約 698,398 件
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/58.html
クイーンに着くとだれも口を開かない。当たり前だ。俺も震えて何もできない。誰も「死」って事は口に出さないけどきっとわかってたと思う。 ピッチの着信音が静寂を切り裂いた。 「もしもし。」 信義が出る。 「俺だけど。いま一平は東病院着いた。ヤマトは中央病院だって。とりあえずヤマトの方に誰か行ってやれ。」 格さんは落ち着いてた。さすがだ。 「特攻服と単車はまずいから着替えて行けよ。あと誰かヤマトんちに連絡入れてくれ。一平は免許証持ってたけどアイツは何も持ってないから連絡できなかったみたいだ。頼むな。」 格さんはそー言うと、静かに電話を切った。 「着替えて行こうぜ。あとこの人数で行ったら病院も迷惑だ。俺と信義と真也で行ってくるからお前らは待っててくれ。後で必ず連絡するから。」 俺はみんなに伝えると自宅に向かった。 家に帰ると適当な服を持って外に行く。 外はだんだん明るくなってきた。 「タクシーで行こうぜ。俺、捕まえてくるわ。」 真也が国道まで走ってく。 「とりあえずタバコくれよ。一服しよーぜ。いろいろありすぎてもたねぇ。」 信義はそー言って俺のポケットからタバコを抜いた。 「ちょっとヤマトんちに電話してくるわ。」 俺はそー言って家の中に入る。信義は無言だ。 番号を押す指が震える。正直、ビビってる。 なんとか押すと呼び出し音が鳴る。 いやな時間だ。 「もしもし。」 電話にでたのばあちゃんだ。 「こんな時間にすいません。斎藤って言うんですけど、ヤマト君のお母さんかお父さん起きてますか?」 「…どう言ったご用件でしょうか?生憎母親は眠っています。」 ばあちゃんはかなり不審な電話だと思って疑っている。 「すいません、実はヤマト君が事故っちゃいまして。いま中央病院に運ばれました。」 「…わかりした、すぐに向かいます。」 ばあちゃんはそう言うと電話を切った。胸が痛い。 俺が外に行くとタクシーが来てた。 「…中央病院まで。」 俺達を乗せたタクシーが走りだした。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/112.html
反対側のスタンドからの大ブーイングで試合が始まった。 「…ぶっ殺す。」 俺が行こーとすると博史が俺を止める。 「いままでのがんばりを無駄にする気か?あとちょっとだから辛抱しろよ。熱くなるな。」 コイツはいつも冷静だ。流されて暴れたら奴らと一緒になっちまう。 「…悪かった。もーちょい我慢するわ。」 なんとか堪えた。試合はウチの高校の勝ちで終わった。まだ一回戦。先は長そうだ。でも俺は二度と球場に来る事はできなくなったんだ。 俺達は旗とか楽器の片付けしてからだったから一番最後まで残ってた。一般の奴らは先にさっさと帰った。片付けが終わってバスに乗り込むと、博史が来てないのに気づいた。 「アイツ、どこいったんだ?」 ジローや後輩達に聞いても首を傾げるばっかりだ。バスで帰ってくるのを待ってると相手校の奴らが博史の腕章持って歩いてた。アイツ捕まりやがった。典も気づいたけど残念ながら手遅れだ。俺はバスから飛び降りてソイツらをぶん殴った。 「先生、悪ぃ。ちょっと行ってくっから先に帰ってろよ。」 典は慌ててバスから降りたけど後の祭りだ。なんとか博史は助けたけど俺は応援団にいられなくなり、無期限の停学になった。そりゃそーだ。教師の前で7人も怪我させりゃ十分だ。しかも絶対あやまらなかったし。間違った事してねーのに頭なんかさげたくなかった。博史には最後までバカだって言われたけどいまじゃ笑い話だ。 これで短かった團長生活は終わった。ちなみにウチの高校は2回戦で負けた。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/43.html
クイーンに着くと誰もまだ来てない。待ち合わせは5分前には着く。これが大人のマナー。 しばらくすると2ストの音が聴こえてきた。GT380。浩二だ。 「まだみんな来てねぇーの?」 「見りゃわかるだろ。」 「なんでウチの奴らって時間通りこないんだろうな。」 「育ちがわりーからだよ。」 「多分、みんなお前にだけは言われたくないと思う。」 そんな会話をしてると、信義と格さんが来た。 「今日は誰の追悼なん?」 俺が聞くと格さんは、 「なんか4つぐらい上の先輩みたい。顔も知らない。祭りみたいなもんだからそんなんでいいんじゃね。」俺達にとって誰かが死ぬって事はまだリアルに感じられなかった。 8時半ぐらいになりようやく集まった。 格さんがみんなを集める。 「今日は追悼だから喧嘩はなし。ウチの地元にきたら俺達が先頭になって引っ張ってくから、みんなよろしく頼む。特攻は群の舵取りになるからしっかりやってくれ。」 特攻隊は俺と信義の二人だけだ。本当は10人ぐらいの特攻隊を別に持ってるけど、こいつらは表に出さない。喧嘩の時のかくし玉って事だ。 格さんの話が終わる頃、イーグルの奴が迎えにきた。集合場所まで誘導してってくれる。 来たのは谷先輩。俺の一コ上。いくら追悼とは言え、たった一人でよその地元に来るって事はかなり喧嘩に自信がなきゃできない。 谷先輩は軽く格さんに挨拶だけすると、俺が引っ張ってくから後についてきてと言った。 イーグルの集合場所はゲームセンター。 そこで集合してから出発になるらしい。 俺達は谷先輩の先導でゲームセンターに向かった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/85.html
次の日俺は学校を休んだ。体中痛いしダルくて動きたくない。それに香織にこの顔見られたら何言われるかわかったもんじゃない。真也が朝迎えに来たけどそのまま行ってもらった。真也は俺の顔見たけど突っ込まなかった。アイツなりの優しさらしい。 夜、信義から連絡があった。今週土曜日に格さんの引退集会をやるらしい。まぁ引退集会ってのも名ばかりで実際は陸の時と一緒でケジメをつける。俺達に特例はない。その前に一度幹部会を開く事になった。水曜日の夜にマックに集合って事で話はまとまった。 ボーっとしてると電話がなる。香織だ。 「もしもし。」 「なんで今日休んだの?風邪?」 「いや、めんどくさくって。ってかいまバイト終わったの?」 「うん。今日は早番だった。暇だからいまから行っていい?」 「今日かよ!?いきなりすぎじゃね!」 「暇なんだもん。家に帰ってもやることないし。それとも行っちゃまずい訳?」 「いや、そんな訳じゃねーけど。いまから来るの?」 「行っちゃ悪い?アンタ目を離すとすぐ他人に迷惑かけるからね!それとも浮気かなんかしてる?」 「バカじゃねーの!してねーよ!とりあえず駅着いたら電話くれよ。迎えに行くから。」 「わかった。そんじゃーまた後で!」 そー言って香織は電話を切った。 一息つこうとしたらまた電話だ。今度は誰だ?…格さんだった。 「いま大丈夫か?ってか体大丈夫?」 「心配すんなよ!体だけは頑丈だから。それよりどーした?」 「いや、ちょっと心配になって。そーいやみんなに話したよ。」 「なんか言ってたか?」 「真也は心配してくれた。信義は怒ってたよ。」 「信義はヤクザとか大嫌いだかんな。真也は予想通りだな。」 「でもみんな俺の事考えてくれてる。いい奴らだよ。」 「なんだそれ!いまさら持ち上げたって何も出ねーよ!」 「そーかもな。それより土曜日はお手柔らかに頼むわ。痛いの嫌いだし。」 「…全力でぶん殴る!昨日の分まで返してやるよ!」 「ふざけんなバカ、こーゆー時は手加減するってのが世の中の常識だろーが!」 「常識ねーから族なんかやってんだろ!観念してボコボコにされろよ!」 「ハイハイ。そんじゃー土曜日な。元気そーで安心したわ。」 「じゃーな!」 こんな普通の会話がこれからはできなくなる。そー思うと寂しくなる。でもこれが別々になるって事なんだって自分納得させた。そろそろ香織が駅に着く。なんか言い訳考えなきゃならない。めんどくせーな。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/87.html
「急にわりぃな。」 今日はやけに素直だ。気持ち悪い。 「別にいいけどよ。俺は単車出さなくていいのか?」 「いいよ。今日はケツに乗れよ。どーせ1台だし。」 お言葉に甘えて格さんのGSのケツに乗る。 「とりあえずクイーン行って浜向かうわ。」 そー言って走り出した。 クイーンに行く途中、真也とマッキーにあった。 「どこ行くんだよ?俺達も暇だからまぜてくれよ!」 真也とマッキーが合流した。3台でクイーンに向かう。 「久しぶりじゃね?集会以外で流すの!」 たしかにそーだ。一平達がいなくなって以来、集会だけじゃなく個人的な走りもしばらくしてなかった。 「浜行ってちょっと休憩してまたクイーン戻って解散な!」 格さんが言った。ちょっと嬉しそーだった。それから浜ちょっと流してクイーン帰ってきた。もめ事も起こらない。 「送ってくから帰ろーぜ!」 あとは家に帰るだけだった。帰る方向が同じだったから真也と格さんと俺と3人で帰った。 「ヤクザになってもたまには一緒に遊ぼーぜ!走ったりはできなくても酒とかは一緒に飲めるじゃん。」 「そーだな。お前らと一緒にバカやってんのが一番楽しいしな。たまにゃ一緒に飲もーぜ。」 「もちろんおごりだろ?それなら付き合ってやるよ。」 「チンピラがそんなに金持ってる訳ねーだろ!割りだよ割り。」 そんなくだらない話をしてるといきなり真也が叫んだ。 「格さん、前ー!!」 前を見たら逆走してくる車が目の前だ。 「…ヤベェ!!」 グシャって音が聞こえた瞬間、俺達は前に吹っ飛んでいった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/115.html
次の日。早速、家の前に迎えが来てた。ボロボロの軽バス。しかもなぜかフルスモーク。こんなので送り迎えかよ。気が重い。中からはもっと気が重くなる様な奴が降りてきた。 …崔だ。 「テメェなんで俺んち知ってんだよ!嫌がらせか!?」 「…俺だって来たくねーよ。だけど加藤さんに言われたからしょうがなくだ。」 まさかと思って聞いてみた。 「お前が入った組ってまさか…」 「…加藤さんとこだよ。文句あっか。」 最悪だ。まさかコイツが加藤さんちの世話になってたなんて。どーしていいかわからない。そんな俺を無視して崔がしゃべり出す。 「今日からしばらくよろしくな。これ、加藤さんから。」 そー言って携帯を渡してきた。今のとは比べ物にならないぐらい大きいヤツ。 俺は早速崔に見えない様に加藤君に電話した。 「もしもし。」 「加藤君、こりゃないっスよ!なんでよりにもよってコイツが来るんですか!?」 「暇な奴がいねーんだよ。仲良くしてくれ。」 「だからって…」 「ちょっといま忙しいからまた後でな。じゃーがんばってくれ。」 そー言って電話切られた。クソ、まいった。 「…電話終わったか?」 崔が俺に声をかけた。しょうがない。何日か適当にこなして解放してもらうしかない。 「…あぁ。さっさと行くか。とりあえず川城の前に行ってくれ。写真もらってきたんだろ?それは車ん中で見せてもらうから。」 「…わかった。」 俺達は出発した。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/39.html
仁さんから30万もらった俺達は、その30万を格さんには渡さずに二人で飲みに行った。 真也は15万をパチンコに注ぎ込みわずか2日で泡にした。俺はとりあえず香織を誘って久しぶりに二人で出かけた。行き先はディズニーランド。香織が決めた。俺も文句は言わない。今回でかけるのはご立腹の香織さんの機嫌を直すためだし。ちょっとぐらい夢の国に行くぐらい、どうってことない。香織は朝からテンション高かった。前の日も夜遅くまで起きてたのに、なんでこんなに元気なんだってくらい。香織がこんなに喜んだのには理由があった。 その日一日中遊び回った俺達はパレードを見ていよいよ帰る時間になった。駅に向かって歩いて行こうとすると、香織はなかなか動こうとしない。いい加減疲れてた俺は、ちょっとイライラして香織を怒った。香織は何も言わずに下を向いてうつ向いていた。ちょっと意地悪してやろうと思い、香織を置いて物陰にかくれた。案の定、すぐにナンパされてた。キョロキョロ俺を探してたけどまだ助けにいかない。10分してもまだナンパ野郎達は引く様子が見えない。香織は困ってちょっと泣きそうになってた。流石にちょっとかわいそうになって、ジュースを買って香織のとこに。男達は引き上げていき、香織は安心したのかその場にへたりこんだ。俺は香織を抱き起こすと、もう帰ろうと言った。所詮は高校生、電車だから終電がなくなると帰れなくなるのはわかってる。 そんな俺の心配をよそに、香織は帰りたくないって言った。じゃーどーすんだと聞いたら、 「私がお金出すからホテルに泊まろう。お願いだから今夜は一緒にいて。」 って言った。いまからちゃんとしたホテルはとれないから一番近くのラブホまで二人で歩く。 今日の香織はちょっと様子がおかしい。だが、泊まる事を了解した途端機嫌はよくなった。20分ぐらい歩いてラブホに着いた。一泊2万近くする。高けぇ。地元のラブホなら一泊1万でお釣りがくる。さすがディズニーランド。部屋に入ると作りも豪華だった。風呂にお湯を張り、ちょっとの間ぼーっとしてると、香織が真面目な顔してこっち来た。俺が、 「何だよ。今日のお前ちょっと変だよ。なんかあった?」 と聞くと、香織は涙を流しながら色々話してくれた。 俺がいなくなるのが(捕まったりとかね)嫌な事、怪我だらけで心配になるって事、それと香織の家族の事。 香織の親は離婚してる。親父さんのDVがひどくて母ちゃんと一緒に逃げたけどやっぱり見つかり母ちゃんが香織と姉ちゃんを逃がすために親父さんの元に戻った事。姉ちゃんと二人で暮らすのが本当は嫌だと言う事。 香織の姉ちゃんは俺達の3コ上で、キャバクラで働いてた。香織に似て美人だけど、どこか影のあるような女の人だった。 香織はそこから、過去に姉ちゃんに彼氏を取られた事や、その彼氏とディズニーランドにきて楽しく遊んだ後に、実は姉ちゃんとも付き合ってるって告白された事も話してくれた。 俺は大馬鹿だった。香織が無理にテンションあげてるのも気付かなかった。それどころか、一人にして不安にさせてみたりとにかく最低だった。 俺は香織に謝り、そしてもう絶対に不安にさせないし、一生側にいる約束もした。あと香織より先に死なないってのもかな。とにかくこいつを守っていく。そう決めたんだ。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/82.html
一平達の追悼がやっと終わった。俺達はまたいつもの日常に戻っていく。なんもない緩い日々。だけど誰かが死んだり他のチームと喧嘩になったりばかりだと体も心ももたねぇ。 でも戻る前にやらなきゃならない事がある。格さんの事だ。アイツ俺達に何か隠してる事がある。ヤクザなんか絶対にさせねぇ。 俺は格さんに電話した。 「…俺だけど。今日ちょっと夜、時間作れるか?」 「昼間は無理だけど夜なら。10時頃なら大丈夫だ。」 「ちょっと話あるんだけど。時間空けといてくれ。」 「…わかった。じゃーふねに10時な。」 ふねは昔、拓ちゃんと竜と一緒に飲んだ焼鳥屋だ。 「遅れんなよ!」 そー言って電話を切った。今日は信義も真也も連れてかない。場合によっては殴ってでも止めなきゃならない。めんどくさい事にならなきゃいいけど。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/52.html
「別に嫌いじゃないですけど。」 俺がそー言うと渡辺が、 「お互い熱くなっちまったら話もできない。ちょっと汗流しに下に行こうぜ。」 「…別にいいですよ。早く帰してくれるなら。」 「わかった、わかった。おい、下の準備してくれ。」 渡辺が若いおまわりに言った。 警察署の地下に行くと道場があった。柔道着着た格さんが倒れてる。クソ、騙された。 森島が笑いながら言う。 「何してんだ、運動好きなんだろ。格田はもー動けないってよ。さあ、元気出してこい。」 殺してやりたい。俺は目の前の大人に本気で殺意を抱いた。 3時間もするともー動けない。背中が痛い。 「もー終わりか、根性ないな。ほら、立って向かってこい。」 「さっきまでの元気はどーした。早く立て。」 立ちたくても立てない。俺はなんとか上半身だけ起こして言った。 「てめぇらなんかにゃ絶対捕まらねぇ。てめぇは俺の敵だ。」 森島は笑いながら、 「お前みたいなチンピラがいくら強がったってこんなもんだ。捕まらない?敵だ?笑わせんな。オシメが取れてから言えクソガキ。」 俺達はその後、また取調室に戻り、指や手の指紋を取られた。 「今日は始めから捕まえる気なんかねぇよ。ちょっと撫でてやっただけだ。後からちゃんと引っ張ってやるから心配すんな。とりあえずその紙持って壁に立ってろ。」 森島は俺の写真を撮ってファイルにとじた。 「これで今日から敵だ。おめでとう。」 俺達は暴走族になった。
https://w.atwiki.jp/uyoku310/pages/61.html
泣き疲れた俺は一平の単車を起こした。このまま置いてはいかない。みんなが待ってるマックまで連れて帰らなきゃ。 なかなかこない俺を心配したのか信義が迎えにきた。 「遅いから心配でみにきた。手伝うよ。」 二人無言で押す。 「…なぁ。一平はさぁ。最後は何考えてたんだろーな。」 信義が唐突に聞いてきた。 「…わかんねーよ。明日のバイトの事でも考えてたんじゃねーかな。アイツ働き者だったから。」 「…ヤマトは?」 「…知らねーよ。多分、アイツは女好きだったから女の事じゃねーか。」 「俺達の事じゃねーのかよ。」 「…それはねーな。あの二人かに限ってそりゃねーわ。ありえん。」 「向こうで寂しくねーかな。結構二人とも誰かといたがりだったじゃん。」 「二人一緒だから大丈夫だろ。心配ねーよ。あいつらならきっとうまくやってけるって。」 「久しぶりにこけたけどさー。痛いのな。久しぶりすぎて俺、ちょっと泣いちゃったよ。」 後でグスグスと鼻をすする音が聞こえる。 「あいつらさー。ちゃんと迷わず逝けたかな。」 「意外と迷ってたりしてな。ヤマトは方向音痴だったからな。中学ん時北海道行ったじゃん。あんときあいつ迷子になってさ。交番で半ベソだったぞ。本人は泣いてねーって言ってたけど。」 「一平も泣き虫だったよ。小学校んときに授業中うんこ行きたくなってさ。泣きながらもらしてた。」 「汚ったねーなー!あいつらしいっちゃ、あいつらしいけど。」 前から格さんが歩いてくる。 「こんな事してたのか。どーりでこねー訳だよな。」 そー言って後に回って信義と一緒に押してくれた。 「単車マックに置いたらさ。ちゃんと現場まで行こーぜ。あいつらもタバコ吸いたいだろ。」 「…そーだな。」 一平とヤマトはもう帰ってこない。友達が死ぬのはもう二度とごめんだ。 俺達はマトモに人が死ぬ暴走族だ。 不死身のヒーローなんていない。