約 2,067,542 件
https://w.atwiki.jp/susumuhirasawa/pages/54.html
スレッドより 以下は、平沢進の歌詞をどうにかして解読するスレ2ループ目から引用 435 Track No.774 2010/06/26(土) 02 45 28 謎はたくさんあるよ。ありすぎてどれから手をつけていいか分からないくらい。 新しいところで言えば、AnotherDayの台詞部分が 「合言葉はきえちゃいました」 から 「合言葉は消去可能」 に変わった理由とかさ。 昔のがツイートにもあった、ある意味の「諦め」を含んでいるのだとすると、 新しいのは台詞どおりの可能性、消すも残すも自由、みたいな意味があるのだろうか、 みたいなことを日々考えてみてるよ。 436 Track No.774 2010/06/26(土) 08 58 22 録音技師の口癖がどうの、が本当なら 今のレコーディング環境ならundoもredoも自由自在自分でできる そんなのじゃないかな? 438 Track No.774 2010/07/08(木) 23 34 19 435 ただ単に「きえちゃいました」なんて恥ずかしい歌詞を いい歳こいて歌いたくないから ちょっと格好良く「消去可能」だなんて歌っただけだと思う。
https://w.atwiki.jp/blendr/pages/21.html
対比表 ツールを色々跨ぐとどうしてもショートカットに整合性を保てなくので カスタムをしてしまうことに・・。 ショートカットは検索出来るのでワードさえあれば楽に探せ出せるのでワードを上げていきます。 自分は2dツールを良く使うので2dツール風に改変して行っています。 改変法が直キーボードなので完成した物をアップするまでは自力で直変更する形になります。 機能面と利便性の重複で独自になってしまっている部分も有りますが なるべく利便性の追求に徹したカスタムを考えています。 目的意味 デフォルト カスタム改変 元に戻す undo CTR Z やり直し redo CTR Y 削除 del 3dビュー関連 viewで探せば出てきます。 目的意味 デフォルト カスタム改変 移動 move view space 3dカーソルを視点の中心に shift middle mouse 拡大縮小 zoom view 上(拡大) 下(縮小) LW調ですね lw的な改変と コミスタ等のスペース移動 回転に関してはボタン指定が一つなのでblenderのミドルで回転します。 3dカーソールの中心指定で高速な移動が可能になっています。
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/271.html
③*④*⑤ 瞑った眼を開けると、白磁の大地が静かに、遠くさざなんでいた。 その遠く、遠くを、見知った背中が歩いてゆく。 追いかけた。自分の吐息が、白い世界に溶けて感じられなくなるまで。 その人が、最後に囁いた。 君の手を取って共に生きてくれる人々が、その世界にいる筈だよ── 彼らと、同じ日々を歩いてみなさい。 ──君が次に目覚めた時は、やさしい世界でありますように── アレから途方もない年月が経過したのだろう。水面に立つ波紋が緩やかに拡がるように、それまで半永久的な休止状態を維持していた意識が、閉ざされた白磁の世界から私の袖口を引っ張る。 来たというのか──。 「あ──ん、う……」 伸ばされた影が未練を残している。身体機能は未だ休止期間を必要とし、しかし、私は反抗するそれを強引に意識下へ隷属させた。統合意思が上手く機能しないが、それでも現状を把握する事は大体可能だった。 意識状態の明確化と共に知覚機能群が復旧処置に入り、ひとつの存在を捕捉する。 ──このさざなみ、あの兵器か? 兵器と呼ぶにも幼すぎた鋼鉄の赤子、その体内から引き摺りだされた頃に感じた、彼の者の嘶き。 内なる母胎として、私を必要とする未熟な鋼鉄の赤子──身体に染み付いた感覚は、決して嘘を言わない。 しかし、こちらの知覚機能を捕捉していない鋼鉄の赤子は袖を弱々しく引くのみで、彼の者の名を知らぬ私にとって、それは対応すべきものでもない。 永久にも等しかった休止期間で機能障害が発露していないかどうか、意識野のシステムスキャンを低速で進行させる傍ら、私は眼を瞑ったまま、鈍い疼痛が渦巻く前頭部に手の甲を当てた。 「──目が覚めたのか?」 その声の持ち主について、復旧した知覚機能群が真っ先に気配を捉えていた為、私はさしたる驚きを示さなかった。薄く瞼を持ち上げ、臥せた姿勢の私を覗き込む少年と視線が重なり合った。 この顔は、知っている── 極めて朧で記憶すら定かでないが、何処かあどけなさを残す顔つきのこの男に、見覚えがあった。 徐々に晴れ始めた視界には、清潔感に包まれた天井が広がっている。馴染み深い消毒液の芳香が鼻腔をつき、一瞬だけ暗澹とした感情が胸中に染み渡った。しかし、右側で中ほど空いた窓から流れて来た緩やかな外気を肌に受け、その暖かさを初めて感じた。 その風は清涼としていて、気持ちのいいものだった。 この男が、私を此処へ連れてきたのだろう──。 実時間にして一瞬だったが、強制的な復旧処置によって統合意識は確かに、この男の背中を捉えていた。 あれはいつの事だったのだろう──気になって初めて、知覚機能群が定める標準時刻が初期化されている事に気づいた。視覚野の中、極彩色を纏う可視映像群は全て滅茶苦茶な情報を表示しており、一切の意味を成していない。 寝覚めとしては、最悪という事だ。状況としても、そうである事に申し分ないが──。 「ええ、随分と長い夢を見ていたような気がする──」 強い倦怠感が蔓延する身体を起こすだけで、相当の労力を要した。長期間休止状態にあった身体機能は著しく低下しているようだった。復旧処置が進行中とはいえ、鉛のように固まった身体を自在にうごかせるようには、暫くかかるだろう。 上体を起こす動作だけで息が切れ、男が気遣う様子を見せたが、私は手を小さく上げてそれを遮った。 「そうか、無理するなよ。俺はマイ、マイ・アーヴァンク。ここはコロニーの病院だから安心していい、お前は?」 澱みのない声で、少年は名乗る。溌剌とした口調に相応しく、その容貌は端正である。切れ長の双眸はその者の意志の強さを反映したように鋭い。 自らの個別名称としてマイを名乗った男が、逆に自分の名を求めてきた事に、少なくない驚きを覚えた。 まるで等価交換として当たり前であるかのような振る舞いに、どうしようもない戸惑いを感じる。 個別名称を呼ばれる事はあれど、それを聞かれる、ましてや自ら能動的に名乗るような機会が、与えられた事はなかった。 名乗り方を知らない訳ではない。だが、自分には彼が望むようなラベルが貼られていない事を、承知していた。どうやっても避けられないし、避ける必要もない、この先に感じるであろう奇異の眼差しを予想した。 「──名前?……好きに呼んでいいわよ。名前なんて、私にはないもの。でも、そうね──あえて言うなら、私のが呼ばれていた名前は、【No.00】……」 思っていた程の反応の大きさはなかったものの、それでも若干の驚愕を孕んだ視線を感じた。 当たり前だ。マイという名の男が知るはずもないが、そもそも自分は──。 「──【No.00】……。へえ、何か、味気ない名前だな。お前、旧世代兵器か何かの実験に付き合ってたのか?」 その純朴な問いに、何故か安堵する自分がいた。名前ではなく、そういったものを問われる事だけが他者との話と呼べる意思疎通の大半を占めていたからかもしれない。 自分とて彼の素性を知る由もないし、今の問いに関しては恐らく単純な好奇心からきているものだろうと思う。 応える義理はないが、それ以上に応えない必要性もなかった。 「そうね、何の事かよく分からないけれど、大差はないかもね。──それで? 私を何の為に起こしたの? アレを完成させる為? さっき起動情報を捕まえたけれど」 そう言い、該当する方角を指差す。 休止状態の私を、正規の処理規定を辿らずに再起動させる術は限られている。 先ほど、私の統合意識に語りかけてきた、〝鋼鉄の赤子〟──。 見た印象、マイという男にはそれほどの害悪は感じない。それどころか、これまで自分を取り巻いてきた者達とは随分と違う印象を受けていた。しかし、それが無関係という事には何も直結しない。 事実として、私は赤子の嘶きによって引き摺り起こされたようなものなのだ。 私が機能復旧したその場に、それがあったというのなら、その前後が如何なる状況であったとしても、私が知るべき事実は最早、過去と変わらない。 ──私はまた、死に損ねた。 改めて思い出すと、どうでもよくなった。 「あー、いや、と」 「連れていって。近いんでしょ?」 「いや、そんな事ないけど」 「勿体ぶらないで。私が必要なんでしょ」 「だから、あのな──」 「気遣いは不要よ。早くしてよ、どうせ私は──」 どうせ私は、また死に損ねただけの、ただの素材に過ぎないのだから。 そんな当たり前の、分かりきった事を口にするのも億劫だった。尻すぼみに口をつぐみ、暫く続いた沈黙の後に、妙な気配を察知して男の方を振り返った。 なんというか、見た事のない表情が、そこにあった。 「えーとな、落ち着こう、な? 何処かに連れていこうなんてないし、何かの実験に付き合わせようなんて思っちゃいないよ。俺はただ、お前を遺跡で偶然見つけただけなんだ。──ただ、お前の助けになればと思って、連れて来ただけさ」 己の知覚機能群の程度を把握しているからこそ、その男が偽りない意図を伝えている事に、すぐ気づいた。 全てを伝えてはいない、何処か肝心な意図を省いている面持ちではあるが、彼が誠実な態度を保っている事自体も理解できた。 そして、予測の範疇を超えた二つの事柄に、自分は静かに驚愕していた。 「え──貴方、そんな理由で、本当に私を連れてきたの?」 そんな理由とか言うなよ、俺だって命掛けだったんだぜとかなんとか呟いた後、後頭部をがしがしと掻きながら少年は言葉を紡ぐ。 「ああ、そうだけど。何か不都合でもあったか?」 天井の端から端まで一度視線を切り、額に指を当てる。これを言葉にするのは相当な状況的偽善なのかもしれないが、口に出さずにはいられなかった。 「不都合があるとしたら、それは貴方の方よ……。私はこれでも、危ない身の上なの。貴方のその軽率な行動ひとつで、色んな人々から狙われるかもしれないのよ?」 久々とはいえ、他者に対して自分からこれほど話す機会は、恐らくなかったと思う。それほどまでに、目の前の男が、自分がこれまで目にしてきた人間という認識の範疇から逸脱していたのだ。 「ああ、覚悟なら出来ているよ。その辺は心配しなくていい」 マイという男はまたしても、しれっとのたまう。 生まれて初めて、あたまがくらりとした。 「そんなバカな事言う人は、初めて──」 率直に言うと、彼は否定する様子もなく腕を組んで頷く。 「確かに、バカな事かもしれないな。けど、俺、元々は戦災孤児ってヤツでさ。困ってるヤツを見ると、放っておけないんだ」 「私が困ってるように見えた?」 「いーや。お前を気にかけてた奴は、大層心配してたよ。でも、【No.00】、今のお前は充分困惑してそうだけどな?」 彼が口にした【戦災孤児】という語句を情報管轄野で検索に掛けたが、該当しなかった。情報管轄野には現在五〇兆項目超のデジタル情報が収納されているが、その何れにも引っかからなかった。だが、その原因についてはすぐに理解が及んだ。 当然だ。私の普遍世界は、小さく区切られた片隅の部屋でしかなかったのだ。 「貴方に対してね──そんな事はいいわ。でも、貴方は受けた恩を、誰かに返したいのね?」 「かもな。でも、それはもう済んでる。俺がお前を助けたのは、俺自身の意志だ。俺がお前を助けたいと、そう思ったから、従っただけの話だ」 正しく鮮烈、そう形容してもいい意思の溢れる双眸をまっすぐ向け、彼は一切の澱みなく言い切る。他者に拠るものでなく、自分の意志に根ざした行為を持って、そう在ったのだと。 私が知る中には、そんな人は一人もいなかった。 ──いや、その背中を見せてくれた人が、たったの一人だけ、いた。 「──迷惑だったかな?」 「いや、そんな事は……」 何故だろう。そう問いただした。しかし、それに対して絶対的に整合性のある理由が見当たる訳はないと自覚していた。 恐らくそう思うのは、自分にも人としての片鱗が残されているからだろう──。 胸が熱く、そして顔が熱く仄かに染まってゆくのを感じる。 薄く開いた口から言葉を出そうとして、何度か空振る。 そうしてようやく、 「……ありがとう」 こういう時に言うのは、こんな言葉で正しいのだろうか。 「どういたしまして、と」 彼──マイはそういって微笑む。正面から見据えていなかったにせよ、私は彼に向けていた視線を僅かに上の方へと逸らした。 まっすぐ見られない。初めて覚える感情だった。 でも、嬉しい──。 「さて、やっぱり名前が【No.00】ってのは味気ないよなあ。名前要るだろ、やっぱり?」 胸中に波立つ感情が収まり切らない内に、マイは次の提案を投げてよこした。 「え、と……名前、というのは、何か、そんなに重要なものなのか?」 そう言うと、彼は大きく頷く。 「誰だって、自分の名前は好かれたいもんだろ?」 名前自体がそもそも自己の本質を指す、そう言わんばかりの言葉だった。 多少強引ではあるが、確かにそう思う事はある。 いまいちその重要性と必要性を感じられなかったが、単純な好奇心で私は頷くことにした。 「そうね──面白そう」 「面白い、のかな? まあ、それはいいとして、そうだなあ──あ、イリヤってのはどうだ?」 「イリヤ──どういう意味だ?」 「いやあ、意味は知らないけど。俺のさ、婆ちゃんの名前なんだよ。俺が大事にしたいと願った人の名前だよ」 婆ちゃん──祖母、遺伝学上の縁者という事か。 「イリヤ、か……うん、悪くない名前ね」 「オーケー。じゃあイリヤ、俺はリヴァルディに連絡を遣してくるよ。──あ、リヴァルディってのは、〝俺達〟のホームの事だから。後で皆に紹介するよ」 そう言うと、マイは席を立って部屋を後にした。ドアを閉める際は不要な刺激を与えないよう配慮してか、静かに閉めていった。 「それにしても、随分と時間が過ぎたのね…・・・」 驚きを覚えた事柄の片割れは、過ぎ去った永久のような時間だった。 私が発見された時には、既に私の眠っていた施設は遺跡と呼ぶまでに成り果てていたらしい。 彼の言葉を信じるのならば、だが。 彼の口から訊くよりも早く真偽を確かめる手法を知っていた私は、室内から青々とした空を仰ぐ。 機械的知覚機能群の一部に復旧処置を優先し、地球周回軌道に点在する環境観測衛星とのデータリンクを確立。 「標準時刻及び休止経過時間、地表環境情報を新規策定──」 速やかに望む情報をアップロードした直後、それで漸く役目を終えたとでもいうのか、データリンクが衛星の方から一方的に断絶された。 「そう──そんなに経っていたの。御苦労様……」 凡そこの大地に生きる人々にとって悠久と称するにも長すぎる時間が、私の周りを過ぎ去っていたらしい。 周回軌道を孤独に巡り続けていた衛星ですら、老朽化によってその機能を停止してしまうほどの時間が。 データ・リンクから獲得した必要情報群の中に、既に自分と似たような境遇の先達が環境観測衛星を使用した痕跡も発見した。私は、運が良かったのだろう。 「私のほかにも、まだいたのか──……」 自分の体が横たえられていたベッド脇の窓を引き開き、緩やかな風を全身に受ける。 「気持ちいい風──」 気持ちを切り替え、私は先程マイが与えてくれた名前に思考を巡らしてみた。 イリヤ、か──その名前をつけられる事にさしたる意味は見出せない。 けれど、つけられたばかりのその名前を呼ばれてみて、やはり私は、そう、慣れない感情が介在しているのを自覚していた。 ただ、嬉しかった。 過去に──私は死に損ねた。 それを望んでいたし、今もそれを否定する事はできない。 しかし、いま、この時だけは、その感情を受け入れてもいいだろう。 そう思い直し、青々とした空を再び見渡した時だった。 鋼鉄の赤子が再度発した嘶きを機械化知覚機能群が解析し、瞬く間にその詳細を可視映像として眼前に出力する。広域電子妨害措置と思しき伝播を押し退けて接触してきた嘶きは、先ほどより一層強く苦痛に満ちていた。 対応レベルが更新され、身体機能に及んでいた復旧処置が全て脳機能野へと傾注される。 この時代にも確かに、鋼鉄の赤子の遺伝子を受け継ぐモノが存在している──。そして、私と同じような者たちも……。 先程よりも一層激しい様相で赤子は嘶きを発し、私の感覚野を掻き乱そうとする。 体感時間を限りなく圧縮し、認識速度を倍加的に跳ね上げた。 「プロトコルが目茶目茶ね、仕様のない子──今、手伝ってあげるから」 助けを求めるその嘶きに対し、今の私は何の外的制限も与えられていない。 指示がなければ、私は〝起動〟できない訳ではない。 私が与えられていた本懐は、鋼鉄の赤子の成長を、助けてあげる事だった──。 ならば、その役目に従うしかない。それは自分にとっての、本能に近いものだった。 圧縮時間の中、最大限に上げた対応速度で関連情報群を視覚野に出力、可視映像が眼前を埋め尽くす。 既存のコード改変プログラムに該当、類似するシステムではない──。 「新規オペレーションコード作製──所要時間【00 02sec】、……作製、プログラム試行完了」 微細なバグ修正を加えたプログラムの試行演算を秒間二〇五〇兆回以上で繰り返し、状況更新プログラムを完結させた。苦しそうな嘶きで訴え続ける鋼鉄の赤子に対して応える。 「大丈夫だから。今、楽にしてあげる──」 特定周波数で結び上げた双方の知覚機能群を通じ、鋼鉄の赤子の成長を促すプログラムを打ち込んだ。 しばらくして、感覚野を弾き回っていた嘶きが不意に収まる。 私は安堵した。 「そう、いい子ね。よくやった、偉いわよ──」 非常に充足した感覚。 それが、私の役割だ。時代を経ても何も変わらない。 知覚機能郡の接続体制を解消する前に、その間隙へ先ほどから潜伏介入していた遠隔意識に少し語りかけた。 ──貴女は、だれ? しかし、その問いに対する返答はなかった。遠隔意識は潜伏介入を一方的に解消し、その存在を消去した。 素性はわからなかった。ただ、〝姉妹〟のうちの誰かが、接触してきていたのだという事は、理解できたが。高い遠隔意識による潜伏介入から察するに、恐らくかなり後期型の〝姉妹〟だろう。 多少残念ではあったが遠く会えぬ者に今、興味を巡らせる事もない。 そして、私という存在をこの時代にて、真に求める者達の姿を見つけたのは直後の事だった。 * 遠慮してマイが病院前に出たのと、シルヴィアが車輌をそこへ乗りつけたのはほぼ同時だった。 大胆な運転で車輌を駐車スペースに滑り込ませ、停止もそこそこにシルヴィアが路上へ飛び降りる。 「マイ、隔壁を破ってACが進入してきた! こっちに向かってきてる!」 そう言ったシルヴィアは、動揺を落ち着けられていない様子だった。 私有地を挟んだ市街地の方面から平時とは明らかに違う喧騒が俄かに届き、その中に混じる怒号と悲鳴はマイにとって馴染みのあるものだった。 「落ち着け、シルヴィ。そのACってのは、どこの所属だった?」 突然の事態にも取り乱さず冷静な対応に勤めるマイの表情を見て、シルヴィは幾らか落ち着きを取り戻す。彼女の気転の良さはマイも知る所であり、柔軟な姿勢に望む彼女を見て得心した。 「それが、ミラージュ本社の実行部隊みたいなんだっ──」 AC兵器まで持ち出したミラージュ本社の実行部隊──それが、この総合病院へ一直線に向かいつつあると二つの事実に、マイはその意図する所へ瞬時に行き着いた。 (ミラージュは、イリヤを奪取しに来たのか──?) サンドゲイルの面々にはこの数日、イリヤの事については一切とは言わないまでも、その詳細については話していなかった。それは彼女を旧世代遺跡から拾ってきたと事実通りに説明するのは、その状況があまりに突飛であった事と、自らの口からそれを語るには役不足である気がした為であった。 彼女が目覚めるのを待ち、改めて皆に理解を求めるつもりでいたのだ。 その判断が今、全て裏目に出ようとしている──。 数日前に関与した作戦時の記憶が、俄かにマイの脳裏を過ぎった。 幾つかの記憶が接点として意図を成し、結合し合う。 ミラージュ社が大々的に推進した領土奪回戦闘──旧世代兵器施設〝アスセナ〟制圧作戦の中で、ミラージュ社は彼女の確保を目的の一つとしていたのではないか。 状況証拠は乏しく、そうと断言できる明確なものはない。しかし、マイには確信があった。 最下層部の冷凍保管施設に収納されていたイリヤを連れて行くよう懇願した、施設管轄AI──。 それは遥か悠久の過去に消え去った先達が遺した遺言のひとつだろうと思っていた。その解釈に従ってイリヤを連れ出した後、作戦担当の通信士は確かに、こう、マイへ問いかけていた。 ──何か、確保されましたか、と。 推測の域は出ない。しかしそう考えると、筋道はその道理として全て矛盾なく成立し得る。 その域内での事実関係を知って尚、マイには一欠片の後悔もなかった。 自らに課す誓約という名の覚悟とは、そういう意味であり、あらゆる代償を踏み越えねばならない。 かつて自らにその生き方を身を持って示した大恩ある練達の戦士も、現在を尚そうして戦い続けている。 マイは瞬時に判断し、元々取り出す予定で手に持っていたインカムを耳に装着した。反対側を人差し指で叩き、共有回線に繋ぐようシルヴィアにも指示する。 「旗艦、こちらマイ──聞こえるか」 一拍の空白を挟み、応答用の接続ノイズがごく小さく耳を打つ。 『マイ、状況はどうなってる?』 応答したのは管制室常駐のオペレータではなく、旗艦指揮を行っているシェルブだった。此方からの通信要請が入った時点で直接繋がせたのだろう。そして開口一番極力要約した言葉を発した事から、マイは既にあちらも〝現在の状況〟に遭遇したか、或いはそれに類似した状況に直面しているのを察した。 「隔壁から進入したミラージュ本社所属のACが、総合病院へ向かって来てます。ごろつきの輸送車襲撃は陽動作戦だったんですか?」 『分からん。だが、旧世代兵器群の襲撃を挟んでいる辺り、別の状況だろう』 シェルブの応答の中に、自分が関知していなかったらしい事象が含まれていた事について、マイは即座に問い返した。 「旧世代兵器って、いつそんな事になってたんです?」 『電子妨害措置が都市域レベルで展開されていたらしい。どういう訳か、丁度繋がったのは幸運だったな』 関知していなかった事態の詳細については後で把握する事にして、都市全域という範囲でECMが展開されていた為に連絡手段が断絶されていたというのなら、自分が知らなかったというのは納得できる。 そして都市域レベルでそれを実行していたという事は、余程周到な準備工作をしていた──即ち、事前にコロニー内部へ工作人員が進入していた事を意味する。進入してきたというミラージュ本社の実行部隊の状況を鑑みるに、それとの関連性を考えるなという方が困難な話だ。 『リヴァルディは帰還済みだが、施設外部に制圧歩兵部隊、及びコロニー外部遠域に複数のAC反応がある。どうやら目的は俺達らしいぞ、マイ』 シェルブが最後に自分の名を付加し、その意図する所にマイは苦もなく気づいた。 「敵性勢力の狙いは、彼女──イリヤだと思います」 『イリヤ──あの娘の名か? 目が覚めたのか?』 「はい。それと何故か、恐らく旗艦の方を指差していました」 電子妨害措置が展開されている間に起きたらしい、旧世代兵器群とリヴァルディの戦闘、ミラージュ本社部隊の介入、イリヤの覚醒──状況が一箇所に集中し過ぎている。 それらと、イリヤが意識を取り戻した事に何らかの関連性があるのでは、とマイは勘ぐっていた。 『そのイリヤとか言う娘を敵部隊が狙っているという予測、随分確信があるようだな?』 「──俺の口からは言えませんが、ほぼ確実です」 確立状態にある回線からシェルブが一時期思案する気配が届いたような気がした。 『こちらは旗艦と施設の防衛で間もなく手一杯になる、そちらにまで手は回せん。目的が分かっているのなら、マイ──何としても、娘を護れ。──出来るな?』 命令というには余りに抑揚の意思を孕んだ言葉で、提案というには余りにも冷徹な予兆を含んだ言葉だった。 マイは知っていた。自らを拾い、兵士として教え育てた大恩ある戦士シェルブ・ハートネットという練達の事を。 彼は決して詮索しない。 彼は決して追求しない。 彼は決して糾弾しない。 自らの意志と覚悟をもって他を顧みない代償を呑み、コトを成そうというのなら、何を捨て置いてもそれを全うしろ──彼はマイにそう教えたのだ。そしてそれが出来ないのなら、戦士としての恥辱を自らに塗り、看板を下ろして戦場を去れ、とも。 マイは今、自らの資質を試されている──そう捉えた。 「了解しました。命に代えても、イリヤを護ります」 『シルヴィアも一緒にいるな? こちらからではアハトとは連絡がつかない。可能であれば合流して、旗艦へ戻れ。幸運を祈る──』 通信体制は確立状態を維持したまま、旗艦との交信を終了した。 シェルブの老猾、且つ冷徹な言葉にマイは密かに胸を早鳴らせた。しかし気を静かに保ち、通信を見守っていたシルヴィアをまっすぐ見下ろす。 「聞いただろうが、イリヤがさっき目覚めた。病室へ戻るぞ」 シルヴィアが力強く頷いたとほぼ同時、何処かでガラスの割れる派手な音が響いた。速やかに音源を手繰り、後方左手の駐車ポートに面した病院四階の病室を見上げる。 其処は自分が今しがた出てきた病室の場所であり、屋上から垂れ下がった降下用のロープが壁面を揺れていた。 「急いで戻るぞ、シルヴィア!」 保護用カバーで覆ったヒップホルスターから自動拳銃を抜き出し、両手に携えると正面エントランスから院内へ駆け込んだ。時間帯も相まってかエントランスの人影はまばらで、しかし、噂を聞きつけたかした関係者がざわめきを立てる中を一気に駆けていく。その中で、傍目には凶器しか映らない得物を握るマイとシルヴィアの姿を見咎めた来院者が短い悲鳴を上げるなどして、潮のように通路を明け渡す。 マイはエレベータを待たず、通常階段から四階まで数段飛ばしで上がると、人気のない左手の通路の先──イリヤが収容されている病室の中から、何者かの話し声が聞こえる。それが何かは聞き取れなかったが、マイはその間に姿勢を下げて廊下を渡りきり、引き戸に遮られた病室前の壁に密着する。 対面に回り込んだシルヴィアへハンドシグナルで指示を送り、彼女が頷く。そして彼女が引き戸開き、マイは逡巡なく室内へ飛び込んだ。 「動くな──」 そう、冷徹に宣告する。 最も手近な闖入者へ向けて言い放つつもりだった制止の言葉を、マイのこめかみに銃口を突きつけた覆面の兵士が抑揚に著しく欠けた口調で言う。 やられた。こいつ等、手練だ──。 マイは大人しく指示に従った。後方に続いて隣から進入を図ったシルヴィアも同様に、得物を足元に落とし、両手を緩く掲げる。 「伊達に、本社の実行部隊を名乗っちゃいないって訳か──?」 自らに自動小銃の銃口を向ける兵士に向けて言ったが、そいつは何ら意に介してもいないようで、冷え切った視線だけを此方に向ける。 「この期に及んで、手を出そうなどとは思わないことだ」 室内には目視でき得る限りで、五人の大柄な闖入者がいる。何れもミラージュ本社正規軍の兵服に身を包み、同社陸軍の特殊部隊所属である事を示す肩章が目を引く。 その兵士達に囲まれる中に、よろめきつつベッドから立ち上がるイリヤがいた。 マイは眉間に皺を寄せ、普段はそれほど変える事のない表情を厳しくした。 やがて、地鳴りのように轟く足音が病院外から近づき、一機の鋼鉄の巨人──ミラージュ社の肩章を煌かせたACの頭部が砕け散った窓の外に現れる。薄い橙色の反応光を放つカメラアイを前に、ようやく立ち上がったイリヤが此方を振り返った。 「──言ったでしょう? これでいいのよ、私は。それに、此れで貴方達が狙われる事もない」 せめてもの気遣いか、諦観というには余りに達観し過ぎた、マイにとっては理解の範疇を超えた表情を浮かべてイリヤは淡々と言う。 しかし、彼女が伝えたその言葉は額面通りに受けるだけで用意に理解できた。 マイは冷静に勤めた。 「お前はいいのか、本当にそれで?」 彼女は小さく俯き、首を振る。その振る舞いは澱みなくマイの視界に映る中で行われた。 彼女自身、その経験を何度も経て来たかのように。 「でも、そうね──嬉しかったわ。私に優しくしてくれて。名前まで貰った……ありがとう」 彼女の表情は一貫して変わらない。しかし、不慣れな言葉を扱う時には誰しも特徴がでるものだ。それを彼女の顔に感じた。 イリヤは何も言わずに背を向け、華奢な身体を兵士に預けた。窓の外のACは背部を向けて待機し、積み込まれていた収納用コンテナの中に彼女は姿を消した。現場指揮官と思しき兵士からの指示を受けるとACが待機姿勢を解除、通常歩行で病院から離れていく。 「出ろ、下がれ──」 銃口を突き付けられたままマイは指示に従い、廊下にまで歩を下げた。 有無を言わさず此処で撃ち殺して終わりにするつもりだ。当事者にとっての不都合は徹底的に隠滅する──それは常套手段でありすぎるが故に、軽い吐き気を催す。 マイは不屈の意思を双眸に湛え、距離を保って眉間に狙いを定めた銃口から銃火が溢れるまで、抵抗を貫くつもりでいた。シルヴィアの様子は分からない。視線を僅かにでも切るという事は、それだけ此方の意図を伝えてしまうことに他ならなかった。 眼前に立つ処刑人がトリガーにかける指先に力が入る──その瞬間だった。 『避けろ──』 間断なく、マイは身体を横合いへ弾いた。 重く轟いた銃声が鼓膜を打ち、眼前の兵士の頭部が石榴のように弾け飛んだ。血液と脳漿が一帯に飛散し、指揮系統を失った身体が無意味に一度跳ね、前のめりに斃れ込む。 「シルヴィア、走れ!」 マイは叫んだ。ほぼ同時に反対側へ逃れていたシルヴィアは、マイと死体を視界に入れる前に走り出す。 よし、持ち直したな──。 腹部にどすんと叩きつける銃声──その特徴からして恐らく大口径の自動小銃、対物ライフルかその系統に属したものだろう──が連続して轟き、室内の壁に大きな弾痕を穿つ。外部からの奇襲によって足止めを喰らった兵士達が壁際に伏せ、その間にマイは死体の傍に駆け寄った。ベルトに吊るされた武装類──手榴弾と閃光音響手榴弾を幾つか拝借し、一方的な制圧射撃が続く室内から窓の外を見やると、対面のビルの屋上に、一つの人影があった。 「間一髪、役所を待ってたな? アハト」 『さあな。ACは市街地を進行中だ、脱出して旗艦へ戻れ。その間、掩護する』 「了解、恩に着る──」 逃がすな、という兵士の声が室内から響く。対面のビル内から制圧射撃を行うアハトに対して兵士達が応対射撃を行うのを遅延させるべく、マイは即座に閃光音響手榴弾を投げ込んだ。 結果を待たずに走り出し、後方から耳を劈くような爆発音が響く。残響音と銃撃音が木霊する廊下を渡りきり、エントランスへ直結する階段脇で待機していたシルヴィアと合流した。 「今の、アハトさんかな?」 「ああ。まったく、おいしい所を持ってってくれる奴だ」 屋上で待機していた兵員が気づいたのだろう、軍靴を高く鳴らしながら階段を下りてくる。 先行してシルヴィアを階下に行かせ、後方を警戒しながら駆け下りる。切り替えしの踊り場に到ると同時に屋上から降りてきた敵部隊と接触、手に握った自動拳銃をフルオートでばら撒いた。 軽い足止めから牽制用にグレネードを投げ込み、シルヴィアの後を負う。くぐもった爆音が、院内階段と通路の内壁に反響する。 来院客や職員達が逃げ惑うエントランスを走り抜ける中、院関係者と対応協議の為に席を外していたアリーヌがマイを呼び止めた。 「何があったの、マイ!」 「ミラージュの部隊があの子を攫った。俺達も追われてる、先生は病院に紛れて遣り過ごしてください」 要点のみを抽出して口早に伝えると、流石軍医として一線を張っているだけあり彼女は速やかに状況を把握、頷いた。 「わかったわ、気をつけるのよ?」 「ああ、先生も」 視線を交わし、人ごみの中に紛れていくアリーヌを視界の隅に残して病院前へと走り出た。エントランス前の路上に無傷で停車してあったサンドゲイル謹製の車輌運転席へシルヴィアが乗り込み、マイは荷台から直接後部座席へ飛び乗った。 「出せ! 急いでリヴァルディに合流するぞ!」 「了解、しっかり掴まっててよ!」 そう言うなり車輌が弾丸のように路上へ飛び出し、その急加速に何とか耐えつつマイは銃架の展開準備に入った。 「脱出に成功した。最短経路で繋留施設への合流を試みる!」 『了解。こちらも移動を開始する──』 車内後半部に設置された銃架機構のコンソール端末を叩き、折りたたんで収納されていた車輌搭載用重機関銃の砲身が展開、車上銃架へ迅速に組み上がる。 狭い車内を身を捩るように移動して銃架へ身体を押し上げ、グリップを握り込んで銃身を後方へと取り回す。 「繋留施設までの所要時間はどうだ、シルヴィア?」 「最短経路を検索に掛けたけど、最低でも一〇分は掛かる。その間、二人で何とか凌いで!」 「了解。優しいエスコートを頼むぜ、相棒」 コロニー内に武装勢力が介入した事実は既に広く伝播しているようで、在留市民の過半は既に各地に設置されている地下避難施設へと駆け込んだ後のようだった。事実、路上には既にシルヴィアの駆る車輌以外に一般車の走る姿はない。市民も逃げ遅れと思しき人影を数十メートル間隔でまらばに見かけはするものの、歩道には殆どいない。 平時からコロニーに篭もっているだけあって──しかも辺境もいい所の治安も差して良いとはいえない場所だ──危機察知にはかなり長けているらしい。 もしもの可能性を考慮してマイはコンソールを叩き、銃架制御機構を更新する。武装状態による脅威度認識プログラムを火器管制機構に搭載し、各種索敵センサも同時起動──コンソールのひとつである小柄なディスプレイに【-System All Green-】の文字が表記される。 迎撃準備を完結した直後、タイミングを良くしてインカムに無線連絡が入る。 『マイ、此方アハト──合流進路上に展開していた敵の撤退支援勢力を足止めした。間もなくお前達の後方に周り込むだろう。目の前から蜂の巣なんて事はないだろうが、しっかり狙えよ──?』 「オーケー。派手な花火を上げてやるよ」 相変わらずやることの早いこと──アハトの素性について詳しく知ってはいなかったが、彼はどうやら身体の大部分に機能強化措置を享受していることをマイは把握していた。 車輌などに頼らなくとも、建物から建物を自在に飛び移って先回りしていたのだろう。 そしてアハトの予告通り、通り過ぎた後方十字路の両端から追撃用の攻撃車輌が計四台、猛然と滑り込んできた。 「シルヴィア、速度を上げろ! 逃げ切るぞ!」 風の走る音に紛れて返答が聞こえ、マイの要求に応えた車輌がギアを上げて一段階、速度を上げる。 搭載銃架の射撃管制システムが後方より迫り来る攻撃車輌を捕捉し、解析情報を瞬く間にディスプレイへ出力する。 『捕捉対象、KUM社製汎用攻撃車輌HMGW──搭載武装、五,五六ミリ軽機関銃。対弾装甲防御能力なし、装填弾種での制圧攻撃、可能です──』 敵対勢力からの反撃を食らう可能性などは一切考慮せず、人員輸送と目標の速やかな達成を念頭に、車両状態を大幅に改変したのだろう。 マイは迷いなく、射撃管制システムが捕捉した手近な目標に向けて発砲した。 秒間十発以上の速度で吐き出される通常徹甲弾が弾幕を張り、目標のフロントタイヤを外装ごと容易に撃ち貫く。走行バランスを崩した目標が斜めから横転して後続の車輌を巻き込んだ。 「よし、行けるぞ──」 積載していた爆薬系統にでも多大な衝撃が加わったのか、二台の車輌が不意に爆発し黒煙と共に大きな火球を作り上げた。 繋留施設への合流は程なく近い──マイは、グリップトリガーを握る力を強めた。 「必ず行くからな、イリヤ……!」 彼女は一言も言わなかった。助けて、とすら。 だが、僅か十分足らずでしかなかった自分との関わりの中で、心の底から来る感謝の言葉を述べる交感を得ていた。でなければ、あの局面で 誰が口に出来るものか。 ありがとう、と──。 それが、どんな心を押し潰して出されたものか、マイは分かっていた。 そしてそれが、助けを請う、どの言葉よりも重いかも。 →Next… ⑤ コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/oggb/pages/23.html
ゲーム名 RED STONE:レッドストーン 価格 登録無料、クライアントダウンロード無料、クライアント使用無料、基本プレイ無料、アイテム課金 対応OS Windows 98/Me/2000/XP日本語版 アカウント発行 ゲームオン ネットマーブル(CJインターネットジャパン) 運営 ゲームオン 開発 L K Logic Korea Co., Ltd. 関連リンク RED STONE:レッドストーン ゲームオン ネットマーブル(CJインターネットジャパン)
https://w.atwiki.jp/lolsarasi/pages/127.html
419 名前:名無しさん@ゴーゴーゴーゴー![sage] 投稿日:2016/03/25(金) 23 54 36.12 ID UbqyJqqO red ral adc シヴィア 試合中 feedしてチームメイトから煽られると自分から死にに行きだす。 極めつけは 「僕、煽られなれてないから~~~^^」 煽られると死んじゃうんだぁーとのことでした。 動画もとってた人いるみたいなのでyoutubeに上げるとのこと。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/god14/pages/293.html
エインフェリア・ルベド Dies iraeにおけるエレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグの専用曲。 溶鉱炉のような苛烈さと、どこか神聖さを感じさせる曲調が印象的。 初出は螢ルート13章「Nemo ante mortem beatus」。城でのベアトリスvsエレオノーレ戦にて。 ベアトリスの言葉に侮辱を感じたエレオノーレによる創造発動の場面であり、言葉こそ静かな彼女の激情を音楽によって十分以上に表現した名シーン。 余談だが、07年版プレイヤーにとって専用BGMの初実装だけでなく真創造の初披露の場でもあり、その興奮たるや語るに及ばない。 玲愛ルート13章「Acta est Fabula」の三騎士戦では、Einherjar NigredoとEinherjar Albedoを抑えて、この曲が流れる。 三対一の絶望的な状況を見事に演出しており、その上の三騎士同時詠唱は地の文も合わさり多くのプレイヤーが画面越しでカタルシスと共に絶望を味わった。 備考 Einherjarはラテン語でエインフェリアを指し、Rubedoは「赤化」、「紅疹」という意味である。要するに赤騎士。 関連項目 エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ Einherjar Nigredo Einherjar Albedo この曲の始まりを聞くと、何故か溶鉱炉のイメージが頭を過る。 -- 名無しさん (2012-02-15 21 15 46) ニコニコで龍明の清めの呪文の時に流す動画があったな -- 名無しさん (2012-02-15 23 38 37) 先輩ルートでの三騎士戦で流れた時の絶望感は半端なかったな -- 名無しさん (2012-12-30 22 33 11) この曲は戦争感が半端ない -- 名無しさん (2012-12-31 02 47 42) 苛烈さと荘厳さを同時に感じる -- 名無しさん (2016-01-06 22 31 25) この曲はめちゃくちゃテンション上がる。あと、三騎士戦での絶望感よ -- 名無しさん (2016-01-07 19 09 05) 元になったルベドが賢者の石が完成した証(鋼錬とかも赤)とされてる事が多いから、三騎士戦で優先されたとか。まあ場面に合ってるから選ばれたってだけだろうな -- 名無しさん (2016-04-08 00 38 06) アニメ版にアレンジされたやつ神すぎるだろ、くそかっけぇな。 -- 名無しさん (2019-06-04 06 23 55) なんかlightのBGMを弾いてみた系の動画なくね? -- 名無しさん (2019-07-01 16 51 49) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/yomiura/pages/11.html
livedoor 上場企業から滑り落ちた
https://w.atwiki.jp/takkyuunosekai/pages/39.html
「RED_ZONE」のMADを関連付けて紹介! 大抵、音MADとは評価されがたく、いかに「RED_ZONE」が有名であっても、時期が立てば伸び悩む。 MAD中には曲のサビの部分を「○○テクニック」と称している。 具体的に言えば、音のパートを二つに分けて合わせる方式。 このテクニックがあってこその知名度であり、最大の長所でもある。 様々な作品が最近に掛けて続出していて、それぞれのクオリティはかなり高い。 評価こそされないが、技量のある製作者ばかりなので、一度タグ検索する事をお奨めします。 「RED_ZONE」【元曲】 ~作品集~ 「HON ZONE」 “【製作者】1k様” 「○○テクニック創始動画」 今、人気があるのもこの動画の投稿があった御蔭。 投稿当時は然程伸びなかったが、RED_ZONE MADの投稿が増えるに連れて、 関連動画紹介等から、その本気の伸びを発揮した。 「石川テクニック」が元凶であり、音響が半端無い。ミラーで反転するのも始まりはこの動画。 〝【テクニック名】石川テクニック〟 「RED SHU-ZONE【音ゲー×松岡修造】」 “【製作者】MI-R様” 「HON ZONE」をリスペクトした動画で、熱い(汗) テクニックの部分や、音合わせもリスペクト式。 作者は「音ゲーMAD」造りに定評のある方で、実に素晴らしいクオリティ。 今年の春からも、元気に行くZOー!! 〝【テクニック名】修造テクニック〟 「REDONALD ZONE」 “【製作者】kishito様” ドナルドお兄さん作の神動画。 携帯の着信音の音源をテクニックの箇所で利用した発想の勝利。 疾走感溢れるドナルドMADとして、投稿直後から急激に伸び、ランキング入り1位も果たした。 RED_ZONE MADの中では最多の再生数を誇っていたが、伸びが沈黙してから、二つのMADに抜かされてしまう。 〝【テクニック名】教祖テクニック〟 「[祝!]EXCITING ZONE[バトルドーム][受験合格]」 “【製作者】EXAM.S様” 作者はリア厨だが、受験には合格したそうだ。所謂、合格祈願動画。 「勉強しろ」というコメントの割合が多い。タグにも付けられている。 製作時間四時間にしては、クオリティが高く、これからに期待が掛かる人物。 バトルドームのMADもこれを機会に増えるべき。 〝【テクニック名】エキサイティンテクニック〟 「OSUDAKE PONE【越後製菓×RED ZONE】」 “【製作者】phenix様” タイトルが逸材で且つ、テクニックの部分が特に印象的な動画。 「越後製菓」のMADの知名度は低かったのだが、この動画投稿で、一段と名が挙がった。 「RED_ZONE」の数々のMADの中でも、ついつい填まって何度も見てしまう動画の最候補と言える。 餅も結構旨い。 〝【テクニック名】越後テクニック〟 「スーパーマリオブラザーズでRED_ZONE」 “【製作者】M(´◉◞౪◟◉)S様” マイリストがコメントをかなりの大差で上回っている驚異的な動画。 伸び率はドナルドのと同じくらいで、ゲームの効果音を上手く利用している。 安定した造りのMADで、これからも粘り強く評価されていくであろう。 ファイヤーボール最高! 〝【テクニック名】ファイヤーテクニック〟 「YANDERED ZONE」 “【製作者】こな☆さく様” ニコニコムービーメーカーで製作しているとは思えない音合わせが最大の良さ。 投稿日からして、もっと評価されるべき上手さだが、中々され難い。 死にゲーならば、直ぐリセットで再トライしたくなるのだが、 このヤンデレゲーは、逆にリセットしたくても出来ない。という違った恐怖感がある。 〝【テクニック名】ゆりしーテクニック〟 「KIWAMI ZONE【RED_ZONE×キワミ】動画.ver」 “【製作者】「音源」FUNENGOMI様・「動画」また会う暇で様” 最初は音のみで投稿されたのだが、製作者とは別人の方が映像を製作。 しかも映像の方は手書きと来た。これは間違いなく並大抵の技術で出来る物ではない。 非常にテンポよい動画で、テクニックの部分はとても印象に残ります。 「アッー!」 〝【テクニック名】おかたづけテクニック〟 「RED ZONE(ANAGOR)【若本マニアIIDX】【バルバトス】」 “【製作者】HITS様” 若本規夫MADは、知らない方も多いと思うので、コレを機会に見てはどうでしょうか。 元がゲームなので、音ゲーのRED_ZONEと組み合わせるのは、可笑しいが。 テクニックの部分なんかはもう、顔芸並みの怖さ。サムネも糞怖い。 網膜に焼き付かない程度で試聴しよう。 〝【テクニック名】若本テクニック〟 「SHINSUKE ZONE」 “【製作者】ねじドライバー様” 元曲の疾走感をそのまま残している所にインパクトを感じる動画。 三浦工業のMADで良く作ったな、と思う。 非常にシンプルで文句無い動画だが、評価が足りない。 知名度もっと上がるべき↑ 聞き終わったら、中耳炎♪ 〝【テクニック名】ボイラーテクニック〟
https://w.atwiki.jp/design-mansion/pages/33.html
edit REDさんのプロフィール ●自己紹介・コメント ●GREEのアドレス http //gree.jp/1031023 ●他のサイトアドレス ●参加企画 デザインマンション作品集2008 edit
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/283.html
② *③* ④ 艦橋内に爆発が生まれ、耳を貫くような轟音が轟く。硝子がその爆発音を聞き入り、その慟哭に打ち震えている。 灰燼の後に残されたのは、胸からの上の上半身を失った少女の姿――だった者の姿だ。残された下半身だけが、血溜まりと蛋白質の海に倒れこむ。 マイは背後を見やり、自分の首根っこを掴む人物を見据える。黒衣の装いの男はアハト。 再び前方を見る。上半身のない遺体が血の海に沈んでいた。マイは駆け寄り、遺体を抱き上げる。遺体が纏う血に塗れた白の衣。 「あ、あ……」 「――死を祝別したまえ。何故なら僕がここにいるのは君のおかげなんだから……。ふふっ……最後の笑顔、最高だったね。悲しくて、怖くて、でもどうしようもなくて……」 カイは自身の顔を鷲掴みにするかのように顔を覆い隠し、微笑を打ち消そうと努める。その指の合間からは少女のような顔と、一層の狂気に染まる瞳が見え隠れしていた。 マイはかつてリナリアという少女だったものを抱きしめる。粘度の高い液体が手に塗れ、それが血であることを知覚する。 カイは一頻り笑った後、マイを引き止めた黒衣の男――アハトへと視線を転ずる。 「久しぶりだね。グラズヘイムのUebermensch(超人)」 「カイか」 「君の親族、騎士殿と楽士殿は元気にしているかい?」 「さぁな。俺が奴等の行動を把握出来るわけがない」 「では、元気にしていたなら是非伝えて欲しい。目障りだから早く死んでくれ――ってね」 カイの言葉を受け、アハトは二人の人物――赤髪の騎士と金髪の楽士の姿を脳裏に描く。すなわちその人物とはリアトリス・クラインハインツとフィリーネ・ユーヴェルリートの二人である。 かの二人はアハトと同様、生体開発研究所である「グラズヘイム」によって強化人間と化した人物である。単独での作戦遂行を目的とし、来るべく運命に抗うためにACという戦力に頼ることのない人類だ。 マイはかつて白百合のように微笑んでいた少女の遺体を横たえ、そして白髪の少年へと視線を向ける。 その視線に宿しているのは、憤怒と激情、何よりも慟哭である。マイは黒々とした感情が渦巻く視線でカイを射抜く。 「……お前ッ!」 マイは涙を流しながら、カイに掴みかかる。身長の低い少年を掴み上げ、自分の視点の高さまで持ち上げる。 少年は矮躯に反して、その体重は重い。だが身体に満ちた怒りは、その重さに頓着しない。 「お前が……お前が……!」 「――余り気にするなよ。君は一つのモノに固執しすぎだ。君がソレに固執する理由がどこにあるのさ?」 「……ッ!」 「そこにあるのは死体だよ、死体。ただのモノでしかない。あの生体CPUも同じさ。あれもモノだ。弁えなよ」 「……違うッ!」 「――だいたい君はさ、何を判断材料にして赤の他人を救っているのさ? 助ける理由をどこにおいているの? あの装置を君が庇う理由は何なんだい?」 水面に垂らされた一滴のように、カイの言葉が心中に染み渡っていく。 「それは……」 「困っているように見えたから? 可愛そうに見えただから? それとも見た目が綺麗だから?」 「ぐっ……!」 「答えられないんだろう? だって理由なんてないじゃないか」 マイはそんなわけはない――と否定しかけ、しかしその反論の言葉を紡ぐことが出来ないでいた。 何か言わなければならない。その言葉を否定しなければならない。だが幾らそう思っても、言葉は明確な形を結ぼうとはしなかった。 「認めろよ。君は同情しているだけなのさ。可愛そうな身の上の子を助けて、それで『あぁ、自分は救われたんだった。今、自分はコレと違って幸せなんだ』って思って、自分のアイデンティティを保っているだけなんだよ」 「お前――ッ!」 「ああ、親近感を覚えずにはいられないね。僕と君は似たもの同士。その本質は同じさ」 邪なる微笑をするカイ。少女然とした装いの内に満ちる狂気の表情。 マイは握りこんだ拳を引き、掴み上げたカイを殴りつける。その行動に、カイと共に艦橋に現れた男女組みが浮き足立つも、カイは制止を促す。カイはマイに殴られながらも、笑うことを止めない。 マイの憤怒に満ちた行動を止めたのは、黒衣の男――アハトである。マイの背後にたったアハトは、振り上げられたマイの拳を掴み上げた。 「――離せッ!」 「――やめろ」 静止の声はアハトではなくシェルブだ。シェルブの強い声音が響き渡る。 「交渉は既に終わっている。ここでミラージュの者と敵対したところで意味はない。対立はより明確なものとなるだけだ」 「懸命な判断だよ、シェルブ・ハートネット。そういうことさ。仮に今、君等が僕を殺すことが出来たとしても何の解決にもならない。その行動はミラージュと明確に敵対することになる。交渉は完全にオジャンだね。あぁ、それを望むなら僕を殺せばいい」 「くっ……!」 マイはカイを突き放す。カイは口元から滴る血を舌で舐め取る。 「――君等はつくづく、不思議な集団だね」 カイは周囲にいるサンドゲイル所属の面々の顔を見据え、その各々を確認し、呆れたように言葉を漏らす。 「アークの元トップランカーが率いているってだけで面白おかしいのに、スフィアやロアにまでコネクトがあるなんて。それにグラズヘイムのUebermensch(超人)、さらに赤い瞳の暗殺者までいるらしいじゃないか」 カイは艦橋を見渡しつつ、心底から不思議そうな声音を発する。その声音は理解し難い、という感情さえ含まれているように思える。 「イレギュラーが寄り集まっているというのを、君等は少し自覚したほうがいい。この広い地上において、最も異質な特異点さ」 「――多少は自覚している。それためにこうして立ち回っているのだ」 シェルブの言葉を受け、カイはまたもその事柄が愉快であるかのよう、笑い出す。感情の制御がうまくいっていないのか、その可笑しそうな声音に反し、瞳と口元は微笑んでいない。 「そうかい? まぁどの道、君等がこうして特異点であり続ける限り、いずれ僕等と明確に対峙することになるだろうさ。その時を僕はとても楽しみにしている」 カイは両腕を天へと伸ばし、身体を伸ばす。血の滴る白髪が扇状に広がる。 「さてと、それじゃ次はスフィアでも訪ねようかな」 「スフィアにまで手を伸ばすというのか?」 「当然でしょ? アレは僕等のものだ。技術提供の交渉などどうでもいいことさ。頭下げて交渉して、それでいて図に乗らせるぐらいなら奪ってしまったほうが話が早いだろ?」 「容易とはいかんだろう」 「そうだね。まぁ、僕等が来ることを事前に伝えるなら伝えるといいさ。無駄だろうけど、その無駄が実を結ぶことも稀にある。切なる思いを無慈悲に断ち切るのは、僕が最も好むところさ。それじゃ――」 カイは歩みだす。そして怒りの表情で立ち尽くすマイの横を過ぎ去ろうと試みる。 マイの真横に立ったカイは、立ち止まり、その背を伸ばす。マイの耳元へと口を寄せる。その光景は、さながら恋人の耳元で囁く若娘のようである。 カイはマイの頬から滴り落ちる血を指で拭い、その耳元へ向かって囁きを生む。 「マイ・アーヴァンク――また会おうね。バイバイ」 去り行く白髪の少年。少年に続き、男女二人も退出していく。 数多の静寂が繰り返される。誰もが口を開くことなく、誰もがそれを恐れた。静寂を打ち破ること、それが目の前の非現実的な光景を確定させてしまうかのように感じた。 惨劇の後。そこには凄惨極まる悲劇の跡と無慈悲な血溜まりだけが残された。 * {-Desine fata deum flecti spectare precando.(懇願によって、運命が動かされることを望むな)- } 凄惨極まる事件が生じてから一日が経過した。衝撃的な事件により、サンドゲイル内には未だ暗雲とした雰囲気が立ち込めていた。 活気はとうに失われ、復帰の兆しは見せない。それは天真爛漫さを備えたシルヴィアとて例外ではなかった。 未だ幼く、少女でしかないシルヴィアもまた同様に大きなショックを受けていた。だがそれもマイの想い――彼が受けたであろう心痛を考えれば、耐え切ることが出来た。 自らが世話をしていた少女を目の前で失うという事実。その命が明確な形で奪い去られたというのは、かつでないほどの痛みとなってマイを襲った。 マイはイリヤの件以上に意気を消沈させていた。シルヴィアは危機感を抱き、エイミ・ツザキの下を訪ねた。 エイミが出してくれた飲み物に口をつけることなく、エイミに己が心中を吐露する。 「共感を求めて接しても、無駄でしょうね」 エイミが口にしたのは、無駄という隔絶したものだ。 「どうしてですか? 辛いならボクは分かち合いたいし、そうすれば少しは心が軽くなるはず……」 「えぇ。けどそれは――女の理屈かもしれないわね」 「……え?」 「シルヴィとマイがそういう関係だとは言わないけども……。今、安易に共感を求めようとすると、逆に反発されるかもしれないわね。お前に何がわかるんだ――って」 「あ……」 そう。皆、往々にして感じた痛み。その心痛を皆が感じたとて、その痛みの度合いが皆々同じというわけではないのだ。 因果関係が近ければ近いほど痛みは増していく。 シルヴィアは共感することで痛みを分かち合えると思っていた。だが、必ずもそうではないのだと、エイミは語る。 「共感で痛みが和らぐこともある。けど、そうじゃないこともある。その心の傷口を見られることを嫌う人もいるから――特に男性はね。苦悩しているところに無理して寄り添う必要はないと、私は思うわ。いずれ自分で答えを見つけるはず。けど――」 「けど?」 エイミは飲み物を一度、口にする。片目だけを閉じ、柔らかく微笑む。 「それでも、マイがあなたを頼ってきたら、その時は心から助けてあげればいいと思うわ」 「でも、もどかしいよ……」 「そうね。何かしてあげたいと思うのは自然なことよ。なんだかシルヴィも女の子になってきたわね」 「へ?」 「ううん、なんでもない。厳しいようだけど、今は私達が出来ることをしましょう。サンドゲイル内も暗い雰囲気になってるしね」 「うん。ボクももう少し、頑張ってみる」 * リヴァルディの医務室には三人の人物が座し、もしくは立ち尽くしていた。シェルブ、整備士であるショーン、そして医者であるアリーヌである。 シェルブは腕を組み、黙して熟考する。 イリヤの件に続いて起きた、リナリアの悲劇。その衝撃を間近で受けたマイの心痛は計り知れないものだ。 歴戦の勇士であるシェルブであっても、それは耐え難いものだ。だがその心痛は大人であれば、感情の整理は大なり小なり、出来るものである。 故に大人に成りきれていないマイには、些か以上に酷な出来事だろう。 「俺は――不器用だな。俺が今、あいつに言えるとすれば割り切れ、という非情な言葉しか出てこん」 「……それはどう言い繕うとも事実よね。生き物は皆、必ず死者となる。それに例外はないわ。例えその命が理不尽な理由で奪われたとしても、全て同じことよ」 「それは医者としての意見か」 「ええ」 シェルブは天井を見上げ、そして溜息をつく。視点を床面へと移す。 「何かしてやりたいとは思うのだが、何も出来んとはな。それが事実であっても辛いものだ」 「悩んでいる若人にやきもきするのはわかるわ。けど、年長者は賢者ではない。賢者のように思い込んでいるけどね。若者を導けることもあれば、出来ないことだってある。苦難に挑戦するのはあの子であり、それを乗り越えるのもあの子の役目」 「冷たいようだが、それが真理だな。結局のところ、試練は自分で打ち勝たねばならない」 「下手な同情はそれこそ辛いだけよ。放任するというわけではないけども、気持ちの整理を付けるだけの時間は必要だと私は思うわ」 「それも医者としての意見か?」 「これは女としての意見よ」 「――そうか」 シェルブはその意見に感心を示す。医者としての仕事柄からか、アリーヌの言葉はわかりやすく、穿ったものが多い。 シェルブは過去の光景を思い浮かべる。自身の人生に数々の困難があった。その都度、周囲が助けてくれることもあれば、周囲がさらなる泥沼を生むこともあった。 今、自分があの少年に何が出来るのかと問われれば何も出来ず、何をするべきかと問われれば黙すことしか出来ない。 それが事実であったとしても、すぐさま納得できないものであった。 ――なるほど。これが親というものか 難儀なものだと、シェルブは感じる。突如、頬に冷たいものを感じる。視線をそちらへと送ると、黄金色の液体を湛えたグラスと対面する。その奥にはショーンの姿だ。 「弔い酒ってわけじゃねぇけどよ……。少し、大人の対応をしようじゃねぇの」 「ショーン……」 「死者を忘れることなかれ、それが俺達に出来る唯一のことさ。今までもこういうことがまったくなかったわけじゃない。けどよ、やっぱいつまでたっても慣れないもんだよ。侘しく飲もうぜ」 グラスを打ち鳴らす。硝子と氷が打ち鳴らす旋律は、かくも寂しく響いた。 * マイは外気を求め、リヴァルディの甲板へと向かった。空圧式の扉のハンドルを回し、重々しい金属製の扉を開放する。先んじて注がれたのは月明かり。次いで荒野の冷えた夜風が頬を柔らかく撫でる。燦々とした日中の暑さのものとは異なり、侘しささえ感じさせる冷風が流れ込んでくる。 夜空は孤独な月を取り囲むよう、星々の群れが瞬いている。それがいつも以上の寂しさを感じさせた。 吹き抜ける夜風に混じり、鋭い風斬り音を聴覚が捉える。 視線の先にいるのは、銀髪の男。舞い動く度に銀色の髪が揺れている。サンドゲイルに所属するアハトである。 その手にはデータベースの中でしか見られぬような、白銀色の刀剣が握られている。白刃が一太刀、二太刀と星々の躯を抱きかかえる夜空の足元を駆ける。 その剣閃は、戦場で見せる疾風の如きものとはまったく異なるものだ。常人の眼であっても、その軌跡は充分に捉えることが出来るほどの速度だ。緩慢とさえ定義できるだろう。 だがさりとて、それが堕落故のものかと言えば、それは異なる。戦闘時の剣閃が突き抜ける疾風、あるいは夜空を駆ける彗星と称せよう。対して、今、目の前行われている動作は山より流れ出で、谷間を渡る川を彷彿とさせるものだ。 それは繊細で流麗でありながら、何よりも力強い。人体の動きに決して逆らうことなく、緩やかに繰り出した剣閃は、堅固に静止する。優雅な足捌きは、転進の音すら一切生じさせない。 剣術――と言うよりは人々に魅せるための剣舞を髣髴とさせるものだ。 「――マイか」 アハトは視線を向けることなく、マイの名前を呼ぶ。反して動きは一切静止することなく、継続されている。見ればその頬には僅かな汗が流れていた。 赤道に近いソグラトよりやや北上したとはいえ、未だ周辺環境の気温は高い。 「悪い、邪魔したかな……」 「いや――」 アハトは剣を振りぬき、そのままの状態で彫像のように静止する。完成された彫像のように動くことのないアハト。 しばしの時が経過しその後、その剣先が下ろされる。アハトは視線だけをマイへと向ける。 「リナリアの件か」 アハトの鋭利さを含んだ言葉に対し、マイは沈黙する。会話をどう切り出して良いものか惑う。 己が内に渦巻く感情を明確な言葉に出来ない。 「俺が……俺がもっとしっかりしていれば、あるいはもっと強ければ、あの娘を守れたんだろうか?」 「――どうだかな」 吐露されたのは憤りと悔恨。それに対してアハトは、簡潔な言葉で切りかえした。 「強いからといって、全てが守れるわけではないだろう」 アハトが白刃の剣先を持ち上げる。三度――刹那を走り抜ける。此度は先ほどよりも鋭利で速く、銀光のみしか捉えられない。 マイはアハトの動きに、明確な「強さ」という概念を見出す。アハトの実力のほどは、戦場での動きからおのずと推察できる。銀髪の男――アハトは確かに強い。 だが何も強者はアハトに限ったことではない。サンドゲイル内の面々は皆々、何かしらの方面に対して明確な強さを持っているのだ。 だが焦がれるほどの強さを持った目の前の男は、それを否定する。強いからとて、全てが守れるわけではないと彼は語る。 それもまた当然だろう。何もかもを守れるようなご都合主義がこの世には存在しない以上、あらゆるモノ全てが守れるというわけではないのだ。 「この世にはどうしようもないことが多々ある。あの時こうしておけば良かった、今よりもしっかりしていればなど、結果論に過ぎん」 「だからって、俺は納得できない。俺がもっと――もっと――」 熟慮していれば、あるいは違う未来を迎えられたのではないかと、憤りは口に出ることはなく、留まる。 「その未来があったことを見つけたところで、過去が覆ることはないな。ただ――見方が変わるだけだろう。自分を断罪したいのなら、それも構わんがな」 「――――ッ」 断罪――。そう、自身は今回の件について多くの責任を感じている。 アスセナの件、イリヤの件、あらゆる因子が寄り集まり、結果としてリナリアの命は失われた。無論、それすらも結果論でしかないと言われればそれまでだ。しかし、あの時、自分が異なる選択をしていたのならと思うと悔恨を抱かずにはいられない。 リナリアを助けられると選択肢があったにも関わらず、それを選択できなかった自分がいる。ならば自分に明確な責任がある。違う未来を迎えられるだけの選択権が与えられているのだから。 しかし、そのことを誰も自分を責めようとしない。それが何よりも苦しく、何よりも辛い。明確に、そして徹底的に追求され、糾弾されたほうが、どれだけ楽なことか。 ――何で、誰も俺を責めないんだ……。 「何で――」 だがそれすらも甘えなのかもしれない。断罪されることがないという心痛こそが己に課せられた罰なのであり、それから逃れようと断罪を求めるのこそ、自分が楽になろうとしているのかもしれない。 堂々巡りする思考の混濁。混じっては濁り、沈殿する黒々とした感情を知覚する。 「間違わないことなどない。失敗しない人生などない。時として――」 鋭い剣閃が再び走る。月明かりの足元を優雅に、しかし此度は獣のように獰猛に走り抜ける。その鋭さ、知覚できたのは月光の照り返しのみだ。 「その失敗によって、致命的な何かを失うこともある」 アハトの鉄面皮がやや和らぎ、その視線が下ろされた剣先に向けられる。いつもの硬く、他者を寄せ付けない雰囲気が消え失せる。反してその表情には憂いある表情を覗かせていた。 普段の冷静沈着な表情とは異なるものだ。超人的な能力を持つアハトが、僅かに見せた一人の人間としての表情。 「それに対して憂いもあるだろう。悔恨もあるだろう。だが、それでも諦めずに――走り続けろ」 隻眼が静かにこちらを見据える。 「後悔するな――とは言わん。ただ諦めるな。諦めさえしなければいつか――いつか何とかなるように思える。絶望的な袋小路にも、いずれ光明が見えてくるようにも思える」 「――諦めなければ、いつか……」 「月並みな意見だがな」 確かに有り触れた言葉だ。だがそれを実行し続けるというのが何と難しいことか。言葉で表せば容易なようにも思えるが、その求道を選択し続けるのは極めて困難なことだろう。 諦めなければ――ただ一つを信じて走り続けるのならば、人は皆、英雄になれている。だが、世界には苦難の末に諦める人のほうが圧倒的に多い。それはつまり、諦めてしまう者が大多数ということを意味する。 「――イリヤの件、貴様はどうする気だ?」 「……スフィアか」 「カイの言葉に従えば、奴は次にターミナル・スフィアを襲撃するだろう。スフィアの戦力の底は知りえないが、一企業と正面から対立出来るとは到底思えんな」 「襲撃すれば、ミラージュはイリヤを奪う――」 「そうだな。奴等があの娘を丁重に扱うとは思えんな。貴様はその上で、何を選択する?」 「俺は――」 マイは瞳を静かに閉じる。リナリアの件を思い浮かべる。その笑顔を思い出す。 リナリアとイリヤの姿が重なる。このまま、自分が何も選択しなければ、恐らく彼女も同様に――。 澄み渡っていく思考。極々単純に、何を選択するのかと問われれば、思考に混濁は一切ない。行うべき行動は一つだ。マイは瞳を見開き、己が心中の思いを吐き出す。 「俺はイリヤを助けたい……! 俺だってあの時、親方に拾われなかったら野垂れ死んでいた。けど、親方が拾ってくれたから、こうして生きていられる。生きるということが唐突に奪われるようなことがあるのはわかる。命が理不尽に奪い去られることもある」 そう。リナリアの命が失われたように他者によって理不尽に命が奪われるような出来事が、この世界にはある。 あるいは自分の選択が、生奪を助長してしまうこともあるだろう。だがそれでも――。 「それでも――俺は救いたい。救えない人がいた。また何もせずにただ奪われるのを見続けるなんて、そんなことは嫌なんだ。イリヤも……このままじゃ理不尽に命を奪われるかもしれない。このままそれを黙って見ていることなんて、俺には出来ない。生きることに仕方のないことなんてないはずなんだ。誰にだって自分の人生を――自分の生き方を自分で決める権利があるはずなんだ」 心の内で渦巻いていた感情が一つの方向性を見出し、明確な言葉へと変換される。 「俺はイリヤが――イリヤがそれを決めるまで、守ってあげたい。守り続けてあげたい――!」 言葉に感情が掛け合わさり、思いはより一層の高みへと上る。己が心中に渦巻く思いの丈、マイはその全て放出する。 「俺がイリヤを――助けたいんだ!」 「――そうか。決意は固そうだな」 マイはアハトの言葉を、無言で肯定する。アハトの鋭い隻眼を臆することなく、正面から相対する。この想いに偽りも邪なるものがないと、その意思を示さんと強く見据える。 「ならば――」 アハトが手に持った刀剣を鞘へと格納する。小さな鍔鳴り音が夜空の足元に響き、風に浚われる。 アハトは刀剣を格納した鞘を、マイに向けて放り投げる。マイはそれを掴み取り、その真意が何であるかと惑い、疑問の視線をアハトに送る。 「……これは?」 「貴様がこれから起こす行動は、サンドゲイルに対して少なくない悪影響を及ぼすだろう。その決意を聞いて俺はみすみす、貴様を見逃したりはしない」 「――っ!」 それも当然の反応か。自身がサンドゲイルに所属する以上、その意に反して行動を起こすというのならば、その行動を万人が阻止を試みる筈だろう。 仮にサンドゲイルを抜けたとしても、それは同じことだ。自分と組織にしっかりとしたケジメをつけたところで、その覚悟を周囲が汲み取ってくれるとは限らない。各企業からすれば、そのような個人的な覚悟に頓着する利用など、どこにもありはしない。 今後、自身がどこかしらの企業に対して敵対的な行動をとったというのなら、仮にサンドゲイルに所属してなくとも、サンドゲイルに対して影響を及ぼす。事と次第によっては、サンドゲイルは責任を糾弾される可能性さえあるだろう。 マイはアハトの言葉はもっともであると感じる。だがさりとて、同情などで通してもらおうとは微塵も思っていなかった。 一企業と対立して、それでも一人のために戦い続けるという求道を目指すというのなら、この程度の障害は自力で乗り越えなければならない。 「飛び立ちたいのなら、楔を千切れ。自由が欲しいのならば、貴様自身の手でそれをもぎ取れ。それを使って一撃でも打ち込めたのなら、貴様への義理を通し、貴様の行動に対して俺は瞑目する」 目の前の男は、一撃打ち込めることが出来たのなら、自身の行動を黙認するといっている。 一撃――されどそれを実現するには程遠い。不可能と断言しても過言ではないだろう。 アハトの普段の動きを知っているからこそ、そのことを明確に定理できる。本人の口から聞いたわけではないものの、アハトは間違いなく身体能力を人為的に強化された強化人間である。 その人外なる身体能力だけに限らず、こうしてこの場で行っていたように、日々の訓練をかかしていない。力と技量の両立。 通常の人類でしかない自身では、例え自動小銃の類を持ち出したとて、相手にはならないだろう。 ――けど。 不可能だろうと、この意思は通さねばならない。この先、この想いを阻むものと数え切れないほど遭遇するだろう。これから先にこの銀髪の男と対峙する以上の困難が、数多も立ち塞がるかもしれない。 この男すら納得させることが出来ないのなら、この先生き残れない。その程度の覚悟では、何も救えない。 「――わかった」 「貴様の覚悟を形にしてみせろ」 「あぁ――いくぞ!」 * 痩身の肉体が足音すら置き去りにし、転進を繰り返す。流れるような歩法に一切の淀みはなく、さながら円舞の如く美麗。苦節を乗り越え、その動きに追い縋るも、振るう刀は全て虚空を薙ぐ。乾坤一擲の一撃とて、目標を捉えるにはなお遠い。 刀剣の重量、手に持つだけならそれほどでもない。だがこれを自在に振るうとなると途端に剣先は泳いでしまう。その剣先の迷走は生き方の迷いか。その迷いに誘われるよう、身体もまた空を泳ぐ。 疲労は加算ではなく乗算の如く積み重なっていき、四肢の動きを拘束する枷へとその姿を変える。 頭の隅で、悪魔の戯言が囁かれる。もう諦めてしまえと――お前には無理なのだと――その一切の行動を無に帰そうとせんために、悪魔は堕落の言葉を囁いている。 諦めてしまうほうがどれだけ楽なことか。投げ出してしまえば心と身体は即座に解放されることだろう。それでも自身を突き動かしているのは何なのか。 己が罪に対する贖罪もあるだろう。救済されたことに対する恩返しもあるだろう。その恩返しが、自分の身を軽くするための手法であり、それを偽善と捉えることも出来るだろう。 己を突き動かしているのは一つの感情ではないように思える。だが、その数多の感情が一つのベクトルへと向いているようにも思える。一丸となり、ただ一つの目標に向けて手を繋いでいる。 ――諦めるな……! 諦めなければいつか――。 渾身を込めた一撃を、幾度振るったことか。そして幾度と回避されたことか。こちらの攻撃を一切受けることなく、流麗な動作で回避する銀髪の男。隻眼であるのにも関わらず、決して正確な位置情報を損なわず的確に避け続けている。 銀髪の男に挑戦してから、どれだけの時間が経過したのかはわからない。暗色に染まっていた夜空は既に明るさを増し始め、青みを帯び始めている。だが、未だ銀髪の男に対する有効打はない。惜しむほどの一撃すら繰り出せていない。 慣れない武器の扱いに、筋肉が次々と断裂していく。長きに渡る運動によって呼吸は乱れ、身体はその呼吸を整えることすら放棄してしまっている。 脳裏によぎる妖精の如き容貌の少女。見目麗しき外貌の少女が、妖精のような声音で言葉を紡いでいく。 『そんなバカな事言う人は、初めて──』 一歩、踏み込む。呆れながらも、どこか嬉しげな声で返した少女がいた。 『……ありがとう』 一歩、さらに踏み込む。支えることを放棄しそうになる両足に鞭を打ち、奮い立たせる。 『貴方は本当に馬鹿だわ、こんな私の為に……』 一刃、振るう。そう言いながら微笑む少女がいた。 『ありがとう。でも、今はそれが嬉しい──』 一刃、さらに振るう。ありがとう――と、それが嬉しいと涙と共に微笑んだ少女がいた。今に思えばあの言葉は、自分達と共に歩むことが出来る月日が長くないことを示していたのかもしれない。 こうして別れるであろうことを、少女は既に知っていたのだろうか。 ――くそっ! 歯を食いしばる。瞳の端に雫を満たす、イリヤの姿が過ぎる。 『ありがとう、マイお兄ちゃん』 今は失われた、栗色の髪の少女が過ぎる。二人の姿が重なり、リナリアとの生活と妖精の如き少女の未来の姿重なっていく。生者と死者の姿が重なる。再び身体が活力を取り戻す。 過去にいけるのならば自身を咎めたい。何故気づかなかったのかと、何故選択肢を誤ったのかと、何故――何も出来なかったのかと。自分で自分を糾弾したいという衝動にかられる。 だが、過去は過去であり、それは過ぎ去ったものなのだ。 憂いも悔恨がないのか問われれば、それは嘘になる。だがそうであっても、自分は過去に対してすべきことがある。 それは過去を憂うことではなく、過去を参照し、そして今に対して働きかけることだ。 ここで終わるわけにはいかない。覚悟があるというのならば、その意志を身をもって示さなければならない。 口だけの覚悟など、誰にでも出来ることだ。それを明確な形にしてこそ、明示してこそそれは意味を成す。観測してこそ、存在は知覚できる。だから――。 「――ォォオオオオオオッ!!」 「――む」 一歩さらに苛烈に、痛烈に踏み込む。身体を懸命に支える両足が崩れかける。腕が脳を経由することなく、反射的な運動を開始する。 床面へと倒れこむ身体。身が甲板に倒れ伏すよりも早く左手を突き出し、全身を支える。脚は床面と蹴り上げ、身体に最後の円転運動を促す。側転を開始。 隻眼であるアハト、その眼帯で覆われた左の瞳――すなわち自身から見て右方向へと側転。着地と同時に両の足が崩れかけるも、頓着することなく即座に刃を振リ下ろす。 風切り音と共に物理的な金属音が響く。寸前で受けに回ったアハトの右腕の義手が、振り下ろされた刃を受け止めていた。 地平線から顔を出した朝陽が白人を照り返す。僅かにずれた反射する陽光の奥に、黒衣の男が見える。 「はぁ……はぁ……」 「ほう――」 アハトは淡白ながらも、感心した声音を放つ。その表情には僅かな驚きが混じっていた。 疲労で揺れる視界の中に、銀髪の男の腕に打ち込まれた白刃がある。それが示すのは――。 「やっ……た――」 試練への勝利に笑みが零れかけるも、意識は急速に薄れ、視界は暗闇に落ちていった。 * アハトは倒れ込むマイを抱きとめる。マイの手の内から刀剣「パンツァーシュナイダー」が零れ落ち、リヴァルディの甲板上に落下。甲高い音を響かせた。 「……我武者羅な男だ」 アハトはマイを抱き上げ、甲板の角へと運び、自身の外套をかける。 深き空がもたらす夜風を受け、身を冷やす。地平線の彼方から注がれる太陽光。太陽はいつの間にやら、その姿を現し始めていた。 アハトはスラックスから小さな懐中時計を取り出す。表面の金属が朝の陽光を反射する。 「選択……か――」 アハトは過去を思い返す。自身が今まで歩んできた人生、自分で選択することができた数多の「瞬間」が連ね、過ぎていく。 自分が愛し、また自分のことを愛してくれた一人の女性がいた。だがその想い人は理不尽な形で、その生涯を閉じることとなった。 彼女が死にいくのを、ただ黙って見ていることしか出来なかった自分。だが果たしてあの時、自分が強かったのなら確実に彼女のことを守れたのかはわからない。 その憤りこそが、血の復讐だ。己が思いの丈を吐き出すために、そのためだけに生涯と身命を復讐に捧げた。そして――数多の悲劇と死者を生み出した。 身体は人間とも定義できぬものへと変異した。そして他者を討ち取るためだけの人生など、到底人とは思えぬ代物。悪鬼畜生の類と称されたところで、もはや苦痛を感じることさえなくなった。 生きているのか、死んでいるのか。その境界線は夜空のように曖昧。自分には生きている意味も価値も、ましてや許しさえも得ることはできないだろう。 復讐の過程で幾人も殺害し、幾人もの恨みを買い、多数の狂気から当然の如く命を狙われた。 ――だが、こんな身体だからこそ……こんな人生だからこそ手に入れることができたものがある。 それもまた事実だ。己が生涯の全てを肯定することは未だ難しい。だがそのような中でも僅かばかりではあるが、得たものがある。 「いつだったかな。お前が言った言葉は……」 何が正しく、何が最善で、何が間違いだったのか。それすら、今こうして考えても答えは一向に見つけることはできない。 覆ることのない数多の事実がある。今まであった正しかったこと、間違っていたことの全てが、今の自分を構成している。そうである以上、過去に対して憂いを持つことはなかったはずである。 だがこうして寝静まる男を前に、一角の感傷が感じ取る。感傷が言葉を形成していく。 「アイリ……あるいは俺も……」 ――あるいは俺も……。選択を誤らなければ、お前が傍にいる未来を迎えられたんだろうか? * 地平線から顔を覗かせる白き太陽。その眼差しが大地を朝焼けに染めていく。 日の始まり指し示す太陽は、その姿の変異を見咎めることはできない。事実としては、微細ながらもその姿は変化しているはずである。だが人間の尺度で見据えれば、それは永遠の存在のようにも思える。 変わらぬ物を見やり、それでもそこに変異のようなものを感じるというのなら、それは人の心象風景の変化によるものか。対象の姿が変わったのではない。物の見方が変化しただけなのだろう。 マイは目の前に広がる朝焼けの光景に、新たなる旅路を感じる。これから自身が行う行為は褒められることではなく、賞賛されるようなことでもない。むしろ咎められるべきと言っても過言ではないだろう。 たった一人の少女を助けるために、自身は『仲間』に牙を向く。ただ一人を助けるための行為とて、他者の命を食い潰すというのなら、それは覇道といって差し支えない。 よしんば、それが成功したところで安寧が約束され、諸手を上げて喜びを示せるかと問われれば、それはわからない。だが成功の是非がどうであれ、運命は動き出すはずである。 マイは蒼竜騎を輸送機の内に運び終える。向かうべき道を切り開く剣であり、数多の災害を受け止める鎧を持つ、唯一無二の相棒――蒼竜騎。機内に灯る小さな照明を受け、暗蒼色の装甲が静かにその意匠を示している。 機体の調整はもとい、武装の調整も昨日の時点で終えている。であれば、あとは力強く飛び立つのみである。 『マイ・アーヴァンク様。アーマード・コアの格納、及び施錠を完了・確認いたしました。いつでも飛び立つことが可能です』 「あぁ、わかった」 輸送機のパイロットから、飛び立つ準備が出来たという旨を伝えられる。 リヴァルディを離れること――そこに憂いがないと言うのなら、それは嘘だ。だが別れの言葉を各人に伝えようとすれば、それもまた決意を揺らがせてしまうかもしれない。それが手前勝手な話であることを、マイは重々承知していた。 ――俺もまだまだ、子供だな……。 マイは瞳を閉じ、自嘲気味に笑う。 輸送機の後方ハッチから一人の男が降りてくる。サンドゲイルの整備士――ショーン・ハワードだ。 「終わったぞ、マイ」 「ショーン……ありがとう」 「いいってことよ。まぁ、シェルブの野郎に怒鳴られたら『お前に脅されてやった』と言い訳しとくさ。それぐらいはいいだろ?」 「はは。うん、それで頼むよ」 「しかしお前、どこか吹っ切れたような顔だな」 「まだだよ。吹っ切れるかどうかはこれからさ」 「――へぇ。一丁前の顔しやがって、気にいらねぇ!」 言葉だけならば、どこか手厳しいものを感じるだろう。だがショーンの表情はどこか楽しげである。 「格納武装の切り替えシークエンスは簡略化してある。即応性は増した半面、待機時の消費エネルギーは通常より多めだ。そこにだけ注意しろ。それと――頭部CPU、FCSの偏差射撃にも多少、手を加えてある。偏差射撃用のデータをアイツのACのものに入れ替えてある。五分とは言わねぇが、これで少しはマシになるだろう」 「ショーン……」 マイがこれより、唯一人の少女を救うために、一人の『レイヴン』と対峙する。そのため、マイは機体構成を細部に至るまで調整を施していた。そのアセンブル作業にはショーンとアハトも付き添ってくれていた。 マイは蒼竜騎の最終調整を終えた後もショーンが何かしらの作業を続けていたのは知っていた。だが、このような作業をしていたとは、マイは思いもよらず、驚きと感動を得る。 「俺からの餞別ってやつだ。アイツとやり合うってんなら、今のままじゃフェアじゃねぇからな。つっても、これでもフェアとは言い難いが……」 「いや、いいんだ。これは本来、俺が一人でやらなきゃいけないことだったから。でも――ありがとう、ショーン。助かるよ」 「構わねぇよ。無事で帰ってこい――とは言わねぇ。けど頑張れ」 「あぁ――それじゃ、また」 マイはショーンに別れを告げ、輸送機へと乗り込む。輸送機の搭乗席には、雇い入れたパイロットが既に待機していた。彼にこちらも飛び立つ準備が出来たことを告げる。 その時、輸送機の後方カメラがショーン――の隣にいる一人の少女を映し出す。 「シルヴィ……」 輸送機に駆け寄るシルヴィア。それを止めるショーンの姿が映し出される。二人は何かを会話しているようだが、その会話内容を聞き取ることはできない。 マイはその姿を見て、声をかけるべきか惑う。しかし、声をかけてしまったら、この決意が鈍ってしまうようにも思えた。 マイは見上げるシルヴィアに対し、何も語ることなく去ることを決意する。自分勝手な判断だろう。だが今自分の決意が揺らいでしまうようなことをしてしまうのは、どうしても避けたかった。 「飛ばしてくれ」 『了解しました』 マイはパイロットに離陸を促す。重低音を掻き鳴らしながら飛び立ちいく輸送機。 想いの強さが速度を上げているようにさえ思える。自身の内に満ちるのは緊張と――勇気だ。向かおう。ただ一つの目的を達成するために。 人は全てのことをこなせるというわけではない。そして不確実なものを追い求め、時にはそれが確実なものを失わせてしまうこともある。 その運命に涙を湛えて懇願したところで、運命が一人でに動き、そして危機を覆してくれることはない。 成りたい自分になるためには、他の誰でもなく己が努力しなければならない。すなわち、運命を紡ぐのは他の誰でもなく、己なのである。故に――。 己が責務は――己こそ果たそう。 →Next… ④ コメントフォーム 名前 コメント