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DLNAクライアント・サーバ Twonky Mobile(ドコモユーザのみ無料・有料)★ https //market.android.com/details?id=com.pv.twonkyremote_dcm(ドコモ向け無料版) https //market.android.com/details?id=com.pv.twonkyremote(有料版) http //octoba.net/archives/20110904-android-2011.html NetFront Life Connect(無料)★ http //octoba.net/archives/20110612-android-1717.html
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Mini Metroids Super Metroid Revolution EX?のオプションとして作られたパッチ。メトロイドもどきがメトロイドになるらしい。 関連リンク metroid2002.com forum http //forum.metroid2002.com/index.php/topic,7564.0.html download ips patch http //forum.metroid2002.com/index.php?action=dlattach;topic=7564.0;attach=5500 感想・レビュー等 名前 コメント
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同期に失敗する場合 パソコン版のGoogle Chromeで「暗号化するデータの種類」を「同期データをすべて暗号化する」にすると同期に失敗する。 「パスワードを暗号化する」にすること。 同期内容 対応関係は以下の通り。 Androidの標準ブラウザ Android版Chrome パソコン版Chrome 備考 最上位階層 パソコンのブックマーク ブックマーク バー 特に理由がない限りはここを使うことになる。 Other Bookmarks その他のブックマーク その他のブックマーク Android版Chrome以外では、実質的には最上位階層・ブックマークバーに対するフォルダの1つとして扱われる。 同期されない モバイルのブックマーク モバイルのブックマーク 実質Android版Chrome専用。
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一般ユーザー向けの軽量・高速化項目一覧です。 メンテナンスの項との違いは、設定を詳しくいじって(環境を変えて)windowsを軽くすることまで拡張し、windowsの高速化を図ろうという点です。 PCゲーマー用一覧との違いはさほどありませんが、あちらはこの項目にプラスして、一時的にパフォーマンスを上げる方法が足されています。 パソコン本体の冷却をする Windows本体の整理をする デスクトップ、マイドキュメントなどの中にあるいらないファイルを削除する。 ウイルスの排除 Ad-wareの排除 OS内の不要なファイルの整理 OS内の不要なレジストリの整理 レジストリのデフラグをする ハードディスクのデフラグをする Windows本体の軽量化をする リモートアシスタンスをオフにする インデックスサービスをオフにする 画面の色数を16bitにする アイコンの表示色数を256色にする 視覚効果をオフにする クラシックスタイルに切り替える Win高速化PC+を導入する サービスの軽量化を検討する スタートアップの軽量化を検討する 軽量代替ソフトを検討する アンチウイルスソフトの設定を検討する
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③*④/ /第十三話 ――ガレージに戻って武装を整えるしか手が無いな。 ミランダにガレージへの最短ルートの検索を頼もうとしたその時、嫌な予感がしてアリスを庇いながら咄嗟にフルブレーキングする。 直後、目の前で大爆発が起き、路面を大きく抉り返し、爆風と瓦礫がブリューナグを震わせる。 背後に迫る無機質な殺気を感じ、振り向くと、そこには1機の赤いACが立ちはだかっていた。 ――やはりな、とうとう現れやがったか。 「ナインボール・・・コピーか」 ―ナインボール・コピー― 統一政府がイレギュラーと認定したレイヴンを抹殺するために暗躍する、ネクスト技術を取り入れたAC。完全自律制御で、オリジナルよりもデチューンされているとはいえ、既存のACを凌駕する性能を持っている。 「な、ナイン・・・ボール、ですって?有り得ません!ソリテュードがイレギュラー認定されるなど!!」 さすがのミランダもナインボールの登場に動揺を隠せない。 しかし、ソリテュードは驚くほど冷静だった。 ――なりふり構っていられなくなったって事か。それともこれも計画の範囲内なのか・・・。まあ、そんなことはどうでもいいか。 ナインボールは己の獲物を仕留めるべく、パルスライフルを構えながら腰を落とす。 「いや、ナインボールの狙いは俺じゃない」 「え・・・?」 状況を飲み込めないミランダを置き去りにしてブリューナグとナインボールの戦いの火蓋が切って落とされた。 ナインボールはマイクロミサイルを射出し、弾幕と共に突っ込んできた。 こうなれば、もう機動戦は避けられない。アリスを左腕で抱きかかえながら、右腕の武器だけで迎え撃つ。 エクステンションの迎撃ミサイルがマイクロミサイルをたたき落とす。 後退しながらパルスライフルの速射で応戦するものの、狙撃仕様にしていたためFCSも長距離様でサイトが狭く狙いづらい。 その上、ナインボールの機動力は尋常ではなく、軽量二脚やフロートも軽く凌駕する速度でこちらを撹乱してくる。 「クソ、当たらない!」 圧倒的不利というよりは話にならない、と言った方がいいだろう。 パルスライフルを撃ち尽くしてしまえば、残る武器はブレードのみ。 運良く当てられたとしても、射程重視のロングブレードでは一撃で切り伏せられまい。 有効打を与えられないまま、パルスライフルの残弾は急速に減っていく。 ナインボールは左右に急速に切り返しながら、マイクロミサイルでこちらを揺さぶりつつ様子を窺っているようだったが、突如ミサイルでの攻撃を止め、一直線に突っ込んできた。 「っ!まずい!!」 全速で後退しながら、少しでも速度を稼ぐため迎撃ミサイルをパージし、パルスライフルをトリガー引きっぱなしでナインボールに叩き込むが、多少の被弾などものともせずナインボールもパルスライフルで攻撃してくる。 こちらに有効な攻撃手段が無いと判断し、一気にケリをつけるつもりなのだろう。 ナインボールのパルスライフルは試作品なのか、見たこともないシルエットで、弾速も威力も桁違いだった。 凄まじい弾幕を前に避けきれず、ついに被弾する。 エネルギー弾なので衝撃はあまり無いが、装甲が焼け焦げ、機体温度が急上昇する。 『AP70%に低下』 「何っ!?」 AIの告げる事実に耳を疑う。 ほぼ100%あったAPが、たった数発の被弾で30%以上削られた。 「化け物め!」 残弾が0になったパルスライフルをパージし、回避に専念するが、猛烈な弾幕にその身を徐々に削られていく。 危機的状況は変わらず、悪化の一途をたどるばかりで打開策が見出せない。 「レイヴン!今、救援を向かわせています。どうにか持ちこたえて!!」 ミランダの悲痛な声が耳に響く。 そんなミランダの思いも裏切るようにAIは事実を淡々と告げる。 『AP50%に低下。左腕、破損。ブレード使用不可』 エネルギー供給装置が破損したのか、ブレードそのものが破壊されたのかは分からないが、大した違いは無い。 とうとう打つ手が無くなった。いくら腕に自信があっても、武器がなければ戦えない。 ――俺も、ここまでだったってことか?結局俺は誰も護れないのか・・・。 体も機体もまだ動く。だが絶望的な状況は変わらない。 自然と体から力が抜け、視界がぼやけるような感覚に襲われる。 その時、不意に胸元に違和感を覚えた。 視線を下げると、そこには俺のパイロットスーツをきゅっと掴みながら澄んだ赤い瞳で見上げてくる一人の少女が居た。 その瞳は俺を真っ直ぐに見詰めている。俺を信じるように。それを見て俺は自分を恥じた。 ――なんてバカだ。護るべき人がすぐ傍にいるっていうのに。 再びコントロールレバーを握る手に力を込め、ディスプレイをキッと見据える。 ――そうだ、諦めるのは死んだ後でいいじゃねぇか! ソリテュードの心の消えかかっていた闘争心に再び火が灯る。 「アリス。悪いが、支えていられなくなった。俺はこれから全力でヤツに挑む。だからアリスも全力で俺にしがみ付いていてくれ」 俺の言葉にアリスも力強く頷く。 「うん、がんばる。だからソリッドも、がんばって」 「ああ、当たり前だ。コイツを倒して二人で一緒に帰ろう」 アリスが俺の体に回している手に力が込められるのを感じてから、操縦に全神経を集中する。 ――武器がないなら、調達するまでだ。だが、どうするか・・・。 断続的なブーストによる左右の切り返しと、短いオーバード・ブーストを織り交ぜながらナインボールの熾烈な攻撃をやり過ごす。 武装をほぼ全てパージしてしまったことにより、機動力だけは上がっている。 被弾も幸い左腕が破損したに留まっているため、回避に支障は無い。 ――このままでは、ジリ貧だ。なんとかして・・・ん?あれは・・・ 回避しつつ思考を巡らすソリテュードの目に入ったのは荷物運搬用の業務用エレベーターであった。 このエレベーターは地下の商業・工業用リニアの路線に繋がっており、自動でコンテナや運搬車両を運び、地上へ搬出できる造りになっている。 この運搬システムはエデンⅣに入っている企業なら共同で運用できるようになっており、グローバルコーテックスも、その例に漏れていない。 それを見た瞬間、ソリテュードの脳裏に閃きが走った。 ――コイツを使えば、いけるか!?確かアレを購入して、まだコンテナに入れっぱなしだった筈だ。ヤツに唯一対抗できる武器が。 一縷の望みに掛け、迷うことなくミランダに回線を開く。 「ミランダ、単刀直入に聞くぞ。俺のガレージから、コンテナに入ったACパーツを企業共有の業務用エレベーターを使って地上に搬出できるか?」 俺の突拍子もない質問に少々面食らいながらも、冷静にミランダは答える。 「え?ええ、可能ですが・・・。搬出先を指定して下されば、運搬用リニアの路線を使用して搬出できる筈です。しかし、今までにそういった使用は例が無く・・・」 「できるんなら、やってくれ!ガレージの倉庫にミラージュのコンテナが1個ある。この前、業者から購入してリニアで搬入してそのままだから、話が早い筈だ。違約金だろうが追加料金だろうが、いくらでも払うから大至急頼む!俺はこんな所で死ぬわけにはいかない!!」 「了解しました。大至急手配します!」 俺の気持ちを察してくれたのか、力強く答えてくれるミランダ。 「頼む。搬出先は・・・」 「それには及びません。こちらでレイヴンがいる最寄りのエレベーターを検索して搬出します。それまで、持ちこたえて」 「ああ、持ちこたえて見せるさ」 希望が見えてきたことで余計なことを考える必要が無くなり、操縦はより精度を増していく。 だが、それでも圧倒的不利な条件は覆らない。 『AP30%。機体損傷度、増加しています』 「くっ・・・」 さっきよりは被弾の頻度は低下したものの、全て避けられるほど都合のいい話は無く、徐々に追い込まれていく。 しかし、ナインボールはパルスライフルでの攻撃を突然止め、距離を取った。 何事かと思った次の瞬間、背筋が凍りついた。 ナインボールは左肩のグレネードキャノンを展開し、砲口をこちらに向け、発射態勢に移っていた。 一撃でも直撃すれば、撃破は免れない。 回避しようにも、周りを高いビル群に囲まれた商業区画では上手く回避行動が取れない。 パルヴァライザーの時とは逆の立場になり、窮地に立たされる。 ――まずいぞ、どうする! グレネードキャノンが火を噴こうとしたその時、ナインボールの後方から超高速の弾丸が轟音とともに飛来する。 咄嗟の回避行動を取ったナインボールに続けざまに多方向からのミサイル弾幕が襲い掛かる。 「ソリッド!今よ、逃げて!!」 ミサイルを回避しようとするナインボールにライフルとマシンガンの追い打ちをかける黄色の重装四脚AC。 ファンロンは立ち止ることなく、器用に切り返しながら連続砲火をナインボールに浴びせかける。 「メイファ、手を出せば狙われるぞ!お前一人じゃ勝てない、逃げろ!!」 「できる訳ないでしょ、そんなこと!」 ナインボールは驚異的な機動力でファンロンからの攻撃を悉く回避するが、積極的に反撃してこない。 「この、バカにして!」 ライフルとイクシード・オービットで攻撃を絶やすことなくレールキャノンを連続で発射するが、そのどれもが避けられてしまう。 その機動力にメイファは戦慄した。 「なんてヤツなの、有効射程圏内なのに掠りもしないなんて」 それでも、ソリテュードが離脱する時間を稼ぐため、攻撃の手を緩めることなく立ち向かっていく。 ――私はまだ、あの時の恩を返してない。だから今度は私がソリッドを助けなきゃ! 決意を胸に赤いACを見据え、全神経を集中して攻撃を加え続ける。 「コイツ!ソリッドとアリスちゃんから離れろっ!!」 その執拗な攻撃に、ナインボールはファンロンを障害と認識し、突如攻撃を加えてきた。 今まで回避するだけだったのが一転、苛烈な攻撃を開始したナインボールを前にファンロンは後退を余儀なくされる。 「くっ、まず!」 ファンロンの機体構成は火力と機動力に優れる反面、防御力はあまり考慮されておらず、コアや腕部は軽量級のパーツを使用しているため撃たれ弱いという欠点がある。 ブーストで後退しつつ、自分を追ってくるナインボールにライフル、マシンガン、イクシード・オービットの高密度射撃を見舞うが、怯むことのない赤い機体はファンロンとの距離を詰め、パルスライフルでその装甲を剥ぎ取っていった。 「きゃあっ!う、嘘でしょ、これでも止まらないなんて!?」 圧倒的な力の前に、瞬く間に追い詰められるファンロン。 機体は既にボロボロで装甲は焼け焦げ、右腕は肘から吹き飛ばされ、左腕のマシンガンはエネルギー弾の直撃を受けて爆散し、ミサイルも接近されすぎて撃てず、レールキャノンも近すぎて狙えない。 既に満身創痍で満足に動くこともままならないファンロンにナインボールは無慈悲にブレードによる止めを刺した。 前方右脚部を焼き切られ、閣座するファンロン。 「メイファ!」 「ご・・・めん、ね。役に、立てなくて・・・。アリスちゃん連れて、逃げて」 「バカ野郎!ンなことできるか!!」 「メイファおねえちゃん!」 しかしナインボールは閣座したファンロンにそれ以上、追撃を加えることなく再度ブリューナグの方へ向き直る。 戦闘能力を失った敵にこれ以上無駄弾を使う必要は無い。機械ゆえの合理的な判断だった。 ファンロンがブリューナグと反対方向へ後退したことにより、かなりの距離が離れていたが、それでも逃げ切るには十分な距離とは言えない。 メイファはまだ生きている。今なら無事に助け出せるかもしれない。 だが、それを実現させるにはナインボールを倒して自分が生き延びなければならない。 ソリテュードの胸を焦燥感が襲う。 ――ミランダ、まだなのか!?メイファが命がけで稼いでくれた時間が・・・ 無駄になってしまう――そう思いかけた時。 「レイヴン、指定のコンテナが間もなく到着します!場所は現在位置の右後方すぐの所にあるエレベーターです。見えますか!?」 ミランダの声に弾かれる様に機体を巡らせると、さっき見たエレベーターの搬出口が視界に飛び込んできた。 「確認した。今すぐ向かう!」 「搬出口は自動的に開放されます・・・只今到着しました!」 ミランダの言葉通り、エレベーターの搬出口のゲートが開放され、ドーリーに乗ったコンテナがせり出てきた。 それを見て、ソリテュードはオーバード・ブーストを起動し、一気に距離を詰める。 だが、ブリューナグに再び狙いを定めたナインボールが、もうすぐそこまで迫っていた。 ナインボールはブリューナグを仕留めるべくグレネードキャノンを展開し追い縋ってくる。 ――間に合うか!?いや、間に合わせて見せる!! コンテナが目前に迫り、ロック解除のパスコードを送信すると同時にブリューナグの右腕を伸ばす。 が、次の瞬間、ソリテュードの視界は白い閃光に包まれ、一拍遅れて轟音と衝撃が激しく体を揺さぶった。 ブリューナグとコンテナ、エレベーターの周囲は黒々とした爆煙に覆われ周囲の視界は遮られる。 束の間の静寂が辺りを包み、もうもうと立ちこめていた煙が徐々に薄れていく。 ナインボールは目標の沈黙を確かめるため、ブリューナグの残骸があるだろう爆発の中心点に近づこうとした。 しかし次の瞬間、煙を掻き消しながら蒼い光弾が閃き、ナインボールの右肘から下をパルスライフルごと吹き飛ばした。 その高性能AIでさえ予測しなかった事態にナインボールは慌てたように距離を取るが、それを許さぬかの如く、続けざまに2発の蒼い閃光が直撃し、ぐらりとバランスを崩す。 煙を吹き飛ばしながらフルブーストで躍り出たブリューナグの右腕には巨大なレーザーライフルが握られていた。 ―WH04HL-KRSW― ハイレーザーライフル、通称カラサワ。設計者の名前が冠されたACの歴史に名を残す名銃。高い機体負荷と引き換えに得られる火力は絶大で、これだけで戦況を覆す能力がある。 敵を追い込むための武器であるパルスライフルを失ったナインボールは、グレネードキャノンを直撃させようと左右に切り返しながら距離を取るべく後退を試みるが、ブリューナグのカラサワによる追撃を受け、急速に動きを鈍らせていく。 ――逃がすか!一気にケリを付けてやる!! 確かな手ごたえを感じ、ソリテュードはナインボールを攻め続ける。 さっきまで防戦一方だったのが嘘のようにカラサワの高出力レーザーはナインボールの装甲を貫いていく。 しかし、これには理由があった。 カラサワの性能が優れているのはもちろんだが、ソリテュードには幾つかの幸運が味方していた。 まず一つ目は、グレネードキャノンの直撃を免れたこと。 砲弾はエレベーターの搬出口に直撃し、ブリューナグにダメージが及ばなかったのだ。 そして、二つ目はエレベーターの搬出口が破壊されたことによって、派手にまき上がった爆煙が煙幕代わりになりナインボールに誤解を与え、時間が稼げたこと。 そして最後はアリスの手によるものだった。 カラサワを装備して今まさに打って出ようとした時、アリスは俺を制するように右腕をくいと引っ張った。 「どうして止めるんだ?これならヤツに対抗できる」 「うん、でもそれだけじゃ、だめ。FCSのサイトはんいがせますぎて、ソリッドとこのこがついていけてない。これじゃ、ナインボールにあたらない」 アリスの的確な発言に正直、面食らってしまった。 「あ、ああ。だが、こればっかりはどうしようもない。後は腕で何とかするしか・・・」 「ううん、だいじょうぶ。こんどは、わたしがおてつだいするばん。このコンソールからシステムにアクセスできる?」 アリスが何をする気か分からないが、正直モタモタしている時間は無い。 だが、俺はこの少女に託してみたいと思った。今この瞬間、運命を共にしている者の熱意を無碍にしたくは無い。 「ああ、できる筈だ。コンソールにタッチパネル式のキーボードがある。それを使ってアクセスできると思うが、どうするんだ?」 「うん、じかんがないからせつめいできないけど、FCSをかきかえて、サイトはんいとロックそくどをはやくするの」 アリスの突拍子もない発言を聞いて耳を疑う。 「なっ!?そんなことできるわけが・・・」 「できるよ。だってわたし、せいたいCPUだもの」 「アリス・・・」 その言葉を聞いて、胸が締め付けられるような思いがした。アリス自らそんな風に言ってほしくは無かった。しかし同時に、それは自分の身勝手なエゴだと認識する。 そんな俺の心を見透かしたようにアリスは微笑んだ。 「わたし、もっといろんなことがしりたい。ソリッドやメイファおねえちゃん、ミランダさんにいろんなこと、もっとおしえてもらいたい。いろいろべんきょうして、みんなみたいに、なりたいの。だから、ナインボールをはかいするための、おてつだいするの」 そうしてアリスは俺の膝の上からコンソールに向かい、パネルを操作し始めた。 「ブリューナグ、ごめんね。きもちわるいかもしれないけど、がまんしてね」 自分のぬいぐるみに話しかけていたように優しく語りかけると、まるで何度も操作したことがあるような手際でシステムを呼び出した。 そこから先は夢でも見ているかのようだった。 少女の繊細な指先が精密機械のように超高速で正確にキーボードを叩き、瞬く間にFCSが書き換えられていく。 そして、戦闘システムが一旦フェイルし、再起動した瞬間、俺は自分の目を疑わざるを得なかった。 あれだけ狭かったサイトがディスプレイほぼいっぱいまで広がっていたからだ。 「う、嘘だろ・・・?」 「ロックきょりは、すこしみじかくなったけど、サイトはんいとロックそくどは、はやくなってるから」 そうして、アリスは再び俺にぎゅっとしがみ付いた。 「ソリッド、あいつをやっつけて」 アリスの努力と期待を裏切る訳にはいかない。 俺自身も意識を集中する。準備は整った。後は実行するだけだ。 「ああ、任せておけ」 そう言って、レーダーに表示されている方向に向き直り、薄れゆく煙越しにナインボールをロックオンすると同時にトリガーを力強く引いた。 白いACと赤いACが、まるでダンスでも踊っているかのように激しい機動戦を展開する。 凄まじいブーストの風圧で、商業ビル群の窓ガラスが吹き飛んでいく。 ナインボールは少しでも被弾率を低下させるため、空中での機動を展開していた。 通常のACよりも余裕のあるジェネレーター出力を持つナインボールは、普通では有り得ない滞空時間を実現し、自在に空を舞う。 そして、空中からの強烈なグレネードキャノンをブリューナグへ放つが、ソリテュードは巧みにこれを回避する。 ナインボールは規格外の性能を持つが、実体弾兵装の弾薬自体は既存の標準のものを使っているとソリテュードは見抜いていた。 グレネードキャノンの弾速は速い方だが、光学兵器と比べればその速度は劣る。 タイミングさえ誤らなければ、フルブーストの回避機動で十分避けられるのだ。 対するソリテュードの方はアリスの恩恵によるサイティング能力の大幅な向上により、ナインボールを捉え続けていた。 しかし無駄弾は撃たず、向こうが攻撃を仕掛けてくる時の僅かな隙を狙って確実に命中弾を当てて行く。 ここまでの戦闘で、既にソリテュードは10発もの命中弾をナインボールに与えていた。 通常のACであれば大破、重量級やタンクでも大破寸前のダメージを与えられているはずであるが、ナインボールは所々の装甲を吹き飛ばされつつも、動きはまだまだ衰えてはいなかった。 ――クソっ、一体どんな装甲してやがるんだ。 胸中で毒づくが、それとは裏腹に思考は冷静だった。 残弾カウンタに目を向けると、残り21発。ほぼ半分を撃ち切ったことになる。 ――命中率は50%といったところか。ヤツに対してこの数値は上等だが・・・全弾撃ち切るまでに沈黙させることができるか微妙だな。やはり接近してコアを撃ち抜くしかないか・・・。 しかし、それには大きなリスクが伴う。 ソリテュードは接近戦を避け、こちらの有効射程を保ちつつ、ここまで戦ってきた。 武器はもうカラサワしかなく、ブレードも破損しているため、近づかれれば圧倒的に不利になる。 一番危惧するべきは相手のブレードによる攻撃だった。 ブレードを受けてしまった場合、衝撃による硬直で、一瞬身動きが取れなくなってしまい、そこを至近距離からのグレネードキャノンで狙われれば確実に撃破されてしまう。 ――今仕掛けるのはまずい。残弾が10発を切るまでは・・・ん!? 戦略を纏めかけていたソリテュードの目に、それまで空中を飛び交いつつグレネードキャノンを連射していたナインボールからマイクロミサイルが射出されるのが映った。 「チッ」 既に撃ち切っていたと思っていたマイクロミサイルの牽制に思い描いていた戦闘のイメージを崩され苛立つ。 ――やはり一筋縄ではいかないな。 マイクロミサイルといえど、現状の残りAPで直撃を食らえばひとたまりもない。 全弾回避するため、それまで封じていたブーストジャンプで上空へ飛び上がりミサイルを引き付ける。 ミサイルの束が目前に迫ったところでブーストをカットし、自由落下による急激な軌道の変化でやりすごす。 続けて放たれていた第二波はオーバード・ブーストを起動し、無理やり引き離した。 回避する間もナインボールから目を離さず、狙いを定め続ける。 ――ミサイルに泡を食っているところを狙い撃つ算段だろうが、そうはいくか。 未だ滞空し続けるナインボールの足元に潜り込むように路面を滑走し、グレネードキャノンの射角から逃れつつ、無防備な胴体にロックする。 「これでどうだ」 コアを撃ち抜くべくトリガーを引こうとした瞬間、赤いシルエットが視界から掻き消えた。 「何っ!?」 ナインボールは瞬間的にオーバード・ブーストを起動し、あろうことかブリューナグの背後に回り込んだ。 ――ちくしょう、なんてヤツだ! 咄嗟に旋回し、レーダーの示す方へ視界を巡らすと、そこには自分を見下ろしつつ完全に捉えたナインボールがグレネードキャノンの砲口をこちらへ向けていた。 その姿は死を運ぶ悪魔を連想させる。 直撃を覚悟し身構えたその時、轟音が鳴り響いて赤いACがぐらりとその身を震わせた。 何事かと思ったソリテュードの視線の先に、満身創痍ながらもレールキャノンを構えるファンロンの姿が見えた。 ファンロンは完全に機能を停止していた訳ではなく、閣座しただけであり、前部右脚を破壊され歩行不可能だったものの、残る3つの脚部で機体をなんとか立ち上げ、レールキャノンによる最後の一撃を放ったのだ。 「ソリッド・・・そいつ、ぶっ殺し、て」 薄れる意識を全身全霊で繋ぎ止め、必中の一撃を放ったメイファはゆっくりと暗い闇に落ちていった。 「メイファ!しっかりしろ!!」 呼びかけに応えないメイファを気にかけつつも、今はナインボールを仕留めることに全力を注ぐ。 ここでヤツを倒さなければ、メイファの努力が無駄になってしまう。 背部にレールキャノンの直撃を受けたナインボールは、急速に高度を下げていく。 今の一撃で、ブースターの片方を破壊され、十分な推力を得られなくなったためだ。 ――しめた、チャンスだ! 迷うことなくフルブーストで落下予測地点まで距離を詰める。 そして、ナインボールが着地する寸前の隙を突いて、脚部を狙い3発のレーザーを撃ち放った。 ほとばしる3発の蒼い閃光は赤いACの機体を掠め、装甲を焼き焦がしていき、最後の1発が右膝関節を直撃する。 その直後、着地したナインボールは突然右側に大きくバランスを崩し、膝をつく様な形で停止した。 着地寸前に破損した右膝関節に着地の衝撃が加わり、完全に破壊されたためだった。 閣座したナインボールを前に、ソリテュードは努めて冷静に照準を合わせる。 「これで、終わりだ」 コアをロックオンサイトに収め、トリガーを引こうとした瞬間、ナインボールのカメラアイが妖しく光った。 只ならぬものを感じた直後、ナインボールの背後に不気味な光が灯るのが目に飛び込んできた。 ――まずい! 敵の意図を瞬時に理解し、咄嗟に後退を試みたソリテュード目掛けてナインボールはオーバード・ブーストを起動し、赤い弾丸と化して突っ込んでくる。 捨て身の特攻。人間同士の戦いならば相討ちになるが、機械であるナインボールは目標をどのような形であれ、撃破できれば勝ちなのだ。 一切の迷いのない特攻にソリテュードは恐怖を感じた。 目前に迫る赤いACは燃えるようなオレンジ色のブレードを展開し、ブリューナグを断ち切らんとその腕を振りかぶる。 ――しまった、予測できていたのに! 死をも覚悟したソリテュードの胸に、ぎゅっとしがみ付いてくる体温が伝わり、心と体を踏みとどまらせる。 キッとディスプレイいっぱいに映し出されるナインボールを見据え、フルブレーキングをかけると同時に、左半身を突き出し迎え撃つ体制を取った。 光の刃が展開された左腕が振り払われる瞬間、ナインボールのカメラアイと自分の視線が交差するような錯覚に襲われる。 直後、激しい衝撃がコクピットを襲い、体を揺さぶった。 視界の端に、ブリューナグの左腕が吹き飛ばされていくのが映る。 衝撃でシェイクされた脳が意識を刈り取り、視界をぼやけさせるが、それでも冴え冴えと映る赤色を逃すことなく、右のコントロールレバーを強く握る。 白いACと赤いACは互いに敵へ止めを刺すべく必殺の武器を構える。 共に零距離。逃れられる道理は無い。 もはや両足で立っていられなくなったナインボールは、確実に命中させるために膝立ちの状態でグレネードキャノンを構え、その砲口をブリューナグのコアへ向ける。 が、それよりも速く、ブリューナグの右腕に握られるカラサワの銃口はナインボールのコアの真中を捉えていた。 人間の決死の判断と機械の合理的な判断。 そのどちらが正しいのかは永遠に分からない。 しかし、この瞬間だけは人間の思いが勝った。 「くたばりやがれ!」 激しい衝撃音と共に蒼い閃光はコアを貫き、赤いACは二度と立ち上がることは無かった。 ソリテュードはブリューナグを閣座したファンロンの横に着け、機体から降りると、ファンロンのコクピットハッチにある外部エジェクトレバーを操作して、外からコクピットを強制開放した。 「メイファ、無事か!?」 メイファは気を失い、首をうな垂れていたが、ソリテュードの呼びかけにゆっくりと顔を上げた。 「ん・・・ソリッド?どうして、ここに・・・」 少し朦朧としているようだが、意識はあるようだ。その様子にソリテュードは心底安堵した。 「そりゃ、ナインボールを倒したからに決まってるだろ」 「たお、した・・・。じゃあ、終わったの?」 「ああ、全部終わった。俺たちの勝ちだ」 俺の言葉にほっとしたように顔を緩めるメイファ。 「よかった・・・、そうだ、アリスちゃんは無事?」 本当に心配していたのだろう、さっきよりもはっきりとした口調で聞いてくる。 「ああ、大したケガもしてないし、大丈夫だ。今は眠ってる。相当疲れたんだろうな」 「そう、よかった」 「お前の方こそケガはないか?」 「ん、もしかしたら肋骨が2~3本折れてるかもしれないけど、他は平気っぽい」 表情を見る限り、必要以上の無理をしているようには見えない。機体がこれだけ損傷していて、この程度のケガで済んだのは僥倖だろう。 「そうか、よかった」 「心配してくれるんだ」 何が嬉しいのか、顔をほころばせるメイファ。 ヘルメットを取り、鮮やかな赤い髪が広がると、ふわっと女性の柔らかな匂いが香った。 「当たり前だろう、助けに来てくれた知り合いに死なれたら寝覚めが悪い」 メイファの女性らしさを目の当たりにして、思わず目を逸らしてしまう。 「んふふ、ありがと。嬉しい」 素っ気ない態度を取っている俺に、見透かしたように花のような笑顔を向ける。 そんな仕草を見て、不覚にもどきりとし、気まずくなって頭を掻く。 コイツの前だとどうも調子が狂う。 目を逸らした先には、赤々と炎が立ち上り、ついさっきまで死闘を繰り広げていたACをこの世から葬り去っていた。 ナインボールを撃破し、メイファの安否を確かめるためファンロンに近づいたとき、突然自爆したのだ。 機密保持のための処置なのだろうが、もしあの自爆に巻き込まれていたらと思うとゾッとする。 何処かに行方を暗ましているハスラーワンの亡霊の残滓を見つめながら、今回の戦いを振り返る。 考えること、やることは山積みだが、今は休息して地盤を再構築するのが先決だ。自身が反省すべき点も数えきれない。 「ねぇ、ソリッド」 目を閉じ、そんな事を考えていた俺をメイファの声が引き戻す。 「ん?」 「私、役に立てた?」 先ほどとは違い神妙な顔つきでメイファは聞いてきた。 何故、今さらそんなことを聞くのだろうか。 「ああ、お前が来てくれなかったら、確実に殺られていた」 「ホント?」 「嘘ついてどうする。今回は本当に感謝してるよ」 「そっか・・・」 そうして、また普段の明るい顔つきに戻ったと思った途端。 「じゃあ、ごほうびちょうだい」 そう言って、今度は悪戯っぽい表情へと変わる。ホント、よく表情が変わる女だ。 「はぁ?なんだよ、ごほうびって」 俺の問いには答えず、静かに目を閉じて、わずかに柔らかな唇を突き出すメイファ。 ――ったく。男である以上、後に引けねぇじゃねえか。 そう思いつつ、彼女の望みを叶える。 昔のように優しく唇を重ねると、当時の思い出が俄かに甦る。 全く、今日は何て日だ。 遠くから、ヘリのローター音が近づいてくる。コーテックスの救援部隊だろう。 「メイファ、悪いが一旦離れるぞ。アリスを他の人間に知られる訳にはいかない。俺はこのままガレージまで帰還する。後日、個人的に礼をしに行くよ」 「うん、期待して待ってるね」 悪戯っぽい笑みを浮かべるメイファに俺も口元を緩ませて応える。 「ああ、期待しとけ」 ファンロンからブリューナグに乗り移り、アリスを起こさぬよう膝の上に乗せて機体を立ち上げる。 するとタイミングよくミランダが通信を入れてきた。 「レイヴン、お疲れ様です。今回は色々なことがありましたが、まずはゆっくり休んでください。シャオランのメディカルチェックは手配済みです。ファンロン回収はこちらで引き受けますので、レイヴンはガレージへ帰還してください」 「ああ、頼んだ。後は任せる。それと、ありがとうミランダ。君の支援が無ければ勝てなかった」 俺の謝礼にミランダは柔らかな笑みを浮かべる。 「いえ、オペレーターとして当然のことをしたまでです。レイヴンをサポートするのが私たちの役目ですから」 その言葉を聞いて心強いものを感じつつ、ガレージへの帰路へつく。 長かった一日は、これにて終焉を迎えた。 膝の上で可愛らしい寝息を立てる少女の髪を優しく撫でつつ、ソリテュードも暫しその羽を休めるのだった。 第十二話 終 →Next… 第十三 コメントフォーム 名前 コメント
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第一話/ /第二話/ /第三話 第二話 執筆者:柊南天 殺した。取り立てて珍しいモノもない、地方によくあるような断崖都市で、殺せる限りの人間を殺した。敵対行動を取る者は無論、戦闘員であるなしを問わず逃げようとする人間は視界に映る隅から撃ち殺した。短機関砲から吐き出された高密度の火力を受けた彼らは例外なく、血霞になってその場から消えていった。 珍しくとも何ともない光景で、何度も繰り返し再現してきた事実だ。 殺しの為の大義などなく、大義を掲げるに足る主義理想もない。 惜しみなく注がれる王岳の報酬に雇われ、肉腫塗れの殺意を代行し、汚れ切った戦場を駆けずり回る、烏は時に独りで屍肉を漁り、時に群れを成して無垢な赤子を襲い、その白い肉を相食む。必要であるとされれば群同市ですら互いの肉を求めて争う。両翼に纏わりつく腐敗した欲望と殺意の残滓を撒き散らしながら。 戦場を跋扈する烏──レイヴンとはそういった兵士達であった。世の中には高潔な理想を振りかざしてその無類の武力を行使するという奇特な烏も稀にいるというが、少なくとも自身にとってはそういうものであり、その生き方を通してきた。──唯一の故郷であったミラージュを去った時から。 代行する殺意の是非に興味などない。だから私は、あの時私に手を差し伸べてくれた"彼女"と共に戦場を駆け巡り、彼女が望む全ての対象を塵に変えてきた。 ──血雨混じりの鉄屑が自身の搭乗する機体の外部装甲を叩き、肉眼で目視できるほどの肉片がべっとりと付着する。カメラアイにまで届いたそれを見咎めて胸中で舌打ちした後、有視界内とレーダー索敵領域に敵性動体がない事を確認し、左腕に構えていた短機関砲の銃口を下した。 「……こちらゼクトラ、当該戦域を制圧した」 『良い手際だ。こちらも間もなく制圧を完了する』 南北に二分した作戦領域の北方戦域で戦闘行為を継続中の"彼女"──ノウラは、低く落ち着いた声を無線を介して寄こしてきた。その彼女の労いの言葉に、私は僅かに口許を緩めた。彼女にとってはその言葉以上の意味は何もないだろう。彼女が必要としているのは、彼女が五年前に私を拾った時から何も代わらない。 けれど、彼女が、ノウラがその言葉をくれる事が、私にとってそれ以上も以下もない喜びだった。 ブースタ機構の出力を微調整して機体を転回上昇させ、たった今しがた殲滅した南方戦域の前景を視界に映し出す。 大渓谷の断崖に寄生するように、醜くへばり付いて発展した採掘都市。廃墟と化した建築物や鉄屑と化した砲台群による防衛機構が周囲一帯で黒煙を吹き上げ、剥離した瓦礫が断崖下方の渓流へと崩れ落ちていく。 動くものは何もない。動体はない。殺して、殺し尽した。 日常によくある光景で、翌日の経済新聞の片隅にも掲載されないようなありふれた話だ。 代行する殺意の是非に興味はない。それは紛れもない事実である。 だが──、それでも、私は意識して自分が溜息をつくことを禁じ得なかった。 五年前から、世界は未曽有の兵器災害に見舞われているというのに、支配企業達は未だに互いの勢力圏の拡大と権益確保に躍起になっている。 『作戦領域の第四種制圧を完了。これより主任務の再開へ移行する。聞いたか?』 「ああ、聞いている」 結局いつも結論の出ない思案に感けていたせいで、我ながら抑揚に欠けた返事を返してしまった。 採掘都市の制圧は、主任務の作戦領域へ移動する最中に依頼主であるミラージュ社──かつての育ての親から持ち掛けられた緊急の仕事だった。灯台下暗しとはこの事だと、仕事を請けた時には思った。 『丁度いい小遣い稼ぎも済んだ。さっさと作戦領域へ移動せんと、依頼主に目を付けられるぞ』 どこか含みを持たせた彼女のその言葉に胸中で同調し、フットペダルを踏み込んで自身が搭乗する機体【ゼクトラ】を宙空へ急速上昇させる。主任務へ最短時間で到着する為の巡航高度にまで達した所でコンソールに指を走らせ、巡航用オーバード・ブーストの起動準備を進行させる。 投射型のメインディスプレイに、先の制圧戦闘における機体損耗状況と周辺戦域の情報映像が出力され、機体搭載の戦術支援AIが情報更新と報告義務を行う。 『機体装甲摩耗率4%、最大巡航速度での機構起動、問題ありません』 「作戦領域までの所要時間は?」 『主任務作戦領域までの距離は565キロ、最大巡航速度で約65分です』 「機体制御を第一戦闘態勢から第二準備態勢へ移行。周辺戦域とのデータリンクを継続、作戦領域到達までの間、現態勢を維持」 『了解。第一戦闘態勢から第二準備態勢へ移行を完了しました。作戦領域までの航行軌道プログラム修正。オーバード・ブースト起動準備、完結──』 若い女性のヴォイス・プログラムを出力するAIがオーバード・ブースト機構の起動準備完結を報告し、コンソール画面に素早く視線を走らせて最終起動チェックを済ませた。 『こちらノウラ、これより北方戦域から作戦領域への巡航機動を開始する。航行軌道のランデブー地点は約255キロ北東、20分後になる。それまで各自単独行動だ、遠方からの戦術支援は行えん。不足の事態に常に備えておけよ、後援部隊の到着まで間もないとはいえ、現戦域はクレスト領下の非緩衝地帯だ。敵対勢力と接触した際は──と、すまない。老兵の過言だったな……』 「──いや。気にするな、ノウラ」 控え目に発したその言葉を無線の向こうで聞いた彼女──ノウラが軽く苦笑する声が聞こえてくる。彼女が発した意での老兵──そう呼んでしまうにはあまりにも、彼女は一線で活躍する優秀なレイヴンであり過ぎている。 確かに、彼女──ノウラという女性はレイヴンとなって既に久しく、その上、何れの勢力にも属さないフリーランスの傭兵となってから五年以上もの歳月が経とうとしている。だが、その経歴と、古参と呼ばれるようになってからさらに現在までの五年間をフリーランスの傭兵という立ち位置で生き貫いてきたという実績は、彼女の意で言う老兵の身としては不相応であり、また彼女が老獪を極めつつあるごく一握りの傭兵である事を私達の業界に知らしめている。しかも五年前以前の経歴を秘匿しながら── 五年前、彼女に拾われなければ、今の私は彼女と同じ道を歩んではいなかっただろう。 いや、今ですら既に私は彼女の影に過ぎない。それはノウラが望んだことであり、私が切望した事実に過ぎない結果論だが。 最早その事実を掘り返すことすら不毛であると、その考えを頭の隅から思考の外へ追い落とす。口許を歪めて軽く笑み、メインディスプレイに出力中のルートマップを注視する。両手にそれぞれ握りしめた操縦把上部に付随のカバーを親指ではじき、内蔵の押ボタンに指面を近づけ── 第二準備態勢に移行し、第一広域警戒態勢にあった各種センサーが突如、けたたましい警戒音を狭いコクピットに響かせた。戦術支援AIが即座に反応してメインディスプレイに現状況を出力する。レーダーに勢力不明の熱源反応が後方、南東から急速接近してくる。 『未確認勢力動体、急速接近。移動速度及び各種駆動音から、動体源をAC機体と断定。機体制御を第二準備態勢から第一戦闘態勢へ移行します』 その無機質な支援報告、ある意味では至極冷静なAIのその対処に大した意味もなく呆れながら、操縦把上部のカバーを閉じ込む。フットペダルを大きく踏み込んで後方ノズルから噴射炎を吐き出し、最大推力で機体を後方へ急速展開させる。ゼクトラのカメラアイが正面から急速接近してくる未確認動体の姿を拡大捕捉し、有視界内にそれを捉えた。 『不明動体、背部兵装のミサイルコンテナ展開を確認。単純な示威行為ではあり得ません。不明勢力を敵性動体と断定、迅速な迎撃態勢の展開を推奨します』 AIが平坦な口調で言い切った後、まさに正面から捕捉した未確認ACが背部兵装のコンテナからミサイルを連続射出した。胸中で軽く舌打ちし、自律支援プログラムに従って戦術支援AIが垂直発射されたミサイルを自動追跡する。 「不明勢力を適性動体と断定、排除する。第一戦闘態勢を維持、自律支援プログラムをセミ・アクティヴからオール・アクティヴへ。友軍AC、ホワイトサンへの回線を開け」 『了解。──開きます』 ざざ、と砂嵐のようなノイズが一瞬流れ、先ほど無線を閉じたノウラと再びコンタクトを取った。センサー情報が凄まじい密度でディスプレイに羅列され、戦術支援AIがそれらの中から有用情報をピックアップしていく。 垂直ミサイルは頭上400メートルから降下接近、時間にして約20秒以内で着弾。適性動体はオーバード・ブーストによる急速接近を続行、25秒後に接敵。 「的中のようだな、ノウラ」 『そちらもか。お前と私で一機ずつとは……クレスト社専属のAC部隊だろう。其処らの野烏共のようには行かん、くれぐれもな。作戦領域への巡航移動を放棄、敵増援戦力を迎撃する。狩るぞ』 「了解。敵戦力を殲滅、その後航行軌道プログラムを再修正する。幸運を、ノウラ」 『ああ、お前もな。カット──』 その最後の彼女の言葉は、彼女の本意ではないのかもしれない。彼女の私の間に信頼関係はあれど、私達の生き方にそぐわないような馴れ合いはない。 しかし、それでも、私は彼女のその言葉にいつも心を満たされる。 一瞬、時間にして刹那足らずの間思考を停止し、自らの意識の深遠に自我を埋没させる。 ──行こう。 「これより迎撃を開始する」 灼けつくような殺意を自身の双眸に湛えて有視界内の敵性動体を睨み据え、操縦把を握りしめた。眼球行動に同調追従するフレーム・システムによってカメラアイが上空を振り仰ぎ、右腕兵装の短機関砲を上方展開。着弾まで二秒に迫っていた垂直ミサイルの弾頭を捕捉。操縦把付随のトリガーを引き絞った。 雷鳴のような砲声が夕刻の赤く焼け始めた夏空に轟き、短機関砲から吐き出された砲弾の弾幕が頭上に迫っていた垂直ミサイルの弾頭を撃ち貫いた。赤々しい爆炎が頭上を埋め尽くし、轟音を伴った爆圧がゼクトラの機体を細かく揺さぶる。 『敵性動体、接触まで2秒。迎撃準備してください』 戦術支援AIに指摘されるまでもなくカメラアイを即座に正面へ据え、それに伴って短機関砲の照準を合わせる。敵性ACはこちらの迎撃態勢に的確に反応し、オーバード・ブーストを継続したまま恐らく最大推力で半円を描くように右手の方へ迂回機動を取る。 強い牽制の意味合いを含めた威嚇射撃を行い、短機関砲を唸らせる。曳光弾の火線が敵性ACの軌跡をなぞり、当の目標はゼクトラの右舷に達すると同時に方向転換、真正面から突進を仕掛けてきた。 ディスプレイに出力された敵性動体の機体情報を、視界の隅に捉える。高速機動戦闘を旨とするクレスト社製の軽量二脚型機体。右腕兵装は短機関砲、左腕兵装はレーザーブレード──その情報を確認した直後、敵性ACは自機の右腕に携えていた短機関砲の砲口を此方へ向けて跳ね上げた。それに即座に反応し、応対射撃を取る。互いの火線が完全に重なり合い、高密度の火力が衝突して派手に火花を散らす。衝突を免れた少なくない砲弾が互いの外部装甲を削り取り、急速に距離が短縮されていく。 「高機動展開に加え、レーザーブレード主体の近接戦闘か──似た者同士というところか?」 ──馴れ合いは好かんがな。 自機、ゼクトラの左腕兵装──射突型物理ブレードに意識を傾ける。互いの火線が零距離で交錯する一瞬──その時の判断が互いの勝敗を別つ。 『敵AC、オーバード・ブーストを解除。接触まで二〇メートル──』 敵性ACの頭部カメラアイから、それに搭乗しているレイヴンの研ぎ澄まされた鋭利な殺意を容易に感じ取ることができる。残余推力に後方ノズルから噴射炎を吐き出して推力を継ぎ足した敵性ACがレーザーブレードの刀身を現出させ、短機関砲の砲弾を撒き散らしながら勢いそのままに突進してくる。 互いの視線がカメラアイを通して肉薄し、左腕兵装である射突型ブレードの電子信管に直結した左操縦把トリガーにかけた人差し指に力を── 「左か──」 トリガーを引き絞る刹那、敵性ACの挙動を読み切ってゼクトラを左舷へ急速展開させた。正面からまさにその方向へ飛び出した敵性ACと完全に張り合う体勢となり、私は左操縦把付随のトリガーを全力で引き絞る。高速機動の中ですら、機体の挙動を一瞬押しとどめるほどの反動が左腕から伝播し、至近距離から敵性ACのコア目がけて、鋼鉄の杭が強装炸薬の燃焼ガスによって撃ち出される。 しかし、その直後敵性ACが取った機動は凡そ、ACという機体のそれとは思えぬものだった。鋼鉄の杭がコア部を刺し貫くかにみえた一瞬、適性ACはブースタを最大推力で噴射しながら噴射方向を微調整し、その場で反時計回りに軌跡反回転、物理ブレードの刺突を外部装甲表層部を掠めたのみで回避してみせた。 「次が来る──」 敵性ACはそれに留まらずさらに機体を展開させてゼクトラの機体後方へ回り込み、その遠心力を上乗せしたレーザーブレードの刀身を走らせる。思わず口許を大きく歪め、ゼクトラの機体をブースタ推力最大で軌跡反回転させた。右腕兵装の短機関砲をターレット稼働範囲限界で後方へ向け、敵性ACの頭部へ方向を突き付ける。 短機関砲の砲口が煌き、同時に二機のAC機体はブースタを逆噴射して即座に距離を保った。 『機体後背部外部装甲に焦熱性損害。機体稼働率に変動ありません。──敵性機体より通信要請です。回線を開きますか』 「通信要請だと──ふん」 胸中で人知れず得心し、戦術支援AIに指示して回線を開かせた。互いに距離を保ちながら、短機関砲の方向を突きつけ合った状態だが、しかし、少なくとも向こうは戦闘機動を取る様子を見せないでいる。 わずか十数秒足らず、その一連の行動の中で自分は通信要請を行ってきた敵性ACのレイヴンについて大体を知り得ていた。 『こちらクレスト社陸軍第六三機械化戦闘小隊だ。レイヴン──いや、"一つ手の射手"。聞き覚えはあるか?』 発信用周波数を流す前にため息を小さくつき、やっぱりか、と首肯する。 「──ああ。だが、久し振り、と言って差し支えはないな。"グレイエンバー"以来だから、五年になるのかな──マハヴィル。クリシュナも健在のようだ」 『お前が生きているという噂は、俄かに聞いていた。が、まさかこんな形になろうとはな……』 「既に、私達は戦場から降りるには手遅れだった。あり得ない話ではなかっただろう?」 『変わらんな、お前は。……それにしても、灯台下暗しとはよく言ったものだ』 そう言って、昔の同僚であったマハヴィルは堪えるような苦笑をもらす。 フリーランスの傭兵となってから五年、少なくともその間に、特定企業と専属契約を結んだ記憶はない。四年前にミラージュ社をはじめとする企業連合軍の犯した失態が私やマハヴィルのような死に損ないのレイヴンを産み、企業への失望が私達の頚城を外した。 昔の同僚と対峙する傍ら、脳裏に五年前の風景を描き出す。今にして思えば、その時の企業の裏切りはそれと呼べるようなものでもなかった。単に時期が悪すぎただけなのだろう。 兵器災害と呼ばれるようになった発端──旧兵器群による全世界の企業領土への大攻勢。ただ、それでも、手を差し伸べてくれた彼女に従い、私が背を向けるに足る十分なモノであったという事実に、変わりはない。 ──オペレーション:グレイエンバー。 旧兵器群の侵攻を足止めする為、前線での後退支援戦闘を命じられた捨駒のAC部隊。押し寄せる数万の旧兵器群の波によって、部隊は数日と持たず壊滅し、散り散りになった。 記録の一切は抹消され、焦土に埋もれていった多くの友軍の死も同様に扱われた。 忠誠の報酬は、徹底的な隠匿。 レイヴンとしても、一人の人間としても幼かった私は、割りに合わないという以前に──許容できなかった。 『私達に、感傷などという贅沢を楽しむ猶予はない。此処から先は、クレスト社の者としての言葉だ。貴軍はクレスト社領有地を著しく侵略している。我が社の増援部隊も急行している。速やかに武装解除し、降伏しろ』 「そうやってお前は、また企業の犬という身分に収まっているつもりなのか?」 『不相応な言葉を吐くべきではないな。この世界の戦場に在っては、結局私もお前も企業支配体制の尖兵でしかない。遠いか近いか、敵か味方かの違いでしかない。そうだろう?』 五年前に離れ離れになって以降、与り知ることのない時間を歩んできた戦友が選んだ現在である。それに対して過分な言葉をかけたくはなかった。しかし、思い出にしてしまうにはいまだ近すぎるあの過去が、所属先を変えて再び企業専属のレイヴンとなったマハヴィルに対する辛辣な言葉を出させた。マハヴィルとて、それは今も同じだろう。覆い隠してしまいたい過去に、今も苛まれている。 「敵味方の差でしかない、か。……ふふ、野放しの烏相手に少々行儀が良過ぎるんじゃないのか?」 『……あまり賢い返答とは思えんな』 今しがた吐き捨てた自身の言葉は、それ以上ないほどに自身の立ち位置の在り方を示していた。レイヴンには簡単に降伏する選択肢などは元来与えられるはずもない。穢れ切った烏が戦場から降りるのは、運悪くしに損ねた時か、死ぬ時だけだ。 「勝ち戦で吠えるなよ。お前は私とは違う。お前はお前の仕事を全うしろ。それだけで済む話だ。……それに、殺したいんだろう? 街ひとつ潰したレイヴンを?」 『死に際に吠えるなよ、貴様。幸運を──』 最後に明確な殺意を込めた言葉を残し、マハヴィルは一方的に無線を終了した。 最後の自身の言葉は、明らかな挑発の意を内包したものだった。私自身にとっても、彼自身にとってもその先で迎える互いの死を欲している。 ──過去に影を囚われるのはゴメンだ。 真正面で対峙していた敵性AC──かつてミラージュ純正部品で構成されていた機体はクレスト社のそれに置き換わっているが、変わらず軽量二脚のコンセプトを引き継いでいる──、クリシュナが右腕兵装の短機関砲を弾き上げ、砲口を煌かせる。瞬時に反応してブースタを噴射し、ゼクトラの機体を左舷下方へ急速降下させる。飛来した砲弾によって引き裂かれた右腕肩部の装甲損耗状態を、ディスプレイに更新された機体情報で確信しながら、廃墟と化した制圧済みの断崖都市は渓谷部を降りていく。 『閉鎖環境下では充分な機動戦闘を展開できません。広域拡視界での作戦遂行を推奨します』 「それは相手も同じだ。これからの戦闘行為を記録しておけ。次からの戦術支援に役立つだろう」 『──了解。まもなく、峡谷最下層部渓流域へ到着します』 ブースタを連続噴射してホヴァリング状態を保ち、水上へ降り立つ。上空を見上げると、下方への射撃体勢を取っていたクリシュナが再度、獲物の短機関砲から銃火を撒き散らした。 狭い峡谷の断崖部に砲弾が着弾し、抉り取られた大小無数の断崖の石片が頭上から降り注ぐ。周囲一帯で巨大な水柱が発生し、有視界を完全に遮断された。 クリシュナの機体から発生する駆動音と噴射炎の燃焼音をセンサーが正確に捉える。有視界を埋め尽くす水柱と石片から意識を引き剥がし、レーダーに目を向けた。 「闇討ち──後背か」 レーダーで機体後方から急速接近する敵機の機影を捕捉してゼクトラを急速転回させた瞬間、ブースタを最大推力で吹かしたクリシュナが有視界内前方の水柱を粉砕しながら突進してきた。既にレーザーブレードはその刀身を現出させており、それに相対するように左腕に装着していた射突型物理ブレードを構える。 双方の間合いが深く重なり合い、それが致命的になる直前、私は左舷の岩壁に向けて物理ブレードの引き金を引いた。 大きく砕かれた岩石が天然の凶弾となって前方に吹き荒び、軽量二脚機の機体に正面から衝突する。重質量の岩石によって機体制御を著しく乱したクリシュナの推力が減衰し、それを肉眼で目視すると共に突進を仕掛けた。 クリシュナの頭部を鷲掴み、フットペダルを踏み込んでブースタを最大推力で吹かす。そのまま水上を疾走し、クリシュナの機体を岩壁へ強引に叩きつけた。大気と水面を震わせる轟音が響き、衝撃で岩盤がさらに落下してくる。頭部を掴んだその密着状態から自身の右腕兵装である短機関砲の砲口をコア部にほぼ押し付けた状態で引き金を絞った。瞬間的に高密度の火力を受けたクリシュナのコア部装甲がいとも簡単にはがれとび、内部の駆動系機構が晒しだされる。 『敵性AC機体、機体磨耗率上昇。沈黙までまもなくです』 黙っていろ。蛇足のような報告を付け加えてきた戦術支援AIに胸中で悪態をつく。その瞬間、めまぐるしく明滅していたクリシュナのカメラアイから明確な殺意を感じ、それは自身の背筋に悪寒を走らせた。 クリシュナと岩壁の間からオーバード・ブースト特有の色彩を宿した噴射炎が溢れ出し、集中していた射撃精度が急激に乱れる。 ──押し戻される。 そう判断し次の機動を取るよりも早く、クリシュナは最大推力のオーバード・ブーストを使ってゼクトラの機体を押し戻した。フットペダルを細かく踏み込んでブースタの出力方向を微調整し、向かい後方の岩壁に叩きつけられるのを回避したが、クリシュナはゼクトラの機体を巻き込んで渓流息を下流へ向かって疾走し始めた。 「くそ……」 『敵性AC、最大推力で戦闘機動を展開しています。危険です、離脱してください』 「すこし黙っていろ──」 メインディスプレイに表記される警告メッセージを無視してブースタを噴射し、零距離で膠着状態にあった機体姿勢を強引に立て直した。不意にクリシュナとの間に空白が生まれ、ほぼ同時に短機関砲で牽制射撃を見舞う。 『南東に動体反応多数、状況判断によりクレスト社の増援勢力と断定』 時間的猶予は最早残されていない。回避機動を取りながら有視界に視線を巡らせる。かなり下流まで流されてきたのか、周囲は広域の河川地帯へ入っていた。 終わりが近い──。互いに弧を描くように周回機動を取りながら接近し、火器管制システムを左背部兵装のマイクロミサイルへ転換する。ミサイルコンテナを展開し、激しく流動する有視界の中でロックサイトにクリシュナの機体を捕捉、射出準備を完結し操縦把付随の射出スイッチを押し込んだ。 マイクロミサイルが同時射出され、追跡機動の展開の確認と共にフットペダルを強く踏み込む、ブースタを連続噴射してマイクロミサイルの弾幕の背後に追随し、間合いを自ら詰める。 マイクロミサイルの弾頭が迎撃射撃によって誘爆し、大きな爆炎が前方一帯を埋め尽くす。その鋭すぎる光源に目を細めながら、しかし、そこへ突っ込んだ。 爆炎の向こう側から精度を欠いた砲弾の弾幕がゼクトラを出迎え、それらを外部装甲で強引に受け止める。左腕兵装の射突型ブレードに意識を傾注し、寸秒後、その判断が最適でなかったことに、レーダーに現れた敵性熱源を見咎めて気づいた。 「垂直ミサイル──」 戦術支援AIが指示を出す間も、また自身の明確な思考も待たずに短機関砲の砲弾による弾幕を上空へ向けて張った。推力バランスが欠け、上空至近距離からの爆圧によって突進攻撃の要諦が崩れた所で、それをこそ狙っていたといわんばかりにクリシュナが爆炎の壁の向こう側から赤々しい炎を機体にまといながら出現する。 ここでの後退に勝機はないだろう。 ──次の一手が要だ ノイズが走る有視界内で火器管制システムがマイクロミサイルに固定維持されていることを確認し、ブースタ各部を吹かしてゼクトラの機体を緊急展開させる。背部ミサイルコンテナをその勢いに乗せて機体から切り離した。準備射撃を行っていたクリシュナの得物の砲弾がコンテナに次々と着弾し、その直後、互いに至近距離から爆発の衝撃を受けた。機体装甲が容赦なく吹き飛び、メインディスプレイに出力される情報が全て警告メッセージで埋め尽くされる。それを見てなお、私はその先を見据えた。 「オーバード・ブースト起動──」 機体後背部の加速機構が展開し、後方ノズルから高出力の噴射炎が吐き出される。ゼクトラの機体速度を跳ね上げ、爆炎の中へ進ませた。同じタイミングをもって再び現れたクリシュナの機体を捕捉する。 私は、口許を歪めていた。結局逃れ得ない現実が、此処にある。 ──マハヴィル、お前も同じだろう? クリシュナはレーザーブレードの刀身を現出させ、自身は射突型ブレードに意識を傾注する。灼けつく意識が交錯し、私は最後の殺意を撃ち込んだ。 コクピットに吹き込んできた高温の熱風が肌を撫で、続いて投げ出されるような衝撃が全身に襲い掛かってきた。オーバード・ブースト解除後の残余推力で浅瀬を数十メートル滑走し、停止間際に機体を転回させる。 突き抜けてきたばかりの爆炎が風に流され、黒煙と共に下流域へと流されていく。数十秒を待ってようやく周囲一帯に元風景が戻り、爆炎が渦巻いていたその先に、機能停止したクリシュナの機体を見つけた。 『機体磨耗率62%、左肩部外部装甲破損。第一戦闘態勢での機体稼働率は34%です』 戦術支援AIの機体報告を耳に入れながら、数十メートル先でこちらに背を向けているクリシュナの機体を拡大映像で映し出した。コア左下部が大きく欠損し、吹き飛んでいる。コクピットへの直撃はならなかったようだが、搭乗者への致命傷は確実だろう。 終わった、か── 『敵性ACより通信要請。回線、開きます』 耳障りなノイズが静けさを取り戻したコクピットを満たし、しばらくして、 『さすがは"一つ手の射手"……。ミラージュが、お前だけに懸賞金を、賭けた意味が、わかる……』 「過去の死人に賞金をつけるとは、ミラージュもよくよく暇を持て余しているようだな」 『阿呆……。お前の過去は、これからもお前も追い詰めるぞ。火遊びも程々にしておけ。──"グレイエンバー"の、最後の火が潰えるまで、ミラージュは諦めないだろう……』 「それでも、私は企業のもとには下らんさ……」 それから無線が一時途絶え、開放状態の回線からマハヴィルの咳き込む声だけが漏れる。間違いなく吐血している。致命傷に間違いない── 「自由にしろ。此処が、私の潮時だ。影を捕まえられるまで……生かされて、生きていけ──、アザミ……」 そして、無線は今度こそ途絶えた。 『友軍AC、ホワイトサンからの通信要請です』 コンソールを叩いて回線を開く。 『大丈夫か、──ファイーナ?』 「止めてくれ。……さすがに、少し堪えた。そちらは?」 『敵ACは殲滅した。だが、増援部隊までの相手はさすがにできん。依頼主から帰還指示が出ている。帰投するぞ』 ノウラの気の抜けたその言葉に首を傾げ、メインディスプレイの隅に表記された時刻に視線を向けた。時刻は既に夕刻過ぎ、一九四五を指している。なるほど── 「報酬は前金のみか?」 『クレスト社専属ACの撃破に対して、依頼主から特別報酬が提示された。それで充分釣りが来る」 「そうじゃない。今回のミッションに興味があったんじゃないのか?」 『今から出向いて、何ができるという訳でもあるまい。それに、今回の作戦には"サンドゲイル"が戦力を派遣しているらしい』 「サンドゲイルが……?」 サンドゲイルという名には多少の聞き覚えがあった。何でも特定の企業勢力に所属しないで依頼をこなす、レイヴンを主力として扱う遊撃傭兵部隊だとか。レイヴンを主戦力とする独立勢力はそれこそ数えるのも億劫になるほど存在するが、サンドゲイルは放っといても耳に入ってくるほどには名を知られている。 『奴さんに古い連れがいる。そいつにでも聞くさ。私達は黙って帰ってバーボン片手に一服してればいい』 「……本当に考古学者か、あんた?」 『それも生きようだよ、アザミ。似たような話は沢山転がってる。身体は一つしかないんだ』 「……了解。ゼクトラ、これより現作戦領域を離脱、帰投する」 ゼクトラの機体を巡航高度まで上昇させ、巡航用オーバード・ブーストを起動。 五年の付き合いを経たノウラ。分かっている事は、彼女がレイヴンと同時に一人の考古学者である事と、自身を今、必要してくれていること。 他の事はまだ、よく分からない。彼女は、ノウラは過去を溯ろうとしている。私は過去から遠ざかろうとしている。 生かされて、生きていけ──。 「そんなコト、関係ない──」 脳裏に木霊するその考えを振り払い、陽がほとんど落ちた夜空を見据える。ベリーショートの白髪の前髪をなんとなく摘み、それから軽くかき梳く。 今はただ、彼女の為だけに戦う── それが、今の私の意志。 第二話 終 →Next… 第三話 コメントフォーム 名前 コメント
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Corporation コーポレーション Haas-Bioroid (ハース=バイオロイド) #61 - 《Architect (アーキテクト)》 #62 - 《Peak Efficiency (最大効率)》 Jinteki (ジンテキ) #63 - 《Labyrinthine Servers (迷宮サーバー)》 #64 - 《Ashigaru (アシガル)》 #65 - 《Mamba (マンバ)》 NBN (エヌ・ビー・エヌ) #66 - 《Reversed Accounts (口座の没収)》 #67 - 《Universal Connectivity Fee (ユニバーサルコネクティビティフィー)》 Weyland Consortium (ウェイランド・コンソーシアム) #68 - 《Blue Sun Powering the Future (ブルーサン 未来への供給)》 #69 - 《Changeling (チェンジリング)》 #70 - 《Reuse (再利用)》 Neutral (中立) #71 - 《Hades Fragment (ハデスの断片)》 #72 - 《Docklands Crackdown (波止場の手入れ)》 Runner (ランナー) Anarch (アナーク) #73 - 《Inject (注入)》 #74 - 《Origami (オリガミ)》 #75 - 《Fester (化膿)》 Criminal (クリミナル) #76 - 《Autoscripter (自動筆記機)》 #77 - 《Switchblade (スイッチブレード)》 Shaper (シェイパー) #78 - 《Trade-In (下取り)》 #79 - 《Astrolabe (アストロレイブ)》 Neutral (中立) #80 - 《Angel Arena (エンジェルアリーナ)》 Spin Cycle (回転サイクル) エキスパンションリストへ
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debugしたい時のつなぎ方 環境 Android SDK r8,r9 Android NDK r5 ■USB接続(windows) driver download Android SDKが入ったWindowsで[スタート]-[Android SDK Tools]-[SDK Manager]を選択。 『Android SDK and AVD Manager』が起動したら、左のListから『Available packages』を選択。 右側にリストが表示されるのでtreeをたどって行き、[Third party Add-ons]-[Google Inc. add-ons (dl-ssl.google.com)]-[Google Usb Driver package, revision 4]にcheckを入れて、『Install Selected』を押下。 『Accept』を選んで、『Install』押下。 左のリストから『Installed packages』を選択してリストに『Google Usb Driver package, revision 4』が追加されてることを確認。 Android SDKのinstall dirに『google-usb_driver』ってdirができる。 e.g.) デフォなら C \Program Files\Android\android-sdk-windows\google-usb_driver driver install 上記dirが確認できたらAndroid端末を接続。 PnPウィザードが立ち上がるので、以下のようにドライバを指定。 ※WindowsXPの場合 デフォルトのInstall先なら『C \Program Files\Android\android-sdk-windows\google-usb_driver』を指定。 接続 ■USB接続(Linux) http //developer.android.com/intl/ja/guide/developing/device.html ■無線LAN まず、以下の環境を満たすこと。 上記のUSBドライバinstallを実施済み 無線LANでネットワークに接続済み 無線LAN接続で割り振られてるIP addressを確認しておくこと。 IP addressは[設定]-[無線とネットワーク]-[Wi-Fi設定]を表示して、出てきた任意のWi-Fiネットワークをタップすることで表示される。 以後の設定では無線LANで『192.168.1.111』が割り振られてるとして進めて行く。 環境を用意したら、 ①PCにAndroid端末を接続。USB機器として認識されることを確認。 端末起動前にUSB接続してるとおかしくなることがあるっぽぃ。確実に起動してから接続することをおすすめする。 正しく接続されていれば、デバイスマネージャで上図のように表示される。 ②コマンドプロンプトを起動して以下のコマンドを実施。 adb devices * daemon not running. starting it now on port 5037 ** daemon started successfully *List of devices attached0123456789ABCDEF device tcpip接続時に使用する任意のportを設定。今回はとりあえず『5555』を使う。 adb -d tcpip 5555 restarting in TCP mode port 5555 先に調べておいたAndroid端末のIP addressにさっき指定したport番号をくっつけて以下のように記述。 adb connect 192.168.1.111 5555 connected to 192.168.1.111 5555 adb devices List of devices attached192.168.1.111 5555 device ココまで表示されたら adb shell ll -la とか打つ。すると端末のroot dirのfile一覧が表示されるはず。 drwxrwx--- system cache 2011-03-07 17 56 cachedr-x------ root root 2011-03-08 16 43 configlrwxrwxrwx root root 2011-03-08 16 43 d - /sys/kernel/debugdrwxrwx--x system system 2011-02-14 15 22 data-rwxr--r-- root root 118 2010-03-13 12 47 default.propdrwxr-xr-x root root 2011-03-08 16 43 devlrwxrwxrwx root root 2011-03-08 16 43 etc - /system/etc-rwxr--r-- root root 103256 2010-10-29 16 59 init-rwxr--r-- root root 16856 2010-10-14 11 01 init.rc-rwxr--r-- root root 974 2010-10-14 11 00 inshaldrwxrwxrwx system system 2031-01-03 15 04 nanddr-xr-xr-x root root 1970-01-01 09 00 procdrwxr-xr-x root root 2010-07-26 18 33 sbind--------- system system 2011-03-08 16 43 sdcarddrwxrwxrwt root root 2011-03-08 16 43 sqlite_stmt_journalsdrwxr-xr-x root root 1970-01-01 09 00 sysdrwxrwxrwx root root 2010-10-29 20 27 systemd--------- system system 2011-03-08 16 43 udisk あとはadbコマンドを利用して端末を操作可能となる。 ついでですが、こんなバッチとか作っとくと良いかな? @echo offif "%1" == "" (@echo NG 引数が足りない) else (adb devicesadb -d tcpip 5555ping localhost -n 5 nuladb connect 192.168.1.%1 5555adb devices) 任意の名前で保存。拡張子は当然『bat』。 見たら分かるが、8行目でconnectしてる。このとき引数でもらったIP Addressを使用。セグメントが異なる場合はイイ感じに書き換える必要がある。 7行目でping飛ばしてんのはwait代わり。連続して実行させるとconnectで失敗する。pingは1sec毎に実行されるので、都合5secのwaitになる。こんなに要らんと思うが、一応安全にね。 8行目を |adb connect 192.168.1.%1 5555|→|adb connect %1 5555|ってしちゃうのが良いかな? とりあえず、こんな感じでbat組んだら少し楽になると思う。 ■有線LAN 更新日: 2011年03月23日 (水) 10時27分43秒 名前 コメント すべてのコメントを見る
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⑨*⑩*⑪ 変わらず抑揚を欠いた言葉。しかし、ガロはその口調の裏側に僅かな焦りの介在を感じ取っていた。 統合制御体がファントムヘイズとの近接対峙を前に、機体制御態勢の速やかな移行を推奨する。 「知らんだろうな。貴様が世界の裏側でのんびりとしている間に、この地上世界は大きく変容した──」 意思判断し、左腕部に携えた適合兵装を持ち上げる。それに合わせてファントムヘイズも狙撃銃の銃口を動かした。長鑓を思わせる長大なひとつの銃身を基軸とし、レールシステムの搭載によって多種兵装の搭載を可能にした実働試験機体:マルシアの為のみに製造された大型の適合兵装。 『貴様に見せてやる。この五年間、世界がどう動いたのかをな──』 その言葉を最後とし、一方的に通信回線を解除。 統合制御体に指示し、機体制御態勢の速やかな移行を指示する。 その間際、再びハルフテルが最後に言い残した言葉が脳裏をよぎった。 ──悪ければ、それはアンタの速やかな死を意味している その言葉通りだった。機体制御システムと搭乗者を物理接続する事によって、従来の機動兵器とは一線を画す戦闘能力を発揮するネクスト兵器は、本来AMS適性を持つ搭乗者一人のみで制御するものではない。 だが、それこそがエンシェントワークスが推進するネクスト研究の本質だった。 ──生体CPUを一体切り刻んだ 狂っている。そうでなければ辿りつけない場所を、彼らは目指しているのだ。 旧世代ですら成し得なかった境地へと、ネクスト兵器を持って行こうとしている。 モラルも既存の理念も何もかもを置き去りにして、彼らは生み出そうとしている。 ──彼らが望む、真のネクスト兵器を ──何故、志願したか? ──戦場から降りられなくなった兵士に残された道だったから? ──その礎になることが望みだったのか? ──私は ──戦場で生きる事でしか、自分を認められないのだ。 ──この計画の末に、きっとその終わりが待っているはず。 一瞬瞼を下した後、迷いなくコンソールキーを叩いた。 『AMS接続制御態勢、第一種戦闘態勢へ移行します──』 ──理性が灼かれ、溶け出した。自らの願いを戦場で達する為に、私は彼女と一体となった。 溶けゆく意識の中、私の外側で誰かが獣のような咆哮を上げた。 それは、私だったかもしれない。もしかしたら、一体となった"彼女"だったかもしれない── 行こう── AM09;33── * AM08;50── 街が灼け堕ちていくその光景は、決して気分の良いものではない。 住み慣れた古郷を幾度も失ってきた私には、それが耐えられないのだ── ──止められない ヴァネッサの脳裏にそんな焦燥感が過り始めたのは、興行区画で戦線確立の為の防衛戦闘に武力介入し始めてから一時間ほどが過ぎた頃だった。 無尽蔵とも言える兵力差で迫りくる旧世代兵器群の侵行は大きな波となって第三波、第四波ととめどなく続き、途中からヴァネッサはそれを数える事を止めていた。旧世代兵器群の進撃を辛うじて遅らせる事しかできず、反転攻撃の為の戦線確立などは望むべくもない。そして、ヴァネッサの焦りを一層増長させていたのは前方から迫りくる旧世代兵器群の潮に対し、後方でまだ避難誘導により弾雨の中を搔い潜りながら地下シェルターへと一心不乱に逃げ往く一般市民の群だった。 今回の騒乱自体が旧世代兵器群による一方的な奇襲攻撃に端を発していた為、エデンⅣ全域に戦火が拡大するまでに避難シェルターへ退避できた一般市民はおそらく、全体の三割にも満たないはずだ。辛うじて退避に成功したのは主権企業をはじめとする各政財界の官僚や重鎮達のみで、危機管理体制などが行き渡っていない一般市民レベルなどは出動軍の避難誘導を頼って徒歩でシェルターまで向かうしかない。 その一般市民の誘導数が膨大な数に上って後方防衛ラインで衝突し合い、それが返って戦線確立の妨げとなりつつあるのが、現在の戦況の致命的な箇所だった。 興行区画は二十四時間体制で昼夜関係なく栄えるエデンⅣの一大都市区画であり、その集約人数の割合は他区画と比較すべくもない。それが仇となったのだ。 戦線確立のための後退戦闘もまともに行えず、いたずらに友軍戦力のみがじわじわと消耗していく。 現にたった今、興行区画の防衛戦闘に当たっていた友軍AC部隊のうちの一機が旧世代兵器による攻撃で決定打を受け、前線から急速離脱していった。 「また一機やられた……! 後方避難誘導はまだ終わらないのっ?」 『急くな、ヴァネッサ──。増援部隊の到着まで堪えるんだ』 広域防衛区画からのその増援部隊も、後方の混乱に邪魔されて当該戦域への到着がいつになるかは分からない。戦況は確実に悪化修正されているといえる。 決定的な打開策が見当たらない今、最悪の可能性だけが頭の中で反芻される。 「──! 危ないっ」 前衛に展開し、正面の敵の攻撃に囚われていた友軍機の右舷に別の旧世代兵器が姿を現し、ヴァネッサはその敵性動体に向けて右腕兵装であるグレネードライフルの榴弾を撃ち込んだ。 「突出してはダメ、早く下がって!」 『す、すまん──。だが、これではキリがないぞっ……』 搭乗機体である重量逆脚型の機体をラピッドタイドと同一ライン上へ下げながら、グローバルコーテックス帰属のそのレイヴンは、他の例と同じように焦燥感を滲ませた言葉を吐く。 「増援部隊がすぐに到着する。それまでこの防衛ラインを維持するのよ」 統合司令部から通信技官として、戦術支援に当たってくれているリサの言葉をそのまま繰り返す。だが、実際にはその間にも確実に友軍戦力は消耗され続けており、一方的なダメージレースとなる展開は避けられない。 確実に忍び寄る死の影に、誰もがその戦域から遠のきたかった。 しかし、ヴァネッサは震える奥歯をぎりっと噛みしめて抑え込み、操縦把を握り込み直す。無尽蔵に思える敵性兵力にも必ず限界がある。そこまで耐え切らなければこの騒乱を生きて、生き延びることは難しいだろう。 同一ライン上に展開する友軍機と連携して前方から迫り来る旧世代兵器群の侵攻を何とか押しとどめ、その間にも地上に展開していた通常戦力部隊が戦火の煽りを受けて吹き飛ぶ。 瓦礫片と共に飛散した肉片交じりの血雨がラピッドタイドの外部装甲を叩き、ヴァネッサはその光景にわずかに目を細めた。 左腕部と背部の多砲身式回転機関砲で高密度の弾幕を張っていたが左腕部機関砲の残弾数が尽きた。補給部隊の作業用MTが予備弾倉を抱えてラピッドタイドの機体に取りつき、砲身と機体付随のマガジンラックにそれぞれ弾倉を補給する。 『此方補給機、装填を完了した──!』 「助かった、サンキュー──」 その直後、短い悲鳴と共に作業用MTからの無線が途絶える。機体のすぐ傍で起こった爆発を搭載センサー群が捉えたことから、MT機が攻撃の余波を受けて爆散したのだと気づいた。 「ちくしょうっ……!」 作業用MTを一瞬で吹き飛ばしたと思しき旧世代兵器の四脚型パルヴァライザーを捕捉、背部兵装のリニアキャノンを展開、即座にトリガーを絞る。強化推力を与えられた徹甲弾がパルヴァライザーの頭部を過たず消し飛ばす。が、機能停止したその残骸を踏み越えて後方から旧世代兵器群が押し寄せる。 『止むを得ん、防衛ラインを後退するぞ』 「それじゃあ一般市民に被害が及ぶ可能性があるわ……」 『では他にどうするというのだ。我々が此処で撃破されては、護れるものも失ってしまうんだぞっ』 当該戦域のAC戦力の中で便宜上指揮機体のような役割を担っていたコーテックスのレイヴンが、若干の冷静さを欠いた声で言う。しかし、その言葉は戦場に臨む者としての説得力に満ちた声であり、ヴァネッサも異議を申し立てはしたものの同種の人間である事に変わりはなく、それ以上の追及はできなかった。 今此処で、戦力消耗を少しでも遅らせなければ、増援部隊の到着まで防衛ラインをすら守り切ることはできない。 『此方フロント、此れより防衛ラインを後退する──』 指示に従い、友軍機同士で後退支援を行いながら幹線道路上を移動、インターチェンジ付近まで後退した時、其処に駐留していた地上後衛部隊と接触。 指揮機のレイヴンが外部拡声器を用いて、インターチェンジで防衛ラインを構築していた一般部隊に後退を促す。 『お前達も早く下がれ、此処も突破されるぞ──』 その逼迫した声に押されて一般部隊が下がり始めるのもそこそこに、幹線道路上に構築された重バリケードを破壊して友軍機が進入、その時ウエストインターチェンジ方面から装甲輸送車の部隊が此方へ向かってきた。 『逃げ遅れか、急げ──!』 その声が聞こえたのかどうかは分からないが、装甲輸送車はインターチェンジのカーブへ速度を緩めず曲がり込む──しかし、破壊した重バリケードの隙間を縫って飛び込んできた榴弾の弾幕が路上に着弾し、その衝撃波が前衛の装甲輸送車を容易く吹き飛ばした。鋼鉄の匡体が横倒しになって路上を滑走し、その事態に巻き込まれた後続車両が次々と玉突き状に衝突を起こす。 「追いつかれた──」 今しがた後退してきた進入口に早くも追いついてきた旧世代兵器の侵攻部隊が現れ、インターチェンジへ向けて迫撃戦術を展開し始める。友軍AC機が一斉に迎撃弾幕を張るが、それをすり抜けた榴弾群が重バリケードからインターチェンジ内へ降り注ぐ。 走行不能になった輸送車から降り、徒歩での避難を始めていた一般市民と兵士達が榴弾の爆発に巻き込まれて爆煙の中に消え去り、友軍機もまた榴弾による損傷を負う。 「私達が防ぐから、早く市民の避難掩護をお願い!」 悲鳴と断末魔が行き交う地上の様子を視界の隅に収め、ヴァネッサはラピッドタイドの機体を重バリケードの突破口前に移動させた。侵攻部隊の軽い弾幕を分厚い装甲で弾いていなし、御返しとばかりに多砲身式回転機関砲による一斉掃射を浴びせかける。 その文字通り捨て身を賭したヴァネッサの行動に呼応した友軍機達が、重バリケードの上から応対射撃を取り始める。バリケードから一歩突出したラピッドタイドに旧世代兵器群の攻撃が集中し、それを脇から友軍機達が叩き潰す。重戦車であるが故の分厚い外部装甲が幸いし、ラピッドタイドは正面からの被弾にも何とか耐える事が出来た。 『市民の避難距離を稼いだ、下がるぞ──』 コーテックスのレイヴンが指示し、先行して周囲の友軍AC機を下がらせる。そして、最後まで最前衛に残っていたヴァネッサに無線を遣し、 『レイヴン、スイッチだ──』 ヴァネッサの後退戦闘を支援すべく指揮機のレイヴンが代わって前衛へ突出し──その交差の隙を、運悪く旧世代兵器群に突かれてしまった。 その一瞬の隙の間に飛来した徹甲弾が指揮AC機の頭部を粉砕し、その破砕片がラピッドタイドの装甲に降り注ぐ。機体制御を著しく搔き乱され、そこへさらに数発の砲弾が食いついて指揮機の左腕部その他、外部装甲を吹き飛ばしていく。 『くそ──君は早くいけ!』 「でも、貴方はっ──?」 応対姿勢を継続しながら後退するラピッドタイドの前に立つレイヴンは、致命的な被弾を自ら甘んじて受け止め、両背部に搭載した連装型ミサイルコンテナを展開する。 『俺はコーテックスのレイヴンだ。与えられた任務は全うする──幸運を、レイヴン』 ──その言外に含まれた意図にヴァネッサは口許を手で覆った。 旧世代兵器群の追撃がさらに指揮ACの機体に致命打を与え、後退推力をすら失ったレイヴンは至近距離に迫った旧世代兵器群に向けて背部コンテナから大型ミサイルを連続射出した。 ──インターチェンジを含む周囲施設を大きく揺るがす爆炎が前方幹線道路を呑み込み、巨大な噴煙が立ち上る。決死の応対攻撃を行った指揮ACの機体もその爆発に呑み込まれ、その姿はラピッドタイドからは一切確認できない。 『──今のうちに早く下がれ、ヴァネッサ』 リサのその冷静さを欠かない指示にヴァネッサはようやく気を取り戻し、フットペダルを踏み込んでラピッドタイドをインターチェンジから幹線道路後方へ進ませる。 ラピッドタイドの後退を待っていた友軍機がそれに合わせて応対機動を再開するも、その情報を搭載センサー群で捕捉したのだろう、赤々しく燃え上がる爆炎の向こう側から旧世代兵器群が一斉に突出を展開してくる。 「そんな──」 旧世代兵器群は各々の機体を炎に包まれながらも、それには一切構わず追撃戦闘を継続。実弾兵器群による弾幕がラピッドタイドの外部装甲の上を跳ねまわり、徐々に機体損耗率が上昇していくのを戦術支援AIが無機質なヴォイスで報告していく。 やっぱり、止められない──けれど── 一切の怖れを知らず他の感情をも持ち合わせていない旧世代兵器群は、正確な数値判断から導き出される合理的行動に従い、味方機がその場に崩れ落ちようと構わずそれらを踏み越えて侵攻してくる。そんな容赦のない敵を相手に、絶対的に不利な状況下では長く持つはずもなかった。 だが、其処で継続戦闘を放棄する事だけは、ヴァネッサの猛る矜持が一切許そうとしなかった。 ──10年前、先生もそうやって私達を護ってくれた かつての前例があり──その彼女が事実として遣り遂せてくれた。その実力が伴っていない中で自ら速やかな死を所望するのは愚行以外の何物でもない。しかし、それが間違っているとは思うな── 自ら師と仰ぐ彼女は、ヴァネッサにそう諭した。 ふと、ヴァネッサは行き着いた── 「そっか。此処が、私の──」 私の、死線か── 戦場の一線に在り続けるのなら、何れ誰もが直面する時。少年兵の時分だった頃から、そんなモノには慣れ親しんできた。あの頃は恐ろしくすらなかった。護るものが何もなく、ただ自身が憎むモノ全てを灰に変えてしまうだけでよかった。 護るモノが在ると、人は恐れを抱くのだ。 此処は、先生のおかげで生まれ変わった私の、初めての死線── 後方を先行後退する友軍機から届く弾幕がラピッドタイドの周囲を飛び過ぎ、旧世代兵器群の前衛機を破壊すると共にラピッドタイドの後退を同時支援する。 『ぐあ──……!』 その悲鳴と共に友軍機が路上へ崩壊し、その傍をラピッドタイドで通り過ぎる。両脚部と片腕を粉砕されて移動能力を失った友軍機を落下爆雷群が襲い、外部装甲を焦がす。 旧世代兵器群の侵攻速度が確実に増し、それに合わせて友軍部隊も次々と撃破されていく。インターチェンジを出てから数分を待たず、その頃に後退戦闘を継続していたのはラピッドタイドを含めて三機のAC機のみとなっていた。 搭載兵装の弾薬消耗率が30%に近づき、応対戦闘に用いていた主兵装を機関砲群から背部兵装のリニアキャノンへ換装。一撃必殺の砲弾が狙い通り前衛のパルヴァライザーを撃破、しかし後方から瞬く間にスイッチしてきた二機のパルヴァライザーが背部に搭載したコンテナから地対地ミサイルを垂直発射し、計十二基から成る弾頭がラピッドタイドの頭上を越えて後方へ飛んで行く。 一拍後、後方から轟いた崩壊音を搭載センサー群が捕捉、後方視界用のサブカメラから転送されてきた映像をメインディスプレイに映し出した。 後退進路の高架幹線道路が崩落し、そこから奈落の底の闇がのぞいていた。其処にいた二機のACは辛うじて回避機動をとったらしいが、致命的な損壊を受けて分断された幹線道路の先で機能を停止していた。 「分断された──」 崩落距離は目測で約55メートル──爆発の衝撃派に巻き込まれて崩落距離が伸びたのだろう。旧世代兵器群が前方百数十メートルに迫り、ヴァネッサはブースタ用フットペダルに足をかけようとし、そこで踏み込むのを躊躇した。 『増援部隊が間もなく到着する、耐えろヴァネッサ──!』 リサが珍しく感情を表出させた口調で言う。統合司令部のヴァネッサから転送されてくる広域索敵レーダーに、自機後方から複数の動体反応が接近してきていた。 操縦把を握り込みなおし、崩落した幹線道路の断崖ギリギリまでラピッドタイドの機体を近づける。 重戦車型機体にも基本、強化推力用のブースタ機構は搭載されている。しかし、それらは緊急機動用の推力機能として扱われる事が多い。その為長距離移動用や巡航用機能としての調整は成されておらず、極めて短距離でしかブースタ機構は使用できない場合がほとんどである。 ラピッドタイドもその例に漏れず、実働試験の際にブースタ機構を用いた時の最大航続距離は僅かに直線距離50メートル程度であった。 ギリギリだが、行けない距離ではないかもしれない。後退飛行中に応対行動を行いながらでないと渡り切れる可能性は低く、しかし、射撃反動や被弾による推力低下を鑑みると、ブースタ機構を用いる選択肢はどうにも無理があった。 リニアキャノンによる精密な遠距離砲撃で一体一体を確実に撃破──計5,6機を前方に沈め、増援部隊の到着が残り約二分に迫っていた時だった。 ──旧世代兵器群の攻撃が不意に止み、やがて奴らの群列が左右に別れて中央から一機の機影が姿を現した。 軽量二脚型を模り、両腕部マニピュレーターに既存の実弾型機関砲とレーザーブレードと思しき発振機構を備えたパルヴァライザー──。 戦術支援AIに詳細解析を進行させるが、データバンクから当該情報は検出されなかった。 「まさか、新型機──。此処でそんな隠し玉を出してくるなんて……」 取り捲きの旧世代兵器群は一切の進撃行動を停止しどうやら待機状態へと移行しているようであった。どうやら、新型機と思しきパルヴァライザーの戦術展開を邪魔しないためであると、ヴァネッサは推測した。 相手から先制攻撃を行う予備動作は見受けられない。その分増援部隊の到着までの時間稼ぎにはなるだろうが、その事実を旧世代兵器群が捕捉していないはずはない。 その事に疑問を呈した瞬間の事だった。まるで空間を切り貼りするかのようなブースタ推力でパルヴァライザーが正面から突進を仕掛け、ヴァネッサは一拍遅れて応対射撃を取った。 左腕部の短機関砲で牽制の意味合いを含んだ弾幕を張り、それに紛れて精密に狙いすましたリニアキャノンの砲弾を撃ち放つ。強化推力を得た砲弾は狙った頭部へと吸い込まれていくが着弾の刹那、パルヴァライザーは圧倒的な機動力で事も投げに強化推力の砲弾を回避して見せた。 (なんて早さなの──他とはまるで違う!) それはこれまで相手にしてきたパルヴァライザーとは全く性質を異にしていると、ヴァネッサは直感した。これまでの敵は圧倒的な兵力差で迫ってきはしたものの、いずれもが突出性のない画一的な機能であった為になんとか数機の友軍ACのみで対応する事が出来た。 だが、これは違う──! これまでのパルヴァライザーとは違う、そいつだけ全く桁違いの高性能な戦術判断AIを搭載しているとしか思えないほどの戦術展開能力である。 制圧射撃を旨とする高密度火力で圧倒しているつもりが、それを最大限の機動展開で回避し、残りは外部装甲のみで弾いていなされる。ものの数秒で距離を目前にまで詰められ、背部から展開した大型グレネードキャノンの砲口がラピッドタイドを捉えた。 重装甲による高度な防弾能力を持つラピッドタイドとはいえ、度重なる被弾で消耗した外部装甲ではどこまでその攻撃を無力化できるか分からない。もし当たり所が悪ければ── そんな可能性が脳裏をよぎった時、こちらを完全に捕捉したパルヴァライザーが背部大型グレネードキャノンから榴弾を射出した。 「くそ──!」 まっ直ぐに飛来してくる榴弾の直撃は避けられないと直感的に悟ったヴァネッサだった──が、外部装甲に衝突するその刹那、後方上空から不意に一筋の光線が榴弾を巻き込んで眼前の幹線道路上へ突き刺さった。 圧倒的熱量で焼かれた榴弾が誘爆し、わずかな破片が軽くラピッドタイドの外部装甲を叩く。 『増援部隊が到着したぞ──!』 続けて、 『遅くなってすまない、ヴァネッサ──』 リサとは異なるその声に驚いて言葉を発しようとした時、ひとつの機影が頭上を通り越してラピッドタイドとパルヴァライザーの間へ降り立つ。──クレスト社純製パーツで構成された純白の軽量二脚機体、それはたった数時間前にアリーナ予備大会決勝で対戦した知己のものだった。 「ジェリー……!」 『戦況が芳しくないって聞いてね。統合司令部に直接掛け合って許可してもらったんだ』 「──怪我は大丈夫なの?」 その気づかいにジェリーは搭乗機体ブルーマーレの右腕を軽く持ち上げて見せる。 『そんなにひどくはなかったよ。──それよりも行けるな、ヴァネッサ?』 先行して現場合流したブルーマーレに続いて広域防衛区域から派遣されてきた通常部隊が到着し、分断された幹線道路の先に重防衛用バリケードを構築し始める。 『──追加部隊もすぐに到着する。此処までよく戦ってくれたな──ありがとう』 獰猛な意思を湛え、ジェリーはブルーマーレの機体に突進体勢を取らせる。 『一気に押し返すぞ』 その最も古い戦友の言葉にヴァネッサは口許に淡い笑みを浮かべ、操縦把を改めて握り込んだ。 「ええ。やりましょう──」 ──まだ、生きて戦える AM09 25── * AM09 15── 【Client Kelly Altman──地下核部に不正侵入した旧世代兵器群の排撃、及び当該戦域の第二種武装制圧】 素性の定かでない不定勢力であっても、依頼に仔細ないと判断すれば受諾し業務履行は此れを全うする。一部例外はあるにせよ、基本的にはフリーランスの傭兵であるファイーナは、自らにその活動領分を課していた。 商業区画当該戦域の第六次防衛戦闘までを単機で完結した後、ファイーナは戦線確立に成功した増援部隊に継続作戦を一任、自らは戦域を離脱して現在搭乗機体のゼクトラを新たな作戦領域へ向けて疾駆させていた。 統一連邦政府駐留軍からの依頼業務はこの騒乱がエデンⅣ存続という形で無事終息した場合、当該戦域を作戦途中で離脱した事実から依頼不履行となり、発生報酬の減額はおそらく避けられない。 だがその不名誉を差し引いたとしても、第六次防衛戦闘の最中に舞い込んできた不定勢力からの緊急依頼に応えねばならない理由がアザミにはある。 状況が状況である為、不定勢力からのその緊急依頼をアザミは受諾するつもりは毛頭なかった。 ──が、その依頼ファイルの受信先、ファイル文書の文末に加えられていた古い言葉を見咎めた時、その判断はアザミの中で180度転換することとなった。 緊急依頼の送信された受信媒体はアザミが平時使用する業務アドレスではなく、かなり以前に継続使用を破棄しそのまま放置していた個人アドレスのひとつであった。それは五年前よりも以前──ミラージュ社陸軍は機械化空挺部隊に所属していた頃の専用個人アドレスであり、それを現在に至っても記録している人間は本人を除いてごく限られている。 その事実へ瞬時に行き当たった時、アザミは浅く息をついた。明らかな偽名──或いはワークネームを騙るクライアントは過去の素性を深く知る何者かであり、アザミの鋭利な直感はその存在が覆面依頼を持って自身を誘っていると悟ったのである。 そして、依頼詳細の文末に添えられた言葉を見た時、クライアントがかつて非公式のうちに抹消されたミラージュ社の五年前の致命的な汚点を知る者であり、それがかつての身内の誰かである事に気付いた時点で、アザミは当該戦域の制圧戦闘に区切りがついた時点で速やかに戦線離脱する事を逡巡なく判断していた。 添えられた言葉は、かつての帰属部隊──機械化空挺部隊【レッド・シーカーズ】が共有していた唯一無二の標語── 「ノウラの通り、唯では終われんな……」 統合司令部で陣頭指揮を執るノウラと最後に無線通信を行ったのは約90分程前だが、その時既に彼女はこの騒乱が唯では終わらないであろう事を示唆していた。 ──人類最後の庭園と謳われた絶対要塞の閉鎖型機械化都市【エデンⅣ】へその広域警戒網をすり抜け、大胆にも都市天蓋部に大穴を空けて侵入。続いて製造元が未確定である紅い亡霊の武力介入──彼女は統一政府との関連性を疑い、この騒乱終息までの間に判断材料を収集して何らかの行動を起こすつもりらしい。 その矢先に、この緊急依頼だった。もしクライアントの素性が推測通りならば、騒乱終息後の事後事態は混迷化を深めるだろうとアザミは思考を巡らす。 この騒乱の暗部は、表面的に見るより遙かに深い場所にある── 今だ明白にならない事態推移の中、アザミの豊富な経験則は常に彼女へそう伝え続けている。 その最も深く暗い部分へとクライアントは誘おうとでも言うのか、依頼場所へのルートマップも添付しておりそれの事実詳細を戦術支援AIに解析させた後、アザミは一部改変を加えたルートマップに則って作戦領域へと進行していた。 途中、商業区画他戦域で防衛戦闘に当たるAC部隊と接触したがそのまま戦域を素通りし、一直線に向かう。アザミが単機で制圧した当該戦域はまだマシな方らしく、他の戦域は思ったより戦線確立に苦戦しているらしかった。 ──それも無理はないか。都市全域から戦力をかき集めたとはいえ、大半は有象無象と変わらん エデンⅣ防衛に当たって統一連邦管理局は、都市内部に駐留するAC保有勢力の全てに依頼を投げかけた。無論、エデンⅣ最大の企業体であるグローバルコーテックスからもAC戦力が派遣されてはいる。しかし、それをしても多くはアリーナ下位ランクや予備ランカーのレイヴンであり、加えて独立勢力系の有象無象が多く参加していては、そう防衛戦闘が上手くいくはずないというのが、軽く考察したアザミの結論である。 商業区画当該戦域を抜けて移動を開始してから約15分後、アザミは隣接する工業生産区画の重隔壁施設を有視界前方に捉えた。下降する幹線道路の直線上に重厚な造りの隔壁扉が聳え、其処を基点として両区画を分断する隔壁の高度限界の先からは、赤々しい炎と黒煙が噴き上がっていた。 侵入した敵性勢力が工業設備に手を出した為に、火の手が上がったのだろう。都市天蓋部へ向けて立ち昇る災禍は単純な火災規模で片づけるには大き過ぎ、その事から工業区画が受けている被害の甚大を容易に窺い知る事が出来る。 アザミはフットペダルを強く踏み込み、正面に高く聳える重隔壁扉へ向けてゼクトラの機体をブースタ推力で進ませた。幹線道路の下り坂を弾丸の様な早さで駆け下りる最中、前方右舷の角から一機の四脚型パルヴァライザーが滑り出してゼクトラの進路上を完全に塞いだ。この後に及んでも、侵攻の手を一切緩めようとしない旧世代兵器群の徹底振りに軽く息をつく。眼球動作に追従したフレームシステムが敵性目標を捕捉、同時に左腕兵装の短機関砲を跳ね上げてバースト射撃による牽制射撃を撃ち込む。 持ち前の重装甲でその軽い弾を弾いたパルヴァライザーが背部グレネードキャノンの砲身を前方展開、その光景を冷えた視線で追いながら、戦術支援AIにオーバードブースト・システムの起動を口頭指示した。 直後、前方拡視界に捉えた敵性目標の得物の砲口が轟然と火を噴く。そのタイミングを計っていたアザミは大きく吹かしたブースタ推力で射線上から真横へ移動、操縦把上部カバーを弾き上げて中の起動スイッチを押し込んだ。 開放された背部大型ノズルから高出力の噴射炎が噴き出し、圧倒的な速度を持ってゼクトラの軽量機体を前方へ弾き出す。その感じ慣れた強いG負荷を身体に受け止めながら瞬く間にパルヴァライザーの頭上を通過、転回される前に単純距離にして百メートル近い間合いを取る。 最優先すべきは作戦戦域への速やかな到着であり、無駄な接触戦闘やそれに伴う弾薬浪費は抑えるべきである。その為、アザミはパルヴァライザーの追撃が背後から迫ってもオーバードブーストを解除せず、そのまま隔壁境界に急速接近した。 戦術支援AIの情報処理を介して隔壁制御システムへアクセスしようとした直前、何をした訳でもなく重隔壁設備が自らその扉を両側へ押し開く。そのあまりにタイミングの良すぎる事態に、右腕兵装の短機関砲を開いた隔壁扉の隙間へ向けるが、其処から何者かが飛び出してくる様子は一切ない。 狭域索敵態勢のレーダーにも動体反応は見られなかった。 残り百数十メートルに迫った所でオーバードブーストを解除、ゼクトラの機体を背後へ急速転回させる。充分な残余推力を用いて幹線道路上を滑走しつつ、背後から追撃してくるパルヴァライザーに対していつでも応対射撃を取れるよう短機関砲を突き付けながら、そのまま隔壁扉の隙間へ機体を滑り込ませた。 そしてまたもやそれを確認した隔壁設備が起動し、追い付かれる前に閉鎖を完了した隔壁扉がゼクトラとパルヴァライザーの前に完全に立ち塞がった。 警戒灯が激しく明滅する重隔壁設備内に侵入したアザミは、動体反応の見当たらない設備内を速やかに移動して大型資材運搬用の昇降機を発見すると、そこの昇降台へゼクトラの機体を搭載させる。戦術支援AIへの口頭指示を思いとどまり、しばし待っているとアザミの予測通りに、昇降機はアザミ以外の機器制御指示を受けて自動起動、警報音がひとしきり鳴り響いた後、地下への下降を開始した。 ゆっくりと昇降台が下降していく中、アザミはその奇妙なエスコートに歪んだ笑みを浮かべた。 「此方の接近は常時把握済みという訳か──」 作戦領域となる当該戦域は都市地下核部──その存在を知る者自体が限られている閉鎖空間である。 それを知っている事と先に言葉にした事実と併せてエデンⅣの内部事情にある程度詳しい事から、此処まで諸々の設備制御システムに介入するに際して、かなり手練の電子情報技術員を運用している可能性を読み取れる。 既に外部データリンクは切断してあるが、干渉工作の痕跡がないかどうかを戦術支援AIに解析処理させた結果、幸いというべきか機体制御システムに異常は発見されなかった。元より、機体制御システムには高性能の電子防衛システムが標準搭載されている為、先方が余程のハッカーでもない限り発見できないという事はない。 『想定作戦領域、約30秒で到着します──』 →Next… ⑪ コメントフォーム 名前 コメント