約 5,021,733 件
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/159.html
⑩*⑪*⑫ 昇降機の下降制御情報によると、現在地下高度は千数百メートルまで下がっている。エデンⅣ全域に散在する区画隔壁管理局の運営する昇降機でも通常では、地下数百メートル程度の経済管轄階層までしか降りられない。それより先へ進むには、制御システムに専用コードでアクセス指令を出すかプログラム自体を改竄する方法と取らねばならない。 地下核部構造体は複数の空間層によって構築されているが、不定勢力の依頼主が指定してきた作戦領域はその最下層区域であった。 その最下層へ、間もなく到着する── 数十秒後、昇降機の停止と共に制御システムが最下層区域への到着をプログラムヴォイスで伝え、隔壁扉が開放される。 「動体反応はない、が──」 前方に伸びる連絡通路は赤黒く点滅する警戒灯によってその全貌を淡く映し出しており、ルートマップ上でゼクトラの現在位置を把握。搭載レーダー機能を戦術支援AIの性能支援と併せて並列展開させ、広域及び狭域警戒態勢で反応検出を行ったが、機体周囲半径500メートルには少なくとも動体反応は見当たらない。 作戦領域──当該戦域である場所のその状況に不審を抱き、右腕部に携える短機関砲の発砲態勢を固定維持して、アザミは通常歩行による隠密索敵を開始する。 薄暗くはあるが夜間戦闘支援システムを起動するまでもない連絡通路を緩慢な速度で進行し、ルートマップ上直線距離に最下層区域北方ターミナルエリアの広大な設備空間を確認。其処へレーダー索敵が及んだ時、ターミナルエリア内に動体反応が検出された。 (敵か──にしては、動かんな……) レーダー機能が検出した動体反応はターミナルエリア内に僅か一つ、それ以外の物体反応は見当たらず、無論周囲空間にも同様のものはない。加えて、その動体反応は恐らく此方のレーダー波を捕捉しているはずだが、それにも関わらず、ターミナルエリアからの所定行動を一切取る気配がなかった。 通常歩行による索敵姿勢を固定維持し、アザミはゼクトラをターミナルエリアの方向へ転進させた。 動体反応の検出から約十分後、ターミナルエリアに直線上に直結する連絡通路へ行き当たったが、その時点でも動体反応は一切の機動行動を起こす様子がない。 アザミはその事を不審に思いながらも機体搭載兵装の運用状態を再確認、瞬時に戦闘機動へ移行できるよう準備してその連絡通路をターミナルエリアまで通過した。 ──廃棄線路と資材の残骸が散在、天蓋部まで凡そ百数十メートルもある広大な設備空間がゼクトラの有視界に姿を現した。暫く進んだ後、レーダー機能が検出した動体反応の方向へ頭部のカメラアイを転回させる。 一番初めに捕捉した時と変わらない座標位置に、その"AC機体"は鎮座していた。口頭指示するまでもなく自己判断した戦術支援AIが捕捉機体の詳細解析を展開する。 その間にゼクトラの機体を捕捉機体のほぼ正面へ移動させ、約220メートルの距離を取って停止した。 (AC機体のようだが──少し違うか……?) 望遠拡視界に出力したその機体を一瞥した所、外部機体構造はミラージュ社純製のアーマードコア機体【ガイア・モデル】のように見える。が、アザミがそのアーマードコア機体をガイアモデルに酷似したものだと感じたのは、明らかに既存の同種機体と比較して異なる視覚的情報が散見されたからであった。 事実、詳細解析を行っていた戦術支援AIも当該情報なしの結果を導き出している。 ──両腕部搭載の突撃型ライフル銃と思しき兵装は見慣れない形態をしており、それは少なくともアザミの記憶の中に見当たるものはなかった。両背部兵装に其々搭載されている兵装についても、同様である。 それが実働試験用の新規開発兵器だというのなら驚くに値はしないものだが、アザミはそれらを搭載する機体自体に最も注視していた。 限りなくガイアモデルに近い中量型二脚機体──しかし外部構造に見られる若干の差異として、推力機構と思しきスラスターノズルが構造体各部が挙げられる。 所属を示す部隊章などもなく、眼前に捕捉した機体はまさに未確認機そのものであった。 さて、どうしたものかとアザミが幾つかのコンタクトの手段を考えていると、前方未確認機からの通信要請の受信音がコクピットに不意に響いた。その受信音をカットした後、アザミは自らコンソールを操作してその未確認機との回線を確立した。 数秒の緊迫した空白が両者の間を包み──、 『ぬるい戦場だったろう、──"一つ手の射手"?』 低く静かな、しかし聴く者に確かな緊迫感を伝える鋭い声音。それが、アザミの古い戦場で呼ばれていた俗称を口にした。抑揚に乏しく端的なその声音と言葉は、それを久しく耳にする事のなかったアザミの意識の奥底を強く揺さ振り、過去の記憶を思い出させた。 ──影を捕まえられるまで、生かされて、生きていけ…… 今はもう戦場を下りた一人の友の言葉が、脳裏をよぎる。 「……──アンヘル。クライアントは、お前か……」 グレイエンバー作戦以前、所属を共にしたレイヴンとして部隊を率いたかつての同志の名を、そう呼んだ。地上は商業区画で緊急依頼を送信してきた不定勢力のケリー・アルトマンという人間は、恐らく眼前の未確認機に搭乗する彼の事だと、アザミは瞬時に悟った。依頼データの文末に添えられていた標語、それを部隊に広く知らしめたのが彼──アンヘル・セラ・イ・ナダルという男である。 ──戦場の挽歌を詠え 常に最前線に在り続け、戦場で幾多の死線に曝されながら友軍を勝利に導いた、かつてミラージュ社陸軍に存在した精鋭機械化空挺部隊──レッド・シーカーズの誇りだった。 半ば独り言のような問いに、アンヘルはそう言ったニュアンスを強く孕んだ気配を流して見せ、アザミの六感はそれを鋭く感じ取った。 『──"グレイエンバー"を生き残っていたとは、初耳だな』 「──憶えている人間を探すのも困難では、仕方のない話だろうな……」 変わらず抑揚に欠けた口調ではあるが、その裏側に確かな感情の揺らぎが介在しているのをアザミは手に取るように理解する事ができた。かつてアンヘルとは同部隊のレイヴンとして多くの戦場を共にし、──"グレイエンバー作戦"の際も、部隊が散り散りになる直前まで協同していたのだ。心を感じる事はできなくても、それを察する事はできる。 たったの数人ではあるにせよ、部隊員の生存者がいるという話をこの五年間でちらほら聞いたものだが、その中に彼に纏わる事実情報は一切含まれていなかった。 そんな噂話すら出る余地もないほど、"グレイエンバー作戦"で姿を消した彼は死んだと思われていたのだ。 武装地帯の最前線に押し寄せた数万の軍勢を前に致命的な戦火に呑まれゆく中、彼は幾名かの部下を率いて戦闘を継続した。確かな記憶として残っている訳ではないが、朧げな赤錆色の映像の中に、確かにその際へ立とうとしていたアンヘルの姿をアザミは憶えていた。 状況がどうであれ古い戦友との再会を喜ぶべきなのだろうが、アザミはその期待を容易に受けれなる事はしなかった。操縦把のセーフトリガーを引き、提げていたゼクトラの右腕を持ち上げる。携えた短機関砲の砲口をガイアモデルのコア中枢部へ突き付けた。 「昔話は余り趣味じゃない。──アンヘル、何の為に此処へ来た?」 ──この騒乱の渦中に在って緊急依頼を寄こしてきた【ケリー・アルトマン】とクライアントが、アンヘルである事を疑う余地はない。しかし、依頼内容と実際の当該現場における状況の比較事実は著しく異なっている。 其処に何らかの猜疑を抱くなという事自体が難題であり、たとえ相手が五年振りに再会する死んだと思われていた旧友だとしても、それに対する兵士としての義務を変える事などはしない。 だからこそ先日も、その延長線上で一人の古い知己と別れを交わしたのだから。 ──長く戦場を共にした戦友であろうと何だろうと、五年という時間さえ在れば、人間はどこまでも変わる。 アザミはかつてのその戦友の一人を前にして、レイヴンとして在る以上に冷酷でいた。 アザミのその鋭利な態度を前に、しかしアンヘルは僅かな意識の揺らぎすらも見せることはしない。それは往来の彼の性質に依るものではなく、彼もまた、この五年の間に相応の密度を生き抜いてきた故である。 互いの心理を探り合う緊迫した時間が過ぎ、やがて未確認機のカメラアイが僅かに動いてゼクトラを正視する。その細やかなカメラアイの機能動作気付かなければ何でもない程度のものだ。しかし、明らかに既存のAC機体とは異なる高精度の反応動作である其れに気付いたアザミは、やはり未確認機がミラージュ社純製のガイアモデル機体を模しただけの、全く異なる兵器である事を確信した。 その細やかな挙動は人間のそれであるような── アンヘルは気配を一切変えず、先ほどのアザミの問いに答えるべく口を開いた。 『──お前を、殺す為だ』 殺意の膨張は見られず唯、事実としての言葉のみをアザミは静かに受け入れた。 最後まで肩を並べて戦い抜いた彼の、アンヘルの五年越しの致命的な言葉に驚きはなかった。 兵器災害からの五年間──その間に彼の選択した意思が、その言葉をアザミに告げさせたのだ。 何故、と自ら問うつもりはなかった。代わりにアザミは問い返す。 「何処で、私を知った──?」 ──グレイエンバー作戦を境にミラージュ社を去った後、執拗な追撃を振り切る為にアザミは公的記録を全て削除した。その為にターミナルスフィア所長であるノウラの手をも借りた。徹底的な情報及び偽装工作の末、自身はグレイエンバー作戦後の何処かの戦場で戦死した──それが最後の公的記録として残されることとなった。 当然、"グレイエンバー作戦"の記録抹消の為に生存者の粛清を行っていたミラージュ社もそれを最終報告記録とした。本人と判断できる死体が見つからなかった為に掛けられた懸賞金はそのままとなったが、少なくともグレイエンバー作戦を生き抜いて軍から逃亡した"アザミ"という人物は死亡した、という事ことになったのである。 その真相を、アンヘルは何処で知ったというのか── 俄かに伝わる都市伝説のような噂のみで確信したとは、冗談でも考えられない。 『──あらゆる手を使った、と言えば満足か? だが、案ずるな。此れは──私の私闘だ』 決定的な決別の言葉。此方の問いに答えることは終ぞしなかった。が、その言葉から察する限り、何処で知ったか、その全容を知るのは自身のみにとどめていることを、アンヘルは暗に述べている。 完全に無視された訳ではないが、問いの答えを逸らされたという事だ。 「そうか……では構わん。幸運を、アンヘル──」 『残り火同士の喰い争い、か。幸運を、ファイーナ──』 その言葉の交わりを最後に、交信を終了。 有視界に捉えた未確認機が機体重心を下げ、戦闘態勢を確立する。その異様なまでに円滑な機体動作はやはり人の挙動を全て反映したかのようである。 ──アザミは既に、その未確認機の可能性に行き着いていた。 「……【NEXT】、お前も企業に下ったのか……」 断定するのは早計かもしれないが、外部構造体にミラージュ社純製のAC機体であるガイアモデルを採用している事から、眼前の"未確認ネクスト"機体の製造元はかつての帰属企業であるミラージュ社の可能性が高い。 ──財団存続時に既に幾つかのネクスト兵器は試験実働段階にまで到達してはいた。しかし、それらは支配企業群の開発技術を集約したが故に実現した叡智に過ぎなかった。 超過技術とも言えるネクスト技術は財団の組織的解体に伴って各支配企業へ分散、その後新たなネクスト兵器の開発競争が水面下で継続されている所までは、アザミも把握していた。 直接関与している訳ではないが、ターミナルスフィアの研究施設へノウラに幾度か連れられ、其処でネクスト兵器なるものの実態を目の当たりにしていたのだ。 だが、どの支配勢力も──一部例外はあるにせよ──実働型ネクストの開発にはまだ到達していない、というのが此れまでの見解だった。 ──その見解を改める事実が今、アザミの眼の前にいる。 アザミは自らの戦意を極限にまで研ぎ澄ますが、その意図とは裏腹に"明確な死"という可能性を意識していた。 ネクストという存在が持つ戦略的兵器価値は十二分に理解している。自身がAC機を駆るレイヴンであるからこそ、尚更その重大性について分かっているつもりだった。 従来のアーマードコア兵器では、もしも実働型ネクストを相手にした時、勝つ術はない。 つまり、今自分はその瀬戸際に立たされているのだ。 それを強く認めながら、しかし回避する為にアザミはネクスト兵器を正面に見咎めて戦意を研ぎ澄ます。 術がないというのは戦場で訪れる幾つかの瀬戸際で、従来の意識を引き剥がせなかった場合に限る。 戦場の幾つかの瀬戸際に、セオリーは通用しない。 生き残りたいのなら、生き残る事の出来る可能性を見出すしかない。 ──ミラージュ社製のネクスト兵器、か。 操縦把付随のトリガーにかけた指に力を込め、 カメラアイから転送されてくる有視界に閃光の如き光が溢れた事を意識した時には、既に眼前にネクスト兵器が肉薄していた。正対に位置していたにも関わらず知覚外の速度で迫った脅威は、既に左腕部の突撃型ライフルの銃口をゼクトラの頭部に突き付けている。 視覚情報の認識反応は遅れた──しかし、強化内骨格体の自身の体に刻みこませた経験則は意識の外側から行動判断を送り、アザミは推力用フットペダルを踏み込んでいた。 最大推力で吹かした噴射炎がゼクトラの機体を右舷真横へ弾き飛ばし、刹那よりも短い差で煌いたライフルの砲口から吐き出された銃弾が、ゼクトラの頭部外部装甲を掠める。 残余推力をそのままに迎撃姿勢を構築すべくゼクトラを機動転回、空間を切り貼りするような知覚外の速度で移動してきた敵性目標へ機体を向ける。 ──其処に既に姿はなかった。白緑色の噴射炎の陽炎のみが前方の空間をたゆたい、間もなくしてかき消える。狭域索敵態勢のレーダーに視線を巡らす前に敵性目標の位置座標を予測確定、明確な行動判断の前にアザミは左腕部ターレットを最大展開し短機関砲を後背部へ向けた。 短機関砲による高密度の火線が空を切り、敵性動体は瞬間推力による回避行動から後方上空へと機体を浮上させていた。左腕部ターレットを固定維持したまま機体を急速展開させ、ゼクトラのカメラアイを敵性目標へと向ける。背部兵装から展開されたグレネードキャノンの長大な砲身が、ゼクトラに突き付けられていた。 「──!」 グレネードキャノンの砲口の煌きに併せて短機関砲による応対射撃を展開、前方高密度に張った集中弾幕が榴弾飛翔体を直撃し、巨大な爆炎が有視界を埋め尽くす。応酬とばかりに背部コンテナを展開、爆炎の裂け目に捕捉した敵性目標へ向けてマイクロミサイルを射出。 後の先を取った事により敵性目標が燻り出される格好で、マイクロミサイル群の追撃を受けながら右舷へ飛び出す。分割ディスプレイに出力している拡視界映像で、敵性目標の背部兵装が今度は逆側に転換されているのを肉眼で捉え、アザミは明確な意思判断を待たずにフットペダルを踏み込んだ。 滑走進路をなぞるように逆進し、予測射線に向けてばら撒かれた重拡散銃の弾幕を明後日の方向へやり過ごす。数秒と持たずに撃墜されたマイクロミサイル群が立て続けに爆発を起こし、赤々しい火球が空中に幾つも浮かび上がる。反転攻撃に転じた敵性目標が重拡散銃と突撃ライフルの砲口を向けた時、それよりも一拍早くアザミは再度マイクロミサイルを同時射出していた。予め火器管制システムに設定しておいた飛翔起動パターンを戦術支援AIが自律選択し、そのプログラムを搭載したマイクロミサイルが敵性目標へ向けて不規則なアウトラインを取りながら飛来していく。 反転攻撃を中断せざるを得なくなった敵性目標が急速接近してくるマイクロミサイル群の迎撃射撃に転じ、重散弾銃から放たれた無数の火線が雷鳴の如き砲声と共に大気を切り裂く。弾薬消費の効率性を度外視した事により、敵性目標はミサイルコンテナ群の接近を一切許さず、全て同時に撃墜し切る。 轟く残響音が冷め遣らぬ間に爆煙を突き抜けた対重兵器用の散弾の雨が降り注ぎ、しかしそれらが牽制射撃である事は疑いようもなく、アザミは軽くブースタを吹かして弾幕を機体後方へやり過ごす。何発かの弾をわざと装甲で弾いていなし、その損害度を戦術支援AIが解析して報告する。 『右肩外部装甲、小破。第一種戦闘態勢継続維持に問題ありません』 掠める程度に止めた散弾銃の銃弾は、しかし通常ACの規格兵装と比較するとやや衝撃力や搭載火力に長けているといえる。 「重い──が、それほど大差はないか……?」 外部構造体を既存ACであるガイアモデルから流用しているとはいえ、内部駆動構造に至っては全くの別物である事は此れまでの戦闘推移を見ていればだれでもわかる。機体自体のペイロード限界も底上げされている事は、搭載兵装から確認できるが、それらが持つ火力脅威は既存ACと比較して致命的な差がある訳ではないことを、アザミは察知した。 それでも、正面から喰らえば致命傷は避けられんだろうが── 交戦開始から現在までの時間推移は、8,65秒── ネクスト兵器相手に最初の数秒をよく継戦維持できたというのが、アザミの見解だった。それだけの継戦行為を可能にしたのは、彼我の差とすら言える機体機能である訳ではなく、搭乗者であるアザミ自身や敵性目標の未確認機に搭乗するアンヘルに長らく染み込んだ経験則を互いが理解していたが故である。 アザミは最初の数秒を乗り切る可能性を、大きく其処に賭けていた。 ──アンヘルは、変わっていない。 かつてミラージュ社陸軍が保有していた精鋭機械化空挺部隊──レッド・シーカーズはその運営方針の通り、敵地内部へ深く先行潜入し、速やかな指揮機能の破壊や兵站部隊の排除と言った前衛撹乱戦闘に特化していた。 強襲、奇襲、威力偵察、殲滅戦闘を旨とし、徹底的な撹乱戦闘によって目標を達する。レッド・シーカーズの任務達成率は同種部隊の中では群を抜いており、それら技術の基礎を作り上げた兵士の一人がアンヘルという敏腕レイヴンであった。 烏から山猫になっても、アンヘルはそのスタイルを変えていなかったらしい── もし、そうでなければ、アザミは自身が最初の三秒足らずで即死していたであろう事を理解していた。 他の展開戦術を秘匿している可能性が有ることも重々承知しているが、それを出さずに最初の数秒をやり合った事はかなり大きな意味を持つ。 だが、此処から先はそう上手く行きはしないだろう。 アザミが此処まで考えているのなら、同じ部隊のレイヴンであったアンヘルが同様の思考に行き着いていない道理はない。つまり、此処から先は互いに別に道を歩んだ五年間で培った戦場での経験がモノを言う事になる。 しくじれば、それは速やかな己の死── 「アンヘル、貴様がどんな戦場を歩んできたのか聴かせてくれ……」 幾多もの戦場を潜り抜けてきたかつての戦友、その男が自身の預かり知らぬ時間の中でどのような戦場を過ごしてきたのか、致命的な決別の中ですらアザミはそれの一端を知りたいものだと意識のどこかで僅かに願った。 ネクストが正面から通常兵器とやり合ってその殲滅に掛かる時間に、数秒もかからない。初見であるにも関わらず、過去の双方の接点のみでそれを覆してみせたアザミを警戒しているのだろう。爆煙の向こうに姿を隠すアンヘルは、牽制射撃から次の機動を起こさずに此方の出方を見ているようだった。 次が始まれば、一連の結実まで恐らく、数秒の間もない。 アザミは素早くコンソールを叩き、此れまで一度しか実戦で使う事の無かった機体制御システムの起動プロトコルを完結させた。続いて戦術支援AIに口頭指示し、 「BICS(ブレイン・インターフェース・コントロール・システム)、起動──」 『了解しました。BICシステム起動プロトコル、開始します──』 コクピット後方部の収納設備から出た接続機構が、アザミの頚部に施されたインターフェースへ物理接続される。それと同時に同調システムの処理プロトコルが進行、頭の中に砂のざらつきのような不快感が巡る。 『BICシステム、起動完結しました。此れより第一種戦闘態勢をBIC制御下に固定維持します──』 砂のざらつきが収まり、アザミはBICシステムによって高精度で再起動したフレームシステムを意識した。自身の視覚行動をBICシステムの接続によって認識したフレームシステムが追従していく。その精度の余りの滑らかさについ、アザミは口許を僅かに歪めた。 システム下に入ったフレームシステムを扱い、アザミは若干下げていたゼクトラのカメラアイを上空へ向ける。ゼクトラのその明らかな変化を敵性目標が認識し、未確認機は後方ノズルから噴射炎を吐き出してゼクトラに肉薄する。コンマ数秒しかかからないその接近機動に対し、アザミは此れまで使用しなかった右腕部兵装──物理型射突ブレードに意識を傾注、右腕部を跳ね上げた。 互いの視線がカメラアイを介して交錯し、此方の迎撃行動に瞬時に反応した敵性目標が有視界内から掻き消える。アザミは強化内骨格施術の恩恵である義眼の卓越した動体視力を用いてその軌跡を追い、フレームシステムがそれに同調する。 しかし、有視界内に完全に機影を捕捉するのを待たず、アザミは操縦把付随のトリガーを絞った。 強装炸薬の燃焼によって長大な鋼鉄の杭が、ゼクトラの近接周囲を迂回しようとしていた敵性目標に向けて射出される。杭の突端部が外部装甲を捉えるも、敵性目標は致命打を受ける前に瞬時にその場から回避機動を取った。 (やはり一芸では終わらんな……) 明確な意思判断を待たずに敵性目標が刹那以下の展開にすら反応できたのは、その機体に搭載されているであろうAMS機構による機体制御の賜物に違いない。 此処から付いていけるか── ──アザミが先に起動したBICシステムは、そのAMS機構に酷似した機体制御技術である。正確に言えば酷似しているのはAMS機構であり、BICシステムは遥か以前から軍事用技術として確立されていた代物に過ぎないが。ネクストに搭載されているAMS機構は従来の類似機構を遥かに凌ぐ高精度の機体制御を可能としており、いくらアザミがアンヘルの行動を先読んでいるとしても、何れ応対行動に遅れが生じるであろう事は、本人が最も分かっていた。ならばと、アザミはゼクトラに搭載していたBICシステムを起動したのである。 最も、それで機体機能の差が詰められるはずはないという事も重々承知している。 従来のBICシステムの大半が大脳部皮質機能を経由して高精度の情報伝達を実現している。しかしネクストに搭載されているAMS機構は、ノウラの話によれば大脳新皮質という従来では扱われなかった分野を用いる事によってさらに高精度な情報伝達を可能としているらしい。 しかしAMS機構は、大脳新皮質に特異な神経回路構造を備えた者だけが正常に機能制御できる代物であり、普及させるには現在の技術力は余りに乏しすぎると、彼女は言っていた。 ──アンヘルは、その適性を保持していたというのか 空間認識能力を大幅に底上げしたフレームシステムで、地上百数十メートル前方へ後退した敵性目標を有視界に捕捉──アザミは戦況が致命的な域に達する前に動いた。 火器管制システムを右背部コンテナへ転換──垂直発射式ミサイルを上空へ向けて連続射出した。戦術支援AIによるプログラム修正を受けた計八基のミサイル群が急速上昇し、順次投下高度に達する前に分解した弾頭部から小型子弾が広範囲に向けて散開した。 戦術支援AIが支援態勢段階を跳ね上げ、有視界外を含む交戦域全域に拡散する小型子弾の豪雨の落下軌道を解析捕捉、メインディスプレイに落下軌道を随時更新出力する。 漆黒の豪雨が降り注ぐその下で、二機の機動兵器は同時に接近を開始した。 「果てが、見えるぞ──」 此方の出方と同様、落下軌道を全て解析捕捉したのだろう敵性目標は瞬間推力による高機動を極力抑える。過度の移動能力を齎すその機能を用いては、無秩序に落下してくる小型子弾への接触爆発に対する対応が遅延する事をよく理解している。 アザミは大きく口許を歪め、先行落下してきた子弾群を的確に回避或いは撃墜しながら眼前の敵性目標へ迫り往く。敵性目標も進行の障害になる落下子弾のみを突撃ライフルをバースト射撃で撃ち落とす。 敵性目標のその慎重とも言える出方にアザミは可能性を見出した。 火器管制システムを左背部コンテナへ転換、戦術支援AIに射出ミサイルの回避軌道をインプットさせる。着弾目標までの回避軌道を瞬時にシミュレーションさせ、その完結と同時にアザミは操縦把付随の射出スイッチを押し込んだ。マイクロミサイル群は射出後急速上昇し、次々と落下してくる子弾群をインプットされた回避機動に従って糸を縫うように避け、上空へ急速上昇していく──それが着弾目標へ過たず吸い込まれていくのを有視界の隅で見送った直後だった。 精密射撃によって安全軌道を自ら切り開いた敵性目標のネクストが、後方ノズルより出力を絞った──それでも充分な推力を齎す噴射炎を吐き出して弾丸の如く迫り来る。 アザミはその眼前から迫りくる強襲機動に対し、応対射撃を前方ではなく上空へ向けて展開した。短機関砲によりばら撒いた弾幕が上空から落下してきていた子弾群を次々と誘爆発させる。無数の小さな爆炎が頭上を赤銅色に染め上げ、多重の炸裂音が広大な空間を反響していく。 固定維持していた左背部コンテナに残存のマイクロミサイルを前方へ向けて全基射出、同時にコンテナをその場へ切り離す。前方から殺到するマイクロミサイルをネクスト機体は突撃ライフルによる高密度射撃で撃ち落とし、その端から見れば悪あがきにも取れる攻撃の中を突き抜けて突進攻撃を仕掛けてきた。 その交錯の間際こそが、アザミの予測していた結実の時だった── 頭上に広がる爆炎の海を突き破って落下してきた無数の物体──マイクロミサイル群の直撃を受けて崩落した天蓋部の大きな瓦礫片が頭上から降り注ぎ、眼前に肉薄してきていたネクスト機体を直撃した。大質量の瓦礫片の直撃を受けて機体バランスを崩したネクスト機体がその場で機動を中断、その完全な停止状態を捕捉したアザイは其処へゼクトラを突進させた。 機体姿勢を持ち直すも退路を塞ぐ瓦礫片に意識を取られていたネクスト機のカメラアイと、視線が交錯── 右腕部に備えていた射突型物理ブレードの刀身を敵性目標のコア中核部に向け、アザミはトリガーを引き絞った。突進推力を上乗せした鋼鉄の杭を至近距離から撃ち放ち── 結実まで数秒足らず──アザミの見立ては間違っていなかった。しかし、その思いもよらない形で飛び込んできた終幕にアザミは目を瞠った。 「何だ、それは──」 コア中核部を貫くはずだった鋼鉄の杭は、その手前でコクピット内部への侵入を停止していた。そして、ネクスト機の機体周囲を巡るように環流する薄い白緑色の膜の存在に其処でようやく気づき、アザミは不意にそう遠くない記憶を思い出した。 →Next… ⑫ コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/catnap222/pages/437.html
Super Metroid Landing Site Abuse 関連リンク metroid2002.com forum http //forum.metroid2002.com/index.php/topic,7100.0.html 攻略動画 Landing Site Abuse play through by kokoakkiを参照。 評価 改造度 ★★ ワンルーム同様,一部屋のみ 難易度 ★★ 特に難しいところは無い 探索難易度 ★★★ 地道な探索が必要な所も 探索自由度 ★★ 基本的に一本道 楽しさ ★★ クリア条件がX-ray取得で取得しても何の達成感も無い スタート地点がシップ代わりとなっていて斬新だった。 道を塞ぐ岩石の特徴に気付くまでに少し時間がかかった。 一つ一つのアイテムに意味を持たせているのは良いが,やはりX-ray取得で終了なのは寂しい。 総合評価 ★★ kokoakki アンケート 総合評価を投票してください。 選択肢 投票 ★★★★★ (0) ★★★★☆ (0) ★★★☆☆ (0) ★★☆☆☆ (0) ★☆☆☆☆ (0) ☆☆☆☆☆ (0) 感想・レビュー等 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/272.html
④*⑤*⑥ 停泊ポートに迫る制圧部隊を他施設との連結通路を隔てて圧し留め、水際での近距離戦に突入してから数分が経過していた。 練達した技量を持って連綿な戦術を駆使する制圧部隊を前に、サンドゲイの歩兵戦力は初期に築いた防衛線から順序後退し、既に最後衛へその拠点を移していた。 『正面第五、第六搬入通路の封鎖完了──』 「よくやった。迂回路を進行し、五〇秒で拠点に合流しろ」 地下へ遣した爆破工作班を労い、シェルブは次の作戦段階に意識を移す。 (戦局はまずまずといった所か……稼げて、残り一五分弱。そろそろ来るな) 敵征圧部隊の技量が確かな事も無関係ではないが、シェルブは時間稼ぎの為の機動防御を当初から指示していた。施設管理局の承諾を得て爆破工作班に地下の物資搬入路を封鎖させた事により、敵部隊が武力による進入を確実にするには正面から乗り込むしかない。 あらゆる時間稼ぎを使って敷設した強固なバリケードに篭もれば、弾薬系統が枯渇しない限りいつまでも粘り続けられる算段が確信としてあった。 もっとも、相手の意図がそうであれば、の話だが──。 「ショーン、こちらFU(Front Unit)──調子はどうだ?」 実行要員でない為に、艦内で別行動中の整備士のショーンへ問いかけると、余りに逼迫した時間と状況の中で精彩を欠いた中年男の喚切り声が届いた。 『あと腕が二〇本は欲しい所だ! 間に合わせで正常に稼動する保障はないぞっ?』 「皆、お前の腕を信じてる。一〇分以内で調整を済ませてくれ」 『相変わらず、人使いの荒い頭目だな。そんな特権はプレジデント・クラスになってから寝言で言ってくれ』 愚痴こそ絶やさないものの、ショーンの言動にはある程度の余裕がある。最前線の兵士を整備面から支える腕利きのメンテナンスクルーとして鉄火場に長い間浸かっているだけあり、旧来の間柄であるショーンを全面的に信頼していた。 シェルブやショーン、サンドゲイルにとっても、今回の襲撃は何ら特別なものでなく、相手の素性を除けばよくある癇癪のようなものだった。 状況は逼迫しているが、珍しい類の話ではない。それに慣れているかいないかでは、命が天秤に乗っかった状況の結末に雲泥の差が出る。 いくつもの戦場の辛酸をなめて来たシェルブは、老獪な認識力を持って現状を把握していた。 傍の装甲板で跳ねた小銃弾が甲高い音を立て、応酬とばかりにFUが制圧射撃を一層激しく撃ち込む。 使えるならば旗艦の艦載砲群で一掃したい所だが、生憎とそんなモノを屋内で持ち出せば、建物自体の倒壊を招き双方共倒れか、運良くて丸裸で命辛々という所が関の山だろう。 肩に掛けた小銃を取って制圧攻撃に加わろうとした矢先、確立状態の無線に連絡が入り、シェルブは確信を持って応答した。 『親方、こちらマイ──地下道へ入りました。間もなく到着します──ACの出撃準備を済ませておいて下さい』 あちらはどうやら、何とか無事に遣り遂せたらしい。だが、総合的な状況は然程芳しくないようだ。 「既にショーンが掛かっている、お前達は直接ハンガーへ向かえ──」 今回の襲撃自体が、不測の状況下で起こったのだ。事態が好転しないどころか悪化修正したとしても、そこに驚きはない。だからこそシェルブは万一に備え、施設ドックに移していたAC機体を全て艦内ハンガーへ再搬入、コロニー外部への出撃がすぐにでも可能なようショーンに指示を出していた。 攻囲網が敷かれる前に、フィクスブラウも繋留施設内へ帰還させた。一対多数で不利な野戦を演じさせるよりは、強固な隔壁設備を盾に状況を保つべきだとシェルブが判断した為だ。 マイからの通信に加え、ほぼ入れ替わりでコントロールから通信が入る。 『ボス、こちらコントロール──施設外部のAC部隊が戦域離脱を開始しました』 「了解。艦載レーダーの索敵態勢を第一種広域索敵態勢へ移行、データリンク・システムの確立を急げ」 『了解しました』 早速万一の事態が転がり込んできた事に、シェルブは薄ら笑う。 現場指揮権を副官に委譲し、バリケード伝いにシェルブも停泊ポートの内壁階段を下りる。最寄の乗降口から艦内へ駆け込みハンガーへ到着するのと、開放状態のハッチからマイ達の乗り込む車輌が滑り込んできたのはほぼ同時だった。 マイが文字通り車内から飛び降り、丁度傍で繋留状態にあったAC機体──濃蒼色を宿す中量級二脚機〝蒼竜騎〟の最終調整を行っていたショーンの元へ駆け寄る。 「おやっさん、蒼竜騎の状態は?」 機体上方は整備用重機械を用いて作業に臨むショーンが、顔面保護用のマスクを被ったまま大声を上げる。 「だめだ、まだ腕の換装が済んでねえ。五分待て、シーアが拾ってきた部品を着ける!」 数日前の作戦によって左腕部を欠損した蒼竜騎には、それに変わる新しい腕部が接続されつつある。先程まで周辺地帯で戦闘を行っていたシーアが偶然拾ってきた代物だが、それを使えると判断したショーンがほぼ独断で、その場で蒼竜騎に換装することを決めた。 ハンガー上部の欄干に立つシェルブの下方部へ、マイが走り寄る。軽く息を切らしてはいるが、焦燥と頑健な意思の入り混じった双眸と視線が交わり、表情を引き締めた。 娘の姿がない──。 「あの娘が、攫われたんだな?」 一時を置き、マイは覚悟した面持ちで返す。 「はい──親方、力を貸して下さい」 事前のやり取りの手前が為に恥を偲んで──という表情ではない。 それは、己が遣り通すと誓った覚悟を微塵も諦めていない者の眼だった。 だからこそ忌憚なく、 一切の澱みなく、 全く臆さず、 マイは、率直に助力を述べた。 自らの手で成すべき事を放棄した人間は、その目に恥辱の色を浮かべる。それに例外はない。 戦場で長い年月を過ごすシェルブには、尚も戦士としてあろうとする者を視る確かな洞察眼が備わっていた。 自らが最も時間を掛けて育て、教えてきた最も古い教え子は、覚悟を放棄していなかった。 戦士の尊厳──その重圧に屈さず、戦おうという意思を貫こうという教え子に、シェルブは敬意を払った。 今一度大きく肺腑に息を吸い込み、ハンガー内にいる全ての者に聞こえるよう号令を響き渡らせる。 「聞いたか野郎ども! サンドゲイル、全機発進だ──!」 各々が威勢良く応え、速やかに出撃できるよう搭乗準備を開始する。 その中で一人、非常にゆったりとした足取りで此方へ歩む寄るアハトの姿があった。 「施設に残って、奴らの相手をする──構わんな?」 「ああ。手はず通りに頼む」 サンドゲイルに引き入れてからまだ間もないアハトには、その身の上、容易に姿を外部へ曝せない、或いは曝そうとしない姿勢を以前から見せていた。 「今回の襲撃規模、ただ事ではあるまい。本社がその気だとしたら、あの娘は黙って引き渡した方が利口かもしれんぞ」 連絡通路へと向かうアハトと背中合わせの状態を保ったまま、シェルブは逡巡なく応答する。 「──かもしれん。だが、通すべき筋が俺達にはある。それをなくして、俺達はどうやって傭兵を語れる。この生き様を通し、マイ自身が望むようにその筋を通させてやりたい。──後の事はさておいても、な?」 力強い意思を秘めるシェルブの言動に対し、アハトは一拍を置いて小さく苦笑する。 「ふ──シェルブ、お前も大概狂ってるな」 出がかった言葉を飲み込み、シェルブは自らも出撃すべく待機室へと向かった。 前を向いて狂わなければ、生き残れない戦場もあるさ──。 それにどう折り合いをつけて生きるかが、戦士の分水嶺だ──。 * 嬉しかった──。 そう思ったのは、産まれてからの日々の中で、二回──。 私が知らなかった世界には、そんな感情が生きているという事に、ようやく確信を持つ事ができた。 でも、繋がれた日々は、やはり私に嵌められた頚城を強く引き戻す。 だから私は、淡く暖かいその感情を享受する前に、線を引いた。 それがいつか私自身の頚城を引っ張り、首を酷く締めつける事を知っていたからだ。 傷つき、傷つけるのなら、本当に受け入れてはいけない。 身体が横たえられた薄暗く狭い筺体の中で、そんな事をぼんやりと考えていた。 私が生きるのは、いつの時代も変わらない。 小さく区切られた普遍世界──。 願う事が誰の損にもならないとは言うけれど、自分が傷つくのなら、それを考える事すら愚かしい。 ただ、かつて自分がそう思った事だけを胸に抱いて、日々を繰り返そう──。 そう心に考え、瞳を瞑ろうとした時だった。 無意識下で稼動していた機械化知覚機能群が、外部環境情報の変動を捕捉する。 何の興味もなく、しかし、退屈凌ぎには丁度いいものかと、意識を傾けて外部状況の取得を試みる。各種知覚機能群の稼動率を僅かに底上げしただけで、単純な遮光外板で覆っているだけの天蓋は透過できた。 周囲一帯に広がる荒野──その果てに粉塵を巻き上げ、渇いた大地を縦断してくる幾つかの機影があった。 更に知覚機能を遠方へ拡張して詳細を把握した時、私は余りの驚愕に上体を起こした。 「嘘でしょ、何故──っ?」 驚異的な速度で荒野を走り寄る複数の機影──その中の一つに、見覚えがあった。 最先鋒へ立つ、滄海のように深い彩を宿した、この時代の鋼鉄の戦士──。 「マイ、貴方は──」 * ソグラト管轄領外へ向け前方の荒野を縦断していく動体群の反応を、各種搭載センサー群と広域索敵態勢で稼動中のレーダーが捕捉する。 娘が拉致されてからほぼ間を置かず追撃に入った事も一助となって、見事な引き際を持って撤退を試みる敵部隊の後方有効戦域内へ踏み込む事ができた。 拡視界に捕捉した敵性動体を速やかに解析した戦術支援AIが、中性的なプログラムボイスを操って報告事項を述べる。 『敵性動体数、四機。いずれもAC兵器、中量級二脚機〝三〟、軽量級二脚機〝一〟の同規模編成です──』 敵部隊が此方の増速接近へ対応すべく後退陣形を移行、背部に収容コンテナを積載したACを最前衛に残りの三機が後方へ扇状に展開し始めた。 典型的な後退支援隊形──手堅く、確実に逃げ切るつもりか。 積極的な攻勢を仕掛けてくる事は一切ない、相手の出方を瞬時に把握したシェルブは隊内回線を通じて指示を出した。 「彼我の戦力差は同等だ。最前衛から時計回りに、敵個体をレイダー1から4とする。目標は〝レイダー4〟が確保しているコンテナの奪還だ。流れ弾を当てないよう、注意してかかれ」 ただの迫撃戦闘ならば問題ないが、今回は奪還すべき対象が此方にある。それは恐らく、コンテナを最優確保先目標として動く敵部隊も同様だろう。 つまり、此方が主導権を掌握して動く限り、相手もそれに合わせて動いてくる事に直結している。 制圧戦闘を行なうには戦域密度が高く、戦闘の際の何れかの呷りを受けて万が一の事態──コンテナが被弾するような末路だけは避けねばならない。 奪還猶予は、敵部隊の領域外離脱まで──地域情勢を鑑みるならば、相対距離的にも然程時間は残されていないと考えた方が良い。 如何に冷静に、繊細に、そして同時に大胆に動くかが重要だ。 「敵隊形の即時分断、各個撃破を図る──状況を見誤って遅れるなよ?」 『了解です──』 横列追撃隊形の最右翼を進行中の軽量級二脚AC、〝ジルエリッタ〟に乗り込むシルヴィアが意気よく応える。それに続いてシェルブが自ら駆る機体〝ツエルブ〟の右側にフィクスブラウを併走させるシーアが、 『連続だが、中々楽しめそうだな』 と、言う。 本人が口にする通り先程の戦闘から時間は経ておらず、シーアの口調は冷静でこそあるものの、何処か高揚感に満ちている。シェルブが言及する前に、旗艦の管制室に残って通信支援を行なう専属オペレーターのエイミが、彼を嗜めた。 『シーア、ボスが言ってるのはあくまであの娘の奪還支援よ、わかっていて?』 度の過ぎた息子の手を抓るような、母性をすら感じさせるエイミに対し、シーアはばつが悪そうに言い返す。 『わかってるって──』 自陣に今の所、問題はないな──中央右寄りを最先鋒で疾駆する滄海色の中量級二脚機〝蒼竜騎〟の背中を見咎め、シェルブは冷淡に勤めた口調で問う。 「奪還猶予は然程ないぞ、ドラグーン」 『はい。何としても、イリヤを取り戻します──』 心理的にこの状況を逼迫していると考える筈のマイが、最も冷静に勤めた態度で応える。しかし、その戦意は猛っている事だろう。 そろそろ仕掛けるか──。 シェルブは左腕部携行兵装──軽装型滑腔砲を注視し、操縦把付随のスイッチを数度押し込んで装填弾種を白燐発煙弾に切り替える。即座に砲口を跳ね上げ、四五〇メートル前方を移動中の敵部隊最後尾に向け発砲した。 それを契機として自陣のAC機が各々に機動展開を開始、その様子を視界の隅で捉えながら自らもフットペダルを踏み込む。著しい前方増速による軽負荷が身体をパイロットシートに押し付ける中、自然燃焼から急速な収束へ移った白燐が広範囲にわたって乳白色の煙幕を展開する。 強襲機動を取った蒼竜騎が突出して煙幕右側からの迂回を実行、後方は追従進路を取るフィクスブラウが安全射角を取った上で腕部武装の滑腔砲を用いて制圧射撃を撃ち込んだ。 その隙に蒼竜騎が前方へ大きく食い込んだ直後、識別名称〝レイダー1〟と割り振った中量級二脚のAC機が煙幕を突き破る。即座に反転したフィクスブラウが蒼竜騎の後背を護り、交戦状態へと移行した。 明確な戦術計画がなくとも柔軟に状況を展開した二人に感心しつつ、シェルブは自身の駆る重量級二脚機ツエルブを左側迂回路へ進行させていた。 ツエルブの動体反応を捕捉していた〝レイダー2〟が、進行路を遮断すべく同様に煙幕の中から姿を現す。 先行し、シェルブは仕掛ける。右腕部の重滑腔砲の砲口を跳ね上げ、APFSDS弾(離脱装弾筒付徹翼安定徹甲弾)を撃ち込む。多大な砲火が一瞬有視界に閃光を撒き散らし、外部情報を遮断する。 「ほう──、一兵卒とは違うようだな……」 流石にミラージュ本社が送り込んできた精鋭部隊と言うだけはあるか、微細な機動増速を行なって此方の狙い済ました着弾地点を狂わした。大口径のAPFSDS弾が荒野の大地へ弾痕を穿ち、大量の乾燥した土砂が中空へ舞い上がる。 シェルブは焦燥しない。何故ならば、自分が確信して行なった誘導軌道にレイダー2が過たず踏み込んだからである。レイダー2が踏み込んだ軌道上に、砲弾の再装填を済ませた左腕部軽装型滑腔砲より通常榴弾を撃ち込む。 黒々とした噴煙が上がり、胸部に重大な損傷を受けながらもなお戦闘機動を展開するレイダー2がその中から離脱を試みる。 『レイダー2、前胸部破損、冷却機構系統の機能低下を確認。有効打撃です──』 攻撃の手は、一切緩めない。コンソールを叩いて火器管制システムの管轄対象を切り替え、背部ミサイルコンテナを展開、確定捕捉を済ませた小型地対地ミサイルを連続射出した。急加速した小型ミサイル群が燃焼ガスによる白線を引き、レイダー2へと殺到する。 立て続けの攻撃に慌てて回避行動を取ったレイダー2が、大型推力機構のオーバード・ブーストを起動し、交戦圏からの一時離脱を図る。 小型ミサイルの直撃を回避されはしたものの、それ以上の回避機動は不可能である事をシェルブは確信していた。事前に破壊した冷却気候系統の不全により、間もなくレイダー2はその機体機動の停止を余儀なくされる。 そして僅かに三秒後、不意に高速機動を停止したレイダー2がその無防備な後背部を曝した。 其処へ撃ち込んだAPFSDS弾が胸部を無慈悲に貫通し、指揮系統を喪失したレイダー2の機体が、ずん、と大地に倒壊する。 「まずは一機──」 精鋭部隊の一機を瞬く間に撃滅せしめてみせたシェルブではあったが、大した感慨や高揚感などはなく、戦闘収束までの一切が全て当人の予定調和の範疇に過ぎなかった。 表現としてこれ以上ない陳腐さなのかもしれないが、赤子の手を捻ると言って良い程度のものだった。 しかし、事態の推移に対してはそうも言っていられないだろう。 支配企業の一角を担うミラージュ社、その本社直轄部隊が出向いて独立武装勢力を襲撃したのだ。 この数日間の動向が全て監視されていたというのなら、我々の置かれている状況は傍目以上に致命的な爆弾を抱えているという事になりかねない。 荒野の風によって流れていく黒煙の裂け目に、膝関節を追って中座する識別目標レイダー1の機影を見咎める。その傍に、武装の幾つかを投棄して格納装備の光学発振装置を備えたフィクスブラウが立っていた。 『他に歯ごたえのある奴はいないのか──?』 「スコープアイ、此方ザックセル──始末が済んだのならレイダー4の追撃、及びマイの支援に向かうぞ」 『了解──』 今は戦闘を全面的に収束させる事が、最優先案件である。 →Next… ⑥ コメントフォーム 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kubo-zemi/pages/2199.html
トップページ 新聞論評 新聞論評 2012 新聞論評 20120206 this Page updated 2012-02-08 00 52 55 (Wed) 2012年2月6日締切 新聞論評 200914029 平中隆義 1.新聞情報 見出し 「iPhoneの人気ゲーム、Android版も登場」実は偽アプリ インストールすると広告サイトへ誘導 新聞名 日本経済新聞 オンライン 発行日 2012年2月3日 面 オンラインのため不明 2.要約 米トレンドマイクロ社はiphoneなどで大人気ゲームアプリのAndroid版をかたる極めて悪質なアプリが発見され、使用しないようにユーザーに注意呼びかけを行なっている。なお、実際のAndroid版は製作途中である。 (90文字) 3.論評 近年の、スマートフォンの普及により、いつかはこのような犯罪を起こすものも現れることは予測済みだったが最近のやり口は巧妙なものであると言わざるをえない。今回問題となっているアプリは起動するとかってに広告サイトに誘導し、facebookなどのソーシャルネットワークアプリなどに勝手なリクエストなどを行わせる悪質なものである。数日前に違法ダウンロードなどへの取締が強化されサイバー犯罪を行うものも多少は減るという私の予想を超える事態になっていることに驚きを隠せない心境である。 便利な半面でユーザーがうまく機能を制御しきれていないこの多機能端末にどのような具体的対策を講じるかが今後の被害者拡大の抑止につながると私は考える。私はアプリ自体をあまり入手しないが、悪質なアプリの被害に合わないためにどこのメーカーのものなのかと評価を確認するなどは行なっていたが、今回の事件をきっかけに自分なりの対策方法について考察する必要があると断定した。(408文字) まず,なぜオンライン版ですか?それをしてほしくないから,明日まで待つとメールしたつもりなのですが・・・・。1月30日付の論評もまだ掲載されていません。 そもそも毎日,新聞(できたら日経新聞)に目を通す時間を作れと言ってますが,それもできてないということです。今,自分のしてることについてよく考えることを求めます。 -- (dj-kubo) 2012-02-08 05 52 50 段落行頭は1文字分字下げを。 -- (dj-kubo) 2012-02-08 05 54 20 論評お疲れ様です! 日経はコンビニでも買えますのでぜひ頑張ってください -- (長野原みお) 2012-02-08 07 09 13 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/androidtools/pages/19.html
取り敢えず環境は作れたのでメモ替わりにめっちゃサンプルを探しまくる。 [Android]KeyEventでキー入力取得 そんなわけでアプリ作るのに必須のキー入力。 キーイベントを取得するにはonKeyDown()をオーバーライドすれば良い。 そのときのポイントが2つ。 "setFocusable(true);"を忘れない "invalidate();"を忘れない invalidate()が必要なのはループするためなので、 Handlerとか使ってループする場合は必要でないかも。 package net.swelt.android.keyeventtest; import android.app.Activity; import android.os.Bundle; import android.content.Context; import android.content.Resources; import android.graphics.*; import android.view.View; import android.view.KeyEvent; import android.graphics.Canvas; import android.graphics.drawable.Drawable; public class KeyEventTest extends Activity { /** Called when the activity is first created. */ @Override public void onCreate(Bundle icicle) { super.onCreate(icicle); setContentView(new SampleView(this)); } private static class SampleView extends View { private final int MOVE_VALUE = 10; private final int AREA_WIDTH = 320; private final int AREA_HEIGHT = 200; private Paint mPaint = new Paint(); private Point mPos = new Point(); private Bitmap mBitmap; public SampleView(Context context) { super(context); setFocusable(true); mBitmap = loadImage(R.drawable.kirby, 64 , 64); } public Bitmap loadImage(int fileid, int width, int height) { Resources r = this.getContext().getResources(); Bitmap bitmap = Bitmap.createBitmap(width, height, true); Drawable drawable = r.getDrawable(fileid); Canvas canvas = new Canvas(bitmap); drawable.setBounds(0, 0, width, height); drawable.draw(canvas); return bitmap; } @Override protected void onDraw(Canvas canvas) { Paint paint = mPaint; canvas.drawColor(Color.WHITE); canvas.drawBitmap(mBitmap, mPos.x, mPos.y, paint); invalidate(); } @Override public boolean onKeyDown(int keyCode, KeyEvent event) { switch(keyCode) { case KeyEvent.KEYCODE_DPAD_DOWN mPos.y += MOVE_VALUE; if( mPos.y + mBitmap.height() AREA_HEIGHT ) mPos.y = AREA_HEIGHT - mBitmap.height(); return true; case KeyEvent.KEYCODE_DPAD_UP mPos.y -= MOVE_VALUE; if( mPos.y 0 ) mPos.y = 0; return true; case KeyEvent.KEYCODE_DPAD_LEFT mPos.x -= MOVE_VALUE; if( mPos.x 0 ) mPos.x = 0; return true; case KeyEvent.KEYCODE_DPAD_RIGHT mPos.x += MOVE_VALUE; if( mPos.x + mBitmap.width() AREA_WIDTH ) mPos.x = AREA_WIDTH - mBitmap.width(); return true; } return super.onKeyDown(keyCode, event); } } }
https://w.atwiki.jp/hoshiba/pages/25.html
※WindowsMobile全般に関する情報です。 ウェブサイト新着情報 「MicrosoftとQualcommの独占契約が間もなく終了」報道を考える(ITmedia PC USER) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース プレイすると実際に農作物が手に入る「リアルファーム」、初交換者を対象に国産牛肉&ブランド米が1年分もらえる「ドドンと!1年分キャンペーン」を実施! - PR TIMES さらば、Windows Mobile! 本日をもって完全にサポート終了 - GIZMODO JAPAN キミはXperia初号機のWindows mobile「Xperia X1」を知っているか? - 週刊アスキー - 週刊アスキー 「もうちょっと」だった--ゲイツ氏、「Windows Mobile」の失敗を語る - CNET Japan MS、Windows MobileユーザーにAndroidとiOSを推奨 - iPhone Mania QWERTYキーボード搭載で世界最薄 Windows Mobileスマホ「IS02」(懐かしのケータイ) - - ITmedia 玄人向け? Windows Mobile搭載のHTC製スマホが税込999円でセール中 - AKIBA PC Hotline! どこから出てきた?Windows Mobileスマホが税込2980円、スライド式キーボード搭載 未使用品で在庫は約700台、ただし難あり ( なもの) - AKIBA PC Hotline! 東芝スマホが2980円! QWERTYキーボード付きWindows Mobileスマホが大量販売中 - ASCII.jp Windows 10の全7エディションが明らかに…まさかのWindows Mobileまで復活! - ギズモード・ジャパン Windows Phone、Symbian、BlackBerry――日本から消えたスマホOSから何が見える?:佐野正弘のスマホビジネス文化論(1/2 ページ) - - ITmedia マイクロソフト、「Windows Mobile 6.x」向けアプリストアを閉鎖へ - CNET Japan Windows Phone 7スマートフォン「OMNIA 7」ムービーレビュー、過去の「Windows Mobile」とは雲泥の差に - GIGAZINE マイクロソフト越川氏に聞く Windows Phoneの「7」と「6」、MSの目指すモバイルの世界 - ケータイ Watch ソニエリ、Windows Mobile 6.5.3搭載携帯「Aspen」発表 - ITmedia 【三浦優子のIT業界通信】 Windows 7+Windows Mobile 6.5で何が変わる? - PC Watch 【レビュー】Windows Mobile 6.5を搭載した「HYBRID W-ZERO3」 | RBB TODAY - RBB Today MS公式アプリ配信“Marketplace”の日本語版がWindows Mobile 6/6.1で利用可能に - 窓の杜 【特別企画】Windows Mobileスマートフォン“EMONSTER”をAndroid端末に! - 窓の杜 Windows Mobile 6.5レビュー:言い訳する余地もない - ギズモード・ジャパン Windows Mobile 6.5搭載の“Windows phone”、10月6日発売へ - ITmedia ドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルでWindows Mobileはどこが違う!? - CNET Japan Microsoft、新モバイル向けOS「Windows Mobile 6.5」を発表 - INTERNET Watch 携帯電話向け新OS Windows Mobile 6.5が発表 - ASCII.jp 「Touch Diamond」(S21HT)レビュー 「TouchFLO 3D」搭載のWindows Mobile端末 - ケータイ Watch どこが変わった? 「Windows Mobile 6」 Windows Mobile 5.0と徹底比較 - ケータイ Watch 国内初のWindows Mobile 6を搭載する「ウィンドウズケータイ」2機種が登場 - ITmedia 【NEWS】MS、ActiveSyncのVista向け後継版「Windows Mobile デバイス センター」を公開 - 窓の杜 NTTドコモ、Windows Mobile搭載3Gスマートフォン「hTc Z」 - PC Watch マイクロソフト、パワポが使えるPocket PC用最新OSを初公開 - ITmedia ブログ新着情報 #blogsearch2 technorati検索結果 #technorati
https://w.atwiki.jp/myandroidlife/
My Android Life ここは、管理人がAndroid用のゲームアプリ開発を始めるにあたり作成したWikiです。 始めは個人用のメモが中心になります。 私の目的 Androidアプリの開発に関係する様々なスキル/経験値を向上させる。 私の目標 2011年6月1日までにAndroid用のアプリをリリースして、6月末までに3万ダウンロードを達成する。 (※3ヶ月間の短期集中でいきたいと思います。目標大きくね^^;) 私の略歴 仕事の方は、社内SE(ヘルプデスク、サーバー管理)を5年した後、、 現在、ゲーム業界3年目になります。(PCオンラインゲームの運営をしています。) どうぞ宜しくお願いいたします。 きっかけ オンラインゲームの運営を日々の仕事にしていますが、 自分でもゲームの開発をしてみたいと思い、今回Androidアプリでのゲーム開発を選びました。 システム部分はある程度出来ると思いますが、グラフィック・サウンドのセンスが全くゼロです/// 作業時間の確保 土日の昼間に各5時間程度 平日は仕事が遅いので、深夜に2時間程度になります。 ここで作業ログも残したいと思います。
https://w.atwiki.jp/androidplayapp/pages/26.html
コメント すべてのコメントを見る 選択肢 投票 良い (0) どちらかというと良い (0) 普通 (0) どちらかというと悪い (0) 悪い (0) アプリ関連 更新情報 オクトバ様 おすすめアプリ比較 オクトバ セール情報 「ADV 最悪なる災厄人間に捧ぐ」が大幅割引中!&「戦乱のサムライキングダム」が8周年記念開催中! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「ADV 最悪なる災厄人間に捧ぐ」「ソードナイツ」「戦乱のサムライキングダム」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つかるかも!? 【お願い】 デベロ [ #8230;] The post セール情報 「ADV 最悪なる災厄人間に捧ぐ」が大幅割引中!&「戦乱のサムライキングダム」が8周年記念開催中! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . セール情報 「Rush Rally Origins」が約半額!&「にゃんこ大戦争」でQ周年記念ガチャ「極選抜祭」開催! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「Rush Rally Origins」「ソードナイツ」「にゃんこ大戦争」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つかるかも!? 【お願い】 デベロッパ [ #8230;] The post セール情報 「Rush Rally Origins」が約半額!&「にゃんこ大戦争」でQ周年記念ガチャ「極選抜祭」開催! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . 先週のニュースまとめ 「Xperia PRO-I」が12月発売!ホームアプリ「SNS launcher」登場!【2021年10月23日 ~ 2021年10月29日】 ソニーが「Xperia PRO-I」を12月15日に発売します。また、XperiaでVR体験できるゴーグル「Xperia View」が11月19日に発売となっています。ソフトバンクからは法人向けの5Gスマートフォン「DI [ #8230;] The post 先週のニュースまとめ 「Xperia PRO-I」が12月発売!ホームアプリ「SNS launcher」登場!【2021年10月23日 ~ 2021年10月29日】 appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . セール情報 謎解きアドベンチャー「The Lost Treasure」がセール中!&「ぷよぷよ!!クエスト」で「テクニカルクエスト アルガーの挑戦状」開催! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「The Lost Treasure」「モニュメントバレー」「ぷよぷよ!!クエスト」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つかるかも!? 【お願い】 [ #8230;] The post セール情報 謎解きアドベンチャー「The Lost Treasure」がセール中!&「ぷよぷよ!!クエスト」で「テクニカルクエスト アルガーの挑戦状」開催! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . 先週のニュースまとめ 5Gタブレット「Lenovo TAB6」登場。「HUAWEI MatePad 11」に新色!【2021年10月16日 ~ 2021年10月22日】 ソフトバンクからレノボ・ジャパンの5Gタブレット「Lenovo TAB6」が発売となっています。また、ファーウェイのタブレット「HUAWEI MatePad 11」に新色の「マットグレー」が登場し、カラーバリエーションが [ #8230;] The post 先週のニュースまとめ 5Gタブレット「Lenovo TAB6」登場。「HUAWEI MatePad 11」に新色!【2021年10月16日 ~ 2021年10月22日】 appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . セール情報 お弁当パズルゲーム「隠弁当 -inbento-」が約半額!&「クッキングママ お料理しましょ!」でクリスマスイベントが12月1日より開催! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「隠弁当 -inbento-」「7Days」「クッキングママ お料理しましょ!」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つかるかも!? 【お願い】 デベ [ #8230;] The post セール情報 お弁当パズルゲーム「隠弁当 -inbento-」が約半額!&「クッキングママ お料理しましょ!」でクリスマスイベントが12月1日より開催! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . セール情報 「Kingdom Rush オリジンズ」がセール中!&カプコンの「スヌーピー」アプリ3タイトル合同キャンペーン開催! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「Kingdom Rush オリジンズ」「キングダムラッシュの復讐」「スヌーピードロップス」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つかるかも!? 【 [ #8230;] The post セール情報 「Kingdom Rush オリジンズ」がセール中!&カプコンの「スヌーピー」アプリ3タイトル合同キャンペーン開催! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . セール情報 ノベルゲーム「アンダーワールドオフィス」がセール中!&「妖怪三国志 国盗りウォーズ」で400万DL記念ステップアップガシャ! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「アンダーワールドオフィス」「She Sees Red」「妖怪三国志 国盗りウォーズ」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つかるかも!? 【お願い】 [ #8230;] The post セール情報 ノベルゲーム「アンダーワールドオフィス」がセール中!&「妖怪三国志 国盗りウォーズ」で400万DL記念ステップアップガシャ! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . セール情報 「すべてのビデオオーディオコンバータPRO」が110円!&新作パズルアプリ「バブルンのパズルブラスト!」リリース! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「すべてのビデオオーディオコンバータPRO」「ReFactory」「バブルンのパズルブラスト!」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つかるかも!? [ #8230;] The post セール情報 「すべてのビデオオーディオコンバータPRO」が110円!&新作パズルアプリ「バブルンのパズルブラスト!」リリース! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . セール情報 「Epic Heroes」が無料!&「SHOW BY ROCK!! Fes A Live」でリリース609日記念キャンペーン! オクトバ、セール・お買い得情報です。 今日は「Epic Heroes」「Dungon Shooer」「SHOW BY ROCK!! Fes A Live」のセール・キャンペーン情報をお伝えします。 意外な掘り出し物が見つ [ #8230;] The post セール情報 「Epic Heroes」が無料!&「SHOW BY ROCK!! Fes A Live」でリリース609日記念キャンペーン! appeared first on おすすめアプリ比較 オクトバ . 引用元 : http //octoba.net/feed Android(アンドロイド)アプリ・スマートフォン情報サイト|アンドロック様 アンドロック 無料LINEスタンプ&隠しLINEスタンプまとめ!無料で使えるラインスタンプ盛りだくさん!【iPhone/Android共通】12/7更新 無料でゲットできちゃうLINEスタンプを一挙大公開! カワイイ・カッコイイ・面白い、様々なLINEスタンプが全て無料でダウンロードできます! しかも、スタンプショップには出てこない隠し無料LINEスタンプも大量公開!超激 [ #8230;] プロスピA 攻略情報まとめ|プロ野球スピリッツA攻略 プロスピA(プロ野球スピリッツA)の攻略情報をまとめたページです。 基本的な使い方や機能、イベント攻略、おすすめ情報などなど!プロスピAをプレイしている人は是非チェックしてみてください!! [Adsense] Check [ #8230;] 【プロスピA】OB第2弾(2021年)の評価ランキング!火の玉ストレート藤川球児降臨!【Sランク評価】 2021年度シリーズ2OB第2弾の評価ランキングを紹介します。 前回登場したOBダルビッシュセレクションも超豪華ラインナップでしたが、今回は火の玉ストレート藤川球児が登場します!! 火の玉ストレート藤川球児は既にTwit [ #8230;] 【プロスピA】OBダルビッシュセレクション2021の選手評価ランキング! 昨年のセレクション第2弾では、ダルビッシュ有が選ぶキャリアハイベストナインと称してダルビッシュセレクションが開催されましたが、今年はOBダルビッシュセレクションが開催されます!! さらに、OBダルビッシュ有の登場もあると [ #8230;] 【プロスピA】2021シリーズ2 一塁手の評価ランキング!【Sランク評価】 2021年度シリーズ2の一塁手の評価ランキングを紹介します。 先日アニバーサリー第1弾と第2弾が公開されてばかりなので、ここでエナジーを消費するユーザーはほとんどいないと思いますが、獲得した際には誰が当たり選手なのかチェ [ #8230;] 東京卍リベンジャーズが無料で読めるマンガアプリまとめ 東京卍リベンジャーズが無料で読めるマンガアプリ一覧です。 本記事で紹介するマンガアプリ・マンガサイトなら、すべて合法的に無料で東京卍リベンジャーズを読む事が出来ます。 期間限定のキャンペーンだったり、読める話数が限定され [ #8230;] 【プロスピA】2021アニバーサリー第2弾の選手評価ランキング!確定で獲得したい選手は? 2021年度アニバーサリー第2弾の選手評価ランキングを紹介します。 アニバーサリー第1弾に続き第2弾もかなり素晴らしいラインナップ!ポジション最強選手も多数! 確定では誰を取るべきなのかチェックしていきましょう。 [Ad [ #8230;] LINEグループを作る方法&複数人トークを作成する方法!基礎知識を解説! LINEでグループを作る方法と、複数人トークをする方法を紹介します。 LINEグループと複数人トークについての基礎知識です。 2021年9月更新:グループの自動承認について LINEグループとは?複数人トークとは? LI [ #8230;] 【プロスピA】2021アニバーサリー第1弾の選手評価ランキング!確定で獲得したい選手は? 2021年度アニバーサリー第1弾の選手評価ランキングを紹介します。 今年のアニバーサリーも非常に豪華なラインナップ!アニバーサリープレイヤー確定スカウトでは一体誰を獲得すべきなのかチェックしていきましょう! [Adsen [ #8230;] 【プロスピA】2021S1左翼手の評価ランキング!【Sランク評価】 2021年度シリーズ2の左翼手の評価ランキングを紹介します。 左翼手はシリーズ1とラインナップはほとんど同じですが、それぞれ能力に変化があるようです。上がっている選手もいれば下がっている選手もいますね。 評価をチェックし [ #8230;] 引用元 : http //androck.jp/feed/ アンドロイドアプリのポータルサイトappliko(アプリコ)様 feedreader プラグインエラー RSSを入力してください。
https://w.atwiki.jp/pocketplanes/pages/18.html
FLIGHT CREW概要 画面の見方 2chスレ有志チーム FLIGHT CREW 概要 FLIGHT CREWはユーザ参加型のイベント、指定された街に制限時間の間に乗客・荷物を運べるかを競う。 成績によってBUXや機体など商品が貰える。 画面の見方 ARCHAEOLOGICAL DIG IN SANTIAGO 現在開催中のイベント名と目的地 IN xxxが目的地 JOBS BY FLIGHT CREW(#5 IN WORLD) 所属しているチーム全体でこなした仕事の数と世界ランキングでの順位 JOBS BY YOU 自分がこなした仕事の数とチーム内での順位 2chスレ有志チーム 2chスレッドの有志チームは「2CH」 FLIGHT CREW画面で「#XXX」と書かれている部分に2CHと入力することで参加出来る。 ※半角で入力すること
https://w.atwiki.jp/achdh/pages/284.html
③*④ 干上がり罅割れた荒野。地平線から視線を覗かせる夕日にその身を焼かれ、赤銅色に染めあげられている。 数多ある自然の造形美の内にて、無機なる物は唯一つだ。それは地平線まで続いている錯覚させるほどに長大な灰色の道路である。片側の車線を一際大きな輸送車両が移動している。 機動兵器――アーマード・コアを運送することを主とする専用の大型輸送車両。その搭乗席に座しているのは、二人の男性と一人の女性である。 整備士を髣髴とさせる装いの若人の名はシーア・ヘルゼン。前者よりもやや年上と思わしき男性の名はキース・ウォルナント。そして――童書の中より現れたとさえ思える、妖しい美しさを添えた少女――イリヤである。 ソグラト付近での一件から、事を終えた三人は、ターミナル・スフィアが存在する完全循環型都市――エデンⅣへと向かっていた、現在はその道中にある。 三人が搭乗する車両は、ACの運搬を主とする輸送車両だ。大重量の機動兵器たるアーマード・コアを運送することが出来る輸送車両だとは言え、その移動速度は決して速いほうではない。 また燃料の補給、そして後顧の憂いを取り除くという意味でも、積載するアーマード・コア――フィクスブラウの弾薬の補給などは必須であった。このため、道中の小都市にて停泊することもまた必要な事柄であった。 それ故にソグラト周辺から旅立って一週間以上が経過してもなお、三人は目的地であるエデンⅣには未だ到着できないでいた。 シーアは地平線を見据える。 高くに昇っていた太陽は下り始めており、夕刻を示しつつある。情報端末の周辺地域情報からすれば、目的地であるエデンⅣ付近まで差し迫っている。 マッピング情報の隅に表示された直線距離と車両の移動速度から参照するに、シーアは今夜中にも到着するであろうと推測する。 「お――見えてきたな」 地平線の彼方から盛り上がり始める、半球形状の建造物。距離が遠いためか、建造物として桁違いとも言える大きさを感じ取ることはできない。完全循環型都市――エデン。シーア含め、三人はその四番目の巨大都市を見咎める。 何の前触れもなく、小型携帯端末が鳴り響く。車内の青年――シーア・ヘルゼンは自身の携帯端末を取り出し、受信を選択する。ディスプレイに表示されたのは自身が所属するリヴァルディだ 通信回線を確立すると、ディスプレイに見知った顔が表示される。極東生まれ特有の妖しさ含む黒髪が目を惹く女性が映し出される。 エイミ・ツザキ。サンドゲイルの通信士であると同時に、シーアにとってかけがえのない人物である。 ディスプレイ上に表示されたエイミの表情には、僅かばかりの憂いが垣間見える、 『シーア……』 「どうしたんだエイミ。何かあったのか?」 『うん。あのね……』 「あぁ――」 エイミが一度視線をはずし、何か思案するかのような表情へと変化する。シーアは彼女の想いをその表情から推察できないでいた。故に待ち続ける。 そうして幾多の迷いを超えたのか、エイミは一つの言葉を紡ぐ。 『……ごめん、なんでもない』 「なんだそれ。何かあったんだろ?」 『うん。そうなんだけどね……』 シーアは急かすことなく、静かに待ち続ける。 急いては事を仕損じる――とは、エイミに教えられた東洋の諺だったか。今、それを実行することが正しいのかはわからない。だがエイミが何を伝えたいのかがわからない以上、こうして言葉を紡いでくれるのを待つ他はない。 『シーア。もし――もしだよ? 仲間と戦うことになったら、どうする?』 「どうするってお前……」 シーアは予想だにしないエイミの言葉を受け、言いよどむ。エイミの言う「仲間と戦うことになったらどうするか」などと言う仮定を問われたところで、そのようなありえもしないようなことを即座に答えることはできない。 『うん。だからもしも、だよ?』 「――俺は」 シーアは視界を閉じ、思案する。今の仲間を――サンドゲイルの面々の姿を脳裏に思い浮かべ、戦場で対峙した際の光景を想像する。 その場合に己が選択すべき行動は――。 「俺なら――例え仲間であっても討つ。そいつが敵対しようとしているなら、そいつも覚悟の上だろ? なら問答は無駄だ。意見が食い違う以上、押し通す他ないな」 『うん。そうだよね……』 その答えにエイミの声が沈む。それはつまり――。 「まさか――」 『ううん。なんでもない。それじゃ――』 通信が半ば一方的に切られる。シーアはエイミの言葉、その意味を片隅で考察する。 車両内に生まれる沈黙。反して車両は目的地への走破に従事する。地平線から覗くエデン。距離が近くなったことで、その姿が先ほどよりやや大きく感じる。 「天蓋が割れてる……?」 完全防護を謳うエデンの外壁が破壊されているという驚愕の事実。リヴァルディより出発する際に得た、エデンⅣの音信不通に関係することか。 次いで、輸送車両の搭乗席に影が舞い下りる。遅れて轟いたのは航空機の機関音だ。 「輸送機にしちゃ随分低い場所を飛んでるな」 キースが訝しげに言葉を吐く。こちらが搭乗する輸送車両よりも遥か先へと進む輸送機。 エデンへと向かうように思えた輸送車両が、その速度を減じる。後部ハッチがゆっくりと開放され、その先に機動兵器の装甲と強く意思を灯すカメラアイが僅かに見える。 一歩進んだ機動兵器が輸送機から降下する。陽光を浴び、その蒼暗色の鎧袖が晒される。 機動兵器の見知った外見を捉えたシーアは、苦々しい言葉を吐露する。 「――あの馬鹿……」 降下する蒼暗色の機動兵器。その外貌、惑うことなき――蒼竜騎。サンドゲイルに所属するレイヴン、マイ・アーヴァンクが所持するACである。 『もしだよ? 仲間と戦うことになったら、どうする?』 シーアはエイミの言葉と目の前の立ち塞がる機動兵器、その二つの事柄を結びつけ、合点する。 蒼竜騎は広大な荒野に対し逆噴射を行い、静謐に着地する。立ち塞がる機動兵器を見咎め、キースは輸送車両を緊急停止させる。 シーアは即座に後部へと移動し、フィクスブラウに搭乗する。手早くフィクスブラウの戦闘システムを起動させ、立ち上がる。蒼暗色の竜騎兵と相対するフィクスブラウ。 『……イリヤを渡してもらおう、スコープ・アイ』 通信機越しに聞こえる声は、惑うことなくマイのものだ。その声音は些か固い。 「――はいそうですか、というわけにいかないのはわかってるよな?」 『あぁ』 「ということは、俺と戦うことになるわけだ」 『……あぁ』 「覚悟の上なんだな?」 『――――あぁ』 「そうか、ならいい。互いにレイヴンだ。是非を問うまでもない」 『助かる』 赤銅褐色の大地、その内に静寂が浸されていく。静けさはさながら豪嵐を前にした暗雲の如く、彼らは等しく整然と立ち並んでいる。 一つ、二つ。あるいは一重、二重か。もたらされる一瞬とは滴る雫であり、積み重ねることでそれは黄金の大河となる。それこそが時の流れであると、人は認識する。 だが、この場にて時を刻む雫を知覚できるものは一切存在しない。変異のない風景とは、すなわち現在軸から見てその前後、それらの違いを検証・照合するだけの情報がないことを意味する。 開幕を示すものは未だ非ず。舞台は今なお、その姿を変えることなき夕凪の如く。時は須らく留まり続ける。 その光景の中にて、否を唱えようと一つの影が舞い降りる。夕映えを受けてもなお、明瞭さを発揮しない黒衣の羽翼を持つ鴉。彼は荒々しい岩山の頂上へと着陸する。 鴉の毛並みはこの幅広い荒野の中にありて、唯一の黒点である。異質といっても過言ではないだろう。鴉はこの場に満ちる緊張感に頓着することなく周囲を世話しなく見渡す。 二機の巨人から放たれる戦意が渦となる空間。その渦中にあり、己が場違いであることを認識したのだろう。黒衣の毛並みを持つ鴉が翼を大きく広げる。奇しくも、それは闘争の開幕の予兆へと変異する。 相対する二機の機動兵器、その脚が僅かに沈む。それに呼応するかのよう、一羽の鴉もまた邪なる大地から汚れなき大空へと飛び立とうと、その小さな身体に膂力を込める。 黒闇色の両翼が大きく広がる。力強く羽ばたく。鴉は赤銅の大地を飛び立つ。 闘争が幕を開けた。 -Carpe viam et susceptum perfice munus.(引き受けた己が責務を果たすため、足早に駆け抜けよう)- 風すら受け流す流麗な鎧袖は、朝焼けの夜空の如き暗蒼。疾走する姿はさながら飢えた餓狼の類か。褐色の荒野を足早に駆け抜ける疾風すら置き去りにし、追い縋ろうとする陣風さえ遥か彼方へと追いやる。景色に留まることすら否と定理する。 痩身の機動兵器の名は――フィクスブラウ。搭乗者は真紅の片眼の持ち主、スコープ・アイ――シーア・ヘルゼン。 フィクスブラウは、その外見に限れば既存のアーマード・コアと同様のものであり、そこに大きな相違点は見受けられない。だがその内部に敷き詰められた駆動を司る各種機関は、常軌を遥かに超越したものを備えている。 従来とは隔絶した出力を持つジェネレータは、膨大な熱量を代償に大量の血流の生成を可能とする。これによって生まれた熱量は、その鋼鉄の身さえ、溶かし焦がすほどの域にある。故に蒼身の機動兵器が備える冷却機関は常に急速冷却を強いられることとなる。 それは常にして臨界であり、臨界とは常を意味する。そしてその要因がもたらす結果とは、従来の推進機関が持つ限界機能の突破という現象を、この現実の世界にて具現する。すなわち――。 マイは自身の視界の内側にフィクスブラウの姿を捉える。明確にその姿を捉え、FCSが補足を開始するも、一拍子の間を置いて対象を失う。視界の内側に駆け走るフィクスブラウは、その僅かな間を利用して視界から掻き消える。視覚に焼きついた蒼い装甲だけが、先ほどまでそこに、痩身の機動兵器がいたことを示している。 マイは瞬時に反応し、索敵装置に視線を送る。しかし、その視線の走査に割り込むように、搭乗席に照準を受けたことを示す警告音が鳴り響く。それが意味することを悟ったマイは、即座に肩部拡張兵装である補助推進装置――「E08BM-REMORA」を作動。緊急回避を試みる。 肩部拡張兵装のマルチブースタが蒼竜騎を前方へと運び出す。僅かに遅れて着弾した榴弾は、先ほどまで蒼竜騎がいた箇所を穿った。粉塵と爆発の双生児が産み落とされ、互いが互いを交差し、天へと舞い上がる。 穿たれた砂茶色の荒野。励起された結果から汲み取れるのは、三つの意味と意思である。 一つは、フィクスブラウの機動力は、蒼竜騎の機動性能では到底追いつけるようなものではないということである。機動力と視覚で捉えるのが容易ではないのならば、その場合は機械的な知覚能力――すなわちセンサー・レーダーの類による補足・索敵に頼る他はないだろう。 だが、ここで二つ目の問題が生じる。よもや機械的な知覚能力でさえ、フィクスブラウを追上出来るものではないということである。それも道理か。フィクスブラウが常軌を逸脱している以上、もはや一般的な索敵機能で追うことが出来ないのは明白であると言えるだろう。 そして第三の要素。それはその一撃に込められた意思だ。シーア・ヘルゼンは、情けを持ち込まず、ましてや加減すらすることなく、苛烈な一撃を見舞った。それは敵対するならば打ち倒す――というシーアの明確な意思を示している。 ――ダメだ……。レーダーを見ている暇もない……! マイは内心にて、目の前の状況に対する苦言を吐露する。 マイは蒼竜騎に対し、フィクスブラウと交戦することを前提とした調整を行っていた。より言えば、機体構成を対AC戦闘――より言えばフィクスブラウという規格外のACと交戦することを前提としたアセンブリを施していた。 機動力という面においては、そもそも通常のACでしかない蒼竜騎と、通常のACという枠組みを踏み越えたフィクスブラウとでは地盤が異なる。このため、この点において追いすがろうとするのは自殺に等しい行為である。 故に対抗するならば他方面による速度の概念が必要となる。そのための補助推進装置であり、肩部レーダー装置の積載である。 蒼竜騎の肩部には現在、肩部専用のレーダー装置が備え付けられている。肩部という戦略的に大きなウェイトを占めるハードポイントを一つ潰すことになるため、それなりのリスクは生じる。しかし、それ故に頭部パーツに標準装備されているレーダー機能よりも、遥かに優れた索敵機能と各種機能を備えている。 だがその優良な機能も、搭乗者がその情報を取得できなければ一切の意味をなさない。フィクスブラウの機動性は従来のACとは隔絶した域に達しており、そして乗り手であるシーア・ヘルゼンの判断もまた、人の枠組みを超えるものだ。 故に現状では後手――のさらに後手。明確な致命打を受けてはいないものの、装甲を打ち据える熱量や金属片は、確実に蒼竜騎の耐久力を削いでいる。 マイは心中に座する泉、その水面が揺らいでいるのを知覚する。それが意味するのは動揺だ。 フィクスブラウと主観で対峙して、初めて肌で感じる脅威。味方であれば心強いはずの痩身の機動兵器は今、目の前で己と対峙している。相対することで感じられる恐怖。 心中の動揺が体中を侵蝕しようとするのを、無理やりに押さえ込む。戦う意思を飲み込もうとする濁流に対し拳を打ちつけ、そのうねりに頑なに抗う。 マイは決死の思いで蒼竜騎を操る。死力を駆使したフェイントはあっさりと見破られ、機転を狙った攻撃が空を切る。にも関わらず、フィクスブラウは精密機械の如き攻撃を続けている。 彼我の距離は、常に一定の間隔が敷かれている。すなわち間合いだ。フィクスブラウが得意とする射程距離が、常に維持し続けられていた。 幾多の読み合いと撃ち合いを乗り越え、一角の静寂が置かれる。マイはフィクスブラウから視線をはずすことなく、緊張感を保ちながらも、リヴァルディの格納庫で交わした会話を思い起こす。 『詳細は知りえないが――傍目から見てのフィクスブラウの特徴はその機動力にあるだろう』 言葉を発したのはアハトだ。 『だが、運動というのは必ず何かを代償にして行うものだ。これは人であろうと、機械であろうと変わりはしない。何の代償もなしに桁違いの運動性を実現するなどというのは不可能だ。機動力の要となるのは推進装置。ならば――』 『ブースタ……いやもっと言えばジェネレータか?』 『そうなるだろうな。外見上、フィクスブラウはそれほど軽量ではない。ならばあの桁違いの機動力は、ブースタによる純粋な推進力であると見ていいだろう。爆発的な運動性、その代償となるのはジェネレータか。あるいはラジエータも一役買っているかもしれんが……』 推進装置は主機から生まれたエネルギーを喰らう。そうして主機、あるいは肉体をも焦がすほどの熱量を、ラジエータが補う。その無茶を実現するということは、機関の臨界状態を常に保っているようなものである。その危うい均衡を、奇跡的なバランスで保っているのだろう。 ならばそこに何かしら外的要因を与えれば、その危うい均衡は崩れるはずである。 マイはアハトとの会話を再度咀嚼。実際の戦闘から得られたフィクスブラウの性能を掌握し、実現できる戦術の再整理を行う。 蒼竜騎の武装はクレスト社製短機関銃「CR-WR69M」、同じくクレスト社製のレーザーブレード「CR-WL88LB3」、中型サイズのロケット砲「CR-WB82RP3」。そして――。 マイは格納ベイに積載された兵装を意識する。此度、ショーンとアハトから託された四つ目の武装が、そこには格納されている。 蒼竜騎とフィクスブラウ、そして自身とシーアの戦力差を考えるならば、通常通りの戦闘をこなしているだけでは、敗北は必定だろう。従来のような戦い方では、一度のチャンスさえ、目にすることは出来ない。 ならば、そのチャンスは自らが生み出さねばならない。だがそれすら、生成できて一度が限度だろう。機会を生成することすら、決死の代償を伴うもの。ましてやそれを手にし、勝利に結びつけるのはさらなる困難が待ち受けている。 実現できるかどうかもわからず、成功したところで実を結ぶかどうかすら、予測はつかない。だが――。 ――そう、一度でいいんだ。一度のチャンスを手繰り寄せれば、それで……。 マイは静止する砂茶色の視界の中で、ただ一つの戦法を脳裏に描く。実像を帯びていくその景色、実現できる勝利の姿を明確にする。 色彩すら帯びたその光景を是とし、マイはブースタペダルを一気に踏み込んだ。 * 蒼暗色の竜騎兵――蒼竜騎と対峙するのは、赤い瞳の暗殺者と謡われる男――シーア・ヘルゼンである。 静止した視界の内側は、蒼穹の空と荒れ果てた地で塗り別けられている。大空は輝く太陽を抱き、そして大地は一つの機動兵器を載せている。吹き抜ける砂風だけが、辛苦の決闘に興じている。 数度の撃ち合いを乗り越えたシーアは、彼我の戦力差について考察する。 現状において、両者の実力には機体、搭乗者の両方において隔絶したものがあるのは明白だ。これは驕りなどではなく、極々客観的に推察した上で求められる定理である。 さりとて、マイがそのことを知らぬはずもない。こうして決闘するということを想定している以上、この戦力差を看過するはずはない。 その意志は蒼竜騎の機体構成からも推察できる。此度の蒼竜騎の機体構成は、対AC戦闘――取り分けフィクスブラウと相対することを前提としている。入念な機体調整を行っているであろうことは、容易に予想できる。 だが、それでも足りない。蒼竜騎があくまで通常のACに過ぎない以上、従来の機動兵器の枠組みを半歩踏み越えるアーマード・コア――フィクスブラウと対峙するには、まだ不足している。 ――こうなるのはわかっていたはずだ。 だがこうしてマイが戦いを挑んできたというのなら、この戦力差を理解した上で挑んできたということだ。策無くして勝利はない。ならばマイが何かしらの秘策を備えているのは間違いないだろう。それが何であるかは、現状では推して図ることは出来ない。 フィクスブラウに対し、蒼竜騎が正面から挑んだのでは敗北は必須。これは理論上、勝利することが不可能であるということである。 その求められた定理を覆すとすれば、それは戦法という要素でしかない。機体と搭乗者に差があるのならば、戦術という概念で凌駕するしかないだろう。 さりとて、既に強襲や奇襲の類を行える状況はとうの昔に過ぎ去っている。正面から相対したこの状況にて、奇襲・強襲の類を行ったところで、自身はその挙動を見逃しはしない。 ――何を考えてやがる……? 対峙する蒼竜騎は満身創痍ではないものの、多くの損傷が加えられている。だがその立ち姿にはまだ、強い意志を感じさせる。 降伏や諦めの挙動は一切感じられない。先ほどの戦闘で浮き彫りとなった明確な戦力差。マイはこの事実を突きつけられても、なお理解できぬ蒙昧ではない。ならば、この戦力差を踏まえた上で、フィクスブラウに勝利する算段があるということなのか。 ――逆の立場なら……。蒼竜騎がフィクスブラウを攻略するには、接近戦しかない。だが蒼竜騎の機動力では……。 アウトレンジからほぼ一方的な射撃攻撃に晒される以上、この場合、蒼竜騎はフィクスブラウに対して速度で上回らなければならない。 戦闘における間合いという概念は、思いのほか戦闘を大きく左右するものだ。有史以来、武器という存在の優劣は、その武器が持つ間合いの広さによって淘汰されてきた。 徒手よりも刀剣であり、刀剣よりも槍が勝る。槍すら勝るのは弓であり、弓を優ったのは火砲である。間合いという概念は長くの間、戦場を王者のように支配してきた。だがその間合いの広さが常に戦闘で有利となったのかと問われれば、それは否であろう。 弓を打ち破るのは機動力に勝る騎兵であった。つまり、広き間合いを持つ相手に対して有効なのは、高い機動力を持ってして間合いを詰めることにある。そして広い間合いを持つ兵士としては、須らく機動力に欠け、その武器の装填に時間を要するものだからである。 蒼竜騎がフィクスブラウに対し間合いで劣る以上、この場合、機動力によって勝る他はない。しかし、機動力の面においても、蒼竜騎はフィクスブラウに大きく劣るのである。 シーアは痩身の機動兵器――フィクスブラウを操舵する。引き金を絞り、ライフルとスナイパーライフルの弾幕を繰り出す。 蒼竜騎のベースは中量二脚型である。取り分け、実弾兵装に対して高い抵抗力を備えたパーツを多く採用している。ライフル程度の運動エネルギーでは、それほど大きな損傷とはならない。この程度の運動量の弾丸が直接的なダメージとなり、機体機能を完全停止させることは滅多にあることではない。 だが、ダメージとは蓄積するものである。損傷とは結晶構造の欠陥であり、それは対象の素材が持つ強度を大きく損なわせる。 積み重ねられた損傷、機体装甲に埋め込まれた数多の欠陥。彼らは大きな運動量を持つ物体を撃ち込まれた時、初めてその牙を向く。堅固な装甲を一斉に食い破るのである。 シーアは蒼竜騎の高い実弾防御能力を備えているのを把握していた。牽制のライフル程度では致命傷にならないことも、心得ている。故にライフルによって表装甲を削ぎ、そして然るべきタイミングにて榴弾砲――グレネードランチャーを打ち込むという算段を心の内に打ち立てる。 ――さぁどうする、ドラグーン。このままじゃジリ貧だぜ。 求められた絶対敗北の定理、それを覆せるか、否か。あらゆる好機を結びつけ、最大の好機を生み出し、唯一つの勝利を手にすることが出来るか。 あるいはやはり不可能であると、無様に地に伏せることになるのか。 シーアは自分ですら知るところなく、笑みをこぼした。 * 明確に時の経過を知覚できたとて、その程度が如何程なのかを掌握することは叶わず。僅かな時間しか過ぎていないようにも思え、悠久の時間を過したようにも思える。 マイは蒼竜騎の損傷状況を走査する。現状、蒼竜騎には多くの損傷が生まれているものの、それでも機能停止を誘発させるようなものは未だない。だがフィクスブラウから与えられたダメージ、その蓄積度合いは決して看過できるものではない。 脚部の状態は一次破壊。これによりACが持つ機動力の大半が低下した状態となっている。それでも安定した稼動を続けるのは、クレスト社が持つ質実剛健なパーツ設計にあるのだろう。 頭部も同じく一次破壊。制動能力はやや失われはいるが、副次機能が働いているため大事はない。レーダー機能は肩部の「WB10R-SIREN2」によって補われているため、これもまた大きな問題とはならない。 内装の走査――。ジェネレータ出力はやや不安定。エネルギーの変換における抵抗が増えたのか、ジェネレータの駆動させた際に生じる熱量が、通常時よりも一六%ほど上昇している。これにより、ラジエータは通常時よりも稼動率を上昇させている。 結果として全体のエネルギー容量は圧迫された状態にある。 武装の走査――。短機関銃の弾数は半分を切っている。反してロケット弾の総数は心許ない。左腕部のレーザーブレードは正常稼動中。 痩身の機動兵器――フィクスブラウが再び苛烈に華麗に動き出す。槍先の如く迫る弾丸の連撃の間隙を縫うように機体を進め、しかし避けきれない弾丸が蒼竜騎の身を削っている。 ――焦るな……。冷静さを失うな。まだ勝負は決まっちゃいない……! マイは蒼竜騎を懸命に操る。そうして幾多も身を震わせる死線を乗り越え、蒼竜騎の頑強な装甲を頼りに間合いを詰めることに従事する。 ――保ってくれ、相棒……! マイは切なる願いを、乗機である蒼竜騎に投げかける。 共に戦場を駆け抜けた唯一無二の相棒。自分は彼に全幅の信頼を寄せている。だが彼が自身を信頼してくれているかどうかはわからない。だが――。 ――少しでいい、俺に力を貸してくれ。俺はそれに応えてみせるから! マイはフィクスブラウが、その左腕部に持つライフル「WH01R-GAST」の銃口が下がるのを見咎める。 ――リロード。 マイはその刹那を見咎め、蒼竜騎に急加速を促す。拡張兵装――「E08BM-REMORA」を点火。蒼竜騎が急浮上し、大空へとその身を投げ出す。 フィクスブラウは再装填を開始したライフルを下げ、反して肩部兵装が稼動を開始。超小型誘導弾――俗に言うマイクロミサイルの群れが発射される。 鶴翼を連想させる軌道を描き、立ち塞がる砂塵を渦状に切り裂きながら差し迫る。 マイクロミサイル――。その名のとおり、一般的に装備される誘導弾よりもさらに一回り小型なミサイル総称である。小型故に、積載されている弾数は多い。しかし、弾頭そのものが小型であるため、標準的な誘導弾よりも威力・航続距離・誘導性能に劣るという欠点を持つ。 臆することはない。マイクロミサイル程度の誘導性能ならば、掠める程度に留まるだろう。 広がるマイクロのミサイルの群れ、それらが収束するよりも一歩速く踏み込み、死地が形成されるよりもなお速く、矢先のように鋭く駆け抜ける。 周囲を過ぎ去っていく誘導弾の群れ。視界の内には白煙だけが残されている。蒼竜騎は奇跡的にも一切の被弾なく、間合いを詰めることに成功する。 死地を乗り越え、白煙の奥に立つは痩身の機動兵器――フィクスブラウの姿。 ――引くか? それとも押すか!? 苛烈な踏み込みを行うのを前に、シーアのフィクスブラウは迎え撃つことを選択した。それが英断なのか、あるいはこちらに対する情けなのかは推察することはできない。しかし、その判断がどちらであっても、その行動がマイにとって好機であることは揺るがない。 彼我の距離が瞬間、二倍の速度で縮退する。フィクスブラウの腰部分が捻られ、次いで左腕部が胴体に引き込まれる。左腕部に供えられた兵装はレーザーブレード――「CR-WL88LB3」。 極短い刀身ながら、高密度の光刃を形成する近接兵装。蒼竜騎と同じレーザーブレードである。 フィクスブラウの左腕部から、光の刀剣が形成される。捻られた腰が解放され、光の刃がなぎ払われる。 マイはこの瞬間こそが好機であると判断する。目を見開く。拡張兵装――「E08BM-REMORA」を起動。補助ブースタによって蒼竜騎が急加速を行う。 刹那の瞬間に生まれた加速度の壁が、肉体を痛烈に圧迫する。圧力はこみ上げる吐き気すら押しつぶしている。 踏み込みは光の発振よりは明確に遅く、しかしその腕が振るわれるより確実に早い。フィクスブラウのすぐ傍を過ぎ去る。蒼竜騎はフィクスブラウの、その真後ろへと着地する。 マイは蒼竜騎に対して急速旋回を指示。背後にいるであろうフィクスブラウに対し、向き直ると同時に左腕部のレーザーブレードを展開する。 蒼竜騎とフィクスブラウ。お互いがお互い、背後にいる存在にし対し、同時に向き直る。 ――ブレード展開後でも、この旋回速度か……。けど――! 先手を繰り出したのは痩身の機動兵器――フィクスブラウ。その行動の速さはシーア・ヘルゼンの惑うことのない即断を示し、その即応に対応してのけるフィクスブラウの底の深さも同時に示している。 先んじで放たれた自動小銃の弾丸によって、蒼竜騎の頭部が打ち抜かれる。致命的な損傷により、搭乗席内に警告が鳴り響く。看過。 一切と合切、目の前で起きた結果に頓着することなく、レーザーブレード――「CR-WL88LB3」を突き出す。 だが、決死の覚悟で繰り出した突きよりも一歩早く、フィクスブラウのブレードが弧を結ぶ。蒼竜騎の左腕部は光の刃によって溶断され、繋ぎを絶たれた腕部が落下を開始。 ――ここだ……! マイは切断された左腕部が荒野に落下するよりも早く、蒼竜騎に次なる行動の展開を促す。右腕部の短機関銃を投棄すると同時に、格納ベイから武装を取り出す。 格納ベイから取り出されたのはレーザーブレードだ。形式番号は――CR-WL06LB4。本来ならば武装の切り替え時には僅かばかりではあるが、隙を生む。 その隙がこの場に具現しないのは、整備士の技術の賜物だ。 『俺からの選別だ。精々気張れや』 既に臨戦状態にあった格納兵装がコンマ数秒で本体との接続を追え、光を発振する。瞬時に長く、青白く輝く刀身を形成する。 マイはフィクスブラウのコア部を見据え、レーザーブレードを走らせる。 「届けぇぇーーーーッ!」 差し迫る美麗な蒼き刀身の刃。今この瞬間にて、フィクスブラウが起動できる武装は非ず。間合いは既に極近距離であり、回避することもまた叶わず。故に光刃は痩身の機動兵器を別つ。 フィクスブラの右腕部が稼動し、光の刃が突き進むべく軌道に対し、割り込みをかける。蒼竜騎のレーザーブレードは当然の如く、その右腕部を溶断しながら侵攻する。だが、割り込まれた質量体の存在によって、その進軍速度は明確に減退。 その僅かに減退した進軍速度。そこから生まれた僅かな時間を用いて、フィクスブラウは後退する。 フィクスブラウの右腕部を両断しきったレーザーブレード――CR-WL06LB4は、次いでフィクスブラウのコア部へ差し迫る。しかし、フィクスブラウが僅かに後退したことにより、追いつくことは叶わず。 光の刀身はフィクスブラウのコア部を表面の塗装を溶かし、表装甲を焼き切り――しかし、そこまでに留まる。 奇を狙って繰り出した刃が、空を走り抜ける。痩身の機動兵器の肩部の砲身が稼動を開始。 ――あ。 フィクスブラウの肩部に備え付けられた榴弾砲――CR-WB78GLの砲身が向けられている。砲口の奥、暗闇に見つめられる。 一瞬の自失の後、機体に痛烈な衝撃が走る。その一撃によって蒼竜騎が自動姿勢制御機能さえも失い、地へと倒れこむ。 搭乗席内に警報が鳴り響く。コンソールになだれ込んでいるのは、多数の被害状況と幾多のエラー。そしてそれを覆い隠すほど大きく表示された脱出要請の文字。 ノイズ交じりのモニターの奥、隻腕となった機械仕掛けの巨人が見下ろしている。残された左腕部が自動小銃を突きつけている。 『終わりだ、マイ』 通信機器でさえ充分に機能していないにも関わらず、その言葉は明瞭に耳を打った。 * シーアは地へと沈んだ蒼竜騎を見下ろす。 赤い片瞳で蒼竜騎の状態を見据える。腕部破損、頭部半壊、それ以外でさえ致命的な損傷を受け、各部で火花を散らしていた。もはや立ち上がることすら、叶わないだろう。 シーアは突きつけた自動小銃の銃口を下げ、フィクスブラウを輸送車両が鎮座する方向へと向ける。 「――じゃあな」 『……待て!』 静止の言葉が投げかけられる。機体の通信機器にも異常をきたしたのか、届いてきた言葉は明瞭とはいえないものだ。 マイのその言葉が何を意味するのかは推して図ることはできない。反射的に出ただけの言葉という可能性もあるだろう。 シーアはフィクスブラウをやや旋回させ、半身だけ振り返させる。 視界の先では残された腕部を伸ばす蒼竜騎の姿がある。それは去り行く相手をこの地に留めようとして、その腕を掴もうとする愚者のようにも見える。 「――待たねぇよ」 シーアは一言だけ言い残し、フィクスブラウを輸送車両の下へと移動させる。 フィクスブラウを車両に横たえたシーアは汗を拭い、衣服を着替え、運転席へと舞い戻る。待機していたキースが清涼飲料と共に出迎えた。 「いいのかよ、何も言わなくて。同僚なんだろ?」 「敗者に言葉をかけたところで、惨めさが増すだけだ。それに――」 敵対した者は敵対したのだ。それに対して情けの言葉をかけることは出来ない。かつて仲間であったとて、それは例外ではない。 だが、本来ならば命をとる場面であった。それをしなかったのは、やはり仲間だったという事実あるからこそだろう。 シーアは非情になりきれていない自分がいるのは知覚する。だが、かつての仲間を容易に切り捨ててしまえるほど、機械的な判断ができるわけではない。そのような冷徹な判断を下せるものは、もはや人であって人ではないだろう シーアはフィクスブラウの損傷状況を省みる。 自分とマイ、そしてフィクスブラウと蒼竜騎では実力、機体スペック共に根底からして異なるものだ。そうである以上、マイと蒼竜騎の敗北は必然だ。 それでもフィクスブラウに挑み、また一太刀入れることに成功したという事実は驚愕に値するだろう。 それは容易に看過できるものではない。一太刀ではあるが、まさにされど一太刀だ。光刃を届かせたというだけでも、僥倖といえるだろう。 「そうだな……。悪くない動きだった――ってことぐらいか」 「厳しいねぇ……」 シーアはキースに運転を促す。輸送車両は戦場跡に頓着することなく、走破を再開する。 搭乗席の内、妖精の如き外貌を持つ少女が憂いの表情を貼り付けている。 「マイ……」 少女は悲しみの視線と共に、少年の機動兵器が失われるまで見続けた。 * 未曾有の旧世代兵器襲撃事件。その災禍を一身に受けた地上の楽園――エデン。 エデン都市はその存在そのものが、他に類を見ない規模を持つ巨大な建造物である。故にそれが破壊されたということは、未だかつてないほどの破壊が具現されたということで相違ない。 物理的な完全閉鎖を実現し、健やかなる安寧を掲げる果樹の楽園。この地上に吹き荒れる数多の災害を頑強に防いでいた天蓋は、今や醜く罅割れ、大きな穴が穿たれている。美しい流線型の意匠は失われていた。 いわゆる小地球とも言うべきエデンの都市システムは、密閉空間でなければ十全には成り立たない。こうして天蓋に巨大な空隙が生み出された以上、従来運用されていた都市制御システムは意味をなさない。楽園の如き平穏と優雅さを再び得るには、膨大な資源と時間を要するだろう。 さりとて、この枯れ果てた地上を生きる黒鴉の傭兵――レイヴンにとってはある意味で朗報と言える。エデンの都市機能の欠落、防衛能力の低下に伴う治安の悪化は、傭兵としてはむしろ吉報に近いものがある。 レイヴンとはあくまで戦力を提供し、その対価として金銭を得る非正規雇用の戦闘員である。戦闘という行為を飯の種とする以上、混乱や不安定な情勢というものは全て金銭の苗床となる。 世が混迷に喘げば喘ぐほど、傭兵の仕事は増える。民の不安が、傭兵の優雅な生活と食事を約束する。 大儀なき傭兵に陣営は関係なく、同時に後ろ盾という守護も必要としない。ならばエデンⅣの損害によって齎される影響はメリットのほうが大きい。 エデンⅣでは現在、多数のACが周辺区域の哨戒行動に当たっていた。無論、彼等は全て固定の雇用主を持たぬ傭兵――レイヴンである。 その中にありて、一際目を惹く赤紫色で染め上げられたACが褐色の大地を走破している。吹き抜ける荒野の風を切り裂き、砂塵を圧して従える中量二脚型ACの名はガイアフレア。搭乗するのは、元企業連合特務部隊「Dies irae(ディエス・イレ)」所属、レイヴン――ダイスケ・ロットブルである。 彼もまた他のレイヴンと同様、エデンの防衛機能が構築されるまでの間に用いられる仮初の戦力として召集されたレイヴンの一人だ。 此度の旧世代兵器の襲撃により、エデンは都市そのものに大規模な損害を被っていた。だがそれよりも深刻なのは、旧世代兵器に抗おうとしたことで失われた、防衛設備とその戦力である。 無論、あれほど大規模な襲撃があった後に再襲撃があるというのは考えにくい。だがその可能性がゼロではない以上、その仮定は意味をなさないだろう。 再襲撃の是非がどうであれ、レイヴンを雇用しての警戒態勢の維持というものは、不明瞭な存在を明瞭なものとする効果がある。仮に襲撃があったとしても、安全を確約することは可能だ。そしてそれは都市に住む民への安心に繋がる。 ダイスケに依頼されたのは、一定時間内におけるエデン都市周辺の哨戒任務だ。 ダイスケはデジタル表記された時刻に視線を送る。依頼された時刻まで、時間は残り僅かを示していた。 「ティア、そろそろ時間だな」 『――えぇ。正確にはあと五分ほどで依頼完了ね』 飛び込んできた声は、実に清涼さと透明感に溢れたもの。前者は朝風の如く、後者は春の湖畔を彷彿とさせるもの。 ダイスケを補佐するオペレーター、ティア・ソールである。 『ともあれ――お疲れ様、ダイスケ。もうまもなく輸送機が来るから、それで帰還して』 「了解した。これより帰還準備に入る」 『――あれ……? 待ってダイスケ。付近に救難信号が――』 「救難信号?」 ティアの言葉にダイスケは眉根を寄せる。次いでティアから送られてきた情報が共有され、モニターの隅に小窓が出現する。 周辺エリアの地形情報がワイヤーフレーム状態で表示される。数多の引き出しに詳細情報が展開され、戦域情報がこと細かに表示されていく。 その片隅に、救難を示すマーカーが明滅を繰り返している。 「あの時の生き残りか……?」 ダイスケはAC――ガイアフレアの推進装置を起動させ、目標の地点へ移動する。 辿り着いたのは、数多の岩山と枯れ果てた不毛の大地が広がる不毛の大地だ。砂茶色で厚く染め上げた荒野には、黒く焦がされた跡が疎らにあり、そこが真新しい戦場跡であることを示していた。 その中心部には鉄塊――否、破壊された機動兵器が一つ、倒れ伏している。 ダイスケはガイアフレアを近くまで寄せ、見下ろす。暗蒼色の機動兵器はかつてアーマード・コアであったもの。今や各部位が手痛いほどに損傷しており、隻腕となっている。 「こいつは――」 『照合完了。サンドゲイル所属のAC――蒼竜騎』 ダイスケはティアの言葉を聞く。あるいはそれは、運命の扉を叩く音のようにも感じられた。 第十六話 終 →Next… コメントフォーム 名前 コメント