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いちやひめのためのこっけん【登録タグ GUMI い 前略P 曲】 作詞:前略P 作曲:前略P 編曲:前略P 唄:GUMI 曲紹介 白昼夢に描いた詩は消えていきました。 夜は真っ赤に染まっていったし、閉じた目は真っ白に溶け出しました。 あの頃の黄ばんだ記憶にはもう近付けないのかもしれません。 前略P の17作目。「Good Night Twilight E.P.」シリーズ最終章。 webシングル「Unrequited Drug E.P.」収録曲。 さあさあ皆様、絵本のご用意を。たった一夜の夢物語、朝は君を狙い始めております。…そんなお話。(作者コメ転載) 経過報告:………(作者シリーズマイリストコメントより) 清々しい朝だ。身を焦がす苦痛と快楽はリンボですら味わえない。薬はドンドン体を蝕み、神に会い、鳥になり、太陽に焼かれそして力尽きた。大事な人、ねえ聞こえる?もう私は夢を見れない。瞼が開かない。ねえ、夢の続きは…?(Twitterより転載) PVを うさこ氏 が手掛ける。 歌詞 「おはよう、どんな夢を見てたの?」 「神様になって君を殺した。真っ逆さまなんだ、街も人も」 「楽しかったの?」 「とっても怖かったよ」 重なったハコの中で君は壊れてた 身体も心も 「絡まった薬をくれないかな?」 「ダメだよ、私を一人にしないで」 「おはよう、どんな夢を見てたの?」 「鳥になって君を探した。ちっぽけだったんだ、街も人も」 「空は近かったの?」 「太陽に焼かれてた」 行かないで、寂しいよ泣きたいよ 戻らない、身体も心も 絡まった薬は君を笑う 時計の針は夢を歌い出した 「大事な人、ねえ聞こえてる?」 「朝は始まったばかりだよ。」 「ねえ、早く話をしよう… ねえ、夢の続きは…?」 重なったハコの中で君は壊れてた 身体も心も 「絡まった薬をくれないかな?」 「ダメだよ、私を一人にしないで!!」 コメント 追加おつ! -- 名無しさん (2012-05-29 00 52 23) この曲最初の話かと思ってたからかなりびっくりしたwww -- 肉厚 (2012-05-30 21 44 58) 名前 コメント
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登録日:2014/08/24 (日) 21 50 00 更新日:2023/06/20 Tue 09 49 03NEW! 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 SF あなたのための物語 小説 早川書房 機械知性 死 長谷敏司 サマンサ・ウォーカーは死んだ 概要あらすじ 登場人物 用語 備考 『あなたのための物語』とは、2009年8月に早川書房より刊行されたSF小説である。 現在では文庫版が出版されているため、そちらのほうが手に入りやすい。 著者は『円環少女』シリーズや『BEATLESS』で知られるSF・ライトノベル作家の長谷敏司氏。 後、某聖杯戦争ゲーのスピンオフに同名の宝具が存在するが、そちらとは全く関係ない。 そもそもあっちは「貴方のための物語」だしね。 概要 死病に瀕した天才科学者サマンサ・ウォーカーとITP(後述)と呼ばれる技術により生み出された擬似人格、 通称 wanna be の交流を通して、人の死や人と道具の関係を問いただすSF小説。 本編のほぼ全てが死病に蝕まれ死にゆくサマンサの鬱った思考と、 容赦のない病と死の描写で占められており、読了後はきっと鬱になる事請け合い。 常時フラットかつ起伏の少ないストーリー展開であり、 BEATLESS等に見られる派手なアクションも存在しないためその辺を期待する人は楽しめないであろう。 反面、BEATLESSにおいても見られるような、「ヒト」と「道具(モノ)」との関係というテーマや、 機械知性との対話の描写も内包しておりそういったものを求める人にとっては紛れもない傑作となりうる。 また、同氏の中編小説「地には豊穣」「allo,toi,toi」と同一世界観の物語であり、共通のガジェットであるITPが主軸に据えられている。 というかallo, toi, toiに関しては、本作がベストSF2009において二位入賞を果たした際に書かれたものである。 とはいえ、どちらの作品に関しても同一世界観を書いた話であるという以上の関連性は無いに等しい。 あらすじ 西暦2083年、人工神経制御言語・ITPの開発者サマンサは、 ITPテキストで記述される仮想人格 wanna be に小説を執筆させることによって、使用者が創造性を兼ね備えるという証明を試みていた。 そんな矢先、サマンサの余命が半年であることが判明。彼女は残された日々を、ITP商品化の障壁である”感覚の平板化”の解決に捧げようとする。 いっぽう wanna be は徐々に、彼女のための物語を語り始めるが……。 本作表紙裏、あらすじより 登場人物 ○サマンサ・ウォーカー 「わたしにとって、科学とは抵抗(プロテスト)です。自分自身の無力さと、親世代が欠損を残した不満足な世界を乗り越えてゆくために、科学者を志したのです」 人工神経の分野において、若くして頭角を現した天才科学者。 「脳神経と電動義肢を接続する人工神経の制御プロトコル」であるNIP(Neuron Interface Protocol)の開発者連中の一人。 共同開発者であるデニス・ローデンバーグと共に、ニューロロジカル社という企業を起ち上げ、NIP技術により巨大企業へと押し上げた。 その後、社の経営はデニスと専門の経営者に任せ、本人は社内において研究開発の一翼を担う存在となる。 現在はNIPを応用したITPの開発に心血を注いでおり、その過程で創造性試験体 wanna be を生み出す。 生粋の研究者であり、研究開発以外の事にあまり目を向ける事がない。 それ故プライベートよりも仕事を優先させる……というかそもそもプライベートを殆ど持っていない。 本人はそんな現状に不満はないが、デニスには心配されている。 そんな最中、新種の自己免疫疾患により余命半年を宣告された彼女は、残された時間をITPの開発に使おうとするが……。 ある意味ラスボス。 ○ wanna be なにか、お役に立てる事はありますか ITPの研究開発の途中で生み出された仮想人格。 作中においては「創造性試験体」、 彼 、 wanna be と呼ばれるが、人間のような名前は持たない。 人間の脳を記述するための言語であるITPを用いて記述された存在であり、 肉体は持たず量子コンピュータ内のソースが全てであるものの、拳大の球状端末に接続する事で人間と同じように外部を感知することが出来る。 また作中においては、人間との意思疎通を円滑化させるため人間の男性を模した立体映像を空間中に投影している。 その存在意義は、ITPの記述に人間と同様の「創造性」があるかどうかを調べるためであり、その方法として小説を書く事を課せられている。 そして、 wanna be の書いた小説が、どこかで見たもののツギハギから外れれば外れる程、ITPの創造性が証明されら事 となる。 最終的に小説は創造性の実証のため報道陣向けに発表され、 wanna be 自体はそれが終わればバックアップを残し量子コンピュータ内から削除――簡単に言えば死ぬのである。 起動初期は(言語能力自体は有していたものの)人間で言えば赤ん坊のような存在であったが、 研究員やサマンサとの対話や、多くの小説を読む事により、ITPなりの自我が発芽することになる。 そして wanna be は自我の赴くまま、徐々に「サマンサのための物語」を書くようになり……。 ○ケイト・ブライアン サマンサの後釜としてITP技術の開発を引き継ぐ事となった若き研究者。 子持ちでファッションにも気を遣う。研究一筋のサマンサとは全く違う、ワークライフバランスを大切にする研究者。 研究開発の手法もサマンサとは正反対であり、サマンサがトップダウン式の 、ある種独裁的な部下の使い方をするのに対し、ケイトはチームワーク重視で研究開発を進めている。 ○デニス・ローデンバーグ サマンサと共にNIPの基礎理論を作り上げ、ニューロロジカル社を立ち上げた元研究者。 現在は経営者としてニューロロジカル社に勤めている。 己のプライベートを捨て、研究に没頭するサマンサを心配しながらも、経営者としてサマンサに厳しい言葉を投げかけることも。 用語 ○ITP(Image Transfer Protocol) 神経伝達言語。NIPの発展系として開発されている。 対象の脳内には無い神経の発火を、ナノマシンを使い対象の脳内に記述する事が出来る技術。 例えば、人間は文字で「悲しい」と描いても実際に悲しいと感じることはない。 然しITPを用いれば、ある人の感じた「悲しい」という感情をITPの形で保存しておく事により、 その「悲しい」と記録した神経を、伝えたい相手の脳内でも働く書式で発火させる事によで、「悲しい」の感情を相手に対し完全に伝えることが出来る。 神経の発火を模倣し、意思や意味を脳内で作り出す言語、それがITPである。 この技術を用いれば脳内のあらゆる働きを記述し、保存することが出来る。 つまりこの技術により新たな人格を作り出したり、自分の脳神経の発火を記述する事で人格のコピーを残すことすら出来る技術である。 ニューロロジカル社では、将来的にこの技術を商品として売り出そうとしているものの、 「感覚の平板化」と呼ばれる現象を始め、未だ少なくない問題と課題を抱えており、現在はそれらのバグを無くすべく開発を進めている。 備考 本作が長谷敏司氏のSFレーベルにおける初の長編となる。因みに、初のハヤカワレーベル作品は「地には豊穣」であるが、こちらもITP技術者の話となっている。 前述したが、同氏は本作で同年のベストSF第二位に入賞している。また、(残念ながら逃しはしたものの)日本SF対象候補にも選出された。 世界観が世界観なだけに当たり前であるが、同氏の作品でありながらヒロインが幼女ではない。どころか幼女自体出てこない。 追記・修正よろしくお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] てっきり角川の十代向け小説短編集かと。 -- 名無しさん (2014-08-25 02 34 40) タイトル見てFateの某鯖を真っ先に思い浮かんでしまった俺はもう駄目かもしんない -- 名無しさん (2014-08-25 08 08 26) エースコンバット3のシンシアやディジョン、nemoが思い出される。 -- 名無しさん (2016-09-04 00 39 56) これはお前が始めた(ry -- 名無しさん (2023-06-20 09 49 03) 名前 コメント
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ある程度ゲームに慣れてきた方のためのアドバイスページです。 適宜追加お願いします。 称号を取って報奨金を貰おう Blind Justiceは多機能なゲームで様々なことが出来ますが、その全てに関わっていると言っても過言ではないのがお金です。 しかし、討伐では効率が悪いし、給与は8時間周期な上に国の状態や階級で左右されてしまいます。 そこで、多くの報奨金が貰える称号を取ることが重要になってきます。 最初は内政の称号から取り始めると国にも貢献しやすくて一石二鳥です。 熟練度が中々上がらない!という方は次項をどうぞ。 ペットを有効に使おう ゲームを有利に進めるためにはペットの存在が必要不可欠です。 ステータス、熟練度、国の状態、軍事・戦争etc... 様々な面であなたを助けてくれるペットを利用しない手はありません。しかし、当然利用価値の高いペット程高価で入手困難です。 なので、(使用しても無くならないペット等の場合)同国の人や友達から貸してもらうのが良いでしょう。 宣伝言板に書き込むのも一つの手です。 (ペット一覧はこちら) 職業を選ぼう ある程度レベルが上がり普通に修行が出来るようになったら、職業を選び直してみましょう。 物理武器なら攻撃、魔法武器なら魔力を重視。防御と魔防は平均的に上げると良いです。打たれ強くするならHP、スキルを沢山使いたいならMP。 また、戦争をするなら統率、魅力なども重要な要素です。勿論、素早さも忘れずに。 ペットを使ってなれる職業はそのペットが入手困難な分ステータスの上がり方が良いのでオススメです。 また、一定期間ごとに職業を変えるとバランス良くステータスを伸ばすことが出来ます。 (職業一覧はこちら)
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亡くなった茶道家の父は、礼儀作法に非常に厳しい人だった。 今でもよく覚えている。 ある日俺は寺子屋から帰ると、茶箪笥の中に見たこともない高級な和菓子があるのを見つけた。 きっと、両親は奮発して高いものを買ってきてくれたのだろう。 俺は勝手にそう判断し、それを一人で無断で平らげた。 仕事から帰ってきた父は烈火の如く怒った。 あの菓子は、俺のために買ったのではない。 里長を招いて茶会をする際に、皆に振る舞うために購入した大事な菓子だったのだ。 泣いて謝る俺の尻を父はばしばし叩き、真っ暗な蔵の中に閉じ込めた。 あの時ほど、父が恐いと思ったことはない。 結局、父は大事な茶の席で大恥をかく羽目になり、俺は怒られても仕方のないことをしたのだ。 そんな父もあっけなく亡くなり、俺は父の跡を継いで茶道を教える仕事に就いた。 今では何とか、妻と一緒に食べていけるだけの稼ぎもある。 夜。ガラス戸を叩く音がしたので俺は立ち上がった。 こんな夜更けに誰だろう。 戸を開けると、そこには丸っこい物体がある。 金髪にカチューシャ。ゆっくりありすと呼ばれる饅頭生物だ。 「こんばんは、とかいはなおじさん」 「ああ、こんばんは。どうしたんだい、こんな夜に」 このありすとは初対面ではない。 今日の午後、縁側で一緒に簡素なティータイムを楽しんだゆっくりだ。 俺が縁側で湯飲みを片手に羊羹を食べていると、このありすが森の方から庭にやって来た。 垣根から顔を覗かせ、ありすは遠慮がちに俺に挨拶した。 「ゆっくりしていってね、おじさん」 「ああ。ゆっくりしていくといい」 「ありがとう。おじさんはしんせつなひとね。ありすも、おじさんのおにわにいてもいいかしら」 「庭を荒らさなければ、別に構わないよ」 「あら。ありすはとかいはよ。にんげんさんのおにわをよごすようなことはしないわ」 ありすの言ったことは嘘ではなかった。 ありすは俺の近くまで出てくると、口にくわえていた野苺を静かに食べ始めた。 よくいるゆっくりのような「むーしゃむーしゃ! しあわせー!」といったような大声を上げることもない。 都会派、と自称するだけあって、ありすの食べ方はゆっくりにしては品がよかった。 俺は少し気をよくして、抹茶に砂糖を入れて冷ましてからありすに差し出した。 「ゆっ! とってもおいしいおちゃね! おじさんはすてきなひとだわ」 ありすとはしばらくの間、なかなか楽しい茶会の時間を過ごすことができた。 時には、作法にこだわらず自然体で茶を楽しむのも素晴らしい。 茶を飲み終わるとありすは野苺の茎を片づけ、森へと帰っていったはずだ。 なのに、いったいどういう風の吹き回しだろう。 「おじさん、ひるまのおれいよ。ありすのつくったいんてりあなの。うけとってほしいわ」 ありすが口にくわえて差し出したのは、きれいに形の整っている押し花だった。 木の葉っぱの上に一輪の花がくっついている。 恐らく、ゆっくりの涙か唾液によって固めたものだろう。 あの不器用なゆっくりが作るものとは信じがたいほど、それは手が込んでいる。 「ありがとう。遠慮なく受け取らせてもらうよ」 たとえそれがゆっくりが作ったものであっても、誠意がこもっていることに代わりはない。 俺はお礼を言ってありすから押し花を受け取った。 「ゆっくり! おじさん、ありすとおともだちになってほしいわ」 俺が受け取ったことで、自分が受け入れられたと思ったのか、ありすはそんなことを言ってきた。 「君と友達にかい?」 「おじさんはとってもいいひとだから、ありすはおともだちになりたいの。また、いっしょにてぃーぱーてぃーをたのしみましょう?」 ありすはニコニコと笑っている。 あまりにも、ありすの笑顔は無防備だった。 だからこそ、俺は首を横に振った。 「残念だけど、それは無理だよ。今日のことはもう忘れて、お家に帰りなさい」 「…………ど、どうして。もしかして、ありすはいなかものだったの? おじさんのめいわくだったの?」 ありすのうろたえ方はかわいそうなくらいだった。 まさか、否定されるとは思っていなかったのだろう。 それもそうだろう。俺とありすとは、本当に仲良くやっていたのだから。 「いいや、そうじゃない。ありすはゆっくりとは思えないくらい都会派だったよ。でも、駄目だ」 「……おじさん。…………どうして?」 「君がゆっくりで、俺が人間だからさ。俺と君とでは、種族として違いすぎるんだ。人間には、近寄らない方がいい」 まだすがるような目をしてくるありすを、俺は優しく突き放す。 「今は仲良くできても、きっといずれどちらも不幸になる。俺たちは、絶対に相容れないんだよ」 俺はかつて、下らない過ちを犯した。 ゆっくりのしたことに本気で怒り、ゆっくりが分からないことを無理に分からせようとした。 人間の常識でも、ゆっくりにとっては常識ではない。 なまじ彼らは喋ることができるから、意思の疎通ができると思ってしまう。 実際はそうではない。人間とゆっくりとは違いすぎる。 あの不毛な体験は、俺の記憶の中に嫌な過去として位置づけられている。 あれは、この家に引っ越してきてすぐのことだった。 俺は今日のように、庭を眺めようと縁側に出ていた。 やや古くはあるが、実に趣のある家と庭だ。 何気なく見ていても、あちこちに風情があって飽きることがない。 しばし休息を取ろうと、俺は茶を点て茶箪笥からおはぎを一つ取り出した。 行きつけの和菓子店が作る、徹底的に痛めつけて味をよくしたゆっくりを材料にした名菓だ。 俺は茶碗と皿をお盆に載せ、縁側に戻ると座り直した。 ほっとする一息だ。 誰のためでもなく、自分のために点てる茶も悪くない。 茶の香りは奥ゆかしく、午後の静かな時間と相まって幻想郷を桃源郷に変えようと誘う。 柔らかなその誘いに、しばし身を委ねていた時のことだった。 「ゆっゆっゆ~♪ ゆっゆっゆ~♪ おさんぽおさんぽ~♪ まりさのおさんぽたのしいな~っ♪」 せっかくの気分が、たちまち台無しになった。 垣根をがさがさとうるさく揺らし、小動物らしからぬ不用心さで飛び出してきたものがいる。 金髪に黒い帽子。小生意気そうな表情。ゆっくりまりさだ。 サイズは大きめのリンゴくらいだろうか。どうやらまだ幼いゆっくりのようだ。 まりさはへたくそな歌を歌いながら、ぴょんぴょんと跳ねて庭を横切ろうとしている。 人間の耳には、ちょっとゆっくりの歌のセンスは理解しがたい。はっきり言って不快だ。 ……それにしても、散歩なのだろうか。 だとしたら、何という無警戒だろう。 俺の住む里では、あまりゆっくりにいい顔はしない。 畑を荒らす害虫として駆除されることもしょっちゅうだ。 付き合いで俺も幾度かかり出されたことがある。 里のあちこちに作られた巣を壊し、泣き叫ぶゆっくりを袋に詰めて加工場に引き取ってもらう。 「にんげんさんやめてよ! やめて! まりさたちはゆっくりくらしてただけだよ! なんでこんなことするの! ゆっくりしてよ!」 「おちびちゃんをもっていかないで! れいむのだいじなおちびちゃんなんだよ! やめて! ひどいことするなられいむにして!」 「ゆあああああん! きょわいよおおおお! おかあしゃああん!おとうしゃああああん! たすけちぇよおおお!」 俺はあまり彼らのお喋りが人間のようで好きになれないが、農家の人が言うにはあれはただの鳴き声だそうだ。 意味などない。ただの饅頭の発する音。人間のような思考はない。 そう思っているからこそ、簡単に駆除できるのだろう。 里は決して、ゆっくりにとって安全な場所ではないのだ。 それなのに、この警戒心皆無の動きは何だろうか。 「ゆっ! にんげんさんがいるよ。おにいさん、ゆっくりしていってね!」 俺の足元にまで近づいて、ようやくまりさは俺の存在に気づいたらしい。 まりさはぐいっと体と頭が一緒の部分をもたげ、俺の方を一心に見つめてそう言った。 きらきらと輝くような瞳だ。 実に無邪気な、人間の子どもでさえもここまであどけない目つきをしてはいない。 俺と仲良くできる、と無条件で信じ込んでいるのがよく分かる。 「……あ、ああ。ゆっくり、しているよ」 「ゆっ! ゆっ! ゆっくり! ゆっくり! おにいさん、ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」 俺はまりさの迫ってくる気迫にあっさり負け、返事をしてしまった。 途端にパアァ……とまりさの顔がさらに明るくなる。 ぽよんぽよんとまりさは反復横跳びをして、返事が来た喜びを全身で表現した。 きっと、これで俺とまりさとは仲良くなった、と思い込んでいるのだろう。 ゆっくり、という言葉を連発することから、余程その響きが気に入っているらしい。 「ここはまりさのみつけたゆっくりぷれいすだよ! おにいさんもゆっくりしていいからね!」 「え? いや、ここは俺の家で、君のいるところは俺の庭なんだが」 「ちがうよ! まりさのゆっくりぷれいすだよ! まりさがおさんぽしててみつけたんだよ! まりさのすてきなゆっくりぷれいすだよ!」 「……まあ、そうだよな。君たちに人間の家とか庭とか分かるわけないだろうし」 「ゆっ! ゆっ! おにいさん、へんなこといわないでよね。まりさちょっとこまっちゃったよ。ゆっくりしようね!」 「はいはい。ゆっくりゆっくり」 ああ、これがお家宣言という奴何だな、と俺は一人納得していた。 まりさにとっては、ここは自分が見つけた場所なんだろう。 俺という人間は、ついさっき気づいた。つまり、庭が先で俺が後だ。 だから、まりさにとってここは先に自分が見つけた場所ということになっているのだろう。 どうでもいいことだ。 どうせ、飽きたらすぐにどこかに行ってしまうだろう。 俺はまりさのかん高い声と、妙に人の神経を逆なでする口調に少しいらついたが、怒るほどではなかった。 そもそもここは借家だ。まりさが何と言おうが、あまり執着心はない。 まりさは楽しそうに俺の周りを転がってみたり、あちこちに顔を突っ込んで匂いを嗅いだりしていたが、不意にさっきよりもさらに目を輝かせた。 「ゆゆっ! おいしそうなおかしがあるよ! とってもおいしそうだね! まりさたべたい!」 ゆっくりは感情がすぐ表に出る。 まりさの目は、俺の隣にある皿に置かれたおはぎに釘付けだった。 おはぎに焦点を合わせたまま動かない目と、よだれの垂れている口元、そして舌なめずりをする舌。 露骨に「食べたいよお!」という欲望がむき出しになった顔だ。 「駄目だ。これは俺のお菓子だよ。まりさにあげる食べ物じゃないんだ」 「えぇぇ……。うらやましいなぁ…………おいしそうだなぁ……まりさもたべたいよぉ……」 餌付けして居座られても困る。 俺はちょっと大人げなかったが、皿を持ち上げてまりさから遠ざけた。 まりさはすぐさま縁側に這い上がって、おはぎに噛み付きかねない勢いだったからだ。 まりさの視線は、器用におはぎを追って動いた。 もう、関心はおはぎに固定されたらしい。 仕方のないことだ。 ゆっくりは極度の甘党だが、野生のゆっくりが甘いお菓子を食べることなどできない。 常に甘いものに飢えているゆっくりの目の前に、大好きなお菓子が置かれたのだ。 飛びつこうとするのも無理もない。 「いいなぁ………おにいさんだけいいなぁ………まりさもほしいなぁ……たべたいなぁ……むーしゃむーしゃしたいなぁ………」 さっさとあきらめて出て行けばいいものを。 そうすれば、それ以上おはぎを見続けて焦がれることもないのに。 俺はそう思ったが、まりさの取った行動は正反対だった。 俺のそばにべたべた付きまとって、懸命に自分をアピールし始めたのだ。 俺の機嫌を伺うように顔をのぞき込んでみたり、チラッと流し目を送ってみたり、実にうっとうしい。 口からは、俺が羨ましい、自分も食べたい、と馬鹿の一つ覚えのような言葉が連発される。 俺がそっぽを向くと、そちらに回り込んでぴょんぴょん跳ねたりぷりんぷりんと尻を振ってみせる。 少しでも俺の気を引こうと、まりさは手を尽くしているらしい。 だがそれは、俺にしてみれば不愉快な行為ばかりだ。 人のものを欲しがるという態度が気に入らない。 ましてや、あきらめが悪くしつこいならばなおさらだ。 茶の席でこんなことをしようものなら、即座に追い出されても仕方がない不作法だ。 「いいなあ! まりさもほしいよ! ほしい! おかしほしい! おかしたべたい! たべたい! たべたいよお!」 ついに、まりさは我慢できなくなったらしく、大声で俺に頼み始めた。 いや、もはや図々しく要求している。 それにしても、ゆっくりは体は小さいのに声がやたらとでかい。 小さな子どもが耳元でどなっているようで、耳がおかしくなりそうだ。 「ちょうだい! まりさにもちょうだい! おにいさん! ねえ! ねえねえねえ! きいてるの!? おにいさん! おにいさんってば!!」 「駄目ったら駄目だ。いいか、これは俺のものなんだ。君にあげるものじゃない。いい加減あきらめろ」 「おにいさんのいじわる! けち! まりさおこったよ! ぷんぷん! もういいよ! おにいさんなんかしらない!」 とうとうまりさの堪忍袋の緒が切れた。 俺のことを一方的に非難すると、ぷりぷり怒りながら垣根の中に潜り込んでいった。 まりさにしてみれば、仲良くなった人間が自分だけお菓子を楽しんでいるように思えたのだろう。 俺は少しまりさがかわいそうになったが、すぐに自分の考えを改めた。 「じぃぃぃぃっ…………………………じぃぃぃぃ…………………………」 わざわざ声に出して、自分がいることをアピールしているのはなぜだろうか。 まりさは森に帰ろうとはしなかった。 生け垣の下から、まりさの食欲でらんらんと輝く二つの目が俺を見ていた。 まりさ本人は隠れているつもりだろう。 だがこちらからは、じーっとおはぎを見つめるまりさの姿が丸わかりだ。 ああ言ったものの、菓子への未練はそう簡単に断ち切れないのだろう。 ふと、俺の心に子どものようないたずらが思いついた。 この状態で、俺が席を外したらどうするだろうか。 十中八九、まりさはおはぎを食べてしまうだろう。 その現場を俺が押さえたらどんな顔をするだろう。 さぞかしうろたえるだろう。どんな言い訳をすることだろう。 泣いて謝るだろうか。それともちょっとすねてから謝るだろうか。 「わあ! そうだった。用事を思い出したぞ。すぐ部屋に戻らなくちゃ! 急ぎの用だから、おはぎはここに置いていこう!」 俺がわざとらしく大声を出すと、まりさが生け垣の中で身じろぎしたのが分かった。 「どこにいるか分からないけど、もしまりさがいたら困るからちゃんと言っておかなくちゃな!」 まりさが俺のおはぎだと言うことを忘れては困るので、ここでもう一度繰り返す。 「まりさ! これは俺のおはぎだからな! 絶対に食べちゃ駄目だぞ! まりさのおはぎじゃない。俺のものだぞ! 食べたら怒るからな!」 俺の声はまりさに聞こえただろう。 しかし、まりさの目はもうおはぎの方しか見ていない。 本当に聞こえたのだろうかと怪しく思うが、さっきから食べるなと連呼してあるから、あれが自分のものではないことぐらい分かるだろう。 では、実験の開始だ。 俺は縁側から立ち上がり、家の中に入って柱の陰に隠れた。 俺が身を隠してすぐ、まりさは生け垣の中から飛び出してきた。 駄目だこれは。 ゆっくりには、人間のものとそうでないものとの区別が付かないようだ。 あっさりとまりさがおはぎを平らげて実験終了かと思ったが、そうではなかった。 まりさは縁側に飛び乗ると、おはぎの載っている皿に顔を近づけた。 しかし、ぱくりと噛み付くことはなかったのだ。 「ゆうぅ……おにいさん……たべちゃだめだって……どうして……こんなにおいしそうなのに……」 俺は耳を疑った。 なんだ。ちゃんとまりさは理解していたんだ。 俺がいなくなっても、おはぎが自分のものではなく人間のものだと覚えていたのだ。 ゆっくりの記憶力を俺は侮っていたが、どうやら考えを改めなくてはいけないようだ。 「いいなあ……たべたいなあ……おいしそうだなあ……おにいさんうらやましいなあ……まりさもたべたいなあ……」 まりさはよだれをたらたら、未練もたらたら流しながらおはぎに心を奪われている。 食べられないと分かっているなら見なければいいのに、と思うのだが、まりさはじっとおはぎを見つめてうっとりしている。 それが欲望を加速させるニトロであることに、まりさは気づいていない。 「たべたいよぉ…むーしゃむーしゃしたいよぉ……くんくん……くんくん……ゆぁぁぁ……いいにおいだよぉ……くんくん………」 どこにあるのか分からない鼻をひくつかせ、まりさは餡子の甘い匂いをいっぱいに吸い込んでいる。 もはや舐めるようにまりさはおはぎをあちこちから眺め、ほとんどくっつきそうなくらいに顔を近づけている。 これは駄目だ。 絶対にまりさは我慢できない。 俺の予想は的中した。 「ちょっとくらいならいいよね! おにいさんにわからないくらいなら、たべてもだいじょうぶだよね!」 分かる分からないの問題じゃなくて、そういうことを口にしちゃいけないだろ。 俺は柱の陰でまりさの行動に突っ込む。 「なめるだけだよ! ぺーろぺーろするだけだよ! それくらいならおにいさんもわからないよ!」 まりさはきっと、自分で自分を騙しているのだろう。 いけないことだと分かっている。 でも、どうしても食べたい。 ならば、これくらいなら分からないと自分に嘘をつき、信じ込もうとしているのだ。 「ぺーろぺーろ…………し、し、し、しあわちぇええええええ!!」 ついに、まりさは俺の警告を無視した。 ゆっくりの体の割に大きくて分厚い舌が口から伸びると、ぺろりとおはぎの餡子を舐めてしまった。 次の瞬間、まりさは幸福そのものの顔で叫んだ。 まりさは冗談抜きで輝くような表情で、甘いものを味わう幸せを表現していた。 「しゅごくおいちい! しゅごくおいちぃよおおおお! あみゃいよおおお! もういっかいぺーろぺーろ! ぺーりょぺーりょおおお!!」 まりさは歓喜のあまり涙を流している。 よく見ると、下半身からちょろちょろと何か流れ出している。 失禁しているのか? 不快になる俺を置いてきぼりにして、まりさはもう一度おはぎをべろりと舐める。 前回は罪悪感からか恐る恐るだったが、今回は舌で餡子を削り取るような舐め方だ。 あれでは、おはぎの表面に舐めた跡が残るだろう。 まりさの罪はこれで確定したわけだ。 「ち! ち! ちあわしぇぇええええええ!! おいちぃいいいいいい!!」 再びまりさは嬉しさのあまり大声を出す。 こっそりと盗み食いをするつもりだったが、あまりのおいしさに声が出てしまうのか。 もう、こうなってしまっては一直線だ。 止まるわけがない。止められるわけがない。 「むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃ! あまいよおおおお! おいちいよおおおお! むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃぁあああ!」 まりさは、おはぎにかぶりついた。 一口で三分の一をかじり、もぐもぐと噛む。 途端に、まりさは口から餡子をこぼしながら叫んだ。 「すごいおいしいっ! おいしいいいい! あまいよお! まりさむーしゃむーしゃするよ! むーしゃむーしゃ! おいしいよおおおお!」 もう夢中だった。 まりさはおはぎにぱくつき、もぐもぐと噛み、ごくりと飲み込む。 ずっと我慢していた甘さへの渇望を満たせる喜びで、まりさの顔は緩みきっていた。 「まあ、そうだよなあ……」 俺は、茶箪笥に向かいながら苦笑していた。 怒りの感情はわいてこなかった。 きっと、父が里長のために用意した茶菓子を勝手に食べた俺も、あんな感じだったのだろう。 俺は、まりさに子どもの頃の俺を重ねていた。 大事な茶の席で使うはずの茶菓子を、無断で食べてしまった俺。 食べるなと厳命されながら、甘味の誘惑に勝てなかったまりさ。 どちらも、似たようなものだ。 悪いと分かっていても、ついついやってしまう。 それを責めるのは、いささか大人げないと言えるだろう。 ……この時の俺は、まだ正常だった。 俺は代わりの茶菓子のきんつばを取り出し、皿に載せた。 さて、まりさはどんな顔をするだろう。 俺が怒ると、何て弁解するだろう。 俺はいたずらが成功した子どもの顔で、縁側へと向かったのだった。 縁側に置かれた皿には、おはぎの代わりにまりさが載っていた。 半分幸せ、半分物足りない顔で、まりさは皿をぺろぺろと長い舌で舐め回している。 「おや、おはぎがないぞ。しかもそこにいるのはまりさじゃないか。さては盗み食いしたんだな。悪い奴め!」 芝居気たっぷりに、俺は恐い顔をして縁側に姿を現した。 皿の上に乗っかり、しかも皿を舐めていたまりさに逃げ場はなかった。 「ゆううううううっっっ!?」 まりさはびっくりして跳び上がった。 こちらを向くまりさの口の周りは、おはぎの餡子ですっかり汚れている。 「ゆあっ! あっ! ゆああっ! おにいさんっ! ゆっくりしようねっ! ゆっくりっ! ゆっくりっ!」 「まりさ、口の周りが餡子で汚れているぞ! 言い訳しても無駄だ。あれだけ食べるなと言っておきながら、よくも俺のおはぎを食べたな!」 まりさのうろたえた様子は、本当に面白かった。 何度も空になった上に自分の唾液でべとべとになった皿と、怒った顔をした俺とを見比べている。 まりさが混乱しているのがよく分かり、俺は内心笑いを噛み殺していた。 「まりさ! この悪いゆっくりめ! 人のものを勝手に食べちゃったら、何て言うのかな!?」 おろおろとしているまりさに、俺は親のような顔で言ってみた。 もちろん、この状況は俺が作ったものだから、まりさが拗ねたり泣いたりしても怒る気はなかった。 一回でもいいから「ごめんなさい」と言えば、それで俺はすっきりしただろう。 「まりさも食べたかったのか。じゃあ、これも半分あげるよ」 面白いものを見せてもらったお礼に、きんつばを半分食べさせてやるつもりだった。 ……そもそも、ゆっくりに本気で怒るなんて大人げないだろう。 こんなことを考えるほど、かつての俺は甘かった。 ゆっくりという饅頭がどれだけ人間とは異なる存在なのか、理解していなかった。 そして、ゆっくりという饅頭がどれだけ人間を苛立たせる存在なのか、体験していなかった。 まりさはしばらくおたおたしていたが、いきなりにっこりと笑った。 それまでの困惑した様子が嘘のような、あっけらかんとした笑顔をこちらに向けた。 「おかしとってもおいしかったよ! もっとちょうだいね!」 俺は絶句した。 何だって? 今、こいつは何て言ったんだ? おいしかった? もっとちょうだい? 「何を言ってるんだ? あれは俺のお菓子だぞ」 「うん! でもおいしそうだったから、まりさがまんできなくてたべちゃった! すごくおいしかったよ!」 まりさは初対面の時とまったく同じ、無邪気な顔でニコニコと笑っている。 自分が悪いことをしたという自覚がないのか? 野生動物だから、目の前にある餌をただ貪るだけだったのか? そうじゃない。 まりさは一度ためらっている。 おはぎが俺のものであるということは、知っていたはずだ。 「食べちゃ駄目だって言っただろ。聞こえなかったのか。それとも、忘れちゃったのか?」 わすれちゃったよ、とまりさが言ってくれれば。 そうすれば、俺は納得していたはずだ。 単なるおはぎ一つのことだ。 俺が食べられなかったからといって、子どものように怒ることはないはずだった。 しかし、まりさの返答は違った。 「ずるいよおにいさん! おいしいおかしをひとりじめして! おかしはみんなでたべるからおいしいんだよ!」 「まりさ、君が全部おはぎを食べちゃったせいで、俺の食べる分はなくなったよ。全然みんなで食べてないじゃないか」 「おにいさんおかしをもうひとつもってるでしょ! まりさはおなかがすいてたんだよ! そっちもはんぶんちょうだいね!」 たかがゆっくり如きの馬鹿な言い草。 そう片づけてしまうには、俺は若すぎた。 いや、片づけてしまえないほど、俺はこのことについてトラウマがあったのだ。 呆れ果ててものも言えない俺を差し置いて、まりさは俺の手のきんつばに向かってジャンプする。 「まりさおかしだいすき! もっとちょうだい! ねえ! ねえ! ねえ! きいてるの!? まりさはおかしだいすきなんだよ!」 俺はまりさを見た。 まりさは俺を見ていない。 俺の手にあるきんつばしか眼中にない。 俺の存在など、まりさには邪魔なだけなのだろう。 「おにいさん! おにいさんってば! きいてるの! ねえきいてよ! まりさにそれちょうだい! まりさもっとたべたい! おかしたべたいよお!」 俺の心情の変化は、大人げないと批判されても仕方がない。 しかし、俺の心の奥から、自分でも信じられないほどの怒りがこみ上げてきた。 ただの理性のない獣ではなく、こいつはゆっくりだ。 どんな形でも、まりさが一度でもごめんと謝れば当然許すつもりだった。 これは俺の仕組んだいたずらだ。それくらいの余裕はあったはずだ。 それなのに、俺の手にあるきんつばに向かって、羞恥心の欠片もなく飛びつくまりさをみていると、怒りしか感じない。 かつて俺は、何度謝っても父に許されなかった。 心底反省しても、許してもらえなかった。 やがて雷親父の怒りはおさまったのだが、その間俺は家の中で針のむしろにいた。 かばってくれる祖母がいなければ、俺は父を憎みさえしただろう。 あの嫌な経験は、俺の中でしこりとなって残っている。 人のものを勝手にかすめ取ることが、どれだけ悪いことなのか身に染みていた。 それなのに、こいつは。 こいつは人のものを食っておきながら謝りもせず、もっとよこせと催促するのか? 自分が何をしたのか分かっていながら、恥知らずにもこちらに要求するのか? たかが饅頭風情が、人間の食べ物をよこせとうるさく詰め寄るのか? 俺はゆっくりの生態に詳しくなかった。 もし詳しい人がこれを読めば、当然失笑することだろう。 何を馬鹿なことをしているんだ、ゆっくりにいったい何を期待しているんだ、と笑われて当然だ。 俺の間違い。 それは、ゆっくりを人間のように扱ったことだった。 俺はきんつばを地面に落とした。 こんなものが血相を変えるほど欲しいのか。 勝手にしろ、と俺はまりさにきんつばをあげた。 「ゆっゆ~♪ おいしそうなおかしさん、ゆっくりまりさにたべられてね! むーしゃむーしゃ! しあわせーっっっ!」 地面に落ちたきんつばに、まりさは飛びついた。 落とした俺に目もくれず、がつがつと貪っていく。 遠目から見ればまだ耐えられるが、近くで見ると本当にこいつは汚らしい食べ方をする。 足で蹴り飛ばしたくなる誘惑を抑え、俺はまりさが食べ終わるまで待った。 「ゆっくりおいしかったよ! まりさこんなにおいしいおかしはじめてたべたよ! もっとたべさせてね!」 舌で口の周りをべろべろ舐め回しながら、まりさはさらにお菓子を欲しがる。 こいつは、お菓子をくれた俺にお礼さえ言わなかった。 無神経な物言いに、俺の心はもう動かない。 腹立ちはピークに達しているため、火に油を注いでもこれ以上燃えないのだ。 「もうないよ。これで終わりだ」 「ゆぅぅ……そうなんだ。まりさ、もっとむーしゃむーしゃしたかったよ……おかしおいしかったのになあ……」 たちまちまりさの顔は悲しそうになる。 体の大きさからして結構な量を食べたのに、こいつは満足しないのだ。 ますます俺はゆっくりが嫌いになった。 「じゃあもうまりさはかえるね! おにいさん、またおいしいおかしをちょうだい! まりさまたくるからね!」 「ああ、ちょっと待つんだ、まりさ」 「ゆゆ? おにいさん、どうしたの? まりさはおうちにかえるんだよ」 食うだけ食ってさっさと帰ろうとするまりさを、俺は呼び止める。 振り返って首を傾げるまりさ。 俺は両手を伸ばして、その丸っこい顔と体をつかんだ。 「ゆっ! おそらをとんでるみたい! まりさとんでるよ! とりさんみたいにおそらをとんでるよ!」 いちいち実況中継するのがうるさい。 それに、この状態は飛んでるのではなく浮いてるだ。 食べたせいか、まりさの体はそれなりに重量がある。 手に持つとちゃんと重みが伝わってくる。 饅頭皮はもちもちとしていて、手触りがなかなかいい。 まだ若いからだろう。手首を回して横と後ろを見てみたが、傷らしいものもない。 「ゆゆっ? なんなの? そんなにみつめられると、まりさちょっとはずかしいよ~」 俺が見とれているとでも思ったのか、まりさは顔をちょっと赤らめてもじもじし始めた。 恥じらいとかそういった感覚はあるのか。 ならばなおさら、好都合だ。 「まりさの両目はきれいだね」 俺はいきなりまりさを誉めた。 まりさはきょとんとしていたが、すぐにとても嬉しそうな顔になる。 「とってもきれいだよ。きっと、ゆっくりの中では一番きれいな目をしているんだろうね」 「ゆゆ~ぅ。それほどでもないよ~。でも、まりさすごくうれしいよ! うれしい!」 両手で持ち上げられた状態で、まりさは嬉し恥ずかしといった感じで体をぐねぐね左右に振っている。 表面上は恥ずかしそうだが、明らかにまりさはこちらの言葉に期待している。 俺がじっと見つめていると、伏し目がちになりながらも時折チラッとこちらを見てくる。 もっと誉めて、と思っているのが丸わかりだ。 お望み通り、俺はまりさを誉めちぎった。 「まりさの髪の毛もきれいだよ。とてもきれいでまるで黄金の小川みたいだ」 「ゆゆん! まりさのかみのけさんはまりさのじまんだよ! みんないっぱいほめてくれるんだよ!」 「まりさの歯は白くて整ってるね。虫歯もなくていい歯をしているよ」 「はさんはだいじだよ! むーしゃむーしゃするときにはさんがなかったらたいへんだよ!」 「まりさの帽子は素敵だね。よく手入れがされていて、ほかのゆっくりたちも羨ましがるだろうね」 「だって、まりさのたからものだもん! ゆっへん! まりさはおぼうしさんがいちばんだいじなんだよ! まいにちまりさはおぼうしをごーしごーしあらうんだ! きれいきれいにしてからおぼうしをかぶると、とってもゆっくりできるよ!」 すっかりまりさは誉められて有頂天になっている。 見る見るうちに、まりさの顔は幸福を絵に描いた笑顔になっていく。 まだだ。 もっともっと、まりさを舞い上がらせてやろう。 俺はさらにまりさの誉めるべき点を、大事にしているであろう点を探す。 「まりさのお家はどんなところだい? きっと、とても住みやすい場所だろうね」 「ひろくてゆっくりできるすてきなおうちだよ! まりさのたからものがいっぱいあるんだ!」 「まりさの家族はどうかな? まりさはどう思ってる?」 「みんなだいすき! おとうさんだいすき! おかあさんだいすき! いもうとのれいむもまりさも、みんなみんなだ~いすき!」 「まりさには友達がいるだろう? 友達のことはどう思ってる?」 「みんなゆっくりしてるよ! ありすもいるし、れいむもまりさもいるよ。いっしょにあそぶとすごくたのしいよ!」 「じゃあ、最後にまりさのゆん生はどうかな。まりさは今まで生きてきてどうだった?」 「とってもしあわせだよ! まりさゆっくりできてしあわせ! まりさはしあわせなゆっくりだよ!」 「そうだろうね。まりさは幸せなゆっくりだよ。俺にもよく分かる」 「ゆ~ん♪ おにいさん、まりさてれちゃうよ~♪ ゆんゆん♪ ゆっくり♪」 最後にまりさはとびきりの笑顔を見せて締めくくった。 本当に、まりさは幸せそうだった。 まりさの言葉を聞いて、俺もよく分かった。 こいつは生まれてからずっと、ゆっくりにしては恵まれた環境にいたのだ。 さぞかし、幸福なゆん生を送ってきたのだろう。 これからも、それが続くと信じて疑わないのだろう。 「じゃあそれ、全部俺がもらうよ」 手始めに、君の片目をもらうことにしよう。 いきなり両目を奪ったら、これから始まる喜劇が見られなくなるからね。 俺はまりさを片手で持つと、右手の人差し指をまりさの左の眼窩に突っ込んだ。 まりさは指を突っ込まれても、2秒ほどは笑顔のままだった。 きっと、俺の言葉の意味が分からなくて頭の中を素通りしたのだろう。 別に構わない。こちらも、まりさが理解してからこうするつもりなどなかったのだから。 柔らかい感触が指に伝わってきた。 つるんとして湿った眼球を避けて、その裏側の餡子に指先が届いた。 やや温かい。 「ゆっ……ゆぅ……ゆ゙! ゆ゙ぎぃ゙い゙い゙い゙あ゙あ゙あ゙!! あ゙あ゙あ゙ぎ゙い゙い゙い゙い゙い゙!」 まりさはどぎついまでの絶叫を張り上げた。 この声は聞いたことがある。 ゆっくりを里の皆で駆除していた時、えらく気合いの入った男が一人いた。 人の二倍も三倍もゆっくりを狩る彼の回収したゆっくりは、どれもずたずただった。 彼の持ち場からは、今のまりさと同じ悲鳴が止むことがなかった。 ゆっくりの鳴き声ということで誰も気にしなかったが、あの男はゆっくりを生きたまま解体していたのか。 俺は慎重に指先で眼球をつまみ、引っ張る。 視神経やら筋肉やらの抵抗はなく、思った以上にあっさりとまりさの目玉は顔から抉られた。 俺は激痛で歪んだ顔をしているまりさに、それを見せてやった。 「や゙あ゙あ゙っ! や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! まりざの! まびぢゃのおびぇびぇえええええええ!!」 自分の目と見つめ合うという状況は、なかなか希有なものじゃないだろうか。 俺の手の中と眼球と目があって、まりさはさらに大声で叫ぶ。 「い゙ぢゃい゙ぃい゙い゙い゙い゙い゙!! がえぢでっ! まりぢゃのおべべがえぢでよおおおおお!!」 隻眼から大量の涙を流しながら、まりさは俺に目玉を返すよう訴える。 ぽっかりと開いた眼窩からは、どろりと餡子混じりの涙が流れる。 果たして、これをまりさの眼窩に突っ込んだらまた機能するのだろうか。 俺は改めて、こいつの眼球をしげしげと眺めてみた。 材質は寒天か白玉だろう。 ゆっくりの顔についている時はあんなにも表情豊かなのに、こうして抉り出すととたんにただの無機物になる。 「おにいざんがえじでえ! おめめがえじでよおお! どうじで! どうじでごんなごどずるのお!? まりざいだいよおおお!」 「君だって、勝手に俺のお菓子を食べたじゃないか。だから俺も、君から勝手に目をもらうよ」 俺は痛みに苦しみもがくまりさにそう言った。 まりさは一瞬、信じられないものを見る目で俺を見た。 不愉快だ。 自分がそうしたというのに、自分が同じようにされるのは嫌なのか。 「がえじでっ! がえじでっ! それはやぐまりざのおかおにもどじでよおおおおおお!!」 「お菓子を返してくれたら戻してあげるよ。ほら、早く返して。そうしたら戻してあげる」 「でぎないよお! できないよおおお! もうおがじざんだべじゃっだがらがえぜないよおおおお!!」 「じゃあ、これも返してあげない」 泣き叫ぶまりさを尻目に、俺は指先に力を込めた。 ブヂュッ、とあまりにもあっけなく、まりさの二つとない左目は潰れて四散した。 目の前で自分の体の一部を潰されたショックで、まりさは泣きわめく。 「や゙ぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! お゙め゙め゙ぇ! お゙め゙め゙ぇ! まりざのずでぎなおべべぇえええええええ!!」 ねっとりとした液体が、潰れた眼球から流れ出した。 恐らくシロップだろう。 これでもう、まりさの顔から左目は永遠に失われた。 どんなことがあっても、まりさはこれからずっと片目で生きていかなければならないのだ。 俺は眼球の残骸を庭に放り投げた。 「次はまりさの髪の毛だね。それももらうよ」 「だめぇ! だめだめだめえええええ! やだあ! まりさのおさげさんむしっちゃやだあああああ!」 必死に体を捻って、俺の手から逃れようとするまりさ。 だが、その力はあまりにも弱く、抵抗と呼ぶにも値しない。 俺はまりさの帽子から出ているお下げを掴み、ぐいっと力任せに引っ張った。 「い゙ぎゃ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙! いだいっ! いだいいだいいいい!」 お下げは根本から千切れて手に残った。 なぜ根本からだと分かるかというと、皮と餡子がわずかながらくっついてきたからだ。 俺はまりさの帽子を取り上げた。 「おぼうしさんっ! それまりさのおぼうしさんっ! かえして! まりさのおぼうしさんかえしてね!」 邪魔になるから、俺は帽子を自分の頭に乗せた。 傍目から見ればかっこわるいが、この際気にはしない。 「これだけじゃ足りないな。もっとまりさの髪の毛をもらうよ」 「やだああ! やめてね! まりさのかみのけむしらないで! いたいのやだああ! むしるのだめえええええ!」 まりさの声は、昨日の俺が聞いたら痛々しくて手を止めたくなるものだったに違いない。 いくら何でも、菓子を勝手に食べられたくらいで目を抉って髪を抜くなんて、と不快感をあらわにしたことだろう。 だが、今の俺はまったく嫌悪感がなかった。 まりさのきらきら光る金髪を指で掴み、お下げと同じようにして引っこ抜く。 雑草を抜くようなブヂッという手応えを残して、一つまみの金髪が手に残った。 「いぢゃあああああいいい! あちゃま! あちゃま! まりぢゃのあぢゃまああああああああ!!」 まりさは涙を流して激痛を訴える。 髪の毛は地肌ごと引き抜かれ、まりさの頭には小さな穴が空いていた。 気にせず、俺は次々とまりさの頭から髪の毛をむしり取る。 「いびゃい! いびゃいよっ! おにいざんやめでっ! まりざのがみのけっ! だいじな! だいじながみのけなのっ! いぢゃいいぃっ! どうじでぇ? どうじでごんないだいごどずるの!? まりざなにもわるいごどじでないのにいいいいいい!」 自称「悪いことをしていないまりさ」は、俺が手を止める時には「まばらに頭に髪の毛が残っている禿まりさ」になっていた。 完全な禿にするよりも、所々に残っている方が無様さに拍車がかかる。 俺と最初に出会った時の若くはつらつとしたまりさは、もうどこにもいない。 ここにいるのは、片目に穴が空き、髪の毛のほとんどをむしられた不細工なゆっくりだ。 「ゆっ……ゆぐっ……ゆぐぅ……いだいよぉ……まりさのかみのけさん……みんなにほめてもらったかみのけさん…… ゆっくりかえってきてね……いだいぃ……まりさのあたまにゆっくりかえってきてねえ! はやくかえってきてねええええ!!」 まりさは俺の足元に散らばる自分の髪の毛を見て、涙をぽたぽた落としている。 その悲しそうな顔は、ゆっくりを駆除していてもなかなかお目にかかったことがない。 どうやら、本当にこいつの髪の毛は仲間の間でちやほやされていたようだ。 それを苦痛と共に失った気分はどんなものだろう。 「もらったけど、やっぱりいらないね。こんな汚い髪の毛」 俺は下駄の足でその金髪を踏みにじり、土の中にねじ込んだ。 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 まりさの悲鳴がかん高くなる。 俺は自分の頭にかぶっていた帽子を、まりさに返してあげた。 「おぼうしさん! まりさのだいじなおぼうしさん! ゆっくりおかえり! おかえりいいい!」 大あわてでまりさは帽子をかぶる。 大事なものだということもあるが、同時に禿を隠したいのだろう。 まりさは俺をにらみつけた。 「ひどいよ! おにいさんひどい! やめてっていったのに! まりさがやめてっておねがいしたのに! どうしてこんなことするの! おにいさんはゆっくりできないよ! きらい! だいっきらい!! まりさのおめめもどして! かみのけももどしてよお!」 「ああ、まりさはやめてって言ったね。聞こえたよ」 「だったらどうしてこんなことするの! まりさいたかったよ! すごくいたかったよ! どうしてえええ!」 「だから? まりさが止めてって言ったから何なの?」 まりさは口を閉じた。 涙がいっぱいにたまった右目で、こちらをじっとにらんでくる。 まるで、自分はかわいそうな被害者であるかのような顔だ。 「君だって、俺が食べちゃ駄目だと言ったお菓子を食べたじゃないか。同じことだよ。俺も、君が止めてって言っても髪の毛をもらうよ」 「そ……そんなこと……。そんなの……。そんなのやだよおおおお! やだあ! やだやだやだあああああ!!」 「次はまりさの白い歯だね。それももらうよ」 「やだあ! やだあああ! やじゃびゃびぎぃぃぃ!!」 俺は大声を張り上げるまりさの口に、親指と人差し指を突っ込んだ。 手にまりさの口内の濡れた感触が伝わった。 上顎の奥歯を一本掴み、力任せに引っ張る。 予想よりも遙かに力を必要とせず、まりさの歯は引っこ抜けた。 「あびっ! ばびびっ! あびっ! あびや゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙!!」 歯の抜けた歯茎から粘性の低い餡子をびゅっびゅっと拭きつつ、まりさは絶叫した。 俺は指先でつまんだこいつの歯をじっくりと眺めてみた。 色は真っ白だ。形は人間のものとよく似ている。 少し力を入れただけで、あっけなく歯は砕けた。恐らく砂糖でできているのだろう。 「びゃびぇでっ! いびゃいびょ! しゅびょびゅいびゃいっ! いびゃびいいいい!! 」 たった一本歯を抜かれただけで、まりさは顔をぐしゃぐしゃにして激痛を訴える。 ろれつの回らない様子から、これがまりさにとって初めての激痛なのがよく分かる。 だが、俺は一本では満足しなかった。 怯えきったまりさの視線を無視して、俺はさらに口に指を突っ込んだ。 「びゃべびぇえええええええ!!」 上顎の歯を四本ほどつまむと、一気に引っこ抜く。 一度目で力加減が分かったから、二度目の抜歯は簡単だった。 ブチブチッという歯茎の千切れる音と共に、俺の手はまりさの口から抜かれた。 まりさの大事にしていた、きれいな白い歯と一緒に。 「い゙ぎゃびい゙い゙い゙い゙い゙い゙!! ゆ゙びあ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙あ゙あ゙っ! びぎゃい゙い゙い゙い゙い゙!」 目を抉ってやった時よりも、数段上の悲鳴が聞こえた。 さすがに、これを近距離で聞くとこちらも鼓膜がおかしくなる。 麻酔なしで歯を何本も一度に抜かれたのだ。 こいつがこれだけ叫んでもおかしくない。 「ぼうやだああああああ!! やだああああああ!! まりざいだいのやだああああああああ!!」 まりさは俺の手の中でめちゃくちゃに暴れる。 どうやら、歯を失っても喋れるようだ。 そうでなくては。 こちらも、これでこいつのすべてを奪い尽くしたとは思っていない。 俺はまりさを地面に降ろした。 まりさは、まさか助かると思っていなかったのだろう。 一瞬きょとんとして地面を見ていたが、次の瞬間ものすごい勢いで泣き出した。 「ゆわああああああん! ゆえええええええん! もうやだああ! おうちかえるうううう! まりさおうちかえるううううう!!」 泣きながら、まりさはぴょんぴょんと跳ねて庭を突っ切る。 生け垣に頭から体当たりし、中に無理矢理潜り込んだ。 火事場の馬鹿力という奴だ。 まりさはゆっくりらしからぬ速さで俺の家から逃げ出した。 「おうちかえる! まりさはおうちにかえるよおおおお! おとうさあああん! おかあさああん! まりさもうやだよおおおお!」 泣きじゃくるまりさの声が遠ざかっていくのが分かった。 さて、後を追うことにしよう。 まだまだ、こいつから頂戴しなければならないものはあるのだから。 逃げるまりさの後を追うのはあまりにも簡単だった。 「ゆええええん! ゆええええん! ゆっくり! ゆっくりいいい! ゆっくりしないでにげるよおおおお! いたいよおおお!」 何しろ、まりさは大声で泣きながら逃げているのだ。 あれだけ小さな生き物が、よく全力疾走しながら大声を出せるものだ。 幻想郷の人間である俺は、それなりに妖怪との付き合いもある。 だが、あんな奇怪な存在などゆっくり以外にいない。 「おうちかえる! まりさはおうちかえるよ! かえって! おうちかえって! ゆっくりする! ゆっくりしたいよおおお! おとうさんとすーりすーりする! おかあさんとすーりすーりする! いもうととごはんさんむーしゃむーしゃする! ゆっくりするうう!」 一度も振り返らず、いっさんに巣に向かったまりさは実に愚かだった。 姿を隠しもせずに大声を出して、あれでは後を追ってきて下さいと言わんばかりだ。 森に入ってしばらくしてから、まりさは大きな木の根元で立ち止まると叫んだ。 「おかあさあああああん! おとうさああああん! まりさだよおおおお! かわいいまりさがかえってきたよおおおお!」 わざわざ出迎えを要求するとは、ずいぶんと甘ったれた子どもだ。 だが、こいつの尋常でない声の調子に驚いたのだろう。 「おちびちゃん? どうしたの? ゆっくりしてないね!」 「ゆっくりしていってね! おちびちゃんだよね! どうしたの?」 「おねえしゃんどうちたの? ゆっくちちてないにぇ!」 「ゆっ! おえねしゃんだ! おねえしゃんおかえりなちゃい!」 「どうちたんだじぇ? こわいいぬしゃんかとりしゃんにおいかけられたにょ?」 巣穴にかぶせてあった木の枝が取りのけられ、中からゆっくりの家族が姿を現した。 両親のまりさとれいむ。 それにこいつよりも体の小さな、れいむが二匹とまりさが一匹。 舌足らずな口調と体の大きさで、妹だとすぐ分かる。 「ゆええええええん! ゆえええええん! おかあさああああん! おとうさあああん! まりさっ! まりさあああああ!!」 まりさは家族の顔を見て安心したのか、一目散に両親の所に跳ねていった。 その側にくっつくや否や、まりさは大声でわんわんと泣き出す。 「おちびちゃんそのおかおどうしたのおおおお!? きずだらけだよおおおお!」 「おめめがかたっぽないよおおおお! それに……おちびちゃんのはがおれてるよおおおお!」 「ゆああああ! おねえしゃんいちゃいいちゃいだよおおお!」 「おねえしゃんいちゃいの? れいみゅがぺーろぺーろちてあげりゅにぇ!」 「まりしゃもぺーろぺーろしゅるんだじぇ! ぺーろぺーろ! ゆっくちなおっちぇにぇ!」 俺が隠れていることに、家族一同誰も気づいていない。 泣き沈むまりさを慰めようと、両親はまりさに優しくすりすりしている。 妹たちも同様だ。懸命に舌でぺろぺろとまりさを舐めて、何とかして落ち着けようとしている。 確かに、こいつが自慢するだけのことはある、仲のよい家族だ。 しばらくまりさは泣いてばかりだったが、ようやく安心したのかぐずるだけになってきた。 「ゆっ……ゆぐっ……こわかったよお……まりさすごくこわかったよおおお!」 「よしよし、もうだいじょうぶだよ。なにがあってもおとうさんがまもってあげるからね。こわいことなんてなにもないよ」 「そうだよ。れいむたちがついているから、おちびちゃんはあんしんしてね。ゆっくりあんしんしていいからね!」 「ゆぅ……ゆっくりありがとう、おとうさん、おかあさん……。まりさ、うれしいよお…………」 「さあ、おとうさんにおしえてね。どうしてそんなけがをしたの?」 「……ゆうぅぅ…………こわいにんげんさんが……にんげんさんが……おにいさんがまりさにひどいことしたんだよおおお! やめてっていったのに! やめてっておねがいしたのに! おにいさんがまりさのおめめをとっちゃったんだよおおお!!」 再びトラウマを想起したらしく、まりさは泣き始めた。 意外なことに、親のれいむとまりさはこんな事を言った。 「おちびちゃん! どうしておかあさんのいいつけをまもらなかったの! にんげんさんにちかづいちゃだめだっていったでしょ!」 「そうだよ! おとうさんもおしえたでしょ! にんげんさんはこわいよ! ゆっくりできなくされちゃうよっていったでしょ!」 「だって……だってえええええ! おいしそうなおかしがあったから! すごくおいしそうだったから! まりさだってえええ!!」 「ま……まさか…おちびちゃん? もしかして、それを…………」 「ゆええん! ゆわああああん! たべちゃったよおおお! たべたかったんだもん! おいしそうだったもん! まりさだってたべたかったんだもん! すごくおいしそうなおかしだったんだよ! まりさちょっとたべただけなのにいいい!!」 「どうしてそんなことするの! にんげんさんのたべものはたべちゃだめだってあれほどいったのにどうして! どうしてええ!」 「そんなことしたらにんげんさんおこってあたりまえだよおおおおお! おちびちゃん! なんでそんなことしたのおお!?」 俺は感心さえしていた。 この家族は本当にまともだ。 きちんと、人間にちかづいてはいけないと、人間の食べ物を食べてはいけないと両親は教えているのだ。 これなら、人間に駆除されることもなく、森でひっそりと生きていけるだろう。 それなのに、こいつはわざわざ人間の里まで下りてきて散歩なんてしていた。 長女だから甘やかされたのか。 あるいは、もともとこいつだけ特に馬鹿なのか。 どちらでもいい。 俺のプランは既に決まっていた。 「ゆわああああん! まりさゆっくりできなかった! ゆっくりしたかったのにゆっくりできなかったよおお!」 「よしよし、おちびちゃん。もうだいじょうぶだよ、だいじょうぶだからね。ここまでくれば、にんげんさんもおいかけてこないよ」 「いたかっただろうね。ゆっくりできなかっただろうね。さあ、きょうはもうゆっくりおやすみ。ぐっすりねむればゆっくりできるよ」 「れいみゅおねえしゃんにおくちゅりとってくるにぇ! ぱちゅりーおばしゃんのところまでいってくりゅよ!」 「まりしゃもついていくんだじぇ! まりしゃのおぼうちにおくちゅりをいれればだいじょうぶだじぇ!」 「れいみゅはおねえしゃんといっしょにおやしゅみーしてあげりゅよ! いっしょにおやしゅみしゅるとあっちゃかいよ!」 「ゆぅぅ……ありがとう、おとうさん、おかあさん、まりさ、れいむ。こわかったけどもうゆっくりできたよお…………」 一致団結して、傷ついた長女を慰めようとする家族。 実に、理想的な家族の形じゃないか。 両親に抱きしめられ、妹たちにすり寄られ、あれだけ泣いていたまりさに笑顔がようやく戻った。 「ゆっくり! まりさもうだいじょうぶだよ! いたいのもうへいきになってきたよ!」 片目と口内の痛みをこらえて、まりさが家族に笑いかけた時を見計らい、俺は一歩を踏み出した。 たった一歩で、俺はまりさと家族たちの前に立ちふさがる形になる。 「やあ、まりさ。確かに、素敵な両親と妹だね。君の言った通りだ」 俺の出現に、まりさはあんぐりと口を開けた。 その顔が、見る見るうちに恐怖で引きつる。 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 この声も駆除の時によく聞いた。 隠れ家を壊して中のゆっくりと対面した時、よくゆっくりは目と歯茎をむき出してこういう声を出す。 よほど驚き、しかも怖がっている時の声らしい。 顔といい声といい、はっきり言ってグロテスクだ。 「やだあああ! おにいさんやだああああ! こわいよおお! ゆっくりできないよおおお! ゆんやああ! ゆんやああああああ!!」 まりさは家族のど真ん中で、パニックに陥って泣き出した。 下半身から勢いよくしーしーが噴き出して、地面に水たまりを作る。 恐怖のあまり失禁したらしい。 「おとうさああん! こわいよおおお! おかあさあああん! このひとだよお! このひとがまりさのおめめを! おめめをおおおお!」 まりさは泣き叫びながら両親に助けを求める。 おおかた、恐い人間を両親によって追い払ってもらおうという魂胆だろう。 まりさに水を向けられた親のれいむとまりさは、俺の方を怯えた目で見た。 「にっ! にんげんさん! おこるのやめてね! ゆっくりしようね! ゆっくりしていってね!」 「そっ! そうだよ! いっしょにゆっくりしようね! おねがいだからおこらないで! おこらないでね!」 びくびくしながらも、親れいむと親まりさはまりさをかばう形で俺の足元に近づく。 しかし、俺が聞いたのは二匹の身の程知らずな主張ではなく、卑屈なお願いだった。 俺が二匹をにらむと、たちまち両親は体を縮める。 人間とゆっくりとの実力差がはっきり分かっているようだ。 「ゆえええん! ゆええええん! どうしてええ! このひとはまりさにいたいことしたよ! ひどいこといっぱいしたよお! いっぱいいたいことしたゆっくりできないわるいひとだよおお! わるいおにいさんだよおお! ゆえええええん!」 分かっていないのがここに一匹いる。 当てが外れてがっくりしたのだろう。まりさは泣きながら両親をけしかける。 きっと、この聡明でしっかりしたゆっくりたちは、子どもたちの脅威を何度も退けたに違いない。 さぞかし、まりさは両親の力に信頼を置いていたことだろう。 俺など、両親があっさりやっつけてくれるものと思っていたのか。 だが、現実は両親が俺に頭を下げ、機嫌をうかがう言葉を発するだけだ。 「まってね! ゆっくりまってね! おちびちゃんはびっくりしているだけなの! ほんとだよ! ゆっくりしんじてね!」 「おちびちゃんはほんとはとってもいいこなんだよ! ね!? ね!? にんげんさん! おこってないよね! ね!?」 親れいむと親まりさは、ひたすら俺にゴマをする。 何としてでも人間さんを怒らせてはいけない。 怒ったら、きっと自分たちは皆殺しになる。 その恐怖がありありと伝わってくる。 俺はしばらく、この後どうしようとかと考えていた。 足に何か柔らかいものがぶつかった。 顔を下に向けると、妹のチビまりさと目が合う。 「ゆっくちまつんだじぇ!」 「おぢびぢゃんどうじでえええ!?」 「おぢびぢゃんやべでええええ!?」 俺の足に体当たりしてふんぞり返るチビまりさの目は、まるで勇者様気取りだ。 どうやら、このチビまりさは両親の脇をすり抜けて俺に特攻したようだ。 一方、親れいむと親まりさは鎮静化しつつあるはずだった事態がぶち壊れたことで、顔をこわばらせて悲鳴を上げている。 さらに足に当たる二つの感触。 チビまりさに続いて、チビれいむが二匹俺の足に体当たりした。 「おにいしゃんだにぇ! おねえしゃんにいちゃいことをしたわりゅいにんげんしゃんは!」 「どうちてこんにゃことしゅりゅの!? おねえしゃんいちゃいいちゃいだよ! りかいできりゅ!?」 「にんげんしゃん! じぶんがわりゅいことちたってわかったのじぇ!? だったらはやくおねえしゃんにあやまるんだじぇ!」 横一列に並んだ、哀れなまでに勇ましい妹たちの戦列。 どのゆっくりの目も闘志に満ち、俺を敵として判断したのがよく分かる。 憎き姉の敵。 絶対に許すものか、という気構えさえ伝わってきた。 「どうちてもあやまらにゃいなら、れいみゅもおこりゅよ! ぷくーしゅるよ! ぷくーっっ!」 「れいみゅもぷくーしゅりゅよ! にんげんしゃん! れいみゅのぷくーではんせいしちぇにぇ! ぷくーっっ!」 「はやくあやまるんだじぇ! あやまらないともっときょわいめにあうんだじぇ! ……ゆゆぅ! もうまりしゃもおこったんだじぇ! まりしゃもぷくーするんだじぇ! おねえしゃんのいちゃいいちゃいをにんげんしゃんにもわからせりゅんだじぇ! ぷくーっっ!」 いっせいに三匹は、頬と体を風船のように膨らませる。 これも何度か見たことがある。 「おちびちゃんはおかあさんがまもるからね! ぷくーっ!」 とか言って、駆除しようとする人間に体を大きく見せるのだ。 ゆっくりの威嚇で間違いないだろう。 そう言えば、あのれいむはどうしただろうか。 確か、面倒だから回り込んで、先に子ゆっくりの方を袋に入れた気がする。 親ゆっくりは「やべでぐだざあい! おぢびぢゃんなんでず! まりざがのごじでぐれださいごのおぢびぢゃんなんでず!」と泣いていた。 つまり、まったくの無意味なのだ。 「………あ…………ああ………やめ……て……やめて……おちび……ちゃん…………」 「に……にんげん…さん………おちびちゃんを……おねがいだから……ゆるして……ね…………」 それが分かっているのは両親だけだ。 親れいむと親まりさは、もはや絶望さえ漂いだした目で俺に許しを請う。 後ろでは、ようやく泣き止んだまりさが潤んだ目で妹たちを見つめていた。 「まりさぁ……れいむぅ…………。まりさ……すごくうれしいよお…………」 姉のために健気に立ち向かう妹たちに、まりさは感動しているらしい。 ついさっき、自分が俺に半殺しにされたことなどもう忘れたのか。 「なあ、まりさ」 俺は足元で膨れた三匹を無視して、まりさに話しかける。 「この妹たち、俺がもらうよ」 「はやくあやまっちぇ! れいみゅがぷくーしちぇるのになじぇあやまらにゃいの! がまんちてにゃいではやぶぎゅびゅぶぶぅぅ!!」 俺がしたのは簡単なことだ。 ただ、一歩を踏み出しただけだ。 それだけで、一番端で膨れていたチビれいむが下駄の裏で潰れた。 「れ…れいみゅがあああああああ!!」 「ど…どうぢでええええええええ!!」 「いもうと……まりさの……れいむ……れいむがああああああああ!!」 隣のチビまりさとチビれいむ、そしてまりさは一撃で妹が潰れたショックで大声を上げる。 特にチビたちは、発狂したのかと思うくらい口を開けて泣き叫んでいる。 「あ……あ……おちびちゃん……が……」 「そん……な……おち……び…ちゃん…………」 親れいむと親まりさのショックは、子どもたちに比べて少ないようだ。 こうなることを、ある程度予期していたからだろう。 俺は足を上げた。 そこには、かろうじて無事な顔で呻き、ぐしゃぐしゃに潰れた下半身を動かす不気味な塊があった。 即死は免れたらしい。 チビれいむは生まれて初めて味わう苦痛が、同時にゆん生最後の体験であることが分かり、餡子混じりの涙を流していた。 「いぢゃいよぉ……おにゃかがいぢゃいよぉ………あんよしゃん……どうちでうごがにゃいの………… やじゃあ……れいみゅじにだくにゃいよぉ…………れいみゅ……れ……い…みゅ…………」 口から吐いた大量の餡子に埋もれるような形で、チビれいむは死んだ。 チビれいむは即死できなかったことを恨んだに違いない。 ごく短い間だったが、途方もない苦痛を味わってから死んだのだから。 まずは一匹だ。 俺はすぐに両手を伸ばし、動けないでいるチビまりさとチビれいむをつかんだ。 「やめちぇ! やめちぇにぇ! はなちちぇ! れいみゅをはなちてにぇ!」 「やめりゅんだじぇ! まりしゃをはやくはなしゅんだじぇ! はなちぇえええええ!」 手の中でじたばたともがくチビたち。 先程の勇ましさはどこへ行ったことやら。 俺が顔を近づけると、「「ゆっぴいっ!」」とそろって悲鳴を上げて失禁した。 手の中に生温かい液体の感触が伝う。 「やめちぇえ! おにいしゃん! れいみゅをはなちてくだしゃい! もうぷくーちまちぇん! ちまちぇんかりゃあああ!」 「まりしゃをたしゅけてくだしゃい! まりしゃはばきゃなゆっくちでしゅ! もうちましぇん! たしゅけちぇえええええ!」 俺は、徐々に握力を強めていった。 指に力を入れ、二匹を握り潰していく。 「ゆぶっ! ゆぶぶっ! ゆぶううううううう!」 「ゆぐっ! ゆぐうう! ゆぐううううううう!」 少しずつ、力を加えていく。 だんだんとチビまりさとチビれいむの体の形は、ボールから瓢箪に変わりつつあった。 懸命に力を入れて握力に抗おうとしているが、無駄な努力だ。 閉じた口からわずかながら餡子が垂れ始める頃になると、二匹は露骨に苦しみだした。 顔を左右にぶんぶんと振り回し、苦痛から逃れようと無駄な努力をする。 「ちゅっ! ちゅっ! ちゅぶれりゅうううううううううう!!」 「ちゅぶれりゅ! ちゅぶれりゅよおおおおおおおおおおお!!」 こんなところでも、ゆっくり特有の「自分の行動を声に出して表現する」習性は変わらない。 二匹は白目をむいて絶叫した。 ぱんぱんに膨れ上がった顔は真っ赤になり、ゆっくりとは思えない不気味な形に変形している。 「やべでぐだざい! やべでぐだざい! ぐるじんでまず! おぢびぢゃんぐるじがっでまず! もうやべでぐだざあい!」 「おねがいでず! おぢびぢゃんをごろざないでぐだざい! がわりにれいぶがじにまず! れいぶががわりにじにまずがら!」 「やめて! やめてよお! まりさのいもうとだよ! かわいいいもうとだよおお! はなして! はやくはなしてえええ!」 親れいむと親まりさは、顔を涙でべちゃべちゃに汚しながら、俺の足にすがりついている。 濁りきった声で、俺を止めようと必死だ。 それなのにまりさは、キンキンとかん高い声で離れた場所からわめくだけだ。 俺はさらに力を入れた。 「ぶぼぉっ!」 「ぶびゅっ!」 あっけなく、二匹の口とあにゃるから餡子がほとばしり出た。 グロテスクなお多福のような顔になったチビまりさとチビれいむの顔が、さらなる苦しみで歪む。 ここが限界だったようだ。 たちまち餡子が流れ出て小さくなっていく体を、俺は地面に落とした。 「おちびぢゃん! おちびぢゃあああん! へんじじでっ! へんじじでよおおおお!」 「おかあさんだよ! れいむおかあさんだよおおお! ゆっぐりじでえ! ゆっぐりじでえええ!」 「ゆ゙っ……びゅ……ぼっ………ぶっ……ぶぶっ…………」 「ごっ……びぇ………べっ……ゆ゙っ……ゆ゙ゆ゙っ…………」 すぐさま顔を近づける両親。 瓢箪の形になったまま戻らないチビたちは、もはや命が尽きる寸前だった。 何度も呼びかける親の声も聞こえないらしく、わずかに体を痙攣させて呻くだけだ。 それなのに、ぎょろりと飛び出しかけた目だけは血走って、今も終わらない苦痛を訴えている。 やがて呻き声は止まり、虚空をにらむ目がゆっくりと濁っていく。 チビまりさとチビれいむは、最後まで苦しみながら死んだのだ。 「まりさのかわいいいもうとおおおおお!! どうして! どうしてころしちゃうのお! まりさのいもうとなんだよ! かわいいいもうとなんだよ! ゆっくりしてたよ! どうして! どうしてこんなひどいことするのおおおお!!」 すすり泣く両親に何の遠慮も示さず、まりさは跳びはねながら俺を非難する。 よく見ると、まりさも目から涙を流していた。 これで、まりさのかわいい妹たちは全滅したことになる。 二度と仲良く家族で団らんはできないだろう。 もう、頬をすりつけることも、顔を舐めることもできない。 惨めに潰れたチビれいむと、変形しきったチビまりさとチビれいむの死体が、現実を突きつける。 「何を言ってるんだ、まりさ。あのチビたちは俺のものだよ。だから、俺がどう使おうと勝手じゃないか」 「ちがうよ! まりさのいもうとだよ! おとうさんとおかあさんがうんだまりさのかわいいいもうとなの! おにいさんのじゃないよ!」 「さっきまではね。でも、俺のものだって主張すればそうなるんだよ。生かそうが殺そうが、俺のものに文句を付けないでくれないか」 「やめてよ! やめてええ! まりさにいじわるしないで! おにいさんきらい! だいきらいだよ! どっかにいって! かえって!」 「君がお菓子を返してくれたらね。さあ、早く返して。返してくれたら全部元に戻してあげるから。ほら、早く返すんだ」 挿絵:キモあき
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亡くなった茶道家の父は、礼儀作法に非常に厳しい人だった。 今でもよく覚えている。 ある日俺は寺子屋から帰ると、茶箪笥の中に見たこともない高級な和菓子があるのを見つけた。 きっと、両親は奮発して高いものを買ってきてくれたのだろう。 俺は勝手にそう判断し、それを一人で無断で平らげた。 仕事から帰ってきた父は烈火の如く怒った。 あの菓子は、俺のために買ったのではない。 里長を招いて茶会をする際に、皆に振る舞うために購入した大事な菓子だったのだ。 泣いて謝る俺の尻を父はばしばし叩き、真っ暗な蔵の中に閉じ込めた。 あの時ほど、父が恐いと思ったことはない。 結局、父は大事な茶の席で大恥をかく羽目になり、俺は怒られても仕方のないことをしたのだ。 そんな父もあっけなく亡くなり、俺は父の跡を継いで茶道を教える仕事に就いた。 今では何とか、妻と一緒に食べていけるだけの稼ぎもある。 夜。ガラス戸を叩く音がしたので俺は立ち上がった。 こんな夜更けに誰だろう。 戸を開けると、そこには丸っこい物体がある。 金髪にカチューシャ。ゆっくりありすと呼ばれる饅頭生物だ。 「こんばんは、とかいはなおじさん」 「ああ、こんばんは。どうしたんだい、こんな夜に」 このありすとは初対面ではない。 今日の午後、縁側で一緒に簡素なティータイムを楽しんだゆっくりだ。 俺が縁側で湯飲みを片手に羊羹を食べていると、このありすが森の方から庭にやって来た。 垣根から顔を覗かせ、ありすは遠慮がちに俺に挨拶した。 「ゆっくりしていってね、おじさん」 「ああ。ゆっくりしていくといい」 「ありがとう。おじさんはしんせつなひとね。ありすも、おじさんのおにわにいてもいいかしら」 「庭を荒らさなければ、別に構わないよ」 「あら。ありすはとかいはよ。にんげんさんのおにわをよごすようなことはしないわ」 ありすの言ったことは嘘ではなかった。 ありすは俺の近くまで出てくると、口にくわえていた野苺を静かに食べ始めた。 よくいるゆっくりのような「むーしゃむーしゃ! しあわせー!」といったような大声を上げることもない。 都会派、と自称するだけあって、ありすの食べ方はゆっくりにしては品がよかった。 俺は少し気をよくして、抹茶に砂糖を入れて冷ましてからありすに差し出した。 「ゆっ! とってもおいしいおちゃね! おじさんはすてきなひとだわ」 ありすとはしばらくの間、なかなか楽しい茶会の時間を過ごすことができた。 時には、作法にこだわらず自然体で茶を楽しむのも素晴らしい。 茶を飲み終わるとありすは野苺の茎を片づけ、森へと帰っていったはずだ。 なのに、いったいどういう風の吹き回しだろう。 「おじさん、ひるまのおれいよ。ありすのつくったいんてりあなの。うけとってほしいわ」 ありすが口にくわえて差し出したのは、きれいに形の整っている押し花だった。 木の葉っぱの上に一輪の花がくっついている。 恐らく、ゆっくりの涙か唾液によって固めたものだろう。 あの不器用なゆっくりが作るものとは信じがたいほど、それは手が込んでいる。 「ありがとう。遠慮なく受け取らせてもらうよ」 たとえそれがゆっくりが作ったものであっても、誠意がこもっていることに代わりはない。 俺はお礼を言ってありすから押し花を受け取った。 「ゆっくり! おじさん、ありすとおともだちになってほしいわ」 俺が受け取ったことで、自分が受け入れられたと思ったのか、ありすはそんなことを言ってきた。 「君と友達にかい?」 「おじさんはとってもいいひとだから、ありすはおともだちになりたいの。また、いっしょにてぃーぱーてぃーをたのしみましょう?」 ありすはニコニコと笑っている。 あまりにも、ありすの笑顔は無防備だった。 だからこそ、俺は首を横に振った。 「残念だけど、それは無理だよ。今日のことはもう忘れて、お家に帰りなさい」 「…………ど、どうして。もしかして、ありすはいなかものだったの? おじさんのめいわくだったの?」 ありすのうろたえ方はかわいそうなくらいだった。 まさか、否定されるとは思っていなかったのだろう。 それもそうだろう。俺とありすとは、本当に仲良くやっていたのだから。 「いいや、そうじゃない。ありすはゆっくりとは思えないくらい都会派だったよ。でも、駄目だ」 「……おじさん。…………どうして?」 「君がゆっくりで、俺が人間だからさ。俺と君とでは、種族として違いすぎるんだ。人間には、近寄らない方がいい」 まだすがるような目をしてくるありすを、俺は優しく突き放す。 「今は仲良くできても、きっといずれどちらも不幸になる。俺たちは、絶対に相容れないんだよ」 俺はかつて、下らない過ちを犯した。 ゆっくりのしたことに本気で怒り、ゆっくりが分からないことを無理に分からせようとした。 人間の常識でも、ゆっくりにとっては常識ではない。 なまじ彼らは喋ることができるから、意思の疎通ができると思ってしまう。 実際はそうではない。人間とゆっくりとは違いすぎる。 あの不毛な体験は、俺の記憶の中に嫌な過去として位置づけられている。 あれは、この家に引っ越してきてすぐのことだった。 俺は今日のように、庭を眺めようと縁側に出ていた。 やや古くはあるが、実に趣のある家と庭だ。 何気なく見ていても、あちこちに風情があって飽きることがない。 しばし休息を取ろうと、俺は茶を点て茶箪笥からおはぎを一つ取り出した。 行きつけの和菓子店が作る、徹底的に痛めつけて味をよくしたゆっくりを材料にした名菓だ。 俺は茶碗と皿をお盆に載せ、縁側に戻ると座り直した。 ほっとする一息だ。 誰のためでもなく、自分のために点てる茶も悪くない。 茶の香りは奥ゆかしく、午後の静かな時間と相まって幻想郷を桃源郷に変えようと誘う。 柔らかなその誘いに、しばし身を委ねていた時のことだった。 「ゆっゆっゆ~♪ ゆっゆっゆ~♪ おさんぽおさんぽ~♪ まりさのおさんぽたのしいな~っ♪」 せっかくの気分が、たちまち台無しになった。 垣根をがさがさとうるさく揺らし、小動物らしからぬ不用心さで飛び出してきたものがいる。 金髪に黒い帽子。小生意気そうな表情。ゆっくりまりさだ。 サイズは大きめのリンゴくらいだろうか。どうやらまだ幼いゆっくりのようだ。 まりさはへたくそな歌を歌いながら、ぴょんぴょんと跳ねて庭を横切ろうとしている。 人間の耳には、ちょっとゆっくりの歌のセンスは理解しがたい。はっきり言って不快だ。 ……それにしても、散歩なのだろうか。 だとしたら、何という無警戒だろう。 俺の住む里では、あまりゆっくりにいい顔はしない。 畑を荒らす害虫として駆除されることもしょっちゅうだ。 付き合いで俺も幾度かかり出されたことがある。 里のあちこちに作られた巣を壊し、泣き叫ぶゆっくりを袋に詰めて加工場に引き取ってもらう。 「にんげんさんやめてよ! やめて! まりさたちはゆっくりくらしてただけだよ! なんでこんなことするの! ゆっくりしてよ!」 「おちびちゃんをもっていかないで! れいむのだいじなおちびちゃんなんだよ! やめて! ひどいことするなられいむにして!」 「ゆあああああん! きょわいよおおおお! おかあしゃああん!おとうしゃああああん! たすけちぇよおおお!」 俺はあまり彼らのお喋りが人間のようで好きになれないが、農家の人が言うにはあれはただの鳴き声だそうだ。 意味などない。ただの饅頭の発する音。人間のような思考はない。 そう思っているからこそ、簡単に駆除できるのだろう。 里は決して、ゆっくりにとって安全な場所ではないのだ。 それなのに、この警戒心皆無の動きは何だろうか。 「ゆっ! にんげんさんがいるよ。おにいさん、ゆっくりしていってね!」 俺の足元にまで近づいて、ようやくまりさは俺の存在に気づいたらしい。 まりさはぐいっと体と頭が一緒の部分をもたげ、俺の方を一心に見つめてそう言った。 きらきらと輝くような瞳だ。 実に無邪気な、人間の子どもでさえもここまであどけない目つきをしてはいない。 俺と仲良くできる、と無条件で信じ込んでいるのがよく分かる。 「……あ、ああ。ゆっくり、しているよ」 「ゆっ! ゆっ! ゆっくり! ゆっくり! おにいさん、ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」 俺はまりさの迫ってくる気迫にあっさり負け、返事をしてしまった。 途端にパアァ……とまりさの顔がさらに明るくなる。 ぽよんぽよんとまりさは反復横跳びをして、返事が来た喜びを全身で表現した。 きっと、これで俺とまりさとは仲良くなった、と思い込んでいるのだろう。 ゆっくり、という言葉を連発することから、余程その響きが気に入っているらしい。 「ここはまりさのみつけたゆっくりぷれいすだよ! おにいさんもゆっくりしていいからね!」 「え? いや、ここは俺の家で、君のいるところは俺の庭なんだが」 「ちがうよ! まりさのゆっくりぷれいすだよ! まりさがおさんぽしててみつけたんだよ! まりさのすてきなゆっくりぷれいすだよ!」 「……まあ、そうだよな。君たちに人間の家とか庭とか分かるわけないだろうし」 「ゆっ! ゆっ! おにいさん、へんなこといわないでよね。まりさちょっとこまっちゃったよ。ゆっくりしようね!」 「はいはい。ゆっくりゆっくり」 ああ、これがお家宣言という奴何だな、と俺は一人納得していた。 まりさにとっては、ここは自分が見つけた場所なんだろう。 俺という人間は、ついさっき気づいた。つまり、庭が先で俺が後だ。 だから、まりさにとってここは先に自分が見つけた場所ということになっているのだろう。 どうでもいいことだ。 どうせ、飽きたらすぐにどこかに行ってしまうだろう。 俺はまりさのかん高い声と、妙に人の神経を逆なでする口調に少しいらついたが、怒るほどではなかった。 そもそもここは借家だ。まりさが何と言おうが、あまり執着心はない。 まりさは楽しそうに俺の周りを転がってみたり、あちこちに顔を突っ込んで匂いを嗅いだりしていたが、不意にさっきよりもさらに目を輝かせた。 「ゆゆっ! おいしそうなおかしがあるよ! とってもおいしそうだね! まりさたべたい!」 ゆっくりは感情がすぐ表に出る。 まりさの目は、俺の隣にある皿に置かれたおはぎに釘付けだった。 おはぎに焦点を合わせたまま動かない目と、よだれの垂れている口元、そして舌なめずりをする舌。 露骨に「食べたいよお!」という欲望がむき出しになった顔だ。 「駄目だ。これは俺のお菓子だよ。まりさにあげる食べ物じゃないんだ」 「えぇぇ……。うらやましいなぁ…………おいしそうだなぁ……まりさもたべたいよぉ……」 餌付けして居座られても困る。 俺はちょっと大人げなかったが、皿を持ち上げてまりさから遠ざけた。 まりさはすぐさま縁側に這い上がって、おはぎに噛み付きかねない勢いだったからだ。 まりさの視線は、器用におはぎを追って動いた。 もう、関心はおはぎに固定されたらしい。 仕方のないことだ。 ゆっくりは極度の甘党だが、野生のゆっくりが甘いお菓子を食べることなどできない。 常に甘いものに飢えているゆっくりの目の前に、大好きなお菓子が置かれたのだ。 飛びつこうとするのも無理もない。 「いいなぁ………おにいさんだけいいなぁ………まりさもほしいなぁ……たべたいなぁ……むーしゃむーしゃしたいなぁ………」 さっさとあきらめて出て行けばいいものを。 そうすれば、それ以上おはぎを見続けて焦がれることもないのに。 俺はそう思ったが、まりさの取った行動は正反対だった。 俺のそばにべたべた付きまとって、懸命に自分をアピールし始めたのだ。 俺の機嫌を伺うように顔をのぞき込んでみたり、チラッと流し目を送ってみたり、実にうっとうしい。 口からは、俺が羨ましい、自分も食べたい、と馬鹿の一つ覚えのような言葉が連発される。 俺がそっぽを向くと、そちらに回り込んでぴょんぴょん跳ねたりぷりんぷりんと尻を振ってみせる。 少しでも俺の気を引こうと、まりさは手を尽くしているらしい。 だがそれは、俺にしてみれば不愉快な行為ばかりだ。 人のものを欲しがるという態度が気に入らない。 ましてや、あきらめが悪くしつこいならばなおさらだ。 茶の席でこんなことをしようものなら、即座に追い出されても仕方がない不作法だ。 「いいなあ! まりさもほしいよ! ほしい! おかしほしい! おかしたべたい! たべたい! たべたいよお!」 ついに、まりさは我慢できなくなったらしく、大声で俺に頼み始めた。 いや、もはや図々しく要求している。 それにしても、ゆっくりは体は小さいのに声がやたらとでかい。 小さな子どもが耳元でどなっているようで、耳がおかしくなりそうだ。 「ちょうだい! まりさにもちょうだい! おにいさん! ねえ! ねえねえねえ! きいてるの!? おにいさん! おにいさんってば!!」 「駄目ったら駄目だ。いいか、これは俺のものなんだ。君にあげるものじゃない。いい加減あきらめろ」 「おにいさんのいじわる! けち! まりさおこったよ! ぷんぷん! もういいよ! おにいさんなんかしらない!」 とうとうまりさの堪忍袋の緒が切れた。 俺のことを一方的に非難すると、ぷりぷり怒りながら垣根の中に潜り込んでいった。 まりさにしてみれば、仲良くなった人間が自分だけお菓子を楽しんでいるように思えたのだろう。 俺は少しまりさがかわいそうになったが、すぐに自分の考えを改めた。 「じぃぃぃぃっ…………………………じぃぃぃぃ…………………………」 わざわざ声に出して、自分がいることをアピールしているのはなぜだろうか。 まりさは森に帰ろうとはしなかった。 生け垣の下から、まりさの食欲でらんらんと輝く二つの目が俺を見ていた。 まりさ本人は隠れているつもりだろう。 だがこちらからは、じーっとおはぎを見つめるまりさの姿が丸わかりだ。 ああ言ったものの、菓子への未練はそう簡単に断ち切れないのだろう。 ふと、俺の心に子どものようないたずらが思いついた。 この状態で、俺が席を外したらどうするだろうか。 十中八九、まりさはおはぎを食べてしまうだろう。 その現場を俺が押さえたらどんな顔をするだろう。 さぞかしうろたえるだろう。どんな言い訳をすることだろう。 泣いて謝るだろうか。それともちょっとすねてから謝るだろうか。 「わあ! そうだった。用事を思い出したぞ。すぐ部屋に戻らなくちゃ! 急ぎの用だから、おはぎはここに置いていこう!」 俺がわざとらしく大声を出すと、まりさが生け垣の中で身じろぎしたのが分かった。 「どこにいるか分からないけど、もしまりさがいたら困るからちゃんと言っておかなくちゃな!」 まりさが俺のおはぎだと言うことを忘れては困るので、ここでもう一度繰り返す。 「まりさ! これは俺のおはぎだからな! 絶対に食べちゃ駄目だぞ! まりさのおはぎじゃない。俺のものだぞ! 食べたら怒るからな!」 俺の声はまりさに聞こえただろう。 しかし、まりさの目はもうおはぎの方しか見ていない。 本当に聞こえたのだろうかと怪しく思うが、さっきから食べるなと連呼してあるから、あれが自分のものではないことぐらい分かるだろう。 では、実験の開始だ。 俺は縁側から立ち上がり、家の中に入って柱の陰に隠れた。 俺が身を隠してすぐ、まりさは生け垣の中から飛び出してきた。 駄目だこれは。 ゆっくりには、人間のものとそうでないものとの区別が付かないようだ。 あっさりとまりさがおはぎを平らげて実験終了かと思ったが、そうではなかった。 まりさは縁側に飛び乗ると、おはぎの載っている皿に顔を近づけた。 しかし、ぱくりと噛み付くことはなかったのだ。 「ゆうぅ……おにいさん……たべちゃだめだって……どうして……こんなにおいしそうなのに……」 俺は耳を疑った。 なんだ。ちゃんとまりさは理解していたんだ。 俺がいなくなっても、おはぎが自分のものではなく人間のものだと覚えていたのだ。 ゆっくりの記憶力を俺は侮っていたが、どうやら考えを改めなくてはいけないようだ。 「いいなあ……たべたいなあ……おいしそうだなあ……おにいさんうらやましいなあ……まりさもたべたいなあ……」 まりさはよだれをたらたら、未練もたらたら流しながらおはぎに心を奪われている。 食べられないと分かっているなら見なければいいのに、と思うのだが、まりさはじっとおはぎを見つめてうっとりしている。 それが欲望を加速させるニトロであることに、まりさは気づいていない。 「たべたいよぉ…むーしゃむーしゃしたいよぉ……くんくん……くんくん……ゆぁぁぁ……いいにおいだよぉ……くんくん………」 どこにあるのか分からない鼻をひくつかせ、まりさは餡子の甘い匂いをいっぱいに吸い込んでいる。 もはや舐めるようにまりさはおはぎをあちこちから眺め、ほとんどくっつきそうなくらいに顔を近づけている。 これは駄目だ。 絶対にまりさは我慢できない。 俺の予想は的中した。 「ちょっとくらいならいいよね! おにいさんにわからないくらいなら、たべてもだいじょうぶだよね!」 分かる分からないの問題じゃなくて、そういうことを口にしちゃいけないだろ。 俺は柱の陰でまりさの行動に突っ込む。 「なめるだけだよ! ぺーろぺーろするだけだよ! それくらいならおにいさんもわからないよ!」 まりさはきっと、自分で自分を騙しているのだろう。 いけないことだと分かっている。 でも、どうしても食べたい。 ならば、これくらいなら分からないと自分に嘘をつき、信じ込もうとしているのだ。 「ぺーろぺーろ…………し、し、し、しあわちぇええええええ!!」 ついに、まりさは俺の警告を無視した。 ゆっくりの体の割に大きくて分厚い舌が口から伸びると、ぺろりとおはぎの餡子を舐めてしまった。 次の瞬間、まりさは幸福そのものの顔で叫んだ。 まりさは冗談抜きで輝くような表情で、甘いものを味わう幸せを表現していた。 「しゅごくおいちい! しゅごくおいちぃよおおおお! あみゃいよおおお! もういっかいぺーろぺーろ! ぺーりょぺーりょおおお!!」 まりさは歓喜のあまり涙を流している。 よく見ると、下半身からちょろちょろと何か流れ出している。 失禁しているのか? 不快になる俺を置いてきぼりにして、まりさはもう一度おはぎをべろりと舐める。 前回は罪悪感からか恐る恐るだったが、今回は舌で餡子を削り取るような舐め方だ。 あれでは、おはぎの表面に舐めた跡が残るだろう。 まりさの罪はこれで確定したわけだ。 「ち! ち! ちあわしぇぇええええええ!! おいちぃいいいいいい!!」 再びまりさは嬉しさのあまり大声を出す。 こっそりと盗み食いをするつもりだったが、あまりのおいしさに声が出てしまうのか。 もう、こうなってしまっては一直線だ。 止まるわけがない。止められるわけがない。 「むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃ! あまいよおおおお! おいちいよおおおお! むーしゃむーしゃ! むーしゃむーしゃぁあああ!」 まりさは、おはぎにかぶりついた。 一口で三分の一をかじり、もぐもぐと噛む。 途端に、まりさは口から餡子をこぼしながら叫んだ。 「すごいおいしいっ! おいしいいいい! あまいよお! まりさむーしゃむーしゃするよ! むーしゃむーしゃ! おいしいよおおおお!」 もう夢中だった。 まりさはおはぎにぱくつき、もぐもぐと噛み、ごくりと飲み込む。 ずっと我慢していた甘さへの渇望を満たせる喜びで、まりさの顔は緩みきっていた。 「まあ、そうだよなあ……」 俺は、茶箪笥に向かいながら苦笑していた。 怒りの感情はわいてこなかった。 きっと、父が里長のために用意した茶菓子を勝手に食べた俺も、あんな感じだったのだろう。 俺は、まりさに子どもの頃の俺を重ねていた。 大事な茶の席で使うはずの茶菓子を、無断で食べてしまった俺。 食べるなと厳命されながら、甘味の誘惑に勝てなかったまりさ。 どちらも、似たようなものだ。 悪いと分かっていても、ついついやってしまう。 それを責めるのは、いささか大人げないと言えるだろう。 ……この時の俺は、まだ正常だった。 俺は代わりの茶菓子のきんつばを取り出し、皿に載せた。 さて、まりさはどんな顔をするだろう。 俺が怒ると、何て弁解するだろう。 俺はいたずらが成功した子どもの顔で、縁側へと向かったのだった。 縁側に置かれた皿には、おはぎの代わりにまりさが載っていた。 半分幸せ、半分物足りない顔で、まりさは皿をぺろぺろと長い舌で舐め回している。 「おや、おはぎがないぞ。しかもそこにいるのはまりさじゃないか。さては盗み食いしたんだな。悪い奴め!」 芝居気たっぷりに、俺は恐い顔をして縁側に姿を現した。 皿の上に乗っかり、しかも皿を舐めていたまりさに逃げ場はなかった。 「ゆううううううっっっ!?」 まりさはびっくりして跳び上がった。 こちらを向くまりさの口の周りは、おはぎの餡子ですっかり汚れている。 「ゆあっ! あっ! ゆああっ! おにいさんっ! ゆっくりしようねっ! ゆっくりっ! ゆっくりっ!」 「まりさ、口の周りが餡子で汚れているぞ! 言い訳しても無駄だ。あれだけ食べるなと言っておきながら、よくも俺のおはぎを食べたな!」 まりさのうろたえた様子は、本当に面白かった。 何度も空になった上に自分の唾液でべとべとになった皿と、怒った顔をした俺とを見比べている。 まりさが混乱しているのがよく分かり、俺は内心笑いを噛み殺していた。 「まりさ! この悪いゆっくりめ! 人のものを勝手に食べちゃったら、何て言うのかな!?」 おろおろとしているまりさに、俺は親のような顔で言ってみた。 もちろん、この状況は俺が作ったものだから、まりさが拗ねたり泣いたりしても怒る気はなかった。 一回でもいいから「ごめんなさい」と言えば、それで俺はすっきりしただろう。 「まりさも食べたかったのか。じゃあ、これも半分あげるよ」 面白いものを見せてもらったお礼に、きんつばを半分食べさせてやるつもりだった。 ……そもそも、ゆっくりに本気で怒るなんて大人げないだろう。 こんなことを考えるほど、かつての俺は甘かった。 ゆっくりという饅頭がどれだけ人間とは異なる存在なのか、理解していなかった。 そして、ゆっくりという饅頭がどれだけ人間を苛立たせる存在なのか、体験していなかった。 まりさはしばらくおたおたしていたが、いきなりにっこりと笑った。 それまでの困惑した様子が嘘のような、あっけらかんとした笑顔をこちらに向けた。 「おかしとってもおいしかったよ! もっとちょうだいね!」 俺は絶句した。 何だって? 今、こいつは何て言ったんだ? おいしかった? もっとちょうだい? 「何を言ってるんだ? あれは俺のお菓子だぞ」 「うん! でもおいしそうだったから、まりさがまんできなくてたべちゃった! すごくおいしかったよ!」 まりさは初対面の時とまったく同じ、無邪気な顔でニコニコと笑っている。 自分が悪いことをしたという自覚がないのか? 野生動物だから、目の前にある餌をただ貪るだけだったのか? そうじゃない。 まりさは一度ためらっている。 おはぎが俺のものであるということは、知っていたはずだ。 「食べちゃ駄目だって言っただろ。聞こえなかったのか。それとも、忘れちゃったのか?」 わすれちゃったよ、とまりさが言ってくれれば。 そうすれば、俺は納得していたはずだ。 単なるおはぎ一つのことだ。 俺が食べられなかったからといって、子どものように怒ることはないはずだった。 しかし、まりさの返答は違った。 「ずるいよおにいさん! おいしいおかしをひとりじめして! おかしはみんなでたべるからおいしいんだよ!」 「まりさ、君が全部おはぎを食べちゃったせいで、俺の食べる分はなくなったよ。全然みんなで食べてないじゃないか」 「おにいさんおかしをもうひとつもってるでしょ! まりさはおなかがすいてたんだよ! そっちもはんぶんちょうだいね!」 たかがゆっくり如きの馬鹿な言い草。 そう片づけてしまうには、俺は若すぎた。 いや、片づけてしまえないほど、俺はこのことについてトラウマがあったのだ。 呆れ果ててものも言えない俺を差し置いて、まりさは俺の手のきんつばに向かってジャンプする。 「まりさおかしだいすき! もっとちょうだい! ねえ! ねえ! ねえ! きいてるの!? まりさはおかしだいすきなんだよ!」 俺はまりさを見た。 まりさは俺を見ていない。 俺の手にあるきんつばしか眼中にない。 俺の存在など、まりさには邪魔なだけなのだろう。 「おにいさん! おにいさんってば! きいてるの! ねえきいてよ! まりさにそれちょうだい! まりさもっとたべたい! おかしたべたいよお!」 俺の心情の変化は、大人げないと批判されても仕方がない。 しかし、俺の心の奥から、自分でも信じられないほどの怒りがこみ上げてきた。 ただの理性のない獣ではなく、こいつはゆっくりだ。 どんな形でも、まりさが一度でもごめんと謝れば当然許すつもりだった。 これは俺の仕組んだいたずらだ。それくらいの余裕はあったはずだ。 それなのに、俺の手にあるきんつばに向かって、羞恥心の欠片もなく飛びつくまりさをみていると、怒りしか感じない。 かつて俺は、何度謝っても父に許されなかった。 心底反省しても、許してもらえなかった。 やがて雷親父の怒りはおさまったのだが、その間俺は家の中で針のむしろにいた。 かばってくれる祖母がいなければ、俺は父を憎みさえしただろう。 あの嫌な経験は、俺の中でしこりとなって残っている。 人のものを勝手にかすめ取ることが、どれだけ悪いことなのか身に染みていた。 それなのに、こいつは。 こいつは人のものを食っておきながら謝りもせず、もっとよこせと催促するのか? 自分が何をしたのか分かっていながら、恥知らずにもこちらに要求するのか? たかが饅頭風情が、人間の食べ物をよこせとうるさく詰め寄るのか? 俺はゆっくりの生態に詳しくなかった。 もし詳しい人がこれを読めば、当然失笑することだろう。 何を馬鹿なことをしているんだ、ゆっくりにいったい何を期待しているんだ、と笑われて当然だ。 俺の間違い。 それは、ゆっくりを人間のように扱ったことだった。 俺はきんつばを地面に落とした。 こんなものが血相を変えるほど欲しいのか。 勝手にしろ、と俺はまりさにきんつばをあげた。 「ゆっゆ~♪ おいしそうなおかしさん、ゆっくりまりさにたべられてね! むーしゃむーしゃ! しあわせーっっっ!」 地面に落ちたきんつばに、まりさは飛びついた。 落とした俺に目もくれず、がつがつと貪っていく。 遠目から見ればまだ耐えられるが、近くで見ると本当にこいつは汚らしい食べ方をする。 足で蹴り飛ばしたくなる誘惑を抑え、俺はまりさが食べ終わるまで待った。 「ゆっくりおいしかったよ! まりさこんなにおいしいおかしはじめてたべたよ! もっとたべさせてね!」 舌で口の周りをべろべろ舐め回しながら、まりさはさらにお菓子を欲しがる。 こいつは、お菓子をくれた俺にお礼さえ言わなかった。 無神経な物言いに、俺の心はもう動かない。 腹立ちはピークに達しているため、火に油を注いでもこれ以上燃えないのだ。 「もうないよ。これで終わりだ」 「ゆぅぅ……そうなんだ。まりさ、もっとむーしゃむーしゃしたかったよ……おかしおいしかったのになあ……」 たちまちまりさの顔は悲しそうになる。 体の大きさからして結構な量を食べたのに、こいつは満足しないのだ。 ますます俺はゆっくりが嫌いになった。 「じゃあもうまりさはかえるね! おにいさん、またおいしいおかしをちょうだい! まりさまたくるからね!」 「ああ、ちょっと待つんだ、まりさ」 「ゆゆ? おにいさん、どうしたの? まりさはおうちにかえるんだよ」 食うだけ食ってさっさと帰ろうとするまりさを、俺は呼び止める。 振り返って首を傾げるまりさ。 俺は両手を伸ばして、その丸っこい顔と体をつかんだ。 「ゆっ! おそらをとんでるみたい! まりさとんでるよ! とりさんみたいにおそらをとんでるよ!」 いちいち実況中継するのがうるさい。 それに、この状態は飛んでるのではなく浮いてるだ。 食べたせいか、まりさの体はそれなりに重量がある。 手に持つとちゃんと重みが伝わってくる。 饅頭皮はもちもちとしていて、手触りがなかなかいい。 まだ若いからだろう。手首を回して横と後ろを見てみたが、傷らしいものもない。 「ゆゆっ? なんなの? そんなにみつめられると、まりさちょっとはずかしいよ~」 俺が見とれているとでも思ったのか、まりさは顔をちょっと赤らめてもじもじし始めた。 恥じらいとかそういった感覚はあるのか。 ならばなおさら、好都合だ。 「まりさの両目はきれいだね」 俺はいきなりまりさを誉めた。 まりさはきょとんとしていたが、すぐにとても嬉しそうな顔になる。 「とってもきれいだよ。きっと、ゆっくりの中では一番きれいな目をしているんだろうね」 「ゆゆ~ぅ。それほどでもないよ~。でも、まりさすごくうれしいよ! うれしい!」 両手で持ち上げられた状態で、まりさは嬉し恥ずかしといった感じで体をぐねぐね左右に振っている。 表面上は恥ずかしそうだが、明らかにまりさはこちらの言葉に期待している。 俺がじっと見つめていると、伏し目がちになりながらも時折チラッとこちらを見てくる。 もっと誉めて、と思っているのが丸わかりだ。 お望み通り、俺はまりさを誉めちぎった。 「まりさの髪の毛もきれいだよ。とてもきれいでまるで黄金の小川みたいだ」 「ゆゆん! まりさのかみのけさんはまりさのじまんだよ! みんないっぱいほめてくれるんだよ!」 「まりさの歯は白くて整ってるね。虫歯もなくていい歯をしているよ」 「はさんはだいじだよ! むーしゃむーしゃするときにはさんがなかったらたいへんだよ!」 「まりさの帽子は素敵だね。よく手入れがされていて、ほかのゆっくりたちも羨ましがるだろうね」 「だって、まりさのたからものだもん! ゆっへん! まりさはおぼうしさんがいちばんだいじなんだよ! まいにちまりさはおぼうしをごーしごーしあらうんだ! きれいきれいにしてからおぼうしをかぶると、とってもゆっくりできるよ!」 すっかりまりさは誉められて有頂天になっている。 見る見るうちに、まりさの顔は幸福を絵に描いた笑顔になっていく。 まだだ。 もっともっと、まりさを舞い上がらせてやろう。 俺はさらにまりさの誉めるべき点を、大事にしているであろう点を探す。 「まりさのお家はどんなところだい? きっと、とても住みやすい場所だろうね」 「ひろくてゆっくりできるすてきなおうちだよ! まりさのたからものがいっぱいあるんだ!」 「まりさの家族はどうかな? まりさはどう思ってる?」 「みんなだいすき! おとうさんだいすき! おかあさんだいすき! いもうとのれいむもまりさも、みんなみんなだ~いすき!」 「まりさには友達がいるだろう? 友達のことはどう思ってる?」 「みんなゆっくりしてるよ! ありすもいるし、れいむもまりさもいるよ。いっしょにあそぶとすごくたのしいよ!」 「じゃあ、最後にまりさのゆん生はどうかな。まりさは今まで生きてきてどうだった?」 「とってもしあわせだよ! まりさゆっくりできてしあわせ! まりさはしあわせなゆっくりだよ!」 「そうだろうね。まりさは幸せなゆっくりだよ。俺にもよく分かる」 「ゆ~ん♪ おにいさん、まりさてれちゃうよ~♪ ゆんゆん♪ ゆっくり♪」 最後にまりさはとびきりの笑顔を見せて締めくくった。 本当に、まりさは幸せそうだった。 まりさの言葉を聞いて、俺もよく分かった。 こいつは生まれてからずっと、ゆっくりにしては恵まれた環境にいたのだ。 さぞかし、幸福なゆん生を送ってきたのだろう。 これからも、それが続くと信じて疑わないのだろう。 「じゃあそれ、全部俺がもらうよ」 手始めに、君の片目をもらうことにしよう。 いきなり両目を奪ったら、これから始まる喜劇が見られなくなるからね。 俺はまりさを片手で持つと、右手の人差し指をまりさの左の眼窩に突っ込んだ。 まりさは指を突っ込まれても、2秒ほどは笑顔のままだった。 きっと、俺の言葉の意味が分からなくて頭の中を素通りしたのだろう。 別に構わない。こちらも、まりさが理解してからこうするつもりなどなかったのだから。 柔らかい感触が指に伝わってきた。 つるんとして湿った眼球を避けて、その裏側の餡子に指先が届いた。 やや温かい。 「ゆっ……ゆぅ……ゆ゙! ゆ゙ぎぃ゙い゙い゙い゙あ゙あ゙あ゙!! あ゙あ゙あ゙ぎ゙い゙い゙い゙い゙い゙!」 まりさはどぎついまでの絶叫を張り上げた。 この声は聞いたことがある。 ゆっくりを里の皆で駆除していた時、えらく気合いの入った男が一人いた。 人の二倍も三倍もゆっくりを狩る彼の回収したゆっくりは、どれもずたずただった。 彼の持ち場からは、今のまりさと同じ悲鳴が止むことがなかった。 ゆっくりの鳴き声ということで誰も気にしなかったが、あの男はゆっくりを生きたまま解体していたのか。 俺は慎重に指先で眼球をつまみ、引っ張る。 視神経やら筋肉やらの抵抗はなく、思った以上にあっさりとまりさの目玉は顔から抉られた。 俺は激痛で歪んだ顔をしているまりさに、それを見せてやった。 「や゙あ゙あ゙っ! や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! まりざの! まびぢゃのおびぇびぇえええええええ!!」 自分の目と見つめ合うという状況は、なかなか希有なものじゃないだろうか。 俺の手の中と眼球と目があって、まりさはさらに大声で叫ぶ。 「い゙ぢゃい゙ぃい゙い゙い゙い゙い゙!! がえぢでっ! まりぢゃのおべべがえぢでよおおおおお!!」 隻眼から大量の涙を流しながら、まりさは俺に目玉を返すよう訴える。 ぽっかりと開いた眼窩からは、どろりと餡子混じりの涙が流れる。 果たして、これをまりさの眼窩に突っ込んだらまた機能するのだろうか。 俺は改めて、こいつの眼球をしげしげと眺めてみた。 材質は寒天か白玉だろう。 ゆっくりの顔についている時はあんなにも表情豊かなのに、こうして抉り出すととたんにただの無機物になる。 「おにいざんがえじでえ! おめめがえじでよおお! どうじで! どうじでごんなごどずるのお!? まりざいだいよおおお!」 「君だって、勝手に俺のお菓子を食べたじゃないか。だから俺も、君から勝手に目をもらうよ」 俺は痛みに苦しみもがくまりさにそう言った。 まりさは一瞬、信じられないものを見る目で俺を見た。 不愉快だ。 自分がそうしたというのに、自分が同じようにされるのは嫌なのか。 「がえじでっ! がえじでっ! それはやぐまりざのおかおにもどじでよおおおおおお!!」 「お菓子を返してくれたら戻してあげるよ。ほら、早く返して。そうしたら戻してあげる」 「でぎないよお! できないよおおお! もうおがじざんだべじゃっだがらがえぜないよおおおお!!」 「じゃあ、これも返してあげない」 泣き叫ぶまりさを尻目に、俺は指先に力を込めた。 ブヂュッ、とあまりにもあっけなく、まりさの二つとない左目は潰れて四散した。 目の前で自分の体の一部を潰されたショックで、まりさは泣きわめく。 「や゙ぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! お゙め゙め゙ぇ! お゙め゙め゙ぇ! まりざのずでぎなおべべぇえええええええ!!」 ねっとりとした液体が、潰れた眼球から流れ出した。 恐らくシロップだろう。 これでもう、まりさの顔から左目は永遠に失われた。 どんなことがあっても、まりさはこれからずっと片目で生きていかなければならないのだ。 俺は眼球の残骸を庭に放り投げた。 「次はまりさの髪の毛だね。それももらうよ」 「だめぇ! だめだめだめえええええ! やだあ! まりさのおさげさんむしっちゃやだあああああ!」 必死に体を捻って、俺の手から逃れようとするまりさ。 だが、その力はあまりにも弱く、抵抗と呼ぶにも値しない。 俺はまりさの帽子から出ているお下げを掴み、ぐいっと力任せに引っ張った。 「い゙ぎゃ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙い゙! いだいっ! いだいいだいいいい!」 お下げは根本から千切れて手に残った。 なぜ根本からだと分かるかというと、皮と餡子がわずかながらくっついてきたからだ。 俺はまりさの帽子を取り上げた。 「おぼうしさんっ! それまりさのおぼうしさんっ! かえして! まりさのおぼうしさんかえしてね!」 邪魔になるから、俺は帽子を自分の頭に乗せた。 傍目から見ればかっこわるいが、この際気にはしない。 「これだけじゃ足りないな。もっとまりさの髪の毛をもらうよ」 「やだああ! やめてね! まりさのかみのけむしらないで! いたいのやだああ! むしるのだめえええええ!」 まりさの声は、昨日の俺が聞いたら痛々しくて手を止めたくなるものだったに違いない。 いくら何でも、菓子を勝手に食べられたくらいで目を抉って髪を抜くなんて、と不快感をあらわにしたことだろう。 だが、今の俺はまったく嫌悪感がなかった。 まりさのきらきら光る金髪を指で掴み、お下げと同じようにして引っこ抜く。 雑草を抜くようなブヂッという手応えを残して、一つまみの金髪が手に残った。 「いぢゃあああああいいい! あちゃま! あちゃま! まりぢゃのあぢゃまああああああああ!!」 まりさは涙を流して激痛を訴える。 髪の毛は地肌ごと引き抜かれ、まりさの頭には小さな穴が空いていた。 気にせず、俺は次々とまりさの頭から髪の毛をむしり取る。 「いびゃい! いびゃいよっ! おにいざんやめでっ! まりざのがみのけっ! だいじな! だいじながみのけなのっ! いぢゃいいぃっ! どうじでぇ? どうじでごんないだいごどずるの!? まりざなにもわるいごどじでないのにいいいいいい!」 自称「悪いことをしていないまりさ」は、俺が手を止める時には「まばらに頭に髪の毛が残っている禿まりさ」になっていた。 完全な禿にするよりも、所々に残っている方が無様さに拍車がかかる。 俺と最初に出会った時の若くはつらつとしたまりさは、もうどこにもいない。 ここにいるのは、片目に穴が空き、髪の毛のほとんどをむしられた不細工なゆっくりだ。 「ゆっ……ゆぐっ……ゆぐぅ……いだいよぉ……まりさのかみのけさん……みんなにほめてもらったかみのけさん…… ゆっくりかえってきてね……いだいぃ……まりさのあたまにゆっくりかえってきてねえ! はやくかえってきてねええええ!!」 まりさは俺の足元に散らばる自分の髪の毛を見て、涙をぽたぽた落としている。 その悲しそうな顔は、ゆっくりを駆除していてもなかなかお目にかかったことがない。 どうやら、本当にこいつの髪の毛は仲間の間でちやほやされていたようだ。 それを苦痛と共に失った気分はどんなものだろう。 「もらったけど、やっぱりいらないね。こんな汚い髪の毛」 俺は下駄の足でその金髪を踏みにじり、土の中にねじ込んだ。 「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! や゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 まりさの悲鳴がかん高くなる。 俺は自分の頭にかぶっていた帽子を、まりさに返してあげた。 「おぼうしさん! まりさのだいじなおぼうしさん! ゆっくりおかえり! おかえりいいい!」 大あわてでまりさは帽子をかぶる。 大事なものだということもあるが、同時に禿を隠したいのだろう。 まりさは俺をにらみつけた。 「ひどいよ! おにいさんひどい! やめてっていったのに! まりさがやめてっておねがいしたのに! どうしてこんなことするの! おにいさんはゆっくりできないよ! きらい! だいっきらい!! まりさのおめめもどして! かみのけももどしてよお!」 「ああ、まりさはやめてって言ったね。聞こえたよ」 「だったらどうしてこんなことするの! まりさいたかったよ! すごくいたかったよ! どうしてえええ!」 「だから? まりさが止めてって言ったから何なの?」 まりさは口を閉じた。 涙がいっぱいにたまった右目で、こちらをじっとにらんでくる。 まるで、自分はかわいそうな被害者であるかのような顔だ。 「君だって、俺が食べちゃ駄目だと言ったお菓子を食べたじゃないか。同じことだよ。俺も、君が止めてって言っても髪の毛をもらうよ」 「そ……そんなこと……。そんなの……。そんなのやだよおおおお! やだあ! やだやだやだあああああ!!」 「次はまりさの白い歯だね。それももらうよ」 「やだあ! やだあああ! やじゃびゃびぎぃぃぃ!!」 俺は大声を張り上げるまりさの口に、親指と人差し指を突っ込んだ。 手にまりさの口内の濡れた感触が伝わった。 上顎の奥歯を一本掴み、力任せに引っ張る。 予想よりも遙かに力を必要とせず、まりさの歯は引っこ抜けた。 「あびっ! ばびびっ! あびっ! あびや゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙っ゙っ゙!!」 歯の抜けた歯茎から粘性の低い餡子をびゅっびゅっと拭きつつ、まりさは絶叫した。 俺は指先でつまんだこいつの歯をじっくりと眺めてみた。 色は真っ白だ。形は人間のものとよく似ている。 少し力を入れただけで、あっけなく歯は砕けた。恐らく砂糖でできているのだろう。 「びゃびぇでっ! いびゃいびょ! しゅびょびゅいびゃいっ! いびゃびいいいい!! 」 たった一本歯を抜かれただけで、まりさは顔をぐしゃぐしゃにして激痛を訴える。 ろれつの回らない様子から、これがまりさにとって初めての激痛なのがよく分かる。 だが、俺は一本では満足しなかった。 怯えきったまりさの視線を無視して、俺はさらに口に指を突っ込んだ。 「びゃべびぇえええええええ!!」 上顎の歯を四本ほどつまむと、一気に引っこ抜く。 一度目で力加減が分かったから、二度目の抜歯は簡単だった。 ブチブチッという歯茎の千切れる音と共に、俺の手はまりさの口から抜かれた。 まりさの大事にしていた、きれいな白い歯と一緒に。 「い゙ぎゃびい゙い゙い゙い゙い゙い゙!! ゆ゙びあ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙! あ゙あ゙あ゙あ゙っ! びぎゃい゙い゙い゙い゙い゙!」 目を抉ってやった時よりも、数段上の悲鳴が聞こえた。 さすがに、これを近距離で聞くとこちらも鼓膜がおかしくなる。 麻酔なしで歯を何本も一度に抜かれたのだ。 こいつがこれだけ叫んでもおかしくない。 「ぼうやだああああああ!! やだああああああ!! まりざいだいのやだああああああああ!!」 まりさは俺の手の中でめちゃくちゃに暴れる。 どうやら、歯を失っても喋れるようだ。 そうでなくては。 こちらも、これでこいつのすべてを奪い尽くしたとは思っていない。 俺はまりさを地面に降ろした。 まりさは、まさか助かると思っていなかったのだろう。 一瞬きょとんとして地面を見ていたが、次の瞬間ものすごい勢いで泣き出した。 「ゆわああああああん! ゆえええええええん! もうやだああ! おうちかえるうううう! まりさおうちかえるううううう!!」 泣きながら、まりさはぴょんぴょんと跳ねて庭を突っ切る。 生け垣に頭から体当たりし、中に無理矢理潜り込んだ。 火事場の馬鹿力という奴だ。 まりさはゆっくりらしからぬ速さで俺の家から逃げ出した。 「おうちかえる! まりさはおうちにかえるよおおおお! おとうさあああん! おかあさああん! まりさもうやだよおおおお!」 泣きじゃくるまりさの声が遠ざかっていくのが分かった。 さて、後を追うことにしよう。 まだまだ、こいつから頂戴しなければならないものはあるのだから。 逃げるまりさの後を追うのはあまりにも簡単だった。 「ゆええええん! ゆええええん! ゆっくり! ゆっくりいいい! ゆっくりしないでにげるよおおおお! いたいよおおお!」 何しろ、まりさは大声で泣きながら逃げているのだ。 あれだけ小さな生き物が、よく全力疾走しながら大声を出せるものだ。 幻想郷の人間である俺は、それなりに妖怪との付き合いもある。 だが、あんな奇怪な存在などゆっくり以外にいない。 「おうちかえる! まりさはおうちかえるよ! かえって! おうちかえって! ゆっくりする! ゆっくりしたいよおおお! おとうさんとすーりすーりする! おかあさんとすーりすーりする! いもうととごはんさんむーしゃむーしゃする! ゆっくりするうう!」 一度も振り返らず、いっさんに巣に向かったまりさは実に愚かだった。 姿を隠しもせずに大声を出して、あれでは後を追ってきて下さいと言わんばかりだ。 森に入ってしばらくしてから、まりさは大きな木の根元で立ち止まると叫んだ。 「おかあさあああああん! おとうさああああん! まりさだよおおおお! かわいいまりさがかえってきたよおおおお!」 わざわざ出迎えを要求するとは、ずいぶんと甘ったれた子どもだ。 だが、こいつの尋常でない声の調子に驚いたのだろう。 「おちびちゃん? どうしたの? ゆっくりしてないね!」 「ゆっくりしていってね! おちびちゃんだよね! どうしたの?」 「おねえしゃんどうちたの? ゆっくちちてないにぇ!」 「ゆっ! おえねしゃんだ! おねえしゃんおかえりなちゃい!」 「どうちたんだじぇ? こわいいぬしゃんかとりしゃんにおいかけられたにょ?」 巣穴にかぶせてあった木の枝が取りのけられ、中からゆっくりの家族が姿を現した。 両親のまりさとれいむ。 それにこいつよりも体の小さな、れいむが二匹とまりさが一匹。 舌足らずな口調と体の大きさで、妹だとすぐ分かる。 「ゆええええええん! ゆえええええん! おかあさああああん! おとうさあああん! まりさっ! まりさあああああ!!」 まりさは家族の顔を見て安心したのか、一目散に両親の所に跳ねていった。 その側にくっつくや否や、まりさは大声でわんわんと泣き出す。 「おちびちゃんそのおかおどうしたのおおおお!? きずだらけだよおおおお!」 「おめめがかたっぽないよおおおお! それに……おちびちゃんのはがおれてるよおおおお!」 「ゆああああ! おねえしゃんいちゃいいちゃいだよおおお!」 「おねえしゃんいちゃいの? れいみゅがぺーろぺーろちてあげりゅにぇ!」 「まりしゃもぺーろぺーろしゅるんだじぇ! ぺーろぺーろ! ゆっくちなおっちぇにぇ!」 俺が隠れていることに、家族一同誰も気づいていない。 泣き沈むまりさを慰めようと、両親はまりさに優しくすりすりしている。 妹たちも同様だ。懸命に舌でぺろぺろとまりさを舐めて、何とかして落ち着けようとしている。 確かに、こいつが自慢するだけのことはある、仲のよい家族だ。 しばらくまりさは泣いてばかりだったが、ようやく安心したのかぐずるだけになってきた。 「ゆっ……ゆぐっ……こわかったよお……まりさすごくこわかったよおおお!」 「よしよし、もうだいじょうぶだよ。なにがあってもおとうさんがまもってあげるからね。こわいことなんてなにもないよ」 「そうだよ。れいむたちがついているから、おちびちゃんはあんしんしてね。ゆっくりあんしんしていいからね!」 「ゆぅ……ゆっくりありがとう、おとうさん、おかあさん……。まりさ、うれしいよお…………」 「さあ、おとうさんにおしえてね。どうしてそんなけがをしたの?」 「……ゆうぅぅ…………こわいにんげんさんが……にんげんさんが……おにいさんがまりさにひどいことしたんだよおおお! やめてっていったのに! やめてっておねがいしたのに! おにいさんがまりさのおめめをとっちゃったんだよおおお!!」 再びトラウマを想起したらしく、まりさは泣き始めた。 意外なことに、親のれいむとまりさはこんな事を言った。 「おちびちゃん! どうしておかあさんのいいつけをまもらなかったの! にんげんさんにちかづいちゃだめだっていったでしょ!」 「そうだよ! おとうさんもおしえたでしょ! にんげんさんはこわいよ! ゆっくりできなくされちゃうよっていったでしょ!」 「だって……だってえええええ! おいしそうなおかしがあったから! すごくおいしそうだったから! まりさだってえええ!!」 「ま……まさか…おちびちゃん? もしかして、それを…………」 「ゆええん! ゆわああああん! たべちゃったよおおお! たべたかったんだもん! おいしそうだったもん! まりさだってたべたかったんだもん! すごくおいしそうなおかしだったんだよ! まりさちょっとたべただけなのにいいい!!」 「どうしてそんなことするの! にんげんさんのたべものはたべちゃだめだってあれほどいったのにどうして! どうしてええ!」 「そんなことしたらにんげんさんおこってあたりまえだよおおおおお! おちびちゃん! なんでそんなことしたのおお!?」 俺は感心さえしていた。 この家族は本当にまともだ。 きちんと、人間にちかづいてはいけないと、人間の食べ物を食べてはいけないと両親は教えているのだ。 これなら、人間に駆除されることもなく、森でひっそりと生きていけるだろう。 それなのに、こいつはわざわざ人間の里まで下りてきて散歩なんてしていた。 長女だから甘やかされたのか。 あるいは、もともとこいつだけ特に馬鹿なのか。 どちらでもいい。 俺のプランは既に決まっていた。 「ゆわああああん! まりさゆっくりできなかった! ゆっくりしたかったのにゆっくりできなかったよおお!」 「よしよし、おちびちゃん。もうだいじょうぶだよ、だいじょうぶだからね。ここまでくれば、にんげんさんもおいかけてこないよ」 「いたかっただろうね。ゆっくりできなかっただろうね。さあ、きょうはもうゆっくりおやすみ。ぐっすりねむればゆっくりできるよ」 「れいみゅおねえしゃんにおくちゅりとってくるにぇ! ぱちゅりーおばしゃんのところまでいってくりゅよ!」 「まりしゃもついていくんだじぇ! まりしゃのおぼうちにおくちゅりをいれればだいじょうぶだじぇ!」 「れいみゅはおねえしゃんといっしょにおやしゅみーしてあげりゅよ! いっしょにおやしゅみしゅるとあっちゃかいよ!」 「ゆぅぅ……ありがとう、おとうさん、おかあさん、まりさ、れいむ。こわかったけどもうゆっくりできたよお…………」 一致団結して、傷ついた長女を慰めようとする家族。 実に、理想的な家族の形じゃないか。 両親に抱きしめられ、妹たちにすり寄られ、あれだけ泣いていたまりさに笑顔がようやく戻った。 「ゆっくり! まりさもうだいじょうぶだよ! いたいのもうへいきになってきたよ!」 片目と口内の痛みをこらえて、まりさが家族に笑いかけた時を見計らい、俺は一歩を踏み出した。 たった一歩で、俺はまりさと家族たちの前に立ちふさがる形になる。 「やあ、まりさ。確かに、素敵な両親と妹だね。君の言った通りだ」 俺の出現に、まりさはあんぐりと口を開けた。 その顔が、見る見るうちに恐怖で引きつる。 「ゆ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」 この声も駆除の時によく聞いた。 隠れ家を壊して中のゆっくりと対面した時、よくゆっくりは目と歯茎をむき出してこういう声を出す。 よほど驚き、しかも怖がっている時の声らしい。 顔といい声といい、はっきり言ってグロテスクだ。 「やだあああ! おにいさんやだああああ! こわいよおお! ゆっくりできないよおおお! ゆんやああ! ゆんやああああああ!!」 まりさは家族のど真ん中で、パニックに陥って泣き出した。 下半身から勢いよくしーしーが噴き出して、地面に水たまりを作る。 恐怖のあまり失禁したらしい。 「おとうさああん! こわいよおおお! おかあさあああん! このひとだよお! このひとがまりさのおめめを! おめめをおおおお!」 まりさは泣き叫びながら両親に助けを求める。 おおかた、恐い人間を両親によって追い払ってもらおうという魂胆だろう。 まりさに水を向けられた親のれいむとまりさは、俺の方を怯えた目で見た。 「にっ! にんげんさん! おこるのやめてね! ゆっくりしようね! ゆっくりしていってね!」 「そっ! そうだよ! いっしょにゆっくりしようね! おねがいだからおこらないで! おこらないでね!」 びくびくしながらも、親れいむと親まりさはまりさをかばう形で俺の足元に近づく。 しかし、俺が聞いたのは二匹の身の程知らずな主張ではなく、卑屈なお願いだった。 俺が二匹をにらむと、たちまち両親は体を縮める。 人間とゆっくりとの実力差がはっきり分かっているようだ。 「ゆえええん! ゆええええん! どうしてええ! このひとはまりさにいたいことしたよ! ひどいこといっぱいしたよお! いっぱいいたいことしたゆっくりできないわるいひとだよおお! わるいおにいさんだよおお! ゆえええええん!」 分かっていないのがここに一匹いる。 当てが外れてがっくりしたのだろう。まりさは泣きながら両親をけしかける。 きっと、この聡明でしっかりしたゆっくりたちは、子どもたちの脅威を何度も退けたに違いない。 さぞかし、まりさは両親の力に信頼を置いていたことだろう。 俺など、両親があっさりやっつけてくれるものと思っていたのか。 だが、現実は両親が俺に頭を下げ、機嫌をうかがう言葉を発するだけだ。 「まってね! ゆっくりまってね! おちびちゃんはびっくりしているだけなの! ほんとだよ! ゆっくりしんじてね!」 「おちびちゃんはほんとはとってもいいこなんだよ! ね!? ね!? にんげんさん! おこってないよね! ね!?」 親れいむと親まりさは、ひたすら俺にゴマをする。 何としてでも人間さんを怒らせてはいけない。 怒ったら、きっと自分たちは皆殺しになる。 その恐怖がありありと伝わってくる。 俺はしばらく、この後どうしようとかと考えていた。 足に何か柔らかいものがぶつかった。 顔を下に向けると、妹のチビまりさと目が合う。 「ゆっくちまつんだじぇ!」 「おぢびぢゃんどうじでえええ!?」 「おぢびぢゃんやべでええええ!?」 俺の足に体当たりしてふんぞり返るチビまりさの目は、まるで勇者様気取りだ。 どうやら、このチビまりさは両親の脇をすり抜けて俺に特攻したようだ。 一方、親れいむと親まりさは鎮静化しつつあるはずだった事態がぶち壊れたことで、顔をこわばらせて悲鳴を上げている。 さらに足に当たる二つの感触。 チビまりさに続いて、チビれいむが二匹俺の足に体当たりした。 「おにいしゃんだにぇ! おねえしゃんにいちゃいことをしたわりゅいにんげんしゃんは!」 「どうちてこんにゃことしゅりゅの!? おねえしゃんいちゃいいちゃいだよ! りかいできりゅ!?」 「にんげんしゃん! じぶんがわりゅいことちたってわかったのじぇ!? だったらはやくおねえしゃんにあやまるんだじぇ!」 横一列に並んだ、哀れなまでに勇ましい妹たちの戦列。 どのゆっくりの目も闘志に満ち、俺を敵として判断したのがよく分かる。 憎き姉の敵。 絶対に許すものか、という気構えさえ伝わってきた。 「どうちてもあやまらにゃいなら、れいみゅもおこりゅよ! ぷくーしゅるよ! ぷくーっっ!」 「れいみゅもぷくーしゅりゅよ! にんげんしゃん! れいみゅのぷくーではんせいしちぇにぇ! ぷくーっっ!」 「はやくあやまるんだじぇ! あやまらないともっときょわいめにあうんだじぇ! ……ゆゆぅ! もうまりしゃもおこったんだじぇ! まりしゃもぷくーするんだじぇ! おねえしゃんのいちゃいいちゃいをにんげんしゃんにもわからせりゅんだじぇ! ぷくーっっ!」 いっせいに三匹は、頬と体を風船のように膨らませる。 これも何度か見たことがある。 「おちびちゃんはおかあさんがまもるからね! ぷくーっ!」 とか言って、駆除しようとする人間に体を大きく見せるのだ。 ゆっくりの威嚇で間違いないだろう。 そう言えば、あのれいむはどうしただろうか。 確か、面倒だから回り込んで、先に子ゆっくりの方を袋に入れた気がする。 親ゆっくりは「やべでぐだざあい! おぢびぢゃんなんでず! まりざがのごじでぐれださいごのおぢびぢゃんなんでず!」と泣いていた。 つまり、まったくの無意味なのだ。 「………あ…………ああ………やめ……て……やめて……おちび……ちゃん…………」 「に……にんげん…さん………おちびちゃんを……おねがいだから……ゆるして……ね…………」 それが分かっているのは両親だけだ。 親れいむと親まりさは、もはや絶望さえ漂いだした目で俺に許しを請う。 後ろでは、ようやく泣き止んだまりさが潤んだ目で妹たちを見つめていた。 「まりさぁ……れいむぅ…………。まりさ……すごくうれしいよお…………」 姉のために健気に立ち向かう妹たちに、まりさは感動しているらしい。 ついさっき、自分が俺に半殺しにされたことなどもう忘れたのか。 「なあ、まりさ」 俺は足元で膨れた三匹を無視して、まりさに話しかける。 「この妹たち、俺がもらうよ」 「はやくあやまっちぇ! れいみゅがぷくーしちぇるのになじぇあやまらにゃいの! がまんちてにゃいではやぶぎゅびゅぶぶぅぅ!!」 俺がしたのは簡単なことだ。 ただ、一歩を踏み出しただけだ。 それだけで、一番端で膨れていたチビれいむが下駄の裏で潰れた。 「れ…れいみゅがあああああああ!!」 「ど…どうぢでええええええええ!!」 「いもうと……まりさの……れいむ……れいむがああああああああ!!」 隣のチビまりさとチビれいむ、そしてまりさは一撃で妹が潰れたショックで大声を上げる。 特にチビたちは、発狂したのかと思うくらい口を開けて泣き叫んでいる。 「あ……あ……おちびちゃん……が……」 「そん……な……おち……び…ちゃん…………」 親れいむと親まりさのショックは、子どもたちに比べて少ないようだ。 こうなることを、ある程度予期していたからだろう。 俺は足を上げた。 そこには、かろうじて無事な顔で呻き、ぐしゃぐしゃに潰れた下半身を動かす不気味な塊があった。 即死は免れたらしい。 チビれいむは生まれて初めて味わう苦痛が、同時にゆん生最後の体験であることが分かり、餡子混じりの涙を流していた。 「いぢゃいよぉ……おにゃかがいぢゃいよぉ………あんよしゃん……どうちでうごがにゃいの………… やじゃあ……れいみゅじにだくにゃいよぉ…………れいみゅ……れ……い…みゅ…………」 口から吐いた大量の餡子に埋もれるような形で、チビれいむは死んだ。 チビれいむは即死できなかったことを恨んだに違いない。 ごく短い間だったが、途方もない苦痛を味わってから死んだのだから。 まずは一匹だ。 俺はすぐに両手を伸ばし、動けないでいるチビまりさとチビれいむをつかんだ。 「やめちぇ! やめちぇにぇ! はなちちぇ! れいみゅをはなちてにぇ!」 「やめりゅんだじぇ! まりしゃをはやくはなしゅんだじぇ! はなちぇえええええ!」 手の中でじたばたともがくチビたち。 先程の勇ましさはどこへ行ったことやら。 俺が顔を近づけると、「「ゆっぴいっ!」」とそろって悲鳴を上げて失禁した。 手の中に生温かい液体の感触が伝う。 「やめちぇえ! おにいしゃん! れいみゅをはなちてくだしゃい! もうぷくーちまちぇん! ちまちぇんかりゃあああ!」 「まりしゃをたしゅけてくだしゃい! まりしゃはばきゃなゆっくちでしゅ! もうちましぇん! たしゅけちぇえええええ!」 俺は、徐々に握力を強めていった。 指に力を入れ、二匹を握り潰していく。 「ゆぶっ! ゆぶぶっ! ゆぶううううううう!」 「ゆぐっ! ゆぐうう! ゆぐううううううう!」 少しずつ、力を加えていく。 だんだんとチビまりさとチビれいむの体の形は、ボールから瓢箪に変わりつつあった。 懸命に力を入れて握力に抗おうとしているが、無駄な努力だ。 閉じた口からわずかながら餡子が垂れ始める頃になると、二匹は露骨に苦しみだした。 顔を左右にぶんぶんと振り回し、苦痛から逃れようと無駄な努力をする。 「ちゅっ! ちゅっ! ちゅぶれりゅうううううううううう!!」 「ちゅぶれりゅ! ちゅぶれりゅよおおおおおおおおおおお!!」 こんなところでも、ゆっくり特有の「自分の行動を声に出して表現する」習性は変わらない。 二匹は白目をむいて絶叫した。 ぱんぱんに膨れ上がった顔は真っ赤になり、ゆっくりとは思えない不気味な形に変形している。 「やべでぐだざい! やべでぐだざい! ぐるじんでまず! おぢびぢゃんぐるじがっでまず! もうやべでぐだざあい!」 「おねがいでず! おぢびぢゃんをごろざないでぐだざい! がわりにれいぶがじにまず! れいぶががわりにじにまずがら!」 「やめて! やめてよお! まりさのいもうとだよ! かわいいいもうとだよおお! はなして! はやくはなしてえええ!」 親れいむと親まりさは、顔を涙でべちゃべちゃに汚しながら、俺の足にすがりついている。 濁りきった声で、俺を止めようと必死だ。 それなのにまりさは、キンキンとかん高い声で離れた場所からわめくだけだ。 俺はさらに力を入れた。 「ぶぼぉっ!」 「ぶびゅっ!」 あっけなく、二匹の口とあにゃるから餡子がほとばしり出た。 グロテスクなお多福のような顔になったチビまりさとチビれいむの顔が、さらなる苦しみで歪む。 ここが限界だったようだ。 たちまち餡子が流れ出て小さくなっていく体を、俺は地面に落とした。 「おちびぢゃん! おちびぢゃあああん! へんじじでっ! へんじじでよおおおお!」 「おかあさんだよ! れいむおかあさんだよおおお! ゆっぐりじでえ! ゆっぐりじでえええ!」 「ゆ゙っ……びゅ……ぼっ………ぶっ……ぶぶっ…………」 「ごっ……びぇ………べっ……ゆ゙っ……ゆ゙ゆ゙っ…………」 すぐさま顔を近づける両親。 瓢箪の形になったまま戻らないチビたちは、もはや命が尽きる寸前だった。 何度も呼びかける親の声も聞こえないらしく、わずかに体を痙攣させて呻くだけだ。 それなのに、ぎょろりと飛び出しかけた目だけは血走って、今も終わらない苦痛を訴えている。 やがて呻き声は止まり、虚空をにらむ目がゆっくりと濁っていく。 チビまりさとチビれいむは、最後まで苦しみながら死んだのだ。 「まりさのかわいいいもうとおおおおお!! どうして! どうしてころしちゃうのお! まりさのいもうとなんだよ! かわいいいもうとなんだよ! ゆっくりしてたよ! どうして! どうしてこんなひどいことするのおおおお!!」 すすり泣く両親に何の遠慮も示さず、まりさは跳びはねながら俺を非難する。 よく見ると、まりさも目から涙を流していた。 これで、まりさのかわいい妹たちは全滅したことになる。 二度と仲良く家族で団らんはできないだろう。 もう、頬をすりつけることも、顔を舐めることもできない。 惨めに潰れたチビれいむと、変形しきったチビまりさとチビれいむの死体が、現実を突きつける。 「何を言ってるんだ、まりさ。あのチビたちは俺のものだよ。だから、俺がどう使おうと勝手じゃないか」 「ちがうよ! まりさのいもうとだよ! おとうさんとおかあさんがうんだまりさのかわいいいもうとなの! おにいさんのじゃないよ!」 「さっきまではね。でも、俺のものだって主張すればそうなるんだよ。生かそうが殺そうが、俺のものに文句を付けないでくれないか」 「やめてよ! やめてええ! まりさにいじわるしないで! おにいさんきらい! だいきらいだよ! どっかにいって! かえって!」 「君がお菓子を返してくれたらね。さあ、早く返して。返してくれたら全部元に戻してあげるから。ほら、早く返すんだ」
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初心者のためのプレイチャート 新規登録 名前、パスワード、職業、性別4つとも途中で変更できますが ゲーム内のお金が必要になります 基本的な動作説明 @○○と書かれている文字をクリックして「発言」を押せばいいです また、チャットと同じように打ち込んで「発言」を押しても同じことができます 冒険の準備 武器、防具、アイテムは一つしかもてません また武器、防具は重さがあり 重さの分だけ素早さが下がります 素早さが低いと自分の攻撃がはずれやすくなり 会心の一撃をくらいやすくなります 冒険へ 「@つくる」を入力して自分でパーティーをつくるか 「@さんか ○○」でだれかのパーティーにはいりましょう 途中から参加することはできません 新しいパクモンを手に入れるには 野生のパクモンを倒していたらでる「卵」を とあるところにもっていこう 最後に 続けていればそのうち慣れます がんばってください
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※正直言ってここは何の意味もない! +・・・を貼る 動画を貼る方法 【#video(URL)】 画像を貼る方法 貼りたいページにうpしてから 【#image(うpした画像の名前)】 表を作る方法 表示 データ 表示 データ リンクを貼る方法 表示名 クリックして読み込む表を作る +表示名 こんな感じ +表示文字関連 文字の大きさ・色を変える 文字 具体的に変える 一番おおきな文字 おおきな文字 すこしおおきな文字 文字を強調する 普通のもじ強調したい文字普通の文字 コメント こんな感じにコメントを投稿できます -- アスケス (2011-03-12 19 31 43) 名前 コメント
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発言者:レイン・ペルセフォネ 対象者:アシュレイ・ホライゾン 逆襲劇に引きずられて目の前の英雄譚を担う相手を滅ぼしたくてたまらない衝動に駆られながらも、 レインが目の前の相手へと告げた決して譲れない彼女の想い。 やっている喧嘩の規模を無視すればバカップルの痴話喧嘩にしか見えないシーンである 滅びの闇で蝋翼(イカロス)を地に落としながらそれでもまだ到底足りない致命傷の十や二十で死ぬはずがないと 何故か今にも泣き出してしまいそうな顔になりながら、アッシュを必死に切り刻む 負けられない、今だけは この時のために、自分は強くなったのだから……と、決意を燃やして叫ぶ 「死なせない、絶対に―――今度は私がお前の全てを守るんだ!」 そんな傍から見て支離滅裂なことをしているレインの言葉を受けてアッシュも叫ぶ そんな言葉は断じて認められないと十七の致命傷を血肉ごと焼き怒りを露にして 「――戯言を抜かすなァァッ」 「守るだと?冗談じゃない、それはこっちの役割なんだよ。君(・)は黙って後ろをついて来ればいい」 「俺が信じられないなら、今から証を見せてやるッ」 俺が君を守るためにこそ俺は強くなったのだと……かつて誓いを果たすことが出来なかった少年は愛しき少女に向かって叫ぶ しかし、そんな少年の叫びを受けて少女も譲らずに叫ぶ 私が貴方を守るためにこそ私は強くなったのだとかつて守られた少女が愛しい少年に向けて 「変わり果てた姿を見ろって? 冗談じゃない。 何度でも言ってやる。私たちが大切なのはアシュレイ・ホライゾンだって」 「思い知らせてやるからさ……来てよ、私も証明してみせる。 あの日とは違うことを、他ならぬお前に示してみたいんだ」 「それこそ、俺には譲れるものか―――!」 そうして二人は守る、俺が、私がと際限なく決意を高めあいながら激突していく。 それを嘆く二人にとって共に大切な幼馴染の嘆きを置き去りにして…… 一週目では地雷踏んでるなぁとなり、二週目では糞眼鏡たち死ねとなり、三週目ではこいつら序盤からラブラブだな...となるシーン -- 名無しさん (2017-04-04 22 54 07) よしわかった、お前らもう結婚しろ馬鹿野郎!って言いたくなるな、もう。え?それはそれでどっちが主導権かで痴話喧嘩?誰か脳内ピンクさん連れてきて、もうこいつらピンク色方面で仲良くさせた方が早い気がする -- 名無しさん (2017-04-05 00 00 34) ↑ もう、性欲界紳士道に二人とも蹴り落とせばいいんじゃねえかな? -- 名無しさん (2017-04-05 00 14 04) ↑レイン「私がアッシュを満足させるんだから!」アッシュ「俺が君を満足させるんだ!」と言ってまぐわり合うんですねわかります。なおどう見ても基本レイン総受けだけど本人は私が責め(呂律は完全に回ってない)と言い張る模様 -- 名無しさん (2017-04-05 00 18 47) 幼馴染ガチ勢同士が結婚するとこうなるわけか -- 名無しさん (2017-04-05 01 15 10) 主人公vsヒロインは主軸ではなかったけれど、この辺りのシーンで2人の関係性や想いを描写していたから間違いなく作中屈指の重要なシーンなんだな -- 名無しさん (2017-04-05 01 20 37) トリニティのテーマの縮図でもある -- 名無しさん (2017-04-05 01 28 12) 一見どっちも殺そうとしながら守る守ると支離滅裂で意味不明なこといってるのに、本編後は十分理解可能という -- 名無しさん (2017-04-05 01 57 26) あそこまでのトンチキ改造施されてもこうなるあたりアッシュくん凄い -- 名無しさん (2017-04-05 04 47 53) 全てを知った後に見てみると、プロローグの完成度の高さが分かるな -- 名無しさん (2017-04-05 13 36 41) 礼「死なせない、絶対にーーー今度は僕が君の全てを守るんだ!」…違和感ないな。 -- 名無しさん (2017-04-06 06 51 44) ↑うーん、この主人公力ともヒロイン力ともとれる言動、やっぱりゼロインのメインヒロインはあんただよ -- 名無しさん (2017-04-06 07 48 56) 主人公にかつて救われて、それ故に主人公を守りたいと強く願っているって共通点もあるナギサちゃんと礼さん -- 名無しさん (2017-04-06 09 25 33) 自分が殺されかけていることよりも、彼女が自分を守ると叫んでいることにキレるアッシュに初見で笑った記憶 -- 名無しさん (2017-04-07 00 12 21) 「致命傷の十や二十で」………一つでも命に到る傷だから致命傷なんですけどねぇ…が -- 名無しさん (2017-06-03 22 18 04) ↑普通の人間基準の致命傷なんだよ… -- 名無しさん (2017-06-03 22 27 12) 戯れ言を抜かすな→守るだと?冗談じゃない!のあとのセリフが、それはこっちの役割だとか……流石だわ。なぎさちゃんのこと好きすぎやろ…… -- 名無しさん (2017-06-03 23 41 15) 公式で究極の愛重たい族と言われた幼馴染ヒロインとタメを張れる愛の強さを持つ幼馴染ガチ勢主人公の図 -- 名無しさん (2017-06-04 02 14 25) 戯言を抜かすな←そうだよなー守ると言いつつ攻撃叩き込んでくるとかわけわからんよなー 守るだと?それはこっちの役割なんだよ!←ブチ切れていたのそっちかーい! -- 名無しさん (2017-06-04 09 12 36) アヤさんとミステルさんが自分の中で区切りを付けてるのも合わさって、この2人の抱え込みっぷりが凄まじく感じる -- 名無しさん (2017-08-09 02 51 35) 名前 コメント
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お金について色々。 とりあえずマニュアル熟読、話はそれからだ。 資金の使い道武器を買う コインを買う 機体を改造する 手術 貯金 訓練他 ジャンク買う ステータスダウン 金を集める方法勢力事務所にて 戦闘 武器・ジャンク品を売る 競売の利用 戦争での活躍 博打 傭兵 アリーナ 資金の使い道 金の使い方は十人十色……とは言え無駄な使い方してると何時まで経っても強くなれない。 ある程度の指針とか、参考に。 武器を買う 良くある使い方。店で買うとか、カジノで交換するとか。 高い武器=強いわけじゃないのに注目。 コインを買う カジノを利用するためのコイン購入。1枚10c。 武器の交換レートは店の最低値の10倍よりちょっと下ぐらい。 博打で当てないととても元は取れない。 機体を改造する HPを強化するとか、ENを強化するとか。 半端に上げても意味が無いので、やるならどかっとやっておく事。 破損したら涙目。 手術 初心者はまず手術を目標に資金を貯めよう。 強化100万 生体100万 AI500万。 強化の場合は8回分溜めること。 貯金 銀行にて貯金。1週間で大体元本の1割が増える。 確実に毎週最大の利益をもらえるようにしておけば後々楽。 訓練他 ステータスとは別に能力を強化する。 重要。特に生体とAIはやっとけ。 また、武器の性能の底上げも可能。結構上がるぞ。 負担にならない程度にメイン武器には改造をしておくと吉。 ジャンク買う 合成や分解やるなら。 無駄金になっても知らない。でも高精度武器はこっちの方法からしか取れない。 ステータスダウン 能力調整時に。1下げるごとに1万取られる。あんまり気にしない額。 金を集める方法 こっちがメインです、はい。 勢力事務所にて 直接契約とかで金を貰う。序盤はこれで纏まった資金を回収しておくと吉。 また、契約期間が長いほどショップでの武器の値段が安くなる。 戦闘 一番の基本。 ただし、国費がMAXの状態である国に所属して戦った方がより大きな額を得られる。 武器の修理費などにも注意しておかないと赤字化することも。 武器・ジャンク品を売る ジャンク品は、武器を分解して得られる物をジャンク屋に売るのが一般的。 競売の利用 こちらで大きめな利益を得る方法はこんな感じ。 分解可能武器を売る(自分の分解スキルが低い場合。職人が買っていく時がある) Lv10まで上げた進化途中の武器を売る(進化させる武器を探してる人が買うかも) 最終進化武器をLv100まで上げて売る(付加価値が無いと厳しいか?) 高精度武器を作って売る(下手に進化させると利益が逆に落ちる。進化前の方が評価高い) レア武器、レア防具を売る(これが出来る人間は殆ど居ない。元値高いのでそもそも出さないし) 戦争での活躍 戦争で活躍すれば総帥が報酬をくれるかも? ただ、自分からクレクレするのはやめとけ。 博打 宝くじとか、ロトとか。 基本的に投資額>収入なのでこれを当てにするのはオススメしない。 傭兵 傭兵に出てみる。 ただし、タイミングによっては実力に見合わない金額で落札されてしまう事も。 そこは注意しておこう。 アリーナ SPやらSGやらノーマルやらEXやら。 地味に金を稼げる。自動エントリーおいしいです。
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第一層でドラゴンを倒した後、ダンジョンの奥に進むための鍵をもらえるので 入り口から右側の壊せる柱のある通路を行きます。 縦長い部屋の一番下の右の扉を調べると第二層に入ります。 第二層 いくつかの部屋にある4つの石碑を調べると先に進むためのヒントがあります。 一番上の左側の部屋を目指します。 仕掛けの答えは緑、赤、黄、青の色に変えると扉が開きボス・ヨルムン・ガント戦になります。 ダメージが与えづらいですがノーダメを目指すなら真ん中の足場でひたすらナイフで倒せます。 倒したら、おくの宝箱からスキル書を取ってギルドに戻ります。