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永遠の孤独 -Sparks Liner High- ◆2kGkudiwr6 ―――――体は剣で出来ている。 I am the bone of my sword. 血潮は鉄で、心は硝子。 Steel is my body, and fire is my blood. 幾たびの戦場を越えて不敗。 I have created over a thousand blades. ただの一度も敗走はなく、ただの一度も理解されない。 Unknown to Death. Nor known to Life. 彼の者は常に独り 剣の丘で勝利に酔う。 Have withstood pain to create many weapons. 故に、生涯に意味はなく。 Yet those hand will never hold anything. その体は、きっと剣で出来ていた。 So as I pray, unlimited blade works. ■ 読み上げられた死亡者の名は、彼らにとって十分考察に値するもの。 しかし、この場において反応する者はいない。 目の前にいる剣士が発する剣気は空気を凍りつかせ、凍てついた空気は思考さえも侵食していく。 戦場という場を体感したことのない者に耐えられるものではない。 それを示すかのように――この場に響くことは、しんのすけの寝息だけ。 そして動いたのは、セイバーとトウカのみ。 「幼子に剣を向けるとは――それでも武士か」 「私は武士でもなければ騎士でもない。王だ。それも愚鈍な」 風が吹く。音が二人の声と協和する。 声の大きさはどちらもそれほど変わらない。だが、その質はまったく違う。 トウカは激情を乗せて、まるで溶岩のように。 セイバーはまるで氷のように、何も込めずに。 「王ならば、尚更無闇に民を戦に巻き込むことの愚かさは分かろう!」 「戦が――必ず民草を巻き込まない、騎士だけで行われる清廉なものとでも?」 「そのように戦うのが理想ではないのか」 「理想というものは、現実の前に敗れるものです」 その声は、どこか自嘲するような様子も含んでいて。 だからこそトウカは逆に、これ以上の問答は無用だと知った。 「キョン殿、ハルヒ殿。 すぐにここから離れるように」 「で、ですけど、援護とか……」 「しんのすけ殿もいる。 それに何より――彼女は某の敵だ」 目を尖らせ、耳を開きながらトウカは告げる。 しかし、それに答えたのは、セイバーだった。 「そうはいかないのです――風王結界」 セイバーが呟くと共に、大気の流れが変わる。 風の剣によって勢いを増した竜巻は、その場にいた者を簡単に飲み込んで。 トウカ達が気づいた時には、一つの壁を作り上げていた。 周囲一帯と外を遮断する、閉鎖空間を。 「いてっ!?」 「な、なにこれ!」 生み出された壁に押し出される形でキョンとハルヒが倒れこむ。 慌てて起き上がった二人が見れば、そこには異様な光景が広がっていた。 渦巻く風は不可視ではなく、可視。だからこそ、外の様子は見えない。 更に轟く音が聴覚をも阻み、風は内部の空気を澱ませ匂いを取り入れない。 しかし、何より問題なのは…… 「まずい、しんのすけ君が外に置き去りだ!」 キョンの声に、トウカは思わずセイバーを睨み付けていた。 もっともセイバーにしてみれば、明らかにパソコンを持っていないしんのすけは閉じ込める必要がなかっただけの話。 契約の主軸は数人を殺すこと、そしてパソコンを奪うことである。 故に、風王結界の内部に取り込まず放置した。ただそれだけ。 明らかに戦闘力の無い者を連絡が取れない状況下に置くことで、相手の焦りを生むという狙いもあったが。 「ちょっと、出しなさ……」 思わず文句を言おうとしたハルヒの口は、セイバーに見つめられ閉ざされる。 兜に覆い隠され、その素顔は見づらい。 それでもハルヒを黙り込ませるには、その殺気は十分すぎた。 「この風の牢獄から抜け出すことはできません」 「どうすれば開く」 「私が死ねば」 「……そうか。 ならば――某のすることは一つ」 トウカの腕が動く。 風に包まれ、外の光景も音も遮断する閉鎖空間の中。 斬鉄剣をセイバーへと突きつけて、告げた。 「討つのみだ」 こちらもまた、圧倒的な剣気と殺気を込めた言葉。 しかしセイバーはそれを軽く流して、剣を握る。 「できるものなら」 ただの言葉だけで、時を止めて。 ■ 明らかに異常な結界に、内部の三人が苦戦する中、外部でも動きがあった。 異常が露見するのは、結界の内部だけではない。 結界の外部。風が渦巻く様子は、誰がどう見ても異常な物として映るだろう。 「な、なんなんだゾ、これ……」 しんのすけも、そうだった。 数多数知れない不思議な事象を見てきた彼でも……いや、彼だからこそか、 目の前に広がる光景には圧倒されるばかり。 だが、それでも彼はすぐに気を取り直した。 「って、迷ってる場合じゃないような気がしないでもないような気がするゾ!」 言葉こそ冗談めかしているがマジである。 年の割に聡い彼は、いなくなったキョン達がこの中にいることに気づいたのだ。 「うおおおおおおおおおおお~!」 叫ぶと共に全力疾走、そのまま迷わずに結界へと向けて体当たり。 が、あっさり吹き飛ばされる。 立ち上がってむむ~、と考え込んだしんのすけは。 ふと自分に覆いかぶさる影に気づいて、振り返った。 「……???」 怪訝な顔をした彼の前にいたのは……スランという名を得た、機械人形だった。 ■ 「くっ!」 「てぇい!」 二つの剣が火花を散らす。風によって遮断された決闘場に、二人の剣士の声が響く。 一見したところ、二人の勝負は互角だった。 ただし、その互角は全く同じ武器や技量に基づいたものではない。 様々な要素、有利不利が複雑に絡み合ったものだ。 まず武器。風の剣も相当な魔剣であることに疑いは無いが、斬鉄剣は雷や流星さえ斬ることができるキチガイじみた刀だ。 まともに斬り合えば、風の剣といえどもただではすまないだろう。 ――まともに斬り合えば、の話だが。 「ぐぅ……!」 トウカの顔が歪む。 今まで一度も、斬鉄剣が綺麗に相手の剣と火花を散らしたことはない。 常に腹と刃の中間、斜めに近いような角度でぶつかり合い、その真価を発揮できていない。 だがそれも当然。なぜなら、相手は風王結界で包まれた不可視の剣だからだ。 本来なら有り得ぬ風王結界の二重展開。 しかし、今セイバーが携えるのは文字通り風の剣。 だからこそ、セイバー自身の魔力で風王結界を周囲に展開し、 剣の魔力で剣の周りに風王結界を展開するという離れ業を可能とする――! もっとも、だからセイバーが押しているのかと言えば、それは否だ。 セイバーの顔もまた、苦々しい。不可視の剣とは言え、トウカも全く目測が付いていないというわけではない。 不可視の剣というアドバンテージがあっても、相手の剣をまともに受けられないという事実は変わらないのだ。 斬られる前にセイバーがそれに気づいたのは一重にその直感スキルの恩恵だが、 できるのは不可視という長所を利用してうまく相手の剣を流すことだけ。 トウカは相手の剣が見えないが故にまともに受けることができず、 セイバーは相手の刀に悪寒を覚えるからこそ正面から防ぐことができない。 不可視の剣と無敗の刀。今のところ、得物は互角。 魔力放出と剣技の才。こちらもまた、均衡している。 だが、セイバーに無くともトウカにあるものがある。 それは、早くしんのすけの姿を確認しなくてはいけないという、焦り。 攻めあぐねたトウカが、痺れを切らして打って出た。 鋭い踏み込みから、何のフェイントもない直線的な正面からの払い。 技巧を主とする彼女らしくない、強引な攻撃。 だから、それは。 「甘い」 簡単に、弾かれる。 トウカの姿勢が崩れ、一気呵成にセイバーは追撃する。 土煙を巻き上げる切り上げから正中線をなぞる返し。 セイバーの剣技は剛。対するトウカは柔。 姿勢が崩れるということは、その柔を成す技巧の下地が崩れるということを意味する。 かろうじて受けきって距離を離したトウカだったが、その腕は明らかに痺れていた。 「余力を残してどうするのです」 「……ッ!!!」 焦りを見透かしたかのように、セイバーが告げる。 当然、トウカがそれで落ち着くなどということはない。 むしろ焦りは肥大化し、冷静な判断力を奪っていく。 そして……焦りとは伝染するものだ。 「どうすんのよキョン! このままじゃまずいわよ!」 「お前に言われなくても分かってる!」 ハルヒの言葉に、キョンはそうはき捨てた。 かつて病院で戦った時とは完全に別次元の殺陣だ。一般人が邪魔できるレベルではない。 近接攻撃による援護は論外。 何か投げつけるか射撃するにしても、密着して戦っている以上トウカも巻き込みかねない。 クローンリキッドごくうも同じ。下手に使えばトウカの攻撃範囲を狭めるだけだ。 通じるとすればタヌ機ぐらいだろうが――それもとっくに説明書がなくなっており、 ハルヒもキョンもその使い方や効果を分かってはいなかった。 つまり、二人にできることは何も無いということだ――だからこそ、トウカは手出ししないように言ったのだが。 考え込むキョンだったが、その思考は途中で中断された。 突然、ハルヒが声を上げたのだ。いつものように。 「そうよ! これがあった!」 怪訝に思うキョンを尻目に――実際のところはセイバーやトウカも聞いていたが、あいにくこの二人に反応する余裕は無い――、 ハルヒはデイパックに手を突っ込んだ。 しばらくして取り出されたのはRPG-7! 「おい、何やってんだ! トウカさんに当たるだろう!」 「そうじゃないわよ馬鹿キョン! このよくわかんない壁に撃つの!」 「へ?」 「何もできないなら、さっさとここを脱出してしんちゃんを探しに行くしかないでしょ? この壁をどっかーんとふっ飛ばしてね!」 「なるほどね……」 珍しくキョンが素直に感嘆したのもつかの間。 「えっと、これね!」 「あ、おい!?」 ろくに構えもせずにハルヒは弾丸をぶちかます。 幸い弾が外れることは無かった。 目標は動かない壁、範囲は前一帯。これで外す方がどうかしている。 問題は、ハルヒ自身が反動に耐え切れないことで。 地面に頭をぶつける寸前、キョンはスライディングしてなんとかフォローした。 「馬鹿、あんまり急ぐからだ!」 「う、うるさい!」 すぐに起き上がり、待っていられないとばかりにハルヒは煙の中に突入していく。 やれやれと肩を竦めながらも、キョンはちらりと金属音がする方向に目を向けた。 (戦況はまだ互角みたいだな……) 一般人であるキョンには、少なくともそう見えた。 ならば、ここで二人が脱出して完全にお荷物になっているキョンやハルヒと、 心配要素であるしんのすけというマイナス要素を一気に排除すれば、悪いようには働かないはずだ。 (信じますよ、トウカさん) そう呟いて、彼は視線を戻した。 ハルヒと違い、キョンは煙の中に突っ込みたがるような性格ではない。 煙が晴れたところでそのまま外に出るつもりだった。 つもりだったの、だが。 煙が晴れた中から姿を現したのは。 壁に張り付いている、むくれたハルヒの姿。 キョンは呆然として……その後、珍しく声を荒げていた。 「おいおい、これでも開かないって言うのかよ!」 「開いたけど、すぐ戻っちゃったのよ!」 腹いせとばかりにハルヒが風の壁を蹴飛ばすものの、何の効果もありはしない。 もしこれを突破するとすれば……この結界を完全に吹き飛ばせる威力を持った遠距離攻撃をぶつけるか、 穴を開けることができる威力のある突進攻撃でぶつかるしかないだろう。 一般人でしかないハルヒとキョンに、そんなものがあるわけがなく。 ――響いた爆音は、よりトウカを焦らせていく。 「たあああああああっ!」 気合いと共に、剣舞の口火をトウカが再び切った。焦りが、切らせた。 一瞬のうちに目にも止まらぬ速さで居合いを繰り出す。それも、何度も。 両断どころか、三枚おろしや四枚おろしにしてお釣りが来る斬撃。 だが、所詮は正面からの、軌道も速さも分かりきったモノだ。 初撃から三まで、身のこなしだけを以って紙一重でセイバーは回避。 四撃目を剣で受け流した後、そのままトウカの体に蹴りを叩き込む。 とっさにトウカは後ろに跳んだものの、避けきれず。 腹部に伝わった衝撃に、一瞬息を詰まらせた。 「…………ッ!」 歯を噛み締めてセイバーを見やるトウカの目に、冷静になった様子は欠片も無い。 元々彼女は落ち着いた性格ではない。寧ろ感情的な部類だろう。 故に、ハクオロのようなブレーキ役がいるならともかく、彼女自身だけで立てた考えは必ず正しいとは言えない。 例えば、オリリカンに付いた時のように。 この場合において正しい行動とは、ひたすら受けに回って不可視の剣の長さなどを掴むことだ。 そもそもこんな焦りに満ちた剣では、互角であるはずのカルラにだって勝てはしない。 そして、そんな彼女を見て。キョンは一つ、覚悟を決めた。 ■ 先に言っておくが、俺は正真正銘の一般人だ。 ここに閉じ込められた中では一番のお荷物だという自信がある。 はっきり言って俺があの二人の斬り合いについて偉そうに言う資格なんざ無いが、 それでもトウカさんが押されてるくらいは分かるし、 彼女が思いっきり焦ってるのも分かる。俺だってだいぶ焦ってるからな。 そしてそんな俺でも、無理やり攻め込んだぐらいで勝てる相手じゃない、 勝ったとしてもトウカさんは無事にすまないということくらい分かってるつもりだ。 トウカさんが焦ってる理由もな。 「この、開きなさいっての!」 脇では相変わらずハルヒが壁をガスガス蹴っている。 そんなんで開いたら誰も苦労はしない。あんなバズーカだかロケランだかをぶちかまして壊れないんだからな。 一般人にこんなものを開くのは無理だ。ハルヒ自身も薄々分かってるだろう。 ただ、他にすることが無いからそうしてるだけ。 だけど。ハルヒは一般人じゃない。 「おい。ハルヒ、話がある!」 「何よ! つまんないことだったらぶっ飛ばすわよ!」 強引に肩を掴んだ俺に、あいつは目を吊り上げて言葉を返した。 明らかに焦って、いらついてる。それこそ、閉鎖空間を作って神人とやらを呼び出しかねない位に、だ。 だから……下地は揃っている。 なんだか知らないがこんなどこともしれないとこに拉致られて。 とんでもない不思議体験をしまくって。 ……たくさんの人に、死なれて。 風で包まれたここはまるであの閉鎖空間だ。 こいつの世界観なんてとっくの昔に変わりまくってるに違いない。 なんでこの世界がぶっ壊れないのかは知らない。大方、ギガゾンビが何かやったからだろう。忌々しい。 じゃなかったら呑気にこいつを殺し合いになんか参加させられやしない。 なら、ギガゾンビに教えてやるさ。ここに呼ばれた中で、一番とんでもない力があるのはハルヒだってことをな。 「いいか、よく聞けよハルヒ。 世界はな、いつだってお前をど真ん中において回ってたんだよ! 俺達の世界にだって未来人だっているし、宇宙人だっているし、超能力者だっている!」 「は、はぁ、またその話? こんな時に何言ってんのよ!?」 ハルヒの目はまるでキチガイでも見るかのようだ。正直痛い視線だが、あいにく、そんなの気にする余裕は俺にはない。 「お前は神様みたいなもんで、何でも自由にできる力があるんだとよ。 超能力者代表の古泉からのご意見だ」 「……は?」 正確に言えば古泉はハルヒを神だと思っていないそうだが、細かいことは知ったことか。 そんな些細なことを伝える余裕なんざ皆無だ。似たようなもんだろ。 「ジョン・スミスって名前に心当たりがあるだろ。あるはずだ」 「え……ちょっと待って、それって……」 「過去の北高の校庭、七夕の日! お前と一緒によくわかんない紋様を書いた男子高校生! あれは俺なんだよ、未来人代表の朝比奈さんの力を借りてタイムスリップして、 宇宙人代表の長門の力を借りてきて帰ってきたんだよ、現代に!」 珍しくハルヒは黙り込んだ。俺を見上げて、目を瞬かせるばかり。 古泉に言わせれば深いところでハルヒは常識人らしい。ならこの反応は当然か。 こんなこと言われて理解できる一般人はいやしない。 自分のやったことの危険性は俺だって理解してる。 なんせ俺自身、ハルヒと一緒に閉鎖空間入りした身。 そりゃあ下手すりゃこの世が崩壊しかねない大惨事だ。だが。 同じとんでもないことをする奴なら。 ギガゾンビなんかよりハルヒの方が、よっぽど人格的に優秀だ。 少なくとも俺はそう信じてる。 「じゃ、じゃあともかく、百歩譲って、本当に古泉くんが超能力者で、みくるちゃんが未来人で、有希が宇宙人だとして、よ。 私が神様みたいだって言うのは、どういうことよ」 それでも、ハルヒは反論してきた。 だが、その口ぶりに自信はない。思い当たる節がある目だ。 後は後ろから押してやればいいだけだ。 「いつか見た夢があるだろ。お前が一度だけ、髪型をポニーテールに戻すきっかけになった夢」 俺とハルヒがキスした夢、とは流石に言えない。 「ありゃ現実だ。 なんだか知らないが、あれは新たな世界を作るための儀式みたいなもんで、お前がやったことなんだそうだ」 「…………」 「お前が遊びたいって言ったから未来人も宇宙人も超能力者もいる。 映画を撮る時に長門が変な動きをしたりフェンスが裂けたりしたろ? ありゃお前が朝比奈さんに変なもの出してとか言った結果、マジで出しちまって大変なことになったからだ」 後ろではトウカさんがまだ斬り合っている。音を響かせている。 けれど、ハルヒは黙ったまま、何もしない。ここも何も変わらない。 「他にもある。 季節はずれの桜だって秋に咲き誇ったし、俺の妹でさえホームランを……いやこれは長門だった。 鳩は真っ白く変わるしシャミセンは喋り出すし……お前見てないんだっけ?」 俺はもうかなり焦っていた。後半はかなりの早口だ。 今更ながら自分や古泉、長門の隠蔽工作技術に驚かざるを得ない。 ハルヒに話せることが意外と少ない。ちくしょう、もう少し怪しい行動取ってりゃよかった! 完全にネタ切れで黙り込んだ俺を、ただハルヒは見つめ続けるだけ。響くのは金属音だけ。 俺の身体能力が大幅に上がった様子も無いし、トウカさんが勝った様子もしない。 何も変わってない状態で、ハルヒは呟いた。 「ありえない」 これ以上無く、暗い声で。 とっさに何か言おうとした俺の喉が急に止まる。 ハルヒが俺の襟首を掴んで、叫んでいた。 「嘘よ! 私にそんな力があるならみくるちゃんだって有希だって鶴屋さんだって生き返らせてる! けどみんな……は」 「お、おい落ち着け! そして手を離せ!」 「私にどうしろって言うのよ! どうやってそのよくわかんない力を使えって言うのよ!」 「そ、それは、えっとだな……」 ハルヒは今にも泣きそうな顔で襟首を掴んだままゆすりやがる。 だがそんなの、はっきり言って俺にも分からん。下手すれば古泉だって長門だって分からんぞ。 しかし反論する暇も無く、ハルヒは俺をぶん投げた。 「死んだ人は……どうやったって帰ってこない……。 確かに私だって、みんなの役に立ちたいけど、私に何ができるって言うのよ!」 頭を振りながら起き上がると同時に、ハルヒは俯いてそんな事を言ってきた。 ……自分の馬鹿さ加減が嫌になる。よくよく考えれば、ハルヒの力はどう見ても制限されている。 いくら何を言っても、条件を変えても、やっぱりハルヒは何もできない可能性もあったのだ。 ただ、ハルヒを無力さに泣かせるだけの可能性も。 「……ん?」 そこまで考えて……ふと、気付いた。 周りの空気がどこか変わったことに。……まるで本物の閉鎖空間みたいに。 そして、ハルヒはイライラしてる。これ以上無く。 弱い自分が嫌になって、みんなの役に立ちたいと、今までに無いほど強く願っている。 「まさか……うおっ!?」 「……え?」 「なっ……!」 「馬鹿な!?」 その衝撃は、突然だった。俺たちどころか斬り合っていたトウカさん達も動きを止めていた。 揺らぐような轟音と共に、ここを覆っていた風の檻が歪み、消えていく。 まるででかい物がぶち当たったように……いや、実際ぶち当たったのだ。 そして、晴れた視界の中、外にいたのは。 「あれ……」 「神人……」 青い、現実離れした巨人の姿。 しばらくそいつは俺達を見つめた後(目があるわけじゃないがそう見えた)、溶けるようにいなくなった。 トウカさんも、セイバーとかいう女騎士さえ呆然としている中。 ふとハルヒを見た俺は、とっさにその手を掴んで走り出した。 「トウカさん、後は頼みます! 勝って下さいよ!」 「……あ、ああ! 承知した!」 トウカさんの顔も見ず、自分のできる全力疾走でハルヒを連れてこの場を離れていく。 忌々しいことに外にしんのすけ少年はいなかった。絶対に探して見つけ出さないと。 だが、何より今は他にしなくてはならないことがある。 原因はトウカさんは気付かないだろう、それでも俺は気付くくらいの違和感。 俺達はなんとかトウカさん達が見えない森の中まで走り去って。 同時に、ハルヒはぶっ倒れた。 「お、おい、どうした!?」 「わかんない……なんか、頭、いたくて……」 とっさにハルヒの頭に手を当てる。 ……熱い。明らかに、なんかやばい事態だ。 オーバーフローという言葉が頭を過ぎる。 多分、この場においてはこれがハルヒのできることの限界なんだ。 思わず、俺は答えが分かりきっている質問を出していた。 「なんで我慢したんだよ!? 俺はお前がぶっ倒れても文句は言わなかったぞ!」 「トウカさん、焦らせるわけ、いかないでしょ……」 そう。そういうことなのだ。 俺が感じた違和感。それは、ハルヒの痩せ我慢。 今にも倒れそうなのに、トウカさんを心配させまいと我慢して突っ立ってたってワケだ。 溜め息を吐きながら、俺は近くの木にハルヒを寄りかからせて立ち上がった。 「俺はしんのすけ少年を探してくる。お前はそこで……」 「北」 「……は?」 「北よ……そこで、しんちゃんを探してあげて。 そこから、映画館まで行って道沿いに行けば安全に病院に着けると思う」 「分かるのか?」 「わかんない。なんとなく。でも、映画館の辺りには誰もいない気がする」 よくわからんが、今のハルヒが言う事なら恐らく信憑性は高いだろう。 そのまま、ハルヒは俺に厳しい口調で命令した。 「見つけなさいよ。絶対」 「神様としての命令か?」 俺の言葉に、ハルヒは笑みを浮かべて言葉を返した。 弱弱しいけれど、しっかりとした笑顔で。 「決まってる、じゃない……SOS団団長としての、命令よ」 その言葉ににやりとして、俺は走り出す。 安心しろ、古泉。 どうやら我らが団長殿は、世界をぶっ壊すつもりはなさそうだ。 ■ 結論から言えば、しんのすけは無事だった。 外傷ひとつ負うことなく、山を走っていた。 ……ハルヒ達がいたところから、数百m以上離れた場所を。 『警告します。禁止区域に抵触しています。あと30秒以内に爆破します』 「う、うお、やばいゾ!」 首輪から発せられた音に、しんのすけは慌てて飛びのいた。 まるで周りの地理が全く分かっていないような動きだったが、それも当然。 今の彼は何も持っていなかった。地図も、コンパスも、何も。 そんな彼を、更に利用せんと画策する者がいる。 見つめてはいないし、聞いてもいない。それでも彼が彷徨っているのは分かる。 彼をこのような状況に追い込んだ張本人、スランである。 「やはり、パソコンは無かったか」 C-4エリアで手に持ったデイパックを揺らしながら、草葉の陰でスランは毒づいていた。 彼がやったことは、種を明かせば単純な話。 ツチダマはどこでもドアでしんのすけをB-5に移動させた。それだけ。 一応デイパックも強奪したものの、予想通りそこに彼が求めていたものは無かった。 このような遠回りな手段を採った理由は単純だ。 いかにもツチダマと言え、さすがに参加者の生死まで誤魔化すのは不可能だ。 だが……移動や居場所程度ならば、まだ可能である。 このような手段を採ったというよりは、採らざるをえなかったという方が正しい。 「キョンとやらを隔離してくれればよかったが、さすがに贅沢か」 目の前を走っていく二人の学生を見やりながら、スランは呟いた。 実際、これでも十分すぎるほど効果を上げている。 あの調子ならば、病院から来る増援とハルヒ達が合流するのは遅れるだろう。 セイバーが負けそうになっても、彼女を離脱させしんのすけを人質に取るよう仕向けることもできる。 ……うまくやれば、何らかの事故やセイバーを通じてハルヒやキョンの命を奪い取ることも。 「まだだ。まだ早すぎる」 自戒するような言葉。 しかし、口ではそう言っても自らの手でグリフィスの道を拓ける選択肢があるということに、 スランは恍惚を隠し切れないでいた。 ■ 「ぐっ――」 呻きながらトウカが後退する。 その左太腿には、赤い筋。 それほど深い傷ではない。だが――動きは確実に鈍る。 今のトウカに焦りはない。ハルヒ達が外に出たことで、しんのすけも探してくれるだろうという考えを持てている。 故に正しい戦術……不可視の剣の長さを測るという手にもやっと気付いた。 もちろん、それまでに受けた傷は大きい。特に足の傷は、互角に持ち込むには大きすぎるハンデである。 それでも、精神的にだいぶ楽になって焦りが消え、不可視の剣に見当がつき始めている。 それは疑いも無く、トウカを有利にする材料だ。 トウカが前に出る。再び居合い。剣が交差する。 トウカの腕がぴくりと動く。その向きから胴への斬り返しと判断したセイバーはそこへと剣を動かす。 だが、トウカはワンテンポずらして顔へと剣を持っていった。 腕の動きはフェイントだ。焦っていたときには思いつかなかった手段。 0コンマレベルのフェイント。セイバーはそれに反応して回避したものの、その髪の毛がうっすらと舞う。 もっとも、回避できたのには変わりない。そのままセイバーは剣を振り上げた。 とっさに斬鉄剣を戻したものの流しきれず、トウカの頬に一筋の赤い線が引かれる。 セイバーが更に剣を振り下ろすのと、トウカが剣を再び振り抜くのはほぼ同時だった。 風が大気を断ち、刀が地を割る。 そのまま、互いに弾かれるように後退した。 「……粘りますね」 「粘るのが目的ではない。某は勝つ。 外道は絶対に許しはしない」 「…………」 共に血を地面に零しながら、言葉を交わす。 かすり傷ならば、どちらにも多数付いている。だが行動を阻害されるような傷はトウカの方が多い。 それでも、その心は落ち着き、引けを取ってはいない。 そんなトウカを見て、セイバーは剣ではなく、口を動かした。 「貴女は侍のようですが…… 貴女の主は、どのような方でしたか?」 思わぬ言葉に一瞬トウカは怪訝な顔になったものの、すぐに言葉を返した。 「前の主も聖上も、義に厚い方であった。 前の主は誤ったが、あくまで騙されていただけだ」 「前の主……とは?」 「自らの目で仕えるべき主を探し、見定める。 義があると信ずればその者を助け、騙されていたとなれば自らの手で責を負う。 それが某達の生き方だ」 「傭兵のようなものですか。 あなたの故郷は滅んだのですか?」 「我が一族の誇りは義であり、それは全土に知れ渡っている。 我が里に攻め込む者などいない」 エヴェンクルガはその清廉潔白な生き様から、他の全ての民に畏怖され、崇められている。 味方に付けば士気が高まり、敵に回れば困惑が上がる。エヴェンクルガは、存在そのものが大儀の証と言えるからだ。 故に――わざわざエヴェンクルガに喧嘩を売るうつけはいない。 「なるほど。だから」 セイバーは、思いに沈むように目を閉じた。ほんの一瞬だけ。 そして、再び目を開いた彼女の瞳は、 「――だから貴女には、分からないッ!」 強い意志に、満ちていた。 魔力放出と共に、セイバーが前進する。言葉と共に、意志と共に。 速いとはいえ真正面、受けたトウカの斬鉄剣により風の剣は刃が欠けたものの…… 意に介さずセイバーはつばぜり合い、押し込んでいく。 互いの顔を挟んで火花が散りあい、剣の刃は欠け、刀が歪んでいく。 「村を一つと部隊を一つ蛮族の手に落とさせることで、数百の部下の命が救え、十の村が救えるとすれば、貴女はどうする!」 「それは……」 「確かに見捨てることが正解かもしれない! しかし! 見捨てられた民は王を恨み、騎士は捨てられた仲間に同情する!」 剣を押し込みながらセイバーは叫ぶ。 当時のブリテンは、戦ばかりだった。 ゲルマン民族サクソン人はブリテンへの侵入を試み、何度も何度も戦闘が繰り返されていた。 そして、内通者モルガンの存在。 伝説にあるように、アーサー王の治世とは戦争ばかりの動乱期であったのだ。 「5年、10年、20年! そんなことを繰り返すたびに、人々の心は離れていく!!! けれど、私はそれ以外の方法を知らなくて――分からなくて! そうして国は滅んだ!」 全てを救うことなどできない――戦の摂理である。 そも、戦うということ自体が、敵という一を切り捨てるものなのだから。 だから、アーサーは最善はそうだと思ったのに。 「分からないでしょうとも――私にも分からないのだから! 故に、方法はただ一つ!」 セイバーが踏み込む。気合いと共に。 言葉をぶつけながら。 「正しき方法を思いつくであろう賢者に王位を譲り渡すこと、それのみだ!」 「ぐっ……!」 なんとか押し返そうとしたトウカの足元が、突然ふらついた。 その正体は風王結界。風の檻として使われていたものが霧散して集束、嵐のようにトウカの足を掬ったのだ。 一瞬バランスを崩したトウカを容赦なくセイバーは弾き飛ばし、地に叩きつけ。 そのまま喉元に剣を突きつけた。 「そう、願いを叶えて私が消えれば、私の存在は無くなる。 私が王だったという事実も。私が多数の罪無き人々を殺したという事実さえも。 だから、私は止まらない。殺した人のためにも止まれない」 息を荒くしながら、セイバーは続けた。 無表情なのに、どこか疲れを感じさせる表情で。 「そんな都合のいい話が――」 「あるのです。私が勝ち残れば私が王だったという事実自体が消える。 そうしてタイムパラドックスが起きれば、私がこの殺し合いに呼ばれることもなくなるかもしれない。 そうすれば、この殺し合いの結末さえも変わるでしょう。だから」 「安心して死ね、と。そういうのか」 「ええ」 そのまま、セイバーが剣を振り下ろそうとした瞬間。 「――ふざけるなッ!!!」 トウカは、叫んだ。 ■ しんのすけ少年はあっさりと見つかった。 ハルヒの言った通り、北にいたのだ。 「大丈夫か。どうしてここに?」 「なんかハニワが現れて、ドアに押し込まれてたらここにいた~」 「…………」 マジで訳わからん。 「ともかく、このデイパックを持って病院まで行ってくれ。中にコンパスと地図がある。 ロックさんとその知り合いがいるはずだ。 そうそう、山の中を通らないように。 映画館まで下りて、C-3から行ってくれ。あっちに行けば見つかるはずだ」 俺のデイパックを渡しながら、そうしんのすけ少年に告げる。 とんでもない斬り合いをやってる目の前を通るよりは安全だろう。 「おにーさんは?」 「いったん戻ってハルヒと合流する。 それに、トウカさんに無事だったことを伝えた方がいいかもしれんし」 「オラもいく!」 「ダメだ、万が一ってこともある」 「きれーなおね~さんを助けるのは、男の義務なんだゾ!」 「…………」 思わず、俺は肩を竦めていた。随分とませたお子さまだ。 ともかく、連れて行くわけにはいかない。 しかし、この強い瞳。まるで意地になった時のハルヒだ。 半端な言い訳じゃ納得してはくれないだろう。 どうやって追い払うか……考えて。 そういやこいつ、ずいぶんませてるよなと思って。 とんでもない追い払い方が思いついた。 「…………」 「おにいさん、どうしたの~?」 個人的に、こんなことを言うのは勘弁だ。ああ、そうだとも。 もしハルヒにこんなことを言ったことが知れたら、俺は死ぬね。 だが。 「早くしないとおいてっちゃうゾ!」 目の前では少年が今にも走りだろうとしている。 覚悟を決め、半ばヤケっぱちで俺は口を開いた。 「悪いが、その役は譲れん。俺の言った通り一人で行くんだ、少年」 「なんで~?」 「キスした相手を助けにいくのは、男として当然だろ?」 まったく……やれやれ。 俺の頭もだいぶ沸いてきたようだ。納得してくれたのは、せめての救いだろうな。 「……わかったゾ。 でもオラ、すぐに助けを呼んでくる!」 「ああ、頼む」 少年の言葉に、俺はしっかりとうなずいた。 ■ 時系列順で読む Back Can you feel my soul Next I have no regrets. This is the only path 投下順で読む Back SUPER GENERATION(後編) Next I have no regrets. This is the only path 275 遥か遠き理想郷~アヴァロン~ 涼宮ハルヒ 280 I have no regrets. This is the only path 275 遥か遠き理想郷~アヴァロン~ セイバー 280 I have no regrets. This is the only path 275 遥か遠き理想郷~アヴァロン~ 野原しんのすけ 280 I have no regrets. This is the only path 275 遥か遠き理想郷~アヴァロン~ キョン 280 I have no regrets. This is the only path 275 遥か遠き理想郷~アヴァロン~ トウカ 280 I have no regrets. This is the only path
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01_ 空は、一秒ごとに暗くなっていく。 空からは黄昏の残滓がみるみるうちに消えていき、代わりに夜の突き放した静けさが広がっていく。 赤い日差しの代わりに顔を出した、青く巨大な月はまるで支配者のように空に鎮座していた。 そんな夜の世界を、真黒な流星が疾駆していた。 その流星は黒く禍々しく染まった翼を携えている。 ローブをばさばさとはためかせ、その腰には鋭い刃。 その身からは黒点が泡のようにこぼれ落ちている。 その異様な姿を見た者は、まず恐れをなして逃げるだろう。 いかな愚か者であろうとも、 それが災厄をもたらすものであることは、一目でわかるからだ。 フォルテ。 その黒い流星は、そんな名前をしていた。 「――――」 ファンタジーエリア、西方。 つい数時間前に飛んでいた軌道を彼は再び飛んでいる。 その目指すはただ一つ――月海原学園。 そこには彼の敵がいる。 今まで何度も辛酸をなめさせられた因縁の敵がいる。 ゴミとして見向きもしなかった者もいる。あるいは全く見たことのない者もいるだろう。 そのすべてを、彼は破壊しようとしていた。 胸からあふれ出る憎悪と敵意が身体を動かす。 疲れや憔悴など一切ない。そんなものよりもこの力を振るう相手がいないことが歯がゆい。 彼の身体はただ行き場のない力を向ける相手を求めていた。 「――フン」 だが流星は、そこでひとたび足を止めた。 翼を操り制動をかけ、立ちふさがったそれと相対する。 その巨大な体躯は、これまでのゲームにおいて一度も遭遇したことのないほど巨大なものであった。 青銀の両翼を広げるその姿は悠然としたもの。その身の中心にには黄金のリングが据えられている。 その怪物は、かつてとある世界においてザ・ワンシンと呼ばれていた。 イレギュラーのない、純然たる“ゲーム”においてのハイエンドとして設計されたその獣が、フォルテの前に立ちふさがっていた。 ザ・ワンシンはフォルテをターゲットに入れたのだろう。臨戦態勢を取り、けたたましい咆哮を上げた。 そしてザ・ワンシンを中心に他にも無数の獣が出現する。 その中にはフォルテもよく知る電脳世界のウイルスの姿もあった。 「イベント、とか言っていたか」 その姿を冷めた目でフォルテは見下ろす。 いつも読み飛ばしている内容であったが、こいつらはゲームにおけるイベントだろう。 当然、無視してしまっても構わない。 今の彼にしてみれば、こうして現れた有象無象などもはや取るに足らない障害に過ぎない。 とはいえ――おめおめと逃げ帰る必要もまたない。 「良いだろう、肩慣らしに付き合ってある」 故にフォルテはそうつぶやき、そして――エリアを埋め尽くす勢いで増えていくモンスターの群れへと突っ込んでいった。 その姿はまるで――飢えた子どものようでもあった。 ◇ 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 「予想はしてたけど、やっぱ一気にレベルが上がってるよ、慎二」 ファンタジーエリア最北。 日本エリアとの境目近くで慎二たちは必死に走っていた。 「何だよあのモンスター、いくら何でもレベルが高すぎるだろ!」 慎二はちら、と後ろを振り向きながら叫んだ。 そこには無数の敵が追いかけてきている。 そこにいるのは全高3メートルはある巨人だ。アーマーで身を固めたそいつらは、近くにいる自分たちを猛然と追いかけてきている。 それは加速世界において《帝城》と呼ばれる場所に配置されていたエネミーであったが、慎二たちは知る由もない。 「アーチャーの予想が当たったみたいだ。さっきの低レベルのエネミーはこちらを油断させる罠だ」 揺光が冷静な声で分析を漏らした。 恐らく彼女ならば、あのエネミーと正面から相対しても遅れをとることはないだろうが、 しかしここで無駄な戦闘を積むわけにはいかない。 「そんなことは分かってるけど、あれ、下手なプレイヤーより強いだろ!」 慎二、ミーナの動きは現在加速されている。慎二はコードキャストで、ミーナは快速のタリスマンなるアイテムによって、だ。 揺光はというと、元々身軽なビルドなうえ、単純にステータスがブーストされた恩恵か、何もせずとも彼らに追い付くくらいはできるようだ。 なのでパーティ全体での移動速度は全体的に急上昇しており、モンスターからの逃走も楽になったのだが、 とはいえそれでもギリギリ、といったところだ。 『幸いエリアの境目はすぐそこだ。それまで逃げれば何とかなる。 ここで時間と戦力を消耗させている時間はないぞ、慎二。死ぬ気で逃げろ』 霊体化したアーチャーが慎二の耳元で囁いた。 「分かってるよ、そんなこと。僕等はアイツらにかまっている時間はないんだ」 走りながら慎二は言う。 この先、この先に――奴がいる。 最後の決着をつけるべく、彼らは走り続けた。 _02 同時刻、月海原学園では別のイベントが発生していた。 形成された真黒なバトルフィールド内に3対3の形で彼らは向き合っている。 二刀を携えた黒衣の剣士、キリト。 漆黒の艶やかな装甲が映える剣のデュエルアバター、ブラック・ロータス。 そして影のように暗い色彩を身に纏う三体のドッペルゲンガー。 「なーんか黒い奴多くないっすか?」 敵と相対しながら緑衣のアーチャー、ロビンフッドがそうぼやいた。 “黒薔薇”の騎士さんはこの場にはいないが、代わりに入ったキリトとかいう少年も黒い剣士である。 「ふっ、自分だけ浮いていて厭か? 弓兵」 「別に、ただオタクら本当に黒いのが好きだねって思っただけですよ」 アーチャーはやれやれと首を振りつつ、弓を構えた。 すると向こう側でも黒い弓兵が弓をセッティングしているのが見えた。 ドッペルゲンガーだか、シャドウサーヴァントだか知らないが、このイベントはご丁寧にサーヴァントまでコピーするらしい。 「アーチャーって呼ぶと俺の中では別の奴になるから、ちょっと面倒だな」 不意にキリトがそう口にした。 この少年、あっちの紅い方のアーチャーとはこのゲーム中で知り合ったのだという。 「アーチャーっての、名前というよりジョブの名前みたいなものだろ? このあと二人で並んだ時に困るから、なんかほかに名前はないのか?」 「ふむ、確かに面倒だ。緑色のアーチャー……ということで“ミドチャ”はどうだ?」 悪戯っぽくロータスが言う。アーチャーは思わず頭を抱えたくなった。 ミドチャ。その名になぜか妙な既視感があったからだ。そしてその時も《黒》がかかわっていた気がする。 いや、まるで覚えてはいないのだが。 「好きに呼んでくれ。アーチャーってのが面倒なら、真名の方でもいい。 ま、そもそもあっちの方のアーチャーと並んで戦うなんてことはないと思いますがね」 そこでアーチャーは、とん、と地を蹴り一歩下がる。 前衛に二人の剣士、後衛に弓兵。この面子ならば陣形としてはこう組むべきだろう。 「弓兵、このパーティで遠隔持ちはお前だけだ。当然それはコピーである向こうも同じ」 「へいへい、分かってますよ、自分のコピーは自分で押さえろってことだろ?」 「ああ、押さえるだけでいい。俺と黒雪姫のどちらかが前衛を崩せれば、その時点で敵のパーティを崩せる」 最低限の作戦会議を交わしながら、二人の《黒》は剣を抜く。 瞬間、彼らの雰囲気が変わる。研ぎ澄まされた戦意が鋭く場に広がっていく。 「黒雪姫、提案だ。敵はこちらのコピーだけど、こういう場合」 「分かっている――違うタイプをぶつけた方がいい、ということだろう?」 そうして交わした言葉が合図となって――《黒》が戦場を駆け抜けた。 一切の迷いなく、恐れなく、彼らは剣を振るう。 ――全く、味方としてはこれ以上ないですわ。 生前、こうした集団戦をほとんど経験してこなかったアーチャーにとって、 信頼できる“騎士”に守ってもらえる状況に、思わず苦笑してしまう。 ――ならまぁ、精々仕事をするとしますかね。 ◇ いわゆる対戦型ゲーム、あるいは一人のRPGにおいても、 自分と全く同じステータス、武装の敵と戦うというイベントはさして珍しいものではない。 そして――そういう場面にあたって、有効な手段もまた、同じだ。 自分の影、ドッペルゲンガーの最も厄介な点は、自らと同じである、という点だ。 ならばそれを対策するには――自分と相対しなければいい。 「デュエル・アバターと戦うのは、三度目だぜ」 刃と化した両腕を剣で受け止める。キリトは黒雪姫、ブラック・ロータスのドッペルゲンガーと刃を交えていた。 ちら、と辺りを一瞥すると黒雪姫の方もまたキリトのドッペルゲンガーと戦っているのが見える。 先ほどの交わした一言で、彼らの作戦もまた固まっていた。 ドッペルゲンガーが同時に現れ、バトルフィールドに巻き込まれる形になったのは幸運だったとさえ言えるだろう。 敵をシャッフルすれば、自分と同じステータスのエネミー、ではなく、単なる高レベルのエネミー、という構図に持ち込めるのだから。 「とはいえ――強敵だな」 真黒な装甲を見せるロータスのドッペルゲンガーと剣で打ち合いながら、彼はそうぼやく。 その両腕から放たれる剣撃は一撃一撃が重く、そして鋭い。 その威力たるや、タイミングを見計らってカバーしていかなければ、こちらのガードごと吹き飛ばされるだろうと確信できるほどだ。 ただその分連打力にはこちらに分がある。キリトはそう冷静に分析していく。 一撃の重さで向こうが勝っているとしても、受け流すのに二手三手と“間”が使えるのならば、いくらでもやりようはある。 僅か数回の打ち合いでそのことを見破ったキリトであったが、しかしここで安易に攻めに回ることはしなかった。 かつてシルバー・クロウやダスク・テイカ―とやりあった経験から、デュエル・アバターの特徴を把握していたからだ。 「デス・バイ・バラージング」 ドッペルゲンガーが無機質なシステムボイスを漏らす。 途端――連撃がやってきた。刺突、刺突、刺突、刺突、それまでの鋭く重い斬撃から一転しての高速斬撃がキリトを襲う。 一方の剣から放たれる斬撃を必死にパリィし、バックステップして回避に専念する。 くっ、と彼は声を漏らす。 それまでの重い一撃はブラフだ。 緩急をつけられたことで、この高速斬撃が、より速く強烈なものとして感じられる。 デュエル・アバターの特徴は、そのアビリティと《必殺技》の存在だ。 他のアバター――たとえばネットナビの強みがデフォルトの武装の汎用性にあるとすれば、 逆にデュエル・アバターは一点特化だが強力な技を持っている点が挙げられる。 特に《必殺技》は場合によっては一撃で状況が逆転しかねない。 それがシルバー・クロウならば《飛行》だし、ダスク・テイカーならば《争奪》であった。 そして、ブラック・ロータスは――《斬撃》という訳だ。 「上等だぜ、とか言ってみるか」 ロータスのドッペルゲンガーと相対しながら、キリトはニッと笑みを浮かべる。 シルバー・クロウから話には聞いていたが、なるほどこれは手ごわい。 一撃の重さもさることながら、あらゆるタイミングから強発生・連撃の《斬撃》につなげることができる。 特異な付加効果こそないものの、そのシンプルさ故に強い。 ――まずはあの《必殺技》を攻略しないことには勝機はない、か。 そう確信したキリトは再び地を蹴った。 あの近接特化アバターに剣で挑む以上、こちらのステータスは当然SAOアバター。 二刀の刃で再びロータスとの打ち合いを挑む。 一つ、デュエル・アバターの《必殺技》の弱点を挙げるとすれば、それはゲージだ。 強力な技であるがゆえに、他のアバターの持つ技――例えばソードスキルなどと比して、《必殺技》は連続使用が効かない。 ならばこそ、一度必殺技を使ったタイミングを狙う。 タイミングを狙って敵の剣劇を弾く。 パリィに成功したのを確認したところで、ソードスキル《バーチカル・スクエア》へと繋げる。 スクエア/正方形を思わせる軌跡を描く四連撃。ロータスのドッペルゲンガーはそれをまともに受ける。 そしてそこから派生させて、さらなる連撃を叩き込もうとしたところで――キリトは気づいた。 「って――スーパー・アーマー!?」 思わず声を出してしまった。 スーパーアーマー。格ゲーやアクションゲームなどに存在する要素で、その効果は一言でいえば“のけぞり無効”となる。 とはいえリアル性を重視したSAOやALOなどにはあまり意識しない要素だ。 ソードスキルの始動にアーマーがついているものはあるが、対人戦において“常時スーパーアーマー”などという状況はまずなかった。 が、しかしロータスは四連撃を受けても、一切行動を阻害されることなく、キリトへのカウンターを叩きこもうとしていた。 その事実がキリトの動きを一拍遅らせた。 もう一つ、キリトの知らないこととして、このドッペルゲンガーにはそのほかにも様々な強化バフをパッシブスキルとして備えている。 その中には速度上昇やHPの回復、それに加えて――ダメージによるゲージ回収率の上昇といったものも存在していた。 「デス・バイ・ピアーシング」 四連撃によるダメージで再びゲージを充填したロータスのドッペルゲンガーは再び《必殺技》を唱えた。 レベル5必殺技であるその技は、ガードもパリィも不可能な貫通攻撃である。 「――なっ」 ソードスキルの硬直で固まっていたキリトに、 《パラメータ全ブースト》《クリティカル率アップ》《HP半減》が付与/バフされた斬撃が炸裂した。 ◇ 黒雪姫はキリトのドッペルゲンガーと相対しながら、どうしても既視感を拭えないでいた。 「《スラント》」 「《ソニックリープ》」 「《ダブル・サーキュラー》」 黒衣の剣士が放つ数々の剣技を彼女は冷静に処理していく。 どれも初めて見るはずの技だが、対処はさほど難しくなかった。 ――偶然、ではないだろうな。 それもその筈だ。 黒雪姫にしてみれば、それらの技はすべて“知って”いるからだ。 ソードスキルと呼ばれるらしいそれらの技は――ほかでもない彼女の師匠たるデュエル・アバターが使っていたものと酷似していたからだ。 ――何せ私の師匠、だからな。 かつてネガ・ネビュラスに参加していた《四元素》の一角である、黒の双剣士である。 他の《四元素》メンバーが復帰する中、彼の消息のみ黒雪姫は把握していない。 「ソードアート・オンライン、か」 剣を打ち合う最中、黒雪姫はぼそりとその単語をつぶやく。 その名はもちろん知っている。彼女の“現実”において、凄惨な歴史的事件としてそれは記録されている。 VRMMO黎明期に一人のエンジニアが起こした大量殺人事件。その中心にあったゲームこそ、それだ。 キリトというプレイヤーがあのゲームを体験した世代であることにも驚いたし、 他にも自分たちからみれば過去の人間たちがこのデスゲームに参加していることも学園合流後に知ったことだ。 だがそれ以上に彼女がいま感じていることは――旧友のことだ。 ―― お前、一体何者なのだ。 前々から変というか、よくわからない奴だとは思っていたのだが、 こうしてSAOの伝説的プレイヤーと相対し、その技・動作の大半が似通っているという事実に直面した今、いよいよもって彼の正体がわからなくなっていた。 「《バーチカル・スクエア》」 無機質なシステムボイスが敵から流れてくる。 はっ、とした黒雪姫はとっさに両腕を交差し、ガードを取る。 四連撃を受け止めつつも、すべての威力は殺しきれず、じりじりとHPゲージが削られていく。 いまこのデスゲームには直接的に関係しないことだとは思うのだが、どうしてもそちらに気がいってしまう。 彼女の師とキリト。SAOとブレインバースト。 この相似は、果たして何の意味もないのだろうか。 「《ヴォ―パル・ストライク》」 脳裏を過るその疑念につけ込むようにして――キリトのドッペルゲンガーは襲い掛かってきた。 ヴォ―パル・ストライク。それはグラファイト・エッジから黒雪姫へと教えられた心意技《奪命撃》の名だ。 心意技を想起してしまった彼女は思わずその腕に心意の光を灯し、剣で打ち返す。 だがそのヴォ―パル・ストライクは《奪命撃》ではない。 似て非なる――単発の高威力攻撃であった。 そして《武器破壊・部位欠損無効》というパッシブスキルが発動しているドッペルゲンガーにとって、単なる《攻撃威力拡張》の心意は通常攻撃と大差のない威力しかない。 それ故に――ソードスキルに撃ち負けることになる。 「しまっ――」 「《ジ・イクリプス》」 両腕が弾かれる。そしてそこに叩き込まれる更なるソードスキル。 それもまた聞き覚えのある技であり――かつて彼女が届かなかった黒衣の双剣を思わせた。 ◇ ゆらめく影のような己のドッペルゲンガーと撃ち合いながら、アーチャーは冷静に考えていた。 「さて、あと何分くらいかねぇ。3、4……5分はまぁいかないわな」 ぼそりと一人呟きながら、己の敵を見定める。 シャドウ・サーヴァントとでも形容すべき敵が相手をする訳だが、 同戦力での戦いである以上、普通にやれば互いに千日手になりかねない。 だが恐らくは――この敵は強化されている。本来の自分たちよりも、戦力・武装面で上回った状態でこちらにぶつけている。 なんともまぁ悪趣味なことだと思うが、同時にこうも思う。 ――ま、それくらいでちょうどいいでしょ、マスターたちには このゲームは確かにイレギュラーな要素や反則じみたスキルが多い場所であるが、 仮に「普通のゲーム」が成立する場所であれば、いま目の前で戦っている《黒》二人は、間違いなく最強格である。 紛れもない、ゲーマーなのだから。 ◇ 「《デス・バイ・ピアーシング》」 ロータスのドッペルゲンガーが発した無機質なシステムボイス。 それはエンジンの唸りを思わせる金属的なサウンドエフェクトにかきけされ、青紫の光が閃光となってキリトを貫かんとする。 間近でそれを受けることになったキリトが取りうる選択肢は二つ。 刺突を剣を逸らし、でドッペルゲンガーの《必殺技》を受け流すこと。 あるいは剣を交差することでその一撃をブロックし耐え凌ぐこと。 だが――そのどちらもこの《必殺技》を前にしては無意味であることを、キリトは悟った。 その斬撃はそれほどヤワなものではない。 あるいは、この世から重力というものが消えたのであれば、完璧なタイミングでパリィすることで、キリトがノーダメージで受け流すことも可能だったかもしれないが、 しかしその一撃はどこまでも鋭く、そして重かった。 だからキリトは――どちらもしなかった。 「ぐっ……」 思わず悲痛な声が漏れた。 レベル5必殺技をその身に受けたのだから、それも当然だ。 彼のその身は吹き飛ばされ、宙を舞う。 ――そして、同時にキリトは虚空に指を滑らせた。 「チェンジ……!」 そして、そのままキリトは飛び続ける。 そこにいたのは翅が映えた影妖精/スプリガン。 飛行が可能となるALOアバターと化したキリトは吹き飛ばされた勢いを利用して――飛ぶ。 「――――」 そしてALOアバターと化したことで、キリトはソードスキル以外の《魔法》が使用可能になる。 幻惑範囲魔法。煙幕をまき散らす《魔法》によって飛び上がったキリトはその身を消す。 その動きに、ロータスのドッペルゲンガーは一瞬動きを止める。 ――デュエル・アバターにとって《飛行》というアビリティは希少である。 初めて遭遇したデュエル・アバターがシルバー・クロウであったキリトは意識しづらいが、話を聞くにあれは超レアアビリティなのだとか。 ならばこそ、こうした戦法に敵は戸惑わざるを得ない。 これが本物ならばいざ知らず、AI操作である以上、《飛行》状態からのかく乱戦術というのはどうしても反応が遅れる。 そしてキリトは既にこの敵が敵がスーパ―アーマーを携えていることを知っている。 だからこそ――連撃でなく、一撃で大ダメージを与える技を選択する。 「《ヴォ―パル・ストライク》」 無防備な背中に、単発高威力のソードスキルを叩き込む。 放たれた剣撃はドッペルゲンガーを正確に捉え、斬り裂いた。 ◇ 「なかなかいいぞ、ロッタ」 「もうひと踏ん張りだ、ロッタ」 「ナイスガッツだ、ロッタ」 師のことを思い出すと、自然とそんな声がよみがえってくる。 その凄烈な剣筋以上に、こちらのことをあやすような――親戚の子供を相手にしているような――声を彼はいつもかけてくる。 まぁ実際、出会った当時の黒雪姫は小学生低学年だったので、それほど不自然という訳でもない。 だがそんな彼の声を思い出すと彼女は、 ――いいかげんにしろ。 と、うっとうしく感じてしまう点もなきにしもあらず、なのだった。 というか年齢的にはその彼も大して変わらない筈であるので、 こう、我ながら子供っぽい話でもあるが、兄貴ぶられるのが厭だった覚えがある。 ――いいかげんにしろ、グラフ。 グラファイト・エッジ。 《矛盾存在/アノマリー》の名を冠した、《四元素》の一角である。 「負けては――られないな!」 迫りくるドッペルゲンガーの刃を前にして、ロータスは叫びを上げた。 ソードスキルの始動をこのタイミングから邪魔することは難しい。 だがかといって一度連撃を受けてしまえばそこからの脱出も不可能だ。 ならば――真っ向から斬り裂くのみ。 先ほどは半端な心意技を使い、弾かれた。 しかし《絶対切断》たるブラック・ロータスが100%の力を振り絞った剣を放てばどうなるのか。 敵のソードスキルがその身に炸裂する。右半身に強烈なダメージが走っていく。 だがそこまでは読みの内――まだ左の刃が残っている。 どん、風がバトルフィールドを走った。 放たれた漆黒の件は衝撃波となってドッペルゲンガーを襲う。 それは単なる斬撃というだけではない。ヤワなボディなど吹き飛ばしてしまうほどの力強さを持った一撃だ。 超高速で放たれたその斬撃が、地面にひびを入れ、結果としてドッペルゲンガーは態勢を崩す。 「《デス・バイ・エンブレイシング》」 そこに叩き込まれるブラック・ロータスのレベル8必殺技。 ――この技は、まだグラフには使っていなかったな。 そうしてキリトのドッペルゲンガーを斬り裂いたとき、 黒雪姫は、いずれグラファイト・エッジと決着をつける日が来ることを願った。 ◇ 「四分半ってところですか。ま、予想通りだな」 アーチャーの飄々とした声が響いた。 ロータスのドッペルゲンガーを撃破したキリトが顔を上げる。 見れば黒雪姫もドッペルゲンガーを下しているのが見えた。 「観戦者気取りか? 弓兵」 「そう楽なもんじゃありませんでしたよ、こっちも」 二人はそう軽口を叩き合いながら合流する。 マスターとサーヴァントという関係になった彼らだが、そこにはどこか気やすい雰囲気が流れていた。 「とりあえず早くここから出よう。学園の奴らが心配だぜ」 レオやハセヲが外にいるはずなのでまだ大丈夫だと信じたいが、とはいえこんなところで時間を取られるわけにはいかない。 「アーチャーのドッペルゲンガーは――」 そう思いキリトが辺りを確認する。 すると離れた位置に影のようなサーヴァントが立っていたが、 「ああ? あれならもう倒したって」 がた、と倒れ伏した。 アーチャーは欠伸をしながらその光景を眺めていた。 「今更あんな奴に負ける俺じゃないっての。オタクらもそうだろ?」 「まぁ、な」 あのドッペルゲンガーはどうやらこちらとまったく同じステータスと見せかけて、全体的に強化されていた。 普通に戦えば強敵になったのだろうが、とはいえこれからの戦闘と思えば“単なる強敵”どまりだ。 フォルテやオーヴァン、GMたちに比べれば前哨戦にもなりはしないだろう。 パリン、と音がした。 真黒だったバトルフィールドにひびが入り、隙間から光が漏れ出している。 ドッペルゲンガーが全滅したことによるフィールドの消滅だ。 その演出をじれったく眺めながら、キリトは外のことを考えた。 レオやハセヲ、生徒会のメンバー。 ブラックローズたちのダンジョン攻略組。 そして、慎二たちのパーティ。 頼むどうか――誰も欠けていないでくれ。 その願いと共に、彼らは月海原学園へと帰還した。 【ドッペルゲンガー(キリト@ソードアート・オンライン)@.hack//G.U. Delete】 【ドッペルゲンガー(ブラック・ロータス@アクセル・ワールド)@.hack//G.U. Delete】 【ドッペルゲンガー(アーチャー(ロビンフッド) @Fate/EXTRA)@.hack//G.U. Delete】 03_ 「おかえりなさい、黒雪姫さんに、そしてキリトさん」 砕けちったフィールドに向こう側にはレオたちが待っていた。 レオは柔和な笑みを浮かべキリトたちの帰還にねぎらいの言葉をかけてくれる。 その隣には大剣を携えるガウェインと、安堵に胸をなでおろしているハセヲの姿があった。 「こっちは一応大丈夫だぜ、ジローの奴も運よくフィールドから出られた」 ハセヲの言葉にキリトもまた安堵する。 自分たちと同様にほかのプレイヤーもドッペルゲンガーイベントに巻き込まれている可能性があった。 戦闘のできるブラックローズたちはまだしも、ジローのような非戦闘用アバターが襲われてはひとたまりもない。 だが幸い、誰も被害は出ていないようだった。 「――しかし別の問題が発生しました」 そこでレオは柔和な笑みを消し、真剣な口調に変わった。 校門の先、暗い夜空を見上げながら彼は言う。 「いま先ほど仕掛けていたコードキャストが反応しました。 すぐ近くで戦闘が起こっています。この反応はおそらく――ダスク・テイカーです」 Next ライバル―慎二と能美―
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草案 楽曲 フラージェス:一輪の花 『BLEACH』オープニング主題歌 ボーマンダ:DIVE into YOURSELF 『戦国BASARA2』オープニング主題歌 ムシャーナ:Dreams 『DARKER THAN BLACK-黒の契約者-』エンディング主題歌 -- (ユリス) 2015-12-27 20 55 22 草案 楽曲 ケンホロウ:PRIDE 分類(プライドポケモン)から。 毎日放送・TBS系アニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』2ndオープニングテーマ。 -- (麻宮穹) 2022-05-07 23 04 35
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7th-自己紹介透・椿 「はい。僕の名前は水季透(みずきとおる)です。 趣味は音楽を聞くことです。」 なんていうか、いかにもな優等生だな。 「へえ、どんな曲を聞くんだい?」 「何でも聞きますよ。 クラッシックもJ-POPも聞きます」 かなり範囲が広いみたいだ。少し意外。 「さて、と。後3人か。 じゃあ、姫雪椿さん」 「はーい」 と立ったのは。元気そうな髪を上で纏(まと)めた少しつり目の女の子。 「皆、よろしゅう頼んどくわ、ウチは姫雪椿(ひめゆきつばき)昔関西に住んどったから関西弁やけど気ぃせんといてや」 「おや、姫雪さんは関西弁を話されるんですか?」 関西弁か、だが大阪の関西弁とは違うような… 「せやねん、やけどちょい郊外の方やったから純粋な大阪弁とちゃうくてな。」 やはりか。違うと思った。 少し訛りがあるしな。 「ちなみに、コッチには中学のときに来たさかいまだよぅわからへん事もぎょうさんあるから教えてなぁ」 「はっ、図太い神経してる奴が何言ってるんだ」 「ウルサイ、何か言うたか?」 高速で飛ぶ消しゴムによって頭を撃ち抜かれた荒木(だったよな?)が「ぐはぁ!」と言って崩れ堕ちた。 <戻る> <次へ-no page> <章選択>
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天城輝 名前/天城輝 フリガナ/アマギテル 呼称/テル等 性別/バリ男っしょ 年齢/男盛りの15 誕生日/8月20日だ 身長/んー高けぇ方 職/学生だろ 得意教科/体育!!!! 苦手教科/その他 特技/陸上は得意だ! 趣味/ゲーム 外見的特長/染めた金パ・濃紫の瞳 性格/バカ・アホ・パシリ 姉×2+妹、両親の6人暮らし。 姉とは仲がよく(?)、よくプロレスごっこ(負け)や買い物(荷物持ち)にいってる。 妹のみ兄の味方。何処でどう間違えたのか、普通にいい子。 メモ(ネタバレ注意) □昔は黒髪だった □実は俺様キャラにしようか悩んだ時期も… □愛猫のカカにもバカにされる □服装はラフ 機能性がいい服が好き □赤や緑を好む □授業中は熟睡。モチロン赤点大量。椿と二人で『オールレッド』と言われてる □↑なんか戦隊っぽくて格好いいとか思ってる □奏多とはかなり昔から仲がいい 「まてーーテルー!」 「だーれーが、待つか!!」 「フフ、甘いわねテル」 「げ…美沙〈ミサ〉」 「ミサ御姉様大陰陽師と呼んで欲しいものね」 「なげえよ!」 「テールー、観念なさい!」 「げ、希沙〈キサ〉もう来やがった!」 「テル…何で私がココにいるでしょう?」 「…まさか…ミサ姉…?」 「さあ、キサ!今よ!」 「いーやーだー!」 「…ミサ姉ちゃん!キサ姉ちゃん!やめて!」 「…那沙〈ナサ〉(とカカ)…助けに来てくれたのか、兄ちゃん感激(涙)」 「テルお兄ちゃん、さ、晩御飯作りに行こっ!」 「……ちぇ、せっかくテルで遊んでたのになぁ」 「全く、ナサには負けるよねぇ」 「…お姉ちゃん×2」 「×2は止めてよ。なに?ナサ」 「あのままお兄ちゃんで遊んでたら今日の晩御飯、誰が作ってくれたの?」 ………そう言って輝の元へ走って戻る妹を見て私達は、寒気がしました。 ……那沙、あんた結構黒いのね。
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望月 霊詩 名前/望月霊詩 フリガナ/モチヅキレイシ 呼称/レイシ等 性別/男だ 年齢/高一だけど 誕生日/12月の25日だ 身長/大体135位か?(チビって言うな) 職/学生、だな 得意教科/数学・理化学・体育 苦手教科/調理室での調理実習・体育(走るやつ) 特技/バイト 趣味/バイト・バイク・剣道等 外見的特長/白髪(地毛)・黒い瞳・左耳にピアス・身長が…低い 性格/生意気・意外と親切?・実は(黒く塗り潰し)である 今年高校生になった新入生。 両親はある事件で亡くなっており、近い親戚は兄(望月旋)のみ。 現在は兄の親友の夜晃優一の家で下宿中。 基本的に放課後はバイト尽くしでいつ寝て、いつ宿題をしているかは謎。 成績は上位。 メモ(ネタバレ注意) □霊詩と旋は仲が悪そうだが、実際は割と良好 □実は押しに弱い □兄に弱い □服装は硬い格好が多い □派手ではない色合いを好む □授業中は眼鏡をかけている(右目の視力はかなり悪い) □服の下の上半身は包帯を巻いている □昔、大きな事件に巻き込まれた □昔から優一と桃夜とは仲が良かった □肺が昔から弱く、定期的に検診に行かないといけない □父は警察官だったので、今も休日は警察道場で剣道や柔道をしに行ってる □昔は髪が黒く伸ばしていた(母の意向) □しかも、服も女物を着ることが多かった(母の…以下略)ためよく女の子と間違えられた
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CHARACTER ■望月 霊詩 ■三条 観月 ■天城 輝 ■姫雪 椿
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No Printing 名前 ShiGeMo 動物名 狼 目標 No Coments ホーム ウロウロしてます 得意ゲーム クリケット High Count-Up No Data コメント 初めまして宜しくお願いします とりあえず、ダーツが大好きです 結構負けず嫌いです、一回考えだすと止まらずひたすらボードに向かって格闘してます
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【登録タグ L Lily 曲 渡辺いと】 作詞:渡辺いと 作曲:渡辺いと 編曲:渡辺いと 唄:Lily V3 曲紹介 渡辺いと氏の9曲目。 英語ライブラリを持たないLilyに全編英語で歌わせた意欲作。 V3Lily発売2周年記念作品。 歌詞 (作者ブログより転載) There is light on me Like a silverlining o'er us that Comes out from clouds of doubt There is light on wind I pray that any vestige of a flower Would remain in the world If I turn around Do I get to find Cavernous nights when I have Been closing my eyes The days I forgot, we let whizz on by Hid my feeling or thought And they caved in my heart Let the haze go, and the sky is so high I could still see your smile in the sunlight Tell me where do I start There is light on me Like a silverlining o'er us that Comes out from clouds of doubt Your light on breeze Is shining everlasting tomorrow Whenever we are So I won't be afraid Let the story tell Grief and joy, hate and love Here I sing to rejoice in the sun (対訳) 光が私を照らす ひとすじの希望が 疑いの雲から差し込むように 光は風に乗って 私は願う 一輪の花が咲いた証が 何かひとつでも残るようにと 振り返ってみれば 気づけるだろうか 空虚な夜をずっと 目を閉ざしていることに あまりに速く過ぎ去って忘れていた日々 何を感じたり考えたりしていたのかよくわからなくて 胸にぽっかりと穴が空いていた 霧が晴れれば空はこんなにも高い 陽だまりの中、まだあなたが笑っているのが見える どこから始めればいいか言ってくれないかな 光が私を照らす ひとすじの希望が 疑いの雲から差し込むように あなたの光はそよかぜに乗って 終わらない明日を照らしている どんなときも だからもう恐れない 物語を話して 悲しみも喜びも、憎しみも愛も 私は歌う 降り注ぐ太陽のもとで コメント すごく好き。 -- 名無しさん (2016-02-29 20 35 47) 名前 コメント