約 2,086,354 件
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/789.html
息が切れる。肺が弾む。体が、何か別のものになったみたい。熱に腫れて、ふわふわと浮ついている。 「カカカ、見事見事。ここまで粘ろうとは思いもしなかった。まだ底を見せぬとは」 相変わらず、どこに居るのかわからない声の主。なんだか腹も立たない。今は自分のできることに集中している。 鉄人さんはまだ頑張っている。姿は見えないけど、わかる。鉄人さんが戦っているから、わたしの場所には鬼火が少ない。 「いや、限界を見てみたいものだが、どうも無理そうじゃのう」 声は無視。近寄る敵に、精一杯の魔力をぶつける。また一つ、体のギアが上がっていく。 まだ耐えられる。まだきっと、ここで踏み止まれる。ここで鉄人さんを待っていられるという希望。その曙光は―― 「ライダーめ、人間相手にこんなものを使おうとは」 ――現れた巨大な狗の影に、塗りつぶされていた。 目が、その大きさに釘付けにされて、動かない。自分の甘さがはっきり見える。どうして理由もなく、わたしだけでもできることがあるなんて思ったのだろう。 吐息が、大きく聞こえる。これはわたしのもの、それとも狗のもの。 「その右手だけは残ることを祈っておるよ、お嬢ちゃん」 ぬらりと光る瞳。重機が突っ込んできたみたいに、前肢が落ちてくる。土砂が弾ける。一抱えの石が脇腹をしたたかに打った。 息が漏れる。膝が揺れて、立っていられなかった。お腹の中身が口から飛び出る気がする。 「あ…ぃ……っ」 洞窟の淵、岩肌に手をついて、必死に前を向く。苦しい。でも、そんな苦しさも、恐怖よりずっと弱い。 月を隠すように、狗は顔を上げている。舌なめずりをして、獲物を見定めている。犬の形をしているのに、どうしてこんな人間みたいな生々しさ。 死ぬんだ。強く、どうしようもなく、わかってしまう。 セイバーやキャスターのときとは違う。死ぬんだ。わたしは、ここで、結局何をもできないままで。 「……いや」 死にたくない。わたしはまだ、死にたくない。まだ生きていたい。助けて、誰か、誰か。 「アーチャー……アーチャー!」 呼ぶ声は草原に吸い込まれ、消えていく。 「カカカ。令呪の使い方を知っておくべきじゃったな。令呪もないのでは、呼んだところで無駄じゃよ」 「アーチャー!」 それでも呼ぶ。他にどうすればいいのか、わからない。 狗は唸りを上げ、楽しそうに顔を歪めた。その口が開いて、牙が剥かれる。 「アーチャー……―――!」 月下の光を遮る巨大な体が、一つの輝きに吹き飛ばされる。 雲から解き放たれた月は、明かりを地上に下ろす。白くてなめらかな光は、こんなにも美しく世界を照らす。 ああ、恐怖は消えた。今あるのは、何が何だかわからない気持ち。涙が溢れそうな、どうしようもない気持ち。 宙に浮かぶ小さな影。その姿が、今はこんなにも頼もしい。 「さっきの話、俺も同感だ。令呪の使い方は教えておくべきだった。けど、後半は違う」 金の輪は舞う。きれいな腕のもとへ戻っていく。その主は言うまでもない。 「呼ぶことには意味がある。マスターとサーヴァントとはパスで繋がってる。本気で呼べば、届く」 「アーチャー……!」 空から降り立つアーチャー。涙が満ち満ちて、姿が滲む。掴んだ腕の温かさが、体に染み渡る。 「まったく。戻ってこないと思ったら、こんなところで何をしてる」 「それは……こっちの台詞なんだから……本当に……」 ぎゅうっと手を握る。嬉しくて、嬉しくて、その気持ちを伝えたくて。 感慨を遮ったのは遠吠えの声。三つの足音が、地面を揺らす。 「ちっ、まだ居るのか。そっちの奴もまだ動くみたいだし、面倒だな」 「おやおや、せっかく来たんじゃ。もうしばらく楽しんでいってはどうかな、アーチャー」 好々爺を装ったまま、声は誘う。いい加減に腹が立ってくる。でも、今はそれどころじゃない。涙と鼻水を拭って、目を開いた。 今は――― 1:ここから離れるべきだ 2:鉄人と夏海を探すべきだ 3:ライダーたちを倒すべきだ
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/772.html
聖杯とは何なのだろう。あらゆる願いを叶えるっていうけれど、本当にそんなものがあるんだろうか。そんなもの、本当に必要なのかしら。 「鉄人さんは聖杯のこと、どう思います?」 「うーん、ちょっとわからないな。それはどういう意味だい?」 「……じゃあ、聖杯があるかどうかを」 「言葉通りのものなら、あるかどうかわからない。何でも願いを叶えるってこと自体がありえるのか疑問だからね。ただね、とんでもない代物があるのは間違いない。英霊を降霊する、そんなデタラメを可能にするものがね」 「セイバーもそう言ってたけれど……」 「一つ聞きたいんだけど、みことちゃんが気になってるのは、本当に聖杯の有無なのかい? 疑問に思ってるのは、この争いに参加するだけの意味があるのかってことじゃないかな?」 そうなのかもしれない。聖杯が手に入るっていうけれど、わたしはそれに命懸けの争いをするほどの価値があるとは思ってない。あの子が、あんな血だらけになるような価値を、見つけられない。 「君が聖杯戦争に巻き込まれたことは変わらない。だから、命を守るためだけに戦うって割り切ってもいいと思うけど……それはできないみたいだね」 「……はい」 「じゃあ、他に理由があるかどうかだ。聖杯を手に入れたと仮定してみよう。何でも願いの叶う、夢みたいな代物だ。実際はどうあれ、そう仮定してみて。さあ、何を願う?」 何でも叶う。世界がひっくり返ることも、星が海に沈むことも、ありとあらゆる金銀財宝を手に入れることも。どれもやってみたいとは思うけれど、心の底から願うことはない。 不満も不安も沢山ある。もっといい世界になって欲しいし、もっと優しい世の中にもなって欲しい。戦争は嫌だし、飢えや病気も無くなってくれればと思う。でも、それの中のどれを願うだろう。 想像してみる。静かで仄かに暗いどこかで、射す光の道にきれいな杯が降りてくる。神々しい、見たこともない光景。手を伸ばすと、少し冷たい淵が指に触れる。きっとそのとき、わたしの心にあるものは――― 「思いついたみたいだね」 「はい」 だからわたしは顔を伏せる。わたしの望みは、わたしの思っていたとおりのもの。とてもじゃないけれど、顔を上げていられない。 「みんなが幸せになることって、できるんでしょうか」 「……それが君の願い?」 「いいえ。けれど、願いが叶うならそれが一番いいと思って」 「で、君はそのために戦えるのかな?」 答えられない。答えるまでもなく、わかりきっていることだから。 「みことちゃん。いい悪いは抜きにしよう。君が願いたいことは何なんだい?」 「―――わたし、好きな人が居るんです」 鉄人さんが顔を少し逸らして、鼻の頭に指をやる。わたしはもっともっと顔を下げて、膝を抱え込む。 「まあ……若いころはそういう願いでも構わないんじゃないかと思うよ」 「その人、病院に居るんです」 月の夜は空気が濡れて、息をするのが辛い。かたかたと鳴る木の音は、どうして頭を痺れさせる。 「病院?」 「アーチャーが現れる数日前に、事故に、遭ったんです」 「その事故で怪我を?」 「それで、まだ目が覚めなくて、先生はもう起きないって……ベッドの上で、チューブをつながれてて……! わたしを……庇ったから……!」 喋るのが、こんなにも苦しいなんて。途切れ途切れにしか喉を動かせない。忘れていられる間はまるで平気だったのに、思い出したら涙が溢れて止まらない。 わたしの目の奥に溜まった涙が一息つくまで、鉄人さんはわたしの肩をさすってくれていた。 「彼を助けたいんだね」 「……はい」 鼻声はくぐもって、返事一つもまともにできない。鉄人さんの顔を見るのも怖い。 「けど……そんなこと……願うのは」 「どうして?」 「だって、色んな人を危ない目に遭わせて……アーチャーも、鉄人さんも……なのに、わたしがそんな願い事をするなんて」 「別に、いいんじゃないかなあ。そのぐらいのご褒美を欲しがっても構わないだろう」 肩が温かい。ぐじゅぐじゅの顔を上げると、ぐにゃぐにゃの世界。滲んで見える鉄人さんは、でも笑っているんだとわかる。 「いいんですか……?」 「僕はいいと思うよ。奪うわけでも、何かを独り占めするわけでも、傷つけるわけでもない、善良な願いだと僕は思う。それを願うことは許されるべきだと思う。君もそう思うだろう―――アーチャー」 窓の向こう、背中合わせに。アーチャーはガラスに寄りかかっていた。 「ああ。好きな奴を助けたいのは、当たり前だろう」 流れる黒髪の掛かった小さな後ろ姿。見上げているからなのかな。華奢な背中はとても広く、強いものに見えた。 ガラス越しの頼もしさに、わたしの涙の栓はまた緩んでしまって。水の中で溺れてるんじゃないかっていうぐらい、目が潤んだまま。 感謝を言いそびれることがあると聞いていた。びっくりしたからなのだと思っていた。相手が急いでいるからなのだと思っていた。その本当の理由、本当の気持ち。この夜、それはわたしの胸に降りてきていた。 ああ。明日の朝には、涙が止まって、ありがとうって言えますように。
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/779.html
鉄人さんの影がわたしを覆う。世界が暗くなっていく。足はがたがたと震えて、逃げろ逃げろと叫んでいる。 だからって、ここで逃げて、どうするのだろう。怖い、本当に怖い。でも、この人たちから逃げて、鉄人さんを置き去りにして、どうする。 温かい家に逃げ込みたい。平穏な世界に帰りたい。でも、ここに来たんだ。夏海さんを探すって、あのひとがもう一度起き上がれるようにって、そう思ってここに来たんだ。 なら、やれることをやってみせないと。 「……ほう。逃げぬか」 ライダーのくぐもった声、剣闘士のあがきに綻ぶ笑み。それは立ち上がったわたしに向けられている。 「君が居ても何も変わらない。今回ばかりは、僕に君を守るつもりもない」 「わたしだって……わたしだって、魔術を練習してました」 「だからって、何ができる」 魔術回路の切り替えはできる。だから、魔力を操ることはできる。問題はその先だ。鉄人さんが言うには、魔力は燃料だという。その燃料を変化に繋げるのが魔術。 要するに魔力は電気みたいなもので、機械が魔術ってことらしい。それで、わたしは魔術を使えない。つまり燃料だけはあるけど、それを使える機械がわたしには無い。 「君には何もできない。早く行け!」 「―――できます」 電気でもガソリンでもいい。どっちにしても、使えるものはある。やれることは必ずある。手の中に道具があるなら、それを使う。 「待ったところで、意思は変わるまい。始めるぞ」 光る眼。ライダーの号令下、鬼火の軍勢は解放された。大海のうねりのように襲い来る餓鬼を断ち割って、鉄人さんが駆けてゆく。 波紋が広がる。漏れ出したものが、わたしへ向かってくる。 怖い。怖い。怖い、けれど。逃げようという思いは浮かんでこない。気持ちが静かに雨に打たれて、余分なものが落ちていく。 人の形をしたものが、手を伸ばしてくる。それに合わせて、自分の中で塊を回転させる。てっぺんから下って、足を回って再び上へ、そして掌に。形のないまま、勢い任せに吐き出した。 拳銃を撃ったような衝撃が腕を伝う。思わず目を瞑って、数歩後ろへたたらを踏んで。目を開いてみると、人の形の敵は居なくなっていた。 「ほ。魔力を加工せぬまま放つとはの。なんと無様な力技じゃ。効率の悪いこと、この上ないわ」 どこかから玄耶さんの声がする。返事をしようにも、わたしの心臓はばくばくと震えて、息をするのに精一杯だ。 「早晩魔力が尽きようが、それでどれだけ保てるか、やってみるがよいわ」 カカカカという軽妙な笑い声と揃って、死霊の群れが踏み出した。
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/786.html
すっかり暗くなった通り、ところどころの黒い世界、電灯の光が届かない。その暗がりに、鉄人さんは迷わず踏み込んでいく。わたしは、怖い。けれど鉄人さんの手の引かれて、歩き続ける。 「鉄人さん。どこへ行くんですか?」 「協力者のところだ。彼が案内してくれる」 雑木林の奥の奥、そこに黒いわだかまりが木の根に腰掛けている。どうしてだろう、それが人の形をしていることに気付くのには時間がかかった。びっくりするぐらいに、彼は自然の中に溶け込んでいる。 「やっと来たか。遅いではないか」 「そんなことはない。時間通りのはずだ」 「そうかのう? 少し時間の感覚が狂っているのかもしれぬな」 男の人は黒ずくめの装束を着ていた。それで見えにくかったのかもしれない。声がしゃがれているし、体も少し小さい。かなりお年を召しているみたいだ、この人。 「……む? アーチャーとやらはどうした。サーヴァントが居らぬのでは話にならんではないか」 「帰ってこないんだ。仕方ないから、僕らだけで先に来た」 「呼べばよかろう」 「この子はまだ念話が使えない」 「そうではなく……ふむ。そうか、呼べぬのか」 お爺さんはよたよたと歩いてくる。なんか、すごく危なっかしい。この人、大丈夫なのかしら。 「お嬢さん、儂の名は菅代玄耶という。この街の安寧と繁栄を願っておる者でな。御覧の通りの老身じゃ、あまり役に立つとは思えんが、よろしく頼む」 「は、はい。わたしは志那都みことです。よろしくお願いします。わたしも、その、あんまり役に立てないと思いますけど、頑張ります」 握手をぎゅっと。枯れ木みたいに思える掌だけど、予想よりずっと力が強い。 「おや、手の甲に痣があるようじゃが」 「これですか? 少し前に……事故に遭ったんです。なかなか治ってくれなくて」 「ほうほう。それは大変じゃったなあ」 好々爺って、こんな人のことをいうんだろう。玄耶さんは憎めない顔でやんわりと笑う。うーん、本当に憎めない人だ。でもいい加減に手を撫で回すのは止めて欲しい。 「あの、わたしはまだ状況が飲み込めないんですけれど」 「ぬ? 説明しておらんのか」 「アーチャーが帰ってから思ってたんだよ」 「ふむ。では儂から説明しようか。儂の家は、この街に長く住む魔術師の家系でな。じゃから聖杯戦争についても知っておった」 「じゃあ、玄耶さんも聖杯戦争に?」 「いや、儂はマスターではない。既に半ば隠居した身じゃからの。街に被害が出なければ、あくまで静観しているつもりじゃった。うむ、そのつもりだったんじゃが」 玄耶さんの手が緩んだ隙に、わたしはぐいと手を引く。ようやく撫で回し攻撃から逃れて、ほっと一息ついた。 「残念ながら、死体を積極的に増やそうという痴れ者が現れてしまってのう。そやつを止める方法を模索しておったところで、この男を見つけた」 「そういうことで、協力することにしたんだ」 「わからないんですけど、玄耶さんは夏海さんを見たんですか?」 「いいや」 「けど、この人の見た男と僕の探してる男は同一人物なんだ」 なるほど、やっと繋がった。玄耶さんが止めたい相手は、夏海さんと一緒に居たっていう相手なんだ。それなら、協力する理由もよくわかる。 「わかりました。今から、その相手のところに行くんですね?」 「そういうことじゃ。ただし、正面から行ってはどうにもならん。地上は奴の配下が蠢いておるのでな、当てにしていたアーチャーが居らんのでは」 「だから次善の策で行く。奴らの背後を衝く」 「それはどんな方法なんですか」 「下じゃよ」 玄耶さんがにやっと笑って、指を下に向けた。 「うわあ……」 どんな明かりなのかわからないけれど、地下の洞窟には不思議な光が満ちている。電灯とか火の光とは違って、柔らかいのに全面を照らす。これはヒカリゴケなんだろうか。暗いのに明るい。まるで星の近くに居るみたい。 「すごい、こんな場所があったなんて」 「カカカ、すごかろう。どうじゃ、みことちゃん。本当なら先祖代々の秘密なんじゃが、今度一緒に」 「爺さん、色ボケしてないで、道案内を頼むよ」 鍾乳洞のように、道の横には小川の流れ。ちょろちょろと音が響く。 「ふうむ。あの男、余裕がないのう。いつもああなのかね?」 「いえ、違います。いつもはもっとのんびりしてます。夏海さんのことが心配なんですよ、鉄人さんは」 「ほほう」 「夏海さんをすごく大事にしてたみたいです。だから、手がかりを見つけたら目の色が変わっちゃって」 「道理で。今の奴は、これまで尻尾を出さなかったとは思えぬ。それほどに大事だったか」 カツカツカツと道を行く。変な感覚がするのは、明かりのせいなんだろうか。なんだか、こう、ゆっくり自分の中身が流されているような。 「これは……つらいな」 「かなりのマナの流れじゃからの。精神を保つには、オドで対抗するしかない。これでも流れの弱い場所を選んでるんじゃがなあ」 「どのぐらいで出られる?」 「もうすぐじゃよ。そこの曲がり角の上じゃ」 洞窟の先、向こうの方から違う明かりが射している。玄耶さんがわたしたちを手招きする。 「ねえ、玄耶さん。さっき、奴の配下って言ってましたけど、その人は沢山の部下が居るんですか?」 「うむ。今でもかなり数、おそらく無尽蔵に増やせるじゃろう」 「増やせる?」 「うむ、奴らは人間ではない。もっとも、人間だったものじゃが」 「それってどういう」 「なあに、百聞は一見に如かず。見ればわかる」 外気の冷たさ。開けた空には、まばゆい星々。草のたなびく野原に風が駆けていく。これは輝く自然の景色。 ただ、そこにあるのは怨霊の声。鬼火に思える茫洋さを連れて、人の形の何かが蠢いている。 「どういう……ことだ、爺さん」 鉄人さんの声は掠れている。わたしも声が出ない。どうしてって、それは―――ヒト型の何かはみんな、待ちうけていたように、わたしたちを取り囲んでいたから。 「クカカカッ。どうもこうもあるまいよ」 「ご苦労だった、老人」 鬼火が割れる。見たことのない男が、威容と共に歩いてくる。豪奢な飾りを揺らして、彼は立ち止まった。玄耶さんがその側に平然と歩み寄る。 「どうかな、ライダー。これで儂を信用する気になったのではないかな?」 「よかろう。これを以って、汝の忠誠の証とする」 鉄人さんが刀を抜く。ライダーが腕を上げると、鬼火の軍は道を塞いだ。 「こいつを止めるんじゃなかったのか、玄耶」 「止める方法がこれじゃよ。儂が手引きをすれば、犠牲は最低限で済むじゃろう?」 「貴様」 「儂は街の安寧を願っておる。それには最強の者が迅速に勝利するのが一番よい」 「本当にそう思うのか」 「儂が事を上手く運ぶ限り、無用に死体を増やさぬとの確約がある」 「もうよい。黙れ、老人。して、そこの男、アーチャーはどうした」 「居ない。夏海はどこに居る」 「ナツミ? ああ、我が寄り代のことか。案ずるな、まだ魔力が残っている。喰らうのは最後だ」 鞘が飛ぶ。ライダーの直前、矢は玄耶さんの手で掴み取られた。 「どうやら、大人しく死ぬつもりは無いか。それもよし。欲の限り動くのが人というものだ」 ライダーは細い目をもっと細くして、遊び相手を見つけた子供みたいに微笑んだ。 鉄人さんがわたしの腕を引く。荒々しい指が食い込んで、少し痛い。 「……引き返せ、すぐに」 鉄人さんはわたしを見ない。彼が見ているのは、ライダーだけ。 「ライダー、あれがアーチャーのマスターじゃよ」 「あちらがそうか。では逃がせぬな」 「いや、逃がしても問題はない。地下通路は複雑で、素人が道を覚えるのは不可能じゃ。道を間違えれば、巨大なマナの流れに出くわし、魔力に呑まれて終わりじゃよ。精神が崩れれば、肉体もすぐに分解される」 「では狩りにするとしよう。龍脈に落ちた人間が、どのように崩れていくのかは興味深い」 「外から見たところで、どうってことはないがの。すぐには死なん。だがいずれオドが尽きて、耐えられずに死ぬ。それだけじゃ。それより、体を残したまま、儂にくれぬかな?」 あれは、自分の事が話されているのだろうか。そうは思えない。 あの人たちはおかしい。おかしいよ。セイバーとアーチャーも怖かった、鉄人さんも怖かった。 だけど、この人たちはもっと怖い。もっと醜い。小石が一つ転げ落ちる。人が死ぬのを、それと同じようにしか思っていない。 「行け! 早く!」 「鉄人さんは……どうするんです」 「目の前に夏海を食い物にしてる奴がいる。逃げる理由がない」 鉄人さんに突き飛ばされる。足元の石に躓いて、尻餅をついた。鬼火の明かりが迫ってくる。鉄人さんの影がどんどん大きくなっていく。心臓が弾けて壊れそう。 わたしは――― 1:この場に残る 2:洞窟の中に逃げる
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/780.html
聖杯とは何なのだろう。あらゆる願いを叶えるっていうけれど、本当にそんなものがあるんだろうか。そんなもの、本当に必要なのかしら。 「鉄人さんは聖杯のこと、どう思います?」 「うーん、ちょっとわからないな。それはどういう意味だい?」 「……じゃあ、聖杯があるかどうかを」 「言葉通りのものなら、あるかどうかわからない。何でも願いを叶えるってこと自体がありえるのか疑問だからね。ただね、とんでもない代物があるのは間違いない。英霊を降霊する、そんなデタラメを可能にするものがね」 「セイバーもそう言ってたけれど……」 「一つ聞きたいんだけど、みことちゃんが気になってるのは、本当に聖杯の有無なのかい? 疑問に思ってるのは、この争いに参加するだけの意味があるのかってことじゃないかな?」 そうなのかもしれない。聖杯が手に入るっていうけれど、わたしはそれに命懸けの争いをするほどの価値があるとは思ってない。あの子が、あんな血だらけになるような価値を、見つけられない。 「君が聖杯戦争に巻き込まれたことは変わらない。だから、命を守るためだけに戦うって割り切ってもいいと思うけど……それはできないみたいだね」 「……はい」 「じゃあ、他に理由があるかどうかだ。聖杯を手に入れたと仮定してみよう。何でも願いの叶う、夢みたいな代物だ。実際はどうあれ、そう仮定してみて。さあ、何を願う?」 何でも叶う。世界がひっくり返ることも、星が海に沈むことも、ありとあらゆる金銀財宝を手に入れることも。どれもやってみたいとは思うけれど、心の底から願うことはない。 不満も不安も沢山ある。もっといい世界になって欲しいし、もっと優しい世の中にもなって欲しい。戦争は嫌だし、飢えや病気も無くなってくれればと思う。でも、それの中のどれを願うだろう。 想像してみる。静かで仄かに暗いどこかで、射す光の道にきれいな杯が降りてくる。神々しい、見たこともない光景。手を伸ばすと、少し冷たい淵が指に触れる。きっとそのとき、わたしの心にあるものは――― 「思いついたみたいだね」 「はい」 だからわたしは顔を伏せる。わたしの望みは、わたしの思っていたとおりのもの。とてもじゃないけれど、顔を上げていられない。 「みんなが幸せになることって、できるんでしょうか」 「……それが君の願い?」 「いいえ。けれど、願いが叶うならそれが一番いいと思って」 「で、君はそのために戦えるのかな?」 答えられない。答えるまでもなく、わかりきっていることだから。 「みことちゃん。いい悪いは抜きにしよう。君が願いたいことは何なんだい?」 「―――わたし、好きな人が居るんです」 鉄人さんが顔を少し逸らして、鼻の頭に指をやる。わたしはもっともっと顔を下げて、膝を抱え込む。 「まあ……若いころはそういう願いでも構わないんじゃないかと思うよ」 「その人、病院に居るんです」 月の夜は空気が濡れて、息をするのが辛い。かたかたと鳴る木の音は、どうして頭を痺れさせる。 「病院?」 「アーチャーが現れる数日前に、事故に、遭ったんです」 「その事故で怪我を?」 「それで、まだ目が覚めなくて、先生はもう起きないって……ベッドの上で、チューブをつながれてて……! わたしを……庇ったから……!」 喋るのが、こんなにも苦しいなんて。途切れ途切れにしか喉を動かせない。忘れていられる間はまるで平気だったのに、思い出したら涙が溢れて止まらない。 わたしの目の奥に溜まった涙が一息つくまで、鉄人さんはわたしの肩をさすってくれていた。 「彼を助けたいんだね」 「……はい」 鼻声はくぐもって、返事一つもまともにできない。鉄人さんの顔を見るのも怖い。 「けど……そんなこと……願うのは」 「どうして?」 「だって、色んな人を危ない目に遭わせて……アーチャーも、鉄人さんも……なのに、わたしがそんな願い事をするなんて」 「別に、いいんじゃないかなあ。そのぐらいのご褒美を欲しがっても構わないだろう」 肩が温かい。ぐじゅぐじゅの顔を上げると、ぐにゃぐにゃの世界。滲んで見える鉄人さんは、でも笑っているんだとわかる。 「いいんですか……?」 「僕はいいと思うよ。奪うわけでも、何かを独り占めするわけでも、傷つけるわけでもない、善良な願いだと僕は思う。それを願うことは許されるべきだと思う。君もそう思うだろう―――アーチャー」 窓の向こう、背中合わせに。アーチャーはガラスに寄りかかっていた。 「ああ。好きな奴を助けたいのは、当たり前だろう」 流れる黒髪の掛かった小さな後ろ姿。見上げているからなのかな。華奢な背中はとても広く、強いものに見えた。 ガラス越しの頼もしさに、わたしの涙の栓はまた緩んでしまって。水の中で溺れてるんじゃないかっていうぐらい、目が潤んだまま。 感謝を言いそびれることがあると聞いていた。びっくりしたからなのだと思っていた。相手が急いでいるからなのだと思っていた。その本当の理由、本当の気持ち。この夜、それはわたしの胸に降りてきていた。 ああ。明日の朝には、涙が止まって、ありがとうって言えますように。
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/787.html
鉄人さんの影がわたしを覆う。世界が暗くなっていく。足はがたがたと震えて、逃げろ逃げろと叫んでいる。 だからって、ここで逃げて、どうするのだろう。怖い、本当に怖い。でも、この人たちから逃げて、鉄人さんを置き去りにして、どうする。 温かい家に逃げ込みたい。平穏な世界に帰りたい。でも、ここに来たんだ。夏海さんを探すって、あのひとがもう一度起き上がれるようにって、そう思ってここに来たんだ。 なら、やれることをやってみせないと。 「……ほう。逃げぬか」 ライダーのくぐもった声、剣闘士のあがきに綻ぶ笑み。それは立ち上がったわたしに向けられている。 「君が居ても何も変わらない。今回ばかりは、僕に君を守るつもりもない」 「わたしだって……わたしだって、魔術を練習してました」 「だからって、何ができる」 魔術回路の切り替えはできる。だから、魔力を操ることはできる。問題はその先だ。鉄人さんが言うには、魔力は燃料だという。その燃料を変化に繋げるのが魔術。 要するに魔力は電気みたいなもので、機械が魔術ってことらしい。それで、わたしは魔術を使えない。つまり燃料だけはあるけど、それを使える機械がわたしには無い。 「君には何もできない。早く行け!」 「―――できます」 電気でもガソリンでもいい。どっちにしても、使えるものはある。やれることは必ずある。手の中に道具があるなら、それを使う。 「待ったところで、意思は変わるまい。始めるぞ」 光る眼。ライダーの号令下、鬼火の軍勢は解放された。大海のうねりのように襲い来る餓鬼を断ち割って、鉄人さんが駆けてゆく。 波紋が広がる。漏れ出したものが、わたしへ向かってくる。 怖い。怖い。怖い、けれど。逃げようという思いは浮かんでこない。気持ちが静かに雨に打たれて、余分なものが落ちていく。 人の形をしたものが、手を伸ばしてくる。それに合わせて、自分の中で塊を回転させる。てっぺんから下って、足を回って再び上へ、そして掌に。形のないまま、勢い任せに吐き出した。 拳銃を撃ったような衝撃が腕を伝う。思わず目を瞑って、数歩後ろへたたらを踏んで。目を開いてみると、人の形の敵は居なくなっていた。 「ほ。魔力を加工せぬまま放つとはの。なんと無様な力技じゃ。効率の悪いこと、この上ないわ」 どこかから玄耶さんの声がする。返事をしようにも、わたしの心臓はばくばくと震えて、息をするのに精一杯だ。 「早晩魔力が尽きようが、それでどれだけ保てるか、やってみるがよいわ」 カカカカという軽妙な笑い声と揃って、死霊の群れが踏み出した。
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/793.html
暖かな日で、つまりぽかぽかで、陽は高くて、お昼時で、動き回って。簡単に言っちゃうと、ベタベタするし、熱くて、臭くて、疲れた。ああ、もうやだ、ということ。 軽快に歩いていくアーチャーの後ろで、わたしはよろよろと足を止めた。 「おい、みこと」 「ねえ、休みましょう」 「まだ何も掴んでないぞ」 「焦っても、仕方がないわ。果報は寝て待てって言うでしょう」 「寝てていいことないだろ。ライダーがいつ来るか、わからないんだから、できるだけ早く他の連中を見つけないと」 「アイスが食べたーい!」 「わがまま言うな。こんな時期に氷菓子が売ってるか」 「コンビニなら、この季節でも置いてあるわ。ちょっと遠いけど」 「じゃあ、却下だ」 ああ。新しい手がかりでも見つかれば、やる気も湧いてくるのだろうけど。今のところ、全て空振り。 商店街は全部回った。二人きりのローラー作戦も、釣果ゼロ。先手を打たれてしまったのかもしれない。白ヤクザのことを誰も覚えてないなんて、変過ぎる。スガシロ名義の家のことも、誰も知らない。 「口止めでもされてるのかしら」 「さあな。記憶操作じゃないか」 「でも住所録にも載ってないのは、変よ。もしかすると、もともと探せないようにしてるのかも」 「そうなら、キャスターを探すのは無理か」 「そうすると」 「他は、セイバー、ランサー、バーサーカー、アサシン、だな。アサシン以外のマスターならわかる」 「セイバーはわかるけど、他のひとって?」 「セイバーと戦ってるときに横槍入れてきた女が、ランサーのマスター。側にいた、でかい男がバーサーカーのマスターだろう」 あの夜のことを、思い起こしてみる。前ほど怖いと思わなくなってるし。 セイバーのマスターが綺麗な妖精さんで、たしかヒルデガルドさん。後から出てきたのが…… 「うわっ。面白い顔してるぞ、みこと」 「……バーサーカーのマスターは覚えてないけど、ランサーのマスターは思い出したわ」 「で、どうする。戦力的にはランサーのマスターか」 「嫌。ぜったい嫌。あのひと、怖いからイヤ」 全力で首を横に、ぶんぶんと振った。ちょっと眩暈がする。 「なら、バーサーカーか」 「ランサーのマスターと一緒に居たんでしょう? なら、今も一緒かも」 「…………そんなに嫌か」 「嫌」 「こういうおまえ、初めて見たよ」 わたしも初めてだ。ほとんど話してもいないのに、こんな風に人を嫌うのもどうかと思う。でも、駄目。ぜっったいに、イヤだ。もう会いたくない。あのひとは、とんでもないぐらい、おぞましい。 「そういえば、セイバーたちってどうなったのかしら。誰かが」 「脱落してるだろうな。少なくとも一体ぐらいは。ランサーか、バーサーカーか」 「ふーん。セイバーは脱落しないのね」 「しないさ。あいつが俺以外に負けるわけがない。ランサーたちが二体で掛かっていったって、無理だな」 こういうのも信頼っていうのかしら。セイバーの話をするアーチャーは楽しそうだ。まるで遊び仲間のことを話す子供。頬を少しばかり赤くして、目はきらきら輝いている。そんな姿を見せられて、これからの行動が決まらない筈もない。 「セイバーたちを探すのがよさそうね」 「え?」 「アーチャーもセイバーのこと、嫌いじゃないみたいだし。わたしもヒルダさんなら大丈夫だから。セイバーは、ちょっと怖いけれど」 「セイバーと組むのか」 「嫌なの?」 「考えたことがなかっただけだ。あいつについては、戦うってことしか」 「向こうもそうだったら、誘うのは難しいかしら」 「いや。また横槍が入るのは嫌だからな。先に他を叩くなら、それはそれで断らないと思う」 「なら、決まりね。ヒルダさんを探しましょう。あれだけ綺麗な人なら、目立つもの」 外国の人がよく来る場所は、ある程度決まっている。特に肌の色が違う人はそうだ。じろじろ見られるのが嫌なんだろうと思う。ヒルダさんが居るならきっとそういう場所だろうと、わたしたちは幾つかの広場を歩き回った。路面電車も使って、散策気分もいっしょに。 思い知ったのは後だったのだけれど、わたしたちは甘かった。目立つ人だろうと、手がかりもなく人を探すのが大変なことだって、わかってなかった。 またしても収穫は皆無の無。アーチャーは気持ちが、わたしは心身ともに疲れて辛く、アイス屋でチョコチップアイスをカップで二つを買った。 「はい、アーチャー」 「俺は要らない」 「せっかくだから食べて。このお店、おいしいんだから」 アーチャーはしぶしぶアイスを受け取って、じっと眺めた。見たことのない食べ物を前にしてる子猫みたい。 わたしはわたしで愛しの君に手をつける。ベンチに座って食べるアイスは、口の中でひやっとして、舌の上で甘さが溶けて、歯でチョコチップを噛むと一風変わった甘みと少しの苦味。それが乾いた体に染みこんで、頬が落ちた。 「うふふふ。幸せって、こういうことね」 「手が冷たい」 「アイスだもの。食べないの?」 「これ、氷じゃないぞ。アイスって氷菓子じゃないのか」 「似たようなものだと思うけど」 意を決して、アーチャーがスプーンを口に運ぶ。猫舌を心配したけれど、大丈夫そうだった。表情がぱあっと明るくなってる。 「甘い」 「アイスだもの」 わたしたち二人、並んで、アイスを最後まで食べる。やっぱり、思う。幸せって、こういうことなんだと。おいしい甘さと同じ、ふわりと乗ってきて、いつの間にか去ってしまう。 陽が傾いてきているからかもしれない。海風も冷え始めていて、火照った熱は体の内側から、外側から、抜けていく。空にも闇がじわりと迫る。 「おい、どうした」 「……え?」 アーチャーがわたしの肩を揺する。目は真剣そのもの。それが滲んで見えたから、わたしは自分が泣いていることに気付いた。 「あれ、変ね。どうして」 泣くようなことなんて何もないと思った。人探しは思ったより大変だけど、聖杯戦争は大変だけど、わたしはこうしてアーチャーと居て、おいしいアイスを食べている。それを幸せだって思ったのに。 人探しは大変で。鉄人さんは、どんな気持ちで夏海さんを探していたんだろう。 口に広がる甘さは幸せで。まだ病院に居るひとのことを忘れている。 アーチャーのことが大好きで。いつか、この憩いも去りて帰らぬものとなる。 舞う落ち葉は表も裏も。色々なものが混ぜこぜになって、涙もはらりはらりと落ちていた。 「やだ。また泣いちゃうなんて」 「どうしたんだよ」 「わかんない」 「ライダーと戦うのが怖いのか?」 「そうじゃないの。嬉しくて、でも思い出してたことがあって。いやね、ぐちゃぐちゃ、本当に。やっと強くなれたと思ったのに」 目元を指で拭って、笑って見せた。アーチャーの顔が、今度ははっきりと見える。肩に掛けられた手は小さく、柔らかく、そして温かい。 「強くなってる。前みたいに大泣きはしてない」 「でも、また泣いちゃったわ」 「もう泣き止んでる。それに――」 「――――恐れでなく悲しみで泣くのなら、上等だ」 女の声が、アーチャーの言葉を継いだ。 振り向いた先にある、白き髪靡く女性の姿は――― 1:ヒルデガルドのものだった。 2:ヒルデガルドのものではなかった。
https://w.atwiki.jp/remodeling/pages/12.html
NDS 内容を充実させるためゲームタイトルを極端に少なくしています。追加して欲しいゲームタイトルがあれば こちら から。意見が多ければ検討します。 またコードは PAR(WP)、CF、CL の四つを扱っており、PARとWPは互換性があるので一緒にしてあります。 ※ゲームタイトルの先頭にある四桁の数字はROM番号です。 「このページは100000文字以上あるため、負荷対策のため表示できません。大変お手数ですが編集し、文字数を減らしてください。」と表示されて見れない場合お手数ですが こちら からページ名もしくはアドレスを書いて管理人に知らせてください。 ゲームタイトル あ行 か行 さ行 0025 スーパーマリオ64DSv00 PAR(WP) (0) CF (0) CL (0) 1217 スーパーマリオ64DSv01 PAR(WP) (0) CF (0) CL (0) た行 な行 0442 NEWスーパーマリオブラザーズ PAR(WP) 1 (36) PAR(WP) 2 (2) CF (0) CL (0) は行 ま行 0228 マリオカートDS PAR(WP) (0) CF (0) CL (0) や行 ら行 わ行 数字、記号 その他のコンテンツ 改造の手引き 「改造」初心者必見!!これさえ見れば快適な改造ライフをおくれます!! 改造機器 ┗改造したいけど何を買えばいいの?改造機器の性能比較!! 進法変換 ┗改造コードを使うにあたって16進法は必須の知識。この記事を活用しよう!! 発動コード一覧表 ┗発動コードの一覧!!コードの制御に使え!! マジコン マジコンとは何か、マジコンの性能比較や最新FWなどあらゆる情報をまとめました!! マジコンとは ┗そもそもマジコンってなんなの?使うことは犯罪なのでは? マジコンの種類 ┗マジコンにも種類は沢山あります。それらの性能比較です。 FW ┗マジコンのFWのチェックは大切です。ここで最新のFWを確認しよう!! その他 ┗チートの編集やスキンの変更など。 エミュレータ 手軽にDSでレトロゲームを遊べる!!そんなことを可能にしたエミュレータの紹介です。 ▼DS上で起動するためにマジコンが必要です。また、 コードフリーク から起動可能。 DSでゲームボーイ、ゲームボーイカラー DSで ファミコン DSでスーパーファミコン DSでマスターシステム、ゲームギア DSでPCエンジン DSでネオジオ、ネオジオポケット、ネオジオポケットカラー DSでワンダースワン、ワンダースワンカラー DSでメガドライブ ▼マジコンは必要ではありません PCでDS、ゲームボーイアドバンス 非公式アプリ 公式に作られていないDSアプリの紹介。ネタから実用性ありまくりのものまで!! ▼DS上で起動するためにマジコンが必要です。また、 コードフリーク から起動可能。 ファイル再生 ┗テキスト、画像、音声、動画などをDS上で再生させるアプリの紹介!! 学習 ┗漢字辞典など学習に役立つアプリの紹介!! 編集 ┗ペイント機能の持つアプリの紹介!! 娯楽 ┗非公式のゲームの紹介!!大乱闘スマッシュブラザーズDS!? 演算 ┗DSを計算機にするアプリの紹介!! その他 ┗その他のアプリの紹介!! プログラミング 自分でゲームを作りたい・・・そんな人のための記事です。難しいけどその見返りは大きい!! 開発環境のダウンロード ┗まずは開発環境をダウンロードしてプログラミングの準備を整えよう。 チュートリアル1 ┗
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/785.html
待ってるときに限って、帰ってこない。りんりんりんと陶器が鳴る。弾いた指に軽い痛み。手持ち無沙汰を慰めるのも、いい加減につらい。もう陽も暮れてしまった。 「むー。どうしたのかしら、アーチャーったら」 「ずっと探し回ってるのかもしれないね。でも連絡がつかないってのは困るなあ」 「ですよねえ。せっかく夏海さんの居場所がわかるかもしれないっていうのに」 「……困ったなあ」 鉄人さんがぼりぼりと頭を掻く。なにか、こう、見覚えがあるような。テレビで見た名探偵によく似てる気がする。この人は、どんなときでも暢気さんだ。 「みことちゃん、相談なんだけど……先に夏海を探しに行っててもいいかな」 「もう少し待つのはダメでしょうか?」 「手がかりがあるなら、放ってはおけないんだ。これ以上じっとしてるのは難しい」 「ですけど、アーチャーと一緒の方が探すのにも有利になると思います」 「そうだね。きっとアーチャーの力は必要なんだろう。夏海と一緒に居るのは、聖杯戦争の参加者だろうから」 「え?」 「いや、違うな。僕はね、夏海が聖杯戦争に参加してると思うんだ」 かちゃりと音がする。今日の鉄人さんの刀を覆うのは、ステッキに模された木ではなく、細工の見事な柄と鞘。どうして、鉄人さんはそんなものを持ってきたんだろう。 「居なくなるちょっと前から、ずいぶん楽しそうにしてたらしいんだ。その前は落ち込んでたんだけど」 「それが、どう繋がるんですか?」 「あの子は、ずっと悩んでた。誰にもどうしようもできないものなのに、自分が無力だって感じてたんだよ。どの道、終わったものを救ってやることなんて、できないのにね」 「話が見えないんですけれど……」 「夏海は、ちょっとばかり特殊な才能の持ち主でね。僕の妹もそうだった。夏海たちほどじゃないけど、僕もそうだ。それで、悩んじゃうんだな。見なくてもいいものを見てしまうからね」 柔和な表情が動いていく。珈琲にミルクが混じっていくようにゆっくりと。ふわふわの綿の中から鋭い切っ先がせり出される。 「――そこに、つけこまれたんだろう。あの子は、救えるものを探し続けてた。誰かを救ってあげたかった。その優しさを利用された」 「鉄人さん?」 「実はね、夏海と一緒に行動していた男のことは知ってたんだ。断片的だけど、見たモノから聞き出したからね」 怖い。わたしは、この人を、初めて怖いと思った。ログハウスの中のか弱い明かりが、慄くように揺れては燃える。 「見つけられなくて、困っていたんだけど。昨日なったばかりのモノが知ってた。ようやく見つけた。それを逃がすつもりなんてないんだ。だから、これ以上は待てないよ」 「あの……」 「わからないかな? まあ、わからないように話しているからね」 立ち上がった鉄人さんの顔は、影になっていて見えない。いやだ、膝が震えてる。手の動きが、止まらない。 「僕は夏海を助けに行く。そこだけは信じてもらっていい。それで、君はどうする? 僕としては、アーチャーの力を使いたいから、君にも来て欲しいけど……ね」 夜に光る狼の目のように、影に浮かぶぎらぎらとした輝き。獣は誰に牙を剥く。共に何かを救うとしても、矛先が自分に向かないと誰が言える。わたしを引き起こしてくれたときの温かさを、覚えているけれど。 わたしは――― 1:夏海を探しに行く 2:アーチャーを待つ
https://w.atwiki.jp/minasava/pages/774.html
「アーチャー、ありがとう」 朝の靄を通して柔らかな光が差し込む。気持ちのいい朝。これから始まる一日への期待で心は躍る。 「ありがとう、アーチャー」 鏡を前に、じいっと自分の顔を見る。 「ありがとう、うれしかったわ、アーチャー」 何度目か忘れたけれど、鏡の中の自分へ言葉を贈る。うん、やっぱりダメ。とてもじゃないけど笑わずにいられない。 「……ぷっ、あはははは!」 ぐるんぐるんと転がって、笑えるだけ笑ってみる。ああ、バカみたい。ぱんと顔をはたいて、もう一度鏡の前に立つ。 こうやってると自分が何をしているんだろうって少し思う。でも言いそびれると、なかなか言い出せないもの。だから、こうやって練習しているんだけれど。 「……ふう」 一息ついて、ぐいっと鏡に近寄る。その、自分の顔のことは気にしないようにしよう。誰かの前で言っていると思えばいいんだし、そのために練習してるんだし。 「―――アーチャー、ありがとう」 「何の話だ?」 開きかけのドアから、ひょこっとアーチャーの顔が出てくる。 真っ白になった。何も考えられない。 「――――きゃあああああああああ!」 「な、なんだぁ!?」 「なんで入ってきてるの!? 洗面所に入るときはノックしなさいって言ったでしょう!」 「でも扉は開いてたぞ」 「関係ないの!」 「黙って、外で待ってればよかったのか?」 「それはもっとダメ!」 息を整えて、アーチャーを見る。きょとんとした顔は、やっぱりすごい可愛い。何ていうか、ほっぺたすりすりしたい。じゃなくて。 「どうしたの? あ、朝ごはんなら街のお店で食べるつもりだけど」 「これ、ガタガタ震えてたぞ。よくわからないけど、伝達手段なんだろ」 アーチャーが手に持っていたのは携帯電話。メールが着いたみたいだ。 「誰からかしら。学校なら、もう少し休んでいられるはずなんだけれど」 受信メール一覧を見て、わたしは混乱した。一通だけ、差出人は――― 「夏海……さん?」 件名も本文も意味がわからない。子供が弄り回したみたいな言葉が並んでる。 急いで電話を掛けてみる。昨日は繋がらなかったのに、今朝はコール音が続いている。 「もしもしっ?」 『やはり広場へ凱旋するのが……あん?』 「その声、誰です!?」 『なんだ、これは。どうしろというのか』 「ちょっと、もしもーし!」 『切れ? 世迷言を。王が欲するものを切れとは』 「訳のわからないことを言っていないで、わたしと話しなさい!」 『―――無礼者が。よかろう、叩き切ってやろうぞ』 ぎちょんと普通じゃない音がして、電話は切れる。電話の相手はまるで聞いたことのない男のひとの声だった。わたしの知らない人と夏海さんが知り合いだってことはありえることだけれど。 でも、もしかしたら夏海さんは誘拐されたのかもしれない。 「おい、何だったんだ?」 「誘拐……誘拐……」 「おーい」 「待って、そういえば一昨日のときの声……聞き覚えがあるような」 「一昨日? あ、キャスターのゴーレムが来たときのことか」 「あーっ!!!」 あの声、乱暴な喋り方。どこで聞いたんだろうと思ったら。 「アーチャー、大変! わたし、キャスターのマスターを知ってるかも!」 「うそつけ。そんな偶然あるか」 「嘘じゃないわ! 商店街にね、お店にたかってる白いチンピラが居るのよ!」 「ふーん」 「どうして気付かなかったのかしら……行きましょう、アーチャー。商店街にきっと手がかりがあるわ!」 「手がかりって何の?」 「え……ええっと。夏海さんの行方……かな」 「どうして?」 「夏海さんに電話したら、知らない男のひとが出て、それで」 「誘拐されたと?」 「ええ、そう」 「誘拐が本当だったとして、何でキャスターの話になるんだ?」 「…………あら?」 ぷすぷす燻る頭の中身。あらら、ちょっとショートしてたみたい。恥ずかしい目に遭ったばかりだったし、慌ててたんだろうと思う。 だから、情状酌量の余地はあるんじゃないかしら、ねえ……アーチャーったらそんな冷たい目で。 「で、どっちを優先するんだ?」 「どっちって?」 「少しは考えろよ」 ぶわっと伸びをするアーチャー。子猫がガリガリするみたいに、わたしに詰め寄る。その様子はとっても微笑ましいんだけれど、自分より小さい子に言われると響くの、その台詞。 「キャスターたちを探すのか、夏海さんを探すのかってことね」 「そう。マグロを探すのはついででもいいと思うけどな、どうせ手がかりらしい手がかりは無いんだし」 「うーん、広場がどうのって言ってたけれど」 「広場ってどの広場だよ。そんな雲を掴むみたいな話より、俺はキャスターを排除したい。セイバーと決着をつけるのは最後だから、その前に他の奴らを倒さないと」 アーチャーが遠足の前の子供みたいに張り切ってみせる。うーん、その意気に水を差したくはないんだけど、夏海さんのことは気になるのよね。 わたしは――― 1:商店街へ行く 2:虱潰しに広場を当る