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=== 一 === つねの年にも增して寒さもきびしく、風も吹き荒れることの多いその年の暮れであつた。この地方は、北と東とに向つて開き、海も近く、そこから吹き上げて來る風は、杉野たちの部落の後ろの山で行き止まりだつた。晝も夜も山に鳴る風の音に包まれながら、山裾の地のわづかなくぼみに、杉野の家はひつそりとしてゐた。家のなかは、平和な、物靜かな空氣にあたたまつてゐた。舊暦の節季までにまだひと月あつたが、その節季への備へがすでに一應はととのつていたからである。 今年の葉煙草収納の結果は、先づいいとしなければならなかつた。十二月の初めに豫定されてゐた葉煙草の収納は、役所の都合で月の終りに變つた。何月何日に幾百個の包を収納せよとの示達が、役所から村の耕作者組合にあり、組合ではこの包數を各組合員に割り當てる。その前後から夜晝休みなしの葉の撰別作業が始まる。米國葉煙草の葉分けは三通りだつた。幹の最下部の二三枚が土葉、土葉の上部の四五枚で肉の薄いのが中葉、中葉の上部の肉の厚い葉全部が本葉であつた。この三通りに區分される、乾燥した幾萬枚の葉を、その各區分に從つて、一枚一枚、その形態や葉肉の厚薄や乾燥の工合や彈力や色澤や損傷の程度やによつて品位を鑑別し、品質の近いものどうしをまとめて一つ束にするといふ葉撰みの作業は、熟練を要することであつた。土葉は三十枚、中葉は二十枚、本葉は十五枚を以て一把とし、一把のうち一枚で葉柄の上部を包み、その端を螺旋形に卷き附け、結束する、これが規則である。杉野の家の五人のうち、一番の手利きは一番年少のお道だつた。いくら經驗を積んでも敏速に行かぬものもあるが、お道のは熟練といふよりは勘のするどさだ。山のやうな葉を、人の倍の速さで、次々に處理して行く。彼女がゐなければ、杉野の家でも、ほかの家がよくさうするやうに、熟練者をその期間中傭はなければならぬかも知れなかつた。駿介も、お道の側に坐つて、見まねで少しづつおぼえて行つた。仕事に熱してゐる時のお道は、いつも妹として見てゐる彼女とはちがつた。仕事は彼女をおとなにした。わきから言葉をかけることもなんとなく遠慮されるきびしさを持つてゐた。 結束した葉は、藁製の薦の上に、兩方から十把づつ、葉の先きを互ひ違ひにして、並べた。つまり二方積一段二十把になわけだ。その上に何段も重ねて行つた。何段といふ規定はなかつた。規定は目方によつた。かうして積み重ねると、その上からも下のと同じ薦をあて、繩で固くしばつてそれを一包とした。一包は五瓩以上三十瓩といふことになつてゐた。煙草耕作はその最初から持たねばならなかつた獨特な細々しい規則から、この包裝といふ最後の仕上げの時になつても免 れることは出來なかつた。薦は藁製の新しいものに限り、古いものは決して使へなかつた。それもどんな藁製の薦でもいいといふのではなく、「一手二本宛四ヶ所編み縱二尺五寸横二尺二寸一枚の重量三百瓦内外」のものといふ風にきまつてゐた。また繩は、「太さ徑曲尺三分とし撚數曲尺一尺の間二十撚内外とす」ときまつて居り、その掛方も、「一筋繩にて橫三ヶ所縱一ヶ所とし各一重□しとなし三寸内外の餘裕を存し上部に於て堅く結束すべし」ときまつてゐた。かうした指示事項を見てゐると、駿介は頭が痛くなつて來るほどだつた。云はれてゐる通りに、薦や縄を編むといふことも、駿介にはまだ自信がなかつた。すべてこれらは最初から最後までの細々しさの一切が、本來的に煙草耕作に結びつかねばならぬものかどうかは駿介にはわからなかつた。しかし、煩雜を煩雜とも思はぬらしく、平氣で、默つて事を片附けて行く父のやうになることが、今の自分にとつては先づ何よりも必要だと思つた。 包裝が全部すんで、すべての作業が終つて、包を積み上げた夜は、さすがに感慨が深かつた。春から今までの辛勞のすべてが思ひ出された。しかしその思ひ出も今は甘かつた。あとはこの十四包が、いい値で引き取られて行くことを、心から祈るばかりである。今年は一段足らずだから、積み上げた包もわづか十四だ。しかし來年はこの三倍は積むことが出來るだらう。 いよいよ明日は収納日といふ日の前日、村の耕作者組合では、全組合員の荷をトラツクに積んでN町の収納所に搬入した。荷は、搬入場に、各個人別にまとめて積んだ。そして各包毎に、村名、氏名、納付月日、受付番號、納付包數等をそれぞれに書き込んだ荷札をつけた。 収納の當日、駒平と駿介は朝六時にはもう出かける仕度をした。収納は八時から始まる豫定だつた。しかしそれまでに荷を提出順に整頓し、遺漏の無いやうにしておかねばならなかつたから、早く向うに着くことが必要なのだ。 朝飯をすますと、駒平は裏口へ出て行つて、空を見上げた。しかし冬の六時はまだやうやく明けたばかりだつた。 「どうかな。今日の天氣は。」 彼は戻つて來て、相談するやうに駿介を見た。 「さア……いいと思ふけどなア、今日は。寒いし、それにかう靄がかかつてゐるから。」 この月に入つてから、餘り感じたことのなかつたこの朝の寒さだつた。さつき山羊の小屋へ行つた時、駿介の足の下では、霜柱がざくざく鳴つた。井戶端の桶には、薄氷が張つてゐた。 「さうやなあ。よからうとは思ふんぢやが、靄の濃い日は朝でつかりですんぢまふことも珍らしうはないよつてなあ。」 村のことだから、新聞の配達は日が上つてよほどしてからだつた。天氣豫報を見ようにも見ることは出來なかつた。 間もなく近くに住む組内の二人、石黑と菅原とが誘ひ合してやつて來た。彼等が寄ることはわかつてゐたので、駒平と駿介は待つてゐたのだつた。彼等は互ひに朝の挨拶を交し合つた。 「おつさん、どうやらうなあ、今日の天氣は?」 挨拶がすむと、石黑が最初に云つたのはやはり天氣のことだつた。彼等二人は、ここへ來る途中もそのことを話し合つて來たに違ひなかつた。 「大丈夫や。昨日もあななええ天氣やつたけに。――あんさんも今日は行きなさるんやろ?」と菅原が訊いた。 「ええ、行きます。わたしは何しろ初めてなんだから。収納の模樣も見ておかんことにや。」 「さうやとも。ようく見といて、何ぞ役所に云ふことでもあつたらまた願ふて下され。――ぢやあ、往(い)なうぜ、みんな。」 「うん、往なう。」 彼等は自轉車を曳いて、下の道まで歩いた。 「何時頃にすむんです?」 「さうやさなあ、二時にはすみますやろ。この頃は日が短かいよつて、さう遲うなつちや、後になつたものはやりきれんからのう。」 彼等が氣にしてゐるものは一に太陽の光線だつた。朝起きた時から今日の天氣を問題にしてゐるのも全くそのためだつた。葉煙草の賠償價格は鑑定官の鑑定によつてきまつた。鑑定は明るい光線の下で爲されることが絶對に必要だつた。當局でもその點には充分な考慮を拂つてゐた。収納所の建物の周圍は全部ガラス窓になつてゐた。殊に鑑定官が立つ鑑定臺の前の窓は、彼の腰から二間位の高さまで、總ガラス張りになつてゐた。しかしそれによつても尚、雨天や曇天の日を、晴れた日と同じ條件の下におくといふことは無論出來なかつた。晴れた日の明るい光りの下では、葉煙草は、百姓達の言葉で云へば、「見てくれがいい」のだつた。晴れた日とさうでない日とでは、葉は一等級を上下すると云はれてゐた。賠償金一瓩一圓四錢の三等品になつたかも知れないものが、その日たまたま雨天だつたといふだけのことで、賠償金一瓩七拾四錢の四等品と鑑定されねばならぬとしたら、生產者にとつて諦め切れぬことではないか。 収納所までは自轉車で四十分の道のりだつた。彼等は道の途中で他部落の者とも一緒になつた。向ひ風のなかを彼等は元氣よく飛ばして行つた。走りながら聲高に話して行つた。すぐ前と後ろに連なつて話しても、その話聲を途中で切つて飛ばして了ふやうな風の强さ冷たさも、今日の彼等には一向苦にならなかつた。風が出て來たといふことは、空がからツと吹き拂はれ、空氣の乾燥した、寒い明るい日を思はせて、却つて彼等を喜ばした。 やがて彼等は収納所に着いた。着いて暫くすると係員の手から、一人一人に、番號の附いた木札が渡つた。この木札は、各人が最初に鑑定に出す包に附けてやるものだつた。この木札は鑑定順を示してゐた。番號の早さ遲さにも何となく拘泥して彼等は互ひに仲間の番號を聞き合つたりした。 各自の荷は、各自がきめた順番によつて鑑定に送り出すことになつてゐた。それで彼等は昨日の搬入場へ來て、自分達の荷を調べ提出順をきめるのだつた。その頃搬入場へやつて來るものはしかし彼等だけではなかつた。明日鑑定を受ける者達がもう荷を運んでやつて來てゐた。天上の高い明るい建物の中に微塵が躍つて、薦の藁の匂ひが仄かにしてゐた。たたきの上に荷の落ちるやはらか味のある鈍い音。入り亂れる人々の足音。彼等はお互いどうし餘り口をきかなかつた。何となく急き立てられるやうなざわめきのなかに自分の荷のことを思つて、彼等はだんだんに興奮して來るのだつた。 日はいつか高く上つてゐた。空は吹き拂われたやうに晴れてゐた。彼等が豫想したやうな天候になつた。りりりりりりりりり……りーん。 その時よく冴えた鈴(りん)の音が乾いた収納所のなかの空氣をふるはして響き渡つた。八時の鈴であつた。鑑定開始の合圖である。係員や人夫が出て來て、それぞれの持場に着いた。 駿介は、最初に荷を送り出さうとしてゐる一人の後ろに近く立つて、鑑定の行はれるさまを見ようとしてゐた。 十四間に十二間の収納所の建物は、ほぼ中央で、黑いカーテンに仕切られ、こつち側が事務所や搬入場で、向う側は鑑定所に荷造場だつた。駿介達はそのカーテンの手前に立つてゐた。作業中はカーテンが引き絞られてゐるから、鑑定は少し離れて眼の前で行はれることになる。駿介達が立つてゐるすぐ左の方に、眞中にもう一本木が渡してある點は梯子とは違ふが、梯子によく似てもつと長い形のものが、コンクリートのたたきの上にぢかにおいてある。これは送り臺であつた。送り臺の上にはもう荷が鑑定を受ける順序でならんでゐる。端の方には、荷主達が、緊張した顏で待つてゐる。 送り臺が押されてゆく向うには、直徑二間半の大きさで、圓形にレールが走つてゐる。鐵製のトロッコがその上を走る。レールを前にして、その左の方に鑑定臺がある。二人の鑑定官と一人の書記とが、鑑定臺をはさんで待つ。 ガラガラガラガラと音を立てて、人夫がトロッコを送り臺の方へ走らせて來た。 「それツ。」と、口には出さないが、その氣構へで、番になつてゐる荷主とほかの者とが一緒になつて、送り臺を前に押しやつた。送り臺の上の荷は、すでに包裝の繩が解かれ假結びになつてゐる。人夫はその荷をトロッコの上へ移し、ガラガラガラとトロッコはまた□つた。鑑定臺の前まで行くと、待つてゐた二人の下手間の女がそれを引きとめた。黑い上つ張りを着た彼女等は素早く假結びの繩を解き、包裝の薦を取り去り、摘まれた葉を中頃から左右に開いた。同時に傍に立つた二人の鑑定官は、葉の束を一把づつ手に取つて見た。 いかにも慣れ切つたさまでちらつと一瞥し、葉の裏を返してまたちよつと見て、すぐにもとの所へおいた。一人はそれきりだつたが、他の一人は積んだ葉の下の方からもう一把を取つて見た。見終ると二人は別々に鑑定臺の上の釦を押した。すると二人の反對の側に臺に向つて腰をかけてゐる書記の前に細長い箱がおかれてある、その箱の中から外へ、ぼーつへ仄かな晝の電燈の光りがもれた。箱の中を見て、書記はだまつて臺の上の紙に何かを書き込む。それを人夫に渡す。トロッコはまたガラガラと走つて荷を今度は右手鄰りの量目係の方へ送られて行つた。 百姓達は硬く緊張した表情でこのさまを眺めてゐる。駿介のやうに今年始めてこの場に臨むといふものは居さうになかつたが、皆はじめて見るもののやうな眞劍さであつた。これら一連の作業は全く敏捷に、素早く行はれた。三十秒ぐらゐの間のことだつた。はじめての駿介は全く驚かされて了つた。あまりにあつけなく、ぽかんとさせられて了つた。彼は水の流れのやうになめらかに進む統一ある仕事とその素早さに感心するといふよりは何か不滿であつた。彼は鑑定といふ仕事がもつと念入りに行はれるものだと思つてゐた。耕作者が滿足するほど念入りにやつてゐたら山ほどの荷をあとに残して日が暮れて了ふだらう。日は何日あつても足りないだらう。念入りは鑑定には必ずしも必要ではなくて、必要なのは熟練なのだ。そして熟練は當然時間を短縮する――しかしそれにしても尚駿介には早すぎる氣がした。あんなに意氣込んで來たことがかうも簡單に片附けられたことで、ふいに肩透かしでも食つたやうな氣がした。彼には不當の事のやうにさへ思はれて來るのだつた。あの一包にこめられたあらゆる辛勞が彼の心の底にはあるからだつた。 「早いんだね、随分。」と、駿介は、トロッコの音が止んだ時、小聲で傍に立つ石黑に囁いた。 「ああ、どうしてもう慣れてるけんのう。」その言葉からは石黑の感情は汲み取れなかつた。「一時間に百五十包からの鑑定をすますといふんぢやけに。一段歩が六分か七分ぢやさうな。えらいもんぢや。」 「あの釦を押すのは何かな。」 「あの釦を押すな、するとあの書記の前の箱ん中の豆電燈に明しがつくんや。豆電氣はこつからは見えんけどな。電氣は赤と白とでな、こりや本葉と中葉とを區別するんぢや。その前には等級板があるけに、明しがつきや、こりや本葉の何等(なんとう)ぢやこりや中葉の何等ぢやいふことがわかるんや。」 「ふん……成程な。二人は相談し合ふといふことはしないんだね。何等にきめたかをお互ひに知らないんだね。」 「知らんのぢや。鑑定官が二人ゐるな正確と公平を期するためちうことになつとるんやからね。」 「ぢやあ、もし二人が一致しない時は?」 「そんな時は書記が知らせるけに、見直すといふことになるんや。」 しかし石黑が一層聲をひそめて話すところによれば、さういふことは殆ど無いといふことだ。鑑定官がそれほどに熟練してゐるとも云へるが、一つにはまた、鑑定官の一人が主任で、他は從屬的な存在だといふことにもよつた。つまり主任の鑑定が動かし難いものになつてゐるのだ。書記は多くの場合主任の鑑定にそのまま從ふ。 送り臺は引き續き押しやられ、トロッコは走り、それはまたもとへ戻り、葉煙草の包は次々に消化されて行つた。百姓達は送られて行く荷を見、また鑑定官を見た。眼鏡をかけ髭のある鑑定官はだが彼等の方を見ることはなかつた。彼等は無用の言葉を云つたり、またどんな意味の笑ひにしろ笑ひを見せたりすることはなかつた。彼等は周圍に對しては殆ど無關心で、車が軌道を行くやうに、きまりきつたことをきまりきつたやうにやる時の事務的な冷たさを持つてゐた。その冷たさといふものは、彼等の役目柄から來るおのづからなものであり、また仕事に慣れ切つてゐるといふところから來るものであり、鑑定に對する高ぶりとも云へるほどの强い自信から來てゐるものでもあつた。仕事に敏速であることは鑑定官の生命であり、誇りだつた。鑑定臺の後ろ、窓に近く、念のために等級別の標本が備へてあるが、疑はしい時に標本に照らし合して見なければならぬといふことは、その道の專門家ともあらうものの恥であつた。二人のうち若い方の鑑定官に見られる一種の誇張は、彼が人々のさまざまな眼を感じて居り、自分の一擧手一動を强く意識してゐることを示してゐた。 百姓達の關心は自分の荷の運命についてまはつた。だから、荷が鑑定官の手を離れ量目係の手に移ると、彼等の眼も亦そこへ移つた。ここでは三人が自動看貫を取りまいてゐた。二人は量目係、一人は記帳係だつた。鑑定の方から□つて來た紙を人夫の手から受け取ると、記帳係は讀みあげる。 「中葉の四等!」 その時はもう包を看貫にかけ終つた量目係は言下に應じる。 「二十キロ!」 記帳係は、「ええ、二十キロ!」と、復唱して記入する。 「本葉の三等!」……「十五キロ!」……「ええ十五キロ!」――淀みなく、二人の聲は一つのリズムを以て相和して行く。等級が聲高く讀み上げられる毎に、見てゐる百姓達の間にざわざわが起る。 彼等はここへ來てはじめて自分の包が何等級になつたかを、はつきり知ることが出來るのだ。彼等は眼に見えて興奮して來る。彼等は思ひ思ひの批評をはじめる。彼等は鑑定官の鑑定に對して、自分達の評價を對立せしめずにはゐられない。 「あれが四等かいや!さつきはあななものが三等やつたのに。あの三等より今の四等の方がずんとええやないか。」 その、「あの三等」の荷主がすぐ傍にゐることをも彼等は忘れて了ふ。まれに一等が出たりすると、ざわめきは大きくなる。誰だ、誰だとかたきでも探すやうにさわぎ立てたりする。豫想外の成績をあげてひそかに喜びの聲を胸のうちにあげるものもあつたが、やはり不滿をもらすものの方が多かつた。自分の包の等級がきまつて了ふと、彼等は自分の内に何かごつそりと穴があいたやうな氣持がした。何か一言云はねば氣がすまぬやうな、これだけですんで了ふといふ法はないと云ひたいやうな、さうかと思ふと萬事すんだとがつかり諦めて了うやうな氣持でもあつた。さういふ氣持の底にあるものは鑑定に對する疑惑と不滿だつた。道々ひそかに考へて來た自分の評價には自信があつた。その自信は容易には棄て得なかつた。こんな筈はないと思ふ。そこにさうして立つてゐるまも實に多くの考へが彼等の腦裡を駈けめぐる。 (どうしよう?云つたものか、それとも默つてゐたものか?)彼等はそれについてとくに强く考へる。不服の申立ての道は開かれてゐる。再鑑定を行ふことが出來る。云はうか云ふまいか? ためらひながら向うを見ると、そこに立つ鑑定官の姿といふものは大きく見える。云ひたい口をも强張らせて了ふやうな何かが彼にはある。《憎まれては損だ!》と彼等は考へる。しかも再鑑定を云つて、取り上げられたとして、それの實際の結果が殆んど云ふに足らぬものであることを、彼等は餘りにもよく知りすぎてゐる。それでも、たとへわづかでも、評價額が增加した場合はいい。前鑑定以下になつた場合にはどうだらう。費用までも自分が負はねばならぬ! しかし豫想外の好成績をあげるものもなくはなかつた。そして杉野の荷はその少數なものの一つであつた。 彼の荷は少なかつたから、ほんの數分間で片附いて了つた。本葉は殆どが三等で、なかに四等が少しまじつた。中葉は四等が大部分だつた。土葉は六等七等だがこれは僅かであつた。そして一瓩當りの賠償額、三等は壹圓四錢、四等は七拾四錢、五等は五拾錢、六等は參拾錢、七等は拾四錢だつた。 「ほう!」と、この結果には駒平も滿足らしくほほゑんだ。今年の出來は杉野の家としては例年になくよかつたのだが、三等がかう澤山出ようとはちよつと豫想外だつた。わづかの耕作段別だから、金額から云つて幾らの違ひでもないが、何と云つてもこれは嬉しかつた。石黑や菅原やその他部落の連中が、喜んだり羨ましがつたりした。 もう十一時に近かつた。するとその頃になつて場内が俄かに暗くなつた。日が陰つて來たのだ。ガラスに圍まれてゐる収納所の内部は明暗の變化の度合が大きかつた。これから荷を出さうといふ人々は不安な面持になつた。外へ出て空を仰いでみるものもあつた。風は依然强く時々びゆーんといふ鋼鐵板のふるへのやうな音で吹きつけて來た。しかしさつきまではからツとした高い空をつくつてゐたやうな風は、いつの間にか薄黑い濁つた汁を空一ぱいに撒き散らしてゐた。雲で一時日が覆はれてゐるといふのではなかつた。薄黑いろの空はどこまで行つてもきれ目がなかつた。彼等は場内へ戻つて來て、もう鑑定のすんだ仲間達が量目係から少し離れて立つて、話したり笑つたりしてゐるのを見ると、自然ひがんだ氣持になつた。さつきまであんなに天氣を氣にしてゐた連中が、自分の分がすんだとなると、俄かにこんなに暗くなつた場内にも氣づかぬ風で居れるのだ。後番の人々は不機嫌に默り込んで、自分達の荷を送り臺へと載せて送つた。搬入場の入口から吹き込む風は冷たく、コンクリートの床は冷えて、腰から下は冷え切つてゐた。順番を待つてふところへ交互に手をさし込んで立つてゐると、すぐに小便がたまつて來るのだつた。 量目係の手を通つた包は、必要事項の記載のすんだ用紙と共に、すぐその傍の檢査係の手に渡つた。ここでは包が各耕作者別に並べられた上で讀み合せがあつた。荷にも一包毎に、記帳係によつて票が添附されてゐる。下手間の女が、やや鼻にかかつたやうな聲で、慣れ切つた早い口調で、その票に記された包數、葉分、等級、量目について讀み上げる。檢査係は手にした用紙の記入と引き合して行く。間違ひがないときまつたところで、耕作者が一人一人呼び出される。 百姓達は、煙草耕作許可證と認印とをぐるぐる巻きにした風呂敷包の固い結び目を解くのに苦勞しながら、いそいそとして呼ばれて行つた。そして認印を押し許可證を渡し、「等級量目票用紙」の複寫をもらつて歸つて來ると、大急ぎで、葉煙草賠償價格表が貼りつけてある壁の前に行つて立つた。それともらつた複寫紙とを照らし合して見さへすれば、自分が幾ら金を受け取ることになるかがわかるのだつた。一年の、煙草耕作勞働が、どんな實を結んだかがはつきりわかるのだつた。半紙四ッ切型のうすいペラペラしたその紙には、一包毎に等級と量目とが、カーボンで複寫してあつた。この複寫の他の一枚はあの許可證と一緒に今頃はもう事務所の計算係の手に渡つてゐるだらう。今から二三時間の後にはあの窓口で金を受け取ることになるのだ。 すんだものから順次そこへ來て立ち、表を眺めまた手にした紙を眺めてがやがや云ひ合つてゐた。ふところから紙を出して壁にあてがひ、鉛筆を嘗め嘗め、いくらになるかを計算してゐるものもあつた。 「いくらになつたんや?え?」と、後ろから仲間がのぞき込む。「えらく景氣が好ささうやないか。」 「いやあ、」と、のぞき込まれたものは照れ臭さうな顏をする。「どうもあかんが。すつかりどうも行かれつちもうたが。お前はどうや。」 果して「すつかり行かれちまつた」かどうかは顏でわかつた。同じやうに云ひながら喜びを隱し得ないでゐるものもあつた。駿介もそこへ來て仲間の誰彼と話し、計算に行き惱んでゐる二三人のために計算をしてやつてから、もとの送り臺の所へ戻つて來た。 「急にえらう暗うなつて來たなア。」と、彼は、ほかのものと一緒になつて送り臺を押しながら誰にともなしに云つた。 「お前さんはもうすみなさつたで、安心がでけますのやろ。」それを引き取つて答へた鄰の男の言葉には思ひがけなくひがんだ調子があつたので駿介はふいに胸をつかれた感じだつた。彼は他部落の男だつた。「照らうと曇らうとお前さんにはもう何ちうことはござんすまいが。」男はつぶやくやうに云つて、新しい荷を、どしんと送り臺の上にのつけた。 さうしておいて彼は鑑定官の方を見た。鑑定官の前には彼の荷の一つが擴げられてあつた。鑑定官の一擧一動は强く彼の注意を惹かずにはゐないが、その時彼の注意をうばつたものはまた特別だつた。いつもはあんなに敏速に一つの包を捌いて行く鑑定官の手が、容易に今の包を行かしめようとはしないのだつた。包の中が上から下まで引つくり返して調べられてゐることは明らかだつた。何か無ければそんなに念入りであるわけはない。 その時、主任の鑑定官がわきを向いて、書記に何か云つた。鑑定臺に向つてゐた書記が、立つて、つかつかと引き絞つたカーテンの前までやつて來た。 「十七番は?ゐるかね、十七番は?」と彼は受附番號を云つて荷主を呼んだ。 「はア、」」と、駿介の鄰のその男は、さつと緊張した顏になつて、前へ出て行つた。「わしですが……何でござんせうか知ら?」 書記はだまつて鑑定官の方を指し示し、自分はもとの席に着いた。 十七番の男はおづおづと鑑定官の前へ進んで行つた。そしてかきまはされた自分の包にぢつと眼を注いだ。 「だめだね、かう品混が多くつちや。」と、鑑定官は男を見るなり云つた。「葉分が出來とりやせんぢやないか。再調し給へ。」 「へえ、そりやどうも。」と男は全く恐縮して、低く頭を下げると、擴げられた包を素早くもとに直し、また一つ低く頭を下げて包を抱へ込んで歸つて來た。彼はあがつて、心もち赤い顏をしてゐた。 「頼むぜえ。あとを。品混が出やがつたけに。」 同部落のものに、殘つてゐる荷を送り出すことを頼むと、彼は包を抱へたまま、急いで控室の方へ去つて行つた。 「たうとう品混が出やがつたなあ。」 「今日始めてやらう、品混は。今日はめつたに出ないと思つとつたが、野島の奴、たうとうやられよつたわ。」 彼等は笑つて話しながら、仲間から品混が出た以上は、今日の歸りはおそくなるといふやうなことを思つてゐた。葉分が出來てゐないで、各種の葉がまざつてゐたりするのが品混だつた。これは再び撰別して、一つの包を幾つかにしなければならなかつた。大抵はむしろ乾き過ぎてゐたが、濕氣の過ぎたものがあつても同じやうに再調を命ぜられた。これは風にあてたり、火を焚いたりして乾燥しなければならなかつた。その上で改めて鑑定に出すのだが、再鑑定はみんながすんでからのことだつた。當然金を受け取るのも最後であつた。 今日はいつもよりは少ないと云はれてゐたこの品混は、午後になつてから急に出て來た。朝のうちに出てくれれば時間がたつぷりあるから始末によかつたが、皆がもう終らうとする頃になつて出て來るのでは、役人と耕作者の兩方にとつていかにも迷惑な話だつた。それでも仲間中の熟練したものが力を貸して、素早く調理をし直して行つた。 午後になると、午前中収納された葉煙草は早くも荷造りされ、積み出されて行つた。檢査ずみの荷は、一等から七等までに區分した仕切りのなかに整理されてあつたが、下手間の男女が大勢でこれを薦に包み、繩をかけ、どしどしトラックに積み込んでしまつた。これはT市の專賣局出張所に送られ、ここで再乾燥にかかるのである。 早くに収納がすんだものにとつては随分待たされた感じで、午後三時近くになつて、漸く賠償金の支拂ひが行はれることになつた。 支拂ひは事務所の窓口で行はれた。事務所は搬入場の入口を入つたつきあたりだつた。自分達の荷は全部運び出され、代りに明日収納される荷が運び込まれてゐる廣い搬入場に、百姓達はふるへながら立つてゐた。下がコンクリートのたたきで、周圍がガラス張りの収納所の内部は、日が陰り出してからはだんだん冷えがきつくなつて行つた。長時間そこに立ち盡し、あれこれと氣を使ひ、最後に金を受け取る頃には、彼等は何となく堪(こら)へ性(しょう)をなくして了つてゐた。黑ずんだ唇のいろをして、時々足踏みをしながら絶えず窓口の方を氣にかけてゐた。話も餘りはずまなかつた。長い間の辛勞が今報いられようとする直前の光景としては、陰氣に過ぎる感じだつた。風はやまぬらしく、窓ガラスが時々ガタガタ鳴つた。 小さな窓口の戶が開いて、顏が半分出た。 「一番から十番まで。」 呼ばれたものはぞろぞろと出て行つた。 彼等が金を受け取つて歸つて來ると、また次の一句切が出て行つた。金を受け取つたものは、窓口から離れて後も、向う向きになつて、節くれ立つた指で何度も札を數へては見、數へては見した。それから袋の中や、三つ折れの大きな財布の中へ入れて、紐でぐるぐる巻きにしてしつかと縛つて、内ふところ深く押し込んだ。そしてこつちへ歸つて來ると、受け取つたものどうしで互ひに話し合つた。 「どうや、なんぼ引かれた?」 「うん……」 「肥料代はなんぼになつたんや?」 「肥料代は二十五圓ばしぢやが……」 「なにや、二十五圓ばしか。わしはちよつと六十圓近くになつたが」 「そりやお前とは段別が違ふけに。わしは肥料代のほかにも、乾燥室の借入金なんぞがあるやけんのう。」 金の支拂ひは銀行から出張して來て、行員の手から直接なされた。いろいろなものが、賠償金の中から豫め差し引かれて支拂はれた。肥料代はその中でも大きかつた。油粕は一俵六圓だつた。一段歩につき三俵は要つた。これは勸業銀行から低利で借りて共同購入するのだから、二月頃肥料を買ひ入れ、十二月頃の収納とすると、ほとんど一ヶ年の利息がかかるわけだつた。煙草耕作者組合の書記も出張つて來てゐて、組合の諸經費もやはりこの場で引かれた。 同じ組のものの支拂ひが全部すむのを待つて彼等は歸りかけた。駿介も、父や仲間と一緒に収納所を出た。 もう四時になつてゐた。日の短い最中だし、曇つてゐるので、あたりは暗くなりかけてゐた。百姓達は外へ一歩踏み出すと、思はずぶるツとからだをふるはせるやうにして、空を仰いだ。今にも雪でも來さうな空模樣だつた。 「よくまア吹きやがるなあ。」そんな風に云つて、手袋をはめ襟卷をし直して、鼻をくすんくすん云はせながら自轉車をならべてある軒下の方へと行つた。橫から來る風に逆らひながら、背をかがめ、顏をそむけ、ハンドルにしがみつくやうにして、村々に通ずる街道を歸つて行く彼等の後姿は寂しかつた。 「さア、わしらも一つ元氣で飛ばさうかい。」と、駒平がチユンと手洟をかみ、襟卷の端をふところへ押し込むやうにして云つた。 「ああ、行かうぜえ。早う歸つて今晩は熱い奴を一杯引つかけて、ゆつくりと寝んことにや。」 と、菅原が云つた。 「そのうち案内しますけに、どうぞ一つわしとこさ一杯やりに來ておくんなさい。」と、これは石黑だつた。 「大きに。」とみな禮を去〔ママ〕つた。「毎年毎年石黑の振舞ですまんのう。」 「なんの、なんの。」と云ひながら、石黑は歩き出した。 組内で、段當り賠償金の一番多かつたものは、組内のものを招んでお客をするしきたりになつてゐた。この組ではそれは今迄大抵石黑にあたつた。そして今年もさうきまつた。彼等の仲間うちでは、煙草を作ることにかけて、石黑は最古參者だつた。仕事に熱心でもあつた。それだけに品物の出來もいいのだつた。 「たうとう暗くなつちまひやがつた。」 石黑を先頭に一列になつて、風の中に向つて走り出した。 === 二 === 節季に備へるためのまとまつた金としては、葉煙草からの収入のほかに、牛を賣つて得た金、百二十圓餘りがあつた。 春、田を起す前に買つた二歳の朝鮮牛は、十一月の末に、麥蒔きがすむと間もなく賣つたのだつた。買つた時には八十圓に少し缺けた。十月末からひと月餘りは、牛を引いた百姓の群が、毎日ぞろぞろ街道に續いた。春買つて秋賣る牛のためには、町から仲買人が出張して來る。杉野の家では駒平が鼻綱を引いて連れて行つた。すでにその一週間前から、牛は一切の仕事から解放され、牛舎内はつねにも增して清潔に、新しく取り替へられた敷藁はたつぷりと厚かつた。牛のからだは刷毛をもつて丁寧に梳いてやつた。食べものは、切藁、牧草、にんじん、豆粕、もやしなどある限りのものを、あるひは取りまぜ、あるひは代る代る、出來得る限りの變化で與へた。そういふ心の配りは必ずしも賣らうとするものの評價を考へての打算からばかりではなかつた。その咸鏡道生れの、全身赤毛で、角は珍らしく黑く、蹄も黒い牡の朝鮮牛は、がつちりした骨骼で、その頸の太さと、恰好のいい腹のひき緊り方からもその種の好さが知られる、癖のない、いかにも性質のいい奴だつた。それはここ八ヶ月餘りの間の最も忠實な働き手だつた。煙草を始めるやうになつて、いくつもの主要な勞働が一時に輻輳して來る時もあるやうになつては、ことに、牛のゐない耕作といふものは考へられなかつた。田の除草にさへ、牛に除草機を引かせるものが、この地方にも此頃ぼつぼつと見えて來てゐた。 その朝は、出て行く前に、家ぢゆうのが牛のまはりを取りまいて、口々に何か云つては、額や鼻面を撫でたり、背や腹をばんばん、平手で輕く叩いたりした。毛の色艶は此頃一際よくなつたやうで、毛竝に添うて何べんも撫でてやる手に傳はるあたたかな感觸は、かういふ經驗が今年はじめての駿介にはことに忘れがたかつた。八ヶ月勞苦を共にして深い親しみを重ねて來てるだけに、却つて身にしむものを感じた。彼等は、一年足らずこの家の藁を食つて大きくなり、毎年秋になるとどこかへ賣られて行つた、それぞれに特徴のあつた過去の牛どもを思ひ出すのだ。 牛は頸をのばし、頭を低く垂れ、大きくゆるやかに右に左に動かし、また上を向きなどして、廣い額や大きな眼に比べて愛嬌があるほど短かく小さい角を打ち振りながら時時長く聲をひいて鳴いた。やがて駒平が曳いて去り、家の下の道の向うに隠れてまでも、その聲はしばらく聞えてゐた。その道は二曲りほどして、牛どもが集る原つぱに通じてゐた。 牛を春買つて秋賣るといふのは、牛耕を必要としない冬から春の間、牛をただ遊ばせて食はして置くその費えを省くためといふよりは、一に現金を得たいがためにすることにほかならなかつた。仔牛は普通七八十圓見當のものを買ひ、百二三十圓から四十圓位に賣れれば先づいいとした。豆粕を十枚位、價にして二十五六圓、それに藁を五圓は食はせるから、買値と賣値の差額がそのまま純益になるとは云へず、飼料を算入すれば結局とんとんといふのがむしろ普通であつたが、それでも厩肥が大分とれるから、この方で手間賃にはなると云はれてゐた。春から夏にかけてずつと現金収入の少ない百姓は、牛を賣る日を待ち構へてゐるのだ。牛を高く賣るためには、耕作に適するやう、彼を仕込まなければならない。人間のいろいろな命令と仕ぐさとを呑む込むやうに敎へなければならない。だから百姓は仔牛を買ふと、暇さへあれば牛を外へ引き出して、運動をさせながら、人にものを云ふやうにして敎へ込み、少し慣れて來たら田へ連れて行つて訓練する。さうして漸く仕事の上でも一人前(?)になり、人と動物相互の間の愛情も深いものになつて來たと思ふともう手離さねばならぬといふのだから、つらいわけなのだ。秋になるまで待つことが出來なくて、秋前に賣つて了ふものも少なくはなかつた。秋前に賣れば、すぐに秋の耕作に間に合ふから、あとで賣るよりも十圓乃至二十圓は高くなる、これに惹かれるのだ。しかしその結果は田を耕す時になつてよその牛を借りて來なければならぬといふことになる。そしてその代償は自分の勞力でする。牛の一日の代りに、人間が二日又は三日、先方の最も忙しい時に仕事の手傳ひに行くといふのが習はしである。 葉煙草からの収入は、無論そのなかに來年度の經營の費用を含んでゐる。牛を賣つて得た金も新しく買ふ牛のために備へておかねばならぬ。ほかの使途に廻せる餘裕がこの二つからどれほど引き出せるといふわけでもなかつた。しかしこの二口のまとまつた金が、しばらくでも手の中にあるといふことは何としても大きな力であつた。飯米のほかに幾らか賣ることの出來る米はあつても急いで賣りたくはなかつた。何も思ひがけぬ金が轉げ込んだといふのではないが、豫定通りのものが豫定通りであるといふことは喜ばなければならなかつた。かうしてとくにきつい今年の冬の寒さも苦ではなかつた。これで老父の駒平が神經痛に惱み、時々寢込むといふことさへなければ、何もほかにいふことのない冬であるのだが。 風が落ちて珍らしくよく晴れた日の暮れ方、彼等は始めての麥の足壓から歸つて來た。おむら、駿介、じゆん、お道だつた。五時にはもうほとんど暗い。駒平はこの二三日來、わるくて寢てゐた。曇れば曇つたで、風があればあるで、よく晴れればまた晴れたで、肉のなかは刺すやうに、抉るやうに、また灼くやうに痛んだ。朝は乳のやうな靄で、日が上ると同時にだちだちだちと雨の落ちるやうな音で霜の解け出す日は、よく晴れたが、氣溫がぐつと下るから、痛みはかへつてひどかつた。晝間はさほどではなく、夜になるときつと痛んだ。が、さうだからと云つて、晝間起きて動き廻つてゐると、恐らく冷え込むからなのであらう。報いは覿面に來て、次に來る痛みは一層激しかつた。手當てのしやうもべつになかつた。醫者にもかからず、そのやうな時には、炬燵の火をごくぬるくして、駒平は一日でも寢てゐた。食事も眼立つて細く、ぢつと眼を閉ぢて身動きもせず、口も餘りきかなかつた。苦痛を訴へるといふこともなかつた。病苦ばかりではなく、日頃の疲れが一時に出たといふふうにながめられた。粗末な建方の二階は冷えるので、冬になつてからはみんなと一緒に階下に寢るやうになつた駿介は、夜なかに時々眼をさました。一眠りしたあとの若い彼のからだは快くぬくもつてゐる。裏山には今夜も風が吼えてゐる。彼は襖を一つ隔てた向うの老父の氣配に、耳をすまさないわけにはいかなかつた。かすかに鼾の聞える夜があつた。何一つ物おとの聞えぬ夜があつた。しかしまた苦痛をこらへる呻きにちかい聲を聞かなければならぬ夜もあつた。その聲は斷續しつついつまでも續いた。駿介は思わず半身を起して、闇のなかにぢつと息をひそめるやうにしてゐた。突然のことのやうに、今はじめて氣づいたことのやうに、彼はすでにかなりに傾いている老父の年齢を思つた。そして自分が歸つて來てこの家に住みつくやうになつたことをよかつたとする氣持をあらためて深めるのであつた。 「どうですか、今日は。お父つあん。」と、手足を洗つて、上へあがると、駿介は云つた。「ちつとは痛みはいいやうですか。」 「うう。」と、駒平は云つて、大義さうにゆるゆると起き上ると、炬燵の上に顏をこすつた。眼をしばたたきながら、戶のガラス越しに向うをすかすやうにして、 「ぼう、もうこんなになるんかい。俺ら、ついうとうととしとつたもんぢやけに。――今日は家ん中はよう冷える。どこもここも何やらかう乾いとるやうで。」 咽喉がいがいがすると云つて、傍の茶盆を引き寄せて、冷たくなつた番茶を含んでは咽喉をカラカラいはせた。駿介は外は風さへなければ日向はずゐぶん暖かだと云つて、麥が順調にのびてゐることや、朝はあんなに土が霜に濡れてゐながら、風のために乾くのが早いのにおどろく、といふやうな話をした。臺所の方でごとごと音をさせてゐたじゆんが、その乾くといつたのを聞きつけて、家のなかもよう乾く、朝、お櫃を洗つてかけておいたのがもうカラカラだし、雨が降ると窮屈な臺所の床板の上げ下ろしも此頃は木が乾いて輕いといふやうなことを、大きな聲で云つた。感冒はかういふときにはやるんだから氣をつけなくつちや、と自身に向つて云ふやうに附け加へた。駿介は炬燵の火を繼ぎ足し、それからまた下へ降りて行つて、鷄の小舎と山羊の小舎とを見□つた。 夕飯が濟むと、親子は一つ部屋に集つて、寢るまでの時間を過した。此頃は彼等は多くの晩かうであつた。一年を通じてここしばらくほんのわづかな期間が、幾らか仕事が暇だと云へる時であつた。暇だと云つても、繩を綯つたり、筵を編んだり、夜なべの仕事のないわけはなかつた。たださういふ仕事もここしばらくはやめてゐた。やがて、もうすぐ、舊正月も待たずに激しい勞働が始まる。煙草の苗床準備がそれである。それを皮切りとして、それからはもう次から次へと少しの暇も許されぬ。それまでの短かい期間を、せめては少しはゆつくりしたいといふ氣か、おのづからみんなにあつた。 母は明りのすぐ下に坐つて、膝の上に襤褸をひろげてゐた。おむらももう六十である。眞綿が厚く入つて、切地の上にところどころ小さな玉になつて下つてゐるあつたかさうなちやんちやんこを着て、背中をまるめて、老眼鏡の眼でたどりながら、かなりおぼつかなげに針を運んでゐる。眞白な髪が年寄りには珍らしくたつぷりして、かぶさるやうなので、黑くコチコチした感じの顏が一層小さく見える。眼がわるいほか、彼女には喘息の持病があつた。ふだんでも息するごとにゼーゼーかすかに音をさせてゐるが、時々首を前へのばし、背中を一層まるめてこんこん續けさまに咳をする。赤くなつて力みながら、最後に自分で咳込みをふつ切らうとするもののやうに、ガーツと大きく咳拂ひをしてやめる。しかし冬季には大きな發作は少なかつた。それが一番激しく來るのは梅雨時だつた。――じゆんは火鉢の傍へ寄つて、麥稈眞田を編んでいた。それを編む手の甲は紫がかつて脹れ、その指先きはところどころ皸破れて赤く口を開いてゐた。じゆんは火箸の先をあたため、それで黑い皸ぐすりを溶して破れ目になすり込んだ。若い彼女は絕えず微笑を含み、生き生きとした紅い顏をして、たつたそれだけの手仕事をするのにも、全身をもつてしてゐるやうに見えた。時々はその手をやめて、傍に開いて伏せてある四月も五月も月おくれの婦人雜誌の頁をめくつたり、母や妹に向つて話しかけたりした。妹のお道は壁の一方に小机を寄せて、その前に小學生のやうにきちんと坐つて、本に向つてゐた。彼女は父親似の、目尻の少し釣り上がつた、額が男の子のやうな顏立ちで、何よりも本の好きな娘である。 駿介は父と向ひ合つて、炬燵に入つてその上に本をひろげてゐた。彼はこのごろの貴重な暇を得て、毎晩かうして本を開いた。はじめ彼はなんとなく不安を感じた。生活の激變、激しい肉體的な勞働は、生理的にも頭腦を硬化させ、細胞の組織を一變し、キメが粗くなつて書物による知識の吸収、緻密な論理の追求といふことが今までのやうなわけにはいかぬのではないか、といふやうな危惧を感じたのである。が、さうした危惧は全く意味のないことだつた。むしろ事實はこの反對であるとさへ云へた。肉體的な勞働は彼に活力を與へ、彼の細胞をリクリエートしたものだらう。一時書物から離れてゐたといふことは、結果から見れば、いいこと、あるひは必要なことであつたとしか思へなかつた。新しく讀み出した彼の頭腦は潑剌として、新鮮な水を含む海綿のやうにたんらんにすべてを吸収した。彼の精神はいつのまにか、彼自身も知らぬまに、いろいろな垢と來雜物が拂拭されてゐた。それは肉體になぞらへて云へば、チブス後の復活したそれのやうなものだつた。日々の新しい生活に對して淸新な感動をもつて立ち向つて來たやうに、書物の世界に對しても同じやうな感動をもつて踏み込んで行くことが出來た。もう長らく彼はこのやうな狀態からは遠のいてゐた。何を讀んでも物倦く、つまらぬ。理解は一通り行き届いてゐながら、對象と自分との間には幾重にも何か眼に見えぬ煙幕のやうなものが立ちこめてゐる――一年前、歸郷する前後の彼はそのやうな狀態にゐたのだつた。かつて中學から高等學校へかけて、夜を徹してまで外國の文學や哲學などを讀み耽つたあの感激、情熱といふものはどこへ行つてしまつたのだらう?當時からわづか二三年後にはもうこんな狀態だ。この無感動、この衰弱といふものは一體どこから來たのであらうか?それは一時は誰にでも來るやうな、靑年期の病氣の一つなのであらうか?それともそれはもつと時代的な社會的な意味を持つたものなのであらうか?かつてのあのやうな時期は何人にももう二度とは□つて來ないのであらうか?――駿介は寂しい氣持でそのやうなことを幾度も思ひ返した。ところが、その失つてゐた時期を、思ひがけなくも、彼は今再び取り返すことが出來たのである。 夜更けまで讀んで彼は容易に眠くはならなかつた。晝の疲れにも倒れなかつた。夜が更けるにつれて肩のあたりに忍び寄る寒さも何ほどのことにも感じなかつた。やや讀み疲れると、久しく無沙汰してゐる、東京の親しかつた二三の友達に手紙を書いたり、古い葛籠から祖父の代からのいろいろな書きつけや帳面を引つぱり出して來て見たり、古い寫眞帳をくりひろげて見たりした。それらのものも充分に彼を樂しますことが出來た。彼は見ながら、熱い番茶を幾杯も代へて、うまさうに飮んだ。 彼が今讀んでゐるのは、農業の經濟的方面や技術的方面に關する書物だつた。それらは今の彼が日々生きて行くために必要とされる知識だつた。そのあるものは、今日獲得されれば、すぐその翌日、實際の仕事のなかに生かされるといふふうだつた。さきに云つたやうな彼と對象との間の隙間の無さ、新しい知識への感動は、おそらくはもつと手近に、右の關係から來てゐるものにちがひなかつた。 「お父つあん、やつぱり一度醫者に見せたらどうですか。」 壁の方に向いて横になつてゐた駒平が、寢返りを打つて、こつちの明るい方に顏を向け、物憂ささうに眼を見開いた時、本の上から顏をあげて駿介が云つた。駒平はしかし、ゆつくりゆつくりした口調で答へた。 「あきやせん。俺らのこの病氣にや醫者はなんちや役に立たんが。」 「そりや治り切るなんてことはないでせうが、いくらかでも痛みが薄らぐだけでもいいんだから。」 「今までにも何度か醫者にはかかつたが、何せえもう十年このかた毎年毎年のことぢやけんのう。村の醫者にやむろん、赤十字の醫者にもかかつたし、手療治なんども、ええと云つて人の敎へてくれるもなア大抵やつてみた。けど、どれもこれもあきやせん。藥をもらへば、その當座だけはちよつとええが、ほんの當座だけぢや。第一、醫者はみんなこちとらには出來(でけ)んことばかり云ふで、どもならん。やれ仕事をやめて溫泉さ行けとやら、電氣をかけに毎日半年がほども通へとやら。――結局、まアかうして溫(ぬく)とうして、ぢつとして寢とるのが何よりぢや。」 「そりや、結局は、からだの無理からばかり來てゐることなんだから。」 「何も餘計な手をかけんと、溫とうしてぢつとしとつて自然とおさまるのを待つとるのが一番ぢや。そのうちにや氣候も溫とうになるし……しかし、これでようしたもんぢや。おつ母さんと俺らとは代り番こぢや。おつ母さんの喘息もやつぱしこつちから醫者に愛想づかしせんならん病氣ぢやが、もしもこれが俺らと一緒の時であつて見い、えらいことになる……天道人を殺さずとはようしたもんぢやがな。」 駒平はゆつくり半身を起して、傍の煙管を取つた。ぢゆーツと終ひの方で脂の音をさせて一服うまさうに吸ひ終つた。それからふところからずつとなかへ手を入れて、腰にあててゐた懷爐を取り出した。「じゆん、これ、ちよつくら。」と云つて、そつちの方へ押しやつた。じゆんは古い懷爐灰を棄て、新しい懷爐灰に火をつけ、ふーつと息を吹きかけた。赤い火花がパツと散つた。 外は靜であつた。裏山にも珍らしく音が絶えてゐた。月が高く上つて、空を差してゐる葉の落ち盡した木々の枝々の交はりもはつきりそれと知れる明るさである。その中で空氣中の水氣が玉に結ぼれ、凍つて行く。さういふ外の澄んだ靜けさが家のなかにまで侵み入るのだつた。新しく仕替へた懷爐に腰のあたりが熱いぐらゐになると、からだのほかの部分に、ことに襟元にかへつてぞつとするやうな寒さを感じた。 「じゆん!もつともつと炭をくべろや。薬罐をちんちん云はせにや。寢る前にみんな熱い砂糖湯でも飮んで、少しなかから溫(ぬく)とまらにや。」と、駒平が云つた。 「もう少しここを繕らうて了うてから。」と、おむらが獨りごつやうに云つて、なほも針を進めようとしたが、丁度その時絲の終りに來たらしく、針を明りの方へ高くかざして、新しく絲を通さうとしたが、弱つた眼に針めどは動いてしばしも止まらなかつた。傍に居て火鉢に炭を繼ぎ足してゐたじゆんがそれを見て、すぐに代つて通してやつた。 こつちから母の横顏を見てゐた駿介は、毎日見慣れてゐる母の顏に今はじめて氣がついたことがあるやうに思つた。知つてゐたことのなかに新しく何か見たやうに思つた。彼は母の傍へ寄つて行つて、「おつ母さん、ちよつと。」と云つて、手を輕くその肩において顏をのぞき込んだ。おむらは、「何ぢや、駿は。お醫者さんの眞似かいな。」と云ひながら、さう云はれるままに、その小さな顏を明りの方へ近く持つて行つた。駿介は母の眼にぢつと見入つた。やや褐色がかかつた黑目のなかの瞳。しかし黑い筈のその瞳は黑くはなかつた。黑いどころか白濁してゐた。右の瞳はすつかり白い薄皮に覆はれ、左のそれも半ば白く變つてゐた。 「おつ母さん、これで見えるんですか。」と、駿介はおどろいて云つた。 「うん、だんだん見えんやうになつて行きよる。」 おむらは當り前のことを云ふやうに云つて、云はれるままに左の眼を閉ぢた。 「何も見えやせん。そこらへんがぼんやり黄色に見えるだけや。」 駿介はその顏の前に近く手をやつて、上に下に振つて見た。おむらは、薄暗いところに、何か黑いものが動いてゐるだけだと云つた。それから右の眼を閉ぢた。 「こつちはまアどうにか見えるが。顏をずつと近く持つて行きや、大抵見えんこたアない。それでも去年から見りやずツと見えんやうになつたがのう。一年一年見えんやうになつて行きよる。」 他人(ひと)事のやうに靜かに云つて、また膝の上の襤褸を取り上げた。 「底翳(そこひ)ですね……白ぞこひつて云ふんですね。それに違ひないけれど、何とかしなけりや。」 「こりや年寄りの眼やけに。年を取りや大抵のをなごはかうなる。まるで見えんけりや困るけど、どうにか見えとるうちは、高い錢かけたり、暇だれしたりするには及ばんこつちや。」 病氣や醫者の話から、ふと氣づいたらしく駒平が云つた。 「駿、お前、今度目歸つて來てから、森口の息子に會つたかいや。」 彼については、前に足を怪我したとき父から聞いて知つてゐた。 「いや、まだ會はないんです。これから世話にもなるんだし、一度會つて挨拶をしとかなくちやと思つてゐるんだけど、訪ねて行くとなると何だか億劫で……それに暇もなかつたしするもんだから。一度、自轉車で行く姿を見かけたことがあつたけれど。」 「一度會つておくがええ。何と云うても森口は村ぢや有力者やけに。――それにお道のこともあるよつて、今度會つてお前から一つ賴んどいてくれんかな。」 「お道のことを――ああ、さうですね、そりや森口に賴んでもいいわけですね。」と云つて、駿介は隅の方で默つて机に寄つてゐるお道を見た。 高等科を卒へたお道は、看護婦にならうとしてゐるのだつた。それは誰から云はれたものでもなく、自分自身からの發意からだつた。彼女は町へ行つた時に、その方面の受驗に必要な本を買つて來て、わづかな暇も無駄にせずに讀んでゐた。そのさまには何か眞劍なものが見られた。無邪氣なこの年頃の娘のなかに伸びつつあるそのやうな意志的なもの、自分のおかれてゐる境遇をさとつて、ひとりで自分の道を切り拓いて行かうとしてゐる姿を、駿介ははじめて見たもののやうに思つた。はじめは誰にも相談せず、自分ひとりで考へながらやつてゐるやうなのが、いぢらしくもあり、また健氣でもあつた。一體に、ふだんから、思つてゐることをさう賑やかに言葉や色に出す方ではなく、だがさうかと云つてただ内へ内へ籠る一方といふのではなく、考へたことはすぐにも行ひとしてあらはれるから賑やかである必要がない、とさういつたやうな子であつた。明るく外に向つて開け擴げたじゆんの性格とはちがつてゐた。さういふお道を、駿介はしばらく默つてわきからいたはりの眼で見護るやうにしてゐたが、ある時はじめて彼女の志望について妹と話した。それまでお道は駿介にあまり馴染まなかつた。やつと小學生に入つた年頃に別れて、それからはずつと別れ別れにくらして來た兄だつた。時々渡り鳥のやうに立ち歸つて來るかと思ふと、すぐに慌ただしく去つてしまふ。その度毎にぐんぐん伸びて、顏にも姿にもものの云ひぶりにも昔の兄のおもかげは殆んど殘らなかつた。さういふ存在が、昔から何の疑ひの餘地なく自分に深いつながりがあるものときめられて、今もかうして一つ家に寢たり起きたりしてゐるといふことが、時には何やら不思議な感じであつた。向ひ合つて坐つてゐると、胸が壓され、息がつまりさうな氣のすることがあつた。薄髭が生え、面皰が一つ二つ熟んでゐる顏を見、靑年に特有な汗ばんだ肌のにほひを嗅いで、憎しみと敵意のやうなものを感じさへした。それは血のつながりの深さから來てゐる複雜な一種の感情で、愛情とは裏と表の關係にあるものであつたが、もとよりお道にはそんな自覺はなかつた。そしてただ掻き亂すやうな不思議な感情の經驗に苦しんだ。駿介の東京からの土產を小さな子供のやうに有頂天になつて喜び、彼が着いたその日から、戯談口をきき合ひ、會はずにゐた何年間かが何の障害にもなつてゐない、かへつて親しみを増し深めるものになつてゐるじゆんのやうには、到底素直で蟠りなしにあることは出來なかつた。 ところが、一週間足らずゐて、駿介が歸つてしまふと、お道はまた思ひがけない、新たな氣持を味はふのだつた。彼女は空虚を感じた。そしてさういふ氣持の原因がやはり駿介にあることを認めなければならなかつた。彼女はそれを感じた。すると兄へのなつかしさが、非常に深く激しいものとして一時に甦つて來るのであつた。 その兄が今度は一時的にではなく、ずつと自分達と一緒に住むやうになつても、なほしばらくは人が普通兄に對して持つやうな氣持を素直には持てなかつたのである。駿介が、彼女の志望としてゐるものについて話しかけて來た時、お道は赤くなつて口ごもつた。しかしお道が兄に對して何でも思つてゐることが云へるやうになつたのは、それ以來のことであつた。急に兄に對してよりかかる氣持を深めて行つた。駿介ははじめ看護婦などではなく、もつとほかに何かないかと思つた。彼はあまり看護婦などは好まなかつた。しかし、好まぬと云つたところで、では一體何がほかに、小學校しか出てゐない田舎の娘のためにあるのであらう。彼は勵ましの言葉を云つた。そして必要な二三の書物を買つて與へもした。 「今は何を讀んでゐるんだい?」と、駿介は訊いた。お道は開いてゐる本の背を、チラとこつちの方へ向けて見せた。それは有名な博士が書いた生理學の講義であつた。ラヂオの講演をもとにして、平易に、しかし要領よく人體の生理全體に亙つて書いた本であつた。駿介はそれと、もう一册机の上にあつたのとを手に取つて見た。他の一册といふのは看護學の本で、試驗問題集が附錄になつてゐた。どつちも、彼女に手に渡る前に、もう何人もの人手を通つて來たらしい、綴(とぢ)もグヅグヅになつてゐるやうな本であつたが、それでも彼女が讀んだあとといふものはよくわかるのだつた。それは繰り返しよく讀まれてゐた。試驗問題のあるものの上には、赤鉛筆で〇や△などのしるしがあつた。「人事不省ノ徴候及其處置ヲ述ベヨ」「手指ノ消毒方法ヲ記セ」「シヤイネ・ストツク氏呼吸現象ヲ詳記セヨ」――さう云つたやうなものであつた。それを見てゐると、駿介は、突然のことのやうに、自分のこの妹に對するいたはりのなほ足らなかつたことを感じた。彼女のこれらの勉强に、自分も力を協せ得べき筈だといふことを思ふのだつた。 「シヤイネ・ストツク氏呼吸現象つてのは何かな。かうして見るとずゐぶんむづかしさうな問題もあるんだね。」と駿介は問題集の頁をめくりながら云つた。お道は微笑しただけで默つてゐた。するとじゆんが云つた。 「お道はわしなんぞと違うて頭がいいけに、そのくらゐのもんはなんちやないがな。春には試驗を受けて、見たがええ。たんだの一囘で受かるやらう。」 「そりや駄目や。學科には自信があつたとて、實地の經驗がないによつて。」 「やつぱし、講習所さ入らないかんのかいな。」 「なんだね……講習所でなくつても、一年以上、醫者の所で看護婦見習をしたといふ證明がありさへすりやいいわけなんだらう?」と、駿介が訊いた。 「ええ、さう。」 「どつちがいいかなあ。講習所だと家から通へるといふことがあるが……。」 駿介は考へ込んだ。「講習所は郡の醫者が交代で來るんだらう?大きな病院のやうなとこなら、かへつてその方がいいんぢやないかな。」 駿介やはり森口愼一に一度會つておかうと考へた。妹のことを賴み、それに父と母のことについても一應訊いておきたいと思つた。森口愼一などと云つても、同じ村から出たインテリの一人としての關心があるだけで、昔から別に親しかつたわけでもなく、それぞれ自分の考へといふものを持つやうになつてからは會つて話したこともなく、それだけにこつちからわざわざ訪ねて行つて會ふといふことになると億劫で、なんとなく氣の進まぬことであるのだが。 「本はどうだい。今持つてゐるだけぢや足りないんだらう?是非いるつていふものがあつたら云つてみないか。」 「看護學の本がね、」と、お道は、兄が手にしてゐる本の方を指しながら云つた。「それぢやあんまり簡單すぎるんや。それに古すぎるし……。もう少し新しうて、詳しいのが欲しいんやけど。」 「成程な、こりや古いや。」駿介は、本の奥附のところを開いてみた。「大正二年か。――お道の生れるずつと前ぢやないか。」 彼女はそれを、町の古本屋の、均一本のなかから探し出して來たのであつた。 「ぢやあ、何ていふのがいいの。」 「吉井つて云ふ博士の二册になつた本がええさうやけど、なんぼにも値段が高いによつて。」 「いくらだい。」 「上卷が四圓で下卷が五圓やさうな。」 町には醫學の學校がなかつた。その方面の本を古で揃へてゐるといふ本屋なども思ひ當らなかつた。駿介はやはり東京の知合ひの誰かに云つて賴んでやらうと考へた。五圓以上といふ金は、今の彼等にとつては實に大金だが、出來るだけ早くその願ひはかなへさせてやりたいと思つた。 「もう寢ようぜ、みんな。」と、駒平がその時ねむさうな聲で云つた。「もう遲いけに。今晩はずゐぶんよう冷える。」 みんな立ち上つた。おむらは膝のあたりの絲屑を拂ひ、襤褸を風呂敷に包んで、針箱や針立てと一緒に押入れのなかにしまつた。お道は本や雜記帳をのせた小机を持ち上げて次の部屋へ立つた。駿介は炬燵を部屋の片隅に押しやつた。じゆんがそのあとから箒で掃いて行つた。 「ああ、さうさう、忘れとつた。」と、のべられた布團の上に、眞先に横になつた駒平が、思ひ出して云つた。 「暮れ方にお前が歸る少し前に、廣岡の親爺が寄つて行つた。何か駿に賴みがあるさうな。」 「賴みが?わしに。」 「ああ。また明日にでも來るさうな。」 「廣岡の親爺がわしにつて。何かな。」 「何か知らんが。――わしは丁度少し痛み出して來た時だもんで、何も話さずにすぐ歸つたが――けど、駿、お前これから追々と忙(せわ)しなうなるぜ。村の者ら、なんだかんだといろんなことをお前なんぞのとこさ持ち込んで來ようわい。そりや、今から覺悟しとらな。――面倒なことが多いにきまつとるが、短氣は出さんがええ。一々短氣を出しとつたら、村には住めんよつて。何もかも勉强ぢやけに、そのつもりでやるがええ。根氣のええのが一番やけんのう。」 === 三 === 父のこの言葉は、駿介自身が、内々氣づき始めてゐたことに關してゐた。 此頃、村の人々の自分を見る眼が、自分への對し方が、何となく變つて來たらしいことを、折に觸れて、駿介は感じさせられてゐた。道を行く。村人に逢ふ。「お疲れさんで。」「毎日えらう吹きよりますなあ。」そんな挨拶を交して別れる。普段と何の變りもない、鄰り同士の普通の挨拶ながら、言葉つきや、それを云ふ時の彼等の全體の感じに、何か今までとはちがつたものが感じられるのだつた。氣のせゐだといふやうなことではない。また人の多く寄り集るところ、たとへば小間物、雜貨などを商なふ、村一番の店の野田屋へ行く。日暮れ方のさういふ店さきはことに混んでゐる。土間に立つもの、上り框に腰を下すもの、かみさん達のなかに、土に汚れた男達の姿もまじつて、廣い店さきも所狹いほどである。軍手とか地下足袋とかシヤツのボタンとか、藁紙とか、さういつた買物をすませた後も彼等はすぐには立ち去らうとはしない。一服つけながら大聲で話し合つてゐる。一つには、土間の、大きな鐵の火鉢に惜しげもなくくべた炭の火が眞赤なので、店の前を通るものは、日暮れなど、用がなくてもちよつと立ち寄つて行かうといふ氣になるのだ。戶を開けて入ると、炭火と人いきれとにムツとするほどで、臭いやうなにほひも寒風に吹かれて遠道を歩いて來た身にはなつかしかつた。もう一時間ちかく、火鉢の前に大きくはだかつて、顏を眞赤にほてらせながら、股火をしてゐるものがある。股引など、火にあたりはじめはかへつて濕りが出て肌にも餘りいい氣持とはいへないのが、その頃になるとハシヤハシヤして來て、直接火にあたるところばかりではなく、全身、背なかの方までぬくぬくして來て、とろとろとしたいい氣持で、すぐには容易に立てなかつた。濡れた地下足袋を脱ぎ、底の泥をこそげ落し、穴の明いた眞黑な軍手と一緒に、火箸や爐せんで支へをして火鉢の緣にならべ、ひどい臭氣をさせてゐるものもある。 さういふ人々の後ろに立つて、駿介はためらつてゐるやうに見えることがあつた。まつすぐ人人の間を行き、ずつと前へ立つて、商品の間をこまめに立ち□つてゐる小娘を呼んで、必要な品物を云ふ、ただそれだけのことだ。が、さういふ自分の動きが何となくあたりの空氣を變へてしまひさうな氣がするのだつた。それは今でもはほ百姓達の集つてゐる所へ出ると、どうしても自分に拘泥する氣持が殘るためであつた。自分と彼等との相違の意識、彼等の世界を向うに見て、そこにまだ溶け込めきれぬ自分を感ずることから、駿介はなお脱却することが出來ないのだつた。脱却しようとして脱却出來るものでもない。それには長い月日をかけねばならぬ。さう思つてゐる駿介は、しかし、自分の存在があたりにかもし出す雰圍氣、周圍に與へる影響については非常に敏感だつた。時としては神經質すぎるほどだつた。たとへば今の場合にしても彼が入つて行く。人々は彼の姿を見、聲を聞いて、何となくハツとわれにかへつたやうな氣持になる。今まで夢中で話してゐたり、高笑ひしてゐたりする聲がやむ。急にあたりを見□して、「ああ、すつかり話し込んでしもうた。遲うなつた。どれ、去(い)のうか。」と云つて立ち上る。――と云つた風にさせるものが、何か知ら自分の側にあるとすれば、――入つて行つたものがほかのものならさうはならぬのに、自分だとさうなるといふものがあるとすれば、彼はそれを避けたかつた。別にどうといふことはないが、避けたかつた。 そんな氣持のうちにやがて彼は前に立つた。店の小娘は堆い品物のかげに半ばかくれてこつちに背なかを向けてゐた。すると腰をかけて、火鉢にささりこんでゐた男が、すぐに駿介に氣づいて、にこにこと笑ひかけて來た。 「ああ、杉野のあんさん。お寒うござんす。まア、こつちさ寄りまあせ。」彼は膝を開き、重い火鉢を片方にずり寄せて、坐るための場所をつくつた。「さア、寄りまあせ。ずつと。どうもえらい寒さだで。」 これは他部落の男である。顏は見知つてゐたが、名は記憶にない。今まで格別に言葉を交したこともない。 彼が云ふと、今まで彼と話してゐた二三人のものも、それと氣づいて、口々に挨拶の言葉を云つた。頰冠りしてゐた手拭ひを取つて、丁寧に小腰をかがめたものさへあつた。なかには全然見知らぬものもある。駿介が挨拶を返してゐると、一人が、店の奥へ向つて、いかにも世話燒きらしく、 「ねえさん、ねえさん。お客さんだぜえ。こつちだ。こつちだ。早くしなよ。」と、大きな聲で怒鳴つた。 買物をすましてからも、駿介はそこに腰を下し、皆としばらく世間話に打ち興じてから歸つた。歸る時、戶を閉めてから、チラと後ろを振り返つて見ると、ガラス戶の向うに、なお居殘つてゐる人々が、みな云ひ合したやうに、こつちを、自分を、見送つてゐた。自分が去つたあと、自分のことが人々の噂□に上るだらうといふことを駿介は感じた。たつた今人々と取り交された何氣ない話の間にも、やはり駿介は、人々の自分に對する態度が何か特別な關心によつて裏づけられてゐることを感じたのである。 これに似たやうな經驗は、村の共同風呂などでもあつた。 明らかに駿介は、多數の村人たちの眼に、特別な注意をもつて見られ始めてゐた。この變化は、今までは普通一般の鄰人として格別氣にも止めず、せいぜい淡い好奇心をもつて見るに止まつた駿介の上に、何か新しい發見をしたと云つたやうなものだつた。そして駿介は、人々の自分に注ぐこの注意の眼が、反感や惡意からのものではなくて、却つて反對に、一種の尊敬と、敬愛と、親身な感じを伴つたものであることを感じたのである。 この思ひがけない新事實は、一體、何に基因してゐるのであらう? この新事實の發生は、少くとも駿介自身がはじめてそれに氣づいたのは、ほんの十日ほど前のことに過ぎなかつた。近頃、何かそのやうな結果を生ずべき原因が、自分の身に就てあつたであらうか?深く考へて見るまでもない。そこにはただ一つ、煙草の耕作段別の擴張について、自分の微力が幾らかの足しになつたといふことが同じ部落の人々に、さらにそこから他部落の人々にまで廣く傳へられたといふことがある。駿介は、未だに、果して自分の力にあの結果に幾らかでも與つたものかどうか、一體、自分の陳情がどれほどの力を持ち得たのかと疑つてゐる。しかし兎も角、思ひあたることと云つてはほかにはないのだ。田舎において、人と物についての噂□がひろがる速さといふものは人々が往々想像してゐる以上である。煙草の一件などは、噂話としても恰好なものであつたに違ひはない。それは彼等の經濟に關する事柄だけに、熱情をもつて語られたであらう。ある場合には嫉妬さへ誘ひ出したことであらう。そしてそこには必ず駿介の名が伴つたことも間違ひない。話が口から口へ傳はり、外へと擴がるにつれて、誇張の度も大きくなり、いろいろな附會も行はれたことであらう。…… 附會されたに違ひないものをあれこれと想像し、自分が實際とは似ても似つかぬ何か大きな存在にされてしまつてゐるのではないかと思ふと、駿介は、ただ苦笑ではすまされぬものを感じた。人々の間に、何時しか創り出されてゐる滑稽な自分の姿を思つて彼は赤面した。羞恥と同時に不安と不快をも感じた。そしてそれは彼をそのやうに取り扱ふ人間に對してといふのではなしに、己れ自身に對してであつた。 その責任がどこにあるかは問はず、そのやうな世間的評價を得てゐる自分自身に對して彼は激しい嫌惡を持つた。昔から彼はかういふ男であつた。學生時代から、自分の實質以下に買はれることにはむしろ平氣であつたが、實質以上に買はれることがあると非常に氣にした。彼はひどく羞恥し、もしもその評價に多少でも甘えてゐるやうな自分に氣づく時には、ひどい自己嫌惡に陥つて、暫くは仕事が手につかぬほどであつた。學校でもだから派手な存在ではなかつた。今は一頃ほど、内攻的ではなくなつたまでだ。彼の少年期から靑年期へかけての環境は、彼の生得の性情を一方へと深めた。どんな意味ででも彼は自分の足もとを見つめないでは、先へ踏み出すことは出來なかつた。絕えず細かな自己省察を必要とされた。美德を勵んだわけではない。彼としてはただ、さうでなくては生きることが出來なかつたまでのことだ。敎壇の倫理ではなしに、日々生きるための必要物として少年時からさういふ實踐道德を强ひられて來た彼の人間は、おのづからほかの學生達とは異つてゐた。彼は朗らかでもなく、所謂靑年らしくもなく、時には利己的にさへ見えた。それで、一部の學生からは嫌はれた。それが誤解であつたともなかつたとも云へない。さうした外觀が、駿介のすべてでなかつたことだけは確かだと云へる。 誤られた評價に逢つた時の、今までの彼の對應策は、だから一つしかなかつた。益々消極的になつて行くことである。この上とも心して不必要な出しやばりは避けるやうにすることである。さうしてそんな評價を受ける機會を少くすることだ。 だが、今日の彼は果してそれですませるであらうか?過去の彼はいかにも明哲保身の道にかなつてゐた。それはそこではいかにも一つの德であつた。しかし今の彼は必ずしも保身を唯一の目的としてはゐない。何よりも先づ彼の過去は、外に向つて行動しないといふことを特徴とした。不當な評價といふ、その評價は何等かのさういふ行動あつてのものである。だから先づその行動を切つて捨てればいい。不當な評價を與へた他人をではなしに、つねに自身を嫌惡した駿介はその意味ではまことに正當なのであつた。だがそれは過去の彼であつて、現在の彼は行動を生命としてゐる人なのである。社會に積極的に働きかけることをもつて生きる道としてゐる人なのである。 一度、社會に向つて何等か働きかけようと決意したものが、その行爲と、行爲の主體に對する世間の評判に、それがどのやうなものであるにしろ、引き□されるといふことは本來無意味なことだと、氣持の上だけにしろ蹈(ふん)切りをつけるまでには、駿介は尚よほどの思考と感情の浪費を續けなければならなかつた。そしてそれは必ずしも、世間の買被りがそんなにも氣になるやうな駿介にのみ特別なことも云へなかつた。現代の知識靑年が、行爲の世界に入らうとする時、彼は思ひもよらぬ障害や蹉跌の原因を、主として自分の内部に見つけておどろかなければならぬのだつた。 そんな心の動きを感じながら、一方、自分に對する農民の對度から、駿介はある强い感動を受けた。そしてそれはすべての障害に打ち克たうとする勇氣を彼に與へるものであつた。此頃の彼は、敢て珍らしからぬ「ものの道理」が、實生活のなかで、一つ一つ確認されて行くのを見るときも最も感動し、新鮮な喜びを感じるのであつた。村の人達が、生活の利害に關してそんなにも敏感に反應するといふことは、輕侮の心を起さしむるどころか、駿介には美しく見えた。今までの駿介は、學校を途中で止して歸つて來た風變りな男として、村の一部のものの好奇心をそそつただけであつた。讀み書きはたつしやだらうから、何かの時には役に立つ、せいぜいそんなふうに見られてゐただけだつた。ところが今、彼等のお生活利益に直接交渉を持つ人間として現れて來たので、彼等は改めて駿介を見直し、自分達に緊密なつながりあるものとして心にはつきり刻みつけたのだつた。これは駿介の、何よりも喜び感謝しなければならぬことである。 とりわけ駿介が喜んだのは、今度のことをきつかけに、村の靑年の一部が、彼に興味を持ち、彼に近づき、彼と語りたいとねがひはじめたと知つたことだ。寺田の源次を介して、彼等に近づく機會を得たいといふ望みを、駿介はかねてから持つてゐたが、まだその時を得なかつた。今日(こんにち)村の靑年達が、自分等の現在についてどう考へ、どんな夢想を抱き、部落や村や縣から廣く國までの社會の動きをどんな眼で見てゐるかといふことは、容易にうかがひ得ないことであり、それだけにまた知りたい、魅力のあることでもあつた。それでゐながら、お互ひに氣忙しく、源次とさへもゆつくり寛いで話したことがない。 四五日前のある日、晝から雨が降つた。雨は途中から霙に變つた。午前中、僅かに伸びた蠺豆の畝間(うねま)の土を鋤き返してゐた駿介は、丁度それが終つた時に來た雨だつたので、工合がよかつた。少し濡れて歸つて來て、午後からは仕事を休んだ。しばらく炬燵で溫(ぬく)まつてから髪床へ行つた。 床屋は雜貨店野田屋の筋向ひにあつた。駿介が、齒がちびて角(かど)がまるくまくれ上つてゐる足駄に、雨に解けはじめた凍つた道の泥を後ろにはね返しながら歩いてゐる時に、床屋の親爺の鹿本喜助〔ママ〕は、持ち前のがらがらしたつぶれ聲で、しきりに戲談を云つて皆を笑はしてゐた。客の顎にあてた剃刀に眼が向く時と、店の片側の緣臺に腰かけたり坐つたりして持つてゐる客の方に顏が向く時とか、半々ぐらゐである。口はほとんど休む時がない。仰向いてゐる客は、剃刀が顏の上を走る合間に、同じ顏の上を飛ぶ唾をも感じた。しかし客も、さういふことを一向苦にする樣子もなく、剃刀がちよつとでも顏から離れたなと思ふと、すぐに口をきいたり、聲を立てて笑つたりして、話のなかに割つて入らうとした。口元をおさへられながらも、もぐもぐと口を動かして、嘉助は剃刀を持つた手をしばらく手持無沙汰でゐなければならなかつた。鏡の前にならべた二つの椅子と向ひ側の緣臺との間隔はほんの僅かで、奥行きもそれに應じて狹い所へ、四人も五人もが詰めてゐた。しかし彼等のすべてが、刈つたり剃つたりしてもらふ客ではなかつた。たわいなくしやべつたり、將棊をさしたりするためだけにやつて來る。入り代り立ち代りやつて來る。雨の日はことにさうだつた。 ひどく不健康な肥り方をしたおかみさんが、白い上つ張りの紐を結ぶ手を後ろへまはすのも大儀さうに、奥から出て來て、亭主の助太刀に取りかかつた。靑くふくれた顏をして、欠伸を嚙みながら、革砥の音をさせた。すんだ一人が出て行つてしばらくすると、「おお寒む、寒む」と一向寒さうにもない元氣な聲で云ひながら、また一人入つて來た。コール天のズボンにジャンパーを着た、二十三四の若者である。將棊をさしてゐる若ものと背中合せに、緣臺の端に腰を下すと、すぐに親爺と話をはじめた。 「ああ、おつさん、タンクを新調したんだね。」 入つて來るなり、先づ最初にそれを云はせるほど、いかにもこのすべてが古ぼけたなかに、新しい桶は眼についた。洗ひ場に据ゑられた、風呂桶を小さくした樣な木の桶である。蛇口から勢いよく迸り出る湯のけむりにも、新しい木の香はしみてゐさうだつた。これはこの店としては確かに瞠目に値する出來事だつた。これまでは、漬物桶のやうな桶から、如露で水を汲み出しては、客の頭にふりまいたものだ。冬は汲みおきの水が冷たくて、ふるへ上つた。首を縮め、背なかをまるくしてこらへてゐる客を尻目に見ながら、如露を持つ手を上げ下ろししてゐる嘉助はいかにも心地よささうに、楽しさうでさへあるので、「ひどい親父だ、盆栽と間違へてゐやがる。」と云つて恨むと、「なにを。一つだつておらとこの鉢植ゑと取り替へつこの出來る頭があるかさ。」と酬いた。嘉助には盆栽の趣味があつたのである。 「ほう……鏡までも新しくしたんだね。こりやどうも。」と、若い男の工藤はまた云つて驚いて見せた。「しかし、片一方とはどうしたもんだ。どうせ取つ替へるんなら、二つ一緒にしたらいいに。」 二つの姿見のうちの一方は、依然古いままであつた。下のあたりは水銀が剝げてゐて、鏡の用をなさなかつた。罅の入つてゐるところもあつて、紙など貼りつけてあつた。工藤は伸び上つて新しい方の鏡面をのぞき込み、顎を撫でまはしながら、 「やつぱしなア、新しいだけあつて自分のらしい面(つら)に寫らあ。」と笑っ〔ママ〕た。 「減らず口叩きやがつて……さあ何もかも一ぺんに行くもんか。段々とやらんことにや。」と、親爺はそれでも得意さうだつた。 「椅子もそのうちにや□轉椅子にするこつたね……何にしても、おつさんも今度は金がかからあな。したが、さうせんことにやね……。」 工藤は云ひさして意味ありげに笑つた。それに氣づいてかどうか、むすつとしてしまつた親爺には構はずに、 「山ノ上(部落)に今度出來た店のおやぢはありやどこのもんかね……この村の出ぢやあるめえが。」 「知らねえな。」と、親父はやはりむつつりしてゐた。 「年は四十かな……もう少し出てるかな、何にしてもめつたに愛想のいいおやぢだ。」 「ありや町のもんよ……山ノ上の谷口の親戚やさうな。」と、将棊の盤に見入りながら、もう一人の靑年の黑川が云つた。 「おい、黑川、お前んとこさも刷り物を□して來たらうが……お前、もう行つて見たんか。」 「いや、まだや。」 「おら、こないだ試しに行つてみた。なアに、まだ別に刈るほどぢやなかつたんだが、丁度町さ行く時だつたもんで。なかなか氣張つてるぜ。□轉椅子の三つもあつて、レーザーも舶來のだ。パリン、パリンつていい音がしやがる。蒸しタオルで蒸したり、ゴムの吸ひふくべみたいなもんで、顏中撫で□したり、どうしてもうすつかり町並よ。」 「道具ばかし揃へたかて、腕がなまくらぢや。」と、こらへかねて嘉助が憤然として云つた。「なまくらな職人に限つて、衛生だの何だのといつて、體裁ばかり張りたがるもんよ。」 それを云はせたかつたので、思ふ壺にコトンとはまつて來たので、工藤はニヤニヤ笑ひだした。後ろを振り返つて、黑川と、ほかに二人の靑年、桐野、塚原と顏を見合してクスクス笑つた。 「素人さ……商賣に失敗したもんで床屋なんぞおツ始めたんだ。當節は床屋もえらく嘗められたもんさ。」 「素人だなんて、免狀がなくちや店は出せんやないか。」 「免狀さへ取り 〔ママ〕それでいいつてのかね?……何に限らず一緒に出來るかね、一體、餓鬼の時分から苦勞して叩き上げたものと、ほかの方で食ひ詰めて來て、まア仕方がないこれでもやらうかつてものとがさ。」 靑年達の笑ひは、しかし、小馬鹿にした笑ひではなくてかへつて親愛のこころのこもつたものだつた。この店のあるじ鹿本嘉助は偏屈もので通つてゐる。若い頃方々の土地を渡りあるいて、十五年前、四十過ぎてから生れた村に歸つて來た。背中一面の俱梨伽羅紋々とうかれ節と、盆栽趣味とが自慢である。仕事の腕の自慢は云ふまでもない。何でも新しいやり方や流行に對しては一應は反對して見なければ氣がすまない。が、勿論ただそれだけのことである。店の内部を思ひ切つて古くさくしておくのなども、金もないし、競爭相手もない村ではそれですむといふことが第一だが、そんな風にして何にともなく拗ねてゐる樣(さま)に、自己陶醉してゐるのだといふこともある。仕事の方でも例へば西洋剃刀は絕對に使はない。レーザーといふ言葉すら嫌ふ。やかましく吟味した日本剃刀で、長い時間かかつて、毛穴を一本一本、その根まで掘り起すやうにして剃る。「お前さん方、レーザーなんどで、さらさらさツとやつてもらつて、一體それで髯を剃つてもらつたやうな氣がするのかね?」と云ふ。しかし腹はきれいだし、生活の見聞はこのあたりでは廣い方で話は面白いし、人の泣言は表面は馬鹿にしながら喜んで聞き、その馬鹿にすることのなかにたとへ一時(いつとき)でも却つて人を力づけるやうなものがあり、時には經驗がものを云つて實際に助けになることもあるので、人々に愛され親しまれてゐる。靑年達は、彼の若い頃の無軌道ぶりと流れ歩いた諸國の物語とが、誇張と修飾とをもつて語られるのを喜んで聞いた。 「ともかくこの店も時勢に合ふやうに少しづつ改造して行かんことにやだめだね。……第一あんなものを今時まだ後生大事と飾つておくなんて……ひどい時勢おくれだ!先づあれを引き下ろすことから始めにや。」と、丁度その時桐野との勝負を終へた黑川が、將棊盤をわきの方へ押しやり、こつちへ向き直つて云つた。ちよつとしたことを云ふにもすぐ激したやうな口調になる若ものである。彼が見上げた所は、姿見の上で、そこには三尺ほどの横額がかかつてゐた。「至誠」の二文字が讀まれた。 皆、その額の方を見上げた。嘉助も見た。彼はすぐに眼を返して、黑川をじろつと見て、それから默つて鋏を動かしはじめた。怒りがはつきり彼の顏に現れてゐた。椅子には、新しく塚原がかけたばかりのところだつた。 「さうだなア。あの額があそこつからおれ達を見下ろしてるつていふのは妙なものだなア。額なんてものは書いた人間のねうちだ。代議士でも大臣でも縣の出世頭でも、腰繩がついちまつちやおしまひだものな。」 乙種の農學校を二年まで行つた、ニツケルの緣の眼鏡をかけた靑年の桐野が、黑川の相槌を打つた。 「ちげえねえや。胸糞のわるくなる話だ。だが至誠とは皮肉だな。ははははは。」工藤のその笑ひはひどく人の癇にさはるやうなものだつた。 嘉助は、憤懣に堪へかねたもののやうに、怒鳴り返した。 「笹沼さんが罪人だつて!何時誰がどこでさうきめたんだ。云つてもらはうぢやないか。」 しかし桐野は負けてはゐなかつた。 「罪人だとは誰も云ひやしない。腰繩がついたとだけおらあ言つたんだ。」 「いいか、お前もな、農學校まで行つた男だ。ちつとはものの理解は出來とる筈だ。餘り人に嗤れるやうなこたア云はんがええぜ。罪人か罪人でないかは何できまるんだ?こりや裁判できまるこつたぜ。ほかのこととは違ふんだ。裁判前にはめつたなことは云はんがええ。人間、誰かて誤解を受けるといふことはある。わしももう二十年の餘も昔の話だが……。」 「しかし、火のない所に煙は立たんといふ譬もあるからな。」 何でもない言葉でも、工藤から出るとへんに神經にさはり、嘉助はそれきり默つてしまつた。 落款のある片隅には、何かの染みが紋様をなして殘つて、この店の唯一の異彩であつた「至誠」の横額も何時の間にかくすんでしまつた。彼等はそれぞれの氣持で、この額がはじめてここに掲げられた時の騒ぎを思ひ起してゐた。後には大臣になつた笹沼重行氏がこれを書いた當時は政務次官だつた。自分の選擧地盤のこの地方に遊說に來て、この村にも足をとどめたある日、ひよつこり嘉助の店へ來て、髯をあたつてくれといふのだつた。これは驚きだつた。嘉助はしかし當り前の客とどこがちがふと云つた傲岸な面構へで仕事にかかつたが、棚の上に、いかにも持主の愛情がそれと感じられるやうな盆栽を見た笹沼氏が、氣輕な調子で話しかけて來た時には、嘉助の人の好さや、無性な感激性は忽ちさらけ出されないわけにはいかなかつた。笹沼氏にも盆栽の趣味があつた。顏がすんでからも、腰をかけて休み、嘉助が汲んで來た澁茶を啜つて、笹沼氏は話し、嘉助の表現に從へば、二人は趣味の共通が取りもつ緣となつて、その場で意氣投合したのだつた。別れ際に嘉助はいつもの無遠慮な調子で、記念に先生の書が欲しいといつた。約束して去つた笹沼氏をあてにして待つてゐる嘉助を人々は嗤つたが、月を經て、人々も忘れかけた頃、それはほんとうに送られて來た!するとまた人々は、その驚きを率直に現すよりも、あれも選擧のための備への手なのだと云つた。しかし嘉助は年を取り、苦い人生經驗の多くを甞めても、なほ、人の好意は好意として、その裏は探らずに、そのまま眞直ぐに受けて喜ぶ子供らしさを持つた、少數の人間の一人だつた。これは、何でも一度は人の意見に反對して見なければ氣がすまぬやうに見える彼の一面と、決して矛盾するものではなかつた。かうした人間といふものは、そのために後に手痛い目に逢ふことがあつても、それを幾度も繰り返してさへも、一向に性懲りのないものである。裏切られたと知つた瞬間、子供の泣きッ面のやうな妙な顏をするが、すぐにけろッとして、相手の人間の眞直ぐなところとばかりつきあつて、またも騙されるやうな因をつくる。勿論彼は損をするが、他人の知らぬ喜びと幸福のなかに、そのためにひたることも出來るのである。嘉助は、誰にでも笹沼氏の人物を稱揚して止まなかつた。笹沼氏の政派や、彼の政治的意見などは、嘉助にとつては問題ではなかつた。笹沼氏の經歷やその人物に對する世評の如きも問題ではなかつた。彼はただ彼が話し合つたその間(かん)の印象を頑固に信じてゐるのだつた。やがて幾らも經たぬうちに、笹沼氏が大臣になるに及んで、村人達も驚かねばならなかつた。遠くからわざわざ「至誠」の文字に敬意を表しに來るものもあつた。しかし時は再び囘轉した!政界と財界の利け者達が、數珠つなぎになつた事件が起り、笹沼氏の名もそのなかにあつた。 怒りを押し鎭めながら、嘉助は云つた。 「笹沼さんはまだ罪人ぢやないぞ。未決に入つただけですぐに罪人だなんどと誰も云へるこつちやないが。明日にも靑天白日の身で出て來るかも知れやせんのだ。だがまた、赤い着物を着にやならんことになるかも知れん。どつちともわしにはむろん分らん。わしには今度の事件がどんなものやら、新聞を讀んだかててんで見當もつきやせん。どつちになるものやら分らんが、どつちになつたかてわしには大差ないこつちや。わしはあの額は決して下ろさんぞ。よしんば笹沼さんが罪人ときまつたかてそれが何ぢやろ。わしは大臣が書いた書だから云ふて、あの額を飾つとくんぢやないぜ。大臣だから懸けておく、罪人になつたから引つ込める、人間のつきあひはそななもんぢやなからうが。わしはえらい政治家と附き合つたんぢやないわ。わしはお互いに好きな鉢植ゑの話をしてあの御人が好きになつたといふまでだ。お前らが何と云はうと、滅多にあの額は下ろすこつちやないぞ。」 嘉助はこつちを睨(ね)め附けるやうにした。靑年達は彼の興奮にすつかり驚いてしまつた。いつものやうに戲談で受けて、茶化して、わきへ逸らしてしまふといふことが出來なかつた。それで何となくばつがわるくて、口を噤んでしまつた。 座が白けて來たのて〔ママ〕、それを救はうとして、黑川が、工藤の方を向いて、 「こないだの、淸川んとこの娘の婚禮の道具は大したもんだつたつて云ふやないか。」 「ああ。手傳ひに行つた山田のおつ母が、衣裳を見てぶつたまげて、蟲干しに何日かかるべつて心配しとつたが。おれもトラックに荷物を積みながら、これが皆米の俵の化けたのかと思ふと、何だか妙な氣がしたよ。」 工藤は百姓の伜だが、運送店で働いてゐるのだ。それで話題も、ぐつと明るく華やかな方に變つて行つたので、靑年達は再び調子に乘つて喋り出した。その淸川の娘の嫁入つた先の話も出て、花嫁は料理に堪能で、西洋料理、支那料理なんでもござれだが、肝腎の飯を炊くことを知らない、飯炊きは女中の仕事ときまつてゐたからだ、といふやうなことが笑ひ話にされた。嫁取りといふことから、話はいつか猥雜な方に移つて行つた。鄰村の製絲工場の女工と、村の靑年との關係がひとしきり噂□された。 雨はよほど小降りになつて來たらしい。ガラス戶の向うが明るくなつて來た。嘉助は火鉢に炭をつぎ足し、大きな鐵瓶に水をつぎ足した。そこへ入口に足音がした。入口に敷いた石の上に、泥のつまつた足駄の齒を打ちつけてゐる音がした。戶が開いて、駿介が入つて來た。 駿介は親しみ深い笑ひを浮べて皆に挨拶した。話したことはなくてもどこかで見知つてゐない顏はなかつた。靑年達は急に居ずまひを直し、すつかり默りこんでしまつた。駿介はこの店へはまだ二度目か三度目だ。どうも不潔な氣がして來る氣にはなれなかつた。頭を刈るのはいつも用事で町へ出たついでにしてゐた。さういふことが一向苦にならなくなつたのもやつと此頃のことである。 少し待つてゐると塚原が立つたので、そのあとへ掛けた。長く伸ばし、手入れもせずに亂れてゐる髪の上に手をあてて、嘉助は、 「どう刈るかね?あんさん。」 「今日はひとつ坊主に刈つてくれませんか。」 「全體短くかね?丸坊主にかね?」 「ええ。」 「そいつは惜しいや。これまでにするには大へんだぜ。あとで悔みなさんなよ。」 嘉助が構はぬといふので嘉助は刈りはじめた。 「あんさん、今までどうしておらの店さ來なかつた。」 「べつにどうしてと云つて……町さ行つた時、そのついでにすまして來るもんだから。」 「村さ來たら、村のものを贔屓にするもんだ。」 ぶつつりと云つたその調子は思はず微笑ませた。それまでひつそりとしてゐた後ろの靑年達もクスクスと笑つた。嘉助はその方をじろつと見て、 「お前方、ばかに默りこんでしまつたぢやないか。何も杉野の兄が來たからつて、そんなに急におとなしくなることはねえぜ。意氣地のねえ人方だ。陰でばかり威張(えば)つても、自分等よりちつとでも豪(えれ)え人間の前さ出るともう口も利けねえ。急に眞面目な話も思ひ出せめえ。遠慮なくさつきの話の續きをやつたがいいや。」 そして自分は駿介を相手に話しはじめた。東京も變つたらうなと云つた。どこに住んでゐたかと訊いて、上野の公園の近くにゐたことがあると聞くと、廣小路を中心に天ぷらや壽司の店の名をいろいろあげて、知つてゐるかと訊いた。床屋の話もした。どこそこの親爺は剃刀の腕がいいのだといふやうなことを話した。床屋の渡り職人の生活の侘しさが彼の話から想像されて、駿介は嘉助に親しみを感じた。しかし嘉助の東京は、殆ど震災前の東京だつた。駿介が聞き上手なので彼は益々おしやべりになつた。遊びや喧嘩の話もしだした。話すに從つて若い頃の思ひ出が壓倒するのだ。急に話題を變へて、 「あんさん、あんたは、笹沼さん達の事件をどう思ひなさる?」と、彼はそれが餘程氣になるらしい。 「どう思ふつて……。」 「罪になると思ひなさるかえ?」 「さア、そりやわかりませんね。しかし證據が薄弱だといふやうな說もあるしするから。」 事件の性質のやや詳しい嚙み碎いた說明は、嘉助を納得させ、喜ばした。 「さうだろう、それに違えねえ!」と、意氣込んだ。後ろを振り返つて、「どうだ、お前達、今のをよつく聞いとけよ。」と云つた。 頭がすんでからも、駿介は、引きとめられ、そこに腰を掛けさせられた。上機嫌の嘉助は、自分で緣のかけた茶碗に澁茶を汲んで來て、駄菓子を添へてみんなに出した。また話がはずみ、――と云つても、殆んど嘉助の一人舞臺で、その間に挾む駿介のどんなちよつとした言葉でもが、嘉助の熱烈な共鳴を受けるのだつた。靑年達はだまりこんでもじもじしてゐた。今まで股をはだけて鐵の火鉢のふちにかけてゐた足の持つて行き場にも困つた。彼等のその遠慮はいろいろなものから來てゐた。初對面の人間だからといふ、ただそれだけではなかつた。駿介に對する尊敬はあつたが、どこかおれたちとはちがふといふなじめぬものをも感じてゐた。しかし、警戒よりはやはり親しさが勝つた。駿介は自分に興味を抱き、自分とかうしてゐる時間を喜び、そこに何かを期待してゐるらしい彼等を感じとつた。彼等はただ表現を持たぬのだ。駿介は二三話しかけてみた。彼等は彼等同士笑つたり、顏を見合せたり、端(はし)だけ切つて取つたやうな言葉を何か云つたりした。 「あんさん、お前さんとこさ今度、杜松(むろのき)の小つちやな鉢を一つ持つて行かう。勉强しなさる机の端にでもおいて、本を讀んで厭(あ)いた時には見なさるがいい。なかなかええもんだぜえ。厭いたら何時でもほかのものと代へて進(しん)ぜる。」 さういふ嘉助に禮を云つて駿介は立ち上つた。皆に挨拶して足駄をつつかけてゐると、一人が後ろから云つた。 「杉野さん、今度、晩げにでも暇な時に一度寄せていただきます。」 それから靑年のうち一番年若で、初々しい圓顏の塚原であつた。何時でもみんなで遊びに來てくれと駿介は云つて、そこを出た。 出て行く彼を見送つてから、嘉助は振り返つた。そして云つた。 「いい若いもんだ!お前らもつまんねえ遊びをするひまがあつたら、杉野の兄のところさ行つて話を聞くんだな。學校さ行つて學があるといふばかしぢやねえ。ものの理解といふものがよう出來(でけ)とる。そんでゐで知つたかぶりをするでなし、餘計なことをくつちやべるでなし、若いがよう出來とる人間だ。苦勞しただけのことはあらあ。おらあ、あそこの親爺とは古くから親(ちか)しくしてゐるが……。」 === 四 === 年があけて十日程經つた。役所の正月休みの時も過ぎたので、駿介はある日、地方專賣局のある町まで、自轉車で行つた。彼は役所に高野光太郎氏を訪ねた。 彼は世話になつた高野氏に逢つて、一度禮を述べておかねばと思つたのだつた。彼はそしてまた增段してもらつた煙草耕作者は皆、增段といふことに感謝してゐた。この感謝のこころは傳へたかつた。この結果は、或ひは何も駿介の願出のせゐではないかも知れなかつた。駿介如きものの願出によつて役所が動いたなどと考へることは、じつはあまいのであるかも知れなかつた。それは役所の既定の方針であつて、駿介如きものが願出ようが出まいが、遲かれ早かれさうした結果になるべきものであつたのかも知れなかつた。あたかも丁度そこへ駿介は願ひ出て行つて、彼はまぐれ當りをしたのである。どうやらこの方が事實に合つてゐるらしいし、少くともさう考へた方が、單純な人間との譏りはまぬがれる。のこのこ禮になど行かうものなら、却つて、うぬぼれるな、馬鹿な奴だ、と嗤はれるのがおちな氣がする。それだけの顧みはあつたが、駿介は構はず出かけて行つた。このやうな場合、彼は相手の氣持に深く立ち入り、あれこれと豫想し、附いてまはるといふことを欲しなかつた。相手はどう思はうとこつちの氣持だけを傳へればいいのだ。彼はむしろ、相手に善意のみを感じて單純に喜べる人間であることを欲した。喜べなかつた時にはそれはそれでよく、どう繕つてみる要もないことだが、素直に喜び得た時には、あとからたとへさまざまなちがつた氣持が動くとしても、當初の單純さに從つて行動したかつた。これは何も反省の拒否ではない。彼は生きて行く上の態度としてこの單純さを信じてゐた。さうして行つた方が、相手からなほ多くのとくが引き出されるなどといふこととは違ふ。 道がわるいので七里の道は長かつた。霜解けの道はぢくぢくして車輪の囘轉は重かつた。しかし南側が崖になつてゐるやうな所は、霜が淡雪のやうに白くおいて、辷つて轍に落ち込むと薄氷が音して碎けた。崖の土が崩れて大きなうつろになつてゐる所には、七八寸の氷柱(つらら)がいくつも下つてゐた。それでも山からの水はその崖を傳つてちよろちよろ流れてゐた。風を切つて行く顏の一部分は無感覺になるまで冷えながら、内からのほてりに彼はのどが渇いて來た。自轉車を下り崖に身をすり寄せ、願をさかしまにして、流れが小さな瀧になつて、空間をまつすぐ下に落ちてゐるところで、直接口へ受けて飮んだ。口に含むと齒に痛いほどの冷たさで腹の底まで冷えて行く快さに、思はず太い息をついた。その水に、落葉か枯草のやうなにほひが染んでゐると思つた。 殺風景な役所の建物は今日はことに寒々として見えた。庭に、年を經た鼠もちの木が一本、くすんだ綠で立つてゐるのを見て、駿介はこの前にここへ來た時のことを思ひ出した。見覺えのある受附も、休みが續いて、まだ仕事に身が入らぬといつた顏をしてゐた。 しばらく待たされたのちに、高野氏に逢ふことが出來た。 「ああ、あなたでしたか。」と、片手に駿介の名刺を持つて出て來るなり、彼はさう云つたが、それは別に、名刺では思ひ出せず、顏を見てはじめて思ひ出した、といふ風でもなかつた。そして受附の窓口の前へ立つてゐた駿介を、この前の時もそこで話した、應接間へ案内した。 「何かまた、用事でしたか?」と、彼は、席に着くなり、テーブルの上の兩手の指を組んで、正面から駿介の顏を見て、云つた。 「ええ……。」と、駿介は云い淀んで、ちよつとつまつた恰好になつた。 高野氏は相變らず瘠せてゐて、堂々としてはゐなかつた。そして人に接する態度もこの前の時と同じだつた。それは今後何度逢つてみてもいつも同じで、又、駿介ならぬほかのどんな人間に對してもやはり同様であらうと思へるものであつた。それは駿介にはじめ無愛想と思はせ、次に無愛想といふよりは、かういふ所の勤め人らしく、事務的が身についてゐるのであらうと思はせたものであつたが、その何れとも違ふことを、今日逢つてみて感じた。それは何と云つていいかわからないが、兎も角、人間の生地(きぢ)からそのまま來るものであることが第一に感じられた。學問や社會的地位や職業などから來るものが、人間の生地に染み込んで、それぞれの人柄をつくる。渾然としてゐる場合は勿論、學問や職業からのものが、より强くにほつて來る場合も、生地は示されない。しかし高野氏に於てはさまざまなあとから附け加つた筈のものよりはただちに生地を感じさせた。それほどにその生地が、何かぎらぎらしたものだといふのではなく、反對に却つてくすんだものだが、あとから附け加つたものがその生地をどう修飾することも出來ないでゐることだけは確かだつた。恐らく彼は異なつた經路を辿り、今とは異なつた職業にあるとしても、依然、今と同じ肌合の人間であるだらう。非常に純粹な人間か、田舎者のあるものなどに見られるものだ。何れにしてもかうした人間が、人として僞りのない、信頼できる者であることを、年の割にはいろいろな人間に接して來てゐる駿介は知つてゐた。かうした人間は、自分が思つただけ、感じただけのことしか云はないだらう。お世辭などは無論云はぬが、またたとへば、氣の毒な相手の氣持に負けて、心にもないことを口走つてあとで後悔する、といふやうなこともないだらう。從つてまたこつちの心にもない言葉を聞く耳も持たない。當世のある人々をしてそれでは何か物足りぬと感じさせるやうなものがある。――ふと駿介は、高野氏の人間に、自分と同じ土のにほひを嗅いだ。 「――今日はべつに用事でお伺ひしたのではないのです。昨年は突然お訪ねして、御無理をお願ひしたものですから、お禮を申し上げたいと思ひまして。――お蔭様でどうもいろいろ有難うございました。」 「ああ、あの事ですか。いや、あれは何も私の力でもなんでもないのです。」と、彼はあつさり云つた。「役所としてもこの地方の煙草畑は增段の方針でゐるところなのです。しかし外部からの刺戟があるとないとではやはり違ひますから、それであなたがああ云つて來て下すつたといふことは、非常に好かつたのです。」 どうも、といふ氣持で駿介は輕く頭を下げた。 「さうすると何ですね。あなたは今年からはいよいよ自分で煙草を始められるわけですね。」 「ええ。」 「煙草はえらいですよ。夏の暑いさかりに芽を摘む時なんか、木と木との間をまるで這ひ□るやうにしてやるんです。着物のはしにちよつと觸れただけでも葉の裂けることがありますからね。煙草の脂(やに)と汗が一緒になつて眼にしみる。からだ中、どこもかしこも脂でべとべとになる。手拭ひでふけば拭いた手拭ひが黄いろに染まる。その手を洗ふ間もなく、――洗つたところでさつぽりとはなりやしないが、その洗ふ間も惜んでその手でつかんで握り飯を食ふ、まだ口のなかをもぐもぐさせながらまた這ひ込んで行く。何しろ忙しい眞最中ですからね。煙草ばかりぢやないですからね。水田だつてまだ除草が殘つてゐたり、ボルドウ液を撒いたりしなきやならん時なんだから。それからまた乾燥が始まつてからがえらい。不眠不休ですよ。過勞と睡眠不足で眞黑になつて瘠せてしまふ……。」そして彼は附け加へた。「からだは十分注意しなきやいけませんよ。倒れつちまひますからね。」 駿介は心に驚きを持つて高野氏の顏を見た。彼の言葉には實感が籠つてゐたからである。 「ええ、――私も去年は少しばかり手傳ひをしたものですから。」 「ああ、さうでしたね、お父さんの畑を。」少し間をおいて高野氏は云つた。「――私も子供の時は家で煙草をやらされたものですから。忙しい時には學校を休んでやらされました。」 「ああ、さうでしたか!」と、駿介は感動して云つた。彼には高野氏の人柄のもととか、そのほかいろいろなことが一時にわかつた氣がした。 「失禮ですが、どちらですか、おくには。」 「S――縣です。」と、高野氏はずつと南の方の國の名を云つた。「K――煙草の名で知られてゐる、煙草の產地です。」 やはり農家の出なのだな。それについて駿介はもつと訊きたい氣がしたが、無躾であると思つてやめてしまつた。 「私の故郷などとはちがつて、この縣などは、煙草產地としてはまだ新進の方ですから、それでまアいろいろやりいいといふこともあるわけです。殆んど米國種ですからね。年々少しづつでも段別も殖えてゐます。役所の方でも殖やさうといふ方針だし、耕作者の方はまだまだ殖やしてもらふことを望んでゐるんですから。」 「私の村なども、煙草を始めたのはまだここ七八年來のことのやうです。私の子供の頃にはおぼえがありませんから。」 「この縣でも西の方ではだいぶ以前から作つてゐたんです。勿論内地種でしたが。近頃東の方でも作るやうになつて、昭和五年から八年までの間に、縣全體で一躍三百町ほど殖えましたが、これは全部米國種なのです。」 「どうして近頃は米葉ばかりなのですか。」と、これは幼稚な質問だといふ氣がしながら、駿介は訊いた。 「消費、需要方面の變化ですよ。――昔は刻みばかりでしたね。それが世界大戰の好景氣の頃から、百姓まで紙卷を吸ふやうになりましたが、それもはじめは口付がおもだつたのが、今は兩切が全盛です。一時煙草といへば、敷島を思ひ出したほどのあの敷島など、今ではまるで影を消して、その代りに兩切りの新裝品がたくさん出てゐるでせう。これは無論安いからですよ。上級品から下級品へと移つて來たわけです。それに嗜好の變化といふこともあります。これは食物の變化に伴つてゐるわけで、淡泊な刻みや口付よりも、味の濃く强い兩切の方が、今の人間に喜ばれるのは當然でせう。そしてこの兩切の原料は外國種なのです。刻みや口付は内地種ですが。しかし外國葉の輸入はできるだけふせがねばならんでせう。内地產の外國種といふものがそこで重要になつて來たわけです。この地方が煙草產地の新進だといふのもさういふことです。――あなた方は國の產業から云つてもなかなか重要な任務の擔當者ですよ。」高野氏は微笑した。 「すると、昔からの内地種の高級品の產地といふものはどうなりますか?さういふ地方の農民は困ることになりやしませんか?」 「さうです、さうです。」と、高野氏は强くうなづいた。「困ることになるんです。これは私共の最も頭を惱ましてゐる問題の一つなんです。從來のままでやつて行ける所もあるが、どうしても新しい品種に轉換しなければならぬ所も多いのです。しかしどこでもがうまく轉換できるとは限らない。いろいろな條件がいることですからね。米國種は大體寒い所はだめです。病害にも弱いのです。それから乾燥方法が内地種の聯干とは違つて火力乾燥ですから、乾燥室に金がかかり、今迄よりも固定資本が要つて、下層農民にはなかなか作れないといふこともあります。その上從來の内地葉の高級品に比べて、米葉の賠償金がよほど安い。内地種一瓩二等品なら一圓八十錢とすると米葉は一圓四十錢といふやうな工合にですね。――それらのいろんなことのために轉換がうまく行かなくて、昔有名だつた煙草の產地で沒落したといふ所もずゐぶんあるんです。私の郷里などはその一つですが。作りたくもまた作らせたくも、さうすることが出來ない。さうかといつてまるでほかのものに轉換しても煙草ほどの収益はあげられない。勞働はえらいけれど、うまく行けば煙草ほどの現金収入の得られる仕事は今の農村にはさうたんとはありませんからねえ。さういふとこの百姓は實に氣の毒なことになるんです。うまく轉換できるやうにわれわれとしてもいろいろ研究はしてゐますが。」 「あの……專賣制度といふことになると、どうしても免れ得ないことなのかも知れませんが、耕作者に對する取締規則といふものはずゐぶんきびしいものですね。私達のやうな初心なものには煩瑣にすぎるやうな氣のすることもありますが。それからどうも納得の出來ないことも……農業技術上の事とは別に、さういふ制度上の事も、今お話になつたやうな事柄について障害になつてゐるといふことはないものでせうか。」 今日はまだ二度目の面會だが、さういふことを樂な氣持で駿介に云はせるだけのものが、高野氏の側にあつた。 「さうですね、さういふことは確かにあるでせう……何か此頃特にお氣附きになつたことはありますか。」 「ええ……取締りといふことではありませんが、たとへばかういふことは如何でせうか。乾燥は私の方だと大體八月下旬には終ります。ところが収納は去年は十二月もよほどしてからでした。はじめは月初めだといふことでしたが、變更になつて。かう遲くなると葉煙草の品質がぐつと落ちてしまふと云つてみんなボヤいてゐます。切角丹誠して仕上げ、黄變も彈力も申し分なく出來たものが、そのいい狀態に於て納められないで、風に當り乾きすぎ、適當な濕度を失つて、品質が落ちてから納めることになりますから、そのために等級が下つて、賠償金が少くなるのですから、大きな痛手です。なんとかならないものでせうか?」 「さうですね、確かにそれは問題ですね。……さういふことは、役所の側だけのことで、それも制度をどうかするといふやうなことではないのですが、……しかしまた單純に事務上のことでもなく、事は豫算にも關してゐますから……。」 そのあとを高野氏は何故か言い淀み、そのまま口を噤んでしまつた。 「役所の仕事といふものはとかく難しいですよ。」と、高野氏は微笑した。「云ふまでもないことですが、私なら私がどう思つても、自分一人の仕事ぢやありませんから。よく、係りがちがふから、とか、そのやうに話しておきませう、などといふのを役人の常套的な、無責任な逃口上とだけ取られ勝ちですが、實際誠意はあつてもさうしか云へない場合は多いのです。しかしそれにもかかはらず、あなた方からかういふことを云つていただくといふことはいいことです。私などもなかなか思つた通りのことはやれません。一頃はどうも役人は面白くないと思ひましたが、此頃はまたさうでもありません。自分ではべつにずるくなつたのでも、諦めたのでもないつもりですが、一ぺんに成就する事柄といふものは何に限らずない、十(とう)思つたことが一つしか實現出來なくても、やるべきことはやらなくちやならない、自分にやれるだけのことは力を盡してやつて行かうといふ平凡なところに落ち着いてゐるのです」彼はチラと腕の時計を見て、それから駿介の顏を見た。「私も無理をして學校をやつたのですが、あなたのやうに、家へ歸つて百姓をした方がましだと考へたこともありましたがね。」と云つてまた微笑した。今迄の彼になかつた、人懷こい顏になつた。 「これからも時々お話にいらつしやい。そしてお氣づきのことは遠慮なく仰つて下さい。」 そう云つて高野氏は立ち上つた。駿介も立ち上つた。叮寧に禮を返して、彼は戶外へ出た。 === 五 === 町へ來たついでに、本屋へ立ち寄つて、新刊の棚を見て行くことを、駿介はたのしみにしてゐた。ここはふだん行き慣れてゐる、縣廰のある町ではない。中等以上の學校とてもべつになかつたから、本屋の棚は貧しかつた。が、それでもそこには遠い國の中央からの文化のおとづれがあつた。駿介はむさぼるやうな眼で一段々々棚を見て行つた。心を惹かれる書物があると、手に取つて見た。ケースをすべり出る本のしつとりとした重さ。新しい紙と活字のインクのにほひ。はじめて人の手に開かれる分厚い本の頁は、小口でくつつき合つてゐて、彼の手の下でパラパラと鳴つた。その頁をひらく、皮の厚く硬い荒れた指先も、全體の風體そのものも、本屋の店先などには似つかはぬやうなものに、わづか一年足らずのうちに變つてしまつてゐた。それに伴つて書物といふものに對する彼の感じも亦變つてゐた。彼には新刊と思へたが、事實はかなり以前の發行で、箱の上に薄く埃の溜つてゐるのをプツと息で吹き拂ひなどして、手にした本を、何か貴重なものをでも扱ふやうに再び棚のなかにおさめた。今日は、通俗醫學書の詰つてゐる棚も探して丹念に見た。妹のことを思つたのである。しかし彼のふところは乏しかつた。 雜誌を一册買つて、間もなくその店を出た。外は、わびしく和やかな冬の日ざしがあたたかだつた。道路に落ちるものの影を見るともう晝過ぎだつた。彼は眼についたうどん屋へ入つて行つた。一杯のうどんかけで腹ごしらへをすまし、葉の屑がゴミのやうに浮いて來る番茶を、緣の缺けた大きな湯呑みに注いで息を吹き吹き飮んでゐると、いい工合にからだがなかからあつたまつて來た。のんびりとした氣持になり、店にはほかに客とてもなかつたので、買つて來た雜誌を漫然と開いて見たりなどしながら、しばらく休んだ。 歸りの道は非常にゆつくりと踏んで、短い冬の日の日ざしがもう陰りはじめた頃に彼は家へ歸つて來た。入口を入ると、上り口に腰をかけて、母と話してゐる男の後ろ姿があつた。 「ああ、お歸んなさんし。――お邪魔さして貰うとりましたです。」 足音に振り向いて、少し腰を浮かしかげんにしながら男は云つた。 「まア丁度ええとこさ歸つて來た。お引き止めしといて、ほんによござんした。」 母は云つて、それからしきりに上れとすすめ始めた。 同じ部落の廣岡卯太郎だつた。過度の勞働に脊骨がまがり背中がまるくなつてしまつてゐるやうな彼は、今日はことに着ぶくれしておかしな恰好だつた。何枚も重ねて着た上に、何かけものの皮を鞣して裏打ちにした袖なしを着てゐた。子供がよくするやうに、眞綿をまるくしたのを首に捲いて、一口云ふ毎にこんこんと咳き入つた。 「どうもすつかり風邪を引き込みましてなあ。今度の風邪はなかなかにしつこいもんで……もう疾うにお伺ひしてお願ひせんならんことがあつて氣になつとつたんぢやが。」 五十餘りの、瘠せて狐のやうな顏をした貧相な彼は、いかにも病後らしく一層老いて、疲れて元氣がなかつた。 彼等は上へ上つて、向ひ合つて坐つた。 「何時ぞや、一度訪ねて見えたと親父から聞いて居りましたが、その節は留守にしてえらう失禮しました。そのうちまた見えられることと思つてゐましたが一向見えなさらんもんで……何かわたしに用事でも。」 「ええ……あんさんに一度よつく聞いてもらうて力になつて戴きたいことがありましてな、それで伺つたのぢやが。こないだ伺つたあの次の日からすつかり寢込んぢまひまして……わしにはまるで珍らしいこつてす。……ナニ、ほかのこつてはありません、わしらの旦那伊貝さんの田圃のこつですが。」 「ああ、さうですか。――それでどういふ?」 「八幡さんの森の陰にあたるへんに伊貝の土地が少しばしあるが……御存知かな?」 「はア……あのあたりですか。」と、駿介は、云はれた伊貝の土地といふのはどこか知らなかつたけれど、八幡さんの森の陰といへばあのへんだと頭のなかに思ひ浮べた。 「あすこでわしは伊貝から借りてほんの少しばし作つとりますが、そのわしのすぐ鄰りで畑浦――御存知でせうがな――あれがまた作つとりまして、一段歩ほどぢやが、これがまた伊貝の田圃です。ところが畑浦がな、去年の秋限り、その田圃を作るのを止めて了ひましてな。」 「へえ、どうしてですか。何かまた年貢の問題ですか。」 「年貢は年貢ぢやが……自分の方から投げ出したんですわ。」 「ほう、自分の方から。」と、駿介は、これはまた珍らしいといふ氣がした。この土地飢饉に惱んでゐる地方で、どういふ理由があるにしろ、自分から作ることを止めるといふのは近頃餘り聞かないことではないかと思つた。それに駿介の知つてゐる畑浦はやはり一人の貧農だつた。年貢のことでたとへどう縺れようと、自分からあつさり土地を手離せるやうな身分ではなかつた。 「一體どんな風に縺れたんです、年貢のことが。」 「別に縺れたといふわけぢやありません、――作つとつちや引き合はんけに、損が行くばかしぢやけに、それで投げ出したんですわ。そりゃ實際、畑浦で無うても投げ出したくもなりますわ。わしが借りとるぶんも同(おん)なじやうな田圃でなあ。どうも大した年貢なんです。若いうちはええが、年を取つてからだが弱つて來るちうと、なんぼにも根氣が續かんけんなあ。バカバカしい、こななえらい目えして、といふ氣持ばかしさきに立つやうになるですわ。なんぼ田圃飢饉ぢやからとて、こななえらい目えしてこなな田圃まで作らんならんこたアないと思ふのは、わしかて此頃しよつ中のことですわ。別して去年みたやうに出來のわりい年にぶちあたるとなあ。したがいよいよ投げ出さうとなるとやつぱし未練が出來(でけ)て……あなな田圃ぢやからとて、全く作らんとなりややつぱし困ることになるんぢやからして。それどこか、人の投げた田圃まで欲しいといふ氣まで起すことになるんです。」 「一體、その年貢といふのはどの位なんです?」 「石三なんですわ。」 「はア?」と、これは駿介も一寸出端を折られた感じだつた。一段歩に一石三斗の年貢は、それほどに驚かねばならぬ高額であるとは駿介には思へなかつた。この地方で一段歩に六俵は普通だから、石三の年貢はその半分である。収穫高の半分の年貢といふのはこの地方では一般に普通のことである。いやこの地方のみならず、日本全國を通じて、小作料の平均額はほぼさういふものとされてゐる。廣岡の歎きと訴へから、何か法外なものを豫想させられてゐた駿介は、やや意外な氣がした。勿論この小作料の平均額は現在がさうだといふことである。現狀がそのままで果して合理的であるかどうか、それを檢討しようとする立場にもいろいろあるわけだ。大學敎授、農林省の官吏、產業組合の理論家、小作組合運動者などが、合理的な小作料といふものを求めて、いろいろな說をなしてゐる。しかし今駿介の眼の前にあるのは、病み衰へた一人の老貧農に過ぎない。彼が世間の平均以下を求める强い主張を云はうとするのだとは思へなかつた。 「はア石三ですか。それで、そこはどれくらゐ取れるんですか、やはり六俵ぐらゐですか。」 「二俵半ですわ。」 「ええ?」と、駿介は今度はまたひどく驚かされた。我耳を疑ふやうに聞き返した。 「ええ?いくらですつて?」 「二俵半ですが。」と、廣岡は同じ言葉を繰り返した。 「二俵半と云ふと……」と、駿介は口ごもつた。――「ぢや、一石ですか。」 「はア、一石なんですわ。」 風邪でつぶれてしまつた喉から押し出すやうにして嗄れた聲で老人は答へた。急にこんこんと咳入つて、喉をゴロゴロと鳴らした。强く咳拂ひをして、からんで來た痰を切つてそのままぐつと呑んでやつて、袖で口あたりを拭ふと、しよぼしよぼした眼を瞬いて駿介を見た。 驚いて、すつかり驚いてしまつて、駿介はすぐにはものを云ふことが出來なかつた。彼はさきに聞いた一石三斗といふ年貢と、たつた今聞いた全収穫の高が一石であるといふことを、どう結びつけるべきであるか、突嗟には分らなかつた。それで彼は色々と考へて見たが、やはり納得の行くやうな考へがどうにも思ひつかなかつた。ふと彼はどつちかが思ひ違ひしてゐるのではないかと思つて一石といふのはやはり一段歩の全収穫量なのかと訊ねてみた。答へは勿論さうだといふことだつた。それを聞いてしまつてから彼は、年貢だけを一段歩の標準で云つて、全収穫をほかの單位で云ふわけはあるまいし、問はでものことを訊いたと思つた。が、それにしてもやはり彼には分らず、一段歩に二俵半といふ異常に少い全収穫量もさることながら、年貢が全収穫量よりも多いといふことは一體どういふことなのか、どうしてさういふことがそもそも可能か、考へがつかなかつた。かういふことは自分は見たことも聞いたこともないが、この地方では別に怪しむに足りぬことなのであらうか。農村の實情についての無知識を曝露することになるが、彼は訊いて見るのほかはなかつた。 「わたしにはどうも分らんのですが……年貢が、全體の取れ高よりももつと多いといふことは一體どうなんです?どうしてそんなことが出來るんですか。足りない年貢は一體どうして拂ふんですか。それよりも、第一、それぢや何のために一體そんな田圃を作つてるんですか。あなたはさつき、こんな田圃でもやつぱり、全く作らんとなると困ると仰つたが……。」 「困るんです。そりややつぱし作らんとなりや困るんですわ。」と、老人はこつくり頷くやうに頭を二度三度下げて云つた。「裏作がありますんで、年貢の足らん分は、借りてでも買うてでも納めます。」 「裏作が……ああ、さうですか。」 迂闊であつた駿介は、何もかにも一遍でわかつた。 「裏作だけが目的なわけなんですね……表作はその全部が年貢に足りんほどでも、人から借りて足前(たしまへ)をせんならんほどでも、裏作があるもんだから、その収益が云ふに足りんほどのものでも、それをあてにして、作つてゐるといふわけなんですね?それでそんな田圃からも離れられないと云ふわけなんですね?」と、駿介はひどく興奮して云つた。 「さう、さう、さうなんですわ。」と、廣岡も、駿介の興奮にひきこまれるやうに、急き込んで云つた。 駿介はしばらく默つてゐた。少ししてから、 「で、裏作は何を作つてるんです。やつぱり麥ですか?」 「「ええ、わしは麥と煙草をやつとります。」 「麥と煙草……兩方ですか。すると稻とで三毛作なわけですね」 「さうですわ。三毛作なんです。一番に麥を植ゑて、こりや夏前に刈りませうが。その次あ、煙草の本畑になります。これも夏うちに乾燥がすみますわな。それからがいよいよ水田ですわ。大あわてにあわてて……忙がしいこつてす、まるで瘠せ馬の尻を引つぱたくみたいなもんで……。」 「忙がしいでせうね!」と、駿介は思はず溜息をついた。 駿介は、東京を中心とする地方の、關東の諸地方の農村を思ひ出してゐた。學生の頃、彼も時折ハイキングのコースなどを辿つたこともあつたが、その道々眼にした田舎の風景は、その頃こそ別に氣にも止めずに見過してゐたが、今思ひ出してみればたしかに彼の郷里とは違つてゐた。秋の終から冬の間中、田圃の多くは、秋に稻を刈つた時のままの姿で放置されてゐた。切株がすつかり黝ずんで、田の上には水がぢくぢくして、所によつては切株の上近くまでをひたしてゐた。それらは深田や瀦□(ちよ)水田や濕田で、水捌けがわるく、裏作は出來ないのだつた。ところが彼の郷里では排水設備だけは完備してゐた。それで田もそのほとんどが乾田だつた。そのことと氣候の溫暖とが相俟つて、三毛作さへも可能であるわけだ。さうでなければまた、わづか三段か四段の土地で、どうにか一家をやつて行くといふことは考へられぬことであらう。 「まるで瘠せ馬の尻を引つぱたくみたいなもんで……。」廣岡のこの言葉が、駿介の耳から離れなかつた。廣岡はその形容で自分達と土地の雙方を云つたのかも知れない。駿介には、瘠せて骨ばつた、さうしてその上鞭打たれて赤裸かになつたやうな馬の尻と、甘土(あまつち)が薄く、すつかり養分を吸ひ取られて、カサカサになつてしまつたやうな瘠地の肌とが、この上ない相似性をもつて眼に見えて來るのだつた。 「……だとすると、作物の出來だつて自然良くないといふことになりませんが。」 「さうです、さうですとも――急がなきやなりませんから、麥だつて早目に刈つて了はにやなりません。もつとも麥は少し早目の方が却つてええなんどと云ふ者もあるにやありますが……煙草も本畑への移植がほかとはずんと後れるよつて、どうしても晩作ぢや。しかもそいつを、あとに肝腎の稻が待つとるよつて、人のよりも早うすまさにやならん。自然、もう少し熟さにやならん、今摘んだんぢやあかんちうことが、みすみす分つとる葉までも急いで摘んでしまふことになります。結果は云はんとも知れとることですわ。乾燥しても黄變がよういかんけに、ろくな葉は出來よりやしません……稻だつてさうですわ。なにせ、八月になつてから植ゑ附けるんだによつて、しつかり實の入るひまもなも無いやうなもんです。さつき二俵半と申したですが、ありやええ時のこつてす。去年なんざアひどくつて……そんで、わしらとこぢやしよつ中靑米です。實の入らん靑米ですわ。こりやあんさんなんぞ食うたこたアありませんぢやろが。苦(にが)うてただ炊いたんぢや食べやしません。そんななア、碎いて、蓬(よもぎ)のなかさ入れて、團子にして食ふんですわ。さうすりや苦みが消えますよつて。… わしら米麥半々の麥飯なんぞ食うたこたアありやしませんぜ。いつだつて、二升の麥に三合の米入れて炊くんですわ。味噌つくる麴にや、碎け米のほか使つたこたアありやしません。……なんしろ、さうで無うてさへ瘠せた田圃を、後から後からと苛めるんやけに。肥えるひまなんぞありやしません。土地だつて生きものとひとつこつです。たまにや養分をやつて休ませんことにや。」 「元來が惡田で普通なみには取れないんですね。それでそれだけぢや間に合はないから裏作をやつてひどく無理をする。それで益々土地は瘠せる……三毛作だと云ふことと土地が瘠てゐるといふことと、兩方から來るんですね、たつたそれしきや取れないといふのは。」 「さう、さう、さうなんですわ。」 「どうなんでせう、どうしたつて普通にはなれない惡い土地なんでせうか?」 「そりや惡い土地にや違ひやしません。ぢやが、金と時間をかけて甘土を肥やしさへすりや、良うならん土地なんてものもありやしませんわ。」 廣岡はぷつつりと云ひ切つた。云はれて了つてから、いかにも分り切つたことを訊いたものだと駿介は思つた。そして、その分り切つた事がその通り廣岡の手によつて出來るのであれば、何も問題は無いのだつた。 「八月も餘程經つてから稻を植ゑるとなると、それはどこから持つて來て移植するんですか?無論苗代からぢやないでせうし。」 「そりや、ほかの田圃の稻を取つて來てそこさ移すんです。……稻の苗はかう、八寸四方の四角に植ゑますやらう、」廣岡は手を上げて、ものを植え附ける恰好をして見せた、「そん時、その四角の眞ん中に一本づつ餘分に植ゑつけておくんです。その一本づつを後になつて引つこ拔いて來て、さつきの、煙草のあとの田圃さ植ゑるんです。その引つこ拔くのがまたえらいぜえ、八月の末にもなりや、もうしつかと根を張つてゐるけんのう。汗と泥とでびしやびしやぢやが。」 「……それで何ですか、畑浦の投げ出した田圃といふのは、今もそのままになつてるわけですか?」 「さうです、そのままになつとりますわ。今でも刈株が殘つとります。暖かうになりゃぺんぺん草が生えるこつでござんせう。」 「それでも年貢は下げんのですか?たとへ僅かでも作れば出來る土地を遊ばしておくといふ法はないですね。村のためにも、大きくは國のためにもならんことですがね。何よりもこの土地の狹い地方に勿體ない話だ。――年貢を下げて作らせるやうにすれば、小作人が喜ぶばかりぢやなく、第一自分もとくだらうと思ふが。」と、駿介には伊貝の氣持がどうにも解(げ)せなかつた。「しかしどうもそれぢやほかに望み手もないわけだ。」 「さうなんですわ。それぢやなんぼにもみんなよう辛抱し切れんけに。何しろ年貢を金で買うて納めにやならんのやけに。それで普段は田圃の取り合ひをしくさる連中までがそこばつかしは御免蒙つとります。わしが畑浦のと似たやうな田圃をどうにか辛抱して作つてをれるのは、全く煙草があるからですわ。米と麥とで年貢がすませりやまアよろしい、煙草が儲けとなりや、と諦めとるんです。煙草だけ目當てに土地を借りつとるやうなわけです。煙草を作つとらん畑浦が投げ出したなア無理ありません。まるで年貢を納めるためだけに土地を借つとるやうなもんですけに。」 「それにしても畑浦も思ひ切り好すぎたなあ、伊貝さんによつく理解の行くやう賴み込んで見たらよかつたのに、餘り話にしても見なかつたんでせう?」 「差配の沼波には話したんです。伊貝の旦那には話しやしません。なかなかさう心易う話せるもんぢやござんせん。――それでなあ、杉野のあんさん、」と、廣岡は改めて杉野の名を呼んで、駿介を見た。「折入つてあんさんに一つお願ひぢやが、聞いておくんなさるまいか。やはりわしらぢやあかん、やつぱし學のある人でなけにやあかんよつて、一つ是非にと思つて、それで今日はお邪魔に上りましたやうなわけですが……。」 「わたしが皆さんのお力になれるかどうかはわかりませんが……それどでいふ〔ママ〕――」 「畑浦が投げ出した田圃をわしが作りたいんですが……わしに作らして貰へるやう伊貝の旦那にあんさんから一つ願つて見て下さらんでせうか。」 「ほう、あなたが作りますか、その田圃を。」云つて、駿介は云うべからざる一種の感動を受けた。 廣岡はさういふ小作地を作ることの苦痛をなげきを以て述べて來た。しかも彼は畑浦のやうにその土地を投げ出さうとするどころか、人が投げ出した最惡の田をまで拾つて耕さうといふのだ。さうせずには居れないのだ。それほどまでに土地を欲してゐる。それほどまでに土地に結ばれて生きてゐるのだ。この事実が何よりも先づ强く駿介の心を打つた。 しかし廣岡とても新しくその土地を耕すに當つては、今迄の條件を改善して貰ふことを願はないわけにはいかなかつた。さうして貰はなければ安心して土地は作れなかつた。そしてそれについて駿介の助力が願はれるのだ。今迄の通りの條件でいいといふのなら、伊貝にして見れば畑浦から廣岡に乘り代へるだけのことだから、廣岡自身の交渉で事はすむだらう。しかし狀態の改善といふことになるとさうはいかなかつた。 「あんさんが力を入れて下さつて、それでいよいよ駄目ときまりや、わしもすつぱりと諦めますわ。そん時は今まで通りでも結構やけに、わしに作らして貰へるやう賴んで見て下さるまいか。」 廣岡はさうまで云ふのであつた。 駿介は義憤をさへも感じた。これほどまでに眞摯な生活者の願ひといふものは少ない。そしてこれはまた單純な小作料減免ともちがふ。事柄は小さくても、國と社會にとつて重要な農村の生產力がなほざりにされてゐるのを救ふといふことでもある。廣岡がたとへそれでいいと諦めたところで、決して今迄通りの條件が許されていいといふわけのものではない。 駿介は暫く默つて、火鉢の灰のあたりを見つめてゐた。やがて顔を上げて、廣岡を見て云つた。 「わたしは伊貝さんといふ人には一度も會つたこともありませんが……いいでせう、話して見ませう。わたし直接にか、誰か人を介してか、……兎も角、話してみませう。云ふことが通るかどうかは分らないことですが。」 「どうぞまア何分よろしうお願ひ申し上げます。」 廣岡は、膝の上においた兩手をきちんと揃へて、低く頭を下げた。 「畑浦の方は伊貝とはもうすつかり手が切れてゐるんですね?この話に對して畑浦の方からべつにどうといふことはあありませんね?」と、駿介は訊いた。 「ええ、ええ、そりやもうすつかりけりのついとる事ぢやけに。」 二三世間話をして、やがてあたりが暗くなりかけた頃に、廣岡は歸つて行つた。 駿介はかなりに興奮してゐた。廣岡の話の内容、彼からものを賴まれたこと、そしてそれを引き受けてしまつたことに對して興奮してゐた。「いいでせう、話して見ませう」とはつきり肯(うげご)うた自分の言葉に對しても興奮してゐた。何しろかうしたことは初めての經驗であつたから。 彼は廣岡に、もつと詳しく訊いておかねばならぬことがあつたやうな氣がした。また賴まれて、その場ですぐに受け合つたのは、少し輕はずみではなかつたかと云ふやうな氣もした。それまでにもう少し何か考へて見ねばならぬことがあつたのではないか。少し考へさせてくれ、とでも云つて、一先づ彼を歸すのが至當であつたのではないかとも思つた。 しかし、事は何しろ餘りにもはつきりしてゐた。事柄そのものは、誰も疑ふ餘地がなかつた。いやしくも、常識のある人間ならば、それがどうでなければならぬかについては、異論などあるべき筈がないと云へる性質の事柄だつた。 今のところ、かうした問題が起つた時に、駿介が、意見を尋ねたり、相談したりすることが出來るのは、父の駒平だけである。學問なぞはないけれど、父の圓滿な常識と、生活が生んだ叡智と、六十年の經驗と、圭角のとれた練れた人柄とに、駿介は信賴してゐた。 「お父つあん、今日、廣岡の親爺さんがやつて來ましてね。」と、それから間もなく駒平が外から歸つて來ると、駿介はすぐに云つた。そして夜になつて寛いだ時に、廣岡が持つて來た話の内容を父に告げた。 「わたしは初耳だつたけれど、そんなことがあるんですねえ。ちよつと驚いたな。」 「ありや札つきの田圃やけんなあ。何も畑浦がはじめてぢやないわ。今迄入れ代り立ち代りして何代も代の代つて來とる田圃でな。あれぢや今に作るものが無うなるやらうと、人事ながら氣になるんぢや。」 事実を知つてゐる駒平は別に驚きもしなかつた。しかし無關心ではなかつた。炬燵の上に片頰を寄せて、壁の方を見てゐる眼は、考へ深さうな色を見せてゐた。彼は廣岡がそのやうな話を、餘人ならぬ自分の息子の所へ持つて來たといふこと、そのやうな相談を持ちかけられた自分の息子の身の上について考へてゐるのだつた。 「無論こんなことはどこにもここにもあるといふやうな話ぢやないでせう。」 「そりや、ない」 「何も難かしい理窟なんぞぢやない、世間一般の常識に外れたことだと思ふがなあ。小作料が何に基ふいてきめられ、どのやうにして今の平均に落ち着いてゐるかについては色々說明もされるでせうが、何れにしたつて全體の収穫量が根本の基準でせう。全収穫量がこれこれだから、その何割を地主、何割を小作、といふ風に分けてるんでせう。さうでなくちや兩方が立つて行かんのだから……全収穫量より多い小作料なんて聞いたことも見たこともありやしない、德川時代だつて、五公五民とか七公三民とか云つたんですからね。」 「うん。」 「何でせう、伊貝の土地だつて何も一率に一石三斗といふわけぢやないんでせう。多いところは多いやうに少いところは少いやうに取つてゐるんでせう。」 「そりや、さうぢや。上田で七、八俵取れるとこは石六斗の年貢ぢや。大體このへんの年貢は石二、三斗から石六斗までやから……。」 「そんなら廣岡の田圃だつて全収穫量が二俵半なら一俵と少しの年貢にするのが常識でせうがね。」 「一石二三斗はこのへんぢや安い年貢の部ぢやけに、そのなかさ籠めて了うたんぢやらう。」 「そんな無茶なこと。」 駿介は、父が、今日に限つた事ではないが、彼の感情にそのまま乘つて來ないのが、今日は非常に物足りなかつた。 「それは何ぢや、地主は裏作のことも勘定さ入れてるからのことなんぢや。表作だけやつたらむろんそななこと絕對に出來るこつちやないが……。」 「しかしまともな年貢の所にだつて裏作はあるんだから。――そんなふうに云やあ、裏作にも年貢をかけるといふことになるぢやありませんか。それぢや世間一般の仕來りにも反するでせう。麥年貢なぞ取つてるとこ、今でもどこかにありますか。」 「今ぢやもう恐らくなからうわい。昔はあつたもんぢやが。」 「さうでせう。しかし廣岡の場合は麥年貢よりももつと無理ですからね。また煙草を作るからと云つて、それに對して別に年貢をかけるといふ者もないんだし。一體どうしたんでせう、持つてるものにして見りや、ほんの僅かなことぢやないですか。世間なみにしてやつたらどういふもんでせうかね。」 「持つてる者ぢやからこそ、僅かが僅かにならんのぢや。それを僅かと云ふやうやつたら、物持ちにやなりやせん。」 「したが結局とくでせう、伊貝にしたつてさうした方が。田圃に草を生やしておくより。」 「廣岡や、似たやうな二三のものの問題としてだけ考へるんぢやないによつて。持つとる者は持つとる者らしく先の先までも考へとるもんぢや。年貢を上げるといふこたア造作ない、下げるといふこたア大變ぢや、ほかのものへも響くよつて――響かいでも響くやらうと考へるによつて。廣岡の年貢の負かつたなああした特別の田圃やからと思ふものだけやつたら世話ないが、その特別といふことよりや負かつたといふ事だけを一途に思ひ詰めて、今度は我身の上を考へる者もあるわけぢや。伊貝なんざさうした先々までも考へとるんぢや。してまた地主(ちしゆ)なりやそりや當り前のこつちやからして。物持ちも辛いわ。」 成程さうしたものかと頭で納得することは容易だが、さうした物持ちの心理といふものは、駿介にはまだどうもぴつたりとは來ない。 「伊貝の今の主人公といふのは一體どんな人なんです。」 村切つての有力者である伊貝の名は、子供の頃から聞いて知つてはゐるが、長年の閒郷里を離れてゐた駿介はその當主の人となりについては、噂□話の程度にしか知ることがなかつた。 「どんな人かと云ふて……。」駒平は簡単な言葉ではうまくは云へぬらしかつた。 「幸藏といふ人はまだ隱居してるわけぢやないんですね、もうだいぶの年でせうが、實權はやはりあの人が……。」 「ああ、ああ、隱居どころか、まだまださかんなもんぢや。さうさな、もう六十七八にならうわい、さあ、わしとどつちが上だつたやら……。」 駒平はそこで駿介にぢつと見入つた。 「それで何かい、お前はその廣岡の賴みといふのを聞いてやるつもりなのかい。」 「ええ……」と、駿介は何か非常に强い決心を要求されるやうな氣がした。「聞いてやらなければならないと思ひますが。わざわざああやつて訪ねて來て、くれぐれも賴んで行つたんですから。出來るか出來ないかわかりませんが。わたしには荷が勝ちすぎたことかも知れないし……お父つあんはどう思ひます。」 「そりや、見込まれて力になつてくれろと云はれりや、引き受けんわけには行かんやらうなあ。荷が勝ちすぎるかどうかはやつて見にやわからん。結果は今からあれこれ思ふて見る要もない。何もかも經驗ぢや。」彼はきつぱりと云つた。「ぢやが、伊貝は難物ぢやて。」 そして駒平は、伊貝幸藏の人となり、彼の村に於ける有力な地位について大體の話をした。駿介は心を留めて聞いてゐた。聞き終つて彼は事の解決が、必ずしもた易くはないであらうことを、改めて思ひ知らされたのである。 「だが、何れにしても爭ひにだけはならんやうにせえ。理を說くよりや、情に訴へるこつちや。どこどこまでも下手に出て歎願するんぢや。なんといふても小作は弱いもんぢやけに。爭ひになることは、どんな場合にも避けるやうにせんならんぞ。」 「しかしそんな人柄の人ならむしろ理詰めで押して行つた方がいいんぢやないかと思ひますがねえ……勿論僕は爭ふつもりはありません。また爭ひになるわけはありません、廣岡がああままでおとなしく出てゐるのですから。しかし廣岡は諦めることが出來てもどうも僕の氣はすまないなあ。理を說いて、情に訴へて、それでも聞かれないとなると……。」 「その時は默つて引き下るまでのこつちや。」駒平は低いが非常に强い調子で云つた。「こつちが眞心こめて說いて、願つて、それで聞かれにや仕方がないわ、それきり默るまでのこつちや。それ以上云へば爭ひにならうが。しかしそんな爭ひは要もないこつちや、止めたがええ。」 「ぢやあ、負けになるわけですね。」 「何が負けぢや。」殆んど斷乎として駒平は言つた。「お前はそれを負けと思ふんか?わしはさうは思はん。物の道理を說けば必ず人に聞かれるものとは限りやせん。聞かれる時もありや、聞かれん時もある。聞かれんのはこつちのせゐばかりぢやないぞ。それをどうしてすぐに負けだと云ふんや。そななことにお構ひなく正しい物の道理といふものなアいつだつてあらうが。たとへ今聞かれんからとて、おのれの云ふことがその理に合つとりさへすりや、いつかはきつと聞かれる時が來べき筈のもんぢやらうが。さう思はにや、何も出來やせんぞ。聞き入れられん時にや、默つて引つ込む、用もない爭ひはせん、まだその時は來んのぢやによつて。」 その平凡な信條を、駒平は確信に滿ちて語つた。それは彼の内からの聲として、ほとんど信念にまでなつてゐる響きを傳へたので、駿介はぐつと押された。駒平の言葉とその内容だけなら、老獪な、獨善的な處世哲學とでも何とでも云へるやうなものであつたが、それが六十歳の彼の肉體を通した、おのづからな聲として出て來たので、その場では駿介は反對することは勿論、批評がましいことも云へなかつた。さうしてその限りでは、父の云ふことは正しいのだと思つた。意見が、抽象的に表現され、問題にされてゐる限りでは、正しいとも正しくないとも云へぬ、特定の場合に特定の生きた人間の肉體を通した聲として聞いて、始めてそれが云へる、さういふことがある。駿介は新しい父を見たやうに思つた。 自分はそれでよからう、やるだけのことはやつたのだからと、自分はそれで滿足することは出來よう。しかし當の廣岡はどうなる?遂に未解決に終つた現実に引き續き向ひ合つて行かなければならない廣岡はどうなる?彼は諦めてゐるからそれでいいといふのか? しかし最後に、當然、右の考へが鋭く迫つて來た時に、駿介ははたと當惑した。まだ時が來ないのだからと云つて、すますことの出來るのは自分達であつて廣岡ではない。廣岡の現実は差迫つたものなのだ。 駿介は、自分達が、自身が氣づかないやうな欺瞞(自己と他人と雙方に對する)に落ち込もうとしてゐるのではないかとの懼れを感じた。しかしその懼れを父に向つて云ふこともなしに、深く事の重大さを思ひ詰めてゐた。 「顏も知らぬ私がいきなり伊貝に會つたりするよりも、誰か伊貝と懇意な村の有力者に賴んでもらつた方がいいかも知れませんね。どうでせう?」 「うん、さういふ適當な人があればなあ。」 「村長はどうでせう?岩濵さんには、私は二度ほど會つて――煙草の許可が下りるやうに願ひに行つた時と、その後お禮に行つた時と會つて、たつたそれだけだけれどいろいろ打ち解けて話して、あの人は私には非常に好意を持つてくれてるらしいんです。しきりに遊びに來い、遊びに來いと云つてくれるんです。東京に勉强に行つてゐる同じ年頃の息子があるせゐでもあらうけど、……あの人はどうでせう?」 「村長か、……岩濵さんはええ人やけどなあ、田舎には珍らしくものの理解のよう出來(でけ)た人ぢやが、人間がおだやかに過ぎとる上に、伊貝のこととなるとのう。云ふべきことも云はんとく、といふことがあるんぢや。伊貝との間に、一寸の隙間や縺れが出來ても村會がやり惡うなるけんのう。村會へ出とるもんの大半は伊貝の言葉一つでどうにもなるんぢやけに。――しかし、一應話して見ることはそりやええやらうな。」 ――その夜、寢床へ入つてからも、駿介の頭は長い間冴えてゐた。 杉野駿介は社會主義者ではなかつた。學生時代には讀書の世界で學說として一應の知識を得たに止まり、將來の進路がそれによつて動かされるといふまでの大きな影響を、社会主義諸學說からは遂に受けることなくて終つた。それは彼の境遇や、性格や、特に當時の社會狀勢に因つた。だから今の彼を行動の世界にまで衝き動かす動機と感情には、ならびにその行動が生み出す結果の見透しには、社會主義的なものはなかつた。何に限らず彼にはまだイズムはないのだつた。 廣岡卯太郎がもたらした話が、駿介の内に惹き起した感情は、あらゆるイズム以前のもの、もしくは以後のものであつた。それは階級的なものでもなかつた。また駿介といふ個人にのみ起り得る何か特別なものでもなかつた。健全な常識と人間的關心を持つ者ならば、誰であらうと等しく同じものをその話から感ずるに違ひないと思はれるものであつた。それは全く一般的な、ただ人間的なものなのであつた。 廣岡の周圍の人々は、今まで何等怪しむところがなかつたのであらうか?彼等は常識と人間的關心とを持たぬのであらうか?さうではない。ただ彼等には力が、あるひは意志がなかつたのだ。自分の手に負へないと知ると、見て見ぬふりをして過ぎる。それに人間は慣れ易いものだ。はじめはどう思はうと、やがては、それが當り前の事ででもあるやうに思はせられて行く。 新鮮な、みづみづしさにある今の駿介の心情は、人々がどんなに些細と見る事柄に向つても、純粹な正常な健康な動きを見せる。しかし彼も亦彼の周圍の人達と同じく乾いた心になり、何を見ても聞いても當り前だ、世のならひだと思ふやうにならぬとは限らない。駿介はそれを懼れてゐる。その意味からも見て見ぬふりは出來ない。あるひは内にのみ籠つてはならぬ。そのやうなみづみづしさ、若々しさの保たれる道は、對象への積極的な働きかけのなかにあることを駿介は知つてゐる。 「わしらとこぢやしよつ中靑米です。……二升の麥さ三合の米入れて炊くんですわ。」廣岡の訴へは駿介の耳に殘つてゐた。しかしもつと强く彼の想像の眼に浮んで來るのは、草が生えるままに放置されてゐるといふ田圃だつた。物の生產を少しでも增加させることにみんな躍起となつてゐる今日の農村に、そんな土地がたとへ少しでもあらうとは、信ぜられぬことであつた。 ともかく早速明日にでも行つて話して見ようと、からだが溫まり、次第に眠くなつて行く頭に人の好ささうな村長の顏を思ひうかべながら、駿介は思ひ續けた。 === 六 === 翌日、夜になつてから、駿介は、村長の岩濵をその自宅に訪ねた。朝のうちに、村役場の小使の久作に逢つて、あらかじめその旨を傳へておいてもらつたのだつた。 前夜、駿介が駒平から聞いたところによつて、伊貝幸藏の人物の大體の輪郭は想像された。駒平は總括的な人物論の形では、彼の人物を語りはしなかつた。いかにも彼の人物を示唆するやうな、一つ二つの事實を物語つたのみであつた。 六十の聲を聞いた年に、伊貝幸藏は、長らく大阪の方で女工をしてゐた女が村へ歸つて來たのをかこつて、妾とした。もう三十にちかい、ちつとも美しくはない、ただ身體が牛のやうに頑丈で、疲れることを知らぬといふやうな女であつた。小學校に通ひ出す頃の、父(てて)無しの女の子を一人連れてゐた。伊貝は本妻に死に別れてゐたわけではなく、本宅には、老いて愈々氣性の激しくなつて來たやうな妻と、中學を出てぶらぶらしてゐる長男と、甲種の農學校に通つてゐる次男とがあつた。上の子供達はみんな女で、もうそれぞれに身の始末はつけてあつた。 妾宅は本宅から五町ほど離れた所にあつた。この村は大したこともなしにすんだが、數年前まではこの地方も小作問題で何かと騒がしかつた。年貢は思ふやうに寄らず、土地の價格は下つて、先は見えたと早合點した地主のなかには、土地から家屋敷を全部賣り拂つて都會へ去つたといふものさへぼつぼつあつた。尤もさういふのは殆んど總て、息子が都會へ出て、相當にやつてゐるといふやうな家であつたが。土地ぐるみさういふ家の一つを伊貝は買つてあり、それがそのまま妾宅になつたのだつた。だから家としては立派であつた。 家は立派であつたが、その大きな構へのなかに子とただ二人住むことになつた女は、他(はた)の眼からはひどくみじめであつた。そして年と共にそのみじめさは增して行くやうであつた。元來が何年都會に居つても、つひに町風にはなり切れぬ土臭い女とはじめから見えてゐたが、それでも村へ歸りがけの頃には、顏に白いものを塗り、擦れ違へば女らしいにほひもあつて、暗がりに村の若者達の心を唆かすぐらゐのものはあつた。しかし今の彼女の風體からは、人は女らしい何ものをも感ずることは出來なかつた。彼女はなりもふりも構はず、ただ眞黑になつて働いた――いや、働かされた。その家に附いてゐる、そして彼女が耕作しなければならない土地の廣さは、屈强な男手を中心とする一家の經營としてもなほ足りるほどのものであつた。そしてそこからの収穫物を、彼女は普通の小作人同様に、伊貝の倉庫に運んだ。彼等と異なる所はただ、収穫の半ばを小作料として持つて行くのではなしに、全収穫量をそのまま運ぶといふことであつた。母子が必要とする飯米味噌醬油その他は、月々の終りに本宅の臺所口まで顏を出し、そこで正確に量つた上で、渡されるのだつた。 時々彼女が村の本通りに姿を現すと、人々は袖を引き合ひ、眼くばせして嗤つた。そして伊貝の心事を勝手に憶測してはあやしんだ。田舎で妾といふのは、働かすためのものであるやうなのはよく見られることではあつたが、それにしても伊貝の心事には人々の解しかねるところがあつた。彼女が本通りに姿をあらはすのは、その一人子のためであることが多かつた。彼女は村のどんな貧しい農婦にも劣る風體のまま、店先に立つて、メリンスの切れや、赤い鼻緒の立つた下駄などを買つた。一つのものを買ふにもよくよく思案して、店の者に嫌はれるほど長い時間をかけた。しかし日頃は殆ど無表情な彼女の顏に、あれやこれやと迷つてゐるその時だけ、人間らしい感情が動いて、見る者の心にいぢらしいやうな思ひを誘つた。そのためにあらゆる辛抱をし、この一筋にと縋つてゐるものの正體を改めて見たやうな氣がした。 村の產業組合の理事長をしてゐる伊貝は、毎日晝から組合の事務所に姿を見せた。そしてその歸り途にはその家へ立ち寄つた。しかしその家に寢泊りするといふことはなかつた。 本宅に何か取り込んだ、人出の要ることでもあると、彼女は行つて忙がしく立ち働いた。女中達の間に混つて、氣性の激しい老妻のきついとげのある言葉を頭から浴せられ、追ひ立てられた。そこでのどんな僅かな貰ひものでも、例へば仕事のあとのお茶請けの駄菓子のやうなものでも、彼女は必ず塵紙に包んで持つて歸つた。 そのまま數年經つて、彼女の一人子も小學校を卒業する年頃になつた。彼女に同情を持つ村の人々は我が事のやうにほつとした。母親もここで始めていくらか輕い息が出來るだらう。娘ももうどうにか一本立ちが出來る。家にゐて母親を助けてもいいが、しかしそれよりはすぐ鄰村に工場があつた。製絲の工場と貝ボタンの工場とで、貝ボタンはドイツに行くのだといふことだつた。はじめ三十人ぐらゐだつた男女の職工は、少しづつふえて今では五十人近くなつてゐた。そのどつちもが、毎年春には、小學校を出たての少女を求めてゐた。工場に寢泊りするものもあつたが、通ひのもあり、年寄りのまだ元氣な家などでは、百姓仕事は年寄りに任せておいて、夫婦して白い上(うわ)つ張(ぱ)りを着て自轉車で通ふという風だつた。――しかし人々が驚いたことには、彼女の一人娘は、彼女も亦自轉車で三里ほど離れた町に通ひ始めたけれども、それは女學校の制服姿をもつてであつた。 同時は母の方は產業組合に姿をあらはすやうになつた。一日のうち何時間かを組合の事務所で立ち働くやうになつた。それまでゐた小使ひがやめてしまつたのとそれは一緒であつたから、彼女がその小使ひの代りといふわけかも知れなかつた。拭掃除から茶を汲んで出すことから、一寸した使ひ走りまでがその仕事であつた。事務所の汚穢を汲み取つてゐるやうな彼女の姿もあつた。それは畑に掘つた溜(ため)まで運ばれねばならぬ。しかし彼女は組合の方にかかりきりになつたわけではなく、畑仕事から解放されたわけでもなかつた。今迄の畑のうち幾らかは他の小作に出すことになつたが、新たな仕事の加重であることには違ひなかつた。それで彼女は一日のうち僅かな時間しか事務所に居れなかつたから、自然小使ひの仕事である雜用まで自分達の上にかかつて來るし、それに第一伊貝の前であつて見れば、彼女に用事を云ふにしても云ひ惡くて、事務所で働く人達は少からず弱つた。しかし苦情を云ふことは出來なかつた。一切は、云ふまでもなく伊貝の考へによつて行はれたことであつたから。 このことと、さきの、彼女の娘が女學校に通ひ出したといふこととの間にある一つの關係が、廣く村人達の間に知れるやうになるには、長くはかからなかつた。 娘が小學校を出るよほど以前から、母は娘をなんとかして女學校へ通はしてくれと、伊貝に願ひ出てゐた。彼女の態度は眞劍であつた。そして執拗であつた。はじめふふんと鼻の先であしらつてゐた伊貝は、遂に□責的斷乎とした一言でけりをつけようとしたのだが、彼女はそれでも引き下らなかつた。繰り返し繰り返しうるさく云つた。今迄伊貝の決定的な一言をただ默つて聞き、それに從つて動き、口を返すことの全然なかつた彼女としては全く始めてのことであつた。自分の生涯の不幸の大きな原因は、女學校を出なかつたことにあると、無智な女らしく一途に思ひ込んでゐるやうなところが見えた。 流石の伊貝も遂に根氣負けしてしまつた。彼は女の願ひを聞き入れることになつた。娘は女學校へ通ひ始めた。そして母は產業組合へ。 母は新しい勞働によつて月々幾らかの金を得ることになつたが、その金は無論伊貝といふ個人から出るのではなく、組合から出るのであつた。が、その金は現金の形では彼女の手には渡らぬのだつた。それは組合の會計から伊貝の手へ、そして伊貝の手許で保管せられた。娘の授業料その他の學資はそのなかから出された。そして母も娘も、伊貝の恩恵としての學資ででもあるかのやうに、伊貝に向はなければならないのだつた。 伊貝はこの村にばかりではなく、鄰の郡の村にも相當面積の土地を持つてゐた。 それは近年になつて、一時に得た土地であつた。數年前、地主小作間の揉め事が最も頻繁だつたその地方で、土地の値段が下る一方だつた時、狼狽した地主の間には土地を賣りに出すものが出て、それを伊貝は買つたのだつた。非常に安い値段で買つた。ところが近頃、農村の狀態が再び平靜に歸して見ると、昔賣つた土地に對して激しい執着を感じ、早まつた自分等の過去を後悔するものがぼつぼつ出て來た。それらの人達は、失地の囘復について、熱心に伊貝に懇請しはじめた。伊貝は徐ろに聞いて、さて値段の交渉に入つたが、曾つて彼が買ひ取つた時の値段に較べれば、今度彼が賣らうとする云ひ値はまことに法外なものであつた。聞いた彼等は驚いたり怒つたり悲しんだりした。しかし時の變りを楯にとつて、頑として一歩も引かぬ伊貝の前には施す術もなかつた。しかし土地はどうしても欲しかつた。ある人々は諦めてしまつたが、ある人々は到底諦めることが出來なかつた。今はもう損得の問題ではなかつた。昔わがものであつた土地を、どうしてももう一度わがものにしなければならぬといふただその一筋の氣持であつた。伊貝にそのやうに云はれ、そのやうに傲然と居られると、益々焦り出すのだつた。まことに土地の魅力、土地への執着といふものは、それを失つたときに一層痛切であるらしく、それには地主たると耕作農民たるとの差は格別ないものらしかつた。伊貝はさういふ足もとを十分に見抜いてゐるのである。かうして無理をして土地を買ひ戻した地主達は、いきほひ小作にも辛く當つて來るだらう。切角もとにもどつた村の平靜が、再びかき亂されるやうなことにならねばいいがと、先々のことを考へ、心ある人々は憂へてゐるのである。 駒平は、伊貝といふ人物について、かうした一二面を駿介に語つたのであつた。 駿介は、村長の岩濵に逢ふ前に、明るいうちに、問題の伊貝の小作地といふのを見ておいた。それから同じやうな惡田で現在廣岡が作つてゐるといふ土地も。それらの土地はそれぞれ相接してゐた。三方が低い丘にかこまれ一方だけが開いて道路に向ひ、開いてゐる方から向うへ段々に高く、僅かに傾斜をなして、先へ行くにつれて幅が狹くなつてゐるやうな土地であつた。廣岡の分には、ほかと較べてひどく發育がわるい麥が植つてゐた。それに鄰る、小さく幾つにも不規則に仕切られた、一段歩ほどの田圃は、稻を刈つたあとそのままの姿で、田のおもては霜解けに濡れて、黑い切株のまはりや、株と株との間には、細長く伸びたままに寒さに立ち枯れた枯草が、わびしく風に吹かれてゐた。 岩濵は心待ちに待つてゐたところなので、訪ねて行つた駿介はすぐに客間に通された。 「やあ、よくお出かけでしたな。」 眞白な髯を、將軍乃木の肖像に見るやうな型に刈り、品のいい細面で、笑ふと眼尻に皺が一ぱいに寄つて、それがまた何ともいへぬ柔和な相を示した。駿介は彼を見るごとに「翁さぶ」といふ言葉をよく似つくものとして思ひ出す。物慾にも恬淡に、次第に世外の人らしくなる顏に親しみは感じながらも、村長としての彼はどうかと時折思はないわけにはいかない。名もない小村の長であるとしたところで、ほかの何者であるよりも「力の人」であることを要求される場合が、決して少くはないであらうと思はれるからだ。そして岩濵の風貌からは、さういふ時に、思ひがけない意志的な半面が發揮されるだらうといふことは、どうも想像されぬのである。 元來が懇切な人柄の上に、彼はその若い時代に、駿介の祖父には世話になつた一人であつたから、駿介を粗略に扱ふやうなことはなかつた。 頰がうす紅に艶々して、白い髯との對照が美しいほどだつた。向ひ合つて坐つた時、かすかに酒の香があつた。 「しばらくでしたな。――どうもあんたは逢ふ度毎に變つて見えるもんだから……さう云つちや何だが、眼に見えて村の靑年らしうなつて行きよる。肥柄杓擔いで通つてももう別段振り返つて見る者もあるまいといふやうになつてしもうたが。」 「早くさうなりたいんですけど、なかなか。」 と、駿介は笑つた。 「物好きな人や。この人はほんまに。」 と、もう一度親しみ深い眼で駿介を見て、始めて氣附いて、「ああさうか、何だか滅多に變つとると思つたら……髪を短うに刈りなすつたんぢやな。」と笑つた。 「精一さんは……この休みにはお歸りぢやなかつたんですか。」と、駿介は遊學中の彼の息子のことを云つた。 「ええ、休みにはどこやらの工場へ通つて實習するんだとか云ひよつてな。そんなにまでせんならんもんかと思ふんぢやが。」 「さうでせうね。そりや忙しいでせう、工科はやつぱり。……あと一年ですか。」 「さやう、まだ一年ありますわ。しかし今にして思へば奴を專門學校さ入れといてよかつたとつくづく思ふとります。奴を東京に出すときに、專門學校にせうか、大學にせうかと思ひ煩ふて、家ン中でもいろいろ意見が別れて、えらう揉めよつてなあ。結局わしの意見通りきまつたが、果してその三年でもが容易なこつぢやない。あと一年、息せき切つて漸く天邊(てつぺん)の見えるとこまでこぎつけて來たといふやうなわけで。」 しかしその一年といへども油斷がならない。最後になつてぐれてしまつた上原の息子の哲造のやうなのや、途中で投げ出して了つてその心事を諒解するに苦しむ眼の前の駿介のやうなものもある……彼はさう思つてゐるかも知れなかつた。 「それにしても駿介さん、何度もいふことだがあんたは一體どうしたんぢや。わしは考へれば考へるほど惜しい氣がしてならんが……實際、この頃の若い人は何を考へとるもんか、わしらには全く見當もつかんやうなことが多てなあ。」 駿介はこの老人に對しては自分の事は殆ど語つてゐない。今もそれについては默つて、その先の彼の言葉を引き取つて、 「しかしもう一寸の御辛抱です。精一さんは學校を出さへすりや、あつちこつちから引つ張りだこなんだから。機械の方は今は實際素晴らしいんですから。」 「ほんたうに精一等もさうなりますかしらん。」 老人は嬉しさうな、同時にまた心配さうな色を押し隱さうともしなかつた。 二人はそれから暫くの間、東京の學生生活のことや、學生の就職の狀況などについて話し合つた。その話が一段落ついた時、老人は彼の趣味である、そして相當に深く凝つてゐる俳諧について語りはじめた。彼は立つて鄰の部屋から生半紙(きばんし)を綴ぢた帳面を持つて來た。表紙には墨で、草堂句集とある。彼自身の作品集である。彼はやや恥らひながら、しかし嬉しさうに、何等かの藝に遊びはじめた初心者が、誰に向つても自分をひけらかさずにはゐられない無邪氣さで、それらの句の三四を駿介に披露した。そして駿介の意見を問ふた。駿介は答へられずにゐたが、意見を聞くのが何も主眼ではないから、なほ先へ先へと話は進んだ。彼は又立つて、次の間から短册などを持つて來て見せた。諸國を歷遊して、彼の許へ草鞋を脱いだ宗匠達の句であるといふ。さういふ方面には暗い駿介の眼にも、眞に力量あり、名ある人々のものとも見えなかつた。 「どうも下手の橫好きと云ひますかな。――いや、すつかり自分勝手な話になつて。」短册を帳面の間に挾み、老人はそれを机上の片側へ押しやつた、「お話があるのでしたな。それから承らにやならんのだつたが。――してどんな御用件です?」 そこで駿介は、彼の用件を話し始めた。 話の途中から彼は相手の顏色を氣にしないではゐられなかつた。すると話すことが段々に話しにくくなつて行つた。彼の話に影響された相手の氣持が、こつちに傳はつて來るのであつた。それはやはり彼がそれとなく恐れてゐたやうなものであつた。さういふ話を聞くことを迷惑とする、避けたいといふ老人の氣持であつた。事實を事實としてその前に眞直ぐに立つことを囘避する、そつとわきをすり拔けて通りたい、決して狡さではないが、いかにも弱々しい氣持であつた。 だが駿介は話すだけのことは話してしまはないわけにはいかなかつた。 「……それで廣岡は私のところへそれを云つて來たんです。何とか一つ伊貝さんにお願ひしてみてくれまいかといふんです。何でまた私なんぞの所へ云つて來たものかと思つてるんですけれど、しかし事情を聞いてみればいかにも尤もなことで、同情しないわけにはいかないんです。それで私もつい引き受けてしまつたやうなわけですが、考へて見ればどうにも私一人の力には餘ることです。世の中の經驗には疎いんだし、伊貝さんには一面識もなし、第一伊貝さんが私のやうなものを相手にかういふ問題について話してくれるかどうかも疑問です。それで私は結局、あなたにお願ひするほかはないんですが……。御面倒でも一つあなたから、伊貝さんに、廣岡のことをお願ひしてみていただきたいのですが……いかがでせうか。」 「さあ、そりや。」と云つて、岩濵は、話の間中、火箸の上にあててゐた手のひらを引いて、瀬戶の火鉢の緣を二度三度こすつた。そのしぐさが、いかにも無様な、能のないものに見えた。 「いかがでせうか。」と、駿介はまた繰り返した。 「いや、お話の次第はようく分りましたが、」と、しばらくしてから岩濵は言つた。「その件につき、直接わしから伊貝さんに話すといふことは何かとこれで差支へのあることでなあ。」 「はア。」 「わしが村長でなけにやいい。わしが村の公職にあるもんでなけりや、問題はないが……。お話の件は、何といふてもやはり一つの私事ぢやけんのう。さうした地主と小作との間の私事に、村長の職にあるもんが、最初つから間に入つて行くといふことは少しく隱當を缺くと思ふんぢや。小作人のために村長が小作田を取り持つといふことはどうもなあ。それに年貢引き下げのこともこれには絡んどるけに、わきからは村長が小作の肩ア持つとるやうに見えんこともなし……また一度さうしたことがありや、決してそれ一つぢや濟まん。さうなりや一方にしてやつて一方にしてやらんといふわけには行かんが、村長がさうしたことに一々かかずらうてゐるわけには行きやせん。きりも際限もないこつちやからして。ぢやによつてそれはやはり當事者の間で先づ話し合ふて見て、どうしても話し合ひがつかん時に、事情によつてはわしらが間に入るといふのが、これがまアものの順序やらうと思ふ。そしてそれなら無論今までにも數多く例はあることぢやから。さうぢやらうと思ふが……。」 「當事者が對等で話し合ふといふことが出來れば、無論それに越したことはありませんが、それが出來るやうなら、そして願の筋が聞き入れられる見込みがつくやうなら、廣岡も最初から私なんぞの所へは話を持つて來はしまいと思ひます。ものの順序としては仰有る通りにちがひありませんが。」彼はそれは一片の形式論に過ぎぬと思つた。それでその通りに云つた。「話し合うて見て、話し合ひがつかん時にとなりますと、その時にはもう兩方の間が大分に縺れとるんぢやないかと思ひます。爭ひになぞなつちや困りますし、矢張最初から間に立つていただいた方が……村長の資格でなく、個人の資格といふわけには參りませんか。」 「さういふのこそ形式的です。村長の資格とか個人の資格とか、われわれの頭にはあつても、村の者は誰もそんな風に分けては考へませんよつて。」 「私はこれは決して廣岡一人の私事だとは思はないんですが。」 私事であつても一向構ひはしないではないか、とは思つた。私事だから村長の職にあるものが、最初から間に入ることが出來ない、といふことは駿介には理解しかねることであつた。村長の仕事といふものを單に村役場の關係にだけ限つて考へてゐるのであらうか。このやうな事柄の圓滿な解決のために力を盡さないで、何が村長であり、何が村の有力者であらう。それともいよいよ爭ひにでもなり、村一般の耳目を集める問題となつた時、それは初めて「公事」たるの性質を備え、村長が關係するに適當な條件を得たとでもいふつもりなのであらうか。かういふことに一々口を挾んでゐてはきりがない、などといふことは無論駿介は信じはしない。 「普通の地主と小作の間の問題といふこととは少し違ふと思ふんです。小作が普通に、年貢が高いから負けてくれ、といふこととも違ふ、私事と公事といふことを云ひますと、これは立派に公事であると思ひますが。表面はいかにも、耕作地の不足してゐる百姓が、不利な條件を忍んでも新しく小作地を得たいと望んでゐるといふ、ただそれだけのことですが、事柄の實際は、たとへ小さくても農村の生產力の問題に關係してゐると思ひます。作りたいと熱心に希望してゐる人間があり、作ればものの出來る土地があるのですから、この二つを耕作が最も圓滿に行くやうな狀態の下に結びつけることが必要なんです。廣岡が諦めて、どんな條件でもいいから作らしてくれと云つたからとて、本人がさういふからそれでいいといふわけのもんぢやない、それぢや生產は決して圓滑には行かないんですから。また伊貝さんにしても、自分の土地だからどうしておかうが勝手だ、草を生やしておかうが勝手だといふやうなことは決して許されないことです。さう考へて來るとこれは單に當事者だけの問題ではないと思ひますが。村の問題であることは勿論、社會全般の、國家の問題として、その見地からだつて充分ものは云へると思ふんですが。」 これに對して岩濵は何も云はなかつた。相手を突つぱねての沈默ではなしに、正直な彼は駿介の云ふことを認め、その上で何も云ふことが出來ないのであつた。かういふ岩濵を眼のあたりに見て、駿介はこの弱々しい好人物の本質をはつきり見たやうに思つたが、それにしてもかうまで彼が伊貝に遠慮しなければならぬといふのは殆んど不思議であつた。ほかの理由は僞りではないにしても、要するに附け足りだ。言葉に言ひ出さぬところにほんとうの理由があると駿介には感じられる。 同時に駿介は、この對談そのものをやや馬鹿馬鹿しく感じはじめて來た。無理をしてまで岩濵老人を勞さねばならぬ理由が一體どこにあるであらうか?氣の進まぬ彼を强ひ、云ふ通りにしてもらつたところで、結果は推して知るべきであらう。村にほかに心當りがあるならば、廣岡とても何も自分のやうなものの所へ眞直ぐやつて來たりはしないであらう。 「――では、ともかく、私が直接伊貝さんにお逢ひしてお願ひして見ようと思ひます。その話の上で、何れまたお力をお借りしなければならないことになると思ひますが、その時には何卒宜敷お願ひ申します。しかし私はまだ伊貝さんを全然知りませんので、紹介の手紙でも一つお書き下さいませんか。」 「ああ、そりやええとも、そりやもう――。」 駿介にさう出られると、岩濵はいかにも濟まないらしく云つた。 それから今日の用件を離れて、打ち寛いで話した。さうして話せば實に物分りのいい好々爺で、古い頃の村の話は殊に面白くもあり、爲にもなり、時の經つのを忘れた。夜食を御馳走になり、夜更けて駿介は家へ歸つた。 === 七 === 今日訪ねよう、明日訪ねようと思ひながら、駿介の、伊貝訪問の日は一日一日と延びてゐた。 色々な氣持が駿介に働いてゐた。全然未知な人を始めて訪問する際に誰でもが感ずる億劫な氣持といふだけのものではなかつた。相手の伊貝は、年齡、閲歷、境遇、性格、趣味、敎養、思想の何れから云つても一つとして共通點を持たぬ人間だつた。同じ村に住んでゐながら、全く觸れ合ふことのない離れ離れ世界に住んでゐる二人であつた。駒平の話を思ひ返して見る毎に、駿介の氣持は重くなつた。駿介には、伊貝の性格といふものは、一寸見當がつかなかつた。彼が今まで接觸したり、見たり聞いたりして來た人間の中にはそれに近いものすらも思ひ浮ばなかつた。駒平の話の斷片から、次々に想像の翼が延びて、益々えたいの知れぬものに伊貝の人間が形造られて行くのであつた。それに彼が持つて行かねばならぬ要件が要件である。若い駿介が二の足を踏んでゐるのは無理がなかつた。想像の世界でだけこねまはしてゐるから伊貝の人間が愈々不可解な、時には怪物じみたものにさへなつて來るのだ。さういふ幻想をぶちこはすためにも早く逢つて見ることが必要なのだ。逢へば何でもない人間であることがわかるだらうし、この一點を突きさへすれば、脆くも陥落するといふ弱點だつて見拔くことが出來るだらう。――さう思つては見るのであつたが。 部落の中でも特に近く往き來してゐる煙草の耕作者仲間に逢つた時など、駿介は廣岡のことを話してみた。そして彼等と話したといふことは駿介に必ずしもいい心理的影響を與へなかつた。話を聞いても彼等は一向に何の感動も示さなかつた。何も初めてと聞くことではなく、知り盡してゐる事實だからと云へばそれまでのやうでもあるが、駿介が何とかしたいといふ考へに對しても同じやうに冷淡であるのは意外であつた。間接には自分達の利害にも關係するやうな彼等の一面を見た。成るか成らぬかも分らぬ、事の初めに當つては常にさうなのかとも思へた。うまく行つた結果に對してだけ興奮するのかも知れない。しかしこの場合の彼等の冷淡には、ほかに原因があることが段々に分つて來た。彼等のあるものは、單に消極的に心を動かさぬと云ふだけではなくて、露骨な反對感情をすらも駿介に示した。餘計なことをしなさるな、といふ心だつた。駿介のむきな若い心は嗤はれてゐるやうであつた。 村での煙草耕作者の多くは、自作、自作兼小作で、耕作農民中の上層の部分で、暮し向きも比較的らくな方であつた。これは煙草耕作には、固定資產がかなりいるところから來る結果であつた。そのなかで小作一方でひどく貧しい廣岡などは、ごく少數の例外であつた。部落の耕作者仲間の間でも、彼一人は何かにつけて區別されてゐた。そしてこの區別はどこまでも區別として殘しておきたいといふ心理が、云はず語らずの間に人々には働いてゐるのらしいのだつた。自分達に何かのとくがあるといふわけでもない。しかしたださうであることを望む心があるのだ。廣岡も自分達も共に均霑し得る利益ならば何も云はない。しかし廣岡一人が浴し得る利益となれば、それがどんな小さな、またどんな性質のものであらうとも、何となく心平らかならぬものがある。劣つてゐるものが、自分達の域に少しでも近づくことに對する不快がある。 駿介は、去年の夏の葉煙草乾燥の時、廣岡一人が、それが當然の約束のやうに非常にわるい乾燥場所を與へられて、人も我も怪しまずにゐた奇妙な風景を、その時もをかしなことに思つたことを、今になつて又思ひ出した。 それは廣岡といふ人間の人柄もある。彼が外見(そとみ)も内も元氣のいい、あたりの者に愉快を感じさせるやうな、その元氣で相手を壓して了ふやうな、さういふ人間であるならば、人々にそんな氣持を抱かしめるやうな餘地は無いのだ。しかし廣岡といふ人間はおよそそれとは反對な存在だつた。見る者をして、陰氣な、じめじめとした感じを抱かしめる貧相な存在だつた。みじめなしよぼしよぼしたものは、同情を起さしめるよりも、却つて苛立たしい氣持を起させる。いぢめてやりたい氣持を人に起させる。 兎も角、彼等の態度がそのやうであることは、駿介には愉快ではなかつた。周圍の人間がそんな考へでゐるのを知ると、一方には反撥し、だからこそこの自分が委囑されたのだといふ氣持を强めるが、一方にはまた萎縮する氣持が兆すのもやむを得ないことであつた。 さうかうしてゐるうちに、家の仕事も段々忙がしくなる時にさしかかつてゐた。苗代地の冬起し、煙草の苗床の準備並に播種の時が相前後した。 苗代は去年は誘はれるままにほかの家と共同で持つたが、今年は別々だつた。今年は苗の仕立を新しいやり方でやつて見ることになつてゐた。從來の水田苗代に代つて乾田苗代が近年この地方にも段々行はれるやうになつて來てゐた。乾田苗は水田苗に比して優良であることが、經驗から段々にわかつて來た。乾田苗の莖は勁く、根本は太くしつかりしてゐて、移植する時もいたまないし、植ゑ附け後は非常に强く根附き、發育は早いと云はれてゐた。どこの地方にも行はれると云ふわけにはいかぬことだが、この地方の土地の條件は、乾田苗代を可能ならしむるばかりか、必要とさへしてゐた。苗代時期にも、表土の充分乾き切る所を随所に得られるといふ好條件に惠まれてゐた。また水田苗代であれば、播種の時から移植の時まで絕えず水を灌がなくてはならないが、溜池によつて灌漑するこの地方では、水は出來るだけ節約することが必要であつた。どの點から云つても、乾田苗代は有利な方法であつた。 駿介は父と共に苗代地の土を打ち起した。その土地は排水がわるく表土が乾きにくいといふやうな所ではなかつたが、今のうちによく打ち起し、日光や空氣を透して、乾かしておくに若くことはなかつた。駿介は最初の力强い一鍬を田の中へ入れた。黑い稻株が打ち下す鍬の先に掘り起され、白つぽく乾いてゐるやうな土の表面と、眞黑な濕りを持つた下の方とが、ムクムクと反轉して行くのを見ると、彼は新鮮な喜びを感じた。その喜びは色々な要素から成り立つてゐた。子供の時、泥にまみれて遊ぶことが特別な歡喜であつた。わざわざ深いぬかるみに入つたり、泥んこで團子やそのほかの樣々な物の形を作つたり、手や足が土にまみれることが多ければ多いほど喜びを感じた。遂には何かの衝動に驅られて、着物のまま土の上に轉げまはり、仰向けに寢て、手や足をバタバタさせたりした。また少年の彼は、夏草が背丈ほどにも繁つた野原に寢轉んだり、堆く積んだ乾藁のなかに首を突込んだりして、夏草や乾藁の匂ひで胸一ぱいに膨らませることを喜んだ。草のなかに寢轉んでゐると、風に靡いてゐる草の先はそのまますぐに靑い空にくつついてゐる。誰あれも自分がここにかうして寢轉がつてゐることなんか知りやしない、すぐに近くの道路を歩いて行くものからだつて見えやしない、といふことがいやが上にも彼の歡喜をそそる。何か秘密めいたぞくぞくするやうな氣持だ。しかし、さうしてぢつとしてゐるうちにはやがて自分がどこにどうしてゐるかをも忘れてしまふ。空も靑草もその靑草のかげの翅ある蟲も自分の身體も何もかにもが一つになつてしまふ。さうしてうとうとと眠りに落ちて行く。――秋も末になると、祭りがある。祭りの夜、小屋掛けの芝居を見ての歸るさは、丁度いい工合に疲れてゐる。人混みのなかにゐたのと、今見た芝居のあくどさ、ねつつこさに刺戟されて、頭はのぼせたやうにぼつとしてゐる。大人達に外れて一人ぶらぶら夜道を來て、向うの田の畦に積み上げた藁グロの黑々と立つのを見ると、もうそこへ走つて行かずにはゐられない。べつたり土の上に腰を下し、手も足も投げ出し、藁のなかに首を突つ込むやうにして寄りかかる。毎日いい天氣が續いたあとで、それにまだ露に下りる時刻ではないから、どこもここもよく乾いてゐる。乾いた藁の匂ひに胸が膨らんで來るうちに、段々氣も冴え冴えとして來る。夜空には星が輝いてゐる。何の物音も聞えな。初めは餘りに何もかもが澄んでしんとしてゐて、生きて息をしてゐるのは自分ばかりで、自分の存在だけが際立つてゐて、恐(こわ)いやうだが、次第にその世界にも慣れて來る。慣れて來るといふのは、離れてゐたあたりと自分とが段々一つになつて行くことだ。夜つぴてでもかうしてゐたいと思ふ。するとやがて自分がどこにどうしてゐるかをも忘れてしまふ。……・ 遠い遠い日の夢だ。あの頃のああした喜びは二度と歸つて來べきものでもない。しかし今鍬を振り土を掘つてゐる時の喜びには、少年の日のあの喜びにどこか通じたもののあることを駿介は感じた。二つのものは無論ちがふ。しかし今かうしてゐるとふとゆくりなくも少年の日の喜びが再び胸に歸つて來るのは、つまりはその兩者の間に共通したものがあるからだと思つた。自然から汲み出す、あるひは自然と一つになる喜び、原始に惹かれるこころには共通なものがあつた。 そこにはまた季節の喜びがあつた。湯氣でも立ちさうな溫かさうな黑土に彼は逸早く春を感じた。これが稻作についての最初の勞働であると云ふこと、我家の稻作は、今年からはじめて、その生產の全過程が自分の勞働によつて貫かれるのだと云ふこと、その自覺から來る喜びも亦大きかつた。 それらすべての綜合かあら成る一つの力强い感情は極めて自然に胸に溢れて來た。この極めて自然にといふことの自覺は、駿介に二重の歡喜を與へた。新しい生活に入つた當初、彼は世間での所謂勞働の喜びの概念に對して反發を感じてゐた。本來美しかるべきその言葉は、それが云はれる時のさまざまな政策的な動機や、ふざけた精神によつて冒瀆されてしまつてゐた。人の勞働でうまい汁を吸つてゐるものや、勞働を手なぐさみにしてゐる、勞働の嚴しさを身を以て知らぬものに限つてその言葉を使つた。それを云ふ時、齒の浮くやうな甘たるさがあつたり、鼻持ちならぬ臭氣を發したりして、それを云ふ者のほんとうの腹は、勞働と勞働する者とを輕蔑してゐるのだと云ふことを彼等自身曝露してゐた。そしてそれ故にこそ駿介は自らの勞働によつて勞働の眞實の喜びに觸れることに向つて大きな期待を持つてゐた。勞働が持つあらゆる苛酷さと嚴しさを通り、甘皮を剝くいたそれの核心に觸れた上での喜びを期待してゐた。しかしさうした境地といふものは容易には來なかつた。喜びはたしかにあつた。それは抑々初めての彼の勞働、父を助けて井戶を掘つた時からしてあつた。蚊の群に襲はれ、不眠を强ひられながらの葉煙草の乾燥、雜地の開墾、堆肥用の落葉集めなどの諸勞働に伴つた苦痛のなかにもそれはあつた。しかし秘かに思ふ時、その喜びを感ずるといふことのなかにはなほ無理があつた。その喜びを感じようがために、感じたいがために、心を奮ひ起してゐるといふやうなところがどこかにあつた。肉體的な勞働は、いな、肉體的な勞働を基礎としてゐるこのやうな生活は今の自分にとつての活路であると彼は信じてゐる。從つてそこには喜びがなければならぬと思ふ。またどうしても喜びを感じたい。さういふ風に强ひられたものがあつたのである。 それが何時の間にか變つて來てゐた。事の性質上、何時からと截然と驅切りをつけて云ふことは出來なかつたが、今の彼は以前とは變つてゐた。言葉では云ひ難い、人には傳へ難い變化をひとり感じて駿介は嬉しく思つた。彼はこれで落ち着いたのだなどとは思はなかつた。勞働の苛酷さ嚴しさを人並にくぐつて來たなどとは戲談にも云へることではなかつた。今後またどのやうに變るかも知れなかつた。しかし今到達したこの境地すらも、そこからのささやかな歡喜すらも、去年の夏以來の自らの歩みによつて初めて得られたものである。それはほかのどんな方法によつても得らるべきものではなかつた。さう思へば、この到達を貴重に思ひ、自ら愛し育んで行かうとの氣持が、强く深い感情として駿介に湧き上つて來るのであつた。 苗代地の耕起が濟むと、直に、煙草の苗床の準備であつた。 苗床は本畑一段歩の分が一間に四間の廣さとして、今年の耕作段別は二段歩だから、二つ作らなければならなかつた。駿介はかねて山から伐り出しておいた材木をもつて、苗床の周圍に立てる柱と、この柱を橫に貫く貫木(ぬき)とを作つた。柱と貫木とをもつて、苗床の床框が成るわけだつた。框で仕切つた内側は藁で圍ひをして、それからその中へ先づ落葉を踏み込んだ。秋に苦勞して山から運び、小屋に貯へてあつた落葉の板をほぐし、大籠に入れ、これを背負つては何囘にも運んだ。この落葉の床は厚さが一尺にも及び、一坪に三四十貫は要るのである。充分踏み込んでからその上によく腐らした堆肥と厩肥を混ぜて五六寸の層を作つた。次は二寸ほどの厚さに土を敷いた。この土は何を措いても先づ水捌けがいいといふことが必要だつた。それで山から礫の比較的多く混つてゐる土を運ばなければならなかつた。最後は播土である。これは土に油糟と木灰とをよくかきまぜたものである。 二月に入つてから、この播土に種子を播いた。播いたその上を落葉と堆肥とで覆ふて蓋肥とした。この上にさらに、早くからそのために織つておいた薦をかぶせて、かうして苗床の處置は一應終つた。 此頃の駿介は、朝は五時に起き、起きるとすぐに鷄と山羊に餌をやり、家の表裏の掃除をすます。鷄はその後ずつとふえて八羽になつてゐた。掃除がすむ頃には妹達の手によつて飯の支度が出來てゐる。飯がすんでも外はまだすつかりは明けきらない。窓から首を出して見るとすぐ眼の前の裏山もかくれるほど眞白な靄のやうなもので濁つてゐる。その靄のかげんと、家のなかを洗ふ水のやうな空氣の肌への感じで、ああ今日もいい天氣だなといふことがわかつた。すると朝毎に新しい彈むやうな生々とした力を感じた。 その冷い朝の間(ま)一時間ほど、すつかり仕事に出て行くばかりの恰好になつて、駿介は本を讀んだ。本を讀む姿勢は色々であつた。ほのぼのとしたあたたかみの傳はつて來る朝の竈の前に蹲つて讀んだり、上り口に腰をかけたまま讀んだりした。彼は以前から、きれいに片附けた机の前に坐つてでなければ本を讀めぬといふ環境に慣れて來た人間ではなかつた。東京で岡島の家に使はれてゐた時には、道を歩きながら讀み、使ひに行つて返事を待つ間の玄關先きででも讀んだ。事情は今もその頃と殆ど變つてはゐない。 同じ頃、臺所の後片附けをした妹達は、茶の間へ來て坐つて、手内職にと此頃はじめた絹手袋のミシン縫ひにかかる。町の會社の出張所が近頃この村に出來たのである。娘相手の農家の副業とすれば、會社としては非常に安いものになり、女工を傭つたりするには及ばぬことである。それは手ミシンを向うで貸してくれ、裁斷した切地を渡されて、ただ縫ふだけである。手間賃は一ダース八錢だつた。絲はこつち持ちで、それは一ダースに二錢ほどかかるのだつた。仕事にかかると二人の妹は口もきかず、僅かな時間をも惜んで一心だつた。本を讀みながら、朝の靜かな空氣を動かして手ミシンがカタカタ云つてゐるのを聞くと、侘しく和やかな氣持を誘はれた。 年寄りは若いものと相前後して起きることがあり、その頃になつてもまだ寢てゐることもあつた。息子にもたれかかるといふのではないが、息子がしつかりして來て、力になつてくれてゐるといふ氣持は、何よりも親達にゆるゆるとした腰をのばさせた。襖一つ向うに漸く起きようとしてゐる氣配や、年寄りらしいしはぶきの聲にも安らかなものが感じられた。 さうかうしてゐるうちに朝の最初の光りが射す。白い靄はまだ晴れ切らない。空は天心から靑み渡つて行つて、山の上あたりはまだ靄にかすんでゐる。しかしそれはもはやただ白く濁つただけのかすみやうではない。その向うには空の靑い地が透いて見える。そこへ明るく黄色い光りが滿ち渡るのだから、玻璃板をすかして見たやうな輝きになる。この朝の光りを見るや否や、駿介は仕事にでる。 彼は最初に煙草畑へ行く。夜ぢゆう上にかぶせておいた苗床の薦をすつかり取り拂つてやる。それがすむと戻つて來て、今度は堆肥を麥畑へ運ぶ。その頃は駒平も仕事に出て來るから、父と一緒の仕事になる。麥畑に堆肥をふり、また土をかける。十時になると彼一人また煙草の方へ行つて、苗床に水をかける。この水は午後の二時には二度目をかける。そして四時半頃、短い冬の日がかげり出す頃には再び薦をかぶせてやる。 苗床のかうした管理は、種子が發芽し、成長して、本畑に移植するやうになるまで續くことである。二月も半ばを過ぎれば暖かい春めいた日ざしの日が二日や三日は續いた。何もかにも新しいはじめての經驗に、駿介もこの季節のやうな若々しい力に溢れた。 === 八 === ある夜、床屋の親爺の嘉助が駿介を訪ねて來た。彼はかねて駿介に約束した杜松(むろのき)の鉢植ゑを持つて來てくれた。靑の淡色で長方形の淺鉢に、二株の寄植ゑであつたが、それはいかにも可愛らしい小品だつた。去年植ゑ替へたばかりだから當分植替へはしなくていい、水さへやつてゐてくれればいいとの事だつた。駿介は喜んで彼の好意を受けることにした。 しかし嘉助がわざわざやつて來たのは、そのためばかりではなかつた。彼はかねてから一度駿介の所へ遊びに行きたいと、口癖のやうに云つてはゐたが、今日來たのはただの遊びではなかつた。彼は用事を持つてゐた。 「兄さん、今日はひとつ相談に乘つておもらひしたいことがあつて來たんだが、どうだらうか。」 いい加減雜談に時を過してから、彼は云つた。 「何です、相談て。何か面倒なことですか。」 「いやあ、何も面倒なことなんぞぢや。したが人助けになることだもんだからね。」 「人助け?そりや結構ですね。何ですか、一體。」 「乘つてくれるかね、ぢやあ。」と、徐ろに云つて、 「森口醫者の息子、あれは駿介さん、よう知つてゐなさるんぢやらう。」 「ああ、愼一さんですか。べつにさうよく知つてゐるといふほどではないが。」 「したが、お友達ですやろ。」 「いや、友達といふよりはずつと先輩なんです、向うが。さあ、もう随分長く逢つてゐないんでねえ。村へ歸つてまだ一ぺんも逢つて話してゐないんだから。」 「一ぺんも逢つてゐない?村へ歸つてから。何とそりやまあ。」彼は仰山に驚いて見せた。 「そんな法つてあるもんでねえな。そんなとこは兄さんもまだ若(わけ)えなあ。村さ住むやうになつたらやつぱし村のものとの附合ひといふことも考へんことにや。森口なんぞには顏を出しておいたがいいんだ。何かにつけてその方がええ。知らんなら兎も角、知つとりなさる仲なんだから。」 「ええ、私もさう思つてはゐるんだが。歸つて來た當座すぐに逢つておけばよかつたんだけれど、何となくそびれつちまつた恰好でね。段々時が經つてしまふと一層億劫になつて。」 「一體、お前さんとこぢや、醫者はどこさかかつてなさる。」 「やつぱし佐久間と森口の兩方なんでせうが、わたしが歸つて來てから、生憎と、誰も醫者にかかるやうな病氣はしないもんだから。――それで何です?森口に何か用事でもあるんですか。」 「うん。お前さんがあそこの息子の先生と親(ちか)しいやうなら、ひとつ口を利いてお貰ひしたいと思ふことがあつてね。もつともわしから話したつていいことなんだが、お前さんからなら、一層好都合だなんどと思つて。」 嘉助の話といふのはかうであつた。 貧しい小作農の長森といふのは、子澤山で有名だつた。妻のお石は殆ど毎年生んでゐるとはた眼に見られるほどに、次々に生んでばかりゐた。よく死なしもして、死なすために生むのかと嗤はれるほどであつたが、それでも今家には、やつと親の手助けがどうにか出來るやうになつた年頃の長女を頭に七人もゐた。そしてお石は今年四十一だつた。四十の聲を聞いて、もう生まぬかと、本人もわきのものもほつとした氣持でゐるらしかつたが、その時はもう、激しく働きながら生み續けに生んで來たお石の身體はガタガタだつた。多產なだけあつて、いかにもがつちりとして元氣だつた彼女の、急な弱り方が去年あたりから人々の眼につき出した。いや、弱りと故障は、もうここ數年來出て來てゐるのだつた。ただ今までは無理が利いた。人にそんな氣配は見せずに押し通して來ることが出來た。周圍に弱りを見せたら、周圍のそれに對して示す反應が逆にこつちに響いて、自分は倒れてしまふだらうといふことを、本能的に彼女は感じ取つてゐた。それで張つて來れた意地を、此頃では張り通すことが出來なくなつた。 去年あたりから彼女はしきりに病むやうになつた。ちよつとしたことで倒れて、三日も四日も寢つくやうになつた。今迄とちがつて、醫者の厄介にもなるやうになつた。もつとも長森は今までも醫者の出入りの多い家だつた。しかしそれは親達ではなくて子供達だつた。長らく病んだのちに死んで行つた子供達もあつたし、生存してゐる者達も弱かつた。その上に今度は母親である。 その薬價の支拂ひといふものが、長い間滯りに滯つて來てゐる。村には醫者が二軒あつた。そのどつちにも、かなりの不義理を重ねてしまつた。それで鄰村の醫者にかかるやうになつたが、ここでも不義理をして、賴みに行つてもおいそれとは來てくれないし、また厚かましく賴みにも行けなくなつた。この地方の村々には、東北地方の僻村などとちがつて、醫者は多い。少し大きな村には三軒はある。しかしそのすべてに、近くの方から、次々にかかつて見るといふことは流石にお石にも出來ない。またたとひ恥を忍び、鐵面皮になり得たとしても、醫者の方で警戒する。長森のさういふ噂□は、もうかなりに廣く知れわたつてしまつてゐるのだ。 村には醫者に對するわるい習慣があつて、それは、「癒つた時拂ひ」あるひは「癒らにや拂はん」といふことだつた。藥價の支拂ひをのばすために押す橫車であつた。医者の藥が果してどれほどの効果があつたかもわからず、癒り切らぬままに推移する慢性病の場合は勿論、治療の結果がはつきりしてゐる場合でも、その癒りやうが自分の思つた通りでないと醫者に楯つくものがあつた。医者にかかるとき、何日ぐらゐで癒るかといふことをしつこく聞いた。最初からあとでの口實のためにしようとする狡いものもあつたが、醫者であればそれがはつきりと云えぬ筈はない、はつきり云へる醫者はいい醫者だし、云へぬ醫者はわるい醫者なのだと本當に信じてゐるものもあつた。病氣の性質から、さういふことは云へぬ場合もあるのだと、いくら醫者が說明してやつても聞き入れなかつた。仕方なく氣休めの言葉を何かかにか云ふと、その言葉を後生大事と覺え込んでゐて、醫者にかかつてゐる間、一日一日曆をめくつて、その約束の日に近づくのを、千秋の思ひで待ちかねてゐた。やがてその日が來る。しかも尚續いて醫者にかからねばならぬやうだと、彼等は騙されたと思ふのである。陰では騙りだの藪醫者だのと罵つた。本當に怒つて醫者の前で大きな聲を立てるものもあつたが、それは正直なもので、意識的なのは却つて素知らぬ顏をしてゐた。しかし、そのどつちもが、約束の日が來ても癒らぬ以上、それまでの藥價は拂ふには及ばぬ、それは當然のことだと云ふのだ。 醫者の支拂ひは普通半期半期であつた。その頃になると俄かに病苦を訴へるものも亦少くなかつた。以前に診てもらつた病氣がまだ癒つてはゐないと云はうとするのである。 お石の場合はさういふのではない。彼女が支拂はぬといふのは、全くただの貧しさの故で、寸毫の惡意もなかつた。彼女が醫者を轉々と變へて歩くのは、むしろ彼女の氣の弱さや、善良さをあらはすものであつた。不義理を重ねたところには、平氣な顏をして行くことが出來ないのである。醫者の家の玄關の把手を押す時の彼女は、うす氷の上を踏むやうな思ひだつた。それ故にこそ村の二軒の醫者も目をかけてゐたが、さうさう何時までもそんな風でやつて行くわけにも行かなかつた。彼女一人ではない、ほかの者等のこともある。考へて見れば、彼女と、もつと狡さうに見えるほかの者達との間にだつて、さう大きな違ひがあるわけでもなかつた。狡さうに見える者達だつて、やはり貧しさの故に拂はぬと云ふに過ぎない。彼等はただ幾らか氣が强いのだ。氣の強さを賴んで、彼等らしい、色々な理窟を云ふのである。 そのお石が近頃また病んでゐるのである。今度の病氣は、ひどく下腹が張つたり、引釣つたりするのだつた。不意に差し込むやうな痛みが來た。時々吐き氣を催した。立眩みをするといふことが珍らしくはなかつた。下腹に痛みが來る時には、出血を伴ふことさへあつた。 お石は不安であつた。近頃の彼女は一寸した身體の不調にも、甚だしい精神の動揺を感じた。何か非常な不幸の前兆のやうな豫感がして、さうすると一層心臓がドキドキして、一所にぢつと坐たり立つたりしてゐることが出來なかつた。彼女の實感では身體の水分が乾上つて行くやうで、聲が上ずつたり、物を持つ手がふるへたり、視線が定まらなかつたりした。彼女の小さな眼はきよときよとして、追ひ詰められた動物のやうな恐怖にふるへてゐた。 お石は一度醫者に診てもらひたかつた。彼女はどんな醫者をも信じてゐた。醫者の言葉さへ聞けば、身體中のしこりが溶けるやうに今の不安が消えて、ゆつたりと落ち着いた氣持になれることをお石は知つてゐた。醫者が氣休めに云ふ言葉をも、そのままに信じて疑はず、有難がるやうな女だつた。今迄何人かの小さな子供達が、突然思ひもかけない死の轉機を取つたやうな時にも、それを醫者の罪として考へたことは一度もなかつた。その醫者を思ふ心が今度は特に痛切であつた。お石は今迄世話になつた幾人かの醫者の顏と、その診察室とを腦裡に思ひ浮べて見た。しかしその何れもが、踏むべき敷居として、彼女の前には高きに過ぐるのであつた。 お石は思ひ餘つた。不吉な豫感と恐怖とは益々募つた。その時お石は嘉助を思ひ出した。お石はかねてから、嘉助とは親しい間柄であつた。何かにつけて嘉助に泣言を聞いてもらひ、嘉助の强がりを聞いて慰めを得てゐるやうな一人であつた。で、今度も彼女は嘉助を訪ねた。そして訴へたのである。 嘉助は同情した。先生にいいやうに話して取り成してやるから安心しろと云つて歸した。それはつい今しがたのことであつた。 「どうも可愛想なもんだからね。長森の家といふのは亭主がやくざで、女房が働きものなんだ。今女房に萬一のことでもありや、あの家は滅茶苦茶やからね。なアに、あの女がぢかに先生のとこさ行つて賴んだかて、厭だ、診るわけにはいかんなんて云ふこたアありやせんさ。人の命にかかはるこつちやからね。だもんで圖々しい奴らはみんなさうするんだ。醫は仁術と云ふことにつけ込むんさ。したが長森の女房にやそれが出來ん。しをらしいやうなもんんだ。で、わしは今晩にも森口の先生のとこさ行つて賴もうと思うたが、わしはあの息子の先生のことはよう知らん。老先生は先月からずーつと京都の方さ行つてゐて、留守だと聞いてるもんでね。そこで思ひついたのがあんたのこつた。これはあんたからの方がようはないかと思うてね。一つ行つて話してみてくんなさるまいか?」 さう嘉助は駿介に云つた。駿介は無論この賴みを請け合つた。 嘉助が訪ねて來たのはまだ宵の口であつた。駿介は今晩これからすぐに森口を訪ねることにした。まだ仕事着姿でゐた駿介は、手足を洗ひ、着物を着替へ、大急ぎで茶漬けをかつ込んだ。訪ねる家へ一緒に行くわけではないが、嘉助は一緒に出ようと云つてその間待つてゐた。 間もなく、暗くなつた夜道へ二人は連れ立つて出た。 駿介は菠薐草の束を、風呂敷に包んで右手に下げてゐた。それは非常によく出來た菠薐草で、駿介自身の丹誠に成るものであつた。何か手土產を持つて行きたいと思つた駿介は、咄嗟のこととて何も考へつかず、拔いて來て土間の隅においた菠薐草を、泥のついたまま下げて來たのであつた。 「家にゐるだらうね、森口さんは?」 「そりやゐなさるよ。お医者ぢやもの。それに老先生もお留守のことだし。」 「一體どうなの。森口さんの醫者としての評判は。」 「どつちかね?息子さんの方かね、それとも――」 「息子さんの方。」 「そりや評判のいいもわるいもないが。なんしろ、東京の大學を出とる醫學士の醫者なんてものは、この近在には一人だつてないからね。あの先生さ注射の一本も打つて貰やあ、どんな病氣だつてその場で吹つ飛んぢまふやうに思ふだらうからね。愛想つ氣のないとこなんぞ、却つて有難く見えるのかも知れねえね。」 「愛想つ氣のない方なのかね。」 「ああ、無愛想な方らしいね。だから餘り親切でないなんて云ふものもあるがね。」 駿介は、かつて父から、森口慎一が、田舎の家を嗣がなければならぬ境遇に不滿であり、その父との間もとかく圓滿を缺いてゐると聞いたことがあつたのを思ひ出した。 今日これからの訪問を思ふにつけても、駿介は、彼が寄託されてゐるもう一つの事件、廣岡のことを思ひ出さないわけにはいかなかつた。それは此頃の彼の心に絕えず一つの鈍い重みとしてのしかかつてゐるものだつた。彼は引き受けてそのままになつてゐるこの寄託に對する毎に、ひどく憂欝であつた。彼の責任感は疼いた。怯懦な氣持の重さに引きずられて、彼はまだその解決のための第一歩すら踏み出してはゐない。 道が本通りと交叉してゐる所で、二人は別れた。 「ぢやあ、また後程。歸りには寄りますからね。」 「どうぞよろしう。遲うなつても寄つて下され。起きてますによつて。」 嘉助は左へ、本通りの方へ折れた。駿介は眞直ぐ前へ道を横切つて行つた。 間もなく森口の家の前へ出た。古風な冠木門のわきの潛門を彼は中へ入つて行つた。玄關は二つあつた。新しく建つた診察室にすぐ續く玄關と、古くからの住宅の方のとであつた。その後の方の戶を開けて、駿介は案内を乞ふた。 女中が名を聞いて奥へ引つ込んで少しすると、長い廊下の奥の方から、 「ええ、誰だつて?」と、訊き返す若い男の聲が聞えた。續いて、患者ぢやないのか、と云ひ、それに對して何か云ふ女中の声は聞えなかつたが、「なに、杉野。」と云ふ聲ははつきり聞えて、すぐに廊下をこつちに來る足音がした。 出て來た森口は禮を返して、半信半疑らしく、そこに立つてゐる見慣れぬ男を見た。名を聞いてすぐに腦裡に兆した男の姿を、確かめようとするもののやうだつた。 「ああ、やつぱり君だつたのか。」彼は叫ぶやうに云つた。顏ぢゆうが綻びた。「さア、まあ上つて下さい。」彼は手を取らないばかりにした。そして駿介が下駄を脱いで式臺に足を掛けた時、森口は大きな聲で女中を呼んで何か云ひ附けながら、廊下をずんずん先の方へ行つた。駿介は、下げて來た風呂敷包を、そのわけを云つて、女中に渡して、森口の後に續いた。 座敷に向ひ合つて坐つた二人は、その瞬間、何れも共通の思ひのなかにあつた。彼等は彼等が最後に逢つた時は何時であつたかと思ひ返してゐた。しかしそれはうすぼんやりとした印象のなかに消え去つてしまつてゐた。そのことは過去に於ける彼等の交友關係が、さほどに濃密なものでなかつたことを示してゐた。何れにしてもそれは彼等の學生時代であつた。それ以來今日までの間にはさまる時の經過を、二人はそれぞれ相手の身の上について思つた。彼等は互ひの變化を認め合つた。 「どうして今迄訪ねてくれなかつたんです。つい眼と鼻の間にゐるのに。」 彼はもうすつかり醫者であつた。いかにも學校出たての若い醫者らしい風格が、さうして和服姿で寛いでゐても身についてゐた。 「どうもつい來そびれてしまつて……お歸りになつてゐるつてことは、もうずつと前に伺つてゐましたが。餘り長くお目にかからないでゐると、どうしても億劫になつてしまつて。」 「僕も君のことは聞いてゐたんです。志村君からね。」 「志村君にはよくお逢ひですか。わたしはずゐぶん長く逢ひませんが。」 「さうですつてね。ぼくもさう始終といふわけではないけれど。」 それでも時々逢つてゐるとすれば、志村の方から訪ねて來ることもあるのだらう。近くでゐながら、その時駿介を訪ねることはしない。志村は避けてゐるのであらう。そして、その氣持は駿介としても同様であつた。彼は志村と氣拙い別れ方をしたなどとは思つてはゐなかつた。次に逢ふことの障害となるやうな感情を持ち合つて、別れたなどと思つてはゐなかつた。ただ彼等は二人ともに自分自身について自信がなかつたのだ。逢へば何となく苛立つばかりである。そのあとの氣持は何とも云い難いものだ。しばらく離れて各自がその信ずる處に從つて、各自の世界をもつと堅固な基礎の上に築きたい。ある程度それが出來から逢ひたい。それまでは孤獨であることが必要である。さういふ氣持が自分にもあるし、志村にもあるのだと駿介は思つてゐた。又、森口を訪ねるのを億劫に感じてゐたといふのも、同じ氣持からのことだと彼は感じた。 「君のことばかり云つて、僕が君を訪ねなかつたのを云はないのは滑稽だが、志村がね、まだ當分、訪ねない方がいいんだらうなんて云ふもんだから……。」 「さういひましたか、志村君が。」と、駿介は微笑した。 「さう云ふんですよ。久しぶりで逢つていきなり議論になつちやふからつてね。」と、森口も笑つた。 「此頃はどうですか、志村君は。何れ東京へ行くと云つてましたが、止めにしたんでせうか。」 「此頃は落ち着いてゐますよ。身體もずつとよくなつたし。やつぱり何か一つ仕事を始めるとね。」 「仕事?仕事つて何を始めたんですか。」 「へえ、君はまだその事も知らなかつたのかな。したつて、上原さんといふのは、君とは近いんでせう。」 「ええ、上原はさうですが――上原の小父さんにも随分長く逢ひませんが、あの人が何か――」 「上原さんはね、今度縣で始めた、縣史編纂掛りの主任になつたんですよ。それで志村君は囑託になつてその下で働くことになつたわけです。去年の秋あたりから、ぼつぼつ仕事にかかつてゐるらしいんだが。」 「ああ、さうでしたか。」 上原の小父にさういふ話があるといふことは駿介もかつて聞いたことがあつた。縣史は明治三十年代に一度編纂されたことがあつたが、それはいかにも杜撰きはまるもので、新しい編纂の必要は早くから云はれてゐた。二年前に縣會の決議となり、豫算を組み、縣の學務部に縣史編纂掛りをおいて、いよいよその仕事を始めることになつたが、肝心の編纂主任について色々行き惱んだ。結局、郷土史の研究でその業績を廣く認められてゐる上原が、慫慂されて、その任に就くことになつたが、上原は彼一流の綿密さでプランを立てて見て、五ヶ年の繼續事業とするなら引き受けようと云つた。豫算では三ヶ年の繼續事業であつたのである。上原は三年では到底滿足な仕事は出來ないと主張した。飽く迄讓らなかつたので、そこでまた行き惱んでゐるのだつた。それまでのことを駿介は耳にしてゐた。今引き受けたと聞けば彼の要求は通つたのであらう。新聞にも出ただらうが、駿介は見逃してゐた。この正月にもらつた年賀狀の端にも、その後どうしてゐるか、たまには遊びに來るやうに、とは書いてあつたが、縣史のことについては何もなかつた。 「プランを聞いてみるとね、だいぶ大掛りのものらしいですよ。索引や年表を除いて四卷ださうです。縣には一應資料は集つてゐるさうだが、その他民間の資料も可能な限り見たいと云つてるんです。僕んところの土蔵の二階にあるものもかなり參考になるらしいんでね、それで志村君がやつて來るんですよ。身體のことで前にもちよいちよい來てはゐたが……此頃は丈夫になり、氣持も明るくなつて、戯談口の一つも利くやうになりましたよ。」 志村がどういふ氣持からその仕事に攜はるやうになつたとしても、今の彼にとつてそれはいいこと、必要なことだと駿介は思つた。 「どうか君、今日はゆつくりして行つてくれ給へ。」 そしてその森口の言葉と同時位に、襖が開いて、女中が酒の支度をして運んで來た。森口が何時家人に云ひ附けたものか、駿介は氣づかなかつた。すすめられるままに彼は盃を二つ三つ干した。 「君も此頃は飮(や)るんでせう。激しい勞働をするものにとつては生理的に必要物らしいからね。」 「激しい勞働」などと云ひながら、森口はしかしそこから駿介の今の生活に觸れて行かうとするのでもなかつた。彼は手酌でぐいぐい飮んだ。彼に醉はれる前に、肝心の話は耳に入れておかなければならなかつた。 「實は今日は少し用事を持つて上つたんですが。」 駿介が話し出した用件を、森口はふむふむと聞いてゐた。患者の長森の名は彼の記憶にあつた。聞き終ると、「ぢやあ、明日にでも寄越してくれればいいです。」と無造作に云つた。そしてそれつきり話を他へ持つて行かうとした。駿介が云つたことを、一體どれだけの注意を持つて心に留めたか、と疑はれるほどであつた。しかしそれは誠意を缺いてゐるのではなくて、何だそんなことか、そんなことは何もわざわざ斷るには及ばないぢやないか、何時でも來てくれたらいい、といふこことが色に現れたのであることが知れた。駿介が追つかけるやうにして念を押すと、彼は分つた、分つたといふやうに頷いて笑つた。そして話をまたさつきのところへ持つて行つた。 「――その仕事のことでね、志村君は毎週一囘土曜日に上原さんの所へ色々打ち合せをしに行くんです。あんな黴臭い古反古のなかに首を突つ込んで、實際によくやつてゐると思ふよ。仕事が違つて了つてからの彼のことは餘り知らなかつたが、彼にはああいふ詮索癖みたいなものがもとからあつたのかな。」 「兎も角非常に丹念な人ですからね。むしろ彼の得意な領域でせう。繼濟史をおもにやつてゐて、學生時代にもう立派な論文があつたくらゐですから。」 「道理で。好きでやつてゐる、熱情さへ持つてやつてゐるとしか見えないもんだから。――しかし上原へ行くのは苦手らしいですよ。今、息子さんが歸つて來てゐるんで、その人にひどくやられるらしいんです。此頃の志村は餘り人と議論はしたがらないらしいから。」 「息子つていふと、――哲造さんですか。」 「さう。君はよく知つてゐるんですか。」 「いや、殆んど知らないんです。」 「ひどい懷疑派らしいねえ。これは僕の想像だけれど、曾つての君對志村といふ關係が、今は志村對上原になつてゐるんぢやないかと思ふんだが。話の模様を聞いてみると。」 「さうですか。」 「ところでどうなんです。君の此頃は。もうすつかり落ち着いて了つたんですか。」 森口は漸く話をそこの所へ持つて來た。同時に彼の顏には適度の醉が現れてゐた。舌は滑らかになり、聲は段々高くなつた。 駿介は一寸答へられなかつた。すつかり落ち着いて了つたのかといふ云ひ方のほかには、幾らか皮肉な調子が嗅ぎ取れなくもなかつた。 「本當に落ち着いて居れるんならえらいけどなあ。僕は尊敬するけどね。――本當ですか。本當に君は田舎に歸り切りに歸つて來たんですか。このまま田舎に落ち着くんですか。」 「ええ、落ちつくつもりなんです。」 「そりや君、つもりでせう。そのつもりで歸つて來たんでせう。しかし一年經つて見てどうです。一年前と變つてゐませんか。一年前の意氣込んだ氣持を今も持ち續けてゐますか。」 「變つたとしても惡く變つて來てゐるとは思ひませんね。意氣込んだ氣持といふものがあつたとすれば、それはもつと沈潛したものになつてゐると思ひます。興奮狀態はさう長くは續くわけはないから。しかしそれだけ强くなつて來てゐると云へると思ひますね。」 「それは正直なところですか。無理をしてゐる、もつと突つ込んで云へばごま化してゐるといふところはありやしませんか。慘めな氣持を味ひたくないと云ふ……この轉換が、この生活が失敗だつたとすればやり切れないことだ。それを自分に感ずることは堪らないといふ氣持があるから、深い底の方は見ないことにする、恐いものは見ないやうにして、そつと手前の方ですましておくと云ふやうな――」 「さうだとすると、卑怯な、勇氣を缺いたことになりますが、僕は自分ではさうではないつもりです。見るもの聞くもの感じるものを、自分に都合が惡いからと云つて、拒否するといふことはない。僕にとつての問題はさうではなくて、その見たり聞いたり感じたりしたことの本當の意味を自分は果して摑んでゐるかどうか、或ひは、自分は本當に見なければならぬ、感じなければならぬものを、見たり感じたりしてゐないのではないか、――さういふことだと思ふんです。そしてもしさうだとしてもそれは、今の卑怯な氣持からではなくて、ただ僕がまだあらゆる意味に於て未熟だといふに過ぎない、もつと年を經、苦勞を積み、勉强をすれば段々分つて來るだらうといふ、極めて單純な、まともなことに過ぎないと思つてゐるのです。」 「………………」 「そりや色んな氣持といふものは起ります。しかしそれは氣持ですからね。感覺的なものを輕視していいわけはないし、夫々に根を持つてゐるといふ意味ではみな眞實なものだが、さうかと云つて互ひに矛盾し合つて起つて來るそれらを皆一樣に大切に思はなければならぬといふことはないでせう。どれにもこれにも忠實に一々引き□されてゐたんぢや、やり切れない。感情の動きなんていふものは一つには習慣みたいなもので、かなりだらしのないものだから、これに對しては意志的な努力を差し向けることが必要だと思ふんですが。それは決して壓力を加へて眞實を阻むといふやうなことぢやないんです。ただその意志的な努力も結局は生活に根を持つたもので、ただ觀念の上で氣張つて見た所で何にもならない。生活の上に確固とした目的が立つて、それに向つてひた向きであれば、感情の上にも自ら整理が行はれて健康であり得ると云ふやうなものです。その點でも私は昔は駄目でしたが今はいいわけです。」 「ぢやあ、生活の上の確固とした目的といふ、その根本的な點での動揺は無いわけですか。」 「動揺……といふやうなことがあるとしても、そのために却つて確信が强まるといふやうな――つまり最初からその解決を疑はないし、それが解決した時には自分は今の方向に益々强まつて行くだらう、とさういふ見通しの上に何時も立つてゐるのです。さういふ點ではひどく樂天的ですよ。」 「ふむ、一つの信念になつてゐるわけだね、もう。」 「…………」 どうも僕には納得出來ないところがあるな、つまりその信念になつてゐるといふところだが……しかしまアいい、君は君の信ずる通りやつて行くだらう。――君は百姓に成り切れりやいいんだ。」 「さうです。」 「しかし僕はどうだ?百姓には田舎しかない。今のこの農村を離れて百姓はない。君はもうちやんと縛り附けられて了つてゐる。それが君の强味だ。さう腰が据ゑられさへすれば君は幸福なもんだよ。しかし僕は醫者だ。醫者は何もここでなきやならんと云ふわけはないんだからね。」 「…………」 「君はインテリの皮を一枚一枚剝いで行きやいいんでせう。剝ぐことはじつに難しからうが、方向は一直線だ。僕はさうはいかないよ。インテリでも、地主の伜か何かで、上納米目あてに田紳として田舎に居る分にやいいが、僕等の若さで、醫者といふ仕事を持つて田舎にゐなければならんといふことは實際やり切れないことですよ。」 「さうですかしら。」 「若い醫者としての夢、希望、野心、さう云つたものは何一つ滿されやしない。仕事の上で何か一つの業績を上げようと云ふことだつて出來やしない。研究室の便宜も無いんだから。せめて近くに大學のある町でもありや助かるんですけどね。何しろ環境がこんなぢや。君が百姓に成り切るやうには、僕が田舎醫者に成り切るといふわけにはいかないんだ。醫者とは違ふ何かに成ることぢやなくて、醫者としては駄目なものに成り下つて行くと云ふことなんだから。それが見す見すわかつてゐながら、かうしてゐなきやならんと云ふのは、やり切れないことですよ。」 「僕等には醫者の仕事と云ふものはよく分らないけれど、素人考へだけれど、さう諦めて投げて了はなきやならんものでもあるまいと思ひますが。」 「といふと?」 「若い醫者としての夢、希望、野心、さういふものを田舎醫者だつて滿たされる、いや田舎醫者ならこそ滿されるといふものがあるんぢやないかといふやうな氣がしますが。例へばその地方に特有な病氣とか、農民に最も多く見られる病氣と云つたやうなものがあるでせう。また何か新しい研究とか、發見とか云ふことではなくても、――さういふことだけが何も醫者としてのえらい仕事ぢやないんだから――例へば今の農村は醫療設備の方からいふと實に貧しい、衛生思想も遲れてゐる。醫者は居ても新しい學問をした醫者は少い、さういふ狀態だから、自分の個人の力だけでも出來るだけの事をしてその缺を補つて行く、罹らなくてもいい病氣に罹り、死ななくてもいい病氣で死んで行く狀態を少しでも改め、さういふ人間を一人でも多く救ふことが出來ればそれほど素晴らしいことはないでせう。さうだとすれば、ただ患者を診て癒すといふ日常の仕事のなかにこそ情熱を感じることが出來る、そしてそれが今日の醫者としてのほんとうの――」 「そりや君、折角だけれど僕等は、さういふことは實際聞き飽きてゐるんだ。毎年の卒業生の中にはさういふ理想家といふものが少なからず居てね、丁度いま君が云つたとそつくりそのままの事を云つて、抱負を持つて田舎へ落ちて行くんだけれど、二年と一所に踏み止つて居たものはない。都會に居て、學生時代に想像してゐたやうなわけにはいかないんだよ。そりやさういふ連中の意志の弱さを攻めることは出來よう、しかし攻めて見たところでどうなりますか?その連中だつて何も特別弱い人間なわけぢやないんで普通な人間なんですからね。そして誰にでも普通以上を要求したつて無理なことですからね。問題はさういふ普通の人間が、やつて行けないやうな狀態に、今日の農村があるといふことです。彼が自分の成長を欲する醫者である以上は、ね。僕は何も經濟的なことばかり云つてゐるんぢやありませんよ、そのほかに實に樣々な事柄です、彼の醫者としての發展を消極的にか積極的にか阻害するやうな。――すると、さういふ狀態がわるい、田舎がどんどん優秀な醫者を吸収し、彼等が安んじてそこに止まり得るやうな狀態に先づしなければならぬといふことに當然なるでせう。しかしそれは社會の組織とか制度の問題です。醫者の問題ぢやありません。僕は技術家なんだから。」 「それが医者の問題ぢやないと云はれるんですか?」 「無論醫者に關係のある問題ではあります。しかし医者が積極的にどうかうしようといふ問題ぢやないと云ふのです。そりや、少し前にはさういふ問題も醫者の領域と考へた人もありましたがね。しかしそこへ首を突つ込んだ人達の成行きといふものは僕等はこの眼で見て來てるんだから。僕等は飽迄もただの技術家として止まればいいんです。やつて行けるやうになつたら行く、それ迄は行かない。社會改革的な意味で醫者が社會の先に立つ必要なんぞ何もありやしないんだ。」 「さうですか、そんな風に考へてゐられるんですか。――それではたとへば未開の地の開發に於ける醫者の大きな役割などは醫者本來の仕事ではないと仰るんですか?」 「僕は何も特別な場合の事を云つてゐるんぢやありませんよ。普通一般のことを云つてるんですよ。さういふ人は醫者として尊敬されるべきでせう。しかし誰にでも普通以上は要求出來ぬと僕はさつきから云つてゐるのです。――誰だつて物質的には惠まれた方がいいし、學位も、社會的な名も欲しいにきまつてますからね。どんな醫者だつて貧乏人よりは金持を、非常識な人間よりは物の分つた人間を、汚ない人間よりはきれいな人間を患者にすることを好みますからね。――また例へば、君なんぞは實に馬鹿げたことのやうに思ふかも知れないが、うまいコーヒーの一杯も飮みたいとか、うまいものを食ひたいとか、明るい夜の街を歩きたいとか、きれいな女を見たいとか、さういふことが實際には實に大きなことなんです。都會生活に慣れたものにとつちやね。田舎の生活に堪へられなくなつて逃げ出す原因の大きなものは案外さういふ卑近なものではないかと思ふくらゐです。ことに醫者にとつてはある程度の享樂は生理的な必要かも知れない。よく醫者は遊ぶと云ふでせう。何しろ醫者は一日中、病人相手ですからね、どうしたつてさういふことになるんです。――さういふ實際を見なくつちや。」 「そりやさういふことはあるでせう。しかしそこまで考へなくちやならない、そこまでさういふ人と一緒について□らなくちやならないとなりや、僕はもう何もいふことはない、引き下るまでですね。――僕はいつも何かやらうといふ意志を持つた人間について云つてゐるんですから。今の農村の醫療狀態を考へて、これに對して何等か積極的に働きかけるために農村に居を据ゑようといふ人間について云つてゐるので、さういふ人に、都會的な感覺的な享樂が許されぬといふことは、これは最初から既定の約束でせう。さういふことは最初から覺悟してゐるべきことでせう。」 「君は理想家だよ。だから僕がさつきも云つたやうに、君は結局、限られた特別な人間にあてはまることだけを云つてゐるといふんだ。」 「さうでせうか。僕はさうとは思ひませんが。例へば感覺的な享樂的な要求といふものだつて、僕は非常に簡單に考へてゐるんです。習慣だと思つてゐるんです。日常の生活を少し意志的に規律することでどうにもなると思つてゐます。そしてそれは何も難かしい、特別な人間にだけ可能なことではない。大切なのは、簡粗な淸潔な秩序ある勤勞生活です。朝は早く起き、冷水で身體を拭ひ、淸潔な食ひ物を食ひ、よく筋肉を勞して働き、物事は何でも自分自身の頭で納得の行くまで考へ、一日の課程は必ず仕上げてのち眠る、といふやうな平凡な事柄の持續的な實行です。過去と未來との雙方に無用に引きずり□されることなしに、その日その日の生活を一つ一つ土臺石をおくやうにして積んで行くことです。僕自身はさういふ平凡な單純な一種の努力主義を自分の生活の信條としたいと念じてゐるのです。ある人々には少し現代離れがしてゐるやうに思はれるでせうが。しかしさういふ生活にあつては不健康な要求は起ることが少いし、またよし起つても意志を働かして抑へることが割合に容易だと思ふのです。無理な克己をせずに强ひられざる禁欲が出來るのです。禁欲は別に苦痛にはならない。そして僕は、別に禁欲主義者ではないが、さういふ風にして得られる禁欲は、――といふよりはその基礎をなす生活ですが――それは望みを持つ我々には必要であり、大切であると思つてゐるのです。」 「…………」 「僕はあなたが、今の若い醫者が田舎に住みにくいといふことに就て云はれたことは皆その通りだと思ひます。そのなかで經濟的に惠まれぬといふことは矢張最も大きな原因ぢやありませんか。しかしそれはこれから田舎へ新しく足場を持たうといふ人のことで、あなたはさういふ人とはまるで違ふんですから。醫者としてあなた位しつかりした足場に立つてゐる人なんていふものは今日さうたんとあるわけはない。僕がさつき云つたやうな仕事をやれる條件は、少くともその外部的な條件はあなたには實に申し分なく揃つてゐる。僕などはあなたにそれをお願ひしたいのですが――」 「君はまるで僕の親父そつくりなことを云ふ。」と、森口は笑つた。 「この事に關する以上、僕はお父さんに左袒します。」と、駿介も笑つた。 「僕の親父にとつては、十代續いた醫者としての家名、それもこの土地に於けるそれが絕對唯一のものなんですからね。ただそれだけなんです。そのために今君が云つたやうなことまで色々云つて僕を誘はうとするんです。此頃ぢや、早く嫁を持たせたら、といふやうな常套を考へて色々やつてゐる……。」 「今はお留守ださうですが。」 「そんなことのために京都へ行つてゐるんですよ。」 話が途切れた。もう大分時が經つてゐるので駿介は歸ることにした。「どうも初めて來て議論なんかしつちまつて」と、駿介は辭去の挨拶を述べた。森口はまだいい、まだいいと云つてしきりに引き止めた。その引き止め方は、決して口先きだけのものではなかつた。 玄關までの廊下を歩きながら、駿介はもう一度、お石のことを云つて賴んだ。 「ぢやあ、これから是非時々來てくれ給へ。僕の方からも行つてもいいが、君は忙しくてゐるだらうから……。」と、見送りながら森口は、本當に心殘りがするやうであつた。 夜は暗く、冷く、少しばかり飮んだ酒のために、身内から一層冷えて來るやうであつた。 ひどく遲かつたけれど、約束通り嘉助の店に寄つた。戶に掛けた白いカーテンの向うは明るく、戶を叩くとまだ起きてゐた嘉助はすぐに來つて来〔ママ〕た。中へ入れといふのを、遲いからと立話ですました。嘉助は明日の朝早速、お石を、森口の所へやるやうにすると云つた。
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[部分編集] 天下を汝に取らせない! http //www.nicovideo.jp/watch/sm9301931 使用ゲーム 太閤立志伝V シナリオ・担当勢力 覇道の章(1575年) 今川氏真 シナリオの設定 - 動画形態 紙芝居あり 登録武将 下記参照 史実武将の扱い - 縛り - 投稿時期 2010年1月5日~2010年5月5日 投稿者名 じゃが マイリスト 天下を汝に取らせない! 関連タグ ニコニコ大百科 - 関連サイト なんと?! ら ニコ証 - 備考 次回作→ ナントラ!氏真公はカリブの大統領 [部分編集] 簡単な解説 今川氏真で九州・佐伯城からスタートする仮想プレイ動画。 このタイトルは、今川氏真が主人公の長編小説『天下を汝に』(赤木駿介)からと思われる。 基本的にプレイ画面早送りでゲーム説明はほとんどなく、 時折紙芝居がはさまれるタイプの動画のため、「初心者向け」とは言えない。 「太閤立志伝動画を見慣れている人向け」の作品であり、 プレイの早送り→「紙芝居によるまとめ」でサクサク展開するテンポは心地よい。 「歴ヲタ」ならばわかる「史実ネタ」もポイントの一つ。 BGMとして、ユニークで頓知のきいた曲(懐かしめの曲が多め)も流すのも特筆すべき点である。 ■今川家公式テーマソング 「ふり向くな君は美しい」 阿久悠作詞、三木たかし作曲 Vo.ザ・バーズ ■今川家蹴鞠大会公式テーマソング 「WE ARE THE CHAMP〜THE NAME OF THE GAME〜」 [部分編集] ものがたり 武田・徳川に攻められて領国を失い、北条にも見捨てられて諸国を流浪する氏真夫妻。 忠臣朝比奈泰朝が、かつて九州探題を務めた「今川了俊の埋蔵金」の情報を手にしたところから物語は始まる。 めざすは今川家再興。その旗の下に、時空を越えて惹かれあう者たちが…… ブーストは「初期資金を60万貫に」の一点。 小説『天下を汝に』の「汝」は徳川家康のこと。 『天下を汝に取らせない!』の氏真は、家康をはじめとする「裏切り者」たちを打倒し、 天下を自ら手中に収めることができるか?! [部分編集] 初期メンバー 初期メンバーは以下の面々。 今川氏真 :君は美しい、戦いに敗れても。ひたすらに生き、前向きに走り続けるかっこいい氏真公。 朝比奈泰朝 :ご存知今川家の忠臣。このシナリオでは本来死亡扱いだが(史実では没年不明)、うp主により復活。 + up主による解説 今川家の忠臣。表向き死んだことにして諸国を放浪中、九州にて今川了俊の埋蔵金の情報を手にし、氏真に伝える。 その後は今川家の家老として、戦場に出たり治安維持を行ったりと八面六臂の活躍をする。 高能力武将の加入により、戦場からは遠ざかってしまい留守を任されることが多くなったが 氏真が戦場で戦えるのは泰朝がいるという安心感から(第10話より)なのである。 欠地王ジョン・劉禅 :再評価待ちセイムスメル仲間の登録武将。たぶん軍師黄皓の憂鬱リスペクト。 + up主による解説 欠地王ジョン :博多の町で埋蔵金発掘の誘いに乗って仲間になる。まんま軍師黄皓の憂鬱リスペクト。 足軽隊が主力だった序盤戦などで活躍したが、やはり高能力武将の加入により一線から遠ざかっている… と思いきや、第15話で西洋建築術を駆使して城郭整備を行っていることが判明。 さすがリバプールの生みの親である。 劉禅 :博多の町で埋蔵金発掘の誘いに乗って仲間になる。まんま軍師黄皓の憂鬱鬱リスペクト。 初期メンバー唯一の火攻め持ちゆえに城攻めで活躍したが、やはり高能力武将の加入により一線から遠ざかっている… と思いきや、行政官向きのステータスを割り振られているために内政では主力級の活躍を見せている。 (だが映像ではカットされているため、扱いは悪い) 第16話では久々に従軍したが、敵の集中攻撃を食らってピンチになっていた。 一条兼定 :「再評価」されつつある氏真に代わり、暗君キャラの代表となっているお方。土居さんはついてません。 + up主による解説 府内の町で絶望していたところを氏真一行に誘われ仲間になる。 初期メンバーの中でも一番低い能力値だったため、初期から合戦に置いてきぼりにされるなど扱いは悪いように見えるが 弁舌と算術の技能を最初から持っている唯一の初期メンバーのため、軍資金調達に活躍する。 また、中村御所攻めのときは自ら戦場に立つことを志願。交渉で中村御所を手に入れたり その後、長宗我部を寛大な心で許したりとストーリー上でも活躍を見せている。 もちろん、氏真公の愛妻・早川殿もいますよ。 + 早川殿up主による解説 氏真の正室。あまり紙芝居上の出番はないが、出るときはインパクトの強い登場をすることもある。 [部分編集] 途中加入メンバー(ネタバレ注意) + 伊東家 今川家の最初の攻略目標となった大名家 主要BGM・ 伊東義祐 「伊東家など九州では弱小中の弱小」と言い切り、氏真たちにプレッシャーを与える。 伊東祐兵 父と匡徳を今川家へ降伏するよう説得した。 山田匡徳 力攻めの持ち主だったため阿蘇攻めのメンバーに抜擢される。その後も九州で奮戦するが、高能力武将の加入に伴い一線を退く。 + 阿蘇家 今川家の第2の標的 主要BGM・巫女みこナース・愛のテーマ 阿蘇惟将 阿蘇神社宮司。本願寺メンバーが加入してきたときは宗教上の理由により若干緊張していた。 甲斐宗運 阿蘇家の忠臣。今川家がはじめて迎えた高能力武将ということで優遇されるかと思いきや、そんなことはなかったぜ! 現在は外交のドサ回りが主な仕事。 須田満親 このシナリオでは初期小諸の町所属なのだが、流れ流れてなぜか阿蘇家に所属していた。 + 肝付家 このシナリオでは島津に下っていたが、今川領を攻めて備大将ばかりの今川家に返り討ちにあい、その後城を攻められて降伏する。 主要BGM・スネオのテーマ 肝付兼護 グラでは甲冑に身を包んでいるにもかかわらず、能力などは氏真と同レベルのため返り討ちにあう。 禰寝重長 今川家の中でも有数の内政能力を持つ頼れる人。主に商品作物の植え付けを行っているらしい。 + 相良家 島津に攻められていたところを今川家にハイエナされた。 主要BGM・ 丸目長恵 剣豪でありながら内政技能も高いため八面六臂の活躍を見せる。イベントで道場を開いていたが、新流派を興した氏真の手により、見えないところで閉鎖されていた不運な人。 赤池長任 紙芝居での登場はないが、地味に活躍していた人。第12話の有岡城防衛戦で勲功第一になったあと、氏真が丹後を攻めている最中に病死した。 + 最上家 第4話で滅亡したことを乗阿の手紙で知った氏真が、「ちょっと」出羽まで行って主力メンバーを勧誘してきた。 主要BGM・ 最上義光 歓迎会で出されたスモークサーモンの影響で頑張ることを誓う。その後は赤井直正らに尊敬の目で見られたり、内政で活躍していたりする。 志村光安・氏家守棟 同時に勧誘された。紙芝居での出番はないが、訓練や内政で地味に活躍している。守棟のシルエットが氏真とほぼ同じである。 + 波多野家 第4話で滅亡したことを知った氏真がダッシュで有能な二人を勧誘してきた。 旧波多野家居城攻略時BGM・赤鬼と青鬼のタンゴ 赤井直正・籾井教業 赤鬼青鬼と呼ばれるために、鉄棒使いの最上義光に畏敬の念を抱いている。 + 本願寺家 第4話で滅亡したことを知った伊集院忠棟が勧誘を提案し、下間頼廉をはじめ何名かが応じた。 主要BGM・RYDEEN 下間頼廉 ライレーンの異名を持つ陸戦型バトル坊主。そのため内政・合戦・外交にフルに活躍。頼廉の三段撃ちは相手にとって死を意味する。なお、最初うp主は廉の字を間違えていた。 + 浦上家 第4話で宇喜多直家ら数名が加入。その後、第8話の毛利攻めなどで残りのメンバーが加入。 主要BGM・水の星へ愛を込めて・Z・刻を越えて 宇喜多直家 この動画では乗っ取る前に浦上家が滅亡してしまったため悪名が低い。内政においては高い技能で成果をあげ、合戦においては威圧と鬼謀を駆使して大車輪の活躍を見せる。間違いなく今川家におけるエース中のエース 戸川秀安・岡利勝・長船貞親 宇喜多三家老で、利勝と貞親の二人は直家を逃がすために毛利に下る。その後、毛利攻めで再会する。 + 大友家 龍造寺との戦いに明け暮れていたところを今川家にハイエナされた。 主要BGM・ 大友宗麟 氏真の考えに共感し、家臣団と共に協力することを誓う。動画中では蹴鞠大会にしばしば出場し、優勝をかっさらっていく。史実でも飛鳥井流を学んでいるため、ある意味当然の結果かもしれない。 + 島津家 多くの動画でラスボス的地位を与えられているが、この動画では九州スタートのため比較的早く滅ぼされた。 主要BGM・曲名不明島津冴子Vo(おそらくサクラ大戦のもの) 島津義久 島津家当主。今川の士気攻めに耐え切れず降伏する。その後は今川家のエースとして主力になる。何気に紙芝居への出演が多かったりする。 島津義弘 ご存じ島津の有名人。あまり出番はないが熱いキャラである。 伊集院忠棟 イベコンのイベントによる関係で島津を出奔、そのまま今川家に迎え入れられる。本願寺メンバーの勧誘を提案したり、赤井直正とコンビを組まされそうになったりした。 + 龍造寺家 九州統一におけるラスボス的存在であった。 主要BGM・ 龍造寺隆信 今川の士気攻めに耐え切れず降伏する。豪快な人物である。 鍋島直茂 地味に大村城攻めの際に部下になっていた。この動画では寡黙な人物として書かれている。威圧が使えるため合戦の主力となっている。 成富茂安 今川家における新田開発のエース。のみならず強力な合戦札「土竜攻め」を持っているため、合戦に参加して奮戦することも多い。 + 宗家 特に目立つこともなくひっそりと攻め滅ぼされてしまった。 主要BGM・愛國戰隊大日本EDテーマ + 長宗我部家 一条兼定の仇であるが、寛大な心を見せた兼定の手により許される。 主要BGM・黄金バッド・BAD 長宗我部元親 兼定に許されて今川家に下る。築城能力が半端ではなく、小規模な城でも彼の手にかかればあっという間に大規模になる。 + 毛利家 山陰山陽で強大な勢力を誇っていたが、織田に攻められ弱体化したところを今川家にハイエナされた。 主要BGM・太陽戦隊サンバルカン・山口さんちのツトム君 小早川隆景 今川家のエース。内政から合戦まで、出来ないことは殆どない。 + 松永家 本能寺の変が発生したため独立を図るも、今川家の攻略対象になり屈服した。 主要BGM・科学戦隊ダイナマン・FCボンバーマン 松永久秀 この動画でも黒いには黒いのだが、暗殺などの直接行動に出たことはない。氏真のことは一定の評価をしている模様。 藤堂高虎 なぜか松永家に所属していたため、そのまま部下となる。築城から合戦に至るまで奮戦しており、間違いなく今川家の若きエースである。 + その他 根岸兎角 序盤で自ら志願して部下になる。剣術以外の能力が壊滅的だったために将来を危ぶまれていたが、16話現在では立派な家老である。おめでとう! 古田重然 通称ゲヒ殿。姫路城攻略戦の際に捕虜になり、そのまま部下になる。16話で今川家の茶頭に就任。お祝いに打曇大海をもらっていた。 岡部正綱・岡部元信 第8話で武田家が滅亡したことにより加入。 松下加兵衛・大久保長安 同じく第8話で徳川を出奔し加入。 コメント欄 本当にBGMセンスが素晴らしいwww -- 名無しさん (2010-01-23 10 17 43) 取り急ぎまとめました。BGM関係をまとめるならば別途項目を作ったほうがいいかもしれない -- 名無しさん (2010-03-29 04 03 32) 名前 コメント
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2010年度 得点ランキング 最終第11節終了時点(2011年2月24日更新) 順位 得点 選手 チーム 1 12 須田 開郎 TUFSAL 2 10 山崎 麟太郎 学習院 佐藤 駿介 学習院 3 8 稲葉 友祐 学習院 中田 守 さんぱち 4 7 梅田 駿介 Bruja 山口 修太朗 学習院 佐々木 貴史 さんぱち 間瀬 康介 TUFSAL 難波 竜矢 Family 柴田 元 慶應 小池 弾 慶應 5 6 岡田 将之 frontier 望月 賢 Bruja 塙 純一 Bruja 吉岡 宏海 不動前 高野 佑 さんぱち 武田 陽介 コモエスタ 6 5 佐久間 清貴 Bruja 曽根 直人 不動前 五十嵐 隼 さんぱち 服部 大紀 さんぱち 内藤 聖木 TUFSAL 大澤 卓 Family 毛利 太希 コモエスタ
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プロフィール 凡例 投手 36 1977/5/6 173/75 右右 東京
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プロフィール 凡例 投手 47 1981/11/26 187/85 左左 岐阜
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【出場校】旭川実業(11年ぶり3回目) 【注目選手】鈴木 【戦力】AB 【甲子園でどこまで戦えるか?】 182cmの大型左腕、鈴木駿平が安定感を持つ。 強豪に競り勝ってきた。
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『強襲!極東基地』-2 作者・ユガミ博士 892 バラクティカ*** ポイントゼロにある、バラノイアの前線基地から出撃した戦艦バラクティカの と量産された複数のマシン獣。その旗艦となるバラクティカにはカイザーブルドント そして妃であるマルチーワが乗艦していた。 カイザーブルドント「ふふふ、見ていろよ地球人共。再びこの地球を支配して みせようぞ。」 マルチーワ「頑張って、ブルピー。」 カイザーブルドント「任せろ、マルピー。全軍かかれ!」 カイザーブルドントの号令と共に、バラクッティカから戦闘機タコンパスが 出撃し、マシン獣のバラドリルやバラソーサーにバラミサイラー、バラマジロ、 バラバニッシュ、バラケンダマといった面々が伊豆基地の攻撃を始めた。 ドゴーン、ドゴーン ギュルルルン、バシューン 岡長官「Gショッカーか!」 ベガ副指令「岡長官、待機しているパイロット達に出撃の許可をお願いします。」 岡長官「うむ、待機しているスーパーロボットのパイロット達は出撃だ!」 けたたましい轟音と共に、伊豆基地に火の手があがる。そして、岡長官 によって、ダルタニアス、ザンボット3、ダイターン3、トライダーG7とシャトル、 ダイガード、電童が出撃した。 勝平「にゃろう、Gショッカーめ。この神勝平様とザンボット3が相手だ!」 星野『油断をするな、勝平君。攻撃をしているのは、マシン帝国バラノイアだ。 奴等の戦闘力は、そんじょそこらの組織よりも強力だ。』 剣人「だったら、さっさと片付けちまおうぜ。そうだろ弾児、ベラリオス!」 弾児「応よ、剣人!」 ベラリオス「ぐぉぉぉぉん!」 星野吾郎からの通信に、ダルタニアスのパイロットである剣人、弾児、 ロボットライオンのベラリオスがやる気をみせる。ダルタニアスは、 バラソーサーの元へ向かい、キャノンキュービックで攻撃をする。 柿小路「社長、周りの戦闘機は我々にお任せ下さい。」 厚井「社長は、マシン獣を頼みます。」 ワッ太「OK、これが再スタートした竹尾ゼネラルカンパニーの 最初の仕事だ!行くぞ、マシン獣。」 柿小路専務達の乗るシャトルは基地を攻撃するタコンパスに向けて、 ミサイルとビームで撃ち落していく。トライダーG7も右腕のミサイルで 攻撃するバラミサイラーに向かって、トライダージャベリンで攻撃する。 一方、赤木達の乗るダイガードは、バラドリルへと向かっていった。 赤木「マシン獣、お前達にこの地球を好きにはさせないぞ。」 桃井「ダイガードの整備は完璧よ。」 青山「出力も問題無い。行け、赤木!」 赤木「応。サラリーマンだって、地球を守れるんだ!」 ダイガードの両腕のアタッチメントをドリルアームに換装し、バラドリルを 攻撃する。一方、万丈はバラバニッシュと対峙する。バラバニッシュは 太陽を利用して透明となり、ダイターン3に破壊光線を放つ。 万丈「く、あのマシン獣は太陽を利用するのか。だが、世のため、人のため、 悪を討つダイターン3。この輝きを恐れるのなら、かかってこい!」 ダイターン3のトレードマークである頭の太陽に指を指し、いつもの口上を 唱える。また別の所では、ザンボット3はバラマジロの回転攻撃に苦戦していた。 恵子「きゃぁぁ!」 宇宙太「何をやっている、勝平!」 勝平「うるせぇ、負けてたまるかぁ!」 バラマジロに対して、三叉状のザンボット・ブローで攻撃する。その頃、 電童はバラケンダマの相手をしていた。 銀河「剣玉なんて、おかしな格好しているなぁ。」 北斗「でも、相当強いみたいだよ。」 銀河「よ~し、行くぞ。疾風三連撃!」 銀河と北斗はコマンドを入力して、バラケンダマに攻撃をするのであった。 893 一方、基地内部にもバラノイアの兵士であるバーロ兵が侵入して、 その攻撃に伊豆基地に所属する多くの連邦兵士が負傷しており 広報2課のメンバーは負傷兵の手当に奔走する。 三田「隊長・・・。」 星野「バラノイアめ・・・皆、超力変身だ!」 星野吾郎達、超力戦隊の5人はオーレンジャーへと変身し、バーロ兵と 戦っていく。 オーレッド「スターライザー!」 オーグリーン「スクエアクラッシャー!」 オーブルー「デルタトンファー!」 オーイエロー「ツインバトン!」 オーピンク「サークルディフェンサー!」 オーレンジャー達は個人の武器を使い、基地に侵入したバーロ兵を倒していく。 だがそこへ・・・。 ドゴーン、ビューン、バーン オーレンジャー「「「「「うわぁ」」」」」 突然の攻撃を受けるオーレンジャー達。砂煙が晴れると、新帝国ギアの ビッグスリーの1体モンスターとその部下であるジューノイドのジュウオウ、 そしてギアの世紀王候補であるプリンスがメカクローンを率いて現れた。 オーレッド「お、お前達は・・・。」 プリンス「我々は新帝国ギア。我が父ドクターマンの命により、バラノイアの 加勢としてやってきた。」 オーレッド「新帝国ギア・・・バイオマンが戦ったという組織か。」 オーレッドは以前読んだ資料に新帝国ギアについての記述が あった事を思い出す。 ジュウオウ「・・・でも、何でバラノイアに手を貸すんですかね、オヤビン?」 モンスター「分からん。でも、命令は絶対だ。暴れるぞ!」 小声で何故、バラノイアに手を貸すのか疑問に思うモンスター達だが、 命令を優先して、そのパワーで暴れていく。 オーグリーン「電光超力クラッシャー!」 オーイエロー「炸裂超力バトン」 モンスター「ふははは、効かんわ!」 オーグリーンとオーイエローは必殺技を放つが、ドクターマンによって 更なる強化改造されたモンスターの防御力には及ばなかった。 ジュウオウ「バリバリロケット!」 オーブルー「うわぁ。」 オーピンク「きゃあ。」 ジュウオウの胸から発射されたバリバリロケットの攻撃に倒れる オーブルーとオーピンクの2人。そして、オーレッドはプリンスと 剣を交える。 プリンス「ふん、そろそろ時間だな。」 オーレッド「何!?」 一方外でマシン獣と戦うスーパーロボット達。だが、新帝国ギアの メラージュ戦闘機の大部隊が現れる。 バラクティカ*** ドクターマン『では手筈通り、援軍を送りましたぞ。カイザーブルドント。』 カイザーブルドント「ご苦労。だが・・・貴様は何故、我々に手を貸す?」 ドクターマン『ふふ、私はメカこそ優秀、メカこそ絶対、メカこそ永遠と 信じているのだ。マシン帝国であるそちらに手を貸すのは道理といえよう。』 カイザーブルドント「・・・」 ドクターマン『それでは、またいつでも手を貸しますぞ。では』ピッ カイザーブルドントからの疑問に不適な笑みを浮かびながら、その疑問に 答えて通信を切るのであった。 マルチーワ「何のつもりかしら、あのメカ人間。」 カイザーブルドント「ふん。何を考えているか知らんが、その時は始末を すれば良いだけだ。」 一方、戦闘機とはいえスーパーロボット相手でも強力な攻撃を繰り出す メラージュ戦闘機が加わり、スーパーロボット達もだんだんとダメージが 蓄積されていく。 木下「専務ー!これ以上はシャトルが持ちません。」 柿小路「五月蝿いですぞ、木下君。社長がまだ戦っておられるのです。 弱音を吐いてはいけません。」 シャトルに被弾し、木下が慌てるが、柿小路はまだまだ諦めなかった。 万丈「このままではジリ貧だ。どう・・・!?」 万丈もこのままではいけないと、チャンスを伺っていたその時。 周りに異変が起きる。 岡長官「どうした!?」 オペレーター「これは・・・空間に乱れが!」 ベガ副指令「なんですって!?」 岡長官「まさか・・・。」 空間が振動となって伝わり、戦っていた両陣営が動きを止める。 そして穴が入り、そこから何かそう・・・戦艦らしき物が姿を現すのであった。 894 ○神勝平→宇宙太、恵子と共にザンボット3で出撃。バラマジロと戦う。 ○破嵐万丈→ダイターン3で出撃。バラバニッシュと戦う。 ○竹尾ワッ太→トライダーG7で出撃。バラミサイラーと戦う。 ○柿小路梅麻呂→他の社員と共にシャトルで出撃。タコンパスを撃ち落していく。 ○楯剣人→柊弾児と共にダルタニアスで出撃。バラソーサーと戦う。 ○赤木駿介→桃井、青山と共にダイガードで出撃。バラドリルと戦う。 ○出雲銀河、草薙北斗→電童で出撃。バラケンダマと戦う。 ○オーレンジャー→伊豆基地を守る為、バーロ兵、新帝国ギアと戦う。 ○岡長官、ベガ副指令→出撃の命令を出す。 ●カイザーブルドント、マルチーワ→バラクティカから指揮を執る。 ●バラドリル→ダイガードと戦う。 ●バラソーサー→ザンボット3と戦う。 ●バラバニッシュ→ダイターン3と戦う。 ●バラミサイラー→トライダーG7と戦う。 ●バラケンダマ→電童と戦う。 ●ドクターマン→目的は不明だが、バラノイアに援軍を送る。 ●プリンス→メカクローンを率いて、援軍として伊豆基地を攻撃する。 ●モンスター→伊豆基地を襲撃する。 ●ジュウオウ→伊豆基地を襲撃する。 ●バラマジロ→ザンボット3と戦う。 895 【今回の新登場】 ○草薙織絵=ベガ副指令(GEAR戦士 電童) 北斗の母親で喫茶店の店主。だが、実はGEARの副指令でガルファから 逃れた惑星アルクトスの姫であり、アルテアの妹。地球へ辿り着いた時に 西園寺実に助けられ、養女となる。正体を隠すべく仮面を被っており、 仮面ライダー顔負けのバイクアクションでガルファと戦う。 ●マルチーワ姫(超力戦隊オーレンジャー) 皇妃ヒステリアの姪であり、カイザーブルドントの妻。夫のカイザーブルドント とはラブラブでお互い「ブルピー」「マルピー」と呼び合う。美麗な外見と 天然な毒気の無い無邪気さとは裏腹に残忍な性格をしている。武器は剣にも なれる弓「マルチアロー」ブルドントJrの母である。 ●バラドリル(超力戦隊オーレンジャー) 最初に送り込まれたマシン獣。巨大なドリルが特徴。UAOH基地に向かう 吾郎以外の4人を追い込んだが、変身したオーレッドによって倒される。 ●バラソーサー(超力戦隊オーレンジャー) 最初から巨大化した状態で開発されたマシン獣。初めて変身した オーレンジャー達のビッグバンバスターによって倒される。 ●バラバニッシュ(超力戦隊オーレンジャー) 太陽の光で自身を透明化にする事が出来るマシン獣。破壊光線を武器にしている。 ●バラミサイラー(超力戦隊オーレンジャー) 皇帝バッカスフンドがドローラ星から呼び寄せたマシン獣。右腕のミサイル で街を破壊していった。 ●バラケンダマ(超力戦隊オーレンジャー) 三田裕司が操縦を任されていた夢野市の町興しロボット「剣玉ロボ」に 似せて造られたマシン獣。右手の剣と光線、剣玉をぶつけて攻撃する。 ●バラマジロ(超力戦隊オーレンジャー) 球体となって戦うマシン獣。レッドパンチャーと復帰したオーレンジャーロボの 攻撃に耐える程の防御力を持つが、バスターオーレンジャーロボには適わなかった。 ●ドクターマン(超電子バイオマン) 「メカこそ優秀、メカこそ絶対、メカこそ永遠」を信じる新帝国ギアの支配者。 元々は優秀な科学者・蔭山秀夫博士だったが、人体実験の結果、脳の機能を 飛躍的に高めた引き換えに老化してしまった。現在GVMNラボのリーダー格で南の王。 ●プリンス(超電子バイオマン) ドクターマンが自身の息子である蔭山秀一を似せて造り出した新帝国ギアの 後継者。 ●モンスター(超電子バイオマン) ドクターマンに忠誠を誓うビッグスリーの一人。スキンヘッド風の大男で とてつもないパワーとモンスタートマホークを武器に持つ。ビッグスリーの 中では最も人間臭く、ボケキャラ。後に腕が5つのアタッチメントに換装 出来るように改造された。ジュウオウとは堅い絆で結ばれている。 一人称は「俺」もしくは「ボクちゃん」夢はファラとの結婚。 ●ジュウオウ(超電子バイオマン) ジューノイド五獣士の1体。モンスター直属の部下で「オヤビン」と 呼んで慕っているが時々、軽口を叩く。メタルメガスの攻撃で崖から 落ちてバラバラになるが、モンスターが破片を拾って再生を許されたので、 パワーアップ。胸から「バリバリロケット」を撃てる様になった。口癖は 「はいな」「ランラランララーン」 。
https://w.atwiki.jp/butumori_wii/pages/27.html
街へいこうよ どうぶつの森Wii攻略まとめ @ ウィキ へ戻る どうぶつへ戻る 少し昔のコメントを読むどうぶつ/コメログ倉庫1 うちの村には、クリスチーヌとフランソワの双子が住んでいます。一体、誕生日はいつなのでしょう? -- (なつ) 2008-12-17 14 09 08 はちまき街で見ました。 -- (No.145のすみと) 2008-12-17 16 40 36 多分、姿が、似てる住人と間違ったのかもしれません。すみません。 -- (sx3) 2008-12-17 18 37 58 アセクサが、村に来ました。追加お願いします。 -- (sx3) 2008-12-18 18 45 01 ガビの口癖は,「やんけ」です。 -- (;;lll9) 2008-12-18 20 35 08 オオカミのシベリアの誕生日は12月18日ですよ。追加お願いします。 -- (未定) 2008-12-19 16 01 14 オオカミのチーフの誕生日は29日ではなく19日です。 -- (春風 奏) 2008-12-21 14 45 38 私のむらはトンコ、グレオ、ルーシーとぶたぞろいです・・・どうやったらひっこさせれますか~(泣) -- (くるる) 2008-12-31 14 53 25 くるるさん、いじわるすると近いうちに引っ越します -- (コロコロ) 2009-01-12 14 46 36 イヌのトミ、ラッキー、ロビンの口癖に誤りがあります。 -- (TAMA) 2009-01-04 12 36 36 修正しました。 白鳥いません?ちとせって名前なんですが・・・ -- (白鳥s) 2009-01-05 11 47 02 ちとせみたことあるよ -- (五年生) 2009-01-05 14 51 26 モヘヤじゃなくてモヘアです -- (☆ブルー☆) 2009-01-06 12 43 37 修正しました。 うちのDS版のどう森にちとせいるよ! -- (つっこ♪) 2009-01-06 14 35 57 ちとせは↑の一覧の「ダチョウ」のグループに載っていますよ! -- (まさにゃ) 2009-01-09 14 16 05 ここまで更新 カンガルーに「キッズ」という名前の動物が居たんですね✦ -- (ルル♪) 2009-01-12 18 43 05 ぎ・・・ぎんかくって・・・!? -- (こころ) 2009-01-17 21 28 52 ミスの報告。トラのゴメスはボク系ではなく、おいら系です。修正お願いします。 -- (まるかく) 2009-01-18 01 00 57 ちとせを鶴だとおもってました -- (リゾート) 2009-01-20 19 40 10 うちもーー! -- (チェリー) 2009-01-23 21 11 38 くまにメープルがいませんよ^-^ -- (ふうせんさん) 2009-01-31 13 02 58 ふうせんさん、メープルはコグマのトコに書いてありますよ? -- (コーラ) 2009-01-31 19 09 09 ここの画像ってどこから引っ張ってきたんですか? 編集の際の参考にしようと思うんですが・・・ -- (まも) 2009-02-15 21 30 34 スクリーンショットは色々な人がやってて、原画っぽいのは海外のサイトをイメージ検索とかです。 -- (管理人) 2009-02-15 21 37 41 お早い反応ありがとうございますw あのキレイな画像は海外からですかー、まあ、平気、だよね?( 余裕が出来しだい着手していきますです。 -- (まも) 2009-02-15 21 49 46 当サイトは任天堂の許可を得て運営してますよ。去年の頭ごろに「決算報告」か何かのpdfにWii森の事が記載されてたので、その時期に立ち上げました。やっぱりメーカーの登録商標に関するコンテンツをwebサイトにするには認可が無いとマズいハズです。ただし動画はNGって言われております。 -- (管理人) うちの兄の誕生日、2╱19なんだ!!で、しかも!ぁたしの村の住民のとめと、マグロとめっちゃ近い!てかほぼ同じなんだ!とめは18日で、マグロは19日!これって奇跡かも~~!! -- (ルル) 2009-02-21 15 58 04 それって良いほうのことですよね? マグロはみんなに嫌われているので、かわいそうです・・・ -- (いちごとうふ) 2009-02-22 18 54 22 ええっ!!!?マジっすか!!マグロ可愛いし、ぁたしは好きだけど・・・。あ、もしかして、みんなは、マグロと住んだコト無いからキライって言えるんだよ!マグロはめっっちゃイイ人だよ!! -- (ルル) 2009-02-22 22 47 04 そうですか。ルルさん。自分が間違っていました。自分は嫌いじゃないけど、友達が嫌いと言っていたんです。とりあえず、住人と仲良くするのは大切ということですね。ありがとうございました。 -- (いちごとうふ) 2009-02-26 19 55 47 お、表示直りましたね。まもさんありがとうございました。 -- (管理人) 2009-03-08 12 50 16 いえいえ、とんでもないです。むしろご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。 -- (まも) 2009-03-08 23 58 52 詳細ページをちょこちょこ編集してみました。 -- (まも) 2009-03-10 01 43 31 画像が無くても取りあえず項目だけは埋めていこうと思ってます。「~も載せて!」ってコメントをよく見かけるので。テンプレ大活躍です。攻略本スキャンで画像手作りもしてみましたが、結構大変です。なるだけ画像大募集の方向でいきたいです。あと、マイコミの攻略本に住人の「傘」の記載がなかったので、そこは軒並み空白のままです。ゲーム内で目撃したらその度にメモしておきますね。 -- (まも) 2009-03-10 02 50 30 まもさんって・・・。編集者なんですか? -- (ノンフライ) 2009-03-11 18 27 35 違いますよ。多分。 -- (ルル) 2009-03-12 16 18 41 25人いる編集者のうち、ブレーンみたいなポジションですね。 -- (管理人) 2009-03-12 17 23 47 そうなんですか!ブレーンですか・・・。 -- (ルル) 2009-03-15 12 19 06 ブレーンてwぶっちゃけ攻略本を写してるだけなんで暇つぶし程度っす;; -- (まも) 2009-03-21 15 51 13 すごいですねえ。 -- (いちごとうふ) 2009-03-21 17 51 50 ピータンってなんていうどうぶつなんですか?? -- (star*) 2009-03-22 12 09 42 見ての通り アヒルだよ! -- (ルル) 2009-03-22 15 22 24 そうですよ!アヒルですよ! -- (チェリー) 2009-03-27 13 12 51 アヒルだよ! -- (ミズキックス) 2009-04-01 14 51 51 うん、アヒル…ね。 -- (みかん) 2009-04-01 17 29 20 ウサギ系のギンジがWiiで「?」になってるけど、ウチの村に来たことありますよ -- (名無しさん) 2009-04-02 06 27 05 修正しました。ありがとうございました。 「ウサギ」「ヤギ」詳細ページを更新しました。 -- (まも) 2009-04-12 22 38 51 アリガトウございます! -- (のー) 2009-04-17 16 09 00 かねてより、このページが開けたり開けなかったりと不具合の為に更新が滞っておりましたが、 atwiki より連絡があり『コンテンツ量とテーブル構文によるシステム負荷』が原因だったそうです。どうぶつ/登場未定のサブページを作成し内容を移植したので、これでしばらく様子を見ます。 -- (管理人) 2009-06-16 01 16 27 アザラクのおなかのポケットに入っている小さいアザラクは人形?と思いきやまばたきをするので、生きているものですね。ちょっとこわいって今日思いました。 -- (ばーぐ) 2009-07-17 23 55 11 あと、アップリケのおなかのポッケにもいますよ。確かに人形(ぬいぐるみ)にもみえますね。 -- (ララァ) 2009-07-29 11 41 21 目が、ぱちぱちしてますね(・・)(^^)パチパチ -- (るう) 2009-07-29 23 04 17 それは、カンガルーの子どもですよ。 -- (ゆうみ) 2009-08-03 14 09 42 ぞうの住人に話しかけると、村メ路 -- (☆ムートン☆) 2009-08-16 12 37 35 フランソワとクリスチーヌって、色違い??似てませんか? -- (るう) 2009-08-18 22 25 38 るぅⓢ確かに‼ うちもそう思った‼ -- (イチゴマロン) 2009-10-08 13 50 52 公式サイトだと、フランソワとクリスチーヌは色違いではなく、兄弟らしいんですが(まちがってたらすいません) -- (イッエーイ) 2009-08-19 18 42 49 兄弟だったらいいな -- (アイク) 2009-08-27 18 30 52 私の村には、3にんのウサギがいます。(バズレー・フランソワ・ルナ)。かたよってます。でも、楽しい住民がたくさんいます♪ -- (じしゃく) 2009-10-08 18 05 38 アンデスさんの手がオノにみえる、、、 -- (リース) 2009-10-18 19 10 10 そういえば、ぼくの村に8月うまれが3人いるよ(ガビ、トミ、ゴメス)。 -- (せんり) 2010-03-22 18 04 08 サイのユメコの一番初めのくちぐせが、「ンフ」じゃないんですけど、これはバグですか? -- (ミントガム) 2010-04-02 23 43 10 エイプリルが、村に来ました。のりっぺと性格かぶってます。 -- (gao) 2010-04-26 14 44 46 同じ誕生日の動物がいない・・・・・!!ちなみに私は11月の6日です。もし同じ誕生日の動物がいたら教えてください。お願いします>< -- (ピット) 2010-07-24 20 21 29 366匹の動物がいたら、同じ誕生日の動物が必ずいるのにね。 -- (名無しさん) 2010-07-26 10 00 42 ウシのミルクいるよね? -- (Baby) 2010-11-27 15 03 51 ちとせって鶴だと思ってた。 -- (jo) 2010-11-29 23 32 01 ここまで整理 5月11日の住人はいますか? -- (にくきゅう) 2011-04-14 17 17 47 う〜ん....。私が見た結果5月11日の住人はいませんでした。お役に立てなくてごめんなさい。.........あっ!!ちなみに私はキャラメルと一緒です! -- (ダックス) 2011-04-14 18 46 59 まあいいや。うん。ありがとう。 -- (にくきゅう) 2011-04-17 14 20 42 私は、」5月3日生まれです!! -- (ディズニー) 2011-05-01 10 54 39 GWなので、住人と同じじゃない(+_+) -- (ディズニー) 2011-05-01 10 57 55 サルってさ、DSからいたっけ!? -- (わたしポークと誕生日近い) 2011-03-04 19 58 48 いたかなあ??(半信半疑) -- (にくきゅう) 2011-03-13 21 13 48 いなだろー -- (T,K) 2011-06-07 18 42 45 いないと思うよ! -- (ちぇりー フルーツ村 みほ 4082-1517-1851) 2011-07-01 19 03 25 かえるのハルマキとおなじだぁぁぁぁぁぁあー!! -- (ミク) 2011-07-02 20 03 04 ↑誕生日ね♪ -- (ミク) 2011-07-02 20 03 56 なんか街でビアンカと話したら口癖がオレになるバグがwww -- (ちょっと金持ち) 2011-07-16 14 40 37 まちがえた↑性格がwww -- (ちょっと金持ち) 2011-07-16 14 42 30 誕生日がナイルと一緒ww クフフ・・。 -- (村の人) 2011-09-26 17 26 05 wwwwwwwwww -- (^) 2011-10-02 11 12 47 私の村では、サラが病気にになってます! -- (ラムネ) 2011-11-04 16 57 42 GO-! -- (アフロマン3の3) 2011-11-27 11 18 57 ボク村デビューで、ラムネとアデレードが楽しみ! -- (殿ち) 2012-03-04 21 38 39 恐らくスミとトンコは当時凶悪的で今街や八幡団地で反省中。アデレード神明町車庫で待っている -- (殿ち) 2012-03-04 21 41 14 誕生日が一日ちがいしかおらんかったー -- (あおい) 2012-03-27 10 41 38 自分の所に全くサルを見かけないんです。街にも現れません。これなんでなのでしょうか?分かる人がいたら、ぜひ教えて頂けると助かります。 -- (試作品ロボットNo,1310) 2012-04-01 11 39 13 ロッタの誕生日が間違っています。詳しい方はあっていますが、1月21日ではなく6月14日だと思います。 -- (試作品ロボットNo,1310) 2012-04-01 12 11 33 キャラメルが全然引っ越さない(笑) -- (ナナ) 2012-04-02 10 52 01 チッチ早く引っ越せyo------ -- (ボッス昆布) 2012-05-12 12 16 40 トンコってブス -- (アンナ) 2012-05-12 12 19 47 アヒルのマモルと誕生日1日違い! -- ((○∂○)にったん) 2012-06-02 15 16 38 誕生日1日違いしかおらんやんか~!! -- ((○∂○)にったん) 2012-06-02 15 26 47 えっっ?!パンダっていなかったけ??(○∂○)にったんの村には、パンタってゆうのいるよ!! -- ((○∂○)にったん) 2012-06-02 15 36 10 ドっくん引っ越さないんだけど。… -- (ケイ) 2012-06-30 21 07 01 あれ?9月23日生まれいない?ま、おんなじ誕生日のひ・とにも会ったことないけど!(9月23日生まれ募集中・・・。) -- (ゆっきゅん(ww)) 2012-09-03 16 44 55 ロボ好きやわ。かっこいいw -- (あ) 2012-09-30 18 02 36 ジエーンちゃん誕生日おめでと。 -- (あ) 2012-09-30 18 03 56 シルエットすごいかわいい! -- (チョコレートパフェ) 2012-10-02 20 34 31 だれかコメントちょうだい -- (チョコレートパフエ) 2012-10-04 20 40 36 シルエットってなんですか?教えてくださーい♪ -- (りんご) 2012-10-06 09 25 58 黒いリスですよ♪りんごさん♪ -- (チョコレートパフエ) 2012-10-06 19 18 42 そうなんですか!ありがとうです!! -- (りんご) 2012-10-06 21 59 58 アヒル、アリクイ、イヌ、ウサギの詳細ページに画像を追加しました。新作が出るってのに今更ですが。昔と比べると住人たちも丸っこいフォルムになってきてますね。 -- (まも) 2012-10-08 08 03 24 駿介です。[^ェ^] よろしく! -- (駿介) 2012-10-08 20 55 49 ウシ、カンガルーの詳細ページを新設しました。ウマの詳細ページに画像を追加しました。他にもいくつか手を加えてます。 -- (まも) 2012-10-09 00 16 56 駿介さん、よろしく! -- (りんご) 2012-10-10 17 29 01 (∩´∀`@)よろしくです~~~~ -- (駿介) 2012-10-10 20 48 28 よろしく! -- (チョコレートパフェ) 2012-10-10 20 50 49 あ、ごめんなさい!私の方が歳下なのに歳上でも駄目だけど… -- (チョコレートパフエ) 2012-10-10 20 53 59 チョコレートパフェさんは何歳(何年生)なんですか? -- (りんご) 2012-10-12 18 58 29 りんごさん、5年で10歳です!年下です… -- (チョコレートパフェ) 2012-10-12 19 22 05 あと一年で移動教室ですね~いいな~もう一回行きたい! -- (駿介) 2012-10-12 19 41 36 移動教室って何ですか?私の学校には移動教室はありませんよ。 -- (りんご) 2012-10-12 20 26 32 修学旅行ならあるけど…(〓∧〓) -- (チョコレートパフェ) 2012-10-12 20 38 20 修学旅行はみんなあるんじゃないですか? -- (りんご) 2012-10-14 20 37 32 皆さん日光とか行っていないんですか?自分の学校では6年になると絶対に行きますよ -- (駿介) 2012-10-15 18 59 46 私の小6の修学旅行は広島でしたよ。駿介さんはどこですか? -- (りんご) 2012-10-16 16 44 01 広島ですか!!かなりうらやましいです。自分のところなんて日光ですよ。りんごさんの学校は広島のちかくですか? -- (駿介) 2012-10-16 19 41 41 ちなみに日光というのは栃木にあるところですよ~ -- (駿介) 2012-10-16 19 42 56 私の学校でも、広島に行くらしいですよ!ちなみに、私が住んでいるのは、大阪です♪ -- (ほのか) 2012-10-16 21 21 09 移動教室なんてあったっけ……???(?Д?) -- (チョコレートパフェ) 2012-10-16 22 52 49 駿介さん、大阪の学校ですよ♪俊介さんの学校はどこですか? -- (りんご) 2012-10-17 16 59 12 東京です。東京の福生というところです。りんごさんとほのかさんは同じ大阪なんですね。 -- (駿介) 2012-10-17 21 19 46 いいですね~東京♪私まだディズニーランド3回ぐらいしか行ったことないですよ~! -- (りんご) 2012-10-18 17 09 37 僕は10回以上はいっているとおもいます。今年なんかもう2回いきました。(事実)一回目は兄弟と2回目は家族といきました。(自慢してすいません) -- (駿介) 2012-10-18 18 43 14 すっごいうらやましいな〜私なんて行った事ないからな〜 -- (チョコレートパフェ) 2012-10-19 16 58 39 そうなんですか~。まぁ、いつか行けるときはきますよ~。ちなみにランドだったらスプラッシュマウンテン。シーだったら、センターオブジアースがおススメです! -- (駿介) 2012-10-19 20 27 33 チョコレートパフェさん私も5年生で10歳です!同じですね(●^o^●) -- (あやか) 2012-10-19 21 56 30 通信しよう! -- (ひとえ) 2012-10-20 07 56 08 駿介さんいいな~!私はUSJもあきましたよ。行き過ぎてー!でもディズニーランドはあきませんか? -- (りんご) 2012-10-20 10 11 39 USJいったことないんですよ~。いいな~。ディズニーランドは飽きないですよ~ -- (駿介) 2012-10-20 20 44 06 でもUSJはあきますよ -- (りんご) 2012-10-21 15 13 06 へぇ~。ジュラシックパーク・ザ・ライドとか乗ったことありますか? -- (駿介) 2012-10-22 20 55 55 私は乗った事ないからな… -- (チョコレートパフェ) 2012-10-23 19 22 10 あっ、それ私大好きです☆ -- (ほのか) 2012-10-24 20 50 18 ありますよ!すごくリアルで恐いですよ~!!おススメは超恐いジェットコースターです!(名前忘れましたけど・・・) -- (りんご) 2012-10-25 17 06 06 ふぅ~ん。皆さんジェットコースターとか大丈夫なんだですか? -- (駿介) 2012-10-26 20 27 02 たいていは大丈夫ですけど、USJのは死に掛けました。。。 -- (りんご) 2012-10-27 12 34 42 ジェットコースターは、好きですけど酔ったりします( _ )駿介さんはどうですか? -- (あやか) 2012-11-02 21 56 31 自分もです。(笑) -- (駿介) 2012-11-23 20 57 21 やっぱり。お化け屋敷はみなさんどうですか? -- (りんご) 2012-11-26 18 22 20 自分絶対[+д+]/ ムリダーヨ。おくびょうでビビリなんですよ~ -- (駿介) 2012-11-30 20 49 57 何か皆はなし違うwww -- (みんな) 2012-12-28 21 23 40 駿介さんビビりなんですか? -- (しおりん) 2013-01-19 17 50 05 しおりんさんは? -- (りんご) 2013-01-21 16 49 04 新キャラ何匹いるの? -- (管理人w) 2013-03-01 18 06 37 あやしいネコがきたよー -- (まゆまゆ) 2013-03-09 15 25 17 だいすけさん、私は少しビビりです。、 -- (しおりん) 2013-04-22 13 39 08 ここどうぶつの森のサイトだよ しおりんさん 俊介さん りんごさん -- (あいうえお) 2014-01-26 19 47 19
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ヴェルスパ大分は大分県大分市をホームとするサッカークラブである 基本情報 名前 う゛ぇるすぱおおいた クラブカラー 赤・白 創設年 2003年 所属リーグ 日本フットボールリーグ(4部) ホームタウン 大分県大分市 ホームスタジアム 収容人員 代表 清原栄二 監督 山橋貴史 公式HP http //verspah.jp/ 沿革 2003年8月、豊洋精工株式会社とソイテックスジャパン株式会社の社員からHOYOFC発足。 2005年、挟間町のジュニアチームアトレチコエランと合併し「HOYO Atletico ELAN」にクラブ名を変更。 2009年に九州各県リーグ決勝大会優勝し九州サッカーリーグ昇格を果たした。 2011シーズンよりHOYO AC ELAN大分に改称 2013シーズンよりHOYO大分へ改称 2014シーズンよりヴェルスパ大分へ改称 シーズン成績 シーズン ディビジョン 勝点 試合 勝利 引分 敗戦 得点 失点 差 順位 監督 天皇杯 備考 2009 大分1部 25 9 8 1 0 39 5 +34 優勝/10 増田忠俊→ブレノ・エンヒケ・バレンチン 県予選敗退 2010 九州 44 16 13 3(P勝2,P負1) 0 48 8 +40 優勝/9 ブレノ・エンヒケ・バレンチン 1回戦敗退 2011 49 18 15 2(P勝2,P負0) 1 55 11 +44 優勝/10 HOYO AC ELAN大分に改称 2012 JFL 35 32 9 8 15 40 57 -17 15位/17 結城治男 2回戦敗退 2013 32 34 9 5 20 32 45 -13 15位/18 HOYO大分へ改称 2014 33 26 8 9 9 30 28 +2 7位/14 ヴェルスパ大分へ改称1st-S 5位,2nd-S 12位 2015 37 30 10 7 13 40 47 -7 10位/16 1st-S 11位,2nd-S 9位 2016 31 30 6 13 11 30 42 -12 13位/16 佐野達 県予選敗退 1st-S 13位,2nd-S 13位 2017 27 30 5 12 13 27 46 -19 14位/16 2回戦敗退 1st-S 14位,2nd-S 11位 2018 39 30 11 6 13 29 38 -9 9位/16 須藤茂光 1回戦敗退 1st-S 12位,2nd-S 7位 2019 40 30 10 10 10 42 36 +6 7位/16 2020 32 15 10 2 3 27 16 +11 優勝/16 4回戦敗退 COVID-19のため、1回戦総当たり 2021 62 32 19 5 8 46 24 +22 3位/17 山橋貴史 2022 43 30 12 7 11 40 44 -4 8位/16 2回戦敗退 2023 40 28 10 10 8 28 29 -1 6位/15 3回戦敗退 2024 30 /16 所属選手(2024シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 浜崎拓磨 3 福宮弘乃介 4 西村大吾 5 日根野達海 6 石上輝 7 中野匠 8 堀研太 9 今村優介 10 福満隆貴 11 鈴木啓太郎 13 14 山崎一帆 15 池内龍哉 16 17 藤本拓臣 18 中村真人 19 重田快 20 佐藤隼 21 小倉貫太 22 瓜生昂勢 23 宮本優 24 佐々木翔? 25 伊藤颯真? 26 伊藤翼? 27 山田恭也 28 安島樹 29 竹田竣 30 村田勉 31 豊田純平? 40 中井崇仁 移籍情報(2023-2024) in out 中井崇仁(藤枝→)鈴木啓太郎(ソニー仙台FC→)豊田純平?(大阪体育大学→)今村優介(FC大阪→)堀研太(ヴェロスクロノス都農→)重田快(ラインメール青森FC→)福満隆貴(千葉→)佐々木翔?(仙台大学→)浜崎拓磨(FC大阪→)山田恭也(レンタル / 岡山→)伊藤颯真?(福岡大学→)宮本優(レンタル / 東京V→)池内龍哉(ソニー仙台FC→)伊藤翼?(常葉大学→) 金子雄祐(引退)篠原宏仁(→エリース東京FC)薮内健人(引退)松本龍典(→ヴィアティン三重)中村勇太(→アスルクラロ沼津)立岩玄輝(→未定)酒井信磨(→未定)松木駿之介(レ終了 / →岡山)中井崇仁(レ終了 / →藤枝)大嶽拓馬?(レ終了 / →柏)長島滉大(→未定)杉山耕二(レ終了 / →岡山)半田航也(レ終了 / →秋田)西埜植颯斗(→North Sunshine Eagles FC) 所属選手(2023シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 中村勇太 3 福宮弘乃介 4 西村大吾 5 日根野達海 6 石上輝 7 中野匠 8 篠原宏仁 9 山崎一帆 10 薮内健人 11 長島滉大 13 半田航也 14 西埜植颯斗 15 金子雄祐 16 立岩玄輝 17 藤本拓臣 18 中村真人 19 酒井信磨 20 佐藤隼 21 小倉貫太 22 瓜生昂勢 23 松木駿之介 24 25 大嶽拓馬? 8/23より、柏レイソルからレンタル移籍 26 27 28 安島樹 29 竹田竣 30 村田勉 31 松本龍典 40 中井崇仁 8/16より、藤枝MYFCからレンタル移籍 50 杉山耕二 移籍情報(2022-2023) in out 瓜生昂勢(アスルクラロ沼津→)安島樹(順天堂大学→)金子雄祐(奈良クラブ→)日根野達海(鈴鹿ポイントゲッターズ→)長島滉大(奈良クラブ→)松木駿之介(レンタル / 岡山→)杉山耕二(レンタル / 岡山→)半田航也(レンタル / 秋田→)石上輝(ソニー仙台FC→)福宮弘乃介(ソニー仙台FC→)佐藤隼(BTOPサンクくりやま→) 吉田直矢(→品川CC横浜)西川公章(→FC刈谷)西村光明(→未定)小川朋広(→未定)土田直輝(→未定)渡辺泰広(引退)浦島貴大(→FCマルヤス岡崎)山出旭(→SHIBUYA CITY FC)本多琢人(→ジェイリースFC)利根瑠偉(→FC大阪)前田央樹(→FCマルヤス岡崎)渡邉柊斗(→FCマルヤス岡崎) 所属選手(2022シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 中村勇太 3 浦島貴大 4 西村大吾 5 本多琢人 6 土田直輝 7 中野匠 8 篠原宏仁 9 山崎一帆 10 薮内健人 11 利根瑠偉 13 吉田直矢 14 西埜植颯斗 15 山出旭 16 立岩玄輝 17 藤本拓臣 18 中村真人 19 西村光明 20 渡辺泰広 21 小倉貫太 22 23 西川公章 24 25 小川朋広 26 27 酒井信磨 8/18付で加入。前FC刈谷 28 渡邉柊斗 29 竹田竣 30 村田勉 33 前田央樹 34 松本龍典 移籍情報(2021-2022) in out 山出旭(HBO東京→)立岩玄輝(日本文理大学→)中村勇太(東洋大学→)松本龍典(関西学院大学→)渡邉柊斗(名古屋→) 高橋宏季(引退)中村駿介(引退)餅山大輝(→未定)高橋祐翔(レ終了 / →大分)久米航太郎(レ終了 / →徳島) 所属選手(2021シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 土田直輝 3 浦島貴大 4 西村大吾 5 本多琢人 6 高橋宏季 7 中野匠 8 篠原宏仁 9 山崎一帆 10 薮内健人 11 利根瑠偉 13 吉田直矢 14 西埜植颯斗 15 宇高魁人 8/3付で、F.C.大阪?へ完全移籍 16 17 藤本拓臣 18 中村真人 19 西村光明 20 渡辺泰広 21 小倉貫太 22 餅山大輝 23 西川公章 24 25 小川朋広 26 久米航太郎 27 28 高橋祐翔 29 竹田竣 30 村田勉 33 前田央樹 34 中村駿介 移籍情報(2020-2021) in out 山橋貴史(JFAユース育成サブダイレクター→)吉田直矢(いわてグルージャ盛岡→)中村駿介(日本経済大学→)渡辺泰広(秋田→)高橋祐翔(レンタル / 大分→)山崎一帆(ソニー仙台FC→)久米航太郎(レンタル / 徳島→)小倉貫太(福山大学→)西埜植颯斗(藤枝MYFC→)小川朋広(埼玉大学→)竹田竣(KSSC→)土田直輝(東洋大学→)宇高魁人(東京国際大学→) 須藤茂光(→未定)福島新太(引退)塚田翔悟(引退)長谷川凌(レ終了 / →水戸)瓜生昂勢(→アスルクラロ沼津)佐藤建太(→ジェイリースFC)金子雄祐(→奈良クラブ)福元考佑(→ジェイリースFC)坂本和哉(引退)宮内寛斗(→YSCC)西埜植颯斗(レ終了 / →藤枝MYFC) 所属選手(2020シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 坂本和哉 3 浦島貴大 4 西村大吾 5 本多琢人 6 高橋宏季 7 宮内寛斗 8 篠原宏仁 9 薮内健人 10 瓜生昂勢 11 利根瑠偉 13 塚田翔悟 14 西埜植颯斗 15 金子雄祐 16 福元考佑 17 藤本拓臣 18 中村真人 19 西村光明 20 佐藤建太 21 中野匠 22 餅山大輝 23 西川公章 24 25 吉本勇気 7/9付で退団 30 村田勉 31 長谷川凌 33 前田央樹 44 福島新太 移籍情報(2019-2020) in out 浦島貴大(MIOびわこ滋賀→)宮内寛斗(松江シティFC→)西埜植颯斗(レンタル / 藤枝MYFC→)本多琢人(長崎→)吉本勇気(徳島U-18→)西川公章(FC徳島→)佐藤建太(東京23FC→)餅山大輝(鹿屋体育大学→)西村光明(鹿屋体育大学→)金子雄祐(FC今治→)長谷川凌(レンタル / 水戸→)薮内健人(FC岐阜→) 清水大輔(引退)中西倫也(→アルテリーヴォ和歌山)畝本諭(→松江シティFC)佐藤永望(→未定)西岡佑馬(→東京武蔵野シティFC)井福晃紀(→ジェイリースFC)長谷川覚之(→MIOびわこ滋賀)最上川祐輝(引退)脇坂早俊(引退)畠中佑樹(→福井ユナイテッドFC)井上翔太郎(→VONDS市原FC)永冨誠也(→佐賀LIXIL FC)鍔田有馬(引退)福元洋平(引退)林田隆介(レ終了 / →長崎)本多琢人(レ終了 / →長崎) 所属選手(2019シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 坂本和哉 3 4 西村大吾 5 本多琢人 6 永冨誠也 7 畠中佑樹 8 篠原宏仁 9 鍔田有馬 10 瓜生昂勢 11 利根瑠偉 13 塚田翔悟 14 中西倫也 15 畝本諭 16 福元考佑 17 清水大輔 18 中村真人 19 佐藤永望 20 西岡佑馬 21 中野匠 22 林田隆介 23 最上川祐輝 24 井福晃紀 25 前田央樹 26 高橋宏季 27 西大輔 5/31付で、FC徳島へ完全移籍 28 29 藤本拓臣 30 村田勉 31 脇坂早俊 32 井上翔太郎 33 福元洋平 39 長谷川覚之 69 福島新太 移籍情報(2018-2019) in out 瓜生昂勢(FC今治→)藤本拓臣(奈良クラブ→)本多琢人(レ延長 / 長崎→)林田隆介(レ延長 / 長崎→)福元洋平(山口→)高橋宏季(東洋大学→)前田央樹(ギラヴァンツ北九州→)村田勉(GFC Düren 99→)井上翔太郎(ヴァンラーレ八戸FC→) 長谷川豊喜(引退)梶谷充斗(→未定)宮崎耀(→FC.ISE-SHIMA)名和太陽(→未定)木島悠(→ジェイリースFC)清家俊(→未定)下田和輝(→未定)安部隆也(→未定)本多琢人(レ終了 / →長崎)林田隆介(レ終了 / →長崎)野上拓哉(レ終了 / →大分)西室隆規(→ラインメール青森FC)山本祐輝(→未定) 所属選手(2018シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 坂本和哉 3 清家俊 4 西村大吾 5 最上川祐輝 6 福島新太 7 畠中佑樹 8 篠原宏仁 9 鍔田有馬 10 利根瑠偉 11 中西倫也 13 塚田翔悟 14 永冨誠也 15 畝本諭 16 福元考佑 17 清水大輔 18 中村真人 19 佐藤永望 20 西岡佑馬 21 中野匠 22 林田隆介 23 長谷川覚之 24 木島悠 25 梶谷充斗 26 長谷川豊喜 27 西大輔 28 下田和輝 29 安部隆也 30 宮崎耀 31 脇坂早俊 32 山本祐輝 33 名和太陽 34 井福晃紀 7/20付で、テゲバジャーロ宮崎から完全移籍 36 野上拓哉 40 西室隆規 55 本多琢人 6/19より、V・ファーレン長崎からレンタル移籍 移籍情報(2017-2018) in out 須藤茂光(JFAアカデミー兼ナショナルトレセンコーチ→)西村大吾(日本文理大学→)塚田翔悟(鹿児島ユナイテッドFC→)福元考佑(FC刈谷→)篠原宏仁(藤枝MYFC→)畠中佑樹(藤枝MYFC→)中野匠(立命館大学→)最上川祐輝(鹿屋体育大学→)西岡佑馬(流通経済大学→)林田隆介(レンタル / 長崎→)長谷川覚之(大阪学院大学→)野上拓哉(レ延長 / 大分→)中西倫也(カターレ富山→)西室隆規(カターレ富山→)安部隆也(長崎U-18→) 佐野達(→ギラヴァンツ北九州強化育成本部長)原一生(引退)中西倫也(レ終了 / →カターレ富山)河野諒祐(→Y.S.C.C.)西原樹(→FC刈谷)荒川徹也(→ジョイフル本田つくばFC)藤本心(→MIOびわこ滋賀)栫健悟(→未定)松浦尚人(→未定)ブーゾ・アモス?(→アヴェントゥーラ川口)千布一輝(→テゲバジャーロ宮崎)朴兌桓(レ終了 / →湘南)野上拓哉(レ終了 / →大分)西尾太生(→未定) 所属選手(2017シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 坂本和哉 3 清家俊 4 藤本心 5 朴兌桓 6 福島新太 7 原一生 8 河野諒祐 9 鍔田有馬 10 利根瑠偉 11 中西倫也 3/31より、カターレ富山からレンタル移籍 13 福島立也 7/7付で退団 14 永冨誠也 15 畝本諭 16 ブーゾ・アモス? 3/31付で加入。前SC Viktoria Griesheim 17 清水大輔 18 中村真人 19 佐藤永望 20 森川泰臣 6/30付で退団。東邦チタニウム?へ移籍 21 荒川徹也 22 栫健悟 23 西原樹 24 木島悠 25 梶谷充斗 26 長谷川豊喜 27 西大輔 28 下田和輝 29 西尾太生 30 宮崎耀 31 松浦尚人 32 山本祐輝 33 名和太陽 36 野上拓哉 7/19より、大分トリニータからレンタル移籍 39 千布一輝 移籍情報(2016-2017) in out 千布一輝(岡山→)福島立也(鹿児島ユナイテッドFC→)森川泰臣(熊本→)西大輔(徳島商業高校→)西尾太生(九州総合スポーツカレッジ→)西原樹(金沢星稜大学→)朴兌桓(レンタル / 湘南→)松浦尚人(九州国際大学→)宮崎耀(東京国際大学→)栫健悟(J.FC MIYAZAKI→)清家俊(J.FC MIYAZAKI→)藤本心(立命館大学→)荒川徹也(FC刈谷→)畝本諭(FC中津→)名和太陽(静岡産業大学→)山本祐輝(静岡産業大学→) 中島康平(引退)村田勉(→未定)當瀬泰祐(→ホンダロックサッカー部)戸谷飛鳥(→栃木ウーヴァFC)杉本恵太(→FCマルヤス岡崎)森永玲央(→FC CASA)甲斐拓也(→未定)北里仁(→未定)バハウ航(→FC大阪)土遠修平(→アルテリーヴォ和歌山)池田達哉(引退)日野竜一(引退) 所属選手(2016シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 坂本和哉 3 土遠修平 4 池田達哉 5 清水大輔 6 福島新太 7 原一生 8 河野諒祐 9 鍔田有馬 10 11 中島康平 13 村田勉 14 山田雄太 6/1付で、サウルコス福井?へ完全移籍 15 日野竜一 16 森永玲央 17 永冨誠也 18 中村真人 19 利根瑠偉 20 當瀬泰祐 21 戸谷飛鳥 22 甲斐拓也 23 平川諒 7/19付で退団 24 木島悠 25 梶谷充斗 26 長谷川豊喜 27 佐藤永望 28 下田和輝 7/20付で加入。前大分高校 29 バハウ航 30 横山楽 3/18付で引退 31 北里仁 32 杉本恵太 33 二戸将 7/19付で退団 移籍情報(2015-2016) in out 佐野達(サウルコス福井監督→)佐藤永望(徳島商業高校→)バハウ航(大阪産業大学→)梶谷充斗(九州産業大学→)池田達哉(SP京都FC→)平川諒(九州共立大学→)村田勉(福岡大学→)山田雄太(サウルコス福井→)中島康平(町田→)當瀬泰祐(大阪学院大学→)戸谷飛鳥(サウルコス福井→)坂本和哉(VONDS市原FC→)杉本恵太(Chiangrai United F.C.→) 結城治男(→未定)福元考佑(→J.FC MIYAZAKI)西出隼也(→新日鐵住金大分サッカー部)木下晋之介(→未定)江口貴俊(→未定)中島大輝(→FC中津)楠美圭史(レ終了 / →東京V)岡崎和也(レ終了 / →岡山)大迫希(→藤枝MYFC) 所属選手(2015シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 大迫希 3 土遠修平 4 5 西出隼也 6 福島新太 7 原一生 8 河野諒祐 9 鍔田有馬 10 フェリペ? 3/24付でレンタル移籍満了。大分トリニータへ復帰 11 岡崎和也 13 江口貴俊 14 楠美圭史 15 日野竜一 16 福元考佑 17 永冨誠也 18 中村真人 19 利根瑠偉 20 木下晋之介 21 22 甲斐拓也 23 森永玲央 24 木島悠 25 中島大輝 26 長谷川豊喜 27 姫野宥弥 3/30より、大分トリニータからレンタル移籍。6/7まで 28 佐藤昂洋 3/30より、大分トリニータからレンタル移籍。6/7まで 29 清水大輔 8/14付で加入、前近畿大学 30 横山楽 7/17付で、日本経済大学から完全移籍 31 北里仁 33 二戸将 移籍情報(2014-2015) in out 江口貴俊(立命館大学→)岡崎和也(レンタル / 岡山→)河野諒祐(湘南→)二戸将(MIOびわこ滋賀→)フェリペ?(レンタル / 大分→)楠美圭史(レンタル / 東京V→)木島悠(大分→)土遠修平(グルージャ盛岡→)木下晋之介(東京学芸大学→)永冨誠也(大阪体育大学→)甲斐拓也(MSU FC→)大迫希(熊本→)北里仁(神村学園高校→)中島大輝(九州総合スポーツカレッジ→)利根瑠偉(徳山大学→)森永玲央(Stanmore Hawks FC→) 田中淳也(引退)中嶋雄大(引退)藤本陽平(→FC刈谷)野田佑成(→未定)宮迫太郎(→未定)中田良(→未定)松本光平(引退)矢野稔(→新日鐵住金大分サッカー部)黒木恭平(→レノファ山口FC)濱中祐輔(→九州三菱自動車サッカー部)山瀬彰也(→未定)福満隆貴(→レノファ山口FC)宮田繁輝(→未定)原田昂輝(→FC刈谷)西口佳祐(→未定)山本祥輝(レ終了 / →富山)生口明宏(引退) 所属選手(2014シーズン) 番 名前 備考 1 姫野昂志 2 矢野稔 3 西口佳祐 4 松本光平 5 西出隼也 6 福島新太 7 原一生 8 藤本陽平 9 10 福満隆貴 11 中嶋雄大 13 生口明宏 14 田中淳也 15 日野竜一 16 福元考佑 17 黒木恭平 4/1付で加入。前サガン鳥栖 18 宮田繁輝 19 濱中祐輔 20 中村真人 21 野田佑成 22 宮迫太郎 23 原田昂輝 24 中田良 25 山本祥輝 26 長谷川豊喜 27 山瀬彰也 28 鍔田有馬 移籍情報(2013-2014) in out 原田昂輝(神戸国際大学→)宮迫太郎(日本文理大学→)野田佑成(金沢星稜大学→)山本祥輝(レンタル・富山→)中村真人(MIOびわこ滋賀→)鍔田有馬(MIOびわこ滋賀→) 中野裕太(→FCガンジュ岩手)小池恭一(→トヨタ蹴球団)西野隆司(→未定)島屋八徳(→レノファ山口FC)杉本恵太(→Chiangrai United F.C.)野寺和音(引退)堀健人(引退) 所属選手(2013シーズン) 番 名前 備考 1 河原正治 3/9付で引退 2 矢野稔 3 西口佳祐 4 松本光平 5 西出隼也 6 福島新太 7 原一生 8 中島崇文 7/16付で引退 9 中野裕太 3/25付で加入 10 福満隆貴 11 中嶋雄大 13 生口明宏 14 田中淳也 15 日野竜一 16 福元考佑 17 堀健人 18 宮田繁輝 19 古賀宗樹 3/26付で退団 杉本恵太 3/26付で加入 20 西野隆司 21 野寺和音 22 小池恭一 23 藤本陽平 24 濱中祐輔 25 中田良 26 長谷川豊喜 27 山瀬彰也 28 島屋八徳 29 30 31 姫野昂志 移籍情報(2012-2013) in out 矢野稔(国士舘大学→)西口佳祐(鹿屋体育大学→)松本光平(順天堂大学→)西出隼也(静岡産業大学→)藤本陽平(環太平洋大学→)濱中祐輔(法政大学→)姫野昂志(大阪体育大学→)小池恭一(阪南大学→) 糟谷浩志(引退)堀内省吾(引退)中原丈聖(→レノファ山口FC)片山直哉(→レイジェンド滋賀FC)後藤優介(レ終了・→大分)瀬里康和(→FC琉球)菅原太郎(→ブラウブリッツ秋田)田上渉(引退)堤友樹(→未定)渡邊昭文(→未定)金子昌樹(→未定)滝裕徳(→FC岐阜 SECOND) 所属選手(2012シーズン) 番 名前 備考 1 河原正治 2 片山直哉 3 福元考佑 4 安藤寛明 8/20付で退団 5 堀内省吾 6 堤友樹 7 原一生 8 中島崇文 9 菅原太郎 10 佐藤亨 9/11付で退団 11 中嶋雄大 13 生口明宏 14 田中淳也 15 日野竜一 16 糟谷浩志 17 堀健人 18 宮田繁輝 19 古賀宗樹 20 中原丈聖 21 野寺和音 22 田上渉 23 渡邊昭文 24 瀬里康和 25 福満隆貴 26 長谷川豊喜 27 山瀬彰也 28 島屋八徳 29 金子昌樹 30 中田良 31 滝裕徳 32 後藤優介 7/26より、大分トリニータからレンタル移籍 33 西野隆司 34 福島新太 35 松本和弥 8/20付で退団 移籍情報(2011-2012) in out 結城治男(大宮・強化育成本部長→)安藤寛明(徳島→)西野隆司(ザスパ草津U-23→)日野竜一(佐川印刷サッカー部→)福元考佑(福岡教育大学→)山瀬彰也(桃山学院大学→)島屋八徳(宮崎産業経営大学→)瀬里康和(関西大学→)福満隆貴(九州総合スポーツカレッジ→)金子昌樹(広島崇徳高校→)片山直哉(ブラウブリッツ秋田→)中田良(東海大学→)松本和弥(九州産業大学→)福島新太(徳島→)菅原太郎(ソニー仙台FC→)滝裕徳(カマタマーレ讃岐→) ブレノ・エンヒケ・バレンチン(GKコーチ就任)相良真輝(引退)鴨川奨(引退)船津佑也(→未定)安藤寛明(レ終了・→徳島)岩本昌樹?(→未定)梶原公(→未定)長正之(→未定)西尾直輝(→未定) 所属選手(2011シーズン) 番 名前 備考 1 河原正治 2 田中淳也 3 4 安藤寛明 5 堀内省吾 6 堤友樹 7 原一生 8 中島崇文 9 佐藤亨 10 岩本昌樹? 11 中嶋雄大 13 生口明宏 14 相良真輝 15 鴨川奨 16 糟谷浩志 17 堀健人 18 宮田繁輝 19 古賀宗樹 20 中原丈聖 21 野寺和音 22 田上渉 23 渡邊昭文 24 梶原公 25 長正之 26 長谷川豊喜 27 28 西尾直輝 29 30 31 船津佑也 移籍情報(2010-2011) in out 田上渉(無所属→)船津佑也(北九州→)中嶋雄大(北九州→)河原正治(カマタマーレ讃岐→)長正之(V・ファーレン長崎→)佐藤亨(カマタマーレ讃岐→)安藤寛明(レンタル・徳島→)梶原公(V・ファーレン長崎→) 長谷部浩?(→新日鐵大分サッカー部)ルイス・フェルナンド?(→未定)花水貴裕?(引退)本田竜馬?(引退)三浦宏之?(→未定)清永研治?(→未定)奥薗将太(新日鐵大分サッカー部) 所属選手(2010シーズン) 番 名前 備考 1 花水貴裕? 2 田中淳也 3 清永研治? 4 奥薗将太 5 堀内省吾 6 堤友樹 7 原一生 8 中島崇文 9 ルイス・フェルナンド? 10 11 清原龍弥? 12 宮田繁輝 13 生口明宏 14 相良真輝 15 鴨川奨 16 糟谷浩志 17 堀健人 18 金正旭 10/4付で退団 19 古賀宗樹 20 中原丈聖 21 岩本昌樹? 22 山口純 23 渡邊昭文 24 25 長谷部浩? 26 長谷川豊喜 27 三浦宏之? 28 西尾直輝 29 30 32 本田竜馬? 34 野寺和音 40 今山源太? 41 清原裕輔?
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「阿良々木駿河だ」 「いつの間に僕はお前と学生結婚したんだ!?」 「阿良々木駿河。得意技は毒手だ」 「この間思いっきりお前の手握っちゃったよ!!」 「ははは、安心してくれ阿良々木先輩、結婚したというのは冗談だ」 「わかってるよ! 何うまくびっくりさせたみたいに得意になってんだよ!! っていうか毒手は冗談じゃないのか!?」 というかお前は、他の奴からの電話だったらどうするつもりだったんだ……? 「安心してくれ、すでにアドレス帳の機能は使いこなしている」 「ああ、そうか……」 機械に疎そうな感じだけど、そうでもないのかな。 「ついでにエロサイトばかり見ていたものだからパケット代がとんでもないことになってしまった」 「変な使い方まで覚えなくていいんだよ!!」 「データフォルダがエロ画像でいっぱいだ」 「嫌な携帯だー!!」 誰かに見られたら言い訳きかないだろ……。 「別に見せてもいい。いやむしろ見て私を理解してほしい」 「お前のことを理解できる人間なんてこの世に数人いればいい方だよ!」 「全部BL画像だ」 「お前のことを理解できる人間なんてこの世にいないな!!」 「まあ、最近私は自分でBL小説をねこってるんだ」 ねこってる……? 「ああ、描いている。だな」 「いや、まあ確かに漢字は似てるけど普通間違えないよな!? そもそも小説は書くだ!」 「阿良々木先輩×ヤマト王子だ」 「僕とビックリマンのキャラを絡めるな!!」 戻る