約 11,586 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5265.html
前ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第二十一話 夕日を浴びて高らかに笑う謎の貴婦人、その正体とは―― 「何やってるんですか、先生?」 モンモランシーが気の抜けた声を出した。 「な、ち、違いますよ。断じて私はシュヴルーズなどという者ではありません!」 いや、シュヴルーズのシュの字も出してねーよ。 と、モンモランシーは思った。 「なんで、魔法学院におったはずのシュブルーズ先生がこんなところにおんねん?」 「あ、違いますよ、ウルフウッド君。シュブルーズ、じゃなくてシュヴルーズ。下唇を噛んで、ヴ。よくある間違いなんで気をつけてください」 「……」 一同、言葉が出ないまま、ぽかーんと自称シュヴルーズではない人を見つめる。 「……というのが、シュヴルーズの発音に対する一般論です」 なわけねーだろ。 と、モンモランシーは思った。 「で、そのセンセ……じゃなくて、謎の貴婦人さんが何の用やねん」 つい先生と言いそうになったウルフウッドは、唇に指を当ててシーッの仕草をしたシュヴルーズに気を遣って、言い直した。 「あ、そうそう、用件ですわね」 謎の貴婦人はいそいそとたたずまいを直した。そして、コホンと咳払いをする。 「私がわざわざここに現れたのは、他でもありません。同志モンモランシー! あなたをスカウトに来たのです!」 「へぇ?」 突然謎の貴婦人に指を指されたモンモランシーが間抜けな声を上げた。 「あの、すみません。せんせ、じゃなかった、謎の貴婦人さんですね。いきなり同志とか言われても、言っている意味がよくわからないんですが……」 「ふふふ、とぼけなくてもいいのですよ。私は味方です。私は知っているのですよ、あなたの作った――ガチホモの薬を!」 「惚れ薬です!」 誰がガチホモの薬なんか作るか! 思わずモンモランシーは大声で反論した。 「しかし、想像の世界だけでは満足できず、まさかそうやって自分好みのカップリングをリアルに成立させるとは、私でさえ出来ない暴挙! あなたのその熱意に私感動いたしましたわ!」 「あれは、事故です!」 「さぁ、同志モンモランシーよ。あなたも我々と共に来るのです。共にいたるところにガチホモのカップリングが溢れかえる、ガチホモの楽園となる世界を作りましょう!」 「そんな世界、私はいらないー!」 モンモランシーは両手を頬に添えて叫んだ。 「何を言うのです! これは人類の世界のハッテンなのですよ!」 「ハッテンの意味が違うわよ、ハッテンの意味がー! 絶対に協力しません! っていうか、もう二度と作りません、惚れ薬なんか!」 「……これほど言ってもダメなのですか」 「どれほど言ってもダメです」 「ならば仕方ありませんね。一つの目的はあきらめましょう」 「一つの目的?」 急に冷静になった謎の貴婦人に、モンモランシーが問い返す。 「その通り、今回私がここに来たのには三つの目的があった。一つ目はモンモランシーあなたを我が同志に加えること。二つ目はあなたの持っているガチホモの薬。そして、三つ目は――」 ウルフウッドとルイズの顔が同時に引きつる。 まさか、ヤツの狙いは―― 「リアルウルコルカップリングの成立ですわ!」 その一言と共に先ほど謎の貴婦人の飛び出した穴から、コルベールが現れた。 「ははは、ウルフウッド君。やっと会えましたな」 「な、なんということや」 ウルフウッドはその場に膝を着く。 「ちょ、ちょっと、ルイズ。どうしてコルベール先生がこの場にいるのよ? 私たちが学院を出たときには間違いなく、学院の地下室で転がっていたはずでしょ!」 モンモランシーがルイズの服の裾を引っ張った。 「そういえば、お母様から聞いたことがあるわ。あの時はそんな話嘘だと思って信じなかったけれども」 「え?」 「あのシュヴルーズ先生はかつて腐敗のシュヴルーズの二つ名で、軍に所属していたのよ。それも、シュヴルーズ先生の存在だけで、ガリアやゲルマニアの地上軍と渡り合えるといわれたほどの」 「な、なんですって、そ、そんなの信じられないわよ!」 「私だって信じてなかったわよ! けど、学院からここまで地中を高速移動した魔法能力を考えると、あながち嘘でも……」 「う、確かに……」 ジャイアントモールも真っ青のスピードで地中を移動できるなど、確かに並みのメイジの技ではない。 「じゃ、じゃあ、そ、そんなすごいメイジがなんで魔法学院の教師なんかしてるのよ!」 「そのあまりにも神をも恐れぬ振る舞いを恐れた軍上層部の手によって、学院の教師に左遷させらたと、お母様からは聞いたわ」 神をも恐れぬ振る舞いという言葉にモンモランシーは思わず息を呑む。 「神をも恐れぬ振る舞いって、い、一体何をやったのよ! 敵軍の兵士数千人を地中に生き埋め? それとも、ゴーレムで町ひとつを壊滅させたとか?」 「……ガリア王ジョセフ×ロマリア教皇ヴィットーリオ本を発行したのが軍にばれて」 神を恐れぬにも限度があるよ、シュヴルーズ先生! 「あ、違う違う、ミス・ルイズ。あれジョセフ誘い受けだから、ヴィットーリオ×ジョセフよ」 んな、細かい修正どうでもいいからー! 「って、ウルフウッド、あんた何してんのよー!」 突然ルイズが大声を上げた。見れば、ウルフウッドが謎の貴婦人に向かって、パニッシャーを構えている。 「あんた、あれシュヴルーズ先生よ!」 「大丈夫や、じょうちゃん。やって、本人がシュヴルーズ違う言うてるんやから」 ウルフウッド、ストレスで半分目がいっている。 「な、わけないでしょ! 本人がシュヴルーズじゃないっていっても、本人は本人なんだからー!」 会話がもう意味不明である。 「かまいませんよ、ウルフウッド君。さぁ、キミのいけないパニッシャーで私を突いてきてください!」 「ウルフウッド! パニッシャー捨てるのはいいけど、湖に身を投げようとするのはダメー!」 朦朧とした足取りで湖へ向かうウルフウッドの服をルイズが精一杯引っ張る。 「お願い、水の精霊。この状況をなんとかして!」 モンモランシーが湖面にまだいた水の精霊に助けを求めた。 「無理だ。我には汝らを助けることは出来ない」 「な、なんで!」 「我には腐るという言葉は禁句なのだ。水の精霊だから」 ええい、どいつもこいつも使えねー! モンモランシーは頭をぼりぼりと大きく掻く。 「ふふふ。ミス・ルイズ。この私の恋路を邪魔しようとしても無駄ですぞ!」 「邪魔するに決まっているでしょうが、こんなの!」 ウルフウッドを抑えながら、ルイズが絶叫する。 「いくらミス・ルイズ、あなたがウルフウッド君に想いを寄せたとしても――」 「ち、ちょちょ、ちょっといきなり何を言い出すんですか、先生!」 突然のコルベールの言葉にルイズは顔を真っ赤にして反論した。 「そ、そんなわけ、ないじゃないですか。わ、わたしとウルフウッドはあくまで使い魔と主人っていうだけで」 「甘いですぞ! 隠していても私には分かるのです! 恋のライバルとして!」 「な、何も隠してないかいないです!」 いや、まず否定するのは恋のライバルっていうところだろ、とモンモランシーは心の中で突っ込みを入れた。 「ならば、仕方がありませんね。ウルフウッド君自身に決めてもらいましょう! 私とあなたと、本当に好きなのはどっちか!」 「な、何を馬鹿なことを言ってるんですか!」 「やはり、勝つ自信がないのですね」 「そんなわけないでしょう!」 勝ち誇るコルベールに思わずルイズはムキになる。 「ならば、ウルフウッド君に直接訊きましょう! ウルフウッド君、私とミス・ルイズとあなたが好きなのはどっちですか!」 「へ?」 唐突なコルベールの問いかけを聞いて、ようやくウルフウッドの意識は現実に帰ってきた。 え、ちょ、ちょっと待て。この展開は一体なんやねん。 ウルフウッドは慌てて助けを求めて、辺りを見回した。 シュヴルーズは両手を組んで祈るような仕草をしているし、モンモランシーは我関せずといった感じで遠くの夕日を見ている。 コルベールは頬を染めて、こっちを見ているし、ルイズは無言のままきつくウルフウッドの服の裾を握り締め、目を合わせないようにしている。 ――お、お前らこの状況で黙るな! ウルフウッドの背中に冷や汗が湧き上がる。 「さぁ、ウルフウッド君。あなたが好きなのは、私ですか、ミス・ルイズですか。はっきりしてください!」 コルベールがウルフウッドとズバッと指差す。 ルイズは何も言わない。その代わりに、服を掴む力が強くなる。 「さぁ、好きなのはどっち!」 コルベールがさぁさぁとはやし立てる。 ルイズの手の力も強くなっていく。 「え。えっと、ワイが好きなのは……」 「好きなのは!」 「好きなのはやな……」 完全に状況に飲み込まれてしまっているウルフウッド。 「す、好き、なんは……」 「好きなのは、さぁどっちですか!」 「……背も高くて、胸も大きくて、女の人らしい人」 ピシッとその場が凍った。 どちらとも答えられないウルフウッドが出した、どちらにも当てはまらない苦肉の答えだった。 モンモランシーが思わず天を仰ぐ。 「へ、へぇー。そうなの、そうだったの。あんた、そんなのが好みだったんだ」 「いや、じょうちゃん、今のはこの場を切り抜けるための苦肉の策で――」 ウルフウッドを掴むルイズの手に殺気がこもる。どす黒いオーラがルイズから巻き起こる。 「ふ、ふははは。ウルフウッド君は胸の大きい人が好みですか」 「そ、そや。だから、胸のないのは……」 ルイズの殺気が一段と強くなる。 アホ、とモンモランシーは心の中で呟いた。 「しかし、それは私とミス・ルイズの対決にはなんの問題もない。なぜなら、ミス・ルイズの胸などないも同然ですからな。さぁ、ミス・ルイズ共に言いましょう。胸なんて飾りです、と!」 「……ざけんじゃないわよ」 コルベールの一言で、完全にルイズはぶち切れた。 「ちょ、ちょっとじょうちゃん、落ち着け。それは、いくら何でもやばいで……」 「うるさいわね。そもそも、一体誰のせいだと思ってるのよ。こ、こ、この……バカーッ!」 ルイズが叫ぶと同時に辺りが光に包まれた。 エクスプロージョン、再び炸裂である。 「な、なんなのよ、これ」 やばそうな空気を察知して、少し距離を離れていたモンモランシーが呟いた。 辺りでは見事にウルフウッドとコルベールと謎の貴婦人もといシュヴルーズが白目をむいてひっくり返っている。その真ん中でルイズが泣いてるんだか怒っているんだかわからない表情で肩を震わせて立っている。 とにかく、さっさと帰って、さっさと解毒剤つくって、さっさとこの一件については忘れようとモンモランシーは思った。 その光景を見ていた水の精霊がぼそりと呟いた。 「体の一部でもなんでもあげるから、お前らもう帰ってくれ……」 こうして多くの人々の最も忘れ去りたい記憶となる一日は終わった。 $ ウルフウッドはルイズをサイドカーに乗せて、トリステインの公道を走っている。サイドカーに乗ったルイズは随分と不機嫌そうだ。 「なぁ、じょうちゃん。いい加減機嫌直せや」 「別に、機嫌なんか悪くはないわよ」 そんだけ思い切り口を尖らせながら言われても、とウルフウッドは思う。 「……あんたが胸の大きな女の人が好きだなんて知らなかったわ。どうせ、キュルケとかあのメイドとかをいやらしー目で見てたんでしょ」 「やから、あれはその場しのぎやったって、何度も言うてるやないか」 あれから、ずっとルイズの機嫌は悪い。その原因が先日の騒動にあることはわかっているのだが、ルイズはあの惚れ薬事件ではなく、あのときのウルフウッドの発言にばかりこだわり続ける。 「コルベール先生も災難だったわね。あれから、仕事も休んでるし。先生、やめなきゃいいけど」 「まぁ、教師以前に人間やめてしまう一歩手前までいってもうたからな」 ウルフウッドはしみじみと呟く。惚れ薬の効果が切れても、そのときの記憶は残っているというのはすさまじい拷問だとしみじみと思う。 「で、じょうちゃんの実家いうのはあとどれくらいや?」 「もうそろそろヴァリエールの領地に入るころあいよ」 ウルフウッドはため息をついた。あの後で、ルイズの元に家族から一度帰郷するようにという手紙が届いたのだ。 ルイズはあの事件以降はまともに口も聞かない状態だったのだが、なぜかしぶしぶといった感じで「バイクのほうが早いから」とウルフウッドに送ってもらうことを頼んだ。 辺りにはろくに人気のないだだっ広い平原をウルフウッドは走る。 なんとなく、ルイズが呼び出された理由がわかる様な気がしたから、それについてはお互い話さない。 「うひー、便所、便所」 「ちょっと、あんたこれからわたしの家族に会うんだから、そんな下品な行動はやめてよね!」 小さな旅籠に小休止したウルフウッドは、着くやいなや慌ててトイレに駆け込む。その姿を見て、ルイズがあきれ返るようにたしなめた。 「ルイズさま!」 旅籠の中にいた人々がルイズの姿を見て、駆け寄ってくる。 「これはこれはようこそ、お帰りくださいました。お疲れでしょう」 「いやー、また一段とおきれいになられましたな」 村人たちは口々にルイズに話しかける。ルイズはどうしていいかも分からないような表情で、はにかんでいるのか笑っているか。曖昧に頷いていた。 「先ほどの殿方はどちら様ですか? ご家族に会われるということは、ルイズさまの婚約者か何かで?」 「な、な。何を言っているのよ、そんなわけないでしょ! あれは、その、ただの召使、みたいなの!」 ルイズが真っ赤な顔で慌てて否定した。 「ふはー。あー、すっきりした」 そのころウルフウッドは機嫌よくトイレから出てきた。近くにあった手洗い桶に手を突っ込んで、パシャパシャと手を洗う。 「さてと、じょうちゃんを待たしたら、またうるさいからな。さっさと戻るか」 手をぴっぴとふって水滴を払った。機嫌よく歩こうとしたウルフウッドの前に、すっと手が差し伸べられる。 「手を洗ったら、ちゃんと拭かないとだめですよ」 見ればその手にはハンカチが握られていた。薄いピンクの品のいいものだ。 もともと、そんな習慣のなかったウルフウッドは困ったなと思い、その相手の顔を振り返った。 「あっ――」 その顔を見て、思わず声が漏れた。 「私の顔を見て、そんなに驚いた顔をしないでください。ただ、ハンカチを貸してあげるだけですよ」 その人は口に手を当てて、クスクスと笑った。 ウルフウッドはそれでも呆然とその人の顔を見つめる。桃色がかったブロンドの髪、白い肌、パッチリとした目、見れば見るほどにその人はそっくりだったからだ。 「あんたは――」 ウルフウッドは困惑した様子で尋ねた。 「あら、旅の方でしたか。私のことをご存じない方に、これは失礼してしまいましたわね。私は、カトレアといいます」 そう言ってカトレアは柔らかく笑った。 前ページ虚無と狼の牙
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4392.html
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第五話 揺れる馬車の振動の中でフーケは目を覚ました。もう、随分と陽は傾き始めている。例の小屋にたどり着いたのが真昼だったから、自分は三時間くらい気を失っていたのか。 体をもぞもぞとうごかしてみた。両腕が縛られている。杖は近くにはないようだ。当たり前か。 「やられちゃったわねぇ……」 小さくひとり言を呟く。気が付いたことがばれたら色々とうっとおしそうなので、誰にも聞こえないような小さな声で。 これから自分はどうなるのだろうか。まぁ、よくても悪くても死刑には変わりはないだろうが。 それにしても、まさかメイジでもなんでもない男にやられてしまうとは思わなかった。 ゴーレムの動きから正確に自分の位置を見つけ出すとは。 フーケは職業柄そういった敵に回したらやばい人物に鼻が効くつもりだったのだが、今回だけは失敗した。 恐ろしい男だ。あいつが自分に向かって破壊の杖を構えた瞬間、両手が冷たくなったのを覚えている。 足が震えて動けなかった。これほどの殺気を放つ男なんて今まで見たことがない。けど―― 「か、かつて、これほどまでに、死ぬ、思たことはなかった……恐ろしい、魔人以上……」 ――なんで私を捕まえた張本人が私の横でうなされながら気絶しているわけ? フーケ討伐一行全員は学院に戻ってきた。秘書のロングビルがフーケの正体だったことに学院の人々は驚きを隠せない。 そんな人々をよそにウルフウッドは経過の報告をルイズたちに任せて部屋を出て行った。 彼にとってはこの一件の事後処理など興味もなかったし、フーケを捕らえること以外は自分の範疇外だと思っていたからだ。 部屋を出て行く自分にルイズが何か言いたそうな顔をしているのに気が付いたが、ウルフウッドはそれを無視して部屋を出た。 例の一件を怒っているわけではなく、ただ一人になりたかった。 ウルフウッドは夕暮れの学院の庭に佇んでいた。塔に背をもたれかけながら、落ちていく陽を見ていた。 今まで大して深くも考えなかったが、この世界へ来てこのまま自分はどうなるのだろうか。 そんな疑問をウルフウッドはぼんやりと思い浮かべる。 「ややっ、こんなところに居られましたか」 「おう、センセ」 コルベールがやって来てウルフウッドに声を掛けた。 「探しましたぞ、突然ふらっと出て行かれるので」 「ワイがおってもしゃあないやろ。事後処理はそっちに任せる」 「そんな他人事のように。ミスヴァリエールが食い下がっておりましたぞ。ウルフウッド君には何の褒章もないのか、と」 「かまへん。別にそんなもんはいらん。そっちはもう片付いたんか?」 「ええ。フーケは明日身柄を引き渡すことになりました。ミスヴァリエールたちにはシュヴァリエの称号を王家に申請することになりそうです」 「そらよかったな」 「浮かない表情をされておられますな」 コルベールがウルフウッドの隣に座った。 「何か思うところでもありましたかな?」 「……あかんな、ワイは」 ため息とともにウルフウッドは空を見上げた。 「どういう意味です?」 「牙のない狼は野垂れ死にするしかあらへん。それが今回ようわかったわ」 「けど、彼女たちの説明ではあなたがフーケを捕らえたと?」 「運がよかっただけや。ランチャーがなかったら手詰まりやったで」 コルベールはここで何かを悩むように少し頭を振った。そして、唾を飲み込むとウルフウッドの目を強く見据える。 「ウルフウッド君。あなたに前から訊きたかったのですが、あなたはどこから来られたのですか?」 「どうでもええやんか、そんなことは」 「ひょっとしたら、我々とは違う世界じゃないですか?」 「……なんでそう思うねん?」 「あなたのあの銃、パニッシャーですか? 早速ですが、私もあれをいろいろと調べさせていただきました。 あれは明らかに我々の世界の技術水準を超えています」 「かもしれへんな。ワイにはようわからんわ」 「……あなたのいた世界とはどんな世界でした? ここよりも素晴らしい世界でしたか?」 ウルフウッドはコルベールの問いを鼻で笑ってみせた。 「ゴミみたいな世界や。焼かれるだけの砂の惑星―― そこでぎょうさんの人が限られた資源にすがりながら、奪い合いながら明日をも知れぬ生活を暮らしとる。 そんな世界やで。そんなんと比べたらここは天国やな」 「帰りたいですか?」 「やるべきことはやった。向こうに思い残すことはないな」 「そう、ですか」 「ほんまクソみたいな世界やったで。けどな、そんな世界でも――みんな必死に生きとったわ」 ウルフウッドはぼんやりと日の沈む先を見つめていた。この先にあの世界はあるのだろうか。 「なぁ、センセ。時々不思議にならへんか? 自分は何で生きているんやろ、て? ワイは思うで。自分は血と泥の水溜りをいつまで這い回るんやろうて。 生きている限りここから出られへんのちゃうかて」 「……記憶や過去というのは残酷ですね。どれだけ後悔しても、懺悔しても、変わることがない」 コルベールは自分の手を見つめる。この手は一体どれだけの人の血に染まっているのだろうか。 「これこれ、お前ら男同士でなにをしんみりとしとるのじゃ」 二人が佇む壁の傍に一人の老人の影が伸びてきた。 「誰や、このじーさん?」 「うちの学院長ですよ。ほら、フーケ討伐の前に会ったでしょ」 へんなものを見るような目をしているウルフウッドにコルベールが耳打ちする。 「んなこと言われたって、こんなじーさんの顔いちいち覚えてられへんて」 「こんなスケベでいいかげんで、それが原因で今回のフーケ事件の原因を作った学院長で、 私もいっぺん死んだほうがいいのではと思うくらいですけど、 それでも一応学院長なんですから、それなりの対応をしてください」 「……あの、丸聞こえなんじゃけど」 オールドオスマンは肩を落として立ち尽くす。 オスマンはウルフウッドに説明すべきことを説明した。つまりはガンダールヴとしての能力、そして破壊の杖の出自についてである。 「つまり、ワイはそのなんたらいう使い魔になったおかげで、全ての武器を使いこなせるっていうんか?」 「うむ、その通りじゃ。おぬしも実際に体感したのではないのかの?」 「まぁ、確かにな」 ウルフウッドは静かに自分の左手の甲に刻まれた文字を見つめる。あの感覚はこのルーンの能力だったのか。そう納得していた。 「ただ、その件については口外無用でお願いしたい」 「かまわへんけど、なんでや?」 「伝説とかいうものは得てして利用されがちじゃからな」 「ワイもこんなけったいなもん人に自慢する気もないから、安心してや」 「それで気になるのがその破壊の杖を持っていたという男ですな」 コルベールが顎に手を当てて、オスマンを見つめる。 「うむ。随分とぼろぼろの身なりじゃったが、あの服装は間違いなくみたことのないものじゃった。 彼はなくなる前に『自分は砂漠の星から水を求めて旅をしていた』と言うたな。 まさか、そのときは彼が別の世界から来たとは思わなかったのじゃが――」 「今となってはそう解釈するのが妥当やな」 ウルフウッドは立ち上がると、壁に背をもたれた。 自分以外にも、あの砂の星からこの世界にやって来た人間がいる、その事実をどう受け止めていいかわからない。 「その事実はつまりはウルフウッドくんの世界と我々の世界がどこかで繋がっていることを示唆しているわけですな。 ならばウルフウッドくん、君は可能ならば元いた世界に帰りたいと思いますか?」 そんなウルフウッドにコルベールは尋ねた。 「いや。むしろその逆や。もしも可能なら、ワイのいた世界の人をこっちに連れてきてやりたい。 ここなら水もある、草もある、土もある。 砂漠の星の片隅でいつ果てるともわからん限られたプラントを奪い合って生きていかんですむんや。 明日をも知れぬ生活に怯えんですむんや。 もしも、あの砂の星から抜け出せるんやったら、そしたらワイは――」 「これこれ、今日はもうそんな難しいことは考えなさるな」 ウルフウッドの肩をオスマンが叩いた。 「答えはそう焦らずともよいじゃろう。なに、まだ時間はある。ゆっくり考えるがよい。 今宵はブリッグの舞踏会じゃ。 ウルフウッドくんよ、我々は君にさしてなにもできはしないのは無念で仕方がないのじゃが、せめてブリッグの舞踏会くらいは楽しんでいってくれんかの。 ご馳走も酒も出るぞ」 オスマンの誘いにウルフウッドは小さく頷いた。 食堂のバルコニーの柵にウルフウッドはもたれかかっていた。 右手にはワインの入ったグラスと、その傍らにはデルフリンガーが立てかけてある。 「けっ、相棒もさみしーね。パーティーだっていうのに一人バルコニーで酒飲んで、挙句話し相手が俺とはなぁ」 「べつにええやないけ。お上品な舞踏会なんてワイのガラちゃうしな」 「ちげぇねえ」 デルフリンガーは鍔をカタカタと鳴らして笑った。 「いつぞやか、お前の言うた使い手いうのはひょっとしてこれのことやったんか?」 ウルフウッドは左手のルーンをデルフリンガーに見せる。とはいっても、この剣のどの辺りが目なのかはわからないが。 「あぁ、そうだった、ような気もするねえ」 「頼りない返事やな」 「何せ六千年も生きているからねぇ。いろいろと忘れちまっているんだよ」 ふぅん、とウルフウッドは鼻を鳴らした。頬杖を付きながら夜の学院の庭を眺める。煌々とした舞踏会の灯りが背中から降り注いでくる。 話し相手にコルベールでもいてくれればよかったのだが、コルベールは「いや、実はですな。お恥ずかしいことに私はふられてしまってですな」などとわけのわからないことを言って、この舞踏会には参加しなかった。 心なしか、少し落ち込んで見えた背中の上で、頭頂部の輝きが鈍くなっていた気がする。 仕方がないので、ウルフウッドは料理を皿に盛って失敬した後、こうしてワイン片手にバルコニーで一人飲んでいるのである。 「あんたこんなところで何をやっているのよ」 ウルフウッドは不意に声を掛けられた。ちらりと横を見ると、ドレスに着飾ったルイズが腰に手を当てて仏頂面でこちらを見ている。 「見たらわかるやろ。酒飲んどんねん」 はぁー、とルイズは大げさにため息を付いた。 「あんたねぇ。せっかくの舞踏会だっていうのに、なんで一人でこんなところでお酒なんか飲んでいるのよ」 とか文句を言いつつもルイズはウルフウッドのほうへ歩み寄ってくる。 「別にワイは貴族ちゃうからな。こういう場は苦手なんや」 ルイズはウルフウッドの隣に立つと、先ほどまでウルフウッドの視線の向いていた学院の庭を見つめた。 「食堂の中は明るくてきれいなのに、こうして外を見ると不思議ね。なんか、暗くて、何も見えなくて、この暗闇がずっと続いていそう」 「暗闇に底なんてないで。どこまでも深く、どこまでも堕ちるだけや」 「なんであんたはそんな暗闇をずっと見てるの?」 「……ちょっと中が眩しすぎただけや。ワイにはあの暗闇のほうが合うとる」 「あんたって自分のこと、あまり話さないわよね。あけっぴろげに見えて、誰も中に踏み込ませない」 「じょうちゃん、ちょっと酔いすぎやで」 「酔ってなんかいないもん」 ルイズは口を尖らせた。それから二人は会話を見失ったように、黙った。 「ねぇ」 「なんや」 ルイズが小さな声で呟くように沈黙を破る。 「あんたこんなところにいても暇でしょ」 「部屋に一人でいても暇やで」 ウルフウッドの対応にルイズはあきれ返るように顔をしかめた。相変わらずデリカシーのない男だ。 「わたしも暇なの。せっかくの舞踏会なのに、そ、その一緒に踊る相手がいなくて」 ウルフウッドはその言葉にルイズの顔を見つめる。 「べ、別に誰も誘ってくれなかったっていうわけじゃないのよ。 さ、誘いなんてほんと引く手あまただったんだけれども、わたしに見合う男の子がいなくて。 け、けどせっかくの舞踏会なのに、誰とも踊らないなんてもったいないから、 えっと、だから、そのあんたが暇で暇でしょうがなくってどうしても、っていうなら踊ってあげないこともないわよ」 ルイズはところどころしどろもどろになりながらも、ウルフウッドから顔を背けて一息にそう言い切った。 「いや、別にワイ踊りたいわけちゃうけど」 ルイズはバルコニーの欄干にごんっという音を立てて額をぶつけた。 あぁ、そうだった。忘れていたわ。このデリカシーゼロの鈍感馬鹿にこんなことを言っても無駄だったわ。 「だ、だから、今日のお詫びとお礼を兼ねて、わたしがあんたをダンスに誘ってあげているのよ! 結局、あの、勘違いだった、みたいだし……」 「あぁ、今日のアレか。アレはええ蹴りやった。じょうちゃん筋ええで。久々に死ぬか思た」 屈託なく笑ってみせるウルフウッド。 本人的にはルイズに「もう気にするな」と伝えたいのだろうが、如何せんウルフウッド自身に肝心なことが伝わっていない。 ルイズはもう一発蹴り飛ばしてやりたい衝動に駆られたが、ここはぐっと我慢した。 この男相手にこの程度のことでいちいち腹を立てていたらきりがない。 この馬鹿には回りくどいことを言っても無駄なのだ。言うならストレートに言うしかない。 「貴族の娘っ子、あんたも苦労するねぇ」 「うるさいわよ!」 茶々を入れたデルフリンガーをルイズは怒鳴りつけた。 仕方がない。ここは妥協に妥協を重ね、百歩どころか一万歩譲るしかない。 「ウルフウッド、ちゃんとわたしのほうを向きなさい」 「え? なんでやねん?」 「いいから!」 頭の上にハテナマークを浮かべたウルフウッドを強引に向き合わせる。ルイズは大きく深呼吸した。 「わたくしと一曲踊ってくださいませんこと。ジェントルマン」 ウルフウッドはしばらく状況をつかめないようにぼんやりとルイズを見つめていた。ルイズの顔がだんだん赤くなってくる。 仕方がないか。ウルフウッドはぽりぽりと頭を掻いた。 「ワイ、ダンスなんてやったことないで」 「わたしに合わせてくれればいいのよ」 ルイズはそういうだけ言うと、ウルフウッドの手を掴んで引っ張るように歩き出した。ルイズに引かれるままにウルフウッドはホールへと向かった。 ウルフウッドはぎこちないステップでルイズについていく。 普段、何事もひょうひょうとこなす彼が、珍しく額に汗の玉を浮かべて慎重にルイズの足元を見ている。 必死な目をして「おっ」とか「あっ」とか言いながら、不器用な足運びでダンスをするウルフウッドの姿をルイズは目を細めて見つめる。 小柄なルイズとウルフウッドでは、ルイズがヒールの高い靴を履いたとしても、ルイズの頭はウルフウッドの胸の辺りだ。 そんな二人が手を取り合ってダンスすると、ルイズがウルフウッドに包み込まれるように見えなくなる瞬間があった。 大きな背中――なのだ、彼の背中は。ルイズを全て包み込めるほどに。 遠くへ消えてしまうような気がしていたこの背中が、今自分のすぐ傍にある。ルイズはただそれだけで、無邪気にただ深く安心できた。 前ページ次ページ虚無と狼の牙
https://w.atwiki.jp/tenkai_cr/pages/371.html
花と太陽と雨と ビクターインタラクティブソフトウェア(現マーベラスエンターテイメント) PS2版 開発 グラスホッパー・マニファクチュア 発売日 2001年5月2日/2002年9月5日(Victor the BEST)/2005年1月13日(Super Best Collection) 価格 7,140円/3,990円(Victor the BEST)/1,890円(Super Best Collection) Link 開発元公式サイト※ネタバレあり DS版 花と太陽と雨と -終わらない楽園- 開発 ハ・ン・ド 監修 グラスホッパー・マニファクチュア 発売日 2008年3月6日 価格 5,040円 最近だとキラー7、ノーモアヒーローズ等でお馴染み、ghm開発のADV。ディレクション及びシナリオはもちろん須田剛一。 DS版の発売も迫ってきたことだし遥か昔のおぼろげな記憶を頼りにPS2版のレビューをしてみる。 ゲームの流れは、主人公がホテルで起きる→ホテルや島の住人を相手に様々な謎を解決していく…というショートシナリオを チャプター(章)形式で進めていくものである。“問題数の少ないレイトン”とでも言おうか。ただし間違っても謎解きそのものに 期待してはいけない。というのも、基本的に一つの章に対し2,3問程度しか出題されないためである(ただし複数出題される章もある)。 謎解きのクオリティもマチマチで、小一時間かけてようやく解けるような歯応えのある問題もあれば、単なる計算問題を こなすだけの問題もあり、やはり謎解きメインでの購入は薦められない。 では何が本作の魅力なのかと言うと、やはり須田剛一の描く世界観や台詞回しである。 キラー7やノーモアではアクションの合間にキャラがやり取りする程度だったが、本作はADVということもあり キャラが会話しまくり。もうこれだけでもファンにとってはたまらない。台詞回しの魅力については須田剛一の作品を プレイした人なら分かると思うので、敢えて説明はしない。というか説明しきれないので。 ただし逆に言うと、そこら辺が気に入らない人にとっては世紀末のクソゲーとなり得る可能性が高いので注意が必要。 長々と書いたけど、一言で言うと“ふいんきゲー”ってやつです。それも究極の。 ちなみに本作はキラー7やノーモアと違いバイオレンス色はほとんど無いんで、その点はそこら辺が駄目な人でもOK。 全体的な雰囲気はかなり緩く、クラシックのアレンジを採用した音楽と相まってどっぷり世界観に浸れます。 個人的にはノーモアで「キャラのやり取りが気に入った!もっと見たい!」という人にこそオススメしたい。 で、本作にはたった一つ大きな欠点があって、前作のシルバー事件をやってないと後半凄まじく意味不明になる点。 シルバー事件をクリア済みの人にはたまらん要素だが、新規の人にとってはひたすら置いてきぼりを食らうこと確実。 オマケに中途半端にシルバー事件のネタバレも含んでるので、後にシルバーをプレイ予定の人にも薦めづらい。 この要素さえ無ければ普通に薦められるのに…何故DSシルバーを先に出さなかったのかと小一時間問い詰めたい。 …まあ、細かいことは気にしないぜ!って人なら普通に楽しめるかと。 あ、あとバーチャファイターを彷彿とさせるノスタルジックなポリゴンはDS版・PS2版共通です。 570 :名無しさん必死だな:2008/04/27(日) 01 37 11 ID OlQl6hcH0 某スレでPS2版は遊んでて全然面白くなかったと言われてしまった 「花と太陽と雨と」のDS版を地雷覚悟で買った結構気に入ってしまった。 据置きだとやる気にならないだろうけどDSでポチポチ遊ぶにはいい、 リプレイ時にムービーシーンをキャンセル出来れば良かったけど R-0以外は気にするほどでは無いかな。 謎解き部分は数字入力だけだから単純と言えば単純、でもガイドブックから 探したり計算したりとそれなりに推理が必要。 雰囲気が好みに合えば十分と言ったレベル。 話が進んで範囲が広がると移動が面倒になるのとカメラが自由に動かせないので 周りを確認しにくい、それに伴って十字キーでの移動がやりにくくなることが有る のが気になるところ。
https://w.atwiki.jp/best300/pages/297.html
[部分編集] 交響的物語《ピーターと狼》 名盤ランキング バーンスタイン指揮〈60〉 プレヴィン指揮〈73〉 プレヴィン指揮〈85〉 交響的物語《ピーターと狼》 名盤掲示板 name comment すべてのコメントを見る 《ピーターと狼》より《ロミオとジュリエット》のほうが名曲だろww -- (774) 2011-08-08 12 52 51 log/プロコフィエフ/交響的物語《ピーターと狼》あなたのオススメ盤は何ですか?記入例)カラヤン上等記入例)カラス命 交響的物語《ピーターと狼》のリンク #blogsearch2 交響的物語《ピーターと狼》のアナリーゼ 交響的物語《ピーターと狼》の58%は大阪のおいしい水で出来ています。交響的物語《ピーターと狼》の29%は嘘で出来ています。交響的物語《ピーターと狼》の4%は海水で出来ています。交響的物語《ピーターと狼》の4%は覚悟で出来ています。交響的物語《ピーターと狼》の4%は不思議で出来ています。交響的物語《ピーターと狼》の1%は時間で出来ています。 powered by 成分解析 ページ先頭へプロコフィエフ 交響的物語《ピーターと狼》
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/24656.html
あめとあすふぁると【登録タグ 2013年 40㍍P NexTone管理曲 △○□× あ 初音ミク 曲 曲あ 殿堂入り】 作詞:40㍍P 作曲:40㍍P 編曲:40㍍P 唄:初音ミク 曲紹介 叩きつけられながら消えてく。 PVは △○□×氏 が手掛ける。 CD 『シンタイソクテイ』 収録曲。 歌詞 (作者ブログより引用) 零れ落ちた涙 受け止めた君の手をすり抜け 堅いアスファルトに叩きつけられながら消えてく そこに在るモノさえ 信じることはできない癖に そこに無い何かに 救いを求めて目を瞑(つむ)った 生まれ変わるその日を信じて 目に映るものすべて 遮断して 息を吸った 抱えきれないほどの現実(げんそう)を この手で壊してしまえたら 君が僕の感情を切り裂いた言葉も 忘れてしまえるかな 砕け散った僕に容赦なく降り注ぐ雨粒 君のその涙と混ざり合い 川になり流れる 誰かの悲しみなど いつかは 空を彷徨う風になって 消える場所を探す 君の名前を僕は叫んだ 例え届かない声だとしても いつか誰かをその手で愛し いつも誰かをその手で守れるように 数えきれないほどの偶然と 数えきれないほどの必然が 君と僕の存在を引き裂いて 孤独を分け与えていった 抱えきれないほどの現実(げんそう)を この手で壊してしまえたら 君が僕の感情を切り裂いた言葉も 忘れてしまえるかな 抱えきれないほどの現実(げんそう)を この手で壊してしまっても 君が最後にひとつだけくれた言葉だけは 忘れないままで コメント おつー -- 名無しさん (2013-03-01 20 56 48) おつです。 -- 名無しさん (2013-03-01 21 37 01) めっちゃいい曲! -- 名無しさん (2013-03-01 22 37 34) 良い曲ー!前奏から好きw -- リル (2013-03-01 23 00 56) さすが安定の40㍍さん、 -- ヒャッハー (2013-03-01 23 10 29) 40さんではちょっと珍しい曲だけどかっこよくてすごく好みです!サビの「現実」はなんて歌ってますかね?自分には「幻想」って聞こえるんですけど・・・ -- 名無しさん (2013-03-01 23 36 15) 現実の聞き取りが難しいなぁ・・・幻想?現状?「げん」までは聞こえるのに・・・w -- 名無しさん (2013-03-02 00 00 15) ↑「げんそう」って読んでいそうですね。 -- 名無しさん (2013-03-02 00 21 30) 私も幻想って聞こえました。切な爽やかな曲ですね!! -- 名無しさん (2013-03-02 01 03 03) げんそう、ですかねぇ -- みや (2013-03-02 04 14 42) たぶん動画の間違いじゃないか?げんそうってきこえるし -- 名無しさん (2013-03-02 09 31 14) うん、げんそうに聞こえるな どうなんだろう いい曲。 -- 名無しさん (2013-03-02 11 09 26) いい曲。 -- 名無しさん (2013-03-02 15 45 35) 乙乙♪ -- 名無しさん (2013-03-02 16 25 28) 「げんそう」は意図的な演出だそうです。 -- 名無しさん (2013-03-02 18 47 55) 早いw40㍍さんらしいいい曲だわ -- 名無しさん (2013-03-03 00 03 44) 現実がげんそうなのが素敵。すき。 -- 名無しさん (2013-03-03 11 30 09) 早い乙!イントロから素敵!!惚れたっっ -- める (2013-03-04 01 33 58) 乙です!この曲好きです!かっこいい歌詞ですね! -- ルナ (2013-03-04 20 51 17) これすごい好きだ\(^-^)/ -- 名無しさん (2013-03-08 07 59 18) 一発で惚れたッ!! -- 拓都 (2013-03-09 21 20 04) 40?Pさん好き!! -- メイド服love (2013-03-11 01 24 03) 40さん作業早いなwそして全部、いい曲ばっかり!この曲ももちろん神曲! -- 沙奈 (2013-03-12 20 29 44) いい曲過ぎる!!さすが40さん! -- グミッチー (2013-03-27 13 20 01) さすが40㍍Pさん -- 村上秋桜 (2013-03-29 10 25 11) 最高 -- 粉 (2013-04-18 20 28 42) 雨とアスファルト本当にいい曲! -- gumi (2013-05-04 06 54 26) 2番のサビみたいな人になりたいな。最高じゃないですか、いつも誰かをその手で愛し いつも誰かをその手で守れるように ってね。 -- 海豚 (2013-05-14 17 35 12) 凄くいい曲ですね!最高です! -- アクア (2013-05-15 22 51 17) すっごく素敵ないい曲!!40mPさんの曲は歌詞がホントに良いものばかりで最高ですっっ(´ノω・。)゚+.大好きですっっ!!!! -- まろん (2013-06-09 16 58 28) 大好きだぁぁ -- K-girl (2013-06-17 15 42 40) めっちゃ素敵ですっ!!心にジーンときます( _ ) -- えあこん (2013-07-22 23 34 10) いい曲だー応援してるよ!! -- 名無しさん (2013-07-26 17 55 32) 凄く、大好きな曲です。ありがとうございました -- しゅしゅ。 (2013-08-24 17 59 54) 凄く好きな曲!イントロもステキ -- アネモネ (2013-08-30 15 56 02) いい曲すぎてもう…っ! -- 名無しさん (2013-08-30 18 14 13) イントロに惚れて聴いたらフルでいい曲(*uωu*) -- あさか (2013-09-22 07 42 39) イントロもいい!神超えてます! -- 名無しさん (2013-10-22 17 54 25) 好きすぎて死す← -- 名無しさん (2013-12-03 20 42 49) 前奏からの入りがすごい綺麗。このミクの声も合ってて好き -- あいす (2014-02-06 22 37 23) 綺麗な曲だと思うけど、歌詞の意味が分からない…。 -- 果穂 (2014-02-28 20 32 01) いい曲 好き 大好き -- kana (2014-04-17 20 33 10) 大好き…!! -- 名無しさん (2014-04-19 11 47 15) この曲好きー。君の名前を・・の部分好き、あとピアノ伴奏きれいー!! -- らりこ (2014-06-27 23 48 32) 泣いたw -- アッシェン帝 (2014-09-23 17 58 28) ピアノ伴奏大好き☆☆ -- むきむきみかん (2014-10-19 14 57 32) もっと評価されるべき!!めちゃくちゃいい曲だから!!! -- 名無しさん (2015-03-17 07 02 36) 何度聞いてもきれいな曲。とてもすてきな曲。 -- k,正哉 (2015-05-24 13 05 14) この曲ほんとすき -- 名無しさん (2016-10-19 20 42 09) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/45973.html
あめとかめん【登録タグ VOCALOID あ ブリザード吹雪 曲 鏡音レン】 作詞:ブリザード吹雪 作曲:ブリザード吹雪 編曲:ブリザード吹雪 唄:鏡音レン 歌詞 (PIAPROより転載) 早すぎた目覚めに 少し気鬱、空は曇り 低すぎる体温で さらに落ちて、声はかすれる 眠れない理由は 雨音にかき消される 退屈すぎる毎日に嫌気がさす午前中は どこにも・なんにも・だれにも 「行きたくねぇ」「やりたくねぇ」「会いたくねぇ」のに 目覚ましに急かされて 重い体を起こして 意味ねぇ・つまんねぇ 一日の始まり 冷えたエンジン蹴りつけて走り出す キ〇ガイの悲鳴みたいなエンジン音あげて 何もない壊れた世界で ただ正気のフリをして 人知れず悲鳴を上げる 悟られることを恐れている 何が正しいのか 何が狂気なのか 世界が狂気ならば 苦しかねぇだろう クソみたいな言葉 小声で囁かれ 作り笑いをする 機械(マシン)になる 偽善であふれた世界で ただ信じるフリをする 飛び散るガラスの欠片は 雨に濡れた手首を切る この壊れた世界で ただ正気のフリをして 人知れず悲鳴を上げる 悟られることを恐れている 何が正しいのか 何が狂気なのか 世界が狂気ならば 狂うしかねぇだろ コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/u2ldm9o/pages/22.html
私もいまではすっかりリピーターになりましたが、きっかけは、ちょっとしたことでした<サリー・スコット(Sally Scott) カーディガン>。私はブーツが大好きなんですが、ご存知のように、これって本当に蒸れやすいんですね<靴下屋 Tabio(タビオ) 靴下 ソックス レギンス スパッツ スポーツ タイツ>。 靴下屋さんの公式オンラインストア Tabio(タビオ)はいいですよ<コープ ネット注文 eフレンズ|宅配サービスの「お試し」注文>。そんなとき、友達に勧められたのが、Tabio(タビオ)の5本指ソックスです。 「餅は餅屋」の言葉どおり、靴下の専門店だけのことはあるんです<ニューヨーカー(NEWYORKER) ブルゾン ベスト>。これだと、指と指のあいだの汗までしっかり吸収してくれるので、ヌルヌルした感じがなくなるんですね。 「人間は冬でも汗をかく」といいますが、ブーツを履くときほど、この言葉を実感することはありません<apres les cours(アプレレクール) カバーオール ロンパース>。
https://w.atwiki.jp/coeur/pages/16.html
-海琴-ririasimaronこの先生たま☆ほこまこ蔵アスティナードマリウミルレィ平たい顔族彩瀬楓椛憂月こころ灰色龍総汰菜々緒雨と砂時計*マシロシャンティ。 雨と砂時計 くーるのマスターとして、日々奮闘中^^; のんびりまったり時々ガッツリw 細かいようですが、実は大雑把+てきとーな楽観主義者デス^^v ザビーといえばコレでしょ(`・ω ・´) 愛称 マスター、飴ちゃん、あめさん フルネーム ザビエル・飴・マスター(愛称ザビー) 職業 さんだるナイト(ニコ厨) 星座 デスマスク的なアレ 生産 ミスター鍛冶っ子 ペット 元ネタ不明な生物、青狼×2、カエル玉 乗り物 ユニコーン 主な活動時間 23時前後~明け方 クランでの役割 いじられマスター 口癖 ハラヘッタ( ゚д゚) 不要なモノ クツ(靴なんて飾りです!エライ人には(ry 必要なモノ 帽子(ザビーですから(´・ω ・`) サブ アセ、マジなどなど(主に祈りと倉庫) 趣味 読書、スキー、ガンダム(ぇ 好きなモノ 無理ゲー、コーヒー、メガネ、メイドさん(ぁ 嫌いなモノ ペット隊、自己中、チーズ、ジン 称号 残念なイケメン 名前の由来 銀の砂時計(FF)からのアレンジ(・・・だったような気がw) 一言 火力の違いが戦力の差ではない事を教えてやる 専用SNS日記はこちらから
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5073.html
前ページ次ページ虚無と狼の牙 虚無と狼の牙 第十四話 ルイズは、ぼんやりと、夢の中にいた。 故郷のラ・ヴァリエール。忘れ去られた中庭の池……。 そこに浮かぶ小船の上で、ルイズは寝転んでいた。つらいことがあると、ルイズはいつもここで隠れて寝ていたのであった。自分の世界。誰にも邪魔されない、秘密の場所……。 何もかも忘れ去りたかった。何も考えたくなかった。 目の前で人が殺された。 殺したのは、自分も良く知っている人。自分の元婚約者。 そして、その男から自分を守るために傷ついた自分の使い魔。 彼の身体を引きずった重さがずっと手に残っている。 魔法で焼け爛れた肌の熱い感触も。そして、地面に広がっていった赤い血も。 ルイズは小船の上で、泣いていた。 何もかもから逃げ出したかった。このままずっと一人ぼっちの世界にいたかった。 そう、もう誰にも―― 「ドボァ!」 突然視界が反転した。突然の奇声を発しながら、両手を広げて水にダイブした。 ゴボゴボと水を飲みながら、必死に手足をばたつかせる。 何、何が起こったの――? 頭の中で疑問を浮かべながら、必死に手足をばたつかせていると、足が固いものに当たった。その感触に少し冷静さを取り戻す。 どうやらそれは池の底らしい。足をばたつかせるのをやめて、足を伸ばすと、すくっと水面から身体が飛び出した。水かさは膝くらいまでしかない。 よかった――。 どうやら足が立つ程度の深さしかなかったらしい。 立ち上がってポカーンと安心すると、先ほどまでの不安が一気に怒りに変化し始めた。間違いない。これは誰かがボートをひっくり返したのだ。犯人は誰――? 「そうやって一人でいじけてやり過ごすつもりか? ほんましょうもないやっちゃで」 犯人を捜そうと、首をきょろきょろと振っていたルイズの背後から声が聞こえた。ルイズの頭の中に稲妻が走る。 間違いない。犯人はこいつだ。 ルイズは背後に振り向く。そこには頬に絆創膏をした目つきの悪い黒髪の少年が立っていた。 少年は年齢は十二歳くらいで、両腕を組んで唇を突き出しながら、ルイズを見ている。 ルイズの頭が一気に沸点に達した。 「あ、あんたが船をひっくり返したのね! 思いっきり水の中に落ちたじゃない! 何するのよ!」 少年はピンクブロンドの髪から水をしたたらせ猛り狂うルイズを、フンと鼻であしらう。 「なんやねん。うじうじ泣いとったかと思たら、今度はキーキー吠えくさって。それにしても、お前のリアクションはおもろかったな。『ドボァ!』って、女の言うセリフちゃうで」 ぐぅとルイズは言葉にならないうめき声を飲み込む。 なんて憎たらしい少年だろうか。涼しい顔して、口が悪い。 突然だったから仕方がないじゃないか。『ドボァ!』なんて声を出して、大の字で湖にダイブしたって。というか、常識的に考えて、いきなり船をひっくり返すというのがむちゃくちゃすぎる。 一気に腹が立ったルイズは少年を指差す。 「そ、そういうあんた。そう、そのあんた! あんたは一体誰なのよ!」 「ニコラスや。食え」 にこりともせずに少年はぶっきらぼうに言うと、すっとパンを一つ差し出してきた。 「な、なんのつもりよ?」 「あんだけ泣いとったら、腹減るやろ」 ……これは一応、自分を思いやってくれているのだろうか? 「何を泣いとるんや?」 「あんたには関係ないでしょ」 ルイズはなんとなく受け取ってしまったパンを胸に抱きながら、少年から顔を背けて素っ気無い態度を取る。 「それもそやな」 「なっ――」 自分から訊いてきたくせに、あまりにもどうでもよさそうなニコラスという少年の態度に、ルイズは思い切り眉をしかめる。 「何をグジグジ悩んどったんかは、知らんけど、んなことしている暇があるんやったら、なんかせえ」 「なんかせえ、って何をしろっていうのよ?」 「知らん。そんなんワイの知ったことか。お前に出来ること、お前にしかできひんこと、お前がやるべきことや」 少年の言葉に食いかかろうと勢い込んだルイズを無視して、少年はくるりと踵を返した。そして、そのまますたすたと歩き去っていく。 「ち、ちょっと待ちなさいよ!」 大声で叫ぶルイズに振り向かないまま右手を挙げて答えると、少年の姿は深い霧につつまれるように消えていった。 ルイズは目を覚ました。ほとほとと身体が揺れる感触がして、新しい木の匂いがつんと鼻につく。 ほんの数秒の間があいて、彼女は自分が今馬車の中にいることに気が付いた。もちろん、今自分の髪も服も濡れてはいない。あれはやはり夢だったのだ。 「あら、やっと起きたの?」 どこか間延びした声が、聞こえて、ルイズはその声の方を見やった。 そこではキュルケが退屈そうに足を組んで、頬杖をつきながらルイズを見ていた。 「まぁ、仕方がないわね。あんたが馬鹿みたいにグーグー寝ても。あれだけのことがあったんだから」 キュルケは素っ気無く言うと、指で馬車の壁の木目をなぞり始めた。 「な、何よ。何か文句があるの?」 「別に何も」 「何よ。はっきりと言いなさいよ。なんか、いつでも無遠慮にずけずけ言うあんたがはぐらかすと気味が悪いわ」 「あら、私はあんたに言いたいことは、この間全部言ったから、別に今更わざわざ言うべきことはなくてよ。それとも、もう一度言って欲しい?」 「……別に」 「そう」 キュルケはどこか退屈そうにふぅと息を吐いた。 「トリステインの王宮までは、あともう少しっていうところよ。あんたもそろそろしゃっきとしなさい。今のあんたには、今のあんたにできることしかできないのよ」 「わかっているわよ」 ルイズは唇を噛んでうつむいた。 今、彼女とキュルケはアンリエッタの依頼であった手紙の件を報告するために、トリステインの王宮へと向かう馬車の中にいる。 ルイズはゆっくりと服の襟を正した。懐にはちゃんとウェールズから受け取った手紙が入っている。 今の自分にできること――それは一体なんなのだろう。 キュルケからその言葉を投げかけられたのは、昨日のことだった。 ラ・ロシェールになんとかたどり着いたルイズは、ウルフウッドの傍に付いている、と主張した。自分の使い魔だから、主人である自分が傍にいないとだめなのだ、と。 そんなルイズをキュルケは言葉で一刀両断した。 「今ウルフウッドがそんな状態なのは誰のせいか、考えなさい。あなた、ウルフウッドがワルドと戦っているとき魔法で助勢できた? ウルフウッドが血を流していたとき、魔法で治療が出来た? 何も出来ないで、ただ足手まといになっただけでしょ? 今だってそうじゃない。あんたはそうやって傍にいるだけしかできないじゃない。そんなの、はっきり言ってただの自己満足よ」 痛烈な言葉だった。ルイズは何も言い返すことが出来なかった。すべて、事実だった。 そして、キュルケはこう続けた。 「あんたがどんだけ背伸びしたって、あんたにできないことはできないの。だったら、まずはあんたに出来ることからしなさい。あんたには今やるべきことがあるでしょうが」 ルイズはこのときほど自分が魔法を使えないことを、深く恥じたことはなかった。 そして、こうしてルイズにしかできないこと――つまりは、アンリエッタへの報告のためにトリステインへと向かっているのである。 キュルケも、ルイズ一人だと心配だし、あぁいう重い雰囲気は苦手だから、という理由をつけてルイズに付いてきた。そして、こうして今二人で馬車の中にいる。 「……ねぇ、キュルケ。わたしにしかできないことってなんだろう?」 ルイズの頭の中にずっと浮かび続ける疑問。 「さぁ。そんなの知らないわ。ただ、本当に自分に出来ることを知りたいんだったら、背伸びじゃなくて、ちゃんと背を伸ばしてみせることね」 そういえば、夢の中に出てきたニコラスという少年も、同じようなことを言っていた。無愛想でぶっきらぼうで不親切だけれども、どこか暖かさを感じさせる少年。 いつの間にか、ワルドに変わって自分の夢に居ついた少年。 そう、彼は、よく似ている。 $ 目を開けると、眩しい光が飛び込んできた。 生暖かい感触。少しずつ目の前の景色の輪郭がはっきりしてくる。 刺された傷口を手で触ってみた。包帯の感触がした。 「……ワイは、生きてるんか?」 ぼんやりとまだ霞んでいる視界に向けて、ウルフウッドは静かに声を出した。 「ウルフウッド! 意識は戻ったのかい?」 視界にギーシュの顔が映る。どうやら、彼が今自分の顔を覗き込んでいるようだった。 「あぁ。っちゅうか、小僧、なんでお前がここにおんねん?」 「おいおい、これはまた随分な言い草だね、命の恩人に向かって。もっとも、君はあの時意識を失っていたから仕方ないか」 ギーシュは大げさに両腕を広げる。 そんなギーシュの動きを横目でみやると、おもむろにウルフウッドは体を起こした。服はいつものスーツから、楽な入院着に着替えさせられている。 「おい、寝てなくていいのかい?」 「大丈夫や。こう見えても結構体は頑丈でな。ところで、ここはどこや? ワイは今どこにおるんや?」 「ここはラ・ロシェールさ。それで今、君がいるのは病院」 「……ワイは助かったんか? あの状況下で?」 「あぁ、もちろんだよ。今の君は幽霊なんかじゃないから安心したまえ」 ウルフウッドは首をひねる。助かったのはわかるが、あの状況下から一体どうやって? どう考えてみても、手詰まりだったはずだ。 「どうやって助かったんだ? って訊きたそうな顔だね」 「あぁ」 ギーシュどこか得意そうに笑うと、「コホン」と咳払いをした。 「例の礼拝堂の前までルイズと一緒に行ったのは、記憶にあるかい」 ウルフウッドは頷いた。そして、記憶はそこから途絶えている。 「本当に危険な状態だったよ。出血がひどくてね。発見が遅れていれば危なかった。まぁ、手遅れにならないうちに君を発見できたのは、僕の手柄だけどね」 「お前の?」 「……そんな露骨に疑うような目で見るのは失礼じゃないかい? まぁ、いいさ。ヴェルダンデだよ。ヴェルダンデがルイズの持っていた水のルビーの匂いを頼りに、アルビオンの地中を掘り進んで君を見つけ出したんだ」 「ちゅうことは?」 「そう。僕たちはちょうど君たちが礼拝堂でやり合っていたころに、アルビオンにたどり着いていたのさ」 「ワルドが裏切ったことも知っているんか」 「あぁ。ルイズから聞いた。それで、君を見つけ出したときはびっくりしたよ。君は血だらけで、その横でルイズがワンワン泣いているし。 それで、話を聞けば、もうすぐ貴族派の連中が襲ってくるという話じゃないか。僕たちは君を連れて、慌てて逃げ出したわけさ」 ここでウルフウッドはルイズの姿が見えないことに気が付いた。 「じょうちゃんも無事やったんやな? 姿は見えんけど」 「あぁ、ルイズなら無事だったよ。今は、アンリエッタ王女へ報告するためにトリステイン王宮への道中のはずさ」 「そうか」 ウルフウッドはそう言って、少しの間黙りこんだ。 「……そういえば、パニッシャーやデルフリンガーはどうした?」 「あぁ、それならば――」 「おう、オレはここにいるぜ、相棒」 ギーシュの言葉を遮って、デルフリンガーの明るい声が聞こえた。声のほうを見やると、デルフリンガーが壁に立てかけられていた。そして、その傍らにはパニッシャーの姿もある。 「よく、あんな重たいもん運んでくれたな」 「ルイズが『あれも運んで』ってうるさくてね。あと、例ならタバサにも言ってくれたまえ」 「タバサ、ってあのちっこいじょうちゃんか?」 「そうだよ。彼女の使い魔シルフィードが僕たちを運んでくれたんだけれども、これだけの人数とあの重たい銃だろう? さすがに無理があったのを、タバサが風の魔法で手助けしてくれたのさ。あと、ついでに君に止血の応急処置をしたのも彼女だ」 そして、ギーシュはウルフウッドの隣のベッドを指差した。ウルフウッドがゆっくりとカーテンを引くと、そこには白いシーツにくるまれて眠るタバサの姿があった。 「君を運ぶのに、随分と精神力を使ってしまったみたいでね。今は、そうして休んでもらっている」 「そうか。ちっこいじょうちゃんとあの竜には、改めて礼を言わんとな」 ウルフウッドは、タバサが杖を胸に抱いて眠っているのに気が付いた。その姿を見て、なぜか心の奥底がぎゅっと痛んだ。 「とは言っても、それでもやっぱり限界はあってね。今にもタバサの魔法力が尽きそうになっているときに、運よくアルビオンから脱出してきたイーグル号を見つけてね。そこに不時着して何とか難を逃れたわけさ。 それで、さらに運のいいことにイーグル号には医者の水のメイジがいてね。彼が君を治療してくれたのさ」 「そうか……。ほんまに、お前らには迷惑かけてもうたな」 「まぁ、そう気にすることはないさ。こういったトラブルは貴族の職業病みたいなものだからね」 ギーシュは得意そうに胸を張る。その姿がどこか滑稽に映って、ウルフウッドは笑う。 「……んで、じょうちゃんはどや?」 「どや、って?」 「色々あったからな」 ギーシュは「あぁ」と納得した声を出した。 「ワルドに裏切られたショックとか、目の前で皇太子を殺されたショックとかは、あまり感じなかったな。彼女はひたすらにキミのことばかり心配していたよ。 例のイーグル号にいた医者にも、『お金ならいくらでも出すから、秘薬を出し惜しみせずになんとか助けて』ってね」 その光景がありありと想像できて、ウルフウッドは苦笑いをする。 「その医者に言わせれば、本当に結構危険な状態だったらしかったけれども、キミの体力が人並みはずれているおかげで助かったんだ。普通の人間なら、危なかったってさ」 普通の人間――その言葉は静かにウルフウッドの胸に重くのしかかった。 「――大丈夫や。ワイは、そう簡単には死なん」 「まったくだ!」 そんなウルフウッドの微妙な変化に気が付かなかったギーシュは、愉快そうに大声で笑う。 「あれからの情勢はどうなった?」 そのウルフウッドの質問にギーシュは分かっている限りの状況をかいつまんで説明した。 アルビオン王家はあの日の総攻撃で全滅したこと。そして、クーデターに成功したレコン・キスタはクロムウェル首相のもと神聖アルビオンを名乗り、事実上国を乗っ取ったこと。 そして、現在アルビオンはトリステイン・ゲルマニアに対しては交戦の意図を表明しておらず、事態は小康状態であること。 「連中がトリステインと交戦の意思はないと言っていても、それをどこまで信じていいものやら。まさしく、明日にはどうなっているかわからない危険な情勢だよ」 「今、アルビオンには渡れへんのか?」 「何かアルビオンに忘れ物でもしたのかい?」 「……まぁ、そんなとこや」 ウルフウッドは傍らのチェストを開けて、自分の服があることを確認した。そして、そのポケットを触って、風のルビーの感触を確かめる。 ――サウスゴータのウェストウッドという場所に埋めて欲しい。 その遺言はまだ果たせぬままだった。 「一応、国交は形式上は断絶されていないが、こんな時期にトリステインとアルビオンを行き来する船なんて、ないよ。下手をすれば、それが戦争の火種になるかもしれないこんな緊迫した状況下ではね」 「そうか……」 ウルフウッドは静かに、自らの心の奥底に染み渡らせるように呟いた。 結局、何も出来なかった自分の無力さが、どうしようもなくうらめしかった。 $ ラ・ロシェール。アルビオンとトリステインを繋ぐ港として繁栄している町。 この町も中継地点としての役割にそぐわず、人の行き来は非常に多い。 ゆえに、食べ物だとかみやげ物だとかそういった文化が発達するのは必然なわけで、つまりはこの町には名物のプリンがあるのだった。 ルイズは今、そのプリンを片手にラ・ロシェールの病院へと向かっている。 無事、王女への報告をなんとか終えた彼女は、数日ぶりにこの町へと戻り、そして入院している自らの使い魔の様子を見に戻ってきたのだ。 使いに出したふくろうからウルフウッドが意識を取り戻し、順調に回復していることを聞いていた。ゆえにそういう意味ではとても気が楽なのだが、別の意味で彼女は自らの使い魔と会うことを恐れていた。 ――ウルフウッド、怒っていないかな? あのワルドとの戦いで彼が生死に関わるような大きな傷を負ったのは、間接的には自分のせいだ。 それ以前に目を閉じれば、あの日の光景がありありとよみがえる。 目の前で血を吐きながら斃れたウェールズ。あの時、頬にかかった彼の血の感触はまだ生々しく残っている。 自分を殺そうとしたときのワルドの目。まるで、蛇のような目をして、彼は自分に向かって杖を振り下ろそうとしていたのだった。 そして、ワルドに杖を突きたてられて、崩れ落ちるウルフウッド。あの時、引きずった彼の体の感触と、少しずつ血の気を失っていく彼の姿が頭にこびりついて離れない。 もう一つ。初めて、魔法で人を傷つけた。血があふれ出る左肩を押さえながら、自分をにらみつけたワルドの目。自分の魔法で、人の肉と血が飛び散った。 ルイズは、そこで頭をフルフルと左右に振った。 嫌なこと、辛いことは早く忘れてしまうに限る。 終わってしまったことはどうあがいても変わらない。なら、それにとらわれて悩むだけ無駄だ。 今大切なことはそんなことではない。今はそんなことを考えずに、ただいつも通りに振舞ってみせよう。 お見舞いに買って来たプリンを二人で食べよう。まず、今やるべきことは、それだけだから。 ルイズは病室の前で深呼吸した。つい数日前まで一緒にいたのに、なぜこんなに緊張するのだろうか。 意を決してドアをノックする。コンコンという乾いた音を二回響かせて 「わたしよ。入るわよ」 慎重にドアのノブを回した。間接的とはいえ、ウルフウッドの怪我の原因を作ってしまった自分を、彼はどう見るのだろう? 改めて、恐怖が頭の中に浮かぶ。 ルイズは意を決して、一歩部屋の中へと足を踏み入れた。 「よう、じょうちゃん。久しぶりやな」 「って、なんであんたはそこまで普段通りなのよー!」 気が付けば、ルイズは思い切り怒鳴りつけていた。 気さくにベッドで半身を起こしたまま右手を挙げて挨拶をしたウルフウッドは「なんやねん?」と不思議そうに首をかしげている。 「はぁ……。まぁ、いいわ。あんたがそんななのは今に始まったことじゃないしね。いい加減わたしも慣れてきたわよ」 「はぁ、そうけ」 まだ、どこか納得の行かなさそうな表情のウルフウッド。 「傷は、もう大丈夫なわけ?」 「まぁな。もうしばらく安静にしたら、退院してもええいう話やで」 ウルフウッドの傷は、実はほぼ現時点で完治していたのだが、彼はあえて入院したままでいた。 彼の人間離れした回復力について問い詰められるのもうっとおしかったし、とりあえずここにいればルイズと落ち合えるので、病院に滞在したままでいた。 「おおきいじょうちゃんは? 一緒違うんか?」 「キュルケのこと? あいつはトリステインからそのまま学院に戻ったわよ。『また、ラ・ロシェールまで行くのはめんどくさいわ』とか言って。それはそうと、タバサも帰ったの?」 「あぁ。あの子、礼言ういても頷くだけやったけどな」 「ふーん。そう」 一通り当たり障りのない世間話をして、二人の話題は尽きてしまった。 ウルフウッドも、ルイズも、あのアルビオンの一件について話すことはお互いに避けていた。 ウルフウッドはルイズを気遣って。ルイズもウルフウッドに怪我を負わせた負い目からうまく切り出せないでいた。 「ところで、じょうちゃん。その手に持っている包みはなんや?」 沈黙に耐え切れなくなったのか、ウルフウッドがルイズの手に持っている荷物を指差した。 よっしゃ、キター! ナイス話題振り! とルイズは内心でガッツポーズを取った。これなら、自然にお見舞いの品を渡せれる。 二人で仲良くプリンを食べて、このぎくしゃくした感じから脱出する。これで、この計画を自然に実行できる。 変に不器用なところのあるルイズは、お見舞いの品一つ渡すだけでも、苦労するのだった。 「こ、これはね。そ、そのあれよ。一応、主人としてつ、使い魔を気遣うのは当然の義務というか――って、ウルフウッド、そのベッドの脇にあるのは何?」 「これか?」 緊張して言葉をかみながら喋っているルイズは、ウルフウッドのベッドのサイドテーブルにおいてあるブツに気が付いた。なんか、どっかで見たことがある気がする。しかも、つい最近。というか、ついさっき。 「これは、この町の名物やいうプディングや。けっこう、イケるで」 ウルフウッドはしれっと言ってのけると、傍らの皿を手にとって食べかけのプリンを食べ始めた。 「ち、ちょっと待ちなさいよ! なんであんたが、そんなものを食べて――」 「やや! これはミス・ヴァリエール、お久しぶりですな!」 ルイズの背後から、聞き慣れた声が聞こえた。 あぁ、大体わかったわよ。声と喋り方で大体わかったわよ。 ルイズはその声の方向を振り向いた。そこには見事に後光の差すありがたい頭が。 「……なんで、コルベール先生が、ここに?」 「いや、先日ウルフウッド君が怪我をして、病院に運ばれたという話を聞きましてな。心配になって、こうしてお見舞いに来たのですよ」 「んで、このプディングは先生が、さっきお見舞いの品に持ってきてくれたんや」 空気を読め、このハゲが。 「え? 今、なにかおっしゃいましたかな、ミス・ヴァリエール?」 「……いえ。何も」 ルイズは顔をうつむきにし、全身からどす黒いオーラを出し始めた。 せっかくのとっておきの仲直り計画が見事に頓挫だ。どうしてくれる? そのオーラに圧倒されたコルベールは慌てて、ウルフウッドの傍による。 (ウルフウッド君。なんかミス・ヴァリエールの様子がおかしくないですか?) (あんだけ色々あったから、じょうちゃんも結構精神的に辛いんやろ) ブラックホールのようなオーラを放つルイズをみながら、ウルフウッドとコルベールは小声で語り合う。 「おや? ミス・ヴァリエール、その手に持っておられるのはひょっとして、この町名物のプリンですか?」 ルイズは唇の端だけを引き上げて笑った。 触れてはいけないことに触れたな、このハゲ。 その様子が怖かったので、コルベールとウルフウッドは身をのけぞらす。 「……えぇ。そうよ。でも、残念ですわ。わたし一人でこのプリンを、ウルフウッドの目の前でおいしそうに食べてやろうと思って持ってきたのに。 先生が使い魔にプリンを買い与えていたなんて。やだわねー。あらやだ、ほんと。オホホホ……」 ゴクリとウルフウッドとコルベールはお互いの顔を見やって、同時に唾を飲み込んだ。 そして、やけくそになったルイズはその場でプリンを二個、一気に食べた。 $ コルベールは病院の裏庭で一人パニッシャーの整備を行っていた。 外装に固定化の魔法を掛けたおかげで、ワルドの魔法攻撃を何度か食らっても、パニッシャー自体はほぼ無傷で無事だった。 「しかし、改めて惚れ惚れする技術の高さですなー」 コルベールは額の汗を袖で拭きながらひとりごちた。 持ってきた予備の銃弾を装てんする。 結果的に自分の整備した銃が、人に向けて発砲されてしまったわけだったが、それによって少女一人の命が救われた。ならば、まだよしとしよう。 コルベールは心の中で、そう自分に言い聞かせた。 「……センセ。ちょっと、相談したいことがあるんやけれども」 突然、背後から声を掛けてきたウルフウッドに、コルベールは背中をびくっと震わせた。 「う、ウルフウッド君。いきなりびっくりさせないでくださいよ」 「びっくりしたんはこっちの方や、センセ」 「……なにか、あったんですか?」 ウルフウッドのただ事じゃない様子に、コルベールは表情を引き締めた。 「じょうちゃんの様子がおかしい」 「ミス・ヴァリエールの?」 こくりとウルフウッドは頷く。 「んでワイにはどうしたらええかわからんから、こうしてセンセに相談とるねん」 「おかしいって、具体的にはどういう風におかしいのですか?」 「こっちに来たときもなんか様子がおかしかったけど、今回のはもっとおかしいねん。何言ってるか、わかりにくかもしれへんけど、ちゃんと聞いてや?」 コルベールは頷いた。いつもは飄々としているウルフウッドがいつになく真剣だ。いや、悩んでいる。これはとても珍しいことだ。 「今日、病室でじょうちゃんがなんか本みたいなものを広げていたんや。んで、ワイはなんとなくそれを覗き込んだ。そしたら、それは白紙やったんや。やからワイはこう訊いた『じょうちゃん、なに書いてるんや?』てな」 コルベールとウルフウッドは病院の裏庭で二人頭をつき合わせて、うんこ座りの姿勢で話し合っていた。傍目に見ると、なかなかに奇妙な光景だった。 「そしたら、じょうちゃんはこう答えたんや。『違うわよ。書いてるんじゃなくて、読んでるの。これは本よ』って。けどな、それはなんぼ見ても白紙やねん! なんも書いてへんねん! センセ、これっておかしないか? 最近じょうちゃん様子おかしいし、なんかやばいことになっているんちゃうか?」 ウルフウッドの言葉にコルベールは深く考え込んだ。そして、重々しく一つの言葉を言った。 「空鍋……」 「え?」 「聞いたことがあります。私はそれに近い症状の症例を。ウルフウッド君、もしかしたらことは一刻を争うかもしれません! 早速、この町の図書館へ調べに行きましょう!」 コルベールは切羽詰った表情で、やおら立ち上がった。ウルフウッドもその勢いに後押しされるように立ち上がる。 一人の少女を救うために、今ここに二人の男が立ち上がった。 前ページ次ページ虚無と狼の牙
https://w.atwiki.jp/tomtan/pages/24.html
とむ。とりさが一緒に作った歌のタイトル。 作詞は、りさ本人で、作曲はとむ。である。。 『雨とまきはらとわっしょい』 作詞:りさ 作曲:とむ。 かき氷とともに溶けた あの夏のわっしょい シロップかけ放題が 狂わせた運命 奪えなかった 15歳の童貞 痔主のチョコバナナも 未だ食べられぬまま 電車でJKに2828していたあなたが 上田駅の中心で“りさ”と叫ぶ こうして私たちは出会ったんだ ※わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい 上田わっしょい 食べたいなと 訴えかける私に 財布の紐は緩まないままのおっさん ガストの会計までも 割り勘なんて・・・ 外配信は いつの日も雨 同僚から逃げた あの夏 本当はからあげも ほしいのお願い モンペじゃないよズボンは じゃあ脱ぎますか? 大事なのはいつの日も 金、カネ、かね はるばる大阪から 来てくれたあなたを 最後にきちんと見送りたくて 台詞「来年も再来年も、一緒にわっしょい行こうね」 そう言って見送ったのは 痔主だった ※Repeat.