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WORLD ALL 1-0 自衛隊サイド 西暦200X年 10月30日 日本海対馬沖 朝鮮半島情勢は緊張の度合いを深めていた。 先年来の食糧難、そして相次ぐ脱北者、日本をはじめとする各国の援助打ち切り…北朝鮮の経済状況は明らかに瀬戸際だった。 それに対し、北朝鮮は強硬姿勢を崩そうとせず、逆に日本・アメリカへの弾道ミサイル攻撃を行う用意があるという宣言を行った。 譲歩しないブッシュ政権に対して脅迫を持って妥協点を得ようしたのだ。 これには、日本・アメリカのならず中国やロシアからも反発を受けた。 かくして国連安保理は北朝鮮に対する経済制裁と直接攻撃を決定。 多国籍軍の派遣を決定する。 小泉総理も、この事態を受けて有事法制を強行採決で可決。 邦人救助と経済水域封鎖を目的として護衛艦隊 第1護衛隊群、第4護衛隊群の派遣を決定した。 そして陸上自衛隊の派遣中隊第一陣も車両と装備を積載し輸送艦「おおすみ」とともに派遣されたのだった… そして、派遣護衛艦隊は現在米軍第7艦隊と合流、韓国釜山港へ向かう途上の海の上にいた。 「おおすみ」甲板上。 午前6時29分。 陸上自衛隊の橘2尉と藤原陸曹長はロープで固定された車両列の間を歩きながら話していた。 「でもアメリカが動くのは、日本にミサイルが落ちてきてからだと思ったけれどな」 「そりゃまた、何故です?」 「そうすればアメリカは北朝鮮への攻撃と、同時に日本占領の口実が得られるからだよ。 日本が北朝鮮と戦争して社会や経済に大打撃を受ければ、日米安保理を建前にアメリカは治安回復の為と称して日本を再占領できる」 橘2尉の視線の先には米海軍の空母キティホークが白い波を曳いて海上を進む姿がある。 併走する巡洋艦やイージス艦を引きつれ、海自の護衛隊まで従えて威風堂々とした王のようだ。 「そのために、韓国や沖縄から駐留部隊を引き揚げさせり、強硬な姿勢をとったりして北朝鮮を挑発した。 911テロの時もそうだが、アメリカはそこら辺ずるがしこい。 相手に一発殴らせてから、袋叩きにする口実をつけて喧嘩をする」 「…いかにもやりそうな事です。 真珠湾のときもアメリカは事前に日本軍の奇襲を察知していて、黙認したって言う噂もあります」 「噂じゃなくて、事実だよ」 橘2尉はくわえていた煙草を海に投げ捨てた。 事実、とは言い切ったものの陰謀論に過ぎない。 ただ、集団的自衛権が行使できるようになった途端、今回のような事態が起こったようなことを考えると、自分たちは誰かの書いた脚本の上で動かされているような、そんな気もしてくる。 「お前たち、何をやっているか! 釜山港に到着するまで艦内待機の命令だぞ!」 艦橋の上から声が響く。 二人は一瞬肩をすくめて艦橋の上を見上げた。 派遣中隊の中隊長、柊3佐。 規律にうるさく、隊内では煙たがられている人物だ。 中隊の指揮官で、今回の第一陣派遣には率先して志願したとささやかれている。 「おはようございます! 自分が藤原曹長を連れて車両点検巡回中です」 「そうか。 ならいい。 30分後にミーティングだ! 艦内に戻れ」 橘2尉が敬礼しそう答えると、柊3佐は意外にも簡単に納得し船内に戻って行った。 いつもはここからさらに10分ほど説教というか、小言が続くのだが。 藤原曹長がほっとしたように息を吐く。 「いつも二言目には規律、規律ですからね。 頭が固いったら…」 「ああいうのが自分の仕事だと思ってるのさ」 部隊の規律と部下の気を引き締めるだけが、指揮官の仕事ではない。 が、柊3佐はどうもそればかり重視しているような向きもあると橘2尉は思っていた。 ああいう上官は、上手く立ち回ってなだめたり軽くいなすのが調度いい。 自分の場合はさらに、下の部下たちと上の幹部たちの間を取り持つ役目もある… 「さて、3佐が戻ってきて小言の続きでもされたらかなわない。 戻るか」 そう言って、二人が艦内に戻ろうとしたとき、甲高い音を立てて警報が鳴り響いた。 警報は「おおすみ」艦内だけでなく、艦隊全部から発せられていた。 米海軍の動きもあわただしくなり、空母から艦載機が発進する。 『総員配置! 北朝鮮が第7艦隊および日本本土に向け弾道ミサイルを発射した模様!』 二人ははっとして顔を見合わせ、すぐに駆け足で艦内のタラップを駆け下りる。 途中、血相を変えた海自隊員数名とすれ違った。 「やっぱり血迷ってミサイル攻撃に踏み切ったか!」 「核弾頭でしょうかっ!?」 「わからんっ! そうでないことを祈ろう」 海上では日米双方のイージス艦が噴煙を吹き上げるスタンダードSAMを発射し始めていた。 午前6時47分。 北朝鮮は第7艦隊と日本本土へ向けて弾道ミサイルを発射。 米軍第7艦隊は日本の派遣護衛艦隊を含む艦艇の約3分の1を消失する。 その中には、「おおすみ」も含まれていた。 日本本土にもミサイルが着弾、自衛隊および民間に多くの犠牲者と行方不明者を出すことになる。 これを契機とし、アメリカは北朝鮮に宣戦布告、本格的な攻撃を開始する。 そして、中国およびロシアも北朝鮮に軍を派遣、朝鮮半島情勢は混乱の様相を見せ始めた。 1-0 F世界サイド 西方スード地方 アルヘイム王国 シーレーギャーグ内海に突き出た半島の先端部、フラーナングの入り江に見慣れぬ灰色の鉄の船が浮かんでいるのを岬の上から見下ろす集団がいた。 その内の一人は漆黒の外套を着た、男性とも女性ともつかぬ人物で、被ったフードは目元までを覆い隠し、表情は見えない。 そのほかの人物たちは上質そうな素材で仕立てられた装飾つきの礼服を着て腰に剣を帯びた者たちか、金属製の甲冑を着込んで武装した屈強そうな男たちで、兜の面頬をあげて驚嘆の表情を浮かべている。 「…これにて召喚の儀は滞りなく完了したしました。 あの者たちとの交渉は公御自らがなされるがよろしいかと」 闇の色に身を包んだその人物が少年のような高い声で、ひときわ華美な装飾のなされた服を着た偉丈夫に告げると、公、と呼ばれた人物はやや呆然としながらもうむ、と頷いた。 今しがた目の前で起きたことがまだ信じられないでいるようだった。 異世界より軍隊を呼び出すなどという事が。 しかし、現に眼下に見下ろす入り江にはこれまで見たことも無いような大きな鉄の船が、ほんの一刻ほど前までには船影一つ無かった静かな海面に浮かんでいる。 「もっとも、外つ国より呼び出されました彼の者たちの言葉を通訳する者がおりませぬと話しになりませぬから、それは私が務めましょうが…」 彼とも彼女ともつかぬその人物はそう言って、フードに半分隠された顔の、下半分から覗く赤い唇を笑うように歪ませた。 公はその笑みを見て肌寒いものを感じた。 この「魔法使い」に命じて異世界より軍隊を呼び寄せたのはほかならぬ公自身であるが、そもそもの初めに公へ異世界の軍勢を呼び出すことを進言したのは魔法使いの方である。 公も公の家臣たちも最初は魔法使いの言葉に半信半疑であったが、自らの野望のため戦力を必要としていた公はその進言を受け入れた。 そして、魔法使いは言葉どおりに軍…軍艦とその乗組員を召喚して見せたのである。 この魔法使いがいつ頃から自分の腹心として、公に助言や提言を行うようになったのかは公自身も覚えていない。 ただ、魔法使いの言う言葉は全て物事を正確に言い当て、その言葉に従って間違いはあったことが無かった。 そして今回も、この魔法使いはいとも容易く、風と稲光を伴って異世界より軍を呼び出して見せたのだ。 彼は思った。 これだけの事をやってのける魔法使いの力に、得体の知れない恐怖と不信感を抱いたのだ。 元々魔法使いという生き物は、魔の力を使う呪われた人間と世俗では言われ、誰もが魔法使いの行使するその力に畏怖と嫌悪を覚える。 公もそれは承知で、何よりも自分のために役に立つからと、この魔法使いを側においてきたのだ。 しかし、今回ばかりは魔法使いの力に恐怖した。 このまま、この化け物のような生き物を飼っていて良いものだろうかと。 その時、一瞬魔法使いが顔を上げフードの奥に隠していた青い左右の目を公に見せた。 公と魔法使いの視線が交差した次の瞬間には、公は魔法使いに抱いていた不審と恐怖とをすっかり忘れてしまっていた。 「うむ、ご苦労である。 引き続き、我が大義のために力を貸してくれような」 「御意…」 公が言葉をかけ、魔法使いは口元に笑みを浮かべながら恭しく一礼した。
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ストーリー 29年前―― 日本近海の離島、夜見島。 ある日の深夜0 00、原因不明の海底ケーブル切断による大停電が発生。 それと連動するかのように、全島民失踪事件が発生、島は一夜にして無人島と化してしまう。 現在―― 何かに導かれるように島を訪れる人々。 そして0 00、サイレンが島を覆い、惨劇の夜は蘇る。 消えたはずの島民たちは異形となって戻り、人間を襲い始める。 人々は己を保つため、命の限り抗い続ける。 そして、侵食がはじまる・・・・。 ※以下ストーリーのネタバレ(冒頭からエンディングまで)見難いので修正よろ 誤字修正、時間別に分けてみた 29年前 -怪異発生4時間前- 網元である太田常雄の家に漁師たちが集まっていた。 彼らにとって余所者である民俗学者の三上隆平は、考古学の研究とはいえ太田家が代々守ってきた禁足地を荒らす邪魔者であり、 また彼が先日海岸で保護した少女である加奈江は、村の言い伝えにある「海から来た穢れ」そのものであった。 太田常雄の娘、ともえが加奈江が黒い影のようものを海へ追い返しているのを見たという証言もあり、加奈江討伐の決起のために集まったのだった。 太田以下、全ての漁師が緊張した面持ちだったが、反対するものは1人もいなかった。 -怪異発生3時間~2時間前- 父である隆平と、姉と呼び慕う少女加奈江の3人で夜見島の蒼之久の集落に住む幼い少年、三上脩は夜、階下からの物音で目を覚ました。 「お父さん・・・?」 そういいながら階段を降りた先で見たものは、惨殺された父の死体だった。 必死に事切れた父を起こそうとするが、突如玄関に現れた、「犬を連れた男」に驚き、2Fのもと来た部屋へと逃げ込む。 窓から家の外へと逃げた脩は、加奈江を見つける。両手が血に染まった加奈江。なぜか自分と加奈江を狙い、襲い掛かってくる漁師たち。 何が起こっているかわからない脩であったが、加奈江に先導されるまま、漁師達に見つからないように集落から逃走を試みる。 -怪異発生1時間前~怪異発生- 脩を小さな貨物用ロープウェイで先に脱出させた加奈江は夜見島港へと急ぐ、途中太田ともえが彼女の行く手を阻んだが、彼女を振り切り脩の元へ急ぐ加奈江。 「あんたは逃げられない!」背後からともえの叫びが彼女に投げつけられる。 網元の太田常雄以下、多数の漁師が港湾施設跡地で二人を探していたが、加奈江は彼らをかいくぐり、無事脩と再会する。 しかし、灯台へと向かう二人を漁師達が取り囲み、窮地に立たされる2人。そのとき唐突に足場が崩れ、二人は崖下の海へ落ちていく。 「終わりだ・・・」そうつぶやく太田たち。 だが、ほっとしたのも束の間、サイレンに似た不気味な音が高らかと鳴り響き、島全体が鳴動し始める。 そして、ともえは赤く染まった海から巨大な赤い津波が押し寄せてくるのを目撃する。漁師たちは逃げることも出来ず、その津波に飲み込まれていくのだった・・・ 19年前 -怪異発生31時間前- ブライトウィン号の怪についてはこちら→http //www.playstation.jp/scej/title/siren2/siren2_top/anotherstory/bw.html -怪異発生5時間前- 夜見島出身の駐在警官、藤田茂は夜見島の金鉱跡を巡回していた。地元の漁師たちから無人のはずの島に女がいるのを見た、との通報があったためだった。 藤田は生来、余計な事によく首を突っ込む性質で、そのため家族からは疎まれていた。 決定的だったのは数年前、情に絆(ほだ)されて窃盗犯を取り逃がし、警部補から現在の地位に降格されたときのこと。 妻は過労で倒れ、そのために大学進学を諦めざるを得なくなった娘、朝子からは事実上の絶縁を手紙で通告される事になったのだった。 無線で連絡を取ろうとした藤田だったが、どうした事か無線が通じない。 その時、彼の視界を黒い塊が横切る。黒い塊は屍霊と呼ばれる靄のようなものに人面が浮かび上がったものだった。 屍霊の襲撃を懐中電灯と警棒で振り払い、高台の小屋から藤田は妙なものを見つける。深い森の中に大きな客船が座礁しているのだ。 「はぁ~やんなっちまうなぁ」そうつぶやくと彼は客船へと急行する。 ※補足(一応客船の光は見えているが、船自体は現実に存在していないので発見できない。森の中をうろうろしている間に津波に巻き込まれる。) 現代 -怪異発生8時間前- オカルト雑誌「アトランティス」の若手編集者である一樹守は29年前に島民が謎の消失を遂げ、その後も近海で謎の消失事件の相次ぐ島、夜見島の取材を行おうとした。 だが、危険な無人島である夜見島へ行く手段が見当たらず、一時は途方にくれてしまう。 だが、その場に居合わせた盲目の作家「三上脩」の計らいにより、運良く彼がチャーターした漁船「翔星丸」に同乗することができた。 その後、出港直前に駆け込んできたチンピラ風の男と、麦藁帽子を目深にかぶった女を乗せ、船は夜見島へと出港した。 夜見島も近くなった時、突然船が大きく揺れだした。一樹が外に出てみると、海は赤く染まり大きくうねり出していた。 船に必死にしがみつく船員の女性を助けようとするが、女性は流されてしまう。さらに、大きな赤い津波によって船は転覆。一同は海に投げ出された。 ちなみに、船長は屍人となってゲーム中に登場、具体的にはハード「遭遇」、阿部貝追崎、市子フェリーの赤い服に鉢巻の男。 -怪異発生3時間前- 海に投げ出された一樹は、運良く夜見島の廃港へ流れ着いていた。 状況をつかもうと周囲の探索を始めていると、彼の視界の端で何かが光る。 一樹がその場所へ向かうと、人の死体と思しきものが動き出すのを目撃する。 見つからないように動く死体をやり過ごしつつ探索を続ける中で、彼は小屋の中で気を失っていた美しい少女「岸田百合」と出会う。 「助けて・・!あいつらが私のこと探してる!」 一樹はその訳が理解できなかったが、その場に先ほどの動く死体「屍人」が現れ、百合に襲い掛かる。 屍人を撃退した一樹は、百合を伴って廃墟の港を脱出する。 ※補足(一樹はこの際、港の波打ち際で三上脩が29年前に紛失したメダルを拾っている。) -怪異発生2時間前- 山道を行く一樹と百合。座るのに具合のよさそうな岩を見つけ二人は休憩を取った。 百合が島へ来た目的を話し出す。それはこの島に閉じ込められた母を助けるためだと言う。 驚きを隠せない一樹だったが、百合は続ける 「母さんは鳩を飛ばし続けた、でも戻ってこなかった」 「ずっと待ってた、あなたが来るのを・・・。あなたは私を助けてくれる・・・?」 意味が理解出来ない一樹だったが、懇願する百合に一樹は困惑しながらも、女の美しい容姿から同行を決意する。 一樹達の乗った船が転覆したころ、上空を一機のヘリが爆音を上げながら、急激に高度を落としていった。 夜見島近海を飛行していた陸上自衛隊の輸送ヘリが自機の場所を見失った上にパイロットが変死、操縦不能に陥ったのだった。 夜見島に不時着したヘリは奇跡的に助かった3名、三沢岳明・三等陸佐、永井頼人・陸士長、瀕死の重傷を負った沖田宏・二等陸曹を残し、全員死亡する。 「2136 非常事態発生。これより私が指揮を執る・・・直ちに、撤収」 瀕死の沖田を前に泣きじゃくる永井と対照的に、淡々と指揮を宣言する三沢。 不時着の衝撃で無線機は壊れてしまっていたが、遠くに観覧車を発見した三沢は永井とともに瀕死の沖田を担ぎ上げ、救助を要請すべく行動を開始する。 廃墟の遊園地にたどり着き、管理小屋の電話から外部への連絡を試みる三沢だが、電話が繋がる様子はない。 受話器を置き、銃を手に小屋の外へ出ると、永井が沖田の死体を前にして未だに泣きじゃくっていた。 「もうそいつ死んでるぞ」冷淡に声をかける三沢。 永井を引き起こし、立たせようとしたが、永井はくずれるように再び座り込んでしまう。「気持ちは分かるけどな、これドラマじゃねーから。・・・急がないと危ねえだろ」 その時死んでいたはずの沖田が突然動き出し、永井に向けて発砲。 何が起きているのか理解できない永井に対して淡々と応戦を命じる三沢。永井は三沢から拳銃を受け取り、変わり果てた上官に向けて小銃を発砲する。 遊園地跡から脱出を試みる二人だったが、屍人として蘇ったかつての仲間達が行く手を塞ぐ。 その途中永井は2つの物を見つける。1つは精神を高揚させる薬、三沢は自分のだと言って永井から取り上げてしまったが、それは三沢には縁の遠いもののはずだった。 もうひとつはヘリ不時着の際に紛失した爆発物を入れた装備。信管を含む発火装置は回収できたのだが、TNT爆薬がなくなっていた。 遊園正門は厳重に封鎖されていたため、二人は遊園裏門から崖を乗り越え、遊園地を後にする。 -00:00 怪異発生- 再び移動を開始した一樹たちは、瓜生ヶ森に辿り着いたが、不意にライトを当てられ、驚く一樹。 「誰だ!?」 そこには迷彩服を纏った二人の自衛官の姿があった。 「君こそ誰?ここで何してる」「良かった…助かった…」救助に来たのかと思い、駆け寄る一樹だったが、三沢は警戒を解かない。「そっちの人どうかしたの?」 ライトの光を怖れる百合を不審に思った三沢だったが、ライトを当て続ける三沢の態度に激昂した一樹が間に割って入る。「おい、あんた何なんだよ!いい加減にしろよ!」 と、突如としてサイレンの轟音が鳴り響き、同時に永井は信じられないものを見た。 「三沢三佐、あれ・・!」 一同はこちらに押し寄せる巨大な赤い津波を目撃する。 チンピラ風の男、阿部倉司とともに漁船に乗り込んだ女、占い師の喜代田章子は生まれつき場所や物に付いた過去の記憶を見ることができ、その力で生計を立てていた。 少し前、彼女は不思議なものを見ていた。彼女は夜見島の漁港で、とても古い記憶の中に殺害された彼女の友人「多河柳子」の顔を見たのだった。 (参照 http //www.yumemi-salon.com/j/index.html) 「なぁなぁそれ霊感てヤツ?実はさ、俺も昔みたことがあってよ~」 くだらない話で章子の思考をジャマする阿部は、柳子と同棲している恋人であり、彼女の殺害容疑者である。 柳子が殺害されたことを章子が自宅のテレビで知ってすぐ、突然ナイフを持った阿部が押しかけてきたのだ。 「俺は柳子を殺しちゃいねぇ!あの前にあいつに会っているんだ!」そう喚く阿部。 彼は自宅で顔が判別不可能なほどに殴打されていた柳子らしき死体を発見する前に、階段で彼女とすれ違い、挨拶までしたという。 だが普段から粗暴で、柳子との諍いが絶えなかった阿部は真っ先に容疑者として指名手配されてしまう。 パニックに陥った彼は、柳子の友人で、胡散臭がっていた章子のもとに駆け込んだのだった。そこで彼の過去を「視た」章子は阿部を信じ、彼が目撃した「もう1人の柳子」を探す決意をする。 そうして夜見島へやって来た二人だったが、船は転覆。二人は無人の島に置いてけぼりである。にもかかわらず阿部は足元に落ちていた胡散臭い金のアクセサリーを拾い 「これ純金じゃね?」などと軽薄でくだらない言動を続けるのだった。 そうして休んでいるなか、阿部と章子は、二人に向かって押し寄せる巨大な赤い津波を目にする。 ※補足(阿部が階段で出会ったのは百合、柳子を殺したのも百合。章子がみたもう1人の柳子は加奈江。実は皆同じ顔。) 赤い津波に巻き込まれ、船から海へと投げ出されて赤い海の中を漂う三上に、過去、子供だった頃の記憶が断片的に蘇る。 足場が崩れ、海に落ちた後、彼は加奈江によってボートに乗せられた。 しかし加奈江は全ての力を使い切ってしまい、もう動くことすら出来なかった。 力なく海に浮かぶ加奈江。そしてそれを見つめる脩。 「脩・・・見ないで・・・・お願い。見ちゃダメ・・・・」 昇りゆく朝日とともに、加奈江は海の底へ、まるで溶けていくように消えていった。 ※補足1(溶けていくお姉ちゃんのトラウマ+αのせいで、この後三上は視力を失う。) ※補足2(加奈江は光に弱く、朝日を浴びて溶けてしまう。この後、彼女は近くを遊覧していたある妊婦に寄生する。) -29年前 怪異発生2時間前-盲目の作家、三上脩は、彼の失われた記憶の断片に残るある少女を追って、夜見島を目指していた。 船から投げ出された三上はかつての住居であった蒼ノ久集落に漂着し、そこで彼の愛犬ツカサに起こされる。 だが彼は自分の目に驚いた。失ったはずの彼の視野には、ツカサのものと思しき視界が広がっていたのだ。 「ツカサ・・・これはお前なのか?」 そういいながらフラフラと目の前の石段を登り、目の前の家の引き戸を開ける三上。 そこには29年前、あの日あの時の自分自身が事切れた父を揺り起こそうとしていた。三上に驚き逃げる子供時代の自分。 背後から太田常雄が現れ、三上を不審がる。突然、死んだはずの三上隆平が飛び起き、驚き逃げる太田を追いかけていく。 三上は状況が信じられず、事実を確かめるために彼が埋めた「お姉ちゃんとの思い出」を掘り出しに行く。 彼の記憶の通り、彼が描いたお姉ちゃんの絵はそこに埋まっていた。 自分は29年前のあの島にいる。そう確信した三上をツカサが突き飛ばす。その直後、近くのプレハブが倒壊し、ツカサは生き埋めになってしまう。 更に三上の背後から屍人と化した漁師が襲い掛かる。弱い視界を頼りに逃げる三上。だが彼は足を踏み外し、崖下へと転落してしまう。 ※補足1(ここで、29年前の夜にチビ脩がみた「犬を連れた男」はタイムスリップした未来の自分だと分かる。) ※補足2(三上は船の転覆後、時空の裂け目的なものを通って29年前にタイムスリップ。その後の津波で太田達29年前の人々と共に異界へ。) 怪異発生後/異界 -怪異発生直後- まるで誰かの意識が自分の中に流れ込んでくるような不快感に苛まれながら、一樹は目を覚ました。 傍に立つ百合に着物姿の女(太田ともえ)が掴み掛かる。 「なんで!なんであんたが生きてんのよ!」女を振りほどき、逃げる一樹と百合。 金鉱跡にたどり着いたとき、一樹は再び不快感に襲われる。 「じっとして。意識を集中して・・・。」 一樹に声をかける百合。すると一樹の視界に、百合の視界と思しき視界が入り込む。 一樹は信じられなかったが、百合は特に気にした様子はない。この不可解な力を駆使し、2人は屍人の蠢く金鉱跡を突破する。 ※補足1(ともえは百合と加奈江を見間違えている。だって同じ顔だし。)※補足2(ともえはこの後、紛失した「お父様から貰った大切な髪飾り」を捜索中に橋から転落し、アンテナに体を貫かれ死亡、屍人化します。) -怪異発生30~40分後- 金鉱跡を抜け、再び山道へと入った一樹と百合。一樹は自らの体験した数々の不可解な出来事に困惑していた。 「おかしい。いくらなんでも非科学的すぎる。」そうつぶやく一樹。 百合に意見を求めても、返ってくるのは母を助けるという自分のことばかり。混乱と疲労が一樹を苛立たせ、きつい言葉を発してしまう。 「その君の母さんとかいう人、本当にいるの?」その言葉に過剰な拒否反応を示す百合。 「私のこと信じてないのね!」そう言い放ち、駆け出す百合。 一樹は取り繕うこともできず、その場に立ち尽くしてしまう。 金鉱社宅前で意識を取り戻した章子は奇妙な感覚に違和感を抱く。いつもの過去の視界ではなく、今現在の誰かの視界を見ているのだ。 「何、これ?いつもと違う・・。」そうつぶやく章子。 彼女が見たのはフェンスに生っていたアケビをもぎ取って食べる阿部を見ている誰かの視界だった。 放置されていた軽トラに乗り、社宅跡を突破する章子。 一方阿部は犬の鳴き声に導かれるように、社宅跡を後にする。 ※補足(犬の鳴き声は三上の愛犬・ツカサのもの) -怪異発生1時間後- 県立亀石野中学2年、矢倉市子は突然目を覚ました。 テニス部の試合、団体戦準優勝、その帰りのフェリーの中・・・のはずだったが、市子はたった一人、薄暗い船倉で倒れていたのだ。 「ノリコー!中島くーん!?みんなどこー!?」 だが返事はない。その時唐突に頭に流れ込む誰かの視界。 「なに・・?これ?・・・ヤダ・・わかんない!!」 パニックに陥りそうになる市子だったが船内を徘徊する屍人をやり過ごし、何とか艦橋へとたどり着く。突然船内電話が鳴り響く。 受話器を取ると中年男性の声が受話器のから聞こえてくる。矢継ぎ早に市子に質問する男。 しかし市子が答えようとした途端、ノイズが混じり、電話は切れてしまう。またしてもパニックになりそうな市子だったが、勇気を振り絞り、船底の電源室へと向かう。 「誰かいませんかー!?」 そう叫ぶ市子に扉の向こうから男が答える。 「そこにいるのか!?待ってろ!お巡りさんすぐにここを開けるから!」 針金を使い、鍵をこじ開ける藤田。かくして二人は無事合流し、船の外へ脱出するのだった。※補足(市子も藤田と同じく19年前の人間、フェリーごと異界へ取り込まれている。) 山道を独り歩く百合。足元にまとわり着く屍霊を踏み潰し、一瞥をくれたその時、森の中に座礁した船から何かを感じ取る。 「-誰?」そうつぶやくと百合は客船へと向かう。 ※補足(誰?とは恐らく市子のこと) -怪異発生2時間後- 夜見島、瀬礼洲(せれす)に打ち上げられた客船ブライトウィン号。三沢と永井は船内を探索するなか、永井が不安な心境を告白する。 「自分不安になってきました…これは夢じゃないのかって、自分の頭がおかしくなっているんじゃないのかって」 「頭に弾丸ぶち込んでみるか?」三沢は永井に聞く。 「夢なら暖かい布団で目が覚める。もし夢じゃなかったら、それで終わり…」 突然永井の頭に銃口を向け、ふざける三沢、その顔には子供のような狂気じみた笑い顔が浮かんでいる。 驚く永井。ふと、背後の物音に気づきライトを向ける。そこには先ほどの若い女がいた。光を嫌がり、逃げる百合。 追いかけようとする永井だったが、三沢は気にも留めず、そのまま別の船室へと向かう。 「三佐?三沢さん!・・・・・なんだよあいつ調子乗ってんじゃねーよ」 永井は一人で百合を追い、無事百合を保護するが、百合を執拗に狙う着物を着た女屍人(太田ともえ)によってタラップを落とされ、船から脱出できなくなってしまう。 永井は船倉にできた亀裂から百合を逃がし、自らも、救難艇で客船から脱出するのだった。 -怪異発生3時間後- 先に脱出した百合に追いついた永井。百合は永井に抱きつき、問いかけるのだった。 「あなたは私を信じてくれる?助けてくれる?」百合の神秘的な美しさに惹かれる永井。 その時、突然背後から三沢の銃口が百合に向けられる。銃口を跳ね除け、百合を逃す永井。 「何なんだよあんた!あんた前からおかしいと思ってたよ!!なんであんたなんだ・・・。 なんで沖田さんが・・・!ちくしょう!!もうやってられっかよ!!」 募らせた思いを吐き出す永井。吐露された怒りは上官と部下の関係を破綻させるものだった。 夜見島遊園で百合と再会した一樹。声をかける一樹に百合はガラス製の鳩を見せた。 「見て」百合の手から滑り落ち、粉々に砕けるガラスの鳩。 「早くしないと戻ってしまう、混沌の闇の中に・・・」つぶやく百合。 一樹は百合の言葉を理解できなかったが驚くべきものを見た。それは先ほど砕けたはずのガラスの鳩だった。まるで何事もなかったかのようにそれはそこにあった。 百合の歌う失われたはずの「巫秘抄歌」と幻視によって次々と現れる碑の封印を解く一樹。そうして最後の封印を解いた時、とたんに強い眩暈に襲われる。 「見て・・・」頭を押さえ、苦しむ一樹の背後を指差す百合。 錆付いた観覧車があったはずのそこには巨大な穴が現れていた。 ※補足(遊園施設のある碑足は代々太田家が守ってきた禁足地の1つ。碑によってあるものを封印していた。) 崖から転落したあと、阿部によって助けられた三上。今は砲台跡のトンネルにいた。 「アレッ?あんた三上脩じゃねぇ?」相変わらず軽薄な阿部を無視して、話を進める三上。 「この島のどこかに、記憶を引き出す鍵があるはず・・・阿部さん、きみの目をかしてくれないか?」 阿部の視界を借り、砲台跡を探索する阿部と三上。地下の封じられた弾薬庫をの入り口を破壊し、中に入る二人。だが特に妖しいものはない。 「なんだよなにもねーじゃねーか」ぼやく阿部。 しかし三上がレンガ造りの壁に触れたとたん、壁が崩れ、土の中に埋もれた人魚のような生き物の化石を発見する。 おおきなかみさま しんだ おねえちゃんのおかあさん うまれた いっぱいうまれた 子供のころ、加奈江が話してくれたことを思い出す三上。 三上は記憶の断片を取り戻し、阿部と共に砲台跡を脱出し、遊園地を目指す。 -怪異発生4時間後- 最後の一粒になった錠剤を飲み込む三沢。 「なーがいくーん、いっしょにあそびましょー!」 またしても彼らしからぬ、ふざけた調子を取る三沢。彼の精神は極限まで蝕まれつつあった。 2年前、大規模な土砂災害にみまわられ壊滅した羽生蛇村。彼は災害救助の任務を遂行していた。ただ1人、無傷で助かった少女を抱きかかえ、ヘリに吊り上げられる三沢。 その時彼は見たのだ。眼下に広がる泥土の中から彼と少女に掴みかかろうとする無数の手を。この地にかけられた呪いの断片、安らかに眠ることすら禁じられたものたちの呪詛と怨嗟-。 「やめろ・・・やめろーーーーッッ!!」ただ叫ぶことしかできない三沢。 「三沢一尉?三沢一尉!?」彼を呼ぶヘリからの声で我に返る。 彼の眼下にはただただ先ほどと同じ、泥土に埋もれた村が映っていた。 この出来事以来、彼の精神は病み、鬱の状態になることが多くなった。 それは、三佐昇進、冬季東アジア大会での輝かしい功績をもってしても打ち消せず、薬の使用により何とか押さえ込んでいる状態だった。 だがこの島に来て以来、立て続けに起きている怪異は彼の神経を高ぶらせ、鋭敏にし、加速度的に精神状態を悪化させていた。 「どうしてそんなに嫌うかな・・・・・どこだ、永井」そうつぶやき歩き出す三沢。 そして彼は廃墟の金鉱社宅の一室に妖しい光がともるのを目撃する。その部屋へと向かおうとする三沢。だが彼の行く手を沖田以下、彼のかつての仲間達が阻む。 彼の持てる戦闘技術を結集し、屍人たちを退け、三沢はついに部屋へたどり着く。 だが、そこには、2年前の羽生蛇村で助けたはずの少女が座って泣いていた。少女の肩に手をかけようとする三沢。 その時少女が突然振り向き飛び掛ってきた。その顔は屍人そのものだった。 反射的に飛びのき、小銃を乱射する三沢。だがそこには少女の気配すらなかったのだった。 ※補足(はるみちゃんのにおいがするよー) 遊園地跡へとたどり着いた阿部と三上。三上は闇の中から自分を呼ぶような声を聞いた気がした。 幼いころの記憶が蘇る、七つの門、七つの鍵。加奈江の残した言葉と歌、そして父、隆平が捜し求めた夜見島の謎。それさえ解けば記憶が完全に戻るという確信が彼にはあった。 電動パンダにまたがる阿部に三上は再び協力を求める。物事に頓着しない阿部は、彼の真意を知ることもなく、彼に協力するのだった。 -怪異発生5時間後- 藤田の乗ってきた船を目指す藤田と市子。旧軍の砲台跡地に差し掛かったとき、1人の男が二人の前に現れる。 「藤田んとこの、馬鹿息子か・・・・」 息も絶え絶えに語るのは、網元、太田常雄である。 「親父さん!あんた今まで一体どこに!?」 10年前 に全島民とともに消えたはずの太田を前にして動揺する藤田。 だが二人の再会も束の間、太田は絶命してしまう。絶命した太田を取り囲む屍霊。ほどなくして太田は屍人として復活し、二人に襲い掛かる。 太田を退け、砲台跡の地下に入る二人、だが地下の武器庫に入ったとき、復活した太田に追い詰められてしまう。 太田が市子に襲い掛かろうとしたまさにその時、市子は太田に向かって笑んだのだった。その笑みをみて恐れおののき、逃走する太田。 不思議に感じた市子だったが、藤田は気に留めず、二人はもうひとつの砲台跡を経由し船を目指すのだった。 武器庫から出ようとした時、市子の意識は何者かに乗っ取られる。 ※補足(フェリーを脱出してから今まで、2人は蒼ノ久の三上家で休息をとっている。4時間も間が開いてるのはこのため。) -怪異発生6時間後- 遊園地の地下に広がる空間。異様な雰囲気が漂うなか、一樹は百合の後を追って鉄製の階段を下りていく。 その先にあったのは、地底に広がる赤い海。百合はゆっくりと振り返り、上着を脱ぎ捨てていく。 「本当の私を見て・・・」 そう呟き、はだけた胸元には、もうひとつの顔が浮かび上がっていた。 百合もまた、人ならざる者だったのだ。立ち尽くす一樹に、今度は胸元の顔が話しかける。 「見て・・・私を見て・・・本当の私を・・・」 そして百合の背後の赤い海の底から、サイレンに似た咆哮とともに、怪物と呼ぶにふさわしい姿をしたものが現れたのだった。 百合を名乗っていたモノ・・・。それは「母胎」だった。 母胎・・・かつて地上を光の洪水によって追われ、地の裏に逃げ込んだ者達の集合体。永遠に近いときを経て、彼らの悲願を達成する機会がついに訪れた。 封印を解き、人の肉体を自らと融合させること。悲願達成の第一歩はついに歩みだされた。 成す術もなく、母胎に取り込まれそうになる一樹。だが取り込まれようとした瞬間、翔星丸の無線員、木船郁子が突如現れ、不可思議な力で母胎の動きを封じ、一樹を助ける。 「早く逃げてっ!これ以上は私が持たない!」 正気に返り、母胎から逃げる一樹。 ※補足(翔星丸から落ちてしまった船員の女性が郁子。ゲーム中でも普通に分かりづらい) その時。 「うわぁっ!何なんだよこれ!」絶叫する阿部。 三上と阿部の二人がこの封印の地へと、母胎の前へと現れた。 三上の見えなくなったはずの目には、母胎ではなく、かつて己の目の前で海の底へ溶けるように消えていった加奈江の姿が映っていた。 「おねえちゃん・・・?おねえちゃんだよね・・・?」過去の記憶を取り戻した三上。 彼の目に映るのは人面魚体の怪物ではなく、やさしかった姉の姿。 「ぼくさびしかったよ・・・くらやみのなかでひとりぼっちだったよ・・・」 ふらふらと赤い海に佇む加奈江へと歩いていく三上。三上が加奈江に抱きつこうとしたその時、章子が現れ、三上に叫ぶ。 「脩ゥッ!見ちゃダメェーーッ!!」 「おねえちゃん・・・?」章子の発した言葉に驚きの表情見せた三上だったが・・・ すでに遅かった。 母胎の腹部から伸びた何本もの触手によって、三上は母胎に完全に取り込まれてしまう。 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」 歓喜の笑い声とともに何十、何百もの闇霊を産み落とす母胎。 その姿に驚き、阿部は章子を、木船は一樹を連れ、その場から逃げることしかできなかった。 しかし彼らの後を闇霊、大きな口を持った、たとえるなら真っ白な人魚のできそこないのようなモノが追いかける。 ※補足(死体に闇霊が取り付くと闇人という屍人の強化Ver.となる。闇人は身体構造を変化させることも可能。変化した闇人は乙式・甲式と呼ばれる。) ※補足2(母胎・百合・柳子・加奈江…こいつらは全員三上脩の母親、弥生の顔と一緒。) ※補足3(闇島近海で海難事故に遭い死んだ弥生の体が空間の裂け目的なものを通って冥府へ。無形であった母胎は自らに弥生の形を与える。) その時、地上では、 三沢は無数の屍霊と戦い、 永井は鳴り響くサイレンの音に耳をふさいでいた。 冥府の門が開き、母胎が復活したその時、市子に急激な変化が訪れた。 薄笑いを浮かべる市子。藤田の胸に突き立つナイフ。うわごとのように娘への懺悔を呟き動かなくなる藤田。 我に返った市子の嗚咽と叫びが闇に木霊する。・・・市子は鮮血に染まり、もう動くことのない藤田に抱きついて、泣いていた。 母胎復活後 -怪異発生9時間後- もと来た道を全力で駆け上がる木船と一樹。だが一樹は母胎に操られたこともあってか、疲労が頂点に達していた。膝をつき、その場から動けなくなる一樹。 そこへ、階段の上から無数の屍霊が、下からは無数の闇霊たちが迫る。 「僕を置いて・・・逃げるんだ・・」弱音を吐く一樹。 「何かっこつけてんのよ!こんなとこでかっこつけたって誰も見てないよ!バッカじゃないの!?」そんな一樹を叱咤する木船。 人外のものが迫り、最早これまでと思われたが、果たして化物たちは二人に襲い掛かることはなかった。 彼らを飛び越え、互いに喰らい始めたのだ。顔を見合わせ、頷く一樹と木船。二人は全ての力を振り絞り、地上へと向かって走り出したのだった。 なんとか地上へと出た二人だったが、そこにはすでに屍人たちによって包囲されていた。 木船は他者の肉体を乗っ取る自らの力を駆使し、武器を手に入れ、七つの碑を叩き壊し、「冥府の門」を閉じようとする。 しかし門は閉じられることなく、門の中から黒衣をまとった闇霊たちがあふれ出てくる。 逃げようとする二人を、変わり果てた藤田と屍人自衛官が包囲する。 しかしまたしても闇霊たちによって屍人は喰われ、二人は窮地を脱する。 遊園地の出口へと向かった二人は闇霊に襲われ、すでに出せる力もなく、絶体絶命の危機に陥る。 しかし空から降り注いできた謎の赤い光によって彼らを取り囲んでいた闇霊は蒸発し、二人は三度の危機をまたしても運命に救われたのだった。 ※補足(2人は藤田に会ったこと無い。) 潮降浜。その近くを矢倉市子は彷徨っていた。服には藤田の血がついている。 「お母さん・・・家に・・・帰りたい・・・」そう呟く市子の脳裏に一瞬奇妙な記憶が甦る。 誰かの手にぶら下がる自分。しかし、ブレスレットが千切れて海へ落ちていく。 記憶のなかの市子が海に落ちたと同時に、市子自身も足を踏み外し、崖下の道路へと転落した。 逃げなきゃ。そう思い、潮降浜の前を走りだす市子。その前にアイロンを手にした女屍人が立ち塞がる。 武器を持たない市子では対抗することができない。逃げようとしたその時、背後から軽トラックのエンジン音が鳴り響いた。 驚いて道脇の草むらに飛び込む市子。そのすぐ横を軽トラックが猛スピードで通過した。 市子が草むらから這い出してみてみると、女屍人が少し離れたところに転がっていた。撥ねられたらしい。 市子はアイロンを手に廃墟になった小中学校跡へと向かう。 大道具倉庫で釘箱を入手した市子はそれを校舎裏の道に撒いた。しつこく追跡してくるトラックをそれでパンクさせようというのだ。 市子の目論み道理、タイヤが破裂。制御を失い、封鎖された校舎裏門を突き抜けるトラック。 その時校舎裏門から大量の闇霊が侵入してきた。屍人たちは市子に目もくれず、闇霊を攻撃し始める。 そのまま校舎裏門を抜ける市子だったが軽トラックから屍人が降りてきた。かつての沖田宏である。 沖田は市子に気づくまもなく闇霊に囲まれ、そして喰われた。 市子は泣き叫びながらその脇を通り抜けるが、闇霊に囲まれてしまう。 その時、市子の頭上に謎の赤い光が降り注ぎ、包囲していた闇霊は蒸発するのだった。 ※補足1(謎の光は現実世界に差し込んだ光の照り返し。木船と一樹を救った光も同じ。何故かは後述。) ※補足2(市子は沖田に会ったことがない) -怪異発生11時間後- 蒼ノ久集落まで逃げた二人。しばしの休息の後、人との接触を怖れる木船はその場から立ち去ろうとするが、木船の手をつかみ、二人で行動することを提案する一樹。 しかし木船の、自分は人の心を読むことが出来る、という言葉に驚き、一樹は手を離してしまう。 「そんな・・・化物を見るような目で見ないでよ」木船はそういい、力なく微笑み立ち去っていった。 やはり自分は化物なのか。そのような思いに捕らわれる木船であった。 取り残された一樹は、何故手を離してしまったのか、と後悔していた。 彼の脳裏につらい過去の記憶がよみがえる・・・ ※補足(2人が休息をとったのは三上家。みんなの憩いの場である。) ※補足2(一樹は過去に、意図しない何気ない言動から同級生であった1人の少女を自殺未遂に追いやってしまう。彼がやたら女に優しいのはそのため。) -怪異発生13時間後- 四鳴山の林道を歩く阿部と喜代田。阿部が多川柳子との思い出を語りだす。 「あいつ時々わけわかんねーくらい暴れだしたりしてさ・・・」そこまで語ると言葉につまり、俯く阿部。 阿部に寄り添う章子。二人が顔を上げたとき、信じられないものを見る。 目の前にそびえたつ廃鉄塔。その上空にはもう一本の鉄塔が宙吊りに浮いている。 いや、そうではない。夜見島上空にはまるで鏡に映りこんだかのように、もうひとつ夜見島が存在していた。「何かに呼ばれている気がするの。そこまで連れってくれないかな。」 そう阿部にいい、廃墟の港湾施設を探索。立ち止まっては過去の映像を見る章子。 「アレ?これは・・?」「どういうことなの?」「・・・そうか」「・・・もう少し・・・もう少しで・・・」 「・・・灯台へ行きましょう」そう阿部に告げる章子。 「・・ほら、がんばって・・」「もう少し、あともう少しよ・・」 灯台前の橋にたどり着いた二人。だが橋は崩落している。しかし章子は穴に向かってフラフラと歩いていく。 「ホラ・・・もう少しよ・・・がんばって・・・・・脩」 「おい!あぶねぇ!」 穴に落ちそうになる章子の腕をつかむ阿部。章子はそのまま倒れこんでしまう。 ※補足1(異界の夜見島には光が差さないが、上空にある現実の夜見島に当たった光は届く。) ※補足2(過去の映像とは29年前に起きた加奈江と脩の脱出の様子。) 砲台跡で大の字になって寝転び、三沢は空を見上げていた。空にはもうひとつの夜見島があった。 「・・・あっち側は遠いなぁ・・・」そう呟く三沢。 その時、突然少女の叫び声が聞こえてきた。 すぐ近くで市子が闇人に襲われていたのだ。その叫び声を聞き、薄ら笑いを浮かべて64式小銃を構える三沢。 市子は三沢に助けられ、無事に砲台跡から脱出する。そして三沢も市子の後を追うのだった・・・。 -怪異発生14時間後- 疲れ果て、道沿いの石の上に腰を落とす二人。 「はっぴばーすでぃとぅゆー♪」 突然歌いだし、ポケットから拾った金のアクセサリーを章子に手渡す阿部。 「今日誕生日だったろ?免許書で見たんだよ。」 戸惑いながらも表情を緩める章子。俯いて寝息を立てだした阿部に寄り添い、しばしの平穏を味わうのだった。 蒼ノ久集落に来た永井は少女の嗚咽と男の声を聞いた。 「あの女より生臭い。お前は何なんだ」そういい市子に小銃を向ける三沢。 そして泣き叫ぶ市子。 「やめろーッ!!」そう叫び咄嗟に機関拳銃を構える永井。 しかしその弾みで、三沢を撃ち抜いてしまう。 よろよろと永井の方に向き直る三沢。 「・・・・やるじゃない」そして永井に抱きかかり、最期の言葉を残すのだった。 「俺だけ先に目覚めちゃうけど・・・・・悪いな」 最後まで三沢の真意を理解できず、目の前の事実に呆然とする永井。 永井は市子を連れ、その場から逃げだした。 三沢を射殺し、市子を連れてその場から逃げ出した永井は夜見島金鉱社宅へとたどり着いた。 虚ろな市子を励ます永井。その背後の暗闇に、巨大な顔がぼんやりと浮かび上がる。 銃を構える間もなくはじき飛ばされる永井。起き上がると既に市子の姿も無い。 さらわれた市子を奪還すべく走り出す永井。 社宅の一室に市子はいた。しかし永井が声をかけるが虚ろな笑い声だけを返す市子。彼女はフラフラと立ち上がり、突如、機関拳銃を永井に向けて発砲した。 「あの時死んだのは・・・・私。・・・・早く還りたい・・・・おかあさん」 意味不明な言葉を呟き、闇人を殲滅しながら社宅をさまよう市子。 永井は市子が落としたと思われる壊れたブレスレットを市子の前に示し、正気に戻そうとするが、市子は永井の手を振り解き、逃げてしまう。 市子は思い出す。ー眼下に広がる、荒れ狂う漆黒の海。親友ノリコの腕にぶら下がり、今にも落ちそうな市子。 おそろいで買ったノリコのブレスレットに指がかかり、ブレスレットが大きく歪む。 死にたくない。そう思い指に力をこめた刹那、市子は荒れ狂う異界の海へと落ちた。 赤く染まった海中に漂う市子。手にはブレスレットが握りしめられている。 水中に響くくぐもったサイレンのような音が、徐々に市子に近付いていく。 参考→http //www.playstation.jp/scej/title/siren2/siren2_top/anotherstory/bw.html -怪異発生15時間後- ドアを開け船室に足を踏み入れる一樹。薄暗い船内に外光が差し込み、闇霊が奇怪な叫び声を上げ蒸発する。殲滅すべき敵を認識した一樹の目に憎悪が宿る。 「光が・・苦手なんだな・・・。化物め、化物め、化物め!」 憎むべき敵と、その弱点を知った一樹は船内の電源を復活させ、闇霊を一掃する。 闇人達、乙式となった太田ともえをも倒した一樹、外敵のいなくなった船内にてしばしの休憩。 ※補足(一樹の前にやたらともえが現れるのは、彼がともえの失くした大事な髪飾りを拾い、所持しているため。メダルやら髪飾りやら拾得物の多い一樹。) 夜見島、瓜生ヶ森。 背後から郁子の肩を掴もうとする阿部。反射的に振り払う郁子。 「なぁアンタ、派手なカッコした女見なかった?・・・・あれ?アンタどこかで・・。」 阿部は章子の行方を尋ねるうちに、何故か奇妙な懐かしさを覚える、郁子は何も答えず走り去る。 ※補足(全く触れられていないが、多河柳子と木船郁子は双子の姉妹。阿部が懐かしさを覚えたのはそのため。顔は違うんですけど。) 章子は蒼ノ久集落にいた。 章子の意識に自分のものではない過去の映像が断片的に甦る。目を開く章子。 「脩……あの子はどこ?」覚束ない足取りでさまよい始める章子。 自分のものでない記憶に導かれた章子は三上家へたどり着く。 しかしその三上家から異形の存在となった三上脩の父、隆平が現れる。 「もう起きなさい、ね?」子供をあやすような口調で襲い掛かってくる隆平。 章子は霊体となった脩に導かれ、夜見島に伝わる異形の存在を浄化するという滅爻樹(めっこうじゅ)を手に入れる。 隆平の隙を突き、その体に滅爻樹を突き立てる章子。異形の断末魔の叫びとともに、隆平は浄化された。 そして章子は真実を知る。 ※補足(滅爻樹は 穢れ を栄養にする木。) ※補足2(隆平に使った滅爻樹は三上脩銘だが、銘は人間の後付けで、誰に使おうが効果は一緒。夜見島出身者はみんな滅爻樹持ちだが、隆平は夜見島出身ではないので自分の滅爻樹を持っていなかった。) -怪異発生17時間後- 疲れ果て、忍び寄る闇霊に気が付かない一樹を永井が助ける。 悲観的言動の一樹に対して、ある種の居直りを見せる永井は、絶望的状況での悪あがきを促す。 再び夜が訪れる。待っていても助からない。二人は怪異とその元凶に挑む。 血に塗れ錆び付いた包丁。本当の自分。あの日の記憶。隆平の腹部に刃物を突き刺している自分。隆平は何が起きているのかわからない、という顔だ。 玄関の戸が乱暴に開けられる。雨合羽をきた漁師たち。 逃げこんだ部屋。そこの鏡に映るのは・・・自分の顔! 振り上げた包丁を鏡に叩きつける。章子の顔はひび割れ、砕け散る。 「ーそう、私はー」 錆びた包丁を手に立ち上がる章子。だがその顔は加奈江のものになっていた。 ※補足(隆平を殺したのは加奈江、アーカイブ23とか色々あって母胎から邪魔だと思われていた隆平。加奈江は母胎に意思をジャックされ、無意識のうちに刺殺してしまう。) ※補足2(脩をボートに乗せて溶けた加奈江は、近くを遊覧中だった章子の母に取り付く。章子の母は誤って船から転落してしまい、その日のうちに緊急出産。) -怪異発生18時間後- 四鳴山、離島線4号基鉄塔。かつて島民から聖域として畏れられた地に聳え立つこの鉄の塔も、島の他のものと同じく朽ち果て、自然の中に埋没していた。 そしてそれは島が異界と化した際に、さらにおぞましい姿になった。朽ちたコンクリートの基部とその上に立つ鉄骨製の塔、そしてそれらにまとわりつき、飲み込むように伸びる一本の巨木。 それは異形に対し、抗うことを決心した者たちを竦みあがらせた。 ※補足(太田家の禁足地その2。碑足が母胎を封印していた場所であったのに対し、四鳴山は滅爻樹の大木があったとされる場所。) ※補足2(聖域に遊園地やら鉄塔やら建てたり、研究と称してそこらへんをほじくりまくる余所者に切れていた太田さん。) 社宅、ブライト・ウィン号、それぞれで異形に対面した二人だったが、一樹と永井は奇怪な鉄塔がそびえ立つ異様な光景に気圧された。 その鉄塔の先に、もうひとつの夜見島があるのを見た一樹がひとつの結論に達した。 「ここは29年前の夜見島のコピーだったんだよ!!」 「うわぁ・・・語り始めちゃったよこの人・・・。」 「やつらはこの鉄塔を利用して現実の世界に干渉するつもりなんだ!」 一樹は思いつめた表情で、塔へと独り歩き出し、諦めと居直りの態度の永井がその後を追う。 二手に分かれた一樹と永井だったが、鉄塔上部にて無事に落ち合うことができた。階下の永井を一樹が引き上げようとしたその瞬間、背後から再び異形が現れた。 「他所者どもめ・・・・わしの目の黒いうちは好きにはさせんぞ!!」それは変わり果てた網元、太田常雄だった。 太田に突き落とされ、鉄塔から落下する永井。一樹は鉄塔内部へ逃げ込み、隙を突いて太田を押さえ込む。そして途中で偶然手に入れた太田常雄銘の滅爻樹を突き立てた。 「あああぁぁぁぁぁッ!・・・穢れが・・・消える・・・」 断末魔の叫びを残して、太田常雄は滅せられた。 その様子を見ていた太田ともえは、驚き、怯え上階層へと逃げていくのだった -怪異発生19時間後-夜見島金鉱採掘所 昨日団地内に自生していた夜見アケビに当たり腹痛に苛まれながらトイレを探していた阿部。 激しい絶望感に「くそすぎだろっ!このままじゃよう…」とへたれこんだその頭上に銃弾が打ち込まれた。 徘徊の最中、闇人化した三沢をかわし物置に入ると霊体化した三上と遭遇。持ち前の明るさで気さくに挨拶する阿部の目の前で三上は壁の中へ消えていった。 三上が消えたそこには犬笛があった。それを何の気無しに吹いてみるとツカサが現れる。彼女も霊体化した三上に導かれて金鉱へと来たのだった。 ツカサは阿部が砲台跡で落としたライターを返すと、瓦礫の向こうへと再び走り去っていった。 ※補足(三沢と阿部には面識無し。) -怪異発生20~21時間後- 感応視により闇人達が鉄塔を通じて現実世界に侵攻しようとしていることを知った郁子は、鉄塔のふもとにて頂上を見上げ、闇人たちの思惑を打破しようと決意する。 そのとき不意に背後に気配を感じ振り向くと、視界の端に人影を捉え消えた。その人物のいたところには滅爻樹(藤田茂銘)が転がっていた。 鉄塔を上る道中、クレーンの鍵、鉄塔に絡まるように生えていた大樹に突き刺さっていた闇那其(あんなき)なる巨大な石、乙式ともえがいじくっていた一樹のカメラを入手。 感応視を駆使して闇霊や闇人がたむろする鉄塔をさらに上り、鉄塔中腹で徘徊していた闇人藤田を滅爻樹で浄化した。 「そうか…あんたも…あの…」と藤田は謎の言葉を郁子に投げかけ浄化されていった。 闇霊闇人との幾多の戦闘の果てに疲労困憊となった郁子はよろけ、さらにその足場は崩れてしまった。が、あわやの所でその手を一樹がしっかりとつなぎ止めた。 数時間前には異能に躊躇し手放してしまった郁子の手だったが今度は離さないと、これまでの顛末を詫びる一樹。それに悪態で返す郁子。そうして笑みを浮かべる二人であった。 そして二人で鉄塔の頂上を目指す。 -怪異発生22時間後- 鉄塔から落とされ再び一人となった永井は闇人への徹底抗戦を決意。フェイスペイントを施し自己を鼓舞し『逆切れモード(永井談)』となり闇霊を殲滅していく。 永井は軽トラックで小学校を根城に跋扈する闇人闇霊を轢き殺し、団地で手に入れたタイムカプセルの地図をもとにヒューズを手に入れた。 さらに校舎に立てこもった闇霊を信号弾の閃光でいぶりだし殲滅、残った闇人化した沖田をトラックに積んであったTNTで爆殺、体を完全に破壊されたことで沖田の復活は不可能になり、遂に引導を渡すことに成功する。 そのころ学校に程近い浜、そのさらにさらに底の方から何か異形の生物が陸地に向かって急激な浮上を行っていた。 ※補足(滅爻樹を使わずとも、闇霊がよりしろにしている肉体を破壊すれば復活できなくなる。) 夜見島離島線4号基鉄塔 鉄塔頂上を目指す一樹と郁子の前に完全に自我を失った模倣体(外見は完全なコピーで中身はさっきの異形の生物の意思というようなもの)として覚醒した市子が現れた。 母胎への恨みと思慕を郁子へ語りかける市子。右手に日本刀左手に機関拳銃を携えた市子も鉄塔の頂上を目指す。先に市子を頂上へ行かせてはいけないと悟った郁子と一樹は、さらに急いで鉄塔頂上を目指す事になった。 ※補足 何故みな鉄塔頂上を目指しているのか 一樹&郁子組 一樹:キバヤシ理論。根拠無し。 郁子:ブライトウィン号沈没の際に唯一生還した木船倫子(市子の親友、中学生で妊娠)の娘で双子の片割れ、母親の体内にいた時に、母胎の分裂体が寄生した。 その結果、郁子は生まれながらに異能を手に入れていたのだが、異能を手に入れるとともに母胎の精神とのリンクも手に入れていた。 そのため鉄塔の頂上に母胎がたどり着いてしまうと現実世界も侵食されてしまうと気がついている。 母胎:地上侵攻作戦。三上脩の肉体を手に入れたことで、現実世界に侵攻する力を手に入れたため侵攻作戦が遂に実行されることとなった。 鉄塔の頂上で現実世界とリンクしているため、そこにたどり着けば、現実世界への侵攻が現実のものとなる。 市子:そもそも闇霊と屍霊は同一種であり、光の届かなかった頃の地上で繁栄していたが、地上に光が降り注いだ際に、光に耐性のなかった彼らは、闇霊達は異世界へ、逃げ遅れた屍霊達は光の届かない深海へ。 屍霊は自分達を見捨てて異世界へ逃げた母胎達が憎くてたまらない反面、母胎と再び一つになりたいという願望を抱いている。 そのため母胎の元へたどり着くべくブライトウィン号沈没の際に手に入れた市子の水死体をもとに自己の意思を反映するためのコピー、模倣体を異世界へ送り込んだ。 最初は生前の記憶が再生されていた市子ではあったが、現在は完全に模倣体として覚醒しており母胎と合流するために鉄塔の頂上を目指している。 また市子は母胎との合流が至上目標であるため、それを妨げるものは人間であろうと闇霊であろうと駆逐していく。 一方母胎側としては長く現実世界にいることで形質が劣化してしまった屍霊にはさしたる興味もなく地上侵攻作戦を遂行することが至上目標であるため、邪魔する屍霊は敵として認識されている。 -怪異発生23時間後- 鉄塔頂上に向かう道中乙式ともえを滅爻樹で浄化し、市子をかわして鉄塔頂上へたどり着く二人。そこへ母胎も同じく頂上へたどりつく。 母胎と一樹、郁子が対峙するその最中突如鉄塔が崩壊を始め、市子は地面へ、一樹と郁子母胎は空へと落ちていった。 そのとき念願の母胎に辿りついた市子は、母胎にかえりみられる事もなく落ちて行くことになった。 丁度同じ頃、念願のトイレを遂に発見した阿部は用を足す。満足げにトイレを出、ツカサに返してもらったライターでタバコに火をつけ一服の後、バスケットのシュート宜しく便器に吸殻を放り込む阿部。 見事にシュートが決まりガッツポーズを決め、トイレに背を向けた時、背後のトイレが爆発を起こした。汲み取り式のトイレであったそのトイレの底に溜まっていたメタンガスにタバコの火が引火、爆発することになったのだ。 その爆発に連鎖されるように地下道に充満していたメタンガスが連鎖的に爆発。その爆発は鉄塔の足元にまで広がっていった。 遂に爆発は鉄塔の足元を完全に破壊しつくし、鉄塔は崩壊を開始する。目の前の現実に眼を疑う阿部なのだった。 その爆発鉄塔崩壊のため、現実世界とのリンクである鉄塔は崩壊、母胎の地上侵攻作戦は完全に潰えることとなり、阿部は何気に世界を救ったヒーローなのであったが、そのことは誰も、本人さえ知らないことである。 鉄塔が崩壊していく姿を呆然と眺める永井の周囲から光がなくなっていく。闇人甲式として進化を遂げた三沢が不敵に笑っていた。永井は三沢との最後の決着をつけることを決意する。 闇人甲式として進化した三沢はMINIMI軽機関銃を装備、永井は迂闊にその前に立つことはできず、背後からその身を隠し狙撃することに成功する。 機関銃を乱射し遂に地に果てた三沢。やっと全て終わったことに安堵する永井の背後から市子の声がした。その市子の顔には巨大な目玉が浮き上がっていた。市子はもはや模倣体としてその存在を維持できなくなっていたのだ。 「家に帰りたい…一緒になりたい…」 つぶやき倒れる市子と、倒れ動けなくなった三沢を吸収するように浜から巨大な顔面(市子を放った者)の生き物が浮上してきた。 まだ戦いは終わっていないことを知った永井は三沢の残したMINIMI軽機関銃を携え巨大な顔面の生き物(堕慧児/おとしご)との戦いに臨む。(堕慧児は屍霊の凝結したもの。) 永井は堕慧児の突進攻撃を上手くかわして廃タンクに激突させ、そこに残されていた重油を浴びせかけることに成功する。 重油を浴びて怯んだ堕慧眼児に対し、浜に打ち揚げられていた漁船の発電機を起動させ水銀灯をともす。 そのランプを堕慧児にぶつけることで、重油を浴びたその体を燃やし尽くすことに成功。 今度こそ本当に全て終わったことに歓喜の雄たけびを上げる永井。その叫びが夜の浜辺にこだました ※補足(模倣体は母胎でいう鳩と同じもの。伊達に海底暮らしをしていないため、光耐性余裕でした。) ※補足2(決戦前に学校周辺の闇霊達は殲滅されているため、三沢は回復も復活もできなくなってしまっていた。) ※補足3(母胎が自分に弥生の形を与えたように、堕慧児もまた自分に市子の形を与える。さすがは劣化種、出来たのは醜い顔面である。) -怪異発生後23 59 59- 鉄塔の崩壊により一樹、郁子、母胎は特異点へ飛ばされていた。特異点、それは全ての事象が起こりうる世界であり、無限の可能性の中で現世と虚無の区別のない場所だった。 その世界の空には赤い海があり、そこから母胎が顔を出していた。計画の破綻に激怒した母胎は一樹たちに襲い掛かる。そして、一樹たちも母胎との最後の決着をつける。 一樹と郁子の協力の下でも母胎の力は強力で、一樹は弾き飛ばされてしまう。その際にポケットから港で拾ったメダル(元々は三上の幼少時代の所有物)が零れ落ちる。 そのメダルを辿って幼少の三上もこの特異点へ導かれたのだった。 さらにその三上を探して章子/加奈江も特異点へやってきた。三上を探す最中、加奈江は自身と母胎がリンクしていることに気づく。三上の肉体は母胎によって抑えられている。 その肉体を解放するために加奈江は自傷する事によって、母胎に強烈な痛手を与えることに成功した。 そのとき、一樹と郁子がここに来るまでに手に入れていた闇那其(あんなき)が輝きだし、石の刃物の様な形態になった。その闇那其を母胎に振り下ろす郁子。 すると今まで一度もさしたる痛手を受けたと見られなかった母胎がうめき声を上げ逃げ出した。 この闇那其には全てを無にしてしまう力(そして闇那其のみが残る世界を作る力)があった。 そして一樹も母胎にその闇那其を叩き込む。 強烈な断末魔を上げ息絶える母胎。決着に安堵する二人。しかし母胎は最後の力を振り絞り、再び赤い津波を呼び起こす。 ※補足(前述どおり、特異点は何でもありな世界である。こまけぇこたぁいいんだよ) ENDING 三上脩&加奈江 赤い海の中パジャマを着た幼い三上を抱く加奈江。 「おやすみ、脩」三上はそのまま瞳を閉じた。 こうして加奈江と三上はともに赤い海(時空ののりしろ)の中、静かに二人のときを過ごしていく。 永井 堕慧児を倒したのもつかの間、赤い津波に飲み込まれる永井。 その永井が飛ばされた世界は太陽に暗黒の影がかかり、さも日食になったかの世界だった。浜辺には日常を謳歌する闇人達。ここは母胎の地上侵攻作戦が成功した世界だった。 人間は永井ただ一人、人間は伝説の怪物として恐れられていた。錯乱状態になり絶叫する永井。永井の姿に恐れおののく逃げていく闇人達を機関拳銃で次々と射殺していく。永井が現実世界に戻る術はあるのだろうか… 阿部&ツカサ やはり赤い津波に飲み込まれてしまった阿部とツカサであったが、辿りついた先は朝日の昇る穏やかな海岸道路だった。 その朝日を見つめながら、不意に全てが終わってしまったことに気づく阿部。この世界は闇霊屍霊がはじめから存在しない世界だった。 闇霊が存在しないため、母胎は存在せず、そして彼の愛した多河柳子もはじめから存在しなかった世界なのだった。 果てしない絶望感に苛まれただ滂沱と涙を流す阿部にツカサが寄り添った。彼女も自身が尽くしてきた飼い主の三上がいなくなってしまったのだ。 そうして一匹と一人は互いに寄り添い朝日を見続けるのだった。 一樹&郁子 海岸で眼を覚ます一樹。朝日が昇っている。夜の世界が終わり現実の世界に戻ってきたことを実感する一樹。 一樹と郁子が戻ってきた世界は唯一今までと同じ現実の世界だった。郁子が眼を覚ました。二人で朝日を見つめる。 穏やかな朝焼けの元満足げな一樹。その横で郁子は太陽の光を煩わしそうに睨み付けるのだった。 外伝 -怪異発生7時間後- 崩谷、夜見島金鉱(株)社宅跡。 そこに女の悲鳴が響き渡った。だが生きているもののそれではない。海より来る穢れに操られしもの、屍人の叫び声である。 異界、夜見島において人の上に君臨し、蹂躙する存在。そのはずの彼らが恐怖し、逃げ惑い、仲間に助けを求めていた。かつての彼らの同胞、闇人が復活したのだった。 同胞とはいえ、彼らの間には仔細あって愛憎遺恨が渦巻いている。 初めはいきり立って闇人に襲い掛かった屍人たちだったが、その力の差たるや歴然。屍人は頂点の座をあっさり奪われた。しかし己の存在意義を賭け、全力で抵抗していた。 助けを求めた女屍人、鍋島揉子は背後に迫る気配を感じ、ベランダへと逃げた。機関拳銃を手にした闇人が彼女を追いかけていたのだ。 彼女を見つけ、歓喜の叫びを上げる闇人。 その時。 響きわたる叫び声に答えるかのように、不規則な足音が社宅跡に響く。その数2人分。 三沢、永井らの隊を指揮していた陸上自衛隊の佐官、一藤二孝が部下の屍人自衛官を連れ、揉子救出に駆けつけたのだ。 銃に弾倉を装着し、部下に指示を出す一藤。動き回る死体程度の屍人と完全に肉体を支配する闇人では身体能力の差は歴然。・・・ならば戦術でカバーするのみ! 光に弱いという闇人の致命的な弱点をつきながら、立ち塞がる敵を倒し、社宅に突入した両名。その一室で揉子を無事発見する。 「うぉぅ!?(訳:大丈夫か!?)」 「ヒィィィィィィィ・・・(訳:アイロンが・・・形見のアイロンがないの・・・)」 「うぉぅ!(訳:俺にまかせな!)」銃に新しい弾倉を装填する一藤。 女を泣かすやつァ許さねぇとばかりにいきり立つ一藤。その心の裏には彼女への想いがあった。屍人だてらに一目ぼれである。 その想いの前には凄腕狙撃闇人も変わり果てたかつての部下も意味を成さなかった。 ついにアイロンを手にする揉子。あとはここより脱出するのみである。 脱出まであと一息、その時背後から一藤を大量の銃弾が襲った。振り返ると銃を構えた闇人が立っていた。 「イヒヒヒィィィイィィ!!」一藤に狙いを定め笑い声をもらす闇人。 「!?ギィィィィィィッ・・・!」 銃声とともにその場に倒れる闇人。その背後には部下屍人が立っていた。 その姿を見て、安堵し、その場に座り込む一藤と揉子であった。 ※補足(市子in学校で事故ってたのはまさに彼女。形見のアイロンを易々奪われる。ちなみに学校には一藤もいます。) 怪異発生後-33 33 33- 不死の肉体を持ち、 左手には異形を滅する神器、宇理炎。 右手には精霊を宿した日本刀、焔薙。 肩には装弾数以上の弾丸を発射するライフル。 ヘッドフォンから漏れる「THE BUSTER!」をBGMに、この世界に存在する全ての異形を殲滅すべく、虚無の世界の夜見島に現れた須田恭也。 「お前等みたいなのがいる限り・・・」 「俺は、何度でも現れる。」 未だに生き残っていた闇霊闇人を殲滅する。その戦いに終わりはない。 ※補足(増えすぎた平行世界を消し去るためという説も。) 終了条件の意味 今作の終了条件1・2は「平行世界」 数ある可能性の中から、終了条件毎に未来があると考えられる。 全て終了条件1の世界もあれば、一つだけ終了条件2の世界もある。 そして全て終了条件2を通った世界が、母胎・堕慧児の撃破となったと思われる。 無限にある可能性の世界の中で、ある条件を達成した世界だけ、エンディングにたどり着けたみたいな感じの。
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バトルシミュレータ マップ一覧 チーム一覧 + チーム一覧(長いので折り畳み) バトルシミュレータ マップ一覧ジャンクリーグアリーナ アマチュアリーグアリーナ ネオアサヒカワリーグアリーナ チーム一覧(プレイヤーチーム) ムービングターゲッツ ウゴーズ サンデーリーマンズ ワンデイドリーマーズ ONCT模型同好会 ヘルズ・ワーカーズ MAM電脳研究会 ジャンクテイカーズ 拉麺三傑衆 スシ・ナイツ NAレギオン UITサバゲ―サークル NAクリルタイ モンキークラブ ルーキーズ NA貨物運送組合 ケンキーズ ハラスメンツ 光芒寺一門 ブラックナイツ オホーツク狩猟団 メカケンドー同好会 石狩川JETBOXERS 浮動機普及促進の会 天神ローダーヘッズ ムロラン・アイアンワークス 愛宕重工第一ワークス キング・オブ・ザ・ヒル マジノ・バンカーズ タンクス・オブ・ワールド G・G フランク近衛騎士隊 ウンメェ~イーツ アトリエ・ホーリー オリオン三連星 浪花節だよミサイルは トリプル★タイムス チーム正統派 極悪屋一家 リーサルランバーズ 南部最速運送協会 ネオアサヒカワ市警機動隊 アイゼン戦闘団 オクシレトコ第二空挺猟友会 大光真宗 ルーキーズ ホーネッツ・ネスト PUNIHIZ オリオンカルテット 散弾三銃士 ブークリエ・ド・モーリス 愛宕重工第三ワークス ブラックナイツ 第七特科師団選抜小隊 真・光芒寺一門 トカチ重装機師団 モノノフ・レーシング 石狩川JETBOXERS ルーキーズ 天神ローダーヘッズ 三田兄弟チームA 光芒寺聖夜会 三田兄弟チームX ネオエゾ・ドラグーン ソーヤ・サンライズ ネオアサヒカワ神仏連合 天神ローダーヘッズ スシ・ナイツ PUNIHIZ ジャンクテイカーズ 大光真宗 G・G ネオ・ハラスメンツ アバシリ脱獄囚 ネオアサヒカワ自警団 メカケンドー同好会 バックホーパンチングクラブ ハママッチョブラザーズ 東京ダンジョンマスターズ ネオミヤコショーグネイト バトルシミュレータ 3対3の大会仕様で模擬戦が行える。賞金は出ない。 通常通りの戦闘を行う「自機を操作する」と自チーム以外の戦闘を見れる「戦闘を観戦する」の2つが選べる。観戦時にはプレイヤー部隊を参戦させる事も可能。 マップ一覧 ジャンクリーグアリーナ ネオアサヒカワ郊外の居住区画に作られた小さなアリーナ。駆け出しのローダーパイロットはこの会場に通い詰める事になるだろう。 ジャンクリーグでのメイン戦場。4隅のスロープコーナーと中央の台地が特徴的。遮蔽はやや少なく、壁に隠れてチラ撃ちとかはしづらい。 マップ自体も狭めで、決着がつきやすいマップ。 アマチュアリーグアリーナ ネオアサヒカワ駅から徒歩数分の場所にあるアリーナ。周辺の宿泊施設から試合が見放題なため、旅行者に人気が高い。 アマチュアリーグのメイン戦場。マップが非常に広く、最外端は傾斜付きの台地。狙撃しろと言わんばかりの広さである。その分遮蔽はしっかりと設置されており、逃げるのも追うのも容易な部類。 マップの広さからやや長期戦になりがち。 ネオアサヒカワリーグアリーナ ネオアサヒカワを象徴するアリーナ。ローダーバトルの聖地とされており、惑星郊外からの訪問者が跡を絶たない。 ネオアサヒカワリーグ、EXリーグのメイン戦場。EXリーグは他マップも選定される事がある。 奥行き方向に長いアリーナ。中央の台座はジェットパックがない場合一部からしか登れず、戦術に組み込みやすい形状をしている。 遮蔽の多さと奥行き方向の広さも相まって遮蔽戦術も狙撃戦もしやすい方。勿論敵部隊も行ってくる。 チーム一覧 (プレイヤーチーム) あなたのチームの構成をコピーしたデータです。歩き回って撃つだけなので、近接武器をうまく使用できません。 解説通り自機チームのコピー。ミラーマッチとか観戦用にどうぞ。 ムービングターゲッツ ロボットプニヒが操縦する訓練用標的チーム。攻撃してこないので、ここで操作練習をしよう。 [リーダー機] パイロット MAM制御コンピュータ 機体名 ムービングターゲット 胴体 センパイ ボディC 左腕 センパイ マシンガンC 右腕 センパイ マシンガンC 脚部 センパイ レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [1番機] パイロット MAM制御コンピュータ 機体名 ムービングターゲット 胴体 センパイ ボディC 左腕 センパイ マシンガンC 右腕 センパイ マシンガンC 脚部 センパイ レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [2番機] パイロット MAM制御コンピュータ 機体名 ムービングターゲット 胴体 センパイ ボディC 左腕 センパイ マシンガンC 右腕 センパイ マシンガンC 脚部 センパイ レッグC 背部 ウージン500 積載パックC 説明通り攻撃を行ってこない。恐らくテストモードの敵機と同じ。 ウゴーズ 今日初めて顔を合わせた、SNS上で結成されたチーム。全員素人だし、連携も取れていない。 [リーダー機] パイロット たてひ 機体名 レンタルメック01 胴体 センパイ ボディC 左腕 センパイ マシンガンC 右腕 センパイ マシンガンC 脚部 センパイ レッグC 背部 センパイ ジェットパックC [1番機] パイロット ちとひ 機体名 レンタルメック07 胴体 エントリー ボディC 左腕 エントリー ライフルC 右腕 エントリー ショットガンC 脚部 エントリー レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [2番機] パイロット つさひ 機体名 レンタルメック10 胴体 タロー ボディC 左腕 タロー シールドC 右腕 タロー ライフルC 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ジェットパックC のっけから帰りてえ!とか言い出す正に烏合の衆。 シールドは盾に弾かれると攻撃が無力化される。但し、当たり判定はモデル形状通りで、爆風は盾を貫通するのでバズーカ系が有効。尚、ミサイルに爆風判定は無い。 サンデーリーマンズ 仕事に疲れたぷにひ達が日曜日にレンタルメックを借りて結成しているチーム。土曜日から徹夜で酒盛りした後試合に望むためあまり調子が出ないらしい。 [リーダー機] パイロット 佐藤さん 機体名 レンタルメック02 胴体 グリヌイユ ボディC 左腕 グリヌイユ ガトリングC 右腕 グリヌイユ ガトリングC 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 グリヌイユ 弾薬パックC [1番機] パイロット 田中さん 機体名 レンタルメック08 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 タカオ二式 ジェットパンチC 右腕 タカオ二式 ジェットパンチC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 タカオ二式 ブースターC [2番機] パイロット 鈴木さん 機体名 レンタルメック09 胴体 タカオ八式 ボディC 左腕 タカオ八式 マシンガンC 右腕 タカオ八式 マシンガンC 脚部 タカオ八式 レッグC 背部 タカオ八式 リペアキットC ワンデイドリーマーズ 賞金が出ると聞いて急遽駆け付けた若き三兄弟。貸し出されたローダーで戦うがローダーバトル自体が初めてだ! [リーダー機] パイロット 太郎 機体名 レンタルタローA 胴体 タロー ボディC 左腕 タロー ブレードC 右腕 タロー ブレードC 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ブースターC [1番機] パイロット 二郎 機体名 レンタルタローB 胴体 タロー ボディC 左腕 タロー バズーカC 右腕 タロー ライフルC 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ジェットパックC [2番機] パイロット 三郎 機体名 レンタルタローC 胴体 タロー ボディC 左腕 タロー ミサイルC 右腕 タロー ミサイルC 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ジェットパックC 説明通り操作の覚束ない連中。ブレードは後ろに下がりながら振り回すわ試合中に背部パーツの使い方が分かんねえとのたまうわで大変賑やか。 唯一ミサイルが正常に飛んでくる程度なので余程の構成でもない限り負ける事は無いだろう。 ONCT模型同好会 オカノウエ工業高等専門学校の学生で構成されたローダーチーム。部活動の一環としてジャンクリーグに参戦中。放課後は中古ローダーキットを漁りまくっているらしい。 [リーダー機] パイロット ぺぺひ 機体名 タロー(バズーカ装備) 胴体 タロー ボディC 左腕 タロー シールドC 右腕 タロー バズーカC 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ジェットパックC [1番機] パイロット ちわひ 機体名 バーナード37(仮) 胴体 バーナード37 ボディC 左腕 バーナード37 ハンドガンC 右腕 バーナード37 ハンドガンC 脚部 タロー レッグC 背部 プニンゲール ジェットパックC [2番機] パイロット とてひ 機体名 砲戦型タロー 胴体 タロー ボディC 左腕 タロー ミサイルC 右腕 タロー ガトリングC 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ブースターC ヘルズ・ワーカーズ 玄孫請け企業の厳しい労働環境から逃れるため、ローダーバトルでの資産形成を目論む三人組。ジャンク品を中心に捉えた独特の構築で安価に仕上げているのが特徴。 [リーダー機] パイロット チープ・ワーカー 機体名 ハッピー・ペイデイ960 胴体 モート ボディC 左腕 デッチ ネイルガンC 右腕 モート ロケットランチャーC 脚部 モート レッグC 背部 ダスター ジェットパックC [1番機] パイロット ロング・ワーカー 機体名 オーバー・タイム150 胴体 ストーブ ボディC 左腕 ストーブ バーナーC 右腕 デッチ レーザーC 脚部 ダスター レッグC 背部 ダスター ジェットパックC [2番機] パイロット ホリデーレス・ワーカー 機体名 7デイズ・ウィーク・デイ 胴体 ダスター ボディC 左腕 ウージン500 ロケットランチャーC 右腕 モート サブマシンガンC 脚部 ストーブ レッグC 背部 ダスター ジェットパックC MAM電脳研究会 ジャンクローダーのCPUに自作AIを書き込んで戦わせているエンジニアプニヒのチーム。幼馴染の整備担当と二人タッグでジャンクリーグに参戦中。RUN中書き込みが特技らしい。 [リーダー機] パイロット M社制御CPU改 機体名 重機人 胴体 プレール ボディC 左腕 バルキー ガトリングC 右腕 モート ロケットランチャーC 脚部 バルキー レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [1番機] パイロット MAM制御CPU改 機体名 機人2号 胴体 ダスター ボディC 左腕 センパイ マシンガンC 右腕 センパイ マシンガンC 脚部 ダスター レッグC 背部 エントリー FCS C [2番機] パイロット 電脳バリー 機体名 機人一号改 胴体 センパイ ボディC 左腕 オヤカタ ミサイルC 右腕 オヤカタ ミサイルC 脚部 オヤカタ レッグC 背部 ゴリアツ リペアキットC AI制御の味方2体を連れたチーム。2番機が有人の様子。2番機は完全に停止して防衛の構えを取る。AI制御の2体を自陣に釣って料理すれば楽に制する事が可能。 ジャンクテイカーズ ネオアサヒカワでスクラップヤードを運営する傍ら、ローダーバトルに熱を上げているチーム。「テイク・ジャンク、メイク・ジャンク」を合言葉に、ジャンクリーグ有数の強豪として活躍している。 [リーダー機] パイロット スクラップ・キング 機体名 屑鉄タイラント 胴体 バルキー ボディC 左腕 バルキー ガトリングC 右腕 プニンゲール アックスC 脚部 バルキー レッグC 背部 プニンゲール マントC [1番機] パイロット 歩く焼却炉 機体名 赤錆パイロフィリア 胴体 ストーブ ボディC 左腕 ストーブ バーナーC 右腕 ストーブ バーナーC 脚部 ストーブ レッグC 背部 エントリー ブースターC [2番機] パイロット ゴミ山に吹く風 機体名 廃品ダストシューター 胴体 モート ボディC 左腕 デッチ レーザーC 右腕 モート ロケットランチャーC 脚部 モート レッグC 背部 ダスター ジェットパックC 拉麺三傑衆 ネオエゾ各地から今勢いのあるラーメン屋が集結。競合店舗に刺客を送り込むなど日々抗争に明け暮れている。 [リーダー機] パイロット マーマレード 機体名 激ウマ炭火叉焼マシーン 胴体 タカオ八式 ボディC 左腕 ストーブ バーナーC 右腕 デッチ ネイルガンC 脚部 プレール レッグC 背部 プニンゲール マントC [1番機] パイロット 麺龍 機体名 伝統の味噌拉麺 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 バーナード37 シールドC 右腕 バーナード37 サブマシンガンC 脚部 デッチ レッグC 背部 タロー ジェットパックC [2番機] パイロット 暴富ピエロ 機体名 岩塩要塞 胴体 ラーナ ボディC 左腕 ラーナ シールドC 右腕 デッチ ネイルガンC 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 ウージン500 積載パックC スシ・ナイツ 古代より伝わる「スシ」の食文化を全宇宙に広げることを教義とした自称騎士団。ファイトマネーの全額を超高速鮮魚輸送技術や銀河マグロ・銀河巨大イカ養殖事業に投じていることで有名。 [リーダー機] パイロット スシ・ナイト 機体名 アイアン・ニギリ 胴体 ストーブ ボディC 左腕 タロー シールドC 右腕 センパイ マシンガンC 脚部 ストーブ レッグC 背部 タロー ブースターC [1番機] パイロット ローリング卿 機体名 ガンファイア 胴体 バルキー ボディC 左腕 モート サブマシンガンC 右腕 モート サブマシンガンC 脚部 ストーブ レッグC 背部 グリヌイユ 弾薬パックC [2番機] パイロット ウェルダー卿 機体名 バーニング・アブリ 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 ストーブ バーナーC 右腕 エントリー カタナC 脚部 タロー レッグC 背部 プニンゲール マントC NAレギオン 超古代文明の歩兵戦術を可能な限り再現したヒストリカルローダーチーム。当初は長槍を装備していたが高速化が進むローダーバトルについていけず、やむなくガトリングガンを長槍であると主張している。 [リーダー機] パイロット テストゥド亀田 機体名 レッドウォール 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 ラーナ シールドC 右腕 ラーナ シールドC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC [1番機] パイロット レギー亀山 機体名 ポプリテスR 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 ラーナ シールドC 右腕 オリオン号 ガトリングC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC [2番機] パイロット レギー亀川 機体名 ポプリテスL 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 オリオン号 ガトリングC 右腕 ラーナ シールドC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC 僚機で雇えるテストゥド亀田がリーダーを務める。 重装甲の硬さと旋回性能の低さを教えてくれるある意味チュートリアル的な存在。 武装はほぼ無いので横に回って撃ち続けてれば勝てる。 UITサバゲ―サークル ウチウラ工科大のサバイバルゲームサークルメンバーで構成されたローダーチーム。生身でのゲームも人気だが、バトルローダーを使ったゲームの人気が近年増してきている。 [リーダー機] パイロット 伍長 機体名 コマンダー 胴体 エントリー ボディC 左腕 エントリー シールドC 右腕 エントリー ライフルC 脚部 エントリー レッグC 背部 エントリー FCS C [1番機] パイロット 二等兵 機体名 マークスマン 胴体 エントリー ボディC 左腕 エントリー ライフルC 右腕 エントリー ライフルC 脚部 エントリー レッグC 背部 エントリー FCS C [2番機] パイロット 上等兵 機体名 アーティラリー 胴体 エントリー ボディC 左腕 エントリー バズーカC 右腕 モート サブマシンガンC 脚部 エントリー レッグC 背部 エントリー FCS C NAクリルタイ 伝説の古代遊牧民帝国に憧れを持つぷにひ達のチーム。史学的には著しく不正確な雰囲気だけのコスプレに身を包み、遊牧民の戦術と称する隊形で戦う。 [リーダー機] パイロット プニヒ・カン 機体名 ブルーウルフ 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 タカオ二式 ミサイルC 右腕 タカオ八式 マシンガンC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 プニンゲール ジェットパックC [1番機] パイロット オナンムレン 機体名 ホワイトドゥ 胴体 ローフォ ボディC 左腕 ゴリアツ バズーカC 右腕 タロー シールドC 脚部 ローフォ レッグC 背部 センパイ ジェットパックC [2番機] パイロット バアトル 機体名 モウコホース 胴体 バーナード37 ボディC 左腕 モート ロケットランチャーC 右腕 バーナード37 サブマシンガンC 脚部 バーナード37 レッグC 背部 タロー ジェットパックC モンキークラブ 2輪ローダーを愛する若いぷにひ達のチーム。バトルフィールドを縦横無尽に走り回る。いつかはデカいツーリングマシンでネオエゾ周遊をしたいとのこと。 [リーダー機] パイロット 手放し乗りのリョウ 機体名 悪羅悪羅 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 デッチ ネイルガンC 右腕 デッチ ネイルガンC 脚部 ウージン500 レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [1番機] パイロット ロケット花火のジン 機体名 弩蚊怒夏 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 ウージン500 ロケットランチャーC 右腕 ウージン500 ロケットランチャーC 脚部 ウージン500 レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [2番機] パイロット 竜騎士のナギサ 機体名 弩拉権 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 デッチ ネイルガンC 右腕 タロー ブレードC 脚部 ウージン500 レッグC 背部 ウージン500 積載パックC ルーキーズ フォーメーションを組んで移動する事を覚えたばかりの新参チーム。構成のバランスが良く侮れない。 [リーダー機] パイロット イスヒ 機体名 トゥドハリヤ 胴体 グリヌイユ ボディC 左腕 ラーナ シールドC 右腕 グリヌイユ ガトリングC 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 タカオ八式 リペアキットC [1番機] パイロット シハヒ 機体名 アヌルワンダ 胴体 センパイ ボディC 左腕 ウージン500 ロケットランチャーC 右腕 タロー ライフルC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 タロー ブースターC [2番機] パイロット ソヒヒ 機体名 ハットゥシリ 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 プニンゲール レーザーC 右腕 プニンゲール レーザーC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC 構成は良好だが単純な突撃戦術で攻撃してくる。撃破対象を絞って火力を集中させればそこまで苦労する相手ではないだろう。 NA貨物運送組合 運送会社社員による部活動チーム。分業で効率化を図る。 [リーダー機] パイロット 剛三郎 機体名 新・街道無双 胴体 タカオ八式 ボディC 左腕 タカオ八式 マシンガンC 右腕 タカオ八式 ショットガンC 脚部 タカオ八式 レッグC 背部 タカオ八式 リペアキットC [1番機] パイロット 権三郎 機体名 ウルトラコンボイ 胴体 タカオ八式 ボディC 左腕 バルキー ガトリングC 右腕 バルキー ガトリングC 脚部 オヤカタ レッグC 背部 プニンゲール マントC [2番機] パイロット 源三郎 機体名 韋駄天丸 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 ウージン500 ロケットランチャーC 右腕 タカオ八式 ショットガンC 脚部 ウージン500 レッグC 背部 ウージン500 積載パックC ケンキーズ 建設会社社員による部活動チーム。NA貨物運送組合とはよく対抗試合をしているらしい。 [リーダー機] パイロット 剛次郎 機体名 オヤカタ・カスタム 胴体 オヤカタ ボディC 左腕 オヤカタ パイルキャノンC 右腕 オヤカタ ミサイルC 脚部 オヤカタ レッグC 背部 ウージン500 FCS C [1番機] パイロット 権次郎 機体名 ネイルキング改 胴体 センパイ ボディC 左腕 デッチ ネイルガンC 右腕 デッチ ネイルガンC 脚部 ウージン500 レッグC 背部 エントリー ブースターC [2番機] パイロット 源四郎 機体名 街道無双 胴体 タカオ八式 ボディC 左腕 エントリー シールドC 右腕 エントリー ショットガンC 脚部 タカオ八式 レッグC 背部 プニンゲール ジェットパックC 僚機で雇える剛次郎の移籍前のチーム。 ハラスメンツ 周囲にしかめ面をさせる編成が好きな奴らの集まり。最近のトレンドは両手盾と長距離火器らしい。 [リーダー機] パイロット ユウ 機体名 ツインシールド 胴体 センパイ ボディC 左腕 ラーナ シールドC 右腕 ラーナ シールドC 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 プニンゲール マントC [1番機] パイロット リュウジ 機体名 ツインミサイル 胴体 センパイ ボディC 左腕 オヤカタ ミサイルC 右腕 オヤカタ ミサイルC 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 タロー ジェットパックC [2番機] パイロット ソウタ 機体名 ツインカノン 胴体 センパイ ボディC 左腕 タロー キャノンC 右腕 タロー キャノンC 脚部 タロー レッグC 背部 グリヌイユ 弾薬パックC 光芒寺一門 光度をとにかく高めることで悟りを得ることができると自称する宗教団体。レーザーを愛用している。 [リーダー機] パイロット 光沢師 機体名 光芒大師 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 タロー レーザーライフルC 右腕 タロー レーザーライフルC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC [1番機] パイロット 反射師 機体名 光芒大師 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 タロー レーザーライフルC 右腕 タロー レーザーライフルC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC [2番機] 機体名 光芒大師 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 タロー レーザーライフルC 右腕 タロー レーザーライフルC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC 全機体同一の構成。 レーザー撃ってアリーナ外周を回るだけというお遍路行為を戦闘中にかまけてくる。レーザー自体は普通に痛いのでチマチマ削るかリロード中の隙に一機ずつ叩こう。 ブラックナイツ ネオアサヒカワの華族、スゴクデカイ1世率いる黒備えのローダー軍団。大型武器の扱いに長ける。 [リーダー機] パイロット スゴクデカイ1世 機体名 デカイ・バズーカ号 胴体 タカオ八式 ボディC 左腕 ゴリアツ バズーカC 右腕 ゴリアツ バズーカC 脚部 タカオ八式 レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [1番機] パイロット バトラー大釘 機体名 デッカ・キャノン号 胴体 オヤカタ ボディC 左腕 オヤカタ パイルキャノンC 右腕 オヤカタ パイルキャノンC 脚部 タカオ八式 レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [2番機] パイロット 庭園の巨大翁 機体名 デッケー・アックス号 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 プニンゲール アックスC 右腕 プニンゲール アックスC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 プニンゲール マントC オホーツク狩猟団 オホーツク地区でバイオ生物の狩猟を生業とするぷにひ達によるチーム。堅実なコンビネーションで勝利を掴む。 [リーダー機] パイロット クマ狩りのテツ 機体名 アンチ・バイオヒグマ 胴体 オヤカタ ボディC 左腕 オヤカタ ミサイルC 右腕 タカオ八式 マシンガンC 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 ウージン500 積載パックC [1番機] パイロット トド狩りのギン 機体名 アンチ・バイオトド 胴体 グリヌイユ ボディC 左腕 タカオ二式 ミサイルC 右腕 タカオ二式 ミサイルC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 プニンゲール ジェットパックC [2番機] パイロット シカ狩りのスズ 機体名 アンチ・バイオエゾシカ 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 タロー キャノンC 右腕 タロー キャノンC 脚部 エントリー レッグC 背部 エントリー ブースターC メカケンドー同好会 巷でやや流行っている「メカケンドー」の愛好家によるチーム。近接武器のみを使って戦う。 [リーダー機] パイロット 両刀斎 機体名 トゥー・ハンド・ブレード 胴体 ゴリアツ ボディC 左腕 タロー ブレードC 右腕 タロー ブレードC 脚部 プニンゲール レッグC 背部 プニンゲール マントC [1番機] パイロット 抜刀斎 機体名 ガード・アンド・イアイ 胴体 エントリー ボディC 左腕 エントリー シールドC 右腕 タロー ブレードC 脚部 エントリー レッグC 背部 タカオ二式 ブースターC [2番機] パイロット お惣菜 機体名 ブレイン・マッスル 胴体 エントリー ボディC 左腕 タロー シールドC 右腕 プニンゲール アックスC 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ジェットパックC 2番機のパイロット名が何か間違っている。 石狩川JETBOXERS 水上格闘ローダーバトル競技からの参戦チーム。全員で突っ込んでくるぞ! [リーダー機] パイロット G65 機体名 BORDERLINER O 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 タカオ二式 ジェットパンチC 右腕 タカオ二式 ジェットパンチC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 センパイ ジェットパックC [1番機] パイロット G66 機体名 BORDERLINER T 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 タカオ二式 ジェットパンチC 右腕 タカオ二式 ジェットパンチC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 プニンゲール マントC [2番機] パイロット G67 機体名 BORDERLINER L 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 タカオ二式 ジェットパンチC 右腕 タカオ二式 ジェットパンチC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 タカオ二式 ブースターC 武神杯の強敵。ジェットパンチで交戦距離の概念を消し飛ばしながら殴り続ける害悪戦法を取り続けるチーム。 引き撃ちも旋回戦も意味を成さないので装甲を盛って迎撃に徹しよう。各個撃破を徹底するように。 浮動機普及促進の会 日夜ホバークラフトの布教に勤しむ非営利活動法人。二脚、四脚、無限軌道に一輪車までも受容されるネオアサヒカワでは、ローダーバトルの実力をもってホバー脚の素晴らしさを説くことにしたようだ。 [リーダー機] パイロット ホバーラヴァー中村 機体名 突風号 胴体 バーナード37 ボディC 左腕 デッチ ネイルガンC 右腕 デッチ ネイルガンC 脚部 バーナード37 レッグC 背部 グリヌイユ 弾薬パックC [1番機] パイロット ニューモビリティ田山 機体名 疾風号 胴体 タカオ二式 ボディC 左腕 エントリー カタナC 右腕 エントリー カタナC 脚部 バーナード37 レッグC 背部 タロー ブースターC [2番機] パイロット フューチャーイラ神威 機体名 豪風号 胴体 オリオン号 ボディC 左腕 エントリー バズーカC 右腕 エントリー バズーカC 脚部 タカオ二式 レッグC 背部 プニンゲール ジェットパックC 天神ローダーヘッズ アマチュアリーグ昇格戦の決勝は大会運営が準備したエキシビションチームとの1戦だ。しかし、ネオエゾ最強を狙うなら絶対に勝たなければならない1戦である。今まで培った全てをぶつけろ! ※半角、全角数字が混ざっている ※恐らくネオエゾではなくネオアサヒカワ [リーダー機] パイロット ネジ 機体名 超合金一番星 胴体 デッチ ボディC 左腕 タロー ライフルC 右腕 プレール キャノンC 脚部 ウージン2500 レッグC 背部 センパイ ジェットパックC [1番機] パイロット ユーリ小星 機体名 モナリザC 胴体 モート ボディC 左腕 エントリー バズーカC 右腕 エントリー ライフルC 脚部 モート レッグC 背部 センパイ ジェットパックC [2番機] パイロット シンシア 機体名 オクトデシリオン 胴体 ダスター ボディC 左腕 グリヌイユ ガトリングC 右腕 ローフォ オートショットガンC 脚部 ウージン2500 レッグC 背部 センパイ ジェットパックC ジェットパックを装備した派手なチーム。 リーダー機、1番機が範囲攻撃持ちの為、団子になって移動してるとまとめてダメージを食らう。分散して行動を心がけるように。 僚機指示を活用してリペア持ちを後ろに待機させると良好。脳筋突撃も構わないが僚機指示も活用できると戦術の幅が一気に広がる。 ムロラン・アイアンワークス 高炉衛星を多数保有するムロラン・アイアンワークス社が運営する社会人ローダーチーム。事業所内で実際に使用されている作業用ローダーをベースに競技に参加できるよう改造を施している。戦闘スタイルは超攻撃的だ! [リーダー機] パイロット 高炉マン 機体名 スラグ・ピーラー 胴体 デッチ ボディB 左腕 デッチ ショットガンC 右腕 デッチ ショットガンC 脚部 デッチ レッグC 背部 センパイ ジェットパックB [1番機] パイロット 解体マン 機体名 デモリッション・クラブ 胴体 タカオ八式 ボディB 左腕 タカオ二式 ジェットパンチC 右腕 タカオ二式 ジェットパンチC 脚部 ラーナ レッグC 背部 タカオ八式 リペアキットB [2番機] パイロット 焼却マン 機体名 バーニング・ワーカー 胴体 オヤカタ ボディB 左腕 ストーブ バーナーB 右腕 ストーブ バーナーB 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 ウージン500 積載パックB 愛宕重工第一ワークス 愛宕重工によるワークスチーム。各部門横断プロジェクトで始動した結果、機体構成変更にも稟議が必要な運営体制となり、アマチュアリーグで身動きが取れなくなっている。操縦者の大会モチベーションは高い。 [リーダー機] パイロット 課長 機体名 競技用ローダー1号機 胴体 センパイ ボディB 左腕 センパイ マシンガンB 右腕 センパイ マシンガンB 脚部 センパイ レッグB 背部 センパイ ジェットパックB [1番機] パイロット 職長 機体名 競技用ローダー2号機 胴体 センパイ ボディB 左腕 デッチ レーザーB 右腕 デッチ レーザーB 脚部 センパイ レッグB 背部 センパイ ジェットパックB [2番機] パイロット 担当 機体名 競技用ローダー3号機 胴体 センパイ ボディB 左腕 デッチ ネイルガンB 右腕 デッチ ネイルガンB 脚部 センパイ レッグB 背部 センパイ ジェットパックB キング・オブ・ザ・ヒル 「王はむやみに動かない」を信条とする、(自称)最も高貴なぷにひ達のチーム。リーダー機は直立不動で敵と交戦し、盾役とかく乱約がその側面を支える構築。 [リーダー機] パイロット キング・プレジデンテ 機体名 丘の王 胴体 ゴリアツ ボディB 左腕 ラーナ ミサイルB 右腕 ラーナ ミサイルB 脚部 ゴリアツ レッグB 背部 ゴリアツ リペアキットC [1番機] パイロット ノーブル・シールド 機体名 王の盾 胴体 プニンゲール ボディB 左腕 ラーナ シールドC 右腕 ラーナ シールドC 脚部 プニンゲール レッグB 背部 エントリー リペアキットC [2番機] パイロット ノーブル ブレード 機体名 王の剣 胴体 タロー ボディC 左腕 タロー ブレードB 右腕 タロー ブレードB 脚部 タロー レッグC 背部 タロー ジェットパックB マジノ・バンカーズ 集団でリペアを展開しつつ、大火力でごり押しする古典派集団。電撃戦にはめっぽう弱いとのもっぱらの噂である。 [リーダー機] パイロット アンドレ 機体名 オールド・フォート 胴体 バルキー ボディB 左腕 ラーナ キャノンC 右腕 バルキー ガトリングC 脚部 ラーナ レッグB 背部 ゴリアツ リペアキットC [1番機] パイロット ヴェルダン 機体名 オールド・ランチャー 胴体 ラーナ ボディB 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーC 右腕 ラーナ ミサイルC 脚部 ラーナ レッグB 背部 ゴリアツ リペアキットC [2番機] パイロット アルパイン 機体名 オールド・ファイター 胴体 ラーナ ボディB 左腕 バルキー ガトリングC 右腕 ゴリアツ バズーカC 脚部 ラーナ レッグB 背部 ゴリアツ リペアキットC タンクス・オブ・ワールド タンク脚が最強であることを示すため、色々な大会にタンク編成で殴りこんでいるチーム。今のところ連勝を重ねているが、「タンク統一ではなくキャノン統一が強いのでは?」と疑う識者も少なくない。 [リーダー機] パイロット コミッサール 機体名 Pnhect 221 胴体 バルキー ボディB 左腕 ラーナ キャノンB 右腕 ラーナ キャノンB 脚部 オヤカタ レッグB 背部 グリヌイユ 弾薬パックB [1番機] パイロット コムラド 機体名 Pnhect 222 胴体 プレール ボディB 左腕 プレール キャノンB 右腕 プレール キャノンB 脚部 プレール レッグB 背部 グリヌイユ FCS B [2番機] パイロット コンスクリプト 機体名 Pnhect 223 胴体 グリヌイユ ボディB 左腕 タロー キャノンB 右腕 タロー キャノンB 脚部 プレール レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックB G・G ガトリングガンをこよなく愛するぷにひによって結成されたチーム。G・Gは「ガトリング・ギャングスターズ」の略。 [リーダー機] パイロット バルカンマン 機体名 ブルフロッグG 胴体 ゴリアツ ボディB 左腕 バルキー ガトリングC 右腕 バルキー ガトリングC 脚部 タカオ二式 レッグB 背部 ウージン500 積載パックC [1番機] パイロット ガトリングマン 機体名 スーパーフロッグG 胴体 ゴリアツ ボディB 左腕 グリヌイユ ガトリングB 右腕 グリヌイユ ガトリングB 脚部 ゴリアツ レッグB 背部 ゴリアツ リペアキットB [2番機] パイロット ロータリーマン 機体名 ネオフロッグG 胴体 グリヌイユ ボディC 左腕 グリヌイユ ガトリングB 右腕 グリヌイユ ガトリングB 脚部 グリヌイユ レッグC 背部 プニンゲール ジェットパックB フランク近衛騎士隊 ローダー騎士道の修行に取り組むぷにひ達。大馬力のシャーシから繰り出されるランスチャージの破壊力は驚異的だ。 [リーダー機] パイロット ロイヤルナイト 機体名 フルール・ド・リス 胴体 ウージン2500 ボディB 左腕 ウージン2500 シールドC 右腕 ウージン2500 ランスC 脚部 ウージン2500 レッグB 背部 プニンゲール マントB [1番機] パイロット キャバルリー 機体名 パラディン 胴体 ローフォ ボディB 左腕 タロー ブレードC 右腕 ウージン2500 ランスC 脚部 ウージン2500 レッグB 背部 タカオ二式 ブースターB [2番機] パイロット フランカスロウ 機体名 マンフッド 胴体 オリオン号 ボディC 左腕 プニンゲール アックスC 右腕 ウージン2500 ランスB 脚部 ウージン2500 レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックB ウンメェ~イーツ 食品デリバリーのアルバイトが一念発起、友人のタクシー運転手と中古ローダー整備士を勧誘して結成したチーム。全員運転が荒っぽいのが特徴だ。 [リーダー機] パイロット 韋駄天★馳次郎 機体名 爆走★Derivering 胴体 ウージン2500 ボディB 左腕 デッチ ネイルガンB 右腕 オヤカタ パイルキャノンB 脚部 ウージン2500 レッグB 背部 タカオ二式 ブースターB [1番機] パイロット シルバードライバー 機体名 銀色旅程 胴体 ローフォ ボディB 左腕 ウージン500 ロケットランチャーB 右腕 ゴリアツ バズーカB 脚部 ローフォ レッグB 背部 センパイ ジェットパックB [2番機] パイロット ビッグ・ダイナモ 機体名 ムービング・ピット 胴体 ローフォ ボディB 左腕 モート パイプB 右腕 ジャンクヤード マルノコB 脚部 ローフォ レッグB 背部 タカオ八式 リペアキットB リーダー機のパイロット名が異様に読みづらい。 アトリエ・ホーリー フーフォン自動車の新型ローダー開発部門で結成されたローダーチーム。グリーゼ星間ラリー参戦を主眼とした新型二輪ローダー開発が難航しており、アマチュアリーグを荒らす頻度が加速している。 [リーダー機] パイロット ホーリー 機体名 シャルル 胴体 ローフォ ボディA 左腕 ローフォ オートショットガンB 右腕 ローフォ オートショットガンB 脚部 ローフォ レッグB 背部 プニンゲール マントB [1番機] パイロット グロリア 機体名 指南車 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 モート ロケットランチャーC 右腕 タロー レーザーライフルC 脚部 モート レッグC 背部 エントリー リペアキットC [2番機] パイロット マルコ 機体名 タカオトラック(中古車) 胴体 タカオ八式 ボディB 左腕 ウージン2500 ミサイルC 右腕 ウージン2500 ミサイルC 脚部 タカオ八式 レッグB 背部 センパイ ジェットパックC オリオン三連星 オリオン号をこよなく愛する古参ファンのチーム。重量級機体特有のペイロードで圧倒してくるぞ! [リーダー機] パイロット ミンタカ 機体名 スーパーオリオン 胴体 オリオン号 ボディB 左腕 オリオン号 ガトリングB 右腕 オリオン号 ガトリングB 脚部 オリオン号 レッグB 背部 グリヌイユ 弾薬パックB [1番機] パイロット アルニラム 機体名 パワードオリオン 胴体 オリオン号 ボディB 左腕 プニンゲール アックスB 右腕 プニンゲール アックスB 脚部 オリオン号 レッグB 背部 プニンゲール マントB [2番機] パイロット アルニタク 機体名 ウルトラオリオン 胴体 オリオン号 ボディB 左腕 ラーナ キャノンB 右腕 ラーナ キャノンB 脚部 オリオン号 レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックB 二番機はジェットパックで高台に上りラーナキャノンを垂れ流す害悪戦法を取ってくる。突撃するともれなく吹き飛ばされるので迎撃の構えで人数有利を作り出そう。 浪花節だよミサイルは ミサイルが奏でる噴進音に心奪われた男声アンサンブルグループ。今日もアリーナでミサイル交響曲を噴き散らす。 [リーダー機] パイロット テノール一郎 機体名 歌唱号 胴体 タロー ボディC 左腕 オヤカタ ミサイルB 右腕 オヤカタ ミサイルB 脚部 グリヌイユ レッグB 背部 センパイ ジェットパックC [1番機] パイロット バリトン次郎 機体名 熱唱号 胴体 プニンゲール ボディC 左腕 ウージン2500 ミサイルB 右腕 ウージン2500 ミサイルB 脚部 プニンゲール レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックC [2番機] パイロット バス三郎 機体名 絶唱号 胴体 オリオン号 ボディC 左腕 ラーナ ミサイルC 右腕 ラーナ ミサイルC 脚部 オリオン号 レッグC 背部 プニンゲール マントC 浪花節(なにわぶし)と読む。元ネタは「浪花節だよ人生は」という曲。今時の人に伝わらんぞ。 トリプル★タイムス 何かを通常の三倍にしないと気が済まないぷにひ達のチーム。最近は通常のランカーの三倍ジャンプするようにしているらしい。 [リーダー機] パイロット 赤星★三倍男 機体名 レッド・コメット 胴体 タロー ボディC 左腕 ゴリアツ バズーカC 右腕 ゴリアツ バズーカC 脚部 タカオ二式 レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックB [1番機] パイロット 赤井 警告 機体名 レッド・ガジェット 胴体 バーナード37 ボディB 左腕 タロー バズーカC 右腕 タロー バズーカC 脚部 バーナード37 レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックB [2番機] パイロット レッド・デッド・ニンジャ 機体名 レッド・ブラッド 胴体 ウージン500 ボディC 左腕 タカオ二式 ロケットポッドC 右腕 タカオ二式 ロケットポッドC 脚部 バーナード37 レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックB 二番機パイロットはネオサイタマ出身と思われる。 チーム正統派 「他企業・多機種の混載は邪道」と主張し、同一企業の同一機種で構築したローダーのみを使用するチーム。戦法についても奇策など用いず、盾持ちが前面に立つ堅実な連携を見せる。 [リーダー機] パイロット 普通マン 機体名 オーソドクシア 胴体 センパイ ボディB 左腕 センパイ マシンガンB 右腕 センパイ マシンガンB 脚部 センパイ レッグB 背部 センパイ ジェットパックB [1番機] パイロット 標準マン 機体名 素材の味 胴体 タロー ボディB 左腕 タロー ライフルB 右腕 タロー シールドB 脚部 タロー レッグB 背部 タロー ブースターB [2番機] パイロット 安定マン 機体名 不変伝統 胴体 タカオ二式 ボディB 左腕 タカオ二式 ロケットポッドB 右腕 タカオ二式 ロケットポッドB 脚部 タカオ二式 レッグB 背部 タカオ二式 ブースターB 極悪屋一家 ローダーパーツの卸を営む裕福なぷにひが、道楽のためだけに結成したチーム。軽快な足回りと重厚な攻防性能の両立を目指した、異様な外見のローダーを駆る。 [リーダー機] パイロット 極悪屋邪乃介 機体名 非道王 胴体 タカオ八式 ボディB 左腕 ラーナ キャノンB 右腕 ゴリアツ バズーカB 脚部 ウージン500 レッグB 背部 ウージン500 積載パックB [1番機] パイロット 極悪屋暴太夫 機体名 無法丸 胴体 オヤカタ ボディB 左腕 オヤカタ パイルキャノンB 右腕 オヤカタ パイルキャノンB 脚部 デッチ レッグB 背部 ウージン500 積載パックB [2番機] パイロット 極悪屋凶兵衛 機体名 違憲松 胴体 バルキー ボディB 左腕 プレール ミサイルB 右腕 プレール ミサイルB 脚部 エントリー レッグB 背部 ウージン500 積載パックB リーサルランバーズ ネオアサヒカワ開拓時代から続く由緒正しい林業会社のチームだ。大斧とショットガンの強烈な一撃に気を付けろ! [リーダー機] パイロット 鉈 振男 機体名 錻力の樵号 胴体 オリオン号 ボディB 左腕 プニンゲール アックスC 右腕 プニンゲール アックスC 脚部 オリオン号 レッグB 背部 プニンゲール ジェットパックC [1番機] パイロット 草林 刈太郎 機体名 羆に用心号 胴体 デッチ ボディC 左腕 タカオ八式 ショットガンB 右腕 タカオ八式 ショットガンB 脚部 エントリー レッグB 背部 ウージン500 積載パックC [2番機] パイロット 山林 間伐斎 機体名 丸太の運び屋号 胴体 タカオ八式 ボディB 左腕 オヤカタ ミサイルB 右腕 オヤカタ ミサイルB 脚部 タカオ八式 レッグB 背部 タカオ八式 リペアキットC 漢字が読みづらい。 南部最速運送協会 ネオエゾ南部を縄張りとする運送業者達によるローダーチーム。物流業界の合理化が進んだ後も、未開拓路やバイオ生物攻撃に晒されるルートでは個人武装トラックによる高速輸送が絶大な信頼を獲得している。 [リーダー機] パイロット ジロー 機体名 明星号 胴体 タカオ八式 ボディB 左腕 モート サブマシンガンB 右腕 エントリー カタナB 脚部 タカオ八式 レッグB 背部 センパイ ジェットパックC [1番機] パイロット 初芝 機体名 雲雀号 胴体 タカオ八式 ボディB 左腕 モート パイプB 右腕 モート パイプB 脚部 タカオ八式 レッグC 背部 プニンゲール マントB [2番機] パイロット 熊左衛門 機体名 極北号 胴体 タカオ八式 ボディB 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーC 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーC 脚部 タカオ八式 レッグB 背部 センパイ ジェットパックB ネオアサヒカワ市警機動隊 ネオアサヒカワ市警機動隊第二中隊所属。言うまでもなく精鋭であり、市警のイメージアップ及び新規採用者募集活動の一環として大会に参戦した。 [リーダー機] パイロット アンシン警部補 機体名 重外骨格(所属改造品) 胴体 ゴリアツ ボディB 左腕 バーナード37 サブマシンガンB 右腕 タカオ二式 ジェットパンチB 脚部 グリヌイユ レッグB 背部 エントリー リペアキットB [1番機] パイロット アンゼン巡査部長 機体名 市警制式重外骨格 胴体 ゴリアツ ボディB 左腕 タロー シールドB 右腕 エントリー ショットガンB 脚部 グリヌイユ レッグB 背部 エントリー リペアキットB [2番機] パイロット コウボク巡査長 機体名 市警制式軽外骨格 胴体 エントリー ボディB 左腕 エントリー シールドB 右腕 エントリー ジッテB 脚部 エントリー レッグB 背部 エントリー ブースターB アイゼン戦闘団 ミリタリー・オタクのぷにひ達が結成したチーム。爆発系武器を多用し、中距離から遠距離での撃ち合いにめっぽう強い。 [リーダー機] パイロット アイゼン少尉 機体名 誘導噴進弾Type-P射出機 胴体 ゴリアツ ボディB 左腕 プレール ミサイルC 右腕 プレール ミサイルC 脚部 オヤカタ レッグB 背部 ゴリアツ リペアキットC [1番機] パイロット クロイツ軍曹 機体名 八式突撃砲闘技戦仕様 胴体 ラーナ ボディB 左腕 ラーナ キャノンB 右腕 ラーナ シールドC 脚部 タカオ八式 レッグB 背部 グリヌイユ FCS B [2番機] パイロット エーカー1等兵 機体名 E型機動重無反動砲 胴体 エントリー ボディB 左腕 ゴリアツ バズーカC 右腕 ゴリアツ バズーカC 脚部 エントリー レッグB 背部 ウージン500 積載パックB オクシレトコ第二空挺猟友会 開拓の最前線であるオクシレトコ地区でバイオヒグマ・ネスト攻略を目標として掲げる空挺マタギ集団。オクシレトコの猟期となる冬季以外はローダーバトルなどで猟友会への参加を呼び掛けている。 [リーダー機] パイロット クマ狩りのレツ 機体名 戦人(教習用) 胴体 エントリー ボディB 左腕 エントリー バズーカB 右腕 エントリー ショットガンB 脚部 エントリー レッグB 背部 タロー ジェットパックB [1番機] パイロット クマ狩りのリク 機体名 特火点(教習用) 胴体 ラーナ ボディB 左腕 エントリー ライフルB 右腕 エントリー ライフルB 脚部 グリヌイユ レッグB 背部 エントリー FCS B [2番機] パイロット クマ狩りのレオ 機体名 白兵格闘機(教習用) 胴体 プレール ボディB 左腕 ウージン2500 シールドB 右腕 プニンゲール アックスB 脚部 ストーブ レッグB 背部 プニンゲール マントB 機体名に教習用と記載されているあたり狩猟用はより強力なモデルを採用しているものと思われる。 大光真宗 光芒寺から分裂し、本流の座を賭けて抗争中の派閥。本流が光度の高さを重視する一方、こちらは光量の大きさを重視している。思想を反映してか、ローダーにも重量級のレーザーを搭載する。 [リーダー機] パイロット 大光師 機体名 大光芒師 胴体 プレール ボディB 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーB 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーB 脚部 バルキー レッグB 背部 プニンゲール マントB [1番機] パイロット 爆光師 機体名 大光芒師 胴体 プレール ボディB 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーB 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーB 脚部 バルキー レッグB 背部 プニンゲール マントB [2番機] パイロット 散光師 機体名 大光芒師 胴体 プレール ボディB 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーB 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーB 脚部 バルキー レッグB 背部 プニンゲール マントB 射程が長く、威力の高いレーザーを集団で浴びせてくる宗教団体。塊になってお遍路をするのは変わらず。不用意に近づくと1体づつ焼き殺されるので射程外からキャノンをぶち込み、近寄るならシールドで防ぐと良い。 ルーキーズ アマチュアリーグに昇格しメキメキと頭角を現してきた若きチーム。風の噂ではトップランカーに師事することが出来たらしい。フォーメーションに更に磨きをかけている。 [リーダー機] パイロット イスヒ 機体名 トゥドハリヤⅡ 胴体 グリヌイユ ボディB 左腕 ラーナ シールドB 右腕 グリヌイユ ガトリングB 脚部 グリヌイユ レッグB 背部 タカオ八式 リペアキットB [1番機] パイロット シハヒ 機体名 アヌルワンダⅡ 胴体 センパイ ボディB 左腕 タカオ二式 ミサイルB 右腕 タロー ライフルB 脚部 タカオ二式 レッグB 背部 タロー ブースターB [2番機] パイロット ソヒヒ 機体名 ハットゥシリⅡ 胴体 プニンゲール ボディB 左腕 プニンゲール レーザーB 右腕 プニンゲール レーザーB 脚部 プニンゲール レッグB 背部 プニンゲール マントB ジャンクリーグで出会ったルーキーズとの再戦。 全機遮蔽に陣取り、チマチマと攻撃を仕掛けてくるようになった。 リペア持ちのリーダー機をガン無視し、先に1番機と2番機を仕留めると楽。リーダー機を先に攻撃するとリペアで全体を回復されてしまう。 ホーネッツ・ネスト ネオアサヒカワの養蜂業界による宣伝部隊として結成されたが、予想外に強くプロリーグ入り、さらには単独黒字化まで果たしたチーム。高火力武器を高度な管制装置で補助し、正確無比な射撃を繰り出す。 [リーダー機] パイロット 蜂谷 蜜賀城 機体名 女王蜂 胴体 センパイ ボディA 左腕 オヤカタ パイルキャノンA 右腕 オヤカタ パイルキャノンA 脚部 タカオ八式 レッグA 背部 グリヌイユ FCS A [1番機] パイロット 蜂村 蜜衛門 機体名 兵隊蜂 胴体 ローフォ ボディA 左腕 タロー キャノンA 右腕 タロー キャノンA 脚部 ローフォ レッグA 背部 エントリー FCS A [2番機] パイロット 蜂田 蜜次郎 機体名 労働蜂 胴体 デッチ ボディA 左腕 デッチ ネイルガンA 右腕 デッチ ネイルガンA 脚部 モート レッグA 背部 ウージン500 FCS A 中、近距離から高精度に砲弾を叩き込むチーム。遮蔽を活用してじわじわ削ってくる。 塊で動くので、キャノンで一網打尽にすると良いだろう。陽動機がいるとなお良し。 使用する武装は非爆発物。盾で弾けばパイルキャノンもノーダメージである。 PUNIHIZ PUNIHIZ(プニヒズ)はネオアサヒカワ出身の3ピースロックバンド。若いローダーパイロットから絶大な人気を誇る。曰く「バンドは副業」であり、ネオアサヒカワリーグでは息の合ったプレイで相手を粉砕する。 [リーダー機] パイロット シンディ 機体名 カムバック 胴体 ローフォ ボディA 左腕 タカオ二式 ロケットポッドA 右腕 ローフォ ダブルバレルショットガンA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 エントリー ブースターA [1番機] パイロット ゴールデン稲沢 機体名 16ビーター 胴体 ローフォ ボディA 左腕 タロー ガトリングA 右腕 タロー ガトリングA 脚部 ストーブ レッグA 背部 エントリー ブースターA [2番機] パイロット サイケデリック伝説 機体名 木春菊 胴体 ローフォ ボディA 左腕 バーナード37 ハンドガンA 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーA 脚部 グリヌイユ レッグA 背部 エントリー ブースターA 全体的に機動力が高く、火力も優秀な厄介なチーム。 クソデカレーザーやダブルバレルショットガンなど、厄介な武装も散見される。陣形も崩されやすく、ブースターによる回避がかなり目立つ。 FCSパックを積んだダブルバレルショットガンでさっさとケリを付けよう。相手にリペア持ちはいないので長期戦ならコチラに分がある。 オリオンカルテット オリオンホビーが誇る社内最強のワークスチーム。近距離~中距離を意識した編成で高い爆発力を誇る。熱血のレッド、インテリのブルー、斬込み役のピンク、司令塔イエローの4ぷにひによって構成される。 [リーダー機] パイロット オリオン・レッド 機体名 カスタムタロー 胴体 タロー ボディA 左腕 タロー ガトリングA 右腕 タロー バズーカA 脚部 タロー レッグA 背部 タロー ジェットパックA [1番機] パイロット オリオン・ブルー 機体名 チョッパー 胴体 バーナード37 ボディA 左腕 オリオン号 ガトリングA 右腕 オリオン号 ガトリングA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 ウージン500 FCS A [2番機] パイロット オリオン・ピンク 機体名 シュレッダー 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 タロー ブレードA 右腕 エントリー カタナA 脚部 タロー レッグA 背部 プニンゲール マントA 編成バランスの良い強敵。 2番機の突撃で自陣形を切り崩し、1番機が丁寧に遠距離狙撃、リーダー機が上空からバズーカを撃ち下ろしてくる。 遮蔽を駆使しつつ1番機の射線を切り、リーダー機は味方の陽動で戦力を分散させよう。幸い装甲は全体的に薄いので火力を叩き込めば容易に沈む。 散弾三銃士 ショットガンだけを用いる編成でジャンクリーグからプロまで駆け上がった実力者。短射程という弱点を補うため、突撃と散開を繰り返す独特な戦法を編み出した。 [リーダー機] パイロット 公道に奔る電光 機体名 ロード・レイジ 胴体 ウージン2500 ボディA 左腕 ローフォ オートショットガンA 右腕 ローフォ オートショットガンA 脚部 ローフォ レッグA 背部 プニンゲール マントA [1番機] パイロット 水面を蹴る疾風 機体名 デス・スプラッシュ 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 タカオ八式 ショットガンA 右腕 タカオ八式 ショットガンA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 タカオ二式 ブースターA [2番機] パイロット 急峻に上る紫煙 機体名 スウィフト・ボーイ 胴体 デッチ ボディA 左腕 ローフォ ダブルバレルショットガンA 右腕 ローフォ ダブルバレルショットガンA 脚部 エントリー レッグA 背部 センパイ ジェットパックA プロリーグ内でもかなりの強敵。 特に危険なのがダブルバレルショットガン持ちの2番機。威力と射程が高く、ショットガンにあるまじき距離からHPをモリっと持っていく。 機動力は高いがその分装甲に難あり。迎撃の構えで着実に仕留めよう。 ブークリエ・ド・モーリス モーリスコンクリートが運営するワークスチーム。軍部を始め多くの業界への営業が主目的の宣伝部隊だが、「動く要塞」と呼ばれる実力は本物だ。 [リーダー機] パイロット 森田 機体名 プレール 胴体 プレール ボディA 左腕 ラーナ ミサイルA 右腕 ラーナ ミサイルA 脚部 プレール レッグA 背部 ゴリアツ リペアキットA [1番機] パイロット 軽川 機体名 ゴリアツ 胴体 ゴリアツ ボディA 左腕 プレール キャノンA 右腕 プレール キャノンA 脚部 ゴリアツ レッグA 背部 プニンゲール ジェットパックA [2番機] パイロット 馬場 機体名 グリヌイユ 胴体 グリヌイユ ボディA 左腕 グリヌイユ ガトリングA 右腕 グリヌイユ ガトリングA 脚部 グリヌイユ レッグA 背部 グリヌイユ FCS A 非常に厄介な編成の重装ローダーチーム。 リペア持ちのリーダー機、ジェットパックでトップアタックを仕掛ける1番機、FCSパックでチマチマ削ってくる2番機とどの敵機も厄介。リーダー機を沈めようと躍起になっていると上空からキャノンで吹き飛ばされる。先に仕留めるべきはジェットパック持ちの1番機。 どいつもこいつも装甲値が高く、遮蔽まで活用してくる徹底ぶり。一撃離脱戦法で一気に火力を叩き込もう。 愛宕重工第三ワークス 愛宕重工が投入する最強のワークスチーム。メーカー最後発の参戦ながら徹底的に戦法の無駄を削ぎ落としたチーム編成で、観客から若干のひんしゅくを買いながらも連日高い戦績を上げている。別名「愛宕銀行」。 [リーダー機] パイロット 顧問 機体名 センパイ・リーダー 胴体 センパイ ボディA 左腕 デッチ レーザーA 右腕 デッチ レーザーA 脚部 センパイ レッグA 背部 ゴリアツ リペアキットA [1番機] パイロット 主幹 機体名 オヤカタ・ワーカー 胴体 オヤカタ ボディA 左腕 センパイ マシンガンA 右腕 センパイ マシンガンA 脚部 オヤカタ レッグA 背部 グリヌイユ 弾薬パックA [2番機] パイロット 主査 機体名 オヤカタ・ワーカー 胴体 オヤカタ ボディA 左腕 センパイ マシンガンA 右腕 センパイ マシンガンA 脚部 オヤカタ レッグA 背部 グリヌイユ 弾薬パックA リペア持ちのリーダー機、継続火力の高い1番機、2番機で構成されたチーム。 説明とは裏腹にリーダー機を釣って消し飛ばせば後は棺桶だけが残る。旋回性能の低さが完全な弱点となっている。 ブラックナイツ ローダーバトルは貴族の嗜み。ネオアサヒカワの華族、スゴクデカイ一世はネオアサヒカワリーグでも存在感を示している。巨大ローダーから繰り出される巨大攻撃に注意しろ! [リーダー機] パイロット スゴクデカイ1世 機体名 デカイ・バズーカ号 胴体 タカオ八式 ボディA 左腕 ゴリアツ バズーカA 右腕 ゴリアツ バズーカA 脚部 タカオ八式 レッグA 背部 グリヌイユ FCS A [1番機] パイロット バトラー大釘 機体名 クルイ・キャノン号 胴体 オヤカタ ボディA 左腕 オヤカタ パイルキャノンA 右腕 オヤカタ パイルキャノンA 脚部 タカオ八式 レッグA 背部 ウージン500 FCS A [2番機] パイロット 庭園の巨大翁 機体名 アホ・アックス号 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 プニンゲール アックスA 右腕 プニンゲール アックスA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 プニンゲール マントA ジャンクリーグで出会ったブラックナイツがプロリーグでも登場。 単発火力高めの装備が多いが、リロードか射程に難を抱えている。遮蔽でいなして旋回戦に持ち込みたい所。 第七特科師団選抜小隊 ネオアサヒカワ帝国陸軍最新鋭の砲兵師団から腕利きのローダー乗りを選抜して編成されたチーム。装甲を生かした直接照準射撃に定評がある。派手モノ好きのぷにひたちからの人気も厚い。 ※誤字により「装甲を生かした」となっている。 [リーダー機] パイロット 准陸尉 機体名 65式重歩行指揮車 胴体 ゴリアツ ボディA 左腕 グリヌイユ ガトリングA 右腕 グリヌイユ ガトリングA 脚部 ラーナ レッグA 背部 グリヌイユ 弾薬パックA [1番機] パイロット 陸曹長 機体名 65式重歩行榴弾砲A 胴体 ゴリアツ ボディA 左腕 ラーナ キャノンA 右腕 ラーナ キャノンA 脚部 ラーナ レッグA 背部 グリヌイユ FCS A [2番機] パイロット 1等陸曹 機体名 65式重歩行榴弾砲B 胴体 ゴリアツ ボディA 左腕 ラーナ キャノンA 右腕 ラーナ キャノンA 脚部 ラーナ レッグA 背部 グリヌイユ FCS A 超重装甲の4脚ゴリラ共。 遠距離からのFCSパックを用いた狙撃が強力で、基本的には遮蔽を駆使した散開戦術を用いて1体づつ制したい。 幸い、リペア持ちは居ないので長期戦を挑めば勝てる。観客からはブーイングの嵐が来そうだが。 真・光芒寺一門 もっぱらジャンクリーグで布教に勤しんでいる光芒寺一門だが、実は自宗派の権威付けのためプロリーグにも登録していたりする。当然、より強力なパーツに換装した機体を持ち込んでいるぞ。 [リーダー機] パイロット 光沢師 機体名 超光芒大師 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 プニンゲール レーザーA 右腕 プニンゲール レーザーA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 ゴリアツ リペアキットA [1番機] パイロット 反射師 機体名 超光芒大師 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 プニンゲール レーザーA 右腕 プニンゲール レーザーA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 ゴリアツ リペアキットA [2番機] パイロット 鏡面師 機体名 超光芒大師 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 プニンゲール レーザーA 右腕 プニンゲール レーザーA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 ゴリアツ リペアキットA グレードAでも戦術は変わらず。 レーザーの火力は上がったものの、射程は低下しているので付かず離れずを維持すれば比較的楽に処理可能。 範囲型リペアを積んでいるが、味方の体力減少には使用しないので1体づつ仕留めると良いだろう。 トカチ重装機師団 広大なトカチ一帯が勢力下であると主張している私設重装機師団。その重装甲に物を言わせた突撃戦術で幾多のチームを粉砕してきた。騎士団の協議に後退の二文字は存在しない。 [リーダー機] パイロット グリエール 機体名 トカチ重装騎士 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 ウージン2500 シールドA 右腕 タロー ブレードA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 プニンゲール マントA [1番機] パイロット パルメザン 機体名 トカチ戦列破壊兵 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 プニンゲール アックスA 右腕 プニンゲール アックスA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [2番機] パイロット カマンベール 機体名 トカチ重槍兵 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 ウージン2500 シールドA 右腕 ウージン2500 ランスA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 プニンゲール マントA モノノフ・レーシング ネオアサヒカワ華族の跡取り達によって構成されるプロチーム。高速移動しながら斬撃を叩き込んでくるぞ! [リーダー機] パイロット スエヒロ 機体名 神速武将 胴体 ローフォ ボディA 左腕 エントリー カタナA 右腕 エントリー カタナA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 エントリー リペアキットA [1番機] パイロット アンセスター武田 機体名 ロケット足軽 胴体 バーナード37 ボディA 左腕 エントリー カタナA 右腕 タカオ二式 ジェットパンチA 脚部 エントリー レッグA 背部 プニンゲール マントA [2番機] パイロット カキザキJr 機体名 連撃旗本 胴体 ウージン500 ボディA 左腕 エントリー ジッテA 右腕 エントリー カタナA 脚部 ローフォ レッグA 背部 タロー ジェットパックA 武神杯の強敵その1。 刀をぶん回しながら高機動で襲い掛かるリーダー機がかなり厄介。装甲厚いわリペア持ちだわすばしっこいわで鬱陶しい事この上ない。 残りの2機も厄介だが、装甲にやや難を抱えているのでまだマシ。リーダー機を真っ先に仕留める事。 石狩川JETBOXERS 真の力を開放したジェットボクシングチーム。立ちふさがるものをすべて粉砕する。全機にジェットパックを搭載したため、もう相手に逃げ場はない。 [リーダー機] パイロット G65 機体名 BORDERLINER O MK3 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 タカオ二式 ジェットパンチA 右腕 タカオ二式 ジェットパンチA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 タロー ジェットパックA [1番機] パイロット G66 機体名 BORDERLINER T MK3 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 タカオ二式 ジェットパンチA 右腕 タカオ二式 ジェットパンチA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 タロー ジェットパックA [2番機] パイロット G67 機体名 BORDERLINER L MK3 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 タカオ二式 ジェットパンチA 右腕 タカオ二式 ジェットパンチA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 タロー ジェットパックA 武神杯の強敵その2。ジャンクリーグの悪夢再び。 ジェットパックを装備しているため文字通り逃げ場が無くなった。重装甲で磨り潰そう。 余談だが装備構成が3機とも同一。色が違うのみ。 ルーキーズ ネオアサヒカワリーグにおいても快進撃を続け、シーズン最終戦に招待枠で殴り込みをかけた若きチーム。最高のフォーメーションで貴方を迎え撃つ。 [リーダー機] パイロット イスヒ 機体名 トゥドハリヤⅢ 胴体 グリヌイユ ボディA 左腕 グリヌイユ ガトリングA 右腕 タロー シールドA 脚部 ストーブ レッグA 背部 タカオ八式 リペアキットA [1番機] パイロット シハヒ 機体名 アヌルワンダⅢ 胴体 センパイ ボディA 左腕 ウージン2500 ミサイルA 右腕 タロー キャノンA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 タロー ブースターA [2番機] パイロット ソヒヒ 機体名 ハットゥシリⅢ 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 プニンゲール レーザーA 右腕 プニンゲール レーザーA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 ゴリアツ リペアキットA ルーキーズが三度登場。プロリーグで更に強くなった。 リペア持ちが2機に増え、更にレーザーでゴリゴリ削ってくる。 最初に仕留めるべきは1番機。全体的に装甲値が高い構成なので長期戦は覚悟の上で。 天神ローダーヘッズ リスクを顧みないド派手なバトルスタイルで人気を博すネオアサヒカワ最強のチーム。会場を盛り上げバトルを楽しむことを信条としている。かかってこいや! [リーダー機] パイロット ネジ 機体名 超合金一番星改 胴体 デッチ ボディA 左腕 ウージン2500 ランスA 右腕 エントリー カタナA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [1番機] パイロット ユーリ小星 機体名 モナリザ 胴体 ダスター ボディA 左腕 ゴリアツ バズーカA 右腕 グリヌイユ ガトリングA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [2番機] パイロット シンシア 機体名 ノベンデシリオン 胴体 ダスター ボディA 左腕 グリヌイユ ガトリングA 右腕 タカオ八式 ショットガンA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA ジェットパックの出力を上げ再び現れた運営側の連中。上下の動きが素早く、攻撃がかなり当てづらい。弾速の高めの武器を事前に用意しておく事。 爆発物の持ち込みは少なく、対集団戦にはやや弱い傾向にある。固まって行動しよう。 三田兄弟チームA チャリティーローダーバトル興行で有名な三田一族の中でも若手のチーム。とは言えフォート・ワッカナイローダーバトル協会のプロリーグに所属する実力者だ。上空からレーザーを撃ちまくるド派手な戦闘スタイルでアリーナを魅了する。 [リーダー機] パイロット 三田A 機体名 ニコライ 胴体 モート ボディA 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーA 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーA 脚部 ストーブ レッグA 背部 プニンゲール ジェットパックA [1番機] パイロット 三田B 機体名 ブリッツェン 胴体 ストーブ ボディA 左腕 タロー レーザーライフルA 右腕 タロー レーザーライフルA 脚部 ローフォ レッグA 背部 センパイ ジェットパックA [2番機] パイロット 三田C 機体名 コメット 胴体 ストーブ ボディA 左腕 プニンゲール レーザーA 右腕 プニンゲール レーザーA 脚部 ローフォ レッグA 背部 センパイ ジェットパックA Ver0.5007にて追加されたチーム。 散開して上空からレーザーをまき散らす連中。遮蔽に隠れても別の機体が焼いてくるため少なくとも1機は撃破しないとかなり苦しい展開となる。 射程は全体的に長いが、リロードが遅くやや隙が大きい。地上に降りたタイミングで一気に叩こう。また、範囲攻撃は持たないので集団で動くと良い。 光芒寺聖夜会 ネオアサヒカワの名門チーム光芒寺一門は毎年この時期になると普段は使用しない小型レーザー火器を両手に抱えて三田一族とアツい交流戦を繰り広げている。フォート・ワッカナイリーグにはレーザー火器の使い手が多く、とても刺激を受けているとのこと。 [リーダー機] パイロット 電飾師 機体名 光芒僧 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 デッチ レーザーA 右腕 デッチ レーザーA 脚部 ストーブ レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [1番機] パイロット 大星師 機体名 光芒僧 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 デッチ レーザーA 右腕 デッチ レーザーA 脚部 ストーブ レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [2番機] パイロット 点滅師 機体名 光芒僧 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 デッチ レーザーA 右腕 デッチ レーザーA 脚部 ストーブ レッグA 背部 ダスター ジェットパックA Ver0.5007にて追加されたチーム。 光芒寺一門クリスマス仕様。 全員突っ込んでくる。ジェットパックで空からレーザーをぶちかます姿はとても鬱陶しいキレイ。 機体構成は全員同じなので大した脅威とはならない。砲撃手に焼いてもらおう。 三田兄弟チームX フォート・ワッカナイのチャンピオンチーム。新たな強敵を求め、ローダーバトルの聖地ネオアサヒカワに現れた。チャリティーとしてローダーバトル興行を催すうちに自らもパイロットとして参戦した挙句、地元最強のチームとなった経緯を持つ。 [リーダー機] パイロット 三田X 機体名 ニコラウス 胴体 タカオ八式 ボディA 左腕 プレール キャノンA 右腕 ラーナ キャノンA 脚部 オヤカタ レッグA 背部 エントリー リペアキットA [1番機] パイロット 三田Y 機体名 ループレヒト 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 タカオ二式 ジェットパンチA 右腕 ローフォ ダブルバレルショットガンA 脚部 ストーブ レッグA 背部 プニンゲール マントA [2番機] パイロット 機体名 クランプス 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 ローフォ ダブルバレルショットガンA 右腕 タカオ二式 ジェットパンチA 脚部 ストーブ レッグA 背部 プニンゲール マントA Ver0.5007にて追加されたチーム。 ガチタンと強襲機2体の相手をする。ガチタンは旋回が死んでいるので強襲機を1体づつ料理しよう。強襲機はふざけた機動力で突進してくる。速すぎて旋回が追いついておらず、上手く立ち回れば自機をぐるぐるし続ける的になり下がる。 ガチタンは放置安定。火力と装甲はしっかりあるので片づける際は遮蔽をしっかり活用する事。 ネオエゾ・ドラグーン 惑星ネオ・エゾを旅しながら各地の大会に参加し日銭を稼いでいるチーム。彼らがアップロードした旅動画が人気を集めており、広告収入でローダーを改造しファイトマネーは修理費に消えるとのこと。射撃の腕は確かだ。 [リーダー機] パイロット ドラグーン保世 機体名 ブランダーバス01 胴体 タロー ボディA 左腕 エントリー ショットガンA 右腕 エントリー ライフルA 脚部 ローフォ レッグA 背部 タロー ブースターA [1番機] パイロット ドラグーン加藤 機体名 ブランダーバス02 胴体 タロー ボディA 左腕 エントリー ショットガンA 右腕 エントリー ライフルA 脚部 ローフォ レッグA 背部 タロー ブースターA [2番機] パイロット ドラグーン立花 機体名 ブランダーバス03 胴体 タロー ボディA 左腕 エントリー ショットガンA 右腕 エントリー ライフルA 脚部 ローフォ レッグA 背部 タロー ブースターA Ver0.5008にて追加されたチーム。 引き撃ちライフル&SG機*3。機体構成は完全に同一。単体の性能は高くないが戦術が妙に厄介。遮蔽を活用してライフルでチマチマ削って来るわどうにかして近寄るとショットガンで抉られるわで面倒な相手。 仕留めること自体は容易。ブースターで回避されやすいので連射武器かFCSパックのどちらかを搭載推奨。 旅動画の広告収入でグレードAのフレームを購入している辺りかなりの有名投稿者と考えられる。 ソーヤ・サンライズ フォート・ワッカナイのプロリーグに所属するチームだが、メンバーは全員ネオアサヒカワでローダー修理店を営んでいる。ケープ・ソーヤで初日の出を見ることに命を懸けており、降雪が多い年はバーナーで道を切り開く。 [リーダー機] パイロット バルバラ 機体名 ジギスムント 胴体 ウージン2500 ボディA 左腕 ストーブ バーナーA 右腕 タロー ブレードA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 プニンゲール マントA [1番機] パイロット ボンテンマル 機体名 クレセントムーン 胴体 モート ボディA 左腕 ストーブ バーナーA 右腕 エントリー カタナA 脚部 モート レッグA 背部 プニンゲール マントA [2番機] パイロット シリュウ 機体名 リンドウ 胴体 モート ボディA 左腕 ストーブ バーナーA 右腕 ウージン2500 ランスA 脚部 モート レッグA 背部 プニンゲール マントA Ver0.5008にて追加されたチーム。 近接武器と火炎放射器を持った世紀末なアセン。見た目はモヒカンではない。 機動力が高く、陣形を容易に切り崩してくる。その分装甲は薄く、車輪系なので旋回も低い方。マントで強化しているがうまく躱せれば攻撃のチャンス。各個撃破を前提に。 ネオアサヒカワ神仏連合 ネオアサヒカワの様々な催事を取り仕切る由緒正しきチーム。惑星開拓時代に宗教対立を防ぐために設立されたローダーチームの直系とされている。重装甲機体で編隊を組むクラッシックな戦術はシンプルながら強力で、多くの挑戦者に初心を思い出させるという。 [リーダー機] パイロット チーフプリースト竹林 機体名 バンブーキャノン 胴体 バルキー ボディA 左腕 ラーナ キャノンA 右腕 ラーナ キャノンA 脚部 バルキー レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [1番機] パイロット シュラインメイデン笹木 機体名 バンブーオラクル壱号 胴体 バルキー ボディA 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーA 右腕 タカオ八式 ショットガンA 脚部 タカオ八式 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [2番機] パイロット シュラインメイデン笹本 機体名 バンブーオラクル弐号 胴体 バルキー ボディA 左腕 タカオ八式 ショットガンA 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーA 脚部 タカオ八式 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA Ver0.5008にて追加されたチーム。 重装甲、ジェットパック持ちのチーム。 リーダー機がキャノンを撃ち下ろし、1番機、2番機が全距離対応でじわじわ削る。 ラーナキャノンは脅威だが、リロードが遅いので回復に弱い。残りの僚機は旋回が死んでいるので後ろを取ってショットガンを打ち込むと沈む。説明通り重装機の初心を思い出して相手しよう。ジェットパックの退避には注意。 どう見てもカビた鏡餅。 天神ローダーヘッズ 今シーズン準優勝のプロチーム。運命の悪戯かネオアサヒカワリーグ決勝進出チームが初戦で潰し合う展開に観客のボルテージは最初から最高潮だ! [リーダー機] パイロット ネジ 機体名 超合金一番星改 胴体 センパイ ボディA 左腕 ウージン2500 ランスA 右腕 エントリー カタナA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [1番機] パイロット ユーリ小星 機体名 モナリザ 胴体 ダスター ボディA 左腕 ゴリアツ バズーカA 右腕 グリヌイユ ガトリングA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA [2番機] パイロット シンシア 機体名 ノベンデシリオン 胴体 ダスター ボディA 左腕 グリヌイユ ガトリングA 右腕 タカオ八式 ショットガンA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 ダスター ジェットパックA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 EXリーグの初戦に運営側チームとのバトル。 装備はほぼ変わっておらず、唯一リーダー機が少し頑丈になった程度。要はネオアサヒカワリーグでの戦闘と同等。固まって行動すればさして脅威でもないだろう。 スシ・ナイツ 古代より伝わる「スシ」の食文化を全宇宙に広げることを教義とした自称騎士団。「スシ」に全財産を投じているため常に自転車操業だが、ローダー費全額補助が出る本大会は逃さまいと全力で協会に圧力をかけジャンクリーグ招待枠として出場 [リーダー機] パイロット スシ・ナイト 機体名 サー・アイアン・ニギリ 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 タロー シールドA 右腕 ローフォ オートショットガンA 脚部 ストーブ レッグA 背部 タロー ブースターA [1番機] パイロット ローリング卿 機体名 サー・ガンファイア 胴体 バルキー ボディA 左腕 モート サブマシンガンA 右腕 モート サブマシンガンA 脚部 ストーブ レッグA 背部 グリヌイユ 弾薬パックA [2番機] パイロット ウェルダー卿 機体名 サー・バーニング・アブリ 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 ストーブ バーナーA 右腕 エントリー カタナA 脚部 タロー レッグA 背部 プニンゲール マントA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 ジャンクリーグのスシ大好き集団がEXリーグにご登場。 中距離から削ってくる1番機、接近戦で陣形崩しを狙う2番機、そして横から散弾を垂れ流すリーダー機で構成される。リーダー機は盾を持っているだけあってそこそこしぶとい。先に僚機を始末してから料理しよう。 PUNIHIZ PUNIHIZ(プニヒズ)はネオアサヒカワ出身の3ピースロックバンド。若いローダーパイロットから絶大な人気を誇る。ネオアサヒカワリーグ招待枠として参戦。 [リーダー機] パイロット シンディ 機体名 カムバック 胴体 ローフォ ボディA 左腕 タカオ二式 ロケットポッドA 右腕 ローフォ ダブルバレルショットガンA 脚部 ウージン2500 レッグA 背部 エントリー ブースターA [1番機] パイロット ゴールデン稲沢 機体名 16ビーター 胴体 ローフォ ボディA 左腕 タロー ガトリングA 右腕 タロー ガトリングA 脚部 ストーブ レッグA 背部 エントリー ブースターA [2番機] パイロット サイケデリック伝説 機体名 木春菊 胴体 ローフォ ボディA 左腕 バーナード37 ハンドガンA 右腕 ジャンクヤード クソデカレーザーA 脚部 グリヌイユ レッグA 背部 エントリー ブースターA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 装備構成は完全に同一。展開すべき戦術も同等。 ロケットによる範囲攻撃やクソデカレーザーの火力は脅威。射線を切って有利を確保する事。 弱体化されたとはいえリペアパックで長期戦を挑めば勝てる。 ジャンクテイカーズ ネオアサヒカワでスクラップヤードを運営する傍ら、ローダーバトルに熱を上げているチーム。ジャンクリーグ招待枠として参戦。スクラップヤードからかき集めた至高の一品で勝負を挑んでくるぞ! [リーダー機] パイロット スクラップ・キング 機体名 鋼鉄タイラント 胴体 バルキー ボディA 左腕 バルキー ガトリングA 右腕 プニンゲール アックスA 脚部 バルキー レッグA 背部 プニンゲール マントA [1番機] パイロット 歩く焼却炉 機体名 赤熱パイロフィリア 胴体 ストーブ ボディA 左腕 ストーブ バーナーA 右腕 ストーブ バーナーA 脚部 ストーブ レッグA 背部 エントリー ブースターA [2番機] パイロット ゴミ山に吹く風 機体名 新品ダストシューター 胴体 モート ボディA 左腕 デッチ レーザーA 右腕 モート ロケットランチャーA 脚部 モート レッグA 背部 ダスター ジェットパックA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 重量、中量、軽量揃ったバランスの良いチーム。 全体的に射程が短い武装を装備しており、脅威となるのは2番機。上空からレーザーとロケットで焼いてくる。だからと言って1体にかまけていると横から1番機のバーナーで炙られる。 尚、リーダー機は単なる棺桶。隙の多い構成なので処理には困らない。最後に片づけよう。 大光真宗 光芒寺から分裂し、本流の座を賭けて抗争中の派閥。アマチュアリーグ招待枠として参戦。前試合で光芒寺所属のプロチームと激突し、換装した新型レーザー砲と新しい戦術によって遂に初勝利を収めた。残るは優勝ただ一つ。 [リーダー機] パイロット 大光師 機体名 特大光芒師 胴体 プレール ボディA 左腕 カントク ツインレーザーA 右腕 カントク ツインレーザーA 脚部 バルキー レッグA 背部 プニンゲール マントA [1番機] パイロット 爆光師 機体名 大光芒師 機体名 特大光芒師 胴体 プレール ボディA 左腕 カントク ツインレーザーA 右腕 カントク ツインレーザーA 脚部 バルキー レッグA 背部 プニンゲール マントA [2番機] パイロット 散光師 機体名 特大光芒師 胴体 プレール ボディA 左腕 カントク ツインレーザーA 右腕 カントク ツインレーザーA 脚部 バルキー レッグA 背部 プニンゲール マントA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 アマチュアリーグの宗教団体がEXリーグで新装備で襲ってくる。 団子になってじわじわ前進してくる。そこそこ頑丈な上速度も高く、ツインレーザーの火力も非常に危険。12もの砲門が一斉に火を吹くので軽装機は一瞬でスクラップ送りされるだろう。 相変わらず全機武装構成が同一な特化構成。キャノンやシールドに弱いのも相変わらず。 G・G ガトリングガンをこよなく愛するぷにひによって結成されたチーム。アマチュアリーグ招待枠として参戦。完全整備されたプロ仕様ローダーに搭乗した結果、手が付けられない強さとなり決勝に勝ち上がってきた。付け入る隙はどこにある!? [リーダー機] パイロット バルカンマン 機体名 ブルフロッグGX 胴体 ゴリアツ ボディA 左腕 グリヌイユ ガトリングA 右腕 グリヌイユ ガトリングA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 ウージン500 積載パックA [1番機] パイロット ガトリングマン 機体名 スーパーフロッグGX 胴体 ゴリアツ ボディA 左腕 タカオ三十二式 ガトリングA 右腕 タカオ三十二式 ガトリングA 脚部 ゴリアツ レッグA 背部 ゴリアツ リペアキットA [2番機] パイロット ロータリーマン 機体名 ネオフロッグGX 胴体 グリヌイユ ボディA 左腕 タカオ三十二式 ガトリングA 右腕 タカオ三十二式 ガトリングA 脚部 グリヌイユ レッグA 背部 ウージン500 積載パックA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 ガトリング大好き野郎共がEXリーグで大暴れ。正面火力、装甲、リペア持ちが団子になって突っ込んでくるので本当に手が付けられない。特にリペア持ちが厄介。下手に手を出すと全機の体力を回復されてしまう。 何としてでもリーダー機か2番機を沈めておきたい。味方機を盾に瞬間火力でねじ伏せよう。 ネオ・ハラスメンツ 周囲にしかめ面をさせる編成が好きな奴らの集まり。リーグ戦で敵チームを煽り散らかした結果暴力沙汰になり出場停止となった。その後は賭け試合で生計を立てているため羽振りが良くなっている。最近のトレンドは引き撃ちらしい。 [リーダー機] パイロット ユウ 機体名 ヘアサロン暴力 胴体 タカオ三十二式 ボディA 左腕 タカオ三十二式 ガトリングA 右腕 タカオ三十二式 ガトリングA 脚部 バルキー レッグA 背部 キャプチャー ブースターA [1番機] パイロット リュウジ 機体名 引き撃ちミサ次郎 胴体 デッチ ボディA 左腕 ウージン2500 シールドB 右腕 タカオ二式 ミサイルA 脚部 タロー レッグA 背部 センパイ ジェットパックA [2番機] パイロット ソウタ 機体名 爆速☆引き撃ち太郎 胴体 エントリー ボディA 左腕 キャプチャー ライフルA 右腕 キャプチャー ライフルA 脚部 タロー レッグA 背部 エントリー ブースターA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 案の定やらかした様子。 戦術は遮蔽裏に隠れて削ってくる。向こうから接近はしてこないので後方からキャノンで吹き飛ばしたい。 遮蔽裏を取ってもガトリングとライフルが凄まじく削ってくる。長期戦を視野に入れておこう。 1番機はいっちょまえに低グレードのシールドで重量を減らしている。その分装甲は薄いので爆風で粉砕してやろう。 アバシリ脱獄囚 ネオエゾの重犯罪者収容所であるアバシリ・プリズンから脱走したと自称するワルいぷにひたちで構成されたチーム。脱走したため公式リーグに参戦出来ないと言い張っているが、ネオアサヒカワ市警から追われていない辺り、刑期は全うしたらしい。 [リーダー機] パイロット 前科四犯 機体名 カチコミメカ1号 胴体 ジャロピー ボディA 左腕 エントリー ショットガンA 右腕 エントリー カタナA 脚部 ストーブ レッグA 背部 センパイ ジェットパックA [1番機] パイロット 前科三犯 機体名 カチコミメカ2号 胴体 ジャロピー ボディA 左腕 ローフォ オートショットガンA 右腕 ローフォ オートショットガンA 脚部 ストーブ レッグA 背部 エントリー ブースターA [2番機] パイロット 前科二犯 機体名 カチコミメカ3号 胴体 タカオ八式 ボディA 左腕 カントク バックホーA 右腕 カントク バックホーA 脚部 タカオ八式 レッグA 背部 タカオ二式 ブースターA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 近距離戦闘集団。乱戦に持ち込んでくるが装甲がやや薄めのリーダー機、1番機どちらかを先に仕留めれば容易に勝てるだろう。 尚、こちらには前科6犯の肝臓カチカチカチ太郎がいるのでそんな大したことは無い連中である。 ネオアサヒカワ自警団 ネオアサヒカワ・アンダーグラウンドの治安維持に貢献している私設自警団。ローダーバトル人気の高まりに合わせてネオアサヒカワリーグからは一度退き、ストリート出身者の後ろ盾となり活動している。 [リーダー機] パイロット 鬼平 機体名 清么 胴体 オヤカタ ボディA 左腕 タロー キャノンA 右腕 タロー キャノンA 脚部 タカオ三十二式 レッグA 背部 グリヌイユ 弾薬パックA [1番機] パイロット 権兵衛 機体名 組合龍 胴体 ローフォ ボディA 左腕 ウージン2500 ミサイルA 右腕 タロー ミサイルA 脚部 ジャロピー レッグA 背部 エントリー FCS A [2番機] パイロット ケン 機体名 無字 胴体 センパイ ボディA 左腕 ウージン2500 シールドA 右腕 ローフォ ダブルバレルショットガンA 脚部 ストーブ レッグA 背部 ジャロピー リペアキットA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 1番機、2番機の装甲が薄いので狙い目だが、2番機はリペア持ち。先に1番機、2番機、リーダー機の順に倒そう。 リーダー機は頑丈な上タローキャノンをガスガス当ててくる。幸い旋回は控えめなので後ろを取って攻撃すれば沈む。味方機にリペア持ちがいるとかなり楽できるだろう。 メカケンドー同好会 巷でやや流行っている「メカケンドー」の愛好家によるチーム。普段は費用のかからないジャンクリーグで修業を積んでおり、大一番である本大会でご自慢のケンドー・メカを繰り出してくる。 [リーダー機] パイロット 両刀斎 機体名 トゥー・ハンド・ブレード皆伝 胴体 ゴリアツ ボディA 左腕 タロー ブレードA 右腕 タロー ブレードA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 プニンゲール マントA [1番機] パイロット 抜刀斎 機体名 イアイ・アンド・イアイ 胴体 エントリー ボディA 左腕 エントリー カタナA 右腕 キャプチャー マチェーテA 脚部 エントリー レッグA 背部 キャプチャー ブースターA [2番機] パイロット お惣菜 機体名 スマート・マッスル 胴体 バーナード37 ボディA 左腕 バーナード37 シールドA 右腕 タロー ブレードA 脚部 エントリー レッグA 背部 タロー ジェットパックA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 1番機のキャプチャーマチェーテの火力は脅威の一言。まあどの道重装甲ですりつぶせば全員沈むが。 相変わらず2番機のパイロット名が何か間違っている。 バックホーパンチングクラブ 愛宕重工社内の部活動から生まれたワークスチーム。カウンター戦法を得意とする。保守的な愛宕重工の中で競技専用パーツを生産販売するプロジェクトチームを同時に立ち上げ、遂にその第一弾である「カントク」がレギュレーション入りを果たした。 [リーダー機] パイロット 部長 機体名 不動明王 胴体 オヤカタ ボディA 左腕 カントク バックホーB 右腕 カントク バックホーA 脚部 カントク レッグA 背部 センパイ ジェットパックA [1番機] パイロット 部員 機体名 連動明王 胴体 デッチ ボディA 左腕 カントク バックホーB 右腕 カントク バックホーA 脚部 センパイ レッグA 背部 ジャロピー リペアキットA [2番機] パイロット 営業 機体名 暴走明王 胴体 カントク ボディA 左腕 ラーナ シールドA 右腕 カントク バックホーA 脚部 カントク レッグA 背部 キャプチャー ブースターA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 重装甲近接機。動きは鈍いが旋回は高い。 正面から挑むと逆にこちらがすり潰される。盾などで攻撃を受け止められるようにしておきたい。 ハママッチョブラザーズ 惑星ハママッチョ出身のボディビルディングチーム。猛烈な突進と激しい援護射撃で相手を粉砕する。 [リーダー機] パイロット マグマ大山 機体名 900ポンド・ゴリラ 胴体 タカオ八式 ボディA 左腕 グリヌイユ ガトリングA 右腕 ゴリアツ バズーカA 脚部 プニンゲール レッグA 背部 センパイ ジェットパックA [1番機] パイロット インフェルノ中山 機体名 マッスルドラグーン甲 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 プニンゲール アックスA 右腕 タカオ八式 マシンガンA 脚部 グリヌイユ レッグA 背部 プニンゲール マントA [2番機] パイロット タルタロス小山 機体名 マッスルドラグーン乙 胴体 タロー ボディA 左腕 デッチ ショットガンA 右腕 プニンゲール アックスA 脚部 グリヌイユ レッグA 背部 プニンゲール マントA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 高機動の1番機、2番機が陣形崩しを、リーダー機が集団に向かってキャノンをぶち込んでくる。 攻撃力はあるが機動力に対して旋回が追いついておらず、横に避ければ容易に攻撃をいなせる。 乱戦になる事はほぼ確実だが事故らなければ危険な相手ではないだろう。 東京ダンジョンマスターズ グレートカントー星系の古豪。正確な射撃で敵の接近を許さない。 [リーダー機] パイロット SKMGiYM 機体名 摩天楼号 胴体 オヤカタ ボディA 左腕 ジャンクヤード クソデカレーザーA 右腕 タカオ三十二式 ガトリングA 脚部 タカオ三十二式 レッグA 背部 タロー ブースターA [1番機] パイロット 桜花 機体名 Shaman's Daughter 胴体 グリヌイユ ボディA 左腕 エントリー ライフルA 右腕 キャプチャー ライフルA 脚部 タカオ二式 レッグA 背部 タロー ジェットパックA [2番機] パイロット ヴァン・デミエール 機体名 リメンバーミー 胴体 ウージン2500 ボディA 左腕 プレール キャノンA 右腕 エントリー バズーカA 脚部 キャプチャー レッグA 背部 センパイ ジェットパックA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 2022年の東京ゲームダンジョン出展時、最強チームとして登録されていたチームと戦える。関連サイトはコチラ。当時の装備とはやや構成が違う。 ガチタン、引き撃ち、範囲攻撃機と非常にバランスが良い。真正面から挑むと誇張抜きに勝てない。2番機が一番仕留めやすい。数的有利を取ったら後は回復しながら数の暴力で解体しよう。 ネオミヤコショーグネイト ミヤコケンタウリ星系からやってきた高名な武士一家。息の合った連携攻撃で一気呵成に攻め立てる。 [リーダー機] パイロット タカウジ 機体名 ボーンバイター 胴体 プニンゲール ボディA 左腕 タロー ミサイルA 右腕 センパイ マシンガンA 脚部 キャプチャー レッグA 背部 プニンゲール ジェットパックA [1番機] パイロット ヨシミツ 機体名 ゴールデンブル 胴体 タカオ二式 ボディA 左腕 エントリー カタナA 右腕 タカオ八式 ショットガンA 脚部 グリヌイユ レッグA 背部 タカオ二式 ブースターA [2番機] パイロット ヨシマサ 機体名 シルバーテンプル 胴体 ウージン500 ボディA 左腕 デッチ レーザーA 右腕 エントリー カタナA 脚部 エントリー レッグA 背部 タロー ブースターA Ver0.6000bにて追加されたチーム。 接近戦で陣形崩し、ショットガンで大きく削ってくる中々に厄介なチーム。 リーダー機はガン無視して1番機を真っ先に始末しよう。カタナとショットガンが普通に強い。 全体的に硬めで旋回も考慮された強チーム。とはいえ横にすり抜ければ攻撃は躱しやすい。短期決戦を目安に。
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11 京都府舞鶴市余部下 海上自衛隊舞鶴地方総監部 作戦室 2012年 6月5日 20時05分 舞鶴市の幹線道路である国道27号線は、小高い丘に設置された総監部の敷地を右手に見ながら、市街地に向かい右に折れている。 折れた先の左手には艦艇の建造、整備を受け持つユニバーサル造船の工場が立ち並び、大型クレーンが夜の闇に聳え立っていた。その先の舞鶴航空基地に続く支道を過ぎると、艦艇部隊が係留されている北吸岸壁に続く。 岸壁には、護衛艦みょうこうと補給艦ましゅうが横付けしていた。二隻共隔壁灯は消され、自衛艦旗がマストに翻っていた。艦は合戦準備──戦闘態勢にある。 未だ続く敵の侵攻に対し、海上自衛隊は北吸岸壁手前、片側二車線の路上に予備陣地を構築。五老ヶ岳応急陣地から撤退してきた部隊を収容し、第二次防衛線としていた。 万が一ここを突破されれば、市の対策本部がある市役所や、市民が避難している前島埠頭が敵の攻撃に曝される。海自は何としてもここで敵を食い止める覚悟でいた。 戦闘は、太陽が完全に沈んだ後もその勢いを減じる様子は無い。海上自衛隊舞鶴地方総監部は、満天の星空の下で自らも無数の閃光を放っていた。 雲一つ無い夜空に、硝煙と騎士団の放った火矢による火事の煙が漂っていた。その煙の中、強烈な投光器の光が寄せ手に向けてまっすぐに放たれ、陣地からは発砲炎が、激しく明滅している。 投光器の光によって強制的に夜の闇から引きずり出された騎士の着た鎧が、鈍く煌めいた。それを見た周囲の手勢が慌てて逃げ出す。主人の運命が尽きたからであった。 彼等はこの一日で学んでいた。 呆然とした表情を浮かべたその騎士は、遮蔽物を得る前に陣地からの集中砲火を浴びた。たちまち地面に撃ち倒される。 一方、立木や建物の陰からは弓兵が火矢を放っている。火矢は可燃物がほとんどない自衛隊陣地にはあまり効果が無い。しかし、庁舎まで届いた一部が、小火を引き起こしていた。 エレウテリオ騎士団側は、自衛隊の旺盛な火力に攻撃を阻まれていた。密集陣形による突撃を諦めた後も、じりじりと損害は増え続けている。 しかし、優位に戦いを進めているかに見える自衛隊も、守るべき面積に対して明らかに兵力が不足している。どこか一カ所の綻びが致命的な結果を招きかねなかった。 「総監、報告します」 防衛部第三幕僚室長が疲れの滲んだ声色で報告した。彼の率いる第三幕僚室は主に作戦を担当する。当然、昨日から寝ていない。 作戦室の中は、書類の束が積み上がり、情報端末を操作する海曹士が目を血走らせ、幕僚が電話口で怒鳴っていた。室内は控えめに表現しても、一糸乱れぬとは言えない有様であった。 壁には舞鶴全域の地図と、総監部敷地の地図が貼られていた。西舞鶴全域、中舞鶴、そして東舞鶴駅から南側には、敵を示す赤色のピンが無数に打たれている。 一方、味方を示す青色のピンは、総監部をはじめとする自衛隊施設、東舞鶴駅、市役所周辺に有るのみで、辛うじて重要な地点を維持しているに過ぎなかった。 地図が示す現実を裏付けるかのように、建物の外からは断続的に銃声が聞こえてくる。総監は、銃声が先程までより大きく聞こえていることに気づいた。 総監部は敵の攻撃を受け続けていた。 「外柵を放棄しました。以後は内柵に隊員を配置し、敵を迎撃します」 「敷地内に侵入を許してしまったな」 総監は、渋い顔で応えた。 「やむを得ませんでした。外柵全周を守るには兵力が足りません」 総監部の敷地は総監部庁舎や第4術科学校校舎のある丘を中心に、二重の柵で守られている。内柵の中には、庁舎群の他に海軍記念館や隊員の居住区、衛生隊等がある。 そこから一段下がった内柵と外柵の間には、体育館、プール、武道場、売店等が設置されているが、それらはすでに放棄され、エレウテリオ騎士団が占拠していた。 「持久は可能か?」 総監は探るように訊ねた。三室長はわずかに背筋を伸ばした。その目には光がある。 「防御正面を整理できましたし、『みょうこう』から一個分隊を借りました。朝まで保たせられます」 総監部に残されていたのは、施設管理要員や、4術校で学ぶ経理・補給関係の学生である。士気は高いものの、お世辞にも戦力として頼りになるとは言い難い。 彼等は、外柵を守りきれないと判断した幕僚の指示により内柵の中まで後退、建物と積み上げた土嚢を頼りに、押し寄せる敵と戦っていた。 本来であれば施設警備を担当するはずの陸警隊が出払っているため、『みょうこう』陸戦隊第三分隊を引き抜き、予備兵力としている。 庁舎や校庭のあちこちには土嚢陣地が組まれ、古めかしい建物の外見と相まって、まるで先の大戦の都市攻防戦のような光景であった。 「──万が一ここが落ちても、大丈夫な手は打ってあるが……」 総監が銃声の方向を見つめながら言った。情報を担当する第二幕僚室長が答える。 「市庁舎に防衛部長、舞鶴航空基地には幕僚長がいらっしゃいますから、指揮継承及び分掌指揮は問題ありません」 「うむ──ところで、良い話は無いのか?」 「は、良い話ばかりではありませんが、ご報告があります」 二室長の答えに、総監は片眉を上げた。無言で続きを促す。 「まず、民間人救出に向かったヘリが帰投しました。児童5名を含む民間人7名は、全員無事保護されました」 「そうか、無事か。そうか──それは、本当に良かった」 総監は思わず両手で顔を覆った。一つ溜め息をつく。安堵している様がありありと見えた。周囲で目立たぬように耳を傾けていた隊員達の表情も明るくなった。殺伐とした作戦室の雰囲気も、少しだけ和らいだようだった。 綾部市の惨劇が伝えられて以来、隊員たちは、その本分を尽くせていない、という後ろめたさを、多かれ少なかれ心に抱えていた。そんな中、民間人救出成功の知らせは、彼等の気分を明るくさせるのに充分な知らせであった。 しかし、続く二室長の声は一転して固く、深い憂慮を表していた。 「しかし、救出に当たったヘリが、敵のロケット攻撃を受け損傷しました。再出撃には修理が必要です」 室内がざわめいた。 「ロケット?敵の武装は刀剣と弓矢のみでは無いのか?」 総監が問いただす。今までの報告では、銃火器の類いは持っていないとの情報ばかりだった。横から三室長が、疑問を述べた。 「ロケットというのは、RPG-7か?やはり、背後には北が……」 二室長は、かぶりを振った。慎重に答える。 「いや、それにしては威力が弱い。少なくとも二発は命中したが、ガラスを割った程度で済んでいる。恐らくは、過激派が用いるような手製のロケットだろう」 「なるほど。しかし、それでもヘリの飛行に十分な障害だな」 三室長の言うとおりであった。敵は、ヘリに損傷を与える事のできる火器を保有している。航空機の運用に与える影響は大きい。 「脅威が不明なため敵地上空の飛行を一時禁止しました。『みょうこう』立入検査隊は、ヘリによる脱出を断念。徒歩で東舞鶴駅へ向かっています」 二室長は、総監に対し現状を報告した。立入検査隊は味方が辛うじて確保している東舞鶴駅へ、徒歩での移動を強いられていた。 当然、敵の追撃が予想された。しかし、自衛隊側には、予備兵力も、それを投入する手段も無い。 「彼等の健闘に期待するしか無い、か。何とも情けない話だな」 総監はつぶやいた。島根県から青森県にかけて、日本海側に広大な担当警備区を持つ舞鶴地方総監部の、最高指揮官たる自分の手元にはわずか数キロ先で苦戦する部下を救うための兵力が無い。 彼は、壁に貼られた地図を睨みつけた。部屋の外からは怒号と銃声が絶えない。 一体貴様等は何者なのだ。言葉は通じず、身元を示す物は何もない。それどころか、現代人である事を示す証拠がない。明らかに『軍』でありながら、この地球上の何処の国の所属でもない。 地獄から蘇った中世の亡霊だとでも言うのか。そんな奴らに、多くの市民や部下が殺されてしまったというのか── 総監が怒りで体を震わせている間も、作戦室の無線機や電話は鳴り止まず、幕僚や隊員達は各々の持ち場で、休む間もなかった。 戦況は未だ予断を許さない。各所を守る海上自衛隊員達は、必死の防戦を継続していた。 京都府舞鶴市倉梯町 2012年 6月5日 20時08分 護衛艦みょうこう立入検査隊第2班員、進士宏保三等海曹は、舞鶴市倉梯町の路地裏で仲間と共に汗にまみれていた。 住民が避難した周囲の家屋からは灯りが消え、路上は闇夜同然であった。人気の絶えた街角は静かであった。遠くから聞こえる遠雷のような音は、発砲音だろうか。進士にはよく分からなかった。 今、彼の耳を満たしている音は、ブーツがアスファルトを蹴る音、装具の立てるかすかな擦過音、そして隊員達の荒い息遣いであった。無駄口を叩く者はいない。 しかし、普段は温厚な進士の内心は、思いきりわめき散らしたい気分で一杯だった。 まだ、着かない。銃が重い。畜生、何も見えない。これじゃ横からいきなり敵が飛び出してもわからない。糞、プレートが重い。ベストの襟が擦れて痛い。ああ、休みたい。可児の野郎ペースが早すぎる。水雷長なんか倒れそうだ。 何でこんな目に合わないといけないんだ。あのイカレたブリキの兵隊共のせいか。くそったれ、死んじまえ。 進士が現状の辛さを忘れるために、ありとあらゆるものを罵っている路地裏では、彼の他に11名の隊員が、黙々と東舞鶴駅を目指していた。 隊員達は狭い路地の両端を二列縦隊になり、老人のジョギング程度の速度で進んでいた。最後尾の隊員が定期的に後方を確認する。その他の隊員も、それぞれ別々の方向を油断無く警戒していた。 濃紺のつなぎは汗で濡れ、隊員の身体に重くまとわりついていた。個人装備が肩や腰に食い込む。未だ兵士としての動きは失っていないものの、各々の足取りは重い。 疲労と緊張は彼等の人相を極端に悪くしている。短期間の間に頬は痩け、瞳だけが白くぎらついた光を放っていた。 先頭を進む沢井三曹が足を止め、左手を顔の横で握った。後続も無言で止まり、片膝立ちの姿勢をとる。 沢井は酷く緊張した面持ちで目の前の十字路を見つめていたが、不意に何かに気付いた。足音と話し声だ。沢井が猛烈な勢いで左手を振り始める。 ──隠れろ! それを見た進士達は慌てて左右の民家の敷地に駆け込み、塀や植木の陰に身を潜めた。遅れて沢井も身を翻した。 「────!」 沢井が門柱の裏に滑り込むと同時に、右手の路地から敵兵が姿を現した。槍で武装した人間が三名、弩弓を持った人間が二人。何れも革鎧で身を固め、腰には70センチ程度の長さの剣を下げていた。槍を持った兵士は片手に松明を掲げている。 彼等は、唯一人金属鎧を纏った男の指示を受け、進士達を探しているようであった。 何を話しているのか、さっぱり聞き取れない。だが、その声色からは敵意と緊張と恐怖が容易に窺えた。 進士は必死に息を殺した。手にした散弾銃を身体に引き寄せる。ブーツが踏みしめた庭土が、やたらと大きな音を立てたように思えた。 薄いブロック塀一枚隔てて、先程まで殺し合いをしていた敵が、自分達を探している。もちろん、殺すためだ。 背後で誰かが尻餅をついた。砂利が音を立てた。進士は戦慄した。身体が凍りついたようになり、冷や汗が噴き出した。見つかってしまう。彼は覚悟した。 だが、幸いにも敵は進士達に気付かなかった様だった。異国の言葉で何事かを話しながら、左手の路地に消えていった。 進士はゆっくり振り返った。殺意すら籠もった目で、尻餅をついた隊員──水雷長を睨みつけた。周囲の者もみな冷ややかな目を向けていた。 明智一尉は、そんな視線に気付かないほど消耗し、荒い息を吐いていた。装具の重みに耐えられず、へたり込んでいる。 進士は、これが指揮官かと改めて暗い気分になった。 味方が確保する東舞鶴駅まであと300メートル。今の彼にはまるで無限の距離に思えた。 民間人を救出したSH-60Jが、敵のロケット攻撃を受けたことは、彼等の脱出に多大な影響を与えた。被害を受けた機はもとより、無傷の機についても一時退避を余儀なくされたからである。 そして、みょうこう立入検査隊に、ヘリの再出撃を待つ余裕など無かった。民間人脱出の為に、手持ちの弾薬を惜しげもなくバラまいた結果、残弾が一人平均2弾倉にまで低下してしまったのだった。これ以上の交戦は、弾薬切れを招きかねない。 「速やかに脱出し、東舞鶴駅の陸警隊機動班と合流する」 事態を重く見た可児一曹の強烈な助言を受け、指揮官の明智一尉は部隊に命令を発することとなった。 大通り側、大雲寺方面は敵で埋まっている。いくら火力で優越していても、開けた場所で騎馬隊(一体あれだけの馬をどこから持ち込んだのかは分からない)と戦うのはあまりにも分が悪い。 脱出経路として選ばれたのは裏手側、校舎を抜けた住宅地の狭い路地であった。検査隊員は不要な装備(ダンプポーチに収めていた空弾倉等)を放棄すると、音を立てない様、慎重に移動を開始した。 現在、進士達は舞鶴線高架下にある菓子店の店舗を目指している。敵に発見されることなく辿り着けるかは、まだ分からなかった。 彼等が苦労して占拠した敵の建物からは、如何なる宝物も高位の捕虜も得ることはできなかった。多数ある小部屋には、小振りな机と椅子が並ぶだけで、どこも無人であった。 予想に反して兵舎でも無さそうである。 「ええい、まだ奴らは見つからぬか!何をぐずぐずしておるかッ!」 兵を指揮するロンゴリアは苛立ちを隠そうともしなかった。多数の兵に加えて、貴重な騎士団付魔術師を三名も失い、捕虜も取れず、敵まで逃がしたとあっては、騎士の面目が立たない。彼の顔は怒りで赤く染まっていた。 しかし、下知に対する兵達の足取りは重い。疲れているのだった。 ロンゴリアは配下の兵を少人数の組に分け、街に放った。どれかの組が敵を見つけたならば、速やかに直率の騎兵と槍兵、弩弓兵を差し向け、押し包んで殲滅する構えであった。 しかし、彼の意気込みに反して敵は一向に見つからない。街並みは予想以上に広く入り組んでおり、捜索に当たる兵達は敵に怯えていた。ゴブリンに至っては、大損害を受け既に逃散してしまっていた。 「兵を差し向け、必死に探っておりますが、何分敵地にて思うようには……」 配下の騎士が弁明した。彼の顔にも、怯えが見えた。 無理もない。この日彼等が戦ったいくさは、如何なる練達の騎士であろうとも経験したことのない、異様ないくさであった。敵の魔術は騎士も兵も分け隔てなく打ち倒した。鎧も楯も役に立たなかった。 名誉と勇気を貴ぶ西方諸侯領の騎士たちですら、疲労と怖れが、身の内に澱のように溜まるのを無視できなかった。 「言い訳はいらぬ!今のままでは見つけられぬと申すか」 ロンゴリア自身も、この街が自国のどんな王侯貴族が財貨をつぎ込んだとしても、造り得ない物であることをようやく理解していた。そして、恐怖した。彼は、執拗に敵を追い続けることで、どうにかして恐怖を抑え込もうと努力していたのであった。 ロンゴリアは、ひとしきり怒鳴ると、顎に手を添え急に静かになった。何か思案しているようである。配下の騎士は、不思議に思い、問うた。 「ロンゴリア殿、いかがなされました?」 ロンゴリアはじろりと配下の騎士を睨み、低い声で答えた。 「騎士も兵も頼りにならぬとなれば、亜人共をけしかけるしかあるまい」 「しかし、ゴブリンはすでに……」 騎士の言葉を遮り、ロンゴリアは言った。 「亜人共はゴブリンだけではない」 京都府舞鶴市倉梯町 2012年 6月5日 20時27分 きっかけはほんの些細なことだった。 中腰で進む立入検査隊員の雑嚢に納められていた、ビクトリノックスのマルチツールが、たまたま、アスファルトではなくマンホールの蓋の上に落ちた。 その時、近くには偶然猟師上がりの兵を含むロンゴリアの手勢がいた。その兵は音のした方角を速やかに聞き取り、組長に伝えた。 元来真面目な性分だったその組長は、松明を掲げた兵を差し向けた。兵達は得体の知れない街と敵に怯えながらも、実直な組長の指示に従い、路上を進んだ。 マルチツールがマンホールの上で金属音を立てた僅か15秒後、追う者と追われる者は、10メートルという距離で鉢合わせていた。 轟音と共に、網膜を焼く赤い光が視界を覆った。ストックを当てた右肩が激しく叩かれ、上半身が僅かに仰け反る。進士三曹は、膝のバネを使い、反動を吸収した。 彼の放った散弾は、狙いが甘かった。大部分が何もない空間を通過した。疲労の影響で銃口が上擦ったのだった。しかし、幸いにも(撃たれた相手にとっては不幸にも)、胴体を狙って放たれた散弾の一部は兵士の顔面に命中した。 ガマがえるが潰れたような悲鳴を上げて、兵士がひっくり返った。松明が地面に転がる。倒れた兵士の表情が全く分からないのは、暗さだけが理由ではない。体が小刻みに痙攣するたびに、黒々とした液体がアスファルトに広がった。 「班長!後ろからも追ってきてやがる!」 「来た来た、左からも来た!」 検査隊の位置は完全に暴露していた。 ロンゴリアは、突然響き渡った銃声に対し、手持ちの兵をまとめて投入した。指揮官としての判断というよりは、一人の人間としての恐怖心の影響が大きかった。 生半可な数では、やられる。 そんなロンゴリアの判断から下された用兵は、自衛隊側に陽動の意図があれば容易く包囲を抜けられてしまいかねないものであった。しかし、この夜、みょうこう立入検査隊は一団となって脱出を試みていた。 その結果として、彼等は捕捉され、暗い路地裏での遭遇戦を強いられる事となった。 「第2班は後ろから来る奴らを叩けッ!第3班は先の十字路を抑えろ。水雷長!3班と行ってください!」 「か、可児一曹は、どうするんだ?」 「左から来る奴らを何とかします。斎藤!早く連れて行かんかァ!」 「了解!」 会敵から僅か数秒の間に、発砲の轟音と兵達の怒声で満ちた路地の真ん中で、可児一曹が吼えていた。彼の認識では少なくとも後方と左から敵が迫っていた。ぐずぐずしていれば、早晩包囲されるだろう。 第2班員が松明を目安に弾をばらまく。その多くは外れたが、敵兵は慌てて松明を捨てた。民家の庭先に飛び込む者もいる。敵の圧力が弱まった。 一方、第3班は斎藤二曹の指揮の下20メートル程先の次の十字路に向けて走った。明智一尉も、よろめきながらそれに続いた。 可児はその様子を確認すると、左側から迫る盾を構えた男たちに向き直った。巌のような顔面に、獰猛な肉食獣の笑みを浮かべる。彼は64式小銃を腰だめに構えると、無造作に発砲した。 可児は7.62㎜弾の連射による強烈な反動を、いとも容易く抑え込んだ。敵兵が腰の辺りを吹き飛ばされ、崩れ落ちる。 金属製の空薬莢がアスファルトに落ちて甲高い音を立てた。可児は、薬莢拾いを考えなくても良いのなら、幾らでも撃ち続けたいものだと思った。 第3班から、『十字路確保!』と無線で報告が入る。 不期遭遇戦で味方は混乱したが、敵はそれ以上に混乱している。この間に立て直せばまだやれるな。可児は一層大きな声で、必死に戦う部下に指示を飛ばした。 「妻木、道の右側に寄って下がれ!第3班の先を確保しろ!蛙跳びで行くぞ」 最後尾で銃を乱射していた第2班員が道の右側を後退し始めた。射界を確保した可児と第1班は第2班の後退を援護する。 三個班が相互支援しつつ、敵の追撃を振り切ろうという動きであった。 この辺りの区画は、道路がほぼ碁盤の目のようになっている。一個班が後退支援射撃で敵を抑えている間に、辻々を確保しつつ下がっていけば、刀剣と弓矢程度の武装しかない敵は、つけ込む隙が無い。 人家に灯りが無く、街灯も割られているせいで敵がよく見えなかったが、可児はそれは敵も同じ事だと考えていた。 後は弾が切れる前に、駅に駆け込めるかどうかだな。 派手に撃っている隊員の中には、そろそろ残弾が怪しい者が出てくる頃であった。 進士三曹の心臓は、猛烈な勢いで収縮し、全身に血液に載せた酸素を送り出していた。うっかりすれば息を吸うことすら出来なくなる程、呼吸は乱れ、視界が狭くなっている。酸欠寸前なのかも知れない。 こんなに走ったのは、教育隊以来だよ。進士は眼前に星が散る状況下で、そんな事を考えていた。彼の所属する第2班は、第3班を追い越し、次の十字路を確保するため全力で走っていた。 足がつりそうになる。手にした散弾銃を放り捨てたい気持ちが湧き起こる。しかし、理性──若しくは生存本能、がそれを捨てる事を踏みとどまらせた。 駅に着けば休める。頭の中をそんな考えで埋め尽くし、進士は十字路に辿り着くと受け持ちである左方向に銃を構えた。 「左クリ──アじゃな……い?」 呆然とした進士の眼前に、大きな影が立ち塞がっていた。それは2メートル程の身長を持つ大きな影であった。 敵兵かッ!? 進士は咄嗟に散弾銃を構え、狙いを定めようとした。そして、敵の異様な姿に気付いた。 力士の様な体格であった。腕や足はゴツゴツとした筋肉に覆われ、丸太のように太い。胴には粗末な鎧を着けているようだ。たっぷりとした胴回りが、鎧の下に窺えた。 手には恐ろしげな棍棒を下げている。殴られればただでは済まないだろう。 一瞬のうちにそこまで観察した進士は、強烈な違和感を覚えた。無意識のうちにその原因を探す。 彼は原因に気付いた。 その敵兵は、異様に頭部が大きかった。そのため、バランスの悪さを感じたのだった。そして── 「な……!?」 見上げるような大男の両肩の間には、豚の顔が乗っていた。脂肪に覆われた顔面では、凶暴な光を放つ瞳が進士を睨んでいる。大きく裂けた口元からは、涎と唸り声が漏れていた。生臭い臭いが辺りに漂った。 「ば、化け物ォ!」 金縛りが解けた進士は、叫び声を上げながら散弾銃の引き金を引いた。よく見ると、その化け物は一匹では無かった。轟音。素早くレシーバーを引き次弾を装填。間髪入れず次弾を叩き込む。至近距離で放たれたバックショットは、狙い違わず化け物の腹に命中した。 仲間が倒れた事で、敵も我に返ったらしい。甲高い咆哮をあげると、猛烈な勢いで進士に襲いかかった。 発砲。装填。発砲。 そこで、弾が切れた。慌てて腰の9㎜拳銃を抜こうとしたものの、到底間に合いそうになかった。 立ち尽くす進士の頭部めがけて、敵兵は巨大な棍棒を振り上げた。進士は、何故か、豚の体脂肪率はそんなに高くない。という雑学を思い出した。 視界一杯に棍棒が迫っていた。 妖魔若しくは亜人の一種とされる『オーク』は、主に帝國領内の北辺山間部に多く存在している。 体格は人間種より優勢で力も強く、その性格は貪欲かつ好戦的である。そのため、しばしば地方の村落が襲撃され、家畜や領民が大きな被害を受けてきた。ただし、多くの個体が知能に劣るため、人間側が態勢を整えれば、撃退は難しくない。 問題は、その旺盛な繁殖力にあった。オークはほぼ全ての人様種族との交配が可能な上、母胎がどの様な種族であれ、オークの形質を色濃く受け継いだ赤子が産まれる。 討伐を重ねても、一向に勢力が衰えず、投入した資金兵力に成果が追いつかない状況に、地方領主が悲鳴をあげる事態となったのだった。 このため、帝國は懐柔策をとった。有力な亜人(妖魔)を首魁に仕立て上げ、山岳地帯の一部を自治領とした。そこに、オークやゴブリンその他の種族を住まわせ、彼ら自身に統制を取らせたのだった。 帝國は山間部で賄えない物資や奴隷(主に交戦国の領民を送り込んだ)を提供する代わりに、兵力を供出させていた。 悪名高き妖魔兵団の始まりである。 これにより、山岳地帯の一部領邦は国替えを余儀なくされたが、帝國内に存在する妖魔のかなりの部族・集団が自治領へ移動し、結果として他地方の治安に向上が見られた。 オークやゴブリンの部隊は、西方諸侯領では伝統的に妖魔が徹底的に差別されるため、異民族討伐時の尖兵として位しか、用いられない。 また、オークを指揮する役を担う軍人や亜人、下手をするとオーク部隊が配属された騎士団までもが『豚繰り』と蔑まれた。 だが、ロンゴリアは敢えてそれを受け入れた。エレウテリオ騎士団に約20程配置されていたオーク達を、追撃に投入したのだった。 敵の魔法戦士部隊を捕捉したとの報告に対し、ロンゴリアはオークを迂回させ敵の前方に回り込ませるよう下知を下した。 その成果は上がっている様であった。どれだけ消耗しても、幾らでも産まれいでる汚らわしいオーク共と、敵が噛み合い消耗したところで、騎兵を突入させる。 「我ながらよい思案だ」 何より、貴重な郎党を失わなくてよい。これ以上の損害は領地の経営に大きな痛手なのだ。 「敵勢は足を止めました。御味方は隊列を整えつつあります!」 「よろしい!俺も出るぞ。今度こそ、だ」 ロンゴリアは口の端を釣り上げ、笑った。遂に敵を押し包み、討ち果たすのだ。 京都府舞鶴市倉梯町 2012年 6月5日 20時48分 進士は思わず目を閉じた。棍棒の唸りが聞こえた。多分、次の瞬間自分の頭は柘榴の様に割れるのだ。 しかし、棍棒が彼の頭にめり込む代わりに、金属同士がぶつかる異音と、軽く鋭い銃声が響いた。装薬の燃焼する匂いがした。それ程近くで、射撃が行われたのだった。 「だ、大丈夫かい?進士三曹。はぁ、機関けん銃って重いんだねぇ」 進士が恐る恐る目を開くと、目の前にいた豚の様な化け物は、胴体に満遍なく9㎜弾を食らい、大の字に倒れていた。 「これは、一体……」 振り返ると、指揮官の明智一尉が如何にも重たそうに機関けん銃を両手に下げ、汗塗れで立っていた。息は絶え絶えで今にも崩れ落ちそうな程疲労していたが、その顔には進士への気遣いの色があった。 手にした9㎜機関けん銃の銃口からは、薄く硝煙が立ち昇っている。 「危、機一髪だったね。間に合って──ぜぇ、よかったよ」 明智一尉は、進士の横を通り過ぎると、自分が撃ち倒した敵を、恐々覗き込んだ。感心したようにつぶやく。 「と、とんでもない相手だとは──思っていたけど、これほどまでとはね──」 明智はもう一度、進士に向き直った。頼り無げな笑みを浮かべる。 進士はようやく、自分がこの誰からも頼りにされていなかった幹部自衛官に助けられたことを理解した。 礼を言わなければと思った。 「鉄砲様々だね。とてもじゃないけど素手で勝てる相──」 明智が進士の前から消え失せた。 鈍い打撃音が聞こえた時には、明智の大きな身体は、横薙ぎに跳ね飛ばされ、民家のブロック塀に叩きつけられ止まっていた。腕がおかしな方向に折れ曲がり、痙攣している。気を失っているか、既に死んでいるか。 進士の眼前に、明智を腕の一振りで吹き飛ばした化け物が、ゆっくりと立ち上がった。信じられない。9㎜パラベラム弾をあれだけ撃ち込まれて、これか。化け物め。 進士はもう一度諦めた。9㎜拳銃も通じなさそうな相手に、何も思いつかなかった。 「コラァ進士!諦めるな莫迦もん!」 可児は、第2班長妻木二曹からの報告を受け、全力で路地を疾走した。横合いから現れた正体不明の化け物。とてつもなく嫌な予感がしていた。 巨漢に似合わぬ速度で第2班に追いついた可児が見たのは、豚顔の化け物の腕の一振りで、指揮官明智一尉がブロック塀に叩きつけられる姿であった。進士三曹が呆然と立ち尽くしていた。腰に提げた拳銃を抜く気力も無いようだ。 「コラァ進士!諦めるな莫迦もん!」 可児は叫ぶなり、化け物と進士の間に躍り出た。化け物の肉体は、189センチある可児よりも10センチ以上は大きく、また分厚かった。 こいつは、難物だなぁオイ。 可児は素早く敵の戦力を見積もった。肥満した様に見える躯は筋肉の塊であり、純粋な力比べなら勝ち目は無いだろう。 ひゅう、と一つ息を吐く。手にした弾切れの64式小銃を地面に捨てた。そのまま左足を半歩踏み出し、重心を落とす。両手は緩く開くと、やや半身の身体の前に自然に構えた。 端で見ていた進士の目には、可児の巨体がまるで猫科の獣の様に見えた。柔らかく、それでいて爆発的なバネを溜め込んだ肉食獣。 「こいよ、化け物」 顎を引いた可児が、不敵に言い放つ。 化け物は豚に似た顔面を醜く歪めると、右腕を大きく振り上げた。手には拾い直した棍棒が握られている。そのまま可児の頭部を叩き潰そうと、唸りをあげて斜めに振り下ろす。 可児が左足を右斜め前に踏み込んだ。そのまま膝を曲げ、身体を沈める。その頭上を武骨な棍棒が掠めた。88式鉄帽から、焦げた臭いが立ち昇った。 可児の身体は、踏み込みにより独楽のように半回転した。踏み込みで生じた移動エネルギーが、貯め込まれる。敵に背を向けた可児は、回転の勢いを乗せた後ろ蹴りを放った。 鉄芯の入った重たいコンバットブーツに包まれた可児の右足が、槍のように突き込まれる。地を這うような軌道を描き、靴底が、化け物の右膝を真っ直ぐに打ち抜いた。 化け物がくぐもった悲鳴をあげた。哀れな人間に必殺の一撃を加えようと踏み込んだ、その右膝の皿が、粉々に砕けたのだった。自分の体重に耐えられず、化け物は堪らず右に崩れる。 既に可児は蹴り足を敵のすぐ側に下ろしていた。身体は正面に向き直っている。左拳を固める。 崩れる化け物を、左フックが斜め下から突き上げた。甲殻類を砕くような破砕音が響く。拳は化け物の頬を正確に迎え撃っていた。 牙が折れ、血潮が飛び散る。地響きをあげて、化け物は地に倒れた。可児のブーツが間髪入れず頸椎を踏み抜く。乾いた音が鳴った。さらに、素早く9㎜拳銃を抜くと、立て続けに三発、脳天に叩き込んだ。 「セイッ!」 可児が残心の構えをとる。化け物は完全に絶命していた。 進士は、呆れ果てた。可児のおっさん、2メートルもあるような化け物を殴り殺しちゃったよ。 可児が振り返り、左手を振りながら言った。 「おい、進士。俺もまだまだ修行が足りんわ」 「はあ?どこがですか!?」 進士は思わず聞き返した。人間離れした強さを見せられたばかりであったからだ。 「うむ。左拳を痛めちまった。部位鍛錬が足りん」 進士は、言葉もない。可児は小銃を拾い上げると、大声で命じた。 「水雷長を助けろ!まだ生きてるぞ。集まれ小僧共、あと百メートルはダッシュだ!!」 あれだけ恐ろしかった豚顔の化け物も、小銃弾には耐えられないようであった。まだ、十体はいた連中は、身を隠すことも知らないかの如く、簡単に射殺されていった。 京都府舞鶴市 舞鶴東港前島埠頭 2012年 6月5日 20時54分 埠頭は昼間のような明るさであった。避難誘導に駆り出された舞鶴教育隊所属の一等海士は、照明灯を見上げ目を細めた。警察や消防車両が辺りを照らし、洋上では海上保安庁の巡視船が、探照灯を左右に振っていた。 まるで幽霊を怖がっているみたいだ。一士は思った。人気の絶えた市街地は暗闇に包まれており、前島埠頭の煌々と照る灯りを際立たせている。 彼が受けた印象はあながち的外れではない。自衛隊、警察、海保らの担当者は、奇襲を恐れていた。埠頭には市内から避難した市民が溢れている。万が一この場に突入されれば、阿鼻叫喚の地獄絵図になることは間違い無い。 このため、埠頭の出入り口は警官と自衛官が固め、海側は保安庁がパトロールを行っている。岸壁には新日本海フェリー所有の大型フェリー『はまなす(16810トン)』が、その白い船体を横付けしていた。 桟橋が降ろされ、住民課の職員により身元が確認された順に、市民の群れが乗船しつつあった。 「あれなら、確かに守りやすいよな」 若い一士にも、その意味は見て取れた。高い舷側、限られた出入口、優れた居住性、そしていざという時の脱出能力。 彼は優美な船体を見上げ、この船がエクソダスの為に使われることが無ければ良いと思った。 不意に海曹達の動きが慌ただしくなった。車両を移動し、何かのスペースを空け始める。 先輩の海士長が、赤と緑の誘導灯を手に駆け寄ってきた。 「先輩、どうしたんですか?そんなに慌てて」 その海士長は、何故か明るい表情で東の空を指差した。 「え?空ですか?」 彼は空を見上げた。地上の照明が明るすぎて、星もよく見えない。いや──あれは、何だろう?彼は気付いた。 東の空に瞬く赤い航空灯。それは時間が経つにつれはっきりと見えるようになった。微かにローター音が聞こえる。 「もしかして!!」 「味方だよ。増援が来たんや!」 思わず両手を振り上げた一士達の目には、UH-1J多用途ヘリの姿がはっきりと見え始めた。 京都府舞鶴市田中町 国道27号線 2012年 6月5日 21時07分 「おうおう、見事に真っ暗だなぁ、おい」 陸上自衛隊第三戦車大隊所属、海北義男一等陸尉は、73式小型トラックの助手席で、いささか緊張感に欠ける声をあげた。 「はぁ、何でですかねぇ」 運転席の中島三曹がのんびりした声で応える。 海北は大きな身振りを交え、彼の部下に言った。 「バカ、ナカジそりゃみんな避難したからに決まってるだろう!俺達は野蛮なよく分からんコスプレ殺人集団から、無辜の民間人を助けに行くんだよ!」 「なるほどぉ」 海北は喋るほどに饒舌となる性分であった。 「ついでにもう無理ですって悲鳴をあげてる海自の皆さんも助けて差し上げるんだ!俺達が一番乗りだぞ!まぁ、当初の予定より六時間程遅れたけどな!」 「そりゃ、デートなら振られるレベルですねぇ」 「だから急ぐんだよ!海軍カレーが待ってるぞ!」 上空をヘリの爆音が通り過ぎた。海北は喚いた。 「ああ!第三飛行隊の連中に先越されちまう!ナカジ急げ急げ!」 「駄目ですよぅ」 後部座席でやりとりを聞いていた雨森曹長は、うんざりしていた。相変わらずやかましい中隊長だ。 雨森は百メートルほど先にある、赤色回転灯の灯りに気付いた。まだ演説を続ける海北に告げる。 「中隊長、前方」 「あん?お、居たか」 海北はピタリと演説を止めた。 73式小型トラックは国道を封鎖する福井県警の検問前で停車した。後方にはディーゼルエンジンの重低音を響かせ、96式装輪装甲車が待機している。 その後方には、第三戦車大隊第一中隊各車が列を作っていた。海北にとって残念な事に、主力装備である74式戦車は投入許可が降りず、小浜市で待機していたが。 「曹長、大隊本部に報告。『第一中隊、舞鶴市に到着。これより市内へ進入する。2115』」 「了解」 「よし、96式を前に出すぞ。各自装填を許可する」 八輪のコンバットタイヤが重々しく回転し、96式装輪装甲車の角張った車体が前進する。銃手席の隊員が、M2重機関銃に初弾を装填した。後続車の隊員もそれぞれの武器に初弾を装填し、安全装置をかけた。 準備よしの報告を受け、海北は命令を発した。 「よぅし、行くぞ!全周警戒を怠るな!中隊前進!」 京都府舞鶴市余部下 国道27号線 2012年 6月5日 20時42分 頑強に抵抗する敵陣に対し、騎士団主力は執拗な攻撃を続けていた。騎士団長、ブエナベンドゥラ・ディ・エレウテリオ・イ・ロッサ帝國子爵は、視界の隅に本領軍魔導師バルトロが配下の魔術師と難しい顔で話し込む姿を認めた。 あの、バルトロがあの様な深刻な顔を見せるとは? 戦況は芳しくない。右手に見える敵の城館に対する攻撃と共に、街道を塞ぐように築かれた敵陣に対しても、仕寄りは続いていた。 敵は相変わらず呆れるほどの焔の礫を放ってくる。密集陣形による突撃は、とっくに断念していた。 幸いなことに、敵も夜目が利くわけではないと分かった。そのため、エレウテリオは、配下に対し「壁や溝を用いて敵に近付け」と命じていた。 彼は、切り込むことが出来れば勝機はあると信じていた。 「──付の魔術師と、繋ぎがとれ──」 「ふむ、本──は、どう────」 「同様に御座います」 途切れ途切れに聞こえる内容に興味を覚え、エレウテリオはバルトロに話しかけた。 「バルトロ殿、如何なされた?何か御困りか?」 バルトロは不意に呼びかけられた事に、思いのほか動揺した。配下の魔術師はネズミが逃げ出すかの如く、居なくなった。 「……これは、団長殿。いやいや大した事では御座いませぬぞ」 「されど、バルトロ師の斯様に深刻な様など拝見した事がない故、気になりましてな」 そう言ったエレウテリオの瞳は『隠し事は許さぬ』と、剣呑な光を放っていた。最早、勝手な動きが許される戦況では無かったからだ。 バルトロは僅かな間の後、静かに伝えた。 「我が弟子が伝えるには、本隊付の魔術師と上手く繋ぎが取れぬとの事にて」 「それは──本隊に何か有ったということでしょうか?」 エレウテリオの問いに、バルトロは首を振る。 「いやいや、それは無かろう。異界の地故、未熟な我が弟子がしくじっているだけかと思案いたしまするぞ」 エレウテリオが更に問おうとしたその時、甲冑の音を響かせながら、戦神に仕える神官戦士団長のグイドが現れた。 グイドは顔の下半分を埋める見事な髭を震わせながら、しゃがれた声で言った。 「エレウテリオ殿、戦神はこの地におわさぬやもしれぬぞ!戦歌が効かぬ。こんな事は初めてじゃ!」 詳しく聞くと、神の力を借りる事が極端に難しくなっているとの事である。配下の士気を高め、恐怖心を打ち消す為の切り札が失われたことは、エレウテリオに少なからず衝撃を与えた。 神聖魔法が使えぬとは、何故だ?神々の力及ばぬ地とでも言うのか? 時が経つにつれ、我が騎士団に良からぬ事ばかり増える。このままでは、敵を破ること能うまい。 やはり、この敵陣を突破し、アランサバルの手勢と合流せねばな。 エレウテリオは決心した。 京都府舞鶴市余部下 総監部前予備陣地 2012年 6月5日 21時11分 陣地正面の路上に投擲されたレッドフレアが燃え尽きつつあった。赤い光が消えるにつれて、夜が力を取り戻す。かろうじて確保されていた視界は、総監部方向から流れてくる煙にまぎれ、急速に失われ始めた。 陣地守備隊を指揮する護衛艦『みょうこう』陸戦隊指揮官、稲富祐也一等海尉は舌打ちで不満を表した。煙の元は、火矢によって発生した小火であった。 早く消火しろよ、と思う。この煙のせいで、二十メートルも離れれば、人影も曖昧になってしまう。 二十メートル。 わずか二十メートル、しか見通せない。これがどんな結果を招くのか、今日一日で陸戦について日本で有数の実戦経験者となった稲富は、容易に想像する事ができた。 右前方、驚くほど近くで喊声が上がった。それに呼応する様に、64式小銃の射撃音が鳴り響く。マズルフラッシュが煌めく。喊声はすぐに悲鳴に変わり、消えた。 稲富の後ろで悲鳴が上がった。 「伏せろ畜生!」 「矢を食らった!」 隊員が叫んでいる。予備陣地は掩体を構築する余裕が無かったため、敵の矢に対する防御力が不足していた。 稲富は奥歯を噛み締めた。煤で真っ黒になった顔面が歪む。昼間に比べてここまで統制をとるのが難しいとは、思ってもみなかった。 「敵は、遮蔽物を活用しています。物陰からにじり寄ってくるため、どうしても発見が遅れてしまいますな」 先任海曹として稲富を補佐する沢田曹長が、苦々しい口調で言った。彼の作業服の右腕には血に汚れた包帯が巻かれていた。 「敵も、学んでいる。そうそう都合良くはいかん」 「海側と正面の圧力が強まっています。気を抜くと突入されかねません」 稲富が指揮する陸戦隊は、第一第二分隊と、母艦で再編成の後増援されたMINIMI軽機関銃装備の機関銃班を加え、志馬警部が指揮する警官隊と共に、陣地を頼りに敵と交戦していた。 本来指揮下に入る筈であった第三分隊は総監部に引き抜かれている。総監部の敷地には敵が溢れ、施設は重囲下に置かれていた。 国道正面だけであれば、さほどの問題は生じなかっただろう。しかし、陣地左側面の総監部敷地が敵に制圧された結果、半包囲を受けるような形で攻撃され、自衛隊側は苦戦を強いられていた。 素人集団の限界だな。稲富は思った。五老ヶ岳を放棄した結果、自衛隊側は主導権を失った。隊員達はひたすら陣地を頼りに眼前の敵を撃つことしか出来ない。 これが陸自普通科部隊であれば、各所の陸曹が敵の意図を看破し、指揮官が命じる前に進言があるか、対処してしまっただろう。 しかし、陸戦など教育隊や学校以来だという海曹士達には、とにかく目に入る敵を叩くという単純な事しか出来なかった。 「撃ち続けるしかないぞ」 「はい。弾薬の補充に注意させます」 腕が無い分は、弾をばらまくしかない。幸い、弾薬の補給は順調に行われていた。しかし消費弾薬に比べ、倒した敵はそう多くない。 稲富の目に敵は見えない。しかし、ひたひたと迫る敵の気配と、時間と共に疲労していく自陣の様子が、何故か理解出来た。 この一時間が山だな。戦場の喧騒の中で、稲富は静かに覚悟した。 京都府舞鶴市余部下 国道27号線上 2012年 6月5日 21時20分 エレウテリオは確かな手応えを感じていた。敵の狙撃を避けるため愛馬を降りた彼は、地面に突き立てた長剣の柄頭に両手を置いた姿勢で、静かに伝令の報告を聞いていた。 「騎士アルマハーノ様が手勢、右翼にて敵陣に迫りつつあり!」 「敵陣正面に対しては、長弓兵隊が射撃を継続中!」 「神官戦士団長グイド殿、麾下二十士と共に総寄せに加わるとの事」 密集陣形を捨てたエレウテリオ騎士団は、夜陰に紛れ敵陣に迫った。 エレウテリオの手元には、今までの損害と逃散したゴブリン兵を除いても、騎士二十騎と兵三百が残されている。温存していた軽騎兵も百騎が健在である。長弓兵は疲労の為、戦闘可能な者は約五十。 エレウテリオは、まず左翼海側と陣地正面に長弓兵の全てと下馬軽騎兵の半数を投入した。さらに選抜した軽装歩兵を躍進させ、陣地突入を窺う。 当然、敵魔法戦士の反撃は苛烈を極めた。たちまち敵陣に肉迫した兵が撃ち倒される。生き残りは、路上で釘付けとなった。 「エレウテリオ卿、頃合にて」 騎士の声に、エレウテリオは重々しく頷き、長剣を地面から引き抜いた。 攻撃の主力は右翼──敵の城館敷地を通り敵陣の側面に至る──である。植え込みや建物を利用し、騎士団は静かに敵前二十歩の位置までにじり寄っていた。 エレウテリオは眼前に片膝をつく伝令達に命じた。 「諸隊、総寄せにかかれ」 「はッ!」 伝令が駆け出すのを確認したエレウテリオは、自らも前線へと歩き出した。背を真っ直ぐに伸ばし大股で進む姿は、騎士団長の威厳に溢れていた。傍らに控える魔導師バルトロに告げる。 「さあバルトロ殿。参りましょうぞ」 「ふぇっふぇっふぇっ。人使いの荒い御方じゃな」 バルトロが応える。その声は夜に溶け込み、直ぐにかき消えた。 「右翼は騎士団長が直率されるぞ」 「団長が出られる」 細波の様に声が伝わり、一瞬遅れて静かな熱気が、兵の間に広がった。 京都府舞鶴市余部下 総監部前予備陣地 2012年 6月5日 21時30分 陣地は絶え間ない弓射を受け、じりじりと負傷者が増え続けていた。特に海側への攻撃が激しい。 稲富は予備隊の機関銃班を右翼に投入し、支えさせていた。効果はあったようだ。敵の突撃を二度撃退している。 「いい加減奴ら諦めないかな」 稲富が硝煙で真っ黒になった顔に、うんざりした表情を浮かべ、ボヤいた。半日戦い続け、さすがに疲労が誤魔化せなくなってきていた。 装備も疲労していた。彼と彼の部下達が頼みとする豊和工業製64式7.62㎜小銃は、その多くが分解整備を必要としていた。排挾不良を起こす確率が増加している。 「総監部守備隊より『敵の攻勢が弱まった』との通報ありました!」 通信員の報告に、稲富は一瞬安堵しかけた。やれやれ、ようやく諦めたか。部隊に一休みさせられるか? 沢田曹長が言った。 「砲術長、総監部が楽になるのはいいですが、こっちはどうでしょうな」 その言葉に稲富は頭を殴られたような衝撃を受けた。そうだ!こっちはまだ攻撃を受けているんだぞ。都合の良いように考えてどうする。 「通信!総監部に敵の動きを報告させろ。あと、早く火を消せと伝えろ!」 「了解!」 総監部への攻撃を止めた敵は、退くのか。それとも── 総監部からの答えを待つまでもなく、答えは示された。 「左翼に敵多数!突っ込んできます!」 陣地左翼側面を守備する隊員からの、悲鳴のような報告が稲富の耳朶を打った。 陣地左翼。 総監部守備隊が内柵に下がった結果、防衛線に間隙が生まれていた。第二分隊が側面の守備につき、間隙を埋めている。 分隊を指揮する有吉二曹は、膝が震えるのを止められなかった。 分隊員は警衛所付近に展開している。その眼前、放置車両や植え込み、売店の建物等の彼方此方に、蠢く影が見える。それは明らかに数を増やしていた。 「有吉二曹、これやばくないですか?」 「そうだな──狙えるか?」 小銃を構えた隊員は、照門を覗き込んだ後、顔を上げ被りを振った。 「煙でよく見えないです。それに、奴ら上手く隠れやがる」 寒気が背筋を伝う。取り返しがつかない事が起きる予感。このままでは、拙い。有吉二曹は指揮官に報告しようと無線機を手に取った。その瞬間── 鋭い叫び声が聞こえた。続いて無数の矢が警衛所に打ち込まれる。さらに、低く重厚な喊声が上がった。 敵が突撃を開始した。いち早く気付いた有吉二曹は七名の部下に射撃開始を命令しようとした。 しかし、次の瞬間、唸りをあげて飛来した投擲斧が、彼の魂を肉体から消し飛ばした。 「エレウテリオ騎士団、突撃せよ!」 明らかに敵は立ち遅れた。行ける。いくらかは撃ち倒されるだろうが、生き残りは敵陣に辿り着く。 「戦神よ!御照覧あれ!」 敵陣に向けて駆ける彼の隣を、戦斧を振りかざした神官戦士団長グイドが猛烈な勢いで敵陣に迫る。 彼等が突入出来れば、如何に魔法戦士といえども対抗できまい。熟練の神官戦士は並の兵五名を容易く屠る。 物陰を出た槍兵が穂先を並べ、駆け出した。雄叫びが夜空に響く。残念な事に、彼等はすぐに撃ち倒された。だが、槍兵が倒れる間に、その脇を騎士アルマハーノとその手勢が先へと進んだ。 神官戦士団も、甲冑の上に着込んだ法衣を翻し、躍進する。たとえ戦歌の効果が無かろうと、彼らの戦意に一点の曇りもない。 戦神の導きの下、名誉ある戦に身を投げ出し、神の武器たる戦斧を振るい、戦塵に倒れることを至上とする漢達であるからだ。 焔の礫に打たれ、騎士アルマハーノがもんどりうって倒れる。しかし、エレウテリオは確信した。 敵は俺達を阻止出来ない。 第二分隊から「敵、突撃を開始。有吉二曹死亡」の報告を聞いた稲富一尉の動きは早かった。 「松井二曹、正面を任せる!」 そう命令すると、自分の64式を掴み、左翼へと駆けだしたのだった。沢田曹長と予備隊の二名が後に続く。 稲富の内心は悔恨に満ちていた。早くに気付くべきだった。総監部への攻勢が突然衰えた。ならばその兵はどこに向くのか。 畜生。自分に都合が良い方に考えちまった。あらゆる教本に、やるなと書いてある事を。 彼は朴訥な顔に怒りを張り付け、陣地左翼を守る土嚢に辿り着いた。敵の槍兵が陣地まであと五メートルに迫っていた。 「負けるな!撃て撃てェ!」 叫ぶと同時に、腰溜めで発砲する。至近距離で弾丸を食らい敵兵が吹き飛んだ。 稲富は辛うじて間に合った。戦意を砕かれかけていた第二分隊は、稲富の指揮を受け反撃を開始。負傷者二名を出したものの、第一波を撃退した。 「砲術長!次が来ます。斧を振り回した厳つい奴等です!」 「そうか!歓迎してやれ!予備班は警衛所を守れ!」 新手は長衣を翻した大柄な兵だった。手には長柄の斧をかざしている。比叡山の僧兵を連想させる姿だった。 部下が発砲する。しかし、驚くべきことに最初の一人を撃ち倒された敵は、素早く地を転がると射撃を避けた。後方から矢が降り注ぐ。 慌てて土嚢に伏せた。すぐに反撃するものの、ゆっくり狙う暇がない。 「砲術長、拙いですな」 「狙いは適当でいいから、とにかく敵の頭を抑えよう……だが」 膠着状態に持ち込むことには、成功した。しかし、稲富の手に反撃するための兵力は残されていなかった。 危うい均衡は、何かが加われば容易く崩れることは明らかであった。 第一陣の騎士と兵達が倒れるのが、エレウテリオからもよく見えた。彼自身も敵陣まであと僅かの位置に進んでいた。 「敵ながら粘るな……」 先行する神官戦士団も、射竦められていた。こちらの弓射により敵の狙いも甘くなっているものの、無視できる密度では無い。 あと一手、あと一手が欲しい。エレウテリオは心から願った。手勢の半数は倒れ傷付き、もう半分もこれ以上の戦闘に耐えられそうもない。 やはり、自ら鼓舞するより他に手は無し。 彼は、敵前に身を曝す覚悟を決めようとした。 「エレウテリオ殿、お待ちくだされ」 戦場の喧噪の中、何故かバルトロの嗄れた声が、よく耳に届いた。振り向くと、ローブに小柄な身を包んだ老魔導師が影のように佇んでいた。 「……手短にお願いする。私は配下を鼓舞せねばならぬ」 エレウテリオは苛立ちを隠さなかった。しかし、バルトロは彼の刺すような視線を気にする素振りもなく、エレウテリオに言葉を投げた。 「死にまするぞ」 「!!」 「敵の礫を侮ってはなりませぬ。エレウテリオ殿が死ねば、兵は崩れましょう」 エレウテリオは周囲を見た。地に伏せる兵達の視線を感じる。 「だが、このままでは敵陣を抜けぬ。あと一撃を加えねば!」 バルトロはその皺だらけの口元を薄く開くと、笑った。右手で首飾りを弄んでいる。石と石が擦れる様な音が鳴った。 「その一撃、儂が加えて差し上げる」 何を馬鹿な。エレウテリオは思った。そして、すぐに思い直した。バルトロは魔導師である。 星を降らせたとて、驚くに値せぬ。 エレウテリオの無言を同意と受け取ったバルトロは、目を閉じると詠唱を始めた。右手で弄んでいた首飾りを引きちぎる。首飾りには尖った石がいくつもぶら下がっていた。 京都府舞鶴市余部下 総監部前予備陣地左翼 2012年 6月5日 21時45分 彼我の交戦距離は限りなくゼロに近づいていた。射撃をかい潜り敵兵が陣地に迫る。 「うわぁッ!」 陸戦隊員の海士が戦斧を下から突き上げられる。鉄帽が弾け飛んだ。彼はそのまま後ろに倒れ込む。左の頬がざっくりと切り裂かれていた。 敵兵は土嚢に足をかけると、倒れた海士に戦斧を振り上げた。 「させるか!」 沢田曹長が素早く動いた。大きく空いた敵兵の脇腹に着剣した64式小銃を突き込む。銃剣が鎖帷子を突き破り、臓腑を抉った。 苦悶の表情を浮かべた敵兵は、それでもなお道連れとばかりに戦斧を振り下ろそうとした。沢田曹長は銃剣が刺さったまま、引金を引いた。 轟音と共に敵兵は土嚢から転がり落ちた。沢田曹長は、すぐさま倒れた海士の首根っこを掴むと、引きずり起こした。 「おい、無事か!?」 「痛テテテ……目は見えます。口も動く」 沢田曹長は、海士の背を平手でどやしつけた。 「よろしい。戦え!次が来るぞ!」 いやはや、頼もしい限りだ。自らも敵に銃撃を浴びせつつ、稲富は部下の活躍に舌を巻いた。戦況は苦しいが希望はある。数分前、通信員が報告した内容を思い出す。 『前島埠頭に陸自普通科小隊到着。市場検問所を第三戦車大隊通過。市内へ急行中』 朗報であった。あと少し耐えれば、増援が到着するのだ。 その時、生暖かい風が稲富の頬を撫でた。煙に霞む戦場に奇妙な気配を感じる。 何だ? 稲富だけでは無かった。隊員達は程度の差は有れど、落ち着かない様子であった。 突然、敵軍内に青白い光が生まれた。生暖かい風は、光の中心から吹いている。付近の煙を巻き込み、渦が生じている。 カタカタと、音がした。 光が消えた戦場に、先程まで存在しなかった人影が浮かび上がった。 乾いた足音が、陣地に迫る。数は十を超えていた。 人影は、片手に曲刀、片手に円形盾を持っている。ゆっくりと迫ってくる。 「ヒィッ!?」 稲富の傍らで、海曹が情けない悲鳴を上げた。 「情けない声を出すな!海曹だろう!」 思わず稲富は叱責の声をかけていた。些細な事で士気が崩壊する事が怖かったからであった。しかし、彼の予想に反し、その海曹はさらに悲鳴を上げた。 「あ、あれを見てください!何だってんだ!勘弁してくれ!」 その言葉に導かれるように稲富が目を向けた先には、敵兵が立っていた。 それは異形、の一言では片付けることが出来ない姿であった。一目でこの世のものではないと分かった。驚くべきことに全身のどこにも肉はなく、ぽっかりと空いた眼窩の奥に、青白い炎が見えるのみであった。 「……骸骨が動いている?」 流石の稲富も、動揺を押さえられなかった。 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ 呆然とする隊員達をあざ笑うかのような、骨が鳴るけたたましい音と共に、骸骨達は一斉に走り出した。 「う、撃てェ!」 陸戦隊員達が一斉に射撃を開始した。統制も何もない、全弾をフルオートで叩き込まんとする射撃であった。 数秒の後、静寂が訪れた。1弾倉を撃ち尽くし、隊員達は骸骨がバラバラになったことを期待した。 ──しかし。 骸骨兵は倒れていなかった。手や足や、頭を失ったままの姿で、前進を続けていた。 「もう駄目だ!」 稲富が恐れていた一言が、自陣から発せられた。骸骨が銃撃をものともせず目前に迫る様子に、稲富自身も一瞬同意しそうになった。 その一言で、ついに守備隊は崩れた。隊員が次々と逃げ出す。稲富も、沢田もそれを止めることは出来なかった。 「くそっ、沢田曹長。第一分隊に後退命令を出せ!もう持たない」 「残念です」 側面が崩れては正面が持ちこたえても無意味であった。この局面を打開できる唯一の手段──予備隊も存在しない。 稲富に出来ることは、部下と共に後退するのみであった。 エレウテリオは、呆気なく崩れる敵軍をやや意外に感じた。あれほど頑強に戦った魔法戦士が、竜牙兵を見ただけで総崩れになるとは。 そこで周囲の様子に気付く。神官戦士団こそ平然としているが、その他の騎士や槍兵達は一様に足を止めていた。竜牙兵に近付く者はいなかった。皆、畏れている。 我が手勢とて同じか。話には聞けど、竜牙兵を見たことのある者など、我を含め一人もおらぬからな。 「さてさて、エレウテリオ殿。如何なされましょうや」 魔導師バルトロが言った。彼の傍らには一体の竜牙兵が侍っている。竜の牙を寄代に、魔導によって生み出された外道の兵は、何の感情も持たず、ただ使役者の命ずるままに殺戮を行う。 禍々しい姿よ。だが、その力は認めねばなるまい。 「流石は本領軍直属の魔導師殿。御助勢感謝する」 エレウテリオはいくらかの本音を込め、バルトロに答えた。さらに、配下の兵に告げる。 「敵は崩れた!勇敢なる我が騎士団の兵達よ!追撃だ!敵を海に追い落とせ!」 エレウテリオが発した力強い激に、兵達は己を取り戻した。土嚢を越え、敵を追撃にかかる。 勝った。 エレウテリオは、確信した。このまま敵を追い散らす。そして、市内で戦うアランサバル指揮下の別働隊と合流し、この都市を我が物とするのだ。 京都府舞鶴市余部下 海上自衛隊北吸岸壁 護衛艦みょうこう艦橋 2012年 6月5日 21時47分 艦橋内は照明が消され、照度を抑えた赤灯だけが僅かに手元を照らしていた。その僅かな光が、艦橋立直員の姿を暗闇に影絵の様に浮かび上がらせている。 暗闇に声が響く。 「総監部に小火災。未だ鎮火に至らない模様」 「陸戦隊、敵部隊と交戦中」 「立入検査隊指揮官負傷。現在、東駅に移動中」 左ウィングで二十倍双眼鏡を覗き込む二番見張員、艦橋中央に立つ航海長、無線からの交話を中継する通信士が、口々に報告した。 護衛艦『みょうこう』艦長、細川孝英一等海佐は、艦橋の右側に据えられた艦長席の赤い背もたれに体を預け、静かに左手を上げた。 「了解」 彼は静かに返答すると、そのまま左手をあごにあて考え込み始めた。 『みょうこう』は戦闘配置を維持している。艦橋ウィングには土嚢と防弾盾が配置され、見張員は鉄帽と防弾チョッキに身を固めていた。 細川は物々しい様子を見せる艦橋で、指揮を執っていた。通常、護衛艦において戦闘ともなれば、艦長はCICに降りるのが普通である。 しかし、この異常な夜に限って言えば、『みょうこう』の戦闘力の源であるイージス武器システムの大部分が眠ったままであり、戦闘指揮に必要な条件は艦橋に揃っていた。 細川は自分の目で状況を把握する必要を感じ、CICを船務長と砲雷長に任せると、艦橋に上がったのだった。 艦の左前方数百メートルの路上では、彼の部下が慣れない陸戦を戦っていた。常に穏やかな雰囲気を絶やさない細川も、さすがに気が気ではない。 明滅する発砲の光。総監部から流れる煙。怒号と銃声が艦橋の開け放たれた防水ドアから聞こえてくる。 細川は首から提げた双眼鏡を持ち上げ、顔にあてがった。視界が限られる代わりに、数倍に増幅された映像が彼の目に映し出された。 細川の口元が歪んだ。唸りが漏れる。彼には珍しいことだった。背後に控えていた通信士が、思わず表情を変えた。 「拙いな。崩れるぞ……」 「艦橋、二番。味方が陣地を離れます。──撤退しています!」 「艦長!」 細川の呟きをかき消すかのように、見張員と航海長の叫びが、艦橋に響いた。 細川は、装受話器を手に取った。 「CIC、艦橋艦長だ。射管員長はいるな?」 『はい!射管員長です!』 まだ三十代前半の若い声が、返ってきた。元気がよいと評判の一曹だ。 「砲術長が危ない。主砲、やれるか?」 細川は言葉を惜しんだ。静かだが苛烈な問いに、艦内通信系がしばし沈黙する。 『……出来ます!』 『無茶だ!』 射管員長と砲雷長が同時に叫んだ。艦内通信系の向こうで、雑音に混じり何かのやり取りが聞こえる。 数秒の後、細川は再度尋ねた。 「無理か?」 『やります!可能です!』 間髪入れず、挑むような声が返ってきた。 『……他に手はないのでしょう。稲富組を信じて、やります』 砲雷長も同意した。 すでに総監部前予備陣地には、敵兵が突入しつつあった。陸戦隊員は一部の者が反撃を加える中、辛うじて敵の手から逃れようとしていた。 「対地戦闘用意」 「対地戦闘用意!」 命令が復唱される。アラームがけたたましい音をかき鳴らし、全乗員が戦闘配置につく。 「各部、配置よし。対地戦闘用意よし!」 すでにほとんどの乗員が持ち場についていたため、素早く報告があがった。 細川は、はっきりとした発音で、命令を下した。 「左対地戦闘」 『左対地せんとーう。260度、距離300。目標、敵武装集団』 独特の抑揚をつけた号令がスピーカーを震わせた。前甲板に鎮座する54口径127㎜単装速射砲塔が生き物のように動き、砲口をわずかに左へ向けた。 目標指定を受け、CICでは射管員長が脂汗で顔中を濡らしていた。砲雷長も同じである。 距離300。対地射撃。すぐ傍に味方。前代未聞の射撃であった。自分のミス一つで砲術長以下数十名が吹き飛ぶ。 だが、迷っている時間はなかった。試射も出来ない。算出した調定値を入力する。 主砲がほんの少し俯角をかけた。即応弾マガジン・ドラムから主砲弾が砲塔内に揚弾された。無人の砲塔内に重い金属音が響く。 「調定よし!」 射管員長が全身全霊を込めて報告する。 『装填よし』 報告を受けた砲雷長は、大きく唾を飲み込んだ。フットペダルを踏む。おい、本当に撃っちまうぞ。 『調定よし。主砲目標よし、射撃用意よし』 スピーカーから砲雷長の報告があがった。 『みょうこう』は、わずか数分で敵に向け牙を剥く用意を終えたのだ。 細川は軽くうなずくと、背後に控える通信士に言った。 「砲術長と話す」 京都府舞鶴市余部下 北吸岸壁前 国道27号線上 2012年 6月5日 21時52分 稲富は、最初その呼びかけを意図的に無視した。自分にはもっと優先すべきことがあると考えたからだった。 最後の弾倉を装填すると、スライドを前進させると同時に、敵に向けて引き金を引いた。 発砲。その隙に、周囲を転がるように部下たちが逃げる。その半数がすでに小銃を失っていた。 拙い、ヤバい、洒落にならん。稲富の半分茹だった頭の片隅で、警報が鳴っている。どう考えても、逃げ切れないと頭の中の冷静な部分が告げていた。 スライドが金属音を立てた。前進した状態で止まっている。弾切れだ。顔を上げると、骸骨が一体土嚢の上でゆらゆらと揺れていた。 一瞬の躊躇のあと、彼は小銃を捨てた。弾帯から9㎜拳銃を抜く。冷たい金属の塊は、彼の手にずしりと重みを伝えたが今の状況ではいかにも頼りなかった。 「──長。砲術長!」 そこでようやく通信員の叫びに気づいた。携帯無線機を片手に、目に涙を浮かべながらも、必死に稲富を呼んでいた。 「どうした、早く逃げろよ」 稲富の言葉に、通信員が何を言っているんだ、という顔をした。 「砲術長に、通信です!逃げたいので早く出て下さい!」 ああ、そうか。こいつ俺が無線に出ないと逃げられないのか。稲富はすまん、と詫びると通信員が差し出した携帯無線機を握った。 「こちら、砲術長」 『艦長だ。生きているな』 稲富は思いがけない相手が出たことに驚いた。 「はい、今のところは、ですが。しかし、ずいぶんと楽しくなってきました」 話す間にも敵は迫る。稲富と通信員は拳銃で敵を牽制しつつじりじりと後退した。突撃をかけられたら、抑えきれない。 『砲術長が敵に一番近いな?もう、陣地に味方はおらんな?』 「はい。私と通信員が最後尾です。再びお目にかかるのは難しいかも知れません」 一拍の間があり、艦長が言った。 『君の仕事を代わってやる。今すぐ総員側溝に飛び込め。いいな?』 「は?それはいったい……?」 『いいからすぐに飛び込んで、目を閉じろ。口は開けておけよ!』 まさか、まさかな。稲富は、『みょうこう』を見た。前甲板の主砲がこちらを向いていた。なんてこった、艦長は本気だ。 「砲術長了解!──総員側溝に飛び込め!急げ、死んじまうぞ!」 稲富は周囲で味方の撤退を援護していた数名に、有らん限りの声で叫んだ。傍で状況を掴めずおろおろするばかりの通信員を、側溝に蹴り込む。 周囲の全員が飛び込むのを確認し、稲富は身を翻した。左肩に矢が刺さるのを感じつつ、彼は側溝に倒れ込んだ。 「路上に味方なし!」 「航海長、確認した。艦長、クリアです」 細川は、艦長席で背筋を伸ばすと、よく通る声で命令した。 「主砲打ち方始め」 『打ちー方始め!』 『射ェッ!』 スピーカーの号令に、間髪入れず砲雷長が裂帛の気合いを込めて叫ぶ。 閃光。轟音。計測員が測る間もなく、300ヤード先の路上に、着弾の閃光と土煙が上がる。薬莢が甲板に転がり、耳障りな音を立てたが、誰も気にする者はいなかった。 『遠五十』 「よぉし、まずまず!」 航海長が叫んだ。初弾は風圧で桜並木を吹き飛ばしたあと、敵の真っ只中を抜け、路上に着弾した。 『修正、下げヒト。───調定よし!』 『射ェッ!』 弾着から速やかに修正が行われる。再計算値が入力された。第二弾発砲。 『命中!』 次弾は突撃を挫かれた敵の直中に着弾 した。アスファルトと土砂と、生き物だった何かと、この世の者ではない何かの混合物が巻き上げられる。 『射ェッ!』 第三弾発砲。冷却水を滴らせた砲口から閃光が煌めく。艦橋は鼻を突く硝煙の臭いに包まれた。 第三弾は、国道に架けられた歩道橋の基部にダメージを与えたらしかった。始めはゆっくりと。そして、ある瞬間からは一気に、年期の入った外見の歩道橋は、埃を猛烈に巻き上げながら倒壊した。 「総監部守備隊より本艦宛て。『敵は潰乱セリ。射撃効果大』」 通信士が報告した。細川は、はっきりとうなずくと、静かに命令した。 「打ち方やめ」 『打ちー方やめ!』 『主砲打ち終わり。砲中弾なし』 CICから異状なしの報告を受けても、艦橋では誰もしゃべらなかった。射撃は絶大な威力を発揮し、敵の突撃を破砕したというのに、歓声をあげる者もいない。 誰もが一時的に放心していた。その中で唯一艦長細川一佐だけが、平常心を保っていた。 「うん、なかなかよろしい。──航海長、陸戦隊の収容を行え」
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全般捕虜についてですが、捕虜になったらその捕虜に対して、警察権(?)を持つことができるのでしょうか? 先進国の軍隊に所属して捕虜になった場合、抑留期間中の給与は支払われるのでしょうか? 民間徴用船の乗組員が万が一拿捕された場合、捕虜としての待遇は期待できるものなのでしょうか? 士官はたとえ捕虜になったとしても高待遇なのは何故なんですか? 捕虜の存在は、戦略上重要なのでしょうか? 捕虜虐待禁止ルールはいつ頃、どのようにして作られたのか? 戦闘中、本国が降伏して戦闘停止・武装解除命令が出た場合、その部隊はそれに従い敵に降伏して、その場で解放されるのか、それとも一旦は捕虜収容所に抑留されるのか・・どちらなんでしょ? 捕虜宣誓とは何ですか 近代戦において王族が捕虜になったら、停戦したりすることはありえるんでしょうか? 第2次世界大戦物の映画などに登場する捕虜収容所の所長などは戦線で負傷などが赴任理由になっているようですが、実際はどうだったのでしょうか? 捕虜になった際、尋問に口を割らない訓練とは具体的にどのようなものなのでしょうか 兵士は、万が一敵の捕虜となってしまった場合、敵に対してどのように対応するよう教育されているのですか? 戦争捕虜郵便についての条項が郵便法に制定されたようですが、この規定は戦前に存在したものが復活したのでしょうか? 戦時国際法上、捕虜の官姓名を相手方に通知する義務ってあるんですか? 映画「戦場に架ける橋」みたいに兵や下士官を労働力として使うことは条約で認められていたんでしょうか? 敵兵を武装解除して解放なんてことは本当に可能なのでしょうか? 傭兵は金で動く連中なので雇い主からは使い捨てで運用されかつ敵からも憎悪の対象で捕虜になれないというのは事実でしょうか? 各国の捕虜日本軍は民間人の殺害、強姦、略奪、捕虜虐待などを行ったと言われてますが本当ですか? ジェシカ・リンチはどうして拉致されただけなのに勲章もらえんの? グアンタナモで拷問してたのが問題になったけど、今の米軍は公式には拷問禁止なの? ソ連や中国が大戦中にまともに捕虜を扱った事例はあるのでしょうか? 太平洋戦争中、日本軍に黒人捕虜はいたのか? 米英豪などの捕虜になった日本兵には、どんな食事が供されたんですか? 第2次世界大戦においてドイツ軍が捕虜等で構成した師団を運用していましたが、日本は捕虜を使って何らかの軍事作戦に従事させていたことはあるでしょうか? 戦陣訓に「生きて虜囚の辱めを受けず」てありますが、実際捕虜になって罰せられた例はあるの? 広島や長崎の原爆投下で被爆した連合国軍の捕虜の兵士は、どの位いたんでしょうか? アメリカ兵による日本兵捕虜の集団殺害や虐待の記録は存在するんでしょうか? 日本軍の捕虜となった米兵はどういう扱いをうけたのでしょうか? 日露戦争で捕虜になった日本兵が敵に協力することが多々あったらしいしとか? 「一空事件」についてはよく存じていません。ぜひ詳しく聞かせてください 中国軍の捕虜になってしまった日本兵の扱いはどんなだったんでしょう シベリアに抑留されたのはドイツ・日本兵捕虜だけ? 日本爆撃の際、中島飛行機の工場などの情報はどうして得ていたのですか? 旧日本軍で捕虜が死亡した場合、その遺体・遺品はどのような措置が執られたのですか。 「生きて捕虜の辱めを受けず」と最初に言い出したのは誰なんですか? 日露戦争当時,日本に「捕虜になることは恥だ」という意識はあったのか? 山県有朋はなぜ「捕虜になるな」という布告を出したのですか? 日本本土に捕らわれていた連合軍捕虜はどこで何をしていたのでしょうか? イタリア軍に捕まったイギリス兵の扱いはどうだったのでしょうか?? 第2次世界大戦時に、中国側の捕虜になった日本兵の扱いはどの様な物だったんでしょうか? バターン死の行進の報復として、アメリカ軍によって日本兵の捕虜が虐待されたことがあったそうですが。 連合軍の捕虜となったドイツ兵100万人が虐待などにより死亡したという説ですが、証拠はあるんですか? 1945年の8月15日から、米軍が進駐してくる間の日本国内の捕虜収容所は、どの様な状況だったんでしょうか? シベリアに抑留された日本兵って、具体的にどういう事業に投入されたのですか? 日中戦争における両軍捕虜の処遇について教えて下さい。 日本はどれぐらいの連合国兵士を捕虜にしたの? 全般 捕虜についてですが、捕虜になったらその捕虜に対して、警察権(?)を持つことができるのでしょうか? また、捕虜を殺すのは禁止ですが、相手が収容所ないでかなりの問題行動をしたら、正規の手続きの上で殺すことはできるのでしょうか? また、脱走者について、逃げたら殺していいのですよね? その際、相手が一回軍に復帰して、また捕まったとき、(覚えてたら)前回逃げたのを理由にして殺してもいいのでしょうか? それとも一回復帰したらチャラでしょうか? 「捕虜の待遇に関する一九四九年八月十二日のジュネーヴ条約(第三条約)の 第三章で捕虜の刑罰に対して規定しています。 その八十二条において、捕虜は抑留国の法令に服さなければならないと規定されています。 従って、警察権の行使は可能です。 但し、裁判は軍事裁判で行われ、捕虜だからと言って自国民以上に厳しい刑罰を課することは出来ません。 例えば、捕虜収容所内で連続殺人をするなど反社会的行動に出た場合は、死刑も免れないでしょうが、些細な罪で死刑には出来ません。 また、死刑に関しては第百条以降で規定され、勝手に死刑には出来ないようになっています。 脱走に関しては、第九十一~九十二条で規定されており、回数の如何に問わず、懲戒罰しか課すことが出来ません。 従って、死刑には出来ません。 数回に渡って脱走を企てた場合は、特別の監視の下に置くことが出来ますが、これも拘禁 (しかも、集団に科する刑罰、肉体に科する刑罰、日光の入らない場所への拘禁、その他拷問は不可)までです。 なお、懲戒罰は30日以内の作業の俸給、労働賃金の100分の50以下の減給、特権の廃止、一日に付き二時間の労役、拘禁のいずれかしか選択できません。 あと、捕虜は再び捕虜になった場合、再び捕虜の身分を与えられます。従って、再度捕虜になったからと言って殺すことは出来ません。 (12 眠い人 ◆ikaJHtf2) 先進国の軍隊に所属して捕虜になった場合、抑留期間中の給与は支払われるのでしょうか? 一応、ジュネーブ条約第三条約では、そうなっていたかと。 捕虜通知が赤十字(赤新月)を通じて来た場合はですが。 でもって、収容所に入っているときに使役された場合、その使役分きちんと賃金は支払われます。(確か捕虜条約の第62条) (23 眠い人 ◆ikaJHtf2) 民間徴用船の乗組員が万が一拿捕された場合、捕虜としての待遇は期待できるものなのでしょうか? 捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約(第三条約)によれば、 第四条〔捕虜〕A この条約において捕虜とは、次の部類の一に属する者で敵の権力内に陥ったものをいう。 (1) 紛争当事国の軍隊の構成員及びその軍隊の一部をなす民兵隊又は義勇隊の構成員 (2) 略。 (3) 正規の軍隊の構成員で、抑留国が承認していない政府又は当局に忠誠を誓ったもの (4) 実際には軍隊の構成員でないが軍隊に随伴する者、たとえば、文民たる軍用航空機の 乗組員、従軍記者、需品供給者、労務隊員又は軍隊の福利機関の構成員等。 但し、それらの者がその随伴する軍隊の認可を受けている場合に限る。 このため、当該軍隊は、それらの者に附属書のひな型と同様の身分証明書を発給しなければならない。 (5) 紛争当事国の商船の乗組員(船長、水先人及び見習員を含む。)及び民間航空機の乗組員で、 国際法の他のいかなる規定によっても一層有利な待遇の利益を享有することがないもの となっています。 従って、お尋ねの場合は第四条第四項または第五項に該当すると思いますので、 捕虜としての待遇は期待できると見て良いでしょう。 (相手国がその条約を遵守する姿勢がある場合においてですが) (26 眠い人 ◆ikaJHtf2) 士官はたとえ捕虜になったとしても高待遇なのは何故なんですか? 国際法にそういう規定があるから,って答えじゃだめですか? 第四十四条〔将校の待遇〕 将校たる捕虜及び将校に相当する地位の捕虜は、その階級及び年令に適当な考慮を払って待遇しなければならない。 ② 将校収容所における役務を確保するため、同一軍隊の兵たる捕虜でできる限り同一の言語を話すものが、将校たる捕虜 及び将校に相当する地位の捕虜の階級を考慮して、充分な人数だけ同収容所に派遣されなければならない。 それらの兵に対しては、他のいかなる労働も要求してはならない。 ③ 将校自身による食事の管理に対しては、すべての方法で便益を与えなければならない。 第四十五条〔その他の捕虜の待遇〕 将校たる捕虜及び将校に相当する地位の捕虜以外の捕虜は、その階級及び年令に適当な考慮を払って待遇しなければならない。 ②それらの捕虜自身による食事の管理に対しては、すべての方法で便益を与えなければならない。 とまあこういう感じに,ジュネーブ第3条約の第44条と第45条で明確に差別的待遇が規定されてるわけです. 歴史的な背景については知りませんが,やっぱり国際法を作る連中も貴族出身だとか社会的地位の高い連中なわけで ”階級”差別的な意識が頭の中にあったんじゃないでしょうか.あんなDQSと同じ扱いされてたまるか,みたいな. (54 予備語学陸曹見習い) 捕虜の存在は、戦略上重要なのでしょうか? プロパガンダとか情報収集等の一部の例外を除けば、そんなに重要じゃないです。 どちらかと言うと邪魔な存在です。 (74 719) 捕虜虐待禁止ルールはいつ頃、どのようにして作られたのか? 元々、1874年に欧州16カ国の代表が総合的成文戦時国際法について討議する為に、 ベルギーのブリュッセルに集まったのが最初。 主唱者は、ロシアのアレクサンドルII世だったり。 この辺の捕虜の取り扱いを定めた規程は、南北戦争での北軍が1863年に発した「陸戦の 法規慣例に基づく軍隊の守るべき規則」(陸軍一般命令第100号)、通称、「リーバーコード」 と言うのが最初です。 1874年のそれは、リーバーコードを敷衍した内容で、条約としての発効は成りませんでしたが、 先駆けとなりました。 1877年に、そのロシアはトルコとの戦争に当り、「露国捕虜取扱規則」を定め、尊重します。 1899年には、こうした動きを受けて、ハーグで万国平和会議が開催されますが、これも提唱者は ニコライII世です。 ロシアがこうした戦時国際法制定に動いていたのは、西欧先進諸国に対等の国として認められる 為に必要となった訳です。 謂わば、大国のエゴから始まった事だったりする訳です。 因みに、戦争を行うのにはお足が要ります。 そのお足を頂くのに、自国で賄いきれない場合は、各国の金融市場で資金を調達しなければなら ない訳ですが、捕虜を虐待するような野蛮な行為を行っている事が知れれば、世論がその資金調 達に対する批判を強める事が考えられます。 そこで、捕虜の虐待は各国とも極力避けようとする訳です。 (480 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 戦闘中、本国が降伏して戦闘停止・武装解除命令が出た場合、その部隊はそれに従い敵に降伏して、その場で解放されるのか、それとも一旦は捕虜収容所に抑留されるのか・・どちらなんでしょ? ケースバイケース。 そのときの状況によるけど、まあしばらくは戦争犯罪の調査や、事務手続きでその間は捕虜収容所送り。 復員するまで母国の軍人の身分は消えないので、一定場所に指揮官の指揮の下起居することになる。 これを悪用して移送したのがソビエトロシア、支那。 (465 323,324) 捕虜宣誓とは何ですか 捕虜になった後、当該戦争では、敵対する役務につかないことを宣言する事. これによって解放される。当然解放後に敵対行動をとって再度捕虜になったら 捕虜でなく犯罪者扱いになる。 (491 138) 近代戦において王族が捕虜になったら、停戦したりすることはありえるんでしょうか? 実例として、捕虜になって大問題となったケースとか、 あるいはそういう事態を避けるために特別の配慮がされたケースとかは、あるんでしょうか? 普仏戦争の時フランス皇帝ナポレオン三世はベルダンで捕虜となったが、フランスでは共和政府が樹立され、その後も戦争は続いてる。 あと王族とはいえんが、独ソ戦でスターリンの息子ヤコフがドイツの捕虜になったが、スターリンはドイツからの捕虜交換の申し出を拒否。 見捨てられたヤコフは捕虜収容所で自殺同然の死を遂げた。 (522 785) 捕虜になったことが大問題になった王族は、ベルギーのレオポルド三世がよく知られています。 第2次世界大戦においてベルギー軍の降伏した後、レオポルド3世はあえて亡命することなく ベルギー国内に留まり、ドイツ軍に幽閉されました。 ところが、国王はロンドンに樹立されていたベルギーの亡命政府と行動を共にしなかったことを 他の連合国や一部の国民に批難され、終戦によって解放された後もすぐに帰国することが 出来ませんでした。 この混乱はしばらく続き、国王は国民投票に掛けられた後に国内の混乱の責任をとって退位しています。 (522 名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE) 第2次世界大戦物の映画などに登場する捕虜収容所の所長などは戦線で負傷などが赴任理由になっているようですが、実際はどうだったのでしょうか? 栄転なんでしょうか?それとも左遷先と見るのが良いのでしょうか? 特に変わりありません。 軍隊では戦闘をするばかりでなく、後方を担当するのにも士官が相当数必要であり、 その中の一部が、捕虜収容所長として赴任したにすぎません。 部下の方は、戦傷などで後方に送られたケースが多いようですが、捕虜収容所長は、 それなりに国際法に精通した人々を充てることが多く、高等教育を受けた人間がなる ケースが多いです。 (325 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 栄転か左遷か、という観点とは少し違いますが・・・ かの名著「戦場における『人殺し』の心理学」によれば、捕虜収容所では 捕虜側よりも看守側のほうに心的外傷が多発するそうです。 捕虜の生殺与奪の権を握り、反乱や脱走に備えるなどの心的負担は 尋常なものではなく、後方だからといって閑職ではないようです。 同所には「ナチスドイツによって収容所の管理者に任命された者たちには、 攻撃的精神病質者が驚くほど多かった」「できるだけ<凶悪犯とサディスト> があてられた」ともあります。 そんなところの所長ですから、左遷先としては不適切でしょう。 (325 58) 捕虜になった際、尋問に口を割らない訓練とは具体的にどのようなものなのでしょうか まず話術の訓練。 誘導尋問の典型的なやつを一通り経験させて「つい喋ってしまった」ということに 対する耐性をつけさせる。 あとは「どうやったらすぐに気絶できるか」を教える。 でも尋問する方もプロなので、”一通り”した程度の訓練では対抗できないのが ほとんどらしい。 結局「吐かれて困ることは最初から教えない」というのが一番、ということになる。 特殊部隊の隊員にはあらかじめ少量の薬物(いわゆる自白剤とかそういう系統の)を 投与しておいて耐性を上げる、という事もやってはいる、とのこと。 (316 221) 兵士は、万が一敵の捕虜となってしまった場合、敵に対してどのように対応するよう教育されているのですか? 時代とか軍によって異なりますが…。 日本軍だって、日露戦争や第1次世界大戦までは、きちんと捕虜になった場合の国際法に関する教育を していた訳で。 ゲリラ以外の正規軍の捕虜となった場合は、捕まる際に、自軍の軍服を着用し、武器を持たずに恭順の 意志を表すこと、日記など、敵軍の情報源になるものは破棄すること、敵国兵士の尋問に対しては、認識 番号と氏名、階級、所属のみ答え、それ以外の一切に答えるべきではないこと、国際法に則った捕虜とし ての正当な扱いを要求出来ること、その為の捕虜条約の内容など、一連の国際法の教育が最低限為され ます。 尋問に関しては、敵に嘘の情報を流すことは考えないのですか? それなんて日本陸軍@昭和時代? 例えば、捕虜の名前なんて、大した情報でもないし、自分が生きている情報を自国に教えないと いけないのに、日本軍の捕虜はみんな「長谷川一夫」を名乗っていたりする訳で。 だから余り捕虜からの情報は重視しません。 雑談とか世間話程度から、情報を取得するのは多かったりしますが。 (296 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 戦争捕虜郵便についての条項が郵便法に制定されたようですが、この規定は戦前に存在したものが復活したのでしょうか? 戦前の日本では俘虜郵便ってのがあった。 で、これらが具体的に何かというと、 第71条 捕虜に対しては、手紙及び葉書を送付し、及び受領することを許さなければなら ない。抑留国が各捕虜の発送する手紙及び葉書の数を制限することを必要と認め た場合には、その数は、毎月、手紙二通及び葉書(第七十条に定める通知票を 除く。)四通より少いものであってはならない。それらの手紙及び葉書は、でき る限りこの条約の附属のひな型と同様の形式のものでなければならない。その他 の制限は、抑留国が必要な検閲の実施上有能な翻訳者を充分に得ることができな いために翻訳に困難をきたし、従って、当該制限を課することが捕虜の利益であ ると利益保護国が認める場合に限り、課することができる。捕虜にあてた通信が 制限されなければならない場合には、その制限は、通常抑留国の要請に基いて、 捕虜が属する国のみが命ずることができる。前記の手紙及び葉書は、抑留国が用 いることができる最もすみやかな方法で送付するものとし、懲戒の理由で、遅延 させ、又は留置してはならない。 長期にわたり家族から消息を得ない捕虜又は家族との間で通常の郵便路線により 相互に消息を伝えることができない捕虜及び家族から著しく遠い場所にいる捕虜 に対しては、電報を発信することを許さなければならない。その料金は、抑留国 における捕虜の勘定に借記し、又は捕虜が処分することができる通貨で支払うも のとする。捕虜は、緊急の場合にも、この措置による利益を受けるものとする。 捕虜の通信には、原則として、母国語で書かなければならない。紛争当事国は、 その他の言語で通信することを許すことができる。 捕虜の郵便を入れる郵袋は、確実に封印し、且つ、その内容を明示する札を附し た上で、名あて郵便局に送付しなければならない。 「捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約」より (295 170) 戦時国際法上、捕虜の官姓名を相手方に通知する義務ってあるんですか? それと、本国との通信を捕虜に許す義務もあるんですか? 捕虜の官姓名を相手方に通知する義務に関する条約 ハーグ陸戦条約第14条: 「交戦国毎に、開戦時に戦争捕虜に関する情報局を開設する。必要なときその局は 中立国に置かれる。その局は捕虜についての情報を提供するとともに、個々の捕虜に ついて報告書を保存し全ての必要な情報に関する業務を執行するものとする。 移送中または病院で死亡した捕虜が遺した、または戦場で発見された個人的所有物、 貴重品、手紙などを集め、受領することは、この情報局の任務である。」 ジュネーブ条約第三条約第六十九条〔措置の通知〕 「抑留国は、捕虜がその権力内に陥ったときは、直ちに、捕虜及び、利益保護国を通じ、 捕虜が属する国に対し、この部の規定を実施するために執る措置を通知しなければ ならない。」 通信を捕虜に許す義務に関する条約 ハーグ陸戦条約第16条 「情報局は郵便料金免除の特権を受ける。戦争捕虜に送られる、または戦争捕虜が 発信する手紙、支払い指図書、郵便小包、その他の貴重品は発信地または受領地 もしくはその中継地点のいずれの国においても郵便料金は免除される。 戦争捕虜あての贈り物と援護物資は郵便料金が無料のみならず、国有鉄道の輸送費 も免除される。」 ジュネーブ条約第三条約第七十一条〔通信〕 「捕虜に対しては、手紙及び葉書を送付し、及び受領することを許さなければならない。(以下略)」 以上の条約の下において抑留国は捕虜に対してあなたが訊ねた義務を負いますです。 (120 名無し軍曹 ◆Sgt/Z4fqbE) 映画「戦場に架ける橋」みたいに兵や下士官を労働力として使うことは条約で認められていたんでしょうか? ジュネーヴ条約第二十六条第二項 抑留国は、労働する捕虜に対し、その者が従事する労働に必要な食糧の増配をしなければならない。 上記から対価を払えば問題なし。タダでメシを食わせる道理は無いので、大体その分の労働はさせている。 第1次世界大戦の支那の青島で捕虜になった独逸兵は食事代分の労働はしている。 ただ、捕虜将校の労働に関しては同条約第四十四条によって禁止されている。 (262 177) 蛇足。 一応、捕虜に関しては、肉体的に不適当な労働、不健康若しくは危険な労働に従事することは 禁止されています。 第2次世界大戦に於いては、日本軍の規定では、賃金は企業から軍に対し、捕虜一人一日当り1円 が支払われ、捕虜受け取り分は兵が10銭、下士官15銭、准士官25銭、将校は階級に応じて支払う ことになっており、企業は賃金を日本軍の経理部(主計科)将校に渡し、経理部(主計科)将校が 捕虜の将校に渡し、将校が各自に払う形式を取っていました。 また、この場合は現金ではなく、通帳支払いという形で受け取っており、その給料を使う場合は、 将校から通帳を受け、監視員と共に収容所外の商店で買い物をすることになっていました。 (262 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 敵兵を武装解除して解放なんてことは本当に可能なのでしょうか? 「宣誓解放」という制度があります。 第3ジュネーブ条約第21条第2項 「捕虜は、その属する国の法令により許される限り、宣誓又は約束に基づいて 不完全又は完全に解放することが出来る。・・・捕虜に対しては、宣誓又は約束に よる解放を受諾することを強制してはならない」 同第3項 「各紛争当事国は、敵対行為が始まったときは、自国民が宣誓または約束に 基づいて解放されることを許可し、または禁止する法令を敵国に通告しなければ ならない。こうして通告された法令に従って宣誓又は約束をした捕虜は、その 個人的名誉に基づいて、その者が属する国及びその者を捕虜とした国に対して 宣誓及び約束に関わる約定を果たす義務を負う。この場合には、その者が属する 国は、宣誓又は約束に反する役務をその者に要求し、また、その者から受けては ならない」 (142 115) 傭兵は金で動く連中なので雇い主からは使い捨てで運用されかつ敵からも憎悪の対象で捕虜になれないというのは事実でしょうか? フランス外人部隊とかを傭兵に含めていいんだろうか あれは普通に正規軍扱いだから、捕虜資格もあるけど (俺初質スレ436 778) 各国の捕虜 日本軍は民間人の殺害、強姦、略奪、捕虜虐待などを行ったと言われてますが本当ですか? 兵が個人単位でそういう行為に走るのは世界の例にもれず日本も同様だし、 捕虜虐待は風潮として帝国陸海軍の常識でもあった。 軍として作戦上の話であっても 徴用という名で占領地から物資を略奪した例は山ほどあって、 そもそもの戦略目標が南方の資源だったから、 ある意味では戦争そのものが略奪を目的としていたとさえ表現できる。 民間人の殺害も憲兵の拷問とか有名だし、 のみならず自国の兵の虐殺としか表現できない作戦 (特攻ではない。敵ではなく味方を殺す為の作戦)をも頻発していた。 (477 794) 日本軍は「捕虜になるのは恥ずかしい事である。軍人たるもの命ある限り戦って散れ」と 将兵に教えていた(かの東条英機が訓令した「戦陣訓」)ので、捕虜に偏見の目を向けて いた。 欧米(ソビエト除く)では「捕虜はやれるだけの事をやった結果なのであれば恥ずかしい ことではない。むしろ、逃げ出さず捕まるまで戦ったのは褒められるべき」という意識 だったので、日本人に「捕虜になって恥ずかしいと思わないのかお前達は?」という態度で 接しられたことは「虐待」だった。 「バターン死の行進」は決して意図的に多数の死者を出したわけではなく、むしろ日本軍的には 「常識の行為」だったのだが(当時の日本には兵が徒歩以外で移動するのはまずないし、行軍中は 大して休憩もせず水もなるべく飲ませないのが普通)、国際常識的に見ると「捕虜の健康を気遣う」 という配慮が全くなく、「意図的な虐殺だ」と言われても仕方ない面があった。 日本軍が占領地で支払いに使った軍票は何も考えずに乱発したためにインフレ化して 事実上の紙屑状態だったし、そもそも「これ売ってくれ。支払いは軍票で」と言われて 「軍票じゃ売れません」と返事することは許してないのだから、略奪しているのと変わら ない。 インパール作戦等、「こんなの実行する前から失敗することは判り切ってるだろう!」 という作戦を数多く実行し、実際大失敗して多大な犠牲を出したことは、 「敵ではなく味方を殺すための作戦だった」 と言われても仕方がないだろう。 事実、「実は太平洋戦争の兵士の戦死者は戦傷死よりも補給の途絶による飢餓で死んだ方が 多い」ので、連合軍よりは日本軍の指導部の方が、日本人を殺すことに貢献していたとも言える。 (477 844) ジェシカ・リンチはどうして拉致されただけなのに勲章もらえんの? 授与条件を満たしたから 拉致された(捕虜になった) → Prisoner of War 戦闘にて負傷した → Purple Heart 勇敢な行いがあった → Bronze Star 政治宣伝的な側面がないとは言い切れないが、不自然な叙勲ではない (503 775) グアンタナモで拷問してたのが問題になったけど、今の米軍は公式には拷問禁止なの? 『24』のジャックバウアーのまねする兵士がいるとも聞いたけど? はるか昔にハーグ条約によって捕虜の虐待は禁じられておりますので。 (506 939) 肉体的な暴力は公には禁止だが、こんな拷問はやってたりする。 音楽をエンドレスで聞かせる「拷問」、米軍収容所で実践 http //wiredvision.jp/news/200809/2008092221.html (506 951) ソ連や中国が大戦中にまともに捕虜を扱った事例はあるのでしょうか? ソ連や中国(国府、中共ともに)については悪い話しか知りません。 過酷な労働を科すのはましな方で、降伏の軍使を撃ち殺すわ、死体にしたあとで(あるいはしながら) 遊び半分にぐちゃぐちゃにするわ。果たして、この二カ国がまともに捕虜を扱った事例はあるのでしょうか? 中国はかなり優遇したみたいだよ。一種の引き抜き工作。 優遇した上で日本側に返した例もある。返された後、自決に追い込まれたりしてるみたいだけど。 ソ連もノモンハン事件のときの捕虜は優遇してたみたい。 これも日本側に返還された後、自決に追い込まれた。 http //kiuchi.jpn.org/nobindex.htm シベリア→中央アジアに抑留された元日本兵の画集。 これを見る限りでは過酷ではあったが、意図的に虐待したというわけではない。 同じ捕虜のドイツ人やハンガリー人だけでなく、赤軍の兵士や民間人ともそれなりにうまくやっている。 国民党軍と違って航空兵力の無い共産軍は、降伏した日本の関東軍第2航空軍第101教育飛行団第4練成飛行隊の隊員を厚遇、 機材を集めて修理し、教官の教えを真面目に学び、人民解放軍航空隊の基礎を作った。 日本人たちは無事に帰国したが、中共帰りなことで公安に目をつけられ、就職が困難だったそうな。 後に、彼らは国交回復後に元教え子たちと再開し、歓迎されている。 (525 401-426) 太平洋戦争中、日本軍に黒人捕虜はいたのか? おそらく黒人捕虜は一人もいません。 大東亜戦争中日本陸海軍が捕獲した俘虜(所定の手続きの後に収容所などに収容された捕虜をこう呼びます)や衛生部員は 総数16万7930名、内3万8135名が死亡しました。 ちなみに原住民捕虜を加えると、約30万人になります。 で、本題ですが、白人捕虜と原住民捕虜に関する規定はあります。 つまり、日本軍は「人種的な区別をつけて」扱っています。 が、黒人に関する規定もなければ記録もないのです。 唯一考えられるのは記録に残される前、つまり収容される以前に「戦場で処理」された可能性ですが、多分ないでしょう。 私が持っているのは日本側から見た記録の類で、連合軍側からの戦死傷記録に黒人兵のそれがあるはずですから 照合すればはっきりしますが、米公文書館まで足を運ぶ方はいらっしゃらないでしょうね・・・ ま、「いない可能性が極めて高い」までにしときましょうか。 少なくとも日本側に黒人捕虜を収容した記録はありません。 「俘虜情報局・俘虜取扱の記録」は一応市販されてます(不二出版)ので、古書店探せば見つかるかもしれません。 (472 ゆうか ◆9a1boPv5wk) 米英豪などの捕虜になった日本兵には、どんな食事が供されたんですか? 補給さえしっかりしていれば、普通に米兵と同じ物を食べさせた。捕獲した携行食糧を「アメ公はええもん喰っとるのう」 とか言ってたレベルの食糧事情なんで、SPAM缶とかでも大喜び。 捕虜になった場合の対応を教育されていなかった上、飢餓に苦しんでいたところに十分に食事を与えられたのと、 虐待されるものだとばかり思ってた反動で、積極的に米軍に協力する日本人捕虜が続出したほど。 捕虜になった人が書いた本ではなく「日本兵捕虜は何をしゃべったか」という本 捕虜の証言と米軍資料を研究したのをまとめた 文春新書、著者山本 武利、ISBN4-16-660214-4 680円 (571 366-386) 第2次世界大戦においてドイツ軍が捕虜等で構成した師団を運用していましたが、日本は捕虜を使って何らかの軍事作戦に従事させていたことはあるでしょうか? 連合国側で同じようなケースはあったのでしょうか? えーと、戦場に架ける橋とか聞いたことないかな 九大事件も軍事っちゃ軍事か 有名な泰緬鉄道の敷設がそれに当たる。 連合軍の場合、ソ連が、ドイツの捕虜を集めて、自由ドイツ委員会などという プロパガンダ組織を作ってドイツに赤色政府を立てようとした。 日本はシンガポールで捕虜となった英領インド軍将兵から志願者を募ってインド国民軍(Indian National Army)を編成し、インパール作戦などに投入している。 ソ連はスターリングラードで捕虜となった将校に自由ドイツ委員会などの傀儡組織を作らせ、前線での宣伝や投降勧告などを行わせてる。 (579 153-155) 戦陣訓に「生きて虜囚の辱めを受けず」てありますが、実際捕虜になって罰せられた例はあるの? 軍法には処罰規定はないと思う。 しかし、ノモンハン事件で関東軍将校らが蒙・ソ軍に捕らわれ、停戦後の捕虜交換で帰還したケースがある。 捕らわれていた連隊長や下級士官は原隊復帰は成らず、職を解かれ、 全員が関東軍司令部付となり、参謀の服部・辻らに事実上の自決を強要されている。 半藤一利著「ノモンハンの夏」より ただし、彼らの多くは戦闘中に負傷または人事不省の状態で戦線に残置されていることから、 抗命や逃亡兵とは異なる点は注意が必要。 満蒙の国境を巡る小競り合いの小規模戦闘から、数個師団を投入する会戦にまで発展した結果は周知の通り。 もちろん事件の責任は、省部の方針に従わず、独断で無謀な作戦を遂行した関東軍司令部にあるのは言うまでもない。 作戦に当たった第23師団長・小松原中将以下、各連隊長ともに予備役に編入されているが、服部・辻の参謀は一切の責任を問われていない。 しかも自ら立案した作戦の失敗に反省も教訓も残さずに、参謀本部作戦課長・班長へ栄転している。 マキャベリズムの権化ともいうべき服部・辻の独善的な態度は開戦劈頭のシンガポール攻略戦で益々増長し、 ガダルカナルで多大な犠牲を払うことになる。 東絛内閣が誕生した直後に戦陣訓が出されたのも、ノモンハンでの虜囚に端を発しているのではないかと推察される。 (軍法スレ:114) 広島や長崎の原爆投下で被爆した連合国軍の捕虜の兵士は、どの位いたんでしょうか? 又、生き残った捕虜達は米国から補償を受けれたんでしょうか? 実際には、日本側の報告では「原爆で死んだこと」にされた捕虜もおり、その実数自体は きちんと掴めていません。 その捕虜たちは米国から補償は受けていなかったと記憶しています。 (324 眠い人@出張先 ◆gQikaJHtf2) アメリカ兵による日本兵捕虜の集団殺害や虐待の記録は存在するんでしょうか? ジョン・ダワーの『容赦なき戦争』にはその手の話が結構載っている。 (618 888) 日本軍の捕虜となった米兵はどういう扱いをうけたのでしょうか? 太平洋戦争勃発当初からアメリカを始めとする連合軍捕虜に対する処置は過酷を 極めました。これは日清・日露、或いは第1次世界大戦時に敵捕虜の処遇にかかる 費用が大変大きかったのが一つ、さらに伝統的に捕虜になる事をきらう日本軍 にあって「味方が捕虜になるのを戒めるのに敵捕虜を客人の様にもてなすのは 如何なものか」という論調が当時の主流だったのが一つです。戦陣訓も敵捕虜 への虐待を後押しした側面があるでしょう(ただ、開戦当初は古き伝統にのっ とって米捕虜を厚遇した例もありました。東京に到着した米捕虜にお茶が振る 舞われた、などといったのんびりした事もあったようです。もっともこの時炊 き出しに参加した女性の一人が漏らした『おかわいそうに』という言葉が報道 され連合軍捕虜厚遇への非難に使われたのは皮肉です) 連合軍捕虜の収容所は日本内地をはじめ、フィリピンやインドシナ、ビルマと いった占領地にも作られました。過酷な労働(ジュネーブ条約では将校の捕虜は 労働する義務を負いませんが、これを批准していない日本は当然この条項を適用 しませんでした)やカロリーの低い食事のため多くの連合軍捕虜が収容所で 命を落としました。東京裁判でのアメリカの主張によると日本軍に捕虜になった 米兵の死亡率は約27%で、ドイツに捕虜になったそれの4%を大きく上回ります。 なお、ご存知の通り日本占領地で撃墜された爆撃機搭乗員は多くの場合戦犯として 処刑されました。これは1942年ドーリットル隊の日本本土爆撃の結果 昭和17年10月19日付けで大本営陸軍部が出した 「大日本帝国領土を空襲し我が管内に入れる敵航空機搭乗員にして暴虐非道の行為 ありたる者は軍律会議に付し死または重罰に処す」との布告にもとづくものです。 (日本軍の捕虜となった米兵の運命 20) 黛治夫が「利根」の艦長時代、捕虜に取ったイギリス人を65人も航行中に舷門から 突き落として処分したけど、その件は上司の左近允尚正司令が責任を取らされて 処刑されたんで、本人はたったの懲役7年をくらっただけ。この件で黛の首が繋がったのは 他のケースと比較すると奇跡的。というか、命令で、もう息が無くなった敵兵を銃剣で突き刺した 兵隊が絞首刑にされてるのと比べれば明らかな不公平。 この話は、生き残った海軍関係者の間ではタブーになったらしい。 出所後の黛の偉そうな物言いはご承知の通り。 (日本軍の捕虜となった米兵の運命 12) 日本軍の捕虜だけはいやだ 確かに日華事変以降の日本の捕虜政策はひどいものなのですが、 第1次世界大戦までの日本は世界でも稀に見る捕虜を大切に扱う国でした。 日露戦争の時にロシア兵が捕虜収容所のある松山の名前を連呼しながら 投降した話や、捕虜になったポーランド系ロシア人が日本の厚遇に 感謝し、その後の日ポ友好に貢献したなどといったエピソードがあります。 でも、そうやって積み上げたものも太平洋戦争のムチャクチャで すっかりご破算になったんですが…。 (日本軍の捕虜となった米兵の運命 23) 日露戦争で捕虜になった日本兵が敵に協力することが多々あったらしいしとか? 日露戦争で問題になったのは、それこそ日本人捕虜が敵の尋問に何でも答えて しまうこと。本来これは軍の兵隊教育の問題で、「捕虜になっても自軍の情報を喋るな」 と徹底しておけば良かっただけのこと。そこまで頭が回らなかったので、こういう事態に 立ち至ってしまった。 それと、当時の日本の庶民は近代法の精神なんて全然理解してないから、「黙秘権」なんて 概念が念頭に無かった。だから敵の将校に尋問されるということが、 彼らの多くにとっては、お上のお取調べと区別がつかなかったらしい。 その結果、拷問もせんのに、聞かれたことは何でも素直にベラベラ喋る兵隊になってしまったらしい。 捕虜が敵側の戦力として戦線に復帰することは、朝鮮戦争やベトナム戦争の米軍にもあった。 (捕虜第一号 48) 朝鮮戦争では、北朝鮮軍や中共軍の捕虜も素直に秘密を喋ったらしい。 次の攻勢は何月何日とか。初期の頃には素直すぎて米軍上層部に信用さ れないこともあったとか。彼らも日本軍のように捕虜になった際の教育を されてなかったのであろう。 (捕虜第一号 55) 「一空事件」についてはよく存じていません。ぜひ詳しく聞かせてください 開戦直後のフィリピン爆撃時に撃墜され捕虜となった第一航空隊 所属の原田一飛曹以下8名がのちに自爆した事件。 原田機は1941年12月12日ルソン島アラヤットに不時着して 乗員8名はフィリピン人ゲリラに捕虜になる。その後陸軍が救出し 翌年1月7日に一空に復帰するものの査問に掛けられる。 その結果「死に場所を与える」なるうやむやな裁定が下され原田達は ラバウルへと転属になる。1942年3月31日、「ポートモレスビ ーへの写真撮影」を命ぜられた原田機は96式中攻1機で出動、 モレスビー飛行場上空で自爆した。 (捕虜第一号 16) 中国軍の捕虜になってしまった日本兵の扱いはどんなだったんでしょう 日清戦争時は非常にひどかったようです。清軍には今日的な捕虜を保護する精神は まったくなく、捕虜になった日本兵はそのほとんどが虐殺されました。戦後送還された 日本兵捕虜は公式にはわずか1名です。 上海事変以降の国民党軍はジュネーブ条約を多少尊重した形跡があります(徹底していた とは言いがたいですが)。捕虜になった日本兵が非常に厚遇を受けた例もありますし その場で虐殺されたり、中共の思想教育キャンプにおける捕虜の思想改造のように極めて 悪質な処遇を受けた例もあります。 (捕虜第一号 112) シベリアに抑留されたのはドイツ・日本兵捕虜だけ? ソ連の捕虜になった枢軸国兵士(イタリア、ハンガリー、ルーマニア等)はシベリアを含む国内各地の収容所に抑留されてる。 http //kiuchi.jpn.org/nobindex.htm ここの画集にあるようにドイツ兵やハンガリー兵などと同じ収容所で肩を並べて作業するようなこともあったようだ。 ちなみに日本人がよくシベリアとしてイメージするウラジオストクあたりはロシアの区分では「極東」で、シベリアはもっと西。 (633 65) 日本爆撃の際、中島飛行機の工場などの情報はどうして得ていたのですか? 日本兵捕虜を尋問して情報を得ていたのです 第2次世界大戦中、アメリカはアルホルニア州サンフランシスコ市近郊に、日本兵捕虜秘密尋問所を設けていました。 1944年9月、サイパン陥落の2ヵ月後に、合同攻撃目標グループが設置されました。 アメリカ陸軍情報参謀部、陸軍航空隊、海軍、イギリス空軍、戦略情報局(OSS、CIAの前身)、外国経済局、国防調査会議などからなります。 ここに情報を供給した主な機関が、日本兵捕虜秘密尋問所なのです。 まず、捕虜に身上書を書かせて、本人の情報を得ます。 役立ちそうだと見ると、日本兵捕虜秘密尋問所へ送り込んで、詳しく尋問しました。 サイパンで1944年7月に捕虜になった日本兵がいます。 1944年4月21日まで、三菱重工業名古屋発動機製作所にて働いていました。 11月4日から21日にかけて尋問を受けました。 11月23日爆撃を受けました。 元工員の証言は詳細でした。 同じようなことが、日本各地に対して行われました。 合同攻撃目標グループは、単独の組織ではありませんでした。 いろんな部署から情報を持ち寄りました。 オーストラリア駐留の陸軍航空隊の情報部隊では、零戦の製造番号の秘密を解き明かしました。 最初の1桁が、嘘の数字だったのです。 製造番号の秘密が分かると、生産量も推測できました。 そんな中でも、日本兵捕虜秘密尋問所からの情報は秀逸でした。 工場や皇居や横須賀の猿島要塞の見取り図が詳しく描かれていました。 日本人関係者に確認すると、間違いの無い、正確なものだそうです。 日本海軍の情報機関の大佐が捕虜となり、在中国の、日本陸海軍の情報機関や、 ドイツやイタリアの情報機関のことまでしゃべってしまったそうです。 中国の漢口在勤の、沖野海軍大佐が、乗っていた飛行機の不時着で、連合軍の捕虜になりました。 情報部門の高官で、いろんなことを知っていました。 そのほとんどをしゃべってしまったらしてのです。 『トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所』 中田整一出版社:講談社価格:¥1890 (本体¥1800+税) 巧妙な米国の情報戦略 (656 霞ヶ浦の住人 ◆ORAm06ellg) その爆撃前に写真偵察機で、写真撮影をして、爆撃目標、 爆撃コースを検討して決定しています。 霞ヶ浦の住人のいってる、戦前のお雇い外人の話や捕虜の情報は、 あたりをつけるだけの情報としか活用されておらず、事前に偵察型のB-29などで、 写真撮影を行ないそれを持って爆撃の情報としています。 (656 321) 旧日本軍で捕虜が死亡した場合、その遺体・遺品はどのような措置が執られたのですか。 また、葬儀・慰霊祭に相当するものは行なわれたのですか。 捕虜が死亡した場合は、火葬され、捕虜収容所(もしくは分所)近くの寺院に遺骨を納める 場合が多かった様です。 遺品に関しては、殆ど残ってません。 と言うか、衣服にしても、元々着ていたものと、作業服、手拭い、軍手、地下足袋が支給され ますが、戦争が進むと衣料品の欠乏も申告で、結局その支給すらありませんので、私物など は殆ど持ち込めていません。 礼拝については、収容所によって違うと言う回答しかありませんね。 一応、捕虜の自由で、捕虜で牧師役になる人もいますけれども。 従って、略儀的な葬儀はあったと言えるでしょう。 (294 眠い人@規制中) 「生きて捕虜の辱めを受けず」と最初に言い出したのは誰なんですか? 「此一戦」を書いた水野某という海軍の将校だとか言う話を前に読んだ覚えがあります。 NHKブックスにその辺を書いた本があった筈なのですが。 (290 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 日露戦争当時,日本に「捕虜になることは恥だ」という意識はあったのか? 恥だったと見ることはありませんでした。 ウィキペディアの捕虜の日露戦争から引用 http //ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8D%95%E8%99%9C 「日本側で捕虜となった人間の扱いも後世と異なっていた。 例えば、旅順要塞降伏後、日本人捕虜101人(陸軍80名、海軍17名、民間人4名)が解放されたが、 彼らは「旅順口生還者」と呼ばれ、冷遇されることは無かった。 海軍捕虜の一人であった万田松五郎上等機関兵曹(第三次閉塞作戦で「小樽丸」に乗り込み、捕虜となる)は、 解放後に上京し、連合艦隊司令長官東郷平八郎大将に面会して作戦状況の報告を行い、記念に金時計を授与されている。 また、陸軍においても開戦直後の明治37年2月19日、 義州領事館に所在して情報収集活動をしていた韓国駐在陸軍武官・東郷辰二郎歩兵少佐がロシア騎兵部隊の包囲を受けて部下の憲兵5名 (中山重雄憲兵軍曹、坪倉悌吉憲兵上等兵、古賀貞次郎憲兵上等兵、牛場春造憲兵上等兵、山下栄太郎憲兵上等兵)とともに降伏、 捕虜になり(日露戦争における捕虜第1号)、ペテルブルクの収容所で捕虜生活を送った後、 戦後の明治39年2月14日に帰国したが、任務遂行中に捕虜になった不注意で軽謹慎30日の処分を受けたのみであり、 東郷少佐は後に少将まで昇進している。」 (683 霞ヶ浦住人 ◆1qAMMeUK0I) 上のレスは偏向してます。 眠い人 ◆gQikaJHtf2の以前のレスでは、戦後の還送の際にインドやシンガポールなどの寄港地で行方をくらまし、 日本に帰らなかった兵士が少なからずいた例を挙げて、捕虜は恥という考えの方が世論的には勝っていたようだと 書いています。 ただし山県有朋の申告や寺内正毅の訓示は下士卒への影響は少なかったらしく、捕虜に対する忌避感は軍上層部では 表向き見られないとも書いているので、捕虜は恥という空気が支配的になるのはやはり戦陣訓以降でしょう。 (名無し三等兵) 山県有朋はなぜ「捕虜になるな」という布告を出したのですか? 中国兵に、残虐行為をされるので、それを避けるというのが、真意です。 「日清戦争であまりに支那が残虐で野蛮だったため、第一軍司令官の山県有朋は「捕虜になるな」という布告を出した。 日本人が捕虜になると、あらゆる残虐な方法で苦しめられたうえに殺されたからである。 支那人は日本人の手や足を切り、首を切り、睾丸を抜いたり、男根を切り取り、胸部を割って石を詰めるなどした。 このため山県は「敵の生捕りする所となるべからず、むしろ潔く一死を遂げ、以って日本男子の名誉を全うすべし」と言わざるを得なかった。 「生きて虜囚の辱めを受けず」とは単に死ぬまで戦えという意味だけではないのである。」 下記を参照ください。 ttp //www.geocities.co.jp/Bookend-Yasunari/7517/nenpyo/1891-00/1894_nisshin_senso.html (686 霞ヶ浦の住人 ◆1qAMMeUK0I) 日本本土に捕らわれていた連合軍捕虜はどこで何をしていたのでしょうか? 正式に降伏調印がおわり、連合軍の係官に 引き継がれるまで、収容所暮らしです. (267 144) 蛇足ですが。 1945年8月15日の日本降伏に伴い、米軍は、日本政府に対して各地の捕虜収容所の屋根に「PW」と表記することを要求します。 また、捕虜の引揚げは各地に分屯している捕虜たちを数カ所に集めることとなりますが、その間、30日と見積もられた捕虜還送 日程から、捕虜に対する救恤品が不足すると言うことで、日本側から提出を受けた捕虜収容所のリストを元に、169カ所の捕虜 収容所に、B-29または艦載機を用いて、8月27日から9月20日に掛けて69,000名に対して30日分の補給物資を用意し、補給品は 3日分、7日分、10日分単位のいずれかを投下して、彼等の糊口を凌ぐことになっていました。 その後、捕虜達は長崎、静岡県新居町、横浜、東京都大森、北海道千歳など、主な収容所に交通機関を使って移動し、9月1日 の降伏文書調印後は、連合国軍総司令官の命令の下、直ちに係官を集合地に派遣して、捕虜を受取、9月中に沖縄、マニラ経由 で本国に帰還を果たしました。 (267 眠い人 ◆gQikaJHtf2) イタリア軍に捕まったイギリス兵の扱いはどうだったのでしょうか?? イタリア軍に捕まった英国兵は、概ね捕虜条約に則った待遇をされています。 それが行き過ぎて、以下の話があったりするのですが。 英国空軍のボーフォート搭乗員が撃墜され捕虜になったのですが、彼は士官だったので、色々と 便宜を、特に食べ物などに対して図ってくれたそうです。 しかし本国への護送中に、その搭乗機、Z.506をハイジャックし、監視中の枢軸国軍用機を騙し、 味方のスピットファイアの攻撃から命からがら逃れ、マルタ島に帰還して、搭乗員が逆に英国の 捕虜としたと言うエピソードがあります。 (135 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 第2次世界大戦時に、中国側の捕虜になった日本兵の扱いはどの様な物だったんでしょうか? 捕まった場合、虫の居所が悪い指揮官に当たれば、命はありません。 ただ、国民党、共産党共に、技術者、医者と言った専門家は、結構厚遇されています。 徴兵された一般人の場合も大体同様(但し、待遇は専門家よりは落ちるので、自活の 為に苦力的な仕事に就かねばならない場合もある)。 一番悲惨を極めたのは、士官以上の職業軍人でしょうか。 彼等の場合は、民衆の憤懣が集中する場合もあり、中には命を落とすこともありました。 特に共産党軍の捕虜の場合は、定期的な教育、啓蒙活動が繰り広げられ、延安にいた野坂参三が 校長を勤めた「労農学校」に送り込まれて思想改造を受け、後に反戦同盟延安支部を結成、 これは更に、日本人民解放連盟に発展し、彼等は、在華日本軍兵士に対する宣撫活動を行うことに なります。 (260 眠い人 ◆gQikaJHtf2) バターン死の行進の報復として、アメリカ軍によって日本兵の捕虜が虐待されたことがあったそうですが。 日本兵の死の行進と言えば、以下のケースがありました。 「ナウル守備兵の死の行進」 これは豪州軍によって行なわれましたが、関係者は処罰されていません。 このほか、漂流民への機銃掃射については豪州軍が行なっていますし、米軍でも行なわれています。 ついでに、ソ連に抑留された日本兵に対する処遇は結構有名ですが、英国も結構 嫌らしく、南方で抑留された日本兵は、「捕虜」ではなく、「降伏軍人」という扱いになっています。 「捕虜」とするとジュネーブ捕虜条約の規定に従わなければなりません。 また、自軍による監視など経済的負担も可成りのものになります。 このため、東南アジア連合軍(SEAC)のScott参謀長は、彼らをP.O.W.ではなく、降伏日本軍人 (Japanese Surrendered Personal(JSP))と規定し、国際法で定める捕虜待遇から外します。 また、45年12月31日には「日本軍人は極限まで使役すべし」という命令が出されます。 これにより、ポツダム宣言第九条(捕虜の武装解除後の即時帰還)を無視し、彼らのうち10万人を 「作業隊」として、1日12時間労働、素手による地面掘削、休憩・飲料水接種・用便の不許可、談話・ 喫煙の厳禁、作業現場までの片道15kmの往復駆け足、広場での長時間正座、駆け足移動に遅れれば 殴打、疲労で倒れると強制的に立たされ、それでも倒れると放置されるなど、凡そ捕虜条約の規定では 厳禁となっているものを全て無視することが出来た訳です。 また、作業中、休業中の暴行も茶飯事で、言葉が通じないとてまごついていると、命令不服従 として、炎天下に広場を1時間走らせたり、食事の量を減らすなどの罰則がありました。 作業内容は、無意味なモノのほかに、汚水処理場、糞尿処理場での糞尿処理、ゴミ集荷、炭塵の 立ちこめる船倉内での石炭積載作業、100kg入り米袋、岩塩袋の運搬などがあり、休日は1946年 10月までは1日も与えられていません。 また、明らかに国際法に違反する作業、軍港においてのインドネシア軍との戦闘用に用いる弾薬の 積み卸し作業、Guerrilla鎮圧も行なわれています。 ついでに、「捕虜」であれば、使役中の労賃は払われますが、「降伏軍人」では支払わなくても良いと。 民間人が使役した場合も、日本側には支払わず、英軍側に支払う形が取られました。 労賃は、1947年5月まで支払われず、それも現地支給ではなく、6月以降の賃金を日本政府が支払うと 言う形になりました。 その労賃たるや、残業、手当は一切無し、熟練職が1時間1.5ペンス、非熟練職が0.75ペンスで、これは 英本国の賃金水準の僅か32分の1に過ぎません。 給養についても同等。 SEACの支給は1600~1700calの支給で、特に認めた場合は50%増しでしたが、Kレーションは3300calなので、 英軍の半分の食料。 例えば、マラヤでは46年に米が一日分茶碗2杯強、昼食はビスケット6枚と小判型の魚の缶詰を5人で1缶。 これはインド兵の64%の量でしか有りません。 衣服、寝具、日用品の支給は皆無、住居も掘立小屋。 当然、伝染病が蔓延しますが、英軍は毎日の作業隊内の患者最高率を提示し、それ以上は認めませんでした。 最高率は各地区で異なりますが、1~3%程度。 こうして、1947年10月10日までに、全体で8,971名が死亡、負傷者は延べ20,084名に上りました。 あ、片手落ちにならない為に補足しておきますと、日本軍上層部も「捕虜」の扱いではなく、相当の名誉と待遇を 要求していた点もあり、「捕虜」に課せられる強制労働を嫌って、「降伏軍人」という扱いに同意した、と言うお馬鹿 で脳天気な点も見逃せませんがね。 (150 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 連合軍の捕虜となったドイツ兵100万人が虐待などにより死亡したという説ですが、証拠はあるんですか? 米兵によるダッハウ収容所員の処刑(1945.4.29:329~500名殺害) → 米陸軍省法務局によって記録、写真ならびに映画撮影が行なわれている。 (参考文献) Howard A. Buechner "The Hour of the Avenger(1986) Nerin E. Gun "The Day of the Americans"(1966) スウェーデンによるドイツ兵士のソ連への引渡(1945.12:2,522名) → スウェーデン軍将兵はこの移送命令を拒否、国家警察が輸送に当たる。 (参考文献) パウル・カレル「捕虜」 チェコに於けるドイツ兵の虐殺 → ミレシャウに於けるチェコ人の残虐行為が記録に残る。 1990年代、殺された将兵の集団墓穴が発見され、個人の写真が報道され、明らかとなる。 米仏による強制収容所の転用(1945.:200万人)。 → 平均30ヶ月の抑留。釈放証明書の存在など。 フランス軍占領地域では、連合軍将兵の暗殺に備え、人質の提供が求められていた。 (参考文献) ジェームス・バクー「消えた百万人 ドイツ人捕虜収容所、死のキャンプへの道」(1993) Charles Lincoln "Auf Befehl der Militarregierung"(1965)など デンマークのドイツ兵捕虜による地雷除去作業(1945.5~10:死者250名、重傷250名) → 英軍将校による命令により、リンデマン将軍の個人的責任で、地雷除去作業を命令。 (参考文献) Helge Hagemann "Under Tvang"(1998) などなど (118 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 終戦前までは捕虜の扱いは普通だったが、ドイツ降伏後は一転。 西部戦線で捕虜になった約900万人の捕虜のうち、1年もしないうちに約100万人が連合軍 (主にアメリカ軍)の過酷な取り扱いにより餓死や伝染病で記録上から消えた 連合軍から、「捕虜」では無く「犯罪者」として扱われた武装SS所属の兵士だけではなく普通の兵士も 終戦後、 野ざらしで雨を遮るテントもない『捕虜収容所』に送り込まれた。食料はほとんど支給されない、 赤痢や1日に数百人が死んでトラックで運び出される。時たま連合軍兵士がジープで乗り込んで、 機関銃を連射しながら、適当に捕虜達を銃殺していった。 しかもこの残虐な行為は事実上連合軍最高司令官のアイゼンハワー直々の肝いり。 詳しくはこちらを。 『消えた百万人 ドイツ人捕虜収容所、死のキャンプへの道』 (ジェームス・バクー 著 申橋昭 訳 光人社) 発生した大量の死者は、書類上の操作で最初から存在していないように扱われ、この本の著者は 各地の公刊資料などを綿密に調べ「意味不明の曖昧な記述」から、実態を調査していくしか無かったほど。 (155 815) 消えた大半は脱走したらしいが。 米軍側も戦争は終わってるし、めんどくさいので見て見ぬ振り。 (155 819) さっさと釈放したヒトラーユーゲントや国民突撃隊の老兵などをOther Lossesに繰り込んだのを著者が死亡としているなんて話もある。 ただ終戦後数ヶ月の間独軍捕虜の待遇がよくなかったのは事実。 意図的な虐待ももちろんあったが、連合軍は占領下のドイツ国民にも食糧を配給しなければならなかったので捕虜にまで充分手が回らなかったことも一因。 (155 821) 1945年の8月15日から、米軍が進駐してくる間の日本国内の捕虜収容所は、どの様な状況だったんでしょうか? 戦時捕虜や抑留民間人は、占領軍の手によって引き上げが出来るまでの間、 食料、衣類、医薬品を補給しつつ、現場に留まることになっていました。 また、日本政府に対し、各地の捕虜収容所の屋根に「PW」と大きくペンキで表記する 様命じ、8月27日~9月20日の間、艦載機、B-29による補給物資が投下しています。 そして、捕虜の集結地点を指示し、9月1日の降伏文書締結後に、直ちに係官を派遣して 捕虜を受領し、彼等は、長崎、静岡県新居町、横浜、東京の大森、北海道の千歳に集合し、 9月中に沖縄、マニラ経由で殆どが帰還しています。 (242 眠い人 ◆gQikaJHtf2) シベリアに抑留された日本兵って、具体的にどういう事業に投入されたのですか? 石炭・石油・非鉄金属の採掘、木材伐採、兵舎・工場の建設、河川・港湾の整備、シベリア鉄道本線・支線の建設や補修、 機関車や貨車の修理、石油精製工場や重機械工場での操業、農場での労働など多岐にわたっています。 例えば、バム鉄道の建設なんかもそうですね。 また、南方に於ける英国軍抑留者の処遇も似たようなものでした。 ちなみに、ドイツ人捕虜の場合、1941~49年まで、大規模工業施設や炭坑の建設および再建、鉄道・道路の建設、橋梁の 建設、暖房・ガス管の敷設、都市住宅および労働者共同住宅の建設などに従事しています。 これらドイツ人捕虜が建設したのは、ウクライナのコルホーズ建設、ドンバス炭坑の再建、レニングラードの石炭供給、世界 最大の水力発電所、モスクワの地下鉄、運河、モスクワのディナモ・スタジアム、東シベリアのゴルドベルク工場、原爆研究所 まで、多岐にわたっており、捕虜を監督するGUPVI(ソ連捕虜抑留者問題管理総局)の収入は111億ルーブル、経費支出は133 億ルーブルで、赤字ではありましたが、その後のソ連経済に対する価値は何倍にもなります。 (164 眠い人 ◆gQikaJHtf2) 日中戦争における両軍捕虜の処遇について教えて下さい。 日支事変(日中戦争)における両軍捕虜の処遇は非常に複雑でしてなかなか簡単にはまとめられません。 ですが開戦の年・1937年に限って言えば比較的状況はシンプルであります 捕虜になった中国軍(国民党軍・八路軍)兵 日本陸軍は日支事変を戦争とは見なしておらず、従って捕虜の処遇については「(捕らえられた)支那軍人は法律上 これを俘虜と解していない」との見解を、海軍に対して回答しています(1937年8月5日陸軍省法務局)。このためかどうか 解りかねる部分もあるのですが、陸軍に捕虜となった中国兵は「その場で武装解除・解放」「銃剣・軍刀などの試し切り で殺された」「荷物運搬等の使役」などなど処遇一つ取ってもまちまちでした。ただし海軍は事変勃発時に戦時国際法 に乗っ取った捕虜処遇を行うとした「第三艦隊俘虜取扱規程」を制定し46名と少数ながら捕虜の管理も行っています。 彼等がどのような処遇を受けたかはぼくの手持ちの資料では追跡できませんでした。陸軍捕虜からは汪政権軍への 編入も募られていたようですので、一部は汪政権軍へ参加した可能性もありますが、おそらくは終戦時まで解放され なかったのではないでしょうか? 捕虜になった日本兵 当時の国民党軍は敵軍への投降を禁じており督戦隊も投入されていました。そのこともあって、戦争初期に捕虜になった 日本兵は大多数が殺害されています。1937年の段階では海軍航空兵を中心とした数十名程度しか捕虜を獲得できなか ったことからも、捕らえられた日本兵の殺害は裏付けられています。なお、国民党軍は一応「俘虜処理規則」において 捕らえた日本兵は「我国軍民と同等に看待し且つ其人格名誉を尊重すべし」「俘虜に対し陵虐、恐嚇、詐欺手段を持って 所属国の各項軍情の報告を誘迫するを得ず」と定めています(37年10月15日)。一方八路軍は「三大規律」「八項注意」 というスローガンを持って組織を維持していましたが、うち八項注意には捕虜虐待を禁ずる一項がありまして、事変初期 から捕虜獲得に積極的だったようです(主にプロパガンダ目的だったと思われます)。が、1937年に置いては、獲得した 捕虜の数はけっして多くはありませんでした。 さて、1937年に捕虜となった日本兵の数は、国民党軍約20から50人。八路軍は不明ですが1938年5月の時点で124人 ですからこれよりは当然少なくなるでしょう。国民党軍が捕虜にした20~50名は西安の捕虜収容所へ収容され1940年 宝鶏の収容所へ移送、そこで終戦を迎えています。良く解らないのは八路軍に捕虜になった人たちです。八路軍は 「捕虜が希望するなら原隊への復帰を認める」との政策をとっていまして、実際に日本軍へ捕虜を送り返しています。 日本側がこれを確認したのは1939年後半で、初期に捕虜になった人たちの中にもこうして送還された人たちが 少なからずいたものと思われます (168 460-461) 日本はどれぐらいの連合国兵士を捕虜にしたの? 第2次世界大戦で捕虜となった米国軍人は、13万201名、うち、日本軍の捕虜となったのは、 33,587名で、このうち、37.3%が死亡。 ちなみに、ドイツ軍の捕虜となった米兵の死亡率は1.1%。 オーストラリアの場合、22,376名が日本軍の捕虜となり、そのうち35.9%が死亡した。 この数は、戦闘で死亡した兵士の数より多かったりする。 んなわけで、極東軍事裁判のBC級戦犯になった者の内、起訴件数の16%、起訴された 人員の17%、有罪者の27%、死刑の11%が捕虜収容所関係者で、この比率は憲兵の比率 に次いで多い。 (しょうもない知識を披露するスレ 第9幕 眠い人 ◆gQikaJHtf2)
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前回までのあらすじ 未知の平原に乗り出した自衛官片桐と、聖女スビア。そこで初めて出会ったのは戦士トルンドだった。彼の話ではこの平原世界の名前はヨシーニア。出会った者同士いつ決闘が始まってもおかしくない。刺すか刺されるかという殺伐とした世界だった。 この殺伐とした世界に点在する村、ギルティで一躍注目を浴びてしまったスビアは殺人鬼トラボロに目を付けられてしまう。それを察知してトルンドは片桐たち を彼の隠れ家に案内するが、お世辞にもそこは快適とは言えなかった。しかも、トルンドはスビアを求めて彼女の寝込みを襲うが、彼女の機転でそのもくろみは 失敗に終わる。夜襲をかけてきたトラボロ一派をまいて、トルンドの言う「腑抜けの街」を目指す2人。 街にたどり着いたとき、追跡してきたトラボ ロ一派の強襲を受ける。片桐は門を開いてくれるように街の衛兵に頼むが時間がかかり、トルンドは射殺されてしまった。間一髪、門を開いてくれた警備隊長ド ロスの案内で片桐、スビアは街での在留資格を問う評議会に出頭する。都市の名前はリターマニア。片桐が召還された大陸、ヌーボルのさらに北にあるコロヌー ボルにある神聖ロサール王国の自治都市だった。 在留資格を得た2人はドロスと伴侶タローニャの親切な歓待を受け、街でつかの間のバカンスを楽しんだ。リターマニアは高度に洗練された魔法文明と自由な雰囲気、平和的で教養ある人々であふれる理想郷のように思われた。 翌日、殺人鬼トラボロの弾丸からドロスを救い、彼を射殺した片桐はドロスとの友情を確固たるものにして、その夜に行われた年に1度の「神の御心」の対象者 選考を迎えた。惜しくもはずれて残念がるドロスだったが、スビアが見事当選した。周囲の祝福ムードに流され彼らの言われるがままスビアと別れた片桐だが、 そこでドロスから「神の御心」について衝撃的な内容を教えられて血の気を失った。 ドロスのにこやかな表情とは正反対の宣告を聞いて片桐は愕然とした。それと同時にこの恐ろしい選考にはずれたことを心底残念がるドロスを理解できなかった。狼狽する片桐をドロスはタクシーに乗せた。すうっと走り出した車内で片桐はドロスにつかみかかった。 「ドロス!それはあくまで「権利」なんだろ?拒否することもできるんだろ?」」 慌てて片桐はドロスに尋ねた。彼は、少し驚いた表情をしたが、すぐにいつもの穏やかな顔に戻った。 「実質拒否はできないよ。それに今まで拒否した人を聞いたことがない。だって、不本意な死(彼らは戦死や殺人、病死などをそう呼ぶ)でなく、神の意志による死だよ。神に近づく最大の栄誉なんだ!拒否なんてしないよ。」 だが片桐にはその理屈は通用しなかった。死は同じだ。永遠に別れることを意味するにすぎない。 「ドロス、止めてくれ!」 片桐はドロスにタクシーを停車させた。そしてドアを開けて飛び出そうとしたが、ドロスがそれを止めた。彼の意図を察していたのだ。 「止 めておけ、ここに来て間もない君には理解できないだろうが、これも彼女の運命だ。そしてそれは不幸な運命ではないとわたしは信じている。それに、彼女を奪 い返すということはこの都市だけでなく、神聖ロサール王国の法律に違反することになる。わたしに君を逮捕させないでくれ・・・」 その言葉に片桐は反論しようとしたが、ドロスはそれを無視して言い含めるように彼に言った。 「それにもう遅い。スビアはわたしのタローニャの手伝いで支度を整え、首都ヴァシントに送られた頃だろう」 思わず片桐はシートにうずくまった。愛する聖女がもうここにはいないこと、そして自分ではどうにもできない状況に置かれたことを悟ったのだ。最後に彼女が残した笑顔で言った言葉が片桐の脳裏に繰り返し流れていた。 「片桐!よくわからないけど、楽しみにしていて!」 楽しみにできることなどあるはずもなかった。ポルを使った全国中継で彼女が心臓をえぐり出されたり、首を切られたりする断末魔のあえぎを中継されることな ど、楽しみのはずもない。そしてここは高度な魔法文明社会だ。今までみたいに無茶な冒険でどうにか道を切り開けるようにはとうてい思えなかった。 「さあ、片桐。着いたよ」 ドロスはそう言って片桐をタクシーから降ろした。彼の部下である士官の家のようだ。うなだれる片桐を出迎えたのはドロスの部下と彼の伴侶だった。 「おめでとう!」 「おめでとうございます!」 口々に祝福の言葉を捧げるドロスの友人に片桐はもはや反論する気力もなかった。形だけ乾杯につきあうと、早々に提供された部屋に入った。 ベッドに突っ伏すと片桐は大声で泣きたい心境に駆られた。こうなるとわかっていたら彼女をこんな危険な抽選から棄権させることもできたかもしれない。そも そもこんな恐ろしい都市に足を踏み入れることもなかったかもしれない。自責の念だけが彼を襲い続けた。つい1時間前まで片桐の腕の中にいた最愛の聖女は、 今はいずことも知れない地、すなわち彼女の生涯を強制終了させられる地、に送られているのだ。 「片桐・・・」 ドアが開いてドロスが顔をのぞかせた。 「お願いだから、変な気は起こさないでくれよ。そして最愛の友人に君を逮捕させるような悲劇は見せないでくれ・・・」 そう言ってドロスはドアを閉めた。今の彼の言葉は自己の保身のためではないことは片桐も承知していた。彼は片桐がショックのあまり暴走することを恐れてい たのだ。そうなれば、警備隊長であるドロスは片桐を逮捕して、この都市の最高刑である追放刑に処さねばならない・・・。それを心配しての言葉だった。それ と同時に、ドロスが片桐とスビアを友人として受け入れてくれていることも知っていたし、片桐も彼の教養や人柄以上に彼を友人と思っていた。 「変な気ね・・・」 ベッドにうつぶせて片桐は彼の言葉を反芻した。変な気・・・・ 「あっ」 思わず片桐は飛び起きた。そして意識的にか、無意識的にかわからないドロスの友情に感謝した。ドロスは「変な気を起こすな」と警告しつつも、片桐を1人に しているのだ。これを利用する手はなかった。片桐の心に自衛隊で鍛えた不屈の精神が再びよみがえっていた。そうと決まれば話は早い。電光石火。片桐はドア の外を確認して、本当にだれもいないことを確認すると窓にとりついた。 「けっこう高いな・・・」 2階の窓から地面まで4,5メートルあったが、片桐は窓枠に彼が着ている、この世界の着物の腰巻きを結んでぶら下がった。これで足腰に負担なく、悟られることなく屋外に出ることができる。だが、それを実行に移す前に、ドロスのおだやかな笑顔が片桐の脳裏によぎった。 「ドロス、すまない・・」 彼に聞こえるはずもないが、せめてもの気持ちでそうつぶやくと、ぶら下がったベルトから手を離して地面に降り立った。そしてタクシーを拾うと、タローニャしかいないドロスの家へ向かった。 警備兵はすでにドロスの家からはいなくなっていた。スビアを連れて首都ヴァシントに出発したのだろう。ここでの片桐の用事は決まっていた。彼の荷物と銃だった。玄関をさけ、ゲストルームに面した窓が開かれているのを確認した。中ではタローニャが宴会の片づけをしている。 用済みの革の靴を脱ぐと素足で窓を飛び越えた。キッチンに洗い物を運んだタローニャの口を後ろからふさいだ。 「んん!」 警戒の声を出そうとするタローニャの耳元で片桐はささやいた。 「タローニャ、俺です。片桐です」 その声を聞いて彼女は声を出すのをやめた。片桐はそれを見届けて彼女を拘束していた手を離した。 「タローニャ、スビアはどこです?」 片桐の意外な来訪に気がついてからすぐに彼の意図を察したであろうタローニャは悲しげに首を振った。 「もう手遅れです。彼女は先ほど首都ヴァシントへの船に乗りました。他の当選者と共に。片桐、今なら遅くない!ドロスのところへ帰って!わたくしをからかった悪ふざけということでなんとかなります!」 タローニャの言葉に片桐は無言で首を横に振った。半分悟っていたのだろう、タローニャは美しい顔に苦悶の表情を浮かべた。 「すまない・・・、タローニャ」 彼女をキッチンの手ぬぐいや布巾で後ろ手に軽く縛り、両足も同じように軽く縛った。 「痛くないですか?」 片桐の質問に彼女は無表情、無言で頷いた。それを確認すると、スビアと片桐に割り当てられた部屋に駆け込み、着慣れた迷彩服と防弾チョッキを身につけ、愛用の89式小銃を手に取った。と、机に向かうと大急ぎで一筆書いて懐にしまった。 「片桐・・・あなた、どうしても行かれるのですか」 キッチンに戻った片桐の姿を見てタローニャが小さく叫んだ。そんな彼女の元に片桐は歩み寄った。 「タローニャ、君とドロスの恩は忘れない。だが許してくれ。俺はスビアをこんな形で失いたくないんだ。」 そう言って片桐は先ほど書いた手紙をタローニャの懐にねじ込んだ。中には、この計画は片桐単独で謀ったこと、ドロスはそれを知らないし、タローニャも不意をつかれて拘束されたことを記していた。 「それじゃあ・・・」 「片桐、無事を祈ります・・・」 そう言うタローニャの口に猿ぐつわをかまして片桐はキッチンの窓から外に出た。そして再びタクシーを拾って今度は街の門に向かった。シートの中でドロスとタローニャへの罪悪感で思わず吐きそうになったが、最愛のスビアを失うことを考えたらそれもどうにか我慢できた。 門の前の衛兵は昼間、ドロスと共にいた衛兵だった。 「やあ、どうしました?」 衛兵は陽気に片桐に声をかけた。迷彩服姿の片桐を大して気にしていないようだった。 「昼間やっつけた男の確認にドロスと出かけるんだ、開けてくれ」 片桐の言葉を信用して衛兵は門の通用口を開けた。それをくぐって片桐は街と外界を隔てる第1の門へと向かおうとした。が、その前に、警備隊に預けてある彼の弾薬が必要だった。馬小屋は無人だった。 「いい子で待ってろよ・・・」 船に乗るのに愛馬を連れていくことはできない。片桐は賢い愛馬に別れを告げて第1の門へと向かった。 「異世界人片桐、こんな時間にどうしました?」 第1の門を守る門番は不思議がって片桐に質問してきた。無理もない、完全武装で夜中に外界に出るというのはちょっと考えられない。片桐は第2の門番へ言った嘘と同じ嘘を彼についた。 「ドロスと、昼間倒した男の確認に行くことになってるんだ」 だが、この門番はそれを鵜呑みにしなかった。 「だったら、2人だけで行くのは危険です。護衛の小隊が必要です・・。わたしからドロス様に言いましょう」 そう言って、門に備えられた伝声管にとりついた。ここで下手に連絡されてはすべてが露見してしまう。片桐は決心した。 「すまん・・・!」 背中をさらした衛兵に片桐は飛びつくと彼の右手の親指を締め上げて、背中に腕を持ってこさせた。彼のベルトをはずし後ろに回った右手を縛り、左手も素早く奪うと後ろ手に縛り上げ、ベルトのもう一方を門の柱に縛り付けた。 「すまん、俺は行かねばならんのだ」 「異世界人片桐!その通用口を開けてはだめだ!君はその瞬間、全土のお尋ね者になってしまう。わたしは君の人相書きを見たくはない!」 ここでも片桐への言葉はドロスやタローニャと同じ内容だった。しかし、それを気にしてはスビアを助けることはできない。片桐は通用門を開けて外界、ヨシーニアへ踏み出した。 ヨシーニアに出て、すぐに片桐は海沿いのギルティへ向かった。こんな殺伐とした世界に長くいる理由はなかった。目的は船だった。コロヌーボルにある首都 ヴァシトンへ向かうための船が必要だった。片桐は村にはいると一目散に、商店に入った。例によって愛想の良くないガンドールが窓口にいた。 「おい!船をくれ!」 そう言うが早いか、片桐は手持ちの金を全部、窓口のガンドールに差し出した。しかし、ガンドールは驚きながらも平静を保っている振りをして答えた。 「今すぐには無理だよ!」 面倒をいやがったのだろう。言い訳するガンドールに片桐は有無を言わさず89式を突きつけた。横柄なガンドールもさすがに息を飲むのがわかった。 「演説はいらない。今すぐ出航できる船はあるんだろうな?」 殺人鬼トラボロを射殺した彼の銃の評判を知っていたのだろう。ガンドールは怯えながら船の手配をはじめた。 「あるよ!1隻だけな。でもあんたが望んだんだ!後で文句は言うな!」 負け惜しみに近い感じでガンドールはそう言って、許可証を片桐に出した。 船着き場で指定された船を片桐は見つけた。長さ20メートルほどで漁船みたいな形をしている。帆が大きく張ってあり、船外機らしきものも船尾に見受けられた。大きな後部甲板に片桐は装備を乗せた。 「ええっと・・・、エンジンはどれだ?」 キャビンに入った片桐は操舵室らしきところでエンジンを動かそうとしたが、うまくいかない。そこへ1人のクーアードが通りかかって片桐に声をかけた。 「エンジンがかからないのか?」 「ああ、俺には操縦できないようだ」 片桐の言葉を聞いてその男は船に乗り込んでいとも簡単にエンジンを始動させた。聞けばこの男、遠洋漁業から戻って仕事がないということだった。 「よし、俺をヴァシントまで送ってくれ」 ミストと言う男は二つ返事でそれに応じた。コロヌーボルは目と鼻の先だ。片桐もポルを使ったエンジンを動かすことのできる船員を手に入れて満足だった。 「出航するぞ!」 ミストの得意げな大声が夜空を裂いた気がした。だが、その言葉と裏腹に、船のスピードはいまいちだった。 「片桐、エンジンの調子が悪いみたいだ」 ミストが片桐に操舵室から叫んだ。あのガンドールめ。思わず片桐は舌打ちした。当然、彼にこの世界の船の修理なぞ出来はしない。自然、ミストに任せること になった。数百メートル沖に出たところで、やくざな木造船は停止した。片桐は夜の海を見ていた。岸にはついさっき、飛び出したリターマニアがの夜景が見え る。ほんの数時間前まで理想郷のように思っていた大都市が今の片桐にはなにか、恐ろしい魔都のように見えた。 そこへ、1隻の木造船が接近してくるのが見えた。何者が潜んでいるかわからない。片桐は89式のセレクターを安全から「3」へ切り替えた。そうしているうちにも船はどんどん接近して片桐の船と横に並んだ。 「おい!ミスト!いいカモを捕まえたな!」 船には3人の男が乗っていた。どうやら海賊のようだ。片桐が89式を構えようとすると、彼の耳元をゲベールの弾丸かかすめた。 「変なまねするな!今度ははずさないぞ!」 そう言って男がゲベールに弾丸を込めようとした。その隙をついてマガジン1本分の5・56ミリ弾を海賊どもが乗る木造船の喫水線あたりに撃ち込んだ。 「うわああ!」 轟音と水柱で3人の海賊は尻もちをついてしまった。弾丸が命中した部分は見事に壊れ、恐ろしい量の水が船に流れ込んでいる。 「このやろう!」 ミストが後ろから飛びかかってきた。それをひょいっと交わして片桐はミストの背中を押してやった。哀れ、ミストは頭から海に落ち込んだ。 「おい!こっちに捕まるんじゃない!」 泳げないのだろう。ミストは沈みゆく海賊船にしがみついた。その重みで船はますます傾くのが見て取れた。 「た、助けてくれ!」 「お願いします!俺たち泳げないんです!」 口々に海賊たちが片桐に助けを求めた。あきれたことに海賊たちは4人とも泳げないと言う。片桐とて無益な殺生を望んでいるわけではない。それにポルを使っ た船の操縦は彼には難しすぎた。ザンガンは片桐のポルの量が多いと言っていたが、実践となるとからっきしだ。あまり才能がないように思えた。 「よし、こっちに乗れ」 片桐は油断することなく、哀れな海賊を船に乗せてやった。 海賊たちは嘘のように片桐に従順だった。そして彼がリターマニアの評議会から6000サマライの懸賞金付きでお尋ね者であることを知っていた。すでに全土 にそれは知れ渡っているようだ。たった数時間で異世界人片桐は、お尋ね者片桐になってしまったわけだ。だが、それがかえって海賊たちの尊敬を集めたよう だ。 聞けば彼らもリターマニアを追放刑で追い出された連中だった。陸の殺伐とした世界を逃れて海に出た連中だった。 「キャプテン・片桐!目的地はどこです?」 片桐にゲベールを撃ったトータが質問した。どうやら片桐はこのちんけな海賊団のボスになったようだ。もう1人のタリマはせっせと何か針仕事をしている。ミストは服を乾かし、もう1人、マルージが船を操縦している。 「ヴァシントだ。どこにあるかわかるか?」 その言葉にトータはうなずいた。首都ヴァシントは対岸に見える都市ではなかった。対岸の都市はつきだした半島の先端に位置していた。そこからコロヌーボル は北に向かって東西に広くなっていく。ヴァシントはその東岸に位置していた。この船で2日の距離だった。トータの話によると、コロヌーボルはヌーボルほど 大きな大陸ではない、みたいだった。というのも、ヴァシントから北は山脈が多く、寒冷で神聖ロサール王国の支配地域ではなく、あまり知られていないのだ。 異種族が住んでいるそうだが、神聖ロサールとは仲が悪く交流もないということだった。 「よし!できたぞ!」 タリマが大声をあげた。さっきから黙々と針仕事をしていたがそれが終わったようだ。 「おい、タリマ!何を作ったんだ?」 服をようやく乾かしたミストが尋ねた。タリマは自信満々に彼にその仕事の成果を見せた。 「キャプテン・片桐の旗だよ!」 そう言ってタリマはみんなにも旗を見せた。自衛隊の三等陸曹の階級章を模した見事な造りだった。口々に海賊が驚嘆の声をあげた。そして、「キャプテン」片 桐は思わずため息をついた。俺は自衛官なんだ。海賊の親分になった覚えはないぞ!と叫びたくなったが、彼らに自衛官とはなんたるかを説明する気にはなれな かった。 首都ヴァシントの港は壮観だった。大きな18世紀のコルベットに似た軍艦や、ガレオン船のような商船。それらと港を行き来する様々な小舟が無数に見えた。 「ヴァシントの自慢はその海軍だそうですよ。キャプテン、あれをご覧なさい。」 そう言ってトータは港の向こうを指した。港のさらに先に軍港が見えた。そこには100隻近いコルベットが停泊している。よく見てみようと片桐は双眼鏡を探した。だが、見つからない。 「あっ」 思い出した。リターマニアの城壁でドロスに貸したままにしておいたのだ。しかたなく、肉眼で見える範囲でそのコルベットを観察してみた。パサティアナで見 た大砲が数門装備され、船首には衝角がついている。片桐は海上自衛官でないが、船の構造でこの世界の海戦がおおよそ飲み込めた。 まず、大砲を互いに撃ち接近する。そして、チャンスがあれば衝角で敵船にぶつかり、甲板上のゲベール隊が水夫を減らし、接舷して突入するのだろう。 「キャ、キャプテン!」 操縦していたマルージが怯えた声をあげた。それを聞き、片桐は軍港の観察を止めた。振り返ると、さっきまでつぶさに観察していたコルベットが間近に接近している。その砲門は間違いなく、片桐たちを狙っていた。 「異世界人片桐と見受けた!こちらに乗船せよ!」 甲板で士官が叫んだ。港からはかなり離れていたつもりだったが、自分のうかつさに片桐は歯がみした。 「キャプテン、どうします?」 トータがゲベールを構えようとしたが、片桐はそれを止めた。今更1発撃ったところで大砲にこの船を木っ端みじんにされるのが落ちだ。片桐だけならいざとなれば泳いで港までたどり着けるだろうが、残念ながら彼の忠実な部下は全員がかなづちなのだ。 「心配はいらぬ!お尋ね者としてではなく、客人として迎える。グンク・シュブのお達しだ」 この国の王はシュブと言うらしい。抵抗も無駄。逃げることも難しいとなれば選択肢はなかった。運が良ければスビアを生け贄からはずすように王に直談判できるかもしれない、と思った。非常に楽観的だが、今の片桐にそれ以外の選択肢はなかった。 港に着いた時点では、グンク・シュブの約束は守られているようだった。片桐の部下は拘束されることなく、船に残された。そして片桐は海軍士官と共に王の待 つ城へと向かった。ヴァシント海軍の士官はドロスたち、リターマニア警備隊と似たり寄ったりの格好だった。そして首都ヴァシントの町並みも同じだった。高 度な魔法文明社会だった。だが、この高度な文明社会に「生け贄」という野蛮な習慣が存在しているのも確かであり、そのために片桐は愛するスビアを失う危機 に直面しているのだ。 王宮はまるでヴェルサイユ宮殿を思わせる造りだったが、その大きさはヴェルサイユほどでもなかった。しかし内部の豪華さは 引けを取っていなかった。豪奢な絨毯に、壁に描かれた美しい絵画の数々。そこを行き来する士官たちの出で立ちや淑女のドレスや装飾具の美しさは夢の世界の ようであった。 そして王座の間の前にある扉には警備隊の通常装備である革の装具と剣以外に様々な装飾具で飾った親衛隊が控え、恭しくその扉を開けた。高い天井に真っ赤な絨毯の先にある玉座にグンク・シュブは座っていた。その両側には彼の側近や閣僚がずらっと居並んでいる。 「さあ、私をまねて控えて・・・」 海軍士官が片桐にささやいた。彼は片膝をついて王に敬意を払った。とりあえず、片桐もそれに習った。 「異世界人片桐、よもやこんなに早く貴殿と会えるとは思っておらなんだ」 グンク・シュブは小柄な茶髪の中年で、一見すると王とは見えない。だが、彼の言葉と雰囲気から発されるオーラは間違いなく王のそれであった。 「この2日で君をとりまく状況が変化したことをまずは説明したい。君のリターマニア評議会での審査結果は聞いている。そして君がリターマニアから6000サマライの懸賞金で追われていることも」 グンク・シュブは淡々と片桐に話した。時折、そばの女性が彼にペーパーを見せている。あれに片桐に関する情報が書かれているのだろう。 「だ が、昨日余とリターマニア評議会を決裂させる決定的事件が起こった。それは以前からの古代ロサールの神々を巡る解釈の違いだったんだが、今の君には関わり ないことだ。その結果、ヴァシント評議会は全会一致でリターマニア評議会のこれまでの宗教的解釈を異端とし、その行為を反逆と見なした。」 そこで再びシュブはペーパーを見た。彼はあまりすらすらとしゃべることが得意でないように思えた。 「そ こで、この国における君の罪状は取り消しとなった。君を罪人とすることを評決した評議会自体が違法と判断されたからだ。したがって、その評議会が選考した 「神の御心」を行使する権利も無効となる。異世界人片桐、君の今回の行動の動機も聞き及んでいる。反逆者のしたこととは言え、君に多大な苦痛を与えたこと を国民に代わってお詫びしよう」 一瞬、片桐はグンク・シュブの言った意味を理解できなかった。が、数秒してその意味を知ると涙がこぼれそうになった。自分自身がお尋ね者でもなくなったと同時に、スビアも生け贄ではなくなったのだ。 「こ の国は古代ロサールの神々の恩恵で今日の繁栄を築いた。歴代の王は都市に、神への解釈、法律の制定など、ある程度自治と自由を与えてこの国をよりすばらし い国にしようと努力した。しかし、リターマニアの評議会はそれを軽んじ、越えてはならぬ一線を越えてしまった。フェルド、海上封鎖の準備はいいか?」 フェルドと呼ばれた将軍は王の前に進み出て報告した。 「はっ、目下50隻のコルベットを動員して海上封鎖の準備を行っております」 その答えに満足したグンク・シュブは今度はペーパーを持っていた女性に声をかけた。 「イラス、国民への呼びかけはどうだ?」 彼女は賢そうな表情をした女性だった。そしてその返答は彼女の外見通りだった。 「はい、国民に彼ら反逆者の悪行をわかりやすく、正義感をかき立てやすい内容にしております」 それを聞いてグンク・シュブは満足げに頷いた。そして片桐に向き直った。 「余は王であると同時に国民への奉仕者でもある。自由と神への敬意を第一に考えておる。そして余の敵は背教者どもだ。」 そこへ伝令が入ってきた。伝令はイラスに内容を伝えて立ち去った。彼女の表情から見てあまりいい知らせではないようだった。 「グンク、また今年も「神の御心」に選ばれた市民がさらわれました」 グンク・シュブの顔つきが先ほどまでの善良な王の顔から怒れる王の顔に変わった。 「またしてもウィンディーネの仕業か!」 王の言葉に居並ぶ閣僚の中でただ1人、無表情だが怒るグンクに軽蔑的な視線を向ける人物を片桐は見つけた。だが、その男は一瞬そのしぐさを見せただけで、その後は無表情のままだった。 「異世界人片桐、君の探す聖女を含めた「神の御心」当選者が北のウィンディーネにさらわれたそうだ。彼らは捕まえた捕虜を数ヶ月生かして太らせ、食料にすると聞いている。余はこの非人道的な事態を看過するわけにはいかない」 片桐は目の前が真っ暗になりそうだった。彼の愛する聖女は、心臓をえぐり出される危機から転じて、今度は食人種のメインディッシュにされるというのだ。怒りと絶望でふらふらしながら、片桐は目の前の王に尋ねた。 「で、俺・・・、いや自分は何かできることが?」 片桐のその言葉を待っていたのか、グンクは顔をあげた。その顔は今度は悲壮感にあふれていた。場合が場合でなければ、相当な役者だと片桐も思えたことだろう。 「我 が軍は現在再編成中で兵力不足だ。リターマニアへの海上封鎖と首都の防衛で手一杯なのだ。そこで君にお願いしたい。命令ではない。先発隊としてウィン ディーネに行ってはくれないだろうか?君のこの世界での功績や武勲は聞き及んでいる。今、この事態を打開できるのは君しかいない!」 片桐としては彼の願いは断る理由もない。せっかく、生け贄から解放されたスビアは今度は食料となる危険にさらされているのだ。 「わかりました。すぐにでも出発したいと思います。グンク、お心遣い感謝します」 「余とて、いかに百戦錬磨の君だけでは困難な話ということはわかっておる。パウリス!」 王に呼ばれて一歩前に進み出たのはさきほど、グンクに冷たい視線を投げた閣僚だった。 「パウリス、君は異世界人片桐と共にウィンディーネの状況を探ってくれ。しかる後、余が自ら軍を率い救出に向かおうぞ!」 「はっ!」 こうして、片桐には名君主に見えるグンク・シュブとの会談は終わった。 片桐に割り当てられた王宮の部屋は豪華絢爛だった。豪奢なツインベッドに美しい浴室。そしてその広さは下手なホテルのスウィート以上だった。だが、今の片 桐にはその豪華な寝室を堪能する気分ではなかった。グンク・シュブの話では数ヶ月あるスビアの生存期間だが、この世界の伝え聞く話はあまりあてにならな い。この手で彼女を抱きしめない限り、その無事を信じることはできなかった。思えば、片桐はこの世界でスビアと別れ別れになったのは、ガルマーニで拘束さ れた2日と、パサティアナでの2日だけだ。3日目、たった3日で片桐は身を削られるような気持ちになった。 この世界に召還されて数ヶ月、古代ロ サール滅亡の謎を解き、世界を安寧に導く秘術を求めて旅に出てから、片桐の支えは文字通り、スビアだけだった。今、翌日の旅立ちを控えている間でも片桐は 彼女を求めていた。彼女の美しい黒髪、彼女の柔らかい唇、暖かい指。その感触だけが心の支えだった。 「入るぞ・・・」 不意に声がしてドアが開かれた。入ってきたのは同行するパウリスだった。グンク曰く、彼はこの国の国務大臣で最高の剣士ということだそうだ。彼は手近なイスに座った。がっちりとした彼の身体は豪華なイスには若干窮屈のようだった。 「片桐、君に警告に来た。」 いきなり開かれたパウリスの言葉は意外なものだった。少し驚く片桐を無視して彼は言葉を続けた。 「出発前に言うのも何だが、グンクは我々をお払い箱にするためにこのような無茶な旅をご下命なさった。君は異世界人だ。妙な思想を国民にふれさせないため、そして、わたしが指名されたのはグンクやフェルドが進める軍国主義に反対する勢力を黙らせるためだ」 「え?この国は都市が自治しているんじゃないのか?」 その片桐の質問にパウリスは肩をすくめて笑った。無骨な剣士らしい笑いだった。 「わたしは剣士として常に戦場に立った男だ。その中でグンク自身の保身や利益のために戦った戦争も多かった。君の言う、都市の自治を認めた最大の原因は、ロサールの神々への解釈の違いで大規模な宗教戦争が起こりかけたからだ」 パウリスが言うには、10年ほど前、グンク・シュブたちの急進的な保守主義、すなわち神への帰心とその教えを全世界に広げようとする復古運動に反対する都 市が独立を宣言したことがあった。その論争は国を2つに分ける勢いであったという。それを納めるべく、グンクは宗教的解釈を各都市の評議会に任せることで 妥協したのだ。その見返りに、現在の軍拡、世界統一路線を容認させた。すべては正義の名の下に世界をその支配に治めるためだ。それに宗教的観点から唯一反 対していたのがリターマニアの評議会だという。 「彼らは無法地帯ヨシーニアだけでなく、君の来たヌーボルの西部地域の状況をふまえて、神聖ロサール独自の支配は不可能だと反対していたのだ。それが、先日のグンクとの会談で決裂に至った。」 そう言って、パウリスはポルを使った魔法ラジオのスイッチを入れた。 「親愛なる国民のみなさん、グンク・シュブです。今日はみなさんに悲しい発表をしなくてはいけない・・」 スピーカーから聞こえたのはグンク・シュブの声だった。 「か ねてより、意見の分かれていたロサールの神々についてのリターマニア評議会との交渉で、ヴァシント評議会はついに彼らとの決裂に至りました。彼らは神のご 意志である世界の統一を否定し、あつかましくも、ヌーボル西部の原住民との共存を訴えました。古代ロサールの聖地を抱くヴァシントの、そして神聖ロサール 王国のグンクとしてわたしは彼らのこの冒涜にこれ以上甘んじることはできません。」 次にグンクから放たれた言葉は片桐にも少なからず衝撃を与えた。 「わたしは、ロサールの神々のご意志を受け継ぐグンクとして、このような背教者に対し海上封鎖による制裁を発動することを決心しました。」 恐ろしい内容だった。一見民主的で合理的だが、その実気に入らない主張をする勢力は「神と正義の名」において罰するというのだ。 「神聖ロサールとその善良な国民に神のご加護があらんことを・・・」 ラジオはその言葉で終わった。パウリスはスイッチを切った。さっきまでの演説を聞いて片桐の脳裏に浮かんだのはドロスとタローニャのことだった。今や、グ ンク・シュブの庇護を受ける片桐はドロスとは敵になってしまったのだ。彼の屈託のない笑顔と、タローニャの美しい笑顔が脳裏をよぎった。 「こういうことだ。グンクは政治力に優れているが、敵を恐れている。命令が下った以上、わたしもグンクの命令に従う・・・。悲しいものだな」 パウリスの言葉を片桐もイヤと言うほど理解できた。元々の世界では彼も自衛官だ。上官や政治家の無茶な命令で死ぬとわかっている命令も受けなければならなかった身だ。 「で、この時期にここにいられちゃ都合の悪い我々が、野蛮なウィンディーネへの潜入を命じられた訳か・・・」 片桐はグンク・シュブの政治力に驚いた。彼が今までで会ってきたこの世界の王や指導者とはグンク・シュブは違っているように感じた。むしろ片桐の世界にいる政治家に近い。 「とにかく、お互い死出の旅だ。仲良くやろう」 そういってパウリスは部屋から出ていった。 数日後、片桐とパウリスは雪を抱く山々を見ながら高原地帯を北上していた。山と言っても木々はほとんどない。岩と、湖が所々にあり、森はその周辺にぽつぽ つある程度だ。気温は低く、温度計がないので正確にはわからないが、氷点下を下回っている感じだった。2人は毛皮のコート、と言えば豪華そうだがその実、 ただのオーバーコートにすぎないような代物だけで高原を歩いていた。 「俺は死なんぞ!生還して、評議会にグンクの政治責任を問うまではな!」 ここ数日のパウリスからの説明、半分愚痴のようなものだったが、によると、彼らは政権内で分裂しているようだ。 まず、強硬派のグンク・シュブとフェルド。穏健派のパウリス。そして中立のイラス、評議会は表面上中立だが立法権や宗教的解釈の裁量をグンクから与えられている手前、表だったグンク批判はしない。 「自由や正義は押しつけではない。君のいたアムターやガルマーニ、エルドガンたちに我々の宗教解釈と正義感を押しつけるつもりはない。共存していくうちに彼らが学んでいけばいいのだ」 片桐からすれば、強硬派でも穏健派でも、結局彼らの考えはヌーボル西部の人々に受け入れられるべきであると言うことに変わりはないようだったが、この寒さの中、歩く以外にすることもないのでパウリスの政治学講座を止めることはしなかった。 「なあ、ところで、グンク・シュブが言ってた「古代ロサール」の聖地ってなんだい?」 話の内容がパウリスの考える異民族との共存論に入ったところで片桐は鼻水をすすりながら尋ねた。 「言葉の通りだ、古代ロサールの神々が眠る聖地だ。もっとも、そこには歴代のグンクと評議委員しか入れないがね。我々が偉大な神から受け継いだ自由と正義の根元なのだよ。」 思わず片桐は歩を止めた。アムターから旅立って数ヶ月。おそらくそこがこの旅の最終目的地であろうことが予想できた。 「そこに何がある?この世界を平和に導く秘密の魔法でもあるのか?」 片桐の思わぬ食いつきように驚いたパウリスが答えた。 「わ からん。俺はそこには入ったことはない。だが、君も見てきただろう?古代ロサールから受け継いだ我が国の魔法文明の数々を。そしてアムターの聖女の他、少 数が受け継いだと言われる召還魔法。あれらはすべて古代ロサールの残された秘伝だ。その源があそこにあると言われている。」 パウリスの答えは片 桐の質問の答えとは違っていたが、それでも彼は確信を持ちつつあった。だが、直感的な疑問も発生した。もしも、その聖地にスビアの求めるものがあったとし て、なぜ、歴代のグンクはそれを修得することも、行使することもなかったのか?グンク・シュブのような野心あふれるグンクばかりだったわけではあるまい。 そして「神の聖地」を抱く神聖ロサールはなぜ、このような王制とも共和制ともつかない奇妙な政治体制で、各都市、異民族と政治的、宗教的な対立と融和を繰 り返しているのか・・・。 その疑問はふと聞こえてきた奇妙なもので中断された。 「おい、パウリス・・・。聞こえるか?」 自分の聞こえたものが幻聴でないことを確認すべく片桐は彼に声をかけた。パウリスも聞こえたのだろう。立ち止まって耳を澄ませている。それは歌だった。こ の世界ではあまり音楽は聴かないし演奏もされない。それがなぜかはわからないが、そうなのだ。片桐にとってこの世界の歌を聴くのはほとんど初めての経験 だった。 「こんな寒いところで演奏会か?」 今、片桐とパウリスがいるのは広大な高原のまっただ中だ。ところどころ雪が積もり、湖も凍り付きそうな寒さの中なのだ。 「あっちからのようだ・・・」 パウリスが示す方向には大きな湖とその周辺に雪をかぶった森が見えた。その向こうには数千メートル級の山々がはるか彼方まで連なっている。このあたりが世界の果てと言うのかもしれないな、と片桐は思った。 そして、その世界の果てで歌声は間違いなく2人の耳に聞こえていた。その歌声はソプラノ歌手のような声にも、アルトのような低音にも聞こえたが、思わず聞き惚れる美しさだ。 「行ってみよう・・・」 どちらからともなくそう提案して2人は湖の岸辺へと出た。高原の湖はきらびやかな水面と、吸い込まれそうになるほどの透明度で2人を出迎えた。歌声は今やすぐ近くから聞こえていた。湖につきだした大きな岩の上にその歌い手がいた。 「あれはいったい・・・」 半分呆然と片桐はつぶやいた。歌い手は女性だった。ほっそりとした体つき、美しい青みがかった髪、湖に負けないくらい透き通った白い肌・・・。そしてこの 寒さに関わらず彼女はしなやかなローブをまとっているにすぎなかった。その姿で岩場に腰掛け、足を伸ばして水面を蹴っている。白昼夢のようにすら思える光 景だった。パウリスとて同じ思いだったのだろう。この奇妙な光景に剣を持っていることを忘れているようだった。食人種の野蛮人の地に足を踏み入れて、この ような光景に出くわすとは夢にも思っていなかったようだ。 「ヴァシトンの貴族と異世界人・・・」 不意に女性が歌うのを止めて片桐たちに振り向いた。今や3人の距離はいくらもない。片桐もパウリスも歌声に導かれるように彼女のすぐ近くまで歩み寄っていたのだ。 「あなたが噂に聞く異世界人ですね・・・」 静かに女性が言った。その美しい顔にこぼれたほほえみに思わず片桐は見とれてしまった。それに気がついた女性は伸ばした足で湖の水面を軽く蹴った。 「わたくしはウィンディーネの女王、セイレースです。勇敢な異世界人、よくぞ世界の果てウィンディーネまで来られました」 その言葉にパウリスが夢から覚めたようにはっとして、即座に剣を抜いた。 「おのれ!ウィンディーネの女王、セイレース!我が国民を数年にわたって誘拐し、無惨に殺した罪をこの剣で償わせてやる!」 その言葉にセイレースは軽くほほえんだ。パウリスはひと飛びで彼女に飛びかかり斬るだけの間合いにいるのだ。 「ヴァシントの貴族パウリス。あなたほどの聡明な男がそのような世迷い言を信じているとは・・・」 「世迷い言だと?貴様がさらったのは我が国民でも「髪の御心」に選ばれ、その意志で神の国に旅立つ者たちだ!それを太らせて食うなどと、神を冒涜するにもほどがある!」 電光石火、剣を構えて飛びかかろうとしたパウリスの足下に音もなく、つららが数本刺さって彼の足を止めた。彼女のポルが作り出したつららだった。 「うっ・・・」 歴戦の剣士パウリスは、自分が再びセイレースに斬りかかろうとしたら間違いなくそのつららが自分を切り裂くであろうことを悟った。 「ついて来るがよい。わたくしが本当に食人をしているか・・・。それを確かめてからでもそなたの剣を振るうのは遅くはない・・・」 そう言ってセイレースは岩場から立つと森に向かって歩き出した。片桐とパウリスもそれに続いた。まるで彼女の優美な歩みに引き寄せられるように・・・。 山に面した岩の壁にセイレースの居城は造られていた。その麓の森の中に城下町があった。建物は木で作られ、その屋根には森の木と同じ葉で覆われていた。暖 房と、偵察の目を欺く2つの効果を期待してのことだった。村の人々は男はクーアードと見分けがつかないが、女性はみな、セイレースのように透き通る肌が印 象的だった。 セイレースの居城は岩の中、豪華な装飾にも関わらず底冷えするような雰囲気だった。その中に作られた玉座の間に置かれた氷のように輝くクリスタルの玉座に彼女は座った。周りには毛皮を着た幕僚が控えている。 「みな、席を外せ」 開口一番、女王が幕僚に告げた。幕僚たちはざわめいた。 「セイレース様、彼らの武装もまだ解除しておりません。どうかお考え直しを・・・」 そう言う幕僚にセイレースは優しさに満ちた目を向けた。 「彼らなら心配はいりません。さあ、言われたとおりになさい」 口調こそ優しかったが、彼女の言葉にはその場の者にこれ以上の異論を差し挟ませない空気があった。それを察して幕僚たちは次々と玉座の間を辞した。広い部屋には片桐とパウリス、そして美しい玉座に座る美しい女王だけになった。 「さて、ヴァシントの貴族パウリス。そなたはわたくしたちが、そなたたちから奪った捕虜を食べていると言いましたね?その証拠はどこにあるのです?」 玉座から身を乗り出すようにセイレースはパウリスに問いかけた。彼は少し口ごもった。 「我がグンク・シュブとフェルドの調査の結果である!」 それを聞くと女王はくすっと笑った。 「では。3年前に「神の御心」に選ばれたそなたの親族を覚えていますね?」 意外なセイレースの言葉に歴戦の剣士がうろたえた。そう言えば、数日にわたった彼の愚痴の中にそんなことを聞いた記憶が片桐にはあった。 「これへ!」 女王は玉座の横にある扉に声をかけた。1分も立たぬうちに1人のクーアードが玉座の間に入ってきた。それを見てパウリスが驚きのあまりその場に座り込んだ。 「パ、パロウス!?幻ではあるまいな・・・」 「パウリス様、夢ではありませんぞ」 パロウスは驚く剣士に駆け寄ってその手を取った。その手の温かさにパウリスもようやくこれが現実であると判断したようだ。男泣きに泣きながらパロウスを抱きしめた。 「おお!神のお慈悲だ!」 「神のお慈悲ではありません・・・・、その答えはセイレース様から聞くがよろしかろう・・・」 そう言って、パロウスは感涙むせび泣くパウリスから離れ、女王に跪いた。それを見てセイレースは玉座から立ち上がり、片桐とパウリスに歩み寄った。 「パウリス、そなたならこれからわたくしが見せることは評議会で使われる魔法と同じく、嘘偽りないこととわかるであろう・・・」 そう言ってセイレースは右手を片桐、左手をパウリスの額に近づけた。ひんやりと冷たい感触が片桐の額に伝わった。それと同時に彼女のポルを介して強力な映像が彼の脳に流れ込んできた。 そこは狭い一室だった。大勢の男女が恍惚に満ちた顔で座り込んでいる。そこへ、グンク・シュブの親衛隊がやってきた。丁重に室内の男女を連れだした。室内の人々も王の親衛隊の誘導に喜々として応じた。 「さあ、こちらへ」 親衛隊が人々を案内したのは暗い地下室だった。しかし、その広さはかなりの広さで、奥までは暗くて見通せない。「神の御心」当選者たちはそこに全員入場した。 「では、神のご加護を」 そう言って親衛隊は入ってきた扉を閉じてカギをかけた。数ヶ月待たされてようやく神に近づくことができる人々は暗い地下室で神の迎えを待った。だが、そこに現れたのは彼らの想像した神の使いではなかった。 「ぐるるるるる・・・・」 血に飢えたうなり声をあげて歩いてきたのは身長2メートルを超える醜い怪物だった。犬歯の発達した口からよだれを垂らして、延びっぱなしの爪で武装された指をくねくねさせている。想像しない「神の使い」に人々はざわめいた。 「おお!神よ!」 それでも、先頭の1人が化け物に向かって身体を差し出した。次の瞬間、化け物はその身体に噛みつき腹の一部を食い破った。 「わぁぁぁぁぁぁ!!!」 その男は絶叫しながら床を転げ回った。あまりの出来事と、化け物の目的を察した人々に動揺が広がった。一斉に閉じられた扉に飛びつく。 「開けてください!」 「我々はオーガに食われるために選ばれたんじゃない!」 「神の御心とはこれだったんですか?」 その直後、数匹の化け物は幸運な「神の御心」当選者に一斉に飛びかかった。 片桐は気がつくと玉座の間の床に座り込んでいた。身体には脂汗がびっしりと出ているのがわかった。そしてそれはパウリスも同じであった。 「あ、あれは伝説の魔人オーガ・・・・」 古代ロサールの聖地で儀式的な死を迎えることを希望していた幾多の人々の末路をかいま見てパウリスは驚愕していた。グンク・シュブが語ったウィンディーネの野蛮さは、そっくりそのままパウリスの祖国のことだったわけだ。 「これは哀れな生け贄と共に捕らえた親衛隊の兵士の記憶です・・・。」 セイレースの言葉にパウリスは真っ青になった。彼の中にあった神への自己犠牲の精神がぼろぼろに壊れていくのを感じていた、 「まさか、歴代のグンクはあいつらを飼育するために・・・、「神の御心」と称して市民を選んでいたのか・・・」 うろたえるパウリスの自問を聞いてセイレースはうなずいた。 「わたくしもこのことはつい数年前まで知りませんでした。ひょんなことからそれを知ってそれ以来、見つけられる範囲で彼らをさらって救っていたのです」 セイレース曰く、あの化け物はオーガと言い、不老でほとんど不死の食人鬼だ。神聖ロサール歴代のグンクは彼らを飼い慣らし、生け贄として餌を提供して飼育 していたのだ。それが、神聖ロサールの勢力拡大を助けていたわけだ。そして餌の安定供給のために「神の御心」と言う、半分自発的な生け贄選考を行っていた のだ。すべては「神の名において」自由と正義を世界に満ちさせるために。 「な、なんということだ・・。」 あまりの事実にパウリスは言葉を失った。それを見たセイレースは今度は片桐に向き直った。 「そなたが探し求める聖女もここにいます・・・」 そう言って女王は先ほどと同じく扉の向こうに声をかけた。そして現れたのは片桐の探し求めたその人物だった。 「片桐・・・?」 別れたときのローマ風の白いドレスと、ここに来て与えられたのだろう毛皮のコートをまとった女性は間違いなく、スビアだった。 「スビア!」 思わず駆け寄ろうとした片桐の首筋に冷たい感触の何かがふれて彼の足を止めた。 「待ちなさい・・・」 そう言ったのはセイレースだった。そして片桐の首筋に当たった冷たいものとは、鋭いつららだった。首筋から数センチのところで止まっている。そして同じものがスビアにも向けられていた。 「スビア、わたくしはこのような世界の果てまであなたを追い求める異世界人に感心しました。そしてその実物を見て、愛するに至りました」 意外な人物の意外な言葉を聞いてスビアは驚愕の表情を浮かべた。それを見てセイレースは冷たい微笑を浮かべた。 「わたくしの意志ひとつであなたたちの前のつららはどうにでもなります。」 セイレースの言葉を確認するつもりで片桐は真横に動いてみた。つららは片桐の喉元数センチの距離を保ちつつ、平行に動いた。 「片桐、あの聖女を捨てわたくしを受け入れなさい。そうすればあの聖女をアムターまで無事に帰しましょう」 その言葉にスビアは怒ったような、驚いたような表情を浮かべた。そしてセイレースに対抗するように1歩、前に進んだ。つららの鋭い先端は彼女の首ぎりぎりにまで迫る形となった。 「わたくしは片桐を捨てることはありません!」 きっぱりと言う彼女に従って片桐も1歩前に進んだ。これは推測だったが、セイレースは本気で2人を殺すつもりがないように思えた。それがなぜかはわからな いが、彼にはそう思えて仕方がなかった。それを見てセイレースは自嘲気味に笑うと首を横に振った。そのとたん、彼らに突きつけられていたつららは床に落ち て見る見る水になって溶けてしまった。 「私の負けです!異世界人片桐、聖女スビア!」 玉座で女王が宣言した。 「これはあなたがたの愛を試す、わたくしの芝居です。やはり、あなたがたは本気で愛し合っているのですね。わたくしの悪い癖です。どうか許してください。」 その言葉と同時に片桐とスビアは駆け出していた。そして互いの感触を確かめ合うようにきつく抱き合った。 「片桐!怖かった!まさか、わたくしが生け贄になるなんて夢にも思ってなかったから!」 底冷えのする最果ての玉座の間で2人は互いの体温を確かめ合うかのごとく抱き合った。突然の事態を見守っていたが、ようやく我に返ったパウリスが赤面するほどだった。 「片桐、スビア、これが愛なのですね・・・」 2人が落ち着いたところでセイレースがつぶやいた。その顔には安らかなほほえみが浮かんでいた。 「わたくしたちが、ヴァシントの哀れな生け贄を助けることにした動機があるのです」 女王は閑散とした玉座の間で話し始めた。3人はそれに聞き入った。 「わたくしたちウィンディーネは女系血族です。産まれる子供はすべて女子です。だから子孫を迎えるには男子を外から招くほかありませんでした。わたくしの王家に伝わる歌も、思えば太古、男をいざなうためのものだったのでしょう・・・」 女王は今度は少し悲しげな表情を浮かべて言葉を続けた。 「そ んな中でわたくしたちは、愛情を失いました。わたくしたちに備えられた美しい歌。美貌は子孫をもたらす手段としてしか見られなくなったのです。どういうわ けか、わたくしは少し違っていました。生け贄にされる神聖ロサールの民を哀れみ、今、あなたたちの愛し合う姿を見て心が動いています。異世界人片桐、そし て聖女スビア。あなたがたはわたくしたちウィンディーネが凍らせていた「心」を溶かしてくれたのかもしれません」 セイレースはパウリスに向き直った。 「パウリス、そなたは神聖ロサール王国の最高機密を知ってしまいました。おそらく、ヴァシントには帰れないでしょう。評議会も今、そなたが見た記憶と、パロウスの生存を見ればそなたがうそを言っているとは言えないはず。」 パウリスは女王の言葉にしばらく何か考えていたが、思いついたように手を叩いた。 「リターマニアへ向かいましょう。リターマニアの評議会で我々の記憶を見せて、生け贄の真実を全国民に知らしめれば、グンク・シュブの権威は地に落ちる!」 「だが、フェルドはリターマニアを封鎖しているぞ・・・」 片桐は玉座の間で交わされたフェルドとグンク・シュブの言葉を思い出していた。2人の話を聞いていたセイレースはポンポンと手を叩いた。玉座の間に1人の士官が入ってきた。 「クランガートを準備なさい。この者たちをリターマニアまで送り届けます」 「はっ・・・」 聞き慣れない言葉に片桐とパウリスが互いに顔を見合わせた。それを見てスビアが笑った。 「大きな鳥です。彼らはそれに乗って空を飛ぶのです。空から行けば、海にいくら艦隊がいても関係ないでしょう?」 それを聞いて片桐は少し考えた。パウリスから道すがら聞いた「神の聖地」のことを思い出していた。 「セイレース、俺1人だけでもヴァシントへ送ってもらえないでしょうか?」 その言葉にスビアが驚きの声をあげた。セイレースも驚きの表情を浮かべて片桐を見つめた。 「ヴァシントの「神の聖地」。その謎を解くことが、おそらく俺たちの旅の最終目的です。できれば、合図をしたら俺を収容してもらえたらありがたいのですが・・・・」 そう言って片桐は2台のトラックからはずしてきた発煙筒を取り出した。 「用事が済めばこれで合図します。」 「待って!わたくしも行きます」 予想しなかったわけではないが、その言葉に片桐はスビアを振り向いた。今度という今度はあまりに危険すぎる。 「今回はいくら何でもやばすぎる・・・。先にリターマニアに行くんだ」 「イヤです!それに、片桐。あなただけで古代ロサールの魔法が理解できて?」 彼女の言葉に片桐は反論の言葉を失った。確かに、片桐1人では、聖地を見てくるだけで大したこともわかりそうにない。 「わかった・・・。セイレース、彼女も一緒にお願いしたい・・・」 セイレースが頷いて、再び手を叩いた。先ほどの士官が再び入ってきた。 「ショーク、そなたもクランガートを出しなさい。そして異世界人と聖女をヴァシントまで送り、合図を待って彼らを収容し、リターマニアへ向かうのです。できますね?」 ショークと呼ばれた士官は膝をつき、王女に恭しく一礼した。 「仰せのままに・・・・」 危険な任務を引き受けたショークにセイレースは歩み寄ると、彼を抱きしめた。 「ショーク、生きて帰ってくるのですよ」 「もったいないお言葉に存じます」 かつては愛情もなく、氷のような世界で氷の心持っていたウィンディーネに生まれた、暖かい心を持った女王は忠実な部下の額に優しくキスをした。 王座の間から出てすぐの岩山を利用したバルコニーにクランガートが準備されていた。クランガートは体長5メートル近い、白鳥のような鳥で手綱のようなロープで操縦者が操るようであった。 「片桐、リターマニアで待っているぞ!」 パウリスと親戚のパロウスが先に飛び立った。巨大なクランガートは颯爽と大空に飛び立ち、かなりのスピードでリターマニアに向かった。 「セイレース、いろいろとお世話になりました。では・・・」 片桐もそう言ってショークが乗るクランガートに乗り込もうとした。しかし、それをセイレースが止めた。 「そなたたちの愛を試すようなまねをして、申し訳ないと思っています。きっと、わたくしに流れる祖先の血があんな行動をさせたのかも知れません。」 「あなたが我々を本気で殺すとは思っていませんでしたよ。」 その言葉にセイレースは少し微笑んで、スビアに向き直った。 「できることなら、片桐に感謝の気持ちを込めたキスをしたいのですが、許してくれますか?」 スビアは黙って頷いた。彼女にはそれが「感謝の意」だけではないことはわかっていたが、醜い嫉妬心で彼女の申し出を断る気持ちもなかった。同時にその気持 ちは哀れみでもなかった。自分でもよくわからない感情だった。セイレースは片桐の顔に自分の顔を近づけると、遠慮がちに少しだけ唇に触れた。冷たい感触が 片桐の唇に感じられた。 「さあ、お行きなさい。自らに課した旅の結末を確かめてくるのです・・・。そして、2人の愛を永遠のものにするのです・・・」 セイレースは後ろを振り返った。そのまま、玉座の間に入っていった。 「では出発します」 ショークが手に持った手綱を動かすと、巨鳥クランガートは2人を乗せて大空に飛び立った。 思ったよりもクランガートは乗り心地がよかった。ショークは怪鳥を操りながら片桐に質問した。 「しかし、先ほどの筒でどうやってわたしに合図を」 「派手に煙が出るし、炎も出る。上空からでもわかると思うよ」 片桐は彼の後ろ、怪鳥の背中の上でスビアの肩を抱きながら答えた。今、彼は迷っていた。ようやく、安全を取り戻したスビアを、最大の危機に立たせようとしているのではないだろうか、と。その不安を察したようにスビアは片桐の手を握った。 「片桐、後悔しないで。これはわたくしが望んだことです。それに、ショークが迎えに来てくれれば何も危ないことはありません」 その言葉を聞いて片桐は考えるのを止めた。もはやここまで来ては、彼女を止めることはできない。その考えを振り切るように、今度は片桐がショークに尋ねた。 「ショーク、君の女王は愛を知った初めての女王だそうだが・・・」 「ええ、彼女の両親は心の底から愛し合って、女王を産み、育てました。それまでのウィンディーネは、その美しい歌声で導いた男と交わるだけで、愛情はなかったのです。その瞬間からウィンディーネは変わりました。平和で友好的な民族に変身したのです」 なるほど、愛し合った末に生まれ育てられた彼女だからこそ、哀れな生け贄の末路を知って助け船を出したわけだ。ショークは言葉を続けた。 「しかし、セイレース様はお気の毒です。彼女は愛を知っている故、愛に飢えておられる。先ほど、玉座であなたたちにあんな行動をしたのも、愛を知っているが故・・・」 片桐とスビアは、最果ての女王に同情の心を抱いた。愛を知り、強く求めるが故の悲しさを抱く女王に将来、幸せが訪れることを祈らずにいられなかった。 「まもなくヴァシントです。「神の聖地」は郊外にありますので、そこまでお送りしましょう。そして上空で旋回してあなたの合図を待ちます」 ショークは郊外にそびえる神殿を指さして言った。3階建ての壮大な神殿には人影もなく、王宮のような豪華さもない。神殿と言うより、なにか巨大な墓地に見えた。 「ショーク、あなたはヴァシントにいたことがあるのですか?」 スビアの質問にショークは振り返ってにっこり笑って答えた。 「わたしもかつて「神の御心」当選者でした。セイレース様に助けられた1人なのです」 無人の神殿の屋上らしきところにクランガートは着陸した。ショークは発見されぬように素早く飛び立った。広い屋上には片桐とスビアだけだった。 「ホントに広いな・・・」 3階建てとはいえ、その屋上は遙か数百メートルから1キロ以上の幅を持っている。福岡ドームよりもはるかに多くの人間を収容できそうだった。 「さあ、片桐。行きましょう・・・」 手近な入り口を見つけて2人は階段を下った。片桐は89式を構えて慎重に進んだ。長い階段は薄暗く、直接1階までつながっているようだ。どうやら、この神 殿は巨大な吹き抜け構造であるようだ。しかし、見張りが誰もいないというのが、片桐には疑問だった。パウリスの話ではここは、グンクと評議会しか入れない と言うが、聖地ならもうちょっと警戒厳重でもいいものではないのか・・・・。 「どうやら、下に降りてきたようです・・・」 スビアの言葉に片桐は下を見下ろした。階段は終わって、薄明かりが外から漏れている。いよいよ古代ロサールの聖地のすべてを見ることができるかも知れない。2人は思わずつばを飲み込みながら階段を下りきった。 「な、なんだ・・・これは?」 思わず片桐は声をあげた。この建物が吹き抜け構造になっている理由がわかった。今、2人が降りてきた階段に沿った壁一面、びっしりと2メートルほどの大き さ、ガラスのような物質でできた「棺桶」が置かれている。その上にも、その上にも、15メートル近い天井の上までびっしりと・・・・。数列おきに梯子があ り、それを使って上の方にある棺桶まで行くことができるようだった。壁だけではない。幅4、5メートルの通路以外、巨大な神殿は一面、何十にも重なったガ ラスの棺桶で覆われているのだ。何万、何十万あるかわからない。 「これが、古代ロサールの聖地・・・」 スビアが予想とは全然違う「聖 地」を見て呆然としている。彼女の期待していた「聖地」は、古代ロサールの秘術を収めた数々の文献と、偉人たちの残した言葉だった。だが、それはこの「聖 地」のどこにも見あたらない。彼女の思いつく限りの言葉でこの「聖地」を表現するなら・・ 「まるで集団墓地だ・・・」 片桐の言葉の通りだった。片桐は「棺桶」のひとつを確かめてみた。中には今まで見たことのない人種の男が眠るように、ほほえみすら浮かべて死に顔を見せて いた。なぜ、死体が腐敗しないのかまではわからなかった。そして片桐が何より不思議だったのは、天井に近い「棺桶」までびっしりと入った死体の数々だっ た。そこまで行く手段は小さな梯子だけだ。この梯子を死体を担いで「棺桶」に収めたのか。それとも、死体を収めた「棺桶」を組み立てたのか。 「いや、違うな・・・」 「棺桶」は壁沿いのものは壁に埋め込まれている。まるで最初からこのように設計されていたようだ。とすれば、この中の人々は自らの意志で「棺桶」に入ったことになる。ふと、片桐は無人の「棺桶」を見つけた。 それを丹念に調べてみた。 「棺桶」は心地よい羽毛みたいな材質で包まれている。頭が収まる部分には枕のような、何かがついている。驚いたことに、「棺桶」の蓋は内側から閉まるようにできているのだ。 「スビア、ここの連中は自分からこの「棺桶」に入ったんだ・・・、こうやって・・・」 そう言って片桐はその「棺桶」に入った。 「片桐!何をするのです?」 スビアが片桐の行動を見て叫んだ。片桐の頭が、枕のような何かに触れた瞬間、彼の意識は飛んだ。 「片桐!どうしたんです?片桐!」 慌ててスビアが片桐を抱きあげた。その瞬間、片桐の意識が戻った。しかし、その顔は真っ青で脂汗が浮かんでいる。 「なんてことをしたんです!」 しばらくしてようやく片桐は我に返った。そして、静かにつぶやいた。 「・・・・彼らの意識が見えたんだ。ここは墓場じゃない。いや、墓場じゃなかった・・・」 水筒の水を飲んで一息ついた片桐は、一瞬の間にかいま見た古代ロサール人の末路を話し始めようとした。 「異世界人片桐!」 その時、巨大な神殿にグンク・シュブの声が響いた。どこにいるかはわからない。片桐は89式を構えて周りを警戒した。だがやはり姿は見えず、その不敵な声だけが響くばかりだった。 「まさか、ウィンディーネから生還してよもやこんなところにいるとは思わなかったぞ!しかも、古代ロサールの聖地まで侵すとはな!」 2人は身を隠すために駆け出した。だが、数歩走ったところで彼らは自分たちの足が床を踏んでいないことに気がついた。いつの間にか、落とし穴がその床に開いていたのだ。 「貴様らには、オーガの餌になってもらおう!最近腹を減らしておるのでな!聖女の村も、侍の村も、余が艦隊を率いて殲滅してくれるわ!」 グンク・シュブの恐ろしい声を聞きながら片桐とスビアは、真っ暗な穴にまっさかさまに転落していった。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------- アービル=別世界。この物語の場合日本を指す アクサリー=石。ポルを増幅させる。ゲベールなど魔法を使う道具に多く使われている。 アムター=聖女スビアの治める村。古代ロサール語で「豊かな森」と訳されるという。 アンバード=蛮人。アムターはじめヌーボル西部の森を荒らし回っていた。 イラス=神聖ロサール王国、グンク・シュブの補佐官 ウィンディーネ=コロヌーボル北方の山岳民族。女系社会で女王セイレースが支配する エルドガン=耳長人。エルフみたいな人種 エル・ハラ=片桐がエルドガンの都市パサティアナで出会った少女。ホントはエルドガンの王女 オーガ=伝説の魔人。不老でほとんど不死。神聖ロサール王国が生物兵器として密かに飼育していた ガルマーニ=ドイツ人が作った都市。元ナチ幹部ボルマンが支配していた。 ガンドール=人種。こびと ギルティ=平原世界ヨシーニアにある交易所。中立地帯 クーアード=人種、人間とほとんど同じ クブリル=海岸に住む、ワニに似たどう猛な生物 クランガート=ウィンディーネが使う大きな鳥 グンク=王の呼称、王女の呼称はグンクラート コロヌーボル=ヌーボル北方の大陸 ゲベール=この世界で広く使われる武器。ポルで弾丸を飛ばす。 サクート=ガルマーニのレジスタンスを率いるリーダー サニート=ヨシーニア戦士の階級。下級戦士。 中級戦士はボサニート、上級戦士はデボサニートという サマライ=この世界の通貨単位 ザンガン=アムターの長老。両親を失ったスビアを育てる ジャキータ=平原に住む肉食獣。食うとうまい シュブ=神聖ロサールのグンク。世界制覇をもくろむ。 シュミリ=海沿いの村。召還された馬を育てていた ショーク=ウィンディーネの士官。クランガートを操る ジョニーチ=ロサリストの指導者 神聖ロサール王国=強大な魔法文明国家。古代ロサールの聖地を抱く セイレース=ウィンディーネの女王 セピア=片桐の愛馬。スビアの愛馬はローズ ゾード=赤い満月。なぜそうなるかは不明 タボク=片桐に救われたシュミリの村人 タムロット=シュミリの長老。スビアを敬愛している タリマ=海賊 タロール=エルドガンの警備隊長。エル・ハラと結ばれた タローニャ=リターマニア警備隊ドロスの伴侶 トータ=海賊 富田竜之助才蔵=侍の末裔。片桐の盟友 富田弥太郎=才蔵のいとこ トラボロ=ヨシーニアの戦士。大勢を率いる殺人鬼 トルンド=ヨシーニアの戦士。片桐に助けられるがスビアを襲う ドロス=リターマニア警備隊長 ニル=エルドガンの王 ヴァシント=神聖ロサールの首都 バートス=才蔵の「草」忍者 パウリス=神聖ロサールの国務長官にして剣士 パサティアナ=エルドガンの要塞都市 バストー=アムターのガンドール。片桐と初めて出会った パタトール=アンバードなどが使う原始的な弓 ハルス=元Uボート艦長。ボルマン打倒後、リーダーの1人になる ハルスマン=ボルマンの副官 パロウス=パウリスの親族 パンサン=異世界の戦士を召還する魔法 フェルド=神聖ロサールの将軍。強硬派 フランツ=元親衛隊中尉。片桐の盟友 ヘラー=ボルマンの敬称。フューラーがなまった ボスポース=六本足の馬 ボルマン=元ナチス幹部。この世界にたどりつきガルマーニを支配した ポルンゴ・ロッサー=ロサリストの叫び「ロサールの神に栄光あれ」の意 ポル=魔法力の意味。さまざまな魔法の根元 マルージ=海賊 ミスト=海賊で片桐の船に乗り込む ミスタル=アムターに咲く花 ヨシーニア=殺伐とした刺すか、刺されるかの世界 リターマニア=神聖ロサールの自治都市 ロサール=古代に滅亡した王国 ロサリスト=エルドガンに発生した過激派
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その瞬間に何が起きたのか、彼には理解できなかった。 作戦開始から28分。 C50区画にて強襲艇へと搭乗中の4分隊、そして救出したパイロット2名、計38名のバイタルサインが強襲艇のシグナル諸共、唐突に途絶えたのだ。 ジャミングを疑ったものの、中枢は既にこちらが抑えている筈。 不可解な事態に彼は他の分隊の状況を確認すべく回線を繋ぐが、同時に意識へと飛び込んだのは信じ難い言葉だった。 『中枢を奪還された。繰り返す、中枢を奪還された。バイドによる侵蝕ではない。管理局側の抵抗と思われる』 その内容を理解すると同時、彼は自身の意識を疑わざるを得なかった。 信じられなかったのだ。 プログラムの発動から30分と経たずに中枢の奪還を果たされるなど、本作戦の実行前段階に於いては完全に想定外だった。 それ程の技術を有する人材を、管理局は温存していたのか。 『トランスポーターの暴走を確認・・・第5・6・9・10分隊が空間歪曲に巻き込まれた。反応消失・・・』 『第14分隊からの応答が2分前より途絶したままだ。第2分隊より「ウーパー・ルーパー」。サーチを実行、第14分隊の状況を報告せよ』 『ウーパー・ルーパーより第2分隊、第14分隊は2分前にバイタルをロスト。最初のトランスポーター暴走に巻き込まれたものと思われる』 『第18分隊よりウーパー・ルーパー、敵のアクセスポイントは何処だ』 『バイド汚染区画からの干渉が激しく、特定不能。フィールド出力を下げると、こちらが汚染されかねない』 錯綜する情報は、戦況が秒刻みで悪化し続けている事を告げていた。 バイドまでもが本局へと侵入していた事も予想外だったが、この状況はそれ以上の脅威だ。 再び中枢を掌握されたという事は、こちらが完全な敵地に取り残されているという事を意味している。 中枢を再度奪取する手段を講じるか、或いは早急に脱出を図らねばならない。 『第13分隊よりウーパー・ルーパー、援護機はどうした?』 『ウーパー・ルーパーより第13分隊、既にツァンジェンは侵入に成功、Aブロックにて局員の殲滅に当たっている。「ウラガーン」、「エグゾゼ」は潜航中に遭遇したバイドの一群を殲滅次第、本局へと突入する』 『ならブロックだけでも良い、アクセスポイントを突き止めてツァンジェンを誘導してくれ。ブロックごと破壊するんだ。パイロットについては既に全員を確保している』 『戦闘機人はどうする。現在、確保しているのはNo.2の残骸とNo.3の射殺体のみだ。ジェイル・スカリエッティは?』 『中枢を掌握された状態では作戦続行は不可能。中枢再奪取後に生存していれば確保する』 『了解。ウーパー・ルーパーより全部隊へ。「ラップドッグ」を起動せよ。繰り返す、ラップドッグを起動せよ』 インターフェースによる通信を行いつつ、同時に彼は並列処理によって隊員に指示を出し、互いをカバーしつつ歩を進める。 現在地、D33区画主要通路。 彼等の後方には、銃弾によって粉砕されたデバイス、そして人体組織の破片が散乱していた。 大量のどす黒い液体によって描かれた染みが、力無く点滅を繰り返す照明の中に浮かび上がっては消えるを繰り返している。 周囲に各種反応が無い事を確認し部隊の歩みを止めると、彼は周囲警戒を命じ右腕に繋いだ漆黒のケースを床面へと下ろした。 信号を送りロックを解除、開いたケース内の端末にインターフェースを接続。 疑似信号を織り交ぜながら正規のコードを入力し、更に起爆コードを手動で直接入力する。 そして全ての操作を終えるとケースを閉じ、管制機へと回線を繋いだ。 『第13分隊よりウーパー・ルーパー、ラップドッグ起動完了・・・ウーパー・ルーパー? ラップドッグを起動した。聴こえているか? ウーパー・ルーパー・・・』 しかし、呼び掛けに答えるのは沈黙のみ。 幾度繰り返しても、結果は変わらなかった。 ウーパー・ルーパー、通信途絶。 『第2分隊、応答せよ・・・第2分隊・・・第17分隊、そちらの状況は? 応答せよ・・・』 他の分隊へと通信を試みるも、こちらもまた繋がらない。 管理局によるジャミングか。 すぐさま対抗手段を講じようとするものの、それより早く隊員からの警告が飛び込んだ。 『高密度魔力反応検出・・・300m前方、魔力障壁展開を確認』 『後方220m、同じく魔力障壁展開』 その警告に従い視線を上げると、主要通路の前後に展開した薄緑の光を放つ障壁が、拡大表示された視界内へと飛び込む。 表面に無数のミッドチルダ言語の羅列と魔法陣を浮かび上がらせるそれは、障壁前後の空間を完全に遮断していた。 通路の反対側へと視線を投じれば、同様の障壁がもう1つ展開している。 すぐさま最寄りのドアを開けようと試みるが、何時の間にかロックされていたそれらは微動だにしない。 『ドアを撃て!』 軽装甲車両程度ならば紙の様に引き裂く銃弾が、嵐の様にドアへと撃ち込まれる。 しかしそれらの銃弾は、ドアを引き裂いた先に展開していた数重の障壁、その数枚までを破壊して停止、或いは兆弾となって通路内を跳ね回った。 その十数発が周囲に展開する隊員を襲い、更に内数発が装甲服を貫通し内部の人体を破壊する。 インターフェースを通じて彼等の苦痛の声が届く事はないが、被弾の衝撃で弾き飛ばされた身体が床面へと叩き付けられ、更にのた打ち回る事もなく倒れ伏す様は、負傷の度合いが決して軽くはない事を窺わせた。 装甲服の医療機構が作動し、すぐさま大量のナノマシンが負傷個所の修復を開始。 それを確認し、彼は残る隊員へと指示を下す。 『どうやら完全に隔離されたらしい。警戒しろ、すぐに局員が・・・』 『障壁、急速接近!』 その言葉に反応した時には、既に障壁との距離は100mを下回っていた。 300m前方に展開していた筈の障壁は、一瞬にして200m以上もの距離を高速移動していたのだ。 反射的に彼は後方へと振り返り、自動小銃のトリガーを引絞っていた。 周囲から同様に発射された大型火器の銃弾が、前方と同様に急速接近する障壁へと殺到する。 数十発もの大口径対魔力障壁弾による集中射撃を受けた緑光の壁は、忽ちの内に粉砕されて同色の光を放つ魔力素へと還元された。 しかしその向こうから、更に同様の障壁が急速に接近してくる。 射撃継続。 連射される銃弾が、通路の前後より迫り来る障壁を次々に破壊してゆく。 しかし幾ら破壊しようとも障壁の発生が止む事はなく、それとは逆に隊員は次々に弾薬切れを起こし始めた。 視界内に隊員の弾薬欠乏、或いは装填中を示すマーカーが次々に表示される。 そして遂に、彼自身も自動小銃の弾薬を撃ち尽くし、腰部に掛けられたPDWへと手を伸ばした。 だが、それすらも間に合わない。 『来るぞ!』 掃射が途切れた瞬間、障壁が一気に距離を詰めてくる。 視界を完全に覆う緑光の壁を見据えながら、彼は任務失敗を悟った。 そして恐らくは、この作戦自体が既に破綻しているであろう事も。 衝撃、暗転。 人工筋肉と自身の骨格が破壊される耳障りな音を最後に、彼の意識は暗黒に閉ざされた。 * * 主要通路の奥から衝撃音が響き、僅かな振動が壁面越しにも身体を震わせる。 腕の中の義娘が僅かに身を強張らせた事を感じ取り、リンディは彼女の肩を支える手に微かな力を込めた。 直後、傍らに展開した小さなウィンドウから、聴き慣れた音声が響く。 『敵勢力排除。もう大丈夫ですよ』 その言葉を受けて、通路の角へと身を潜めていた数人が前方の様子を窺い、後方へと合図を送った。 彼等の更に後方で息を潜める者達はそれを目にし、恐る恐るといった体で動き出す。 リンディもまたフェイトへと肩を貸しつつ、周囲の局員達と共に歩を進めた。 そして数分後、彼等は障壁の消失地点へと辿り着き、侵入した地球軍部隊の末路を目にする事となる。 「う・・・」 「年少者には見せるな・・・よせ、反対側を見てろ!」 その凄惨な光景を前に、リンディは吐き気を堪える事で必死だった。 地球軍は特殊な銃弾を用いていたのか、1つ1つを呆気なく破壊してはいたが、本来ならばSランク相当の砲撃ですら防ぎ切る魔力障壁。 通路の両端より高速にて接近する2つのそれらに挟まれた地球軍兵士達は、見るも無残な有り様となり果てていた。 外観からは21世紀の第97管理外世界にて普及している野戦服、その発展形にしか見えないが、実際には人工筋肉を主とする各種機能を搭載した装甲服の様な物なのだろう。 強固な装甲に身を包んでいた彼等は、しかしその事実によって更に悲惨な末路を辿る事になった。 彼等は装甲服の耐圧限界が訪れると共に、まるで卵の如く破裂して砕け散ったのだ。 薄い板の様に圧搾された、漆黒と濃灰色の迷彩装甲服。 その其処彼処から、断裂した人工筋肉と思しき組織と大量の水気を含んだ赤い有機組織、そして無数の白い破片が噴水の様に噴き出し、2つの障壁の隙間、僅かな空間を真紅に染め上げている。 こちらへの配慮か、障壁が解除されてそれらが通路へと撒き散らされる事はないが、迂闊にもその様を直視してしまった者達の中には、込上げる物を抑え切れずに嘔吐してしまう者も少なからず存在した。 リンディは嘔吐しそうになる自身を抑制しつつ、フェイトの視界を覆い隠す様にして歩を進める。 フェイトも義母の意図を察したのか、何も言葉を発する事なくそれに従っていた。 しかし、その見るに堪えないオブジェの傍を通り過ぎる際、水音と共に金属的な接触音が鳴り響く。 思わず足を止めると同時、新たに展開されたウィンドウから声が発せられた。 『誰か、そのケースを回収して下さい。中を確かめて』 足音が1つ、集団を離れて障壁の方向へと歩み去る。 それを確認するとリンディはそのまま直進し、集団と共にリニアレールの停車場へと辿り着いた。 此処で一旦、休息を取るのだ。 フェイトを優しくベンチへと下ろすと、リンディの目にケースを手にした局員の姿が映り込む。 彼はウィンドウの向こうからの指示に従い、漆黒のそれを開こうとしていた。 地球軍部隊の血に塗れているのか、床に置かれたケースの周囲には小さいながらも血溜まりが拡がっている。 意外にも呆気なく開かれたそれに対し数名の局員が魔法による解析を開始するが、程なくして上がった声が作業の終了を告げた。 「うそ・・・」 「戦術核・・・奴ら、正気か!?」 戦術核。 少なからぬ局員が、その名称に反応した。 リンディ、そしてフェイトも例外ではない。 彼女達が驚愕も露わにケースを解析する局員達の方向を見やると、ウーノを伴ったスカリエッティがその場へと歩み寄るところだった。 彼は局員達の後ろからケースを覗き込み、傍らへと展開したウィンドウと僅かに言葉を交わす。 やがて表情を顰めて吐息をひとつ、諦めた様に言葉を紡いだ。 「・・・完全にロックされている。介入は不可能だ」 「起爆装置は?」 「既に作動している。状況から推測するに、恐らくは時限式ではなく感応式だ。作戦領域内からの友軍バイタルサイン完全消失を以って起爆すると思われる」 『つまり全ての核を処理できない限り、本局から彼等を逃がす訳にも、かといって全滅させる訳にもいかなくなった訳だね』 結論として紡がれたウィンドウからの言葉に、一同は緊張を深める。 だが、錯乱して騒ぎだす者が居なかっただけでも、僥倖だったかもしれない。 自らが身を置くこの巨大艦艇内部に、起爆装置の作動した核弾頭が複数存在する。 そんな事実を知って、その上で冷静でいられる者は少ない。 幸いにもリンディは、その数少ない者の1人だった。 彼女はケースへと歩み寄り、スカリエッティと同じくそれを覗き込みつつ言葉を発する。 「正確な数は?」 『分かりません。しかし探知した地球軍部隊の数からして、20は下らないと思います』 「初めから此処を吹き飛ばすつもりだったのかしら?」 『さあ、其処までは・・・君はどう思う?』 ウィンドウの向こう、問い掛ける言葉。 返す声は、何処か馬鹿にする様な響きを含んでいた。 聞き慣れない女性の声。 『向こうは目標だけを確保して、後は口封じに周囲の人間を皆殺しにして脱出するつもりだったんじゃないですか? 地球軍が管理局と完全に敵対する方針を選んだ、その事実を隠蔽する為に。 でも局員の皆さんが予想外に優秀だったものだから、本局内の全区画に事態が知れ渡ってしまった・・・そちらの提督さんが発動したプログラムを打破してね。作戦続行は困難、しかも放っておけば管理局の全戦力に自分達の敵対が知らされてしまう。 そうなったら、本局を残しておいても百害あって一利なし。後々の為にも後腐れなく一切合切、纏めて吹き飛ばした方が利口・・・って、私ならそう考えますけど?』 その言葉に、一同が沈黙する。 良心の呵責も、自身ならば殺戮も辞さないと宣言する事に対する躊躇も、少なくとも表面上は微塵も感じられない声色。 幾人かが嫌悪も露わに表情を顰めるが、続く声はその言葉の内容を肯定するものだった。 『成程、合理的だね。確かに、彼等なら躊躇なくやってのけるだろう』 『あら、無限書庫司書長から直々にお褒めの言葉を頂くなんて、光栄ですわ』 感嘆する様な声、そして楽しげな声。 リンディは歯噛みし、フェイトの方を見やる。 案の定、自身の傍らに展開したウィンドウを通して今の会話を聞いていたらしき彼女は、悔しさと憤りを隠そうともせずに、此処には居ない人物への敵意を表情に滲ませていた。 ウィンドウの向こうに存在する人物、即ちユーノの容態をフェイトが気に掛けていた事はリンディも知っている。 自身の判断ミスから彼に重傷を負わせ、その四肢を奪い去ったとの自責の念を抱えていた事も。 そして同時に、なのはと並ぶ恩人の1人でもあり古い友人でもある彼が見せた行動に、単なる友情を越えた感情が芽生えつつある事にも、リンディは気付いていた。 その感情が、彼に対する罪悪感と地球軍に対する憎悪によって自覚を妨げられているであろう事も、少し前にレティと交わした会話を通して確信している。 だからこそ、フェイトは彼の現状が気に喰わないのだ。 あろう事か戦闘機人の中でも最も酷薄な人物に協力を仰ぎ、しかも現状の分析と対処に於いて表面上ではあるが意気投合しているという事実が、どうしても素直に受け入れられない。 正確に云えば、彼女の記憶の中に存在するユーノ・スクライアという人物像と、無限書庫という情報機関の長であり現状に於いて冷酷とも取れる対応と実力行使を為すユーノ・スクライアという人物像、その両者の相違を受け入れる事ができないのだろう。 確かに今のユーノは、長らく指揮官としての立場から実戦と相対してきたリンディから見ても、必要とあらば敵対勢力の殺害すら厭わない冷酷さというものが感じられた。 嘗てのプレシア・テスタロッサ事件に於いて、リンディが自身の乗艦であるL級次元航行艦アースラ魔力炉からの魔力供給を受けていた事例と同じく、今のユーノはEブロック第2予備魔力炉からの直接魔力供給を受けている。 魔導師としては補助系統全般に長け、術式構築などの精密性に於いても並ぶ者の無い才覚を発揮するユーノだが、如何せん攻撃魔法に対する適性の無さと、Sランクには到底届かない魔力保有量がネックとなり戦場に於ける主力とはなり得ない。 だからこそ、嘗ての彼はなのは達の補助に徹し、裏方ながら重要な役割を果たしてきた。 それは無限書庫という情報機関の頂点に立った今でも変わる事はなく、桁外れの情報処理能力と検索魔法という力を用いて、彼は前線の局員達を支え続けている。 しかし、外部からの強大な魔力供給を受けている現在、ユーノにはこれといった欠点が無い。 膨大な魔力を用いて、過去の事例と同じく最適な補助を齎してくれる。 リンディ達は、そう信じて疑わなかった。 補助ではなく、攻撃。 彼が実行したのは、それだった。 しかもその方法、彼が中枢を介して展開した結界魔法、それを応用した複数の障壁を用いて実行した攻撃は、過去のユーノ・スクライアという人物像からは想像もできない程に凄惨なものだ。 高速移動する2つの障壁の間に敵を挟み圧死させるなど、果たしてこれまでに実行した魔導師がどれ程に存在する事だろう。 そもそも敵勢力の殺傷を目的とするにしても、本来の用途からして防御用である障壁を攻撃に転用するなど、同じく補助を得意とするリンディですら発想し得なかった。 否、するにしても間接的な手段として用いただろう。 直接的に、障壁そのものを用いて殺傷しようとなど、考えた事もない。 しかし、彼はやってのけた。 Sランクの砲撃すら防ぎ切る魔力障壁、魔力炉からの供給を得て更に強固さを増したそれを用いて、9名もの地球軍兵士を殺害してみせた。 過去のユーノ、即ちリンディの記憶にも存在する心優しい少年しか知らぬフェイト、彼女の目と鼻の先で。 一部門の長として成長した結果というだけでない事は、リンディにも分かっている。 恐らくは彼なりに地球軍という敵性組織を分析し、その目的を推測し、現状を理解した上で決意した行動こそがこれであるという事も。 だがそれでも、フェイトのみならずリンディでさえ、今この瞬間に彼が身を置く状況を許容する事はできなかった。 本局内の其処彼処で地球軍を殺傷し、その事象についてあの酷薄な戦闘機人、クアットロと意志の一致を見せている事実など。 「フェイト!」 「・・・アルフ!」 そんな事を思考する内に、別の一団を引き連れたアルフが他の通路より現れる。 最近では珍しく、成人女性の姿だ。 クラナガンへと下りたエイミィ達と別れ本局へと残った彼女は、ユーノを欠いた無限書庫に臨時の戦力として組み込まれていた。 彼女の有する魔導資質がユーノと近似であった事もあり、検索魔法を展開する事ができた為だ。 そして、ユーノの誘導に従って彼女がこの場所を目指していた事も、ユーノ自身からの報告で聞き及んでいた。 「アルフ、無事で良かったわ」 「そっちもね。ユーノの方から連絡が入ったんだって?」 アルフの言葉に、リンディとフェイトは複雑な笑みを浮かべる。 実際にアルフの言葉通りなのだが、その事実は自身等が彼に頼り切っている現状を証明するものでもあったのだ。 心中の苦いものを自覚しながらも、リンディは言葉を絞り出した。 「ええ・・・中枢を奪還したと、連絡が入ったのよ。後は彼の誘導に従って・・・」 「そっか・・・あの、さ・・・リンディ、あんたの旦那は・・・」 アルフが何処か言い難そうに、リンディへと問い掛ける。 彼女が何を訊こうとしているのか、リンディは正確に理解していた。 半身をずらし、後方で2人の局員が手にする偏向重力発生結界に覆われた、灰色のポッドを指す。 それを目にしたアルフは、瞬時に悟ったらしい。 「・・・良かった、何とかなったんだね」 「プログラムを発動していたのは彼ではなく、ポッドを固定していた電子機器群だったわ。ユーノ君とスカリエッティが気付いて、すぐに分離する事に成功したの」 「危なかったよ。気付くのがもう少し遅れていたら、武装局員が義父さんを殺していたかもしれない」 全てではないにせよ、家族が揃った事で幾分か雰囲気が和らぎ、互いの口数も多くなる。 他の者達も同様で、総数が500人を超えた事で少なからず安堵の気配が漂っていた。 武装局員を始めとする魔導師の数も200人に達し、強力なバックアップの存在もあってか状況打破への希望が湧いてきたらしい。 だが其処に、ユーノから新たな情報が齎される。 『リンディさん、ロウラン事務官は其処に居ますか』 「グリフィス君・・・?」 ユーノからの問いに、リンディは周囲を見渡した。 目的の人物はすぐに見付かった。 既にこちらを気に掛けていたのか、彼の方から歩み寄って来るところだったのだ。 「此処に居ます。何の御用件でしょうか、スクライア司書長」 『・・・リンディさん、ロウラン事務官。レティ提督の消息についてご報告があります』 その言葉にレティは息を呑み、グリフィスは無表情に言葉の続きを待つ。 御世辞にも好ましいとは言えない予感が、リンディの脳裏を掠めた。 そして無情にも、その予感は現実のものとなる。 『セキュリティ・サーチャーがレティ・ロウラン提督の執務室にて、彼女の遺体を確認しました。現場の状況から推測するに、重火器による至近距離からの銃撃を受けたものと思われます』 瞬間、リンディは自らの呼吸が止まった事を、確かに認識していた。 直後にグリフィスの方向へと視線を投じるも、彼は無表情のまま、取り乱す事もなく佇んでいる。 どんな言葉を掛ければ、と半ば混乱する思考を廻らせるも、彼は特に目立った反応を見せる事もなく、平静を保ったまま言葉を紡いだ。 「・・・了解しました。有難う御座います、スクライア司書長」 敬礼をひとつ、彼は踵を返す。 そんなグリフィスの背を呆然と見送っていたリンディだったが、彼の進む先に待つシャリオの表情を目にし、全てを悟った。 平静を装ってはいるが、やはり彼は大きな衝撃を受けている。 自分にはそれと判らなかったが、彼女は全て承知しているらしい。 傍らのベンチへと腰を下ろしたグリフィスの傍へと佇み、項垂れるその背を静かに見つめるシャリオは、まるで母親の様な慈愛を感じさせる。 今、彼の心を慮れるのは母親の友人であった自分ではなく、幼い頃から傍にあった彼女だろう。 少なくとも今は、彼の事については自身の出る幕は無い。 『ところで、これからの行動ですが』 そんな思考を遮る様に、ユーノが言葉を発する。 見ればウィンドウの傍らに、本局の立体構造図が表示されていた。 紅く点滅するのは、現在地であるDブロック、その端。 『皆さんには、Dブロック脱出艇格納区を目指して貰います。道中の地球軍はトランスポーターの暴走により排除済みですが、システムの一部が破壊されている為に完全なサポートは不可能ですのでご留意を』 「リニアレールで移動すれば4分といったところだな。最終停車場まで行けるのか?」 『いいえ。地球軍強襲艇突入の影響により、D61区画の路線が破壊されています。其処から先は徒歩での移動になりますね』 「逆方向は? 中央区の脱出艇はどうなっているの?」 『中央・A・B・F区画はほぼ全ての接続が破壊された為、現在はいずれも独立機能しています。回復を試みてはいますが、まだ暫く掛かるでしょう。よって現在、こちらからの干渉はできず、状況は不明。そちらへの移動は危険です』 「待って、中央区の状況が不明? 市街は? 住民はどうなったの!?」 中央区の状況不明。 ユーノより齎されたその情報に、少なからぬ人数が反応した。 中央区といえば、本局に於いては生活の中心である。 本局内部12万の人間、局員とその家族が住む街そのものが、中央区には築かれているのだ。 それは単なる居住施設ではなく、広大な自然公園を含む生存空間だった。 上空にはホログラムによる空が拡がり、小規模ながら生態系が存在し、ビルやショッピングモール等の建造物が建ち並ぶ。 次元世界に浮かぶ巨大艦の内部とは到底信じられぬ、クラナガンの縮小版とも云える街が3つ、階層状に築かれているのだ。 最下層の第1階層から順に、自然区・居住区・商業区が建造されている。 特に、居住区には局員の家族7万人が生活しており、彼等の生活を支える為に4000人が商業区に常駐していた。 即ち、少なくとも74,000人の民間人が、中央区には存在している筈である。 だと、いうのに。 『脱出艇の射出は観測されていません。システムが完全ではないから、これが本当に正しい情報とは言い切れないけど、もしそうなら誰も中央区から脱出していない事になる』 「そんなっ!?」 『民間人が生存している事は確実です。中央区にはかなりの数の武装局員が存在するし、地球軍にしても居住区に侵攻するメリットは無い筈。バイドによる汚染も・・・』 『そうでもないみたいですけれど』 唐突に、クアットロの声が通信に割り込む。 誰もがウィンドウへと視線を釘付けにされる中、非情な報告が発せられた。 『E19から8までの区画で、バイド係数の上昇を確認。どうやら汚染は中央区へと近付いているみたいですねぇ』 「な・・・」 『それとC1から7までの区画で異常振動を観測。魔力反応が多数に、戦闘によるものと思われる轟音も未だに響き続けています。多分、バイドか地球軍が局員と戦闘を行っているんじゃないですか?』 その報告に、リンディは絶句する。 7万を超える民間人が存在する空間で、戦闘が発生したというのだ。 逃げ場の無い閉鎖空間での戦闘によりどれ程の被害が出るのか、想像する事は難しくない。 何より、クラナガンという先例があるのだ。 バイドは勿論の事、地球軍が民間人への配慮を行う事はないだろう。 周囲の局員達も、同じ事を考えたに違いない。 だからこそ、その言葉が発せられた事は当然と云えた。 「中央区へ行こう! 民間人を助けなければ!」 「まだ戦っている連中が居るんだろう!? 援護に向かうべきだ!」 「中央区を奪還して脱出艇を確保すれば・・・」 展開された数十のウィンドウを経て、一連の会話を聞いていたのだろう。 其処彼処から中央区へ向かうべきとの声が上がり始める。 非戦闘員の存在さえなければ、リンディもまたその声に賛同していただろう。 しかし今、当の彼等でさえ中央区への移動を支持している。 無理もない。 今まさに彼等の家族が、其処で危機に瀕しているのだから。 だが、続くクアットロの言葉は、そんな事を熟考する暇さえ与えてはくれなかった。 『・・・D1から9区画までのシステムが次々に沈黙している・・・警告、何かがそちらに近付いている!』 その言葉とほぼ同時、壁面に設けられたトンネルを出た5両編成のリニア車両が2本、停車場へと侵入してくる。 歓喜の声と共に、30人程が車両へと向かい始めた。 瞬間、鋭い声が飛ぶ。 「戻れ!」 それは、狙撃銃型のデバイスを携えた局員の叫びだった。 車両へと駆け寄ろうとしていた局員達が、一斉に振り返る。 トンネルの奥より響く、断続的な重低音。 「こっちに戻るんだ! 早く!」 次の瞬間に起こった事を、リンディは明晰さを取り戻した思考の中で捉えた。 トンネルより飛び出してきた、巨大な鉄塊。 薄青色に塗装されたそれは高速にて飛来し、停車中の車両、内1本へと減速もせずに衝突した。 大音響、衝撃。 巨大な質量同士が激突するその余波に、リンディは耐え切れずに床面へと倒れ込む。 嘗ては実戦に身を置いていただけあって即座に身を起こしたものの、その視界へと飛び込んだ光景は信じ難いものだった。 車両が、潰れている。 5両のリニアが大質量によって拉げ、飛び散った破片と火花とが周囲を埋め尽くしていた。 衝撃と破片を至近距離から受けた者達が其処彼処へと転がり、ある者は絶叫と共にのたうち、ある者は呻きつつ這いずり、ある者は微動だにせず血溜まりに沈む。 そして大音響により麻痺した聴覚に代わり、一定のリズムで響く重低音を全身が感じ取っていた。 皮膚は叩き付けられる重圧に緊張し、髪は場違いなまでの強風によって踊り狂う。 恐怖と混乱に満ちた念話が飛び交う中、リンディの視界へと飛び込んだ、その存在は。 「・・・ヘリコプター?」 管理局武装隊正式採用輸送ヘリ「JF704式」。 『おい、あれは実験用の機体だぞ! 技術部の格納区にあった奴だ!』 『誰が搭乗してる!? 何て操縦をしてやがるんだ、馬鹿野郎!』 『負傷者を救助しなさい! 医療魔法の使える者は壁際に!』 30人前後の負傷者及び死者が転がる中、救助活動へと移るべく動き出す局員達。 しかし数十発の直射弾が、衝突後も未だに滞空し続けるヘリへと襲い掛かった事により、その作業が実行される事はなかった。 その一方でヘリは閉鎖空間にも拘らず高機動による回避運動を実行、ローターを壁面へと擦りつつも、完全ではないにせよ直射弾の弾幕を回避していた。 すぐさま発せられる、非難の念話。 『武装隊、何をやっているの! 何で攻撃なんか!』 『あれは味方だぞ!?』 返されたのは武装局員からの念話のみならず、ウィンドウ越しのそれも含まれていた。 緊迫したユーノの声が、音声と念話の双方として総員の意識へと響き渡る。 『コックピットが潰れている! 生きた人間なんか乗っていない!』 『JF704式よりバイド係数検出、11.80! なおも上昇中!』 次の瞬間、全身を重圧が襲った。 高出力AMFによる、魔力結合阻害。 技術者の1人から、ウィンドウを通した音声での警告が飛ぶ。 『機載型高出力AMFの実験機体だ! 不完全だが、200m以内ではプログラムの展開すらできない!』 『対抗策は!?』 『とにかく距離を取るしかない! 集束砲撃か魔力密度の高い直射弾なら、AMFの最大効果域を突破できる筈だ!』 『総員、敵機から離れ・・・』 その指示が、最後まで紡がれる事はなかった。 ヘリは唐突に機体を旋回させ、出現の際とは反対のトンネルへと飛び込み、そのまま姿を消したのだ。 誰もが呆然としたまま、遠ざかる重低音と震動の源を呆然と見送る。 AMF効果域、消失。 「何が・・・」 「見逃された、って事かい・・・?」 唖然としつつ呟く、フェイトとアルフ。 その言葉は、この場の全員の総意だったろう。 1本の車両を破壊し、そのまま立ち去った輸送ヘリ。 何を目的として現れたのか、それが解らない以上は見逃されたと考えるしかなかった。 だがその予想は、すぐさま否定される。 『・・・路線管理システムの一部が沈黙・・・いや、D47区画以降のシステムが次々に沈黙していく・・・バイド係数、検出! 汚染拡大!』 『車両に乗り込んで! 早く! 中央区へ!』 トンネルの奥から轟く、不気味な衝撃音。 誰も彼もが一斉に動き出し、悲鳴と怒号が折り重なって停車場に響く。 リンディもまた、アルフと共にフェイトを支えつつ、残る車両へと向かい必死に走り始めた。 時折、背後へと振り返ってはクライドのポッドを運搬する2人が尾いてきているかを確認しつつ、数十秒ほど掛けて3人は最後尾の車両内へと乗り込む。 ユーノが呼び寄せた車両は物資輸送用であり、500人以上であっても余裕を持って乗り込む事ができた。 全員が乗り込むと同時に搬入口が閉じられ、車両は中央区へと向けて加速を始める。 そして、負傷者の呻きと指示を飛ばす声が響く中、リンディの傍らに新たなウィンドウが展開された。 『中央区との接続が一部復旧。リンディさん、中央第5・第8魔力炉を確保しました。供給ラインをそちらに繋ぐので、適当な人員に接続をお願いします』 「分かったわ」 ユーノの言葉に応を返すと、リンディは周囲の武装局員、その全てのデータを表示する。 それらの中から「AC-47β」非所持の人員を選別すると、更に高ランクの魔導師を2人ほど選出した。 しかし本人達に連絡を取った結果、2人が先程の負傷者の中に含まれている事が判明。 リンディは集団の纏め役となっている数人と短く議論を交わした後、軽く息を吐きつつ背後へと振り返る。 「アルフ」 「何だい?」 フェイトの具合を確かめていたアルフは、リンディの呼び掛けに顔を跳ね上げた。 少しでも長くフェイトの傍に居たいであろう事はリンディにも理解できたが、しかしその内心を押し殺して用件を告げる。 「ユーノ君が中央区の魔力炉を確保したわ。でも、此処には大量の魔力を扱える攻勢特化の余剰人員が無いの。だから・・・」 「攻撃は「AC-47β」を持っている連中に任せて、リンディとあたしは供給を受けつつ援護だね。了解」 だがアルフは、リンディが全てを言い切るまでもなく、要請の内容を正確に把握していた。 言葉もなく佇むリンディの目前で、彼女は新たに展開したウィンドウ上に指を滑らせると、魔力供給回路の接続完了を告げる。 「終わったよ・・・何だい、リンディ。ぼうっとしちゃってさ」 「いえ・・・」 アルフの言葉で我に返ったリンディは、すぐさま自身も魔力供給回路の接続作業を開始した。 本来ならば山の様な数の手続きを踏む必要のある作業だが、ユーノとクアットロが気を利かせたのか、1分と掛からずに全ての作業が完了する。 リンカーコアを通し、全身に漲る膨大な魔力。 背面からは余剰魔力蓄積の為の光る羽根が出現し、その表面から幻想的な光を放つ。 その気になれば周囲一帯を消し飛ばす事さえ可能であろう程の力を得て、しかしリンディの胸中を満たすのは心強さではなく、際限の無い不安ばかりだった。 だが、その不安は新たな通信によって和らぐ。 『こちら第7管制室。新たにEブロック第1予備魔力炉、中央第3魔力炉の制御を確保しました。既にシグナムとアコース査察官が接続を完了、これよりそちらに対する攻性支援を行います』 「了解した・・・助かるよ、スクライア司書長」 『2人はシステムを用いた間接戦闘に不慣れな為、支援は通常行使とほぼ同様の魔法による攻撃手段に限られます。一応、こちらでもイメージを付加しますが、炎と犬型の魔力集束体は味方なので注意を・・・』 「おい、居住区からの通信だ!」 ユーノからの通信に局員の1人が答える中、唐突に別の局員が声を上げた。 彼が放った言葉にほぼ全員が反応し、無数のウィンドウが展開される。 リンディもそれに倣い、アルフ、そしてフェイトと共に、流れ出る音声に耳を傾けた。 『・・・こちら・・・応答・・・居住区、市街・・・攻撃・・・』 「駄目だ、雑音が酷過ぎる。管制室、そちらで通信状況を回復できないか」 『少し待って下さい・・・これで良い筈』 『聞こえますか!? 1046から接近中のリニア! すぐに離脱を!』 通信状況、回復。 車両がトンネルから巨大な空間、第2階層内部へと飛び出し、窓から差し込む眩い光に眼が眩む。 そして、同時に飛び込んできた言葉が、リンディの意識を凍て付かせた。 『区画全体が崩落します! お願い、離脱して!』 頭上に拡がる、第2階層の人工の空。 其処から降り注ぐ人工の陽光に目が慣れるや否や、窓越しに信じ難い光景が視界へと飛び込んだ。 「・・・嘘だろ」 それは、誰の言葉だったか。 リンディには、それを確かめる余裕すら無かった。 只管に眼前の光景、理解の範疇を越えたそれを眺める以外に、採り得る行動など無かったのだ。 その、余りに常軌を逸した、現実のものとは思えぬ光景を前にして。 空に「穴」が開いていた。 人工の空に、漆黒の空間。 直径が数百mにも達するその「穴」が実に4つ、作り物の蒼穹に漆黒の闇を穿っていた。 商業区のビルが数棟そのまま落下してきたのか、「穴」の直下は大量の瓦礫と粉塵に覆われている。 第3階層崩落、第2階層へと落下。 大地が「焔」を噴き上げていた。 空と同様に穿たれた巨大な「穴」から、赤黒い「焔」が巨大な柱となって立ち上っている。 「穴」の淵に建っていたビルが、僅かに傾いたかに見えた、次の瞬間。 そのビル、更には隣接する1棟までもが、巨大な力によって「焔」の中へと引き摺り込まれた。 第2階層崩落、第1階層へと落下。 「階層が・・・崩壊している・・・!」 「そんな! 階層構造は破壊できる硬度や厚さじゃない筈・・・!」 『第7管制室より警告! 第1階層・自然区全域、異常高温! 階層全体が炎に沈んでいる! 現在2500℃!』 『こちらクアットロ、第2階層全域で温度上昇を確認! 現在53℃、なおも上昇中! 耐熱遮断障壁が保ちません! 第2階層底部が融解を始めています!』 リニアが居住区内を疾走する間にも、周囲には頭上よりビルそのものが降り注ぎ、また別の個所ではビルの一群が大地の下へと沈み込み姿を消す。 更には小規模から大規模なものまで爆発が頻発し、魔力光の炸裂と誘導型らしき質量兵器の弾体が曳く白煙の線が中空を埋め尽くしていた。 その光景は地球軍の侵入を意味していたが、同時に局員の生存をも示している。 すぐさま、全方位通信回線が開かれた。 飛び込む音声は、生存者達の叫び。 『第6避難所は全滅! 全滅だ! みんな死んじまった! 化学兵器だ! 畜生、ケダモノどもめ! 化学兵器で武装した地球軍部隊が居るぞ!』 『こちら2103! 現在地、市街4区2-7! 地球軍部隊の撃破に成功した! この地区の地球軍は全滅だ!』 『誰か、誰か聴こえますか!? こちら避難所・・・第10、いえ、第11避難所です! 地球軍に出口を封鎖されました! 現在、約1800人が避難しています! 室温が上昇中、既に68℃に・・・お願いです、早く救援を! もう死者が出始めているんです! 誰か、誰か助けて・・・』 『無人清掃車が民間人を襲っている! メンテナンスシステムもだ! 今は地球軍と交戦しているが・・・奴等・・・奴等、捕獲した人間を破砕機に放り込んでやがる! くそ、くそ! 何て事だ! 人間を砕いてやがる!』 『良いぞ、地球軍残党が7区1-1のビルに集結中だ! ビルを包囲しろ! 建物ごと吹き飛ばせ!』 『2区2-7から4-3、連鎖崩落! 地球軍が巻き込まれている!』 『11区の壁面に肉腫が・・・スフィアだ! オートスフィアが出現しました! 肉腫から魔導弾の発射を確認! 侵食域が拡大しています! バイド係数、更に増大!』 爆発と崩落、射撃と砲撃の轟音が紛れる中、怒号が幾重にも折り重なる。 絶望に叫ぶ声、歓喜に沸く声、恐慌に喚く声。 それらが念話・通信として飛び交う中を、リニアは常と変らぬ速度で以って駆け抜ける。 そして状況はリンディ達を、傍観者としての立場に留め置いてはくれなかった。 『運行中のリニア車両! ヘリが後方に迫っているぞ!』 その言葉が終るや否や、無数の光条が車両天井部を撃ち抜く。 極限まで高密度集束された魔力砲撃。 ユーノのそれよりもやや淡い緑、そして褐色の障壁によって構築された2重の防御壁に阻まれ、それらの矛先が局員へと至る事はなかった。 しかし、その事実にも拘らず砲撃が止む事はなく、逆に機銃の如く連射される光条が虫食いの様に無数の穴を天井部へと穿ちゆく。 その執拗な連射を前に、魔力が尽きる事さえないものの、出力端子となっているリンディ等の身体に苦痛が奔った。 「く、う・・・っ!」 「ユーノ、君・・・!」 『援護します、伏せて!』 次の瞬間、車両外部が爆炎に覆われる。 シグナムによる、魔力の過剰供給を用いた空間爆破だ。 感知した魔力からして、アギトとのユニゾン状態にあるらしい。 膨大な魔力の爆発を感じ取ったリンカーコアを通し全身が悲鳴を上げ、更に直前に伏せた身体を衝撃波が打ち据えた。 鼓膜が破れんばかりの破裂音と全身を叩く強風に、天井部が吹き飛んだのだと理解するより早く、続く地鳴りの様な重低音に素早く身構える。 完全に吹き飛んだ天井部の先、疾走する車両の200mほど後方に、あのコックピットの潰れたJF704式が滞空していた。 明らかにこちらを追跡している。 「リンディ、上!」 アルフの警告。 咄嗟に障壁を展開すると、再度頭上から襲い掛かった砲撃が褐色と緑の壁に弾かれる。 障壁越しに見上げれば、滞空するオートスフィアの群れが視界へと飛び込んだ。 それらは散発的にリニアレールの路線上へと配置され、車両の通過に合わせて砲撃を放つ。 どうやら先程の焔は、あのオートスフィア群の一部を狙ったものらしい。 次々と襲い来る砲撃に、リンディは焦燥を押し隠しつつ鋭く叫んだ。 「アルフ、暫く時間を稼いで!」 「了解!」 結界を解除、ディストーション・フィールドの発動準備に入る。 その作業すらも、膨大な処理能力を誇るユーノと本局データバンクからのバックアップにより、僅か5秒程で発動段階へと到った。 すぐさま、アルフへと声を飛ばす。 「アルフ!」 「はいよ!」 アルフの展開していた障壁が消失すると同時、入れ替わる様に車両上部へと空間歪曲が出現。 可視化した揺らぎが降り注ぐ砲撃を呑み込み、その全てを片端から掻き消してゆく。 高ランク魔導師であるリンディが、更に魔力供給を受けた上で展開したフィールドだ。 新型とはいえオートスフィア程度の砲撃では、万が一にもその防御を抜く事はできない。 その間に周囲では、後方より接近するJF704式に対する迎撃が開始されていた。 直射弾と集束砲撃が薄青色の機体へと襲い掛かり、高出力AMFによってその威力を減じられながらも機体表面を削りゆく。 だが、ヘリは怯まない。 回避行動を取るどころか、更に速度を上げてリニアへと接近してくる。 敵機は飽くまで輸送ヘリであり、AMF以外にこれといった武装を施されてはいない筈だが、しかし危険な事には変わりがない。 攻撃がより一層に激しさを増し、更にシグナムの炎と局員に対してのみ可視化されたヴェロッサの「無限の猟犬」がヘリへと襲い掛かる。 しかし、いずれにしてもAMFの効果範囲内へ侵入すると同時に減衰を始め、決定的な損傷を与えるには至らない。 幾ら高出力とはいえ、余りに異常に過ぎる魔力結合阻害効果。 どうやら汚染によって、安全回路が完全に破壊されているらしい。 今やあのJF704式は、次の瞬間には魔力暴走による爆発を起こすとも知れない、制御できない爆弾の様な存在なのだ。 局員の間に、焦燥を含んだ念話が奔る。 『駄目だ、魔力弾が減衰してしまう! 何か構造的弱点は無いのか!?』 『ヴァイス陸曹、何か知りませんか!?』 『テール・ブーム側面の排気口を破壊できれば、トルクを相殺できずに墜落する筈なんだが・・・誘導操作弾じゃAMF効果域を突破できないだろうしな・・・』 『不味いわ、フィールドが!』 念話が交わされる間にもリニアとヘリの距離は縮み、徐々にAMFの効果がリンディ達にも影響を及ぼし始めた。 そしてあろう事か、ディストーション・フィールドまでもが綻び始める。 空間歪曲の範囲が、明らかに狭まり始めたのだ。 このままでは未だ続くオートスフィア群からの砲撃を、直接的に受ける事となってしまう。 だがそんな中、クアットロからの通信が入った。 『ウーノ姉様、そちらで車両のコントロールを掌握できます?』 『・・・20秒程あれば』 『では、お願いしますね。それと皆さん、何かに掴まっていた方が宜しくてよ?』 その会話の内容に、リンディはスカリエッティ等が座していた方向を見やる。 彼女の視線の先では、ウーノが壁際のコンソール前へと佇んでいた。 信じ難い速さでキーウィンドウ上に踊る指を見つめていると、今度はスカリエッティからの警告が意識へと飛び込む。 『さて、急停車するぞ。そろそろ準備した方が良いのでは?』 その瞬間、リンディはフェイトを庇う様にその上へと覆い被さった。 視線だけは頭上へと向けたまま、同じくフェイトへと寄り添ったアルフが再度、障壁を展開する様を視界へと捉える。 直後、鼓膜を劈く金属音と共に車両へと急制動が掛かり、同時に30を超えるデバイスが頭上の空間へと向けられた。 そして、車両が急減速した結果、ヘリは一瞬にしてその上方へと躍り出る。 AMFによる重圧が急激に増すと同時、ヘリの至近距離に展開していたディストーション・フィールドは霧散し、アルフの結界が綻び始めた。 防御手段を奪われれば、後は砲撃の餌食となる以外に道は無い。 だが次の瞬間、轟音と共に頭上のヘリが「潰れた」。 砕け散る緑光の壁、飛び散る魔力光の残滓。 メインローターの一部が捻じ曲がり、既に圧壊していたコックピットが更に小さく押し潰される。 歪んだ機体は其処彼処から大小の破片を零し、亀裂と火花、赤々とした炎が一瞬にして表層を覆い尽くす。 金属が圧壊する巨大な異音が容赦なく鼓膜を叩き、飛び散る無数の破片がAMFにより減衰した障壁へと殺到した。 「まだ・・・!」 だというのに、ヘリはまだ飛んでいた。 減衰していたとはいえ、リニア進路上の空中に展開されたユーノの障壁、強固さでは並ぶ物の無いそれへと高速で突入し、機体各所より炎を噴き上げつつも未だ飛行している。 フレームが歪み十分な安定性すら確保できない状態となっても、メインローターとノーター・システムはその役目を放棄してはいなかった。 しかし、機内のAMFシステムはそうではなかったらしい。 元々が繊細な魔法機器である上に、耐久性を考慮されていない試作品だったのか、フレームの歪みに耐え切れず損壊した様だ。 全身を圧迫していたAMFの重圧が消失し、同時に鋭い念話が局員の間へと奔る。 『撃て!』 連射される直射弾、簡易砲撃。 シグナムの炎が機体を貫き、ヴェロッサの猟犬がテール・ブームを喰い千切る。 メインローターのトルクにより回転を始める機体へと更に大量の直射弾が撃ち込まれ、爆音と共にハッチが弾け飛んだ。 業火を噴きつつ、機体の高度が下がる。 そして、ユーノの警告。 『伏せて!』 視界へと飛び込んだユーノの障壁は、これまでとは異なる形で展開していた。 地表に対して垂直ではなく、水平に展開されていたのだ。 ヘリは回避する事もできずに障壁へと突入、鋼を引き裂く異音と共に機体が上下に分断される。 切断された機体下部は車両を掠めて路線へと接触、高架橋を破壊して市街へと落下した。 残る機体上部は回転運動の激しさを増し、更に路線に沿って建ち並ぶビルの壁面へと接触して大量のガラス片を周囲へと撒き散らす。 『やった!』 誰かが、念話で叫んだ。 ヘリは制御を失い、更に大きく速度を落として車両から離れ始めている。 あの様子からして、数秒後にでも墜落するだろう。 リンディも、そう信じて疑わなかった。 数瞬後、機体切断面より現れたそれを見るまでは。 「な・・・」 反応する間も無かった。 切断面から出現した、巨大な1本の触手。 有機的柔軟さと骨格の強固さを併せ持った赤黒い外観のそれは、車両とヘリの間に存在する40m程の距離を一瞬にして詰め、先端が4つに分かれると其々が天井部を失った車両へと突き立ったのだ。 異様な光景と衝撃に目を見開くリンディ達の眼前で、床面を抉ったそれは徐々に有機的な組織を構造物へと侵食させ始める。 鋭い、悲鳴の様な声が上がった。 「前へ! 逃げて!」 それがフェイトの声だと理解した時には、既にリンディはアルフと共に駆け出している。 周囲に展開していた局員やスカリエッティ達も、前部車両との連結部を目指し走っていた。 そして全員が4両目へと移ると共に、ベルカ式の武装局員が自身の槍型デバイスに魔力を纏わせ、連結部を切り裂く。 「これで・・・」 彼が言わんとした言葉を、最後まで聞く事はできなかった。 振動と共に5両目が離れ行く様を見つめる中、破壊された連結部から離れようとしたその武装局員は、天井部を貫いて侵入してきた触手により頭頂部から2つに分たれたのだ。 その惨状に凄まじい悲鳴が上がり、頭上では天井面へと血管状の組織が奔り始める。 だがユーノ達が、その状況を黙って見ている筈がない。 忽ちの内に障壁とバインド、各種結界と炎、無数の猟犬が侵食された天井部を吹き飛ばし、襲い来る異形の姿を露わにする。 「さっきのヘリ・・・あれが!?」 「節操の無い化け物だね、バイドってのは!」 メインローターは未だ回転していた。 機体上部もほぼ原形を保っている。 だが、それは最早ヘリではなかった。 機体下部からは6本もの触手が伸び、内4本が切り離された5両目に、残る2本がこの4両目へと打ち込まれている。 それらを用いて機体を固定する事によって、バイド化したJF704式はトルクに抗っていた。 素人目に見ただけでも触手の総質量は、明らかに機体のそれを超えていると解る。 しかし増殖は未だ止まらず、無数に枝分かれした極小の触手群が、最寄りの局員達へと一斉に襲い掛かった。 「うあ・・・げ、ひ!」 「ぎ、い・・・ぎッ・・・!」 「嫌、嫌・・・! ぎ、う・・・ぅ・・・ッ」 『退がれ、退がるんだ! 巻き込まれる!』 悲鳴に告ぐ悲鳴。 それらが絶叫へと変化する前に、触手の群れは哀れな犠牲者達を津波の如く呑み込んでいた。 縫い針ほどにまで細分化した数千、数万もの触手が銃弾さながらの速度で伸長し、それらの先端が局員の身体を貫いてゆく。 人体を貫通したそれらは更に伸長、先端が床面に達し構造物と同化すると同時に増殖を停止。 植物の根、或いは神経ネットワークの如く張り巡らされた触手の枝の中、全身を貫かれた局員達の影が網状となった赤黒い触手の中に蠢く様は、他の生存者達の正気を乱すには十分に過ぎた。 そして無数の悲鳴が上がる中、更なる狂気じみた事実が発覚する。 『バイタルが・・・バイタルが残ってる!』 『何の事だ!?』 『デバイスのバイタルサインが残っているんだ! 生きてる! 彼等はまだ生きてるぞ!』 『何を馬鹿な・・・!』 『見て!』 局員の1人が、触手の一部を指した。 反射的にその先へと視線を滑らせたリンディの視界に、褐色の制服が映り込む。 数十本もの極小の触手に貫かれた、局員の腕。 僅かずつ滲み出す血液に、褐色の制服が徐々に紅く染まりゆく。 その末端、同じく微細な触手に縫い止められた五本の指が、確かに動いた。 当然の帰結として、その腕の付け根へと視線を移動した結果。 「ッ・・・!?」 「見ちゃ駄目だ、フェイト!」 アルフの叫び。 もう少しそれが発せられる瞬間が遅ければ、叫んでいたのはリンディ自身だったろう。 尤もそれが、果たしてフェイトへの注意であったかは怪しいが。 「何て・・・事・・・」 信じられなかった。 否、信じたくなかった。 こんな事実を認識したところで、何ができるというのだ。 彼等は、まだ「生きて」いた。 全身を隈なく、それこそ四肢の先端から胴体、顔面から頭頂部に至るまでを数百もの極小の触手によって貫かれながらも、確かに「生きて」いたのだ。 それら触手の貫通する箇所から少しずつ血液を滲ませながら、眼球から鼻腔内までを貫かれながら、そして恐らくは心肺から脳髄までをも侵されながら。 彼等は「死ぬ」事もできずに「生かされて」いた。 くぐもった悲鳴混じりの呼吸音を漏らし、自らの身体を襲う異常な感覚に恐怖の涙を零し、触手によって貫かれた傷という傷からあらゆる体液を溢れさせながら。 「あ・・・ぁが・・・ぁ・・・げ・・・」 「ひ・・・!?」 そして、最も近い位置に囚われていた1人、その奇跡的に触手の刺突を受けなかった右眼球が動き、リンディ達を瞳の中心へと捉えた。 瞬間、リンディと腕の中のフェイト、傍らのアルフの身体が小さく跳ねる。 小刻みに揺れ動く瞳とか細い呼吸音、動かそうと必死に試みては傷を拡げ血液を噴き出す五本の指。 その局員が何を求めているのか、想像する事は容易だった。 彼は助けではなく、救済を求めているのだ。 「死」という名の救済を。 「あ・・・ああああぁぁぁッ!?」 「フェイト!?」 「フェイト、見ないで! 落ち着いて、目を閉じて・・・!」 『何をやっているんです! 逃げて下さい、統括官!』 『畜生、畜生! どうしろっていうんだ、どう助けろっていうんだ、畜生!』 『また伸び始めた・・・増殖が始まったぞ! 退がれ!』 肉体的に問題はなく、魔力の供給も問題なく行われている。 にも拘らず、リンディは限界が近い事を認識していた。 再度ディストーション・フィールドを展開し、触手に取り込まれた犠牲者達と生存者達の間を遮断しながらも、彼女の内心はこれまでにない焦燥と諦観とに染まりゆく。 炎が触手を焼き、猟犬がヘリ本体を貫通し、結界が触手の殆どを切り裂く様を視認してなお、その認識は揺らぐ事がなかった。 果たして、何時まで保つだろうか。 自身の、フェイトの、アルフの、延いてはこの場に存在する全員の精神は。 ただでさえ、実戦の場は精神を消耗する。 それに加えて家族の安否不明、地球軍による殺戮、そしてバイドによるこの惨劇だ。 精神に異常を生じる者が現れたとしても不思議は無い。 寧ろこの状況で取り乱す者は居るものの、未だに深刻な精神障害を生じる者は居ない事が奇跡的なのだ。 先程の光景は、人の心を破壊するには十分に過ぎる。 「死ぬ」事ができるならば、個人差はあれど納得はできるだろう。 如何なる要因かの差異はあれど、生ある者はいずれ「死ぬ」のだから。 だが、死すべき時に「死ねない」、死が救済となる場面に於いて「死ぬ事を許されない」という可能性を、現実の光景として見せ付けられたなら? 彼等は、あの触手の犠牲者達は、明らかに致命傷を負っていた。 全身を数百もの触手に貫かれ、口腔内へと侵入したそれらによって舌から食道、気道の奥までをも貫通されて。 にも拘らず、彼等は「生きて」いた。 死ぬ事も許されず、生ある事が苦痛以外の何ものでもない状況へと陥れられた状況で、自らを破滅へと誘った存在によって「生かされて」いたのだ。 安楽たる死へと至る事もできず、自身を貫く苦痛の源、醜悪な生命体によって生き続ける事を強要されるという恐怖。 それを齎す脅威が眼前に存在しているというのに、正気を保ち続ける事ができるものだろうか。 『その車両から出ろ! 焼き払うぞ!』 シグナムからの通信。 上空では無数の猟犬が宙を翔け回り、展開したオートスフィア群を片端から喰らい尽くしている。 周囲の市街にはユーノが展開したらしき巨大なラウンドシールド、サークルプロテクション、スフィアプロテクションが乱立し、バイド・地球軍双方の攻撃から局員と民間人を守護していた。 それらを視界の端へと捉えながら、リンディは再度アルフと共に、フェイトを支えつつ3両目を目指して走る。 その必死の逃走を遮ったのは、ユーノからの警告。 『第1階層隔壁面F、完全崩壊! R戦闘機、居住区侵入!』 リニア進行方向、右前方に立ち昇る赤々とした焔。 第1階層・自然区とこの第2階層・居住区を隔てる階層構造に穿たれた巨大な穴。 溶鉱炉と化した第1階層、魔女の大釜へと繋がるその只中から、1つの影が浮かび上がる。 濃緑色の機体、緋色のキャノピー。 主翼に相当する機構は存在せず、見るからに重装甲のエンジンユニットらしき構造が左右に突き出している。 機体後部には尾翼の間に姿勢制御用らしき左右一対のユニットが迫り出し、其々の後方からは更に噴射炎の青白い光が僅かに零れていた。 そして何より、機体下部に据えられた箱型のユニット。 射出口らしき無数の穴が並んだ平面を機体前方へと向けるそれは、明らかに大規模破壊を目的とした特殊重兵装であった。 「来やがった・・・!」 アルフの呟きは、この中央区に存在する管理局側の人間、その全ての心を代弁しているだろう。 中央区はバイドによる汚染が進行し、更に展開する地球軍は局員の抵抗により少なからぬ被害を受けているのだ。 この状況下で、中央区へと侵入したR戦闘機が取る行動とは何か。 『R戦闘機、波動砲充填開始!』 リンディの予想は的中した。 地球軍はバイド諸共、本局の人間を殲滅するつもりなのだ。 それを理解した瞬間、彼女は叫ぶ。 「緊急停車ッ!」 複数の人物が、その叫びに応えた。 リンディ、アルフ、ユーノの障壁が其々に角度を変えて空中へと展開され、それらは一瞬にして触手群を切り裂き車両とヘリを物理的に切り離す。 ほぼ同時にウーノが非常用の摩擦・空気抵抗複合式緊急停止機構を作動させ、更に武装局員が自身のアームドデバイスを床面へと突き刺し、車両の前進運動に急制動を掛けると、ヘリは先程と同様に車両直上へと躍り出でた。 更にトルクによる回転運動を開始し、制御を失ったまま車両を追い抜く。 リンディは周囲の者と同じく、急制動によって身体を3両目と4両目を隔てる壁面へと打ち付けつつ、その様を見届けた。 直後、R戦闘機が滞空していた周辺で光が爆発。 そしてほぼ同時に、車両を追い越したJF704式の姿が、幻影の様に掻き消える。 轟音、衝撃。 「ッ・・・!?」 アルフが、フェイトが何かを叫んでいる。 だが、聴こえない。 聴覚が麻痺する程の轟音と、床面へと倒れ込んだ身体を容赦なく襲う衝撃を前に、互いの声を聴き止める程の余裕などありはしなかった。 念話も同様で、とても言語の認識などしている暇は無い。 そんな状態が数秒ほど続いた後、全ての圧力が消失した事を確認し、漸くリンディは身体を起こした。 周囲の局員達も、既に立ち上がっている者が殆どだ。 車両は完全に停止し、纏わり付く外気は今更ながら異様に高温となった大気を認識させる。 燃えゆく市街を呆然と見詰めていると、ウーノからの報告が飛び込んできた。 『緊急停止機構がロックされました。解除は不可能・・・前方の路線に重大な異常が発生した様です』 『異常?』 ウーノの報告を受け、1人の局員が吹き飛んだ壁面の残骸を飛び越え、前方の様子を窺う。 その間、リンディは何とか自力で立ち上がったフェイトの身を気遣い、更にユーノとの通信を行おうと新たにウィンドウを展開していた。 そんな彼女の意識に飛び込んできたのは、理解できないと云わんばかりの局員の声。 『路線が・・・路線が無くなってる』 前方の車両から、幾つもの悲鳴が上がる。 それは恐怖の、というよりも悲嘆を色濃く含むものだった。 リンディはアルフへと視線をやり、フェイトは任せろとの意思を示す。 アルフは頷きをひとつ返すと、他の局員と共に車両外へと飛び出した。 「義母さん・・・?」 「大丈夫。大丈夫よ、フェイト・・・」 不安げに声を零すフェイトを、リンディは優しく抱き締める。 被曝と化学物質汚染により疲弊した身体が、彼女を常ならぬ不安の最中へと落とし込んでいるのだろう。 何時になく弱気な義娘を気遣い、髪を撫ぜてやるリンディ。 その傍ら、唐突にウィンドウが開き、切迫したアルフの声が木霊した。 『リンディ、聴こえるかい!?』 「聴こえるわ、アルフ。路線はどうなの?」 『それどころじゃないよ!』 続くアルフの言葉、そして映し出された光景に、リンディの意識が凍り付く。 同時に、彼女の腕の中のフェイトまでもが全身を強張らせたが、それに気付く事は終ぞなかった。 リンディの意識を釘付けにしているのは、ウィンドウ越しに映る悪夢の光景。 『街が・・・街が薙ぎ払われてる! あのヘリが居た周辺、全部だ! 路線もビルも、みんなバラバラになっちまった!』 波動砲充填音。 反射的に視線を投じた先に、あのR戦闘機が浮かんでいた。 居住区の空を悠々と漂いながら、青い波動粒子の光を貪欲に機体下部へと取り込んでいる。 周囲のオートスフィアは既に殲滅されているらしく、機体へと襲い掛かるのは地表部からの直射弾と砲撃、そして無限とも思える程に枝分かれしては壁となって襲い掛かるバイドの触手ばかり。 どうやらバイドはあのJF704式のみならず、既にこの階層全域に侵食しているらしい。 だがR戦闘機は見事な機動でそれら全てを回避すると突然、機種を反転させて地表へと向き直る。 そして先程と同じく、光が爆発した。 「うあッ!?」 思わず、悲鳴が零れる。 その強烈な閃光は、従来の青い波動粒子の光ではなかった。 黄金色の閃光が奔り、その光は巨大な奔流となって市街を襲ったのだ。 市街もろとも、バイドと局員の全てを呑み込む金色の奔流。 だがそれは、単一の砲撃などではない。 リンディは見た。 市街を襲う光の奔流の正体、無数の小さな光弾を。 あの波動砲は強力な単発の砲撃ではなく、高密度凝縮された何らかのエネルギー弾を極高速連射するタイプだ。 機体下部のユニットより薙ぐ様にして発射されたそれらは、ホースから放たれる水飛沫の如く市街へと押し寄せ、弾体軌道上の全てをコルク材の如く貫き崩壊させたのだ。 時間にすれば2秒にも満たない時間だが、その間に放たれる弾体数は万を優に超えているだろう。 でなければ、たった2度の掃射で1区画を完全に崩壊させる事など、できる筈がない。 掃射を受けたビル群はいずれも一瞬にして無数の穴を穿たれ、あるものは自重に耐え切れず崩壊し、またあるものは異常な密度の弾幕によって徹底的に細分化されて四散した。 リニアレールの路線も、あのバイド化したJF704式を砲撃した際に巻き込まれ、跡形も残さずに削り取られたのだろう。 ヘリが掻き消えた様に見えたのは、錯覚などではない。 あの弾幕に呑み込まれ、形ある物を何ひとつ残す事もなく、完全な塵と化したのだ。 否、弾体形成に波動粒子が用いられているであろう事を考えれば、塵すらも残ってはいない可能性すらある。 そして地球軍はそんなものを、無数の局員とその家族が存在する居住区へと、些かも躊躇う事なく撃ち込んだのだ。 当該区画に存在していた局員及び民間人、彼等の生存は絶望的だろう。 「何て・・・事を・・・!」 『どうやら彼等は、この本局内で滅菌作戦を行う腹積もりの様だ。汚染の事実があるのなら、局員の殲滅にも正当性が生じる』 思わず呟いた言葉に返す声。 スカリエッティだ。 彼が返した言葉の内容に、フェイトが感情も露わに反論する。 「これが・・・この蛮行が正当ですって!?」 『ある意味ではそう捉える事もできるというだけだ。何も私自身がそう思っている訳ではない』 「だからって・・・!」 『其処までだ! 8区上空、2機目の侵入を確認!』 冷静に言葉を紡ぐスカリエッティ、感情的な反応を返すフェイト。 今にも論戦を始めそうな2人の間に割り込んだのは、緊迫したユーノの声だった。 彼の言葉に従い、8区上空の空間を見やる。 其処に2機目のR戦闘機、その姿があった。 群青の機体、漆黒のキャノピー。 これまでに確認されたR戦闘機の外観としては、オーソドックスな部類に該当するだろう。 だがリンディは、その機体の細部に見覚えがあった。 それはフェイトも、多くの武装局員も同様だろう。 「R-9Leo」。 捕虜となったR戦闘機パイロット達より齎された情報に基づき判明した、R戦闘機の1機種。 嘗ての地球軍による襲撃の際に、本局内部へと侵入した3機のR戦闘機、内1機。 Sランク1名を含む67名の魔導師、彼等を塵も残さず消し去った、忌まわしき機体。 波動砲の出力を犠牲に、フォースを介して放たれる光学兵器全般を極限まで強化した、殲滅戦特化機体。 リンディ等の視線の先に浮かぶ機体は、証言に基いて描かれたスケッチに瓜二つだった。 恐らくは、R-9Leoの上位互換機であろう機体。 それに付属するフォースは、6本のコントロールロッドを備える異様な外観だった。 機体左右に展開したビットシステムもまた、バイド体の半面を装甲と何らかの機能を伴う機器に覆われ、更に砲口までもが設けられている。 数瞬後、そのフォースの先端とビットシステムの砲口に、微かな青い光が宿った瞬間。 反応する暇すら無く、視界を強烈な光が覆い尽くした。 眼窩の奥に鋭い痛みを覚え、目を覆って床に伏せた事は認識している。 衝撃が全身を襲った事も、轟音によって再び聴覚が麻痺した事も理解していたが、続く生産的な行動を実行できない。 視覚を焼いた光が薄れ、痛みが薄らぐ瞬間を待つ事、それだけが自らの意思で選択し得る行動だった。 「な・・・あ・・・!」 『リンディさん! リンディさん、応答して下さい! リンディさん!?』 ユーノの声。 光が薄れ、痛みが消えた。 治癒効果を備えるラウンドガーダー・エクステンド、それが自身を含め全ての局員を覆っている事に気付いたリンディは、それまでの疲労が嘘の様に身体を起こした。 飛び交う念話を正常に拾い始めた頃、リンディは自身の身体が健在である事を確認し、市街へと視線を投じる。 だが、彼女の視界に映る光景は、既に一変していた。 街が無い。 ビルも、第1階層から噴き上がっていた炎すらも、全てが掻き消えている。 群青のR戦闘機が青い光を纏った事は覚えているが、その後に何が起こったのか、まるで理解できない。 何もかもが嘘の様に、抉れた階層構造物だけを残して消えている。 一部始終を観測していたであろうユーノへと詳細を尋ねようとするも、それより早く複数の声が悲鳴の如き叫びを返した。 『高架橋を降りて! 階層構造内に逃げるんです、早く!』 『6区、掃射型波動砲により壊滅! 敵機、再度充填を開始!』 『こちらで時間を稼ぐ! 猟犬の後を追え!』 ユーノ、クアットロ、シグナムの叫び。 視線の遥か先で、群上の機体が機首をこちらへと向けた。 だが、シグナムの炎が襲い掛かった事により、進路を変更すると異なる方向へと飛び去る。 彼方で炸裂する、青い光。 虹色の燐光が奔り、遅れて轟音が届く。 『くそ、迎撃された!』 苦々しく呻くシグナム。 だが、それに答える暇は無い。 彼方に点る、赤い光。 そして、赤い光条が大気を打ち抜いて飛来した。 周囲には眩い燐光を纏い、漂う粉塵をすら触れる片端から消滅させてゆく。 隣接区のバイド触手群を狙ったそれは車両上部を掠め、照射箇所の構造物を瞬時に溶解・気化させた。 熔鉄が降り注ぎ、気化した金属が路線上の生存者達を身体の内外から焼き尽くす。 絶叫が上がる中、リンディは障壁を展開しつつ、車両外より戻ったアルフと共にフェイトを支えて走り出した。 一分、一秒でも早く高架橋を降りなければ、あの常軌を逸した攻撃に巻き込まれて消滅する事となるだろう。 「リンディ、あれ!」 車両外へ出ると同時に、アルフが後方を指した。 R戦闘機が、こちらへと戻ってくる。 そのフォース先端には青く輝く波動粒子が集束しており、明らかに波動砲発射態勢へ移行していると判る。 そして砲撃が放たれるが、それはリンディ等の頭上を突き抜け、彼方に展開するバイド群の中央へと着弾した。 ビルが2つ、弾体の炸裂に巻き込まれて崩壊する。 これまでに確認された機体の砲撃と比して、明らかに低出力だ。 ならば構造物を盾に、何とか逃げ切れるかもしれない。 そう、考えた時だ。 『高速飛翔体、接近!』 警告と共に、燐光を纏って飛来した2つの光球が、先頭車両を粉砕した。 衝撃に煽られ、リンディはフェイトとアルフ共々に吹き飛ばされる。 その視界の端を、光球が掠めて消えた。 局員の誰かが、掠れた声で叫んでいる。 『ビットだ! ビットが襲ってくる!』 立ち上がる暇は無かった。 空間が赤く光り、振動と浮遊感がリンディを襲う。 背中に触れる高架橋のコンクリートに罅が入り、次の瞬間には崩れ始めた。 そして重力に引かれるまま、リンディの身体は落下を始める。 無数の瓦礫の中、上下逆転した視界の内へと映り込むは、接近してくるフォースと2つのビット。 腕の中のフェイトを強く抱き締め、瓦礫と敵機の攻撃を防ぐ為に有りっ丈の出力で障壁を張る。 だが無情にも、瓦礫の1つが彼女の腕を直撃した。 悲鳴を上げる間もなく、フェイトの身体が腕の中から逃れ、奈落へと落下してゆく。 「フェイト!」 「義母さんっ!」 母親としての悲痛な声、義娘としての叫び。 アルフ、そして彼女に抱えられたフェイトが必死に手を伸ばす。 それに応え、リンディもまた手を伸ばそうとして。 背後での青い光の炸裂と同時、全てが漆黒に塗り潰された。
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第一部 第九話『なのはと諜報部の一日』④ 「………」 ゲストの一人であるレクス・レオンハルト二等空尉は緊張で顔が強張っていた。 「大丈夫ですか?」 顔を強張らせているレクスを心配そうに見るなのは。 「だ……大丈夫です…」 レクスは顔を寄せるなのはに動揺し、頬を赤らめる。 確かにゲストとしてラジオに参加する事に緊張しているが、この場の状況が更にレクスを緊張させていた。 紙で指を切って出血してしまったクロエの人差し指をくわえた涼香。 今、自身に顔を寄せているなのは。 女性が苦手なレクスには効果的過ぎる状況であった。 会話をして気を紛らわそうにも涼香は、はがきの整理をしている。 本当は男性であるという噂の幽霧は何故か寝ている。 寝顔がかなり女の子っぽいので、噂も疑わしいが。 幽霧の寝顔を見ていると更に顔が熱くなってきたので、レクスはガラスの向こうの収録スタジオを見る。 ガラスの向こうでは、キーパーの方がカンペを出していた。 カンペには、「開始まで後、五分」と書かれている。 周辺の空気が更に緊張し始めた事をレクスは感じた。 「ん……」 ちょうど良く幽霧は瞼をあける。 幽霧が起きた事を確認すると、涼香は楽しそうに言った。 「後、五分で開始です。頑張って下さいね」 その言葉に、レクスは気が重くなった。 キーパーはガラスの向こうにいる涼香たちに手で合図を送る。 一秒ごとに指を折っていく。 「5」 「4」 「3」 「2」 「1」 ゼロの代わりにキーパーは放送ボタンを押した。 「今週も始まりました!ミッドチルダナイトステーション。」 「略して!」 「「みどすて!!」」 ハイテンションな司会の涼香三等空尉と司会補佐の蔵那クロエによってラジオ番組『ミッドチルダナイトステーション』略して『みどすて』が開始される。 ゲストである幽霧たちはハイテンションな二人に気圧されて更に緊張していた。 「今回はゲストが三人です!」 「どうぞ!!」 涼香とクロエが三人にウィンクで合図する。 幽霧は冷静に自己紹介をする。 「時空管理局諜報部所属の幽霧霞です」 「じ…時空管理局第21特殊編隊「ナイツ」のレクス・レオンハルト二等空尉でず……」 レクスは緊張と女性恐怖症で舌を噛んでいた。 「そして、緊急ゲスト!時空管理局のエース・オブ・エース」 「高町なのは一等空尉!!」 涼香とクロエの紹介に顔を赤らめながらなのはも自己紹介をする。 「戦技教導隊所属の高町なのはです」 その顔は恥ずかしさで少し顔が赤くなった。 「先週はヴィアッリ執務官と鉈部隊長代行でしたが……今週は、幽霧霞三等陸士。レクス・レオンハルト二等空尉。高町なのは一等空尉の三名をゲストにお迎えして90分お送りいたします」 「では、まずゲストの三人に一つ目の質問です!趣味はなんですか?」 クロエは三人に問い掛ける。 その質問には幽霧があっさりと答えた。 「チェスの駒を彫る事です」 「はい!?」 「チェスの駒彫り!?」 幽霧の言葉に驚く涼香とクロエ。 まさか、職人のような趣味を持っているとは思いもしなかったからだ。 「デバイスを磨く事」 レクスはぽつりと言う。 「意外と普通ですね」 涼香は意外そうな顔をする。 「お菓子を作ること……ですね」 「えっ!なのはさんはお菓子作れるのですか!?」 なのはの言葉にクロエが驚く。 他の人も少なからず驚いていた。 「まあ…実家が喫茶店なので」 苦笑しながら答えるなのは。 「ということで!幽霧三等陸士がチェスの駒彫。レクス二等空尉がデバイスを磨く事。高町一等空尉はお菓子作りですか……」 「レクスさんとなのはさんの趣味は意外と普通でしたが……」 涼香とクロエは幽霧を見る。 そして、感嘆するように言う。 「まさか、幽霧三等陸士にそんな職人芸の趣味があるとは思いませんでした……」 涼香の意見に幽霧を除く全員が同意する。 そこでクロエが四人が驚く理由が分かっていない幽霧に言った。 「出来れば作ったチェスの駒を見せて頂けないでしょうか?」 「分かりました」 クロエに頷き、幽霧は隊服のポケットを漁り始める。 チェスの駒を持ち歩いている事に涼香たちは驚く。 駒を見つけたらしく、幽霧はチェスの駒を机に置いた。 涼香たちは更に感嘆する。 置かれたチェスの駒はまるで、小さい木製のリインフォースがいるようであったからだ。 「ルークの駒です。駒のデザインは最近、三等空尉に昇格したリインフォースⅡさんを元にしています」 それにしては似過ぎだろうと全員が思った。 涼香たちは驚愕の事実に驚く。 局員の間では没個性で有名だったのに、まさか職人的な趣味を隠し持っているとは思わなかった。 唖然としている涼香たちの中でなのはは納得したかのように呟く。 「アルフィトルテちゃんを創ったのは幽霧くんだと知っていたけど…こんな事も出来たんだね……」 その言葉に涼香・クロエ・レクスの三人どころか、収録スタジオの向こうで放送している局員たちも驚く。 放送の担当責任者は驚きで吸っていた煙草を口からポロリと落とした。 「なのはさん…今……なんて言いましたか?」 次にする質問の事などすっかり忘れ、涼香はなのはに尋ねる。 かなり驚いた顔で質問してきた涼香になのはは答えた。 「アルフィトルテちゃんを創ったのは幽霧くんだと知っていたけど…こんな事も出来たんだねって……」 首からギチギチという変な音を奏でながら涼香は幽霧を見る。 「…………ホントウデスカ?」 「…………はい……」 幽霧の頷きに涼香は口元を引きつらせた。 最近、幽霧の後をついて回る少女がいるという話は広報部でも有名であった。 涼香はクロエから幽霧の後をついて回る少女はアルフィトルテと言う名で、幽霧のデバイスだという事を聞いたのは最近の事である。 まさか、アルフィトルテを創ったのが幽霧だとは涼香も思わなかった。 それはクロエもレクスも同様らしく、唖然としている。 「でも、ヒューマノイド形態は開発部の鏡月主任ですよ」 デバイスの核を内蔵する少女の人形を作ったのが雫という幽霧の言葉に四人は納得する。 しかし、そこで四人は気付いた事があった。 「ヒューマノイド形態を創ったのは、雫・鏡月開発部主任ですよね?」 「ええ」 クロエの問いに幽霧は素直に頷く。 幽霧の頷きに四人どころか、放送担当の局員たちも体から汗が噴出し始めた。 「もしかして……他の所は………」 「はい。デバイスのデザインから内蔵している核に搭載された魔法まで自分でしました。しかしメンテナンスを時々、忘れます」 苦笑しながら幽霧は答えるが、他の面々はまたもや幽霧の有り得なさを感じた。 「次の質問は………」 涼香は次の質問に移ろうとしたとき、誰かが小さくガラスを叩いた。 視線を移す涼香。キーパーがカンペをホワイトボードに出していた。 キーパーからの指示は、「時間が無いからそろそろ、個人的な質問に移れ」。 指示に従い、涼香は送られてきたはがきを読む。 「PN「書類担当のミーナ」さんからです。 時空管理局第21特殊編隊「ナイツ」のレクス・レオンハルト二等空尉は付き合っている女性がいないって本当ですか?」 はがきの内容にはさっきまで黙っていたレクスが噴いた。 「そこの所はどうなのですか?レクス・レオンハルト二等空尉」 涼香はてがみの内容にニヤリと笑いながら涼香はレクスに尋ねる 。 「もしかして………レクスさんって…衆道の方ですか?」 「違います」 かなり見当違いなクロエの予測にレクスは頬を紅くしながら反論する。 レクスは恥ずかしさで頬を紅くしながらはがきの質問に答えた。 「俺は女性と付き合うのが苦手なんですよ………緊張するというか……なんというか………」 溜め息をつくレクスにクロエは微かに悪戯っぽい笑みを浮かべた。 クロエの悪戯っぽい笑顔に涼香は嫌な気がしたが微笑みながら見守る。 悪戯っぽい笑みを浮かべながらクロエは尋ねる。 「女性が苦手なら………ココの状態もやっぱり緊張する?」 「はい……」 顔を寄せてきたクロエに顔を赤らめながらレクスは頷く。 収録スタジオにいるのは、レクスを除けば女性が二人で男性が二人。 ただし、レクスから見ると幽霧が明らかに女の子にしか見えない。 左右はなのはと幽霧に挟まれ、前はクロエが顔を近付けられているレクス。 レクスとしては左右と前を女性に挟まれているような心境らしく顔を真っ赤にし始めた。 涼香は、微笑みながらはがきを読み始める。 「では、次はPN「カイゼル髭」さんのお便りですが……その前に前々会の『みどすて』で寄せられたお便りの返しです。 諜報部の調査によると、次元航行部隊のレン・ジオレンス陸曹長には………恋人が五人位はいるそうです」 「「ぶふぅ!!」」 涼香の報告に全員が噴いた。 まさか、前々回寄せられた「次元航行部隊所属のレン・ジオレンス陸曹長には恋人が何人いるのですか?」という質問の答えが今回で出されるとは誰も思っていなかった。 「では、遅れました。PN「カイゼル髭」さんの質問に移りたいと思います」 涼香が質問を読み上げ始める。 放送スタジオで放送を担当する局員は、遠くから誰かの叫び声を聞いた気がした。 「諜報部所属の幽霧霞三等陸士の性別はどちらなんだろうか?幽霧霞三等陸士自身は男性だといっているが、自分には女性にしか見えない……」 「だそうですが?」 クロエはまたもや悪戯っぽい、笑顔を浮かべる。 「カイゼル髭」と名乗った人の質問には放送担当の局員もリスナーも気になった。 幽霧は本当に男性なのだろうかという事に。 「この質問にはどうお答えしますか?」 クロエは悪戯っぽく幽霧に尋ねた。 「どっちだとおもいますか?」 顔を寄せるクロエに妖艶の笑顔で返す幽霧。 「ーーーーーーーっ!!」 妖艶な笑顔を浮かべる幽霧にクロエは顔を真っ赤にする。 いきなり顔を真っ赤にするクロエに幽霧は首を傾げた。 「大丈夫ですか?」 幽霧はクロエに顔を近づける。 妖艶な幽霧の顔を見た後に顔を近付けられると流石に心拍数なども上がるらしく、クロエの顔は湯気が出るほど真っ赤になる。 涼香は顔を赤らめるクロエに一種の新鮮さを感じながら、ニコニコと笑っていた。 「本当に大丈夫なんですか?クロエさん………」 更に顔を近づける幽霧。 クロエは顔を赤らめ、幽霧から視線を逸らしながら恥ずかしそうに言う。 「だ……だいじょうぶ…です……お姉さま……」 「………はい?」 クロエの言葉の意味が上手くつかめず、幽霧は首を傾げる。 「ぶっ!」 顔を赤らめながら言ったクロエのセリフで放送担当の局員たちは噴いた。 徐々に放送担当の局員たちの肩が震え始める。 「ぷっ……はははははっはははっははは!!!」 一人の笑い声が伝播して、全員が爆笑し始める。 放送スタジオが騒がしくなり始めた。 キーパーは笑いを堪えながら、ホワイトボートに指示を書いて出す。 涼香はキーパーの指示を見て、納得して頷く。。 指示は、「終了時間も近い。これ以上続けたら収拾がつかなくなる。だから、上手くまとめて切れ。」 顔を赤らめ、悶死しかけているクロエの代わりに涼香が幽霧に質問する。 「結局、幽霧霞三等陸士の性別はどちらなのですか?」 クロエの言った意味が分かった幽霧はかなりへこんでいた。 「………男です」 「幽霧霞三等陸士が男性と分かった事で、今夜の「みどすて」を終わります。 今夜は幽霧霞三等陸士。レクス・レオンハルト二等空尉。高町なのは一等空尉の三名をゲストにお迎えしてお送りしました」 涼香の声はとても冷静であった。 キーパーはタイミング良く放送ボタンを切った。 「お疲れ様でした。皆さん」 放送スタジオから聞こえる爆笑を聞きながら、涼香は収録スタジオにいる四人に言った。 「お疲れ様でした……」 衆道と勘違いされたレクスは必至に恥ずかしさと笑いを堪えている。 「お疲れ様…でした……」 最後の最後でクロエに『お姉さま』と呼ばれた幽霧は人生の終わりのような顔しながら席を立つ。 「お疲れ様でした~」 緊急ゲストだった為、話題の矛先を向けられなかったなのはは笑顔で答える。 「お…つかれ…さま……です…嗚呼……恥ずかしい…」 幽霧に『お姉さま』発言をしてしまったクロエは悶死しそうな顔であった。 挨拶を終え、収録スタジオの面々は解散する。 「幽霧くん」 「なんでしょうか……」 人生の終わりのような顔をしながらなのはを見る幽霧。 「ごはん…食べにいこっか」 幽霧に笑顔で言うなのは。 「………はい」 軽く溜め息をつきながら、幽霧は了承した。 居酒屋「苺壱枝」で雪奈はグラスを磨きながら空を見上げていた。 空には漆黒の帳が下ろされ、幾多の星が宝石の様に瞬いている。 息を吐く雪奈。雪奈の口から白い息が吐き出される。 「本格的な冬も近づいてきたね」 「そうですね。雪奈さま」 雫はヒツジのシチューをかき混ぜながら言う。 鍋の中からは美味しそうな匂いが漂う。 二人は夜の寒さから本格的な冬の訪れを感じた。 「こんばんは」 声と同時に青年が居酒屋「苺壱枝」の暖簾をくぐる。 「こんばんは。レキさん」 入ってきたのは、「Debil Tear」店主のレキであった。 椅子に座るレキに雪奈が尋ねる。 「レキさん。お店はいいの?」 雪奈に渡されたお冷やを飲みながらレキは答える。 「今夜はお休みです。心配しなくてもちゃんと事前に今夜は休む事は言ってありますから」 その言葉に雪奈は安堵する。 二人の会話を眺めていた雫はシェイカーの中身をグラスにあけ、レキに差し出す。 「どうぞ。「龍王の吐息」です」 「…………手際が良いですね……」 驚きながらレキは「龍王の吐息」を口に含む。 一種の暴力に似た辛さが口の中に広がり、焼け付くような痛みと共に液体が喉を滑る。 「やっぱり、雫さんの作る「龍王の吐息」は美味しいですね………」 感嘆の声を出すレキに雫は微笑みながら答えた。 「主である雪奈さまを影から尽くす事と同じ様に、主のご友人に尽くす事は私にとって重要なことですから」 「こんばんは~」 暖簾をくぐって、なのはが入ってきた。 それに続いて、幽霧も入る。 「こんばんは。お二方」 雪奈はニヤリと笑いながら二人に言う。 屋台のカウンターでは、雫の作るカクテルを飲むレキとシェイカーを振る雫がいた。 なのははレキの姿を見て驚く。 「レキくん。久しぶり~」 声をかけるなのはにレキは顔を向ける。そして、のんびりと挨拶を返す。 「こんばんは。なのはさん」 「お店は?」 「休みです」 なのはの問いにレキは即答する。 「お二方。注文は?」 「ヒツジドリアと………『カルマ』をグラスに一杯」 酒に弱い癖に赤ワインも注文するなのは。 雪奈はなのはが酒に弱い事を知っていたが、流石に今のなのはは客であるので止めはしなかった。 『カルマ』のボトルを開け、空気と混ぜるようにゆっくりとグラスに注ぎ込む。 まだ少し腐敗臭のする赤い液体がグラスに注がれた。 更に雪奈は軽く『カルマ』の入ったグラスを振り、空気と馴染ませる。 空気と触れることで腐敗臭が薄れて、葡萄の良い香りに変わった。 「去年に出荷された『カルマ』で御座います。 香りを楽しみながらゆっくりお飲み下さい」 なのはは雪奈に差し出された去年の『カルマ』をまず一口、口に含む。 味わい深い葡萄酒の味が口一杯に広がる。 「幽霧は何にする?」 「鴨雑炊で」 「アルフィトルテも~」 雪奈は鴨肉と出汁を取ったスープを鍋に入れ、煮込み始めた。 出汁の良い香りが屋台に広がっていく。 鴨肉をスープで煮込みながらなのはに尋ねる。 「なのはさん」 「………なんでなんでしょうか?雪奈さん」 『カルマ』のアルコールが回っているからか、なのはの頬は赤い。 雪奈は雑炊に焦げ目が付かないように鍋をかき混ぜながら静かに尋ねた。 「何か悩み事でもありましたか?」 「ーーーっ!」 なのはの身体が凍り付く。 雪奈に自身の中で今もなお、くすぶっている悩みを見抜かれたかと思ったからだ。 次第に自身の心臓の音が聞こえてきた。 その時、頭に激痛が走った。 昨日、弾を喰らった時の痛みがぶり返したようだ。 頭の怪我を心配しているだけだと自身に言い聞かす。 そう考えると次第に硬直が薄れ、なのはが口を開く。 「………気のせいですよ」 「じゃあ何故、なのはさんの目から涙が出ているのでしょうか?」 「!?」 雪奈の言葉になのはは自身の頬を撫でる。 頬には冷たい滴が付いていた。 「今、なのはさんがオーダーした『カルマ』には面白い逸話があるのでございます」 なのはの顔を見ながら雪奈は語り始める。 「実はこのワインは死刑が確定されている囚人の奥さんが夫の為に作ったワイン だったのです。 死刑が執行される当日。奥さんは、囚人である夫にグラス一杯の『カルマ』を飲ませて欲しいと頼み込んだ。 執行人たちも奥さんの熱意にうたれて、執行直前にグラス一杯の『カルマ』を囚人に飲ませたの。 奥さんの作ったワインの味に囚人は罪を犯した後悔で涙を流したそうです」 最後に雪奈は付け加える。 「今でも奥さんの血筋が『カルマ』を作り続け、この話に出てくる水の都では今 でも死刑執行前に『カルマ』を飲ませる習慣があるそうです」 話を締めくくる雪奈になのはが尋ねる。 「その話と、私に何の関係があるのですか?」 雪奈はなのはを見据えながら答えた。 「悩みや後悔がある人が『カルマ』を飲むと、涙をこぼすという伝承があるので すよ。 内容的に眉唾物だけど、今のなのはさんを見ると信じられますね」 蒼天の様に蒼い雪奈の瞳がなのはを射抜く。 まるでなのはの心を見透かすように。 なのははその蒼い瞳に吸い込まれていく。 「吐いた方が楽になりますよ」 雪奈の一言になのはの肩の力が抜ける。 そして、ポツリポツリと途切れ途切れになりながらも話し出す。 「雪奈さんは……いなくなった……知り合いが……再び………現れたら………ど うしますか…………?」 なのはの問いに少し驚く雪奈。 更に問いは続く。 「そして……その…人……が………拒絶……したら……」 「簡単ですよ」 雪奈はあっさりと言った。 なのははあっさりと言った雪奈に驚いた顔を見せる。 「何度も出会いを重ね、コミュニケーションを取れば良いのです。 少し拒絶された位で泣いていたら、キリがありません。 人という物は出会いを深めることで関係を深めていくのです…………それはな のはさん。貴女が一番よく分かっているはず」 「でも…………」 言いよどむなのはに雪奈は苦笑する。 そして、一本のボトルを開けた。 「これは私のお気に入りのボトルの一本。『氷蒼の薔薇』です。」 そう言って、雪奈は用意したグラスに『氷蒼の薔薇』を注ぎ込む。 「どうぞ」 雪奈は全員に『氷蒼の薔薇』が入ったグラスを渡す。 渡された『氷蒼の薔薇』を一口だけ口に含むなのは。そして、顔を強くしかめ る。 『氷蒼の薔薇』の味は飲めたものではなかったからだ。 『氷蒼の薔薇』には強い腐敗臭がする上に強い渋さと苦みがあった。まだ水の方が美味しいと感じる。 レキのグラスも同様らしく、顔をしかめている。 雪奈と雫は『氷蒼の薔薇』の入ったグラスを揺らしていた。 「なのはさん」 雪奈は顔をしかめるなのはに言う。 「ん……なんでしょう…か………?」 未だ口に広がる渋さと苦みを感じながらなのはは反応する。 「もう一度、飲んでみて下さい…………大丈夫。今度はちゃんと飲める筈です………私を信じて」 なのはに笑顔でいう雪奈。 雪奈の言葉を信じて、なのはは『氷蒼の薔薇』を恐る恐る口に含む。 再び口の中に流れ込む液体になのはは硬直する。 「雪奈さん!」 レキはなのはが『氷蒼の薔薇』の不味さで遂に思考すら止まったのかと思った。 レキに怒鳴られても雪奈は微笑んでいる。 しばらくして、グラスを唇から離すなのは。そして、惚けたの様に呟く。 「………おい…しい……です………」 「え………?」 レキはなのはの言葉を疑った。雪奈の顔を見るも、雪奈は微笑んだままだ。 なのはの言葉にレキは疑いながらも『氷蒼の薔薇』を口に含む。 口腔に流れ込んだ液体の味にレキもなのは同様、驚くしかない。 最初に飲んだ時にあった渋味や苦味が無くなり、鼻を突き抜けるような爽やかさと仄かな甘みが口一杯に広がったからだ。 雪奈は幽霧とアルフィトルテに鴨雑炊を出し、笑顔でなのはに言った。 「このお酒は………時間をかければかける程、美味しくなる薔薇のお酒なんですよ。まるで、硬く閉じた蕾がゆっくりと時間をかけて開くようにね」 感嘆するなのはに雪奈はウィンクする。 「まるで、人間関係の様ではないでしょうか?」 「!?」 なのはは何かに気付いたらしく、身体を強張らせる。 身体を強張らせるなのはをチラリと見る雪奈。 グラスに注がれた『氷蒼の薔薇』を揺らしながら言う。 「フェイト・T・ハラオウンと初めて出会った『P・T事件』 後の夜天の王となる八神はやて。シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラ。そしてリインフォース。計五人の守護騎士と出会った『闇の書事件』 全て、最初から友好的な関係から始まった訳ではないでしょ?」 なのはは雪奈の言葉に耳を傾けながら、心の中で頷く。 雪奈の言う通り、親友であるフェイトとはやてとは最初から友好的な関係から始まった訳ではなかった。 想いの食い違いで戦い合い、戦いの末に友情が芽生えた。 更に雪奈は続ける。 「例え、一度は想いや絆が食い違ってバラバラになっても………時間や想いをゆっくりと重ね、そうやって出会いを重ねることが出来る。 それが………」 雪奈は一度、口を閉じる事で区切り、優しく微笑みながら言った。 「本当の友達だと思いますよ」 なのはにそう言って、グラスの『氷蒼の薔薇』を口に含む雪奈。 飲んだ雪奈は嬉しそうに唇を舐める。 『氷蒼の薔薇』を飲んでは、空を見上げるレキ。 レキにも何か想う事があるのだろう。 なのははグラスの中で揺れている『氷蒼の薔薇』を見ながら呟いた。 「時間や想いを重ねることが本当の友達を作る条件……か…………」 「長月部隊長。自分はこれで失礼します。 なのはさん。お先に失礼します」 「ばいばーい!」 幽霧はなのはたちに一礼し、アルフィトルテは大きく手を振りながら帰っていく。 なのはたちは軽く手を振りながら幽霧とアルフィトルテを見送る。 「さて!」 幽霧の姿が見えなくなってから、雪奈はなのはを見る。 「まだ悩みはあるかな? 神威からセクハラでもされてるとか」 蒼い瞳がなのはを見る。 綺麗に澄んだ蒼になのはは引き込まれそうになる。 笑顔で雪奈はなのはの瞳を覗き込む。 なのはは思った。確実に悩みを見透かされていると。 意を決し、なのははにこやかに言う雪奈に尋ねた。 「幽霧くんの事なんですが………なんで時々、悲しそうな目をするのでしょうか………?」 なのはの問いに雪奈は尋ねる。 「幽霧が気になる?」 「いえ………時々、死んだ魚のような冷たい目をするので………」 言いよどむなのは。 雪奈は少し苦笑しながら言った。 「幽霧があの目をするときは………感情を捨てないといけないときだよ。」 「感情を………捨てる?」 なのはは雪奈の言葉を反復する。 雪奈は蒼い瞳でなのはを射抜きながら淡々と言った。 「幽霧はね…………ある事故で家族を失っているの。あれは言わば………その後遺症であり、名残………」 「え…………」 なのはは雪奈にその続きを聞こうとしたとき。 雪奈は手を叩いた。 「はい!その話はもう終わりです。そろそろ帰りなさい! なのはさんも明日は仕事でしょっ!」 なのはは手叩く雪奈につられて、席を立つ。 勘定を払って帰ろうとするなのはに雪奈は言った。 「なのはが知り合いとの関係を改善することも、幽霧の過去を知ることも、時間と想いを重ね続ける事が必要です」 「…………ありがとうございます」 雪奈の意味深長な発言の意味が分からないが、なのはは頭を下げる。 そして、家路を急いだ。 なのはの足取りは少しだけ軽くなっていた。
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報告書 ― 不祥事の分析と改革の方向性― 20.7.15 防衛省改革会議 目次 報告にあたって………………………………………………………………… 1 Ⅰ はじめに…………………………………………………………………… 3 本会議の任務― 問題事案への対処…………………………………… 3 ネガとポジ…………………………………………………………………… 3 新たな国際環境と自衛隊の多機能化……………………………………… 4 戦後日本の文民統制………………………………………………………… 4 官邸と防衛省― 二つの焦点…………………………………………… 5 幕僚監部と部隊……………………………………………………………… 6 Ⅱ 不祥事案― 問題の所在……………………………………………… 7 1 給油量取違え事案― 報告義務不履行…………………………… 7 (1) 不規則な展開………………………………………………………… 7 (2) 問題点………………………………………………………………… 8 2 情報流出事案― 通信情報革命と情報保全……………………… 9 3 イージス情報流出― 先端技術の学習と情報保全……………… 11 (1) 特別防衛秘密の拡散………………………………………………… 11 (2) 問題点………………………………………………………………… 13 4 「あたご」衝突事案― 基本動作のゆるみ……………………… 14 (1) 「方位落ち、危険なし」…………………………………………… 14 (2) 破局への道― 錯誤の連鎖……………………………………… 16 (3) 問題点………………………………………………………………… 19 5 前事務次官の背信……………………………………………………… 20 6 諸事案の総合検討……………………………………………………… 22 Ⅲ 改革提言(1) ― 隊員の意識と組織文化の改革……………………… 29 1 改革の原則……………………………………………………………… 29 2 規則遵守の徹底………………………………………………………… 30 (1) 幹部職員の規則遵守の徹底………………………………………… 31 (2) 規則遵守についての職場教育……………………………………… 31 (3) 機密保持に関する規則の徹底的遵守……………………………… 31 (4) 防衛調達における透明性及び競争性の確保並びに 責任の所在の明確化…………………………… 32 (5) 監査・監察の強化…………………………………………………… 32 (6) 規則の見直し・改善………………………………………………… 33 3 プロフェッショナリズム(職業意識)の確立……………………… 33 (1) 幹部教育の充実……………………………………………………… 33 (2) 基礎的な隊員教育の充実…………………………………………… 34 (3) 情報伝達・保全におけるプロ意識の醸成………………………… 34 4 全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立…………… 36 (1) 文官と自衛官の一体感と陸・海・空の一体感の醸成…………… 36 (2) PDCA(Plan Do Check Act:計画・実施・評価・改善) サイクルの確立……………………………………………… 37 (3) 機能する基本組織単位(部隊など) ……………………………… 37 (4) 部局間の垣根を越えたチームによる課題への対処……………… 38 (5) 防衛調達におけるIPT の推進……………………………………… 38 (6) 統合運用体制の促進………………………………………………… 39 (7) 組織として整合性のとれた広報…………………………………… 39 ア) 平時における広報の在り方……………………………………… 39 イ) 緊急事態等における広報の在り方……………………………… 39 Ⅳ 改革提言(2) ― 現代的文民統制のための組織改革………………… 40 1 組織改革の必要性……………………………………………………… 40 2 戦略レベル― 官邸の司令塔機能の強化………………………… 41 (1) 安全保障戦略の策定………………………………………………… 42 (2) 三大臣会合(内閣官房長官、外務大臣、防衛大臣など) の活用………………………………………………… 42 (3) 防衛力整備に関する政府方針策定のための仕組み……………… 42 (4) 内閣総理大臣の補佐体制強化……………………………………… 43 3 防衛省における司令塔機能強化のための組織改革………………… 43 (1) 防衛大臣を中心とする政策決定機構の充実……………………… 44 (2) 政策面での施策― 防衛政策局の機能強化…………………… 45 (3) 運用分野における施策― 統合幕僚監部の機能強化………… 45 (4) 整備分野における施策― 整備部門の一元化………………… 46 (5) その他の重要分野における施策…………………………………… 47 ① 管理部門…………………………………………………………… 47 ② 人事、教育・訓練………………………………………………… 47 Ⅴ 結びにかえて……………………………………………………………… 47 防衛省改革会議の開催について……………………………………………… 50 防衛省改革会議の開催実績…………………………………………………… 52 防衛省改革会議勉強会等の開催実績………………………………………… 54 図表1 …………………………………………………………………………… 58 図表2 …………………………………………………………………………… 59 防衛省改革会議「報告書」の概要…………………………………………… 60 別添参照資料 - 1 - 報告にあたって 『防衛省改革会議』は、昨年12 月に、前防衛事務次官の不祥事、報告義務の不 履行、情報の流出などがきっかけとなって発足しました。当初は3 ヶ月程度で中間 報告をまとめる予定でいましたが、議論の深まりを受け、11 回の本会議、15 回の 勉強会、専門家へのヒアリング、陸・海・空各自衛隊の現場の視察や自衛官との意 見交換など半年以上の議論の積み重ねを経て、ここに改革の原則と指針を答申する に至りました。 議論で力点をおいたことが2つあります。一つは、それぞれの不祥事案(とりわ け前事務次官の不祥事は語る言葉も見当たりませんが)について、個別事象への対 策に留めるのではなく、その背景や根本にある原因にできるだけ接近しようと努め たことです。もう一つは、近年の安全保障環境の大きな変化を認識しつつ、それに 即した防衛省・自衛隊の在り方に敷衍したことです。 「防衛省・自衛隊の不祥事はなぜこのように繰り返すのか」と、初回の本会議冒 頭から多くの委員が疑問を呈されました。事務方から、不祥事案が発生する度に積 み重ねてきたこれまでの対策をお聞きしながら、それでも続発するのはなぜかを、 会議は問わずにはおれませんでした。そのため、会議は、この報告書にかなり詳細 に採録した不祥事案等の分析・評価に加え、防衛省・自衛隊の組織管理状況や気風 等にまで立ち入って議論を重ねました。 我が国の自衛隊は、戦前の痛烈な経験から、警察予備隊として創設以来58 年間 「抑止力として存在することに意義がある」、「自衛隊の暴走を抑止する」との認 識の下での文民統制(シビリアン・コントロール)が貫徹されてきました。これか らの自衛隊の役割への期待の大きさを考えますと、文民統制は、更に強化・充実さ せる必要があります。他方、これまでの文民統制は、防衛省・自衛隊の「逸脱」を 厳しくチェックする国会やマスコミの存在を背景に、内部部局の文官がその役目を 代行してきた感がありました。文官と自衛官、内部部局と各幕僚監部に判然と分れ て相互の人事交流も乏しく、ともすれば全体の目標に向かって相互のコミュニケー ションに不足や齟齬をきたし、更には自衛官の主体的・自律的な責任意識の希薄化 をもたらすなど、不祥事が続発する一因になったのではないかとも考えました。全 ての民主主義国に不可欠なシビリアン・コントロールを我が国も大事に守りつつ、 内部部局と各幕僚監部が共に政治を支えて、我が国の安全保障を全うすることが必 要と思います。 また、半世紀以上が経ち、我が国自衛隊は、海外派遣任務や国際平和協力活動な - 2 - ど活動範囲が拡がり、安全保障の概念が従来の「国対国」だけでなく「対テロ」も 加え多面的になってきているなど、今日の自衛隊を取り巻く環境の変化や求められ る役割の重要性に鑑みれば、文民統制を確保しつつ、人材を有効に活用して自衛隊 をより積極的・効率的に機能させることができるように、防衛省・自衛隊の組織を 改革することが必要な時期に来ているとの結論を得ました。 報告書には「改革の三つの原則」と「現代的文民統制のための組織改革」の指針 を示しましたが、今後、これらに血肉をつける具体的な検討は、内閣官房と防衛省 ・自衛隊に委ねます。特に、我が国の平和と独立を守るという崇高な任務を与えら れた防衛省・自衛隊の諸君が、本報告書の本旨を汲み取って、自らの変革に自発的 に挑戦していくことを切に期待しています。また、自衛隊の活動に対する政府と国 民との相互理解が益々重要になってきていますので、多くの国民が文民統制の最終 権限者として、今後の改革に関心と叱咤激励を寄せられることを強くお願いするも のです。 今回、検討し切れなかった諸課題もありますが、福田内閣総理大臣に本報告書を 答申するに当たり、町村内閣官房長官、石破防衛大臣、多忙な中を精力的に議論に 参画し、報告書の執筆に当たられた委員の方々、事務方として会議を支えてくれた 内閣官房、そして防衛省の皆さんのご尽力と協力に深く感謝します。 平成20 年7 月 防衛省改革会議 座長南直哉 - 3 - Ⅰ はじめに 本会議の任務― 問題事案への対処 昨平成19 年12 月に、防衛省改革会議が官邸に設置されたのは、防衛省・自衛 隊にあるまじき事件・事故が頻発したのを受けてのことであった。 当然ながら、本会議の第一の任務は、そうした諸事案について何が起こったの か、そしてその原因は何かをレヴューし、再発防止のためにどんな対処が必要か を検討することにあった。もとより本会議は、捜査や調査を自ら行えるわけでは なく、また司直の手により解明中で結果が未だ公表されていない事案も存在する。 そうした中、本会議はとりあえず防衛省などに資料提供を求め、関係者・有識者 へのヒアリングを行って、検討と評価を試みてきた。個々の事案を問うとともに、 不祥事を許容した組織の問題をも問わねばならない。防衛省・自衛隊に何が起こ っているのか。その解明を基に対処と改革の方向を示すことが、本会議の第一義 的任務である。 ネガとポジ ただ本会議は、不祥事への対処をもって任務完了とは考えていない。なぜなら ミスやエラーを犯さないことは必要条件であって十分条件ではないからである。 スポーツを例にとれば、エラーを連発するチームが優勝することはありえないが、 エラーを犯さないことを至上目標とするチームが優勝することも難しいであろ う。選手がミスを恐れてダイビングキャッチも試みないチームは強くなれない。 より重要なことは、チーム全体が高い志と目的意識を共有し、結束して試練に立 ち向かう気風である。その息吹の中で各プレイヤーが積極的に高度な技術をめざ して訓練を重ね、ミスやエラーの可能性を極小化していくのが強いチームの姿で あろう。国家と国民が危殆に瀕するとき、その安全のために働くべき最後の手段 である自衛隊も、同じことが求められるのではなかろうか。 ミスをしない、不祥事を起こさないと否定形で語られることは、全て必要であ り重要である。そのためにあらゆる措置がとられねばならない。しかし人間と人 間組織は否定形の山の中でよい仕事を長期に続けることはできない。管理強化の 山によって不祥事から逃れることができると考えるのは、人間性への洞察を欠い た暗い統制主義である。ポジ(肯定形)が組み合わされなければならない。ほと - 4 - ばしる流水は腐らない。健全で積極的な前進目標を主軸とし、それに向う組織全 体の息吹の中で、否定的な逸脱が強力に抑制されねばならない。エラーを極小化 するためにも、組織のミッションが明確に提示され、それに沿って実効的な活動 が行えるよう組織構成と意思決定システムができ上がっていることが必要なので ある。 新たな国際環境と自衛隊の多機能化 今日、積極的な側面はとりわけ強調されねばならない。なぜなら冷戦終結後の 国際秩序が流動化する中で、自衛隊にはこれまでよりも実際に働き、役に立たね ばならない局面が増加しているからである。世界的に民族紛争や地域紛争が多発 し、21 世紀の開幕とともに9.11 の無差別大量虐殺テロまで勃発した。その結果、 非在来型の脅威にも備えねばならなくなった。貿易によって生計を立てる日本に とって世界の平和維持が存立の基盤であり、PKO をはじめとする国際平和協力 活動は自衛隊の本来任務となった。我が国周辺における近年の国際環境の変化も 顕著であり、核とミサイル、拉致と不審船などにより、我が国が脅かされる事態 を招いた。日本はミサイル防衛に着手し、また自然災害の多発を受けて自衛隊が 内外の救援活動に赴くことも増えた。「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告 書が示したように、我が国の安全を全うするため、自衛隊が多機能・弾力的・実 効的に行動しなければならない時代を迎えている。すなわち現在は、防衛省・自 衛隊が、多様な事態に対し迅速かつ的確に対処できるよう組織と意思決定システ ムを再検討しておくべき時期なのである。 戦後日本の文民統制 機能する自衛隊という21 世紀の課題は、全ての政府が例外なく直面している 政軍関係及びシビリアン・コントロールという普遍的難問とあいまみえることを 我々に迫るであろう。あの戦争と敗戦から学んだ戦後日本は、「下克上」や「独 断専行」、クーデターや軍部支配を二度と起こさないことに注意を集中し、「軍 事実力組織からの安全」を最重視してきた。 戦後日本において、民主主義とシビリアン・コントロールを重視する社会意識 は定着し、防衛省・自衛隊もそれを共有している。吉田茂首相は「下克上のない 幹部」を育成するために防衛大学校の前身である保安大学校を創設したが、槇智 雄初代学校長は、幹部自衛官が民主主義社会において確立すべき徳目を防大生に 説き、シビリアン・コントロールを自らの自発性において内面化するよう求めた。 - 5 - 他の多くの民主主義社会と同じく、今日の日本にクーデターの挙はありえないで あろう。 ただ、人の世にあって、油断とゆるみ、慢心や驕りが容易に人と組織を転落さ せうることは、近年の不祥事の多発を含む歴史の示すところである。例えば情報 の隠蔽や操作による不服従はあらゆる官僚組織に稀ではないが、究極的な実力組 織機関がそれを行うとき、格別な政治社会的意味を帯びるであろう。自衛隊がシ ビリアン・コントロールをほぼ内面化したことを評価しつつも、その制度的担保 を消失させない考慮を残すべきである。全ての民主主義社会はシビリアン・コン トロールの制度を内蔵していなければならないのである。 ここで、戦後日本における文民統制(シビリアン・コントロール)の在り方が 独特であったことを想起しておかねばならない。戦後の政党政治がなお未成熟で あり、社会が安全保障問題に理解を欠いていたことを想えばやむを得ない面もあ るが、防衛庁内部部局が自衛隊組織の細部に至るまで介入することが、文民統制 の中心的要素とされてきたのである。国民→国会→首相→防衛庁長官→自衛隊と いう議院内閣制民主主義の本旨に沿った文民統制のラインの確立よりも、いわゆ る「文官統制」ともいうべき状態をもって文民統制とした戦後日本であった。 戦後日本のこうした文民統制の問題点を承知しつつも、本会議はそれを全壊さ せるのではなく、内部部局の文官と自衛官の双方によって補佐される政治という 基本骨格を鮮明にすることが、21 世紀に安全保障上の任務を達成する上で最も 適切と考える。 官邸と防衛省― 二つの焦点 安全保障と防衛の分野については、首相官邸と防衛省の二つが焦点であり、両 者の連携において政策展開がなされる。双方の健全な機能強化が求められる。 国会によって選出された内閣総理大臣が、安全保障政策と文民統制の根幹たる 主体である。内政・外交にまたがる全体性の中で安全保障戦略を策定し、主要な 防衛政策と重大事態への対処を決定できるのは首相官邸のみである。それを完遂 するため、首相官邸の安全保障機能は強化されねばならない。 他方、防衛省の任務は、防衛をめぐる政策と人材を用意し、かつ精強にして規 律正しい部隊を整備し、加えて政治の決定を実施することにある。 防衛省中央組織の再編については、現行の内部部局と四幕僚監部(統合・陸・ 海・空)の組織を基本的に存続しつつも、必要な改革を大胆に行うものとする。 その際の基本的観点として、文民統制を守りつつ安全保障を効果的に遂行しうる - 6 - ことの他、セクショナル・インタレストに立つ部分最適化を克服し、全体最適化 を求めること、多くの組織に同種の機能が重複的に存在する場合、できる限り統 合化・重点化することにより、無駄をなくし、人材を有効活用し、かつ決定の迅 速化を期すこと、を本会議は重視している。 政治行政的観点に立つ文官と、軍事専門家である自衛官とが完全に一体化する ことはありえないが、相互補完的な協働が求められる。内部部局と幕僚監部の双 方において、文官と自衛官を混在化させる人事配置を積極的に推進し、互いの視 野拡大と相互理解、双方の活性化と力量向上を期する。 防衛会議を政治家、文官、自衛官の三者構成とし、公式化する。大臣を文官と 自衛官によって補佐する文民統制の中心的機関として、全ての重要問題を審議す る。 幕僚監部と部隊 幾多の不祥事を検討する中で、士気と規律、装備と能力を含めて自衛隊がどの 程度の水準にあるのか気にかかるところであった。従来、専守防衛を旨とする自 衛隊の能力は自制的であっても、装備の近代化は進んでおり、実戦経験はなくと も、日米共同訓練などで高い練度を示してきたとされる。また世界的に地域紛争 が増え、平和構築や災害救援、社会再建などのため、軍隊の非戦闘活動の拡大が 注目されているが、その点、自衛隊は戦後期を通じ日本国内で行ってきた住民へ の協力活動を、カンボジア、東ティモール、サマーワなどにおける国際平和協力 活動でも行い、高い評価を受けてきた。不祥事の頻発は、そうした自衛隊の崩壊 を意味するのであろうか。 豊かな先進社会における一般国民の気風と、軍隊が求める高い規律との間のギ ャップを考えれば、精強にして規律正しい部隊を築き維持するのは容易ではない であろう。けれども事例分析においても見るように、不祥事に対する改善努力が 成果をあげている例もないではない。要は、任務に向っての全組織的な結束と前 進姿勢を如何につくり上げ、その中でミスやエラーを如何に極小化するかであろ う。それができなければ、近年の不祥事は自衛隊の崩壊の始まりであったと後に 位置づけられることであろう。逆に取り組みに成功すれば、この時代の不祥事に 反省し、それをバネに、かえって立派な防衛省・自衛隊を築いたと評価されよう。 後者のコースを辿るための幕僚監部と部隊でなければならない。 陸・海・空の幕僚長は、隊務(人事、教育・訓練、補給等)に関し防衛大臣を 補佐し、精強にして規律正しい部隊を教育・訓練、整備し、それを防衛大臣と統 - 7 - 合幕僚長の下での、統合運用に供する。三自衛隊が統合運用に移行した近年の実 績を評価し、今後も21 世紀の安全保障環境に適合的な統合化を進めるものとす る。 Ⅱ 不祥事案― 問題の所在 近年、相継いで発生した防衛省(庁)・自衛隊によるあるまじき事案のいくつか を検討しておきたい。何故にそれが起ったか、どこに問題があったのか。それを起 こした個人の問題として済ますことができるだろうか。国の安全保障を担う機関が 格別に高い規律と職業意識を求められるのは当然である。ある不祥事について、組 織構造がそれを必然化もしくは助長していないにせよ、それを許容し看過するなら ば、やはり組織の体質が問われねばならないであろう。 社会に小さくない衝撃を与えた諸事案のうち、給油量取違え、自衛隊情報流出、 イージス情報流出、「あたご」衝突、前事務次官の供応・収賄の5 つのケースをま ず簡潔に振り返り、点検しておきたい。その上で、その他の諸事案とあわせて問題 点の究明に努めたい。 1 給油量取違え事案― 報告義務不履行 平成15 年(2003 年)5 月6 日、米空母キティーホークを率いるM.G.モフィッ ト司令官が、海上自衛隊より間接的に約80 万ガロンの給油を受けた、日本政府 に感謝する、旨の発言を横須賀基地内の記者会見で行った。 日米同盟の深まりを象徴する情景であった。 (1) 不規則な展開 2 日後の5 月8 日、統合幕僚会議議長は記者の質問に対し、去る2 月25 日 に海上自衛艦「ときわ」が米補給艦「ペコス」に約20 万ガロンの給油を行い、 その後、キティーホークはペコスから80 万ガロン受給した、と説明した。 統合幕僚会議議長の説明は、海上幕僚監部防衛部の防衛課長(1 等海佐)が 用意し、直接持参した資料に基づいていたが、それは誤った情報であった。 実際には、「ときわ」は2 月25 日、「ペコス」に約80 万ガロン、駆逐艦「ポ ールハミルトン」に約20 万ガロン給油した。ところが、海上幕僚監部運用課 のオペレーション・ルームにおいて給油量の集計表を作成する際に、担当者が - 8 - 誤って両者を逆に入力してしまった。それに基づいて、防衛課長は「ペコスに20 万ガロン」という誤った数字の報告を統合幕僚会議議長に言ったのである。 海上幕僚監部の防衛課長が、間を飛び越して直接、統合幕僚会議議長に情報 と方策を持ち込むのは、官僚機構のプロセスとして普通ではない。もちろん緊 急を要する事態であれば課長の行動は異とするに足りないであろう。ただ、こ の件は緊急重大という程の事態でなく、同じ海上自衛隊の先輩への好意的配慮 からの情報提供と推されるが、不幸にもそれは誤った情報だったのである。 ところで、統合幕僚会議議長が記者発表した翌9 日、海上幕僚監部需品課の 燃料班長(2 等海佐)がこの誤りに気付き、海上幕僚監部防衛課に指摘した。 防衛課長は、課員らとこの件につき検討した上、前日に統合幕僚会議議長が 会見で表明した数字がそのまま社会的に受け止められており、在京米大使館よ り、海上自衛隊より提供された燃料をテロ特措法の目的に反して使用されたこ とはないとの回答をすでに受けてもいた。給油量が80 万ガロンであっても、 それが例えばイラク作戦に使われた可能性はないと防衛課長は考えた。事務的 な数字の誤りは重大な実質にかかわるものではないので、あえて訂正するには 及ばないと判断した。平穏化しつつある事態を、さして意味のない数字の正確 さにこだわって紛糾させる必要はないとの趣旨である。 しかし自らが誤った情報を、組織内の通常プロセスを飛び越して高官に提供 し、かつその誤りに気付きながら、訂正と陳謝を行わないのは、許されること であろうか。こうした無責任な対応が、このアクティブな課長に例外的なのか、 組織内で普通のことなのかが気にかかるところである。 この小さな虚偽のレールに乗って日本政府全体が動き、やがて日本政府は困 難に陥る。9 日に福田内閣官房長官、15 日に石破防衛庁長官が同じ誤情報に基 づいて発言を行った。 (2) 問題点 もし防衛課長が別のオプションをとり、速やかに訂正措置をとっていれば、 高官からのお叱りに加えて、メディアによる批判が巻き起こったかもしれない。 しかし、4 年後の平成19 年(2007 年)9 月に、米国の情報公開法に基づい て米艦関係の資料を入手した市民団体の指摘を受けて、インド洋における海上 自衛隊の給油活動そのものを揺るがす政治問題となることはなかったであろ う。誤りそれ自体は訂正・陳謝すればそれ程大きな傷にはならないが、それを 隠蔽することがしばしば致命傷となるのである。 - 9 - 課長の情報に基づいて内部部局が答弁資料を作成し、政府高官が公的に発言 しなければならないとすれば、本件はすでに微妙な判断を必要とする政治案件 なのである。これについて、課長が自ら最終決定を行い、上司への報告すらし なかったのは驚くべきである。日本の官僚機構にあって課長は政策起案の実質 的中心であるのが普通である。しかし自らの誤りによって作り出した政治判断 を要する案件について、上司の決裁を求めず、放置するのは、秩序と責任を重 んずる如何なる組織にあっても許されるものではない。防衛庁長官・内閣官房 長官そして国会を誤った認識に巻き込みつつ、それへの正しい情報提供を履行 しなかったことは、本人の動機が何であれ、客観的に文民統制への背反である。 本件の場合、個性が強く行動力に富む課長個人の要因が主要であるが、次い で組織の在り方も問われなければならないであろう。海上幕僚監部内では取違 えに気付いた者がいたにも拘らず、4 年後に外部から問題提起されるまで、格 別の対処はなされなかった。海上幕僚監部運用課オペレーション・ルームの集 計表には誤入力されていたのに対し、海上幕僚監部装備課は正しい給油量を記 した実施報告書を作成し、これを事件となる以前の3 月10 日に内部部局へ送 付していた。同文書は管理局装備企画課にファイルされていたが、問題が生じ た後、参照され問題提起されることはなかった。モフィット司令官の発言以来、 内部部局もこの問題を重視し、事実を確かめて対処すべきであったろう。誤り を正すべき責任を持つ部署が省内で明確でないという組織上の問題も正されな ければならないであろう。 民主主義は国民に選ばれた政府が、文武の官僚の補佐を受けて統治するシス テムである。政治の優位が文民統制の本旨であり、文官も自衛官もそれに服し つつ、専門家としての技量を駆使して任務を達成する職業意識(プロフェッシ ョナリズム)が求められる。本件は自衛官の中枢にある幕僚に文民統制への認 識が不十分であるとともに、国会に対する説明をはじめ対外説明責任の重要性 が今日の民主主義社会において高まっていることへの認識が備わっていなかっ たことを示している。 また海上自衛隊がインド洋での国際活動を展開する状況を迎えて、不都合な 事実を内部に伏せておくことが、国際的文脈からも困難となったことをも本件 は示している。透明性について新たな水準の認識が求められていると言えよう。 2 情報流出事案― 通信情報革命と情報保全 二種類の問題が連動して、自衛隊からの情報流出事案が頻発した。一つは急速 - 10 - な通信情報革命に防衛庁と自衛隊員の認識がついて行けなかったことである。い ま一つは、自衛隊内において秘密情報についての保全意識が不十分であり、不徹 底であったことである。両要因の連動によって情報流出する事案が平成18 年 (2006 年)までたて続けに起こった。 例えば、平成15 年2 月輸送艦「おおすみ」の3 等海曹が、通信に関する秘密 情報を、「秘」であるとの自覚なしに艦内で私有ノートパソコンにとり込み、後 にそれを自宅に持ち帰った。自宅の別のパソコンに保存したところ、それがコン ピューターウイルスに感染し、業務用データが部外に流出した。流出は平成17 年12 月確認された。 また隊員が業務用データを可搬記憶媒体に落として持ち出し、自宅のパソコン でウィニーなどファイル共有ソフトを使用してコンピューターウイルスに感染 し、情報流出を招くケースが、佐世保造修補給所(平成15年10 月より、平成16 年10 月頃までの間に、1 等海尉が無許可で持ち出し、平成18 年2 月流出を確認)、 自衛隊病院(平成16 年6 月より平成17 年6 月までの間に、3 等空佐が無許可で 持ち出し、平成17 年9 月流出を確認)、第4 化学防護隊(平成17 年7 月より8 月頃までの間に、2 等陸曹が無許可で持ち出し、平成18 年2 月流出を確認)、第7 航空団(平成16 年7 月に、2 等空尉が無許可で持ち出し、平成18 年2 月流出を 確認)などで起こった。 護衛艦「あさゆき」海曹長も、平成17 年1 月頃から海上自衛隊の訓練・通信 に関する秘密情報を同じように自宅のパソコンに持ち出し、平成18 年2 月に流 出が確認された。 この「あさゆき」事案に、防衛庁は衝撃を受け、全庁的レベルで対応を検討し、 平成18 年4 月にいわゆる「抜本的対策」(正確には、「秘密電子計算機情報流出 等再発防止に係る抜本的対策の具体的措置」と不必要に長々しい表題の文書)を 取りまとめた。これにより業務用パソコンが隊内に十分配備され、私有パソコン によって業務用データを取り扱うことが明確に禁止された。業務用データの外部 持ち出しに対するチェックが行われず、また予算の制約等により業務専用のパソ コンが十分に配備されなかったため、個人用パソコンの業務利用の誘発を免れな かった「あさゆき」以前と、それ以後では情報に対する自衛隊内の扱いが異なる。 にも拘らず、それ以後も同じタイプの情報流出は根絶されなかった。第14 旅 団の3 等陸曹及び第83 航空隊の2 等空尉が、禁じられた私有パソコンによる業 務用データの取り扱いを継続し、それぞれ平成18 年8 月と11 月に、流出が確認 された。これらはパソコン技術に熟達していると自信過剰の隊員が自分は大丈夫 - 11 - と、「あさゆき」以後も改めずにいて、陥ったケースと見られる。 自衛隊における業務用データへの保全意識の不徹底と、コンピューターという 新しい技術のメカニズムへの理解不足が重なって、流出事案がたて続けに起こっ たのである。 3 イージス情報流出― 先端技術の学習と情報保全 イージスシステムに関する情報管理の問題は、以上のいくつもの情報流出事案 と同じ理由による不始末である面と、いささか趣を異にする面とがある。異なる 点は、情報拡散が個人的・散発的ではなく、海上自衛隊がこなすべき最高軍事技 術を積極的に学習教育しようとの意図を持って、高位の責任者の許可はなかった ものの、中堅幕僚クラスの教官の保有するイージス知識をかなり広域に共有した ことにある。そして何よりも重いのは、「日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保 護法」に規定する「特別防衛秘密」がそこに含まれていたことである。 一言で「秘密」と言っても、防衛省においては三種類の秘密が取り扱われてい る。外部に出してはならない通常の「省秘」(これを犯した場合、自衛隊法によ り1 年以下の刑)、大臣が我が国の防衛上特に秘匿を要するものとして指定した 「防衛秘密」(同5 年以下の刑)、そして米国から供与された装備品等の性能等 に関する「特別防衛秘密」(上記秘密保護法により、10 年以下の刑)である。イ ージスシステムの性能に関する情報がこれに当たることは言うまでもない。 最高レベルの秘密を厳しく管理保全しなければならないとの意思と、最先端技 術を深く広く理解し、有能に使いこなして日米同盟の実をあげたいという意思の 双方が、二律背反的に海上自衛隊内に存在するであろう。何人かの中堅幕僚が、 後者の意思に主軸を置き、前者を甘く扱ったのが本事案である。 (1) 特別防衛秘密の拡散 海上自衛隊においてイージスシステムを取り扱っていたのは、横須賀のプロ グラム業務隊であった。平成9 年(1997 年)から平成12 年(2000 年)頃にか けて、同隊の新着任者への教育のため、3 人の3 等海佐が「イージス概要」と 題するパワーポイント教材を作成した。それは米国留学中に得たイージスシス テムについての知識などを基にしていたが、上記「特別防衛秘密」に該当する 情報も含まれていた。部内教育用であるから柔軟に扱ってよいと考えたのか、 特別防衛秘密としての登録は行われなかった。 平成14 年(2002 年)3 月の組織改編により、プログラム業務隊は廃され、 - 12 - 同じく横須賀の艦艇開発隊がイージスシステムを担当することになった。上記 3 人のうち引き続き艦艇開発隊でイージス教育に当たっていた3 等海佐Iは、 同年5 月から米国の「イージスシステム幹部課程」へ留学することになった3 等海佐Bに対し、先の「イージス概要」を用いて教育を行った。 米国から帰国後、江田島の第1 術科学校の教官として、「イージスシステム の概要」という教科を担当することになった3 等海佐Cは、留学仲間である3 等海佐Bに参考となる資料の提供を求めた。3 等海佐Bは、上司であり、「イ ージス概要」の作成者の1 人であった3 等海佐Iの了解を得て、それを含むイ ージス資料をCD にコピーし、江田島の3 等海佐Cに送付した。その際、特別 防衛秘密を送付するために必要な手続きはとられなかった。同秘密が含まれて いるとの認識がなかったわけではないが、米国に留学しイージスシステムに通 じた専門家仲間が、部内教育のために用いる限り、杓子定規に手続きを踏まな くてもよいと考えたのであろうか。 それ以後、海上自衛隊内のイージスシステム教材の中に含まれた特別防衛秘 密は、受講した学生たちの間に広く拡散することになる。最高軍事技術であり、 重要な秘密が含まれるとの認識は、教える側にも教えられる側にも存在したよ うである。教官が席を外した間に学生がイージス資料を自分のPC にコピーし たりしたことは、その認識を前提とするであろう。しかし教官側にも、学生が 情報の重要性を認識し、厳重に注意してイージス資料を保管し利用するなら所 持させてよい、との判断があったと推される。席を外してコピーの機会を与え たり、時にはコピーを許したり与えたりしたと思われる。 イージスの情報流出は、以上の経路が全てではない。それと類似の型を踏む ものであったが、江田島の第1 術科学校自体で開発された教材が別に存在した。 平成11 年(1999 年)9 月に米国「イージスシステム幹部課程」へ留学した2 等海佐Jは、帰国後の平成12 年8 月頃、その知識を利用して「誘導武器シス テム」と題するパワーポイント教材を作成した。これにも特別防衛秘密に該当 する内容が含まれていたが、それとしての登録は行われなかった。この教材は MO(光磁気ディスク)に記録され、当人の転出後も歴代教官に引き継がれ、 前記イージス資料とともに、平成15 年(2003 年)から平成18 年(2006 年) までの8 つの課程(幹部中級一般課程、幹部任務射撃課程、幹部中級射撃課程、 海曹射管課程、海士射管課程、幹部中級船務課程など)において教材として用 いられた。受講者のうち特に関心を持って希望した者に、この教材を所持・保 管することを許したこともあった。 - 13 - また、第1 術科学校の諸課程とは別に、イージス艦の職場でも有用な参考資 料として上記教材が個人的なチャンネルを通じて複製利用された。(図表1参 照58頁) イージス資料で教育を受けた多数がイージス資料をCD に保存したまま、様 々な職場に動いた。その後、平成18 年2 月に「あさゆき」事案が、前記のよ うに大きな問題となるに及んで、かなりの者がCD や私有PC からイージス資 料を削除した。 イージス資料を入手した者の1 人である護衛艦「しらね」の乗組員2 等海曹 Aの妻は外国人であり、出入国管理及び難民認定法違反の容疑で、平成19 年1 月神奈川県警により家宅捜索を受けた。その際に特別防衛秘密を含んだ外付け HD が発見され、事件が発覚することとなった。 (2) 問題点 以上のように、特別防衛秘密に該当するイージス情報が、海上自衛隊の佐官、 尉官、曹士クラスに広く共有された。この尋常でない拡散は、前述のように世 界の最先端技術への好奇心と学習意欲、それを米国留学等を通じてマスターし たことに誇りを持つエリートが、本場米国に劣らない高水準の授業を行って海 上自衛隊のイージス理解と運用能力を高め、この分野で日米同盟を担う人材イ ンフラの育成を望んだがゆえと解される。それ自体は悪いことではなく、明治 以降の日本が非西洋社会の中で真先に近代化に成功したのは、外部文明の優れ た点に心ひかれ、それを学んでわがものとするとともに、仲間や後進にそれを 分ち合おうとしたからこそであった。日本人の特質、未だ失われずの想いを一 面において抱かせる。こうした気風は、海上自衛隊がイージスシステムを迅速 に使いこなすことに資したと推される。 もとより、そのことは重大な秘密情報の流出をいささかも正当化するもので はない。不用意な最高秘密情報の取り扱いは、海上自衛隊内専門家以外への流 出の危険を高め、そのことは米国の同盟国日本への信頼を失墜させ、日米同盟 そのものを揺るがすであろう。それゆえ、学習と教育は、情報保全のための万 全の防護措置を伴って展開されねばならなかったのである。 まず、プログラム業務隊と艦艇開発隊が、イージスシステムという特別防衛 秘密を扱う責任部署であるにも拘らず、定められた登録手続を踏むことなく、 秘密情報を含む教材を作成し、規則の枠外で最高秘密を流通させる道を開いた ことは、根本的な誤りであり、その責任は重い。規則に定められた手続きを略 - 14 - した上、上位責任者の判断を仰ぐことなく、指導的な教官たちが、教育の向上 や勤務の参考のために、特別防衛秘密を含む教材を作成し使用しただけでなく、 個人ベースで複製し提供する柔軟な慣行を作ったことが、上流における決定的 な誤りであった。受講生や同僚・後輩から教材のコピーを求められたときには、 厳格な資格審査と手続きを踏んだ上でなければ渡さないというルールを励行す べきであった。 それを怠った帰結が、規律を欠いたイージス資料の拡散であり、別件で家宅 捜索を受けた2 等海曹の所持品から特別防衛秘密の流出が発覚するという不名 誉な事態である。海上自衛隊の部外へ流出しなかったことを、天に感謝すべき であろう。 4 「あたご」衝突事案― 基本動作のゆるみ イージス型護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」が平成20 年(2008 年)2 月19 日午前4 時7 分、房総半島野島崎の南南西約40 キロの海上で衝突した。 本件につき、6 月27 日に横浜地方海難審判理事所は、横浜地方海難審判庁に 対して海難審判開始の申立てを行った。その申立て書は、双方の記録を吟味して 事故の経緯と原因を判定せんとするものであり、従来の諸情報よりも詳細にして 総合的である。以下の記述もそれに負うところが多い。 (1) 「方位落ち、危険なし」 舞鶴を母港とする第3 護衛隊群所属の「あたご」(7,750 トン)は、ハワイで の性能確認試験を終えての帰国途上であり、横須賀へ入港するため、速力10.6 ノット、針路北北西(328 度、海潮流のため、実航針路は324 度)、自動操舵 で浦賀水道に向って航行していた。他方、房総勝浦漁港を午前0 時55 分に出 港した「清徳丸」(7.3 トン)は、マグロはえなわ漁のため、三宅島方面の漁場 へと南西(215 度)に針路をとり、速力15.2 ノットで航行していた。当時、天 候は晴、視界良好(約20 キロメートル)、日の出2 時間15 分前の夜ながら、 月齢11.8 の月が沈む1 時間前であった。 「あたご」に即して見るならば、問題は衝突1 分以内の午前4 時6 分まで「清 徳丸」を認識できなかったことにつきる。それは誠に不思議な事態である。な ぜそんなことが起こったのか。 「あたご」艦橋において航行の責任を負うのは当直士官であり、当時は通常 航海の方式で、2 時間または2 時間半で5 組の当直が輪番する5 直体制をとっ - 15 - ていた。 艦長は前日の夕18 時頃に艦橋から降り、夕食後は艦長室で入港・通関等の 準備作業を行った。0 時30 分頃より休み4 時頃に目を覚まして、艦橋に上が ろうかと思っていたところであった。 艦橋では、航海長が午前2 時から4 時前まで当直士官として指揮をとり、12 名が配置についていた。見張りは艦橋の左右ウィングに各1 名いたが、当直士 官は2 時10 分に2 人を艦橋内に入れ、窓越しの見張りを行わせていた。その 理由について、防衛省の記録は「通り雨があったので」としており、上記申立 て書は「北上して外気温が低下したことと、周囲に接近するおそれのある他船 を認めなかったこと」をあげている。いずれにせよ、他船が接近する海域に入 れば、寒い2 月であってもウィングへ出して見張らせねばならなかった筈であ る。 3 時30 分頃、右舷側の見張りが、右30 度水平線付近に白灯1 個とその左右 に白色の光芒を双眼鏡で視認し、40 分頃にそれが3 個の実光に変わった。こ れらを電話で当直士官に報告した。 当直士官は自らも視認した上レーダーで確認し、3 時40 分、右30 度から50 度にある「これら3 隻の映像の捕捉操作を行ってシンボルを付け」た。レーダ ー上でマークして動きを確かめるというなすべき注意を払ったのである。とこ ろが「間もなく、この3 隻の速力表示が約1 ノット」と読まれた。15 ノット で走る漁船群を1 ノットとする誤りがなぜ生じたのか不明である。当直士官は、 これにより3 隻が操業中の漂泊漁船であろうと判断し、接近はないと見て、45 分頃レーダー上で3 隻につけたシンボルを消去した。この早過ぎた見切りによ って、漁船群はノーマークとなった。「あたご」は接近する漁船群への回避措 置をとらず、自動操舵のまま航行を続けた。 4 時の交代時間を前に、3 時55 分、当直士官は航海長から水雷長に交代し、 新たに11 名が配置についた。前直は漁船群に対する持続的な動静監視を行わ ず、そのために生じた誤認を申し継いだ。船首の右に点在する灯を指差して、 「右艦首の漁船群は、方位落ちるので危険性なし」と告げたのである。(距離 は5 ~ 6 海里、1 万メートル程度と見られた。) 「方位落ちる」とは、この場合、右舷に見える目標の方位が右に変化してい く状態であり、自艦が他船より前に進んでおり、衝突の危険がないことを意味 する。 「方位落ちる」共同幻想に、なぜ「あたご」は陥ったのか。交代した新チー - 16 - ムは、10 分程度の短い時間で、幻想から現実に立ち返ることができるだろう か。 艦橋内左舷で見張りについた信号員は、3 時56 分頃双眼鏡により、右30 か ら50 度にかけて「白・紅2 灯を表示した4 隻を視認した」。しかし、いずれも 申し継がれた漁船と判断し、「一見して方位が右方に変化しているように見え たことから」当直士官に「右の漁船方位落ちる」と報告した。幻想に支配され、 幻想を補強したのである。 船舶はマスト上に白灯をつけることになっており、遠くから最初に見えるの はこれである(船長50 メートルを超える大船は、前後に2 つの白灯をつける のがルールである)。そして右舷に緑灯、左舷に紅灯をつけており、それによ り船のどちら側が見えているのか分る。この場合、左舷の紅灯まで見えたこと は、ある程度接近したことを意味し、警戒すべきである。が、漁船群の動きは スローであり、「方位落ちる」との申し継がれた誤認を「一見して」受け入れ、 再検証しなかったのである。 当直士官は、「危険性なし」との申し継ぎを受けはしたが、「念のため16 海 里レンジとしたレーダーで確認したところ、右舷艦首に4 ないし6 個の映像を 認め捕捉操作を行い、その映像にシンボルを付けた」。しかし「見張り員やCIC に対し、漁船群の動静監視を行うよう指示しなかった。」 レーダーにより一応チェックする準備を行ったが、チーム全体で注視する態 勢を命じなかったのである。そうであれば、当直士官自身が、レーダー上でシ ンボルを付けた漁船の映像をどう読み取るかが問題であった。ただレーダーに も映像の錯誤がありうるので、過度に依存してはならないとされている。レー ダーを参照しつつも、自ら視認し艦橋の中央にあるジャイロコンパスレピータ ーなどを用いて確認する必要があった。 (2) 破局への道― 錯誤の連鎖 この時期、漁船群はどう動いていたのか。上記申立て書によれば、午前3 時58 分少し前、「あたご」の艦首の右「41 度3.0 海里に清徳丸、同29 度3.1 海里に 幸運丸、同38 度4.6 海里に金平丸、及び同50 度5.7 海里に第18 康栄丸」の4 隻がいた。 清徳丸は、出港後約2 時間の午前3 時、「針路を215 度に定め15.2 ノットの 速力で自動操舵により」航行した。清徳丸の右前方には幸運丸が先行し、右後 方には金平丸と第18 康栄丸が続き、ほぼ同じ針路と速力で進んでいた。(図表 - 17 - 2参照59頁) 当直士官はこの4 隻の「白・紅2 灯を視認し、また、レーダーで各船の映像 を探知」した。申立て書は、この時点で当直士官が二つのことをなさねばなら なかったと示唆している。一つは「航行指針に従って艦長に報告した上で避航 措置について指示を受け」ること、いま一つは「大きく右転するなり、大幅に 減速又は停止するなど」清徳丸を避ける操船である。 しかしながら、「あたご」はなお「動静監視を十分に行っていなかったので、 清徳丸と衝突のおそれがあることに気付かなかった。3 時59 分少し前に、当 直士官が各紅灯の方位を確認して「右20 度の漁船のCPA(最接近距離)が近 い」と言ったので、信号員が8 海里レンジのレーダー画面をチェックした。右4 海里あたりに3 隻のシンボルを認め、そのうち「あたご」の航路に近いシンボ ルを「針路260 度及び速力3 ノット」と読み取った。そこで著しく遅い「これ ら3 隻はいずれも艦尾方を通過するものと予測した。」この期に及んで、なお 「方位落ちる」幻想を脱することができなかったのである。人間の幻想に機械 までが同調するのであろうか。15 ノットで走る漁船を先には「1 ノット」、こ の衝突8 分前の時点で「3 ノット」と示すレーダーをどう理解すればよいのだ ろうか。 4 時3 分、幸運丸が右16 度1.3 海里に上っているのに信号員が気付き、当直 士官に「右の漁船、増速、方位上る」と報告した。当直士官はこれをレピータ ーで確かめ、更に「8 海里レンジとしたレーダーで幸運丸が艦首方を通過する ことを確認した。」これまで足が遅く、「あたご」の後方へと「方位落ちる」 と想定していた4 隻が、依然右前方にあり、そのうちの1 隻が「あたご」の後 方ではなく、前方を横切ることが明らかとなった。それでも、それを1 隻のみ の「増速」とみて、他の3 隻については双眼鏡を使用して目視しただけで、特 に注意を払わなかった。 この時点で、清徳丸は約1 海里(1852 m)に接近していた。レーダーの中 でシンボルを付けられていた清徳丸の映像は、「レーダー画面中心部の海面反 射を抑制する不感帯に入って」表示されなくなった。清徳丸のシンボルは、後 方の金平丸に乗り移ったが、そのことに気付かなかった。 15 ノットを1 ノットや3 ノットとしたり、1 海里以内に入ると消えたり、表 示が近所の船に乗り移ったり、一般人には想像もつかない話であるが、それだ けレーダーのみに頼らず、海のプロたる人間がしっかり認識し操船せねばなら ないということであろうか。 - 18 - しかし、人間の錯誤が続く。レーダー上で金平丸に乗り移った清徳丸のシン ボルは、「あたご」前方を通過するものと判断された。4 時4 分、これを複数 のレーダーで監視しているCIC(戦闘情報センター)が「5 度、5000 ヤード(2.5 海里)に映像を探知」した。「5 度」とは、真方位(北に対して)「5 度」の意 味である。CIC は艦橋の見張り員に対し「5 度、5000、何か視認できないか」 と質した。見張り員は、「5 度」を「あたご」艦首に対するものと誤解し、そ の方向に、前方を横切る直前の幸運丸を見出して報告した。 錯誤の中で、その時が来た。4 時6 分、艦橋の左にいた信号員が、艦尾を通 過すると予測していた漁船の灯火を確認しようと右舷側を見たところ、至近に 清徳丸の紅灯を視認、「漁船増速、面舵」と当直士官に告げた。 当直士官は艦首を通過したばかりの幸運丸のことと思い、前方を見ていたと ころ、信号員が「近い、近い、近い」と連呼しながら右舷ウィングに出て行こ うとした。 4 時6 分少し過ぎ、当直士官は、身を乗り出して窓に近づき、海面を覗き込 んで清徳丸の紅灯を視認、「両舷停止、自動操舵止め」を命じた。距離は100 メートル以内に迫っていた。 4 時6 分半わずか前、当直士官は艦首に向っている清徳丸の船影を月明かり で視認し、直ちに汽笛で単音の連吹を行い、「後進一杯」を令した。右舷ウィ ングへ出た信号員は、探照灯を清徳丸の船尾付近に照射した。 100 メートル以内に迫ってから、7,750 トンの護衛艦が何をしても、ほとん ど航行に変化を起せない。申立て書は言う。「原針路及びほぼ原速力のまま、 その艦首部と清徳丸の左舷中央部が衝突した。」 申立て書によれば、「あたご」「清徳丸」の双方とも、自動操舵で衝突軌道 を直進していたことになる。「清徳丸」がどの時点で「あたご」の接近に気付 いたか明らかではない。「あたご」側は100 メートルに迫ってから、ようやく 「清徳丸」に気付き、「清徳丸」が増速しつつ右に舵を切って「あたご」の前 方を横切ろうとしたと見た。ただ、「増速」の前提は、遅くて方位の落ちてい く漁船という誤認である。 申立て書は言う。「清徳丸は、あたごが避航動作をとらないまま間近に接近 したが、大幅に減速又は停止するなどして、「あたご」との衝突を避けるため の最善の協力動作をとることなく、大きく右転し、279 度に向首して進行中、 原速力で前記のとおり衝突した。」 しかし、「清徳丸」側の「最善の協力動作」の不在が、「あたご」の責任を - 19 - 免ずるものでないことは言うまでもない。 (3) 問題点 まず、「清徳丸」は「あたご」の右側から接近した。航海のルールはこの場 合、「あたご」に避航の義務を課してる。「あたご」は全くそれを行っていな い。小回りの利く小船の方が避けることが多いという海面におけるならわしは、 「あたご」の過失をいささかも正当化するものではない。 より根本的に深刻な問題は、艦橋に立つ2 組の当直チームが、1 分前まで「清 徳丸」を認識できなかった点である。11 ~ 12 名が艦橋に林立して監視しなが ら、誰一人最も危険な目標を見出せなかったことを、どう理解すればよいのだ ろうか。基本的な事態認識ができないことほど、安全保障と防衛を担う者にと って耐え難いことはないであろう。 海技訓練のはじめに、入門者がABCとして教えられることの一つは、自船 から見て方位の変わらない船こそ、自船への衝突軌道に乗っている恐るべき存 在だということであるという。先に見たように、右舷にあって方位が右へ落ち て行く目標に衝突の危険はない。逆に方位が左へ上る目標は自艦の進行前方を うかがっているのであり、距離と速度との関係で要注意である。それよりも危 険なのが、艦橋から見て同一方位にあり続ける目標である。夜であれば、左右 いずれにも動かない灯である。 「あたご」艦橋の海の男たちにとって、もちろんそんなことは常識であろう。 ならば、なぜそのような存在であった「清徳丸」を認知できなかったのか。不 運もあった。レーダーが漁船の動きにつき「1 ノット」や「3 ノット」と示し た。前直も現直も、時に間違いを起こすレーダー表示のみで「方位落ち、危険 なし」と見切りをつけることなく、しばし継続監視を行い、ジャイロコンパス レピーターを用いて方位と動きを測定し、漁船群の中で一番近く、方位の動か ない「清徳丸」を見出さねばならなかった。 当直士官は、現場責任者として自ら以上の判断をなすべきであるが、同時に チームを統率し、機能を分担する当直員を有効活用する責を負う。その点で、 左右ウィングの見張り員を、やさしさから艦橋内に招き入れ、漁船群が視認さ れるようになった後も、外へ出てしっかり見張るよう指示しなかったことは誤 りであった。もし、外へ出て右ウィングの見張りに漁船群を注視するよう指示 していれば、「清徳丸」を妥当に認識した可能性は高かったと思われる。「右 舷のウィングに出て行こうとした」とか、「窓に近づき、身を乗り出した」と - 20 - いった行動は、艦橋内で見る限界を外の見張りが補う意味を持つことを示唆す るであろう。 艦橋で当直の任にあった個々人の責を問えば済むのであろうか。前記申立て 書によれば、艦長は「護衛艦あたご航行指針」を定めていたが、それは徹底さ れていなかったと指摘している。例えば、他船とのCPA(最接近距離)が2,000 ヤード(約1 海里)以内と予測される場合は、5 海里に接近するまでに当直士 官は艦長に報告すべきと定めていたが、艦長は何の連絡も受けなかった。 艦橋とCIC のレーダー電測員との連絡に齟齬が多かった。3 時40 分に艦橋 が漁船群を視認した際の報告をCIC は聞き逃した。3 時58 分段階で、CIC は 漁船4 隻を捕捉(この時は、「清徳丸」は2.9 海里の距離)したが、艦橋と連 絡をとっている電測員に伝えなかったため、当直士官には報告されなかった。 艦首に対する5 度と真方位の5 度を取違えて理解しあった。 ハワイでの性能確認試験での緊張を、太平洋の帰途はゆるめたのであろうか。 ゆとりある5 直体制をとり、艦長は当直士官に基本的に任せ、各人の自覚ある 行動をまち、航行指針にもとる行動を一々とがめたりしない方針であったよう に見える。もし艦長が早くに昇橋していれば、艦橋内の緊張と士気は高まった であろう。他の船跡も稀な太平洋ひとりぼっち状況から、日本近海に近づき、 もう一度厳しい緊迫感をとり戻すべきときに、一瞬早く危険な事態を迎え、重 大な認識の誤りを犯した「あたご」であったと言えよう。 なお、「あたご」事案については、事故発生後、防衛大臣や総理大臣に報告 がなされるまで約2 時間を要したことから、幕僚監部と内部部局における緊急 時の情報伝達システムの問題が改めて浮き彫りにされた。 5 前事務次官の背信 守屋武昌前防衛事務次官は、昭和63 年に防衛局運用課長となって以来、20 年 近くにわたり、防衛庁(省)内部部局の中枢を進んできた。有力者らしく毀誉褒 貶ともに多い人であったが、その退任後に公務の裏側が明らかになるとともに、 社会も防衛省関係者も唖然とするばかりであった。様々な報道と記事があったが、 まだ裁判が始まったばかりであり、事実関係が確定されたわけではない。ここで は、去る4 月21 日の東京地方裁判所における検察側冒頭陳述を参照しつつ事案 の輪郭を探り、最終的な判断を留保しつつも、あるべき対処の方向を考えたい。 守屋前事務次官は装備局航空機課長であった平成2 ~ 4 年頃から、株式会社山 - 21 - 田洋行の宮崎元伸専務取締役と、次期支援戦闘機のエンジンをめぐって話し合う 間柄になり、防衛政策課長となった平成6 年頃からゴルフの接待を定期的に受け るようになった。接待・供応については、守屋前事務次官自身が国会の証人とし てすでに認めたところである。平成19 年8 月に事務次官を退任するまで約13 年 にわたって、月3 ~ 4 回の日帰りゴルフ、年1 ~ 5 回のゴルフ旅行の接待を受け、 金品の供与も様々な機会に受けたとされる。 全自衛隊員に綱紀粛正を呼びかけ、公務員倫理規程の励行を求める最高幹部が、 自らについては全く正反対の行為を恣にしていたことは、省内と社会に衝撃を与 えた。また、これほど遊興に時間を割いて、国家安全保障を担当する省の最高幹 部が務まるのかとの疑念と憤りをも招いた。 より一層重大な問題は、接待や金品供与を受け前事務次官が職務を通じて便宜 を供与したか否であり、収賄罪をめぐって裁判は争われる。本人は全面的には容 疑を認めていない様子であるが、検察側の陳述は、次のようにかなりの多くの調 達につき、宮崎らの利益に沿って職権や影響力の行使を試みたとしている。 ・化学防護車にドイツのヘンセル社製FOX を推す(平成11 年、日本の道路 事情に不適合で、実現せず。官房長時代)。 ・山田洋行がBAE システム社の見積書を改ざんしたことが発覚した際、自 発的減額変更申請で済ます穏便な処理へ誘導(平成14 年、防衛局長時代)。 ・掃海・輸送ヘリMCH-101 用エンジンにロールスロイス社製を採択するこ とを抑え、GE 製の検討を要求(平成14 年、防衛局長時代)。 ・生物偵察機材にスミス社製を、随意契約により選定するよう指導(平成16 年、実現。以下、全て事務次官時代)。 ・ロッキード・マーチン社の長距離大型地対地ミサイルATACMS の購入を 提案(平成15 年-平成17 年、実現せず)。 ・次期輸送機C-X 用エンジンにGE 社の販売代理店である日本ミライズを推 す(平成19 年、実現)。 ・新型護衛艦19DD 用エンジンにロールスロイス社だけでなくGE 社製を併 用するよう指導(平成19 年、実現に傾いたが、事務次官退任後再変更によ り実現せず)。 ・早期警戒機E-2C のアップグレードを促進(平成19 年、実現)。 かなりの年月を要するであろう最終判決まで、決めつけることには慎重でなけ ればならないが、一定の根拠を持ってこれだけの立件がなされたことを厳粛に受 - 22 - け止めねばならないであろう。 ここに列記されていることは、公務員として、高級官僚として最もしてはなら ない背信行為である。ルールを知り、その遵守を全隊員に求めつつ、自らは長期 にわたり踏みにじってきただけではない。調達に当たってはセクショナルな部分 最適化ではなく、国家的必要に沿った全体最適化を求めねばならないところ、も しここに書かれたことが事実であれば、個人最適化のゲームを密かに演じていた ことになる。国民の納めた税を無駄なく有効に用いるのは全ての官僚に課せられ た任務であるが、税による調達に際して私的利益へのキックバックを動機の一つ とすることは、最も忌まわしい背信行為である。内部部局官僚が誇るべき職務意 識(プロフェッショナリズム)から最も遠いと言わねばならない。 前事務次官は、省移行をはじめとする懸案実現に手腕を示し、省内に大きな力 を振った。大臣による文民統制に服するよりも、自らを組織意思の体現者と自負 していたように感じられる。前事務次官は、大臣から退任を求められた際、次の 事務次官の選定を問題にし、防衛省生え抜きの者でなければならないとの反論を なしたとされている。そのことは、大臣(文民)ではなく、事務次官(文官)中 心の省という思想を前提にしてないだろうか。政治による大局判断を補佐しつつ 服し、その実現のために専門技術を駆使して支えるという職業意識を文武の官僚 は求められる。 本会議にとって重要な関心は、前事務次官が防衛省組織の中で誰からもチェッ クされることなく、頻度高く業者から接待を受け続け、また調達について個人的 利益のために職権に基づく影響力を行使したと疑われることである。有力な高官 による恣意的な行為が放置される防衛省を改めねばならない。 6 諸事案の総合検討 ここでは、すでに論じた4 事案を含め、以下の9 事案を総合的に検討すること とする。これらの事案は、(1)武器管理、(2)文書・情報管理、(3)事故、(4)前事 務次官の背信、の4 分野に区分されよう。 (1) 武器管理をめぐる事案 ① 東富士演習場の射場における違法射撃H6( 94).11.16 ② 舞鶴港での護衛艦「はるな」20 ミリ機関砲不時発射H11.( 99)2.18 (2) 文書・情報管理をめぐる事案 - 23 - ③ 「とわだ」航泊日誌誤破棄H19( 07).7 ④ 業務用データの部外流出「あさゆき」(H18( 06).2)ほか ⑤ イージス情報の部内流出H19( 07).1 まで ⑥ インド洋での給油量取違えH15( 03).2 発生、H19( 07).10 問題化 (3) 事故 ⑦ 「しらね」火災H19( 07).12 ⑧ 「あたご」衝突H20( 08).2 (4) 前事務次官の背信 ⑨ 前事務次官の供応・収賄容疑H19( 07).8 まで 自衛隊は、国家安全保障のための最終機関であり、日本における究極の実力組 織である。憲法と国策により「専守防衛」の制約が設けられているが、もちろん 国内における実力組織として保有する武器・装備は、他の機関と比較できない強 大さである。 それだけに、武器の管理は、自衛隊の重大な職責である。もし管理されざる武 器使用が行われるならば、国民は大きな不安を覚え、改めて「軍事実力組織から の安全」を求めねばならないと感じるであろう。国際的にも日本国家の信用が揺 らぐであろう。つまり自衛隊がその保有する武器を自律的に間違いなく管理して いることが、文民統制を進んで受け入れている民主主義社会の軍隊であることの 証なのである。些細な武器の不正使用にも厳しい目が注がれる所以である。 はじめに①東富士演習場の射場における違法射撃事案に注目したい。 平成6 年(1994 年)11 月16 日、東富士演習場内の小火器戦闘射場での射撃訓 練には、3 名の部外者が招かれていた。そこで二種類の不正射撃が行われた。 一つは、部外者の携行した猟銃を、演習指揮官であった第1 空挺団普通科群長 が借りて、自ら試射した。二つは、群長が部外者に射場での小銃及び機関銃射撃 を体験させたのである。群長は市民・支持者との友好関係増進のため、望ましい と思ったのであろうか。官民の違法な射撃交流となった。 本事案それ自体以上に、陸上自衛隊内における取り扱いが、新たなより大きな 事案を作り出した。 事実を知った第1 空挺団長らは、安全管理の徹底した射場内でのことであり、 - 24 - 社会に迷惑は及ばないので、軽く扱いたいと考えた。服務を担当する陸上幕僚監 部の人事計画課長は、管理された自衛隊の射場内で自衛官が猟銃を撃ったことだ けが報告の対象となったため、人に危害を与えたわけでもないので、公にしない 処理が望ましいと考え、内部部局にも報告せず、猟銃試射のみを内々軽微に処置 する方針をとった。 ところが、5 年を経た、平成12 年(2000 年)1 月になって、この処置につき、 報道関係者から疑問が提起され、防衛庁長官は徹底的な調査を命じた。その結果、 二種の不正射撃が明らかとなり、群長は銃刀法違反容疑で逮捕され、懲戒免職、 陸上幕僚監部人事部長及び人事計画課長が停職20 日の処分を受けることとなっ た。 この事案が陸上自衛隊全般に与えた影響は大きい。不祥事が起こったとき、社 会的非難を恐れて表沙汰にするのを避け、当人たちの地位と組織の体面を守ろう とする傾向が、自衛隊組織には(のみならず、全ての組織に)、根深く存在する。15 万人を擁する陸上自衛隊全体が一朝にして変わることは不可能であるが、少なく ともこの事案を契機に、陸上自衛隊幹部は考え方を変えたように思われる。不祥 事を隠蔽しようとすることこそが破滅的な結果を招く。問題が生じたら、直ちに 上部機関に報告し、社会に公表して全力で対処に当たる方針を示して陳謝する。 それ以外にない、という対応が陸上自衛隊内で優勢となったように思われる。い わば政治社会の文民統制に服する姿勢である。 その点で気にかかるのが、平成19 年(2007 年)2 月14 日の中部方面総監部(兵 庫県伊丹市)におけるUSB紛失事案である。 今では、海上自衛隊や航空自衛隊だけでなく陸上自衛隊も日米共同訓練を行っ ている。YS 訓練と呼ばれるコンピューター画面を日米で結んでの模擬演習であ る。日本側は各方面総監部持ち回りで主催しており、平成19 年(2007 年)は2 月8 日から16 日まで中部方面総監部がホストした。 共同訓練が幕を閉じようとしていた14 日、調査部資料課において課員が、共 同演習に使用するシステムの概要や利用案内などを記した可搬記憶媒体(USB メモリ)を机の上に残したまま帰宅し、翌日それが課員の机の中の2 千数百円な どとともに紛失していた。 警務隊の捜査により、4 月11 日、同課の1 等陸尉が犯行を自供した。USB メ モリはゴミ捨て場に投棄したという。 この事案について、方面総監部もしくは陸上自衛隊内で情報の隠蔽があったの - 25 - ではないか、との疑いが一部に持たれた。 そうだとすれば、陸上自衛隊が先の違法射撃事件を扱った際の隠蔽体質は、何 ら変わっていないことになろう。 事実は、紛失したUSB メモリには秘密情報は含まれておらず、「注意」扱いの 文書であった。また方面総監部は3 月2 日、陸上幕僚監部に対し本件を報告し、 陸上幕僚監部は内部部局の人事教育局へ3 月上旬報告した。内部部局は秘密情報 が含まれていないので、規定に従い、これを防衛大臣に報告せず、米国にも伝え なかった。とりたてて問題はないように思われる。 にも拘わらず隠蔽を疑われたのは、一つには、陸上自衛隊には違法射撃事件の ような「前科」があり、同種の事案と感じさせたからであろう。二つには、方面 総監部がUSB メモリ紛失については公表せず、犯人の1 等陸尉の処分発表の際 も金銭の件を理由とし、メモリの件は伏せたからであろう。それを平成20 年6 月に至って記者が知るに及び隠蔽を疑って報道したのである。防衛省はメモリ紛 失を伏せた理由を、それを公表すれば未回収の紛失データ探しを社会的に助長す るなどの弊をあげている。未回収捜査中のときはともかく、処分を行う5 月下旬 段階で、なお伏せねばならない十分な理由があったか否かについては、情報事案 をめぐる広報方針全般にかかわる検証が必要であろう。 ある事案を重大に受け止めて、組織的な対処方針が根本的に変わり、それが組 織全体に浸透して、その種の不祥事が大きく抑制されるに至ることが時に起きる。 その種の組織変革として、前述の情報管理をめぐる、平成18 年2 月の「あさゆ き」事案後の全庁的な「抜本的対策」をあげることができよう。業務用データの 持ち出しに関するチェックが全省的に行われ、入念を極めた。翌年には、業務用 データの暗号化の措置もとられた。技術革新は速く、攻防が止むことはあるまい が、とりあえず情報流出防止措置は徹底されたと見てよいのではないかと思われ る。 ②舞鶴港での護衛艦「はるな」20ミリ機関砲不時発射は、理解困難な事件であ る。平成11 年(1999 年)2 月18 日、舞鶴港における護衛艦「はるな」の高性能20 ミリ機関砲(CIWS)の発砲回路試験中、混入されていた実弾2 発が不時発射さ れた。その原因はCIWS を管理する員長が、計画弾数と発射弾数が一致すること が技能の高さを示すものであると誤って認識し、そうであるように見せかけよう と、残った実弾2 発を砲の中に隠した。それがテスト中に発射されたのである。 - 26 - 機関砲の責任者が、技量評価について誤った思い込みをし、それが正されなか った。その誤認に基づいて、実弾を隠すという偽装工作まで行うとは、どういう 精神状態であろうか。ルールを守り、正直であるという基本的モラルを見失った 者が、高性能砲を扱う員長でなぜありえたのか、理解に苦しむところである。 そして、この件についても事故の取り扱いが問題を拡大した。「はるな」艦長 から順次上に報告されたが、護衛艦隊司令官が、民間への被害がないので自らの 職責で対処しうると考え、上級司令部等へ報告しなかった。そのことが違法射撃 事案と同じく、不祥事の組織的隠蔽として糾弾されることとなった。 現代世界の軍事組織にあって、文書・情報の管理は武器管理と同様に重要であ る。情報と認識をめぐる競争が、武器をとっての戦いに劣らず事態を左右しうる。 すでに見たように、④業務用データの部外流出の頻発は隊員の情報保全意識の 欠如と、急速な通信情報分野の技術革新に自衛隊がついて行けなかったことに起 因していた。 ⑤イージス情報の部内流出は、最先端技術への学習教育意欲が情報保全意識の 欠如と結びついて生じたものであった。 双方の事案とも、情報保全をめぐるルールを厳格に励行するとともに、省全体 として現代の技術水準における情報保全システムをたえず再構築する努力を要求 するものであろう。 それに対し、③「とわだ」航泊日誌誤破棄事案は、素朴きわまるルール誤認に よるものであった。航泊日誌についての文書管理ルールは、1 年間艦内で保存し、 その後、更に3 年間は地方総監部において保存することを定めていた。平成19 年(2007 年)7 月、「とわだ」航泊日誌の整理・処分に当たった3 等海曹Aは保 存期間を2 年と誤解しており、2 等海曹Bに対し、その理解で正しいか確認を求 めた。Bは「2 年でなく3 年である」と、これまた誤った認識を持って答えた。 1 年プラス3 年で4 年間は保存すべきところ、3 年保存すればよいと2 人は誤 解し、平成15 年分の航泊日誌を裁断・破棄してしまったのである。インド洋派 遣中の航泊日誌が翌月求められる事態となり、この誤った処置が明らかとなった。 この件を受けて、防衛省が調査を行ったところ、同様の誤破棄が3 隻の護衛艦そ の他でも行われていたことが判明した。 隊員のルールへの無知・誤解が問題であるが、それに劣らず文書の破棄処分に 際して、責任ある幹部の決裁を得るルールが確立していないのは驚くべきである。 - 27 - 航泊日誌の文書管理は、隊員が勝手に破棄してよい程に軽く認識されていたので あろうか。 そのことを、誤りを犯した個々人のみの問題に留めてはならない。ルールを明 確にし、それを隊内に徹底するのは組織全体の問題であり、リーダーシップの責 任である。 同じことは⑦「しらね」火災事故についても言える。平成19 年(2007 年)12 月14 日、横須賀停泊中の「しらね」のCIC(戦闘情報センター)から出火し、CIC を全焼し、約7 時間を経てようやく鎮火した。火災の原因としては、冷蔵庫の上 に置かれた缶コーヒー等を保温するための冷温庫が疑われている。家電製品を艦 内に持ち込む際の申請手続が定められていたが、冷温庫についてその手続きが踏 まれていなかった。また、冷蔵庫と冷温庫はAC100V の電圧用のものであった が、艦内の電圧はAC115V であり、用いるべき変圧器を用いていなかった。誠 に些細なことから、海上自衛隊の誇る護衛艦の中枢部を大きく痛める結果となっ た。ルールを適当に扱い、細心の注意を欠いた行動が原因であり、規律のゆるみ が広がっているのではないかと気にかかるところである。 ⑧「あたご」衝突事案もすでに見たとおり、ルールを厳しく励行して任務を立 派に完遂しようとの艦内の息吹が感じられない。規律のゆるみと航海技量を疑わ せる事態を招いた。気のゆるみ、ちょっとしたルール無視の組織的蔓延がどれほ ど恐るべき結果を招くかを教える事案である。 同じく文書・情報管理をめぐる事案であっても、いささか趣を異にするのが⑥ インド洋での給油量取違え事案である。技術的な入力ミスに基づく誤情報を、海 上幕僚監部防衛課長が統合幕僚会議議長に提供したこと以上に、それが翌日に誤 った情報であることを認識しながら、訂正しなかった不作為の作為がより重大な 問題である。そこには違法射撃の事実を公にしないよう画策し、内部部局にも報 告しなかった①②の事案と通じる情報操作による不服従の要因が感じられよう。 これら中堅幕僚や幕僚監部による事実の隠蔽と情報操作は、単純なルール無知 ・誤認や規律のゆるみというレベルを越えて文民統制への不遜な不服従を含意し ているのではないだろうか。陸上幕僚監部が違法射撃の件を機に21 世紀を迎え る年に示した変化が、徹底されることを望みたい。 本会議は、限られた情報を基に事案の究明・分析・対処を試みてきたが、それ は不完全で仮説的であっても、建設的な方向性へと導くことの重要性を感じたか - 28 - らである。 近年における諸事案を再検討する中で、興味深い事実に行きあたった。航空自 衛隊において、航空事故件数が著しい減少傾向を示している事実である。航空自 衛隊では、航空事故を大中小に区分しているが、ここでは死亡又は機体破壊に至 った大事故のみを見ておこう。 昭和31 年(1956)~昭和42 年(1967)年10 ~ 20 件 昭和43 年(1968)~昭和53 年(1978) 5 ~ 10 件 71 年雫石事故 昭和54 年(1979)~平成12 年(2000) 1 ~ 4 件 平成13 年(2001)~平成19 年(2007) ほぼ0 件 05 年の1 件のみ これほど、顕著な改善がなぜ可能となったのか。機体自体の性能向上もあろう。 日本の整備は国際的に高い水準を誇るが、この間一層の熟達を遂げたことであろ う。しかし多くの事故は人的要因や偶然的要因がからむ。それをどう管理・抑制 するかが、組織の問題である。 かつて昭和46 年(1971 年)に自衛隊機が全日空機と雫石で衝突して大きな犠 牲を出したとき、自衛隊の中でも航空自衛隊が社会的非難の対象であった。この 悪夢の後、航空自衛隊は再発防止に全力をあげたが、それでもほぼ1970 年代を 通じて、5 ~ 10 件の大事故が毎年のように起こった。ようやく80 年代には、年5 件を越えることはなくなった。昭和57 年(1982 年)には航空安全管理隊を創設 した。20 年にわたる努力で、次第に年1 件程度に抑制されるに至ったかと見え たが、世紀末の3 年間(平成10 年(1998 年)~平成12 年(2000 年))に8 件の 大事故が連発した。航空自衛隊は改めて組織をあげて考えられるあらゆることを やることを決断した。監査・監察の制度を最高レベルから部隊レベルまで拡げる とともに、指揮官・隊員の技量と意識の向上に力を注いだ。興味深いのは、人間 と人間の組織が必ず誤りを犯すものと前提(エラートレラント)し、それが事故 につながるのを阻むための方途を制度化する努力である。21 世紀に入って、7 年 間で大事故は1 件のみである。しかし、中事故は5 件も起こっているから油断は できないと航空自衛隊の安全担当者は言う。1 つの決め手があるわけでなく、事 故原因は多様で複合的であり、安全対策も多様で総合的である必要があろう。そ れを全組織あげて完遂しようとする上層部の強い意思が、気風として隊内に浸透 するとき、事故がゼロに近づくこともありうると、このケースは告げているであ ろう。気をゆるめることなく、更なる前進を遂げることを望みたい。 - 29 - 今日の社会にあって、国民の欲する自由と快適さの水準は高い。豊かさと少子 化の結果、子供たちの多くは個室を与えられ不自由なく育てられる。自衛隊員も 概してそのような普通の家庭に育った若者たちである。それゆえ、彼らは自衛隊 に入っての訓練、規律、団体生活の厳しさに、大きなカルチャーギャップを覚え る。 自衛隊は、国家と国民が安全を脅かされる事態において対応すべき組織であり、 任務を遂行できる隊員となるために、高い水準の鍛錬が不可欠である。多くの隊 員はそのことを理解してギャップを超える努力を重ねる。とはいえ、ギャップの 拡大は、隊員募集と教育・訓練の困難を増す。妥協なく高い基準を若い隊員に求 めるとき、「では辞めます」との反応にあえば、上官はたじろぐ。とりわけ長期 の艦艇勤務を要する海上要員にとってギャップを埋めることは容易でない。 自衛隊はこうした困難に屈することなく、全組織的な対応によって規律正しく 有能な部隊を養わねばならない。ここで扱った不祥事を決定的に過去のものとす る再出発の時を迎えねばならない。その意味から、海上自衛隊が、「海上自衛隊 抜本的改革委員会」を設けて検討を開始したことに注目したい。そこでの自身の 手による本格的な検討と対処が、根深い変革をもたらすことを期待するものであ る。 Ⅲ 改革提言(1) ― 隊員の意識と組織文化の改革 1 改革の原則 前章において詳述したように、本会議は、最近防衛省で起こった様々な不祥事 を詳細に分析・検討してきた。その結果、本会議は、このままではいけない、ど うしても抜本的な改革が必要であるとの認識に達した。最近の不祥事は、個別に 観察すれば、それ自体として日本の安全保障を脅かすとは言えない事案も多いが、 全体として観察したとき、我々に小さくない不安を与えるものであった。最高幹 部が規則違反を行い、現場部隊では初歩的なルールさえ守られない。現代社会に おける自衛官としての責任ある意識を欠いた隊員の行動がある。高度な秘密の保 持についての明確な心構えの欠如も見られた。圧倒的多数の自衛隊員がまじめに 任務を遂行していることは事実である。しかし、このままで、日本の安全保障の 根幹を担う防衛省・自衛隊が、緊急事態において真に有効に機能するのであろう - 30 - か。脅威が多様化し、過去の先例のみに従っていては対処できないような複雑な 事態の発生が想定され、しかも実効的で確実な対処が必要な現代の安全保障環境 の下で、適時・適切な対処ができるのであろうか。近年の国際平和協力活動など で諸外国から高く評価されてきた自衛隊だけに、最近の不祥事に見られる規律面 ・行動面・組織面での弛緩現象は、憂慮の念を禁じえないものであった。 このような不祥事の検討・分析を踏まえ、本会議は、如何なる改革がなされな ければならないかを検討した。その結果、以下の三つにまとめられる原則が実施 されなければならないとの結論に達した。更に、現代的な安全保障環境の下で、 このような原則の実施を担保し、しかも、平時から有事にかけて、日本の安全保 障政策が有効に機能するためには、文官と自衛官とが協働して任務遂行を可能と することを含む、大胆な組織改革が必要であるとの結論に達した。 三つの原則とは、 ① 規則遵守の徹底 ② プロフェッショナリズムの確立 ③ 全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立 である。以下に、この三つの原則のそれぞれに関連する具体的措置を提言する。 防衛省・自衛隊が、減点主義に劣らず加点主義を重視する能動的で積極的な組織 となっていくためには、このような原則の具体化が必要である。更にこれを担保 する必要な組織改革については、章を改めて次章で詳述する。 2 規則遵守の徹底 防衛省・自衛隊に対する国民からの信頼を回復するためには、何よりもまず、 幹部職員をはじめとして、法令など様々な規則の遵守という基本に戻らなければ ならない。圧倒的多数の自衛隊員にとって、今更言うまでもないことであろう。 しかし、自らには規則を適用されないと考えた人物が、防衛省・自衛隊の事務方 のトップたる事務次官を務め、自衛隊員の倫理保持の実務上の責任者である倫理 監督官たる地位を有していたということは事実であった。更にルールを自らのも のとして真剣に考えこれを遵守するという態度が徹底していれば、例えば、補給 艦「とわだ」航泊日誌誤破棄事案や護衛艦「しらね」の火災、情報の流出、調達 に関わる業者との癒着といった不祥事案は起きなかったであろう。 隊員一人ひとりに自発的な規則遵守意識が浸透し、組織風土として定着するよ - 31 - う、適切な施策を講じていくことが必要である。同時に、不祥事案の度に積み重 ねられ、繁文縟礼になっている規則類を、基本に立ち返って見直し、不要なもの を整理して、本当に遵守しなければならない規則となるよう改善する必要もある。 (1) 幹部職員の規則遵守の徹底 防衛省の最高幹部であった前事務次官自らが規則を守っていなかったこと は、国民の自衛隊に対する信用を失墜させたのみならず、規則を遵守し日々ま じめに任務を遂行している圧倒的多数の自衛隊員に大きな衝撃を与えた。幹部 自らが規則を守らない組織で、いくら部下に規則遵守を語っても、その効果は ない。規則遵守は、幹部職員が率先垂範するという姿勢から始まらなければな らない。 (2) 規則遵守についての職場教育 隊員一人ひとりに自発的な規則遵守意識が浸透し、組織風土として定着する ためには、職場教育などの施策を講じていくことが必要である。隊員の自発的 な規則遵守を促す最大の要因は、隊員の高い任務意識である。いたずらに規則 遵守の形式を求めるのではなく、規則の制定目的や趣旨を十分に理解させた上 で、自衛隊の任務遂行を担保するための規則遵守という視点で指導、教育を行 うべきである。 (3) 機密保持に関する規則の徹底的遵守 自衛隊の扱う情報の中には、国の安全に直結する重大な情報が存在する。情 報保全のための規則こそ、数ある規則の中でも、特に厳重に遵守されなければ ならないものである。情報保全に対する規則を、それが制定された意味合いを 含めて更に徹底的に周知するとともに、違反者に対しては厳正な処分を行い、 その上司に対しては監督責任を問わなければならない。 具体的な措置として、情報保全機能強化のためにすることは、各自衛隊の情 報保全隊を統合して新設が予定されている自衛隊情報保全隊(仮称)を育成・強 化し、部内の犯罪捜査や規律違反防止などの保安職務を任務とする警務隊が、 現在、陸・海・空自衛隊にそれぞれ設置されているものを統合することにより、 その能力を格段に強化しなければならない。そのため、陸・海・空自衛隊が組 織横断的に連携し、情報の共有を推進するとともに、警察等の捜査機関からの ノウハウの吸収により、情報保全に対する自律的チェック体制を強化する。 - 32 - (4) 防衛調達における透明性及び競争性の確保並びに責任の所在の明確化 防衛調達の意思決定過程から特定業者との癒着など不適切な要因を排除せね ばならない。そのためには、意思決定過程の初期の段階から、その可視化を図 り、透明性と競争性を確保するとともに、責任の所在を明確化することが必要 である。このような視点に立ち、輸入調達に係る監査・監察機能の強化、過大 請求事案に対する制裁措置の強化、外国メーカーとの直接契約の推進、調達職 員の人材育成等の強化など「総合取得改革推進プロジェクトチーム」の報告書 で掲げられた施策を、着実に推進していくことが必要である。更に、個別の装 備品の選定のための意思決定を行う過程において、会議等の記録を作成するこ とを義務づけ、その要点の公表を行う。また、会議録全文も、一定の期間後に は情報公開の対象とすべきである。 また、文官、自衛官を問わず、幹部隊員と特定の防衛関連企業との過度の結 びつきが疑われることは、防衛調達全体の公正性について疑念を生じさせるこ とになる。こうした疑念を生じさせないようにするため、幹部隊員の再就職に ついては、単に形式的なチェックのみならず、新たな職務の内容などに関し従 来に増して厳格なチェックを行うとともに、特に、60 歳定年の幹部隊員の退 職後の再就職については、一般国家公務員の再就職見直しにあわせて、その在 り方を見直していく必要がある。 (5) 監査・監察の強化 防衛監察本部は、職員の職務執行における法令の遵守を始め、職務執行の適 正を確保するため、高い独立性を有した防衛大臣直轄の組織として、平成19 年9 月に新設された。防衛省は、同本部が実施する監察を積極的に活用するこ とにより、防衛大臣からの指示等が徹底しているか、各種規則等は遵守されて いるか、隊員が実力組織に相応しいより強固なプロフェッショナリズムを持っ ているか、規律が維持されているかなど、部隊の状況をつぶさに確認すること が必要である。この結果を受けて、改善に向けた措置を講じていかねばならな い。 そのため、防衛監察本部の体制を強化するとともに、いわゆる「抜き打ち監 察」をその対象を限定せず実施するなど、監察の厳格性、実効性を確保するよ う配慮すべきである。 - 33 - また、調達に関する規律維持のため、あわせて、会計監査機能を充実させる ことが必要である。 (6) 規則の見直し・改善 隊員が守るに値し、自ら必要なものとして規則をとらえるようになるために は、そのような規則の中に任務に合致した合理性があることが認識できなけれ ばならない。様々な規則のうち、不必要かつ形式的なものが残っていないかど うか徹底的に検討すべきである。 特に、情報保全に関しては、安易な秘密の指定が、かえって秘密に対する保 全意識を弱める危険性を注視しなければならない。秘密指定の理由を明確化し、 一定期間を経過した後に原則として情報公開の対象とするルールを確立する必 要がある。この場合、秘密指定が適切に行われていることを確認するため、部 内の専門家による委員会を置くことも有効である。 3 プロフェッショナリズム(職業意識)の確立 規則遵守は、しかしながら、規則だけを考えていて実現するものではない。ま た、規則が遵守されるだけで、組織が高度な機能を発揮することもない。第Ⅰ章 で指摘したように、規則遵守のみでは「ネガ」(否定形)を減らすことだけに終始 してしまう可能性がある。「ポジ」を実現するためには、この規則に則って組織の 構成員が、自らの仕事に誇りを持ち、その組織全体の中での自らの仕事の意味を 理解し、しかも、仕事の内容について高度の知識と技能を保持しつつ積極的・能 動的な行動をとらねばならない。防衛に関するプロフェッショナルである自衛隊 員は、文官であると自衛官であると問わず、自らの任務に関する知識と技能を常 に向上させるための研鑽を怠らず、自らの任務が省内、更には日本社会の中に占 める意味を理解し、より高次の倫理観、使命感、責任感を持って仕事に当たらな ければならない。規則の遵守は、このようなプロフェッショナルに担われてこそ、 組織全体を強固にしていく。このようなプロ意識に裏打ちされた上司・上官・指 揮官が統率してこそ、組織・部隊全体に同様な意識が共有されるのである。自衛 隊が全体として高い士気を維持するためには、幹部職員がまずもって、自らのプ ロフェッショナリズムの質を日々高める努力を行っていかなければならない。 (1) 幹部教育の充実 プロとしての防衛省・自衛隊の再確立もまた、幹部職員から始まらなければ - 34 - ならない。文官であると自衛官であると問わず、「長」の任務に当たる者は、 日々、任務の内容、部下の統率につき研鑽を続けなければならない。このよう な人材を養成するためには、幹部要員の教育プログラムや経歴管理の在り方を 見直すとともに、各自衛隊の幹部学校の見直しや高級幹部に対する教育課程の 統合化を推進していくことも必要である。 文官については、日々の業務に追われ、まとまった教育を受ける機会が十分 に与えられていないことが問題である。また、自衛官についても、米国軍人な どに比べて修士号や博士号の学位や法曹などの資格を有する者が極めて少ない のが現状である。このため、国内外の大学院への留学など、軍事はもとより他 の分野についても幅広い視野を養う機会を積極的に与えていくことが必要であ る。 また、様々な行政経験の機会を与えることにより、旧来の仕来りにとらわれ ない人材を養成していくことが必要である。このため、特に、文官や自衛官に 対して内閣官房や外務省を始めとした他府省に出向する機会を計画的に与えて いくべきである。更に、防衛省・自衛隊にとって、地域社会との良好な関係を 築くことも重要な任務である。地方自治体や基地周辺の住民の考えを十分に理 解することができる人材を養成していかなければならない。 (2) 基礎的な隊員教育の充実 護衛艦「あたご」の衝突など様々な事案が発生した背景として、自衛隊の各 部署における業務量と人員の配置がバランスを欠き、現場部隊等に日常的に過 度の負担が課される結果、隊員の基礎的な教育が行き届いていなかったという 問題があったと考えられる。このような状況を改善するためには、幕僚監部、 司令部、部隊等の各レベルにおける業務量と人員配置を見直すことが必要であ る。特に、日常業務についての必要性・緊急性を見直し、またその優先順位を 厳しく精査して業務の効率化・簡素化を図ることにより、今、最も必要とされ る隊員の基礎的な職場教育の充実を図るものとする。 また、隊員の自衛隊の学校における教育に当たっては、隊員個々に求められ るべきプロフェッショナリズムに重点を置いて、教育体系の見直しを行う。基 礎的な教育の充実強化を図りつつ、陸・海・空自衛隊の統合運用を支える統合 教育の充実強化を図る。 (3) 情報伝達・保全におけるプロ意識の醸成 - 35 - 現代の安全保障において、情報を如何に正確に伝え、しかも必要な秘密を保 全するかは、決定的な意味を持っている。正確な情報伝達と情報保全の分野ほ ど、単なる規則の遵守を超えてプロ意識が必要な分野はない。伝達した情報に 誤りを見出したときに、これを直ちに修正することは、情報伝達の基本である。 また、国の安全に関わる秘密情報は、何があっても守り抜かなければならない。 給油量の取違えの事案にしても、その他情報流出にしても、この面でのプロフ ェッショナリズムが未だに十分確立していないことを物語っている。 また、秘密情報に限らず、未だ意思決定に至っていない情報などを正当な理 由なく部外に漏らすことは、中央組織であると、現場の部隊であると問わず、 自衛隊に対する国民の信頼を損なうおそれがあるのみならず、政府が行う必要 な政策決定を妨害する可能性すらある。国民に開かれた自衛隊が、マスコミと の関係を重視するのは当然のことであり、必要な情報は適時にマスコミに提供 すべきである。しかし、情報発信が無分別であってはならないことは言うまで もない。 たしかに、防衛省は、平成12 年の幹部自衛官による秘密漏えい事件を始め とした過去の情報流出事案を受け、情報保全体制の見直し等を行い、他府省よ りも先進的な情報保全体制を構築してきた。それにもかかわらず、秘密情報の 流出事案が繰り返されてきた事実を厳粛に受け止めなければならない。情報伝 達及び情報保全についての教育の見直しは不可欠である。文官、自衛官を問わ ず、幹部も含めて、全ての隊員と部隊を対象とした情報関連教育のプログラム を作らなければならない。 また、安全保障に関する情報に関しては、単に保全するという心構えだけで なく、我が国の秘密情報を取得しようとする意図的な試みに対して、カウンタ ーインテリジェンスの仕組みを整えていかなければならない。防衛省において これまで実施されてきたカウンターインテリジェンス機能の強化対策を徹底す るとともに、内閣官房に置かれているカウンターインテリジェンス・センター を活用する必要があろう。同センターは、防衛省を含む各府省に対し、カウン ターインテリジェンスに関する政府統一基準の達成状況を評価し、改善の助言 を行うなど、官邸を交えた全政府的な重層的チェック体制を構築することが必 要となる。 更に、IT の重要性が増す中で、情報セキュリティ対策をより一層強化する ことが必要である。そのため、内閣官房の情報セキュリティセンターが行って いる政府横断的・統一的な情報セキュリティ対策を着実に進めるとともに、各 - 36 - 府省に対する対策実施状況の検査・評価を厳格に実施せねばならない。情報セ キュリティに関する重層的な評価と対処が必要である。 4 全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立 現代の安全保障環境に適合し、不祥事を防ぐためには、規則遵守の徹底、プロ フェッショナリズムの確立という、主として個々の隊員の行動を念頭に置いた改 革に加えて、組織の運営の仕方についても改革を進める必要がある。個々の隊員 への教育や研鑽を支え、更にプロフェッショナリズムを生かしていくためには、 組織文化とも言うべき領域における改革も必要である。 その際、打破しなければならない組織文化とは、第1に、全体最適よりも部分 最適を重視する組織文化であり、第2に、任務に着目してこれの実現のために日 々改善を遂げようとする意欲に乏しい消極的・受動的組織文化である。すなわち、 必要な改革は、まず、組織における基本的な考え方であり行動基準である。防衛 政策の実現に当たっては、防衛省・自衛隊全体として何が最適になるのかを常に 考える文化を定着させることであり、新たな環境の下で次から次へと生じる新し い任務を、よりよく積極的・能動的に実現しようとする文化である。 全体最適をめざした任務遂行型の業務運営のためには、以下の方策が必要であ る。 (1) 文官と自衛官の一体感と陸・海・空の一体感の醸成 今後の安全保障政策の遂行に当たって、文官と自衛官の区別がなくなること はないし、陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の区別がなくなることもない。 政府を構成する1 つの省としての防衛省が、国全体の中で整合的に運営される ためには、政策企画文書作成、法令案作成、人事管理、国会対策などに関して 専門的知識と経験を有する文官が必要である。また、軍事実力組織としての自 衛隊を実効的に整備・運用していくために、国内外情勢を踏まえた戦略眼を持 ち、企画立案能力や人事管理能力の優れた人材を、自衛官の中にも数多く養成 していかなければならない。そして、陸・海・空のそれぞれの任務への誇りと アイデンティティを持ち、それぞれの術科に通じた精強にして規律正しい部隊 が必要である。 しかし、文官と自衛官の区別、そして、陸・海・空の区別は、現代の安全保 障環境の中では、かつてほど截然と分けられるものではなくなってきている。 文官もまた軍事専門的知識を保持しなければならないし、自衛官もまた国際環 - 37 - 境や国内社会の在り方に高度の見識を持たなければならない。いずれにしても、 文官と自衛官で別々の防衛省や自衛隊があるのではなく、一つの防衛省と自衛 隊があるのである。文官と自衛官は、防衛省・自衛隊という全体最適のために 協力しなければならない。また、陸・海・空という各自衛隊のアイデンティテ ィや伝統は異なるにしても、それぞれが別の国を守っているわけではない。一 つの日本を守っているのである。あらゆる局面で、文官と自衛官が協働し、陸 ・海・空が協働するとの精神が徹底しなければならない。そのために、次節で 詳述するように、組織的にいって、内部部局においても統合幕僚監部において も、整備部門においても、文官と自衛官、そして陸・海・空の自衛官を混在さ せるなど、緊密に協働する体制を作らなければならない。 (2) PDCA(Plan Do Check Act:計画・実施・評価・改善)サイクルの確立 全ての任務において、体系的な遂行体制が実現しなければならない。具体的 には、企業経営の分野などで強調されるPDCA サイクルの考え方を防衛省・ 自衛隊の各部門でも常に意識していかなければならない。PDCA サイクルとは、 プロジェクトの実行に際し、計画を立て(Plan)、実行(Do)し、その評価(Check) に基づき改善(Act)すると言う過程を継続的に繰り返す仕組みのことをいう。 各自衛隊においても、隊員がその任務意識を共有し、適正な任務遂行ができて いることを検証するため、自律的なPDCA サイクルを確立していくことが望 まれる。そのため、指揮官が、自らの部隊等における任務遂行、規則遵守や規 律維持の向上について、具体的な行動計画を策定し、それに基づいて指導、評 価を行い、計画に沿っていない点を検証し、改善に向けた措置を講ずる仕組み を作る必要がある。前述の「監査・監察の強化(Ⅲ-2-(5))」は、このための 貴重なデータを提供するであろう。 (3) 機能する基本組織単位(部隊など) 様々な形の全体最適を実現するといっても、軍事実力組織としての自衛隊の 基本単位は部隊であり、部隊が適切に機能しなければ、全体最適どころか部分 最適さえ実現しない。様々な不祥事において、この基本単位に機能不全が起き ていたこと、チームワークが機能していなかったことが確認されている。基本 単位を統率する指揮官と部下との間に、規律正しく、活き活きとした任務遂行 関係を生み出さなければならい。そのためにも、上述のPDCA 手法によって、 業務の課題を常に可視化(目に見えるものと)し、これを隊員一体となって実 - 38 - 現・検証していることがなされなければならない。防衛省・自衛隊は、かかる 指揮官の努力を支援し、評価して不足点の改善を促すための一貫した方針を持 ち、全組織的なチェック体制を確立しなければならない。 その際、民間企業などで行われているいわゆるカイゼン方式などを参考にす るのは有益であろう。中央は、各部隊が業務改善を進めるに当たってのガイド ラインを策定し、一方、各部隊は、それを参考にしながら自律的な業務改善を 進めるとともに、改善内容を幕僚監部に報告し、それがガイドラインに反映さ れる仕組みを確立することによって、一部隊の優れた改善提案を組織全体に波 及させる必要がある。 (4) 部局間の垣根を越えたチームによる課題への対処 政策課題に対し、各局、各幕僚監部の立場を離れた全省的な観点から検討を 行うことができるよう、政策課題毎の組織横断的なプロジェクトチーム(政策 形成過程におけるIPT ※手法の導入)を作り、機動的に対応していくことも重 要である。 このような、個々の人材の役割を固定しないプロジェクトチームにおいて文 官と自衛官が一緒に仕事をすることにより、相互の研鑽が図られるとともに、 両者の一体感の醸成が期待できる。 ※ IPT の概要については、次の「(5)防衛調達におけるIPT の推進」の記 述を参照のこと。 (5) 防衛調達におけるIPT の推進 特別な技術に依存し、数多くの業者が供給力を保持するという条件の整わな い防衛調達に関しては、民間企業や他国の防衛部門で実施されつつあるIPT (Integrated Project Team)による調達方式を本格的に導入すべきである。装備品 などの構想、開発、量産、運用から廃棄に至るライフサイクルについて、明確 な責任体制の下、関係する部門や利害関係者を一堂に集め、情報共有と意見調 整を図る組織横断型チームをIPT というが、この手法は、トヨタなど競争力の ある民間企業で発達したものであり、各国の防衛部門でも実施されつつある。 コスト管理においても、品質管理についても、全体最適を達成する試みとして 実現すべきである。目標と情報を共有するこのチームが機能すれば、調達への 不当な介入や不祥事が発生する余地を極小化することができよう。次章で提言 - 39 - するように、このIPT 手法が機能するために必要な組織改革も実施しなければ ならない。 (6) 統合運用体制の促進 (1)で強調した全体最適をめざした「陸・海・空」の協働を具体的に促進する ため、統合幕僚監部を中心とする統合運用体制を更に実効あるものとしていく 努力を重ねなければならない。特に緊急時・重大事における情報の伝達などに 関して、セクショナリズムや他の部門への責任転嫁の対応が起こらないような、 体制を整備していく必要がある。 (7) 組織として整合性のとれた広報 民主的文民統制の重要な柱の一つは、主権者である国民に対する説明責任を、 政府・防衛省が適切に果たすことである。「正しい情報を」「より早く」伝え ることは極めて重要であり、そのための体制を平時・有事を問わず整備してお くべきである。 ア) 平時における広報の在り方 同一事項に関して防衛省内の各組織が独自に整合性のとれていない形で情 報を発信すれば、国民に対して大きな誤解を与え、ひいては、防衛省・自衛 隊に対する国民からの信頼を損なうことにもなりかねない。広報分野におい ても、基本的な考え方において整合性のとれた全体最適をめざした広報体制 を構築していく必要がある。このため、省幹部の記者会見や防衛省・各自衛 隊の情報発信について、内部部局に置かれている報道官の下で一元的に把握 し、整合性のとれたものとする体制を構築する必要がある。 また、部隊にあっては、マスコミの取材を通じて国民に実態を理解しても らうことが重要である一方、中央の方針と一致しない見解を述べることによ って組織全体への信頼感を損なうおそれもないとは言えない。このため、中 央における各機関のマスコミ対応だけでなく、部隊等におけるマスコミ対応 のルール化を図ることが必要である。あわせて国民との直接対話、広聴の機 会も一層充実させることも重要である。 イ) 緊急事態等における広報の在り方 更に取組むべき課題として、護衛艦「あたご」の衝突事件において明らか - 40 - となった、自衛隊の報道対応における混乱の問題をあげなければならない。 これにより、結果として国民の重大な不審を招くとともに、危機管理組織と しての防衛省・自衛隊の鼎の軽重が問われることとなった。緊急事態におけ る広報について、基本的なルールや意思統一の方法を確立する必要がある。 Ⅳ 改革提言(2) ― 現代的文民統制のための組織改革 1 組織改革の必要性 様々な不祥事の再発防止の措置を検討するとともに、現代の安全保障環境の中 で、防衛省・自衛隊をどのようにして実効的な組織として機能させるかというの が、本会議に与えられた課題である。この課題に答えるため、すでに、規則遵守 の徹底、プロフェッショナリズムの確立、全体最適をめざした任務遂行型の業務 運営の確立の三つの分野について、現在の組織の在り方を前提として、数多くの 提言を行ってきた。しかし、本会議は、現代の安全保障環境の下で、防衛省・自 衛隊が、不祥事を起こさないだけでなく、日本の安全と独立を確保していくため には、また、上記三つの分野の改革をより確実にかつ効果的に実行するためにも、 どうしても組織面での改革が必要であるとの認識に達した。 本報告書冒頭で述べたように、かつて文民統制と言えば、「軍事実力組織から の安全」を担保するための仕組みであると考えられてきた。軍が国を敗戦に導い た過去を持つ我が国にとって、とりわけ重い課題である。戦後の自衛隊の運営に おいて、この意味での文民統制が必要であるとされてきたのには十分理由がある。 しかし、自衛隊誕生以来の実績を見れば、自衛隊が民主的政治の意向を無視して 行動する可能性がほとんどないことは明白である。このようないわゆる消極的な 文民統制という考え方に対して、いまや、軍事実力組織を如何に効果的に使って 安全保障を高めるかという積極的な観点の文民統制の考え方も十分考慮にいれな ければならない。軍事実力組織の暴走は防がなければならないが、軍事実力組織 が、必要とされるとき機能しないのでは、国の安全保障は保てないからである。 しかも、不祥事の検討・分析から明らかになってきたことの一つは、部隊・現 場のレベルにおける、消極的で退嬰的な姿勢、失敗さえしなければよしとする減 点主義の傾向であった。徹底的に自衛隊を統制しておかなければならないとの組 織の在り方が、このような消極的な姿勢を助長した側面がある。減点主義からよ り積極的な任務遂行体制へ移行し、その中で不祥事を極小化するためにも、自衛 - 41 - 隊を国と国民の安全のため十全に活用するための組織改革が必要とされている。 いまや、昭和29 年(1954 年)以来形成されてきた防衛省の組織についても、「軍 事実力組織からの安全」という機能は堅持しつつ、「軍事実力組織を活用した安 全」という機能を更に高度に発揮させるための見直しが必要になってきたのであ る。 不祥事の再発を防ぐという側面を超えて、現代的安全保障環境の中で適切に自 衛隊を活用しようとすれば、国全体の安全保障政策の最高責任者たる内閣総理大 臣の下における官邸の体制も整備していかなければならない。如何なる意味であ れ、文民統制の根幹たる主体は、国会で選出される内閣総理大臣だからである。 従って、以下では、まず官邸における安全保障政策のための組織改革を論じ、そ の後、防衛省における組織改革を提示していきたい。防衛省内部における組織改 革を詳述する前提として、官邸における戦略レベルの司令塔機能について、まず 提言する。 2 戦略レベル― 官邸の司令塔機能の強化 内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊に対する最高の指揮監督権を有してお り、我が国の安全保障政策について行政面における最終的な意思決定主体である。 本来、安全保障政策とは国の総力をあげて行う総合的なものであって、内閣総理 大臣が統合的な戦略の下で、防衛省のみならず、政府全ての機関を指揮し実施し ていくものである。防衛省・自衛隊が担う防衛政策もまた、内閣総理大臣が主宰 する国全体の安全保障政策の一要素として位置づけられることによって、文民統 制の根幹が規定されるとともに、現代的な安全保障環境により適合したものとな る。 しかし、内閣全体としての安全保障戦略は、これまで、ほとんど意識的かつ体 系的には示されてこなかった。これまで、内閣には国防会議、これを引き継いだ 安全保障会議が設置されてきたが、危機における決定のための機関としてはとも かく、戦略作成に関しては、やや形式的な機関となってきている。防衛省・自衛 隊を根本的な意味で適切な文民統制の下に置くためには、内閣総理大臣を中心と した官邸が、実質的な我が国の安全保障戦略の策定機関とならなければならない。 また、近年、官邸における危機管理機能の強化(例:内閣危機管理監の設置) や事態対処法制の制定等を契機として、官邸の安全保障に関する役割は増大して いる。また、我が国を取り巻く安全保障環境が変化する中で、イラク人道復興支 援特措法に基づく航空自衛隊の輸送活動や、補給支援特措法に基づくインド洋に - 42 - おける海上自衛隊の補給活動など、自衛隊の国際平和協力活動において、官邸・ 内閣官房の果たす役割も大きくなっている。今後、新たな脅威や多様な事態に対 する迅速かつ適切な対応が一層求められていくことを考えれば、緊急事態への対 処とともに安全保障に関する戦略的判断を迅速・的確に行うため、官邸の司令塔 機能の強化を図ることが必要である。 従来、安全保障会議は、防衛力整備計画や毎年度の防衛予算の審議を通じて、 文民統制の大枠を設定する機能を果たしてきた。しかしながら、我が国の安全保 障環境が大きく変化した今日、官邸は、安全保障会議やその他関係閣僚会議など も活用し、安全保障に関する重要事項について幅広く積極的に議論し、我が国と しての安全保障戦略を策定し、各省に指示を与えていかなければならない。 そのため、内閣総理大臣は、安全保障会議やその他関係閣僚会議などを活用し つつ、以下の施策を行っていくべきである。(現行の安全保障会議設置法第2 条 の規定する諮問事項については、本格的な見直しが望ましいと思われるが、同法 を改正しないとすれば、安全保障会議に関わる、以下の提案は、同法第2 条第1 項第8 号にいう「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」と して実施されるべきである。) (1) 安全保障戦略の策定 世界情勢の変化、新たな脅威や多様な事態を考慮した上で、我が国全体とし て、安全保障の目標と手段を明示し、今後の方策の優先順位を示した戦略を策 定する。この戦略の下で、防衛計画の大綱が改訂され、自衛隊の海外任務の在 り方や、有事・緊急事態における自衛隊の運用をめぐる基本的な方針が策定さ れねばならない。 (2) 三大臣会合(内閣官房長官、外務大臣、防衛大臣など)の活用 流動する国際情勢の下で、安全保障上の課題に適切に対応するためには、我 が国を取り巻く安全保障環境についての基本的な情勢認識を分析・共有すると ともに、安全保障に関する諸課題につき戦略的観点から日常的、機動的に議論 する場が必要である。このため、「三大臣会合」と近年呼ばれている、内閣官 房長官、外務大臣、防衛大臣など関係閣僚による協議を積極的に活用し、内閣 総理大臣を補佐するとともに、安全保障会議の機能を補完する。 (3) 防衛力整備に関する政府方針策定のための仕組み - 43 - 防衛力整備に関する重要事項について、政府レベルで議論する場として、安 全保障会議をより一層活用していくとともに、防衛政策を柱とした産業・技術 基盤に関する方針を策定し、装備体系や主要な装備品の選定等について議論す るための関係閣僚会合を設置する。同時に、このような機能を支えるために、 安全保障会議の下に、事態対処専門委員会(安全保障会議設置法第8 条)に加 え、政府レベルでの防衛力整備の在り方を検討するための常設の検討機関(局 長級の実務レベルの委員会)を設置する。 かかる常設の検討機関においては、防衛計画の大綱、中期防衛力整備に基づ く施策の進捗状況、毎年度の防衛力整備の改善点等について議論するとともに、 防衛省で行われている総合取得改革に基づく契約制度の改善の進捗状況の検証 などを行う。 (4) 内閣総理大臣の補佐体制強化 安全保障政策に関わる内閣総理大臣の補佐体制を充実強化するため、内閣総 理大臣に直結し、機動的に内閣総理大臣を補佐する安全保障政策に関して高度 の知見を持つアドバイザーを置く。また、内閣官房の外交・安全保障に関する スタッフの体制強化を図るとともに、専門的知識を有する人材や軍事専門家で ある自衛官の更なる活用を図る。 3 防衛省における司令塔機能強化のための組織改革 国民が防衛政策を統制するという文民統制の根本は、国会が内閣総理大臣を指 名し、内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮権を持つとともに、防衛大臣を任命する ことによって具現化されている。更に、この仕組みは、防衛省内においては防衛 大臣が防衛省・自衛隊全てを適切に指揮監督することによって貫徹されることに なる。防衛省における近年の不祥事を分析・検討して見ると、この防衛大臣によ る適切な指揮監督が十分貫徹しない組織の実態があったことがわかる。単なる法 令違反や規律のゆるみにとどまらない組織としての問題がひそんでいるのではな いかと思われた。 更に、このような不祥事の連鎖は、平成16 年(2004 年)に決定された「防衛 計画の大綱」にいう「多機能で弾力的な実効性のある」防衛力が発揮できるのか に懸念を抱かせるものであった。おそらく、平成19 年(2007 年)1 月の防衛省 の省移行時に、本来であれば、これまでの組織について全面的な見直しが行われ - 44 - るべきであったろう。現実には、省移行は、それまでの組織についての変更なし に行われた。不祥事の検討と、現代の安全保障環境とを全面的に考察した結果、 本会議は、この際、防衛省において、現行の内部部局と統合幕僚監部、陸・海・ 空幕僚監部の組織を基本的には存続させつつも、大胆な改革を行い、更にその機 能や責務の割り振りを組み替えることによって、不祥事の発生を防ぎつつ、文民 統制を機能させ、より実効的な防衛政策が実施できる体制を作るべきであると提 言する。 (1) 防衛大臣を中心とする政策決定機構の充実 防衛省の機能を大きく分類すれば、防衛政策の企画・立案・発信、自衛隊の 運用、防衛力の整備、その他管理機能と分けることができるが、このいずれに ついても、最終的には防衛大臣が、全てを適切に指揮監督できる体制がなけれ ばならない。そのためには、以下の改革が必要である。 ① 形骸化している防衛参事官制度を廃止し、防衛大臣補佐官を設置すべきで ある。防衛大臣補佐官は、防衛政策に関して見識ある者の中から、防衛大臣 が自ら選任し、政治任用として採用するものとする。 ② 現在、防衛省では、訓令に基づき防衛会議が置かれているが、これを法律 で明確に位置づけ、より実効的に防衛省の最高審議機関として活用していく べきである。防衛会議においては、副大臣、政務官及び防衛大臣補佐官など 政治任用者と、事務次官、主要な局長などの文官、統合幕僚長及び陸・海・ 空幕僚長など自衛官の三者が、防衛省・自衛隊に関する万般の政策に関して 審議し、大臣の政策決定及び緊急事態対応を補佐するものとする。防衛政策 の企画立案、自衛隊の運用の方針、防衛力整備の方針などは、全て防衛会議 での審議と大臣の決裁を経て、首相官邸での審議に供されるものとする。防 衛会議は文官と自衛官が政治を補佐しつつ服するという、文民統制の在り方 を具現するものでなければならない。 とりわけ重要なことは、新しい体制の下の防衛会議を決して形骸化させて はならないことである。会議は、できる限り頻繁に開催し、防衛省の最高幹 部の意思疎通を良好なものに、相互のチェック体制を確立しなければならな い。こうしたチェック体制は、前事務次官の不祥事に見られたような有力な 幹部による恣意的な行為を排除する機能を持つことを意味する。 - 45 - なお、防衛会議は議事録を作成し、国家安全保障に重大な影響をおよぼす 事項以外については、一定期間後に公開するものとする。 ③ 官邸の情報集約・危機管理センターに倣い、防衛省において、護衛艦「あ たご」の衝突事案のような緊急事案が起こった際に、情報集約や幹部への適 時適切な報告が行いうるよう、内部部局と幕僚監部が一体となった情報集約 や危機管理への対応を行うセンターを設置すべきである。 ④ 緊急事態の際の報告手順等も含め、各種事態における対処要領を確立する とともに、随時の訓練によって不断の組織的検証を行う。 (2) 政策面での施策― 防衛政策局の機能強化 ① 内閣の制定する安全保障戦略の一環として、防衛政策の企画・立案・発信 機能を向上させるため、防衛政策局を拡充しなければならない。 ② 文官を局長とし、次長クラス以下に自衛官を組み入れるべきである。統合 幕僚監部と陸・海・空幕僚監部からの人材補給により、運用面での実情も踏 まえた活気ある政策面での中枢機能を強化する。 ③ 国際的な自衛隊の活用は益々必要となると想定される。国際的平和活動、 国際的災害援助活動、その他国際的活動の企画立案、そのための情報分析能 力の向上は、とりわけ防衛政策局が取り組まなければならない課題である。 (3) 運用分野における施策― 統合幕僚監部の機能強化 ① 実態としての業務の重複を合理化するため、運用企画局は廃止し、作戦運 用の実行は、大臣の命を受けて統合幕僚長の下で行うものとする。 ② 現代社会においては、国内外の様々な政治情勢を考慮しつつ、自衛隊の運 用をしていかなければならない。そのため、文官を統合幕僚監部の副長クラ ス以下に組み入れるべきである。 ③ 部隊出動等の決定やその作戦計画の承認などは、防衛政策局を通じ、防衛 会議の議を経て、防衛大臣の決裁を仰ぐものとする。 - 46 - ④ 自衛隊は、現場部隊と中央組織との間に存在する多くの中間司令部の在り 方について見直しを行い、情報伝達を迅速かつ正確にし、また、現場の部隊 により有能な人材を配置するため、全体として組織のフラット化を図るべき である。 (4) 整備分野における施策― 整備部門の一元化 ① 防衛力整備の全体最適化を図るため、内部部局、陸・海・空幕僚監部の防 衛力整備部門を整理・再編して、整備事業等を一元的に取り扱う新たな整備 部門を創設することとし、その具体的在り方については、更に検討するもの とする。 その際、統合幕僚監部は、防衛力整備部門に対して、運用上の全体最適の 観点から、各自衛隊の装備体系の優先順位などについて、意見を述べるもの とする。 他方、陸・海・空幕僚監部は、人事、教育・訓練、補給等の観点から、現 場部隊の声が各自衛隊の防衛力整備に適切に反映されるよう、防衛力整備部 門に対して意見を述べるものとする。 ② 重要整備事項については、内閣として策定される防衛力整備の方針に基づ き、防衛省の整備部門が選択肢を作成し、内部部局を通じ、防衛会議の議を 経て、防衛大臣の決裁を仰ぎ、かつ、内閣レベルでの審議・決定を仰ぐもの とする。その他の整備・調達案件は、整備部門において精査し、内部部局を 通じ、防衛会議の議を経て、防衛大臣の決裁を仰ぐものとする。 ③ 整備部門の一元化に当たっては、組織構造はできる限り柔軟なものとし、 IPT 方式の調達を本格的に実施できる体制にすべきである。 ④ 地方調達については全面的見直しを行い、陸・海・空自衛隊の調達に関す るデータの一元化を推進するとともに、できる限り中央調達に移行させるべ きである。 ⑤ 調達の透明性を更に確保し、不正を防ぐ観点から、防衛省において、防衛 調達に関する規則、及び防衛調達の実施に関する計画について調査審議すべ - 47 - きである。必要に応じ、防衛大臣に対して意見を述べることを業務とする防 衛調達審議会を強化するなど、独立性の高い第三者チェック体制を確立すべ きである。 (5) その他の重要分野における施策 ① 管理部門 防衛省・自衛隊の基盤を支える予算、調達、渉外広報、その他の管理部門 については、行政的事務が主体であるが、内部部局の組織的充実・活性化を 図るため、部隊の実情に精通した自衛官を積極的にスタッフとして登用する ことが必要である。 また、これらの分野は各機関の重複を避け、防衛省として統合的に遂行す べき分野であることから、極力統合化を図るべきである。その際、これらの 分野における重要な事項は、内部部局を通じ、防衛会議の議を経て、防衛大 臣の決裁を仰ぐものとする。 ② 人事、教育・訓練 自衛官の人事、教育・訓練については、規律を維持しつつ精強な部隊を建 設するという意味で、陸・海・空幕僚長の下で幕僚監部が主たる責任を負う べき分野である。同時に、内部部局も制度や政策面から統一的に防衛大臣を 補佐する必要がある。 Ⅴ 結びにかえて 昨年12 月3 日に発足して以来、本会議は、防衛省・自衛隊で発生した様々な不 祥事について詳細に検討するとともに、防衛省・自衛隊の現場の視察、省内外の関 係者との意見交換を数多く行い、防衛省改革にとって何が必要であるかについて議 論を重ねてきた。我が国の平和と安全を守り、国際平和活動や災害救援に、日夜献 身的な役割を果たしてきた自衛隊員に対して敬意と感謝の念を抱いてきた本会議メ ンバーの全てにとって、防衛省・自衛隊で最近起きてきた不祥事を分析・検討する ことはつらい作業であった。圧倒的多数の自衛隊員がまじめに任務についているの に、どうしてこのような不祥事が発生するのか。我々が何か錯覚しているのか。こ のように思ったこともある。 - 48 - しかし、不祥事の実態を検討すればするほど、やはり改革は必要だと確信するよ うになった。前事務次官の規則無視から始まって、初歩的ルールについての無知、 基本的作業が遂行されない部隊、情報革命への対応の遅れ、正確な情報伝達に関す る心構えの欠落、秘密保全意識の甘さ、組織としての一体感の欠落など、個々の事 例を検討すればするほど、この際抜本的な見直しが必要であるとの認識が深まった。 本報告書では、隊員個々人に自らの行動を振り返ってもらうために、「規則遵守 の徹底」と「プロフェッショナリズムの確立」という原則を提示し、組織としての 行動を変えるために、「全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立」と いう原則を提示した。自衛隊員各位におかれては、この三つの原則の意味するとこ ろを深く認識することを求めたい。 更に、本会議は、これらの原則を空文とさせず、現代の安全保障環境に実効的に 対応するための組織改革を提言した。有効で機能する安全保障政策を実施するため、 防衛省の範囲を超え、官邸における安全保障政策形成の仕組みについても、提言し た。本報告書冒頭で述べたように、本会議は、不祥事さえなければよい組織である とか、ミスさえなければよいのだ、というような考え方をとらない。我が国の安全 保障の根幹である防衛省・自衛隊は、規律正しく積極的に任務遂行に当たる組織で なければならない。 提言の内容については、本文で詳述してあるので繰り返さないが、是非、防衛省 そして内閣として、真剣に検討し、改革を推し進めていっていただきたい。改革の 実施に当たっては、更に詳細な実務的な実施計画が必要となる。防衛省には、規則 遵守、プロフェッショナリズムの確立、業務の改善、更には組織改革に至る実施計 画をできるだけ早急にまとめ、官邸に報告し、実施に移すことを求めたい。本報告 書で提示した業務配分の見直しや組織改革は全て実行可能なものであると判断する が、真に機能する改革とするため、事前に多面的なシミュレーションを行うことに よって、不必要な混乱を招かぬよう、円滑な実施を期すことを求めたい。国の安全 保障の根幹を担う組織が、改革のためとはいえ、混乱や停滞をきたしてはならない からである。 今回の検討を通して、防衛省改革については、必要な原則の確認や組織改革は提 示できたと思う。しかし、今後検討すべき課題もいくつかある。 防衛省として今後検討すべきテーマとしては、退職した自衛官を如何に活用でき るか、処遇するかという課題がある。例えば、多くの退職した幹部自衛官の予備自 衛官への採用など、退職した自衛官を国の防衛にどう活用するか、国としてどう処 遇するかということについても考えるべきであろう。 - 49 - 国全体として安全保障政策を考えたとき、二つの課題を指摘したい。第1は、防 衛省と他省庁とりわけ警察・海上保安庁との関係である。安全保障上の脅威が多様 化しつつある現在、防衛省・自衛隊と警察、海上保安庁との関係は、運用面を重視 し、更に緊密なものとしていかなければならない。同時に、国全体として必要な機 能をどう果たしていくかとの観点から、その役割分担についても検討がなされるべ きである。 国全体として考えるべき第2の課題は、国会における秘密会制度の確立という問 題である。言うまでもなく憲法は国会が秘密会を開催することを想定している。国 会が、安全保障の問題を適切に議論し判断することこそが、文民統制の根幹である。 しかし、安全保障問題の特性からして、全てを公開で議論できないことはありうる。 だからこそ、他の民主主義国の議会において秘密会が開催されるのであり、日本国 憲法もこれを想定しているのである。我が国としても国会における秘密会の在り方 について議論することが必要なのではないか。国会に対して意見を述べることは本 会議の任務ではないが、国民として、この問題について国会が真剣に取り組んでほ しいと希望するものである。 繰り返しになるが、本会議は、防衛省・自衛隊に対して、ミスを防ぐためのみを 目的とする些末な規則の網の目をかけようとしているのではない。国際平和活動や 災害救援活動で、高い評価を得ている世界の自衛隊である。不祥事を契機として縮 こまるのではなく、誇りを持ったプロフェッショナルの集団として再生しなければ ならない。日本の安全保障の根幹は、まさにこの改革にかかっている。 そして、不祥事の抑制と改革の実現のためには国と社会の理解と励ましが必要で ある。これら不祥事を犯した防衛省・自衛隊の過去を厳しくとがめるとともに、国 の平和と独立を守るという本来の任務を立派に果たそうとする防衛省・自衛隊の今 後を、社会は見守り支えねばならないのである。 - 50 - 防衛省改革会議の開催について 平成19年11月16日 内閣官房長官決裁 1.設置の趣旨 今般の補給支援特措法案の審議等を通じて、我が国の防衛・安全保障を担う防 衛省の業務遂行について様々な指摘を受けたことを踏まえ、現在、防衛省が抱え る問題について、基本に立ち返り、国民の目線に立った検討を行う場として、有 識者の参加を得つつ、「防衛省改革会議」(以下「会議」という。)を開催する。 2.検討事項 (1) 文民統制の徹底 (2) 厳格な情報保全体制の確立 (3) 防衛調達の透明性 3.構成 (1) 会議は、内閣官房長官及び防衛大臣並びに別紙に掲げる有識者により構 成し、内閣官房長官が開催する。 (2) 内閣官房長官は、別紙に掲げる有識者の中から、会議の座長を依頼する。 (3) 会議は、必要に応じ、構成員以外の関係者の出席を求めることができる。 4.その他 会議の庶務は、防衛省の協力を得て、内閣官房において処理する。 - 51 - 「防衛省改革会議」の委員 五百籏頭眞防衛大学校学校長 小島明社団法人日本経済研究センター特別顧問 佐藤謙財団法人世界平和研究所副会長 (元防衛事務次官) 竹河内捷次株式会社日本航空インターナショナル常勤顧問 (元統合幕僚会議議長) 田中明彦東京大学大学院情報学環教授 御厨貴東京大学先端科学技術研究センター教授 ◎南直哉東京電力株式会社顧問 上記の他、町村内閣官房長官及び石破防衛大臣が委員である。 注)◎は座長 役職については、平成20 年7 月現在 - 52 - 防衛省改革会議の開催実績 第1回会議(平成19年12月3日(月)) 議題:防衛省・自衛隊をめぐる諸課題について全般的な意見交換 第2回会議(平成19年12月17日(月)) 議題:文民統制の徹底について 第3回会議(平成20年1月9日(水)) 議題:厳格な情報保全体制の確立について 第4回会議(平成20年2月1日(金)) 議題:防衛調達の透明性について 識者:及川耕造独立行政法人経済産業研究所理事長 西口敏宏一橋大学イノベーション研究センター教授 第5回会議(平成20年2月13日(水)) 議題:文民統制の徹底について 第6回会議(平成20年3月3日(月)) 議題:①イージス艦「あたご」の事案について、情報の連絡体制などに関す る問題点等 ②これまでの議論の論点 第7回会議(平成20年4月7日(月)) 議題:総合取得改革推進プロジェクトチーム報告書について(防衛省報告) 第8回会議(平成20年5月8日(木)) 議題:これまでの議論の論点 - 53 - 第9回会議(平成20年5月21日(水)) 議題:防衛省における組織等の在り方に関する検討状況等について(防衛省 報告) 第10回会議(平成20年6月19日(木)) 議題:これまでの議論の論点についての全般的な整理 第11回会議(平成20年7月15日(火)) 議題:「報告書」の取りまとめ - 54 - 防衛省改革会議勉強会等の開催実績 ○ 防衛省改革会議勉強会 第1回勉強会(平成19年12月11日(火)) 議題:文民統制の徹底について 第2回勉強会(平成19年12月27日(木)) 議題:①秘密保全に関する政府全体の取り組みについて ②厳格な情報保全体制の確立について 第3回勉強会(平成20年1月28日(月)) 議題:防衛調達の透明性について 第4回勉強会(平成20年2月12日(火)) 議題:文民統制の徹底について 第5回勉強会(平成20年2月28日(木)) 議題:イージス艦「あたご」の事案について、情報の連絡体制などに 関する問題点等 第6回勉強会(平成20年4月4日(金)) 議題:①国家公務員制度改革について ②総合取得改革推進プロジェクトチーム報告書について 第7回勉強会(平成20年5月2日(金)) 議題:これまでの議論の論点 第8回勉強会(平成20年5月16日(金)) 議題:防衛省における組織等の在り方に関する検討状況等について - 55 - 第9回勉強会(平成20年6月4日(水)) 議題:これまでの議論の論点整理 第10回勉強会(平成20年6月6日(金)) 議題:これまでの議論の論点整理 第11回勉強会(平成20年6月16日(月)) 議題:これまでの議論の論点整理 第12回勉強会(平成20年6月24日(火)) 議題:「報告書」の取りまとめ 第13回勉強会(平成20年6月26日(木)) 議題:「報告書」の取りまとめ 第14回勉強会(平成20年6月30日(月)) 議題:「報告書」の取りまとめ 第15回勉強会(平成20年7月9日(水)) 議題:「報告書」の取りまとめ ○ 防衛調達勉強会 第1回防衛調達勉強会(平成20年1月17日(木)) 第2回防衛調達勉強会(平成20年1月22日(火)) 第3回防衛調達勉強会(平成20年1月28日(月)) 第4回防衛調達勉強会(平成20年4月18日(金)) 識者:江畑謙介軍事評論家、防衛調達審議会委員 及川耕造独立行政法人経済産業研究所理事長 小林信雄トヨタ自動車株式会社常務役員 - 56 - 坂井一郎弁護士、防衛調達審議会会長 佐藤達夫三菱商事株式会社顧問 清水俊行公認会計士、防衛調達審議会委員 庄野凱夫財団法人ディフェンスリサーチセンター専務理事 西口敏宏一橋大学イノベーション研究センター教授 日手間公敬全日本空輸株式会社専務取締役 (五十音順) ○ 部隊等視察及び意見交換 視察(平成20年2月26日(火)) 訪問先:航空自衛隊百里基地、陸上自衛隊習志野駐屯地 意見交換(平成20年2月26日(火)) 議題:防衛省改革について 相手方:防衛事務次官、陸上幕僚長、航空幕僚長、海上幕僚監部防衛部 長 意見交換(平成20年3月13日(木)) 議題:イージス艦「あたご事案」を踏まえ、海上自衛隊の組織の問題 等について 相手方:海上自衛隊幹部(海上幕僚副長、護衛艦隊司令官ほか) 視察(平成20年3月17日(月)) 訪問先:海上自衛隊横須賀地区、統合幕僚監部統合幕僚学校 意見交換(平成20年3月17日(月)) 議題:自衛隊の部隊等の現状について 相手方:統合幕僚学校統合高級課程学生 - 57 - 意見交換(平成20年3月24日(月)) 議題:防衛省改革に関して 相手方:防衛事務次官、統合幕僚長、陸・海・空幕僚長、全防衛参事官 意見交換(平成20年4月10日(木)) 議題:海上自衛隊抜本的改革委員会の検討状況について 相手方:海上自衛隊幹部(海上幕僚副長、海上自衛隊幹部学校副校長ほ か) 意見交換(平成20年4月23日(木)) 議題:防衛省改革に関して 相手方:防衛事務次官、統合幕僚長 - 58 - ( 図表1 ) - 59 - ( 図表2 ) - 60 - 防衛省改革会議「報告書」の概要 平成20 年7月15日 防衛省改革会議 Ⅰ はじめに 1 平成19年12月、防衛省・自衛隊の不祥事の頻発を受け防衛省改革会議を官邸に設置。 2 個々の事案とそれを許容した組織の問題を解明し、再発防止の方策と改革の方向を 示すための検討を重ねる。改革の原則を機能させ、また、組織の任務に沿った実効的 な活動が行えるよう、防衛省・自衛隊の組織と意思決定システムの再構築が必要。 3 自衛隊は、多機能・弾力的・実効的に行動すべき時代を迎えている。戦後強調され た「軍事実力組織からの安全」の更なる充実強化とともに、今後は「軍事実力組織に よる安全」という観点との組み合わせが必要。 4 文民統制を確保しつつ、安全保障機能を効果的に果たしうるシステムの改革をここ に提案。 Ⅱ 不祥事案― 問題の所在 1 給油量取違え事案(報告義務不履行):米海軍艦船への給油量について、海幕防衛 課長が報告した誤った数値によって統幕議長の記者会見や、防衛庁長官及び官房長官 の発言が行われた。誤りを認識した後も訂正をしなかった報告義務不履行は、プロフ ェッショナリズム(職業意識)の欠如と文民統制への背反。誤りを正す責任が明確で ない組織上の問題も正されるべき。 2 情報流出事案(通信情報革命と情報保全):秘密情報を含む業務用データを私有パ ソコンに取り込んだファイル共有ソフトを介して部外に流出するなどの事案が平成18 年まで立て続けに発生。急速な通信情報革命に自衛隊の認識がついていけなかったこ と、秘密情報についての保全意識が不徹底であったことが原因。 3 イージス情報流出事案(先端技術の学習と情報保全):特別防衛秘密に該当するイ ージス情報が正規の手続きを経ることなく教材として利用され、海上自衛隊内に拡散 した事案。最先端技術への学習意欲が情報保全意識の欠如と結びついて生じたもの。 4 「あたご」衝突事案(基本動作のゆるみ):海自護衛艦「あたご」が漁船と衝突。 基本的な規律のゆるみやルール無視の組織的蔓延、航海技量の欠如がどれほど恐るべ き結果を招くかを教える事案。また、事故発生後の幕僚監部と内部部局における緊急 時の情報伝達の問題が浮き彫りに。 5 前事務次官の背信:前事務次官が接待や金品供与を受け、防衛装備品の調達に当た って影響力を行使したとされている事案。調達に際して私的利益を動機にすることは、 内部部局官僚が誇るべきプロフェッショナリズムから最も遠く、忌まわしい背信行為。 最高幹部による重大な逸脱が放置された組織的な背景にも問題。 6 諸事案の総合検討 不祥事の抑制のためには全組織をあげて目標と任務意識を鮮明化しつつミスを極小 化する継続的な取組みが不可避。 - 61 - Ⅲ 改革提言(1) ― 隊員の意識と組織文化の改革 1 改革の原則 不祥事案の検討・分析を踏まえ、①規則遵守の徹底、②プロフェッショナリズムの 確立、③全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立、の改革の原則を提唱。 2 規則遵守の徹底 自発的な規則遵守意識が組織風土として定着することが必要。また、守るべき事項 を明確にするための規則の整理が必要。 (1) 幹部職員自身が規則の必要性を理解し、率先垂範すること。 (2) 形式よりも必要性に着目した規則遵守についての職場教育。 (3) 機密保持に関する規則の徹底と違反行為の厳正な処分。 (4) 防衛調達における透明性確保のための責任の所在の明確化、会議録の作成・公開。 (5) 抜き打ち監察など監査・監察の強化。 (6) 規則の必要性の検討及び見直し。 3 プロフェッショナリズム(職業意識)の確立 プロ意識に徹した上官の統率によって組織全体に高い倫理観、使命感を与えるべき。 (1) 幅広い視野を持った幹部要員を養成するため、教育プログラムや行政経験の在り方 を見直し。 (2) 自衛隊の各部署における業務量と人員配置のバランスを見直し、現場の過度な負担 を軽減しつつ、基礎的な職場教育の充実を図る。 (3) 現代の安全保障に決定的な意味を持つ情報伝達・保全におけるプロ意識の醸成。 4 全体最適をめざした任務遂行優先型の業務運営の確立 個々の隊員、部隊等の意識改革に加え、任務遂行を中心に全体最適をめざす組織文 化を創出することが必要。 (1) 文官と自衛官の一体感と陸・海・空自衛隊の一体感醸成による協働体制の確立。 (2) 自律的なPDCA(Plan Do Check Act:計画・実施・評価・改善)サイクルの確立。 (3) 民間のベスト・プラクティスを参考にしつつ、自衛隊の基本単位である部隊を統率 する指揮官と部下との共通の改善努力。 (4) 組織横断的プロジェクトチーム(IPT(Integrated Project Team))方式による政策立 案を通じた政策課題への機動的対応。 (5) 防衛調達におけるIPT 方式の本格的導入。 (6) 統合幕僚監部を中心とする統合運用体制の更なる促進。 (7) 国民が不信を抱かぬよう、各種会見や中央と部隊の間で整合性の取れた広報の実施。 Ⅳ 改革の提言(2) ― 現代的文民統制のための組織改革 1 組織改革の必要性 防衛省・自衛隊が、上記の改革の三原則をより確実・効果的に実行するため、組織 面での改革が必要。 2 戦略レベル― 官邸の司令塔機能の強化 防衛省のみならず官邸の司令塔機能強化が必要。 - 62 - (1) 防衛政策の前提となる国全体としての安全保障戦略を明示。 (2) 官房長官、外相、防衛相などの閣僚により、安全保障に関わる重要課題を日常的・ 機動的に議論する会合の充実。 (3) 防衛力整備に関する政府の方針等を議論するための関係閣僚会合の設置。あわせて これを補佐する常設の機関の設置。 (4) 安全保障に関わる内閣総理大臣の補佐体制を充実強化するため、内閣官房のスタッ フの強化。 3 防衛省における司令塔機能強化のための組織改革 (1) 防衛大臣を中心とする政策決定機構の充実 ① 防衛参事官制度を廃止し、防衛大臣補佐官の設置。 ② 防衛会議を法律で明確に位置づけ、副大臣、事務次官、統幕長などの政治家、 文官、自衛官の三者による審議を通じ防衛大臣の政策決定・緊急事態対応を補佐。 ③ 省としての情報集約や危機管理の対応を行うセンターの設置。 (2) 防衛政策局の機能強化 防衛政策の企画・立案・発信機能の向上を図る。また、自衛官を登用して運用面 での実情を踏まえた機能強化を図る。とりわけ、国際平和活動等の企画立案や、情 報分析能力の向上に取り組む。 (3) 統合幕僚監部の機能強化 運用企画局を廃止し、作戦運用の実行は、大臣の命を受けて統合幕僚長の下で実 施。また、部隊出動等や作戦計画等の重要事項については、防衛政策局を通じ、防 衛会議の議を経て、防衛大臣の決裁を仰ぐ。なお、文官を登用して機能強化を図る。 (4) 防衛力整備部門の一元化 ① 防衛力整備の全体最適化を図るため、内部部局、陸・海・空三幕の防衛力整備 部門を整理・再編して、整備事業等を一元的に取扱う整備部門を創設することと し、その具体的在り方を更に検討。IPT方式の調達を本格実施できる体制とする。 ② 地方調達については、できる限り中央調達に移行させる見直しを実施。また、 独立性の高い第三者チェック体制を強化。 (5) その他の重要分野における施策 ① 管理部門については、部隊の実情に精通した自衛官を積極的に登用すると共に 極力統合化を図る。 ② 自衛官の人事、教育・訓練は、陸・海・空三幕が責任を負うが、内部部局も制 度や政策面から防衛大臣を補佐。 Ⅴ 結びにかえて 本提言の改革の実施計画を早急にとりまとめ、実施に移すべき。また、組織改革に当 たっては、事前に多面的なシミュレーションを行うべき。 防衛省・自衛隊と警察、海上保安庁との関係を更に緊密にするとともに国全体として の機能をどう果たしていくか、というような今後検討すべき課題を提起。 防衛省・自衛隊が誇りを持ったプロフェッショナル集団として再生することを期待。
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0714 谷垣財務相「敵基地攻撃論」に慎重姿勢 久間総務会長も [朝日] 0713 米次官補、日本の「敵基地攻撃」議論に理解 中国は批判 [朝日] 0712 額賀長官「敵基地攻撃、法理論的には認められる [朝日] 0711 「敵基地攻撃論」に野党から批判続出 [朝日] 0712 官房長官「先制攻撃論批判」に反論、山崎氏「憲法違反」 [朝日] 0719 防衛大学校長に五百旗頭真氏が内定 [読売] 0709 敵地攻撃能力の保持は当然、ミサイル問題で防衛長官 [朝日] 0629 イージス艦「きりしま」に帰国命令…テポドン2号警戒 [読売] 0623 日米、次世代迎撃ミサイルの共同開発に正式移行 [読売] 0624 米軍レーダー運用前倒し、テポドン2監視目的か [朝日] 0623 米、海上ミサイル迎撃実験に成功 日本のイージス艦参加 [朝日] 0609 防衛庁の「省」昇格関連法案を閣議決定 [読売] 0610 国防 諸国並み組織に 防衛「省」法案閣議決定 [産経] 0610 「防衛省」法案、国会提出 秋の臨時国会へ継続審議方針 [朝日] 0609 鳩山幹事長「議論できる環境ではない」 防衛省格上げ [朝日] 0608 安保会議、防衛省への昇格法案了承…衆院提出へ [読売] 0608 防衛省法案9日に閣議決定 政府提出は初めて [共同] 0528 自民・中川氏 防衛政策見直し、次期政権の課題と認識 [毎日] 0526 「防衛省」昇格法案提出へ…今国会成立は困難 [読売] 0526 日中韓ロ米加が海上訓練、不法入国・密輸防止が狙い [朝日] 0524 防衛庁に「装備本部」新設 組織改編の改正法が成立 [朝日] 0520 中期防、正面装備など削減へ…米軍再編の財源確保で [読売] 0517 ネット流出、海自文書計3千点 有事演習計画も [朝日] 0512 自衛隊の災害派遣、過去2番目の892件 [読売] 0509 米ミサイル実験に海自イージス艦が参加 [朝日] 0506 武器輸出3原則の緩和求める 久間・自民総務会長 [朝日] 0505 麻生外相:NATOで閣僚初の演説 対テロ協力を強調 [毎日] 0430 「戦争の危険ある」過去最高 「自衛隊に良い印象」も [朝日] 0413 防衛庁 省昇格関連法案の骨子、与党に提示 [毎日] 0411 防衛庁天下り、前年比49人増の852人 [読売] 0328 自衛目的で軍事利用も可 自民、宇宙基本法案提出へ [共同] 0327 中台軍事力「中国に有利」 防衛研究所の概観 [朝日] 0327 陸海空3自衛隊の運用一元化、新統合体制スタート [読売] 0322 自衛隊の統合運用 命令一下の戦闘をめざすのか [赤旗] 0317 自衛隊、懲戒の9割を匿名発表…逮捕・免職者も [読売] 0317 初代統幕長に先崎氏 3月27日付 [共同] 0220 米の最新鋭戦闘機F22「日本への輸出有力」 専門紙 [朝日] 日米共同訓練中止求め1200人行進/奈義 [赤旗] 「防衛省」見送りの公算大 官製談合で与党に冷めた声 [朝日] 武部幹事長 防衛「省」法案の提出に慎重発言 [毎日] 防衛庁設置法 閣議で改正案決定、国会提出へ [毎日] 米国防計画見直し 日本の戦争動員は既定事実か [赤旗] ゴラン高原PKO、6か月間延長…閣議で決定 [読売] 防衛庁「省」昇格後、施設庁を統合…政府・与党検討 [読売] 宇宙の「防衛目的」利用を提言へ 自民特別委 [朝日] ヤマハ発動機 無人ヘリ、防衛庁にも納入 軍事転用を認識 [毎日] 防衛庁のミサイル研究データ、総連系企業に流出 [読売] 中国への武器輸出、露に透明性求める…額賀防衛長官 [読売] 無人偵察機、日本に導入へ 北朝鮮動向などに備え [朝日] 在日米軍再編:防衛人事「沖縄シフト」最終調整が本格化 [毎日] 離島防衛、日米で訓練 9日から南西諸島重視 [朝日] 宇宙の防衛利用解禁へ、自民が夏にも政府に提言 [読売] ●自衛隊・防衛05 から続く 0714 谷垣財務相「敵基地攻撃論」に慎重姿勢 久間総務会長も [朝日] 2006年07月14日08時13分 谷垣財務相は13日、北朝鮮のミサイル発射に端を発した敵基地攻撃論について「法律上可能だと思う」と述べながらも、「日米安保のなかで日本とアメリカの役割は何なのかということをよく詰めていかないといけない。近隣諸国の信頼醸成をどうしていくかもあわせ、幅広い視点から慎重に議論することが必要だと感じている」と強調した。谷垣派の在京議員総会で語った。 自民党の久間章生総務会長も同日、記者団に「かっかしている時には議論しない方がいい。そういう時は議論することを慎んだ方が良い」と述べた。 久間氏は「相手が(ミサイルを)撃つ状況がはっきりしてきた時の攻撃を憲法9条は否定していないということは論理的には言えるかもしれない」と指摘する一方、「それをやるかやらないかは政策判断で微妙な問題だ」と語った。また、米国が「大量破壊兵器がある」として始めたイラク戦争について「自衛とは言えないような気がする」と述べた。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0714/004.html 0713 米次官補、日本の「敵基地攻撃」議論に理解 中国は批判 [朝日] 2006年07月13日12時45分 ヒル米国務次官補は13日、北京で記者団に対し、北朝鮮のミサイル発射を受けて「敵基地」への攻撃をめぐる議論が日本で浮上したことについて「こうした脅威に対する自国の防衛能力について議論することは理解できる」と語った。これに先立ち、中国外務省の姜瑜副報道局長は12日、日本での議論を「まったく無責任」で「北東アジアに緊張をもたらす」と厳しく批判した。 宿泊先のホテルを出発前、記者団の質問に答えたヒル氏は「日本にとって北朝鮮のミサイル技術は相当な懸念のはずだ」と指摘した。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0713/004.html 0712 額賀長官「敵基地攻撃、法理論的には認められる [朝日] 2006年07月12日02時13分 額賀防衛庁長官は11日の記者会見で、北朝鮮のミサイル発射をうけ議論されている敵基地攻撃の能力保有問題について、「他国から例えば精密誘導兵器で攻撃され、防ぎようのない時にどうやって国民と国家を守るか。その場合は相手基地を攻撃することもやむを得ない手段として、法理論的には認められる」との見解を改めて示した。 そのうえで「現実的にどうするかは、きっちりと議論をしていない経緯がある」として「98年や今回の北朝鮮のミサイル発射を契機に、少なくとも与党内で議論されたらいかがか」と述べた。 また、敵基地攻撃の議論に韓国大統領府が反発していることについて、額賀氏は「(日本が)戦後60年、自由に徹し平和を守ってきた実績を考えれば、理解してもらえると思う」と述べた。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0712/001.html 0711 「敵基地攻撃論」に野党から批判続出 [朝日] 2006年07月11日21時03分 北朝鮮のミサイル発射を機に政府・自民党内で敵基地攻撃能力を検討するべきだという主張が出ていることについて、野党から批判が相次いでいる。民主党の小沢代表は11日の記者会見で「(相手が)攻撃していないのに(基地への攻撃は)できない」と指摘。共産、社民両党も北朝鮮によるミサイル発射で議論が加速していることに警戒感を強めている。 小沢氏は会見で「敵というのは、北朝鮮だけとは限らない。敵と決めたとたんに戦わないといけなくなる。大事な立場におられる方は、よくよく国民全体、国全体のことを考えて発言しないといけない」と述べ、敵国の存在を前提にした議論にくぎを刺した。 その上で、ミサイル基地を攻撃する能力を持つことについては「撃つ前にどこに向けたか分からない。日本に撃ったか、他に撃ったかは、どうやって判断するのか」として、現状では困難だという認識を示した。 ただ、ミサイル防衛(MD)システムの早期配備には積極的な意見が強い民主党内の中堅・若手には、基地攻撃を容認する考えもある。鳩山由紀夫幹事長も「向こうが意図を持って日本を狙っていることが自明な場合に、専守防衛の範囲の中で基地をターゲットにできると思う」と言及している。小沢氏の発言は、こうした党内の意見を牽制(けんせい)するねらいもある。 一方、社民党の福島党首は11日、国会内で記者団に「今の段階で敵基地攻撃論まで政府の中から出てくることに非常に危機感を感じる。北東アジアで緊張を高めることになる」と、議論が出ていること自体を批判した。 共産党の市田忠義書記局長は10日の記者会見で「向こうがやるなら、それ以上の軍事力を、と。そうすると、際限のない軍拡競争になる。しかも一種の先制攻撃論だ」と指摘。その上で、北朝鮮のミサイル発射問題には「外交的な努力によって解決すべきだ。これを奇貨として日本の軍事力を増強しようというのは正しくない」と語った。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0711/009.html 0712 官房長官「先制攻撃論批判」に反論、山崎氏「憲法違反」 [朝日] 2006年07月12日20時18分 安倍官房長官は12日、北朝鮮のミサイル発射を踏まえ、敵基地攻撃能力を研究する必要があるとした自らの発言について「攻撃された場合という前提条件で言っている。だれも先制攻撃とは言っていない」と述べた。同日の記者会見で質問に答えた。国内外で「先制攻撃発言」(盧武鉉(ノ・ムヒョン)・韓国大統領)と受け止められていることに反論した。 安倍氏は「相手が武力攻撃に着手していない時点で自衛権を発動しようとしているかのような批判があるが、全く当たっていない。何もない空中を棒でたたいているのではないか」と反論。敵基地攻撃ができるのは、日本に対する攻撃への「着手」があった後になるとの立場を強調した。 攻撃に着手した時点の判断については「非常に難しい。着弾、被害発生後という可能性が当然高くなる」と語った。 ただ、日本が敵基地を攻撃する能力を保有すべきかどうかについては「議論をしなければいけない」と指摘。「日米で共同対処をしていくうえで、盾(防御)と矛(攻撃)の役割分担があるなか、ベストのコンビネーションを常に研究する必要がある」と語った。 一方、自民党の山崎拓・安全保障調査会長は12日、大阪市内で講演し、敵基地攻撃能力を検討すべきだとの主張について「非常に乱暴な議論だ。国是である専守防衛に反するし、重大な憲法違反になる。政府の外交安保の担当者は、自ら進んで発言するのは慎むべきだ」と強く戒めた。 さらに「『全面戦争になるおそれがある』と神崎公明党代表が言ったが、その通りだ。国民は『発進基地をたたく』というテーマに限定してとらえるので、非常に危険な要素がある。『やっちゃえ、やっちゃえ』と戦前回帰の危険性を持っている」と語った。 URL http //www.asahi.com/international/update/0712/019.html 0719 防衛大学校長に五百旗頭真氏が内定 [読売] 政府は19日、第8代防衛大学校校長に、五百旗頭真(いおきべ・まこと)神戸大教授(62)を起用する人事を内定した。21日の閣議で決定する。 発令は8月1日付。防大校長は、西原正・前校長が3月に勇退した後、空席となっていた。 五百旗頭氏は京都大法卒。日本政治外交史や日米関係が専門で、2004年4月に小泉首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」のメンバーに就任。防衛力整備について、弾道ミサイルなど「新たな脅威」への対処や国際平和協力への積極的取り組みなどを求めた報告書づくりに参画した。 (2006年7月19日19時52分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060719i312.htm 0709 敵地攻撃能力の保持は当然、ミサイル問題で防衛長官 [朝日] 2006年07月09日13時13分 額賀福志郎防衛庁長官は9日午前、北朝鮮の弾道ミサイル発射に関連して「日米同盟によって(日本は防御中心、敵基地攻撃は米国との)役割分担があるが、国民を守るために必要なら、独立国として限定的な攻撃能力を持つことは当然だ」と述べた。日本に対する攻撃が差し迫った場合に備えて、ミサイル発射場などを先制攻撃する能力の保持を検討すべきだとの考えを示したものだ。都内で記者団に語った。 ただ、額賀氏は「まず与党の中で議論し、コンセンサスをつくる必要がある。こういう事態が起きたからといって拙速にやるべきではない」と述べ、あくまで将来的な課題だとの認識を示した。(時事) URL http //www.asahi.com/politics/update/0709/003.html 0629 イージス艦「きりしま」に帰国命令…テポドン2号警戒 [読売] 海上自衛隊は29日、ハワイ沖で日米などが参加して今月26日から実施中の環太平洋合同演習(リムパック)に派遣していたイージス艦「きりしま」に、帰国を命じたと発表した。 北朝鮮が発射準備を進めている長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射を警戒するための措置とみられる。 (2006年6月29日13時33分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060629i306.htm 0623 日米、次世代迎撃ミサイルの共同開発に正式移行 [読売] 日米両政府は23日、ミサイル防衛(MD)システムの次世代型迎撃ミサイルについて、日米の開発担当部分などを定めた文書を取り交わし、共同開発段階に正式に移行した。 また、日本の武器輸出3原則の関係で、米側がミサイルを第三国に輸出する際には、日本側の事前承認を必要とすることなどを盛り込んだ交換公文も締結した。 共同開発する次世代型迎撃ミサイルは、イージス艦に搭載するSM3(スタンダード・ミサイル3)で、2007年度中に配備を始める現行の海上配備型ミサイルに比べると、防護範囲が約2倍になる。開発期間は9年間を見込んでいる。 日米は1999年から、次世代型迎撃ミサイルの共同技術研究をしていた。 (2006年6月23日22時58分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060623ia23.htm 0624 米軍レーダー運用前倒し、テポドン2監視目的か [朝日] 2006年06月24日01時13分 米軍の移動式早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が航空自衛隊車力分屯基地(青森県つがる市)で運用されるのに伴う飛行禁止区域の設定について、国土交通省は23日、当初予定より2日早い26日に区域設定することを発表した。米軍が運用開始を早めたためで、北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2」の発射準備の態勢を解いていないことと関連しているのではないか、と防衛庁関係者はみている。 Xバンドレーダーは、米本土などを狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の追尾のための移動式の装置。米軍三沢基地(青森県)で保管されてきたが、23日未明、車力分屯基地に移送された。 レーダーは当初、28日から運用される予定だったが、在日米軍が23日、外務省に「運用開始日を26日に変更する」と連絡してきたという。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0624/001.html 0623 米、海上ミサイル迎撃実験に成功 日本のイージス艦参加 [朝日] 2006年06月23日23時12分 米国防総省ミサイル防衛局(MDA)は22日、イージス巡洋艦「シャイロー」から発射する迎撃ミサイルSM3で、弾道ミサイルから切り離された弾頭の迎撃実験に成功した、と発表した。実験には初めて日本から海上自衛隊のイージス護衛艦「きりしま」が参加し、標的をレーダーで捕捉、追尾する実験を行った。 ハワイ沖で同日夕(米東部時間)に行われた。海上配備型の実験は8回目で、成功は7回目。シャイローは8月に米海軍横須賀基地(神奈川県)への配備が予定されている。 ミサイル防衛局のオベリング局長は23日、ワシントンで記者団に対し、「今回の実験で北朝鮮の長距離ミサイルを迎撃できるとの確信を持った」と述べた。局長は「北朝鮮の脅威を念頭にシステムを配備している」とも指摘した。 URL http //www.asahi.com/international/update/0623/014.html 0609 防衛庁の「省」昇格関連法案を閣議決定 [読売] 政府は9日午前の閣議で、防衛庁の省昇格関連法案を決定した。防衛庁を「防衛省」とすることや、自衛隊の国際平和協力活動を本来任務化することが柱だ。 同日午後、衆院に提出した。 通常国会は、会期末が18日に迫っているため、政府・与党は継続審議とし、秋の臨時国会での成立を目指す。 防衛庁設置法を「防衛省設置法」に改正して、防衛庁を防衛省にする。防衛長官は防衛相となる。防衛省の任務や所掌事務、組織などは、現行の防衛庁設置法の規定を基本にする。防衛庁は内閣府から独立し、各省並びの防衛省と位置づけられる。 自衛隊法3条で定めている自衛隊の本来任務には、国際平和協力活動と周辺事態への対応を新たに加える。その前提として、日本防衛に「支障を生じない限度」と、「武力による威嚇、武力の行使に当たらない範囲」を盛り込んだ。 シビリアン・コントロールをより明確化するため、安全保障会議設置法を改正し、安保会議に対する首相の諮問事項に、自衛隊の国際平和協力活動と周辺事態への対処を明示した。自衛隊の最高指揮監督権や防衛出動を命じる権限は、首相に残した。 談合事件が起きた防衛施設庁を2007年度に廃止し、防衛省に統合する。 自民党には、省名を「国防省」と主張する声もあったが、当初、公明党が「防衛国際平和省」「防衛国際貢献省」などとするよう求めていたことを踏まえ、「防衛省」とすることに落ち着いた。 (2006年6月9日18時54分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060609i103.htm 0610 国防 諸国並み組織に 防衛「省」法案閣議決定 [産経] 2006年 6月10日 (土) 03 21 政府は9日、防衛庁の「省」昇格法案を閣議決定、国会に提出した。政府・与党は今国会では継続審議とし、秋の臨時国会での成立を期す。成立はなお流動的だが、省昇格を悲願としてきた防衛庁は、党内に根強い慎重論があった公明党の了承を得たことで、「大きなヤマを越えた」(幹部)と安堵(あんど)している。 法案では、防衛庁を防衛省、防衛庁長官を防衛相に改称、内閣府の外局から独立させる。諸外国では国防担当はミニストリー(省)が一般的で、エージェンシー(庁)は特異な例だ。 小泉純一郎首相が9日、記者団に「なんで『庁』である必要があったのか。当然だ」と述べたように、国防を担う組織を常識的な“格付け”に修正する措置といえる。 実務的には、これまで防衛庁は、閣議にかける必要のある法案提出や予算要求を内閣府を通じて手続きをしなければならなかったが、省になれば直接できる。不審船に対処する「海上警備行動」発令の承認を得るための閣議開催も要求できるようになり、「対処が迅速化する」(防衛庁幹部)メリットもある。 ただ、自衛隊の最高指揮監督や、武力攻撃事態における防衛出動発令については、従来通り首相の権限で、「防衛相の権限は限定的」(政府筋)といえる。 また、現行自衛隊法で付随的任務と規定されている国連平和維持活動(PKO)やイラク派遣などの国際平和協力活動は、省昇格に伴う法改正で、防衛出動と並ぶ「本来任務」に格上げされる。 ■拒否反応に配慮 公明、3原則条件 防衛庁の省昇格問題について、公明党の神崎武法代表は8日、(1)自衛隊の活動は憲法9条の枠内に限定(2)集団的自衛権の行使は認めない(3)防衛費の増大を防ぐ-の三原則を条件に容認する考えを示した。同党や支持母体である創価学会の一部に「防衛省」への拒否反応があることに配慮した形だ。公明党としては、統一地方選、参院選が続く来年に法案処理を持ち越すのは避けたいのが本音で、同党の東順治国対委員長は9日、「秋の臨時国会で必ず成立させねばならない」と強調した。 臨時国会は防衛「省」昇格法案以外にも、教育基本法改正案、国民投票法案、社会保険庁改革法案など多くの重要法案を抱える見通しになっているが、自民党は「新政権発足の勢いで成立させる。防衛軽視と言われないため、小沢民主党は反対できないだろう」(国対幹部)と楽観視している。 URL http //news.goo.ne.jp/news/sankei/seiji/20060610/m20060610002.html 0610 「防衛省」法案、国会提出 秋の臨時国会へ継続審議方針 [朝日] 2006年06月09日17時14分 政府は9日の閣議で防衛庁の「省昇格法案」を決定し、国会に提出した。54年に発足した同庁を防衛省に格上げする法案が政府によって提出されたのは初めて。自衛隊の海外活動の本来任務への格上げも盛り込まれた。会期末が18日に迫り、政府・与党は法案を継続審議にして秋の臨時国会での成立を目指す方針。だが、教育基本法改正案など他の重要法案も軒並み先送りされるうえ、処理の優先順位の判断は次の首相に委ねられることになり、省昇格法案の成立の見通しは立っていない。 安倍官房長官は9日の記者会見で「近年、防衛問題が重要性を増すなか、諸外国と同様に防衛庁を省と位置づけ、各種の事態により的確に対応することは必要なことであり、自然な流れだと考える」と述べた。 法案は(1)防衛庁を「防衛省」に、防衛庁長官を「防衛相」に格上げする防衛庁設置法改正(2)自衛隊の海外活動を付随的任務から本来任務に格上げする自衛隊法改正――などの一括改正。 現在の内閣府の外局から独立の省に格上げすることにより、法案提出などの閣議開催の要求や、予算の財務相への要求などが直接可能になる。不審船に対処する「海上警備行動」などの発令の承認を得る閣議の開催も要求できる。同庁は「危機に迅速に対応できる」と意義を強調する。 本来任務に格上げする海外活動は、自衛隊法で雑則に定められている(1)国際緊急援助活動(2)国連平和維持活動(PKO)(3)周辺事態での後方支援、付則の(4)テロ特措法の活動(5)イラク特措法の活動――などで、国土防衛や災害派遣などと同等の重みを持たせる。 同法案が成立しても、首相が自衛隊の最高指揮監督権を持つことは変わらない。国内外に根強い慎重意見に考慮し、同庁は「シビリアンコントロール(文民統制)の基本的枠組みは変わらない」としている。 省昇格法案は64年の池田内閣時にも閣議決定されたが、国会提出は見送られた。01年に旧保守党が議員立法で提出したが、03年の衆院解散で廃案になった。 政府は公明党の要求を受けて法案の付則に07年度の防衛施設庁解体を盛り込み、了承を得た。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0609/002.html 0609 鳩山幹事長「議論できる環境ではない」 防衛省格上げ [朝日] 2006年06月09日23時09分 民主党の鳩山由紀夫幹事長は9日、党本部で記者会見し、政府が防衛庁を「防衛省」に昇格させる法案を提出したことについて「防衛庁は米軍再編問題で巨額の費用負担について説明責任を果たしていない。防衛施設庁で不祥事も起きたのに、防衛庁長官の責任も取られていない。『省』への格上げなどという議論ができる環境ではない」と批判した。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0609/005.html 0608 安保会議、防衛省への昇格法案了承…衆院提出へ [読売] 政府は8日夜、安全保障会議を開き、防衛庁の省昇格関連法案を了承した。 9日に閣議決定し、衆院に提出する。今国会は会期末が18日に迫っているため、政府・与党は秋の臨時国会での成立を図る考えだ。 また、安保会議は、インドネシアに巡視船3隻を政府開発援助(ODA)で供与することも了承した。 (2006年6月8日22時28分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060608ia24.htm 0608 防衛省法案9日に閣議決定 政府提出は初めて [共同] 与党安全保障プロジェクトチーム(座長・山崎拓自民党前副総裁)は7日午後、防衛庁の「省」昇格法案について、公明党部会の了承を受け、政府に同法案の提出を要請した。政府は8日の安全保障会議(議長・小泉純一郎首相)などを経て、9日に閣議決定、国会提出する方針だ。 省昇格法案は1964年に閣議決定まで至った例があるが、政府としての法案提出は今回が初めて。旧保守党が2001年に「防衛省設置法案」を出したが、03年の衆院解散で廃案となった。ただ会期末が18日に迫っており、成立は次期国会以降に持ち越される。 公明党の神崎武法代表は7日午後の記者会見で「秋の臨時国会で安全保障分野の最優先課題として取り組み、必ず成立させたい」と強調した。 URL http //flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM PG=STORY NGID=poli NWID=2006060701003610 0528 自民・中川氏 防衛政策見直し、次期政権の課題と認識 [毎日] 自民党の中川秀直政調会長は28日、鹿児島市内の会合であいさつし、「中期防衛力整備計画も防衛計画大綱も『ポスト小泉』時代に検討を進める」と指摘、防衛政策の見直しが次期政権の課題になるとの認識を示した。在日米軍再編問題については「経費の在り方を歳出・歳入一体改革の中でどうしていくか」と述べ、6月のとりまとめを目指す財政改革論議の対象にする考えを明らかにした。【谷川貴史】 毎日新聞 2006年5月28日 20時52分 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20060529k0000m010083000c.html 0526 「防衛省」昇格法案提出へ…今国会成立は困難 [読売] 政府・与党は26日、防衛庁の省昇格関連法案を今国会に提出する方針を固めた。 防衛施設庁をめぐる談合事件などで難色を示していた公明党が提出は認める方針に転換したためだ。ただ、6月18日までの会期を大幅延長しない限り成立は困難と見られる。 法案は、〈1〉防衛庁設置法を防衛省設置法に改正する〈2〉自衛隊法を改正し、自衛隊の国際平和協力活動などを本来任務に格上げする――などが主な内容だ。自民党は26日の内閣・国防部会合同会議で、法案の提出を了承した。 公明党は同日、安保政策の専門家を招き、意見交換をした。公明党の東順治国会対策委員長は記者団に「今国会は法案が提出できればいいのではないか」と語った。 (2006年5月26日23時16分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060526ia23.htm 0526 日中韓ロ米加が海上訓練、不法入国・密輸防止が狙い [朝日] 2006年05月26日00時26分 海上保安庁は27日から、中国、韓国、ロシア、米国、カナダの計5カ国の海上保安機関と、大規模な合同訓練を行う。入港に必要な書類の提出を拒んだ船を追跡するなどの想定で、日本側が各国に呼びかけた。中国・上海からロシア・ウラジオストクまでの約2000キロに及ぶ追跡訓練など東シナ海と日本海を舞台に、来月8日まで実施する。北太平洋沿岸の主要国がこれほど多く参加する訓練は初めてという。 6カ国共同訓練の追跡想定航路 この取り組みは、米国主導で中韓が不参加の大量破壊兵器の拡散防止構想「PSI」とは別に、不法入国や違法薬物などの密輸といった犯罪の防止、海上テロの抑止や制圧能力を高めることに主眼を置く。00年から4カ国で協議が始まり、カナダ、中国が順次参加し情報交換システムの開発や机上訓練を続けてきた。 昨年9月、神戸で開かれた6カ国の長官級会合で石川裕己長官が海上訓練を提案し、各国も同意した。 訓練では、米沿岸警備隊の船が大量破壊兵器の流出が懸念される国の貨物船にふんする。船の仕様や寄港地などの保安情報の提出を拒んだことから上海で入港を拒否され、ロシア方向に航行するのを、沿岸各国が自国の排他的経済水域(EEZ)で追跡し、情報交換システムでデータをやりとりする。追跡を引き継ぐ地点は各国が追跡しやすいように、各国のEEZの中間線や参加航空機の飛行可能領域を考慮して決めたという。 URL http //www.asahi.com/national/update/0525/TKY200605250345.html 0524 防衛庁に「装備本部」新設 組織改編の改正法が成立 [朝日] 2006年05月24日10時27分 防衛庁の組織を改編する同庁設置改正法などが24日の参院本会議で自民、公明、民主各党などの賛成多数で可決、成立した。98年の旧調達実施本部の背任事件を受けて分離していた契約本部と同庁内局の原価計算部を再統合し、「装備本部」を新設する。同庁は外部監査を導入してチェックするという。 また、米軍基地に関する防衛施設庁の企画立案機能を内局に移し、強化する。陸上自衛隊に中央即応集団も新設する。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0524/006.html 0520 中期防、正面装備など削減へ…米軍再編の財源確保で [読売] 政府は19日、巨額の在日米軍再編関連経費の財源を確保するため、現行の中期防衛力整備計画(2005~09年度、総額24兆2400億円)を見直し、正面装備の予算などを削減する方針を固めた。 見直しの対象は、07年度予算から3年間とするか、08年度から2年間とするかで調整している。米軍再編の最終報告の内容を実施するために近く閣議決定する際、中期防見直しに言及する方向だ。 米軍再編経費としては、在沖縄海兵隊のグアム移転費102億7000万ドル(06年度予算の換算レートで1兆1400億円)のうち、日本側負担が60億9000万ドル(6760億円)で、そのうち直接の財政支出が28億ドル(3108億円)、出資金が15億ドル(1665億円)となっている。 一方、国内の基地再編費は「地元振興策を含め1兆5000億~2兆円程度」(防衛庁幹部)として、総額で2兆円を超すとの見方がある。この場合、再編を10年程度で完了するには、年間平均2000億円以上を要する計算になる。 これらの経費について、防衛庁は、沖縄施設・区域特別行動委員会(SACO)関係経費と同様、防衛庁予算の「別枠」を設け、政府全体で財政措置を講ずるよう求めているのに対し、財務省は防衛庁予算の枠内で処理するよう主張し、対立している。 ただ、防衛庁も、中期防を見直し、正面装備などを一定程度削減することには理解を示している。 (2006年5月20日3時17分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060520i101.htm 0517 ネット流出、海自文書計3千点 有事演習計画も [朝日] 2006年05月17日06時08分 海上自衛隊の内部資料がインターネット上に流出した問題で、防衛庁は03年に行われた海自最大の実動演習「海上自衛隊演習(海演)」の作戦計画を含む大量の文書が流出していたことを確認した。総数は約3000点にのぼる。同作戦計画は事実上、朝鮮半島有事を想定したものだが、秘匿性の高い海演のシナリオが公になるのは初めて。流出文書は通信や暗号の分野にも及び、海自は共通するものも使っている米海軍と協議し、暗号については全名称を、通信については周波数の一部を変更した。 03年11月に行われた海演(10日間)には、艦艇約80隻、航空機約170機、人員約2万5000人が参加した。 その内容を周辺事態と防衛出動事態に分けて詳述した3点の資料は、九州・沖縄を管轄する海自の佐世保地方隊が、主力部隊の自衛艦隊や米海軍とともに事態に応じて実施する作戦を列挙。いずれも防衛庁が定める3段階の秘密区分のうち、3番目にあたる「秘」に指定されていたが、問題発覚後に指定を解除された。 海演のシナリオは、周辺事態で日本周辺の2カ国が、日本に対しても弾道ミサイルを発射する準備に入ったり、南西諸島の「S諸島」の領有権を主張したりするという筋書きになっている。 佐世保地方隊は、対馬海峡から九州西方にかけての海域で、警戒監視活動や船舶検査活動、邦人輸送、機雷掃海などを行う。 日本有事に移行すると、海自の主力部隊の自衛艦隊は、作戦海域に向かう空母部隊などの米海軍部隊を護衛、S諸島に陸上自衛隊の部隊を揚陸させるために艦船による海上輸送作戦を行う。また、米海軍は、朝鮮半島を中心に作戦行動を展開する一方、日本海でも海上阻止行動(MIO)などを行うとしている。 このほか流出が確認された資料には、有事の際にも使う通信や暗号に関するものが多数確認された。有事に九州の沿岸部に派遣される移動通信部隊の周波数や通信可能範囲などを図示した「秘」指定文書もあった。 一方、海上幕僚監部の調査で、佐世保基地所属の護衛艦に勤務していた隊員が資料を流出させた時期は、今年1月21日とわかった。04年から自宅のパソコンでファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を使い始め、05年から業務用データを勝手に自宅に持ち帰り私物パソコンに保存していた。 海自がネット上に秘密文書が流出しているのに気づいたのは2月16日。5日後の同21日、ようやく流出元を突き止めた。 再発防止策として、防衛庁は(1)ファイル交換ソフトの削除(2)私物パソコンからの秘密文書の削除などを定めた通達を出す一方、パソコン約5万6000台(約40億円)を購入。今年9月末までにパソコンが必要な全隊員に行き渡るようにした。 同庁は流出元の隊員を含め処分を検討中だ。 URL http //www.asahi.com/national/update/0516/TKY200605160541.html 0512 自衛隊の災害派遣、過去2番目の892件 [読売] 2005年度に自衛隊が災害派遣に出動した件数は892件で、1996年度(898件)に次いで過去2番目に多かったことが、防衛庁のまとめで分かった。 一方、派遣人員は、のべ3万4026人で、新潟県中越地震への派遣があった04年度に比べ、約12万8000人減った。 内訳をみると、急患輸送が609件(68%)で、例年通り最多。このうち、582件が九州、沖縄地方などの離島からの輸送だった。次いで、山林火災などの消火支援が147件、その他65件、捜索救難55件など。 (2006年5月12日23時23分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/national/news/20060512ic22.htm 0509 米ミサイル実験に海自イージス艦が参加 [朝日] 2006年05月09日23時24分 6月中旬から下旬にかけて米ハワイ沖で予定されている米海軍の海上配備型迎撃ミサイル「SM3」の発射試験に、海上自衛隊のイージス艦「きりしま」が初めて参加することが分かった。齋藤隆海幕長が9日の記者会見で明らかにした。 イージス艦の「SPY―1」レーダーによる標的の追尾能力と、米軍との情報連絡の方法を確認するのが目的。 海自が保有する4隻のイージス艦のうち、「こんごう」が07年度末までに迎撃ミサイルSM3と発射誘導システムを装備し、弾道ミサイル防衛(BMD)能力を備えた第1号艦として改修を終えることになっている。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0509/009.html 0506 武器輸出3原則の緩和求める 久間・自民総務会長 [朝日] 2006年05月06日12時39分 自民党の久間章生総務会長は4日、訪米中の与党の安全保障議員団のメンバーとともに記者会見し、「在日米軍なども日本でメンテナンス(整備)できるようにしたらどうか。武器輸出3原則もある程度の緩和をしなければならない」との考えを示した。武器輸出3原則は04年末にミサイル防衛(MD)に関する共同開発・生産が例外とされているが、さらなる緩和を求めた発言だ。 会見で久間氏は「日米関係をさらに深化するためには、政府対政府、軍対軍だけでなく、産業界も含めてやっていかないといけない」との認識を示した。「太平洋、在日米軍が持っている装備品、艦船、飛行機を米国まで運んで修理するとコストがかかる」と、日本国内で修理・整備をする必要性を強調。「それをするためには、武器輸出3原則も今までみたいにかたくなにやっていたら、部品の取り換えをやった時に部品を米国に持って帰ることができず、意味がない。ある程度の緩和はしなければならない」と述べた。 米国防総省当局者らと与党議員団との一連の会談で、こうした考えを米側に伝えたという。 久間氏はまた、「武器の交換や部品の交換、メンテナンスをする時に即時に情報の交換をしなければならない」とも指摘。日本政府として、米軍の軍事情報に関する包括的な秘密保全協定の検討に入ったことも明らかにした。米国は約60カ国と同協定を結んでいるが、日本は個別案件ごとに協定を結んでおり、一般的協定がないという。 武器輸出3原則を巡っては、日本経団連が04年に見直しを提言。政府は同年末の官房長官談話で、ミサイル防衛の共同開発・生産を武器輸出3原則の例外と位置付け、緩和に踏み切った。元防衛庁長官で自民党国防族の久間氏が、与党議員団を代表して緩和を求めたことで、論議を呼びそうだ。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0506/001.html 0505 麻生外相:NATOで閣僚初の演説 対テロ協力を強調 [毎日] 【ブリュッセル福原直樹】麻生太郎外相は4日午後(日本時間同日夜)、北大西洋条約機構(NATO)本部で日本の閣僚として初めて演説し、今後、テロ対策などで日本とNATOが協力を深めていくべきだと強調した。日本政府高官によると、将来、自衛官をNATOの幹部養成機関に留学させるなどの人的交流も考えているという。 演説で外相は、北朝鮮や中国・台湾問題など、アジアの安全保障状況を説明。イラクでの自衛隊活動など最近の日本の国際貢献の実績も紹介した。また、テロ対策や平和維持活動などで、憲法の枠内でNATOに協力する意向であると述べた。 毎日新聞 2006年5月5日 2時27分 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060505k0000m010139000c.html 0430 「戦争の危険ある」過去最高 「自衛隊に良い印象」も [朝日] 2006年04月30日18時31分 自衛隊に良い印象を持っている人が84.9%に達したことが内閣府の「自衛隊・防衛問題に関する世論調査」で分かった。一方、日本が戦争に巻き込まれる「危険がある」と感じている人は45%で、いずれも過去最高だった。自衛隊の国内外の活動が定着していることや、北朝鮮の核問題が決着しないことなどが国民のこうした意識につながっているようだ。 調査は2月16日から26日にかけて、20歳以上の全国3000人を対象に面接で実施、1657人が回答した(回収率55.2%)。69年からほぼ3年ごとに実施している。 自衛隊に良い印象を持っている人は、72年調査の58.9%を最低にほぼ上昇傾向が続いている。一方、悪い印象を持っている人は10%にとどまり、過去最低だった。 日本が戦争に巻き込まれる「危険がある」と感じている人は、前回調査(03年)の43.2%を1.8ポイント上回った。その理由を複数回答で聞いたところ、「国際的な緊張や対立があるから」が77.4%で最も高く、次いで「国連機能が不十分だから」が29.8%、「自衛力が不十分だから」が19.1%、「日米安保条約があるから」は17.3%だった。 また、日本の平和と安全で関心を持っていることについて10項目から複数尋ねたところ、「朝鮮半島情勢」が63.7%と最も高く、次いで「国際テロ組織の活動」が46.2%、「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」が36.3%だった。 イラクでの自衛隊の活動については「役立っている」が66.7%で、「役立っていない」の24.1%を大きく上回った。また、弾道ミサイル防衛(BMD)システム整備については、「賛成」が56.6%、「反対」が25.2%だった。 国を守る気持ちを教育の場で取り上げる必要があるという人は65.7%で過去最高を記録、取り上げる必要はないとした人の22.1%を大きく上回った。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0430/004.html 0413 防衛庁 省昇格関連法案の骨子、与党に提示 [毎日] 防衛庁は12日、今国会への提出を目指している同庁の「省昇格関連法案」(仮称)の骨子を与党に提示した。「省」昇格とともに、国際平和協力活動を自衛隊の本来任務に格上げする自衛隊法の改正も抱き合わせで一本の法案として提出する内容。 骨子によると、防衛省に移行後も、首相や防衛庁長官の指揮監督権はそのまま継承され、文民統制(シビリアンコントロール)の基本的枠組みは維持される。 自衛隊法3条に定められている「自衛隊の任務」に、(1)周辺事態に対応して行う活動(2)国際協力の推進を通じて安全保障環境の安定化に資する活動--の二つを新たな項目として加え、本来任務と位置付ける。 テロ対策特別措置法、イラク復興特別措置法は、これまで通り自衛隊法の付則に位置付けられるが、活動そのものは本来任務と解釈する方向。来週以降、与党内の調整が本格化する見通しだ。 【田中成之、古本陽荘】 毎日新聞 2006年4月13日 3時00分 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060413k0000m010157000c.html 0411 防衛庁天下り、前年比49人増の852人 [読売] 自衛隊法に基づき、2005年中に防衛長官の承認を受けて、防衛庁と密接な関係にある企業に再就職(天下り)した自衛隊員は前年比49人増の852人に上ることが11日、防衛庁が発表した「自衛隊員の営利企業への就職の承認に関する報告」で分かった。 本庁課長級以上の承認数は106人(前年比18人増)で、人事院が3月に発表した他省庁全体の64人を防衛庁単独で上回っている。同庁は「自衛官は、部隊の精強さを保つための若年定年制があるため」などと説明している。 また、106人について、04年度の同庁契約本部との契約高上位20社への天下りを見ると、三菱重工業8人、日本電気6人、三菱電機5人、日立製作所4人などとなっており、上位20社で42人を占めた。106人全員が「官のあっせんや仲介などによる就職」で、自発的な就職活動や知人の紹介はなかった。 官製談合事件が摘発された防衛施設庁からは、札幌防衛施設局長が設備工事会社に顧問として、また、那覇防衛施設局会計課の課長補佐が建設会社に嘱託として再就職していた。 (2006年4月11日12時29分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/national/news/20060411it03.htm 0328 自衛目的で軍事利用も可 自民、宇宙基本法案提出へ [共同] 自民党は28日、これまで非軍事目的に厳しく制限してきた日本の宇宙開発政策を転換し、自衛の範囲であれば軍事利用も可能とする「宇宙基本法案」(仮称)を議員立法の形で提出する方針を決めた。 同日開いた党宇宙開発特別委員会小委員会(委員長・河村建夫元文部科学相)で確認した。8月までに法案をまとめ、次期通常国会に提出する。 防衛庁による高解像度偵察衛星の開発・運用や、弾道ミサイルの発射を検知する衛星の開発も可能になる。民間の参入により、宇宙の産業化促進も目指す。 宇宙の平和利用原則は国会が1969年に決議。当時の科学技術庁長官がこれを「非軍事を指す」と国会答弁し、宇宙開発事業団法にも盛り込まれて定着した。 URL http //flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM PG=STORY NGID=soci NWID=2006032801000368 0327 中台軍事力「中国に有利」 防衛研究所の概観 [朝日] 2006年03月27日22時50分 防衛庁防衛研究所は27日、中国や朝鮮半島など東アジアの軍事情勢を分析した06年版「東アジア戦略概観」を発表した。中国と台湾との軍事バランスについて、昨年は「不透明になりつつある」と表現していたが、中国の軍事力増強をうけ「中国側に有利に傾きつつある」と踏み込んだ。 台湾をにらんだ中国軍の動向について「概観」では(1)独立の動きを阻止するため、核・ミサイル戦力や海空戦力の近代化を継続(2)武力による統一を念頭に各種訓練を実施、と分析している。 一方、北朝鮮が昨年2月に核兵器保有宣言をしたことを挙げて「米国への牽制(けんせい)を続けている」と指摘。「大量破壊兵器や弾道ミサイルの保有は東アジアの大きな脅威」との懸念を示した。 日米両政府が協議中の在日米軍再編では、こうした中国や北朝鮮の情勢などを踏まえ「兵力削減と抑止・緊急対処力維持という矛盾した要求を満たしていかなければならない」と記した。 URL http //www.asahi.com/international/update/0327/010.html 0327 陸海空3自衛隊の運用一元化、新統合体制スタート [読売] 陸海空3自衛隊でこれまで各自衛隊ごとに行われていた運用を一元化し、自衛隊の効果的な運用を図る、新しい統合運用体制が27日、スタートした。 防衛長官を一元的に補佐する新設ポストの統合幕僚長には、先崎(まっさき)一・前統合幕僚会議議長(61)が就任した。 移行に伴い、従来の統合幕僚会議が廃止され、500人体制の統合幕僚監部を新設した。 (2006年3月27日23時1分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/national/news/20060327ic24.htm 0322 自衛隊の統合運用 命令一下の戦闘をめざすのか [赤旗] 自衛隊は二十七日から、陸海空三自衛隊の指揮・命令を一本化する新しい統合運用体制に移行します。 自衛隊は米軍と同じ常設統合軍に変わり、防衛庁長官の指揮を受けて新設の統合幕僚長が、三自衛隊、二十五万人の巨大な実力部隊を動かすことになります。指揮形態が米軍と同じになることで、日米軍事一体化の強化と海外で戦争する軍事体制づくりが大きく進むことになります。それはまた、「制服組」の政治介入を生む危険と隣り合わせです。 「制服組」主導の危険 自衛隊は、どのレベルであれ、一人の指揮官が陸海空部隊を指揮する常設統合軍になります。指揮体系が米軍と同じになることは共同作戦を効果的に進めるテコになります。 米軍は、一人の指揮官が陸海空などでつくる統合部隊を指揮し、たたかいます。多国籍軍をつくる場合も、同盟国軍が一人の指揮官によって指揮されるのを前提にしています。 統合運用体制移行の背景には、海外の戦場で自衛隊が米軍作戦を分担し、戦闘部隊としての役割を果たさせるというブッシュ政権のねらいがあります。陸海空三自衛隊の各幕僚長がそれぞれ個別に部隊を動かす現行体制では迅速な共同作戦が難しいとして、統合運用体制への移行を求めてきたのです。 小泉政権は、「防衛計画の大綱」(二〇〇四年十二月)で、イラク戦争のようなアメリカの先制攻撃戦争参加を中核とする「国際平和協力活動」を安全保障政策の柱にしました。それはイラクで行っているような輸送などの後方支援に限定されるものではなく、武力行使を想定にふくんでいるのはいうまでもありません。 統合運用体制は、憲法九条改悪を見越して、海外で武力行使を効果的に実施するためのものであり、到底認めることはできません。 統合幕僚長の権限強化による「制服組」の発言力増大も心配です。 統合運用体制は自衛隊創設時から問題になってきました。しかし、政府は、「昔のような弊害を再び繰り返させてはいかん」(一九五四年五月三十一日 参議院内閣委員会 木村保安庁長官、七月から防衛庁長官)として拒否してきました。 自衛隊創設のさい、軍部横行の再来を許さないために、防衛庁設置法で、「官房長及び局長」が自衛隊のすべてについて防衛庁長官を補佐すると明記もしました(一六条)。 このしくみを実質的に変えるのが統合運用です。内局と統合幕僚長の防衛庁長官補佐権限を対等な形にするだけでなく、内局の権限を弱め、相対的に統合幕僚長の権限が大きくなるようにしています。 二〇〇二年までの防衛白書で明記していた「基本的方針の作成について長官を補佐する防衛参事官が置かれている」の表記を〇三年から削除しました。内局の自衛隊統制のかなめである防衛参事官(官房長と局長などから構成)も十人から八人に減らしました。軍事優先政治の危険を軽く考えるわけにはいきません。 過去の教訓をふみつけにし、海外での戦争推進のテコとなる統合運用体制は憲法九条とは相いれません。 歯止めは憲法九条 アジアと世界では、紛争を戦争ではなく話し合いで解決する流れが本流となっています。アメリカ政府も、イラク戦争の失敗にこりて外交重視を示すようにもなっています。 小泉政権の平和と進歩への異常な逆流を許すわけにいきません。 憲法九条を守り抜くことがいよいよ重要になってきています。 URL http //www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-03-22/2006032202_01_0.html 0317 自衛隊、懲戒の9割を匿名発表…逮捕・免職者も [読売] 防衛庁や各地の自衛隊が今年2月末までの約半年間に自衛官らの懲戒処分を発表した際、9割近くのケースで氏名を伏せていたことが分かった。 内部でも本人が特定されないよう、年齢や階級すら明かさない例も目立つ。防衛庁は「処分公表は個人が特定されない形が原則」としているが、逮捕や懲戒免職でさえ匿名発表があり、重要な職責を担う組織としての姿勢が問われそうだ。 防衛庁によると、昨年8月15日から今年2月末までに、自衛隊法に基づいて懲戒処分を受け、公表されたのは、陸海空各自衛隊の自衛官453人、事務官28人の計481人。421人は匿名で、実名は自衛官55人、事務官5人だけだった。実名の大半は、警察の逮捕時などに既に氏名が発表されていたケースとみられる。 陸自郡山駐屯地(福島県郡山市)で、事務室から63万円の入った金庫を盗んだ3等陸曹(25)が、昨年12月に懲戒免職になった際は、内部の警務隊が逮捕していたのに氏名、経歴を伏せた。酒気帯び、無免許運転などによる停職処分でも年齢が伏せられた。 今月になっても、女子学生へのセクハラ行為で懲戒免職にした防衛大学校助教授(37)のケースでは、「被害者が特定されないため」として、助教授の略歴を明かさず当初は年齢も伏せたが、被害者には処分すら伝えていなかった。痴漢行為で逮捕された防衛庁技術研究本部の陸自幹部(43)の停職処分でも、通常公表する階級を「佐官級」とした。 こうした発表方式は、昨年8月の防衛次官通達に基づくもので、職務関連のすべての処分と私的行為でも降任や停職以上は、発表するよう求める一方、「個人が識別されない内容を基本とする」としている。だが、通達でも、ベースとなった人事院指針でも、不祥事の内容や被処分者の職責によっては、個別に判断して実名発表が可能だ。防衛庁広報課では「内外に個人が識別されないことが原則で、公表内容は適切」としている。 ジャーナリストの櫻井よしこさんは「政治家や公務員は、国民の信頼を裏切った場合は顔を出して責任を取るべきで、匿名にすることが不祥事や失敗がなくならない一因ではないか。自衛隊は普段、安全保障や防災に努力しているのに、氏名も年齢も出さないのでは信頼を失う」と話している。 (2006年3月17日3時2分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/national/news/20060317it01.htm 0317 初代統幕長に先崎氏 3月27日付 [共同] 額賀福志郎防衛庁長官は17日午前の閣議で、新設した統合幕僚監部の初代幕僚長に先崎一統合幕僚会議議長(陸将)を充てるなど自衛隊の将官人事を報告、了承された。発令は27日付。 URL http //flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM PG=STORY NGID=poli NWID=2006031701000315 0220 米の最新鋭戦闘機F22「日本への輸出有力」 専門紙 [朝日] 2006年02月20日06時18分 米空軍の最新鋭戦闘機F22ラプターを日本へ輸出する案が空軍内部で検討され、有力になりつつあると、空軍関係専門紙が18日までに伝えた。機密性の極めて高い先端軍事技術が多用された軍用機で、これまで他国と共有することには否定的だったが、日米同盟関係の緊密さを優先させる判断に基づく方針転換とみられる。ただし、巨額のコストなど課題は多く、日本側が受け入れるかどうかを含めて今後の曲折が予想される。 軍事産業業界のニュースレター「インサイド・ジ・エアフォース」の最新号によると、主製造社のロッキード・マーティン幹部が対日輸出について「まだ最高レベルの検討には及んでいないが、そこへ向かいつつある」と述べたという。 同紙によると、日本の防衛当局者もF4戦闘機の後継としてF22に関心を持っており、同社や空軍と協議したことを認めた。年内に米国へ航空自衛隊の調査担当者を派遣する方針も示したという。 F22は、レーダーに捕捉されにくいステルス性と超高速巡航能力を兼ね備えた高性能戦闘機として90年代から開発されてきたが、冷戦の終了で計画が縮小され、現時点では合計約180機調達が予定されている。昨年12月に初めてバージニア州ラングレー空軍基地に実戦配備されたばかり。 同紙によると、1機の調達価格は約1億3000万ドル(152億円)で、同社幹部は日本側にもほぼ同様の価格を提示しているという。 URL http //www.asahi.com/international/update/0220/001.html 日米共同訓練中止求め1200人行進/奈義 [赤旗] 2006年02月12日 陸上自衛隊日本原演習場(奈義町、津山市)での日米共同訓練に反対する「2・11日米共同訓練反対日本原集会」(連合岡山などでつくる実行委員会主催)が11日、奈義町豊沢の広場であった。労組員ら約1200人(主催者発表)が参加し、「訓練の中止を求める決議」などをしたあと、陸自日本原駐屯地まで約3キロをデモ行進した。 集会で連合岡山の森本栄会長らが「いつか来た戦争への道を許さないため、自信と誇りを持って訓練に反対しよう」などと訴えた。参加者は中国地方各県からバス計27台で駆けつけた。 今回の日米共同訓練は、米軍250人、陸自350人が参加し、あいば野(滋賀県)と日本原の両演習場で19日から3月3日まであり、日本原へは20日に参加部隊が来るという。 URL http //mytown.asahi.com/okayama/news.php?k_id=34000000602130005 「防衛省」見送りの公算大 官製談合で与党に冷めた声 [朝日] 2006年02月13日13時54分 小泉首相は13日昼、防衛庁を「省」に昇格させる法案について「自民、公明の協議の状況を見守っていきたい。急ぐ話じゃないし、ゆっくりと協議していただければ」と記者団に述べ、今国会での法案提出にはこだわらない姿勢を示した。自公両党の幹部からも提出に慎重な発言が相次いでおり、防衛施設庁の官製談合事件が発覚したなか、法案は見送られる公算が大きくなった。 この問題では、自民党の武部勤幹事長が12日のNHKの番組で「出せばいいというものでもない。国会の状況を見ながら考えていく必要がある」と見送りもあり得るとの考えを示し、公明党の冬柴鉄三幹事長も同じ番組で「(防衛施設庁の事件が)燃えさかっているなかで冷静な議論が出来ない」と語った。 安倍官房長官も13日午前の記者会見で「与党で方針が一致すれば、政府としてはその方針を踏まえて対処していく」と述べ、与党次第との考えを示した。 防衛省設置法案は政府・与党が今国会での提出・成立を目指してきたが、防衛施設庁の事件発覚で情勢が変化。世論の批判が集まるなかで、「焼け太り」につながる省昇格の論議はできないとして反対論が急速に強まった。防衛庁長官経験者の一人は13日、「この法案は出すことに意味があるが、一国会でやるのは無理だ」と述べ、提出の可能性はなお残されているものの、成立までこぎつけるのは難しいとの考えを示した。 法案に慎重姿勢だった公明党は、昨年末に執行部が前向きに転じて党内論議を始めていたが、党幹部からは「もう無理ではないか」という声も上がっている。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0213/002.html 武部幹事長 防衛「省」法案の提出に慎重発言 [毎日] 自民党の武部勤幹事長は12日のNHKの討論番組で、防衛庁の「省」昇格法案について「出せばいいというものでもない。出した以上、成立を期さなくちゃいけない。党内の論議や国会の状況を見ながら考えていく必要がある」と述べ、今国会提出について慎重に判断する考えを示した。 公明党の冬柴鉄三幹事長も同番組で、防衛施設庁の官製談合事件を踏まえ「この問題が燃えさかっている中で冷静な議論はできない」と指摘し、当面は党内議論を見送る考えを示した。 これに関連し、自民党幹部は「今国会提出方針は変わらないが国会は生き物だ。事件の推移を見ないといけない」と語った。【田中成之】 毎日新聞 2006年2月13日 11時29分 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/seiji/seitou/news/20060213k0000e010061000c.html 防衛庁設置法 閣議で改正案決定、国会提出へ [毎日] 政府は6日の閣議で、在日米軍再編を担当する防衛施設課の新設など、防衛庁の組織改編のための防衛庁設置法改正案を決定、7日国会に提出する。今夏、実施の方針。 米軍施設に関する事務は防衛施設庁の担当だが、在日米軍再編では、防衛政策に直結する案件が多いため、防衛庁防衛局に防衛施設課を設け、対応する。また、装備品の開発から廃棄までの一連の流れを効率的に管理するため、調達担当の契約本部と内局の原価計算部を統合し、装備本部を新設。新たに監査担当審議官や外部の監査法人による検査を導入する。 全国に50カ所ある自衛官募集のための地方連絡部は、災害対策などで地方自治体との渉外業務や広報などの業務を新たに付与し、地方協力本部として衣替えする。また陸上自衛隊に、ゲリラなどに備える長官直轄の中央即応集団を新設する。【古本陽荘】 毎日新聞 2006年2月6日 23時23分 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20060207k0000m010146000c.html 米国防計画見直し 日本の戦争動員は既定事実か [赤旗] 米国防総省は、「四年ごとの国防計画見直し」(QDR)報告を公表しました。ブッシュ政権がすすめている地球的規模での米軍事態勢の見直し計画を具体化するものです。 米軍の統合化とともに同盟国の戦争動員をめざしており、先制攻撃戦争の態勢づくりを進展させます。米軍事戦略に組み込む形で進んでいる日米軍事一体化も加速されます。 ■「日本防衛」と無縁 QDRは、「長期戦争のための同盟能力の強化」を強調し、「日本、オーストラリア、韓国などとの同盟が太平洋地域での関与と共通の安全保障上の脅威に対処する協力行動を促進」「世界全体の軍事と安全保障の負担分担」とのべています。日本にアジア太平洋と世界での軍事責任を分担させようというのです。日米同盟を地球的規模に変質させることを許すわけにはいきません。 日本政府は、日米安保条約を、「純粋に防衛的な安全保障の条約」(外務省「新しい日米間の相互協力・安全保障条約」)と説明してきました。自衛隊について、「わが国を防衛するための必要最小限の実力組織であるから憲法に違反するものではない」(八〇年政府答弁書)ともいってきました。QDRの指摘は、政府見解でも認められないことです。 QDRは、イラク戦争で非人道的活動をしている特殊作戦部隊を増員、海兵隊の特殊作戦機能の強化、無人偵察機中隊の創設を明記しています。これらは、先制攻撃戦争に備えた装備の強化、配置の変更です。 小泉政権は、日米軍事一体化を進め、QDRの内容を先取り的に具体化しています。先月、陸上自衛隊は、米国西海岸で米海兵隊から強襲上陸のやり方の手ほどきを初めて受けました。額賀防衛庁長官は、無人偵察機を〇七年度に導入することをあきらかにしました。 QDRは中国について、「軍事的に競争する最大の潜在力をもつ」と指摘しつつ、米国の目標は、「責任ある利害関係者になること」だとしています。小泉政権は、〇四年十二月の「防衛計画の大綱」で軍事力の「近代化」をあげて中国の「動向には今後も注目していく」とのべて、事実上の仮想敵にしています。麻生外相も「中国は軍事脅威になりつつある」とのべました。 小泉政権が世界でも突出した異常な従属内閣であることは明白です。 QDRは、太平洋地域に展開する空母を「少なくとも六隻」とし、約七十隻ある潜水艦のうち60%を太平洋地域にまわすこともあきらかにしました。横須賀を恒久的な空母母港とし、通常型空母を原子力空母に変えることを当然視しています。佐世保基地の空母利用をふくめて日本は二隻の空母の拠点になる可能性があります。横須賀、佐世保、ホワイトビーチへの原潜寄港が激増するのは必至です。 QDRの同盟関係強化計画は、日本の「平和と安全」どころか、世界とアジアの平和を脅かす震源地に変えるものです。国民にとって絶対認められるものではありません。 ■平和の流れ大きく アメリカの先制攻撃戦略は、世界の平和と安全を脅かす不当不法な軍事方針です。そのための地球的規模の米軍事態勢見直しに反対するのは当然です。この中核ともいえる在日米軍再編に反対することは、アジアと世界の平和を守る重要な大義をもちます。 アメリカの危険な軍事戦略に反対するとともに、日本国内で米軍再編に反対する運動を広げることがいよいよ大切になっています。 URL http //www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-02-06/2006020602_01_0.html ゴラン高原PKO、6か月間延長…閣議で決定 [読売] 政府は27日の閣議で、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づき、中東・ゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に参加している自衛隊の活動期限を、3月31日から9月30日まで6か月間延長することを決めた。 (2006年1月27日13時43分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060127ia03.htm 防衛庁「省」昇格後、施設庁を統合…政府・与党検討 [読売] 政府・与党は26日、今国会で防衛庁の「省」昇格が実現した場合は、「防衛省」を外局の防衛施設庁と統合する方向で検討を開始した。 早ければ2007年度予算案に組織改編費を計上し、来年の通常国会に関連法案を提出する。 自民党の久間総務会長は26日、「(米軍や自衛隊の)施設整備は、(組織を)一つにまとめた方がノウハウが統一されていい」と統合に前向きな見解を示した。公明党内に、「省」昇格の際には両庁の統合を求める意見があることにも配慮したものだ。 (2006年1月27日3時33分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060127ia01.htm 宇宙の「防衛目的」利用を提言へ 自民特別委 [朝日] 2006年01月25日17時53分 防衛目的の宇宙開発を厳しく制限してきた国の「宇宙平和利用原則」について、自民党の宇宙開発特別委員会は、政府解釈の見直しを求めることを決めた。宇宙の平和利用を「非軍事目的」と解釈してきた政府に対し、非攻撃的な防衛目的の利用は容認するよう求める。3月に中間報告をまとめ、8月に政府へ提言することを目指すという。実現すれば、69年以来の大きな転換となる。 宇宙平和利用原則は69年に国会決議され、政府は「非軍事目的」とする解釈を示した。85年には、自衛隊が衛星を利用する場合でも、民生分野で「一般化」した技術に限定するとの政府見解をまとめた。98年の北朝鮮による弾道ミサイル発射をきっかけに政府が開発した情報収集衛星の解析度も、1メートル四方と、民間衛星の水準にあわせた。 自民党政務調査会の宇宙開発特別委員会は「日本の解釈は国際的に特異」として、非攻撃的な防衛目的の利用は認めるよう働きかける方針。27日の会合から検討を始める。ただ、党内や政府内の理解は十分には深まっておらず、実現するか流動的だ。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0125/007.html ヤマハ発動機 無人ヘリ、防衛庁にも納入 軍事転用を認識 [毎日] 「ヤマハ発動機」(静岡県磐田市)が昨年、軍事転用可能な無人ヘリコプターを中国に不正輸出しようとした外国為替法違反事件で、同型ヘリが04年以降、防衛庁に納入され、陸上自衛隊が駐留するイラク南部・サマワに配備されていることが分かった。福岡、静岡両県警の合同捜査本部は、同社が軍事分野への転用が可能と認識していたとみて、防衛庁との取り引きの経緯を調べる。 ヤマハ発動機は「会社として法令に違反しているという認識はなかった」と釈明し、社内基準においても軍事転用の恐れはないとしている。 ところが、同型のヘリは4機が04年9月から防衛庁に納入され、サマワの宿営地周辺で利用されている。防衛庁は空中監視用として発注しており、サマワでは周囲を監視するためのUAV(無人航空機)として使われている。 UAVに最新のセンサー類を搭載すれば、従来以上に詳細な情報分析ができるうえ、パトロール中に事故に遭う危険性も減る。サマワでは、武装勢力による攻撃の兆候を早期につかむなど、宿営地の安全確保に役立っているという。 ヘリ納入について防衛庁関係者は「暗視カメラなどを取り付ければ、軍事用に転換可能なのは明らかだ」と指摘する。経産省安全保障貿易管理課も「過去の輸出の経緯などからも、ヤマハが知らなかったというのはありえない」と話している。 毎日新聞 2006年1月25日 3時00分 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/news/20060125k0000m040160000c.html 防衛庁のミサイル研究データ、総連系企業に流出 [読売] 防衛庁は24日、ミサイルシステムの研究開発データの一部が、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の傘下団体「在日本朝鮮人科学技術協会」(科協)の幹部だった男性が社長を務めるソフトウエア会社に流出していたと発表した。 警視庁公安部が昨年10月、薬事法違反容疑で男性の関係先として同社を捜索した際、自衛隊法上の「秘」に相当するデータが含まれた資料が見つかり、連絡を受けた防衛庁が調査していた。データ流出によって、ミサイルの運用に直接的な影響はないという。 男性の関係先から見つかったデータは、「03式中距離地対空誘導弾システム」(中SAM)に関連する研究開発データの一部。 防衛庁などによると、この研究開発は1993~95年、将来配備予定の地対空ミサイルに関して三菱電機に委託されたもの。三菱電機は同研究に絡み、社内報告書の作成を三菱総合研究所に委託。三菱総研はさらに、男性が社長を務める東京・豊島区のソフトウエア会社に、報告書作成関連業務の一部を委託していた。 報告書には、敵の戦闘機を撃ち落とせる距離など、ミサイルの性能に関するデータが記載された図表があり、図表と同一の内容のデータが記載された資料が、男性の会社から見つかった。防衛庁は、同社に業務の一部が委託されていたことは知らなかったという。 (2006年1月24日14時49分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/national/news/20060124i105.htm 中国への武器輸出、露に透明性求める…額賀防衛長官 [読売] 【モスクワ=今井隆】額賀防衛長官は13日午前(日本時間同日夕)、ロシアのセルゲイ・イワノフ国防相と国防省で会談し、ロシアから中国への武器輸出について「透明性を確保し、地域の安全保障バランスに配慮してほしい」と慎重に対応するよう要請した。 国防相は「国益と国際法にのっとって実施している」と述べるにとどめた。 額賀長官は、中国の軍事力の透明性が欠如しているとの認識を示した上で、中露が昨年8月に実施した大規模な合同軍事演習について、「演習内容の透明性を確保してほしい」とも伝えた。 (2006年1月13日22時38分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060113ia23.htm 無人偵察機、日本に導入へ 北朝鮮動向などに備え [朝日] 2006年01月12日11時00分 英国訪問中の額賀防衛庁長官は11日夜(日本時間12日朝)、同行記者団に対し、早ければ07年度に米国製の無人偵察機(UAV)を導入する方針を示すとともに、機種はプレデターかグローバルホークを検討していることを明らかにした。北朝鮮による弾道ミサイル発射や、外国からの離島侵攻があった場合、いち早く情報を把握するためだとしている。 無人偵察機導入には、北朝鮮や中国などの画像情報を収集する狙いがあると見られる。両機種は米軍がイラク戦争で投入し、プレデターはミサイルを搭載してイラク軍を攻撃したが、日本政府は専守防衛との整合性から「攻撃能力は持たせない」(防衛庁幹部)という。 飛行できる高さはプレデターが中高度(最大約15キロメートル)、グローバルホークは高高度(同約18キロメートル)。プレデターは全天候に対応でき、グローバルホークはより広域で監視できるなどの利点がある。1機あたりの費用はプレデターが約14億~18億円、グローバルホークが約64億円の見通し。 機種選定のため、防衛庁は3月に担当課長を米国に派遣するほか、プレデター5機を運用するイタリアや、グローバルホークの改良型5機を使っているドイツにも派遣する。 無人偵察機による情報収集は、日米両政府が昨年10月に合意した在日米軍再編中間報告で協力を強化する分野で挙げていた。防衛庁はミサイル防衛(MD)システムで無人偵察機を活用し、海上配備型迎撃ミサイルを搭載したイージス艦に弾道ミサイルの発射情報を伝え、迎撃能力を高めることも検討している。 同庁は03年度から無人偵察機の国産化の研究開発を進めていたが、「約20年かかる」(防衛庁幹部)とされ、配備を急ぐため米国製を導入する。国産化は断念する方向だ。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0112/006.html 在日米軍再編:防衛人事「沖縄シフト」最終調整が本格化 [毎日] 日米外務・防衛審議官級協議が11、12日、額賀福志郎防衛庁長官とラムズフェルド国防長官による日米防衛首脳会談が17日にともにワシントンで開かれ、3月に予定される在日米軍再編の最終報告へ向けた調整が本格化する。ただ、普天間飛行場の移設先として昨年10月の中間報告に盛り込まれたキャンプ・シュワブ沿岸案に対する沖縄県や地元・名護市の反発は強く、防衛庁は地元自治体や在沖縄海兵隊との調整を進めるため、1月下旬の人事で「沖縄シフト」を強化する。 審議官級協議には日本側から外務省の梅本和義北米局参事官、防衛庁の山内千里防衛局次長、米側からはローレス国防副次官らが出席。防衛首脳会談では、中間報告に盛り込んだ再編案の実現へ向け双方が努力することを確認する。 額賀長官は22日の名護市長選後、審議官級協議の担当者を約2年半にわたり務めた山内氏を那覇防衛施設局長に充てるなどの人事を発令する方針。中間報告ではシュワブ沿岸案の詳細が固まっていないほか、沖縄海兵隊7000人削減や沖縄本島南部の基地返還など、沖縄関連であいまいな部分が多く残されており、地元の自治体や米軍と調整する態勢の強化が必要と判断した。【古本陽荘】 毎日新聞 2006年1月10日 3時00分 URL http //www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20060110k0000m010119000c.html 離島防衛、日米で訓練 9日から南西諸島重視 [朝日] 2006年01月07日20時10分 陸上自衛隊は9日から27日まで、離島侵攻を想定した米海兵隊との初めての共同訓練を米カリフォルニア州の演習場などで実施する。島国である日本の地理的特性から、04年末に閣議決定された新防衛大綱で「島嶼(とうしょ)部に対する侵略への対応が防衛力の新たな役割」と位置づけられており、新大綱に沿った訓練が具体化されることになった。 04年11月に先島諸島周辺の領海で原子力潜水艦が潜没航行するなど中国が日本近海で活動を活発化させており、今回の訓練は南西諸島を念頭に日米のプレゼンスを示す狙いがあるとみられる。 参加するのは陸自西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)の一個中隊(125人)。同連隊は離島へのゲリラ攻撃に備えるため02年に編成された専門部隊だ。米側からは、海兵隊第1海兵遠征軍が参加。「武装ゲリラや敵の特殊部隊が離島を占拠するおそれが出てきた」との想定で実施する。 九州・沖縄を管轄する陸自西部方面隊(熊本市)の管内には離島が極めて多いが、離島に配置されている陸自の部隊は、沖縄本島の第1混成団と対馬の対馬警備隊だけだ。制服組幹部は「広範囲に島が点在している南西諸島は『攻めやすく、守りにくい』だけに対応が困難なのが実情だ」と打ち明ける。 一方、これとは別に、1月下旬から約10日間、西部方面隊と米陸軍第1軍団(ワシントン州)などが、健軍駐屯地(熊本市)でコンピューターによる戦闘シミュレーションを使った「日米共同方面隊指揮所演習」も実施する。 URL http //www.asahi.com/politics/update/0107/009.html 宇宙の防衛利用解禁へ、自民が夏にも政府に提言 [読売] 政府による防衛目的の宇宙利用を厳しく制限してきた「平和利用」の原則について、自民党が今夏までに見直す方針を決めた。 従来の「非軍事」という解釈から、攻撃的でない技術の軍事利用は認めている世界の潮流に合わせた解釈へ変更を図る。実現すれば、高解像度の偵察衛星打ち上げなどが可能になり、欧米に比べて劣勢だった宇宙産業に新たな需要を呼び込むのも確実。日本の宇宙開発は、歴史的な転換点を迎える。 宇宙開発を「平和目的の利用に限る」という原則は1969年、宇宙開発事業団(現・宇宙航空研究開発機構)の設置法と、同法制定時の国会決議に盛り込まれた。その際、政府が「非軍事」との解釈を示した。このため、自衛隊は自前で衛星を開発できず、通信など広く一般に利用されている衛星技術しか使えない。 テロの拡大など国際情勢が複雑化する中、毎年膨大な予算を投じて開発している宇宙技術を国民の安全確保に生かす必要性が高まり、政府解釈の見直しが避けられない課題となってきた。同党政務調査会の宇宙開発特別委員会は今月から、河村建夫・元文部科学相を中心とする小委員会で、平和利用の問題について集中審議。今夏には政調として政府へ提言する方針だ。 「平和利用」の定義を世界の潮流に合わせた場合、民間より解像度の高い偵察衛星のほか、弾道ミサイルの発射を検知する早期警戒衛星などを、自衛隊が開発・利用できるようになるとみられる。 (2006年1月6日3時6分 読売新聞) URL http //www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060106i101.htm ●自衛隊・防衛05 から続く