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486 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg 投稿日: 2006/09/12(火) 21 49 28 「そうだ、昼飯……」 良く考えてみると、朝以来何も口にしていないのを思い出した。 学校で蒔寺や三枝がすでに昼食を取っていたことを考えると、昼飯には随分遅くなってしまった。 「氷室は、昼飯はもう食べたのか?」 「いいや。正午頃からずっとここにいたのでな、特に何も食べていない」 「そっか、じゃあ何か食べに行こうか。あんまり高いところには行けないけど」 砂礫を払って立ち上がる。 遅れて氷室も立ち上がると、自らの制服を指して言った。 「わかっている。いくら下校時刻だからと言っても、この服装ではドレスコードに引っかかるだろう」 「そうだな……手軽なところでマッグとかか?」 そんなわけで、俺たち二人は遅めの昼食を取るために、港を後にした。 「そういえば、以前ランサーという御仁にナンパされた時もファーストフードだったな」 マッグで早速カウンターに並び、ほどなくして注文を受け取った。 そうして先に席に座って待っていた氷室の向かい側に着くと、いきなりそう言って切り出してきた。 「ああ。あの時は氷室にアドバイスしておいて良かったな……」 あの時、と言うのは、氷室と三枝と蒔寺が海浜公園でランサーに絡まれていた時のことだった。 ランサーと蒔寺が意気投合して、連れ立ってお茶をしに行き掛けた所で、俺が氷室にあるブツに関するアドバイスをしたのだが。 「まさかあの時は、自分がナンパする側になるとは思わなかっただろう?」 「いや、だから。俺はナンパは、」 「私だけだ、と? いやしかし、良く考えればそれも良くできた口説き文句に聞こえるが」 「勘弁してくれ……」 心なしか、ニヤニヤしているように見える氷室。 これ以上つつきまわされては俺の身が持たない。 話題を変えよう、話題を。 「氷室、楽しいか? まだデートは始まったばっかりだけど」 「……難しいな。これくらいのことならば、蒔の字や由紀香とも連れ立ってやっていることだ」 この程度ではわからない、か。 まあ、そうだろうとは思っていたから落胆は無い。 むしろ今後のデートプランを練るのにも熱が入るというものだ。 と、卓に肘を付いてストローを加えていると、氷室がこっちをじっと見ていることに気が付いた。 「ふむ、……ではもう少し、『らしく』振舞ってみようか」 「え?」 聞き返す暇もあればこそ。 氷室は不意に、何気ない仕草でストローをコップに差し入れた。 自分のウーロン茶ではなく……俺のジュースに。 「……ん……ふ」 そして、そのままストローに口をつけて……オレンジジュースを一口、吸った。 「……な、な、ななななな!?」 椅子ごとひっくり返すような勢いで仰け反る俺。 だ、だって今、俺が吸っていたのと同じジュースを氷室が吸いに来て……!? ヤバイ、氷室がストローを吸うときの息の音だけでドキドキ言ってるぞ。 「……そこまで動転されるとはな。衛宮は、こういうことは嫌なのか?」 「嫌だなんて、そんなことはない、けども」 「では問題ないな。衛宮も一緒に飲もうじゃないか。それとも、衛宮も私の茶のほうを飲むか?」 「あ、う……」 うんともすんとも言えず。 仰け反っていた体を戻し、ストローをカップに差し入れる。 氷室と俺の距離は、ストロー2本分にまで縮まっていた。 「………………」 「………………」 ……結局。 倍の速さで減るはずのジュースは、しかしなかなか減ることは無かった。 487 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg 投稿日: 2006/09/12(火) 21 50 47 精神的緊張の連続だったファーストフード店を出ると、そのまま午後の新都へと繰り出すことになった。 映画は時間帯も内容も合わなかったし、ゲームセンターはお互い好んで入るような性格ではない。 わくわくざぶーんは、水着さえあれば入っても良かったのだが……仕方あるまい。 そんなわけで、新都を散策することになった俺と氷室。 とはいえ、新都はどちらかといえば氷室のホームグラウンド。 結果として、俺よりも新都に詳しい氷室にアドバイスを受けながら、ウィンドウショッピングを楽しむこととなった。 「おや、これは……」 立ち並ぶ店のショーウィンドウを覗いていた氷室が、何かに気付いたように立ち止まった。 「どうした、なにがあった?」 釣られて俺も覗き込んで見ると、そこは貸衣装店のようだった。 ショーウィンドウの中には、頭身の高いマネキンが純白のドレスを纏って立っていた。 「ああ、ウェディングドレスか」 氷室は、硝子に手を添えてそのドレスをぼうっと眺めている。 やっぱり女の子は、こういうものに憧れとかあるのだろうか? 「私とて恋には興味はあった。それと同じように、こういうものにも人並み程度には憧れているつもりだ」 ウィンドウの中身から目を逸らさないまま、氷室が俺の疑問に答えてくれた。 なるほど、男の俺にとってはタキシードなど単なる衣装にしか過ぎないが、女の子にはとってウェディングドレスは特別な意味を持つものなんだろう。 氷室の背中とガラス越しに映るその顔を見守っていると、不意に—— α:「あら、坊やじゃない」フリル付きの服を抱えたキャスターがそこにいた。 β:「なんだ、坊主か」バイトの制服を着たランサーが店から出てきた。 γ:「……フィッシュ」なんだか凄く嫌な予感がし「ゲット。奇遇ですね衛宮士郎」 δ:「ほう。奇遇だな、衛宮士郎」……聞きたくも無い神父の声がした。 投票結果 α 5 決定 β 1 γ 2 δ 2
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Fate/hollow ataraxia 【ふぇいと ほろうあたらくしあ】 ジャンル 伝奇ビジュアルノベル+ファンディスク ※Windows版 ※PSV版 対応機種 Windows 98~XPプレイステーション・ヴィータ 開発元発売元【Win】 TYPE-MOON 発売元【PSV】 角川ゲームス 発売日 【Win】2005年10月28日【PSV】2014年11月27日 定価 【Win】7,140円(税5%込)【PSV】限定版:8,640円/通常版:6,480円/DL版:5,400円 レーティング 【Win】アダルトゲーム 【PSV】CERO C(15歳以上対象) 判定 良作 ポイント 繰り返される四日間の日常と戦い敵サーヴァント・サブキャラの掘り下げ充実したミニゲーム相変わらず"実用性"の方は微妙 Fateシリーズリンク 概要 ストーリー 特徴 ミニゲーム 開運 遠坂神社 風雲イリヤ城 ~とつげきアインツベルン~ トラぶる花札道中記(EX) 評価点 問題点 総評 余談 移植版の特徴 カプセルさーばんと 概要 『Fate/stay night』(以下前作)のファンディスクとして発売された作品。 舞台は前作で行われた第五次聖杯戦争の終結から半年後の冬木市で、前作のどのルートからも繋がっていない。 前作で登場したほぼ全てのキャラが登場し、それぞれのキャラについての掘り下げがなされている。 なお本作のシナリオは、本筋こそ前作と同様に奈須きのこが担当しているが、日常パートは他のライターが担当している。 2014年に発売されたPSVita版は、ボイスが追加されたほか、Win版の18禁要素を含むシナリオ・CG等が削除・改訂され、OPムービー及び主題歌も変更されている。また、ミニゲームも一部差し替えられた。 ストーリー “第五次聖杯戦争”終結から半年後の冬木市。サーヴァントたちは現界したまま、穏やかな日常を満喫している。衛宮士郎は何者かが聖杯戦争を再開しようとしていることをつかみ、調査のための夜回りを始める。 さあ、聖杯戦争を続けよう 夜。目覚めは苦痛から始まった。不快極まりない痛みとおぞましさを耐え、私は蘇生していた。胸を貫かれ、死んだはずの自分が…。 生き返った私の傍らには、“名前のない”サーヴァント。 残るのは曖昧で断片的な記憶。増幅していく嫌悪と不信。 斃すべき敵を求め、街へ。不吉な月の光の下、影が蠢く夜がまた始まる。 (PSV版公式HPより引用) + 主要キャラクター紹介 衛宮士郎 前作から引き続き主人公を務める、セイバーのマスター。平穏な日々の中で聖杯戦争再開の兆しを察知し、阻止のために行動を始める。 バゼット・フラガ・マクレミッツ もう一人の主人公で、第五次聖杯戦争開催の折、魔術協会より派遣された女性。繰り返される4日の聖杯戦争を勝ち抜くべく、戦いに挑む。 アヴェンジャー 本来聖杯戦争には召喚されない第8のクラスのサーヴァント。バゼットと契約し、彼女と共に夜の聖杯戦争に挑む。 カレン・オルテンシア 「教会」より、冬木市の教会に新たに派遣された銀髪の少女。 特徴 ストーリーは二つに大分され、一つは前作で主人公を務めた衛宮士郎の視点で、もう一つは本作で新たに登場するバゼット・フラガ・マクレミッツの視点で進行する。前者ではプレイヤーが冬木市上の各所に存在するイベントを選択し、それぞれの場所で起こる出来事を見ることができる。 見たことがない、あるいはストーリー進行に関わるイベントと選択肢にはそれぞれ印が付いている。 一日は午前・午後(場合によってはさらに放課後)・夜に分かれており、イベント一つにつき原則1つ時間を消費する。これを4日間繰り返すと、再び1日目の朝に戻る。ただし4日間までのどこかで死亡などの要因で打ち切られることもあり、この場合も1日目の朝に戻る。 ストーリー進行に関わるイベントを選ぶことでフラグが回収され、新たなイベントが出現する。 特定のイベントを選択することでミニゲームが解放されるほか、『eclipse』にシナリオが追加される。なお一度見たイベントは、メインメニューから自由に選択して見ることが可能。 後者は前者で行ったイベントの進行度合いによって、1日目の前に挿入される。本作の本筋は概ねこちらと言ってもよい。 主人公バゼットと、彼女のサーヴァント・アヴェンジャーが夜の聖杯戦争に挑む物語。 バゼット編に選択肢は存在しないが、読了後、新たにイベントが出現した状態で1日目が開始する。これにより選択肢が広がっていくことで、物語はエンディングへと近づいていく。 『eclipse』はタイトル画面から入る項目で本編から離れたエピソードを見られる。本作の18禁描写は一部を除きこちらに入っている。 そして、本作前後で型月と関わることになる、豪華ゲスト作家らによる壁紙イラストも収録。ファンディスクのお約束。 ミニゲーム 本作のミニゲームは3つ存在する。 開運 遠坂神社 遠坂凛が巫女を、アーチャーが宮司を務める神社。ゲーム開始時より選択可能。 ゲームを進行していると自動的に入手されるお金を消費して、おみくじや絵馬を買うことができる。 絵馬は本作キャラの設定画で、購入するとCGの項目に追加されるほか、それぞれの解説を聞くことができる。 風雲イリヤ城 ~とつげきアインツベルン~ あるイベントに仕込まれ、クリアした後は自由に選択可能となるゲーム。担当したのは『MELTY BLOOD』のフランスパン。 まずマスターを士郎・凛・桜の三人、サーヴァントをセイバー・アーチャー・ランサー・ライダー・キャスターの五人の中から一人ずつ選ぶ。 ステージは4つに分かれているが、基本的にクリックした箇所に進み、ゴールを目指す。 他のサーヴァントに接触すると戦闘となり、クリックを連打することで勝負。勝つと相手のHPを削ることができる。 魔力のゲージが満タンの状態で右クリックすると、先頭の敵に宝具を撃つことができる。敵も宝具を撃って来るが、クリック連打によって防ぐことが可能。 ステージ上には食べ物が存在し、これを取得することでHPを回復したり、移動速度上昇・無敵といった状態になったりできる。 最後のステージでボスを倒すとクリア。それまでのタイムが記録される。 サーヴァントを倒したりすることで出現する宝箱を開けると、コレクションアイテムを入手することがある。これらをすべて集めるとボーナスCGが閲覧できる。 ステージの間にはなぜか○×クイズが出題されるが、本作とはまるで関係のない問題が出されることも。 トラぶる花札道中記(EX) あるイベントをクリアすることで選択可能となるゲーム。拡張パッチを適用することでチームが追加されたEX(エクセリオン)になる。ストーリーモードのほか、フリー対戦モードやチュートリアルも完備。 こいこいルールを使用した花札であるが、加えてキャラ毎に設定された札をとることで蓄積されるMPを消費して、チームそれぞれ異なる『宝具』を使用することができる。 一部チームはゲームバランスを崩壊させるどころか、最早ゲームを成立させない宝具(*1)を使ってくる。 『Fate/stay night [Realta nua]』のPS2版初回限定特典に、またPSV版のRealta nua及び本作の購入特典に、このミニゲームのPSP移植版『とびだせ!トラぶる花札道中記』が前者ではパッケージ、後者ではDLコードとして同梱された。 『とびだせ!~』はパッチ適用前を基本としてフルボイス化、オリジナルチームを一つ追加したもの。 またPSV版にはいずれも、システムを流用した続編『とびたて!超時空トラぶる花札大作戦』も同梱された。 評価点 ファンディスクの域に収まらない、前作の補完も行われるイベントを含むシナリオ。前作から引き続き「きのこ節」も健在。 日常シーンでは、前作では基本的に敵として登場したサーヴァントとのイベントが大量に増えており、これまで知り得なかった一面を存分に見ることができる。 それぞれの過去を知ることができたり、それまでのイメージが一転するほどの壊れぶりが見られたりと、掘り下げが為されている。 秋ではあるが、室内プールに行くというシチュエーションがあるため、ヒロインたちの水着姿を見ることもできる。 他にも、前作では登場するシーンが少なかったサブキャラクターも登場する場面が増えた。 特に前作ではプロローグのみの登場となった氷室・蒔寺・三枝の三人は出番が劇的に増え、氷室については彼女が主役を務めるおまけシナリオも存在している。 夜の聖杯戦争に関わる戦闘描写も前作に引き続き好評。特に終盤は燃えること必至。 燃えを削ぐとして批判された18禁要素についても、『eclipse』という別枠に収めることで解決している。 本作で新たに登場した新主人公・バゼットと彼女のサーヴァントのアヴェンジャー、そして謎の少女カレンのいずれも、前作に登場したキャラクターと何らかの形で関わりがあるため、違和感を覚えることはないだろう。 なお今作のOPムービーは前作のようなアニメでなく静止画で構成されているが、流れるタイミング等も含め主題歌とセットで評価されている。 問題点 四日間を繰り返すという設定上、同じイベントを何度も見る羽目になることが多く、テンポが異様に悪い。 スキップ機能が充実しており、見たことがないイベントやストーリーを進める選択肢にそれを知らせるマークが付いていても、やはり気になることではある。 18禁要素こそあれ、実質おまけ扱いされているため実用性は微妙。 また、あるキャラクターとの濡れ場は例の如くシナリオ中(しかもほぼクライマックス)に挿入されているため、燃えを削いでしまっている。 前作がなまじ完成された作品であるがために、本作での一部キャラの掘り下げが却って蛇足となっていると捉えられることも。 掘り下げについても、日常パートはライターが異なるため、雰囲気の違いに違和感を覚えるプレイヤーも少なくない。 前作のルートの一つで登場した『真アサシン』が、本編中では一度も姿を見せない(*2)。 登場するのはパッチ適用後の「トラぶる花札道中記EX」のみ。しかも移植版では登場しないというあまりにも酷い扱い。 本作の主人公について + 核心に迫るネタバレのため注意 実は本作に登場する主人公・衛宮士郎は厳密には本人ではない。 そして本物の衛宮士郎は本編エピローグにチラッと登場するのみ。主人公だったのに。『eclipse』内にもう一つ本人としての登場エピソードがあるが、そちらは完全な番外編である。 補足すると、ややこしくはあるが「本物となんら変わらない偽者」と語られている通り「士郎」として登場している間は紛れもなく士郎である。なので「士郎のフリをして周囲を欺いている」のではなく「一時的に完全に士郎と化している」という解釈の方が正しい。 総評 ファンディスクでありながら、実質続編とも言える内容。 前作で主人公と敵対したキャラクターたちの日常の平穏、そして夜に繰り広げられる死闘。 それらを踏まえたうえでのクライマックスに向けての一連の流れは、多くのプレイヤーを魅了することだろう。 実用性については燃え描写からは切り離されたものの、ファンディスクとしては少々物足りないと思われる。 いずれにせよ『Fate』の本流を語るならば、前作に加えて本作も併せてプレイしておくべきだろう。 18禁のWin版と全年齢版のPSV版、いずれも好みで選んでも構わない。 余談 2014年1月30日に本編とのセット『Fate/stay night+hollow ataraxiaセット』が9,500円で発売された。 パッケージが描き下ろしだが、ゲーム内容は変更なし。Windows 8まで対応している。 スマートフォンアプリ『Fate/Grand Order』の爆発的ヒットなどにより本作が再度注目され、初回版もセット版も定価を超えるプレミア値段となっていた。 2019年6月28日に『Fate/stay night+hollow ataraxia 復刻版』が発売された。こちらはダウンロードカードであり、Windows 10まで対応している。 『Fate/stay night』と合わせて2014年時点で約40万本売れている。(参考リンク) 移植版の特徴 ミニゲームも含めて全てボイスが追加され、OPムービーと主題歌も一新された。 OPムービーはPSV版『Fate/stay night [Realta nua]』でも担当したufotableが制作し、主題歌は後にアニメ版『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』の後期OP及び挿入歌を担当することとなった「Aimer」が担当。 ED曲はアップデートで追加されたが、Win版ED曲の英語版となっている。こちらも同じく「Aimer」が担当している。 『eclipse』中の18禁要素を含むエピソードは削除されている(差し替えではない)。 そのため『eclipse』は前述の氷室が主役を務める話とゲームクリア後に追加される『後日談。』(というタイトルの番外編)のみと、専用のメニューがあるのに中身がスカスカになってしまった。 本編ストーリー中の濡れ場については18禁要素を削り改変という形になっている。 トラぶる花札道中記が特典となったため、新たなミニゲーム『カプセルさーばんと』に差し替えられた。それによってストーリー中でのミニゲーム解放までの下りも一部変更が為された。 このミニゲームでも『真アサシン』は登場しないため、正真正銘彼の出番がなくなってしまった。 その他のミニゲームはそのまま収録。いずれも多数のボイスが収録されている。 カプセルさーばんと 花札と同じ条件を満たすことで解放されるミニゲーム。所謂タワーディフェンス。なんかポ○モンっぽい 主人公を「シロウ」と「リン」のいずれかから選びゲームスタート。リンのほうが敵のレベルが高い。 登場するマスターやサーヴァントは前作『Fate/stay night』と本作のみならず、前日譚の『Fate/Zero』や外伝作品の『Fate/EXTRA』及び『Fate/EXTRA CCC』『Fate/Apocrypha』、原作のさらに原案の『Fate/Prototype』などなど、何気にオールスターを実現している。 バトルの方法は、時間経過で貯まるマナを消費してサーヴァントを召喚し、敵拠点を先に破壊した方が勝ちという、至ってシンプルなもの。 召喚したサーヴァントは敵拠点へ向かったりその場に留まったりと、様々な行動を取る。それぞれの特質をつかむことが重要。 サーヴァントは敵の攻撃によってHPがなくなると消滅して、マナを放出する。これを入手することでもマナは増加する。 原則倒した方にマナは移動するが、マナを横取りする能力をもつサーヴァントも存在している。 強いサーヴァントほど召喚に必要なマナの量も多く、再召喚にかかる時間も長い。 一度の戦闘で召喚可能なサーヴァントは事前にセットできる7騎までなので、よく考えてサーヴァントを選ぶ必要がある。 加えてサーヴァントを召喚する場所は召喚陣の位置を変えることで調整できる。極端な話敵拠点手前にも召喚可能。 ただし召喚陣を一定以上敵陣に近づけるほど、必要なマナの量は2倍3倍と増加するので注意。 また一定時間経過することで、マスターごとに異なる必殺技を使用できる。これで戦局を一気にひっくり返そう。 バトルに勝利すると、召喚した回数等に応じて各サーヴァントのレベルが上がる。 レベルが上がるとHPや攻撃力が上がるほか、再召喚にかかる時間が短縮されたりもするため、育成は重要。 同時にマスターのレベルも上がり、拠点のHPやマナの充填速度が上がる。 経験値は「自分以上のレベルの相手マスターに勝つ」「拠点ノーダメージ」「一定以上のマナを消費して勝利」を達成するほど倍増。 そして勝利後はガチャを回す。レアサーヴァントが出るか、既に持っているサーヴァントが出てしまうかは運次第。 排出されるサーヴァントは戦った相手が使ったものに限られるため、欲しいサーヴァントはそれを使う相手と出るまで戦い続ける必要がある。 ちなみにダブった場合はサーヴァントのレベルが1上がる。高レベルでは必要な経験値の量も増えるため、これでサーヴァントを育成するという手もある。 ちなみにいずれかの主人公でストーリーをクリアすると、敵マスターをプレイヤーとして選ぶことも可能。 それぞれのマスターで、特定のサーヴァントを召喚した場合の専用セリフがあったりするので、意外とボイスパターンは多様。 …最早おまけミニゲームの域を超えている。対人戦は不可能だが、あればきっと盛り上がったことだろう。 更に後の2019年12月20日、このゲームのみを切り出した移植版がスマホアプリとして買い切り販売された。
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阿良々木暦の暴走(前編) ◆1aw4LHSuEI 走る馬の上で、僕たち二人は無言だった。 僕も浅上も馬に乗るのが初めてで慣れていないから緊張しているっていうのもある。 だけど、一番の原因は、ライダーが死亡していたことを知ってしまったことなんだろう。 正直な話、僕自身はライダーに対してあまり良い感情を持ってはいなかった。 当然と言えば当然な事だ。だって、僕にとって彼女は冷酷な殺人者にすぎない。 真田の仇であり、僕自身だって殺されかけた。 浅上から話を聞いても、僕にとっての印象は変わらない。 だけど。きっと浅上にはライダーの、他の一面も見えていたのだろう。 完全に、とはいえないけれど、僕だってそれを理解できないわけじゃない。 他人にとっては、ただの化物かもしれない。 でも、確かに、自分との間に何かを感じた。 そんなやつが、僕にだっていたことがある。 今では見る影もない美しい吸血鬼。 一生をかけて償うと決めた相手。 それを選んだのは責任感だけじゃなく、生きていて欲しいと僕自身が望んだからだ。 きっと、その関係とはまた違うんだろうけど。 でも、同じぐらい浅上はライダーに生きていて欲しかったんだと思う。 背中に感じる感触と腰に回された腕。押さえられた嗚咽の声がそれを痛いほど感じさせた。 だけど、僕には浅上を慰めてやる余裕なんてない。 なんと言葉をかければいいのか分からない、というのが一番の本音ではあるけれど。 思い出してしまったのだ。分かっていたはずのことを。 ここでは、人は本当に簡単に死んでしまう。 千石、八九寺、神原、真田、セイバー。 僕は、それを分かっていたつもりだった。 だけど、そうだ、だけど。 やぱり全然わかっちゃいなかった。 早く合流しなければ、戦場ヶ原が、死んでしまうかも知れない。 やっと、僕はそんな当たり前のことを実感する。 「言葉」でなく「心」で理解できた。 だから、心が急いていた。 だから、気遣いが薄くなる。 前に神原から言われたことがある。 もしも――それでも誰か一人を選ばなくてはならない状況が訪れれば、 そのときは迷わず、戦場ヶ原先輩を選んであげて欲しいな その通りだ。 僕は戦場ヶ原が好きだ。 あいつを守ってやらなきゃならない。 そのために他のすべてを犠牲にするなんて言えないけれど。 それでも、義務でもなく責任でもなく。 ただひとりの男として、僕はあいつを守りたいと思っているのだから。 原村によると戦場ヶ原は僕たちと同じE-5エリアにいるらしい。 だけど、今までの戦場ヶ原の位置から僕して、僕たちから見て対岸にいるってことは想像に難くない。 同じエリアにいることが分かってるのに会えない。遠回りしなくちゃならない。 そう、僕は焦っていた。 尋常じゃないはずの馬に突っ込むことや、背中に当たっているだろう感触への反応を忘れてしまうほどに。 こんなことじゃ、だめだ。 きっといいことにはならない。 だけど、どうしたらいいのか。いい考えは浮かばなくて。 ただひたすらに一心に、馬を走らせることしか今の僕には出来なかった。 「――――――!」 「――――――!?」 そんなときに聞こえてきた声。 何か言い争っているように聞こえる。 馬のハンドルのあたりに据え付けたデバイスを見ると、薬局と書かれた施設の近く。 これまでの経過時間で戦場ヶ原がここに移動してくるとは思えなかったから通りすぎようと思っていたんだけど……。 確かに誰か参加者がいてもおかしくはない。 正直、戦場ヶ原のことを考えると先を急ぎたくもなるけれど。 殺し合いに乗ってない相手なら、情報交換をしておくべきだろう。 「浅上、他の参加者だ。接触しようと思うけど、いいか?」 「…………はい」 少しだけ、僕に話しかけられて驚いたように身を震わせた後、浅上は僕の言葉に同意した。 こんな状態の浅上を他の参加者と出会わせていいのかとも思ったけど、放っていくというわけにも行かない。 何があるかわからないけれど、やぱり接触しておくべきだろう。 揉めているようだし、対応は慎重に考えた方がいいだろうけど。 僕は様子を伺うため、静かに馬を停めてゆっくりとそっちに近づいて―――あれ? ―――馬って、どうやって停めればいいんだ? 「……あの、悪いけど停まってくれないか?」 そう呼びかけると、馬は一鳴きだけして薬局を視認できるぐらいの位置で停まってくれた。 ……最近の馬は賢いんだなあ。乗ったときも要件を伝えたらそのとおりにしてくれたし。 何かトラウマでもあるのかと思わせるぐらいに、こっちの命令から逸脱した行為はとらない。 できた馬もいたもんだ。 でも、停るときの鳴き声で向こうもこっちに気付いたらしい。 聞こえていた声が止んで、静かになった。警戒しているのだろう。 取り敢えず馬から降りて様子を伺ったけど反応はない。 でも、すぐに攻撃してこないってことは、話し合う余地があるってことだろう。 このまま見合っていても仕方ないし、、出来るだけ警戒させないようにこっちから自己紹介する。 「僕の名前は阿良々木暦! こっちは浅上藤乃。どっちも殺し合いには乗ってない。そっちは、どうだ?」 すると少しの間の後、薬局の中から金髪の男が銃を構えながら出てきた。 素人目にだけど、その姿は様になっていて銃の扱いに手馴れていそうに見える。 着てる服からして軍人かなにか、だからだろうか。 それにしても男、か。言い争ってた声は両方共女の子の声っぽかったし、後二人は薬局の中にいるんだろう。 それを守るようにこの人が出てきたってことは……殺し合いには乗ってない、かな。多分。 「私はグラハム・エーカー。君と同じくこの殺し合いのルールに従うつもりはない!」 と、告げた後。 「―――君が、阿良々木暦か。ふむ、聞いていた通りの容姿だな。あまり、時間はないが……。入りたまえ」 僕のことを知っているようだ。一体、どうして僕のことを知っているんだろう。 そんな疑問は浮かぶけど、中で聞いたらいいことだ。 馬にそこで待っててくれと呼びかけて、僕らは薬局へと入ることにした。 ◎ ◎ ◎ 少しばかり時間を巻き戻し薬局の中。 三人の人間がそこにはいた。 一人は白井黒子。ユーフェミアに撃たれ重症を負い、施設サービスにより治療され今は眠っている。 一人は天江衣。黒子を救うために一億ペリカの借金を独りで背負った少女。 一人はグラハム・エーカー。衛宮士郎の救出と二人の安全を天秤にかけた結果、『保留』という選択をした男。 何をしているのか。グラハム・エーカー。早く衛宮士郎を救出に行くべきでないか―――。 いや、彼を見捨てるというのなら、もっと戦場から離れるべきではないのか―――? 今の彼にそれを問うのは酷だろう。 彼の同行者は現在、無力な幼い少女と、致命傷を癒したばかりで眠るこれまた年端もいかぬ少女の二人。 その二人を置いて戦場へ向かうことなど出来るはずもなく。 かと言ってこれ以上逃げるとしても、戦力外二人を連れた上での逃走は危険も大きい。 何よりも、グラハム自身が、少年、衛宮士郎の無事を祈っている。 ここを移動して離れてしまえば、二度と出会うことがないかも知れない。 そんな考えすら浮かんでくる。 だからこその『保留』による待機。 どちらも取り落としたくないからこその、第三の選択肢。 だが、つい考えてしまう。 ひょっとしたら増援に向かうべきだったかも知れない。 ひょっとしたら全力で逃走すべきだったのかも知れない。 ひょっとしたら……どちらも失うかもしれない最悪の選択肢を選んでいるのかも知れない。 グラハム・エーカーはこの男にしては珍しく迷っていた。 本当に、自らの出した決断が正しかったのかを。 「―――すまないな、天江衣。不甲斐ないばかりだ。私としたことが」 「な、何を言うのだグラハム! 人は十全十美というわけにはいかない。完全無欠の選択など見つからないで当然だ! それに、グラハムが千思万考して得た答えなのだから、きっと大丈夫だ! なんとかなる!」 だが、天江衣のまっすぐな言葉を聞いて理解する。 後悔など、迷いなど持っている場合ではないのだ。 こんな子供を死なせていいはずがない。あのような勇敢な少年を見捨てていいはずがない。 ならば、きっと自分の選択は間違っていない。 そう信じるしかないのだから。 「そうだな……。その通りだ。この私が泣き言などを言っている場合では無かった」 グラハム・エーカーは自分の選択を信じる。 そうと決まれば次に考えるべきは、これからのこと。 白井黒子が目覚めれば、どうするのか。 勿論、それまでに衛宮士郎と合流出来ることが理想的だろうが。 彼の位置情報は最早なく、少年自身にもこちらの位置を知る方法が無い以上それは望めない。 つまり、状況が動くこと。 白井黒子の覚醒後にどう動くか。 それまで動けないだろうからこそ、それを今考えるべきだった。 やはり、全員で彼の元へと向かうことが望ましいだろうか。 しかし、此の島にきてから一度も経験していない殺し合い。 それも、想像もつかないような異能をもってしての争い。 自分はいい。グラハム・エーカーはそう考える。 軍人なのだから。弱き者を守るために戦うのは当然のことだ。 だが、天江衣を戦いに巻き込んでもいいのだろうか。 殺し合いなどには縁のない、この可憐な少女を。 とはいえ戦闘力の無い彼女を一人きりにするわけにもいかない。 ある程度戦闘の出来る誰かとともにいてもらわねばならないだろう。 では、自分のみが行き白井黒子と天江衣には待機していてもらう、ということではどうか。 だが、納得するだろうか。白井黒子が。 グラハムの心にまた僅かな迷いが生まれる。 「―――……? ここ、は―――……?」 しかし、それが具体的な形を見せる前に、白井黒子の目が覚める。 疲労も含めて肉体が回復した以上、それほど長く眠りが続くはずも無かった。 「しらい、しらい! 目を覚ましたのか!」 「衣さん……。そう、わたくしは撃たれて……。え? 何故傷がありませんの? それに、士郎さんは……?!」 「落ち着け、白井黒子。ここは薬局だ。傷は施設別サービスで治療した。―――衛宮少年とは、まだ合流出来ていない」 冷静に答えるグラハム。 「では、まだ士郎さんは……―――!」 瞬時に意識がはっきりとする黒子。 一刻も早く駆けつけなければとばかりに勢い良く起き上がる。 「ま、待ってくれ、白井! まだ傷も癒えたばかりでそんな無茶を―――!」 それを留めるは天江衣。 正直な話、彼女は怖かった。 白井黒子が危険な戦場に繰り出そうとすることが。 自分と友達になると言ってくれたものが、また死んでしまうのが。 ―――どうしても、伊藤開司と被って見えてしまい。 「―――もっと、もっと無茶をする人が行ってしまったんですの! だから、わたくしは―――!?」 しかし、それも黒子には通じない。 普段の彼女であれば天江衣相手にここまで怒鳴ることはないだろう。 衛宮士郎という少年が未だ死地にいることが、黒子の頭から冷静な思考を排除していた。 「待て、衣、白井黒子。―――どうやら、他の参加者のようだ」 二人を制しようと口を開きかけたグラハム・エーカーは外から聞こえた馬の声に反応する。 思い出すのは支給品だった馬のこと。 それを考えれば、他の参加者が馬を移動手段としていると言う可能性にはすぐに思い当たった。 どう対応すべきか、わずかに迷い身構える。 すると、向こうもこちらの存在に気がついているようで、声をかけてきた。 「僕の名前は阿良々木暦! こっちは浅上藤乃。どっちも殺し合いには乗ってない。そっちは、どうだ?」 そして時間を巻き戻す。 ◎ ◎ ◎ 情報交換のターン。 筆談等を適時交えて盗聴に備えながら、各自、己の知ったことを伝え合う。 開会式の少女の家族、天江衣。学園都市の風紀委員にしてレベル4のテレポーター白井黒子。ユニオンの軍人にしてフラッグファイターのグラハム・エーカー。人間もどきの吸血鬼未満、阿良々木暦。歪曲と千里眼の少女、浅上藤乃。それぞれの元々の知り合いの名前と容姿、簡単なプロフィール。 ギャンブル船、希望の船、エスポワール。セイバーのマスター、衛宮士郎。蝸牛に迷った少女、八九寺真宵。元帝愛幹部、利根川幸雄。普通の女子高生、秋山澪。ギャンブラー(?)、伊藤開司。戦国武将、明智光秀。エスポワール会議。OZの軍人、ゼクス・マーキス。投影魔術と解析魔術。仲間割れ。そして、日本人を殺す女、ユーフェミア・リ・ブリタニア。世界有数のデジタル派、原村和。『黒子の仮説』。聖杯戦争。ガンダムのパイロット、ヒイロ・ユイ。その同行者の女、ファサリナ。エスポワール・ノート。参加者よりと予想される工作員、忍野メメ。正義の味方、衛宮士郎、首輪解除の鍵となりうる。政庁崩壊。政庁跡での戦闘。狂った女。治療サービス。その際に現れた主催者側の少女、禁書目録。 殺人に乗った少女、平沢憂。牧師のような服を来た少年、デュオ・マックスウェル。中性的な和服の少女、両儀式。ナイトオブゼロ、枢木スザク。熱き戦国武将、真田幸村。気高い少女、セイバー。おくりびと。明智光秀と織田信長は危険な存在。駅襲撃。東横桃子とルルーシュ・ランペルージ、平沢憂と手を結んでの不意打ち。位置ワープ。F-7/ホールと条件入場の扉。USBとパソコン。バトルロワイアルサポート窓口担当、原村和。時間経過により開示されていく情報。ライダーの襲撃。浅上藤乃との合流。ライダーの死亡。位置情報により戦場ヶ原ひたぎと合流するためにここまで来たこと。 まず、初めに加治木ゆみを殺した。琴吹紬と千石撫子を逃した。月詠小萌は藤乃の行動の結果死んだ。ライダーと出会い同盟を結んだ。駅を襲撃して真田幸村を殺した。駅で枢木スザクと銃を持った男、神原駿河、一方通行と戦闘した。アリー・アル・サーシェスと同盟を結んだけれど、即座に別れた。阿良々木暦を殺そうとして殺せなかった。そして、人を殺すことをやめた。 ◎ ◎ ◎ それぞれの情報が開示され、空いていたピースがいくつか埋まる。 僕の情報も彼らの持っていた考察の裏付けや、新しい発見にもなったらしい。 だが、彼らにとってはそれ以上に衝撃だったことは浅上による罪の告白のようだった。 繰り返される謝罪の言葉。自身の罪を隠すこともなくさらけ出した浅上。 でも、三人の反応は分かっていたことだがあまり芳しいものじゃなかった。 白井は不信感を隠そうともしなかった。 「―――正直、阿良々木さんには申し訳有りませんけれど、信用できませんわ。 改心したふりをしている、ということも考えられますし。 それに、改心が偽りで無かったとしても、それをどう償うつもりですの? もし、お姉さまを殺した人間が貴女だったのなら、私は到底許せそうにはありませんわ」 天江は泣いてしまった。加治木ゆみは彼女の知り合いで、友達になれたかもしれない人、だったらしい。 「……すまない。衣は……あさがみを許してもいいものか、分からない……」 グラハムさんは白井ほど感情的ではなかったけれど、やはり信用しきれないようだ。 「―――人を殺したということ。それ自体は仕方ないと許せることかも知れない。 私も軍人だ。戦場で人間を殺したことはなんどもある。この狂った殺し合いを戦場と見立てれば分からない話でも無い。 しかし、ここで相手をするのは死ぬ覚悟のある軍人ではない。殺し合いとは無縁なはずの一般人だ。 しかもそれを享楽的に殺したと言う人間を手放しで信用できるほど、私、グラハム・エーカーは人間が出来てはいないな」 冷たい、いや、当たり前の言葉だった。 浅上がしてきたことは、それだけ罪深く許されざる行為なのだ。 どれほど罵られても償いには決して値しないほどの。 浅上は、それらを聞いて辛そうだった。 泣きそうだった。罪を噛み締めていた。 だけど、泣いてはいなかった。 誤魔化さず、罪と向きあおうとしていた。 そんな彼女を見て僕は思う。 彼らの言っていることはもっともで、許してもらおうなんて図々しいことだと。 浅上は、許して欲しいわけではないだろう。甘んじて責を受けるつもりだろう。 しかし、それすら傲慢なことかもしれない。 なぜなら、意図せずして選択肢を狭めているのだ浅上は。 だって、許せなかったとして、許さなかったとして。 どうすればいい。今まで殺し合いに乗っていなかった人間は。 殺すか? 浅上は殺意を向けられるても受け入れるつもりはあるだろう。 それはそれでひとつの選択肢なのかも知れない。 だが、殺せるわけがない。殺し合いを選ばなかった人間が、無抵抗な人間を殺せるわけがないのだ。 心情的には兎も角、行動としてそうしてしまえば、それはゲームに乗ったものと同じになってしまうのだから。 だからといって、許すことも難しい。殺し合いにのっていない人間は多かれ少なかれ、誰かとの死を乗り越えてきただろう。 今更、それを行っていた人間にごめんなさいと言われても、怒りを抑えることは難しい。 だったら、だったらどうするのか。 決まっている。 「少年、君にも聞きたいことがある。―――どうして、君は浅上藤乃を許せた?」 そう、僕だ。 既に同行している僕が、どうして浅上を許せたのか。 その確認と、理屈の追求。 「聞いてみたところによれば、君の元からの知人二人が死ぬことになった遠因も、浅上藤乃によるもののようだ。 だというのに、何故だ、少年。何故君は浅上藤乃を許したんだ?」 だから、僕は答えた。 「―――許したわけじゃない。……別に僕は浅上がやったことを許したわけじゃないんですよ。 神原も、千石も僕にとって大切な友達でした。―――それを手放しに許せるほどに、僕だって人間が出来ているわけじゃない」 そうだ。 かつて、どうしようも無いほどに敵対した男を殺されて。 それを、許せなかったのが、僕だ。 人を殺した浅上を、それを楽しんでいた浅上を許せるはずが無い。 「……ならば、何故だ。君はどうして彼女と同行している」 訝しげなグラハムさんの顔。 そうだろう。許せないなら、どうして僕は浅上の側にいる? ちらりと浅上を見れば、少し不安そうな顔をしていた。 大丈夫。既に答えは得ている。 そう心の中でつぶやいてグラハムさんに目を向けた。 僕は、覚悟を決める。 ―――いや、覚悟なんて。もっと前に決めていた。 「―――それでも、浅上に生きていて欲しいと思ったからです。 許せなくても、仇でも、あの涙は、後悔は嘘じゃなかった。 僕を殺そうとした浅上も、僕を生かそうとした浅上も、嘘じゃない。 人殺しをしないと誓った彼女は、僕と一緒にここまできた浅上は、普通の女の子だった。 僕は……嫌だ。こんな子が救われないのは、真っ当に生きられないことは嫌だと思った。 浅上藤乃を許せない気持ちは本物です。だけど、それ以上に、僕は浅上に生きていて欲しい。 だから。 僕は浅上を守る。―――ただ、それだけです」 ちゃんとした、誰にでも誇れるような理屈があるじゃない。 こんな、ただの短絡的かもしれない、だけど嘘じゃない。 僕にはそんな感情しか無い。 納得してくれるとも思っていないけれど。 押し付けられるわけも無いけれど。 それが、僕の偽らざる気持ちだった。 「……そうか」 グラハムさんは少し考えていたようだった。 そして、向き帰り、白井、天江のことを見る。 天江は、泣きながらもしっかりとグラハムさんを見据えていた。 白井は僕を少し見た後で、グラハムさんに向かって頷いた。 こちらに顔を向けて、彼は僕らにこう言った。 「では、少年。君のその意志に免じて判断を『保留』することにしよう。 これからの彼女の行動で、私たちが浅上藤乃をどう扱うかが、決まる」 ……それは、この場で出来る最大限の譲歩と言ってもいいものだと思う。 僕も、浅上も驚いて彼を見る。 グラハムさんは少しだけ笑うと言った。 「許さなくてもいい―――か。少年、君はなかなかユニークだな」 こうして僕たちは、本当の意味でグラハムさん達と合流することができた。 ◎ ◎ ◎ さて、こんな心温めるエピソードのあとで非常に心苦しいところではあるんだけれど……。 僕の方からやはりもう一つ提案をしようかと思う。 いや、なんていうか空気読めとか、おいおいさっき言ったことはどうしたんだとか聞かれても困るんだけど。 これから先のことを考えたら。多分、こうすることが一番いいと思うから。 「ふむ、情報も集まったところでこれからどうするかだが―――」 「ごめん、グラハムさん。先に僕からいいですか?」 まとめようとしたグラハムさんの声を遮っての発言。 みんなの視線が僕に集まる。 う。ちょっと緊張。 あまり大勢に注目されたことないしなあ。 「なんですの? 阿良々木さん。わたくし、出来ましたら早く―――」 「うん、僕も早く行動したい理由はあるよ。その上での提案がしたい」 ちょっと苛立を見せた白井。 気持ちは分からないでも無い。 僕だって戦場ヶ原を早く迎えに行きたいのだし。 「僕たちの目的は大きく分けると二つだ。 ここから見て、北東、東方面にいる知り合いの探索と、天江の安全の確保。 ―――勿論、天江以外はどうでもいいってわけじゃないけどさ。 全く戦えないんだし、最優先で安全を確保することに異論があるやつはいないと思う」 見わたせば皆ここまでは特に反論なし。 まあ、当然か。一応、そういうふうに言葉を選んでいる。 「で、それがなんなんですの?」 「慌てるなって。―――うん、だから僕は二手に別れることを提案したい」 この時点でグラハムさんだけが少し反応する。 僕が何を言おうとしているのか大体わかったのかも知れない。 白井、天江、浅上は未だピンときていないようだけど……。 「で、班分けは僕とグラハムさんで政庁の方へ。天江、白井、浅上は安全なところへ行くってことでどうだろう」 ……続く僕の言葉で爆発した。 「…………なっ!」 「…………ふぇ?」 「…………え」 時系列順で読む Back “腹黒の騎士団・バトルロワイヤル・ツアー御一行様”の旅(後編) Next 阿良々木暦の暴走(後編) 投下順で読む Back “腹黒の騎士団・バトルロワイヤル・ツアー御一行様”の旅(後編) Next 阿良々木暦の暴走(後編) 248 アラガミShort Story 阿良々木暦 257 阿良々木暦の暴走(後編) 248 アラガミShort Story 浅上藤乃 257 阿良々木暦の暴走(後編) 249 とある月夜の友情物語 天江衣 257 阿良々木暦の暴走(後編) 249 とある月夜の友情物語 グラハム・エーカー 257 阿良々木暦の暴走(後編) 249 とある月夜の友情物語 白井黒子 257 阿良々木暦の暴走(後編) 248 アラガミShort Story 伊達軍の馬 257 阿良々木暦の暴走(後編)
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00~50 No. タイトル 作者 登場人物 000 ――はじまり。 ◆awaseG8Boo氏 源千華留、柚原このみ、河野貴明、向坂環、ノゾミ、ミカゲ、言峰綺礼、神崎黎人 No. タイトル 作者 登場人物 001 Einsatz ◆eQMGd/VdJY氏 葛木宗一郎、高槻やよい、吾妻玲二(ツヴァイ) 002 To all people ◆AZWNjKqIBQ氏 黒須太一 003 そして始まる物語 ◆guAWf4RW62氏 向坂雄二、桂言葉、千羽烏月 004 月夜に踊る隠密少女 ◆aa/58LO8JE氏 支倉曜子 005 世界で一番NGな出会い? ◆LxH6hCs9JU氏 小牧愛佳、菊地真 006 Piova ◆J1Yqz32Be.氏 クリス・ヴェルティン、藤林杏 007 I AM SACRIFICE BLOOD ◆DiyZPZG5M6氏 羽藤桂、アル・アジフ 008 Spicy Drop Marble Jenka ◆wYjszMXgAo氏 西園寺世界、棗鈴、間桐桜 009 狂ヒ咲ク人間ノ証明 ◆PELOaKeBfU氏 鉄乙女、杉浦碧 010 Let s Play? ◆iDqvc5TpTI氏 ドクター・ウエスト 011 固有の私でいるために ◆CKVpmJctyc氏 対馬レオ、山辺美希 012 真逆 ◆CMd1jz6iP2氏 ティトゥス、直枝理樹、真アサシン(ハサン・サッバーハ) 013 I am bone of my sword ◆WAWBD2hzCI氏 椰子なごみ、衛宮士郎、リセルシア・チェザリーニ 014 天から舞い降りたシ者 ◆awaseG8Boo氏 蒼井渚砂、鮫氷新一、古河秋生 015 激突!?究極の筋肉VS至高の筋肉! ◆jRWsRROwBY氏 井ノ原真人、アントニーナ・アントーノヴナ・二キーチナ 016 私と貴方は似ている。 ◆UcWYhusQhw氏 棗恭介、トルティニタ・フィーネ 017 彼等の本気 ◆nrFxk81wlQ氏 如月千早、岡崎朋也 018 Memento Vivere ◆GWJrhWwbC6氏 柚原このみ、ドライ 019 希望、あるいは絶望への最初の一歩 ◆lcMqFBPaWA氏 清浦刹那、ウィンフィールド 020 誰が為に刀を振るう ◆rb7ZL.QpjU氏 一乃谷愁厳・一乃谷刀子、宮沢謙吾 021 熱く、強く、私らしく、たとえ殺し合いの舞台でも ◆56WIlY28/s氏 伊達スバル、玖我なつき 022 Battle Without Honor Or Humanity ◆PELOaKeBfU氏 アイン、深優・グリーア 023 愛する人の元へ ◆bD004imcx.氏 藤乃静留 024 偽りの空の下で狂人は変人に魅入られ、そして始まるたった2人だけの演奏会。 ◆UcWYhusQhw氏 クリス・ヴェルティン、来ヶ谷唯湖 025 少女の求めるもの ◆aa/58LO8JE氏 佐倉霧、若杉葛 026 The Course Of Nature~秒速5メートル~ ◆eQMGd/VdJY氏 浅間サクヤ、神宮司奏、大十字九郎 027 幸せになる為に ◆guAWf4RW62氏 ファルシータ・フォーセット、伊藤誠、柚原このみ 028 ドゥー・ユー・リメンバー・ミー ◆nrFxk81wlQ氏 小牧愛佳、菊地真、古河渚 029 死の先にあるモノ ◆CMd1jz6iP2氏 九鬼耀鋼 030 えきぞちっく・といぼっくす ◆LxH6hCs9JU氏 蘭堂りの、源千華留 031 殺す覚悟 ◆jRWsRROwBY氏 如月双七 032 月光カプリッチオ ◆WAWBD2hzCI氏 ユメイ、加藤虎太郎、橘平蔵 033 Fearing heart ◆WAWBD2hzCI氏 ドクター・ウェスト、岡崎朋也、藤林杏 034 True Love Story/堕落のススメ ◆UcWYhusQhw氏 ファルシータ・フォーセット、伊藤誠、古河渚、菊地真 035 HEART UNDER BLADE ◆AZWNjKqIBQ氏 支倉曜子、衛宮士郎 036 To hell ,you gonna fall ◆GWJrhWwbC6氏 鮫氷新一、古河秋生 037 吊り天秤は大きく傾く ◆eQMGd/VdJY氏 対馬レオ、山辺美希、鉄乙女、杉浦碧、一乃谷愁厳・一乃谷刀子 038 降り止まない雨などここにはないから(前編)(後編) ◆wYjszMXgAo氏 棗恭介、トルティニタ=フィーネ 039 死を超えた鬼と少女 ◆CKVpmJctyc氏 佐倉霧、九鬼耀鋼 040 蒼い鳥に誘われて ◆aa/58LO8JE氏 千羽烏月、岡崎朋也、クリス・ヴェルティン、椰子なごみ、来ヶ谷唯湖 041 GET TO BURNING ◆iDqvc5TpTI氏 ドクター・ウェスト、藤林杏 042 World Busters! ◆CMd1jz6iP2氏 如月千早、棗鈴 043 王達の記録 ◆DiyZPZG5M6氏 浅間サクヤ、蘭堂りの、源千華留 044 契約、そして ◆guAWf4RW62氏 羽藤桂、アル・アジフ 045 まこまこクエスト~狸と筋肉とスライムと呪われし血脈 ◆CMd1jz6iP2氏 菊地真、アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナ、伊藤誠、井ノ原真人 046 求めなさい、そうすれば与えられる ◆lcMqFBPaWA氏 西園寺世界、柚原このみ 047 GO MY WAY!! ◆LxH6hCs9JU氏 高槻やよい、葛木宗一郎 048 クモノイト ◆WAWBD2hzCI氏 黒須太一、吾妻玲二(ツヴァイ)、真アサシン、藤乃静留、直枝理樹 049 胸には強さを、気高き強さを、頬には涙を、一滴の涙を。 ◆UcWYhusQhw氏 ティトゥス、宮沢謙吾、蒼井渚砂 050 何気ない遊園地に、数々の出会い ◆eQMGd/VdJY氏 アイン、ユメイ、佐倉霧、橘平蔵、加藤虎太郎
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参加者名簿 6/6【Fate/stay night@ゲーム】 ○衛宮士郎/○セイバー/○遠坂凛/○アーチャー/○間桐桜/○ランサー 6/6【仮面ライダー555@実写】 ○乾巧/○草加雅人/○木場勇治/○海堂直也/○長田結花/○村上峡児 5/5【けいおん!@漫画】 ○平沢唯/○秋山澪/○田井中律/○琴吹紬/○中野梓 5/5【涼宮ハルヒの憂鬱@アニメ】 ○涼宮ハルヒ/○キョン/○長門有希/○古泉一樹/○朝倉涼子 5/5【ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース@漫画】 ○空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/○花京院典明/○ジャン=ピエール・ポルナレフ/○DIO 4/4【とある魔術の禁書目録@小説】 ○上条当麻/○御坂美琴/○一方通行/○白井黒子 4/4【仮面ライダークウガ@実写】 ○五代雄介/○一条薫/○ゴ・ガドル・バ/○ン・ダグバ・ゼバ 4/4【鋼の錬金術師@漫画】 ○エドワード・エルリック/○ロイ・マスタング/○エンヴィー/○キング・ブラッドレイ 4/4【ハピネスチャージプリキュア!@アニメ】 ○愛乃めぐみ/○白雪ひめ/○大森ゆうこ/○氷川いおな 3/3【ベルセルク@漫画】 ○ガッツ/○ゾッド/○シールケ 3/3【金色のガッシュ!!@漫画】 ○ガッシュ・ベル/○高嶺清麿/○ブラゴ 3/3【テイルズ オブ シンフォニア@ゲーム】 ○ロイド・アーヴィング/○コレット・ブルーネル/○ゼロス・ワイルダー 2/2【遊☆戯☆王@アニメ】 ○武藤遊戯/○海馬瀬人 2/2【フルメタル・パニック!@小説】 ○相良宗介/○テレサ・テスタロッサ 2/2【カウボーイビバップ@アニメ】 ○スパイク・スピーゲル/○ビシャス 2/2【警部補 矢部謙三@実写】 ○矢部謙三/○秋葉原人 2/2【メタルギアソリッド3@ゲーム】 ○ネイキッド・スネーク/○リボルバー・オセロット 1/1【キノの旅@小説】 ○キノ 1/1【古畑任三郎@実写】 ○古畑任三郎 計64名 主催者 1/1【Fate/stay night@ゲーム】 ○言峰綺礼 ネタバレ参加者名簿はこちらで
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No. タイトル マスター クラス 真名 作者 001 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン&アーチャー イリヤスフィール・フォン・アインツベルン アーチャー(アヴェンジャー) アルケイデス ◆aptFsfXzZw 002 怪物(フリークス) 神山樹 アーチャー 吉良吉影 ◆gQzkrK6H2s 027 『殉ずる者たち』 志村ダンゾウ アーチャー ファニー・ヴァレンタイン ◆XksB4AwhxU 030 童話迷宮 時槻雪乃 アーチャー コヨーテ・スターク ◆yy7mpGr1KA 043 encounter 衛宮士郎 アーチャー イシュタル ◆DpgFZhamPE 048 春野はるか&アーチャー(春野ムサシ) 春野はるか アーチャー 春野ムサシ ◆k7RtnnRnf2 051 巴マミ&アーチャー 巴マミ アーチャー ケイローン ◆HOMU.DM5Ns 067 兎の穴 ネオ(トーマス・A・アンダーソン) アーチャー イリヤスフィール・フォン・アイツベルン ◆yYcNedCd82 068 沢下条張&アーチャー 沢下条張 アーチャー 海東大樹 ◆lkOcs49yLc 069 毛利蘭&アーチャー 毛利蘭 アーチャー シータ ◆3SNKkWKBjc 074 ジョルノ・ジョバァーナ&アーチャー ジョルノ・ジョバァーナ アーチャー ギルガメッシュ ◆DIOmGZNoiw 087 宇佐和成&アーチャー 宇佐和成 アーチャー 狗神 ◆NIKUcB1AGw 092 診療記録5・6 チョコラータ アーチャー ダダ271号 ◆DdYPP2qvSs 104 刹那・F・セイエイ&アーチャー 刹那・F・セイエイ アーチャー アーラシュ ◆7WJp/yel/Y 120 エヴリデイドリーム ジェイク・マルチネス アーチャー イカロス ◆T9Gw6qZZpg 131 Break My Fate/Break Your Fate 乾 十三 アーチャー ウェカピポ ◆DdYPP2qvSs 136 兆し 董白 アーチャー 暗闇の雲 ◆nY83NDm51E 138 ウェイバー・ベルベット&アーチャー ウェイバー・ベルベット アーチャー ウラヌス-No.ζ ◆srQ6oTQXS2 142 君がまってる 瀬良あゆみ アーチャー 馬神弾 ◆TAEv0TJMEI 148 兄より優れた弟なんて ジャギ アーチャー ラディッツ ◆7PJBZrstcc 160 ここが地獄の森!魔天使は舞い降りた!! サガラ アーチャー 浪蘭幻十 ◆v1W2ZBJUFE
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参加者一覧 ※本編中での名簿には名前順で記されています。 ※作品名をクリックすると、外部サイト「wikipedia」の該当項目へリンクします 5/5【仮面ライダー555】 ○乾巧/○草加雅人/○長田結花/○村上峡児/○北崎 4/4【仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】 ○木場勇治/○園田真理/○海堂直也/○菊池啓太郎 5/5【コードギアス 反逆のルルーシュ】 ○ルルーシュ・ランペルージ/○C.C./○枢木スザク/○ロロ・ランペルージ/○篠崎咲世子 6/6【コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】 ○ナナリー・ランペルージ/○アリス/○ゼロ/○ロロ・ヴィ・ブリタニア/○マオ/○ユーフェミア・リ・ブリタニア 4/4【DEATH NOTE(漫画)】 ○夜神月/○ニア/○メロ/○松田桃太 4/4【デスノート(映画)】 ○L/○弥海砂/○夜神総一郎/○南空ナオミ 5/5【Fate/stay night】 ○衛宮士郎/○間桐桜/○セイバーオルタ/○バーサーカー/○藤村大河 6/6【Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】 ○イリヤスフィール・フォン・アインツベルン/○美遊・エーデルフェルト/○クロエ・フォン・アインツベルン ○遠坂凛/○ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト/○バゼット・フラガ・マクレミッツ 5/5【ポケットモンスター(ゲーム)】 ○シロナ/○N/○ゲーチス/○オーキド博士/○サカキ 5/5【ポケットモンスター(アニメ)】 ○サトシ/○ヒカリ/○タケシ/○ニャース/○ミュウツー 4/4【魔法少女まどか☆マギカ】 ○鹿目まどか/○暁美ほむら/○美樹さやか/○佐倉杏子 4/4【魔法少女おりこ☆マギカ】 ○美国織莉子/○呉キリカ/○千歳ゆま/○巴マミ 57/57 主催者 ○アカギ ○シャルル・ジ・ブリタニア ○キュゥべえ →死者表示(ネタバレ注意) 人物紹介用テンプレート 【名前】 【声優/俳優】 【性別】 【年齢】 【外見】 【一人称/二人称】 【関連人物への呼称】 【略歴】 【性格】 【能力・武装】 【パラレル作品での概要(参戦してる場合は省略)】 【備考】
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Moonlight Blue ◆hqt46RawAo ■ 『少女:悲哀の自己認識:路地裏~橋』 ■ 三人分の足音がバラバラのリズムを刻みながら夜に反響して消えていく。 前方には先の見通せない夜道が続いていて、左右にはコンクリートの壁がぼんやりと街灯に照らし出されていた。 ゼクスマーキスと別れた後、エリアD-5路地裏の薄暗くて小汚い道のりを福路美穂子は二人の魔術師と共に進み続けていた。 4メートル程前を先行しているコート姿の女――アオザキの背中を追って、疲れの溜まった両足をひたすらに動かし続ける。 「――で、その聖杯戦争ってのが……なんていうか……。七組の魔術師とサーヴァントが聖杯を巡って殺しあう……。って言っても伝わらないよなぁ……」 傍らからには、隣を歩く少年――衛宮士郎の声が聞こえてくる。 彼との会話に集中することによって、美穂子は足を動かす億劫さをなるべく感じないようにすることが出来ていた。 暗い道中における士郎の存在は、疲労感を大きく紛らわせてくれる。 (気を、使わせちゃってるな……) 士郎は努めて明るく話そうとしているようだった。 美穂子は、人の『感情の動き』を読むことには長けていた。 『超能力』的なものでは決して無いものの。 その『観察眼』の精度は既にある種の『能力』と言える域にあるだろう。 『場』の状況を速く正確に把握すると共に、相対した人物の心理状態をあくまでその人の表情や挙動のみ察知する。 それを元の世界では、ずっと卓上でこなしてきたのだ。 普通の人では気がつかないような僅かな心の機微も、美穂子は見逃さずに感じ取る事ができた。 だからこの時、士郎が少し無理をしている事も分ってしまっていた。 彼は何も気にしていないように話し、平静を装ってはいる。 しかし時折その横顔や挙動に、迷いや焦りの色が通り過ぎるのが垣間見えてしまう。 そしてその理由も、アオザキやゼクスと話す士郎の姿を見ていた美穂子には瞭然の事であった。 この場において誰よりも焦燥と苦悩を感じているのは士郎のはずだ。 にも拘らず、誰かに心配を掛けないようにと、彼は全てを背負い込んでいる。 その心遣い為を無下にしない為にも、礼の言葉を口に出す事は出来ない。 だからせめて、彼の心が今より少しでも軽くなるようにと、 自身の疲労も焦燥も憂慮も、全て士郎に悟られぬよう心の内へと仕舞いこんで。 美穂子もまた、なるべく明るく話すことを意識しつつ、士郎の言葉を聞いていた。 「うーん。これを人に説明するのはここに来て二回目なんだけど、やっぱりどう話すか悩むな……」 「理解できない部分は私から質問するから、とりあえずは衛宮くんの話しやすいように話してみたらどうかな……?」 「……わかった。でも断っておくけど、普通の人にしてみればかなり信じがたい話になるぞ?」 「それはきっと大丈夫。今ならどんな荒唐無稽な話でも、信じられそうだから」 ――聖杯戦争。 『イリヤ』『バーサーカー』に続き、またしても士郎の口から飛び出した聞きなれない単語。 名前だけではどのような物かを予想する事は出来なかったが、 『戦争』という言葉がつくからには穏やかなものではないのだろうと思われた。 「まず、魔術師っていう存在があって――」 美穂子はひとまず士郎の説明に耳を傾け続けた。 「――それでサーヴァントっていうのが――――で、聖杯っていうのが――」 魔術、魔法、マスター、サーヴァント、聖杯。 聞かされた話は確かに士郎の言うとおり、事情を知らない人間には信じがたい話であったことだろう。 とはいえ、この場所で様々な経験を経た今の美穂子にはもう、なんの引っかかりも無く彼の話を納得出来てしまっていた。 「――とまあ、色々ややこしい説明をしてきたけど。 最初に言ったように、七組のマスターとサーヴァントが『手に入れれば何でも願いが叶う聖杯』を巡って最後の一組に為るまで殺しあう。 聖杯戦争を簡潔に言えばこんな感じかな。全部、元の世界での俺の仲間の受け売りなんだけど……」 そして、先程彼が言った『イリヤ』は七人のマスターの内の一人であり、『バーサーカー』はイリヤのサーヴァントであったと言う事。 他にも何人かのサーヴァントがこの島に連れてこられていることや、最後に士郎自らもまたマスターの一人であったことを告げて、 士郎の話は締めくくられた。 「…………」 美穂子はすぐに返事を返す事が出来なかった。 士郎が語った聖杯戦争の、ひいてはサーヴァントについての話。それは想定よりも、今の美穂子にとって関連性の在る事柄だった。 美穂子がこれまで戦ってきた大敵達の正体。 ヴァンと平沢唯を殺害し、伊達政宗に致命打を与えた巨人――バーサーカー。 片倉小十郎を殺害した紫髪の女――ライダー。 「……そっか――」 だが、それらを知って沸きあがる感情は既に無かった。 少し前の、憎悪に支配されていた頃の美穂子であれば、果たして何を考えたか分らない。 けれど、美穂子もう知っていた。 今の自分にとって重要なものは、大切な人たちを奪った敵の名前ではなく、大切な人達が残した思いだけなのだと。 いまさら誰かの仇の正体を知ったところで、心が揺らぐ事は無い。 だから、この時に囚われていた感慨はまったく別のこと。 「――それじゃあ衛宮くんは、ここに来る前からずっと戦ってたんだ……」 そんなことだった。 美穂子は思う。 日常から非日常に引きずり出された自分に対して、非日常から更なる非日常へと引きずり出された彼。 はたして、その心境はいかほどのものなのだろうか。 辛くは無いのか? いや、辛いはずだ。普通の人間であれば、彼が言ったように、少し魔術が使える以外は普通の学生であったのならば。 そんな過酷な戦いの連続には絶えられないだろう。 少なくとも美穂子には出来なかったことだ。なのに、どうして彼はそこまで強く在れるのだろうか? そんな単純で大きな疑問に――。 「――え? いやっ……俺は別にそんな大した事は……。戦いは全部セイバーがこなしてばっかりで……俺は全然何も……出来てないよ」 士郎は少し悔しそうな表情を浮かべながら、どこか的外れな答えを返していた。 そうじゃない、と。美穂子は心中で思う。 敵と戦うことや、役に立ったかではなく、疑問はもっと根本的な事だ。 どうしてそんなに、命を掛けた戦いに『場慣れ』してしまっているのか? ということ。 「俺にはまだ、何も出来てない……誰も救えてない……」 けれども、士郎の言葉からは決定的な感情のズレが感じられていた。 デパートの屋上で、漆黒の武者と対峙したあの時と同じ。 圧倒的な力不足を理解していて、立ち向かえば必ず死ぬという事が分っていながらも、誰かを助ける事に迷いが無い。 それはもう自己犠牲の領域すら超えた、ある種の歪。 彼はとても哀しい生き方をしてきたのではないか、と。 ふと、美穂子はそんな思いに駆られていた。 「だいたいセイバーの奴、女の子の癖に自分が戦うんだって聞かなくてさ……。そりゃ確かに俺は半人前だけど……」 そんな美穂子の心中を知るはずもなく、 ブツブツと愚痴を吐くかのようにセイバーについて語る士郎の横顔はどこか懐かしそうで、どこか辛そうだった。 その表情に、大切な人を失った自分と似たものを見つけて、美穂子の感慨は流されていく。 「半人前だけど……今の俺なら……あの時より少しは戦えるかもれないのに……」 呟いた士郎の視線は、何も無い手の甲のあたりに向けられていた。 それはきっと、彼にとって最大の心残りなのだろう。 セイバーの名前は、既に放送で呼ばれている。 それが意味することなど明白だ。 士郎もまた、美穂子と同じく大切な人を失っている。 死した人への思いを抱えている。 「って、悪いな。なんか、愚痴みたいになってた……」 それきり口を閉ざす士郎。 彼の思いに対して、美穂子が言える事など何も無い。 これ以上、その思いに踏み込むことは出来ない。 士郎が今感じてる思いは、きっと彼だけにしか理解できないものだから。 美穂子の中の死者への思いが、美穂子だけのものであるように。 「ううん、気にしないで。気持ちは分るから……」 けれども、思いを共有することは出来なくとも、その一端を知る事なら出来る。 思いを抱えて生きているのは自分だけではない。皆それぞれ懸命に戦っているのだ。 それを実感することで、美穂子は少しだけ勇気をもらう事が出来ていたから。 ひっそりと、心中で彼に感謝する。 同時に、それを彼にも返してあげたいと思う。 「私も、その人に会ってみたかった。とても綺麗で、高潔な人だったのでしょう?」 「……ああ……うん。まあな」 そして、軽く戸惑いながらも、少しだけ誇らしそうに士郎が頷いたとき。 「開けた場所に出るぞ。 一応、警戒はしておけ」 前を歩くアオザキの重苦しい声が、暗い路地裏道の終わりを告げていた。 窮屈な路地裏を抜け、一転して広い道路に出た。 どうやら、ここは既にD-5中央都市部からは相当離れた西端の住宅街のようで、 もう美穂子の視界に高くそびえるビル郡は無く、まばらに民家が立ち並んでいる光景だけが広がっている。 道路の先を見ると、そう遠くない距離に橋が見えた。 息苦しさから解放され、一つため息をついた美穂子と士郎だったが、先行するアオザキはずんずん先へと進んでいく。 「っと、そうだ! セイバーの話をしてたら忘れそうになってたんだけど……」 アオザキを追って、美穂子が早歩きを再開したとき、ふと士郎が声を上げた。 「そもそも何で聖杯戦争の話をしたかっていうとだな」 イリヤとバーサーカーの説明ついでに、サーヴァントの危険性を語ったものかと思っていたのが、どうやら違うらしい。 確かに考えてもみれば、士郎が言った人物達――サーヴァントはもうライダーを除いて全て放送で呼ばれてしまっているし、 最後のサーヴァントであるライダーですら、もう生きているのか死んでいるのかも分らない。 今更サーヴァントの危険性について話す意義は少ないだろう。 とすると、聖杯戦争を知らせる事そのものに意味があったようだ。 「えっと、これも俺の仲間の受け売りなんだけど……」 そんな前置きをして、士郎は語った。 このバトルロワイアルに関する一つの『仮説』を。 様々な世界から参加者をここに集めた要因は聖杯の魔力によるものではないかということ。 この殺し合いは聖杯の行使を目的としたものではないかということ。 つまり、『バトルロワイアルとはルールを捻じ曲げて、規模を拡大した聖杯戦争で在る』という可能性について。 「……なるほど……ね」 納得する。人を生き返らせる魔法の正体。 それは美穂子も今までずっと考えてきた事であったが、 知らない異世界に聖杯という願望器があったならば、事の次第はずっと簡単なものとなる。 と同時に、『仮説』を語った士郎の表情に、ある変化を読み取って、 そちらに気が行ってしまっていたので。 「福路は、どう考えてたんだ?」 士郎からの問いに、少し反応が遅れてしまった。 「えっ?」 驚いたように顔を向けた美穂子に対して、士郎はあくまで興味本位と言った様子で聞いてくる。 「だから、福路は主催者の力に関して、どんなふうに考えていたのかってことなんだけど……」 「……あ……えと……私は……」 美穂子が考えていた死者蘇生の力。 ついつい、だらりと垂れ下がった制服の左袖に目が行ってしまう。 かつてそこに在ったモノ。そして、未だに己が内に潜むモノ。 それこそが美穂子の考えていた死者蘇生の正体であり。 「それは……」 やはり、語る事は憚られた。 今の自分の身の上についてを語る事は、彼への負担になる気がしていたから。 「もっと……詐欺みたいなモノなんじゃないかって。ほらあの帝愛の人たちって、信用できないから……」 代わりに、そう言ってはぐらかした。 美穂子は士郎という人物について、少しずつだが理解し始めていた。 この少年は、誰彼構わず助けようとするし、なんでも背負い込もうとする。 見ず知らずの者や、過去に自分を殺そうとした者すらも。 それは聖杯戦争で敵同士であった筈のイリヤという少女を本心から心配している事や、 あの屋上で迷う事無く美穂子を助けようとした行動からも伺えた。 そしてなによりも――あの時、士郎に投げかけられた言葉を憶えている。 『――死ぬな!いますぐ助けるから!だから――』 だからこそ、彼には知られたくなかった。 「詐欺……? それってどう――」 「あ、そういえば。衛宮くん。 もしかして、その仮説を考えた人が、白井黒子さん?」 だから、士郎が事をより深く追求する前に、美穂子は先程考えていた予測をぶつけてみた。 「へ? あ……ああ、そうなんだけど……なんで分ったんだ?」 どうやらそれは図星だったようで、話を逸らすことに成功する。 「なんとなく、そう思ったから……かな」 実際に、美穂子は少し鎌を掛けていたのだが、根拠はちゃんとある。 『受け売りの仮説』について語る士郎の表情には、彼がアオザキやゼクスと白井黒子に関して話していた時と同じような表情が浮かんでいた。 それは焦燥感と、もしくはそれ以外の何か。 信頼感のような、それで居て何より気遣っているような。 ほんの僅かに、特別な感情を浮かべていたように思われた。 「聞かせてもらっても、いいかな? 西に居るその白井って人や、衛宮君の仲間の人たちについて……」 美穂子の提案はこの場において、もっともな意見のはずだ。 二人は未だに、まともな情報交換を済ましていない。 そんな理屈に加えて、美穂子は少し気になってもいた。 最良の選択だったとはいえ、士郎があれほどに悩み、そして選んだ後も未だに苦悩している選択肢。 その結果優先した白井黒子とは、はたしてどのような人物なのだろうかと。 「ああ、もちろんだ」 当然の如く、士郎は快く引き受けて、彼が今まで関わってきた者達について話し始めた。 会話の合間にも、目的地までの距離は縮まっていく。 三人が辿り着いたD―5西端の橋には、既に崩壊の兆しが見え始めていた。 バーサーカーとライダーによって散々痛めつけられた木材は多くの部分が欠損しており。 今このときも軋みを上げ続けている。 そんな場所をアオザキは臆する事無く進んでいき。 美穂子もまた士郎と共に、朽ち掛けている足場におずおずと足を乗せた。 「そう……。そんなことが……」 「ああ、だから急がないと」 不安な足場に意識を割きながらも、美穂子と士郎の情報交換は未だに続いている。 今は士郎から、士郎がこれまでに体験した一連の出来事を聞いていた。 ここまで、彼はあまり殺し合いに乗った者とは遭遇していないようであったが。 この島での初戦となった先の戦闘の最中、彼と共にいた白井黒子は銃撃により重傷を負ってしまったらしい。 「俺が不甲斐ないから、白井はあんな事になったんだ……。だから絶対に助けないと……」 士郎はそんな事を言ったが、 流石にこの発想には美穂子も異を唱えた。 「そんな……。どうして衛宮くんがそこまで責任を感じているの……? そもそもあれは私が――」 三回目の放送を聞いてから漆黒の武者と対峙するまで、美穂子の記憶は混濁している。 しかし、先の戦闘の火蓋を切ったのは自分であったことを、おぼろげながらも覚えていた。 そして今隣を歩いている少年に向かって手を上げたことも。 だから非が在るとすればそれは美穂子であり、責められるべきも同様のはずで、無論甘んじて受けるつもりだった。 にも拘らず、士郎は美穂子の言葉を手で制して言う。 「俺は、アイツと約束したんだ……」 「……約束?」 「ああ。一緒にこの世界から生きて帰る……って約束。だからアイツは、俺が守ってやらなきゃ……駄目なんだ」 「………………」 士郎の目は真っ直ぐだった。 ここに居ない白井黒子に告げるように。誓いを反芻するかのように、言い切った。 美穂子は少し、呆気に取られてしまう。 改めて自分の考え――やはり白井黒子が士郎にとって、特別な人物であるという事を確信する。 そう、特別なのだ。 誰彼構わず平等に助けようとする、まるで『正義の味方』のような衛宮士郎という人物の中で。 唯一、白井黒子だけが特別な価値を持とうとしている。士郎本人が自覚しているかどうかは分らないが。 ただ一つ言えた事は、あの戦いのおり、士郎は誰よりも白井黒子を優先したかったはずだ。 なのに、それを押し切ってまで福路美穂子を救いに来た。 その矛盾した行動にこそ、彼の苦悩と、歪の正体があるのではないかと、美穂子は思う。 そして、その歪の形は今の美穂子の在り方と、どこか似ているような気がしながらも。 この瞬間迷いに揺れている士郎と、彼に守りたいと想われている白井黒子のことを、美穂子は少し羨ましく感じてもいた。 守りたいと願う、大切な人。 それは美穂子にとって、もう既に失われていて、二度と戻らないものだ。 けれども、士郎と黒子にはまだ互いが残っている。 彼らの大切な人は失われていない、まだ生き続けている。 それは何よりも幸福なことだと、美穂子は心から思う。 やり直したいと思った。 もう間違えない、負けないと誓った。 だから美穂子まだ生きている、生きてここ居る。 もう一度だけ、勝つ為に戦う事を決めたのだ。 それでも、失ったものは戻らない。 これはどうしようもない現実だ。 戻らないからこそ、何よりも尊い価値がある。 故に死者の蘇生など嘘っぱちだと、美穂子は思う。 金や殺人で大切なモノを取り戻す事など、出来る訳がない。 そんなことは絶対にしちゃいけない、と。 大切な人をたくさん失った今だからこそ、美穂子には断言することができた。 そんな感慨と共に、美穂子もまたこれまで体験してきた事を、アンリマユや自分の状態については伏せつつ士郎に話した。 士郎は少し顔を顰めながらも、最後まで黙って美穂子の話を聞いていた。 話終えたとき、士郎は少しだけ顔を伏せてしまったので、美穂子に士郎の心中を図る事は出来なかった。 一通りの情報交換が終わり、橋の中央まで来たときだ。 「なあ、アオザキ。そろそろ教えてくれないか?」 士郎が、先行するアオザキに近づいて声を掛けた。 「アンタ、どうして俺達を助けた? 俺達の味方だって言ってたけど、具体的に何が目的なんだ?」 未だ不明瞭なアオザキの正体。 橋を渡りきる前に、それを問い質しておこうと考えたのか。 士郎は少し詰問するような口調だった。 美穂子はそれをひとまず後ろから見ていることにする。 自分が続いたところで話が拗れるだけであろうし、魔術師同士である二人の間には軽い専門用語が飛び交っており、正直入っていけそうに無い。 だから、話の内容は後で士郎に教えてもらうことにした。 小さな声で為されている前方の会話から取り残されて、自分だけが世界から隔離されたような錯覚に陥る。 壊れかれた橋の上。 思わず足を止めて、橋の下に流れる川を見下ろしていた。 あたりは酷く静かだ。 ビル郡の光も、背後に遠い。 今は月明かりだけが美穂子の世界を照らしている。 人と人との喧騒も、虫の声もここには無い。 ただ、夜風が頬を撫でていくだけで――。 穏やかに、時間が流れていく。 士郎とたくさん話した余韻も手伝って、心が少し軽くなっていたからだろうか。 「『生きて』……『この世界から出る』……か」 気がつけば、その言葉をなぞっていた。 生きて、この世界から脱出して、それからどうするのか。 そんな『先』の事を美穂子は初めて考えた。 真っ先に浮かんだのは自分の事を『お姉ちゃん』と読んでくれた三つ子たちの存在で。 出来る事なら、生きて帰る事が出来たなら、華菜の代わりに自分が守ってあげたい。 もう一度、あの日常へと――。 「――――――っ!!」 そんな、儚い空想は、目の前に結ばれた像によって、呆気なく壊されてしまった。 「私は……いまさら……何を……」 月の光に煌いた川の水面に映る、美穂子自身の姿。 在るべき片腕を失った少女。この世全ての悪を身に宿した少女。 そんな変わり果てた自分の姿を見て。 急速に、心が冷えきっていく。 立ちくらみのように、一瞬だけ前後不覚に陥って。 全身を包む悪寒。絶望の味を思い出した。 ――なにを馬鹿な。今更あの暖かな日常の中に、戻れるとでも思っているのか? 美穂子は自嘲する。 自分は今、なんて甘い幻想を抱いていたのだろうか、と。 そして、いまさら何に絶望しているのか、と。 全てが終わった後の事など、『先』の事など、果たして自分に用意されているか分らない。 今の自分がどれだけ日常からかけ離れてしまったのか、歪な存在になってしまったのか、そんな事は自覚していた。 日常に帰れるなんて、到底思えない。 きっと、自分は救われない。 左肩が、悲哀を喰らうように、厳かに疼く。胸が締め付けられるようだ。 こんな事はずっと前から分かっていた事なのに。とうに覚悟していた筈なのに。 自分の姿を見た。現実を再認識した。 ただそれだけの事で、こんなにも心が痛む。 水面に映る現実に、圧しつぶされそうになっている。 けれども、それは考えてもみれば当たり前の事だろう。 いくら美穂子が数々の体験を経て、強くあろうと振舞っても、高貴な決意を固めていても。 結局、その心の本質は、普通の日常を生きてきただけの、普通の少女のものだった。 平気で居られるわけが無い。 美穂子は疼く左肩を押さえがなら、静かに眼を閉じる。 本音を言えば、怖くてしかたがなかった。 どうしようもなく、苦しかった。 泣きたいくらい、辛かった。 けれど自分には、それを訴える資格など無いと思っていた。 自分の間違いを許す事は出来ない。 失った人たちの事を思うと、自分だけが救われていいなんて思えなかった。 そして最も明確な罪の形にも、つい先程直面したばかりだ。 士郎は気が付いていないようだったが。 数十分前に出会い、そしてすぐに別れたゼクス・マーキスという男。 彼はきっと――死ぬだろう。 あの怪我で動き回って、無事で済む筈が無い。 『ならば良い。後は我々と共に主催に立ち向かってくれるのであれば言う事はない』 強い決意と共に走り去る彼を、美穂子にも士郎にも止めることは出来なかった。 ゼクスもまた美穂子に思いを残していき、美穂子も彼に誓いを返した。 この意志を貫きたいとは思うけれど。 それでも、やはり許されるとは思えない。 様々な感情が綯い交ぜになって美穂子の中を駆け巡っている。 ただの少女の限界を超えた精神疲労。 それを美穂子は暫く立ち尽くしたまま、左肩を押さえ、両目を瞑り、じっと耐えていた。 たった一人で、一人ぼっちで苦痛に耐えて続けていた。 それが罰なのだと、背負うべき業であると言うように――。 「大丈夫……私はまだ……大丈夫だから……」 失った人たちを脳裏に思い出して、唱えるように断言する。 託された思いこそが、今の美穂子を支えている。 彼らの分まで勝利するという意志こそが全ての原動力だ。 ただ一つ、自分が正しいを思ったことを為す。 目の前の事からは絶対に逃げない。 「私は……まだ……戦えるから……負けないから……」 この強い思いが在る限り、『この世全ての悪』なんかには絶対に負けたりしない。 例えどれほど辛くても、苦しい道のりであったとしても。 今の美穂子には、自分は間違えていないと強く言える。正しい気持ちで戦っていける。 ならば、それで十分だ。 立ち向かうべきものは分っているから。後は自分の役割を見つけ出すだけ。 「絶対に……勝つからね……みんなの分まで……」 左肩の疼きが、少しずつ退いていく。 美穂子はゆっくりと右眼を開いて、水面に映った自分の姿を今一度、正面から見据えた。 曇りのない青い瞳が、美穂子を見返している。 「もう、泣かない」 もう、自分の世界が揺らぐ事は無い。 「いつか終わりが来るまでは、精一杯生きてみせる。生き抜いてみせるから――」 その言葉だけを水面の自分に告げて。 美穂子は少し距離が離れそうになっていた士郎の背中を追い、再び歩き始めた。 もうすぐ、橋の向こう側だ。 最後に美穂子は思う。 どうか、かの二人には報われてほしい、と。 せめて救われる事のない自分の分まで、 彼と彼女とが無事に再会し、そして約束を果たしてほしい、と。 そんなことを、静かに祈っていた。 ■ 『魔術師:根源に至る道:橋の中間~橋の終わり』 ■ 橋の中間地点にて。 「アンタ、本当はどうして俺達を助けた? 俺達の味方だって言ってたけど、具体的に何が目的なんだ?」 問いかける少年――衛宮士郎に対して、 さてどう答えようか、と。 魔術師――荒耶宗蓮は一瞬だけ思案を巡らせていた。 「善意だけって訳じゃないんだろ?」 続けられた言葉も、計算の内。 いつかは問われる事だと思っていた。 とはいえ、どの程度事情を明かすかは、そのときの状況に応じるもの。 「――然りだ。 おまえ達に私の協力者足りえる価値が在るからこそ、私は危険を冒してでもあの場に赴いた。 理由は先程にも言ったとおり、現状おまえはこの島で生存している唯一の魔術師であるからだ」 とりあえずは、あらかじめ用意してあった返答を返して様子を見ることにする。 今のところ、荒耶の言葉に嘘はない。 そして当然の事だが、やはり荒耶の想定通り、この説明では士郎も納得がいかないようだ。 「じゃあ、俺に協力してほしいことってなんだ? そもそもアンタは一体何者なんだ? 首輪をしていないってことは――」 「全てを話せば長くなる」 繰り出されかけた質問の嵐を、ゼクスマーキスに放った言葉と同じもので圧し留める。 「だが、そうだな。肩書きとしての素性と、おまえを助けた具体的な理由については、今の内に軽く述べておく事にしよう」 ――今はそれでいいだろう、と。 押し通すような視線と共に魔術師は言う。 士郎もまずは話を聞こうと決めたのか、「わかったよ」と一つ呟いて暫し口を閉じる。 そうして、荒耶宗蓮は開示するべき真実と吹き込むべき虚実を、目の前の少年に与え始めた。 「察しているだろうが私は主催者側の人間だ。ただし、連中とは既に袂を分っている。故、多少ばかり身動きが取りにくい状況に在る。 私の目的はこの状況の打開。その為におまえの力が必要だ」 その前置きは、かつてアステカの魔術師に語ったものと似たような内容であった。 「確かに、ここに来る前のおまえは魔術師として酷く半端者であった。同じ世界からここに来た者の中では最弱と断言できる。 何故、連中はあれほど多くのサーヴァントを呼び出しておいて、マスターの中からおまえ一人を選んだのかは私も知らぬが……」 荒耶は未だに真実を述べ続けている。 実際、マスターの中から士郎だけがここに呼び出されている事は荒耶も疑問に思っていた。 このバトルロワイアルにおける黒幕の正体を知っていればこそである。 「だが、衛宮士郎は成長する事が可能である。 事実として、おまえは己の力の本質を理解し、それなりに戦えるほどの力を付け始めている。 そして、お前の魔術はここが底ではない」 「どういう……意味だ?」 さて、ここからが本題だ。 荒耶にとって、そして士郎にとっても。 「実態は私が話さずとも、それを得る事が出来れば自然に知れる事だろう。 行使が可能となれば、おまえは殺し合いに乗った者達や主催者に対して、かなり有用な切り札となる。 そして、そのための下地は既に出来上がっている。故に、残る必要な工程にも私は協力しよう。 だが今は身体を休める事が先決だ。魔力が枯渇した状態では何を為す事もできん」 一気に言って、荒耶は士郎から視線を切り、歩みのスピードを上げた。 取り残された士郎は未だに何か聞きたそうな様子であったが。 荒耶はもうこの場ではこれ以上語らぬと背中で示す。 そうして、魔術師は己の思考の中へと埋没していった。 衛宮士郎は荒耶が与えたきっかけを見事に掴み、自身の本質を完全に理解しつつある。 しかも、最大の課題であった『膨大な魔力』と共に、こちらの手の内に転がり込んできたのだ。 美穂子の身に刻まれたアンリ・マユの疑似魔術刻印の一部を士郎へと移植し、 魔力の流れを作れば、士郎は固有結界を展開出来る程の出力を得るのだ。 見込みの薄かった策が、現実に為そうとしている。 『衛宮士郎の固有結界をもってして抑止力を打開し、両儀式を手中に収め、根源へと至る』 その方法。 残る大きな課題は衛宮士郎を如何にして両儀式にぶつけるか、だ。 三人が向かう島の西には、式と共に数々の思惑を抱えた者達の姿が在る。 ならば幾つかに分けれた西側の集団。 そこに蔓延るそれぞれの思惑、誤解や不和を利用するのが定石か。 荒耶はその具体的な方法に思慮を働かせ続ける。 そこへもう一度、背後から挟まれる士郎の声。 「なあ最後にもう一つだけ、教えてもらってもいいか?」 魔術師は前を見つめたまま、返事を返さない。 士郎はそれを無言の肯定と受け取ったのか。 「福路は……今どういう状態なんだ?」 その問いに対して。 なるほど確かに、この男は聞き及んでいた通りの『正義の味方』だなと納得しつつ。 「……やめておけ。アレはもう、おまえにはどうにも出来ない存在だ」 荒耶はつまらなげに、振り返る事も無くそう言い切った。 時系列順で読む Back 夢幻の如くなり(後編) Next Moonlight Black 投下順で読む Back Mobius Noise Next Moonlight Black 254 シスタープリンセスを追え 福路美穂子 260 Moonlight Black 254 シスタープリンセスを追え 衛宮士郎 260 Moonlight Black 254 シスタープリンセスを追え 荒耶宗蓮 260 Moonlight Black
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85 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/22(金) 00 30 30 ID R4b40wos ~~安土城・資料室~~ デュオ「えーっと、これがこうで……ああすれば……よし、なんとかなりそうだな」 刹那「誰かいるのか?…デュオ・マックスウェルか。ここで何をしている」 デュオ「おっ、刹那か。実はさっきな、瓦礫の山の中でサザーランドを見つけたんだ。けど、故障箇所があって修理する必要があったからそれに関する資料を探していたんだ」 刹那「そうか。それで、直りそうか?」 デュオ「ああ、いけそうだぜ。世界が違うとはいえ使っている部品はどこも同じようだ。ただ、不足したパーツを探すのが面倒だな」 刹那「それなら、黒桐幹也や衛宮士郎に頼むといい。一方は物探しが異様に得意、一方は魔術で物を精製できるようだ」 デュオ「へぇ、そいつはいい事を聞いたぜ。(スイーパー・グループに最適だな。後で誘ってみるか)ありがとよ」 刹那「ところで、参戦作品棚のBDが何点か空いていたが、それもお前か?」 デュオ「ああ、ちょっと息抜き程度に見させてもらったぜ」 刹那「そうか。見終わったら棚に戻しておけよ」 デュオ「へぇへぇ。しかし、お前とヒイロって本当に境遇が似ているな。朴念仁だったり、お姫様と知り合いでゾッコンなところも」 刹那「いや違う。俺と彼女はそんな関係じゃない」 デュオ「…扱い方も一緒だな…。しかも、このバトルロワイアルでも美人さんと仲良くしていたようだし」 刹那「?ヒイロとファサリナは互いにただ協力していただけだ、っと聞いていたが?そもそも俺はホンダムと一緒で女性とほとんど接触していない」 デュオ「だーっ!そこでマジでボケるな!お前のは死者スレでの話だよ!えーっと、ほら、たしか竹井久っていう女の子といい雰囲気だったろ!」 刹那「…過去の死者スレも見ていたのか」
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85 :名無しさんなんだじぇ:2010/10/22(金) 00 30 30 ID R4b40wos ~~安土城・資料室~~ デュオ「えーっと、これがこうで……ああすれば……よし、なんとかなりそうだな」 刹那「誰かいるのか?…デュオ・マックスウェルか。ここで何をしている」 デュオ「おっ、刹那か。実はさっきな、瓦礫の山の中でサザーランドを見つけたんだ。けど、故障箇所があって修理する必要があったからそれに関する資料を探していたんだ」 刹那「そうか。それで、直りそうか?」 デュオ「ああ、いけそうだぜ。世界が違うとはいえ使っている部品はどこも同じようだ。ただ、不足したパーツを探すのが面倒だな」 刹那「それなら、黒桐幹也や衛宮士郎に頼むといい。一方は物探しが異様に得意、一方は魔術で物を精製できるようだ」 デュオ「へぇ、そいつはいい事を聞いたぜ。(スイーパー・グループに最適だな。後で誘ってみるか)ありがとよ」 刹那「ところで、参戦作品棚のBDが何点か空いていたが、それもお前か?」 デュオ「ああ、ちょっと息抜き程度に見させてもらったぜ」 刹那「そうか。見終わったら棚に戻しておけよ」 デュオ「へぇへぇ。しかし、お前とヒイロって本当に境遇が似ているな。朴念仁だったり、お姫様と知り合いでゾッコンなところも」 刹那「いや違う。俺と彼女はそんな関係じゃない」 デュオ「…扱い方も一緒だな…。しかも、このバトルロワイアルでも美人さんと仲良くしていたようだし」 刹那「?ヒイロとファサリナは互いにただ協力していただけだ、っと聞いていたが?そもそも俺はホンダムと一緒で女性とほとんど接触していない」 デュオ「だーっ!そこでマジでボケるな!お前のは死者スレでの話だよ!えーっと、ほら、たしか竹井久っていう女の子といい雰囲気だったろ!」 刹那「…過去の死者スレも見ていたのか」