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絞めるぜ典明は ずるいぜ典明は 黒いぜ典明は レロレロ典明だ 絞めるぜ典明は ずるいぜ典明は 黒いぜ典明は レロレロ典明だ 原曲【ソフトバンクホークス川崎宗則のテーマ】 元動画URL【http //www.nicovideo.jp/watch/sm1496522】
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* * * 後ろで銃声が聞こえあたしが振り向いた時、ジョンガリ・Aの銃口はあたしを向いていた。 つまりジョンガリ・Aは、チャンスを見計らってあたしを殺そうとしてたってワケだ。 なるほど、やっぱりそういう腹積もりだったってワケかよ。 ただ、まだ疑問は残っている。 何であたしに当たらなかったんだ? 至近距離、あたしは殆ど動いていない。加えてコイツは銃のプロだと言っていた。 それなのに何であたしに弾丸が当たらない? その時、ホテルから二人の男が姿を現した。 一人は西部ガンマン風の男で、もう一人の男を置いて走り去った。 そして残されたもう一人の人間の姿を見てあたしは驚いた。 立っていたのは傷だらけの学生。 足下もおぼついていなくて、立っている事すら難しいように見える。 背後に男のスタンドが見える。多分アレがあたしを助けたんだろう。 「逃げろ!ヤツは未だ貴方を狙っている!」 男の声にジョンガリ・Aの方を向くと、 …確かにあたしを狙ってやがる。だが、 「うぜぇ」 ヤツが撃つ前にあたしがF・F弾を炸裂させた。 F・F弾をその身に受けたジョンガリ・Aは吹き飛ぶ。 「…ッ!!」 傷だらけの男の、息を呑む声が聴こえた。 ヤツが倒れたのを見届け、あたしは男に向き直った。 「何故あたしを助けた?」 コイツ達が何者かは分からないが、信用する訳には行かない。 が、あたしを助けてくれたのも事実だ。 (まあ、そんな事されなくてもあたしは全く問題無かったが) 借りが出来た以上、返さなきゃならんだろう。 「殺したのか?」 あたしの質問に、男は質問で返して来た。 「え?」 「何故あの男を殺したんだ?」 ここでウソを言うと、あたしの質問にもウソの答が返って来る気がする。 そう思ったあたしは、正直に答える事にした。 「殺らなきゃ殺られてた。それにコイツがDIOの仲間だってんなら、あたし達の敵だ」 「あたし達?DIOが…敵?」 「そう、あたしや徐倫、エルメェス、エンポリオ、ウェザー、アナスイ、…」 「…」 警戒を解かず私の答を淡々と聴いていただけの男の表情は、次の名を聴いた時一気に豹変した。 「…承太郎」 「…!!承太郎!?貴方は空条承太郎の仲間なのか!?」 「あ、あぁ」 男の勢いに、つい返事をしてしまう。こっちの質問に答えて貰って無いってのに。 「そうか、承太郎の…。しかし、僕が知らないと云う事は…」 そこまで呟いて、男は考え込んでしまった。 「おい、あたしの質問にも…」 「済みません、後二点質問させて下さい。 貴方のお名前と、貴方が承太郎と一緒に居たのが西暦で何年かを」 あたしの発言は遮られた。しかも何故か敬語になってるし。 「さっきからお前が質問してばっかじゃねぇか。あたしの質問にも答えろ!」 若干キレ気味に男に言うが、 「これで最後ですから」 と返答してきた。 「ったく。あたしの名はF・F。もう一つの答は2015年だよ」 「やはり、未来の仲間か…」 あたしの答に、ワケ分からない事を呟く。 「イイ加減答えろ!アンタ何モンだ?何故あたしを助けた?」 「名を名乗らず、礼を欠き申し訳ありませんでした。 僕の名は花京院典明。1987年、承太郎達とDIO打倒の旅に出た者です」 「1987年、承太郎と…?」 徐倫からその話は聴いている。しかしこの男が…? 「まあいい。で、何であたしを助けた?」 「あの、ジョンガリ・Aという名の男から DIOの情報を訊き出そうと思っていたのですが…」 「答になって無い」 あたしの射る様な視線を受け、花京院は顔を背け、 「こんな理不尽なゲームに付き合う必要は無い。 命を落とす人間は少ない方が良い。そう思いませんか?」 と言って来た。 そしてこいつの視線を追うと、その先には 瓦礫の下のガキを救おうとしている二人の男がいた。 その内の一人は、さっきのガンマン風の男だ。 なるほど、そういう事か。 あの二人はコイツの仲間なんだな。 「!!」 その時、瓦礫が崩れ二人の上に落ちて来た。 辛うじて二人は押さえたものの、岩盤を支えるだけで精一杯のようだ。 「ジョースター卿!!」 叫ぶ花京院に私は言ってやった。 「OKOK。あたしが援護に行ってやるよ」 「え?」 花京院が振り返る。 「あんたには借りがあるしな」 そうあたしが立ち上がろうとした時、 「待て!」 花京院がいきなり声を荒げた。 「な、何だよ。いきなり」 「ジョンガリ・Aが居ない!」 花京院の声にジョンガリ・Aの死体の方を振り向くと、 …ヤツの死体は消えていた。 * * * こいつはヤベェ!何でこんな事になっちまうんだよ! DIOからの伝言なら俺宛にもあるかも知れねぇ、 そう思って、この小僧を助けようとしたら…。 「ぐおおぉぉ……!!」 何でこのタイミングで瓦礫が崩れて来るんだよぉ! 「………ッ!!」 ジョースターも余裕は無さそうだ。 俺も全くねぇ。首を動かす事すらままならねぇ。 逃げることも出来ねぇ。そんなことしたら三人まとめて下敷きだ。 全く、利用価値があると思ってジョースターに付いてりゃ花京院を助けるし、 ジョースターの前じゃ殺せないからと花京院の手当てをすれば、その花京院のせいでこのざまだ。 どいつもこいつも恩を仇で返しやがる。 おい、花京院!お前、この状況見えてんだろ!さっさと何とかしてくれよ! * * * 「ハイエロファント・グリーン!」 花京院が叫ぶと、再びコイツのスタンドが出現した。 「法皇の結界!」 続く花京院の声に、スタンドがヒモ状に変化し、辺り一面がヒモで覆われる。 …まるでいつぞやのストーン・フリーの様に。 「F・Fさん。ジョンガリ・Aはあの背後に隠れている様です」 糸のスタンドから何かを感じ取ったのだろう、花京院はホテルの一角を指し、あたしに言って来た。 「さて、どうやって取り押さえるか…」 「あぁ、そいつなら問題無い。あたしがアイツから50m離れるだけで爆死する」 「え?」 「そういう腕輪が付いているんだ。ヤツには」 そう言ってあたしはヤツと逆の方向に走り出し、 「待て!迂闊に動くな!」 ドン! 制止の声と銃声が同時に聴こえ、あたしは吹き飛ばされた。 ―――後頭部を貫かれ。 * * * 辛うじて立っていた僕はF・Fさんが斃れる光景を目の当たりにし、 ずるずると壁をずり落ち、地べたにへたり込んだ。 最悪の事態になってしまった。 F・Fさんは凶弾に斃れてしまい、ジョースター卿達は救助の筈が二次災害に巻き込まれ身動きが取れない。 そして、放っておいたら僕達を皆殺しにするであろう、ジョンガリ・A。 ヤツを斃す事は不可能では無い。再び銃を撃つ前にエメラルドスプラッシュを叩きこめば良いだけだ。 しかしその後、ジョースター卿達の救出をする術が無い。 僕には岩を支える力どころか立つ力さえ残されていないのだ。 僕が長くない事は十分過ぎる位理解している。 つまり、数時間後に残るのは六人の死体だけとなってしまう。 もう全員死ぬしか道は無いのか?荒木の能力を知るものは居なくなってしまうのか? 「……ッ!」 僕は頭を振った。 そんな結果を受け入れる訳には行かない。 考えろ、考えるんだ。 最悪でも、あの三人だけは救出できる方法を! しかし僕の意志とは裏腹に、僕の体力はどんどん失われて行く。 それに呼応するかのように、法皇の結界の糸もその数を減らして行った。 兎に角、今僕が出来る事は時間を稼ぐ事だけだ。 緩めればすぐに落ちてしまう意識を気力のみで繋ぎ止め、僕はジョンガリ・Aに向かって言葉を発した。 * * * 勝負はついた。F・Fは斃れ、側の男、花京院という名のスタンド使いは瀕死状態。 残りの人間は崩れ落ちる瓦礫を支えるだけで精一杯。 …何もしなくても死ぬような連中ばかりだ。 弾を込め直している所に、花京院から声を掛けられる。 「お前のスタンドは見切った」 「…」 「お前のスタンドは弾丸を操る能力」 弾を込める手が止まる。そのままヤツは話を続けた。 「僕が知るスタンド使いに銃がスタンドという人間がいる。 そいつは弾丸もスタンドなので自在に軌道を操る事が出来る。 お前の場合は、あくまで銃は銃であり、弾丸もただの物質。 放たれた弾丸の軌道を変える事しか出来ない。しかも変えられるのは1回だけだ。 何回も軌道を変更出来るのならば先の一発で僕も一緒に撃ち抜かれている筈だからな」 「…」 「図星か」 若干の見当違いこそあれ、ほぼ正解のようなものだ。 しかし、俺の優位は変わらない。 「それが解ったからどうだというのだ?お前では俺を斃す事は出来ん」 「何故だ」 「お前が俺を斃せないほど弱っているからだ。 ほら、お前の糸のスタンド、時間と共に段々と量が減っているだろうが」 「…ッ」 花京院が息を呑む気配がした。 すかさずさっきの言葉を言い返してやる。 「図星か」 実際、スタンドの糸はかなり減ってきている。最早俺の周りに数十本在る程度だ。 恐らく花京院は意識を保つのすら厳しいのだろう。 俺自身も放って置いて良いケガではないが、 この場に居る全員を殺し、『ライク・ア・ヴァージン』を入手した後手当てするだけの余裕はある。 何せ相手は抵抗出来ないのだ。 悠々と弾を込める俺に又花京院が何か言い始めたが、もう無視する事にした。 やつを撃ち殺すのに不要な情報は遮断する。 耳に入るヤツの声も、消え行く硝煙の臭いも、口元にある糸くずの感触も、 胸元から流れ、止まりかけている血の感触も、 やつのスタンドが段々となくなる気配も…。 弾丸を装填し、マンハッタン・トランスファーに狙いを定める。 マンハッタン・トランスファーに当たり反射した弾丸は、確実に花京院の頭を貫く。 そう、F・Fのように。 「………」 暗殺時に相手に掛ける言葉など無い。 俺は無言で引き金を引いた。 「………?」 引き金は引いた。それは俺自身としては既に終えた作業の筈だった。 後はマンハッタン・トランスファーが反射した弾丸がヤツに命中するだけなのに…。 「!!…う、腕が…動かない?」 どういう事だ!?これは!! 動揺する俺に、壁越しに花京院の声が掛かる。 「相手のスタンド能力を知らずに闘う事は敗因へと直結し易い。 だからスタンド使い同士の戦いでは、相手のスタンドの能力を見極める事が最優先なのだ」 俺は、自分の意志と裏腹に銃を取り落とし、足が勝手に動いて花京院の前に姿を現した。 壁にもたれ掛かり俺を見る花京院は淡々と喋り続ける。 「法皇の結界は弱まって消えていたんじゃ無い。 より細い糸状になってお前の口から内部に潜り込んだんだ。 そう、お前に感知されない位細い糸になって…」 ま、まさかさっきの口元の糸くずの感触は…! そしてこいつがペラペラと喋っていたのは、それから俺の気を逸らすため…!? 「今、お前の体を操らせて貰っている。体内に潜り込んだハイエロファント・グリーンが…ね」 く、くそっ! 花京院の前に無防備に立たされる。最早俺に成す術は無い。 血の気を失った顔で、しかし冷静さは全く失っていない声で花京院は告げた。 「さぁ、お仕置きの時間だ」 * * * ジョンガリ・Aの自由は奪った。 この男の腕を内部から破壊し、銃を持てないようにしても良いのだが… 「さて、お前からは色々と訊きたい事があるが、それらは後回しだ。 先ずお前がやる事はジョースター卿達の救出。 その次にF・Fさんの埋葬だ」 「…ッ」 「行け!!」 弾かれた様にジョースター卿の下へ走り出すジョンガリ・A。 これで三人を助けられる筈だ。 警戒は解けないが、少々の安堵の息を吐いた。 と、 「あたしを埋葬する必要なんて無いぞ」 「!!」 死んだ筈のF・Fさんが起き上がりながら僕に声を掛けてきて、僕は驚いた。 「だ、大丈夫なんですか?」 「あぁ、あたしは頭を撃ち抜かれた位じゃ死なないからね。 死んだ振りして、ヤツが姿を現した時に殺ってやろうと思っていたんだが」 「貴方は一体…?」 唖然とする僕に、F・Fさんは 「お互い色々訊きたい事があるだろうが、まずはアレ、何とかした方がいいな」 と、親指でジョースター卿達を指した。 ジョンガリ・Aと組んでいたという不安要素は残るものの、 動けない僕の代わりに手伝ってくれると言うのなら有難い。 「…お願い出来ますか?」 「任せな。…っと、そうだ」 ジョースター卿の下へ走り出そうとしたF・Fさんはふと足を止め、僕に近付いて来た。 「な、何を…?」 警戒し、ハイエロファント・グリーンを出そうとしたが、その前に 「借り返しのついでだ」 そう言ってF・Fさんは僕の前にしゃがみ込み、傷口に触れた。 「え?」 彼女が触れた途端、傷が治って行く。 次々に傷を治しながらF・Fさんは言った。 「応急処置だ。傷口を埋めただけなんで痛みは残るが、出血したり、動く事で傷口が開いたりする事は無くなる筈だ。 このまま大人しくしていれば、直ぐにちゃんと動けるようになるよ」 確かに傷はなくなっていた。 暫く休んでいれば、体力も回復するだろう。 「あ、有難う御座います」 F・Fに礼を述べると、F・Fさんは 「これで貸し借りゼロだからな」 と言って、今度こそジョースター卿の下へ走って行った。 「…違いますよ」 もう聴こえないであろう、F・Fさんの背に向かって、僕は呟く。 「借りが出来たのは、僕の方じゃありませんか…」 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 66 激戦(前編)~背信~ 花京院典明 66 激戦(後編)~零れた笑い~ 66 激戦(前編)~背信~ ナランチャ・ギルガ 66 激戦(後編)~零れた笑い~ 66 激戦(前編)~背信~ ホル・ホース 66 激戦(後編)~零れた笑い~ 66 激戦(前編)~背信~ ジョージ・ジョースター1世 66 激戦(後編)~零れた笑い~ 66 激戦(前編)~背信~ F・F 66 激戦(後編)~零れた笑い~ 66 激戦(前編)~背信~ ジョンガリ・A 66 激戦(後編)~零れた笑い~
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{※フリー二次創作ゲーム 7人目のスタンド使いの主人公から改変。 お相手は花京院(恋愛)と承太郎(友情)。 #FF0000} 呟いたネタまとめ→https //twitter.com/i/moments/856741746335559680 タグネタまとめ→https //twitter.com/i/moments/858969636431314944 イメージCV**:「パプリカ」千葉敦子のひと(アニメ、EOH) 「パイレーツ・オブ・カリビアン」エリザベス・スワンのひと(ASB) **イメージ曲**:「少女A」(中森明菜) 「本能」(東京事変) 「シンデレラグレイ」(米津玄師) 承太郎の幼馴染の少女。 いわゆる不良であり、武闘派。 スタンドは本編開始の数日前に発現した**「ディープ・パープル」**。 旅へ同行した理由は、承太郎の母・ホリィを慕っていたためである。 容姿** 髪型:黒のストレートロング。 OVAでは外巻きだったりするかもしれない。 顔立:目鼻立ちのくっきりしたキツめの美人。 赤い口紅をしている。 血色の透けにくい肌質ゆえに、色白。 服装:ロングスカートのセーラー服(所謂スケバンスタイル) アルバイト先ではバニーガール。 雰囲気は承太郎や花京院と並べても全く見劣りしない程イカツい。 スタンド** 7スタ公式設定に沿った「空気中の成分や密度を操作する」もの。 ※ただしデザインだけは女性的な体つきになっていたり、壺が香水瓶になっていたりなどの微改変有。 毒ガスを無害化する、水中へ泡の形で空気を持っていける、風を発生させて砂嵐を避ける、 空気中の酸素と水素を化合させて水を作る等が可能。 旅をするには便利なスタンドと言えるだろう。 性格** 鷹揚で屈託がなく、天邪鬼。 強いが故にテキトーだが、二度手間を嫌うのでやることは案外丁寧。 人並みに気遣いはするが、天邪鬼なので相手が感謝しなくてよさそうに見せかけたり、 そもそも自分の仕業だと気づかせないようにすることが多い。 **誤解上等。** 恋する相手には惜しげなく愛を注ごうとする……のだが、気遣いを自分からのものと気づかれたくない性格はここでも健在。 相手から愛情表現をされることにはあまり慣れていないが、突き放したりはしない。 とある理由で世間一般に好かれるような、いわゆる「正統派ヒロイン」タイプの少女が苦手。 ネタバレ とある理由 グレて地元の暴走族とつるんでいた中2~高1のうちの一時期、菫子はグループ内のリーダー格と交際していた。 しかし「清楚でか弱く女の子らしい」年下の小柄な少女に彼の気が移り、破局。 その際に暴走族を抜けた(もちろんリンチは受けた)。 最後に言われた「お前は一人でも平気だけどコイツは俺がいないと」という言葉が少々トラウマになっており、 「柔らかい」「儚げ」「か弱い」などの雰囲気を持つ正統派ヒロイン系の少女が苦手なのはこのせい。 なお元カレの事は黒歴史なので訊かれない限り話題にすることはないが、 幼馴染である承太郎はこのことを知っている。 ちなみにリンチを受けた菫子に呼び出されて駆け付けたのも承太郎。 /ネタバレ 家族構成など** 家族は両親と4歳上の姉。 一応、目立った問題のない普通の家族。 だが母は自身の経験から娘たちを淑やかな女性に育てようとしており、姉と違ってそれが肌に合わない菫子は反発している。 交友関係は性別は関係なしに広い方だが、この年頃の少女としては珍しくベタベタすることは好まない。 自称舎弟・舎妹も何人かいるらしい。 承太郎とは近所であることもあり、幼馴染。 彼の母・ホリィにも、第二の母親ともいえるほど昔から世話になっている。 ネタバレ ホリィとの過去 菫子は幼少期からかなりやんちゃで、中学年以降はいわゆる「ガキ大将」であった。 勝気な性格のせいで苦労した母は娘たちを淑やかに育てようとしたのだが、 姉の茉莉子はともかく、我の強い菫子の方は母の思い通りには育たなかった。 実は菫子も「お人形」「お化粧」「宝石」などのモチーフが嫌いなわけではなかったのだが、 やはり母や姉、世間が良しとする「少女が憧れるべきもの」とは少し違っており、そのことで劣等感や気恥ずかしさがあった為、 きちんと菫子の秘密を守ってくれるホリィと二人きりのときにのみ「女の子らしくふるまう自分」を許していた。 中学に上がってからは空条邸へ遊びに行くことも減ってしまったが、 菫子の心に深い傷を刻んだ事件(※前述)の際にもホリィは見舞いに駆け付けた。 その時に見舞い品として贈られた、「ホリィのものと色違いの赤い口紅」を、菫子は今も愛用している。 /ネタバレ お相手との関係** 花京院典明(恋人) こじらせ童貞×魔性聖母。 愛が重いのはお互い様なのでとても平和。 菫子の方が年上なこともあり、花京院が時折見せる生意気な態度も大抵は「可愛い」で片づけられる。 ちなみにハイエロファントも花京院と同等に可愛がられている。 空条承太郎(幼馴染) 菫子は親友のつもりだが、承太郎は悪友と定義している。 幼いころからの付き合いなので、感覚的には頻繁に会う親戚のようなもの。 お互い、異性であることをほとんど意識していない。 本編のあらすじ** ネタバレ プロローグ/連載1話~11話 本編の数日前にスタンドを発現。 突然自分の身に起きた怪奇現象を認識しても驚きこそすれ怯えることはなく、 むしろ楽し気にその力を試していく。 スタンドを発現した翌日にハイエロファントと仲睦まじく歩く花京院と遭遇。 彼らを「綺麗」と感じ、見とれているうちに気づかれてしまうが、 ジョースターの血族ではないため「スタンドが見える」ことを素直に喜ばれ、喫茶店デートをするなどする。 このため花京院の知人の少女から恨みを買うが、菫子は気づいていない。 /ネタバレ ネタバレ 日本~シンガポール/連載12話~36話 最初こそスタンドの見える菫子に強く惹かれていた花京院だが、肉の芽を抜かれるとその自覚は消えてしまった。 その一方で、菫子は「灰の塔」戦の鮮やかな勝利を目の前に、花京院への好意を自覚する。 いわゆる「進んだ」17歳である菫子は積極的にアプローチを仕掛けるが、 他者とまともな交友関係を持ったことさえない花京院にはなかなか通じない……という状況。 ちなみにハイエロファントの方は本体とは違い結構デレデレ。 本体の意に反しない程度に勝手に動き、菫子に構うことも。 これは本体の無意識の望みを汲んでいるだけなのだが、恋愛経験のない花京院は「スタンドが暴走した!?」と不安がっている。 /ネタバレ ネタバレ 未確定部分/連載36話~ 菫子が振り向いてもらえるのは死神戦。 仲間割れを嫌った(或いは面倒がった)菫子が「どの道見張りは要るしそれで花京院が安心するならいいんじゃない?」と助け船を出し、 花京院の腕の「BABY STAND」の傷もスカーフとスタンドで生成したオキシドールで手当てしたことで完全にオチる。 死神13を倒した直後花京院は夢の中で告白しOKをもらうが、**7スタ通りの共闘ルートではない**ので、菫子にその記憶は残らない。 その後ゲブ神戦で花京院が目をやられた際に、 「ジョースターさんも病院で襲われたわけで、血族ではないがDIO側からすれば 裏切り者である花京院を独りにするのは危ないのではないか」 という話になったタイミングでハイエロファントに手を握られ、入院に付き添うことを決める。 菫子の再合流のタイミングは7スタ通りの展開ではなく、花京院と同時。** 最終戦では(普段からすれば異様なほど無鉄砲な)花京院の行動に危機を感じた菫子が防御に回り、一緒に貫かれる。 吹っ飛ばされた瞬間に菫子が高圧空気でブレーキを掛けたため原作より衝撃が軽く済み、財団のチームの救急救命措置で蘇生。 /ネタバレ 本編以後** 原作以降は 両方生存 → 順当に結婚、二児をもうける。 両方死亡 花京院のみ生き残る → フランスへ渡り、ポルナレフと共に暮らす。 の3パターンが存在。 両方生存ルートの場合 菫子が一人暮らしを始めた時から花京院は彼女の家に転がり込むようになり、大学卒業のタイミングで結婚する。 1999年時点でふたりの間には幼稚園児の娘がおり、菫子は第2子(息子)を妊娠中であるため、**4部本編への参加は無し。** ネタバレ 【注意】花京院との子供の設定 c 109878[娘] c 109885[息子] /ネタバレ 両方死亡ルートの場合 原作ルートに合流。 しあわせに。 花京院のみ生存の場合(ブロマンスルート) 花京院のみの生存は、菫子の臓器を移植されたことによるもの。 細胞記憶によるものか、ディープパープルの小瓶だけが消えずに花京院の手元にある。 いけないと知りつつ持ち去った菫子の遺骨入りのマグカップが宝物。 大学在学中に日本にいる意味がないと感じて卒業後にフランスへ移り、ポルナレフと共に暮らす。 ちなみにポルナレフが花京院を側に置く理由は、「愛した女が逝ってしまった苦しみは、よくわかる」から。 花京院の心の傷が癒えたら、笑って送り出そうと決めている。 「菫子だけ生き残る」ルートはメタ的に存在意義がなくなってしまうため、なし。 うちよそ** {**藍子様宅/空条眞砂子さん** #0099e3} 承太郎の双子の姉。幼馴染設定で交流させていただいています。 彼女との関係はちびまる子ちゃんのまる子とたまちゃん、シュガシュガルーンのショコラとバニラのようなイメージ。 ネタバレ 詳細(以下敬称略) 先述の通り幼馴染。 眞砂子は一見菫子の苦手な「清楚でか弱く女の子らしい」娘にも見えるため何も知らない者は混乱するが、 実際の眞砂子は芯が強く大人びた性格な上、菫子も昔から彼女の本音を知っているので関係は非常に良好。 幼い頃は眞砂子とホリィのいる空条邸だけが菫子の「女の子」が嗤われない場所だったこともあり、特別な関係である。 (当時の二人と承太郎をまとめたモーメントはこちら→https //twitter.com/i/moments/877393624299847681 ) しかし中学からは状況が変わってしまう。 菫子が1年生の夏休み明けから長いスカートを穿くようになり、2年生からは暴走族とつるみはじめ夏にはメンバー入り、 3年生で暴走族のリーダーと付き合い始め……といった感じに順調にグレていったため、 3年生でやっと同じクラスになった際には既に非常に気まずい雰囲気になってしまっていた。 (ちなみに承太郎は2年生のときに同じクラスだったが、強く引き留められる間柄ではないので「やりすぎるなよ」と注意したに留まっている。) 中学を卒業すると眞砂子は違う高校へ進学する。 近所なので時折顔を合わせることはあり、その際は昔のように話すこともあったが、話題は軽い世間話程度。 当時失恋の兆しもあって非常に荒れていた菫子のほうは、「こんな野良犬がお姫様に話しかけるもんじゃあないわよね」と思っていた。 旅後は気まずさも無くなり、元の良好な関係に戻る。 それぞれが結婚してからも続く間柄。 /ネタバレ 3部スタクル夢主さんと一緒に旅をする等大歓迎です。 菫子には花京院ルート以外存在しないので同担の方はご注意ください。
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++第十二話 デルフリンガー++ トリステインの城下町を、花京院とルイズは歩いていた。 魔法学院からここまで来るのに乗ってきた馬は町の門の側にある駅に預けてある。 馬に乗るのは初めてだったが、ラクダで砂漠を横断した経験のある花京院には、さほど難しいことではなかった。 「この世界には馬以外の交通手段はないのか?」 「馬以外?」 「ああ。自動車や電車……はあるわけないか」 魔法が発達しているということは、他の分野では遅れを取っている可能性が高い。 「じゃあ、ラクダとか、そういう生き物はいないのか?」 「ラクダ?」 怪訝そうな顔でルイズは花京院を見る。 「背中にこぶのある、四本足の動物だ。砂漠を移動する時によく乗るんだが……」 「聞いたこともないわね」 「そうか」 花京院の世界とはやはり根本的に違うようだった。 生き物もそうだし、建物もかなり違っていた。 コンクリートも鉄も使わず、白い石を削って作られた街は、一見するとテーマパークのようにも見える。 通りには行き交う人々で溢れ返り、道端では商人たちが声を張り上げて、果物や肉や籠などを売っている。 魔法学院に比べると、質素な格好をした人たちが多かったが、活気溢れて、声に満ちているこの場所は、魔法学院よりも、花京院の住んでいた世界に似ている気がした。 ただし、道が酷く狭い。 「狭いな」 擦れ違うたびに誰かと肩をぶつけながら、花京院が呟いた。 慣れているのか、すいすい通り抜けていたルイズは、またも怪訝な顔で花京院の方を向く。 「狭いって、これでも大通りなんだけど」 「……これで?」 「そうよ。ブルドンネ街。トリステインで一番大きな通りよ」 そう言って、通りの先を指差しながら、 「この先にトリステインの宮殿があるわ」 「宮殿に行くのか?」 「女王陛下に拝謁してどうするのよ」 軽く睨むような目を向けられた。 花京院は苦笑しながら答えた。 「スープの量をふやしてもらうかな」 「馬鹿ね」 そう言って、ルイズは笑った。 二人はそのまま大通りをしばらく歩いた。 ふとルイズが立ち止まり、振り向く。 「あんた、財布は持ってるわね?」 「持ってるよ。大体、こんな重い物を誰が掏れるんだ?」 「魔法を使われたら、一発でしょ」 確かに、と納得しかけた花京院だったが、ある疑問が湧いた。 「でも、魔法を使えるのは貴族だけだろう。貴族がスリなんてするのか?」 「……貴族は全員メイジだけど、メイジの全員が貴族って訳じゃないわ」 「どういうことだ?」 「勘当されたり、家を捨てたりした貴族の次男や三男坊なんかが、身をやつして傭兵になったり犯罪者になったりするのよ」 そう答えると、ルイズはさっさと歩き出してしまう。 二人は大通りを歩いていき、狭い路地裏に入った。 そこは大通りとは比べ物にならないほど、汚れていた。 悪臭が鼻をつく。ゴミや汚物が道端に放置されていて、動物の死骸なども転がっていた。 「……きたないな」 「だからあんまり来たくないのよ」 顔をしかめながら足早にルイズは進んでいく。 時折、小さなメモを取り出して確認していることから、間違った道ではないらしい。 その後、何度か道を曲がっていき、十字路に差し掛かった。 メモと周囲を見比べながらルイズが呟く。 「ビエモンの秘薬屋の近くだったから、この辺なんだけど……」 花京院も同じように回りに視線を動かした。 大通りと違って露店は少ないが、店の数自体は多い。瓶の形をした看板やら宝石をかたどった看板もある。中には、蛙を逆さに吊ったような看板もあり、すぐには何の店なのか分からない店も多かった。 「あ、あった」 ルイズの視線の先を見ると、剣の形をした看板が下がっていた。 目的の場所は、そこの武器屋のようだ。 「ルイズ。君はここに来るつもりだったのか」 「そうよ。あんたも丸腰じゃ頼りないから、剣ぐらい買ってあげるわ」 腰に手を当て、胸を張りながらルイズが尊大な態度を取る。 その仕草が子供っぽくて、ルイズから見えないように、花京院は苦笑いを浮かべた。 花京院とルイズは武器屋に入った。 店の中は昼間だというのに薄暗く、ランプの明かりが灯っていた。壁や棚に、所狭しと剣や槍が乱雑に並べられ、立派な甲冑が飾ってあった。 店の奥で、パイプをくわえていた五十がらみの男が、花京院とルイズを胡散臭げに見つめた。 じろじろと無遠慮に見てきた男だったが、ルイズの紐タイ留めに描かれた五芒星に気付くと、すぐに立ち上がった。パイプをはなし、ドスの聞いた声を出す。 「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうに商売してまさあ。お上に目を付けられることなんか、これっぽっちもありゃしません」 「客よ」 ルイズは腕を組んで言った。 「こりゃおったまげた。貴族が剣を! おったまげた!」 「どうして?」 「いえ、若奥さま。坊主は聖具を振る、貴族は杖をふる、そして陛下はバルコニーからお手をおふりになる、と相場は決まっておりますんで」 「使うのはわたしじゃないわ。使い魔よ」 きっぱりとルイズは言った。 店主は目を細め、ルイズの後ろに立つ花京院を見た。 「へえ。昨今は貴族の使い魔も剣を降るようで。するってえと……そちらの方で?」 「ああ。僕が使う」 「剣はこっちで勝手に選んじまってもいいですかねえ?」 店主は上目遣いに花京院とルイズを見上げる。 「いや、少し店の物を見せてもらいたい」 武器の良し悪しは門外漢だったが、この店主に選ばせると何が出てくるかわかったものではない。粗悪品を高値で買わされる可能性もある。 断られたことに動揺したかのように、男は捲くし立てる。 「で、でもですねえ。こういうのは慣れてる人間の方が目が利くってもんです。素人さんにゃわからねえ細けえ違いってのもありますし、下手に選ぶと失敗するかもしれやせんよ」 「構わない」 会話を断ち切るように、花京院は答える。 ルイズは以前の戦いから花京院を剣の達人だと思っているらしく、口は挟まなかった。それは誤解なのだが、必要がないのでそう思わせている。 しばらく、花京院と店主はにらみ合いを続けたが、先に店主が視線を逸らした。 「ええ、どうぞご覧になってくだせえ」 「ありがとう」 短く礼を言い、花京院は店の物を物色していった。 武器屋、というだけはあり、武器の種類は豊富だ。長剣、短剣など剣以外にも、槍やら斧やら色々な武器がある。 それらをつぶさに観察してみるが、どの剣が切れるのか、丈夫なのか、花京院にはよくわからなかった。 そうしている間にも、店主は長々と語っている。 「うちはこの界隈でも少々名の知れた店でね。かの有名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿の剣だって置いてるんですから。魔法が掛かってるんで、鉄だってスパスパ切れまさあ。 この間仕入れた剣なんて、妖刀なんて呼ばれる品物でね、鞘をしてるのに切れただの、握った人が狂っただのって色々な噂があるほどで――」 「うるせえやい!」 突然、後ろから声がした。低い、男の声だ。 すぐに声のした方を見るが、そこには誰もいない。 空耳ではないようで、ルイズも不思議そうな顔で見回している。 「さっきからでけえ声で、でたらめを並べ立てやがって! 聞いてるこっちの身にもなりやがれ!」 間違いない。誰かの声が聞こえる。 だが、やはり姿は無い。そこには乱雑に剣が積んであるだけだ。 「そっちの娘っ子も坊主もさっさと家に帰りな! ここはガキの遊び場じゃねえんだ!」 「……」 花京院は積んである剣の中から一本の剣を見つけ出した。 うっすらと錆の浮いた、古い剣だった。長さはそれなりにあるが、刀身が細い。薄手の長剣である。ただし、全体的に薄汚れていて、お世辞にも見栄えが良いとは言えなかった。 「何ジロジロ見てやがんだ! おめえさんのひょろっこい身体じゃ剣なんて振れっこねえよ! とっとと帰りやがれ!」 花京院が呆然としていると、店主が怒鳴り声をあげた。 「やい! デル公! お客様に失礼なことを言うんじゃねえ!」 「お客様? 剣もまともにふれねえような小僧っ子がお客様? ふざけんじゃねえよ! 耳をちょんぎってやらあ! 顔を出せ!」 かたかたと鍔の部分を動かしながら剣が怒鳴り散らす。 奇妙な現象ではあったが、魔法のあるこの世界に、花京院の常識が通じないのは既に知っている。剣が喋ることもあるのだろう。 ルイズが剣を横目に見ながら当惑した声をあげた。 「それって、インテリジェンスソード?」 「そうでさ、若奥さま。どこの魔術師が考えたんでしょうかねえ……意志を持つ魔剣、なんて言やあ聞こえはいいんですが、実際のもんはこんなもんでさあ。 ただうるさいだけのボロ剣ですよ。客にケンカは売るわ、買い主にもケチつけるわで、いっつも返品されて戻って来やがるんで困っちまいますよ……」 ばつが悪そうに店主が頭を掻く。 「デル公! これ以上失礼があったら、てめえを溶かして鉄くずに戻しちまうからな!」 「はんっ、おもしれ! やってみろ! どうせこの世にゃもう、飽き飽きしてたところさ! 溶かしてくれるんなら、上等さ!」 「言いやがったな! てめえ! やってやらあ!」 額に青筋を浮かべながら店主がカウンターを回ってこようとした。 花京院はそれを止めた。 「喋る剣か。なかなか面白いじゃないか」 柄を掴んで、刃をじっくりと見てみる。 さびてはいるが、元は悪くはないらしく、刃こぼれはほとんどない。刀身を軽く叩いてみると、澄んだ音が聞こえた。刀身に加わる力に偏りが無い。 剣の値段を店主に尋ねようとした、その時だった。 「おめえさん、『使い手』……いや、『スタンド使い』か」 剣がぽつりと、独り言のように言った。 花京院は虚を付かれ、まじまじとその剣を見つめてしまった。 「……お前、今何て言った」 「だってそうだろ? おめえさん、『スタンド使い』だもんな」 「……」 訊きたいことはあるが、花京院はここでは訊くのをやめた。 何も言わずに、花京院は店主の方を見た。 「この剣はいくらだ?」 「へ、へい。五十で結構でさ。はい」 「えー。そんなのにするの? もっと綺麗でしゃべらないのにしなさいよ」 ルイズは不満そうだったが、花京院は首を振った。 この剣に訊きたいことは、山ほどある。 「この剣じゃなきゃ。駄目なんだ」 「……しょうがないわね」 花京院が財布を渡し、ルイズが必要な金貨を店主に払う。 店主は身長に枚数を確かめると、頷いた。 「毎度」 店長は剣を鞘に収めてから花京院に差し出した。 「どうしてもうるさいと思ったら、こうやって鞘に入れれば大人しくなりまさあ」 「わかった。ところで、こいつの名前は?」 「デルフリンガー。俺はデル公って呼んでやしたがね」 「そうか」 花京院は頷いて、『デルフリンガー』という名の剣を受け取った。 To be continued→
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「出血が…止まらない…」 放送の後、花京院典明は民家で休息をとっていた。 改めて傷の処置をし、食料のパンを胃に押し込んだ。 「これから…どう動くか…」 じきに赤く滲んでゆく止血帯を見ながら、花京院は考える。 考えることによって、ともすれば薄れそうになる意識を押し留めるために。 「何処にいる…承太郎…?」 一刻も早く仲間と合流し、荒木を倒すための策を練らねばならない。 「ポルナレフ…会えるのか…僕は…」 『磁力』を操る敵から受けた傷は、頭部を含め全身に及んでいる。 このままでは、仲間に出会うまえに、自身が殺されてしまう可能性が高い。 「いや…それより先に…失血死…か…」 たった6時間のあいだに、13人もの人間が死んだ。殺しあいの末に。 自分もいずれは…重症を抱えた花京院が、そう考えたのも無理はない。 「ジョースターさん…!」 敬愛するジョセフの死が、彼の不安をいっそう駆り立てていた。 心の奥底に棲みついた不安は、さらに致命的な『臆病さ』を生む。 「…どうして…あまりに…早すぎる…!」 他愛のないジョークを飛ばすジョセフの姿が、脳裏に浮かんでは消えてゆく。 体力は、少しは回復した。しかし花京院は、立ち上がることができなかった。 「ジョースターさんが死んだ…あの機知に富んだ、ジョセフ・ジョースターが! 僕もこのまま…仲間を探し当てることも…できずに…」 悲痛は激しさを増し、彼を自暴自棄に陥らせるかに見えた。 しかし、 「…いや…僕は…」 ジョセフの死は、いつしか花京院に『覚悟』をもたらしていた。 心を刺すような悲しみは、一転して冷静沈着な怒りへと変わっていた。 「…どうやら…勘違いをしていた…」 『臆病さ』はいつも、花京院の卓越した『思考力』の裏返しにほかならない。 「このままでは…遅かれ早かれ…失血死する…それは『確実』…そう… 『味方に攻撃すれば目を覚ます』…それくらい『確実』なんだ…!」 見知らぬ町に放りだされた不安によって、無意識のうちにわずかに乱されていた彼の思考 は、しだいに温かさを増してゆく朝日のなかで、落ち着きを取り戻しつつあった。 「いま…重要なのは…『仲間を探す』…こと…じゃあなかった」 花京院はおもむろに地図を広げると、記憶にしたがって目を走らせる。 「…重要なのは…この最悪の…状況を…『生き延びる』ことだ」 …そして、伝えることだ…『誰か』に…荒木の秘密を…」 『法皇の結界』に、再び活力がよみがえる。 「そうだ…仲間を…なんてのは…僕の『甘え』にすぎなかった。 承太郎たちで…なくてもいい…『誰か』に伝えれば、『意志』は受け継がれる。 たとえその場で…僕が…殺されるとしても!」 死を覚悟した花京院の眼は、これまでにない『決意』に満ちていた。 「…だとすれば…一番近いのは…」 地図を閉じ、結界を保ったまま、民家を後にした花京院は進路を北に向けた。 ********* この俺、ホル・ホースは『拳銃使い』だが、『狙撃手』じゃねえ。 ほとんどの奴等はそこんトコを勘違いしてるようだが、おなじ『銃』でも拳銃と狙撃銃 はまったくの別モンだぜ。なにが言いたいかっていうとだな、だから当然、『拳銃使い』が 『狙撃』も得意と決まってるわけじゃねえってことだ。 言い訳じゃねえぜ。 俺はたんに『事実』を述べたまでだ。俺は根っからの『拳銃使い』、それは『事実』さ。 だが遠距離での『狙撃』はできねえ、それもまた紛れもねえ『事実』だ。 だから、俺にとっちゃこの狙撃銃はとんだ「宝の持ち腐れ」ってやつだ。作りからしても おそらく、かなり性能の良いものに違いない。射程距離は1キロってとこか? おまけに、 このスコープの倍率ときたら! 軍隊も真っ青のシロモノだぜ。 もちろん『狙撃銃』だからって、引き金も引けねえってわけじゃあねえ。だが、さっきの 野郎をぶち抜いたときみたいな目に遭うのは、もう御免こうむりたいね。はずれた肩はなん とか入れたが、痛みがひどい。これじゃあ、この狙撃銃でまともに狙えるのはせいぜい200 メートルが良いトコだろう。まったく、俺としたことが情けない話しだぜ。 このホテルを中心に半径200メートルが、俺の『テリトリー』というわけだ。 まぁもっとも、いま独りきりの俺には、戦う気なんざ微塵もないがね。 俺はもともと、誰かと『コンビ』で力を発揮するタイプだからな。 このホテルの屋上にいるのは、あくまで『見張り』のためだ。『見張り』に徹するっての は、あんまり上等な役回りじゃねえが、生き残るためには仕方がない。客室でおネンネして るジョースターの旦那が、回復するまでの辛抱ってわけさ。 そういえば、放送で『ジョセフ・ジョースター』が死んだって話してたな。確か承太郎の 祖父に当たるジジイだったか。それに、『ジョナサン・ジョースター』もだ。こいつは確か、 ジョースターの旦那の息子だったな。『アイス』ってのもやられたようだが…俺には関係 のない話しだ。みんなまとめて、ご愁傷さまってやつだぜ。 ジョースターの旦那が目を覚ましたら、放送の内容は伏せておいたほうがいいかもな。 とことん利用してディオに取り入ってやるぜ。いや、ここはひとつ承太郎たちを言い含め てやるってのも、快感かもしれないが。まぁ、ゆっくり考えるさ。 …って、オイオイ、俺が頭を使い始めた途端、誰か来やがった。 来たってもそれは、このスコープで覗いて見える範囲まで近づいたって意味だがな。 ここから、北西に500メートル程のところだ。なんだ、まだガキじゃねえか。あいつも参加 者らしいな。首輪をつけてやがる。しかしよぉ…首輪はいいとして、頭のあれはなんだ? 変わった帽子だな…いや、包帯かもしれん。 妙にビクビクしやがって、あれで警戒してるつもりかよ。 『殺してください』って看板ぶらさげて歩いてるようなもんだぜ。 …っと、こっちばっかりに気をとられてちゃマズかったな。 南の方角からも一人お客さんだ。こいつは…承太郎の連れにいたヤツじゃあねーか。 名前は確か…『カキョーイン』とかいったか。ダセェ名前だぜ。それに、よく見りゃあ コイツすでにけっこう重症じゃねえか。ずいぶん派手にやりあったな。 まぁ何にせよ、このまま行けば二人はぶつかる。何も手をくださずとも、潰しあえばどちら かが死ぬことになる。俺としてはまさに、『高見の見物』ってわけだ。 いい気分だぜ、相手に気づかれずに誰かを『利用』するってのはな。 …って、まさかこの二人、知りあいじゃねえよな? ********* 花京院が目指した場所、それは『病院』だった。 しかし、第一の目的は『治療』ではない。 この『ゲーム』が、最初の6時間であれだけ多くの犠牲者を出すほど残酷で激しいものであ るとすれば、死なずとも深手を負った参加者は少なくないだろう。そして、そうした『誰か』 が目指す場所といえば、設備の整った『病院』か診療所が候補にあがるだろう。 治療を終えたその『誰か』に、あるいはその『誰か』に付き添っている仲間に、荒木の秘密 を伝えること…それが花京院にとってもっとも優先順位の高い目的だった。 もちろん、仮にそこに誰もいなかったとしても、『病院』であれば自身の治療ができる。 『輸血』の設備もあるだろう。その場合は、治療をしながら、後に来る参加者を待つことがで きる。より好ましいその可能性も考えに入れたうえでの選択である。 戦闘の起きやすい町中をむやみに歩き回るより、自然と人が集まる場所で待つ。深手を負っ た花京院にとって、それが現時点で最善の選択肢だった。 半径20メートルの『法皇の結界』を張っていれば、至近距離からいきなり襲われるといった 心配はほとんどない。だが、それでも、探知した相手が敵か味方かまで判断することができる わけではない。花京院は、もし何者かが網にかかったら、戦わず回避するつもりだった。もち ろん、それが誰であるかを見極めることができれば、それに越したことはない。 だが、出会いは予想外のかたちで彼を訪れた。 前方100メートル以上離れたところにある交差点、『法皇の結界』の射程範囲を遥かに超えた 先に、一つの小さな人影があった。遠すぎて、年齢や性別までは確認できない。 「誰だ…承太郎か…? いや、違うな」 その人影は、何かを探し求めるかのようにキョロキョロと周囲を見回している。用心深げな 仕草とは裏腹に、こちらにはまったく気づいていないようだ。 「承太郎なら、あんな目立つ行動はとらない…」 民家のかげに潜みながら、花京院は考えた。 「ポルナレフなら」と思った矢先、人影は十字路を東へ折れた。 「いずれにせよ…ここでの戦闘は回避しなければ…」 花京院は、手近な角を右に折れた。 あのまま真っ直ぐ進んで、引き返してきた相手に遭遇するのは避けねばならない。そのため には、相手の行く先を見極めてから回避する必要がある。だがそれ以上に、相手が誰であるか を確かめておきたいという気持ちも、彼にはあった。 傷をかばって歩く花京院の左前方、民家の屋根越しに『杜王グランドホテル』の看板が目に 入った。この建物も、ほかの参加者が隠れるのには好都合である。しかし、逆に云えばそれだ け探しだすのは面倒だということになる。花京院のスタンド能力をもってしても、20階建ての このホテルを探索するのは、骨が折れるに違いない。 花京院は角のマリンスポーツ専門店のかげから、北の方角を覗き込んだ。 「さっきのヤツは、まだ現れていないか。…だがそれも、時間の問題だろう」 しかしながら、花京院のこの予想は外れることになる。 それからゆうに5分が過ぎても、さきほどの人影が花京院の視野に現れることはなかった。 『法皇の結界』にも、誰かが通過したことを示す反応はない。 「妙だな…まさか、僕のことに気づいていたのか?」 その可能性は低いと考えながらも、花京院は次の手を打った。 「ハイエロファント・グリーン!」 道路沿いにスタンドの触肢を伸ばし、大通りや、建物と建物のあいだ、曲がり角などをくま なくチェックさせる。三次元ではなく二次元、つまり平面上であれば、『ハイエロファント・ グリーン』は、いっそう広い範囲を索敵することが可能だ。 「…いたぞ! 150メートル前方…さっきの角に隠れている!」 やはり、相手もこちらに気が付いていたのだろうか? 今度はその可能性もしっかり考えに 入れながら花京院は、相手の出方をうかがいつつ、次のプランを模索していた。 ********* ピコーン、ピコーン、ピコーン… コンビニエンスストアのかげで、ナランチャはレーダーを凝視していた。 モニターには、同じサイズの光点が二つ、点滅を繰り返している。 「ヤバイなあぁぁぁ、見つかったかもなぁぁぁ」 光点は、通りの斜め向こうのホテルにいる生物の存在を示している。そのうち一体は、14 階の客室に潜んでいる。そしてもう一体は、屋上に陣取っているらしい。 「まさか動物ってことはないよなぁ。俺は学校は行ってないけどさぁ、動物はホテルに泊まっ たりしないってのはさぁ、それくらいは分かるぜ、常識だもんなあぁぁぁ」 ナランチャは、自分に言い聞かせるように、何度もうなずきながら呟いた。 「それに屋上のこいつはよぉ、さっきからずーっと、こっちの角に止まったまんまだしよぉ、 さっき覗いたとき、何か光が反射してキラッと光ったんだよなぁ。あれはスコープじゃねえの かなぁ、狙撃とかに使うさぁ。だとしたらヤバイよなぁ、絶対ヤバイ!」 だが、もし相手がこちらを発見したのなら、どうして攻撃を仕掛けてこないのか。 実際、ナランチャの頭を悩ませているのはそのことだった。 「気づいてるのに攻撃を仕掛けてこねえってことは、つまり…どういうことだ?」 もし相手が攻撃を仕掛けてきたなら、もちろんナランチャは反撃しただろう。または、相手 に発見されている可能性が全くない状態であったとしたら、ナランチャはやはりためらいなく 不意打ちを仕掛けたに違いない。 もちろん、相手が攻撃してこないのは、攻撃の射程距離外だからかもしれない。 あるいは、たんに戦意がないだけのことかもしれない。それらの可能性は高い。 しかし、 「ひょっとすると、俺のことを知ってるヤツなのかもしれない」 その考えはナランチャを魅惑した。もしその考えが正しいとすれば、屋上の人物は『敵側』 の人間ではなく、ナランチャの『味方』だということになる。 「ブチャラティ…」 真っ先にその名前が、ナランチャの心に浮かんだ。 「ジョルノ…」 その男は新入りだが、とても強い『精神』の持ち主だ。 「誰だろうと関係ない…殺らなきゃ…でも…いや…」 ブチャラティとジョルノ! もし今ホテルにいるのが、この二人だとしたら。 その希望は、確かにナランチャを魅惑した。しかし、その希望に勝るとも劣らない恐怖が、 彼の心に巣くっていた。第一にそれは、この残虐なゲームの主催者であるアラキに対する恐怖 だった。そのうえに、先刻出会ったディオという男に対する凍てつくような恐怖が根を生やし ている。けれども、それらすべてを養っているのは、わけもわからないまま二人の人物を殺害 してしまった、自分自身に対する恐怖だったかもしれない。 「殺らなきゃ…ブチャラティ…関係ねえ…殺される…まえに…」 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 46 仮説・それが真実 花京院典明 62 テリトリー×テリトリー(後編) 52 DIO軍団再結成に向けて ナランチャ・ギルガ 62 テリトリー×テリトリー(後編) 34 全てが噛み合わない ホル・ホース 62 テリトリー×テリトリー(後編) 34 全てが噛み合わない ジョージ・ジョースター1世 62 テリトリー×テリトリー(後編)
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穿つべきピリオドは―― ◆gsq46R5/OE 少年の幼少期を一言で表すなら――それは"孤独"。 とはいえ、花京院典明の生まれや人物像に問題があったかと言えば、否。 彼が生まれたのはごく普通の一般家庭だったし、友人だって作ろうと思えば人並みには作れたハズ。 それでも、彼はそうしようとはしなかった。何故か。答えは、彼に宿りし力にあった。 スタンド能力。それが、花京院に生まれながらに備わっていた異能の力。 法皇の緑(ハイエロファントグリーン)。そしてこの力は、花京院以外には見えない。同じ力を持たない限り。 彼を孤独にしたのは、つまるところ、スタンドの持つその性質であった。 というよりも、花京院自ら選んだのだ――孤独を。 自分と同じものを見ることのできない人間とは、真に心を通わせることなど出来やしないのだから。 彼が初めて自分以外のスタンド使い、邪悪の化身と邂逅する迄に、十七年。 それから紆余曲折あって、正しい心を持った仲間達と出会う迄に、数ヶ月。 そこから今度は、一度は屈服した『世界』を倒すために、数十日間の旅をした。 孤独だった花京院典明はもういない。 彼は自分の背負った恐怖を乗り越え、仲間との絆に支えられ、遂に宿敵の待つ終わりの館へ足を踏み入れ、 「参ったな。まさかこんなアクシデントに見舞われるとは……流石に予想していなかった」 ――そこで、『繭』を名乗るスタンド使いに"嵌められた"。 エジプトへ向かう旅の途中、本当に様々なスタンド使い達と戦ってきた。 かつての花京院と同じく、『肉の芽』によって洗脳されていた男。 彼は正気を取り戻し、花京院たちの仲間として迎え入れられたが、それ以外の殆どは悪しきスタンド使いだった。 金目当てで立ちはだかった者。中には、一行が不倶戴天の敵と定める吸血鬼に心底心酔した者もあった。 だが、断言できる。あの『繭』という少女のスタンド使いは――これまで見てきた中で、間違いなく『最強』。 道具として代用できる応用性、近距離型スタンドのそれにも劣らない力を持つ『竜の手』、 極めつけに、彼女へと反逆した者の『魂』を『マスターカード』へ封じ込めるという能力まで備えている。 掟破りも甚だしい。 一つのスタンドでこれだけのことが出来るなんて、正直お手上げと言いたい気分だった。 「彼女もまた、DIOが我々を倒すために差し向けたスタンド使いなのか――いや、違うな。それはありえない」 自分で口にした『可能性』を、間髪入れずに自ら否定する花京院。 根拠は二つあった。花京院がそう思うに至ったのは、マスターカードで表示された名簿を見たから。 そこに載っていない名前と、逆に載っている名前。 「此処にはジョースターさん……ジョセフ・ジョースターがいない。こんな大掛かりな手段を使ってまで僕らを抹殺しにかかって来たのだとすれば、少なくともジョースターの血統を受け継ぐ彼がいないのは不自然だ」 そも。 奴、DIOが真に抹殺したいのは誰か。 答えは分かりきっている。奴にとって因縁のある相手、正確にはその子孫。 『ジョースター』の血を受け継ぐ者たちだ。即ち、空条承太郎とジョセフ・ジョースター。 そこでこの名簿へ立ち返る。承太郎の名前はあるが、ジョセフの名前はない。 確かにジョセフは老いているものの、そんなことに頓着するDIOではないはず。 更にもう一つ。花京院を信へ至らせてくれたのは、むしろこちらの方だった。 「そして、DIO――。奴自身が前線へ出てくるということ。これは明らかに不自然だ。奴らしくもない」 自分の根城まで辿り着かれ、流石のDIOも焦ったのかもしれない。 しかしそれでも、花京院はそこへ不自然さを感じずにはいられなかった。 まして、こんな腕輪を巻かれた挙句、命まで握られる醜態。 たとえ信頼の置ける部下であれ、あのDIOがそんなことを許すだろうか。 花京院には、そうは思えなかった。 「……あのDIOさえも予想だにしない、未知の敵か」 口にした言葉に、思わず込み上げる――怖気。 これまで最大の敵だと思っていた人物さえ、ともすれば超えてしまうかもしれない存在。 まず間違いなく、一筋縄では行かないだろう。 主催陣営が一枚岩とも考えにくいし、何より問題はこの『腕輪』だ。 外す手段があるとすれば、剣か何かで腕ごと切断してしまうことか。 しかし、腕の切断を止血するともなれば大掛かりな作業になる。 よしんば成功したとして、皆が隻腕状態では勝てる勝負も勝てない。 これについては追々考えていくことになるだろうが――現時点では、はっきり言ってお手上げ状態だった。 殺し合いに乗るのは言うまでもなく論外として。 何度も修羅場を潜り抜けてきたとはいえ、自分たちだけの力で主催に与し得るかというと怪しいものがある。 旅のブレインであるジョセフは不在、アヴドゥルとイギーの力も借りることは出来ない。 おまけに参加者名簿には、DIOとその刺客、ホル・ホースの名。 正直に言って、このままではキツいものがある。 だが花京院は、戦力となり得るまだ見ぬスタンド使いが、間違いなく参加者として混じっているだろうと考えた。 繭はゲーム性を重んじている。 それはあの場で彼女が見せた言動の節々からも窺えることだ。 であればこそ――ワンサイドゲームで殺し合いが幕を閉じるような参加者選出はしないだろう。 完全に平等な戦力ではないにしろ、花京院たちやDIOへ対抗できる素質を持った者が招かれているハズだ。 それならまだ可能性はある。繭の定めたルールを打ち破り、彼女を倒せる可能性が。 それでも、『対主催』の活動は変わらず茨道。 殺し合いに乗る、DIOたちのようなスタンド使いも紛れ込んでいるのだから、決して油断は出来ない。 何もスタンドがなくたっていい。 スタンドは脅威的な力だが、それを操るスタンド使いは――少なくとも花京院達は、銃弾の一発でもあれば死ぬ。 このゲーム、常に『死』が隣にある。 それを忘れてしまえば、何も成すことは出来ない。 過酷で、悪趣味で、それでいて腹立たしいほど完璧で。 ――だからこそ、許せない。 「首を洗って待っていろ、主催者。それに、DIO。 貴様らは必ず倒す……お前達の好きには決してさせない」 そこに込められているのは燃え上がる闘志。 ゲーム感覚で人の命を弄び、糧として愉しむ邪悪な鬼畜ども――奴らを、生かして帰すわけにはいかない。 そのためにまず必要なのは仲間との合流、戦力の確保。道中乗った参加者と出会ったなら、その都度鎮圧。 この『バトル・ロワイアル』における行動方針を固め終えて、花京院は凭れかかった壁から背を離す。 地図によればここはD-4、研究所。どこか胡散臭い雰囲気が名前からは垣間見えるが、幸いもぬけの殻だ。 であれば長居は無用という事に為る。もっと人の集まりそうな場所なりに移動するのが賢明だろう。 「先ずは――旭丘分校。此処が近いな」 地図を見、呟き。 学生が集まってくるかもしれないと期待し、歩き出す。 「ク、ク、ク。イイ覚悟じゃねえか――なあ、ちょっとばかし遊んでくれや」 「誰だッ!」 無人だと思っていた研究所内に、どこからか響く男の声。 それに声を荒らげ、即座に臨戦態勢を取る花京院。 彼は運が良かった。後数秒、先程のまま壁に凭れていれば、その勇敢な意思は一瞬にして散っていたに違いない。 爆音にも似た破壊音。コンクリート仕立ての壁面が――花京院がついさっきまで背を預けていた壁が、 まるで砲弾の直撃でも受けたかのように弾け飛ぶ。その向こうから、筋骨隆々とした破壊の権化が現れる。 「な――」 花京院は思わず絶句した。 豪快どころの騒ぎでは収まらない、突然の襲来。 小細工などとは最も縁遠い、ごく原始的な『襲撃』! そして何より彼を驚かせていたのは。 (なんだ――なんだ、この男はッ!? 今、コイツはスタンドを出して『いなかった』!) 壁を破り、男が現れる一瞬。 粉塵で視界は悪い中、ほんの一瞬だけ見えた光景だったが、それは想像を絶するもの。 コンクリートを破壊するほどの力となれば、当然近距離型のスタンド能力と予想する。 然し。花京院が見たその瞬間――男は、確かに素手で壁面を押し潰していたのだ。 有り得ない。あの体の中に、一体どれほどの膂力が込められているというのか。 「何だ。意外とヒョロい野郎だな」 花京院の動揺など露知らず、首をコキコキと鳴らしてみせる男。 「クク。さっきは随分、威勢のいい啖呵を切っていたな」 「……」 「せっかくの祭りだ。普段ならキサマのような雑魚、相手にもしねぇとこだが。 さっきのを聞いて――少しだけ興味が湧いたもんでな。ちと遊んでくれや、なあ」 花京院は努めて冷静を装いながら、内心ではこの上ない焦りに駆られていた。 『柱の男』と戦った経験のある、ジョセフ・ジョースターならいざ知らず。 スタンド使いとの闘いしか経験したことのない花京院にとって、生身でコンクリートを砕くような存在は化物だ。 あの拳を直撃でもした日には、どう打ち所が良くても生き延びられはしないだろう。 ならば、一番上等な選択肢は――。 「――! キサマッ!!」 即断即決。 花京院は曲がり角を勢いよく曲がり、男――範馬勇次郎からの逃走を図った。 これはジョセフからの受け売りだが。勝ち目のない勝負に、無理をして挑むほど不毛なこともない。 彼があの場で一騎打ちに打って出ていたなら、もう勝負は決していたかもしれない。 花京院典明のスタンド能力は、真っ向切っての戦闘向きではないのだから。 (しかし、あんな危険な男をこのまま野放しにしておくわけにはいかない…… あの化け物を自由にさせていては、いずれ必ず多くの犠牲者が出る――僕がどうにかしなければッ) 逃げる花京院。 その背後からは、勇次郎の追い立ててくる音がする。 逃げ場に事欠かない室内なことが幸いした。 花京院は考える。 無力化や撃退ではダメだ。あの男は一度不覚を取ったくらいでは折れず、いずれまた戦う羽目になる。 完全に、確実に。 排除しなくてはならない。 「敵前逃亡とは恥知らずめがッ!」 範馬勇次郎は、花京院典明を追う。 彼ほど暴力という言葉を体現したような存在も、そう居まい。 筋骨隆々とした体は見てくれ以上に硬く重い。鍛え抜かれた筋肉は、人の手で作られた建造物程度軽々打ち壊す。 勇次郎にとって、この殺し合いは――娯楽。 主催の小娘はいけ好かないが、趣向自体は実に彼好みのもの。 存分に強者と殺し合い、潰し合い、喰らい合い。これほど楽しい祭りは、世のどこを探しても見つからない。 花京院は勇次郎の初撃を回避する幸運を発揮したが、それを差し引いても有り余るほど不運だった。 自分を鼓舞する意味合いで口にした啖呵。それを聞かなければ、勇次郎は彼を獲物とはしなかったろう。 だが、結果として聞かれてしまった。勇次郎は、花京院典明を、試し甲斐のある相手と見做した。 「あれだけ大層なことを口にしておいて、よくもまあ抜け抜けと背中を向けられたものだなッ」 敵前逃亡を働いた花京院に、勇次郎が吐くのは侮蔑の言葉。 しかし、それで失望し、興味を失いはしない。 花京院の小癪な考えを、根底から覆して踏み潰す、その姿はまるで猛獣か何かのよう。 勇次郎は花京院を見つけ出すだろう。そして花京院は彼に為す術もなく――捻り潰されるだろう。 「ぬッ!?」 だが、花京院とて無抵抗のままに狩られる獲物ではなかった。 研究所の一室から転がり出てくる、手毬ほどの大きさをした黒い球体。 それが何かしらの意図を持って転がされたものだと勇次郎は理解するが、既に遅い。 球は弾ける。手榴弾のように破片と爆炎こそ撒き散らしはしないが――代わりに、閃光と爆音を発生させて。 花京院が使った道具は、俗にスタングレネードと言われる暴徒鎮圧用の武器だ。 ドラマや映画の世界ではお馴染みの道具である。使ったことはなくとも、聞いたことがある者は多いだろう。 閃光で目を。爆音で耳を。一時的に失明、難聴状態にさせることで相手を無力化する。 もちろん、これを投げた花京院もただではすまない。 背を向け、目を覆うことで目への影響は最小限に留めたが――聴覚を埋め尽くす、キンキンという耳鳴り。 この様子では、しばらくの間耳は使い物にならなそうだった。 一方の勇次郎はと言えば。 「――邪ッッッッ!!」 一喝。 声だけで衝撃波が巻き起こるような気合の喝。 信じられないことだが、この一喝で勇次郎は耳へのダメージの殆どを吹き飛ばしていた。 視覚へのダメージは、最初から微弱なものでしかない。 範馬勇次郎は紛れもなく人間である。しかし、常人ではない。彼を表すには、月並みな言葉だが――、 「見つけたぜ」 ――『超人』と言う言葉を使うしかないだろう。 花京院は足を伸ばし、勢いよく扉を閉め、飛び退いた。 だが相手は勇次郎。行儀よく扉を開けなどしない。 勢いよく振るわれた回し蹴りがハンマーか何かのように扉を捻り潰し、折れた扉の破片が花京院を直撃する。 「うぐッ!」 苦悶の声が漏れるが、悶え苦しんでいる暇はなかった。 体の上から扉の残骸をどけ、勇次郎から一刻も早く離れようとして。 「よう」 全てがもう遅いのだと気付かされる。 自身が蹴り壊した扉の半分を、まるでギロチンか何かのように持ち上げて。 ニタニタと微笑みながら近寄ってくる範馬勇次郎の姿は、まさしく『鬼』としか形容のしようがない。 だが勇次郎は、花京院をすぐに殺そうとはしなかった。 笑顔を浮かべたまま、来い来いと、手招きをして挑発している。 もしもこの期に及んでまだ花京院が自分に背を向けるようなら、彼は躊躇なく花京院を殺すだろう。 要は、勇次郎の余裕の表れだった。 「どうした? 一発でもいい、俺にキサマの攻撃を撃ってみろよ。もしかしたら俺を殺せるかもしれねえぜ」 心にも思っていないことを。 花京院は心の中で毒づいた。 彼の心中を満たすのは屈辱感と、絶望感を通り越した諦観。 長旅の中で培ってきた経験も、人生を共に歩んできたスタンド能力も、こんな暴漢一人にさえ届かない。 それでも、花京院は自分のスタンド能力――『法皇の緑』を出現させた。勇次郎の言う通りに、打つことにした。 「コイツは驚いた! これまたけったいなモンを使うじゃねえか」 「…………食らえ」 『法皇の緑』が、範馬勇次郎へ矛先を向ける。 そこに現れるのは緑宝石(エメラルド)。正しくは、スタンドによるエネルギーの塊。 「――エメラルド・スプラッシュ」 一風変わった仕掛けはない。 だがそれだけに協力。極めた一芸は、時に多芸のそれを凌駕する。 『法皇の緑』が生成した輝けるエネルギー弾が、水飛沫のように範馬勇次郎へ襲い掛かる。 それは決して。そう、決して易しい攻撃などではなかったが。 「ヌルいなあ。それでこの範馬勇次郎を殺せるつもりかよ」 範馬勇次郎にしてみれば、それこそ『水飛沫』でしかなかった。 相手は生身でありながら、近距離パワー型スタンドにも匹敵するパワーを持つ勇次郎。 飛んでくる弾丸(タマ)を腕で掴み取って握り潰し。 身体で受けた分もかすり傷程度の損害に止めてしまう。 掴んだエメラルド・スプラッシュの弾丸を無造作に放り捨てれば、勇次郎は失望したような表情を浮かべた。 「つまらねえ。どうやら見当違いだったみてえだな」 握った扉の破片を、万力にも似た腕力で握り潰す。 それから勇次郎は、もはや興味もないと拳を握り締め、花京院へ肉薄した。 彼本人が重量級なこともあって、花京院はまるでダンプカーが突っ込んできたような錯覚さえ覚える。 花京院の反射神経と身体能力では、範馬勇次郎から逃れることは不可能だ。 いや――本当に彼から逃げたいと思うなら、そもそも勝負になど打って出るべきではなかった。 では、どうして花京院は勝負に出たのか? 彼は範馬勇次郎という『超人』と自分の力量差も理解できない馬鹿だったのか? 答えは否だ。彼の真意は―― 「ッ?!」 「範馬勇次郎、か」 勇次郎の手足に、緑の紐状をした物体が絡み付いていた。 それは彼の力ならば容易く引き千切れる程度の強度しかないが、花京院とてそれは承知の上だ。 彼は最初から、無謀な勝負などするつもりはない。 勇次郎が人間を超越していると仮定して考えれば、エメラルド・スプラッシュが通じないことにも考えが及んだ。 しかし。範馬勇次郎という男がどれほどの怪物でも、決して鍛えることの出来ない弱点はある。 それを突くために花京院はこの部屋へと逃げ込み、急拵えの『法皇の結界』を張り巡らせた。 本来は触れた対象へエメラルド・スプラッシュを自動的に放つ技だが、今回のものはそれを拘束に特化させたもの。 触れた相手に『法皇』の体が絡み付き、その動きを止めにかかる。 「ならば覚えておけ、範馬勇次郎」 勇次郎が結界を引き千切る。 彼を止めていられたのは、時間で言えば二秒にも満たない間だった。 それで十分。集中すれば狙いを定めることは出来るし、それだけじゃない。 『法皇の結界』に邪魔立てされた驚きとそれを引き千切る動作。 範馬勇次郎をして隙を生む、二つの要素。 それが歯車のようにカッチリと噛み合うことで、花京院典明は満を持して『王手』をかけることが出来た。 「花京院典明。おまえを殺す、スタンド使いの名前だ」 どんなに優れた生物でも、眼球は鍛えられない。 そこを通じて脳を破壊されれば、どんなに優れた生物でも生き延びられない。 人間という生き物に区分される以上。相手が範馬勇次郎であれ、そこは変わらない。 威力を一点特化させたエメラルド・スプラッシュが、彼の両の目を目掛け迸った。 ● 「な」 驚きに目を見開いたのは、花京院の方だった。 確かな手応えをもって放った、渾身のエメラルド・スプラッシュ。 勇次郎の両目を突き破り、眼窩から脳髄へ侵入。そのまま頭の内部を破壊し、とどめを刺すはずだった。 にも関わらず、である。 「やるじゃねえか」 範馬勇次郎は生きていた。 右目を潰され、額から微かに流血しながらも、確かに生命活動を保っていた。 一瞬のことではあったが、花京院は彼がどのようにして必殺のエメラルド・スプラッシュを破ったのかが見えた。 彼の右目に、エメラルドの弾丸が突き刺さったまでは良かった。 だが勇次郎はそこで、自分自身の額を使ってエメラルド・スプラッシュを迎撃する選択肢に打って出たのだ。 人間離れした怪力から繰り出される頭突き。 重量の乗った一撃で、目を抉った弾丸は眼窩から外れ、あらぬ方向へ飛び出した。 後は単純だ。勇次郎の額はエメラルド・スプラッシュ相手に少々血を流しこそしたが、遅れは取らなかった。 ただ、それだけの話。花京院典明の敗因は、範馬勇次郎という生物が余りに『理不尽』の塊だったことだ。 作戦もタイミングも、何もかも完璧だった。しかし、勇次郎には通じなかった。 「だが、俺の右目を抉った代金――キサマの命で支払ってもらおうかッ!!」 今度身動きを取れなくなるのは、花京院の番だった。 彼の戦意はまだ消えていない。ただ、彼は敗北を認めてしまってもいた。 完璧に決まった策を、ただの力技で切り抜けられ。 花京院典明という少年は、こう思ってしまった。『範馬勇次郎には勝てないのではないか』と。 勇次郎の腕が、花京院の腹に触れる。 肺の空気が逆流し、彼は吐血した。 それから更に勢いを維持し、花京院の土手っ腹に風穴を穿たんとし―― ガ オ ン ッ ! そこで、範馬勇次郎という生物は、花京院へと伸ばした右腕を残して完全にこの世から消滅した。 【範馬勇次郎@グラップラー刃牙 死亡】 【残り67人】 何が起きた? 花京院は自分の腹から力なく地へ落ちた、腕輪の巻かれた隻腕を見、思う。 そして同時に、こうも思った。それは彼がこれまで旅してきた中で身につけた、半ば直感のようなものだった。 (マズい――この場に留まっているのはマズいッ!!) 迷いなく、彼は部屋の窓枠へと手を掛けた。 飛び越えることに躊躇いはない。それよりも、この部屋へ留まる方が余程危険に思えたからだ。 範馬勇次郎が死んだ。 エメラルド・スプラッシュを意にも介さない、超人としか言い様のない怪物が――呆気無く死んだ。 腕から先を残して、一瞬のうちにこの世から消滅してしまった。 当然ながら、花京院にそんな力はない。だとすれば、あの場に誰か、第三者が存在したことに為る。 地面へ着地。衝撃を逃すために、学生服が汚れるのも厭わず地を転がる。 素早く体勢を立て直すと、花京院は脱兎のごとく駆け出した。 一刻も早くこの場から離れるために。もちろんそれは殺し合いを止める者として、決して最良の選択ではない。 範馬勇次郎を一撃で殺せるような能力。野放しにしておけば、当然より多くの死人が出るに違いない。 しかし花京院の行動は正しかった。 あの狭い部屋の中で、奇襲の主と戦えば、彼はまず勝てなかっただろう。 ただでさえ急拵えの『法皇の結界』は勇次郎によって破壊され、原型をとどめていなかった。 そこに逃げ場がない以上、無駄死にを晒すよりかは余程賢明な行動を取ったのだ。 「一度体勢を立て直し、それから今後について、もう一度よく考えなくては……」 範馬勇次郎。 そして勇次郎を葬った、未知のスタンド使い。 この『バトル・ロワイアル』には、まだあんな連中がゴロゴロいるというのだろうか。 果たして自分は――そんな奴らを相手に、本当に通用するのだろうか。 膨れ上がる不安に唇を噛みながら、花京院は研究所から離れるべく走る。 【D-4/研究所周辺/一日目・深夜】 【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:疲労(小)、難聴(中)、脚部へダメージ(小)、腹部にダメージ(中)、自信喪失気味 [服装]:学生服 [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:不明支給品0~2 [思考・行動] 基本方針:繭とDIOを倒すために仲間を集める 1:研究所から離れる 2:承太郎たちと合流したい。 3:ホル・ホースと『姿の見えないスタンド使い』には警戒。 [備考] ※DIOの館突入直前からの参戦です ※繭のことをスタンド使いだと思っています 「妙だな」 誰もいなくなった研究所で、下手人はその姿を現していた。 虚空に不気味に顔を出すスタンド。その口から這い出るように現れ、喰らい損ねた勇次郎の隻腕を拾い上げる。 彼はそれを自身のスタンドでもって、残さず喰らい切ろうとする――が、食えない。 「……『腕輪』は我が『クリーム』の力でも飲み込むことは出来ん、というわけか」 忌々しげに呟き『姿の見えないスタンド使い』……ヴァニラ・アイスは隻腕を放り捨てようとし、やめた。 現状では、確かにこの腕輪を外す手段は存在しない。 しかし『サンプル』として予備の腕輪を確保しておけば、追々何かの役に立つ可能性は十分あるだろう。 ヴァニラ・アイスは腕輪を解除する方法があるなら、自らの肉体を犠牲にしても明らかとしたい思いだった。 それは、殺し合いを円滑に進める為などではない。彼にとっては、もっと崇高でかけがえのない理由である。 「見下げたド畜生女めが……よくもDIO様にこのような狼藉を働いてくれたな。貴様は死でも生ヌルい」 ヴァニラ・アイスには許せない。 崇拝するこの世の支配者、DIOへこんな物を装着させる不敬。 自分の身分も弁えず、駒か何かのようにあの方を扱う狼藉。 断じて許せない行いだった。決して生かしておいてはならぬと、自分の全神経が告げていた。 「だが、腹立たしいことに好都合でもある……」 名簿にあった三人の名前。 空条承太郎、花京院典明、――ジャン=ピエール・ポルナレフ。 DIOに仇をなす、ドブネズミのように下等で救いようのないクズども。 ……そして、一度は自分が遅れを取った相手。ポルナレフ。奴も存在していることが、ヴァニラには重要だった。 ヴァニラ・アイスは一度、ポルナレフに敗北している。 イギーとモハメド・アヴドゥルを殺しはしたが、あのような男に負けた身で、DIOに顔など合わせられない。 彼は思う。次に自分がDIO様の前に立つ時があるとすれば、あの方の為に他全ての参加者を殺し尽くした後だと。 承太郎を、花京院を殺し、ポルナレフへの雪辱を果たした後であると。 信じているからこそ、ヴァニラはあえてDIOを探そうとはしなかった。 「逃しはせんぞ、花京院。DIO様に支配される栄誉を自ら放棄した裏切り者めが」 ヴァニラは暗黒空間へ潜り込み、外へと脱出。 周囲を見渡し、花京院の姿がないことを確認すると、彼を追い立てるべく行動を開始した。 「貴様も、承太郎も、そしてポルナレフも。皆、このヴァニラ・アイスが始末してくれるわ」 一度死に、蘇った吸血鬼ヴァニラ・アイス。 その殺意は死してなお執拗に、すべての参加者の脅威となる。 【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】 [状態]:健康 [服装]:普段通り [装備]:なし [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10) 黒カード:不明支給品0~3、範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、範馬勇次郎の不明支給品0~3枚 [思考・行動] 基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする 1:花京院を追い、殺す 2:承太郎とポルナレフも見つけ次第排除。特にポルナレフは絶対に逃さない [備考] ※死亡後からの参戦です ※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました 時系列順で読む Back ?←HEARTBEAT Next Pure girls project 投下順で読む Back ?←HEARTBEAT Next Pure girls project 範馬勇次郎 GAME OVER 花京院典明 025 Just away! ヴァニラ・アイス 025 Just away!
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華京院 舞 通称:- 性別:女性 年齢:12歳 血脈:緑、黒 属性:神楽、水 台詞: 「私に中には代々の神楽人形全ての記憶が刻まれている。いずれ一族に生まれる子供には、私の記憶も刻まれる。………そんな私でも、人間と言えるの?」問いかけるように 「……………………わからない。けれど、私は消えたくない。華京院舞で在り続けたい。人形になんて………なりたくない」俯き 解説: K市でも高名な人間国宝、人形職人の『華京院籐吉』の孫娘。 短めに切り揃えた黒髪に大きな瞳の愛らしい少女。中学一年生だが、体格から小学生に間違えられる事が多い。 元々は快活な少女だったが、事故で両親を一度に失って以来、言葉を話す事は無くなる。 心も閉ざし、周囲に全く興味を示さなくなったが、封じられた魔性『炎蓋』との戦いの中で声を取り戻し、華京院の血に目覚めて行く 華京院家は代々神楽人形作成の技術を受け継ぎ、その一族の娘は神楽人形として生まれる事さえあったとされる。 ただし、現在はその技術を完全に失っており、稀に生まれ落ちる神楽人形にのみその特製が残っている。 その末裔は一族の力の悪用を避けるべく、その技術と力全てを捨て去りK市において生活を続けている。
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(やはり何かおかしい…)花京院は次第に歩を速める。 誰も後は付けてきていない。だが何かがおかしいのだ…何かこう…誰かに見られている様な気が… そんな気がするためにいまだに港をウロウロとしていた。 広いところに出たら障害物がないためあっさり殺られてしまうかも知れないと考えている。 (しかしどこにも誰もいないじゃないか……いや、もしかしたら…) 花京院は一つの仮説に行き当たった。名簿を見て何となく理解した事…このゲームに参加しているのは恐らく主にスタンド使いだ。 今まで共に戦った仲間や敵として対峙した者が何人もいた。 ならば名前を知らない連中もスタンド使いの可能性は十分にあるだろう。何しろあの殺された少年もスタンド使いだったのだ。 (しかし何だ…誰にも気付かれずに尾行するとしたらそれはどんな能力だ?) 考えても埒が開かないので花京院は動く事にした。 (もし後を追われているならそのまま承太郎達と合流して迷惑は掛けられない… 虎穴に入らずんばとも言う…ここは僕のスタンドで謎を解く!) (後を付けているのに気付いている様だな…だが詳しいところまでは気付いていまい) 一方リゾットは前の男の後をずっと付けていた。正味約一時間と言ったところか? ここまでの尾行でわかった事がいくつかある。 まず男はかなりやり手だ。歩き方でわかる。周りに気を配りながら歩いている。 それもただ気を配っているだけではない。 ほんのちょっとした違和感をも見逃さない程の警戒をしているようだ。 暗殺チームのリーダーとして様々な人間を見て来たからこそわかる。とにかくこの男に簡単に近付くのは良くないと本能でわかっていた。 また男が路地に入る。 (この方向…まだ港を出ないつもりか…やはり後を付けているのには気付かれている様だな) こんな調子で一時間が経ったのである。余談だが男が入っていった路地は既に三回程通っている。 (まぁ良い。どうせ奴にはオレの姿が見えない。バレる等有り得ない。 しかしもう後を付けるのにも飽きたな。そろそろ…終わりにしようか) リゾットも後を追って路地に入る。すると数十m先に男の姿があった。 (慎重に射程距離まで近付く…) 次第に距離が近くなる。すると男が立ち止まる。バレたのか? どうやら地図か何かを見ている様だ。しかしそれならリゾットには好都合だ。一気に近付いて先手を取れる。まさにリゾットはそう思っていた。 が、先手を打ったのは花京院だった。 (何だ?何か飛礫の様な物が飛んでくる?!) リゾットは避けようとするもいくらかは当たってしまった。 「結界にかかったな。そこに誰かいるのはわかっている。隠れてないで出て来たらどうだ?」 …どうやら追い詰めたつもりだったが罠…釣り出されたらしい。 しかも厄介な事にどんな能力かは知らないが男のスタンドはリゾットの『メタリカ』より射程が長い様だ。 これでは近付くのも困難になる。 それにしてもこの目の前の男…まだ少年の様だがどうやらリゾットの予想よりかなりのやり手の様だ。 そこにいるのが完全にバレてしまっては姿を隠している意味もない。 「やり手と思っていたがまさかこれほどまでのやり手とはな」 何もないところから急に姿を現わした事に驚きはない様だな。 まぁそんな事で驚く様な奴だとしたらそんな奴にケガを負わされたこっちが恥ずかしい。 「何もないところから現れた…どうやらお前は自分を透明にして姿を隠す能力を持っているな」 男は語る。どうやら能力をわかっているつもりの様だ。 しかしオレの能力を透明になるだけと勘違いしている様なら射程距離の差があれどまだ付け入るスキはあるはずだ。 何とか近付いて…スタンドで仕留める! リゾットは駆け出す。が、再び飛礫が飛んでくる。 「!!!」 「無駄だ!半径20mにハイエロファントの結界を張った!触れればエメラルドスプラッシュが発射される!」 リゾットは動きを封じられてしまった。これでは動いたが最後、下手をしたら射程距離に近付く前に死んでしまいかねない。 「追わないと誓うならこの場は見逃そう。しかし攻撃をしてくるのであれば手加減はしない!」 見逃すと言う言葉にリゾットのプライドが刺激される。 (偉そうに言うではないか。 自分の優位はもう揺るがないって顔してやがる。 が、こちらにもまだ策はあるぞ!) リゾットはおもむろに先の攻撃で割れたガラスの破片を拾い上げると自分の左手の小指を切り落とし、石ころにくくり付けた。 少年もさすがにこの行動には動揺を隠し切れない様子だ。 「な…何を考えている?」 「オレは正直お前をナメてかかっていた。ゲームに対する覚悟も足りなかった様だ。しかし今はもうそんな油断はない!」 リゾットはそう言うと手に持っていた石を花京院の足下に放った。 たかが石ころ。指をくくったところで花京院にはなんのダメージもないはずだった。 が、花京院の足からいきなり数本の釘が飛び出す。 花京院は何が起こったのか把握出来ない。 「お前一体何を…」 「答えてやる義理はないな。」 そう答えるとリゾットは花京院に向かって走りだす。結界に触れようとお構いなし、ダメージ覚悟の様子だ。 一方の花京院は混乱した。ただ指をくくり付けただけの石で何故ダメージを受ける? そう思って石を拾い上げる。と、指の断面で奇妙な物がうごめいていた。 (ムーミンにこんなの出てきたな…それよりも奴のスタンド…指の中に?…もしかすると!) 敵の左手を良く目を凝らして見るとやはり同じ物が切り口でうごめいている。 (やはり!体内にいたのか!) しかしスタンドが体内にいるのがわかっても能力がわかったわけじゃあない。 花京院が敵の能力について思考を巡らせたのは数秒だった。 しかしその数秒で充分、だいぶ近付かれてしまった。 すると今度は額からカミソリの刃が大量に出てきた。 「ぐああああ!」 (クソ!奴の能力は一体…このまま結界を張っていても近付かれるのなら戻して攻撃と防御をしながら距離を離した方が…) そう考えると花京院は『法皇の緑』の結界を解き手元に戻した。 しかしリゾットの本当の狙いはこちらだった。 これ以上の攻撃はリゾット自身が危なかった。 しかしダメージ覚悟で近付いて攻撃をすればスタンドを手元に戻して…(恐らく結界と呼んでいた物と本体は別物だろう)身を守りながら距離を置こうとするはず。そう考えた。 花京院はさらに攻撃を食らっていた。距離を置こうとする前に腹から針がまた大量に飛び出す。 (だ、だいぶダメージを受けてしまった…しかし何なんだ…) そこまで考えたところで一つの仮説に行き着く。 「仮説だが…最初は釘、次はカミソリの刃、今のは針だったな…いずれも体の中から出てきた。共通点は鉄製という事と体内から出てきた事だがこう考えたらそれも納得行く…お前のスタンドは鉄分を何らかの手段で別の物に変えて攻撃する。違うか?」 血液の中には鉄分が含まれている。 花京院は相手はその鉄分をスタンド能力でカミソリ等に変えて攻撃していると考えた。 すると男が半ば感心した様な言葉を返した。 「大体正解だ。そこまでわかっているのならもう隠す必要もないだろう。お前の知力に敬意を表して教えてやろう。 私のメタリカは体内の鉄分を吐き出させる事が出来る。また磁力も利用している」 花京院の仮説はほぼ当たりだったのだ。 だがリゾットは続ける。 「しかし能力がわかったから何だというんだ?言っておくが鉄分は血液のみに含まれているわけではないぞッ!」 花京院が周りを見渡すと自分に刃先を向けて数本のナイフが浮かんでいた。 (ま、まずい…) 咄嗟に避けようとするも数本が刺さる。 花京院はその場に崩れた。普通なら確実に入院が必要な程の重傷である。 どうやらスタンドも消えてしまった様だ。 「なかなか手強かった…が、これで終わりか…止めだ!メタ…」 が、花京院への攻撃が成る事はなかった。リゾットは次の瞬間後方へと吹き飛ばされた。 (うぉっ!何だこれは) ふと見やると倒れていたはずの花京院が立ち上がり喋り出した。 「能力を詳しいところまで話してもらった礼に僕の能力も教えよう。 僕の『法皇の緑』はただ攻撃をするだけではない… 体を糸状にして地面を這わせたりする事も出来る。そこまで言えば何が起こったかわかるな?」 花京院のスタンドは消えたわけではなかったのだ。 消えた様に見せかけて背後に忍び寄らせ相手を射程距離外まで引きずり飛ばしたのだった。 「ただの学生に見えるだろうが、策を巡らせられるだけの修羅場はくぐってきたんだ。 喰らえ!エメラルドスプラッシュ!」 リゾットが見た光景は自分に向かって飛んで来る無数の飛礫。地面に跪いているリゾットにそれを避ける手立てはなかった。 そこでリゾットの意識はプツリと消えた。 「生き残った…が、ダメージもかなり大きいみたいだな…」 確かに生き残る事は出来たがだいぶヒドいケガである。 ちなみにリゾットも重傷ではあるが辛うじて生きている様だ…意識はないが。 多分…まぁその心配はないだろうがまた追われては敵わないのでリゾットを彼の服で建物の柱にくくりつけた。 ついでに支給品も必要な物のみ失敬する事にした様だがリゾットに支給された武器を見て明らかに落胆している様だ。 (この先承太郎達に合流する事は出来るんだろうか…) とりあえずの止血は済んだ。今すぐにも歩き出せる。 が、花京院は己の行く末に不安を抱いていた。 理不尽な殺人ゲーム…ゲームを操るのが荒木なら、そのゲームの中での人の生き死でさえ実は荒木の掌の上での事なのかも知れない… 花京院に訪れるのは希望の光だろうか…それとも絶望の闇だろうか… 【杜王港(I-09)/一日目/深夜~黎明】 【花京院典明】 [スタンド] 『法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)』 [状態] 重傷/行く先に対する不安 [装備] アーミーナイフ [道具] 支給品一式、またリゾットの支給品から食料等をゲット [思考・状況] 1)こんなケガをした状態で承太郎達と会うまで生き残れるのか…? 2)とりあえず止血は済んでいる 【リゾット・ネエロ】 [スタンド] 『メタリカ』 [状態] 瀕死/意識不明 [装備] ハリセン [道具] 食料以外の支給品 [思考・状況] 1)花京院の能力の詳細(糸状になれる等)を把握しきっていなかったために後一押しが出来ずに負けた 2)冷静に対処すれば花京院が結界を解いた後に姿を消しながらの攻撃も出来たはずだが想像以上のダメージが思考を鈍らせていた 3)とりあえず生きているが身動きを封じられたため意識が戻ったところで誰かに見つかれば抵抗は不可能だろう 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ キャラを追って読む 01 『ゲームスタート』 花京院典明 46 仮説・それが真実 01 『ゲームスタート』 リゾット・ネエロ 33 戦慄のリゾット
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昇り始めた太陽が恨めしい。 今の今まで僕を照らすことなく日陰者にしてきた張本人はしたり顔でスポットライトを当て、表舞台に引きずり出した。 睨み付けるように顔をあげるとそんな僕を非難するように容赦ない光が脳をチリチリと焦がす。 立ちくらみを感じ思わず立ち止まる。 すべてのものに公平なはずの太陽さえも僕に圧力をかけているかと思うのは被害妄想だろうか? そう思い、惨めであろう自分の姿を想像すると自虐的な笑みがこぼれた。 第一回放送を聞いてから一時間ほど。現在僕は進路を西にとり、線路か政府公邸を目指して歩き続けている。 先ほど存在に気づいた写真の同行者、吉廣氏には申し訳ないが彼にはポケットの奥底で黙って貰っている。 正直なことを言うと僕はまだ結論をだしてない。将来協力者になる可能性のある彼の機嫌を損なうのは頂けないがそれでも慎重な判断をすべきだと僕は思った。 それは吉廣氏が述べたことがあくまで彼『だけ』の話であり、あくまで彼の主観的な話であること。 吉廣氏が言った絶対に殺しあいに乗らない仲間、吉良吉影。 幸運なことにこの世界に来てから僕はいかに『絶対』というものが脆いか思い知ることができた。 そう考えると吉良吉影という人物が吉廣氏の言ったとおり『殺し合い』に乗らないか、どうか怪しいものだ。 仲間一人の証言をどこまで信じられるかだろうか。それこそ吉廣氏の言葉しか信用すべきものがないのにそんな相手に命を任せるなんて愚の骨頂だ。 何処の誰かのように生き残ることを強いられ、頼るものもなくし、仲間を失った者はこの舞台では容易く変わる。 なぜならこの僕、パンナコッタ・フーゴがそうだから。 そしてもう一方。 強盗、殺人、横領、暴行などなど…。彼の話を信じるならご対面はぜひとも遠慮したい。 吉廣氏が被害者側であり、多少の誇張表現が含まれていたとしても犯罪という分野に関わってることは間違いない。 危険人物である空条承太郎、及びその仲間たちがたとえチンピラのような分際であったとしても僕としてはそんな野蛮な人間に関わるのはゴメンだ。 …だからと言ってその集団が必ずしもこの舞台では『悪』とは断定できないけれども。 なぜなら僕たち、パッショーネのギャングだってそうだから。 ブチャラティ、アバッキオ、ミスタ、ジョルノ、ナランチャ…。 彼らは僕と違う。困難が立ち塞がろうとそれから逃げることなく向かっていく。それがどんなに巨大な壁であろうと。 彼らは僕と違う。正しいと思う道を、進むべき道を切り開いていく。それがどんなに困難なものであっても。 『オレは“正しい”と思ったからやったんだ。後悔はない……こんな世界とはいえ、オレは自分の“信じられる道”を歩いていたい!』 『“鍵”を渡すことはない。そしてフーゴもアバッキオも無事でみんなのところに帰る!』 『この国の社会からはじき出されてよォーー…。俺の落ちつける所は………ブチャラティ、あんたといっしょの時だけだ………。』 『よお………オメーか、フーゴ』 『オレに“来るな”と命令しないでくれーーーーッ!トリッシュはオレなんだッ!オレだ!トリッシュの腕のキズはオレのキズだ!!』 痛む頭を押さえる。直射日光から守るように目を日陰で覆うと僕の足はまた動き始めた。 時々僕は自分の頭脳が恨めしくなる。IQやらなんやらで人の可能性を決めつけるのは嫌だが、客観的に見たら僕は賢い部類に含まれるのだろう。 だったら、と願う。 僕はどうしてもっと聡明じゃないのだろうか? 或いはどうしてもっと間抜けじゃないのだろうか? ああ、わかってるさ。悪態を吐きたくなるのを堪える。ここで言ったらそれは即ち自己否定になるだろう。 それでもわかってしまう。本心を客観的に見つめてしまう。 それが見えなければいいのに。 それが客観的でないと心底否定できればいいのに。 結局の所僕は脅えてるにすぎない。 決断を先伸ばしにしたのはどちらにでも都合が良いときに付けるようにとの下心からだ。 都合がいいほうに味方できるようにだ。 決断してしまったら……ゲームに乗ったとしたら……もう戻れないのだから。 一ヶ所に留まって参加者最後の二人になるまで待つという選択肢を取り上げられた僕はもうどうすればいいかわからない。 それが唯一の道だと、なけなしの勇気を振り絞った僕にはその道しか選べないように思えたのに…。 それを荒木は許してくれなかった。 殺すことも殺されることも御免だ。 人影に脅えてビクビクするのも勘弁だ。 それでもそうするしかないんだ……。 堪えきれなかった感情は溢れて口をつく。 「僕は……死にたくないんだ………」 歩くことに取りつかれたように僕の体は動き続ける。 意図せずとも漏れた呟きは誰に届くこともなく消えた。 嫌なんだ。 恐いんだ。 死にたくないんだ。 誰か助けてくれ。 不意に聞えたその声は天使の助けか、悪魔の囁きか。 「やあ」 ああ、確かに求めたさ。 「死にたくないんだ、って?」 助けてくれ、と願ったさ。 どうにかしてくれ、と思ったさ。 「それだったら…取引しようか?パンナコッタ・フーゴ君…」 けどこれは冗談キツいだろ? 目の前に聳え立つ政府公邸を背景に突如現れた男。 ゲームマスター、荒木飛呂彦。 選択する権利さえ奪われた僕はもう、乾いた笑いを漏らすしかなかった。 ◇ ◆ ◇ 「そう急かさないでください。警戒を緩めるにはここは危険すぎます。常に気を張って、ほんの少しの気配でも感じたら……」 「わかってるって、花京院。それにしたってこんな時間に襲いかかってくるような奴はいないと思うぜ?せっかくのお天道様だってのに…もっと楽しまないとなッ!」 「ちょっと、グェスさん!…まったく………」 ため息と駆け出したあたしのあとを追いかけるような靴音が聞こえて思わず頬が緩む。 だらしない表情を曝してると頭で理解しながらもあたしはそれを変えることができなく、ただ花京院にそれを見られないようにまた少し足を速めた。 まったく…ハイスクールの女生徒じゃねーんだからと、今まで散々馬鹿にしてきた極めて『女の子』らしい行動に我ながら呆れる。 家族や知り合いにこんな光景を見られようものならそれこそこめかみにトリガーを突きつけてバン!だ。 言うまでもなく突きつけるのはあたし自身のこめかみだけど。 後ろからやって来た人影を横目で確認する。ちらりと視界に映った男…青年は息を弾ませながらあたしの横に並んだ。 平均身長よりやや高い、それでいて華奢な体。 呆れと心配からかすこし皺をよせた顔は男と言えどどこか美しくある。 なによりもその気高く孤高に輝く瞳はあたしにエメラルドを思い起こさせた。 「……?どうかしましたか?」 ばっちりとあたしと目があった花京院が聞いてくる。 キラキラ緑色に輝くお前の眼に見とれてた、なんてことを初なあたしが言えるわけもなく慌てて取り繕ったような言葉を返した。 「ああぁ…と…、えぇと…。そーいえばまだ朝食をとってないなぁー…ってな、思って。それで……」 上ずった自分自身の声を聞いてあたしはますます焦った。 こんな調子じゃ顔も赤くなってるんじゃないかと思い、それを隠すために平静を努めてに俯いた。 それでも花京院の奴は話しかけてくる。石を蹴飛ばし妙にぎこちないあたしに気を使って話しかけてるんだとしたら……くそ、意外に鈍いやつなんだな………。 あたしたちは今、政府公邸を目指して向かってる。 日記をパチったあたしの行動に花京院は最初、おおいに怒りを示した。 曰く『なんて危険な真似をッ!こんなことをしたら今すぐにでも荒木が取り返しに行動を起こすかもしれない……!』とのこと。 ただその一方で『貴女の行動は気高く勇気ある行動でした。誇りを持つべきでしょう。』とのこと。 別に誉められたかったからパチったわけじゃないし…ただ自分の手癖の悪さが出たっていうか…。 まぁ、誉められて嫌な奴はいなく、あたし自身もその大多数と一緒で満更でもなかった。 日記は荒木のスタンドによって細工が施されたのか開くこともできなかった。 そして花京院が言うにはだからこそ良いらしい。 『それだけ必死に荒木が隠したいものとは…』 そう言ってぶつぶつ呟いた後、最も近くにある施設、政府公邸で詳しく調べたいとの事をあたしに言ったわけ。 でもあたしとしても政府公邸に行くこと自体は大賛成だった。 そこに行けば食事も取れるだろうし、どっしりと腰を据えての情報交換もできる。 他の参加者に合う機会でもあるし、なにより体を休めるに最適な温かいベットだってあるだろうし…。 い、言っとくけどベッドっていうのは…その…イメージの中でもシングルベッドだからな! キングサイズだとかツインベッドだとかあたしがこいつとチョメチョメだとか………。 そんなことは断じてないんだからな! 「そうだ、絶対ない………ッ!」 「???」 唐突なあたしの言葉に花京院は頭上に疑問符を浮かべる。 あたしはそれを気にかけずずんずんと足を進めた。 不意に喉の乾きを覚えた。 それもそうか…。なんてたってもう六時間も動きっぱなしだ。 この緊張状態…殺し合いの緊張状態は簡単に人の体力を奪う。 そう考えたとき、さっきのあたしが口走った『まだ朝食をとってない』っていう提案が現実味を帯びてきた気がした。 まぁ、それでも流石にここで鞄を広げてピクニックってわけにはいかねーな。 そう思って鞄を体の前に回す。中を手探りで物色するとお目当てのペットボトルが出てきた。 歩き食いする気分じゃなかったし、事実あまり腹は減ってなかった。 喉を潤す水の冷たさを感じるとあたしの体は満足したのか、欲求をようやく押さえた。 それでもそれはペットボトルの半分までもを消費するには充分で、あたしはふと補給ができなかったらどうしようと思った。 きっとそうやって別のことを考えてたからだろう。 あたしがペットボトルの蓋を絞めきる前に、デイバッグそれごとを落としてしまった。 慌てて拾おうと身を屈めたがそこには水でふやけた物を口からぶちまけたデイバッグがあるだけで、仕方なく使い物になるか微妙な用具を集め始めた。 この時ドラマでよくありがちな物を拾おうとして男女の手が重なり『あッ………』っていうワンシーンを思いだしてしまったのは内緒だ。 先に言うが期待なんてこれっぽちもしてないからな! ただこういうシチュエーションはあたしにしては珍しいかなァ……って思っただけ。 結果としてあたしの手を花京院が包みこむなんて幻想は妄想に終わり、あたしは無事ふやけた地図と名簿に向かい合うことができたというわけ。 ただひとつを除いては。 「花京院………」 あたしの声の低さに何か読み取ったのか、花京院も柔らかな表情だったものを険しくするとあたしを見つめる。 黙ってあたしはそれを渡した。デイバッグの中で唯一濡れずにすんだ、正確にはなぜだか『濡れてない』日記を。 「これは………?」 「ああ、それだけじゃない。」 顎で促すように示すと今まで頑なに閉じていた表紙に力を込める。 すると、どうだろう。今までは開かなかった日記は急にその拘束を放ち、中身を曝し始めた。 真っ白な中身を。 「こ、これは………?!」 「何か条件があるんだろうな。とにかく思った以上にこいつはヘビーそうだな…。」 「急ごうぜ、花京院。そうとわかったらグズグスしてねぇで一刻も早く政府公邸に行かねえと。」 明らかに流れ出した緊迫感。 そこにはさっきまであった余裕は消え失せ、黙ったまま小走りになるあたしたちしかいなかった。 さっきまでの下らない妄想の数々を打ち消すように頭を振るとあたしは足を動かすことに集中する。 この雰囲気が好きかと言ったらもちろん好きじゃねーさ。 もっと緩くてダルそうな感じがあたしには合ってると自分ながらに思ってる。 大体こういうシリアスってのはキャラに合わないんでよォ。 そう思ってもあたしは今、たった今、この状況にはこれっぽちも不安を感じなかった。 なぜならあたしの横にはコイツがいてそしてコイツは言ってくれた。 『僕と友達になってください』ってな。 柄にもなく太陽が明るく見える。いつもと違う、あたしを優しく温かく包んでくれる太陽。 隣に並んでくれる奴がいる。それがこんなに嬉しいことなんて知らなかった。 それでも今だけは、この一瞬の幸せな時間に浸っていたいと思った。 ◆ 入り口に設けられた鉄門を慎重に開いていく。 いつもだったら気にならないであろう、それが軋む音に冷や汗を流しながらも二人して庭園に入る。 閉めるべきかどうか、少しの間悩んだが庭園内に警戒を張る花京院に聞くのも気がひけて、結局あたしはゆっくりと後ろ手に門を閉めた。 移動中に知ってびっくりしたがあたしのグー・グー・ドールズのような不思議な力は『スタンド』と言い、花京院もスタンド使いらしい。 運命を感じるだとかそんな狂言を吐いてる余裕はなく先行させたグー・グー・ドールズの視界に何か写らないか意識を集中させる。 ……特に不審なものはなし。隣にいる花京院に頷きでそれを伝えると花京院も同様に頷きを返してくる。 それを合図に庭園内を疾走する。政府公邸の入り口まで全速力でかけていく。 あたしたちが呼吸を整え安堵の息をついたのは扉にあたしたちの体を滑り込ませた後だった。 ほっとあたしを戒めるかのように花京院が手を挙げる。反射的に視線を向けるとその指が広々とした玄関ホールの脇にある一室のドアを指していた。 依然スタンドを出し警戒を解かないまま扉の前にたつと、花京院のスタンドが扉の下より滑り込んだ。 幾分か経過した後、中の安全を確認できたのか、花京院が扉を開くとそこは小さながらも政府公邸の名に恥じない立派な一室があった。 「…ふぅ」 「とりあえずは大丈夫そうですね」 そう言って互いに椅子に腰を下ろす。中央に置かれた背の低いお茶用の机を挟んで向かい合うようにあたし達は座った。 うお、柔らけぇ。いい椅子使ってんな…。 「大きすぎる施設ってのも考えもんですね。これ程だと中に誰がいるかどうかもわからない」 「あたしたちはゲームに乗ってないッ!……なんて大声で主張するのも間抜けだしなぁ」 あたしの言葉に頷きなから花京院は自分のスタンド、法皇の緑を展開していく。 イソギンチャクみたいに触手を伸ばしてく様は見ていて気味が悪いが口に出すとなんだか悪いのでやめといた。 細切れになった緑の網は部屋中に広がりさらに隙間から外に出ていった。 「法皇の結界…僕のスタンドで簡単ですが警戒ラインを敷きました。これで安心して情報交換ができますね…。」 ソファーに座り直し、顔の前で手を組む。 花京院はそうした後、組んだ手の向こう側から覗きこむようにあたしと目を合わせてきた。 この殺し合いに巻き込まれてからのことは歩きながらある程度は話終えていたから主だったものは自分達の境遇と互いの知り合いについてだった。 花京院の話を聞いて真っ先に考えたことは花京院にあたしが犯罪者であることを言うべきかどうかだった。 花京院の正義感の強さは話だけでなく実際に荒木の部屋でもあたしは目撃している。 そしてその過酷という言葉が生ぬるいほどの冒険とその発端。 …普通友達のお母さんのためとは言え命をかけれるか? あたしだったら少なくとも二つ返事で答えることも、躊躇いもなく首を縦に振ることもできないだろう。 そんな正義馬鹿…とまではいかないが、とにかくこいつがあたしが犯罪者であることを知ったらどうだろう…。 あたしは悩んだ。 相槌をうち、話を聞きながら必死で考えた。 適当な質問で話を引き延ばしながら脳みそをフル稼働させた。 そうして大袈裟なリアクションをとり時間を稼ぎ、あたしは結論を出した。 「――――…と、まぁ僕の話はこんな所でしょうか。」 「それじゃ、次はあたしの番だな。」 ソファーに改めて座り直す。姿勢を良くして背筋を伸ばす。 緊張で顔が強張ってないか不安だったが仕方ねぇ…。 いや、むしろ自分の過酷な『運命に』ついて語るんだ。少しぐらい緊張が伝わったほうが良いだろう。 唇を舐め、唾を飲み込んだあたしは花京院に向かって口を開いた。 「まず最初に、花京院だから話しておく。あたしはアメリカにあるグリーン・ドルフィン刑務所に服役中の犯罪者だ」 重々しい口調を意識した。 驚愕に見開かれた目に構わず言葉を続ける。 「……はめられたんだ、あたしは。たぶんこんなこといっても信じてくれないだろうけど…信じてくれ、花京院。あれは確か夏だったかな…?」 正義感が強い花京院、だからこそなのか、こいつは甘ちゃんだ。それもあたしがびっくりするぐらいの。 だからきっとこいつはあたしを信じる。 気の毒でしたね、なんて同情を示して。あたしが正真正銘の犯罪者なんてこれっぽっちも思わないだろう。 ……罪悪感がないかって?友達を裏切ることにならないかって? …それじゃなんて説明すればいいんだよ。 あたしは放火に殺人未遂に仮釈逃亡を重ねて刑期が12年あるベテラン囚人です、って言えばいいのかよ? 小心者で他人に嫌われるのが嫌で人生失敗してきました、なんて言えばいいのか? ……そんなこと………そんなこと言えッかよォ! 偽りの表情を貼り付けながらあたしは胸を痛めた。 きっと花京院はこの話を信じ、いもしない犯罪者に怒り、ありもない冤罪を被ったあたしを慰めるだろう。 罪悪感で胸が張り裂けそうだった。 それでも、あたしは初めてできた『友達』を失いたくなかったんだ……。 ◆ 「それにしても不思議ですね。『空条』なんて苗字はそうざらにあるものじゃないんですよ」 「でもあたし自身、あいつのフルネームは知らないからな…。かもしれない、だけであって違うかも」 「それでもなにか運命的な物を感じますね。同じ知り合いが同じ苗字…もしかしたら親戚かもしれない」 小声だが二人の会話は続く。 驚きと旧友の名前を聞いたからか、若干饒舌になった花京院の言葉に愛想笑いを浮かべ相槌を打った。 憂鬱な気分だったがそれをおくびにも出さずあたしは花京院の後に続く。 警戒を怠らずに次々と部屋を回っていく中で、あたしは気分を落ち込ませまいと無理に振舞っていた。 幸い状況が状況だったから、幸いにもいつもと違うあたしでも怪しまれることはなかったようだけど。 部屋の扉を開く。 相も変わらず高価な机やらソファーやらで部屋は快適に過ごせそうだ。 あたしには全部一緒に見えるが隣にいる花京院が言うにはその部屋その部屋で応接室、来客室、従者室等々……。 とにかくあたしが言いたいのはここが安全だと主張するにはまだ早い、ってことだ。 それだけ部屋があるってことはそれだけ隠れる場所が多いわけだからな。 とはいってもあたしは途方もなくある部屋の多さにいい加減勘弁だった。 ただでさえさっきのことがあって気持ちが落ちてるあたしには、部屋で隠れてる参加者をひたすら探すのはキツい作業だった。 まったくもういいだろ…。 少し投げやり気味に入り口から死角になった物陰を覗きこむ。 いなかったことにほっとしながらもあたしはうんざりし、隣に繋がる扉に手をかけた時だった。 花京院があたしの肩を掴む。 普段物腰が柔らかいコイツにしてはやけに強い…というか強引過ぎる。 そのまま部屋の壁際まで押し込まれるように移動を強制された。 少し痛む肩に顔をしかめつつ、見上げる花京院の顔は何処までも強張っている。 何かを言おうとして視線をさ迷わせ、花京院はそれでも黙ったままだ。 …あたしは覚悟した。 ああ、きっとさっきの嘘がバレたんだな。いや、もしかしたら最初から気づいてたのかもしれない。 それでも優しい花京院は口に出せなかっただけで。あたしがこうやって気持ちの整理をすることを見越していたのかもしれない。 でも…だからこそあたしは花京院が許せなかった。 お前が言ったんじゃない、友達だって。自分の言葉に責任とれよ、お前は。 お前がいう友達ってのはそんな軽いものなのか?気を使い合う必要があるのかよ。 空条ってヤツの母親のため、飛び出したお前と空条の間にはそういう遠慮があったのかよ。 八つ当たりだって……? 矛盾してるんじゃないかって? そんなの知ったことかよ…ッ! あたしの感情の昂りに合わすようにグー・グー・ドールズは姿を現す。 顔を歪めまいと堪える気持ちはきっと自分の傲慢な気持ちなんだろう。 それでも押さえきれなかった。耐えることなんてできなかった。 花京院…お前が言った『友達』が偽りだっていうなら……あたしは……あたしは…………ッ! 甲高い奇妙な音と銃撃音。 二つがあたしの耳に入った瞬間、体は突き飛ばされバランスを崩ししこたま頭をぶった。 振り返ったあたしの眼に映ったのは肩から血を流して崩れ落ちそうになる花京院。 そしてその向こうには部屋の切れ目から体を半身だけ出し片手に銃を持った青年。 瞬間身体を動かした。 怖いという気持ちが自分の中で湧き出る前に這いずるような格好で花京院に近づく。 歯をガチガチぶつけ合う音が自分の物とは思えず、それでも花京院の身体を無理矢理引っ張っていく。近くのソファーの裏側まで行かないとこのままじゃいい的だ。 もちろん襲撃者がそんなことを許してくれるはずがない。青ざめやけに若い、少年といっても通ずるようなそいつは今度は身体を完全に乗り出させて銃を持ち上げる。 あたしの脳裏に浮かんだのは一瞬で命を刈り取られた老人の最期。 あいつは直前まで自分の死に気づかなかった。痛みもなく、でも髪の毛一本も残さず瞬きする間に文字通り消された。 走馬灯のように駆け巡る映像の中でもあたしが感じた感情はひとつだった。 死にたくない。 少年がそうしてるのか、脳内に分泌された何かがそうさせているように見せているのか。 やけにゆっくりと狙いをつけている間にもあたしは命を諦めれなかった。 死にたくない。死にたくない。死にたくない。 這い出る恐怖と諦めきれない後悔。 いったいあたしが何やったんだって言うんだ…ッ! なんだよ、殺し合いって! 何であたしが殺されないといけないんだよ…ッ! なんで……誰もあたしを助けてくれないんだよッ! 少年が引き金に指をかけたのとエメラルド色の閃光が走ったのは同時だった。 不意をつかれたのか、少年は顔をびっくりさせ眼を見開く。 それでも反射的にスタンドを出現させるとものすごいスピードで宙を舞う宝石を叩き落とす。 視線を固定されたまま首根っこを捕まれ、あたしは後ろに引っ張られる感覚に身を任せた。 あたしを庇うかのように広げられた手。 細身の身体をそらすようにして胸を張る。 傍らに並び立つはその気高い精神を象徴する叡知のエメラルド。 「法皇の緑ッ!」 多方から無数に飛びかかってきた射撃に流石の少年も対応しきれない。 一発、二発をスタンドの両の手で弾くのが精一杯。 三発目を射軸上から身体をずらした後は後退しながらなんとか直撃を免れるように部屋の扉から出ていった。 「グェスさん…」 花京院が振り向きあたしに語りかける。出血が続く肩を押さえながらも視線を合わせようとその場で片膝をついた。 「貴女のおかげです…。貴女が僕をこのソファーの後ろに導いてくれた。その行動が僕の命を救ってくれたのです。 たったそれだけ……、と貴女は謙遜するかもしれません。 でもそのたったそれだけが僕と貴女の命を救ったんです。あの少年の襲撃から僕たちを救ったんです。」 肩に温かみを感じた。 なぜだか狭まった視界だが今は気にならない。 遠くでぼやけたように見える花京院の姿と声を必死でかき集める。 「貴女は誇るべきだ。友達の危機を救ってくれた、僕の最高に頼れる友達だと胸を張ってください」 少年はまだ隣の部屋にいる。 安心が慢心に繋がりかねない状況にも関わらずあたしはそれでも込み上げてくる何かに身を任せて眼を瞑った。 友達、か…。 「だったらよォ、花京院…。」 見開いた瞳で花京院を見つめ返す。今度はあたしが肩に手を置く番だった。 怪我をしてないほうの肩にあたしの手を重ねるとほんのりと花京院の体温を感じた。 力強いその目線に押し負けそうになるがそれでも目を逸らすことなくことなくあたしは言い切った。 「あたしにも助けさせてくれ。さっきみたいにお前の危機を救わせてくれよ…」 あたしが先に立ち上がる。花京院の手を引っ張って立ち上がるのを助けてやった。 手を握ったままあたしはまた言葉を重ねた。 「友達なんだから」 控えめながらも笑みを浮かべ頷く花京院を見てあたしは本当に嬉しかった。 ◆ 投下順で読む 前へ 戻る 次へ 時系列順で読む 前へ 戻る 次へ