約 374,268 件
https://w.atwiki.jp/psyren_wars/pages/142.html
月夜を彩るShuffle Beat ◆wd6lXpjSKY 昼の学園が表だとするならば夜の学園は裏と表現するべきか。 吸血鬼が近付き悪魔が潜み未知なる座標が向かう魔の宝庫は表ではない。 だが裏と仮定する場合何が表であり何が裏であると言えるのか。その基準はどうなっているのか。 世界の理が回っている。それに従うならば参加者の数だけ世界が存在する聖杯戦争には何が真実と言い切れるのか。 ハイラルの勇者が理を司るのか。吸血鬼が闇を体現するのか。魔女が総てを包み込むのか。 それぞれが異なる世界の存在故に。 聖杯戦争に基準など必要なく死ぬ者から死んで行き、生きる者だけが明日を見る。 堕ちた鳥がもう二度と大空を飛べないように、蒼穹を感じれるのは限られた者だけである。 暁美ほむらはエレンに連絡を取った後、改めて職員室を物色していた。 鹿目まどかを始めとする三人の参加者の連絡先が手に入ったが欲を言えば情報はまだまだ掴み取りたい。 サーヴァントを失っている今、完全に窮地なる状況に立たされている彼女には焦りが出始めていた。 天戯弥勒と因縁を持つ男、夜科アゲハ。 彼の所在地を把握出来れば真実に辿り着ける可能性が飛躍的に上昇するだろう。 地獄から手を伸ばし、その手に収まったのは血と同じ赤を纏ったテレホンカード。 聖杯なる唯一無二の願望器を目指してはいるものの、疑念の目を向けずにはいられない。 それは嘗て彼女達魔法少女が一瞬の希望と未来の輝きを永遠の不幸と背負わされた閉ざされた世界が影響しているのだ。 願いがノーリスクで叶う筈がない、甘い話には毒が潜んでいる、ならば聖杯戦争にも、天戯弥勒に裏が存在する筈、と。 聖杯戦争に必要な対価を考えた時、犠牲になる参加者だけではどうも釣り合わない予感が胸を埋め尽くす。 願いを餌に殺し合わせるならば日常生活など不要であり、外部からの干渉を遮断した小島にで参加者を詰め込めればいい。 (例えば魔力や魔法……何かしらの力が必要とか) 魔法少女は願いの対価に小さいころ憧れた正義の魔法を身に付ける。 正義の力あってか一般人とは比べ物にならない程の能力であり、少女だろうが彼女達の世界水準を超えている。 しかし彼女達の世界であって、サーヴァントには到底及ばず、彼らの存在は規格外である。 暁美ほむらからしてみれば、彼らを召喚した時に使用した魔力は何処から来るのだろう。という疑問が生まれる。 もし魔法少女と同じように契約を交わしたなら、その願いの大きさは計り知れない。 聖杯が媒体だとすれば死んだサーヴァントは器に戻るのが道理であろう。 使用された魔力が還元すれば再びは器は器として機能されると考えて問題ない。 暁美ほむらの推測であって、そもそも聖杯自体がサーヴァントを呼ぶ媒体など真実でもなければ掠ってもいない可能性があるが。 更に言ってしまえば本当に聖杯が存在するかも怪しく、天戯弥勒の掌で踊っているだけの世界だって存在しているかもしれない。 仮に聖杯が存在しないとして考える。 考えるまでもなく、結論はさっさと帰る。この一言で総てが終わるのだ。 願いが叶わないのならばこんな世界に居る必要なんて欠片も存在しない。 自分の思うように魔法が使えない空間に長居するほど暇でもなければ馬鹿でもない。 天戯弥勒に生命を握られている、暁美ほむらにとって時間停止に対する制限と軸移動の禁止は首に鎖を繋げられているのと同義。 このまま戦っていても碌な目に合わず、現に悪趣味な人形やそれを創り上げる気色の悪い魔術師を見てしまったんだ。 聖杯が無ければ帰る、鹿目まどかと美樹さやかにはどうせまた会えるのだ、そう何度でも。 (これが夜科アゲハの連絡先ね……ついでに人吉善吉のも手に入ったわ) 小萌先生の席から離れた場所のとある机を物色していると高等部一クラスの名簿が出て来た。 視線を流すと夜科アゲハの名前があり、さらに人吉善吉の名前も確認。その後引き出しを開けると取扱注意と書かれたファイルが一つ。 中を読むと各個人携帯の連絡先まで記載されており、自分の携帯に番号を落とすと何事もなかったように仕舞い込む。 (人吉善吉の連絡先まで手に入るとは儲けものね) 夜科アゲハと喧嘩をしていた一人の青年。 映像だけでしか知らないが聖杯戦争の参加者の時点で無関係ではなく、来るべき時を待っていればいずれ彼と関わるだろう。 最も暁美ほむらは彼が自分と別れたキャスターと再契約をしているなど微塵も知らない。 それに彼女は笑顔の道化師が死んだと思い込んでいるのだ。運命とは時に現実を悪い意味で助けてくれるものだである。 しかもその道化師は新たなる宿主との契約を結び、当面の間は現界出来る条件を揃えてしまった。 対する暁美ほむらはというと、新しいサーヴァントを手に入れるために四苦八苦している。 (……あんなのでも英霊なのよね。人形を使役する量の戦術は強いけれど美樹さやかのサーヴァントのような圧倒的力の前では多勢に無勢もいいところ) 遊園地で監視していたバーサーカー同士の戦いは圧巻の一言であった。 あの戦闘に奇怪な傀儡共が押し寄せても蹂躙されてしまうのが容易に想像出来てしまう。 最もケースバイケースであり、キャスターが創り上げる自動人形は多芸な幅を持っているのだ。 実際戦闘が始まればどう転ぶかなど誰にも予想することは不可能であり、常識は通用しないと考えて問題ないだろう。 そして聖杯に再び、思考を寄せてみる。 (脱落したサーヴァントの魂が素体となり願いを叶える……なら、今は不完全な状態) 聖杯戦争において他者のサーヴァントを殺すことはその魔力を聖杯に注ぎ込むことである。 格式を多いに上回る規格外な魔力で満ち、溢れんばかりに潤えば聖杯は聖杯としての機能を果たし願望器へと昇華するはず。 例えば現時点で天戯弥勒から聖杯を奪ったとしても願いを叶えることは不可能である。 それならば見知らぬ少女を誑かし、インキュベーターと契約を結ばさせて願いを叶え、絶望を押し付けた方が早い。 ……そんな手段を取るはずがないのだが。 (インキュベーター……まさか、ね) 鹿目まどかと美樹さやか。そこに暁美ほむらを加えて何なら巴マミや佐倉杏子が居てもおかしくない。 美国織莉子を始めとする螺旋の軸から外れた主個性が参戦していても不思議には思わないだろう。 何の打ち合わせも無しに魔法少女の参戦が現段階で自分を含めて三名判明している。偶然とは思えない。 何かが彼女達に惹かれたのだろうか。共通項は契約と魔法少女、その先にある始まりの存在インキュベーター。 考えたくもないがこうも魔法少女が多いと悪魔が天戯弥勒に絡んでいるのではないかというくだらない幻想が生まれてしまう。 これで勝ち残れもせずに無残に死んでしまうと聖杯戦争は人生において最悪のイベントになるだろう。 逃げるには世界を移動する魔法ではなくてテレホンカードによる帰還に頼るしか無い。 聖杯を手に入れれば問題はないのだが、元から願いを叶えられない未来も想定しておくべきだ。 茶番だがそもそも願いを対価無しに叶えようとするのが茶番であり愚かであったのだ。 同じ結末を迎えるのは飽きた、次なる世界を理想郷にするためには無茶だろうが奇跡を掌に収めるしか無い。 そのためにはエレンからサーヴァントを奪い取るしか無い。彼の従者のクラスは不明だが時間が無いのだ。 元よりあのキャスターよりはマシだろう。 扉へ振り向くが彼が到着するにはまだ時間が掛かりそうである。 ■ それは心に安らぎを与えてくれる優しい音色だった。 学園から離れ、比較的森林が多い地帯へと避難し休憩を取っていた。 孤独の女王の魔の手に触れないための措置だったが、正解だった。 あのまま学園に残っていれば間違いなく戦闘に巻き込まれ無駄な血を流していただろう。 戦闘を行うことに文句はない、此方としても願いを求めて参加しているのだ。向かって来る敵は倒すまで。 だが無駄な血を流すことには繋がらない。戦力の浪費を好んで行うほど馬鹿ではない。 絶対的な軍略があれば常に優位に立てるだろうが生憎奇跡の伝道師たる零の仮面はこの場にいない。 現に居たとしても今のカレンではルルーシュに信頼を置くことは難しく、彼女と彼には時間と距離と対話が必要である。 嘘の仮面と真実の人間。 優しいことだけでは回らない世界、真なる平和と理想郷を勝ち取るためには聖杯を手に入れなければならない。 (ルルーシュ……) 無論対話が必要なだけであり、完全に彼女は彼を見限った訳ではない。 しかし他の参加者にとってルルーシュ・ランペルージの存在はどうでもよく、そもそも認知していない。 紅月カレンと言う参加者の来歴や日本とブリタニアの関係、黒の騎士団の活動やゼロの存在など知る必要がないのだ。 どんなドラマがあろうとそれは彼女の物語であり他人にとってそれは興味の無い幕間以下の雑音に過ぎない。 勝たなければ世界が危ないだの日本に未来は無いだの……他の参加者からすれば戯言なだけ。 世界にはキーパーソンが存在する。 物語の主人公は自分自身ではあるが、運命には台本のようなものが存在しており、残念ながら活躍度合いは個体によって別れてしまう。 総ての中心になる幻想殺しや偽りの仮面を付けた優しい悪逆皇帝。 幾度なく時間を渡り世界を救った覚悟在る青年と世界を包み込み座に到達した救済の女神。 世界の数だけ物語が在り対極的に見れば其処には主人公『格』と呼べる存在がある。 数多の世界が綴られた聖杯戦争において主人公は存在するのか。 結論から言えばそんなの知ったこっちゃない。の一言で総てが終わってしまう。 世界の運命を背負っていようが、大切な存在が居ようが、叶えたい願いがあろうが此処では一人の役者に過ぎないのだ。 お前のドラマは俺には関係ない。 聖杯戦争に綺麗事は必要なく、血を流し最後に立っていた存在が願いを叶える。ただそれだけである。 そんな殺伐な世界で流れるオカリナの音色は紅月カレンの心に細やかな安らぎを与えていた。 適当な切り株に腰を下ろし今後の方針を考えていたが正直、詰まっている。 他の参加者を倒すにしても総てが初見では対策も戦略も練るには情報不足所ではない。 これまでの戦い総ての頭脳はゼロが担っていたこともあり、孤立である聖杯戦争では正面から戦うだけでは無駄な被害を被るだけ。 だが彼女が勝ち残るには戦うしか無い。つまり彼女らしく正面から倒していくしかないのだ。 「この曲……とても吹き慣れてる感じがする」 決意を決めたところで流れてくるオカリナの音色は己の世界を創造するように表現されている。 創作とは表現の塊であり音楽であろうが文章であろうが彼らは仲間だ。 文章でただ一発殴る動作だけでも人の数だけ表現があるように音楽もまた創作の一種。 譜面通りに吹いてもそれは最低限の音楽であり、自分の色を付着するには己の世界を音色に乘せて表現するしかない。 セイバーが吹くオカリナは優しくて、何処か懐かしさと寂しさを感じさせる音色であった。 まるで遠く離れた存在を感じるように、優しくて、懐かしくて、寂しくて、それでも絆は此処にあるような。 「私はそんなに音楽は知らないけど、やっぱこの音色が好き」 相手を持ち上げるために捻り出す感想ではなく、自然と出てくる偽りのない言葉。 演奏を終えたセイバーにカレンは何度聞いても飽きない創造に感心とも言える感想を告げた。 その言葉に対し、彼は優しい笑顔を見せるとバイクに跨り、エンジンキーを回す。 勇猛なる馬のような雄叫びを、エンジンを吹かしながら主へと視線を移し、後部座先に手を置いた。 「……そろそろ行こう、って話だよね」 彼の動きに対し一切の文句を言わずカレンは切り株から腰を上げるとバイクへ向かった。 森林の静けさ漂う環境から立ち上がり彼女たちが向かうは一度退避してきたあの場所である。 「私は日本を取り戻す――だから」 聖杯戦争に身を投入したのだ。 どれだけ策を練ろうと一介の兵士に出来ることは唯一つ。 戦うことだ。 ■ 学園の職員室。 小萌先生の席に座っている暁美ほむらは再び聖書を片手に取りながら、エレンとの対話について考える。 「外国の少年……クラスが一緒だから同い年だとは思うけど」 年齢詐称の可能性もあるが同じクラスに在籍しているため同年代と考えるのが一般的であり理想である。 つまり日常世界に置いては対等な関係であり、接し方は普段男子生徒と会話する要領で問題ないだろう。 「……普段はそんなに男子生徒と会話していないわね」 と言いたい所だが暁美ほむらはお世辞にもコミュニケーション能力とやらが高くない人間である。 無関心を装いつつも実際には接し方が解らない難しい年頃な少女だ。 それは彼女が長い間病気で学校に通っていないことも影響しているが、含めても致命的である。 心を開ける人間は数える程しかいなく、『現在の彼女が心を赦す人間は誰一人として存在しない』のも辛い所。 鹿目まどかに真実を告げようが、彼女に要らぬ心配を掛ければそれこそ契約への引き金となってしまう。 美樹さやか、論外。 「まぁ何とかするしか無いわね。私にはサーヴァントが必要、これに変わりはないから」 天戯弥勒の言葉を信じるならばサーヴァントを失ったマスターは六時間後に灰となりこの世から消える。 信じるか信じないかは自由だが、彼にとって嘘を憑くメリットを考えた場合特段見当たらないので真実と考えてよい。 早急にサーヴァントを手に入れる必要があるため、エレンとの交渉に失敗は許されないだろう。 「方舟、ね……」 気分転換の感覚で聖書に目を通す彼女。 開いていたページにはノアの方舟が記載されており、耳にしたことのある単語であった。 仮に方舟が在るならば神話通り自分達を残酷な世界から運び出してくれるのだろうか。 鹿目まどかと共に魔女の存在しない、誰も不幸にさせない理想郷へと運んでくれるのだろうか。 もう一度心の底から笑顔になれるあの時間をもたらしてくれるのだろうか。 「なんて……ありもしない方舟に未来を託そうと思うなんて末期だわ。 気を引き締めなさい暁美ほむら。私は奇跡をもう一度起こせるチャンスがあるんだから」 「なら方舟とやらに乗ってみるか、暁美ほむら」 空気が変わる。 辺りを包んでいた気の流れが一斉に同じ方向に統一され一片の狂いもなく焦点を彼に合わせた。 突然職員室に現れた彼は意味不明な言葉を呟きながら暁美ほむらに一歩近づく。 彼女は何も言わずに変身し、何時でも魔法を行使出来る状態へ己を持っていった。 何も言わなかったのではない、突然現れた彼に対し言葉を発せず、反射的に己の危険を感じたのだ。 理屈よりも先に本能が働き、言葉よりも早く行動し、己を契約者の真命たる魔法少女へと変身させたのである。 「天戯弥勒……!」 現れた主催者に対し何も考えずに拳銃を構え銃口を彼の額に合わせ何時でも引き金を弾けるように。 「腕が震えて……いない、か。 まぁそう構えるな。何もこの場で殺すなんて思っていないからな」 「それは逆に何時でも殺せると捉えていいのかしら」 「随分と強気だな……解釈は任せるさ」 最初に見かけた時は大分印象が変わる、そう思うぐらいに天戯弥勒の態度は軽い。 脳内に直接声が響いてきた時よりも重さを感じず、それでも完全に砕けきっている訳ではないが、 まだ会話が出来そうである。 引き金に指を引っ掛けたまま、暁美ほむらは彼に話し掛けた。 「突然現れて何のようかしら」 「方舟に乗ってみる気はないか……そう言った筈だが」 「冗談にしか聞こえない」 「あぁ。冗談だからな」 薄気味悪い笑みを浮かべながら天戯弥勒は暁美ほむらに返した。 その不適で何を考えているか解らない笑みはまるでキャスターのようで彼女の心は必要以上に苛つく。 今すぐにでも発砲したい所だが謎の多い聖杯戦争について言及出来るまたとない機会である。 己の荒波を鎮ませ彼女は冷静さを装い口を動かした。 「もう一度聞くわ。何しに来たのかしら」 「俺は監督役のようなものだからな。参加者の前に現れても構わないだろ」 「監督役を司るなら干渉はいいのかしらね」 「干渉するつもりはない。それに監督役と言ってはいるが俺は聖杯戦争の行く先を見つめ、選ぶだけだ」 彼女をおちょくるような態度で舞台の行く末を語る道化師の真意は未だ掴めず、霧に包まれている。 サーヴァント曰くイレギュラーなこの聖杯戦争。先が読めず、正直に言えば不安が心を埋め尽くしているのだ。 それなのに嘘か真かも解らない話を始める天戯弥勒に対し、暁美ほむらは戸惑ってしまう。 照準が逸れないようにグリップを強く握る。頬を伝う汗は誰も拭いてくれない。 「選ぶ……? 何を選ぶ……?」 思った言葉がそのまま口から漏れだし、静かな職員室の隅々にまで響き渡る。 聖杯戦争で勝ち残った者が願いを叶えられる、ならば選ぶとは一体何を選ぶと言うのだろうか。 優勝者を選ぶつもりならば参加者同士の殺し合いは茶番に成り下がってしまう。 主催者が願望器を捧げる対象を選ぶならば最初から選べ、私達を巻き込むな、誰だって思うのだ。 娯楽に付き合ってる暇は無く、優勝したとしても天戯弥勒に気に入られていなければ願いが叶わない。 そんな事実が真実ならば聖杯戦争何て茶番だ。 最初から夜科アゲハとやらと勝手にタイマンで喧嘩して、知り合い同士で馬鹿をやっていろ。それだけの話しである。 「解釈は任せる……が、お前たち参加者が意欲を見せないならば俺が動くしか無いだろ? もうすぐ日が変わると言うのに脱落はサーヴァントが一騎だけだ、ペースが遅過ぎる。 あまり俺を失望させないでくれよ? 何のために再現したと思っているんだ。 願いがあるならば他者を喰らい、その身を汚してでも、悪魔になってでも聖杯に総てを捧げろ――期待しているぞ」 彼が発する言葉総てが意味不明であり、しかしながら総てに得体の知れない何かが篭っている。 質が悪い。質問をしたところで解答など返ってこず、代りに新たな疑問が生まれるだけであった。 何か一つでも有益な情報を聞き出そうとするも、時は止まってくれない。 目を離したつもりは一切ない。しかし彼女の前から天戯弥勒は消えていた。 一陣の風が吹いた訳でも無く、ドロンと言ったような煙幕も発生していない。 まるで最初から存在していなかったかのように彼は職員室から消えていた。 彼は結局の所、気まぐれか何かで目の前に現れたのだろうか、暁美ほむらは考える。 方舟の冗談から始まり監督役の努めとして参加者の動向を見に来ていた。これだけならばまぁ納得は出来る。 しかしキャスターと共に遊園地で監視していた時、天戯弥勒を捉えていた映像は無かった。 干渉するのが不自然で無ければ他の参加者に接触している映像が一つぐらいは撮れていても可笑しくない。 寧ろ不自然である。このタイミングで自分の前に現れる意図が不明なのである。 関係は不明だが始まりの儀式と仮称する天戯弥勒の宣言。 その時、彼の事を知っているのはおそらく夜科アゲハただ一人だ。 彼の前に現れないで、暁美ほむらと言う一人の魔法少女の前に現れる理由が全く解らない。 「監督役の努めならサーヴァントの一人や二人持って来い……言い過ぎかしら」 そうなら大変有難いのだが、文句も言っていられまい。 サーヴァントはこの後手にいれれば問題ないのだ。そうでなければ死んでしまう。 灰になる未来など認めない、黙って帰る選択は最後まで取っておきたい。 開かれた職員室の扉へ身体を向かせると彼女は口を動かした、 「初めまして――エレン・イェーガー」 ■ 館に帰還するため歩いていたウォルターを止める声が一つ。 姿や気配は一切見せず、声だけが彼を止めるために響いていた。 背中に隙など存在せず、後を付けられていることも無い。不意に声を掛けれる存在など一つしかないだろう。 「これはレミリアお嬢様……貴方も帰宅途中でしたか」 ライダーとの交戦を終えた後、それぞれ動いていた闇夜の主従が合流を果たす。 本来ならば館で合流する予定であったが、早くなった所で問題はない。 「首尾はどうかしら」 「血液の確保は出来ていませんが……アーチャーを一人確認いたしました。 マスター共に若い日本の学生でしょうな」 「そう……やっぱり学園に向かった方が盛り上がるわね」 「ええ私もそう思います。ですが、やっぱりとはニュースを指しているのですか」 「それもそうだけど……夜科アゲハと遭遇したの」 それぞれの成果もとい出来事を簡潔に交換し、現状とこれからの策を考える。 学園で起きた荒れ事に関しては夜が生業の彼女達にとって絶好の狩場と成り得る、吸血鬼ならば。 闇夜を主役に活躍する彼女は日中よりも更に絶大的な戦闘能力を保有する。 事件現場である学園に向かえば少なくとも戦闘痕から他の参加者の手掛かり或いは消息が掴めるかもしれない。 そして参加者の多くが学生、説いう仮設が語らなくして生まれつつ在る。 最初に出会った海賊のサーヴァント、そのマスターは男の学生であった。 ウォルターが遭遇したアーチャーとそのマスター、両者日本の学生風な容姿であった。 レミリアが邂逅した夜科アゲハ、現状この聖杯戦争の裏に最も近い学生。 「夜科アゲハ……天戯弥勒に唯一面識がありそうな参加者と言えば解るよね」 夜科アゲハ。 この言葉を耳にしたウォルターの口角が自然に上がり、夜に緊張感を齎す。 聖杯が言い伝え通りならば、それを持ち主かのように振る舞う天戯弥勒は何者なのか。 そもそも聖杯戦争のシステムを用いて本当に願いが叶うのか、或いは叶える気が彼に在ると言うのか。 聖杯戦争に潜む闇、即ち天戯弥勒の真意に近づけるたった一つの鍵。 それが夜科アゲハだ。現状唯一と思われる主催者との関係者であり、接触は是非とも行いたい所。 「これは興味深い」 「えぇ。彼や天戯弥勒はサイキッカーと呼ばれる超能力者。 聖杯については……彼の知っている天戯弥勒からは聞いた事がない」 「つまり、有益な情報は持っていない、と」 「彼も情報が欲しいみたい。 でも、天戯弥勒が接触する可能性が高いのは間違いなく彼よ。勿論生命は奪っていない。 貴方が言っていた学園に使い魔を放ち探索と罠を張る案だけど――直接行った方が早くないかしら」 提案に意義を唱える邪教徒などこの場には存在しない。 元よりレミリアとウォルターの二人だけ、レミリアの提案に意義を唱えるとしたら彼しか発言権を持たない。 しかし彼がそんなつまらない言葉を発する訳もなく、夜に相応しい妖気と艶を含んだ笑みを浮かべ、無言で彼女に頷く。 戦争が始まる。否、既に開戦は告げられており、戦人が勝手に微温湯に浸かっていただけだ。 願いを対価無しに叶えるなど奇跡、それも『これは偶然ではなく必然だった』『まるで最初から運命が決まっていた』。 『仲間たちが掴んだ勝利の鍵』『意地で掴みとった唯一無二の奇跡』などと言った創作の妄言ではなく真の奇跡。 本来在り得ないであろう一種の世界線の話を無理矢理にでも己の世界に引きずり込み、座に憑かせる強行だ。 ウォルターもレミリアも。天戯弥勒と夜科アゲハでさえ本来の座では聖杯を手にすることがない。触れることすらない。 これより吸血鬼は夜を舞台に学園へ向かう。 其処に戦はあるのか、刺激はあるのか、そんなことはどうでもよく、脚本家にしか解らない。 その脚本家の存在も危うい此度の聖杯戦争に当たり前や常識と言った概念は存在しなく。 先を見据えることなど参加者には不可能であり、泥に塗れてでも聖杯を掴み取る覚悟が無ければ死んでしまう。 吸血鬼が求めるのは――何だ。 聖杯戦争に召喚されたサーヴァント、其処には聖杯を求める戦でしかない。 所詮は二度目の生だ、ならば骨の髄まで愉しんでも構わないだろう。誰も止めやしないのだ。 愉しめ、常夜総ての主役はこの吸血鬼に在る、夜は私の時間だ、雑兵は下がれ、力無きものは砕け散れ。 「早速他の参加者に遭遇するなんて……運命って奴かしら」 学園に吸血鬼が到着した時。 時を同じくして一台のバイクが校庭に停まり、二人の男女が現れた。 心が踊る、思えば戦争と銘を翳しているが、戦闘を行ったのはライダーとの一戦のみ。 欲している、欲しているのだ。身体が、生命が、魂が刺激を求めて疼いている。 夜は私の時間。 この闇こそが私を一番美しく輝かせてくれる最高の瞬間だ。 時計の針を止めて、永遠の刹那をこの光に弱い白く鮮やかな肌で一生抱きしめていたい。 「……ウォルター。あのサーヴァントは私に頂戴」 「かしこまりました」 得物を前にし高ぶる鼓動は抑えようもなく、得物を狩ることでしか終わらない。 自分でも何故高揚しているか解らず、普段とは言動や思考も違ってくるかもしれない。 本来在り得ぬ話ではあるが、レミリアは主であるウォルターに命令を下す。彼も承諾した。 対する男女の主従は自分達の発言の有無に関わらず話を進める敵のサーヴァントに対し呆れとも言える表情を浮かべた。 戦闘することに意義はないが、もう少し正規な順序というか、話そうと思わないのか。 思わない、少なくとも紅月カレンは、黒の騎士団には必要なかった代物だ。 目的のためならば手段は選ばない、実質NPC以外に被害を与える存在が居ないのだ、思う存分戦える。 彼女は戦闘狂の類ではない、けれど叶えたい願い在る故に、この戦に馳せ参じた。 緑のセイバーが盾と剣を取り出す。 その剣、真名を開放していないため、本来たる輝きを宿していない。 だが宝具だ、その逸話、成り立ち、業……真の力を開放していなくてもサーヴァントが操る最高の武具だ。 油断など出来ず、したところで自分に得など一切存在しない、そう思い慢心しないランサー。 「今夜は愉しい夜になりそうね」 言葉と同時に片手をセイバーに翳すランサー。するとその腕には光が収束し始め、一つの球体が完成していた。 魔力から構成されるエネルギー体を弾丸のように飛ばしセイバーの身体を貫かんとする。 常人では目に捉えられないような速度で進む弾だが、サーヴァントにとって見切れぬ速度ではない。 マスターであるカレンに被害が及ばぬように数歩前に出ると、セイバーは盾を突き出し弾を防ぐ。 辺りに音が響くがダメージの類は一切発生しておらず、盾に直撃した弾は消えていた。 「ならこれはどうかしら」 翼を広げ空に舞い上がったランサーは両腕を突き出し再度、魔力を収束させる。 その密度は単発であった先ほどよりも濃く、色彩も深くなり夜に輝く一つの星と見間違えるほどに。 収束する魔力から察するに攻撃は単発ではなく複数、それも一撃二撃といった優しい数ではなく無数の嵐。 「セイバー……下がっていろ? ……うん」 カレンの前に腕を伸ばしこれ以上の踏み込みを抑制し、後退させる。 一発ならば防げるが嵐となると話は別だ。盾では防ぎきれる面積に限界が生じてしまうのだ。 己は魔力に対する力が備わっているため直撃しても問題はないだろうが、マスターは別である。 サーヴァント同士の戦いで守りながら戦うのは自分にも、そしてマスターにも危険を伴わさせてしまう。 しかし後退させたところで目が届く範囲に留まってもらわなくてはならない。闇討ちに対応出来ないから。 マスターを信頼していない話ではないが、自分が動けない時に他者に襲われれてしまえば救援には迎えない。 敵のマスターは戦闘に参加する意思を見せていないが油断と過信は禁物である。 老体と云えどサーヴァントに対峙しても恐怖を見せず、此方の動きを目で追っており、漂わせる空気も一般の其れに括れない。 カレンを一人にしたとして、老体が仮に攻めの動きに出る可能性を考えると……どちらにせよ危険には変わりない。 「さぁ遊びましょうか、剣士さん」 剣を握る手に力を込め月を背景に浮かぶ紅い少女を見つめる。 セイバーの視線と全神経は彼女に注目しており、余程のことが無い限り視界から消えることはない。 敵に背中を向けることもなく、彼は駆け出し荒れ狂う弾幕の中へ己の身を投じた。 「弾幕に自分から突っ込むなんて面白いことするのね……!」 躱さず単身乗り込んでくる輩は生前の記憶でも珍しく、心が躍動する。 戦いを楽しんでいるのだ。次はどうする、どの手でくる、どうやり返せばいいのか。 思考の渦が戦を中心に渦巻き、セイバーとの戦のみに全思考が傾いているのだ。 サーヴァントになってから戦闘に好意的になったような気がするが、今はそんなことを考えている時間も惜しい。 セイバーは盾を構えながら弾幕の中を走り、ランサーの元へ己の身体を動かす。 盾で防ぎ切れない弾幕は剣で受け流し、跳ね返し、斬り落とす。 嘗てその刀身に魔力を宿し、一種の魔力放出として放っていた剣ならば実体を持たぬ塊も斬れるのだ。 弾幕とて例外ではなく、■■の剣に恥じない力を発揮し、単身ながら嵐に走るセイバーを守る攻防一体の武具。 弾幕が数発身体を掠るが気にするほどの傷は受けない、対魔力なるサーヴァントの力によって。 極論防がなくてもいいのではないか、しかし油断と過信、そして慢心は足元を掬われる原因となってしまう。 有利な状況に酔いしれ他者を見下し、それでいて足元を掬われ結果として窮地に立たされては笑いものである。 気付けばセイバーは何一つ手を抜かず、大地を飛び、ランサーに対して剣を振ろうとしていた。 刀身に月が反射し闇夜を美しく照らす。剣の美しさと月の灯り、暗い夜。 「――!?」 その刀身に反射する光の中に一つ、いや二つだ。 小さな、とても小さいが紅の輝きが二つ灯っており、その持ち主はセイバーが今正に斬らんとしている対象の少女だ。 小さな紅い瞳を輝かせ、口からは小さくも鋭利な牙のような歯を覗かせ、背景になっている月が演出を担う。 其れは闇夜に輝く孤独の女王、誰一人として触れることを許されない紅い吸血鬼。 危険を直感で察知し、逸早く斬り付けるセイバーだが弾幕によって剣先を物理的に流されてしまう。 剣の一振りは少女に当たること無く宙を斬ってしまい、彼女と違い飛行能力を持たない彼は落下するしか方法がない。 よって追撃は不可能であり、寧ろされる側の彼は身動きの取れぬ空中で来るであろう攻撃に備えんと武具を身体に寄せた。 「……?」 しかし追撃は発生せず、依然として少女は宙に浮かんでいた。 ドクン。 月並みで幼稚な表現ではあるが、その光景を見てセイバーの心臓は短く、強く跳ねる。 瞳に映るランサーは追撃することなく、ただ独り宙で嗤い、その右腕に魔力を集中させていた。 その密度は弾幕なぞ比ではなく、サーヴァントと呼ばれる故の規格外な魔力を宿らせている。 「今夜は月が綺麗ね。紅く見えちゃうぐらいに――冗談だけど」 血の如く紅い魔力が夜空を飾る星々のように数多の粒子となりて突き上げられた右腕に収束していく。 球体ではなく得物を捉え、その心臓を貫くような鋭利な形状へと紅い粒子が形を形成し始めた。 数は三つ、例え一つを防いで躱したとしても三つ分の攻撃を捌ききれるだろうか。 弾幕のような攻撃ならば構わないがそうもいかない――空気が変わった。 「初お披露目……私の力」 口から零れる言葉には笑みと感情の昂ぶりが込められている。 早く、あぁ早く。そうだ、今直ぐにでもこの魔力を開放し己がサーヴァントたる所以を証明して見せたい。 収束する力はその矛先を求めて、爆発寸前の火薬のように、得物を待ち侘びていた。 「逃げてもいいけど無駄よ……この槍は貴方を夜から逃さない」 三つの魔力はセイバーを裁く魔の槍となって上空に形成された。 突き上げた彼女の右腕が振り下ろされれば、審判の一撃は連撃となりて彼を貫くだろう。 「避けれるものなら避けてみて」 無邪気に嗤うように。 純粋な楽しみから生まれる好奇心を以ってランサー、レミリアは宝具を発動していた。 「月は貴方を見ている……この運命から逃れられるかしら」 放たれた三つの結晶――運命の槍はセイバーに吸い込まれるように推進する。 まるで最初から彼に刺さっていたかのように、何事も無いように彼一直線に飛んでいるのだ。 彼は察する、この一撃は躱せない。 何かが次元を歪ませているから。 セイバーは時の勇者と讃えられたとある世界の救世主である。 時空を行き来しハイラルを包む闇を祓った勇気の黄金三角を宿した存在である。 魔力や異能に耐性或いは関わりが在ったため、歪んだ槍の異常さを彼は察知した。 その紅蓮たれる魔力で構成された紅い槍、小柄な少女、闇夜に浮かぶ赤い瞳――英霊の候補は大分絞られた。 そしてランサーはその真たる名を開放した。 神鎗――スピア・ザ・グングニル。 オーディンが所有していた逸話を持つ神話の神鎗の名を宿したレミリア・スカーレットの宝具。 血のように紅く、後ろに聳える月までもが紅く見えてしまう程に濃い、濃い、濃い紅色。 紅――彼女の雰囲気から表せば赤の方が適切だろうか。見た目幼い吸血鬼はその幼さ故の不気味さを醸し出している。 手が滑っても許されるような、不安や失敗さえも正当化してしまうような愛嬌さ。 「踊りなさい――言ってみたかったのよね」 幾ら可愛く役者のように台詞を吐こうが、セイバーの状況に変わりはない。 彼は迫る槍から感じる禍々しさを直感で感知し之は避けれぬ必中の裁きと認識し盾を背中に戻した。 宝具となれば弾幕のようにはいかず、防げる保証など存在しない。 永劫の旅を共にしてきた盾であるが、宝具へ昇華されていない現状を考えると槍を防げるとは思えない。 ならばどう対処するか。 因果の逆転を兼ねる槍を回避するのは至難の業であり、突発的に行える芸当ではない。 直前とは言え、その性質に気付けただけでもよしとするしかなく、黙って貫かれるよりはマシである。 だが彼が取る行動は最初から決まっており、宝具を粉砕するのは同じ宝具だ。 「――っ」 その輝きは常夜を照らす永劫たる黄金の輝き。 媒体の大きさは月よりも遥かに小さいながら、その輝きに吸血鬼は声を漏らし瞳を閉じる。 何だあの光は。 何だあの輝きは。 何だあのサーヴァントは。 「魔を祓う……剣?」 何だあの剣は。 瞳を閉じたい程に、目を背けたい程に輝く剣。 高まる魔力の密度は通常の其れとは違い、周囲だけが別次元に感じる程の神々しさ。 腰を落とし、剣を後方へ伸ばすように構え迫る神の三撃槍を見つめる時の勇者。 一撃を放つために大地を削りながら後退する軸足に体重を乘せ――溢れる魔力を今此処に開放する。 まず一つ目の槍は半月を描く軌道の剣先によって裂かれ、構成していた魔力が粒子のように夜を赤く染め上げた。 続く二撃も動き続ける剣が横から一閃し行き場を無くした魔力は雪のように儚く大地に赤を落とす。 三撃目。 二撃を斬り捨てた勇者はその勢いを殺さず、身体ごと動かし己を剣と共に後ろへ。 再度正面を見た時、それは回転の力を剣に上乗せした勇者が幾度なく愛用した伝家の宝刀。 「運命を超越して無傷……その『退魔の剣』は流石と言うところかしら、ハイラルの勇者さん」 クルクルと子供が木の棒を拾い、振り回すように赤い槍を回すレミリアの表情は悪い笑顔。 宝具を正面から潰されたことに対して怒りや悲しみではなく、純粋なる興味と楽しみが顔に浮かんでいる。 噂に聞く退魔の剣とやらをこの目で見れたこと。 多くの世界で闇を祓い、人々に黄金の輝きと永劫たる未来を見せ続けたあの時の勇者で出会えたのだ。 本来有り得ない邂逅だ、こればかりはサーヴァント化したことを、聖杯戦争に感謝するしか無いだろう。 「ふふ……さぁて。この先はどうしま――そう」 これからどうしましょうか。 セイバーの険しい表情から彼も己の真名――までは判明していなくても近しい所まで辿り着いているようだ。 歴戦の武具の中から退魔の剣を選んだのだ、己が邪なる存在で構成されていると感じ取ったのだろう。 そしてその予測は確信に変わる。 「炎……生憎吸血鬼だけど私は其処まで弱くないの」 戦場に流れる激しい旋律は炎となって具現化しレミリアを多い囲む。 しかし吸血鬼と云えど、彼女にとって炎は然程脅威ではなく、この程度なら対魔力なる防壁で対応可能だ。 依然として空で嗤う少女の表情は黒い笑みであり、まるで何を見据えているような悪い瞳。 「私の相手もいいけれど貴方のマスター……大丈夫かしらね」 「――ッ」 弾幕と神槍。 迫る裁きと対峙していた時、セイバーの視界からマスターであるカレンの存在は消えていた。 少女の薄ら嗤いの籠もった言葉を耳にし意識が覚醒するように脳内は白く包まれ、彼は後ろへ振り向いた。 其処にはワイヤーによって右腕が血塗れになっていた己のマスター。 足は崩れ大地に腰を落としており、その近くには応戦したのだろうか拳銃は転がっていた。 セイバー自身、総てを目撃していないため何が起きたか分からないが、月夜の中に赤く光るワイヤーが物語る。 接近した執事がワイヤーでカレンの右腕を斬り付けたのだろう。迫る銃弾を回避する常人離れした身体能力を以って。 月明かりだけでは常夜総てを照らすのは無理があり、鋭利なワイヤーは肉眼で捉えることは出来ない。 故にカレンはウォルターに対処する術もなく、個人としての完成度は彼が圧倒的に上回っただけの話しである。 セイバーは即座に弓を構えると、予備動作無しにウォルターへ射出するが彼は矢を数歩下がるだけの行動で回避した。 追撃を挟まずセイバーは再度オカリナを吹き炎をウォルターとカレンの間に発生させ接触を断絶させる。 彼自身は走り出し無言でカレンを担ぐように広い上げるとそのまま学園内に向かう。 カレンは小さな声でありがとうと呟き己の無力さを噛み締めていた。 何も出来ずに傷だけを負った己が情けない、これでは願いを叶えるどころか朝日を拝めるのも危うい。 情けなくても声も出せないまま、セイバーに担がれながら彼女は学園の中へ踏み入った。 「お怪我は……要らぬ心配でしたかな?」 「見ての通りよ。貴方にも言っておくけど私に炎は効かないと考えてもらっていいわ」 「それを私に伝えてどうしろと?」 「さぁ、自分で考えることね……それと、私に気遣って彼女を殺さなかったことには礼を言うわ」 炎に包まれながら吸血鬼と執事は何かを含んだ言葉を交わす。 彼は本当に彼女を心配しているのか、彼女は彼に説明したのか忠告したのか。 闇夜にせせら嗤う声は真実か偽りか、聖杯戦争に置いて真なる敵は一体誰なのか。 「それにしても学園の中に逃げるのは悪手じゃないかしらね」 「血を辿れば居場所の特定も容易いでしょう」 炎を遮って追撃することも可能だが無理に追う必要もなく、レミリアは黙って彼らを見逃した。 最優のサーヴァントたるセイバーが相手だとお世辞も死合を有利に進ませるなど言えない。 けれど彼女は楽しんでいるのだ、その顔は嗤い、その心は初めての玩具を与えられた子供のように輝いている。 「狩りとは言わないけれど、彼女には此処で退場してもらいましょうか」 「ええ。あの傷では聖杯戦争を生き残るにも傷が深すぎる」 利き腕の粉砕は戦争において致命的な痛手となる、日常生活でさえ不便になるのだ、生命の賭博では邪魔にしかならない。 余程の馬鹿か筋金入りの夢追い人でも無ければ諦めて幕を引くだろう。しかし彼女はどの人間なのだろうか。 少なくとも拳銃を持ち込んでいる或いは所有している以上、事情に詳しいか裏側の人間だ。 ならば退けない理由もあるかもしれないが――此方には関係のない話しである。 「じゃあ行きましょう。 それにしても建物の中に入るなんて……ふふ。 このまま『館』の中で苦しむってのもそれはそれで愉しい結末ね」 槍を消滅させ、朽ちた魔力の結晶が雪のように舞い散る中でレミリアは学園を見つめる。 何を思って逃げたかは不明だし解るつもりもないが、もし、もしもの話しだ。 生命からがら逃げ込んだ場所が『吸血鬼住みし赤い館』だとしたら。 「どんな顔をするか愉しみで……あぁ、愉しみ」 喘息を漏らし潤いを秘めた小さい瞳を細々とさせながら彼女は――。 「避けなさいっ! ウォルター!!」 学園で一騒動が発生する少し前に。 架空世界の夜空を吹き抜ける影が一つ。 それは隼ではない。 子供が後部座席で妄想しながらガードレール等の上を走る忍者でもなく。 (――気持ちいい) 腰に纏った立体機動装置の重さを感じさせない程の爽快感。 遂に外に出ることが出来た開放感から少年は満面の笑みで夜空を翔けていた。 (溜まっててたモン全部ぶっ飛ぶぐらいには最高だ) トリガーを引く指の感覚も。 重力に引かれるこの感覚さえも己を興奮させる刺激となっている。 電信柱を掻い潜り、屋根の上を傳い、宙を蹴る。その姿は空想上の忍者とも捉えられる。 暗闇なのが幸いし、人々に感知されていないのが彼にとっての救いであった。 目撃され情報が拡散されれば一躍有名人となりエレン・イェーガーとしての知名度はこの世界において爆発的に上昇する。 そうなれば他の参加者から目を付けられてしまい、己を破滅へと導くことになる。 何のためにアサシンが彼を隠蔽させ続けたのか、総てが無駄になってしっまうのだ。 故に月明かりしか無いこの常夜は彼に味方しており、彼は堂々と空を飛べるということになる。 「アサシンには悪いことしたけど……俺だって黙ってるままじゃないんだ。 これじゃあ何のために聖杯――なんのために……?」 彼の自分に対する態度は正直に言って不愉快であり、理解に苦しんでいた。 圧倒的圧力で密室に閉じ込め必要以上の外部との接触を断たせる。 その癖に口数は少なくて、精神面を支えることも無ければ、外出を強制的に阻止してくる。 エレンにとってジャファルは気に食わない教官と同等かそれ以下の捉え方をしてしまう存在になっていた。 「……俺のためだってのも解る」 その態度と行いが自分を守ることだとエレンは理解していた。 彼が部屋で腐っている時、とある夢を見た。 その青年は捨て子で、拾われた人間は心を何処かに忘れてしまった闇の住人。 冷徹なる殺人鬼へと育てられた彼は感情の代わりに闇の業を身に纏ってきた。 依頼があれば王族だろうと殺し、組織の人間だろうが命令が下れば殺害してきた。 そんな殺人鬼の元に一人の少女が現れる。 その少女は優しく、太陽のように眩しい笑顔を持った闇の世界とは対極の存在であった。 彼女と行動を共にしていくにつれ殺人鬼は言葉にし難い暖かい感情を感じるようになる。 そんな彼女を殺害する命令が下った時、彼の中で何かが動き始めた。 来る決戦の月夜。 彼は彼女に暗殺命令が下されたことを話し――組織と敵対する道を選んだのだ。 きっと彼にとって初めて感情に身を任せた行動だったであろう。理屈では説明出来ない何かが彼を動かした。 「誰にでも大切な人はいる……っ」 その後は思い出す気にもならない。 決して訪れぬハッピーエンド、運命分岐点は彼の在り方を変えた。けれど、最後まで幸せにはなれない。 彼は血を浴び過ぎた、人を殺し過ぎた。 再び陽の光を浴びれる程真っ当な人生を送っていない、太陽を感じることさえ運命は許してくれなかった。 (ごめん) 心で謝る、念話は飛ばさず、思いは伝わらないがエレンは独り呟いた。 だが、彼は戻らない。気付けば学園の前に降り立ち、玄関から中に入る。 事件の影響もあって学園内から人の気配は感じず、お構いなしに土足で侵入し職員室を目指す。 所々ガラスが割れていたり、校庭にクレーターが出来ていたりと非日常を感じさせていた。 階段一つ一つを昇る足が軽い。 このまま天井と言う名の壁を突き破り天元と言う名の蒼穹へ飛び出してしまう程に軽い。 楽しいのだ。 彼は聖杯戦争に参加して日常を感じてしまった、巨人の存在しない世界を感じてしまった。 明日に怯えること無く、安心して眠れる世界を、優しい世界を知ってしまった。 ミカサやアルミンはいない。それでも彼はこの世界に一定以上の理解と感情を抱いてしまったのだ。 戻りたくても戻れない、いや本当あのか、戻る気がないのか戻れる気がしないのか。 「ふぅー……」 辿り着いた職員室前。 此処の中に入れば自分を呼び出した小萌先生が居る筈だ。 改めて考えると、先生の連絡一つで飛び出すのは異常であった。 学園でテロと同義級の事件が起きているなら尚更であり、行きたくも無ければ呼びもしないだろう。 罠だ。誰がどう見ても聞いても考えても感じても、罠である。 エレンは気付いていない、気付きたくないのかもしれない。 小萌先生は自分に接触してくれた数少ない存在である。 外出を許されぬ環境で日々過ごす変わらない一日を変えてくれる彼にとっての救世主である。 その一声が彼の起爆剤となりアサシンの言い付けを破るまでして行動するにまで至ったのだ。 それもあるが本当は。 聖杯戦争に参加してから初めて誰かに必要とされたのが嬉しかった。 誰一人として知り合いがいないこの世界は不安に包まれており、憩いの場何て何処にも無かった。 従者であるアサシンは口数が少なく、自分に総てを話してくれない不器用な男。 彼に総ての責任を押し付けるつもりはないが、自分を苦しめる大きな理由になっていた。 そんな環境の中で、自分を呼んでくれた小萌先生の存在は太陽のように輝いていたのだ。 必要とされているのが嬉しかった。この世界に自分の価値が在ったことが嬉しかった。 感じていたい、刹那の一時を永遠に抱いて噛みしめたい。 この輝きを更に浴びるにはこの扉を開ければいい、自分を待っていてくれる人がいる。 そして。 「初めまして――エレン・イェーガー」 彼の学園生活が始まった。 BACK NEXT 049 背に腹は 投下順 050-b 巨人が生まれた日 049 背に腹は 時系列順 050-b 巨人が生まれた日 BACK 登場キャラ NEXT 042 魔科学共存理論 天戯弥勒 050-b 巨人が生まれた日 043 裏切りの夕焼け アサシン(ジャファル) 045 右は楽園、左は―― エレン・イェーガー 暁美ほむら 047 Cat Fight!!! アーチャー(モリガン・アーンスランド) 048 神話前話 浅羽直之&アーチャー(穹徹仙) ウォルター・C・ドルネーズ&ランサー(レミリア・スカーレット) 紅月カレン&セイバー(リンク)
https://w.atwiki.jp/itan_seihaisensou/pages/249.html
キャラシート(マスター用) 【名前】 ニロ 【サーヴァント】 【性別】男 【性格】 正義感に溢れて、真面目で優しい性格。 しかし時々何かに戸惑うような不安げな素振りを見せる。 【出典】 オリジナル 【属性】 善・中立 【ステータス】 筋力 A 耐久 C 敏捷 D 魔力 B 幸運 E 供給 E TOTAL 160 【詳細】 とある仕事を引き受け今回の聖杯戦争に参加する事になった40代前半の男性。 無意味な戦いは好まず「聖杯戦争」と言った現実味離れた事も一切知らず、ただこの戦いに生き残る事こそがその「仕事」の達成である為参戦した。 ____と言ってるが別に彼に目的がある。 何か過去にこのような戦いに出て「死んでいる」。 そんな感覚が彼の身体にこびり付いていた。 「聖杯戦争」という聞きもしない言葉にも違和感がない、何よりそれがどのような物なのか、漠然とながらも知っている。 そしてういつから身体に現れた謎の能力。「自分自身じゃない何か」になる現象。 だから彼は探し、聖杯に求める。 「自分は何者なのか」と。 『変身』 彼の任意で姿を変える異形の姿。 自らの「死」が原動力であり武器や防具となる。 『自分殺しの大剣』 かつて心臓を大剣によって一突きされ死んだ事から編み出された能力。 血と黒い錆に塗れた大剣を相手に振り払う。 (クリティカル/2 回避/4の特殊ダイスを使用) しかし使えてもこの戦いに1回程か。 人間誰しも死の苦しみを何回も経験すれば気が狂ってしまうものだ。 しかし彼は人間ではないかも知れない。 『人間ぶる為』にこの能力に制限を掛けているのかも知れない。 [画像必須]
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/416.html
【英数字】【あ行】【か行】【さ行】【た行】【な行】【は行】【ま行】【や行】【ら行】【わ・を・ん】 【二次二次】 当ロワ、第二次二次キャラ聖杯戦争の一般的な略称。 二次聖杯2nd、新二次聖杯など、幾らでも名付けようがあった中、敢えて、“二次”が連なる企画名になったが故の略称。 また、初代二次キャラ聖杯戦争が完結済みのため、向こうを初代と称し、こちらを単に二次聖杯と呼ぶこともある。 とはいえ二次聖杯という略称は初代が本家であるため注意が必要。 このロワのひな形になり、完結を成し遂げた初代に敬意を表しつつ、二次二次も頑張っていきたいところである。 【日常パート】 第二次二次キャラ聖杯戦争の特徴の一つ。 参加者(及び主催者)のみで行われる普通のパロロワと違い、聖杯戦争ではNPCたちが日常を営む街で殺し合いが行われている。 予選時においては参加者であるマスター達も記憶を封印され、役職を割り当てられNPCたちと混じっていて生活していた。 名簿が支給されていないこともあり、誰がマスターか参加者たちは当初分からない状態にある。 そのため、日常生活を続けて自身がマスターであることを隠しながら、他のマスターを見つけるという戦術を取る組が自然と多くなった。 主に朝昼は割り当てられた仕事や学業による日常編及び斥候や策謀、夜が探索や戦闘という割り振りである。 戦争を夜に行うことはペナルティ回避のためにNPCを巻き込まないで済む為二重に合理的でもある。 無論、例外も存在し、マスターの正体が割れだせばNPCの振りをする意味もなくなるため、日常パートも減っていきかねないのだが。 尚、一般的なパロロワにおいても、バトルや謀略、考察話だけではなく、ギャグや恋愛、ほのぼのといったSSは投下されるものである。 しかしながら二次聖杯では学校に行ったり勤務をこなすなど、文字通り日常が組み込まれているといえる点が珍しい。
https://w.atwiki.jp/2jiseihaisennsou2nd/pages/555.html
角笛(届かず) ◆ysja5Nyqn6 世界は広いが 世間は狭い 配点(偶然、必然、運命)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 01/ 聖杯問答(門前払い) バスを乗り継ぎ、新都から深山町へと移動する。 目指す場所はエリア【D-5】の一角――裁定者たちが拠点とする、もう一つの教会だ。 そこにいるはずのルーラー達に、東風谷早苗は聖杯の是非を問おうとしていた。 そんなマスターの隣に座りながら、アーチャーのサーヴァント、アシタカは窓の外を眺めていた。 その理由は二つ。 一つは警戒のため。そしてもう一つは、今自分たちが乗っているバスについて考えていたからだ。 このバスという乗り物は、移動手段としては非常に優秀だ。 一度に十人以上の人間が乗車でき、移動時の振動も少なく、その速度も速い。そして何より疲れ知らずだ。 また鉄で構成されたその車体はそれなりに頑丈であり、街中におけるその利便性は騎馬にも勝るだろう。 だがこのバスには、それ相応の欠点も存在する。 まず道路上でなければその安定性を発揮できず、さらにその巨体故に小回りが利かない。 また多少の空腹であっても無理をすれば動ける馬と違い、燃料が尽きればただの鉄の箱になり下がる。 そして何より、その運用は社会秩序に縛られている。 発車時間、走行位置、走行速度、停車地点、停車時間。その全てが定められており、原則としてそれを外れることは許されていない。 つまり、好きな時に、好きなように利用できる乗り物ではないのだ。 それらの欠点は、戦闘を想定して考えればより顕著になる。 もし今このタイミングで襲撃を受けてしまえば、自分たちは一瞬で窮地に立たされるだろう。 なにしろ、このバスの手綱を握っているのは、NPCである運転手だ。襲撃に対する咄嗟の対応など、望むべくもない。 仮に自分たちが即座にバスを降車しようと思うのなら、窓ガラスを叩き割って飛び出すしかないのだ。 しかし、その行為にも危険が伴う。 地面はそれなりに柔らかい草原ではなく、非常に固いアスファルト。加えてバスは高速で移動している。 物理的ダメージの及ばないサーヴァントならともかく、当たり前の人間であるマスターの場合、大怪我をする危険性がある。 そして当然、そんな事をすれば注目を集めることに繋がり、他のマスターやサーヴァントに目を付けられる可能性が高まる。 また、これがバスではなく自家用車であっても、その危険性は変わらない。 確かにその手綱は自由に扱えるようになり、襲撃には対処しやすくなるだろう。 だが規律から外れた走行を行なえば、今度は社会秩序自体に目を付けられることになる。 何しろ道路にはNPCの乗車する車も走っている。走行方向や制限速度を破れば、彼らに迷惑を掛けてしまうのだから。 これが夜間であれば、NPCの車も減り、多少は無茶な走行もできるだろう。 だが今度は、車のエンジン音によって自分たちの存在を知らせることに繋がりかねない。 ……まあもっとも、自身の騎乗スキルには車などの機械は該当しないため、車を運転する事自体がまずないのだが。 アーチャーのクラスにある身としては、注目を集めるようなことは絶対に避けなければならない事態だ。 何しろ自分には、一撃の火力というものに欠けている。狙撃による暗殺を狙うのであればともかく、真正面からの戦闘には向いていないのだ。 ヤックルがいれば他にやり様もあったのだろうが、現在のクラスでは呼び出すこともできない。 つまり今の自分には、セイバーやランサー、バーサーカーと言った、近接戦闘を得意とするサーヴァントが天敵といえる。 だからこそ、今も気配感知のスキルによって周囲を警戒しているのだが。 幸いにして、いくつかサーヴァントらしき気配はあったが、こちらに近づいてくるような気配は感じ取れなかった。 だが自分はアサシンと違い、気配遮断スキルを持ってない。今の自分と同様、気付いたうえで無視した可能性もある。 更には、感知範囲外から攻撃できるアーチャーや、気配を隠せるアサシンといったクラスも存在する。 今の時間帯は利用客が多いため襲撃される可能性は低いが、よほど急ぎでもない限り、今後はバスの利用は控えた方がいいだろう。 アシタカはそう判断し、マスターである早苗にそう伝えるとともに、一層車外への警戒を強めた。 ………その際に、 ―――この街は……いや、この時代は、もののけはおろか、自然の気配さえも希薄なのだな。 森と共に生きた者としての、そんな感傷を懐きながら。 † ―――それから十数分後。 バス停から降車した早苗は、教会へと通じる坂道を、考え事をしながら上っていた。 今後は、バスの利用は控えた方がいい、とアーチャーは言った。 説明されたその理由と危険性は、早苗にとって思いもよらないものであった。 幻想郷に来るまでは現代社会に生きていた早苗にとって、バスと言うのはごく日常的なものだった。 時折テレビや新聞のニュースなどで事故があったというのは聞くが、それは画面や紙面の向こう側。今一つ実感の湧かないものだった。 だからなのだろう。 早苗は自分が乗っていたバスが襲われるかもしれないなどとは、全く想定していなかったのだ。 その感性は、今も変わらない。 考えてみれば当たり前のこと。テレビや映画で観た事のあるその場景は、だからこそ現実感に乏しい。 その危険性を説明された現在にあっても、バスに乗ることが危険だと、早苗には実感できていなかった。 ……だが、同時に思う。 それこそが、自分とアキトとの違いなのではないか、と。 テンカワ・アキトは、己が願いのために他者を殺すことを是としている。 それは聖杯戦争のルールにおいては、決して間違った行動ではない。 だが東風谷早苗は、己が思想のもと、他者を殺すことを否とした。 それはつまり、ある意味において聖杯戦争を否定したに等しい。 そして日常と非日常で区別するのなら、日常の裏側で行われる聖杯戦争は当然非日常に分類される。 つまり、聖杯戦争を是としたアキトは非日常の側に、否とした早苗は日常の側に立っていることになるのだ。 そして立ち位置が違えば、たとえ同じモノを見たとしても、目に見えるカタチは違う。 ……いや、そもそも、 「……ああ、そうか。私はまだ、“聖杯戦争を知らない”のですね」 殺し合いを実感できていない早苗には、聖杯戦争そのものが見えていなかったのだ。 確かに早苗は、箱舟に呼びこまれ、予選を突破し、サーヴァントと契約し、聖杯戦争に関する知識を得た。 だが、言ってしまえばそれだけだ。 サーヴァントとはすなわち、聖杯戦争へと参加する“権利”であり、与えられた知識とは言い換えれば、ただのルールブックだ。 権利と知識。その二つしか得ていない彼女は、まだ聖杯戦争に真には参加していなかったのだ。 早苗はその事を、ここに至ってようやく理解した。 ―――ならばどうするべきか。 早苗は、聖杯戦争が間違いであると証明するためにここに来た。 否定するだけならば簡単だ。力で己が考えを押し通し、相手の願いを押し潰せばいい。 だが早苗が望んだのは、“証明する”こと。 ただ間違っていると言い張るだけでは証明にはならない。それを、相手に認めさせなければならない。 そのためには―――― 「この聖杯戦争について、もっとちゃんと知らないと」 そう口にして立ち止まる。 目の前には人影のない広場。その奥に、日に照らされた白亜の建物がある。 新都にあった廃教会とよく似た造りの神の家は、早苗からすれば異教の神を崇め奉る神殿だ。 加えて聖杯戦争を否定する彼女にとっては、ここはもはや敵地にも等しい。 ……ここは地上より遠く。 天(そら)にはなお遠い、告解の惑い場――― 『………マスター』 不意に、アーチャーが念話で話しかけてきた。 「っ……」 『どうしたんですか?』 それに、つい声を出して答えそうになりながらも、どうにか念話で応じる。 現在アーチャーは実体化している。念話ではなく、肉声で話しかけても問題はないはずだ。 だというのにわざわざ念話を使ったということは、何か理由があるのだろう。 そんな早苗の予想に違わず、アーチャーは表面上は穏やかなまま、警戒の声を発してきた。 『周囲に何か、魔力を持った存在の気配がする』 『魔力? それってもしかして、ルーラーですか?』 『判らない。だが感じ取れる気配は複数以上ある。 ここにいるサーヴァントがルーラーだけならば、気配は一つだけのはずだ。 だがそうでない以上、この教会は使い魔か、あるいはサーヴァントに監視されていると見ていいだろう』 『そう……ですか』 『どうする、マスター。今ならば気付かれていない可能性もあるが、教会に入れば確実に知られるだろう。 そしてルーラーと接触したことが知られれば、その者に目を付けられる可能性もある。 それを避けるために、一度出直すのも一つの手だが……』 アーチャーの言う“目を付けられる”という意味。それはおそらく、アーチャーの情報を奪われるという事だろう。 そして情報が奪われれば、アーチャーへの対処が行われてしまうかもしれない。 要するに、不利になるという事だ。 ……が、しかし。 「――――」 覚悟を決めて、教会へと一歩踏み出す。 『構いません。襲われることを恐れていては、幻想郷では信仰を広められませんから。 それにもしかしたら、その人から接触してくるかもしれないでしょう? そうなればむしろ好都合です。上手くすれば、その人から情報が得られるかもしれません』 教会には、この聖杯戦争を司る裁定者が居るはずだ。 今必要なのはまだ見ぬ敵への恐れではなく、見知らぬ事を知るための勇気だ。 そして東風谷早苗の崇め奉る神は二柱。 一つは洩矢諏訪子。洩矢の国の祟り神を統べし土着神であり、 一つは八坂神奈子。その洩矢の国を侵略し治めた軍神である。 異郷の地に踏み入れることを恐れる理由など、どこにもない。 むしろ一層強く胸を張り、早苗は神の家の扉を開け放った――――。 「――――――――」 ――――天窓からの日差しが、偶像のない礼拝堂を照らし上げる。 銀色の髪の少女が、何かに祈りを捧げるように荘厳なパイプオルガンを奏でている。 幾重にも反響して響き渡る、オルガン(いのり)の音色(うた)。 一つの宗教画のような情景。 見る者が見れば、ある種の神聖さすら感じられただろう。 無心でオルガンを奏でる少女からは、サーヴァント特有の気配は感じられない。 おそらく、彼女が裁定者の内の一人、カレン・オルテンシアなのだろう。 法衣を纏った銀髪の少女は、来訪者に気を向ける事もなく演奏を続けている。 「――――――――」 この隔絶された聖域を侵すように、堂々と教会へ踏み入る。 「――――――――」 無心の祈りを捧げていた少女が、それに応じるように演奏を止め、早苗へと向き直る 「……………………」 一層気を引き締めて、早苗は銀髪のカレンへと近づく。 だが早苗のその歩みは、あと一歩という所で彼女の言葉に止められた。 「ようこそおいで下さいました、アーチャーとそのマスター。 何の持て成しもできませんが、どうぞ寛ぎください」 「っ…………!?」 今カレンは、自分の事をアーチャーとそのマスターと呼んだ。 だがそれはおかしい。 確かにアーチャーは実体化したまま、自分の後ろに付き従っていた。 だが彼は現在そのクラスを象徴する弓を持っておらず、服装も現代のものだ。 サーヴァントであることはともかく、外見でクラス名までは判断できないはずだ。 だというのにカレンは、彼をアーチャーであると断言した。 ……まさか、見られていた? 気配感知スキルを持つアーチャーの目を掻い潜って? 一体どうやって……! 「落ち着け、マスター。相手は裁定者だ。こちらのクラスを判別する権限くらい、持っていてもおかしくはない」 「っ……、そうですね。ありがとうございます、アーチャー」 大きく深呼吸をして、気を落ち着かせる。 アーチャーの言う通り、相手は裁定者。ただの参加者に過ぎない自分より、上位の立場にある存在だ。 対等に渡り合うためには、気を引き締めてかからなければ。 「カレンさん。裁定者である貴女に、訊きたいことがあります」 「なんでしょう」 「聖杯戦争について、教えてください」 「それは、予選を突破した時点で既に“知っている”はずでは?」 怪訝そうに眉を顰めるカレンの瞳を、まっすぐに睨み付ける。 気負ったら負ける。聞きたいことも聞けずに、この話し合いは終わるのだと、早苗は直感しているのだ。 確かに聖杯戦争のルールは理解している。 自分以外のマスターとサーヴァントを倒し、最後の一組になった時、一度だけ月の聖杯を使用できるという事は。 だが、自分が知りたいのはそんな事ではない。 「私が知りたいのはルールではありません、理由です。 どうして他のマスターを殺さなければ、聖杯を得られないのですか?」 「……………………」 「聖杯が一度しか使えないから、他のマスターと競い合う。これはわかります。 ですがそれだけが理由なら、負けたマスターは方舟から追い出されるというルールでも問題はないはずです」 だが現実は違う。 生き残れるのは一組だけ。他のマスターを倒し、最後まで生き残ったマスターのみ。 サーヴァントを失い敗れたマスターは、ムーンセルに削除されそのまま死に至る。 それがこの聖杯戦争のルールだ。 ……ならば、そこには何か理由がある筈だ。 「教えてください。 敗北したマスターが死ななければならない理由。 私のような、明確な望みや参加する意思のなかった人が招かれた理由。 聖杯を望んでいない私たちが、殺し合わなければいけない理由は何ですか?」 「――――――――」 僅かな緊張が奔る。 それも当然。早苗の問いは、ある意味で聖杯戦争の根幹に関わることなのだから。 だがそれを受けたカレンは、つまらなさそうな顔をした後、 「申し訳ありません。 その問いに、私は答えることは出来ません。何故なら、その問いの答えを、私も知らないからです」 そう、興味がなさ気に口にした。 「裁定者なのに……ですか?」 「ええ。……いえ、だからこそ、と言うべきでしょうか。 確かに私たちは聖杯戦争聖杯戦争を恙なく運営するため、裁定者の任を与えられました。 しかし、言ってしまえばその為だけの存在。それ以外の、聖杯戦争の運営に必要のない知識は与えられていないのです」 早苗の疑問。 聖杯戦争が起きた理由。聖杯戦争の仕組み。聖杯の正体。 それらはただ聖杯戦争を運営させるだけならば、知る意味のないことだ。 いやむしろ、絶対的な権限を持つ裁定者が聖杯に疑念を懐いてしまえば、聖杯戦争そのものが破綻しかねない。 故に、聖杯に関する知識という意味ではむしろ、他のマスターやサーヴァントよりも知らない可能性があるのだ。 カレンはそう言外に語る。 つまり早苗が聖杯戦争について知るには、他のマスターと接触するしかないのだ。 「そうですか……わかりました」 最も有力だった人物への当てが外れた事に、早苗は落胆の表情を浮かべる。 だが次の瞬間には、先程よりも強い意思を籠めた視線とともに、カレンへと更なる問いを投げかけた。 「カレンさん。あなたはこの聖杯戦争が、正しいものだと思いますか?」 「…………」 「私は、間違っていると思います。こんな殺し合いをさせる聖杯は、みんなが考えているようなものじゃないと思います」 「…………それは、どういう意味でしょうか」 「聖杯がどのような方法で願いを叶えるのか、私は知りません。 だから、聖杯が願いを叶える為には、代償となる贄が必要ということもあるのかもしれません。 けどそれなら、せめてマスターとなる人物には、参加の是非を問うのが道理ではないですか? こんな、マスターの意思を無視して無理矢理に参加させるようなやり方は、絶対におかしいと思います」 「――――――――」 「これで仮に、聖杯に生贄が必要ないのだとすれば、なおさらです。 もしそうなら、私は聖杯を認めるわけにはいきません」 まっすぐにカレンを見据えて、早苗はそう口にする。 元より彼女は、それを確かめるためにここに来た。先ほどの質問は、そのための前置きに過ぎない。 聖杯は正しいのか間違っているのか。 早聖杯戦争を司る少女はどう思っているのかと、早苗はその答えを求め、 「では逆に訊きますが、もしこの聖杯戦争が間違いだとして、その場合貴女はどうするのですか?」 「へ?」 カレンのその問いに、あっさりと意気込みを挫かれた。 「たとえ聖杯が何かを間違えていようと、聖杯戦争はすでに始まっています。 そしてマスターである以上、貴女は他のマスターと戦い、倒すしかない。でなければ死ぬだけです。 あるいは、もし仮に聖杯戦争を止めようというのであれば、場合によってはルールに反する可能性があるでしょう。 ――つまりそれは、裁定者(わたしたち)と対立することにも繋がります。その覚悟が、貴女にはありますか?」 「そ、それは……」 たとえ聖杯が間違えていると証明したところで、何の解決にもならないとカレンは告げる。 実際、その通りだ。 早苗の目的は、聖杯が間違いであると証明し、テンカワ・アキトを止める事だ。 だが、彼一人を止めたところで、聖杯戦争は止まらない。生き残れるのが一人だけである以上、結局は殺し合うしかないのだ。 もしそれを避けたいのであれば、聖杯戦争そのものをどうにかするしかない。 それも、間違いを承知の上で聖杯を望むマスターと、聖杯戦争を運営する裁定者とを相手にした上で、だ。 「聖杯が正しいのか、それとも間違っているのか、私にはわかりません。 ですが、裁定者の務めを任された以上、私はその役割に殉じるだけです」 「ぅ…………」 ルーラーは憮然とした表情で、早苗の問いを切って捨てる。 己が行為の無意味さを突き付けられた早苗は、その冷めた声につい視線を逸らしてしまう。 「話が終わったのであれば、お帰りを。それこそ、裁定者としての役割を果たさなければなりませんので」 今この場で話すことはもう何もないと、カレンは言外に告げる。 「……はい」 それを受けた早苗は意気消沈し、肩を落としながら教会の外へと足を向ける。 目的を見失った彼女には、カレンの声に抗うだけの気力は残っていなかったのだ。 そこへ不意に、 「どうしても聖杯について知りたいのであれば、岸波白野というマスターを尋ねるといいでしょう」 そんな言葉が、投げかけられた。 「え?」 「月の聖杯についてなら、おそらく彼が一番よく知っています。聖杯について知りたければ、彼に訊いてみなさい」 カレンはそう口にすると、礼拝堂の奥へと去っていった。 助けてくれた……のだろうか。 理由はよくわからないが、彼女のおかげで、当面の目標は出来た。 「…………ありがとうございました」 カレンの去った方へと向き直りそう口にすると、早苗は今度こそ教会の外へと向けて歩き出す。 † 「すみませんアーチャー。考えが足りませんでした」 教会の外へと出た早苗は、アーチャーへとそう謝罪した。 「謝る必要はない。マスターは、己の心に従っただけであろう」 だがアーチャーは、そう首を振って否定した。 「ですけど」 「確かに聖杯の間違いを証明した後の事は考える必要がある。 だが先の事ばかりを考えていては、今成すべき事も成せなくなろう。 大事なのは、己が本当に成したいことは何か、それを成すために必要なことは何か、それを成した結果どうなるのかを考え、受け入れる事だ」 「自分がしたいこと、するために必要なこと、した時の結果を考え、受け入れる……」 「そうだ。その覚悟さえあれば、何も迷う必要はない。 ではもう一度問おう、マスター。この聖杯戦争において、そなたは何を成したい」 「私の……したいこと………」 アーチャーに促され、早苗は改めて自分がどうしたいのかを考える。 そもそも、自分が教会に来たのは何のためか。 ――聖杯について知るため。 では、なぜ聖杯について知ろうと思ったのか。 ――聖杯戦争が間違いであることを証明するため。 何のために、それを証明しようと思ったのか。 ――テンカワ・アキトを、止めるため。 どうして彼を止めるのか。 ――彼に、人殺しをして欲しくないから。 そう。それが答えだ。 テンカワ・アキトに、人殺しをして欲しくない。だから聖杯が間違いであると証明しようと思った。 ……だが、それだけでは足りなかった。 聖杯戦争は始まっている。生き残れるのは一組だけ。生き残るには、他者を殺すしかない。 たとえ聖杯が間違いであると証明したところで、このままでは人殺しは避けられない。 ―――ならばどうすればいいか。 決まっている。聖杯戦争を止めるしかない。 だがそれは、聖杯戦争を運営するルーラーと敵対する行為だ。 いや、ルーラーだけではない。場合によっては、聖杯を望むマスター全てを敵に回すことになるだろう。 「っ…………」 まだ見ぬ未知の敵に、思わず唾を呑む。 サーヴァントがどのような存在かは、アーチャーを見て知っている。 その彼と同等か、あるいはそれ以上の存在が、何人も、あるいは何十人も襲い掛かってくる。 そんな想像をしてしまったのだ。 …………だが。 「……私はそれでも、この聖杯戦争が間違いであると、証明したいです」 目指すものはすでに定まっている。 令呪まで使って宣言したのだ。いまさら後戻りはできない。 ……ならば、その結果他のマスターと戦うことになったとしても、受け入れよう。 それが、覚悟を決めるという事なのだから。 「そのために、岸波白野という人を探します。……手伝ってくれますか、アーチャー?」 「無論だ。私の持てる全てを以て、そなたの力になって見せよう」 「…………、ありがとうございます」 アーチャーのその言葉に、背中を支えられたような気持ちになる。 彼が支えてくれている限り、きっと私は、途中で挫けることはないだろうと、そんな実感が湧いてくる。 だからこの先、誰かと戦うことになったとしても、今の私なら、きっと大丈夫だと思えた。 「あ、でもその前に、白野さんの事をアキトさんに言っておいた方がいいのかな……?」 岸波白野の事は早く見つけたい。 けどどこにいるかわからない以上、探すのに時間はかかるだろう。 それまでの間に、アキトさんと岸波白野が戦ってしまうかもしれない。そのせいで二人の内どちらかでも死んでしまえば本末転倒だ。 ならそうならないように、アキトさんに岸波白野の事を話しておくべきだろうか。 「……それにしても、白野さんの名前、どこかで聞いた覚えがあるような…………気のせいかな?」 そこはかとない既視感(デジャヴ)。 手掛かりは自分の中にある気がするのに、それはまるで、深い霧に隠れているかのよう。 早苗が聖杯の手掛かりに辿り着くには、もうしばらく時間が掛かりそうだった。 【D-5/教会周辺/一日目 午後】 【東風谷早苗@東方Project】 [状態]:健康 [令呪]:残り2画 [装備]:なし [道具]:今日一日の食事、保存食、飲み物、着替えいくつか [所持金]:一人暮らしには十分な仕送り [思考・状況] 基本行動方針:誰も殺したくはない。誰にも殺し合いをさせたくない。 0. 白野さんの事を、先にアキトさんに伝えておいた方がいいでしょうか……? 1. 岸波白野を探し、聖杯について聞く。 2. 少女(れんげ)が心配。 3. 聖杯が誤りであると証明し、アキトを説得する。 4. そのために、聖杯戦争について正しく知る。 [備考] ※月海原学園の生徒ですが学校へ行くつもりはありません。 ※アシタカからアーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しましたが、あくまで外観的情報です。名前は把握していません。 ※カレンから岸波白野の名前を聞きました。その名前に聞き覚えはありますが、よく思い出せません。 ※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。 ※アキト、アンデルセン陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。なお、彼らのスタンスについて、詳しくは知りません。 ※バーサーカー(ガッツ)のパラメーターを確認済み。 ※アキトの根城、B-9の天河食堂を知りました。 【アーチャー(アシタカ)@もののけ姫】 [状態]:健康 [令呪] 1. 『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合、私を殺してください』 [装備]:現代風の服 [道具]:現代風の着替え [思考・状況] 基本行動方針:早苗に従い、早苗を守る 1. 早苗を護る。 2. 使い魔などの監視者を警戒する。 [備考] ※アーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しました。 ※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。 ※教会の周辺に、複数の魔力を持つモノの気配を感知しました。 02/ 気付かぬ繋がり 「何だったんだ、結局あいつは」 雄叫びとともにいずこかへと走り去っていった真玉橋孝一を見送った後、本多・正純はそう独り言ちた。 そして廊下を走るな、と注意し損ねた事にいまさらばがら思い至り、はあ、とため息を吐く。 「どうやら逃げられてしまったようだな」 「一成」 掛けられた声に振り替えれば、そこには生徒会長の柳洞一成がいた。 彼は悩ましげに眉を顰めながら、先程の正純と同じように、はあ、とため息を吐いた。 「こちらもケイネス先生にご助力を願おうとしたのだが、今は忙しいと素気無く断られてしまった」 「そうか。なら、真玉橋孝一の事は自分たちでどうにかするしかない、という訳か」 「そういう事になるな。 ……まったく、岸波が休んでいることもあって、こちらも手が足りていないというのに。猫の手も借りたいとはこの事だ」 「岸波?」 一成が口にした名前に、正純は首を傾げる。 フルネームは岸波白野。クラスはたしか、2‐A。新聞部に所属していたはずだ。 一成の友人で、生徒会役員ではないが、何かと手を貸してくれる生徒だったか。 その関係で、自分ともいくらか交流があったのを覚えている。 「岸波白野が休んでいるのか?」 「うむ。しかも聞いて驚くなかれ、何と無断欠勤だ。 遅刻ならばともかく、普段真面目なあいつがそのようなことをするとは思えんのだが……休み時間に家に連絡してみても、応答がなかったのだ。 最近は何かと物騒だと聞く。話によれば、新都では暴動事件まで起きたそうではないか。岸波は新都に一人暮らしだからな。心配でならん」 その暴動の話は、正純もライダーから聞き及んでいた。 確かに暴動に巻き込まれれば、学校どころではなくなるだろう。 もっとも、岸波白野が登校中だったのなら制服を着用していたはずだ。 そして制服を着ていたのであれば、学校へと連絡をするはずだろう。 それがなかった、という点が若干気にかかる。 「それに最近は、学校を欠席する生徒が、連絡の有無を問わず増えてきている。 岸波の他にも、俺にとって仏門における好敵手とも言える東風谷早苗や、二年E組の狭間偉出夫まで無断欠席しているらしい。 あとはそうだな、一年の間桐桜も欠席していると聞き及んでいる。まあこちらはちゃんと連絡があったそうだが」 「む。その者たちは一成の知り合いなのか?」 「いや、東風谷早苗に関してはそうだが、他二人とは直接的な面識はあまりない。 だが狭間偉出夫は悪い意味で有名だからな。その動向は嫌でも耳に入る。 彼の事はどうにかしたいと思ってはいるのだが、如何せん会長業務に追われて、何の手も打てていないのが現状だ。 間桐さんの方は、弓道部部員であると同時に保健委員でもあるのだ。それぞれの部長と委員長が話し合っていたのを小耳に挿んだのだ。 なにしろ、間桐さんは人見知りこそするが責任感もある人物らしく、次期部長または委員長にと期待されているようだからな。何かと物騒な昨今、彼女達も心配なのだろう」 「なるほど」 一成の言葉に、正純は納得して頷く。 たとえ聖杯戦争を知らずとも、街の雰囲気の変化はNPCたちも感じ取っているのだろう。 加えて最近は聖杯戦争に関与すると思われる事件も報道され始めている。そこでいきなり無断欠席ともなれば、心配にもなるだろう。 しかも一成はまだ知らないようだが、無断欠席をした生徒は初等部にもいる。 名前は遠坂凛。住んでいる場所は、たしか【B-4】地区だったはずだ。 そう。先ほどの通達で、ルーラーの警告があった地域だ。 偶然と言えばそれまでだが、あまりにもピンポイント過ぎる。 とはいえ、何がどこまで聖杯戦争に関与しているかなど、考えたところでキリがない。 授業が終わるのは午後三時半。あと二時間近くも後だ。 ここはやはり、次の休憩時間にでも、彼女の家に一度連絡を入れてみるべきだろう。 「まったく、寺の用事さえなければ、放課後にでも岸波の家を直接訪ねたものを」 「寺の用事?」 「うむ。我が命蓮寺には今、住職である聖白蓮殿の客人が訪ねておってな。その持て成しをせねばならんのだ」 「客人?」 「そうだ。これがまた奇妙な御仁でな。相当な恥ずかしがり屋なのか、全身を鎧で固めておって、顔はおろか男か女かもわからん。 せめて性別さえ判別できれば、もう少しまともな持て成しが出来るのだが……」 「そうか、それは大変だな。 ……そうだ、一成。岸波白野の家には私が替わりに訪ねようか?」 「む。それは助かるが、いいのか?」 「ああ。実は午後にシャア・アズナブルの後援会に出る予定でな。そのついでで良ければの話だが」 正純のその提案は、ちょっとした思い付きであった。 後援会が行われるのは、【C-6】にある冬木ハイアットホテルだ。そこから新都まではそう遠くない。 爆発事故や暴動の起きた場所も気になるし、ついでに現場を調査するのも悪い案ではないだろう。 無論、他のサーヴァントに発見されないよう、様子見程度に留めた方が無難だろうが。 「……そう言えば、本多は政治家志望であったな。 すまんが頼む。この礼はいずれ必ず返そう。 岸波はB-8地区の住宅街にあるアパートに住んでいる。詳しい住所は―――」 そうして告げられた住所を、正純はメモに書き留める。 住所の位置取りからして、岸波白野はバス通勤なのだろう。 加えて幸いと言うべきか、その場所は爆発事故の現場からほど近い。ふらりと立ち寄る分にはそう怪しまれないと思われる。 「ではな、本多。岸波の無事を確認できたら、くれぐれもよろしく言ってやれ」 「Jud. 一成は安心して寺の子の務めを果たすといい」 正純は一成へとそう返事をし、教室へ戻ろうと踵を返し、ふと先ほどの会話に違和感を覚えた。 その違和感の正体は何かと思い、一成の方へと振り返る。 「まったく……真玉橋の事は早々にどうにかせねばな。 もし何かの拍子で聖殿と遭遇した時に、あのような調子でセクハラされてはたまらんわ」 喝。と締めくくりながら、一成は早足で自分の教室へと向かっている。 ――――そう。違和感を覚えたのは、その聖という人物に関してだ。 たしか一成はこう言っていた。『命蓮寺には今、聖白蓮の客人が訪ねている』と。そしてその人物は『全身を鎧で固めていた』とも言っていた。 このタイミングで訪ねてきたという鎧姿の客人。それはサーヴァントの存在を連想させるには充分過ぎる符合だ。 故に、その客人の事をより詳しく聞こうと一歩踏み出し、 「―――む、いかん。六限目の授業が始まってしまう」 スピーカーから鳴り出したチャイムに、仕方ない、と正純は再び自分の教室へと踵を返した。 聖白蓮の客人の事は気になるが、どうせ今日は予定が詰まっている。 今はその人物の存在を知れただけでも良しとして、詳しい事は後日改めて訊くとしよう。 † そうして、午後二度目の休憩時間となった現在。正純は遠坂邸へと電話をかけていた。 休み時間は十分だけ。他にもすることがあるので、話の内容は遠坂凛の安否を確認する程度に留めておこう。 そう考えながら待つこと数十秒。 『――はい、もしもし。遠坂です』 そんな言葉とともに、聞き覚えのある少女の声が応答した。 「もしもし。私、本多・正純と申します」 『へ? 正純さん……!? えっと、いきなりどうしたんですか?』 「いやなに。君が学校を無断欠席したと初等部の先生から聞いてな。 それに最近は何かと物騒だろ。それで少し心配になったのだよ」 『は、はあ。それは、ご心配をおかけしました』 正純が要件を言えば、遠坂凛は戸惑ったように返してきた。 ただ、その声がどこか申し訳なさげに聞こえたのは気のせいだろうか。 「なに。無事であるのならそれでいい。 ただ、君が無断欠席をした理由を教えてもらってもいいだろうか」 『ええと、その……学校を休んだのは、風邪を引いたからで、連絡は、ついうっかり忘れちゃったんです』 「……ふむ。そうか、了解した。 なら話はここまでにしておこう。病人に長話をさせるのもなんだしな。 ではな。しっかり休んで、風邪を治してくれたまえ」 『はい、ありがとうございます。本多さんもお体には気を付けてくださいね』 そう労い合うと同時に電話を切る。 「ふむ…………」 正純は一つ呟いて、先程の凜との会話を思い返す。 遠坂凛の様子にはどこか違和感があった。 どこか慌てたような電話の対応。風邪を引いたにしては張りのある声。 彼女は本当に、風邪を引いたことが理由で学校を休んだのだろうか。 それを確かめるには、直接会いに行けば確実だが………。 遠坂凛の住所は【B-4】で、岸波白野の住所は【B-8】。 冬木ハイアットホテルは【C-6】だから、学園から近いのは遠坂凛の方になる。 しかし一成と約束した以上、岸波白野の方を無視するわけにもいかない。 どうするべきか、と考え、 「やはり、少佐と相談するべきだな」 という結論に至る。 自分たちにはそもそも戦力がない。一人で方針を決めるような、迂闊な行動は避けるべきだ。 ……それよりは、夕方からのシャア候補との交渉に備えなければ。 その交渉如何によって、自分たちの聖杯戦争の行方が変わってくるのだから。 正純はそう判断して、自身の教室へと戻っていった。 【C-3/月海原学園/一日目 午後】 【本多・正純@境界線上のホライゾン】 [状態]:まだ空腹 [令呪]:残り三画 [装備]:学生服(月見原学園)、ツキノワ [道具]:学生鞄、各種学業用品 [所持金]:さらに極貧 [思考・状況] 基本行動方針:他参加者と交渉することで聖杯戦争を解釈し、聖杯とも交渉し、場合によっては聖杯と戦争し、失われようとする命を救う。 0. 少佐と話し合わなければな。 1. シャア候補との交渉に備えて、彼の過去の演説に当たるなどして準備する。 2. マスターを捜索し、交渉を行う。その為の情報収集も同時に行う。 3. 余裕があれば岸波白野の自宅(B-8の住宅街)に向かいたいが、遠坂凛の事も気になる。 4. 聖杯戦争についての情報を集める。 5. 可能ならば、魔力不足を解決する方法も探したい。 [備考] ※少佐から送られてきた資料データである程度の目立つ事件は把握しています。 ※武蔵住民かつ戦争に関わるものとして、少女(雷)に朧気ながら武蔵(戦艦及び統括する自動人形)に近いものを感じ取っています。 ※アーカードがこの『方舟』内に居る可能性が極めて高いと知りました。 ※孝一を気になるところのある武蔵寄りのノリの人間と捉えましたがマスターとは断定できていません。 ※柳洞一成から岸波白野の住所を聞きました(【B-8】の住宅街)。 ※遠坂凛の電話越しの応答に違和感を覚えました。 後半「角笛(確かに)」に続く BACK NEXT 112 スタンド・アップ・フォー・リベンジ 投下順 113-b 角笛(確かに) 102 A_Fool_or_Clown? 時系列順 113-b 角笛(確かに) BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 079 第一回定時通達 カレン・オルテンシア 113-b 角笛(確かに) 089 バカばっか 東風谷早苗&アーチャー(アシタカ) 118 前門の学園、後門のヴォルデモート 090 健全ロボダイミダラー 第X話 悲劇! 生徒会副会長の真実! 本多・正純 119 会談場の決意者 ▲上へ
https://w.atwiki.jp/kakiteseihai/pages/18.html
足りない、と気づいた瞬間、彼女は自分が書き手であったことを思い出した。 大学の一室で博士として研究に精を出している最中だった。 あまりにも唐突に、彼女は思い出してしまったのだ。自分が研究すべきはこれだけではないと。 「パロロワの歴史を研究しようと思います」 「ほう……おもしろいことを言い出す奴じゃな? その手に持ってるのじゃ足りんのか?」 研究室にはいま、白衣を来た女性と、彼女のサーヴァント――アーチャーの姿があった。 ネコミミ魔法少女の格好をしたアーチャーは白衣女性の言葉に首を傾げた。 何故なら白衣女性はアーチャーと会話しながらも、虫めがねで手に持ったあるものを調査していたからだ。 それは、恐竜の化石だという。 「足りません。古生物だけでは、私の知識欲は」 アーチャーの疑問に、当たり前のように白衣女性は返す。 「確かに私は、古生物ロワを開きました。また、世界史やサザエさんも研究してきました。 しかしまだ、この世には知るべき事が沢山ある。見るべきものが、読むべきものが、 感じるべきものが溢れている。どれ1つとっても人生を賭けてまだ足りないくらいにそれらは奥深い」 そして今興味があるのはパロロワの歴史です、と言った。 「かつてはネタスレから始まり、およそ十五年の時を経て徐々に整備されたリレー企画。 私もそれなりに長くこの世界に浸ってはいますが、古きも新しきも、まだまだ研究の余地がある。 そしてこの書き手聖杯戦争。古き英雄から若き勇士まで様々な書き手からナマの話を聞くチャンスです。 こうして化石から推測するのも楽しいですが、フィールドワークも大事ですからね」 「ナマの話を聞く、か。そうは言っても「かふぇでいんたびゅう」とは洒落込めぬぞ? 聖杯戦争は殺し合いなのだから。甘いやり方では話を聞く前に死ぬじゃろうよ」 「承知しています。もちろん、腰を落ち着けて話が出来るのが最高ですが、それは一般人のやり方でしょう。 書き手は言葉を交わさなくても筆で会話ができる。私も一人の書き手として、そちらの方法を取るまでです」 書き手にとって筆は拳。 作品で殴りあうように、力をぶつけ合うことこそが語り合いになる。 古くから企画を見てきた白衣女性はそれを信じている。だから何も心配はしていない。 聖杯戦争は初めてだが、やることは変わらない。力をぶつけ、筆を交わすだけ。 それが互いを知りあうことに繋がり、そうして得た知識は研究に繋がる。つまり勝ち抜けばいいのだ。 ……そして白衣女性のサーヴァントは、勝ちぬけるだけの力を持っていると言える。 「ならば、結局は殺し合いか。フン、構わぬぞ、わしにとってもそれが願いよ。 今までの書き手ロワじゃあ、何故か知らんが“書き手としてのわし”ではなく、 それより有名な“書き手という設定のわし”が召喚されておったからな……本気を出せていなかった」 アーチャー。老人の口調でしゃべるネコミミ魔法少女。その根源は雷。 歴史にして8年、最も多くの話数が投下され、最も多くのキャラクターを死に至らしめ、 すべてのパロロワ企画の中で最も極北に位置する、 生きる伝説のロワ企画――そこにトリップ付きで記録されているトップ書き手が彼だ。 それだけではない。彼が記録している伝説はまだまだある。 書き手としてのロワ企画最多出場記録。パロロワクロススレ最多登場人物記録。 正式なロワ企画への最終出場こそ少し遡るものの、今後まず破られることのないだろう記録を持つ存在。 “最も知られているパロロワ書き手”。 トリップ、◆6/WWxs9O1s。出展、カオスロワ。 今度の姿は書き手としての彼の代表作より、魔法老人リリカルかみなり。 もちろんキャラクターとしての彼のトレードマークであるクルミの技も完備する。 知名度こそが力と成る聖杯戦争のサーヴァントにおいて、紛れもなく最強の一角を担う一人だろう。 「では、往くとしようか? マスターよ」 「はい。ただちょっと待ってくださいね」 「?」 「今日は雪室回の予感がするので、念入りに録画確認をしておかないと」 「……好きじゃのうマスターも」 そして彼を従えるマスター、◆sOMmvl0ujoもまた、恐るべき魔力を持つ書き手であることは言うまでもない。 1を務めて俺ロワ・トキワ荘で開いた古生物ロワのインパクトは非常に大きいものであったし、 本人の口から明かされた話では、波平ロワや歴史ロワへの関与、そして確認の手段こそないものの、 ◆6/その人ではないかという噂まである。もっと言えば書き手4では主催を務めた。 “勝てないと思わされるパロロワ書き手”として、多くの人から名が上がることは間違いない存在なのだ。 ロワ界最強の学者と、最勇のサーヴァントがいま、手を組んだ。 しかしこれでさえ絶対ではない。何が起こるのか分からないのがこの世界。 彼らすら、カオスの戯れにズガンされても全くおかしくない――だからこそロワはおもしろいのだ。 「よし、オッケーです。では行きましょう。学を深め、聖杯に至るために。そして」 「うむ。知らしめてやらねばの。聖杯戦争を最初にリレーに取り入れたのは、ウチの奴らだってことを。そして」 「「そして――この混沌(カオス)を、楽しもう」」 【クラス】 アーチャー 【真名】 魔法老人シックスラッシュ(◆6/WWxs9O1s)@カオスロワ 【パラメーター】 筋力:B 耐久:A 敏捷:A 魔力:A+ 幸運:E 宝具:A 【属性】 混沌・中庸 【クラススキル】 対魔力:B 単独行動:B 【保有スキル】 誤解:- どれだけ正義を尽くしても悪と思われてしまう反英雄のスキル。本来はAランク。 現在は本人が対主催する気がないのでこのスキルは失われている。 恋愛:- 二次元出展のキャラクターとの恋愛展開に補正がかかるスキル。本来はCランク。 今回は厳密には二次元出展ではない書き手が主な参加者なため、発動するかどうかは不明。 神出鬼没:A カオスロワのキャラクターとして、また様々なロワに参加した存在として、 マップ上の距離を無視してどこにでも現れることが可能。 カオスあるところに◆6/があり、◆6/があるところにカオスがある。 パロロワ把握:B クロススレの常駐キャラクターとしてほぼ全てのロワにメタ的に精通している。 相手の容姿やスキル、宝具からかなりの高確率で相手の真名を看破することが可能。 比較的最近のロワに関しては看破が難しいかもしれない。 展開対応力:A カオスロワ、書き手ロワ、およびその他様々なロワで様々なキャラクターと成り、 凡そすべての展開を経験している彼が得たスキル。どんな展開が来ても即時対応し、 自らをその環境に適応するよう変化させることが可能。 【宝具】 『説教の雷(プリティサンダー)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ 1~66 最大補足 1人 魔法老人リリカルかみなりとしての宝具。説教と共に恐るべき威力の雷を降らせる。 まともに受ければ炭化は免れないだろう。 『無限の胡桃(アンリミテッドウォールナッツ)』 ランク:A 種別:対界宝具 レンジ 1~66 最大補足 1~10人 無限にクルミおよびクルミの樹が生成される空間に対象を閉じ込める固有結界。 かつてアーチャーがカオスロワで得た宝具。無限の剣製クルミ版と言ってもいい。 『神降ろしの儀(オールゴッド、オールライド)』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ 1 最大補足 1人 オールロワにて支給された神、国常立神を召喚する宝具。発動に少々時間がかかるものの、 神の力を得ることで全てのパラメータが強制的にA+まで引き上げられる。 魔力消費が激しく長時間の使用は難しい。 【容姿】 魔法老人リリカルかみなり@カオスロワ 【Weapon】 レイジングハート@魔法少女リリカルなのは 【人物背景】 【HN】6/氏 【主な作品】 「魔法少女リリカルかみなり」「マーダー誕生」など 【書き手紹介】 カオスロワ第1期にて書いていた書き手。ドラえもんのかみなりさんを魔法少女にするという 突飛な展開、マーダーの大量投入などで当時のカオスロワに衝撃を与えつつも引っ張った。 第2期で登場人物として放り込まれてからの伝説はここで書くにはあまりにも長すぎるため割愛。 好きなキャラクターは岩崎みなみだが、柊かがみや初音ミクと浅からぬ因縁がある。 【スタンス】 殺し合いを楽しみつつ、優勝を狙う。 姿は書き手としての歴史を反映。中身はキャラクターとしての歴史も含んでいる。 ロワに古くから携わる者として若者にはいろいろと説教(アドバイス)することもあるかもしれない。 【基本戦術、方針、運用法】 書き手ロワのギルガメッシュといっても過言ではない。好き勝手するので好き勝手しよう。 【マスター】 ロワ学の権威・ソーム教授(◆sOMmvl0ujo)@古生物ロワ 【マスターとしての願い】 様々な書き手と筆で語り合い、パロロワ学を深めつつ優勝狙い。 【容姿及び口調】 古生物学者、メアリー・アニング 【weapon】 「2chパロロワ事典(未完成版)」 古生物ロワ、波平ロワ、歴史ロワ、カオスロワの4つのロワの情報が載っている事典。 他のロワの書き手と出会うたびに中身が更新されていくが、 深すぎる情報はそのロワの書き手全員と出会わないと閲覧できない。 【能力・技能】 古生物ロワ 1としての古生物知識、また生物への知識。 サザエさんと世界史、日本史問わぬ歴史への知識もあるようだ。 書き手としての魔力は非常に高いが、本人の身体能力は一般人レベル。 【人物背景】 言わずとしれた古生物ロワの 1。まさかの主催・地球、専門知識を下地にしつつも 独自の雰囲気でキャラ付けし、しっかりロワらしく書かれた古生物たちが非常に魅力的。 書き手ロワ4thでは主催を務めた。 波平ロワの人と同一人物で、歴史ロワも書いてたらしい。さらに◆6/本人でもあるという噂がある。 【方針】 パロロワ事典の完成を目指しつつ、いろんなロワの書き手と交流(物理)。 000:OP 終焉にして始まりの男 投下順に読む 002:アレイアード ロワ学の権威・ソーム教授 007:地獄型書き手動物園 魔法老人シックスラッシュ 007:地獄型書き手動物園 ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/kakiteseihai/pages/43.html
【マスター】 29NIKUマニア ◆NIKUcB1AGw@kskロワ →書き手の詳細はこちら 【マスターとしての願い】 書き手聖杯戦争の頂点に立つ 【容姿及び口調】 古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱(ただし一人称は「俺」、額に「肉」) 【能力・技能】 「キン肉マン」を知り尽くした彼は、作中に登場した全ての技を使うことができる(超人の特殊な身体構造に依存した技は除く)。 ただし肉体のレベルは現実の格闘家程度であり、サーヴァントと戦えるようなものではない。 【代表作品】 「殺戮を大いに行う涼宮ハルヒのための団」「古泉一樹の戸惑」「カッコつけた言葉じゃない強さを見せてくれ」 【人物背景】 とにかくキン肉マンを愛する書き手。 超人達の激闘をいくつも描いてきた。 また、kskロワを代表するキャラの一人である「俺古泉」の生みの親でもある。 【方針】ノリと勢いとksk ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/kagemiya/pages/156.html
序章(1) 序章(2) 序章(3) 序章(4) 序章(5) 序章(6) 序章(7) 序章(8)
https://w.atwiki.jp/kakiteseihai/pages/44.html
【マスター】 29NIKUマニア ◆NIKUcB1AGw@kskロワ →書き手の詳細はこちら 【マスターとしての願い】 書き手聖杯戦争の頂点に立つ 【容姿及び口調】 古泉一樹@涼宮ハルヒの憂鬱(ただし一人称は「俺」、額に「肉」) 【能力・技能】 「キン肉マン」を知り尽くした彼は、作中に登場した全ての技を使うことができる(超人の特殊な身体構造に依存した技は除く)。 ただし肉体のレベルは現実の格闘家程度であり、サーヴァントと戦えるようなものではない。 【代表作品】 「殺戮を大いに行う涼宮ハルヒのための団」「古泉一樹の戸惑」「カッコつけた言葉じゃない強さを見せてくれ」 【人物背景】 とにかくキン肉マンを愛する書き手。 超人達の激闘をいくつも描いてきた。 また、kskロワを代表するキャラの一人である「俺古泉」の生みの親でもある。 【方針】ノリと勢いとksk ▲上へ戻る
https://w.atwiki.jp/sentakushi/pages/1078.html
937 :隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM:2007/09/04(火) 04 10 45 遠くを見やれば、時折光が見える。 人工ではあるが機械による物ではない光。 詰まるところ武器同士の激突による火花と、それと同時に放たれる純粋な魔力同士のぶつかり合いだ。 昨日のような派手な光も音もない地味な戦いだが、そこに込められた気迫を思えば、むしろ昨日よりも激しく思う。 上空に展開する兵器は、己の時代には無かった代物だが、その危険性は一目で理解した。 その兵器がある限り、己の位置は常に捕捉され続ける可能性があり、同じ可能性で攻撃され続ける。 それが上空制圧の強みであり、地上の英霊達の弱みでもある。 仮にただ一つであれば唯の一撃を持って粉砕も出来よう。 だが、それが数機、数十機となれば一度での掃討は不可能。 そして上空の敵が驚異と見なせば、禿鷹に狙われた小動物のように殆ど為す術無く狩られることとなろう。 故にそれが無く、上を気にする必要のない今夜は、激しい戦いが各所で展開されている。 意識が切り替わる。 英霊へと至る程の戦闘経験が、近くの危機を察した故だ。 意識を近距離への対応に切り替えれば、通りの物陰に人が隠れているのが見えた。 「出てこい」 間違えようもない簡潔な要求。 それに応えて、男が現れた。 「やあ」 男はひらひらと手を振り、気安く声をかけてきた。 この距離で表情の判別は出来ない。 だが、その男は笑っていると理解できた。 そして何より腰に下げた一振りの獲物は、決して歓迎出来る物ではない。 「何用だ」 歓迎はしない。 己のマスターなど死のうがどうなろうが関係のないことだが、魔力供給が途絶えれば現界出来なくなるというただ一事を持ってマスターは守らねばならないと自覚している。 まして今のマスターは瀕死と言っていいこの現状では、どこかに放置しておくこともできない。 「つれないなあ、俺はただいい話を持ってきただけだよ、君の望みを叶えるという、ね」 一瞬揺らぎかけ、それでも表情には出さず堪えた。 それは虚偽であると、理性が悟ったのだ。 「それは自力で叶える事だ、勝ち抜いてな」 依然として口調に変化はない。 だが、それでも現れた男は確かな手応えを感じているようだった。 「ああ、君なら出来るかもしれないね、『軍神殺し』である君ならね」 暗闇が落ちた夜だというのに、掛けたままのサングラスを掛け直す。 その視線の先では、交渉対象の男の表情が変化している。 無理からぬ事ではあるが、鉄仮面のように変わらぬと思えた表情が驚愕に歪んでいる。 戦うどころか武装さえしていないこの状態で、真名を看破されたのだから。 「……貴様、何者だ」 「J.B.」 男は笑みを殺し、己を表す記号を口にした。 己のマスターのことも気になるが、今現在は三人でどうにかランサーを抑えていると言った現状である。 誰かが救援に行き、その間に誰かがやられてしまえば、最も危険な存在を主の前に立たせることになる。 それは出来なかった。 親友の作戦を聞き、フェイトは頷く。 「分かった、それで行こう」 タイミングが重要な作戦である。 なのはの懸念はまさにそこで、しかもタイミングの重要な部分はフェイトに殆ど丸投げの作戦だ。 だが大丈夫だと、フェイトは笑みを浮かべる。 「それよりも、先生の方が心配だ、やろう、なのは」 「うん!」 僅かに距離の離れた場所で戦うセイバーとランサーは、二人が何かやると言うことに気付いた。 そこで距離を離そうとしたランサーを、今度はセイバーが追撃する。 「っく……正気か?」 槍の柄で拳の連撃を捌きながら、ランサーが呟く。 「極めて正気ですよ、3対1の状況なら、ダメージを食らって困るのはそちらですからね」 槍の利点を殺し、次の行動を制限する。 その為に今セイバーは後先を考えぬ連撃を放ち、反撃の槍を捌くことすら殆どせず、ランサーを壁際に追い込んでいく。 「なるほど……良い覚悟だ!」 互いの踏み込みの激しさにアスファルトがあっさりと粉砕されていく。 喉を狙うランサーの一撃を屈んで回避し、両手で掌打を叩き込む。 咄嗟に槍の柄を叩き付け壁に叩き付けることを拒否したランサーの顔が苦痛に歪んだ。 セイバーはその隙を逃さず一瞬だけ錬気し、連撃を叩き込む。 その姿はまるで数人が同時攻撃しているようにも見えた。 レイジングハートを構えたなのはのすぐ近く、フェイトがバルディッシュを握った状態で、短距離走のクラウチングスタイルのように身を屈めている。 「エクセリオンバスター、バレル展開、中距離砲撃モード!」 『All right. Barrel shot』 レイジングハートのバレルが展開し、六枚羽が展開する。 ちらりとフェイトの方に視線を移せば、フェイトもなのはの方に視線を移し、頷く。 準備は終わり、視線を戻す。 セイバーの猛攻がランサーの動きを著しく制限している。 これならば確実に一撃をたたき込めると確信した。 巨大な空気の塊が撃ち出され、同時にフェイトも 『Blitz action』 その場より掻き消えた。 この相手は危険だ。 早急に無力化しなければならない。 故に消耗を気にしてはいけない。 ポケットに手を突っ込み、中から宝石を取り出せるだけ取り出す。 その動きに気付いたのか、ヴィルベルトが突撃する。 決して思慮有る行動ではない、出した結論は等しく、相手が危険であるという事だけであった。 取り出せた数は三つ。 全て使い捨ての宝石である。 かつての10年宝石には遠く及ばぬ一撃ではあるが、それでも戦車装甲を貫徹する程度の魔力量が込められている。 それを三つ一気に投入、投射する。 「Das Schiessen 発砲 ――Gedraenge 破砕 」 槍が目前に迫って尚、瞳は力強く敵を睨み、そして魔力が放たれた。 直後、一瞬だけ閃光が視界を覆う。 違えようのない直撃の閃光が、ヴィルベルトの身体を包み込み、爆砕する。 ヴィルベルトが常時装備していたルーン防御の防壁 アミュレット はあっさりと貫通し、殆ど純粋な魔力塊をたたき込まれ、吹き飛ばされ、悶絶する。 だが、それでも膝立ちで堪え、そして遂には立ち上がった。 「まだ……まだだ! 遠坂凛」 ヴィルベルトの全身が震えている。 叩き込まれた魔力塊は体内の魔力回路にも、もしかしたら魔術刻印にさえ深いダメージを与えたかもしれない。 その証拠に、魔力塊が与えた負荷によるものだろう、全身から血が噴き出ている。 回路に与えた過負荷が全身を巡り、同時に血管と皮膚を破裂させたのだろう。 だがそれでも立ち上がった。 そして逃げようともせず、槍を構えてこちらに向かい歩いてくる。 走る力さえ、今の一撃は奪ったのだろう。 遠坂凛にはその姿が、よく知る男と重なって見えた。 クエッション:「何故そこまで……何がそうさせるの?」一歩後退し、問いかける オーバーキル:「なら……今楽にしてあげる」腕を突き出し、ガンドの狙いをつける
https://w.atwiki.jp/nijiseihaitaisen/pages/82.html
なんなんだよ…聖杯戦争って…… この言葉を一体何度繰り返したのだろうか。 しかし、直保はその回数はとっくに忘れてしまったし 溜息の数も両手では収まり切れなかった。 何よりもここは彼がかつていた場所――農大ではないのだから…… 沢木惣右衛門直保―― 長いので沢木直保と省略する。 彼は聖杯戦争に巻き込まれてしまったのである。 何故?かと言えば思い出せない。 月の石とやらにも心当たりない。 もしかしたら、彼の先輩たちがうさんくさい高価な石だと紹介したあの石…だったかもしれない。 何にしても故意ではないのだ。 彼は魔術師じゃない。 かといってタダの人間でもなかった。 直保には「肉眼で菌の姿を捉える」能力がある。 掴むことも出来るし、少々くらいは操ることも出来る。 だけどもそれだけ。 もしかしたら、自分の能力が魔術的なものなのかもしれないが 逆に嬉しくも何ともない。むしろ迷惑だ。 何故、このような戦争に巻き込まれてしまったのだろう。 さらに巻き込まれただけならともかく 農大ではない、全く見知らぬ地に移されてしまったのも迷惑極まりなかった。 直保は友人たちや先生たちの心配もそうだが 果たして自分は元の場所へ帰ることができるのだろうか…? 「大丈夫大丈夫!なんとかなるってー」 そう呑気に声をかけてくるのは直保のサーヴァント・キャスターである。 戦争に参加するのに何が大丈夫で、なんとかなるのか。 直保は困り果てていた。 「そんな顔すんなよ、提督ぅ~これでもあたし、結構活躍できるんだぜー!」 「違う……俺は好きで参加した訳じゃないんだ…」 悲壮に溢れる言葉を漏らすが キャスターはヘラヘラとした態度で軽く受け流した。 「そりゃあ、仕方ないね~」 「仕方ないって―――」 「たまーにそういうのあるんだよ。聖杯戦争ってさー それに今回はあたしらだけじゃないんだ。皆と頑張ればなんとかなるなる!!」 確かに今回の聖杯戦争は 月と地球 二つの陣営に分かれ戦うのだ。仲間がすでにいる状況だ。 ルールを聞いている直保は分かっているものの、また溜息をつく。 「それよりさー提督、酒作ってるんだろ? あたし、それ飲みたいなぁ~今度飲ませてくれよ~」 「酒だって、農大に帰らなきゃないだろ…」 「じゃあ一緒に帰って飲もうぜー!」 ノリで話している気がしなくもないが キャスターの提案に直保は少し間を開けてから 「……そうだな。皆のところへ帰ろう」 少しだけ頬笑み答えた。 ちゃんと生きて帰ろう。 そんでもって宴でも何でもいい、皆で酒を飲み明かそう。