約 772,633 件
https://w.atwiki.jp/uran/pages/624.html
#blognavi すみません、ひとことBBSにカキコしてもらったメッセージのレスです。BBSへレスすると”ひとこと”で終わらず、長文になりそうなので(爆)。 ビアンコさんへ。 ビアンコさんにはすでにブログのソースを修正して頂きました。 話が見えない方へ(みんなにも参考になるトピックだと思うので)ご説明。ビアンコさんのブログの、画面左上に住んでいるネコちゃんのスクリプトが h1 タグでマークアップされてたんですね。 これはネコちゃんスクリプトの作者さんサイトで指定の「ソースをコピペして使ってね」という指示があってのモノなので、ビアンコさんのミスではありましぇん。 なんでスクリプト作者さんが h1 タグを使ったかは、たぶん、スクリプトが無効になっているブラウザでも、ご自分のスクリプトとサイトの存在を印象づけたかった、明示されたかったからではないかと推測いたします。(^_^;) 実際、スクリプトを無効にしたブラウザでは、以下のように画面左上にリンク文字がでっかく(大見出しの文字サイズで)表示されます。 でっかく表示されるだけでなく、表示された分だけページ上部にスペースが取られます。 ブログによってはレイアウトが崩れるかもしれませんねー。 スタイルシートでこのリンク文字列を非表示にすることは出来ますが、それはスクリプトを厚意でシェアしてくださっている作者さんに対して非礼な行為だと思うので、 h1 タグを div タグに変えたほうがいいですよ~と、アドバイスさせてもらったワケです。 こうすれば、たとえスクリプトが無効なブラウザでも標準の文字サイズの大きさで表示されるから(スタイルシートの設定によりますが)見た目もそれほど、レイアウトも気になるほどには崩れないと思うので。 見出しを適切にマークアップする、できれば、他の文書要素も、、と書くのは、BBSでコムムスさんがフォローしてくださってますが、音声ソフトには「見出しだけ読み上げる」機能が付いていたりするからなんです。 目が見えるヒトなら、本屋さんで新しい本を手に取って立ち読みするシーンを想像してもらうとわかるんだけど、、 どんな内容なのか、構成になっているのかを知るためには目次ページを見ますよね。音声ソフトに頼らざるを得ないヒトたちにとって、目次にあたるのが「見出し一覧の読み上げ」です。 それがなかったら、ページを上から下まで全部読み上げないと、ナニについて語っているのか、わからないですね。しかし、そんなブラウジング(読み方)は利用者にとって非効率でしょう。 時間もかかるでしょう。 ページ内の文字列に対して適切なマークアップがなされていれば、音声ソフトの機能が生かされるんです。ちなみに音声ソフトは見出しだけでなく、段落も一つの単位として認識するので、長い文章であれば、その文章をひとつの p タグで囲むのではなく、文脈的に複数の段落に分ける、複数の p タグを使う、、ようにされることをオススメします。 コムムスさんへ。 ☆(ここは引用文です) FC2がCGISSIどちらも禁止なので、好きな掲示板を使えない そうだったんだ~。いや、ちょいとinfoseekと混同してました。 まあ、SSIが使えない(会社で借りたレンサバもexecが使えなかったし)のはいいとしても、CGIが。。よっぽど過去にみんなしてエラーを出しまくってたのかなあ。(^^;;; それでfc2はレンタルアクセスカウンタに掲示板サービスを提供してるんですね。 画像引用ができないのは、直リンク防止策ですね、きっと。 しかし、考えてみれば掲示板はサブコンテンツだし、利用者がレンタルで満足できるなら、まあ、それほどこだわる必要ないかも。掲示板を設置したら、それなりに管理が必要になるから、時間のあまりないヒトには薦められないしい。 一度、fc2のユーザーサイトを見に行けばいいか~。 補足説明、ありがとでした。 カレンダーでは大変お世話になりました。/*と*/で挟むということですが、それをしなくても、非表示になっていました。新しく作ったカレンダーバーのスクリプトを以前のカレンダーバーの上に貼り付けていたので、2箇所に出る、という失態でした。お世話になった、こももさんに尋ねられて発覚しました。お騒がせしましたm(_ _)m あやまる-- ビアンコ (2006-06-21 22 35 28) ビアンコ&ロッソさん→こちらこそ、色々おせっかい焼いて、余計なアドバイスもして、、失礼しましたあ。☆(ココ引用文)/*と*/で挟むということですが、それをしなくても、非表示になっていました。ハイ、それがインラインスタイルシートで「要素を表示しない」と設定しているからなんですねー。(^^)少しずつHTMLとスタイルシートを覚えて頑張ってくださ~い。 -- うらん (2006-06-22 10 01 03) 名前 コメント カテゴリ [インターネット] - trackback- 2006年06月21日 11 36 43 #blognavi
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1621.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/素敵な恋のかなえかた 愛妻弁当はまだ早い ある日の放課後、柵川中学の一年生、初春飾利と佐天涙子は街中でよく見知った人物の姿を視界の端に捉えた。 「ねえ、初春。あれって御坂さんだよね」 「へ? あ、そうですね、御坂さんです」 佐天の指摘に初春も相づちを打つ。 二人の視線の先には本屋で立ち読みする御坂美琴の姿があった。その真剣な表情は二人があまり見たことのない物である。 「何やってるんだろう?」 「それは立ち読みでしょう、やはり」 「だよね。でもお嬢様も立ち読みするんだ」 「佐天さん、知らないんですか? 御坂さんって結構立ち読みとかするんですよ」 「ふーん、まあ御坂さんらしいっちゃ、らしいか」 「はい。でも妙ですね」 「何が?」 「御坂さんの読んでる本です、ほら」 「ん? どれどれ?」 佐天は初春の指示通り、美琴の読む本のタイトルに視線を動かした。 けれど佐天は何が妙なのかわからず首を傾げる。 「普通の本でしょ」 「佐天さんにとっては普通の本ですけどね。けど御坂さんって立ち読みするのは漫画ばっかりで、ああいう本に興味はないはずなんですよ。あくまで白井さん情報ですが」 「ふーん」 初春に言われて佐天は改めて美琴の読んでいる雑誌のタイトルを目で追ってみる。 それはごくありふれたティーンズ向けの雑誌、女子中学生にとっては本当に極当たり前、普通の本であった。 「そんなもんなんだ」 一方、自分の行動が初春達に監視されていることなど露ほども知らない美琴は、真剣な表情で雑誌を読み進めていた。 「ふむふむ、なるほどね。お菓子をプレゼント、うん、こういうのもありかな。でもアイツの好みからすると、あっちの方が合ってるのよね。おやつなんかよりまず三食きっちり食べることの方が重要そうだし」 そう呟きながら美琴は雑誌を棚に戻すと、家庭料理を扱った本のコーナーに移動した。 「うんうん。凝った物もいいけど、やっぱり基本は家庭料理よね」 美琴は家庭料理のレシピ本をパラパラとめくり始めた。 「まあ、基本的なことはできるから別に気にすることもないんだけど、やるからにはやっぱり徹底的にやらないと。それにアイツ、一人暮らし長いくせにあんまり料理得意じゃないって言ってたし。こういうのって結構効果的になったりするのよね」 何に対してどう効果的なのか、という肝心な部分を深く考えないまま、美琴は先日、上条にお好み焼きを振る舞った時のことを思い出していた。 『別にそんな大げさに美味しいって言わなくてもいいわよ。私だってしょせん素人なんだし』 『いやいや、本当にすげー美味かったって。恥ずかしい話、俺って一人暮らし長いけど料理なんてあんまり上手くなくってさ。こういうまともな料理食えたの、久しぶりなんだ』 『へ、へえー。そうなん、だ……。で、でも私だってそんな慣れてるわけじゃないし』 『それでも俺より絶対に上手い、保証する。それにしても慣れてない、ね……。うーん、慣れてなくてこれって言うんなら、本当にお前って凄い奴なんだな。うん、なんだかよくわかんなかったけど、こういう勝負ならまたいつだって受けて立つぜ。今日はサンキューな、御坂』 『え? ……ま、またって、その、アンタ、私のて、手料理、食べたいって、事、なの?』 『ああ、御坂が迷惑じゃなければな。上条さんはいつでも大歓迎いたしますですよ。あくまで食べる専門だけど』 『そう、なんだ……』 『?』 その後しばらく上条と会話した結果、料理をあまり得意としない上条は、安くて一見凝っているように見えて実は簡単な上にお腹もふくれる、ある意味における三拍子揃った料理を家では主に作っていること、更に言うなら簡単なように見えて意外と手間のかかる家庭料理という物への強い憧れを持っている、ということまでを美琴は聞き出した。 もっともこの上条の発言の裏には、インデックスという上条家のエンゲル係数を極限まで押し上げるブラックホールの胃を持つ少女と上条が同居している、という事情が大いに関係しているのだが、美琴がそんな事情を知るはずもない。 とにかく美琴は上条の舌と胃袋を虜にする手段を手に入れた、そう考えていた。 上条の周りの女性でこういう事情を知る者はいないはず。 だからこの路線で攻めれば、また上条との関係を良い方向に変えることができる、そう思ったのだ。 「料理のことがあるから私を邪険にすることはできない、そう思わせられればまた私の勝ちよね。これで二連勝!」 二、三度瞬きした美琴は小さくうなずいた。 「うん、大丈夫。アイツ、私の手料理、好きって言ってくれたんだもん。また作って上げたら、きっと喜んでくれるわよね」 手に持った家庭料理のレシピ本を閉じた美琴は頬を染め、はにかんだような笑みを浮かべる。 本人がどれだけ否定しようともそれはもう、常盤台の超電磁砲でも、学園都市最強のレベル5の顔でもなかった。 今の美琴の表情。それは紛れもなく一人の女子中学生、恋する乙女、のそれだった。 そんな美琴の様子を見た佐天は、美琴に聞こえないよう小声で歓声をを上げた。 「うわー、御坂さん、かわいい。ねえ初春、あの御坂さんってめちゃくちゃかわいすぎ……って、何やってるの?」 「はい? ただの隠し撮りですけど、それが何か?」 声をかけられた初春だったが、彼女は佐天の方を見もせず黙々と作業を続けていく。 その様子に佐天は若干顔を引きつらせた。 「いや何かって、そんな真顔で聞かれても」 「何がそんなに不思議なんですか、佐天さん?」 「えと、そりゃ、普通に不思議だと思うけど」 「はぁ、そうですか」 しかしやはり佐天の方を向くこともなく、真顔の初春は手に持った高性能デジカメで美琴の写真を撮り続けていた。 やがて写真を撮り終えた初春は、ようやくカメラから手を離して佐天の方を向いた。 「ふぅ、これくらい撮れば十分ですね。佐天さん、お待たせしました。ん? どうしたんですか?」 「え、ええっと、その、なんて言うか、終わったの?」 「はい、撮影終了です。これだけあれば白井さんも満足すると思いますから」 「え? 白井さんって……この写真、白井さんのために?」 きょとんとした佐天の質問に初春はこくりとうなずいた。 「ええ。白井さん、すごく喜ぶんですよ、御坂さんのベストショットをプレゼントしてあげたら。あの頬を染めた御坂さんの写真なんか、きっと大喜びしますよ」 「確かにそれは喜びそうだろうだけど、でもどうして初春がそんなことをしてあげるの? 頼まれてるとか?」 「いいえ、あくまで私が勝手にやってるんですよ。白井さんは大切なお友達ですから。お友達が喜ぶことをするのは当然です」 「はぁ……。ねえ初春、まさか、とは思うけど、プレゼントなんて言いながら、白井さんにその写真を売ったりしてないわよね?」 訝しげに質問する佐天に、初春は憮然とした表情になった。 「佐天さん、それはいくらなんでも失礼じゃないですか? 大切な友達の御坂さんの写真を、同じく大切な友達の白井さんに売るなんてマネ、私がすると思ってるんですか? あくまでプレゼントするだけです。一円ももらってません」 静かだが凛とした声で断言する初春。 その口調に佐天の頭は自然に垂れた。 「ご、ごめん初春。そうだよね、いくらなんでもそんなマネ、あたし達の間で――」 「だけど、御坂さんの写真をプレゼントしてあげたら、なぜか白井さん、常盤台の実習なんかで使うすごく上等なお茶やお菓子をごちそうしてくれるんですよね。それもたくさん写真をあげればあげるほど」 「…………」 「佐天さん、どうして黙るんですか?」 「……ごめん、初春。本当になんかもう、ものすごくごめん。スカートめくる回数、今まで一日十回だったの、七回までに減らすから。だからね、私の知ってる純粋な初春に戻って、お願いだから」 「はい? 何を言ってるんですか、佐天さん?」 心の底から残念そうな表情で自分の肩に手を置いてくる佐天の顔を見ながら、初春は小首を傾げた。 「…………」 そんな初春に対して、もはや佐天は何も声をかけることができなかった。 今の佐天にできることは心の中でさめざめと泣くこと、ただそれだけだった。 初春達がそんな珍妙なやりとりを続けている事をまったく知らない美琴は、嬉しそうな顔をしたまま本屋を後にした。その手にはもちろん、先程購入したレシピ本が入った紙袋がある。 「佐天さん、御坂さんが出てきましたよ」 「え?」 美琴が本屋を出たことに気づいた初春が、小声で佐天に声をかけた。 「どうします?」 「どうするって……とりあえず、追いかけようか」 「ですね、また写真のネタがあるかもしれませんし」 「それはもういいって……」 美琴はブツブツと呟きながら常盤台の寮への家路を急いでいた。 「そうね、ぶっつけ本番でいきなりアイツに食べさせるっていうのもいいんだけど、まずはこの本に載ってる料理を片っ端から練習して、その上でアイツに食べてもらうってのがセオリーよね」 美琴は上条とよく会う公園の入り口に来たとき、ぴたりと足を止めた。 「ということはやっぱり寮の調理室で練習するしかないわよね。黒子にばれなきゃいいけど」 それだけは避けないと、と美琴は独りごちた。 なぜかはわからないが、白井は上条と自分がいっしょにいることを快く思っていない。この間など少し上条と話していただけで、彼女は上条を攻撃したくらいだ。 そんな白井にもし自分が今やろうとしていることがばれた日には、彼女がどんな行動を取るか想像もできない、そう美琴は考えていた。 したがって白井にばれることだけは絶対に避けなければならないのである。 「黒子にばれないように練習するんだったら、初春さんや佐天さんの部屋で練習させてもらうのも一つの選択肢なんだけど……。でもあの二人がこのこと知ったら、また私をからかおうとするだろうしなあ。別にあの馬鹿とはなんでもないって言ってるのに、どうしてあの子たちって妙な誤解するのかしら」 美琴は顎に指を当てるとうーんと唸った。 「やっぱり言わない方がいいか、妙なネタを提供するだけだろうし……。うん、やっぱり内緒にしておこう」 美琴は一人納得したようにうんうんとうなずいた。 そんな美琴を近くの物陰に隠れながら見ていた佐天と初春は、小さく、それでいて盛大なため息をついていた。 「御坂さん、もう完全にばれてますから……。それに誤解じゃないでしょう、あんな嬉しそうな顔して。だいたいなんでもない相手なら、どうしてわざわざ本まで買って、練習してまでご飯を作ってあげるんですか……」 「ですよね。お好み焼き屋デートの話だってこっちはもう掴んでいるっていうのに、何を今さら。佐天さん、もしかして御坂さんって、カミジョウさんが絡むとドジッ子になるんでしょうか?」 「かもね。あんな大声で独り言言ってて周りに気を遣いもしないし。そもそもあたし達が常連になってるお好み焼き屋でデートする事自体がうかつだよね」 「はい、情報ダダ漏れです」 「まあとにかく、恋愛ごとに関して言えばあの『常盤台の超電磁砲』も」 「ただの女の子って事ですね」 初春達はやや困ったように互いに顔を見合わせた。 しかしその表情には、友人である美琴の新たな一面を知ることができた喜びも含まれていた。 「ところでさ、初春」 「はい?」 「あれ、なんだと思う?」 「あれとは?」 「あれ」 「はあ」 初春は佐天の指差した方向、公園の中の方へ目を向けた。 確かに公園の中の方に何か、いや誰かがいるのが見えた。しかもその人影は徐々に大きくなっている。こちらに向かってきているのは間違いない。 初春は無意識にかわいらしく小首を傾げていた。 「誰かがこっちに向かってきてますね。いったい誰でしょう?」 「うーん。あ、あたし正解わかったかも」 「え、まだ顔もよく見えないくらい遠いのに、わかったんですか佐天さん?」 「たぶんね、ほら」 「ほへ?」 佐天は公園の中ではなく、その入り口に立っている美琴を指差した。 「どうして御坂さんを?」 「ほら、よーく見てみ初春、御坂さんの様子」 佐天に促されるように初春は美琴の様子を観察してみた。 しかし美琴の様子にこれといって特筆すべきところはないように思えた。彼女はただじいっと公園の中を見ているだけだったのだから。 「ただ公園の中を見ているだけみたいですけど」 初春は不思議そうに佐天を見た。 「ノン、ノン、初春。もう一度よーっく見てみなさい」 初春はもう一度美琴の様子を見てみた。そして美琴の表情を注意深く見たときに、ようやく自分が思い違いをしていることを理解した。 美琴はただ見ているのではなかった。彼女はこちらに向かってくる人物を、頬を染め熱心に見つめていたのだ。 「…………!? なるほど!」 「そういうこと」 佐天は嬉しそうにうなずいた。 あの現在進行形で恋する乙女、御坂美琴が見つめるような相手はこの世にたった一人しかいない。 しかもその美琴の目がほんの少し潤んでいるのだから、これはもう間違えようがないのだ。 美琴が熱を帯びた視線で見つめる相手。 それは、 「だあ――っ! もう間に合あわね――! 上条さんちの食卓が大ピンチですよ――!!」 学園都市で最も有名なレベル0、伝説のフラグ男、上条当麻である。 上条は必死の形相でこちら、というより公園の出口に向けて全力疾走していた。 その様を見ながら美琴はぎこちない様子で片手を上げた。 「あ、あら、奇遇じゃない、ど、どうしたの、こんなとこ――」 しかし美琴の挨拶はここで終わってしまう。 上条がびゅんっという効果音を付けられるほどの勢いで美琴の側を駆け抜けてしまったからだ。 「とこ、ところ……で、ででで……?」 上条が駆け抜けたあと、そこにはぽつんと一人、美琴が立ちつくすのみだった。 「何あれ……」 「あっさりスルーでしたね……」 呆然と美琴達の様子を見ていた佐天だったが、急にはっと息を呑むと自分と同じように呆然としていた初春の腕をぎゅっと掴んだ。 そしてそのまま初春に小声で、けれど真剣な口調で話しかけた。 「何してるの初春? 速く逃げるよ!」 「え?」 「だから危ないから、ほら、逃げなきゃ!」 再度、佐天は初春を促す。 しかし初春は未だぼうっと美琴の様子を見たまま動こうとしなかった。 その様子にイライラした佐天は、ややきつめの調子で初春に声をかけた。 「何やってるのよ!? 初春は知らないだろうけどカミジョウさんが絡んだときの御坂さんって、いつもと比べものにならないほど沸点低いんだよ! このままだと電撃であたし達も巻き添え食らうかもしれないんだから速く逃げな――」 「でも」 「何!?」 なおも動こうとしない初春を佐天はキッとにらみつける。 「御坂さん、電撃出さないみたいですよ」 「へ? 嘘!?」 思わずまぬけな声を出した佐天は初春の指差した先、美琴の様子をまじまじと見つめた。 「ほんとだ……」 確かに初春の言う通り、美琴の周りにはまったく電撃が漂ってはいなかった。これなら自分達が電撃の余波で被害を受けることはないだろう。 けれど、 「でも御坂さん、とんでもなく怖い顔してるじゃない……。子供が見たら泣くわよ、あれ……」 美琴は確かに電撃自体は出していなかった。しかし上条をにらみつけるその表情は正に般若のようであり冗談抜きで怖い。 いや、怖いと言うよりむしろ恐ろしい。そう、いつぞや上条が女性を押し倒す様を目撃したあのときと同じくらい、それくらい恐ろしい表情だった。 電撃は確かにないかもしれない、しかし上条が無事で済むとも佐天にはとても思えなかった。 「カミジョウさん。身から出た錆とはいえ、ご愁傷さまです……」 佐天は走り去る上条に心の中でそっと黙祷を捧げた。 一方、当の美琴は般若の表情のまま上条をにらみつけていた。 「何よ、あの馬鹿……いくらなんでもスルーって事はないでしょう? 私はアンタにとって未だにその程度の存在なわけ? デートだってしたし、手料理だって作ってあげたし、これからだって……。なのにその態度……。そんなこと、許されると思ってるの……? ううん、許される訳ないでしょう……」 すっと表情を消した美琴は側にある空き缶を掴んだ。彼女はそのまま野球の投球フォームを取ったかと思うと、 「いっけ――!」 上条に向かって思い切り空き缶を投げつけた。狙いは寸分違わず上条の頭。 「ぐげ!」 そして空き缶は見事に上条の頭を強襲。彼は綺麗な放物線を描いて地面に倒れることになった。 「やった! 大当たり!」 ぐっと拳を握った美琴は嬉々として上条の元に駆けていった。 「…………」 地面に倒れた上条はピクリとも動かなかった。 そんな上条の側に、ぶちぶちと文句を言いながら美琴が走り寄ってきた。 「アンタね、いくらなんでも私をスルーするってのはどういう了見なのよ。ていうか、どうしていつまで経ってもアンタの検索件数の中で私はゼロ件のままなのよ。ほら、なんとか言ってみなさいよ、ねえ!」 しかし上条は美琴の声に何の反応も示さず目も覚まさない。よほど当たり所が悪かったのだろうか。 美琴は顔をほんのわずか引きつらせて地面に座り込むと、上条の体を揺すった。 「ね、ねえ、ちょっと、いい加減に起きなさいよ」 「…………」 しかし上条が目覚める様子は見られない。 美琴はごくりとつばを飲み込むと、今度は上条の体を強く揺すってみた。 「ねえ、ねえってば!」 「…………」 けれど上条は無反応。 「嘘、でしょ……。たったあれくらいで……」 唇をぎゅっと噛んだ美琴は更に強く上条を揺すった。 「ねえ、ねえ! 起きてよ! 冗談なんでしょ! ねえ! ねえ!!」 美琴はひときわ大きな声を出した。 だが上条が未だ何の反応も示さないのを知ると、美琴は地面にうつぶしたままの上条の体をゆっくりと仰向けにし、彼の頭を自分の膝の上に乗せた。 「…………」 美琴はそっと上条の頭、缶がぶつかったであろう部分を撫でた。 「ねえ、本当に打ち所、悪かったの……? ごめ、ごめんなさい、本当に、ごめんなさい……」 ぽつりぽつりと呟きながらなおも上条の髪をなで続ける美琴。その瞳には徐々に涙がたまり始めていた。 「ちゃんと謝るから、ねえ、起きてよ。ねえ、とう……まぁあ――――!?」 突然、目を開いた上条ががばっと跳ね起きた。 上条はきょろきょろと辺りを見回すと、思い出したかのように顔をしかめ、後頭部をさすりだした。 「いてててて……」 「ち、ちょっとアンタ、大丈夫なの?」 慌てて美琴は心配そうに上条に顔を寄せた。 無意識に上条も美琴の方を向く。 「えと、御坂、か……!」 「…………!」 瞬間、互いの吐息が感じられるほどに顔を寄せ合っていることに気づいた二人は、顔を真っ赤にしてぱっと離れた。 「…………」 「…………」 気まずい緊張を含んだ空気が二人の間に流れる。 二人とも無言。しかしお互い相手のことが気になるようで、ちろちろと目だけは相手の方を見ていた。 やがて意を決したかのように上条は小さくうなずくと、キッと美琴の方を向いた。 「御坂」 上条の声に美琴は声を裏返しながら応えた。 「は、ハイ?」 「えーと、さっきの、顔が近かったの、とか、そんなのはこの際どうでもいい。えーと、お前なのか、俺に何かぶつけたのは?」 「あ」 上条の質問に、美琴は途端にばつが悪そうな表情になって露骨に顔を背けた。 「……お前なんだな。何をぶつけた?」 「空き缶……。その、ごめん……」 「ったく……。なんで俺がそんなことをされなきゃいけないんだよ」 「だって……アンタが、私をスルーするから……」 「スルーってなんだよ。そんなことで空き缶ぶつけるか、普通? こっちだってわざとやってるわけじゃないし、だいたい上条さんは急いでたんだから……って、急いで、た……!? み、御坂! 今何時だ!」 「今? えっと、四時過ぎだけど」 「やばい!」 ばっと立ち上がった上条は、きょろきょろと辺りを見渡すと、地面に落ちていた自分の鞄をあわてて拾った。 「ちょっとどうしたのよ、急に慌てだして?」 「タイムセールだよ、タイムセール! 今日は鶏肉がめちゃくちゃ安いんだ! 今日を逃せば、上条さんちではまた当分の間、動物性タンパク質を取るのが困難になるんだよ! なのにこんなときに限ってタイムセールが一時間早く始まるし……。あー、こんなこと話してる時間もねー! じゃあな、御坂!」 上条は片手を上げて美琴に挨拶すると、先程以上の勢いで走り出した。逃げんじゃねーぞ俺のチキンちゃん、といったかなりまぬけな叫び声を上げながら。 美琴は去っていく上条に手を振りながら、ぽつりと声を出した。 「悪いことしたわね……」 美琴は少しうつむくと、きゅっと口を結んだ。 また、であった。 また、自分は上条の事を何も考えずに自分の気持ちだけをぶつけてしまっていた。 上条は決して美琴をないがしろにしているわけではない。 ただ今の上条にとってはお腹がふくれるわけでもない自分との語らいよりも、今晩の栄養源を手に入れる方が大切、ただそれだけなのだ。 そこに悪意はない。ただ衣食住が保証されているエリートお嬢様と貧乏高校生の住む世界の違い、それだけなのだ。 なのにまた自分はそんな上条の事情を考えることもなく、自分の想いや都合だけを押しつけてしまい、結果として上条に迷惑をかけてしまった。 美琴はそんな自分が嫌になっていた。 「ちゃんと謝って、お詫び、しないと……」 無意識に美琴の口から言葉が漏れていた。 「お詫び……」 もう一度つぶやいて美琴はごくりとつばを飲み込む。 美琴は今、上条に申し訳ないと思った。 何かで罪滅ぼしをしたいと思った。 そうしなければ上条に嫌われると思った。 上条に相手にされなくなると思った。 それだけは、絶対に、嫌だった。 だから上条に嫌われないようお詫びをしなければいけないと思った。 上条に嫌われないような、さらに上条に喜んでもらえるようなお詫び。 「そうだ、ご飯」 美琴はばっと顔を上げた。 「ねえ! アンタ、よかったら今日の晩ご飯――」 思わず上条に声をかけた美琴だったが既に上条は遥か遠くにおり、美琴の声が届くはずもなかった。 「…………」 美琴は再びうつむいてしまった。 「……馬鹿」 美琴は自分の頬を軽くはたく。ぺちっという弱々しい音が鳴った。 「どうしてこう、私はタイミングが悪いのよ。ちゃんと謝ることもできないなんて。お詫びだって……。私、アイツの家知らないし、携帯の番号すら知らないのに。こんなんじゃ私、アイツにお詫び一つできない……。馬鹿、本当に私、馬鹿……」 美琴は再び自分の頬をはたいた。 「?」 ふいに美琴は足下に何かがあることに気づいた。 「これって」 足下にあるその物体を拾った美琴は、それを眺めてみる。 「鍵、よね。それも家の……」 確かにそれは鍵、どこかの家の鍵だった。しかも足下付近にある砂埃でほとんど汚れていないことから、落ちたばかりの鍵だとわかる。 さらに言うなら鍵が落ちていたのはちょうど上条が倒れていた場所、まさにそこだった。 「…………」 美琴は小さくうなずいた。 「やっぱりそうよね」 美琴は確信した、これは上条の家の鍵だと。他にも可能性はあるだろうが、上条の家以外の家の鍵だとは美琴にはどうしても思えなかった。 根拠はないが、これは神様が与えてくれた上条にきちんとお詫びをするチャンスだと、そう美琴には思えた。 ならば自分はそのチャンスをちゃんと生かさなければならない、そう思った美琴は携帯を操作するとある番号を呼び出した。 「え? え?」 美琴が携帯を操作した途端、初春の携帯が着信音を鳴らし始めた。 ばっと初春の方を向いた佐天は大声を出した。 「ちょっと何やってるのよ初春! こういう時は携帯の電源は切っておくかマナーモードにするのが常識でしょ!」 「ご、ごめんなさい佐天さん! つい!」 わたわたと慌てながら初春は携帯を取りだした。 「もう、いいから早く音消して!」 「は、はい!」 ひときわ大きな声で返事をしながら、初春はようやく携帯の電源を切った。 「ふぅ」 初春の携帯の音が止んだことで、佐天は安堵の息をついた。 「もう、どうするのよ初春、もし御坂さんに見つかりでもしたら」 しかし初春は佐天に返事をすることはなかった。ただ残念そうに頭を振るのみだった。 「ん? どうしたのよ、初春?」 その態度に疑問を持った佐天だったが、初春はやはり返事をすることはなかった。ただ諦めきったような表情で、佐天に後ろを見るよう促していた。 やがてその行動が意味することに気づいた佐天はさあっと表情を青ざめさせた。彼女はそのままそうっと後ろを振り向く。 「……お約束」 「ですね」 彼女達の背後には穏やかな笑みを浮かべた美琴がいた。 「ねえ佐天さん、初春さん、そんな所で何してるの?」 美琴が口にしたのはごく当然の疑問。そのまま彼女は笑顔を佐天達に近づける。 「え、えっと、その、あの……」 「別に脅してるわけじゃないけど、説明は、してくれるわよね?」 穏やかな口調だったが、美琴のその言葉は言霊のように佐天達を怯えさせるのだった。 物陰から美琴に促される形で出てきた初春と佐天は、諦めたような表情でがっくりと肩を落としていた。 「あ、あのですね御坂さん。これは、その……」 チラと上目遣いで美琴を見た佐天は、おずおずと言い訳をしようとした。 だが、美琴は別段気にした風もない。先程と同様の穏やかな表情のままだった。 「ん? どうしたの、なんか怯えてるみたいだけど?」 「は、はい。そりゃあ、ねえ?」 「はい」 美琴の問いに対して佐天と初春は互いに顔を見合わせてうなずきあった。 「もしかして」 美琴は初春に顔を近づけて小首を傾げた。 「私の様子をずっと観察してたことに負い目を感じてるとか?」 「…………!」 美琴の言葉に初春と佐天ははっと息を呑み、助けを求めるように互いを見た。 「うーん……」 二人のそんな様子を見て美琴は困ったような表情を浮かべる。 「ねえ、なんでそんなに怖がるの? 私、なんにも言ってないじゃない」 「でも……」 「本当に気にしてないんだし、別にいいわよ。ね?」 「は、はあ……」 なんとか自分達を安心させようと言葉を続ける美琴に、ようやく佐天達の心は少しずつ落ち着き始めた。 そんな二人の様子を見て取った美琴は、表情をほんの少しだけ変えて本題を話し始めた。 「むしろラッキーだったと思ってるんだから、こっちは」 「へ? それって……?」 「うん、ちょっと二人にお願いがあってね、だから電話したのよ」 「お願い、ですか?」 「そう、お願い。聞いてもらえるかしら?」 美琴の様子が変わったことがわかった佐天は、チラと初春を見た。 「内容によりますけど。ねえ、初春」 「はい。まあ、私達でできることでしたら」 「もちろんできるわよ。たぶん、私が知ってる中であなた達以上の適任者はいないわ」 「はあ。それで、お願いっていうのは?」 「うん。ああ、その前に確認したいんだけど、確か風紀委員の一七七支部ってキッチンあったわよね?」 「はい、もちろんありますよ。いつもお茶を入れるのに使ってますし、普通の料理くらいなら作れますよ」 「そう。じゃああともう一つ、黒子は本当に今日は風紀委員の会議で支部にはいないのよね?」 「はい。白井さん、昨日からブツブツ言ってましたから間違いありません」 初春の答えを聞いた美琴は、満足そうにうなずくと相好を崩した。 「うんうん。よし、じゃあ問題なしね!」 「は、はい? 御坂さん、いったい何を?」 「ふふん。じゃあ二人とも、ちょっと付き合って。スーパーに寄ってから、一七七支部に行くわよ」 「へ?」 やたら嬉しそうな美琴の様子に、佐天達は嫌な予感が脳裏をよぎるのを感じるのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/素敵な恋のかなえかた
https://w.atwiki.jp/azum/pages/52.html
夜になり、智はよみの部屋の明かりがついているのを確認し、家を出た。 よーし、今度はよみの部屋へ直撃だ。奇襲をかけて、そのまま犯人の名前を暴いてやる。 あっ、それと、宿題も見せてもらってやる。ふふふ、今に見ていろ。 智はよみの家のインターホンを押さずに、庭先を周ってよみの部屋の窓に立つと、よみ の部屋の窓ガラスをノックした。 少しして、よみがカーテンを開けた。智は窓ガラス越しに映るよみの顔を見て、思わず ニヤニヤと笑みを浮かべた。 もう少しで犯人の名前を教えてやるからな、と思うと思わず頬が緩んだのである。 よみが何も言わずに、窓のロックを外すと、智はひょいと飛び上がり、窓からよみの部 屋へと入った。 おっと、目的をちゃんと言わないと追い返されるかもしれないな。 「よみー、宿題教えてくれー」 智は一点の曇りもない笑顔で言った。ただ、これは嘘ではない。宿題を見せてもらうの も目的の一つだ。ただ、真の目的は別のところにあるんだけどな。 智はよみがどことなくよそよそしい態度をとっているように思えた。やっぱり警戒して いるのか。まぁいい。すぐには言わないでやる。その方が盛り上がるからな。 「今、宿題解いているところだから、もう少し待っててくれ」 何だ、まだ終わってなかったのか。じゃあ、待たせてもらうとするか。 「んじゃ、そうする。お前、あの雑誌の今週号買ったか?」 「あぁ。その辺にあるだろう」 智はよみが勉強している机の後ろにあるベッドに横たわり、ベッドの横においてあった ファッション雑誌を読み始めた。 よみは宿題を解きながら、自分の好きなラジオ番組を聴いていたため、しばらくは二人 の間に会話がなく、ラジオのDJの軽快なトークが部屋中に響いていた。 また、こいつはこのラジオ番組を聴いてるのか。本当に好きだね。 智はそう思いながらも、ファッション雑誌を何気なしに眺めていた。それから、少しし て、ラジオから最近のヒット曲がかかったとき、智はふとある疑問が頭をもたげ、沈黙を 破るように口を開いた。 「なぁ、今日の放課後どこに行ってたんだ?すぐいなくなったろ」 「ん?本屋に行ってた。欲しい参考書があってな」 よみが智のほうを振り向かず、勉強机に向かったまま、ぶっきらぼうに答えた。 何ぃ?本屋だって。それは気付かなかった。何で気付かなかったんだ。くそー、よく考 えたら本屋って選択肢ぐらい思いつきそうだったのに…。 智は唇を噛み締めながら、 「何だ、本屋だったのか?あー、それは盲点だったなぁ」 と、心から悔しそうな声を出した。 ん、待てよ…。本屋にいたって事はあの本を立ち読みすることもできたってことじゃな いのか?もしかしたら、もう全部読んじゃったんじゃ…。聞いてみる必要がありそうだな。 智はベッドから体を起こし、 「ところで、話は変わるけどさ。あの本どこまで読んだ?」 と、尋ねた。起き上がったときにギィとベッドがきしんだ音がした。 「まだだ」 よみが智の顔を振り返ることなく、それだけ言った。 「まだ読んでないのか」 智の嬉しそうな様子で言った。思わず、声が弾んでしまった。 ふぅ、良かった。まだチャンスはあるみたいだな。しかし、バカ正直な奴だ。嘘でも読 んだって言えばいいのに。そうすれば、バラされないかもしれないのにな。まぁ、仮にそ うだとしても、答えあわせのつもりで言っちゃうけどね。 智は読みが自分に背中を向けていることをいい事に、意地の悪い笑みを浮かべた。 「そうか。じゃあ、宿題を教えてくれるお礼に犯人の名前を教えてあげよう」 智はさっきと同じようなトーンで言った。しかし、普段ならツッコミが入るところなの に、よみからは何のリアクションもなかった。 ん、言っちゃっていいのか?言っちゃうぞ。それでいいんだな。まぁ止めても言うけど な。もう観念したのか? 「あれ?何だ、止めないのか。言ってもいいのかぁ?言っちゃうぞ?」 智は早く言いたくてたまらなかった。よみが苦悩する瞬間を目の当たりにしたい、そう 思うと胸の中がウズウズして止まらなかった。 「犯人は…」 「ちょっと待て!」 よみがそう叫んで、智のほうをキッと睨むように見た。 うおっ!そんな睨まなくても。 智は思わずその気迫に押されてか黙り込んでしまった。再び、DJの軽快なトークが部 屋中に流れた。 「それでは、ここでおハガキを一通。ラジオネームが『涙のダイ…」 ん?ラジオネーム『涙の…』だって。よみの奴、また『涙のダイエット少女』として、 ハガキを出していたのか。あはははは。こいつはお笑いだ。こうなったら読まれた記念 に、犯人の名前をバラしてやる。 よみは視線を智からラジオへとずらした。智もそんなよみの動作に合わせるようにラジ オへと視線をずらした。 よみのハガキよ、電波に乗って読まれろ。その瞬間、私はよみに犯人の名前をバラすの だ。ハガキを読み終えた瞬間が、よみにバラす号令となるのだ。 智の視線はラジオへと釘付けになった。 (後編へ続く)
https://w.atwiki.jp/na_rete/pages/19.html
工事中 公式サイトで一時的に設置された企画ページをリストする予定。 ◆企画・コラム関連◆ ほたる横丁町民会報(05/10/21~06/07/22) http //ar-tonelico.jp/directors_page/index.htm ドッコイフェスティバル(06/01/10~06/01/26) http //ar-tonelico.jp/dokkoi/index_01_10.htm アルトネリコ1周年記念祭プレゼントキャンペーン(07/01/26~07/04/03) http //ar-tonelico.jp/1avs/present/ アルトネリコ1周年記念祝辞ページ http //ar-tonelico.jp/1avs/syukuji/index.html アルトネリコ2発売記念サイト「ドッコイ秋祭り」(07/11/02~07/11/28) http //ar-tonelico.jp/at2/dokkoi_fes/ アルトネリコ2メタファリカフェスタ2008(08/03/15~08/11/17) http //bb.fwinc.co.jp/at2/ アルポータル2周年記念祭(08/07/09~08/08/31) http //shop.salburg.com/product/arpo_sec_fes/index.html アルトネリコ3カウントダウンフェスタ(10/01/18~10/01/28) http //ar-tonelico.jp/at3_countdown_fes/ アルポータル4周年祭(10/07/30~10/09/10) http //ar-tonelico.jp/4th_anniversary/index.htm アルトネリコファン感謝祭 http //ar-tonelico.jp/ent_2009/ アルトネリコファン感謝祭~PHASE2~ http //ar-tonelico.jp/fanfes_phase2/ アルトネリコ5周年記念祭 http //ar-tonelico.jp/AT5TH/ ありがとうアルポータル http //ar-tonelico.jp/ARIGATO/index.html ◆フラッシュコスモスフィア◆ 1:http //ar-tonelico.jp/1avs/index.html 2:http //ar-tonelico.jp/2avs/index.html 2周年記念:http //ar-tonelico.jp/2nd_anniversary/fc_2ndavs/cosmosphereYN.htm バレンタイン占い:http //ar-tonelico.jp/AT5TH_VT_FCS/fortune_cs.htm ◆関連商品ページ◆ アルトネリコ オリジナルサウンドトラック http //shop.salburg.com/product/at_soundtrack/index.htm アルトネリコ ヒュムノスコンサート 星詠/月奏 http //shop.salburg.com/product/at_hyummnos_concert/index.htm アルトネリコ2 オリジナルサウンドトラック http //shop.salburg.com/product/at2_ost/index.htm アルトネリコ2 ヒュムノスコンサート 焔/澪 http //shop.salburg.com/product/at2_cd_h_m/index.htm アルトネリコ3関連CD特設サイト http //ar-tonelico.jp/at3/at3_cd/index.htm アルトネリコOVA特設サイト http //shop.salburg.com/product/at_ova/index.html む茶ぶりカレンダー2009 http //shop.salburg.com/product/at_calendar2009/index.htm アルトネリコ等身大タオル http //shop.salburg.com/product/at_towel/top.html アルトネリコ2等身大タオル(投票) http //ar-tonelico.jp/at2/dokkoi_fes/towel_enq.htm 瑠珈フィギュア特設 http //ar-tonelico.jp/at2/luca_figure/index.htm 謳う丘~Ar=Ciel Ar=Dor~ http //ar-tonelico.jp/arciel_ardor/index.htm Voice de トウコウスフィア http //www.team-e.co.jp/sp/atvdts/ アルトネリコ3小説立ち読み ゲーマガBlog:http //gemaga.sbcr.jp/2011/03/315ga-1ffe.html 4gamer.net:http //www.4gamer.net/games/100/G010023/20110308051/ アルトネリコポストカード特設 http //shop.salburg.com/product/arpo_sec_fes/postcard/index.htm
https://w.atwiki.jp/wii-strap/pages/18.html
ゲーム1週間:Wii発売直前、米ではトラブルも発覚 続くDSブームでメーカー倒産も http //mantanweb.mainichi.co.jp/web/2006/12/1wiids.html? Wii発売直前の12月1日、先行発売された米国では、遊んでいる途中でリモコンが手を離れ、テレビ画面が割れたり、壁がへこむなどのトラブルが、動画投稿サイトやブログなどで多数報告され、話題になっていること分かった。 みんなのニュース:Wii国内発売前に思わぬ騒動 http //www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061202k0000m040006000c.html? そういう画像があるのは事実だが、米国でストラップがとれるなどのトラブルの情報は入ってきていない。品質管理についてはどこよりも徹底しており、通常の遊び方でとれたりすることはない。おもしろおかしく投稿されたものでは 大評判任天堂「Wii」に「欠陥」? リモコンの「スッポ抜け」トラブル http //news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2796949/detail? 「ストラップの耐久試験は十分に行い、安全を確認しています。仮に切れたとするなら(異常なほど)グルグル振り回したとか、特殊な使い方をした以外に考えられません」 「Wiiのリモコンがミサイルとなって家具を破壊!?」 http //itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20061130/255543/?(ITpro) 「もしもこの情報がすべて確かならば、製造物責任法(PL)による訴訟が起きる可能性は否定できない」と内田・鮫島法律事務所の鮫島正洋弁護士は指摘する。 発売直前、WiiとYouTubeの強烈な関係 http //business.nikkeibp.co.jp/article/life/20061130/114686/?P=2?(日経ビジネス) ゲームに熱中するあまりか、振り回した手からコントローラーが滑って、テレビや家具を壊してしまった画像もアップロードされています。 (※11月30日にこの件を任天堂に問い合わせたところ、YouTubeなどネット上の画像はストラップを正しく付けていたかどうかなどが不明で、現在事実関係を確認中とのこと:編集部) 323 名前: 名無しさん必死だな [sage] 投稿日: 2006/12/01(金) 00 44 12 ID SdRaagCE フライデー立ち読みしてきた ・Wiiテニスでリモコンがすっぽぬける動画の連続写真3枚 ・Wiiリモコンと血まみれの手が写った写真(2chにでてたやつ) ・ひび割れたテレビ画面 ・「滑り止めもなければストラップの強度の低いWiiリモコンは欠陥商品だ」(Wiiリモコンで被害にあった北米男性) ・「ストラップを使用しなかったり強く振りすぎたせいであり使用前の注意書きもあいてあるので問題ない」(任天堂) ・「Wiiはリモコンを振るのと画面の反応に遅れがあるのでゲームマニアなどはそこがもどかしく必要以上に振り回してしまいそう」(ゲーム雑誌編集者) Did Wii break your TV? http //videogames.yahoo.com/ongoingfeature?eid=494785 page=0?(米ヤフー) リモコンはあなたの汗で濡れた手を離れ、衝撃音が起こりTVや窓や おばあちゃんの写真でも何でも新しく自由になったリモコンの進路に あるものは何もかもぶち壊します。 じゃあもしストラップをつけていれば防げることなのか? 我々の知る限り、何人かのWii購入者はストラップが切れてるのを見ています。 問題はストラップ自体にあるのではなく、ストラップとリモコンを繋ぐ 狭い接触部にあります。擦り切れるのです。 米版Wii、Q A……リモコン操作のトラブル、バーチャルコンソールなど http //journal.mycom.co.jp/articles/2006/11/27/wii/?(毎日コミュニケーションズ) Wiiリモコンにはストラップがついており、任天堂はストラップの使用と周囲への注意を呼びかけているが、「ストラップが切れた」という報告まで出てきている。 Bay Area Expert Explains Nintendo Wii Injury Risks http //www.nbc11.com/news/10410052/detail.html?(NBC11) SAN FRANCISCO -- For some gamers, the Nintendo Wii is one system that can be a bit too interactive -- people are getting so involved in the action of the games that they are getting injured in the process, NBC 11 reported.
https://w.atwiki.jp/ikiikigonbo/pages/34.html
浦安鉄筋家族20周年記念イラストにて陸井によるお祝いイラストが掲載 カラーページの階段のだまし絵 「ペンローズの階段」・・・イギリスの数学者ロジャー・ペンローズが考案した不可能図形 「童貞無限回廊。」 「無限回廊」・・・ソニーから発売のPSP、PS3用ソフト だまし絵のステージでキャラクターを操作するパズルゲームである 編集コメント ◎肉体的にも精神的にも腐敗しまくる俺らの青春。ハエがたかるぜ!ザ・フライ!! 「ザ・フライ」・・・1958年もしくは1986年公開のアメリカ映画(1958年の邦題は「ハエ男の恐怖」) 科学者が物質転送装置の実験中に誤ってハエと一緒に自分を転送してしまい、 遺伝子がハエと融合し、ハエ人間へと変化してしまうSF映画である (女子の持つ雑誌) ・・・表紙から、角川マガジンから隔週刊発売のタウン情報誌「関西ウォーカー」と思われる 「素晴らしき哉人生!!(ビューティフルメモリー)」 「素晴らしき哉、人生!」・・・1946年公開のフランク・キャプラ監督のアメリカ映画 アメリカでは毎年末にテレビ放映される名作映画である (吏毘堂、今木の後ろの暗闇から登場する少女) ・・・週刊少年チャンピオン2012年40号に掲載のタカヲヨシノブの読み切りホラー漫画「DAMNED(ダムド)」より 主人公たちを襲う人型殺人ウイルス「ダムド」と呼ばれる少女から (枷井の着ている服のモザイクがかったキャラクター) ・・・ディズニーのキャラクター、ミッキーマウス (「ぶぇあああ」と叫びながら走る吏毘堂と枷井) ・・・ビッグコミックスピリッツにて連載の花沢健吾の漫画「アイアムヒーロー」に登場する感染者に酷似 (ジェットコースター、メリーゴーランド、コーヒーカップで吏毘堂と枷井の後ろに座る男性) 板垣恵介の格闘漫画グラップラー刃牙シリーズに登場するキャラクター タンクトップの男・・・神心会空手の末堂厚 黒い服を着た男・・・同じく神心会空手の加藤清澄 カツラを被った男・・・アメリカの死刑囚・ドリアン 元ネタは板垣恵介の格闘漫画「バキ」にてドリアンに瀕死の重傷を負わされた加藤の仇をとるために 神心会空手が遊園地にドリアンを拉致、メリーゴーランドやコーヒーカップを楽しむドリアンの前に末堂が登場 逃げ出したドリアンと末堂がジェットコースター上で格闘した一連の場面から (カートに乗る吏毘堂と枷井) ・・・原作・貴家悠、作画・橘賢一の漫画「テラフォーマーズ」第31話「MORTAL EVILS 死すべき魂」より ゴキブリが進化した火星に住む宇宙人・テラフォーマーが車両に乗って登場するシーンから (吏毘堂と枷井の乗るカートのキャラクター) ・・・藤子・F・不二雄の代表作、ドラえもんから ボディーのテントウムシのような模様はドラえもんの漫画単行本レーベルである小学館の「てんとう虫コミックス」から ドン ガッ ゴ!! 「ドンガッゴ!!」・・・週刊少年チャンピオン2011年1号にて掲載の大窪宏明の読み切り作品より (吏毘堂と枷井のぶつかった女の子の乗ったカートのキャラクター) ・・・週刊少年チャンピオンにて連載の石黒正数のギャグ漫画「木曜日のフルット」の主人公、フルットより いるかドルフィン 「さぁ ちびっこたちよ ケモノがれぇ~~~ ケモノがる クワ~~~~~」 司会 「たーいへん!!みんなのおともだちが悪バッドのビースト獣にケモノがられちゃう!!」 「ケモノがれ」・・・大槻ケンヂが中心となって結成したバンド「特撮」がリリースした楽曲 「超越人間オーケボーマン」または「人間以外の俺になれ」の歌詞から (おばけ屋敷「スリラー館」の看板) ・・・1982年発売のマイケル・ジャクソンの楽曲「スリラー(原題:Thriller)」 看板の人物はPVで登場するマイケルやゾンビの姿をしたダンサーから (「ア゛ァ゛~~」と落ちてくるお化け屋敷の人形) ・・・週刊ヤングマガジンにて連載の松本光司のホラー漫画「彼岸島」の登場キャラクター、青山龍ノ介から (枷井がお化け屋敷内でぶつかった男性) ・・・週刊少年チャンピオンにて連載の細川雅巳の不良漫画「シュガーレス」Vol.141「チャンス」より 御辻高校の妹尾が引き連れてきた不良の1人から (「キミらで最後ね~~~」と言うピエロの格好をした男性) ・・・板垣恵介の格闘漫画「バキ」第64話「ッしゃアァッ」より アメリカの死刑囚ドリアンを連行した先の遊園地の支配人・芦田から (観覧車からの眺望) ・・・関西地方の遊園地であることから推測すると眼下の競技場のような建物は 兵庫県神戸市灘区の王子動物園内の遊園地に隣接する神戸市王子スタジアムからか (技野の着るシャツの「IONA☆ZUN」) ・・・RPGドラゴンクエストシリーズで登場する呪文「イオナズン」から また、「12ごんぼ/バンドと嘲笑とフローチャート」で技野が買ったバンドのステッカーと同じである 「知らないバンド」と言っていたが結局ファンになったのだろうか (吏毘堂の立ち読みしている雑誌「絶頂天」) 「COMIC快楽天」・・・ワニマガジン社より1995年に創刊された成人向け漫画雑誌 (絶頂天の漫画で登場する女の子) ・・・ハガキ職人・三峰徹の画風 ◎そんなもんだぜ、人生は。次号、D(ダイエット)。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1478.html
8月8日。 その日、垣根帝督は久々のオフであった。 実験も、仕事もない。 そんな日は、友達と一緒にどこかへ遊びにいったりするのが一番だ。 が、しかし。 『未元物質』にそんな常識は通用しなかった。 というか友達がいなかった。 「いや、そもそも仕事や実験がなくったって、やることは山積みなんだよ。ダチと遊んでる暇なんざねぇんだよ」 負け惜しみにしか聞こえない言い訳を誰にともなく呟きつつも。 仕事時に着る学校の制服のような服ではなく、今時の若者という言葉がしっくり来る雑誌モデルのような格好をして。 言葉の通り、垣根帝督は貯まっていたいろいろな用事を一気に処理すべく、街へ乗り出すことにした。 垣根帝督の休日、である。 (しっかし……) バイク置き場から愛用の大型バイクを出し、マンションから駆け出したところで、車上の垣根の顔が曇った。 (何なんだ? ずっと俺のことつけ回してんだよな、アレ) 垣根は、前を向いて走りながらも、後方から自分をつけてきている『人間ではない何か』を感知していた。 周囲に展開している極小の『未元物質』の粒子。 それが、ここ数日自分の周囲をよく徘徊している存在があること、その存在はどうやら同一の物体であることを垣根に教えていた。 (遠すぎて、具体的にどんな形してるかまではわかんねぇが、この硬度と移動性は最近よく感じてるやつだ) 追跡されているのを知りながらも、しかし垣根は何か策を講じるということはなかった。 (幻生の監視がこっちにも飛び火したって感じだろな。ま、実害がねぇなら放っといても問題ねぇだろ。俺やヒメにちょっかい出してきたら別だが――) ――それが貴様の道を阻むのなら破壊しろ、完膚無きまでに叩き潰せ。 (――――!?) 頭の中に、誰とも知れない声が響いた。 (そういやこっちも最近よくあるんだよな……) 思い、頭を左右に振る垣根。 (ただの幻聴だ。こっちも放置) 心の中でそう呟くと、垣根は本日最初の用事を済ますため、駐車場にバイクを停めて学園都市内にあるとある書店に入店する。 (料理本のコーナーは、っと) 垣根がこの書店に来た目的は、ズバリ料理本の立ち読みである。 一冊一冊買っていたら馬鹿にならないくらい金がかかるが、店頭でパラ見する分には無料。 そして、学園都市は第二位、垣根帝督の頭脳をもってすれば、小一時間立ち読みするだけでメニューの十や二十は完璧に覚えられる。 (そろそろレパートリー増やしたいしな。今度は中華とか挑戦してみるか) 垣根は料理本のコーナーに移ると、棚から中華料理の本を適当に抜き取り、目を通し始める。 すると、 「あのー」 背中から声がかかった。 「あ?」 人差し指をページに挟んで本を閉じ、後ろを振り返ると、そこには見知らぬ少年がいた。 ツンツン頭を右手で掻きながら、少年は下手な態度で垣根に話しかける。 「参考書のコーナーってどこにあるのか知りません、かね?」 「あぁ、ちょっと見つけにくいところにありますからね。あの柱の裏ですよ」 垣根は特に無視するでもなく、丁寧な対応で答える。 ――どちらでもないなら無視しろ、貴様の行動の結果それが生きようが死のうが関心を持つな。 「ちっ……」 途端に頭の中に響いた幻聴に、軽く舌打ちをする垣根。 「え?お、俺、何かお気に召しませぬことをやっちまいましたか?」 垣根の舌打ちに、少年が畏縮した態度を取る。 「あ、いえ。何でもありませんよ。えっと、ここに来るのは初めてなんですか? 確かに参考書コーナーは入り口からは見えづらいところにありますけど、店内をぐるっと一周でもすれば、すぐに気づけますから」 垣根は取り繕うように言葉を並べ立てる。 ちなみに、垣根はこの店の常連である。 但し、商品を買ったことは数えるほどしかないのだが。 実は昨日までこの書店では参考書の半額セールを行っていたことも知っているが――それは知らない方が幸せだろうと思い、黙っておく。 「ん、えっと……初めてっつーか、何つーか……」 垣根の言葉に、少年は頭を掻きながら歯切れ悪く答える。 「? まぁ、ここは結構品揃え豊富で、駅も近いですから、利用しやすいと思いますよ」 立ち読みとかに、とは言わない垣根である。 「そうか、じゃあこれからも使うことにするよ。まぁ……あんまり本屋とか来ないんだけどな。はは。それじゃ、ありがとうな」 少年はそう言って笑うと、柱の裏にある参考書コーナーへ向かう。 「…………………」 少年を見送ると、垣根は再び料理本に目線をやる。 その頃には、垣根はもう少年のことを忘れていた。 垣根帝督にとっては、そのツンツン頭の少年は、ただの一般人Aでしかなかったのだ。 「あとは何か要るもんは……」 書店で一時間の立ち読みの後、続いて垣根は行きつけのバイク屋に顔を出す。 そこで、メンテナンスのため、そこまで乗ってきたバイクを、 「丁寧に使ってくれていただいているみたいでありがたいです」 と言う店員に受け渡す。 実際はかなり荒っぽい使い方をしているのだが、そういう時には『未元物質』でバイクを丸ごと保護しているため、本体を傷めることはない。 それでも、中身は普通のバイク。 フレームを強化しようが、エンジンなど、内部の機構については他のバイクと同等の強度しかないし、そっちが壊れては元も子もないので、こうして定期的にメンテナンスに出しているのだ。 (今日は仕事も入ってねぇから使わねぇし) バイク屋を出ると、垣根は徒歩で歩き出す。 (ちっ……相変わらずついて来やがる。よく飽きねぇな) 垣根が建物から出てくると、外で待っていたらしい『何か』が、追跡を再開してくる。 それでも垣根は無視し続け、本日の最後の目的地である、自宅近くの大型デパートに足を向ける。 そこでの目的は―― 「あ、来た来た。てーとにぃ」 デパートの入り口に、こちらに向かって手を振っている少女がいた。 「おぉ、ヒメ」 垣根帝督のたった一人の妹、垣根姫垣である。 肩の部分が紐状になっている白いシャツ、男の子が穿くような(実際垣根が穿いていたのだが)白っぽい短パンのセットに、ピンクのサンダルという如何にも真夏少女と言った風体の姫垣は、たったったっ、と軽快に駆けながら垣根に近づいてくると、 「に~いぃ!」 その左腕に自身の右腕を絡ませ―― 「う、うぅ……高い」 ――ようとして身長の違いに大きく阻まれた。 「……何やってんだ?」 「腕を、組んでるの……」 自分の左腕に半ばぶら下がるようにしながら、必死でしがみつく妹の姿に、 「猿みてぇ」 と垣根は正直な感想を漏らす。 「むぅ!」 膨れる姫垣。 「てーとにぃがもっとちっちゃくなればいいんだよぉ!」 と言いながら、腕組みを諦めて自然に手をつなぐ。 ぴょこぴょこ、といつも以上に動き回る妹の姿を見ながら、垣根は少し意地悪そうに告げた。 「何だよ、あんなに要らないって言ってた癖に、全然テンション上げまくりじゃねーか。やっぱり欲しかったんだろ、水着」 話は一日前に遡る。 8月7日。 「ねぇ、てーとにぃ?」 夕食後。 本日の洗い物当番である姫垣が、キッチンの方から、リビングで何の気なしにテレビを眺めている垣根に向かって話しかける。 「学校のさ、水泳の用意ってどこにしまっちゃった?」 「んー、お前の部屋のクローゼット。上から二段目」 「りょうかーい」 「何だ? ガッコって夏休みもプールあんのか?」 当然の疑問を放つ垣根に、 「ううん。明後日さ、友達と屋内プールに遊びに行くことになったんだ。あ、そういや言ってなかったっけ。明後日遊びに行ってもいい?」 布巾で皿を拭きながら答える姫垣。 「はぁ、別にいいけど……ん?」 少し首を捻ってから、垣根は続ける。 「お前って、水着持ってたっけ?」 学園都市に来る前はプール施設になんて連れて行ってもらった記憶はないし、来てからも、今まで妹っが誰かとプールに遊びに行ったという話は聞いたことがない。 「うん。だから水泳の用意、探してるんじゃん」 そこで、テレビに向いていた垣根の首がキッチンの方へと90度曲げられた。 「……いや、ちょっと待て。それは何だ? 屋内プール施設に遊びに行くのに、スクール水着を着ていこうと言うのか?」 「そうだけど……え、何かダメだった?」 「いや、ダメだろ……」 「何で? どこが?」 「いや、何でっつーか、どこかっつーか……」 「スクール水着で入っちゃいけないなんて決まり、無かったと思うんだけどなぁ」 「そうだろーよ、そうだろーけどさ、やっぱりさ……」 幼女がスクール水着を着てそこらのプール施設に飛び込むことがどれほどの破壊力を秘めているのかについて、核兵器の威力と対比させて説明しようと思う垣根だったが、しかしそれではただの変態だということに気づき、自重する。 「……ヒメ、明日水着買いに行くぞ」 危機回避の一策として、垣根は姫垣を真っ直ぐに見つめてそう言い放った。 「えー、要らないよぉ。スクール水着で充分だって」 なおも遠慮してくる姫垣だったが、 「だからそれはダメなんだよ」 「だから何でなのー?」 「だから何でもなの。好きなの買ってやるから。明日昼にそこのデパートな。決定」 「むぅ。……わかったよ」 垣根の言葉に、最終的に屈する形になったのだった。 かくして垣根と姫垣は、デパート内にあるフードコートで昼食をとった後、早速水着売り場へやってきたのだが―― 「嘘吐き! てーとにぃの嘘吐きぃぃぃぃ!!」 女性用水着売り場の一角で、大声で叫んでいるのは垣根姫垣。 「好きなのって、何でも好きなのって言った癖に!」 「そりゃ言ったけどよ! でもダメだろ! それは例外だろ! ルールには須く例外ってもんがあるんだよ!」 噛みつかれているのは当然その兄、垣根帝督だ。 二人の争点となっているのは、姫垣がこれがいい、と言って選んだ水着である。 それは―― 「セパレートって! ビキニタイプって! 中一にゃ早すぎだろ! こっちのワンピースタイプにしとけよ!」 「そんなことないって! みんな持ってるって言ってたもん!」 いつもならすぐに折れるのだが、言葉とは裏腹に新しい水着にかなり心躍らせていたのか、珍しく兄の言葉に反論する姫垣。 「んな馬鹿な話があるか! 中学生からこんなエロい水着着てるってのか? 有り得ねぇ!」 一方の垣根は、エロのハードルが低いのか、変な幻想でも入ってるのか、必死に野暮ったいワンピースタイプの水着を勧める。 「エロい!? ただ上下分かれてるか分かれてないかだけの差じゃん! おへそが見えるか見えないかだけの差じゃん! それをエロいっていうにぃが変態さんなんだよ!」 「なっ! 実の兄を捕まえて変態呼ばわりだと!?」 「だってそうじゃん! 女の子の水着って言ったらセパレートの方が普通じゃん! 可愛いじゃん! それをエロいって何さ!」 妹の攻撃に、追い詰められた垣根は。 「一般的にはそーかもな、そーかもしれんな! だがなヒメ、お前はまだブラジャーすら着けてねぇんだぞ! それなのにビキニっておかしいだろ!」 「…………!」 言ってはならないことを口にした。 「てーとにぃの……」 姫垣が右の拳を握り、 「バカぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 容赦なくアッパーカットを繰り出す。 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」 そして、学園都市第二位、『未元物質』、垣根帝督は、中学一年生の少女に顎を撃ち抜かれてKOされたのだった。 「えへへ―」 水着の入った紙袋を抱え、姫垣は頬を緩める。 その横で、垣根は顎をさすりながら、やれやれ、と言った表情を浮かべる。 結局、お互いの折衷案として、露出の低いビキニタイプの水着――アンダーまでしっかりと布で隠されている、それこそへそが出ているかいないかくらいしかワンピースタイプと違いがないものだ――を購入した。 姫垣としては、取り敢えずセパレートなら満足、垣根としては、露出が少なければ了解、ということらしい。 (まぁ、もともと俺が言い出したことだし、あんまりガミガミ言うのも大人げねーし……) ちらり、と両手でしっかりと紙袋を握りしめながら、横を歩く妹の笑顔を盗み見て、思う。 (こいつが幸せそうなら、それでいいか。……あとは、っと) 垣根は本日最後の用事を済ますため、再びデパートのフードコートにやって来た。 「ソフトクリーム、好きなの選んでいいぞ」 アイスのチェーン店の前で、垣根は壁に飾られている色鮮やかなメニューを示す。 「え? いいよ、お腹空いてないし……」 案の定、遠慮する姫垣だったが、 「ちょっと俺、服買ってきたいからよ。その間暇だろ。ソフト食って待っててくれ」 垣根は姫垣の片手を掴み、強引に千円札を握らせた。 「じゃ、じゃあヒメも一緒に行くよぉ」 ついてこようとする姫垣に、 「いいから待ってろ」 ぴしゃり、と言い放って、垣根はフードコートから出、さっさとエスカレーターで上階に上がっていった。 その言葉は嘘ではない。 実際に垣根は服を買った。 まず自分用のシャツ、ズボンなどを適当に見繕い、ポイポイとカゴに入れる。 ものの数分でそれらをレジに通すと、しかし垣根は姫垣の待つフードコートへは戻らず、さらにエスカレーターを上る。 そうして着いた先は、最近爆発事故が起こり、先日新装開店したばかりだという女性服売り場だ。 「はぁ、スカートですか」 「えぇ。出来れば、動きやすいのとかがいいんですけど」 愛想笑いを浮かべながら、垣根はポカンとしている女性服売り場の女性店員に話しかける。 「えーっと……」 どうやらどう見ても男である垣根がスカートを買いに来ているのが引っかかっているようだが―― 「あ、あぁ!」 すぐに胸の前で手をポン、と叩く店員。 垣根がプレゼント用に――勿論妹にである――購入しようとしているということに思い至ったようだ。 「ご自分でお穿きになるんですねっ♪」 「どうしてそうなるっっっ!!!!!」 思わず神速で突っ込みを入れてしまった垣根である。 「え、だって……」 店員は垣根の全身を上から下まで確かめてから、 「似合うと思うんですけど……」 と謎な発言を繰り返す。 「マジで締めるぞコラ……プレゼントだよ。妹に」 店員の態度に、垣根は敬語を忘れて接する。 「あぁ、成る程。ちょっと残念です。妹さんはいくつですか?」 「…………中一」 一言余計な店員は、しかしそこは仕事人らしく、店内を巡り、ハンガーに掛けられたホワイトのシンプルなミニスカートを持ち出してくる。 「これなんてどうでしょう。最近女の子の間で人気の商品ですよ。とても動きやすいですし」 「んー、でもシンプル過ぎやしねーか?」 賛同しかねる様子でそれを見る垣根は、そばに置かれている別のスカートを手に取り、 「これとかどうなんだ?」 と店員に問う。 「…………………おにーさん、メルヘンですね」 「はぁ!?」 「正直センスを疑います。そんなの貰って喜ぶ女子はいませんよ」 自分の店に置いてある商品に対して、店員は暴言のようなセリフを吐く。 「いや、明らかにそっちの無地よりこれの方が華やかだろ」 「華やかすぎてどん引きですよ。おにーさん、女の子は……ってゆーか俺様の妹は可愛くあるべき、みたいな幻想入っちゃってません?」 「んなっ…………悪いかよ」 結構図星だったらしく、しゅんとなる垣根。 「悪いですよ。全くこれだから男は……自分の考えを押し付けるばっかり。相手のこともちゃんと考えてあげないと。本当に相手を大切にするっていうのは、そういうことですからね」 「……いや、何で俺は初対面の店員に説教されてんだよ」 「兎に角、こっちの白いスカート渡せばまず失敗はないですから! 保証します! よってお買い上げ、オーケー?」 「ちっ、分かったよ……!」 ふとそのスカートの値札を見ると、垣根が想定していた値段よりも0が一つ多かった。 対して垣根が選んだスカートはセール品。 まさか填められたんじゃないんだろうか、と思いつつも、安物を贈るよりはいいかと思い直し、店員の選択に任せることにした。 「あ、それではウエスト測りますね♪」 「だーから俺じゃねぇっつってんだろーがぁぁぁぁぁぁ!!!!」 紆余曲折の末買ったスカートを、自分の服を入れた紙袋の中に突っ込み、 「これでよし、っと」 一人満足気に頷いた時、 「…………?」 垣根は、ズボンのポケットで携帯電話が鳴っているのに気づいた。 しかも、 (こりゃ幻生からのメールの着信音……。ちっ、今日はオフなんじゃなかったのかよ) 心中で毒づきながら、垣根は携帯を開きメールを確認する。 例の粘つくような口調で書かれているその文面を要約すると、 『緊急の仕事。垣根帝督を尾行している何『物』かの破壊。特別手当あり』 ということらしい。 (アレのことか) ずっと自分を尾行していた存在のことをすぐに思い浮かべた垣根だったが、あまり気分は乗らなかった。 (緊急ねぇ。アレはすぐにこっちに危害を加えてくるような感じには思えねぇが。大体今はヒメと一緒だし、久々のオフだってのに、特別手当だか何だか知らねぇが、んな面倒臭ぇことするくらいだったら――) ――利用できるなら利用しつくせ、不要になったら切り捨てろ。 「――っ!」 三度、頭の中に幻聴が走る。 「くそっ、何だってんだ畜生が」 頭を掻きながら、口に出してそう毒づき紙袋を握り直すと、垣根は足早に階下へ降りていった。 「あ、てーとにぃおかえり……って、へ?」 突然目の前に服の入った紙袋を差し出され、困惑する姫垣。 「悪い、用事出来た。これ持って先帰っててくれ」 「え? 用事って? 服を買ってたんじゃ……」 「それとは別、仕事」 「あ……うん」 こくり、と頷くと、姫垣は垣根が差し出した紙袋を素直に受け取った。 そして、 「じゃあ。……先、帰ってるね」 とだけ言い置いてデパートを離れる。 垣根の事情もろくに聞かずに、その言葉に従った姫垣。 それは、垣根の様子が普段とどこか違うように見えてしまったから――その違和感のある垣根の言動に、つい、気圧されてしまったから。 両手に紙袋を抱えて歩きながら、姫垣は違和感の正体を考察する。 まるで、何かに急かされているみたいだった、と。 (妹の方だけ? 垣根帝督は一緒じゃないのか?) 第二二学区。 その地下数百メートルに存在する地下街に存在する、VIP用の核シェルター。 俗に『避暑地』と呼ばれるその場所――ではなく、普通のアパートの一室で(『避暑地』には前から目をつけているのだが、まだプロテクトを解除できていない)馬場芳郎はコンピュータのディスプレイに映し出された映像に首を傾げる。 (待ち合わせしてたくらいだから、てっきり仲良しこよし、一緒に帰宅かと思ったんだが……) 他の出入り口の監視カメラの映像を(勿論無断で)確認するが、いずれにも垣根帝督の姿は映っていない。 (まだ中にいる……別に買い物でもしてるのか) そう思い、何気なく四足歩行型ロボットのカメラで姫垣を追いかける馬場。 やがて姫垣は、すぐ近くにある自宅マンションのエントランスに一人消えていく。 それから十分な時間を置いて。 垣根帝督がデパートの正面出入り口から出てきた。 (まだ中にいた、やっぱり買い物か……ん? でもそうすると、何で手ぶらなんだ?) 馬場が疑問を感じたその瞬間。 垣根帝督が、自宅と反対方向に全速力で駆け出した。 「――っ野郎! 尾行に気づいて……」 慌ててコンピュータを操作し、ロボットに垣根を追いかけさせる。 (それで垣根姫垣を先に帰したのか!? 一緒にいてはこちらを振り切れないと踏んで……いや、だがここで一度こちらの追跡を逃れたところで意味はない。向こうの拠点は分かっているんだから、簡単に尾行は再開できる。それは垣根帝督も了解している筈だ。そもそも……) 馬場がキーボードにあるコードを打ち込むと、ドッグレースの犬並みと言った感じだったロボットの速度が、一気に自動車のそれへと変速した。 (バイクもない今、垣根帝督は、こいつから――『俺』から逃げられやしない) 瞬時に垣根との距離を詰めるロボット。 だが、次の瞬間。 垣根の身体が垂直に上方へ向けて飛び上がった。 「なっ!? まさか、強い弾力性のある『未元物質』で、ジャンプ力を強化したのか!?」 トランポリンみたいなものか、と思いながら、ロボットのカメラを上に向けると、垣根は空中でひも状の『未元物質』を作り出し、それを立ち並ぶビルの屋上の柵に絡みつけていた。 そしてひもを収縮させて身体を引き寄せると、ビルの屋上に見事に着地し、そのまま屋上を伝ってロボットの視界から消えてしまった。 「くそっ、どういうつもりなんだ……! 待てよ、まさか俺の監視から逃れている内に、何か木原幻生からの依頼を……ちっ、博士のジジイに連絡を」 思い、携帯を取り出した時、馬場はディスプレイに表示されている監視カメラの一つに垣根の姿を認めた。 その監視カメラは―― 「くそっ、違う! 垣根帝督の狙いは……」 ロボットが潜んでいる場所の、後方の路地を映していた。 「――ロボットの破壊か!」 コンマで馬場がキーを叩くと、ロボットが脚を一瞬大きく曲げた後跳ね上がり、控えていた場所から高速で離脱する。 そして、一瞬の間すら置かずに、その場所に『未元物質』の槍が何本も突き刺さった。 馬場はその映像をまともに見ないままロボットを走らせ、一目散にその路地から離脱させようとする。 「『暗黙の了解』が仇になった……向こうがこっちを攻撃しても、『言ってくれなかったら監視だとは分からずに攻撃してしまいました』とでも言えば通っちまう! そして、逃げるんじゃなく、こっちを破壊してからなら、監視の束縛から解放される時間は格段に上がる! その隙に何かをやる気か!」 コンピュータを片手で操作しながら、もう一方の手で携帯をダイヤルし、『メンバー』はリーダー、博士へと繋ぐ。 「博士! 緊急事態です! 垣根帝督が監視用ロボットに攻撃を仕掛けてきました……っ!」 その短い間に、気がつくと垣根がロボットを高速で追いかけている。 監視カメラの映像によると、どうやら今度は靴裏に仕込んだ限りなく摩擦が0に近い『未元物質』で、道路に敷いた同質の『未元物質』の上をさながらスキーかスケートのように滑って高速移動しているようだ。 ロボットにジグザグに路地を移動させ、追跡を振り切ろうとするも、ギリギリのところでこちらの位置を把握し、しつこく付きまとってくる。 追う側と追われる側が、完全に入れ替わってしまった。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/149.html
小ネタ とある少女の髪型事情 深々と雪が降り積もる十二月の学園都市、天気予報では晴れ…だったはずなのだが、所詮予報である。そろそろ年の瀬というこの時期、学園都市に住む学生の四割が新年を家族と迎えるために実家に帰省しているというこの都市の中央道を、一人の超能力者(レベル5)が歩いていた。彼女はその長い髪を後ろで一つに括った茶髪…、もといポニーテールにした髪を揺らしながら白線に沿うように歩いてゆく。名は御坂美琴、その能力…通称「超電磁砲(レールガン)」を振りかざす学園都市第三位である。彼女が属する常盤台中学はここから三キロの場所にあり、よってこの辺りは休みの日は基本漫画の立ち読みな彼女の行動範囲から大きく外れている。別に確固たる目的があって歩いている訳では無いのだが、ただの散歩という訳でもなく。大まかにいうと…この辺はあのツンツン頭の高校生の学校がある学区だからもしかしたら会えるかな…?みたいな淡い望みが見えたり見えなかったりな散歩なのだ。「……それで新しく開発された「延毛技術」の成果たるこのポニーテール見てもらえたら嬉しかったり……って何言ってんの私!?ないない、こんなところでバッタリとか今時漫画でも見ない…」「何がだ?」「うひゃおうおぉえ!!??」「斬新なビックリ声だなオイ」まぁビックリするのも無理はない、何故なら目の前に目的のツンツンがいつの間にか立っていたのだから。彼の名は上条当麻、その不運な能力(?)…「幻想殺し(イマジンブレイカー)」を振りかざす無能力者(レベル0)である。「何!?今アンタどっからどこまで聞いてた訳!?」「…とりあえずそのポニーテールが「延毛技術」っていうやつで作ったっていうのはわかった」「結構最初からじゃないのよコラァッ!!」「ヒィッ!?ポニーテールが帯電して逆立ってますけど!?」その髪もまた彼の右手に触れただけで生気を抜かれたように元に戻ってしまうのだが。「…はぁ、で?アンタここで何やってる訳!?」場所的には彼女の方が「何やってる」なのだがそんなことを気にする学園都市第三位ではない。「補習ですよほしゅー、二学期末のテストで盛大なる大ポカをやらかした上条さん+青いの+サングラスは担任つきっきりで補習ですよーだ」大ポカの詳細を話すと上条が通う高校の評判を思いっきり落としかねないのでここは割愛させていただく。「アンタそんなんで進学できる訳?…そもそも卒業できるの?」「うっ…中学生に卒業の心配された…」「勉強なんか結局日々の積み重ねなんだから」「さらに中学生に勉強の事まで諭された!?」「ねぇ、そんなことより…」「そんなことッ!?」「あっ、アンタこのポニーテールどう思うのよ」ふむ、と。ここで高校生上条当麻は考え込んでしまう。好みは寮のお姉さん、と公言する上条にとって認めるのは少し癪なのだが、出会ったとき少し可愛いと思ってしまった。まるで女の子になったように。………まぁ元から女だけど。「まぁいいんじゃねぇか?何かいつもより大人っぽく見えると思うぞ……?」「最後のクエスチョンマークが果てしなく気になるんだけど……えっと…それって褒めてるのよね…?」「ん?うんまぁ褒めてる」「(……何か嬉しい…)」「おーい?何か目が泳いでるぞ?おーーーい?」「そっ、それならもう何時もこの髪型にしようかしら……」「うーん…だけどなぁ…」「何よ?」「いっつもそれっていうのも…お前らしくないっつーか」「?結局何が言いたいのよ?」一人のシスターがいる。純白の修道女服…上条に言わせればティーカップのような服に身を包んだ彼女が御坂美琴のことを何と呼んでいるか。日本人では無い、それ故に人をそのイメージで呼ぶような彼女が御坂美琴のことを何と呼んでいるか。「……短髪、ね」「はい?」「俺は……俺はその髪型も良いと思うけど…やっぱりビリビリって言ったら短髪だな。それじゃなきゃお前らしくねぇ…と思う、うん」「…けっ、結局ハッキリしないわね…」「まぁいつも通りが一番ってこった、あの髪型似合ってたしな!……と、補習の身な上条さんはここらで急がなくては、じゃあな」「えっ?えぇ!?ちょっと!今褒めたの!?…ってもういねぇし」それでも。それでも彼女は寮を出るときよりほんの少し幸せだった。ポニーテールを褒められたことより、ショートカットを褒められたことより、彼女にどんな髪型が似合うかあの少年が真剣に考えてくれたことが。彼が自分を異性として見てくれたことを垣間見れたことが。「(…よし、今度はどんな髪型にしてみようかな…)」そんなこんなで学園都市の都市は暮れていった。
https://w.atwiki.jp/wiki13_datuota-2ch/pages/115.html
非常に悪意と偏見にまみれたコピペです。 さも善意で書いてあるかのように見えますが、 ところどころに、志願者を悪い方向へと誘導する非常に不快な悪意があります。 テンプレと誤解しないように願います。 ↓本文ここから ★最初にオタ度チェック 1.パーカー、フリースをアウターにして町を歩ける。 2.冬にコンバースのキャンバススニーカーを履いても平気 3.パンツはジーンズしか持ってない。 4.スポーツメーカーのロゴ入りの服はかっこいいと思う 5.鞄はリュックに限る 6.シャツはチェック柄が多い 7.靴下は清潔感と若々しさを出すため白だ。 8.アンダーパンツは白ブリーフでなければ何でもいいと思う。 9.下着がシャツの胸元から見えても気にしない 10.筋肉をつけても服を着れば見えないから意味がない。 YES1つでオタ ★オタが好むものをチェック ママが勝手に買ってきたもの、Gパン、Gジャン、Gショック アニT パーカー、フリース、リュックサックをはじめとする登山用品 コンバースなどのキャンバススニーカー、ポールスミス、 スポーツウェア(特にサウナスーツ)、軍用品 これらは燃えないゴミ・資源ゴミに出そう。百害あって一理なし。 従来の脱オタ方法 ★オタクスタイルの基本形 マックハウスのパーカー マックハウスのジーンズ マックハウスのTシャツ ナイキやアディダス リュックサックかスポーツメーカーのロゴ入りショルダーバック カシオGショックかシチズン ↓ 進化系 ★脱オタスタイルの基本形 ポールスミスのテラジャケ リーバイスのストレートジーンズ コムサイズムの白シャツ ユニクロのアンダーウェア アディダスのスタンスミス 吉田カバンのショルダーバック オメガスピードマスター ★【重要注意事項】 当スレでは脱オタ=ダサオタによる重度オタへの差別行為、嘘のアドバイスが横行しております。彼等の特徴は ユニクロのジーンズがリーバイスになれば脱オタ ナイキのハイテクスニーカーがコンバースのキャンバスになるとお洒落 リュックが吉田カバンになるとカッコイイ Gジャンが丸井のテラジャケになると最高 ポールスミス・ブラレは俺の人生 これらは定番だから間違いはない などの嘘のアドバイスをします。自分と同レベルに引き止めるためのプロパガンタ行為です。 十分注意しましょう。 ★脱オタスタイルの危険性 【コムサの黒ジャケ】【無印の白シャツ】【リーバイスのストレートジーンズ】【アディダスのカントリー】 最近、街中で上記のコーディネートの若者が異常に増えたと思いませんか? そう、これは2chの脱オタスレで紹介されているアイテムをそのまま着ているだけの人です。 自分はオタクだったけど、2chで脱オタできました!と公言しているようなもので、 電車男によって「脱オタ」が有名になった今、こんなんでは間違いなく周囲から白い目で見られます。 脱オタスタイルこそが、脱オタできない元凶です。 上記の脱オタコーデを批判する声があれば工作員によって荒らし扱いされることは、 すでに多くの人に言及されてる通り。 なぜなら、この工作員こそが脱オタであり、自分達の考えたコーデこそが最高だと思っているからです。 彼らはファッションに賞味期限があるということを分っていないそもそもの頭でっかちなのです。 なんたって元オタクですから。 オタクのみなさんは藁にもすがる思いかもしれませんが、盲目的に彼らを信用するのはもうやめましょう。 PCにへばりついていないで、外に出ておしゃれな人を参考にする、これが一番大切なことかもしれません。 エレガントカジュアルスタイルで街を歩こう! はっきり言ってユニクロや無印で本当の脱オタは不可能 おしゃれになりたければエレカジになれ!地味なものは当分の間避けろ ★ベストorショート丈のジャケット+Tシャツ ← ボトムはカーゴかデニムで http //??? http //??? http //??? http //??? http //??? ★ブランドはこれをチョイス ハレ http //??? ← 安くておしゃれ 初心者にオススメ レイジブルー http //??? アルフレッドバニスター http //??? ← 二足は揃えろ ↓↓ 上記のブランドだけでは物足りなくなったらこっちへ ↓↓ ファクトタム・アタッチメント・ラウンジリザード・アンドエー・ジョンローレンスサリバン プレッジ・ユリウス・タイシノブクニ・ラッドミュージシャン・ミスターハリウッド・ナンバーナイン リックオウェンス・カルぺ・ダイエットブッチャー・ディスカバード・ノゾミイシグロ グリーンマン・エディケーションフロムヤングマシーン・アンビリカル・ヨウジヤマモト ラフシモンズ・マルタンマルジェラ・アンドゥムルメステール・ディオールオム ※ショップ店員が恐ければ通販から http //??? http //??? ★髪型はアシンメトリーヘアーを注文、とりあえず染めろ ← ブサでも髪型でごまかせる http //??? ★雑誌は立ち読みで済ませない 買って熟読 MEN S NON-NO http //??? CHOKi CHOKi http //???
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1400.html
8月8日。 その日、垣根帝督は久々のオフであった。 実験も、仕事もない。 そんな日は、友達と一緒にどこかへ遊びにいったりするのが一番だ。 が、しかし。 『未元物質』にそんな常識は通用しなかった。 というか友達がいなかった。 「いや、そもそも仕事や実験がなくったって、やることは山積みなんだよ。ダチと遊んでる暇なんざねぇんだよ」 負け惜しみにしか聞こえない言い訳を誰にともなく呟きつつも。 仕事時に着る学校の制服のような服ではなく、今時の若者という言葉がしっくり来る雑誌モデルのような格好をして。 言葉の通り、垣根帝督は貯まっていたいろいろな用事を一気に処理すべく、街へ乗り出すことにした。 垣根帝督の休日、である。 (しっかし……) バイク置き場から愛用の大型バイクを出し、マンションから駆け出したところで、車上の垣根の顔が曇った。 (何なんだ? ずっと俺のことつけ回してんだよな、アレ) 垣根は、前を向いて走りながらも、後方から自分をつけてきている『人間ではない何か』を感知していた。 周囲に展開している極小の『未元物質』の粒子。 それが、ここ数日自分の周囲をよく徘徊している存在があること、その存在はどうやら同一の物体であることを垣根に教えていた。 (遠すぎて、具体的にどんな形してるかまではわかんねぇが、この硬度と移動性は最近よく感じてるやつだ) 追跡されているのを知りながらも、しかし垣根は何か策を講じるということはなかった。 (幻生の監視がこっちにも飛び火したって感じだろな。ま、実害がねぇなら放っといても問題ねぇだろ。俺やヒメにちょっかい出してきたら別だが――) ――それが貴様の道を阻むのなら破壊しろ、完膚無きまでに叩き潰せ。 (――――!?) 頭の中に、誰とも知れない声が響いた。 (そういやこっちも最近よくあるんだよな……) 思い、頭を左右に振る垣根。 (ただの幻聴だ。こっちも放置) 心の中でそう呟くと、垣根は本日最初の用事を済ますため、駐車場にバイクを停めて学園都市内にあるとある書店に入店する。 (料理本のコーナーは、っと) 垣根がこの書店に来た目的は、ズバリ料理本の立ち読みである。 一冊一冊買っていたら馬鹿にならないくらい金がかかるが、店頭でパラ見する分には無料。 そして、学園都市は第二位、垣根帝督の頭脳をもってすれば、小一時間立ち読みするだけでメニューの十や二十は完璧に覚えられる。 (そろそろレパートリー増やしたいしな。今度は中華とか挑戦してみるか) 垣根は料理本のコーナーに移ると、棚から中華料理の本を適当に抜き取り、目を通し始める。 すると、 「あのー」 背中から声がかかった。 「あ?」 人差し指をページに挟んで本を閉じ、後ろを振り返ると、そこには見知らぬ少年がいた。 ツンツン頭を右手で掻きながら、少年は下手な態度で垣根に話しかける。 「参考書のコーナーってどこにあるのか知りません、かね?」 「あぁ、ちょっと見つけにくいところにありますからね。あの柱の裏ですよ」 垣根は特に無視するでもなく、丁寧な対応で答える。 ――どちらでもないなら無視しろ、貴様の行動の結果それが生きようが死のうが関心を持つな。 「ちっ……」 途端に頭の中に響いた幻聴に、軽く舌打ちをする垣根。 「え?お、俺、何かお気に召しませぬことをやっちまいましたか?」 垣根の舌打ちに、少年が畏縮した態度を取る。 「あ、いえ。何でもありませんよ。えっと、ここに来るのは初めてなんですか? 確かに参考書コーナーは入り口からは見えづらいところにありますけど、店内をぐるっと一周でもすれば、すぐに気づけますから」 垣根は取り繕うように言葉を並べ立てる。 ちなみに、垣根はこの店の常連である。 但し、商品を買ったことは数えるほどしかないのだが。 実は昨日までこの書店では参考書の半額セールを行っていたことも知っているが――それは知らない方が幸せだろうと思い、黙っておく。 「ん、えっと……初めてっつーか、何つーか……」 垣根の言葉に、少年は頭を掻きながら歯切れ悪く答える。 「? まぁ、ここは結構品揃え豊富で、駅も近いですから、利用しやすいと思いますよ」 立ち読みとかに、とは言わない垣根である。 「そうか、じゃあこれからも使うことにするよ。まぁ……あんまり本屋とか来ないんだけどな。はは。それじゃ、ありがとうな」 少年はそう言って笑うと、柱の裏にある参考書コーナーへ向かう。 「…………………」 少年を見送ると、垣根は再び料理本に目線をやる。 その頃には、垣根はもう少年のことを忘れていた。 垣根帝督にとっては、そのツンツン頭の少年は、ただの一般人Aでしかなかったのだ。 「あとは何か要るもんは……」 書店で一時間の立ち読みの後、続いて垣根は行きつけのバイク屋に顔を出す。 そこで、メンテナンスのため、そこまで乗ってきたバイクを、 「丁寧に使ってくれていただいているみたいでありがたいです」 と言う店員に受け渡す。 実際はかなり荒っぽい使い方をしているのだが、そういう時には『未元物質』でバイクを丸ごと保護しているため、本体を傷めることはない。 それでも、中身は普通のバイク。 フレームを強化しようが、エンジンなど、内部の機構については他のバイクと同等の強度しかないし、そっちが壊れては元も子もないので、こうして定期的にメンテナンスに出しているのだ。 (今日は仕事も入ってねぇから使わねぇし) バイク屋を出ると、垣根は徒歩で歩き出す。 (ちっ……相変わらずついて来やがる。よく飽きねぇな) 垣根が建物から出てくると、外で待っていたらしい『何か』が、追跡を再開してくる。 それでも垣根は無視し続け、本日の最後の目的地である、自宅近くの大型デパートに足を向ける。 そこでの目的は―― 「あ、来た来た。てーとにぃ」 デパートの入り口に、こちらに向かって手を振っている少女がいた。 「おぉ、ヒメ」 垣根帝督のたった一人の妹、垣根姫垣である。 肩の部分が紐状になっている白いシャツ、男の子が穿くような(実際垣根が穿いていたのだが)白っぽい短パンのセットに、ピンクのサンダルという如何にも真夏少女と言った風体の姫垣は、たったったっ、と軽快に駆けながら垣根に近づいてくると、 「に~いぃ!」 その左腕に自身の右腕を絡ませ―― 「う、うぅ……高い」 ――ようとして身長の違いに大きく阻まれた。 「……何やってんだ?」 「腕を、組んでるの……」 自分の左腕に半ばぶら下がるようにしながら、必死でしがみつく妹の姿に、 「猿みてぇ」 と垣根は正直な感想を漏らす。 「むぅ!」 膨れる姫垣。 「てーとにぃがもっとちっちゃくなればいいんだよぉ!」 と言いながら、腕組みを諦めて自然に手をつなぐ。 ぴょこぴょこ、といつも以上に動き回る妹の姿を見ながら、垣根は少し意地悪そうに告げた。 「何だよ、あんなに要らないって言ってた癖に、全然テンション上げまくりじゃねーか。やっぱり欲しかったんだろ、水着」 話は一日前に遡る。 8月7日。 「ねぇ、てーとにぃ?」 夕食後。 本日の洗い物当番である姫垣が、キッチンの方から、リビングで何の気なしにテレビを眺めている垣根に向かって話しかける。 「学校のさ、水泳の用意ってどこにしまっちゃった?」 「んー、お前の部屋のクローゼット。上から二段目」 「りょうかーい」 「何だ? ガッコって夏休みもプールあんのか?」 当然の疑問を放つ垣根に、 「ううん。明後日さ、友達と屋内プールに遊びに行くことになったんだ。あ、そういや言ってなかったっけ。明後日遊びに行ってもいい?」 布巾で皿を拭きながら答える姫垣。 「はぁ、別にいいけど……ん?」 少し首を捻ってから、垣根は続ける。 「お前って、水着持ってたっけ?」 学園都市に来る前はプール施設になんて連れて行ってもらった記憶はないし、来てからも、今まで妹っが誰かとプールに遊びに行ったという話は聞いたことがない。 「うん。だから水泳の用意、探してるんじゃん」 そこで、テレビに向いていた垣根の首がキッチンの方へと90度曲げられた。 「……いや、ちょっと待て。それは何だ? 屋内プール施設に遊びに行くのに、スクール水着を着ていこうと言うのか?」 「そうだけど……え、何かダメだった?」 「いや、ダメだろ……」 「何で? どこが?」 「いや、何でっつーか、どこかっつーか……」 「スクール水着で入っちゃいけないなんて決まり、無かったと思うんだけどなぁ」 「そうだろーよ、そうだろーけどさ、やっぱりさ……」 幼女がスクール水着を着てそこらのプール施設に飛び込むことがどれほどの破壊力を秘めているのかについて、核兵器の威力と対比させて説明しようと思う垣根だったが、しかしそれではただの変態だということに気づき、自重する。 「……ヒメ、明日水着買いに行くぞ」 危機回避の一策として、垣根は姫垣を真っ直ぐに見つめてそう言い放った。 「えー、要らないよぉ。スクール水着で充分だって」 なおも遠慮してくる姫垣だったが、 「だからそれはダメなんだよ」 「だから何でなのー?」 「だから何でもなの。好きなの買ってやるから。明日昼にそこのデパートな。決定」 「むぅ。……わかったよ」 垣根の言葉に、最終的に屈する形になったのだった。 かくして垣根と姫垣は、デパート内にあるフードコートで昼食をとった後、早速水着売り場へやってきたのだが―― 「嘘吐き! てーとにぃの嘘吐きぃぃぃぃ!!」 女性用水着売り場の一角で、大声で叫んでいるのは垣根姫垣。 「好きなのって、何でも好きなのって言った癖に!」 「そりゃ言ったけどよ! でもダメだろ! それは例外だろ! ルールには須く例外ってもんがあるんだよ!」 噛みつかれているのは当然その兄、垣根帝督だ。 二人の争点となっているのは、姫垣がこれがいい、と言って選んだ水着である。 それは―― 「セパレートって! ビキニタイプって! 中一にゃ早すぎだろ! こっちのワンピースタイプにしとけよ!」 「そんなことないって! みんな持ってるって言ってたもん!」 いつもならすぐに折れるのだが、言葉とは裏腹に新しい水着にかなり心躍らせていたのか、珍しく兄の言葉に反論する姫垣。 「んな馬鹿な話があるか! 中学生からこんなエロい水着着てるってのか? 有り得ねぇ!」 一方の垣根は、エロのハードルが低いのか、変な幻想でも入ってるのか、必死に野暮ったいワンピースタイプの水着を勧める。 「エロい!? ただ上下分かれてるか分かれてないかだけの差じゃん! おへそが見えるか見えないかだけの差じゃん! それをエロいっていうにぃが変態さんなんだよ!」 「なっ! 実の兄を捕まえて変態呼ばわりだと!?」 「だってそうじゃん! 女の子の水着って言ったらセパレートの方が普通じゃん! 可愛いじゃん! それをエロいって何さ!」 妹の攻撃に、追い詰められた垣根は。 「一般的にはそーかもな、そーかもしれんな! だがなヒメ、お前はまだブラジャーすら着けてねぇんだぞ! それなのにビキニっておかしいだろ!」 「…………!」 言ってはならないことを口にした。 「てーとにぃの……」 姫垣が右の拳を握り、 「バカぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 容赦なくアッパーカットを繰り出す。 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」 そして、学園都市第二位、『未元物質』、垣根帝督は、中学一年生の少女に顎を撃ち抜かれてKOされたのだった。 「えへへ―」 水着の入った紙袋を抱え、姫垣は頬を緩める。 その横で、垣根は顎をさすりながら、やれやれ、と言った表情を浮かべる。 結局、お互いの折衷案として、露出の低いビキニタイプの水着――アンダーまでしっかりと布で隠されている、それこそへそが出ているかいないかくらいしかワンピースタイプと違いがないものだ――を購入した。 姫垣としては、取り敢えずセパレートなら満足、垣根としては、露出が少なければ了解、ということらしい。 (まぁ、もともと俺が言い出したことだし、あんまりガミガミ言うのも大人げねーし……) ちらり、と両手でしっかりと紙袋を握りしめながら、横を歩く妹の笑顔を盗み見て、思う。 (こいつが幸せそうなら、それでいいか。……あとは、っと) 垣根は本日最後の用事を済ますため、再びデパートのフードコートにやって来た。 「ソフトクリーム、好きなの選んでいいぞ」 アイスのチェーン店の前で、垣根は壁に飾られている色鮮やかなメニューを示す。 「え? いいよ、お腹空いてないし……」 案の定、遠慮する姫垣だったが、 「ちょっと俺、服買ってきたいからよ。その間暇だろ。ソフト食って待っててくれ」 垣根は姫垣の片手を掴み、強引に千円札を握らせた。 「じゃ、じゃあヒメも一緒に行くよぉ」 ついてこようとする姫垣に、 「いいから待ってろ」 ぴしゃり、と言い放って、垣根はフードコートから出、さっさとエスカレーターで上階に上がっていった。 その言葉は嘘ではない。 実際に垣根は服を買った。 まず自分用のシャツ、ズボンなどを適当に見繕い、ポイポイとカゴに入れる。 ものの数分でそれらをレジに通すと、しかし垣根は姫垣の待つフードコートへは戻らず、さらにエスカレーターを上る。 そうして着いた先は、最近爆発事故が起こり、先日新装開店したばかりだという女性服売り場だ。 「はぁ、スカートですか」 「えぇ。出来れば、動きやすいのとかがいいんですけど」 愛想笑いを浮かべながら、垣根はポカンとしている女性服売り場の女性店員に話しかける。 「えーっと……」 どうやらどう見ても男である垣根がスカートを買いに来ているのが引っかかっているようだが―― 「あ、あぁ!」 すぐに胸の前で手をポン、と叩く店員。 垣根がプレゼント用に――勿論妹にである――購入しようとしているということに思い至ったようだ。 「ご自分でお穿きになるんですねっ♪」 「どうしてそうなるっっっ!!!!!」 思わず神速で突っ込みを入れてしまった垣根である。 「え、だって……」 店員は垣根の全身を上から下まで確かめてから、 「似合うと思うんですけど……」 と謎な発言を繰り返す。 「マジで締めるぞコラ……プレゼントだよ。妹に」 店員の態度に、垣根は敬語を忘れて接する。 「あぁ、成る程。ちょっと残念です。妹さんはいくつですか?」 「…………中一」 一言余計な店員は、しかしそこは仕事人らしく、店内を巡り、ハンガーに掛けられたホワイトのシンプルなミニスカートを持ち出してくる。 「これなんてどうでしょう。最近女の子の間で人気の商品ですよ。とても動きやすいですし」 「んー、でもシンプル過ぎやしねーか?」 賛同しかねる様子でそれを見る垣根は、そばに置かれている別のスカートを手に取り、 「これとかどうなんだ?」 と店員に問う。 「…………………おにーさん、メルヘンですね」 「はぁ!?」 「正直センスを疑います。そんなの貰って喜ぶ女子はいませんよ」 自分の店に置いてある商品に対して、店員は暴言のようなセリフを吐く。 「いや、明らかにそっちの無地よりこれの方が華やかだろ」 「華やかすぎてどん引きですよ。おにーさん、女の子は……ってゆーか俺様の妹は可愛くあるべき、みたいな幻想入っちゃってません?」 「んなっ…………悪いかよ」 結構図星だったらしく、しゅんとなる垣根。 「悪いですよ。全くこれだから男は……自分の考えを押し付けるばっかり。相手のこともちゃんと考えてあげないと。本当に相手を大切にするっていうのは、そういうことですからね」 「……いや、何で俺は初対面の店員に説教されてんだよ」 「兎に角、こっちの白いスカート渡せばまず失敗はないですから! 保証します! よってお買い上げ、オーケー?」 「ちっ、分かったよ……!」 ふとそのスカートの値札を見ると、垣根が想定していた値段よりも0が一つ多かった。 対して垣根が選んだスカートはセール品。 まさか填められたんじゃないんだろうか、と思いつつも、安物を贈るよりはいいかと思い直し、店員の選択に任せることにした。 「あ、それではウエスト測りますね♪」 「だーから俺じゃねぇっつってんだろーがぁぁぁぁぁぁ!!!!」 紆余曲折の末買ったスカートを、自分の服を入れた紙袋の中に突っ込み、 「これでよし、っと」 一人満足気に頷いた時、 「…………?」 垣根は、ズボンのポケットで携帯電話が鳴っているのに気づいた。 しかも、 (こりゃ幻生からのメールの着信音……。ちっ、今日はオフなんじゃなかったのかよ) 心中で毒づきながら、垣根は携帯を開きメールを確認する。 例の粘つくような口調で書かれているその文面を要約すると、 『緊急の仕事。垣根帝督を尾行している何『物』かの破壊。特別手当あり』 ということらしい。 (アレのことか) ずっと自分を尾行していた存在のことをすぐに思い浮かべた垣根だったが、あまり気分は乗らなかった。 (緊急ねぇ。アレはすぐにこっちに危害を加えてくるような感じには思えねぇが。大体今はヒメと一緒だし、久々のオフだってのに、特別手当だか何だか知らねぇが、んな面倒臭ぇことするくらいだったら――) ――利用できるなら利用しつくせ、不要になったら切り捨てろ。 「――っ!」 三度、頭の中に幻聴が走る。 「くそっ、何だってんだ畜生が」 頭を掻きながら、口に出してそう毒づき紙袋を握り直すと、垣根は足早に階下へ降りていった。 「あ、てーとにぃおかえり……って、へ?」 突然目の前に服の入った紙袋を差し出され、困惑する姫垣。 「悪い、用事出来た。これ持って先帰っててくれ」 「え? 用事って? 服を買ってたんじゃ……」 「それとは別、仕事」 「あ……うん」 こくり、と頷くと、姫垣は垣根が差し出した紙袋を素直に受け取った。 そして、 「じゃあ。……先、帰ってるね」 とだけ言い置いてデパートを離れる。 垣根の事情もろくに聞かずに、その言葉に従った姫垣。 それは、垣根の様子が普段とどこか違うように見えてしまったから――その違和感のある垣根の言動に、つい、気圧されてしまったから。 両手に紙袋を抱えて歩きながら、姫垣は違和感の正体を考察する。 まるで、何かに急かされているみたいだった、と。 (妹の方だけ? 垣根帝督は一緒じゃないのか?) 第二二学区。 その地下数百メートルに存在する地下街に存在する、VIP用の核シェルター。 俗に『避暑地』と呼ばれるその場所――ではなく、普通のアパートの一室で(『避暑地』には前から目をつけているのだが、まだプロテクトを解除できていない)馬場芳郎はコンピュータのディスプレイに映し出された映像に首を傾げる。 (待ち合わせしてたくらいだから、てっきり仲良しこよし、一緒に帰宅かと思ったんだが……) 他の出入り口の監視カメラの映像を(勿論無断で)確認するが、いずれにも垣根帝督の姿は映っていない。 (まだ中にいる……別に買い物でもしてるのか) そう思い、何気なく四足歩行型ロボットのカメラで姫垣を追いかける馬場。 やがて姫垣は、すぐ近くにある自宅マンションのエントランスに一人消えていく。 それから十分な時間を置いて。 垣根帝督がデパートの正面出入り口から出てきた。 (まだ中にいた、やっぱり買い物か……ん? でもそうすると、何で手ぶらなんだ?) 馬場が疑問を感じたその瞬間。 垣根帝督が、自宅と反対方向に全速力で駆け出した。 「――っ野郎! 尾行に気づいて……」 慌ててコンピュータを操作し、ロボットに垣根を追いかけさせる。 (それで垣根姫垣を先に帰したのか!? 一緒にいてはこちらを振り切れないと踏んで……いや、だがここで一度こちらの追跡を逃れたところで意味はない。向こうの拠点は分かっているんだから、簡単に尾行は再開できる。それは垣根帝督も了解している筈だ。そもそも……) 馬場がキーボードにあるコードを打ち込むと、ドッグレースの犬並みと言った感じだったロボットの速度が、一気に自動車のそれへと変速した。 (バイクもない今、垣根帝督は、こいつから――『俺』から逃げられやしない) 瞬時に垣根との距離を詰めるロボット。 だが、次の瞬間。 垣根の身体が垂直に上方へ向けて飛び上がった。 「なっ!? まさか、強い弾力性のある『未元物質』で、ジャンプ力を強化したのか!?」 トランポリンみたいなものか、と思いながら、ロボットのカメラを上に向けると、垣根は空中でひも状の『未元物質』を作り出し、それを立ち並ぶビルの屋上の柵に絡みつけていた。 そしてひもを収縮させて身体を引き寄せると、ビルの屋上に見事に着地し、そのまま屋上を伝ってロボットの視界から消えてしまった。 「くそっ、どういうつもりなんだ……! 待てよ、まさか俺の監視から逃れている内に、何か木原幻生からの依頼を……ちっ、博士のジジイに連絡を」 思い、携帯を取り出した時、馬場はディスプレイに表示されている監視カメラの一つに垣根の姿を認めた。 その監視カメラは―― 「くそっ、違う! 垣根帝督の狙いは……」 ロボットが潜んでいる場所の、後方の路地を映していた。 「――ロボットの破壊か!」 コンマで馬場がキーを叩くと、ロボットが脚を一瞬大きく曲げた後跳ね上がり、控えていた場所から高速で離脱する。 そして、一瞬の間すら置かずに、その場所に『未元物質』の槍が何本も突き刺さった。 馬場はその映像をまともに見ないままロボットを走らせ、一目散にその路地から離脱させようとする。 「『暗黙の了解』が仇になった……向こうがこっちを攻撃しても、『言ってくれなかったら監視だとは分からずに攻撃してしまいました』とでも言えば通っちまう! そして、逃げるんじゃなく、こっちを破壊してからなら、監視の束縛から解放される時間は格段に上がる! その隙に何かをやる気か!」 コンピュータを片手で操作しながら、もう一方の手で携帯をダイヤルし、『メンバー』はリーダー、博士へと繋ぐ。 「博士! 緊急事態です! 垣根帝督が監視用ロボットに攻撃を仕掛けてきました……っ!」 その短い間に、気がつくと垣根がロボットを高速で追いかけている。 監視カメラの映像によると、どうやら今度は靴裏に仕込んだ限りなく摩擦が0に近い『未元物質』で、道路に敷いた同質の『未元物質』の上をさながらスキーかスケートのように滑って高速移動しているようだ。 ロボットにジグザグに路地を移動させ、追跡を振り切ろうとするも、ギリギリのところでこちらの位置を把握し、しつこく付きまとってくる。 追う側と追われる側が、完全に入れ替わってしまった。