約 1,857,958 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/134.html
総括所見:ベラルーシ(OPSC・2011年) 第1回(1994年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/BLR/CO/1(2011年4月8日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月25日および26日に開かれた第1597回および第1598回会合(CRC/C/SR.1597 and 1598参照)においてベラルーシの第1回報告書(CRC/C/OPSC/BLR/1)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPSC/BLR/Q/1/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、ハイレベルな代表団との前向きな対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第3回・第4回定期報告書および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書について採択された総括所見(2011年2月4日、それぞれCRC/C/BLR/CO/3-4およびCRC/C/OPAC/CO/1〔ママ〕に掲載)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、人身取引、不法な移住および関連の不法行為に対する対策プログラム(2008~2010年)に、評価の意とともに留意する。 III.データ 5.委員会は、選択議定書で対象とされたすべての分野に関するデータ収集、分析および監視のための体系的機構が存在しないことを遺憾に思う。 6.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされたすべての分野に関するデータ収集、分析、監視および影響評価のための包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう、勧告する。当該データは、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとくに注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。罪種別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集することが求められる。これとの関連で、委員会は、締約国が、とくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的支援を求めるよう、勧告するものである。 IV.実施に関する一般的措置 立法 7.委員会は、子どもの売買を個別の問題としてではなく人身取引の不可欠な一部として見なしている締約国のアプローチについて、懸念を覚える。 8.委員会は、締約国に対し、子どもの売買(この概念は人身取引に似てはいるものの同一ではない)を法律上も実際にも禁止する選択議定書上の義務を負っていることを想起するよう、求める。 国家的行動計画 9.委員会は、子どもの権利に関わるさまざまな計画およびプログラムならびに人身取引に関する行動計画(2011~2013年)に留意しつつも、選択議定書をとくに対象とする行動計画が存在しないことを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国が、条約およびその選択議定書の実施のための包括的な政策およびそれに対応した国家的行動計画を採択し、かつ当該計画の効果的実施を確保するために十分な監視評価システム(地方レベルにおけるものを含む)を確立するとともに、市民社会および子どもたち自身を含むすべての関係パートナーのいっそうの関与を促進するよう、勧告する。 調整および評価 11.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止するための取り組みに従事している15以上の省庁のうち、いずれの国家機関が選択議定書の実施について主たる責任を負っているかが明確でないことを、遺憾に思う。 12.委員会は、締約国が、横および縦の双方の調整を確保しながら、選択議定書の実施を担当する国レベルの調整機関または調整機構を設置するとともに、当該機関または機構が、国レベルでも地方レベルでもその任務を効果的に遂行するための十分な人的資源、技術的資源および財源を有することを確保するよう、勧告する。 普及および研修 13.締約国の公的機関、マスメディア、国際機関およびコミュニティ団体が人身取引に反対する広報キャンペーンを行なっており、かつ学校で人身取引に関する情報が提供されていることには留意しながらも、委員会は、意識啓発活動では主として人身取引について扱われており、選択議定書で対象とされている犯罪について具体的に扱われていないように思われることを、懸念する。委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家が、選択議定書の規定にとくに関連した十分な研修を受けていないことを、遺憾に思うものである。 14.選択議定書第9条2項に照らし、委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび長期的な意識啓発措置を通じ、子ども、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に選択議定書の規定を広く知らせるとともに、このような犯罪の被害を受けた子どもとともに働くすべての専門家集団(とくに警察、弁護士、検察官、裁判官、ソーシャルワーカーおよび出入国管理官)を対象とする、選択議定書の規定に関する体系的な教育および研修を継続しかつ強化するよう、勧告する。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項) 選択議定書で禁じされた犯罪を防止するためにとられた措置 15.委員会は、とくにインターネット上の児童ポルノの製造および流布を抑止するために締約国が行なっている努力についての情報に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、選択議定書で対象とされた犯罪の防止に対して締約国が優先的注意を向けていないことを、遺憾に思うものである。 16.委員会は、根本的原因、問題の規模ならびに保護措置および防止措置の存在を明らかにし、かつ対象の明確な措置を採択する目的で、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの性質および規模に関する調査研究を行なうよう、勧告する。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2項および3項)ならびに第5~第7条) 現行刑事法令 17.委員会は、締約国の刑法で選択議定書に掲げられたすべての犯罪が網羅されているわけではないことを懸念する。しかしながら委員会は、委員会の勧告を考慮しながら法律を再度見直すつもりである旨の、締約国代表団から得られた情報を歓迎するものである。 18.委員会は、締約国が、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条と全面的に一致するようにするとともに、不処罰を防止するため、法律が実際に執行され、かつ加害者に適切な制裁が科されること確保するよう、勧告する。とくに、締約国は以下の行為を犯罪化するべきである。 (a) 性的搾取、営利目的の子どもの臓器移植もしくは強制労働に子どもを従事させることを目的として、いかなる手段によるかは問わず、子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ること、または、養子縁組に関する適用可能な法的文書に違反し、仲介者として不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すことによる、子どもの売買。 (b) 児童買春の目的で子どもを提供し、入手し、周旋しまたは供給すること。 (c) バーチャルな児童ポルノ、あからさまな性的活動に従事する子どもを描いているわけではない子どもの挑発的描写(児童エロチカ)を含む児童ポルノを配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売し、所持し、または情を知ってこれにアクセスしもしくはこれを閲覧すること。 (d) これらのいずれかの行為を奨励する資料の製造および配布。 法人の刑事責任 19.委員会は、締約国の法律において法人の刑事責任が定められていないことを遺憾に思う。 20.選択議定書第3条4項に照らし、委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされたすべての犯罪に関する法人の責任について定めるよう、勧告する。 裁判権および犯罪人引渡し 21.締約国が、犯罪発生地国の法律に関わらず、人身売買関連犯罪についての域外裁判権を設定できることには留意しながらも、委員会は、人身取引の要素をともなわない子どもの売買、児童買春および児童ポルノの犯罪についてもこれが当てはまるのかに関する情報がないことを、遺憾に思う。委員会はさらに、犯罪人引渡し条約が締結されていないために犯罪人引渡しが相互主義の基準に基づいて行なわれることを、懸念するものである。 22.委員会は、締約国が、法律により、選択議定書で対象とされたすべての犯罪について双方可罰性の基準を課すことなく域外裁判権を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、犯罪人引渡しのための効力を有する二国間協定が存在しないときは選択議定書をその法的根拠として活用するよう、勧告するものである。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項) 議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 23.委員会は、子どもの被害者または証人の事情聴取の際に教員または心理学者が同席することのような一部の保護措置が14歳までの子どもにしか適用されないことを、懸念する。委員会は、人身取引被害者の保護について定める人身取引法案に留意するものの、売買、児童買春および児童ポルノの被害者である子どもに対してこの保護がどのように適用されるのかに関する情報が存在しないことを、遺憾に思うものである。人身被害者については適用除外とされていることには留意しながらも、委員会は、16歳以上の子どもが売春に従事することが行政犯とみなされていることを遺憾に思う。 24.委員会は、締約国に対し、売買、児童買春および児童ポルノの被害者である子どもの保護を人身取引法案に含めるよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事件の訴追に対する被害者中心アプローチを促進するとともに、被害者の援助および保護に充てられる資源を増加させることも、促すものである。委員会は、締約国が、選択議定書第8条1項および子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針にしたがい、18歳に達するまでのすべての子どもの被害者が十分な保護および専門的援助を受けることを確保するための措置を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、選択議定書で禁じられたいずれかの犯罪の被害を受けた子どもが犯罪者と見なされて処罰されることがないこと、および、このような子どもに対するスティグマおよびその周縁化を回避するためにあらゆる可能な措置がとられることを確保するよう、勧告するものである。 被害者の回復および再統合 25.委員会は、子どもの被害者を担当する省庁が子どもの年齢によって異なることに留意するとともに、このような縦割りのアプローチにより、被害を受けたすべての子どもに適切な援助が提供されることを確保するうえで困難が生じる可能性があることを懸念する。委員会は、売買、買春およびポルノの被害を受けた子どもに提供されるサービスについて情報を受け取れなかったことを、遺憾に思うものである。 26.委員会は、とくに包括的なかつ調整のとれた援助を提供し、かつ、選択議定書第9条4項にしたがい、法的に責任のある者に対して被害賠償を求めることのできる子どもにやさしい手続へのアクセスを保障することによって、締約国が、第9条3項にしたがい、選択議定書上の犯罪の被害を受けた18歳未満に達するまでのすべての子どもを対象とする、社会的再統合ならびに身体的および心理社会的回復を促進するための措置を強化するよう、勧告する。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 27.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、犯罪者のインターネット・プロトコル・アドレス、ホストおよびウェブサイトを追跡するためのインターネット・プロトコル特定システムを増強するため、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化するよう奨励する。委員会はさらに、選択議定書で対象とされたいずれかの犯罪の効果的な防止、摘発、捜査、責任者の訴追および処罰を可能にする目的で、締約国が、犯罪的資料のホストとなりまたはこれを配布するインターネット・サービス・プロバイダ(ISP)を特定するよう勧告するものである。この目的のため、委員会は、締約国がすべてのレベルの国際的および地域的枠組みに引き続き参加するよう、勧告する。 IX.その他の法規定 28.委員会は、締約国が、非加盟国による加入に対して開かれている、サイバー犯罪に関する欧州評議会条約(2001年)および性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2007年)を批准するよう、勧告する。 X.フォローアップおよび普及 29.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚および議会ならびに自治体に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 30.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに採択された総括所見を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループおよび専門家グループが広く入手できるようにすることを勧告する。さらに委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じて、子どもおよびその親に対して選択議定書について広く知らせるよう、勧告するものである。 XI.次回報告書 31.第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回定期報告書(提出期限2017年10月30日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年12月26日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/108.html
総括所見:フランス(第1回・1994年) 第2回(2004年)/第3回・第4回(2009年)/第5回(2016年)OPAC(2007年)/OPSC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.20(1994年4月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1994年4月11日および12日に開かれた第139回~第141回会合(CRC/C/SR.139-141)においてフランスの第1回報告書(CRC/C/3/Add.15)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1994年4月22日に開かれた第156回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国が条約を迅速に批准したこと、および、第1回報告書がきわめて包括的でありかつ委員会のガイドラインに忠実に従って作成されたことに、満足感とともに留意する。 3.委員会は、条約の実施に直接携わっている省庁の職員も含む高級レベルの代表団が締約国から出席したことに、評価の意を表したい。委員会は、締約国の代表団との意見交換、および、第1回報告書を広く入手できるようにするという政府の決定が、子どもの権利に関する全国レベルの開かれた議論に貢献することを希望するものである。 B.積極的な要因 4.委員会は、締約国が、条約の規定および原則を実施するためにとられた措置およびそのために選択された政策を、子どもの現状の変化を踏まえて振り返りかつ見直す決意を表明していることを、とくに心強く思う。 5.委員会は、国際連合総会において子どもの権利条約が採択された記念日に、公的機関と非政府組織との間で毎年会合が持たれていることの重要性を認識する。委員会は、政府と「市民社会」との間で実りのある対話を開始し、かつ子どもの権利の促進および保護のためにとられた政府の政策の真剣な評価を確保するにあたってこのような会合が持つ価値を強調するものである。 6.委員会はまた、条約の実施状況および世界の子どもの状況に関する政策についての報告書を毎年議会に提出するという政府の決定を歓迎する。このような手続は、子どもの最善の利益の原則の重要性を強調することに貢献するであろう。この原則は、立法機関によって行なわれるものを含む子どもに関わるあらゆる活動において、第一義的に考慮されなければならないものである。 7.委員会は、子どもに影響を与える手続において子どもが意見を聴かれかつ考慮される権利を認めるために締約国がとった措置を歓迎する。子どもに自己の権利について知らせ、かつ、学校内および地域共同体に設置された特別評議会を通じて子どもが意見を表明するよう奨励するための、さまざまな取り組みについても留意されるところである。 8.委員会はさらに、子どもの権利に関して一部の専門家グループを研修するための措置がとられたことも心強く思う。委員会はまた、少年司法の分野で子どもに法的情報および援助を提供するシステムを確立するために法曹界が行なった取り組みも賞賛するものである。 9.委員会は、フランスが、開発援助の分野におけるものも含む国際協力活動に積極的に参加してきたことに留意する。 10.委員会はまた、対人地雷が民間人、とくに子どもに対して与える危険な影響の問題に取り組む国際的キャンペーンに対して、締約国が行なってきた重要な貢献にも留意する。 C.主要な懸念事項 11.委員会は、条約第30条に対して締約国が付した留保に懸念とともに留意する。委員会は、子どもの権利条約がマイノリティに属する子どもの権利を含む子どもの個人的権利を保護しかつ保障しようとしていることを強調したい。 12.締約国が人権条約機構に提出したコア・ドキュメントで言及されている憲法第55条は、国際人権文書の規範はフランスにおいて自動執行的であり、かつ国内裁判所において援用できると規定している。このことに鑑み、委員会は、国内法の枠組みにおける子どもの権利条約の地位に関して、とくにこの点に関して破棄院が最近行なった決定に照らし、不明瞭さを感ずるものである。 13.委員会は、地方分権化によって生ずる可能性のある社会的悪影響に対して十分な保護措置をとる必要があることを懸念する。このような措置は、たとえば、生活水準に関して地域間格差が悪化する危険を避けるため、かつ、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもによる経済的および社会的権利の享受に悪影響が生ずる可能性を最低限に抑えるために、必要である。 14.母が出産および出生宣言の最中に自己の素性を秘密のままにするよう要請した場合、養子縁組の場合および医学的援助による出産の場合も含めて自己の出自を知る子どもの権利に関して、委員会は、締約国によってとられた立法措置は条約の規定、とくに一般原則を全面的に反映していないのではないかと懸念する。 15.委員会は、「難民資格を得るために前触れなくフランスに」(締約国報告書書 389項)到着した、保護者のいない子どもの状況を懸念する。委員会はまた、このような子どもが締約国の管轄下にある間および出身国に帰国する過程でこのような子どもに適用される、社会機関および(または)司法機関が関与する包括的な保護システムが存在しないことも懸念するものである。 16.委員会はまた、少年司法の運営の制度における逮捕、拘禁、刑の言渡しおよび収監に関わる立法および実務が、条約の規定および原則ならびにとくに第37条および第40条に全面的に一致していないのではないかと懸念する。 D.提案および勧告 17.委員会は、締約国に対し、条約第30条に対する留保を撤回の方向で見直すことを検討するよう奨励したい。 18.委員会はまた、締約国が、子どもの権利条約を実施するためにとられる政策の調整、評価およびフォローアップを目的とした常設機構の設置を構想するようにも提案したい。 19.委員会は、サービスの提供に関して地域間で生ずる可能性がある格差を最低限に抑えるために、予算問題に関するものも含め、中央政府と地方の公的機関が緊密に協力することの重要性を強調したい。委員会はまた、効果的でありかつ条約の規定および一般原則、とくに予算の財源に関わりなく適用される子どもの最善の利益および差別の禁止に一致した、子どもの権利の実施に対する包括的なアプローチをとることの価値を強調するものである。 20.最低社会所得を保障し、かつもっとも不利な立場に置かれた集団による居住へのアクセスを改善するためにとられている措置に満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国が、この経済的後退の時期にあって子どもの個人的権利の享受を注意深く監視するよう勧告する。これとの関連で、郊外生活者、移住労働者の子どもおよび社会的に周縁化された子どもも含む、社会のもっとも貧しくかつもっとも脆弱な立場に置かれた層に属する子どもの経済的および社会的権利の全面的実現を確保するため、必要な措置をとることが提案されるところである。 21.委員会は、開発援助の枠組みにおいて社会プログラムを優先させることを強調した国際連合機関および専門機関の勧告に、締約国の注意を促す。委員会は、締約国が、国際協力プログラムにおいてこのような社会的発展の促進の側面を考慮するよう提案したい。 22.法改正の枠組みにおいて、かつ条約の基本的原則、とくに第2条に照らして、委員会は締約国が最低婚姻年齢に関する現行法を見直すことを検討するよう提案する。 23.委員会は、子どもによる意見の表明を奨励する手段、および、とくに学校および地域社会において、子どもに影響を与える意思決定過程のなかでこのような意見が正当に重視される手段を、さらに検討するよう提案したい。 24.委員会はまた、児童虐待および子どもの体罰を防止するため、さらなる意識啓発措置および教育措置をとるようにも提案したい。 25.第1回報告書の提出後に、とくに国籍、外国人の入国および滞在、難民および庇護申請者ならびに家族の再統合の領域で重要な立法が採択されたことを踏まえ、委員会は、これらの領域について、および新規の立法措置が条約で認められた子どもの権利、とくに条約の一般原則を正当に考慮しながら第7条、第9条、第10条および第22条の享受にどのように影響を与える可能性があるかについて、文書による追加的情報を1994年10月1日までに受け取ることができれば感謝するものである。 26.委員会は、締約国に対し、自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い期間でのみ用いられることを確保するため、条約の規定、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに関連の国際基準、とくに「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則に照らして少年司法の運営の領域における国内法を検討するよう奨励する。 27.子どもの最善の利益および子どもの権利条約のその他の規定ならびにフランスが締約国となっているILO第138号条約の規定に照らし、委員会は、まだ義務教育を修了していない子どもの雇用が家事労働、および農業分野を含む家内制産業の場合に法律で認められていることは、締約国による再検討の価値があると考える。委員会はまた、締約国に対し、ファッション産業における活動への子どものアクセスを、これが個別事案アプローチに基づいてかつ子どもの最善の利益に照らしてのみ行なわれることを確保するために見直すようにも奨励するものである。 28.国内レベルにおける条約の実施の監視を委員会が重視していることに照らし、委員会は、政府によって議会に提出される、条約で認められた子どもの権利の実現を確保するためにとられた政策に関する年次報告書の写しを受け取ることができれば感謝するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年11月1日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/164.html
刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針(1997年) 国連経済社会理事会決議1997/30 原文英語(日本語訳・平野裕二) 初出:『少年司法における子どもの権利:国際基準および模範的慣行へのガイド 』(現代人文社、2001年)。 関連文書:少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)/自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)/子どもの犯罪被害者及び証人に関わる事項における正義についてのガイドライン(Word)子どもの権利委員会・一般的意見10号(少年司法における子どもの権利) 1.刑事司法制度における子どもについての行動に関する本指針は、1996年7月23日の経済社会理事会決議1996/13にしたがい、オーストリア政府の財政的支援を受けて1997年2月23日から25日にかけてウィーンで開かれた専門家グループ会合において作成されたものである。本行動指針の作成にあたり、専門家グループは各国政府から表明された意見および提出された情報を考慮にいれた。 2.当該会合には、地域を異にする11か国出身の29人の専門家、国連事務局人権センター、国連児童基金および子どもの権利委員会の代表ならびに少年司法に関心を持つ非政府組織のオブザーバーが参加した。 3.本規則は、国連事務総長ならびに関連する国連の機関および計画に対して、子どもの権利条約の実施に関連してその締約国に対して、かつ少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則の活用および適用に関して国連加盟国に対して、それぞれ宛てられたものである。以上の国際文書は、以下「少年司法に関する国連の基準および規範」と称する。 I.目的、目標および基本的考慮事項 4.本行動指針の目的は、以下の目標を達成するための枠組みを提示することである。 (a) 子どもの権利条約を実施し、かつ少年司法の運営の対象とされた子どもに関して条約に掲げられた目標を追求するとともに、少年司法に関する国連の基準および規範、ならびに、犯罪および権力濫用の被害者のための司法に関する基本原則宣言のようなその他の関連文書を活用および実施すること。 (b) 子どもの権利条約および関連文書の効果的実施のための、締約国に対する援助の提供を促進すること。 5.本行動指針の効果的活用を確保するためには、各国政府、国連システムの関連機関、非政府組織、専門家グループ、メディア、学術機関、子どもおよび市民社会のその他の構成員とのあいだの協力のあり方を改善することが不可欠である。 6.本行動指針は、条約を実施する責任は明らかにその締約国に存するという原則にもとづかなければならない。 7.本行動指針を活用する基盤は子どもの権利委員会の勧告であるべきである。 8.本行動指針を国際社会および国内のいずれのレベルでも活用するにあたっては、以下の点が考慮されなければならない。 (a) 条約を通底する4つの一般原則、すなわち差別の禁止(ジェンダーへの配慮を含む)、子どもの最善の利益の擁護、生命、生存および発達に対する権利ならびに子どもの意見の尊重と合致する、人間の尊厳の尊重。 (b) 権利を基盤とする志向。 (c) 資源および努力を最大限に用いることを通じた、実施に対するホリスティックなアプローチ。 (d) 分野を超えたサービスの統合。 (e) 子どもおよび社会の関連部門の参加。 (f) 発展過程を通じたパートナーのエンパワーメント。 (g) 外部機関に絶えず依存することのない、持続可能性。 (h) もっとも援助を必要とする者に対する公平な適用およびアクセス可能性。 (i) 説明責任、および運用の透明性。 (j) 防止と事後対応のための効果的措置を基盤とした積極的対応。 9.あらゆるレベル(国際社会、地域、国、州および地方)において、かつ各国政府、国連機関、非政府組織、専門家グループ、メディア、学術機関、子どもおよび市民社会のその他の構成員ならびにその他のパートナーを含む関連のパートナーとの協力により、充分な資源(人的、組織的、技術的および財政的資源ならびに情報)が配分され、かつ効率的に活用されなければならない。 II.子どもの権利条約の実施、その目標の追求ならびに少年司法に関する国連の基準および規範の活用および適用のための計画 A.一般的適用のための措置 10.子どものあらゆる権利は相互依存的でありかつ相互不可分であることに関連して、少年司法分野において国レベルで包括的かつ一貫したアプローチをとることの重要性が認識されなければならない。 11.以下のことを確保することを目標として、政策、意思決定、リーダーシップおよび改革に関連する措置がとられるべきである。 (a) 子どもの権利条約ならびに少年司法に関する国連の基準および規範の原則と規定が、国および地方の立法政策および実行に全面的に反映されること。とりわけ、そのための手段として、子どもの権利を保障し、子どもの権利の侵害を防止し、尊厳および価値に関する子どもの感覚を促進し、かつ、子どもの年齢、発達段階、および社会に意味のある形で参加しかつ社会に貢献する権利を全面的に尊重する、子ども中心の少年司法制度を確立すること。 (b) 上述の文書の関連の内容が、子どものアクセスしやすい言葉で、広く子どもに知らされること。加えて、必要な場合には、子どもひとりひとりが、少なくとも刑事司法制度と接触した最初の段階から上記文書に掲げられた自己の権利に関する関連の情報を提供され、かつ法律を守る義務について思い起こすよう促されることを確保するための手続が設けられるべきである。 (c) 子ども中心の司法の精神、目的および原則についての公衆とメディアの理解が、少年司法に関する国連の基準および規範にしたがって促進されること。 B.具体的目標 12.各国は自国の出生登録プログラムの実効性を確保するべきである。司法制度に関わった子どもの年齢が不明なときは、独立のかつ客観的な評価により子どもの真の年齢が確認されることを確保するための措置がとられなければならない。 13.国内法で定められた刑事責任年齢、民事上の成人年齢および同意年齢に関わらず、各国は、子どもが国際法によって保障された権利、この文脈において具体的には条約第3条、第37条および第40条に掲げられたすべての権利を享受することを確保するべきである。 14.以下の点に特段の注意が向けられるべきである。 (a) 包括的な子ども中心の少年司法手続が設けられているべきである。 (b) 独立の専門家またはその他のタイプの委員会により、少年司法に関する現行法および法案ならびにそれが子どもに及ぼす影響についての審査が行なわれるべきである。 (c) 法定刑事責任年齢に達しないいかなる子どもも刑事告発の対象とされてはならない。 (d) 各国は、犯罪行為を行なった少年に第一義的管轄権を有する少年裁判所を設置するべきであり、かつ特別手続は子どもの具体的ニーズを考慮にいれられるようなものでなければならない。これに代わる措置としては、通常裁判所においてそのような手続が適切な形で編入されるべきである。必要なときは常に、子どもが少年裁判所以外の裁判所に引致された場合に条約第3条、第37条および第40条にしたがってすべての権利および保護を子どもに認める国内法上その他の措置が検討されなければならない。 15.現行手続の見直しが行なわれるべきであり、かつ、可能な場合には、罪に問われた青少年を対象として刑事司法制度を利用することを回避するため、ダイバージョン、または古典的な刑事司法制度に代わるその他のイニシアチブが開発されるべきである。再犯を防止し、かつ罪を犯した子どもの社会復帰を促進する目的で、逮捕前、審判前、審判時および審判後の各段階における広範な代替措置および教育的措置を全国で利用できるようにするための適切な措置がとられなければならない。適切な場合には常に、罪を犯した子どもに関わる事件の紛争を非公式に解決するための機構が活用されるべきである。このような機構には、調停および修復的司法実践、とくに被害者が関与する手続が含まれる。さまざまな措置をとるにあたっては、罪を犯した子どものためになるかぎりにおいて、家族の関与が求められるべきである。各国は、代替的措置において、条約、少年司法に関する国連の基準および規範、ならびに、非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京規則)のような、犯罪防止と刑事司法に関するその他の現行の基準および規範が遵守されることを確保しなければならない。そのさい、そのような措置を適用するさいの適正手続上の規則、および最低限の介入の原則を尊重することに特別な考慮が払われなければならない。 16.法的援助、および通訳のようなその他の援助を必要であれば無償で子どもに提供し、かつ、とくに、拘禁された時点からそのような援助にアクセスするすべての子どもの権利が尊重されることを確保するための機関およびプログラムの確立に、優先順位が置かれるべきである。 17.路上で生活しもしくは働いている子どもまたは家庭環境を恒久的に奪われた子ども、障害を持った子ども、マイノリティ、移民または先住民族の子どもおよびその他の傷つきやすいグループに属する子どものような、特別な保護措置を必要とする子どもの問題を軽減するための適切な措置が確保されるべきである。 18.子どもを閉鎖型施設に措置することは減らされなければならない。子どものそのような措置は、条約第37条(b)にしたがって、最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれるべきである。少年司法制度および児童福祉制度における体罰は禁じられなければならない。 19.自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および条約第37条(b)は、いずれかの司法機関、行政機関その他の公的機関の命令による公的もしくは私的な環境への措置であって、子どもがみずからの意思で離れることを許されないいかなる措置にも同様に適用される。 20.拘禁された子どもとその家族およびコミュニティとのつながりを維持し、かつその社会的再統合を促進するため、親族、および子どもに対して正当な関心を有する者が、子どもが自由を奪われている施設に容易にアクセスできることを確保することが重要である。ただし、子どもの最善の利益に照らして別段の判断が必要と思われるときはこのかぎりでない。 21.必要な場合には、身柄拘束施設の環境について定期的に監視および報告する独立機関が設置されなければならない。監視は、少年司法に関する国連の基準および規範、とくに自由を奪われた少年の保護に関する国連規則を枠組みとして行なわれるべきである。各国は、子どもが監視機関と自由にかつ秘密裡にコミュニケーションをとることを認めなければならない。 22.各国は、適切な場合、関心のある人道団体、人権団体その他の団体による身柄拘束施設へのアクセスの要請を前向きに検討するべきである。 23.刑事司法制度における子どもとの関連では、政府間機関、非政府組織その他の関係者が提起する問題、とくに、不適切な措置や、自由を奪われた子どもに影響を及ぼす長期の遅延を含む制度的問題が正当に考慮されなければならない。 24.刑事司法制度における子どもと接触する者またはそのような子どもに責任を持つ者はすべて、その養成・研修プログラムの不可欠な一部として、人権、条約の原則および規定、ならびに少年司法における他の国連の基準および規範についての教育と研修を受けなければならない。そのような者には、警察官その他の法執行官、裁判官、検察官、弁護士および司法行政職員、刑務所吏員および子どもが自由を奪われている施設で働くその他の専門家、ならびに、保健従事者、ソーシャルワーカー、平和維持部隊隊員、および少年司法に関係するその他の専門家が含まれる。 25.現行国際基準に照らし、各国は、職員が子どもの基本的権利および自由を意図的に侵害したという申立てが迅速に、徹底的にかつ公正に調査されることを確保するための機構を設置しなければならない。各国は、同様に、責任を認められた者が適正な制裁を受けることを確保するべきである。 C.国際レベルでとられるべき措置 26.国連システム全体の行動の枠組みにおけるものを含め、少年司法に対する正当な注意が国際的、地域的および国家的に向けられるべきである。 27.この分野のすべての機関、とりわけ国連事務局の犯罪防止刑事司法局、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連難民高等弁務官事務所、国連児童基金、国連開発計画、子どもの権利委員会、国際労働機関、国連教育科学文化機関および世界保健機関のあいだで緊密な協力を図ることが、緊急に必要である。加えて、世界銀行その他の国際的および地域的金融機関ならびに非政府組織および学術機関も、少年司法分野における助言サービスおよび技術的援助の提供を支援するよう要請される。したがって、とくに調査研究、情報の普及、養成および研修、子どもの権利条約の実施および監視、ならびに現行基準の活用および適用に関して、かつ、技術的助言および援助のプログラムを提供することに関して、たとえば少年司法に関する既存の国際的ネットワークを活用することによって協力が強化されなければならない。 28.技術的協力および助言サービスのプログラムを通じた子どもの権利条約の効果的実施ならびに国際基準の活用および適用が、とりわけ、拘禁された子どもの人権の保護および促進、法の支配の強化ならびに少年司法制度の運営の改善に関わる以下の側面に特段の注意を向けることにより、確保されなければならない。 (a) 法改正の援助。 (b) 国内の能力およびインフラストラクチャーの強化。 (c) 警察官その他の法執行官、裁判官、検察官、弁護士、司法行政職員、刑務所吏員および子どもが自由を奪われている施設で働くその他の専門家、保健従事者、ソーシャルワーカー、平和維持部隊隊員、ならびに少年司法に関係するその他の専門家を対象とした研修プログラム。 (d) 研修マニュアルの作成。 (e) 少年司法における権利を子どもに知らせるための情報および教材の作成。 (f) 情報システムおよび運営システムの発展の援助。 29.平和構築時および紛争後の状況、または発生しつつあるその他の状況における犯罪の被害者および加害者としての子どもと青少年の問題を含め、子どもの権利の保護が平和維持活動に関わっていることにかんがみ、国連事務局内の犯罪防止刑事司法局と平和維持活動局との緊密な協力が維持されるべきである。 D.技術的助言・援助プロジェクトの実施のための機構 30.条約第43条、第44条および第45条にしたがい、子どもの権利委員会は条約の実施に関する締約国報告書を審査する。条約第44条にしたがい、当該報告書は、条約にもとづく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因および困難が存在する場合、それを示さなければならない。 31.条約の締約国は、その第1回報告書および定期報告書において、条約の規定の実施、ならびに少年司法に関する国連の基準および規範の活用および適用に関する包括的な情報、データおよび指標を提供するよう要請されている。 32.条約にもとづく義務を履行するにあたって締約国が達成した進展を検討する過程を経た結果、子どもの権利委員会は、条約の全面的遵守を確保するための提案および一般的勧告を行なうことができる(条約第45条(d))。条約の効果的実施を促進し、かつ少年司法分野における国際協力を奨励するため、委員会は、適当と認める場合には、助言サービスおよび技術的援助を要請しているか、またはこれらの必要性を指摘している締約国からの報告書を、もしあればこれらの要請または指摘についての委員会の所見および提案とともに、専門機関、国連児童基金および他の資格のある機関に送付する(条約第45条(b))。 33.このように、締約国の報告書および委員会による審査の過程において、国連または専門機関の技術的助言・援助プログラムによる援助によるものも含めて少年司法分野において改革を開始する必要性が明らかになった場合、締約国は、犯罪防止刑事司法局、人権センターおよび国連児童基金による援助も含むそのような援助を要請することができるのである。 34.このような要請に応えて充分な援助を提供するため、少年司法に関する技術的助言・援助に関する調整委員会が設置され、国連事務総長によって少なくとも年1回召集されるべきである。当該委員会は、犯罪防止刑事司法局、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連児童基金、国連開発計画、子どもの権利委員会、国連犯罪防止刑事司法プログラム・ネットワークを構成する諸機関および他の関連の国連機関、ならびに、後述三九項にしたがって技術的助言・援助の提供に携わっているその他の関心ある政府間機関、地域機関および非政府組織(少年司法に関する国際的ネットワークおよび学術機関を含む)の代表によって構成されることになろう。 35.調整委員会の最初の会合に先立ち、少年司法分野におけるさらなる国際協力をどのように活性化するかという問題に対応する戦略が作成されなければならない。調整委員会はまた、共通の問題の特定、望ましい実務の実例の収集および共有された経験とニーズの分析も促進するべきである。このことにより、ニーズ評価、および行動のための効果的提案に対するいっそう戦略的なアプローチをとれるようになろう。そのような積上げを行なうことにより、少年司法に関する協調的な助言サービスと技術的援助が可能になるはずである。これには、そのような援助を要請する政府、および国別プロジェクトのさまざまな部分を実施する能力と権限を有する他のすべてのパートナーと早期に協定を結ぶことが含まれ、もってもっとも効果的かつ問題志向型の行動を確保することができるであろう。このような積上げは、すべての関係当事者と緊密に協力しながら絶えず発展させられなければならない。そこでは、少年司法の運営を改善し、少年拘置所や審判前拘禁の使用を少なくし、自由を奪われた子どもの処遇を改善し、かつ再統合と回復のための効果的なプログラムを創出することを目的としたダイバージョンのプログラムおよび措置が考慮にいれられることになろう。 36.少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)で求められているように、包括的な防止計画の策定が重視されなければならない。プロジェクトにおいては、とくに家族、コミュニティ、仲間集団、学校、職業訓練および仕事の世界を通じ、すべての子どもと若者がうまく社会化および統合できるようにするための戦略に焦点が当てられるべきである。これらのプロジェクトにおいては、路上で生活しもしくは働いている子どもまたは家庭環境を恒久的に奪われた子ども、障害を持った子ども、マイノリティ、移民または先住民族の子どもおよびその他の傷つきやすいグループに属する子どものような、特別な保護措置を必要とする子どもに特段の注意が払われなければならない。とりわけ、このような子どもを施設に措置することはできるかぎり禁止されるべきである。このような子どもが犯罪者として扱われるおそれを限定するため、社会的保護の措置が発展させられなければならない。 37.上述の戦略においては、条約の締約国に対して国際的助言サービスおよび技術的援助を調整のとれた形で提供するための手段も定められることになろう。そのような提供は、長期的な技術的援助プログラムを立案する目的で、適切な場合には常に、関連のさまざまな組織および機関の職員により、合同ミッションとして行なわれる。 38.国レベルで助言サービスおよび技術的援助プログラムの提供を行なうさいの重要な主体は国連の駐在コーディネーターであり、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連児童基金および国連開発計画の現地事務所が重要な役割を果たすことになる。国連国別戦略覚書を通じてのものも含め、少年司法に関する技術的協力を国別の計画およびプログラム立案に統合することの重要性が強調される。 39.調整委員会の調整機構と、条約の遵守を向上させるために立案された地域別および国別プロジェクトの双方に対し、資源が動員されなければならない。以上の目的(前掲パラ34~38参照)のための資源は、通常予算または予算外の資源のいずれからももたらされることになろう。具体的プロジェクトのための資源のほとんどは外部から動員せざるを得ないであろう。 40.調整委員会は、この分野での資源の動員に対する調整のとれたアプローチを奨励し、かつそれどころかその媒介者となることができよう。このような資源の動員は、この分野における世界的プログラムを支える形で作成されたプログラム文書に掲げられる、共通の戦略にもとづいて行なわれなければならない。関心あるすべての国連機関、およびこの分野における技術的協力サービスを提供する能力が実証されている非政府組織に対し、このようなプロセスへの参加が要請されるべきである。 F.国別プロジェクトの実施に関するさらなる考慮事項 41.少年非行の防止および少年司法における明白な教義のひとつは、長期的な変化は症状が治療されたときのみならず根本的原因への対応が行なわれたときにもたらされるということである。たとえば、少年の拘禁の過度な使用に対しては、捜査、訴追および司法ならびに刑務所制度のあらゆるレベルにおける運営体制および管理体制が関与する包括的なアプローチをとることによってしか、充分な対応が行なえない。そのためには、とくに、警察、検察官、裁判官、地方行政機関、行政機関および拘禁センターの関連機関との、相互間および内部のコミュニケーションが必要である。加えて、相互に緊密に協力しようとする意思および能力も必要とされる。 42.子どもの行動に対応するためにこれ以上刑事司法上の措置に過剰に依存するのを防止するため、適切な場合には司法制度からの子どものダイバージョンを可能にする社会的援助を強化すること、および身柄拘束以外の措置と再統合プログラムの運用を改善することを目的としたプログラムを確立および適用するための努力が行なわれなければならない。そのようなプログラムを確立および適用するためには、少年司法部門、法執行を担当する諸機関、社会福祉部門および教育部門間の緊密な協力を促進することが必要である。 III.子どもの被害者および証人に関わる計画 43.犯罪および権力濫用の被害者のための司法に関する基本原則宣言にしたがい、各国は、子どもの被害者および証人に対し、司法および公正な取扱い、被害回復、賠償ならびに社会的援助への適切なアクセスが提供されることを確保するとりくみを行なわなければならない。適用可能な場合、刑事上の問題を司法制度外の賠償により解決することを、それが子どもの最善の利益に沿わないときは防止するための措置をとるべきである。 44.警察官、弁護士、裁判官およびその他の法定吏員は、子どもが被害者である事件への対応に関する研修を受けなければならない。各国は、子どもに対する犯罪に関わる事件に対応する特別部局をまだ設置していない場合には、その設置を検討するべきである。各国は、適切な場合、子どもが被害者である事件の適切な処理に関する行動規範を定めなければならない。 45.子どもの被害者は、共感と、その尊厳への尊重の念をもって取り扱われなければならない。子どもの被害者は、みずからが受けた被害に対し、国内法で規定されている方法にしたがって司法機構および迅速な救済にアクセスする権利を有する。 46.子どもの被害者は、弁護、保護、経済的援助、カウンセリング、保健サービス、社会サービス、社会的再統合ならびに身体的および心理的回復のためのサービスのような、そのニーズを満たす援助にアクセスできなければならない。障害を持った子どもまたは病気の子どもに対しては特別な援助が与えられるべきである。施設措置よりも家庭およびコミュニティを基盤としたリハビリテーションが重視されなければならない。 47.必要な場合、子どもの被害者が迅速、公正かつアクセスしやすい公式または非公式の手続を通じて救済を得られるようにするため、司法上および行政上の機構が設置および強化されるべきである。子どもの被害者および(または)その法定代理人に対してしかるべき情報提供が行なわれなければならない。 48.人権侵害、とくに拷問および他の残酷な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いまたは処罰(強姦および性的虐待、違法なまたは恣意的な自由の剥奪、正当な理由のない拘禁ならびに誤審を含む)の被害を受けたすべての子どもに対し、公正かつ充分な補償へのアクセスが認められなければならない。適切な裁判所または審判所において訴訟を行なうための必要な法的代理、および、必要な場合には子どもの母語への通訳が、利用可能とされるべきである。 49.子どもの証人は司法手続および行政手続において援助を必要とする。各国は、子どもの権利が全面的に保護されることを確保するため、証拠法および手続法における、犯罪の証人としての子どもの状況を必要に応じて再検討、評価および改善しなければならない。それぞれ異なる法的伝統、実務および法的枠組みにしたがいながら、捜査手続および訴追手続ならびに公判の最中の子どもの被害者と犯罪者の直接の接触はできるかぎり回避されるべきである。子どものプライバシーを保護するために必要なときは、メディアにおいて子どもの被害者を特定することが禁じられなければならない。禁止することが加盟国の基本的な法的原則に逆行するときは、そのような特定が抑制されるべきである。 50.各国は、とくに子どもの証言をビデオに記録すること、およびビデオに記録された証言を正式な証拠として法廷に提出することを認めるため、必要なときは刑事訴訟法を改正することを検討するべきである。とりわけ、警察官、検察官および裁判官は、たとえば警察活動および子どもの証人の事情聴取において、いっそう子どもに優しい実務を適用しなければならない。 51.司法上および行政上の手続における、子どもの被害者および証人のニーズに対する配慮が、以下の方法により促進されなければならない。 (a) 子どもの被害者に対し、とくに犯罪が重大である場合に、その役割、手続の範囲、時期および進展、ならびに事件の処分について情報を提供すること。 (b) 証言に先立って子どもが刑事司法手続に慣れることを可能にする、子ども証人準備計画の発展を奨励すること。子どもの証人および被害者に対し、法的手続全体を通じて適切な援助が提供されなければならない。 (c) 子どもの被害者の個人的利益に影響が及ぶ場合に、被告人の権利を損なうことなく、かつ関連の国内刑事司法制度にしたがって、子どもの被害者の意見および関心が手続の適切な段階で提出および検討されることを認めること。 (d) 刑事司法手続における遅延を最小限に抑えるための措置ととり、子どもの被害者および証人のプライバシーを保護し、かつ、必要な場合には、脅迫および報復からの安全を確保すること。 52.国境を越えて不法に移動させられまたは不当に身柄を抑えられた子どもは、出身国に送還するのが一般的原則である。その安全に正当な注意が払われるべきであり、そのような子どもは送還までのあいだ人道的に取り扱われ、かつ必要な援助を与えられなければならない。子どもの権利条約の遵守を確保するため、このような子どもの送還は迅速に行なわれるべきである。国際私法に関するハーグ会議が承認した、子の奪取の民事面に関する1980年のハーグ条約もしくは国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約、または親の責任に関する裁判権、適用法、承認、執行および協力ならびに子どもの保護のための措置に関する条約が適用可能な場合、子どもの送還に関するこれらの条約の規定が迅速に適用されなければならない。子どもが送還されたさい、出身国は、人権に関する国際的原則にしたがって尊重の念をもってその子どもを取り扱い、かつ家庭を基盤としたリハビリテーションのための充分な措置を提供するべきである。 53.国連犯罪防止刑事司法局(プログラムのネットワークを構成する諸機関も含む)、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連児童基金、国連開発計画、子どもの権利委員会、国連教育科学文化機関、世界銀行および関心ある非政府組織は、法執行官その他の刑事司法関係者(警察官、検察官および裁判官を含む)を対象とした分野横断的な研修、教育および情報提供の活動を発展させていくにあたり、国連予算または予算外の資源の全体的配分額の枠内で、要請に応じて加盟国を援助しなければならない。 更新履歴:ページ作成(2012年2月26日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/43.html
総括所見:韓国(第2回・2003年) 第1回(1996年)/第3回・第4回(2011年)/第5回・第6回(2019年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.197(2003年3月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年1月15日に開かれた第838回および第839回会合(CRC/C/SR.838 and 839参照)において、2000年5月1日に提出された大韓民国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.14)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/REPKO/2)に対する詳細な文書回答の提出により、締約国における子どもの状況についてより明確な理解が得られたことを歓迎する。委員会はさらに、締約国がいくつかの部門から選ばれたハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、討議中に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約をさらに実施するために制定された法律、とくに、児童虐待事案の調査および通報について扱うドメスティック・バイオレンスの処罰のための特別法(1997年)、および、19歳未満の者からの性的サービスの購入に関与した者を犯罪化する青少年保護法(2000年)を歓迎する。 4.委員会は、2001年に国家人権委員会が設置されたことを歓迎する。 5.委員会は、委員会が過去に勧告したように、締約国がそれぞれ1999年および2001年にILO第138号条約および第182号条約を批准したことならびに最低就業年齢を15歳に引き上げたことを歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、1997年のアジア金融危機およびその後に行なわれた国際通貨基金の構造調整改革プログラムにより締約国が経済的および財政的制約に直面し、そのため経済的、社会的および文化的権利を実施する締約国の能力に影響が生じてきたことを認知する。委員会はまた、厳格な財政緊縮措置によって締約国が時宜を得たやり方で国際融資を返済できてきたこと、および、経済がおおむね回復したことにも留意するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.21)の検討を受けて採択された総括所見(CRC/C/15/Add.51)の勧告のほとんど、とくに以下の事項に関わる勧告が不十分にしか対応されていないことを遺憾に思う。 (a) 留保の撤回(パラ19)。 (b) 女子、障害児および婚外子に対する差別的態度と闘うための公衆教育キャンペーンの発展(パラ20)。 (c) 家庭、学校および社会生活への子どもの参加を促進するための措置(パラ26)。 (d) あらゆる形態の体罰の禁止(パラ22)。 (e) 条約第29条に掲げられた教育の目的を全面的に反映させることを目的とした、締約国の教育政策の見直し(パラ29)。 8.委員会は、これらの懸念をあらためて表明するとともに、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために持続的努力を行なうよう、促す。 留保 9.委員会は、第9条第3項、第21条(a)および第40条第2項(b)(v)に対する締約国の留保を、依然として非常に懸念する。 10.委員会は、犯罪を行なったことを理由として刑を言い渡された少年が上訴権を有することに留意しつつ、締約国に対し、第40条第2項(b)(v)に対して付した留保を可能なかぎり早期に撤回するよう奨励する。締約国はまた、1993年に採択されたウィーン宣言および行動計画にしたがって第21条(a)および第9条第3項に対する留保を撤回する目的で、子どもおよび親の双方が相互に接触を維持する権利を保障されるように民法改正のプロセスを進捗させること、および、国内養子縁組に対する公衆の態度を変革するための努力を強化することも奨励されるところである。 立法 11.委員会は、国内法の改正に留意しながらも、国内法がいまなお条約の規定および原則に全面的に一致していないことを依然として懸念する。 12.委員会は、締約国に対し、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう奨励する。 調整 13.委員会は、第8次社会経済開発5か年計画(1998~2002年)に、子どもに関する国家行動計画が含まれていることに留意する。しかし委員会は、種々の行政段階においてさまざまな省庁が運営している子どものためのあらゆる政策およびプログラムを調整する全面的権限を与えられた常設の中央機構が存在しないことを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、2001年に策定された「子どもの保護および子育てのための包括的計画」の適用範囲を拡大し、条約に基づくあらゆる権利、および、子どもに関する国際連合総会特別会期(2002年5月)で行なわれ、かつ「子どもにふさわしい世界」と題された成果文書に記載されたコミットメントを含めるよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、子どものためのあらゆる政策およびプログラムの調整を担当する常設の中央機構をひとつ指定するとともに、当該機構がその責務を効果的に履行するのに必要な権限ならびに十分な財源、人的資源および物質的資源を有することを確保するよう、勧告するものである。 公的機関による監視 15.委員会は、締約国が条約の実施を監視するための常設機関を政府内に設置することを検討している旨の、代表団から提供された情報を歓迎する。 15.委員会は、締約国がそのような監視機構の設置を進捗させ、かつ条約実施におけるその活動を積極的に監視するよう、勧告する。 独立の監視 17.委員会は、前掲パラ4に述べたとおり、国家人権委員会が設置されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、同委員会が子どもの権利についての専門性を何ら有していないことを懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(「パリ原則」)(国連総会決議48/134付属文書)および国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがって、次のことをするよう勧告する。 (a) 人権委員に子どもの権利の専門家が少なくとも1名いること、または同委員会が子どもの権利に関する小委員会を設けることを確保すること。 (b) とくに、子どもによる苦情申立てを子どもに配慮した方法で受理し、調査しかつこれに対応する同委員会の権限に関する意識を啓発することにより、国家人権委員会が子どもにとってアクセスしやすいものであることを確保すること。 資源配分 19.委員会は、この2年間の経済的回復にもかかわらず、子どものための中央予算の配分が、とくに健康および教育の分野において1997年以来着実に減少していることに、懸念とともに留意する。現在の支出水準は、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応するには不十分であり、かつ、同様の経済発展水準にある他の国々の予算配分に匹敵していない。 20.委員会は、締約国が、以下の対応をとることにより、条約第4条の全面的に実施に特段の注意を払うよう勧告する。 (a) 「利用可能な資源を最大限に用いることにより」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させること。 (b) 支出の影響を評価する目的で、かつさまざまな部門で子どもに提供されているサービスの費用、アクセス可能性、質および実効性の観点からも、公共部門、民間部門およびNGO部門において子どもに用いられている国家予算の額および割合を特定すること。 データ収集 21.委員会は、締約国がその文書回答で表明した、現行のデータ収集機構では条約のあらゆる分野における18歳未満のすべての子どもが対象とされていない旨の懸念を共有するとともに、子どもの権利指標を開発する計画があることに留意する。 22.委員会は、締約国に対し、とくに18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータを収集するための効果的システムを確立する努力を継続しおよび強化し、かつ条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のためにこれらのデータおよび指標を活用するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、条約の実施に関して達成された進展を継続的に評価できるようにするため、子どもの権利指標に関する活動を可能なかぎり早期に完了させるようにも奨励するものである。 市民社会との協力 23.子どもに対するサービスの提供における締約国と市民社会との協力には留意しながらも、委員会は、必要な基準設定が行なわれていないこと、および、政策立案レベルまたは報告プロセスにおける市民社会との協力が限られてきたことを懸念する。 24.委員会は、委員会は、条約の規定の実施におけるパートナーとしての市民社会の重要な役割を強調するとともに、締約国が、国および地方のレベルにおける条約実施のすべての段階(政策立案を含む)ならびに条約実施に関する将来の定期的報告書の作成に、より体系的かつ調和のとれた方法で非政府組織を関与させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割」をテーマとして2002年に開催された一般的討議の勧告(CRC/C/121、パラ121)を考慮に入れ、かつ、とくにサービス提供者の登録認可制度を改善することにより民間のサービス提供機関の監督を向上させるようにも勧告する。 普及 25.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に認識していないことを懸念する。 26.子どもの権利に関する情報を普及するためにNGOおよび国際組織が行なっている活動には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定ならびに条約の実施に関する自国の報告書を広く知らせるという、第42条および第44条に基づく自国の義務を想起するよう求める。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 一般公衆およびとくに子どもを対象とした、子どもの権利に関する公的意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教職員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を実施すること。 2.子どもの定義 27.委員会は、女子(16歳)および男子(18歳)の最低婚姻年齢が異なることを依然として懸念する。 28.委員会は、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げるべきである旨の、締約国に対する前回の勧告をあらためて繰り返す。 3.一般原則 29.委員会は、差別の禁止に対する権利(第2条)、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない旨の原則(第3条)、子どもの生命、生存および発達に対する権利(第6条)、ならびに、自己の意見を自由に表明し、かつその意見を年齢および成熟度にしたがって考慮される子どもの権利(第12条)のような、条約に掲げられた一般的原則および権利が、国および地方のレベルにおける締約国の法律、政策およびプログラムに全面的に反映されていないことを、懸念する。 30.委員会は、締約国が以下の対応をとるよう勧告する。 (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関するあらゆる関連の法律に適切に統合すること。 (b) 政治上、司法上および行政上のあらゆる決定ならびにすべての子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて、これらの原則を適用すること。 (c) あらゆるレベルにおける計画および政策立案、ならびに社会機関、保健福祉機関、教育機関、裁判所および行政機関による行動において、これらの原則を適用すること。 差別の禁止 31.委員会は、人種差別に関する情報が締約国報告書に存在しないこと、および、ひとり親家庭の子ども、婚外子、障害のある子ども、女子および移住者家族に対する差別行為についての情報量が限られていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、憲法において、条約において述べられているように人種、皮膚の色、言語、政治的その他の意見、民族的もしくは社会的出身、障害、出生またはその他の地を理由とする差別が明示的に禁じられていないことも、懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、条約第2条に列挙されたすべての事由を含める目的で、差別を明示的に禁ずる法律を制定するよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、とくに公衆の教育および意識啓発のためのキャンペーンを通じて、とりわけひとり親家庭の子ども、婚外子、障害のある子ども、移住労働者の子どもおよび女子に対する社会的差別と闘うため、あらゆる必要な積極的措置をとるよう勧告する。 33.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重がいまなお制限されていることを懸念する。 35.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2000年に改正された児童福祉法が、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために改正されることを確保するとともに、裁判所、行政機関、学校および教育制度の懲戒手続において、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見の尊重を促進しかつ子どもの参加の便宜を図るために、立法を含む効果的措置をとること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうこと。 4.市民的権利および自由 表現および結社の自由 36.委員会は、管理者による生徒会の厳格な統制、および、初等中等学校の生徒が学外で行なう政治的活動を制限しまたは禁止する校則により、生徒の表現および結社の自由が制限されていることを懸念する。委員会はさらに、10代が独自に立ち上げたインターネットのチャットルームが公的機関によって恣意的に閉鎖させられてきたという訴えについて、懸念するものである。 37.条約第12条~第17条に照らし、委員会は、締約国が、学校内外の意思決定プロセスおよび政治的活動への子どもの積極的参加を促進し、かつすべての子どもが結社および表現の自由を全面的に享受することを確保するために、法律、教育部が発する指針および校則を改正するよう勧告する。 体罰 38.委員会は、学校における体罰が公式に容認されていることに、大きな懸念とともに留意する。委員会は、体罰は、とくにそれが子どもの尊厳の重大な侵害であることから、条約の原則および規定に一致しないという見解に立つものである(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の同様の見解も参照。E/C.12/1/Add.79, para. 36)。教育部の指針によって、学校で体罰を用いるか否かの決定が個々の学校管理者に委ねられていることは、一部の形態の体罰は受け入れられていることを示唆するものであり、したがって積極的かつ非暴力的な形態の規律を促進する教育上の措置を阻害するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連の法律および規則を改正し、家庭、学校その他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すべきであるという、国家人権委員会の勧告を実施すること。 (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について公衆教育キャンペーンを実施するとともに、そのような罰に代わる手段として、学校および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 5.家庭環境および代替的養護 代替的養護 40.委員会は、締約国が、家族から分離された子どもの施設措置に代わる手段としてグループホームを設置していることに留意する。しかしながら委員会は、グループホームの設置および里親養護制度の発展が依然として限定されており、かつ民間の代替的養護施設が政府の規制または定期的査察の対象とされていないことを、懸念するものである。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに里親家庭への金銭的支援を拡充し、かつ里親家庭を対象とするカウンセリングおよび支援のための機構を増やすことにより、グループホームの数および里親養護制度を引き続き拡大すること。 (b) 公立および私立のすべての施設にいる子どもについて、子どもの意見および最善の利益を考慮に入れ、かつ可能なときは常に家庭的環境への子どもの再統合を目的とする、措置の定期的審査が行なわれることを確保すること。 (c) ソーシャルワーカーを増員し、かつ、代替的養護を受けている子どもおよび脆弱な状況に置かれた家族に援助を提供するソーシャルワーカーの技術および能力を向上させること。 養子縁組 42.委員会は、否定的な文化的伝統が蔓延していることにより、国内養子縁組が権限ある公的機関の認可または関与なしに手配される場合があること、および、そのような手配においては子どもの最善の利益または適当なときは子どもの意見が必ずしも考慮されていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、国際養子縁組の件数が多いこと(これは、この形態の養子縁組が必ずしも最後の手段とされていないことを示唆するものである)にも懸念とともに留意し、前回の総括所見で述べた、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をまだ批准していないという懸念を繰り返すものである。 43.委員会は、締約国に対する前回の勧告を繰り返すとともに、以下のことを求める。 (a) 子どもの権利条約の原則および規定、とくに第21条に全面的に一致させるために国内法を改正することを目的とする、国内養子縁組および国際養子縁組の制度の包括的見直し。 (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准。 児童虐待およびネグレクト 44.委員会は、児童虐待およびネグレクトの通報に対応し、かつ被害者にカウンセリングおよび援助を提供する児童虐待防止センターが同国の多くの地域で設置されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、児童虐待およびネグレクトの苦情申立てを受理して効果的に対応し、かつ被害者に援助を提供する全国的システムが存在しないことを懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童虐待およびネグレクトの苦情申立てを受理し、監視しおよび調査し、ならびに必要なときは子どもに配慮したやり方で事案を訴追するための全国的システムを確立するために法改正を含むあらゆる適当な措置をとるとともに、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象としてこの点に関する研修を行なうこと。 (b) 介入または処罰だけではなく、適当なときは家族間暴力の被害者および加害者の双方に支援および援助を提供することを目的とし、かつ暴力の被害者全員がカウンセリングならびに回復および再統合に関する援助にアクセスできることを確保する全国的対応システムを発展させる目的で、児童虐待防止センターを設置する努力を強化すること。 (c) これらの問題の規模を適正に評価し、かつこれらの懸念に対応するための政策およびプログラムを立案する目的で、虐待およびネグレクトの加害者および被害者に関する、ジェンダーおよび年齢によって細分化されたデータを収集するための機構を確立すること。 子どもの扶養料 46.委員会は、離婚した親およびひとり親(主として母親)であって、法的に受け取る資格を有する子どもの扶養料の支払いを受け取っていない者の人数が多いことを懸念する。 47.第27条および子どもの最善の利益の原則(第3条)に照らし、委員会は、締約国が、裁判所の命令または当事者間の取決めに基づく子どもの扶養債務を、子どもおよびその監護権者である親にスティグマを与えないやり方で執行するため、あらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。たとえば締約国は、執行措置が定められるまでの間、支払期限が過ぎた子どもの扶養債務が監護権者に対して支払われることを確保するための国家基金の設置、または、子どもの扶養債務を負う被雇用者の給与から子どもの扶養料が自動的に天引きされる制度の導入を検討することが考えられる。 6.基礎保健および福祉 48.委員会は、子どもの保健指標が非常に良好であることを心強く感ずる。にもかかわらず、委員会は、保健に配分される政府予算の割合が1%に満たないこと、および、全保健ケア施設の9割は民間によって運営されていることを懸念するものである。委員会はまた、子どもを母乳で育てる母親の割合が1990年代以降顕著に減少していること、および、喫煙する青少年およびアンフェタミンその他の不法な物質を使用する青少年の人数が増えていることも懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健に配分される資金を相当水準まで増加させるとともに、低所得家庭が費用負担なしに保健制度にアクセスできるよう公的ケア施設制度を確立すること。 (b) 生後6カ月間は乳児に母乳のみを与えることを母親に奨励し、かつその利点について母親を教育するための措置をとるとともに、母乳育児に関する国家的規則を採択すること。 (c) 子どもを母乳で育てる女性の雇用にいかなる悪影響も生じないようにするための効果的対策をとること。 (d) とくにHIV/AIDSその他の性感染症に関する教育、10代の喫煙および薬物濫用の問題ならびに他の関連する問題に対応する包括的な青少年保健政策を策定する目的で、青少年の健康に関する研究を実施すること。 障害のある子ども 50.委員会は、〔障害のある〕子どもに対する社会的差別が広範に行なわれており、これらの子どもによる、「尊厳を確保し、自立を促進し、かつ地域社会への積極的な参加を助長する条件の下で(の)十分かつ人間に値する生活」に対する権利の享受が妨げられていることを、著しく懸念する。委員会はとりわけ、相当数の障害のある子どもが毎年遺棄されており、多くは学校に通うことができず、かつ学校に通う際は他の生徒から隔離されているという報告があることを懸念するものである。 51.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的討議(1997年)の勧告および障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親、子ども、教職員および一般公衆を対象とする意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン等を通じ、障害のある子どもに対する差別の文化と闘うための効果的措置をとること。 (b) 障害のある子どもの教育上のニーズおよび教育その他の社会サービスへのアクセスについて評価する、障害のある子ども(現在通学していない子どもも含む)の人数についての包括的調査を実施すること。 (c) 公共の建物および場所(学校およびレクリエーション施設を含む)に対する障害のある子どもの物理的アクセスを改善するための現行プログラムを拡大し、かつ初等前、初等、中等および高等教育段階における統合教育プログラムの数を増やすこと。 7.教育 52.委員会は、締約国の経済発展水準が相対的に高いにもかかわらず初等教育しか無償とされていないことを懸念するものの、締約国が中学校教育の無償化を進めているという情報を歓迎する。同様に、初等教育においては女子および男子の就学率に格差は存在しないものの、高等教育に進む女子は男子よりも相当に少ない。最後に、委員会は、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されるおそれがあるという懸念をあらためて繰り返す。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校に提供される物質的資源を増加させ、かつ授業の質を向上させることにより、私立学校に比べて低い公立学校の質を高めること。 (b) 初等前教育および中等教育の費用負担を軽減しかつ撤廃するための、期限を定めた戦略を策定すること。 (c) 女子の就学を促進し、かつ根強く残るジェンダーの固定観念に対応することにより、すべての者が能力に基づいて高等教育にアクセスできることを確保するための効果的措置をとること。 (d) 競争を軽減し、かつ条約第29条第1項ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた教育の目的を反映させるため、教育政策を見直すこと。 8.特別な保護措置 性的搾取 54.委員会は、子どもから性的サービスを購入した者の処罰を目的とする青少年保護法が2000年に制定されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、同法が効果的に実施されていないこと、および、子どもの性的搾取の蔓延度に関する利用可能なデータが限られていることを懸念するものである。委員会はまた、思春期の女子が金銭と引き換えに年上の男性と性的関係を結ぶ「援助交際」(Wonjokyuje)現象が広がっているという報告があることも懸念する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) それぞれ1996年・2001年に開催された第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で合意されたとおり、効果的なデータ収集措置を含む「子どもの商業的性的搾取に関する国内行動計画」を策定すること。 (b) 子どもに配慮した方法で苦情申立てを受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を研修すること。 (c) 性的虐待および性的搾取の被害を受けたすべての者が、回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。 (d) 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。 少年司法 56.委員会は、法律に違反したとして申し立てられかつ保護処分の対象とされた少年が、刑事手続を経ることなく、かつ弁護士による援助にもアクセスできないまま自由を奪われる可能性があることを懸念する。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保するとともに、少年司法制度に関与する職員を対象として専門的研修を実施すること。 (b) 自由の剥奪を最後の手段としてのみ用いるようにするとともに、自由の剥奪に至る可能性がある保護処分に関与するすべての少年が早期に弁護人にアクセスできることを確保すること。 (c) 未成年者を刑事手続または保護処分のいずれに付すかを決定する検察官の裁量権を撤廃するため、法律を改正すること。 移住労働者の子ども 58.委員会は、教育および社会福祉に関する法令に外国人の子ども、とくに資格外移住労働者の子どもの福祉および権利について定めた具体的規定が含まれていないことを懸念する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内法、とくに教育および社会福祉に関する法律を改正し、外国人の子ども(資格外移住労働者の子どもを含む)全員に対してサービスへの平等なアクセスを確保する具体的規定を含めること。 (b) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(1990年)の批准を検討すること。 9.子どもの権利条約の選択議定書および条約第43条第2項の改正 60.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書に署名したものの、批准はしていないことに留意する。 61.委員会は、締約国が子どもの権利条約の2つの選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 62.委員会は、条約第44条第6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般およびとくに子どもが入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回の報告書 63.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2008年12月19日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう促す。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年8月14日)。
https://w.atwiki.jp/reikozemi/pages/112.html
はじめに~課題設定 外国籍の子どもをめぐる問題の多くは、公立学校を中心とした公教育が「日本国民」の育成を中心的課題としている点に関連している。 1990年代以降の急激なグローバリゼーションによって、外国是院の教育のあり方も徐々にではあるが改善の事態が見られている。しかし日本国民育成の学校教育のあり方の基本を揺り動かすまでには至らず、多くの課題が残されている。 第1節 1990年代における社会状況の変化 1.急速な他民族・多文化化の進展 89年の入管法の改正から日本国内で外国人が増えたという話。 2.「日本語教育が必要な」外国籍児童・生徒の増加と多様化 文科省は1991年から「日本語教育が必要な外国人児童・生徒の受入れ状況に関する調査」を開始し、各年実施して来た。これは90年6月施行の改正「出入国管理及び難民認定法」により日系人を含む外国人の滞在が増加し、これら外国人に同伴される子どもが増加したことを契機としている。 99年の調査結果概要によると、1.在籍児童生徒の増加(ただし増加率は低下)、2.小規模在籍市町村が約半数、小規模在籍校が約8割を占める、3.一部の学校・地域への集中化傾向、4.多様化の傾向 第2節 一条校における対応 公立学校における外国人児童・生徒教育の基本方針は、1991年日韓「覚書」を契機に大きく転換している。また、外国籍生徒の学習機会の保障を考える上で高校入試は避けられない問題であるので、そのことについても検証する。 1.1991年日韓「覚書」以後の動き この日韓「覚書」の教育関係事項は、その後韓国人以外の外国人をも対象とした外国人児童・生徒教育の基本方針として文部省通知により示された。その要点は、1.課外での母語・母文化教育の公認、2.就学案内の発給、3.教育公務員への任用の際の国際条項の撤廃 (1)課外での母語・母文化教育の実施状況 日韓「覚書」第3項には、「日本社会において韓国等の民族の伝統及び文化を保持したいとの在日韓国人社会の希望を理解し、現在、地方自治体の判断により学校の課外で行われている韓国語や韓国文化等の学習が今後も支障なく行われるよう日本国政府として配慮する」。→公立学校における母語・母文化教育、民族教育の場としての「民族学級」の設置状況をみると、確かに90年代に急増している。 民族学級の形態が放課後に希望者のみが参加する活動として行われているため、クラブや塾との兼ね合いで参加できない子どもも少なくない点が今後の課題として指摘されている。 (2)就学案内の発給 (3)教育公務員の国際条項の撤廃 日韓「覚書」第4項を踏まえ、文科省は教育任用の国際条項を廃止。 2.公立高校入試の配置の現状と課題 1999年の「日本語指導が必要な外国人児童・生徒の受け入れ状況に関する調査」から、中学校に比べ、高校生が少ない。 日本語に不自由する外国籍の子どもへさまざまな制度的配慮を! (1)~(4)において配慮の仕方について述べる。 第3節 一条校における動向と対応 2.ブラジル人による学校教育の開始 1990年代に増大した日系ブラジル人やペルー人は、日本経済が先行き不透明の中で、そして日本国内でのブラジル人コミュニティーが様々な面で充実し環境整備されて来る中で、帰国の判断が難しくなり滞在年数が長期化して来ている。来日当初は仕事が最重要関心事であったが、現在ではブラジル人コミュニティの中で子どもの教育問題が大きな関心事となってきている。 (1)「セテバン」にみる通信教育の充実・普及 プロジェクト「セテバン」はブラジルの第一レベル(第1~8学年)、第二レベル(3~4年)の修了資格を、日本にいながらにして通信教育講座で取得させるシステムである。1995年11月に最初の卒業生1名を送り出してから、2000年3月までに第一レベル189名、第二レベル197名が卒業し、修了資格を取得している。2000年9月をもって終了。 (2)「ピタゴラス」にみる全日制初等・中等学校設立の動き ブラジルの学校法人ピタゴラス・グループが1999年4月に群馬県・太田市に「ピタゴラス太田校」を開校。教師のほとんどは日本に在住しているブラジル人から採用している。 ピタゴラスは、ブラジルの企業が海外で長期にわたる事業を展開する際に学校を開設している実績がある。今回は出稼ぎ帰国円滑化プロジェクトを進めるブラジル政府の支援を受けている。 おわりに~新たな動向と今後の課題 1.「民族教育権」の保障を求める「民族教育ネットワーク」の発足(1998年) 民族教育ネットワークは「在日同胞と日本人の幅広い協力と連携を通して、民族教育権の確立及び学校文化の変革をはかり、多文化共生の実現に資することを目的」としており、民族教育権は国際人権規約や子どもの権利条約によって保障されている普遍的権利であるという認識を広げていく必要があるという。 2.「21世紀日本の構想」懇談会にみる教育構想 「21世紀日本の構想」報告書によると、「義務として強制する教育」は「統治行為だということである。国民を統合し、その利害を調停し、社会の安寧を維持する義務のある国家は、まさにそのことゆえに国民に対して一定限度の共通の知識、あるいは認識能力を持つことを要求する権利を持つ。・・・義務教育という言葉が成立して久しいが、この言葉が言外に指しているのは、納税や遵法の義務と並んで、国民が一定の認識能力を身につけることが国家への義務であるということにほかならない」 こういった義務教育観は、戦後共通認識であった「権利としての教育」を否定するばかりでなく、国民国家の公教育における国民形成という機能を極端に強調するもので、これからの共生社会に向けた教育のありかたにブレーキをかけるものである。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/249.html
総括所見:バチカン(第2回・2014年) 第1回(1995年)OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/VAT/CO/2(2014年2月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年1月16日に開かれた第1852回(CRC/C/SR.1852参照)において法王聖座(Holy See)の第2回定期報告書(CRC/C/VAT/2)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、法王聖座の第2回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/VAT/Q/2/Add.1)の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、報告書の提出が相当に遅延したことにより、委員会が、法王聖座による条約の実施を14年間審査できなかったことを遺憾に思うものである。 3.委員会は、法王聖座の他部門型代表団との間に持たれた、開かれた、かつ建設的な対話、および、多数の分野について代表団が行なった積極的な誓約を歓迎する。とくに委員会は、態度および慣行を変革することについて法王聖座の代表団が表明した前向きな姿勢に、積極的側面として留意するものである。委員会は、これらの誓約を具体的に実施するために迅速なかつ確固たる措置がとられることを期待する。 4.委員会は、法王聖座に対し、この総括所見は、いずれもやはり2014年1月31日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて法王聖座が提出した第1回報告書についての総括所見(CRC/OPAC/VAT/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく法王聖座の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/VAT/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第8号。 (b) 刑法および刑事訴訟法の改正を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第9号。 6.委員会はまた、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の批准(2012年1月25日)も歓迎する。 7.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 子どものための安全な環境プログラムの発展に関する新たな取り組みを提案し、かつ世界中の虐待被害者のパストラルケアのための努力を向上させることを目的として、未成年者保護司牧委員会を創設したこと(2013年12月5日)。 (b) バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局をバチカン市国政庁内に設置したこと(2013年8月10日)。 III.条約の実施における特殊性 8.委員会は、法王聖座による子どもの権利条約の批准が、バチカン市国政府としての行為であるとともに、いかなる領域的権力または司法権力からも独立した原有的かつ非派生的法人格を有する国際法の主権的主体としての行為でもあるという、二重の性質を有するものであることを承知する。司教および宗教施設の主要な高位者がローマ法王の代理人または代表として行動するわけではないことは十分に承知しながらも、委員会は、カトリック修道会に所属する者が、カノン法典第331条および第590条にしたがい、法王に対する忠誠に拘束されていることに留意する。したがって委員会は、法王聖座に対し、条約を批准するにあたり、法王聖座は、条約を、バチカン市国の領域内のみならず、カトリック教会の最高権機関として、その権威のもとにある個人および施設を通じて世界中で実施することを誓約したことを想起するよう、求めるものである。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(第6項)) 委員会の前回の勧告 9.委員会は、法王聖座の第1回報告書に関する1995年の総括所見(CRC/C/15/Add.46)に掲げられた勧告のほとんどについて十全な対応がとられていないことを遺憾に思う。 10.委員会は、法王聖座に対し、条約に基づく第1回報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの(とくに差別の禁止、自己の意見を表明する子どもの権利および家族問題に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 11.委員会は、条約に付した留保を撤回する可能性について現在検討中である旨の、法王聖座の代表団による発言を歓迎する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.46、パラ10)に照らし、委員会は、権利の主体としての子どもの全面的承認を妨げ、かつ、条約の適用についてバチカン市国の法源との両立性を条件としている、法王聖座が条約に付した留保についての懸念をあらためて表明するものである。 12.委員会は、法王聖座が、条約に付したすべての留保を撤回し、かつ条約が国内法令に優越することを確保するために必要な措置をとるよう勧告する。 立法 13.バチカン市国の法律が条約に一致することを確保することに対する法王聖座のアプローチは歓迎しながらも、委員会は、カノン法を含む内部法との関係で同じアプローチがとられていないことを遺憾に思う。委員会はまた、カノン法の一部の規定が条約の規定、とくに差別、暴力ならびにあらゆる形態の性的搾取および性的虐待から保護される子どもの権利に関連する規定と一致していないことも懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、条約との全面的一致を確保する目的でその規範的枠組み、とくにカノン法の包括的再検討を行なうよう勧告する。 調整 15.委員会は、条約の実施を調整する任務を委ねられた機構の設置を法王聖座として検討する旨の代表団の発言に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、そのような機構がまだ設けられていないことを遺憾に思うものである。 16.委員会は、法王聖座が、すべての評議会および司教会議を横断して、かつ法王聖座の権威のもとに活動している個人および宗教的性格を有する施設との関連で子どもの権利の実施を調整する任務および能力を有する機構を、高いレベルに設置するよう勧告する。この機構に対しては、その任務を履行するための十分な人的資源、財源および技術的資源が提供されるべきである。 資源配分 17.委員会は、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもを支援しおよび保護し、ならびに、このような子どもに対し、とくに教育の機会、保健ケア、社会的ケアおよびその他の家族支援サービスを提供する目的で、草の根レベルで行なわれ、かつ世界中のカトリックの教会、財団および団体によって資金が拠出されている多数の活動を評価する。しかしながら委員会は、子どもを支援するための資源配分について包括的な子どもの権利基盤アプローチがとられておらず、かつ、法王聖座ならびに法王聖座が勢力および影響力を有している締約国の教会関連団体・施設が行なっている子どもに関する支出を追跡するシステムが存在しないことに、留意するものである。 18.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) バチカン市国における子どもの権利の実施ならびに他の締約国においてカトリックの団体および施設が行なう子どもの権利の促進および保護のために必要な資源の包括的評価を実施すること。 (b) 被害を受けやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、子どもの最善の利益に奉仕するために配分された資源の効果を評価するシステムを確立すること。 独立の監視 19.委員会は、バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局が2013年8月に設置されたこと、および、2013年12月に創設された委員会に、性的虐待に関する子どもの苦情を受理する権限が与えられる予定であることに留意する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとに世界中で活動している個人および施設(すべてのカトリック学校を含む)による、かつバチカン市国における、子どもの権利の遵守および尊重を監視するための機構を設置していないことを懸念するものである。 20.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、委員会は、法王聖座が、子どもの苦情を、子どもに配慮したやり方で、かつ被害者のプライバシーおよび保護を正当に尊重しながら受理しかつ調査する明確な任務を与えられた、子どもの権利を監視するための独立機構を設置するよう勧告する。法王聖座はまた、カトリック教会が提供する学校、サービスおよび施設に出席しまたは関係しているすべての子どもが当該機構にアクセスできることも確保するべきである。法王聖座の特別な性質に鑑み、この機構と国内法執行機関との関係および連携に関する指針も定められ、かつ広く普及されるべきである。 普及および意識啓発 21.委員会は、法王聖座の報告書で説明されている意識啓発の取り組み、とくにインドのカトリック学校で設けられている人権についての教育講座を歓迎する。しかしながら委員会は、法王聖座が、報告対象期間中に、1995年に委員会が勧告したとおり(CRC/C/15/Add.46、パラ11参照)、条約の幅広い普及および世界中で話されている言語への条約の翻訳を促進するための十分な措置をとっていないことを懸念するものである。 22.委員会は、法王聖座が、とくに具体的かつ長期的な意識啓発プログラムを策定しかつ実施すること、ならびに、子どものためにとくに作成された適切な教材を活用しながら、あらゆる段階のカトリック教育制度の学校カリキュラムに条約の規定を含めることを通じ、条約のすべての規定を、とくに子どもおよびその親に対して広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。 研修 23.カトリック学校の教員を対象として子どもの権利についての研修を行なう、オーストリアで2007年以降実施されている取り組み等のプロジェクトが進められていること、および、法王聖座が、研修は子どもの根本的保護のための望ましい実践であると認めていることは歓迎しながらも、委員会は、法王聖座が、その権威のもとに活動しており、かつ子どもとともにおよび子どものために働いている個人および施設(カトリック学校の教員および神学校の聖職者を含む)を対象として条約に関する研修を組織的に行なうための措置をとっていないことを、依然として懸念する。 24.委員会は、法王聖座に対し、すべての聖職者ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働いているカトリック修道会およびカトリック施設の構成員を対象として条約の規定に関する組織的研修を実施し、かつ、教員養成プログラムおよび神学校に子どもの権利についての必修単位を含めるよう、促す。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、法王聖座が、カノン法(とくに第1139条)に掲げられた「非嫡出子」という差別的表現を撤回する目的で法律の見直しを開始した旨の、双方向的対話の際に法王聖座の代表団から提供された情報を歓迎する。2013年に法王が行なった進歩的発言にも積極的対応として留意しながらも、委員会は、同性愛に関して法王聖座がこれまで行なってきた発言および宣言が、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの青少年ならびに同性カップルによって育てられている子どもへの社会的スティグマおよび暴力を助長していることを懸念するものである。 26.委員会は、法王聖座が、すべての法律および規則ならびに政策および実践を条約第2条に一致させるとともに、婚外子を非嫡出子として差別的に分類することを速やかに廃止するよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの性的指向またはその親の性的指向に基づく子どもへのあらゆる形態のいやがらせ、差別または暴力を非難するためにその道徳的権威を全面的に活用し、かつ、同性愛の非犯罪化のために国際的に行なわれている努力を支持することも促すものである。 27.ジェンダーの基づく差別についての前回の懸念(CRC/C/15/Add.46、パラ8)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が引き続き、補完性および尊厳の平等の促進を重視していることを遺憾に思う。この2つの概念は、条約第2条で定められた法律における平等および慣行とは異なるものであり、かつ、差別的な立法および政策を正当化するのに利用されることが多い。委員会はまた、法王聖座が、委員会から1995年に要請されたように、女子と男子の平等を促進し、かつカトリック学校で使用されている教科書からジェンダー上のステレオタイプを取り除くためにとられた措置に関する正確な情報を提供しなかったことも遺憾に思うものである。 28.委員会は、法王聖座に対し、女子と男子の間にある差別に対応し、かつ、女子と男子の平等に異議を唱えることになりうる用語の使用を行なわないため、権利基盤アプローチをとるよう促す。委員会はまた、法王聖座に対し、カトリック学校で使用される教科書で、男子および女子の才能および能力の発達を制限し、かつその教育上の機会および人生の危害を阻害しかねないジェンダー上のステレオタイプ化が行なわれないことを確保するために積極的措置をとることも促すものである。 子どもの最善の利益 29.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての法王聖座の対応が、立法上、行政上および司法上の手続において、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて不十分であることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待の訴えに対応するにあたり、法王聖座が、いくつかの国内調査委員会から指摘されているように、教会の信用の維持および加害者の保護を子どもの最善の利益よりも一貫して優先させてきたことを、とりわけ懸念するものである。 30.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利に関する委員会の一般的意見14号(2013年)に対して法王聖座の注意を喚起するとともに、法王聖座が、この権利が立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合され、かつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、法王聖座は、子どもの最善の利益があらゆる分野で(子どもの性的虐待の事案に対応する場合を含む)第一次的に考慮されることを確保するため、あらゆる関連の権威者に指針を示すよう奨励されるところである。委員会はまた、法王聖座に対し、そのような指針を世界中のあらゆるカトリック系の教会、団体および施設に配布することも促す。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、法王聖座が、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を表明する子どもの権利ならびに表現、結社および宗教の自由に対する子どもの権利について制限的解釈を行なっていることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が引き続き、条約第12条に掲げられた権利は親の権利および義務を損なうものであると考えていることも、懸念するものである。 32.委員会は、法王聖座に対し、自己の意見を自由に表明する子どもの権利は子どもの尊厳のもっとも本質的な要素のひとつであり、かつ、この権利を確保することは条約に基づく法的義務であって締約国の裁量は認められていないことを想起するよう、求める。委員会はまた、子どもが自己の意見を自由に表明でき、かつ子どもの意見がもっとも幼いころから正当に重視される家庭は重要なモデルであって、子どもがいっそう幅広い社会で意見を聴かれる権利を行使するための準備につながることも強調するものである。意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 意見を聴かれるすべての子どもの権利の実現に対する否定的態度と闘い、かつ、子どもが権利の保有者として認められることを促進すること。 (b) 関連の法的手続において、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律が効果的に実施されることを確保するための措置をとること。 (c) 親および子どもの保護者が子どもに耳を傾け、かつ子どもに関係する事柄について子どもの意見を正当に重視する機会を、立法および政策を通じて奨励するとともに、すでに存在する積極的な行動および態度をもとにした親教育プログラムを促進すること。 (d) カトリック系の団体および施設が家族および子どもに対して提供しているすべてのサービス、ならびに、カリキュラムおよび学校プログラムの計画における子どもの積極的役割を促進するとともに、意見を聴かれる子どもの権利が規律に関わる事柄において全面的に尊重されることを確保すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 親を知り、かつ親によって養育される権利 33.委員会は、カトリック司祭が父親である子ども(多くの場合は父親の身元を知らない)の状況について懸念を覚える。委員会はまた、子どもが経済的に自立するまで教会から定期的給付を受ける計画を母親が獲得できるのは、子どもの父親または当該計画についていかなる情報も公にしない旨の秘密保持契約に母親が署名した場合のみであることも、懸念するものである。 34.委員会は、法王聖座が、カトリック司祭が父親である子どもの人数を評価し、それが誰であるのかを調べるとともに、父親を知り、かつ父親によって養育されるこれらの子どもの権利が適宜尊重されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座が、今後、子どもを扶養するための金銭支給計画を母親に付与する条件として教会が秘密保持契約を課さないことを確保するようにも勧告するものである。 アイデンティティに対する権利 35.法王聖座が、親とともに暮らし、かつ自己の身元を知る子どもの権利を重視していることは歓迎しながらも、委員会は、いわゆる「赤ちゃんボックス」の利用を通じていくつかの国でカトリック団体が行なっている、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行が続いていることを懸念する。 36.条約第6条、第7条、第8条および第19条に照らし、委員会は、法王聖座に対し、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行の根本的原因を明らかにするための研究に協力するとともに、条約第7条で定められているとおり、自己の生物学的な親およびきょうだいを知る子どもの権利を全面的に考慮に入れながら、これに代わる手段を速やかに強化しかつ促進するよう、強く促す。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの遺棄および(または)死亡を防止する最後の手段として病院で秘密に出産する可能性を導入しながらも、家族計画、リプロダクティブヘルスケア、ならびに、計画外の妊娠を防止し、かつ困窮している家族を援助するための十分なカウンセリングおよび社会的支援を提供することにより、赤ん坊の遺棄への対応に貢献するよう促すものである。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条(第3項)、第28条(第2項)、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 37.委員会は、4つのカトリック女子修道会が1996年まで運営していたアイルランドのマグダレン洗濯所に家族、国家機関および教会によって恣意的に措置された女子を保護し、かつこれらの女子に対して正義を確保するために必要な措置を、法王聖座がとってこなかったことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) これらの施設に措置された女子が、奴隷のような条件下で働くことを強制され、かつ、非人道的な、残虐なおよび品位を傷つける取扱いならびに身体的および性的虐待をしばしば受けていたこと。 (b) 女子が、そのアイデンティティ、教育、ならびに、しばしば食料および必須医薬品を剥奪され、沈黙の義務を課され、かつ、外界との接触を禁じられていたこと。 (c) 洗濯所への入所前または洗濯所での監禁中に出産した未婚の女子が赤ん坊を強制的に取り上げられていたこと。 (d) 関係する4つのカトリック修道会は法王聖座の権威のもとで活動していたのに、洗濯所を運営する修道女らの行為を調査するための措置、または当該人権侵害の責任者、および、女子の無償労働を組織し、かつ事情を承知のうえでそこから利益を得ていた者の責任を問うにあたって法執行機関に協力するための措置がなんらとられていないこと。 38.加害者を訴追し、かつ行なわれた犯罪の重大性にふさわしい刑罰をもって処罰するとともに、すべての被害者が救済措置の対象とされ、かつ補償を受ける執行可能な権利を有することを確保するべきである旨の、拷問禁止委員会が2011年にアイルランドに対して行なった勧告(CAT/C/IRL/CO/1、パラ21)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう促す。 (a) アイルランドのマグダレン洗濯所およびこのような制度が存在していたすべての国で活動していた宗教関係者の行為について内部調査を実施するとともに、このような犯罪について責任を負うすべての者が制裁の対象とされ、かつ訴追のために国内司法当局に通報されることを確保すること。 (b) 被害者およびその家族に対し、修道会自身を通じて、または教会の最高権機関であってその権威のもとにあるカトリック修道会の構成員について法的責任を負う法王聖座を通じて、完全な補償が行なわれることを確保すること。 (c) これらの犯罪の被害を受けた者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するためにあらゆる適当な措置をとること。 (d) このような慣行をもたらした事情および理由についての評価を実施するとともに、今後、いかなる理由があっても女性および子どもがカトリック施設に恣意的に監禁されないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 体罰 39.あらゆる場面における子どもの体罰の禁止について検討するよう法王聖座に提言する旨の代表団の発言は歓迎しながらも、委員会は、子どもの儀式的殴打を含む体罰が一部のカトリック系施設で広く行なわれてきており、かつ依然として広く行なわれていること、および、とくにアイルランドのライアン委員会によって明らかにされたように、一部の国々ではこのような体罰がエンデミックの水準に達していることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、体罰が条約によって禁じられているとは考えておらず、したがって、カトリック学校または子どもとともにおよび子どものために活動しているカトリック系施設ならびに家庭における子どもの体罰を明確に禁じた指針および規則を定めていないことも、懸念するものである。 40.委員会は、法王聖座に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力はいかに軽いものであっても受け入れられないこと、および、条約は子どもに対していかなる水準の暴力を振るう余地も残していないことを想起するよう求める。委員会はまた、法王聖座に対し、あらゆる形態の身体的または精神的暴力から子どもを保護するためにあらゆる適当な措置をとる、条約第19条に基づく自国の義務を想起することも求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰に反対するのと同様に、子どもに対する体罰に明示的に反対すること。 (b) カノン法およびバチカン市国法を改正し、子どもに対するあらゆる体罰(家庭におけるものを含む)を明示的に禁止すること。 (c) カトリック系のすべての学校ならびに子どもとともにおよび子どものために活動している施設(バチカン市国の領域内の学校および施設を含む)でこの禁止規定を実効的に執行するための機構を設置するとともに、子どもに対する暴力について責任が問われることを確保すること。 (d) その権威を活用して積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てを促進するとともに、聖書は体罰を容認していないという解釈が、教会の教育その他の活動に反映され、かつあらゆる神学教育および神学研修に編入されることを確保すること。 虐待およびネグレクト 41.委員会は、法王聖座が、世俗の公的機関について、親の義務および権利に干渉しないよう、虐待が行なわれたことが証明された場合以外は過程の現場に介入するべきではないという立場をとっていることを懸念する。このような立場は、子どもの虐待およびネグレクトを防止するための国際的な努力および措置を深刻に阻害するものである。委員会はまた、法王聖座が、カトリックの家族に相当の影響力を有しているにもかかわらず、家庭における虐待およびネグレクトを防止するための包括的戦略をまだ採択していないことも懸念する。 42.委員会は、子どもの保護はあらゆる形態の暴力の積極的防止から開始されなければならないこと、ならびに、虐待およびネグレクトから保護される子どもの権利が親の特権によって損なわれることはけっしてあるべきではないことを強調する。したがって委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもの虐待およびネグレクトを防止し、かつこれと闘うための包括的な戦略を策定するとともに、子どもの関与を得ながら、意識啓発および教育のためのプログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。 (b) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得て、かつこれらの者を訓練する等の手段も用いながら、ドメスティックバイオレンス、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに取り組むことを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 (c) 子ども、その代理人その他の者が子どもに対する暴力を通報できるようにするため、これらのものを対象とした、安全な、十分に広報された、秘密が守られ、かつアクセスしやすい支援機構を発展させること。 (d) 虐待およびネグレクトの事案をいつ、どのように捜査機関に付託すべきかについての明確な指針および研修を発展させること。 性的搾取および性的虐待 43.委員会は、すべての子どもの尊厳および全人格を不可侵なものにする旨の、法王聖座の代表団によって表明された誓約に留意する。にもかかわらず、委員会は、法王聖座の権威のもとに活動するカトリック教会の構成員によって行なわれた子どもの性的虐待(聖職者が世界中で数万人にのぼる子どもの性的虐待に関与していた)について、深い懸念を表明するものである。委員会は、法王聖座が、行なわれた犯罪の規模を認めることも、子どもの性的虐待の事案に対応しかつ子どもを保護するために必要な措置をとることもせず、聖職者による性的虐待の継続および加害者の不処罰を可能にする政策および慣行を採用してきたことに、重大な懸念を覚える。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 子どもの性的虐待を行なっていることをよく知られた者が、そのような犯罪を隠蔽しようとする教会の試みにより、教区から教区へまたは他の国へと転任させられてきたこと。この慣行の証拠は多数の国内調査委員会によって記録されている。加害者を移動させるというこの慣行により、多くの聖職者は子どもとの接触を維持して子どもを虐待し続けることができ、かつ、多くの国の子どもが聖職者から性的虐待を受ける危険性が高い状態に置かれている。子どもに対する性的犯罪を行なった数十名の加害者がいまなお子どもと接触しているという報告がある。 (b) 法王聖座が、聖職者による子どもの性的虐待事件に関する全面的裁判権を1962年に設定し、かつ2001年には教理省がこれらの事件について排他的権限を有するとしたにもかかわらず、法王聖座が、報告対象期間中に把握したすべての子どもの性的虐待事件およびこれらの事件に関する内部手続についてのデータを委員会に提供しないこと。 (c) 子どもの性的虐待について法王聖座による対応が行なわれた事案で、当該虐待が、懲戒措置について定めた内部手続を通じて道徳に対する重大な違背として扱われており、その結果、虐待を行なった者の圧倒的多数および子どもの性的虐待を隠蔽した者のほぼ全員が、当該虐待が行なわれた国の司法手続を免れ得てきたこと。 (d) 聖職者全員に、違反すれば破門という条件のもとで沈黙の掟が課されていることから、子どもの性的虐待事件について当該犯罪が行なわれた国の法執行機関に通報が行なわれた例がほとんどないこと。それどころか、委員会のもとには、沈黙の義務を尊重しなかったという理由で修道女および司祭が追放され、降格されまたは聖位を剥奪された事案が報告されている。カストリヨン・ホヨス枢機卿がピエール・ピカン司教に宛てた2001年の書簡で述べられている、子どもの虐待を行なった者の告発を拒否したという理由で司祭が祝福を受けた事案についても同様である。 (e) 国内法執行機関への通報が義務的とされたことは一度もなく、かつ、マヌエル・モレノ司教およびルチアーノ・ストレロ大司教がアイルランド司教協議会の構成員に宛てた公式書簡(1997年)でこのような通報が明示的に否定されたこと。多くの場合、法王聖座の最上級段階にある機関を含む教会機関は、司法機関および国内調査委員会への協力について消極的であり、かつこのような協力を拒否した例も複数ある。 (f) 性的虐待から身を守れるよう、カトリック系の学校および施設に登録されている子どものエンパワーメントを図るために、限られた努力しか行なわれてこなかったこと。 44.委員会は、過去に何が起きたかの真実を確実に明らかにすること、再発防止のために必要な措置をとること、正義の原則が全面的に尊重されることを確保すること、ならびに、とくに、被害者およびこれらの言語道断の犯罪の影響を受けたすべての者に癒しをもたらすことの重要性に関する法王聖座の発言を認知する。このような観点から、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう強く促すものである。 (a) 2013年に創設された委員会が、あらゆる子どもの性的虐待事件およびこれに対応する際のカトリック全聖職団の行為を独立の立場から調査することを確保すること。市民社会および被害者団体に対して委員会への参加を呼びかけること、および、国際人権機構に対して同委員会の活動への支援を呼びかけることを検討すること。調査の結果は公開され、かつカトリック教会の構成員による子どもの性的虐待の再発の防止に役立てられるべきである。 (b) 子どもに性的虐待を行なったことがわかっている者およびそのような疑いがある者全員を直ちに職務から外すとともに、捜査および訴追のために事案を関連の法執行機関に付託すること。 (c) 子どもに性的虐待を行なった者、ならびに、そのような犯罪を隠蔽した者および事情を承知のうえで犯罪者を子どもに接触する立場に置いた者全員の責任を問うために使用できる公文書が透明な形で共有されることを確保すること。 (d) 子どもの性的虐待が「道徳に対する違背」ではなく犯罪とみなされるようにし、かつ、被害者およびそのような犯罪について知るに至ったすべての者に沈黙の義務を課している可能性があるすべての規定を削除する目的で、カノン法を改正すること。 (e) 子どもに対する性的な虐待および搾取が疑われるすべての事案を法執行機関に義務的に通報することについて、明確な規則、機構および手続を確立すること。 (f) 法王聖座の権威のもとに活動するすべての司祭、宗教関係者および個人が、自己の通報義務について、かつ抵触がある場合には当該義務がカノン法の規定に優越することについて、知っていることを確保すること。 (g) それぞれストックホルム、横浜(日本)およびリオデジャネイロ(ブラジル)で開催された子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された成果文書にしたがって、このような犯罪の防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策を発展させること。 (h) 性的虐待に関する子どもの意識を高め、かつ自分のみを守るために必要なスキルを教えるための教育的防止プログラムを発展させること。 (i) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 45.委員会は、法王聖座が女性および女子の尊厳の促進にとくに注意を払っていることの表れが見られることを歓迎する。しかしながら、ドメスティックバイオレンスが大規模に行なわれており、かつ子どもに破壊的な影響を与えていること、および、ドメスティックバイオレンスにはジェンダーの要素がしばしばあることに鑑み、委員会は、2013年の女性の地位委員会の際、宗教、慣習または伝統は、国が女性および女子を暴力から保護する義務を免れるための弁明として用いられるべきではない旨を提案した最終草案に法王聖座が反対したことを深刻に懸念するものである。 46.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)を想起しつつ、委員会は、法王聖座が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、法王聖座が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) あらゆる形態のドメスティックバイオレンスおよびジェンダーに基づく暴力と闘うことを目的とした努力および措置(これらの形態を正当化するものとしてしばしば機能する態度、伝統、慣習および行動習慣に対応する措置を含む)を支援するため、その権威および影響力を活用すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための包括的な国家的戦略を策定すること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための調整枠組みを採択すること。 (d) 暴力のジェンダーの側面にとくに注意を払って対応すること。 (e) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国連機関と協力すること。 ヘルプライン 47.委員会は、法王聖座が、諸締約国におけるヘルプラインの創設を促進し、その存在に関する意識を高め、かつ子どもにその利用を奨励するよう勧告する。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 48.近い将来、カノン法の家族関連規定の改正に歩を進める旨の、法王聖座代表団によって提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、法王聖座および教会運営施設が、多様な形態の家族の存在を認めておらず、かつ、家庭の状況を理由として子どもをしばしば差別していることを懸念する。 49.委員会は、法王聖座が、カノン法の規定が家庭環境の多様性を認め、かつ子どもが暮らしている家庭の態様を理由として子どもを差別しないことを確保するよう勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 50.委員会は、法王聖座が、子どもの人格の全面的かつ調和のとれた発達のために家庭環境のもとで成長することの重要性を重視していることを歓迎する。しかしながら委員会は、「キリストの軍団」(Legion of Christ)および他のカトリック系の施設に勧誘され、徐々に家族から引き離されて外界から孤立させられる青少年の状況について懸念を覚えるものである。子どものために学校および神学校を選択する親の権利および義務を強調する法王聖座の回答には留意しながらも、委員会はまた、2013年11月、フランス司教協議会の会長が、カトリック系の一部の施設および修道会における個人の道義心の操作を認めたことにも留意する。 51.委員会は、法王聖座に対し、心理的操作によって家族から引き離された子どもおよび青少年に関するすべての訴えを適切に調査するとともに、青少年を操作した責任者がその責任を問われ、かつ活動をやめることを確保するよう、促す。 52.委員会は、カトリック系団体において子どもの施設措置がいまなお広く行なわれていること、および、多くの国で新たな施設が開設されていることに表れているように家庭型の代替的選択肢がいまなお優先されていないことを、懸念する。委員会はまた、法王聖座が、カトリック系の代替的養護施設における子どもの措置およびモニタリングについてのガイドラインを採択しておらず、かつ、カトリック系団体に措置された子どもの脱施設化のための政策をいまだに定めていないことも懸念するものである。 53.委員会は、法王聖座に対し、カトリック系の施設に措置されている子どもの脱施設化を図り、かつ可能なときは子どもが家族と再統合できるようにするための政策を採択するよう促す。委員会はまた、法王聖座が、3歳未満の子どもが施設に措置されないことを優先的に確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。法王聖座はまた、基準が適用されることを確保し、かつ虐待を防止する目的で、カトリック系のすべての代替的養護現場における子どもの措置、十分な定期的再審査およびモニタリングについてのガイドラインも採択するべきである。その際法王聖座は、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日の総会決議64/142付属文書)を考慮に入れるよう求められる。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)および第33条) 健康 54.委員会は、ブラジルの9歳の女子が義父から強姦された後に緊急救命妊娠中絶手術を受けた事件(2009年)で、ペルナンブーコ(ブラジル)の大司教が女子の母親および中絶を行なった医師を処罰したことに、このうえなく深い懸念を表明する。当該処罰はその後、ローマカトリック教会司教省長官によって承認された。 55.委員会は、法王聖座に対し、妊娠した女子の生命および健康に明らかなリスクを付加している、中絶に関する法王聖座の立場を再検討するとともに、中絶サービスへのアクセスが認められうる状況を明らかにする目的で中絶に関するカノン法第1398条を改正するよう促す。 青少年の健康およびHIV/AIDS 56.委員会は、避妊手段ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する〔サービス〕および情報に対する青少年のアクセスを否定する法王聖座の立場および実践の悪影響について深刻な懸念を覚える。 57.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利に関する一般的意見15号(2013年)、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)およびHIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が、とくに思春期の女子の妊産婦有病率および妊産婦死亡率を高めることにつながる若年妊娠および望まない妊娠ならびに非公然の中絶の危険性、ならびに、思春期の女子および男子がHIV/AIDSを含む性感染症(STD)に感染しかつその影響を受ける特別なリスクを想起するよう求める。委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 到達可能な最高水準の健康を青少年が享受することに対して法王聖座の立場が及ぼす深刻な影響について評価を実施するとともに、性および生殖に関する情報(家族計画、避妊手段、若年妊娠の危険性、HIV/AIDSの予防ならびにSIDの予防および治療に関する情報を含む)への青少年のアクセスを妨げている、思春期のセクシュアリティを取り巻くすべての障壁およびタブーを克服すること。 (b) 青少年の健康および発達意影響を与えるすべての決定(青少年の健康を左右する根底的要因に影響を与える政策および介入策の実施に関する決定を含む)の中心に青少年の最善の利益を位置づけること。 (c) 自己の健康および発達にとって必要不可欠な十分な情報にアクセスする青少年の権利を確保し、かつ、青少年が社会に意味のあるやり方で参加できるようにすること。これとの関連で、法王聖座は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育ならびにHIV/AIDS予防が、カトリック学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ、若年妊娠およびSTDの予防にとくに注意を払いながら思春期の女子および男子を対象として進められることを確保するべきである。 (d) 妊娠した10代の最善の利益を保障するとともに、リプロダクティブヘルスの分野で、妊娠した10代の意見が常に聴かれ、かつ尊重されることを確保すること。 (e) 早期婚および若年妊娠が引き起こしうる害についての情報の普及に積極的に貢献し、かつ、カトリック系の団体が妊娠した子ども、思春期の母親およびその子どもの権利を保護することを確保するとともに、これらの子どもに対する差別と闘うこと。 (f) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任ある親のあり方および性行動についての意識を高め、かつこれを促進するための措置をとること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条) 売買、取引および誘拐 58.委員会は、とくにスペインにおいておよびアイルランドのマグダレン洗濯所においてそうであったように、数千人の赤ん坊が、多くの国のカトリック修道会の構成員により母親から強制的に引き離され、かつ孤児院に措置されまたは国外の養親に引き渡されてきたことを深く懸念する。委員会は、責任のある修道会が法王聖座の権威のもとに活動していたにもかかわらず、法王聖座がこれらの事件について内部調査を実施せず、かつ責任者に対する行動をとらなかったことをとくに懸念するものである。委員会はまた、法王聖座が、これらの子どもの所在を追跡し、かつ可能なときは生物学的母親と再会させるためにとられた措置についての情報を提供しなかったことも懸念する。 59.委員会は、法王聖座に対し、赤ん坊が母親から引き離されたすべての事件について内部調査を開始し、かつ、責任者の責任を問うにあたって関連の国内法執行機関と全面的に協力するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、関係のカトリック修道会が、可能なときはこれらの子どもを生物学的母親と再開させる目的で、その所在について有しているすべての情報を全面的に開示することを確保するとともに、今後同様の慣行が生じないようにするためにあらゆる必要な措置をとることも、促すものである。 犯罪の被害者および証人である子ども 60.委員会は、法王聖座が、さまざまな形態の虐待の被害を受けた子どもに対応するにあたり、被害を受けた子どもの保護よりも教会の信用の維持および加害者の保護を組織的に優先させてきたことに、深刻な懸念を表明する。委員会は、法王聖座が、文書回答においておよび双方向的な対話の際に国内司法機関の第一義的権限を認めながらも、引き続き、被害を受けた子どもの保護、支援、リハビリテーションおよび補償について定めていないカノン法上の手続を通じて虐待事件に対処していることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、以下のこともとりわけ懸念する。 (a) とくにウェストチェスター郡の大陪審(アメリカ合衆国)、ライアン委員会(アイルランド)およびウィンター委員会(カナダ)が留意しているように、被害を受けた子どもおよびその家族が、宗教的権威を有する機関によってしばしば非難されかつ信用を貶められ、告発の継続を思いとどまるよう促され、かつ、場合によっては屈辱を与えられてきたこと。 (b) 被害を受けた子どもおよびその家族に対し、金銭的補償の前提条件として秘密保持および沈黙が課されてきたこと。 (c) 法王聖座が、法王聖座自らが関わる事件については時効を延長したにもかかわらず、場合により、子どもの性的虐待についての時効を延長しようとする一部の国の努力を妨害してきたこと。 61.委員会は、法王聖座が、被害者および証人である子どもの取扱いに関わる事柄について、子どもの最善の利益の尊重および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである旨、勧告する。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 性的虐待その他の形態の虐待の被害を受けた子どもを早期に発見するための包括的手続を発展させること。 (b) 性的虐待の被害者または証人である子どもを対象とした、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ効果的な通報のための回路を確保するとともに、性的虐待または他のあらゆる犯罪の被害を受けた子どもが、虐待を通報した際、将来の虐待および報復から保護されることを確保すること。また、親に対し、その子どもが受けた虐待について裁判所に訴えを起こす際の援助を提供すること。 (c) 犯罪の被害者および証人である子どもに対し、その身体的および心理的リハビリテーションならびに社会的再統合のための支援が提供されること、ならびに、このような措置について、子どもが国内法執行機関に虐待を通報することの妨げとなる秘密の和解が条件とされないことを確保すること。 (d) 法王聖座の権威のもとにある個人および機関によって行なわれた性的虐待の被害者に対し、いかなる秘密保持または沈黙の義務も課さずに補償を行なうとともに、これとの関連で被害者のための補償制度を確立すること。 (e) 子どもの性的虐待の被害者が正義および救済を求めることが時効によって阻害されている国々において、時効制度の改革を促進すること。 (f) 性的な搾取および虐待の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施すること。 H.国際人権文書の批准 62.委員会は、法王聖座が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約および両規約の選択議定書、ならびに、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約およびその選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書を批准するよう、勧告する。 I.フォローアップおよび普及 63.委員会は、法王聖座が、とくにこれらの勧告を法王、法王庁、教理省、カトリック教育省、カトリック保健ケア関連施設、家庭評議会、司教協議会ならびに法王星座の権威のもとに活動する個人および機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 64.条約第45条(a)および(b)に照らし、委員会は、法王星座が、性的虐待および性的搾取に関連する委員会の勧告の実施にあたり、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する特別報告者に対して専門的助言を求めることを検討するよう、勧告する。 65.委員会はさらに、条約ならびにその実施および監視に関する議論の喚起および意識の促進を図る目的で、法王星座が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 66.委員会は、法王聖座に対し、第3回~第6回統合定期報告書を2017年9月1日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、法王聖座が、今後の報告書は当該ガイドラインを遵守すべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 67.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を一体となって構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2014年4月28日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/68.html
総括所見:ベトナム(OPAC・2006年) 第1回(1993年)/第2回(2003年)/第3回・第4回(2012年)OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/VNM/CO/1(2006年10月17日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年9月22日に開かれた第1187回会合(CRC/C/SR.1187参照)においてベトナムの第1回報告書(CRC/C/OPAC/VNM/1)を検討し、2006年9月29日に開かれた第1199回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関してベトナムで適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する実質的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書、文書回答および文書による追加情報の提出を歓迎する。委員会はまた、部門横断型のハイレベルな代表団との建設的な対話についても謝意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2003年1月31日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.200)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.積極的側面 4.委員会は、ベトナム法上、軍隊に徴募されるのは18歳以上の男性の市民のみであることを歓迎する。委員会はさらに、締約国が以下の文書を批准したことを歓迎するものである。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2001年12月20日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号条約(1999年)(2000年12月19日)。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 5.委員会は、ベトナムの領域外で行なわれた犯罪について、締約国が批准しまたは加入した国際条約に定められた状況下で当該行為が国内法違反となる場合にはベトナムの裁判所に裁判権の行使を認める規定が、締約国の刑法に存在することに留意する。しかしながら、以下の点が明確ではない。 (a) ベトナム法において、18歳未満の者を強制的に徴募しもしくは敵対行為に関与させることまたは選択議定書に掲げられた規定の他のいずれかの違反が犯罪とされているか。 (b) ベトナム法において、これらの行為がベトナム外で行なわれた場合またはベトナム市民に対して行なわれた場合に裁判所の裁判権の行使が認められているか。 6.軍隊または武装集団のための子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) (子どもの権利条約第38条に照らし)15歳未満の子どもを軍隊/武装集団に徴募することおよびこのような子どもが敵対行為に直接参加することを法律で明示的に禁止すること。 (b) 子どもの徴募および敵対行為への関与に関する選択議定書の規定に違反することを法律で明示的に禁止すること。 (c) これらの犯罪が、締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によって、またはこれらの者に対して行なわれた場合の、当該犯罪についての域外裁判権を設定すること。 (d) 軍の要員は、選択議定書に掲げられた権利を侵害するよう命ずる軍令の存在に関わらずそのような行為を行なうべきではない旨を、明示的に規定すること。 7.委員会は、国際刑事裁判所を設置するローマ規程の採択に至るプロセスに締約国が積極的に参加し、かつその内容に合意している旨の情報を歓迎し、締約国に対し、可能なかぎり早期にローマ規程の加盟国となるよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関するジュネーヴ諸条約の第2追加議定書を批准するよう勧告するものである。 普及および研修 8.委員会は、高等段階(軍事学校を含む)の倫理公民コースに人権が含まれているという情報を歓迎しながらも、選択議定書に関する十分な情報が関連の専門家集団に提供されていないことを懸念する。 9.委員会は、締約国が、関連のすべての専門家集団(とくに軍の要員)が条約および武力紛争への子どもの関与に関するその選択議定書の規定についての体系的研修を受けることを確保するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムを通じて条約およびその選択議定書の規定を子どもに広く知らせるよう勧告するものである。 2.子どもの徴募 10.委員会は、出生登録が近年相当に向上してきたという情報を歓迎するものの、過去に出生登録が行なわれていなかったために若い新兵の年齢が確かでない事態がいまなお生じうることを、依然として懸念する。 11.委員会は、締約国が、出生証明書が存在しない場合、新兵の年齢が他の信頼しうる手段(医師による検査を含む)によって決定されることを確保するよう勧告する。 3.敵対行為への子どもの関与 敵対行為への直接参加 12.委員会は、締約国が選択議定書の批准時に行なった宣言によれば、18歳未満の者は軍事戦闘(敵対行為)に直接関与しないとされるものの、「国家の独立、主権、統一および領土の一体性を保護する緊急の必要があるときはこのかぎりでない」とされていることを懸念する。 13.委員会は、国際連合憲章にしたがって国の自衛権を全面的に尊重しながらも、締約国が、選択議定書第3条2項にしたがって子どもの志願入隊に関する最低年齢を定めるとともに、たとえ前掲パラ12に挙げた例外的状況が存在する場合であっても敵対行為への子どもの積極的参加を防止するよう勧告する。 4.武装解除、動員解除、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関してとられた措置 14.委員会は、1975年の再統一以降、ベトナムが平時復興の一環として数次の動員解除プログラムを実施してきたことを歓迎するものの、選択議定書に反する行為の被害を受けた者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関して行なわれた措置およびプログラムについての情報が乏しいことを遺憾に思う。委員会は、危険物除去のために行なわれている種々のプロジェクトおよび活動にも関わらず、締約国の領域の広範な部分がいまなお過去の紛争時から残されている不発弾(UXO)および地雷の影響を受けており、住民およびとくに子どもにとって深刻な危険を引き起こしていることを、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、選択議定書に反する行為の被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関してとられた措置に関して、次回報告書でより多くの情報を提供するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、国際協力の枠組みのなかで必要な技術的および財政的支援(国連諸機関からのものも含む)を求めながら、地雷および不発弾の除去活動ならびにその危険性に関する教育活動を引き続き行なうよう勧告するものである。 5.国際的な援助および協力 16.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関して提供されたおよび(または)受けた協力(技術的協力および財政援助を通じてのものも含む)に関するさらなる情報を提出するよう勧告する。 6.フォローアップおよび普及 17.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国防省、国民議会、人民評議会および適用可能なときは省当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 18.選択議定書第6条2項に照らし、委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。 7.次回報告書 19. 第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合報告書(提出期限・2007年9月1日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月9日)。
https://w.atwiki.jp/datugenn/pages/309.html
2011年9月3日 「朝日がん大賞に山下俊一氏を選んだ朝日新聞社に抗議します」 子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク 代表世話人 中手聖一 世話人一同 貴社の9月1日付けの新聞を見て、わたし達「子どもたちを放射能から守る福島ネッ トワーク」の一同、また、一緒になって、福島の子どもたちを守る市民運動に参 加している関係者は愕然とし、同時に怒りを抑えることができませんでした。 なぜ、山下俊一氏の行っている行為がこのような形で評価されるのか、理解に苦 しみます。氏の発言が、子どもたちを守ろうとしている福島の親たちをどれだけ 苦しめてきたのか、またこれからも福島医大の副学長として福島県民を苦しめる つもりなのか、貴社の選考の基準には入っていなかったのでしょうか。 山下俊一氏は、3月の下旬から福島県に入り、「年間100ミリシーベルトでも問 題ない。妊婦でも子どもでも危険はない」という発言をくりかえしてきました。 当時の同氏のこの発言は、福島市政だよりにも掲載され(別添1)、福島県内で 「安全神話」を築き上げてきました。 同氏は医学系の雑誌には、低線量被ばくのリスクを指摘する記事を書きながらも、 福島では逆に低線量被ばくのリスクをまったく否定する言動をとったのです。 ご存知のように、低線量放射線の影響は「閾値なしの線形モデル」を採用し、線 量に応じた影響が生じるというのが、国際的な常識となっており、保守的なICRP もそれを認めています。 実際には、福島では、多くの地域では、本来であれば、一般人の出入りが禁じら れる放射線管理区域以上の高い汚染が広がり、チェルノブイリ事故と比較しても 安心・安全とはいえないレベルの状況が続いています。同氏の発言は、多くの方 の避難を躊躇させ、また、福島に住み続けることについて安心感を得させ、家族 不和まで生んでいるのです。さらに、「危険かもしれない」という市民が憂慮の 声をあげられない空気をつくりだしました。 この世に家族ほど大切なものがあるでしょうか。子どもほど大切な存在があるで しょうか。それなのに、同氏がつくりだした「安全神話」により、家族を守れず に、私たちがどれほど苦しんだか、言葉には言い尽くせないほどです。わたし達 福島県民は、それでもなんとか明るく前向きに生きようと日々戦っているのです。 私たちは、このように山下俊一氏が、県の放射線リスク・アドバイザー、県民健 康管理調査委員会の座長にあることに強い危機感を覚え、同氏の罷免を求める署 名運動を行い、6607筆の署名を得ました(別添2)。また、全国の署名運動では、 1ミリシーベルト順守と避難・疎開と併せて同氏の罷免を求める要請項目を加え ましたが、4万筆以上の署名が集まりました。 このような市民運動は一切報道せず、山下俊一氏のようない人を「がん大賞」を 授与するとは、御社の新聞社としての良識が疑われます。 わたし達は山下氏への「がん大賞」授与の撤回を求めるとともに、貴社紙面にお いて謝罪を掲載することを求めます。 あわせて、このような批判があったことを、きちんと報道していただくことを求 めます。 以上 別添1:福島市政だより(4月21日号) http //dl.dropbox.com/u/23151586/Experts_Fukushima_Newsletter.pdf 別添2:山下俊一氏の罷免を求める県民署名 http //dl.dropbox.com/u/23151586/kenmin_shomei.pdf
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/199.html
総括所見:シリア(第2回・2003年) 第1回(1997年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.212(2003年7月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.子どもの権利委員会は、2003年6月3日に開かれた第883回および第884回会合(CRC/C/SR.883 and 884参照)において、2000年8月15日に受領されたシリア・アラブ共和国の第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.2)を検討し、2003年6月6日に開かれた第889回会合(CRC/C/SR.889参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告書の時宜を得た提出を歓迎するとともに、報告書そのものは法律偏重的な性質のものであったとはいえ、当該報告書が報告ガイドラインにしたがっていることに留意する。委員会は、豊かな情報を含んだ文書回答の提出および補足報告書を評価するものである。委員会は、ハイレベルな、きわめて適任の部門横断型代表団の出席が、締約国における条約の実施プロセスに関する理解の向上に寄与したことを評価する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 女性に対するあらゆる形態の差別に関する条約および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約を含む諸国際文書の批准。 (b) 委員会はさらに、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の議会承認を歓迎する。 (c) 就業が認められるための最低年齢の、15歳への引き上げ。 (d) 義務教育〔修了〕年齢の、12歳から15歳への引き上げ。 (e) 子どもの問題に関する新たな機関(すなわち文化局、乳幼児教育局および特別教育局)の設置。 (f) とくに保健および教育の分野で、子どものための世界サミットの目標の多くが達成されたこと。 (g) 子ども期高等評議会の設置(1999年)。 (h) 国内法で条約が考慮されていること、すなわち、民事訴訟法および刑事訴訟法において、シリアが加盟する国際条約に反する規定は適用できないと明示的に述べられていること。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、占領下にあるシリア領ゴラン高原においてシリア人の子どもの権利を確保する際の困難に関する締約国の懸念を共有する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 前回の総括所見 5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.2)の検討を受けて表明された勧告および行なわれた勧告(CRC/C/15/Add.70)の多く、とくに条約の原則の法律への統合、予算配分における子どもの権利の優先および子どもの不当な取扱いに関連するものへの対応が不十分であることを懸念する。委員会は、同じ懸念表明および勧告の多くがこの文書でも行なわれていることに留意するものである。 6.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保 7.委員会は、第1回報告書が提示されて以降、留保に関して何の再検討も行なわれてこなかったことを遺憾に思う。報告書における締約国の理由説明に留意しつつ、委員会は、一般的留保の性質のために条約の規定の多くが無効にされる潜在的可能性がある旨の懸念をあらためて表明するとともに、条約の趣旨および目的との両立性に関わる懸念を提起するものである。とくに、第14条に関しては、当該留保は思想、良心および宗教の自由の侵害を生ぜしめるものであり、第20条および第21条に関しては、当該留保は不要である。委員会は、条約第20条3項において、代替的養護のひとつの形態としてカファラが明示的に承認されていることを指摘する。第21条は、養子縁組制度を「承認および(または)許容している」国に明示的に言及しており、締約国は養子縁組制度を承認していないのでこの規定は適用されない。 8.委員会は、締約国が、ウィーン宣言および行動計画にしたがい、かつ自由権規約委員会の一般的意見22号を考慮し、とくに第14条、第20条および第21条に関する留保を撤回の方向で精査するよう、勧告する。 立法 9.委員会は、締約国が、条約との関係で国内法を見直す旨の公約を行なっていることに留意する。委員会はさらに、子どもの権利との関連で最近さまざまな立法措置がとられかつ提案されていること(たとえば身分関係法の改正、および、義務教育法の違反に対する処罰の強化の追求)に留意するものの、これらの立法措置において、条約の実施に対する包括的な人権基盤アプローチが十分に反映されていないことを懸念するものである。さらに委員会は、身分関係の分野で、異なる宗教的コミュニティ(すなわちイスラム教徒、ドゥルーズ教徒、キリスト教徒およびユダヤ教徒)を規律する異なる法律(たとえば1953年民事関係法)が適用されており、そのために異なる裁判制度(たとえばシャリーア裁判所、madhabi裁判所およびruhj裁判所)が利用されていることから、子どもの権利の享受における差別につながる可能性があることを、懸念する。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自国の法律、行政規則および訴訟規則が条約を含む国際人権基準に一致することを確保するため、その包括的見直しをいっそう速やかに進めること。 (b) 宗教法の解釈を基本的人権と一致させるため、あらゆる可能な措置をとること。 (c) 法律が、十分に明瞭かつ正確であり、公表され、かつ公衆にとってアクセス可能であることを確保すること。 調整 11.委員会は、子ども期高等評議会(1999年の決定第1023号)が条約の実施の調整を担当していることに留意する。委員会は、HCC〔子ども期高等評議会〕が県段階に支部を設置する予定であり、かつHCCに対して独自の予算が提供される可能性がある旨の情報を歓迎するものである。委員会はさらに、2003年10月に新たな国家的行動計画が採択される予定である旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、現行の調整が不十分であることおよびHCCが独自の予算を有していないことを依然として懸念するものである。委員会は、中央および地方の行政段階における部門間の調整に欠陥があるため、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策を達成するのが困難になっている旨の懸念を、あらためて表明する。 12.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくにHCCに対して十分な人的資源および財源を提供することにより、HCCを、条約の実施を調整するための有効かつ効率的な機関とするための努力を継続しかつ強化するとともに、設置が予定されている支部とHCCとの間で良好な協力関係および調整を確保すること。 (b) 新たな国家的行動計画の全面的実施のために必要な支援(十分な人的資源、財源その他の資源を含む)を提供するとともに、当該計画が条約の実施に与えた影響を定期的に評価すること。 データ 13.委員会は、保健、栄養および教育の分野におけるデータ収集が改善されたことに留意するとともに、中東統計局内に子ども情報部が設置された旨の情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とする分野についての信頼できる統計データの不足および利用可能性について依然として懸念を覚えるものである。 14.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する統計(遠隔地に住んでいる子ども、虐待の被害者、障害のある子ども、思春期の健康、罪を犯した少年等に関するデータも含む)を収集すること。 (b) 子ども情報部を強化するとともに、当該部局に対して十分な人的資源および財源を提供すること。 (c) とくにさまざまな政府省庁間で統計上の定義を調和させることにより、データの信頼性を向上させるための方法を検討すること。 (d) 引き続きユニセフの援助を求めること。 監視体制 15.委員会は、HCCが、調整機能に加え、少年裁判所所長(1998年の決定第134号)および司法委員会(1999年の決定第2108号)とともに実施の監視も担当していることに留意する。委員会は、これらの種々の機構間で調整が行なわれていないことを懸念するものである。さらに委員会は、条約の実施における進展を恒常的に監視しおよび評価することを任務とし、かつ子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた独立の機構が存在しないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、パリ原則および委員会の一般的意見2号にしたがい、国および地方のレベルで条約の実施における進展を監視しおよび評価するための独立した国内人権機関を設置するよう、勧告する。この機関は、十分な資源を有し、子どもがアクセスしやすく、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しおよび調査しならびにこれに効果的に対応する権限を与えられたものであるべきである。 資源配分 17.委員会は、条約が対象としている分野、とくに保健、教育および子どもの保護に対する予算配分が低額であることを依然として懸念する。このことは、子どもの経済的、社会的および文化的権利を「利用可能な資源を最大限に」用いて実施することに関わる条約第4条に対し、十分な注意が払われてこなかったことを示すものである。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 利用可能な資源を最大限に用いてすべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を確保すること。 (b) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえば同国の北部および東北部に住んでいる子ども)を対象とする社会サービスへの予算配分を優先させ、かつその対象を明確にすること。 (c) 予算配分額が子どもの権利の実施に与える影響を体系的に評価すること。 市民社会との協力 19.委員会は、政府が開発部門および福祉部門の国内団体ならびに国際機関と良好な協力関係にある旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、とくに市民的権利および自由の分野において、条約の実施に市民社会を積極的に関与させるための努力がほとんど行なわれてこなかったことを懸念するものである。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施(市民的権利および自由との関連における実施も含む)の全段階を通じて子ども団体を含む市民社会の関与を得ることに対し、組織的アプローチをとること。 (b) NGOの参加を促進しかつ強化する一歩として、NGOを規制する法律(たとえば民間団体・機関法(1958年法律第93号))が条約第15条および結社の自由に関する他の国際基準に一致することを確保すること。 研修/条約の普及 21.委員会は、条約を普及するために締約国が行なっている努力、および、これらの努力の有効性を評価するための研究を歓迎する。これとの関連で、委員会は、子どもの市民的権利および自由との関連でもっとも意識が低いことに留意するものである。 22.委員会は、締約国に対し、引き続き以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもおよび親ならびに市民社会の間でならびにあらゆる行政部門および行政段階において(市民的権利および自由に注意を向けながら)条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字者であるまたは正規の教育を受けていない脆弱な立場に置かれた集団を対象とするための取り組みを含む)を拡大し、かつ継続的なものとすること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 (c) この点に関してとくにOHCHRおよびユニセフの援助を求めること。 2.子どもの定義 23.委員会は、女子の最低婚姻年齢(17歳)を男子のそれ(18歳)まで引き上げる点についてなんらの進展も見られないことを遺憾に思う。この差異は差別的であり、かつ条約第2条に反するものである。委員会は、農村部における早期婚を引き続き懸念する。 24.委員会は、締約国が、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げるために法律を改正し、かつ、とくに農村部でその法律を執行するためにいっそうの努力を行なうよう、勧告する。 3.一般原則 差別の禁止に対する権利 25.委員会は、条約第2条に反して、とくに以下の点に関して、子どもまたはその親もしくは法定保護者に対する直接間接の差別が根強く残っていることを懸念する。 (a) 女子、婚外子およびマイノリティに属する子ども。 (b) 保健サービスおよび教育サービスへのアクセスに関する農村部と都市部間の格差、および、とくに同国の北部および東北部が社会指標の面で後れをとっていること。 26.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に定められたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、必要なときは法律を制定しまたは廃止すること、格差削減プログラムを実施すること等の効果的措置をとること。 (b) この点に関する社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (c) 男女間の権利の平等に関する自由権規約委員会の一般的意見28号を正当に考慮すること。 (d) そのような努力を支援するために宗教的指導者を動員すること。 27. 委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 28.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が、子どもに関わるすべての法律に明示的に編入されておらず、かつ、実務上、常に考慮されているわけではないことを懸念する。たとえば委員会は、ある法案において、身分関係法第146条に定められた年齢の引き上げが提案されていることに留意するものである。委員会は、監護に関する判断が、どのような取決めが子どもの最善の利益にかなうかではなく年齢のような基準によって行なわれていることを、依然として懸念する。 29.委員会は、締約国が、条約第3条を立法および実務に全面的に編入するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、間もなく子ども議会が設置される予定である旨の情報を含め、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、とくに家庭および学校において子どもの意見の尊重が制約される可能性があり、かつ、子どもが自己に影響を与える裁判手続および行政手続において制度的に意見を聴かれているわけではないことを、懸念するものである。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設および裁判所における子どもの意見の尊重ならびに自己に影響を与えるすべての事柄への子ども参加を引き続き促進し、かつそのための便宜を図ること。 (b) 十分な情報を得たうえでの子どもの意見および見解の表明を支援し、かつこれらの意見を考慮するためのスキル訓練プログラムを、親、教員、ソーシャルワーカーおよび地方官吏を対象として、コミュニティのなかで発展させること。 4.市民的権利および自由 国籍 32.委員会は、シリア国籍法(1969年法律第276号)第3条により、外国人と婚姻したシリア人女性の子どもに対しては、父がシリア人である場合とは異なって自動的に市民権が付与されないことを懸念する。さらに委員会は、シリアで出生した無国籍のクルド人親から生まれ、かつ出生時に他のいかなる国の国籍も有していない子どもが、条約第2条および第7条に反して、シリア国籍を付与されないままであり、かつ差別の対象とされていることを遺憾に思うものである。 33.委員会は、条約第2条および第7条において、締約国の管轄内のすべての子どもが、子どもまたはその親もしくは法定保護者の性別、人種、宗教または民族的出身に関わらず、登録されかつ国籍を取得する権利を有するべきことが求められていることを、あらためて強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) いずれかの親の性別に基づいて差別することなく、国籍に対する子どもの権利を確保すること。 (b) シリアで出生したクルド人親の子どもに対してシリア国籍を取得する権利を保障するため、緊急の措置をとること。 (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)を批准すること。 表現、思想、良心および宗教〔ならびに〕結社および集会の自由、プライバシーに対する権利ならびに情報にアクセスする権利 34.委員会は、報告書において第1回報告書に掲載された情報を参照するよう求められているのは、これらの問題に関する条約第13条~17条の実施との関連でほとんどまたはまったく進展がなかったことの表れであることを懸念する。 35.委員会は、締約国が、とくにこれらの権利に関する子どもたちの意識を高め、かつ日常的実践におけるこれらの権利の積極的活用を推進することによってこれらの権利の実施を積極的に促進するとともに、次回の報告書でこの点に関する進展を報告するよう、勧告する。 5.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 36.委員会は、家庭における子どもの不当な取扱いならびにドメスティックバイオレンスおよびそれが子どもに与える影響に関する研究および意識啓発に関して、締約国においてほとんど進展がなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、学校における体罰が法律で禁じられていないことを懸念するものである。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの不当な取扱いおよび虐待ならびにドメスティックバイオレンスの性質および規模を評価するための包括的研究を実施するとともに、この問題に対応するための政策およびプログラムを立案するために当該研究の結果を活用すること。 (b) 子どもの虐待およびネグレクトを防止するために必要な措置(たとえば子どもの不当な取扱いの悪影響に関する教育的公衆キャンペーン、子育て教室)をとるとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進すること。 (c) あらゆる形態の暴力(家庭、学校その他の施設における子どもの体罰および性的虐待を含む)を禁止するための立法措置をとること。 (d) 苦情を受理し、監視しかつ調査する(必要なときは介入することも含む)ための、効果的かつ子どもに配慮した手続および機構を設置すること。その際、被害者が援助を求めることの妨げとなる社会文化的障壁への対応およびその克服に特段の注意を払うこと。 (e) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けないことおよびそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事案を捜査しかつ訴追すること。 (f) 被害者のケア、回復および再統合を行なうこと。 (g) 教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家を対象として、不当な取扱いの事案の発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。 (h) とくにユニセフおよびWHOの援助を引き続き求めること。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 38.委員会は、障害者に関する法案が作成されつつあり、かつそこで障害者評議会の設置が提案されている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、専門的なサービスおよび教育に対する障害のある子どものアクセスが全般的に不十分であり、かつ家族への支援が不十分であることを懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの障害の原因および規模を評価するための調査を実施すること。 (b) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および「障害のある子ども」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に考慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および実務を見直すこと。 (c) 必要な専門的資源および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうこと。 (d) コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しかつ拡大するためにいっそうの努力を行なうこと。 (e) あらゆる形態の障害のある子どもを普通教育に包摂するためにいっそうの努力を行なうこと。 (f) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 保健 40.委員会は、小児期疾病統合管理戦略の採用、および、さまざまな取り組み(共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」など)に対する締約国の支援を歓迎するとともに、最近の複数指標クラスター調査で明らかにされた、児童保健および妊産婦保健における達成に留意する。しかしながら委員会は、以下のことをなお懸念するものである。 (a) 同国の保健センターのサービスの範囲および質が限定的であること。 (b) 訓練を受けた保健従事者の立ち会いがない出産が約14%にのぼっていること。 (c) ケアの質に関して官民の保健サービス間に相当の隔たりがあること、および、ほとんどの人は保険に加入していないために民間サービスにアクセスできないこと。 (d) 北部の母親のうち、経口保水療法を用いて子どもの下痢に正しく対応している親が25%にすぎないこと。 (e) ヨウ素添加塩を使用している世帯が約60%にすぎないこと。 (f) 農村部において、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスが不十分であること。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公的プライマリーヘルスケアに対する締約国のコミットメントに相応した、人的資源および財源の十分な配分が行なわれ、かつ、とくに農村部のすべての子どもが保健ケアにアクセスできることを確保すること。 (b) 小児期疾病統合管理戦略を国全域で実施するための努力を引き続き行なうこと。 (c) 乳幼児期の家庭看護実践の向上を促進するためにいっそうの努力を行なうこと。 (d) 共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」を引き続き支援しかつ拡大すること。 (e) 引き続き、とくにユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。 思春期の健康 42.委員会は、HIV/AIDS啓発キャンペーンに対する締約国の支援を歓迎する。しかしながら委員会は、思春期の健康に関して利用可能な、リプロダクティブヘルスおよび精神保健関連のカウンセリング・サービスが不十分であることを懸念するものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年が、リプロダクティブヘルスその他の思春期の健康に関わる問題に関する教育および子どもに配慮しかつ秘密が守られるカウンセリング・サービスにアクセスでき、かつこのような教育およびサービスを提供されることを確保すること。 (b) 学校制度において、思春期の健康教育の分野における努力を強化すること。 (c) HIV/AIDS啓発予防キャンペーンを継続しかつ強化すること。 (d) 引き続き、ユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。 7.教育 44.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 初等学校および中等学校を中退する児童生徒、とくに農村部の子どもおよび女子の割合が高いこと。 (b) 教科書および教材が足りない学校が多いこと。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 校舎の衛生設備の不十分さ、早期婚、通学にともなう間接費用および学校送迎の欠如といった問題に対応することにより、とくに農村部におけるおよび女子による初等中等段階での学校中退の問題を食いとめるための取り組みを強化すること。 (b) 学習教材および備品の供給を確保するために必要な資源配分のため、いっそうの努力を行なうこと。 46.委員会は、基礎教育の質向上を目的とした「グローバル教育イニシアティブ」が採択されたこと、および、カリキュラム改革に向けて若干の努力が行なわれてきたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、報告書で提示された教育の目的には条約第29条に掲げられた目的が十分に反映されていないこと、および、とくに以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 公教育制度が、分析的スキルの発達よりも暗記学習を引き続き重視しており、かつ子ども中心のものとはなっていないこと。 (b) 人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することが明示的にカリキュラムの一部とされていないこと。 47.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 批判的思考および問題解決スキルの発達の重要性を強調する、カリキュラムおよび教授法の改革プロセスを――子どもの全面的参加を得ながら――進めること。 (b) 教育において、子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることが指向されるようにすること。 (c) とくに人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することとの関連で、学校カリキュラムに人権教育(子どもの権利を含む)を含めること。これとの関連で宗教的指導者の動員が図られなければならない。 (d) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 8.特別な保護措置 難民および庇護希望者 48.委員会は、とくに保護者のいない未成年者、教育へのアクセスおよび出生登録の確保との関連で、締約国が難民の子どもに関して行なっている努力に評価の意とともに留意する。委員会は、難民の子どもの保護を確保するうえで重要な一歩となるUNHCRとの了解覚書に関する進展を歓迎するものである。しかしながら委員会は、庇護に関わる問題についての立法上または行政上の規定が存在しないことを懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第2条および第22条にしたがい、難民および庇護希望者である子どものすべての権利を確保するための効果的な措置を引き続きとること。 (b) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書の批准を検討すること。 (c) 国際基準に合致した国内難民法を導入するための措置をとること。 (d) UNHCRとの協力を継続しかつ強化すること。 経済的搾取 50.委員会は、ILO第138号条約の批准を歓迎する。委員会はさらに、就労が認められるための最低年齢を15歳に引き上げることを目的とした1959年労働法の改正を歓迎するものである。しかしながら委員会は、14歳未満の子どものおよそ7%が労働者として雇用されていること、および、まさに多くの児童労働が集中しており、かつ多くの場合に危険な条件をともなうインフォーマル部門(すなわち家族経営事業、農業)での労働に従事している子どもには効果的な監察を含む労働法の規定が適用されないことを、依然として懸念する。さらに委員会は、1958年農業関係法の改正案においてこれらの懸念への対応が十分に行なわれていないことに留意するものである。 51.条約第32条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ILO第146号勧告を考慮し、十分な人的資源および財源ならびに研修の提供を通じて労働査察を強化し、かつ防止およびリハビリテーションのためのあらゆる必要な措置をとりながら、子どもの権利条約第32条およびILO第138号条約が法律上も実際上も実施されることを確保するための即時的かつ効果的な措置をとること。 (b) ILOおよびユニセフの援助を求めること。 少年司法の運営 52.委員会は、締約国が少年司法制度の改革プロセスを開始した旨の情報には留意するものの、この改正が子どもの権利を基盤とする包括的な計画ではないこと、および、現在、以下のもののようなさまざまな問題が存在していることを、依然として懸念する。 (a) 犯罪を行なった7~15歳の子どもが(必ずしも収監刑ではないとはいえ)刑を言い渡される可能性があること。 (b) 物乞いのような子どもの問題行動が地位犯罪として犯罪化されていること。 (c) 審判前勾留に対する厳格な制限が実際には遵守されていないように思われること。 (d) 身柄拘束刑に代わる措置の利用が稀にしか行なわれないこと。 (e) 少年を対象とする拘禁所の環境がしばしば過酷なものとなっていること。 (f) 条約で唱道されている、少年犯罪問題への対応((たとえば根本的な社会的要因への対応)に対するホリスティックなアプローチ(防止、特別手続およびダイバージョンを含む)が締約国によって十分に考慮されてこなかったこと。 53.委員会は、締約国が、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)およびこの分野における他の関連の国際基準(北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針など)を法律および実務に全面的に統合した少年司法制度を設置するための、包括的な国家的戦略を策定しかつ実施するよう、勧告する。委員会は、締約国が、以下の目的のために特段の努力を行なうよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を15歳のまま維持するとともに、法律に抵触した15歳未満の子どもに対し、刑事司法制度を通じてではなく子ども保護手続を通じて対応するための措置をとること。 (b) 18歳未満の者が成人として審理されないことを確保すること。 (c) 自由の剥奪が、最後の手段としてのみ、可能なもっとも短い期間で用いられ、かつ裁判所による認可の対象とされること、および、18歳未満の者が成人とともに収容されないことを確保すること。 (d) 子どもが法的援助および独立のかつ効果的な苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (e) 司法制度、政策および社会的支援体制の連携を強化すること。 (f) 子どもの社会的更生の分野で専門家の研修を行なうこと。 9.報告書の普及 54.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる段階の統治機構および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 55.報告の定期性に関して委員会が採択した勧告(CRC/C/114 and CRC /C/124参照)に照らし、かつ締約国の第3回定期報告書の提出期限が第2回報告書の検討後2年以内であることに留意し、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を、2009年2月13日(すなわち条約にしたがって定められた提出期限の18か月前)〔まで〕に提出するよう慫慂する。当該報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/89.html
総括所見:インド(第1回・2000年) 第2回(2004年)/第3回・第4回(2014年)OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.115(2000年2月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.子どもの権利委員会は、2000年1月11日および12日に開かれた第589回~第591回会合(CRC/C/SR.589-591参照)において、1997年3月19日に提出されたインドの第1回報告書(CRC/C/28/Add.10)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2000年1月28日に開かれた第615回会合において。 A.序 2.委員会は、委員会のガイドラインにしたがった報告書について評価の意を表する。委員会は、事前質問リスト(CRC/C/Q/IND.1)に対する詳細かつ有益な文書回答に留意するものである。委員会は、時間の制約により、締約国の代表団が出された質問のすべてに答えられなかったことを遺憾に思う。にもかかわらず、委員会は、行なわれた対話が開かれた性質のものであったことを評価するものである。委員会は、締約国が提供した追加の文書回答を評価する。 B.積極的な側面 3.委員会は、人権および子どもの権利の保護を目的とした広範な憲法上および立法上の規定および諸制度(たとえば国家人権委員会、国家女性委員会および指定カースト・指定部族委員会)が存在することを心強く思う。さらに、委員会は、裁判所、とくに最高裁判所が国際人権文書の規定を頻繁に参照していることを歓迎するものである。 4.委員会は、人権の保護を伸長するための活動に、「公益訴訟」を通じてのものも含めてNGOその他の草の根組織がますます関与するようになっていることを歓迎する。 5.委員会は、教育識字庁の設置を歓迎し、かつ、万人を対象とした無償のかつ義務的な初等教育を達成することに対して締約国が表明している決意に留意する。 6.委員会は、インドにおける子どもの健康および児童労働の問題に対応するために締約国が行なっている努力、および国際機関および非政府組織との協力に留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.インドの子どもの人数が世界の子ども人口の膨大な割合を占めていることを考慮にいれ、委員会は、その管轄下にあるすべての子どものニーズを満たすにあたってインドが直面している課題が、とくに経済的および社会的分野において膨大な難問を提示するものであることに留意する。委員会はまた、高い人口増加率により必要な資源の維持が困難になっていることにも留意するものである。 8.委員会は、インドの人口の相当部分に影響を与えている極度の貧困、構造調整の影響および自然災害が、条約にもとづく締約国の義務のすべてを履行するうえで深刻な困難となる要因であることに留意する。 9.社会がこれほど多様かつ多文化的であることを踏まえ、委員会はさらに、伝統的な慣習(たとえばカースト制度)および社会的態度(たとえば部族集団に対する)の存在が、差別と闘う努力の障害となっており、かつとくに貧困、非識字、児童労働、子どもの性的搾取ならびに路上で生活しかつ(または)働く子ども〔の現象〕を悪化させていることに留意する。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 D.1 実施に関する一般的措置 立法 10.条約第4条に照らし、委員会は、国内法の枠組みにおける条約の地位が不明確であることに留意し、かつ、現行の連邦法、州法および民事的地位法を条約に全面的に一致させるためにとられた措置が不十分であることを懸念する。 11.委員会は、締約国が、条約の一般原則を正当に考慮しながら、国内法が条約と全面的に両立することを確保するための努力を追求するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子ども法の採択を検討するよう奨励するものである。 12.委員会は、立法、および裁判所および諸委員会(すなわち国家人権委員会、国家女性委員会および指定カースト・指定部族委員会)の決定を実施し、かつ子どもの権利に関わるそのような機関の活動を容易にするために行なわれた努力が不十分であることに留意する。 13.委員会は、締約国が、現行法の効果的実施を確保および強化するため、必要な資源(すなわち人的資源および財源)の配分も含むあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、国家人権委員会、国家女性委員会および指定カースト・指定部族委員会を含む国内人権機関の能力および効果を強化するため、十分な資源を提供することその他のあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 調整 14.連邦制の統治構造をとっていることから連邦と州のレベル間の責任分担に関して複雑な状況が生じていることに留意し、委員会は、行政上の調整および協力が不十分であることが条約実施において深刻な問題となっているように思えることを、懸念する。 15.委員会は、締約国が、条約を実施するための包括的な国内行動計画を、子どもの権利アプローチにもとづいて採択するよう勧告する。委員会は、中央、州および自治体の各統治レベルにおける、および当該各統治レベル間の、部門間の調整および協力に注意を向けるよう勧告するものである。締約国は、能力構築を含む条約実施のための支援を地方行政機関に提供するよう奨励される。 独立機構/監視体制 16.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域に関して、もっとも傷つきやすい立場に置かれたグループ(すなわちスラムで生活する子ども、各種のカーストおよび部族集団に属する子ども、農村部で生活する子ども、障害をもった子ども、路上で生活しおよび(または)働く子ども、武力紛争の影響を受けている子どもおよび難民の子ども)を含む18歳未満のすべての者の細分化されたデータを収集および分析する効果的な機構が存在しないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価し、かつ条約実施のためにとるべき政策の立案に役立てる目的で、細分化されたデータを収集するための包括的なシステムを発展させるよう勧告する。 18.委員会は、締約国が子どものための国家委員会を設置する意思を有していることを歓迎する。 19.委員会は、締約国に対し、とくに連邦、州および地方の各レベルで条約実施における進展を恒常的に監視および評価することを権限とする、法律にもとづきかつ独立した子どものための国家委員会を設置するよう奨励する。さらに、当該委員会は、治安部隊に関するものも含む子どもの権利侵害の苦情を受理しかつそれに対応する権能を与えられるべきである。 予算資源の配分(第4条) 20.委員会は、教育への予算配分を国家予算の4%から6%に増加させようという締約国の決意を歓迎する。しかしながら、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利を「利用可能な手段を最大限に用いて」実施することに関して条約第4条に払われている注意が不十分であることを、懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、予算配分が子どもの権利の実施に与える影響の体系的評価を確立し、かつこの点に関する情報を収集および普及する方法を発展させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、中央、州および地方の各レベルにおいて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで資源の適切な配分を確保するようにも勧告するものである。 NGOとの協力 22.委員会は、報告書の作成を含む条約実施における非政府組織との協力が依然として限られていることに留意する。 23.委員会は、締約国に対し、政策立案を含む条約実施の全段階を通じてNGOおよび市民社会一般を関与させるための体系的アプローチを検討するよう奨励する。 研修/条約の普及(第42条) 24.第42条に照らし、委員会は、子どもを含む公衆一般および子どもとともに働く専門家の間で条約に関する意識水準が低いことに留意する。委員会は、締約国が、体系的かつ対象を明確にした方法で十分な普及活動および意識啓発活動を行なっていないことを懸念するものである。 25.これとの関連で、委員会は、締約国が、条約実施に関わる情報を子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府の間で普及するための継続的プログラムを発展させるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、非識字であるまたは正規の教育を受けていない傷つきやすい立場に置かれたグループを対象とするためのとりくみも含め、同国における子どもの権利教育を促進するための努力を追求するよう奨励するものである。さらに、委員会は、締約国が、子どもとともに働くすべての専門家集団(すなわち裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象とした、条約の規定に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この点に関してとくにユニセフの援助を求めるよう奨励するものである。 D.2 子どもの定義 26.第1条に照らし、委員会は、法律により定められたさまざまな年齢制限が条約の一般原則その他の規定にしたがっていないことを懸念する。委員会がとりわけ懸念するのは、刑法にもとづく刑事責任年齢が7歳と定められておりきわめて低いこと、および、16~18歳の男子が成人として審理される可能性があることである。委員会は、性的同意に関する最低年齢が男子について定められていないことを懸念する。委員会はさらに、最低年齢基準の執行が不完全であること(たとえば1929年の児童婚姻禁止法)を懸念するものである。 27.委員会は、年齢制限が条約の原則および規定に一致することを確保するために締約国が国内法の見直しを行なうこと、および、このような最低年齢要件を執行するためにいっそうの努力を行なうことを勧告する。 D.3 一般原則 差別の禁止への権利(第2条) 28.条約第2条に照らし、委員会は、異なる州に住んでいる子ども、農村部で生活している子ども、スラムで生活している子どもならびにさまざまなカースト、部族集団および先住民族集団に属している子どもによる条約上の権利の享受の水準が著しく異なることを深く懸念する。 29.委員会は、もっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象としたプログラムのための予算供与を増加させることも含む政策の見直しおよび方向転換を通じて社会的不平等に対応するため、あらゆるレベルで調和のとれた努力を行なうよう勧告する。 30.条約第2条に照らし、委員会は、カーストにもとづく差別および部族集団に対する差別が、このような刊行が法律で禁じられているにもかかわらず存在していることを懸念する。 31.憲法第17条および条約第2条にしたがって、委員会は、締約国が、州が「不可触性」の差別的慣行を廃止することを確保し、カーストおよび部族を動機とした虐待を防止し、かつそのような慣行または虐待を行なった国または民間の行為者を訴追するための措置をとるよう勧告する。さらに、憲法第46条にしたがい、締約国は、とくにこのような集団を保護しかつその地位を高めるための積極的措置を実施するよう奨励されるところである。委員会は、1989年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)法、1995年指定カースト・指定部族(残虐行為防止)規則および1993年清掃肉体労働者雇用法の全面的実施を勧告する。委員会は、締約国に対し、カーストにもとづく差別を防止しかつそれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを遂行する努力を、引き続き行なうよう奨励するものである。人種差別撤廃委員会(CERD/C/304/Add.13)にならい、委員会は、このようなグループの構成員が、保健、教育、労働、ならびに井戸のような公共の場所およびサービスへのアクセスを含む条約上の権利を平等に享受することの重要性を強調する。 32.委員会は、女子に対する差別的な社会の態度および有害な伝統的慣行が根強く残っていることに留意する。これには、女児の嬰児殺、選択的中絶、低い就学率および高い中退率、若年婚および強制婚のほか、婚姻、離婚、乳児の監護および後見ならびに相続のような分野でジェンダーに基づく不平等を固定化させている、宗教に基づく民事的地位法が含まれる。 33.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、保護法の執行を確保するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、とくに家庭におけるジェンダー差別を防止しかつそれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを遂行する努力を継続するよう奨励するものである。このような努力を援助するため、女子を差別する伝統的な慣行および態度を根絶する努力を支援する目的で政治的、宗教的および地域共同体の指導者が動員されるべきである。 子どもの意見の尊重(第12条) 34.第12条に照らし、委員会は、とくに家庭、学校、ケアのための施設、裁判所および少年司法制度において、子どもの意見が不十分にしか重視されていないことに留意する。 35.委員会は、締約国に対し、条約第12条にしたがって、自己に影響を与えるあらゆる事柄における子どもの意見の尊重および子どもの参加を、家庭、学校、ケアのための施設、裁判所および少年司法制度において促進しかつ容易にするよう奨励する。これとの関連で、委員会は、子どもが十分な情報を得たうえで決定およびその表明を行ない、かつその意見を考慮されることを援助するにあたり、教員、ソーシャルワーカーおよび地方行政職員を対象とした、地域共同体におけるスキル訓練プログラムを発展させるよう勧告するものである。 D.4 市民的権利および自由 名前および国籍(第7条) 36.時宜を得た出生登録が行なわれないことが基本的権利および自由の子どもによる全面的享受に好ましくない結果をもたらす可能性があることを踏まえ、委員会は、条約第7条に照らし、インドのきわめて多数の子どもの出生が登録されていないことを懸念する。 37.委員会は、締約国が、条約第7条にしたがってすべての出生が時宜を得た形で登録されることを確保するためにいっそうの努力を行ない、かつ、農村部において登録に関わる研修および意識啓発の措置をとるよう勧告する。委員会は、移動登録所ならびに学校および保健施設における登録係の設置のような措置を奨励するものである。 拷問または他の残酷な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰を受けない権利(第37条(a)) 38.条約第37条(a)に関して、委員会は、拘禁施設における子どもの日常的な不当な取扱い、体罰、拷問および性的虐待の報告が多数存在し、かつ、路上で生活しかつ(または)働く子どもの殺害が法執行官によって行なわれているという主張があることを懸念する。 39.委員会は、警察署に連れてこられた子どもひとりひとりの登録を拘禁の日時および理由も含めて義務的なものとすること、および、そのような拘禁を判事による頻繁な義務的審査の対象とすることを勧告する。委員会は、締約国に対し、刑事訴訟法第53条および第54条を改正することにより、拘禁の時点における、および定期的な間隔を置いた健康診断(年齢の確認も含む)を義務的なものとするよう奨励するものである。 40.委員会は、警察の拘禁下にある者の強姦、死亡または負傷の疑いがある事件について司法審問を義務的なものとすること、調査機関を設置すること、および拘禁下の虐待の被害者に対して賠償金を支払うことをとくに求めた、国家警察委員会による1980年の勧告および議会委員会による1996年の勧告を締約国が実施するよう勧告する。拘禁下における子どもの虐待の事件に関する苦情申立ておよび訴追の機構を整備するため、少年法の改正が勧告されるところである。加えて、委員会は、刑事訴訟法第197条(拘禁下の虐待または不法な拘禁の苦情が申し立てられた場合に法執行官を訴追するにあたり、政府の承認を要件とするもの)および警察法第43条を改正することにより、不法な拘禁または拘禁下の虐待の事件において警察が令状執行中の行動に関する免責を主張できないようにすることを勧告する。 41.委員会は、締約国に対し、同国が1997年に署名した拷問および他の残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約を批准するよう奨励する。 D.5 家庭環境および代替的養護 養子縁組(第21条) 42.条約第21条および第25条に照らし、委員会は、インドにおいて統一の養子縁組法が存在しないこと、ならびに、締約国内外の措置を監視しかつフォローアップするための効果的な措置がとられていないことを懸念する。 43.委員会は、締約国に対し、国内外の養子縁組に関する法的枠組みを見直すよう勧告する。委員会は、締約国が、国際養子縁組における子どもの保護および協力に関する1993年のハーグ条約の加盟国となるよう勧告するものである。 暴力/虐待/放任/不当な取扱い(第19条) 44.条約第19条および第39条に照らし、委員会は、インドにおいて、学校およびケアのための施設のみならず家庭においても子どもの不当な取扱いが広がっていることを懸念する。 45.委員会は、締約国が、家庭、学校およびケアのための施設における子どもの体罰および性的虐待を含むあらゆる形態の身体的および精神的暴力を禁止するために立法上の措置をとるよう勧告する。委員会は、このような措置とあわせて、子どもの不当な取扱いの好ましくない結果に関する公衆教育キャンペーンを行なうよう勧告するものである。委員会は、締約国が、とくに家庭および学校において、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律の維持を促進するよう勧告する。虐待された子どものリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムを強化すること、および、不当な取扱いの苦情を受理し、そのような取扱いの発生を監視し、調査しかつ訴追するための十分な手続および機構を設置することが必要である。 D.6 基礎保健および福祉 障害のある子ども(第23条) 46.1995年障害者(機会均等、権利保護および完全参加)法には留意しながらも、委員会は、障害児、とくに農村部で生活する障害児のケアの水準およびケアへのアクセスがきわめて貧弱であること、および障害児のケアに責任をもつ者に援助が提供されていないことを懸念する。条約第23条に照らし、委員会は、精神的および身体的障害をもった子どもの権利を保障し、かつそのような子どもの社会への全面的インクルージョンを促進する政策およびプログラムの実施を確保する必要があることを強調するものである。 47.障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および「障害のある子ども」に関する一般的討議の日に採択された委員会の勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、障害をもった子どものリハビリテーション施設の定員を増加させ、かつ、農村部で生活する障害児のサービスへのアクセスを向上させるよう勧告する。予防、インクルーシブな教育、家庭におけるケアおよび障害児の権利の促進に焦点を当てた意識啓発キャンペーンを行なうことが必要である。障害児とともに働く者が十分な研修を受けられるようにすることも求められる。委員会は、締約国に対し、必要な資源が利用できるようにするためにいっそうの努力を行ない、かつ、とくにユニセフ、WHOおよび関連のNGOの援助を求めるよう奨励するものである。 健康および保健サービスへの権利(第24条) 48.条約第24条に照らし、委員会は、締約国が、若干の国家プログラムを設置することにより、すでに主要な健康問題に焦点を当てかつ優先順位を置いていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、妊産婦死亡率が高いこと、および、子どもの低体重出生および栄養不良(微量栄養素欠乏症を含む)の水準が高いことを懸念するものである。このような現象は、出生前ケアへのアクセスが欠けていること、ならびに、より一般的には、質の高い公共保健施設へのアクセスが限られていること、資格のあるヘルスワーカーの人数が不十分であること、健康教育が貧弱であること、安全な飲料水へのアクセスが不十分であること、および環境衛生が貧弱であることとつながっている。このような状況を悪化させているのは、女性および女子がとくに農村部において直面している極端な格差である。 49.委員会は、締約国が、児童期疾病統合管理戦略を採用、拡大および実施し、かつもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループ層に特段の注意を払うためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、女児の嬰児殺および選択的中絶のような慣行につながる社会文化的要因を見定め、かつそのような要因に対応する戦略を策定するための研究を行なうようにも勧告するものである。委員会は、社会の最貧層にひきつづき資源を配分すること、および、とくにWHO、ユニセフ、世界食糧計画および市民社会との協力およびそこからの技術的援助を継続することを勧告する。 50.委員会は、たとえば女子の健康に悪影響を与える若年婚の割合がきわめて高いことを踏まえ、青少年、とくに女子の健康がなおざりにされていることを懸念する。青少年、とくに女子の自殺、および子どもへのHIV/エイズの影響は委員会にとって深刻な懸念の対象である。 51.委員会は、締約国が、もっとも傷つきやすいグループ層を対象とした、リプロダクティブ・ヘルスおよび子どもの健康に関する現行の国家プログラムを強化するよう勧告する。委員会は、締約国が、公衆およびとくに保健専門職を対象とした意識啓発および感受性増進プログラムを強化することにより、HIV/エイズの影響を受けた者への差別と闘うよう勧告するものである。委員会は、社会の最貧層にひきつづき資源を配分すること、および、とくにWHO、ユニセフ、UNAIDS〔国連エイズ合同計画〕および市民社会との協力およびそこからの技術的援助を継続することを勧告する。 十分な生活水準への権利(第27条) 52.委員会は、スラムを含む不十分な居住環境で生活している子どもの割合が高いこと、および、そのような子どもの栄養状態、および安全な飲料水および衛生へのアクセスが不十分であることを懸念する。委員会は、構造調整プロジェクトが家庭および子どもの権利に与える悪影響を懸念するものである。 53.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、1996年の第2回ハビタット〔国連人間居住会議〕で子どもの居住へのアクセスに関して表明した決意を実施するために適切な措置をとるよう勧告する。強制退去に関する人権委員会決議1993/77に照らし、委員会は、締約国に対し、強制的な居住地移動、避難およびその他のタイプの非自発的な人口移動の発生を防止するよう奨励するものである。委員会は、再定住のための手続およびプログラムにおいて登録が含められ、包括的な家族リハビリテーションの便宜が図られ、かつ基本的サービスへのアクセスが確保されるよう勧告する。 54.委員会は、路上で生活しかつ(または)働く子どもの人数が多くかつ増加していることを懸念する。このような子どもたちは、インドにおいてもっとも周縁に追いやられた子どもグループのひとつである。 55.委員会は、締約国が、このような子どもが身分証明書類、栄養、衣服および住居を提供されることを確保するための機構を設置するよう勧告する。さらに、締約国は、このような子どもが保健、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関するリハビリテーション・サービス、家族との和解のためのサービス、職業訓練およびライフスキル訓練を含む教育、および法律扶助にアクセスできることを確保するべきである。委員会は、締約国が、この点に関して市民社会と協力し、かつ国の努力を市民社会と調整するよう勧告する。 D.7 教育、余暇および文化的活動 教育の権利および目的(第28条および第29条) 56.教育への基本的権利に関する第83次憲法改正法案を歓迎しながらも、委員会は、教育との関連で締約国に蔓延している貧弱な状況に懸念を表明する。この状況を特徴づけているのは、インフラストラクチャー、便益および設備が全般的に欠けていること、資格のある教員の人数が不十分であること、および、教科書その他の関連する学習教材が徹底的に不足していることである。さまざまな州の間、農村部と都市部との間、男女間、富裕層と貧困層との間、および指定カーストおよび指定部族に属する子どもの間で、教育へのアクセス、初等段階および中等段階における通学および中退率に関して著しい格差が存在することに関わって、深刻な懸念が存在する。委員会は、とくにさまざまな懸念(女子の状況、および児童労働の発生の削減を含む)に対応するうえで有益となる可能性があることにかんがみて、教育の提供および質を向上させることに重点的な注意を向けることの重要性を強調するものである。 57.委員会は、締約国に対し、第83次憲法改正法案を成立させるよう奨励する。1993年および1996年の最高裁判所決定(それぞれウンニ・クリシュナン事件およびM・C・メフタ対タミールナドゥ州他事件)にならい、委員会は、締約国が、14歳未満のすべての子どもを対象とする無償の義務教育を義務づけた憲法第45条を遵守するための措置を実施するよう勧告するものである。 58.委員会は、締約国が、教育へのアクセスに関して蔓延している格差に関する研究を行ない、かつ、そのような格差に対応するための措置、教員養成プログラムおよび学校環境の質を向上させるための措置、および、ノンフォーマル教育計画の質が監視および保証され、かつ当該計画に参加する働く子どもその他の子どもがメインストリーム教育に統合されることを確保するための措置を発展させるよう勧告する。委員会は、締約国が、もっとも傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもが中等教育に進学する機会を確保および促進するよう勧告するものである。 59.委員会は、締約国が、すべての諸人民、民族的、国民的および宗教的集団ならびに先住民の間の寛容ならびに性の平等および友好を含む、条約第29条に掲げられた教育の目的を正当に考慮するよう勧告する。委員会は、締約国が、条約を含む人権問題を学校カリキュラムに導入することを検討するよう勧告するものである。 60.委員会は、締約国に対し、必要な資源を利用可能とし、かつとくにユニセフ、ユネスコおよび関連のNGOの援助を求めるよう奨励する。 D.8 特別な保護措置 保護者のいない子ども、庇護希望者である子どもおよび難民である子ども(第22条) 61.全体として国際難民法の原則にしたがった行政上の方針がとられていることを歓迎しながらも、委員会は、法律が存在しないことにより、子どもの庇護申請者および難民が条約で規定された保護および援助を確実に得られるという保証が依然として存在しないことを懸念する。委員会は、難民の親から生まれた子どもが無国籍となる可能性があること、家族の再統合に対応するための十分な法制度が存在しないこと、および、難民の子どもが事実上通学しているとはいえ、このような子どもに教育への権利を認めた法律が存在しないことを、懸念するものである。 62.委員会は、難民および庇護申請中の子どもの十分な保護(身体的安全、健康、教育および社会福祉の分野におけるものを含む)を確保し、かつ家族の再統合を促進するための包括的な立法を採択するよう勧告する。難民の子どもの保護を促進するため、委員会は、締約国に対し、1951年の難民の地位に関する条約および1967年のその議定書、1954年の無国籍者の地位に関する条約、ならびに1961年の無国籍の削減に関する条約の批准を検討するよう奨励するものである。 子どもと武力紛争および子どもの回復(第38条および第39条) 63.委員会は、紛争地域、とくにジャンムー・カシミール州および東北部諸州における状況が子ども、とくに生命、生存および発達に対する子どもの権利(条約第6条)に深刻な影響を与えていることを懸念する。条約第38条および第39条に照らし、委員会は、子どもがこのような紛争に関与し、かつその犠牲になっているという報告があることにきわめて深刻な懸念を表明するものである。さらに、委員会は、このような紛争地域における子どもの失踪に治安部隊が関与しているという報告があることを懸念する。 64.委員会は、締約国が、武力紛争における子どもの保護およびケアを目的とした人権法および人道法の尊重をいかなるときにも確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもに対して権利侵害が行なわれた場合に公正かつ徹底的な調査が行なわれ、かつ責任者が迅速に訴追されること、ならびに被害者に対して公正かつ十分な補償を行なうことを確保するよう、求めるものである。委員会は、治安部隊の構成員が行なったとされる虐待の究明を国家人権委員会が行なうことを可能にするため、人権保護法第19条を廃止するよう勧告する。自由権規約委員会の勧告(CCPR/C/79/Add.81)にならい、委員会は、治安部隊の構成員に対する刑事訴追または民事手続には政府の許可が必要とされるという要件を廃止するよう勧告するものである。 経済的搾取(第32条) 65.委員会は、インドが、ILO-IPECプログラムを実施するためILOとの了解覚書に署名した(1992年)最初の国であることに留意する。委員会はさらに、1986年児童労働(禁止および規制)法の別表が改訂されたことにも留意するものである。にもかかわらず、委員会は、とくにインフォーマル部門、家内制企業、家事労働および農業において、債務労働を含む児童労働に携わっている子どもが多いことを懸念する。そのような子どもの多くは危険な条件下で働いている。委員会は、雇用に関する最低年齢基準がほとんど執行されておらず、かつ、使用者が法律を遵守することを確保するための適切な処罰および制裁が科されていないことを懸念するものである。 66.委員会は、締約国に対し、条約第32条に関わる宣言を撤回するよう奨励する。当該宣言は、児童労働に対応するため締約国が行なっている努力に照らして不必要であるためである。委員会は、締約国が、1986年児童労働(禁止および規制)法、1976年債務労働(制度廃止)法および1993年清掃肉体労働者雇用法の全面的実施を確保するよう勧告する。 67.委員会は、1986年児童労働法を改正し、家内制企業ならびに政府の学校および訓練センターが子どもの雇用の禁止から除外されないようにすること、および、農業その他のインフォーマル部門を含めるため対象を拡大することを、勧告する。工場法は、児童労働を使用するすべての工場または工房を対象とするために改正されるべきである。ビーディ〔タバコ〕法は、家内生産の免除を撤廃するために改正されるべきである。使用者は、その施設で働くすべての子どもの年齢の証拠書類を備え、かつ要求に応じて提出することを義務づけられるべきである。 68.委員会は、とくに児童労働者のための補償基金に関する最高裁判所の決定(M・C・メフタ対タミールナドゥ州事件およびM・C・メフタ対インド連邦事件)に照らし、締約国が、法律により刑事上および民事上の救済が規定されることを確保するよう勧告する。委員会は、適切な、時宜を得たかつ子どもに優しい対応が行なわれるよう裁判手続を簡素化すること、および最低年齢基準の執行を精力的に追求することを勧告するものである。 69.委員会は、締約国が、州および地区に対し、児童労働監視委員会を設置および監督し、かつ、十分な人数の労働監察官に対してその業務を効果的に遂行するのに十分な資源が提供されることを確保するよう奨励することを勧告する。州および地方のレベルにおける基準の実施を監視する国家機構が設置されるべきであり、かつ、当該機関に対し、違反の苦情を受理しかつ対応する権限および1次情報報告書を提出する権限が与えられるべきである。 70.委員会は、締約国が児童労働の性質および規模に関する国家的な研究を行なうこと、および、措置の立案および進展の評価の基盤とするため違反を含む細分化されたデータを収集および更新することを勧告する。委員会はさらに、締約国が、労働上の危険に関して公衆一般、とくに親および子どもに情報を提供しかつその感受性を増進するためのキャンペーンを遂行する努力、および、使用者団体、労働者団体および市民組織、労働監察官および法執行官のような政府職員ならびにその他の関連の専門家を関与させかつ訓練するための努力をひきつづき行なうよう勧告するものである。 71.委員会は、締約国に対し、権限ある諸公的機関が教育およびリハビリテーション・プログラムなどに関して協力しかつその活動の調整を行なうこと、および、締約国と関連の国際連合機関(ILOおよびユニセフなど)およびNGOとの間で現在行なわれている協力が拡大されることを確保するよう、求める。委員会は、締約国が、就労のための最低年齢に関するILO第138号条約ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約を批准するよう勧告するものである。 薬物濫用(第33条) 72.第33条に照らし、委員会は、とくにムンバイ、ニューデリー、バンガロールおよびカルカッタの大都市中心部において不法な薬物の使用および取引が増加していること、および、18歳未満の者、とくに女子の間でタバコの使用が増えていることを懸念する。 73.委員会は、締約国が、国際連合薬物統制計画(UNDCP)の指導を得て国家薬物統制計画または総合基本計画を策定するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、タバコの使用を含む有害物質の使用について子どもに正確かつ客観的な情報を提供するための努力、および、タバコ広告の包括的制限を通じ、誤った有害な情報から子どもを保護するための努力をひきつづき行なうよう奨励するものである。委員会は、WHOおよびユニセフから協力および援助を得るよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、有害物質の濫用の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・サービスを発展させるよう勧告するものである。 性的搾取および性的虐待(第34条) 74.委員会は、女性および子どもの売買および商業的性的搾取と闘うための行動計画に留意する。しかしながら、問題の規模にかんがみ、委員会は、子ども、とくに底辺カーストに属する子ども、および都市部の貧困地域および農村部の子どもの性的虐待および性的搾取について懸念するものである。このような搾取および虐待は、宗教的および伝統的文化、子どもの家事労働、路上で生活しかつ(または)働く子ども、地域における暴力および民族紛争、ジャンムー・カシミール州のような紛争地域における治安部隊による虐待、ならびに、近隣諸国(とくにネパール)からのとくに女子の売買および商業的搾取を背景として生じている。委員会はまた、このような現象と闘うために十分な措置がとられていないこと、およびリハビリテーションのための十分な措置が存在しないことも懸念するものである。 75.委員会は、締約国が、法律により子どもの性的搾取が犯罪とされ、かつ、国民か外国人かを問わず関係したすべての犯罪者が処罰対象とされることを、このような慣行の被害を受けた子どもが処罰されないことを同時に確保しながら確保するよう、勧告する。デーヴァダーシーが法律で禁じられていることには留意しながらも、委員会は、締約国が、この慣行を撲滅するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。商業的性的目的のものを含む子どもの売買と闘うため、誘拐を禁じる規定が刑法に置かれるべきである。委員会は、締約国が、子どもの性的搾取に関わる法律がジェンダーに中立であることを確保すること、違反の場合に民事上の救済を提供すること、適切な、時宜を得た、子どもに優しい、かつ被害者に配慮した対応が行なわれるよう裁判手続が簡素化されることを確保すること、侵害の対象とされた者を差別および報復から保護するための規定を含めること、および執行を精力的に追求することを、勧告する。 76.委員会は、実施を監視するための国家機構が、苦情申立て手続およびヘルプラインとともに設置されるべきことを勧告する。性的虐待および性的搾取の被害を受けた子どもを対象として、リハビリテーション・プログラムおよびシェルターが設置されるべきである。 77.委員会は、締約国が子どもの性的虐待および性的搾取の性質および規模に関する国家的な研究を行なうこと、および、措置の立案および進展の評価の基盤とするため細分化されたデータを収集および更新することを勧告する。委員会は、締約国が、児童婚姻および儀式としての売買春のような有害な伝統的慣行と闘うため徹底的なキャンペーンを遂行する努力、および、身体的および精神的不可侵性に対する子どもの権利および性的搾取からの安全に関して公衆一般への情報提供、その感受性の増進および動員を行なう努力をひきつづき行なうよう勧告するものである。 78.委員会は、とくに西ベンガル、オリッサおよびアンドラプラデールの諸州の東部国境地帯に沿って、近隣諸国の国境警察隊との協力をともなう2国間および地域間の協力を強化するよう勧告する。締約国は、権限のある公的機関が協力しかつその活動を調整すること、および、締約国ととくにユニセフとのあいだで現在行なわれている協力が拡大されることを、確保するべきである。 少年司法の運営(第37条、第40条および第39条) 79.委員会は、インドにおける少年司法の運営をめぐって、かつそれが条約第37条、第40条および第39条ならびに他の関連の国際基準と両立していないことをめぐって、懸念を覚える。委員会はまた、刑事責任年齢がきわめて低いこと(7歳)、および、16~18歳の男子が成人として審理される可能性があることも懸念するものである。18歳以上の者には死刑が事実上適用されないことには留意しながらも、委員会は、法律上はその可能性が存在することをきわめて懸念する。委員会はさらに、成人との拘禁を含む子どもの拘禁が過密かつ不衛生な環境下で行なわれていること、司法職員、弁護士および法執行官を含む専門家を対象として条約、その他の現行国際基準および1986年少年法に関する研修が行なわれていないこと、および、これらの規定に違反した職員を訴追するための措置およびその執行が存在しないことを懸念するものである。 80.委員会は、法律が条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則および刑事司法制度における子どもについての措置に関するウィーン指針のような他の関連の国際基準にしたがうことを確保するため、締約国が少年司法の運営に関わる法律を見直すよう勧告する。 81.委員会は、締約国が、18歳未満の者に対して死刑を科すことを法律で廃止するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、刑事責任年齢の引上げを検討し、かつ18歳未満の者が成人として審理されないことを確保するようにも勧告するものである。条約第2条に掲げられた差別の禁止の原則にしたがい、委員会は、1986年少年法第2条(h)を改正し、18歳未満の男子が女子と同様に少年の定義に含まれることを確保するよう勧告する。委員会は、1986年少年法を全面的に執行すること、および、司法職員および弁護士に研修を施しかつ同法について承知させることを、勧告するものである。委員会はさらに、過密状態を軽減し、迅速な審理に付すことができない者を釈放し、かつ刑務施設を可能なかぎり早急に改善するための措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国が、罪を犯した少年のための施設の定期的な、頻繁なかつ独立した監視を確保するよう勧告するものである。 82.委員会はさらに、締約国が、少年司法調整委員会を通じ、とくに国際連合人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討するよう提案する。 D.9 報告書の普及 83.最後に、委員会は、条約第44条6項にしたがって、締約国が提出した第1回報告書を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、委員会が提示した事前質問票への文書回答、関連の議事要録、および報告書の検討後に委員会が採択した総括所見ともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心ある非政府組織を含む公衆一般の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月2日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。