約 1,857,928 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/300.html
総括所見:フィジー(第2~4回・2014年) 第1回(1998年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/FJI/CO/2-4(2014年10月13日)/第67会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2014年9月4日および5日に開かれた第1909回および1910回会合(CRC/C/SR.1909 and 1910参照)においてフィジーの第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/FJI/2-4)を検討し、2014年9月19日に開かれた第1929回会合において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させることを可能としてくれた、締約国の第2回~第4回統合定期報告書(CRC/C/FJI/2-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/FJI/Q/2-4/Add.1)の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、報告書の提出が遅れたことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国のハイレベルな部門横断型代表団との間に持たれた率直かつ建設的な対話について評価の意を表する。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、とくに以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) フィジー憲法(2013年)。 (b) 子ども福祉令(2010年)。 (c) 犯罪令(2009年)。 (d) 家族間暴力令(2009年)。 (e) 婚姻法(改正)令(2009年)。 (f) 雇用関係規則(2007年)。 (g) 刑事施設および矯正法(2006年)。 (h) 家族法(2003年)。 (i) 出入国管理法(2003年)。 4.委員会は、以下の文書が批准されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)(2012年4月)。 (b) ジュネーブ諸条約の第I、第IIおよび第III追加議定書(2008年7月)。 (c) タバコの規制に関する世界保健機関枠組条約(2003年10月)。 (d) 就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関条約(1973年、第138号)(2003年1月)。 (e) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関条約(1999年、第182号)。 (f) 国際刑事裁判所ローマ規程(1999年11月)。 (g) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)(1999年3月)。 5.委員会は、とくに以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 学校基準監視査察政策(2014年)。 (b) 子どもの健康政策・戦略(2012~2015年)。 (c) 学校における子どもの保護政策(2012年)。 (d) 乳幼児期教育政策(2011年)。 (e) 障害とともに生きている人に関する国家政策(2008~2018年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(第6項)) 委員会の前回の勧告 6.締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見(1998年、CRC/C/28/Add.7)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十分な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第1回報告書に関する総括所見の勧告のうち十分に実施されていないもの(とくに資源配分、データ収集、出生登録、体罰、性的虐待および障害のある子どもに関連するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 包括的な政策および戦略 8.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な国家的政策および戦略を策定していることを歓迎する。しかしながら委員会は、当該戦略がまだ草案段階であることを懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、戦略が時宜を得た形で採択するようにするためにあらゆる必要な措置をとるとともに、その実施を促進するために十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保するよう、奨励する。 調整 10.委員会は、国家子ども調整委員会(NCCC)が関連省庁の常駐書記官から構成される予定である旨の締約国の説明を歓迎するものの、内閣がまだ当該体制を承認していないことに留意する。委員会は、現在のところ、とくに有効性を欠いた体制および資金の不十分さによってNCCCの有効性が阻害されていることに、懸念とともに留意するものである。 11.委員会は、締約国が、調整に関するNCCCの責任を強化し、かつこの新体制が速やかに承認されるようにするためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、NCCCに対し、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されるべきことを勧告するものである。 資源配分 12.2014年予算で子どもの保護のためのプログラムに財源が配分されたことは歓迎しながらも、委員会は、条約実施のための他の予算科目が特定されていないことに、懸念とともに留意する。 13.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施をとくに目的とした国家予算を採択し、当該予算がすべての年齢の、両性のおよびあらゆる社会経済的背景を有する子どものためであることを確保し、かつ、被害を受けやすい状況に置かれた子ども(とくにマイノリティ集団の子どもおよび障害のある子ども)のための戦略的予算項目を定めること。 (b) 資源配分の十分性、効率性および公平性を恒常的に評価する目的で評価および監視のための機構を設置すること。 データ収集 14.委員会は、条約の多くの分野について信頼できる細分化されたデータが存在せず、かつ、条約の実施に関連する政策およびプログラムの効果を体系的に評価するいかなる機構も設置されていないことを遺憾に思う。 15.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、包括的なデータ収集システムを確立するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)の状況についての分析を容易にするため、データは、条約の全分野を網羅し、かつ年齢、性別、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景別に細分化されるべきである。さらに委員会は、データおよび指標が関連省庁の間で共有されるべきことを勧告する。 独立の監視 16.委員会は、新たな人権・反差別委員会が設置される予定である旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、フィジー人権委員会の子どもの権利担当官の官位が、資源上の制約のために2年間空席となっていることに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、委員会に配分される資源が不十分であるためにその効率性が阻害されているという報告があることを懸念する。 17.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、新たな人権・反差別委員会を設置するプロセスを速やかに進めるとともに、この新たな委員会および当面の間はフィジー人権委員会が全面的に機能すること(人権侵害の訴えを調査する任務を含む)を確保するためにあらゆる適切な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、フィジー人権委員会内であるか新たな委員会内であるかにかかわらず、子どもの権利担当官をあらためて任命するための速やかな措置をとるとともに、当該担当官に対し、あらゆる必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう促すものである。子どもの権利担当官は、子どもによる苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに対応し、被害者のプライバシーおよび保護を確保し、かつモニタリングおよびフォローアップのための措置をとることができるべきである。 普及および意識啓発 18.委員会は、条約の規定に関する意識を高めるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、条約がまだすべての地方言語に公式に翻訳されておらず、かつ、キャンペーンを含む意識啓発プログラムにおいて外洋諸島および遠隔地のコミュニティが対象とされていないことに、懸念とともに留意するものである。 19.委員会は、締約国が、条約および委員会の総括所見を国全体で体系的に普及しかつ促進するための努力をさらに強化するよう勧告する。その際、とくに以下の点に焦点が当てられるべきである。 (a) 条約、総括所見および一般的意見が締約国のすべての地方言語に翻訳されることを確保すること。 (b) さまざまなコミュニティの子どもにとくに合わせた広報資料、ならびに、親向けおよび子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家向けの広報誌資料を配布すること。 (c) 外洋諸島および孤立したコミュニティを含む地方コミュニティにおいて、意識啓発プログラムの組織化および実施に関して地方政府機構と緊密に協力すること。 (d) インターネットおよび地方言語ラジオ局を通じてメディアの意識を増進すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 20.委員会は、締約国が、婚姻法(改正)令(2009年)を通じて女子の婚姻年齢を16歳から18歳に引き上げ、男子と同一としたことを歓迎する。しかしながら委員会は、憲法で子どもが18歳未満の者と定義されているにもかかわらず、締約国の法律に、まだ条約と全面的に一致していないものがあることを懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、子どもの定義に関する国内法を自国の憲法と、ひいては条約と全面的に調和させるよう勧告する。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 22.差別を禁ずるいくつかの法律が存在することは歓迎しながらも、委員会は、民族的マイノリティの子ども、HIV/AIDSとともに生きている子どもおよび障害のある子どもがしばしばスティグマおよび差別に直面していることに、深刻な懸念とともに留意する。さらに、締約国が初めて定めた国家ジェンダー政策(2014年4月1日)は歓迎しながらも、委員会は、家父長制的な態度、ジェンダー役割についての深く根差した見方、ならびに、家庭およびコミュニティにおいて女子を差別する現行法令が蔓延していることを深く懸念するものである。 23.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての子どもが、いかなる理由に基づく差別もなく、条約に基づく平等な権利を享受できることを確保するとともに、この目的のため、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法律上および事実上の差別を解消するための包括的戦略を採択しかつ実施するとともに、人種、性、障害およびHIV/AIDSに感染していることまたはそのように見なされることを理由とするあらゆる形態の差別をとくに禁止する法律を制定すること。 (b) すべての年齢層の住民を対象とした、障害のある子どもおよびHIV/AIDSとともに生きている子どもの状況に関する広報キャンペーンを確立すること。 (c) 女子を差別し、かつその人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることを阻害する可能性がある否定的な態度および慣行ならびに深く根差したステレオタイプを解消するための包括的戦略の策定および明確な達成目標の設定を、新たな政策に基づいて進めること。 (d) 前述の措置に関して、差別を受けるおそれがある、あらゆる社会経済的、民族的および地理的背景の子どもと協議し、かつその関与を得るとともに、社会的および文化的変革、ならびに、平等を促進しかつ可能性を開花させる環境づくりを促進するために社会のあらゆる層の関与を得ること。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) 出生登録/名前および国籍 24.委員会は、出生登録に取り組むために締約国が行なっている努力を歓迎するとともに、新憲法で出生登録および市民権に対する権利が保障されていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、出生登録がまだ無償ではないこと、および、登録の遅れが手数料によって処罰されることを遺憾に思うものである。委員会はさらに、この2年間、とくに離島において出生登録率が低下しているという報告があることを懸念する。 25.委員会は、新生児を登録する両親の義務に関する意識啓発キャンペーンを開始するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.89、パラ35)をあらためて繰り返す。委員会はさらに、その際、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 登録料(登録が遅れた場合の手数料を含む)が恒久的に廃止されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 遠隔地におけるおよびマイノリティ集団の子どもの出生登録を増加させるための措置を引き続き発展させる等の手段により、出生登録に関わる懸念が依然として深刻な子どもの集団に特段の焦点を当てること。 26.委員会は、市民令第7条で、フィジーで遺棄されているのを発見されたいかなる乳児も、反証がないかぎりフィジーで出生したものとみなすと規定されていることに留意する。しかしながら委員会は、この規定により、フィジーで出生したのではないことが証明されたものの、にもかかわらず国籍を定めることのできない子どもが無国籍となるおそれが生じかねないことを懸念するものである。 27.委員会は、締約国が、フィジーで遺棄されているのを発見された子どもが無国籍にならないようにするため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討するよう勧告するものである。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(第3項)、第28条(第2項)、第34条、第37条(a)および第39条) あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 28.委員会は、家族間暴力令が採択されたことに評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、女子に対して向けられる家族間暴力、および、女性に対して向けられ、ひいてはその子どもに影響を及ぼす家族間暴力の発生率が高いことを深く遺憾に思うものである。これとの関連で、委員会はさらに、女子および女性に対する行為の加害者が訴追された際、ブルブルのような伝統的謝罪が、実務上、刑を言い渡す前に情状酌量の要素として考慮される場合があるという締約国の説明について、深刻な懸念を覚える。 29.委員会は、締約国に対し、家族間暴力を処罰する法律の強化および全面的実施を図り、かつ、伝統的謝罪がいかなる状況下でも情状酌量の要素として認められないことを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、態度の変革を図り、かつ女子および女性に対して家族間暴力を通報するよう奨励するためにあらゆる必要な措置(意識啓発キャンペーンを含む)をとるとともに、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 女性および子どものための、統合的なカウンセリングサービスを備えた十分な数のシェルターを(遠隔地も含めて)設置するとともに、これらのシェルターに十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。 (b) 女性および子どものためのシェルターを提供している市民社会組織と、引き続き緊密に協力すること。 (c) 虐待を行なうパートナーであって家族の稼ぎ手であった者から逃げてきた女性が、子どもおよび自分自身のための金銭的支援にアクセスできることを確保すること。 体罰 30.委員会は、体罰からの保護が憲法で定められていることを歓迎するとともに、「合理的な罰を科す」教員の権利のもとで体罰の使用を法的に正当化している少年法第57条が現在見直しの対象とされていることに留意する。さらに委員会は、家庭、代替的養護現場および保育における体罰が明示的に禁じられていないことに、深刻な懸念とともに留意するものである。 31.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、体罰に代わる手段として積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育てならびにしつけおよび規律の維持を促進するよう促すとともに、さらに、体罰を法律によって包括的に禁ずること、および、体罰の悪影響に関する意識を喚起し、かつ学校、家庭および施設ケアにおける規律の維持およびしつけが子どもの尊厳に一致する方法で行なわれることを確保するための措置をとることを求めた前回の勧告(CRC/C/15/Add.89、パラ36)をあらためて繰り返す。締約国はさらに、すべての教育者および教員を対象とした、子どもの権利に関する定期的な義務的研修を確立しなければならない。 性的搾取および性的虐待 32.委員会は、検事総長事務所が2010年に子ども保護部(2009年)〔原文ママ〕を創設したこと、ならびに、通報およびフォローアップのための制度「沈黙の壁を打破する」が創設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、組織化された児童買春ネットワークおよび売春宿等を通じ、締約国で子どもの性的搾取および性的虐待が蔓延していることに、このうえない懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は以下のことを著しく懸念する。 (a) ブルブルのような伝統的謝罪が被害賠償として用いられており、かつ、実務上、性犯罪に関する情状酌量の要素としてブルブルが用いられる可能性があること。 (b) 子どものニーズを考慮した専門サービスが容易に利用可能とされておらず、男子のためのサービスがほぼ存在しておらず、かつ、法律扶助が限定的であり、必要なすべての者に利用可能とされているわけではないこと。 (c) 女子に対する性犯罪に対応する、実働可能なかつ訓練を受けた警察官(最前線の女性警察官を含む)がとくに農村部において存在せず、かつ、事件の秘密保持が十分に行なわれていないこと。 (d) 性的虐待および性的搾取が(とくに女子の性格または慎みに「問題がある」と考えられるときに)社会によって犯罪とみなされないことが多く、かつ、性的搾取について、加害者ではなく女子が、加害者の関心を惹いたとして非難されることがしばしばあること。 (e) 性暴力および性的虐待について声をあげることが、被害者、家族および加害者を辱め、かつ被害者が女子である場合にはその「経済的価値の低下」につながるとして一般的に否定的にとらえられていることから、性的虐待および性的搾取がしばしば通報されないままとなっていること。 (f) 子どもに対して金を稼がなければならないという圧力がかけられていることから、子どもの性的搾取が貧困と緊密に結びついていること。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ブルブルのような伝統的謝罪が、子どもの性的虐待および性的搾取についての情状酌量の要素としても被害賠償としても用いられないことを確保し、かつ、全件訴追方針の実施をさらに強化する目的で、法律を改正し、かつ意識啓発キャンペーンを確立すること。 (b) 子どもの商業的性的搾取に反対する一連の世界会議で採択された成果文書にしたがい、適切な支援サービスを提供するとともに、防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策の策定および実施を確保すること。 (c) 性的搾取の被害者に対する非難と闘うための意識啓発キャンペーンを実施するとともに、法執行官、ソーシャルワーカー、裁判官および検察官を対象として、秘密保持を尊重する子どもに配慮したやり方で苦情申立てを受理し、監視しかつ調査する方法についての研修を実施し、かつ、最前線で働く十分な人数の女性警察官の養成を確保すること。 (d) 子どもの性的搾取、および、子どもが性産業に従事させられることに関連する重大な危険性についての意識啓発キャンペーンを実施するとともに、性的搾取の根本的原因の一部に対処することも目的として、貧困対策プログラムを実施すること。 ヘルプライン 34.委員会は、締約国が、計画されているチャイルド・ヘルプラインの開設を速やかに進めるとともに、当該ヘルプラインが24時間運用のフリーダイヤルサービスとされ、かつ十分な訓練を受けた十分な人数の職員が配置されることを確保するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、介入およびフォローアップを可能とする目的でヘルプラインと国のパートナー(警察、保健制度および社会福祉制度など)および市民社会との協力を促進し、かつ、このヘルプラインを締約国全域のすべての子どもに周知するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(第1項および第2項)、第20条、第25条および第27条(第4項)) 家庭環境を奪われた子ども 35.委員会は、施設養護最低基準の実施の監視が限定的であること、および、ホームの運営に関して社会福祉・女性・貧困緩和省が困難に直面しているためにこのようなサービスの外部委託につながっている旨の報告があることを、遺憾に思う。 36. 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 里親養育および施設への子どもの措置が定期的に再審査されることを確保するとともに、子どもの不当な取扱いの通報、監視および是正のためのアクセスしやすい回路を提供する等の手段によってこれらの養護の質を監視し、かつ、その一方で、入所ホームに対して十分な人的資源、技術的資源および財源が確実に配分されるようにすること。 (b) 社会福祉・女性・貧困緩和省に対し、入所ホームを効果的に運営し、かつその監視を行なうために必要な資源を提供する目的であらゆる適切な措置をとること。 養子縁組 37.委員会は、養子縁組令の草案において、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年5月29日のハーグ条約と国内法との整合性の確保が図られていることに留意する。しかしながら委員会は、同草案が2012年6月以降、内閣の承認待ちとなっていることを遺憾に思うものである。さらに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 養子縁組の監視を公式に担当する国内当局が設けられていないこと。 (b) 子どもが、公式な手配を通じて養子にされる場合と同一の保護を保障されない非公式な手配を通じて養子とされる、非公式な国内家族間養子縁組の慣行が続けられていること。 (c) この5年間に中国、インドおよびパキスタン出身の子どもの養子縁組が増加しており、適切な監視またはフォローアップが行なわれていない旨の報告があること。 38.委員会は、締約国が、養子縁組に関する規則および手続を見直し、それらが条約と全面的に一致することを確保するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組草案の採択を速やかに進めるとともに、国際養子縁組に関する他国との二国間取決めを強化すること。 (b) 非公式な養子縁組を監視するための措置をとり、かつ効果的に実施するとともに、すべての養子縁組が、明確な権限を与えられた中央当局によって裁判所の許可の対象とされ、かつ十分にフォローアップされることを確保すること。 (c) 養子とされた子どもに関する、年齢、性別および出身別に細分化されたデータを収集する中央集約型のシステムを設置すること。 (d) 養子縁組事件を担当するすべての専門家を対象として、事案の評価、審査および処理のために必要な研修を実施すること。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)および第33条) 障害のある子ども 39.委員会は、障害のある人の権利の保護に関する2013年憲法の規定およびインクルーシブ教育政策(2010年)ならびに障害令草案(2013年)を歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どもがしばしば差別および排除に直面していることに大いなる懸念とともに留意し、かつ、さらに以下のことを遺憾に思うものである。 (a) 障害のある子どもがしばしば極度の貧困に直面していること、ならびに、障害のある子どもが保健サービス、教育サービスおよび社会サービスに効果的にアクセスできることを確保し、かつこれらの子どもの社会への全面的インクルージョンを促進するために締約国がとっている措置が不十分であること。 (b) 障害のある子ども(とくに女子)が、買春を含む性的搾取および性暴力の被害をいっそう受けやすい状況に置かれていること。 (c) 障害のある子どもを対象とした特別学校がインクルーシブ教育よりも優先されており、かつ、障害のある子どものための中等段階の教育が行なわれていないこと。 (d) 障害のある子どもとともにおよびこのような子どもとともに働く、十分な訓練を受けた専門家の人数が不十分であるとともに、フィジー早期介入センターでは発話障害が主たる機能障害であるのに同国に言語療法士がいないこと。 40.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害に対して人権基盤型アプローチをとるよう促すとともに、具体的には以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のあるすべての子ども(精神障害、発話障害、聴覚障害および視覚障害のある子どもを含む)が十分な金銭的支援を受けられることを確保するとともに、とくに遠隔地の子どもに焦点を当てながら、障害のある子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスに平等にアクセスできることを確保するための予算配分を増額すること。 (b) 障害のある子どもが直面している暴力および性的搾取のおそれに関する意識を高めるとともに、コミュニティ、家庭および施設現場における障害のある子どもの保護を増進させるためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) インクルーシブ教育の発展が特別学校における教育よりも優先されることを確保し、かつ当該方針にしたがって教員の養成および研修を進めるとともに、障害のある子どもが中等教育に全面的にアクセスできるようにすること。 (d) とくに遠隔地において、必要なすべての専門職を利用できるようにするためにいっそうの努力を行ない、かつ、この点に関する人的資源、技術的資源および財源の配分を増やすこと。 健康および保健サービス 41.委員会は、5歳未満児死亡率、乳児死亡率および妊産婦死亡率の低下を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、この点に関する2015年までのミレニアム開発目標をまだ達成していないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、乳児死亡率および5歳未満児死亡率に関して地域格差があり、とくに村が遠隔地にあることおよび容易にアクセスできる保健サービスがないために東部地域および北部地域で5歳未満児死亡率が相当に高くなっていることを遺憾に思う。 42.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とりわけ、とくに遠隔地における予防措置および治療(予防接種の実施ならびに栄養および衛生条件の向上を含む)に焦点を当てることにより、5歳未満児死亡率をさらに削減するための努力を強化すること。 (b) 助産師の養成および研修の機会を増やし、かつ、分娩後出血および他の主要な妊産婦の死因を予防するための具体的措置が一般化されることを確保する等の手段により、産前ケアを向上させ、かつ妊産婦の死亡をさらに少なくするための努力を強力に進めること。 (c) 都市部/農村部の格差に特段の注意を払うとともに、すべての子どもが、遠隔地および農村部も含めて保健サービスへの同一のアクセスおよび同一の質の保健サービスを享受できることを確保し、かつ、サービスへのアクセスに関する格差を縮小するために具体的措置をとること。 (d) この点に関して、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)および世界保健機関の金銭的および技術的援助を求めること。 精神保健 43.委員会は、国家自殺防止委員会の設置、国家自殺防止施策(2008年)、および、とくに主要な3か所の病院にストレス管理サービスを設置するとした精神保健令(2010年)など、締約国がとった制度上、政策上および立法上の措置を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国内の子どもの間で自殺行動が増加していることを遺憾に思い、かつ、さらに以下のことを懸念する。 (a) ストレス管理サービスにおいて、子どものニーズにも対応するための具体的態勢が整えられていないこと。 (b) 自殺が子どもについての重大な健康上の懸念であると考えられているにもかかわらず、いまのところ、子どもを対象とした、専用のかつ広く利用可能な、専門家によるカウンセリングサービスが設けられていないこと。 (c) 自殺を図る危険性がもっとも高いと考えられているのがインド系フィジー人であること。 44.委員会は、締約国に対し、自殺行動の効果的防止を確保する目的で、子どもの間に存在する自殺リスク要因(抑うつの根本的原因を含む)についての調査研究を実施するとともに、当該調査研究の結果を活用して、とくに子どもを対象とした包括的なサービスシステム(ストレス管理サービスならびに精神保健促進活動および防止活動を含む)を発展させるよう、促す。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) とくに遠隔地の子ども、貧困下で暮らしている子ども、路上の状況にある子ども、学校に行っていない子どもおよび家庭外で養護されている子どもを含むすべての子どもが、ソーシャルワーカーおよび心理カウンセリングサービスに平等にアクセスできることを確保すること。 (b) これらの措置をとるにあたり、インド系フィジー人の子どもに特段の注意を向けること。 有害慣行 45.委員会は、とくにインド系フィジー人コミュニティにおいて、15歳の女子の斡旋婚が蔓延していることを非常に懸念する。 46.委員会は、締約国が、早期婚および強制婚の犯罪化および訴追を確保するために法改正を行なうとともに、早期婚および強制婚の有害な影響に関する意識啓発プログラムおよび教育プログラムを開始するよう勧告する。 思春期の健康 47.思春期の健康発達クリニックによる取り組みおよび家庭生活教育に関する教員研修を通じた取り組みの双方によって、子どもにセクシュアル/リプロダクティブヘルスについて情報を提供するためにとられた措置は認知しながらも、委員会は、10代の妊娠率が高いことを非常に懸念する。 48.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (b) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの女子および子どもに対する差別と闘うための政策を策定しかつ実施すること。 (c) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置をとること。 HIV/AIDS 49.抗レトロウィルス薬の無償供給または「フィジー国家HIV/AIDS戦略計画(2007~2011年)」など、HIV/AIDSの蔓延を抑制するために締約国が行なっている努力および取り組みは歓迎しながらも、委員会は、HIV〔陽性〕と診断される若者の率が着実に高まっていることを著しく懸念する。 50.HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 予防および保護の方法(より安全なセックスの実践方法を含む)に関する情報および資料を公衆(とくに思春期の子ども)に対して普及すること。 (b) 早期診断および早期の治療開始を確保するため、HIV/AIDSに感染している母親およびその子どものフォローアップ治療を向上させること。 (c) 質が高く、かつ年齢にふさわしいHIV/AIDSおよびセクシュアル/リプロダクティブヘルス関連サービスへのアクセスを向上させること。 (d) とくに国連エイズ合同計画(UNAIDS)およびユニセフの技術的援助を求めること。 薬物および有害物質の濫用 51.委員会は、フィジー警察が、教育省に設けられた国家有害物質濫用諮問審議会と協力しながら専門の薬物対策部を設置したこと、および、同審議会が学校でキャンペーンを組織していることに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、マリファナ、エクスタシー、スピードおよびコカインなどさまざまなタイプの薬物の使用ならびにシンナーの吸引が子どもの間で増えていることを遺憾に思うものである。 52.委員会は、締約国が、とくに子どもおよび青少年に対して有害物質濫用の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供することにより、子どもおよび青少年による薬物の使用の発生に対処するとともに、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく若者にやさしい薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させるよう、勧告する。 母乳育児 53.母乳育児を促進し、かつ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を実施するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、締約国が、同基準を監視するいかなる機構も導入していないことを懸念する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 生後6か月までの子どものうち完全母乳育児を受けていない子どもの人数が多いこと。 (b) 適切な母乳育児のやり方に関する知識が広がっていないこと。 (c) 乳幼児への栄養補給に関する包括的政策が定められていないこと。 54.委員会は、締約国が、新生児室のあるすべての病院について「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の十分な実施の監視が定期的に行なわれることを確保するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 母乳育児の重要性および人工栄養のリスクに関する意識啓発を図ること。 (b) 適切な母乳育児のやり方を促進し、かつ、乳幼児への栄養補給に関する政策(乳児への栄養補給とHIVに関する政策を含む)を策定すること。 気候変動が子どもの権利に及ぼす影響 55.委員会は、国家気候変動政策の導入および国家気候変動調整委員会の設置を歓迎するとともに、さらに、子どもが気候変動および気候変動対策について学ぶ場を提供するための努力を締約国が強めていることを評価する。しかしながら委員会は、子どもたちが自己の意見を聴かれるようにし、かつ気候変動に関して行なわれる決定に貢献できるようにするためにとられている措置が不十分であることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、気候変動が子どもおよびその家族(とくに、気候変動によって土地および淡水源の喪失または塩化が生じており、かつ農業および生計維持の機会が減少している、沿岸部および低地のフィジー人コミュニティで暮らしている子どもおよび家族)に及ぼす影響について著しい懸念を覚える。委員会はまた、子どもは大人よりも深刻な災害リスクに直面しており、かつ気候変動の被害もより受けやすいことを示す報告があることにも注意を喚起するものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 気候変動および災害リスク管理の問題に対応する政策またはプログラムの策定において、子どもの特別な身体的および心理的脆弱性およびニーズならびに子どもの意見が考慮され、かつ、子どもが気候変動に関する政策対話に全面的に関与できることを確保すること。 (b) とくに外洋諸島において十分な量の安全な飲料水へのアクセスを増進させ、かつ十分な衛生設備を提供する目的で、安全な水の供給および衛生設備の持続可能性を確保するための国内法および国家的政策を完成させかつ実施すること。 (c) 気候変動の影響を受けている子どもおよび家族が質量ともに十分な支援を受けられることを確保するため、社会的保護制度を強化すること。 (d) 気候変動および自然災害に関する意識および備えを学校カリキュラムおよび教員養成・研修プログラムに編入することにより、この点に関する子どもの意識および備えを高めること。 (e) これらの勧告の実施に際し、二国間、多国間、地域的および国際的協力を求めかつ強化すること。 生活水準 57.委員会は、貧困緩和基金による住宅供給プロジェクトを歓迎するものの、町会および住宅公社が金銭的負担の可能な住宅の需要を満たせていないこと、および、貧しい家族が、保有権が不安定であり、かつ生活条件も劣悪である非公式な集住地に住む以外の選択肢を持てない状況にしばしば陥っていることに、懸念とともに留意する。委員会は、さらに以下のことを懸念するものである。 (a) 子どもの貧困率が高いことが、締約国における児童労働の最たる原因、学校中退の主たる理由、および、子ども(障害のある子どもを含む)がますます売春に従事させられやすくなることの主たる理由となっていること。 (b) 政府の福祉プログラムおよび貧困削減プログラムにおいて、同国でしばしばもっとも高い貧困水準にあるインド系フィジー人が十分に明確な対象とされていないこと。 (c) 障害のある人(とくに子ども)が貧困下で暮らすことになる危険性がきわめて高いこと。 58.委員会は、締約国が、経済的に不利な立場に置かれた家族に支援および物的援助を提供するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもの貧困に対応するための構造的変革を実施するよう勧告する。とくに以下の点に焦点を当てるべきである。 (a) 非公式な集住地に住んでいるすべての家族が、十分かつ金銭的負担の可能な住宅を提供され、かつ安全な飲料水および衛生設備にアクセスできることを確保するための措置を速やかにとること。 (b) インド系フィジー人コミュニティの子どもおよび障害のある子どもに特段の注意を払いながら、危険な状況に置かれているすべての家族および子どもがサービスに優先的にアクセスできることを確保すること。 (c) ソーシャルワーカーが、危険な状況に置かれた家族および子どもを特定し、社会制度を効果的に運用し、かつ、その実施のフォローアップおよびその影響の評価を行なうための十分な訓練を受けていることを確保すること。 H.教育、余暇および文化的活動(条約第28~31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 59.教育省による授業料の援助、初等学校生徒を対象とする「子ども1人にラップトップ1台」プログラム、および、2014年予算に関する演説のなかで行なわれた首相の授業料無償教育宣言は歓迎しながらも、委員会は、制服、教科書および交通費のような間接的費用負担が部分的に残っていることが、家族がこれらの費用を負担できないために子どもが学校を中退することにつながっていることに留意する。さらに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 思春期の妊婦または母親がしばしば学校中退を強要されていること。 (b) 農村部の学校が、水、電気または通信手段にアクセスできない状況にしばしば直面していること。 (c) 教育制度が、太平洋地域で最善のもののひとつと考えられているにもかかわらず、コミュニティおよび労働力のニーズに十分に適合していないことから、締約国の学校を卒業した者の相当数が就労先を見つけられないこと。 60.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 基礎教育および中等教育への予算配分額を増やし、かつ、すべての間接的費用負担および隠れた費用負担が解消されるようにすること。 (b) 10代で妊娠した女子および思春期の母親に対し、普通学校で教育を続けることに関する支援および援助が提供されることを確保すること。 (c) 効果的な学習環境を整えるために必要なインフラがすべての学校で整備されることを確保するため、十分な財政支援を配分すること。 (d) 教育プログラムおよび教育戦略の影響評価を実施するとともに、学校を卒業した者が国内求職市場の需要に備えられることを確保するための是正措置をとること。 61.委員会は、学校へのアクセスが向上し、通学のために子どもを大都市中心部に送り出す慣行が少なくなったことを歓迎するものの、このような慣行が根強く残っていることに留意する。 62.委員会は、締約国が、遠隔地における就学機会および交通サービスをさらに増やすよう勧告する。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)、第38~40条) 子どもの庇護希望者および難民 63.委員会は、子どもの難民および庇護希望者の特有のニーズおよび脆弱性に対応する特別な規定が出入国管理法に存在せず、かつ、出入国管理法に家族再統合についてのいかなる規定も掲げられていないことを懸念する。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 出入国管理法第6部を改正し、子どもの難民および庇護希望者を保護者の有無にかかわらず保護する特別規定を設けること。 (b) 出入国管理法に家族再統合に関する規定を導入すること。 経済的搾取(児童労働を含む) 65.委員会は、最低就労年齢を15歳とし、かつ18歳未満の子どもが危険な労働に従事することを禁じた雇用関係規則(2007年)に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、危険な労働の包括的リストが作成されていないことを遺憾に思うものである。さらに、委員会は以下のことについて重大な懸念を覚える。 (a) 締約国で多数の子どもが児童労働に従事しており、そのほとんどが、家事労働者、肉体労働者または農場労働者として、非公式な形で家族のために働いていること。 (b) 児童労働が増加しており、かつ、都市部への移住、貧困、ホームレスおよび親と離れての生活といった要因によってその状況が悪化していること。 66.委員会は、締約国に対し、児童労働の根本的原因に対処するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、同時に、児童労働(インフォーマル部門および民間部門におけるものを含む)を根絶するための法的枠組みを実施しかつ強化するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。 (a) 雇用関係規則を補完するため、国際基準に一致した危険な労働の定義およびリストを含めること。 (b) 15歳以上の子どもが労働に従事する場合、それが真正な自由選択に基づくものであり、かつ条約および国際基準にしたがって十分な保障措置の対象とされることを確保すること。 (c) 十分な人数の労働査察官を雇用しかつ訓練するとともに、労働法の違反者について徹底的な捜査および断固とした訴追が行なわれること、ならびに、十分に効果的かつ抑止効果のある制裁が実際に科されることを確保すること。 (d) 児童労働についてのデータならびに危険な児童労働の発生件数および労働条件についてのデータを、年齢、性別、地理的所在および社会経済的背景ごとに細分化された形で収集するとともに、当該データを、あらゆる形態の児童労働を防止しかつ解消するための効果的な政策および戦略の策定のために活用すること。 (e) 家事労働者の適切な仕事に関する条約国際労働機関条約(2011年、第189号)を批准すること。 (f) この点に関して、国際労働機関・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めること。 路上の状況にある子ども 67.委員会は、多くの子どもが、5歳という年齢から、路上で生活しかつ働き、家庭で生活しながら恒常的に路上で働き、または特定の季節(サトウキビ搾りのオフシーズンまたは学校休業期間など)に路上で働いていることに、深刻な懸念とともに留意する。委員会はさらに、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 路上の状況にある子どもの多くが、市場の手押し車の押し手としてまたは靴磨きとして働いており、かつ、その相当数が買春、ポルノおよび性的人身取引の被害者となっていること。 (b) 養育者が子どもに路上で物乞いをさせる事案が起きていること。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象の根本的原因および規模を正確に把握する目的で、路上の状況にある子どもが置かれている環境についての体系的評価を実施するとともに、根本的原因に対処するための包括的政策を策定しかつ実施すること。 (b) 子どもの保護に関する法律、とくに親および養育者の責任に関する法律が常に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 市民社会と調整を図りながら、路上の状況にある子どもに対して必要な保護(栄養およびシェルター、家庭環境、十分な保健ケアサービス、通学の可能性ならびにその他の社会サービスへのアクセスを含む))を提供すること。 売買、取引および誘拐 69.委員会は、出入国管理局が2011年2月に発表した「フィジーにおける人身取引一般および子どもの人身取引を根絶するための国家行動計画」を歓迎する。しかしながら委員会は、人身取引の広がりの度合いおよび根本的原因ならびにこの点に関する法執行官の研修についての細分化されたデータおよび情報が存在しないことを遺憾に思うものである。委員会はさらに、以下の点について重大な懸念を覚える。 (a) 娘を婚姻相手として売り渡す慣行が家族の間で行なわれていること。 (b) 締約国が性的人身取引および強制労働の対象とされる子どもの送り出し国となっており、人身取引の被害者となった子どもが不法な売春宿、地元ホテル、私人宅ならびに農村部および都市部のその他の場所で搾取されていること。 (c) 子どもを大都市の親族または家族のもとに送り出して生活させる伝統的慣行が続いており、送り出された子どもが、家庭内で隷属させられるおそれ、または食料、衣服、宿泊もしくは授業料の対価として性的活動に従事することを強要される可能性があり、人身取引の対象とされる危険性が生じていること。 (d) 子どもの人身取引、とくに国際的人身取引を効果的に捜査しかつ訴追するための資源が存在しないこと。 70.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 危険性の高い状況に置かれている子どもを特定し、かつ対象が明確化された政策およびプログラムを策定する目的で、締約国における子どもの人身取引(とくに性的搾取を目的とした子どもの人身取引)の根本的原因および規模についての調査研究を実施すること。 (b) 危険性の高い状況に置かれた層の間で人身取引の危険性(子どもを都市に送り出して生活させる慣行と子どもの人身取引との関係を含む)に関する意識啓発を図るとともに、家族および子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を対象とした、自己防衛の方法に関する広報キャンペーンを発展させること。 (c) 子どもの人身取引事件の捜査、訴追およびフォローアップに配分される人的資源、技術的資源および財源を増やすとともに、この点に関して法執行官を対象とした専門の研修を実施すること。 (d) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、および、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書の批准を検討すること。 少年司法の運営 71.委員会は、法律に抵触した子どもが置かれている状況について深刻な懸念を覚える。とくに、委員会は以下のことを遺憾に思うものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢が10歳という低さであること。 (b) 特別少年裁判所がある都市はスバだけであること。 (c) 罪を犯した少年に対して終身刑が科されていること。 (d) 刑務所の環境がとりわけ劣悪であり、国際基準に合致していないこと(とくに、過密であること、インフラが劣化していることおよび必須サービスが提供されていないこと)。 72.委員会は、締約国に対し、少年司法制度を、条約(とくに第37条、第39条および第40条)、その他の関連基準および少年司法における子どもの権利についての委員会の一般的意見10号(2007年)と全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準にまで引き上げること。 (b) 専門の少年裁判所施設を追加で設置し、かつ子どものための専門裁判官を指定するとともに、これらの専門裁判官が適切な教育および研修を受けることを確保すること。 (c) 条約第37条(a)にしたがい、子どもに対していかなる終身刑も科されないことを確保すること。 (d) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。 (e) 拘禁環境において国際基準が遵守されること(教育および保健サービスへのアクセスとの関連を含む)を確保すること。 J.国際人権文書の批准 73.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書および通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書ならびに同国がまだ当事国となっていないその他の中核的人権文書を批准するよう勧告する。 IV.実施および報告 A.フォローアップおよび普及 74.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 委員会はまた、第2回~第4回統合定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見)を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 75.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2020年9月11日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短くするよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による検討を目的とした報告書の翻訳は保障できない。 76.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)の共通コアドキュメントに関する要件にしたがい、最新のコアドキュメントを提出することも慫慂する。共通コアドキュメントの語数制限は、総会が決議68/268(パラ16)で定めたとおり、42,400語である。 更新履歴:ページ作成(2017年3月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/279.html
総括所見:インド(OPSC・2014年) 第1回(2000年)/第2回/第3回・第4回(2014年)OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/IND/CO/1(2014年7月7日)/第66会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年6月2日および3日に開かれた第1885回および第1886回会合(CRC/C/SR.1885 and 1886参照)においてインドの第1回報告書(CRC/C/OPSC/IND/1)を検討し、2014年6月13日に開かれた第1901回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答((CRC/C/OPSC/IND/Q/1/Add.1)の提出を歓迎するとともに、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2014年6月13日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IND/CO/3-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/IND/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、締約国が以下の条約を批准したことに評価の意とともに留意する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する条約、ならびに、同条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書ならびに陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2011年5月)。 (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2003年6月)。 (c) 買売春を目的とする女性および子どもの人身取引の防止およびこれとの闘いに関する南アジア地域協力連合条約(2002年)。 5.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった、以下の法律の採択を含むさまざまな措置を歓迎する。 (a) 人身取引からの子どもの保護を強化した刑事(改正)法(2013年)。 (b) 性犯罪からの子どもの保護法(2012年)。 (c) 情報技術(改正)法(2008年)。 (d) 少年司法(子どものケアおよび保護)改正法(2006年)。 6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する制度の創設ならびに国家的計画およびプログラムの採択に関して達成された、以下のものを含む進展を歓迎する。 (a) 国家子ども政策(2013年)。 (b) 「子どもの養子縁組を規律する指針」(2011年)。 (c) 「子どもの人身取引および移住労働の防止、救出、補償およびリハビリテーションに関する対応要綱」(2008年)。 (d) 「「人身取引の防止ならびに商業的性的搾取を目的とする人身取引の被害者の救出、リハビリテーション、再統合および補償に関する包括的計画」(2007年)。 (e) 「商業的性的搾取を目的とする人身取引の被害を受けた子どもの事前救出、救出および事後救出活動に関する対応要綱」(2005年)。 (f) 225の人身取引対策部部署の設置。 (g) 児童買春との闘いに関する中央諮問委員会の創設。 III.データ データ収集 7.締約国が行方不明の子どもを対象とする子ども追跡システムを発展させてきたことには留意しながらも、委員会は、2009~2010年に開始された子ども保護統合制度で構想されているような、選択議定書で対象とされているすべての犯罪についてのデータを収集する包括的システムが存在しないことを懸念する。このようなシステムにより、締約国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの規模および形態を明らかにできるはずである。委員会はまた、選択議定書で対象とされている犯罪について、たとえば国家犯罪記録局を通じて入手できる統計がきわめて限られていることも遺憾に思う。 8.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書で対象とされているすべての分野に関するデータ収集、分析、監視および影響評価のための包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施すること。 (b) 選択議定書で対象とされているすべての犯罪、および、そのような犯罪の被害を受けるおそれが強い、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもについてのデータが体系的に収集されることを確保すること。当該データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段に注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、州または自治地域、農村部または都市部における居住、先住民族としての地位および社会経済的地位別に細分化されるべきである。 (c) 犯罪の性質別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集されることを確保すること。 (d) 収集されたデータが、選択議定書を実施するための政策の立案、この目的に向けて達成された進展の評価および予防の基礎として分析されかつ活用されることを確保すること。 (e) さまざまな州および連邦直轄地域に関するデータを収集するための共通指標システムを確立すること。 IV.一般的実施措置 立法 9.人身取引からの子どもの保護を強化した刑事(改正)法(2013年)、ならびに、性的暴行、セクシュアルハラスメントおよび児童ポルノの使用からの子どもの保護を強化した性犯罪からの子どもの保護法(2012年)をはじめ、選択議定書に関連して多数の法律が採択されたことについて締約国を称賛しながらも、委員会は、国内法が、選択議定書で対象とされているすべての犯罪を全面的に編入しているわけではなく、かつこれらの犯罪の禁止および犯罪化の面で調和が図られていないことを懸念する。委員会はまた、取り組みの焦点が主として人身取引に当てられており、選択議定書で対象とされているその他の犯罪、とくに子どもの売買および児童ポルノが適正に考慮されていないことも懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、国内法を選択議定書に調和させるための努力を継続するよう促す。とくに委員会は、締約国が、選択議定書第1条、第2条および第3条に基づく義務にしたがい、子どもの売買(人身取引と類似してはいるものの同一ではない概念)、児童買春および児童ポルノのあらゆる事案を定義しかつ規制するよう勧告するものである。 国家的行動計画 11.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連するさまざまな計画および戦略が採択されたことを評価する。これには、優先的保護分野として選択議定書上の犯罪を対象とし、かつ子どもに影響を与えるすべての法律、政策、計画プログラムの指針となるべき新たな国家子ども政策(2013年)も含まれる。しかしながら委員会は、同政策を運用するための包括的な国家的行動計画がまだ採択されていないことを遺憾に思うものである。 12.委員会は、締約国が、条約の実施のための国家的行動計画(これには、選択議定書で対象とされているすべての犯罪をとくに取り上げた、明確な達成目標および指標をともなう個別の計画または節を含むものとする)を策定するとともに、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう勧告する。この目的のため、締約国は、第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(ストックホルム、1996年)で採択された宣言および行動綱領、ならびに、ストックホルム(1996年)、横浜(日本、2001年)およびリオデジャネイロ(ブラジル、2008年)で開催された第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で表明されかつ新たにされたグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に注意を払うべきである。 調整および評価 13.委員会は、締約国が、旧女性・子ども発達局を女性・子ども発達省に格上げして財源および人的資源も増やすことにより、その権限および調整の役割を強化したことを歓迎する。しかしながら委員会は、これらの措置がまだ、子どもに関連する政策およびプログラムを実施し、かつその実施状況を評価するための、あらゆるレベルにおける省庁間の調整の改善につながっていないことを懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会間の調整を強化するとともに、女性・子ども発達省が、さまざまな部門を横断して、かつ国、州および県のレベルで選択議定書の実施を効果的に調整するための十分な権限ならびに人的資源、財源および技術的資源を有することを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とられた措置の定期的な監視および評価を実施し、当該評価の結果を、選択議定書で対象とされているすべての分野に関するさらなる戦略および政策の策定のために活用することも勧告するものである。 普及および意識啓発 15.締約国が、商業的性的搾取を目的とする子どもの人身取引の防止についての広報戦略の策定といった意識啓発活動を行なってきたことには留意しながらも、委員会は、締約国において選択議定書に関する意識啓発およびその普及を目的とした体系的かつ包括的な活動が行なわれていないことから、公衆一般、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間における、選択議定書に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを懸念するものである。 16.委員会は、選択議定書第9条第2項にしたがい、締約国が、とくに防止措置および選択議定書で対象とされているすべての犯罪の有害な影響に焦点を当てた適切なメディアキャンペーン、啓発キャンペーン、プログラムおよび研修等を通じて、選択議定書の規定が公衆、とくに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家の間で広く知られるようにすることを勧告する。 研修 17.法執行官を対象とした人身取引に関する2年間の研修事業の開始など、子どもとともにおよび子どものために働く専門家・準専門家集団の能力構築を目的として締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、関連の専門家(とくに警察および司法の運営に従事している者)が選択議定書の規定について十分な研修を受けていないこと、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が研修で十分に網羅されていないこと、および、遠隔地の専門家の能力構築を目的とした体系的努力がきわめて限定的であることを懸念する。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) コミュニティその他の関係者の関与を得た参加型のプロセスを通じ、選択議定書で対象とされているすべての分野についての学際的な研修プログラムを開発すること。このような研修は定期的に実施されるべきであり、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団、省庁および機関(遠隔地におけるものを含む)を対象として行なわれるべきである。 (b) 専門家が、選択議定書で対象とされている犯罪から子どもを保護するために自己の知識およびスキルを効果的に実践できることを確保する目的で、裁判官、法執行官(とくに警察)ならびに子どもとともにおよび子どものために働くその他の専門家を対象として行なわれた研修の定期的評価を実施すること。 資源配分 19.子どもに特化した制度への全般的予算供給に関して締約国から提供された情報には留意しながらも、委員会は、子どもの保護に対する予算配分額がきわめて少ないこと、ならびに、資金の不適切な管理および汚職が選択議定書の実施に悪影響を与えていることを懸念する。委員会はまた、選択議定書を実施するための活動に対して配分される特定可能な予算がないことも遺憾に思うものである。 20.委員会は、締約国が、とくに、防止、保護、被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的統合ならびに選択議定書で対象とされている犯罪の捜査および訴追を目的としたプログラムを開発しかつ実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供することにより、国、州および県のレベルにおける選択議定書のあらゆる規定の効果的実施のために、十分なかつ対象の明確な資源が配分されることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が汚職の防止およびこれとの闘いのためにあらゆる必要な措置をとることも勧告するものである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(選択議定書第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 21.委員会は、選択議定書で対象とされている犯罪を防止するために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、とくに児童買春および児童ポルノの防止との関連で、防止措置が依然として不十分かつ断片的であることを遺憾に思うものである。とくに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 指定カーストおよび指定部族出身の子ども、家庭環境を奪われた子ども、路上の状況にある子ども、児童婚の対象とされた子どもならびにセックスワーカーの子どもなど、選択議定書上の犯罪の被害を受けるおそれがある子どもを発見し、特定しかつモニターするために設けられている機構が不十分であること。 (b) ジェンダー差別、文化的ステレオタイプ、貧困、立退きまたは避難および安全性を欠いた移住など、選択議定書上の犯罪との関連で子どもが被害を受けやすい状況に置かれることにつながる根本的原因および助長要因に対処するためにとられた措置が不十分であること。 (c) デーヴァダーシーまたは花嫁購入の慣行など、文化的に認められた有害慣行が蔓延していること。 (d) 性的虐待および性的搾取からの、男子およびインターセックスの子どもの保護が不十分であること。 (e) 利得を目的とした子どもの不法な臓器移植、子どもの売買、ならびに、児童買春および児童ポルノへの子どもの関与の防止を目的としたプログラムについて、またそのようなプログラムの効果について、報告書においても対話の際にも情報が提供されなかったこと。 22.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪の被害を受けるおそれがある子どもを特定しかつモニターするための効果的な機構を設置すること。 (b) 根本的原因およびその規模を明らかにする目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの性質および規模に関する調査研究を実施するとともに、選択議定書上のすべての犯罪に対処するための、包括的なかつ対象を明確にしたアプローチを採用すること。 (c) もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもの集団に特段の注意を払いながら、子どもの売買に相当する、文化的に認められた有害慣行を解消するための努力を強化すること。 (d) 性的虐待からの男子およびインターセックスの子どもの保護委に対処するための重要な措置が防止戦略に編入されることを確保すること。 (e) 選択議定書で対象とされている分野における防止をより効果的なものにする観点から、とくにユニセフおよびその他の国際機関との技術的協力を強化すること。 養子縁組 23.委員会は、非合法な養子縁組の防止を目的とした「子どもの養子縁組を規律する指針」(2011年)の発出をはじめ、不法な養子縁組から子どもを保護するために締約国がとった措置に留意する。しかしながら委員会は、子どもがいまなお不法な養子縁組から十分に保護されておらず、養子縁組目的の子どもの売買が生じる可能性がある状況を招いていることを懸念するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。 (a) 締約国において、規制のない非公式な養子縁組が継続して行なわれていること。 (b) 病院から赤ん坊が盗まれていることとともに、赤ん坊を盗む行為および遺棄する行為全般を防止し、かつその根本的原因に対処するために締約国がとっている措置、ならびに、子どもを盗む行為および行なわれている可能性がある子どもの売買行為について適用される制裁についての情報がないこと。 (c) 「ゆりかご赤ちゃん受け入れセンター」に預けられた子どもの所在に関する情報がないこと。 (d) 締約国において虚偽の出生登録が相当の規模で行なわれており、かつその防止のために十分な努力が行なわれていないこと。 (e) 仲介者が生物学的家族を説得して養子縁組のために子どもを手放させようとすることを防止するための法律上または政策上の措置が不十分であること。 (f) 非合法な養子縁組の禁止、養子縁組斡旋機関の認可に関する規制要件および料金の規制に関する情報がないこと。 (g) 子どものさまざまな権利を侵害し、かつ子どもの売買にもつながりうる代理出産(国際的代理出産を含む)の商業的利用が広く行なわれていること。 24.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 養子縁組のすべての事案が選択議定書ならびに国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の原則および規定に全面的に一致される形で進められることを保障するための政策および法律を策定しかつ実施すること。 (b) 赤ん坊を病院から盗む行為および乳児をゆりかごセンターに遺棄する行為、虚偽の出生登録、ならびに、仲介者が母親を説得して養子縁組のために子どもを手放させようとする行為を防止するためにあらゆる必要な措置(効果的な監視制度の設置を含む)をとるとともに、これらの行為に対して十分な制裁が科されることを確保すること。 (c) 非合法な養子縁組を明示的に禁止するとともに、非合法な国内養子縁組および国際養子縁組を防止するためのプログラムを策定すること。 (d) 斡旋機関の認可および監視ならびに斡旋機関がさまざまなサービスに対して課す料金を効果的に規制すること。 (e) 子どもが搾取されることを防止するため、養子縁組のフォローアップを適宜行なうこと。 (f) 生殖補助医療法案およびそれに続くその他の法律に、代理出産の斡旋の定義、規制およびその規模の監視について定めた規定が掲げられることを確保するとともに、非合法な養子縁組を目的とする子どもの売買を犯罪化すること。 児童セックスツーリズム 25.「安全で名誉ある観光業のための行動規範」(2010年)の採択等を通じ、児童セックスツーリズムと闘うために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、「マッサージパーラー」および「ヘルススパ」との関係で行なわれている児童セックスツーリズムおよび宗教的巡礼者向けの施設における子どもの性的搾取についての報告、ならびに、締約国のさまざまな地域で生じているその他の関連の問題について懸念を覚える。 26.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 児童セックスツーリズムを防止しかつ解消するために、効果的な規制枠組みを確立しかつ実施し、かつ、あらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとること。 (b) 児童セックスツーリズムの事件について捜査が行なわれ、かつ加害者とされる者が訴追および適正な制裁の対象とされることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 児童セックスツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化するとともに、国連世界観光機関の世界観光倫理規範および選択議定書の規定を、旅行代理店および観光業者の間で、法的制裁に関する情報も含めて広く普及すること。 (d) これらの業者に対し、「旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範」署名業者となることを奨励すること。 (e) セックスツーリズムおよび児童ポルノ事案に関するデータが体系的に収集され、かつ、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、州または自治地域、農村部または都市部における居住ならびに被害態様別に細分化されることを確保するとともに、オンラインポルノを摘発するための監視システム(サイバー監視を含む)を設置すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2および3)、第5条~7条) 現行刑事法令 27.委員会は、立法と選択議定書の規定との一致を確保するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の規定の一部が国内法に編入されたにもかかわらず、国内法がいまなお選択議定書と全面的には一致しておらず、かつ法律も全面的に実施されているわけではないことに、懸念とともに留意する。とくに委員会は、以下のことに懸念とともに留意するものである。 (a) 刑法において、子どもの売買および児童買春の具体的かつ包括的な定義が定められておらず、かつ、児童買春を目的とする子どもの提供、入手、周旋または供給が犯罪化されていないこと。 (b) 刑事法(改正)法(2013年)で定められている人身取引の定義で、子どもの場合も含めて実力またはその他の形態の威迫、誘拐、詐欺もしくは欺罔の要素があったことが要件とされており、かつ、人身取引被害者が刑事訴追から明示的に免除されていないこと。 28.委員会は、締約国が、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させ、かつ刑法が実際に効果的に執行されることを確保するよう勧告する。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 選択議定書第2条にのっとり、児童買春の包括的定義を編入すること。 (b) 児童買春を目的とする子どもの提供、入手、周旋または供給を犯罪化すること。 (c) 搾取を目的として子どもを募集し、輸送し、移動させまたは受領することが行なわれた場合に、それが人身取引と判断されるためには実力またはその他の形態の威迫、誘拐、詐欺もしくは欺罔の要素がなければならないとする要件を削除する目的で、刑法を改正すること。 (d) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもは犯罪者とみなされない旨を明示的に規定すること。 不処罰 29.委員会は、選択議定書上の犯罪を行なった者の捜査および訴追が稀にしか行なわれないことに深い懸念を表明する。とくに委員会は、選択議定書で保護されている子どもの権利の侵害に対処するため、時宜を得たかつ子どもにやさしいやり方で対応する法執行官の能力が不十分であり、かつ時として法執行官がそのような対応に消極的であることを懸念するものである。 30.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪への対応において職務怠慢が見られたすべての専門家(とくに法執行官)を捜査し、かつ十分に処罰すること。 (b) 専門的研修を通じ、選択議定書上の犯罪を摘発しかつ訴追するすべての法執行機関および司法機関の能力を強化すること。 (c) 次回の定期報告書で、選択議定書上の犯罪を行なった者の捜査、訴追および処罰に関する具体的情報を提供すること。 域外裁判権および犯罪人引渡し 31.インドの市民がインド領域外で犯罪を行なった場合に締約国が域外裁判権を行使していることには留意しながらも、委員会は、選択議定書上の犯罪についての裁判権では双方可罰性要件の充足が必要とされていることを遺憾に思う。委員会はまた、選択議定書が、その規定に違反した疑いがある者の引渡しのための手段として活用できるか否かについての具体的情報が締約国から提供されなかったことにも留意すべきものである。 32.委員会は、締約国が、国内法において、選択議定書第4条で対象とされているすべての場合について域外裁判権(双方可罰性の基準を満たさない場合の域外裁判権を含む)を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、犯罪人引渡しの法的根拠として選択議定書第5条を活用することを検討するよう勧告するものである。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条(3および4)) 被害を受けた子どもの権利を保護するための措置 33.選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた多くの措置について締約国から提供された情報には留意しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 苦情申立て機構へのアクセス、および、法的責任を負う者に対する被害賠償請求のための十分な手続に関する情報がないこと。 (b) 司法手続におけるビデオ会議および子どもに配慮した空間のような、子どもに配慮した手続が稀にしか利用可能とされないこと。 (c) 刑事司法手続の過程で、被害を受けた子どもに対し、法的援助または児童心理学者およびソーシャルワーカーによる支援が十分に提供されていないこと。 (d) 被害を受けた子どもが時として犯罪者として扱われていること。 34.委員会は、締約国に対し、刑事司法手続および何らかの責任究明手続のあらゆる段階で、選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための措置を強化するよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下のことを確保するよう促すものである。 (a) 自己の権利を侵害された可能性のある子どもにとって、苦情申立て機構へのアクセスおよびその利用が容易であり、かつ助言およびカウンセリングが提供されること。 (b) 子どもに配慮した手続が確立されかつ遵守されること、および、刑事司法制度における子どもの被害者および証人の取扱いに際して子どもの最善の利益が第一次的に考慮されること。 (c) 選択議定書第8条第1項および子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)にしたがい、刑事手続および司法手続のあらゆる段階における子どもの被害者および証人との子どもにやさしい接し方について、すべての専門家が研修を受けること。 (d) 法執行機関、検察官および裁判官が子どもにやさしい手続(子ども向けに設計された事情聴取室、被害を受けた子どものためにひとつの場所で提供される包括的支援サービス、修正を加えた法廷環境および被害を受けた子どもの出廷回数の削減を含む)を適用できるようにするため、十分な技術的資源および財源が提供されること。 (e) 選択議定書上の犯罪の被害を受けたすべての者に対し、資格のある、独立した、無償のまたは補助がある弁護士およびその他の適切な専門家による援助が利用可能とされること。 (f) 被害を受けた子どもが手続において児童心理学者およびソーシャルワーカーの支援を受けられること。 (g) 選択議定書第9条第4項にしたがい、被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできること。 被害者の回復および再統合 35.委員会は、「商業的性的搾取を目的とする人身取引の被害を受けた子どもの事前救出、救出および事後救出活動に関する対応要綱」(2005年)および「子どもの人身取引および移住労働の防止、救出、補償およびリハビリテーションに関する対応要綱」(2008年)の採択をはじめ、人身取引の被害を受けた子どもを対象とする支援サービスを発展させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、回復および再統合のために締約国がとっている措置が限定的であり、かつ、選択議定書で対象とされているすべての犯罪の被害を受けた子どものニーズを十分に考慮したものになっていないことを懸念するものである。委員会は、以下のことをとりわけ懸念する。 (a) 十分な施設が存在しないこと。 (b) 施設の登録に関する認証方法が設けられておらず、かつ、子どものニーズに合わせた十分なカウンセリングサービスおよび心理学的支援が提供されていないこと。 (c) 施設におけるケア、監督およびコミットメントの基準が不十分であること。 (d) 子どもの施設措置の定期的再審査および再検討に関する効果的体制が整備されていないこと。 (e) 被害者が施設を対処すると、再統合のための援助が限定されてしまうこと。 36.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためにあらゆる適切な措置をとるとともに、これらの措置が、子どもの自尊心および尊厳を醸成するような環境で提供されることを確保するよう、促す。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 選択議定書で対象とされているすべての犯罪の被害を受けた子どもに対して回復およびリハビリテーションのための支援を提供する機構およびインフラを確立するとともに、十分な財政的および技術的支援を確保すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者の認識および取扱いに関する医療専門家向け研修の実施を検討する等の手段により、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに対し、適切なケア、援助およびカウンセリング(被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的および心理的回復のためのものを含む)が提供されることを確保するために、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 子どもの施設措置の定期的再審査および再検討のために効果的措置がとられることを確保すること。 (d) 施設退所者の再統合を、その家族の所在を特定し、かつ家族再統合を確保するためにあらゆる必要な措置をとることなどにより、確保すること。 (e) これらの勧告の実施に際し、ユニセフおよび国際移住機関との技術的協力を強化すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 37.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪について防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を実施するための手続および調整機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 38.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見に掲げられた勧告を関連政府省庁、議会、ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 39.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 40.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって委員会に提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/75.html
総括所見:タイ(第2回・2006年) 第1回(1998年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/THA/CO/2(2006年3月17日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年1月24日に開かれた第1113回および第1115回会合(CRC/C/SR.1113 and 1115参照) においてタイの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.15)を検討し、2006年1月27日に開かれた第1120回会合(CRC/C/SR.1120)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/THA/Q/2)に対する文書回答を歓迎するとともに、多くの懸念領域を明らかにするうえで締約国がとった、開かれたかつ自己批判的な報告アプローチに評価の意を表明する。委員会はさらに、対話の過程で追加的情報を提供するためハイレベルな部門横断型代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、2003年に子ども保護法(B.E. 2546)を採択したことについて締約国を賞賛する。同法は、子どもを、18歳未満であり、差別の禁止および子どもの最善の原則に一致する保護および福祉的援助を受ける資格のある者として定義したものである。委員会はまた、条約の実施を増進させることを目的としたいくつかの法律の採択および改正、とくに国家教育法(1999年)および義務教育法(2002年)ならびに刑事事件における被害者の救済ならびに犯罪者に対する賠償命令および費用支払命令に関する法律(2001年)、ならびに、18歳未満のときに行なわれた犯罪について子どもに死刑および終身刑を科すことはできない旨の刑法改正(2004年)も歓迎する。加えて、委員会は、国家人権委員会および子ども・青少年・家族小委員会、国家子どもの保護委員会ならびに県子どもの保護委員会をはじめ、同国における子どもの権利の促進および保護を増進させる諸機構が設置されたことに、評価の意とともに留意するものである。 4.委員会は、多くの国際人権文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。 (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する1966年の国際規約(1999年9月5日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する1999年のILO第182号条約(2001年2月16日)。 (c) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する1980年のハーグ第28号条約(2002年8月14日)。 (d) あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する1965年の国際条約(2003年1月28日)。 (e) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ第33号条約(2004年4月29日)。 (f) 就業が認められるための最低年齢に関する1973年のILO第138号条約(2004年5月11日)。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、2004年12月26日のインド洋津波によって引き起こされた異例な自然災害によってタイ東南部沿岸が大規模に破壊された結果、多くの経済的および社会的困難が生じ、かつ多くの子どもの生活が影響を受けたことを認知する。委員会はまた、タイ最南部諸県の騒乱が同国における全般的な人権の発展に悪影響を与えた結果として締約国が直面している課題も、認知するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.13)の検討後に採択された総括所見(CRC/C/15/Add.97)に掲げたさまざまな懸念および勧告について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに刑事責任に関する最低年齢、出生登録、無国籍、子どもの難民および庇護希望者に関するそれについては、十分な対応が行なわれていない。 7.委員会は、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、これらの懸念および勧告に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。 留保 8.委員会は、締約国が自国の留保を見直すために努力を行ない、かつ条約第7条および第22条を部分的に遵守していることには留意するものの、これらの留保が維持されていることを遺憾に思う。 9.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国が留保を付さずに批准した、市民的および政治的権利に関する国際規約第2条および第24条に対して締約国の注意を促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画(A/CONF.157/23)にしたがって、条約第7条および第22条に付した留保を撤回するよう促すものである。 立法 10.委員会は、国内法を条約に一致させるために締約国がとった措置、とくに子ども保護法に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約の原則および規定の全面的遵守を確保するため、法律に触れた子ども、人身取引、児童労働および子どもに対する暴力のような分野における、とくに地方レベルでのこれらの法律の実施および執行に対し、さらなる注意を払う必要があることに留意するものである。委員会はまた、一部の現行法(たとえば刑事責任に関する最低年齢を7歳と定めた刑法)においていまなお条約が遵守されていないことにも留意する。 11.委員会は、締約国に対し、自国の法律を条約の原則および規定と全面的に調和させるための努力を継続するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の保護を向上させる目的で、とくに議員および法執行官に対する普及ならびに意識啓発活動を通じ、国内法の全面的かつ効果的実施を確保するための努力を継続するようにも奨励するものである。 12.委員会は、同国における子どもの権利の促進および保護に多数の政府省庁その他の機関が関与していることに留意する。国家青少年局の役割は認識しながらも、委員会は、とくに県、郡および地方のレベルでこれらの機関間の調整が限られていることを懸念するものである。 13.委員会は、国内法および条約の全面的かつ効果的実施を確保する目的で、締約国があらゆるレベルで調整システムを強化するよう勧告する。 国家的行動計画 14.委員会は、2002年の国連総会子ども特別会期で採択された「子どもにふさわしい世界」と題する成果文書を実施するための国家戦略および行動計画(2005~2015年)が導入されたことを歓迎する。 15.委員会は、国家戦略および行動計画において条約のすべての領域が対象とされ、かつ、あらゆる段階で当該戦略および行動計画を全面的かつ効果的に実施するために十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、実施プロセスのあらゆる側面に市民社会(子どもおよび若者を含む)が広く参加することを確保するようにも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、国家戦略および行動計画の実施、成果および評価に関する情報を次回定期報告書で提供するよう要請する。 独立の監視 16.委員会は、独立の監視機構、とくに議会オンブズマンならびに国家人権委員会および子ども・青少年・家族小委員会が設置されたことを歓迎する。委員会はとくに小委員会が行なっている活動、とりわけ、子どもの権利の促進および保護に責任を負う機関および施設に対する査察訪問および監視、ならびに、子どもおよび若者に関する苦情の調査のための活動に留意する。にもかかわらず、委員会は、国内のすべての子どもがこれらの機関にアクセスしかつこれを利用できるかどうか、ならびに、これらの機関にどの程度の資源が配分されているかについて懸念を覚えるものである。委員会はまた、国家人権委員会の勧告が関連の公的機関によって十分に実施されかつフォローアップされていないことも懸念する。 17.委員会は、締約国が、独立した国内人権機関の役割の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2参照)を考慮に入れながら、国家人権委員会および議会オンブズマンがすべての子どもにとって容易にアクセス可能であり、かつ利用者にやさしいものとなることを確保するため、あらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、締約国に対し、子どもが既存の苦情申立て機構を効果的に利用することを促進するための意識啓発の努力を強化するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、国家人権委員会および議会オンブズマンに対して十分な人的資源および財源が提供されること、ならびに、その勧告が全面的にかつ真剣にフォローアップされることを確保するようにも勧告する。 資源配分 18.委員会は、教育、公衆衛生および社会サービスを対象とする社会開発への予算配分が報告対象期間中に増加したこと、および、子どもとその家族に対して福祉的援助を提供し、かつ県の機関が実施する子どものためのプロジェクトおよび活動を支援する子ども保護基金が創設されたことに留意する。しかしながら委員会は、多くの分野で、とくに県および郡のレベルにおける予算配分ならびにもっとも脆弱な立場におかれた集団の子どもに対して配分されている資源の割合に関する情報が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、社会開発・人間の安全保障省が郡レベルで出先機関を有していないこと、および、タムボンまたはコミュニティのレベルで社会福祉サービスを提供する政府の能力が限られていることにも、懸念とともに留意するものである。 19.委員会は、締約国が、次回定期報告書で、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもに重点を置きながら、国および県以下の双方のレベルにおける予算配分について情報を提供するよう勧告する。委員会は、条約第4条に照らし、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもの権利の実施を確保するための予算配分を、あらゆるレベルで優先させるよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、タイにおける子どもの権利の実施を促進する目的でマルチセクター的対応をさらに強化するため、国および県以下の双方のレベルにおいて社会開発・人間の安全保障省への十分な資源配分を確保するよう、奨励する。 データ収集 20.委員会は、同国のすべての子どもに関するデータ収集を改善するために行なわれた努力および取り組みに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、データ収集機構が依然として縦割りであり、かつ、条約が対象とするすべての分野についての細分化されたデータの体系的かつ包括的収集を確保するには不十分であることを、懸念するものである。 21.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、データ収集システムを強化しかつ中央集権化し、ならびに、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(たとえば先住民族およびマイノリティの子ども、最南部諸県の子ども、障害のある子ども、虐待およびネグレクトの対象とされた子ども、貧困下で暮らしている子ども、法律に触れた子ども、子どもの移民および難民、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもならびにセックスワーカーの子どもなど)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての子どもに関する細分化されたデータを体系的に統合しかつ分析するよう、促す。委員会は、締約国に対し、条約の効果的実施を目的とした法律、政策およびプログラムの立案のためにこれらの指標およびデータ効果的に活用するよう、奨励するものである。 条約の普及 22.委員会は、定期報告書の作成に市民社会の構成員(子どもを含む)の参加を得るために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、条約がタイ語およびさまざまな地方方言に翻訳されたことならびに音声および点字で利用可能とされていることを含め、条約を普及するために締約国が行なった努力にも、評価の意とともに留意するものである。委員会は、条約および子どもの権利一般に関するさまざまな研修講座および研修プログラムが開発されており、かつ、子どもの権利の問題が初等中等段階における国全体の公立学校カリキュラムの一部となっていることを、心強く思う。これらの努力にも関わらず、委員会は、条約に関する子どもおよび一般公衆の意識が全体として不十分なままであることを依然として懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなによっても子どもによっても広く認識されかつ理解されることを確保するための努力を継続しおよび強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに遠隔地において、子どもおよびおとなの間で引き続き条約を普及しかつ条約に関する意識を高めるよう、奨励するものである。委員会はまた、締約国に対し、条約を促進しおよび教授するための創造的かつ子どもにやさしい手法を引き続き開発することも慫慂する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止に対する権利 24.委員会は、とくに女子、先住民族および宗教的または民族的マイノリティ・コミュニティの子ども、難民および庇護希望者の子ども、移住労働者の子ども、ストリートチルドレン、障害のある子ども、農村部に住んでいる子どもならびに貧困下で暮らしている子どもとの関連で、条約第2条に反し、子どもに対する直接差別および間接差別の双方が根強く残っていることを懸念する。委員会はまた、とくに最南部諸県において、社会サービス、保健サービスおよび教育サービスへのアクセスの面で地域格差が存在し続けていることも懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障する現行法を効果的に実施することにより、条約第2条にしたがい、その管轄内にあるすべての子どもが差別の禁止を基盤として条約に掲げられたすべての権利を享受できることを確保するため、より効果的な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(イスラム教徒、移民および難民の子どもを含む)のための社会サービスおよび保健サービスに優先的に取り組み、かつこれらの子どもに平等な教育機会を確保するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを実施するよう勧告する。 26.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年、CRC/GC/2001/1)も考慮にいれながら、次回定期報告書に記載するよう要請する。 生命、生存および発達に対する権利 27.委員会は、同国最南部諸県における暴力および騒乱が子どもおよびその家族に重大な影響を及ぼしており、かつ生命、生存および発達に対する子どもの権利を危険にさらしていることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの諸県で暴力を生き残りおよび目撃した子どもを対象とする、リハビリテーション、カウンセリングその他の援助のためのプログラムが存在しないことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、同国の元子ども兵士(その一部は難民キャンプにいる可能性がある)の状況についても懸念を覚える。 28.委員会は、締約国に対し、対象を明確にした政策、プログラムおよびサービスを通じて、とくに元子ども兵士および同国最南部諸県の子どもとの関係で締約国のすべての子どもの生命、生存および発達に対する権利の保護を強化するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、騒乱の影響から子どもを保護し、かつ社会への子どもの再統合を確保することも促すものである。委員会はまた、締約国に対し、暴力および紛争の影響を受けた子どもを心理社会的に支援しかつ援助するための包括的システムを、非政府組織および国際機関と連携しながら発展させることも促す。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、とくに年1回の子どもの権利フォーラムの開催ならびに青少年評議会および青少年ネットワークの設立を通じ、自己の意見を自由に表明しかつ社会に参加する子どもの権利を促進しかつ尊重するために締約国がとっている行動を、心強く思う。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ひとつには社会の伝統的態度を理由として、自由な表現および参加に対する子どもの権利が締約国においてはいまなお制限されているという見解に立つものである。委員会はまた、子どもが被害者、証人または犯罪容疑者として関与する裁判手続において、子どもの意見の尊重が全面的に考慮されていない可能性があることも、懸念するものである。 30.委員会は、条約第12条、第13条および第15条にしたがい、締約国が、家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもが自己に影響を与えるすべての決定に積極的に参加しかつ関与することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつ政策立案、裁判所の決定およびプログラムの実施にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうことも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20)にしたがい、子どもに配慮した裁判手続を改善するよう勧告する。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 31.子ども関連法改正小委員会による立法上の提案および「法的地位およびアイデンティティに対する権利の問題に対応するための戦略」の採択(2005年1月)をはじめ、締約国がこの分野で行なっている努力にも関わらず、委員会は、とくに同国の最遠隔地および津波の影響を受けた地域で、出生を登録されないままの子どもが多数存在することを懸念する。委員会はまた、移住労働者、難民および庇護希望者の子どもならびに先住民族およびマイノリティのコミュニティの子ども、とくに病院外で出生したこれらの子どもの登録を確保するうえで困難が根強く残っていることも懸念するものである。委員会はさらに、法執行が弱いことならびに出生登録の重要性および利益についての公衆の意識が限定的であることを懸念する。 32.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、条約第7条にしたがい、締約国が、締約国の全領域のすべての子ども、とくに移民および難民である子ども、先住民族およびマイノリティのコミュニティに属する子どもならびに最遠隔地または津波の影響を受けた地域に住んでいる子どもが出生登録システムに平等にアクセスできることを確保するため、国内法、とくに1991年住民登録法(B.E. 2534)の見直しを引き続き進めるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、以下の措置をとることによって現行出生登録システムを改善するよう勧告するものである。 (a) 領域内の最遠隔地も対象とすることができるようにするため、移動出生登録班および公衆意識啓発キャンペーンを導入すること。 (b) 同国における出生登録率の向上を達成するため、出生登録担当機関と産婦人科診療所、病院、助産師および伝統的出産立会人との間の協力を強化すること。 (c) 引き続き、出生登録に関する明確な指針および規則を策定し、かつ国および地方レベルの官吏に向けて広く普及すること。 (d) 出生を登録されておらず、かつ公式な身分登録書類を有していない子どもが、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスにアクセスできることを確保すること。 名前、国籍およびアイデンティティ 33.委員会は、タイに在留している相当数の子どもが無国籍のままであり、そのため、このような子どもが、教育、発達ならびに社会サービスおよび保健サービスへのアクセスを含む権利を全面的に享受することについて悪影響を受け、かつ虐待、人身取引および搾取の被害を受けやすい状態に置かれていることを懸念する。 34.委員会は、締約国が条約第7条および第22条に付した留保を撤回するべきであるという前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、タイで生まれかつその管轄下で暮らしているすべての無国籍者がいずれかの国の国籍を取得できること(タイ国籍を取得する可能性も含む)を確保するための措置を引き続き実施するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、無国籍者が社会サービスおよび保健サービスならびに教育にアクセスできることを確保するための具体的措置をとることも促すものである。 プライバシーの保護 35.プライバシーに対する子どもの権利を保護する国内法が存在することには留意しながらも、委員会は、締約国の努力にも関わらず、被害を受けた子どもの身元および写真がメディアで公表されていることに、懸念とともに留意する。これは、条約第16条および子どものプライバシーを尊重する国内法の明白な違反である。 36.委員会は、締約国に対し、タイで放送されるすべての素材においてプライバシーに対する子どもの権利が尊重されることを確保するため、行動規範および(または)自主規制のような機構を確立するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、メディアの専門家を対象として、プライバシーに対する子どもの権利に特段の注意を払いながら、適切な人権研修が行なわれることを確保するようにも促すものである。 情報へのアクセス 37.委員会は、メディアの子ども向け番組を増やすために締約国がとった措置、および、ゴールデンタイムに放送される子ども、若者および家族向け番組の時間数を評価する。しかしながら委員会は、番組の質について懸念を覚えるものである。刺激的素材抑止措置法案が内閣で検討されていることには留意しながらも、委員会は、メディアで公表される素材およびインターネットで利用可能な素材のなかに子どもにとって有害なものがあることを懸念する。さらに委員会は、情報通信技術省の努力には留意しながらも、メディアおよびインターネットを通じて送出される暴力およびポルノ等の有害な情報にさらされることから子どもを保護するための体系的なメディア監視機構が国および国以下のレベルでなんら存在しないことに、懸念を表明するものである。 38.委員会は、ラジオおよびテレビの放送事業者との協力を通じ、主として子どもおよび若者向けに制作されるメディア番組の質および適正さを監視しかつ向上させるための機構を設置するよう、勧告する。さらに委員会は、条約第17条に照らし、締約国が、メディアおよびインターネットを通じて送出される暴力およびポルノ等の有害な情報にさらされることから子どもを保護するため、親、保護者および教員向けの助言キャンペーンならびにインターネット・サービス・プロバイダとの協力を含む、あらゆる必要な法的その他の措置をとるよう勧告するものである。 体罰 39.委員会は、学校における体罰の使用を禁止しようとする締約国の努力に留意し、かつ、刑事施設における体罰の使用を禁じた最近の省令に留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭および代替的養護環境における体罰が法律で明示的に禁じられていないことを遺憾に思うものである。さらに、委員会は、被害を受けた子どもは恐れて苦情申立てを行なわないことが多く、かつ被害を受けた子どもに対して援助が利用可能とされることもめったにないことを締約国が認めたことに留意する。 40.委員会は、体罰は条約の規定と両立せず、かつ、条約第28条2項でとくに求められている子どもの尊厳の尊重の要件と一致しないことをあらためて指摘する。したがって委員会は、締約国に対し、家庭および学校における子どもへの暴力についての一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/111参照)を考慮に入れながら、家庭および代替的養護環境におけるあらゆる形態の体罰を法律で禁止するよう、促すものである。 41.委員会は、締約国が、体罰の有害な影響に関する公衆意識啓発キャンペーンを実施することにより、親その他の養育者、法執行官ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、体罰に代わる手段として、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、子どもに配慮した特定の苦情申立て機構およびサービスを設置し、かつ、すべての子どもがこれらの機構にアクセスできることを確保するようにも勧告する。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 代替的養護 42.委員会は、さまざまな政府省庁によって運営されている、子どもに代替的養護を提供するためのさまざまなプログラムおよび機構(里親養護制度、福祉ホームおよびその他の施設)に留意する。しかしながら委員会は、代替的養護施設に措置された子どもの状況ならびにこのような施設を規律する基準および規則についての情報が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、このようなプログラムおよび施設を監視しおよび監督する機関についての情報が存在しないことも懸念する。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活条件、養護計画および提供されているサービスも含む)を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) 既存の施設および里親養護制度についての明確な基準(条約第9条にしたがって意思決定プロセスに子どもおよびその親の関与を得るための規則を含む)を定めるとともに、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。 (c) 子どもの権利の保護を確保する目的で、すべての代替的養護施設およびプログラムが十分に監視されること(独立した苦情申立て機構および非政府組織による監視を含む)を確保するとともに、子どもがこれらの苦情申立て機構に容易にアクセスできるようにすること。 (d) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族に復帰できるようにし、かつ施設への子どもの措置を最後の手段として用いるようにするため、あらゆる必要な措置を追求すること。 暴力、虐待、不当な取扱いおよびネグレクト 44.締約国が行なっている努力は認め、かつタイ憲法(1997年)第53条には留意しながらも、委員会は、同国におけるドメスティック・バイオレンス、児童虐待およびネグレクトの報告件数が増えていることを深く懸念する。委員会は、性的虐待を含むあらゆる形態の虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの処罰に関する国内法の顕著な欠陥(たとえば刑法の規定では強姦の被害を受けた女性しか保護されない)に懸念を表明するものである。委員会はまた、子どもに対する暴力事案についての全国的なデータ収集システムが存在しないことにも懸念を表明する。 45.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の虐待(性的虐待を含む)、ネグレクト、不当な取扱いおよび暴力を処罰し、かつ子どもを対象としたこれらの犯罪の定義を明確に定める目的で、国内法を見直すこと。 (b) 児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について時宜を得た十分な調査を行なうとともに、暴力および虐待の被害を受けた子どもが、十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 性的虐待の被害者および虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害を受けたその他のすべての子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のために利用可能なサービスを設置しまたは拡大すること。 (d) 非政府組織との協力等も通じ、被害者が犯罪者として扱われかつスティグマを付与されることを防止するためにあらゆる適当な措置をとること。 (e) 被害者が援助を求めることを抑止する社会文化的障壁についても取り上げながら、子どもの不当な取扱いの影響に関する公衆教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを実施すること。 (f) 子どもに対する暴力についてのデータ収集システムを確立するとともに、この現象を防止しかつ減少させることを目的とした、この問題に関するさらなる分析を行なうこと。 46.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、締約国がアジア・太平洋地域協議(2005年6月14日~16日)の受入れ国を務め、かつアンケートに対する文書回答を提出したことを、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的または精神的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための、具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告するものである。 母親とともに刑務所にいる子ども 47.委員会は、タイにおける女性の収監率が高く、そのなかには妊娠している者または子どもがいる者もいることに、懸念とともに留意する。委員会は、量刑に関する決定において、子どもの最善の利益、および、子どもの養育責任を有する母親としての女性の役割が一貫して考慮されていないことを懸念するものである。委員会はまた、死刑を言い渡された妊婦が分娩後に処刑される可能性があることにも、特段の懸念とともに留意する。母親とともに刑務所で暮らしている子どもについて、委員会は、子どものいる女性は一般の受刑者から分離されていることに留意するものの、過密した劣悪な拘禁環境および不十分な職員体制について懸念を表明するものである。 48.委員会は、被告人が子どもの養育責任を有しているときは、子どもの最善の利益の原則(第3条)が、権限のある専門家によって注意深くかつ独立の立場から考慮され、かつ、拘禁に関するあらゆる決定(公判前の勾留および刑の言い渡しを含む)ならびに子どもの措置に関する決定において考慮されるべきことを勧告する。委員会は、収監された母親から分離された子どもの代替的養護が定期的に再審査され、かつ子どもの身体的および精神的ニーズが適切な形で満たされるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、代替的養護において子どもが収監されたままの母親との個人的関係および直接の接触を維持できることを、引き続き確保するよう勧告する。母親とともに刑務所で暮らしている子どもについて、委員会は、締約国が、条約第27条にしたがい、刑務所の生活条件が子どもの乳幼児期の発達にとって十分であることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この点についてとくにユニセフその他の国連機関の援助を求めるよう奨励するものである。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 49.委員会は、障害のある子どもがすべての人権および基本的自由(普通教育および特別教育ならびに職業訓練へのアクセスを含む)を全面的に享受することを促進するため、締約国が多くの具体的措置をとってきたことに、評価の意とともに留意する。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、同国の遠隔地に住んでいる障害児が十分な保健サービスおよび社会サービスならびに教育にアクセスできていないことを懸念するものである。委員会はまた、障害のある子どもに関するデータが不十分でありかつ整合性を欠いていること、ならびに、これらの子どものための官民のサービスが標準化されていないことに関する締約国の懸念も共有する。 50.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を策定しおよび採択し、ならびに計画の実施のために必要な財源および人的資源を配分すること。 (b) 障害のある子どもの権利、特別なニーズおよび可能性に関する意識啓発を図ること等により、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止するとともに、障害のある子どもが生活のあらゆる領域に完全に参加するための平等な機会を確保すること。 (c) 障害のある子どものための官民のサービスを標準化し、かつ、これらのサービスのアクセス可能性および質を監視すること。 (d) 障害のある子どもに対し、学校への物理的アクセスおよび適当な情報通信手段へのアクセスを提供すること。 (e) 国内の遠隔地に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関するデータ収集機構を確立し、かつ、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際にこれらのデータを活用すること。 健康および保健サービス 51.プライマリーヘルスケアを向上させるために締約国が行なっている努力、とくに予防接種プログラムに評価の意とともに留意し、かつ、乳幼児および妊産婦の死亡率の削減に関して達成された進展にも留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、保健サービスのアクセス可能性に関する地域格差、子どもの栄養不良(とくにヨウ素欠乏症および鉄欠乏症)の蔓延状況ならびに同国における地中海貧血の発生について懸念する。委員会はまた、母乳育児率が低いことも懸念するとともに、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の規定が法制化されていないことに、懸念の意とともに留意するものである。 52.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 同国のすべての地域の子ども(遠隔地に住んでいる子どもも含む)が良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保すること。 (b) 同国の遠隔地に住んでいる母子に特段の注意を払いながら、産前ケアを向上させ、かつ妊産婦、乳児および5歳未満児の死亡率を削減するための努力を継続すること。 (c) とくに、締約国がヨウ素添加塩完全普及(USI)および鉄欠乏症根絶に関する目標を達成することを確保するための法律および政策を導入することを通じ、子どもの栄養状態を向上させること。 (d) 働く母親が必要している支援を考慮に入れながら、生後6か月間は母乳のみを与え、その後適切な乳児食を加える育児を引き続き奨励すること。 (e) 早期発見治療プログラム等も通じ、同国における地中海貧血の発生件数を削減するための努力を継続すること。 (f) この問題に関して、とくに世界保健機関(WHO)および国連児童基金(ユニセフ)と引き続き協力し、かつその技術的援助を求めること。 思春期の健康 53.委員会は、青少年による薬物の使用が犯罪の問題ではなく医学的問題として扱われるようになったことに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、タバコおよびアルコールの広告が禁止されるようになったことを評価するものである。しかしながら委員会は、青少年による薬物およびアルコールの消費率が高いままであることを懸念する。 54.委員会は、子どもおよび青少年をとくに対象とした、薬物およびアルコールに関する意識啓発およびその使用の防止のための効果的プログラムを引き続き促進するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、薬物およびアルコールに依存する子どもおよび青少年に対し、治療およびリハビリテーションのためのプログラムを引き続き提供するようにも勧告するものである。 環境衛生 55.委員会は、大気汚染および環境悪化のような広範な環境問題(自治体廃棄物および産業廃棄物の処理に関わる欠点も含む)が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることを懸念する。とくに農村部の家庭にとって水および衛生設備の状況が改善したことには留意しながらも、委員会は、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関する地域格差に懸念を覚えるものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに同国の遠隔地において、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させるための効果的措置を引き続きとること。 (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。 HIV/AIDS 57.委員会は、ミレニアム開発目標6を期限前に達成したことについて締約国を賞賛する。委員会は、HIV/AIDSの予防および削減のためにとられたさまざまな部門横断型の措置を歓迎するとともに、妊婦を対象として任意の相談および無償のHIV検査を実施するHIV/AIDS母子感染予防(PMTCT)国家プログラムに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、HIV/AIDSの母子感染のおそれがある状況のもとで出生する子どもの年間割合が相対的に高いことに、懸念を表明する。委員会は、HIV/AIDSに関する青少年の意識水準が低下する一方で、青少年のHIV感染リスクが高まりつつあることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、セックスワーカーが多数存在することのような、HIV感染の可能性を高めるリスク要因が存在することも懸念する。さらに、委員会は、他のいくつかの国々との間で現在交渉が進められている自由貿易協定により、負担可能な医薬品、とくに抗レトロウィルス薬へのアクセスに悪影響が生じる可能性があることを懸念するものである。 58.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、引き続き以下の措置をとるよう勧告する。 (a) コミュニティ段階の現実をとくに反映した政策およびプログラムを採択しおよび実施し、ならびに、地域レベルにおけるプログラムの立案、実施および監視に対していっそうの技術的および財政的支援を提供することにより、HIV新規感染を予防するための部門横断型の措置をとること。 (b) すべての妊婦に十分な保健サービスおよび社会サービスを無償で提供し、かつ、HIV陽性の母親に抗レトロウィルス薬および乳児用調合乳を提供することにより、HIV/AIDS母子感染予防(PMTCT)国家プログラムを全面的に実施すること。 (c) HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもに対する差別を防止しかつ禁止するとともに、これらの子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (d) 子どもが必要とするときは、親の同意を得ることなく、子どもに配慮し、かつ秘密が守られるHIV/AIDS相談にアクセスできることを確保すること。 (e) 学校および高等教育段階のカリキュラムに、HIV/AIDSに関する正確かつ包括的な情報および性教育(コンドームの利用促進を含む)を体系的に含めるとともに、教員その他の教育担当職員を対象としてHIV/AIDSに関する教育および性教育についての研修を実施すること。 (f) 地域的その他の自由貿易協定が、健康に対する権利の子どもによる享受に悪影響を及ぼさないことを確保すること。より具体的には、当該協定により、子どものための医薬品の入手可能性に悪影響が生じないことを確保すること。 (g) とくに国連合同エイズ計画の技術的援助を求めること。 59.委員会はまた、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/80、パラ243)を考慮すること等により、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重を統合し、かつ当該策定および実施に子どもの参加を得るようにも勧告する。 生活水準 60.タイにおける貧困削減のために締約国が行なっている努力(子ども保護基金の設置を含む)がきわめてうまくいっているにも関わらず、委員会は、貧困者の36%が子どもであること、および、地域によって所得水準に大きな格差があること(北部および東北部ならびに最南部3県が経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域である)に、懸念とともに留意する。委員会は、貧困下で暮らしている子ども、とくに親を失った子ども、ストリートチルドレン、障害のある子どもならびに先住民族およびマイノリティのコミュニティに属している子どもが、社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスを含む人権の全面的享受に関して困難に直面していることを、深く懸念するものである。 61.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、とくに北部、東北部および最南部3県における効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国が、とくに、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を策定しおよび実施する能力を増進させ、かつ、社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに十分な住居へのアクセスを確保することを通じ、貧困下で暮らしている人々の生活水準を向上させるための努力を強化するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、貧困下にある子どもおよび家族に対して使途が指定された資金ならびに具体的な援助および支援を提供するための努力を強化することも要請する。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 62.委員会は、義務教育の就学年数を6年から9年に延長し、最長12年間の無償教育を提供し、ならびに教育へのアクセスを拡大し、教育上の便益を改善しおよび地方言語またはマイノリティ言語で教育を提供するための、さまざまな立法上、行政上、政策上および予算上の措置を歓迎する。とくに委員会は、登録されていない子ども(登録されていない移民の子どもを含む)および無国籍の子どもが普通教育制度にアクセスできるようにする旨の、2005年7月5日の内閣決議を歓迎するものである。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、一部の子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもがいまなお良質な教育に平等にアクセスできていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、就学前教育のための便益が限られていることおよび初等中等段階における中退率が依然として高いことも懸念するものである。 63.委員会は、締約国に対し、登録されていない子どもが普通教育制度にアクセスできるようにする旨の内閣決議を全面的に実施し、かつ、地方レベルで同決議を十分に実施するために十分な資源を配分するよう促す。条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告するものである。 (a) 同国のあらゆる地域で、就学前教育のための負担可能な便益を拡大すること。 (b) 初等中等学校における中退率を減らすための効果的措置をとること。 (c) 先住民族およびマイノリティの子どもが、それぞれに異なる文化的様式を尊重し、かつ先住民族およびマイノリティの言語を使用する良質な教育に平等にアクセスできるようにするための努力を継続すること。 (d) 自己の言語および宗教を学ぶマイノリティの権利を尊重しつつも子どもが同一の教育カリキュラムによる教育を受けることを確保し、かつ、教育を受けるすべての子どもが急進的な政治的または宗教的イデオロギーから保護されることを確保するため、締約国の管轄内にあるすべての学校が教育省によって監督されることを確保すること。 (e) もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する、締約国の最南部諸県の子どもたちに対して良質な教育への平等なアクセスを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (f) 職業教育の利用可能性を拡大し、かつその質を向上させること。 (g) 教育部門の改善のため、とくに国連教育科学文化機関(ユネスコ)およびユニセフ、ならびに非政府組織と協力すること。 教育の目的 64.委員会は、部分的には教授法の質が貧弱であることおよび資格のある教員が足りないことにより、教育の全般的質が低いことを懸念する。委員会は、とくに子どもがより高い学習段階に進むにつれて高まる、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもにさらなる負担が課されており、かつ子どもが可能な最大限度まで発達することが損なわれている可能性があることに、懸念とともに留意するものである。これとの関連で、委員会は、一部の子どもが放課後に塾に通っていることにより、休息、余暇、遊び、文化的活動およびレクリエーション活動の可能性が制限されており、かつ追加的費用が生じていることに、留意する。さらに、委員会は、多くの学校でスポーツおよびレクリエーションの機会が不十分であることに留意するものである。委員会はまた、人権および子どもの権利に関する教育学習活動が教員の裁量に委ねられており、すべての学校で義務的とされていないことも懸念する。 65.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)を考慮に入れながら、以下の目的のためにあらゆる措置をとるよう勧告する。 (a) 教員養成および資格のある教員(とくに女性ならびにマイノリティおよび先住民族集団の出身者)の採用拡大等も通じ、教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。 (b) 教育制度の競争性の緩和に努め、かつ主体的学習能力を促進するような方法で教育の質を増進させるとともに、学校における文化的生活、芸術、遊びおよびレクリエーション活動の促進等も通じ、子どもの人格、才能および能力を可能な最大限度まで発達させることを促進するための努力を強化すること。 (c) カリキュラムの一部としてスポーツおよびレクリエーション活動を提供すること。 (d) 子どもの権利に関する教育も含む人権教育の授業が、あらゆる教育段階の、公立および私立双方の学校で義務的とされることを確保すること。 8.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 難民および庇護希望者の子ども 66.タイで生まれた子どもの出生登録および国籍に関する法律の起草が現在進められていることには留意しながらも、委員会は、タイにおいて難民および庇護希望者の子どもを保護するための法的枠組みが存在せず、かつ国際法に違反する送還の可能性があることを深く懸念する。委員会はまた、虐待および搾取の被害をとくに受けやすい、保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもについても懸念を覚えるものである。さらに、委員会は、難民キャンプに収容される可能性がある元子ども兵士を含む子どもの安全について懸念を覚える。委員会は、締約国が1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書を批准しておらず、かつ条約第7条および第22条に付した留保を撤回していないことを遺憾に思うものである。 67.委員会は、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民を保護するための法律の採択および実施、ならびに、これらの子ども、とくにキャンプにいる子どもの安全を保障する政策およびプログラムが実施されることの確保を緊急に行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、これらの子ども、とくに元子ども兵士に関わる決定にノン・ルフールマンの原則が反映されることを確保するよう促すものである。委員会はまた、前回の勧告をあらためて繰り返し、締約国に対し、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書を批准するよう促す。 移住労働者の子ども 68.移住労働者の子どもを登録するために締約国が行なっている努力は認めながらも、委員会はなお、このような子どもがタイにおいて脆弱な立場に置かれていることを深く懸念する。地方警察による恣意的逮捕および拘禁のような、移住労働者およびその家族構成員に対する人権侵害の訴えがあることは、重大な懸念の理由となるものである。委員会は、多くの家族が、幼い子どもがいる妊婦でさえも、迫害されるのではないかという恐怖を有しているにも関わらず送還されていることを遺憾に思う。加えて、委員会は、移住労働者の子どもがさまざまな保健サービスおよび教育サービス(HIV/AIDSの予防およびケアに関するものを含む)にアクセスできておらず、その生活環境がしばしば著しく劣悪であり、かつ、その多くが有害な条件下で長時間働いていることに、特段の懸念とともに留意するものである。 69.委員会は、移住労働者の子どもまたはその家族構成員、とくに登録されていない移住者が恣意的に逮捕され、拘禁されまたは迫害されないこと、および、これらの者が出身国に送還されるときはノン・ルフールマンの原則が尊重されるべきことを確保するため、締約国が緊急の措置をとるよう勧告する。委員会は、差別の禁止の原則にしたがい、移住労働者の子どもが保健サービスおよび社会サービスならびに教育へのアクセスを保障されるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利に関する国際条約を批准するよう勧告する。 経済的搾取および児童労働 70.委員会は、最悪の形態の児童労働を撤廃するための国家行動計画(2004~2009年)が導入されたことに留意する。委員会はまた、締約国が国際労働機関の児童労働撤廃国際計画(ILO/IPEC)と協力していることにも、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的な措置にも関わらず、委員会は、締約国において児童労働を含む経済的搾取が広範に生じていることを依然として懸念する。委員会はまた、労働保護法においてインフォーマル部門(たとえば農業、小規模家内企業および家事労働)で働く子どもが対象とされていないことも懸念するものである。 71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内の労働法を効果的に実施すること。 (b) 労働保護法の適用範囲を拡大することにより、インフォーマル部門で働く子どもの保護を確保すること。 (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するために労働監察制度を改善するとともに、当該制度が子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告できるようにすること。 (d) 労働に従事する子どもが引き続き教育、訓練およびレクリエーションにアクセスできることを確保すること。 (e) 引き続き、ILO/IPECの地域活動および地域間活動に積極的に参加すること。 性的搾取および子どもの人身取引 72.委員会は、売買春防止・抑止法(1996年)ならびに「商業的性的搾取の防止およびこれとの闘いに関する行動計画」の採択をはじめ、子どもの性的搾取と闘うために締約国が行なっている真剣な努力に留意する。しかしながら委員会は、締約国において児童買春、セックス・ツーリズムおよび児童ポルノを含む性的搾取が広範に生じていることに、懸念を表明するものである。 73.人身取引防止・抑止国家委員会の設置(2005年3月)、子どもおよび女性の人身取引問題に対処するための6か年国家計画および行動計画の採択(2003年)ならびに近隣諸国との了解覚書の締結のような、子どもの人身取引と闘うための努力を締約国が強化しているにも関わらず、委員会は、タイが性的搾取および強制労働目的の子どもの人身取引の送り出し国、通過国および目的地国となっていることに、深い懸念を表明する。委員会は、少数民族および部族民に属する女子が北部から南部へ取引されるなどの国内人身取引の事案が報告されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとって人身取引および搾取のおそれがいっそう高まり、かつ人身取引の被害を受けた子どもが送還されていることに、懸念とともに留意する。さらに、締約国において法執行および人身取引対策の実施が弱いことは深刻な懸念の理由となるものである。 74.委員会は、締約国に対し、1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して十分な援助および社会的再統合のためのサービスを提供する努力を強化するよう、促す。 75.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連の法律の効果的執行を確保することにより、国内でおよび国境を越えて行なわれるあらゆる形態の人身取引と闘うための措置を強化すること。 (b) 子どもの人身取引を防止するため、他の送り出し国および通過国との二国間および多国間の協定ならびに協力プログラムを強化しかつ拡大すること。 (c) すべての人身取引事案が捜査され、ならびに加害者が告発されおよび処罰されることを確保すること。 (d) 人身取引の被害を受けた子どもが保護されるのであって犯罪者として扱われないこと、ならびに、このような子どもに対して回復および社会的再統合のための十分なサービスおよびプログラムが提供されることを確保すること。 (e) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点についてタイ国政府観光庁(TAT)および観光サービス業者と引き続き連携すること。 (f) 子どもの人身取引と闘いかつこれを防止するため、子どもの人身取引の悪影響に関する公衆の意識を引き続き高め、かつ、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに一般公衆の研修を継続すること。 (g) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年)を批准すること。 (h) とくにILO/IPEC、国際移住機関および非政府組織との協力を強化すること。 少年司法の運営 76.委員会は、最近行なわれた少年家庭裁判所設置および少年家庭手続導入法(1991年)の改正を歓迎する。2005年2月に施行されたこの改正は、少年家庭裁判所が設けられていない県においてはすべての刑事裁判所で少年家庭裁判所の手続が適用されなければならない旨、定めたものである。委員会は、刑事施設における体罰を禁じた最近の省令に留意する。委員会はまた、罪を犯した少年を対象とするシェルター・ハウスおよびダイバージョン・プログラム、ならびに、修復的司法の概念を促進する家族集団会議プログラムの利用も歓迎するものである。委員会は、毎年、罪を犯した約4500名の少年が拘禁センターに送致されていることに留意する。しかしながら委員会は、一部地域には少年拘禁施設が存在しないために子どもが引き続き成人とともに収容されていることを懸念するものである。委員会はまた、刑事責任に関する最低年齢が低い(7歳)旨の懸念もあらためて繰り返す。 77.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、少年司法に関する法律および実務が、条約の規定、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(国連総会決議45/112)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(国連総会決議45/113)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針(1997年7月21日の国連経済社会決議1997/30添付文書)のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致することを確保するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑法の関連規定を改正し、刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 国内法を改正し、刑事施設における体罰の使用の禁止を強化すること。 (c) 18歳未満の被拘禁者が成人から常に分離されること、および、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。 (d) 18歳未満の者のための別の施設および(または)別の拘禁房の整備を迅速に進めることによってこれらの設備があらゆる地区に存在することを確保するとともに、被収監者に対して教育、職業訓練および治療のためのプログラムを提供すること。 (e) ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、家族・共同体集団会議、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を引き続き実施すること。 (f) とくに脆弱な立場に置かれた子どもとの関連で、防止のための戦略および措置を支援しかつ強化すること。 (g) 法律に触れた子どもおよびその社会への再統合を援助するためのコミュニティを基盤とするプログラムおよびサービスを支援すること。 (h) とくにユニセフおよびOHCHRの技術的協力を求めること。 先住民族およびマイノリティのコミュニティに属する子ども 78.委員会は、スティグマおよび差別の両方を受けている、先住民族、部族民およびマイノリティの子どもに属する子どもの状況について懸念を表明する。とくに、委員会は、先住民族およびマイノリティの間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることを、懸念するものである。委員会はまた、先住民族およびマイノリティの子どもに無国籍でありかつ(または)出生登録をされていない者が多く、虐待および搾取の危険性が高まっていることも懸念する。委員会はさらに、タイの山岳民族に関する人口動態データが現時点で不十分であることに留意するものである。 79.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、先住民族およびマイノリティの子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、自己の歴史的および文化的アイデンティティ、慣習、伝統および言語を維持する先住民族およびマイノリティの子どもの権利を保護するため、先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年9月)の日に委員会が採択した勧告を考慮に入れながら十分な措置をとるよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを引き続き策定しかつ実施するようにも促す。委員会はまた、締約国が、すべての先住民族およびマイノリティの子どもが出生登録にアクセスできることを確保するとともに、無国籍の問題に対処するための措置を引き続き実施するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、山岳民族ならびにすべてのマイノリティおよび先住民族の集団に関する人口動態調査を実施し、かつデータを性別、年齢および県によって細分化するよう勧告する。 9.子どもの権利条約の選択議定書 80.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約選択議定書に2006年1月に加入したことを歓迎する。委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に加盟するという内閣の最近の決定に留意し、締約国が同選択議定書を批准するよう勧告するものである。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 81.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を内閣の構成員、議会、関連省庁ならびに適用可能なときは県および郡の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 82.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、同国の言語で、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 83.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2009年4月25日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/60.html
総括所見:ノルウェー(第2回・2000年) 第1回(1994年)/第3回(2005年)/第4回(2010年)OPSC(2005年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.126(2000年6月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年5月22日に開かれた第625回および第626回会合(CRC/C/SR.625-626参照)において、1998年7月1日に提出されたノルウェーの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.2)を検討し、2000年6月2日に開かれた第641回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書の提出、追加情報の提供、および質問事項(CRC/C/Q/NOR/2)に対する締約国の文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書に記載された有益な統計的情報、および、対話の過程で追加情報を提供するために代表団が行なった率直かつ建設的な努力に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全体的な進展について締約国を賞賛する。 4.委員会は、加えて、子どもオンブズパーソン事務所が果たしているきわめて積極的かつ独立した役割について締約国を賞賛する。委員会はまた、締約国が、自国の開発援助プログラムにおいても、かつ関連する国際的な場への参加を通じても社会部門を優先していることも、特筆に値すると考えるものである。同様に、委員会は、締約国が研究組織「チャイルドウォッチ・インターナショナル」の発足を支援したこと、および、対話および協力の精神にのっとり、とくに人権問題に関して国内の専門家による援助の提供を促進することを目的としてNORDEMを発展させていることを、賞賛する。 5.委員会は、締約国報告書の作成におけるものも含めて政府とNGOとのあいだに建設的対話が存在すること、および、代替的報告書の作成に関してNGOに支援が与えられたことを、心強く感ずるものである。 6.委員会は、刑事訴訟法の改正を受けて、条約第40条2項(b)(v)に対する締約国の留保が1995年に撤回されたことを歓迎する。加えて、委員会は、子ども法の改正により子どもの立場およびその権利の保護が強化されたことも心強く感ずるものである。 7.委員会はまた、国際的な経済不況傾向が(報告対象期間の一部において)広範に広がり、かつ社会サービスの地方分権化が進展しているにも関わらず、児童福祉プログラムのための予算が締約国において増加していることに、満足感とともに留意する。委員会はさらに、児童福祉プログラムの実施に関して自治体によってとられた政策および措置を監視するシステムが、県知事の報告手続を通じて設置されていることにも留意するものである。 8.委員会は、外国人に対する不寛容の傾向と闘い、かつ人種主義および排外主義の問題に対応するために、締約国が、青少年の関与および参加によるものも含めて相当の努力を行なっていることに留意する。委員会はまた、このような問題に対する同様のアプローチを奨励するうえで、締約国が地域的な場で積極的な役割を果たしていることも歓迎するものである。 9.委員会は、締約国報告書の刊行以降に行なわれた市民法改正が行なわれたこと、および、ノルウェー市民その他のノルウェー在住者によって養子縁組された外国人の子どもの状況にそれが積極的影響を及ぼしていることに、満足感とともに留意する。委員会はさらに、1995年の法律の採択によって女性器切除が禁止されたこと、および、1994年の婚姻法の改正により、婚姻の一方の当事者が、婚姻を強制されたときは当該婚姻を無効と宣言するための手続を開始できるようになったことに留意するものである。加えて、委員会は、親に対する広範な支援および介入のプログラムが用意されていることを歓迎する。 10.委員会は、発展途上国における子どもの権利を支援することに対し、国際協力その他の援助を通じて締約国が豊かな貢献を行なっていることに関して、締約国を賞賛したい。 11.委員会は、締約国報告書において、締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見が頻繁に言及されていること、および勧告の一部に対応するための努力が行なわれたことを歓迎する。 C.主要な懸念事項 1.実施に関する一般的措置 立法 12.委員会は、条約の一般原則および規定がいまなお勧告にしたがって国内法に全面的に編入されていないことを、依然として懸念する。 13.委員会は、締約国がこの問題に関してひきつづき継続的議論を行なうよう奨励し、かつ、1999年5月21日の人権法によって他の地域的および国際的人権文書が編入されたのと匹敵する方法で条約を国内法に編入することを検討するよう、勧告する。 地方レベルにおける実施 14.締約国において意思決定、行政およびサービス提供が大規模に地方分権化されていることを認識し、委員会は、国レベルから自治体への相当の権限委譲が、すべての自治体が条約を全面的に考慮していないという意味で、締約国の条約実施における弱点となっているように思えることに留意する。 15.委員会は、締約国が自治体による条約のすべての側面の実施の評価を行なうこと、および、自治体レベルにおける条約の効果的実施を確保するためあらゆる努力を行なうことを、勧告する。 予算配分 16.委員会は、低所得層の子どもに対して地方の公的機関が提供する福祉サービスの範囲および水準、ならびにその結果としてもたらされる一部の子どもの生活水準が、同国全域のさまざまな自治体において不平等となっていることを懸念する。そのような不平等は、部分的には、異なる自治体機関が利用可能な財源が相当に異なること、これらの機関が定める優先順位が異なること、および、ニーズを評価しかつ援助を与えるシステムが異なっていることから生ずるものである。このような格差は、子どもの居住地域によって、子ども、とくに障害をもった子どもに対して不平等なアクセスまたは異なる水準の福祉援助を提供する効果を有する。 17.委員会は,締約国に対し、福祉サービスの提供の文脈において、たとえば条約実施のための全国的な基準および条約実施に対する全国的な資源配分を確立することにより、居住場所に関わらずすべての子どもが同じ水準のサービスに平等にアクセスできることを保障できる方法を検討するよう促す。 条約に関する研修 18.委員会は、子どもに関わる可能性がある業務を行なっている専門家の研修が組織的なものではないこと、および、多くの専門家がそのような研修を受けていないことに留意する。 19.委員会は、締約国が、教職員、弁護士および警察官を含むさまざまな専門家グループの適切な役割に関する子どもの権利研修のための指針を、関連する場合には委員会が提起した懸念に力点を置きながら発展させるよう勧告する。委員会は、とりわけ、自治体の委員会の委員および公的機関に対し、子どもの権利条約全体の実施に関する訓練を提供することに注意を向けるよう勧告するものである。 2.一般原則 差別の禁止 20.委員会は、ノルウェーの管轄下にある子ども(その在留が法的要件を満たしていない子どもも含む)が条約に定められた権利から実際上利益を得ることを確保するために締約国が行なっている努力を評価する。にも関わらず、委員会は、この原則があらゆる国内法において確立されているわけではないこと、法的保障が存在しないことにより、ノルウェー国籍を有しない一部の子どもが権利を奪われる可能性があること、および、このような子どもによる保健および教育サービスへのアクセスが若干制限されていることに、懸念を表明するものである。 21.委員会は、締約国が、ノルウェー国籍および法的地位を有せずにノルウェーの管轄内で暮らしている子どもの権利にこの状況が及ぼす、長期的影響も含む全面的影響を考慮するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約第2条の全面的適用を確保する国内法改正を検討するよう奨励するものである。 最善の利益 22.委員会は、最善の利益原則を尊重しようとする締約国の相当の努力を認知しながらも、改善の余地があることに留意する。とりわけ、委員会は、自治体機関の役割の文脈で子どもの最善の利益がかならずしも全面的に考慮されていないこと、および、さらに、収監された親、保護者のいないまま庇護を申請している子どもまたは難民の子どもの最善の利益がかならずしも第一義的に考慮されていないことを、懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、オンブズパーソンおよび市民社会と協議しながら、上記の状況を背景として最善の利益原則が何を意味するかについて検討すること、および、子どもに影響を及ぼす決定においてこの原則が第一義的に考慮されることを確保するためにさらなる努力を行なうことを、勧告する。 自己の意見を自由に表明する子どもの権利 24.委員会は、とくに自治体レベルにおける子ども代理人の任命によるものも含めて、意見を聴かれる子どもの権利を尊重するための努力を締約国が行なっていることに対し、締約国を賞賛する。しかしながら、委員会は、締約国と同じく、実際には子どもの意見が充分に聴かれかつ考慮されていないという懸念を表明するものである。委員会は、条約および国内法にもとづいてこの分野で保障されている権利、または子どもの意見の表明のために創設された機会を知らない子どもが多いことを懸念する。 25.締約国の最近のコミットメントに留意し、委員会は、締約国が、子どもの意見表明権およびそのために存在している機構その他の機会を子どもその他の者(親および法曹を含む)に知らせる努力をひきつづき行なうよう勧告する。委員会は、さらに、子どもの意見が考慮されている度合いおよびそれが政策、プログラムの実施および子どもたち自身に及ぼしている影響を定期的に見直すよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 思想、良心および宗教の自由 26.委員会は、初等教育、前期中等教育および後期中等教育に関する締約国の1998年7月17日の第61号法(「宗教・知識・倫理教育」に関する新たな共通カリキュラムを導入するもの)においてとられているアプローチが差別的になる可能性があることを、懸念する。委員会は、とくに、授業の一部に参加したくないと考える子どもおよび親に免除を認める手続を懸念するものである。 27.委員会は、締約国が新カリキュラムの実施を見直し、かつ既存のものに代わる免除手続を検討するよう勧告する。 暴力および有害情報 28.委員会は、社会およびとくに若者(年長の子どもを含む)のあいだで暴力行為が増加しているという締約国の認識を認知する。 29.委員会は、締約国が、そのような暴力の原因に対応し、かつその発生件数を減らすための努力を追求するよう勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親からの分離 30.委員会は、刑務所で刑に服している親との接触を維持することとの関連で、子どもの最善の利益、とくに親からの分離に関わる子どもの権利が全面的に尊重されていないことを懸念する。委員会はさらに、締約国の積極的な努力にも関わらず、刑事犯罪で有罪とされた外国人を退去強制する決定が行なわれるさい、退去強制の対象とされる者の子どもに当該決定が及ぼす影響に関する専門家の意見が制度的に参照および考慮されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、それが子どもの最善の利益である場合には子どもが収監された親との個人的関係および直接の接触を維持することを確保するため、締約国が、非収監者の家族との接触に関わる規則をもっと柔軟に適用するよう勧告する。委員会はまた、退去強制が親から子どもを分離することを意味する場合には子どもの最善の利益が考慮されることを確保するため、締約国が、退去強制決定が行なわれる手続を再検討するよう勧告するものである。 家族の再統合 32.ノルウェー国民ではない子どもの家族の再統合に対して締約国が非常に積極的なアプローチをとっていることは支持しながらも、委員会は、家族の再統合について定めた重要な国内法の規定が最大限に適用されていないことを懸念する。とりわけ、委員会は、手続的遅延のために子どもが家族の再統合の可能性について情報を得ていないこと、または手続が組織的でないことのいずれかを理由として、子どもがこれらの規定をかならずしも利用できていないことを懸念するものである。 33.委員会は、締約国に対し、子ども、および親または法定保護者のようなその他の関係者に家族の再統合のための可能性および手続に関して情報を知らせるための標準的手続を定め、かつ、これらの手続を定められた指針にしたがって組織的に実施するよう促す。 家庭環境を奪われた子どもの保護 34.委員会は、とくに非公式な自発的措置手続を通じて親の家庭外に措置される子どもの人数が増えていることを懸念する。このような手続は、子どもの最善の利益が遵守されることを必ずしも保障しない可能性がある。 35.委員会は、締約国が、親の家庭外に子どもを措置しなければならなくなる要因および非公式な措置の慣行そのものの双方を慎重に分析し、かつ、家庭生活に対する子どもの権利および子どもの最善の利益が尊重されることを保障するための効果的措置をとるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 36.委員会は、拒食症および過食症の発生件数が多いこと、および思春期の青少年のあいだでアルコールの消費が蔓延していることを懸念する。委員会はまた、子ども、とくに男子による自殺がひきつづき発生していることに対しても、懸念を表明するものである。 37.委員会は、締約国に対し、医療上の問題でも心理的問題でもある拒食症および過食症のケースに対応する努力をひきつづき行なうよう奨励する。加えて、委員会は、思春期の青少年のアルコール消費水準を減らすために締約国が行なっている努力に留意するとともに、締約国が、思春期の青少年の健康なライフスタイルをひきつづき促進するよう勧告するものである。さらに、子どもによる自殺をすべて特定することが困難でありうることを認識し、かつ1994年の総括所見(CRC/C/15/Add.23)のパラグラフ17の勧告にしたがって、委員会は、締約国が、子どもの自殺(10歳未満の子どもによるものも含む)の発生件数および原因に関する調査を継続するとともに、当該調査の結果を活用して、締約国の1994年の自殺防止プログラムの参考にし、かつ当該プログラムをさらに発展させるよう勧告する。 障害のある子ども 38.委員会は、障害のある子どもが、同世代の仲間と最大限可能な形で社会的に統合できていないことを懸念する。 39.障害のある子どもの権利が全面的に実現されることを確保するために締約国が行なっている努力を認識し、かつ、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に採択した委員会の勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、締約国の第2次行動計画で強調されているように、障害のある子どもが他の子どもたちと時間を共有できることを確保するための努力をひきつづき行なうよう勧告する。 精神保健サービス 40.委員会は、締約国と同様に、子どもを対象とした精神保健サービスおよび精神保健の専門家にアクセスするために待機する人数が多く、かつアクセスが遅れていることに対して懸念を表明する。これは、心理学者および精神科医の人数が不充分であることによるものである。 41.委員会は、締約国に対し、子どもが精神保健サービスにもっと時宜を得た形でアクセスできるようにするための手段を模索し、かつ、とくに、精神科医および心理学者の不足に対応するよう奨励する。 保育サービス 42.委員会は、締約国と同様に、保育定員の増加がひきつづき必要とされていること、および、利用可能な手当の現金支給計画ではこのニーズを埋め合わせることにはならないことに、懸念を表明する。 43.委員会は、締約国と同様に手当の現金支給計画の評価を勧告し、かつ、さらに、すべての子どもが保育を受けられることを確保するというそもそもの目的を締約国が追求するよう勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育への権利 44.委員会は、締約国と同様に、一部教員の教育上の背景に限界があることおよび専門的訓練が欠如していることに懸念を表明するとともに、そのような限界が教育および児童に悪影響を及ぼしていること、および、そのような限界は教員の低賃金を含む膨大な要因の結果であることに留意する。 45.委員会は、締約国が、教員の低賃金その他の要因が締約国の教育に及ぼしている影響を研究し、かつ、特定された問題に対応するための努力を行なうよう勧告する。 教育へのアクセス 46.委員会は、締約国に存在する多くのロマの子どもおよびその他の移住性集団の子どもが義務教育の必要年限を修了していないことを懸念する。 47.委員会は、締約国が、移動通信施設の使用および遠隔学習プログラムなどを通じ、1年の一定期間を移動して過ごす子どもが正規の教育にいっそうアクセスしやすくする手段を模索するよう勧告する。 7.特別な保護措置 保護者のいない子ども、子どもの庇護希望者および子どもの難民 48.委員会は、子どもの庇護希望者との関係で条約の規定および原則が完全に尊重されているわけではないことを懸念する。具体的には、委員会は、庇護を申請した子どもが申請手続に参加する充分な機会を提供されていないこと、およびその意見が充分に考慮されていないことを懸念するものである。委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者ひとりひとりに個人的後見人を任命するなどの積極的制度が、全面的に実施されていないと考える。さらに、委員会は、庇護申請の処理が遅延していること、および、地方教育制度に統合されていない子どもの申請者がいることを懸念するものである。 49.これらの手続への子ども参加を向上させるために締約国が継続的計画を進めていることを認識し、委員会は、締約国に対し手これらの努力を追求するよう奨励するとともに、子どもが手続に参加しかつその関心事を表明する充分な機会を提供されることを確保するため、締約国が、子ども(保護者がいるかいないかは問わない)の庇護申請を審査する手続を見直すよう勧告する。さらに、締約国が発展させている後見人制度が貴重な貢献を行ないうることを認識し、委員会は、当該制度を実施し、かつ、後見人に対する適切な研修の提供などにより、意図された当該制度の機能が発揮されることを確保するために、追加的努力を行なうよう勧告するものである。 50.委員会は、締約国が、申請の処理および子どもの定住のための手続が遅延する理由を、その短縮を図る目的で検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもが通常の学校制度に迅速に統合されることを確保するため、さらなる努力を行なうようにも勧告するものである。委員会は、加えて、手続の見直しにおいて締約国が条約の規定および原則を考慮するよう勧告する。 51.子どもの難民および庇護希望者に心理社会的援助を提供するために締約国が行なっている追加的努力に留意し、委員会は、締約国と同様に、そのような援助を必要としているすべての子どもがそれを受ける機会を得ているわけではないことに懸念を表明する。委員会はまた、締約国に到着した時点で子どもの難民および庇護希望者のあいだに栄養不良が生じている場合があることも懸念するものである。 52.委員会は、締約国が、現在利用可能な心理的援助を拡大していっそう広範な人数の子どもおよびその親を対象とし、かつ、そのような援助が必要とされる子どもを締約国への到着と同時に特定するためにあらゆる努力を行なうという計画を追求するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、栄養不良の問題に対応する努力をひきつづき行なうよう奨励するものである。 少年司法 53.委員会は、罪を犯した子どもに対して締約国が現在とっている対応において、児童福祉上の措置、または子どもが15歳以上の場合には罪を犯した成人にふさわしい対応のいずれかにのみ焦点が当てられることが多く、少年司法における防止およびリハビリテーションの側面が充分に重視されていないことを懸念する。 54.委員会は、締約国が、少年司法手続の文脈において子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保する努力を追求し、罪を犯した子どもの防止およびリハビリテーションのニーズをいっそう考慮するよう勧告する。 性的搾取および虐待 55.委員会は、締約国で性的虐待が生じていること、および、そのような問題に対応するための締約国の既存の予算がもっとも効果的な形で活用されていないことを懸念する。 56.委員会は、締約国に対し、利用可能な資源(子どもを対象に働く成人職員の雇用を適切に審査するための資源も含む)を増加させること、児童虐待の告発に対応する法的手続を通じて監視すること、法曹関係者その他の関連の専門家を研修すること、およびそのような行為の被害者に時宜を得た形でケアを提供することによって、性的虐待の事案を防止しかつそれに対応する努力をひきつづき行なうよう促す。 7.報告書の普及 57.委員会は、1993年の第1回締約国報告書が広範にかつ早期に普及されたことに関し、締約国を賞賛する。しかしながら、委員会は、1998年の報告書は同じように広範な配布の対象とはなっていないこと、および、とくに、報告書が充分に早くノルウェー語で出版されなかったため、ノルウェーのNGOによるコメントの提出を促進できなかったことを懸念するものである。 58.委員会は、条約第44条6項に照らし、第2回報告書、委員会が提示した質問事項および締約国が提出した文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のあるNGOを含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年8月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/228.html
総括所見:アイルランド(第1回・1998年) 第2回(2006年)/第3回・第4回(2016年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.85(1998年2月4日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年1月12日および13日に開かれた第436回~第438回会合(CRC/C/SR.436-438)においてアイルランドの第1回報告書(CRC/C/11/Add.12)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年1月23日に開かれた第453回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、委員会のガイドラインにしたがって作成された包括的な報告書、会期前に送付された事前質問事項への文書回答の提出、および、議論の過程で提供された詳細な追加情報に関して、謝意を表する。これにより、委員会は、アイルランドにおける子どもの権利の状況を評価することが可能になった。委員会はさらに、締約国の代表団との建設的な、率直なかつ開かれた対話を歓迎するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約で認められた子どもの権利の実施のためにさらなる措置をとることに対する締約国の決意を評価する。委員会は、子どもおよびその家族のために確立されている福祉サービスに、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、締約国において高いレベルの教育制度および先進的な保健制度が確立されていることも評価する。 4.委員会は、法改正の分野で締約国が行なった最近の努力に留意する。委員会は、条約の原則および規定を編入するための憲法改正が計画されていることを歓迎するものである。委員会はまた、子ども養護法(1991年)および同修正法(1997年)、家族法(1995年)、ドメスティックバイオレンス法(1996年)ならびに家族(離婚)法(1996年)が制定されたこと、ならびに、教育法案および養子縁組法案が起草されたことも歓迎する。 5.委員会は、セックスツーリズムを含む性的搾取から子どもを保護するために締約国が行なった多大な努力および具体的措置を称賛する。委員会はまた、海外で子どもセックスツーリズムに関与した市民および(または)定住者ならびに締約国において子どもセックスツーリズムを組織しかつ宣伝した者の訴追に関する管轄権を国内裁判所に与える、性犯罪(管轄)法(1996年)の制定および児童人身取引・児童ポルノ法案(1997年)の起草をとくに歓迎するものである。 C.主要な懸念事項 6.委員会は、条約の原則および規定を全面的に編入し、かつ条約が対象とするすべての領域を網羅した包括的な国内政策が存在しないため、子どもの権利に対する締約国のアプローチがやや断片的になっているように思えることを、遺憾に思う。 7.委員会はまた、締約国で広く行なわれている福祉政策および慣行が、条約に掲げられた子どもの権利中心のアプローチを十分に反映していないことも懸念する。加えて委員会は、防止措置に十分な力点が置かれていないことを懸念するものである。 8.子どもの福祉を担当するさまざまな政府機関が国内および地方のレベルに設置されていることには留意しながらも、委員会は、子どもの権利の促進および保護に関してこれらの機関の間で十分な調整が行なわれていないことを遺憾に思う。 9.監督機構として社会サービス監察官を設置するという決定は歓迎しながらも、委員会は、子どもがアクセス可能で、かつ、その権利の侵害に関する苦情に対応しかつ救済を提供する、オンブズパーソンまたは子どもの権利コミッショナーのような独立した監視機構が存在しないことを依然として懸念する。 10.委員会は、条約の原則および規定の実施を監視する指標の選択および開発に関するものも含めて、締約国が収集する統計的その他の情報に一部欠落が存在することに、締約国の注意を促す。委員会は、子どもの状況に関する統計が15歳未満の子どもについてしか収集されていない場合があることに留意するものである。 11.委員会は、条約に関する幅広い意識を促進するためにとられた措置が不十分であるという見解に立つものであり、かつ、裁判官、弁護士、警察官を含む法執行官、保健従事者、教職員、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカーおよび子どものための施設で働く職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として、条約の原則および規定に関する十分かつ体系的な研修が行なわれていないことを、依然として懸念する。 12.締約国が非政府組織との協力に前向きであることは歓迎しながらも、委員会は、子どもの権利の発展に貢献しうる非政府組織の潜在的可能性が全面的に認識されていないことを懸念するものである。 13.子どもの定義(条約第1条)に関して、委員会は、締約国の国内法で設定されているさまざまな年齢制限が低いことを懸念する。 14.差別の禁止の原則(条約第2条)に関して、委員会は、教育および保健サービスへのアクセスに関して格差が存在することを懸念する。すでにとられた措置には留意しながらも、委員会は、トラベラーズ・コミュニティに属する子ども、貧困家庭の子どもおよび難民である子どもを含む、脆弱なおよび不利な立場に置かれた集団の子どもが、教育、住居および保健サービスへのアクセスも含む基本的権利の享受に関していまだに困難に直面していることに、懸念とともに留意するものである。 15. 条約第12条の実施に関して、委員会は、家庭、学校および社会も含め、子どもの意見が一般的に考慮に入れられていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの意見を聴く手続が法律で全面的に考慮されていないことも懸念するものである。 16.委員会は、家庭における体罰が法律で禁じられていないことを懸念する。委員会の見解では、これは条約の原則および規定に矛盾するものである。委員会はまた、家庭において児童虐待および暴力が存在すること、ならびに、児童虐待の事案に関して義務的通報の機構が存在しないことも懸念する。 17.委員会は、子どもの出生登録にあたって父の名前を記載する適切な手続が存在しないことから、非婚の親から生まれた子どもが不利な状況に置かれていることを懸念する。このことは、現行規則では養子縁組は父の同意なしで行ないうることから、養子縁組に関わる他の権利の実施にも悪影響を与えるものである。委員会はさらに、子どもが離婚後に双方の親と接触を維持する保障が存在しないことを懸念する。 18.委員会は、締約国における母乳育児の割合が低いこと、および、母乳育児が子どもの健康に与える肯定的影響に関する意識が欠けていることを懸念する。 19.委員会は、10代の自殺が発生していることを懸念する。委員会はまた、薬物およびアルコールの濫用ならびに若年妊娠のような青少年の健康関連の問題に取り組む十分なプログラムが存在しないことも、懸念するものである。 20.委員会は、障害のある子どもの権利を確保するための国家政策が存在しないこと、ならびに、子どもおよびその家族の精神保健に対応する十分なプログラムおよびサービスが存在しないことを、懸念する。 21.国家貧困対抗戦略の存在は認めながらも、委員会は、締約国において子どもの貧困およびホームレスの子どもが生じていることをとくに懸念し、かつ、締約国に対し、もっとも脆弱な立場に置かれた子どもの権利を保護するための措置およびプログラムを強化するよう奨励する。 22.委員会は、教職員によって科された制裁によって退学となる子どもの状況、および、それによって発生する、ときには脱落率および出席率にも影響を与えかねない悪影響について懸念する。 23.委員会は、刑事責任年齢の低さおよび自由を奪われた子どもの処遇に関して、とくに条約および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の国際基準の原則および規定に照らして、懸念を覚える。 E.提案および勧告 24.委員会は、締約国が、条約のすべての原則および規定を憲法に含めるべきであるという憲法再検討グループの勧告の実施および1997年子ども養護法の実施を速めるためにあらゆる適切な措置をとり、そのことにより、権利の全面的主体としての子どもの地位を強化するよう勧告する。 25.裁判所において条約が国内法の解釈手段としてしか参照されえないことを踏まえ、委員会は、締約国が、第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を正当に考慮に入れながら、条約が国内法の一部として全面的に編入されることを確保するためにさらなる措置をとるよう勧告する。 26.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、拷問および他の残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰の禁止に関する条約、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を検討するよう、奨励する。 27.委員会は、締約国に対し、条約第4条の全面的実施を確保するよう奨励する。条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益に照らし、委員会はまた、子どもの貧困の問題に取り組み、かつあらあらゆる家族が十分な資源および便益を有することを確保するために、即時的措置をとる必要があることも強調するものである。委員会はまた、締約国に対し、国際開発援助のプログラムの枠組みとして条約の原則および規定を用いるようにも奨励する。 28.委員会は、締約国が子どものための包括的な国内戦略を採択し、あらゆる政策およびプログラムの立案に条約の原則および規定を体系的に編入するよう提案する。 29.締約国の立場には留意しながらも、委員会は、オンブズパーソンまたは子どもの権利コミッショナーのような、子どもの権利侵害に対応するための独立監視機関の設置について再検討するよう勧告する。 30.委員会は、子どもの権利に対応するさまざまな政府機関間の調整を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、子どもの権利を保護するための調整および適切な決定を行なう権限を単一の機関に集中させるよう、勧告するものである。 31.委員会は、条約が対象としているあらゆる領域を編入する目的で、18歳未満のすべての子どもを対象とするためにデータ収集および指標開発のシステムを修正するよう勧告する。そのようなシステムはすべての子どもを対象とすべきであり、かつ、脆弱な立場に置かれた子どもおよびとりわけ困難な状況に置かれている子どもがとくに重視されなければならない。子どもの権利の実現に関して達成された進展を監視しおよび評価し、ならびに条約の規定の実施を強化するために採択される政策の立案に役立てることを目的として、細分化された十分なデータが収集されかつ分析されるべきである。 32.委員会は、締約国に対し、非政府組織(NGO)とのより緊密な関係を発展させるための努力を継続しかつ強化するよう、奨励する。 33.委員会は、締約国が、同国において人権教育を促進し、かつ、条約の原則および規定に関するより幅広い意識および理解を喚起するよう勧告する。委員会はまた、子どもおよびおとなの双方を対象とした、子どもの権利に関する体系的な情報キャンペーンを発展させるために締約国が現在行なっている努力の継続も奨励するものである。さらに、すべての教育機関のカリキュラムに子どもの権利が編入されるべきであり、かつ、裁判官、弁護士、警察官を含む法執行官、出入国管理官、保健従事者、教職員、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカーおよび子どものケアのための施設で働く職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として、条約に関する包括的な研修プログラムが実施されるべきである。 34.委員会は、トラベラーズ・コミュニティに属する子ども、貧困下で暮らしている子どもおよび難民である子どもを含む、脆弱なかつ不利な立場に置かれた集団の子どもが、教育、住居および保健サービスへのアクセスを促進することを目的とした積極的措置から利益を得ることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。 35.委員会は、締約国が、条約第12条、第13条および第15条に照らし、とくに家庭、学校および社会における対話を通じて、自己に影響を与える決定および政策における子どもの参加および子どもの意見の尊重を体系的に促進するよう勧告する。 36.委員会は、締約国が、非婚の親から生まれた子どもの出生証明書にできるかぎり父の名前を記載する手続を確立するために、適切な措置をとるよう勧告する。 37.委員会は、締約国に対し、乳児の授乳に関する世界保健機関の決議を実施するよう勧告する。 38.委員会は、締約国が、条約第23条に照らし、障害のある子どもが地域社会に積極的に参加することを促進するためのプログラムを発展させるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、精神保健に関する統合的なプログラムおよびアプローチの実施を確保し、かつそのような活動に必要な資源および援助を利用可能とするために、さらなる努力を継続するようにも奨励するものである。 39.委員会は、締約国が、家庭における体罰の使用を禁止しかつ解消するために、法的措置も含むあらゆる適切な措置をとるよう提案する。委員会はまた、代替的形態のしつけが子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約にしたがって行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうことも提案するものである。委員会はまた、家庭における性的虐待も含む子どもの虐待および不当な取扱いの事案が適正に調査され、加害者に制裁が科され、かつ、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しながら、そのような事案に関して行なわれた決定が広報されるべきであると考える。 40.委員会は、締約国が、1996年子ども法案の迅速な制定をとくに少年司法制度の運営との関わりで確保するために、あらゆる実施可能な措置をとるよう勧告する。そのさい、条約、および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の国際基準の原則および規定が正当に考慮されるべきである。 41.最後に委員会は、条約第44条6項に照らして、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに同報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のあるNGOを含む一般公衆の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するために、広く普及されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2013年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/193.html
総括所見:カナダ(第1回・1995年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2006年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.37(1995年6月20日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年5月24日および26日に開かれた第214回、第215回、第216回および第217回会合((CRC/C/SR.214 to 217)においてカナダの第1回報告書(CRC/C/11/Add.3)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年6月9日に開かれた第233回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、締約国が委員会のガイドラインに従い包括的な報告書を提出したこと、および、ハイレベルな代表団を通じて委員会との建設的かつ率直な対話に携わったことへの評価の意を表明する。委員会は、今会期前に送付された事前質問事項に掲げられた質問への回答としてカナダ代表団により文書による情報が提供されたこと、および、議論の過程で追加情報が提供されたことを歓迎するものである。このことにより、委員会は、カナダの子どもの権利の状況をよりよく評価することができた。委員会は、さらに、委員会との対話の後に締約国により提出された文書による追加情報を歓迎する。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国が、条約で認められた子どもの権利の実施のためにさらなる措置をとることに固い決意を表明していることを評価する。委員会は、カナダが、子どもの権利に関する条約の起草過程および1990年子どものための世界サミットの開催にあたって指導的役割を果たした事実は、特筆に値すると考えるものである。 4.委員会は、権利および自由に関するカナダ憲章を通じておよび子どもの権利の領域における立法上の措置の採択を通じて、人権、とくに子どもの権利の保護が一般的に強化されていることに、満足感とともに留意する。委員会はまた、少年司法の領域において条約の規定をよりよく実施することを具体的に意図した犯罪防止国家評議会の設置を歓迎するものである。 5.委員会は、さらに、子どものための世界サミット後に子ども局が設置されたこと、および、政府の政策において条約が考慮に入れられることを確保する上で、かつ、当局ならびに民間部門およびボランティア部門との協議を可能にする上で、同局が果たしている役割を歓迎する。委員会は、条約に関する情報を普及するために行なわれた数多くの活動に、満足感とともに留意するものである。 6.委員会は、現在の景気後退から生ずる困難にも関わらず、増加しつつある貧困に立ち向かい、かつ、現在存在する格差を縮小させるための措置をとることに関して代表団により表明された決意を歓迎する。委員会は、これとの関連で、子どもの権利の促進および保護の領域で州政府および準州政府を援助することを目的とした家族支援執行基金の設置に留意するものである。 7.委員会は、子どもの障害を早期に発見するために学校および地域コミュニティ・サービスによりとられている具体的活動を歓迎する。 8.委員会はまた、ユニセフおよび他の政府組織または国際非政府組織との協力で国際事業に参加する際にカナダが行なっている取組みにも留意する。 C.主要な懸念事項 9.委員会は、カナダが連邦制をとっていることが条約の実施を複雑なものにする要因になっており、かつ、子どもに影響を与える事柄をめぐる連邦政府、州政府および準州政府との間の厳密な責任分担が不確定要素を生じかねないという、締約国の報告書に記載された記述に留意しつつも、カナダは条約の批准により生じるとされる義務を全面的に遵守しなければならないことを強調する。委員会は、締約国のすべての地域において効果的な条約の実施制度が確立されることを可能にするであろう恒久的な監視機構の設置に対し、十分な関心が払われていないことを懸念するものである。条約の実施に影響を与える州または準州の立法または慣行に格差が存在することも、委員会の懸念するところである。たとえば、非嫡出子の法的地位の定義が州の責任事項とされていることは、そのような子どもたちが締約国のさまざまな地域において受ける法的保護のレベルが異なるのではないかと思える。 10.委員会は、締約国が条約第21条および第37条c)に留保を付したことに、懸念とともに留意する。 11.委員会は、国内法における条約の価値に関して懸念を表明する。条約の基本的規定および原則の一部、とくに差別の禁止、子どもの最善の利益および子どもの意見の尊重に関する原則は、国内法および政策立案において必ずしも十分には反映されてきていない。 12.委員会は、とくに脆弱な立場に置かれた立場にあるグループの中で、子どもの貧困が問題として浮上してきていることに懸念する。また、ますます多くの子どもたちがひとり親家庭またはその他の問題のある環境で育てられていることも心配されるところである。すでに行なわれている事業は評価しつつも、委員会は、そのような子どもたちに対し、とくに教育、居住および栄養に関して必要なケアを提供するための特別な事業およびサービスの必要性を強調する。 13.委員会は、カナダが長年に渡って多くの難民および移民を受け入れる取組みを行なってきたことを認識する。にも関わらず、委員会は、難民または移民の子どもたちの状況を担当する行政機関によって、差別の禁止の原則、子どもの最善の利益の原則および子どもの意見の尊重の原則が常に重視されてきたわけではないことを、遺憾に思うものである。とくに、治安上その他の関連する目的により移民担当官が子どもの自由の剥奪という手段に訴えてきたこと、および、家族再会が積極的、人道的かつ迅速なやり方で対処されることを目的とした措置が不十分であることが憂慮される。委員会は、具体的には、家族の1人またはそれ以上の構成員が、カナダにおいて難民としての地位を得る資格があると考えられる場合、および、カナダにおいて生まれた難民または移民の子どもが、強制送還命令を出された親と分離されるかもしれない場合において、家族の再会への対処に時間がかかることを、遺憾に思うものである。 14.学校または子どもが措置される可能性のある施設における、あらゆる形態の体罰および子どもの不当な取扱いを効果的に防止し、かつ、それと効果的に闘うためのさらなる措置が必要であるように思える。委員会はまた、家族の中で児童虐待および暴力が存在していること、および、この点で既存の立法では十分な保護が与えられていないことに、とりわけ関心を持つものである。 15.委員会は、さらに、有害な情報、とくに暴力を煽りまたは暴力を含むテレビ番組からの情報から子どもが十分に保護されるようにすることが緊急に必要であることに留意する。 16.加えて、若者の間で自殺の発生率が増加していることも懸念の対象である。 17.委員会は、すでにとられた措置については認識しつつも、先住民族の子どもたちのように、脆弱かつ不利な立場に置かれた集団に属する子どもが、住居および教育へのアクセスを含む基本的な権利の享受に関していまだに深刻な問題に直面していることに、懸念とともに留意する。 D.提案および勧告 18.委員会は、カナダに対し、条約に対する留保を再検討し、かつ、その撤回の可能性を検討するよう奨励したい。委員会は、この基本的な問題に関してどのような進展があったかについて、随時情報を得たいと思うものである。 19.委員会は、締約国に対し、条約に関する情報を普及し、かつ条約に対する公衆の意識を向上させることを目的とした政策を追求しかつ発展させるよう奨励する。委員会は、「国連人権教育の10年」の枠組みのなかで、子どもたち自身も含む一般の公衆を条約の原則および規定に敏感にするための全国的啓発キャンペーンを開始するよう、かつ、学校のカリキュラムに子どもの権利を編入することを考慮するよう、勧告するものである。同時に、締約国は、子どもたちに対応する専門職集団、とくに裁判官、弁護士、移民担当官、PKO要員および教師の研修カリキュラムに条約を統合するよう求められる。 20.委員会は、条約の実施において格差または差別が生ずるいかなる可能性をも払拭し、かつ、領域内のすべての地域において条約が全面的に尊重されることを確保するために、締約国が、立法上のおよび行政上の枠組みのなかで存在する機構の協力を強化し、かつ、子どもの権利の領域において連邦政府、州政府および準州政府の調整を増進するよう勧告する。委員会はまた、監視機構をより効果的なものとするために、人権担当官委員会のような連邦の監視機構に力点が置かれるべきであることも勧告するものである。条約のすべての領域を対象とし、かつ、カナダの管轄下にあるすべての集団に属する子どもを考慮に入れたデータを収集するための、包括的なネットワークの確立も勧告される。子どもの権利の領域における、当局、非政府組織および先住民族コミュニティの協力も、さらに強化されるべきである。 21.委員会は、カナダ政府に対し、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益に照らして、条約第4条の全面的実施を確保するよう奨励する。入手可能な資源は、最大限、経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するために配分されるべきである。委員会はまた、子どもの貧困の問題に取り組むための措置をただちにとる必要があること、および、すべての家族、とくにひとり親家族が十分な資源および便益を得られるようにするためにあらゆる可能な措置をとる必要があることも強調する。 22.委員会はまた、締約国が、条約の原則および規定を、国際開発援助の枠組みとして用いることも奨励する。 23.条約が裁判所において国内法の解釈の手段としてしか参照されないという事実に鑑み、委員会は、国内における条約の効果的実施を確保するためにさらなる措置がとられるべきことを勧告する。これとの関連で、委員会は、条約の一般原則、とくに、それぞれ第2条、第3条および第12条で保障されている差別の禁止、子どもの最善の利益および子どもの意見の尊重に関わる原則が国内法に反映されるようにするための措置をとる重要性も強調したい。とくに第12条に関しては、司法上および行政上の手続において聴聞される機会が子どもたちに与えられるべきことが勧告されるところである。 24.委員会は、強制送還手続も含む難民および移民の子どもたちの保護に関わる事柄において、条約第22条および条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益および子どもの意見の尊重を実施することに、締約国がとくに配慮するよう勧告する。委員会は、家族の1人またはそれ以上の構成員が、カナダにおいて難民としての地位を得る資格があると考えられる場合には、家族の再会を促進しかつ迅速なものとするために、あらゆる可能な措置がとられるよう奨励するものである。条約第9条に照らし、家族の分離を生ぜしめる追放を避けるための解決策も模索されるべきである。さらに一般的には、委員会は、政府が、大人のつきそいのいない子ども、および、難民としての地位を拒否され送還を待っている子どもの状況に、条約の規定に照らして取り組むよう勧告する。子ども、とくに大人のつきそいのいない子どもに対する治安上その他の目的による自由の剥奪は、条約第37条(b)に従い、最後の手段としてのみ利用されるべきである。 25.委員会は、締約国が、親による体罰、学校における体罰および子どもが措置される可能性のある施設における体罰を許容する刑事立法を再検討する可能性について検討するよう、提案する。これとの関連で、かつ条約第3条および第19条に掲げられた規定に照らし、委員会は、家庭における子どもの体罰を禁止するよう勧告するものである。条約、とくにその第19条、第28条および第37条によって認められた子どもの身体的不可侵性への権利との関連で、かつ子どもの最善の利益に照らし、委員会はさらに、家庭における暴力を防止するための新たな立法およびフォローアップ機構の導入の可能性について締約国が検討すること、および、家庭における体罰の使用に関する社会の態度を変え、かつその法的禁止を受け入れる姿勢を促進するための啓発キャンペーンを行なうことを、提案する。 26.委員会は、先住民族の子どもたちのように脆弱かつ不利な立場にある集団に属する子どもが、教育および住居へのアクセスを促進するための積極的是正措置から利益を享受できるようにするための取組みを、締約国が強化するよう勧告する。先住民族コミュニティの子どもたちの間で幼児死亡率および自殺率が増加していることに関連する問題について、調査が計画されかつ実施されるべきである。 27.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、カナダから提出された第1回報告書を公衆一般が広く利用できるようにし、かつ、関連の議事要録およびその後委員会によって採択された総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月30日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/104.html
総括所見:ドイツ(第1回・1995年) 第2回(2004年)/第3回・第4回(2014年)OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/add.43(1995年11月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1995年11月6日および7日に開かれた第243回~第245回会合(CRC/C/SR.243-245)においてドイツの第1回報告書(CRC/C/11/Add.5)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1995年11月17日に開かれた第259回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国によって作成された報告書が、条約の実施のための法的枠組みに関して包括的な説明を行なっていることに留意する。しかしながら、報告書には、条約の原則および規定が実際に全国でどのように実施されているのかに関する十分な情報は記載されていなかった。そのため、委員会は、委員会が提起した質問に回答するにあたって代表団が率直かつ自己批判的なアプローチをとったこと、および、条約の実施のためにとられかつ構想されている措置に関する説明が行なわれたことに、評価の意を表するものである。委員会は、代表団との建設的な対話および意見交換を歓迎する。 B.積極的な要因 3.委員会は、条約に付された解釈宣言の撤回が可能かどうか検討することについて締約国は前向きであるという旨の、代表団の発言を歓迎する。 4.委員会は、15歳以上の子どもが武力紛争に兵士として参加するのは子どもの最善の利益と両立しない旨の解釈宣言を締約国が行なったこと、および、この分野に関する条約の選択議定書の起草を支援することに政府が前向きな姿勢を見せていることを歓迎する。対人地雷の製造および売買を禁じようという国際的な呼びかけを締約国が支援していることも、心から歓迎されるところである。 5.委員会は、連邦議会に対して提出される子ども・若者報告書に貢献する目的で、ドイツの子どもたちの実情を包括的に描き出すための専門家委員会が設置され、かつ同委員会がその作業に着手したことに、満足感とともに留意する。 6.委員会は、外国人嫌悪の傾向および人種主義の表明を防止しかつそれと闘うことに向けた締約国の決意を認識する。そのような現象を防止しかつそれと闘い、かつ民族間および人種間の調和を促進するための全国キャンペーンを、欧州評議会によって開始された青年キャンペーンの一般的枠組みの中で実施するにあたり、連邦、州および地方の公的機関の関与ならびにこれらの機関の間の効果的な調整を確保するために多大な努力を行なっている点で、政府は賞賛に値する。 7.委員会はまた、家庭内の暴力および性的虐待を早期に発見しかつ防止するための調査および追加措置の実施に対して締約国が前向きな姿勢を見せていることも評価する。同様に、委員会は、有害な影響から子どもを保護する必要性に関してメディアを啓発するための取組みを組織することに、締約国が前向きな姿勢を見せていることを歓迎するものである。 8.ドイツが将来的に国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准する基盤作りのための措置を政府がとったことは、歓迎されるところである。 9.委員会は、比較的多くの難民および亡命希望者を、とくに旧ユーゴスラビアからの難民および亡命希望者を受け入れる方向で締約国が行なっている取組みを認識する。 10.子どもの性的搾取と闘うために締約国が行なっている取組みに関しては、委員会は、刑法が拡大されて海外における子どもの性的虐待も刑事犯とされるようになったことに、満足感とともに留意する。加えて、最近の措置により、子どもを取り上げたポルノ的資料の所持が処罰の対象とされるようになったことも、留意されるところである。 11.委員会は、児童労働の撤廃のための国際労働機関の事業に対して締約国が行なっている支援に、評価の意とともに留意する。 12.委員会は、1996年以降、ドイツのすべての子どもが幼稚園に行く法的権利を有するようになることに、関心をもって留意する。 D.主要な懸念事項 (訳者注/Cが欠落しているのは原文ママ) 13.委員会は、締約国が条約に付した解釈宣言が幅広いものであることを遺憾に思う。委員会の見解では、いくつかの解釈宣言は、その意味するところについておよび条約で認められた権利の全面的享受と両立するかどうかについて懸念を生ぜしめるものである。 14.条約の実施を目的とする調整および監視のための効果的な機構を連邦、州および地方のレベルで設置することに十分な関心が払われていないように思えることは、委員会の懸念するところである。このような機構は、条約を踏まえて子どものための政策および事業の発展を評価しかつ促進するうえで本質的な重要性を有している。 15.委員会は、条約の原則および規定に関する意識および理解がおとなおよび子どもの間で不十分であることを懸念する。 16.子どものための活動の枠組みとして条約をとらえることに対する締約国の決意がはっきりと示されていることは認識しながらも、委員会は、条約に定められた、子どもは権利の主体であるという考え方が、国内法、政策および事業に十分に反映されていないことを懸念する。これとの関連で、とくに条約第2条および第3条で規定されている条約の一般原則の導入が怠られているように思えることも、委員会の懸念するところである。 17.条約第12条、第13条および第15条の実施に関して、家庭内で行なわれる決定を含む諸決定ならびに子どもに関する行政上および司法上の手続への子どもの関与を確保することに対し、十分な関心が払われていない。 18.委員会は、新州および旧州の完全な統合を確保するために政府が相当の努力を行ない、かつこの点で実質的な進歩が達成されたとはいえ、全国を通じて生活条件を平等にし、かつ子どもおよび若者を対象とするサービスに関して同等の制度を確立するという目標が依然として達成されていないことを認識する。そのため、委員会は、州によって生活水準およびサービスの質に広く格差が存在し、かつ、婚外子およびひとり親家族の子どもたちのような、社会でとくに脆弱な立場に置かれている集団が困難に直面していることを、依然として懸念するものである。 19.委員会は、庇護希望者および難民の状況にある子どもの特別なニーズおよび権利がどの程度考慮に入れられているのかについて、依然として懸念を覚える。子どもの庇護希望者に関わる手続、とくに家族再会、安全な第三国への子どもの送還および「空港規制」に関する手続は、懸念の理由となるものである。これとの関連で、委員会は、条約、とくに第2条、第3条、第12条、第22条および第37条(d)に規定されている保障が遵守されておらず、かつ、条約第9条および第10条の実施に十分な関心が払われていないように思えることに、留意する。委員会はまた、子どもの庇護希望者に対する治療および医療サービスの提供について、条約第2条および第3条の原則および規定に照らした解釈が行なわれていないように思えることに、懸念とともに留意するものである。 20.少年司法に関わる問題に関して、委員会は、締約国が第40条2項(b)(ii)に解釈宣言を付したことにより、司法へのアクセスおよび公正な審判に対する子どもの権利ならびに法的援助および弁護人に対する権利が制約されているように思えることに、懸念を表明する。 E.提案および勧告 21.委員会は、ドイツ憲法に子どもの権利条約を編入することが検討されているという締約国の情報を心から歓迎するとともに、この精神にしたがって、締約国に対し、条約に憲法上の地位を付与することを意図して現在行なわれている努力を継続するよう奨励する。 22.委員会は、締約国が、条約に関して行なわれた解釈宣言を、その撤回を検討する方向で引き続き再検討するよう勧告する。委員会は、現在提案されている国内法の改正案に照らし、このような解釈宣言は不必要に思えるという見解に立つものである。このような解釈宣言が条約と両立するかについても疑問が生じる。 23.委員会は、締約国が、連邦、州および地方のレベルで子どもの権利に関する調整を行なう常設の効果的機構を設置することについて、さらなる検討を行なうよう提案する。包括的かつ体系的なデータ収集に基づいて条約が対象とするすべての分野に対応し、かつ、広く存在する経済的および社会的格差を減少させつつ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に優先的に注意が向けられることを確保しながら、評価および監視のためのシステムを発展させることについても検討が行なわれるべきである。委員会は、子どもの権利の監視および実施に携わっている非政府組織および子どもグループとのいっそう緊密な協力および対話を引き続き促進していくという締約国の決意を心強く思う。委員会はまた、締約国が、オンブズマン機関の活動を、とくにこれらの機関が子どもの権利の実施状況を監視する作業にどの程度貢献しうるかという点に関して、より注意深く検討するよう奨励するものである。 24.条約第4条に関して、委員会は、条約の諸原則、とくに差別の禁止および子どもの最善の利益に関わる第2条および第3条の原則を踏まえ、連邦、州および地方のレベルで、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施のために資源を最大限に配分することが重要であることを強調する。 25.第三世界に対する構造的援助を提供することに関してドイツが強い決意を示してきたことを認識しながらも、委員会は、締約国に対し、開発途上国に対する国際的援助の目標値である〔対GNP比〕0.7%を達成し、かつ、子どもの状況を改善する事業のために債務転換措置および債務免除措置を適用することを検討するよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、自国の国際協力および開発援助事業が子どもに与える影響についての研究を行なうことが、子どもの権利条約の実施のためのそのような取組みの効果を評価するうえで有益な手段であることが明らかになってきていることを、強調するものである。 26.委員会は、関心を払うべき主要な分野が子どもの権利に関する情報の普及および意識の喚起を目的とする包括的かつ体系的な戦略の策定であることを締約国が認識していることに、満足感とともに留意する。メディアの活用、ならびに非政府組織および子どもグループを含む市民社会の関与を通じて公衆キャンペーンを発展させることは、子どもの権利に関する理解を高め、かつ子どもの権利の尊重を促進する必要性への効果的対応に寄与するはずである。 27.委員会は、締約国が、人権教育のための国連10年によって供された機会を全面的に活用し、人権および子どもの権利に関する教材の作成をさらに継続するとともに、学校カリキュラムならびに子どもとともにまたは子どものために働いている専門家集団(教員、裁判官、弁護士、ソーシャルワーカー、保健サービス職員、警察官および出入国管理官を含む)の養成および研修プログラムに人権教育、とくに子どもの権利に関する教育を導入するよう、勧告する。 28.委員会は、条約第2条に照らして締約国で国内法の改正が提案されていること、とくに婚外子が差別されないことを確保するための改正が提案されていることを心強く思う。そこで委員会は、法律を条約の規定および原則に調和させる努力をさらに継続するとともに、締約国が、条約の一般原則、とくに第2条(差別の禁止)および第3条(子どもの最善の利益)に掲げられている原則を法律および政策に反映させることに引き続き優先的に取り組むよう、勧告するものである。 29.委員会は、子どもの参加に関する条約の規定(第12条、第13条および第15条を含む)をいっそう仔細に検討し、かつ奨励する必要があることに留意する。この目的のため、広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンが発展させられるべきである。同様に、委員会は、家族生活および社会生活における、子どもに影響を与える決定(家族の再統合および養子縁組に関する手続で行なわれるものを含む)への子どもの関与を強化しかつ拡大することを検討するよう、勧告するものである。 30.子どもを養育する者の責任および子育てにおける両親の責任を平等なものにする必要性に関する意識を強化する手段として子どもの権利条約を活用することを締約国が認識していることに対し、評価の意が評される。委員会は、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力(家庭における体罰の使用を含む)を根絶する目的で態度を変えるための努力を継続するよう、奨励するものである。これとの関連で、委員会はさらに、現在進められている民法改正の過程で体罰の絶対的禁止の編入を検討するよう、奨励する。 31.委員会は、家族関連手当に対してさらなる資源の配分が行なわれていること、および、ひとり親が直面している問題への対応に関してさらなる進展を達成するための他の措置を実行することに前向きな姿勢がうかがえることに留意し、かつ、貧しい子どもたちの、余暇の活動を含む学校外活動へのアクセスを向上させるための措置をとることに締約国が決意を示していることを認めつつ、子どもの貧困の発生を分析することに対してさらなる優先順位が与えられるべきであると信ずる。そのような分析は、居住環境、家および学校において家族が子どもに与えている支援ならびに学校中退のおそれのような問題が関連しあっている可能性も考慮に入れながら、ホリスティックな視点から行なわれるべきである。この調査研究の結果は、議会および関連当局がこれらの問題について議論し、かつ、明らかに問題への対応に関するいっそう包括的かつ統合的なアプローチを発展させるきっかけとなろう。 32.委員会は、締約国が、環境汚染が子どもの健康に及ぼす可能性のある影響に関していっそう包括的な研究を行なうよう、奨励する。 33.委員会は、子どもの庇護希望者および難民の問題について、条約および委員会との議論の際に表明された懸念に照らして改革を図る目的で、さらなる研究を行なう価値があるという見解に立つものである。そのような取組みにあたっては、とくに、安全な第3国への子どもの送還、家族再統合および「空港規制」に関わる手続(とりわけ16歳から18歳までの子どもに影響を与える手続)の、条約の規定および原則(とくに第2条、第3条、第5条、第9条3項、第10条、第12条、第22条および第37条(d))との両立性について検討することが求められる。 34.諸サービスの強化、ならびに子どもの被害者および証人を処遇するための子どもにやさしい手続の発展に関わるものも含め、少年司法制度を改革しようとする政府の意図は留意される。また、この改革を背景として、少年に対して不定期刑を科せなくすることが考慮されていることも留意されるところである。加えて、委員会は、この枠組みのなかで、締約国が条約第40条2項(b)(ii)に関して行なった解釈宣言を、可能であれば撤廃する方向で再検討するよう希望を表明する。 35.委員会はまた、条約の規定および原則を全面的に実施するための法改正、政策立案および措置を進めていく目的で、期限付の目標を掲げた行動計画を作成することも勧告する。委員会は、連邦政府が連邦議会に対して子ども・若者報告書を提出する機会を、締約国の子どもが直面している問題に関して議員の議論を促し、かつその問題に取り組むための政策を決定する目的で活用するよう、提案するものである。 36.委員会は、公的機関、非政府組織、関連の専門家グループ、および子どもを含むコミュニティ一般の間で、州および地方のレベルも含めて子どもの権利に関するより幅広い意識を促進する目的で、委員会に対する締約国報告書、報告書に関する議論の議事要録および委員会が採択した総括所見を国内で幅広く普及するよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/106.html
総括所見:ドイツ(OPAC・2008年) 第1回(1995年)/第2回(2004年)/第3回・第4回(2014年)OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/DEU/CO/1(2008年2月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2008年1月18日に開かれた第1293回会合においてドイツの第1回報告書(CRC/C/OPAC/DEU/1)を検討し、2008年2月1日に開かれた第1313回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書が、報告ガイドラインに全面的にはしたがっていなかったことには留意しながらも、提出されたことを歓迎する。委員会はさらに、事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/DEU/Q/1/Add.1)を歓迎するとともに、国防省の代表を含む多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2004年1月30日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.226)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 A.積極的側面 4.委員会は締約国の以下の行為を歓迎する。 (a) 子どもの権利条約の批准時に第38条に関して行なわれた、敵対行為への参加に関して15歳という最低年齢制限を定めることは子どもの最善の利益の考慮と両立しない旨の宣言。 (b) 紛争を経験しているまたは紛争後の状況下にあるいくつかの国における、子ども兵士のリハビリテーションおよび再統合のためのプロジェクトに対する拠出。 (c) 子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表の委任事項に対する支持。 (d) 欧州連合総務・対外関係理事会によって2003年12月に採択され、かつ2005年に改訂された「子どもと武力紛争に関する指針」の実施を促進するための努力。 5.委員会はさらに、締約国が、以下のものを含む、選択議定書に関連する国際文書に加入しまたはこれを批准したことを称賛する。 (a) 国際刑事裁判所ローマ規程(2003年4月23日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号条約(2002年4月18日)。 I.実施に関する一般的措置 普及および研修 6.委員会は、平和維持部隊の参加者を含む軍人が人権に関する研修(子どもの権利条約および選択議定書の規定に関するものを含む)を受けていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもとともに働く一部職種の専門家が十分な研修を受けていない可能性があることを懸念するものである。 7.委員会は、選択議定書第6条2項に照らし、締約国が、議定書の原則および規定が一般公衆および国の職員に対して広く普及されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子ども(徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもの庇護希望者および難民)とともに働くすべての関連の専門家集団、とくに教員、メディア専門職、ソーシャルワーカー、警察官、弁護士、裁判官およびジャーナリストを対象とした、議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修のプログラムを発展させることも、勧告するものである。締約国は、次回の報告書でこの点に関する情報を提供するよう慫慂される。 データ 8.委員会は、締約国の管轄内にいる子どもであって徴募されまたは敵対行為で使用された者(とくに16歳または17歳の者)についてのデータが存在しないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国に対し、その管轄内にいる子どもであって徴募されまたは敵対行為で使用されたすべての者を特定しかつ登録する目的で中央データ・システムを設置するよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、このような慣行の被害を受けた子どもの難民および庇護希望者に関するデータが利用可能となることを確保するよう、促すものである。 II.防止 志願入隊 10.委員会は、志願兵の入隊に関する最低年齢(17歳)はその法定代理人の同意があって初めて有効であること、および、これらの志願兵を軍務に配置することは認められていないことに留意する。 11.委員会は、議定書の締約国の大多数は子どもの志願入隊を認めていないことに留意する。したがって委員会は、締約国に対し、全般的により厳格な法的規準を通じて子どもの保護を促進する目的で、軍への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げるよう奨励するものである。 人権教育および平和教育 12.委員会は、締約国が行なっている人権教育についての情報を歓迎するものの、人権教育および平和教育が、すべての段階におけるすべての学校のカリキュラムの要素となっているわけではないことを遺憾に思う。 13.委員会は、締約国が、学校ですべての子どもを対象とする人権教育およびとくに平和教育を提供し、かつ、これらのテーマを子どもの教育に含めることに関して教員の研修を行なう努力をさらに強化するよう、勧告する。 III.禁止および関連の事項 立法 14.委員会は、締約国の刑法〔2002年6月26日の国際刑法典導入法〕第8条に戦争犯罪に関する規定が設けられていること、および、15歳未満の子どもを軍隊または武装集団に徴募する行為について域外裁判権を行使できる旨が確認されたことを歓迎する。委員会は、15~17歳の子どもについてもこのような裁判権を設定できることに留意するものの、双方可罰性の基準を満たすことがその条件であることを遺憾に思うものである。 15.子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国際的措置をさらに強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもを徴募しかつ敵対行為に子どもを関与させる犯罪について、双方可罰性の基準を課すことなく域外裁判権を拡大することを検討すること。 (b) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること。 IV.保護、回復および再統合 身体的および心理的回復のための援助 16.委員会は、青少年福祉法および移民法の改正(2005年)により、子ども兵士として徴募されることが、難民資格を付与しうる事由である迫害の一形態として認められるようになったことを歓迎する。委員会は、ドイツに入国した子どもの難民または庇護希望者のうち国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもを特定するための十分な措置が適用されていないことを、遺憾に思う。さらに、委員会は、保護者のいない子どもが収容される場合があること、および、16歳に達した者については、庇護申請手続において、後見人が時宜を得たやり方で任命されないおそれがあることを懸念するものである。 17.委員会はまた、保護者のいない子どもの庇護希望者および難民であって国外で敵対行為に関与させられた子どもが、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための学際的援助をドイツにおいて提供できる特別の専門家に十分アクセスできていないことも、依然として懸念する。委員会は、移民担当機関に、とくに16歳または17歳の子どもの庇護事案の決定について特別な訓練を受けた職員が十分に存在しないことを懸念するものである。 18.委員会は、ドイツに到着した子どもの庇護希望者および難民であって国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもに対し、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、保護を提供するよう勧告する。 (a) 子どもの庇護希望者および難民であって国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもを可能なかぎり早い段階で特定すること。 (b) 情報に対する子どもの庇護希望者のアクセスをヘルプライン等も通じて向上させ、これらの子どもが利用可能な法的助言サービスを強化し、かつ、18歳未満のすべての子どもに対して時宜を得たやり方で後見人が任命されることを確保すること。 (c) これらの子どもの状況を注意深く評価するとともに、選択議定書第6条3項にしたがい、これらの子どもに、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、文化的配慮および子どもに対する配慮がありかつ学際的な援助を直ちに提供すること。 (d) 特別な訓練を受けた、より多くの職員が移民担当機関に配置されること、および、子どもの帰還に関わる意思決定手続において子どもの最善の利益およびノン・ルフールマンの原則が第一義的に考慮されることを確保すること。これとの関連で、委員会は、締約国が、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(CRC/GC/2005/6)、とくにパラ54~60に留意するよう勧告する。 (e) この点に関してとられた措置についての情報を次回の報告書に記載すること。 V.国際的な援助および協力 財政援助その他の援助 19.委員会は、武力紛争の影響を受けた子どもの保護および支援を目的とした多国間および二国間の活動に対する財政支援について、締約国を賞賛する。 20.委員会は、締約国が、とくに防止活動ならびに選択議定書に反する行為の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進することにより、武力紛争に関与した子どもの権利に対応するための多国間および二国間の活動に対する財政支援を継続しかつ強化するよう、勧告する。 21.委員会は、国連平和維持活動に対する締約国の積極的貢献には評価の意とともに留意しながらも、締約国に対し、自国の要員が武力紛争に関与する子どもの権利を全面的に認識し、かつ分遣隊がその責任および説明責任について認識することを引き続き確保するよう、勧告する。 武器輸出 22.委員会は、締約国がEU「武器輸出に関する行動規範」の原則を遵守していることを歓迎するものの、これらの原則では、子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されている可能性がある国を最終目的地とする武器の販売を除外する基準について触れられていないことに留意する。 23.委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地である場合における武器の販売の具体的禁止規定の導入を検討するよう、勧告する。 VI.その他の法規定 24.子どもの売買と武装集団への徴募が関連している可能性があることに鑑み、委員会は、締約国が、子どもの権利の保護をさらに向上させる目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の批准を進めるよう、勧告する。 VII.フォローアップおよび普及 25.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、連邦議会および連邦参議院ならびに州および自治体の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 26.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。 VIII.次回報告書 27.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回定期報告書(提出期限2009年4月4日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/246.html
総括所見:アメリカ(OPSC〔第2回〕・2013年) OPAC:第1回(2008年)/第2回(2013年) OPSC:第1回(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/USA/CO/2(20013年7月2日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2013年1月16日に開かれた第1760回会合(CRC/C/SR.1760参照)において、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づくアメリカ合衆国の第2回報告書(CRC/C/OPSC/USA/2)を検討し、2013年2月1日に開かれた第1784回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第2回提起報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/USA/Q/2/Add.1)の提出を歓迎し、かつ、多部門から構成される代表団との間に持たれた建設的対話を評価する。 II.一般的所見 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第2回定期報告書に関して同日に採択された総括所見(CRC/C/OPAC/USA/CO/2)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 4.委員会は、政権は条約の目標を支持しており、かつ、どのようにすれば子どもの権利条約の批准に向けていよいよ行動を起こせるか再検討する意図を有している旨の、対話の際に代表団によって表明された保証を歓迎する。しかしながら委員会は、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ34)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもの権利の保護を包括的なやり方で向上させるために条約の批准手続を加速させるよう促すものである。 積極的側面 5.委員会は、以下の法律の制定を歓迎する。 (a) 2012年国際養子縁組統一認証法(公法第112-276号)。 (b) わが国の子どもたちに対するサイバー脅威を根絶するための資源、担当官および技術供与法(2008年子どもPROTECT法、公法第110-401号、2008年10月13日制定)。 (c) 2008年ウィリアム・ウィルバーフォース人身取引被害者保護(TVPA)再授権法(公法第110-457号)。 6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する、以下のものを含む制度の創設ならびに計画およびプログラムの採択に関して達成された進展を歓迎する。 (a) 保護者のいない子どもに対して合衆国における一時在留許可を与える「子どものときに入国した者に対する措置猶予プログラム」(2012年8月施行)。 (b) 国レベルで人身取引と闘うための全般的な目標を定めた「子どもの搾取の防止および禁止に関する国家戦略」(2010年8月)。 III.データ データ収集 7.委員会は、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、2008年)で表明された、以下の点に関する懸念をあらためて繰り返す。 (a) 現在は多くの異なるデータシステムを利用している連邦、州および地方の公的機関が共有できる、子どもの売買、児童買春および〔児童〕ポルノに関する国レベルの効果的なデータ収集システムの設置について進展がないこと。連邦捜査局(FBI)の統一犯罪報告システムに人身取引が含まれることによってさらなる発展があったことには留意しながらも、委員会は、同システムが基本的に人身取引犯の摘発およびこれとの闘いに焦点を当てており、被害者または潜在的被害者としての子どもには十分な焦点を当てておらず、保護および防止よりも法執行を過剰に重視していることを懸念する。 (b) 子どもおよび子どもに影響を与える犯罪の根本的原因を中心とする調査研究ならびに証拠に基づいた政策・プログラム分析が不十分であり、かつ、現在行なわれている調査研究および分析は性的目的の人身取引に圧倒的に焦点を当てていて、労働搾取および選択議定書で対象とされているその他の犯罪にはほとんど焦点が当てられていないこと。 (c) データおよび分析情報の収集において、子どもに対する広範な犯罪活動(選択議定書で対象とされている犯罪を含む)を人身取引とみなすことから問題が生じていること。このことは、被害者を特定する際の、また国、州、地方および国際社会のレベルでこれらの犯罪を防止しかつこれと闘うための適切な戦略を明らかにする際の誤解およびばらつきにもつながっている。 8.委員会は、締約国に対し、前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、2008年)で勧告されたように以下の目的のための努力を強化するよう促す。 (a) 選択議定書で規定されているすべての分野を対象とし、かつ、合衆国本土の全領域ならびに島嶼領域および合衆国が主権を行使しているその他の属領を網羅した、包括的かつ体系的なデータ収集機構(分析、監視および影響評価を目的とするものを含む)を発展させかつ実施すること。委員会はさらに、データが、とくに性別、年齢、民族的出身、社会経済的背景および地理的所在ごとに細分化されるべきであり、かつ、議定書で対象とされている犯罪の被害者になる具体的危険がある状況に置かれている子ども(保護者のいない外国人の子ども、移住者である家族とともにいる子ども、児童労働者、ホームレスおよび路上の状況にある子どもなど)にも焦点を当てるべきことを勧告する。委員会はまた、連邦および州のレベルで使用されるべき、データ収集のための共通の指標を確立することも勧告するものである。 (b) 子どもに影響を与える犯罪の根本的原因ならびに保護のための措置およびプログラムの規模および効果について、性的搾取および労働搾取ならびに子どもに影響を与えるその他の状況(貧困および周縁化を含む)を対象とした詳細な研究を実施するため、非政府組織(NGO)および中心的学術機関を支援し、かつこれらの機関とのパートナーシップを確立すること。 (c) データ収集のためならびに選択議定書のすべての分野を対象とする政策およびプログラムの計画および策定のための犯罪の定義を、議定書第2条、第3条および第10条に一致する形で明確にし、かつ子どもの被害者と成人の被害者を区別すること、ならびに、連邦、州および地方のレベルで、立法者、サービス提供者、法執行官および一般公衆によるこれらの定義の使用の一貫性を確保することを検討すること。 IV.実施に関する一般的措置 立法 9.2008年TVPA再授権法は歓迎しながらも、委員会は、連邦および州の双方のレベルで、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が法律において区別されて扱われていないため、子どもの性的人身取引が児童買春または子どもの商業的性的搾取と同義になっていることを依然として懸念する。委員会はさらに、連邦の実施法が曖昧であり、かつ議定書のすべての規定に包括的に効力を生じさせるものではないことから、州によってその解釈が異なり、そのため法律および解釈に矛盾が生じていることを遺憾に思うものである。委員会はまた、連邦法と州法との間でおよび諸州間で子どもの年齢についての調和が図られていないことも遺憾に思う。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書に掲げられた売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買の定義(人身取引の定義に似ているものの同一ではない)が修正されること、および、選択議定書上のすべての義務がすべての州および領域で一貫して適用されるよう選択議定書のすべての要素が連邦法で網羅されることを確保すること。委員会は、その際、締約国が、言及されている犯罪の被害を受けた子どもと成人が区別されることを確保するとともに、州レベルでの法律の調和化および強化を動機づけ、かつ促進する目的で模範立法および模範研修プログラムを開発するよう勧告する。 (b) 子どもの年齢について連邦法と州法との調和が図られることを確保し、18歳に達するまでの全面的保護を確立すること。 独立の監視 11.委員会は、締約国の半数以上の州で子どもアドボケイトまたは子どもオンブズマンの事務所が設置されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所によってその役割および独立度がさまざまであること、ならびに、選択議定書上の子どもの権利の充足における進展を恒常的に監視し、かつ子どもからの苦情を受理してこれに対応する、パリ原則にしたがった独立の国内人権機関の設置に関して進展がないことを遺憾に思うものである。 12.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(CRC/GC/2002/2)、および、パリ原則にしたがって独立の国内人権機関を設置する必要性について多数の国連人権機関が行なってきた勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、このような国家的独立機構を設置するよう促すとともに、子どもアドボケイト/オンブズマン事務所をまだ設置していない州に対し、選択議定書上の権利の充足状況を監視し、かつ権利侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしい方法で迅速に対応する同様の責任を委ねられた、このような事務所を設置するよう奨励する。 国家的行動計画 13.委員会は、対話の際に締約国から提供された、人身取引被害者を対象とするサービスを強化するための包括的な戦略的行動計画を策定中である旨の情報、および、司法省における調整官の任命を歓迎する。しかしながら委員会は、このような計画立案の取り組みを、選択議定書上の犯罪を防止しかつこれと闘うという「子どもの搾取の防止および禁止に関する国家戦略」の諸目標を運用可能なものとする目的で同戦略と有効に関連づける対応がとられていない可能性があることを懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止しかつこれと闘うための国家的行動計画の採択および実施を加速させるよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、あらゆる関係者および子どもたちと協議しかつ協力しながら、以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 「子どもの搾取の防止および禁止に関する国家戦略」および関連の計画立案過程において、選択議定書上のすべての犯罪が対象とされ、かつ具体的な目的および達成目標、進展の指標ならびに具体的な予算配分額が定められることを確保すること。 (b) そのような計画立案の取り組みが、選択議定書の実施のための包括的かつ運用可能な計画を州レベルで策定するための模範計画となることを確保すること。 調整および評価 15.委員会は、調整を強化するために行なわれている努力に関して対話の際に締約国から提供された情報には留意しながらも、連邦、州および地方の公的機関間の調整、政府省庁間の調整ならびに選択議定書の実施に関する活動を行なっているNGOとの調整が依然として不十分であることを懸念する。 16.委員会は、締約国が、司法省内で任命された連邦調整官に対し、選択議定書の〔実施の〕調整、ならびに、「国家戦略」ならびに締約国内で議定書を実施するための関連の行動計画、政策およびプログラムの効果的な監視および評価に関する、全般的な部門横断型の責任を履行するための権限および資源が与えられることを確保するよう、勧告する。さらに委員会は、連邦政府が、地方レベルで計画を立案しならびに議定書を執行しおよび実施するための努力の調整を図るよう州に対して奨励する目的で、積極的な調整および意思疎通のための政策、監視ならびに情報伝達の機構および海路を発展させるよう、勧告するものである。 普及および意識啓発 17.委員会は、公衆および〔サービス〕提供者に積極的に情報を提供するために締約国およびとくに保健福祉省が行なっている努力、選択議定書で取り上げられている問題に関する意識啓発を目的とした教育省の児童生徒安全健康プログラム、ならびに、人身取引に関する意識啓発を目的として国土安全保障省が開始した「ブルー・キャンペーン」イニシアティブを歓迎する。しかしながら委員会は、これらの活動が人身取引一般に焦点を当てており、被害を受けた子どもと成人、または売買、児童買春および児童ポルノの被害者となるおそれがある者との重要な区別を行なっていないことを懸念するものである。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、国および州のレベルで具体的かつ長期的な意識啓発プログラムを開発しおよび実施すること、ならびに、子どものためにとくに作成された適切な教材を活用しながら、教育制度のあらゆる段階の学校カリキュラムに議定書の規定を含めることを通じて、公衆、とくに子どもおよびその家族に対して選択議定書のすべての規定を広く知らせること。 (b) 市民社会およびメディアと協力しながら、選択議定書上の犯罪を防止しかつこれと闘う必要性についての意識を公衆一般の間で強化しかつ促進すること。その際、被害者となる危険性がとくに高い子どもおよびその親に焦点を当て、かつ、コミュニティの参加、とくに子ども(被害を受けた男女の子どもを含む)の参加を奨励すること。 研修 19.対話の際に行なわれた、戦略的行動計画の主要な要素のひとつは人身取引被害者に接触する可能性がもっとも高い官吏を対象とした研修の増進である旨の発言、ならびに、国内外で研修を実施するために司法省および連邦調整官が行なっている努力は評価しながらも、委員会は、研修で取り上げられているのは主として人身取引であることを懸念する。さらに委員会は、研修が十分に子どもに特化したものとなっておらず、かつ、研修が実際の理解および行動の変化に及ぼした影響についての評価が予定されていないことを懸念するものである。 20.委員会は、締約国が、研修活動を拡大しかつ強化するとともに、研修が、選択議定書で対象とされているすべての分野を含み、かつ子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家(裁判官、検察官、警察官、出入国管理官および税関吏、医療従事者、社会福祉職員、宗教的指導者およびコミュニティの指導者、養子縁組認証団体、メディア専門家その他の専門家ならびにあらゆる関係技術職員を含む)に対して提供されることを確保するよう、勧告する。 資源配分 21.委員会は、連邦および州のレベルで選択議定書を実施するためのものとされる活動に割り当てられた予算配分額が明確に特定可能となっていないことを遺憾に思う。 22.委員会は、締約国が、選択議定書を実施しかつその適用状況を評価するための、特定可能な予算配分を行なうよう勧告する。加えて、委員会は、議定書上の犯罪を防止するための調査研究およびプログラムに対する資金拠出を増額するとともに、売買、性的搾取および労働搾取ならびにポルノの被害を受けやすくさせる、家庭およびコミュニティにおける根本的原因を理解することに焦点を当てた公的機関、研究機関およびNGOにこのような資金を提供するよう、とくに勧告するものである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項~2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 23.委員会は、選択議定書上の犯罪の防止を目的とした現行の政策、プログラムおよび行政措置のアプローチが法執行志向型であり、子どもの生命および発達を中心に据えたより幅広いアプローチが犠牲にされていることを遺憾に思う。委員会は、以下のことに特段の懸念をもって留意するものである。 (a) 前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ22、2008年)で取り上げられているように子どもの性的サービスへの需要を減少させるために、かつ、性的サービスを買う成人の間で、自分が実際には子どもを虐待している可能性があるという意識を高めるために行なわれている努力が限られていること。 (b) 選択議定書で対象とされている犯罪の根本的原因およびリスク要因に関する調査研究への支援が不十分であること。 (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノの主要な要素である、ジェンダーに基づく差別および暴力と闘うためにとられた措置が限られていること。 (d) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となる危険性がとくに高い、脆弱な状況に置かれた子ども――貧困下で暮らしている子ども、移住者である子ども、困難な家庭状況のもとで暮らしている子ども(家出した子どもおよびホームレスの子どもを含む)、ネイティブアメリカンの子ども(とくに女性)、家を追い出される傾向および家出をする傾向が高い男子、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダー(LGBT)である子ども、思春期の女子ならびに「公的措置の対象とされている」子どもを含む――に対して注意がほとんどまたはまったく払われていないこと。 24.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 商業的理由によるものか他の理由によるものかを問わず子どもの性的搾取を防止し、かつ子どもが被害を受けることを回避するために、性的サービスを求める者および法執行官の態度および行動を変える目的で、児童買春および児童ポルノに関する社会的規範および見方についての意識および理解を促進すること。その際、防止および子どもの保護のために必要とされる保護措置および防壁(親の法的責任を含む)を確立するための、家庭およびコミュニティにおける努力に焦点を当てること。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者から勧告されたとおり(A/HRC/16/57/Add.5、パラ109(f)、2010年)需要側に対応する目的で、児童買春および児童ポルノの顧客の人物像に関する調査研究を実施すること。 (c) 2012年女性に対する暴力再授権法――H.R. 4271――を制定するとともに、ジェンダーに基づく差別および暴力と闘うための努力を強化すること。 (d) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となる危険性がとくに高い、もっとも脆弱な状況に置かれた子ども――貧困下で暮らしている子ども、移住者である子ども、困難な家庭状況のもとで暮らしている子ども(家出した子どもおよびホームレスの子どもを含む)、ネイティブアメリカンの子ども(とくに女性)、家を追い出される傾向および家出をする傾向が高い男子、LGBTである子ども、思春期の女子ならびに「公的措置の対象とされている」子どもを含む――を特定しかつ保護する目的で、根本的原因に関する調査研究、公衆意識啓発プログラムおよび公的討論を実施するとともに、このような子どもに対して必要な支援および援助を提供すること。 (e) 学校を基盤とする防止・早期介入プログラムを開発し、かつ主要なあらゆる関係者および子どもたちの関与を得ること。 (f) 介入が必要な分野を特定するうえで役立ちうる経験および識見を有しており、関連の解決策を立案でき、かつ調査研究の戦略的インフォーマントとして活動できる子どもおよび若者と協議し、かつその協力を得ること。 子どもの経済的搾取 25.委員会は、締約国において多数の子どもが労働(とくに農業部門における労働)を目的とした人身取引の対象とされていること、および、多くの子どもが強制労働を含む最悪の形態の児童労働に直面していることを、深く懸念する。委員会はまた、子どもの経済的搾取に関するデータがほとんど利用可能となっていないことも懸念するものである。さらに、委員会はまた、とくに外国国民をしばしば隷属状態に相当する条件で雇用している農業部門その他の部門における児童労働および子どもの経済的搾取について、関連の法律がほとんど存在しないことも懸念する。委員会は、16歳未満の子どもが、親の同意があれば小規模農場で働くために雇われうることをとりわけ懸念するものである。委員会はさらに、農業部門で危険な条件下で働いている18歳未満(場合により16歳未満)の子どもがしばしば見つかることを懸念する。 26.委員会は、締約国に対し、とくに、児童労働に関連した現代的形態の隷属状態を定義し、かつ、児童労働目的で売られることに同意する能力も有さず、かつそのような成熟度にも達していない搾取されている子どもではなく政府に立証責任が課されるようにするためにTVPAを適用することにより、児童労働を目的とする子どもの売買を防止するために積極的措置をとるよう促す。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) とくに農業部門における最悪の形態の児童労働と闘うための、調整のとれた戦略および専用の予算を採択すること。 (b) 16歳という最低年齢が、親の同意があるか否かにかかわらず小規模農場にも適用されることを確保するため、連邦および州のレベルで法律を見直しかつ改正すること。 (c) 子どもを経済的搾取から安全に解放し、かつ自己の権利を全面的に享受しながら社会に再統合できるようにする目的で査察、監視、調停および斡旋が行なわれることを確保するため、労働省(とくに連邦および州の賃金時間部)の人的資源、技術的資源および財源を強化すること。 (d) 著しく劣悪な形態の児童労働(農業、一部の製造業、保育部門およびサービス部門におけるものを含む)を防止するため、国内外で子どもを雇用している合衆国の産業および企業に関する政策の見直しおよび基準の改善を行なうこと。 (e) 子どもの人数、性別および年齢、労働条件および生活条件ならびに子どもの権利および発達への影響に関するデータを収集するとともに、児童労働に関する記録を改善すること。 (f) 児童労働法において、保護者のいない外国国民であって経済的搾取に相当する目的で同国に連れてこられまたは到着した未成年者に具体的に焦点が当てられることを確保すること。 (g) 就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関(ILO)条約第138号(1973年)を批准すること。 児童ポルノ 27.児童ポルノと闘うために締約国が行なっている努力(2008年子どもPROTECT法を含む)は歓迎しながらも、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者が指摘しているように(A/HRC/16/57/Add.5、パラ100、2010年)、オンラインで児童ポルノがますます入手しやすくなっていること、これまでになく年少の子どもが利用されていること、および、記録された画像における暴力が増加していることを依然として懸念する。 28.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 違反を行なうインターネットサービスプロバイダ(IPS)その他のメディアを自動的にブロックする監視機構を通じて、子どもに関わるポルノ的資料の公表および配布を効果的に防止すること。 (b) インターネット上の安全、ISPの許認可および子どもにとって有害なコンテンツの監視に関する公的機関を設置するため、速やかな措置をとること。 (c) あらゆる環境およびメディアで児童ポルノの被害を受けた子どもを特定しかつ援助するための措置を強化すること。 (d) 世界中で児童ポルノを防止しかつ処罰するための国際協力を引き続き強化すること。 養子縁組 29.委員会は、2000年国際養子縁組法(IAA)の認証基準を拡大してすべての国際養子縁組を網羅することとした、2012年国際養子縁組統一認証法(S. 3331、UAA)の採択を評価する。しかしながら委員会は、2012年UAAが、〔ハーグ〕条約外事案の申請または孤児の申請について、施行後180日間は2000年IAAを遵守することなく提出できると定めていることに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は以下のことをとくに懸念する。 (a) 新たな認証法にもかかわらず、曖昧な定義および法律上の抜け穴が依然として残っており(たとえば、代理母を含む生母への産前報酬その他の費用の支払いが引き続き認められていることなど)、そのため養子縁組目的の子どもの売買の効果的解消が阻害されていること。 (b) 明確に規制されなければ子どもの売買に相当する代理出産について連邦法が定められていないこと。 (c) 2000年IAAにおいて、国際養子縁組に関与する他の国について同法を適用するためには当該国がハーグ条約の締約国でなければならないと定められていることから、すべての国際養子縁組事案における同法の効果的適用が制約されていること。 (d) 2000IAAにおいて、訴追事由のひとつとして「情を知って故意に法律を無視したこと」が要件とされているため、不法行為に関与した者または機関が責任を回避し、かつ法的手続を免れる可能性があること。 (e) 州裁判所および連邦裁判所が競合管轄権を有していることから、法制度の悪用が生じる可能性があること。 (f) 養子がいかなる形態の虐待およびネグレクトを受けないことを確保するためにとられた措置についての情報がないこと。 (g) アニエリ・リセス・ヘルナンデス・ロドリゲス(Anyeli Liseth Hernandez Rodriguez)事件についての情報がないこと。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 大統領が2012年UAAに署名してから180日の間に提出される養子縁組の申請について、それが売買に相当せず、または国際養子縁組に関するハーグ条約に掲げられた他のいかなる規範にも違反しないことを確保するためにとくに注意を払うとともに、養子縁組の申請がどのように処理されたか監視すること。 (b) 選択議定書にしたがい、連邦レベルおよびすべての州において子どもの売買を、とくに議定書第3条第1項(a)(ii)および第5項にしたがって不法な養子縁組目的の子どもの売買を定義し、規制し、監視しかつ犯罪化すること(代理出産および産前報酬のような問題、ならびに、何が「合理的費用」に相当するのかの定義も含む)。 (c) 国際養子縁組目的の子どもの売買の発生を抑制するため、国際養子縁組に関するハーグ条約を十分かつ効果的に実施すること。 (d) 2000年IAAを修正して「情を知って」の定義を改善することにより、これが必ずしも違反について現に自覚していることを要件とするのではなく、そのような疑いを有していれば虐待または売買等の捜査事由として扱えるようにすること。 (e) 締約国出身の機関または個人が、関係国の法的手続を無視して養子縁組を追求する目的で他国に入国することを防止するため、あらゆる必要な措置をとること。 (f) 直接または仲介者として養子縁組を扱っているすべての個人および団体が効果的かつ組織的に認証されおよび監視されることを確保し、その数を制限することを検討し、ならびに、養子縁組手続がいかなる当事者にも金銭的利得をもたらさないことを確保すること。 (g) 養子縁組のための準備に際して、かつ養親家族への養子の統合を援助するために、養親に対して十分な社会的支援およびカウンセリングが提供されることを確保するとともに、養子縁組の十分なフォローアップおよび監視(虐待、ネグレクトまたは搾取が行なわれた場合に養親の法的責任を確定するための体制を含む)を行なうこと。 (h) ソーシャルワーカーおよびケースマネジャーを対象として養子縁組に関する法令および諸問題についての研修および監視を実施すること。 (i) 子どもの年齢および成熟度を正当に顧慮しながら子どもの意見が可能なかぎり最大限に考慮されることに加え、養子縁組手続全体で子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされることを確保すること。 児童セックス・ツーリズム 31.締約国から提供された、セックス・ツーリズム関係者を追及するために合衆国官吏が利用できる手段が最近の立法によって拡大された旨の情報には積極的側面として留意しながらも、委員会は、国外における児童セックス・ツーリズムへのアメリカ市民の関与に関して進展がほとんどないこと、および、締約国が依然として児童セックス・ツーリズムの主な源泉国のひとつであることを懸念する。委員会はさらに、被害者が18歳以上であると合理的に考えたことがセックス・ツーリストの法的抗弁として認容される可能性があることについて懸念を表明するものである。 32.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 法律を見直し、被害者が18歳以上であると合理的に考えたことがもはやセックス・ツーリストの法的抗弁として認容されないことを確保すること。 (b) 前回の総括所見(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ29、2008年)で勧告されたように、外国で貧困下で暮らしている子どもを虐待しおよび搾取することは容認されるという考え方のような態度を変えるために意識啓発を図ることも含め、セックス・ツーリズムと闘うための努力を強化すること。 (c) 児童セックス・ツーリズムは人身取引および売買に相当し、かつ合衆国法上不法な犯罪であることについて、観光業界に働きかけを行なうこと。 (d) 旅行代理店および観光業者の間で国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光倫理規範を広く普及するとともに、これらの事業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範に署名し、かつ児童セックス・ツーリズムを防止するための自社の取り組みについて公に報告するよう奨励すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(第2項~3項)、第5条、第6条および第7条) 現行刑事法令 33.委員会は、選択議定書の禁止規定の一部がいくつかの州の法律に編入されたにもかかわらず、国内法がいまなお議定書と全面的に一致していないことに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 連邦法において、子どもの売買そのものが禁じられるのではなく、児童買春、児童ポルノおよび養子縁組のような特定の目的のための子どもの売買が禁止されていること、および、子どもの売買に関連する法律が、または連邦レベルで定義されている人身売買に関連する法律さえ、すべての州で制定されているわけではないこと。 (b) 子どもが、被害者を逮捕から保護するセーフハーバー(安全港)タイプの法律を制定していない州の大多数でいまなお売春を理由とする合法的な逮捕、拘禁および訴追の対象とされており、かつ、そのような法律を制定した州においてさえ、法律の欠陥および弱点を理由としていまなお逮捕および訴追が行われていること。 (c) 児童ポルノが犯罪とみなされるのは視覚的に表現されている場合のみであること。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 連邦レベルおよびすべての州において、選択議定書第2条~3条にしたがって児童買春およびあらゆる目的の子どもの売買(経済的対価の有無は問わない)を定義しかつ禁止すること。 (b) 売買春への子どもの関与を法律的にかつ実質的に非犯罪化し、売買春に関するいかなる州法においても買春の対象とされた未成年者の逮捕および拘禁は認められないこと、ならびに、被害を受けた子どもの保護に関する上限年齢が締約国の領域全体で18歳とされることを確保すること。 (c) 買春の対象とされた子どもが保護されることおよび逮捕または拘禁の対象とされないことを確保するため、まだセーフハーバー法を制定していないすべての州でそのような法律を制定するとともに、そのような法律の促進および適用のための研修および資金拠出を行なうこと。 (d) 選択議定書上のすべての犯罪を、連邦および州の両方のレベルで、その重大な性質を考慮した適切な刑罰によって処罰できるようにすること。 (e) 選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の未遂および共謀または当該犯罪への参加が選択議定書第3条第2項にしたがって処罰されることを確保すること。 35.委員会は、信仰を基盤とする一部の団体および宗教的組織の聖職者および指導的メンバーにより、子どもの性奴隷制または性的隷属に相当する性的虐待が大規模かつ長期的に行なわれているという情報があること、ならびに、締約国が、事件を適正に捜査し、かつこれらの組織および機関の構成員であって告発された者を訴追するための措置をとっていないことを、深く懸念する。 36.委員会は、締約国に対し、聖職者が行なった子どもの性的虐待事件(単発の事件か、大規模かつ長期的に行なわれているものかは問わない)をすべて捜査するためにあらゆる必要な措置をとること、これらの事件を積極的に訴追するようすべての関連当局に明確に通達すること、ならびに、事件の防止、捜査および訴追のために積極的なかつ開かれた協力を得る目的で信仰を基盤とする団体、宗教的組織およびその指導者と対話を行なうことを促す。締約国はまた、不作為および(または)汚職の場合に法執行機関に課される可能性がある制裁について、これらの機関の注意を促すべきである。 法人の責任 37.委員会は、締約国が実際には選択議定書上の犯罪に参加した法人の責任を認めていることを認知する。にもかかわらず、委員会は、この責任が法律に明示的に反映されていないこと、および、これが雇用との関連でのみ適用されていて、ほとんどの場合には関与した企業を利することになっていることを懸念するものである。 38.委員会は、締約国が、選択議定書上のいずれかの犯罪に参加した法人の責任を法律に明示的に編入するとともに、行なわれた犯罪の深刻さにふさわしい法的制裁を定めるよう、勧告する。 域外裁判権 39.委員会は、犯罪者の国籍に基づく締約国の域外裁判権が選択議定書で対象とされているすべての犯罪に及ぶわけではない旨の前回の懸念(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ35、2008年)をあらためて表明する。委員会はまた、連邦法に、被害者が締約国の国民である場合の域外裁判権の主張について一般的定めが置かれていないことにも留意するものである。 40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPSC/USA/CO/1、パラ36、2008年)をあらためて繰り返し、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムをともなう行為の責任者を訴追しおよび処罰するための枠組みを強化する目的で、締約国が、第4条に列挙されたすべての事案について裁判権を設定するよう勧告する。さらに委員会は、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪を国外で行なった容疑がある者が自国の領域内にいる場合であって、締約国がその者を他の締約国に引渡さないときは、犯罪が行なわれた国が選択議定書の締約国ではない場合または国内法でこれらの行為を犯罪としていない場合であっても、締約国が当該容疑者を訴追できるようにすることも勧告するものである。 犯罪人引渡し 41.委員会は、締約国が、選択議定書の発効後に調印された二国間協定に、選択議定書上の犯罪についての犯罪人引渡しを含めていることを歓迎する。同様に委員会は、締約国が、議定書上の犯罪を対象とする目的で、やはり議定書を批准している国との間でその発効前に調印されたすべての二国間協定は議定書によって修正されると考えていることも、認知するものである。しかしながら委員会は、議定書を批准していない国との協定ではこのような犯罪が対象とされているとはみなされないこと、および、たとえ他国が議定書を批准していても二国間協定が締結されていなければ犯罪人引渡しの決定は行なわれないことを懸念する。さらに委員会は、締約国があらゆる事案で双方可罰性を要件としていることを懸念するものである。 42.委員会は、締約国が、あらゆる事案で選択議定書上の犯罪を犯罪人引渡し犯罪とみなすために法改正を行なうよう勧告する。同様に委員会は、締約国が、議定書に含まれている犯罪については、たとえ二国間協定が締結されていない場合でも犯罪人引渡しの法的根拠として議定書を援用できる旨の第5条第2項の規定を活用するよう、勧告するものである。いずれにせよ、委員会は、締約国が、議定書上のすべての犯罪について双方可罰性の条件を撤回するよう勧告する。 臓器売買 43.臓器売買に関する情報が存在しないことから、委員会は、締約国に対し、臓器売買の防止を目的として捜査を行ない、責任者を訴追し、かつ被害を受けた子どもを保護するよう促す。委員会は、締約国が、次回の定期報告書にこの点に関する情報を記載するよう勧告するものである。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項~4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 被害者の回復および再統合 44.委員会は、保護サービスが著しく不足しており、性的に搾取された子どものためのシェルター(そのほとんどは民間機関および民間慈善団体から資金拠出を受けている)の定員が締約国全体で数百名分にしか達しないことを深く懸念する。被害者のサービス付託について定めたセーフハーバー法が存在する州でさえ、このような保護サービスがしばしば存在しない結果、ほとんどの場合に、子どもをさらなる人権侵害および苦難から「保護する」ために逮捕および拘禁が行なわれている。委員会はまた、これらの子どもが、全面的な身体的、心理的および情緒的回復ならびに社会的再統合ならびに賠償のための十分なサービスを受けられないことがいまなお多いことも、懸念するものである。 45.委員会は、締約国に対し、人身取引の対象とされた子ども、性的目的もしくは経済的搾取目的で売買された子どもまたはその他の形態で選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものために必要とされる専門的サービスを直接またはサービス提供者を通じて確立する目的で資源の配分および支出を増加させるよう、強く促す。このようなサービスには、被害を受けた子どもが身体的、心理的および情緒的に回復し、かつ社会に再統合できるようにするため、即時的救援および長期的サービス(とくに、適当な場合の家族再統合または家族的環境への措置ならびに保健および教育)が含まれるべきである。法的におよびその他の手段を通じて、十分な救済および補償が追求されるべきである。 保護者のいない外国人の子ども、庇護希望者、難民および移住者 46.TVPAに基づき、人身取引被害者が、母国に送還された場合に異常かつ過酷な危害をともなう著しい困難をこうむるときは合衆国への滞在が認められることには留意しながらも、委員会は、人身取引を構成する行為および救援を受ける資格がある者について締約国が非常に狭い定義を適用している旨の情報があることを懸念する。委員会は、保護者のいない外国人の子どものスクリーニングのために行なわれている努力には留意しながらも、人身取引の対象とされた子どもが政府職員によってしばしば犯罪者として扱われていることをとりわけ懸念するとともに、このような子どもが、その最善の利益に関する判断が行なわれることなく、人身取引被害者として特定されないまま送還または退去強制に直面する可能性がある旨の、前回の懸念をあらためて表明するものである。 47.委員会は、締約国が、とくに2008年TVPAおよび2011年難民保護法の将来的な再授権を通じ、選択議定書が対象とする犯罪の被害を受けた子どもの外国人移住者が送還または退去強制の対象とされないことを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、被害を受けた子どもの移住者に対し、その身体的、心理的および情緒的回復を目的としたあらゆる必要なサービスを提供するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、保護者のいない子どもを対象とした「最善の利益認定」を、出入国管理関連の手続全体を通じたあらゆる決定に編入するよう求めること、ならびに、出入国管理関連のすべての手続において子どもの最善の利益を保護する目的で、保護者のいないすべての子どもに独立の子どもアドボケイトが任命され、かつ、出入国管理関連のすべての裁判手続において、保護者のいないすべての子どもが資格のある弁護士によって代理されることを確保することを勧告する。 刑事司法制度上の保護措置 48.委員会は、子どもの事情聴取およびスクリーニングがしばしば、トラウマに十分配慮した事情聴取の経験を欠いた職員によって、かつ不適切な、居心地の悪い、かつ恐怖心を呼び起こすような環境下で行なわれているという主張があることを懸念する。さらに委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者から勧告されたとおり(A/HRC/16/57/Add.5、パラ76)が指摘しているように、被害を受けた子どもが、公開の法廷で、人身取引の加害者または周旋人の面前で証言するよう求められることが多いことを懸念するものである。 49.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪の被害者および(または)証人である子どものケアおよび保護に関する明確な手続および基準を定めるとともに、質を保つために当該手続および基準の適用が監視されるようにすること。 (b) 選択議定書第8条第1項および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)にしたがい、すべての専門家が、刑事手続および司法手続のあらゆる段階における、子どもの被害者および証人への子どもにやさしい接し方に関する研修を受けることを確保すること。 (c) 選択議定書に定められた犯罪の被害者である子どもが刑事司法制度によって処遇されるにあたり、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保すること。 (d) 選択議定書上の犯罪の被害者全員に対し、法的援助を利用可能とすること。 (e) すべての州に対し、子どもの再被害を回避する目的で、被害者/証人による陳述なしに加害者を訴追できるようにし、かつビデオ録画された陳述/事情聴取を法廷で証拠として利用するための手続的改革を行なうよう奨励すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、地域間および二国間の取り決め 50.委員会は、選択議定書関連の問題について締約国が行なっている重要な国際協力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の国内法で人身取引と子どもの売買の違いが明確にされていないため、議定書の適用における国際的一貫性が阻害されていることを遺憾に思うものである。 51.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(人身取引と売買との違いに関して国内法の明確化を図ること、当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.通報手続に関する選択議定書の批准 52.委員会は、締約国が、子どもの権利の履行をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(OPIC)を批准するよう勧告する。 X.フォローアップおよび普及 フォローアップ 53.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、下院、上院、最高裁判所および州当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 54.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を促進する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 XI.次回報告書 55.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、2016年1月23日を提出期限とする次回の第3回・第4回統合定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2014年4月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/296.html
総括所見:ポーランド(OPSC・2009年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2015年)OPAC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/POL/CO/1(2009年10月22日)/第52会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年9月22日に開かれた第1436回および第1437回会合(CRC/C/SR.1436およびCRC/C/SR.1437参照)においてポーランドの第1回報告書(CRC/C/OPSC/POL/1)を検討し、2009年10月2日に開かれた第1453回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、時宜を得た形で提出された、締約国の第1回報告書および委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/POL/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国の報告書が議定書に基づく報告についてのガイドラインにしたがっていなかったことを遺憾に思うものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回報告書に関する従前の総括所見(CRC/C/15/Add.194)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 A.積極的側面 4.委員会は、以下の立法上その他の措置がとられたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 刑法第101条第4項の改正(2008年12月)。 (b) ペドフィリア(小児性虐待)に関する新たな規制を導入し、かつこのような犯罪に対する刑罰を引き上げたその他の法改正(刑法、刑事訴訟法および行政刑法)。 5.委員会はさらに、締約国が以下の文書を批准したことに評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2005年4月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(2005年2月)。 II.データ 6.委員会は、人身取引、児童買春および児童ポルノなどの問題に関して委員会に提供されたデータに留意する。しかしながら委員会は、人身取引および子どもの売買の問題が、別個の問題であるにもかかわらず相互互換的に扱われており、かつ、締約国が、法律において、人身取引とは別に子どもの売買の定義を定めていないことを懸念するものである。委員会はまた、選択議定書で対象とされているすべての分野でデータを収集するための体系的機構が設けられていないことも懸念する。委員会はまた、セックスツーリズムに関する統計がないことも遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野のデータ収集、分析、監視および影響評価のための一貫した方法論および包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう、勧告する。これには、人身取引、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの加害者および被害者双方に関するデータが含まれることになろう。データは、とくに犯罪の性質ごとならびに性別、年齢および都市部/農村部の別ごとに、かつ被害を受けやすい状況に置かれた集団の子どもに特段の注意を払いながら、細分化されるべきである。委員会はまた、締約国が、セックスツーリズム、および、選択議定書で扱われている問題とセックスツーリズムとの関連についてのデータを収集しかつ分析することも勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの売買および児童買春の原因および規模を特定するため、選択議定書で対象とされている問題についての調査研究を実施するよう勧告するものである。 III.実施に関する一般的措置 条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条 8.選択議定書に基づいて締約国がとっている実施措置の立案および適用において子どもの権利条約の一般原則がある程度考慮に入れられていることには留意しながらも、委員会は、それが十全なものではないことを懸念する。委員会は、子どもに影響を与えるすべての事柄(政策およびプログラムの形成を含む)について子どもの意見が正当に考慮されていないこと、および、これが、自己の意見を表明し、かつその意見を正当に重視される子どもの権利の原則の適用が不十分であることの結果である可能性があることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、被害を受けやすい状況に置かれた一部の子ども(ロマの子どもおよび庇護希望者を含む)が直面している差別的態度により、その保護に影響が生じ、かつ選択議定書に掲げられた権利の全面的享受が妨げられる可能性があることも懸念する。 9.委員会は、子どもの権利条約の一般原則、とくに差別の禁止の原則および子どもの意見の尊重の原則が、選択議定書を実施するために締約国がとるすべての措置(司法上または行政上の手続を含む)に含まれるべきことを勧告する。 国家的行動計画 10.委員会は、子どもの性的搾取の問題が2004~2012年国家子ども行動計画に含まれていることに、関心をもって留意する。しかしながら委員会は、選択議定書で扱われているすべての分野を包括的に網羅した具体的行動計画がないことを遺憾に思うものである。 11.委員会は、締約国が、あらゆる関係者との協議および協力に基づき、選択議定書で対象とされているすべての問題に包括的に対処することを目的とした国家的行動計画を策定し、かつ、その実施のために十分な人的資源および財源を提供するよう、勧告する。その際、締約国は、それぞれ1996年、2001年および2008年にストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に特段の注意を払うべきである。 調整および評価 12.委員会は、「人身取引との闘いおよびその防止のための省庁横断チーム」が2004年に任命されたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、諸活動を調整し、かつ選択議定書の実施を体系的に評価するための機構または手続が存在しないことを遺憾に思うものである。 13.委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている問題に対処するための体系的なかつ一貫したアプローチを創造し、かつとられた措置の定期的評価を確保する目的で、省庁間ならびに国および地方の当局間で調整を図るための効果的な制度的機構を設置するよう奨励する。このような調整は、選択議定書で対象とされている分野における戦略および政策の策定のためにも活用されるべきである。 普及および研修 14.委員会は、選択議定書で扱われている問題についての広報活動および教育研修活動が行なわれていることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、選択議定書の促進および普及が十分ではないこと、ならびに、子ども、親および専門家が、選択議定書に掲げられた子どもの権利が侵害されるおそれおよびこれらの侵害からの子どもの保護を向上させるための戦略について十分な知識を有していないことを、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 警察官、検察官、裁判官、医療スタッフ、メディアおよび他の関連の専門家集団を含む専門家を対象として、選択議定書のすべての分野を網羅した普及活動および研修活動(研修資料および研修課程の開発を含む)を強化すること。 (b) とくに、選択議定書の規定をあらゆる段階の教育制度の学校カリキュラムに統合すること、ならびに、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の危険性および有害な影響に関する意識啓発キャンペーンおよび研修を実施することを通じて、選択議定書の規定を公衆、とくに子どもおよびその家族に対して広く知らせること。 資源配分 16.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪の防止および被害を受けた子どもの保護に対応するいくつかのプログラムを、人的資源および財源によって支えてきたことに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の実施のために具体的資金が配分されてきたわけではないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国が、国家予算を策定する際、選択議定書の実施をとくに目的とする財源の配分を行なうよう勧告する。 独立の監視 18.委員会は、子どもオンブズマンが、与えられた任務により、選択議定書の違反に関して子どもからまたは子どもに代わって申し立てられる苦情を受理できることに、評価の意とともに留意する。しかしながら、子どもオンブズマンがその活動の遂行に際して市民社会と連携しているのかどうか、委員会にとっては明確でなかった。 19.委員会は、締約国が、子どもオンブズマンに対し、その任務(選択議定書の実施の監視に関連する任務を含む)を遂行するための十分な財源および人的資源を引き続き提供するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、この点に関する子どもオンブズマンと市民社会との連携を奨励するよう勧告するものである。 市民社会の役割および貢献 20.委員会は、市民社会との協議が行なわれておらず、かつ、非政府組織に対して締約国報告書の作成への参加が呼びかけられなかったこと、ならびに、選択議定書で対象とされている問題に取り組んでいる市民社会の豊かな経験および専門性が全面的には活用されてこなかったことに、遺憾の意とともに留意する。委員会は、選択議定書上の問題に関連した政策立案、計画策定および政府プログラム予算の策定の分野で市民社会の参加が弱いままであることを懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、選択議定書の実施のさまざまな側面(政策および法律の策定、監視および評価ならびに被害を受けた子どもの保護および回復のためのサービス提供を含む)に、子ども団体を含む市民社会の全面的関与を得るよう勧告する。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止 選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置 22.委員会は、選択議定書上の犯罪である行為を防止するために国および自治体の公的機関が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、子どもの搾取(買春およびポルノを含む)をとくに対象とした防止措置、および、問題の原因および規模を特定するための措置が限られたままであることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) リスクの高い状況に置かれている子どもを特定し、かつ問題の根本的原因および主要なリスク要因に対処することを目的として、すでにとられている防止措置の成果ならびに子どもの性的搾取(児童買春および児童ポルノを通じて行なわれるものを含む)の性質および規模についての調査研究を実施すること。 (b) 前述の調査研究に基づいて、防止ならびに影響を受けた子どもの回復および再統合のための措置を組み合わせることにより、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに対処するための、いっそう目標を明確にしたアプローチを採用すること。 特定の集団を対象とするプログラム 24.委員会は、締約国が、2003年に「ポーランドにおけるロマ社会のためのプログラム」を採択したことに留意する。これは、10年間継続することを意図し、かつ子どもを含むロマ・コミュニティのかなりの部分に影響を与えている社会的排除に対応することを目的とするものである。委員会はまた、締約国が、被害を受けやすい状況に置かれたその他の集団(親の出稼ぎの際に自国に残された子ども、入所型養護施設の子ども、および、保護者のいない子どもであって国境を越えて入国した後に措置された養護施設から脱走した者など)の問題に対処するための措置をとってきたことにも留意する。 25.委員会は、締約国に対し、特定の集団の子どもを選択議定書上の犯罪から保護するため、これらの子どもを対象とした組織的な防止活動を引き続き行なうよう奨励する。 意識啓発 26.委員会は、インターネット関連の犯罪から子どもを保護するためにいくつかの意識啓発キャンペーンが実施されてきたこと、および、一般公衆を対象として、子どもに対する暴力に関する広報啓発キャンペーンが実施されてきたことに、関心をもって留意する。委員会はまた、ポーランドの教育制度の基礎的一般教育カリキュラムに人身取引の問題が導入される旨の締約国の説明も歓迎するものである。 27.委員会は、締約国に対し、選択議定書で扱われている問題についての意識啓発キャンペーン、および、親および子どもを対象とする訓練を引き続き実施するとともに、この点に関して市民社会と効果的な形で協力するよう奨励する。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止 現行刑事法令 28.委員会は、選択議定書で対象とされている犯罪からの子どもの保護を相当に強化する関連法の改正に、評価の意とともに留意する。これには、人身売買の定義を掲げ、かついわゆる「勧誘」を処罰することを目的とした2008年の刑法改正、および、新外国人法(2006年)が含まれる。しかしながら委員会は、締約国の法律で、選択議定書第2条および第3条により犯罪を構成するすべての行為が犯罪化されているわけではないことを依然として懸念するものである。具体的には、委員会は、子どもの売買をとくに取り上げた法律が存在しないことを遺憾に思うとともに、刑法で「児童買春」および「子どもの売買」の定義が定められていないこと、ならびに、刑法で15~18歳の子どもが児童ポルノまたは児童買春から明示的に保護されていないことを懸念する。委員会はまた、法律の実際上の実施が依然として問題となっていることにも懸念を表明するものである。 29.委員会は、締約国に対し、ポーランド刑事法制において「児童買春」および「子どもの売買」の定義を定め、かつ、15~18歳の子どもが児童買春および児童ポルノから明示的に保護されることを確保するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、児童ポルノ、児童買春および子どもの売買からの子どもの保護を定めた法律が効果的かつ効率的に実施されることを確保するためにあらゆる努力を行なうようにも奨励するものである。 法人の刑事責任 30.委員会は、対話の際に提供された、刑法には法人の責任に関する規定が存在しない旨の情報について懸念を覚える。 31.委員会は、締約国が、選択議定書第3条第4項に一致する形で、法人の責任に関する規定を刑法に含めるよう勧告する。 養子縁組の法的側面 32.ポーランドで施行されている養子縁組法制には留意しながらも、委員会は、選択議定書第3条第1項(a)(ii)で定められているように、養子縁組事案において不適切な形で同意を引き出すことが締約国の刑事法制の対象とされていないことを遺憾に思う。 33.委員会は、締約国が、選択議定書第3条第1項(a)(ii)で規定されているとおり、養子縁組事案において不適切な形で同意を引き出すことの定義が刑事法制に編入されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 34.委員会は、人身取引の被害者または証人に対して物的、医学的および心理的支援を提供する、人身取引の被害者/証人を対象とした援助および保護のためのプログラムに、関心をもって留意する。委員会は、被害者が18歳に達した時点から5年以内に刑事手続を開始する可能性を認める刑法改正案が作成されたことに留意するものである。 35.委員会は、締約国が、前述の改正を遅滞なく採択するとともに、ある者が18歳に達した後に刑事手続を開始できる期間を5年よりも長くすることを検討するよう勧告する。 刑事司法制度における保護措置 36.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関わる事件では録音および動画による子どもの事情聴取が活用できるとされていること、ならびに、これらの事情聴取は、子どもにやさしい事情聴取室で、特別な訓練を受けた警察官によって実施されなければならないとされていることを歓迎する。しかしながら委員会は、適切な備えのある子どもにやさしい事情聴取室の数および子どもの事情聴取を行なう訓練を受けた要員の人数が、締約国の領域のすべての地域で利用できるほどではないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、子どもにやさしい事情聴取室が設けられている場合でさえ、それが常に活用されているわけではないことも懸念する。委員会はさらに、人身取引事件に関する司法手続が不当に長く、平均して2年かかっていることを懸念する。 37.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもの保護を確保する目的で、子どもにやさしい事情聴取室に適切な備えがなされること、および、子どもの事情聴取を行なう職員がこの点に関して適正な訓練を受けていることを確保するために十分な資源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪に関わる事件の司法手続の期間を短縮し、一方で被害を受けた子どもの全面的回復および再統合のほうに焦点を当てなおすこと等の手段により、選択議定書上の犯罪の被害者がこうむるトラウマを軽減するために必要な措置をとるよう、促すものである。 被害者の回復および再統合 38.NGOが人身取引被害者のためのシェルターを運営できるようにするための空間および資金が提供されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、シェルターの数が依然として不十分であり、かつ、被害者に医学的、心理的および法的援助を提供するための一時的受け入れがしばしば活用されていることを、依然として懸念する。委員会はまた、性的搾取の被害を受けた子どもの回復および再統合のためのプログラムが存在しないこと、ならびに、この問題の全範囲に対処していくことに対する包括的かつ体系的アプローチが欠けていることにも、遺憾の意とともに留意するものである。 39.委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもを対象とした、回復および再統合を援助するためのプログラムおよびサービスを創設するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、これらのプログラムおよびサービスに対して十分な財源および訓練を受けた人的資源が配分されることを確保するよう促すものである。委員会はまた、締約国が、省庁横断チームの行動計画に基づいて策定され、警察部局における試行プログラムとして機能する予定の人身取引被害者援助指針の採択を速やかに進めるとともに、当該試行プログラムに対し、その実施のための十分な財源および人的資源が提供されることを確保するようにも勧告する。 ヘルプライン 40.委員会は、子どもおよび若者を対象とする無償の全国的ホットラインが2008年11月に開設されたことを歓迎する。 41.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもに対してヘルプラインが十分な援助を提供することを確保するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、子どもがヘルプラインの存在を知り、かつ容易にアクセスできることを確保することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、ヘルプラインと、子どもに焦点を当てた非政府組織および警察ならびにヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を奨励しかつ促進するよう勧告する。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 42.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連する国際的または地域的な協力プログラムおよびイニシアティブに締約国が関与していることに、評価の意とともに留意する。 43.委員会は、締約国に対し、人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約および性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討するよう奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 44.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、国民議会、最高裁判所ならびに国家当局および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 45.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 46.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月28日)。