約 449,975 件
https://w.atwiki.jp/maid_kikaku/pages/407.html
(投稿者:神父) 国境での一件以来、サバテとハインツは何件かの任務をこなしていた。 無論、対人任務に関してはすべてハインツが行っており、サバテは周囲の警戒と観測を行うに留まっている。 任務中にGが襲ってきたために応戦するという一幕もある事にはあったが、それなりに平穏ではあった。 ……サバテ自身が、殺人に加担しているという事を思い出しさえしなければ。 「にゃあ」 黒猫が、SS本部の通廊を歩くサバテの足元にまとわりついた。首にはSS中尉の階級章がぶら下がっている。 この黒猫、国境でサバテが勝手に拾ってきたのだが、 猫を車内に持ち込んで連れてきた事にハインツが気がつかなかった事を連れ帰る事に反対しなかったと勘違いし、 おまけにしばらくの間誰もサバテと黒猫の組み合わせを不審に思わなかったものだからうやむやの内に定住してしまった。 ハインツの制服にじゃれついて遊んだ挙句階級章を台無しにして以来、そのぼろぼろの階級章をタグ代わりにつけられている。 おかげで代わりの階級章をもらう言い訳をするのに苦労したとは、ハインツの言である。 「どうしたの、パイワケット? おなかすいた?」 「にゃう」 パイワケット―――はるか西方、グリーデン島の伝承に言う黒猫の名前である。 魔女に使い魔として使役されていた云々と言われているが、サバテは名前の由来を知らない。 拾ってきた猫に名前すらつけないというのも随分だが、SS本部に住み着く過程で周囲の人間が勝手に命名したのだから仕方がない。 ついでに言うとサバテ自身がパイワケットの飼い主というわけでもない。 パイワケットは好き勝手に餌をもらったり散歩したりで日々を過ごし、サバテの部屋に戻るのは寝る時だけである。 それどころか、寝る時すらよその部屋で済ませる事すらある。 ……ともかく、パイワケットはある意味で猫として健全な生活を送っていた。 サバテは懐中時計を取り出し、まだ本部食堂が混雑している時間帯だという事を確認した。 あまり大勢がいる中に骨翼を持ったサバテが入るわけにはいかない。彼女も他人の食事時に不愉快な思いをさせたくはなかった。 「ごめんね、パイワケット。まだ私は食堂に入れない時間なの。でも、ひとりで行ってもご飯はもらえるから大丈夫」 「にゃ」 パイワケットは金色の瞳をしばたかせると身を翻し、食堂の方へ去っていった。 無論人語を解するわけはなく、ただ餌がもらえない事を彼女の雰囲気で察しただけだろうが、 しかしサバテを知る人間は、彼女が何かしらの魔法を使ってパイワケットを化け猫に仕立てたに相違ないと噂していた。 サバテはパイワケットの後ろ姿に手を振り、自室に戻ろうと振り向いたところで目の前に男が立っている事に気がついた。 男はSSの制服の上に白衣を羽織り、技術部隊の徽章と大尉の階級章をつけていた。 彼は陰のある微笑みを浮かべ、サバテが何か言う前に話しかけた。 「サバテ、君に用があるのだがね」 「あの、あなたは……?」 彼は一瞬だけ不審げに眉をひそめ、それからしたり顔で言った。 「ああ、そうか、君は( ・・ )私を知らないのか。私はブルクハルト・マイネッケ……見ての通りSS技術大尉だ」 「ええと、その大尉さんが、私に何の御用でしょうか」 「こんな場所で立ち話もなんだ、研究室まで来てもらいたいのだが……ヘルメスベルガー中尉はどうしたのかね」 「ハインツさ……じゃなくて、ヘルメスベルガー中尉でしたら今は食堂にいると思います。お昼時ですから」 ブルクハルトは制服の内ポケットから銀鍍金の懐中時計を取り出して時刻を確認した。十二時三十分過ぎ、確かに昼時である。 「なるほど、しかし君はいいのかね? MAIDとて腹は減る……肉体的にはどうという事はないが、空腹は精神に悪影響をもたらすからな」 「……私は、皆さんから嫌われていますから、仕方ありません。 まともに話しかけてくれた人も、ハイン……じゃなくて、ヘルメスベルガー中尉以外ではあなたが初めてです。 こんな翼さえなければ、他の人たちとももっと仲良くできるのに……」 半ば無意識に吐き出されたサバテの一言に、ブルクハルトは複雑な表情を呈した。 だが君がその翼を望んだのだろう、という言葉を飲み込み、彼は提案した。 「では、私の研究室で軽い食事でも振舞おう。遠慮はいらん、用があるのは私だからな」 「へ? ええと……あの、ありがとうございます」 あっさりと諒承したサバテに、ブルクハルトは獲物を釣り針にかけた瞬間の、あのなんとも言えない暗澹たる気持ちを味わった。 どのMAIDにも言える事だが、彼女らはあまりにも他人を信用しすぎる。 ただひたすら敵と味方しかいない戦場にいるせいだろうか、あるいはそもそも人間社会で過ごした時間が短すぎるのか。 いずれにしても、MAIDは騙し討ちや裏切りにすこぶる弱い。赤子の手をひねるようなものだ。 いや、まさに赤子の手なのだ、とブルクハルトは思い直した。 彼が自らアデーレを素体にサバテを作り出してから、まだ数ヶ月にしかならない。 そのような彼女が社会生活を送れるのも、ひとえにコアの作用によるものに他ならないのだ。 彼はサバテを後に従えて研究室へと降りていきながら、コアに関わる諸技術の功罪に思いを馳せた。 「さて、粗末な食事で申し訳ないがね、まずは腹を満たそうじゃないか」 湯気を立てるエントリヒアン・ポテトを前に、応接用のソファに座ったブルクハルトが言った。 「Gがグロースヴァント東部の穀倉地帯を荒らしていてな。ジャガイモまでやられなかったのは不幸中の幸いと言うべきか」 「ジャガイモはヴィタミンが豊富だから健康にいいそうですよ」 「ほう、よく知っているな、飛曹長」 飛曹長と呼ばれ、フォークを取り上げかけたサバテがブルクハルトを見て首を傾げた。 無論、MAIDに役職はあっても階級は存在しない。人間ではないからだ。 彼女の視線に気付いたブルクハルトは一瞬だけ身をこわばらせたが、落ち着いてナイフを握り直し、訂正した。 「……いや、なんでもない。サバテ、気にしないでくれたまえ」 「はあ」 「では、冷めない内に食べるといい。最近は代用バター( マーガリン )の質もいまひとつでな……冷えると悪臭がする」 ブルクハルトはぶつくさと食生活レベルの低下に文句をつけながらもポテトを口に運び始め、サバテもそれに倣う事にした。 ……程なくして軽い昼食は二人の胃の中に落ち着き、ブルクハルトは食後のコーヒーを淹れようと言って席を立った。 「ところで、私に用があるというのは、どんなご用件なんでしょうか?」 「まあ待ちたまえ……今コーヒーを出そう。即席だから香りはひどく薄いがね」 「……」 ブルクハルトが二人分のマグカップを手に戻ってきた。 彼は研究室の戸棚を示し、「砂糖とミルクは薬瓶のなかに入っているから好きに取るといい」と言った。 彼自身も実験用の撹拌棒を取り出して薬瓶を開けると、おざなりに砂糖とミルクをマグに流し込んでかき混ぜ始めた。 どちらにも手をつけないサバテを見て、彼はにやりと笑った。 「君は無糖派か、あるいはダイエットでも企んでいるのか。悲しいかな、MAIDの体型はどこをどう頑張っても変わらんぞ」 「ち、違います! ただ、そのお砂糖とミルクは、ちょっと……」 「おやおや、清潔さにかけては我々はちょっとした権威なのだがね。まあいい、ともかく本題へ入るとしよう……」 ブルクハルトがテーブルに戻り、長身を折り畳むようにしてソファに沈み込んだ。 コーヒーマグを慎重に卓上へ置き、ひそめた眉の下からサバテを鋭く見やる。 落ち着きのないサバテの様子を見て、彼は一言目で彼女を釣り上げる事にした。 「君は司令部から与えられた任務を怠っている。その上、虚偽の報告をしているな」 サバテの顔が一瞬にして色を失った。まさに見物というべき様相である。 せわしなくひょこひょこと動いていた骨翼すらも凍りついたように動かない。 「サバテ、君は自身に与えられたはずの任務をヘルメスベルガー中尉に丸投げしている。 これが特務部隊及びその母体たる皇室親衛隊、ひいてはわが国にとってどういう意味を持つかわかるかね?」 「な……あ、あの……ど、どうして……」 「どうして知っているのか、と? 君は我々を何だと思っているのかね? 私はMAIDを作る技術者だ。 それが自ら手がけたMAID―――そう、君の事だとも―――の生産後管理をしないとでも言うのかね?」 サバテの唇が戦慄き、何事かを言おうとしている。だが、彼はそれに構わず先を続けた。 「任務を遂行する事のできないMAIDなど無用だ。それどころか軍務の邪魔にすらなりかねない。 断言しよう。君はわが国にとって有害だ。 そして我々は問題のあるMAIDの調整も行っているのだよ。つまりここで―――」と室内の機材に手を振る。 「君の精神を再設定する事になる。これが何を意味するか、わかるかね?」 ブルクハルトが人差し指を立て、それに反応してサバテがソファの中で震えながら縮こまる。 彼はゆっくりと立ち上がり、その拍子に照明の陰になった顔に大きく笑みを浮かべた。 「い……いや、来ないでください」 「今ある君の精神は消えてなくなる。死ぬと言い換えてもよかろう。 生まれてから今まで何ヶ月になるのかね? その間にできた知人や友人はいるかね? まあ、いてもいなくても構う事はあるまい。これで誰も彼もさようならというわけだ」 サバテの脳裏に、ハインツやジークフリート、パイワケットの姿が横切った。 ほとんど数えるほどしかいない知り合い。それでも彼女にとってはかけがえのない存在だ。 彼女は涙ながらに懇願した。 「死にたく、ない……」 ブルクハルトがますます大きな笑みを浮かべた。 「ほほう、命乞いをするのかね? では君の差し出す代償は何かね?」 「な、何でもします……だから、どうか、殺さないでください……」 君も悪魔に魂を売るのかね、とブルクハルトは一人ごちた。 アデーレ・リットも同じ事をし、そしてサバテに前轍を踏むなと言い残した。だが現実はどうだ。 人間もMAIDも愚かしく、同じ過ちを繰り返すばかりだ。 「では私の与える任務を遂行したまえ。この任務を受けるというならば、君の事は上にも報告すまい」 「ど……どのような任務でしょうか?」 「それは請け負う事を誓ってからでなければ言えんよ」 「考える時間を―――」 「今決めたまえ。でなければ君の事を報告する事になる。直ちにだ」 サバテは衝撃から立ち直りつつあったが、突然に突きつけられた二者択一に頭を悩ませていた。 が、ふと思いついたように顔を上げ、ブルクハルトに言った。 「あのう、今ここで私があなたを殺してしまったら、報告する事もできないのでは?」 ブルクハルトは飲みかけのコーヒーを吹き出した。 人間―――いや、MAIDか―――は追い詰められるととんでもない思考を始めるというのを目の当たりにしたのは始めてだ。 彼は白衣に点々とついた染みを払い、咳き込み、笑いながら「こいつは傑作だ」と呟いた。 「この場で私を殺したら、ただちに君は拘束されるだろうな。ここの警備はそれなりに厳重だ。 まあ、おとなしく諦めたまえ。もっとも、君に私を殺すような勇気があるとも思えんがね」 最後の一言にサバテは言い返せず、うつむいて黙り込んだ。ブルクハルトは続けて言った。 「なに、心配はいらんよ。私は君に機会を与えたいだけだ。君を生み出したわが国に対して報いるための機会をな」 ……やがて、長い時間が過ぎ、彼女が「やります」と言った時、彼は喜びが顔に現れるのを抑えきれなかった。 彼は「このような悪魔の所業にも等しい不当な取引を持ちかけているかもしれないが、私は悪魔ではない」と言ったが、 サバテの目にその顔は悪魔の笑みとしか映らなかった。 冥途回廊 BACK NEXT
https://w.atwiki.jp/qmarikei/pages/26.html
○× 4択 並べ替え 文字パネル 社会スロット キューブ 社エフェ 線結び 一問多問 順番当て
https://w.atwiki.jp/koukouzyuken/pages/10.html
社会の勉強法 地理・歴史の穴埋めワークを完成させる。 日本国憲法の理解
https://w.atwiki.jp/ichinomiy03/pages/16.html
今年度の記事 今年度の記事 日付 紙名 キーワード1 キーワード2 種別 見出し 署名 日付 紙名 キーワード1 キーワード2 種別 見出し 署名 31 2008/4/12 毎日 少子化社会 労働 報道 残業月100時間「もう一人」なんて考えられない 32 2008/5/10 朝日 少子化社会 論説 滅びの美学 「少子化対策」はやめよう 赤川学 33 2008/6/2 朝日 結婚 格差社会 論説 格差時代の「婚活」 白河桃子 34 2008/6/5 朝日 出生率 データ 出生率1.34、07年も上昇 35 2008/6/26 讀賣 労働 報道 欧州の就労支援 上 36 2008/7/2 讀賣 保育所 データ 待機児童遠い「ゼロ」 37 2008/7/5 毎日 少子化社会 データ 少子化じわり進行 38 2008/8/27 讀賣 結婚 データ 結婚観 広がる人生の選択肢 39 2008/10/5 山陽 家族 データ 「大家族」6割希望 40 2008/12/21 山陽 子ども フランス 報道 日仏 男女の関係と子ども 武部磨美 41 2009/2/13 讀賣 育児 労働 報道 「育児も仕事も」ママの夢 42 2009/2/20 朝日 子ども フランス 論説 なぜフランスは高出生率か シリル・フェルナギュ 43 2009/3/19 山陽 少子化 経済 解説 豊かさ再考 日本経済の慢性疾患 44 2009/5/5 山陽 少子化社会 データ 子ども28年連続減 45 2009/5/5 讀賣 少子化社会 論説 少子化招く 若者の貧困 勝間和代 46 2009/6/4 山陽 少子化社会 出生率 データ 出生率1.37 3年連続上昇 47 2009/6/4 朝日 少子化社会 出生率 データ 出生率1.37 上昇3年連続 48 2009/6/6 山陽 少子化社会 社説 出生率上昇 要因分析し対策に生かせ 49 2009/6/28 朝日 少子化社会 ワークライフバランス 解説 仕事と家庭遠い両立 50 2009/6/30 朝日 少子化社会 解説 出生率下がっても少子化は進むの? 51 2009/8/11 朝日 結婚 報道 ただいま婚活中 だけど…道険しく 52 2009/8/13 讀賣 少子化社会 子育て 論説 少子化・子育て 大日向雅美・西沢和彦 53 2009/8/19 山陽 少子化社会 育児休業 データ 育児休業男性取得率1.23%に低下 54 2009/10/7 山陽 少子化社会 子育て データ 子と関わる父の時間増 55 2009/10/17 朝日 結婚 論説 貴女の「婚活」では結婚できませんよ 山田昌弘 56 2009/11/10 朝日 結婚 データ 独身の子供の結婚 57 2009/11/14 朝日 結婚 データ ひたすら増える未婚男 58 2009/12/5 讀賣 少子化社会 結婚 シンポ 結婚・非婚の理想と現実 59 2009/12/6 山陽 少子化社会 データ 内閣府世論調査 子ども持つ必要ない42% 60 2009/12/8 朝日 少子化社会 社説 家庭生活意識調査 安心して産める環境を 61 2009/12/27 讀賣 少子化社会 家族 データ 本社定期意識調査 家族のきずなに強い思い 62 2010/1/19 毎日 離婚 家族 報道 下がる離婚ハードル アラフォーで顕著 63 2010/1/25 朝日 少子化社会 アジア 論説 なぜ、アジアで極端な少子化が進むのか エマニュエル・トッド 64 2010/1/25 朝日 少子化社会 結婚 報道 保守化した若者の婚活に未来はあるのか。 65 2010/1/25 朝日 少子化社会 結婚 データ 結婚の減少が少子化と直結 66 2010/1/30 朝日 少子化社会 結婚 データ 「できちゃった結婚」、抵抗感ある? 67 2010/3/12 毎日 育児休暇 社説 区長の育児休暇 あなたも休んでみよう 68 2010/3/18 山陽 結婚 労働 データ 結婚率に雇用形態影響 69 2010/3/21 朝日 少子化 韓国 報道 少子化韓国に重荷 70 2010.5.5 朝日 少子化 報道 子ども29年連続減 71 2010.6.26 毎日 親権 論説 「共同親権」導入の是非 72 2010.9.20 毎日 貧困 報道 子ども貧困観初調査 73 2010.10.15 毎日 無保険 格差 報道 格差・貧困・虐待…「声なき叫び」追い続ける 74 2010.10.23 朝日 出産 データ 気兼ねなく産みたい 75 2010.10.31 山陽 育児休暇 データ 首長の育休6割反対 76 2010.11.19 朝日 こども園 いちからわかるこども園 77 2010.12.26 朝日 家族 データ 戻れぬ家族の時代 78 2011.1.25 朝日 こども園 報道 こども園幼保一部併存 79 2011.5.3 朝日 少子化 報道 子ども30年連続減少 80 2011.7.16 山陽 育児休暇 報道 育休取得が低下 81 2011.7.28 朝日 こども園 報道 こども園新設 政府案決まる
https://w.atwiki.jp/shomen-study7/pages/2274.html
生活科の学習の特質 児童の身近な( )を活動や体験の場や対象にすること。 人、社会、自然を( )に扱うこと。 児童が自らの思いや願いを実現していく( )を重視すること。 身近な人々、社会及び自然についての( )とともに、そうした気付きをする自分自身の( )にも気づくことができるようになることを重視していること。 生活上必要な習慣や技能を身に付けることを求めていること。 生活科の学習 解答 生活科の年間標準事業時数 第一学年 ( )単位時間 第2学年 ( )単位時間 生活科の学習 解答 ゆとりある指導計画 次の3つのゆとりを大切にした指導計画を作成することが重要。 具体的な活動や体験が十分にできる( )なゆとり 主体的な活動の広がりや深まりを可能にする( )なゆとり 学習の対象にじっくりとかかわることのできる( )なゆとり 生活科の学習 解答
https://w.atwiki.jp/seriousgame/pages/37.html
社会一覧 タイトル アイテム 上達したいスキル amazonもしくは紹介されているURL
https://w.atwiki.jp/epolitics/pages/321.html
刑法における「犯罪論」「犯罪」論の概要 刑法における構成要件について 刑法における違法性の実質論(結果無価値論と行為無価値論) 刑法における保護法益「保護法益」について 「結果無価値論」と「行為無価値論」の保護法益との関係 刑法や刑事政策に関するQ&A刑法分野における「実務」とはどういう意味なのでしょうか? 経済犯罪の場合、罰金刑が高く設定されていますがこれは何故なのでしょうか? 「当番弁護士制度」というのは何故できたのでしょうか? 刑法における「犯罪論」 「犯罪」論の概要 「犯罪」は、以下の3条件を満たした行為だとされています。 ①構成要件に該当する(刑法に書かれている犯罪の定型・パターンに該当) →形式的評価 ②違法な行為(法益侵害がある) →実質的評価 ③有責の行為(行為者に故意や過失がある) 刑法における構成要件について 構成要件というのは、犯罪のカタログで、刑法に書かれている犯罪の定型・パターンです。 構成要件は、人々に「このようなパターンの行為は原則として違法です」と予告する機能をもっており、構成要件概念は罪刑法定主義の基本となっています(構成要件の罪刑法定主義機能)。 構成要件には、以下の3種類があります。 ①客観的構成要件要素 →法益侵害・法益侵害の危険の発生など ②主観的構成要件要素 →目的犯における目的・故意・過失など ③規範的構成要件要素 →わいせつ罪の「わいせつ」のように、裁判所の判断が必要なもの 刑法における違法性の実質論(結果無価値論と行為無価値論) 違法性の実質については、2説があります。 ①法益侵害説:法益の侵害(の危険) →法益侵害と法益侵害の可能性に注目。刑法の役割を法益保護に置き、あくまでも法益に違反する行為のみを刑法の対象と考える。法益の侵害は客観視しやすい内容であり、違法性論を安定させ、罪刑法定主義につながる。 ②社会倫理違反説:社会倫理・道徳違反 →社会倫理違反・社会益道徳違反を問題にする。法益侵害以外の行為者の意図・動機などを評価することができるが、倫理や道徳の客観化が困難なため、裁判官の主観が入ってくるという問題点がある(違法性と倫理違反との混同)。 2 法益保護主義 法益保護主義とは、法益の擁護が刑法の任務であり、犯罪は法益に対する加害行為(法益を侵害する行為、法益保護の危険を生じさせる行為)に限定されるべきだとする考え方であり、現在の学説における通説ないし定説になっている。 これに対して、かつては、社会倫理の維持を刑法の任務として強調する考え方が有力に主張されていた。こうした立場からは、社会の倫理に反する行為であって、その維持の必要性という観点から見て看過しえない行為が犯罪とされることになる。しかし、個人主義に立脚する現在のわが国の法制度下においては(憲法13条参照)、多様な価値観が許容される事が必要であり、「他人に迷惑をかけない限り」行動する自由が保障されなくてはならず、「他人に対して迷惑のかからない行為」に対して国家が積極的かつ強制的に介入し、一定の価値観とそれに従った行動を国民に対して強要することは慎まなければならないのである。こうした観点から、刑法の基本的な政策原理として、法益保護主義が採用される必要があることになる。しかし、後述するように、判例ないし学説における、社会倫理の維持への関心ないし執着には根強いものがあり、それは違法論を初めとして、さまざまな解釈論の場面に顔を出す事になる。(山口厚「刑法総論」p.4) 刑法の任務は法益の保護である。したがって、刑法はその目的に反する事態を、過度の介入の抑制という自由主義的原則を考慮しつつ、禁止の対象とするものである。こうした理解からは、違法性の実質は、法益侵害・危険という「結果無価値」の惹起と解される事になる(これを法益侵害説ないし結果無価値論という。現在、学説では、後者の名称がより一般的には用いられている)。このような意味で、違法性の実質については結果無価値論の立場から理解されるべきである。この立場からは、構成要件該当事実に対応した行為者の主観面であるに過ぎない故意・過失は、違法要素ではなく、また、主観的違法要素は例外的に肯定されるにすぎないのである。 これに対して、刑法の任務を社会倫理の保護に求める立場からは、行為の反倫理性(このような、法益侵害・危険に解消しえない行為の反倫理性を「行為無価値」という)が違法性の実質と解される事になる(これを行為無価値論という)。ここでは、行為者の主観面は、故意・過失を含め、行為の反倫理性に影響を及ぼす事情として、広く違法要素となる。そして、この立場を徹底する場合には、結果無価値は、独立の意義を有するのではなく、行為無価値を評価するための一資料にすぎないと解されることになる(行為無価値一元論)。 わが国の学説においては、刑法の任務を法益保護とする理解に立ちながらも、処罰の限定のためには、行為無価値を考慮することが必要だとする見解が有力に主張されている。法益保護という目的と、それを達成する手段とは別であり、後者の見地から行為無価値を考慮する事は(保護目的との合理的関連性がある限りにおいて)可能であり、必要であるとの指摘もされている。このような意味で、わが国の行為無価値論は、結果無価値に加えて行為無価値を要求するという処罰の限定性を強調しているのである(折衷的行為無価値論)(山口厚「刑法総論」p.93) 上記が教科書的な理解になりますが、弁護士の方に学会及び実務状況を聞いた所、以下のような回答をいただきました。 ①現在の刑法学界では、結果無価値論(法益侵害説)のほうが有力で、学界の主流は明らかに結果無価値論(法益侵害説)。但し、行為無価値の先生も学者も名前を挙げれば意外といる(団藤,大塚,大谷,川端,井田,佐久間,伊東(研)) 。 ②実務は行為無価値論(二元論)といわれているが、実際には実務(判例)は「行為無価値論が正しい」と考えてそこから演繹して結論を導いているわけではなく、常に具体的妥当性との均衡をにらみながら理論的裏付けを探って結論を出すという過程を経ている(そのため、「判例は行為無価値である」というような言い方は誤解を招くといわれるようです)。実務的な価値判断としては二元論というべきなのだと思うし、実務は行為無価値であると言っても大過はないが、そういうものだと理解すべき。 刑法における保護法益 「保護法益」について 法益 法によって保護される社会生活上の利益。権利より広い概念であり、何々権という権利として一般に認められるには至らないものであってもよい。 刑法上、違法性は法益侵害を中核とするとされる。 刑法の主な役割は、刑罰により法益を不法な侵害から保護することにあるので、個々の罪において、刑法が保護しようとする法益(保護法益)が何かを明らかにすることがその刑罰法規の解釈の重要な指針となる。 また保護法益の性質によって、個々の犯罪の体系的分類がなされる。 刑法各則の規定は、おおむね、国家的法益に対する罪、社会的法益に対する罪、個人的法益に対する罪の順に、体系的に整序されている(「法律学小事典」より引用) 。 なお、個人的法益と社会的法益は、全く別個のものではなくて、個人的法益でもあり社会的法益でもあるという場合もありえます。 2つの円の内重なり合う部分があって、その重なり合う部分を個人的法益として扱うのか社会的法益として扱うのかは、その時どきの法律・判例・運用などで変わります。 また、人権と個人的法益の関係でいえば、「人権≒個人的法益」になると思います。 憲法上の人権ではなくても、刑法上、個人的法益として保護されるものもありそうですし、刑法上処罰規定がないからといって、憲法上の人権を侵害していないことにはならないと思います。 参考サイト 法益 - Wikipedia 被害者なき犯罪 - Wikipedia 「結果無価値論」と「行為無価値論」の保護法益との関係 結果無価値論というのは、「法益侵害という結果を起こしたことが悪い」という考え方なので、個人的法益のみならず、国家的法益、社会的法益にも、刑罰法規を設けることはできます。 (例)列車を転覆させてはいけませんよー。通貨を偽造してはいけませんよー。←社会的法益の侵害という結果は発生している。 行為無価値論というのは「やってはいけませんと言われていることをやったのが悪い」ので、刑法等で「やってはいけない」とされていることをやったのが悪い、という考え方です。 学説でいう行為無価値論者は、行為無価値+結果無価値も考慮する、という感じなので、二元論であると言われています。 でも、実務は行為無価値か結果無価値か、というのとはあまり関係なく、事件ごとに「この辺りが落とし所」と考えてやっているようです。 参考サイト 主観的構成要件と主観的違法要素は、同じ意味ですか? 「特定の構成要件に該当する法益侵害の現実的危険性を有する行為」と、「構成要件的結果発生の現実的危険性を惹起する行為」はほぼおなじ意味でしょうか? 刑法や刑事政策に関するQ&A 刑法分野における「実務」とはどういう意味なのでしょうか? 刑法分野の場合、基本的に判例で出た判断が実務を回すときの基準になります。 そのため、法曹が「実務」というときは「判例」を指していることが多く、実務=判例というのが基本的な理解になります。 経済犯罪の場合、罰金刑が高く設定されていますがこれは何故なのでしょうか? 独占禁止法・不正競争防止法・租税法などに違反した経済犯罪の場合、「損害額を賠償すればいい」ということになると、脱法行為をする人が後を絶たなくなるので、「脱法行為をするくらいなら、きちんと法律を守った方が得だ」という考えになるように、罰金などを高額に設定する必要があります。 税金で言うならば、「脱税しても元々払うべき額の税金を納めればいい」という事になると、皆脱税します。 そのため、追徴課税などはかなり高額の罰金が設定されており、「脱税して後からごっそり持っていかれるくらいなら、おとなしく払うものは払ってしまった方がいい」という発想になるように制度設計がされています。 なお、独占禁止法の場合は、そうはいっても、企業はなかなか尻尾を出さないので、司法取引的なやり方も取り入れて、「一番に名乗り出た企業には、課徴金減額しますよ」みたいな事もやっていて、刑法典における経済犯(詐欺や強盗など)とは少し違った考え方で理論構成されているようです。 「当番弁護士制度」というのは何故できたのでしょうか? 当番弁護士制度 - Wikipedia http //ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BD%93%E7%95%AA%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E5%88%B6%E5%BA%A6 当番弁護士制度とは、刑事事件で逮捕された者(被疑者)が、起訴される前の段階であっても、弁護士を通じた弁護権の行使を円滑に行うことができるようになることを目的に、日本弁護士連合会(日弁連)により提唱・設置された制度である。逮捕された人が警察を通じて、または家族や知人などが所管の弁護士会へ依頼することによって当番弁護士による初回の接見を無料で行うことができ、防御の手段等のアドバイス、法律相談、弁護の依頼を行なうことができる。 導入の背景としては、刑事手続きにおいて捜査機関(警察・検察)側と比較して、被疑者側は自分の周りを自分を有罪にしようとしている人達に囲まれるため、被疑者の味方となる弁護士側も裁判で不利になるという事情から、弁護人の弁護活動をもっと良くするためにはどうしたらいいかと考えて、作られた制度だそうです。 参考サイト 日弁連 - 逮捕されたとき! -当番弁護士制度について- 日弁連 - 知ってください『当番弁護士』
https://w.atwiki.jp/wiki11_study/pages/6.html
社会 中学3年になったらほぼ公民だけど(;`ー´) メニュー まだ無いっス(;`ー´)
https://w.atwiki.jp/ikareusagi/pages/18.html
社会 こちらのページは只今編集中にございます。
https://w.atwiki.jp/business-ethics/pages/203.html
2009/10/28 入所費 毎月天引き 相次ぐトラブル「就活できない」 生活保護の受給者などを対象にした「無料低額宿泊所」や無届けの類似施設の一部で、金銭管理や住居環境をめぐり、入所者とのトラブルが全国的に相次いでいる。愛知県内でも、元入所者の男性が生活保護から不当に高い費用を取られたなどとして施設を相手にした訴訟を準備。ホームレスを支援する市民グループは「困窮者を狙った貧困ビジネス」として、国や自治体に悪質業者への早急な対応を求めている。 ◇ ◇ ◇ 「ちょっと飲む?」。昨冬、寒風吹きすさぶ名古屋駅近くの公園、派遣切りにあった男性(43)は、缶コーヒーを手にした60歳くらいの見知らぬ男から声をかけられた。「泊まるところがあって飯も出て、働かんと3万円の金がもらえるぞ」 所持金がなく、住む所にも困っていた。軽い気持ちでついていった先は、名古屋市内にある無届の宿泊施設だった。 入居に際し、生活保護の申請と、それに必要な求職活動の証明書を求められた。区役所やハローワークの手続きには、施設の職員が付き添った。毎月の生活保護費が振り込まれる銀行の通帳と印鑑は施設が預かる決まりになっていた。 男性は1ヶ月11万円7千円を受給。そこから入所費として8万6千円が天引きされ、手元に残るのは3万円ほどだった。1日3食付いて、入浴もあったが部屋は四畳半を薄いベニヤ板で仕切った粗末な個室、小さな物音で隣から「うるさい、殺すぞ」と脅かされたこともある。 男性はい「息苦しくなった」と9月に退去。今はしないの避難所に寝泊りしながら職を探している。 「自立を支援するはずなのに、とても就活できない」とこぼすのは今月、市内の別の施設を1ヶ月ほどで退去した男性(46)。 生活保護費から1ヶ月の入所費9万5千円を天引きされ、残りは2万円。「高いとは思ったが、選択肢が無かった」。面接の洋服代や交通費に回す金がなくなり「生活保護から抜け出せない」 入所費には食費と別に、管理費1万2千5百円、光熱費1万円以上が含まれるのに、エアコンは百円入れないと動かないコイン式。「やはりピンハネされている」と感じた。 こうした声に、愛知県内で宿泊所を運営する業者の1人は「不当な利益を得ているわけではない。むしろボランティアに近い」と反論。県内に複数の施設を運営する業者は「取材は断っている」とだけ答えた。 【無料低額宿泊所】 生活困難者が無料または低料金で利用できる宿泊施設。社会福祉法の第2種社会福祉事業の位置付けられ、不動産業者や民間非営利団体(NPO)などが自治体に届けるだけで設置できる、厚生労働省の調査によると、6月末時点で全国に439施設、入所者数は1万4089人。ホームレスを対象に無届のまま運営している施設は1月時点の初の調査で127施設、入所者数1715人となっているが、詳細は不明。 ソース:CHUNICHI Web http //job.chunichi.co.jp/news/index.php?nid=874&ts=1256959840&PHPSESSID=45799ad2efcfe90e7db4c184f47a7bb1 【コメント欄】 名前 コメント