約 66,488 件
https://w.atwiki.jp/sinraf/pages/3154.html
幼さより、お嬢ちゃん感が上がったなぁ… - 名無しさん 2014-02-26 10 42 38 アレックスさん何してはるんですか・・・ - 名無しさん 2014-02-26 17 00 25 この一言のせいでアレックス(幼)の女装にしか見えなくなったw どうしてくれるんだ! - 名無しさん 2014-02-26 19 54 26 でも雰囲気変わってこれじゃない感はある、かわいいけどね(支離滅裂) - 名無しさん 2014-02-27 01 39 36 じゃっかん成長してる感じは受けるよね。姫の方が好きだからいいけど - 名無しさん 2014-02-27 14 56 34 性能は力属性のクリエール。力属性バフやリーダーが限られる関係上マスターには魔貫通が少なく使いやすい。薙貫通の魔兄妹あたりが当面の難敵になりそう。 - 名無しさん 2014-03-08 14 49 52 0271_眠り姫アルマで強化可能な模様 - 名無しさん 2014-04-05 02 11 37 大全のアルマちゃんは恐らく神具復活が付くな - 名無しさん 2014-07-18 19 25 43
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/1280.html
ラノで読む 戻【眠り姫の見る夢 -Ayana- 前編】 ◇五 「ちょっ、なにいきなり……」 「アヤナさん、ちょっと持ってて」 眠り姫は私の言葉を無視して上着を手渡してきた。そして両腕を交差させる形でロングTシャツの裾を持つと、 「んっ」 裏返す要領で一気に脱ぎ捨てる。反動でキャミソールを持ち上げているその豊かなおっぱいがぷるんと大きく揺れた。 太陽君の異能で再び差し込んだ朝日がドームの横穴から降り注ぎ、それはさながらスポットライトのように、露わになった眠り姫の華奢な肩のラインやその白い肌を照らしだし、不覚にも私は言葉もなく見惚《みと》れてしまっていた。 ……私の隣で眠り姫を見上げていた太陽君が小さく「ぅわっ」と感嘆の声をあげたのが聞こえたが、彼の保身のためにもそれは黙っておこう。 眠り姫は続けてジーンズを絞めていたベルトをカチャカチャと外しにかかり、 「待って、年頃の女の子としてここでそれは待って」 私は慌てて彼女を制止した。何をいきなりストリーキングを始めようとしてるんだこの子は。 「えー、でも汚れちゃうよ」 「汚れるってなんで……まさか」 嫌な予感が脳裏を過《よ》ぎる。 彼女は私へにこりと微笑むと、その視線を蛇ラルヴァへと向け、小さく呟いた。 「うん。私が、おとりになる。その間にアヤナさんはこの子たち連れてここから離れて……あ、出来れば助けを呼んで欲しい、かな」 予感的中か、しかも悪い意味で。 「……それで姫音さんはどうするの? だからって『はいそうですかお願いします』なんて言えないよ」 私は何とか思い留まらせようと彼女の手を引いた。しかし、眠り姫は無言のまま私を見ると、一瞬だがちょっとだけ困ったような表情を浮かべた。 「――俺が行く。いくら年上だからって女の人におとり役なんてやらせられないよ」 私たちの間に、太陽君が一歩入り込んできた。ちっちゃくてもやはり男の子か。さっき異能を使ったことで相当疲れているだろうに、彼はその拳を強く握りしめ真っ直ぐ私たちを見上げていた。 しかし、眠り姫はそんな彼に小さく首を振って答える。 「駄目、だよ。太陽君には太陽君にしか出来ないことがある、から」 「俺にしか……?」 眠り姫は太陽君のスポーツ刈りの頭を優しく撫で、そして両手で彼の肩を取ると、くるりと虹子ちゃんの方へと向け、 「前に虹子ちゃんがあのラルヴァに――れた時、太陽君は何を思った? どう感じた? もし太陽君に万が一のことがあったら、今度は虹子ちゃんがそんな思いをしなきゃならなくなる。だから……」 太陽君と眠り姫に見つめられた虹子ちゃんが、眠り姫の言葉に今にもまた泣き出しそうな複雑な表情を浮かべながら、それでもじっと二人を見つめ返していた。 「だから、太陽君はもしも……もしも私が失敗してあのラルヴァが三人に襲いかかってきたときに、その時は太陽君が虹子ちゃんを守ってあげて……あ、あとアヤナさんも一緒に」 って! 眠り姫の台詞《セリフ》の最後で私は心の中で盛大にずっこけた。うわーおまけ扱いか。話の流れ上しょうがないとはいえちょっと凹むなぁ。 「……で、姫音さんはどうするつもり?」 「足止め出来そうな方法が一つあるんだ。上手くいけば絶対に二度と誰にも襲って来れないくらいに、ね」 眠り姫は私へと振り向き互いに見つめ合う形になる。彼女の表情にもう笑顔は、ない。 「それじゃアヤナさん、後はよろしくね。もし私にどんなことがあったとしても、二人を連れてここを離れることを最優先にして」 「ちょっ、それって……」 そして私の言葉を遮るように、眠り姫は振り向くことなくドームの横穴に手を掛けると一気に表へ出た。辺りを探っていた蛇ラルヴァも彼女に気付いたのか、真っすぐこちらへ再びのしのしと歩み寄り始める。 嫌な予感、すごく嫌な予感がどんどん大きくなっていく。 さっきまでのおちゃらけムードはどこへやら、心臓の鼓動が急激に早くなり、私はちびっこたちを引き寄せ両脇に抱え込む。二人もまた小さく震えているのが感じ取れた。 眠り姫が一歩また一歩と蛇ラルヴァへと近づいていく。 ――あの子、普段は昼行灯を気取りながら、実はあんなラルヴァなんか一瞬で倒せるようなすごい異能を秘めているとか……? 私は無理矢理良い方へと思考を巡らせた。 そうだ、眠り姫はきっと私の知らない何らかの勝算があるからこそ、自分から「おとり役」をかって出たんだ。 両手で二人を支えながら、歩みを進める眠り姫の後ろ姿を見つめ、私は考えうる最良の可能性に期待せざるを得なかった。 しかし。 それは一瞬。私が余計なことを考えている間の、ほんの一瞬のことだった。 さっきまでの鈍重《どんじゅう》な動きと打って変わり、自身の間合いへと踏み込んだ人間を、蛇ラルヴァの巨大な口が即座に捕らえ―― それはまるでさっきの私の浅はかな希望をいとも簡単に打ち砕くかのように、そして想像してしまった最悪な予感の通りに「おとり役」の眠り姫は蛇ラルヴァの口に捕らえられてしまった。 「ひっ……!!」 私は咄嗟に両腕を伸ばし、二人の両目両耳を塞ぐように自身の両脇へと押し付け抱き込んだ。 この子たちにあんな光景は見せられない。あんな酷い音は聞かせられない。 ぐむりぐむりと喉を鳴らし、眠り姫が飲み込まれていく。蛇ラルヴァの口からはみ出た眠り姫の足がバタバタと暴れている。 私は両腕に込められた力を抜くことすら忘れ、ただただ声を殺しこみ上げる嘔吐感を堪え、クラスメートがラルヴァに飲み込まれていく姿に目を背けられずにいた……。 「お姉さん、痛い……」 くぐもった声が耳に届く。太陽君が私の腕から抜け出そうともぞもぞ動き、私は我に返った。 「おっと、ごめんねぇ」 ……もうすでに『惨劇』は終わっている。眠り姫を嚥下《えんげ》した蛇ラルヴァは満足したのか、太陽君の異能で再び差し込んだ朝日の中で胡座《あぐら》をかくと、その大きくなった胴をまるめ陽だまりにトグロを巻き眠るように横になっていた。 ……太陽君に異能を使ってもらったのはこのため? いやまさか……。 私は腕を緩め二人を離す。 「あっちのお姉さんは……?」 虹子ちゃんの質問に、私は答えられず不意に目線を逸らしてしまった。 即座に「しまった」と思ったが時すでに遅し。私の対応によくない空気を感じたのか二人はすぐにドームの横穴から外の様子を覗いた。 「まさか、あれって……」 「そんな……」 その先で日向ぼっこして休んでいる、人一人分の体積が増えた蛇ラルヴァの姿に二人は絶句した。 ――急がないと。 私はわずかに震えるに力を込め立ち上がり、ドームの壁面に手をかけ表情を陰らせたままの二人に声をかける。 「行こう」 「……でも! あっちのお姉さんがあのままでいいのかよ!?」 「だから、だよ。早くあの子を……姫音さんを助けてあげないと!!」 声を荒げ二人の手を取ると、私は力任せに二人を引き連れ、ドームを抜け中央広場へと駆けだした。 ◇六 中央広場の入り口で、運よく虹子ちゃん達の友達四人(虹子ちゃん太陽君も含めて男女三人ずつの六人班だったようだ)と合流することができた私は、すぐさま彼らに学生証を持ってないか確認した。 運良くそのうちの一人が持っていたので、奪うかのように半ば無理矢理借りるとバッテリーを取り外し眠り姫の学生証のそれと交換する。ほどなくして再起動した眠り姫の学生証の端末を立ち上げると……私は電話帳からある人の名を探し出し、急いで通話ボタンを押した。 「もしもーし、リムっちおはよー」 電話の相手は、私たちと同じクラスの醒徒会書記、加賀杜《かがもり》紫穏《しおん》。今の私がまっさきに思い浮べることのできた『この状況をなんとか打開できる唯一の人選』だった。 「紫穏ちゃん! 私、彩七《あやな》だけど、今すぐ助けにきて!!」 「あやな……ってスーさん? でもこれリムっちの学生証番号……何かあったの?」 私は急かすように口早に叫ぶ。 「双葉公園にラルヴァが! 姫音さんが私たちをかばってあいつに……食べられちゃったの!!」 「なっ……スーさんちょっと待ってて!」 急に電話口の空気が変わり、そこで一端会話が途切れた。紫穏ちゃんが電話口の向こうで誰か複数人と会話をしている声が受話口からこぼれてきている。 「わかった、今アタシ醒徒会室にいるから……こっち何人か連れてすぐ行くね!」 電話を切ってから数分と経たない間に、紫穏ちゃんは赤いマフラーをした男子中学生に背負われて中央公園入り口へと到着した。 「はやはや、ありがとっ。スーさんお待たせ! リムっちは!?」 紫穏ちゃんは少年の背から飛び降りると私たちの元へと駆け寄った。少し遅れて紫穏ちゃんを背負っていた少年が息を切らしながらその後に続く。しかし、 「なんだこいつー」 「十円傷つけちゃえー」 「ちょっ、こらこらやめないかキミたち」 いつのまにか太陽君の男友達二人がその赤マフラーの少年に集《たか》っていた。少年はひとまず笑顔であしらっていたが明らかにこめかみへと青筋を立てているのがはっきりとわかった。 ってそんなの見てる場合じゃないっ。 「紫穏ちゃん、こっち! 遊具広場のほう!! あいつ今は姫音さんを――てお腹いっぱいになったのか眠ってるみたいなんだけど……」 私はあわてて蛇ラルヴァが寝ている広場へと指さし、簡潔に状況を伝えた。 「ラルヴァが眠ってる? まさか……」 紫穏ちゃんは私の言葉にちょっと考え込むと、すぐに赤マフラーの少年へと振り返り、 「はやはや、ちびっ子たちの保護を優先して、区の公園管理局にラルヴァ発生を通達。あとは姉御の到着を待って指示を仰いで」 「え。ラルヴァ倒すなら俺も一緒に……」 はやはやと呼ばれた赤マフラーの少年が一歩踏み出す。しかし紫穏ちゃんは手のひらで彼を制止すると、 「ごめんねはやはや。お願い、ここは私にまかせて」 「――わかった。あの子たちと水分《すいぶん》先輩を待つよ……」 そして、少年は身を翻すと子供たちの方へと向かっていった。 紫穏ちゃんは彼の後姿を少しだけ寂しそうな表情で見つめていたが、ぐっと拳を握り私へと振り返る。 「スーさん、行こう!」 その表情は真っ直ぐに力強く。 「うん! 紫穏ちゃんこっち!」 私は遊具広場の方を指差すと紫穏ちゃんと二人、急ぎ足で駆けだした。 紫穏ちゃんを連れて遊具広場へと再び戻ると、蛇ラルヴァは相変わらず太陽君の作った日向《ひなた》で眠るように丸まったままの姿だった。 「やっぱり……」 紫穏ちゃんが呟く。 「え?」 なにが「やっぱり」なのか。尋ねる間もなく紫穏ちゃんが蛇ラルヴァに向かって歩を進めた。 「紫穏ちゃん待って、危ないよ!?」 「大丈夫だよ、あのラルヴァはきっと|も《・》う《・》起《・》き《・》な《・》い《・》から」 「……え?」 「スーさんはちょっと離れててね」 言葉の真意がわからなかった……が私は言われた通り数歩離れた位置で足を止める。 確かに彼女の言うとおり、蛇ラルヴァの枕元に紫穏ちゃんが立ってもいっこうに目を覚ます様子はなかった。 紫穏ちゃんは無言のままスニーカーの爪先でラルヴァの小さな肩をつついてみるがまるで反応がない。そのままその肩を蹴り上げると蛇ラルヴァを仰向けにさせた。 続けて彼女はポケットから既に用意してあったのかカッターナイフを取り出すと、刃を一枚分だけ出してその腹部へと押し当て……、まるで段ボールを塞いでいるガムテープを切り開くかのように、その腹部の皮一枚にだけ縦一本に切り込みを入れ、そしてその切り口に両指をかけると、左右へと一気に引き裂いた。 紫穏ちゃんはその返り血で赤く染まっていくがいっさい気にせず、そのまま露わになった胃袋に手をかけ、ブチブチと引き千切っていった。 さすがは醒徒会役員といったところか、紫穏ちゃんが黙々と蛇ラルヴァを解体していく。私たちはその蛇ラルヴァから逃げ惑うことしかできなかったというのに。 そして、その蛇ラルヴァの残骸の中から、体液まみれで苦しそうな表情のまま眠っているキャミソール姿の姫音さんが救出された。 「リムっち、起きて」 紫穏ちゃんが眠り姫の頬をペチペチと叩く。眠り姫は小さく呻き声をあげ、ゆっくりと体を身を起こした。 「ん、ベタベタしてる……。あれ? シオンさんだぁ」 眠り姫は紫穏ちゃんを確認するなり、ドロドロになりながらもヘラリといつものゆるんだ表情に戻っていた。 「リムっち、やっぱりこいつ自身を?」 「うん、でも美味しくなかった、よ。それにラルヴァの夢の中は、そこにいるだけで気持ち悪いねぇ」 「無茶しちゃダメだよ。リムっち食べてお腹いっぱいで眠るかどうかも賭なのに、それでこいつがもし夢を見なかったら……と」 こちらで聞き取れるかギリギリの声で二人が何やら会話をしていた。てか夢? 何の話だ? しかし紫穏ちゃんはそこで一旦区切ると、私の方へ振り返り、 「スーさん、リムっち無事だったよー」 その血にまみれた姿で私へと手を振ってみせた。 ◇七 ほどなくして先ほどの赤マフラーの少年と先輩らしき女性――あの人が姉御? そして区の役員っぽい人たちが私たちのいる遊具広場へと駆け付けた。 「スーさん、このこと黙っていてもらえると助かるかな。できればタナちゃんにも」 タナちゃん……とは私の相方|田中《たなか》雛希《ひなき》のことだ。そういえば紫穏ちゃんが以前「タナちゃんが浜《はま》なんとかって名字だったらスーさんハマちゃんで良いコンビ名だったのになぁ。そしたら絶対一緒に釣りへと誘うのに」と言っていたのを思い出す。紫穏ちゃんが釣り好きなのは聞いていたが、その時は言葉の意味がわからず愛想笑いしか出来なかった。 「わかった、ヒナキにも言わないでおく……っていうかこれはさすがにネタにできないや」 返り血や体液でドロドロになったままの二人の姿に私はそう言わざるを得なかった。 「ごめんねー。姉御たちも来たみたいだからアタシ向こうでこの件の話済ませてくるねー」 数歩駆けだして何かに気付いたのか、紫穏ちゃんは急に足を止めると再びこちらへ振り返り、 「そうだ、リムっちー。姉御に頼んでこの汚れ流して貰おう」 「うん、え? うん」 「それじゃスーさん、ばいば~い」 「ごめんねアヤナさん、また明日、ね」 そして紫穏ちゃんは眠り姫の手を引くと、二人は赤マフラーの少年と一緒に来た女性のもとへと駆けて行った。 ぽつんと一人取り残され、辺りを見回してみる。紫穏ちゃんが解体した蛇ラルヴァは役員っぽい人たちの手によって、すでに元々何もなかったかのようにほとんど処理が終わっていた。 「うーん、なんだったんだかなぁ。帰るかぁ……」 ひとりごちる。吹きこんだ風に身を震わせ、私は空を見上げた。 太陽君の作った青空のもと、中央広場から虹子ちゃんの綺麗な|虹の掛け橋《レインボーロード》が伸びていた。 【眠り姫の見る夢 -Ayana-】終 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
https://w.atwiki.jp/utauuuta/pages/3762.html
ねむりひめはげんじつのゆめをみるか【登録タグ napi ね 曲 波音リツ】 作詞:napi 作曲:napi 編曲:napi 唄:波音リツ 曲紹介 napi氏の投稿40曲目。 歌詞 (ピアプロより転載) 閉じたまぶたの裏側 色が渦巻くのです 意味を成さない形がキャンパスの中動いて 形づくる夢の世界へ 今日も起きる夢を見るの 夢から夢へ帰る 一人きりも寂しくない 夢なのなら こちらを見てる黒猫 手招きすると逃げた 羊でも飼いましょうか 逃げない電気羊を 区別出来ぬ夢と現実 今日も眠る夢を見るの 夢から夢へ渡る 明日は起きる夢を見るの 一人きりで 静かな胡蝶の夢 一人彷徨う 伸びた茨の棘が 理を分かつまで 眠り姫は夢を見ない 現実を見ているの 目を閉じてるだけなのです 一人きりで コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/vuxuv/
こんにちは^^ ここは ロリィタ大好きな管理人のHPです☆ 遊びにきて下さってありがとうございます♪
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/1279.html
ラノで読む ◇一 「それじゃあ、バイバ~イ」 私は手を振り、学園大学部生を自称する男のアパートを後にした。 文化祭も終わってまだ間もない十一月初頭、早朝の冷たく澄んだ強い風にさらされ小さく身を震わせた。もう冬だなぁ。薄い雲間から差し込む眩い朝日が寝不足の目にしみ、ふあーっと大きくアクビ一つ。 西の空にどんよりとした雨雲が立ちこめていた。まだまだ遠いから降り出すとしても夕方あたりだろうけど、この後さらにぶらついて万が一雨に降られても嫌なので、私はさっさと家へ帰ることにした。 昨晩ナンパされてそのまま夜通し遊んで……顔はそこそこいいオトコだったけど、アレはあまり上手くなかったなぁ。 週末とはいえまだ人気《ひとけ》のない繁華街を通り抜け、|ヒナキんちのお店《スィーツ&ベーカリーTANAKA》がある商店街を横切る。おじさんとおばさんはお店の仕込みのためにもう仕事してるだろうし、ヒナキも休日の朝は手伝わされるって言ってたから、こんな朝っぱから遊びに行くのはさすがに迷惑だろう。 っていうか今行ったらきっとヒナキに「アヤナも手伝って」って言われるな。 私はふと無意識にゴソゴソとポケットを探り……、そういえば昨日帰宅して私服に着替えた後、|わ《・》ざ《・》と《・》学生証を携帯しなかったことを思い出す。金曜放課後から週末にかけて街で夜通し遊ぶ時は下手こいて身元バレしたくないし。誤魔化して逃げるための自己保身術(?)だ。 「まぁいいかぁ」 メールや着信も気になったが、帰宅してからでいいだろう。 ……と、ポケットの中に覚えのない紙切れが折りたたんで入っていることに気付く。広げてみると汚い字であまり見覚えのない男の名前と連絡先、そしてメールアドレスが殴り書きされてあった。これはやっぱり、さっきの男だろうなぁ。 「……あほくさ」 私は小さくため息をつくと、その紙切れを丸めて路肩へぽいっと放り投げた。 「あれ? アヤナさんだ。駄目だよ、ゴミ捨てちゃ」 不意に後ろから声かけられ、私は驚き振り向く。 その先には、片手で学生証をポチポチいじりながらもう片方の手で私に向かって「おーい、アヤナさん、おはよう」と大きく手を振る眠り姫の姿があった。……って、こんな朝早くになぜこの子が? 放った紙くずを拾おうとする眠り姫を適当に言い訳しながら制止し、私はそそくさとそれを拾い直しポケットへ突っ込む。 「ごめんねぇ。おはよー姫音《ひめね》さん。一人? 相羽《あいば》さんは?」 私はふと、いつもの保護者《あいばさん》なしに眠り姫が一人で出歩いてることに疑問を感じた。危険じゃない? この子一人でいたら。 彼女は手元の学生証の表示を見、苦笑いで小さなため息をつきながらコンソールを弄り――おそらく待ち受け画面に戻したのだろう――上着のポケットに仕舞うと、 「んー、学校お休みの朝はいつもそこの双葉公園までお散歩してるんだよ。それと、コトはまだ寮室で寝てる。休日はいつも昼過ぎまで寝てることが多い、かな」 眠り姫はへらへらと笑いながら、なんだか嬉しそうに語った。 「へぇ……平日と休日だとま逆なんだ。面白いねぇ」 「ところでアヤナさんは?」 「私!? 私は……えーとぉ」 突然こっちの話を振られて言葉に窮してしまった。「朝帰り」なんて説明するのもアホらしいし、そもそもこの子に伝わるのかなぁ? どうしたもんかと首を捻っていると、眠り姫が南東の空を見つめ、何かを指差しながら呟いた。 「ねぇ、アヤナさん。あれ……」 私は眠り姫の指差す方へ首を向ける。 そこには、数百メートル先の道路に根を張り緩やかな弧を描く七色の虹がまるで陸橋のように生《・》え《・》て《・》いた。 「ん、虹かぁ。こんな時間に珍し……って、虹!?」 私はその光景に目を見張った。地面から虹が生えてるって何だあれ!? 「うわーすごいね。私、虹の根っこって初めて見たかも。いつも空の高いところに見えるだけだもんね」 眠り姫があまりにもアホなことを言っている。私はその虹が根っこから伸びているさらに先、朝日の昇る東の空を見上げながら、 「いや待って。そもそも虹って雨上がりとか滝の近くとかの空気中に水滴が含まれる状態で、太陽を背にして空高くに見える気象光学現象のことだから。こんな朝、しかも東向きで太陽を正面にして、っていうかそもそも地面から虹が生えてるなんて常識的に考えてもあり得ない!」 ……あ。つい虹には特別な思い入れもあって、口早に蘊蓄《うんちく》を捲《まく》し立ててしまった。もしかして気を悪くさせてしまったかと眠り姫のほうへ、虹の根本へと目線を向けると、 「ねーねーアヤナさん、この虹、乗れるよ!?」 「ちょっと人の話を聞……何だってぇ!?」 私のことなど全く気にせずといった素振りで、眠り姫は地面から生えたその虹の上で嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねていた。 「あ……ありえねぇ」 私は恐る恐る爪先で虹をつついてみる。ホントだ、触《さわ》れるぞこれ。 ◇二 「…………ゎぁぁぁぁあああ!!」 突如、虹が伸びる先の東の上空から甲高い悲鳴が響き、私は慌てて虹から飛び退く。同時に 「きゃぁあ!?」 その虹を滑り台よろしく滑走《かっそう》してきた少女に追突され、そのまま後ろから押し倒される形で、前のめりに地面へと落下した。 「いったぁ……」 「ごめんなさい! 大丈夫でしたか!?」 うつ伏せの眠り姫へと馬乗りになった少女が慌てて飛び退く。初等部の子だろう、二重まぶたの活発そうなかわいらしい女の子だった。 「このまま公園まで行く予定だったのですが、友達が追いかけて来たのが見えたので……まさか虹を降ろした先に人がいるとは思わなくて……ホントごめんなさい」 私は、いかにも申し訳なさそうにモジモジとしている少女をいじらしく思い、 「えっと、お名前は?」 とりあえず訪ねてみた。しかし少女は節目がちのまま、 「……虹子、森田《もりた》虹子《にじこ》です」 「虹……? もしかして、虹の異能者だから『虹子』ちゃん?」 私の返答に虹子ちゃんは急に私を見上げ、驚いたかのように目を見開くと、 「はいっ。私が生まれた時、指にこう……リボンのように虹を巻いていたからなんだよって、お母さんに教えてもらいました」 虹子ちゃんはようやく申し訳なさというか緊張がほぐれたのか、屈託のない笑顔で話してくれた。 それが私はとても嬉しかった。私はそんな虹子ちゃんの手を取ると、 「そっかぁ。私ね『鈴木《すずき》彩七《あやな》』って名前でぇ、アヤナって漢字、七色の彩《いろど》りって書くんだけど――」 彼女の手のひらに指でそっと自分の名をなぞり、 「実は私のこの名前も、生まれた日が雨上がりでものすごくきれいな虹が空に掛かってたからなんだって、私のお父さんが教えてくれたんだよぉ」 そして彼女の手を握り、微笑んだ。 「わー、それじゃ私とおそろいなんですねー」 「ホント、おそろいだねぇ」 私は虹子ちゃんと手をつないだまま、本心から喜びはしゃぎあった。 「へぇ、アヤナさんの名前の由来ってそんななんだ。知らなかったぁ」 ……とりあえず間抜けな表情で私たちを見つめていた眠り姫のことは無視することにした。 「コラぁ! 虹子!!」 和やかな空気の中、一人の少年が息を切らしながら私たちの元へ――いや、正確には虹子ちゃんの元へかな? 駆け寄ってきた。 「あ、太陽くん」 虹子ちゃんが声をかける。太陽君と呼ばれた少年は怒っているような呆れているような、いかにも複雑な表情で、 「あ、じゃねーよ。お前またその異能つかって一人で勝手に先行ったりするんじゃねぇ! 班のみんなもあきれてたぞ!?」 「そうだ、みんなは?」 「他の四人は直接双葉公園の中央広場に向ってもらった。俺だけ先にお前の虹に沿って追いかけて来たんだよ。みんなで走るのもめんどくせーからな。ほらさっさと双葉公園でみんなと合流するぞ。……で、こっちのお姉さんは何を?」 私は太陽君が見つめる先に目線を送った。そこには―― 「……すぅ……」 さっきの虹の斜面にもたれ掛かりすやすやと眠っている姫音さんの姿。うわぁ、ちょっと目を離した隙にすぐこれか。 ひとまず私は眠り姫をたたき起こした。何事かときょろきょろとあたりを見回している。この子に関わってるのが時間の無駄だ。私は太陽君の方へと向き直ると、 「ごめんねぇ、そっちのお姉さんのことは放っといていいからね。……えっと、太陽君、でいいのかなぁ?」 私と、そして目を擦りながらの眠り姫に目線を向けられ、太陽君は困ったような照れたような表情を浮かべ指先で頬を掻いた。そこへ虹子ちゃんが、にこにこ笑顔を私たちに向ける。 「あ、こちらは私の友達で朝倉《あさくら》太陽《たいよう》くんです。太陽くんも異能者で、雨雲をどかせることができるんですよー」 「へぇ、太陽君も異能者かぁ」 「バッカ、俺のことなんて別にいいだろ! それよりもう、早く行くぞ」 名前だけならまだしも異能のことまで紹介されたのが癪に障ったのか――あ、それともこの反応の仕方は思春期特有のアレかな? 太陽君は双葉公園の方角を指さしながらまくし立てた。 虹子ちゃんは如何にも「あ、そうだった」と言わんばかりに手をぽんと打つと、私たちへと振り返り、 「うん。それじゃお姉さんたち、またね」 手を振り立ち去ろうとする。しかし、私はちょっとわけあって慌てて二人を呼び止めた。 「あ、待って虹子ちゃん。ちょっとだけその虹に乗ってみてもいいかなぁ?」 ――そう、乗ってみたかったのだ。 いい歳してそのメルヘンチックな願望を口にするのがはばかられ、言い出すタイミングを失っていたのだが―― 虹子ちゃんは再び私へと振り返ると満面の笑みで答えてくれた。 「はい! 同じ虹の名前のお友達ですもん。遠慮なんてしないでください」 「ほんと? やったぁ、ありがとぉ」 そして虹子ちゃんは、指で顎を押さえながら「うーん」と首を傾げると、 「私たち今からもうちょっと先の双葉公園まで行くんで、もしよかったら私の|虹の掛け橋《レインボー・ロード》で一緒に行きませんか?」 虹子ちゃんに聞かれ、そういえば太陽君の言葉を思い出す。単に友達内で遊びに行くのなら「班のみんなは~」とは言わないだろう、課外活動か何かがあるのかなぁ。 「二人は……あ、班行動で合計六人だっけ? 双葉公園で何か用事とかあるの?」 「はい、社会科の宿題で『班で双葉島の歴史を調べてみましょう』って」 ビンゴだった。隣で太陽君が虹子ちゃんに相づちを打つ。 「そう、自分たちの足で調べて回りましょう、ってな。さっさと終わらせて遊びに行こうってのに、こいつが勝手に……」 「むぅ」 太陽君の言葉に虹子ちゃんが唇を尖らせていた。なんとも可愛らしい。 「それじゃちょっと急ぎましょう。曇ると私の虹は消えちゃうんで……」 「あれ? でももし曇っちゃったら、その時は太陽君に雲どかしてもらえるんだよね? 異能の相性とかお似合いカップルだねぇ、このこの」 私はニヤニヤしながら冗談半分に、耳まで顔を赤らめながらそっぽを向いた太陽君を肘で軽く突っついてみせた。 「では行きましょう!」 虹子ちゃんは、眠り姫がベッドにしていたさっきの虹を一端消しさると、人差し指で徐々に広がりつつある雨雲から覗く朝日を指さし、彼女はくるりと指先を回せて見せる。すると、その指先からまるでシャワーのように、大量の粒子が涌き出てきた。 「……綺麗」 私は思わず呟いてしまった。 虹子ちゃんの指先から作りだされるキラキラと輝きだしたプリズムは、やがて空に一本の「虹」を生み出していった。 今居た住宅地から北西方向の双葉公園まで伸びる虹の上から望む双葉島は文字通り絶景だった。 朝日に照らされた綺麗に区画された町並み、幾重にも折り重なる学園の校舎群。そして人工島でありながら山や川、海岸まで整備された、自然との共存すら考慮された空間。 「うわぁ……」 私は、またしても思わず声を上げてしまった。 ビルの上階から見た景色とほとんど同じはずなのに、それまるで全く違った風景のように感じられた。 私たちはしばらくの間、緩やかに双葉公園の中央広場へと延びていた|虹の掛け橋《レインボー・ロード》を進んでいたが、不意に虹子ちゃんが、 「ごめんなさい、ちょっとここで降ろします」 と、急に螺旋を描《えが》き、虹の先端が双葉公園の南東側、遊歩道のある雑木林へと根を下ろした。 ◇三 先頭の虹子ちゃんが着地し、追うように太陽君、私の順に虹を降りた。 「いてっ」 ……最後尾の眠り姫は、上手く着地できなかったのか尻もちをついていた。ホントどんくさい子だなぁ。 「いったぁ……、えへへ、お尻から落ちちゃった」 へらへらと笑いながら立ち上がり、ジーンズをパンパンと叩《はた》いていた眠り姫。さっきからこんなんばっかで……もしスカートだったら膝とかすりむきまくってたんだろうな、この子。 「でも、虹子ちゃん達中央広場で待ち合わせてたんでしょ? そこまで伸ばしてくれてもよかったのに」 消えた虹に名残惜しみながら私は虹子ちゃんに声をかけた。虹子ちゃんは困ったような表情で空を見上げた。 「あ、そっか。曇ると消えちゃうんだっけ」 風が強いからなのか、まだまだ遠い西の空にあったはずの雨雲が案外早いペースで近づいて来ている。朝日が射し込んでいた東の空もすでにほぼ一面が薄雲で覆われてしまっていた。 「はい、途中で落ちちゃうわけにもいかないので……」 そして小さくうなだれながら「ごめんなさい」と続けた。 「なんだ、それならさっき話してたように俺が雲どかしてやったのに」 太陽君がさりげなく(?)フォローに回った。なんだいやっぱりこの二人いい関係なんじゃない? 「でも太陽くん、集中しなきゃ上手くコントロールできないんでしょ?」 「う、そんなことないぞ、たぶんお前の虹の上を滑りながらでも出来なくはなかったと思うぜ?」 「えー、ほんとにー?」 虹子ちゃんが太陽君の顔を覗きこむ。太陽君の顔はまたしても真っ赤だ。 そんなちびっこ二人に私は隠れてニヤニヤしていた。いやー、若いっていいねぇ初々しいねぇ。 「……ん?」 と、眠り姫がふっと硬い表情で首をかしげるように、雑木林の先へと目線を向けた。 「どした?」 「何か……気配がする」 「気配……何の?」 私も眠り姫の目線を追うが、その先になんらおかしい様子は感じられない。虹子ちゃんたちも顔を見合わせ首を傾げている。しかし―― 「わかんないけど、何か、いる」 雑木林の向こうに何かの影が見え隠れする。ガサガサと藪《やぶ》を踏み分けて進む音が近づいてくる。 眠り姫がちびっこ二人の手を引き小さく屈《かが》ませ、迫り来る「何か」をじっと見据えると、 「……来る」 小さくつぶやいた。 同時に、影がその正体を私たちの前に現した。 「へ、蛇ぃ!?」 雑木林から、数メートルはあるだろう巨大な蛇の頭がぬっと覗かせる。私は情けなくも大声をあげてしまった。 「蛇……ってそんなまさか……、まさかあいつがまだ!? あいつはあの時オバチャンがやっつけたはずなのに……」 「……ぃやぁぁぁあ!!」 突如、眠り姫の手を振り切り、虹子ちゃんが遊歩道の先へと駆けだした。 「ちょっ、おい虹子!?」 間髪いれず太陽君が彼女を追いかけていく。 ……と。彼らの声によってこちらに気付いたのか蛇が私たちの方を見下ろしてきた。間抜けな、それでいて威圧感のある顔。横に裂けた大きな口から先の割れた真っ赤な舌をチロチロと覗かせながら、のそのそとその巨体を藪から抜け出させ……その異様な姿に、私は再び大声をあげてしまった。 「何じゃありゃあ!?」 頭と長い首は確かに蛇そのものだった。が、肩と思《おぼ》しき突起から小さな腕をちょろちょろと動かし、そしてなにより人間のような下半身をもって二足歩行でのそりのそりと近づいてくる。 人間でもない、普通の蛇でもない、人外の存在――初めて見た、こいつが、ラルヴァ? この蛇ラルヴァがいったい強いのか弱いのか、また人を襲うタイプなのかそれとも友好的なのか。頭が回らない、まったくわからない。 学園の授業で概論や模擬戦、避難訓練などはいくらでも受けてきたが、いざ実際に遭遇すると頭は真っ白で、目も背けられないまま立ちすくんでしまう。 ……少なくともこのまま私と眠り姫だけじゃどうしようもないことは明白だった。 「アヤナさん、逃げよう。あの二人を追わなきゃ」 眠り姫に肩を揺らされ私は我に返り、 「わ、わかってる!!」 無理矢理絞り出したその返答を合図に、私たちはちびっこ二人の走り去った遊歩道へと駆けだした。 「姫音さん、足、遅ぉい!!」 「……だって、運動とか、苦手なんだもん……」 私の後を必死になって追う眠り姫は、まだ数百メートルも走っていないというのに、既に表情は崩れ息も絶え絶えで、私も決して速い方ではないにしても、意識していないとすぐに彼女を引き離してしまいそうだった。 まぁ、それでもまだ眠り姫のかなり後方をのっしのっしと走る蛇ラルヴァのほうがもっと足が遅いってのがせめてもの救いか。あいつ後ろ足で走らないで這ったほうが速いんじゃないの? 「ほら、急いで!」 私は眠り姫に檄《げき》を飛ばすと、前を行く二人を追いかけた。 遊歩道を抜け、視界が広がる。 そこにはブランコやシーソー、砂場とセットになった滑り台に丸太組みのアスレチック、そして出入り口の穴が幾つか開けられた直径三メートル程のドーム型の遊具などが設けられた、簡素な子供向け広場だ。 まだ朝早いからだろうか、単に運が良かったのかそれとも悪かったのか、ラルヴァに追われてからここに来るまで私たち以外の人とは遭遇していない。他に被害者が出ないってのはいいことなんだろうけど、同時に助けてもらえそうな人が周りにいないというのはかなりきつい。 広場へ入って見渡す間もなく、滑り台のそばにちびっこ二人を見つけ私は急いで駆け寄った。 「二人とも大丈夫!?」 「俺は大丈夫、でも虹子が……」 「……やだよぅ、怖いよぅ」 膝を抱え地面にうずくまり嗚咽を漏らしている虹子ちゃんの肩を太陽君が支えていた。 なんだろう、虹子ちゃんの怯え方は単に「ラルヴァと遭遇した」ってだけではなさそう? 明らかに「あの蛇ラルヴァ」そのものを拒絶しているように見えた。 「……追いついたぁ」 私の後ろで、前かがみに両膝《りょうひざ》を押さえ、今にも倒れ込みそうな勢いでゲホゲホとむせ返っている眠り姫はとりあえず無視しておいて……、私はそのさらに後方を見渡す。予想以上に足が遅いのか、蛇ラルヴァは先ほど私たちが走って来た遊歩道のはるか向こうにようやくその影が見える程度。しかし……。 「遅いけど、真っすぐこっちに向かって来てる。どうしよう……」 しかし、たったこれだけの距離で息も絶え絶えに疲労困憊の眠り姫と、可愛そうなほどおびえきっている虹子ちゃん。この二人を連れて無事に逃げ切れるのか……? 太陽君がなんとか虹子ちゃんを立たせようと声をかけたり手を引いたりしているが、両膝に顔をうずめたままいやいやと首を振る虹子ちゃんは微動だにせず、こりゃまいったねぇ。 蛇ラルヴァの影は刻一刻と近づいてきている。私はどうしたもんかと辺りを見回すと、 「太陽君、こっち。いったん隠れるよ」 私は虹子ちゃんを脇に抱え眠り姫の手を取り、太陽君と共に二人を引きずるようにドーム型遊具の中へと潜り込んだ。 ◇四 しばらくの間、三人がかりで虹子ちゃんをなだめすかし、ほどなくしてなんとか虹子ちゃんは平静を取り戻したようだった。 っていうか、明らかにヤバイ状況だってのにあの蛇ラルヴァの足がとことん遅いせいもあって中途半端に余裕があるというのも変な話だ。 ……と、ようやく息が整ったのか眠り姫が、 「そういえば太陽君、さっき『あいつはあの時~』って言ってたよね、もしかして、あの蛇ラルヴァと前に遭遇したことあるの?」 突然二人に尋ねる。その言葉に虹子ちゃんがピクリと反応した。 太陽君はそんな虹子ちゃんの顔をちらりと覗くと、 「……うん。二ヶ月半くらい前、っていうか夏休みの終わりころに総合グラウンドで遊んでて、そのときあいつと同じ蛇型のラルヴァに襲われたことがあって。で、虹子があいつに……その、飲み込まれ……」 そこまで言って言葉を詰まらせ、太陽君は再び虹子ちゃんへと視線を向けた。せっかく正気を取り戻したってのに虹子ちゃんはさっきよりもさらに小さくうずくまってしまっている。 しかし――、なるほど。これで虹子ちゃんが何故ここまで異様に怯えるのか納得できた。 「あの時は、大学部の学生課のオバチャンが一瞬で焼き殺して、助けてくれたんだけど……」 「……あぁ、あのおっかない眼鏡のオバチャ……オネエサンね。っていうかごめんねぇ、この子が余計なこと聞いて嫌なこと思い出させちゃって」 言って、私は二人にばれないように眠り姫を小さく蹴った。まったくこの子は、空気読めよねほんとにもぅ。 ってか、そんなことよりも……。 「なんとかしなきゃ」 この状況を打破する方法を考えないと。 現状、非戦闘系異能者が三人と一般人の私。しかもそのうち二人は初等部生だ。もうこのメンバーだけでラルヴァ相手にどうしようかと考えること自体が間違ってる。 「そうだ、誰か助け呼べば……」 ぱっと思いつくだけでも何人か戦闘系異能者の顔が浮かぶ。ポケットを探りながら誰を呼ぶべきか考え……、 「しまった、学生証持ってなかったんだった」 昨晩の自分の浅はかな思惑がこんな時にあだとなるとは。 ていうか、ラルヴァに襲われたら写メってから逃げるなんて息巻いて起きながら、実際に遭遇してみればそんなこと考えていられる余裕すらないことに気づく。我ながらなさけない。 と、余計なこと考えてないで……、 「姫音さん、さっき学生証持ってたよね? 誰かあのラルヴァ倒せる異能者を助けに呼べないかなぁ!?」 「えっと、ごめんね。電池、切れちゃった」 「はぁ!? さっき会った時にいじってたじゃん!?」 思わず詰め寄ってしまった。眠り姫は困ったような本当に申し訳なさそうな表情で私を見ると、 「昨日の夜、充電するの忘れちゃってて……、それに私、朝に散歩する時はいつもアプリ起動してゲームしたり音楽聴いたりしながらだから……ほら、途中で眠くなったりしないように、ね」 ポケットから取り出した電池の切れたらしい学生証を両手で挟み「ごめんね」と頭を下げる。 私は即座にそれを奪うと、勝手に電源を起動する……がしかし、ピピピッという警告音と共にディスプレイに『バッテリー残量が不足しています』の表示が出てそのまま強制終了されてしまった。うわなにこの子使えない。 「そっちの二人は?」 私は眠り姫に学生証を投げ返すと、ちびっこ二人のほうへと振り向く。 もう形振《なりふ》り構ってる場合じゃない。しかしこの子たちの友達に戦闘型異能者がいたとしても、まさか初等部生にそんな危険なこと頼むわけにもいかないし。友達の兄弟とか、なんとか誰か頼める人がいれば……。 しかし、 「今日の宿題は『ネットで調べず自分で見て回りましょう』って先生に言われたから、私も今は……」 「うん、俺も……」 二人の返答はなかなかに辛辣なものだった。えぇぇ、それってつまり……、 「じゃあ、まさか今、誰かと連絡とったり助けを呼んだりする手段がないってこと?」 「……えっと、あれ? アヤナさんも学生証持ってないの?」 絶望が襲う。軽くめまいがした。もう使命感も他人の目とか配慮とか何もかも全部かなぐり捨てて、この三人をおいてダッシュで逃げ出してしまいたい衝動をギリギリのところでなんとか堪《こら》える。 「あ。あいつが見えるところまで来た! どうしようお姉さん!?」 ドーム型遊具の横穴から外を覗いていた太陽君が叫ぶ。私の方こそどうしよう。虹子ちゃんもさっきからおろおろしっぱなしだ。 穴から外を覗く太陽君の後ろから同じように様子をうかがうと、蛇ラルヴァは既に肉眼で確認できる距離まで近づいてきてるのが見て取れた。 他へ行ってくれればいいのに、なぜ真っすぐこっちへ向かってくるのか……と考え、ふと蛇は視覚よりも嗅覚感知で獲物を狙うという情報を、いつだったか動物番組の爬虫類特集をヒナキと一緒に「キモ可愛い」だなんだと笑いながら見ていた記憶と共に思い出す。 あれ? それじゃここに隠れこんだのは失敗だったんじゃない? 私が悶々と考え込んでいると、唐突に眠り姫が、 「うーん、こまった、ね。……そうだ、太陽君の異能、見せてもらえないかな」 あまりに暢気なことを言い出した。この子は本当に今のすごいヤバいって事態を理解しているのかなぁ。 「なんで? 今?」 太陽君は突然話を振られ困惑気味だ。虹子ちゃんもどうして急にと不思議そうに眺めている。 私は改めてちらりとドームの外をうかがう。ついに子の遊具広場に到着してしまったさっきの蛇ラルヴァは、それでもまだこちらには気づいてないのかチロチロと舌を出しながら辺りを探ってる様子だった。 「うん、見てみたいな。お願い、太陽君」 眠り姫は太陽君の前にしゃがみ込むと、手を合わせ「ね、お願い」と再度頼み込んだ。 「しょ、しょうがねぇな、ちょっとだけだぞ」 少し照れながら、太陽君が立ち上がった。 ドームの天井はちょうど私たちの身長でぎりぎり立てる程度の高さ。その中央に横穴と同じサイズで穴が開いている。 太陽君はその穴の真下に立つと右手のひらを広げ天に伸ばし……ただそれだけだった。そのまま幾秒かの沈黙が走る。 その時、奇跡が起こった。 西の空から双葉島上空を覆いつつあった雨雲が裂け、澄んだ青空が姿を見せ始めた。 太陽君は小刻みに震える指先に苦虫を噛みしめたような表情で歯を食いしばり、それでもなおその姿勢を崩さず。そして徐々に青空が広がっていき、いつしか朝日が再び差し込むまでになっていた。 「くそっ、うまく集中できねぇけど、まぁこんなもんかな……」 言って、太陽君がどかりと地面へ腰を下ろす。頼み込んだ本人の眠り姫は心から喜んでいるようだった。 「すごいすごい、あんなに青空広がったよ」 「でも俺の能力で作った青空なんて数時間ともたないぜ?」 やはり疲れたのか座ったまま肩で息をしている太陽君が謙遜してみせる。 「そうだよ、姫音さん。確かに太陽君の異能もすごいけど……この青空に何の意味が?」 「うん、ちょっとね」 そして、私は目を見張った。 突如、眠り姫が上着を脱ぎ出していたのだ。 続【眠り姫の見る夢 -Ayana- 後編】 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
https://w.atwiki.jp/yuina/pages/215.html
「……女の子?」 空中を浮遊するたまご型の椅子に座る、青空色のエプロンドレスを着た、金髪碧眼の少女。 どうひいき目に見ても、その身体は戦いができるような作りではないし、半分眠っているようなその瞳は虚ろで、ひどく頼りない。 「アル、アリス、こいつらの始末、任せたわよ」 そんなこちら側の思考など関係ないとでも言うように、椅子に座る女の子と、椅子の後ろにいるらしい誰かに向かって声をかけるカリフ。 「……仰せのままに」 一拍おいて椅子の後ろから表れたのは、トランプに使われる4つのマークが特徴的な衣装を身につけた、メイド風の女性だった。 だが、アルと呼ばれたその女性は、発した言葉に反してカリフに対してあまり好意的な目は向けていない。 ……どうにも、仕方無しに従っているという空気が見て取れるのだが…… 「ふふっ……」 最後に含み笑いを残して別の扉からカリフは去り、外側からガチャリと鍵をかけられる音がした。 かと思えば、自分達が入ってきた扉も突如として閉じられ、そちらからも鍵のかかる音が響く。 「……なるほど、最初からこの展開は向こうの計算づくだったってことか」 二人の敵を前にして閉じ込められる……そんな状況に舌打ちをして、剣を構えるディン。 それに続いて、エミリアとカネモリもいつでも呪文の詠唱を始められる体勢に入り、エンリケも一歩前に出てハンマーを構え、臨戦体勢に突入する。 して従騎士団の6人も同じように剣を構えたが、ただ一人……ティールだけは、武器を構えるそぶりも見せず、首をかしげるようにして敵の二人にその目を向けていた。 「アルさん……とアリスちゃんでいいのかな。 少し、話できる?」 「……お、おい。 何をそんな悠長な……」 ティールの言葉に驚き、その行動を制止しようとするディン。 ……しかし、そんな行動を笑うかのように帰ってきた答えは…… 「かまいませんよ。 アリス様は半分眠っておりますゆえ、問答でしたら私がお受けしましょう」 妙にやわらかで好意的な声で発せられる、ただそれだけの言葉だ。 拍子抜けした一同は、構えを解く事も忘れ、頭の中で呆然とその言葉の意味の整理を行うこととなった。 ……ただ一人、問いを投げ掛けた、ティールを除いて。 「一つ目。 あなた達、本当に私達と戦う気なの?」 「……はい、それが私達に与えられた役目ですから」 そして、周囲の様子などお構い無しに問答を始める二人。 他の一同は、なんとかかけられた言葉の整理を終え、ただ聞くだけの体勢に入っていた。 「二つ目。 なぜあのカリフとかいう女を睨むような目をしていたの?」 「私個人としては、カリフ様はそれほど信用してはおりませんので」 「……三つ目。 それならばなぜ従っているの?」 「組織と言うものは、個人の感情で動く事は許されません。 上下の関係、それが絶対なのです」 「…………最後。 ”貴方の”主は誰?」 「……この船の指揮か……」 「正直に答えて」 指揮官……とでも言おうとしたのだろうか。 ティールはその言葉を制し、問いではなく、『強制』の言葉をかける。 ……アルは、彼女が発する言葉の意図は最初から理解していた。 しかし、ここから先を口にしてしまっては、彼女達が自分達と戦いにくくなるだけだろう。 ……だが、恐らく目の前の少女は見抜いている。 アルの本当の『主』が誰なのか……そして、こちらが戦おうと言う理由も。 「……なぜ、わかったのですか……?」 ――おそらく、カリフが自分達を彼女達にけしかけたのもこれが理由だろう。 目の前にいるのは、見た目からして甘い考えをもっていそうな戦士達。 それこそ、ほんの少しの理由で敵を斬れなくなるような…… 「貴方のその姿勢は、アリスちゃんに対してのものに見えた。 カリフには、敵対意識しか無いようにも感じたしね」 「……鋭いですね」 「”相手の腹の中を見る事が出来るようになれ” ……私の師匠がそう言ってたから……」 「……え~っと、お嬢ちゃん、わりぃがちゃんと説明してくれないか?」 神妙な顔で話を続けるアルとティールに、さすがに答えが欲しくなったのか、エンリケが口を挟んでいた。 他の者も、口を出すに出せない状態だったのだが、考えていた事は同じらしく、特に制止する様子もなく彼女達の言葉に耳を傾けている。 「……多分この二人、無理矢理戦わされてる」 「――!?」 「人質か、もしくは脅しか……理由は分からないけど」 「……人質ですよ」 今度はアルがティールの言葉を制し、言葉を発する。 その瞬間の表情は、無表情の仮面で取り繕っているようだが、その仮面はややはずれつつあるようだった。 ……言ってはいけない。 言ってしまえば、カリフの思う壺となる。 「我が主の……アリス様の大切な友達が、この船のどこかに幽閉されているのです」 「……一応聞くけど、私達が助けに行ってあげるから、この場は見逃してって事にはならない?」 それは、ティールにも分かっていることで……この時点で、背後で聞き耳を立てているカネモリやエミリアも、カリフが自分達をここに誘導した真意を理解するに至っていた。 そう、自分以外の意思で戦おうとしている相手は、『まっとうな人間』にとっては最も戦いにくい相手となる。 だからこそ、アルは相手に何も知らせないままにしておこうとしたのだが…… 彼女の問答を受けた時点で、ささやかなその抵抗は脆くも崩れ去っていた。 「できません。 それこそ、人質を殺されてしまうでしょう」 「……人質は、生きているからこそ人質。 貴方たちにとっての人質がたった一人しかいないのなら、向こうも総簡単には……」 「そんな、甘い相手ではありません。 ……それに、人質は人間ではなくウサギです…… 動物を殺すことに、躊躇など感じるはずもない」 「ウサギって……」 「ウサギだとか人間だとかは関係ありません!! ラビはアリス様に残された最後の家族なのです!! 軽はずみな言動は許しません!!」 思わず呆れるような声を出しかけたディンだったが、アルはその言葉が彼の口からだしきられる前に察し、急に語調を荒げるようにして攻め立てた。 その瞬間の形相に、思わず一歩あとずさるディン。 ……とにかく、そのラビというウサギは彼女達にとってそれだけ大切な存在である、ということは理解できた。 「……ァル……もういぃよ……」 と、その時。 寝惚けまなこを両腕でこすりながら声を出すアリス。 「あ、アリス様……申し訳ありません、私とした事が、あのように叫ぶなど……」 その声を受けて、さっきの怒りに満ちた叫びがウソであるかのように静まり、佇まいを正すアル。 一同の視線は、すでにアリスの方へと向けられていた。 「……ごめんなさい……わたし……ラビと、おわかれしたく……ないから」 ぱっと見寝惚けてふねをこいでいるような状態だが、その言葉に込められた意思は、確かに感じ取れる。 その声を聞く全員が、いたたまれない気持ちで満たされ、そして怒りにも似た感情がこみあげ……武器を取る手に、行き場のない力が篭っていた。 ……ティール達がそうしている間に、アリスはゆっくりとした動作で、ポケットから一組のトランプを取り出していた。 「たたかわないと……おねがい…………せめて、しんじゃわないで……」 祈るような声でそう呟き、その手のトランプのケースを開く。 ――その次の瞬間だった。 「――!?」 突如として53枚のカードが、アリスを中心に4つの円を描くように広がり、ぐるぐるとその周囲を回り始める。 ……そして、すっと差し出されるアリスの手に従うかのように、その中からスペードのA、クローバーのJ、ハートのQ、ダイヤのKが飛び出し、ゆっくりと地面に降り立った。 「――出てきて、アルカナ・ナイト――」
https://w.atwiki.jp/vuxuv/pages/2.html
メニュー トップページ メニュー メニュー2 @ウィキ ガイド @wiki 便利ツール @wiki
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/13008.html
びゃくやのねむりひめ【登録タグ ひ テトラProject 初音ミク 曲】 作詞:La-Masskera(テトラProject) 作曲:La-Masskera(テトラProject) 編曲:La-Masskera(テトラProject) 唄:初音ミク 曲紹介 La-Masskera氏・SS2104氏・トッキー氏 からなる3人組ユニット、 テトラProject の3作目。本格的なオリジナル曲としてはこれが最初。 季節はもうすぐ冬ということで、テーマは極寒の地、母なる・・・ロシア!!(作者コメ転載) 楽曲中で、ロシア民謡の「ポーリュシカ・ポーレ」を引用している。 イラストは uragoe氏 が手掛ける。 歌詞 Полюшко,поле,(ポーリュシカ ポーレ) Полюшко,широко поле,(ポーリュシカ シローカ ポーレ) Полюшко,широко...(ポーリュシカ シローカ) ひとり まだ降り続く雪 ただ呟く声は 独り吸い込まれて消えた 雪へと 夢のような尾を引いて 透明な空に 白鳥たちの群れ (けれど) キミの笑顔はもう此処にはない 消え去るキミのメモリー かすかに瞳の奥 思い描いて瞼 閉じてゆく 降り積もる雪だけが 記憶とどめ残され 霞んで消えた景色 僅かにキミの香り 思い起こす白い花 抱き寄せ 眠りへと落ちてゆく 白夜のなかで またいつもの悪夢に 白く染まったこの両手で 拾い集めた花と共に 壊して 私のこの想いを・・・ 遠くまで逃げた 白銀の世界で (世界で) キミの体温忘れられるように 記憶に刻むメロディー かすかな声に聴いた 幻影(まぼろし)に目の前 白みゆく 降りやまぬ雪のよう 加速速め 落ちてく 掠れたような空に 見えない自由探して 強く強く羽ばたいた この今 眠りはもう覚めないから 最期にキスをして Полюшко,поле,(ポーリュシカ ポーレ) 銀色の世界で (世界で) キミの笑顔はもう思い出せない 記憶に刻むメロディー かすかな声に聴いた 幻影(まぼろし)に目の前 白みゆく 降りやまぬ雪のよう 加速速め 落ちてく 掠れたような空に 見えない自由探して 強く強く羽ばたいた この今 眠りはもう覚めないから 最期にキスをして コメント 作業早いすなwこれもっと伸びてほしいなー… -- 名無しさん (2010-11-17 19 52 03) 上の人とおなぎじ -- 名無しさん (2010-11-20 15 08 05) これってミクだけなの・・・かな・・・ -- 鬼蜘蛛 (2010-11-20 15 12 48) 切ないですwミクのキレイなこえ( ´艸`) -- 阿琥 (2010-12-15 16 30 18) これからも頑張って欲しいユニット -- 名無しさん (2012-05-05 19 20 40) けっこうお気に入り〜♪ -- かやの (2012-06-05 19 24 36) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/vuxuv/pages/3.html
更新履歴 取得中です。
https://w.atwiki.jp/sexyvoice/pages/381.html
その日、夕食の買い物に出掛けて自分の部屋に戻ったら、いつのまに来たのかニコがいて、 ベッドにぐったりと寄りかかるような格好で座り込んでいた。 中学の制服が皺になるのも構わず、鞄もその辺に乱雑に放り出したままだ。 「おいおい、人の部屋で何くつろいでんだよぉ、ずーずーしいヤツだなぁ、もー。」 いつもだったらすかさず言い返してくるのに、今日は無言で、ゆっくりと虚ろな目を俺に向ける。 よく見ると顔色は蒼白、額には汗をうっすらと浮かべてる。 「あれ?ニコ、どうしたの、具合悪いの?」 「体調悪くて、お母さんまだパートで帰ってなくて、一海ちゃんもまだ大学で…」 「えっ、熱出たの? どっか痛いの?」 「頭が痛い… あとお腹がすごく痛いの…」 ニコはお腹を抱え込んだ姿勢でずるずると床に崩れ落ちると苦しげに顔をしかめた。 相当、我慢していたらしい。 「え、え、じゃあ盲腸炎とかかもしれないじゃん! 病院行こう、救急車呼んだ方がいいかも」 慌てて携帯を鞄から出そうとする手をニコは弱々しく制止した。 「違う…、ただの生理痛…。だから、救急車は呼ばなくていい…。 でも、なんか辛くて一人でいると不安になっちゃって…」 せーりつーって。あーそうか生理か。保健体育でアレコレ習うわりには男には実体がよくわからない現象。 正直、俺は大人なんだし、中坊みたいに女の子の生理話くらいで動揺したりはしない。 でもさ、でもさ、実際こういうときには何をどうすりゃいいの? だけどとにかく今、明らかに相当辛そうな様子のニコが目の前にいて、この子は俺を頼ってここに来ていて。 正義の味方としてなんとかしなくてはいけない事態なわけだ。 「変なこと聞くけど、もしかして今回が初めてだったりする?」 とりあえず保健の先生みたいなことを聞いてみる。首を横に振る。 「えと、じゃあ、そういうときに必要なものは持ってるの?」 首を縦に振る。ちょっとだけほっとした。 「いつもは、こんなじゃないんだけど…緊張してたり、疲れてると、ひどくなるみたい…。 ロボ、痛み止めの薬とかある?」 ニコはお腹を押さえ丸くなりながらしんどそうに聞いた。 そうだ薬だよ。鎮痛剤。それからもっと楽な服装で暖かくしてやって、とにかく休ませよう。 俺たちは、その前々日まで聖ウラジミール学園にスパイとして潜入していた。 次々起こる怪奇現象に俺はいちいち本気でびびって騒いでいたが (もちろん、全部作り事だった…一つの出来事だけをのぞいて。) ニコはずっと冷静で毅然としていた。でも実は相当プレッシャーかかってたわけだ。 体育館に大勢の生徒を集めてインチキを暴いたりしたもんなあ。 痛み止め、痛み止め。頭痛生理痛に効きますってヤツだな。俺は薬箱をあさったが あいにく風邪薬とバンドエイドくらいしか入ってない。 「あのさ、マックスダッシュで薬屋行ってくるから、コレに着替えて待ってて。 すぐ帰るから。待てるよね?」 体を丸めたまま、ベッドに寄りかかるニコに、小さめサイズのスウェットを出してきて手渡す。 今にも消え入りそうなか細い声で「うん」と言う彼女は、ほんの数日前、 年上の高校生達と対決していた少女とは別人みたいだった。 薬局で鎮痛剤を買い、「空腹時に飲まないで下さい」という薬剤師さんの注意を聞いて、 レトルトのお粥も買い、ついでに水分補給も必要かな?と思ってスポーツドリンクも買った。 走って帰ると、ニコは俺のスウェットに着替えていて、あいかわらず真っ青な顔色でぐったりしていた。 ぶかぶかの服の中で泳いでるような体はいつもより小さく見えるし、 静かに目を閉じて動かない人形みたいな様子が、痛々しくか弱く見えて、 一瞬このまま死んじゃったらどうしようかと、俺は急に心配になった。 ちょっと、そんな、そんなの厭だよ。でも大丈夫だよな、これはこの年頃の女の子にはよくあることで、 ただの生理痛で死んだりしないだろう? 「薬、買ってきたよ」 「ん…」 俺はレトルトの粥を温め、鎮痛剤と、水と、ポカリの缶を盆の上に載せて ニコの前に差し出した。ニコは、二さじか三さじ粥を食べて、薬を飲んで、 少しだけポカリも飲んだ。 「おいし…」 「もしかして、朝から何も食ってなかったの?」 「一応給食食べようとしたけど、吐いちゃった…」 「そっか」 俺が中学の頃にも、いわゆる深窓の病弱美少女みたいなタイプがクラスに一人か二人は存在して、 朝礼で校長の話が長引いたりすると、貧血起こして倒れて、大騒ぎになったりしたものだった。 惚れっぽい俺は大抵そういう美少女に憧れていて、格好良く助けたかったけど、 いつも、気の利くしっかり者とか、優等生とかがいち早く駆けつけ介抱するので、 目立たないオタク系は指をくわえて見ているだけだった。 俺の知っているニコは断じてそういう「病弱美少女」タイプではなかった。 よく動く大きな目と、ふっくらした薔薇色の頬と、恐ろしいほどの聴覚を持ち、 俺が後ろを気にせず全力疾走しても、すばしこく走って付いてくる、心身ともに元気そうな娘だった。 いつも生意気で強気で、憎まれ口ばっかりきいて、妙に度胸があるのに、こんなちょっとした理由で 弱々しく儚げになっちまうなんて、なんて女の子って繊細で複雑な生き物なんだろう。 ベッドに上がるのも大儀そうなので、俺は花束を抱えるようにそーっとニコを抱きかかえてベッドに 乗せて、毛布でくるんでやった。 少しでも力を入れると壊れてしまうガラス細工を扱うように。 「薬が効いてくれば、楽になるから。少しおやすみ」 「ロボ」 「何?」 「ありがとう」 その当たり前のまっすぐな言葉に、なんだかキュンとした。なにしろ具合が悪そうな 女の人を介抱しようとしても、痴漢に間違われること数知れずの俺だったから。 目の前で、ニコは静かに眠っている。 少し楽になったようなニコの様子を見て、緊張気味だった部屋の中の空気が 安らぎと、気心の知れた友達のそばにいる幸福感に変化していく。 そのあどけない輪郭はどうみてもまだまだお子様にしか見えないのに、 彼女の体の中では、大人の女性に成長するための準備が確実に進行していて 時々バランスを崩して具合が悪くなったりもするらしい。 まるで蝶になる前の蛹のような変化。 かつて同級生の少女達がそうだったように、ニコも大人に変わっていっちゃうのかな。 そんなに急いで変わらなくてもいいのにさ。 もう少し、今のままで、コーヒーよりフルーツパフェが似合う、お子様のままでいてもいいと思うよ。 まるで、王子様のキスで目を覚ますのを待っている童話の眠り姫みたいだと、 柄にもなくメルヘンなことを考えた。 たぶん、っていうか、ぜったい、その王子様は俺であるはずがなくて。 (その時は何かに縛られたように、そう思いこんでいたのだ。) それを考えるとなぜか胸が痛くなって、しかも妙に腹が立った。 どこの誰がニコの目を覚ますのだろう。今目の前にそいつが現れたら本気でマックスパンチしそうだ。 後から考えるとこれは「嫉妬」だったと理解できるのだけど、その時の俺には もやもやした変な感情の正体がさっぱりわからなかった。 自分はドン=キホーテさながらに、一海ちゃんみたいな煌びやかなお姫様達を 躍起になって追いかけ回し、そのドキドキこそが恋だと信じていたのだから。 二時間ほど眠って、ニコは目を開けた。 顔色は相変わらずあまり良く無いけれど、瞳の輝きが戻っている。 「んー。大分楽になった。薬が効いたみたい。」 「動けそう?」 「うん、もう大丈夫」 「温かいミルクでも飲む?」 「うん、貰う。急に変なことで迷惑かけてごめん」 「別に、たぶん妹がいたらこういうのって普通の出来事だろうし」 ニコはまっすぐに俺を見上げると言った。 「助けてくれて本当にありがとう。ロボがいて良かった。」 俺はニコの素直な言葉にかえってドギマギして、目をそらしてわざとぶっきらぼうに答えるしか出来ない。 「いいけどさー。もう、あまり意地はって無理すんなよなー。 そこまで辛くなる前に、ちゃんと保健室で休ませてもらうとかさ。」 「そうしたかったんだけど、男子に見つかるのイヤで行きそびれたんだよ」 「なんだそりゃ」 「だって、林は今日アレだぜーとか、いちいち騒ぐ子がいるんだよ。本当に男子達って 幼稚なんだから。」 ニコは顔をしかめている。彼女から見れば同い年の野郎どもは、さぞ子供に見えるのだろう。 なにしろこの娘は、10歳年上の俺のことさえ子供に見ている時があるんだから。 たぶん、その男の子達は一足早く大人への階段を駆け上がっていくニコ達が眩しくて、 そういうしょーもない方法で構うしか出来ないんだよ…って、 かつて自分もバカ中学生だった俺としては思ったけれど、 たぶんそんなことを、今のニコに言っても理解出来ないかもしれない。 「ま、中坊なんてそんなもんだよ。俺もさ、中学の時はバカでスケベで幼稚で、 どうしようもなかったよ。たぶんニコの同級生以上に」 「嘘。それは違うよ」 「違うって?」 「ロボは今でもバカでスケベで幼稚だけど、自分より弱い人とか本気で困ってる人をからかったり、 苛めたり、そういうことは絶対しない人じゃん。 中学の時でもおじいさんになっても、そういう人だよ。 そのくらい、私にだってわかる」 え、ちょっとそんなこと言われるとドキっとするんだけど。 貶してるんだか誉めてるんだか一見わかりにくい言葉の中にある深い理解を俺は見逃さず、 その瞬間、この宇宙で一番俺のことを信頼し見守ってくれているのは、 目の前の小生意気なコムスメかもしれないと思って、そしたら妙に胸が詰まって 鼻の奥がなんかツンとしてきて、そうするともう俺はますます目をそらして 「はいはいどうせバカでスケベで幼稚で悪かったね~」と言うしか出来なくなってしまうのだった。 本当はこんなことが言いたいのではなかった。俺達はなんでも言い合える仲のようで、その実、 いつも肝心なことは言葉にし難くて、本当に、男子中学生以上に不器用でバカだった。 心配だから家まで送るという俺に対して、ニコはもう大丈夫だからいい!と言い張る。なんでだ。 こーゆーとこは、ほんっと可愛くない。なんなんだよ。もう。 本心では、もう少しだけニコと話がしたかった。 「だーかーらー 大人に気を使うなって言ってるだろ~」 「気を使ってるんじゃなくて、借りは最小限にする主義なの!」 「そーゆーの子供らしくないっ 可愛くない!」 「別にロボに可愛いと思われなくてもいいもん」 「はいはい、どうせ俺は頼りにならないオタクですからねー」 「頼りにしてるじゃん」 「はぁ?」 「自分がお腹痛くて具合悪くてもう駄目!って時に、頼りにしてない相手の ところに来るわけないじゃん。 生理の話とかさー。超恥ずかしいのに。 でもロボしかいないから来たのに。」 何でわからないの、何でわからないのよー。ロボのバカ。アホ。どんかん。オタク!! マシンガンのように繰り出される理不尽な毒舌を聞きながら、ああ、送らなくていいっていうのは ニコの少女らしい羞恥心と感謝の入り混じったものだったのかと気が付いたけど、なぜか始末の悪いことに、 その悪口の応酬が妙に小気味よく楽しくて。それだけでなんとなく二人して満足してしまって。 俺たちは二人とも、本当に言いたいこと、言わなきゃいけないことから、またもやどんどん離れてしまうのだった。 「おーい、あんまり急いでいくなよぉ。危ないぞォ」 根負けした俺は窓からニコを見送った。 ニコは手を振ってから、あかんべぇをして応える。 ほんの少し首を傾げてしっかり走っていくのは、いつも通りのニコだった。 だけど、さっきまでの脆くて繊細で、透明な繭の奥深くに隠れた眠り姫のようなニコの方が、 もしかしたら真実の彼女なのかもしれないなと思った。 急ぐな、という言葉が自分にとって二重の意味だったことに、俺はニコの姿が見えなくなってから気づいた。 トムとジェリーなら、一生仲良く喧嘩し続けることも出来るけれど、人間はそういうわけにはいかない。 あの時、もう少し素直になっていたら、そして、あの頃俺が「恋」だと思っていた幻影がフィクションで、 目の前で笑う小さな存在こそがリアルだと気づいていたら、 今は違っていたのか、とも考えるし、全然変わらなかったかもしれないとも考える。 俺たちはいつも肝心な一歩を踏み出せないまま、なんとなく会わなくなった。 二人で一緒に大騒ぎの誕生日を迎えた日。二人で午後の公園で仲直りをした日。 いつもの別れ道で、楽観的に同じ明日が来ると信じていたあの日。 俺はあまりにも心の底から幸福すぎたので、それが幸福だということさえ認識できなかったのだと思う。 今でも時々ニコのことを思い出す。思い出の中のニコは相変わらず 俺の胸までしか背の届かない小さな少女の姿のままで、何か失敗をやらかすと、 「ロボ何やってんのよ、もう、役立たず」などと悪態をついてくる。 本当は彼女も今頃は17,8になっているのだから、恋の一つや二つ経験していて、 ぶっちゃけ非モテ系な俺なんかより経験豊かになってるのかもしれない、という方が 現実的な考え方なのだが、なんだか実感がわかない。 これはもしかしたら、俺の勝手な願望なのかもしれないけれど、彼女はまだどこか茨の奥深く、 心の中の城で眠っていて、目覚めるのを待っているようなそんな気がしてならない。 だってこの前、夢の中ではっきり聞いたんだ。 「ロボ出動だよ!」っていう、あの口調で俺を呼ぶ声をさ。 その夜から、生意気でちょっと斜に構えたあのお姫様の目を覚ますことが出来るのは宇宙で俺だけ!という 妄想が取り付いて離れない。 「これって恋なのか?」と自問自答すると、実はよくわからないままだ。 わかっているのはあの子と俺の間には、惑星と惑星の間のように引力が作用していて軌道上で また至近距離に近づく時期が絶対に来るということだ。 根拠は無いのになぜか確信している。こんな確信は今までの「恋」で感じたことは無かった。 そしてこの確信が、ただの俺の自惚れや願望だったとしても。 オタクの妄想力の凄さをなめないで欲しい、世の中を変える発明とか、新しい芸術作品とか奇跡を 起こす原動力は、いつだって思いこみの激しいオタク達の妄想の産物なんだから。 だからもうすぐ、俺は必ずニコを見つけ出す。 この複雑な世界の、日常の中ですれ違っていく雑踏という茨の中から。 それまでキミは眠りの中で、そのまま待っていればいいと思う。 そして「もっとさっさと来なさいよ、役立たず」という悪態と共に目を醒ますべきだよ、ニコ。 だって物語の続きを作ることが出来るのは、宇宙で俺達だけだからね。 ***************** 終わり