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中国の故事だか何に由来するのかは知らないが、俺は光陰矢のごとしなる言葉がこの世にあることを知っている。 意味は、時間は矢のように早く過ぎるとかそんな感じだったように記憶している。 あいにく俺は古代日本語が苦手であり、ついでに古代中国に何があったのかも知らないものだから、光陰って何だ? とか訊くのはよしてくれ。 長門に訊けば由来から実体験ぐらいさせてもらえるのかもしれんが、今はやりたい気分ではないのでやめておく。そのうち気が向いたら辞書で調べるさ。 それはそうと、今は六月である。 去年の今頃というと、それはおそらく俺が白昼夢以上に夢っぽい空間からハルヒと一緒に生還した一週間後くらいであり、それと同時にまさしく悪夢だった中間試験が終了した頃だろうと思う。 それから我ながら大声で笑いたくなるような試験の結果が告知されるとともにハルヒによって草野球大会への出場が告知されたりして、一生のうちにも稀な忙しさを誇る感じの日々だったように記憶している。 そんでもって草野球大会が終了してからもいろいろ、つまり三年前のハルヒとかカマドウマとか孤島ミステリーツアーとかだな、あったんだが、ここでいちいち思い出に浸っていると時間がなくなっちまうので今詳しく話すのは控えておくとする。 というように、光陰矢のごとしなどという脳みその隅っこに埋まってよほどの衝撃がなければ出てきそうにない単語が都合よく出てきたのは、やはり俺主観の時間の流れの早さに由来するのではないかと最近疑いを持つようになっている。 日常、つまりハルヒが何も言い出さないときは時間というのはやたら遅くたらたら流れているように感じるのだが、ハルヒが一旦何かを言い出すと途端にスピードアップしたように感じる。そんでもって今の俺が、ああ時間の流れるのは早いなあとか思っているってことはつまりハルヒが何か言い出さないときのほうが少ないわけで、それは俺の小賢しい頭に巣くっている無数の非日常的思い出がしっかり示してくれているのさ。 さて話が逸れてしまった。 今は六月である。 佐々木とか橘京子とか未来人野郎――藤原とかいう苗字だったかな――とか、あと周防九曜が一気に出現した騒動でいろいろあった四月五月はやっと過ぎ去ったわけで、まだ俺の脳内からトラウマが消えないのはどうしたことだろうと誰かに愚痴をこぼしたいのだがそれはいいとする。そんなのが終了して嵐の後の静けさというか嵐の前の静けさというか、秩序のようなものがSOS団周辺に戻っていた。 ついでに紹介しておくと、四月に他の部活動がまっとうなやり方で新入生を勧誘している間に我がSOS団が実施した、ハルヒ作の某国立大学入学試験よりも難解かつ理不尽な入団試験に合格した新入生は一人としておらず、まあいてくれても困るので俺としてはほっとしたがな。長門も朝比奈さんも古泉も、ついでに俺とハルヒも普通らしい普段の精神状態に復帰し、長門は読書、朝比奈さんはメイド、古泉はボードゲームといったようにまるでどこかの昔話のごとく平和な感じに平凡で不変な状態を維持し続けている今日この頃である。 世界の物理法則を百八十度くらいねじ曲げてくれたハルヒもようやく静かになったか、と思っていた。適度に暴れる、俺に言わせれば一番安全な状態である。その暴れ方も以前に比べればマシなもので、映画撮影をカオスの極地に追い込んだり時間を逆戻りさせたりということはなく、ハルヒの持つスペシャルパワーを使わない暴れ方になっていた。古泉の言う「普通の女子高生」なるプロフィールがハルヒに定着するのも時間の問題かと思っていたのだが。 どっかの誰かがそれを許さなかったらしい。 そんな最中、起こってくれた。 * 「ねえキョン、そろそろ来る七夕に向けて準備をしないといけないと思わない?」 時は六月半ばのとある木曜日、中間テストが続々と返ってくる悪魔週間のまっただ中、俺には理解不能だがおそらく客観的に見れば古典という授業が終わった直後の休み時間だった。 解放感を味わうために座った状態で背伸びした俺の肩を、二年生になってまで飽きもせず俺の後ろの席を占領し続ける女が何の前兆もなく引っ張った。 やめてくれ。 お前のその強力のせいで脱臼でもしたら治療費はお前が出してくれよ。 「そんなのはあたしのせいじゃないわよ。あんたの肩がひ弱だからいけないの。それにほら、今だってバカみたいにぼーっとした顔してるじゃない。そんなだから身体に力が入らないのよ。しゃきっとしなさい。顔の筋肉に力を入れるの」 こんなひねくれの境地のようなことを本気で言う人間は俺の知り合いに一人しかおらず、また世界中を探してもいろんな意味で世界遺産以上の価値を誇る女であり、その名前を涼宮ハルヒといった。 そんなムチャクチャな。 「ムチャクチャじゃないわよ。あたしは状況を冷静に判断して物を言ってるんだからね。悔しかったらあたしが最初に言った言葉を二秒で反復しなさい。ぼーっとしてなければ解るはずよ。はいスタート」 …………。 「はい不合格」 俺の答えを待たずして不合格の印を押したハルヒは笑いながら怒るという芸当を披露している。 「仕方ないわね。もう一度まったく同じことを言ってあげるから、耳の穴かっぽじって今度は一語たりとも聞き逃さないようにしなさい」 ハルヒは不敵に笑いながら、 「来る七夕に向けて準備するわよ!」 と、そう宣言したのだった。 繰り返しなさい、とハルヒが言っている。最初に言ったやつとはずいぶん変わっているがこれはツッコんでやるべきなのだろうかとか思いながらも、反復しなければこの休み時間を無駄にしてしまいそうなので俺はハルヒが言ったとおりに繰り返した。 「合格。もっとしっかり聞いてなさいよ」 「ああ、できるだけ努力する」 「じゃあ本題だけど、あんた、自分が今言ったことの意味はしっかり理解できてるわよね?」 俺だって人並みの耳と脳は持ってるんだ。耳から情報を取り込んで脳で処理しなきゃ、それは聞いてないのと同じだぜ。俺の場合、古典の授業なんかがその典型的パターンだな。 「解ってるならいいわよ。あたしね、つくづく思ってたの。七夕とかクリスマスとかの大イベントって何で一日しかやらないのかしらって。前後一週間くらい七夕ウィークとかクリスマスウィークとかにするべきよ」 「それじゃありがたみが減るだろ」 「そんなんじゃもったいないわ。せっかく大きなイベントなんだから、それなりの日数は取るべきよね。七夕だってそろそろやってもいい頃よ」 自分勝手もここに極まったような言い分だが、まあそうなれば織り姫と彦星も空の上でさぞかしありがたがることだろうよ。だがキリストの誕生日はどうしようったって一日限りだぜ。キリストがそう何回も生まれ変わってたらそこらじゅう神様で溢れかえるに違いない。 「とにかく、あたしは個人的にでも七夕を長期間楽しむことにするわ。クリスマスツリーだって十二月の第二週には飾るんだから、笹だって六月の半ば頃には飾ってもいいはずよ。そうじゃないと不公平よ。許せないわ」 誰を許さないつもりなのか。いや、それはいい。ハルヒの言う個人的ってのに俺や長門や朝比奈さんが組み入れられてるだろうこともいいとしよう。 「それでお前、七夕には何が必要か知ってるんだろうな。えらそうなこと言って、そんなのも知らなかったらロクでもないぜ」 「知ってるに決まってるじゃないの。あたしはこういうイベント事に関してはね、あんたよりもずっと深く理解してるつもりよ。それに去年だって同じことやったし」 ああ、去年ね。確かにそんな記憶がある。あの時は朝比奈さんに連れられて三年前に行って、そこで中一のハルヒと会ったんだったな。犯罪まがいのことをした末に世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミスをよろしくと叫んだ――のは別の時だったか。 回顧録に思考を飛ばす俺をよそに、ハルヒは自慢げに鼻を鳴らした。 「でもねえキョン、あたしだって去年より進歩してるのよ。去年は学校裏の私有地の竹林で笹を取ってきたんだけどね、今年は違うのよ。どこで取ってきたと思う?」 「さあな。私有地の竹林から公有地の竹林に変わったんじゃないのか?」 「違うわよ。今年は鶴屋さんのとこの山から笹をもらってきたの。もうすごかったわよ。あの山、笹から竹まで立派なやつがわんさか生えてるんだもん」 「まさかとは思うが、お前普通の竹を取ってきたんじゃないだろうな。七夕に使うのは笹だし、そうじゃなくても部室は狭いぜ」 「安心しなさい。しっかり部室に収まる程度で適度に立派なやつを選んで持ってきたから。あたしだってそんくらいは考えるわよ」 どっちにしろ鶴屋さんにお礼を述べておく必要があるだろう。あの方にとっては、自分ちの山の笹竹の一本や二本があるかないかなんてのは、俺の自宅にアリがいるかいないかぐらいのもんだろうが。 「じゃあキョン、放課後までに願い事考えとくのよ。善は急げだから」 その用例は少し間違っているのではないかと考える俺に向かってハルヒは「みくるちゃんと有希と古泉くんのところに行ってくる」と言い残して、韋駄天走りで教室を飛び出していった。 願い事ね。 確か十六年後と二十五年後に叶えてもらいたいやつを書かないといけなかったんだっけ。ベガとアルタイルまで光が届く年数だ、とか。ハルヒの考えそうなことだ。 俺は去年俗物を頼んだ覚えがあるが、はたして今年は何と書けばいいのだろうか。今すぐにと言われたら『ハルヒの暴走を止めろ』とか『周防九曜の類の連中とは金輪際顔をつきあわせたくない』とか願うんだろうが、未来の自分の願い事というハルヒ説を重んじるなら今さらそんな願いをしたところで無意味だからな。どうせ十六年後とか二十五年後の俺はその前の年と変わりばえしない日々を送ってるんだろうよ。 もっとも、十六年後や二十五年後にはハルヒやその他の連中は俺の近くにおらず、そんでもってハルヒが暴走していないと仮定しての話だが。 * 放課後はすぐにやって来た。 そういえば部室に向かう途中に鶴屋さんと出くわした。相変わらず快活な挨拶をしてくれて、俺も笹のお礼を述べておくと、 「いいよいいよっ。あの山のなら竹でも笹でもどんどん持ってっておくれっ。あたしはハルにゃんの思いつきをちっと齧らせてくれればいいからさっ」 とまた、こちらが恐縮したくなるような度量の大きさを見せつけてくれた。つくづく感心するお方だ。朝比奈さんと並んで先輩の人気度ランキングナンバーワンだな。 さて、SOS団アジトもとい文芸部室に足を踏み入れた俺を待っていたのは、夏バージョンのメイド服に衣替えした朝比奈みくるさんに長門有希の等身大人形のような読書姿、古泉一樹のハンサムスマイルだった。ハルヒは清掃当番なので俺は先に行って待っていろと指示されている。待ってるだけで短冊を書くのはダメらしい。竹なら部室の隅に準備されてるのに。 なるほど鶴屋家所有の山に生えているだけはあるような、青々と茂る笹の葉を満載したぶっとい笹竹である。このちっちゃい部室には場違いな感が否めないでもないが。 「キョンくん、こんにちは」 扉を開けた俺を一番に出迎えてくれたのは、俺の精神的栄養源かつ目の滋養になってくださっている朝比奈さんだった。相変わらず何も知らないガキに天使だよと紹介したらあっさり信じ込んでしまいそうなくらいに可愛らしい笑顔で、ああ俺も自然と笑顔になっちまいそうだ。 未来から来ているという付加効果なしでも充分SOS団に必要な存在だろう。今さらながら、彼女をスカウトしてきたハルヒの目は確かだったな。いろんな意味で。 「すぐにお茶を淹れますね」 そう言ってパタパタと急須に向かう朝比奈さんの微笑ましい姿を横目で見ながら俺はパイプ椅子に腰を降ろした。 しかし朝比奈さんには悪いですが、いくら夏バージョンとはいえそのメイド姿は暑そうですよ。去年みたいにナース服にしたらどうです。いや、俺の好みとしてはメイドのほうがいいんですけどね。 ただでさえ暑い六月半ばである。人の気も知らずにいつまでも停滞を続けやがる梅雨前線のせいで、この文芸部室は暑いにプラスしてじめじめしていて蒸し風呂状態である。ストーブが冬に来てくれたのは嬉しかったが、どうせならクーラーも欲しいな。オンボロ扇風機程度じゃあ、このだるい部室内空気を引っかき回してるだけだ。 俺は視線をずらし、奥のパイプ椅子にひっそりと鎮座している小柄な読書娘を見る。長門はいつものように完全に固体化しており、はたしてこいつよりも動作の少ない生物が地球上に存在するのか疑わしくなってくるね。 部室が暑いと言ってもこいつは別格である。そもそも暑いとかいう概念がないんじゃなかろうか。あるいは変温動物のように体温調節機能を獲得しているのかもしれん。どっちにしろチートだ。 「いや、もう夏ですねえ」 俺が鞄から取り出した下敷きをうちわにして扇いでいると、本当は暑いくせに暑そうな素振りを一切見せないハンサム男が話しかけてきた。 「まったく驚きです」 これ以上暑苦しくなりたくなかったので無視してもよかったのだが、とりあえず反応してやることにする。 「何にだ」 「四季の過ぎ去るのがこんなにも早い、ということにですよ。同じような話は春にもしたと思いますがね。この一年、細かく言うと涼宮さんに出会ってこの部活に入ってからですが、僕としては多忙を極めたような日々でした。裏方、『機関』のことに加えてSOS団の涼宮さんのことにも気を配らねばなりませんでしたから。たぶん僕の人生のうちでベストスリーにランクインするほどの忙しさだったでしょう。しかし、その割に何故こんなにも早く時間が過ぎ去ってしまうのか、それが不思議でならないんですよ。あなたはそう思いませんか?」 当然のようにオセロを持ち出してきて俺にコマを配布し始める古泉に、俺はまあなと答えた。 「ハルヒが何かやらかす度にこっちの時間も狂っちまうんだから、今ほど時の流れが早くなったり遅くなったりすることもないだろうよ。冬なんか総じてえらい目に遭ったが、そのくせ冬の時間の流れは一番早かった」 「それはなかなか面白い思考ですね。今ほど時の流れが遅くなったり早くなったりするときはない、ですか。それに冬という視点で見るのもなかなか面白いです」 いかん。どうも古泉のご機嫌を取るようなことを言っちまったらしい。俺は朝比奈さんが運んできたほうじ茶を啜りながらこいつの説明地獄からどうやって逃れようかと考えるが、たぶん無理だろうという結論に至ってげんなりした。 「僕はね、時々思うんですよ。春はあんなことがあった、夏はあんなことがあった、秋はあんなことがあった、冬はあんなことがあった、とね。まあ春というのは先日の佐々木さん方面の話ですが」 ああ解った。解ったからその話はもうしないでくれ。当分奴らとは顔を合わせたくないんだ。 「おっと、それは申し訳ありません。あなたに関して言えば彼らは迷惑以外の何者にもならないような人たちでしたからね。実際迷惑をこうむったと思いますが」 「まあな。だが、迷惑ならハルヒが俺をSOS団に引き込んだ瞬間から始まってるぜ。というかそれが一番の原因だろ。SOS団にいなけりゃ俺はまっとうな高校生生活を楽しんでただろうし、橘京子や九曜に迷惑をかけられることもなかった」 古泉は怪訝な顔になりながらもスマイルだけは崩さずに、 「SOS団にいたせいで、ということですか。……ではもう少しつっこんだ訊き方をしますが、あなたはSOS団に引き込まれたことを後悔していますか? 今すぐでも、この団体を去ってしまいたいのですか?」 だから、そんなことを面と向かって訊くな。何にもないときにおいそれと人に――特に古泉に――言いたいことではない。 俺の無言をどう取ったのか、古泉は自嘲気味に小さく笑い、 「すみません。話を元に戻すことにしましょう。あなたが相手だと話が逸れやすくてね。それで僕が言いたいのは、僕の頭の中では春や夏という季節ごとの分類でSOS団の出来事がまとめられているという点なんですよ。SOS団にまつわるさまざまな出来事を思い返す度に、僕の思考には四季が結びついているわけです。野球大会は夏、映画撮影は秋、ラグビーの試合観戦は冬といったふうにね。たとえば、訊きますが夏には何をしましたか? しっかり覚えているでしょうか」 「そりゃお前」 忘れようにもSOS団の活動で俺が死ぬときに忘れ去ってそうな事件なんか一つもあるわけがない。そんなヤツがいたら健忘症を疑ったほうがいいだろう。 夏には無限ループの夏休みをやって、あと野球大会とかカマドウマの一件もあったし、朝比奈さんに連れられて三年前にも行った。そしてお前がやらかした孤島のインチキ殺人事件だ。 「その通りです。ならば秋はどうでしょう?」 「秋は映画撮影に尽きる。コンピ研とネット対戦とかもしたが、まあ秋はハルヒも割と静かだったしな」 「では冬は?」 「……待て、何をしたいんだよお前は」 「そんなに大したことではありませんよ。ちょっとした実験です」 含み笑いのような笑いを浮かべる古泉に不気味さを覚えながらも、俺は冬の記憶を辿る。 冬は本当にいろいろあった。何が一番印象に残ってるかと言われればそれはもちろん長門のエラーだかで世界が変わっちまったことだが、それ以外にも雪山の山荘とか中河のヒトメボレ騒動とかいろいろあるぜ。 「なるほど。つまりあなたは僕が季節を言うだけでその季節にSOS団で何があったかを明確に思い出すことができるんですね。あなたの場合は全部が全部衝撃的だったということもあるわけですが、しかし朝比奈さんや長門さんに訊いても同じ答えが返ってくると思いますよ」 「どういうことだ」 「SOS団の活動は四季と深く結びついている。こういうことです」 古泉の嬉々とした声を聞きながら、俺はああとか思った。 そもそもハルヒが行事的イベントを好んでやり出すからとかいうのもあるんだろうが、それでもSOS団の活動には季節に関係していることが多い。夏には市民プールとか合宿とか夏らしいことを、秋には文化祭関連で一幕あったし、冬は雪山に行っている。知らないうちに季節が一回りしたことも驚きだが、俺の脳内記憶装置に季節ごとのフォルダができているのはそこらへんが関係してるのかもな。 だから何だって話だが。 「僕はそう考えると途方もない想いに駆られますね。このまま同じように高校二年、三年を過ごして卒業したとき、四つの季節フォルダに一年ごとのSOS団の活動録ができあがっているかと思うと、まだやり遂げてもないのに達成感が湧いてきます。朝比奈さんがこのまま行くと今年で卒業してしまわれるのが非常に残念ですが、とにかく今のベストの状態で終わりを迎えたいものです。もちろんそんなのはきれい事に過ぎませんけどね」 俺は古泉の言葉に妙な引っかかりを感じた。 「何だ、今はベストの状態なのか?」 古泉はオセロ盤にコマを置いて俺の白を一枚裏返し、それから自分の手のひらを裏返して、 「さあ。僕は『機関』の一端末でしかありませんから、上の実状がどうなってるのかははっきりとは解りかねますがね」 「お前、知っててわざと伏せてんだろ」 「どうでしょうかね。……まあ僕に言わせるのなら、涼宮さんの面だけで見たら悪くはない状態だと思いますよ。閉鎖空間の出現頻度は今のところかなり少なくなっています。《神人》ともご無沙汰で、いやこんなに会っていないとそろそろ会いたくもなりますよ」 そりゃ病気だ。早めに治療してもらった方がいい。ああ思いついた。閉鎖空間ノスタルジア症候群なんて病名はどうだろう。 「それはそのうち学会に発表することになったら考えさせてもらいますよ。今のところ発表する気はありませんが。それで、確かに涼宮さんの精神は落ち着いています。その面だけで見たらベストと言ってもいいくらいにね。それは我々超能力者にとっては非常にありがたいことなのですが、しかしです。いま問題視されるべき存在は涼宮さんだけではなくなってきているんですよ。あなたもお気づきでしょう。我々の敵と呼ぶべき存在」 けったいな話をしながらも、古泉はオセロのコマを裏返した。 敵と言うべき存在ね。俺の心当たりはなくもない。 そんなのは言うまでもなく周防九曜である。 他にも問題のある連中に持ち合わせはあるのだが、とりあえず誰かを敵視しろと言われたら俺はぶっちぎりでこいつを敵視するね。他の連中ならまだ会話程度は成立するが、九曜の場合はコミュニケーションが成り立たん。会話という意思伝達の概念がないってのがマジな真相さ。 佐々木の一件で現れた広域帯宇宙存在天蓋領域のインターフェース。それが九曜の正体である。 春以前にも雪山の山荘ではずいぶん派手な歓迎会をしてくれやがり、長門を発熱させるようなとんでもないバケモノだ。あんなヤツとは二度と関わりを持ちたくないと思った俺の心情も察して欲しい。 地球外生命の知り合いなら、長門と喜緑さん――と朝倉は微妙なところだが――だけで充分だ。 俺の話を黙って聞いていた古泉は曖昧な表情を作って、 「まあ、確かに周防九曜は敵視すべき存在でしょうね。しかし、です。悔しいことに彼女は僕の手に負える存在ではありませんよ。いいわけめいて聞こえるかもしれませんが、あまりに大きすぎる獲物に狙いを定めても失敗するだけなんです。長門さんには申し訳ありませんが、彼女のような強大な敵は長門さんに任せるまでです。もちろん助力はしますけど。しかし、僕が懸案しているのはその他の人物です」 俺は次なる敵にピントを合わせた。 「佐々木や橘京子や藤原とかいう未来人野郎か」 奴らもまた、出てこなくてもいいのに出てきた連中である。 橘京子は古泉の『機関』の敵対勢力で、藤原は朝比奈さんとは別種の未来人だっけ。 佐々木はともかくとして、橘京子や藤原のような連中に遠慮はいらん。リング外で一万回ぶっとばしてやりたいくらいだ。 「そうですね。彼ら二人に的が絞られます。立場上ということも関係していますが、そのうち僕が気にかけているのは橘京子のほうですよ。長門さんのような強力な存在があと二、三人こちら側について援護してくれれば気にかける必要もなくなるのですが、そんなことはなさそうなのでね。長門さんには周防九曜が、朝比奈さんにはあの未来人がいるのと同じように僕には橘京子がいて、それぞれ自分だけで手一杯なんですよ。この間の一件で一応のことそれぞれ和解していますが、事実上敵対は続いています。証拠に、あちらはまだ佐々木さんを中心として形だけ結束していますからね」 ああアレか。Aに敵対する勢力がどうのとかいうやつだ。あっちが形だけ結束してるのに比べりゃSOS団がはるかにマシなものだってのは、たぶん客観的に見てもそうなんだろうね。涼宮ハルヒという巨大権力の下、宇宙人と未来人と超能力者が団結してるんだからな。俺が何なのかはいまいち解らんが、そんなことはもうどうでもいい。 「つーことは、まだ裏で激戦を繰り広げてたりするのか? 敵対する組織同士で」 「いえ、少なくとも僕のところについて言うならばそんなことはありませんね。今のところ橘京子のほうからの動きは見られませんから。いたって静かですがお互いを観察し合う状態、つまり春以前の冷戦状態に逆戻りです。それだけに何かきっかけがなければお互い攻撃することはないと思いますが、ただし油断はできませんよ」 じゃあ話を変えるが、藤原はどうなんだ。橘京子が黙ってたってあいつがいつまでも黙ってるとは思えないぜ。そして、しかもそうなると朝比奈さんが負けそうな気がしてならないんだよな。不思議なことに。 「そんなことはありません、と僕は思ってるんですけどね。それぞれ実力に見合った相手と敵対しているわけですから。彼も性格がああでも所詮は朝比奈さんと同じ未来人です。そして、未来人がどんなふうかは朝比奈さんを見れば解るでしょう?」 古泉は、パイプ椅子に座って編み物をしている朝比奈さんに目をやった。 可愛さは学園内ナンバーワンだが、こうしている限りではとても未来人とは思えん。いや、素性を隠してるならそれが普通か。 「彼女は何も知らされていない、というのは前にお話しましたね。過去の人間に未来がどうなっているかを予測させないためです。そこの理屈はどの未来にとっても同じはずですから、これはあの未来人にも言えることだと思いますよ。彼もまた未来からはほとんど何も知らされていないのでしょう。ついでに、こちらで何か動きがなければ未来からは干渉してこないところもね。そして今、橘京子の一派はすぐに動き出す様子もないし、天蓋領域は長門さんたちに監視されているため大きな動きがある可能性は少ない。そして未来人も動けないために、涼宮さんの周囲は不気味なほど静まり返っているわけです」 「なるほどな」 俺は息を吐いた。 「とりあえず、今すぐにこれ以上何かが起こるってことはないと思っていいのか?」 「その通りです」 古泉はいつもの微笑を二割り増しにして答えた。 嵐は過ぎ去ったのだ。 危険極まりない周防九曜やその集団は、今や長門のところが見張ってくれている。 橘京子の一派は強行派ではなく、一件を終えて静まっている。 藤原とかいう未来人野郎は事態を動かすだけの力を持っていない。 「このまま静かになってくれるといいんですがね」 古泉がぽろっとこぼした。 「涼宮さんの精神が落ち着くのに始まって、そこからすべての組織が収まってくれれば、それほどいいことはありませんよ」 俺も同感である。 一番最初に大問題だったのはそもそもハルヒなんだ。 四年前に始まり、その変態パワーを使って周囲をさんざん巻き込んでくれたが、高校二年生になった今ハルヒはようやく静かになりつつある。 前みたいな憂鬱と暴走の大きな谷と山の繰り返しがだんだん小さくなって、もう少し経てば平地になってくれるかもしれない。そうなったとしたら俺はきっと妙な寂しさを覚えずにはいられないだろうが、それでも世界が収まってくれるのならそれでいい。 だったら、と思うのだ。 ハルヒが事態のすべてを引き起こした原因だったのだとしたら、その原因が静まればそれを取り巻く周りも静かになってはくれないのか。覆水盆に返らずっていうアレか? そんなことはない。事実そうなりつつあるのだ。二年生の春にあった佐々木の一件を最後にして、ここんとこは事件らしい事件は何も起こってない。だったら、このまま何も起こらずにすべてが収まらないのか――。 「ただしね」 古泉は言って、おもむろに一枚のオセロのコマを手でつまんだ。 「ひっそり静かなのと大荒れなのは表裏一体なんですよ。たとえば、このコマは今は白を表に出しています。しかし、これがちょっとしたことでもあれば裏返るかもしれない。そうすれば、今まであなたの味方だった白は突如として姿を変えて黒になるわけです。しかし、もしかしてちょっとしたことが何もなければ永遠に裏返らないのかもしれません。一方で、すぐに何かがあったらすぐに裏返るのかもしれません。……いえ、我ながらこれは喩えが悪かったですね。とにかく、いつ大荒れになるのかを予測できないのが僕には無念でならないのですが――」 「ごっめーん!」 古泉の言葉はいきなり部室のドアを押し開けた人物の派手な謝罪によってかき消された。古泉は俺に向かってお得意の肩をすくめるポーズを取ると、持っていたコマをパチンと盤に置き、白を一枚裏返してから今までそんな真面目な話などしていなかったかのように挨拶をした。 「おや涼宮さん、どうもこんにちは」
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大庭 ナオミ(おおば なおみ):登場デュエリスト:声 不明 特徴 「男性」という存在が受け付けられず、「女性」が好きという色々な意味で危ない女子学生キャラ。 十六夜アキ(DA)のハート4イベントでは、「女の子は、ばっちい男の子ではなくキレイな女の子を大好きになるのが普通だ」という旨の発言をしている。 他の女性キャラはピンからキリまでプレイヤーを異性として意識している感じなのだが…… ツンデレではなく生理的嫌悪でプレイヤーを叩き起こすのは彼女くらいのものである。 シナリオでも一貫して男性嫌いなので、普通のギャルゲ的な反応を彼女に求めすぎるとガッカリしてしまうかもしれない。 「そういうキャラ」と割り切って大らかな心を持って接しよう。 十六夜アキ(NO)の事を「アキお姉様」と呼び慕い、TF4では夢中だった。 しかし、TF5ではアキのことを諦めかけていて、TF6のプロフィールをみる限り遂に完全に諦めたようだ。 その証拠に機嫌は他の女性同様1段階しか上がらない。 が、龍亞(NO)のシナリオでは相変わらずアキ目当てで登場している(このときの呼び方は「お姉様」ではなく「アキさん」)。 恋愛対象ではなく憧れの存在となった、ということだろうか。 と、思いきや十六夜アキ(DA)のシナリオでは諦めきれていない様子が描かれており、以前のように機嫌が2段階上がり、アキに抱きついても「いつものこと」扱いされているあたりプロフィールと矛盾している。駄目だこいつ… また、龍可(DA)のハート1イベントによれば、彼女は外見でぱっと見でわからなくてもにおいを嗅げば確実に女の子かどうかわかるそうだ。流石である。 フリージャーナリストで不在がちらしい父親との仲は不明。 わざわざ嫌いな男であるコナミ君の部屋にくる理由は……自分の目で確かめよう。 やはり学生以上の女性を連れていたり、女性フィギュアをプレゼントすると機嫌が良くなる。 逆に男性を連れていたり男性フィギュアをプレゼントすると機嫌が悪くなる。非常に分かりやすい。 ただし例外も少なからず存在し、プレイヤーはともかく何故かホセがノーカウント。 さらにルチアーノに至っては機嫌が良くなる。 匂いで男女を判別する特技(?)を持っているらしいが、彼らはロボットなのでその特技から外れているということのだろうか。 が、同じくロボットでもプラシドとアポリアは連れて行くと機嫌が下がるので注意。 ルチアーノは長髪なので女っぽくあり、ホセは高齢なので勘弁しているのかもしれない。 しかしレクス・ゴドウィン(DS)でも機嫌がよくなるようになり、いっそうカオスになっている。 彼女を攻略する上で注意すべきは、彼女を連れている時は一部の女性キャラの機嫌を損ねてしまう事か。 特にアキをはじめ、デュエルアカデミアの女学生には結構嫌われている。 逆にセキュリティや子供キャラとの相性はそれなりに良かったりする。 デッキは【ライトロード】。 裁きの龍の全体除去が強烈なデッキで、墓地肥やしさえ上手く行けば相手に反撃させることなく一方的に打ち勝てる。 本作発売前のルール改訂(起動効果関連)と当時の制限により過去作より弱体化しているが、それでも強い。 デッキの動かし方が単純で、AIの珍プレイが少ない(ないとは言っていない)のも嬉しいところ。 デッキを合わせればただでさえ高い爆発力が更に強化される。 【ライトロード】の必須カードはP00からP10まで順に集めていけば自然に集まるので、構築難易度も低い。 効果モンスター中心なのでハート3イベントのイリアステル相手にも強い。 事故対策をすれば大会でDP稼ぎすることもできる。 (D3の中では)ツァン・ディレと並ぶ優良パートナーだと言える。 全デッキのレベルが安定して高いので、他のパートナーのハートを稼ぐデュエル相手としても好都合である。 その際はナオミに発信器を付けるといいだろう。当然【ライトロード】対策のメタカードは忘れずに。 なお、意外なことに高レベルデッキに裁きの龍が入っていない。 余談だが、デュエル中に負けそうになると相手をインチキ呼ばわりする。 ガチデッキを使いながら相手をインチキ呼ばわり…どこかで見たような…。 ただし、あちらは制限強化によってデッキは弱体化している。 ガチデッキには変わりはないが…。 パートナーデッキ AIとの相性が最悪なのは「魔宮の賄賂」と「激流葬」の2つ。全て抜いてしまおう。 上記カードほどではないが3積みされている「ライトロード・ハンター ライコウ」も相性が悪い。 ライコウ自体は非常に優秀なカードである…しかしAIだと表側攻撃表示で出す、効果でどうでもいいカードを破壊する(例 マクロコスモスを放置して単に攻撃力の高いモンスターカードを破壊)、セットした後にブラックホールや裁きの龍で破壊…といった珍プレイを連発する。抜くか数を減らしておいた方が無難である。 それ以外のカードの使い方は(AIにしては)安定している。自分の好きなように改造しよう。 おすすめの追加カードは「カードガンナー」や「グローアップ・バルブ」。 前者は先攻1ターン目に召喚して効果で墓地を肥やしてくれる。ソーラー・エクスチェンジがあれば更に送ってくれる。墓地にカードが溜まった状態で自分にターンを回してくれるので、同じ【ライトロード】で合わせていればすぐに裁きの龍が出せる。 後者ははライトロードと相性がいいチューナーなので、シンクロモンスターを使いたいなら採用するといい。 逆にやめた方が良いのは「ゾンビキャリア」やオリカの「未来破壊」で、AIでは使いこなせない。 投入するなら自分のデッキだけにしておきたい。 主な出没地点 シティ内陸:朝、夕、夜 デュエルアカデミア:朝、夕、夜 出現条件 最初から登場。 パートナーパック ルール・ザ・ワールド(P)TF6 スペシャルブレークダウン(P)TF6 お気に入り 使用デッキ デッキ名 レベル デッキ使用場所 神聖なる純真 8 パートナー、2周目以降ランダム、イベント 神聖なる純真1 7 1周目、2周目以降ランダム、イベント 神聖なる純真2 9 2周目以降ランダム、イベント 神聖なる純真3 10 禁止・制限解除 ストーリー サブタイトル 信頼度 相手 WRGP Aブロック 1回戦 ハート1 ジャン、アンドレorブレオ WRGP Aブロック 準々決勝 ハート2 牛尾哲、狭霧御影orイェーガー WRGP Aブロック 準決勝 ハート3 ホセ、プラシドorルチアーノ WRGP Aブロック 決勝 ハート4 不動遊星、ジャック・アトラスorクロウ・ホーガンor十六夜アキ(NO) アイテム 大好 (□) カードプロテクター[イエロー、オレンジ、ピンク、ホワイト、レインボー]、カードホルダー[スタイリッシュ、ゴージャス]、デュエルレーダー、ラッキーコイン、呪いのダイス、裏デュエル入門、ロード・オブ・ザ・キング (人) フィギュア[ハーピィ・クィーン、異次元の女戦士、霞の谷の祈祷師、薄幸の乙女、アマゾネスの聖戦士、デーモン・テイマー、魅惑の女王、ドリアード、ビッグバンガール、海神の巫女、雷電娘々、お注射天使リリー、地霊使いアウス、火霊使いヒータ、風霊使いウィン、水霊使いエリア、ブラック・マジシャン・ガール、白魔導士ピケル、黒魔導師クラン、カードエクスクルーダー、サイバー・チュチュ、治療の神ディアン・ケト] (♪) 麦わら帽、ハイヒール、サンダル、ぬいぐるみ[へび、どらごん]、王冠、アロマキャンドル、肩たたき券、マフラー、指輪 (家) メモリーカード、ムービー[歴史大河] (食) 牛丼、オムライス、サラダ、ぶどう、水、牛乳、チョコレート、愛情弁当 好き (□) カードプロテクター[パープル、カーキ、クリア]、カードホルダー[エレガント、シック、キュート]、ゴールドコイン、シルバーコイン、ホワイトダイス、ブラックダイス (人) - (♪) 子供靴 (家) 花束、ドミノスポーツ、チップ、ムービー[現代ドキュメンタリー、推理ミステリー、爆笑コメディ、大衆アニメーション]、香水、耳かき、高性能チップ (食) バナナ、メロン、紅茶、おにぎり、サンドイッチ、ハンバーガー、肉まん、寿司、高級ブランド紅茶、ドローパン 普通 (□) カードプロテクター[レッド、ブルー、グリーン、ブラウン]、カードホルダー[シンプル、ワイルド、アナーキー] (人) - (♪) ニットキャップ、ベレー帽、スニーカー、ブーツ、革靴、長靴、ぬいぐるみ[いぬ、ねこ、うま、さる、くま、かもめ、かえる]、トランプ、スケボー、バット、サッカーボール、タロットカード、水晶玉 (家) 石鹸、シャンプー、リンス、整髪料、歯ブラシ、カミソリ、リップクリーム、目薬、くつした、てぶくろ、アイマスク、耳栓、うちわ、カイロ、孫の手、ワックス、グラス、レターセット、デーリーデュエル、ムービー[恋愛ロマンス、ホラーサスペンス、SFアクション、音楽バラエティ]、トイレットペーパー、洗濯ばさみ (食) りんご、みかん、日本茶、コーヒー、コーラ、栄養ドリンク、ビスケット、ガム、たこ焼き、プリン、ケーキ、パフェ、大福 嫌い (□) カードプロテクター[ブラック、シルバー、ゴールド]、カードホルダー[クラシック]、デュエルカリキュレーター (人) - (♪) ボクシンググローブ、筮竹、ウイングシューズ (家) 万年筆 (食) カレーライス、ラーメン、串焼き、パイナップル、ジュース 大嫌 (□) カードプロテクター[ベージュ、グレー]、デュエル入門、デュエル応用、増幅装置、デスマッチ用デュエルロープ (人) フィギュア[ブラック・マジシャン、ヴァンパイア・ロード、無敗将軍フリード、伝説の賭博師、月風魔、翻弄するエルフの剣士、妖精王オベロン、伊弉凪、伝説の爆炎使い、切り込み隊長、六武衆の師範、結界術師メイコウ、幸運の笛吹き、見習い魔術師、ミラクル・フリッパー、闇霊使いダルク、スターダスト・ドラゴン、レッド・デーモンズ・ドラゴン] (♪) 野球帽、シルクハット、カウボーイハット、バンダナ、ヘルメット、ゲタ、デュエルギャングジャケット (家) ムービー[ヒロイックファンタジー]、がらくた (食) チャーハン、スパゲティ、すいか、いちご アイテムを渡した時の反応 大好 (□) これ…すっごく欲しかったのよ! とってもうれしい!ありがとう! (人) うわ、キレイ! いいセンスしてるのね!ありがとう、とっても気に入ったわ! (♪) うわ、キレイ! いいセンスしてるのね!ありがとう、とっても気に入ったわ! (家) うわあ! こういうのちょうど欲しかったのよ!ありがとう! (食) うわ…いいにおい! とってもおいしそうね!ありがとう、うれしいわ! 好き (□) まあ、なかなか悪くないわねありがとう (人) - (♪) へえ、なかなかいいセンスねありがとう (家) 悪くないわねありがとう (食) 意外とおいしそうねありがとう 普通 (□) まあ…一応受け取っておくわ (人) - (♪) まあ、断るほどでもないから、受け取っておくわ (家) まあ、もらってはおくけど (食) じゃあ…もらっておくわね 嫌い (□) なんか…汚い感じがするんだけど (人) - (♪) なんでこんな物をアタシに? (家) これを…どうしろっていうの? (食) これ…本当に口に入れて大丈夫なの? 大嫌 (□) ちょっと…触るのもイヤだわ (人) こんなの…アタシの部屋には置きたくないわ… (♪) こんなの…アタシの部屋には置きたくないわ… (家) もしかして…嫌がらせのつもり? (食) こんなの…絶対に食べるわけないでしょ パートナー時の会話の相性(D1)機嫌+2 機嫌+1 機嫌±0不動遊星、龍亞(NO)、龍可(NO)、ブルーノ、牛尾哲、ハラルド 機嫌-1ジャック・アトラス、十六夜アキ(NO) 機嫌-2 パートナー時の会話の相性(D2)機嫌+2 機嫌+1 機嫌±0プラシド、ルチアーノ 機嫌-1鬼柳京介(NO) 機嫌-2 パートナー時の会話の相性(D3)機嫌+2 機嫌+1セキュリティ:伊東拓也、鈴木泰斗、サージャント相川、沢中国正、矢ヵ城利之 シティ内陸部:三田川たくや、海野幸子、紬紫、寺師庸佑、龍剛院嬢 シティ沿岸部:田中康彦、石原周子、ケイト・モヘア、青葉あげは、メイ喜多嬉、マーク・フリーダム、成田山司、伊藤泰久、ハル・スプリングス 旧サテライト地区:戦士手島 機嫌±0シティ内陸部:山本百合、シーサイド村本、マー・ムー シティ沿岸部:加藤友紀]、夏乃ひなた 機嫌-1シティ内陸部:藤原雪乃、山本耕司、小野宇里亜 シティ沿岸部:スライダー瓶田、窪田修司、成田伸子、樋口桜、宮田ゆま、長谷部遥、山根章裕、姫美銀鏡 旧サテライト地区:風見吹子 機嫌-2シティ内陸部:清水剛 旧サテライト地区:丸山修二、KENYoU、高橋秀行、吉光誠一郎、ノーマネー弥生、マリア・アン、宮崎健太朗、ミント・ロケット パートナーありで話しかけたときの大庭ナオミの機嫌変動(D1)機嫌+2 機嫌+1十六夜アキ(NO) 機嫌±0龍可(NO) 機嫌-1アポリア、ゾーン 機嫌-2クロウ・ホーガン、龍亞(NO) パートナーありで話しかけたときの大庭ナオミの機嫌変動(D2)機嫌+2 機嫌+1ルチアーノ、狭霧深影、カーリー渚(DS) 機嫌±0ホセ 機嫌-1 機嫌-2プラシド パートナーありで話しかけたときの大庭ナオミの機嫌変動(D3)機嫌+2 機嫌+1シティ内陸部:マー・ムー、紬紫、龍剛院嬢 シティ沿岸部:長谷部遥 機嫌±0 機嫌-1 機嫌-2シティ沿岸部:田中康彦 カリスマデュエリスト:カーリー・なのさ フィールド上会話 シングルデュエル タッグデュエル デュエル申し込み 勝利 敗北 引き分け プレイヤー2 ええ、わかったわキレイに片付けてあげる パートナー時 自分がデュエル パートナーがデュエル タッグデュエル デュエル申し込み アタシが応援してるんだから、キレイなデュエルを見せてよね アタシのクリーンなデュエル…しっかり見てなさい アタシのクリーンなデュエルを邪魔するような…汚らしいマネはしないでよね 勝利 なかなかキレイなデュエルだったわね アタシのクリーンなデュエル…アナタの心も、少しはキレイになったでしょ? ふふん…キレイに片付けたわ 敗北 もう…アナタの心がフケツだから負けちゃうのよ 引き分け 挨拶 機嫌 パートナーなし パートナーあり 最高 アタシに何か用? まあいいわ特別に聞いてあげるから、簡潔に話してね! ふたりそろって、アタシに何か用?アナタたちなら、もちろん歓迎よ 良い アタシに用なの?ちゃんとまとめて、簡潔に話すのよ ふたりで、アタシに何か用なの?もちろん、問題ないわよ 普通 アタシに何か用? ふたりで、アタシに用? 悪い アタシに何か用なの? 手短にしてよね ふたりでぞろぞろ…何か用? 最悪 アタシに何か用? 出来るだけ近づかないように、距離をとって話してくれる? ぞろぞろ来るだけで、ちょっと気持ち悪いわ…何か用なの? セリフ集 1日の終了(朝) もう帰るの? ちょっと早くない? 1日の終了(夕方) もう帰るの? まあ…仕方ないかしら 1日の終了(夜) そろそろ帰るの? まあ、もう夜になるものね 1日の終了(深夜) もうこんな時間…アタシはそろそろ帰るわね カードの話 では、カードについて質問するから、答えて カードの話(出題) このカードの○○、知ってる? カードの話(正解) へえ…なかなかやるのね、見直したわ カードの話(不正解) こんな事も知らないの?まあ…こんなものかしら 数字の話 アタシが一週間に何日お部屋を掃除するかわかる? 数字の話(正解) (毎日!)当然よ気を抜くとすぐにホコリがたまるのよね 数字の話(不正解) (十日?)やだやだ男の人って話をきちんと聞かないのよね 数字の話 アタシの男友達の数が知りたいの? 数字の話(正解) (ゼロだ)当然じゃない男性を友達だなんて思ったことないわ 数字の話(不正解) (100人だ)そんなわけないじゃない…バカなことを言わないで! 数字の話 アナタは掃除道具はいくつ持ってるの? 数字の話(正解) (10個くらいかな)少ないけど、まぁ及第点てところねちゃんと掃除しなさいよ! 数字の話(不正解) (1000個)幼稚なウソねこれだから男の人って嫌なのよ 数字の話 基本的に男性には近づいてほしくないの 数字の話(正解) (半径5m)そうねそれくらいが適切な距離だわ 数字の話(不正解) (4メートル70センチかな)そんな近くには近づけさせないわよほど信頼できないとその距離はないわ 数字の話(不正解) (100メートルとか)そうしたいところだけど人の多いところじゃそうもいかないじゃない 数字の話 で、アナタは可愛い女の子を何人くらい知ってるの? 数字の話(正解) (そこそこ)早くアタシに紹介しなさいよ!鈍いんだから! 数字の話(不正解) (ゼーロー)ちょっとでもアナタに期待したアタシが馬鹿だったわ… 数字の話(不正解) (数え切れん)なんですって!男の分際で生意気よ! 相手の話励ませ! いつもの道を歩こうと思ったら、工事中で…違う道を歩く事になっちゃって… 相手の話励ませ! お気に入りのハンカチに、シミができちゃったの… 相手の話励ませ! 来る途中…泥が制服にはねちゃったの… 相手の話励ませ!(大成功) うん、そうね…落ち込んでばかりもいられないし、気を取り直していかないとね、ありがとう 相手の話励ませ!(成功) うん、そうねありがとう 相手の話励ませ!(普通) 励まして…くれてるの? 相手の話励ませ!(失敗) 相手の話励ませ!(大失敗) 相手の話笑わせろ! クラスのみんなが笑ってる時も、いまいち面白いと思えないのよね… 相手の話笑わせろ! 最近、心の底から笑っていない気がするわ 相手の話笑わせろ! 何か、面白い話をしてよ 相手の話笑わせろ!(大成功) あははははっ!おかしいー! ダメ、涙が出てきそう 相手の話笑わせろ!(成功) はは…それは面白いわね笑っちゃったわ 相手の話笑わせろ!(普通) 相手の話笑わせろ!(失敗) え? 今ので終わりなの? どういうこと? 相手の話笑わせろ!(大失敗) 面白いというより、むしろ不愉快ね… 相手の話叱れ! 誰かと握手なんて、絶対したくないわだって、汚いもの 相手の話叱れ! 汚れた服を着ている人を見ると…丸ごとゴミ箱に放り込みたくなっちゃうわ 相手の話叱れ!(大成功) そ、そうね…アタシが間違ってたわごめんなさい…あと、ありがとう 相手の話叱れ!(成功) もしかしたら、アタシが間違ってたかもごめんなさい 相手の話叱れ!(普通) 相手の話叱れ!(失敗) 何が言いたいの? 相手の話叱れ!(大失敗) 相手の話ほめろ! あ、肩のところに、ほこりがついているわよ…はい、とれたわ 相手の話ほめろ! 掃除当番の掃除がいいかげんだったから、アタシがきれいにやり直してきたの 相手の話ほめろ! 道にゴミが落ちてたから、拾ってゴミ箱に入れてきたわ 相手の話ほめろ!(大成功) そ、そうかしら?そんなに褒められると照れちゃうけど…うん、ありがとう、うれしいわ 相手の話ほめろ!(成功) そうかしら? ええ、ありがとう 相手の話ほめろ!(普通) 相手の話ほめろ!(失敗) 相手の話ほめろ!(大失敗) 相手の話アピールしろ! 男の人なんて…みんないなくなってもいいのに! 相手の話アピールしろ! 女の子の方が、絶対いいわよねえ… 相手の話アピールしろ! 男性なんて、みんなフケツなの! 相手の話アピールしろ!(大成功) え!?ま、まあ…男の人の中では…ましな方、かな? 相手の話アピールしろ!(成功) そんなこと言われても…でも、まあ…思ったよりは、イヤじゃない、かな? 相手の話アピールしろ!(普通) 相手の話アピールしろ!(失敗) 相手の話アピールしろ!(大失敗) 気になる人 アタシが気になっている人は… プレゼント アタシに、これくれるの? 誘う しょうがないわね…今回だけよ? 誘う(断られる) 誘う(断られる2度目) 誘われる 今日は、アタシに付き合ってもらうわね!さあ、支度して! 身だしなみ整えてね つれていく 大丈夫? じゃあ、行きましょう つれていかない え? ダメなの? もしかして、アタシと一緒に出かけられるような、清潔な服がないの? プレゼント(カードパック) あ、ちょうどいいところに! このカードパック、パックの端が曲がってるから、あげるわ プレゼント(アイテム) デッキ編集(誘う) そうだ…ついでに、アタシのデッキを見せてあげるちゃんと手をキレイにふいてから触ってよね デッキ編集(誘われる) あ、ついでに…アタシのデッキ見せてあげるわ手を洗ってきてからね + ボーナスメッセージ クリアしたのね それで? えっ・・・それだけ? そう・・・ そうだ、そんな事よりも貴方の周りに可愛い女の子いない!? いたら紹介してよ! ねぇ、ねえってば!
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「いやーすっかり遅くなっちゃったわね」 全くだ。現在時刻、午後9時半。部活にしては遅すぎるぜ。 朝比奈さんなんかさっきからあくびをかみ殺してばかりだ。ふぁあ。あくびうつった。 とりあえず、早く帰って休もうぜ。明日休みとは言え疲れをためるのは良くない。 「わかってるわよ!…キョン、古泉くん!」 何だ。 「何です?」 「女子をそれぞれの家に送りなさい!こんな時間に女の子が一人で歩いたら危険よ!」 あのなハルヒ、こんな時間になったのはお前が… 「わかりました。ここから一番近いのは長門さんの家ですね」 「じゃあみんなで有希の家へゴー!スパイダーマン♪スパイダーマン♪」 近所迷惑になるからスパイダーマンのテーマ(エアロスミス)歌うな。 「ぅう…暗いですね…」 すみません朝比奈さん、俺がついてますから…本当だったら真っ先にあなたを… 「…キョン」 何だよ… --------- 何となく喋りながら歩き、ほどなく長門のマンションに着いた。 まだ更に朝比奈さんの家・ハルヒの家へと行かなけりゃならん事を考えると少々気が滅入るがまぁ仕方ない。 じゃあな長門。また学校でな。 「………」 「どうしたの有希?」 マンションの門で立ち止まったままの長門に、ハルヒが問い掛ける。 確かに様子がおかしいな。どうしたんだ? 「…あそこ」 「…ぁあっ!ひぃい…」 長門の視線が指す先を俺が見る前に朝比奈さんの悲鳴が夜の住宅地に響いた。 おいおい…あれは… 「おやおや…これは」 おやおやって…お前な… 「キョ、キョン!何なのあれ!」 俺に聞くな!俺にはアレにしか見えんが… 「…有機生命体の言語で言うなら」 待て待て。俺は認めたくないんだ。何かの間違いだ。特撮だ。 「あれは幽霊」 ……はぁ… 「ふみゅう。。。」 崩れ落ちる朝比奈さんを古泉と支えながら、長門に尋ねる。 マジで言ってるのか?幽霊なんてホントにいるのかよ。 「いるじゃない実際に!あたしだってそりゃ100%信じてたわけじゃないけど、 幽霊なんていないって言うならアレは何よ!」 確かにハルヒが指差す先には、中学生くらいの女の子が… その…何だ。浮いてるんだ。宙に。 それに俺は長門に聞いてるんだ。なぁ長門、本当に幽霊なんか… 「…あなたは誰?」 …は?何故それを俺に向かって言うんだ?聞くならアッチだろ? 「あなたに聞きたい。答えて。」 …何か意図するところがあるみたいだな。 俺は俺だ。これでいいか長門。 「いい。次の質問」 ……… 「なぜあなたはあなただと言い切れる?」 ……解らん。 「降りてきなさーい!あんたに聞きたいことがあるのよ!」 向こうでハルヒが拳を振り上げ何やらきゃいきゃい騒いでいるがとりあえず無視する。 「…自意識という情報があるから」 「自分、という概念」 「その情報はとても大事」 「それが確立していないとヒトは自他の境界線を失う」 「だから自意識の情報には強固なセキュリティがかかっている」 「普通死後は全ての情報が破棄されるが自意識の情報はそのセキュリティのせいで残る事がある」 「それが幽霊」 要するに、自意識情報が魂みたいなもんで死後に残ってしまうといわゆる幽霊になるってわけか? 「そう」 なるほどな… 情報統合思念体なんてものの存在を知った今じゃ、 幽霊が完全削除するのを忘れてゴミ箱フォルダに残ったデータだ、 とかいう突拍子もない話の方が、もっともらしい心霊番組よりよほど信じられる。 「キョン!あんたさっきから人を無視して!」 …あぁ、すまん。 「あいつ捕まえるわよ!」 幽霊をどうやって捕まえるって言うんだ! 「頑張るのよ!」 「そうですよ。努力は時に天才を打ち負かすものです」 …古泉を本気で殺したいと思ったのは初めてだ。いや初めてか…?まぁいい。 あのなお前ら、 「あっ!消えた!」 なにっ? さっきまでヤツがいた所を見ると…確かに消えていた。 あぁ…俺の頭にわずかに残っていた特撮説も、一緒に消えちまった。 一般人よりもちょっとばかり超常現象に耐性がついてる俺は、 幽霊が消えた事に驚くよりもさっきから最高の笑みを崩さずこっちを見ているハルヒが、 次に言うだろうセリフを予測しうんざりしていた。 「探すわよ!」 ってな。…まぁいいが、 探しに行く前に、朝比奈さんを起こさないとダメだろ。 「そうね。みくるちゃん起きなさい。気絶なんかしてる場合じゃないわよ」 「う…ん…」 俺の腕の中でかわいらしい声を出す朝比奈さん。 自制しなければ…ってうわぁ! 「……」 いきなりがばっと立ち上がった朝比奈さんは、黙ったまま俺達に視線を向けた。 「みくるちゃん…?」 「これは少々厄介ですね…」 どういう事だ古泉。 「朝比奈みくるの自意識情報が一時的ブランク状態である事を利用して入り込んだ」 …えっとつまり… 「朝比奈さんが気絶しているスキに幽霊が憑りついたということです」 「みくるちゃんが憑りつかれた!?凄いわみくるちゃん! 日頃から巫女さん衣装とか着せてるから霊媒体質になってたのかも!」 …何でそんなに嬉しそうなんだ。 しかし、ハルヒがいくらつねったり胸をつついたりしても無反応な事を考えるとどうやらマジらしい… 「あなたたち」 朝比奈さん(霊)が突然口を開いた。 「あなたたち、私が怖くないの…?」 朝比奈さん(霊)は、朝比奈さんの声で俺達に問い掛けてくる。 不思議と恐怖感は全くない。奇妙なものに遭遇するのにも慣れてきたしな。 「全然大丈夫!ところで、あんた名前は?」 「…ちひろ」 「ちひろちゃんね!どうしてあたし達の前に出て来たの? あと、憑りつくってどんな感じ? そうそう、どうやったら幽霊になれるの?」 朝比奈さん(霊)、どうやらちひろというらしいが… ハルヒのヤツ…幽霊に質問攻めとは… 「好ましくない状態」 長門が呟く。 「一つのフォルダに二つ自意識情報が入っている」 「このまま朝比奈みくるの自意識情報がブランク状態から復帰したら」 「…重大な人格障害を起こす危険がありますね」 「…そう」 人格障害…?まずいじゃないか。何とかならないのか…? 「入り込んだ自意識情報を削除すればいい」 「しかし、セキュリティはどうするんです?」 「外部操作によってセキュリティを解除する」 「正確には自ら解除させるよう仕向ける」 わかったぞ。つまり俺達が幽霊ちひろの未練みたいなのを取り払ってやれば、 セキュリティは解除されるって事だな? 「飲み込みが早いですね。驚きましたよ」 「私も驚いている。 こうも容易に理解することは予測していなかった」 ただ幽霊モノの基本を言っただけなんだが…なんかムカつくな… 長門まで… 「おーいあんたたち!」 俺達をそっちのけで朝比奈さん(霊)となにやら話していたハルヒが、彼女の手をひいてくる。 「ちひろちゃん、生きてた時に付き合ってたひとと話したいんだって!」 またベタな展開だが…いいのか、長門。 「…」コク 正直こんな時間に見ず知らずの人を訪ねるのはどうかと思うが、 朝比奈さんの事を考えれば仕方ない…か。 で、場所は分かってるのか? 「大丈夫。あの人の事はいつも感じているから」 幽霊ならではの能力ってわけか。 「形のない情報として存在しているから自他の境界線はない」 ふむ。 「だから他人を自分として認知することもできる」 頭が痛くなってきた…とにかく行こう。 「こっちです…」 俺達は朝比奈さん(霊)…ちひろについて歩く。 どうやら彼女の恋人の家は例の公園の方向にあるらしかった。 5分ほど歩いたところでふと、ちひろが足を止める。 「………」 …ここか。 「ここね!じゃあちゃっちゃと済ませましょう」 待て! 何普通にチャイム鳴らそうとしてるんだ。 「だって出て来てくれないと話せないじゃない」 あのな…今何時だと… 「…あの…」 …! 「何かご用ですか…?」 …この人は…まさか? ちひろの方へ視線を向けると、彼女は泣きだしそうな表情で呟いた。 「道弘くん…」 やっぱりそうか… 俺達の後ろからやって来た、不審な顔で問いかけてきたサラリーマン風の男。 この人がちひろの探していた人物らしい。 「…どこかでお会いしましたっけ…?」 「あの…私…」 「わからないむぐっ!まいむんももっ!」 何やらわめこうとしたハルヒの口を抑え、古泉と長門に目で合図を送る。 俺達は邪魔者だ。空気を読もうじゃないか。 しばらく遠巻きに見る事にしようと、場を離れかけた時だ。 「何だかわからないけど、制服姿でこんな時間にうろついてたら捕まるよ? 早く家に帰りなさい」 事情を知る俺達にはとてつもなく非情に響く言葉を残し、彼は玄関に歩いて行ってしまった。 「…無理もないですね…彼は何も知らないわけですから」 「話くらい聞いてもいいと思わない!?ふざけてるわ! これじゃあせっかくちひろちゃんが…」 ガチャン… ドアの音がこんなに冷たいとは知らなかったぜ。 「顔が違うだけでわかんないの!? 死んじゃったら忘れるなんて酷い男だわ!信じられない!」 『パパ…か…りーっ』 「いいちひろちゃん、あんな奴の事忘れなさい! もっとマシな男がきっと…」 しっ!ちょっと静かにしろ!今… 『ただい…ちひ…』 …ちひろが息を飲むのがわかる。 いや、息を飲んだのは俺だったのかもしれない。 『ちひろねぇ、パパがかえってくるのまってたんだよ』 『ありがとう。でも夜更かしはダメだぞ』 「「あ…」」 ちひろとハルヒの声が重なる。 「みなさん、こっちを見てください」 古泉が芝居がかったポーズで指し示しているのは… 表札。 そこにはこうあった。 木下 道弘 早紀 千日旅 「これは、何と読めばいいんでしょうね」 「…ち…ひろ…私と同じ…字で」 「これは珍しいですね。きっと出生届を出すときも一悶着あったでしょう。 わざわざこんな字を当てるなんてよほど思うところがあったんでしょうね」 …ハルヒは、驚きと悲しみが混ざり合ったようなよく解らん表情で表札を凝視している。 かくん、と朝比奈さんの体が崩れ落ちる。何とか支えられたが、こりゃ… 「…長門さん」 「彼女の自意識情報は削除された」 …成仏したってことか? 「そう」 「じゃああなたは涼宮さんをお願いします」 再び長門をマンションに送った後、俺と古泉はそれぞれ二手に別れて二人を送ることにした。 あの後ハルヒが終始無言だった事を懸念してるらしい。 懸念だけじゃなく対処もしてほしいんだがな。 「………」 どうしたんだ。黙ってるなんてらしくないじゃないか。 「死んじゃった後の事考えてたの」 …ふむ。 「そしたら…怖くなって…」 あぁ。誰もが体験する感覚だ。自分が死んだらどうなるのか考えて、勝手に恐怖を感じる。 死んだらもう何も感じないし、何も感じない事も感じない。 feel nothingどころかdon t feel nothing の状態になるって事を考えると確かに怖い。 でもなハルヒ、今日した体験で死んでも自意識情報…魂は残る事もあるって解ったじゃないか。 お前ほど自意識の強い奴なら、絶対に幽霊になれると思うぜ。 「当たり前じゃない。幽霊になる方法もちひろちゃんに聞いたし、 死んだら絶対に幽霊になってやるって思ったわ」 …じゃあ何が怖いんだ? 俺は今日の体験で逆に死への恐怖感が減ったくらいだ。ほんの少しだが。 「ちひろちゃんは結局、道弘くんと話せなかった」 …そうだな。でも彼はちひろの事を忘れてなかったじゃないか。 「すれ違いなのよ」 …何がだ? 「例えるなら車道ね。すれ違う時、限りなく近づくんだけど 交わることはないの。だって正面衝突しちゃうでしょ?」 お前まで分かりづらい例えをするようになったか。 要はちひろは道弘さんと話したいし、道弘さんはちひろの事を忘れていないけれど---- 「もう一度二人が会うことはできないってこと…」 …そうか……… 「その事だけじゃないわ。 …そもそも道弘くんがちひろちゃんの事を死んでしまった後も覚えてて、 娘に同じ名前をつけたのって愛してたからよね」 そうだろうな。 「あたしが死んだ時、誰かが同じ事してくれるのかなって考えたら… また怖くなって。」 ハルヒ… 「…あたし死んだらあんたのとこに化けて出るわ」 ……… えーっとこの脈絡でそういうこと言われると…どう反応していいか… 「何よ。イヤなの?」 いや、そういうわけじゃないんだが… お前より先に俺が死んだらどうするんだ? 「あたしのとこに化けて出ればいいじゃない!」 そうする為には俺も幽霊になる方法を知らなければならないんだが… …何赤くなってんだ? 「…すごく、好きな人がいればいいんだって…! もうここまででいいわ!ありがとう!気をつけて帰りなさい!じゃね!」 …はぁ。 何と言うか… 死ぬ時は一緒に…なんて考えちまった俺が憎いぜ。 一緒に幽霊になっちまえば、同じ車線にいるわけだからな。 …疲れてんのかな。明日も休みだし、帰って寝よう。 To ハルヒ Sub 幽霊の件 Txt どっちかが先に死ぬって考えるから怖いんじゃねーか? 例えばお前が先に死んでも忘れられないとは思うが… まぁちょっとした思い付きだ。俺は寝る。 Fm ハルヒ Sub Re 幽霊の件 Txt バカな事言ってないで早く寝なさい!明日9時集合だからね! To ハルヒ Sub Re Re 幽霊の件 Txt 明日は何もなしじゃなかったのか!? Fm ハルヒ Sub Re Re Re 幽霊の件 Txt 今決めたの! fin.
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それはある晴れた日のことだった。 部室に行ってみると、まるで特撮番組の怪獣のようにわめきまくるハルヒも、 いつもオドオドとしていて守ってあげたくなる小動物系の朝比奈さんも、 樹海の奥にひっそりと生えている花のような気配の長門もおらず、年中スマイルのバーゲンセールをしている「アイツ」しかいなかった。 「やぁどうも。僕が来た時には誰もいなかったのですが…いやぁ、手持ちぶさたでしょうがなかったのです。どうです?一勝負。」 と言ってトランプの入った、いかにも安っぽい四角い箱を持ち出してきた。 いいだろう。完膚無きまでに叩きのめしてやるから光栄に思え。 「ははっお手柔らかにお願いします。」 ふん。そういう事はトランプの神様にでも言うんだな。お前の大好きな神様とやらに。 こうして俺たちはポーカーを始めた。あんな不思議なことが起こるとも知らずに。 ハ「よぉ~し!これで写真集が出せるくらいの写真が集まったわ!」 み「ふぇ~…やっぱりあきらめてなかったんですねぇ…」 長「………」 ハ「有希もレフ板ありがとね!ホントは古泉くんに任せようと思ってたんだけどなかなか来ないし、それにいつまでも待ってるとキョンが来てうるさいし!」 今、SOS団三人娘は校内を歩いている。ちなみに格好はハルヒと長門は制服、みくるはメイド服である。(天の声) ハ「まったく…キョンときたらいっつも「朝比奈さんがかわいそう」だの何だの言って邪魔するんだから!」 そうぼやきながら後ろに長門とみくるを率いて歩いている。(天の(ry そして階段にさしかかろうとした時、 ハ「どう思う!?っと!うわっ!?」 勢いよく振り向いて聞いた瞬間、ハルヒは足を踏み外してしまった。(天(ry み「涼宮さんっ!?」 長「……っ!」 とっさに手を伸ばす二人。だが結局支え切れず、三人は階段をもみくちゃになりながら転げ落ちてしまった。 ?「いたたたた…」 ?「ふえぇ~痛いですぅ~」 ?「……不覚。」 どうやら三人ともたいしたケガもなく、無事だったらしい。でもあれれ~?(C.V.高山みなみ)何か違和感が。 ?「あれ!?あたしがいる!」 ?「ふぇ~!?わたしの胸が小さk…きゅぅ(気絶)」 ?「………」 そこには、まるで特撮番組の怪獣のようにわめきまくるみくると、 いつもオドオドとしていて守ってあげたくなる小動物系の長門と、 樹海の奥にひっそりと生えている花のような気配のハルヒがいた。 ハ→み「これは人格入れかえってヤツね!」 みくる?が大声で強気にしゃべっている。心なしか態度もデカい。 み→長「あの~…それってどういう…?」 長門?はいつもと違ってもじもじしている。そしていつもより饒舌である。 ハ→み「ほら!マンガとかでよくあるでしょ!頭ぶつけたり、強い衝撃で人格が入れ替わっちゃうってやつ。きっとそれよ!あーゆーのはマンガだけかと思ってたけど…実際に起こるのねぇ~」 み→長「へぇ~…そんなのが…(あの~長門さん?ですよね?)」 そう言って長門?はハルヒ?に話しかけた。 長→ハ「(……そう。だが外見は涼宮ハルヒ。)」 ハルヒ?は無表情で口数が少ない。ものすごいギャップである。 み→長「(あの…これはどういう…?」 長→ハ「(涼宮ハルヒが望んだ。彼女が階段を落ちるわずかな間に「こうなれば面白いのに」と望んだ結果。でも問題ない。一時的なもの。)」 み→長「(そうですか…とりあえず一安心ですね…)」 どうやらそんな感じの大変なことになってしまったようです。 ハルヒinみくる。みくるin長門。長門inハルヒ。わかりにくいことこの上ない。 そしてみくる?が声高に叫んだ。 ハ→み「おもしろいわ!みくるちゃん、有希!よね?今日はこのまま過ごしましょう!どうせ一時的なものだから楽しまなきゃ損だわ!こんな体験なかなか出来ないしね!キョン達を驚かせてやるのよ!わかったわね!?」 み→長「確かに…そうかもしれませんね!実は私もちょっとワクワクしてたり…」 長→ハ「……ユニーク。」 どうやらみんなあまりショックではないようだ。それにしてもこの三人娘ノリノリである。 ハ→み「そうと決まれば部室に行くわよ!…ところでみくるちゃん。あんたやっぱり胸デカいわねぇ。重くて肩が疲れそうよ。」 み→長「そうなんですよぉ…あ、でも今は私すごい楽なんでs…ひぃっ!」 長→ハ「……………………………………………………………………………………………」 無表情なハルヒ?の目が鋭く光っていた。 フラッシュだ。残念だったな。 古「ワンペアです。いやぁお強いですね。」 お前が弱いだけだろ。俺は普通だ。休み時間に谷口や国木田とやってる時の戦績は三人ともあんまり変わらないからな。 古「少なくとも僕はうらやましく思いますよ…おや、どうやら姫君たちのお帰りのようですよ。」 ふん。そんなキザな言い回しを考えるくらいなら俺に勝つ方法でも考えるんだな。 そう言いながら朝比奈さんで目の保養をと考えてドアの方を見た。すると朝比奈さん、長門、ハルヒの順で部室に入ってきたSOS団三人娘を見て、俺はふと違和感を覚えた。いやそれが何なのかはわからんけど。 み?「あっ!お茶を入れ…ますね~♪」 はぁ。どうも。やっぱり何かおかしい。こう…なんか快活というかなんというか。まさかハルヒが何かしたのではあるまいな? そう思ってハルヒの方を見た。 ハ?「……………?」 なんか怖い。無表情でここまでテンションの低いハルヒなんて初めて見た。七夕やバレンタインデーの時の比じゃない。 おい、どうしたハルヒ?元気ないじゃないか。 ハ?「別に。あんた…には関係ないこと…よ。」 なんだこれは。マジでおかしい。熱でもあるのか?そう思って偉大なる団長様のおでこに自分のを当てようとした瞬間、 ガシャーン! ん?なんだ今の音は。後ろを振り向くと朝比奈さんが湯飲みを割ってしまっていた。 大丈夫ですか!?お怪我などは!? み?「私は何ともないですよぉ~♪」 こちらもやはり変だ。どう見ても朝比奈さんには似つかわしくない怒りマークが顔に出ている。 これは一体どういうことか。その謎を唯一知っていそうなSOS団の有機製アンドロイドの方を見てみると、こっちもどうしたことか。本を広げてはいるがチラチラとこちらの様子をうかがっている。 いつものような頼りがいのある所は感じられず、変わりにビクビクとしていてなんともかわいらしいオーラが出ている。思わず顔がニヤける。なんかこう守ってあげたk ガッシャーン! またか!?本当に大丈夫なんですか?朝比奈さん。疲れてるなら、俺も名残惜しいがお帰りになられては? み?「ホントに大丈夫ですからぁ~♪」 声は笑っているが顔からはある種の迫力がにじんでいた。 なんか今日の朝比奈さんはこう…ハキハキしてらっしゃいますね。はは… ヤバイ。なんかヤバイ。なんだか情緒不安定になりそうだ。一縷の希望を賭け、超能力者の方を見てみると、なんとも形容しがたい微妙な表情をしていた。ダメだ。役に立ちそうもない。 どうしたことだコレは。俺が何かしたのか?いや授業中のハルヒはいつも通りだったし、放課後になってからはさっき会ったばかりだ。俺は何もしていない。たぶん。 そして。もういっぱいいっぱいだったのだろう。俺は何を血迷ったか、ハルヒの肩に手を置き、顔を近づけた。 そう、あの閉鎖空間の時のようにキスをすれば戻ると考えたのだ。他のSOS団メンバーもいるがそんな事を気にする暇もないほどテンパっていた。そしてキスまであと1cm… ?「こんのバカキョン!!なにしようとしてんのよ!!」 うわぁ!悪かったハルヒ!!…ってアレ?目の前のハルヒは目を閉じてじっとしている。ってことは今の声は?と考えるのもつかの間、急にスゴイ力で引っ張られた。 その先にはものすごく怖い顔をした朝比奈さんが。 あの~朝比奈さん?一体どうされたのでs み?「みくるちゃんじゃない!あたしよ!まだわかんないの!?」 え?でもだって…え? み?「みくるちゃんがあたしで、あたしが有希で、有希がみくるちゃんなの!!」 意味がわからん。でもこの口調、態度、唯我独尊な性格はまさしく… まさか…ハルヒなのか? み?「だからそう言ってるでしょ!!もう!!」 その後、三人から事情を説明され、俺と古泉はやっと納得した。こんな時でもスマイルを崩さないこいつは心底すごいと思う。 ちなみにハルヒ(朝比奈さんの外見をした)はなぜか怒ってとっとと帰ってしまった。 朝比奈さん(長門の外見をした)はひたすらもじもじして俺に謝っていた。なんだか俺が悪いことをしたように思えてくるから不思議だね。 あと、残念そうな顔をしていた長門(ハルヒの外見をした)がなんとも印象的だった。 それにしてもなんでハルヒはあんなに怒っていたんだろう。キスだって自分がされる訳じゃないのに。まぁ体はハルヒだが。 古「本気で言っているんですか?」 古泉が聞いてくる。ちなみに今は不本意ながら一緒に生徒玄関に向けて校内を歩いているところだ。まったくもって不本意だ。 本気かだと?ふん。わかったよ、明日ハルヒに謝ればいいんだろ? 古「わかっているじゃないですか。安心しましたよ。今度はちゃんと本人にキスを…」 などと階段を下りながらバカなことを言ってくる。 あーうるさい!まったくお前は…っと!ぅおあ!? 古「危ない!!」 俺はつい「足下がお留守だぜ!」になってしまい階段を転げ落ちてしまった。俺を支えようとした古泉と一緒に。 ?「っつう…大丈夫でしたか?」 ああ、なんとかお前のおかげでな。一応礼は言っておくぞ 。あれ?古泉?どこだ? ?「目の前にいますけど?驚きですね。」 いや目の前には鏡しか…だってその証拠の俺の顔がある。ほら、俺が右手を挙げると鏡に映った俺も… あれ?目の前の俺は右手を挙げるかわりに手鏡を差し出してきた。 その手鏡の中には………ニヤケハンサムな顔が映っていた。 お い ま さ か 終わり
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「こんにちはー。あれ?今日はまだ長門さんだけですか?」 「そう。古泉一樹は休み。」 休みってまさかアルバイトかな…? …あれ?長門さん今日はハードカバー読んでない。 「長門さんが文庫本を読んでるなんてちょっと珍しいですね。いつもはすっごく厚いハードカバーだから私には無理そうかな、って思ってたんですけど。どんな本読んでるんですか?」 「・・・読む?」 「え?いいんですか?ならお借りしようかな。恋愛物とかですか?」 「戦闘物。」 戦闘…? これまた長門さんのイメージとは違って驚いた。そういうのも好きなんだ? 「この表紙の女の子が戦うんですか?どことなく涼宮さんと似てるような…。」 「……。」 その後部室に涼宮さんとキョン君が到着し、いつも通りの時間を過ごした。 古泉君が休んでいる事、長門さんが文庫本を読んでいる事以外は、いつも通りの。 今夜私がこの本を読み終えた瞬間、世界は小規模な改変をされる事になる。 ―― 翌日 コンコン 「はーい。大丈夫ですよ。」 「こんちには。ハルヒは少し遅れます。ところで、今日も古泉が休んでるみたいなんですが何か知りませんか? ハルヒの機嫌も悪くはないし、電話しても繋がらないので。ただの風邪とかならいいんですが。」 「徒を追っているのかもしれませんね…。」 「…ともがら?神人の別種かなんかですか?」 「紅是の徒を倒すのがフレイムヘイズの使命なので。」 「ふれいむ、へいず…?なんですかそれ、未来人の敵とかですか?」 「世界のバランスを崩す紅世の徒を狩る者が私達フレイムヘイズ…私は『雁ヶ音の煎れ手』朝比奈みくる。」 「・・・・・・・・。長門、どうなってる。」 「・・・わからない。」 またハルヒの奴がおかしな事始めたか・・・。なんだって…フレイムヘイズ? 長門は知らない、歩くムダ知識古泉は休み、となれば・・・困ったときのgoogle先生。 「40000件…?」 wikipediaへのリンクを開く。 【フレイムヘイズは、高橋弥七郎のライトノベル作品『灼眼のシャナ』及びそれを原作とする同名の漫画・アニメ・コンピュータゲームに登場する架空の異能者の総称である】 「つまり朝比奈さん・・・灼眼のシャナって小説を読んだわけですか?それで影響されたと。」 「炎髪灼眼の討ち手をご存知なんですか?彼女は今どこに?」 ダメだ…すっかりハマっている・・・。 朝比奈さんがまさか高2ではなく厨2だったとは・・・。 遅れてハルヒも到着したが何やら不機嫌な様子。岡部と揉めたか。ご愁傷様、古泉。 ハルヒが到着するまでヒマだった俺はwikipedia、灼眼のシャナの項目を読み漁ったため大筋は把握した。 ハルヒに知られたら厄介な事になりそうだな…この内容は。 ―― 夜 プルルルルルルル 「はい、もしもし。」 「こんばんは。不躾ですが、ここ数日あなたの周りで何か変わった事はありませんでしたか?」 「朝比奈さんが壊れた。いや正確には朝比奈さんに対する俺の夢が壊れた。」 「…よく分かりませんが。無事ならそれでいいんです。ですが、気をつけてください。近々あなたを狙う輩が現れるかもしれません。」 「…勘弁してくれ。機関の方々で何とかできないのか?」 「えぇ、フレイムヘイズは基本的に単独行動なので横の繋がりが薄いんですよ。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「…今何つった?」 「え?…あ、いや「薄い」というのは別に頭髪の状態を言っているわけではなくですね・・・」 「そこじゃねーよ!!フレイムヘイズって言ったか今!?お前も…フレイムヘイズとかぬかすのか・・・?」 「言いましたよ。いかにも私はフレイムヘイズ、『赤光の狩り手』古泉一樹です。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「分かったもういい・・・全面的にお前らに任せる。」 「お任せを。いざという時携帯電話が命綱になりますので、充電状態には気を配ってください。」 「あぁ心配するな。俺の携帯の充電は午前零時に全回復するか・・・」 俺もかーーーーーっ!!!! ―― 翌日朝 あの2人(俺も?)が同時に影響を受けてるなんて厨2病の一言で済ませられる問題じゃないよな・・・。毎回毎回長門に頼らざる得ない俺が情けない。 でもしょうがないじゃない、一般人だもの。――キョン いや、待てよ。・・・長門に限ってまさかとは思うが、あいつもすでに毒されてるって可能性もあるんじゃないのか? あれこれ考えている内に部室に到着してしまった。 ガラッ 「おはよう、早いな長門。」 「おはよう。」 「朝比奈さんと古泉の様子がおかしいんだが、何か心当たりないか?」 「わからない。」 「そうか。ところで、「灼眼のシャナ」って小説読んだ事あるか?」 「…無い。」 …アイがスイミングしたぞ長門。 「そうか。いや俺も最近知ったんだけどな。ライトノベルって言ったか、ああいう小説にはやっぱりこう無口なキャラが必要不可欠だよなぁ長門。」 「…その意見は正しい。」 「さっき言った「灼眼のシャナ」ってのにもそういうキャラがいてな。俺はそいつが一番好みのタイプなんだ。」 (コクコクッ) 「名前なんて言ったっけなぁー、ヴィ…、ヴィ…」 「ヴィルヘルミナであります。」 「そうそうヴィルヘルミナ。――長門集合。」 「……違う。今のはケロロ軍曹…。」 ―― 「――つまり、まずお前がハマり、古泉に貸したらあいつもハマって学校休んでまで読み漁り、次に朝比奈さんに貸したら案の定、って事だな?」 「…そう。」 「て事はハルヒにはまだなんだな?」 「まだ。しかし、朝比奈みくると古泉一樹、そして私の様子を見る限り、単に小説に影響されただけとは思えない。私が最初に小説を手にした時点ですでに涼宮ハルヒの影響を受けていた可能性も否定は出来ない。」 「…なるほどな。とりあえずハルヒに読んだ事あるか聞いてみる事にするよ。 …で、お前も『なんとかのなに手』とか異名ついてんのか?」 「『万象の繰り手』長門有希。」 …ちょっとかっこいいと思っている自分が、そこにいた。 ―― 昼 「あー、ハルヒよ。ちょっと聞きたい事があるんだが。」 「何よ。団活欠席なら却下よ。」 「違う違う。「灼眼のシャナ」って本読んだ事あるか?」 「なにそれ?知らないわ。」 「フレイムヘイズって単語に心当たりは?」 「はぁ?何なの一体?初耳よそんな言葉。」 「そうか。…で、お前は今何食べてるんだ?」 「メロンパン。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 待て待て待て。あきらめるのはまだ早い。 単にこいつがメロンパンのおいしさに目覚めただけかも知れないじゃないか。美味いしね。美味いしねメロンパンは。 「時にハルヒよ、もうポニーテールにはしないのか?」 「えっ?…な、何でよ?」 「単純に見たいからだ、お前のポニーテールを。」 「あ・・・う・・・、み、見たいって、どうしてよ?」 「どうしてって、俺がポニーテール好きでお前はポニーテールが似合うからだ。」 「なっ・・・う…うるさいうるさいうるさいっ!!」 ・・・・・・・・確定。 つづく
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「・・・・・・・・・・・やっぱりこのままじゃいけないみたいね・・・・・あのときやってさえいれば・・・」 俺たちももう高校二年生になり、桜の花もその役割を終え、新しい季節が 始まりを告げようとしていたとき、SOS団の活動もひと段落ついた学校の帰りの坂道で、ま~たハルヒが妙に気になることを呟いた。 まあ、どうせろくなことじゃないだろうがな。ハルヒのこの無茶な発言にもいいかげん慣れている。 この言い回し・・・・・ろくなもんじゃないってことはわかるぜ。 まあ、もっともこいつがまともなことを言ったことは雀の涙程度しかないがな。 まあ、朝比奈さんの新しいコスプレ衣装に関しては文句なしだがな。 しかし、今回に関してはなにか嫌なー予感ーがするぜ。 少なくとも、いらないのについてくるケータイ電話のストラップくらいろくなもんじゃないな。 で、今度はいったいどんなことを言い出すんだろう・・・・・ 思考をめぐらせてみよう。 ①UMA探索 ②UFOを呼ぶ ③地底人探索 ④GAN○Z部屋に行こう ⑤スタ○ド能力が使えるようになったのよアタシ! ⑥オ○シロ様の正体を探りましょう! ⑦幻○郷に行ってあの貧乏巫女にあいたいわ! ⑧聖○戦争に巻き込まれちまったぜ ⑨直○の魔眼を手に入れた ⑩左手が鬼になっちゃった ・・・ ・・・っと、これくらいかな。あいつが言い出しそうなのは。 しかし、こんな普通に考えるとほぼ100%できないようなことでも、言い出したら最後、飽きるまで暴走し続けるのがこの涼宮ハルヒの得意技だ・・・ ああ、もしかしたら俺、自称ハルヒ心理学者の古泉よりもハルヒの心境がわかるかもしれないぞ。 まあ、もっとも分かりたくもないがな。・・・・・・・おいそこ、嘘だッ!!っとか早くも叫んでるそこのお前、俺は断じて嘘などついておらん。 っていうか、なんで今の俺の考えが嘘と思われるのか知りたいところだ。 てか、俺は誰に向かって話してんだ?俺もそろそろヤバイかな。嘘は谷口の存在だけにして欲しいぜ。 ・・・・・・・・・・なぁんてことを溜息交じりに考えて、俺は手をやれやれだぜといった具合にしながら、ハルヒに問いかけた。 「どうしたんだハルヒ?このままじゃいけないって・・・・・なにがだ?俺はこのままで十分高校生であるべきLifeを堪能しているがな。なにより朝比奈さんが淹れてくれるお茶はそれはもう言葉では言い表し難い程ウマイし、長門は無口、無表情、無感動の3M(?)だし、古泉は古泉だし、何一つとして困ることや不安はないと思うが?」 それにしても、俺たちももう高校二年生か。しっかし色々あったな。 まぁ、色々ありすぎたわけだが。朝比奈さんはもう3年生かあ・・・・・・ 早いものだ・・・・・・・・朝比奈さんは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・3年生・・・・・3年・・・・卒業・・・・・・・・ん?・・・・・・ってちょっと待て! 俺たちよりも早く卒業するとなると、あ、あの極上のお茶・・・別名「天使の涙」(命名俺)が、もう飲めなくなるじゃねえか!! ・・・・・・・・・参ったぜ畜生、思わず声に出しちまったじゃねえか。 ほら、さっき道の角ですれ違った中学生っぽい男の子も、俺のほう見てるよ・・・・・ああ、ハルヒもあきれてモノもいえないみたいだな。 ・・・・・・・で、どの部分から声に出ていたのだろうか? このときの俺には知る由もなかった・・・・・・ ~角川書店 著者キョン『倦怠に満ちた俺の日々』より~ 「・・・・・・あんたもう相当頭が谷口化しちゃったみたいね・・・・・・・・そんなんだからいつまで経っても本名で呼んでもらえないのよっ! 団長の気持ちもわからないようじゃ今後、一生雑用みたいね。 ・・・それはさておき、去年の文化祭のライブ覚えてる?バンド演奏よ。あれ来年の目的とかいって、それからSOS団のライブ活動をちょこっとやっただけじゃない。あの応募して落選したやつ。なんか落選したらさ、もういいや~って思えるようになってね? それっきりやってないじゃない!やっぱり続けるべきなのよ!」 おいおい、バンド演奏ならもういいじゃねえか。それに、俺はもうハルヒの作り出した曲で、あのわけのわからん音符の怪物と戦うのはもういやだぜ? サウンド・ウォーム(命名俺)だっけか? まあ、せっかくベースも弾けるといってもいいレベルまで達したわけだし?俺としても、やりたくないなんていったら嘘になるな。そんな心にもないこといったら針千本を飲まされるぜ。 しかし、俺たちももう高校二年生だ。来年は受験だし、二年の成績はかな~り内申に響くんだぜ? もし、あまりにもできないんで補習!・・・な~んてことになったら、俺はお袋の怒りを買いかねない。 そうなったら最後、バンドはおろかSOS団の活動の参加すら危ういんだぞ。 え~、つまり、大きくまとめると第一に、ハルヒが作った曲にはあのトンデモパワーが宿り、それを聞いたら最後、一生その曲が頭の中で これ以上聴いたらノイローゼになりかねないぞくらいのリピート状態になる。 第二に、俺たちはもう高校二年生だ。わかる?受験だよぉ~・・・ そういうことだからさ、いいかげんそこんとこ学習しようぜ!ハルヒ! ・・・・・という理由である。 まあ、俺的には後者のほうが大きいかな。 理由としては。 しかし、学習してないのは俺も同じだった。 つかさ、俺が本名で呼ばれないのとさ、そこで谷口の名前が出てくる意味がわからねえ。 「なに言ってんの!SOS団の団員である以上は、好成績を残さないとだめだめよ!補習なんてもってのほかだわ!・・・・・・・・・こりゃあま~たあたしが勉強を教えるしかないようねぇ~♪」 はい、俺の話は全然届いていなかったようだ。ようするにやめて欲しかっただけなのにな。ていうか妙にうれしそうだな~、ハルヒよ。 バカに勉強を教えるのは、ペットに芸を教える感覚と類似したものがあるのだろうか?だとしたら、俺には一生無縁な感覚だな。 「バ、バカッ!ぜんっぜんうれしくなんかないわよっ!このうんこっ!」 わかった。もううんこでいいからさ、ネクタイをこれからカツアゲする不良みたいに引っ張らないでくれよ。 でもまたなんで急にそんなことを思いはじめたんだ? 「ハァハァ・・・・・・ふぅ・・・・それはね、昨日部屋のなかを整理してたらね、ビデオが出てきたのよ。結構古かったわね~。それをさ、なんとなく再生してみたら、昔やってた音楽番組だったのよ。でね、あるバンドの演奏してる姿を見たのよ。 それみたらもういても経ってもいられなくなってね! あれがまたすごいのよ! あの哀愁漂うアルペジオのイントロから始まり、終わったかと思いきや、ここから『静』から『動』!ヴォーカルがね、なんていったかしら・・・・・あ、そう!紅だああああああ!!って叫んだのよ! そしたらね、そこからはもう疾走感溢れるアップテンポでね~。 ホント、あれ見て思わず身震いしたほどよ! あのバンドの名前なんていったかしら・・・・・・・・たしか・・・・・アルファベットだったような・・・・? あ、Xなんとかだったわ! 」 こいついったいいくつなんだ? XJAPANだろ?そんでもって曲は紅だ。 なんでそんな古いもん見て興奮するんだよ。Xっていや~・・・・・1989年デビューしたんだっけか。 お袋がファンで、嫌というほど話を聞かされたから覚えてる。 紅はデビュー曲だよな。聴いたことはないけど・・・・・ ああ、そういやこいつ、ロックも聴くんだっけか。いつだったか、『マリリン・マンソン』の曲を口ずさんでたっけ・・・・・・・・・・ 興奮するのも分かる気がする。 「そう!それよ! XJAPAN!懐かしいわね~♪」 だから、お前一世代古いって。 「なにいってんのよ! 彼らの1番の魅力は、『時代を感じさせない音楽』 よ! 『DAHLIA』や、『ART OF LIFE』なんか、90年代の曲だけど、今の邦楽なんかには感じない凄味があるわ! 全然色褪せてないもの! あんたも一回聴いてみなさいよ!絶対ハマルって!」 だ~か~ら~、ハルヒよ、俺はもう勉強でいっぱいいっぱいなの。 そんな音楽聴いてる暇なんかないぞ。 「勉強はアタシが見てあげるっていってんでしょうが!人の話は最後まで聞きなさい! アンタの悪い癖よ! ・・・・・・・・!! 思いついたわ・・・・・・・・!!」 嫌なー予感ーがする。またなんかバンドで俺たちを巻き込むつもりだ・・・・・・・・・・。 まあ、それはいいか! ハルヒが見てくれるって言ってくれてるしな。こちらとしてもそれは大いに助かる。巻き込まれてやろうじゃないか。 なんだかんだいって、俺もバンドをやりたいらしいな。 Xにも興味があるし。・・・・・・で、その思いついたことはなんだ? 「前のときは、容姿が普通すぎたからダメだったのよ! 今度からは、あれよ、あれ。ん~っと・・・・・そう! ヴィジュアル系! これしかないわ~。 邦楽でいいのは、ほとんどヴィジュアル系だしね!PIERROTに、LUNASEA、PENICILLIN、Laputa、Dir en grey、ラファエル、プラスティック・トゥリー、CASCADE、陰陽座、Janne Da Arc、ラルクアンシェル、SHAZNA、上海アリス幻○団・・・・・あげたらきりがないわ!」 わかった、わかったからもう言わなくても、いいぞ? ていうか90年代多いな。ほんとは年ごまかしてんじゃねえのか?・・・・・ていうかさ、ラルクアンシェルをV系呼ばわりしたら、怒って帰っちまうぜ? それに上海アリス幻○団はヴィジュアル系でもないし、バンドでもねえよ。 それに、前に落ちたやつの応募方法は、デモテープを送ることだったろ? 容姿なんて見えないんだから意味ねえじゃねえか。ああ!つっこみどころが多すぎる! 「細かいところは気にしなくていいの! それもあんたの悪い癖よ! それに!アタシがV系っていったら、それはもうV系なの!わかった!? ・・・・・で、これからキョンの家にみんなを呼んで邪魔しようと思うんだけど。 どうせ親はいないでしょ? だったら早くいきましょ!もういても経ってもいられないの!」 どうやらこいつの辞書には遠慮という単語は存在していないようだ。ま、別にかまわんが・・・・・・・・いったいなにをしに来るんだ? 「練習よ練習!みんなだいぶうまくなったようだけど、アタシから見たらまだまだよ。みんなが作詞作曲できるようなレベルにならないとね!」 それはレベルが高すぎだろう。思わず溜息が出ちまったじゃねえか。 気づけば、俺たちがいつも分かれる道まで来ていた。 早いもんだな。 「それじゃあ! 準備が整い次第! あんたの家に行くからねっ!ちゃんと片付けておきなさいよ!」 じゃあねと手を振ったハルヒは、そのまま元気良く走り去って行った。 「やれやれだぜ・・・・・・」 思わずだれかのセリフが出ちまった。 俺はこのあと、ハルヒが去っていった道をただボーっと突っ立って眺めていた。 「そろそろ帰るかな・・・・・」 ハルヒたちが来るので、部屋の片付けを済ませなくちゃならなくなった。やらなかったら死刑っぽいからな、うん。 死刑はやだろ?死刑は。 そして俺は、自分の家に帰るために歩を進め歩き始めた。 これからどんなことになるのかな? なーんてことを考えながらな。 しかし、俺が思っている以上に、大変な出来事に遭遇することは、このときの俺には知る由もなかった・・・・・・・・・・ 続く
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ハル 【みずのかけら -once summer of islet- ORIGIN】【nico】(2004-08-13) 自分の名前を呼んでくれるエロゲを探せPart5 808 名前:名無したちの午後 :2005/08/25(木) 13 12 25 ID zFBdxpez 一年前に簡易報告したのを正式報告 【みずのかけら -once summer of islet- ORIGIN】【nico】 主人公 高村 春(タカムラ ハル)… 変更不可 坂森まち cv:みすみ 「春ちゃん」 屋久香穂 cv:細田なな 「春くん」 葉月 cv:木村あやか 「あなた」が2回だけ 坂森美咲 cv:青柳うみ 「春ちゃん」 高村美冬 cv:みすみ 「春」 坂森貴博 cv:ミサイルγ 「春」 久喜智治 cv:一一 「高村さん」「高村春」 全国の「ハル」さんオメデトンヽ(´ー`)ノ
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■シーン1「虹がまいおりて」 暑くもなくさむくもない季節の、うららかな陽気の午後のひととき。ひなたぼっこをするにはうってつけの日よりです。 ですが、SOS団の団長である涼宮ハルヒは、ひまそうに部室でパソコンとにらめっこしています。 「なんてたいくつなの。せっかく授業が早くおわったっていうのに、なんにも楽しいことがないなんて」 ほおづえをついて、きげん悪そうにしていると、コトリと湯のみが置かれる音がしました。SOS団のマスコットである、みんなと一つ学年が上の朝比奈みくるが、いつものようにおいしいお茶をくんできてくれたのです。 「涼宮さん、そういう時はお茶でもゆっくりのんで、おちついてください。たまにはこういうのもいいと思いますよ」 「ありがと、みくるちゃん」 そう言われてハルヒは、ほどよくあついお茶をずずいと飲みながら、部室をぐるりと見わたしました。 お茶をもってきたみくるちゃんは、いつものふんわりとしたメイド服。動いているだけでも、部室の中があたたかくおだやかになります。 部屋のすみっこでは、同じ学年で、もともと文芸部員として部室にいたユッキーこと長門有希が、ゆったりともの静かに本を読んでいます。 パソコンのモニターのむこうでは、やはり同じ学年で、SOS団の副団長をつとめるキリリとりりしいイケメンの男子、古泉一樹くん。 そしてハルヒと同じクラスで前の席に座り、SOS団の雑用係をさせられているキョンが、公民館のえんがわで、のんびりしているおじいさんたちのように囲碁をしていました。 ハルヒの目の前では、まったり、ゆっくりとした時間が、春の小川のように、たゆたゆとながれているようでした。 けれども、ハルヒにはそれがたいくつでたいくつでしかたがありません。顔をむすりとしてしまうと、自分ひとりだけおいてきぼりにされた気分になりながら、さっきから何度更新しても、全く画面が新しくならないインターネットのニュース画面を見ていました。 (もう、たいくつでたいくつで、今にも干からびてしまいそうだわ!) その時、ぐうぜん目にとまったのは、ニュースの記事にのっていた、大きくてきれいな虹の写真でした。 それを見ていると、むかし絵本で読んだ、虹の下に、宝ものがうまっているというおとぎ話を思いだしました。 「こんなおっきな虹の橋が、どかーんと、今すぐここにあらわれたりしないかしら」 今日は雲も少ないおだやかな日より。雨なんてどこにもふっていないのに、大きな虹が出てくるはずがありません。 いつもなら、そんなことがあるはずがないと、どこかうたがいながら思ってしまうことです。 でも今日のハルヒは、たいくつすぎて、強く、強く、本当におこったらいいなと思ってしまいました。 その時でした。 「ひゃぁ!」 みくるちゃんのかわいらしい、小鳥のような悲鳴が部室にひびきます。 「どうしたの、みくるちゃん?」 「す、涼宮さん。う、うしろ……」 「ハ、ハルヒ、まて!まつんだ!」 キョンがよびとめましたが、ハルヒはすでに後ろをふりむいたあとでした。 「な、なによこれ?!」 それを見てしまったとき、ハルヒの目は、ぎっしりつまった宝石ばこの中身のようにキラキラとかがやきました。 後ろの窓にあらわれていたのは、部室と同じくらいはばのある虹でした。それも、さわれそうなくらいハッキリしたものです。 ハルヒは急いで窓をあけて、身をのりだそうとしました。ですが、だれかがハルヒの体をはがいじめにしてしまいました。 「ちょっとエロキョン!なにしてんのよ!どこさわってんのよ!」 ハルヒは力まかせにあばれます。ですが、キョンはしっかりと組みついて、手をはなそうとしません。 「やめろハルヒ。とびおりる気か?!あぶないだろうが!」 「なに言っているのよバカキョン!ここにしっかりと虹があるのが見えないの?!」 キョンは必死に見えないと言いはっていましたが、ハルヒの目の前にははっきりと虹が見えていました。それにみくるちゃんにも見えているようです。古泉くんとユッキーはだまったままでした。 ハルヒはキョンのうでをふりほどくと、窓から身をのりだして虹に手をふれました。 「すごい、すごいわ!この虹、ほんとうにさわれるのよ!」 ハルヒはみくるちゃんの手をつかんで虹にさわらせます。びくびくとおびえたようすのみくるでしたが、ほんとうにさわれるとわかると、ぱあっとバラのつぼみがほころぶような笑顔を見せたのです。 「ほ、ほんとうにさわれちゃいましたぁ」 みくるの次は古泉くんとユッキーです。二人の手をつかむと、ハルヒは強引にふれさせます。二人とも、その虹がさわれることをみとめると、ハルヒは勝ちほこった顔でキョンを見下ろしました。キョンは顔をおさえたいつものようすで首をふっています。 「キョン、アンタもこれにさわって、この圧倒的な現実をみとめなさい!」 ハルヒは強引にキョンをひっぱりあげると、むりやり虹をさわらせます。 「わかった。もうわかった!」 とうとう、キョンもその現実をみとめてしまったようです。 さっきまでのふきげんを、とおいとおい宇宙のむこうになげすてたハルヒは、つくえの上に立ち上がって、声高らかに言いました。 「この虹の橋のむこうには、きっと見たこともない世界が広がっているのよ。そしてこのSOS団は、そんな世の中のふしぎを、ときあかすために設立された団体なのよ」 「で、どうするんだ?」 もう、どうにでもなれと言いたそうに、キョンはつぶやきます。 「当たり前のことを言わせないで!これからさっそく出発するに決まっているじゃない!」 こうなったハルヒには、世界中、いえ、宇宙中のだれもさからえません。 みくるちゃんは、ハムスターのようにおどおどしながら。 古泉くんはいつものあいそ笑いをうかべて。 ユッキーはいつものポーカーフェイスをくずさずに。 そしてキョンは、やれやれとあきらめた顔をして、虹の橋を先頭に立ってつきすすむハルヒのあとを追っていったのです。 「どうします?これはゆゆしき事態ですよ」 すこし顔をくもらせながら、古泉くんはキョンに耳うちします。 「どうするもこうするもねえよ。こうなったら、やらせるだけやらせて、てきとうなところで言いくるめるしかないだろう」 ほかにどうすることもできないと、キョンはあきらめてしまったようでした。 「さあ行くわよ!これからわたしたちの、大ぼうけんがはじまるのよ!」 ■シーン2「ハルヒの大ぼうけん」 おもいえがいた大きな虹の橋が、本当に現れてしまう。その事をきっかけに、ハルヒは気がついてしまいました。ハルヒが心の底から、なんのうたがいももたずに願ったことは、本当に現実になってしまうことに。 ながれ星が雨のようにふってほしいと願えば、本当に空いっぱいに星がふりそそぎました。 魔法の使える世界に行きたいと願えば、たちまち魔法の世界に行けましたし、SF映画のように宇宙をとびまわるのも思いのまま。 小人のように小さくなったり、怪獣のように大きくなってみたり。 今まで読んできた物語の世界や、自分が思い描いた世界だけではありません。 自分では考えつきもしない、ふしぎな世界を冒険したりもしました。 ハルヒはSOS団のみんなと、時がすぎていくのもわすれて、夢のように楽しい世界を、思うぞんぶん遊びまわったのでした。 「さあ行くわよ。今度のあいては見た目はどうしようもなく弱そうだけど、ずるがしこくて見た目よりずっと強い、異次元大魔王よ!」 まっ白い全身タイツを着たような体に、幼児のらくがきのような顔をした、手ぬきにしか見えないような姿の異次元大魔王が今度の敵です。 見た目とちがって、大魔王は宇宙全部をふるえあがらせるほど強く、その強さの前に、たくさんの勇者たちがたおされてしまっていました。 でもハルヒのSOS団は宇宙最強です。 なんといっても今のハルヒは、ウルトラでスーパーにグレイトな“超”勇者さまです。 みくるちゃんはハルヒが作った映画と同じ、戦うウエイトレスに。 古泉くんもエスパー戦士イツキになり、ユッキーも宇宙人で大魔法使いになっていました。 ただ一人、キョンだけは一般市民の代表としていつもと同じでしたが、とにかくSOS団はぜったいに無敵なのです。負けるはずがありません。 SOS団は、大魔王のずるがしこくて、あくどいワナに苦しめられながらも、あらゆる困なんを、 みんなの知恵と勇気でのりこえて、とうとう大魔王の場所までたどりつきました。 大魔王の強さはウワサ以上で、今まで出会ったことがないような、ものすごい敵でした。 みんなはボロボロになって、今にも負けてしまいそうなくらい追いつめられてしまいました。 「みんなあきらめないで、みんなの力をわたしに全部ちょうだい!それがあのへちゃむくれのちんちくりんを、こてんぱんにやっつける最後の方法よ!」 「わ、わかりましたぁ……」 「私たちの最後の力を、涼宮さんにあずけます」 「……、うけとって」 なんの力ももたない一般市民代表のキョン以外の三人の力が、超勇者ハルヒにあつまります。そして、最後の力をふりしぼってハルヒにあずけた三人は、力なくその場にくずれ落ちてしまいました。 「みんなの力、みんなの想い、たしかに受けとったわ!異次元大魔王、これでもくらいなさい!」 ハルヒはみんなの力を剣の先にあつめて、異次元大魔王につき立てます。 ですが、魔王は固いバリアをはってしまい、剣がなかなかささりません。 「こんのぉ!」 その時です。 ハルヒだけではどんなに力をこめてもやぶれない、固いバリアにヒビが入りました。 だれかがハルヒの背中を後押ししてくれたのです。 「いくぞ、ハルヒ。これで終わらせるぞ」 「うん!」 全宇宙で最強の超勇者ハルヒと、一般市民の代表のキョンが力をあわせれば、たおせない相手はいません。 二人でにぎった剣はバリアをつらぬき、大魔王にせまります。 大魔王は必死にヤリをとばして反撃しますが、二人の勢いをとめることはできません。 グサリ! 「ぐえぇぇ!」 異次元大魔王は、悲鳴をあげてたおれ、ぶくぶくとあわのように消えていきました。 この宇宙に、ついに本当の平和がよみがえったのです。 ■シーン3「大ぼうけんとひきかえに」 「やったわ、キョン!やったわ、みんな!」 うっすらと笑顔をうかべたキョンの顔をみて、ハルヒがうなずいたとき、おどろおどろしい大魔王の部屋は消え去りました。 そして気がつくと、そこはまっ赤な夕陽にてらされた、どこかものさびしい丘の上に変わっていました。 「やれやれ、やっと終わったな」 キョンはその場にすわりこんで、そばにあった大きな岩にもたれかかります。 顔をむすりとふくらませて、ハルヒはキョンにつめたく言い放ちます。 「ちょっとキョン。このくらいでへばってどうすんのよ!?まだまだこれからよ。これからが本気の本番なのよ!」 「そうか。そうだったな。そいつはすまなかった」 ふうと、大きなため息をついてへたりこむキョンにがっかりしたハルヒは、近くにいるはずの三人を探す事にしました。 ハルヒは大魔王をやっつけて手に入れた、七色にかがやく大きなくん章をもっていました。 いつも無口なユッキーはとにかく、みくるちゃんも古泉くんも、きっといっしょによろこんでくれるはず。 足どりも軽く、ハルヒはパタパタと元気よく走り回りながら、三人をさがしました。 「みくるちゃーん!ユッキー!古泉くーん!どこー?!」 やがてハルヒは、丘の中ほどでなかよさそうに寝そべっている二人の姿を見つけました。みくるちゃんと古泉くんです。 「ちょっとちょっと!二人とも、いつのまにそんなになかよくなっていたの?!」 二人をひやかそうと、かけよってきたハルヒでしたが、ようすがおかしい事に気がつきました。 二人とも、返事どころかピクリとも動こうとしないのです。 ハルヒは寝そべっている二人のようすをよく見て、手にしていたくん章を落としてしまいました。 「みくるちゃん?古泉くん?」 あわててかけよったハルヒは、みくるちゃんの体をゆすりました。 でも、何の反応もありません。 同じように古泉くんの体もゆすってみましたが、みくるちゃんと同じように、身動き一つしないのです。 「ちょっと二人とも、冗談でしょう?!」 ハルヒはあわててみくるちゃんのうでをつかみ、脈をとりました。 でも、なにも感じられません。 今度は胸に耳をおしつけてみました。 マシュマロのようにやわらかい胸からは、服ごしからでもまだ、あたたかい温もりは感じられるのですが、心臓が動いている音がしないのです。 そしてそれは、古泉くんも同じでした。 そうです。異次元大魔王をやっつけるためにハルヒにわたした力は、本当に残っていた力の全てだったのです。 そして力を出しつくしたその直後に、みくるちゃんも古泉くんも、こと切れてしまっていたのです。 「いやぁぁ!」 ハルヒの悲鳴が、あたりにひびきました。 ハルヒは必死になって、二人に心臓マッサージをほどこします。 けれども二人は息をふきかえすどころか、体がどんどんつめたくなっていくばかりです。 その時です。ハルヒの前に人影がさしました。 思わずハルヒが見上げると、そこに立っていたのはユッキーでした。 「ユッキー、よかった。無事だったのね!わたしといっしょに、みくるちゃんと古泉くんに、心臓マッサージをするのよ!」 けれども、静かにユッキーは首を横にふりました。 「もう手おくれ。この二人にも、私にも、残されている時間はない」 「ユ、ユッキー?何を言っているの?」 ぼうぜんとおどろいているハルヒに、ユッキーは静かに続けます。 「でも、今ならまだ間に合う。だから、あの人のところに行ってあげて、涼宮ハルヒ」 それを言いおわると、ユッキーはハルヒに人さし指をむけて、何か信号のようなものを頭の中に送ってきました。 そしてその直後、ユッキーは光のこなつぶになって、ゆっくりとふきながされるように消えてしまったのです。 「ユッキー?ユッキー?!ユッキー!」 ハルヒはぶんぶんと手をふり回して消えていくユッキーをつかまえようとしました。 けれども、ユッキーは影さえのこさずに消えてしまったのでした。 たてつづけにおこる、わけのわからないできないできごとで、ハルヒの頭の中は、ぐつぐつとにえたぎるスープのようになってしまいました。 けれども、ユッキーが最後に伝えた言葉は、ぐさりと胸につきささっています。 その時、ハルヒははっとしました。ユッキーが伝えたかった言葉の意味がわかってしまったのです。 ハルヒは必死になって来た道をかけ上がっていきました。 「キョン!ちょっと返事しなさい!キョン!」 ぜいぜいと息をつきながら丘の上にあがると、先ほどと同じような様子で、キョンは岩にもたれかかっていました。 「バカキョン!ちゃんと返事しなさいって言っているでしょう!」 その時、ハルヒはキョンのまわりに、不自然な水たまりができている事に気がつきました。 ついさっきまで、そんなものはどこにもありませんでしたし、雨がふったあともないのに。 「キョン?!キョン!」 水たまりを無視してあわてて駆けよると、パシャパシャと足元ではねたしぶきが体にかかります。 するとハルヒの着ていたまっ白な超勇者のバトルドレスに、まっ赤なはん点もようがえがかれてしまいした。 しずんでいく、まっ赤な夕陽にてらされて、水が赤い色になったのではありません。 それはまちがいなく、キョンの体からながれ出た血でした。 キズ口は右足のふとももの辺りから。 ハルヒをかばって異次元大魔王の攻撃をうけたとき、右の太ももの太い血管をヤリでつらぬかれていたのです。 「バカキョン!何やっているのよ!」 ハルヒはスカートのすそをやぶり取ると、キョンのキズ口をしばります。 けれども、ながれ出てしまった血はあまりにも多く、すでにキョンの体の温もりはほとんど失われてしまっていました。 キョンはハルヒがもどってきた事がようやくわかったようでしたが、そのひとみはぼんやりしてさまよっており、もう何物も見ていないようでした。 キズ口をきつくしばりあげ、必死にキョンの体をゆするハルヒ。 目から涙がぼろぼろとながれ落ち、体もガタガタとふるえています。 そんなハルヒに、キョンは苦しそうにのどを動かしながら、かろうじて一言を、しぼりだすようにつぶやきました。 「ハルヒ……、すまねぇ」 必死にキョンをおこそうとよびかけるハルヒでしたが、それはまったくむだでした。 泣きじゃくるハルヒの目の前で、キョンのまぶたはゆっくりととじられてしまい、か細くあえいでいたのどは、とうとうその動きをとめてしまいました。 一般市民の代表で、SOS団の雑用係のキョンは、その大切なつとめを終えて、ハルヒのうでの中で息を引きとったのです。 「いやあぁぁ―――!」 ハルヒの痛々しいさけび声が、血のようにまっ赤な夕陽にてらされた、だれもいない丘の上にすいこまれていきました。 ハルヒは、SOS団のみんなの死を受け入れることができませんでした。 これはなにかのまちがいだと、かたく信じ、みんなを元にもどそうとしました。 何といっても、ハルヒの力は無限です。かなわない願いなんてあるはずがありません。 いままで何度も、バッドエンドをむかえてしまった物語をハッピーエンドに書きかえてきたように、ハルヒはその力をおしみなく使います。 まばゆく、あたたかい光が世界中にあふれ、さびしい丘はここちよい春のにおいがたちこめる、花いっぱいの場所に変わりました。 キズだらけになって、ボロボロだったみんなも、よごれ一つないきれいな服と、どこにもケガのあとがない、健康な体にもどりました。 「さあ、みんなおきて。また、ぼうけんの続きをしましょう!」 でも、だれも返事をしてくれません。 たしかに、目の前に寝ころんでいるみくるちゃんも、ユッキーも、古泉くんも、そしてキョンも、みんな体は元どおりになっています。 でも、どんなにゆすってみても、耳元でさけんでみても、頭から水をかけてみても、だれも目をさますことはありませんでした。 「みんなひどい!そうやって活動をストライキしようなんて虫がよすぎるわよ!」 怒ったハルヒは、ずぶぬれになって寝ころがっていた、キョンのほおをいきおいよくはたきます。 けれども、それでもキョンは目をさまそうとしません。 ハルヒはおそるおそる、キョンの胸に耳を当ててみました。 そして、キョンの胸から何の音も聞こえてこないことに気がつくと、大きな悲鳴をあげて、もう一度世界を光につつんでしまいました。 ■シーン4「ひとりぼっちにしないで」 それからハルヒは、何度も何度もみんなをめざめさせようとしました。 みんなが好きそうな世界を用意したりもしましたし、見ただけでとろけてしまいそうなくらいおいしそうな料理を、うでによりをかけて用意したりもしました。 ほかにも時間をまきもどしてみたりもしましたし、とにかく思いつく全てのことをためして、ハルヒはみんなを起こそうとがんばりました。 でも、どんなことをしても、どれだけハルヒががんばってみても、みんなが目をさますことはありませんでした。 それでもハルヒはあきらめずに、みんなを起こそうとがんばりつづけたのでした。 ハルヒはほおにつめたい光を感じて、まぶたをあけました。まわりは墨でぬりつぶしたようにまっ暗です。 小高い丘の上、ひゅうひゅうとおだやかな風の音がきこえてきます。 ここがどこであるか、一瞬、ハルヒにもわかりませんでした。 SOS団のみんなといっしょに学校をとびだして、数えきれないくらいドキドキするような大冒険や、夢のように楽しい時間をすごして、最後に悪者をみんなでやっつけて……。 それが終わったあと、どのくらい時間がたったのでしょう。 気がつくとハルヒはここにいました。 まわりには草木もなく、ぽつり、ぽつりとくちてしまった建物のあとがのこっているだけの、つめたい月の光にてらされた、さびしい丘の上です。 ハルヒは歯をくいしばり、おきあがると、かたわらの少年をだきおこしました。 キョンのなきがらです。 何度も、何度も、もう数えきれないくらいハルヒは、みんなをおこそうとがんばりました。 でも、どれだけみんなの体を健康にしてあげても、それはたましいの入っていないぬけがらのままでした。 そして、ぬけがらは、あっという間に、なきがらになってしまいます。 どんなにがんばっても、みんなはなきがらのまま、目をさまそうとはしません。 それでもハルヒは、SOS団のみんなの、一番大好きなキョンの死を、受けとめられずにいました。 キョンはまだ生きていて、いじわるく眠っているだけだと、そう信じているのです。心から。 「こんなにさむいんだから、おきなさいよキョン。こんなところで、いつまで寝ているつもりなのよ。本当にカゼひいちゃうわよ」 返事をしないキョンに話しかけ、たちあがろうとしてよろけて、たおれてしまいました。 一瞬、気を失ってしまいましたが、何とか目をあけます。 空を見あげると、ふりそそぐような満天の星がかがやき、月がきれいにまるく見えました。 ハルヒがみんなでいっしょに見上げるために、星をいっぱいあつめて作った、だれもみたこともないくらいロマンチックな星空です。 ハルヒは寝ころんだまま、キョンにだきよりました。 「キョン見て。とっても星がきれいよ」 ハルヒが話しかけても、キョンはまぶたをとじたままです。 キョンのつめたくかたい体をだきしめながら、ハルヒはふるえていました。歯の根があわず、がちがちと鳴ります。 しかし、しばらくそうしていても、いっこうにキョンの体にぬくもりはもどってきません。 ハルヒのほおに涙が伝い落ちました。 「返事をしてよ。キョン!」 ハルヒは大声でさけびました。 こらえきれなくなったハルヒは、思わずキョンの体にのりかかって、首に両手をかけてしまいます。 けれども、手で直にふれたキョンの体からは、呼吸も、脈も感じられません。 それどころかキョンの体は、ハルヒの手の方がこってしまいそうになるくらい、つめたく、かたくなっていました。 「キョン!みくるちゃんも古泉くんもユッキーも死んじゃったのに、どうして、わたしをひとりぼっちにするのよ!目をあけて―――!」 ハルヒは泣さけびました。 「みくるちゃん、古泉くん、ユッキー!キョンをめざめさせて。わたしを助けて。ひとりぼっちにしないで」 声をしぼりだし、夜空にむかってさけびつづけました。しかし、もちろん返事はありません。 「みくるちゃん、古泉くん……」 ハルヒはあらためてみくるちゃんと古泉くんの最後のすがたを思いだしてつぶやきました。もう、涙もかれはてました。 「ユッキー……」 光のつぶになって消えてしまったユッキーのことを思いだすたび、ふかい穴をのぞくような気持ちにおそわれます。 そのときでした。ユッキーが消えていく前にもらった最後の信号が、はっきりと頭の中に光景になって見えてきたのです。 ハルヒが見た光景。それは、自分以外の四人が話しあっているところでした。そしてそれは、ハルヒにとって、とても信じられないものでした。 「もう、だめです。ぼくはこれ以上たえられない……」 泣きくずれ、うずくまってふるえていたのは、いつもクールな表情を変えない古泉くんでした。 みくるちゃんは、いっしょに半べそになって、背中からだき支えながら、けんめいに小泉くんをはげましています。 「これ以上の……、ニンムのケイゾクハ、困難と判断する……。このインターフェイスはともかく、ワタシの能力はもう、ゲンカイ」 ユッキーはもっと信じられないことになっていました。 声はこわれたラジオのスピーカーのように割れてしまい、体のあちこちから、パチパチと放電の火花をちらせながら、映りの悪いアナログテレビのように、体が何まいにもわかれてブレてしまっていたのです。 「みんな、まだだ!まだこらえてくれ!」 そんな三人に、必死によびかけていたのはキョンでした。 「たしかに、オレたちは体は大丈夫でも、心はもう限界だ」 そうです。ハルヒは楽しかったことの、特に楽しかったことだけをおぼえていましたが、細かいことは、きれいにさっぱりわすれていしまっていました。 でも、ほかのみんなはちがっていたのです。 みんなはハルヒから、そこなしの元気を受けとって、つかれ知らずの体になっていました。 だからハルヒに、気がとおくなるような、とてつもなくながい時間をつれまわされても、なんとかついていくことができたのです。 でも、体は大丈夫でも、心はちがっていました。みんなはそのながい時間の記憶をもったまま、ハルヒの遊びについていっていたのです。 そのつらさは人間はもとより、宇宙人のインターフェイスとしてつくられていた、ユッキーの限界さえこえるものだったのです。 そのつらさにとうとうたえられなくなって、みくるちゃんは泣き出し、古泉くんも、ユッキーも、とうとうこわれてしまったのです。 ですが、それでもキョンだけはがんばっていました。 「これだけハルヒが好きかってに世界をいじくってしまったんだ。ハルヒにオレたちがつらい顔を見せて、きげんを悪くしてしまったら、本当にとりかえしがつかないことになっちまう」 そのキョンの言葉を、だまって三人は聞いていました。 「だから、本当にハルヒがあきてしまうまで、オレたちはいっしょに笑顔で遊んでやらなきゃならないんだ」 それを聞くと、みくるちゃんは、もっとポロポロと涙をこぼしてしまいました。 「それに……、もしかしたらハルヒは、これからずっと永遠に、こんな力を持ったまま生きていかなきゃならないのかもしれない。何となく、そんな気がするんだ」 「たしかに、その可能性は高いと思います」 ようやく、古泉くんも顔をあげました。 「長門はどう思う?朝比奈さんも、どう思いますか?」 ユッキーは返答できないと無言のままでした。みくるちゃんはおずおずとうなずきます。 「だったらオレたちは、あいつを一人ぼっちにさせないようにできるだけいっしょに遊んでやらなきゃならない。あいつをひとりぼっちにしてしまったらどんなことになるのか、考えたくもない」 その言葉を聞いて、三人はキョンのところに集まりました。 「了解した」 「やりましょう。われわれ、SOS団の全員の力がかれはてるまで」 「みんなでいっしょに涼宮さんと遊びましょう!」 「よし、いくぞ!」 ハルヒがしらないところでおこっていた光景が目に、ハルヒが知らなかった、みんなの言葉が耳に焼きつきました。 みんな、むりにむりを重ねて、自分といっしょに遊んでくれていたのです。 そして体ではなく、心の、たましいの力を全て使いはたしてしまったせいで、みくるちゃんも、古泉くんも、ユッキーも、そしてキョンも、二度と目をさますことはないのだと、ハルヒはわかってしまったのでした。 「すまねえ、ハルヒ」 キョンが最後に口にした言葉が、胸のおくからわきあがり、ハルヒは胸をえぐりとられるような痛みにおそわれました。 どんな時でも、どんな場所でも、それが夢の中であったとしても、一度も自分を見すてなかったキョンが、そんな言葉を口にしてしまった事の重さ。 とても受けとめられるものではありません。 「いやぁ―――!」 ハルヒは髪の毛をぐしゃぐしゃにかきみだして泣きさけびながら、みんなにあやまりはじめました。 「みくるちゃん、もうお人形がわりにして遊んだりしません。古泉くん、お金をいっぱい使わせるようなおねがいごとばかりしてごめんなさい」 「ユッキー、文芸部の部室をかってに乗っ取ってしまってごめんなさい。お母さん、お父さん、ほかのみんなにも、ひどいことをいっぱいしてごめんなさい」 もう、いなくなってしまった三人に、今までめいわくをかけてきた人たちに、ハルヒは泣きながらあやまり続けました。 「ごめんね、キョン。今までむちゃくちゃなことや、めんどくさいことを全部おしつけて、いつもこまらせて……。ゆるしてなんて言いません。でも、おねがいだから目をさまして。わたしをひとりにしないで!」 どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。 何がいけなかったのでしょうか。 なんでも自分の思うとおりになればいいと、願ってしまったのがいけなかったのでしょうか。 やがて、ながす涙も、さけぶ力もなくなったハルヒは、キョンのつめたくかたい体にすがりつきました。 キョンの体に、自分の体温が全てすい取られていくようでしたが、それでキョンがおきてくれるのならそれでもかまいません。 もしだめなら、このまま自分も凍えて死んでしまってもいいんだと、ハルヒはそのまま、ふかい、ふかい、ねむりの底にしずんでいきました。 ■シーン5「そして、いつものあの場所に」 「……なさい、ごめんなさい。ごめんなさい」 おえつをもらしてうつぶせに机にふせていると、背中のむこうから、小さくとおく、チャイムの音がきこえてきました。思わずハルヒは顔をあげます。 「ふえ?」 ビクリとしておきあがると、ハルヒの目に、電源が落ちてまっ黒になっていた、パソコンの画面が目にとびこみます。 あと少しでしずみきってしまう夕陽にてらされて、まっ黒な画面には、ハルヒの顔がうつっていました。 見れば顔は涙でぐしゃぐしゃ。まくらにしていたうでも、ぐしょぐしょにぬれていました。 「ゆ、夢だったの?!」 ハンカチをとりだして顔をふこうとしたとき、肩にかけられていた男ものの上着が、すとんとすべり落ちました。 だれかがそのままではカゼをひいてしまうだろうと心配して、かけてくれていたのです。 そのだれかは、すぐわかりました。キョンです。 いつものようにうつぶせではなく、パイプいすに、うとうとともたれかかりながら、キョンは気持ちよさそうにねていました。 もちろんいつものシャツに、ゆるくといたネクタイの姿で。上着がだれのものであるのか、ほかに考える必要はありませんでした。 部室を見わたしましたが、ほかにだれかがのこっている様子もありません。 みくるちゃんも、古泉くんも、ユッキーも、みんなほかに用事があって帰ってしまったのでしょう。 そしてキョンは、ハルヒを起こすのもかわいそうだし、一人にしておくのもあんまりだからと、のこって、起きるのをまってくれていたのにちがいありません。 「キョン……」 さっきまで見ていた夢のことが、ありありと目にうかんできます。いえ、もしかしたら、今もまだあの夢の中なのかもしれません。 キョンのおだやかな寝顔を見ていると、ハルヒの心に太陽が、いえ、銀河がうまれたみたいな気持ちがわきあがってきました。このまま思い切りだきしめてしまいたい気持ちで心も体もいっぱいです。 でも、そのときでした。 「……、かわいいぞ」 そのキョンの寝言をきいたとき、ハルヒはカチンと固まってしまいました。キョンの口から、今まできいたことのない女の人の名前がとびだしてきたからです。 じつは、その名前はキョンの妹ちゃんの名前で、キョンは妹ちゃんが七五三のときのことを思い出していただけだったのですが、ハルヒにはそんなことはわかりません。 ハルヒの心に、めらめらと怒りのほのおが、もえあがってきました。 せっかくまっていてくれたのなら、きもちよさそうに寝ているのを、じゃましないでまっている気づかいをしてくれるのなら、どうして自分が悪夢でうなされていたのに、おこしてくれなかったのだろうと。 こうなると、愛しさあまって憎さ百万、いえ一億倍です。 ハルヒはかけてもらっていた上着を、きれいにたたんで机の上におくと、あどけない寝顔をしているキョンの後ろに立ちました。 そして油断どころか無防備そのものの、キョンの背後から、するどいチョークスリーパーを、万力のような力で首すじにガッチリ決めたのです。 「オトメの痛み、思い知れ!」 悲鳴にならない悲鳴をあげて、キョンはくずれ落ちてしまいました。 ハルヒは、ぐしぐしとそでで目元をぬぐうと、泣きはらした顔を見られないよう足早に、部室からたちさってしまいました。 かわいそうなのはキョンです。 自分一人で勝手にふてねしてしまったからといって、このままカゼをひいたらかわいそうだと、 せっかく上着までかけてあげて、おきるまでまってあげていたのに、この仕打ちです。 むりやり夢の世界からひきずりおろされ、げほげほとむせこんで、息もたえだえになってしまったキョン。 苦しさのあまり、部室のゆかの上で、いも虫のように転がり続けていました。 「まったく、下っぱなんだから、おきて、まっておかないキョンが悪いのよ!」 うつむいたまま玄関まで走りぬけ、靴をはきかえながらハルヒはつぶやいていました。 そして校門をはしりさりながら、キョンの首すじに、技を決めた感かくを思い出していました。 それはやわらかくてあたたかく、脈も息もあって、ここちよいにおいのする生きている人の体でした。 「そうよ。やっぱり、あんなのは夢に決まっているわ!」 でも、夢の中のはずの、みんなの体がつめたくてかたかった感じを、はっきりと体はおぼえていました。 「ただいま!」 いつもの言葉づかいで、家のドアを乱ぼうにあけると、ハルヒはお母さんを無視して自分の部屋にまっすぐむかい、制服もきがえずに、ベッドに顔をうずめてしまいました。 (あんなところで寝ちゃったから、あんなひどい夢をみちゃったのよ!ちゃんとしたところで、ちゃんと寝れば、ちゃんといい夢を見られるんだから!) こうしてハルヒは、自分の家に帰っても、学校でのつかれから、そのまま寝てしまいました。やっぱりあれは悪夢だと決めつけて。 でも、あれは本当に、ただの夢だったのでしょうか? 「がはっ!ごほっ!っつ、ハルヒのやつ……、なんてなんてことしやがる」 ようやく息をととのえたキョンは、ようやく現実の世界に帰ってきました。すると、キョンの携帯電話に古泉くんから連絡が入ってきました。 「古泉、てめえ、よくもオレだけおきざりにしやがったな」 どうやら古泉くんたちは、キョンにだまったまま、三人で部室からはなれたようでした。近くのファミリーレストランからかけてきたようです。 「どうした?また閉鎖空間が発生したって言うんじゃないだろうな?それともほかになにかおきたのか?!」 「いえいえ。涼宮さんと、どう進展されたのか気になったので」 「進展もなにも、こっちは寝てただけだったのに、あやうくしめ殺されるところだったんだぞ!」 キョンはかんかんに怒っていましたが、古泉くんはゆるやかにそれをうけながします。 どうやら三人によると、この日は閉鎖空間の発生が少しあったものの、時間をまきもどしたあとも、情報操作がおきたようすもなかったようです。 もう、これ以上のこっていても仕方がないと、キョンは部室の戸じまりをして帰る事にしました。 まどのカギとパソコンの電源が落ちているのかをチェックして……。 「ん?なんだこりゃ」 キョンはハルヒのすわっていた足元に、なにかが落ちているのに気がつきました。 それは、ずいぶんと古ぼけた、大きな金ぞくの円ばんでした。よくみると、おもちゃのくん章のようにも見えますが、キョンにはそれがなんだかわかりません。 「またハルヒのやつ、へんなものもってきてたんだな」 ハルヒがもってきたものでしょうから、それがなんなのかキョンにはわかりません。 しかし、正体がわからない以上、すてるわけにもいきません。ですので小物入れの中に、そのくん章をかたづけてしまいました。 「まあ、こいつがなんなのか、明日にでもきいてみるか」 ですがキョンは、ハルヒにかけられたチョークスリーパーのことで頭がいっぱいになっていて、そのくん章のことは、きれいさっぱりとわすれてしまったのでした。 ☆おわり☆
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あの閉鎖空間から帰還して数日たったある日のこと・・・ キョン「ん、なんかとなりが騒がしいな」 授業中に突然、なにかを叩きつけたような音がとなりから響いてきた。 ハルヒ「ねえキョン!なんか面白そうなことが起きてるんじゃない?」 後ろからハルヒがオレに耳打ちしてくる。 キョン「スズメバチかなんかが教室に入ってきてパニックになってるだけじゃねえか?」 ハルヒ「アンタってホント夢がないのね」 ハルヒはそういうと視線を窓の外に移した。つられてオレもなにげなく外を見ると・・・!? キョン「なんだありゃ!?」 オレは自分の目を疑った。なんと、ガタイのいい白人がとなりのクラスの窓から 飛び降りていったのだ。一体なにが起きたんだ・・・!? ハルヒ「ちょっとキョン!今の見た!?」 キョン「・・・お前も見たのか?」 ハルヒ「今飛び降りてったの、たぶん外人よね!?なにやら事件のニオイがするわ! キョン、ちょっと一緒にきなさい!」 キョン「一緒にってお前、今授業中・・」 ハルヒ「先生!キョンが気分悪いっていってるから保健室につれていきます!」 ハルヒが一方的に言い放つと、オレの手を引きずって廊下に出た。 大学を出たばかりの英語教師は問題児の扱いに免疫がないらしく、 黙ってうなずくだけであった。 まあ、たとえベテラン教師だとしてもハルヒを持て余すだろうが。 オレたちが廊下に出ると、同時に一人の男子学生がとなりのクラスから出てきた。 ハルヒ「ん?彼はたしか4組の・・・範馬刃牙君、だったっけ?」 エピローグ(´・ω・`) いろいろあって、SOS団は大幅に団員が増えた。 まずは4組のバキだ。彼の本性は地下格闘技トーナメントのチャンプということだが、 ハルヒにとってはただの気弱な高校生らしい。 ちょっと前にバキが不良にからまれているところをハルヒが助けたことがきっかけで、 彼はSOS団員となった。 彼は不思議な力を使えるわけではないが、なんせ地上最強の高校生である。 この前閉鎖空間が大量発生したときは、古泉の頼みで神人退治に駆り出されていた。 しまいには彼の父親まで出てきて素手で神人を殴り殺したらしいが、そのことはハルヒには秘密だ。 次に1組の烈海王だ。長門のクラスメートである。 彼もただの高校生ではなく、その肩書きは中国拳法界最高位である海王の名前の継承者である。 駅前のデパートの本屋で買い物をしているときに長門と知り合ったらしい。 その直後暴漢に襲われた彼だが、薬で眠らされた彼を、長門がなんと 一晩中守っていたらしい。そのことを恩に感じた彼は川の上を走り回った挙句、 SOS団入りすることになった。
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涼宮ハルヒの呪縛-MEGASSA_MIMIKAKI+冥&天蓋こんにゃく百合カレーmix-Relinquished 掃除で遅れた俺は、既に全員揃っているであろう部室へ向かっていた。 扉を開けるとハルヒが怒鳴る。 「遅いわよミョン! …あれ?」 ? 「ちょっとミョン! …あああれ?」 部室の空気が北極並に凍りついた。ハルヒのエターナル(以下略)が炸裂した! 俺はミョンじゃないんだが。どうした、滑舌が悪くなったか? 「よく分からないけど、ミョンって言ってもミョンになっちゃ…ああーーーーーっ!!」 ハルヒはぐしゃぐしゃ髪を掻きむしり悶絶している。意味が分かりません。 「つまり、『キョ』の発音が『ミョ』になっちまうということか?」 「そうなのよ! なんとかしなさいよ!」 「じゃあ試してみるか。Repeat after me. 教科書」 「教科書」 「京都」 「京都」 普通の単語には影響ないのか。 「巨乳」 「……」ガシッボカッ 痛い痛い、無言で殴るな! 「このエロミョン!!」 「「……」」 長門「……変態」 駄目か。 長門「無視しないで…」 「駄目みたいね。ああもうなんとかしなさいよ!」 そう言われても、俺に何が出来る…。 長門(涙目)「無視しないで…お願い…」 「あああああああああああぁぁぁぁあぁぁぁあぁあこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅ!」 混乱したハルヒは髪を掻き回しながら廊下へと疾走していった。 「馬鹿! 廊下へ飛び出すな! もしかしてもしなくてもナイスタイミングでパイプ椅子を運ぶ会長が…!」 バッシャーンガラガラガラガラ 「ハルヒー!」 「きゅーん…」 「あーあ言わんこっちゃない」 「す、涼宮さぁん! あ、あの、私、保健室に連れていきます!」タタタ… 因みに共に気絶した会長は廊下放置されたが、後にボンテージ姿の喜緑さんに回収されていった。何するつもりなんだろうあの人…。 「古泉一樹…、私が勇気を振り絞ってツッコミを放ったのに無視された…」グスン 「それは可哀想に」ナデナデ 「ううっ…」ポロポロ 「僕も空気ですから…」 「古泉一樹…泣かないで」 「長門さん…」 しばらくして朝比奈さんが戻って来た。頭を打ったのか、ハルヒの頭上に星が4つ程「ピヨピヨ」という効果音を伴いながら輪になって回転していたが命に別状はないとのこと。 「あ、あの、ミョン君…ふぇぇぇぇぇ?」 朝比奈さんもですか…。 「ごめんなさいミョンく…」 「……」 「…ぅぅぅ…」 伝染している、まさかハルヒの仕業か…? 「ずみまぜん…」 な、泣かないで下さい。ときに古泉に抱かれている長門よ、どうなってんだこれ。 「(重要な出番ktkr!!)涼宮ハルヒは自分だけが『ミョン』と呼んでしまうことが恥ずかしく、それならばいっそ皆が『ミョン』と呼んでしまうようなればいいという改変を行なった模様」 なんで元に戻るように改変しなかったんだよ…。 つまり、 「今日から貴方の名前はミョン」 「マジか」 「マジ(ざまあwwwwwwwwww)」 「勘弁してくれよ」 「無駄(メシウマwwwwwwwww)」 「はぁ…」 (はっ、いけないいけない。私の愛しのキョン様が…) 「ふ、ふっかーつ!」ピヨピヨ 威勢良く扉を開けて保健室から戻って来たたハルヒであったが、ふらふらしているし、何やら効果音が聞こえる。 「大丈夫かハルヒ、星が回ってるぞ」 「だだだだだだだだ大丈夫!」ピヨピヨ 長門(涼宮ハルヒは思考力が低下している、キョン様に接近するチャンス!) 「ふらふらじゃないか、家まで送ってやるよ」 「え? あ、う、うん、ありがと!」ピヨピヨ 「という訳だから先に帰るよ、じゃあな」 バタン 長門(涙目)「うぅっ……」 古泉「……」 「彼は無意識に人を傷つける…間違い無く女性の敵…」ポロポロ 「そう言われましても……」 意気揚々と学校へ向かう妹「翌日っ!」 なのね「阪中」 妹「逆になってるよー」 あれ? どうなってるの?「阪中」 妹「…」 教室へ向かう。ハルヒはまだ来ていないようだ。重たい足取りで自分の席へ。 「ハァ、参ったなぁ。今日から俺は『ミョン』なんだよな…。なんだよ『ミョン』って、力の抜ける擬音だなぁ、…みょん」 「ミョン君、落ち込まないの」 「朝倉…」 朝倉は長門からの連絡を受けたのか、俺が『ミョン』になったことに驚いていない。 「いくら抵抗しても無駄だからね。仕方ないわよ、ミョン君」 「ああ、相手がハルヒじゃ仕方あるまい…だが俺を『ミョン』と呼ぶ奴は許さん!」ガバッ 「え、ちょ…」 俺は怒りに任せて朝倉を机に押さえつけ、「アレ」を取り出した。 「痛いのが嫌なら大人しくしてろよお嬢ちゃん…」 「…ん、うう…///」 just a moment... 「はぁ……」 「いけないコだ…、俺をここまで本気にさせるとはな」 満足感と達成感に溢れた俺の目の前に、呆れた様子の谷口と国木田が現れた。 「何でお前が朝倉の耳掃除してんだ? (う、羨ましくなんかない! 決してない!)」 悪いか? だが俺の綿棒の手さばきは半端無いぞ? 既に俺の手に「墜ちた」朝倉はすやすやと穏やかな寝息を立てて眠っている。 「しかも綿棒って、耳かきじゃないのかよ」 綿棒なめるなよ。 「なぁミョン…あれ?」 当然のことながら、谷口もハルヒの呪縛に囚われているのである。 「何故だぁぁぁぁぁ! ミョンがミョンになっちまう!」 谷口が頭を抱えている。 「意味が分からないよ谷口君」 ここでようやく国木田が喋った。 こいつがハルヒと同じことを言うのが忌々しく感じられたので、立ち上がると悶絶している谷口に接近し、指先に渾身の力を込めて脇腹を突いた。 「ぅぼぁ」 倒れて床を転がる谷口。俺はそれを見届けて席に座る。 「容赦ないね…」 「俺だってこういう時もあるさ」 「でも、谷口君が悶える姿って本当に愉快だよね」 「国木田!?」 黒い…、国木田の笑顔が、黒い。 「ついでに僕も追撃しちゃお。『冥闇符:チャックアイ=テルーゾ』」 ズガァァァァァァァァァァァァァン 謎の呪文によって放たれた紫炎は龍の如く谷口へと突っ込んだ! 「国木田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(断末魔)」 ピチューン 某魔女「弾幕はパワーだ…」 「国木田、お前の方が容赦無さすぎる」 「ん? そうかなぁ」 「そうかなって…」 「先に謝るよ。ごめん、どうやら僕も『ミョン』としか言えないみたいなんだ」 国木田は申し訳なさそうな表情をしている。この正直者め。 「はははそうかそうかミョンか…ならば貴様も生かしてはおけん!」グサッ 「な…んで…」ドサッ 「まさかこのナイフ(提供朝倉)を汚す時が来るとはな…残念だよ。ラ=ヨダソウ=スティアーナ…」 だが谷口と国木田はまだ残機が残っていたので、3分後には何事も無かったかのように復活した。 チャイムが鳴ると同時にハルヒがやって来た、珍しく遅刻寸前だった。 「おはよ」 「おう。ケガは大丈夫なのか?」 「勿論よ。なーんかミョンって違和感あるわね…」 「ミョンなぁ…あんまりミョンミョン言われるとゲシュタルト崩壊を起こしそうだ」 岡部「朝倉ー、起きろー」 朝倉がまだ眠っている。残念だが、俺の超絶テクニックに墜ちると1時間はぐっすりなんだぜ。 山根(あの男…何をした…!) 岡部「そういえばミョン…ん、ミョン?」 「おんどぅるあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいとこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」 「ミョン!?」 なぁハルヒ、言い間違えるのも恥ずかしいが、言い間違えられるのも恥ずかしいんだぜ…。 「rrrrrrrrrrrrrrr!!!(裏声)」 遂に耐えきれなくなった俺はホームルーム最中の教室を飛び出した。 手ぶらで来た為に行くあてもなく、自分でもどこか分からない程に徘徊していた。 石を蹴って歩く。あそこの電柱まで行ったら100点…側溝に落ちた。ゲームオーバー。 「くそぅ…どいつもこいつもミョンミョン言いやがって…」 カラスが「アホー」と鳴く中、俺は夕焼けを眺めながらとぼとぼ歩いていた。 ふとポケットから綿棒のケースを取り出す。 「綿棒の残りが少ないな…補充しないと」 綿棒「なんで耳掃除を究めようと思ったんだ?」 「なんかこう…至福の時じゃないか」 綿棒「確かにな。だがいきなり襲うのはどうかと思うぞ、誤解を招く」 「耳掃除を耳かきで簡単に済ませようとする人を見ると勿体無いと思ってしまうんだ」 (見たことあるのか…) 「そういう人達に耳掃除の素晴らしさを伝えるには、少々力ずくになっても仕方ない」 (そうか…?) カオス擬人化保守。じゃないよ、嘘だよ、全然違うよ。 「ところで綿棒よ」 綿棒「ん?」 「お前も『ミョン』としか呼べないのか?」 綿棒「どれどれ…ミョ、ミョン、ミョン…」 「……」 綿棒「……ミョン」 「そうか」 綿棒「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……」 「だが綿棒は俺の人生だからな、許す」 綿棒「ほっ…」 そうして綿棒ケースをポケットに戻したその時だった。 救いの手がさしのべられた。 「どうしたんだいキョン、えらく落ち込んでいるじゃないか」 佐々木がいた。 「佐々木…お前、今…!」 「キョン? 何かあったのかい?」 当の本人は不思議そうな表情だが、俺にとってはまさに救世主(メシア)! 彼女の背後にある夕日はまさに後光! 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」ガシッ 「うわっ、何だい、いきなり路上で抱きつくなんて…苦しいじゃないか…///」 「佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! 有り難う佐々木! お前は…お前はこんな時でも俺の味方なんだな! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ佐々木ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」 「どうして泣いているんだい…。ま、先ずは落ち着いてくれないかな…///」 電柱の影から見守る九曜「───計画──通り──」 画面の向こうのみくる「今私のことを空気って言った奴、体育館裏に顔貸しな」 顔だけの谷口「はい」 みくる「ピギィィィィィィィィィ!! 本当に顔を貸してきたでしゅ…! ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん怖いよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」 鶴屋侍「現れたな妖怪カヲダケ! 今日こそあっしが成敗してくれるっさ!」 空中を漂うカヲダケ「ウケケケケケケ…朝比奈たんの(゜ρ゜)ハァハァ…」 鶴屋侍「喰らうが良いっさ、月夜の静寂をも乱さぬ斬撃…。鶴屋流剣術奥義・蒼月静風斬!!」ザシュッ カヲダケ「ギャアアアアアアアアアアアア!!」 鶴屋侍「妖怪、討ち取ったりぃ!!」 カヲダケ「残像だ」 鶴屋侍「!? そんな…馬鹿なっ!」 カヲダケ「クケケケケケケケケケ…無駄無駄無駄ぁ!」 鶴屋侍「な、なんだって…あたいの奥義が…効かない…?」ガクッ カヲダケ「ほっほっほっ、キミの攻撃パターンは全て学習済みなのサ!」 鶴屋侍「くっ…」 みくる「つ、鶴屋さぁん…」 カヲダケ「ヒャッハー! 命が惜しけりゃその娘を…げふぅっ」 SP「………」 カヲダケ「な、何だこのごつい体格の人達…」 SP「………」 カヲダケ「いぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ドゴォォォォォォォォンバキガスドキャグルォメチャイヒャアルデヒドケトンナンプラァァァァァァ… 鶴屋さん「いやぁ…情けないねっ…結局護衛の助けを借りちゃったさ…」 みくる「でも…鶴屋がいなかったら、もう駄目かと思いました…」 鶴屋さん「みくる…」 みくる「鶴屋さん…」 「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」」 人々を震撼させた妖怪カヲダケの恐怖から解放された二人は抱き合い、大きな声で泣きました。そして二人が流した涙は雨となって乾いた大地を潤し、やがてそれが全ての生命の源である母なる海となり(以下略) 終われ 古泉「だがそう簡単には終わらないのだよアンダーソン君」 「おい古泉一樹」 「ただ言ってみたかっただけですよ長門さん…」 「貴方の言動は時折理解出来ない。まだ話は続く、『ミョン』問題は解決していないから」 俺は佐々木の部屋にいた。 そして愛を育んでいた。 「佐々木…」 「キョン…」 ※注 耳掃除です 屋根裏の九曜「──全て──順調───」 天蓋「くーちゃん、ちょっといらっしゃい」 九曜「───!!!」 天蓋「さっきからなにしてるのかなー?」 九曜「──────」フルフル 天蓋「おかーさん、みーんな知ってるんだからねー…」ゴゴゴゴゴゴ 九曜「───ぁ─ぁぁ───」ガクガクブルブル 穏健派「天蓋さんが何やら騒がしいですね」 主流派「どうしたの?」 天蓋「聞いてよ! またくーちゃんがイタズラしちゃったのよ!」 急進派「あー、さっきからのてんやわんやの原因は天蓋さん家の娘さんだったのか…」 天蓋「言ったでしょ!? 情報操作でイタズラはしちゃいけないって!」 九曜「─────」 天蓋「くーちゃん!!」 九曜「──ごめん───なさい…─」グスン 佐々木の部屋で談話していた時だ。携帯に着信が、ハルヒからであった。 「キョン! 遂に治ったわよ!」 「おお! ホントだ! やっぱり馴染みのあるのじゃないとな」 「疲れたわよ、もうあの苦しみから解放されたからもう安心! ってことで、また明日! じゃね!」 電話を切ると、佐々木が寂しげな笑みを見せた。 「佐々木…」 「いいさ、キョンが元の生活に戻ることが出来るなら」 「だが…」 俺は真っ直ぐ佐々木を見つめた。 「な、何だい」 「まだもう片方が終わっていない、やらせてくれ」 「キョンは相変わらずみたいだね、仕方ないな…」 そして俺は佐々木をベッドに寝かせると、綿棒を取り出した。 長門「貴方のお陰で、出番が減った。責任をとって欲しい」バシッ 古泉「キモティー☆」 「しかし、あの時貴方が構ってくれたことは…嬉しい…」 「長門さん…」 「古泉一樹…」 (嗚呼ぷにぷにで滑らかな白い肌…それに長門さんは僕の理想とするょぅι゛ょ体型に近い…。やはりこれは触ってこそ分かる…。見た目以上の破壊力…!) 「ここここ古泉一樹…」 「はい…、なんでしょうかぁ…」 「あああ貴方の様子がおかしい…。しし心拍数が上昇している。ぃぃ言わば『興奮状態』…ななななななな何故…」 「どうして、震えて、いるんですか? おかしくなんか、ありませんよ、あはは」ガシッ 「いいい嫌…やややめて…はははは放して…」 新ジャンル「ロリコン古泉」 バアン! 「私の長門さんに何してるのよ!」 「朝倉涼子…」 「もう大丈夫よ長門さん」 「こ、これは…! 朝倉さんはょぅι゛ょ体型とは異なるタイプ、しかしスカートから覗く紅色に染まったムチムチ太股もまた威力抜群…!」 「ひ、ひひ非常事態…、ここここここ古泉一樹がかかかかか覚醒している…」ガタガタ 「うわぁ…」 「にににににににに逃げ…」ガタガタ 「下品ですが…不覚にもbokkiしてしまいました…」 「ひぃぃっ…」 「そうと決まれば朝倉さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 新ジャンル「変態ヒート古泉」 ズドォォォォォォォン 「だ、誰ですか! 僕のおにゃんにゃんタイムを邪魔するのは!」 「ミョン君(当時)に言われてね、古泉君が暴走する危険性があると」 「国木田君!!」 「な、何故気付いた…」 新ジャンル「冥王国木田」 「「「それはない」」」 「…やっぱり?」 九曜「──うぐっ───ひっく───」 喜緑「ほら、もう泣かないの、ね?」 「──お姉ちゃん───」 (涙で潤んだ目で私を見つめている…あぁ駄目よ私、理性を保って…)クラクラ 「───?」 (く、首を傾げないでぇぇぇぇ! もうらめぇぇぇぇ! お姉さんおかしくなっちゃうぅぅぅぅぅぅ!) 「──お姉ちゃん──どうしたの─?」 (あああああああああああっ…!)ビクンビクン 主流派「喜緑江美里が周防九曜に萌え死にしたそうだ」 穏健派「えみりぃぃぃぃぃん!」 天蓋「くーちゃんがまた一人癒しちゃったわね☆」 喜緑(く、悔しいっ! でも萌えちゃうっ!)ビクッビクッ 佐々木に別れを告げ、その後学校に鞄を取りに行ったので帰宅した頃にはすっかり夜になっておった。いやぁ今日は疲れた…。 「ただい…ふぉ!」 ハルヒ「キョーンキョンキョンキョーン♪ やっぱり『キョン』が一番よね!」 妹「ねー!」 「なんでハルヒがいるんだ、しかもパジャマ姿で!」 「泊めさせて貰うわよ!」 「ハルにゃんお泊まりー!」 俺は突然のことに困惑しながらも、笑みが溢れてしまった。今夜も俺のハイパー綿棒が炸裂するのか、大活躍だな。 月明かりが照らす部屋には俺とハルヒ、二人きりである。妹? 既にお休みさ、俺の超絶技巧でな。今日は俺の綿棒さばきで3人も幸せにしちまったぜ。 ハルヒは窓から見える星空を眺めていた。 「Beautiful...」 「Yeah.」 「Hey,KYON!! Let s go catching stars!」 流石団長様、今日も考えがぶっ飛んでます、絶好調です。 「How?」 「hmm...えーっと」 「『えーっと』なんて英語はないぞ、ハルヒの負けだな」 「うっさいわね…」 何故か知らんが「英語しか話せない」ゲームをしていたのである。途中、冗談半分にパンツの色を訊いたら「SHINE!!」という返事を頂いた。何で「輝け」なんだ? カヲダケの亡霊「ローマ字読みしてみろよ…」 ん? さっきの声は何だ? まぁいいか。 「そうだ、あたし達が行けないなら星を呼べばいいのよ!」 「まだその話題は続いてたのか、って星を呼ぶ?」 もしそうなるとしたら…星が接近してきて恒星の熱で地球どろどろで人類滅亡で地球温暖化もアルマゲドンもビックリの… 「待て待て待て待て待て待て待て待て」 「ダメ?」 そんな甘えたような声でもダメなものはダメ。 「じゃあ、隕石を手に入れればいいのよ!」 「星から離れてないか? ほい、反対側も」 ああそうさ、耳掃除の真っ最中だ。膝枕してんだぜ? 羨ましいだろ。 「じゃあ隕石を呼べばいいのよ!」 「だーかーらー」 カヲダケの亡霊「畜生ー! 羨ましくなんかNEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」 「はぁ…」 ハルヒが眠っている。そう、ハルヒも俺の耳掃除テクニックに墜ちたのだ。起こさないようにそっとベッドに寝かせる。また一人、幸せにしちまったぜ。 鶴屋侍は、苦戦していた。突如として現れたそいつに、手も足も出なかった。 「はぁ…はぁ…」 「貴方の剣術はなかなかのもの。しかし…」 ぼろぼろの鶴屋侍に対し、相手は呼吸すら乱れていない。 「速さが足りない!」 「も、もう一回いくっさ…!」 鶴屋侍が地面を蹴る。 「……」 「はあああああああああああ!!」 「残念でなりません、貴方ともあろう方がこの程度なんて」シュッ 「うっ……」 相手の攻撃をまともに喰らい、地面に倒れた。 「これが峰打ちじゃなかったら、今頃胴体が真っ二つですよ」 「く……」 峰打ちは実力が無い者への手加減、屈辱である。鶴屋侍は砂利を掴んだ。 「出直して来なさい」 そう言い残して立ち去ってゆく。 「待って下さい!」 「なんでしょうか」 「あ、貴方は…一体…」 彼女は振り返ると、微笑んで答えた。 森「ただのメイドですよ」 アクション時代劇、SAMURAI-CRANE カミングスーン… 「なぁハルヒ、何だこの予告編」 「次回の映画よ!」 「いつの間にこんなの撮影してたのか。やけにクオリティ高いなぁ」 「なんてったって今回は鶴屋さんの全面バックアップだからね! そうだ、アンタもミョンって名前で出しちゃおうかしら!」 妙「え、俺こんな名前なの?」 「そうよ! それで『ミョン』って読むの!」 妙「まてこら悪夢再燃させるな」 「結構しっくりくるわね…」 妙「おいおい、あの時言ってたことと違うじゃねぇか」 「あの時はあの時よ。うん、妙(ミョン)に決定!」 妙「うわあああああああああああああああああああああさしみこんにゃくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」 そう、悲劇は繰り返される。 エンドレス・ミョン