約 74,365 件
https://w.atwiki.jp/sw_takamori/pages/106.html
BACK INDEX NEXT 611 名前: 妖杜伝奇譚『‡』 ◆NN1orQGDus [sage] 投稿日: 2008/09/22(月) 22 45 27 ID aTaAF3kl 第2話 『路地裏の交錯』 ◆ 「変なのに付き合ったから遅くなったじゃんかー」 深都姫は頬を膨らませる。 折角倭斗と二人っきり――デートらしき物が出来たというのに、二人の闖入者のせいでグダグダになってしまったのでご機嫌ナナメなのだ。 「言うな。俺だって後悔してる」 倭斗は特殊な嗜好の人間が持つ特有の毒気に当てられた頭を振り、ある種の妄想を抱く輩は度し難い、と内心で呟く。 「お前は、あんな風になるなよ」 膨らんだままの深都姫の頬をつついた刹那、大気の鳴動を感じた。 魔の波動が大気を揺るがしたのだ。 それもこれ見よがしに誇示しているのか、隠そうとはしていない。否、隠そうとしていても隠し切れないのか。 深都姫もそれに気づいたのか、眉をひそめている。 「どうするの?」 「此処まで露骨だと……釣りだな。しかも釣り針が見えてやがる」 波動の先を手繰ると、そこは“彼女”を祓ったあの路地裏だ。 「するっとスルーする訳には……行かないよね」 「ああ。アレを放っておいたらまずいな」 倭斗は嘆息し、深都姫を見る。深都姫もまた、倭斗を見る。 二人の視線は絡み合い、お互いの意思を確認して頷いた。 二人は雑踏の人混みを縫うように駆け出す。行き交う人々は闇に紛れた悪の存在を知らずにいる。 倭斗はそれが気にくわないが、それも仕方のないことだとも思う。 人は自分の手の届かない場所については無関心なのだ。 自分は人よりも手が届く場所が広い。放っておければ良いのだが、それが出来ない自分は相当な貧乏性だな、と一人ごちる。 いつの間にやら深都姫が先行している。彼女は仕方なく退魔師をやっている自分よりも正義心が強い。 それは立派なのだが、年相応の幸せを掴んで欲しいと倭斗は思っている。 そんなもどかしい心を持ちつつ深都姫に並ぶと、件の路地裏に勢い良く飛び込んだ。 ◆ 「がぁぁぁーーーーーっ!!」 路地裏には大小二つの人影があった。双方とも、魔の波動……妖気を発散している。それも、強く濃密に。 つまり、夜の住人である。 小さい影が唸り声を挙げつつ、地を踏みつけている。 その振動は大したことはないのだが、地団駄を踏むたびに熱気を帯びた濃厚な魔の波動を発散している。 「いい加減にしないと呼びもしないお客さんが……って、もう来てるな」 大きい影が溜め息を吐きつつ諦め顔で倭斗と深都姫を一瞥する。 「アンタたち……何者!?」 深都姫の鋭い声が路地裏に広がる。 「ふん……自分の名を名乗らずに他人に強要する、か。なかなかのアティテュードだ」 嘲笑にて返されると、深都姫は気色ばむが倭斗に制止される。 「汚ない油をぶちまけられたら放っておけないタチでね。……つか、煽ってんの、オマエラ」 倭斗は冷笑で応じ、鋭利な刃物のような視線で二人を射る。 「うだうだ五月蝿い! 私は……九蓮宝燈の一人! 世界の果てでこの世を呪う……」 「そんな珍妙な名前を勝手につけるんじゃない! それに仲間は九人もいない! ……連れが失礼したな。俺はジン。こっちはメストだ」 ジンは名乗りながらも地団駄を踏み続けるメストをさえぎり、倭斗と深都姫を圧するように、静かに告げる。 「へえ、そいつは結構。生憎と俺達はお前らみたいな夜の住人に名乗る名を持ち合わせてないんだ……悪いね」 倭斗はそう言い放つと、メストを見て目を丸くする。 「おい、深都姫。向こうにお前と同じスケールのがいるぞ」 「倭斗のバカァッ! 私の方が大きいもん!」 倭斗の軽口に深都姫が反応し、ポカポカと叩き始める。 「ちょい待ち。私が、この私が……そんな毛も生えてなさそうなちびすけと同サイズ? ……訂正を要求する」 「へん! 私はまだ成長途中だもんね!」 「はっ! 夢を見たって無駄よ? 絶壁は絶壁のままが運命なのさ」 「そっちこそえぐれてるくせにっ!」 鬼気を揺らめかせながら、深都姫とメストは対峙する。互いに胸を張り、互いに相手を威嚇するように体を大きく見せようとしている。 ジンは小さな二人のやり取りに苦味の交じった笑みを浮かべると肩を竦める。 「どうする? お互いの連れがこんな風だが……殺り合うかね?」 「残念だけど、殺り合う空気じゃないな。」 倭斗は唇を歪ませると、深都姫の襟首を引く。ジンも同様にメストをたしなめる。 「放せ、ジン! このメストさんは小娘に粉かけられて黙ってるようなチンケな根性してないんだ!」 「なにおぅっ! 私だって!」 未だに言い合う二人を無視し、ジンと倭斗は互いに相好を崩す。 「名前を聞いておこうか。俺は菅原倭斗。……覚えておけ、お前ら夜の住人を狩る者だ」 「顔に似合わず鼻息が荒いな。俺は夜の住人のジン。四暗刻単騎って組織のの一人だ」 ◆ 倭斗は未だに怒りが収まらない深都姫の手を引き往来の雑踏に紛れる。 「なんで逃げるのよ! あんなヤツらやっつけちゃえばいいのに!」 「彼処で戦ったら被害がでかいだろ。それにアイツらは……特にあのジンって奴は相当やりそうだ」 倭斗の唇が歪に歪むと、深都姫はそれを見咎める。 「倭斗、笑ってるけど……楽しいの?」 「笑ってる? 俺が? 気のせいだろ」 でも、と言いかけて深都姫は慄然とした。倭斗は確かに笑っていた。陰惨な笑みを浮かべ、その瞳は渇望にも似た光を湛えている。 「ねえ、大丈夫だよね? 倭斗、別人みたい……」 「平気さ。俺は……俺のままさ」 倭斗はぼんやりと輝く蒼い月を見上げ、深都姫の手を軽く握った。 ◆ 路地裏に残る夜の住人は寂寞の闇に紛れている。 「メスト、少しは頭が冷えたか」 「まあね。それにしてもあのちびすけ……」 メストが収まらない怒りの握り拳に力を込めると、青白い炎に似た燐気が立ち上る。 「お前の悪い癖だな。頭に血が昇ると猪突猛進になる」 ジンは溜め息混じりにメストの肩に手を置いた。 「……わかってる。私が怒ってるのはちびっこのせいじゃない」 「じゃあ、なんで怒ってる」 「夜の住人の存在を忘れた人間は腐りきってる。恐れる事を忘れて増長する人間は……嫌い」 「だったら思い出させてやれば良いだけだ。人を喰らう夜の住人の恐ろしさをな」 ジンの乾いた声が路地裏に静かに木霊すると陽炎の様に揺らめくメストの殺気は揺らいで薄くなっていく。 「俺達四暗刻単騎はこの世を呪うために集った。そうだろ」 力強いジンの言葉に、メストは目を閉じて満天の星屑を仰ぐ。 「そうだったね。……憎悪の炎で焼き尽くす為に、ね」 夜の住人達は不穏な妖気の残滓を残しつつ黒檀の闇に溶けるように消えて行った。 ――To be continued on the next time. BACK INDEX NEXT
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/639.html
前ページ次ページゼロのアトリエ ラ・ロシェールを挟む峡谷の上。険しい岩山のわずかな平地に人影がある。 フーケが、大の字になって倒れていた。 「あの女どころか…あんなガキどもにまでやられちまったよ!くそっ!」 もはや満身創痍、体中傷だらけではあるが致命傷は一つも食らっていない。 飛ばされている途中に『フライ』をかけて『アイス・ストーム』の向かう方向へ飛んだ。 簡単に言ってしまえば、死んだフリをしてやり過ごしたのだ。 「私にトライアングル二人の足止めさせといて、自分は愛しいルイズ様の騎士役だって?ハッ!」 あの女とガキどもは当然として、あまりに自己中心的な仮面の男に対しても怒りがこみ上げてくる。 仮面の男に限らず、組織そのものがフーケには肌に合わなかった。 フーケは自己の判断で自分の気に入らない貴族を襲ってきたし、それを変えるつもりも無かったのだが、 ご立派なお題目を掲げたレコン・キスタは勝手な行動を許してくれない。 せいぜい手駒として役に立てとばかりに、休みなしに勝手な命令を伝えてくるだけだ。 少し休もう。いい機会だ。自分が『アイス・ストーム』に飛ばされる姿は何人もが目撃している。 杖を握れぬほどの怪我を負ったので静養していた、とでも言えば何とかなるし、 気が向かなければこのまま消えるのもいいかも知れない。 「誰も知らない所で…あの娘の所にでも行こうかねえ」 フーケは懐の宝石を確認し、ゆっくりと、助かった事を確認するかのように立ち上がる。 あいつらがいなくなった後、次の船あたりでこっそりアルビオンに向かおうと計画を立てた。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師20~ その木の中は吹き抜けになっていて、各枝に通じる階段が所狭しと並んでいた。 ワルドたちは目当ての階段を見つけて駆け上る。 木の階段がきしむ音を聞きながら、途中の踊り場に差し掛かった時。 ヴィオラートは、きしむ音にもう一つの足音が混じっている事に気付く。 さっと振り向くと、黒い影が翻りルイズの背後に回る。 先ほどフーケのゴーレムに乗っていた、白い仮面の男だった。 (え?) その男には見覚えがあった。見覚えのある男が仮面を被っていた。 だって、髪の色も、気取った仕草も、走る姿だって同じなのだから。 ヴィオラートは杖を向けると同時にルイズに怒鳴った。 「ルイズちゃん!」 ルイズが振り向く。一瞬で男はルイズを抱え上げた。 (まさか…まさか!) 男は軽業師のようにジャンプする。そのまま地面に落下するような動きだった。 即座にワルドが杖を振り、風の槌に打ち据えられた仮面の男は思わずルイズから手を離す。 ワルドは仮面の男を無視し、ルイズに向かって急降下していく。 ヴィオラートは一つの実験を試みる。 あるものが他のあるものと同一であるかどうか、同一条件で試し実証する。 対象は仮面の男、条件は杖の火球。 「えーい!」 仮面の男に向かって飛んだ火球は、予想通り… 風の魔法に散らされて、逆にヴィオラートを襲う。 だが、ヴィオラートは今度は額のルーンを光らせ、ほんのわずかデルフリンガーに顔を出させた。 「やいこら、またおめえはこんな時だけ急に―――」 背中のデルフリンガーに火球の全てが吸い込まれる。 「どぅあちぃぃぃぃ!!」 デルフリンガーの付け根あたりが黒いすすで覆われ、 その間に、ルイズを受け止めたワルドが『フライ』の呪文で階段に戻ってきた。 そして、仮面の男にもう一度『エア・ハンマー』を叩きつける。 仮面の男は力を失い、地面に向かって落下していった。 しばらく経っても、戻ってこなかった。 階段を駆け上った先は、一本の枝が伸びていた。 その枝に沿って一艘の船が停泊している。 ワルドたちが船上に現れると、甲板で寝込んでいた船員が起き上がった。 「なんでえ、おめえら!」 「船長はいるか?」 「寝てるぜ。用があるなら、明日の朝改めて来な。」 船員は、酒の瓶を啜りながらそう言い放った。 「貴族に二度同じことを言わせる気か?僕は船長を呼べと言ったんだ。」 ワルドは杖を抜き、船員に照準を合わせて脅す。 「き、貴族!」 船員は立ち上がると、船長室にすっ飛んでいった。 「何の御用ですかな?」 船長はうさんくさげにワルドを見つめる。 「女王陛下の魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ。」 「これはこれは。して、当船へどういったご用向きで…」 相手が身分の高い貴族と知って、船長は急に相好を崩す。 「アルビオンへ。今すぐ出航してもらいたい。」 「無茶を!」 「無茶でもだ。僕の『風』も力を貸す。僕は風のスクウェアだ。」 船長と船員は顔を見合わせる。 「ならば結構で。料金は弾んでもらいますが…」 「積荷全てと同額出そう。」 商談は成立し、船長は矢継ぎ早に命令を下す。 「出港だ!もやいを放て!帆を打て!」 帆が風を受けてぶわっと張り詰め、船が動き出す。 「アルビオンにはいつ着く?」 ワルドが尋ねると、 「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」 と船長が答えた。 ヴィオラートは舷側に乗り出し、地面を見た。『桟橋』大樹の枝の隙間に見える、 ラ・ロシェールの明かりがぐんぐん遠くなってゆく。結構な速さのようだ。 小さくなる桟橋を見つめながら、ヴィオラートは深い思索の海に沈みこむ。 ワルドはルイズにとっての敵だ。それは間違いない。 しかし、それをルイズに納得させるだけの材料は残念ながらない。 ヴィオラートが見つけた根拠は全て主観で、あるのは経験則による自己流の判断だけ。 例えそれが正しくとも、気のせいと言われれば返す言葉はない。 それにルイズは今、信じたいものを信じようとしている。そんな時の人間に届く言葉は、ない。 もしかしたら、最悪の状況でワルドと対峙することになるかもしれない。 そこで、あるいはその前に何としてもルイズの目を覚ます。 ヴィオラートはひそかに覚悟を決めて、前を向いた。 その隣にはルイズが立ち、同じように地面の方をじっと見つめている。 二人は一言も発せず、遠ざかる地面を同じように眺め続ける。 そんな二人の元に、ワルドが近寄ってきた。 「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、攻囲されて苦戦中のようだ。」 ルイズがはっとした顔になった。 「ウェールズ皇太子は?」 ワルドは首を振った。 「わからん。生きてはいるようだが…」 「どうやって…連絡を取ればいいかしら。」 「…陣中突破しかあるまいな。」 ルイズは緊張した顔で頷いた。それから尋ねる。 「そういえば。あなたのグリフォンはどうしたの?」 ワルドは微笑んで、口笛を吹いた。グリフォンは甲板に着地し、船員達を驚かせる。 ヴィオラートは舷側に座り込んだ。とりあえず今は機会を待つしかない。 延々と続けられているルイズとワルドの会話を子守唄に目を閉じる。 どうやらまた危険な事になりそうだ、そんな予感を胸中に抱えて。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/qbtd/pages/526.html
No.415 レアリティ:☆ ライフ:5 必要アビリティ:(なし) 攻撃力/防御力:10/10 アビリティ:スピード1 バランス1 テキスト (テキストなし) (距離制限なし) 収録セット 第4弾 師弟の絆編(アレイン・シズカ・レイナ・トモエ・エリナ・クローデット・エキドナ・イルマ・ノワ・メローナ・アルドラ) イラストレーター 原田将太郎 シズカで混合デッキを組む場合に基本となる「ライフ5」用カード。 また必要コストがないため、単色よりの混合デッキではサポート用カードとして 採用される場合もある。
https://w.atwiki.jp/sasaki_ss/pages/1825.html
一度成功した事に味を占めるというのは、決して珍しいことじゃない。 例えばだが、猿の檻に「ボタンを押せばエサが出る装置」を置いておけば、猿だってその装置を「扱う」ようになるという。経験は力なのだ。 しかし柳の下に泥鰌がいつも居ると思っちゃいかんし、ましてや切り株にウサギがぶつかってきてコロリと逝くなんて 発生する方が稀な珍例でしかない。そんなものをアテにしちゃいかんのである。 まあ要するにだな……。 「俺はやらん。もう二度とシャミセンの事を団活を休む理由には使わんぞ……」 「キョン、決意を固めるのも誠に結構な事ではあるが、そろそろ現実に戻ってきてはくれニャいか」 「おい?」 「ふむ」 佐々木は小鼻の脇から左右それぞれ三本ずつ生えた「ひげ」を興味深げにさすりつつ首を傾げた。 うん、まあ、そういう事だ。そういう事なんだ。 「すまん佐々木」 「そう謝らニャいでくれよキョン。くっくっく」 ……………… …… 『佐々木』 『ん? やあ、親友』 『……ああ』 『どうかしたかい?』 夏休み某日、たまたま駅前で……まあ佐々木は駅前駐輪場を月極契約しているそうだから、当然といえば当然なのかもしれんが…… こいつと出会った俺は、ふと思うことがあり、久々に友誼でも深めようかという話に持ち込んだ。 ところがだ。 『キョン!』 携帯だ。いつものように団長様が唐突に出かける用件を切り出し有無を言わさずオーバー♪(以上、の意)などと打ち切ろうとしたところ 俺が「いつものパターン」を断ち切り、いつぞやのようにシャミセンの病をでっち上げて休みを取ろうとした訳だ。 先約、それも俺から誘ったのに、俺の事情で「はいさよなら」はさすがに無いからな。 で、居並ぶ諸賢のご賢察の通りそれがバレた結果の因果がご覧の有様ってわけだな。 多分、捨て台詞の『あんな猫がどこにいんのよ!』が効いたんだろう。 ………………… ……… 「すまん。佐々木」 「だから構わないと言ってるだろう、キョン」 夏休み早々自室で土下座する俺の巻、ってなところだが、佐々木は頬をくしくしと人差し指で撫でつつ飄々としたものである。 ハルヒのトンデモパワーの影響を受けてネコ化の奇病にかかってしまったというのにだ。 「とりあえず長門に電話しよう。あいつなら最低でもヒゲをステルス化するくらいはやってくれるはずだ」 そうすりゃ一応の解決くらいにはなるからな。 「くく、そう慌てる事は無いよキョン」 「いやいや、当人であるお前の方が落ち着いてるってのもどうなんだ」 そう言ってやると、くつくつと独特の笑いが返ってきた。 「今のところ、小鼻の脇の計六本のひげ、指先の奇妙かつ独特な柔らかさ、そして時折言語感覚がおかしくなる程度でしかないからね」 「……お前って割と大物だよな」 「くく、褒められているのかな?」 「さてな。だが、なんだ」 絶妙に微妙なとこが猫化したもんだな。 「くっくっく、確かに。普通は猫耳だの尻尾だので可愛らしく変化するのがテンプレートだと聞いているが」 「どこのテンプレだ。どこの」 佐々木は若干視線を彷徨わせつつ自分の頬を指先でくしくしと撫でていたが、ふと、目を煌かせてこちらに視線を差し戻した。 ああ、なんとなく懐かしいな。この視線、佐々木が語りだす時の奴だ。 「キョン、なかなか凄いよコレは。指先が実にソフトなタッチなんだニャ」 「マジか」 「大マジだよ。ほら」 健康的な色をした右手を差し出す。外見上は特に変化は無いようだが。 「……おお、確かにこりゃ人の手の感触とは思えんな」 「だろう?」 ぷにぷにしとるな。 「だが元からこういう感触なだけって事はないよな?」 「怒るよ?」 「すまんな」 佐々木はわざとらしく眉根を決し、すぐに相好を崩す。 それから二人で笑いあった。笑ってる場合じゃないはずではあるんだが、笑うしかなかった。 「ときにキョン。以前こんな事態が発生した経験は?」 「無い。だが強いて一番近いものを探すなら、一年前に自主制作映画を作った時に似てるな」 あの時はハルヒのテンションが上がりまくり、秋なのに桜が咲くわ猫は喋るわ朝比奈さんはフル武装化していくわの大騒ぎだった。 あいつが望んだから桜が咲き、あいつが望んだから朝比奈さんはビーム完備となり……。 考えてみれば、ハルヒの思考が明確に察せられ、しかもそれがストレートに叶うってケースは少ない気がする。 むしろ、古泉の奴などが先回りしてイベントを発生させ、その対応として発現するケースの方が多いのではないだろうか? こんなファンタジーなケースともなると更にレアだ。 いや、待てよ? 『あんな猫がどこにいんのよ!』 ハルヒが望んだものがそのまま世界に現れ、しかもハルヒ当人はそれを意識することは無い。そんなケースと言えばだ…… 俺が思考を飛ばしていると、不意に佐々木がくつくつと喉奥を震わせた。 「そう深刻になるニャよ、キョン」 笑っているのだ。とても、とても楽しそうに。 「まあ確かに外観が変化した以上、外を出歩くことが困難である事は困る。だが今日の学習塾は午前中の内に既に終わらせているからね。 治るまでキミの部屋に退避させていただく限り、問題は起こらニャいだろう?」 「そうかもしれんが」 しかしな、確かに軽度とはいえ治るか治らないのか判らんのだぞ。 何でそんなに落ち着いているんだ。 「くく、この不可思議な現象の原因は涼宮さんなのだろう? なら心配はしニャいさ……僕の、尊敬する人だからね」 数ヶ月ぶりに会った佐々木は、記憶よりも若干目を細めて笑う。 だが、その言葉を聞いた俺はむしろ一層頭を下げた。 下げなくてはいけないと思った。 「いや、なら尚更だ」 「ニャにがだい?」 声のトーンから察したのか、佐々木が心持ち目を見開く。 だが構わず俺は続けた。 「ハルヒの奴がやった事についてだ。俺は謝らないといかん。……重ねてすまん」 「そう本気になるニャよ、キョン」 本気にもなるさ。今回の件はある意味で俺が、いや俺こそが原因なのかもしれんからな。 直接的な原因、下手ないい訳とかそんな話じゃなくてだ。 「ふむ、拝聴したいな」 「すまん」 「いや、謝罪の言葉など正直どうでもいいんだ。理由をだよ、キョン」 「そうだな」 「謝罪で現状が変わる訳でもないしね」 「それを言うな」 「くっくっく」 だが、おかげで肩の力が抜けた。……相変わらずだな。 「ふ、くく。なんの事かニャ?」 「今のニャはわざとだな?」 「解るかい?」 「差し向かいで小一時間も喋っとるんだ。それくらい解るさ」 「くく、そうかい」 ホント、相変わらずだ。変わってねえな。 そしてハルヒもやっぱり相変わらず、変わっていなかったのだ。ある面ではな。 あいつだって思考のタガが外れることくらいあるんだ。 そりゃそうだろ? 確かにあいつの思考回路は根本において常識的で「普通」だ。でも「普通」ならやっぱり思考のタガが外れるのさ。 むしろ外れなきゃおかしいんだ。あいつが「普通」であるのならな。 )続く 67-9xx「そう謝らニャいでくれ、キョン」 67-9xx「いや謝らせてくれ、佐々木」 67-9xx 「構わないよ、親友」
https://w.atwiki.jp/yoshimitsu/pages/200.html
考え方 吉光を使う上で誰しもがぶつかる壁、それが「相手の立ちガを崩せない」だろう。 吉光の下段は全体的に威力が低く、技後の状況も芳しくないものが殆んど。 華厳は間違い無く優秀な部類に入るが、華厳だけ強くてもねぇ…。 ここでは吉光のガード崩しについて色々考察してみる。 行き詰まった方は参考にしてみて欲しい。 そもそも立ちガードを崩す目的は「相手に下段を意識付けする為」である。 卍芟や生ローでチクチク削れば、相手も嫌って捌きを仕込んだり、暴れたりするだろう。 そこに中段を叩き込む!という流れを作る為の布石なのだ。 下段で相手を封殺するほどの材料を吉光は持っていないので、勘違いしないように。 …まぁ卍芟や華厳だけで封殺できる相手であれば、遠慮せずドンドン使うべきであるが。 ガード崩しに使えそうな技一覧 技名 発生 威力 リーチ リスク 横対策 技後の状況 しゃがみステ 忍法卍芟 ◎ △ △ ◎~× △ × ○ 露払い ○ ×~◎ ○ ○ ○ ○ ◎ 華厳 × ◎ × △ △ ○ ○ 生ロー ◎ × ○ ◎ ○? △ ◎ 迅流撃 △ ○ △ × ×? △ △ ▼忍法卍芟 余程不利な状況でもない限りは削り技として機能する。困ったらコレを打っておけばOK。 削り技としては優秀な部類に入るので、ガンガン出して相手に意識付けをしよう。 基本は2発止め~倒木蹴でセコく削りつつリスクも抑える。 相手が対応出来ないのであれば5発止めまで出しても良いだろう。 ガード時のリスクはキャラによってマチマチ。 ▼露払い しゃがみをかませる必要がある為、発生は期待出来るほど早くない。 どちらかと言うと兼置き技としての用途が強い。 とは言え技後大幅有利かつCHでコンボが入るのはとても魅力的。 先端が当たる距離を見切って出しても良いだろう。 ▼華厳 コマンドとエフェクトの関係上、吉光有利の状況ではあまり効果を発揮しない。 相手有利の状況だと、相手が防御に集中出来るからだ(=ジャンプステを重ねられやすい)。 どちらかと言うと五分程度の状況からぶっ放すイメージの技だろう。 相手の反応次第だが、的確にジャンプステを重ねられない限りはドンドン使っていってOK。 極論、前ダッシュ華厳なんて強引なテクも(通るのであれば)立派な崩し手段。 ▼生ロー 威力が極端に低い以外は優秀な下段。あらゆる状況で使っていける。 立ちガード崩しとは要は「相手に下段を意識付けさせる」事が目的なので、バンバン出して しゃがみがちになったり捌きを仕込むようになれば、用途は果たしていると言える。 ▼迅流撃 発生は速いとは言い難いが、NHでも高威力なのが魅力。 起き攻めで使うのが無難だが、有利を奪った後の選択肢としても有効。 LPがガードされた後などの「有利かつ、その後の展開が早い状況」で使うと割と通ったりする。 その他のガード崩し技 以下の技は前述の考え方とはちょっと逸脱するが、相手に「こんなのもあるんだぜ!」という 妙な意識付けが出来る場合があるので、参考にしてみて欲しい。 ▼絶鳴剣 五分~有利の状況で唐突にぶっ放す。若干ネタ色が強いが、決まった時のリターンがヤバイ。 脅威のリーチを誇る為、バックダッシュで避けようとした相手に刺さったりする。 もちろん「見てから右アッパー余裕でした」な相手には封印。 ▼神隠 脅威のリーチを誇る上段ガード不能+打撃投げ。これも五分~有利の状況でぶっ放す系の技。 威力も言うほど低くないので、通るようであれば1~2ラウンドに1回くらい使ってみよう。 銀山魔があるので、余程反応に自信がある相手でもなければ打ち落とされづらいかも。 でもしゃがまれたらお通夜。 ▼御霊削り 投げ技。モーションが他の投げと異なる為、抜け辛いかも知れない。 リーチが短い為、使い辛い。前ダッシュからいきなり出さないと当てられないかも。 しゃがまれるだけならいいが、的確に抜けられるようであれば封印。 投げ 華厳や露払いに味をしめていると忘れがちになるが、各種投げも立派なガード崩し手段だ。 改めて投げの有用性について考えて欲しい。 それなりのダメージ 起き攻め可能(軸などで左右される事もない) ロングレンジスローなら横対策にもなる 抜けられてもリスクなし しゃがまれるか暴れるかで終わってしまうが、それを差し引いても投げは魅力的である。 的を絞らせない為にも、通常投げ/ロングレンジスロー含め万遍なく使うべきではあるが、 基本は意匠惨憺と櫓落としを使っていれば困る事はないだろう。
https://w.atwiki.jp/qbtd/pages/51.html
No.036 レアリティ:☆ ライフ:5 必要アビリティ:(なし) 攻撃力/防御力:-/10 アビリティ:バランス2 テキスト (テキストなし) (距離制限なし) 収録セット 第1弾(レイナ・トモエ・リスティ・ユーミル・エキドナ・ニクス) イラストレーター えぃわ ライフカードとして使うのが最も多くなるだろうカード。デッキの安定感を増すためには最も選ばれやすい。 また、必要アビリティがないため、多色デッキを組む場合に選択される可能性もある。
https://w.atwiki.jp/qbtd/pages/313.html
No.0247 レアリティ:☆ ライフ:5 必要アビリティ:なし 攻撃力/防御力:-/10 アビリティ:バランス2 テキスト テキストなし (距離制限なし) 収録セット 第3弾 美闘士集結編(アイリ・クローデット・ノワ・メローナ・(アレイン)・(アルドラ)) イラストレーター 高村和宏 青単色でデッキを組む際にライフカードとして使うのが最も多くなるだろうカード。 デッキの安定感を増すためには最も選ばれやすい。 また、必要アビリティがないため、混合デッキを組む場合に選択される可能性もある。
https://w.atwiki.jp/wiki3_hope/pages/94.html
一緒に食事 「私、どうあがいたって こんな味は出せない…。」 「せめてこの程度は 作れるようになりたい…。」 「水源から海まで近いからでしょうね、 美味しいお水です。」 「いただきます」 「ごちそうさまです」 一緒に訓練 (ちょっと遊ばない?) 「息抜きしませんか? いえ、した方が良いです。 私が言うんです、間違いありません。」 (真面目に訓練するよう注意する) 「ご冗談を。 誰と一緒に訓練してると思ってるんですか?」 「…あなたが思いのほか真面目だから 少々からかったまでです。 失礼しました。」 (遊びながら訓練する) 「もう飽きちゃったんですか? 仕方ありませんね… ほら、存分に羽を伸ばしますよ。」 「ふう…、暑いですね。 涼しい所行きましょうか。」 (訓練終了) 「ふう… やってやりましたね。」 「お疲れ様です。 じゃ、この辺で終わりにしましょう。」 一緒に勉強 (ちょっと遊ばない?) (真面目に勉強するよう注意する) (訓練終了) 「」 「当然です。 私と一緒なんですから。 じゃ、切り上げましょう。」 遊びに行く 「おはようございます。」 「○○でしたね? じゃ、行きましょう。」 【美術館】 「私は、やはり古いタイプの人間です。 ほら、この、現代絵画の一角、 全く理解ができません。」 【植物園】 「食べちゃ駄目! …ああ、信じられない。 もう笑うしかない…あははは…はぁ。」 【映画館】 「映画といえばポップコーンですよ。 いえ、これはお約束なんです。 私、買ってきますね。」 【博物館】 「そこ、走らない! …も、申し訳ありません。 私が一番、騒がしいですよね…。」 【水族館】 「つ、つ、釣り竿なんていつの間に持ち込んだんですか!」 【動物園】 「さ、次行きますよ。 …何よ私、引率の先生みたいじゃない。」 【遊園地】 「観覧車って好きなんですよ。 てっぺんから見渡すと、何だか、温かい気持ちになるんです」 【公園】 「のーんびり……… それ以上でも以下でもなく……… うん、今、カラッポです…。」 「今日は本当に楽しかったです。 また是非ご一緒させて下さい。」 「今日はありがとうございました。 無駄な時間を過ごすという事が何なのかよくわかりました」 デート 「おはようございます。 …わ、私、ヘンじゃありませんか?」 「○○でしたね? じゃ、行きましょう。」 【美術館】 「…ええ、見ものでしたよ! 裸像の前でだらしなく相好を崩す若者の図! ああ美しい!」 「」 【植物園】 「…今、あそこの茂みに人影が… は!! いけませんわ! いけませんわぁぁ!」 「なるほど…食用か否かは 意外と見た目で判断できるものですね。 …えっ? 他にどのような感想を抱けと?」 【映画館】 「虚構の中にドラマを見出す…。 笑いを、感動を、真実を見出す…。 人間の特権でしょうね。」 「」 【博物館】 「いつも閑散としてますね、郷土資料室は。 でもね、私、ここ好きなんです。 ちっぽけだけど、島の誇りがある。」 「やっぱり誰もいませんね、郷土資料室は。 …見るべきもの、ですか? ………さ、順路はあちらからです。」 【水族館】 「海…母なる海… 漢字だと海の中に母がありますが、フランス語だと逆なんですよ」 「」 【動物園】 「面白いですよね。遺伝子を後世に残すために、様々な形態へと進化して…。 人類は…いえ、よしましょう、こんな話」 「うぅ…いえ、その…ニオイが…。 いえ、大丈夫です。 これも本来の有り様ですから。」 【遊園地】 「無駄だわ…ナンセンスだわ…これだけの高度を稼ぐ為に どれだけの電力を…ぎゃあああああ!!!」 「」 【公園】 「ジャングルジムが何か? えっ? 登るんですか? さぁ、って…ええええ?」 「今あそこのトイレに、カップルが一緒に… は!! いけませんわ! いけませんわぁぁ!」 【扇浦】 「…なるほど、あの程度の胸部になると 女性用ウォードレス装着は無理ですね。 …う、うらやましくなんか………」 「…あの、そ、そんなに見ないで下さい…。 …! も、もう、ほら、早く泳ぎますよ!」 「今日はありがとうございます。 いらぬお気遣いを頂いてしまいました。では失礼します」 「今日はありがとうございます。 あの…出来ればまた、ご一緒させて下さい。…では失礼します!」 「今日はありがとうございます。 全く時間の無駄でした。 では失礼します。」 作戦会議 「では作戦会議を始めたいと思います。 まずは各整備状況の報告を お願いします」 「整備状況はいたって良好です。 引き続きよろしくお願いします」(褒める) 「整備状況は可もなく不可もありません。 可能な限り更なる向上をお願いします」(普通) 「整備状況はいたって劣悪です。 もう少し責任とか仕事への誇りとか… 言うだけ無駄ですか?」(注意する) 「それでは今回の案件ですが…」 「今回の提案者である、○○さん、 議題を提示してください。」 「それではこの案件について 皆さんの意見をお聞かせ下さい」 「皆さんの意見も出揃ったようです。 では採決します」 「それでは以上をもって 今回の作戦会議を終了します。 早朝からお疲れ様でした」 「賛成です。反対する妥当な理由も見当たりません」 「反対です。議論するだけ時間の無駄に思います。」 カラオケ/ボウリング 「楽しかったですね。ついはしゃぎ過ぎました。 …私、はしたなくありませんでした?」 「ふう、騒ぎすぎて疲れました。 今日はもう帰ります。また、誘って下さいね」 「…色々気がかりな事があって、カラオケに集中出来ませんでした。 …当分遊びは控えます」 「こう回転をかけると、こうスライスして…。 …理屈では、ストライクを取れるハズなんですが…」 「手首と膝が痛くなりました…。これでは軍務に差し障ります。 私、当分ボウリングはいたしません」 「もうちょっと事前に勉強しておく必要がありましたね。 …次回にリベンジです。」 「重要なのは手首と膝ですね。 次はもっとマシなスコアを出します。 ですから、次も誘って下さい」 王様ゲーム 「………○○、というので構いませんか?」 【キスをする】 「…ここで拒否したら…、 一生うるさく言われそうね…」 【膝枕しながら耳掃除】 【耳に息を吹きかける】 「…あら、近くで見ると、耳介部分の溝って結構汚れているのね…。 …私、ちゃんと洗おうっと…」 【マッサージをする】 「ふふ…、こう見えてもマッサージには自信があったりするんですよ」 【おでこにキス】 「じゃあ、しゃがんで…、そして髪をあげてちょうだい…」 【手を握る】 「…私、ペンだこがあるから…、 ちょっと手を見られるのが恥かしい…。」 【一緒にジュースを飲む】 「こんなの屈辱…。 は、早く飲んでちょうだい!」 【靴下の匂いを嗅がせる】 「…絶対、顔をしかめたり、声上げたりしないで下さいね! 感想を言うのも無しです」 【鼻毛を抜く】 「…あ、ごめんなさい。 手元よく見えなかったから…、 一本のつもりがこんなに…。」 【ビンタ】 「ふふ、思いっきりいかせてもらいますから、 覚悟しなさいね。」 「命令されるのって、 ちょっといいですね…。 …いえ、何でもありません。」 嫉妬大爆発 「…面白い事をおっしゃいますね」(後攻) どっちも ごめん 誤解だよ 「そもそもが誤解です。」 争奪戦 田上由加里 通常 / 提案 / シナリオ / キャラ
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/4482.html
331: ひゅうが :2017/03/27(月) 00 08 11 戦後夢幻会ネタSS――番外編「マツシロ・ケース」その5 ――2か月後 山形県米沢市 「あれは、閣下の仕込みですね?」 「いつ気が付いた?」 枯れ木のような老人が相好を崩す。 「あの襲撃があってすぐ。」 下村定は、怜悧な瞳でそう断じた。 「皇統護持作戦。占領軍により陛下が軍事裁判に引き出されることを想定した皇族の退避計画。 その行き先は数あれど、本命となったのは新潟。 そしてあの松代地下大本営予定地の建設労働者は『新潟港から送還される』 東条元首相の指示を受けてこれを統括していたのは、閣下だとお聞きしましたからね。」 「保科か?」 海軍の保科善四郎大将は、阿部俊雄少将の協力者の一人である。 海軍が復員省へと改組されようとしている今は軍務局長の地位にある。 「ええ。」 「あいつはおめでたいな。」 自分の事を思い切り棚に上げて、石原莞爾大将はからから笑う。 嘲笑だった。 この男は、本質的には満州事変の頃とは変わっていない。 ただ、バカに対して寛容になり、説得の手間を覚えただけである。 たちが悪いことに頭のキレはそのままに。 そんなことを下村は思った。 「とまれ、陛下の身分保障は内々に確保しました。」 「いろいろ大変だったらしいな」 「何をおっしゃりますか。白系ロシア人特務の情報をもとにソ連軍の満州侵攻を予測して、獄中から出たばかりのバカどもに『松代の金塊』の情報を吹き込んでのけたあなたほどではありませんよ。」 悪魔のような笑みを、石原は浮かべた。 すでに死病に冒されているだけあって、その姿はこの世ならざるものに見える。 あれは何だったか…何かのゲームで。 そうだ。マキリの蟲爺。 霞が関勤務の合間にプレイしたことのある、あのゲームの妄執にとらわれたかつての理想主義者の末路だ。 ああむしゃくしゃする。この老人は、日本という国の肢体を好き勝手改造してのけた挙句、免責されたままあの世へいく。 後始末を大嫌いな東条上等兵や我々に押し付けて。 なんという無責任。なんという不逞の輩か。 これで、近衛邸へもぐりこませていた特務を使ってあのルーピーの自決を阻止しているから始末に悪い。 スケープゴートは十分というわけだ。 まぁおかげで、廣田弘毅元首相は戦犯指定から解除されたのだが。 「おかげで米軍は、わが国は米軍による領土保障を確保しただろう?」 からからと石原は笑う。哄う。 「そのために、満州や樺太のわが国民を生贄に差し出したのですか?」 「怒るな怒るな。後始末をしてやっただけのこと。きちんとマッカーサーにもヤツの金塊の半分は返してやっただろう? いつでも最終兵器が作れるだけの物資や機材もくれてやったのだ。」 これでやつはわが国には無体はできまいよ。 あの遠心分離機の内部に施された分厚い金メッキの出所を知るのは我々だからな。 いや、アメリカのことだから早々に司令官を替えるかもしれんな。 そんなことを石原はいった。 日本軍がどこからか金を手に入れたのか。それは、日本軍が建造していた超巨大な新型爆弾とその製造設備という特大級の「爆弾」によってうやむやになっていた。 332: ひゅうが :2017/03/27(月) 00 09 12 たちが悪いことに、そのコアとなる20キログラムのウラン235はどこからも発見されなかった。 そんなとき、ソ連軍は業を煮やして満州国境を侵犯。 なし崩し的に武装解除中の関東軍と戦闘状態に入った。 すでに大陸の民間人が大挙して旅順大連や朝鮮半島南部に脱出しつつあったのがせめてもの幸いである。 この状況で、下村などのちに「吉田機関」と呼ばれる集団は、マッカーサー相手に取引をもちかける。 条件付き降伏にも関わらず、全土へ進駐してしまってからあらわになりつつあった日本への露骨な内政干渉、とどめが天皇の戦犯訴追をはじめとする連合国強硬派の進める政策の中止と将来の同盟国としての日本再軍備の確約である。 すでに急速に悪化しつつあった日本国内の治安と、松代の施設に迫っていた共産ゲリラ(これはある意味誤解だった)という現実をつきつけられた米本国は1か月あまりを議論に費やした。 しかし、この8月、ついにこれを受け入れた。 最後のピースとなったのは、占守島事件…米重巡インディアナポリスの撃沈事件である。 早い話が、ソ連は欲張り過ぎたのだ。 そしてマッカーサーも、見つけたばかりの金塊――彼がいうところの「フィリピン独立のための財産」の半分を手放す羽目になっている。 その分だけアメリカ政府に与える手土産として相応以上のものを手に入れているから怒るに怒れない。 「北方で頑張っている阿部さんたちには言えませんな。」 「言う必要はない。」 石原はぴしゃりといった。 下村は思う。この男が余命わずかでなければ、八つ裂きにしてやりたいくらいだ。 もうどこまで、今回の事件にこの男の手が伸びているのかわからない。 こいつなら、ソ連が日本の海軍力やそれを支えた人員を喉から手が出るほど欲しがっており、さらにそれ以上に不凍港を同様に欲していることをエサに何らかの取引をしていてもおかしくはないのだ。 「それで、今日呼び立てられたのは?」 「いや、ただ顔を見たかっただけの話だよ。」 ぬけぬけと、石原はいってのけた。 下村がやってくること自体、彼とその仲間がGHQに逮捕されていないという証左であり、この石原莞爾が描いた絵図通りに物事が動いている、そういうことなのだろう。 「最期に何かいいたいことは?」 下村はいった。 この米沢の石原邸の玄関には、すでにMPが待機している。 予定されている戦犯裁判における事情聴取のために出頭が求められているのだ。 もっとも、免責で終わる可能性は高い。 死病というのは便利である。 殺意が湧くほどに、この男は用意周到だった。 潜水艦による撃沈と称して日本本土に搬入した残る半分の金塊のかわりに、20キログラムのウラニウム235を引き渡し、すべてを闇に葬るお膳立てをしてから表へ出てきたのだ。 もちろん、米政府が態度を翻したのなら、皇統護持作戦に基づき分散している皇族がどうなるかを下村は知っていた。 すでに英国か、それともフランスか…まぁ考えるにろくなこともあるまい。 「なにも。言わずとも君らは、日本を守るだろう?」 下村は、何も言わずに席を立った。 8月15日の空は、奇妙なほどに晴れ渡っていた。 333: ひゅうが :2017/03/27(月) 00 11 05 【あとがき】――予想以上にドス黒い話になってしまった…だが私は謝らない 341: ひゅうが :2017/03/27(月) 00 25 05 なお、このあとマックは奇妙な「栄転」を遂げます。 まぁ、好き放題にドイツを改造でき、さらに感謝を受けたのですから彼は彼なりに幸福でしょう。 また、日本降伏に伴いスローダウンしていたマンハッタン計画に基づき、8月6日、ニューメキシコ州アラモゴートにおいて「ウラン型N兵器」の初の起爆実験が行われております。 どっとはらい。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2633.html
「それにしても、赤ちゃんかわいかったですね。キョン君そっくりなんだもの」 「まったくです。幼いながらも達観したようなあの目つきなど、特にね」 「俺はよくわからないな……。長門はどう思う?」 スーツを着込んだ長門は、高速でキーボードを叩きながら、 「ユニーク」 「ユニークって……」 「……」 花嫁を強奪したあの日から時は流れ、先日我が家には新たな家族が増えた。 ちなみに俺とハルヒは正式に結婚して夫婦となり、やかましさの絶えることない 生活を送っている。 鶴屋さんが間に入って相手方さんと交渉を進めてくれたおかげで、思いのほか あっさりと離婚話が進んだんだ。 鶴屋さん曰く、 「人間、話し合えばわかり合えるものなのさっ!」 と言っていたが、詳しくは聞かないほうがいいと思って聞いていない。 裕福とはいえないが、満足できる今の生活があるだけで十分さ。 話を戻そう。 古泉が言うように、おかしなことに産まれてきた子供は俺にそっくりだったんだ。 「お医者さんが勘違い、誤診したんじゃないですか?」 という朝比奈さんの意見もありえると思ったし、何より俺自身が全てを はっきりさせたいと思ったからハルヒに訊いたんだ。 そしたら、あいつあっけらかんと言いやがった。 「勘違いだったみたいね」 聞けば、同窓会の日に聞いたできちゃった婚ってのは、少々生理がきてなかった だけらしい。 ちゃんと医者に行ったわけでもなく、その時点で全部ハルヒの思い込み だったそうだ。 それなのにハルヒの奴は、何の確証も無いくせに相手方に迫ったそうだ。 責任取れ、ってな。 あの旦那さんは結構本気でハルヒと付き合ってたらしく、子供が本当にできたか どうかの確認もせずに結婚を決めたそうだ。 でも、実際にはできてなかったわけで。 その直後の同窓会で、まあ、俺とあんなことになり、そこでできちゃった、と。 俺からすれば結果的に嬉しい結末だが、なんだかなぁ。 事の顛末を会社で話したところ、 「涼宮さんらしいですね」 たった一言で古泉に納得されてしまった。 「まあな」 今は昼休み。 古泉と向かい合って、名前も知らないボードゲームに興じている。 もちろん俺が圧倒的優勢だ。 「涼宮さんの力が以前に比べて薄れているとはいえ、その力が完全に消えた わけではありません。今のこの現実も、もしかすると、涼宮さんが望んだゆえの ものかもしれませんね」 「……そうだな」 現実を捻じ曲げてまでってのはズルのような気もするが、ハルヒが俺を望んで くれるというのは単純に嬉しい。 結局のところ、今という現実が全てだ。 素直に喜ぶことにするよ。 「もっとも、そのおかげで僕もこうしてみなさんと共に同じ時間を過ごすことが できるわけですしね。これでもあなたには感謝しているのですよ」 「お前にそんなこと言われてもな……」 古泉の恥ずかしさ満点のセリフに辟易していると、メイド姿の朝比奈さんが 微笑みながら言う。 初めは「この年になって着れない」と拒んでいたんだが、ハルヒに押し切られて 着るハメになり、それ以降はずっと仕事中このお姿である。 今ではノリノリだ。 「長門さんも、口にはしませんけど喜んでるんですよ」 「長門がですか?」 「ええ。長門さんが今作ってるゲーム、幼児用の遊んで学ぶゲームなんですって。タイトルは『三歳から学ぶ相対性理論』」 「そんな無茶苦茶な……」 「……」 「本気かよ」という意味を十二分に込めた眼差しを長門に向けるが、 長門の視線はモニターに固定されたままだ。 その瞬間、 「お待たせ!」 ここはオフィスとは名ばかりの長門の家の隣室。 その玄関が勢いよく開き、俺の嫁であり、SOS団団長であるハルヒが現れた。 「お前、家にいないでいいのかよ……」 産まれて間もない我が子をおいて会社に来るバカがどこにいる。 「バカがいるとしたらそれはあんたね。ほら、ちゃんと連れてきてるんだから」 うわ、マジだ。 ちゃんと背中におぶってやがる。 「それに、団長たるあたしがいないとみんなやる気がでないでしょ」 そう。 俺たち五人は今再びこうして共に同じ時間を過ごしている。 『偶然』納得のいくゲームを開発した長門が一人で立ち上げたゲーム会社に 『偶然』流通及び宣伝経路を確保できる古泉が雇われ、さらに『偶然』 (学校の小さなサークル規模とはいえ)マスコットキャラクター経験のある 朝比奈さんを対外要因として雇い入れた結果、長門のゲームは大ヒットを 記録した。 その資金を元手に、事業拡大のため求人を出そうとしていたところで『偶然』 職を探していた俺たちに声をかけたんだとよ。 どこまでが『偶然』なんだか。 「別にいいじゃないですか。あたしも、こうしてみなさんと毎日を過ごせて、 とっても楽しいですよ」 どれだけ年を重ねようと朝比奈さんの素敵な笑顔は健在だ。 俺も朝比奈さんのエンジェルスマイルを毎日拝見できてとても気分がいいです。 「さあ、今日も張り切っていきましょ!三人はいつものようにね。キョンは あたしと新作の売り込みに行くわよ!」 我が子を朝比奈さんに預けるなり俺に命令するハルヒ。 「またかよ……」 あんまり外回りって好きじゃないんだよな。 それに、ぶっちゃけお前の荷物持ちじゃねえか。 「何よその顔、不満そうね。仕事を兼ねているとはいえあたしとデートできる のよ?もっと嬉しそうにしなさい。営業はスマイルが命なのよ。笑って みなさいよ、ほら」 「こ、こうか?」 ハルヒに言われるまま無理やり唇の端を上げてみる。 きっとぎこちない笑顔だったろうな。 「……あんたねぇ、ふざけてるの?」 「そんなつもりはないんだがな」 人には向き不向きってのがあるんだよ。 俺はお前のサポートに徹するんだし、そこまで気にしなくてもいいだろ。 だが、ハルヒは納得しない。 「いい?有希のゲームがどれだけ売れるかはあたしたちの営業にかかってるの。 本物のスマイルってのはね、こうよ!」 そう言うなり相好を崩す。 「今日から一日一時間、鏡の前で練習しなさいよね。さあ行くわよ、キョン。 グズグズしないの!資料も忘れないようにね」 「へいへい……」 まったく人使いの荒い奴だ。 毎日そう思わされるんだが、ハルヒが見せる笑顔、あれのせいで不思議と 毎日頑張れるんだよな。 あれは、俺があいつに取り返したものだと信じている。 もう一年近く前、何もせずにグズグズしていたら、俺も、ハルヒも、 どんな『今』を歩んでいたんだろうな。 少なくとも、今の俺は後悔なんてしていない。 たとえうまくいかなかったとしても、それなりに納得はできたと思う。 一番怖いのは、何もしないで心にモヤモヤを抱えたまま生きている自分を 想像することだ。 今考えると怖くてたまらない。 そんなとき、ハルヒはいつも俺を励ましてくれる。 極上の笑顔でな。 その笑顔は── 「何やってんの!?おいてくわよ!」 「わかってるよ!ちょっと待ってろ」 あの頃のように、輝いているんだ。 おしまい 元ネタ「涼宮ハルヒの本当に憂鬱」 Wikiに掲載れていなかったようなので原文を引用させていただいた ID Iwod9cySO氏に最大の感謝と謝罪を申し上げます。