約 1,560,948 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/250.html
昼飯時、ポルナレフは苦虫を噛み潰したような顔で食堂の入口の近くの壁にもたれていた。 そんな顔してそんな所にいるのにはやはり理由があった。 その日の朝。 ずっと幽霊だったポルナレフにとって久しぶりの睡眠であったため目覚めも非常に良かった。 彼は、こんな清々しいのに頭からゆっくり出るようなことはしたくない、と思い、膝を曲げて反動を付け、思いきりジャンプした。 そして着地ッー! グシャァッ! 「『グシャァ?』」 その謎の効果音に恐る恐る下を見た。 見事同時に着地した両足の下にあったのは見覚えのあるピンクの長髪と鳶色の目をした少女の顔だった。 普段冷静沈着である彼の顔にもさすがに冷や汗が流れる。 「…あー、おはようございます。ご機嫌は如何ですか?我が主人?」 「………イッペン死んでみる?」 彼は散々鞭で打ちつけられボロ雑巾と化した後、一週間の食事を抜かれることとなった。 朝食ヘ向かう途中 「まさか亀が夜中の内にベットに載っていたなんて思わなかったんだ…」 と何度も弁明したのだが、取り消してはもらえなかった。 しかも泣きっ面に蜂と言う様に不幸は立て続けに起こった。 朝食後、ルイズとポルナレフ(と亀)が教室に入ると全員がその隣にいる男を凝視した。彼等はパニックに陥り、亀の中から男の生首が出て来たということしか覚えてなかったからだ。 「あいつ…亀召喚しなかったっけ?」 「違う…あの男の顔をよく見ろ…亀の中から出てた顔だ。ほら脇に亀を持ってる…」 ルイズ達を指差しクラスメート達がひそひそ話をしだした。 ルイズはそんな連中を睨み付けたが、ポルナレフは周りにいる使い魔達をしげしげと眺めつつ、壁にもたれ掛かった。 教師が入って来て授業が始まった。 ポルナレフにとっては魔法の授業というのは珍しく新鮮なものであったので、それなり真剣に聞いていた。 その中で分からない単語、トライアングルだの錬金だのをルイズに聞いていたら教師に注意され、ルイズが前に出て錬金をやらされることとなった。 「ルイズをッ!?先生そればかりはやめた方が…」 赤毛の褐色の肌をした少女の言葉を皮切りにクラス中から反対のコールが起きた。 しかし周りの反対を押し切りルイズは前に出ていった。そして呪文を唱えたのだが、何故か爆発が起こった。 周りの異常な反応にポルナレフの警戒心も久しぶりに覚醒し、他の生徒同様机の下に避難したため無事だったが、教師は助からず最低でも二時間は気絶していた。 教師が意識を取り戻した後、当然罰として掃除をやらされることとなったのだが、ルイズが「主人の責任は使い魔の責任」と掃除をポルナレフ一人に押し付けようとしたのでポルナレフは 「貴様の事を何故俺が一人でやらねばならんのだ? 大体成功するという確信もないなら初めからするんじゃない。」 と拒否した。 「うるさいッ!あんた使い魔の癖に口答えするつもり!?」 「別に俺は間違ったことは言ってないはずだが?」 ポルナレフの態度はルイズが激怒していた所にさらに油を注ぎ込むことになった。 「もういいッ!あんたまで私を馬鹿にするなら更に三日ご飯抜きッ!」 「貴様は俺を殺す気か!?」 「私が上ッ!あんたが下よッ!」 「お前が下だッ!!」 結果、更に三日追加され計十日飯抜きという実刑が下ってしまった。 「『ゼロ』のルイズか…よりによって魔法を一つも使えない主人なんて先が思いやられるな…餓死する前に逃げるか…?」 幸いルイズは亀の能力に気付いていない。というよりどうやら認めたくないらしい。 「まあその亀がいるからしばらくは大丈夫なんだが…」 ポルナレフは長い付き合いとなる相棒の亀を見た。 亀の中にはジョルノ達がいざという時にということで冷蔵庫の中に食料が入っていた。 しかしそれにも当然限りがある。多分持って一週間しかない。 どうにか食事を確保せねばその内餓死してしまうのはコーラを飲んでゲップが出るくらい確実である。 「しかしどうすれば…」 ポルナレフが思わず天を仰いだその時、 「あ、あの…どうかなさいましたか?」 誰かがポルナレフに話し掛けてきた。 ポルナレフが声の方を見るとメイドの恰好をした黒い髪の少女がこっちを見ていた。相手の丁寧な口調に自身も自然と丁寧になる。 「いや…特に何も無い」 ポルナレフはそう言ったのだが、少女は足元の亀を見て、思い出したかのように言った。 「あ、もしかして貴方がミス・ヴァリエールの使い魔になったっていう平民と亀の…」 つくづく亀の方が有名らしいな、そう思ったのだが黙っておくことにした。 「その通りだが…君もメイジか?」 「いえ、私も平民です。ここには奉公のために貴族の世話しに来ているんです。」 (どうやらここは魔法だけでは補え切れない所があるから平民をいくらか雇っているらしいな。 しかしこれはチャンスだ。上手く行けば彼等から食事を分けてもらえるかもしれない。) 「私はシエスタと申します。良ければお名前を…」 「私はJ・P・ポルナレフだ。亀はココ・ジャンボと言う。」 「ポルナレフさんにココ・ジャンボさんですか…人間と亀って何だか変なコンビですね。」 シエスタはふふっと笑った。 ポルナレフはその笑みにふとJガイルに殺された妹を思い出した。 「…」 「どうかしましたか?」 「いや、何でもない。ただ、妹を思い出してな…」 「妹さんを、ですか?」 「ああ。あいつも君と同じような笑い方をした…いい妹だった。…もう何年も前に殺されたがね…」 「そうでしたか…」 ポルナレフの寂しそうな顔に思わずシエスタも黙ってしまった。 「あ、いや、こんな事を言って済まなかった。今のは聞かなかった事にしてくれ。それより頼みたい事があるんだが…」 「なんですか?」 「実はな、あの憎たらしい小娘に十日も食事を抜くと言われてな…だから何でもするから、しばらくの間食事を世話して貰いたいのだ…」 ポルナレフが頭を下げ頼み込むと、シエスタはまた笑って 「そんなことでしたか。いえ、ずっとそこにいらっしゃるのでどうなされたのかな、と思いまして…どうぞこちらへ」 と言って、どこかへ案内しだした。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1219.html
王女一行が校門前に到着し馬車からアンエリッタ姫が降りてくると、門の前に並んでいた生徒から歓声があがった。凄い人気である。 最も、ここにいる生徒はメイジであるにしてもあくまで子供である。親が良からぬ事を考えているにしてもここの生徒の世代ならいくらか洗脳が効くだろう。学校とは学びの場でありつつも、そういう場であることもある。 だが、それでも興味無さそうにしているのも何人かいた。キュルケやタバサといった留学生達、そして生徒ではないポルナレフである。 「あれが王女か。凄い人気みたいだが、実際はどうなんだろうな。」 「どういう意味?」 「あの笑顔が嘘臭いという事だ。何と言うか、人の顔を見て作られた表情という感じがする。」 「なんでそう思うの?」 「30年も生きてきたらそれぐらい分かるさ。」 ふーん、とキュルケが頷く。だが、ポルナレフは自分の思ったことが単なる杞憂であることを祈った。もし本当にそうなら、たとえ尊敬していないにしても、あまりにも不憫に思えたからだ。 そういう環境で育てられた人間はよっぽどの転機が無い限り堕落していく。そうやって堕落しきった人間は望んでもいないのに将来的に非難されるのだ。 (もっとも、異邦人の自分にはどうしようもないことだが、な。) そう思うと列の方に目をやった。ギーシュや一部の男子が熱狂的にアピールしていたり、女子は女子で王女の美貌を羨ましがっていたりした。 だが、自分の主人であるルイズはその中でポケッと頬を赤く染めながら皆とは違う方を見ていた。その視線を追うと隊長らしき一人の貴族を見ているのが分かった。 見事な羽帽子、そして髭。正にダンディにしてどことなく繊細な感じを持つ、絵に書いたような美丈夫である。 (…一目惚れか?歳は離れているみたいだが、青春しているな。) ポルナレフはルイズの様子を見てそう思った。 夜になって部屋に戻ってもルイズはまだポケーッとしていた。さすがに不安になってきた。 「ルイズ、一目惚れした気持ちは分かるがいい加減しっかりしたらどうだ?貴族ならまた出会う事もあるだろう?」 それでもまだポケーとしていた。今は駄目だが、いくらなんでも明日になったら戻っているだろう、と考えるとさっさと寝ようとしたその時、部屋のドアがノックされた。 不器用に初めに長く二回、次に短く三回… ルイズが動く気配がしないので仕方なくドアを開けた。 ドアの前にいたのは黒い頭巾を被り、黒いマントを身に纏った一人の女 バタン。 危ない危ない今の女は多分人違いだろう。きっと隣のキュルケに用があるに違いない。こんな時間にルイズに会いに来るほど酔狂な奴なんかいるまい。だいたい俺の周りに来る女は災厄を持ってくる。 「え、ちょっと今の誰!?」 小声でそう言うと先程と同じ調子でドアを叩いてきた。居留守を決め込んで無視した。 「ルイズ!?いるんでしょ?ルイズ・フランソワーズ!」 無視すること約15分。ルイズがその小さな声にようやきはっとしてドアに近付き開けると、外からさっき見た女が入って来た。いくらか怒っているらしく、ルーンを唱えると些か荒っぽい動作で杖を振った。 「……ディティクトマジック?」 ルイズが尋ねるとコクリと頷き、 「どこに目や耳があるかわかりませんもの。」 と言って頭巾を外した。頭巾の中から現れた顔は端正に整っていたが、その両眼はまるで猛禽類のように吊り上がりこっちを睨み付けていた。 目を除けば昼間見た気もするが、誰だったかな。 「ひ、姫殿下!」 あのルイズが床にひざまずいた。ああ、あの王女様か。あんな顔してたのにえらい変わりようだな。 「お久しぶりね。ルイズ・フランソワーズ。」 王女様は感極まった表情をするとルイズを抱きしめた。 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ…」 …やばいな…王女様、ルイズを抱きしめてるけど目が明らかに笑ってない。まだにこっちを睨んでる… ジョースターさん…また、あれをお借りします。 「二人は何故かは知らんが親しいようだな。二人だけで話し合いたいこともあるだろうし、邪魔者はしばらく外に出ていよう。」 と言って紳士らしさを装い部屋の中から逃げた。後ろから来る視線が痛いが気にしない。 部屋から出るとすぐにギーシュと遭遇した。 「夜中の女子寮で何やっているんだ?貴様は。」 「い、いやモンモランシーに会いに行こうと思ってさ…」 「ここはルイズの部屋だが…貴様、さては二股に飽き足らず…!」 「ち、違う!」 ギーシュが慌てて否定する。 「本当のことを言うとだね、彼女の部屋に黒いマントと頭巾の人が入ってきたろう?横顔をちらっと見たんだけど、姫殿下らしかったから気になって…」 ギーシュの言い訳が終わるのを待ってからギーシュと別れた。 15分も待ち続けるとはこいつ、無意識ではあるがストーカーだな。このことを種にしたらこいつもギトーのような金づるに出来そうだ。 懐かしいヴェストリの広場に来た。ベンチに腰掛けるが夜中なだけあって誰もいなかった。 「友達…か。」 ルイズと姫を見て十年以上前、エジプトへ旅した時に得た仲間達…真に心の内を伝え合うことの出来た、掛け替えの無い親友達を思い出した。 帰ってこないのが二人と一匹、そして連絡を絶たれたのが二人。 いまや自分も帰れない仲間に入った。 若き希望の為に命を賭し…そして戦いに費やした人生は戦いの中で終わった。だが、もう戦わなくてすむとなるとホッとした所があった。心の安らぐことがほとんどなかったからだろう。 (もう闘いはいらない…心落ち着くような平和な生活がしたい…) 肉体が戻った今、心からそう願っている。長年会えなかった友人達にも会いたい。だがその願いは… 空を見るとそこには輝く月が二つ。別世界にいるという何よりの証明。それを見て涙を流した。 ここは別世界なのだ。自分の故郷も無い、知り合いもいない、孤独な世界…もう帰れないかもしれないと思うとますます淋しくなった。 「ミスタ・ポルナレフ…。」 不意に声をかけられた。顔を上げると素晴らしいハゲ頭をしたコルベールがいた。 「隣に座らせていただいてもよろしいですかな?」 「…」 ポルナレフは無言で頷いた。よいしょ、とコルベールが隣に座った。親父二人、あまりにも不愉快な光景である。 「みっともない所を見られたな…」 ポルナレフが切り出した。 「いやいや、誰でも泣きたいときはありますし、泣きたい時は泣くべきですぞ。」 「…そうか?」「そうですぞ」 ポルナレフとコルベールは笑いあった。親父同士伝わるものがあるのだろう。 「しかしこんな夜更けにどうなされた?」 「月が綺麗だったから散歩したくなってな…」 ポルナレフは嘘をついた。ルイズの部屋に王女がお忍びで来ているからとは言えないからである。 「私もですな。」 コルベールが空を見上げた。先程のポルナレフと同様、物憂げな表情をしている。ポルナレフはそれを見てきっと思い出したく無い過去があるのだろう、と思った。だから、それには触れないように返事をすることにした。 「へえ、意外だな。貴方がそんなにロマンチストだなんて…」 「はは…私のような者でもたまには月を見て散歩したくなる日もあります。」 「そういうものかな?」「そういうものです。」 ははは、と二人はまた笑いあった。笑い終わった後、しばらく二人は何も喋らずに月を眺めていた。だが、二人の間には友情という絆が確かに芽生えていた。 「ただいま。」 ポルナレフはコルベールと別れてルイズの部屋に帰って来た。 「遅かったわね。」 ルイズが多少嬉々とした様子で迎える。 「姫様は帰ったのか?」 「ええ。」「…ルイズ、何があった?」 ルイズの機嫌がやけにいいのが気にかかり、ポルナレフが尋ねた。 「姫様からアルビオンの皇太子様の持つ手紙を返して貰ってこいと言われたの。姫様から直々だし、すごい名誉よ。だから明日、早朝からラ・ロシェールへ行くわよ。分かった?」 そう言うとルイズは明日が待ち切れなさそうに布団を被った。それと対称的にポルナレフがまた女難か、と嘆いたのは言うまでもない…。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1460.html
一行はその日の夜中にラ・ロシェールの入口に到着した。 「…彼らは本当に先に行ったのかい?」 ワルドは自慢の使い魔であるグリフォンでも二人に追いつけなかったと思いこみ、ショックを受けて凹んでいた。 「あの…子爵…実は」 それを見たルイズは哀れに思い、ワルドに亀の事を話した。 「…そういう種だったのかい。」 「もしかして怒ってますか…?」 「いや一本取られたな、と思ってね。まさかそんな方法で着いてくるなんて思い付かなかったよ。 とりあえず町で一泊して明日朝一番の舟でアルビオンに向かうことにしよう。」 ワルドは笑いながらそう言い、グリフォンをラ・ロシェールの町に乗り入れた。 「道理で追いつけなかったし、見つかりもしなかったわけだ。なるほど、な」 それと同時刻、ラ・ロシェールの入口の崖の上に多数の傭兵達がいまかいまかと待ち構えていた。 金の酒樽亭で女メイジと仮面を被ったメイジの二人に雇われ、「ラ・ロシェールの入口でグリフォンと馬二頭を襲え」と言われたのだ。 そしてつい先程グリフォンが通過し、何人かが弓を構えた。これに続いて馬二頭が来たら矢を尽きるまで射続けるつもりだった。 と、そこへ仮面メイジが闇の中から音もなく現れた。 「作戦は失敗だ。」 「…はあ?どういう事だ、あんた?まだ馬は来てないぜ。」 「奴らは既に町に入った。次にやるべきことを指示するから全員一旦『金の酒樽』亭に戻れ。異論は許さん。」 そう言うと再び闇の中に姿を消していった。 傭兵達は仮面メイジの言うことが理解出来なかったが、そこは傭兵。ぶつぶつ言いながらも雇い主の彼の言うことに従い、崖を降りて行った。 一行はラ・ロシェールで1番上等な宿、『女神の杵』亭に泊まることにした。 「宿に入る前に二人に着いたことを伝えないと…」 ルイズはそう言うと亀の鍵を外した。 「二人共、宿に着いたわよ。」 亀の中から断りもなくいきなり引きずり出されたギーシュは恨めしそうにルイズを見て文句を言ったが、ワルドとルイズはギーシュの文句を華麗にスルーして宿に入ろうとした。 その時である。四人の前に一頭の龍が舞い降りた。 ワルドは咄嗟に杖を構えたが、ルイズとギーシュはその背中に乗っていた少女達に驚愕した。 「あんなに急いで何処に行くのかと思ったら、ラ・ロシェールって…アルビオンにでも行くつもりなの?」 「キュ、キュルケ!タバサも!なんでここに!?」 「後をつけてきた。」 パジャマ姿のタバサが本を読みながら短く答えた。 キュルケは驚いたままのルイズとギーシュを無視してワルドににじり寄った。 「お髭が素敵よ。あなた、情熱はご存知?」 ワルドはちらっとキュルケを見つめて左手で押しやった。 「あら?」 「好意は有り難いが、これ以上近づかないでくれたまえ。婚約者が誤解するといけないのでね。」 そう言ってルイズを見つめた。ルイズの頬が赤く染まった。 「なあに?あんたの婚約者だったの?」 キュルケがつまらなさそうに言うと、ルイズの後ろで何か考え事をしていたポルナレフに抱き着いた。 「ほんとはね、ダーリンが心配だったからよ!」 が、ポルナレフは無反応だった。キュルケが抱き着いてきた事を無視して何か別の事を考えていた。 「…つまんない」 キュルケは自分のアプローチに反応しない男二人に軽く失望した。 『女神の杵』亭の一階は酒場となっていて、その造りは貴族を相手にするだけあって豪華だった。テーブルは床と同じ一枚岩から削り出しでピカピカに磨き上げられていた。 ルイズとワルドが『桟橋』へ交渉に行っている間、彼ら以外はそこでくつろいでいた。 ギーシュとキュルケは他愛のない事をしゃべり、タバサは普段と同じく本を読んでいたが、ポルナレフだけ三人から離れてカウンターに座っていた。 「…果たして俺はどうしたらいいんだろうな…」 出されたワインに手をつけず、そう呟いた。 「なんだい相棒?なんか元気無いねえ」 鞘から僅かに出ていたデルフがいつもと同じ軽い口調で言った。 「いや、これから…俺はどんな『道』に進むべきなのかが気になってな…」 「『道』?」 「俺はここに来るまでずっと戦っていたんだ…妹の仇や100年の時を越え蘇った吸血鬼、世に蔓延る邪悪とかとな…」 「へえ。そいつあおでれーた。意外とすげえ人生送ってきたんだな。」 「ああ。だが、そのような『因縁』はこの世界にはない…俺は異邦人だからな。そんな俺がだ、この世界で戦いを続ける義務が、権利があるのか?まだ戦う事に意味があるのか?分からないんだ…全く、な。」 「…難しくて俺にはよくわかんねーけど、なんだい、相棒は戦う事に『理由』を求めてるのかい?」 「そうとも言えるし、違うとも言える。」 「?」 「ひょっとしたら『戦い』自体を俺はもう嫌っているのかもしれない…」 「おいおい、変な事言うんじゃないぜ、相棒。」 「いや、これはまじめな話だ。考えてみれば俺は今まで生きてきた内の半分は戦いや修業に費やしてきた…もう休みたいと考えても変じゃあない程な」 「でも相棒は…」 ポルナレフはデルフを鞘に収めた。 これ以上話したくなかった。ポルナレフは学院を発つ前に、この任務を終えたらもう戦いから身を退こうと考えていた。ルイズには少し悪い気もするが亀だけで使い魔は十分だろうから、自分はただの平民として暮らし帰る方法も自分一人で探そうと決めた。 だがデルフと話していて沸々と何かが沸いてきた。何かは分からなかったが、それは確かに今の自分の心に問いかけてきた。 それが嫌だった。これ以上話せば自分の決心が鈍る…そう思った。 ポルナレフはワインを煽った。酔い潰れて今の話を全て忘れるまで飲み続けようと… 「お客様の気持ち…よく分かりますよ」 店主はそれだけ言って空いたグラスにワインをなみなみと注いだ。 やがてルイズとワルドが帰って来た。 ワルドは席につくと、困ったように言った。 「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」 「急ぎの任務なのに…」 ルイズが口を尖らせた。 「あたしはアルビオンに行った事無いから分かんないけど、どうして明日は船が出ないの?」 キュルケの方を向いてワルドが答えた。 「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴェル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく。」 キュルケはふーんと納得したように頷いた。 「さて、じゃあ今日はもう寝よう。部屋は取った。」 ワルドは鍵束を机の上に置いた。 「キュルケとタバサは相部屋だ。そしてギーシュとポルナレフが相部屋…って彼は何処だい?」 キュルケがカウンターを指差した。そこにはワインを煽り続けるポルナレフの姿があった。近寄りがたい負のオーラが滲み出ている。 「…まあ、酔い潰れたら店主に運んでもらうよう頼んでおこう。 あと、僕とルイズは同室だ。婚約者だからな。当然だろう?」 「そんな、ダメよ!まだ、私たち結婚してるわけじゃないじゃない!」 しかしワルドは首を振ってルイズを見つめた 「大事な話があるんだ。二人きりで話したい」 貴族相手の宿、『女神の杵』亭で一番上等な部屋だけあって、ワルドとルイズの部屋はかなり立派な造りであった。ベッドを例にとっても、天蓋付きの大きなもので高そうなレースの飾りがついていた テーブルに座るとワルドはワインの栓を抜いて杯に注いだ。それを飲み干す。 「君も腰掛けて一杯やらないか?ルイズ」 ルイズは言われるままにテーブルについた。ワルドがルイズの杯にワインを満たしていく。自分の杯にも注いで、それを掲げた。 「二人に」 ルイズはちょっと俯いて杯をあわせた。かちん、と陶器のグラスが触れ合った。 「姫殿下から預かった手紙はきちんと持っているかい?」 ルイズはポケットの上から預かった封筒を押さえた。一体どんな内容なのか、そしてウェールズから返して欲しいという手紙の内容はなんなのか、ルイズにはなんとなく予想がついていた。 アンエリッタとは幼なじみである。彼女がどういう時にあのような表情をするのか、よく分かっていたからだ。 「…ええ」 「心配なのかい?無事にアルビオンのウェールズ皇太子から姫殿下の手紙を取り返せるのかどうか」 「そうね。心配だわ…」 「大丈夫だよ。きっと上手くいく。なにせ僕がついているんだから」 「そうね、あなたがいればきっと大丈夫よね。あなたは昔からとても頼もしかったもの。で、大事な話って?」 ワルドは遠くを見る目になって言った。 「覚えているかい?あの日の約束…ほら、君のお屋敷の中庭で…」 「あの池に浮かんだ小船?」 ワルドは頷いた。 「君はいつもご両親に怒られた後、あそこでいじけていたな。まるで捨てられた子猫みたいにうずくまって…」 「本当に、もう、ヘンな事ばっかり覚えているのね」 「そりゃ覚えているさ」 ワルドは楽しそうに言った。 「君はいっつもお姉さんと魔法の才能を比べられて、出来が悪いなんて言われてた」 ルイズは恥ずかしそうに俯いた。 「でも僕はそれはずっと間違いだと思ってた。確かに君は不器用で失敗ばかりしていたけれど…」 「意地悪ね」 ルイズは頬を膨らませた。 「違うんだルイズ。君は失敗ばかりしていたけれど、誰にもないオーラ…さっきの使い魔君みたいなんじゃなくて…何て言うかな、魅力、みたいなものを放っていた。 それは君が他人には無い特別な力を持っているからさ。僕だって並のメイジじゃ無い。だからそれが分かる」 「まさか…」 「まさかじゃない。例えば、そう、君の使い魔…人間の方しか見えなかったけど、彼のはただのルーンじゃない。伝説の使い魔の印さ」 「伝説の使い魔の印?」 「そうさ。あれは『ガンダールヴ』の印だ。始祖ブリミルが用いたという、伝説の使い魔さ」 ワルドの目が光った。 「ガンダールヴ?」 「そう。君も知ってるだろう?誰もが持てる使い魔じゃない。しかも亀まで呼び出した…つまり君はそれだけ力を持ったメイジなんだよ」 「信じられないわ」 「君はただ自分の力に気付いていないだけだ。きっと君はいつしか偉大なメイジになるだろう。そう、始祖ブリミルのように歴史に名を残すような素晴らしいメイジにね。僕はそう予感している」 ワルドは熱っぽい口調でそう言うと、改めてルイズを見つめた。 「この任務が終わったら僕と結婚しよう、ルイズ」 「え…」 いきなりのプロポーズにルイズははっとした顔になった。 「僕は魔法衛士隊の隊長で終わるつもりは無い。いずれは国を…いや、ハルケギニアを動かすような貴族になりたいと思っている」 「で、でも…」 「でも、なんだい?」 「わ、わたし…まだ…」 「もう子供じゃない。君は十六だ。自分のことは自分で決められる年齢だし、父上だって許して下さってる。確かにずっとほったらかしだった。婚約者だなんて言えた義理じゃない事も重々承知している。でもルイズ、僕には君が必要なんだ」 「でも…まだ私はあなたに釣り合うような立派なメイジじゃないし…もっともっと修行して…」 ルイズは俯いた。 「…君がそう考えているなら仕方が無い。その気持ちはよくわかる。取り消そう。今返事をくれとは言わないよ。君が君の言う『立派なメイジ』になるまで待とうじゃないか。」 ルイズは頷いた。 「それじゃあもう寝ようか。疲れただろう」 それからワルドはルイズに近づき、唇を合わせようとした。 ルイズの体が一瞬強張る。それから、すっとワルドを押し戻した。 「ルイズ?」 「ごめん、でも、なんか、その…」 ルイズはもじもじとしてワルドを見つめた。ワルドは苦笑いを浮かべて首を振った。 「急がないよ。僕は」 ルイズは再び俯いた。 こんなに優しくて、凛々しい、あの憧れだったワルドの気持ちはもの凄く嬉しい。 だけど気にかかるのはポルナレフのことだった。 使い魔とは言え人間、それも男なのだ。ワルドと結婚しても連れていけるのだろうか。それは出来ない気がした。 異世界から来たあいつはほっぽりだされた後、生きていく宛はあるんだろうか あのメイドや学院の使用人達、あるいはキュルケが世話してくれるだろうか?でも、呼び出したからには帰る方法を一緒に探してやる義務があるんじゃないか。それを無視するのは… そのような思いがルイズの心を前に歩かせないのだった。 翌日、ポルナレフは見知らぬ部屋のベッドの上で目覚めた。隣にはギーシュが寝ていた。 ぼやーとした頭で何処だここは?と思っているとドアがノックされた。 ふらふらした足取りでドアに向かい、鍵を外してドアを開けるとワルドが立っていた。 「おはよう。使い魔くん」 「…おはよう。 おお、そうだ。昨日は結局どうなったのか教えてくれないか?酒を飲んでたから全く聞いてなくてな…」 「ああ。まず出発は明日の朝だよ。明日じゃないと船が出ないらしくてね。」 「ほう…じゃあ今日は暇な訳だ」 ワルドが頷いた。 「そういうことだ。ところで君は伝説の使い魔『ガンダールヴ』なんだろう?」 「あ?」 「いや、フーケを尋問した時君の名前が出て来てね…きみに興味を抱き王立図書館で調べたんだよ。その結果『ガンダールヴ』にたどり着いた」 ポルナレフは二日酔いで頭がぼんやりしていてワルドが何を言いたいのか分からなかった。 「あの『土くれ』を捕まえた腕がどのぐらいのものだか、知りたいんだ。ちょっと手合わせ願いたい」 「手合わせ…」 「分かってるとは思うが、これさ」 ワルドは腰に差した杖を引き抜いた。 「もちろん二日酔いを治す薬は持って来ているよ。ほら。」 ワルドはポルナレフに透明な液体が入っている小瓶を投げて寄越した。 「引き受けてくれるね?」 「断る」「は?」 「手合わせなどやって怪我したりして明日からに響いたらどうするつもりだ」 ポルナレフはそう言うとドアを閉めた。ベッドの方を見るとギーシュがいつの間にか起きていて、こっちをじっと見ていた。 「…なんで断ったんだい?」「任務中だからな。仕方ないだろう」 「そうじゃないだろ?本当の理由は」「…どういう事だ」 「君と一度やりあったからね。何となく分かるんだ。君が今断ったのは心の深いところからやりたくないからじゃないか、てね」 「…気付いていたのか、小僧」 「で、何でなんだい?僕の申し入れは受けたのに」 「それは…もう戦いから身を退くことを決めたからだ。」 「身を退く?」 「ああ…ルイズにはまだ言ってないが、この任務が終わり次第、俺は隠者のような生活をしようと考えている」 ポルナレフは静かに続けた。「戦う理由が…因縁が…俺には無いからな…」 バキィ! ギーシュは魔法を使わず、素手でポルナレフを殴った。「な…!?」 「君は…!君は…!いつの間に誇りも主人も平気で捨ててしまうような屑みたいな人間になったんだ!因縁が無いから使い魔をやめるのかい!?」 怒りで声が震えていた。 「僕は…あの時君から言われた事を覚えている……『誇り高い男に月桂樹の冠を送る』と君は言った! 僕は…君を尊敬した!月桂樹を身につけなかったのは君にまだ劣っていると考えていたからだ!いつか…君に追い付いた時に堂々と身につけようと考えていた!なのに…君は…!」 ギーシュは鞄から月桂樹の花を取り出すとポルナレフに投げ付けた。 「君みたいな男にこんなもの貰うなんてむしろ恥だ!!」 そう言うとギーシュは扉を荒々しく開けて出ていった。部屋には呆然と床に座り込んだポルナレフだけが残されていた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/764.html
(あー、私ったら本当にご主人様失格だわ…) ポルナレフがキュルケの部屋で熱烈なアプローチを受けている時、ルイズは一人部屋で自責の念にかられていた。 あの時、亀とだけ契約したつもりが、何故かポルナレフも一緒に契約されルーンが刻まれてしまった。 とすれば直接契約していないとしてもポルナレフも亀同様に自分の使い魔のはずなのに自分はポルナレフだけを追い出した上にそのポルナレフに、使い魔は亀だけで良い、と言った。 実際本人も嫌々していたようだし、自分も平民付きより亀だけの方がずっと使い魔らしくていいと思う。 しかしポルナレフが言った大切な物が何かは知らないが、亀ごとそれを取り上げ、全く行く宛も無いのに追い出してしまうのは外道以外の何でもない。 それを本当にやってしまうとは自分はなんて最悪な御主人様なんだろうか。彼に謝って、亀を返そう…。 そう決意するとドアを開け、廊下に出た。 暗くなっていたので、とりあえず誰かに探すのを手伝って貰おうと考えたその時、キュルケの部屋のドアをぶち破って男が出て来た。 紫の眼帯、ハートが半分に割れたような金の耳飾り、そして立てた銀髪。 ルイズが探そうとしていたポルナレフ本人だった。 更に部屋の中に下着姿のキュルケが見えた。 そしてポルナレフもキュルケもほぼ同時にルイズに気付いた。 時が止まる。 「あああ、あんた達何やってんの…?」 ポルナレフは激しく後悔した。もっと早く逃げるべき、いや、そもそも入るべきじゃなかったと。 「こ…これはだな、その…俺がそこの小娘の使い魔に連れられてな、中で立ち話していただけだ。何もしていないぞ。な?」 ポルナレフはキュルケの方を向いて、弁護を要請したのだが、 「いやぁ、あんたの使い魔、中々情熱的だったわ。結構ガッシリした体つきしてるし期待してたけど、期待以上だったわ。また貸してね。」 キュルケはそう出鱈目を言うと、部屋に戻り服を着ると呆然としている二人を置いてどこかへ去っていった。おそらくドアの代わりになるものを探しに行ったのだろう。 「まさかとは思うが…あいつの言ったことを信じてないよな?俺はこう見えても30過ぎてて、あんな小娘の色仕掛けになんか…」 ポルナレフは必死になって弁明した。 「…もういいわ、見苦しい。言い訳なら部屋で聞く。」 そう言って踵を返し、部屋に戻って行った。明らかにキレていた。 それから二時間ほどルイズの部屋から、鞭が空気を裂く音、それをナイフで切り裂く音、ルイズの罵声、ポルナレフの悲鳴に似た叫びが響いてきた。 「ハァ……つ、つまりあんたは…ハァ…単に誘惑されてた…ハァ…だけって事?」 ようやくルイズは息を切らせながらも納得したかの様に言った。ちなみにルイズの周りには切られた鞭が散乱している。 「ハァ…ハァ…そういうことだ…。」 ポルナレフは憔悴しきった様子で言った。たとえガンダールヴでも二時間も切り合いしてたら疲れたらしい。(本人は知らないが) 「ハァ…ハァ…!それならいいわ。しかしツェルプストーめ…私の使い魔にまで手を出すつもり!?」 ルイズは苛々した様子で爪を噛んだ。 「やれやれ、なんだ?『まで』って?なんか前にもあったのか?」 ポルナレフはルイズに尋ねた。 ルイズはポルナレフに自分の実家ヴァリエール家とキュルケの実家ツェルプストー家の数世代に及ぶ奇妙な因縁を話した。 「…という訳よ。ただでさえ国境を挟んで隣あってるのに、そのせいでヴァリエール家とツェルプストー家は有り得ないぐらい仲が悪いの。」 「そのせいであんなに怒ったのか。てっきり独占欲かと思ったがな。ほら、飼い犬が他の人になつくとムカつくって奴だ。」 ポルナレフがうんうんと頷く。 「その通りよ。だからあんたも他の女だったらいいけど、ツェルプストーの女だけは駄目よ。あんたは私の使い魔なんだからね!」 ルイズはズビシッとポルナレフを指差した。 「分かった分かった。まあ、女遊びはもうとっくの昔に卒業したんだがな…」 ポルナレフは若い頃は遊びほうけていたが、ディアボロに追い詰められて以来隠者みたいな生活を送っていたため、欲をセーブ出来るようになっていた 「分かればいいのよ。」 ルイズはそう言うと大きな欠伸をし、ネグリジェに着替えだした。もう見慣れた光景なのでポルナレフは無視してとっとと寝ようと藁の方に近寄った。 「あ、そうそう。ポルナレフ、これ。」 ルイズが何かを投げて寄越した。それは亀の鍵だった。 「…どういう風の吹き回しだ?」 「あんたさっきその中に大切な物があるって言ったでしょ?だから返してあげるわ。 それと中で寝ることも許してあげる。そのかわり明日その藁を捨ててきなさい。」 「ああ…そういうことか。すまないな。」 もっとも鍵を取られていた理由がわからんがな、とポルナレフはひそかに思った。 「なんであんたが謝るのよ。むしろ…私こそ亀だけでいいとか言って…部屋から追い出して…その…ごめんなさい…」 ルイズは赤面しながらぼそぼそとだが、ポルナレフに謝った。 ポルナレフはそんなルイズの態度に一瞬ポカンとしたが、すぐに微笑んだ。 ルイズが恥ずかしがりながらも精一杯謝るその姿は、ポルナレフにはまるで妹か娘の様で実にほほえましかった。 そしてその晩、ポルナレフは久しぶりに亀の中のソファで熟睡した。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/otoya/pages/41.html
==白銀(はくぎん)== ホームページ http //hakuginn220.web.fc2.com/index.html 生年月日 1992/2/20 (18) DTM 2008/3から 性別 男 DAW SONAR ジャンル 色々 楽器 ピアノ 作品例 http //www.nicovideo.jp/mylist/10022218 Twitter hakuginn220 コメント どうも白銀といいます。 民族音楽やジャズなんかが結構好きで作ろうとしてたりしてます。 が、実際はそんなうまく行くはずもなく。色々よくわからない方面ばっか作ってる気がします。 アップテンポ厨なのにダウンテンポばっか作ってるのがもはや現実。 基本どんな音楽でも大好きなので色々挑戦したいです。 東方アレンジばっかやってきてたけどオリジナル曲にも興味が出てきてるこの頃。 サークル参加はまだだけど一応White Fallsってサークル名でそろそろCD作りたい こぁかわいいよこぁ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/997.html
ポルナレフが亀の中で寝ていると、いきなりルイズに叩き起こされ、「三分以内に準備しなさい!ただし質問は許可しないィィ!」と言われた。 やけにハイテンションだな、と思いつつも亀を取り上げてルイズに付いて行くと城門に着いた。 近くの馬車の周りにキュルケ、タバサ、ロングビルの三人がいた。 「おい、一体な…」 「これで揃ったわね。それじゃ行きましょう。」 ポルナレフを完全に無視してルイズが言うと、四人が馬車に乗った。御者はロングビルがやるらしい。 ポルナレフも渋々とだが、一行に従い亀を持って馬車に乗り込んだ。 「いい加減教えろ。今から何処へ行くんだ?」 ポルナレフがやけにどすの聞いた口調でその場にいた全員に尋ねた。 「あら、ヴァリエール、あなたダーリンに何も言わなかったの?」 キュルケがルイズを呆れた目で見た。 「だ、だだだだって早くしないと逃げられちゃうじゃない!」 ルイズが慌てて言った。 「まあいいわ、私が教えてあげるわ。」 ポルナレフはキュルケから宝物庫の壁に穴が開けられ『破壊の杖』と呼ばれる代物が盗まれた事、 そしてその犯人が『土くれ』のフーケであり、その隠れ家もロングビルによって突き止めた事を聞かされた。 「何をしに行くのかは分かった。だが、何故貴様らなんだ?フーケはトライアングルで巨大なゴーレムを使うらしいじゃないか。 勝機はあるのか?貴様らのような年端も行かない生徒に。それに行かせた教師も教師だ。止めるべきじゃないのか?」 「私達は志願したの。しかも一番始めに志願したのはルイズよ。」 ポルナレフがジロリとルイズを睨む。 「それにあたしとタバサを舐めちゃ困るわ。私達は生徒だけど、クラスならフーケと同じトライアングルだし、タバサはシュヴァリエなのよ。」 「シュヴァリエ?」 「そう。位としては低いけど、他の爵位と違って純粋な実績でしか取れない爵位なの。タバサの年で持ってるなんて普通有り得ないわ。」 なるほど、この二人がいれば勝機はあるということかとポルナレフは感心してタバサの方を見ると、タバサは本を読んでいた。 少しは緊迫感を持て、と心の中でつっこんだ。 「そういえば前にミス・ロングビルは土のラインと聞いたし、安心してもいいか。」 「へぇ!そうなんですか!?」 キュルケが驚いてロングビルに聞いた。 「え?ええ。ミスタ・ポルナレフの言う通りですわ。」 いきなり話し掛けられたロングビルは少し動揺しながら答えた。 さて、勿論だがそのやり取りに不快を感じているのが一人いた。 ルイズ・(中略)・ヴァリエールである。 (なんで使い魔の癖にあたしを無視して他の三人を頼りにしてるのよ!見てなさい、この可憐なご主人様がフーケなんてギッタンギッタンのボッコボコにしてやるんだから!) なんだか某区のがき大将に近いことを思いつつ、到着をいまかいまかと待ち構えていた。 そんなルイズをポルナレフは「何故魔法も使えないのに志願したのだ」と小一時間問い詰めたかったが場所が場所なので睨み付けるだけで我慢した。 数時間後、馬車は森の中で止まった。そこから道案内役であるロングビルの意見に従い森の中を歩いて行くと開けた場所に出た。 そこにはぽつんと一軒の廃屋があった。 ロングビルいわく、廃屋はフーケの隠れ家であそこにフーケがいるらしい。 「…さて、どうするべきかな。」 五人は頭を寄せて話し合った。つーか敵陣の目の前で作戦会議とかするなよ。馬車の中で出来たろ。 決まった作戦は一番動きが素早いであろうポルナレフが先行して内部を確認し(「これ位しか役に立てないからな」Byポルナレフ) フーケがいたら挑発、そして土の少ない廃屋内から出て来た所をゴーレムを生成する暇を与えず全員で攻撃するという物だった。 いなかったら中を調べて破壊の杖だけでも取り返す次第だ。 ポルナレフは木陰に隠れて亀からレイピアを取り出すと、(「俺を使ってくれ」とか聞こえた気がするが無視した)ルーンが光だし体が軽くなるのを感じた。 それと同時にチャリオッツを発現させる。視覚が無いのがちょっと残念だが、本体である自分より素早く対応できる。 息を殺し、なるべく慎重かつ素早く廃屋に近付いていった。 側まで来るとさっと壁に背中を張り付け、窓から中を覗いたが中に人の姿は見当たらなかった。 ポルナレフは四人の元まで戻るとその事を報告し、今度は五人全員で小屋に近付いていった。 「罠はないみたい。」 タバサが探知魔法を使い罠が無いのを確認すると、ルイズとロングビルを見張りとして残し、三人は中に入って勇者よろしく廃屋中を物色しだした。 やがてタバサがチェストの中から破壊の杖を見つけた。それを見たポルナレフが驚愕し、 「おいおい、嘘だろ?承太郎!」 と、何の意味もないが何となく鼻を押さえて大声をあげた。 「ジョータロー!?」 タバサが何故か目を輝かせて尋ねた。 「あ、いや。なんでもない。」 「………そう」 タバサが何故かしゅんとなった。 (おいおい、これが『破壊の杖』なのか…?確かに破壊もするし、杖にも見えるが…) そんなタバサを気にもかけずポルナレフがそう思っていると、 「きゃああああああああああッ!」 外でルイズの叫び声があがった。驚いて三人が外に出るとそこには身の丈30メイルはあるであろう土のゴーレムがいた。 「ゴーレム!」 ポルナレフはキュルケがそう叫ぶより早くルイズの元まで駆け寄り、 抱き上げるとゴーレムから距離を取った。その時、ロングビルがいないことに気付いた。 「ルイズ!ミス・ロングビルはどうした!?」 「ミ、ミス・ロングビルなら森の中を偵察してくるって…」 ち、とポルナレフは舌打ちした。 (もし仮にフーケと遭遇したら勝てないだろうに…!何故森の中に一人入って行ったんだ!?勝てる見込みなんて…) ポルナレフはロングビルの無事を願った。 だが、他人の心配などしてはいられない。本体であるフーケが見当たらない限りチャリオッツなんて土のゴーレムには無力である。 「退却」 タバサはそういうと口笛を吹いてシルフィードを呼び出し、四人は急いでそれに飛び乗った。 四人が乗るとシルフィードは高度を上げてゴーレムの射程から外れた。 「さて、やはり俺達にあのゴーレムを止める術は無いようだな…。」 シルフィードの背中でポルナレフが言った。 既にキュルケとタバサがゴーレムに試し撃ちをしたが、実力の差のせいか無駄だった。 「俺は一旦帰るべきだと思う。」 この面子では到底勝てはしない、だから破壊の杖だけでも持ち帰るべきだ、というのがポルナレフの意見だ。キュルケやタバサもそれに同意する。 「ちょっと!ミス・ロングビルはどうするのよ!」 ルイズが怒鳴る。 「ミス・ロングビルは俺達の為に犠牲になった…そう学院には伝えよう。」 ポルナレフは残念そうに言ったが、ルイズはそれに反対した。 「ミス・ロングビルは死んだと決まった訳じゃないわ!見捨てる事なんて出来ない!」 「ルイズ、悔しいけどダーリンの言う通り退いた方がいいわ。ミス・ロングビルを探し出すなんて無理よ…」 「ここは退くべき。」 キュルケとタバサもポルナレフと同じく退くことを主張した。そんな三人に対しルイズは 「もういい!あなたたちだけで帰ればいいわ!私だけでフーケを倒すから!」 と言うとシルフィードから飛び降りた。 「待て!はやまるな!」 ポルナレフは思わず叫ぶと同時にタバサが『レビテーション』をルイズにかけた。 ルイズが地面に軟着陸し、ゴーレムと向かい合う。 そのゴーレムの肩にはいつの間にかフード付きのローブを身に纏った人の姿があった。 「あ、あれはまさか『土くれ』のフーケ!?」 キュルケがそれを見て叫んだ。 「あら。お嬢ちゃん、まさか一人で私の相手をするつもり?」 フーケはルイズが一人風竜から落ちてくるや、杖を構えたのを見てせせら笑った。 「わ、私だってやる時はやるんだから…!」 ルイズの声が震えているのに、ますますフーケは笑った。 「お嬢ちゃん、勇気と無謀は違うのよ?お嬢ちゃんのはただの無謀よ。風竜の彼等みたいに大人しく尻尾を巻いて学院に帰った方が身の為じゃなくて?」 「ふざけないで!」 ルイズは怒鳴った。 「まだ…ミス・ロングビルがまだ森の中にいるのに私達だけで帰れる訳無いでしょう…?生死も分からないのに…死んだとか決め付けて…」 ルイズは精一杯声を出して言った。 「…あーお嬢ちゃんの言いたいことは分かったよ。それじゃあそのロングビルの後を追わせてやるよ!」 フーケのゴーレムは足を上げるとルイズを踏み潰そうとした! ルイズはそれに杖を向け『ファイアボール』を唱えたつもりだったが、いつも通り爆発が起こり、ゴーレムの足は粉々になった。 フーケは少し不快感で顔を歪ませたが、気を取り直して足を再生させるとまた踏み潰そうとした。 ルイズは再度『ファイアボール』を唱えようとしたが、 「痛ッ!」 手に衝撃が走り、杖を取り落としてしまった。 見ると地面から小さなゴーレムの腕が生えていた。それがルイズの手から杖を叩き落としたらしい。 「はッ!二度も同じ手を使うもんかい!」 杖を拾うか?と考えた時には既に遅かった。ゴーレムの足がルイズのすぐ上にまで来ていたのだ。 ゴーレムの足が錬金により鉄に変えられる! (やられるッ!) ルイズは目を閉じ、無駄ではあるが、自然と頭を手で庇おうとした。 ズゥン… ゴーレムの足がルイズを踏み潰した。 「あのお嬢ちゃん…まさか失敗魔法であたしのゴーレムの足を砕くとはねぇ…ちょっと恐れいったよ。」 フーケが独りごちた正にその時、 「いや、まだだ。まだ死んではいない…」 いきなりゴーレムの足元から声がした。 「……?」 「貴様のお陰で助ける事が出来た…貴様が『土』から『鉄』に変えてくれたお陰でな…」 「……?」 フーケはゴーレムの足を退けさせた。 「!な!何故あんたが!?」 ゴーレムが足を退けたそこには気絶したルイズ以外に『もう一人』いた。『いるはずの無いもう一人』は破壊の杖を携えたポルナレフであった。 「『土』や『砂』は切れない。それは粒子が細かいからだ。だから切ってもすぐにくっついてしまう… だが、『鉄』や『岩』ならチャリオッツでたやすく切れる…!」 ポルナレフはギロリとフーケを睨み付けた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/39819.html
登録日:2018/06/24 (日) 10 40 00 更新日:2024/08/28 Wed 17 37 49NEW! 所要時間:約 6 分で読めます ▽タグ一覧 かぐや様は告らせたい かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 アホ ガリ勉 シスコン ジャイアンリサイタル ポンコツ モンスター童貞 ロマンチスト 主人公 兄 努力の人 努力の天才 努力は才能を凌駕する 努力家 古川慎 大伴御行 天才 奥手 寝不足 平野紫耀 死にかけのアルパカ 毒親育ち 猫派 生徒会長 発言が意外と乙女 目つきが悪い 秀知院学園 結構暗い過去持ち 虫嫌い 貧乏 資格マニア 近眼 運動音痴 運命に挑む脇役 鉄腕アルバイター 音痴 頭のいいバカ 高校生 四宮がどうしても付き合ってくれって言うなら 考えてやらんこともないがな……! 『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の登場人物。 本作の主人公の一人。 CV:古川慎 演:平野紫耀(King&Prince) プロフィール 性別:男性 学年・クラス:秀知院学園高等部2年B組 生徒会役職:会長 誕生日:9月9日 血液型:O型 趣味:天体観測、音楽鑑賞(ラップ) 身体的特徴:眼つきが悪い 名前の由来は『竹取物語』の登場人物で、かぐや姫への求婚者の一人・大納言「大伴御行」。 大伴御行は「龍の頸の珠」を持ってこいという難題に対し、正面からドラゴン退治に向かって撃沈した。 このある種の正々堂々した部分が白銀に反映されている。 原典では結局かぐや姫を手に入れることができなかった脇役の一人に終わったため、本作では「運命に挑む脇役」と言える。 人物 秀知院学園の歴史上3人目の混院(*1)の生徒会長。 学内でも少数派の一般家庭、更に言ってしまえば貧乏家庭の出身。 近眼と慢性的な寝不足のため眼つきが悪く、自覚なしに常に威圧感を周囲に振り撒いている。 髪の色は明るくビジュアル上は金髪だが、あくまで漫画的表現のためで純日本人。 口癖は「それな!」 学業に特化した「努力型の天才」。 学年1位、全国模試トップレベルの学力を持ち、事務処理能力も非常に高い。 ただし、「努力型」とあるように天賦の才がある訳ではなく、毎日10時間の勉強をはじめとした死に物狂いの努力で学力を維持している。 学年1位であることに王者として筆舌しがたい凄まじいプレッシャーを感じており、試験直前にはペンが持てなくなる程の謎の震えに襲われることもある。 中学時代から学業にはそれなりに優れていたようで、父親が(息子に無断で)願書を提出し、補欠合格に滑り込む。(*2) 当初はあまり乗り気ではなかったが、奨学金制度で家の負担も軽くなるという考えから入学を決心。 しかし、入学当初は純院と混院の摩擦によって荒れており、影で「お高く止まったボンボン共」「金持ちがそんなに偉いのか」と悪態を吐くような有様だった。 そんな折に生徒会に勧誘され、「氷のかぐや姫」と呼ばれていたかぐやと出会い学業に励むようになる。 勉強だけに留まらず一種の努力中毒で、数少ない空いた時間を使ってアルバイトを掛け持ちし、資格試験の勉強も行っている。 アルバイトは社会経験の一つと考えており、一つの職場に長くは勤めない。 資格については現在取得が判明しているものは 漢検2級 英検準1級 危険物取扱(乙) ひよこ鑑定士(*3) 小型船舶免許(*4)。 激務の生徒会長職と勉強とこれらの掛け持ちのため、いつ寝ているのか分からない生活を送っている。 この過激スケジュールをこなすためカフェインの力に頼っており、3時間おきに接種しなければ電池切れを起こして唐突に寝てしまう。 上述の通り家庭が貧乏なので、通学にはママチャリを使って往復2時間(距離で15km)も掛けている。 バイトの収入も全部で月10万程度あるが、全て家計に入れている。 普段の食事も質素で毎食必ずもやしが出る模様。 また、母親が出奔してからは家の台所を預かっており、料理は得意(ただし生きた魚は触れない)。 「朝から夕方までの学校(登校1時間+授業がおそらく6時間くらい+生徒会活動2~3時間+帰宅1時間)で10~11時間」 「毎日の勉強で10時間」とのことなので授業との差分を考えると「家庭学習4~5時間」 「アルバイトで数時間(明確な時間が不明であるが、経済状況を考えればそれなりに働いている可能性が高い)」 家事や食事、歯磨きや風呂などもある。 後に明かされた1日のスケジュールによれば通常時の睡眠時間はおよそ3時間。 「(藤原との特訓がある日は)朝や放課後に時間を割いている」ことを考えると 睡眠時間が短いどころか、日によっては寝ていない可能性すらあり得る のだが、それでいて(目つきは悪いが)基本的に元気という異常なタフネスを誇る。 プライドが高く、一部病的な所があるものの、それらを除けば善良な性格。 困った人を放っておくことを良しとせず、相談を持ち掛けられれば全力で応えようとする。 意外にも趣味はヒップホップで、ラップに関しての造詣は非常に深い。 しかし、彼自身のラップの腕は下記の弱点が祟り壊滅的。 また、天体観測が好きでロマンティストな一面を持ち、テンションアゲアゲでキマってしまうと恥ずかしい発言を連発する。 そして冷静になって黒歴史認定するまでがお約束。 実はキザな台詞がかぐやに抜群に効いていることに気付いていない。 女々しい部分もあり、渚曰く「発言が意外と乙女」。 基本的に温厚だが、名前が女っぽいことを気にしており、「御行ちゃん」と呼ばれるとマジギレする。 周囲からは天才である他に、 「煩悩などない」 「恋愛も百戦錬磨」 「振られたことがない」 等と勝手に思われている(告白したことがないので、振られたことがないというのは一応事実ではある) 実際は年相応にスケベな面を持ち、初恋がかぐやなので恋愛経験も皆無。 ただし、これまでラブレターを貰ったり、好意を寄せられることは何度もあったため「モテる」という自信ばかりが先行してモンスター童貞と化している。 一見完璧超人だが実は弱点だらけで、それらを並々ならぬ努力と藤原による弱点克服トレーニングで補っている。 以下はその一例。 勉強はできるが機転・発想が重要な謎々は苦手。 (前述の通り)化け物じみた体力を持ち、足も速いが、球技となると奇天烈な動きしかできない運動音痴。 「ナマコの内蔵」「ジャイアンリサイタル」と表現され、藤原には「私の交際相手の条件に音痴じゃない人が加わった」と言わしめた程の致命的な音痴。 体育祭プログラムのソーラン節を踊ると「もがき苦しむ人」にしか見えない程リズム感覚が皆無。 小学生時代の経験でゴキブリを見ようものなら立ったまま気絶する程の虫嫌い。 非常に視力が悪い。視力チェックをしたところ0.1未満。その癖普段から裸眼で過ごしている。 正直、これらの克服に付き合ってくれた藤原にもっと感謝すべきである。 また、努力した範囲から少しでも外れると途端に対応できなくなり、酷い時には克服したはずのラスボス同士が悪魔合体して復活することもある。 弱点にぶち当たり奇行を繰り返してぶっ倒れる様子を周囲からは「死にかけのアルパカ」と表現されている。 しかし、克服できたものについてはものの数日で人並み以上にまで技量を向上させており、「さすがは努力の天才」とでもいうべき成長ぶりを見せている。 加えて、不器用という訳ではなく、ヨーヨー・独楽・お手玉など古めかしい遊びをやらせたときは悉く高い技術を披露しており、センスの問題であると思われる。 白銀御行最大の弱点 彼の自室には夥しい程の数の自己目標が張られている。 病的なまでに「自分は優秀な人間である・天才である」と思い込むことで精神の安定を図っている彼にとってこうした自己目標の山は即ちそのまま多数の弱点を抱えているという白銀御行の重大な欠陥そのものと言っても過言ではない。 そしてこれらの真ん中に張られている目標こそが「四宮の横に立てる男になる」という原初の誓いである。 ちなみに妹の圭もこの狂気じみた光景に引き気味で、父親は若干の罪悪感を抱えている。 かぐやに好意を抱いているがプライドの高さ故に素直になれず、彼女から告白するよう腐心するようになってしまった。 ただし、かぐやと違って自分の恋愛感情についてはしっかり認めている。 かぐや同様、自分で考えたアプローチに強い好意を感じさせるようなものがあれば「お可愛いこと……」と蔑まれる様子を思い浮かべる等、恋愛において卑屈かつ奥手。 つまるところやっぱりポンコツ。 頭脳戦・心理戦に長けたかぐやの策略を見抜いて対抗し、逆に自分から攻勢を仕掛けているが、結局ほとんど関係は進展していない。 2年2学期が半ばを過ぎた頃、生徒会長特典として得た秀知院理事会推薦状を使い、スタンフォード大学への海外進学を決定。 残りの高校生活でかぐやと交際するために、自ら告白する期限を定めて今まで以上の覚悟で恋愛頭脳戦に挑む。 その結果は…… 迎えた文化祭。彼は「ウルトラロマンティック作戦」を決行。様々な策略を用いて雰囲気を作り出すと、校舎の屋上でかぐやにスタンフォードに一緒に来てくれと頼む。 (実質的な)告白を受け入れそのままキスまで行った二人だが、その後かぐやは急に(氷)になってしまい対応に苦慮する。 かぐやは白銀が「自分」を全て出していないことに気付いてしまい、そしてそれはかぐやも同じだった。 そしてかぐやは自分の汚点たる(氷)の側面でいることで白銀に自分の全てを見せることとした。好きな人には全てを見せることが誠意だと考えたからである。 しかし、白銀は逆に好きな人にこそ弱点を見せたくないと考えており、クリスマスイブの日に遂に互いの認識の違いが発覚してしまう。 例によって意固地な二人だが、今回プライドを捨てられないのは白銀だけ。しかしそのプライドも自分がかぐやの為だけに用意したプレゼントでへし折られてしまう。 白銀がかぐやに贈ったプレゼントは高級けん玉。見栄を張ることなく直感で選んでしまったものであり、言うまでもないが白銀からしたら汚点の一つと言ってよい。 しかしかぐやは大爆笑したものの白銀に幻滅することはなかった。 そうしてかぐやは白銀の全てを受け入れることを誓い、彼もそれを受け入れた。 その答えを聞いたかぐやは箱の下地の布をリボンとして結び、(氷)から元の彼女に戻った。 冬休みのある日、今度はかぐやからのアタックを受けてOKした白銀。 こうして恋愛争奪戦の結果人生の勝者となった二人なのであった。 交友関係 四宮かぐや 初恋の相手。 両想いなのだが、お互いプライドが高く恋愛に関する思考レベルが小学生並なので関係がなかなか進展しない。 当初は高を括っていたが、結局関係が進展せず覚悟を決めることになる。 告白が恥ずかしいということ以外にも「家柄・その他要素で遥か高みにいる四宮から求められる立場にならなければ対等ではない」という考えがあった。 そもそも白銀が生徒会に入り、会長にまで上り詰めたのも「憧れの四宮と並び立ちたい」という一心によるもの。 学業成績のみ全戦全勝であるが、裏を返せば勉強でも負けてしまえばかぐやが手の届かない所に行ってしまうと感じている。 定期試験でのプレッシャーの大部分はこの恐怖からきており、学年順位が張り出される度にトイレで勝利の雄叫びを上げている。 藤原千花 女友達兼母親。 女性としては見ておらず、「珍獣」「奇天烈」とキワモノ扱いしている。 間接キスをしょっちゅうしているがお互いに恋愛感情としての好意は全くない。 接しているうちに藤原が母性とも独占欲とも取れる奇妙な感情を白銀に抱き始めているため少しややこしくなってきた。 その気安さも手伝ってか弱点克服に毎回駆り出し壮絶に苦労させている。 書記としての能力が今一つな藤原を生徒会役員に指名した理由は未だ不明。 石上優 後輩。 年下の友達という認識で、学内外問わず一緒にいることが多い。 石上が引き籠っていた頃その原因を生徒会で調査、自ら家庭訪問して真相の推理と現況を伝えて部屋から引っ張り出した。 このため石上からは非常に慕われている。 伊井野ミコ 後輩。 第68期生徒会会長選挙ではライバルで、最後の演説での論争で信頼を得る。 しかし、その後異常なまでの間の悪さでかぐやとのあれやこれやを目撃され、一転してケダモノ扱いに。 現在では誤解が解かれたので尊敬されるようになった。 早坂愛 同級生。 「早坂愛」としての関わりは殆どないが、四宮家の使用人「スミシー・A・ハーサカ」としては面識がある。 かぐやに煽られた早坂から一度誘惑されるものの告白を断り、その後合コンで一緒になった際に素性の一部を打ち明けられ「普通の女友達」になった。 女友達になって以降 白銀とガンガン距離を縮めており、それをネタに早坂はかぐやをからかっている。 妹の圭の中では「お兄の好きな人はハーサカさん」となっているのでこれまたややこしい。 田沼翼 友人。 彼からの恋愛相談を受けてアドバイスした結果、奇跡的に告白が成功。 その後もちょくちょく恋愛相談をされるが殆どが惚気話なので殺意を向けている。 一応クラスメイトのハズなのだが、長いこと「柏木の彼氏」と名前登録されていた。 白銀圭 妹。 母親が蒸発した事で「自分が母代りにならねば」と意識した結果、過干渉が過ぎて反抗期を招く。 ここ数年は兄妹として朗らかな会話をしたことが殆どない有様。 ただ圭にとっては「友達に見せつけたい自慢の兄」であり、白銀がお出かけの際は圭による私服チェックが入る。 四条眞妃 女友達。 泣き崩れていた眞妃の頭を意図せず踏みつけてしまった結果交友が始まった。 自分が失恋の原因であるにもかかわらず眞妃への協力を約束してしまう。 かぐやと似ていることを感じ取って「可愛い」と評している。 龍珠桃 女友達。 白銀が天体観測好きである点や、後述の理由から「四宮かぐやの無理難題」シリーズに関わってくると読者から推測されている。 それ以外にも天文部の部長であり、秀知院学園VIPであり、難題女子でありと物語としては結構なキーパーソン。 第66期生徒会 会計の同期(白銀は当時庶務)であり、白銀とは少なくとも「あいつ」と気軽に呼び会える。 ついでに白銀に大きな借りがあるらしく、所々でこき使われている。 白銀が今の病的なまでの努力家になる前の一面やなった背景を知っているので結構気安い関係。 白銀の過去編(アカ先生曰く『かぐや様ゼロ』)における白銀のヒロインとされている。 尚かぐや様ゼロが本編で描かれるかは未だ不明。 名前の由来は原典で大伴御行が手に入れるべき宝「龍の頸の玉」。 原典では手に入れられなかったばかりか、龍神を怒らせてしまい、大伴御行は人前に出られる顔面では無くなってしまった。 四条帝 友人。 当初は彼に全国模試1位を攫われたため一方的に恨んでいたが、3年生になっていざ対面すると彼も白銀を意識していたことが判明し一転し気の置けない仲になった。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] ラブコメの男主人公の中じゃ一番好きかもしれんキャラだわ -- 名無しさん (2018-07-01 01 12 18) かぐやさまという正妻いるけどハーサカと藤原書記と天文部部長とも向こうからフラグ立ちそう -- 名無しさん (2018-09-13 19 06 34) ラブコメ主人公としてだけじゃなく、少年漫画全体見てもかなり上位の好感度主人公。こんな男になりたい人生だった。 -- 名無しさん (2019-01-25 16 56 33) 勉強以外はポンコツで努力して克服する…のだけど、克服したそれらが基本的に平均よりハイレベルになってるように見える。初期値は異常に低いけど成長率が異常に高い、まさに大器晩成な男 -- 名無しさん (2019-01-27 15 42 53) ときメモ系主人公だわぁ、必死に努力して女の子に振り向いてもらうっていうのがドンピシャ。好きな子の為に努力する会長のかっこよさは男も惚れるわこんなん -- 名無しさん (2019-02-23 01 43 54) 母親が気になる せめて妹だけでも連れてけよw -- 名無しさん (2019-02-23 23 21 28) 会長の特訓前の歌のレベルがジャイアン未満で草。アレより酷いってどういうこと? -- 名無しさん (2019-03-21 15 39 07) 桃ちゃんが思った以上に白銀と関わり深いし、白銀の理解者っぽいぞ。これは藤原ママピンチ。 -- 名無しさん (2019-05-09 00 16 21) 過去が重い…重い… -- 名無しさん (2019-05-09 08 53 40) なんというか、過去以上に抱えているものが重すぎる。部屋がガチでヤバい。 -- 名無しさん (2019-05-16 21 18 16) 以前はかぐや様と連絡するだけでドギマギしてままならなかったのに、今では長通話でイチャイチャする仲に… -- 名無しさん (2020-05-02 11 26 41) 会長のとこ毎日10時間の勉強って書いてるがデタラメだろ -- 名無しさん (2020-06-13 23 31 03) ↑に書き忘れ。63話のスケジュール表みても、朝起きて勉強してたとしても授業以外の勉強時間は多くても5時間程度だぞ -- 名無しさん (2020-06-13 23 35 45) ↑授業と合わせて -- 名無しさん (2020-07-25 03 53 34) ↑誤送信すまん。授業と自宅の勉強合わせて10時間だと思うよ。生徒会業務、家事、月10万分のバイトこなしてるんだから自宅勉強だけで10時間は物理的に無理でしょ -- 名無しさん (2020-07-25 03 59 00) 会長、あんたの意思は鋼より硬いさ。でも、鋼を砕く手段が無い訳じゃないんだ…… -- 名無しさん (2021-05-20 17 52 25) どうにもね、一瞬、しろがねぎんこう、と読みそうになってしまうのだった。 -- 名無しさん (2022-03-06 01 50 32) 近くのスマホすらよく見えないとかいってたのによく石上くんとゲームできたなw -- 名無しさん (2024-02-24 20 44 55) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1189.html
夢を見ていた。 故郷ラ・ヴァリエール家の領地内にある屋敷の、誰も寄り付かない中庭の池にある『秘密の場所』。そこはルイズが唯一安心出来る場所。 幼い頃、叱られるとよくここに来て、たった一艘浮かべられている小舟の中に隠れた。 夢の中の幼い私もその小舟の中に隠れていた。 しばらくするとマントを羽織り、つばの広い帽子を被った『彼』がやってきた。 「ルイズ、泣いているのかい?」 『彼』は夢の中の自分に優しく声をかけた。 「可哀相に…また怒られたんだね…。」 『彼』とは領地が近くにあったことから晩餐会を共にしたこともあり、また父と彼の交わした約束もあって、会う度によく会話したものだ。 幼い頃も、そして会わなくなった今も紳士的だった『彼』は私の憧れだ。 「僕の可愛いルイズ。ほら、僕の手をおとり。もうじき晩餐会が始まるよ。 ……安心して。お父上には、僕から取り直してあげる。」 …今思えばかなり陳腐で芝居がかった言葉である。多分今同じ事言われたら「キモい」と言ってしまうだろう。 それでも夢の中の幼い私は立ち上がると、差し出された彼の手を握ろうとした。が、その時、いきなり足元がぐらついた。 「!?」 私は思わずしゃがみ込んだ。何故ぐらついたのか分からなかった。舟の揺れが収まってから立とうとしたが、立てなかった。違う、身体が怠くて動けないのだ。だんだんと睡魔が襲って来た。 私は助けを求めるように彼を見たが、いつの間にか手はひっこめられ、彼は彼じゃ無くなっていた。つばの広い帽子をしていたが、マントが無くなり、全身が真っ黒だった。しかし、何故かそれをどこかで見た気がし、同時に頭が淋しい気もした。 結局夢の中の私は眠気に耐え切れず、舟の中で眠り込んでしまった。 「はう!」 目を覚ますと学生寮の自分の部屋にいた。 「夢か…って何で夢の中でまで寝るのよ。」 私は自分の頭を触った。…よし、髪はある。 「やっと起きたか。」 ポルナレフがベッドのすぐ側に立っていた。洗濯から帰ったばかりらしく(どこでやってるかは知らないが)籠を持っていた。 「…なんか嫌な夢見たわ。いきなり憧れの人が帽子を被った真っ黒い人影みた…「それ以上言うなッ!」!?」 ポルナレフはそう叫ぶと籠を取り落とし、その場にうずくまった。また何かのトラウマに触れたのだろうか?それにしてもこいつってトラウマが無駄に多いわね。若い頃何やってたのかしら? 「言わないでくれ…あそこはああするしかなかったんだ。さもなければやつに、ディアボロに矢を…」 もうなんだかよく分からない。完全に頭の中がどっかにトリップしているらしい。 「ほら立ちなさい。もう言わないから。誰も責めてなんかないわよ。早く朝ご飯食べにいきましょ?」 ポルナレフは泣きじゃくりながら頷くと私の後についてきた。この姿をあのシエスタとか言うメイドやキュルケが見たらどう反応するだろうとか考えつつ外に出るとほぼ同時にキュルケが部屋から出て来た。 「あら、おはようダーリン。」 とだけ言うとキュルケは私を無視してポルナレフに抱きつこうとした。いつものようにポルナレフは避けると私を指差した。 「なんだ、いたの。いろいろ小さくて全然気付かなかったわ。」 「ちょい待ち。いろいろも気になるけど、こいつの情けない顔見て何も…」 振り返ってポルナレフの顔を見ると普段と全く変わらない落ち着いた表情をしていた。 「何も…やっぱりダンディねぇ…」 キュルケが頬を赤らめる。 いや、それより何でもう元に戻ってんの? 「レディに情けない顔など見せられん。」 「私はレディじゃないのかしら?」 私はにっこり微笑みながらポルナレフの股間を蹴り飛ばした。 今日は何となくルイズに着いて行き、授業を受けることにした。股間の痛みも収まってきたし、気分転換にはちょうどいいだろう。 教室のドアを開け入って来た教師は黒い長髪に黒のマントと全体を黒で統一したスネイプもどきの男だった。 「では授業を始める。知っての通り私の二つ名は『疾風』。疾風のギトーだ。」 疾風ということは風のメイジか。 「さて、最強の系統をご存知かな?ミス・ツェルプストー」 「『虚無』じゃないんですか?」 「伝説に…」 この時点でもう聞く気になれなかった。どうせギトーは「風が最強だァーッ!」と言うだけだろう。 土が金属を作り、火が生活のための火を起こし、風は舟を進ませ、水は治癒に関する。つまり優劣等無いはずだ。あるとしても虚無だけが別格といった所か。 ましてや大人と子供では格差というものがある。それを考慮すればあのギトーがキュルケをみせしめにした所で意味は無い。生徒の不満を呼ぶだけだ。 そこまで考えると寝る体勢に入った。どうせ自分は使い魔の平民だ。起こされることはあるまい。 「…残念ながら試したことは無いが、我が風は『虚無』すら吹き飛ばすだろう。…貴様寝ているなッ!」 右手で顔を隠し、左手を半分開け人差し指だけをピンと伸ばし指差してきた。面倒だな… 「生憎俺は生徒じゃなく使い魔なんでな…」 「だからといって寝る奴がいるかッ私が講義しているのにッ!自覚をもたんかッ!」 少しむかっとした。お前よりは人生経験は豊富だぞ。若造が。 「講義?まさか生徒一人吹っ飛ばして『風は最強なんだ。風のメイジは最強のメイジなんだ!』とか自慢することが講義な訳はあるまいな?そうだったら余りにも大人げ無いぞ。」 タンカを切ってやった。生徒達がどよめく。 「おいおい、あの平民頭大丈夫か?」 「まあ、あの『ゼロ』の使い魔だし。」 「さすが平民!俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ!そこに痺れない!憧れないィ!」 「大人げないだと…?」 わなわなとギトーが震え出した。そしてどよめいていた生徒達は一気にシンとなり、心配そうに自分とギトーを交互に見た。 「ああ。子供と大人じゃ場数が違うからな。」 ルイズが「やめなさい。殺されるわよ。」と言ってきたが無視する。 「ほう…なるほど、つまり君は自身が痛い目に逢わないと私の言う事が分からないのだね?使い魔君。」 ギトーが杖を構える。多分もう詠唱し始めているだろう。 「貴様も前のギーシュと同族か?やれやれ、反吐がでる…」 立ち上がって机に立て掛けていたデルフリンガーを引き抜き臨戦体勢に入る。トライアングルメイジ相手だ。容赦せずチャリオッツも使ってもかまわないだろう。 ここまで来るとさすがのルイズも「勝手にしなさい。」とそっぽを向いた。 じりじりと距離を詰めていく。相手がまず出す魔法はエア・ハンマーか、あるいはウインド・ブレイクに違いない。 相手の方が射程が広く、シルバー・チャリオッツの剣も風で弾き飛ばされるかも知れない。だがそれを乗り越えるのが闘いの年季というものだ。もうそろそろ相手の射程に入るかな。 「エア・ハンマー!」 ギトーが叫び、身体に空気の塊が直撃する。チャリオッツを使い防御するが剣の先が飛んでしまい自分も風圧に耐え切れず吹っ飛ばされてしまったが、デルフを床に刺しその抵抗で勢いを殺す。そのおかげで壁に激突する前に止まることが出来た。 「ほう、やるじゃあないか。私の風の勢いに剣を刺して耐え切るとはね。」 ギトーが余裕のある声でそう言った。だが、『もう遅い。』 ドスッバタン ギトーの首筋にチャリオッツの剣が刺さり昏倒した。馬鹿め、剣が折れたときに首筋を狙ってやったのだ。最もスタンドが無い貴様には何も見えなかっただろうがな。 さて、後の処理はルイズに任せようか。 「ルイズ、よくやってくれた。私の失態をカバーしてくれるとはさすが私の主人だ。」 俺は振り向き、うやうやしくそう言った。ルイズが戸惑った様子を見せたが、このまま俺に合わせろと目で合図を送る。 「え?ま、まあね。私にかかればあれぐらいお安い御用よ。」 皆一斉にルイズを見た。まさかゼロのルイズが魔法を!?というような表情である。ルイズもそんな皆の態度に少し嬉しそうだ。 皆から「何をしたのか」と聞かれた時にコルベールが入って来た。 金髪ロールのカツラ、レースや刺繍によって華やかさを演出しているローブという明らかに似合わない、珍妙不可思議で胡散臭い恰好をしている。 「ミスタ・ギトー!授業などやっている場合では…なんと眠っておられるのか!情けない!生徒に居眠りを許さないあなたが自分の授業で居眠りするとは!」 …何を勘違いしたらそうなるの… 「はっ!そんな場合ではありませんぞ! …おっほん。皆さん、今日の授業は全て中止であります!」 教室から歓声が上がる。そりゃ誰だって授業が無くなったらうれしいだろう。 だが、コルベールはその歓声を押さえる様に両手を振り、言葉を続けた。 「えー、皆さん。本日はトリステイン魔法学院にとって名誉な日です。我が国に咲く一輪の華、アンリエッタ姫が急遽行幸に参られることになりました!」 教室中がどよめく。 「したがって、粗相があってはいけません。急な事ですが、今より全力を挙げて歓迎式典の準備を行います。各人、正装して門に整列すること」 生徒達は緊張した面持ちで頷いた。 「皆さんが立派な貴族になったこと(この時ポルナレフはギロリとコルベールを睨んだ)を姫殿下にお見せする絶好の機会です。 御覚えがよろしくなるよう、しっかりと杖を磨いておきなさい。よろしいですな!」 コルベールの言葉に全員が重々しく頷くと学生寮のそれぞれの部屋に戻って行った。私も行こうとするとポルナレフはコルベールに目配せして「コルベールと話がある」と言って中に残った。 今更ミスタ・コルベールと話?と気になって教室のドアに耳を当てて盗み聞きしてみると中で 「このスネイプもどきがァ!てめーをこの事だけで20年は減給になるようにしてやるぜ!」 「ゆ、許して~私は…実演しただけだァーッ」 「トンチキがァ!! 俺はてめーのような長髪野郎がでー嫌いなんだ。だがな、俺達はいい奴なんだ。これから毎週2エキューずつ俺達の所に持ってこい。それから生徒から取り上げた物の半分もだ!」 …二人がかりでギトーからカツアゲしていた…。 後で取り分の半分を脅して上納させようかしら?そんな事を考えながら部屋に向かった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1264.html
早朝。朝靄が立ち込める中、馬に鞍をつけている三つの人影があった。すなわち、ルイズ、ポルナレフ、そしてギーシュである。 「…結局見つかったんだな。」 ポルナレフが嫌そうな顔でギーシュに話しかけた。 「違うな。」 ギーシュが作業をとめ、チッチッとキザっぽく人差し指を振った。 「自分から志願したんだ。女の子が危険な任務を任されたんだ。黙って見てるわけにはいかないだろう?」 ポルナレフは舌打ちした。折角の金づるが…と思っているに違いない。 「ところでお願いがあるんだが…」 「何よ。」 「僕の使い魔も連れていきたいんだ。」 「あんたの使い魔ぁ?…別にいいけどどこにいるのよ?」 「ここさ。」 ギーシュが下を指差すと地面が盛り上がり、巨大なモグラが現れた。 「ヴェルダンデ!ああ、僕の可愛いヴェルダンデ!」 ギーシュが地面から出て来たそれに抱き着いた。 「あんたの使い魔ってジャイアントモールだったの?」 ルイズが驚いて聞いた。 「ああ。このつぶらな瞳が可愛いらしいだろ?」 ベタ褒めである。親バカというか何と言うか… 「なるほど、別にいいかもしれんな…モグラならスピードは馬ぐらい出るだろう。」 ポルナレフの言葉にギーシュは頷いた。だが、 「私達、これからアルビオンに行くのよ。地面を掘って進む生き物を連れていくなんて、駄目よ。」 ルイズはギーシュの案に反対した。 「アルビオン?昨日も言っていたが本当にあそこに行くのか?」 「そうよ。そういう訳だから、残念だけどモグラなんて連れていけないわ。」 「そんな…お別れなんて辛い、辛過ぎるよ……、ヴェルダンデ…」 ギーシュは再び抱擁しようとしたが、そのヴェルダンデはギーシュの抱擁から逃れるとクンクン嗅ぎながらルイズに近寄って行き、押し倒した。そしてそのまま体を弄びだした。 「ちょ、何すんの!このモグラ!」 ルイズは必死になって抵抗したが、相手は小熊程あるジャイアントモール。このSSではあくまでただの少女の肉体であり、現実は非情である。 「いやぁ、巨大モグラと戯れる美少女っていうのもある意味官能的だね。」 「手篭めにしてるのはお前の使い魔だがな。」 ポルナレフは鞍を取り付けながらギーシュにツッコミを入れた。 「こら、離しなさい…!姫様から貰った指輪から…!!」 ヴェルダンデはルイズがしていた指輪に鼻を近付けていた。 「なるほど指輪か。ヴェルダンデは宝石が大好きだからね。ヴェルダンデは貴重な鉱石や宝石を僕のために見つけて来てくれるんだ。『土』系統の僕にはこの上ない素敵な協力者さ。」 ギーシュが自慢するように言ったその時、突如突風が吹きヴェルダンデが吹っ飛ばされた。 「誰だ!」 ギーシュが愛する使い魔を吹っ飛ばされたのに怒って杖を取り出した。 ポルナレフはギーシュと対称的にまず冷静にルイズが無傷であるのを確認した。ルイズが無傷ということは敵ではなく増援か何かだろうと考え、ゆっくりと風のした方を見た。 靄の中から羽根帽子を被った長身の男が現れた。容姿から昨日、ルイズが見とれていた貴族であることが分かった。 その貴族は一礼してから名乗った。 「僕は敵じゃない。姫殿下より、君達に同行することを命じられてね。君達だけではやはり心許ないらしい。しかし、お忍びの任務である故、一部隊を付ける訳にもいかぬ。そこで僕が指名されたって訳だ。」 帽子をとった男はルイズより外見からして10歳は年上だろうとポルナレフは推測した。もっとも、ルイズの外見も考慮すると更に5歳ほど加算出来そうだが。 「僕は女王陛下の魔法衛士隊、グリフォン隊隊長、ワルド子爵だ。すまない……婚約者がモグラに襲われているのを見てみぬ振りは出来なくてね…」 「婚約者…?」 ギーシュが信じられない様子で呟いた。 ポルナレフも自分の予想を少し越えていて驚いたものの、中世の貴族社会ならこの程度の年齢差のある婚約も有り得るか、と思い納得した。 しかしワルドがばれないように股間を押さえているのを見て、やっぱりただの変態か、と思い直した。 ワルドは信じられないといった面持ちでいるルイズに駆け寄ると抱き上げた。股間はもう大丈夫らしい。 「久しぶりだな!ルイズ!僕のルイズ!相変わらず軽いな、君は!まるで羽根のようだね!」 「お久しぶりでございます。……恥ずかしいですわ」 ワルドに笑いかけられ、ルイズは頬を赤く染めた。 「おでれーたなあ、相棒。まさかあの娘っ子にあんな婚約者がいたなんてなあ!」 鞘から少しだけ刀身を覗かせていたデルフがポルナレフに話しかけた。 「ああ。あの若さで魔法衛士隊…多分メイジだけで構成された親衛隊か何かと思うが…その隊長で子爵だとはな。確かルイズは公爵家の三女…家柄だけを考えたら婚約者として相応しいかもしれんな。」 ポルナレフがそう言って頷く。 「君、何納得してるんだい!?魔法衛士隊は僕たちメイジの憧れなのだよ!その隊長と『ゼロ』が婚約者だなんて…」 ギーシュが喚いた。 「誰も魔力や性格について相応しいとは言って」 ポルナレフがここまで言ったとき、二人がいた位置に巨大なクレーターが出来た。 「…彼等は何なんだい?」 ワルドがクレーターの底で倒れている二人を指差した。 「あの金髪がギーシュ・ド・グラモンで」 「グラモン…ひょっとしてあのグラモン元帥の御子息かい?」 「はい。であっちの眼帯をしているのが…その……私の使い魔…ですわ。」 ルイズが恥ずかしそうに言った。 「あれが君の使い魔かい?人だとは思わなかったな」 ワルドの言葉にデルフはちょっとムカッとした。 「おいおい、人の相棒を悪く言うなよ。」 いきなり咎められて驚いたワルドは辺りを見回した。 「今の声は…?」 「あ、あの……私の使い魔の…剣です」 ルイズが怖ず怖ずとポルナレフの近くに落ちている剣を指差した。 「ひょっとしてインテリジェンスソードかい!?これはまた驚いたな。君の使い魔はまた変な武器を使うんだね!ところで彼と彼の剣は何て言うんだい?」 「使い魔はポルナレフで、剣はデルフリンガーです。」 「そうか、デルフリンガー君か。いやいや、持ち主の名誉のために抗議するなんて泣かせてくれるね。」 ワルドが芝居がかった口調でそう言うと、デルフはケッと言い捨ててから喋ろうとしなくなった。 「おいおい、僕は別に君や使い魔君を馬鹿にしたつもりは」 「子爵、早く二人を起こして出発しましょう。こうしてる間にもレコン・キスタは…」 「おっとそうだったね。」 ルイズに急かされたワルドはクレーターの底で倒れていた二人をたたき起こすと、口笛をふいて使い魔のグリフォンを呼び出した。その背中にひらりと跨がるとルイズに手招きした。 「ルイズ、おいで。」 ルイズはもじもじ恥ずかしそうにしていたが、ひょいと抱き上げられ、一緒にグリフォンに跨がった。 「では諸君!出撃だ!」 ワルドがそう勇ましく言ったが、ルイズから死角となっていたその顔はだらし無くニヤついており、ポルナレフ、ギーシュ、デルフの三者は「こいつ、本当に魔法衛士隊隊長なんだろうか」と不安にならずにはいられなかった。 ともあれ、四人はラ・ロシェールを目指して学院を出発した。 「まったく…魔法衛士隊の連中は化け物か?」 とある駅で馬を交換している時、ギーシュがポルナレフに話しかけた。 「まったくだ。半日近くもノンストップで駆けさせるとは…」 学院を出発してから既に半日が経過しており、二人共息を荒げていた。 「二人に先に行っててもらうよう言おうか?」 ポルナレフはギーシュにそう提案したが、 「馬鹿もほどほどにしたまえ。今アルビオンが窮地に立たされていることぐらい知ってるだろう?だから一分たりとも時間が惜しいのだよ。」 ギーシュはポルナレフの提案に反対した。 「確かにな…だが、俺達の体力も限界だ。」 「そうなんだよなあ。勘弁してもらいたいよ。まったく。」 ポルナレフは少し考えてから再度提案した。 「なら俺達もグリフォンに乗せてもらうことにしよう。」 「そんなの出来る訳無いだろう?君は本当に頭脳がマヌケだな。」 「それが出来るんだな。もっとも、誰にも言いたくは無かったんだが…」 ごそごそとポルナレフは鞄の中を探してあるものを取り出した。ギーシュはそれを見て目を丸くした。 「それは…?」 「これが俺達もグリフォンに乗ることを可能にしてくれる。ただ、他の奴らには言うな。いいな?」 「おーい、ルイズ。グラモン元帥の御子息と使い魔君は何処に行ったのか知らないかい?馬を交換するって言ってから全然見当たらないんだが…」 「彼等なら先に行くとか言ってもう出発しましたよ。」 「ははは。なんだ、先に行ったのか。…ところでその亀はどうしたんだい?」 ワルドがルイズが持っている亀を指差した。 「この亀も私の使い魔ですわ、子爵。」 ルイズがそう言うとワルドは笑い出した。 「あっはっは!おもしろいことを言うな、ルイズは!でも冗談は休み休みにしたまえ。時期が時期だからね。」 「いえ、本当ですわ。この亀にも、ほら、この通りルーンが…」 ワルドが見ると確かに亀にもルーンが刻まれていた。なるほど、ルイズが言っているのも嘘じゃないらしい。 「…まあ、いいか。早くその亀を連れてお乗り。すぐに彼等に追い付けるだろう。」 ワルドはルイズを抱き上げてグリフォンに跨がると再び疾駆させた。 「驚いた!君はこんな所で暮らしていたのかい?ポルナレフ」 ギーシュが部屋中を見渡しながら言った。 「ああ。寝るときはそこのソファでな…」 ポルナレフは椅子に座りながらけだるそうに返答した。 二人は今亀の中にいる。馬は疲れるし、その内置いていかれるのは明白だからだ。 「この箱はなんだい?開けたらひんやりするんだが…」 「冷蔵庫。中にいろいろな物を冷やしておける物だ。」 「マジックアイテムかい?」 「違うな…。どういう仕組みか詳しくは知らんが魔法で動いてるのではない。電気で動いてる。」 「ほ、本当かい?」 異世界の文明に触れて驚きっぱなしのギーシュ。 その内、壁に掛けてある矢に気付いた。 「ポルナレフ、ここに飾ってある矢はなんだい?」 ギーシュがそれに魅せられたかのようにフラフラと近寄って行き手に取ろうとしたその時、 「それに触るな!」 ポルナレフが一喝し、ギーシュはびくっと動きを止めた。 「いかなる者もそれに触ってはならないんだ…。」 ポルナレフは椅子に座ったままギーシュを睨んだ。 「さ、触るぐらい構わないじゃないか…」 睨まれたギーシュは大人しく矢から離れた。 「それでいい…世界にそんな矢など…力など…要らないからな…」 ポルナレフはフッと溜め息をついた。 「あと、そこの棚の上の物も触れるな。矢とそれらはこの亀の持ち主の仲間の遺品だからな。」 「遺品…」 棚の上には大きなジッパー、ヘアピン、タマゴの殻みたいな帽子、ナイフ等が飾られてあった。 「…よければ聞かせてくれないか?」 「何をだ?」 「『持ち主』と『遺品』の話をさ。」 ギーシュは真剣に聞きたがった。だが、知りたがったのは『持ち主』や『遺品』ではない。 それはポルナレフが先程口走った『矢』と『力』のことであった。 ギーシュはグラモン家の末っ子として生まれたため、ルイズほどではないが、二人の兄にコンプレックスを抱き、実力で二人を越えたいと常日頃思っていた。 だが、ドットの彼に作れるのは青銅のゴーレム、ワルキューレのみ…まだ子供だからしょうがないのだがそれでもなお悔しかった。 だが、今さっき、何らかの『力』が矢にある、とポルナレフは仄めかした。ギーシュはそれが喉から手が出るほど欲しく思った。その『力』なら兄を、いやひょっとしたら父をも超えれるかもしれないと考えたからだ。 だが、ポルナレフの台詞からしてそのままじゃ明かしはしないだろうと考え、話を『持ち主』と『仲間』の話にすり替えた。 きっと『持ち主』やその『仲間』は『力』に関係している。なら、そいつらの話から推測すれば『力』の手に入れ方も明らかになるはずだ…と考えたのだが、 「だが断る」 「はい?」 「俺は最後ぐらいしか関わってなくてな。だからほとんど知らんのだ。話は聞いてはいるんだが、俺ごときが喋っていい物じゃあないしな。」 「そ、そんなあ…」 「それより先は長いぞ。少しでも寝て精力を蓄えろ。」 そう言って口惜しがるギーシュをよそにポルナレフはソファーの上で横になった。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1100.html
「相棒…ちっと飲み過ぎじゃねえか…?」 「何言ってんだよデルデル君よぉ~せっかく酒貰ってんだぜ?飲まなきゃ勿体ねーだろぉ~?」 舞踏会はアルヴィーズの食堂の上の階のホールで行われた。 貴族ではないポルナレフはバルコニーで食事することを特別に許され、食事とワインをいくらか与えられたのでデルフ相手に飲んでいた。 ベロベロに酔ってそのテンションは完全に20代に戻っていた。 (相棒って酔うともはや普段の面影もくそもないな……) 酔う前は亀からテーブルと椅子を取り出し、「双つの月を眺めながら飲むのもまた一興だな…」と感傷に浸って誰も近寄れない雰囲気だったのだが、 酔いだすと亀から自分を取り出すや否や、「気分いいから歌でも歌え」と言ってきた。「相棒、そりゃやだよ。だって俺剣だし。」と拒否すると、「何だてめえわぁ~?買ってやった恩を忘れたか、この駄剣がッ!」と怒鳴られた。 で、その後散々愚痴を聞かされた(「ジョルノやミスタが亀ナレフって呼んでくんだよぉ~何とか言ってやってよぉ~」だとか「あの糞ガキ、マジ今度針串刺ししたいんだが、ばれない方法ないか?」とか。つかジョルノとミスタって誰だよ。) 正直言って酔った相棒はうざかった。いきなり泣くわキレるわで相手するのが面倒だった。 ちらりと会場を見るが見覚えのある二人の娘っ子はそれぞれ男の相手をしたり、料理と格闘していて忙しそうで、助けてくれそうになかった。 そうしている間にも相棒は亀から次々にワインを取り出した。つかそのワインどうしたんだ? 「厨房から盗って来た。」 そうですか。 「ところでデルデル君よぉ~今、俺のことうざい、て考えただろぉ~?」 はい。 「そんなことないぜ相棒。」 「そーかそーか。って騙されるかコラァッ!」 蹴り飛ばされた。この酔っ払いめ。つかデルデル君って何だよ。 その時、相棒の主人の娘っ子が会場に入って来た。そこそこ綺麗な為りをしている娘っ子を見て何人かの男が群がってダンスを申し込んたが、娘っ子はそれらを断り俺達の方に来た。 「ほー、馬子にも衣装か。」 率直な感想を言ったら 「煩い」 一蹴された。ひでえ。 「どーしたんだ嬢ちゃんよぉ?お前もキュルケみたいに踊ってこいよ。俺ぁデルフと飲んでっから。」 離してください。 「相手がいないのよ。」 ナイス!見直したぜ娘っ子! 「そーか?なら相手してやってもいいぜ。こー見えてもダンスはいくらかやってたんだ。」 ディスコでな、と相棒は付け加えた。ディスコって何だ? 「…あんた酔ってる?」 そこに気付くな!娘っ子ォッ! 「ハッハッハ。」 笑うな、笑うなァァァ 「…ま、いいわ。なら一緒に踊って下さる?」 「喜んで。」 相棒は娘っ子に連れられて中に入っていった。曲が始まり、二人は優雅に踊りだした。 その身長差から、ぱっと見て父親と娘が踊ってる様にしか見えない。だが、こんな不思議な光景は初めてだった。 「こいつはおでれーた!ご主人様と踊る使い魔なんざ初めてだ!」 俺が思わずそう叫んだ時、ホールの端で二人を睨み付けてるメイドの娘を見つけた。 もし視線で人が殺せるなら相棒死んでるだろうな、と思えるくらい、やばい目だった。 やがて曲が終わり、相棒が戻って来た。酔いがいくらか醒めたらしく、多少テンションも落ち着いていた。 「ダンスは疲れるな、デルフ。身長差の影響が予想外にな…」 「俺は酔っ払ってたお前に疲れた。」 「マジか。すまなかったな。」 相棒は笑いながらワインをグラスに注いだ。そこへ 「ポルナレフさ~ん。」 さっきのメイドがやってきた。逃げた方がいいぞ、相棒。 「ん?何だシエスタ?」 「仕事も一段落ついたんで、ご一緒させて貰ってもいいですか?」 メイドがニコッと笑う。俺はその笑顔の裏にあるどす黒い顔がうっすらと見えた気がした。こりゃ嫉妬だな。 相棒がちらっと中に目をやってから 「別に構わない。」 と答えた。 「それじゃあ失礼します♪」 相棒は亀から椅子とグラスを新たに取り出し、メイドに渡した。つーかなんで亀に色々入れてんだ。 「一応念のために」 そうですか。 メイドは相棒とテーブルを挟んで反対に腰掛けると、相棒に話しかけた。 「ポルナレフさんってここに来る前何をしてらしたんですか?」 それは聞いてなかったな。つーか鞘から出してすらくれなかったからなんだが… 「え、あ…んー…騎士…『ナイト』…とでも言っておくかな?」 相棒は曖昧に答えた。 「へー!だからダンスが上手かったんですか?」 相棒はビクリとした。そうだよ、ずっと見られてたんだぜ。相棒…。 「そーですよねー。ナイトなら綺麗な貴婦人を守るのが役目ですよねー」 メイドはワインを呷った。みるみる顔が赤くなっていく。反対に相棒はどんどん青ざめていく。 「ポルナレフさんはやっぱりミス・ヴァリエールの側が合ってますよねー。何と言っても『ナイト』と『御主人様』ですもんねー。聞いてますかー?」 相棒…同情するが助けられん…助けようとしたら手に鱗が刺さるような気がする…手なんか無いけど。 「そ、そこまで言わなくてもいいだろ、シエスタ。私だってあれは酔った勢いで…」 相棒がそう言うとメイドはズイッと前に乗り出した。その手にはワインが握りしめられている。 「飲め。」 「何ィッ?」 「飲めと言ってんだ!この…」 メイドは思いっきり息を吸い込み… 「ド低脳がァーッ!」 そう叫ぶと相棒の胸ぐらを掴み、口にワインを流し込んだ。 「おぶぇ…!がぼ…がぼ…!」 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」 合掌。いや、手なんか無いけど。 メイドはワインをボトルの半分程飲まされピクピク痙攣しだした相棒を見て、人が見ていない(いや俺が見てるけど)事を改めて確認すると、顔を赤らめつつ相棒の唇に自分の唇を近づけていった。 …ここから先は語りたくないし、思い出したくもない。 メイドの唇と相棒の唇が触れた瞬間、娘っ子がメイドに飛び膝蹴りを喰らわせ、そこからバルコニーを完全に破壊するような惨事に至ったなんて思い出したくない…絶対に… To Be Continued...