約 1,529,345 件
https://w.atwiki.jp/oper/pages/3056.html
対訳 ある若き詩人のためのレクイエムの著作権保護期間は継続しています。対訳テンプレートは2021年まで掲載することができません。 ある若き詩人のためのレクイエムとは ある若き詩人のためのレクイエムの32%はスライムで出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの27%は夢で出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの13%は株で出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの9%は見栄で出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの5%は大阪のおいしい水で出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの4%はミスリルで出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの3%は心の壁で出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの3%はカルシウムで出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの2%は元気玉で出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの1%はツンデレで出来ています。ある若き詩人のためのレクイエムの1%は時間で出来ています。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3901.html
かたかた、かた。 単調なタイプの音。ブラインドタッチが出来るほど、慣れているわけでもなかった。手慰みに始めて、今はほんの少しだけ上達した。旧式のデスクトップパソコンだからそれほど機能があるわけでもない。インターネットにも繋がっていない、開いて使えるのはペイントソフトやワードソフトや、それくらいのものだ。 わたしは人気のない部室で、文章を打っている。何の気なしに初めて、それから誰もいないときに、密かに少しずつ打つようになった。単語が並ぶ、接続詞がつながる、変換キーを押す。途切れ途切れに書き始めた、拙いなりの物語。誰も知らない、わたしだけの作品。完成の目処も立ってはいないし、ほとんど勢いで始めたものだから起承転結もぐちゃぐちゃで、とても人に見せられたものじゃない。それでも。 ――着想は、とても単純。 以前、改めて読み直してみたグリム童話に、子供だましと思っていてもいつのまにか引き込まれてしまった。読破したころには、白馬の王子様に憧れる女の子のような心境になってふわふわ夢心地になって。そんなうちにふと浮かび上がった問いかけが、きっかけだった。 白雪姫、お妃に追われ。 小人に助けられて、それでも結局は毒リンゴを食べて死んでしまう。 ガラスの棺に入れられた白雪姫を、通り掛かった王子様が見つけて、余りに美しい姫君の姿にくちづけて――目覚めた白雪姫は王子様と結ばれてハッピーエンド。その後王妃は炙られた鉄の靴を履いて踊りながら死ぬ。白雪姫の命を狙う悪役もきれいさっぱりいなくなって、物語は見事にめでたしめでたし。 だけれども、それは御伽噺の世界だ。現実の世界でそんなふうに、倒れ伏した白雪姫を都合よく救ってくれる存在が、現れるものだろうか。 疎まれ、忌まれ、誰からも手を差し伸べられることなく死んでいく――そんな白雪姫も、いたのではないだろうか。 いくら王子様のことが好きでも、気にも懸けてもらえずに、誰か特定の人に愛されることもなく。凍えるような棺の中で眠り続ける白雪姫がいたのではないだろうか。 「――王子が現れなかった白雪姫は、どうなるのか」 ぽつり、と零した声は冷え切った空気に溶けた。手を止めて、窓の外を見遣ろうとしても、曇り窓は白く靄がかかったようでどんな景色も見通せはしない。 「王子が姫に、目を留めなかったら、どうなるのか……」 しん、とした部屋、独りきりで打ち込む指先が冷たくなる。答えを捜すように、わたしはキーをタッチをする。 幸せな白雪姫は、もしかしたら夢幻なのではないかなんて、疑いながら。 --------------------------- 小人の手によって息を吹き返した白雪姫。 御妃様は今度こそはと、周到に身を繕って白雪姫を訪ねます。 手に携えるは、麗しき櫛。 紅色の麗しき櫛、翳してみれば白雪姫も、手を伸ばさずには居られませぬ。 無知な娘子、白雪姫。 小人の憂慮も知らぬまま。 --------------------------- 長門が絞殺されかかった事件から、七日が、やっと過ぎた。 最寄の警察が定期的に学校を訪れ、教師陣も見廻りを強化していたが、古泉にとっては不自然なまでにあっさりと、騒ぎが収束したように映った。何処か緊張の気配を纏っていた学業生活も、試験だ部活だと忙殺の日々に忘れ去られてゆく。事件の後遺症は、薄い傷跡すら残さず、呆気なく払拭されたかのようだった。 手を取り合い、罠が待ち構えるかもしれないなんて想像もせず、往々に日常を取り戻してゆく生徒たちを見送って、古泉一樹はひとり、置いてけぼりを食らった迷子の心持を味わっていた。 ――何かが可笑しいことは、分かっていた。 掴み切れない違和感に苛まれて、思い出そうとする度に記憶の端でつっかえるものが邪魔をした。不足している、そんな焦燥感だけは何時までも、消化できない気持ち悪さとなって胃の底にへばり付く。 事件もあって瑣末な事にも敏感になり過ぎているのかもしれない、と一人きりの部室に佇んで、古泉は思った。 芯の細い長門は、事件以来、登校もしていない。何度か電話で連絡は取り合ったが、「怖くて学校に出られない」という震えながらの長門の一言を否定できるわけがなかった。何しろ、彼女は命を奪われかける所まで行ったのだから。 古泉にできたのは、「養生してください。ゆっくり、あなたのペースでいいですから」と励ましの言葉をかけることだけだった。そんな古泉なりの精一杯が長門の慰めになったかどうかは、古泉自身にも分からなかった。 好意を抱いている人間が沈鬱な思いで塞ぎ込んでいるのに、何の助けにもなれない無力感と歯痒さ。活動もままならない状態でありながら、長門と居た二人きりの時を一繋ぎでも留めておきたくて、古泉は度々文芸部室に立ち寄った。読書好きで控えめで、鈴蘭が首をもたげるように淑やかな仕草で微笑む。眼鏡の奥に恥じらいを浮かべる瞳を押し隠した少女の面影を、彼女の定位置であった窓辺の椅子に求めて、古泉はただ、漠然と過ごしていた。 何が違うのだろう。何を、忘れているのだろう。 強烈になっていく齟齬の正体を捜すまま、一人きりで過ごし続けての、七日目だった。 古泉は不意に、眼に留まったものに興味を惹かれた。六日目まではただ当たり前であったものに対して、何故だか急に浮かび上がった違和感。思わず座席から立ち上がり、目に付いたそれの前にまで足を運ぶ。 ボードゲーム。 いつから、触れていないのだろうと古泉は箱の縁を人差し指でなぞった。黒ずんだ粉が膚を汚す。 まだ部員数が運営に支障ない程度には揃っていて、賑わいを見せていた頃の置土産だ。山と積まれたボードゲームは浅く埃を被り、遊び手がいない為に隅に追いやられて本棚の一角を占有していた。 古泉はアナログのゲームに関しては下手の横好きというやつで、滅多なことでは白星は望めないという体たらくだったのだが、それでも店先に新種のゲームを見つければついレジに持ち込む有り様だった。――そんなことを、古泉は、『たった今になって』思い出した。 まるで今の今まで、記憶の海底に碇で沈められていたものが、浮上してきたかのような。 「……どういう、ことだ」 敬語の剥がれた呟きを落として、古泉は目を瞑る。……記憶が、あった。何処かで開催されたフリーマーケットで意気揚々と碁盤を担いだのを後目に誰かが呆れたように小言をくれたこと、久しぶりの勝利についマジックで勝敗表に大きめに円を囲って笑われたこと。 やけに不明瞭な記憶のうちから、古泉はいくつか、断片的な記憶を掬い取る。 あれは、誰だっただろう。あのとき対戦していたのは。 少なくとも卒業していった三年生達ではない筈だ、と思い至って、古泉は愕然とした。三年生。確かに部室にいた筈の人々の顔が、思い出せない。 ぐるりと見渡した室内は、古泉の視覚に収まる限りで、異空間に取り残されたような錯覚を起こさせた。 衣装ケースにはコスプレ用のナース服やらバニーガール等が畳みこまれ、創作活動の時にしか利用しないパソコン、剥き出しに置かれてそれきりの給湯器が鎮座している。ふたりきりの文芸部室には、不似合いな代物だ。卒業していった旧三年生の遺産というべきそれらにしては、その三年生の記憶も薄い。 どうして今まで疑問にも思わなかったのだろう。誰かがいて、誰かがいて、誰かがいた。自分と長門以外にも、誰かがいた筈だ、と古泉は指折り数える。そこまではかろうじて、記憶の隅に引っ掛かるのに。 ――それは一体、誰だったのか? 眉間に皺を寄せ、頭をフル回転させて状況理解に努めていた古泉を、控えめなノックが我に返らせた。 「あの……長門さん、いる?」 ドア越にくぐもって響く見知らぬ女子の声。古泉は、ふっと張り詰めた意識を解いた。 「どなたですか」 「8組の者です。長門さんに用があるんですけど」 古泉は一拍、長門を襲った者に関しての情報を脳裏に巡らせ、すぐにそれを打ち消した。非力な女子学生が、幾ら軽量とはいえど、女子一人の首を持ち上げて締め上げられるとは思えない。フードで顔こそ見えなかったが、犯人は男でしか有り得ない。 自分にそう理詰めで納得させた古泉は、尋ね人を丁重に室に招き入れた。知らぬ声と感じたのは間違いではなかったようで、訪れたおさげの女生徒は古泉とは面識のない、取り立てて特筆するところもないような一般的な少女だった。ややふっくらとして、人の良さそうな笑みを浮かべている。古泉は長門の交友関係を掘り返してみたが、こんな少女は長門の親しい人物欄にはなかった筈だった。 「ちょっと知り合いに託っているんですけど、長門さんは……」 「申し訳ありませんが、長門さんは今日もお休みです。僕が承っていい内容なら、伝言も出来ますが」 「そうですか。じゃあ、これをお願いできますか」 長門の不在も想定の範囲内であったのか、少女はあっさりと頷き、懐から白い封筒を取り出した。膨らみが大きいので、手紙以外にも何かが入っているだろうことが一目で知れる。古泉が押されるままに受け取ったそれは、それなりの重量を掌に感じさせるものだった。嵩張る紙の感触に、中に何か無機物が混入されているのが分かる。 「長門さんが来たら、渡してください。それじゃ」 「あの――?」 受け取って古泉が了承の旨を返す前に、少女はさっさと身を翻して走り去っていく。呼び止める間すらない。 唖然とした古泉は、手渡された手紙に眼をやった。端正な字で『長門有希様』と筆記されている以外、差出人の名前等は見当たらない。無味乾燥とした一通の手紙。ラブレターなら同学年で近しくあるとはいえ男である古泉に預けるのは余りに奇妙だし、事件に関しての激励の手紙にしては少女の態度は素っ気無い。ファンシーな動物の描かれたような可愛らしい便箋であったなら古泉もそこまで悩まなかったろうが、手紙自体も味気ないため、女子間のやり取りというようにも見えない。 ただの手紙ならばいい、けれど明らかに何かの小物が収まった手紙を、それも人伝に長門に寄越そうとする理由が分からなかった。 (……まさかカミソリ入り、ということは) 事件があってナーバスになっている少女に対してのスタンダードな嫌がらせなら、有り得るかもしれないと深読みした古泉は、中の小物が何なのかだけでも確かめようと糊付けを剥がした。マナー違反は承知していたが、もし危険物の折込であったら、長門にそのまま渡す訳にもいかない、と考えたためだった。 ――古泉の予想は半分外れ、半分的中した。 開封した手紙を斜めに傾ける。中から滑り落ちてきたのは、見事な緋色をした、一本の櫛だった。その意外さに何故こんなものをと古泉が右掌でそれを受けた瞬間、ざくり、と肌を裂く感触が膚の上を走った。 「…………っ!」 痛みに引き攣った声を上げた古泉は、瞠目し、信じ難いものを見る目つきで己の置かれた惨状を見遣った。 其の場に立ち竦んで、櫛裏に貼り付けられていた刃に切り裂かれた手を前に、呆然とする古泉を尻目に。血液はみるみる溢れ出して手を汚し、白い手紙を侵食し赤く染め、手首も腕も染め上げて、――血塗れになった櫛とともに、床に零れて、落ちた。 --------------------------- 小人の手によって息を吹き返した白雪姫。 御妃様は今度こそはと、周到に身を繕って白雪姫を訪ねます。 手に携えるは、麗しき櫛。 紅色の麗しき櫛、翳してみれば白雪姫も、手を伸ばさずには居られませぬ。 無知な娘子、白雪姫。 小人の憂慮も知らぬまま。 ――髪に差込んだ毒が廻り、また姫は、床に伏してしまうのです。 (→5)
https://w.atwiki.jp/d_va/pages/419.html
所有者への加護 L:所有者への加護 = { t:名称 = 所有者への加護(イベント) t:要点 = 加護の輝き,暖かさ,輪郭 t:周辺環境 = アイテム t:評価 = なし t:特殊 = { *所有者への加護のイベントカテゴリ = 個人イベントとして扱う。 *所有者への加護の効果 = 生死判定で失敗したことを一度無効化する。この加護は派生元のアイテムの所有者にかかる } t:→次のアイドレス = 送り主の不運(強制イベント),更なる加護(イベント),虫の知らせ(イベント),しばしの安らぎ(イベント)} はじめに祈りがあった。 母親が子供に対して、健やかな成長を祈る。 妻が、戦いへ赴く夫が無事であるように祈る。 この世界が、生まれたとき。人がその営みを始めたときから もっとも単純な誰かを思う気持ちが、祈りである。 この世界の誰かが誰か他の人のことを思う。 それはとても純粋で、人が生きるために必要なことだ。 いつからか。祈りに贈り物が加わった。 祈りをこめた贈り物は、その祈りに答え輝きを持つ。 誰にも負けないように、その祈りを加護にかえ、ただの人間を 世界で一番強い男にする。 これはそういう加護の物語である・・・・・・・・・ と思ったら、 「えいえい!えいえい!」 「えいえい!」 何をおもったのか、枕で戦闘とか何を考えてるんだこいつら。 赤コーナー(というか髪の色で決めた)矢上麗華、獲物「安眠枕」 おい、それ爽やかさん(矢上爽一郎)にプレゼントしたやつちゃうんかい。 「だってプレゼントに加護つけるのー!!」 「いや、いまほとんどはいじ・・・」 「いやー!」 「ちょ、おま」 青コーナー(自称青にしてペ○シだから)空き缶。 どーてもいいが、絶技は使わない主義、なぜって?体格-3で壁をつくってみよう。 壁っていうか段差ですね、わかります。評価30の段差。意味ねぇな。 「もー、ちゃんと真面目に祈るのー」 「いや缶、わかんね!まくらで、どつきあいが なんで加護になるのかわかんね!あ。いま本気で一発いれたー」 「もー、真面目にやるー」 わーん、とかギャーとか何かやたら音がする・・・・・・どうでもいいが、近所迷惑だろ、常識的に考えて。 当然ながら周囲に響けばバレるわけで・・・・・ 「おい、お前ら」 「また、何やってるんだ」 右から白衣の矢上爽一郎、左から黄ジャンの弓下アリアン。 二人合わせてWヤガミ、ちなみに2人して危ない橋を渡るのが得意です。 手早く、2人を取り押さえる。 「あ!」 「ふぇ!」 強制的にケンカを中止させられる2人。 ちぇーという顔である。よっぽどマクラで戦闘が楽しかったらしい。 ふてくされる2人を見てヤガミ2名はため息をつく。 「まったく、お前らは何をやってるんだ」 「だってー」 「いいから、何があったのか言ってみろ」 どうせつまらないことなんだろうな、と思いつつ2人にたずねる。 「えー?」 「なんだっけー?」 2人してアホの子のように同じ角度で首をかしげる。 「・・・・・・・」 「じー」 2人の視線に気がついて、照れるヤガミ2名。 左はもうちょと人生考えたほうがいい、相手は缶だ。 「なにがあったっけー?」 最初に缶がつぶやくと麗華がむーっという顔をして答える。 「えーとテレビみてたきがするー」 ヒマだから最近テレビをよく見る。藩国内部では最近 越前藩国キモ入りのアニメ「フェアリーさん」が放送されており 人気を博している。 ちなみにフェアリーさんの内容は、 何故かかまぼこ工場でフェアリー研究をすることになった主人公と フェアリーさんを巡るギャグアニメである。 第一話 「卒業後の進路で妖精研究と答えたらこんな所に飛ばされてしまった」 「……新しく出来る研究所の職員をやることになるらしい」 「ここか……? 建物はかなり古いけど、番地はここであってるな」 「あ。なんだ、表札が立ってるじゃないか」 『ハヤマかまぼこ工場』 「だまされた!?」 第二話 「入ってみたら意外と中は普通だった」 「こんにちは。今日からこちらで働くことになりましたスズハラです」 「スズハラくんね。聞いているよ、私が主任のオグラ、君の上司になります」 「はい、到らぬ点も多いと思いますがよろしくお願いします」 「うん。と言っても私はかまぼこを作るしか能の無い男だから君に期待しているよ」 「工場ッ!?」 といったカンジの4コマ風のテンポのよいストーリーと1話5分程度の短さ。 話のユルさ、フェアリーキャラのかわいさもあいまって、 どうも「フェアリーを違法に使うのはダメじゃね?」という 空気がなんとなくでてはいるが・・フェアリーさん萌えッスという 野郎が多発。【だめだ、こいつら。はやくなんとかしないと】状態らしい。 そんなことこの藩王摂政にいわれたかねーよ、という意見もあるが。 「おお、そうだ、テレビだった」 ぽん、と手を叩いて缶が言う。そして、ない知恵をしぼりつつ回想開始。 「きょーはねー、ひまだったから。テレビのまねしてあそんだのー」 /*/回想はじめ/*/ 缶「ひまですねー」 麗華「ひまだねー」 缶「よし、あれやろーあれー」 缶「おれは、こんな国にきとうはなかった!きとうはなかった!きとうはなかった!」 麗華「さわやか、このれいかのそばにいてくれぬか?」 麗華「いつまでもわたしのそばにいよ!」「わたしのそばにいよ!」 缶「れいか!」 麗華「さわやか!」 /*/回想おわり/*/ 「~って、テレビのマネしてたらエキサイトしました!!」 「ああ、あれチャンバラか」 「その可能性はいなめない!」 「つぶしていいか?」 「すまん、こんなんでも俺の嫁なんだ」 「しつれいな、缶をとりますよ!」 「いや、それはいい」 「わかったー」 「それより、周りの人の迷惑になるから騒ぐな」 「・・ちぇー」 「しょうがない、おとなしく祈ろう」 「そだねー」 2人が静かにアイテムに祈りを捧げ、こうしてただのアイテムに加護がやどるわけだが。 背景の事情を知ると全然うれしくない、ふしぎ! これもまた送り主の不運というものだろうか・・・。
https://w.atwiki.jp/deadtwitter2/pages/65.html
いわゆるナース服。 血まみれではなく、綺麗な新品。 プレイヤー装備効果 1日1度、自分以外の味方のHPを2回復可能 【拠点】に居るなら、同じ日に同じステージの【拠点】を利用しているフォロワーのパーティメンバーも対象にできる メイデン装備効果 HP+5 さらに装備者が属性「医療」を持っているなら、 1日1度、SPを1消費して自分以外の味方のHPを2回復可能 イベント イベント名 条件 紅衣の天使 白衣の天使を所持した状態で【拠点】に辿り着く/一度きり
https://w.atwiki.jp/jumpbattleroyal2/pages/43.html
第010話 報酬は白衣の天使の微笑み ◆WItgwMh0IA おれは冴羽リョウ、またの名をシティーハンター。その筋じゃあ、ちったあ名の知れたプロのスイーパーだ。 美女のボディーガードから殺しまで手広く請け負う。つまり、街のゴミどもを始末する清掃人。 てな訳で、常に危険と背中合わせの毎日だ。 それにしても、今回はやっかいな事に巻き込まれちまった。 おれとしたことが目が覚めたら殺しを強要された挙句、再び目が覚めた時には見知らぬ島に放置されていた。 香の姿も見えないし、冴子も海坊主もミックも見当たらない。 まったく何がなんだか訳が分からんぜ。一体、これからどうなっちまうんだか…。 リョウは徐にその“白衣を着た女性”のスカートを捲り上げた。パンツの薄い布地に包まれた白くて形の良い臀部が丸出しになる。 「きゃ!」 白衣の女性は自分の意思に反して捲くり上がったスカートに驚き、短い悲鳴を漏らすと、スカートを必死に抑えた。 いくら抑えようともスカートは捲くり上がったままだ。何故ならリョウの大きな手が女性の努力を阻むようにスカートを抑えたままだった。 「わぁお!もっこりヒップちゃん!」 柔らかそうな双丘に眼を釘付けにして、リョウは歓声を上げる。香が見たら間違い無くハンマーでお仕置きされている場面だ。 「や……やめてください!」 なんとかリョウの手から逃れると、白衣の女性はリョウをきつく睨んだ。 「なんなんですか、貴方は…………!?」 見ず知らずの女性のスカートを捲り上げ、観察するなど、セクハラの域を超えている。白衣の女性が憤慨するのも無理はなかった。 ただ、相手は新宿の種馬の異名を持つ冴羽リョウだ。馬の耳に念仏というやつだった。 「あっれー?怒っちゃったー?そんな怖い顔してないでさーリョウちゃんと遊ぼうよー」 「やめてください!大声出しますよ?」 「いいじゃんいいじゃん、ねー?遊ぼうよー」 いつまでもしつこく食い下がるリョウに白衣の女性も呆れ顔。その顔は明らかにリョウを軽蔑していた。 「私はこんな事してる暇無いんです。早くあの子達を探さなくちゃ…………!」 白衣の女性は大真面目に言った。 さすがのリョウもふざけてられないほど、白衣の女性は真剣だった。 「訳ありかい?」 さっきまでの変態ストーカーが一変、リョウはシリアスモードに切り替わっている。 こうしていれば、リョウはかなり格好良い。中にはこのギャップの大きさが好きだという女もいるとかいないとか。 とにかくリョウも悪ふざけを止め真剣になったので、白衣の女性の方も重い口を開いた。 「日々野君達を…………うちの学校の生徒達を探さなくては…………。ごめんなさい、貴方の相手をしてられないんです」 白衣の女性は丁寧な辞儀をして、生徒達を探しに行こうとした。 「待ってくれ、話を聞こう。おれに話してみてくれないか?」 「貴方に…………ですか…………?」 疑いの目。まだリョウを信用していなさそうだ。 「なぁに、こう見えてもおれはプロのスイーパーさ。こんな物騒な島を一人でうろつくより、おれのような腕利きと一緒に探した方がずっと安全だと思うがね」 とか何とか言いながら、リョウの腕はちゃっかり白衣の女性の肩をしっかり抱いている。 白衣の女性は半信半疑でリョウの横顔を見上げていた。 「ほう…………要するに、春香ちゃんの所の生徒さんは何を仕出かすか分からない問題児って事か。面倒に巻き込まれないうちに、手綱をつけちまおうって訳だな」 「問題児なんて…………!あの子はとても良い子です。ただ少し元気があると言うかお調子者と言うか…………とにかく悪い子ではありません」 生徒を庇う春香の姿は、リョウに好感を抱かせた。 春香が心根の優しい娘だという事はそれだけで伝わって来ていた。 「まあ何にしても生徒の身が心配だって事だろ?だったら早いとこ出発しようぜ。もう面倒な事に巻き込まれているかもしれない」 「でも…………いいんですか、冴羽さんも誰か探さなくちゃいけない人がいるんじゃ…………?」 「なぁに心配はいらん。どいつも簡単に死んじまうような奴らじゃないからね。そのうち何処かで会えるさ」 リョウの言葉は素っ気無い。春香に要らぬ気遣いをさせない配慮だった。 この純真無垢で優しい心の山ノ上春香を、これ以上不安にさせてしまうのは男が廃るというものだ。 「ありがとう冴羽さん」 春香が笑いかけてくれた。 「フッ……報酬は前払いで貰っておくよ」 「え?」 春香は知らなかった。春香の微笑が最高の報酬になった事を―――――― 【G-08/平野/一日目・午前1時ごろ】 【男子13番 冴羽リョウ@CITY HUNTER】 [状態]:健康 [装備]:特に無し [道具]:支給品一式 [思考]:1、あわよくば春香ともっこり 2、春香を守る 3、香、冴子、海坊主、ミックを探す 【女子15番 山ノ上春香 @BOY】 [状態]:健康 [装備]:特に無し [道具]:支給品一式 [思考]:1、日々野や一条を探す 2、リョウについて行く 二人の支給品は次の作者に任せます 投下順 Back 止まれない理由 Next フライデー中島の憂鬱 時間順 Back 止まれない理由 Next フライデー中島の憂鬱 初登場 冴羽リョウ Men in Black 初登場 山ノ上春香 Men in Black
https://w.atwiki.jp/insane_tja/pages/2903.html
曲Data Lv BPM TOTAL NOTES 平均密度 ★14 165-165 845 7.59Notes/s 譜面構成・攻略 譜面画像
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4120.html
お妃様は、美しい鏡に己の顔を映し、艶然と唱えました。 「鏡よ鏡、わたくしの問いに答えておくれ」 はい、お妃様、と鏡は愛する妃に恭しく答えました。 ---------------- 温く哀しい夢を、見ていたような気がした。 古泉はうつ伏せていた身をそっと起こす。何時の間に眠っていたのだろう、と懲り固まった肩を微かに鳴らす。机に突っ伏して眠を取るなんて、随分、久し振りの行為であるような気がしたのだ。名残惜しさも相まって、霞がかった意識をどうにか覚醒させようと瞼を掌で軽くさする。 睡魔から解放されるのを待っているうちに、日は大きな傾きを見せていた。窓から降り注ぐ落陽の光は、オレンジ色に夜の闇を混ぜたような陰のある色彩を帯びている。 何という事もない、見慣れた文芸部室だ。 転寝をしていた古泉は、間近に開きっぱなしに伏せられていたハードカバーを、寝起きで回らない頭をどうにか動かそうと試みつつ見遣る。新人作家のものだが重厚な語り口と斬新な構成で話題を呼んだSF作品だ。そう、先程まで唯一同じ部員である読書家の少女に薦められたこれを、読んでいた……。眠気に陥落したのは、いつだろうか。 思い出せない。 「おや」 背にさりげなく掛けられていた薄黄色の毛布に気付いて、古泉は無言で与えられたのだろう気遣いに微笑を零した。 撫でると、羽毛の感触がさわさわと肌を滑る。 しかし礼を述べようと彼女の窓際の定位置を見ても、いつも辞典クラスの分厚い書物を読み耽っている少女の姿は見えない。少女の薄い鞄は本棚の傍らに立てかけてあるようだから、古泉を置いて先に帰宅した訳でもなさそうだ。手洗いにでも出ているのかな、とドアを振り返った古泉は、大きな音を立てることを忍ぶように努めて室内に抜き足で入るその少女の後姿を捉えた。 まだ二年生だが、人数不足のため仮に『部長』の役職を任されている、寡黙な眼鏡の少女。ドアの軋みにさえ気を遣って、ゆっくりとノブを両手で引く。恐らくは、眠っていた古泉を起こさないようにという配慮。余りに慎重で、余りにいじらしくて――古泉は抑え切れない感情の赴くまま、笑み崩れた。 「長門さん」 古泉の呼びかけを聞き、慌てたようにぱっと古泉へと視線を向けた少女は「あ……」と僅かに表情を動かす。フレームの奥で、黒瞳が水銀を溶かし込んだようにゆらりと揺れた。 「起こした?」 「いいえ、今丁度起きたところなんですよ。そう、……毛布をありがとうございます。すみません、部の活動中に居眠りをしてしまって」 部の活動といっても、最近は専らお互い読書に励むくらいのことしかしてはいなかったのだが。不意打ちと云うわけでもないだろうに、少女の頬が朱に染まった、と、見えた。安堵の吐息を漏らした彼女、長門有希は、微かに顔を赤らめながらも、摘み取れてしまいそうなほどか細い声音で古泉を案じるようにした。 「今日は、疲れてる?」 「近頃考査が多いですから、自覚のない内に少々疲れは溜まっていたかもしれません。大丈夫です、眠ったら気分は幾らかすっきりしましたから」 「……そう」 部室で古泉が寝顔を晒すような失態を演じたのは、初めてであったこともあるだろう。古泉の体調不良を純粋に憂う長門の言葉に、古泉は大事ではありませんと安心させる意を込め、朗らかに微笑んだ。 長門は返答に、極小の空気穴から声を絞り出すような微かさで、ぎこちなく「無理はしないで」と告げた。対等な友人に抱く以上の好意を長門に向けて握り締めている古泉は、それを差し出せる瞬間を捜しながら、今この時を何より幸せだと感じて笑うのだ。 (本当にここでしあわせだと笑うのは、自分の役割か?) そのとき胸を掠めた、何かどうしようもない違和感のようなものを、古泉は意識的に押し潰した。 読んでいた書籍や最近の流行小説に関してを話題に、それからも幾らか歓談を交えた古泉と長門だったが、ふと時計を確認した長門がぽつりと呟いたことでその時間も終了を告げる。 「今日は、もう下校時間」 「そういえばそうですね。……帰り際、途中までご一緒してもよろしいですか」 「いい」 少し、耳が赤い。古泉は長門の所作一つに気付くたび、笑みを零した。 「それでは、帰り支度をしましょう」 読みかけの単行本の方は皮製の栞を挟み、鞄に纏めて仕舞い込む。入部当初から少しずつ人数を減らし、現行での部員数がたった二人きりとなった文芸部は、それでも古泉には酷く満ち足りた居場所だ。 他の学生がまだ多数在籍していた頃の騒々しさも懐かしくはあるが、今の打ち寄せる波を見護るような安穏とした空気、ひたすら先の物語を読み進める事に意を見出す無為の静けさも、長門の側で彼女の読書をそれと気取られぬよう観察することも。総て、古泉の好みとするところであったから。こんな平和な日常が恙無く流れてゆけばいいと、そんな風に古泉は思っている。長門がどう考えているかは、分からないにしろ――長門もそう思ってくれているのではないかと期待する想いもまた、確かに古泉の内に眠っていた。 それも甘酸っぱい、「思春期だから」で済ませられる夢で終わる日が来るのだろうか。 後片付けを済ませ廊下に並んだ二人は、向かい合ってそれからを打ち合わせた。古泉は「文芸部室」というネームシールがついたキーホルダー付の鍵を摘んで、長門に示す。 「僕は職員室に鍵を返してきますから、先に玄関の方へ行っていてください。すぐに追い着きます」 「わかった」 こくり、と頷いた長門がゆったりとした歩調で階段を下りて行くのを見送り、古泉は用事は手早く終わらせようと踵を返す。職員室まではそう遠くない。 部室をそのまま横切り、通り過ぎようとして――何か足りないような気が、した。 思わず止めてしまった脚も気にならず、碇と共に沈めても海面へ浮上してくる、差し迫る気持ちの悪さに古泉は口元を押さえた。まただ。先程押し殺したのに、また。 言い知れぬ不安が古泉の胸中を席巻した。具体的に表現のしきれない、何か。放課後、文芸部が散会になった折には、もっと掛け声や語らいがあったような漠然としたイメージ。思い出そうとしても、白い靄が侵食し記憶の遡行を阻んでしまう。心の片隅に引っ掛かり、上手く流されてくれないそれを前に、古泉は暫しの間立ち竦んだ。 何かが変わったのだ。そして、何かが足りない。けれどもそれを古泉は思い出せない。 何か忘れたことがあったろうか。 ――何か、とてもとても、大切なことを。 階下から長門の悲鳴が聞こえたのは、それから、間もなくのことだった。 ---------------- お妃様は、美しい鏡に己の顔を映し、艶然と唱えました。 「鏡よ鏡、わたくしの問いに答えておくれ」 はい、お妃様、と鏡は愛する妃に恭しく答えました。 「それでは鏡よ、お答えなさい。此の世で××××××はどちら?」 お妃様の問い掛けに、鏡は押し黙り、やがてやがて、哀しげに言いました。 「お妃様、それは、わたしにも分かりません」 分からないのです、お妃様。 (→3)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4178.html
かたかた、かた。 単調なタイプの音。ブラインドタッチが出来るほど、慣れているわけでもなかった。手慰みに始めて、今はほんの少しだけ上達した。旧式のデスクトップパソコンだからそれほど機能があるわけでもない。インターネットにも繋がっていない、開いて使えるのはペイントソフトやワードソフトや、それくらいのものだ。 わたしは人気のない部室で、文章を打っている。何の気なしに初めて、それから誰もいないときに、密かに少しずつ打つようになった。単語が並ぶ、接続詞がつながる、変換キーを押す。途切れ途切れに書き始めた、拙いなりの物語。誰も知らない、わたしだけの作品。完成の目処も立ってはいないし、ほとんど勢いで始めたものだから起承転結もぐちゃぐちゃで、とても人に見せられたものじゃない。それでも。 ――着想は、とても単純。 以前、改めて読み直してみたグリム童話に、子供だましと思っていてもいつのまにか引き込まれてしまった。読破したころには、白馬の王子様に憧れる女の子のような心境になってふわふわ夢心地になって。そんなうちにふと浮かび上がった問いかけが、きっかけだった。 白雪姫、お妃に追われ。 小人に助けられて、それでも結局は毒リンゴを食べて死んでしまう。 ガラスの棺に入れられた白雪姫を、通り掛かった王子様が見つけて、余りに美しい姫君の姿にくちづけて――目覚めた白雪姫は王子様と結ばれてハッピーエンド。その後王妃は炙られた鉄の靴を履いて踊りながら死ぬ。白雪姫の命を狙う悪役もきれいさっぱりいなくなって、物語は見事にめでたしめでたし。 だけれども、それは御伽噺の世界だ。現実の世界でそんなふうに、倒れ伏した白雪姫を都合よく救ってくれる存在が、現れるものだろうか。 疎まれ、忌まれ、誰からも手を差し伸べられることなく死んでいく――そんな白雪姫も、いたのではないだろうか。 いくら王子様のことが好きでも、気にも懸けてもらえずに、誰か特定の人に愛されることもなく。凍えるような棺の中で眠り続ける白雪姫がいたのではないだろうか。 「――王子が現れなかった白雪姫は、どうなるのか」 ぽつり、と零した声は冷え切った空気に溶けた。手を止めて、窓の外を見遣ろうとしても、曇り窓は白く靄がかかったようでどんな景色も見通せはしない。 「王子が姫に、目を留めなかったら、どうなるのか……」 しん、とした部屋、独りきりで打ち込む指先が冷たくなる。答えを捜すように、わたしはキーをタッチをする。 幸せな白雪姫は、もしかしたら夢幻なのではないかなんて、疑いながら。 --------------------------- 小人の手によって息を吹き返した白雪姫。 御妃様は今度こそはと、周到に身を繕って白雪姫を訪ねます。 手に携えるは、麗しき櫛。 紅色の麗しき櫛、翳してみれば白雪姫も、手を伸ばさずには居られませぬ。 無知な娘子、白雪姫。 小人の憂慮も知らぬまま。 --------------------------- 長門が絞殺されかかった事件から、七日が、やっと過ぎた。 最寄の警察が定期的に学校を訪れ、教師陣も見廻りを強化していたが、古泉にとっては不自然なまでにあっさりと、騒ぎが収束したように映った。何処か緊張の気配を纏っていた学業生活も、試験だ部活だと忙殺の日々に忘れ去られてゆく。事件の後遺症は、薄い傷跡すら残さず、呆気なく払拭されたかのようだった。 手を取り合い、罠が待ち構えるかもしれないなんて想像もせず、往々に日常を取り戻してゆく生徒たちを見送って、古泉一樹はひとり、置いてけぼりを食らった迷子の心持を味わっていた。 ――何かが可笑しいことは、分かっていた。 掴み切れない違和感に苛まれて、思い出そうとする度に記憶の端でつっかえるものが邪魔をした。不足している、そんな焦燥感だけは何時までも、消化できない気持ち悪さとなって胃の底にへばり付く。 事件もあって瑣末な事にも敏感になり過ぎているのかもしれない、と一人きりの部室に佇んで、古泉は思った。 芯の細い長門は、事件以来、登校もしていない。何度か電話で連絡は取り合ったが、「怖くて学校に出られない」という震えながらの長門の一言を否定できるわけがなかった。何しろ、彼女は命を奪われかける所まで行ったのだから。 古泉にできたのは、「養生してください。ゆっくり、あなたのペースでいいですから」と励ましの言葉をかけることだけだった。そんな古泉なりの精一杯が長門の慰めになったかどうかは、古泉自身にも分からなかった。 好意を抱いている人間が沈鬱な思いで塞ぎ込んでいるのに、何の助けにもなれない無力感と歯痒さ。活動もままならない状態でありながら、長門と居た二人きりの時を一繋ぎでも留めておきたくて、古泉は度々文芸部室に立ち寄った。読書好きで控えめで、鈴蘭が首をもたげるように淑やかな仕草で微笑む。眼鏡の奥に恥じらいを浮かべる瞳を押し隠した少女の面影を、彼女の定位置であった窓辺の椅子に求めて、古泉はただ、漠然と過ごしていた。 何が違うのだろう。何を、忘れているのだろう。 強烈になっていく齟齬の正体を捜すまま、一人きりで過ごし続けての、七日目だった。 古泉は不意に、眼に留まったものに興味を惹かれた。六日目まではただ当たり前であったものに対して、何故だか急に浮かび上がった違和感。思わず座席から立ち上がり、目に付いたそれの前にまで足を運ぶ。 ボードゲーム。 いつから、触れていないのだろうと古泉は箱の縁を人差し指でなぞった。黒ずんだ粉が膚を汚す。 まだ部員数が運営に支障ない程度には揃っていて、賑わいを見せていた頃の置土産だ。山と積まれたボードゲームは浅く埃を被り、遊び手がいない為に隅に追いやられて本棚の一角を占有していた。 古泉はアナログのゲームに関しては下手の横好きというやつで、滅多なことでは白星は望めないという体たらくだったのだが、それでも店先に新種のゲームを見つければついレジに持ち込む有り様だった。――そんなことを、古泉は、『たった今になって』思い出した。 まるで今の今まで、記憶の海底に碇で沈められていたものが、浮上してきたかのような。 「……どういう、ことだ」 敬語の剥がれた呟きを落として、古泉は目を瞑る。……記憶が、あった。何処かで開催されたフリーマーケットで意気揚々と碁盤を担いだのを後目に誰かが呆れたように小言をくれたこと、久しぶりの勝利についマジックで勝敗表に大きめに円を囲って笑われたこと。 やけに不明瞭な記憶のうちから、古泉はいくつか、断片的な記憶を掬い取る。 あれは、誰だっただろう。あのとき対戦していたのは。 少なくとも卒業していった三年生達ではない筈だ、と思い至って、古泉は愕然とした。三年生。確かに部室にいた筈の人々の顔が、思い出せない。 ぐるりと見渡した室内は、古泉の視覚に収まる限りで、異空間に取り残されたような錯覚を起こさせた。 衣装ケースにはコスプレ用のナース服やらバニーガール等が畳みこまれ、創作活動の時にしか利用しないパソコン、剥き出しに置かれてそれきりの給湯器が鎮座している。ふたりきりの文芸部室には、不似合いな代物だ。卒業していった旧三年生の遺産というべきそれらにしては、その三年生の記憶も薄い。 どうして今まで疑問にも思わなかったのだろう。誰かがいて、誰かがいて、誰かがいた。自分と長門以外にも、誰かがいた筈だ、と古泉は指折り数える。そこまではかろうじて、記憶の隅に引っ掛かるのに。 ――それは一体、誰だったのか? 眉間に皺を寄せ、頭をフル回転させて状況理解に努めていた古泉を、控えめなノックが我に返らせた。 「あの……長門さん、いる?」 ドア越にくぐもって響く見知らぬ女子の声。古泉は、ふっと張り詰めた意識を解いた。 「どなたですか」 「8組の者です。長門さんに用があるんですけど」 古泉は一拍、長門を襲った者に関しての情報を脳裏に巡らせ、すぐにそれを打ち消した。非力な女子学生が、幾ら軽量とはいえど、女子一人の首を持ち上げて締め上げられるとは思えない。フードで顔こそ見えなかったが、犯人は男でしか有り得ない。 自分にそう理詰めで納得させた古泉は、尋ね人を丁重に室に招き入れた。知らぬ声と感じたのは間違いではなかったようで、訪れたおさげの女生徒は古泉とは面識のない、取り立てて特筆するところもないような一般的な少女だった。ややふっくらとして、人の良さそうな笑みを浮かべている。古泉は長門の交友関係を掘り返してみたが、こんな少女は長門の親しい人物欄にはなかった筈だった。 「ちょっと知り合いに託っているんですけど、長門さんは……」 「申し訳ありませんが、長門さんは今日もお休みです。僕が承っていい内容なら、伝言も出来ますが」 「そうですか。じゃあ、これをお願いできますか」 長門の不在も想定の範囲内であったのか、少女はあっさりと頷き、懐から白い封筒を取り出した。膨らみが大きいので、手紙以外にも何かが入っているだろうことが一目で知れる。古泉が押されるままに受け取ったそれは、それなりの重量を掌に感じさせるものだった。嵩張る紙の感触に、中に何か無機物が混入されているのが分かる。 「長門さんが来たら、渡してください。それじゃ」 「あの――?」 受け取って古泉が了承の旨を返す前に、少女はさっさと身を翻して走り去っていく。呼び止める間すらない。 唖然とした古泉は、手渡された手紙に眼をやった。端正な字で『長門有希様』と筆記されている以外、差出人の名前等は見当たらない。無味乾燥とした一通の手紙。ラブレターなら同学年で近しくあるとはいえ男である古泉に預けるのは余りに奇妙だし、事件に関しての激励の手紙にしては少女の態度は素っ気無い。ファンシーな動物の描かれたような可愛らしい便箋であったなら古泉もそこまで悩まなかったろうが、手紙自体も味気ないため、女子間のやり取りというようにも見えない。 ただの手紙ならばいい、けれど明らかに何かの小物が収まった手紙を、それも人伝に長門に寄越そうとする理由が分からなかった。 (……まさかカミソリ入り、ということは) 事件があってナーバスになっている少女に対してのスタンダードな嫌がらせなら、有り得るかもしれないと深読みした古泉は、中の小物が何なのかだけでも確かめようと糊付けを剥がした。マナー違反は承知していたが、もし危険物の折込であったら、長門にそのまま渡す訳にもいかない、と考えたためだった。 ――古泉の予想は半分外れ、半分的中した。 開封した手紙を斜めに傾ける。中から滑り落ちてきたのは、見事な緋色をした、一本の櫛だった。その意外さに何故こんなものをと古泉が右掌でそれを受けた瞬間、ざくり、と肌を裂く感触が膚の上を走った。 「…………っ!」 痛みに引き攣った声を上げた古泉は、瞠目し、信じ難いものを見る目つきで己の置かれた惨状を見遣った。 其の場に立ち竦んで、櫛裏に貼り付けられていた刃に切り裂かれた手を前に、呆然とする古泉を尻目に。血液はみるみる溢れ出して手を汚し、白い手紙を侵食し赤く染め、手首も腕も染め上げて、――血塗れになった櫛とともに、床に零れて、落ちた。 --------------------------- 小人の手によって息を吹き返した白雪姫。 御妃様は今度こそはと、周到に身を繕って白雪姫を訪ねます。 手に携えるは、麗しき櫛。 紅色の麗しき櫛、翳してみれば白雪姫も、手を伸ばさずには居られませぬ。 無知な娘子、白雪姫。 小人の憂慮も知らぬまま。 ――髪に差込んだ毒が廻り、また姫は、床に伏してしまうのです。 (→5)
https://w.atwiki.jp/puppet-guardian/pages/328.html
全1マス レクイエムイベント限定ステージ 2022年11月のレクイエムイベントで追加された。 イベント期間中のみ、眠りの花園ゴールマスに入り口(光の階段)が登場している。 この階段がステージ126-ヴァルハラへの階段につながっている。 特別なアイテムや魔力などは不要。 イベントの概要やモンスターについてはレクイエムイベントのページを参照。 入手できるアイテム 出現モンスター ヴァルキリー(ヴァルトラウテ/魔法使い)(ヴァルキリーメタル ヴァルキリーの髪 双翼の宝箱 シルク 鋼) ヴァルキリー(ゲルヒルデ/武器:ウィップ)(ヴァルキリーメタル ヴァルキリーの髪 双翼の宝箱 シルク 鋼) マップ詳細 マス数 出現モンスター 採取アイテム 備考 ★ ヴァルキリー(ヴァルトラウテ/魔法使い) x1ヴァルキリー(ゲルヒルデ/武器:ウィップ) x1 なし NPC「ロキ」 NPC「ロキ」 イベント期間中、NPC「ロキ」からクエストを受注可能。 クエスト詳細はイベントページ参照のこと。
https://w.atwiki.jp/heisei-rider/pages/364.html
レクイエムD.C.僕がまだ知らない僕(3)◆.ji0E9MT9g ◆ 敵が包まれた爆炎の熱を鎧越しに感じながら、キバは無感動にゆっくりと得物を構え直した。 先代の王、つまりはもう一人の“キング”との戦いにおいても、似たような状況が訪れ、そして彼が戦う気力を十分に残していたことを鮮明に覚えていたからだ。 正直認めたくはないがあの時の王と同等程度の力を誇る、今自分と対峙するキングも、この程度の攻撃では敗北を認めないだろうとそう高をくくっていたのである。 「ハハハ……、アハハハハハ……」 そしてキバの読みは、的中する。 キングが恐らくは真の姿であろう、金色の甲殻に身を包んだ怪人に変じながら、嗤いを絶やさず煙の中から現れたのである。 その笑いは弱々しいが、しかし先ほど闇のキバの鎧を纏い戦ったダグバという狂人とはまたベクトルの違う狂気を孕んだものだった。 ひたすらに戦うのが楽しくて堪らないといった様子だったあちらに比べれば、キングのそれは例えるなら悪戯を楽しむ悪ガキのようなものというべきだろうか。 信念や決意など微塵も感じられない、ただ今を楽しめればそれでいいという思いが見え隠れするそれに葛藤の中で生きるキバは苛立ちを感じたが、しかしそれで取り乱すことはしなかった。 だがそんなキングに対して感情を抑えきれなかったのは、少しばかりの間蚊帳の外に押しやられていたユウスケだった。 「お前、何がそんなにおかしいんだよ……自分が死ぬかもしれないんだぞ……?」 「だっておかしくってさ……、僕はまだ本気も出してないのに、そっちの王様気取りは全力なんだもん」 その言葉に、鎧越しにも伝わるほどに膨れあがったキバの怒気。 だがそれを受けても、なおキングは何がおかしいのかヘラヘラと呑気に構えるだけだった。 「あれが僕の全力だったかどうか……試してみるか?」 「いや、いいよ。だって――」 言ってキングは突如その手に握ったオールオーバーから殺意を乗せた真空波を放った。 しかし所詮は見え透いた攻撃、その程度今のキバであれば容易に対処出来る。 ……はずだった。 「――僕の勝ちだもん」 「えっ?」 思わず漏れた間抜けな声を、しかし渡は抑えることなど出来なかった。 まだ数分残っていたはずのキバの変身制限が突然限界を迎え、その生身を晒したのだから。 王の威厳を以て悠然と攻撃に対処するはずだった渡に、最早何の回避行動を取る時間さえありはしない。 呆然と立ち尽くす渡、ユウスケの絶叫、キングの嘲笑。 全てが重なった、永遠にも感じられるその一瞬が過ぎた後。 紅渡は、天を仰ぎながら大きく横たわった。 ◆ 「渡ッ!」 思いがけない展開に、駆け寄りながら叫ぶのはユウスケだ。 助けたかったはずの命がまた、自分の目の前で奪われてしまった。 それを思うだけで彼の心に確かに存在していたはずの聖なる泉は二度と恵みをもたらさぬほどに枯れ果ててしまいそうになる。 困惑と敵への怒りと何より自分への不甲斐なさに、しかしもう溢れる涙さえ残されていなかったユウスケは、そのままキングに立ちはだかる。 今しがた志し半ばに倒れてしまった渡と、そして――。 「――キバット?」 心中で呼んだその名前を、しかし実際に声に出したのは、ユウスケではなかった。 それは自身が背に庇うように位置していた、致命傷を受けたはずの渡の、今すぐにでも消えてしまいそうなか細い絶望を秘めた声だった。 その悲痛な声に、何が起きたかとキングのことさえ無視して勢いよく振り返ったユウスケの瞳に映ったのは、自分や仲間たちに分け隔てなく接し力を貸してくれた気の良い蝙蝠の身体が、左の羽の根元から消滅している痛ましい姿だった。 ◆ その時、渡には自分に何が起こったのか、皆目見当も付かなかった。 何故正確に把握しているはずの変身制限が早く解除されるに至ったのか、何故攻撃を受けたはずの自分が生きているのか、そして何より、何故自分の親友であるキバットから片翼が失われているのか。 何一つ理解の追いつかない状況の中で、ひたすらに積み重なっていく困惑がしかし自分に訴えかけてくるのは、『キバットの命が危ない』というただ一つの焦燥感だけだった。 「――キバット?」 思わず呼びかけた渡の声に、しかしキバットはただ漏れるような弱々しい呼吸を返すだけ。 一体どうすればと頭が混乱した渡の耳に届いたのは、しかしこんな状況でも確かな存在感を有したキングの強い溜息だった。 「ハァ、……驚いたよ。まさかそいつが君を庇っちゃうなんてさ、盛り下がるったらありゃしない」 「何……?」 緊張感の欠片も感じられないキングの声に思わず怒気を含み返した渡に対し、キングは変わらぬ調子で続けた。 「気付かなかったの?君の変身が解けちゃった後、その蝙蝠くんは君を押し倒して自分だけで攻撃を受け止めたって訳。 幾ら頑丈に出来てるって言っても、ダグバとの戦いで傷ついた今の身体に僕の攻撃を受けたら一溜まりもないことくらい分かるだろうに、馬鹿な奴」 「馬鹿な奴……だと?」 瞬間、渡より先にキングの声に怒りを露わにしたのは、ユウスケだった。 渡の友として戦った彼のことも、別世界のワタルに仕える彼のことも、どのキバットも自分にとって友人であり、仲間だったのだ。 そんな存在を侮辱されて黙っていることは、ユウスケには到底出来なかった。 「あいつは、何をされたって親友を……渡を信じてたんだ! 本当は他の世界を滅ぼすなんて望んでないって、渡は今も心優しい昔の渡のままなんだって……!ひたすらに信じてた! そんな風に信じられる相棒もいないお前が、あいつを馬鹿にするな!」 「暑苦しいなぁ……、そういうのウザいって。それに、結局蝙蝠くんが馬鹿ってのは変わらないじゃん。 キバが殺し合いに乗りたがってないなんて見当違いもいいところだし、信じる相手を間違った馬鹿だってのは、結局同じ事でしょ?」 「――キングゥゥゥッ!!!」 高まった怒りのままに、ユウスケはキングに向けて駆け寄り拳を振り抜いた。 もしも今クウガへの変身に制限がかかっていなかったらアルティメットフォームになっていただろう。 そう自分でも認めざるを得ないほどに怒りの衝動を込めて放たれたその一撃は、しかしソリッドシールドすらないというのにコーカサスの堅固な甲殻に傷一つつけることは叶わない。 一打、また一打と甲殻を強く叩きつける度血が滲んでいく拳は、今にも壊れてしまいそうだと悲鳴をあげているかのようだった。 しかしそれでも、ユウスケは手を休めることはしない。 ただそれが自分に出来る最大の仕事だとばかりに、ひたすらに拳を振るい続けていた。 「……ウザい」 だがユウスケの必死の連打も、付き合うのに飽きたキングの気怠げな一言と共に力なく振るわれた豪腕によって呆気なく終わりを告げる。 彼からすれば別段殺傷を目的にしていないはずの何気ないただの一撃で、ユウスケの身体は容易く吹き飛ばされてしまった。 一方、“キング“という称号によほど執心なのか、先に渡を殺そうと彼にゆっくり歩み寄っていくコーカサスアンデッド。 呆然と座り尽くし両手に握ったキバット以外の全てが意識に入っていないだろう渡を見て、ユウスケの身体は再び自然と動き出していた。 「ああああぁぁぁぁ!!!」 「邪魔……!」 絶叫と共に後ろからコーカサスの腰に抱きつくようにタックルをかましたユウスケは、桁外れのパワーに何度も引き剥がされそうになりながらも、懸命に言葉を紡ぐ。 「渡!逃げろッ!」 その言葉に、ゆっくりと顔をあげる渡。 未だ目の焦点は合っていないような気はするが、しかし今はそれでもよかった。 「キバットを連れて、ここから逃げるんだ!キバットがくれたものを、無駄にしないためにも! 行け渡!行けええええぇぇぇ!!!」 ユウスケが今、無力であってもキングの前に立ったのは、渡にキバットとの最後を少しでも長く静かに過ごして貰いたいという思い。 自分と姐さんに許されなかったその時間を、彼には与えてやりたいという、強い信念によるものだった。 しかしそんな思いも虚しく、絶叫を最後に遂にコーカサスに捉えられ彼は今度こそ真正面から一撃を食らってしまう。 彼方へと飛ばされていくユウスケを眺めながら、しかし渡はことここに至ってようやく思考力を取り戻した。 今の今まで上の空であったとしても、しかしそれも、当然だったかもしれない。 先ほどまでの渡の胸を占めるのは、キバットに傷を負わせたキングの怒りなどという下らない感情よりも、幼少の頃より悠久にも思える時を二人で共に過ごした唯一無二の相棒の命が消え行こうとする現状への対処だったのだから。 ……この手の中で、消え行くような呼吸を繰り返す相棒を、こんな喧噪の中で死なせたくない。 どこか歪ながらも芽生えたその思いが、渡の瞳に消えかけた芯を取り戻させていた。 ――STAND BY そんな渡の心境に呼応するように、機械仕掛けの紫色をしたサソリが突如どこからか現れた。 初めて出会ったはずだというのにどこか知っているような気がするそのサソリは、そのままキングのデイパックへ飛び込みその中身を散乱させる。 「こいつッ……!」 珍しく苛立った様子のキングが自身のデイパックの中身を抑えるより早く、紫色のサソリ――サソードゼクター――は幾つかの彼の所有物と共に目当てのものをそこから掘り出し既にそこから脱出していた。 丁度その手に収まるようにゼクターから渡に向けて投げ渡されたのは、自身を扱える資格者の証明とも言えるサソードヤイバーであった。 片手のひらに未だキバットを抱えている関係か、それとも単に資格者の手を煩わさせないためか、サソードゼクターが自力でヤイバ-に収まれば、渡の姿は三度異形へと変わっていた。 ――CHANGE SCORPION 闇に怪しく輝いた緑の複眼が表すのは、この会場で渡こそがサソードの資格者に相応しいと認められた証。 彼が本来の世界の資格者である神代剣と同じく自分の死を以て完遂される望み故か、或いは死した最愛の女性の為に戦い続ける無私の愛故か。 ともあれ重要なのは、彼はこの土壇場で新たな力を手に入れたというその事実だけだった。 ――CLOCK UP そして次にサソードが選択したのは、キングとの更なる戦闘ではなく、友の安全を確保するための離脱であった。 クロックアップを使用したそれに元から追いつくつもりもないのか、つまらなさそうに溜息を吐いたキングは残ったユウスケをいたぶってストレス解消でもしようかと彼に振り返る。 しかしその瞳に映ったのは、自身のデイパックからこぼれ落ちた黒いデッキを拾い上げ鋭くこちらを睨む彼の姿だった。 「変、身……!」 息も絶え絶えに何とかデッキをVバックルに叩き込んだユウスケの姿は、先ほどキングも変じた仮面ライダーの姿へと変身する。 とはいえ今の彼ではサバイブになったところで自分の相手ではあるまい。 そう高をくくって破壊剣オールオーバーを構えたキングに、ナイトは勢いよくカードを引き抜いた。 ――GUARD VENT しかし彼の用いた手札は、サバイブではなかった。 先ほどドガバキフォームに変身したキバが強化変身による制限時間の短縮で予想外の展開を見せたことから、切り札を温存しようとしているのだろうか。 どちらにしても結果は同じ、自分の勝ち以外にはあり得ないと威勢良くナイトが上段から振り下ろしたダークバイザーを、切り上げる。 瞬間、ナイトが装着するマント、ウィングウォールに阻まれ一瞬視界を失ったキングが次に見たのは、空高く飛び自身に背を向けて彼方へと滑空していくナイトの姿だった。 最初から渡を逃がして自分も逃げる算段だったのかと呆れながらも、手持ちの戦利品を一気に二つ失ったのもどうでもいいかのようにキングは笑った。 どちらにせよ自分の本来の姿があれば十分にこの場を勝ち抜けるのだ、それ以外の変身アイテムなど能力で遊ぶためだけのもの。なくなろうが増えようが、正直どうでもよかった。 「まぁでも、次はきっと面白くなるよ。……ねぇ、カテゴリーA?」 故に、彼の関心は既にサソードヤイバーやナイトのデッキにはない。 自分から飛び込んできた新しい遊具(おもちゃ)、レンゲルバックルを掲げて、キングは一人ニヤリと笑った。 【二日目 早朝】 【E-1 焦土】 【キング@仮面ライダー剣】 【時間軸】本編34話終了より後 【状態】疲労(大)、ダメージ(大)、ゾーンメモリの能力1時間使用不可 【装備】破壊剣オールオーバー@仮面ライダー剣、レンゲルバックル+ラウズカード(クラブA~10、ハート7~K、スペードK)@仮面ライダー剣、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎、T2ゾーンメモリ@仮面ライダーW、グレイブバックル@仮面ライダー剣、 【道具】デンオウベルト&ライダーパス@仮面ライダー電王、カッシスワーム・クリペウスとの対決用の持ち込み支給品@不明、首輪(五代、海東) 【思考・状況】 基本行動方針:面白おかしくバトルロワイアルを楽しみ、世界を壊す。 0:さて……次は誰と遊ぼうかな……? 1:このデスゲームを楽しんだ末、全ての世界をメチャクチャにする。 2:カッシスワームの復活を警戒……まぁホントに復活してたら会ったとき倒せばいいや。 3:僕はまだ本気出してないから負けてないし! 【備考】 ※参加者ではないため、首輪はしていません。そのため制限が架されておらず、基本的には封印されない限り活動可能です。 ※カッシスワームが復活した場合に備え、彼との対決も想定していたようですが、詳細は後続の書き手さんにお任せします。 ※ソリッドシールドが破壊されました。再生できるかは後続の書き手さんにお任せします。 ※T2ゾーンメモリは会場内どこでも飛べますが、マキシマムドライブでの使用などの場合も含め2時間に一度しか能力を使用できません。 ※この会場内の情報は第二回放送とその直後までのものしか知りません。彼の性格上面白くなりそうなこと優先で細かいことを覚えていない可能性もあります。 ◆ F-1エリア、先ほど一条が自分を叱咤し病院に向けて出発した所謂スタート地点に辿り着いて、ユウスケはようやくその身体を地面に横たえた。 本来であれば今すぐにでも一条が逃げた病院方向に向かいたかったが、キングのことを考えずとも、もう身体は体力の限界を訴えていて、かつもう中間地点であるE-1エリアは禁止エリアになってしまう時間だった。 少なくとも放送までには到底合流が叶わない一条のことや、先ほどの死んだ目をした渡のこと、そして見るも無惨に打ちのめされたキバットのことなどが、次々に頭の中を過ぎっては消えていく。 「結局俺は……全部中途半端だ……!」 その末に導かれた自分の不甲斐なさを呪う声は、震えていた。 一条のことを病院にまで送り届けるという使命も、渡を救うというキバットからの頼みも、キングを倒すという決意も、全てが満足に出来ていない。 こんな中途半端で弱い自分をそれでも頼ってくれた人たちの思いに、何一つ自分は応えられていない。 『君は君で良い』 自己嫌悪に至りかけたユウスケの頭に刹那思い出されたのは、先ほどの一条の言葉。 五代が持っていなかったという、自分と対等に語り合え悩みを打ち明け合える、門矢士という友の存在。 それが自分と五代雄介とを分ける一つの違いなのだとすれば、彼がその五代を殺したかもしれないという懸念を、自分はどう一条に伝えればいいのだろうか。 士が善意から五代を倒したのだとすれば、一条は彼を許すだろうか。 もし悪意で以て士が五代を破壊していたとして、そもそも今の自分に彼を倒せるだけの力など残されているのだろうか。 「姐さん、俺、どうすれば……」 積み重なる不安に思わず助けを求めるかのように空に伸ばしたその腕は、しかし容赦なく迫り来る睡魔に負け、力なく大地に落ちた。 【二日目 早朝】 【F-1 平原】 【小野寺ユウスケ@仮面ライダーディケイド】 【時間軸】第30話 ライダー大戦の世界 【状態】疲労(極大)、ダメージ(極大)、精神疲労(大)、左脇及びに上半身中央、左肩から脇腹、左腕と下腹部に裂傷跡、アマダムに亀裂(進行)、ダグバ、キング@仮面ライダー剣への極めて強い怒りと憎しみ、仲間の死への深い悲しみ、究極の闇と化した自分自身への極めて強い絶望、仮面ライダークウガに1時間変身不能、仮面ライダーガタックに1時間10分変身不能、仮面ライダーナイトに1時間25分変身不能 【装備】アマダム@仮面ライダーディケイド 、ガタックゼクター+ライダーベルト(ガタック)@仮面ライダーカブト、ナイトのデッキ+サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎 【道具】アタックライドカードセット@仮面ライダーディケイド、ガイアメモリ(スカル)@仮面ライダーW、変身音叉@仮面ライダー響鬼、トリガーメモリ@仮面ライダーW、ディスクアニマル(リョクオオザル)@仮面ライダー響鬼、士のカメラ@仮面ライダーディケイド、士が撮った写真アルバム@仮面ライダーディケイド、ユウスケの不明支給品(確認済み)×1、京介の不明支給品×0~1、ゴオマの不明支給品0~1、三原の不明支給品×0~1、照井の不明支給品×0~1 【思考・状況】 0:(気絶中) 1:一条さん、どうかご無事で――。 2:これ以上暴走して誰かを傷つけたくない…… 3:……それでも、クウガがもう自分しか居ないなら、逃げることはできない。 4:渡……キバット……。 5:もし本当に士が五代さんを殺していたら、俺は……。 【備考】 ※自分の不明支給品は確認しました。 ※『Wの世界万能説』をまだ信じているかどうかは後続の書き手さんにお任せします。 ※アルティメットフォームに変身出来るようになりました。 ※クウガ、アギト、龍騎、響鬼、Wの世界について大まかに把握しました。 ※変身に制限が掛けられていることを知りました。 ※アマダムが損傷しました。地の石の支配から無理矢理抜け出した為により一層罅が広がっています。 自壊を始めるのか否か、クウガとしての変身機能に影響があるかなどは後続の書き手さんにお任せします。 ※ガタックゼクターに認められています。 ※地の石の損壊により、渡の感情がユウスケに流れ込みました。 キバットに語った彼と別れてからの出来事はほぼ全て感情を含め追体験しています。 ※カードセットの中身はカメンライド ライオトルーパー、アタックライド インビジブル、イリュージョン、ギガントです ※ライオトルーパーとイリュージョンはディエンド用です。 ※ギガントはディケイド用のカードですが激情態にならなければ使用できません。 ※デイパックは音也のものに移し替えました。その際支給品の紛失についても確認しましたが、彼が覚えている限りの支給品はそのまま残っていました。 ◆ D-2エリアに在する小さな民家の一つの中で、紅渡はただ友を救う手立てはないかと一人奮闘していた。 自分だけではどうにも出来ないと自分より余程キバット族について詳しいだろうキバットバットⅡ世を頼ってみても、その答えは「助かる見込みはない」というだけだった。 ただ冷静に事実と推測される結果だけを述べ後は黙って息子の最後を見届けようとする彼の暗い瞳には、既に諦めしか映っていない。 それでも一握りの奇跡を求めて物言わぬサガークや胸像と化したガルルたちにさえ解決手段を聞いていくその渡の姿は、あまりにも痛々しかった。 「キングよ、何を期待しても無駄だ。俺の息子は、もう――」 「その名前で僕を呼ばないで!」 見ていられないとばかりに思わず再度渡へ忠告を行ったキバットバットⅡ世は、しかし渡のその言葉に耳を疑った。 まさか今この男は……自分がキングと呼ばれるのを否定したというのか? 自分の口をついて出た咄嗟の言葉に驚愕を隠しきれなかったのは、渡も同じだった。 紅渡であることを捨てキングとして世界を救う決意を固めたというのに、その名前で呼ばれることが、キバットをこんな目に合わせた男と同じ名前で呼ばれることが、どうしても我慢ならなかったのだ。 「へっ……、ようやく、自分の名前が何なのか思い出したのかよ……。 ったく遅いぜ……渡……」 自分自身の感情にどうしようもなく困惑する渡に対し、突如降り注いだのは自分がどうしても聞きたかった友の声。 キバットバットⅡ世ともよく似ている、しかし暖かみを感じる聞き慣れた声だった。 だが友の意識が戻ったことを喜ぶより早く湧き出たのは、彼の言葉を否定しなければならないという強迫観念にも似た感情だった。 「違うよキバット……僕はもう紅渡じゃない……。その名前を名乗る資格なんてもう僕には……!」 「馬鹿言ってんじゃねぇよ、親がつけてくれた自分の名前名乗るのに資格なんてあるわけねぇ。 キングなんていう何人もいるありきたりなしょうもねぇ名前じゃなく、親父さんから受け継いだ“紅”て名字に、お袋さんがつけてくれた“渡”って名前。 それがお前の名前だろうが。この先一生、何があったって背負っていかなきゃならねぇ、お前の……」 「キバット……」 ハァハァと浅く乱雑に呼吸を繰り返すキバットの姿を見て、もう渡は彼から目を離すことはしなかった。 一瞬でも瞳を閉じれば、それが永劫の別れになってしまう気がして、ただひたすらどんな些細な点さえもその姿を目に焼き付けようと必死だった。 「なぁ渡……最後に一つだけ、お前に言いたいことがあるんだ、聞いてくれるか?」 「……」 渡は、キバットの問いかけに何も返さなかった。 返事をすれば、そしてキバットがその言いたいこととやらを言い切ってしまったらもうそれで全てが終わる気がして、どうしようもなくそれを先延ばしにしてやりたかった。 だがそんな渡の些細な運命への抵抗に気付いた上でか否か、キバットは独り言のように続けた。 「俺はな渡、お前の頑固なところが好きだったんだ。自分で決めたら真っ直ぐに突き進むことしか知らねぇお前のことを、俺が支えてやらなきゃって、そう思ってた。 お前がキングになろうが何だろうが、お前が自分の気持ちに本当に素直に生きられるなら、俺はそれだって構いやしなかったんだ」 遠い目をしてどこか記憶をたぐるように語りながら虚空を見つめていたキバットは、しかしそこで今にも閉じてしまいそうな右目を何とか渡に向けた。 「……けどよ、今のお前は、ただ自分の気持ちに嘘ついてるだけじゃねぇか。 キングだの世界を守るだのって理由ばっかこじつけて自分の本当にやりたいことから逃げてばっかのお前なんて、もう見てられねぇんだよ」 「何それ……、そんなのずるいよ。僕が本当にやりたいことってなんなの?教えてよキバット……!」 「俺に聞くまでもねぇよ、すぐに見つけられるさ、お前なら……」 そう言われても、渡には自分の心が何を望んでいるのか訴える声は、一切聞こえなかった。 その声をどうにか引き寄せようと藻掻く度、先ほどまでは鮮明だったはずのキングとしての使命も、どんどん霞んでいく。 そんな靄の掛かった思考の中で、今鮮明に聞こえるのは、相棒が紡ごうとする最後の言葉だけだった。 「だからよ渡、俺の言いてぇことってのは結局ただの一つだけだ」 言って、キバットは大きく息を吸い込む。 まさにそれに全ての魂をかけるかのように。 「――俺は、今までお前と一緒にいられて、楽しかったぜ。わた……る……」 それを満足げに言い切って、キバットの重い瞼は閉じた。 深央に続いて、またも手の中で消えた掛け替えのない存在の命。 自分が守りたい、生きていてほしいと願った者たちが、次々と死んでいく。 キバットも深央も、自分が望みを叶え世界から存在を消したとすれば幸せになれるのだろうかと夢想する一方で、それは先ほどユウスケに指摘された“逃げ”ではないかと心が叫ぶ。 自分と一緒にいられて楽しかったという言葉を最後に残したキバットの思いを尊重するなら、彼の生きた世界から自分を消すということを、果たして彼は望むだろうか。 だが今更彼の分まで生き続けるというには、既に自分に関する記憶を消してしまった名護を始めとして、“紅渡”に戻るには取り返しのつかないことが多すぎるのではないか。 誰にも邪魔されない、ただ一人の暗い部屋の中でキバットの遺体を抱き虚空を見つめ続ける渡の瞳が次に映すのは、全てをなかったことにするために他者に犠牲を強いる冷たい覚悟か、それとも全ての世界を救わんとする温かい優しさか。 その選択を下すには、彼にはまだ時間が足りなかった。 【二日目 早朝】 【D-2 民家】 【紅渡@仮面ライダーキバ】 【時間軸】第43話終了後 【状態】ダメージ(極大)、疲労(極大)、精神疲労(大)、キバットの死への動揺、相川始の裏切りへの静かな怒り、心に押し隠すべき悲しみ、今後への困惑と混乱、仮面ライダーダークキバに15分変身不能、仮面ライダーサガに1時間変身不能、仮面ライダーキバに1時間10分変身不能、仮面ライダーサソードに1時間20分変身不能 【装備】サガーク+ジャコーダー@仮面ライダーキバ、ゼロノスベルト+ゼロノスカード(緑二枚、赤一枚)@仮面ライダー電王、キバットバットⅡ世@仮面ライダーキバ、ザンバットソード(ザンバットバット付属)@仮面ライダーキバ、サソードヤイバー@仮面ライダーカブト 【道具】支給品一式×3、GX-05 ケルベロス(弾丸未装填)@仮面ライダーアギト、アームズモンスター(ガルルセイバー+バッシャーマグナム+ドッガハンマー)@仮面ライダーキバ、北岡の不明支給品(0~1)、ディスカリバー@仮面ライダーカブト 【思考・状況】 基本行動方針:王として、自らの世界を救う為に戦う。 1:キバット……。 2:大切な人達を守り抜く。 3:ディケイドの破壊は最低必須条件……?次会ったときは……。 4:始の裏切りに関しては死を以て償わせる(?) 4:加賀美の死への強いトラウマ。 5:これからはキングと名乗る……? 6:今度会ったとき邪魔をするなら、名護さんも倒す……? 7:キング@仮面ライダー剣は次に会ったら倒す。 【備考】 ※過去へ行く前からの参戦なので、音也と面識がありません。また、キング@キバを知りません。 ※東京タワーから発せられた、亜樹子の放送を聞きました。 ※ディケイドを世界の破壊者、滅びの原因として認識しました。 ※相川始から剣の世界について簡単に知りました(バトルファイトのことは確実に知りましたが、ジョーカーが勝ち残ると剣の世界を滅ぼす存在であることは教えられていません)。 ※レンゲルバックルからブレイドキングフォームとクウガアルティメットフォームの激闘の様子を知りました。またそれによってもう一人のクウガ(小野寺ユウスケ)の存在に気づきました。 ※赤のゼロノスカードを使った事で、紅渡の記憶が一部の人間から消失しました。少なくとも名護啓介は渡の事を忘却しました。 ※キバットバットⅡ世とは、まだ特に詳しい情報交換などはしていません。 ※名護との時間軸の違いや、未来で名護と恵が結婚している事などについて聞きました。 ※仮面ライダーレイに変身した総司にかつての自分を重ねて嫉妬とも苛立ちともつかない感情を抱いています。 ※サソードゼクターに認められました。 【キバットバットⅢ世@仮面ライダーキバ 死亡】 129 レクイエムD.C.僕がまだ知らない僕(2) 投下順 130 居場所~place~ 時系列順 小野寺ユウスケ 140 夢に踊れ(前編) 紅渡 136 リブートpf答え、見つからず キング 133 未完成の僕たちに(1)