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三花一瓶(さんかいっぺい) 一 母と子は、仕事の庭に、きょうも他念なく、蓆機(むしろばた)に向かって、蓆を織っていた。 がたん…… ことん かたん 水車の回(まわ)るような単調な音が繰り返されていた。 だが、その音にも、きょうはなんとなく活気があり、歓喜(かんき)の譜(ふ)があった。 黙々(もくもく)、仕事に精(せい)出してはいるが、母の胸にも、劉備(りゅうび)の心にも、今日此頃(このごろ)の大地のように、希望の芽が正々せいせい)と息づいていた。 ゆうべ。 劉備は、城内の市(いち)から帰って来ると、まっ先に、二つの吉事(きちじ)を告げた。 一人の良き友に出会った事と、かねて手放した家宝の剣が、計らず再び、自分の手に帰って来た事と、ふぉう二つの歓(よろこ)びを告げると彼の母は、 「一陽来復(いちようらいふく)。おまえにも次節が来たらしいね。劉備や……心の仕度もよいかえ」 と、かえって静かに声を低め、劉備の覚悟を糺(ただ)すように言った。 次節。――そうだ。 長い長い冬を経て、桃園の花も漸(ようや)く蕾(つぼみ)を破っている。土からも草の芽、木々の枝からも緑の芽、生命(いのち)のあるもので、萌(も)え出(で)ない物はなに一つ無い。 がたん…… ことん…… 蓆機は単調な音をくりかえしているが、劉備の胸は単調でない。こんな春らしい春を覚えた事はない。 ――我(われ)は青年なり。 空へ向かって言いたいような気持である。いやいや、老いたる母の肩にさえ、どこからか舞って来た桃花(とうか)の一片(ひとひら)が、紅(あか)く点じているのではないか。 すると、どこかで、歌う者があった。十二、三歳の処女の声だった。 妾(ショウ)ガ髪(カミ)初(ハジ)メテ額(ヒタイ)ヲ覆(オオ)ウ 花(ハナ)ヲ折(オ)ッテ門前(モンゼン)ニ戯(タワム)レ 郎(ロウ)ハ竹馬(チクバ)ニ騎(キ)シテ来(キタ)リ 床(ショウ)ヲ繞(メグ)ッテ青梅(セイバイ)ヲ弄(ロウ)ス 劉備は、耳を澄(す)ました。 少女の美音は、近づいて来た。 ……十四君(キミ)ノ婦(フ)ト為(ナ)ッテ 羞顔(ショウガン)未(イマ)ダ嘗(カツ)テ開(ヒラ)カズ 十五初(ハジ)メテ眉(マユ)を展(ノ)ベ 願(ネガ)ワクバ塵(チリ)ト灰(ハイ)トヲ共(トモ)ニセン 常(ツネ)ニ抱柱(ホウチュウ)ノ信(シン)ヲ存(ソン)シ 豈(アニ)上(ノボ)ランヤ望夫台(ボウフダイ) 十六君(キミ)遠(トオ)クヘ行(ユ)ク 近所に住む少女であった。早熟な彼女はまだ青い棗(なつめ)みたいに小粒であったが、劉備の家のすぐ墻隣(かきどなり)の息子に恋しているらしく、星の晩だの、人気(ひとけ)のない折の真昼など窺(うかが)っては、墻の外へ来て、よく歌をうたっていた。 「………」 劉備は、木蓮(もくれん)の花に黄金(きん)の耳環(みみわ)を通したような、少女の貌(かお)を眼に描いて、隣の息子を、なんとなく羨(うらや)ましく思った。 そしてふと、自分の心の底からも一人の麗人(れいじん)を思い出していた。それは、三年前の旅行中、古塔の下であの折に老僧にひき合わされた鴻家(こうけ)の息女、鴻芙蓉(こうふよう)のその後の消息であった。 ――どうしたろう。あれから先。 張飛に訊(き)けば、知っている筈(はず)である。こんど張飛に会ったら――など独(ひと)り考えていた。 すると、墻の外で、頻(しき)りに歌をうたっていた少女が、犬にでも嚙(か)まれたのか、突然、きゃっと悲鳴をあげて、そこかへ逃げて行った。 二 少女は犬に咬(か)まれたわけではなかった。 自分のうしろに、この辺で見た事もない、剣を佩(は)いた巨(おお)きな髯漢(ひげおとこ)が、いつのまにか来ていて、 「おい、小娘、劉備の家はどこだな」と、訊(たず)ねたのだった。 けれど、少女は振り向いてその漢(おとこ)を仰(あお)ぐと、姿を見ただけで、胆(きも)をつぶし、きゃっと言って、逃げ走ってしまったのであった。 「あははは。わははは」 髯漢は、小娘の驚きを、滑稽(こっけい)に感じたのか、独りして笑っていた。 その笑い声が止(や)むと一緒に、後ろの墻(かき)の内でも、はたと、蓆機(むしろばた)の音が止んでいた。 墻といっても匪賊(ひぞく)に備えるため此辺(このへん)では、総(すべ)てと言ってよい程、土民の家でも、土の塀(へい)か、石で組み上げた物でできていたが、劉家だけは、泰平(たいへい)の頃に建てた旧家の慣(なら)わしで、高い樹木と灌木(かんぼく)に、細竹を渡して結(ゆわ)ってある生垣(いけがき)だった。 だから、背(せ)の高い張飛(ちょうひ)は、首から上が、生垣の上に出ていた。劉備の庭からもそれが見えた。 「おう」 「やあ」 と、十年の知己(ちき)のように呼び合った。 「なんだ、此処(ここ)か」 張飛は、外から木戸口を見つけて這入(はい)って来た。ずしずしと地が鳴った。劉家が初まって以来、こんな大きな跫音(あしおと)が、この家(や)の庭を踏んだのは初めてだろう。 「きのうは失礼しました。君に会った事や、剣の事を、母に話したところ、母もゆうべは歓(よろこ)んで、夜もすがら希望に耽(ふけ)って、語り明かしたくらいです」 「あ。こちらが貴公(きこう)の母者人(ははじゃひと)か」 「そうです。――母上、このお方です。きのうお目にかかった翼徳(よくとく)張飛(ちょうひ)という豪傑(ごうけつ)は」 「オオ」 劉備の母は、機(はた)の前からすっと立って張飛の礼を享(う)けた。どういうものか、張飛は、その母公(ぼこう)の姿から、劉備以上、気高い威圧をうけた。 又、実際、劉備の母には自(おのず)から備わっている名門の気品があったのであろう。世の常甘い母親のように、息子の友達だからといって、やたらに小腰を屈(かが)めたりチヤホヤはしなかった。 「劉備からおはなしは聞きました。失礼ですが、お見うけ申すからに頼もしい偉丈夫(いじょうぶ)。どうか、柔弱なわたくしの一子を、これからも叱咤(しった)して下さい。おたがいに鞭撻(べんたつ)し合って、大事を為(な)しとげて下さい」と、言った。 「はっ」 張飛は、自然どうしても、頭を下げずにはいられなかった。長上(ちょうじょう)に対する礼儀のみからではなかった。 「母公。安心して下さい。きっと男児の素志(そし)をつらぬいて見せます。――けれどここに、遺憾(いかん)な事が一つ起こりました。で、実は御子息に相談に来たわけですが」 「では、男同士のはなし、わたくしは部屋へ行っていましょう。悠(ゆる)りとお話しなさい」 母は、奥へかくれた。 張飛は、その後の床几(しょうぎ)へ腰かけて、実は――と、自分の盟友、いや義兄とも仰(あお)いでいる、雲長(うんちょう)の事を話し出した。 雲長も、自分が見込んだ漢(おとこ)で、何事も打ち明け合っている仲なので、早速、ゆうべ訪れて、仔細(しさい)を話したところ、意外にも、彼は少しも歓(よろこ)んでくれない。 のみならず、景帝(けいてい)の裔孫(えいそん)などとは、むしろ怪しむべき者だ。そんな路傍(ろぼう)のまやかし者と、大事を語るなどは、もってのほかであると叱(しか)られた。 「残念でたまらない。雲長めは、そう言って疑うのだ。……御足労だが、貴公(きこう)、これから拙者(せっしゃ)と共に、彼の住居まで行ってくれまいか。貴公という人間を見せたら、彼も恐らくこの張飛の言(げん)を信じるだろうと思うから――」 三 張飛は、疑いが嫌いだ。疑われる事はなお嫌いだ。雲長が、自分の言を信じてくれないのが、心外でならないのである。 だから劉備を連れて行って、その人物を実際に示してやろう――こう考えたのも張飛らしい考えであった。 しかし、劉備は「……さあ?」と、言って、考えこんだ。 信じない者へ、強(し)いて、自己を押しつけて、信じろというのも、好ましくないとする風(ふう)だった。 すると、廊(ろう)の方から、 「劉備。行ってお出(い)でなさい」 彼の母が言った。 母も、やはり心配になるとみえて、彼方(かなた)で張飛のはなしを聞いていたものと見える。 もっとも、張飛の声は、この家の中なら、どこに居ても聞こえるほど大きかった。 「やあ。お許し下さるか。母公のおゆるしが出たからには、劉君、何もためらう事はあるまい」 促(うなが)すと、母も共に、「時機というものは、その時をのがしたら、又いつ巡(めぐ)って来るか知れないものです。――何やら、今はその天機が巡って来ているような気がするのです。些細(ささい)な気持などに囚(とら)われずに、お誘いをうけたものなら、張飛どのにまかせて、行って御覧(ごらん)なさい」 劉備は、母のことばに、 「では、参(まい)ろう」と、決心の腰を上げた。 二人は並んで、廊の方へ、 「では行って来ます」 礼をして、墻(かき)の外へ出て行った。 すると、道の彼方から、約百人ほどの軍隊が、まっしぐらに馳(か)けて来た。騎馬もあり徒歩の兵もあった。埃(ほこり)の中に、青龍刀(せいりゅうとう)の白い光がつつまれて見えた。 「あ……、又来た」 張飛のつぶやきに、劉備は怪訝(いぶか)って、 「なんです、あれは」 「城内の兵だろう」 「関門の兵らしいですね。何事があったのでしょう」 「多分、この張飛を、召(め)し捕(と)らえに来たのかもしれん」 「え?」 劉備は、驚きを喫(きっ)して、 「では、此方(こっち)へ対(むか)って来る軍隊ですか」 「そうだ。もう疑いない。劉君、あれをちょっと片づける間、貴公はどこかに休んで見物していてくれないか」 「弱りましたな」 「なに、大した事はない」 「でも、州郡の兵隊を殺戮(さつりく)したら、とてもこの土地には居(お)られませんぞ」 言っている間に、もう百余名の州郡の兵は、張飛と劉備を包囲してわいわい騒ぎ出した。 だが、容易には手を下(くだ)しては来なかった。張飛の武力を二度まで知っているからであろう。けれど二人は一歩もあるく事はできなかった。 「邪魔すると、蹴殺(けころ)すぞ」 張飛は、一方へこう呶鳴(どな)って歩きかけた。わっと兵は退(ひ)いたが、背後から矢や鉄槍(てっそう)が飛んで来た。 「面倒っ」 又しても、張飛は持ち前の短気を出して、すぐ剣の柄(つか)へ手をかけた。 ――すると、彼方(かなた)から一頭の逞(たくま)しい鹿毛(かげ)を飛ばして、 「待てっ、待てえ」 と呼ばわりながら馳けて来る者があった。州郡の兵も、張飛も、何気なく眼をそれへ馳(は)せて振り向くと、胸まである黒髯(こくぜん)を春風に弄(なぶ)らせ腰に偃月刀(えんげつとう)の佩環(はいかん)を戛々(かつかつ)とひびかせながら、手には緋総(ひぶさ)のついた鯨鞭(げいべん)を持った大丈夫(だいじょうぶ)が、その鞭(むち)を上げつつ近づいて来るのであった。 四 それは雲長(うんちょう)であった。 童学草舎(どうがくそうしゃ)の村夫子(そんぷうし)も、武装すれば、こんなに威風堂々と見えるものかと、眼をみはらせるばかりな雲長の風貌(ふうぼう)であった。 「待て諸君」 乗りつけてきた鹿毛の鞍(くら)から跳び降りると、雲長は、兵の中に割って入り、そこに囲まれている張飛と劉備を後ろにして、大手を拡(ひろ)げながら言った。 「貴公等は、関門を守備する領主の兵と見うけるが、五十や百の小人数をもって、いったいなにをなさろうとするのか。――この漢(おとこ)を召し捕ろうとするならば」と、背後にいる張飛へ、顎(あご)を振り向けて、 「まず五百か千の人数を揃(そろ)えて来て、半分以上の屍(しかばね)をつくる覚悟でなければ縛(から)め捕(と)ることはできまい。諸君は、この翼徳張飛(よくとくちょうひ)という人間が、どんな力量の漢(おとこ)か知るまいが、かつて、幽州(ゆうしゅう)の鴻家(こうけ)に仕(つか)えていた頃、重さ九十斤(きん)、長さ一丈八尺の蛇矛(じゃぼこ)を揮(ふる)って、黄巾賊(こうきんぞく)の大軍中へ馳けこみ、屍山血河(しざんけつが)を作って、半日の合戦に八百八屍将軍と綽名(あだな)して、黄匪(こうひ)を戦慄(せんりつ)させたという勇名のある漢だ。――それを、素手(すで)にもひとしい小人数で、縛め捕ろうなどは、檻(おり)へ入って、虎と組むようなもの、各々(おのおの)が皆、死にたいという願いで、この漢へ関(かま)うなら知らぬこと、命知らずな真似はやめたらどうだ。生命(いのち)の欲しい者は足元の明るいうちに帰れ。ここは、かく言う雲長にまかせてひとまず引き揚げろ」 雲長は、実に雄弁だった。一息にここまで演説して、まったく相手の気を呑(の)んでしまい、更に語をついで言った。 「――こう言ったら諸公は、わしを何者ぞと疑い、又、巧(たく)みに張飛を逃がすのではないかと、疑心を抱くであろうが、左(さ)に非(あら)ず、不肖(ふしょう)はかりそめにも、童学草舎を営(いとな)み子弟の薫陶(くんとう)を任とし、常に聖賢(せいけん)の道を本義とし、国主を尊び、法令を遵守(じゅんしゅ)すべきことを、身にも守り、子弟に教えている雲長関羽(うんちょうかんう)という者である。そして、これにおる翼徳張飛(よくとくちょうひ)は、何をかくそう自身の義弟にあたる人間でもある。――だが、昨夜から今朝にかけて、張飛が官の吏兵を殺害し、関門を破り、酒の上で暴行したことを聞き及んで、宥(ゆる)し難(がた)く思い、この上多くの犠牲(いけにえ)を出さんよりは、義兄たるわが手に召(め)し捕(と)りくれんものと、かくは身固め致して、官へ願い出(い)で、宙を馳(は)せてこれへ駆けつけて来たわけでござる――。張飛はこの雲長が召し捕って、後刻、太守(たいしゅ)の県城へまで送り届けん。諸公は、ここの事実を見とどけて、その由(よし)、先へ御報告置きをねがう」 雲長は、沓(くつ)を回(めぐ)らして、きっと張飛の方へ今度は向き直った。 そして、大喝(だいかつ)一声、 「この不届(ふとど)き者(もの)っ」 と、鯨(くじら)の鞭(むち)で、張飛の肩を打ちすえた。 張飛は、むかっとしたような眼をしたが、雲長は更に、 「縛(ばく)につけ」と、跳びかかって、張飛の両手を後ろへまわした。 張飛は、雲長の心を疑いかけたが、より以上、雲長の人物を信じる心のほうが強かった。 で――何か考えがある事だろうと、神妙に縄を受けて、大地へ坐(すわ)ってしまった。 「見たか、諸公」 雲長は再び、呆(あ)っ気(け)にとられている捕吏や兵の顔を見まわして、 「張飛は、後刻、それがしが県城へ直接参(まい)って渡すから、諸公は先へここを引き揚げられい。それともなお、この雲長を怪しみ、それがしの言葉を疑うならば、ぜひもない、縄を解(と)いて、この猛虎を、諸公の中へ放(はな)つが、どうだ」 言うと、捕吏も兵も、逃げ足早く、物も言わず皆、退却してしまった。 五 誰も居なくなると、雲長はすぐ張飛の縄を解いて、 「よく俺を信じて、神妙にしていてくれた。事なく助ける策謀(さくぼう)の為(ため)とはいえ、貴様に手をかけた罪はゆるしてくれ」 詫(わ)びると、張飛も、 「それどころではない。又無益(むえき)の殺生(せっしょう)を重ねるところを、尊兄のお蔭(かげ)で助かった」と、今朝のむかっ腹もわすれて、いつになく、素直に謝った。そして、 「――だが雲長。その身装(みなり)はいったい、どうした事か。俺を助けに来るためにしては、あまりに物々しい装いではないか」 怪しんで問うと、 「張飛。なにをとぼけた事を言う。それでは昨夜、あんなに熱をこめて、時節到来だ、良き盟友を獲(え)た、いざ、かねての約束を、実行にかかろうと言ったのは、嘘(うそ)だったのか」 「嘘ではないが、大体、尊兄が不賛成だったろう。俺の言う事何ひとつ、信じてくれなかったじゃないか」 「それは、あの場の事だ。召使いもいる、女共もいる。貴様のはなしは、秘密秘密と言いながら、あの大声だ。洩(も)れてはならない――そう考えたから一応冷淡に聞いていたのだ」 「なんだ、それなら、尊兄もわしの言葉を信じ、かねての計画へ乗り出す肚(はら)を固めてくれたのか」 「おぬしの言葉よりも、実は、相手が楼桑村(ろうそうそん)の劉備どのと聞いたので、即座に心はきめていたのだ。かねがね、わしの村まで孝子という噂(うわさ)の聞こえている劉備どの、それに他(よそ)ながら、御素性や平常の事なども、ひそかに調べていたので」 「人が悪いな。どうも尊兄は、智謀(ちぼう)を弄(ろう)するので、交際(つきあ)いにくいよ」 「ははは。貴様から交際(つきあ)い難(にく)いと言われようとは思わなかった。人を殺し、酒屋を飲(の)み仆(たお)し、その尻尾(しっぽ)は童学草舎へ持って行けなどと言う乱暴者から、そう言われては堪(たま)らない」 「もう行ったか」 「酒屋の勘定(かんじょう)ぐらいならよいが、官の捕手(とりて)を殺したのは、雲長の義弟だとわかったひには、童学草舎へも子供を通わせる親はあるまい。いずれ官からこの雲長へも、厳(やかま)しく出頭を命じて来るにきまっている」 「なるほど」 「他人事(ひとごと)のように聞くな」 「いや、済まん」 「しかし、これはむしろ、よい機(しお)だ。天意の命じるものである。こう考えたから、今朝、召使いや女共へ、みな暇(ひま)を出した上、通学して来る子供たちの親も呼んで、都合に依(よ)って学舎を閉鎖すると言い渡し、心置きなく、身一つになって、斯(か)くは貴様の後を追って来たわけだ。――さ、これから改めて、劉備どのの家へお目にかかりに行こう」 「いや。劉備どのなら、そこに居(い)る」 「え?……」 雲長は、張飛の指さす所へ、眼を振り向けた。 劉備は最前から少し離れた所に立っていた。そして、張飛と雲長との二人の仲の睦(むつ)まじさと、その信義に篤(あつ)い様子を見て、感にたえている面持(おももち)だった。 「あなたが劉備様ですか」 雲長は近づいて行くと、彼の足下(そっか)へ最初から膝(ひざ)を折って、 「初めてお目にかかります。自分は河東(かとう)解良(かいりょう)(山西省(さんせいしょう)・解県(かいけん))の産で、関羽(かんう)字(あざな)は雲長(うんちょう)と申し、長らく江湖(こうこ)を流寓(りゅうぐう)の末、四、五年前よりこの斤に村に住んで、村夫子(そんぷうし)となって草裡(そうり)に空(むな)しく月日を送っていた者です。かねて密(ひそ)かに心にありましたが、計らずも今日、拝姿(はいし)の栄(えい)に会い、こんな歓(よろこ)ばしい事はありません。どうかお見知りおき下さい」 と、最高な礼儀を執(と)って、慇懃(いんぎん)に言った。 六 劉備はあえて卑下(ひげ)しなかったが、べつに尊大に構えもしなかった。雲長関羽の礼に対して、当り前に礼を返しながら、 「御丁寧(ごていねい)に。……どうも申し遅れました。私は、楼桑村(ろうそうそん)に永らく住む百姓の劉玄徳(りゅうげんとく)という者ですが、かねて、蟠桃河(ばんとうが)の上流(かみ)に、醇風良俗(じゅんぷうりょうぞく)の桃源(とうげん)があると聞きました。おそらく先生の高風(こうふう)に化されたものでありましょう。何を言うにも、ここは路傍(ろぼう)ですから、すぐそこの茅屋(あばらや)までお越しください」 と、誘(いざな)えば、 「おお、お供(とも)しよう」 関羽も歩み、張飛も肩を並べ、共にそこから程近い劉備の家まで行った。 劉備の母は、又新しい客が殖(ふ)えたので、不審(ふしん)がったが、張飛から紹介されて、関羽の人物を見、欣(よろこ)びを現わして、 「どうぞ、茅屋(あばらや)へ」と心から歓待した。 その晩は、母も交(ま)じって、夜更(よふ)けまで語った。劉備の母は、劉家の古い歴史を、覚えている限り話した。 生れてからまだ劉備さえ聞いていない話もあった。 (いよいよ漢室のながれを汲(く)んだ景帝(けいてい)の裔孫(えいそん)にちがいない) 張飛も、関羽も、今は少しの疑いも抱かなかった。 同時に、この人こそ、義挙(ぎきょ)の盟主(めいしゅ)になすべきであると肚(はら)にきめていた。 しかし、劉玄徳の母親思いの事は知っているので、この母親が、 (そんな危ない企(たくら)みに息子を加える事はできない) と、断わられたらそれまでになる。関羽は、それを考えて、ぼつぼつと母の胸をたずねてみた。 すると劉備の母は、皆まで聞かないうちに言った。 「ねえ劉や、今夜はもう遅いから、おまえも寝(やす)み、お客様にも臥床(ふしど)を作っておあげなさい。――そして明日はいずれ又、お三名して将来の相談もあろうし、大事の門出(かどで)でもありますし、母が一生一度の馳走(ちそう)を拵(こしら)えてあげますからね」 それを聞いて、関羽は、この母親の胸を問うなど愚(ぐ)である事を知った。張飛も共に、頭を下げて、 「ありがとうござる」と、心服した。 劉備は、 「では、お言葉に甘えて、明日はおっ母(か)さんに、一世一代の祝いを奢(おご)っていただきましょう。けれどその御馳走は、吾々(われわれ)ばかりでなく、祭壇(さいだん)を設(もう)けて、先祖にも上げていただきたいものです」 「では、ちょうど今は、桃園(とうえん)の花が真盛りだから、桃園の中に蓆(むしろ)を敷こうかね」 張飛は手を打って、 「それはいい。では吾々も、あしたは朝から桃園を浄(きよ)め、せめて祭壇を作る手助(てつだい)でもしよう」 と、言った。 客の二人に床(しょう)を与えて、眠りをすすめ、劉備と母のふたりは、暗い厨(くりや)の片隅で、藁(わら)を被(かぶ)って寝た。劉備が眼をさましてみると、母はもう居なかった。夜は明けていたのである。どこかで頻(しき)りに、山羊(やぎ)の啼(な)く声がしていた。 厨の窯(かまど)の下には、どかどかと薪(まき)が燻(く)べられていた。こんな景気よく窯に薪の焚(た)かれた例(ためし)は、劉備が少年の頃から覚えのない事であった。春は桃園ばかりでなく、貧しい劉家の台所に訪れて来たように思われた。
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打風乱柳(だふうらんりゅう) 一 「おい」 張飛は言った。大地に坐(すわ)っている大勢の百姓町民へ向かって、 「おまえ達は、退散しろ。これから俺がやることに、後で、関(かかわ)り合(あ)いになるといけないぞ」 しかし百姓たちは、泥酔(でいすい)しているらしい張飛が、何をやり出すのかと、そこを起(た)っても、まだ附近から眺めていた。 張飛は、門を打(う)ち叩(たた)いて、 「番人共っ、開けろ。開けなければ、ぶち壊すぞっ」と、呶鳴(どな)り出した。 役館の番卒は、「何者だっ」と、中から覗(のぞ)き合っていたが、重棗(ちょうそう)の如(ごと)き面(おもて)に、虎髯(こぜん)逆(さか)だて、怒れる形相(ぎょうそう)に抹硃(まっしゅ)をそそいだ巨漢(おおおとこ)が、そこを揺りうごかしているので、 「誰だ、誰だ?」と、躁(さわ)ぎ立(た)ち、県尉玄徳の部下だと聞くと、督郵(とくゆう)の家来たちは、 「開けてはならぬぞ」と、厳命した。そして人数をかためて、門の内へ更に又、幾重にも人墻(ひとがき)を立てて、犇(ひし)めき合っていた。 その気配に、張飛はいよいよ怒りを心頭(しんとう)に発して、 「よしっ、その分ならば!」 門の柱へ両手をかけたと思うと、地震(ない)のようにみりみりとそれは揺れ出して、あれよと人々の驚くうちに、凄(すさ)まじい物音立てて内側へ仆(たお)れた。 中にいた番卒や督郵の家来たちは、逃げおくれて、幾人かその下敷きになった。張飛は、豹(ひょう)の如く、その上を躍(おど)り越(こ)えて、 「督郵はどこにいるかっ。督郵に会わんっ」と咆哮(ほうこう)した。 番卒たちは、それと見て、 「やるな」 「捕えろ」と、遮(さえぎ)ったが、 「えい、邪魔な」 とばかり張飛は投げとばす、踏みつぶす、撲(なぐ)り仆(たお)す、あたかも一陣の旋風が、塵(ちり)を巻いて翔(か)けるように、役館の奥へと踊り込んで行った。 折から勅使(ちょくし)督郵は、昼日中というのに、帳(とばり)を垂(た)れて、この田舎町の鄙(ひな)びた唄(うた)い女(め)などを相手に酒をのんでいたところだった。 淫(みだ)らな胡弓(こきゅう)の音を聞きつけて、張飛がその室(へや)を窺(うかが)うと、果たして正面の榻(とう)に美人を擁(よう)して酔いしれている高官がある。紛(まぎ)れもない督郵だ。 張飛は、帳を払(はら)って、 「やいっ佞吏(ねいり)、腐(くさ)れ吏人。よくもわが義兄玄徳に汚名(おめい)をぬりつけ、偽罪(ぎざい)の訴状を作って都へ上(のぼ)せたな。先頃からの傲慢(ごうまん)無礼といい、勅使たる身がこの態(てい)たらくといい、もはや堪忍(かんにん)はならぬ。天に代わって、汝(なんじ)を懲らしめてやるからそう思え」 眼は百錬(ひゃくれん)の鏡にも似、髯(ひげ)はさかしまに立って、丹(たん)の如き唇(くち)を裂(さ)いた。 「――きゃっ」と、胡弓や琴をほうり出して妓(おんな)たちは榻(とう)の下へ逃げこんだ。 督郵も、ちぢみ上がって、 「なんじゃ、待て、乱暴なことをするな」 と、ふるえ声で、逃げかけるのを、張飛はとびかかって、 「どこへ行く」 軽く一つ撲(は)ったが、督郵は顎(あご)でも外(はず)したように、ぐわっと、歯を剥(む)いたままふん反(ぞ)った。 「じたばたするな」 張飛は、その体を軽々と横に引(ひ)っ抱(かか)えると、又疾風(しっぷう)のように外へ出て行った。 二 門外へ出て来ると、 「犬にでも喰(く)われろ」 と、張飛は引っ抱えて来た督郵のからだを、大地へたたきつけて罵(ののし)った。 「汝(なんじ)のような腐敗した佞吏(ねいり)がいるから、天下が乱れるのだ。乱賊は打つも、佞吏を懲らす者はない。人の為(な)し得ぬ正義を為し、人の抗(こう)し得ぬ権力に抗す。それを旗幟(きし)とする義軍の張飛を知らずや。やいっ」 督郵の顔を踏んづけて、張飛が言うと、督郵は手足をばたばたさせて、 「者共(ものども)っ、この狼藉(ろうぜき)を。――この乱暴者を、搦(から)め捕(と)れ。誰かいないか」 悲鳴に似た声でわめいた。 「やかましい」 髻(もとどり)をつかんで引き廻した上、張飛は、門前の巨(おお)きな柳(やなぎ)の樹に目をつけて、 「そうだ、見せしめの為(ため)に」 と、督郵の両手を有(あ)りある縄で縛(しばり)あげ、その縄尻(なわじり)を柳の枝に投げて、吊(つる)しあげた。 柳から生(な)った人間のように、督郵の足は宙に浮いた。張飛は、彼が暴れても落ちないように、縄の端を幹(みき)に巻いて、 「どうだ、やいっ」 と、一本の柳の枝を折って、まずぴしりと一つ撲(なぐ)った。 「痛いっ」 「あたり前だ」と、又一つ打ち、 「悪吏の虐政(ぎゃくせい)に苦しむ人民の傷(いた)みはこんなものじゃないぞ。汝(なんじ)も、廟鼠(びょうぞ)の一匹だろう。彼(か)の十常侍(じゅじょうじ)などという佞臣(ねいしん)の端(はし)くれだろう。その醜い面を曝(さら)せよ。その卑しい鼻の穴を天日に向けて哭(な)けっ。――こうか、こうか、こうしてやる」 柳の枝は、すぐ粉になった。 又新しい柳の枝を折って撲りつけるのだった。三十、四十、五十、二百以上も打ちすえた。 督郵は、見栄(みえ)もなく、ひイひイと声をあげて、 「ゆるせ」と、泣き声出し、 「待て、待ってくれ。何でも言うとおりにするから」 と、遂には、涙さえこぼして、あわれっぽく叫んだが、 「だめだ。その手は食わぬ」 と、張飛は、乱打をやめなかった。 その日も玄徳は、私宅に閉(と)じ籠(こも)って、怏々(おうおう)と勝(すぐ)れない一日を過していたが、誰やらあわただしく門をたたく者があるので自身出てみると、四、五名の百姓が、 「大変です。今、張飛さまが、お酒に酔って、役所の門をぶちこわし、勅使(ちょくし)の督郵(とくゆう)という高官を、柳の木に吊(つる)しあげて打ちすえております」 と、告げて去った。玄徳は驚いて、そのまま馳(か)け出(だ)して行った。 折しふし居合わせた関羽も、 「ちぇっ、張飛のやつ、又持病を起こしたか」 と、舌打ちしながら、玄徳の後から馳けつけた。 見ると、柳に吊されている督郵は、衣裳もやぶれ、脛(はぎ)は血を流し、顔色は紫いろに膨(ふく)れていた。もう少し遅かったら、すんでの事、撲り殺されていたであろう。 仰天(ぎょうてん)して、玄徳は、 「これっ、何をする」と、張飛の腕くびをつかんで叱(しか)りつけた。 張飛は、大息つきながら、 「いや、止めないで下さい。民を害する逆賊とはこいつの事です。息のねを止めないでは俺の虫が納(おさ)まらん」 と、玄徳の遮(さえぎ)りなどは物ともせず、更に、柳鞭(りゅうべん)を唸(うな)らせて、督郵のからだを所きらわず打ちつづけた。 三 悲鳴を放って、張飛の鞭(むち)にもがいていた督郵は、柳の梢(こずえ)から玄徳のすがたを見つけて、 「おお、それへ来たのは、県尉玄徳ではないか。公(こう)の部下の張飛が、酒に酔って、わしをかくの如く殺そうとしている。どうか早く止めてくれ。もしわしを助けてくれたなら、このまま、張飛の積みも不問にし、おん身には、帝に急使を立てて前の訴状(そじょう)を停(とど)め、代わるに充分な恩爵(おんしゃく)をもって酬(むく)ゆるであろう」と、叫んで又、 「はやく助けてくれ」 と何度も悲鳴を繰り返した。 そのいやしい言葉を聞くと、張飛の暴(ぼう)を制しかけていた玄徳も、かえって止める意志を邪(さまた)げられた。 けれど、彼は、いかに醜汚(しゅうお)な人間であろうとも、勅命(ちょくめい)をうけて下った天子の使いである。玄徳は、叱咤(しった)して、 「止(や)めぬかっ張飛」と、彼の手から柳の枝を奪い、その枝をもって張飛の肩を一つ打った。 玄徳に打たれた事は初めてである。さすがの張飛も、はっと顔色を醒(さ)まして棒立ちになった。もちろん不平満々たる色をあらわしてであったが。 玄徳は、柳の幹の縄を解(と)いて、督郵のからだを大地へ下ろしてやった。すると、それまで、是(ぜ)とも非(ひ)ともいわず黙って見ていた関羽が、つと馳(か)け寄(よ)って来て、 「長兄(ちょうけい)。お待ちなさい」 「なぜ」 「そんな人間を助けてやったところで、所詮(しょせん)、むだな事です」 「何をいう。わしはこの人間から利を得るために助けようとするのではない。ただ、天子の御名を畏(おそ)るるのみだ」 「わかっております。しかしそういうお気持も、いったい何処(どこ)に通じましょうか。前には、身命を賭(と)して、大功を立てておられながら、わずか一県の尉(い)に封(ほう)ぜられたのみか、今又、督郵(とくゆう)のごとき腐敗した中央の吏に、最大の侮辱をうけ、黙っていれば、罪もなき罪に墜(お)とし入れられようとしているではありませんか」 「……ぜひもない」 「ぜひもないことはありません。こんな不法は蹴(け)とばすべきです。先頃からそれがしもつらつら思うに、枳棘叢中鸞鳳(しきよくそうちゅうらんほう)の栖(す)む所に非(あら)ず――と昔から言います。棘(いばら)や枳(からたち)のようなトゲの木の中には良い鳳(とり)は自然栖(す)んでいない――というのです。われわれは栖(す)む所を誤(あやま)りました。如(し)かずいちど身を退(ひ)いて、別に遠大の計をはかり直そうではありませんか」 関羽には、時々、訓(おし)えられる事が多い。やはり学問においては、彼が一日(いちじつ)の長(ちょう)を持っていた。 玄徳はいつも聴(き)くべき言(げん)はよく聴く人であったが、今も、彼の言をじっと聞いているうちに、大きく頷(うなず)いて、 「そうだ。……いい事を言ってくれた。我れ栖む所を誤(あやま)てり」 と、胸にかけていた県尉の印綬(いんじゅ)を解いて、督郵に言った。 「卿(けい)は、民を害する賊吏、今その首(こうべ)を斬(き)って、これに梟(か)けるはいと易(やす)いことながら、恥を思わぬ悲鳴を聞けば、畜類にも不愍(ふびん)は生じる。あわれ、犬猫と思うて助けてとらせる。――そしてこの印綬は、卿に託しておく。我れ今、官を捨てて去る。中央へよろしくこの趣(おもむき)を取次ぎたまえ」 そして張飛、関羽のふたりを顧(かえり)みて、 「さ。行こう」 と、風の如くそこを去った。 霏々(ひひ)と散りしいた柳葉の地上に督郵は、まだ何か、苦しげに喚(わめ)いていたが、玄徳等の姿が遠くなる迄(まで)、前に懲(こ)りて、近づいて宥(いたわ)り助ける者もなかった。
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タイトルのリンクをクリックすると外部サイト(YouTube)が開きます。 【~5分】 【5~10分】 [部分編集] 【~5分】 作者 タイトル 時間 備考 芥川龍之介 「鬼ごっこ」 02 04 短編小説 芥川龍之介 「女仙」 04 01 短編小説 折口信夫 「人形の起源」 03 21 民俗学 グリム兄弟《独》 「星の銀貨」 3 48 童話(楠山正雄:訳) 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「伴大納言の事」 01 51 古典 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「龍門の聖が鹿に代らうとした話」 03 02 古典 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「占ひをして金を出した話」 04 14 古典 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「兒とぼたもちの話」 01 54 古典 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「地蔵違ひ」 03 18 古典 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「鬼に出逢つた話」 03 56 古典 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「清徳聖の話」 04 54 古典 夏目漱石 「永日小品」儲口 02 21 随筆 (全25編) 三木清 「人生論ノート」後記 02 12 随筆・論説 宮沢賢治 「永訣の朝」 04 08 詩 吉川英治 「美しい日本の歴史」鼻の白粉 04 46 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」兵隊と天皇 02 45 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」菊池寛氏のオチ 03 12 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」又之丞の恋 04 46 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」性花斉放 03 47 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」さあお進み下さい 03 04 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」大大論 02 48 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」蜂飼いの大臣 03 34 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」異見会 04 57 随筆 蘭郁二郎 「舌打ちする」 02 19 短編 和辻哲郎 「アフリカの文化」 09 17 随筆 [部分編集] 【5~10分】 作者 タイトル 時間 備考 愛知敬一 「ファラデーの伝 電気学の泰斗」 (序) 05 23 伝記 芥川龍之介 「狢」 09 00 伝承 芥川龍之介 「羅生門の後に」 05 25 寄稿文 岡本綺堂 「目黒の寺」 06 26 随筆 折口信夫 「古語復活論」 09 48 随筆 片山廣子 「燈火節」 06 55 随筆 北大路魯山人 「昆布とろ」 08 16 随筆 北大路魯山人 「料理芝居」 06 55 随筆 桐生悠々 「関東防空大演習を嗤う」 06 06 評論 楠山正雄 「長い名」 06 36 童話 楠山正雄 「ねずみの嫁入り」 06 47 童話 鈴木三重吉 「古事記物語」3.八俣の大蛇 09 22 神話 児童文学 太宰治 「あさましきもの」 08 19 小説 寺田寅彦 「瀬戸内海の潮と潮流」 08:01 随筆 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「鬼に瘤を取られた話」 07 49 古典 外山たか子 口訳:宇治拾遺物語「茂経とあらまきの話」 07 12 古典 永井荷風 「帝国劇場のオペラ」 09 39 随筆 夏目漱石 「永日小品」元日 07 20 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」蛇 06 50 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」柿 08 13 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」火鉢 09 25 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」下宿 09 25 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」過去の匂い 08 08 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」猫の墓 08 37 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」暖かい夢 08 56 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」印象 06 00 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」人間 07 53 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」モナリサ 06 40 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」火事 05 40 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」霧 05 14 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」懸物 06 55 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」紀元節 05 58 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」行列 05 20 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」昔 06 00 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」声 05 37 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」金 05 22 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」心 07 20 随筆 (全25編) 夏目漱石 「永日小品」変化 06 34 随筆 (全25編) 夏目漱石 「初秋の一日」 07 11 随筆 夏目漱石 「夢十夜」第一夜 08 52 小説 夏目漱石 「夢十夜」第二夜 08 52 小説 夏目漱石 「夢十夜」第三夜 07 40 小説 夏目漱石 「夢十夜」第四夜 07 09 小説 夏目漱石 「夢十夜」第五夜 06 25 小説 夏目漱石 「夢十夜」第六夜 06 32 小説 夏目漱石 「夢十夜」第七夜 06 28 小説 夏目漱石 「夢十夜」第八夜 07 27 小説 夏目漱石 「夢十夜」第九夜 06 58 小説 夏目漱石 「夢十夜」第十夜 07 18 小説 三木清 「人生論ノート」虚栄について 09 56 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」名誉心について 09 58 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」孤獨について 06 56 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」嫉妬について 07 42 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」成功について 07 55 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」瞑想について 07 43 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」噂について 09 22 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」利己主義について 08 26 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」仮説について 09 11 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」偽善について 09 28 随筆・論説 三木清 「人生論ノート」希望について 09 35 随筆・論説 夢野久作 「お菓子の大舞踏会」 09 40 童話 吉川英治 「美しい日本の歴史」敗戦の狐窟 05 09 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」皇居文明開化に開く日 06 43 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」“ままごと棚”世相 07 09 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」 05 09 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」試されたお妃 06 02 随筆 吉川英治 「美しい日本の歴史」尼のもの底無し 05 54 随筆 吉川英治 ほほ笑ましきスト 07 03 随筆
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競(きそ)う南風(なんぷう) 一 さて。――日も経(へ)て。 曹操(そうそう)は漸(ようや)く父のいる郷土まで行き着いた。 そこは河南(かなん)の陳留(ちんりゅう)(開封(かいほう)の東南)と呼ぶ地方である。沃土(よくど)は広く豊饒(ほうじょう)であった。南方の文化は北部の重厚とちがって進取的であり、人は敏活(びんかつ)で機智(きち)の眼(め)がするどく働いている。 「どうかして下さい」 曹操は、家に帰ると、事の次第をつぶさに告げて、幼児が母に菓子でもねだるような調子で強乞(せが)んだ。 「――義兵の旗挙(はたあ)げをする決心です。誰がなんといっても、この決心はうごきません。そこで、父上にも、一肌(ひとはだ)ぬいでいただきたいんですが」と、言うのである。 父の曹嵩(そうすう)も、 「ウーム……。偉(えら)いことを仕(し)でかして来おったな」 と、呆(あき)れ顔(かお)に、呻(うめ)いてばかりいたが、元来、幼少から兄弟中でもいちばん可愛(かわい)がっている曹操のことなので、 「どうかしてくれって、どうすればよいのじゃ」と、叱言(こごと)も出なかった。 「軍費が要用(いりよう)なんですが」 「軍費と言ったら、わしの家のこればかしな財産では、いくらの兵も養えまいが」 「ですから、父上のお顔で、富豪(かねもち)を紹介して下さい。曹家は、財産こそないが、遠くは夏侯氏(かこうし)の流れを汲(く)み、漢(かん)の丞相(じょうしょう)曹参(そうさん)の末流です。この名門の名を利用して、富豪から金を出させて下さい」 「じゃあ、衛弘(えいこう)に話してみるさ」 「衛弘って誰ですか」 「河南でも一、二を争う財産家だがね」 「じゃあ、父上が聘(よ)んで、一日、酒宴を設(もう)けてくれませんか」 「おまえの言う事は、なんでも簡単だな」 「大きな仕事をやってのけるのが、大事を成(な)す秘訣(ひけつ)ですよ」 父子(おやこ)は、日を定めて、衛弘をわが邸(やしき)に招待した。 衛弘は、曹操をながめて、 「都へ行っていたと聞いていたが、いつのまにか、よい青年になったなあ」 などと言った。 曹操は、彼を待遇するに、あらゆる慇懃(いんぎん)を尽くした。 そして、話の弾(はず)んで来た頃、胸中の大事を打ち明けて、援助を依頼してみた。 もし嫌だと言ったら、生かしては帰さないという気を、胸に含んでの真剣な膝(ひざ)づめ談判(だんぱん)であったから、静かに頼むうちにも、曹操の眸(ひとみ)は、刃(やいば)のように研(と)げていたに違いなかった。 ところが、衛弘は聞くとすぐ、 「よろしい。御辺(ごへん)の忠義にめでて、御援助しましょう。近ごろの天下の乱れを、わしも嘆(なげ)いていたが、わしの器量(きりょう)にはない事だから、時勢の成り行きを眺(なが)めていた折です。――いくらでも軍用金は御用立(ごようだ)てしよう」と、承知してくれた。 曹操は、欣(よろこ)んだ。 「えっ、ではお引きうけ下さるか。然(しか)らば、私は早速、兵を集めにかかるが」 「おやんなさい。けれど、敗れるような戦(いくさ)はすべきではありませんぞ。充分、勝算を握(にぎ)った上で、大挙(たいきょ)なさるがよい」 「軍費の方さえ心配なければ、どんな事でもできます。河南(かなん)をわが義兵をもって埋(うず)めてごらんい入れるから見ていて下さい」 父の曹嵩(そうすう)は、幾(いく)つになっても、子は子供にしか見えなかった。曹操のあまりな豪語(ごうご)に、衛弘がすこし乗り過ぎているのじゃないかと、かえって側(はた)で心配した程だが、曹操のやる事を見ていると、いよいよ不敵を極(きわ)めていた。 まず彼は、近郷(きんごう)の壮丁(そうてい)を狩り集め、白い二旒(にりゅう)の旗を作って、一旒には「義(ぎ)」と大書し、一旒には「忠(ちゅう)」と大きく書いて、 「われこそは、朝廷から密詔(みっしょう)をうけて、この地に降(くだ)った者である」 と唱(とな)え出(だ)した。 二 今でこそ、地方の一郷士(ごうし)に落魄(おちぶ)れているが、なんといっても、曹家(そうけ)は名門である。嫡子(ちゃくし)の曹操もまた出色(しゅっしょく)の才人と、遠近に聞こえている。 「密勅(みっちょく)をうけて降ったものである――」 という曹操の声に、まず近村の壮丁や不遇な郷士が動かされた。 「陳宮(ちんきゅう)、こんな雑兵(ぞうひょう)じゃ仕方がないが、もっと有力な諸州の刺史(しし)、太守(たいしゅ)などが集まるだろうか」 時々、彼は陳宮へ計(はか)った。 陳宮(ちんきゅう)は献策(けんさく)した。 「忠義を旗に書いて待っているだけでは駄目です。もっと憂国の至情を吐露(とろ)なさい。鉄血、人を動かすものを打(ぶ)っつけなさい」 「どうしたらいいか」 「檄(げき)を飛ばすことです」 「おまえ、書いてくれ」 「はい」 陳宮は、檄文を書いた。 彼は、心の底から国を憂(うれ)いている真の志士である。その文は、読む者をして奮起せしめずに措(お)かないものであった。 「――ああ名文だ。これを読めば、おれでも兵を引(ひ)っ提(さ)げて馳(は)せ参(さん)ずるな」 曹操は感心して、すぐ檄を諸州諸郡へ飛ばした。 英雄もただ英雄たるばかりでは何もできない。覇業(はぎょう)を成(な)す者は、常に三つのものに恵まれているという。 天の時と、 地の利と、 人である。 まさに、曹操の檄は、時を得ていた。 日ならずして、彼の「忠」「義」の旗下(きか)には続々と英雄精猛(せいもう)が馳せ参じて来た。 「それがしは、衛国(えいこく)の生まれ、楽進(がくしん)、字(あざな)は文謙(ぶんけん)と申す者ですが、願わくば、逆賊董卓(とうたく)を、ともに討(う)たんと存じ、麾下(きか)に馳せ参って候(そうろう)」 と、名乗って来る者や、 「――自分等(ら)は沛国(はいこく)譙郡(しょうぐん)の人、夏侯惇(かこうじゅん)、夏侯淵(かこうえん)と言う兄妹の者ですが、手兵三千をつれてきました」 と、いう頼(たの)もしい者が現われて来たりした。 もっとも、その兄弟は、曹家(そうけ)がまだ譙郡にいた頃、曹家に養われて、養子となっていた者であるから、真っ先に馳せつけて来るのは当然であったが、そのほか毎日、軍簿に到着を誌(しる)す者は、枚挙(まいきょ)に遑(いとま)がないくらいであった。 山陽鉅鹿(さんようきょろく)の人で李典(りてん)、字(あざな)は曼成(まんせい)という者だの――徐州(じょしゅう)の刺史(しし)陶謙(とうけん)だの――西涼(せいりょう)の太守(たいしゅ)馬騰(ばとう)だの、北平(ほくへい)太守の公孫瓚(こうそんさん)だの――北海(ほっかい)の太守孔融(こうゆう)なんどという大物が、各々(おのおの)何千、何万騎という軍を引いて、呼応(こおう)して来た。 彼の帷幕(いばく)にはまた、曹仁(そうじん)、曹洪(そうこう)のふたりの兄弟も参じた。 一方、それらの兵に対して、曹操は、衛弘(えいこう)から充分の軍費をひき出して、武器糧食の充実にかかっていた。 「あのように、軍資金が豊富なところを見ると、彼の檄(げき)は、空文(くうぶん)でない。ほんとに朝廷の密詔(みっしょう)を賜(たま)わっているのかも知れん」 形勢を見ていた者までが、その隆々(りゅうりゅう)たる軍備の急速と大規模なのを見て、 「一日遅れては、一日の損(そん)がある――」と言わんばかり、争って、東西から来(きた)り投じた。 (河南(かなん)の地を兵で埋(うず)めてみせん) と、いつか衞弘に言った言葉は、今や空(くう)なる豪語ではなくなったのである。 従って、富豪衞弘も、投財(とうざい)を惜(お)しまなかった。いや、彼以外の富豪までが、みな乞(こ)わずして、 「どうか、費(つか)ってくれ」と、金穀(きんこく)を運んできた。 すでに曹操はもう、多くの将星(しょうせい)を左右に侍(はべ)らせ、三軍の幕中に泰然(たいぜん)とかまえていて、そういう富豪の献物(けんもつ)が取り次がれて来ても、 「あ、左様(さよう)か。持って来たものなら取っておいてやれ」 と、言うぐらいのもので、会(あ)って遣(や)りもしなかった。 三 さきに都を落ちて、反董卓(はんとうたく)の態度を明らかにし、中央から惑星視(わくせいし)されていた渤海(ぼっかい)の太守(たいしゅ)袁紹(えんしょう)の手もとへも、曹操の檄(げき)がやがて届いて来た。 「曹操が旗をあげた。この檄に対して、なんと答えてやるか」 袁紹(えんしょう)も、腹心をあつめて、さっそく評議を開いた。 彼の幕下には、壮気(そうき)にみちた年頃の大将や、青年将校が多かった。 田豊(でんぽう)。沮授(そじゅ)。許収(きょしゅう)。顔良(がんりょう)。 また―― 審配(しんぱい)。郭図(かくと)。文醜(ぶんしゅう)。 などと言う錚々(そうそう)たる人材もあった。 「誰か、一応、その檄文(げきぶん)を読みあげてはどうか」 とのことに、顔良が、 「然(しか)らば、てまえが」と、大きく読み出した。 檄 操等(ソウラ)、謹(ツツシ)ンデ、 大義ヲ以(モッ)テ天下ニ告グ 董卓(トウタク) 天ヲ欺(アザム)キ地ヲ晦(クラ)マシ 君(キミ)を弑(シイ)シ 国ヲ亡(ホロ)ボス 宮禁(キュウキン) 為(タメ)ニ壊乱(カイラン) 狼戻不仁(コンレイフジン) 罪悪重積(ザイアクジュウセキ)ス 今(イマ) 天子(テンシ)ノ密詔(ミッショウ)を捧(ササ)ゲテ 義兵ヲ大集(タイシュウ)シ 郡凶(グンキョウ)ヲ剿滅(ソウメツ)セントス 願ワクバ仁義(ジンギ)ノ師(イクサ)ヲ携(タズサ)エ 来(キタ)ッテ忠烈(チュウレツ)ノ盟陣(メイジン)ニ会(カイ)シ 上(カミ)、王室(オウシツ)ヲ扶(タス)ケ 下(シモ)、黎民(レイミン)ヲ救(スク)ワレヨ 檄文到(イタ)ランノ日 ソレ速(スミ)ヤカニ奉行(ホウコウ)サレルベシ 「これこそ、我々が待っていた天の声である。地上の輿論(よろん)である。太守(たいしゅ)、何を迷うことがありましょう。よろしく曹操と力を協(あわ)すべき秋(とき)です」 幕将は、口を揃(そろ)えて言った。 「――だが」と、袁紹(えんしょう)は、なお少し、ためらっている風(ふう)だった。 「曹操が、密詔をうけるわけはないがなあ?……」 「よいではありませんか。たとい密詔をうけていても、いなくても。その為(な)すことさえ、正しければ」 「それもそうだ」 袁紹も遂(つい)に肚(はら)をきめた。 評定(ひょうじょう)の一決を見ると、さすがに名門の出であるし、多年の人望もあるので、兵三万余騎をたちどころに備(そな)え、夜を日についで、河南の陳留(ちんりゅう)へ馳(は)せのぼった。 来てみると、その旺(さかん)なのに袁紹も驚いた。軍簿の到着に筆をとりながら、おもなる味方だけを拾(ひろ)ってみると、その陣容は大したものであった。 まず―― 第一鎮(ちん)として、後将軍(ごしょうぐん)南陽(なんよう)の太守(たいしゅ)袁術(えんじゅつ)、字(あざな)は公路(こうろ)を筆頭に、 第二鎮 冀州(きしゅう)の刺史(しし)韓馥(かんふく) 第三鎮 豫洲(よしゅう)の刺史孔伷(こうちゅう) 第四鎮 兗州(えんしゅう)の刺史劉岱(りゅうたい) 第五鎮 河内群(かだいぐん)の太守王匡(おうきょう) 第六鎮 陳留の太守張邈(ちょうぼう) 第七鎮 東郡(とうぐん)の太守喬瑁(きょうぼう) そのほか、済北(せいほく)の相(しょう)、鮑信(ほうしん)、字(あざな)は允誠(いんせい)とか、西涼(せいりょう)の馬騰(ばとう)とか、北平(ほくへい)の公孫瓚(こうそんさん)とか、宇内(うだい)の名称猛士の名は雲の如(ごと)くで、袁紹の兵は到着順とあって、第十七鎮に配せられた。 「自分も参加してよかった」 ここへ来て、その実情を見てから、袁紹も心からそう思った。時勢の急なるに、今さら驚いたのである。 四 第一鎮から第十七鎮までの将軍はみな、一万以上の手兵を率(ひき)いて各々(おのおの)の本国から参集して来た一方の雄(ゆう)なのである。 その中には又、どんな豪強や英俊が潜(ひそ)んでいるかも知れなかった。 わけて、第十六鎮(ちん)の部隊には、時を待っていた深淵(しんえん)の蛟龍(こうりゅう)がいた。 北平(ほくへい)の太守で奮武将軍(ふんぶしょうぐん)の公孫瓚(こうそんさん)がその十六鎮の軍であったが、檄(げき)に応じて、北平から一万五千余騎をひっさげて南下して来る途中、冀州(きしゅう)の平原県(へいげんけん)(山東省(さんとうしょう)・津浦線(しんぽせん)平原)のあたりまで来かかると、 「暫(しばら)くっ、暫くっ!」 と、大声(たいせい)をあげて、公孫瓚の馬を止めた者がある。 「何者か?」と、旗本たちが振りかえると、傍(かたわ)らの桑畑の中を二、三旒(りゅう)の黄なる旗がざわざわと翻(ひるが)えりつつ、此方(こちら)へ近づいて来るのが見える。 「や?何処(いずこ)の武士共か」と、疑っている間に、それへ現われた三騎の武人は、家来の雑兵(ぞうひょう)約十名ばかりと共に公孫瓚の馬前にひざまずいて、 「将軍、願わくば、われわれ三名の者も、大義の軍に入れて引(ひ)き具(ぐ)し給(たま)え。不肖(ふしょう)ながら犬馬の労を惜(お)しまず、討賊の先陣に先立って、尽忠(じんちゅう)の誠を、戦場の働きに見せ示さんと、これにて御通貨を待ちうけていた者でござります」と、言った。 公孫瓚は、初めのうち、さてはこの辺(あた)りの郷士かとながめていたが、そう言う三名の中に、一名だけ、どこかで見覚えのある気がしたので、思い寄りのまま試(こころ)みに、 「もしや貴公(きこう)は、劉備玄徳(りゅうびげんとく)どのには非(あら)ざるか」 と、訊(たず)ねてみると、 「そうです。御記憶でしたか、自分は劉玄徳です」 との答え。 「おう、さてはやはり――」と、驚いて、 「黄巾(こうきん)の乱(らん)後、洛陽の外門でちょっとお会いしたことがあるが、その後、御辺(ごへん)はいかなる官職に就(つ)かれておらるるか」 「お恥ずかしいことですが、碌々(ろくろく)として、何の功も出世もなく、この片田舎(かたいなか)の県令をやっていました」 「それはひどい微職(びしょく)だな。貴公のような人物を、こんな片田舎に埋(うず)めておくなどとは、もったいないことだ。――して又、お連れの二人は如何(いか)なる人物か」 「これは、自分の義弟(ぎてい)たちです」 「ほ、御令弟(ごれいてい)か」 「ひとりは関羽(かんう)、又次にひかえておる者は、張飛(ちょうひ)と申しまする」 「官職は」 「関羽は馬弓手(ばきゅうしゅ)、張飛は歩弓手(ほきゅうしゅ)。――共にまだ役儀(やくぎ)といっては、ほんの卒伍(そつご)にしか過ぎません」 「いずれも頼(たの)もしげなる大丈夫(だいじょうぶ)を可惜(あたら)、田野(でんや)の卒(そつ)として、朽(く)ちさせておいた事よな。――よろしい、御辺(ごへん)等も同じ志(こころざし)ならば、わが軍中に従って、共々(ともども)お働きあるがよい」 「では、おゆるし下さるか」 「願うてもないことだ」 「必ず逆賊董卓(とうたく)を殺して、朝廟(ちょうびょう)を清めます」 玄徳も、関羽も、恩を謝して誓った。そして再拝しながら起(た)ちかけると、張飛は、 「だからおれが言わぬ事じゃない」と、ぶつぶつ言った。 「彼奴(きゃつ)が黄巾賊の討伐に南下していた頃、潁川(えいせん)の陣営で、おれが董卓を殺そうとしたのに、兄貴(あにき)たちが止めたものだから、今日こんなことになってしまった。――あの折、おれに董卓を殺させてくれれば、今日の乱は、起こらなかったわけだ」 玄徳は、聞(き)き咎(とが)めて、 「張飛、なにを無用なたわ言(ごと)を言っているか。早々、軍の後方(しりえ)に従(つ)くがよい」 と、叱(しか)った。そして自身もわざと、中軍(ちゅうぐん)より後ろの列に加わり共(とも)に曹操の大計画に参加したのであった。 五 かくて―― 曹操(そうそう)の計画は、今やまったく確立したといってよい。 布陣、作戦はすべて成(な)った。 会合の諸侯十八ヵ国。兵力数十万。第一鎮(ちん)より第十七鎮まで備(そな)えならべた陣地は、二百余里につづくと称せられた。 吉日を卜(ぼく)して、曹操は、壇(だん)を築き、牛を斬(き)り馬を屠(ほふ)って祭り、 「われらここに起(た)つ!」 と、旗挙げの式を執(と)り行(おこな)った。 その式場で、諸将から、 「今、義兵を興(おこ)し、逆賊を討たんとする。よろしく三軍の盟主(めいしゅ)を立て、総軍の首将といただいて、われわ命(めい)をうくべし」と、発議が出た。 「然(しか)るべし」 「そうあるべしだ」と異口同音(いくどうおん)の希望に、 「では、誰をか、首将とするべきか?」 となると、人々みな讓(ゆず)り合って、さすがに、われこそと厚顔(あつかま)しく自己推薦をする者もない。 で結局、曹操が、 「袁紹(えんしょう)はどうであろう」 と、指名した。 「袁紹は元来、漢(かん)の名将の後胤(こういん)であるのみでなく、父祖四代に亙(わた)って、三公の重職に昇り、門下には又、四方に良い吏人(やくにん)が多い。その名望地位から見ても、袁紹こそ盟主として恥ずかしくない人物であるまいか」 と彼のことばに、 「いや、自分は到底(とうてい)、その器(うつわ)ではない」 と袁紹は謙遜(けんそん)して、再三辞退したが、それは他の諸将に対する一片の儀礼である。遂(つい)に推(お)されて、 「では」 と、型の如(ごと)く承諾した。 次の日。 式場に三重の壇を築き、五方に旗を立てて、白旄(はくぼう)、黄鉞(こうえつ)、兵符(へいふ)、印綬(いんじゅ)などを棒持(ぼうじ)する諸将の整列する中を、袁紹は衣冠(いかん)をととのえ、剣を佩(は)いて壇にのぼり、 「赤誠(せきせい)の大盟(だいめい)ここになる。誓って、漢室の不幸を回(かえ)し、天下億民の塗炭(となん)を救わん。――不肖(ふしょう)袁紹、衆望に推されて、指揮の大任(たいにん)を享(う)く。皇天后土(こうてんこうど)、祖宗(そそう)の明霊(めいれい)よ、仰(あお)ぎ希(ねが)わくば、是(これ)を鑒(かん)せよ」 香(こう)を焚(た)いて、祭壇に、拝天の礼を行なうと、諸将大兵みな涙をながし、 「時は来た」 「天下の黎明(れいめい)は来た」 「日ならずして、洛陽の逆軍を、必ず地上から一掃せん」 と、歯をくいしばり、腕を撫(ぶ)し、又、慷慨(こうがい)の気を新たにして、式終るや、万歳の声しばし止(や)まず、為(ため)に、天雲(てんうん)も闢(ひら)けるばかりであった。 袁紹は又、諸将の礼をうけてから、 「われ今、菲才(ひさい)をもって、首将の座に推さる。かかる上は、功ある者は賞し、罪ある者は必ず罰せん。諸公、また部下に示すに、厳(げん)をもって臨(のぞ)まれよ。つつしんで怠(おこた)り給(たま)うなかれ」 と、命令の第一言を発した。 「万歳っ。万歳っ」と、雷(らい)のような声をもって、三軍はそれに応(こた)えた。 袁紹は、第二の命として、 「わが弟の袁術(えんじゅつ)は、いささか経理の才がある。袁術をもって、今日より兵糧(ひょうろう)の奉行(ぶぎょう)とし、諸将の陣に、兵站(へいたん)の輸送と潤沢(じゅんたく)を計(はか)らしめる」 それにも、人々は、支持の声を送った。 「――次いで、直(ただ)ちに我が軍は、北上の途にのぼるであろう。誰か先陣を承(うけたまわ)って、汜水関(しすいかん)の関門を攻めやぶる者はないか」 すると、声に応じて、 「われ赴(ゆ)かん」 と、旗指物(はたさしもの)を上げて名乗った者がある。長沙(ちょうさ)の太守(たいしゅ)孫堅(そんけん)であった。
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乱兆(らんちょう) 一 百官の拝礼(はいれい)が終わっって、 「新帝万歳」の声が、喪(も)の禁苑(きんえん)をゆるがすと共に、御林軍(ぎょりんぐん)(近衛兵)を指揮する袁紹(えんしょう)は、 「次には、陰謀の首魁(しゅかい)蹇碩(けんせき)を血まつりにあげん」 と、剣を抜いて宣言した。 そして自(みずか)ら宮中を捜しまわって、蹇碩のすがたを見つけ、 「おのれっ」と、何処(どこ)までもと追いかけた。 蹇碩はふるえ上がって、懸命に逃げまわったが、度を失って御苑の花壇の陰へ這(は)いこんでいたところを、何者かが尻(しり)から槍(やり)で突き殺されてしまった。 彼を突き殺したのは、同じ仲間の十常侍(じゅうじょうじ)郭勝(かくしょう)だともいわれているし、そこらに迄(まで)、乱入していた一兵士だとも言われているが、いずれにせよ、それすらわからない程、もう宮闕(きゅうけつ)の内外は大混乱を呈(てい)して、人々の眼も血ばしり、気も逆上(あが)っていたにちがいなかった。 袁紹は、更に気負(きお)って、何進(かしん)の前に行き、 「将軍、なんで無言のままこの混乱を見ているんですか。時は今ですぞ、宮廷の癌(がん)、社稷(しゃしょく)の鼠賊(そぞく)ども、十常侍の輩(ともがら)を一匹残らず殺してしまわなければいけません。この機を逸(いっ)したら、再び臍(ほぞ)を噛(か)むような日がやって来ますぞ」と、進言した。 「ウム。……むむ」 何進はうなづいていた。 けれど顔色は蒼白(そうはく)で、日頃の元気も見えない。元来、小心な何進、一時は憤怒(ふんど)に馳(か)られて、この大事を敢(あえ)て求めたが、一瞬のまに禁門の内外は此世(このよ)ながらの修羅(しゅら)地獄(じごく)と化し、自分を殺そうと謀(はか)った蹇碩(けんせき)も殺されたと聞いたので、一時の怒りもさめて、むしろ自分の放(つ)けた火の果てなく拡(ひろ)がりそうな光景に、呆然(ぼうぜん)と戦慄(せんりつ)を覚えているらしい容子(ようす)であった。 その間に。 一方十常侍(じゅうじょうじ)の面々は、 「すわ、大変」と、狼狽(ろうばい)して、張讓(ちょうじょう)を始め、各々(おのおの)生きた心地もなく、内宮(ないきゅう)へ逃げこんで、窮余の一策とばかり、何進の妹にして皇后の位置にある何后(かこう)の裙下(くんか)にひざまずいて、百拝、憐愍(れんびん)を乞(こ)うた。 「よい、よい。安心せい」 何后はすぐ、兄の何進を呼びにやった。 そして何進を宥(なだ)めた。 「私(わたくし)たち兄妹(きょうだい)が、微賤(びぜん)の身から今日の富貴(ふうき)となったのも、その始めは十常侍たちの内官(ないかん)の推薦があったからではありませんか」 何進は、妹にそう言われると、むかし牛の屠殺(とさつ)をしていた頃の貧しい自分の姿が思い出された。 「なに、俺は、俺を殺そうと謀(はか)った蹇碩の奴さえ誅殺(ちゅうさつ)すればいいのだ」 内宮を出ると、何進は、右往左往する味方や宮内官(くないかん)たちを、鎮撫(ちんぶ)する気で言った。 「蹇碩(けんせき)は、すでに誅罰(ちゅうばつ)した。彼は我(われ)を害せんとしたから斬ったのである。我に害意なき者には、我又害意なし。安心して鎮(しず)まれ!」 すると、それを聞いて、 「将軍、何をばかな事を言うんですか」 と、袁紹(えんしょう)は血刀を持ったまま彼の前へ来て、その軽忽(けいこつ)を責(せ)めた。 「この大事を挙(あ)げながら、そんな手ぬるい宣言を将軍の口から発しては困ります。今にして、宮闕(きゅうけつ)の癌(がん)を除き、根を刈り尽くして置かなければ、後日必ず後悔なさいますぞ」 「いや、そう言うな。宮門の火の手が、洛陽一面の火の手になり、洛陽の火の手が、天下を燎原(りょうげん)の火としてしまったら取り返しがつかんじゃないか」 何進の優柔不断は、とうとう袁紹の言を容(い)れなかった。 二 一時、禁門(きんもん)の兵乱は、治まったかに見えた。 その後。 何后(かこう)、何進(かしん)の一族は、 「邪魔ものは董太后(とうたいごう)である」 と、悪策をめぐらして、太后を河間(かかん)(河北省・滄州(そうしゅう)の西方)という片田舎へ遷(うつ)してしまった。 故霊帝(れいてい)の母公たる董太后も、今は彼等の勢力に拒(こば)む力もなかった。これというのも、前帝の寵妃(ちょうき)だった王美人の生んだ協皇子(きょうおうじ)を愛するの余り、何后、何進等の一族から睨(にら)まれた結果と――ぜひなき運命の輦(くるま)のうちに涙にくれながら都離れた地方へ送られて行った。 けれど、何后も何進も、それでもまだ不安を覚えて、秘(ひそ)かに後から刺客(しかく)をやって、董太后を殺してしまった。 わずかの間に董太后はふたたび洛陽の帝城に還(かえ)って来たが、それは柩(ひつぎ)の中に冷たい空骸(むくろ)となって戻られたのであった。 京師(けいし)では大葬が執(と)り行(おこ)なわれた。 けれど、何進(かしん)は、 「病中――」と称して、宮中へも世間へも顔を出さなかった。 彼は怒りっぽい。 しかも、小心であった。 彼は自己や一門の栄華のために大悪も敢(あえ)てする。けれど小心な彼は反面で又、ひどく世間に気がねし、自らも責(せ)めている。 要するに何進は、下賤(げせん)から人臣(じんしん)の上に立ったが、大なる野望家にもなりきれず、ほんとの悪人にもなりきれず、位階冠帯(いかいかんたい)は重きに過ぎて、右顧左眄(うこさべん)、気ばかり病んでいるつまらない人物だった。 貝殻(かいがら)が人の跫音(あしおと)に貝のフタをしているように、門から出ないので、或(あ)る日(ひ)、袁紹(えんしょう)は、何進の邸(やしき)を訪ねて、 「どうしました将軍」と、見舞った。 「どうもせんよ」 「お元気がないじゃないですか」 「そんなことはない」 「――ところで、聞きましたか」 「何を?……じゃね」 「董太后(とうたいごう)のお生命(いのち)をちぢめた者は何進なりと、又、例の宦官(かんがん)共が、しきりに流言(りゅうげん)を放っているのを」 「……ふウむ」 「だから私が言わない事ではありません。今からでも遅くないでしょう。あくまでも、彼奴等(きゃつら)は癌(がん)ですよ。根こそぎ切ってしまわなければ、どう懲(こ)らしても、日が経(た)てばすぐ芽を生(は)やし根を張って、増長わがまま、陰謀暗躍、手がつけられない物になるんです」 「……む、む」 「御決断なさい」 「考えておこう」 煮え切らない顔つきである。 袁紹(えんしょう)は舌打ちして帰った。 奴僕(ぬぼく)の中に、宦官(かんがん)たちのまわし者が住みこんでいる。 「袁紹が来てこうこうだ」とすぐ密報する。 諜報(ちょうほう)をうけて、 「又、大変だ」と、宦官等はあわてた。――だが、危険になると、消火栓(しょうかせん)のような便利な手がある。何進の妹の何后(かこう)へ縋(すが)って泣訴(きゅうそ)することであっあ。 「いいよ」 何后は、彼等からあやされている簾中(れんちゅう)の人形だったが、兄へは権威を持っていた。 「何進をおよび」 又、始まった。 「兄さん、あなたは、悪い部下にそそのかされて、又この平和な宮中を乱脈に騒がすような事を考えなどなさりはしないでしょうね。禁裡(きんり)の内務を宦官が司(つかさど)るのは、漢の宮中の伝統で、おれを憎んだり殺したりするのは、宗廟(すびょう)に対して非礼ではありませんか」 釘(くぎ)を刺すと、何進は、 「おれはなにもそんな事を考えておりはせぬが……」 と、曖昧(あいまい)に答えたのみで退出してしまった。 三 宮門から退出して来ると、 「将軍。どうでした」 と、彼の乗物の陰(かげ)に待っていた武将が、参内(さんだい)の吉左右(きっそう)を小声でたずねた。 「ア。……袁紹(えんしょう)か」 「何太后(かたいごう)に召されたと聞いたので、案じていたところです。何か、宦官の問題で、御内談があったのでしょう」 「……ム。あったにはあったが」 「御決意を告げましたか」 「いや、此方(こちら)から言い出さないうちに、太后(たいごう)から、憐愍(れんびん)の取(と)り做(な)しがあったので」 「いけません」 袁紹は、断乎(だんこ)として言った。 「そこが、将軍の弱点です。宦官どもは、一面にあなたを陥(おとしい)れるように、陰謀や悪宣伝を放(はな)って、露顕(とけん)しかかると、太后の裳(も)やお袖(そで)にすがって、泣き声で訴(うった)えます。――お気の弱い太后と、太后のいう事には反(そむ)かないあなたの急所を、彼等はのみこんでやっている仕事ですからな」 「なるほど……」 そう言われると、何進(かしん)も、気づくところがあった。 「今です。今のうちです。今日を措(お)いて、いつの日かありましょう。よろしく、四方の英雄に檄(げき)を飛ばし、もって万代(ばんだい)の計(けい)を、一挙に定められるべきです」 彼の熱弁には、何進もうごかされるのである。なるほどと思い――それもそうだと思い、いつのまにか、 「よしっ、やろう。実はおれもそれくらいの事は考えていたのだ」と、言ってしまった。 二人の密談を、乗物のおいてある樹蔭(こかげ)の近くで聞いていた者がある。典軍(てんぐん)の校尉曹操(そうそう)であった。 曹操は、独(ひと)りせせら笑って、 「ばかな煽動(せんどう)をする奴(やつ)もあればあるものだ。癌(がん)は体じゅうにdきている物じゃない。一個の元兇(げんきょう)を抜けばいいのだ。宦官のうちの首謀者を抓(つま)んで牢へぶちこめば、刑吏の手でも片づくのに、諸方の英雄へ檄を飛ばしたりなどしたら、漢室の紊乱(びんらん)はたちまち諸州の野望家の窺(うかが)い知(し)るところとなり、争覇(そうは)の分脈(ぶんみゃく)は、諸国の群雄と、複雑な糸をひいて、天下はたちまち大乱になろう」 それから、彼は又、何進輦(くるま)に従(つ)いて歩きながら、 「……失敗するにきまっている。さあ、その先は、どんなふうに風雲が旋(めぐ)るか」 と、独(ひと)り語(ごと)に言っていた。 けれど、曹操は、もう自分の考えを、何進に直言はしなかった。その点、袁紹の如く真(ま)っ正直(しょうじき)な熱弁家でもないし、何進のような小胆者(しょうたんもの)とも違う彼であった。 彼は今、天下に多い野望家とつぶやいたが、彼自身もその一人ではなかろうか。白皙愁眉(はくせきしゅうび)、丹唇(たんしん)をむすんで、唯々(いい)として何進の警固には従(つ)いてはいるが、どうもその輦(くるま)の中にある上官よりも典軍の一将校たる彼のほうが、もつと底の深い、もっと肚(はら)も黒い、そしてもっと器(うつわ)の大きな曲者(くせもの)ではなかろうかと見られた。 × × × ここに西涼(せいりょう)(甘粛省(かんしゅくしょう)・蘭州(らんしゅう))の地にある董卓(とうたく)は、前に黄巾賊の討伐(とうばつ)の際、その司令官ぶりは至って香(かんば)しくなく、乱後、朝廷からその罪を問われるところだったが、内官の十常侍一派をたくみに買収したので、不問に終わったのみか、かえって顕官(けんかん)の地位を占めて、今では西涼の刺史(しし)、兵二十万の軍力さえ擁(よう)していた。 その董卓の手へ、 「洛陽からです」 と或る日、一片の檄(げき)が、密使の手から届けられた。 四 洛陽にある何進(かしん)は、先頃来(らい)、檄を諸州の英雄に飛ばして、 天下の府、枢廟(すうびょう)の弊(へい)や今極(きわ)まる。宜(よろ)しく公明の旌旗(せいき)を林集(りんしゅう)し、正大(せいだい)の雲会(うんかい)を遂(と)げ、もって、昭々(しょうしょう)日月の下に万代の革政(かくせい)を諸公と共に正(ただ)さん。 と言ったような意味を伝え、その反響如何(いか)にと待っていたところ、やがて諸国から続々と、 「上洛参会(じょうらくさんかい)」 とか、或(ある)いは、 「提兵(ていへい)援助」 などという答文(とうぶん)を携(たずさ)えた使者が日夜早馬で先触(ぶ)れして来て、彼の館門を叩(たた)いた。 「西涼(せいりょう)の董卓(とうたく)も、兵を提(さ)げてやって来るようですが」 ――御史(ぎょし)の鄭泰(ていたい)なる者が、何進(かしん)の前に来て言った。 「檄文(げきぶん)は、董卓へもお出しになったんですか?」 「む。……出した」 「彼は、豺狼(さいろう)のような男だとよく人は言います。京師(けいし)豺狼を引き入れたら人を喰(く)いちらしはしませんかな」 鄭泰が憂(うれ)えると、 「わしも同感だ」 と、室(へや)の一隅で、参謀の幕将たちと、一面の地形図を拡(ひら)いていた一老将が、歩(ほ)を何進のほうへ移して来ながら言った。 見ると、中郎将(ちゅうろうしょう)盧植(ろしょく)である。 彼は黄匪(こうひ)討伐の征野から讒(ざん)せられて、檻車(かんしゃ)で都へ送られ、一度は軍の裁廷で罪を宣(せん)せられたが、後、彼を陥(おとしい)れた左豊(さほう)の失脚とともに、免(ゆる)されて再び中郎将の原職に復していたのである。 「おそらく董卓は、檄文を見て時こそ来(きた)れりと欣(よろこ)んだに違いない。政廟の革正(かくせい)を欣ぶのでなく、乱をよろこび、自己の野望を乗ずべき時としてです。――わしも董卓の人物はよく知っておるが、あんな漢(おとこ)をもし禁廷に入れたら、どんな禍患(かかん)を生じるやも計り知れん」 盧植(ろしょく)は、わざと、鄭泰のほうへ向かって話かけた。暗に何進を諫(いさ)めたのである。だが、何進は、用いなかった。 「そう諸君のように、疑心をもっては、天下の英雄を操縦はできんよ」 「――ですが」 鄭泰がなお、苦言を呈((てい)しかけると何進はすこし不機嫌に、 「まだまだ、君たちは、大事を共に謀(はか)るに足りんなあ」と、言った。 鄭泰も、盧植も、 「……そうですか」 と、後のことばを胸に嚥(の)んで退(た)がってしまった。そしてこの両者を始め、心ある朝臣たちも、こんな事を伝え聞いて、そろそろ何進の人間に見限(みき)りをつけ出して離れてしまった。 「董卓(とうたく)どのの兵馬は、もう蓮池(れんち)(河南省・河南)まで来ているそうです」 何進は、部下から聞いて、 「なぜすぐにやって来んのか。迎えをやれ」と、しばしば使いを出した。 けれど、董卓は、 「長途を来たので、兵馬にも少し休養させてから」 とか、軍備を整えてとか、何度催促されても、それ以上動いて来なかった。何進の催促を馬耳東風(ばじとうふう)に、豺狼(さいろう)の眼をかがやかしつつ、密(ひそ)かに、耽々(たんたん)と洛内の気配を窺(うかが)っているのであった。 五 一方、宮城内の十常侍等も、何進が諸国へ檄(げき)をとばしたり、檄に応じて董卓などが、蓮池(れんち)附近にまで来て駐軍しているなどの大事を、知らないでいる筈(はず)はない。 「さてこそ」と、彼等はあわてながらも対策を講ずるに急だっった。そこで張讓(ちょうじょう)等はひそかに手配にかかり、刀斧鉄弓(とうふてっきゅう)を携(たずさ)えた禁中の兵を、嘉徳門(かとくもん)や長楽宮(ちょうらくきゅう)の内門にまでみっしり伏せておいて、何太后(かたいごう)をだまし何進を召(め)すの親書を書かせた。 宮門を出た使者は平和時のように、わざと美車金鞍(びしゃきんあん)を燦(かがや)かせ、なにも知らぬ顔して、書を何進の館門へとどけた。 「いけません」 何進の側臣たちは、即座に十常侍の陥穽(かんせい)を看破(みやぶ)って諫(いさ)めた。 「太后の御詔(ごしょう)とて、この際、信用はできません。危(あや)うい限りです。一歩も御門外に出ることはなさらぬほうが賢明です」 こう言われると、それに対して自分の無い器量をも見せたいのが何進の病(やまい)であった。 「なにをいう。宮中の病廃(びょうはい)を正(ただ))し、政権の正大(せいだい)を期し、やがては天下に臨(のぞ)まんとするこの何進である。十常侍の輩(ともがら)が我(われ)に何かせん。彼等ごとき廟鼠輩(びょうそはい)を怖(おそ)れて、何進門を閉(と)ざせりと聞こえたら天下の英雄共も、かえって余(よ)を見縊(みくび)るであろう」 変にその日は強がった。 すぐに車騎の用意を命じ、その代わり鉄甲の精兵五百に、物々しく護衛させて、参内(さんだい)に出向いた。果たせるかな、青鎖門(せいさもん)まで来ると、 「兵馬は禁門に入ることならん。門外にて待ちませい」 と隔(へだ)てられ、何進は、数名の従者だけつれて入った。それでも彼は傲然(ごうぜん)、胸を反(そ)らし、威風を示して歩いて行っったが、嘉徳門(かとく)もんのあたりまでかかると、 「豚殺(ぶたごろ)し待てっ」 と、物陰(ものかげ)から呶鳴(どな)られて、呀(あ)っとたじろぐ間に、前後左右、十常侍の軍士たちに取り巻かれていた。 躍(おど)り出(で)た張讓(ちょうじょう)は、 「何進っ、汝(なんじ)は元来、洛陽の裏町に、豚を屠殺(とさつ)して、辛(から)くも生きていた貧賤(いんせん)ではなかったか。それを、今日の栄位まで昇ったのは、抑々(そもそも)誰のおかげと思うか。われわれが陰に陽に、汝の妹を天子に薦(すす)め奉(たてまつ)り、汝をも推挙したおかげであるぞ。――この恩知らずめ!」と、面罵(めんば)した。 何進は真(ま)ッ蒼(さお)になって、 「しまった!」 と口走ったが、時すでに遅しである。諸処(しょしょ)の宮門はみな閉ざされ、逃げまわるにも刀斧鉄槍(とうふてっそう)、身を囲んで、一尺の隙(すき)もなかった。 「――わッっ。だっ!」 何進はなにか絶叫した。空へでも飛び上がってしまう気であったか、躍り上がって、体を三度ほどぐるぐる旋(まわ)した。張讓(ちょうじょう)は、跳びかかって、 「下郎(げろう)っ。思い知ったか」と、真二つに斬(き)りさげた。 青鎖門外(せいさもんがい)ではわいわいと騒がしい声が起っていた。なにかしら宮門の中におかしな空気を感じだしたものとみえ、 「何(か)将軍はまだ退出になりませんか」 「将軍に急用ができましたから、早くお車に召されたいと告げて下さい」などと喚(わめ)いて動揺しているのであった。 すると、城門の墻壁(しょうへき)の上から、武装の宮兵が一名首を出して、 「やかましいッ。鎮(しず)まれ。汝等(なんじら)の主人何進は、謀反(むほん)のかどに依(よ)って査問(さもん)に付けられ、唯今、かくの如く罪に伏(ふく)して処置は終わった。これを車に載(の)せて立ち帰れっ」 なにか蹴鞠(けまり)ほどな黒い物がそこから抛(ほう)られて来たので、外にいた面々は急いで拾い上げてみると、唇(くちびる)を嚙(か)んだ蒼(あお)い何進の生首(なまくび)であった。
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春園走獸(しゅんえんそうじゅう) 一 まだ若い廃帝(はいてい)は、明け暮れ泣いてばかりいる母の何太后(かたいごう)と共に、永安宮(えいあんきゅう)の幽居(ゆうきょ)に深く閉(と)じ籠(こ)められたまま、春を空(むな)しく、月にも花にも、ただ悲しみを誘わるるばかりだった。 董卓(とうたく)は、そこの衛兵に、 「監視を怠(おこた)るな」と厳命しておいた。 見張りの衛兵は、春の日永(ひなが)を、欠伸(あくび)していたが、ふと幽楼(ゆうろう)の上から、哀(かな)しげな詩(うた)の声が聞こえて来たので、聞くともなく耳を澄(す)ましていると、 春は来ぬ けむる嫩草(わかくさ)に 裊々(じょうじょう)たり 双燕(そうえん)は飛ぶ ながむれば都の水 遠く一すじ青し 碧雲(へきうん)深きところ 是(これ)みなわが旧宮殿 堤上(ていじょう)、義人(ぎじん)はなきや 忠と義とに仗(よ)って 誰(たれ)か、晴らさむ わが心中の怨(うらみ)を―― 衛兵は、聞くと、その詩を覚え書にかいて、 「相国(しょうこく)。廃帝の弘農王(こうのうおう)が、こんな詩を作って歌っていました」 と、密告した。董卓(とうたく)は、それを見ると、 「李儒(りじゅ)はいないか」 と呼び立てた。そして、その詩を李儒に示して、 「これを見ろ、幽宮におりながら、こんな悲歌を作っている。生かしておいては必ずや後の害になろう。何太后(かたいごう)も廃帝も、おまえの処分に任(まか)せる。殺して来い」と、いいつけた。 「承知しました」 李儒は元(もと)より暴獸(ぼうじゅう)の爪(つめ)のような男だ。情けもあらばこそ、すぐ十人ばかりの屈強(くっきょう)な兵を連れて、永安宮へ馳(は)せつけた。 「どこに居(お)るか、王は」 彼はずかずか楼上へ登って行った。折ふし弘農王と何太后とは、楼の上で春の憂(うれ)いに沈んでおられ、突然、李儒のすがたを見たので恟(ぎょ)っとした容子(ようす)だった。 李儒は笑って、 「何もびっくりなさる事はありません。この春日を慰(なぐさ)め奉(たてまつ)れ、と相国から酒をお贈り申しに来たのです。これは延寿酒(えんじゅしゅ)といって、百歳の齢(よわい)を延(の)ぶる美酒です。さあ一盞(いっさん)おあがりなさい」 携(たずさ)えて来た一壺(ひとつぼ)の酒を取り出して杯(さかずき)を強(し)いると、廃帝は、眉(まゆ)をひそめて、 「それは毒酒であろう」と、涙をたたえた。 太后も顔を振って、 「相国(しょうこく)がわたし達へ、延寿酒を贈られるわけはない。李儒、これが毒酒でないなら、そなたがまず先に飲んでお見せなさい」と、言った。 李儒は、眼を怒らして、 「なに、飲まぬと。――それならば、この二品(ふたしな)をお受けなさるか」 と、練絹(ねりぎぬ)の縄と短刀とを、突きつけた。 「……おお。我(われ)に死ねとか」 「いずれでも好きな方を選ぶがよい」 李儒は冷然と毒(どく)づいた。 弘農王は、涙の中に、 噫(ああ)、天道(てんどう)は易(かわ)れり 人の道もあらじ 万乗(ばんじょう)の位(くらい)をすてて われ何(なん)ぞ安からん 臣(しん)に迫られて命(めい)はせまる ただ潸々(さんさん)、涙あるのみ と、悲歌をうたってそれへ泣きもだえた。 太后は、はったと李儒を睨(ね)めつけて、 「国賊!匹夫(ひっぷ)!おまえ達の滅亡も、決して長い先ではありませぬぞ。――ああ兄の何進(かしん)が愚かなため、こんな獸(けだもの)共を都へ呼び入れてしまったのだ」 罵(ののし)り狂うのを、李儒は喧(やかま)しいとばかり、その襟(えり)がみを摑(つか)み寄せて、高楼の欄(らん)から投げ落としてしまった。 二 「どうしたか」 董卓(とうたく)は美酒を飲みながら、李儒の吉左右(きっそう)を待っていた。 やがて李儒は、袍(ほう)を血まみれに汚して戻って来たが、いきなり提(さ)げていた二つの首を突き出して、 「相国(しょうこく)、御命令どおり致して来ました」と、言った。 弘農王の首と、何太后の首であった。 二つとも首は眼をふさいでいたが、その眼が刮(くわ)っと開いて、今に飛びつきそうに、董卓には見えた。 さすがに眉(まゆ)をひそめて、 「そんな物、見せんでもいい。城外へ埋めてしまえ」 それから彼は、日夜、大酒を仰飲(あお)って、禁中の宮内官おいい、後宮(こうきゅう)の女といい、気に入らぬ者は立ちどころに殺し、夜は床(しょう)に横たわって春眠を貪(むさぼ)った。 或る日。 彼は陽城(ようじょう)を出て、四頭立ての驢車(ろしゃ)に美人を大勢乗せ、酔うた彼は、馭者(ぎょしゃ)の真似をしながら、城外の梅林の花ざかりを逍遥(しょうよう)していた。 どころが、ちょうど村社の祭日だったので、なにも知らない農民の男女が晴れ着を飾って帰って来た。 董相国(とうしょうこく)は、それを見かけ、 「農民のくせに、この晴日(せいじつ)を、田へも出ずに、着飾って歩くなど、不届(ふとど)きな怠け者だ。天下の百姓の見せしめに召し捕えろ」と、驢車の上で、急に怒り出した。 突然、相国の従兵に追われて、若い男女は悲鳴をあげて逃げ散った。そのうち逃げ遅れた者を兵が拉(らっ)して来ると、 「牛裂(しざ)きにしろ」 と、相国は威猛高(いたけだか)に命じた。 手足に繩を縛(くく)りつけて、二頭の奔牛(ほんぎゅう)にしばりつけ、東西へ向けて鞭打(むちう)つのである。手脚を裂(さ)かれた人間の血は、梅園の大地を紅(くれない)に汚した。 「いや、花見よりも、よほど面白かった」 驢車は黄昏(たそがれ)に陽城へ向かって帰還しかけた。 するとある巷(ちまた)の角から、 「逆賊(ぎゃくぞく)ッ」と、喚(おめ)いて、不意に驢車へ飛びついて来た漢(おとこ)がある。 美姫(びき)たちは、悲鳴をあげ、驢は狂い合って、端(はし)なくも、大混乱をよび起こした。 「何するか、下司(げす)っ」 肥大な体驅(たいく)の持ち主である相国は、身うごきは敏速(びんそく)を欠くが、力は怖ろしく強かった。 精悍(せいかん)な刺客(しかく)の男は、驢車へ足を踏みかけて、短剣を引き抜き、相国の大きな腹を目がけて勢いよく突ッかけて行ったのであったが、董相国にその剣を叩(たた)き落(お)とされ、慥乎(しっか)と、抱きすくめられてしまったので、どうする事もできなかった。 「曲者(しれもの)め。誰に頼まれた」 「残念だ」 「名を申せ」 「…………」 「誰か、叛逆(はんぎゃく)を企(たくら)む奴(やつ)らの与党だろう。さあ、誰に頼まれたか」 すると、苦しげに、刺客は叫んだ。 「叛逆とは、臣下が君(きみ)の叛(そむ)くことだ。おれは貴様などの臣下であった覚えはない。――おれは朝廷の臣、越騎校尉(えっきこうい)の伍俘(ごふ)だっ」 「斬れッ、こいつを」 驢車から蹴落(けお)とすと共に、董卓の武士たちは伍俘の全身に無数の刃(やいば)と槍(やり)を加えて、塩辛(しおから)のようにしてしまった。 × × × 都を落ちて、遠く渤海郡(ぼっかいぐん)(河北省)の太守(たいしゅ)に封(ほう)じられた袁紹(えんしょう)は、その後、洛陽の状勢を聞くにつけ、鬱勃(うつぼつ)としていたが、遂に矢も楯(たて)も堪(たま)らなくなって、在京の同志で三公の重職にある司徒(しと)王允(おういん)へ、密(ひそ)かに書を飛ばし、激越な辞句で奮起を促(うなが)して来た。 だが、王允は、その書簡を手にしてからも、日夜心で苦しむだけで、董相国を討つ計は何も持たなかった。 三 日々、朝廷に上って、政務にたずさわっていても、王允(おういん)はそんなわけで、少しも勤めに気がのらなかった。 心中ひとり怏々(おうおう)と悶(もだ)えを抱いていた。 ところが或日(あるひ)、董相国(とうしょうこく)の息のかかった高官は誰も見えず、皆、前朝廷の旧臣ばかりが一室にいあわせたので、(是(これ)ぞ、天の与(あた)え)と密(ひそ)かに欣(よろ)こんで、急に座中へ向かって誘いかけた。 「実は、今日は、此方(このほう)の誕生日なのじゃが、どうでしょう。竹裏館(ちくりかん)の別業(べっそう)のほうへ、諸卿(しょきょう)お揃(そろ)いで駕(が)を枉(ま)げてくれませんか」 「ぜひ伺(うかが)って、公の寿(ことぶき)を祝しましょう」 誰も、差支えを言わなかった。 董卓系の人間をのぞいて、水入らずに話したい気持が、期せずして、誰にも鬱(うつ)していたからであった。 別業(べっそう)の竹裏館へ、王允は先へ帰って密かに宴席の支度をしていた。やがて宵(よい)から忍びやかに前朝廷の公卿(くげ)たちが集まった。 時を得ぬ不遇な人々の密会なので、初めから何となく、座中は湿(しめ)っぽい。その上に又、酒のすすみ出した頃、王允は、冷たい杯(さかずき)に見入って、ほろりと涙をこぼした。 見咎(みとが)めた客の一人が、 「王公。せっかく、およろこびの誕生の宴だtいうのに、なんで落涙(らくるい)されるのですか」と言った。 王允は、長大息(ちょうたいそく)して、 「されば、自分の福寿も、今日の有様(ありさま)では、祝う気持にもなれんのじゃ。――不肖(ふしょう)、前朝以来、三公の一座を占め、政(まつりごと)にあずかりながら、董卓の勢いはどうすることもできんのじゃ。耳に万民の怨嗟(えんさ)を聞き、眼に漢室の衰亡を見ながら、何でわが寿筵□(じゅえん)に酔えようか」 と言って、指で瞼(まぶた)を拭(ぬぐ)った。 聞くと一座の者も皆、 「噫(ああ)――」と、大息して、「こんな世に生まれ合わせなければよかった。昔、漢の高祖(こうそ)三尺の剣を提(ひっさ)げて白蛇(はくじゃ)を斬り、天下を鎮(しず)め給(たも)うてより王統ここに四百年、なんぞはからん、この末世(まっせ)に生まれ合わせようとは」 「まったく、われわれも運の悪いものだ。こんな時勢に巡り会ったのは」 「――と言うて、少し大きな声でもして、董相国やその一類の誹謗(ひぼう)をなせば、この首の無事は保(たも)てないし」 などと各々(おのおの)、涙やら愚痴(ぐち)やらこぼして燭(しょく)も滅入(めい)るばかりであったが、その時、末座の方から突然、 「わははははは。あはッはははは」 手を叩(たた)いて、誰か笑う者があった。公卿たちは、びっくりして、末席を振り返った。見るとそこに若年の一朝臣が、独(ひと)りで杯(はい)を挙げ、白面(はくめん)に紅潮を漲(みなぎ)らせて、人々が泣いたり愚痴るのを、さっきから可笑(おか)しげに眺めていた。 王允は、その無礼を咎(とが)め、 「誰かと思えば、そちは校尉(こうい)曹操(そうそう)ではないか。なんで笑うか」 すると、曹操はなお笑って、 「いや、すみません。しかしこれが笑えずにおられましょうか。朝廷の諸大臣たる方々が、夜は泣いて暁(あかつき)に至り、昼は悲しんで暮(くれ)に及び、寄ると触(さわ)るうと泣いてばかりいらっしゃる。これでは天下万民もみな泣き暮らしになるわけですな。おまけに、誕生祝いというのに、わざわざ集まって、又泣上戸(なきじょうご)の泣き競(くら)べとは――。わはははは。失礼ですが、どうも可笑しくって、笑いが止まりませんよ。あははは、あははは」 「やかましいっ。汝(なんじ)は抑々(そもそも)相国曹参(そうさん)が後胤(こういん)で、四百年来、代々漢室の大恩をうけて来ながら、今の朝廷の有様(ありさま)が、悲しくないのか。われわれの憂(うれ)いが、そんなに可笑しいのか。返答に依(よ)っては免(ゆる)さんぞ」 四 「これは意外なお怒りを――」と、曹操はやや真面目に改まって、 「それがしとて何の理(り)もない事を笑ったわけではありません。時の大臣(おとど)ともあろう方々が、女童(おんなわらべ)の如く、日夜めそめそ悲嘆しておらるるのみで董卓(とうたく)を誅伏(ちゅうふく)する計(はかりごと)と言ったら何もありはしない。――そんな意気地なしなら、時勢を慨嘆(がいたん)したりなどせずに、美人の腰掛けになって胡弓(こきゅう)でも聴きながら感涙(かんるい)を流していたらよかろうに――と思ったのでつい笑ってしまった次第です」 と臆面(おくめん)もなく言った。 曹操(そうそう)の皮肉に王允(おういん)を始め公卿(くげ)たちも憤(むっ)と色をなして、座は白(しら)けわたったが、 「然(しか)らば何か、そちはそのような広言(こうげん)を吐(は)くからには、董卓を殺す計(はかりごと)でも有(あ)るというのか。その自信があっての大言か」 王允が再び急(せ)きこんで難詰(なじ)ったので、人々は、彼の返答如何(いか)にと、固唾(かたず)をのんで、曹操の白い面(おもて)に眸(ひとみ)をあつめた。 「無くてどうしましょう!」 毅然(きぜん)として彼は肩を昂(あ)げ、 「不才ながら小生におまかしあれば、董卓が首を斬って、洛陽の門に梟(か)けて御覧に入れん」 と明言した。 王允は、彼の自信ありげな言葉に、かえって喜色をあらわし、 「曹校尉、もし今の言(げん)に偽(いつわ)りがないならば、寔(まこと)に天が義人を地上に降(くだ)して、万民の苦しみを助け給うものだ。抑(そも)、君にいかなる計(はかりごと)やある。願わくば聞かしてもらいたいが」 「されば、それがしが常に董相国に近づいて、表面、媚(こ)び諂(へつら)って仕えているのは、何を隠そう、隙(すき)もあれば彼を一思(ひとおも)いに刺し殺そうと内心誓っているからです」 「えっ。では君には疾(と)くよりそれ迄(まで)の決心を持っていたのか」 「さもなくて、何の大笑い大言を諸卿(しょきょう)に呈(てい)しましょう」 「ああ、天下になおこの義人あったか」 「王允はことごとく感じて、人々はまたほっと喜色を漲(みなぎ)らした。 すると曹操は「時に、王公に小生から、一つの御無心(ごむしん)がありますが」と言い出した。 「何か、遠慮なく言うてみい」 「他ではありませんが、王家には昔より七宝(しっぽう)を鏤(ちりば)めた希代(きだい)の名刀が伝来されておる由(よし)、常々(つねづね)、承(うけたまわ)っておりますが、董卓を刺すために、願わくばその名刀を、小生にお貸し下さいませんか」 「それは、目的さえ必ず仕遂(しと)げてくれるならば……」 「その儀は、きっとやりのけて見せます。董相国(とうしょうこく)も近頃では、それがしを寵愛(ちょうあい)して、まったく腹心の者同様に視(み)ていますから、近づいて一断に斬殺(ざんさつ)することは、なんの造作もありません」 「うム。それさえ首尾(しゅび)よく参るものなら、天下の大幸というべきだ。なんで家宝の名刀一つをその為に惜しもうや」 と、王允はすぐ家臣に命じて、秘蔵の七宝剣を取り出し、手ずからそれを曹操に授(さず)け、かつ言った。 「しかし、もし仕損(しそん)じて、事顕(あらわ)れたら一大事だぞ、充分心して行なえよ」 「乞(こ)う、安んじて下さい」 曹操は剣を受け、その夜の酒宴も終わったので、颯爽(さっそう)と帰途についた。七宝の利剣(りけん)は燦(さん)として夜光の珠(たま)の帯の如く、彼の腰間に耀(かがや)いていた。
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偽忠狼心(ぎちゅうろうしん) 一 曹操を搦(から)めよ。 布令(ふれ)は州郡諸地方へ飛んだ。 その迅速(じんそく)を競(きそ)って。 一方―― 洛陽(らくよう)の都をあとに、黄馬(こうば)に鞭(むち)をつづけ、日夜をわかたず、南へ南へと風の如(ごと)く逃げて来た曹操は、早くも中牟県(ちゅうぼうけん)(河南省(かなんしょう)中牟・開封(かいほう)―鄭州(ていしゅう)の中間)――附近までかかっていた。 「待てっ」 「馬を降りろ」 関門へかかるや否(いな)、彼は関所の守備兵に引きずり降ろされた。 「先に中央から、曹操という者を見かけ次第召(め)し捕(と)れと、指令があった。其方(そのほう)の風采(ふうさい)と、容貌(ようぼう)とは人相書に甚(はなは)だ似ておる」 関(せき)の吏事(やくにん)は、そう言って曹操が何と言いのがれようとしても、耳を貸さなかった。 「とにかく、役所へ引ッ立てろ」 兵は鉄桶てっとう)の如(ごと)く、曹操を取り囲んで、吟味所(ぎんみしょ)へ拉(らっ)してしまった。 関門兵の隊長、道尉(どうい)陳宮(ちんきゅう)は、部下が引っ立てて来る者を見ると、 「あっ、曹操だ!吟味にも及ばん」と、一見して言(い)き断(き)った。 そして部下の兵を犒(ねぎら)って彼が言うには、 「自分は先年まで、洛陽に吏事おしておったから、曹操の顔も見覚えている。――幸いにも生擒(いけど)ったこの者を都へ差し立てれば、自分は万戸侯(ばんここう)という大身(たいしん)に出世しよう。お前たちにも恩賞を頒(わ)かってくれるぞ。前祝いに、今夜は大いに飲め」 そこで、曹操の身はたちまち、かねて備えてある鉄の檻車(かんしゃ)の抛(ほう)りこまれ、明日にも洛陽(らくよう)へ護送して行くばかしとなし、守備の兵や吏事(やくにん)たちは、大いに酒を飲んで祝った。 日暮れになると、酒宴もやみ、吏事も兵も関門を閉じて何処(どこ)へか散ってしまった。曹操(そうそう)はもはや、観念の眼(まなこ)を閉(と)じているもののように、檻車の中に倚(よ)りかかって、真暗(まっくら)な山谷の声や夜空の風を黙然(もくねん)と聴いていた。 すると夜半に近い頃、 「曹操、曹操」 誰か、檻車に近づいて来て、低声(こごえ)に呼ぶ者があった。 眼をひらいて見ると、昼間、自分を一目で観破(みやぶ)った関門兵の隊長なので、曹操は、 「何用か」 嘯(うそぶく)如(ごと)く答えると、 「おん身は都に在(あ)って、董相国(とうしょうこく)にも愛され、重く用いられていたと聞いていたが、何故(なにゆえ)に、こんな羽目になったのか」 「くだらぬ事を問うもの哉(かな)。燕雀(えんじゃく)なんぞ鴻鵠(こうこく)の志(こころざし)を知らんやだ。――貴様(きさま)はもうおれの身を生擒(いけど)っているんじゃないか。四の五の言わずと都へ護送して、早く恩賞にあずかれ」 「曹操。君は人を観(み)る明(めい)がないな。好漢(こうかん)惜(お)しむらく――というところか」 「なんだと」 「怒り給(たも)うな。君が徒(いたず)らに人を軽んじるから一言酬(むく)いたのだ。かくいう自分とても、沖天(ちゅうてん)の大志を抱いておる者だが、真に、国の憂(うれ)いを語る同志もない為(ため)、空(むな)しく光陰の過ぎるのを恨(うら)みとしておる。折から、君を見たので、その志を叩(たた)きに来たわけだが」 意味ありげな言葉に、曹操も初めの態度を改めて、「然(しか)らば言おう」と、檻車の中に坐(すわ)り直した。 二 曹操は、口を開いた。 「なるほど董卓(とうたく)は、貴公(きこう)の言われたようにこの曹操を愛していたに違いない。――しかしそれがしは、遠く相国(しょうこく)曹参(そうさん)が末孫(ばっそん)にて、四百年来、漢室(かんしつ)の禄(ろく)をいただいて来た。なんで成り上がり者の暴賊董卓ごときに、身を屈(くっ)すべいや」 と語気、熱をおびて来て―― 「如(し)かず国の為、賊を刺し殺して、祖先の恩を報ずべしと、董卓の命を狙(ねら)ったが、天運いまだ我(われ)に非(あら)ず――こうして捕われの身となってしまった。なんぞ今さら、悔(く)いる事があろうか」 白面細眼(はくめんさいがん)、自若(じじゃく)としてそう言う容子(ようす)、さすがに名門の血すじをひいているだけに、争い難い落ち着きがあった。 「…………」 黙然――やや暫(しばら)くの間、檻車の外にあってその態(てい)を見ていた関門兵の隊長は、 「お待ちなさい」 言うかと思うと、檻車の鉄錠(てつじょう)を外(はず)して、扉を開き、驚く彼を中から引き出して、 「曹操どの。貴君(あなた)はどこへ行こうとしてこの関門へかかったのですか」 「故郷――」 曹操は、茫(ぼう)とした面持(おももち)で、隊長の行為を怪しみながら答えた。 「故郷の譙郡(しょうぐん)に帰って、諸国の英雄に呼びかけ、義兵を挙げて再び洛陽へ攻め上り、堂々、天下の賊を討(う)つ考えであったのだ」 「さもこそ」 隊長は、彼の手を曳(ひ)いて、密(ひそ)かに自分の室(へや)へと請(しょう)じ、酒食を供して、曹操のすがたを再拝した。 「思うに違(たが)わず、御辺(ごへん)は私の求めていた忠義の士であった。貴君(あなた)に会ったことは実に喜ばしい」 「では御身(おんみ)も董卓に恨(うら)みのある者か」 「いや、いや、私怨(しえん)ではありません。大きな公憤(こうふん)です。義憤(ぎふん)です。万民の呪(のろ)いと共に憂国(ゆうこく)の怒りをもって、彼を憎み止(や)まぬ一人です」 「それは、意外だ」 「今夜がぎり、てまえも官を棄(す)てて此関(ここ)から奔(はし)ります。共に力を協(あわ)せて、貴君(あなた)の赴(ゆ)く所まで落ちのび、天下の義兵を呼び集めましょう」 「えっ、真実ですか」 「なんで噓(うそ)を。――すでにこう言う間に、貴君(あなた)の縄目を解(と)いているではありませんか」 「ああ!」 曹操(そうそう)は初めて、回生(かいせい)の大きな歓喜を、その吐息(といき)にも、満面にも現わして、 「して、貴公はいったい、何と仰(お)っしゃる御仁(ごじん)か」 と、訊(たず)ねた。 「申しおくれました。自分は、陳宮(ちんきゅう)字(あざな)を公台(こうだい)という者です」 「御家族は」 「この近くの東郡(とうぐん)に住まっています。すぐそこへ参(まい)って、身仕度を代え、すぐさま先へ急ぎましょう」 陳宮は、馬を曳(ひ)き出して、先に立った。 夜もまだ明けないうちに、二人は又、その東郡をも後にすてて、ひた急ぎに、落ちて行った。 それから三日目―― 日夜わかたず駆け通して来た二人は、成皐(せいこう)(河南省・衛輝(えいき)附近)のあたりを彷徨(さまよ)っていた。 「今日も暮れましたなあ」 「もうこの辺まで来れば大丈夫だ。――だが、今日の夕陽は、いやに黄いろッぽいじゃないか」 「又、蒙古風(もうこかぜ)ですよ」 「あ、湖北(こほく)の沙風(さふう)か」 「どこへ宿(やど)りましょう」 「部落が見えるが、この辺はなんという所だろう」 「先程の山道に、成皐路(せいこうじ)という道標が見えましたが」 「あ。それなら今夜は、訪ねて行くよい家があるよ」 と、曹操は明るい眉(まゆ)をして、馬上から行く手の林を指さした。 三 「ほ、こんな辺鄙(へんぴ)の地に、どういうお知り合いがいるのですか」 「父の友人だよ。呂伯奢(りょはくしゃ)という者で、父とは兄弟のような交(まじ)わりのあった人だ」 「それは好都合ですな」 「今夜はそこを訪れて一宿を頼もう」 語りながら、曹操と陳宮の二人は、林の中へ駒(こま)を乗り入れ、やがてその駒を樹(き)に繋(つな)いで、尋ね当てた呂伯奢の門をたたいた。 主(あるじ)の呂伯奢は驚いて、不意に客を迎え入れ、 「誰かと思ったら、曹家(そうけ)の御子息じゃないか」 「曹操です。どうも暫(しばら)くでした」 「まあ、お入りなさい。どうしたのですか。いったい」 「何がです」 「朝廷から各地へ、あなたの人相書が廻(まわ)っていますが」 「ああその事ですか。実は丞相(じょうしょう)董卓(とうたく)を討(う)ち損(そん)じて逃げて来た迄(まで)の事です。私を賊と呼んで人相書など廻しているらしいが、彼奴(きゃつ)こそ大逆(たいぎゃく)の暴賊です。遅かれ早かれ、天下は大乱となりましょう。曹操も、もう凝(じっ)としてはいられません」 「お連れになってる人は誰方(どなた)ですか」 「そうそう、御紹介をするのを忘れていた。これは道尉(どうい)陳宮(ちんきゅう)という者で、中牟県(ちゅうぼうけん)の関門を守備しており、私を曹操と見破って召し捕えたくらいな英傑(えいけつ)ですが、胸中の大志を語り合ってみたところ、時勢に鬱勃(うつぼつ)たる同憂(どうゆう)の士だという事がわかったので、陳宮は官を捨て、私は檻(おり)を破って、共にこれまで携(たずさ)え合(あ)って逃げ走って来たというわけです」 「ああそうですか」 呂伯奢(りょはくしゃ)は跪(ひざまず)いて、改めて陳宮のすがたを拝(はい)し、 「義人(ぎじん)。――どうかこの曹操を扶(たす)けて上げてください。もし貴方(あなた)が見捨てたら曹操の一家一門はことごとく滅んでしまう他はありません」 と、曹操の父の友人というだけに、先輩らしく慇懃(いんぎん)に将来を頼むのであった。 そして呂伯奢(りょはくしゃ)は、いそいそと、 「まあ、御(ご)ゆるりなさい。手前は隣村まで行って、酒を買ってきますから」 と、驢(ろ)に乗って出て行った。 曹操と陳宮は、旅装を解(と)いて、一室で休息していたが、主(あるじ)はなかなか帰って来ない。 そのうちに、夜も初更(しょこう)の頃、どこかで異様な物音がする。耳をすましていると、刀でも磨(と)ぐような鈍(にぶ)い響きが、壁を越えて来るのだった。 「はてな?」 曹操は、疑いの目を光らし、扉(と)を排(はい)して、又耳を欹(そばだ)てていたが、 「そうだ、……やはり刀を磨ぐ音だ。さては、主の呂伯奢は、隣村へ酒を買いに行くなどと言って出て行ったが、県吏に密訴(みっそ)して、おれ達を縛(しば)らせ、朝廷の恩賞にあずかろうという気かもしれん」 呟(つぶや)いていると、暗い厨(くりや)の方で、四、五名の男女の者が口々に――縛れとか、殺せとか――言い交(か)わしているのが、曹操の耳へ、明らかに聞こえて来た。 「さてこそ、われわれを、一室に閉じこめて、危害を加えんとする計(はかりごと)にうたがいなし。。――その分なれば、こっちから斬(き)ッてかかれ」 と、陳宮へも、事の急を告げて、にわかにそこを飛びだし、驚く家族や召使い八名までを、またたく間にみな殺しに斬ってしまった。 そして、曹操が先に、 「いざ逃げん」と、促(うなが)すと、どこかで未(ま)だ、異様な呻(うめ)き声をあげて、ばたばた騒ぐものがある。 厨の外へ出て見ると、生きている猪(いのこ)が、脚(あし)を木に吊(つる)されて、啼(な)いているのだった。 「ア、しまった!」 陳宮は甚(はなは)だ後悔した。 この家の家族たちは、猪を求めて来て、それを料理しようとしていたのだ――と、わかったからである。 四 曹操は、もう闇(やみ)に向かって、急ごうとしていた。 「陳宮。はやく来い」 「はっ」 「何を愚図愚図(ぐずぐず)しているのだ」 「でも……。どうも、気持が悪くてなりません。慚愧(ざんぎ)にたえません」 「なんで」 「無意味な殺生(せっしょう)をしたじゃありませんか。かわいそうに、八人の家族は、われわれの旅情をなぐさめる為(ため)に、わざわざ猪(いのこ)を求めて来て、もてなそうとしていたんです」 「そんな事を悔(く)いて、家の中へ、、掌(て)を合わせていたのか」 「せめて、念仏でも申して、科(とが)なき人たちを殺した罪を、詫(わ)びて行こうと思いまして」 「はははは。武人に似合わんことだ。してしまったものは是非(ぜひ)もない。戦場に立てば何千何万の生霊(せいれい)を、一日で葬(ほうむ)ることさえあるじゃないか。又、我が身だって、何時(いつ)そうされるか知れないのだ」 曹操には、曹操の人生観があり、陳宮には又、陳宮の道徳観がある。 それは違うおのであった。 けれど今は、一蓮托生(いちれんたくしょう)の道づれである。議論していられない。 二人は、闇へ馳(か)けた。 そして、林の中に繋(つな)いでおいた駒(こま)を解き、飛び乗るが早いか、二里あまりも逃げのびて来た。 ――と、彼方(かなた)から、驢(ろ)に二箇(こ)の酒瓶(さけがめ)を結びつけて来る者があった。近づき合うにつれて、ぷーんと芳熟(ほうじゅく)した果物の佳(い)い匂(にお)いが感じられた。腕には、果物の籠(かご)も掛けているのだった。 「おや、お客人ではないか」 それはいま、隣村から帰って来た呂伯奢(りょはくしゃ)であったのである。 曹操は、まずい所で会ったと思ったが、あわてて、 「やあ、御主人か。実は、きょうの昼間、これへ来る途中に寄った茶店に、大事な品を忘れたので、急に思い出して、これから取りに行くところです」 「それなら、家の召使いをやればよいのに」 「いやいや、馬で一鞭(ひとむち)当てれば、造作(ぞうさ)もありませんから」 「では、お早く行っておいでなさい。家の者に、猪(いのこ)を屠(ほふ)って、料理しておくように言っておきましたし、酒もすてきな美酒(びしゅ)をさがして、手に入れて来ましたからね」 「は、は、すぐ戻って来ます」 曹操は、返辞もそこそこと、馬に鞭打って呂伯奢と別れた。 そして、四、五町ほど来たが、急に馬を止め、 「君!」と、陳宮を呼び止め、 「君はしばらく此処(ここ)で待っていてくれないか」 と言い残し、何を思ったか、再び道を引っ返して馳(か)けて行った。 「どこへ行ったのだろう?」と、陳宮は、彼の心を解(と)きかねて、怪しみながら待っていたところ、やがての事曹操は又戻って来て、いかにも心残りを除いて来たように、 「これでいい!さあ行こう。君、今のも殺(や)って来たよ。一突きに刺し殺して来た」 と、言った。 「えっ。呂伯奢を?」 「うん」 「なんで、無益な殺生(せっしょう)をした上にもまた、あんな善人を殺したのです」 「だって、彼が帰って、自分の妻子や雇人が、皆ごろしになったのを知れば、いくら善人でも、われわれを恨(うら)むだろう」 「それは是非(ぜひ)もありますまい」 「県吏に訴(うった)え出られたら、この曹操の一大事だ。背に腹はかえられん」 「でも、罪なき者を殺すのは、人道に反(そむ)くではありませんか」 「否(いな)」 曹操は、詩でも吟(ぎん)じるように、大声で言った。 「我(われ)をして、天下の人に反かしむるとも、天下の人をして、我に反かしむるを休(や)めよ――だ。さあ行こう。先へ急ごう!」 五 ――怖(おそ)るべき人だ。 曹操の一言を聞いて、陳宮はふかく彼の人となりを考え直した。そして心に懼(おそ)れた。 この人も、天下の苦しみを救わんとする者ではない。真に世を憂(うれ)えるのでもない。――天下を奪わんとする野望の士であった。 「……過(あやま)った」 陳宮も、ここに至って、密(ひそ)かに悔(く)いを嚙(か)まずにはいられなかった。 男子の生涯を賭(と)して、道づれとなった事を、早計だったと思い知った。 けれど。 すでにその道は踏み出してしまったのである。官を捨て、妻子を捨てて共に荊棘(けいきょく)の道を覚悟の上で来てしまったのだ。 「悔いも及ばず……」と、彼は心を取り直した。 夜が更(ふ)けると、月が出た。深夜の月明りを頼りに十里も走った。 そして、何処(どこ)か知らぬ、古廟(こびょう)の荒れた門前で、駒(こま)を降りて一休みした。 「陳宮」 「はい」 「君も一寝入(ひとねい)りせんか。夜明けまでには間がある。寝ておかないと、あしたの道に又、疲労するからな」 「寝(やす)みましょう。けれど大事な馬を盗まれるといけませんから、どこか人目につかぬ木陰(こかげ)に繫(つな)いで来ます」 「ムム。そうか。……ああしかし惜しいことをしたなあ」 「何ですか」 「呂伯奢(りょはくしゃ)を殺しに戻ったくせにしてさ、おれとした事が、彼が携(たずさ)えていた美酒と果物を奪って来るのを、すっかり忘れていたよ。やはり幾(いく)らかあわてていたんだな」 「…………」 陳宮んは、それに返辞する勇気もなかった。 馬を隠して、暫(しばら)くの後、又そこへ戻って来てみると、曹操は、古廟(こびょう)の軒下に、月の光を浴びていかにも快(こころよ)げに熟睡していた。 「……なんという大胆不敵な人だろう」 陳宮は、その寝顔を、つくづくと見入りながら、憎みもしたし、感心もした。 憎む方の心は、 (自分は、この人物を買(か)い被(かぶ)った。この人こそ、真に憂国(ゆうこく)の大忠臣だと考えたのだ。ところがなんぞ計(はか)らん、狼虎(ろうこ)にひとしい大野心家に過ぎない) と、思い、又敬服する方の半面では、 (――しかし、野心家であろうと姦雄(かんゆう)であろうと、とにかくこの大胆さと、情熱と、おれを買い被らせた程の弁舌とは、非凡(ひぼん)なものだ。やはり一方の英傑にちがいないなあ……) と、自(ひと)り心のうちで思うのであった。 そして、そう二つに観(み)られる自分の心に質(ただ)して、陳宮は、 「今ならば、睡(ねむ)っている間に、この曹操を刺し殺してしまう事もできるのだ。生かしておいたら、こういう姦雄は、後に必ず天下に禍(わざわい)するだろう。……そうだ、天に代わって、今刺してしまった方がいい」と、考えた。 陳宮は、剣を抜いた。 寝顔をのぞかれているのも知らず、曹操は鼾声(いびき)をかいていた。その顔は実に端麗(たんれい)であった。陳宮は迷った。 「いや、待てよ」 寝込みを殺すのは、武人の本領でない。不義(ふぎ)である。 それに、今のような乱世に、こういう一種の姦雄を地に生まれさせたのも、天に意(こころ)あっての事かもしれない。この人の天寿(てんじゅ)を、寝ている間に奪うことは、かえって天の意に反(そむ)くかもしれない。 「噫(ああ)……。なにを今になって迷うか。おれは又煩悩(ぼんのう)すぎる。月は煌々(こうこう)と冴(さ)えている。そうだ、月でも見ながらおれも寝よう」 思い止(とど)まって、剣をそっと鞘(さや)にもどし、陳宮もやがて同じ廂(ひさし)の下に、丸くなって寝こんだ。
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橋畔(きょうはん)風談(ふうだん) 一 蟠桃河(ばんとうが)の水は紅(あか)くなった。両岸の桃園(とうえん)は紅霞(こうか)を曳(ひ)き、夜は眉(まゆ)のような月が香(にお)った。 けれど、その水にも、詩を詠(よ)む人を乗せた一艘(いっそう)の舟もないし、杖(つえ)をひいて逍遥(しょうよう)する雅人(がじん)の影もなかった。 「おっ母(か)さん、行ってきますよ」 「ああ、行っておいで」 「なにか城内から美味(おいし)い物でも買って来ましょうかね」 劉備は、家を出た。 沓(くつ)や蓆(むしろ)をだいぶ納(おさ)めてある城内の問屋に行って、価(あたい)を取って来る日だった。 午(ひる)から出ても、用達(ようたし)をすまして陽(ひ)のあるうちに、楽に帰れる道程(みちのり)なので、劉備は驢(ろ)にも騎(の)らなかった。 いつか羊仙(ようせん)の置いて行った山羊(やぎ)がよく馴(な)れて、劉備の後に尾(つ)いて来るのを、母が後ろで呼び返していた。 城内は、埃(ほこり)ッぽい。 雨が久しくなかったので、沓(くつ)の裏がぽくぽくする。劉備は問屋から銭(ぜに)を受け取って、脂光(あぶらびか)りしている市(いち)の軒並(のきなみ)を見て歩いた。 蓮根(れんこん)の菓子があった。劉備はそれを少し買い求めた。――けれど少し歩いてから、 「蓮根は、母の持病に悪いのじゃないか」と、取り換えに戻ろうかと迷っていた。 がやがやと沢山な人が辻(つじ)に集まっている。いつもそこでは、野鴨(のがも)の丸揚(まるあげ)や餅(へい)を売っている場所なので、その混雑かと思うていたが、ふと見ると、大勢の頭の上に、高々と、立札が見えている。 「何だろ?」 彼も、好奇に駆(か)られて、人々のあいだから高札(こうさつ)を仰(あお)いだ。 見ると―― 遍(あまねく)天下に義勇の士を募(つの)る という布告の分であった。 黄巾の匪、諸州に蜂起(ほうき)してより、年々の害、鬼 畜の毒、惨(さん)として蒼生(そうせい)に青田なし。 今にして、鬼賊(きぞく)を誅(ちゅう)せずんば、天下知るべきの み。 太守(たいしゅ)劉焉(りゅうえん)、遂(つい)に、子民(しみん)の泣哭(きゅうこく)に奮(ふる)って討伐(とうばつ)の天(てん) 鼓(こ)を鳴らさんとす。故(ゆえ)に、隠れたる草盧(そうろ)の君子(くんし)、 野(や)に潜(ひそ)む義人(ぎじん)、旗下(きか)に参ぜよ。 欣然(きんぜん)、各子の武勇に依(よ)って、府に迎えん。 涿郡(たくぐん)校尉(こうい)鄒靖(すうせい) 「なんだね、これは」 「兵隊を募(つの)っているのさ」 「ああ兵隊か」 「どうだ、志願して行って、一働(ひとはたら)きしては」 「おれなどはだめだ。武勇も何も無い。ほかの能(のう)も無いし」 「誰だって、そう能のある者ばかり集まるものか。こう書かなくては、勇ましくないからだよ」 「なるほど」 「憎(にく)い黄匪(こうひ)を討つんだ。槍(やり)の持ち方がわからないうちは、馬の飼糧(かいば)を刈っても軍(いくさ)の手伝いになる。おれは行く」 ひとりが呟(つぶや)いて去ると、その呟きに決心を固めたように、二人去り、三人去り、皆、城門の役所の方へ力ある足で急いで行った。 「・・・・・・・・・・・・」 劉備は、時勢の跫音(あしおと)を聞いた。民心の赴(おもむ)く潮(うしお)を見た。 ――が、蓮根(れんこん)の菓子を手に持ったまま、いつまでも、考えていた。誰も居(い)なくなるまで、高札(こうさつ)と睨(にら)み合(あ)って考えていた。 「・・・・・・ああ」 気がついて、間(ま)がわるそうに、そこから離れかけた。すると、誰か、楊柳(ようりゅう)のうしろから、 「若人(わこうど)。待ち給(たま)え」 と、呼んだ者があった。 二 さっきから楊柳の下に腰かけて、路傍(みちばた)の酒売りを相手に、声高(こわだか)に話していた男のあった事は、劉備も知っていた。 自分の容子(ようす)を、横目ででも見ていたのだろうか、二、三歩、高札から足を退(しりぞ)けると、 「貴公(きこう)、それを読んだか」 片手に、酒杯(さかずき)を持ち、片手に剣の把(つか)を握って不意に起(た)って来たのである。 楊柳の幹より大きな肩幅を、後ろ向きに見ていただけであったが、立ち上がったのを見ると、実に見上げるばかりの偉丈夫(いじょうぶ)であった。突然、山が立ったように見えた。 「・・・・・・私ですか」 劉備は更に改めて、その人を見直した。 「うむ、貴公より他に、もう誰も居ないじゃないか」 黒漆(こくしつ)の髯(ひげ)の中で、牡丹(ぼたん)のような口を開いて笑った。 声も年頃も、劉備と幾つも違うまいと思われたが、偉丈夫は、髪から腮(あご)まで、隙間(すきま)もないように艶々(つやつや)しい髯を蓄(たくわ)えていた。 「――読みました」 劉備の答えは寡言(かごん)だった。 「どう読んだな、貴公は」と、彼の問いは深刻で、その眼は、烱々(けいけい)として鋭い。 「さあ?」 「まだ考えておるのか。あんなに長い間、高札と睨み合っていながら」 「ここで語るのを好みません」 「おもしろい」 偉丈夫は、酒売りへ、銭と酒杯を渡して、ずかずかと、劉備のそばへ寄って来た。そして劉備の口真似をしながら、 「ここで語るのを好みません・・・・・・いや愉快(ゆかい)だ。その言葉に、おれは真実を聴く。さ、何処(どこ)かへ行こう」 劉備は困ったが、「とにかく歩きましょう。ここは人目の多い市(いち)ですから」 「よし歩こう」 偉丈夫は、闊歩(かっぽ)した。劉備は並行してゆくのに骨が折れた。 「あの虹橋(こうきょう)の辺はどうだ」 「よいでしょう」 偉丈夫の指さすところは町端(まちはず)れの楊柳の多い池のほとりだった。虹(にじ)を架(か)けたような石橋がある。そこから先は廃苑(はいえん)であった。何とかという学者が池を坑(ほ)って、聖賢(せいけん)の学校を建てたが、時勢は聖賢の道と逆行するばかりで、真面目(まじめ)に通って来る生徒はなかった。 学者は、それでも根気よく、石橋に立って道を説いたが、市の住民や童(わらべ)は、(気狂いだ)と、耳も貸さない。それのみか、小賢(こざか)しい奴(やつ)だと、石を投げる者もあったりした。 学者は、いつのまにか、ほんとの狂人になってしまったとみえ、遂(つい)には、あらゆる事を絶叫して、学苑(がくえん)の中をさまよっていたが、そのうちに蓮池(はすいけ)の中に、あわれ死体となって浮かび上がった。 そういう遺蹟(いせき)であった。 「ここはいい。掛け給(たま)え」 偉丈夫は、虹橋の石欄(せきらん)へ腰をかけ、劉備にもすすめた。 劉備は、ここまで来る間に、偉丈夫の人物をほぼ観(み)ていた。そして、(この人物は偽物(ぎぶつ)でない)と思ったので、ここに来た時は、彼もかなりな落ち着きと本気を示していた。 「時に、失礼ですが、尊名(そんめい)から先に承(うけたまわ)りたいものです。私はここから程遠くない楼桑村(ろうそうそん)の住人で、劉備玄徳という者ですが」 すると偉丈夫は、いきなり劉備の肩を打って、 「好漢(こうかん)。それはもう聞いておるじゃないか。此方(このほう)の名だって、よく御承知のはずだが」と言った。 三 「えっ?・・・・・・私を以前から御存じの方ですって」 「お忘れかな。ははは」 偉丈夫は、肩をゆすぶって、腮(あご)の黒い髯(ひげ)をしごいた。 「――無理もない。頰(ほほ)の刀傷で、容貌(ようぼう)も少し変わった。それにここ三、四年はつぶさに浪人の辛酸(しんさん)を舐(な)めたからなあ。貴公(きこう)とお目にかかった頃には、まだこの黒髯(こくぜん)も蓄(たくわ)えてなかった時じゃ」 そう言われても、劉備はまだ思い出せなかったが、ふと、偉丈夫の腰に佩(は)いている剣を見て、思わずあっと口をすべらせた。 「おお、恩人!思い出しました。貴郎(あなた)は数年前、私が黄河(こうが)から涿県(たくけん)のほうへ帰ってくる途中、黄匪(こうひ)に囲まれて既(すで)に危(あや)うかったところを助けてくれた鴻家(こうけ)の浪士、張飛(ちょうひ)翼徳(よくとく)と仰(お)っしゃったお方ではありませんか」 「そうだ」 張飛はいきなり腕をのばして、劉備の手を握(にぎ)りしめた。その手は鉄(くろがね)のようで、劉備の掌(て)を握ってなお、五指が余っていた。 「よく覚えていて下された。いかにもその折の張飛でござる。かくの如(ごと)く、髯を蓄え、容貌を変えているのも、以来、志(こころざし)を得ずに、世の裏に潜(ひそ)んでおるが為(ため)です。――で実は、貴公にわかるかどうか試してみたわけで、最前からの無礼はどうかゆるされい」 偉丈夫に似あわず、礼には篤(あつ)かった。 すると劉備は、より以上、慇懃(いんぎん)に言った。 「豪傑(ごうけつ)。失礼はむしろ私のほうこそ咎(とが)めらるべきです。恩人の貴郎(あなた)を見忘れるなどという事は、たとえ如何(いか)に当時とお変わりになっているにせよ、相済まないことです。どうか、劉備の罪はおゆるし下さい」 「やあ、御鄭重(ごていちょう)で恐れいる。ではまあ、お互いとしておこう」 「時に、豪傑。あなたは今、この県城の市(まち)に住んでおるのですか」 「いや、話せば長い事になるが、いつかも打ち明け申したとおり、どうかして黄巾賊に奪われた主家の県城を取り返さんものと、民間に隠れ、幾度も幾度も事を謀(はか)ったが、黄匪の勢力は旺(さかん)になるばかりで、近頃はもう矢も尽(つ)き刀も折れたという恰好(かっこう)です。・・・・・・で先頃から、この涿県に流れ来て、山野の猪(いのこ)を狩って、肉を屠(ほふ)り、それを市(いち)にひさいで露命をつないでおるような状態です。おわらい下さい。ここのところ、張飛も尾羽打(おはう)ち枯(か)らした態(てい)たらくなので」 「そうですか。少しも知りませんでした。そんな事なら、なぜ楼桑村の私の家を訪ねてくれなかったのですか」 「いや、いつかは一度、お目にかかりに参(まい)る心ではいたが、その折には、ぜひ尊公(そんこう)に、うんと承知して貰(もら)いたい事があるので――その準備がまだ此方(こっち)でできていないからだ」 「この劉備に、お頼みとは、いったい何事ですか」 「劉君」 張飛は、鏡のような眼をした。らんらんとそのなかに胸中の炬火(きょか)が燃えているのを劉備は認めた。 「尊公は今日、市で県城の布令(ふれ)を読まれたであろう」 「うむ。あの高札ですか」 「あれを見て、どう思われましたか。黄匪討伐(とうばつ)の兵を募(つの)るという文を見て――」 「べつに、どうと言って、なんの感じもありません」 「無いっ」 張飛は、斬(き)り込(こ)むような語気で言った。明らかに、激怒の血を、顔にうごかしてである。 けれど劉備は、 「はい。何も思いません。なぜなら、私には、ひとりの母がありますから。――従って、兵隊に出ようとは思いませんから」 水のように冷静に言った。 四 秋かぜが橋の下を吹く。 虹橋(こうきょう)の下には、枯蓮(かれはす)の葉がからから鳴っていた。 びらっと、色羽の征矢(そや)が飛んだと見えたのは、水を離れた翡翠(かわせみ)だった。 「嘘(うそ)だっ」 張飛は、静かな話相手へ、いきなり呶鳴(どな)って、腰かけていた橋の石欄(せきらん)から突っ立った。 「劉君。貴公は、本心を人に秘(かく)して、この張飛へも、深くつつんでおられるな。いや、そうだ。張飛を御信用なさらぬのだ」 「本心?・・・・・・私の本心は今言ったとおりです。何を、貴郎(あなた)につつむものか」 「然(しか)らば貴公は、今の天下を眺(なが)めて、なんの感じも抱(いだ)かれないのか」 「黄匪の害は見ていますが、小さい貧屋(ひんおく)に、ひとりの母さえ養いかねている身には」 「人は知らず、張飛にそんなことを仰(お)っしゃっても、張飛は貴郎を、ただの土民と見ることはできぬ。打ち明けて下さい。張飛も武士です。他言は断じて致さぬ漢(おとこ)です」 「困りましたな」 「どうしても」 「お答えしようがありません」 「噫(ああ)――」 憮然(ぶぜん)として、張飛は黒漆(こくしつ)の髯を秋かぜに吹かせていたが、何か、思い出したように、突然、佩(は)いていた剣鞘(けんしょう)を解(と)いて、 「お覚えがあるでしょう」と鞘(さや)を握って、劉備の面(おもて)へ、横ざまに突きつけて言った。 「これはいつか、貴公から礼にと手前(てまえ)へ賜(たま)わった剣です。又、私から所望した剣であった。――だが不肖(ふしょう)は、いつか尊公に再び巡り会ったら、この品は、お手許(てもと)に返そうと思っていた。なぜなら、これは張飛の如き匹夫(ひっぷ)が持つ剣ではないからだ」 「・・・・・・・・・・・・」 「血しぶく戦場で、――又、戦(いくさ)に敗れて落ち行く草枕(くさまくら)の寝覚(ねざ)めに――幾たびとなく拙者(せっしゃ)はこの剣を抜き払ってみた。そして、そのたびに、拙者は剣の声を聞いた」 「・・・・・・・・・・・・」 「劉君、其許(そこもと)は聞いた事があるか、この剣の声を!」 「・・・・・・・・・・・・」 「一揮(いっき)して、風を断(た)てば、剣は啾々(しゅうしゅう)と泣くのだ。星衝(つ)いて、剣把(けんぱ)から鋩子(ぼうし)まで俯仰(ふぎょう)すれば、朧夜(おぼろよ)の雲とまがう光の斑(ふ)は、みな剣の涙として拙者には見える」 「・・・・・・・・・・・・」 「いや、剣は、剣を持つ者へ訴えて言うのだ。いつまで、わが身を、為(な)すなく室中に閉じこめて置くぞと。――劉備どの、嘘(うそ)と思わば、その耳に、剣の声を聞かそうか、剣の涙を見せようか」 「・・・・・・あっ」 劉備も思わず石欄(せきらん)から腰を立てた。――止める間はなかった。張飛は、剣を払(はら)って、ぴゅっと秋風を、斬(き)った。正(まさ)しく、剣の声が走った。しかもその声は、劉備の腸(はらわた)を断つばかり胸を搏(う)った。 「君聞(き)かず哉(や)!」 張飛は、言いながらも、又も一振り二振りと、虚空(こくう)に剣光(けんこう)を描(えが)いて、 「何の声か。抑(そも)」と、叫んだ。 そしてなおも、答えのない劉備を見ると、もどかしく思ったのか、橋の石欄へ片足を踏みかけて、枯蓮(かれはす)の池を望みながら独(ひと)り言った。 「可惜(あたら)、治国愛民の宝剣も、いかにせん持つ人も無き末世(まっせ)であってはぜひもない。霊あらば剣も恕(じょ)せ。猪肉(いのこ)売りの浪人の腰にあるよりは、むしろ池中に葬(ほうむ)って――」 あなや、剣は、虹橋(こうきょう)の下へ投げ捨てられようとした。劉備は驚いて、走り寄るなり彼の腕を支え、 「豪傑、待ち給え」と、叫んだ。 五 張飛は元(もと)よりせっかくの名剣を泥池(でいち)に捨ててしまうのは本意ではないから、止められたのを幸いに、 「何か?」と、わざと身を退(ひ)いて、劉備の言(げん)を待つもののように見まもった。 「まず、お待ちなさい」 劉備は言葉しずかに、張飛の悲壮な顔いろを宥(なだ)めて、 「真の勇者は慷慨(こうがい)せずといいます。又、大事は蟻(あり)の穴より漏(も)るという喩(たとえ)もある。ゆるゆる談(はな)すとしましょう。しかし、足下(そっか)が偽物(ぎぶつ)でないことはよく認めました。大丈夫(だいじょうぶ)の心事を一時(いっとき)でも疑った罪はゆるして下さい」 「おっ。・・・・・・では」 「風にも耳、水にも眼、大事は路傍(ろぼう)では語れません。けれど自分は何をつつもう、漢(かん)の中山(ちゅうざん)靖王(せいおう)劉勝(りゅうしょう)の後胤(こういん)で、景帝(けいてい)の玄孫(げんそん)にあたるものです。・・・・・・なにをか好んで、沓(くつ)を作り蓆(むしろ)を織って、黄荒(こうこう)の末季(まっき)を心なしに見ておりましょうや」よ、声は小さく語韻(ごいん)はささやく如(ごと)くであったが、凛(りん)たるものを裡(うち)に潜(ひそ)めて言い、そして莞爾(にこ)と笑ってみせた。 「豪傑。これ以上、もう多言を吐(は)く必要はないでしょう。折を見て又会いましょう。きょうは市(いち)へ来た出先で、遅くなると母も案じますから――」 張飛は獅子首(ししくび)を突き出して、嚙(か)みついきそうな眼をしたまま、いつまでも無言だった。これは感極(きわ)まった時にやる彼の癖(くせ)なのである。それからやがて唸(うな)るような息を吐(は)いて、大きな胸を反(そ)らしたと思うと、 「そうだったのか!やはりこの張飛の眼には誤りはなかった!いやいつか古塔の上から跳び降りて死んだ彼(か)の老僧の言った事が、今思いあたる。・・・・・・ウウム、貴郎(あなた)は景帝の裔孫(えいそん)だったのか、治乱興亡(ちらんこうぼう)の長い星霜(せいそう)のあいだに、名門名族は泡沫(うたかた)のように消えてゆくが、血は一滴でも残されればどこかに伝わってゆく、ああ有難い。生きていたかいがあった。今月今日、張飛は会うべきお人に会った」 独(ひと)りしてそう呻(うめ)いていたかと思うと、彼はにわかに、石橋の石の上にひざまずき、剣を奉じて、劉備へ言った。 「謹(つつ)しんで、剣は尊手(そんしゅ)へお回(かえ)しします。これは元々、やつがれなどの身に佩(は)くものではない。――が、但(ただ)しです。貴郎は、この剣を受け取らるるや否や。この剣を佩くからには、この剣と共にある使命もあわせて佩かねばならぬが」 劉備は、手を伸ばした。 何か、厳(おごそか)な姿だった。 「享(う)けましょう」 剣は、彼の手に回(かえ)った。 張飛は、いく度(たび)も、拝姿(はいし)の礼を、繰り返して、 「では、そのうちに、きっと楼桑村(ろうそうそん)へ、お訪ねして参るぞ」 「おお、いつでも」 劉備は、今まで佩(は)いていた剣と佩き代えて、前の物は、張飛へ戻した。それは張飛に救われた数年前に取り換えた物だったからである。 「日が暮れかけて来ましたな。じゃあ、いずれ又」 夕闇(ゆうやみ)の中を、劉備先に、足を早めて別れ去った。風にふかれて行く水色の服は汚れていたが、剣は眼に見える黄昏(たそがれ)の万象(ばんしょう)の中で、なによりも異彩を放(はな)って見えた。 「体に持っている気品というものは争えぬものだ。どこか貴公子の風(ふう)がある」 張飛は見送りながら、独り虹橋(こうきょう)の上に立ち暮れていたが、やがてわれに回(かえ)った顔をして、 「そうだ、雲長(うんちょう)にも聞かせて、早く歓(よろこ)ばしてやろう」と、何処(いずこ)ともなく馳(は)せ出(だ)したが、劉備とちがってこれは又、一陣の風が黒い物となって飛んで行くようだった。
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+ 目次 1.0〜1.9 / 24000〜46000 2.0〜2.9 / 27000〜70000 3.0〜3.9 / 71000〜94000 4.0〜4.9 / 95000〜11.8000 5.0〜5.9 / 11.9000〜14.2000 6.0〜6.9 / 14.3000〜16.6000 7.0〜7.9 / 16.7000〜19.0000 8.0〜9.9 / 19.3000〜23.8000 10.0〜 / 24.0000〜 400/m (四百字一分換算) 読む時の参考にしなされ ブンゴウサーチの★(PV数)が基準となっています。 ページ内検索を使うと良いと思います。 1.0〜1.9 / 24000〜46000 【1.0 24-5000】0.1〜0.2 ★3 1.0 白痴 {坂口安吾} 24000 1.0 心理試験 {江戸川乱歩} 1.0 かのように {森鴎外} 1.0 私の個人主義 {夏目漱石} 25000 1.0 恩讐の彼方に {菊池寛} 1.0 山椒大夫 {森鴎外} 1.0 如是我聞 {太宰治} 1.0 天守物語 {泉鏡花} 1.0 キチガイ地獄 {夢野久作} 1.0 赤毛連盟c {アーサー・コナン・ドイル} 1.0 少年 {谷崎潤一郎} 1.0 ウィリアム・ウィルスン {エドガー・アラン・ポー} ★2 死の淵より {高見順} 24000 護持院原の敵討 {森鴎外} 雨あがる {山本周五郎} 金色の死 {谷崎潤一郎} 明治開化 安吾捕物 04 その三 魔教の怪 {坂口安吾} 星より来れる者 {室生犀星} つばくろ {山本周五郎} 別れ霜 {樋口一葉} 25000 エタ源流考 {喜田貞吉} 念珠集 {斎藤茂吉} 恐ろしき錯誤 {江戸川乱歩} 肝臓先生 {坂口安吾} 狼疾記 {中島敦} 入院患者 {アーサー・コナン・ドイル} 自転車嬢の危難 {アーサー・コナン・ドイル} 明治開化 安吾捕物 05 その四 ああ無情 {坂口安吾} あの世の入口 ――いわゆる地獄穴について―― {知里真志保} 名字の話 {柳田国男} 道鏡 {坂口安吾} おばな沢 {山本周五郎} のんしやらん記録 {佐藤春夫} おれの女房 {山本周五郎} 【1.1 26-7000】 ★3 1.1 いのちの初夜 {北条民雄} 26000 1.1 赤いカブトムシ {江戸川乱歩} 1.1 空家の冒険 {アーサー・コナン・ドイル} 1.1 白銀の失踪 {アーサー・コナン・ドイル} 1.1 「平家物語」ぬきほ(言文一致訳) {作者不詳} 1.1 グスコーブドリの伝記 {宮沢賢治} 27000 1.1 原爆詩集 {峠三吉} 1.1 弟子 {中島敦} ★2 忠直卿行状記 {菊池寛} 26000 明治開化 安吾捕物 02 その一 舞踏会殺人事件 {坂口安吾} 「天に積む宝」のふやし方、へらし方c {富田倫生} 源氏物語 13 明石 {紫式部} 明治開化 安吾捕物 03 その二 密室大犯罪 {坂口安吾} 明治開化 安吾捕物 06 その五 万引家族 {坂口安吾} 五百句 {高浜虚子} 虎狩 {中島敦} 断腸亭日乗 04 断腸亭日記巻之三大正八年歳次己未 {永井荷風} 春と修羅 第三集 {宮沢賢治} 天空の魔人 {江戸川乱歩} ママ先生とその夫 {岸田国士} オシャベリ姫 {かぐつちみどり} 27000 盗聴者c {アルジャーノン・ブラックウッド} 【1.2 28-9000】 ★3 1.2 地獄変 {芥川龍之介} 28000 1.2 歯車 {芥川竜之介} 1.2 若菜集 {島崎藤村} 1.2 暗号舞踏人の謎 {アーサー・コナン・ドイル} 1.2 貧乏物語 {河上肇} 1.2 源氏物語 02 帚木 {紫式部} 1.2 六百句 {高浜虚子} 29000 ★2 源氏物語 12 須磨 {紫式部} 28000 海神別荘 {泉鏡花} 世界怪談名作集 09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃 {アーサー・コナン・ドイル} 闇をさまようものc {ハワード・フィリップス・ラヴクラフト} 悪魔の弟子 {浜尾四郎} 鼻 {ニコライ・ゴーゴリ} 29000 明治開化 安吾捕物 10 その九 覆面屋敷 {坂口安吾} 赤ひげ診療譚 03 むじな長屋 {山本周五郎} 【1.3 30-2000】1.3〜1.7 ★3 1.3 たけくらべ {樋口一葉} 30000 1.3 夜長姫と耳男 {坂口安吾} 1.3 阿部一族 {森鴎外} 1.3 ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記 {宮沢賢治} 銀河まつり {吉川英治} 1.3 イワンの馬鹿 {レオ・トルストイ} 31000 1.3 人魚のひいさま {ハンス・クリスチャン・アンデルセン} 1.3 屋根裏の散歩者 {江戸川乱歩} 1.3 源氏物語 04 夕顔 {紫式部} 1.3 源氏物語 09 葵 {紫式部} 乳房 {宮本百合子} 1.3 陰翳礼讃 {谷崎潤一郎} 32000 1.3 十八時の音楽浴 {海野十三} 1.3 俳人蕪村 {正岡子規} ★2 世界怪談名作集 03 スペードの女王 {アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン} 30000 法句経 {作者不詳} UVc {石塚浩之} 彼は昔の彼ならず {太宰治} 31000 キャラコさん 01 社交室 {久生十蘭} 瞼の母 {長谷川伸} 倭女王卑弥呼考 {白鳥庫吉} ハムレット {久生十蘭} 天地有情 {土井晩翠} 32000 人魚の姫 {ハンス・クリスチャン・アンデルセン} 鎮魂歌 {原民喜} 病院横町の殺人犯 {エドガー・アラン・ポー} 歌う白骨 {リチャード オースティン・フリーマン} 盗まれた手紙の話 {坂口安吾} 【1.4 33-4000】 ★3 1.4 風の又三郎 {宮沢賢治} 1.4 月に吠える {萩原朔太郎} 33000 1.4 夫婦善哉 {織田作之助} 1.4 夜叉ヶ池 {泉鏡花} 1.4 源氏物語 05 若紫 {紫式部} 1.4 思ひ出 {太宰治} 1.4 女生徒 {太宰治} 34000 1.4 海潮音 {上田敏} 1.4 まざあ・ぐうす {作者不詳} 34000 1.4 詩ノート {宮沢賢治} 1.4 二百十日 {夏目漱石} 1.4 スリーピー・ホローの伝説 故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より {ワシントン・アーヴィング} 1.4 こがね丸 {巌谷小波} ★2 世界怪談名作集 08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から {ナサニエル・ホーソーン} 33000 思い出の記 {小泉節子} 柳生月影抄 {吉川英治} 流刑地で {フランツ・カフカ} 鬼 {江戸川乱歩} 国語音韻の変遷 {橋本進吉} ビジテリアン大祭 {宮沢賢治} 34000 風野又三郎 {宮沢賢治} 神社合祀に関する意見 {南方熊楠} 幾度目かの最期 {久坂葉子} 万葉集研究 {折口信夫} 【1.5 35-7000】 ★3 1.5 藍色の蟇 {大手拓次} 35000 1.5 野菊の墓 {伊藤左千夫} 36000 1.5 カインの末裔 {有島武郎} 1.5 フランダースの犬 {マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー} 1.5 風流仏 {幸田露伴} 1.5 モルグ街の殺人事件 {エドガー・アラン・ポー} 37000 1.5 金魚撩乱 {岡本かの子} ★2 民芸とは何か {柳宗悦} 35000 散文詩・詩的散文 {萩原朔太郎} 幼年時代 {室生犀星} 東京の風俗 {木村荘八} 木曽義仲論 {芥川竜之介} 人生は擬似体験ゲームc {太田健一} 悪霊 {江戸川乱歩} 36000 知られざる漱石 {小宮豊隆} ちるちる・みちる {山村暮鳥} 人魚謎お岩殺し {小栗虫太郎} 青春論 {坂口安吾} 37000 私の履歴書 ――放浪の末、段ボールを思いつく {井上貞治郎} 秘密礼拝式 {アルジャーノン・ブラックウッド} 【1.6 38-9000】 ★3 1.6 智恵子抄 {高村光太郎} 1.6 李陵 中島敦} 38000 1.6 上海游記 {芥川竜之介} 1.6 外套 {ニコライ・ゴーゴリ} 1.6 すみだ川 {永井荷風} 1.6 共産党宣言 {フリードリッヒ・エンゲルス} 1.6 阿Q正伝 {魯迅} 39000 1.6 道化の華 {太宰治} 1.6 海豹と雲 {北原白秋} 1.6 吉野葛 {谷崎潤一郎} ★2 芥川竜之介論 ――芸術家としての彼を論ず―― {堀辰雄} 38000 天馬 {金史良} 十二支考 11 鼠に関する民俗と信念 {南方熊楠} 義血侠血 {泉鏡花} 39000 菊屋敷 {山本周五郎} 親鸞 {三木清} 妖婆 {芥川竜之介} 予謀殺人 {リチャード オースティン・フリーマン} 【1.7 40-1000】 ★3 1.7 河童 {芥川龍之介} 1.7 高野聖 {泉鏡花} 40000 1.7 後世への最大遺物 {内村鑑三} 41000 1.7 歌行灯 {泉鏡花} ★2 蘆刈 {谷崎潤一郎} 40000 女の決闘 {太宰治} ろまん灯籠 {太宰治} 能とは何か {夢野久作} 嵐 {島崎藤村} 雲霧閻魔帳 {吉川英治} 環礁 ――ミクロネシヤ巡島記抄―― {中島敦} 火の鳥 {太宰治} 41000 怪人と少年探偵 {江戸川乱歩} 桜島 {梅崎春生} コロボックル風俗考 {坪井正五郎} いさましい話 {山本周五郎} オスカー・ブロズキー事件 {リチャード オースティン・フリーマン} ボロ家の春秋 {梅崎春生} 【1.8 42-4000】1.8〜2.0 ★3 1.8 銀河鉄道の夜 42000 1.8 遠野物語 {柳田国男} 42000 1.8 雪の女王 {ハンス・クリスチャン・アンデルセン} 1.8 侏儒の言葉 {芥川竜之介} 1.8 愛の詩集 03 {室生犀星} 1.8 黄金虫 {エドガー・アラン・ポー} 1.8 いなか、の、じけん {夢野久作} 43000 1.8 青鬼の褌を洗う女 {坂口安吾} 1.8 邪宗門 {芥川竜之介} 1.8 大嘗祭の本義 {折口信夫} 1.8 ランボオ詩集 {ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー} 44000 1.8 宿命 {萩原朔太郎} 1.8 絵のない絵本 01 {ハンス・クリスチャン・アンデルセン} ★2 虫喰い算大会 {海野十三} 42000 大菩薩峠 05 龍神の巻 {中里介山} 趣味の遺伝 {夏目漱石} 平将門 {幸田露伴} 何者 {江戸川乱歩} あやかしの鼓 {夢野久作} 43000 性に眼覚める頃 {室生犀星} 月と手袋 {江戸川乱歩} その一年 {山川方夫} 十二支考 10 猪に関する民俗と伝説 {南方熊楠} 郷愁の詩人 与謝蕪村 {萩原朔太郎} 44000 鱷 {フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー} 人外魔境 01 有尾人 {小栗虫太郎} 桑の木物語 {山本周五郎} 【1.9 45-6000】 ★2 魔女の家で見た夢c {ハワード・フィリップス・ラヴクラフト} 45000 美しい村 {堀辰雄} 46000 活人形 {泉鏡花} 新世帯 {徳田秋声} 2.0〜2.9 / 27000〜70000 【2.0 47-9000】 ★3 2.0 春琴抄 {谷崎潤一郎} 49000 2.0 茶の本 04 茶の本 {岡倉覚三} ★2 支那人間に於ける食人肉の風習 {桑原隲蔵} 47000 剣の四君子 02 柳生石舟斎 {吉川英治} 重右衛門の最後 {田山花袋} 或る少女の死まで {室生犀星} 48000 博物誌 {ジュール・ルナール} 探偵少年 {江戸川乱歩} 植物知識 {牧野富太郎} 夜明けの辻 {山本周五郎} 受験生の手記 {久米正雄} 49000 こども風土記 {柳田国男} 日本改造法案大綱 {北一輝} ベーシック英語 {高田力} 【2.1 50-1000】 ★3 2.1 蒲団 {田山花袋} 50000 2.1 青猫 {萩原朔太郎} 2.1 邪宗門 {北原白秋} 51000 2.1 俳句の作りよう {高浜虚子} ★2 ふしぎな人 {江戸川乱歩} 50000 殺意(ストリップショウ){三好十郎} 51000 迷信解 {井上円了} 【2.2 52-3000 ★3 2.2 大塩平八郎 {森鴎外} 52000 2.2 「いき」の構造 {九鬼周造} 53000 2.2 絶対矛盾的自己同一 {西田幾多郎} 2.2 桐の花 {北原白秋} ★2 華々しき一族 {森本薫} 52000 一九二八年三月十五日 {小林多喜二} 文芸の哲学的基礎 {夏目漱石} 夢日記c {アンナ・キングスフォード} ひかげの花 {永井荷風} 政治学入門 {矢部貞治} 六号室 {アントン・チェーホフ} 53000 子規居士と余 {高浜虚子} 【2.3 54-6000 ★3 2.3 文芸的な、余りに文芸的な {芥川竜之介} 2.3 偸盗 {芥川竜之介} 54000 2.3 日和下駄 一名 東京散策記 {永井荷風} 2.3 生まれいずる悩み {有島武郎} 55000 2.3 藤村詩抄 島崎藤村自選 {島崎藤村} 2.3 永日小品 {夏目漱石} 56000 2.3 俳句とはどんなものか {高浜虚子} ★2 糞尿譚 {火野葦平} 54000 滝口入道 {高山樗牛} マリー・ロジェエの怪事件 {エドガー・アラン・ポー} 日輪 {横光利一} 55000 虚構の春 {太宰治} 56000 【2.4 57-8000 ★3 2.4 最終戦争論 {石原莞爾} 58000 2.4 硝子戸の中 {夏目漱石} 2.4 十二支考 01 虎に関する史話と伝説民俗 {南方熊楠} ベートーヴェンの生涯 02 ベートーヴェンの生涯 {ロマン・ロラン} ★2 白蟻 {小栗虫太郎} 57000 おれは二十面相だ {江戸川乱歩} 58000 【2.5 59-61000 ★3 2.5 春と修羅 2.5 あのときの王子くんc 59000 2.5 変身 {フランツ・カフカ} 59000 2.5 五重塔 {幸田露伴} 2.5 風立ちぬ {堀辰雄} 60000 2.5 かもめ ――喜劇 四幕―― {アントン・チェーホフ} 2.5 二流の人 {坂口安吾} 60000 2.5 春と修羅 第二集 {宮沢賢治} 61000 2.5 大宇宙遠征隊 {海野十三} 2.5 桜の園 {アントン・チェーホフ} ★2 福沢諭吉 ペンは剣よりも強し {高山毅} 59000 牧野富太郎自叙伝 01 第一部 牧野富太郎自叙伝 {牧野富太郎} 60000 【2.6 62-3000 ★3 2.6 アーサー王物語 {アルフレッド・テニソン} 62000 2.6 思い出す事など {夏目漱石} 63000 2.6 濹東綺譚 {永井荷風} 2.6 奇巌城 アルセーヌ・ルパン {モーリス・ルブラン} 2.6 妖怪学 {井上円了} 63000 2.6 押絵の奇蹟 {夢野久作} ★2 大和路・信濃路 {堀辰雄} 62000 二千六百年史抄 {菊池寛} 貧民倶楽部 {泉鏡花} 古代国語の音韻に就いて {橋本進吉} 63000 十二支考 04 蛇に関する民俗と伝説 {南方熊楠} 随筆 私本太平記 {吉川英治} 源氏物語 34 若菜(上) {紫式部} 【2.7 64-5000 ★2 【2.8 66-8000 ★3 2.8 ヰタ・セクスアリス {森鴎外} 66000 2.8 老人と海c {アーネスト・ミラー・ヘミングウェイ} 67000 2.8 思ひ出 抒情小曲集 {北原白秋} 68000 ★2 RUR ――ロッサム世界ロボット製作所c {カレル・チャペック} 66000 幽霊島c {ホワイトフレッド・M} 野草雑記・野鳥雑記 01 野草雑記 {柳田国男} 水晶の栓 {モーリス・ルブラン} 68000 トニオ・クレエゲル {パウル・トーマス・マン} 【2.9 69-70000 ★3 2.9 蟹工船 2.9 大菩薩峠 01 甲源一刀流の巻 {中里介山} 70000 ★2 妾の半生涯 {福田英子} 69000 薄紅梅 {泉鏡花} 蒲生氏郷 {幸田露伴} 70000 愛と認識との出発 {倉田百三} 二重心臓 {夢野久作} 十二支考 08 鶏に関する伝説 {南方熊楠} 3.0〜3.9 / 71000〜94000 【3.0 71-3000 ★3 3.0 長崎の鐘 {永井隆} 71000 3.0 党生活者 {小林多喜二} 3.0 死者の書 {折口信夫} 73000 ★2 二十歳のエチュード {原口統三} 71000 法然行伝 {中里介山} 72000 猫と庄造と二人のをんな {谷崎潤一郎} 73000 【3.1 74-5000 ★3 3.1 雨の玉川心中 01 太宰治との愛と死のノート {山崎富栄} 75000 ★2 時間からの影c {ハワード・フィリップス・ラヴクラフト} 74000 鳴門秘帖 05 剣山の巻 {吉川英治} 湖畔亭事件 {江戸川乱歩} 75000 【3.2 76-7000 ★3 3.2 お伽草紙 {太宰治} 76000 3.2 人形の家 {ヘンリック・イプセン} 77000 ★2 盲目物語 {谷崎潤一郎} 76000 ちくしょう谷 {山本周五郎} 【3.3 78-80000 ★3 3.3 ジーキル博士とハイド氏の怪事件 {ロバート・ルイス・スティーブンソン} 78000 3.3 人生論ノート {三木清} 3.3 人間失格 79000 3.3 はつ恋 {イワン・ツルゲーネフ} 80000 ★2 新・水滸伝 {吉川英治} 78000 鼻の表現 {夢野久作} 神鑿 {泉鏡花} 79000 道徳の観念 {戸坂潤} つゆのあとさき {永井荷風} 80000 孔子 {和辻哲郎} おばけの正体 {井上円了} 魔法人形 {江戸川乱歩} 【3.4 81-2000 ★3 3.4 雁 {森鴎外} 81000 3.4 草迷宮 {泉鏡花} 82000 3.4 柿の種 {寺田寅彦} ★2 聞書抄 第二盲目物語 {谷崎潤一郎} 81000 3.4 雪 {中谷宇吉郎} 82000 満韓ところどころ {夏目漱石} オリンポスの果実 {田中英光} 愛ちやんの夢物語 {ルイス・キャロル} 【3.5 83-5000 ★3 3.5 蜜のあわれ {室生犀星} 83000 3.5 パノラマ島綺譚 {江戸川乱歩} 84000 3.5 アリスはふしぎの国でc {ルイス・キャロル} 3.5 アイヌ神謡集 {作者不詳} 85000 ★2 透明人間 {ハーバート・ジョージ・ウェルズ} 83000 塔上の奇術師 {江戸川乱歩} 油絵新技法 {小出楢重} 奇面城の秘密 {江戸川乱歩} 夜光人間 {江戸川乱歩} アリスはふしぎの国で アーサー・ラッカム挿絵版c {ルイス・キャロル} おせん {邦枝完二} 84000 運命 {幸田露伴} サーカスの怪人 {江戸川乱歩} 海底の魔術師 {江戸川乱歩} 仮面の恐怖王 {江戸川乱歩} 妖人ゴング {江戸川乱歩} 春泥 {久保田万太郎} 黄金豹 {江戸川乱歩} 85000 【3.6 86-7000 ★3 3.6 惜みなく愛は奪う {有島武郎} 86000 3.6 墨汁一滴 {正岡子規} 3.6 ファラデーの伝 電気学の泰斗 {愛知敬一} 3.6 省察 神の存在、及び人間の霊魂と肉体との区別を論証する、第一哲学についての {ルネ・デカルト} 3.6 ロミオとヂュリエット 03 {ウィリアム・シェークスピア} 87000 3.6 行乞記 01 (一) {種田山頭火} ★2 魔法博士 {江戸川乱歩} 85000 田園の憂欝 或は病める薔薇 {佐藤春夫} 86000 鉄人Q {江戸川乱歩} 灰色の巨人 {江戸川乱歩} 冒した者 {三好十郎} 87000 電人M {江戸川乱歩} 【3.7 88-9000 ★3 3.7 光と風と夢 {中島敦} 88000 ★2 ヴェニスに死す {パウル・トーマス・マン} 88000 死刑囚最後の日 {ヴィクトル・ユゴー} 89000 青銅の魔人 {江戸川乱歩} 美学入門 {中井正一} 【3.8 90-2000 ★3 3.8 千曲川のスケッチ {島崎藤村} 92000 ★2 少将滋幹の母 {谷崎潤一郎} 90000 超人ニコラ {江戸川乱歩} 平凡 {二葉亭四迷} 鉄塔の怪人 {江戸川乱歩} 91000 【3.9 93-4000 ★3 3.9 学問のすゝめ 3.9 パンドラの匣 {太宰治} 93000 3.9 クリスマス・カロル {チャールズ・ディケンズ} 94000 ★2 海野十三敗戦日記 {海野十三} 94000 4.0〜4.9 / 95000〜11.8000 【4.0 ★3 4.0 草枕 4.0 菜穂子 {堀辰雄} 95000 4.0 こころ 96000 4.0 病牀六尺 {正岡子規} 4.0 惜別 {太宰治} ★2 三太郎の日記 第一 {阿部次郎} 金狼 {久生十蘭} 97000 ★1 我が家の楽園 {久生十蘭} 97000 【4.1 ★3 4.1 新釈諸国噺 {太宰治} 99000 4.1 新ハムレット {太宰治} ★2 宇宙怪人 {江戸川乱歩} 98000 十二支考 05 馬に関する民俗と伝説 {南方熊楠} 夏と少年の短篇c {片岡義男} 99000 私本太平記 11 筑紫帖 {吉川英治} ★1 街頭から見た新東京の裏面 {杉山萠円} 98000 【4.2 ★3 4.2 斜陽 {太宰治} 4.2 緋のエチュードc {アーサー・コナン・ドイル} 101000 ★2 桃の雫 {島崎藤村} 100000 怪奇四十面相 {江戸川乱歩} 炎の人――ゴッホ小伝―― {三好十郎} 海底大陸 {海野十三} 【4.3 ★3 4.3 銀の匙 {中勘助} 102000 ★2 鳥影 {石川啄木} 102000 大金塊 {江戸川乱歩} 浮標 {三好十郎} 103000 日本橋 {泉鏡花} 虎の牙 {江戸川乱歩} 104000 【4.4 ★3 4.4 野分 {夏目漱石} 105000 4.4 一寸法師 {江戸川乱歩} 4.4 鍵 {谷崎潤一郎} 106000 ★2 かんかん虫は唄う {吉川英治} 105000 透明怪人 {江戸川乱歩} 106000 わが町 {織田作之助} 復員殺人事件 {坂口安吾} ★1 地震なまず {武者金吉} 106000 【4.5 ★3 4.5 古事記物語 {鈴木三重吉} 107000 4.5 宮本武蔵 02 地の巻 {吉川英治} 4.5 古事記 03 現代語訳 {太安万侶} 108000 ★2 瘋癲老人日記 {谷崎潤一郎} 108000 戦争史大観 {石原莞爾} 小坂部姫 {岡本綺堂} 【4.6 ★3 4.6 この子を残して {永井隆} 111000 4.6 少年探偵団 {江戸川乱歩} ★1 古川ロッパ昭和日記 01 昭和九年 {古川緑波} 110000 【4.7 ★3 4.7 日本の伝説 {柳田国男} 112000 4.7 無人島に生きる十六人 {須川邦彦} 4.7 地獄少女 {夢野久作} 113000 ★2 恐竜島 {海野十三} 113000 ★1 満蒙遊記 附 満蒙の歌 {与謝野晶子} 112000 良寛物語 手毬と鉢の子 {新美南吉} 113000 【4.8 ★3 4.8 般若心経講義 {高神覚昇} 116000 4.8 哲学入門 {三木清} ★2 にんじん {ジュール・ルナール} 115000 武州公秘話 01 武州公秘話 {谷崎潤一郎} 116000 夢は呼び交す ――黙子覚書―― {蒲原有明} 【4.9 ★3 4.9 津軽 {太宰治} 118000 4.9 黒蜥蜴 {江戸川乱歩} ★2 ロザリオの鎖 {永井隆} 117000 飛騨の怪談 {岡本綺堂} 昭和遊撃隊 {平田晋策} 5.0〜5.9 / 11.9000〜14.2000 【5.0 ★3 5.0 右大臣実朝 {太宰治} 119000 5.0 怪人二十面相 {江戸川乱歩} 120000 5.0 正義と微笑 {太宰治} 121000 5.0 晶子詩篇全集 {与謝野晶子} 5.0 単独行 {加藤文太郎} ★2 蓼喰う虫 {谷崎潤一郎} 119000 大和古寺風物誌 {亀井勝一郎} 古川ロッパ昭和日記 05 昭和十四年 {古川緑波} 空中征服 {賀川豊彦} 120000 ★1 古川ロッパ昭和日記 04 昭和十三年 {古川緑波} 119000 【5.1 ★3 5.1 放浪記(初出){林芙美子} 122000 5.1 山の人生 {柳田国男} 123000 ★1 古川ロッパ昭和日記 02 昭和十一年 {古川緑波} 122000 落葉日記 {岸田国士} ウニデス潮流の彼方 {橘外男} 123000 【5.2 ★2 私本太平記 06 八荒帖 {吉川英治} 125000 黴 {徳田秋声} 【5.3 ★3 5.3 狂気の山脈にてc {ハワード・フィリップス・ラヴクラフト} 126000 5.3 二十四の瞳 {壺井栄} 5.3 探偵小説の「謎」 {江戸川乱歩} 5.3 浮雲 {二葉亭四迷} 127000 5.3 小公女 {フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット} 128000 ★2 明日は天気になれ {坂口安吾} 126000 私本太平記 05 世の辻の帖 {吉川英治} 樅ノ木は残った 02 第二部 {山本周五郎} 自叙伝 {大杉栄} 127000 陰獣トリステサ {橘外男} 狂い凧 {梅崎春生} 手仕事の日本 {柳宗悦} 128000 【5.4 ★2 星座 {有島武郎} 129000 私本太平記 04 帝獄帖 {吉川英治} 130000 ★1 次郎物語 03 第三部 {下村湖人} 129000 【5.5 ★3 5.5 ガリバー旅行記 {ジョナサン・スウィフト} 131000 5.5 怪談牡丹灯籠 04 {三遊亭円朝} 132000 ★2 私本太平記 13 黒白帖 {吉川英治} 131000 如何なる星の下に {高見順} お蝶夫人 {三浦環} 132000 ★1 現代日本の思想対立 {戸坂潤} 132000 【5.6 ★3 5.6 善の研究 {西田幾多郎} 134000 ★2 あらくれ {徳田秋声} 134000 斬られの仙太 {三好十郎} 135000 【5.7 ★3 5.7 古事記 02 校註 {太安万侶} 136000 5.7 卍 谷崎潤一郎 137000 ★2 仏教人生読本 {岡本かの子} 136000 私本太平記 12 湊川帖 {吉川英治} 私本太平記 07 千早帖 {吉川英治} 137000 【5.8 ★3 5.8 若草物語 {ルイーザ・メイ・オルコット} 138000 5.8 青年 {森鴎外} 5.8 東京人の堕落時代 {杉山萠円} ★2 胡堂百話 {野村胡堂} 138000 明治世相百話 {山本笑月} 139000 鳴門秘帖 01 上方の巻 {吉川英治} 140000 妖怪博士 {江戸川乱歩} 私本太平記 02 婆娑羅帖 {吉川英治} 私本太平記 10 風花帖 {吉川英治} 【5.9 ★3 5.9 私本太平記 01 あしかが帖 {吉川英治} 141000 5.9 小説 不如帰 {徳冨蘆花} 142000 5.9 ああ玉杯に花うけて {佐藤紅緑} 5.9 出家とその弟子 {倉田百三} ★2 私本太平記 08 新田帖 {吉川英治} 141000 家 01 (上){島崎藤村} 142000 6.0〜6.9 / 14.3000〜16.6000 【6.0 ★3 6.0 年中行事覚書 {柳田国男} 145000 ★2 玉藻の前 {岡本綺堂} 143000 時と永遠 {波多野精一} 145000 私本太平記 03 みなかみ帖 {吉川英治} 雪国の春 {柳田国男} ★1 恐怖の季節 {三好十郎} 143000 【6.1 ★3 6.1 地下生活者の手記 {フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー} 146000 ★2 縮図 {徳田秋声} 146000 上杉謙信 {吉川英治} 147000 法窓夜話 02 法窓夜話 {穂積陳重} 論語物語 {下村湖人} 私本太平記 09 建武らくがき帖 {吉川英治} 折々の記 {吉川英治} 【6.2 ★3 6.2 現代訳論語 {下村湖人} 149000 ★2 彼のオートバイ、彼女の島c {片岡義男} 148000 【6.3 ★2 探偵夜話 {岡本綺堂} 150000 松のや露八 {吉川英治} 吉田松陰 {徳富蘇峰} 151000 ★1 北越雪譜 03 北越雪譜初編 {山東京山} 152000 【6.4 ★3 6.4 門 {夏目漱石} 154000 6.4 古寺巡礼 {和辻哲郎} 6.4 小桜姫物語 03 小桜姫物語 {浅野和三郎} ★2 家なき子 01 (上){エクトール・アンリ・マロ} 154000 【6.5 ★3 6.5 坑夫 {夏目漱石} 156000 ★2 古川ロッパ昭和日記 06 昭和十五年 {古川緑波} 156000 ワンダ・ブック――少年・少女のために―― {ナサニエル・ホーソーン} 157000 ★1 死せる魂 01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 {ニコライ・ゴーゴリ} 155000 【6.6 ★3 6.6 即興詩人 {ハンス・クリスチャン・アンデルセン} 158000 ★2 随筆 宮本武蔵 {吉川英治} 156000 ★1 鳴門秘帖 02 江戸の巻 {吉川英治} 158000 【6.7 ★3 6.7 或る女 1(前編){有島武郎} 161000 ★2 宮本武蔵 03 水の巻 {吉川英治} 160000 上海 {横光利一} 迷信と宗教 {井上円了} 161000 【6.8 ★3 6.8 細雪 01 上巻 {谷崎潤一郎} 163000 6.8 詩の原理 {萩原朔太郎} 164000 ★2 五瓣の椿 {山本周五郎} 164000 ★1 東京青年c {片岡義男} 164000 【6.9 ★3 6.9 悪魔の紋章 {江戸川乱歩} 165000 6.9 道草 {夏目漱石} 166000 ★2 本の未来c {富田倫生} 165000 茶話 02 大正五(一九一六)年 {薄田泣菫} 166000 7.0〜7.9 / 16.7000〜19.0000 【7.0 ★3 7.0 植物一日一題 {牧野富太郎} 167000 7.0 田舎教師 {田山花袋} 169000 ★2 影男 {江戸川乱歩} 167000 だいこん {久生十蘭} 168000 樅ノ木は残った 01 第一部 {山本周五郎} 169000 食道楽 春の巻 {村井弦斎} 【7.1 ★3 7.1 二都物語 01 上巻 {チャールズ・ディケンズ} 170000 ★2 フレップ・トリップ {北原白秋} 171000 【7.2 ★2 努力論(現代訳)c {幸田露伴} 172000 【7.3 ★3 7.3 不連続殺人事件 {坂口安吾} 174000 7.3 青べか物語 {山本周五郎} 7.3 三国志 04 草莽の巻 {吉川英治} 176000 ★2 人間豹 {江戸川乱歩} 174000 食道楽 秋の巻 {村井弦斎} 175000 波乗りの島c {片岡義男} 海に生くる人々 {葉山嘉樹} 176000 【7.4 ★3 7.4 努力論 {幸田露伴} 177000 7.4 こころ 178000 7.4 次郎物語 01 第一部 {下村湖人} 7.4 三国志 03 群星の巻 {吉川英治} ★2 青春の逆説 {織田作之助} 177000 植物記 {牧野富太郎} 178000 【7.5 ★3 7.5 三国志 02 桃園の巻 {吉川英治} 179000 7.5 宇宙の始まり {スヴァンテ・アレニウス}180000 ★2 三国志 05 臣道の巻 {吉川英治} 180000 【7.6 ★2 三国志 08 望蜀の巻 {吉川英治} 182000 【7.7 ★3 7.7 黒田如水 {吉川英治} 184000 7.7 三国志 06 孔明の巻 {吉川英治} 7.7 宮本武蔵 07 二天の巻 {吉川英治} 7.7 三国志 07 赤壁の巻 {吉川英治} 185000 【7.8 ★3 7.8 渋江抽斎 {森鴎外} 186000 7.8 フランケンシュタイン 02 {メアリー・ウォルストンクラフト・シェリー} 188000 ★2 青空のリスタートc {富田倫生} 187000 獄中への手紙 11 一九四四年(昭和十九年) {宮本百合子} 比較神話学 {高木敏雄} 牢獄の花嫁 {吉川英治} 188000 ★1 双面神 {岸田国士} 186000 樅ノ木は残った 03 第三部 {山本周五郎} 187000 【7.9 ★3 7.9 神曲 01 地獄 {アリギエリ・ダンテ} 190000 ★2 7.9 地名の研究 {柳田国男} 189000 地上 地に潜むもの {島田清次郎} 8.0〜9.9 / 19.3000〜23.8000 8.0 三四郎 {夏目漱石} 8.0 それから {夏目漱石} 193000 8.1 海上の道 {柳田国男} 195000 8.2 痴人の愛 {谷崎潤一郎} 197000 8.2 婦系図 {泉鏡花} 198000 8.6 宝島 02 {ロバート・ルイス・スティーブンソン} 206000 8.8 彼岸過迄 {夏目漱石} 212000 9.3 夜明け前 01 第一部上 {島崎藤村} 224000 9.5 福翁自伝 02 {福沢諭吉} 227000 9.5 破戒 {島崎藤村} 229000 9.5 虞美人草 {夏目漱石} 229000 9.8 万葉秀歌 {斎藤茂吉} 234000 9.9 審判 {フランツ・カフカ} 238000 ★2 7.9 木綿以前の事 {柳田国男} 190000 8.2 孤島の鬼 {江戸川乱歩} 196000 8.2 三国志 11 五丈原の巻 {吉川英治} 197000 8.3 三国志 09 図南の巻 {吉川英治} 200000 神曲 02 浄火 {アリギエリ・ダンテ} 新書太閤記 10 第十分冊 {吉川英治} 8.4 エルヴィスから始まったc {片岡義男} 201000 永遠の夫 {フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー} 楽聖物語 {野村あらえびす} 8.6 新書太閤記 11 第十一分冊 {吉川英治} 210000 8.8 細雪 02 中巻 {谷崎潤一郎} 211000 8.8 新書太閤記 01 第一分冊 {吉川英治} 212000 8.9 吸血鬼 {江戸川乱歩} 213000 9.0 宮本武蔵 04 火の巻 {吉川英治} 215000 二つの庭 {宮本百合子} 9.0 新書太閤記 09 第九分冊 {吉川英治} 216000 9.0 三国志 10 出師の巻 {吉川英治} 217000 新書太閤記 04 第四分冊 {吉川英治} 季節のない街 {山本周五郎} 9.1 新書太閤記 08 第八分冊 {吉川英治} 218000 9.2 神州纐纈城 {国枝史郎} 220000 或る女 2(後編) {有島武郎} 220000 9.3 貞操問答 {菊池寛} 222000 9.5 新書太閤記 05 第五分冊 {吉川英治} 227000 9.5 宮本武蔵 08 円明の巻 {吉川英治} 228000 新書太閤記 07 第七分冊 {吉川英治} さぶ {山本周五郎} 9.5 新書太閤記 06 第六分冊 {吉川英治} 228000 9.5 真景累ヶ淵 {三遊亭円朝} 229000 9.7 暗黒公使 {夢野久作} 232000 9.7 科学の不思議 {ジャン・アンリ・ファーブル} 233000 9.8 随筆 新平家 {吉川英治} 234000 9.8 思想と風俗 {戸坂潤} 235000 ★1 8.1 忘れ残りの記 ――四半自叙伝―― {吉川英治} 194000 8.2 苦心の学友 {佐々木邦} 198000 9.0 新書太閤記 03 第三分冊 {吉川英治} 215000 猫の蚤とり武士 {国枝史郎} 9.0 剣侠受難 {国枝史郎} 216000 9.3 文明と病気c {シゲリストヘンリー・E} 222000 10.0〜 / 24.0000〜 ★3 10.5 行人 {夏目漱石} 251000 11.1 幽霊塔 {黒岩涙香} 266000 11.6 新版 放浪記 {林芙美子} 282000 11.9 土 {長塚節} 286000 12.4 金色夜叉 {尾崎紅葉} 298000 12.6 みみずのたはこと {徳冨健次郎} 302000 13.2 黒死館殺人事件 {小栗虫太郎} 317000 13.6 真珠夫人 {菊池寛} 328000 13.5 レ・ミゼラブル 04 第一部 ファンテーヌ {ヴィクトル・ユゴー} 324000 14.2 ファウスト {ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ} 341000 14.3 吾輩は猫である 343000 15.0 明暗 {夏目漱石} 362000 15.3 新生 {島崎藤村} 367000 15.8 城 {フランツ・カフカ} 380000 17.6 カラマゾフの兄弟 01 上 {フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー} 426000 19.0 ドグラ・マグラ 455000 19.0 イーリアス 03 {ホーマー} 22.6 伊沢蘭軒 {森鴎外} 543000 23.5 チベット旅行記 {河口慧海} 564000 23.7 南国太平記 {直木三十五} 569000 24.8 パソコン創世記c {富田倫生} 596000 ★2 10.0 神曲 03 天堂 {アリギエリ・ダンテ} 241000 10.1 折々の記 {吉川英治} 242000 10.3 大岡越前 {吉川英治} 246000 10.3 獄中への手紙 08 一九四一年(昭和十六年) {宮本百合子} 248000 10.5 浮雲 {林芙美子} 252000 10.6 レ・ミゼラブル 06 第三部 マリユス {ヴィクトル・ユゴー} 255000 10.8 平の将門 {吉川英治} 260000 11.2 宮本武蔵 06 空の巻 {吉川英治} 268000 11.3 人間本性論(人性論) 実験的研究方法を精神上の主題に導入する一つの企てc {デイヴィッド・ヒューム} 270000 11.5 故郷七十年 {柳田国男} 276000 11.5 剣難女難 {吉川英治} 12.0 レ・ミゼラブル 05 第二部 コゼット {ヴィクトル・ユゴー} 288000 12.4 吹雪物語 ――夢と知性―― {坂口安吾} 297000 12.5 森の生活――ウォールデン―― 02 森の生活――ウォールデン―― {ヘンリー・デイビッド・ソロー} 300000 12.6 ゴリオ爺さんc {オノレ・ド・バルザック} 302000 13.0 レ・ミゼラブル 08 第五部 ジャン・ヴァルジャン {ヴィクトル・ユゴー} 311000 13.1 魔都 {久生十蘭} 315000 13.4 いやな感じ {高見順} 322000 13.5 宮本武蔵 05 風の巻 {吉川英治} 323000 14.4 火星兵団 {海野十三} 346000 14.9 源頼朝 {吉川英治} 357000 15.0 レ・ミゼラブル 07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌 {ヴィクトル・ユゴー} 361000 15.8 蔦葛木曽棧 {国枝史郎} 379000 16.0 新編忠臣蔵 {吉川英治} 385000 ▲ 19.3 花と龍 {火野葦平} 464000 23.4 ジエィン・エア 02 ジエィン・エア {シャーロット・ブロンテ} 561000 25.3 神州天馬侠 {吉川英治} 582000 25.8 旅愁 {横光利一} 620000 27.3 江戸三国志 {吉川英治} 654000 29.2 大岡政談 {作者不詳} 700000 ★1 10.0 梅里先生行状記 {吉川英治} 240000 ニールスのふしぎな旅 {セルマ・ラーゲル10.0 レーヴ} 241000 10.4 任侠二刀流 {国枝史郎} 249000 11.7 あさひの鎧 {国枝史郎} 280000 12.0 石狩川 {本庄陸男} 287000 16.0 雪之丞変化 {三上於菟吉} 383000