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銀の道化師と痕面 ◆L9juq0uMuo 『勝を守れば人間になれる』 それが人形である私の存在理由であり、使命である。 その勝という少年が来るまで、私はストローサーカスで働いていた。何時来るかもわからないお坊ちゃまを待つ日々。しかし、事態は急変した。見知らぬ場所に呼び出され、殺し合いをしろと命ぜられ、そして首から上が吹き飛んだ少女。 突然の事態に多少混乱はしたが、だが、それ以上の衝撃が私を襲った。殺し合いの場、校舎らしき場所へと身を移された後、名簿を見るとそこに書いてある一つの名前に目が止まった。 ―才賀勝―、私の存在理由である少年がこの殺し合いに呼ばれていた。 私の心は待ち望んでいたお坊ちゃまにやっと会えるという希望と、そのお坊ちゃまが殺し合いの場に連れてこられたという絶望でごちゃまぜになる。 お坊ちゃまはどこにでもいる普通の少年だ。それが先ほどのユウジロウやケンオウという輩とともに殺し合いの場にいる。それは猛獣の満載された檻に一羽の兎を放り込むような物だ。 もし、お坊ちゃまが死んだのならば、私は人形のまま。自分の顔が青ざめていくのがわかる。震えも止まらない。どうあっても私はお坊ちゃまを守らねばならない。しかし生き残れるのは一人きり。ならば―…… 「お坊ちゃま以外の参加者を全員殺す」 自然と考えが口から漏れた。お坊ちゃまを守る事が私の存在理由である以上、私のすべき事はお坊ちゃまの優勝の為に一人でも多くの参加者を狩る事、そしてお坊ちゃまの保護。その為にはどのような犠牲も厭わない。 だが一つだけ不安がある。それはお坊ちゃまが私の殺人行為を良しとするかだ。普通の人間ならば人を殺す事など良しとはしないだろう。お坊ちゃまとて例外ではない。 仮に殺人の場面を見られてしまえばお坊ちゃまは決して私に近づく事はしないであろう。一般人の、ましてや子供が、殺人者と行動を共にするわけがない。 何か対策を講じなければ、そんな事を考えながら支給品を確認する。そして一つ目に出てきた物を見て、私は目を見開く。 出てきたのはピエロの衣装セットとメイク道具。通常ならばハズレという部類であろう支給品だ。だが、今の私にとってはこの支給品は当たりだった。これで変装してお坊ちゃまを影から助け、また、参加者を消して行けばいいのだから。 早速私はピエロの衣装に身を包み教室を後にした。全てはお坊ちゃまの為に。 「ふざけている」 怒りの感情を顕にし津村斗貴子が廊下を歩いている。脳裏に浮かぶのは先ほど『見せしめ』にされた一人の少女。人の命を何とも思わない悪魔の所業。それは絶対に許してはならない。次に浮かぶのは武藤カズキの笑顔。自分の大切な存在 「カズキならこの殺し合いに乗ったりはしないだろう。だが…」 だが、自らを顧みずに弱者を助け、命を散らすのではないだろうか?言い様の無い不安が頭をよぎる。事実、武藤カズキは自分をホムンクルスから助けようとして殺された前歴があるのだ。可能性は限りなく高い。 「一刻も早く、カズキが無茶をしないように合流しないと―」 そこで斗貴子は口を紡ぐ。どこからか、カツン、カツンと階段を降りてくる音が聞こえ。斗貴子は身構える。ややあって、階段から一人の影が廊下へ現れた。その姿はサーカスにいるピエロその物だった。 (ピエロ……?) その場違いな格好に、斗貴子は自分達と同じ様にここに呼ばれた変体ホムンクルスを一瞬連想し、怪訝な表情を浮かべる。 「一つだけ質問する。お前はこの殺し合いに乗っているのか?」 「……」 ピエロは答えず。その代わりに、手に持った投げナイフで答えた。 「……!」 投函されたナイフを避けと斗貴子に、次いで二本目、三本目のナイフが襲い掛かる。 (この一直線の廊下では分が悪い、ここは一旦退く!) 紙一重でナイフをかわし、弾かれる様に斗貴子はピエロが来た方向とは逆方向の階段へと走り出す。 「…逃がさん」 凛とした、氷を思わせる冷たい声で呟きながらピエロは後を追う。 (くそっ!バルキリースカートがあればあんな奴…) だがしかし、事前に確認した支給品の中には核金は入っていなかった。心の中で悪態をつきつつ階段を降りた斗貴子は、昇降口を目指して走る。後少しで昇降口へつく。その時教室から巨大な影がぬうっと姿を現した。 (新手―!?) 立ちはだかる傷だらけの顔の大男を前に斗貴子うろたえる。目の前の男はどうみても乗っている。前門の痕面(スカーフェイス)後門の道化師(ピエロ)正に万事休すである。 「…新手か、どちらにしろお前に逃げ場はない」 その声に斗貴子が振り向くと両手に投げナイフを携えたピエロが、今正にナイフを投げようと手を振り上げていた。斗貴この身を絶望が支配する。そして、眉間目掛けナイフは投げられた。 (すまない、カズキ、戦士長…) ぎゅっと目を閉じ覚悟を決めた。…しかしいつまで経っても痛みも衝撃も来ない。 (……?) 不思議に重い目を開けると、そこには自分を守るように巨大な腕が斗貴子の顔を 守っていた。 「姉ちゃん、大丈夫かい?」 その腕の主、痕面の男が、腕に刺さったナイフを抜きながら斗貴子に尋ねる。 「あ、ああ」 何が起こったか事情を理解できず若干混乱しながら斗貴子が答える。だがそれはピエロも同じだったらしい。 「……殺し合いには乗ってないのか」 ピエロの問いに痕面の男は素っ気無く答える。 「堅気を殺す気はねぇ」 そう言って痕面の男、花山薫はピエロと対峙する。 「まだやるかい?」 構えを取る花山に対しピエロの取った行動は、逃走だった。窓を蹴破りアクロバティックな動きでピエロは闇の中へと消えた。 「逃げるか…」 そう言ってピエロを視線だけで追った後、花山は斗貴子へと向き直る。 「怪我はねえかい?」 「え、あ、いや、そっちこそ私を庇って……」 そう言って斗貴子は、花山の白いスーツの一点だけ破けた場所に視線を向ける 「この程度、怪我の内にも入らねぇ」 ナイフの痛みなど意にも介さずと言った感じで花山は答える。 「とりあえず、何があったか教えて貰おうか」 津村斗貴子と花山薫、二人の痕面の夜はこうして更けていった。 【C-4 学校校舎・昇降口/1日目/深夜】 【津村斗貴子@武装錬金】 [状態]:健康。 [装備]: [道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~3、本人確認済み) [思考・状況] 基本:主催者に深い怒り・カズキが心配 1:花山と情報交換 2:カズキ、またはブラボーと合流。パピヨンには警戒 [備考] ※一応本編終了後、武装錬金ピリオド辺りから登場。 【C-4 学校校舎・昇降口/1日目/深夜】 【花山薫@グラップラー刃牙】 [状態]:健康。 [装備]: [道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~3、本人未確認) [思考・状況] 基本:乗っていない奴は助けるor手を出さない 1:斗貴子と情報交換 [備考] ※地下トーナメント戦後 「クソッ」 闇に紛れ私は悪態を着いた。まずは一人目、そう思ったがあのでかい男に邪魔された。だが、どうやらあの二人は殺し合いには乗っていないらしい。ならば、お坊ちゃまを保護してくれるかもしれない。それならばあの二人は保留にしておいても問題は無いだろう。 それよりも問題がある。私の支給品はピエロの変装セット、投げナイフ、そして最後の一つはただの飲み物。青汁DXなる物。これから導き出されるものは圧倒的火力不足。これでは先ほどの大男のような相手が来た場合手も足も出ないだろう。 「武器が、もっと強力な武器が欲しい」 そう、お坊ちゃまを守る為、強敵を屠る為の武器が。 「このまま北上し、漁ってみるか」 待っていてくださいお坊ちゃま。このしろがねが命を賭してでも貴方様を生き残らせて見せますから。 ―そして銀の道化師は獲物を求め闇に消えた。 【C-4 道路/1日目/深夜】 【才賀しろがね@からくりサーカス】 [状態]:健康。 [装備]:ピエロの衣装&メイク@からくりサーカス、ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス(残り16本) [道具]:青汁DX@武装錬金 [思考・状況] 基本:見敵必殺、勝の保護 1:勝を優勝させるため皆殺し 2:強力な武器が欲しい・現在北上中 3:花山、斗貴子に関しては襲うのは保留 [備考] ※一巻の勝と出会う前 008 ――――――は砕けない。 投下順 010 甘さを捨てろ 008 ――――――は砕けない。 時系列順 010 甘さを捨てろ 初登場 津村斗貴子 041 ふたりはスカーフェイス 初登場 花山薫 041 ふたりはスカーフェイス 初登場 才賀エレオノール 037 信じるこの道を進むだけさ
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「そこの幽霊、悔い改めなさい、さすれば天への道は」 俺はノンケでも構わず食っちまう女だぜえぇぇぇぇっ!! 「ひきゃぁぁぁぁぁっ!!」 ・ ・ ・ ・ ・ 「ううっ、汚されてしまいましたっ、神よっ、我が主よっ」 どーよ教会、天使の眷属ってんならお前も住みやすいだろ死神。 「あ、はぁ、それは、まぁ……でも、その」 「ひっく、ひっく、純潔が、私の純潔がっ……ぐすっ、ぐすっ」 うん、汚された死神と汚されたシスターと幽霊が住み着く教会、いいねっ。 「悪魔っ、この悪魔っ! 貴女は悪魔ですっ! ケダモノっ!」 ……あぁん? どーも教育が足りなかったみてーだなァ……。 「ひ、ひうっ、な、何を、何をするのですっ!」 いやぁ? 悪魔は悪魔らしくテッテ的に辱めてやらないとなぁ? おい、手伝え死神、このシスターの処女を本格的に散らしてやろーぜ。 「「え、ええええええええええっ!?」」 ・ ・ ・ ・ ・ 「お、お姉様っ……私、もう、もうダメっ……我慢できないっ」 「お、お姉さんっ、ボクももう、もう限界ですぅっ……」 よーし、そんじゃ二人とも、俺の言うことは何でも聞くんだな? 「はいっ、はいっ、言うこと聞きますっ。で、すから、もう、お姉さんっ、イかせてください……!」 「あぁっ、良い子にします、私はお姉様のモノです。で、ですから、ですから早くお慈悲をっ……!」 じゃぁいいぜ、二人とも天国にイッちまいな。 何回でも何回でも、俺が昇天させてやるからよ。
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DQⅦ 【死神きぞく】の気持ちになれる悟りのオーラ。 持っていると死神きぞくに転職できるようになる。 死神きぞくが戦闘終了後に「心」を落としていく確率はE(1/256)。 風の塔の5F~10Fが最も出現率が高いが、移動が楽な現代のレブレサック周辺もそこまで悪くはない。 また、出現率こそ低めだが風の迷宮ならゲリュオンとアンドレアルも同時に狙えるという利点がある。 この心は死神きぞくが戦闘終了後に落としていく以外に入手方法が存在しない。 死神きぞくをマスターしないと【ダークビショップ(職業)】への転職条件が満せないが、 こいつからの心ドロップを狙うくらいならおどる宝石を狙ってから成り上った方が楽だろう。 幸い転職条件となっている他の二つの職業の「心」は、どちらも宝箱から入手することができる。 職業としての死神きぞくに関しては【死神きぞく(職業)】を参照。
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パチン・・・ 黄色のコードは2つに切断され、静寂に包まれた。 爆弾は・・・爆発しない・・・。 それを確認すると、私は大きく息を吐いて尻餅を搗くように倒れた。 激しい緊張感から解放され、心地良い脱力感に包まれている。 私達は・・・負けなかった。爆弾事件の犯人にも・・・死神にも勝ったのだ。 約1時間半・・・想像を絶する恐怖の中・・・私達は爆弾解体という偉業を達成したのだ。 本当に命懸けで闘ってきたからこそ、この達成感は非常に大きな価値があった。 そんな私達の祝福するかのように・・・ムギ先輩から電話がかかってきた。 「もしもし、ムギ先輩!」ピーピー・・・ 『どうかしら・・・残り2本のコードは切れた?』ピーピー・・・ 「はい!唯先輩が残りのコードも切ってくれましたが、爆発しませんでした!」ピーピー・・・ 『そう・・・良かったぁ!』ピーピー・・・ 「ムギ先輩が指示を出してくれたおかげです!本当にありがとうございます」ピーピー・・・ 『唯ちゃんは・・・大丈夫?』ピーピー・・・ 「何か固まったままですね・・・最後にまた、緊張しちゃったんじゃないですかね・・・」ピーピー・・・ ブツ・・・ 「あっ・・・もしもし?・・・私のケータイも電池切れちゃったみたいですね・・・」 ケータイの電池の残量も何とかギリギリ間に合った・・・。 私は胸を撫で下ろし、私の目の前で固まっている人の名を呼んだ。 「ゆーい先輩、大丈夫ですか?」 「・・・」 「唯先輩!」 「・・・」 「唯先輩・・・?」 「・・・あ・・・あずにゃん・・・」 ようやく振り絞るように出た唯先輩の声は・・・何故か震えていた。 そして・・・もう止まったはずの・・・聞こえてくるはずの無い音が、私の耳に入ってくる・・・。 緩んでいた私の表情も、一気に固まっていく・・・。 チッ チッ チッ チッ チッ・・・ 「ゆ、唯先輩・・・あの・・・まさか・・・そんなわけ・・・無いですよね・・・」 「でも・・・止まらないよ・・・?爆発までの時間・・・」 「な、何で・・・」 「コードも2本残ってる・・・青いコードと赤いコード・・・」 恐る恐る爆弾を覗き込むと・・・確かにカウントダウンが止まっていなかった。 残り時間は13分を示している。 まだ13分・・・いや、もう13分しか残っていない。 ―――――今日ガ、オ前の命日ニナルト言ッタハズダ――――― 「えっ!?」 アイツの声が聞こえた・・・。さっきまで居なかったはずなのに・・・観覧車の外から、こっちを覗き込んでいる。 地上120メートルの高さからこちらを覗き込む、大きな鎌を持った死神・・・。 夢で見た時と同じように、ボゥッと青白い光の下に、そいつは存在している。 「あっ・・・ああっ・・・そ、そんな・・・」 「どうしたの、あずにゃん・・・?」 この世に存在しない物を見るかのように驚き、怯えている私・・・。 その姿をはっきりと見たのは、夢以外では今が初めてだった。 視線を感じたり、声が聞こえたり・・・その存在はずっと私の中にはあった。 しかし、その姿をはっきりと視認し、対峙する・・・圧倒的な威圧感が私を押し潰そうとしていた。 私のあまりの怯えぶりに、さすがに不審に思った唯先輩は、目線を私から観覧車の外に向けようとしていた。 「だ・・・ダメです唯先輩!見ちゃダメです!!」 しかし、私が制止する前に唯先輩は観覧車の外を見てしまった。 顔を外に向けた瞬間・・・その視線は1点にロックされ、表情も固まっている。 遅かった―――――唯先輩には死神の存在に気付いてほしくなかったのに・・・。 死神の標的が私と言うなら、唯先輩だけは助けたかったのに・・・。 直立不動で外を見つめる唯先輩・・・。 死神を目の前にした唯先輩の反応を・・・考えるのが怖かった・・・。 「あずにゃん・・・」 「は、はい・・・」 「外に何か居るの?」 「へっ・・・!?あの・・・その・・・」 唯先輩はクルリと私の方に体を向けると、首をかしげながら私を見つめた。 その表情は、まるで外には何も居ないよと言わんばかりだ。 しかし私が再度外を見ると、やはりあの死神がこちらをジッと見ているのだ。 という事は、私にしか見えていない・・・? 唯先輩に変な恐怖心を与えずに済むのは良い・・・私の取り越し苦労だったと思ったが、唯先輩には全てお見通しのようだ。 「私には見えてないけど・・・あずにゃんには、外に居るように見えるんだね・・・死神が」 「ど、どうしてそれを!?」 「外を見て怯えてるあずにゃんの表情・・・今日、話している中で何度か出てきた『死神』って言葉を聞いた時と同じ表情してたもん」 「・・・」 「そういえば私が朝、あずにゃんに電話した時から様子が変だったよね・・・」 「・・・」 「電話して、すぐに私が生きているかどうか確認するなんて、普段のあずにゃんなら考えられない事だよ~」 「・・・」 「もしかして、あずにゃん・・・死神に遭遇するとか、私が死神に殺されちゃうとか・・・そんな怖い夢見たんじゃない?」 「!?」 「お化け屋敷に入った時も、どうしてこんなに夢と似てるんだろうって言ってたし・・・」 「・・・」 「怖い事は1人で抱え込まなくても良いんだよ、あずにゃん」 「・・・」 「苦しむあずにゃんを救う為なら、私はどんな犠牲も厭わないよ」 「・・・」 「だから・・・怯えている理由を話してごらん?」 「ゆ・・・唯せんぱぁい・・・」 鋭い勘の持ち主だと思っていたけれど・・・私の表情と言動で夢の内容まで当てられるとは思わなかった。 私の事をこんなにも理解してくれている・・・私の心の拠り所で居てくれる・・・その事が嬉しくて、私は思わず泣き出してしまった。 今日ずっと1人で抱え込んでいた、辛くて恐ろしい夢の内容。 それに伴い、デート中も悪夢を思い出しては葛藤していた事。 私の運命のせいで、唯先輩も事件に巻き込んでしまった事。 最初は、唯先輩に余計な心配をかけさせたくないと思い、全てを自分の胸に秘めておこうとさえ思った。 しかし、唯先輩はそんな事は許さず、私の全てを受け入れようとしてくれた。 私は何度も何度も嗚咽しながら、私に縛りついていた思いを全て吐露した。 時折、涙に声が詰まって上手く話せなくなると、私を抱き寄せては優しく撫でてくれる事もあった。 唯先輩は私が全てを話し終わるまで、ずっと黙って聞いていてくれた。 「一つ、聞いても良い?」 私が話し終わると、唯先輩は落ち着いた口調で尋ねてきた。 「夢で言ってた死神の言葉は本当?『死神の弱点、嫌いな物は赤い物』って・・・」 「はい・・・そう言ってました」 「死神自身について言ってた事って、本当にそれだけだったの?」 「はい・・・」 唯先輩は少し何かを考えた後、ニコッと笑った。 「わかった・・・あずにゃんを信じるよ♪」 唯先輩の言った、信じるという言葉・・・この時はまだ、その真意を考えなかった。 その真意を考えられる程、余裕が無かったと言った方が正しいのかもしれない。 唯先輩に全てを打ち明けられた事で、気持ちが少し楽になったものの、私達が置かれている状況が好転したわけではないからだ。 心の全てを曝け出している時、時間の事は頭から離れていたが、今確認すると・・・爆発までのタイムリミットは5分になっている。 「あと・・・5分しかないですね・・・」 「そうだね・・・」 「ど、どっちのコードを切れば・・・」 「大丈夫!・・・私、さっきのあずにゃんの話を聞いて、切るコードは決めたから」 「えっ・・・も、もしかして赤、ですか・・・?」 唯先輩は私の問いには答えずに、ただ黙って爆弾を見つめている。 その間にも、1秒・・・また1秒と、爆発までのカウントダウンが進んで行く。 「あと4分・・・遅かれ早かれ、あと4分で私達の運命って決まるんだね」 「唯先輩・・・」 「勿論、私達が勝つよ!私達は生還する!・・・そう信じてる・・・」 「はい・・・」 「でも・・・心のどこかに、死にたくない・・・切るコード間違ってたらどうしようって・・・恐怖心もあるんだよ・・・」 「・・・私のせいで・・・本当にゴメンなさい・・・」 「あずにゃんが謝る事なんてないんだよ!むしろ、謝るのは私の方・・・」 「な、何でですか・・・!唯先輩は何も悪くないですよ!!」 「だって・・・こんな恐怖心をずっと・・・」 「・・・」 「・・・ずっとあずにゃんに1人で背負わせてたんだもん!もっと早く気付いてあげられれば・・・もっと早く共有してあげられれば良かったのに・・・」 グシグシと泣く唯先輩に、私はかける言葉が見つからなかった。 私の予想していなかった事を言うから・・・。 貴女は一体、どこまで優しすぎる人なんですか・・・。 「唯先輩のバカ・・・」 「あずにゃん・・・」 「唯先輩のバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ!!・・・どうしてこの期に及んでまで・・・そんな事が言えるんですか!」 「ぐすっ・・・だって、あずにゃんが好きなんだもん・・・」 「もうすぐ死ぬかもしれないんですよ!?こういう運命をもたらしてしまった私の事を責めたって良いんですよ!」 「だって、あずにゃんが悪いわけじゃないんだもん・・・」 「そうやって、いつも私の事を庇って、私の事を一番に考えて・・・いっつも、あずにゃんあずにゃんって・・・」 「・・・あずにゃん・・・?」 ここでは文句や不満のような形で言葉が噴出してしまったが・・・感謝の気持ちも含め、唯先輩に言いたい事は他にも山ほどあった。 その中で・・・今、一番何を言いたいのか・・・何を伝えたいのか・・・。 私達に残された、あと2分30秒という時間で・・・何を唯先輩に言えば良いのか・・・。 この短時間で伝えたい事を考えてみた。・・・しかし、新たに思い浮かぶ事は何も無い・・・。 「・・・私・・・死にたくないです・・・」 「・・・」 「まだ17歳ですよ・・・まだまだやりたい事だって沢山あります」 「そうだね・・・」 「軽音部の皆さんと、もっともっと沢山演奏したいです・・・」 「うん・・・」 「憂や純と・・・もっともっと遊んだり話したりしたいです・・・」 「うん・・・」 「それよりも何よりも・・・」 短時間で言いたい事を考えてみても・・・新たに思い浮かぶ事は何も無かった。 だけど、ずっとずっと言いたかった事はある・・・。 伝えたくても、簡単には伝えられない・・・掛け替えの無い大切な気持ちを・・・。 「ずっと・・・」 「大好きな・・・世界で一番大好きな唯先輩とずっと一緒に居たいんです!!」 自分自身の心の奥深くに秘めていた、世界で一番大切な気持ち・・・。 キュンとなったり、ドキッとなったり・・・こんな気持ちがあるから、毎日が楽しいんだ。。 そして、そんな幸せな気持ちにさせてくれる人のぬくもりを求めて・・・私は無意識に体が動いていた。 「あ・・・あずにゃ・・・」 唯先輩の事をギュッと強く抱きしめる私・・・。 今日やっと・・・今日初めて・・・唯先輩に対して素直な態度が取る事ができた。 せっかくのデート・・・こうやって、唯先輩に甘えたかったんだ。 さっきは言えなかったけれど・・・私も唯先輩からギュッとされると、温かな気持ちが体中を覆ってくれる。 とっても幸せな気持ちになれる・・・だからずっとこのまま・・・こうしていたかった。 「ありがとう、あずにゃん・・・」 唯先輩はゆっくりと私を引き離すと、涙でぐしゃぐしゃになっていた私にハンカチを差し出してくれた。 観覧車に乗ってから、何度流した涙なんだろう・・・。私はハンカチを受け取り、静かに涙を拭った。 そして滲んだ視線の先の時間を見ると、いよいよ爆発までの時間は1分を切ろうとしていた。 あと1分・・・その先にあるのは、生か死か――――― ―――――己ノ運命ヲ恨ムノダナ――――― 観覧車の外から見張っているであろう、死神の声が聞こえてくる。 その声を聞いた私は覚悟を決めて、目をゆっくりと閉じる。 思い浮かんでくるのは、唯先輩との楽しかった日々だ。 初めてネコミミを付けさせられた事も・・・。 初めて『あずにゃん』と呼ばれた事も・・・。 初めて夏合宿で2人きりでギターの練習をした事も・・・。 初めての学園祭で、唯先輩が遅れてきたけれど、結果的には大成功だった事も・・・。 初めて私が純の猫を預かった時、毛玉を吐く事を知らずに、ビックリして唯先輩に電話をしたら真っ先に駆けつけてくれた事も・・・。 トンちゃんと私と唯先輩の間に三角関係が生まれそうになった事も・・・。 ギー太と唯先輩と私の間に三角関係が部内で認められてしまった事も・・・。 唯先輩と『ゆいあず』のコンビを組んで、演芸大会に出た事も・・・。 夏休みに夏フェスに行った時、綺麗な星空の下で色々語り合った事も・・・。 夏祭りで唯先輩に手を引かれた時に、唯先輩の背中越しに見えた花火にキュンとなった事も・・・。 私の私物に色々と『なかのあずにゃん』と黒猫のシールを貼っては喜ばれていた事も・・・。 学園祭の前夜に積極的にアプローチされた事・・・そして夜遅くまで色々お話しした事も・・・。 3年生最後の学園祭で、張り切る貴女の横顔や後ろ姿をずっと見ていた事も・・・。 みんなみんな、昨日の事のように思えてくる。 楽しかった唯先輩との日々・・・。 これからも、ずっと未来に続いていくと思っていた私達の関係・・・。 もう・・・味わう事もできないのかな・・・。 閉じた目から、拭ったはずの涙が再び頬を辿って流れ落ちる。 幾度も流した涙・・・沢山泣いて、乾ききったと思ったのに・・・。 最後に、もう一度だけ唯先輩の顔が見たい・・・私はゆっくりと目を開け、唯先輩を見つめた。 そこに居た唯先輩は、私と目が合うと・・・穏やかに微笑んでくれた。 苦しいはずなのに・・・怖いはずなのに・・・最後まで私を落ち着かせようと、彼女らしい笑顔を見せてくれた。 あの時と・・・あの夢と同じ表情を・・・。 チッ チッ チッ チッ チッ・・・ 「私もあずにゃんの事、世界で一番大好き・・・だからあずにゃんの気持ち、凄く嬉しかったよ!」 「はい・・・」 「残り1秒になったら、コードを切るね・・・。1秒でも長く、あずにゃんの事を見ていたいから・・・」 「・・・はい・・・」 「あずにゃん・・・本当にありがとう・・・あと15秒・・・最後に、あずにゃんに言っておくね・・・」 チッ・・・(14秒) 「・・・はい・・・」 チッ・・・(13秒) 「私達・・・」 チッ・・・(12秒) 「どんな事が・・・」 チッ・・・(11秒) 「あっても・・・」 チッ・・・(10秒) 「ずっと・・・」 チッ・・・ 「一緒だよ・・・」 チッ・・・ 「あずにゃん・・・」 チッ・・・ 「・・・そこが・・・」 チッ・・・ 「天国で・・・」 チッ・・・ 「あっても・・・」 チッ・・・ 「ずーっと・・・」 チッ・・・ 「一緒だよ・・・」 チッ・・・ 「あずにゃん・・・!」 チッ・・・ パチン・・・ ― ――― ――――― ―――――――――― 「う・・・う~ん・・・こ、ここは・・・」 私は・・・闇の中でうつ伏せの状態で倒れていた。一点の光も差し込まないような闇の中に・・・。 居るだけで息苦しくなってくる、この空間。先程までは観覧車に居たはずなのに・・・もしかしたら、ここは死後の世界なのだろうか。 何も無い・・・誰も居ない空間・・・だと思ったが、唯先輩が私に背を向けた状態で立っているのがわかった。 今どんな表情をしているのか・・・私の位置から見る事はできない。もしかすると、また死神が化けているのかもしれない・・・。 そんな不安が頭をよぎったが、すぐにこの人が本物の唯先輩だとわかった。 「何故ダ・・・」 聞こえてきたのは、あの死神の声だった。私は何とか起き上がり、立ち上がろうとした。 目の前に居る唯先輩が、死神と対峙しているのがチラッと見えたが、全身に力が入らず、思わずよろけそうになってしまった。 その様子を察知したのか、唯先輩は私に優しく声を掛けてくれた。 「大丈夫だよ、あずにゃん・・・そこに座ってて良いからね」 「す、すみません・・・」 「何故・・・オ前ハ・・・最後・・・青ノコードヲ切ッタンダ!?」 「えっ!?」 最後に残された爆弾のコードは青と赤の2種類だった。 唯先輩は私が話した『死神の弱点、嫌いな物は赤い物』という言葉を信じて、切るコードを決めたと言っていたのに・・・。 だから、唯先輩が切ったコードは赤だと思ってたのに、実際に切ったコードは青だった・・・!? 「あずにゃんから『死神の弱点、嫌いな物は赤い物』って聞いたから、青のコードを切ったんだよ」 「何故、赤ノコードヲ選バカナッタ・・・?」 「だって・・・人間の魂を奪おうとしている者が、自分の弱点を簡単に話すわけないでしょ?」 「あっ・・・」 「だから、死神はあえて嘘を言って、あずにゃんに赤いコードを切らせて・・・爆発させようとしたんじゃないかなって思ったんだ」 私の話を聞いて・・・短時間で、そんな事を考えていたなんて・・・私は唯先輩のとっさの分析力に驚いていた。 唯先輩に全てを話したからこそ、私達は助かったのだ。 もし、夢の事を唯先輩に言わずに1人で抱え込んでいたら・・・死神の言葉を鵜呑みにしていたら・・・そう思うとゾッとする。 「それに・・・私にはどうしても、赤いコードを切るっていう事ができなかったの・・・」 「ドウイウ事ダ」 「赤はあずにゃんのリボンの色・・・あずにゃんを傷つけるみたいで、どうしても切りたくなかった・・・」 「ゆ、唯先輩・・・」 「コノツインテールノ娘ノ魂ヲ奪オウトスルト、オ前ハ邪魔バカリスル。コノ娘ノ夢ノ中デモ・・・観覧車ノ中デモ・・・ソシテ今モ・・・」 「私の大切な人の命を・・・簡単に死神に差し出すなんて事はできない!!私は、あずにゃんをどんな怖い物からでも守るって決めたんだから!!」 「ナラバ・・・ヤハリ、オ前の魂モ一緒ニ奪ウマデダ!!」 「や、止めて!!」 死神は、その手に持った大きな鎌を振り上げた。そのまま振りかざされてしまえば、唯先輩の魂は・・・。 もう、あんなに辛くて怖い体験はしたくない・・・あの夢だけにしてほしい・・・。 私の目の前で、あの惨劇は繰り返してほしくない・・・。私はその一心で、唯先輩に向かって走り出そうとした。 しかし、まだ全身に力が入らなかった為、足がもつれて転んでしまった。 唯先輩は私を庇う為か、右腕を横にビシッと伸ばし、死神が私に近づく事を拒んでいる。 そして微動だにせずに、唯先輩は死神から視線を離していなかった。 「逃げて、唯先輩!!」 私は残っている僅かな力を振り絞って唯先輩に向けて叫んだ。 しかし、その言葉すら唯先輩に届かないのか・・・唯先輩はピクリとも動かない。 すると、死神は持っていた大きな鎌を・・・振りかざそうとした。 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 もうダメだ――――― 私の中で全てが崩れてしまいそうになった時・・・死神が思いもよらない言葉を発した。 「・・・止メダ」 「・・・」 「オ前ノ目ハ、全ク恐怖ヲ感ジテイナイ・・・同様ニ、心モ全ク怯エテイナイ」 「・・・」 「ソノツインテールノ娘ヲ守ル・・・ソノ一心ダケミタイダナ」 「・・・」 「カツテ、多クノ人間ヲ見テキタガ、死神ト遭遇スレバ、皆ガ恐怖ニ打チヒシガラレテイタ・・・ソノツインテールノ娘ノヨウニ」 「私だって女の子だもん・・・全然怖くないって言ったら嘘になるけど・・・」 「ゆ、唯先輩・・・」 「でもね・・・守りたい人が居るって思ったら、人間は強くなれるんだよ!私はあずにゃんを守る為なら、どんな困難にも・・・どんな恐怖にも打ち勝ってみせるよ!!」 「唯先輩・・・///」 「ツマラン・・・恐怖ニ怯エル人間ノ魂ヲ奪ッテコソ、死神ニトッテハ至福ナノダ・・・オ前ノヨウナ奴ハ初メテダ・・・」 「例え、何度私達の前に現れたって、必ず私があずにゃんを守るんだから!!」 「フッ・・・ソンナ姿ヲ見セラレタラ、逆ニ気ガ滅入ル。オ前達ノ魂ヲ奪ウ事モ止メダ。モウ、オ前達ノ前ニ現レル事ハ無イダロウ・・・」 死神はそう言い残すとスッと消えていってしまった。 周りは闇が晴れる事はなく真っ暗なままだったが、死神が消えた途端、唯先輩は力尽きるように倒れてしまった。 「唯先輩!?大丈夫ですか!!」 「だ、大丈夫だよ、あずにゃん・・・」 「唯先輩・・・凄い汗じゃないですか!?」 「あずにゃんも・・・汗びっしょりだよ・・・?色々と・・・怖かったもんね」 「唯先輩のおかげで・・・私、助けてもらいました・・・本当に・・・ありがとうございます・・・」 「私達・・・本当に勝ったんだよ・・・私達の絆・・・負けなかった・・・よ・・・」 「・・・唯先輩?」 「・・・」ムニャムニャ 「もう・・・唯先輩ったら・・・」 恐怖に打ち勝った安堵からか・・・唯先輩は眠りに就いていた。 安心しきったその寝顔を見ていると・・・何だか私もホッとして・・・。 全身の力が抜け切って・・・唯先輩に寄り添うように私も眠りに就くのだった・・・。 ―――――――――― ――――― ――― ― 「梓・・・」 「梓ちゃん・・・」 「起きて、梓ぁ・・・」 誰・・・?私の名前を呼んでるのは・・・誰・・・? 「唯・・・」 「唯ちゃん・・・」 「目を開けてよ、唯ぃ・・・」 唯先輩を呼ぶ声も聞こえる・・・。温かい声・・・聞きたかった、皆の声・・・。 皆が居る・・・ここは・・・あの闇の世界じゃないのかな・・・。 「・・・」 ゆっくり目を開けると、そこには真っ白な天井が映えている。 窓から差し込む日射しが眩しかった。 「ここは・・・?」 「あ・・・梓・・・目を覚ました!!」 「梓ちゃん!?・・・良かったぁ!!」 まだ意識が朦朧としている中だったが、憂と純が私に飛びかかるかの勢いで抱きついてきた。 「昨日、梓ちゃんがお姉ちゃんと遊園地の観覧車から救出された後、ずっと病院で眠ってたんだよ」 「お医者さんは2人は凄く汗をかいてたし、脱水症状を起してるから少し安静にしましょうって言ってたけど、もしこのまま梓の意識が 戻らなかったらどうしようって・・・このまま、唯先輩の惚気話が聞けなくなったらどうしようって・・・私、心配で・・・」 「純・・・何の心配してるのよ・・・でも、ありがとう純・・・。憂も・・・心配かけてゴメンね・・・」 「ううん・・・梓ちゃんの意識が戻って本当に良かったよ!!それに・・・」 憂が視線を私から隣のベッドに向けると、そこには律先輩とムギ先輩に私と同じように抱きつかれている唯先輩が居た。 唯先輩も・・・たった今、意識を取り戻したようだ。 「唯ぃ!!・・・本当に無事で良かったぁ!!」 「り、りっちゃん・・・苦しいよぉ・・・」 「こら、律!!唯は安静にしなきゃいけないんだから、そんなに激しく唯を揺さぶるな!!」 「痛っ!!・・・澪がぶったぁ!!」 「まぁまぁまぁまぁまぁまあ・・・ここ、病院内だし、静かに・・・ね?」 「そ、そうだな・・・」 私と唯先輩は、暗くて気付かなかったが、観覧車の中でかなりの汗をかいていたらしい。 1時間30分もの間、爆弾の解体に携わっていたわけで・・・相当のストレスとプレッシャーを感じていたからだろうとの事だった。 そして最後の青いコードを切った瞬間、2人とも緊張の糸が切れて、意識を失って倒れてしまったようだ。 救急隊が私達を見つけた時、爆弾の近くで寄り添うように倒れていた事による、推測ではあるけれど・・・。 とりあえず、私達が入院していたのは脱水症状で意識が無かった事が理由で、他には怪我等はしていなかった。 爆弾を置いた犯人も、昨晩のうちにムギちゃんの通報によって無事に捕まったようだ。 こういう運命になったのは死神のせいだ・・・なんて言っても、きっと誰も信じないだろうな。 だからこの事件の真相は、私と唯先輩の2人だけの秘密という事にしておこう。 「それにしても・・・あの爆弾の設計図に書かれていないコードがあったなんて・・・唯ちゃんは何で最後、青いコードを切ったの?」 さっきの・・・夢の中では、赤は私のリボンの色と同じだから・・・なんて言ってくれた唯先輩。 実際の所もそうなのかな・・・?私は、その唯先輩の答えを期待していた。 「これ、だよぉ♪」 そう言うと、唯先輩は小指を立ててみせた。 しかし、それが何を意味するのか・・・ここに居る皆にはわからなかった。 「小指・・・?」 「どういう意味があるんだぁ、唯?」 「えへへ・・・私とあずにゃんだけの秘密♪」 唯先輩は、不思議そうに聞いてきた澪先輩と律先輩に笑顔で答えてみせた。 私と唯先輩だけの秘密・・・って言われても、私もわからないんだけどな・・・。 「りっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃん・・・ヒントは、あずにゃんは私の嫁!だよ♪」 「それ・・・昨日の朝の主張じゃないか・・・」 「ヒント・・・なのか、それ?」 「何だかよくわからないけど、異論は無いわ!!」 ちなみに、その答えがわかるのは3年後の事だった――――― 「ふふっ、ここに来ると思い出しますね」 「そうだねぇ・・・もう3年経つんだね、あの日から」 今日も、この遊園地には沢山の子ども達や家族連れ、カップルが訪れている。 あの日と同じように・・・訪れている人達は、皆楽しそうな表情を見せている。 3年前と何も変わらない光景がここにはある。 唯先輩が酔ったジェットコースターも・・・。 私達が初めてお弁当を食べさせあった広場も・・・。 2人で絶叫したお化け屋敷も・・・。 勿論、命を懸けて闘ったステージ・・・大観覧車も健在だ。 「今日は思い出の日・・・そしてここが思い出の場所・・・」 私達はあの事件以来、毎年同じ日にこの遊園地へデートに来ている。 祝日では無いので、平日の場合は、大学はサボ・・・コホン、憂や純に後ほどノートを取らせてもらう事になっているけれど。 最初、あの事件を思い出すとトラウマになるのではないか、と周りからは心配された。 しかし、私達は爆弾事件の事は決して忘れる事は無いが、それもまた一つの思い出という認識で、恐怖心を引きずる事もなかった。 あの日以来、死神も夢には出てこなくなり、私達は何事も無かったかのように平穏な暮らしを送っている。 「ねぇ、あずにゃん。あの日、あずにゃんに伝えたかった事・・・もう1度言っても良い?」 徐々に高度が上がっていく観覧車の中で、唯先輩は私の顔を見つめながら言った。 そういえば、3年前は色々な感情が入った状態で、どうしても唯先輩に伝えておきたい・・・そんな想いで私の気持ちを伝えた。 唯先輩は受け入れてくれたけれど、とても告白ムードという状況ではなく、自分の意思をごり押しするような言い方にしかできなかった。 その後もここでデートをしても、その時の事件について振り返ってみたり、他愛の無い話をしてばかりで、お互いの気持ちを確かめる事もなかった。 私達の絆は固い・・・だから、今更確認する事も無いだろう・・・そう思っていたのかもしれない。 でも・・・今、もし貴女達の関係はどういう関係ですかと問われたら・・・自信を持って言えるのだろうか。 私達、恋人同士ですって――――― 何だか、曖昧な関係になっていると思うとスッキリしない。相手の事を大切に思っているなら、尚更・・・。 だから、もう一度貴女の気持ちを聞きたくて・・・私達の関係を確かめたくて・・・返事をしたんだ。 「はいっ・・・」 私達は向き合う形で見つめ合っている。 相手の気持ちをわかっているとは言え、改めて相手に伝えるとなると、どうも緊張してしまう。 ドックンドックンと鳴り響く私の鼓動・・・。私の鼓動は貴女に聞こえてますか? 5年前、貴女と出会った高校1年生の時から・・・貴女の事を考えるだけで、こうやって私はドキドキしてきた。 貴女の事が好きでいられるからドキドキしている・・・そんな感情を持てる事が嬉しかった。 正直になれなかった3年前の冬・・・。なかなか態度に出す事も、口にする事もできなかった、貴女への想い・・・。 今ではしっかり、態度に出しているつもりだけど・・・ちゃんと届いてますか? 言葉にすると、何だか照れくさいけれど・・・また聞かせてほしいな、唯先輩の本音を・・・。 「あずにゃん・・・私ね・・・あずにゃんの事が世界で一番大好きです・・・だから、これからもずっと・・・私の傍に居てください」 唯先輩が言葉にしてくれたら・・・きっと私も、しっかり言葉で返せると思うから・・・。 「私も、唯先輩の事が世界で一番大好きです。・・・ずっと私の目の届く範囲に居てください」 暫く続く沈黙の時・・・しかし、2人の笑い声がその静かな空気を打ち破った。 真剣な想いを伝えた場だったけれど、今更何言ってるんだろうと言わんばかりに2人で笑い合っている。 だけど、3年越しの告白・・・私達の気持ちにわずかにかかっていた霧も、これでスッキリ晴れた事だろう。 「そういえば、あずにゃん・・・あの爆弾事件の時、何で私が青いコードを切ったか知ってる?」 「えっ・・・?死神の言葉の裏を読んだ事と、私の制服のリボンの色が赤だったからなんじゃないですか?」 「それも・・・そうなんだけどさっ・・・」 すると、唯先輩は笑顔で私に小指を立ててみせた。 この仕草・・・どこかで見たような気がすると思ったら、あの病院でのやりとりと同じだ。 あの時は澪先輩、律先輩、ムギ先輩・・・私もどういう事なのかわからなかった。 どういう意味なのか・・・それを説明しようとする唯先輩の頬がだんだん赤くなっていく。 そして、ゆっくりと口を開く唯先輩。 唯先輩は・・・いくつになっても変わらない・・・恋する純粋な女の子だった。 満面の笑みでその真意を聞いた時・・・私はまた唯先輩の事を好きになった。 きっと、唯先輩以上に顔が赤くなっているんじゃないかなと思う。 でも赤い色は、2人を幸せにしてくれる色・・・そういう事ですよね、唯先輩――――― 「赤いコードはどうしても切れなかったんだよね・・・私とあずにゃんを結んでいる・・・運命の赤い糸と同じ色だから♪」 END
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【検索用 しにかみのはなよめ 登録タグ 2017年 VOCALOID し まにゃ 恋愛フラッグ制作委員会 曲 曲さ 混沌のKey 鏡音レン 黒演武】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:混沌のKey 作曲:混沌のKey 編曲:混沌のKey 企画:恋愛フラッグ制作委員会 原案:黒演武 イラスト:まにゃ 唄:鏡音レン 曲紹介 曲名:『死神の花嫁』(しにがみのはなよめ) 歌詞 (PIAPROより転載) ずっと叫べない哀しみだけが胸を覆い尽くしてる 思い切り泣けば辛さを忘れられるのか 君と幸せの扉を開く そんなありふれた事 それすら叶わない願い 僕は君を失った 出会いはいつだったかな?いつの間にか一緒に居て 二人で色々話したね 笑顔の君が居た 一緒の時間は幸せで 永遠に続きそうに感じた いつからか君が居ない この世界は真っ黒に染まった ずっと叫べない哀しみだけが胸を覆い尽くしてる 思い切り泣けば辛さを忘れられるのか そんな事は無いだろ! きっとこの世界には神なんて存在しない 居たとしたらこの仕打ちは何だ! 涙が枯れ果てて 出る事も無いほど この心が枯れてゆく 君と幸せの扉を開く そんなありふれた事 それすら叶わない願い 僕は君を失った 二人で選ぶウェディングドレスも君は笑顔で僕に言うの 「幸せをくれて、ありがとう。」 式を明日に迎えた時は緊張で眠れずに 僕は・・・ ずっと叫べない哀しみだけが胸を覆い尽くしてる 思い切り泣けば辛さを忘れられるのか 少しで良い 辛さを忘れさせて・・・ そう 式に向かう途中で君は事故にあって そのまま君は・・・ 身体が何故か教会に向かって 中に入るとそこには 君と選んだウェディングドレスを付けた骸骨が居たんだ 僕は怖くは無かった だって姿が変わっても君なんだろ? 僕の頬には一筋の涙が流れた ずっと叫べない哀しみだけが胸を覆い尽くしてる 思い切り泣けば辛さを忘れられるのか 僕には解らない 口付けを交わすと君の姿に変わって 僕は君と一緒に結婚式をする 君は泣きながら『ありがとう。』って言ったんだ・・・ コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
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現世 夕方ごろ ここはとある病院 そのうちの個室で二人のAAがいた ベットに横たわっているのはフーン族で水色のAA そしてそれを静かに見守る同じフーン族で黄緑色のAA ピッ ピッ ピッ ピッ と水色のAAの心拍数を告げる 「弟者……」 心配そうに見守る中そっとつぶやく黄緑色のAA 突然! ピーーーーーー(ry 弟者と呼ばれたAAの心臓が停止したことを告げた 「そ、そんな!…と者?弟者!?」 そのとき異変に気づいた医者が部屋へ飛び込んできた 「せ、先生!お、弟者が!弟者が!!」 「落ち着くんだ。兄者くん…」 「っえ…?」 この言葉には何で俺の名を知っている という気持ちも込められていたが ある別の気持ちの方が大きかった 「弟者……」 サヨウナラ ~~~~~~~~~~~~ 「ようこそ。いらしゃい。」 「こ、ここは?お前は…死神?」 「ここはあの世。そして僕は死神。」 今回の魂はフーン族かぁ…。 しぃさん、フーンにはけっこう苦労したとか言ってたなぁ…… そういえばこの人体中傷だらけだけどうしたんだろ? 「な、なぁ…。なんで俺ここに居るんだ…?い、いつのまに!?」 …違う意味で苦労するかも… 「ハァ…。そういう魂って本当に困るんだからな。」 「すまん。本当に知らんのだ…」 「じゃあ、教えてあげるよ。君はついさっき病院で息を引き取ったのさ。」 「そうか…」 「何一人で納得してるの?」 「話すと長くなりますが、何か?」 「別にかまわないけど…;」 ちょうど一話一話が短くて困ってたんだぁ 「じゃあ話すぜ。」 「俺は流石 弟者。 流石家の次男として生まれた。 ちなみに兄とは同い年だ。つまり双子。 流石家は…まぁ普通(?)の家族さ…;」 「な、なるほど…;」 普通って言うのかな…?ここ天界でもある意味有名なんだけどなぁ… 「で、家は知らないうちに大量の借金を抱えていたみたいで…」 「それは、それは…」 お気の毒に… 「やっぱ毎日借金取りがくるわけよ。やくざ五人がな。 っでそいつらは俺と兄者に毎回毎回一本ずつ傷をナイフでつけていくんだ。 『大丈夫。いたくないよ』って。 はじめは足、次は手、胴、頭、耳、と」 「……。」 「ちなみに母者、父者はどっかに連れて行かれた。 妹者や末者が居たから母者はおそらく手出しできなかったんだろうな。」 もう借金取ちゃうやん… 「最終的には、末者も妹者も殺されて…。俺たちは何にもしてやれなかった…。」 ひどい。てか作者…。無理ありすぎなんじゃ…? 「家に残ったのは俺と兄者だけ。俺は変な薬を飲まされ続けた。おそらく麻薬だろう。兄者は痛々しいほどの暴行を受けてたな。」 「信じられないことする人が本当に居るんですね。」 まさかとは思うけど、リアルにはいないよな…。ねぇ。 「続けるが、明くる日。借金取が来なくなったんだ。俺と兄者は大いに喜んださ。けど、母者たちはいつまでたっても帰ってこなかったんだ。」 「え!それって、ま、まさか…。」 「そう。母者たちはもう地上にはいない…。」 よほどの借金だったんだね…。 …しぃさんは何か知ってるかも? 「で俺は誓った『必ずしやこの手で奴等に仇を討つ』ってな。」 「で、全員殺れたんですか?」 そう言うと弟者さんは僕と目を逸らしてこう言った。 「一人だけ生き残った…。」 「弟者さん、一つ聞いてもいいですか?」 「ん?何だ?」 弟者さんの目は不安に満ちていた。 「未練ってありますか?」 突然目つきが変わる。 「あるさ。あるに決まってる。」 やっぱり、生き残った最後の一人の…。 「じゃあ、現世へ?」 僕の心を読んだのか、こう言った。 「俺の未練はそっちのことじゃない。兄者だ。」 「貴方のお兄さん?」 今にも泣き出しそうなのがわかる。 「そう。兄者は今一人だろ。あいつ、一人じゃ何にも出来ないんだ。殺しを働いたのは俺だけであって兄者は何にも関係ない。」 「では、貴方の望みは何ですか?」 弟者さんは今までにもない真剣な目つきでこう言った。 「俺を死神にしてくれないか。」 << TOP 元ネタ有りTOP >>
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プロフィール 基本情報 特技・超必 個性 能力解放 限界突破 潜在覚醒 エピソード ボイス一覧 imageプラグインエラー 画像URLまたは画像ファイル名を指定してください。 プロフィール キャラクター名 性別 タイプ 種族 黒キ死神メルザ 女 神 英装 職業 武器 出身
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帝王と死神 ◆wSaCDPDEl2 南東の市街地F-6で、一人の死神が北を目指し、 そして背後で殺人鬼がその死神の背中を見つめながら少しずつその距離をつめていた。 太陽はその姿を徐々に現してきているものの、辺りはまだ暗い。 (ククッ……ケンシロウと言ったな……) 鷲巣は思う。 (毎朝毎晩欠かさずの苦痛を伴う筋肉トレーニング…… 味気の無いプロテインや食事…… 毎日決まった生活習慣…… 数多くの代償を支払い強靭な肉体を手に入れた一人の男がいるとして……) 追跡相手の実力を目の当たりにしながらも殺人鬼… 鷲巣巌はシルバースキンに隠れた口を大きく横に広げて黄ばんだ歯を見せるように下非た笑みを顔に出す。 敗北の可能性など微塵も考てはいない。 (そんな物が何になる? 何十年もかけて作ったそんな肉体でも……) 自然にショットガンを握る手が強くなっていく。 (しょせん一本のナイフ……、日々何万本と生産されている何の変哲の無い果物ナイフの一本でもあれば… たとえ空洞のような人生を歩んできた中学生でも……) そしてソレを肩に構え銃口をケンシロウへと向けてみる。 「………」 (その肉体はいとも簡単に崩れ去るっ……!) だが引き金に指を掛けることは無く、鷲巣はそのままショットガンを腰に下ろした。 (クックック……ましてわしは今ナイフなど比では無い……言ってしまえば如何なる物も貫く矛っ……! どのような攻撃も通さぬ盾っ……!) まだケンシロウを撃つつもりは無い。 ただ、今引き金を引けばケンシロウを殺していた…自分はいつでもケンシロウを殺せるのだと、 そんな優越感を持ちたかっただけである。 (キキキ…ケンシロウとやら…貴様がどれほどの期間と努力で、その実力を手に入れたかは知らんが…ク、ククク… クク…キキキ…わしは何の苦労も無く貴様を破滅させる能力を持っておるのだっ…!) 干からびた身体の何処にそんな水分があったのだと思うほど汗が湧き出てくる。 もはや笑いを堪えるのも精一杯だった。 (カッカッカッ……!クククククク……) そしてただひたすら驕り昂る鷲巣は気づいていなかった。 「…………」 銃口をケンシロウに向けた時、ケンシロウが僅かだが反応を見せた事に…。 やがてケンシロウは一つの街灯の下で歩みを止めた。 (?? あ~……?なんだ?) 怪訝に思うが一旦電信柱に身を隠して様子を探る。 「!っ」 途端、街灯が消え辺りが暗闇に包まれる。 再び灯った時すでにケンシロウの姿はそこには無かった。 鷲巣の顔から笑みが消え焦燥が走る。 一体何処へ、と思う間も無く 「一つ言っておく…」 鷲巣の背後から冷たい声が届き、表情に恐慌が追加された。 先ほどとは違う、冷たい汗が体中を走る。 振り返ると予想通り… 「俺は北へ向かうだけだ、関わるな」 自分が先ほどまで追っていた男の冷たい眼が頭一つ上から自分を見下ろしていた。 「き、貴様……何時の間にっ……!?」 「俺は暗殺の訓練を受けてきた…こんな程度わけは無い」 問いかけに特に感情を込める事も無くケンシロウは答える。 「それと…」 鷲巣が腰に構えるショットガン、ケンシロウは自分の頭部に突きつけられたソレを一瞥する。 「それを使うのは止めておけ。この距離ではそんな物何の役にも立たん」 「クッ……!」 (この小僧……!) 強がりでもハッタリでも無いのはすぐに分かった。 これまで数多くの若者の表情を観察してきた鷲巣にとってそれを読み取るのは容易い。 ケンシロウは本気で銃に勝てるつもりでいる。 事実、先ほど見せた力ならばそれが出来てもおかしくは無い。 (舐めおって……舐めおって……このクズッ!クズッ!クズが!!) だが今更後に退けるハズが無い。 自分は王、神に選ばれたのだ。こんな努力でのし上がった程度の凡愚などに見下されてたまるものか、その思考だけが鷲巣を動かす。 「ほざ───」 鷲巣は引き金に掛けた指に力を入れた───途端、ケンシロウは手の甲でショットガンを押し退け、 照準をずらされた銃口から放たれた散弾は全てあらぬ方向へ飛んで行った。 「ぐっ……!」 銃口を捌かれ鷲巣の体も横に大きく崩れてしまう。 「あたぁ!」 体勢を崩したままの鷲巣にケンシロウは渾身の蹴りを放つ。 ケンシロウの足は見事に鷲巣の鳩尾に突き立つが… 「な…!?」 足の裏からは全く手ごたえを感じない。 自分の二倍は体重はある大男を新記録にしたケンシロウの蹴り… それが自分より体格の小さい相手を後ずらせる事も出来なかった。 「なんだと!」 此処に来て初めてケンシロウの頬に汗が走る。 「クックック…」 北斗神拳伝承者の蹴りですらもシルバースキンは防ぎきってしまったのだ。 「はっ!」 そして鷲巣の体から伸びてくる『何か』を感じ取り、咄嗟に避けるが一瞬間に合わず肩当ごと肉を多少抉られてしまった。 「クックック、まだまだ…!」 間髪いれずに飛び交う二、三撃目を紙一重で右、左と避けるケンシロウ。 一旦距離を取ってみると鷲巣の体から物が飛んできたわけでは無いのが分かった。 「それは一体…!」 この世のものなのか…? ケンシロウの目の前にソレは在った。 まるでプラスチックと木材を合わせたような不気味な質感、 毒々しいピンク色、全身に走る網目模様… 人間を模られてはいるものの、遠目で見たとしても人と見間違える事は無いだろう。 だが不気味に感じさせる要素はむしろ顔に集中していた。 フードのように体と同じ網目模様が走っており、 ガラス玉をめり込ませたような無機質な眼球、 額に飾りのようにつけられているもう一つの顔、 異常に小さい唇…そして耳鼻は無い。というより顔面に凹凸自体が殆ど無い。 たくましい体に反し、感情を感じさせる要素が全く無いのだ。 帝王っ…! 常に感情らしい感情を持たず、何者も平伏させる威圧を持るそれはまさに帝王と呼ぶに相応しい代物だった…。 「カッカッカッ……それを知った所でどうにもならんよケンシロウ君……」 背後から勝負を挑むつもりが、背後に回られ… 相手のペースに巻き込まれまくった鷲巣だが自分が優位に立ったと感じてペースを取り戻していた。 顔にもまた笑みが蘇っている。 だがケンシロウは多少の動揺などすぐに抑え、肩に付いた血を指で掬い取り舐めてそれを唾のように吐き出した。 「言っておくが、俺は人形遊びは卒業している」 指をパキポキと刻みのいい音を鳴らす 「キキキ…言いたまえっ……」 脇をしめボクシングに近い構えを取るキング・クリムゾンを前に従えた鷲巣と意に介した様子も無いケンシロウ。 二人の距離は少しずつ、一歩進むごとに近づいて行き…そして 「キング・クリムゾン!!」 先手必勝と言わんばかりに、最初に仕掛けたのは鷲巣だった。 キング・クリムゾンのその拳が真っ直ぐケンシロウに向かってゆく。 破壊力、スピード、あらゆる点において超一流の拳…まともに喰らえばケンシロウですら危うい…が 「なっ…」 あっけなく勝負はついた。 キング・クリムゾンの腕が完全に伸びる前にケンシロウに手首を掴まれてしまったのだ。 いくらスタンドに破壊力があろうが、スピードが速かろうがそれを操る鷲巣は所詮格闘技に関しては素人であり、 攻撃は単調になり予備動作も大きくなる。 その程度の動きなどケンシロウにとっては見切る事は容易かった。 「うがあああ……!」 そのままキング・クリムゾンはケンシロウに手首を締め上げられそのダメージは鷲巣に伝達した。 いかにシルバースキンであってもスタンドからのダメージ伝達を防げるわけが無い。 鷲巣の持つ最強の矛は同時に諸刃の剣でもあったのだ。 「どうやら、この木偶の坊に対する痛みは貴様にも伝わるようだな」 言いながら締め上げる力を強める。 「この小僧っ…ぐっ……!」 残された手でケンシロウを攻撃しようとするがその拳もまたアッサリ捕らえられ同じように締め上げられる。 鷲巣の呻き声が大きくなる。 「言っておくが、そんな玩具では俺は殺せん。これ以上俺に関わらん事だ」 言うが早いか締め付けられていた両手首が開放される。 「失せろ」 捨てるように言い放ちケンシロウは踵を返した。 「くううっ……」 痛む手首を押さえながらも鷲巣は遠ざかっていくケンシロウを睨み付けた。 王である自分をものともせず、むしろ見下した態度を取るケンシロウ…その姿がここに連れて来られるまで戦っていた青年と重なった。 「失せろっ…だと……? わしに言ったのか?あ~??」 再び立ち上がりショットガンをケンシロウに向ける。 「ふざけおってっ……!あの小僧っ……!」 先ほどより距離は遠くなったが外す事は無い。 むしろ近づきすぎたからこそあんな目にあったのだ。 「クックック…」 今度こそ確実に殺す。 確実に。 鷲巣は引き金を───引けないっ 「あっ……!!」 引き金に掛けたはずの指が動かない。 いや、全身が動かせない。 「どうやら口で言っても分からんようだな」 振り向いたケンシロウに視線を向けられただけで、単純な比喩で表すならば蛇に睨みつけられた蛙のように… 鷲巣は体を動かせなくなった。 恐怖っ……!! アカギとの対決の時とはまた別の恐怖っ……!! 鷲巣がこれまでで一番恐れた相手であるアカギとの勝負……。 それはまだ麻雀での事であり、自分のツキを信じる事が出来た……。 だが今鷲巣は己の強運ですらも頼る事の出来ない相手を目の当たりにしている……。 この男には……今目の前にいる男にはキング・クリムゾン、シルバースキン、 そして己の強運……それら全て併せ持っても……死っ……! それは揺るがないのでは無いかっ…… この時……ただ一人の男に睨みつけられた……それだけで……鷲巣の思考は全てそれで塗りつぶされた。 (このガキッ……なぜっ……なぜ王であるわしがっ……動けないんだっ……!あいつ以上の悪魔かっ……) 「違うな」 鷲巣の考えを見透かしたかのようにケンシロウが答える。 「俺は……」 「死神だ」 その一言でタガが外れたかのように引き金を引く。 だが散弾が放たれる時すでに鷲巣の腕はケンシロウによって掴まれていた。 「ふんっ!」 途端、鷲巣には何が起こったか分からなかった。 腕に物凄い力がかかり、同時に回りの風景が目の焦点速度を上回ってグチャグチャにかき乱れる。 それがケンシロウに振り回されているからだと気づいたのは、重力から自分の体が開放された時だった…… ケンシロウによって放り投げられた鷲巣の体は綺麗な放物線を描いて、窓ガラスを割り民家の中に放り込まれた。 ◆ ◇ ◆ 「ググッ……」 顔に鈍いようで鋭い痛みが走る。 割れた窓から入り込む太陽の光は瞼をかい潜って鷲巣の意識を引っ張り出した。 薄く開けた目にまず入ってきたのは白い床だった。 靄のかかった頭で床に手を付いて体を起こそうとするも、その床に手が届かない。 そして床は目の前にあるはず、なのに背中が何かに圧迫されている。 一瞬天井に貼り付けられたのかと思ったが勿論そんな訳が無い。 そこでようやく自分が床だと思っていた物が実は天井だったと気付いた。 上体を起こしあたりを見渡す。 霞んだ視界に入ってきたのはベッド、勉強机、本棚……そして割れた窓に内側に散らばるガラス片… 最初は訳が分からなかった。 まるで夢から覚めた時のような、あるいは夢を見ているような錯覚に陥りかける。 (そうだっ……) 少しずつ思考がクリアになってくると同時にこれまでの事が頭に湧き上がってきた。 (わしはっ……あの男に投げ飛ばされ……!) 思い出すと同時に沸々とした怒りが湧いた。 ショットガンは───ある! 落ちてあったのを拾い上げ窓から身を乗り出し外を覗う。 予想していた通りすでにそこにケンシロウの姿は無い。 「くぅ~…」 逃げられた……。 「クソッ……クソッ……あの小僧がっ……小僧がっ……!」 手始めに本棚に並べられていた本を幾つか掴み、部屋中に投げ飛ばす。 キング・クリムゾンで勉強机を破壊する。 蛍光灯を掴み窓から投げ飛ばす。 無事だった他の窓を叩き割る。 「クッ…くぅ~!!」 しかし鷲巣の破壊行為はそこで終わる。 (グッ落ち着けっ……わしはまだ死んだわけでは無い……わしはあの状況でも生き延びたんだ……!! わしは……ツイているんだ……!今ここで騒いでいたら周りの連中に位置を知らせてしまうような物……! ここは耐えるんだ……!) 残っていた理性を総動員して自分を抑え付けた鷲巣は、そのまま玄関へと向かう。 ただ、殺すべき人物が一人増えた。 (あの小僧っ……必ずっ……殺すっ……必ずっ……) 時刻は間も無く放送に入ろうとしている…。 【F-6 民家 一日目 早朝】 【鷲巣巌@アカギ】 {状態}激しい怒り+やや疲労 顔に少しガラスの破片による切り傷 {装備}シルバースキン@武装錬金、ジャギのショットガン@北斗の拳、キング・クリムゾンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険 {道具}、支給品一式×2、ジャギのショットガンの予備弾24@北斗の拳、i-pod、泉こなたのスクール水着@らき☆すた {思考・状況} 基本:殺し合いに乗る 1 優勝する 2 更に強力な武器を手に入れケンシロウだけは殺す 参戦時期:原作13巻終了後 [備考] ※キング・クリムゾンは1秒しか時間を飛ばせません。 時間を飛ばすと大きく体力を消耗する上、連続しては飛ばせません。 【F-5 路上 一日目 早朝】 【ケンシロウ@北斗の拳】 [状態]:カズマのシェルブリット一発分のダメージ有り(痩せ我慢は必要だが、行動制限は無い) キング・クリムゾンにより肩に裂傷 [装備]: [道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1~3、本人確認済み) [思考・状況] 基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない 1:ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎他ゲームに乗った参加者を倒す 2:助けられる人はできるだけ助ける 3:乗ってない人間に独歩・ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎の情報を伝える。北に向けて移動中 [備考] ※参戦時期はラオウとの最終戦後です。 072 自分の選んだ道を行け! 投下順 074 第一回放送 072 自分の選んだ道を行け! 時系列順 074 第一回放送 049 上がれ!戦いの幕 鷲巣巌 085 Drastic Soul 049 上がれ!戦いの幕 ケンシロウ 087 悪魔の子
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驚楽園の道化者(アメイズメント・アルルカン)アルベル /A・∀・HH(アメイズメント・アトラクション・ホログラフィック・ホール) 継承元 翆の歴史の《デスピアの導化アルベル》 あるるかん(からくりサーカス) 性能 上面は「アメイズメント」を持つ呪文・タマシードをサーチし、味方の大型が破壊された時に復活できる軽量ブロッカー。 下面はS•トリガー付き超次元呪文。ついでの如くシールドを追加できる。 概要 別次元のアルベルが参戦。驚楽園のメンバーを引き連れ、トレセン学園を襲うサーカス・ディスペクター達と対峙する。 余談 本人は翠の歴史の出を自称するが、トネリコ曰く「翠の歴史におけるアルベルは2世紀前に行方知れずになった」筈らしく……? タグ ロボット 翠の歴史 遊戯王 名前 コメント
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Un BIRTHDAY SONG 愛を唄う死神の攻略キャラクター。 ゼンのパートナーである死神で、普段は無口だが、口を開けば相当な毒舌家。 あまり感情を出す事はないが、ゼンとはよく口ゲンカをしている。 死神の仕事に関しては冷静かつ着実にこなすため、仕事の精度は高く、死神界での評価は高い。 ゼンが起こした揉め事の後始末を、裏でこっそり行っている。 誰よりも冷めた考えを持っており、現世の魂はすべて地獄に送ってしまえばいいと思っている。 名前 リッカ(りっか) 年齢 20歳(享年) 身長 174cm 体重 誕生日 9月18日 血液型 AB型 声優 日野聡 該当属性 フード、ミステリアス、毒舌家、人外 該当属性2(ネタバレ) 『』