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最強って何かね ―――――――――――― ☢ CAUTION!! ☢ ―――――――――――― 以下の御作品を愛読されている方は先に進むことをご遠慮ください。 武装食堂 キズナのキセキ 深み填りと這上姫 場合によっては意図されていない、悪い方向に読み取られる可能性があるため、閲覧をご遠慮頂くものです。 残虐・卑猥な行為などが理由ではありません。 強いて言うならばコタマがマシロに腹パンされる程度の残虐さです。 ネタバレを含む場合があります。 また神姫や固有名称を(無断で)お借りしています。 登場はしません。 尚、TVアニメ武装神姫 第11話「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」のネタバレを少し含んでいます。 茶室に集まった私とメル、コタマ姉さん、マシロ姉さんでアニメの次回予告まで見終えて、コタマ姉さんが大きなあくびをした時だった。 テレビを消したメルは唐突にこう問うた。 「でさ。実際はどうなのさマシロ姉。今の最強の神姫って誰なの?」 ◆――――◆ 「言うまでもないでしょう。一番は公式戦で優勝経験のあるアーンヴァル型アルテミスかストラーフ型のビクトリア(ヴィクトリア?)。二番は――名前は忘れましたが、あの世界二位(笑)のエウクランテでよいのではないですか」 「マシロ姉さんが(笑)とか使わないでください。キャラが崩れます」 「そーじゃなくてさ。ほら、マシロ姉だってそのアルテミスとほとんど互角だったでしょ。非公式戦も含めて、誰が最強かってこと」 メルの言うバトルというのは、あれはマシロ姉さんが私たちを特別に、対アルテミスさん戦に招待してくれた時だった。 強い神姫の非公開でないバトルの観客席はいつも早い者勝ちの超満員で、初めて生で見た武装神姫の頂点クラスのバトルは思い出しただけでも武者震いしてしまう。 アルテミスさんの十八番『先々の閃』を真っ向から迎え撃ったマシロ姉さんの技はなんとビックリ! 私の『ブレードジェット』を使った突進だった。 といっても二人の激突は文字通り目にも留まらぬ速さで、それと知っていなかったら「離れてた二人が消えたと思ったら中間地点から衝撃波が出た」ようにしか見えなかったのだろうけど。 あの時のバトルは大接戦で、早い段階で十二の騎士のうち半数くらいを落とされていたマシロ姉さんが惜しくも負けてしまったけど、身近にいる信じられないくらい強い神姫の一歩も譲らない戦いに私は大きな歓声と拍手を送ったのだった。 「マシロ姉だけじゃなくて他の『デウス・エクス・マキナ』とか、世の中には隠れた強い神姫がたくさんいるんでしょ。ぜ~んぶひっくるめて、誰が最強かってこと」 「私も興味あります。実はマシロ姉さん、最終的にアルテミスさんに勝ち越してたりしてないんですか」 「あなた達は最強の神姫をそう簡単に決められると……まぁ、いいでしょう。簡単に『最強』という言葉を使わないよう知っておかねばなりません。コタマも良い機会です。聞いていきなさい」 眠い目をこすりながら立ち去ろうとしたコタマ姉さんの尻尾を、マシロ姉さんはむんずと掴んだ。 ◆――――◆ 「まずは――そうですね。エル殿とメル殿は勘違いをしているようですが、『デウス・エクス・マキナ』という括りはあなた方が想像しているよりずっと意味の無い、名ばかりのものです」 「だろうね」とコタマ姉さんは知った風にうなずいた。 「『デウス・エクス・マキナ』がまとまりのある集団だったら、マシロも少しは大人しくなってたろうもん」 無視したマシロ姉さんは続けた。 「そもそも『デウス・エクス・マキナ』とは、『京都六華仙』に対抗意識を燃やした誰かが、修羅の国でも似たような集団を作ろうと勝手に神姫を選んだだけ……らしいに過ぎません」 「らしい? その誰かって、『デウス・エクス・マキナ』の中の誰かじゃないの?」 メルの問に対してマシロ姉さんは首を横に振った。 「誰なのかは分かっていませんが、その線は面子を見る限り薄いでしょう。【神様が暇つぶしに作った】、【マオチャオネットワークによって生み出された】などという噂すらあるくらいですから。私もいつの間にか一人に数えられていて首を捻ったくらいです。当人への告知すら未だになく、噂だけが独り歩きして実体化を果たしてしまったような状態です。まあ、私が知る限り実力だけは十分伴った神姫が選ばれているので、見る目のない者が作った、というわけではなさそうですが」 「マシロ姉さんを含めて五人いるんですよね」 「ええ。初めに選ばれていたのは四人でしたが。私の他に、 『清水研究室 室長兼第一デスク長』ゴクラク。 『大魔法少女』アリベ。 そして後に追加で選ばれたのが『火葬』ハルヴァヤ。あと一人は知りません」 「知りませんってアンタ、そんなてきとーでいいの?」 「誰も知らないのだから仕方がないでしょう。もしかすると噂の【神様】とやらかもしれませんが」 「なんか、本当にいいかげんだね。『京都六華仙』に対抗する以前のレベルだよ。この前の【貧乳の乱】の時に遊びに来てた牡丹が六華仙の一人なんだよね。京都市だとちゃんと取りまとめ役やってるんだってよ」 「それただのヤ◯ザじゃん」というコタマ姉さんのツッコミには「修羅の国のコタマ姉さんがそれを言いますか」と適切に返した。 「いえエル殿、コタマはこれでも役に立っているのですよ。武装神姫のバトルとは端的に言えば強弱上下を決めるものですから、違法改造神姫であろうと何であろうと粛清できる実力者が目を光らせておかなければ、必ずといっていいほど犯罪に手を染める愚者が出て来るのです」 「修羅の国のマシロ姉さんがそれを言いますか」と再び適切な返しを挟んだのだけれど、マシロ姉さんには聞こえなかったらしく、話は続いた。 「私は竹櫛家を守ることのみが使命ですし、ゴクラクは水面下で怪しげな動きをしていて、ハルヴァヤは私たちのレベルから身を引いてしまっています。勿論、正体不明の神姫は言うに及ばずです。なのでこの地域が比較的安定しているのは、誰彼構わず挑まれた勝負に負けない、つまりパワーバランサーのような役割を持つコタマと、大規模かつ熱狂的なファンクラブを持つアリベの二人が表立って動いているからなのです」 「なるほど。だからこの地域では悪事が最小限に留まっているんですね」 「「「修羅の国のアルトレーネがそれを言うな」」」 三人からの一斉攻撃を受けた。 言われてみれば第n次戦乙女戦争とか名物化してるけど、私一人が悪いわけじゃないのに……。 「てことは、真面目に戦ってるアタシが実質的な統治者ってわけ? ウワハハハ、苦しゅうないぜ。オマエら頭が高いんじゃねーか?」 「タマちゃんの背が低すぎるので見下ろす形になっちゃうんです」 「誰がタマちゃんかコラァ!」 私に飛びかかってきたコタマ姉さんはしかし、空中でマシロ姉さんに尻尾を掴まれて体の前面を床に打ち付けた。ビターン! という感じで。 「にゃにしやかんたてめへ!」 鼻に深刻なダメージを負ったらしく手で押さえながら涙目になったコタマ姉さんを、マシロ姉さんは華麗に無視した。 「さて、ここで話を元に戻しましょう。真に最強の神姫とは誰か、という話でしたが残念ながら現状では特定することは不可能です。候補者をあらゆる場所から集めて天文学的数字の回数だけバトルを行ったところで優勝者は決まりません」 「死ねやぁ!」 コタマ姉さんは鼻を押さえたままドロップキックをはなった! しかしマシロ姉さんはこうげきをかわした! コタマ姉さんは再び床に落下してダメージをうけた! 「そうなってしまった原因はコタマ、あなたにあるのです」 築地のマグロのようになったコタマ姉さんを指さして断言するマシロ姉さん。 なんとなくだが、強い神姫になるためには多少の事には動じず無視できる肝っ玉CSCが必要不可欠であるような気がした。 ◆――――◆ コタマ姉さんが落ち着いてから、マシロ姉さんは改めて言い直した。 「コタマ、あなたが矛盾を作ってしまったせいで最強の神姫を決めることができないのです」 「意味が分からん。アタシが何したって? いつ、どこで、なにを」 「以前あなたは妹君と、他人のトレーニングに付き合ってやったと言っていましたね」 「んん……? ああ思い出した。ミスティのことか」 「誰? 聞いたことあるようなないような名前だけど。コタマ姉、何やらかしたの?」 「なんでやらかした前提で話してんだよ。むしろやらかされた側だっての。アタシがまだハーモニーグレイスだった時にさ、『狂乱の聖女』っていう悪者神姫がいて、ソイツを始末する旅か武者修行か何かに出てたミスティがアタシの噂を聞いて『狂乱の聖女』じゃないかって確認に来たんだ。武装が似てたらしい。んで、アタシは無敵の『ドールマスター』様だってバトルで教えてやったら、次は『狂乱の聖女』を倒すために秘密のトレーニングをするから同じハーモニーグレイスで似た武装のアタシに仮想敵になれ、って話を持ちかけられたってワケ。他にも大勢の連中がミスティの練習に付き合ってて……鉄子ちゃんもどーしてわざわざ付き合ってやるかねえ」 「コタマ姉さんが仮想敵って……その『狂乱の聖女』さん? よっぽど強い神姫なんですね」 「それが腹立たしい話でさー。だったらアタシが直接ソイツを始末してやるって乗ってやったのに――いやまあ同じハーモニーグレイスで強いヤツってんなら上下を決めておきたかったってのもあったけど――ミスティのマスターがアタシじゃ勝てないとか言いだしたんだ。筐体の中でヌクヌク温室バトルやってるヌルい神姫じゃ勝てない、ってさ。よりにもよってシスターの善意を断るどころか、『ドールマスター』をふやけた煎餅扱いだぜ? 信じられるか?」 「信じられませんね」と言ったのは意外なことにマシロ姉さんだった。 まさか調子に乗ったコタマ姉さんに同調するなんて、熱でもあるんじゃ……と思ってマシロ姉さんの顔を覗きこんでみると、風邪どころか眉間にしわをよせてコタマ姉さんを親の敵か何かのように睨んでいた。 透き通ったエメラルド色で綺麗だったはずの瞳がドス黒く変色していた。 「まったく信じられませんコタマ。妹君を守る立場にありながら、自分より強いと言われた神姫を――よりにもよって罪を犯した神姫を見逃した?」 「いや、見逃したっていうか、その時点じゃ居場所すら分かってなかったらしくて……何よ、なんでそんなに睨むのさ」 「居場所が分からなければ突き止めればいいだけの話でしょうが。妹君が何処でアルバイトをしているか知らないわけでもあるまいに。答えなさいコタマ、何故その時点で『狂乱の聖女』とやらを始末しなかった。赤の他人のトレーニングに付き合ったことで僅かでも妹君はその犯罪者と繋がりを持つことになってしまった。つまり危険に晒したということだ。仮に本当にコタマの手に余る相手であろうとも私ならばどうとでもなる。しかしあなたは何もしなかった。妹君を危険に晒したまま! 答えろコタマ! どうして何も行動を起こさなかった!」 床に拳が強く叩きつけられ、茶室全体が揺れた。 部屋の空気は凍りついたように冷たく恐ろしくなっていた。 「だ、だだだって……その……あっちにも、じ、事情があったし……た、ただの他人が手を出したら……」 私とメルはお互いに抱きつきかばい合いながら震えるしかなかった。 コタマ姉さんが怯えるほどの殺気。 レラカムイの体はもうとっくに降参の姿勢で、頭の大きな耳と長い尻尾が垂れ下がっている。 マシロ姉さんが両手をゆっくりと肩の高さに上げた。 コタマ姉さんが殺される。 制止に入りたくても体が怯えきって動いてくれない。 そして怒れるクーフランの掌は五指を開いたまま上に向けられ――。 「それで正解です。他所様のストーリーを崩してはなりません」 アメリカンジョークでも言うかのように肩を竦めたマシロ姉さんは殺気を霧散させた。 緊張が解けた瞬間、武装した私たち三人が一斉にマシロ姉さんに襲いかかったのは言うまでもない。 ◆――――◆ 「寿命が縮まった……五年分くらい」 「私もです……後でマスター経由で鉄子さんにチンコロします。絶対します」 「許してください、少々やりすぎたのは反省しています。昨日見たドラマの刑事役がなかなか堂に入った演技をしていまして、それが頭にあったものでついつい。お詫びに後でとっておきのヂェリーをご馳走しますから」 「ヂェリーごときで許せるかボケ」とコタマ姉さんは言いはしたけれど、声には全然力が入っていなかった。 私とメルの寿命が五年縮んだとしたら、殺気を直接当てられたコタマ姉さんの寿命はもって数ヶ月レベルなんだろう。 さっき自分で言ってた通りの『ドールマスター(ふやけた煎餅Ver.)』だ。 そんな私たちを見て悪びれるどころか自分の演技力に満足したらしいマシロ姉さんは、「それはさておき」と私たちの殺気を軽く受け流した。 「コタマの言った通り、他人のストーリーに口を挟んではいけません。というより、口出しできない、と言い表したほうが正しいのは分かりますね。仮にコタマがその『狂乱の聖女』とやらを倒してしまったなら話が余計にややこしくなり、妹君は非難される立場に立たされるでしょう。他にも――」 マシロ姉さんはコタマ姉さん、メル、私の順に見回した。 「あなた達とハナコ殿、そして『京都六華仙』の一人は【貧乳の乱】に参加したそうですね」 「『参加』? 今オマエ『参加』っつったか? それはアタシが好き好んで加わったみたいなニュアンスか?」 メルは静かに私の側から離れてコタマ姉さん側についた。 けれどコタマ姉さんは「アイネスはアニメじゃ谷間があっただろうがこのクソ」とメルを突き返してきた。 ああ哀れなりレラカムイ。 せめてほんの数ミリでも私の胸を分けてあげることができたら。 「さらにコタマは妹君の大学で他の学生に自分勝手な因縁を付けて、メル殿を巻き込んでの勝負の最中ではないですか」 「当たり前だ。『双姫主』だか何だか知らねーけど、鉄子ちゃんのことを『鉄子』って呼び捨てで表記しやがったんだ。鉄子ちゃんのことを呼び捨てしてもいいのはアタシと竹櫛家の連中だけだ。もう修正されてるけどさ」 プンスカ怒りながらコタマ姉さんはそう言った。 この時も鉄子さんは巻き込まれているようだけど、相手が危険じゃなければマシロ姉さん的には問題はないらしく(コタマ姉さんにイチャモン付けられた相手の方は迷惑この上ないだろうけど)、再びご自慢の演技力を発揮しようとはしなかった。 「以上で三つ、例を挙げました。共通点は『コタマが関わっている』ことです。これが矛盾を生じさせてしまっているのです」 「矛盾? 何がですか?」 「先に言ったでしょう。コタマが矛盾点となっていると」 「いえ、ですからその前に……」 「何の話だったっけ?」とメルが私の言いたいことを言ってくれた。 「最強の神姫は誰かと聞いたのはあなたでしょう。そして結論を出すことが不可能であることと、その理由がコタマが矛盾を発生させたためであること。具体例を挙げて理解しやすいよう説明していたのに根本を忘れるとは何事ですか」 「「「誰のせいだ」」」 ◆――――◆ 「アタシが矛盾点? 意味わからん」 「では順を追って説明しましょう」 もうアニメを見終えてから随分と時間が過ぎていて、そろそろ朝日が昇ってくる時間になる。 怖がらせられたり暴れたりしたせいで眠気は吹っ飛んでしまっているけど、重度の疲労が重くのしかかってきている。 メルもコタマ姉さんも顔を見れば私と同じく疲れているようで、マシロ姉さんだけがすまし顔だった。 「まず『狂乱の聖女』の件。コタマはトレーニングに付き合ったと言いましたが、その場で一度でも敗北しましたか?」 「まさか。『FTD3』を使うまでもなかった。しかもそんときゃまだアタシはハーモニーグレイスだったし、今のレラカムイの体ならファーストかセカンドのどっちか片方でも十分だろうね。ま、あっちも修行で当然レベルアップしてるだろうけどさ」 「つまり『狂乱の聖女』は、そのレベルでトレーニングや専用対策を行うことで対応できる神姫ということになりますね。では次に【貧乳の乱】」 コタマ姉さんの大きな耳がピクッと動いた。 ハーモニーグレイスの胸が大きかった分が、今の平坦な胸に対するコンプレックスを加速させているのだろう。 「この一件が最大の問題です。エルメル姉妹も戦闘には加わったようですが、集団 対 集団の中で大きな戦果を上げたのはコタマ、ハナコ殿、そして『京都六華仙』が一人、『遊びの達人』だったそうではないですか」 「それが何さ」 「『京都六華仙』とは私を含む『デウス・エクス・マキナ』の元になった存在であり、京都市の頂点なのです。通名が『遊びの達人』ならば読んで字の如く、純粋にお遊びに興じただけかもしれませんが、なぜコタマ如きに肩を並べているのですか。『京都六華仙』ならば事のついでにコタマにも灸を据えるくらいの気概を見せて欲しいものです」 「レラカムイパンチ!」 コタマ姉さんの短い右腕から繰り出されたストレートはしかし、マシロ姉さんにあっさりはたかれた。 「最後に目下進行中の、コタマが一方的に喧嘩を売った勝負。『双姫主』なる称号を持つ相手だそうですが、妹君にこれ以上恥をかかせないためにも当然、勝つのでしょうね?」 「知らんよ。作者に訊け」 「はぁ……」とマシロ姉さんはこれ見よがしにため息をついた。 「情けない。ここで『作者のストーリーなんざ知ったことか。楽勝だ』くらいの事を言えないのですか」 「オマエ、それさっき自分で言ってたことと矛盾するじゃねえか。他人のストーリーに口を挟むなっつったのを忘れたか、この健忘症め」 「あ、『矛盾』」 メルがそう呟いた時、マシロ姉さんは我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。 「その通り、矛盾しているのです。コタマは私たちの地域におけるパワーバランサーでありながら、勝つか負けるかフタを開けてみなければ分からない状況にあります。メル殿はともかくとして、妹君はなぜコタマより確実に強い私に声をかけて下さらなかったのやら」 「なんだ、一緒に遊びたかったのなら素直にそう言えばよかったのに。この恥ずかしがり屋さんめ」 「クーフランパンチ!」 並のスペックじゃないマシロ姉さんの右ストレートはコタマ姉さんの防御を軽く突き破って、みぞおちに食い込んだ。 口から形容し難いものを吐き出したコタマ姉さんは前のめりに倒れ、再び築地のマグロになってしまった。 安らかな眠りについたコタマ姉さんのことを意に介さず、マシロ姉さんは話を続けた。 私は竹櫛家が恐ろしい。 「他にも地理的な矛盾なども数えきれないほどあるのですが、そこには目を瞑りましょう。修羅の国、京都、北は北海道から南は沖縄までお構いなく、パワーバランスが滅茶苦茶になってしまっているのです。それもこれもすべてコタマのせいで。よってメル殿の『最強の神姫は誰か』という問に対しての答えを出すことはできません。ご理解頂けたでしょうか」 「あー……うん、理解したよ」 メルの目はうつ伏せに倒れて……もとい眠っているコタマ姉さんに注がれている。 パワーバランサーをパンチ一発で黙らせるマシロ姉の存在こそ最大の矛盾じゃない? と言ってコタマ姉さんの二の舞にはなりたくないのだろう。 「それは何よりです。説明した甲斐があったというもの――おや、もうこんな時間でしたか。話が長くなってしまいましたね。ではこれにて解散としましょう。約束のとっておきのヂェリーは次の機会にお渡しします。では失礼」 立ち上がったマシロ姉さんはコタマ姉さんの尻尾をつかみ、ズルズルと引きずったまま茶室から去っていった。 ポツンと残された私とメル。 「ねえ、エル姉」 平坦な声でメルが問うた。 「結局のところさ、最強の神姫って誰?」 私に聞かれても困る。 けれど……。 「とりあえずマシロ姉さんってことにしておきませんか? それで少しは夢見も良くなると思います」 「そだね。そうしとこう」 なんだかよく分からなかったけれど、一つだけ確かなことを言えるようになった。 『最強』という言葉を気安く使ってはならない。 『15cm程度の死闘』の時事ネタ話の中で初めて事前に作文しました。 などという事はどうでもよくて、アニメの「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」なる予告を見て、修羅の国視点で考えてみました。 もうちょっと条件を絞ると、 1.『デウス・エクス・マキナ』は、ばるかんさんの『京都六華仙』から発想をパク・・・お借りしている。すなわち強さはだいたい同等。 2.トミすけさんの『狂乱の聖女』対策内で多作品が同時にリンクしているため、最良の基準点になると期待する(という願望)。 3.主人公補正、ストーリー補正、愛の力補正、脇役補正、かませ犬補正、死亡フラグ補正 etc.・・・それら一切を排除。例えば、マシロはコタマに絶対負けない、コタマはエルメル姉妹に絶対負けない、Lv.100ミュウツーはLv.1キャタピーに絶対負けない、といった感じ。 4.他所様だからといって依怙贔屓しない(これ一番重要)。有名神姫のミスティを相手取ってもタマちゃんは意地でも勝つ。 温かい缶コーヒーを飲みつつ、これらの条件下で深く吟味した結果・・・結論を出すのは不可能ということが分かりました。 唯一の架け橋であるタマちゃんの存在が逆に、どうしても邪魔になってしまうのです。 『ドールマスター』コタマを扱い頂いた作品は4つ。 そのうち、ALCさんのエウクランテ型エニはコタマと衝突する前に戦乙女の群れに飲み込まれてしまったため、コタマ本人がちょびっとでも関わったのは実質3作品。 3作品くらいならなんとか順位を決められるんじゃないか。そう思い上がることもせずに、あくまで修羅の国に基準を置いて1つずつブロックを積み上げていったのですが、積み上げクレーン役のコタマが矛盾を抱えていてはどうしようもありません。 また、『15cm程度の死闘』という異分子を除けばどうか? は自分の存在意義が無くなるので却下(旧掲示板を開く限り不可能だと見られますが)。 まことに遺憾なことです。 もう残す手段は、彗星の如く表れた天才がスパパッとすべてのストーリーをまとめ上げ、頂点を決めてくれることに期待する他ありません。 暫定的かつ勝手に最強となってしまったクーフラン型『ナイツ・オブ・ラウンド』マシロの座を奪う神姫の登場にも期待したいところです。 ただし違法な手段で這い寄ろうとする神姫相手には、にゃーの怨念が取り憑いたマシロがなりふり構わず殺しにかかります。 それもこれも、ここまで読んで頂けた方が一人でもいらっしゃればの話ですが・・・。 ところでアニメの感想ですが、ヴァローナを愛でたい。 思い出したように出てきたハムスターもいいけどヴァローナを愛でたい。 胸が若干盛られてたような気がしたけど、それでもいいからヴァローナを愛でたい。 15cm程度の死闘トップへ
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鋼の心 ~Eisen Herz~ 「犬子さんの土下座ライフ」特別編 -遠征編- ※土下座さま/著 ネタバレ解禁につきあとがき差し替え。 「ここが天海神姫センターですか」 「はい、リアルバトルオンリーの容赦なき戦場で、ツワモノどもが切磋琢磨する修羅の国です」 「うーん、確かに様々な上級者の方の胸を借りることは出来そうですが……正直不安ですねぇ」 「大丈夫ですよ! 私はLPの豊富さには定評のあるハウリンタイプで、しかも今までの戦績は全戦全損敗北なためその成長もハンパなく、打たれ強さには自信がありますから!」 「冷静になると、あまり威張れた話ではありませんねぇ」 「うう、お恥ずかしい限りです……ですが! 今日ここで修練を積むことで、きっと明日は新しい自分に変わっていけるものと信じています!」 「そうですか……でしたら僕はもう何も言いません。全力でサポートしますから、頑張って来てください!」 「はい!」 「ネメシスだー! ネメシスが出たぞー!」 「マジかー!」 「ジーザス!」 「ま、待ってくれ! 中に、中にまだ俺の種子が……!」 「もう手遅れだ、諦めろ!」 「そ、そんな……種子、種子ぉぉぉぉぉ!」 「こっちには化け猫が出たぞー!」 「オーマイガッ!」 「俺、このバトル終わったら猫子にコタツクレイドル買ってやるって約束してたんだ……」 「くそう、やってやる、やってやるぞ!」 「すまない兎子……! 勝ってこいなんて言って、俺が悪かった! 俺が悪かったから…… どうか無事に、無事に戻ってきてくれ、たのむ……!」 「曲射が、曲射がどんなに逃げても追いかけてきて……物影に隠れても平気で狙ってきて…… いやあああああああああああああ!!」 「落ち着くんだ鳥子! もうバトルは終わったんだ、終わったんだ!」 「マスター、そっち大丈夫? トラップない? トラップないよね? あ! 今私の後ろでトラップ仕掛けられたかも?! マスターはそっち見ててね?! 絶対だよ?! 絶対目を離しちゃダメだからね? 目を話したらその隙にトラップで囲まれるんだから……!」 「いやだから黒子、バトルはもう終わっってるって」 「こっち向いちゃダメー!! トラップしかけられちゃったよ、囲まれた、囲まれちゃったよどーすんのよマスター?!」 「くそ、今日はなんて日だ……!」 「おい! こっちじゃポン刀持ったアーンヴァルとやたら素早いサイフォスが狩り物競争してるぞ?!」 「……中の奴らの冥福を祈ろう」 「勝手に殺すな?!」 『No3エリアの戦闘が終了しました』 「丑子! 大丈夫か丑子?!」 「ま、ますたぁ……わたし、ますたぁの武装神姫になれて……幸せでした……がくっ」 「丑子ーーーーーーーーーーーー!!」 「あれ……? なにも見えないよ……何も聞こえないよ……マスター、どこですか、マスター……?」 「ここだ……俺はここにいるぞ……よく頑張ったな、もういい、もういいんだ、ゆっくり休むんだ……」 「ご主人様ー……パインサラダ作る約束、守れなくてごめんなさい……」 「そんなこと気にするな! そんなものいつでもまた作れるじゃないか!」 『予約ナンバー121~132の方は、対戦スペースへお入りください』 「いやああああああああああ!! もういやあああああああああああ!!」 「いかせない、いかせないぞ俺の騎士子は?!」 「あ、俺いま急用ができたわ。帰ろっと」 「ふ、震えてなんていませんよ? これは武者震いですったら」 「あ、マスターなんか前の人が次々帰っていきますよー♪ 得しちゃいましたね♪」 「バカ! 俺たちも帰るぞ!」 「…………………………」 「…………………………」 「……帰りましょうか?」 「はい♪」 遠征編――完! 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 犬子さんの土下座ライフ。へ進む はい。と言う訳でネタバレのお時間です♪ ALCの作と見せつつ、実は土下座さまの作品だったりする本作。 果たして何割ほどのマスターさんが気づかれたのでしょうか? まあ、文体がぜんぜん違うのでもろばれだったような気もいたしますが…。 ALCに暖かなイメージのSSは無理だ(泣)。 かねてよりの告知どおり、一週間ほど経ったので驚愕の事実を公表するにいたった訳であります。 ご意見、ご感想、愛の告白、その他諸々…。 土下座さまへどうぞ。 ちなみにALCはあとがきを書いただけで御座います。 何にもしてない楽ちん楽ちん。 おまけに本文の修正まで土下座さまにやって頂いたとあっては…。 さて、どんな恩返しをいたしましょうかね?
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物事は基本が大事・前編 ※ちょいお色気有り ※後編にエロ有り 「センパ~イ!」 「うを!なんだそのカッコは!?」 新道に呼ばれ振り向いた俺。そこ恰好に驚きを隠せなかった なぜなら新道は… アーンヴァルの恰好をしていたからだ 「えへへ~、どうですセンパイ、似合ってますか?」 足はノーマルだが、翼を付けたり各部アーマーが付いたりしてる つーかボディラインがクッキリと… …新道って、結構いいプロポーションしてるのな… 「あ~センパイ、鼻の下伸びてますよ。私のナイスバディにメロメロですね!」 「いやそんなことは無いぞ」 「え~そうですか~?ならコレならどうだ!」 と言って胸アーマーを外す 「おおっ!」 ぽよん そんな擬音と共にこぼれる胸。いや、きょにうというわけではないが、なかなかの大きさが… インナースーツが張り付きボディラインクッキリの新道、まさかこれほどのスペックを持っていようとは! 「わわっ!お兄ちゃんが新道さんの魅力にメロメロだよ!」 しまった、マイシスターにとんだ醜態をみせてしまった 「え~コホン…ところで新道、なんでそんなカッコしてるんだ?コンパニオンするのはたしか営業部だけじゃなかったっけ?」 「あれ?知りませんでしたっけ?営業部の女子だけじゃ人数が足りないから、部長と以前営業だった私が応援に入るって」 「なに?部長もか?そいや最近、色んなカッコするのが気に入ってたような…で、その部長は?」 「あれ?まだ来てないですね、ちょっと更衣室に…あ、呼ばれちゃった。センパイ、部長を呼んできてくれませんか?」 「あ、ああ。解った」 「覗いちゃダメですよ!」 「解ってるって。そんなことしないぞ俺は」 「それもそうですね。センパイの欲情はユキちゃんが取ってくれてますしね。いつか私も一緒に…」 「ぶっ…いいからはよ行け!」 今日から三日間(木・金・土)は國崎技研の展示会。普段見れないような試作品やら企業向け商品等も展示し、即売なんかもしたりする我が社のイベントだ 企業だけでなく、一般人も入れるようになっているため、様々なイベントなんかもやったりする で、その一環として、営業部の女子社員による武装神姫のコスプレなんかもやったりしてるわけだが、まさか新道と部長まで借り出されてるとは… 「お~い、ケンシロウ~!」 っと、今度は観奈ちゃんだ。部長と一緒じゃないのかな 「やぁ観奈ちゃん…って、あれ?」 「ふふふ、どうだ、似合っておるかな?」 観奈ちゃんは、ストラーフ、いやミチルのコスプレをしていた 当然ボディはインナースーツ。うう、最近の子って結構発育いいのね 「なんだちるちるじゃないか。観奈ちゃんは?」 「ちるちるっていうなー!」げしっ! 「…うーん良い蹴りだ。世界を狙えるぞ、観奈ちゃん…」 「あっゴメン…ケンシロウ、大丈夫か…?」 「大丈夫大丈夫、それよりそのカッコ似合ってるね」 「おう!ミチルとお揃いなのだ!」 「わわっ、いくら模造でも、ムラサメ振り回しちゃダメだよ!って、ところで部長見なかった?」 「水那岐ならまだ更衣室だぞよ。なんか苦労してる様だったが…」 「んじゃちょっと見てくるか」 「覗くでないぞ!」 「しないって…」 俺は社屋の更衣室へと向かった 『女子更衣室』 なんて魅惑的な扉だ…だが紳士な俺は覗きなんてしないぜ! …ホントだよ。期待した君、残念だったな コンコン 「部長ー、着替え、終わってますかー?」 奥から部長の声が聞こえてきた 「…着替えは…終わったのですが…背中の装備が…付かないんです…手伝って…いただけません…他に…誰もいませんから…入って…大丈夫です…」 「う…では…失礼します」 許可があるとはいっても緊張するな…でも部長命令だし仕方ないか ガチャリ 「部長、装備ってど…」 絶句 「…あ…その…花びらみたいな…」 生きててよかった… 「って部長!なんですかそのカッコは!」 「…新発売の…ジルダリア…」 そのカッコは販促…もとい反則ですよ 「部長!いくらなんでもマズイっすよ!」 「…でも…可愛い…」 ぷち ん?俺の理性が切れた音じゃないよな? 「何、今の音…って!、部長!、前掛けとれて…ぶはっ!」 胸の前掛け?が取れてブラが丸見え…うはっ下乳が… ってよく見るとインナースーツ着てない! 「…大丈夫ですか…香田瀬君…」 「大丈夫じゃないのは貴方です部長!そのカッコは止めてくださいええ今すぐ!」 「…しゅん…」 「落ち込んでもダメです、ほかのカッコにしてください!」 「…香田瀬君がそこまで言うなら…いそいそ…」 「って目の前で脱がないでください!」 慌てて部屋を出て扉を閉める 「…香田瀬君…ジュビジーなら…」 「ダメです!」 「…しょぼん…」 『なうろぉでぃんぐ』 カチャリ 更衣室のドアが開く 「…お待たせしました…」 「ををっ!」 部長がしてきた恰好は、マオチャオだった 「うわ~斗小野さん、綺麗…」 美しい黒髪を軽く束ね、標準武装を付け唯一バイザーを追加装備の猫耳に変えたマオチャオ部長。可愛い恰好なのになんともいえない大人の雰囲気がまた… 「でもドリルは外して下さい、危ないですから」 「…可愛いのに…しょぼん……香田瀬君…文句ばっかり…うるうる…」 「う…解りました…でも気を付けて下さいね」 「…こくり…」 「っと、新道が待ってましたよ。早く行ってあげてください」 「…わかりました…」 小走りで去ってゆく部長 ふぅ、見に来てよかった…いろんな意味で 「おー香田瀬、大丈夫か?なんか疲れてるようだが」 ブースへと戻った俺に南山が声を掛けてきた 「ああ、なんとかな…」 「お兄ちゃんは新道さんと観奈ちゃんと斗小野さんの魅力にメロメロなんだよ」 「そーやみんなコスプレしてるんだっけ。アーンヴァルとミチルちゃんとマオチャオ…」 「斗小野さっはジル…むぐぅ!」 慌ててユキの口を塞ぐ。あんな話したら大変な事になる 「はは、へんなヤツ。まぁ今日は木曜日だから会社系の人しか来ないだろうから、そこそこ暇はあるだろ。ちっとは休んでいけ」 「まぁウチの課は展示がメインだしな。元々暇な方さ」 ちなみに展示物のメインは 1課・白雪関連、家事用外骨格(バトルレギュレーションではなく・家電として扱われる高出力の物) 2課・ワークス用診断ケース、神姫用システムキッチン 3課・エネルギー充填式のビームハンドガン 4課・超硬合金製忍者武器各種 5課・忍者服各色・カーボンファイバー製防刃防弾服 6課・高性能無害オイル となっている しかし6課、人が多いな。やっぱアレを聞きに来る人が多いのか ふとみんな(女性陣)を思い出す う~む。しかしみんな可愛かったな… 新道があんなナイスバディだったとは…まぁ俺はユキの方が好みだが 観奈ちゃんも成長してるんだなぁ…社長、これから苦労しますよ そして部長…猫なのに小悪魔チックな魅力が…あの耳のせいか… …ん?耳… 「しまった!」 「ん?どうした香田瀬?」 「いや、なんでもない」 うっかり声を出して南山に不審がられちまった… しかしこれは盲点だった… 俺は早速5課へと向かった 今晩の為に… 半端ですが、前半終了 この後はいつもの展開です つーか部長を(発売前に)書きたかった イベント部は気が向いたら書きます コラボで買い物風景を書いてくれる人大歓迎 他にも色々売ってます
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第4話 「武装」 かくてユーザー登録も終わり、ようやく付属していた『基本武装』ってのを開けてみたんだが。 「……またエラくトゲトゲしいフォルムだな」 「一応『悪魔』をモチーフにしてますから……」 呆れる俺と苦笑するルーシー。 背中に付いた飛行機の翼っぽいモノからにょっきり生えた太い腕にデカい爪。 足にはやたらとゴっツいブーツが付いて、ルーシーの身長が一気に1.5倍くらいになった。 それだけでもうシルエットはすっかり別物になったが、他の装備ってのもまたアレだ。 飛行機の翼に付いてた悪魔っぽい羽は分離して大小4本のナイフになり、デカブーツの爪先には短めのナイフ。 トドメとばかりにルーシーのおさげを取り外した頭にまで、デカい触角みたいなナイフ……というか剣が2本くっつくという始末。 TVのCMじゃ白い天使に目が行ってたんであんまり分からなかったが、コレでもかというほど凶悪なビジュアルだ。 ……もっとも、装備してる本人がなんだか申し訳なさそうな顔してるのがアンバランス。 「や、別にお前のせいじゃないし」 「スミマセン……」 ますます顔を赤くして縮こまる……というか背中の腕がジタバタしてる。 自分の身体を隠そうとしてるのか? 「なんか思いっきり近距離戦闘用って感じだな」 「一応飛び道具もありますよ?」 「……ナニそのドラム缶がくっついたようなの?」 「これは『シュラム・リボルビング・グレネード・ランチャー』といいまして、状況によって弾の種類を替えられるスグレモノなんですよ」 ……コイツ、実は結構マニアか? もう1つ付いてた拳銃には『リボルバーは美学ですが弾数が少ないのが唯一にして絶対的な難点です』と微妙に不満げだったし、羽ナイフの時も『クールなトットリのナイフだ』とか言ってたし……マニアの話は濃ゆいんで流したけどな。 ……実のところ、俺たちにはもっと大事な問題があるんだから。 注:「クールなトットリのナイフ」…『グルカ・ククリナイフ』の聞き間違い。
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引き続いて羽休め──あるいは叙情 神田明神を後にした私・槇野晶と愛すべき三人の神姫達は、その脚で 良さげな蕎麦屋へと入る事にした。普段通り、洋食やジャンク系でも 構わぬのだが折角の和装だ、それに見合っただけの立ち居振る舞いを してみたい。それが人情って物だろう?何より蕎麦を希望したのは、 神姫・クララなのだ。彼女は辛味を好む以外は、割と淡白なのでな。 「へいらっしゃい!……うん?おい、嬢ちゃん一人で食事かい?」 「文句あるか!?見ろ、身分証明書だ……私とこの娘らに蕎麦を」 「へぇ~、最近は人形まで食事でき……ああ悪ぃな。口が滑った」 「……オヤジ、二度と“妹達”をそう喚ぶな。味で、評価したい」 「ヘッ。どうも石頭はいけねぇや……座んな、旨ぇの茹でてやる」 何の気なしに入ったその店は、路地裏の奥にある鄙びた蕎麦屋だった。 このご時世でもアキバ……地勢的には神田やお茶の水か……に、こんな 老舗があるとは知らなかったが、さてどんな蕎麦を出してくれるのか。 蕎麦等をあまり食べないロッテやアルマは、今から気が気でない様だ。 「マイスター、わたしお蕎麦って駅の立ち食いしか知らないですの♪」 「む。そうか?アキバの外れには別の蕎麦屋もある筈だが……うぅむ」 「うん、精々ボクが塾帰りに時々立ち寄る程度なんだよ。マイスター」 「あたし達の中で一番外出するのは、梓……クララちゃんですからね」 「だな。私自身もあまり蕎麦屋は入らぬし……灯の奴ならば別だがな」 碓氷灯。先だってまで、東京……というよりアキバへ遊びに来ていた、 私の従姉だ。彼女の現住所は有名な蕎麦所であり、知る人ぞ知る忍者の 里でもある……裏を返せば、伊賀・甲賀より数段マイナーなのだがな。 数年前だかに送ってもらった生蕎麦は、実に旨かった覚えがある……。 「……しかし、私の料理技能はお前達も知っての通り。凡庸だしな」 「その時は旨く出来なくて……マイスターも今、楽しみなのかな?」 「有無、そう言う事だ。殆ど食べた事がない二人よりは普通だがな」 「そうは言っても、なんだか良い香りがしてきますよ?……ほらッ」 「へいお待ち、ざる四つ!ウチ自慢の自家製手打ちだ、喰いな!!」 「うわぁ……この状態からでも、香ばしさが感じられますの……♪」 出てきた黒い麺は、カツオ出汁の汁と相まって実に食欲をそそる香りだ。 灯の言う所では、余り噛まず汁も付けすぎず……に喉の奥でコシと香りを 感じるのが通の食べ方だッ!みたいな力説振りだったが……さて、問題は 神姫の口と喉でそれが出来るのか?という所だ。流石に少々不安である。 「──という事だが、くれぐれも無理して咽せるなよ?では戴きます」 「え?……マイスターが“いただきます”を敬語で言いましたの……」 「い、いいだろう。そう言う気分なのだ!ほら、お前達も乾く前にッ」 「は、はいっ!いただきます、おじさん……んむ、んっ……ちゅるっ」 「戴きますなんだよ、店主さん……んっ、むぅ……良い喉ごしだもん」 「いただきますですの~♪……はむ、んんっ……ちゅるちゅる……♪」 ──────が、それは杞憂だった様だ。三人とも器用に喉を鳴らして 1~2本ずつ啜っている。しかもかなりのハイペースでだ!普通に食す 私より、若干遅い程度であり……店のオヤジもこれには目を丸くする。 しかし着物を汚さずに蕎麦を啜るとは、“妹達”も何とも器用な物だ。 「くぅ~、旨そうに喰うじゃねぇか!味ぃわかるんだな、驚きだぜ」 「まあ訳ありでな、んむ……旨い。見た目で判断してはいけないな」 「ったりめぇよ!嬢ちゃんがさっき、俺に言い放った事じゃねぇか」 「ウチのマイスターがすみません、おじさんッ……でも、美味しい」 「言葉がなくなってくるんだよ……着物に気を遣うのは大変だけど」 「はむ……♪んっ、んんっ……はぁ。日本人最高の贅沢ですの~♪」 「お、男を泣かせんじゃねぇ!次も贔屓にしてくれよ、嬢ちゃん達」 珍しい光景を見た店主もすっかり上機嫌で話に応じる様になり、時間は あっという間に過ぎた……ほぼ私と同時に、“三姉妹達”も完食する。 そして店主に見送られ、着物を正しつつ店を出る。屋号を確認すると、 “更級屋”という所だったらしいな……覚えておくとしようか、有無。 「しかし、着物は……有無、全員汚れていないな。流石私の“妹達”」 「汚さない食事の仕方は、普段の衣装でしっかりと教わったもんね?」 「はいっ。だから、冷静に食べられました、マイスターの御陰です♪」 「やっぱりマイスターは、愛すべきわたし達の“お姉さん”ですの~」 ロッテの言葉に、少々胸が痛くなる……が、彼女は全てを分かっている。 故に悪気がない事も理解できる。そのまま皆を抱き上げ、私は移動した。 『何処へ』だと?このまま帰っても良かったのだが、少々気が変わった。 そこで、お茶の水駅から電車を乗り継いで……水上バスへと乗り込んだ。 「マイスター……葛西臨海公園行の水上バスなんて、なんでですの?」 「ちょっと潮風に吹かれたくなってな……本当に只の気分だ。嫌か?」 「いえ、そんなことっ。それに、なんだか着物に海って似合いますし」 「……それは歌謡曲辺りの影響だと思うんだよ、アルマお姉ちゃん?」 照れ笑いをするアルマ。そう、彼女は偶にAMラジオを聞く事がある。 私がラジオを使わない間、自室で色々している時によく聞くらしいが、 そこで演歌を聴いているのかもしれんな……私の肩で、慌てるアルマ。 桃色の着物と小柄な躯が、本当に愛らしい。そっと、抱きしめてみる。 無論アルマだけではなく、ロッテとクララも一緒にだ。そう、一緒に。 「きゃ……ま、マイスター?どうしたんですか、急に抱きしめて……」 「理由など無い……が、暫くこうさせてくれんか。潮風の所為かもな」 「……分かったんだよ、マイスター。海は人を、神姫を変えるのかな」 「かもしれませんの……でも本当いい風ですの、天気もいいですし♪」 ──────人恋しく、なったのかな……? メインメニューへ戻る
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雨が降り注ぐ近代都市を、重武装の神姫が滑るように移動していた。 その神姫は背中のブースターを全開にし、その巨躯からは想像もつかないほどの速度でビルの谷間を翔ける。 その姿は・・・神姫と言うよりは・・・・一体の機動兵器の様だった。 「・・・・・・・・目標確認、破壊、する」 機動兵器の彼女は小声でそう呟く。元々声の大きい方ではないからだ。 『うん。なかなか調子がいいじゃないか。ブレードよりもこう言う兵器系に向いてしまったのはなんとも皮肉なもんだが・・・・まぁいいか。それよりもノワール』 「なに」 『今日一日の感想はどうだい?』 「・・・・・それを・・・どうして・・・・聞くの?」 ノワールはそういいながらビルの陰から現れたターゲットを破壊する。 右手のライフルの残弾は・・・・残り僅か。 『どうしても何も、ハウはもう寝てるしサラに聞くわけにもいくまい。私達が見たのは暗闇で何か話していた二人だけだ』 「・・・・・・・・・・・」 彼女の主の言葉を無視しマグチェンジ。 その間も左手に装備したライフルは火を吹き続けている。 『おぉっと。わからないという返答はなしだよ? 具体的な意見を聞くまでは、このトライアルは終わらないし終わってもその武装は使わせてあげませんからね?』 多分、クレイドルで寝ている自分の傍にはニヤニヤ笑った主がいるのだろう。ノワールはそう思った。 意地が悪い。 「・・・・多分・・・二人・・・好き合った・・・・でも・・・・」 ・・・・でも、なんだろう? 何か違うような、そうでないような。そんな感じがする。 『・・・・ふむ。つまり微妙な状態なわけだな』 とうとう右手のライフルの残弾がなくなった。 ノワールはライフルを捨てると、左手のライフルを右手に持ち返る。 そのまま空いた左腕で、近くまで来ていたターゲットを殴った。ターゲットはよろめき、その隙にライフルで止めを刺す。 それと同時にアラームが鳴り響き、ノルマをクリアした事を知らせた。 『ん? 随分と早いな。もう二百体倒したのか。・・・・・AC武装は物凄い相性がいいな。メインこれで行こうか』 「ヤー、マイスター」 * クラブハンド・フォートブラッグ * 第十九話 『出現、白衣のお姉さま』 「ちょっと! 何で起こしてくれなかったのよ!! 遅刻確定じゃない!!」 「そうは言われましても。何度も起こしたのですが・・・・まさかハバネロが効かないくらいに眠りが深いとは」 「どおりで口の中がひりひりするわけね! 毎度の事ながらあんたには手加減って言葉が無いの!?」 「――――――わたしは相手に対し手加減はしない。それが相手に対する礼儀と言うものなのです」 「無駄に格好いい!? あんたいつからそんなハードボイルドになったの!?」 「時の流れは速い・・・というわけでハルナ。わたしと話すより急いだ方がいいのでは?」 「あんたに正論言われるとムカつくのはなぜかしらね・・・・?」 朝、目が覚めたときにはもう八時を過ぎていた。 普段私を起こすのはサラの役目だけどさ。流石にこういうときは起こしに来てよお母さん・・・・・・。 大急ぎで制服に袖を通し、スカートのファスナーを上げる。 筆箱は・・・あぁもう!! 「何か学校行くのがだるくなってきた・・・・休もうかしら」 私がそういうと、サラが驚いた顔で見つめてきた。 え、なに? 「・・・・珍しいですね。普段なら遅刻してでも行ってたのに。と言うか無遅刻無欠席じゃないですか。行ったほうがいいのでは?」 「ん・・・でも何か面倒になっちゃってね。・・・別にいいじゃない。たまには無断欠席も。それに・・・・・」 学校には、八谷がいる。 昨日の今日でどんな顔をしたらいいのか判らない。 お互いにはっきり言葉にしなかったとはいえ・・・・OKしちゃったわけだし。 「うん、決めた。今日はサボる。サボって神姫センター行って遊びましょう!」 「・・・・・まぁ、別にいいですけれども」 そうして辿り着いた神姫センターには、当たり前と言うかなんと言うかあんまり人がいなかった。 まぁ月曜日だし午前中だし。来ているのは自営業さんか私みたいなサボり位だろうけど。 それでも高校生と思しき集団がバトルしてたのは驚いた。まぁ多分同類だと思うけど。 ・・・・でも強いな。あのアイゼンとか言うストラーフ。 砂漠なら・・・勝てる、かも? 「それにしてもなんだか新鮮ですね。人が少ない神姫センターというのも」 「平日はこんなものじゃない? 仕事や学校あるし。・・・・あぁでも最近は神姫預かる仕事も出来たんだっけ」 「そんな職業があるのですか。なんと言うか、実にスキマ産業的な・・・・所でハルナ、わたしは武装コーナーを見たいです」 私はサラの言葉に苦笑しながらも、センターに設けられた一角に向かって歩き出す。 このセンターは武装やら神姫本体やら色々揃ってたりするので結構お気に入りだ。筐体もリアルバトル用とVRバトル用の二種類を完備してるし。 とりあえず売り場についた私はサラを机に乗せ、商品を自由に見せて回る。・・・・買うつもりは無いのよ。 そうこうしているとサラが一挺の拳銃のカタログを持ってきた。 「ハルナ、このハンドガンなんてどうでしょうか」 「・・・いや、そういうの良く判らないんだけど」 「なんと!! ハルナはこの芸術品を知らないと!? このマウザーは世界初にして世界最古のオートマティックハンドガンなのです。マガジンをグリップ内部ではなく機関部の前方に配置しているのが特徴でグリップはその特徴的な形から『箒の柄』の異名で呼ばれています。かつては禿鷹と呼ばれた賞金稼ぎ、リリィ・サルバターナや白い天使と呼ばれたアンリが使用した銃として有名ですね。さらにこの銃、グリップパネル以外にネジを一本も使用しないというパズルのような計算しつくされた構造を持っておりこの無骨な中に存在するたおやかな美しさが今もマニアの心を魅了し続けて ―――――――――――」 「あ、この服可愛いー。でもレディアントはサラに合わないかな」 「ひ、人の話を聞いていないッ!? そして何故ハルナではなくこのわたしがこんなに悔しいのですかっ!?」 ふふん。ささやかな復讐なのよ。 「でもさ、だったらそんなへんてこな銃じゃなくてこっちの馬鹿でかい方が強いんじゃないの?」 「ぬ・・・わたしのツッコミを無視して話の流を戻すとは。いつの間にそんな高等技術を・・・・それはともかく、確かに威力が多きければ強いと言えなくもないですね。でもそのM500は対人・対神姫用としては明らかにオーバーパワーです。リボルバーですから装弾数も期待できませんし」 「ふぅん。数ばらまけないのはきついわね」 威力だけじゃ勝てないってことか。 サラのマニアックな説明はそもそも理解する気が無いけれど、戦闘に関してはさすが武装神姫。私よりも知識が多い。 ・・・うん、この後バトルでもしてみようかしら。 どうせ暇だし、作戦を立てたり実力を図る意味でもバトルはしたいし。 「ねぇサラ。この後さ ――――――」 「ん? こんなところで何をやってるんだお前」 と、サラに話しかけようとしたら逆に後ろから誰かに話かけられた。 振り向くと・・・・そこにはなぜか白衣を着たお姉ちゃんが立っていた。胸ポケットにはノワールちゃんだけが入っている。 「え、何で白衣?」 「第一声がそれかね。これはバイトの仕事着だよ。それよりもお前、何でこんなとこいるんだ? サボりか」 「え、えと・・・・それはですね・・・なんと言うか」 まずいことになった。 そういえばここら辺はお姉ちゃんのテリトリーだったっけ。 ここで見つかってお母さんに告げ口されたら・・・・! 「ん・・・あぁ別に怒ってるわけじゃないんだよ。サボりなら私もよくやったさ。仲のいい三人組で遊びまわったもんだ」 そういってお姉ちゃんは笑った。 よかった。告げ口されたらどうしようかと。 「そっか・・・・そういえばハウちゃんはどうしたの? ノワールちゃんだけだけど」 「アイツは定期健診。今神姫用医務室にいるよ。それよりも、暇だったら一戦やらないか? 今バイトの方も暇だしな」 お姉ちゃんはサラの方をチラリと見ながらそう言った。 サラがどうかしなのだろうか。 「うん、いいよ。それじゃ筐体の方へいこう。・・・サラ、おいで」 「承知です」 断る理由の無い私達はお姉ちゃんの誘いに乗った。 戻る進む
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……さて…… みなさんこんにちは、千尋です 三日間の泊まり込みで中学校の特別講師に行ってきました 授業の内容はまたの機会にお話するとして…… 今回は少佐の強い要望により一等兵の初陣のお話をしたいと思います 場所は地元のゲームセンター、使う筐体はミッシェルの製品です ……え? 講師に行ってきた街でしなかったのかと? …………その街、ゲームセンターが無かったんです 第六話 対決、山田農場神姫部門 とある平日の昼過ぎ、自分たちは総帥に連れられて人もまばらのゲームセンターに来ている 目的は一等兵の初陣だ 付き添いとして総帥の神姫は全員連れてきている 「……弾倉よし、各可動部よし……えっと、あとは……」 「一等兵、すでにチェックは終わってるだろう?」 一等兵と少佐のこの会話も今朝より7度目になり、自分としては既に聞き飽きた感がある 「……私も、初陣はあんな感じでありましたか?」 曹長の問いに自分は頷いた 「1年前のお前も落ち着かなかった……あの時も少佐とあんな感じの掛け合いをしていた」 しかし、少佐もよく何度も同じ返答ができるものだ 自分ならば3回目くらいで返答を拒否したくなるのだがな ……そんな事をしている間に、総帥が筐体のそばに着いたようだ 総帥は自分たちを移送用キャリングケースから出して投入ポッドの側に置き、本体側に歩いていった……試合の受付をしてくるのだろう 「……こんな時は手のひらに『人』と書いて飲む…………あれ? わたし達の場合は『神姫』って書くんですか!?」 ……本当に落ち着け、一等兵 「……おや? キミ達は、高城さんの所の……?」 一等兵に気を取られているうちに、なにやら大きなキャリングケースを2つずつ持った若い夫婦連れが近づいていた……声を掛けてきたのは夫の方だ 「あ! 山田さん、お久しぶりです!」 タイミング良く総帥が戻ってきた……受付を終了して、挑戦者待ちの状態だとディスプレイに表示されている 「やっぱり高城さんですか!……対戦するんですか?」 この人は、この街の外れで農場を経営している山田 貴善(やまだ たかよし)さんで、後ろにいるのが奥さんの柚月(ゆつき)さんだ……見るからに人の良さそうな若夫婦である その山田さんが人懐っこい笑顔で総帥に話しかける 「はい、今日はこの子の初陣なんです」 言いながら総帥は一等兵を手のひらの上に持ち上げた……一等兵はまだあたふたしている 「じゃあ、そのお相手はボク達がさせてもらうよっ!」 山田さんの奥方の胸ポケットから顔を出した小さい戦乙女、アルトアイネス型が高らかに宣言した 「……『達』って事は……姉様、私も出るのですか?」 同じ胸ポケットから遅れて顔を出したのは、大きな戦乙女、アルトレーネ型だ ……アルトレーネがアルトアイネスの妹というのも、なかなか違和感があるな…… 「ルイはともかくマリがやる気なので、お相手お願いします」 山田さんの夫の方……呼び方が面倒くさいな、名前でいいか……貴善さんが低姿勢に勝負を申し出た 後ろでは柚月さんが会釈をしている……先程から言葉を発してないが、この人は失声症なのだとか 総帥の診断では『何らかの心的外傷』が原因なのだそうだ……まあ、今はそんな事は関係のない話だったな 2人が反対側のポッドに向かい、総帥は一等兵のセッティングに入られた 「さあ、頑張ってね一等兵」 「きっ、期待に添えるよう頑張ります!」 重量のある機関銃に、1本の剣……予備の弾倉が2個 今回はフライトユニットを着けずに出撃するらしい……まあ、相手が2人掛かりなのだから、一撃離脱の戦法は使いにくいだろう 「……あとは……曹長も行こうか」 「はっ! 了解であります!」 さすがに初陣で1対2は辛いと判断されたのだろう、総帥は曹長の準備も始められた サブマシンガンにガトリング砲、予備弾倉がそれぞれ3個ずつ……どうやら弾幕で援護させる気でおられるようだ 「……じゃあ少佐、指揮は任せたよ」 「はっ! お任せ下さい! 必ずや我が隊を勝利に導いてご覧に入れます!」 ポッド横の指令席に立ち、少佐が総帥に敬礼をした……相変わらず綺麗なフォームだ 「えっ、あの……総帥が指揮をとってくれるんじゃないんですか?」 やはりと言うべきか、一等兵は困惑しているな そうだろうな、本来神姫バトルにおいて神姫に指示を出すのはマスターの役目だ しかし、総帥の『指揮』はかなり特殊だからな……通常は少佐が全指揮を取ることになっている 「なんだ? 私の指揮では不満か?」 「あ、いえ、そう言うわけではないんですが……」 「ならば問題無かろう、ポッドに入れ」 有無を言わせぬ少佐の言葉に、一等兵は狐につままれたような表情のまま神姫投入ポッドに入っていった 「では! 行って参ります!」 曹長がセンサーゴーグルを取り外したメットを被り少佐に敬礼をした 「うむ、今回は一等兵の初陣であるからな、しっかり援護してやれ」 少佐の言葉に曹長は再び敬礼をしてポッドに入っていった ポッドには拠点に収納される予備の武装が既にセットされていた 戦場情報 ステージ:未開の密林 コーナーA 高城・M・千尋 飛鳥型 δ ゼルノグラード型 γ 予備兵装 ガトリング砲×1門 ガトリング予備弾倉×5個(200発) サブマシンガン×3丁 マシンガン予備弾倉×7個(80発) 携行式ミサイルランチャー×3門(4発) 軍刀:煉×2本 ヒミツの追加武装(δ) ヒミツの追加武装(γ) コーナーB 山田夫妻 アルトアイネス型 マリ アルトレーネ型 ルイ 予備兵装……不明 『GET READY ?』 モニターにこんな表示が現れる……どうやら相手の準備が完了したようだ 総帥も準備完了のボタンを押す……ポッドのシャッターが閉められた 少佐を見ると指揮用ヘッドセットを装着してマイクテストをしていた ……両者の読み込みが終了し、ディスプレイに二人の姿が表示された 「……貴君らの検討を祈る、行くぞ!」 『了解!』 二人の声が綺麗に重なった……試合開始だ ……今回の戦場は『未開の密林』と名付けられていた、どうやら山田夫妻の自作ステージらしい 鬱蒼と茂る木々に、湿度の高そうな空気、堂々と闊歩する巨大生物……ん!? 白い斑紋のある真っ赤な丸い身体に体躯の半分を占める大きな口、口の上から突き出た目玉、巨躯にはアンバランスな足……恐らく、地球上には存在しないであろう巨大生物がそこにいた 「なっ!? この生き物は!?」 「ばっ、バケモノであります!」 ディスプレイのこちら側にいる自分でも驚いているのだ、実際に目の当たりにした二人の驚きは自分のそれを大きく上回るだろう 「落ち着け! ただのギミックだ!」 少佐の言葉通り、その巨大生物は2人に目もくれずに木々の間を縫って何処かへ歩いていった 「……なんだったのでしょう?」 「向こうがこっちに敵意を出さないなら、気にせず行くであります。敵はもう動き出してるはずであります」 曹長はこんな時、意外と冷静になる 既に思考を戦闘用に切り替えているようだ 「一等兵、貴官は九時方向から進め。曹長は遊撃とする、自己の判断で行動せよ」 『了解!』 再び2人の声が重なり、一等兵は少佐の指示通り拠点から左方向へ歩き始めた 一方曹長は、先程の巨大生物を追うように中央の道を進んでいく ……どうやら、巨大生物が気になっていたようだ 自分はとりあえず一等兵の動向を見ることにするか ……道無き道を進んでしばらく…… 周囲の木々は隙間なく茂り戦場の広さがよくわからない上に、視界が非常に悪い 幾度か最初にみた巨大生物よりも3分の1くらいの大きさの生物を見たが、特に一等兵に攻撃を仕掛けることはなかった 生物がレーダーに反応するので多少の攪乱にはなっているが、特に害は無さそうだと少佐は判断している ……しかし、自分にはこの生物がただの環境ギミックには思えなかった 何か別の目的がある……そんな気がしてならなかった 「……これは、なんでしょう?」 自分が考え込んでいる内に一等兵は少し開けた場所に進み、何かを発見したようだ そこには、赤いタマネギのような球体が3本の足で鎮座していた……その足下の地面にはミステリーサークルのような模様がある 生き物ではなさそうだが、球体の頭頂部では花を模したプロペラがゆっくりと回転している……UFOか? 「……未確認飛行物体をこの目で確認してしまったら、それはUFOと呼んで良いんですかね?」 とりあえず自分はUFOと呼称するとしよう 「そんな事は気にするな、まずは周囲に警戒しつつ『それ』が脅威となり得るか調査しろ」 敵以外のものがレーダーに反応しているので、信じられる物は自らの目と耳だけになっている しかし、それすらも生い茂る木々とざわめく生物達によって曖昧になる……果たして、どれだけまともに索敵できるかな 「……なんだか、あたたかいです……これは生きているんでしょうか?」 一等兵がUFOに触れて調査している……生きている? これも生物だとでも言うのか? 「剣で叩いてみますか?」 一等兵がベルトから剣を鞘ごと外し、正眼に構える 「やめておけ……おそらくこれもギミックだ」 少佐の判断に一等兵は剣をベルトに戻した ……ガサッ! 「……っ!?」 「隠れろ!」 何かの物音がして、コンマ数秒の間を空けずに少佐の指示が飛ぶ 一等兵はそれに従い、近くにあった倒木の影に身を潜めた 「……今、誰か居た?」 姿を現したのは、マリだった リアユニット以外の武装を一切着けず、頭に一本のアンテナが立っていて、その先端には赤く光るビーコンが揺れていた……ちょっとマヌケな光景だが、妙に可愛らしい リアユニットのノインテーターは改造されているようで、スカートを構成するブレードが外されサブアームの手の大きさが倍以上に大きい……実質攻撃力が落ちていると思うのだが、何のために? 「う~……あー、もう! デメマダラばっかりでレーダー使えないじゃん!」 ……あのかわい……おかしな生物は『デメマダラ』と言うのか? ということは、小さいのはその幼生体だろうか 「まあいいや……お~い、こっちこっち!」 マリが出てきた方に向かって呼びかけるともう1人、ルイも姿を現した……こちらは頭の上にアンテナと青く光るビーコンが揺れている 「もう……姉様も手伝って下さい!」 ルイの方もマリと同じような改造を施されたニーベルングを背中に背負っていて、今はそのサブアームで何かを抱えている 「いいじゃん、ほら早くペレットこっち置いて!」 マリに誘導されるままルイはそれをUFOの球体部分の真下に置いた ……やはりあのUFOはただのギミックではなかったか……しかし、あれは何だ?…… 丈の短い円筒状で、中央に大きく『1』と書かれた赤い何か……マリが『ペレット』と呼んでいたな ……キュミミミ……キュポンッ! やや間抜けな音を立ててUFOが底部からペレットを吸い込んだ……これが、キャトルミューティレーションというやつか? 「……レーダーに反応が増えました、UFOの内部に反応が二つ!」 相手に聞こえないような小声で一等兵が報告する 「こちらのレーダーでも捕捉している、そのまま様子を見るんだ……相手は二人掛かりの上にどんな武装を持ち出してくるかわからん、下手に動けばやられるぞ」 「了解、このまま経過を見ます」 再び一等兵が視線を戻すと、UFOの頭頂部にあるプロペラが少しだけ早く回っていた ……ポポンッ! UFOの頭頂部から何かが2個射出され、それはゆっくりと降下して地面に落ち、土に埋まった ……遠目ではよく見えなかったが、なにやら葉の付いた植物の種子のようにみえたが…… 「あ! 姉様、芽が生えましたよ!」 しばらくすると、落着した地点から葉っぱのような物が生えた 「……んしょっ、と」 マリがおもむろにその葉の根本をサブアームで掴み、勢いよく引き抜いた ……ぐぐっ……ポンッ! またも間抜けな音を立て、マリは何かを引っこ抜いた 「きゃうっ!?」 マリが引っこ抜いた『もの』……それは……頭から一枚の大きな葉を生やした種型神姫ジュビジーだった まさか、相手はこうして戦力を確保するのか? 「じゃあこっちは私が……っと!」 「きゃん!?」 もう一つの葉はルイが引っこ抜く……こちらも同じようなジュビジーが抜ける ……あのUFOはジュビジーを増殖させるための装置なのか? 「……敵戦力が増殖する条件は、先程の『ペレット』と言うことか……」 少佐は自分と同じ事を考えていたようだ 「曹長、聞こえるか? ビジュアルデータを送る、ペレットを見つけ次第破壊しろ!」 「了解であります!」 ディスプレイは一等兵を追跡するカメラになっているから曹長の状態がわからないが、通信終了直後に銃声が聞こえたあたり、付近にペレットがあったのだろう 「……あの、わたしはどうしましょうか?」 相手の様子を見ていた一等兵が少佐に指示を要求してきた 「一度その場を離れてペレットを捜索、発見次第破壊しろ」 ……自分は物陰に隠れて機関銃で威嚇射撃、敵の警戒心を煽って増殖の進行を鈍らせる、という行動が最適かと思ったのだが指揮官は少佐だ、だから自分は何も言ってはいけない 「了解、この場を離脱します」 一等兵は気配を殺しながら木々に身を隠してその場を離れて森の中へ入っていった ……森の中は、混沌を極めていた 先程のデメマダラのみならず、珍妙な生物で溢れかえっていた 「……凄いです! この森は生命に満ちあふれています!」 一等兵……お前は何故そんなに楽しそうなんだ? 「気を緩めるな、速やかにペレットを探して破壊しろ。敵の増殖をくい止めるんだ」 はしゃぐ一等兵に少佐が檄を飛ばす 「はい、りょうか……あ! 発見しました!」 一等兵の目の前には複数のペレットがあった しかし先程見たような物だけではなく赤青黄の三色あり、そのペレットは背が高く葉のない茎で地面と繋がっていて、本体からは花弁が広がっている……まるで一輪の花が直接地面から生えているようだ 「それがペレットの本来の姿なのかも知れん、本体に狙いを集中させて破壊しろ」 「了解!」 一等兵が機関銃を構え、1つのペレット目掛けてトリガーを引いた 数発の弾丸がペレットに直撃、細い茎が激しく千切れ飛び、花弁は儚く散った……しかしペレットは残っていた……しかも無傷で 「……どういうことなの!?」 一等兵は驚きを隠せず、どうして良いかわからなくなっているようだ 「破壊できないなら、せめて奴らに見つからないように運び出せ」 少佐が次の指示を出し、一等兵がそれに従った……しかし…… 「……くうっ……お、重いです!」 ペレットは見た目以上に重いらしく、一等兵が力を込めても微動だにしなかった こんな物を奴らは運び出したというのか? 「あっ、姉様! 敵さん発見です!」 「やっぱりね、銃声が聞こえたと思ったらペレット狙ってたな?」 機関銃の音を聞きつけた二人に見つかってしまった 「先手必勝だ! 撃て!」 「はい!」 少佐の指示に一等兵が機関銃を構ようとする 「させないよ! 行けっ!」 一等兵の行動を予測していたのかマリの行動は一等兵が機関銃を構えるより早く、サブアームで何かを投げつけてきた 「なっ……むぎゅっ!?」 その何かにぶつかり、一等兵は地面に仰向けに倒れた 一等兵にぶつかったものは、頭に大きな葉を付けたジュビジーだった 「まだまだ行くよ! どりゃあっ!」 「それそれなのです!」 マリとルイは追い打ちをかけるように次々とジュビジーを投擲してくる……いつの間に数を増やしてきたんだ? 「むっ、むぐぐ……」 ジュビジー達の下敷きになり、一等兵が足をばたつかせて暴れるがジュビジー達はびくともしなかった ジュビジーの上にジュビジーが重なり、20人くらいが一等兵の上に乗ったとき、暴れていた一等兵の足がパタリと止まった 「お? やっつけたかな?」 一等兵の状態を確かめるためにマリが近づく ……ドガガガガガガガガガッ!! そこに降り注ぐ大粒の弾丸の雨、マリとルイは反射的にその場を飛び退いた 「うわっ!? あっぶないなぁ、もう」 「あの、姉様……ジュビちゃんたちが……」 一等兵の上から動かないまま弾丸の雨にさらされたジュビジー達はその大半がヴァーチャルの粒子になって消滅した 「やばっ!? 大損害だよ!」 マリは言うが早いか、どこからかホイッスルを取り出し、思いっきり吹き鳴らした 甲高い笛の音があたりに響き、残っていたジュビジー達がマリの側へ移動する ……ん? 今、マリのビーコンが強く光ったような? 「大丈夫でありますか!?」 ガトリングの掃射を終えた曹長が一等兵に近寄り安否を気遣う 「うぅ……ふぁい、らいじょうぶれす……」 一等兵はゆっくりと起き上がり、呂律の回ってない返事をした……自分には大丈夫に見えない 「……ルイ、ここはボクが引き受けるから、5人連れて増やしてきて」 「わかりました!」 二人の短い会話の後に、今度はルイがホイッスルを短く吹いた マリの物と音色が違う音に反応し、5人のジュビジーがルイの側に移動する ……気のせいか、ホイッスルを吹いた瞬間ルイのビーコンが強く光った 「すぐに増やしてきます!」 ルイが背を向けて走り出し、5人のジュビジーもそれに続いていく 「逃がすな! 撃て!」 少佐からの指示が飛ぶ、曹長はすぐにガトリングを構えたが、一等兵は先程ジュビジーをぶつけられた衝撃で機関銃を落としてしまっていたようだ 「させるかっ!」 ルイの背中に向けてガトリングを構える曹長にマリがジュビジーを投げつけた 「ぐあっ!?」 ジュビジーがぶつかった衝撃で照準がずれ、撃ち出された弾丸は周辺の木の幹を穿っただけに終わった 「次はこっち!」 マリが次のジュビジーを掴み、今度は一等兵目掛けて投げつけた 「……せいっ!」 ビシュッ! 投げつけられたジュビジーに対し、一等兵は鞘から剣を抜いて逆袈裟に切り払った ジュビジーは銅を斜めに切断され、ヴァーチャルの粒子になって消滅した ……先程から思ったが、ジュビジー自体には攻撃力も耐久力もほとんど無いようだ 通常の神姫ならば多少の射撃や斬撃では戦闘不能にならないのだが……どうやらこのジュビジー達は攻撃、耐久ともに最低値以下に設定してあるようだ 「……っ! この!」 曹長がジュビジーを振り払い、ガトリングを放棄してサブマシンガンをマリに向ける しかし、それもまた投げられたジュビジーによって照準を狂わされた 「このままでは時間を稼がれてしまいます」 「分かっているであります……しかし……」 「……ほら、仕掛けてこないの?」 三人は距離を開けてにらみ合っていた 現在マリの後ろにはジュビジーが7人、そしてノインテーターの腕に掴まれているのが2人 攻撃準備動作に入った瞬間にマリはジュビジーを投げつけてくる マシンガンを構えるより早いその攻撃は、不要なダメージを受けるどころか弾の無駄撃ちも引き起こしてしまう 「……わたしが仕掛けます、援護お願いします」 どうやら一等兵に何か考えがあるようで、剣を握り直して下段に構えた 「……行きます!」 一等兵がマリに向かって駆けだし、その後ろで曹長がサブマシンガンを構えた 「来た! くらえっ!」 マリが右サブアームのジュビジーを投げる……目標は一等兵 「そこっ!」 曹長がサブマシンガンを構え、トリガーを引いた 「させない!」 マリは自分に向けて撃ち出された弾丸を空いた右サブアームで防御する……しかし、曹長の狙いはマリではなかった 「きゃうぅっ!」 マリの左サブアームに掴んでいたジュビジーが悲鳴をあげた 「…!? しまった!」 左サブアームに掴んでいたジュビジーがヴァーチャルの粒子になって消えた その間に一等兵が投げつけられたジュビジーを切り払い、さらにマリの後ろで待機していたジュビジーを次々と切り捨てていった 「くっ、この!」 マリが空いたサブアームの拳で一等兵に殴りかかるが、手の大きさのせいで大振りになってしまい、易々と回避されてしまう 「食らうであります!」 その隙に曹長がサブマシンガンで残りのジュビジーを掃討する わずか数秒の内にジュビジーは全滅した 「ぐっ……ちくしょー、ジュビジーが全滅した……こんな時は!」 マリの次なる行動に備えるため、一等兵は剣を、曹長はサブマシンガンを構え直した マリがその場にしゃがむ、するとビーコンの発光色が赤から白に変化した 「……勇気ある撤退だ!」 突如ビーコンからまばゆい閃光が放たれ、モニターが白一色に包まれた 視界が戻ったとき、すでにマリは姿を消していた 「……逃がしたか……すぐに探せ! まだ遠くへは行ってないはずだ!」 「了解!」 「了解であります!」 少佐の指示に、2人はルイが逃げた方向へ走り出した……おそらく、ジュビジーが全滅したマリはルイと合流するだろうと予測した上での行動だろう 「……えっしょ、えっしょ……」 「…………」 「…………」 ……2人は、途中でペレットを運んでいるジュビジーを発見してしまった 驚きな事に、一等兵がどれだけ力を込めてもピクリとも動かなかったペレットをジュビジーはひとりで運んでいる 一歩進むごとに頭の葉がユラユラ揺れてなんともかわい……いや、この状態はどう判断したものか ここでジュビジーを撃てば、マリとルイに気づかれないように敵の増殖を遅らせることができる しかし、このままジュビジーを歩かせれば2人がいる地点にたどり着くかもしれない 「撃つなよ、そいつを泳がせれば敵の本陣に着くかもしれんからな」 少佐の判断は後者だったようだ 指示を受け、2人は少し離れた後方からペレットを運ぶジュビジーを観察することにしたようだ ……ドスッ、ドスッ、ドスッ…… しばらく観察を続けていると、デメマダラが2人の横を通り抜けて行った……やはり、2人には興味を示さなかった ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ……グルル…… デメマダラがジュビジーの真後ろで歩みを止め、低く短く唸った 「えっしょ、えっしょ……」 ジュビジーはデメマダラを気にせずにペレットを運び続けている ……グルルル……パクッ 「きゃあっ!?」 「あ……?」 「えっ……?」 ジュビジーの短い悲鳴が響き、2人が素っ頓狂な声を上げた ……ジュビジーがデメマダラに食べられてしまったのだ まず上半身を大きな口にくわえ、もがくジュビジーを気にせずに上を向いて丸呑みにした ……グルル…… ジュビジーを飲み込んだ後、デメマダラは再び短く唸ってから周囲を見回している …………ドスッ、ドスッ、ドスッ…… そして再び歩き出す……気のせいか、先ほどまでジュビジーが向かっていた方向へ進んでいった ……デメマダラが去った後には、ペレットだけが残っていた…… 「……手掛かり、食べられちゃいましたね」 「……そうでありますな」 いきなりの事態に2人は困惑しているようだ 「……あー……どうしたものか」 少佐まで呆気にとられてしまったようだ 「……と、とりあえずデメマダラを追え! 奴はジュビジーのみを捕食対象にしているのかもしれん」 「了解!」 とりあえず少佐が出した指示に一等兵が返事をする……しかし、曹長は首を傾げていた 「……デメマダラ……?」 そうか……あの時曹長はいなかったから、あの生物の名前を知らなかったのか 「先ほどジュビジーを捕食した生物の名前だ。マリがそう言っていた……今すぐ追え!」 「なるほど……了解であります!」 ……2人がデメマダラの向かった方向へ進み、しばらく時間が経過した 既にデメマダラを見失っており、2人はただ歩を進めているだけだった 「……しっかし、やたらと広い森でありますなぁ……軍服を森林迷彩に着替えれば良かったであります」 「うぅ……機関銃を無くしてしまうなんて……軽いサブマシンガンにすれば良かったです」 行けども木々ばかりで気が滅入ってきたのか、2人の声は気弱になっていた 「反省会は後でしろ、今は戦闘に集中するんだ」 少佐のヘッドセットを借り、自分が2人に言葉をかける 「……そうだな、一度2人とも拠点に帰投してはどうだ? 今の装備では心許ないだろう」 後ろの少佐に振り返りながら2人に提案をする……少佐も頷いているから、反対ではないらしい 「……そうですね、さっき少し戦って思ったのですが……マリさんが本気を出したら剣1本では立ち向かえないと思いますので、一度装備の補充に向かいます」 「自分は着替えと弾倉の補充、それとミサイルランチャーを取りに戻るであります……今の武器では、ペレットすら破壊できなかったのであります」 2人の意見を聞き、少佐にヘッドセットを返した 「よし、2人とも拠点への帰投を許可する」 少佐の言葉を受け、2人は拠点へと歩を進めた…… 戻る 続く
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[部分編集] 最新型 文字通りのもっとも新しい神姫の事。ゲーム中ではレーネ、アイネスがよく口にする。…のだがフィギュア(現実)で考えるとレーネ&アイネスは前作の時点で「最新」ではなくなっている。(彼女らの後にゲームと同時にmk.2コンビが出ているため)フィギュアの方での(バトマスMk2時点での)最新型はエストリル ジルリバーズのバイク組。なんせ、フィギュアの発売日すら未定である。一方ゲーム内では「新発売」「新商品」と明示されているのはアーク・イーダ・アルト姉妹などで、その感覚ではアルト姉妹が最新型と言えなくもない。少なくとも新型扱いされるのは彼女らくらいである。ちなみに、バトマス神姫で最古参になるのは「情報が出た順で」考えるとフブキさん(神姫NET出身だが神姫NETが登場したのはケモテックの2人が発表されるより前のため)ただしフブキさんのフィギュア化は発表数年後とかなり後になっており、「フィギュア発売順」になるとケモテックコンビが最古参になる。 早苗さん アーンヴァルのシナリオに登場する神姫マスター永山早苗の事。目は見えないが凄腕のハッカー。一体どうやっているかは謎。相方はハウリンのリッキィ。後にはリッキィにライドオンして神姫バトルを普通にやっている様子を見ると、コンピュータ関係の仕事は電脳世界にダイブしてやっているのかもしれない。 ささくれに醤油しみちゃえ 神姫マスター時速30kmの神姫「和津香」の捨て台詞。負けた時にのみ見れる。実際、地味に痛い。「ささくれ」「ささむけ」等、なぜか和津香はこの症状の言い方を統一していない。ちなみに「ささくれ」「逆剥け」が一般的なようだが「かさもげ」「親不孝」と呼ぶ地方もある。 侍剣士武装 DLC第9号で登場した柳瀬敬之氏デザインの武装セット。バトマス未登場の神姫の武装ではなく、このゲームオリジナルの武装である。お金を払って買うだけあって、なかなかの高性能。リアパーツがないという珍しいパーツ構成をしている。神姫のステータスを大きく伸ばすリアパーツを自由に選択でき、元々優秀な性能を更に伸ばせるので、総合的にはかなり強い。この武装を入手したのなら、やはり先々の閃を使いたいところ。 サラダバー 「さらばだ」のアナグラムなのだが、空耳的にそういう風にも聞こえてしまってる。神姫関連の初出はバトロンでのムルメルティア敗北時のセリフ。今作ではメインストーリーの終盤で拝める。本当の初出は、某世紀末救世主伝説アニメのあるキャラクターが「さらばだ!!」と言って飛び降りたことから。 シーフ嫁 本作での最大のトラウマ。ベイビーラズとは違った形で、マスターを選ぶ事のできない神姫という存在の悲しい一面を示すマスターであるといえる。だ、だれかー!誰か助けてあげて!!もっとも、シーフ嫁がああなったのも、元々は夫のせいであろう。とはいえ、神姫の事を抜きにしてもやってることはあんまり擁護できたものじゃないが。…ここを読む武装紳士・淑女の諸君は、神姫とキャッキャウフフするのも良いが、リアルに影響が出ないように気を付けていただきたい。余談だが、登場時期の設定をミスしているとしか思えないほど、浄化後のヴァルハラからは言動共に浮いている。また、紹介文もかなり冷たい内容となっている。この紹介文は「ゲーム内の主人公視点(らしい)」なので、どうやら主人公の紳士具合は相当なものである事が伺える。「人間なんかと結婚するから・・・」 ジールベルン フロントライン製神姫、剣士型ジールベルン。(オブシダン)。DL神姫。彼女のフィギュア販売時のキャンペーンで付いてきた栞のデザインで話題になった。どんな栞だったのかは、このせいであだ名が「おしりベルン」になったところから想像していただきたい。電撃ムック、武装神姫アーカイブスにキャンペーンの栞の絵が掲載されているので、興味のある方はどうぞ。ちょっとお高いが。 自宅 主人公の家。棚にビックバイパーがあったり友人が叩き出されたり神姫にベッドの下を探されたりPCのモニターを破壊されたり手放したフブキさんが舞い戻ってきたりする。唯一セーブを行うことが出来る場所なのだが、セーブから戻ってくる途中でミミックに襲われることがある。データ保存のためにはミミック活動圏に出なければならない。だが、セーブできて一安心し、さて出かけるかと家を出たところでミミックに襲われることもある。 漆黒の牙 ご存じ厨二病真っ最中のマスター。神姫はイーアネイラ型のレヴィア(何気にオッドアイ)。名前の元ネタは海の怪物リヴァイアサン(仏語でレヴィヤタン)と思われる。強いマスターが近づくと左手の傷(ぜるのんはシャーペンで作った傷と推測している)が疼くらしく、レヴィアはこれを「(妾との)契約の傷」と呼んでいる。闇ハッカー()の力を持っているらしく、これを行使すればプレイヤーにも勝てる力が発揮されるらしいが、使用者への負担が大きいという理由からレヴィアに制止されている。プレイヤー側神姫の反応は様々。っていうか黒い牙って虫歯だろなお、ぜるのんいわく見た目は平凡な中坊だとのこと 柴田君 ゲーム開始時のゲームセンターに登場するマスターの一人。ゲームセンターでは最弱な為、柴田君を1発で倒してLOVE値を効率よく稼いで育てたマスターもいたりするが、クリア後のF0バトル登場の柴田君は侮ってはいけない。また、LOVE上げ時に「残り1柴田で上がる」の様な単位として扱ったりもする。ゲームでは主人公とほぼ同時期に神姫を始めたようである。パートナーはアーンヴァルMk.2のプルミエ。バトマスの仕様上、主人公に負け続ける星の下にある柴田君をけなげに支える、出来たお嫁さんである。 島田フミカネ 神姫デザイナーの一人。ローライズパンツ絵職人。手がけたデザインではスカイガールズやストライクウィッチーズが有名。神姫シリーズの「起源にして頂点」とまで言われる第1弾アーンヴァル/ストラーフから、ムルメルティア/飛鳥、ライトアーマー第1弾のウェルクストラ/ヴァローナ、バトマスのパッケージに描かれ主人公的位置付けのされているアーンヴァルMk.2/ストラーフMk.2、さらにはベルン姉妹といったフロントライン神姫を手がけており、デザインした神姫の種類は最多。その功績はMMS素体製作の浅井パパンに匹敵すると言える。 シャイニング・ナックル アーティルのシナリオを進行することで入手できるRAなのだが、一部では配信前になぜか入手していた。なお、アーティルシナリオをやっていなくとも、対戦で相手のフレンドカードからもらうという手段もある。アーティル専用RAではなく、ナックルさえ装備していれば武装レベルやLOVE値に関係なく誰でも使用可能だが、アーティルシナリオをやって彼女が身に着けたときの状況を知っていると、何か釈然としないものが・・・。全神姫において、それぞれに掛け声が実装されている。「しゃいにんぐ・なっこーーーっ!!」「私のこの手が光って唸る!貴方を倒せと輝き叫ぶ!!必殺!!シャァァァイニング!ナッコォォォーー!」と叫びなから出すと威力が(気分的に)大幅に倍増するぞ!!-虫歯-漆黒の牙 レヴィア相手に使うと、気分が盛り上がる気がしないでもない。 ジャスコ/ジャス子 (自称)ジャスティス型神姫の俗称。ここではイ○ンに統合されたスーパーマーケットの事ではない。 ジャスティス (自称)ジャスティス型神姫のジャスティス。ガン○ムではない。正確にはブラックドラゴン型ジャスティスであるが、武装状態であっても一見して龍型と言うのは難しい。名前の由来はローマ神話の正義の女神ユースティティア(英語名ジャスティス)で、この女神と同一視されるギリシア神話の正義の女神の名前がアストライアーである。些細な事だが、レザーパンツ系を装備すると、素体のグラが飛び出る事がある。 しゃらたん 紗羅檀の読み方。「~たん」という語感が愛らしい事もありそのまま別称ともなっている。単に、漢字変換がめんどくさいという本音もあったりする。 紗羅檀 アヴァンフィジーク製神姫、バイオリン型紗羅檀(しゃらたん)。DL神姫。パッケージアートの圧倒的ラスボス臭は随一で、悪魔的シルエットを持つ武装、黒檀の艶かしい光沢を放つボディは中二心を刺激してやまないが、ゲーム中では世間知らず可愛いやや天然系お嬢様神姫。もう一人のお嬢様型神姫とは、一部に「大きな」差がある。 主人公 プレイヤーの分身。ゲーム開始時にプレイヤーが名前を設定する事ができる。性別は男で、年齢は良くわかっていないが、バイクの免許を取る事ができる年齢ではあるらしい。ライバルデータの説明文およびイベントログは主人公による記述だが「とりあえずバトルしに行くかな」「人間なんかと結婚するから…」「エントはけなげでかわいいな」「これだから人間は嫌いなんだ!」などの記述が…他にも会話などを含めれば基本変人かつ神姫バカと言っていい。ライバル神姫の名前は覚えられるのに、マスターの名前は覚えられないという神姫>人間な一面もあるようだ。(前作では甚平すらたま子のマスターと呼んでいた)変わり者ではあるが、そこは主人公、非常に人気者。マスターをしている神姫達からは絶大な信頼と愛情を受け、複数の女性マスターと「イイ雰囲気」になっている。一見モテて羨ましい!と思うかもしれないが、神姫達に振り回されたり、女性マスター達と知り合ったが故に面倒事に巻き込まれたりという事も多い上に、(性格的に)厄介なマスターに執着されたり変なところに勧誘されることも。先述した女性マスター達とも「イイ雰囲気(キス責めなど)」まではいくものの、それ以上の進展はないし…。マスターとしての実力はプレイヤー次第だが、バトルを始めたのが柴田君と同時期であるにもかかわらず、あっという間に強豪までのし上がっていく実力者。まあその実力が原因で巻き込まれる厄介事もまた多く、女性マスターと知り合っても神姫バトルで勝って行っても厄介事に巻き込まれる単なる巻き込まれ体質の苦労人なのかもしれない。ちなみに、恋人がいない事を少々悔しく思ったり、むっちんプリンが好きだったり、女性からのメール呼び出しにホイホイ応じて3対1ハンデバトルをさせられたり(しかも一回や二回ではない)女性に全く興味がないというわけではないようだ。 ジュビジー プラントプラネット製神姫、種子型ジュビジー。DL神姫(DLC第6号で実装)。独特の形状の武器が特徴。同期の花子がツンドラなのと比べると、買ったばかりの頃からマスター大好きっ子な元気っ子である。 純正 1 (装備)各神姫の素体と共にデザインされた武装の事。そのため固有武装という言い方をすることもある。神姫は素体とこれとセットでデザインされていることが多いので、各神姫のモチーフを象り、キャラクター性を成している。単純に言えばフィギュアに付属している装備のこと。なおリペイント版には追加装備が付く場合が多いが、これは「リペイント版の純正装備」に含まれることが多い(リペイント版の素体はAIの思考パターンも異なる"別キャラ"になっているのが多く、設定上単なる色違いというより仕様変更版のそれに近いため)。バトマスでは、おおむね武装レベル2~3、4~5、6、7辺りの4種類が用意され(されていないものもあるが)、このうち4~5(前作最高ランク)のものと7(今作最高ランク)のものが、それぞれ専用RA、専用EXRAの発動に必要なことが多い。バイクや自動車のオプション部品のうち、製造メーカーが作ったものを指す「純正品」からきた言葉で、対義語は「社外品」2 (装備スタイル)広義では純正装備のみで武装した状態のことを指す。狭義では固有RAを使用できる武装「のみ」を装備した状態のこと。ストレスなく嫁神姫を操作できることより、見た目の整合性やキャラクター性を重視した装備スタイル。しかしどちらの意味の純正装備でも装備部位はまず全て埋まらないし、武器のパターンもかなり限られる(アーンヴァルMk.2の武器の多さが例外なだけ)ため、よほど強い拘りのもと純正縛りをしているのでない限り「ただし武装とアクセサリーは除く」と続くのが普通。前述の通り専用RAの発動には純正装備が必要だったりするが性能が微妙な場合も多く、能力に目を向けるならもっと強力な装備を追加するなりして身を固めた方が絶対的に強いのが現実である。武装神姫は組み替え玩具であるが、組み替えて「も」遊べるであり、公式側は組み替えが必須であるとはしておらず、「組み替えない自由」がある。純正縛りに必要なものは性能の不利を相手やシステムのせいにせず、腕でカバーする信念のみ。そして何より「他所は他所、ウチはウチ」の精神が大切である。 上級者 神姫愛故に普通の人生を歩めなくなった人のこと。さらにレベルが上がると浄級者とも。 上級者向け妹 ヴェルヴィエッタの紹介文で記された言葉。正しくは「上級者向けの妹」。どうしてこうなった。 ショットガン リアルでは散弾と呼ばれる、細かい粒状の弾を飛び散らすように発射する銃のこと。散弾銃。余談だが日本で本物の(装薬式の)銃を所持しようとすると、ほぼ最初はこれになる。猟銃、競技銃がほとんどだが、なかにはセミオートマチック20連発など、戦闘用としか思えない物騒なものもある。 ジルダリア プラントプラネット製神姫、花型ジルダリア。DL神姫。世に溢れる好意がダダ漏れなツンデレとは一線を画す超ツンデレだったが、バトマスではかなり投げやりな性格になっている。サイハイソックス以外は白のブラとローライズパンツのみという驚異の素体をもつが、性格が特徴的すぎることや、プラントプラネット社特有の有機的なデザインの武装がよくマッチしているためか、その露出度の高さは忘れられがちである。上記の素体デザインに加え肌色の成型色が良かったため、EXウェポンセット神姫の素体や自作神姫のベースとして重宝された過去がある。この事で需要に気づいたのか、後にキャラクター性の無い単色素体であるNAKEDシリーズが発売されている。 ジルリバーズ アフォンソファクトリー製(素体部分)神姫、クルーザー型ジルリバーズ。なかなか正しい名前を覚えてもらえない。ジルリバー「ス」ではないからな。byじるりん紹介文には「ヒール」だの「ダーティ」だの書かれているが、ゲーム中のジルリバーズ型神姫は総じていい子が多かったり、笑顔がとってもキュートだったり、バトルと無関係の時は素直に振る舞うため、ホントはイイ子的な雰囲気が強い。純正武装では胸部パーツがないというかなり珍しい装備構成をしている。イベント終盤の噛み具合は一見の価値あり。 じるりん ジルリバーズの俗称の一つ。発売前に投稿されたゲーム情報サイト4Gamerの動画でジルリバーズに付けられた名前。ダーティでクールな外見に対してあまりにも可愛らしい名前だったのでインパクト抜群。正式名称が定着しないことも相まって一般的な呼称となった。 白子 天使型アーンヴァルの俗称の一つ。今作ではMk.2も指す。 白にー 天使型アーンヴァルMk.2俗称の一つ。白=アーンヴァル にー=Mk.2(に)。白いニーソックスではありません。 新川洋司 「メタルギア」シリーズで有名な小島プロダクションのアートディレクター。今作オリジナル神姫ジャスティスとミミックのデザインを手がけている。デザインしたミミックやジャスティスが?????製という扱いなため、神姫メーカーは設定されて無いのかもしれない。デザインした神姫の声は某アニメキャラ(キュ○ムーンライト)からとか妊婦型神姫とかフィギュア用のボイス付き神姫とか、インタビューで色々上級者な発言をしている。 神姫 1:(共通)全高約15cmの美少女型ロボット。このうち、武装し神姫バトルに参加しているものを「武装神姫」と呼称しており、すべての神姫がバトル用に設計され参加しているわけではない。神姫とはMMSを使用していることと、そのMMSは玩具のサイズが1/1であることが絶対であること以外は設定が自由とされている。ゆえに各オフィシャル作品間で戦闘システム、神姫の知名度などに差異があり、作品によっては(「武装神姫 Moon Angel」など)神姫を破壊、人間を殺傷できるレベルにまで火力が上げられている神姫もある。ライドオンして云々というシステム設定も基本的にはこの「バトルマスターズ」というゲーム作品に限っての話である。2:(本作における神姫)マスターの年齢層、プロローグの語りや大会規模などからかなり普及しているような印象を受けるが、作中のニュースや一般人の反応を見る限り、大々的に宣伝されて流通・普及しているわけではなく、あくまでサブカルチャーのひとつで「誰が持っていても別段恥ずかしい事はないが、いつどこにでもあるという訳でもない」物として扱われるに留まっている様子。ただし、マスコミの報道解説は前提として視聴者がそれを全く知らないことを想定して構成されるため、作中の実際の普及率がどの程度に設定されているのかは量りかねる。 神姫イヤー/神姫アイ 神姫マスター山県みちるの神姫 薫 の台詞中の単語。イーアネイラのセリフにも登場する。それほどまでに神姫は高いスペックを持っているという事の裏づけ…のはずだが、アルトレーネの発言であったり、犬養三兄弟を見る負荷に耐えられない発言があるなどと色々と疑問が残る。マオチャオ型曰く「マオチャオ型の神姫イヤーは地獄耳」という事らしいが、メーカー間で性能差があるのかは謎。 神姫センター バトマスでは、実際に行ける場所としては登場しないものの、よく話題に挙がっている場所。神姫がハードワークで倒れたり、おかしな挙動をしたりするときに、よく「神姫センターに行って見てもらおう」という台詞が出ている。神姫にとっての病院のような場所、もしくは現実世界でいえば携帯が故障したときに持ち込む直営店のような扱いかと。 神姫道/神姫魔道 何かしらのきっかけ(ゲームにしろ漫画にしろ)により、神姫(フィギュア)を購入したときから始まる果てしなく長い道。『神姫之道は玩具道、玩具の道は修羅の道。ひとたび踏み入らば、戻る道なしと心得よ』 神姫NET バトロンやジオラマスタジオを運営していたコナミの公式サイト。2012年1月31日に閉鎖された。 神姫破産 神姫のために金を使いすぎて貧乏になること。発祥はおもちゃ板の神姫スレ。 神姫メーカー 神姫世界における神姫開発・販売を行う企業の事。フィギュアのデザイナー1人1人に設定されており、フミカネ神姫=フロントライン製神姫のように対応する。設定ではもともとおもちゃメーカーだった(AIP:ミリタリートイ)企業以外にもいろんな業界から参入しているらしく、元楽器メーカー(アヴァンフィジーク)、元ITセキュリティ会社(パンドア)などが存在する。メーカー名はデザイナー本人からとられたもの、デザインされた神姫の傾向からとられたものなどがある。現在、?????扱いのミミックたちを除きほぼすべての神姫には(コミックのみ登場の神姫であっても)このメーカーが設定されている。 神姫メモリー 神姫アイ同様、みちる 薫の会話中に出てくる単語。アルトレーネ型のメモリーは最高級、マオチャオ型のメモリーは鳥頭でとっても優秀だとか(共に自己申告)。他の神姫の場合は不明。 神姫ライドシステム バトマスのメインとなっているシステム。2040年に実装され、マスターと神姫が疑似的に一体化し、意のままに操作できるというもの。 神姫労働 高額商品でもある神姫が毎月のように発売されるなどの状況により生じる「神姫を買うために働いている」状態のこと。基本再販が絶望的な玩具であり、組み換え要素もあるため、人によっては数セット買う(≒多々買い)という発想になりやすいことから生じる。 神宮司 八郎 ゲーセンで出会う神姫のマスターにして刑事。相方はアーンヴァル型のアトラ。出番は少ないながらも前作・今作共にストーリー部分にも登場する。神姫好きを自称しており、仕事をサボってまでゲーセンにバトルしに来る程である。それでいいのか公務員……。なんと小説『武装神姫 LOST DAYS』の主人公に抜擢された。しかし今のところ後ろ姿はあるものの顔は公開されていない。部下の穂波は挿絵で顔出ししたのにである。神宮「寺」ではなく神宮「司」。 神生 しんせい/じんせい 人間における「人生」を指す言葉の神姫版。らしい。一部のツガル型にはこれが5回以上あるようである。 スタジオルーツ 武装神姫世界における神姫製造メーカーのひとつ。ツガルのメーカー。 ストラーフ フロントライン製神姫、悪魔型ストラーフ。旧ストラーフを指すが、バトマスではストラーフMk.2の事を指すことが多い。アーンヴァルとは違って、両者は性格が全く異なり、旧ストラーフは小悪魔的な印象を与える言動であるなど別物な為、混同に注意したい。(ゲームなどでの旧ストラーフの性格は小悪魔的なものが多く、本作でいえばアイネスのそれに近い)ちなみにストラーフ(cTpax)とは恐怖を意味するロシア語である。これに限らず、ストラーフ・ヴァローナの名前や武装名はロシア語由来のものが多く、ヴァローナはカラス、グリーヴァはたてがみ、といった感じである。 ストラーフMk.2 フロントライン製神姫、悪魔型ストラーフMk.2。今作および前作に登場する旧ストラーフの正統後継機。基本はクールだが、相手の芝居にノリノリで応じたり安い挑発に乗ったりと乗せられやすい。またマスターの無茶な頼みも断り切れない。初代がボクっ娘のイタズラ好きなので、「誇り高き悪魔型」という言葉が虚しく響く…。大地さんのハーデス、千歳のリリス、さらには「Moon Angel」に登場した02のように、ライバルの神姫として登場することが多いのは、悪魔型の宿命であろうか。 ストラーフMk.2ラヴィーナ ストラーフmk.2のリペイントver。ラヴィーナはストラーフと同じくロシア語で、「雪崩」を意味する。その名が示すとおり、カラーが黒メインから白メインに変更されてイメージが激変。素体に真っ赤なタイ、武装にはこれまた真っ赤なマフラー型のセンサーが加わったことで、まるで正義の組織の隊員のような雰囲気を醸し出している。基本AI設定はノーマルモデルに比べるとやや素直になり扱いやすくなっている反面、戦闘時においては積極的に攻める傾向があり、秘められた攻撃的な性格を垣間見せる。 ストライクウィッチーズ 代表的な神姫デザイナーである島田フミカネの代表作。現在、OVA1シリーズ、TVアニメ2シリーズがあり、2012年3月に新作劇場版が公開予定。第二次大戦期の戦闘機を模したユニットを足に装着した「魔女」達が、異界からの怪物と人類の存亡を賭けて戦う壮大で骨太なドラマ。そしてその「魔女」達が萌える美少女揃いという狙ったものである。神姫とデザインが似てる(特に飛鳥)と言われるが、ぶっちゃけデザイナーが同じだもの。仕方ないね。余談だが、同じく島田氏の関わったアニメ「スカイガールズ」はキャラクターがMMS化されているが、こちらについてはMMS化されず仕舞い。一説では、版権を持つ角川とコナミが揉めたためとも言われているが、真相は闇の中である。 ストラダーレ 電撃ホビー館で通販限定で発売された、アークとイーダのリペイント版に付けられた名称。ストラダーレとはストリートを意味するイタリア語。ホロモゲーションモデルなど、レーシングマシンの市販バージョンという意味で車名に冠せられる場合が多い。フェラーリやランボルギーニ等、イタリアのス-パーカーの車名によく使われる。このアークとイーダも、レーシングマシーンという位置づけのオリジナル版に対し、それを公道仕様にした市販モデルという設定のようである。両方ともベースカラーはパールホワイト、黒、クリアレッドと共通のものとなり、武装のペイントやマーキングも全てリニューアルされている。そのカラーリングから、警察仕様と呼ばれることも。余談だが、対義語の競技(コンペティション)を意味するイタリア語はコンペティツィオーネで、市販車を改造したレーシングバージョンという意味で車名に冠せられる場合が多い。 スナイパーモード ランチャーでチャージ射撃時にRボタンを押すと画面にクロスヘアが出現しスナイパーモードになる。ちなみにスナイパーの語源はスナイプ(タシギ)という鳥を撃ち落とす技術を持つ射手の事で、そこから遠距離の難しい狙撃を行う射手をスナイパーと呼ぶようになった。 スリルドライブ イーダ専用レールアクション。アークのロードファイター、ジルリバーズのヘリッシュクレイドルと並んで轢逃げアタックとも言われる。イーダがお嬢様でなくお嬢様「型」と称される所以のひとつ。華麗さってなんだろう…。 正義 ジャスティスの俗称の一つ。 ゼルノグラード アームズインポケット製神姫、火器型ゼルノグラード。死亡フラグメーカーにして武器マニア。最近リペイントが発売された。専用RAは前作と比べて武装枠の制限が緩和されたが、相変わらずショットガードすらなくハンドガンなどの一撃で容易に止められてしまうためやや扱いづらい。 ぜるのん/ゼルノン 火器型ゼルノグラードの俗称の一つ。 先々の閃 読みは、コナミによると「センセンのセン」という。剣道(その他「道」と付く武道でも用いるようだ)の用語が元ネタ(先の先、又は先々の先、先前の先。機先を制し相手が動く前に一太刀浴びせる(要約)事)だという。 F1チャンプである竹姫葉月が使用するRA。入手には『オールバトラーMk2』『不撓不屈の証』『百折不撓の証』の3つの称号を獲得しなければならない。条件は厳しいが、見た目がかっこよいのでこれを目指し奮闘するマスターが後を絶たない。 素体 もともとは、神姫の胴体部分のことをさしていた。頭部(コアユニット)およびCSCと素体を組み合わせて自分好みの神姫を製作する、という設定。その辺はバトロンではゲームに用いられているが、複雑になるためかそれ以外では設定のみになっていることが多く、バトマスでもオフィシャルショップの記述でも判る通り、頭部、CSCと胴体をワンセットにして素体として販売している。
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再誕せし、哀しき神の姫(後半) 人間から逃げ出そうと走り出した“彼女”を、ロッテが抱き留める。 移動中に武装は解除したが、琥珀色の瞳で“彼女”には分かる様だ。 人間である私達に対して程ではないが、少し怯えの色が見て取れた。 「……あたしは、自分の誇りに気付いてそれに従い戦いました」 「はいっ。それは……誇らしくて素敵でしたの、お姉ちゃんは」 「でも、あの人は応えてくれなかった……あたしを“殺した”」 感極まったのか、涙声でロッテの胸板をぽかぽかと叩く“彼女”。 ロッテは言葉もなく、暫くの間自らの胸で泣く神姫を撫でてやる。 落ち着くのを見計らい、クララがそっと挟み込む様に背中を抱く。 物理的に涙を流せずとも、間違いなく“彼女”は泣いているのだ。 「ずっと、あたしはあの人に喜んでほしかっただけなのに」 「その為に痛くても辛くても……我慢し続けたんだよね?」 「……それなのに、あの人は一回も笑ってくれなかった!」 後で分かった事だが“彼女”には愛玩用の改造が施されていた様で、 猪刈めは苦悶の表情を浮かべる“彼女”を、毎晩罵っていたらしい。 それは残酷な嘲笑であっても、優しき微笑では決してなかったのだ。 無論その様な機能はMk-Z氏が取り外してくれたらしい、何よりだな。 「あたし、何の為に今まで生きてきたの……人間が、怖い」 「お姉ちゃん。貴女の中に“誇り”は、まだありますの?」 「ほこ、り……?あたしの、誇り……?あたしの中に……」 「戦いの時、誰かの為に身を呈した“心”は偽物ですの?」 『違う!』と“彼女”は叫び、そして何かに気付き……泣き出した。 例え猪刈が外道であろうとも、彼奴めに尽くしたかった想いは本物。 それが故に、裏切られた事が大きな傷となってのし掛かるのだ……。 「ならもう一度だけ人間を、ううん……神姫を信じてほしいですの」 「……神姫を、信じる?えっと、うんと……神姫を、って貴女達?」 「そう。マイスターを信じているボク達を、信じてほしいんだよ?」 優しく抱きしめ言葉を紡ぐロッテ。背後から抱き寄せるクララ。 二人の言葉で初めて“彼女”は、私・槇野晶を見上げてくれた。 そんな三人を、私は優しく抱き上げて……胸元でそっと暖めた。 「あっ……うんとっ、えっと……お姉さん……?」 「何でも構わん。それよりな、私の所に来ないか」 「あ、あなたのお側に……あたしがですか……?」 「そうだッ。あの様な哀しい想いはもうさせん!」 「で、でも……あなたを信じていいのか、あたし」 “彼女”は哀しそうに、目を伏せて呟いた。それもそうだろう。 マスター登録は解除されているが、それで事が済むわけはない。 だが、ここで口を開いたのは……先んじて引き取られたクララ。 「マイスターは、不具合で戦えないボクを救ってくれた」 「不具合?そんな……えっと、ごめんなさい……あたし」 「謝らなくてもいいですの。お姉ちゃんは何も悪くない」 何か言おうとした“彼女”の唇は、ロッテの指でそっと塞がれた。 決して人間への不信が払拭された訳ではない。またそんな自分が、 人を信じていいのかという迷い。それに私は、誓いを以て応える。 「私がお前達を裏切りし時は、この命果せても訪れぬと知れ」 「え?そ、そんな……そんな大げさな事、言わなくても……」 「いいや、誓いは我が胸とお前……“アルマ”の胸にある!」 「“アルマ”……?それが、あたしの名前……お姉さんは?」 「我が名は槇野晶、マイスターの名に誓い皆と共に在る者だ」 それは、嘘偽りのない想い。命と引き替えにしても、破れぬ願い。 私は3人の“姉”として死ぬ時まで苦楽を共にする為、側に居る。 これはアルマのみならず、ロッテとクララにも改めて誓った言葉。 マイスター(職人)の誇りに賭けて、心より発せられる“契り”だ。 「あ……えっと、ま……マイスター、でいいですか?」 「有無、構わん。これからは私の“妹”だ、よいなッ」 「これから宜しくお願いですの、アルマお姉ちゃん♪」 「……アルマお姉ちゃん、ずっと皆で生きていこう?」 「うんと、はい。皆を一度信じてみる事にします……」 泣き出しそうな笑顔のアルマに、抱きしめるロッテとクララ。 そして、そんな三人が愛おしくてずっと優しく抱きしめる私。 何があろうとも、彼女らの力でいてやろう。私はそう思う!! 「……ありがとうな、アルマや」 「きゃっ!?……あ、あっ……」 そしてロッテにもクララにも行った、額への誓いの口付け。 真っ赤になり応じるアルマが、なんとも可愛らしいな……。 「ええと、うんとっ。みんな、宜しくお願いしますね?」 「はいですのっ♪クララもわたしも、マイスターもっ!」 「帰ったら、いろいろ好きな服を見繕ってやらねばなッ」 「有り難う、Mk-Zさんにマーヤさん……後は田中さんも」 クララに釣られ、私達はそろって助力してくれた人々に礼を言う。 Mk-Z氏は何やら曰くありげに笑っている……恐らくはアレかもな。 「いえいえ。こっちもいろいろ、参考になりますしね?」 「おにーさま、Dr.CTaさんも褒めてくれますよきっと!」 「よーし……それでは帰るか、懐かしき我が家になッ!」 ──────愛しき神の姫に、優しき心の誓いを。 次に進む/メインメニューへ戻る
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哀れなる傀儡に、祝福を(前半) 日曜日。クララのサードリーグ登録を済ませ、私・晶が向かう先は 秋葉原神姫センター3階にある、ヴァーチャルバトルフィールド。 今日はここで、ロッテの二戦目を実施しようかと思っているのだ。 クララの装備は開発中だ。あの日暮にも助力を頼んでいるが……。 「アレス・グリューン──────マイスター、今日も快調ですの♪」 「有無、何よりだ。クララ、ロッテのこの装備を土台にする予定だが」 「……マイスター、綺麗だけど少し大型。CQBでは大きすぎるもん」 「ふむむ?そうか。この翼に負けぬ様、自然と重装化しているからな」 この通り“ゲヒルン”の効能もあり、分析能力では私を越えている。 確かに軽量級ランクの水準よりも多く、吟味して武装させたからな。 何らかの方法で、CQB……戦略的近接戦闘も考慮せねばいかんか? 何せバトルフィールドは毎回、基本的にランダムで選択されるしな。 「だったら、どっか~んって衣替えしちゃえば解決しそうですの♪」 「“どっか~ん”って……クララお姉ちゃん、無理があるんだよ?」 「む、いや待て?……ロッテ、お前の発想は使えるやもしれんぞ!」 以前入手した“アレ”を使えばどうにかなるかもしれんな、有無。 解析は少し骨が折れるが、そこはクララや日暮と共同作業で……。 『槇野晶さん、バトル開始時刻です。オーナー席に付いてください』 と、時間の様だ。思いついた事を咄嗟にテキストエディタに書き込み、 私はクララを肩に乗せて、ロッテをエントリーゲートへと送り出した。 そう言えば今日の対戦相手とそのオーナーは……って彼奴めかーッ?! 「うひはッ、あくまたん良い娘だから今日もしっかり勝ってよ~?」 「は、はい御主人様ッ……あたし、がんばりますっ」 「あれは猪刈ではないか!?アレだけ叩かれて舞い戻ってきたのか?」 「マイスター、猪刈さんって確か……その、わたしの姉妹達に……」 「……覚えておったのかロッテや。まあ、気にする事はないぞ」 猪刈久夫、34歳無職。俗に言う“ネオニート”であり、神姫の敵だ。 む、「何故知っているのか」だと?当然だろうッ!彼奴は某掲示板の 神姫板で、己の神姫に不埒な扱いをして挙げ句壊し……しかもそれを ネット上で動画公開したのだぞ──“彼女”の悲鳴も収録の上でだ! 無論散々叩かれまくり個人情報も暴露されて、奴は有名人となった。 何故罪に問われなかったのか、と事件当時の私は酷く憤ったが……。 「あくまたんはとってもエロカワイクて強いから、あんな人形なんて」 「は、はい……“けちょんけちょんのこなごな”にします……」 「……彼奴め、前の一件でもちっとも懲りておらん様だな」 『ロッテvsあくまたん、本日のサードリーグ第7戦闘、開始します!』 “あくまたん”とやらの姿は見えなかったが、すぐに分かるだろう。 今回のバトルフィールドは……廃工場らしい。CQBの課題探りには うってつけの戦場だな。案の定ロッテは、翼を広げずに相手を待つ。 「さ。始めましょう、出てきてくださいですの!」 「は、はいっ……えっと、宜しくお願いしますっ……」 「……えーと、それって重くないですの?」 ロッテが突っ込むのも無理はない。相手はストラーフタイプなのだが、 その機動特性をガン無視して、大量の火器を無理矢理くっつけている。 近日発売のフォートブラッグタイプと撃ち合いでもする気か、猪刈め。 「だ、大丈夫ですっ。あたしは、御主人様の為に……勝たないとっ」 「きゃっ!?わたしだって、マイスターの想いを背負ってますのっ!」 「ぷひひ、いいぞあくまたん~!そんな鳥なんか、撃っちゃえ!!」 素早く身をよじり風切り音をかわすロッテの後ろで、弾頭が爆ぜる。 爆風がロッテを襲うが、閉じた翼は耐爆装甲の役を果たしてくれた。 増設した脚部の安定性もあり、次々飛来する砲弾の9割は回避する。 とは言え、100%とは行かない。そう思い分析を始めた時だった。 「きゃああぁっ!?」 「な……ロッテッ!!」 「ぶっひひ~、壊せ、壊せっ!」 「ご、御主人様……はいっ」 白い羽が舞い散り、ロッテが地に伏せる。砲弾が直撃したのだ。 その結果に“あくまたん”は最初不安がったが、猪刈の叱咤にて トドメを刺そうと、その砲身を零距離まで突きつけてきた……! 「ご、ごめんなさい……勝たないとあたし、あたし……」 「……あなたは何故、自分で戦おうとしますの?」 「え……!?」 相手の窮地に際して、それは猪刈も“あくまたん”も予期せぬ問い。 半ばでロッテは見抜いておったのかもしれんな、彼女の戦う意味を。 その証拠に、現在優位である筈の“あくまたん”は……泣き出した。 「だ、だって……御主人様に喜んでほしい……!!」 「なら“ごめんなさい”は、勝ってからでいいですの」 「うんと……で、でもっ、わたしはっ」 「あなたの“心”に誇りがあるなら……!」 「きゃぅんっ!?」 翼を纏ったロッテがバネの様に起きあがって、彼女を突き飛ばす。 猪刈の趣味であろう重火器に足を取られ、転んだ“あくまたん”。 だがそこでロッテは仕掛けたりせん。代わりに、凛と叫んだのだ。 「自分の戦いには、自信を持ってくださいの!」 「……自分の、戦い?」 ──────その言葉は、戦乙女の誇りに賭けて。 次に進む/メインメニューへ戻る