約 3,978,893 件
https://w.atwiki.jp/saikinmm/pages/360.html
笑顔YESヌードって良い曲だと思うんだけど 最近のメンバーでは歌わないの? 83 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 14 36 25.68 0 笑顔YESヌードって良い曲だと思うんだけど 最近のメンバーでは歌わないの? あと当時の評判教えてくらさい 85 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 14 41 05.02 0 >>83 秋ツアーで歌ったよ 87 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 14 44 16.79 0 >>83 俺は大好きだった 誰か忘れたけどミュージシャンが絶賛してたな 90 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 15 14 37.04 0 メドレー確認できました やっぱりちょっと色気が足りないね こういう時に中間層がいないのが痛いところか つーか現メンだともっと選曲むずかしそうだね 95 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 16 14 43.89 O 歩いてるから続いて小春が綺麗だなと思ってました 96 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 16 59 14.15 0 >>87 >誰か忘れたけどミュージシャンが絶賛してたな 木村カエラね 唐突だったな 98 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 17 46 21.95 0 海外ヲタからnudeをヌードって発音するのは気持ち悪いっていう意見もあったな 歌詞上じゃnudeじゃなくてヌードのカタカナ表記だし全く問題ないんだが 日本じゃ大まかに言って評判良かったはず ヲタ人気がわかるハロプロ楽曲大賞もみかんより上だった記憶がある 99 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 17 49 59.75 0 というか1位だったな http //www.esrp2.jp/hpma/2007/youarenotalone/song.htm 001. 笑顔YESヌード / モーニング娘。 368pts 157票 002. JUMP / ℃-ute 323.5pts 135票 003. みかん / モーニング娘。 298pts 137票 104 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 21 45 08.36 0 笑顔YESヌードは宇多丸がマブ論で ハロプロでは超久々に5点満点つけてた 愛ちゃんが辞める前に秋ツアーで歌ってくれてよかった 見納めだと思って超盛り上がったわ 105 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 21 47 31.30 0 ミキティが辞めなかったらもう少し笑顔YESを聴けたのになあと 少し寂しく思う 関連 エガヌーはアルバムver.の方が好きだな 悲しみトワイライトがかっこよくて好きなんですけど 古参の評価はどんな感じですか? つんく幅ひろいよなぁ 125ハマリ [2011年]
https://w.atwiki.jp/titech-phys-kakomon/pages/43.html
図表をムリヤリ配置する リンク リンク とりあえず、いいサイトがあったので掲載: 図や表を並べたい http //www.nsknet.or.jp/~tony/TeX/faq/macro.htm#fig2 図と表を並べて,それぞれに適切な\captionを使いたい http //www.nsknet.or.jp/~tony/TeX/faq/macro.htm#captype 図と表の両方を並べて,同時に適切な\captionを使いたい http //www.geocities.co.jp/HeartLand-Poplar/1240/latex/FAQ.html http //www-an.acs.i.kyoto-u.ac.jp/~fujiwara/tex/nup.html ついでに、文章も入れたい http //www17.plala.or.jp/ohishi-masaru/tex/topic.html#figure 表と\captionを横向きにしたい http //oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/texfaq/qa/28706.html # dvipdfmと他のパッケージが競合したときは # http //mytexpert.sourceforge.jp/index.php?Dvipdfmx#ic079c53 # を参考に修正してね。 # 例えば、最後の例「表と\captionを横向きにしたい」は # color, graphicxの順にすればOKのはず。 戻る
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/1862.html
【検索用 ふんなってぃてーるたろーか 登録タグ 2008年 VOCALOID ふ トマ豆腐 曲 曲は 鏡音リン】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:トマ豆腐 作曲:トマ豆腐 編曲:トマ豆腐 唄:鏡音リン 曲紹介 曲名:『フンナッティテール・ダローガ』 歌詞 (ニコニコ動画より転載) 知ってたはずだけど 午後からの空模様 天気予報見たのに 若干馬鹿にしてたの 家出たその直後傘持ってくか迷った 普通の傘にするか 折りたたみにするのか 面倒なとき 選べないとき 二択に迷ったときは どちらも選ばない人だから 結局無防備なまま行ったよ アーメフテック・イトゥアワ ぽつぽつと小雨が頭を刺激して このくらいなら別に構わない コンビニ バス内 駅構内 傘は買わない 気付いたはずだけど 電車の窓から見る 大量の水滴のダイブ でもあまり気にしなかった 電車から降りた時 寒さで目が覚めた とんでもない過ち犯していたのね 戻れないとき どうしようもないとき 背水の陣的なときは 無謀に立ち向かう人だから 結局ズタズタ承知で駅出たよ フンナッティテール・ダローガ 予想以上のにわか雨が服裂いて これはさすがにかなりヤべーけど 金ない 店ない 時間ない 傘は買えない 傘を持っていったとしても 微妙な雨の時は さすかささないか迷う 一番いいのはレインコートだよね 幼稚園以来 着てないけどね フンナッティテール・ダローガ 何言っても振り続けているのね 自業自得と思うかもしれない (テンキョ・フォー)見ない 聞かない 信じない 雨避けられない フンリーツ・ヅクウェール アンメ・ヤンデー・クルェン フンナッティテール・ダローガ クォエッガ・カンヌァー シック・ヒービークウ コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
https://w.atwiki.jp/zatchbell/pages/1432.html
M-313 ハザマの兵士 魔物 2000 バトル攻撃 自分の「クロガネ」がいるとき、何体でも場に出せる (通常の「場の魔物は3体」とは別に出せる。「同名のカード」でも場に出せる)。 以上、枠囲み 《○○○もどき!!》MPを1へらす→合計魔力5000で攻撃(相手の魔本に1ダメージ)する。 ※パートナー表記なし ○○○には好きな術を入れて叫ぼう。 LEVEL 11 クロガネの術は、ハザマの兵士を使ってこそ本領を発揮するのだ。 自分のクロガネがいれば何体でも場に出せる魔物のルールを持つ。 このゲームで同番号のカードは4枚まで魔本に入れられるので、通常の魔物と合計で7体場に並べられる。 なお、「3体の枠内にクロガネが要求される事」と「構築時に魔物は合計8枚までの制限がある事」は忘れないように注意。 クロガネは《気合だ~!》の1枚しか登場していないので、必然的にそちらと組む事になる。 あちらは格闘系の効果ではないため、効果自体のシナジーは薄い。 しかし、ハザマの兵士は「クロガネの術」の強化や使用条件に関わり、それらの術はMP0で使用できるため、MP消費の激しい格闘効果との相性は悪くない。 格闘効果を並べたいだけならV-004 DS軍団も存在するため、クロガネの術を使わないようだとクロガネが枠を圧迫するカードになってしまいがちと言える。 クロガネの術を使わない場合に利点と呼べるのは分類が「魔物」であるというところだろうか。 E-070 黒い覇道で除去される事が無く、ダメージをかばわせる事ができるといった点は、V-004 DS軍団よりも有利に働くだろう。 また、大量展開可能な魔物であるためガッシュ・ベルVSリオウ《素の力》ともシナジーが生じる。 ちなみに効果名に関してフレーバーテキストで「○○○には好きな術を入れて叫ぼう。」と書かれている。 カード化している術は勿論、カードが登場していない術名も叫ぶチャンスだ。 収録パック LEVEL:11 真緋の新しき力 FAQ Q1.ハザマの兵士は、デッキに何枚入れることができますか? A1.4枚までです。魔物の8枚制限に含まれます。 Q2.ハザマの兵士はかばうことはできますか? A2.可能です。 Q3.ハザマの兵士が4体いるとき、1ターン中にその4体ともが、効果を使うことはできますか? A3.できます。 Q4.クロガネ1体とハザマの兵士3体がいるとき、さらに他の魔物を出すことはできますか? A4.できます。 Q5.場にいた「クロガネ」が捨て札になったとき、「ハザマの兵士」も捨て札にするのですか? A5.捨て札にしません。 Q6.「クロガネ」が捨て札になり「ハザマの兵士」だけが3体場に残っているとき、 新たに場に魔物を出すことはできますか? A6.できます。 タグ:2000 ハザマの兵士 バトル攻撃 魔物
https://w.atwiki.jp/kakiterowa/pages/385.html
強がりに満ちた笑いの後は、現実に襲われる時間だった。 幻夜・フォン・ボーツスレーは死んだ。 ステルス鬼畜とサプライズパーティーの二人と共に。 その二人に勝利して放送を超えた後に、死んだ。 (……あれ?) ネコミミストは何か引っかかる物を感じた。 そう、それは確か……。 「……放送だ」 放送の時だ。 幻夜・フォン・ボーツスレーの名が呼ばれなかった、第二回定時放送。 だがそれだけではない。あの放送の死者の名には。 「第二回放送……ステルス鬼畜の名しか呼ばれてない!」 「まさか!」 それを聞いた666が死体に駆け寄る。 それは剣に刺し貫かれた岸田洋一の姿をした遺体だ。 脈を取り、傷の具合を診る。 結論はすぐに出た。666は首を振る。 「……いや、もう死んでいる。心臓を一突きにされたんだ、間違いなく即死していたよ」 「え……?」 その死体が、サプライズパーティーの筈だった。 ステルス鬼畜を仕留めたと高笑いを上げ、しかし逆に殺された男。 何か違和感を感じはしたが、残ったステルス鬼畜も間違いなく悪だと断じて、討った。 勝利の後に仲間との死別を経験する程の激闘によってだ。 だけど。 「じゃあ、どうして放送で呼ばれなかったんだ?」 何か致命的な見落としを予感させる、そんな不安が全身を蝕んでいた。 666は無言で立ち上がり、もう一つの同じ姿をした死体に歩み寄る。 ステルス鬼畜だと思われていた、ネコミミストにより顔面の半分と頸部を破壊された死体。 屈み込んで、その容態を診る。 そして言った。 「死んでいる。だがこちらは即死しなかったようだ」 「え…………?」 ネコミミストも死体に駆け寄り、そして息を呑んだ。 確かにその死体は、衝撃波により頸部の殆どが吹き飛ばされ抉れていた。 だが首輪が盾となったのだろう。 奇跡的に血管が、そして神経が、ズタズタになりながらも部分的に残っていたのだ。 「意識は保てなかっただろう。死も確実だった。だが、即死ではなかったようだ」 それはつまり。 「こっちの死体がサプライズパーティーだ」 「そんな……」 幻夜が危険人物だと言ったステルス鬼畜は、先に殺された方の男だった。 ステルス鬼畜は死の間際、サプライズパーティーに濡れ衣を掛けたのだ。 「それじゃ私が殺したのは誤解によって殺された……被害者……?」 「気にするべきではない。彼もまた危険人物だ」 666はそう言う。 どちらにせよ危険な相手だったのだから気にしてはいけないと。 「でも……もしかしたら話し合えて……そうしたら幻夜は……!」 それでもネコミミストは、素直にそれを受け容れる事が出来なかった。 人を殺した。誰かを傷つける者を。罪無き者を殺す者を殺した。 だけどそれが間違いだとしたら? 本当は悪人なんかではなくて、戦いを避ける方法が何処かにあって、 そして無理に討とうとしなければ、仲間が死なずに済んでいたとしたら? 「そうしたら幻夜は……むぐ」 「君は、良い子だな」 その嘆きを、666が抱き締めていた。 頭一つ分だけ大きな幼い体で抱き締めて、その罪を溶かしてしまう。 「ろ、666……」 666の指が、優しく髪を梳かした。 くすぐったい、柔らかな指の感触。 文字通り猫になったような不思議な気持ちになる。 「だが、保証は私がしよう。君はまだ道を誤ってはいないと。 君は正しいことをした事を、私が保証しよう。判断を間違えはしていないと」 「…………本当に?」 「本当だとも」 666は、優しい微笑みで応えて見せた。 「私を信じてくれ」 「666…………」 666はもう一度、ネコミミストを優しく抱き締めた。 罪への不安に震えるその小さな体から、やがてその震えが無くなるまで。 溢れる愛を篭めて、抱き締めていた。 ――そう、この痛みはもう要らない。既に与えてあるのだから。 666は捻れた愛を胸に秘め、優しくネコミミストを労り続ける。 ずっと、長いこと。 だけど、それでも。 確かに何時までも強がり笑いをしてはいられない。 でも、何時まで泣いてもいられないのだ。 やがてネコミミストは毅然と立ち上がり、地を踏みしめ拳を握り締める。 「もう、いいのかい?」 「うん……もう、大丈夫だ。ありがとう」 666の労りに感謝して、前に進むことを決意した。 666は安堵の息を吐いた。 「よし。行こう」 「ああ」 二人は立ち上がった。 前に進むために。だが。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 彼女達の前には悪夢が立ち塞がる。 * * * デビル・シャリダム。コ・ホンブックから引き剥がされた悪夢の残滓。 校庭に現れた彼女は、ゆっくりと歩きだす。 その背中から翼のように伸びる触手が全てを包みこまんと大きく広がっていく。 夜の帳。悪夢の象徴。シャリダム自身もそれに覆われ姿を隠す。 それが、閉じた。 上から、左から、右斜め上方から、左上方から、正面から、右方から、前面全てから触手が襲い来る。 「たあぁっ!!」 叫びと共にネコミミストが右手の刀を振るう。サプライズパーティーの持っていた永遠神剣『冥加』だ。 正面下方から鋭く伸びる爪を持った触手を叩き斬り、返し上げる刀で右方から伸びた岩のような触手を打ち払う。 続けて伸び上がった右腋の隙を絡め取ろうと襲う無数の房を持った触手を左手から放った衝撃波で跳ね返す。 だが連続した右方からの攻撃に集中させた所に、左方から水気で膨れあがった触手が無数押し寄せる。 「こ、のお!」 無理矢理体をよじって触手の群を切り裂く。 しかし切り裂かれた触手は、バシャリと溜め込んだ水気をぶちまけた。 「…………ぁ」 万全の状態にある触手は色んな使い道が出来るのだ。甘く見たネコミミストの不覚。 ――ちなみに触手汁の主な効能は繊維質の分解、痺れ薬、媚薬、不妊治療、白くて滑って臭うだけなど物による。 「させはしない」 身を挺して666が割り込んだ。 降り注いだ触手汁はどうやら衣服溶解型だったらしく見る見るうちに666の燕尾服を腐食していく。 「666!」 「大したことはない」 ネコミミストは幸いにも殆ど影響を受けなかったが、前方からは更なる触手が押し寄せててきた。 次なる触手はスライム状。スライムもまた触手。薬液そのもののスライムが洪水のように襲い掛かる! (まずい――!) 息を呑むネコミミスト。その目前に投げられる何か。 「伏せなさい!」 666の声。咄嗟に反応したネコミミストはブックを押し倒して背後に伏せた。 次の瞬間、投げ込まれたそれは爆発した。 飛翔の蝙也の爆薬。割と地味なそれはこの場合に最も有効な手札だった。 ダメージの少ない、だが強く広い面の衝撃力を持った爆風が押し寄せるスライム状の触手を吹き飛ばす。 シャリダムに続く視界が、開いた。 「当たれ!」 間を空けず、666の手に握られたF2000Rから自動照準高速貫通ライフル弾が連射される。 放たれた無数の鉛玉がデビルシャリダムの肢体を穿つ。少女の体が衝撃で滑稽に踊る。 デビルシャリダムの少女の形は一瞬で蜂の巣にされて引き裂かれた。 「やったか!?」 ネコミミストの叫びを。 「いや、まだだ!」 666の叫びが否定する。 果たしてシャリダムは大したダメージを受けてはいなかった。 穿たれた無数の銃弾はぷつぷつと果物の種を吐き出すように排出される。 衝撃に引き裂かれた肉体が頭へと引きずられ元の場所に収められる。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 見る見るうちに元の姿を取り戻したシャリダムは畏怖すべき咆哮を上げた。 ネコミミストは息を呑んだ。 「あの再生力はまさか……不死者、なのか?」 アニロワ2ndに登場する異能力の一つ、不死者。 不死の酒を呑んだ者がなる文字通り不老不死の存在。殺す方法は原作ではただ一つ。 「なら問題は解決だな。私達は既に切り札を持っている。いや、幻夜が持っていた」 「まさか……」 666はそう言ってデイパックからそれを取りだした。 幻夜すら未確認だった、ゲドー・ザ・マジシャンの未確認支給品。 ――不死の酒。 人を不死者に変える秘薬。起死回生の一手。 不死者を殺す方法は原作においてただ一つ。 同じ不死者が相手の額に右手を当てて心の底から『食べたい』と念じる事。 それにより不死者は『喰われる』。 肉体は一片すら残らず呑み込まれ、知識と記憶と経験は喰った者に受け継がれる。 つまりこの酒を飲めば、シャリダムを『喰う』事が出来るのだ。 「ネコミミスト君、時間を稼いでくれ」 「ダメだ、666」 そう言う666をネコミミストが制止した。 「それをあなたに使わせるわけにはいかない。あなたがそれを使っちゃダメなんだ。 判ってるだろう、それを使うとその時点の怪我も保存され、永遠に痛み続けるんだ!」 「仕方ないだろう。これを使う以外に手はない」 666は脇腹の傷を押さえて苦笑いを零した。右目の傷はもう出血こそ止まったが鈍い痛みを送り続ける。 666がこれまでに受けた傷は致命的なものこそないが、気休めにも浅いとは言えないものだ。 「永遠に続くと思うと少し憂鬱だがなに、耐えられない痛みではない」 「ダメだ。それはわたしが使う。どう考えてもそれが一番良いんだから」 「…………判っているのかい? それが、何を見る事になるのか」 不死の酒のメリットとデメリット。 永遠に生き続けねばならない苦痛。 「わたしにとってはその位、どうという事は無い。この年齢のまま永遠を生きるなんてむしろ私好みな位さ。 だけど君は……そうじゃないだろう?」 「それは……」 666にとって自らの生は永遠でも構わないものだ。 666はそういう側に生きている。 ネコミミストはきっと、違う。666はそれを知っている。 だけど、と。ネコミミストは歯を噛み締めて言った。 「でもわたしは、仲間が傷付くのはもうイヤだ。 戦っても、危険に身を晒しても、わたしはあなたに護られて傷を押しつけてばかりいる! もうそんなのはイヤなんだ! わたしが不死者の恩恵と呪いを受け容れれば、もっと何かが出来るはずなんだ! だから……おねがいだ、666! ここはわたしに任せて! きっと、なんとかしてみせるから!」 666は少しだけ沈黙して。 「――わかった」 重々しく、頷いた。 666は、ネコミミストに不死の酒を手渡した。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 その瞬間、シャリダムは弾かれたように動き出した。 シャリダムは不死の酒が自分に何をもたらすのか知っていたのだ。 無数の触手がネコミミストを目指して殺到し、同時に別の一本が脇へと伸びた。 それは埋葬すべく寝かされていた幻夜・フォン・ボーツスレーの死体を取り込んでいく。 「な、幻夜……!」 「君の役目を果たせ、ネコミミスト!」 ネコミミストの動揺と666の叱咤。 ネコミミストはハッとなり不死の酒の封に手を掛ける。 無数の触手はもう目前にまで迫っていた。 「ネコミミストは私が守る」 大小の吸盤を備えた歪な蛸の如き触手が666の振るう鉄板の剣ドラゴン殺しに斬り潰される。 ドラゴンころしを振り上げながら、螺旋を描き絡め取るように襲来した触手をわざと左手に絡ませて動きを止めて、 続いて押し寄せた絵にするとモザイクの掛かるような卑猥な触手ごと、右手一本で振り下ろして叩ききる。 ネコミミストは封を開けるのを省略して衝撃波で栓周辺を吹き飛ばした。栓の開いた酒瓶に口を付けて―― ガチガチに硬い触手を力いっぱい振り下ろしたドラゴン殺しで折り砕く。 だがその裏に待ちかまえたぬるぬると滑る触手がドラゴンころしの勢いを削いだ。 瞬時、まるで針金のような触手が666の握るドラゴンころしに絡みつく。 「ぐっ、うああぁ!?」 パチリ。音と共に666が呻く。 ハードな用途の放電触手である。流された電流が666から握力を奪いドラゴンころしを地に落とす。 邪魔が消えた瞬間を狙い、上空から迂回した三本の触手がネコミミストに襲い掛かる。 666は舌打ちと共にゲート・オブ・バビロンの扉を展開し、撃ちだした。 緩やかに沿った西洋刀が三本の触手を百舌のはやにえのように串刺した。 だが、三本目は先程と同じくたっぷりの薬液で膨れ上がった水風船のような触手だったのだ。 引き裂かれた触手から弾けた大量の触手汁は、そのまま真下のネコミミストに降り注ぐ――! ネコミミストは、不死の酒を一息に飲み干した。 まるで滝のように、全身に触手汁が降り注ぐ。 今度の液体は衣服溶解型などという甘い物ではなかった。 一滴垂らすだけで貞淑な聖女でもとか無垢な乙女さえとか枕詞が付くアレである。 効能を発揮すればその時点で色々と規制的にヤバイ事この上無いアレである。 ていうか効き目有りすぎだろなんだあの夢のお薬是非一瓶下さいなってヤバ本音がいやいやとにかくアレである。 ネコミミストの全身に降り注いだそれは瞬時に全身の皮膚から浸透すると、 当然ながらこれまた瞬時にその色んな意味で危なすぎる効能を彼女へと発揮―― ;フラグが立っている場合は勝利ルートへ進む。 ;フラグが立っていない場合はBadEndへ進む。 ;※:大変申し訳有りませんが現在バグによりBadEndへ進む事が出来ません。 ; 有志によるパッチ制作をご期待ください。執筆元からの予定は有りません。 「………………」 ネコミミストは闘志に滾る瞳でシャリダムを見つめていた。 その意志は、汚されていない。 体は戦意で燃えている。 確かに、触手汁はネコミミストの全身に降り注いだ。 それは瞬時に全身の皮膚から浸透した。 その時点ではまだ、不死の酒も効能を発揮してはいなかった。 だがネコミミストの全身に浸透した薬液がネコミミストの神経を変異させるコンマ数秒前。 不死の酒は衝撃のネコミミストを不死者へと変えていた。 不死者となった肉体はその時点で保持される。 よって次の瞬間にネコミミストを作り替えんとした触手汁の効能は、不死の酒の再生効果で相殺された。 触手汁が肉体に変調をもたらす速度を、不死者の再生速度が上回った。 ネコミミストの戦意は今だ健在。闘志と戦意を瞳に燃やしシャリダムをじっと見つめている! 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 シャリダムが絶叫する。 目の前に生まれた脅威を肌で感じ、恐怖と怒りに満ちた叫びを上げる。 新たに生まれたのは無数の腕だった。 その全てが右手。先が右手型をした触手が数十と生え揃う。 それは人型を半端に残しているために完全な異形よりも尚おぞましい光景だった。 「喰らうつもりか」 666は呟く。 不死者は右手を相手の額に当てて『喰いたい』と念じれば、相手を喰う事が出来る。 つまりあの無数に生えた数十本の右腕触手が一本でもネコミミストの額に到達すれば、 ネコミミストは喰われ、彼女達は敗北してしまうのだ。 「666。……道は、作れる?」 「もちろんだ、任せてくれ」 666とネコミミストは見つめ合い、こくりと頷きあう。 「行け。君の道は私が護る」 「おねがい」 ネコミミストは一歩を踏み出した。 にちゃりと服に染み込んだ触手汁が粘り着く。かなり動きづらい。 「く……ふ、服なんて探せば幾らでもある!」 思い切って脱ぎ捨てた。べちゃっと重く地面に落ちる。 大体命の危機の前に恥ずかしいだのなんだの些事に過ぎない。 左手に永遠神剣『冥加』、右手は喰らう為に無手。装備は以上。 「世の中には女性は裸が一番美しいと言う男も居る。気にする事はない」 「あ、ありがとう」 赤くなりながらも666の言葉に頷いた。 そして改めて、一歩。 二歩、三歩。 ネコミミストは触手を密集させる悪夢に向けて、足から衝撃波を放ち特攻する。 666が必ずや彼女に道を作ってくれる事を確信して。 触手の津波に挑む、生まれたままの姿の少女。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 シャリダムの咆哮と共に無数の右腕がネコミミストへと殺到する。 666が、叫ぶ。 「させん」 666の言葉と共に放たれたのは無数の矢だ。 何処からか射手に放たれた如き矢の雨は正確に触手の波を貫いた。 そのまま串刺しに射止めて再生まで遅らせる。 ネコミミストは見る見るうちにシャリダムへと肉薄していく。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 だがシャリダムは尚も足掻く。自らの生存を賭けて蠢く。 ネコミミストの目前に、突如それは出現した。 「な――!」 幻夜・フォン・ボーツスレー。 シャリダムの触手に取り込まれたその死体がひび割れた巨大な剣ミロクを振り上げて――。 紅い一線が走った。 振り下ろされようとした剣に食い込んだ小さな紅い宝石。 それは砕け散り、輝きと共に力を解放する。 大剣巳六は死して尚酷使された幻夜の腕と共に、塵と化していた。 「やれ、ネコミミスト!」 666の叫び。 ネコミミストは一瞬のそのまた一瞬だけ死して尚利用された仲間を悼み。 「すまない。――おやすみ、幻夜!」 それを終わらせる為に、幻夜の胴を両断した。 両断された胴の向こうに、シャリダムの本体が見えた。 「はああああああああああああぁっ!!」 断、と。 右手をデビルシャリダムの額に叩きつけた。 (――喰いたい) ぞぶりという音がした。 ネコミミストの右掌がシャリダムを呑み込んでいく。 肉体を。 精神を。 シャリダムがネコミミストの一部になっていく。 シャリダムの全てが……ネコミミストの中に…………。 「あ」 * * * ネコミミストはいつの間にか森の中に立つ自分に気付いた。 周囲は暗闇に塗り潰され、うっすらとしか見えない。 「ここは……一体……?」 戸惑うネコミミストに言葉が掛けられた。 「あら? そこにいるのはもしかしてアニロワ2ndの書き手さんじゃないですか?」 「誰だ?」 声のした方を振り返る。 見るとそこには、闇よりも尚昏い漆黒の仮面が浮かんでいた。 「おまえは……誰だ?」 「それ、アニタちゃんの格好ですよね? だったらアニロワ2ndの書き手さんなんじゃないかなーって思うんですけど」 「……何を言っているんだ?」 返答は要領を得ない。 ネコミミストの姿はアニタ・キングの姿と合致しない。 だが人影はそれには応えず、言葉を続ける。 「――? ああ、ごめんなさい。コレじゃあ、誰だかわからないですよね」 人影は漆黒の仮面を外した。そこには先程までとは対照的なまでに白い、女の顔が浮かび上がった。 「こんばんわ。私は◆AZWNjKqIBQ――いや、ここでだとマスク・ザ・ドSだね。よろしく♪」 噛み合わない会話とその名前にネコミミストはようやく理解した。 その名は昼の放送で呼ばれていた。つまりこれは過去で、今が夜なのは開幕直後を意味する。 「ここは……コ・ホンブックの記憶なのか?」 デビル・シャリダム。 元はコ・ホンブックだった、コ・ホンブックから分離された狂気の澱。 その精神と、そこに繋がる経緯。 暴走するコ・ホンブックから初期状態のコ・ホンブックを取り除いた後に残された物。 それはつまり。 * * * 突如、びくんとネコミミストの体が震えた。 驚愕と動揺に目が見開かれる。 「…………ぅ」 微かな声が漏れた。 その右掌はシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「や、やめろ、来るな!」 ドSに向けて衝撃波を放とうとした。だが。 「――出ない!?」 当然だ、これは既に過ぎた事なのだから。 その内容を追体験しているに過ぎない。全ての経緯は既に確定した事。 ひうんひうん――と。風を切る不可視の獣が走る様な、そんな奇妙な音が聞こえた。 「あぐっ」 宙を舞った無数の糸がネコミミストを背後の樹に縛り付けた。 かつてコ・ホンブックがされたのと同じように。 だがこれは『記憶であって記憶ではなかった』。 何故ならコ・ホンブックは暴走していた頃の記憶を残しているのだから。 記憶という情報は既にコ・ホンブックが持ち去っている。 ならばこれはなんなのか? 「普通の人間が糸を操るなんてできるはずがないじゃないですか。――けど私は『ニンジャ』ですから」 ドSの指がゆっくりと、動く。 その度に鋼線は、舐めるように白い肌を伝い、嬲るように柔らかい肌へと食い込んでいく。 木々の間に張り巡らされた鋼線がギィン……と弦を弾く様な音を静寂の中に響かせる。 「う……あ…………」 全身の肌で感じる鋼線の感覚がネコミミストの記憶へと刻み込まれていく。 体験していく。 「暴れないで下さいね……怪我をしますから。じゃあ――」 ソレ。小さな掛け声が響いた。 今度はひゅるひゅると見えない蛇が空を泳ぐような音がし、続けて森の中に無数の白い破片が飛び散った。 澄んだ森の空気の中を舞い月光を跳ね返して雪の様に降り注ぐ、白いワンピースだったもの。 ネコミミストは冷ややかな夜気に晒された白い肌を震わせて、羞恥と恐怖に歯を噛み締めた。 体験を経た記憶がネコミミストに刻み込まれていく。 そう。 シャリダムの中に残されていたこれは、コ・ホンブックの軌跡だった。 体験する者という代行者が抜け落ちた、体験そのものだった。 * * * 背中が丸まる。何かに怯え身を守ろうとするように。 歯が震える。噛み締めてそれでもカチカチという音が残る。 「ぎ、ひっ…………」 その瞳に、恐怖が浮かんだ。 その右掌はシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「動かないほうがいいですよ。その糸、砥いでありますから引っ張ると喰いこみます」 「うぐ……っ」 ネコミミストはかつてのブックと同じように動き、後ろ手に縛られた親指を傷つけてしまった。 ブックが解放されて置いていった、ブックの味わったものと同じ苦痛。 「抗うと辛くなるばかりですよ。幸せは受け入れることから始まるんです。前を向いてください――」 漆黒の皮手袋に包まれた両手が、ネコミミストの白い顎を持ち上げる。 ブックはこの時、もう恐怖に怯えた瞳しか出来なかった。 だけどネコミミストは恐怖を噛み潰し、必死にドSを睨みつけてみせた。 記憶と体験の違い。 「不安な気持ちは忘れて、楽しい未来を思い描きましょう」 どんな心構えをしていても、感覚は同じように襲い掛かる。 ドSの手は顎から離れ、冷たく這いずる蛇の様にネコミミストの肌を伝い始める。 猫の肌を蛇がしゅるしゅると舐っていく。 「く、くそ……やめ…………あ……やっ…………!!」 屈辱を覚え、羞恥に怒り、不安に怯え、恐怖を感じながら。 ネコミミストはシャリダムに残された体験に耐え続ける。 * * * 歯の震えは最早はっきりがちがちと音を鳴らしている。 瞳に浮かんだ怯えは気丈な意志を徐々に呑み込んでいく。 666はネコミミストへ向けて駆け出した。 その僅かな距離が、余りにも遠い。 ネコミミストの右掌は尚もシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「く……そ…………」 全身を嬲りつくす指の蹂躙が過ぎ去る。 ネコミミストは恐怖と不安を必死に堪えて耐えていた。 「……~一筆書き、☆の絵には~。5つのトンガリがあるでしょう~♪ ……と、出来た」 見るとドSは意味不明な歌を歌いながら、メモに星を基調とした複雑な模様を描いていた。 その上には銀色の鋏が一つ。 間もなくそれは火花と煙を散らして奇妙な金属塊へと姿を変えた。 「錬金術……?」 「普通の人間である私が錬金術を使える訳ないじゃないですか。――コレは忍法『金遁の術』ですよ」 一瞬ドSが返事をした様に錯覚し、すぐに否定する。 恐らくはただの偶然だ。 ドSはその金属片を摘みあげ、ネコミミストの目の前まで持ってくる。 それは3センチ足らずの小さな、骨組みだけの傘のような形をしていた。 ネコミミストは寒気と胸騒ぎを同時に感じる。 (なんだこのサイズ……見覚えが……) ドSはすぐにその答えを教えてくれる。 「コレ見えます? 今からコレをあなたに刺すんですけど、見ての通り『返し』がついてて、引っ張って抜くと☆型に肉が抉れるんです♪」 「な…………っ!!」 全身の体毛が逆立った。 そして気付いた。シャリダムの胸に、丁度そんな大きさの傷が無数についていた事を。 何故、この『体験』がシャリダムの中に残されていったのか。 その理由は言うまでもない。 コ・ホンブックは情報としての記憶だけを持って救われた。 そう、救われたのだ。 そしてブックの心を壊したのは体験、言うならば感情としての記憶の積み重ねであり、 それを持っていってしまえばブックの心はまた壊されてしまう。 だから残された。 つまり言うならばこの記憶は――。 「や、やめ……う…………ッ……」 プスリ。 ネコミミストの視線の先で金属塊が胸の柔肌を突き刺した。 差し込まれた針の末尾には鋼糸が結ばれ、その糸はドSの手の中へと繋がっている。 ほんの僅かに指が震え、ゼロコンマ数ミリだけ糸が引かれた。 「――――ッ!」 歯を食いしばる。目を見開く。息が荒くなる。心臓が早鐘のように脈打つ。 全身が汗を吹き出し、まるで鋼鉄と化したように体が固まる。 世界が止まったような錯覚を覚えた。 …………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。 「…………ふっ………………ぅっ! う…………きゅっ…………」 世界の音が消え去って、静かすぎる耳鳴りが聞こえ始めた。 口の中の唾が冷え切って冷たさを主張し始める。 …………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。 「…………いっ………………っ………………きっ………………ひゅっ…………」 漏れているのは声なのか、それとも吐息なのか判らなかった。 必死に落ち着け、意識を逸らせ、痛みに備えろと言い聞かせる。 鼓動は乱れ、意識は集中させられ、心構えすら出来ずに感覚が続く。 …………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。 「ひ…………ぁっ……ぁ…………きっ、ひ……いぁっ……ぁ……かっ」 噛み締めていたはずの歯はいつの間にか浮いていた。 生け簀から上げられた魚みたいにぱくぱくと口を開いて閉じて痛みを逃す。 「身体を固くしているとよけい痛いですからね。 リラックスしてください。リラックス。脱力ですよ。身体が水みたいになったってイメージするんです」 ドSは凍り付くほどに優しい口調でそう言うと、片手でネコミミストの頭を撫でる。 猫耳が撫でられ、思わずぴくんと体が震えた。 「きぁっ」 視界が真っ白に染まる激痛に硬直する。 ドSはそれに頓着せず、認識した様子もなくもう片方の手で糸を絞る。 「そしたら痛くないですから。とっても気持ちいいですから…………」 「や……やめ…………やめ……て…………」 ネコミミストの前髪をかき上げてびっしりと汗ばむ額にキスをあげると、ドSは持っていた糸を力の限りに引き絞った――。 ――詰まるところこの記憶は、追体験するだけで少女の心を容易く壊す地獄そのものなのだ。 * * * 恐怖に満たされた瞳の焦点は中空を結ぶ。 口が開いた。舌が伸び、喉が震えた。そして。 「ぎ、ひっ、あがっあああぁあああぎゃあああああああぁあぁあぁああああああああああああ」 ネコミミストは、身も凍るような悲鳴を吐き出していた。 ネコミミストの右掌は尚もシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「――………………………………………………!!!!!!!!!!」 体験の中ではネコミミストはブックと同じように、悲鳴を上げる事すら出来なかった。 ショックで死んだと思うほどの激痛を味わって、それでも死ぬ事は出来ない。 そもそもショック死と言われる物は、主に出血性ショックによる死亡なのだ。 元から心臓が弱ってでもいないかぎり、痛みで死ぬことは出来ない。 詰まるところ肉体が傷付く事の無いこの追体験では、どんな体験をしても死ぬ事は無い。 痛みが激しすぎて、意識を失う事すら出来なかった。 「あ、がっあが、あかっかはっがっああ……が……あぎゃっきああああぁあぁ……かっ」 開けっ放しの口は意味不明な呻きと共に涎を垂れ流し、眼からはぼろぼろと涙が零れていた。 「あ…………」 その視線の先にはドSの手があった。 手には無数の長い針が握られていた。 「大丈夫。大丈夫。ここから先はとても素敵だよ。とぉっても気持ちよくなれるよ……」 「や……いや、だ…………そんなの……は…………ああああ!!」 いやいやと首を振るネコミミストの腹部にドSは、針を突き刺した。 肝臓を貫き通すように何本も、何本も。 通常のものとは違う重くてゆっくりと染み入る痛みと、異物の挿入感。 乗り物酔いを何百何千倍にしたこの様な感覚。 身体が内側から引っくり返り内蔵が口から飛び出すような錯覚。 それは極上の苦痛だった。かつてブックが味わった、誰も望まない最高品質の痛みだった。 * * * 666の手の中で、小さな手鏡が何か映像を映しだしていた。 それは長い内容だったが、ほんの僅かな時間で上映は終わりを告げる。 現実の姿、ネコミミストにゆっくりと呑み込まれていくシャリダムの姿に重なった。 制限でも掛かっているのか、それとも酢飯細胞という異分子のせいか、捕食はとても遅かった。 それでもシャリダムは一切抵抗できずに呑み込まれていく。 * * * (痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い 痛い痛い痛い痛い痛いいたい痛い痛いイタイ痛いいたい痛い痛いイタイ痛いいたいイタイ いたいイタイイタイ痛い痛いいたい痛イ痛いイタい痛いイたイいイタイ痛イいたイイタい イタイいたイイタいいたいイタイいタいイタいいたイいたい痛痛痛痛痛痛痛痛――――) 純粋な痛みの塊。 手を動かすのは痛い事。立っているのは痛い事。座り込むのは痛い事。音を聞くのは痛い事。 何かを見るのは痛い事。匂いは痛い。味は痛い。感触は痛い。思うは痛い。考えるは痛い。 痛い。痛いから痛い。痛いのも痛い。痛いけど痛いから痛くて痛むのが痛い痛い痛い…………。 思考を、閉ざすべきだったのだろう。 あるいは狂うべきだったのかもしれない。コ・ホンブックのように。 だけど幾つもの出会いと別れの中で、死に行く者達と666から多くの物を与えられたネコミミストは、 かつてのコ・ホンブックよりほんの少しだけ強かった。 痛みに全てを塗り潰された中でコ・ホンブックの軌跡は乖離剣エアを振り上げる。 (痛い痛いイヤだ痛いのはこんな痛いイヤだ痛いイタイ助け痛いイヤ痛い痛いこんな誰かイタイ助け 痛いどうにか痛い痛いイタイイタイお願いだから痛いイタイ痛いイタイやめ痛いそれはイタイ痛い 痛い痛いイタイイタイ殺しちゃ痛いいけないイタイイタイ痛いその人達は痛い悪くな痛い痛い痛い 痛いイタイイヤイタイイタイダメイタイダメ痛いダメイタイ止まって痛い痛いやめイタイ痛い痛い おねがい止めて――――!) 涙を流そうとも止まらない。痛いだけ。 逃げてと叫ぼうとしても声は出ない。痛いだけ。 助けてと願おうとしても考えられない。痛いだけ。 目をふさぐ事も考えを止める事も出来ない。痛いだけ。 全て痛みに塗り潰された中で。 コ・ホンブックの軌跡は、フォルゴレの姿をした書き手と、王ドロボウジンの姿をした書き手を殺害した。 * * * 「愛がなければこんなことはできない。あなたは正しいよ、ドS。……だが」 666はゆっくりと呑み込まれていくシャリダムの、切り離されている部分を抱き上げる。 シャリダムに取り込まれた幻夜・フォン・ボーツスレーの死体、その上半身だ。 シャリダムの一部といっても差し支えない、ゆっくりと再生しシャリダムと繋がろうとしているそれを。 「私は少しだけ、アプローチの仕方が違うんだ」 シャリダムを呑み込んでいくネコミミストの右掌に、押しつけた。 * * * (痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイ……) 激痛に埋め尽くされた風景が。 「……ただの見世物ならばな。 だがこれは紛れもなく我々の前に突きつけられた現実だ。笑ってばかりもいられまい」 激変した。 (え…………これ……は…………?) 219 Blitzkrieg――電撃戦 (後編) 投下順に読む 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 218 仮面の下の邪悪な微笑み 時系列順に読む 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 199 かくて勝者は不敵に笑う 衝撃のネコミミスト 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 199 かくて勝者は不敵に笑う 派手好き地獄紳士666 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 183 第二次スーパー書き手大戦 第183話 了承!! デビルシャリダム 220 さよならは言わないで。だって――(後編)
https://w.atwiki.jp/noisy_tone/pages/30.html
なんか・・・自分以外の中の人来てないね・・・(お前もまれに来るだけだろ) マイクが壊れてスカイプもままならない状態。 活動内容をキャラクター設定を保管する場所に変えていきたい。 最近、「今北産業」になってない気がs(ry 中の人募集中の架空ボカロ 虚空に消えた架空ボーカロイドシリーズ 平等院カナ 釣り用架空ボーカロイドシリーズ 黒音ナミ 黒音ナギ UTAU用架空ボーカロイドシリーズ 現在の所はないです。
https://w.atwiki.jp/tracking_quizshow/pages/371.html
問題 問題画像 問題文 □に入る数字は何でしょう?2、3、22、5、23、7、□、33・・・ 回答 222 解説 1~9をそれぞれ因数分解した数字を並べたもの 1=1 2=2 3=3 4=2×2 5=5 6=2×3 7=7 8=2×2×2 9=3×3 補足
https://w.atwiki.jp/oku2005/pages/214.html
#blognavi htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 友達にも宝くじに毎回数万円投入している人が居る。 結果は…、当たったそぶりはない。 宝くじより株の方がよっぽど現実的に稼げると思うのにな。 なにせ宝くじは買う数を増やすしか当たる確率を上げる手段はない。 (あ、あとは、「願掛け」するとか、「○等賞出ました」とかいう販売店で買うことくらい?) それならば、自分の勉強次第で勝率が上げられる投資の方が良いと思わないだろうか。 いきなり3億円!とかは無理だけどね。 だいたい、そんなにお金が欲しいかね、3億円も転がり込んできたら、性格変わっちゃうよ、マジで。 とりあえず私は「買わない」。買っても1枚だけだろうな。 アクセスランキングに参加しております。できましたら1日1クリックのご寄付をお願いします。m(_ _)m htmlプラグインエラー このプラグインを使うにはこのページの編集権限を「管理者のみ」に設定してください。 カテゴリ [その他] - trackback- 2005年11月30日 00 29 35 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/moujiki/pages/295.html
その灰色の夢の中で、僕にはそれが現実だと分かっていた。身体は眠っていた。意識もほとんどなかったと思う。でも頭のどこかが圧倒的に冷たく醒めていた。たぶん幽体離脱とか薬物によるトリップとか、そういうのと同じ感覚だと思う。いや、まだ十四歳の僕は、そんな素敵な体験はしたことがなかったけれども。なにもかもが普通じゃなかった。それは映像として目から入ってくるというよりは、脳内に直接電極でも差し込まれて、電気信号か毒電波か何かを送り込まれているような感覚だった。目から入ってきたにしてはリアルすぎる。間違っている、と僕は思った。でも間違いすぎていて、どう正していいのかも分からなかった。ただ抗えない力で、僕はそれを一方的に体験させられていた。 見えたのは破壊された街だった。至る所から煙が立ち上り、住宅は崩壊し、地面には亀裂が走っていた。戦争の記録映像か何かかと最初は思った。その夢は白黒だったし、その街のすさまじい廃墟っぷりには僕の知っている現実のリアリティがなかったからだった。でも、それは現代の日本の街だった。落ちそうで落ちないぎりぎりの場所、折れた高架の道路の先っぽで、バスが地獄の淵を覗いていた。もちろん何台もの車が実際に落ちて潰れて燃えていた。アスファルト舗装の道路はひび割れて、所々から水が噴き出していた。高層ビルが隣のビルにもたれかかるように倒れていた。ぺしゃんこに潰れた日本家屋もあったし、防水シートで応急処置されただけの倒れかけの住宅もあった。学校や公園の空き地にはテントが立ち並んでいた。怒鳴りながら走り回る人たちの横で、疲れ切った人たちが呆然と何をするでもなく座っている。あるいは頭を抱え込み、あるいは何もない中空に視線をさまよわせながら。 僕の身体はその場所に存在しなかった。ただの感覚器官として映像を見、音を聞き、そしてその場の空気を感じているだけだった。それは夢だった。でも間違いなく現実だった。訳がわからなかった。何なんだこれは、と僕は思った。僕の頭が、あるいは身体がどうかしたんだろうか。でも、何がどうおかしくなってしまったのかも分からなかった。でも、僕はそこにいた。何もできずにそこですべてを見ていた。 僕は眠るたびにその夢を見続けた。でも、そんな日は長くは続かなかった。二週間ちょっとしてからは夢ではなく、テレビをつけるたびにその映像を見ることになったからだった。それは阪神・淡路大震災の光景だった。死者数で三千人を超える、地震大国日本でも史上有数の大災害だった。影響を受けた人の数で言えば何百万というオーダーになるだろう、その被災者の中には僕も含まれると僕は思った。僕はその光景を夢で二週間前から見続けていた。このとき僕は十四歳、中学二年生を終わろうとしているところだった。僕の一九九五年はそんな夢で始まった。あるいは、今の僕はそのときから始まった、と言ってもいいかもしれない。 一月十三日の朝ご飯はトーストとスクランブルエッグだった。飲み物は雪印の牛乳に日東のティーバッグを入れて、アルミの雪平鍋で煮出したロイヤルミルクティ。基本的にはうちでよくある朝ご飯だったけれど、そんなどうでもいい記憶が鮮明に残っている。寒い朝だった。厚手の靴下をはいて、パジャマの上からジャンパーを羽織って台所に降りていった僕の耳に届いたのは、時計代わりのラジオから流れる朝のニュースだった。地震の速報を伝えていた。そのとき被害状況をどう報告していたかは覚えがない。まだ僕は気づいていなかった。確かまだ情報は全然入っていなかったし、まさか自分が未来のことを知っていたなんて思わないじゃないか。僕はただの好奇心からパンをくわえながらテレビのある居間に移動した。NHKが放送局内の被害の瞬間を流していた。震度を表す数字が地図の上に並んでいた。それは全部見覚えがある光景だった。やっと僕は気づいた。夢で見た映像、その圧倒的なリアリティが脳裏にフラッシュバックする。僕は、これを知っている。見た覚えがある。そんな被害じゃすまない、とすぐに僕は思った。 朝食はのどを通らなかった。まだニュースで流れていない映像も僕は知っていた。それは控えめに言っても破局と名前をつけるしかない規模の災害だった。僕が十四年の人生で体験する初めての破局だった。テレビ越しの映像はバーチャルなものに過ぎないし、夢で見ていたことだって本当はリアルとは呼べないかもしれない。でも、その体験は圧倒的な説得力で僕を引き裂いた。昨日までの何も知らない僕と、今、何かを知ってしまった僕と。僕は力なくソファに座り、見るともなくテレビを見ながら、何かを考えようとした。でも何も考えられなかった。 その日、僕は体調不良を口実に学校を休んでテレビニュースをずっと追いかけた。共働きの両親はいつも通り仕事に行って、家の中には僕ひとりしかいなかった。ニュースの情報はもどかしく断片的で、遅々としか入ってこなかった。おかげで僕はやっと、自分の身に起きていることについて考える余裕ができた。僕は二週間前からこの光景を知っていた。それは常識的にはありえないことだった。超能力、と僕は思った。嘘くさく手垢のついた言葉だ。そんなもの宗教と同じくらいにしか信じてはいなかった。年寄りは宗教を信じ、子どもは超能力を信じる。その程度の認識だった。でも、僕の夢は超能力という言葉でしか説明できなかった。予知夢、と僕は口に出してみた。泣きたくなるくらい嘘くさい言葉だった。 そもそも、僕にあるのがどの程度の能力なのか分からなかった。予知と言ったって、この大地震にだけ反応した一般化できない能力なのかもしれない。あるいは他の未来についても夢に見ることができるのかもしれない。僕だけおかしくなってしまったのかもしれないし、みんなどうかなっているのかもしれない。何も分からない状態は不安で仕方がなかった。寝て夢を見れば何か分かるかもしれない、と僕は思った。テレビなんか見ていなくても、どうせ地震の情報はもう全部知っているんだし。でも、こんなに興奮していては寝られる訳がなかった。 僕は居間で筋トレを繰り返して体力を消耗させることにした。エネルギーの無駄遣いならマスターベーションも有効な方法だけれど、さすがにそんな気分にはなれなかった。腹筋とスクワットと腕立て伏せをセットにして、それを体力の限り繰り返す。テレビでは延々、地震のニュースを流していた。見ていても代わり映えはしないし流れる映像は知っているし、でも切ることはできなかった。僕が健康であることに僕は罪悪感を感じた。でも、そんなのどうすることもできない。 結局、筋トレではうまく眠ることはできなかった。身体を動かすほどに頭が冴えてしまうのだ。僕は何をやっているんだろう、と考え始めると眠るなんてできやしない。やっと眠ることができたのは、風邪薬をまとめて飲むことを思いついた昼過ぎだった。きちんと夢を見た。それは居心地の悪い夢だった。 いつの、かは分からない。明日かもしれないし三年後かもしれない。学校で僕はクラスのみんなから無視されていた。ホームルーム前の親密なざわめきの中に居場所がなく、チャイムにあわせて入ってきた担任の教師も僕を意図的に無視した。机の中には落書きされたノートが入っていて、表紙には大きく「死ね」と書いてあった。誰かが僕に後ろから消しゴムをぶつけた。でも、誰も僕と目を合わせようとしなかった。僕に見られると居心地の悪そうなひともいたけれど、逆に僕に対して腹を立てるひともいた。一番多かったのは迷惑そうな顔だった。おまえなんかいなきゃよかったのに、みんなの顔はそう言っていた。試しに何人かに声をかけてもみたけれど、みんな聞こえないふりをした。それは明らかなシカトだった。予知についてしゃべった結果だ、と僕は何の根拠もなく理解した。誰も分かってくれない。僕は除外され迫害され、みんなは僕の存在を拒否する。それは至極ありそうな話だったから、僕としては納得するしかなかった。おまえなんかいなくなれ、それが僕に対するみんなの評価だった。 気持ち悪い汗をかいて目を覚ました時、テレビのニュースは死者の名前を読み上げていた。破壊された街と同じように、死にもリアリティはなかった。夢で見たノートの落書きに「死ね」とあったけれど、中学二年生にとっては死なんてせいぜいそのぐらいだった。もちろん、ニュースで読み上げられる名前には説得力はあった。被害者はただの数字じゃなくて、きちんと名前があるんだって。それは被害の生々しさを伝えるには有効な方法かもしれなかった。でも、僕にとっては生々しい被害なんて二週間前から知っていたことだった。今さら言われても、という冷めた気持ちがどこかぬぐえなかった。もし僕の名前がそこにあったら違うだろうな、と僕は思った。最初それを思いついたのは偶然だった。僕も被害者だ、という気持ちからのただの連想だった。でも、一度そう思うと、そこに僕の名前がないことがむしろ不自然な気がした。でも、もちろん僕の名前が呼ばれることはなかった。 僕は勝手に死ぬしかないと思った。いま生きていて、これからも生きていくということに実感がまるでわかなかった。昨日までの僕はもう死んでいた。今の僕はどこにもいなかった。みんなは僕を受け入れない、と夢の確かな手応えで僕は確信していた。僕がいなくなることをみんなは期待している。戻れるものなら戻りたかった。でも、もう戻れない。僕がみんなと違うことは今さら否定しようがなかった。みんなに受け入れられない僕は、いなくなるしかない。だったら死ぬしかない。どうせ地震で何千人と死ぬのなら、僕がここで死んでもたいした違いはないだろう。 でも、服を着替えてカッターナイフを買いにコンビニまで行く途中で、気が変わった。僕が死ぬ必要はない。間違っているのはみんなの方だ。僕が正しいんだ。僕だけが未来を知ることができる。それは神様から僕に託された権利であり、きっと何かの義務だ。たとえ誰も理解してくれなくてもいい。未来は僕の側にある。僕がみんなを変えればいいんだ。みんなが僕を受け入れないからって、僕が僕を受け入れない必要はない。革命、と僕はつぶやいた。僕は他の誰とも違うこの予知能力を使って、この世界を革命しなきゃいけない。この能力はそのためにあるに違いない。 カッターナイフの代わりにおにぎりふたつとカップラーメンと、大学ノートを一冊買って帰った。コンビニでは脳天気な歌謡曲が流れていた。でも恋愛も友情も、もう僕の関心事ではなかった。僕に興味があるのは未来のことだけだった。家に帰ってお湯を沸かしながら、僕はノートの表紙に<未来>と書いた。どんな未来が待っているのか、今はまだ何も分からなかった。でも、夢で未来をかいま見ることができるのなら、僕はそれを全部記録してやろう。きっと僕にしかできない何かがあるはずだった。 もちろん、すぐに眠ることなんてできなかった。僕はテレビが垂れ流す不幸なニュースを片目で追いかけながら、右手でずっと心臓を押さえていた。興奮と孤独ではりさけそうだった。でも、特別な自分、他の誰とも違う自分でいるのは悪くなかった。だって僕は特別なんだ。みんなに嫌われる、さっきまでそれだけで自殺までしようと考えていたくせに、もう僕はそう思っていた。 次の日、教室に入るときはシカトされる夢を思い出して緊張した。でも、誰も僕が昨日までの僕と違うことに気がつかなかった。みんな間違っている、と僕は思った。もう誰も僕のことを理解することはできない。 見る夢を選ぶことはできなかった。それに、眠れば必ず予知夢を見られるものでもなかった。夢を見たことは覚えていても、内容までは定かではないこともよくあった。ノートに「哀しい夢」としか書けない日もあった。「青空」とか「海」とか、そんな夢を見ることもあった。たぶんそんなのは予知とは何も関係ないだろうと思いながら、僕はそんな夢もノートに記入した。そもそも僕の能力が、未来のことを夢で見る能力なのかどうかだって僕には分からなかった。押しつぶされそうな不安の中で、僕は自分の殻にこもることを覚えた。必要なこと以外しゃべらなくなり、めったに笑わなくなった。 それからしばらくは具体的に予知が的中することもなかった。そもそも普段見るような不確かな夢に当たるも外れるもなかった。 新聞もテレビも地震のことを伝え続けていたけれど、それは逆にそれ以上のニュースがないからだったかもしれない。阪神・淡路大震災のような特大の災害がないから予知が働かないのか、それとも僕の能力が限定的なものだからなのか、それも分からないまま日々は過ぎていった。どうして僕だけが特別なのか、どうして突然目覚めたのか。分からないことばかりだった。でも、誰も答えを教えてくれない。僕はとにかく自分だけが特別なんだと言い聞かせて、なんとか日常生活を維持していた。どうせ誰も分かってくれないんだ。他人に何かを期待する方が間違っている。 次にまとまった夢を見るようになったのは三月に入ってからだった。ノートには、たくさんの救急車の回転灯を見たことや、電車の中やホームで人が倒れている映像を見たことが連日詳細に書いてある。僕はまたやってきた具体的なビジョンに興奮した。いつどこで起きることなのかは僕には分からなかった。でも、きっとそう遠くないうちに、この国のどこかで起きる。それはきっと僕の予知能力を証明することになるだろう。 もちろん僕は、それが地下鉄サリン事件と呼ばれる、オウム真理教に関係する一連の事件を指していたということをすぐに知ることになる。でも事件を予知していたといっても、ニュースが伝えるまで僕は犯人のことはまるで分からなかった。電車で何かが起きる、ということは分かっていた。でも、地下鉄の中で毒ガスによるテロが起きるなんて理解の外だった。後から思えば、誰かが傘で何かを刺す映像は夢でも見ていたような気がした。でもそれはワイドショーで見たものを、以前夢で見たと勘違いしているだけかもしれない。そもそも、テロが行われた場所が東京都の地下鉄だというのも、僕はニュースで聞くまで分からなかった。テレビで、被害現場からのレポートを見て、この映像には見覚えがあると思った。それは神戸の地震のときと同じだった。分かるのは全部終わってからだった。こんなんじゃ知っていたって何の役にも立たないじゃないか、と僕は思った。事件の意味を考えるとか被害者を悼むとか、そういう気持ちはほとんどなかった。僕は現実をリアルに感じる能力を失っていた。僕に興味があるのは僕自身のことだけだった。 ちょうど春休みに入るところだった。僕はもっと積極的に予知をしてやろう思った。精神修行だとか何だとか、きっと精度を向上させるためにできることがあるだろう。たとえ今は限られた能力かもしれないけれど、そもそも他のひとにはないものを僕だけが持っていることに代わりはなかった。僕だけにしかできないことがあるに違いない。未来を知っている僕にしかできないことが、何かきっとあるはずだった。それをするためには、もっとしっかり未来について知らなきゃいけない。そうすればきっと何かが分かる。 その日から、夢うつつの生活が始まった。予知夢を見たいと思って眠りにつくと、僕はきちんと何かの夢を見るようになった。僕はそれを進化だと思った。この先にきっともっと素敵な未来がある、この方向で努力を続ければいいはずだ。春休みをいいことに僕は不規則に眠り続け、起きているときも未来のことばかり考えるようになった。 その頃の僕が夢に見たのはグローバルな規模のものばかりだった。一番よく見たのは戦争の夢だった。たとえば砂漠を背景に、燃えている戦車や海に注ぐ重油、飛ぶミサイルの映像が繰り返された。アラブ系の住人がミサイルや空爆で殺されていた。逆に彼らは白人たちの前で自爆テロを試みていた。超えられない壁の前に銃を構えた兵士がいて、武器らしい武器もない群衆と睨み合っていた。石を投げると銃撃が返ってくる、分かっていても何もしないではいられない。そこには未来なんてなかった。 あるいは、どこかのジャングルの奥で、都会の真ん中の教会で、学校で。夢の舞台はもちろん砂漠に限らなかった。戦争の方法だって多種多様だった。銃撃戦は何度も見た。地雷も見たし、ロケット弾も見た。戦闘機が空母から飛び立つような大規模なものから、生身の人間がナイフで殺し合うような小さなものまで。バスジャックやハイジャックもあったし、爆弾テロもあったし、正規軍同士の戦争もあった。世界中に戦争は充ち満ちていた。実感は全然なかった。でもそれが僕に与えられた未来だった。こんな夢を見せられても僕には何もできない。でも、僕はそれを何度も何度も見せられた。 環境破壊の夢も何度も見た。切り倒される熱帯雨林、溶けて崩れて海に落ちる氷山。巨大なハリケーンに襲われて水に沈む街があり、逆に雨が降らなくて干上がった池では魚たちがなすすべもなく死んでいた。見上げると汚染された大気は日の光を遮って空を覆い、流れる川は汚れた水を海へ海へと運んでいく。酸の雨は浴びると肌を灼き、毒の空気は呼吸のたびに胸を冒す。規模が大きくなるほどリアリティは失われていった。 夢に出てくる未来に対して、僕にできることは何もなかった。でも、何か意味があるんだろうと僕は思った。僕にだけできる何かがあるんだろう、でなければ僕にだけ予知能力がある理由がない。脳髄に直接刻み込まれる予知夢は日常生活より遙かにリアルな記憶として残った。そして、すべての夢が不幸な未来を示していた。僕の存在に意味があると思わなければ耐えられなかった。 僕は時間があると図書館に行って、夢で見た情報の裏付けを取ることにした。戦争に関してはきな臭い情報はどこにでもあった。知らなかったけれど、ちょっと調べれば世界中が戦争の準備をしているようなものだった。そもそも全世界の国が軍隊を持って、戦争の準備をしているのだ。民族対立があり、宗教対立があった。引き金に指をかけて睨み合う毎日の中で、殺すことも殺されることも日常だった。他人はすべて敵だった。それが現実であることを僕は夢のリアリティで知っていた。僕が過ごしてきた毎日の方が薄っぺらい嘘のようなものだった。 現在の日本が平和なことは僕も認める。でも、そんなのは地域的に見ても歴史的に見ても、きわめて例外的なことにすぎない。五十年前の日本軍が中国大陸で何をしていたかなんて知りたくもなかった。それに現在の日本にだって北方領土問題があり、在日米軍問題がある。隣国の北朝鮮と韓国は停戦しているだけで戦時中だし、中国と台湾もミサイルを向けてにらみ合っている。僕たちの現実の外にきちんとリアルは存在しているのだ。予知の夢を見るまでもなく。 環境問題はもっと絶望的だった。既に放出されたフロンだけでオゾン層の破壊は続き、今すぐに対策が取られたとしてもこの先何十年も被害は拡大すると言われていた。その対策だって取られるとは思えなかった。先進国では対応できるかもしれない、でも環境問題以前に生存権が脅かされている国はいくらでもある。たとえば、アマゾンを切り開かなければ生活できないひとがいる。遠い未来より明日のことを考えなければ生きていけない人たちはいくらでもいる。違う例を挙げれば、いつか枯渇するに決まっている石油に依存して生きているという意味では先進国だって未来が絶望的なことには何の違いもなかった。エコ発電のプラントひとつつくるのに、どれだけ石油が必要になるんだろう? たとえば発電分野なら、可能性のある代替手段は原子力しかなかった。でも、原子力発電なんて放射性廃棄物の処理を未来に先送りしなければ成立しない技術だった。原子力発電所が大爆発する夢だって見た。マンガのような破滅が訪れる未来を僕は何度も見た。何度も何度も見た。 図書館で勉強をすればするほど精緻な夢を見るようになった。細かいところまではっきりすればするほど絶望的だった。どうしたらいいのか分からなかった。そして春休みの残り日数は少なくなっていった。春休みが終われば僕は普通の中学生に戻らなきゃいけない。でも、学校なんて行けるとは思えなかった。みんなと同じことをしているなんて耐えられない。この一瞬一秒でできることがあるはずなんだ、僕にしかできないことが。でも、そんなものはどこにも見つけられなかった。 頭のどこかでは、僕にだってそんなものがないことは分かっていたと思う。たかだか、ちょっと頭のおかしい中学生に、特別できることがあるわけがなかった。でも、目をそらすことはできなかった。眠るたびに夢はやってきた。戦争も環境破壊も僕の中にあった。怖くて仕方がなかったのに、僕は溺れるように夢を見続けた。そのうち、起きていても白日夢を見るようになった。 最初は、まぶしすぎる日の光を遮るために、カーテンを閉めようと窓辺に立ったときだった。僕は窓から落ちて死ぬ自分を見た。それは予知夢と同じリアリティを持つ空想だった。たかだか二階の窓から落ちたくらいで死ぬはずがないから、きっとそれは予知ではないと思う。でも圧倒的なリアリティがあった。僕はカーテンを閉めてベッドに倒れた。心臓が痛かった。もうカーテンには触れない、と僕は思った。きっとカーテンを見るたびに僕は転落死する夢を見ることになる。でも、もちろんカーテンだけが僕に悪夢を連れてくる訳ではなかった。 ビルの側を通れば何かが落ちてくる夢、道路に出れば車に轢かれる夢。どこにいっても白日夢は僕につきまとった。自転車に乗ればタイヤが外れ、川を渡れば橋が落ちた。大きな木の側に立てば雷が落ち、電車に乗れば脱線事故が起きた。マンホールに乗ると下水が噴き出し、飛び出してきたワニに襲われる。もちろんそれが夢だということは分かっていた。でも、そんなことは分かっていても何の助けにもならなかった。僕にとって夢の方がはるかにリアルだった。なんだって起きる、と僕は思った。リアルな世界ではなんだって起きる。 でも、本当に怖かったのは被害にあうことではなかった。僕の夢は僕を被害者だけで終わらせてはくれなかった。僕は加害者にもなった。それも、とびきりリアリティのある加害者だった。 鞄を持っていれば、僕はその鞄を振り回して誰彼構わずに殴りかかった。割れ物を手に持ったら叩きつけて壊さずにはいられなかった。老人や女性や子ども、僕の方が体力がありそうな人たちには襲いかかった。実際にはケンカひとつろくにしたことがないくせに、白日夢の中の僕は獰猛だった。拳を固めて殴りかかり、首を絞めたり蹴りつけたり踏みつけたり、思いつく限りの乱暴をはたらいた。女性に対しては服を引き裂いたり、胸を揉んだりもした。悲鳴を上げて逃げまどう声を聞きながら、僕は空を見上げて狂ったように笑った。それが夢の中の僕だった。 僕よりも体力がありそうなひとたちに対しては、僕はスマートな暗殺者になった。なにしろ僕は超能力を持った選ばれた存在なのだ。目の奥の照準で対象をロックオンして、イメージの引き金を引く。僕がそうすると彼らの頭は爆発四散した。心臓を破裂させることもできたし、同じ超能力でビルを爆破することだってできた。すれ違う人ごとに僕は妄想が止められなかった。僕が通りがかるだけでみんなの頭が次々と破裂していく、そんな白日夢。妄想は止まらなかった。 特別な自分でなんていたくなかった。予知能力が欲しいなんて思ったことはないのに。僕は普通の僕でいたかった。つい何ヶ月か前までの僕は普通の中学生だったんだ。でも、今の僕が僕だった。同じ超能力で僕は自分の頭が破裂するところも想像した。何度も想像した。いっそそうなればいいのに、と何度も思った。でも、もちろんそんなことは起きなかった。 光を見ると身体が溶ける夢を見るようになったのは、春休み最後の雨の日だった。僕はもう外出ができなくなっていた。妄想にとりつかれたままで日常生活なんて送れない。僕は部屋に引きこもって日々を過ごしていた。夢がやってくるたびに僕はベッドに逃げ込んだ。布団をかぶって震えていることしかできなかった。でも、目を閉じても白日夢は止まらなかった。薄っぺらな現実より、夢の中の方がリアルだった。僕は予知を通してリアルな世界を求めていた。その結果がこれだった。 冷たい雨は夜まで降り続いていた。窓の外でずっと雨音が続いていた。両親が何度か心配して覗きに来た。僕は布団の中で眠ったふりをした。助けて欲しいと思っていた。でも、何も言えなかった。誰も僕のことを理解できない。僕を助けに来てくれたかもしれない両親さえ、夢の中の僕は何度も殺していた。そんなことを考えているなんて気づかれる訳にはいかなかった。気づかれたら本当に僕は全否定されることになると思った。僕を助けることなんて誰にもできない。全否定されるくらいなら理解されない方がよかった。 ずっと起きていたのか、少しは本当に寝ていたのかは分からない。妄想は波のように押し寄せては去っていった。そして僕はいつの間にか自分を取り戻している自分を発見した。これが最後かもしれない、と僕は思った。この静けさは、津波の前の引き潮のようなものなんじゃないか。それが妄想なのか予知なのかは分からないけれど。 部屋の電気をつけていなかったから、布団から顔を出したときには世界は真っ暗だった。ひどく喉が渇いていた。今が何時なのか分からなかったけれど、特に知りたいとも思わなかった。世界の終わりにいるような気分だったけれど、もちろん自分の部屋にいるに過ぎなかった。多分ここが僕の世界の終わりなんだ、と僕は思った。僕は息を潜めて階下の気配を伺った。誰にも会いたくなかった。 もうみんな寝ているから大丈夫、と誰かが言った。もちろん幻聴だった。白昼夢をずっと見ていたから、現実も妄想もたいした違いはなかった。僕はあいまいに頷いた。それは聞き覚えのない女性の声だった。幻聴にしても誰の声なんだろう。 僕は足音を忍ばせて階段を降り、電気をつけないまま台所の扉を開けた。低く重く冷蔵庫がうなりを上げていた。電子レンジが緑色の光で時計を表示していた。午前三時。まず誰も起きてこないだろう。ダイニングテーブルの上には僕の分の夕飯がラップをかけて置いてあった。丸皿がひとつ、小鉢がひとつ、ひっくり返ったご飯茶碗と塗りのお椀、机に直接置かれた箸。夕飯は何だったんだろう、と僕は思った。最後に食べた食事がいつで、何だったのかを思い出そうとした。でもまるで記憶がなかった。痴呆老人か僕は。でも、家族がばらばらに食事をするのはいつものことだった。誰かの分の食事がずっと残っているのは珍しくない。この家では食事なんて誰も全然大事にしていなかった。 僕は食べ物を心の底から美味しいと思ったことがなかった。嫌いな食材はあるし、失敗料理を食べてこれは不味いと思ったこともある。でも、僕には好きな食べ物はなかった。そもそも食べ物を好きになる、という発想がなかった。母親は料理に興味がなかったし、父親は日常生活に興味がなかった。必要なだけ栄養があって、カロリーが適度にとれればそれでいい。それが僕の家族にとっての食事だった。作るのが面倒なときは外食や冷凍食品ということも多かった。料理の上手なお母さんなんて幻想だ。家族で囲む幸せな食卓なんてホームドラマの中にだけにしかありえない。 でも、いま僕が求めていたのは、そんな幻想だった。冷蔵庫と電子レンジ以外は何も動いていない台所で僕はそう思った。僕は母親を求めていた。血のつながった料理に興味のない僕の母親ではなくて、象徴的なお母さん的なもの、たぶん僕を無条件に庇護し慈しみ、愛し育ててくれるものを求めていた。僕はずっとそれを与えられないで来たんだ、と僕は思った。言葉にして求めていることを意識したのは初めてだった。もともとうちにはないものだとずっと僕は思っていた。それは求めて与えられるようなものではない、と思っていた。でも、僕は今、それを求めていた。得られないことは分かっていた。たとえば今、母が起きてくることなんて僕は求めていない。僕が求めているものは妄想の中にしかなかった。そんなことは自分で分かっている。 どこかの台所で、誰かが料理をしている後ろ姿を僕は想像した。大きな窓があって、明るく日が差す台所だ。鉢植えが置いてあったり花が飾られたりしている。肩までの長さに髪を切りそろえた彼女は、エプロンをしてカウンターに向かっているだろう。包丁で何かを刻んだり、おたまで味を確かめたりしている。すらりと細身の体が蝶のようにキッチンの中を舞っている。前髪を左手でかき上げながら、時々ちらりと時計に目をやる。 今日は肉じゃがですよ、と彼女が言った。もうすぐできますからね、待っててくださいね。 背中越しでも彼女が料理を楽しんでいることが分かった。料理を楽しんでいるし、その後で僕と一緒に料理を食べることを楽しみにしている。幸せというタイトルの物語のようだった。陳腐だ。でも、それは幸せに違いない。陳腐かもしれないけれど、僕の知らない幸せだった。 これは予知かもしれない、と僕は思った。というか、予知であることを祈った。でも間違いなく妄想だろう。僕は彼女の料理が食べたかった。それはきっと僕が今までに食べたことのあるどんな料理よりも美味しいに違いない。だからそんなのは妄想に決まっているんだ。 白日夢の中の僕は、包丁を持って彼女の背中に襲いかかった。どうしてそんなことをしたのかは分からない。僕はそんなことをしたくはなかった。でも、妄想は止められなかった。彼女は悲鳴を上げて倒れ伏した。僕はその背中に何度も何度も包丁を突き立てた。切っ先が刺さるたびに血が飛び散り、骨に当たれば固い手応えが返ってきた。その手応えはリアルな記憶として僕の手に残った。耳の奥に悲鳴も焼き付いている。僕は笑っていた。それが僕だった。何をしているのか分からなかった。でも、僕は自分がしていることを冷静に正確に認識していた。僕は彼女を破壊しようとしている。彼女を破壊することで、僕は僕自身を否定しようとしている。僕は幸せになるようにはできていないんだ、と僕は思った。たぶんそれは真実だった。普通のひとと違う僕には普通の幸せはありえない。そんな当たり前のことが、僕は彼女を殺さなければ理解できないらしかった。 僕は冷たい台所の床に座って泣いた。現実の僕はひとりきりだった。僕はひとりで生きていくだろう。数少ない幸せの可能性を自分で破壊しながら、孤独だけを友として生きていく。それが僕の未来だった。夢を見るまでもない。もし、今すぐ死ぬことを選ばないなら、それしか未来はありえなかった。誰かを殺さなければ生きられないなら死ぬ方がいい。包丁のある場所なら知っている、と僕は思った。暗闇の中で天井を見上げた。 予知と同じリアリティを持つ妄想の中で、僕は空を見上げていた。引きちぎられたような雲が空を流れていく。日が沈みかけていて、冷たい風が吹き抜けていった。犬の散歩をしている人やはしゃぐ子どもたちが、みんな僕を避けていく。でも、僕もみんなを避けているからお互い様だった。僕は公園のベンチに座って、ただ、そのときが来るのを待っていた。僕には待っているのが何なのかが分からなかった。やってくるのが幸せではありえないことは分かっていた。来ないかもしれない。でも、僕は待つことをやめられなかった。 おひさしぶりです、と逆光の中で、シルエットの彼女は僕の前に立ち止まって言った。ついさっき台所で貴方に殺されたものですが、覚えていますか? しばらく言葉が出なかった。彼女は小首をかしげながら僕の反応を待っている。絞り出すように、そんなのは嘘だ、と僕は言った。台所で彼女を殺したのが嘘なのか、彼女がここにいることが嘘だと言いたいのか、自分でも分からなかった。本当ですよ、と彼女は小さく笑った。でもまあいいです、そのときが来れば分かりますから。 「今は言葉だけです。まだ、その時じゃないから。いつか会えるといいですよね」 あなたは誰なんですか、と僕は聞いた。私ですか? と彼女はまた小首をかしげた。それはあなたが一番よく知っているはずですよ。でも、もちろん僕は彼女に心当たりなんかなかった。 彼女はまた空を見上げた。春ですね、そんな意味のないことをぽつりと言う。こんな未来がありえないことは僕が一番よく知っている、と僕は思った。これは妄想だ。僕の意識が見せる白日夢、ただの幻に過ぎない。死ぬしかない僕が思いつく、唯一生き残るための虚ろな希望だ。こんな未来が待っていると思ったら生き残れるんじゃないか、僕の無意識がその可能性にすがっているだけだ。僕はそう思った。 「この可能性にすがったら生き残れるんなら、すがって生き残ればいいんじゃないですか。貴方には、貴方にしかできないことがあるんでしょう?」 僕と彼女の見上げる空に、今までに予知してきた未来が浮かんで見えた。戦争や環境問題や、そんな場違いなあれこれだった。未来、と僕は思った。ひどく嘘くさい言葉だった。それで貴方はどこにいるんですか、と静かに彼女は言った。僕は胸を押さえた。確かに、今まで見た予知の中に僕はいなかった。全部、他人事だった。僕がどこかにいる、という考え方をしたことがなかった。僕は戦場で倒れる一兵卒なのか、それともそれをテレビで見ているのか。戦場は僕のいる場所ではなく、環境破壊の最先端もまた今の僕と連続する場所ではなかった。 僕はどこにいるんだろう、と僕は思った。未来の僕どころか、現実の僕がどこにいるのかさえ僕には分からなかった。僕はどこにもいなかった。 「規則正しい生活をしなさい。夜寝て朝起きること、きちんと食事を摂ること、適度な運動をすること。それができれば貴方は生き残ることができます」 「そんなことが簡単にできたら苦労しないよ」 「簡単にする必要はないでしょう。苦労しなさい、まだ若いんだから」 ふと視線を落とすと、僕の右手はバールのようなものを持っていた。意図しているところは明確だった。僕はそんなことをしたくなかった。逃げて、と僕は声を振り絞った。僕は彼女に襲いかかろうとしていた。理由は分からないけれど、僕にはそうするしかない必然性があった。僕には僕をコントロールすることはできない。でも、もちろん、そんなことを僕はしたくなかった。 「あなたになら殺されてもいいですよ」 彼女は静かに言った。僕にはもう選択の余地はなかった。僕はバールを握りしめて彼女に襲いかかった。どこからか桜の花びらが舞っていた。夕日が僕の影を長く地面に引き伸ばしていた。彼女は逃げなかったし、抵抗もしなかった。ただ僕に殺されていた。死にたくない、と僕は思った。僕は死にたくない。こんな風に死にたくない。 気がつくと、もう隣に彼女の姿はなかった。場所も、もう公園ではなかった。床の冷たさから僕は台所に座っていることを思い出す。周りは暗い夜の底で、僕は元通りひとりきりだった。どうせ誰も助けてくれない、と僕は小さく声に出してみた。貴方を助けられるのは貴方だけです、と彼女は答えた。幻聴はまだ続いていた。 隣の部屋の時計の針の音が聞こえる。深い沈黙の中で僕は冷蔵庫を開けた。オレンジの光の中で、トマトケチャップやイチゴジャムの赤がもの言いたげに僕を見ていた。床にぶちまけたら少しは楽になるかもしれない、と僕は思った。でも、そんなことをしても何も解決しないという理性が勝った。そんなことは妄想の中ですればいい、現実よりそちらの方がリアリティがある。僕はケチャップをぶちまけ、イチゴジャムをぶちまけ、卵をすべて叩き割るさまを妄想した。それから牛乳を取り出してコップに注ぎ、蜂蜜を少し注いでかき混ぜ、電子レンジで四十秒間温めて、ゆっくり飲んだ。眠ろうと思った。頭から布団をかぶって丸太のように眠ろう。今なら眠れるかもしれない。どんな夢を見るかは分からないけれど、どんな不幸な未来だって、僕がいない未来なんて知ったことじゃない。 明日から学校に行ける気はしなかった。僕が普通じゃないことに代わりはなかった。たとえ今、さっきの彼女が出てきたって僕に釣り合わない。彼女の存在はただの幻に過ぎないだろう。でも、死んで何かを解決したことにする気にはならなかった。僕は死にたくなかった。理由なんて分からない。でも、死にたくない。 夜中の台所で君に話しかけたかった、というフレーズを僕は思い出した。谷川俊太郎の詩集のタイトルだったか。僕は彼女に話しかけたかった。今はまだ語りかける言葉も思いつかない。でも、きっと今じゃない未来に、いつか、どこかで誰かに会う日が来るのかもしれない。幸せな未来なんかじゃなくていいから、ただ、瞬間のすれ違いだけでいいから、僕は彼女に話しかけたい。そう思った。 真っ暗な台所から僕は静かに立ち上がり、ゆっくりと階段を上って部屋に戻った。また家から出られるようになったら、図書館へ行って詩集を借りてこよう。谷川俊太郎なんて名前しか知らない。世の中は僕の知らないことばかりだ。僕に関係ないどこかの予知なんてたいした問題じゃない。知ったことか。そう、思うことにした。布団に入る前にカーテンを開いてみた。落ちて死ぬような気がした。窓の外は都会の薄明るい闇、まだ僕の白日夢は続いている。きっと僕が僕である限り、このよくわからないビジョンは続いていくんだろう。でも、僕は眠るために目を閉じることができた。あるいは、苦労はするかもしれないけれど、規則正しい生活をすることだってできるかもしれない。夜寝て朝起きること、きちんと食事を摂ること、適度な運動をすること。それができれば僕は生きられると彼女は言った。それを目指してみようと僕は思った。彼女を殺してきたおかげかもしれない、それができる気がした。根拠なんて何もなかったけれど、そう思った。 僕は布団にもぐりこんで目を閉じた。眠りはほどなくやってきた。また僕は何かの夢を見ていた気がする。でも、目が覚めたら何も思い出せなかった。
https://w.atwiki.jp/gundamfamily/pages/6595.html
790 名前:通常の名無しさんの3倍 :2012/09/25(火) 12 34 49.34 ID ??? ウルフ「アセム、なれよ……(夜の)スーパーパイロットに」 792 名前:通常の名無しさんの3倍 :2012/09/25(火) 12 49 23.73 ID ??? アセム「 790って言われてお風呂奢ってもらったんだ、ウルフ隊長に」 ゼハート「なん…だと……」 ゼハート(アセム、お前は私よりもはやく大人の階段を登ったのか!! それもロマリーとではなくプロの人と!! くっ…私はデシル兄さんにお風呂に連れて行って貰ったことなど一度もないというのに! あげくデシル兄さんは私の名前でお風呂に行ってるというのに!!!」 ゼハート「アセム、私はお前が羨ましい!!」 アセム「え?」 ゼハート「私もそんな師にソープを奢って貰いたかった!!」 アセム「ソープ……? いや、石鹸は買わなくてもサテリコンに置いてるけど?」 ゼハート「妻子持ちのイゼルカント様にそんな願いを託すわけにはいかず私は……え?サテリコン?」