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強がりに満ちた笑いの後は、現実に襲われる時間だった。 幻夜・フォン・ボーツスレーは死んだ。 ステルス鬼畜とサプライズパーティーの二人と共に。 その二人に勝利して放送を超えた後に、死んだ。 (……あれ?) ネコミミストは何か引っかかる物を感じた。 そう、それは確か……。 「……放送だ」 放送の時だ。 幻夜・フォン・ボーツスレーの名が呼ばれなかった、第二回定時放送。 だがそれだけではない。あの放送の死者の名には。 「第二回放送……ステルス鬼畜の名しか呼ばれてない!」 「まさか!」 それを聞いた666が死体に駆け寄る。 それは剣に刺し貫かれた岸田洋一の姿をした遺体だ。 脈を取り、傷の具合を診る。 結論はすぐに出た。666は首を振る。 「……いや、もう死んでいる。心臓を一突きにされたんだ、間違いなく即死していたよ」 「え……?」 その死体が、サプライズパーティーの筈だった。 ステルス鬼畜を仕留めたと高笑いを上げ、しかし逆に殺された男。 何か違和感を感じはしたが、残ったステルス鬼畜も間違いなく悪だと断じて、討った。 勝利の後に仲間との死別を経験する程の激闘によってだ。 だけど。 「じゃあ、どうして放送で呼ばれなかったんだ?」 何か致命的な見落としを予感させる、そんな不安が全身を蝕んでいた。 666は無言で立ち上がり、もう一つの同じ姿をした死体に歩み寄る。 ステルス鬼畜だと思われていた、ネコミミストにより顔面の半分と頸部を破壊された死体。 屈み込んで、その容態を診る。 そして言った。 「死んでいる。だがこちらは即死しなかったようだ」 「え…………?」 ネコミミストも死体に駆け寄り、そして息を呑んだ。 確かにその死体は、衝撃波により頸部の殆どが吹き飛ばされ抉れていた。 だが首輪が盾となったのだろう。 奇跡的に血管が、そして神経が、ズタズタになりながらも部分的に残っていたのだ。 「意識は保てなかっただろう。死も確実だった。だが、即死ではなかったようだ」 それはつまり。 「こっちの死体がサプライズパーティーだ」 「そんな……」 幻夜が危険人物だと言ったステルス鬼畜は、先に殺された方の男だった。 ステルス鬼畜は死の間際、サプライズパーティーに濡れ衣を掛けたのだ。 「それじゃ私が殺したのは誤解によって殺された……被害者……?」 「気にするべきではない。彼もまた危険人物だ」 666はそう言う。 どちらにせよ危険な相手だったのだから気にしてはいけないと。 「でも……もしかしたら話し合えて……そうしたら幻夜は……!」 それでもネコミミストは、素直にそれを受け容れる事が出来なかった。 人を殺した。誰かを傷つける者を。罪無き者を殺す者を殺した。 だけどそれが間違いだとしたら? 本当は悪人なんかではなくて、戦いを避ける方法が何処かにあって、 そして無理に討とうとしなければ、仲間が死なずに済んでいたとしたら? 「そうしたら幻夜は……むぐ」 「君は、良い子だな」 その嘆きを、666が抱き締めていた。 頭一つ分だけ大きな幼い体で抱き締めて、その罪を溶かしてしまう。 「ろ、666……」 666の指が、優しく髪を梳かした。 くすぐったい、柔らかな指の感触。 文字通り猫になったような不思議な気持ちになる。 「だが、保証は私がしよう。君はまだ道を誤ってはいないと。 君は正しいことをした事を、私が保証しよう。判断を間違えはしていないと」 「…………本当に?」 「本当だとも」 666は、優しい微笑みで応えて見せた。 「私を信じてくれ」 「666…………」 666はもう一度、ネコミミストを優しく抱き締めた。 罪への不安に震えるその小さな体から、やがてその震えが無くなるまで。 溢れる愛を篭めて、抱き締めていた。 ――そう、この痛みはもう要らない。既に与えてあるのだから。 666は捻れた愛を胸に秘め、優しくネコミミストを労り続ける。 ずっと、長いこと。 だけど、それでも。 確かに何時までも強がり笑いをしてはいられない。 でも、何時まで泣いてもいられないのだ。 やがてネコミミストは毅然と立ち上がり、地を踏みしめ拳を握り締める。 「もう、いいのかい?」 「うん……もう、大丈夫だ。ありがとう」 666の労りに感謝して、前に進むことを決意した。 666は安堵の息を吐いた。 「よし。行こう」 「ああ」 二人は立ち上がった。 前に進むために。だが。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 彼女達の前には悪夢が立ち塞がる。 * * * デビル・シャリダム。コ・ホンブックから引き剥がされた悪夢の残滓。 校庭に現れた彼女は、ゆっくりと歩きだす。 その背中から翼のように伸びる触手が全てを包みこまんと大きく広がっていく。 夜の帳。悪夢の象徴。シャリダム自身もそれに覆われ姿を隠す。 それが、閉じた。 上から、左から、右斜め上方から、左上方から、正面から、右方から、前面全てから触手が襲い来る。 「たあぁっ!!」 叫びと共にネコミミストが右手の刀を振るう。サプライズパーティーの持っていた永遠神剣『冥加』だ。 正面下方から鋭く伸びる爪を持った触手を叩き斬り、返し上げる刀で右方から伸びた岩のような触手を打ち払う。 続けて伸び上がった右腋の隙を絡め取ろうと襲う無数の房を持った触手を左手から放った衝撃波で跳ね返す。 だが連続した右方からの攻撃に集中させた所に、左方から水気で膨れあがった触手が無数押し寄せる。 「こ、のお!」 無理矢理体をよじって触手の群を切り裂く。 しかし切り裂かれた触手は、バシャリと溜め込んだ水気をぶちまけた。 「…………ぁ」 万全の状態にある触手は色んな使い道が出来るのだ。甘く見たネコミミストの不覚。 ――ちなみに触手汁の主な効能は繊維質の分解、痺れ薬、媚薬、不妊治療、白くて滑って臭うだけなど物による。 「させはしない」 身を挺して666が割り込んだ。 降り注いだ触手汁はどうやら衣服溶解型だったらしく見る見るうちに666の燕尾服を腐食していく。 「666!」 「大したことはない」 ネコミミストは幸いにも殆ど影響を受けなかったが、前方からは更なる触手が押し寄せててきた。 次なる触手はスライム状。スライムもまた触手。薬液そのもののスライムが洪水のように襲い掛かる! (まずい――!) 息を呑むネコミミスト。その目前に投げられる何か。 「伏せなさい!」 666の声。咄嗟に反応したネコミミストはブックを押し倒して背後に伏せた。 次の瞬間、投げ込まれたそれは爆発した。 飛翔の蝙也の爆薬。割と地味なそれはこの場合に最も有効な手札だった。 ダメージの少ない、だが強く広い面の衝撃力を持った爆風が押し寄せるスライム状の触手を吹き飛ばす。 シャリダムに続く視界が、開いた。 「当たれ!」 間を空けず、666の手に握られたF2000Rから自動照準高速貫通ライフル弾が連射される。 放たれた無数の鉛玉がデビルシャリダムの肢体を穿つ。少女の体が衝撃で滑稽に踊る。 デビルシャリダムの少女の形は一瞬で蜂の巣にされて引き裂かれた。 「やったか!?」 ネコミミストの叫びを。 「いや、まだだ!」 666の叫びが否定する。 果たしてシャリダムは大したダメージを受けてはいなかった。 穿たれた無数の銃弾はぷつぷつと果物の種を吐き出すように排出される。 衝撃に引き裂かれた肉体が頭へと引きずられ元の場所に収められる。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 見る見るうちに元の姿を取り戻したシャリダムは畏怖すべき咆哮を上げた。 ネコミミストは息を呑んだ。 「あの再生力はまさか……不死者、なのか?」 アニロワ2ndに登場する異能力の一つ、不死者。 不死の酒を呑んだ者がなる文字通り不老不死の存在。殺す方法は原作ではただ一つ。 「なら問題は解決だな。私達は既に切り札を持っている。いや、幻夜が持っていた」 「まさか……」 666はそう言ってデイパックからそれを取りだした。 幻夜すら未確認だった、ゲドー・ザ・マジシャンの未確認支給品。 ――不死の酒。 人を不死者に変える秘薬。起死回生の一手。 不死者を殺す方法は原作においてただ一つ。 同じ不死者が相手の額に右手を当てて心の底から『食べたい』と念じる事。 それにより不死者は『喰われる』。 肉体は一片すら残らず呑み込まれ、知識と記憶と経験は喰った者に受け継がれる。 つまりこの酒を飲めば、シャリダムを『喰う』事が出来るのだ。 「ネコミミスト君、時間を稼いでくれ」 「ダメだ、666」 そう言う666をネコミミストが制止した。 「それをあなたに使わせるわけにはいかない。あなたがそれを使っちゃダメなんだ。 判ってるだろう、それを使うとその時点の怪我も保存され、永遠に痛み続けるんだ!」 「仕方ないだろう。これを使う以外に手はない」 666は脇腹の傷を押さえて苦笑いを零した。右目の傷はもう出血こそ止まったが鈍い痛みを送り続ける。 666がこれまでに受けた傷は致命的なものこそないが、気休めにも浅いとは言えないものだ。 「永遠に続くと思うと少し憂鬱だがなに、耐えられない痛みではない」 「ダメだ。それはわたしが使う。どう考えてもそれが一番良いんだから」 「…………判っているのかい? それが、何を見る事になるのか」 不死の酒のメリットとデメリット。 永遠に生き続けねばならない苦痛。 「わたしにとってはその位、どうという事は無い。この年齢のまま永遠を生きるなんてむしろ私好みな位さ。 だけど君は……そうじゃないだろう?」 「それは……」 666にとって自らの生は永遠でも構わないものだ。 666はそういう側に生きている。 ネコミミストはきっと、違う。666はそれを知っている。 だけど、と。ネコミミストは歯を噛み締めて言った。 「でもわたしは、仲間が傷付くのはもうイヤだ。 戦っても、危険に身を晒しても、わたしはあなたに護られて傷を押しつけてばかりいる! もうそんなのはイヤなんだ! わたしが不死者の恩恵と呪いを受け容れれば、もっと何かが出来るはずなんだ! だから……おねがいだ、666! ここはわたしに任せて! きっと、なんとかしてみせるから!」 666は少しだけ沈黙して。 「――わかった」 重々しく、頷いた。 666は、ネコミミストに不死の酒を手渡した。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 その瞬間、シャリダムは弾かれたように動き出した。 シャリダムは不死の酒が自分に何をもたらすのか知っていたのだ。 無数の触手がネコミミストを目指して殺到し、同時に別の一本が脇へと伸びた。 それは埋葬すべく寝かされていた幻夜・フォン・ボーツスレーの死体を取り込んでいく。 「な、幻夜……!」 「君の役目を果たせ、ネコミミスト!」 ネコミミストの動揺と666の叱咤。 ネコミミストはハッとなり不死の酒の封に手を掛ける。 無数の触手はもう目前にまで迫っていた。 「ネコミミストは私が守る」 大小の吸盤を備えた歪な蛸の如き触手が666の振るう鉄板の剣ドラゴン殺しに斬り潰される。 ドラゴンころしを振り上げながら、螺旋を描き絡め取るように襲来した触手をわざと左手に絡ませて動きを止めて、 続いて押し寄せた絵にするとモザイクの掛かるような卑猥な触手ごと、右手一本で振り下ろして叩ききる。 ネコミミストは封を開けるのを省略して衝撃波で栓周辺を吹き飛ばした。栓の開いた酒瓶に口を付けて―― ガチガチに硬い触手を力いっぱい振り下ろしたドラゴン殺しで折り砕く。 だがその裏に待ちかまえたぬるぬると滑る触手がドラゴンころしの勢いを削いだ。 瞬時、まるで針金のような触手が666の握るドラゴンころしに絡みつく。 「ぐっ、うああぁ!?」 パチリ。音と共に666が呻く。 ハードな用途の放電触手である。流された電流が666から握力を奪いドラゴンころしを地に落とす。 邪魔が消えた瞬間を狙い、上空から迂回した三本の触手がネコミミストに襲い掛かる。 666は舌打ちと共にゲート・オブ・バビロンの扉を展開し、撃ちだした。 緩やかに沿った西洋刀が三本の触手を百舌のはやにえのように串刺した。 だが、三本目は先程と同じくたっぷりの薬液で膨れ上がった水風船のような触手だったのだ。 引き裂かれた触手から弾けた大量の触手汁は、そのまま真下のネコミミストに降り注ぐ――! ネコミミストは、不死の酒を一息に飲み干した。 まるで滝のように、全身に触手汁が降り注ぐ。 今度の液体は衣服溶解型などという甘い物ではなかった。 一滴垂らすだけで貞淑な聖女でもとか無垢な乙女さえとか枕詞が付くアレである。 効能を発揮すればその時点で色々と規制的にヤバイ事この上無いアレである。 ていうか効き目有りすぎだろなんだあの夢のお薬是非一瓶下さいなってヤバ本音がいやいやとにかくアレである。 ネコミミストの全身に降り注いだそれは瞬時に全身の皮膚から浸透すると、 当然ながらこれまた瞬時にその色んな意味で危なすぎる効能を彼女へと発揮―― ;フラグが立っている場合は勝利ルートへ進む。 ;フラグが立っていない場合はBadEndへ進む。 ;※:大変申し訳有りませんが現在バグによりBadEndへ進む事が出来ません。 ; 有志によるパッチ制作をご期待ください。執筆元からの予定は有りません。 「………………」 ネコミミストは闘志に滾る瞳でシャリダムを見つめていた。 その意志は、汚されていない。 体は戦意で燃えている。 確かに、触手汁はネコミミストの全身に降り注いだ。 それは瞬時に全身の皮膚から浸透した。 その時点ではまだ、不死の酒も効能を発揮してはいなかった。 だがネコミミストの全身に浸透した薬液がネコミミストの神経を変異させるコンマ数秒前。 不死の酒は衝撃のネコミミストを不死者へと変えていた。 不死者となった肉体はその時点で保持される。 よって次の瞬間にネコミミストを作り替えんとした触手汁の効能は、不死の酒の再生効果で相殺された。 触手汁が肉体に変調をもたらす速度を、不死者の再生速度が上回った。 ネコミミストの戦意は今だ健在。闘志と戦意を瞳に燃やしシャリダムをじっと見つめている! 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 シャリダムが絶叫する。 目の前に生まれた脅威を肌で感じ、恐怖と怒りに満ちた叫びを上げる。 新たに生まれたのは無数の腕だった。 その全てが右手。先が右手型をした触手が数十と生え揃う。 それは人型を半端に残しているために完全な異形よりも尚おぞましい光景だった。 「喰らうつもりか」 666は呟く。 不死者は右手を相手の額に当てて『喰いたい』と念じれば、相手を喰う事が出来る。 つまりあの無数に生えた数十本の右腕触手が一本でもネコミミストの額に到達すれば、 ネコミミストは喰われ、彼女達は敗北してしまうのだ。 「666。……道は、作れる?」 「もちろんだ、任せてくれ」 666とネコミミストは見つめ合い、こくりと頷きあう。 「行け。君の道は私が護る」 「おねがい」 ネコミミストは一歩を踏み出した。 にちゃりと服に染み込んだ触手汁が粘り着く。かなり動きづらい。 「く……ふ、服なんて探せば幾らでもある!」 思い切って脱ぎ捨てた。べちゃっと重く地面に落ちる。 大体命の危機の前に恥ずかしいだのなんだの些事に過ぎない。 左手に永遠神剣『冥加』、右手は喰らう為に無手。装備は以上。 「世の中には女性は裸が一番美しいと言う男も居る。気にする事はない」 「あ、ありがとう」 赤くなりながらも666の言葉に頷いた。 そして改めて、一歩。 二歩、三歩。 ネコミミストは触手を密集させる悪夢に向けて、足から衝撃波を放ち特攻する。 666が必ずや彼女に道を作ってくれる事を確信して。 触手の津波に挑む、生まれたままの姿の少女。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 シャリダムの咆哮と共に無数の右腕がネコミミストへと殺到する。 666が、叫ぶ。 「させん」 666の言葉と共に放たれたのは無数の矢だ。 何処からか射手に放たれた如き矢の雨は正確に触手の波を貫いた。 そのまま串刺しに射止めて再生まで遅らせる。 ネコミミストは見る見るうちにシャリダムへと肉薄していく。 「ONIICHAAAAAAAAAAAAAAAAAANNNNN!!!!」 だがシャリダムは尚も足掻く。自らの生存を賭けて蠢く。 ネコミミストの目前に、突如それは出現した。 「な――!」 幻夜・フォン・ボーツスレー。 シャリダムの触手に取り込まれたその死体がひび割れた巨大な剣ミロクを振り上げて――。 紅い一線が走った。 振り下ろされようとした剣に食い込んだ小さな紅い宝石。 それは砕け散り、輝きと共に力を解放する。 大剣巳六は死して尚酷使された幻夜の腕と共に、塵と化していた。 「やれ、ネコミミスト!」 666の叫び。 ネコミミストは一瞬のそのまた一瞬だけ死して尚利用された仲間を悼み。 「すまない。――おやすみ、幻夜!」 それを終わらせる為に、幻夜の胴を両断した。 両断された胴の向こうに、シャリダムの本体が見えた。 「はああああああああああああぁっ!!」 断、と。 右手をデビルシャリダムの額に叩きつけた。 (――喰いたい) ぞぶりという音がした。 ネコミミストの右掌がシャリダムを呑み込んでいく。 肉体を。 精神を。 シャリダムがネコミミストの一部になっていく。 シャリダムの全てが……ネコミミストの中に…………。 「あ」 * * * ネコミミストはいつの間にか森の中に立つ自分に気付いた。 周囲は暗闇に塗り潰され、うっすらとしか見えない。 「ここは……一体……?」 戸惑うネコミミストに言葉が掛けられた。 「あら? そこにいるのはもしかしてアニロワ2ndの書き手さんじゃないですか?」 「誰だ?」 声のした方を振り返る。 見るとそこには、闇よりも尚昏い漆黒の仮面が浮かんでいた。 「おまえは……誰だ?」 「それ、アニタちゃんの格好ですよね? だったらアニロワ2ndの書き手さんなんじゃないかなーって思うんですけど」 「……何を言っているんだ?」 返答は要領を得ない。 ネコミミストの姿はアニタ・キングの姿と合致しない。 だが人影はそれには応えず、言葉を続ける。 「――? ああ、ごめんなさい。コレじゃあ、誰だかわからないですよね」 人影は漆黒の仮面を外した。そこには先程までとは対照的なまでに白い、女の顔が浮かび上がった。 「こんばんわ。私は◆AZWNjKqIBQ――いや、ここでだとマスク・ザ・ドSだね。よろしく♪」 噛み合わない会話とその名前にネコミミストはようやく理解した。 その名は昼の放送で呼ばれていた。つまりこれは過去で、今が夜なのは開幕直後を意味する。 「ここは……コ・ホンブックの記憶なのか?」 デビル・シャリダム。 元はコ・ホンブックだった、コ・ホンブックから分離された狂気の澱。 その精神と、そこに繋がる経緯。 暴走するコ・ホンブックから初期状態のコ・ホンブックを取り除いた後に残された物。 それはつまり。 * * * 突如、びくんとネコミミストの体が震えた。 驚愕と動揺に目が見開かれる。 「…………ぅ」 微かな声が漏れた。 その右掌はシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「や、やめろ、来るな!」 ドSに向けて衝撃波を放とうとした。だが。 「――出ない!?」 当然だ、これは既に過ぎた事なのだから。 その内容を追体験しているに過ぎない。全ての経緯は既に確定した事。 ひうんひうん――と。風を切る不可視の獣が走る様な、そんな奇妙な音が聞こえた。 「あぐっ」 宙を舞った無数の糸がネコミミストを背後の樹に縛り付けた。 かつてコ・ホンブックがされたのと同じように。 だがこれは『記憶であって記憶ではなかった』。 何故ならコ・ホンブックは暴走していた頃の記憶を残しているのだから。 記憶という情報は既にコ・ホンブックが持ち去っている。 ならばこれはなんなのか? 「普通の人間が糸を操るなんてできるはずがないじゃないですか。――けど私は『ニンジャ』ですから」 ドSの指がゆっくりと、動く。 その度に鋼線は、舐めるように白い肌を伝い、嬲るように柔らかい肌へと食い込んでいく。 木々の間に張り巡らされた鋼線がギィン……と弦を弾く様な音を静寂の中に響かせる。 「う……あ…………」 全身の肌で感じる鋼線の感覚がネコミミストの記憶へと刻み込まれていく。 体験していく。 「暴れないで下さいね……怪我をしますから。じゃあ――」 ソレ。小さな掛け声が響いた。 今度はひゅるひゅると見えない蛇が空を泳ぐような音がし、続けて森の中に無数の白い破片が飛び散った。 澄んだ森の空気の中を舞い月光を跳ね返して雪の様に降り注ぐ、白いワンピースだったもの。 ネコミミストは冷ややかな夜気に晒された白い肌を震わせて、羞恥と恐怖に歯を噛み締めた。 体験を経た記憶がネコミミストに刻み込まれていく。 そう。 シャリダムの中に残されていたこれは、コ・ホンブックの軌跡だった。 体験する者という代行者が抜け落ちた、体験そのものだった。 * * * 背中が丸まる。何かに怯え身を守ろうとするように。 歯が震える。噛み締めてそれでもカチカチという音が残る。 「ぎ、ひっ…………」 その瞳に、恐怖が浮かんだ。 その右掌はシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「動かないほうがいいですよ。その糸、砥いでありますから引っ張ると喰いこみます」 「うぐ……っ」 ネコミミストはかつてのブックと同じように動き、後ろ手に縛られた親指を傷つけてしまった。 ブックが解放されて置いていった、ブックの味わったものと同じ苦痛。 「抗うと辛くなるばかりですよ。幸せは受け入れることから始まるんです。前を向いてください――」 漆黒の皮手袋に包まれた両手が、ネコミミストの白い顎を持ち上げる。 ブックはこの時、もう恐怖に怯えた瞳しか出来なかった。 だけどネコミミストは恐怖を噛み潰し、必死にドSを睨みつけてみせた。 記憶と体験の違い。 「不安な気持ちは忘れて、楽しい未来を思い描きましょう」 どんな心構えをしていても、感覚は同じように襲い掛かる。 ドSの手は顎から離れ、冷たく這いずる蛇の様にネコミミストの肌を伝い始める。 猫の肌を蛇がしゅるしゅると舐っていく。 「く、くそ……やめ…………あ……やっ…………!!」 屈辱を覚え、羞恥に怒り、不安に怯え、恐怖を感じながら。 ネコミミストはシャリダムに残された体験に耐え続ける。 * * * 歯の震えは最早はっきりがちがちと音を鳴らしている。 瞳に浮かんだ怯えは気丈な意志を徐々に呑み込んでいく。 666はネコミミストへ向けて駆け出した。 その僅かな距離が、余りにも遠い。 ネコミミストの右掌は尚もシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「く……そ…………」 全身を嬲りつくす指の蹂躙が過ぎ去る。 ネコミミストは恐怖と不安を必死に堪えて耐えていた。 「……~一筆書き、☆の絵には~。5つのトンガリがあるでしょう~♪ ……と、出来た」 見るとドSは意味不明な歌を歌いながら、メモに星を基調とした複雑な模様を描いていた。 その上には銀色の鋏が一つ。 間もなくそれは火花と煙を散らして奇妙な金属塊へと姿を変えた。 「錬金術……?」 「普通の人間である私が錬金術を使える訳ないじゃないですか。――コレは忍法『金遁の術』ですよ」 一瞬ドSが返事をした様に錯覚し、すぐに否定する。 恐らくはただの偶然だ。 ドSはその金属片を摘みあげ、ネコミミストの目の前まで持ってくる。 それは3センチ足らずの小さな、骨組みだけの傘のような形をしていた。 ネコミミストは寒気と胸騒ぎを同時に感じる。 (なんだこのサイズ……見覚えが……) ドSはすぐにその答えを教えてくれる。 「コレ見えます? 今からコレをあなたに刺すんですけど、見ての通り『返し』がついてて、引っ張って抜くと☆型に肉が抉れるんです♪」 「な…………っ!!」 全身の体毛が逆立った。 そして気付いた。シャリダムの胸に、丁度そんな大きさの傷が無数についていた事を。 何故、この『体験』がシャリダムの中に残されていったのか。 その理由は言うまでもない。 コ・ホンブックは情報としての記憶だけを持って救われた。 そう、救われたのだ。 そしてブックの心を壊したのは体験、言うならば感情としての記憶の積み重ねであり、 それを持っていってしまえばブックの心はまた壊されてしまう。 だから残された。 つまり言うならばこの記憶は――。 「や、やめ……う…………ッ……」 プスリ。 ネコミミストの視線の先で金属塊が胸の柔肌を突き刺した。 差し込まれた針の末尾には鋼糸が結ばれ、その糸はドSの手の中へと繋がっている。 ほんの僅かに指が震え、ゼロコンマ数ミリだけ糸が引かれた。 「――――ッ!」 歯を食いしばる。目を見開く。息が荒くなる。心臓が早鐘のように脈打つ。 全身が汗を吹き出し、まるで鋼鉄と化したように体が固まる。 世界が止まったような錯覚を覚えた。 …………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。 「…………ふっ………………ぅっ! う…………きゅっ…………」 世界の音が消え去って、静かすぎる耳鳴りが聞こえ始めた。 口の中の唾が冷え切って冷たさを主張し始める。 …………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。 「…………いっ………………っ………………きっ………………ひゅっ…………」 漏れているのは声なのか、それとも吐息なのか判らなかった。 必死に落ち着け、意識を逸らせ、痛みに備えろと言い聞かせる。 鼓動は乱れ、意識は集中させられ、心構えすら出来ずに感覚が続く。 …………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。…………プスリ。 「ひ…………ぁっ……ぁ…………きっ、ひ……いぁっ……ぁ……かっ」 噛み締めていたはずの歯はいつの間にか浮いていた。 生け簀から上げられた魚みたいにぱくぱくと口を開いて閉じて痛みを逃す。 「身体を固くしているとよけい痛いですからね。 リラックスしてください。リラックス。脱力ですよ。身体が水みたいになったってイメージするんです」 ドSは凍り付くほどに優しい口調でそう言うと、片手でネコミミストの頭を撫でる。 猫耳が撫でられ、思わずぴくんと体が震えた。 「きぁっ」 視界が真っ白に染まる激痛に硬直する。 ドSはそれに頓着せず、認識した様子もなくもう片方の手で糸を絞る。 「そしたら痛くないですから。とっても気持ちいいですから…………」 「や……やめ…………やめ……て…………」 ネコミミストの前髪をかき上げてびっしりと汗ばむ額にキスをあげると、ドSは持っていた糸を力の限りに引き絞った――。 ――詰まるところこの記憶は、追体験するだけで少女の心を容易く壊す地獄そのものなのだ。 * * * 恐怖に満たされた瞳の焦点は中空を結ぶ。 口が開いた。舌が伸び、喉が震えた。そして。 「ぎ、ひっ、あがっあああぁあああぎゃあああああああぁあぁあぁああああああああああああ」 ネコミミストは、身も凍るような悲鳴を吐き出していた。 ネコミミストの右掌は尚もシャリダムを呑み込んでいく。 * * * 「――………………………………………………!!!!!!!!!!」 体験の中ではネコミミストはブックと同じように、悲鳴を上げる事すら出来なかった。 ショックで死んだと思うほどの激痛を味わって、それでも死ぬ事は出来ない。 そもそもショック死と言われる物は、主に出血性ショックによる死亡なのだ。 元から心臓が弱ってでもいないかぎり、痛みで死ぬことは出来ない。 詰まるところ肉体が傷付く事の無いこの追体験では、どんな体験をしても死ぬ事は無い。 痛みが激しすぎて、意識を失う事すら出来なかった。 「あ、がっあが、あかっかはっがっああ……が……あぎゃっきああああぁあぁ……かっ」 開けっ放しの口は意味不明な呻きと共に涎を垂れ流し、眼からはぼろぼろと涙が零れていた。 「あ…………」 その視線の先にはドSの手があった。 手には無数の長い針が握られていた。 「大丈夫。大丈夫。ここから先はとても素敵だよ。とぉっても気持ちよくなれるよ……」 「や……いや、だ…………そんなの……は…………ああああ!!」 いやいやと首を振るネコミミストの腹部にドSは、針を突き刺した。 肝臓を貫き通すように何本も、何本も。 通常のものとは違う重くてゆっくりと染み入る痛みと、異物の挿入感。 乗り物酔いを何百何千倍にしたこの様な感覚。 身体が内側から引っくり返り内蔵が口から飛び出すような錯覚。 それは極上の苦痛だった。かつてブックが味わった、誰も望まない最高品質の痛みだった。 * * * 666の手の中で、小さな手鏡が何か映像を映しだしていた。 それは長い内容だったが、ほんの僅かな時間で上映は終わりを告げる。 現実の姿、ネコミミストにゆっくりと呑み込まれていくシャリダムの姿に重なった。 制限でも掛かっているのか、それとも酢飯細胞という異分子のせいか、捕食はとても遅かった。 それでもシャリダムは一切抵抗できずに呑み込まれていく。 * * * (痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い 痛い痛い痛い痛い痛いいたい痛い痛いイタイ痛いいたい痛い痛いイタイ痛いいたいイタイ いたいイタイイタイ痛い痛いいたい痛イ痛いイタい痛いイたイいイタイ痛イいたイイタい イタイいたイイタいいたいイタイいタいイタいいたイいたい痛痛痛痛痛痛痛痛――――) 純粋な痛みの塊。 手を動かすのは痛い事。立っているのは痛い事。座り込むのは痛い事。音を聞くのは痛い事。 何かを見るのは痛い事。匂いは痛い。味は痛い。感触は痛い。思うは痛い。考えるは痛い。 痛い。痛いから痛い。痛いのも痛い。痛いけど痛いから痛くて痛むのが痛い痛い痛い…………。 思考を、閉ざすべきだったのだろう。 あるいは狂うべきだったのかもしれない。コ・ホンブックのように。 だけど幾つもの出会いと別れの中で、死に行く者達と666から多くの物を与えられたネコミミストは、 かつてのコ・ホンブックよりほんの少しだけ強かった。 痛みに全てを塗り潰された中でコ・ホンブックの軌跡は乖離剣エアを振り上げる。 (痛い痛いイヤだ痛いのはこんな痛いイヤだ痛いイタイ助け痛いイヤ痛い痛いこんな誰かイタイ助け 痛いどうにか痛い痛いイタイイタイお願いだから痛いイタイ痛いイタイやめ痛いそれはイタイ痛い 痛い痛いイタイイタイ殺しちゃ痛いいけないイタイイタイ痛いその人達は痛い悪くな痛い痛い痛い 痛いイタイイヤイタイイタイダメイタイダメ痛いダメイタイ止まって痛い痛いやめイタイ痛い痛い おねがい止めて――――!) 涙を流そうとも止まらない。痛いだけ。 逃げてと叫ぼうとしても声は出ない。痛いだけ。 助けてと願おうとしても考えられない。痛いだけ。 目をふさぐ事も考えを止める事も出来ない。痛いだけ。 全て痛みに塗り潰された中で。 コ・ホンブックの軌跡は、フォルゴレの姿をした書き手と、王ドロボウジンの姿をした書き手を殺害した。 * * * 「愛がなければこんなことはできない。あなたは正しいよ、ドS。……だが」 666はゆっくりと呑み込まれていくシャリダムの、切り離されている部分を抱き上げる。 シャリダムに取り込まれた幻夜・フォン・ボーツスレーの死体、その上半身だ。 シャリダムの一部といっても差し支えない、ゆっくりと再生しシャリダムと繋がろうとしているそれを。 「私は少しだけ、アプローチの仕方が違うんだ」 シャリダムを呑み込んでいくネコミミストの右掌に、押しつけた。 * * * (痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいイタイイタイイタイイタイ……) 激痛に埋め尽くされた風景が。 「……ただの見世物ならばな。 だがこれは紛れもなく我々の前に突きつけられた現実だ。笑ってばかりもいられまい」 激変した。 (え…………これ……は…………?) 219 Blitzkrieg――電撃戦 (後編) 投下順に読む 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 218 仮面の下の邪悪な微笑み 時系列順に読む 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 199 かくて勝者は不敵に笑う 衝撃のネコミミスト 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 199 かくて勝者は不敵に笑う 派手好き地獄紳士666 220 さよならは言わないで。だって――(後編) 183 第二次スーパー書き手大戦 第183話 了承!! デビルシャリダム 220 さよならは言わないで。だって――(後編)
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笑顔YESヌードって良い曲だと思うんだけど 最近のメンバーでは歌わないの? 83 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 14 36 25.68 0 笑顔YESヌードって良い曲だと思うんだけど 最近のメンバーでは歌わないの? あと当時の評判教えてくらさい 85 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 14 41 05.02 0 >>83 秋ツアーで歌ったよ 87 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 14 44 16.79 0 >>83 俺は大好きだった 誰か忘れたけどミュージシャンが絶賛してたな 90 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 15 14 37.04 0 メドレー確認できました やっぱりちょっと色気が足りないね こういう時に中間層がいないのが痛いところか つーか現メンだともっと選曲むずかしそうだね 95 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 16 14 43.89 O 歩いてるから続いて小春が綺麗だなと思ってました 96 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 16 59 14.15 0 >>87 >誰か忘れたけどミュージシャンが絶賛してたな 木村カエラね 唐突だったな 98 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 17 46 21.95 0 海外ヲタからnudeをヌードって発音するのは気持ち悪いっていう意見もあったな 歌詞上じゃnudeじゃなくてヌードのカタカナ表記だし全く問題ないんだが 日本じゃ大まかに言って評判良かったはず ヲタ人気がわかるハロプロ楽曲大賞もみかんより上だった記憶がある 99 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 17 49 59.75 0 というか1位だったな http //www.esrp2.jp/hpma/2007/youarenotalone/song.htm 001. 笑顔YESヌード / モーニング娘。 368pts 157票 002. JUMP / ℃-ute 323.5pts 135票 003. みかん / モーニング娘。 298pts 137票 104 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 21 45 08.36 0 笑顔YESヌードは宇多丸がマブ論で ハロプロでは超久々に5点満点つけてた 愛ちゃんが辞める前に秋ツアーで歌ってくれてよかった 見納めだと思って超盛り上がったわ 105 名無し募集中。。。 2011/12/23(金) 21 47 31.30 0 ミキティが辞めなかったらもう少し笑顔YESを聴けたのになあと 少し寂しく思う 関連 エガヌーはアルバムver.の方が好きだな 悲しみトワイライトがかっこよくて好きなんですけど 古参の評価はどんな感じですか? つんく幅ひろいよなぁ 125ハマリ [2011年]
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09/3/27 時点で、韓国HPの☆評価の点数を並べた。 種 武器名 ☆評価 3/27 4/28 点数 ランク 点数 ランク SG Remington870 8.83 2 8.84 2 SPAS-12 8.33 3 8.37 3 BENELII M1014 8.87 1 9.08 1 【作成履歴】 2009/3/27 作成 2009/4/28 更新 名前 コメント
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7 今思い出しても、すてきな時の流れが続いていた。マコト君と出会い、朝子さんと出会った。僕は長い間待ち続けた瞬間を、ようやく迎えていると思った。やっと掴んだ幸せが長く続くようにと祈らずにはいられなかった。マコト君が口にする「必然たる偶然」や「運命的」という言葉にも意味があるように思えた。そして暖かな陽気に包まれてまどろむように、僕はその幸せな時間に心から浸った。 梅雨のある日、僕は朝子さんを家に呼んだ。 今日は両親はともに家を空け、姉はマコト君の家に泊まりに行って帰ってこない。両親の片方が一晩中家を空けることも珍しかったが、二人とも揃って家に帰ってこなかった。このことを知った時、チャンスだと思った。こういう時、人間というものは俄然やる気を出して知恵を絞る。学校の授業ではそれだけ意欲的に持ち合わせた脳を使うことはなかったのに、いざ自分の欲求の関わることになると、きちんとスイッチが入る。それはとても不思議なことだと思った。ただ、それでも姉が家を空ける方法がどうしても思いつかなかった。 「それなら簡単だよ」とマコト君はにんまりと笑った。彼は姉を自分のアパートに誘い、泊まっていかないかと誘った。いつもしていることだったけれど、彼から姉を誘うことは稀なことだった。たいていは、休日や仕事帰りに彼の部屋に姉が立ち寄り、両親を心配させまいと泊まることまではなかった。 「普通なら泊まるのに、結子さん…君のお姉さんはご両親の気持ちも考えて外泊は止めとこうって言うんだ。優しい人だね」 「律儀と言うか、硬いんだよ。融通が利かないと言うか」 「言い方を替えればね。けれども君たちはよく似ているよ、そういうところが」 「そうかな~?あんまり嬉しくないけれど…」 「僕は一人っ子だったから、そういうのは少し羨ましいな」 マコト君は肩をすぼめて笑った。少し彼に申し訳なかった。家族が当たり前のようにあるのに、羨む彼を前に、こんなことを頼んだりしていることが。 「君は仕方のない人だな。そんなことで心を痛めることはないんだ。世の中、そんなもんさ。あらゆるものは、存在すればその価値は当然のように感じられ、なければ貴重に感じられる。でも、大丈夫だよ。きちんと甘えさせてもらってるから。こういうところ、やっぱり君と結子さんは似ているよ。」 こうして家を空っぽの状態にすることができた。彼からこの話があったとき、「どうしたの?そんなこと言うなんて珍しい」と姉は彼に疑いのまなざしを向けたそうだ。それでも、そこはマコト君がうまくやってくれた。 「サトシ君から聞いたんだ。その日はご両親がいないって。こういうことってなかなかないし、一緒にいたいんだよ」 ここまで彼が言えば、姉は「仕方ないわね」と言いながらも嬉しげにすんなりと彼の申し出を受けた。 そして僕は朝子さんを誘ったが、「何かご両親がいない日を狙って、あなたの家に上がりこむのは気が引ける」と返事を渋っていた。きっとマコト君なら姉を誘ったように、良い言葉が思いつくのだろうが、僕にはからっきしダメだった。結局事実を話すしかなかった。それが一番楽な方法でもあった。共に自宅に住む身で、二人だけで時間を過ごすにはこうするしかなかった。朝子さんは少し考えてから、「いいよ」と言ってくれた。 いよいよその日はやってきた。夕方になると、雨がしとしとと降っていた。髪の毛が濡れている朝子さんもすてきだった。「そんなにジロジロ見ないで」と朝子さんは少し照れていた。それがまた、たまらない。普段は仕事柄ズボンを履いている彼女であったけれど、今日は濃い緑のスカートを履いていた。六月の暖かな雨が降る日には、よく合っていると思った。 食事は僕が作り、朝子さんは手伝ってくれた。本当は朝子さんの手作り料理が食べられるはずだったが、留守中に上がりこんだ上に、勝手にキッチンまで使うことはできないと彼女が言ったからだ。僕は彼女に手伝ってもらいながら、お好み焼きを作った。彼女はそば入りのモダン焼きの方が好きだと言ったが、焼きそばがなかったので大阪風のお好み焼きが出来上がった。作り方は姉が作るのを見ていたので、何とか見よう見まねで作れたし、朝子さんもいろいろと手伝ってくれた。 「でも、何でお好み焼きなのよ?」 二人きりの夜にお好み焼きもどうかと思ったが、それでも気兼ねなくお腹も満たせてすぐ作れる料理は、僕にはこれくらいしか思いつかなかった。朝子さんはそれを聞くと笑っていた。彼女の笑っている姿を見るのが、僕は好きだった。そして僕も一緒に笑った。誰もいない家に、僕らの笑い声が響いた。 ふと我に返ると、何だか夢を見ているような気分になった。嘘だろ、僕がこんな風に誰かと寄り添っているなんて…。よくよく考えれば、相手は姉と同じ年の人というのもまた驚きだった。もちろん、彼女を目の前にすれば、そんなことはどうでも良いことなのだが。ただ、なぜか少し尻ごむ僕らがいた。幸が薄いせいか、幸せになることになれていない。幸せになるのに、どうして臆病になる必要があるのだろうか。おかしな話だった。 「ただ、信じればいいのさ」マコト君の言葉を思い出した。 ただ、幸せになることを望めばいい。余計なことは後から考えればいい。そんな時は幸せになることだけを考えたらいい。 食事が終わり、片づけが終わると二階に上がり、僕の部屋で2人で過ごした。彼女は少し緊張しているようで、微妙に離れて座るその間隔がもどかしかった。話をしていくうちにそんなことも忘れ、少しずつ緊張もほぐれていた。 外は雨がしとしとと降っていた。雨音は、僕らの呼吸や話し声を除いて、すべての音を消してしまっていた。話が途切れると、そこには雨音のみが聞こえる沈黙の世界が広がっていた。この六畳間だけが、世界のすべてとさえ思えた。ここに僕ら二人がいることがすべてのように思えた。世の中に存在するあらゆるものや事実も、地球の中で僕らが他の惑星を思うのと同じくらいに遠いもののように思えた。それはとてもすばらしいことだった。僕も朝子さんも、互いの瞳に互いの姿だけを写し、時の流れに身を任せていた。 僕が彼女の肩に手を回すと、少し驚いた顔をして僕を見た。それから僕の胸に顔を寄せた。僕の胸元では彼女の呼吸がはっきりと感じられた。彼女には僕の高鳴る鼓動の音が届いているのだろうかと考えると、見透かされているようで恥ずかしかった。 しばらく、二人で寄り添ってベッドにもたれて、いろいろな話をした。今日家に誰もいないからくりとか、バイトでの飛田君の話とか、これまでに見てきた、聞いてきたいろいろなことを。からくりの真相を聞いた時、朝子さんは「悪い人ね」と僕の鼻をつまんだ。僕は「苦しいよ」と少し悶え、彼女は笑った。でも、一番盛り上がったのは、飛田君の話だった。彼の話題で盛り上がるのはどうかと思ったが、それでも彼女と話しているのは楽しかった。 時計は十時を越えていた。互いに時計を見て、互いの顔を見た。無言のやり取りが一瞬にして交わされる。 朝子さん:もうこんな時間。 僕:何時までいられるのだろう? 朝子さん:そんな目をしないで。 僕:もう帰るのかな?泊まっていけばいいのに…。 楽しい時はいつだって時間が経つのが早い。一応泊まっていけるように、夜も僕と彼女だけしかいないようにしてあった。コンドームもきちんと用意した。鍵もかけた。それを下心というのだろうが、もし機会があるのなら無駄にすることはないと思った。 「今日は両親とも家に帰ってこないんだ」と僕は彼女に告げた。すると彼女は困った顔をした。しばらく二人とも黙って見つめあった後、朝子さんは「仕方ないな~」と笑みをもらし、そして僕も笑ってキスをした。温かく柔らかな唇は、僕を溶かしてしまいそうだった。最初は短く、やがて間隔を狭めながら何回もキスをした。その間に彼女の目はまどろんでいた。僕は服の上から彼女の胸を触り、またキスをした。もう時間の感覚なんて当になくなっていた。二人とも息が続く限りキスをした。まったりとしたものから、貪るようにして互いを求めた。僕は朝子さんの服をゆっくりと一枚一枚脱がせた。そして彼女も僕の服を脱がせてくれた。そしてしばらく肌を合わせて、抱き合ったままキスをした。 僕らはベッドに入ると、またしばらくの間キスをした。そして僕は上から順に手や舌で彼女の体の一つ一つを確かめるようにしてなぞった。彼女は少しくすぐったそうにしながらも、時々僕の頭を抱いた。彼女の体は温かくて、柔らかくて、すべすべとして気持ちが良いものだった。 やがて僕は彼女の中に入れようとしたが、最初は上手く入らなかった。 僕が「ごめん」と謝ると、彼女は「初めてなの?」と聞いた。僕は少し他所を見てから「自分でなら何回も」と答えた。彼女は「何それ」と笑った。僕は「愛嬌」と答えた。そして彼女が入り口まで導いてくれ、ゆっくりと中へ入れた。思ったよりも彼女の中は温かく、とても濡れていた。こんな時はアダルトビデオに感謝したくなる。初めてで経験がないのに、きちんと手順ややり方を心得ているのは、不断の努力と言える。努力もとい、欲求の追及によるもののおかげだ。煩悩万歳!! 僕は時々アダルトビデオを思い出しながら、彼女の後ろへ回ったり、彼女を上に乗せたりと体位を替えていった。彼女は心地よさそうな声を上げながら、髪を揺らしていた。少しずれかけた眼鏡を外すと、初めて彼女の素顔を見ることができた。赤いふちの眼鏡をかけた彼女も素敵だったが、素顔の彼女はそれよりも少し幼く見えた。より素朴な感じが増し、黒く長い髪がよく似合っていた。 「ねえ、初めてでしょ?」と彼女はキスをしながら僕に尋ねた。 「そうだよ」 「一体どこでそんな知識を学んでくるのよ?」 「エロビデオ。朝子さんもパッケージの写真とか見たことあるでしょ?」 「ありません」 「どうして?返却分のビデオ返す時とか見たりしない?」 「周りに人がいるのに、そんなにマジマジと見れない。だいたい、そういうのは男性が戻しに行ってくれるし」 「なるほど」 「もう、そんなくだらないことはよして」 僕は再び体を動かし、時には激しく、時にはゆっくりとしながら彼女の到達を見届けた。そして僕も彼女の中で気持ちよくなった。 どれくらいの時が経ったのだろう。僕らはしばらく互いの体温を感じながら抱き合っていた。それからタバコを一本吸った。時計の針は1時を指していた。 僕らはベッドから落ちないように寄り添って眠った。彼女の温かな寝息が僕の胸元に流れてきた。ゆっくりと穏やかなその呼吸は、彼女の話し方を思わせた。そしてもう一度、今日の出来事を思い返してみた。自分でも信じられない出来事だった。いつかはこうなるとは思っていた。けれども実際に終わってみると、意外とあっけないものだった。それでも想像するものと現実とは大きく違っていた。時間を掛けて求め合い、温かさを感じながら満ちることができた。すてきな出来事だった。それ以外に何も形容する言葉は思い浮かばなかった。どうか、今日のこの喜びがいつまで続くようにと祈った。そして、朝子さんに「ありがとう」と言うと、僕も眠りに就いた。 次の日の朝、目が覚めると朝子さんは既に目を覚ましていた。昨日のことを思い出して、僕らは顔を赤らめた。 「もう一度しようか」と僕が尋ねると、「もう、ダメよ。今から始めたら大変な時間になっちゃう」と彼女は下着を身に付けた。そして、身なりを整えると、まだ寝起きのままの僕に軽くキスをして、手を振って家を出て行った。外は雨が上がっていた。 その日、バイトで朝子さんと顔を合わせると、朝子さんはすぐにどこかへと行ってしまった。何だか淋しい感じがしたけれど、それでも一緒にいられることは嬉しかった。そして昨日の晩のことが夢でなかったことを確かめるために頬をつねってみたが、痛烈な痛みを感じた。それを飛田君は横でじっと見ていた。 「何してるんですか?今日は何かおかしいですよ」 そう言うと、返却分のビデオを持って店内の奥へと消えていった。 それからも僕らはホテルなどを使いながら、機会があれば何度もセックスをした。彼女とセックスをするのはとても気持ちが良かった。どれだけしてもやり足りなかった。終いには、彼女が「今日はもうこの辺にしよ」と言うことさえあった。僕は自分の渇望をなかなか抑えることができずに、いろいろな形で彼女を求めていた。 「まあ、そんなものだよ」とマコト君は言った。 僕の中では朝子さんへの割合が大きく増し、以前に比べればマコト君への割合は減ってしまっていた。互いに恋人もでき、4回生ともなれば、就職や論文の準備、単位履修、アルバイトとすれ違うことが多かった。僕はそれを申し訳なく思った。僕はこれまで彼の存在をとても大切に思っていたはずだ。もちろん、恋人である朝子さんも大切だ。恋人と友だちを比べるならば、恋人を優先するべきなのだろう。けれども、僕にとってはただの「友だち」で片付けてしまうことができない存在だった。僕は朝子さんのことが大好きだ。どれだけ求めてもそれは満たされないくらいに求めてしまう。それは性的な欲求だけではなく、もっともっと彼女のことを知りたかったし、彼女に近づきたかった。どこかで自分と彼女の年齢差からだろう生まれる経験の差や成熟度合いに必死に追いつこうとしていた。そんなことをしたって追いつくはずもないのに。そしてそれ以上に、これまで抱えてきた孤独や憂いを消し去るように、彼女の存在が確かであることを確かめながら、ただひたすらに目の前にあるものに、僕はどこか求めすぎてしまっていたのかもしれない。自分の中で薄れてゆくマコト君の存在がどうしても気にかかった。彼との出会いにあれほど感動し、姉と同様に僕におおきな影響を及ぼしていた彼が、時の流れやすれ違いの生活で僕の中で少しずつ薄らいでいくのは良くないことだと思った。それでもそれが事実だと認めると、僕は自分を責めた。そんな状態でいる僕がおかしくなるのに、それほどの時間はかからなかった。 決定的に僕を狂わせたのは、姉の死だった。それは突然の出来事だった。あまりの衝撃に、僕の思考は完全におかしくなってしまっていた。当たり前のことを当たり前にできなかった。ひげも伸びたままだった。一瞬にしてすべてのものが存在感を失い、何も手につかなくなり、すべてを見失ってしまいそうだった。 死因は心臓麻痺だった。季節は移り変わり、冬を迎えたころだった。朝起きてから部屋で着替えているはずの姉が、なかなか部屋から出てこなかった。僕は何度か声をかけたけれど、返事はなかった。時刻は当に出勤の時間を迎えていた。少し心配になって部屋のドアを開けると、ベッドから足を落として横になっている姉の姿を見つけた。 「姉ちゃん、もう遅刻しちゃうよ」 何度も声をかけ、面倒臭さを感じながらも、再び姉に近寄って声をかけた。けれども、声をかけてもびくともしなかった。何回か体を揺すっているうちに、息をしていないことに気付いた。何度も名前を呼んだけれど、ピクリとさえ動かなかった。僕は走って階段を下り、救急車を呼んだ。電話口で男性がいろいろなことを言っていたが、何を言っているのか、まったくわからなかった。僕の耳には何も聞こえていなかったし、僕の目には何も見えてはいなかった。 病院に着いたときには、もう手遅れだった。それは、誰にもどうしようもないことだった。けれども、突然すぎる出来事に、あまりにも理不尽で姉がとても不憫に思えた。どれだけ言葉を連ねても、何も変わらなかった。姉が死んでしまったのは事実であり、もうどうすることもできないことだった。それはわかっているけれど、なかなかそんなに簡単に受け容れられるはずがなかった。 外は雨が降っていた。激しく降っていた。屋根を叩く雨音がすべてを包み、朝子さんと過ごした日のように、すべての音を消し去り沈黙を作り出していた。けれども、あの時とは決定的に違っていた。あまりにも悲しく絶望的な沈黙だった。どれだけ大きな声で叫んでも、その沈黙は破れないように思えた。何をしても、死の前では圧倒的に無力な自分が存在した。それはわかっていることではあったけれど、改めて直面すると、僕の中のいろいろなものまで削ぎとっていくように思えた。そして抜け殻のようになって、呆然とするしかなかった。何もしなくても涙がこぼれた。何度も顔をしわくちゃにして泣いた。どうしようもない悲しみが体いっぱいに広がって、僕の胸は押しつぶされそうだった。 灯かりを消した部屋で一人うずくまって、姉のことを思っていた。幼い時、両親の代わりをし、僕の面倒を見ていた姉。僕が独りぼっちにならないように、横で見ていてくれた。大切なものを見失わないようにと、いつだって灯かりを照らしてくれていた。少し強気で、けれども本当は臆病な人間だった。なぜ、僕のような不出来な人間がこの世界に残され、姉のような人間がこの世を去らなければならないのか、まったく理解できなかった。そして、マコトくんの悲しむ姿が頭の隅に浮かんだ。 それからしばらく誰とも出会うことなく、一人で過ごす日々が続いた。しばらくして、休みをもらっていたアルバイト先へ向かった。そこで久しぶりに朝子さんに会うことができたが、彼女の顔を見ても上手く笑うことができなかった。きちんと繋がっているはずの僕と彼女に、おおきな歪みが存在しているように思えた。 素早く彼女の前を横切ると、店の奥にいる店長の元へと向かった。僕は「アルバイトを辞めたい」と伝えた。突然の申し出に店長は戸惑ったし、怒った。主な働き手が急に抜けてしまうこともその理由だったし、あまりにもマナーに反していることもその理由だった。もちろんそれはわかっていたけれど、今は何もする気が起こらなかったし、この状態では迷惑をかけるだけだというのはよくわかっていた。本当ならば、こういう時は気をしっかり持って、耐えて生きていかなくてはならないのは知っている。ゆっくりと時間が悲しみを和らげてくれることも知っている。それでも、今は無理な話だった。店長は一通り説得し一応の説得も無理だとわかると、仕方なく退職を認めてくれた。 帰り際に飛田君に「ありがとう。楽しかったよ」と伝えた。飛田君は僕がバイトを辞めることを知って、驚きのあまり言葉を失った。いつものような調子の良い発言も見られず、ただ、立ち尽くしていた。そして横にいる朝子さんを見た。朝子さんは黙って下を見ていた。僕は「ごめん」とだけ言うと店を出た。僕が店を出た後、彼女が店の外に出て僕を眺めているのは知っていた。でも僕は振り向かずに、ただ歩き続けた。もう僕には誰の声も届いてはいなかった。もう、涙すら出ない。悲しいのに、涙は流れなかった。いつまでも姉がなくなった日の雨音が僕を包んでいた。 それから数日後、僕は朝子さんと喫茶店にいた。二人で会う時によく使っていた店だった。個人で経営しているとても小さな店舗で、店内は薄暗かったけれど、それが僕らには落ち着いてよく似合っていた。椅子やテーブルも木製を使い、趣深い装いも心惹かれた。いつもはくすくすと笑って、いろいろ話していたのに、その日の僕らの間には笑みは一つもなかった。僕は窓から外を眺めながら、タバコを吸った。朝子さんはずっとスプーンでコーヒーかき回していた。 「何も辞めることなかったのに」と朝子さんは口を開いた。 「このままじゃ、何も上手くいかないのはわかってたし。みんなにも迷惑かけてしまうから」 「どうして一言も言ってくれなかったの?」 朝子さんは僕を睨んだ。僕はしばらく彼女を眺めて、それから外に目をやった。長い沈黙が続いた。彼女の言葉の意味も、僕を睨む理由もよくわかっていた。けれども、僕はそれ以外に選ぶことはできなかった。そうするしかなかった。それがたとえ間違った選択であったとしても。それがわかっているからこそ、それでも黙っていたし、今ここで何も語る言葉を持たなかった。 繰り返すようだが、僕はこの頃すべてを見失っていた。この世界のすべてが色をなくし、もう何にも前ほど強く存在感を感じることもなかった。目の前にいる朝子さんさえも。おかしくなっているのは自分でも気付いていた。だからと言って、どうすることもできないことも知っていた。 「すべてをリセットする必要があるんだよ」 僕は瞬間的に脳裏に浮かんだ言葉をそのまま口にした。本当に言葉の意味をわかって語っているのかは怪しかったが、それが今僕の望むことであることはわかった。 「1回すべてをゼロにするんだ」 僕は朝子さんを見つめた。朝子さんは僕を見て、言葉の意味を理解し泣いた。彼女が悲しく泣いているのはとてもつらいことだった。それが僕のせいであることも知っている。どうにかできるものならしたかった。 「ただ、横にいるだけでもダメ?」 朝子さんの気持ちは嬉しかった。彼女を好きになってよかった。僕のために涙を流し、優しい心が伝わってくる。こんなすてきな人ならずっとそばにいたいと思った。でも、今の僕とそばにいたら、きっと傷つけてしまう。僕は大好きだから、今は彼女と一緒にいることはできなかった。だからと言って、僕がまともになるのがいつになるかわからないのに、彼女を僕一人に繋ぎとめておくわけにもいかない。これまでも悲しみを背負ってきた彼女だから、これからは幸せな時間を過ごして欲しい。僕にはそれができそうにもないから、さよならをするんだ。 すがるように僕を見る彼女に、「今はそうするしかないんだ」と呟いた。朝子さんは声を上げて泣いた。僕は黙って彼女の泣く姿を眺めていた。 こうして、僕はやっと手に入れた大切なものをなくしていった。
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変態王子と笑わない猫。 ねんどろいど 筒隠月子 変態王子と笑わない猫。 ねんどろいど 筒隠月子 (ノンスケール ABS&PVC塗装済み可動フィギュア) 発売日 :2013年12月31日 商品情報 ・本体サイズ:全高 約100mm 変態王子と笑わない猫。 キューポッシュ 筒隠月子 変態王子と笑わない猫。 キューポッシュ 筒隠月子 (NONスケール 塗装済み可動フィギュア) 発売日 :2013年12月31日 商品情報 ・本体サイズ:全高 約110mm みんなのくじ 変態王子と笑わない猫 G賞 筒隠月子シークレット+フィギュアケースおまけ付き みんなのくじ 変態王子と笑わない猫 G賞 筒隠月子シークレット+フィギュアケースおまけ付き 発売日 :2013年8月19日 みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア 筒隠月子 みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア 筒隠月子 発売日 :2013年8月14日 商品情報 ・全高6.5cm みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア 小豆梓 みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア 小豆梓 発売日 :2013年8月14日 商品情報 ・全高6.5cm みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア 筒隠つくし(鋼鉄の王) みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア 筒隠つくし(鋼鉄の王) 発売日 :2013年8月14日 商品情報 ・全高6.5cm みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア エミ みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア エミ 発売日 :2013年8月14日 商品情報 ・全高6.5cm みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア全5種セット みんなのくじ 変態王子と笑わない猫。 G賞 デフォルメフィギュア全5種セット 発売日 :2013年8月9日 商品情報 ・サイズ:全高6.5cm カプセルQフロイライン 変態王子と笑わない猫。ヒロインアンソロジー (1BOX) カプセルQフロイライン 変態王子と笑わない猫。ヒロインアンソロジー (1BOX) 発売日 :2013年11月20日 商品情報 ・全4種 ・BOX入数 24個入 ・筒隠月子 原型制作:大嶋優木 全高約80mm ・小豆梓 原型制作:大嶋優木 全高約85mm ・筒隠つくし 原型制作:大嶋優木 全高約90mm ・猫像 原型制作:大嶋優木 全高約40mm
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このページでは、clearfixについて解説していきます。 例えば以下のようにboxを並べたとします。 HTML body div id="box1" p box1 /p /div div id="box2" p box2 /p /div div id="box3" p box3 /p /div div id="box4" p box4 /p /div /body CSS #box1 { background-color #ff0000; height 100px; width 200px; } #box2 { background-color #00ff00; height 100px; width 200px; } #box3 { background-color #0000ff; height 100px; width 200px; } #box4 { background-color #ffff00; height 100px; width 200px; } ここでbox2とbox3を並べてみたいと思います。 その際に、float;left;を使用するのですが float left;をするとそのboxは存在しないものとして扱われてしまいます。 今回の場合、box4が並んでいるbox2とbox3の上にきて重なってしまいます。 そこでfloat left;をした後に影響を与えないようにする文言がclearfixです。 どのようなものか少しみていきましょう。 以下のような状態になります。 HTML div id="box1" p box1 /p /div div class="A" div id="box2" p box2 /p /div div id="box3" p box3 /p /div /div div id="box4" p box4 /p /div box2とbox3を括る新しいdiv,classを作りました。 CSS #box2 { background-color #00ff00; height 100px; width 100px; float left; } #box3 { background-color #0000ff; height 100px; width 100px; float left; } .A after { content ""; display block; clear both; } box1とbox4は変わりません。 このようにして後に影響を与えることなくboxを並べる事ができます。 以上
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M-313 ハザマの兵士 魔物 2000 バトル攻撃 自分の「クロガネ」がいるとき、何体でも場に出せる (通常の「場の魔物は3体」とは別に出せる。「同名のカード」でも場に出せる)。 以上、枠囲み 《○○○もどき!!》MPを1へらす→合計魔力5000で攻撃(相手の魔本に1ダメージ)する。 ※パートナー表記なし ○○○には好きな術を入れて叫ぼう。 LEVEL 11 クロガネの術は、ハザマの兵士を使ってこそ本領を発揮するのだ。 自分のクロガネがいれば何体でも場に出せる魔物のルールを持つ。 このゲームで同番号のカードは4枚まで魔本に入れられるので、通常の魔物と合計で7体場に並べられる。 なお、「3体の枠内にクロガネが要求される事」と「構築時に魔物は合計8枚までの制限がある事」は忘れないように注意。 クロガネは《気合だ~!》の1枚しか登場していないので、必然的にそちらと組む事になる。 あちらは格闘系の効果ではないため、効果自体のシナジーは薄い。 しかし、ハザマの兵士は「クロガネの術」の強化や使用条件に関わり、それらの術はMP0で使用できるため、MP消費の激しい格闘効果との相性は悪くない。 格闘効果を並べたいだけならV-004 DS軍団も存在するため、クロガネの術を使わないようだとクロガネが枠を圧迫するカードになってしまいがちと言える。 クロガネの術を使わない場合に利点と呼べるのは分類が「魔物」であるというところだろうか。 E-070 黒い覇道で除去される事が無く、ダメージをかばわせる事ができるといった点は、V-004 DS軍団よりも有利に働くだろう。 また、大量展開可能な魔物であるためガッシュ・ベルVSリオウ《素の力》ともシナジーが生じる。 ちなみに効果名に関してフレーバーテキストで「○○○には好きな術を入れて叫ぼう。」と書かれている。 カード化している術は勿論、カードが登場していない術名も叫ぶチャンスだ。 収録パック LEVEL:11 真緋の新しき力 FAQ Q1.ハザマの兵士は、デッキに何枚入れることができますか? A1.4枚までです。魔物の8枚制限に含まれます。 Q2.ハザマの兵士はかばうことはできますか? A2.可能です。 Q3.ハザマの兵士が4体いるとき、1ターン中にその4体ともが、効果を使うことはできますか? A3.できます。 Q4.クロガネ1体とハザマの兵士3体がいるとき、さらに他の魔物を出すことはできますか? A4.できます。 Q5.場にいた「クロガネ」が捨て札になったとき、「ハザマの兵士」も捨て札にするのですか? A5.捨て札にしません。 Q6.「クロガネ」が捨て札になり「ハザマの兵士」だけが3体場に残っているとき、 新たに場に魔物を出すことはできますか? A6.できます。 タグ:2000 ハザマの兵士 バトル攻撃 魔物
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【評価】普通 【ブランド】サマンサタバサ 【金額】21000円 【購入場所】三宮OPA 【中身】 ◎紺のトートバッグ 41475円 △豹柄のエナメルバッグ 38375円 △水玉のポーチ?ペンケース? 6875円 【まとめサイトへの転載】画像のみ不可 トートバッグは入れるところが3つあり容量大きめで満足 豹柄があまり好きじゃないのでイマイチ 水玉は生地が少し安っぽいので△ 【評価】鬱 【ブランド】サマンサベガ 【金額】10.5K 【購入場所】天王寺 【中身】 ×蛇柄みたいなハンドバッグ?みたいなの あけ口広がらない、肩からかけられない、デザイン気に入らない △真っ赤なハート型のフリンジ付きバッグ フリンジとってハート型を気にしなきゃ使える ×ショッキングピンク?紫?のキラキラ太カチューシャ 試しに着けたら母爆笑 まだ細ければつかえたのに 【まとめサイトへの転載】画像のみ不可など 【評価】福 【ブランド】サマンサシルバ 【金額】10500円 【購入場所】エスト 【中身】 オープンハートのピンクゴールドネックレス 同タイプのリング 同タイプのピアス ピンクの小さいジュエリーボックス 【まとめサイトへの転載】可 値札にリボンやハートなど系統、入ってるものが書いてあるので大きな鬱はないと思うがギャンブル感はない 値札は捨てちゃったけど額面通りなら総額3万ぐらい 【評価】ちょい鬱 【ブランド】サマンサタバサ プチチョイス 【金額】10.5k 【購入場所】町田 マルイ 【中身】 ×変な柄のサイフ 幼い子供向けw 元値は12kらしい・・・。絶対に買わない。 ○キーケース これは普通に使える。元値が8.9kらしい。 △キーホルダー まぁ可愛いと思うけど、元値が3.9kなので普通は買わないと思う。 【まとめサイトへの転載】可 財布欲しさに買ったけど、めちゃくちゃ変な柄で鬱でした。 キーケースは使うけど財布は誰かにあげようと思いますw 【評価】福 【ブランド】サマンサタバサプチチョイス 【金額】10.5k 【購入場所】ルミネ 【中身】 ◎長財布 4月に出たらしいドーナツチャーム付いた財布。薄いベージュで使いやすい!これは当たりだった。18.9k ○鞄に付けるアクセサリ 雪の結晶とハートモチーフ、白ふわふわで可愛い。とりあえず手持ちの鞄に付ける。タグ見失ったけど5.9kだったかな? どんなエグいの来ても使ったる気持ちで毎年買ってるが、今年は大当り。 パスケース欲しかったんだが財布が神だったので福で。 【まとめサイトへの転載】可 【評価】福 【ブランド】サマンサタバサ プチチョイス 【金額】 10k 【購入場所】 マルイ 【中身】 ◎長財布、○パスケース 【まとめサイトへの転載】可 午後3時でもサマンサの福袋余ってましたw パスケースが欲しくて、福袋を振ってチェーンの音がしたので購入。 予想外によかた! 【評価】普通~福 【ブランド】サマンサティアラ 【金額】31,5K 【購入場所】大丸心斎橋 【中身】 ◎K18PGハートリング ハートモチーフ好き。可愛い。 ○K18PGプレートネックレス サマンサティアラのロゴのプレート。シンプル。 ○ジュエリーケース 家にはちゃんとしたのがあるけど、旅行の時とか便利そう。 【まとめサイトへの転載】可 悪くはないけど、30Kなので石付きとかもうちょっと豪華なのを期待してた。 大丸心斎橋ではK18のリングとネックレスのセットということしかわからなかったんだけど、午後から大丸神戸に行ったら思いっきり中見せてた。 心斎橋にはなかった50Kのがすごく良かったから、ちょっと悔しかった。 -
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問題 問題画像 問題文 □に入る数字は何でしょう?□、43、26、22、30、29、20・・・ 回答 2 解説 いろはにほへとがそれぞれ五十音順で何番目かを並べたもの 補足 Hard/hq041と同じ問題です。
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暇だからバッテリー交換 NC39のバッテリーを上がらせてから数日のこと。 信用できない中古車屋、信用できないディーラーから私の元に届いた バッテリーは『大丈夫なのか?』という不安に駆られる。 とりあえずバッテリーのチェックをしてみることにする。 端子部分の腐食、窓から覗いたときの液残量、液漏れは無いようだ。 本当は電圧を測定できれば一番だけどそこまでする気は起きない。 何故なら車のバッテリーは『安い』からである。 そして買うなら安く置いてあるホームセンターをお勧めする。 車はそこまで変わらないが、バイクとなると酷いものがあるからだ。 間違っても用品店でバイクのバッテリーは買わないこと。 カー用品コーナーに着いて気が付くことがあった。 自分の車の適合サイズを調べていなかったのだ。 現場にある早見表を見れば解決するのだけどね・・・ さて早見表には下記のように記してあります。 40B19R メンテにまったく興味が無い人には意味プイプイですね。 まず先頭の数字40は蓄電量を表します。 単純に大きければ大きいほど大容量ということになります。 ウーハー、ナビ等を装備するなら数値UPするといいかもしれません。 Bは幅(短い側面)と高さになります。 19は横幅です。190mmということです。 Rはプラスの端子を手前に向けて見た際に、 右側に端子が来るのをR,左側をLとなっています。 40以外が適合すれば使用可能ということになります。 私はLRを間違えて買いそうでした・・・。 1980円 1年と2万キロ保障 下記のモデルもありました。 2980円 2年と3万キロ保障 3980円 3年と4万キロ保障 乗り方にもよりますが、3年間もバッテリーを使いたくないですね。 マージンを考えても1,5年で1980円のものを交換すればいい。 そんな考えで一番安いものをチョイス。 ターミナル周辺は見ないでください(恥 取り付けとしては 1、マイナス端子をはずす。 2、プラス端子をはずす。 3、固定ステーのナットとボルトを外す。 4、+、-共に汚れていたら掃除する 私は導電性をあげるシリコンスプレーを塗るだけです。 5、バッテリーを入れ替える。 6、プラス端子をつなぐ。 7、マイナス端子をつなぐ。 8、ステーで固定する。 9、エンジンを掛けて5分程度暖気。 くれぐれも各端子の接触なきこと・・・。 装着後=始動性UP こころなしかカーステの高音が澄んだ。 今日のお勧めの一曲 山下達郎 「湾岸スキーヤー」 93 s 今や跡形もなくなってしまった室内スキー場『ザウス』 家から15分もすれば到着する位置にそれはそこに在った。 スキーもスノボもやらない自分だけど、 この曲を聴くと懐かしさと90年の華やかさを思い出す。 冬のカーステにお勧めの一曲です。 名前 コメント