約 2,981,745 件
https://w.atwiki.jp/kgadventure/pages/13.html
小道具名 効果 下取り価格 その他 パワーメダル 力が300~1000上がる 100 300・500・1000のいずれかの値で上昇する マジックメダル 魔力が300~1000上がる 100 300・500・1000のいずれかの値で上昇する ベリーフメダル 信仰力が300~1000上がる 100 300・500・1000のいずれかの値で上昇する 宝くじ券 ランダムでお金が手に入る 300 最高で10兆GぐらいGETできる
https://w.atwiki.jp/dangerousssms/pages/55.html
さてさてさて。 ニュースもニュース、特大ニュースが舞い込んでいらっしゃいました。 喧騒溢れる朝の学校、それもクラスメイトのかしましい井戸端勧誘をのらりくらり。 あたしはすり抜けるように自教室を離れ、ずんずんと廊下を突き進む。 道行く一人一人に挨拶を投げながら、隣のクラス、もひとつ隣、さらに隣のまた向こう。 開いたドアに思い切りよく体重を預け、目的の教室にぐいと頭を突っ込んだ。 「よっすよっすー!好きマいるー?」 いるかな?どうだろう。 まあ、朝の教室なんてどこだって誰かしらはいるもので、誰かがリアクションをくれればそれでいい。 総シカトを喰ったらそりゃあ恥ずかしいったらないけど、まああたしに限ってそれは大丈夫! ハイそんなわけで、入口付近にたむろっていた男子の一人が反応する。 「急にうるせーわ優子、朝からテンションぶっ壊れてんのか」 「はぁーん?やんのか近藤」 こいつ近藤なんだけど、別に覚えなくていいよ!多分今しか出番無いから! 「それより好きマだって。いる?」 「隙間?」 「卓ちゃん、それ多分高島のことだよ」 「へ?……あー!バトル大好きマシーンの略!?なーる、よく分かるなヤスヒコ!さすが現文満点の男!」 「補習でだけどな!」 「「がはは!」」 近藤の下の名前が卓也でもう片っぽがヤスヒコなんだけど、まじで覚えなくていいよ。 「……チッ」 「「あっすいません……」」 弱い。そんなんだからモブなんだぞ。 「で?いんの?もーーーこんなやり取りするくらいなら自分で確認した方が早かったわ、テンションすっかり冷や水被ってんだけど」 「ごめんなさい……あの、今日はまだ見てなくて」 「あーそうなん?じゃあ登校遅れてるんかな」 「そこはなんとも……すみません、こちらのヤスヒコに至っては現文で補習を取る程度の男なので……」 「所詮お情けのテスト内容でようやく満点を取れるような卑賤な人間なので……」 「「がはは」」 ごめんやっぱめっちゃ強いな。なんだこいつらちょっとキモいぞ。 「んー……まあいいや、さんきゅー。お昼また来るわー」 かー! 携帯持ってねーやつはめんどくせーなー! ◆◆◆ 「ギョエェ~~~!遅刻してしまいます!」 みなさんこんにちは! 私、高島バトル大好きマシーンと申します! 花より蝶より三度の飯より、二度まで保たれるという仏様の柔らかな物腰さえをも差し置いて、バトルこそを好きであれ、人間性を伴わぬ戦闘機械であれという願いを込めて名付けられた、私立ハイスクール高等学校学園大付属高校普通科の三年生! ひどいですよね~。 普段通りであれば、余裕を持った登校の後、教室の隅の花瓶の水を換え、窓際の席に座り朝の日差しを浴びながらその日の予習をして過ごす全国の教師100人に聞いた理想の女学生と言って差し支えのない私ですが、今日は日課の1000人組み手のお相手を怪我させてしまい、病院までお連れしていたらこんな時間になってしまいました!不覚! そもそもこんな習慣やめてほしいんですよね。私、別にバトルとか好きじゃないので……。 両親の名前が『高島我が子をバトル大好きマシーンに育て上げ太郎』と『木津(旧姓)腹を痛めた我が子がバトル大好きマシーンに育ち美』だったばかりに、私の人生はまるでレールに載せられたトロッコのよう!もう!反抗期でも迎えてやろうかしら!ドルンドルン! 「ああ、始業まであと5分!というのにまだバスにも乗れておりません!どういたしましょう!」 中等部時代から続けてきた皆勤賞が、ついに途絶えてしまうのでしょうか! 私には全国の教師100人に聞いた理想の女学生で在り続けるというひそやかな目標があるというのに! ◆◆◆ 「そんで走って間に合ったのね、はいはい」 「ちょっと!人の話を遮って勝手に納得しないでください!」 「ええー。じゃどしたの?」 「走って間に合いました」 「ほらね、この話月1くらいで聞いてるもん。せめてバリエーションを増やせ」 昼休み。 午前の授業を終え、改めて目的の友人ーー高島バトル大好きマシーンを捕まえたあたしは、中庭の適当なベンチを見繕い、弁当を広げつつ並んで腰掛けていた。 天気がいいとこんなに気持ちのいいロケーションは他にないんだけど、今日はあいにくの曇り空。 まあ晴れたら晴れたで陣取り合戦が加熱するわけで、これはこれでいいと言えばいい。 はー。からあげおいしー。 「そんでねー、話があるんだけどさ」 「はい!なんでしょうか」 いつも返事がいいんだよなー、こいつ。 「『大会』に出ることになったのね」 「たいかい!」 「分かってないだろー?」 「はい!」 いつも返事がいいんだ。 「いい?『大会』ってーのはね……」 ◆◆◆ 『大会』というのは。 すべてが謎に包まれた主催者、H・リー(正体はハリー)。 刹那主義者で快楽主義者、そしてついでに毒を喰む趣味の悪いタデ虫だ。 嗜好に問題こそあれど、ある日その男は宣言した。 面白い戦いを見せろ。 その暁には、望むままの過去改変……そして、その頂点に立った者には、5000兆円を差し出すと。 人間性に問題こそあれど、その言葉に偽りがないならば、それはさしたる問題ではなかった。 過去改変。5000兆円。すごい! なれば、『大会』には、参加する意義がある。 裏を返せば、もしそれらの報酬も与えられず、ただ対価無き闘争を強いるというのであれば、これは到底許されるべきではない。 絶対に参加したくない。 コミティアへ行きたい。行きたかった。 まさかそんなことは無いとは思うが、これだけの労力に一切の報酬が用意されず、かといって拒否しようものなら駄々をこね、実質参加を強制されるようなことがあるならばーーこんな仮定は机上の空論ではあるのだがーーそんな主催者は急に「お前も参戦しろ」と詰められてヒーコラ言いながら戦場へ立てばいいと、そのように切に思う。 そうは思いませんか? 選択肢 投票数 投票 切に思う 34 そうでもない 4 ◆◆◆ 「ーーということなのよ!それに!なんか知らんけど招致されました!わかった!?」 「わかりました!5000兆円と望むままの過去改変ですね!!」 「そう!!!いい返事だ!!!」 「がんばってください!!!」 「そう!!!違う!!!」 「えっ!?」 「あんたも出るのよ!5000兆円はあたしのだからー、過去改変は好きマが自由にしていいよ☆」 「えっえっ、私も5000兆円がいいですけど……!?というか私招致されてませんけど!?」 「大丈夫!」 目の前の少女は、そう言い放つと最後のからあげを口の中へと放り込む。というかなんでこの人の弁当箱いつもからあげオンリーなんでしょう。ちょっと怖いですね。 よせばいいのに、乱暴な咀嚼のままに無理矢理に呑み下し、案の定ゲホゲホと噎せながら、一呼吸置いてベンチの上へと立ち上がる。 お行儀よくないですよとか今日のパンツかわいいですねププとかぼんやり思う私をよそに、優子ちゃんは天高く空へ指を突き上げた。 「これは……ダブルスの『大会』よ!!!」 今日の天気は曇り空。 けれど、薄ぼんやりとしたぱっとしない曇天に亀裂が走り、すべて押しのけるみたいに太陽が顔を出す。 高く伸ばされた人差し指に、吸い寄せられるみたいに。 彼女のすべてを、肯定するように。 だから私、確信したんです。 彼女の宣言する通り、これはダブルスの『大会』で……だから対戦相手も当然ダブルスに違いない。 もし単独で参戦しようものなら、レギュレーション違反で全身が内部からドロドロに溶け出して、跡形もなく死んでしまうに違いない! 仮に参加者に全然そんな予定がなかったとしても、急遽ペアを組んでダブルスになるに違いないんだって! 「ダブルスの……バトルですね!」 「そういうこと!5000兆円はあたしのもんよ!」 参加者一覧に戻る
https://w.atwiki.jp/tohoku-suisou/pages/20.html
東北大会2007中学校大編成 東北大会2007中学校小編成の部 東北大会2007高校大編成 東北大会2007高等学校小編成の部 東北大会2007小学校 東北大会2007大学 東北大会2007職場 東北大会2007一般
https://w.atwiki.jp/athome/pages/27.html
せいちゃん 自己紹介 所属 担当 さら スレ情報 [17] 永見のブログ荒らしてるのわせいちゃんみたいだね 今日本店に行ったらメイドさんと常連が話してた せいちゃんてめーうざいんじゃーブログに変なコメントいれんなやー おめーはオコナイがわりーから出禁にするでー ちょうしにのんなやしばくでー 永見のブログ荒らすとか素人だな あんな恥ずかしいブログ放置で良いんだよ [16] 茂とせいちゃんは出禁になってるらしい 他にもヒロも出禁になってると今日本店で聞いた せいちゃんは何か海外留学ちゅう?? 二人は何で出禁なの??? しげるは金がないだけ せいちゃんは親に連れ戻され外国です よって出禁ではないです 出禁でもいいけどね 仁とせいちゃんは友達なのにさらを取り合いですか? [H2] 奴にそんな影響力はないよ 空回りして自爆してるだけだからホットケ 漏れが代わりに書いてやるか 昨日のさらぉ テーブル席のせいちゃんと ロマンティック 浮かれモード せいちゃんが携帯番号メモにして渡したの?w せいちゃんとじんは友情関係にあるのだろ? [H1] せいちゃんははんざいしゃ [15] せいちゃんの顔気持悪いウゲ~~~ 頼むから消えてくれ!メイドが可哀想だよ 今度見たらやるぞこらっ [14] あゆゆのブログに載ってるレイヤー友達と仲良くなりたい知り合いたいって何回もコメに書くせいちゃんうざいしきもい せいちゃんって社会人? なかなかシャイなヤツだよな ニートだよw せいちゃんとかゆうアホは早くさらおのファンやめてくれねーか!ながみさんの足元にもおよばねーよ!ながみさんしかさらおと素のトークできないしな! せいちゃんが一番うぜーけどな せいちゃんのさらちゃん粘着が一番うざいな さらちゃん嫌がってるしな [13] つまんねーなんかネタくれよ かつみんとせいちゃんよろしく せいちゃんはサラのファンなのに毎日きてるな あいつら自分が入店してて後から来る知り合いに「もう一人後から来る」って言って貰って 自分の席キープしておいて出る時間になったらそっちの席に移動して店に居座るプレイをよくやってるな ながちゃんとせいちゃんいいかんけい ながちゃんとせいちゃんみつめあってた 亀梨似のせいちゃんともこみち似のながちゃんお似合いじゃね? 結婚しちゃえってw さらがどっちを選ぶか楽しみだw せいちゃんの方がいいぞ 羽ッスルビミョー 酢ペンサーウザい 性ちゃんビミョー 蚊つみんウザい みーんな仲良くね! [12] せいちゃんてどんなのだっけ 中途半端な金髪のやつ 新参はよくしらん せいちゃん=しげるの取り巻き オコジョ=しげるの取り巻き2 しげる=ボス けいすけ(山田)=しげるのパシリ ハッスル=しげるの親友 ハードビート=しげるのパシリ2 だいたい、叩かれるのはコイツらだな テラテラテラW せいちゃんはさらヲタだから交際を臭わせるだけの カスブログが嫌なんでしょ? 店にもさら本人にもなんらメリットないように思うけど どうなの? 誰も突っ込まないのが不思議 もはやそんな価値すらないのか?
https://w.atwiki.jp/miyabi733/pages/558.html
《ボウデン()/Bowden》 アイコン ゲスト(黄) 年齢 26 性別 男 身長 190cm 本名ボウデン・メル・アルトマン。 金髪碧眼・端正な顔立ちで大柄な体格の男性だが実はロリコン。残念なイケメン。 昔はその顔を活かしてホストクラブに属していたが、前述の嗜好のせいで1年で退職。 その後裏の社会の住人となり、数年後グラナートファミリエに合流し現在に至る。 関連ページ グラナートファミリエ 関連画像 キャラクター紹介へ戻る|キャラクター紹介 【】へ戻る コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/mgrpgar2e/pages/2019.html
メニュー>一般>クラスロール>アサシンI SKG:[Spc,-,U,-,-,1,T/Af与BS.Ft1:強度+1]CR ☆☆☆ 低レベルで毒を使っているか《シックネス》を使ってもらえるなら取得しても良いと思う。この5点を多数に複数回適用できるなら悪くない。 単体攻撃だったり《バッドステータス無効》などのせいで1ラウンドしか続かなかったりするなら、低効率と言わざるを得ない。 -- 灯 (2014-04-28 19 47 27) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/1000ed/pages/102.html
801~810 811 ③誰かが入ってきた 「愛菜、さっきはわるかったな……チハル?」 入ってきたのは隆だった。 隆は薄くなったチハルを見ると、怒った顔になり私とチハルを引き剥がす。 「チハル、何をしてる?」 「愛菜ちゃんがね、おなかがすいて弱っちゃうから、ボクを食べてもらうの」 どこまでも無邪気に、チハルが笑う。 けれど、その身体が小さな子供の姿に変わってしまった。最初に会ったときより更に幼い、5歳くらいの男の子。 「愛菜がお前を食べるって、食べたいって言ったのか?」 「ちがうよ?」 「お前が勝手にやったんだな?」 「うん」 「ばかやろう!」 隆の怒号が響いた。家全体を震わせるくらいに大きな声だった。 「お前が愛菜を悲しませてどうする! 俺はコイツを悲しませるためにお前を動けるようにしたわけじゃないんだぞ!!」 「隆さん、一体……チハル?」 隆の怒声に、春樹がやってくる。そして小さなチハルをみて目を丸くした。 先ほどまでの雰囲気は全く無く、弟としての春樹だ。 「でもボクを食べないと愛菜ちゃんが弱っちゃうよ?」 「あのな精霊は確かに鬼に喰われるさ。鬼にとって精霊は極上の食事だからな。でも、コイツは鬼を喰わないって言ったんだ!」 (隆……?) 怒りにまかせて怒鳴る隆の言葉に、私は違和感を感じる。 「コイツがお前を喰いたくないって泣いてるのに気付かなかったのか? お前はそれでも精霊なのか? やるにしてもやり方ってもんがあるだろうが! 全部喰わせてどうする、自分の身を危険に晒さない程度に分け与えろよ。 俺ほどでないにしても、お前だってそれなりに力のある精霊だろうが!」 (隆、何を言ってるの……?) 「隆、何をいってるの?って愛菜ちゃんが言ってるよ」 隆がなぜ怒っているか分からないらしいチハルは、私の思いを口にする。 (なんで、鬼が精霊を食べるって知ってるの?) 「何で鬼が精霊を食べるって知ってるの、って」 「え? なんでって……あれ? なんでだ?」 (それに、隆は人間でしょ? なんで『俺ほどでもない』っていうの?) チハルが言葉を伝えると、隆はふっと、不思議そうな顔をする。 あの会話をしたのは、光輝とのはずだった。 そして、力が強い精霊も光輝だったはずだ。隆にそっくりな光輝の……。 ①(隆は、光輝の生まれ変わりなの?) ②(やっぱりあの夢を隆も見たの?) ③(隆が光輝なら、守屋さんはまさか……) 812 ②(やっぱりあの夢を隆も見たの?) そう問おうとしたところで、隆が壁に掛かった時計を見てるのに気づいた。 急がないと遅刻してしまう時間になっている。 「やべっ。もうこんな時間かよ」 「隆さん……修二先輩のことよろしくお願いします」 「わかってるって。あと、チハル」 隆は自分の髪をガリガリと掻いて、しゃがみ込む。 きちんと同じ目線になってから、チハルに話し出した。 「怒鳴って悪かった。だけどな、お前のやろうとしていたのはいけない事なんだ」 「どうして?」 「お前が居なくなっちまったら、愛菜が悲しむだろ?」 「だって、ボクはサキミタマだから……」 「幸御霊だろうと関係ない。チハルはチハルなんだからな」 「ボクが居なくなったら、みんな悲しいの?」 「そうだ。だから、しちゃいけないことなんだ。わかるな?」 「ウン……。わかった」 「よし。約束だからな」 隆はまたチラリと時計を見て、私の横へやってくる。 「さっきは……その…悪かったな。別に困らせようとか、そういうのじゃないから」 (わかってるよ) 「そっか」 隆は安心したように笑うと、ドアの前に立った。 「力づくでも、宗像弟は連れてくるからな」 (ちゃんとお願いして、普通に来てもらってよ) 「努力はするさ」 そう言って、隆は私の部屋から出て行ってしまった。 部屋に残ったのは、私と春樹とチハル。 どこか息苦しいような、重い空気が部屋を覆っている。 私は…… ①春樹を見る ②チハルを見る ③隆について考える 813 ①春樹を見る (春樹は学校に行かないの?) 「姉さんを一人にするわけにはいかないからね」 (わたしなら大丈夫だよ) 「そう思ってるのは姉さんだけだよ」 (確かに、うごけないけどさ……) 微妙な空気を振り払うように、春樹は以前と全く変わらない調子で話す。 「それに、今日は午前中に、高村の……周防さんがくるだろう? チハルだけじゃ心もとないしね」 (そう言えば、周防さんがきてくれるんだっけ) 夢の中で周防さんと秋人さんが話していた「闇」について詳しく聞きたかったのだ。 「それに姉さんに協力してくれた人だって聞いたから、お礼も言いたい」 春樹はそう言って、少し微笑んだ。 「あと、俺の従兄らしいからね。 もしかしたら子供の頃に会ってるかも知れないけど、俺は覚えていないし……会って見たいって言うのも理由かな」 (そっか、春樹は周防さんに会うの初めてかもしれないんだ) そう言われると、春樹と周防さんをあわせてあげたくなる。 春樹は微笑んだまま、時計を見てそれからチハルに視線を移した。 チハルはちょこんと首を傾げる。 「チハルおいで、俺にくっついてれば早く力がもどるかもしれない」 「うん!」 小さなチハルはうれしそうに頷くと、春樹に駆け寄ってその足にぎゅっとしがみついた。 そして、ふと不思議そうな顔をして春樹を見上げる。 「春樹……?」 「ん?」 春樹は返事をしながらチハルを抱き上げる。 チハルは春樹の首に手を回してしがみつきながら、首を捻る。 「……なんか………うーん、なんでもない」 「どうしたんだ?」 「たぶん、きのせい」 「? そうか……? じゃあ姉さん、俺、下に居るからなんかあったらチハルに知らせて」 (わかったよ) 春樹はチハルを抱き上げたまま、部屋を出て行く。 途端静まり返った部屋に、私は内心ため息をついた。 (朝からいろいろありすぎだよね……) 私は目を閉じて…… ①夢を見た ②これからのことを考えた ③これまでのことを考えた 814 ③これまでのことを考えた 動かない身体と、大きくなる不安。 みんなに迷惑と心配をかけるだけでなく、チハルさえも犠牲にするところだった。 改めて、隆が私のことを好きと言ってくれた。 春樹が私に対して、家族以上の感情を抱いているかもしれない事を知った。 修二くんも私を想ってくれていた。 (応えることが出来ないから、せめて強くなりたいのに……) 力を得て、迷ってばかりの私のままじゃ駄目だと悟った。 だけど私は私だから、簡単に生き方なんて変えられない。 不器用な性格だから、私でも出来る事をと探し続けてきた。 多少の無茶も承知で、正しいと思ったことをしてきたはずだったのに。 壱与や冬馬先輩や一郎くんに対して、意見したこともあった。 口で言うのは簡単だけど、実行するのはとても難しい。 けど、みんな少しずつ変わっている。 私だけ迷うこと止められない。いつまでも怖がりな弱虫のままだ。 (今は眠ろう……) 出来ることなら、楽しい夢が見たい。 力とか、鬼とか関係ない笑ってみられる素敵な夢がいいな。 そう思いながら夢の中へ落ちていく。 「いくら大連だったあなたでも、現人神に逆えば天罰が下ろうぞ」 「その帝が大陸の教えを信奉し、国神である自らの存在を否定していることに……矛盾を感じないのか」 「現人神の意思ならば従うまで」 「それが最期の言葉か」 目の前には手足に傷を負った大和の兵士と、血に塗れて立つ守屋さんの姿だった。 守屋さんも兵士も会話をしていて、私の存在に気づいていない。 そして、守屋さんの八握剣がゆっくり振り上げられる。 「見るな! 女のお前が見るものじゃない」 視界が閉ざされ、隆そっくりの声が降り注ぐ。 (光輝……) 「離して。あの大和の兵士さんが酷い怪我を……早く行ってあげなくちゃ」 「……駄目だ」 「けど間に合わなくなるよ!」 「行くな。もう遅い」 「どういうこと……?」 「あの鬼は戦いに魅入られちまってるのさ」 光輝は私の目を塞いだまま、吐き捨てるように言った。 ①光輝に話しかける ②光輝から逃げる ③守屋さんに話しかける 815 ①光輝に話しかける 「は、離してよ。光輝!」 「もう遅いって。あの兵士は守屋が殺しちまったからな」 「そんな……」 「殺しあうのは当たり前だろ。あいつら、戦してんだから」 「あの兵士さんは負傷していたんだよ。もう戦えなかったのに……」 「確かに死にかけてたな。だからこそアイツは、楽に死なせてやったんだろ」 光輝はまるで守屋さんを庇うような発言をした。 「楽に死なせるって何? 守屋さんは酷いことをしたのに……」 「酷いのは守屋の軍も大和の軍もみんな一緒だ。感じないか、この空気」 「空気?」 「そうだよ。すっげー生臭い死の匂いさ」 目が塞がれていて、何も見えない。 すぐ傍で感じる光輝の呼吸を真似るように、深く息を吸い込んでみた。 (何も見えないけど……わかる) 鬼になってしまって、嗅覚が敏感になったのか沢山の生臭い匂いを感じる。 辺りに充満していたのは、死臭だ。 この場所だけでも、何十という死の匂いがしていた。 (気持ち、悪い……) 「……酷い匂い」 「だろ? 守屋だけじゃない。みんな戦に魅入られてんのさ」 光輝は目を塞いだまま、私を抱き上げると「守屋」と名前を叫んだ。 足音がして、守屋さんが近づいているのがわかる。 「あなたは……撫子の君」 「陽も沈むし、俺は愛菜を連れてねぐらへ戻るぜ」 「待て。私が陣を構える稲城へ連れて行こう。お前も来るか光輝」 「イナギ?」 聞きなれない言葉に、おうむ返しで私は尋ねる。 「稲城っていったら、稲を積み上げて作った城とか、敵の矢や石を防ぐ防壁とかだろ。 お前、本当に未来から来たみたいに何にも知らないんだな」 光輝はそう言って、楽しそうに笑った。 こんな酷い場所でも、光輝も守屋さんも平然と話しをしている。 どうしよう…… ①稲城に行く ②ねぐらに行く ③考える 816 ③考える 私は当りに漂う死の匂いに眉を顰めながら迷う。 (それにしても……光輝と守屋さんが一緒に居る理由って何……?) 光輝はあの森を守護する立場に居ると言っていたのに……。 こちらへ来た途端に戦で、周りの風景をきちんと確認していないけれど、ここは森ではない。 守護する場を離れてなぜここに居るのか? それにこんなに負の感情があふれる場所に居ることは、精霊である光輝にはつらい事のはずだ。 「大丈夫か、愛菜? おい、とりあえずここから離れるぞ。ここは死の匂いがきつすぎる」 「……わかった」 考え込んで返事をしない私を具合が悪くなったと勘違いしたのか、光輝が私を抱えたまま歩き出すのを感じる。 その後を守屋さんの足音がついてくる。 しばらくすると、空気が変わったのを感じた。 耳に入ってくるのは木々の葉が風に揺れる音だけだ。 「ここまで来ればだいぶいいだろ」 その声とともに、視界が明るくなる。夕焼けの赤い光がまぶしくて何度も瞬きして、視界が戻るのを待った。 視界が回復して、私は辺りを見回す。 どうやら、さっきの場所は森のすぐ側だったらしい。 木々がまばらになっていてここが森の外に近い場所なのだと分かる。 そのとき、ふうっと、光輝がため息をついた。 どこかホッとしたようなそのため息は、やはりあの場所は光輝にとってつらい場所だったのだと知るのに充分の重さをもっていた。 そして私はふとまだ光輝に抱き上げられたままなのに気付いてあわてる。 「こ、光輝もう降ろしてくれる?」 「いやだ。少しこうさせろ」 そう言う光輝の顔色は、ものすごく悪い。 思わず光輝の顔に手を当てる。 「大丈夫? すごい具合が悪そう……光輝、精霊なんだからあんな場所に居たらつらいのに……」 「しかたないさ、このバカ共が戦を止めない限りこの森も危険なんだ」 光輝は憎憎しげに守屋さんをにらむ。 守屋さんはその視線をただ受け止める。 光輝は再度ため息をつくと、私の顔をのぞきこんできた。 「とりあえず俺はつかれた。ねぐらにもどる。お前も一緒に行くよな?」 わたしは…… ①光輝と行く ②守屋さんと行く ③壱与の元へ行く 817 ②守屋さんと行く 「私、守屋さんと行くよ。戦をする理由を詳しく聞いてみたいんだ」 「一緒に来ないのか。じゃあ勝手にしろ」 「あ……」 「ん? なんだよ」 「な、なんでもないよ」 隆そっくりの光輝は、ぶっきら棒だけど頼れる存在だった。 出来れば一緒に行動して欲しいけど、顔色を見たら無理は言えない。 (仕方ないか……) 「そんな顔するなって。やっぱり、俺についてきて欲しいんだろ?」 「無理くていいよ。ねぐらでゆっくり休んでね」 「お前がどうしてもって言うなら考えてやってもいいぞ」 「辛そうだし、本当にいいよ」 「だからさ。お前がどうしても付いて来て欲しいってんなら、行ってやるって」 「別に無理しなくてもいいって言ってるのに」 「一緒に来て欲しいんだろ。ハッキリ言えよ。可愛くないな」 私と光輝の会話を黙って聞いていた守屋さんが、痺れを切らしたように話し出す。 「では……私の陣まで案内しようか。光輝はどうする?」 「ちぇっ、仕方ない。コイツのために俺も行ってやるかな」 「本当にいいの?」 「平気だ。さっきの所よりはマシだろうからな」 (光輝、ありがと) 「陣まで少し歩いてもらうが構わないだろうか」 「はい、大丈夫です」 「早くいこうぜ」 太陽はほぼ沈んで、薄暗い中を私たちは歩いていた。 時期が夏だというせいもあるのか、ひぐらしが鳴いている。 森を沿うように進むと丘陵があり、稲を高く積んだ防壁の中に陣があった。 「あの樫の木の奥だ」 守屋さんに案内されたのは、思ったよりも立派な陣屋だった。 土間のような室内に入り、藁の座布団に私たちは腰を下ろした。 どうしよう…… ①守屋さんに話しかける ②光輝に話しかける ③辺りを見る 818 ②光輝に話しかける 「ところで、光輝。身体は平気?」 「ん……ああ」 私にぺったりとくっつくと、光輝は小さく頷く。 話すことすら億劫なのか、私に抱きついたまま目を閉じてしまった。 未だに抱きつかれるのは慣れないけれど、光輝の体力が少しでも回復するのなら仕方がないと諦める。 「あの……守屋さん」 「わかっている。戦について知りたいからここまで来たのだろう?」 「はい」 守屋さんは黙ったまま、あぐらをかき直して私を見る。 上から下まで、私をじっくり観察でもしているようだった。 「な、なんですか。そんなに見られると恥ずかしいんですけど」 「改めて見ると……君は変わった格好をしているな」 「これは制服っていうんです」 「セイフクか。出雲の生き残りにしても、やはり得体が知れないな。 鬼の力がいくら強くても、音も無く消えたり、深手の傷を一瞬で癒すなんて聞いた事が無い。 命の恩人を悪くいうつもりは無いが、まず君の素性を教えてくれないか」 (どうしよう。未来から来たなんて信じてくれないよね) 私は何も言えなくなってしまった。 未来から来たなんて言ったら、光輝みたいに怒ってしまうかもしれない。 「素性は言えないのか。不躾で申し訳ないが、君は遊行女婦なのか?」 「ウカレメ?」 「旅をしながら歌や舞で宴席に興を添える女だ。不可思議な芸といい、おかしな格好といい……遊行女婦ならば合点がいく」 (よくわからないけど、舞は出来るよね……) 「はぁ……」 私はあいまいに返事をして、守屋さんの様子を伺う。 やっと納得したのか、表情の硬さが和らいだ。 「そうか。では今宵は宴を催そう。君の芸を皆の前でみせてもらうぞ」 「えぇ!?」 「士気も上がるというものだ」 「ちょ、ちょっと……」 「では、楽しみにしているぞ」 そう言って、守屋さんは建物から出て行ってしまった。 いつの間にか、私の背中にくっついる光輝は寝息を立てている。 私は…… ①守屋さんを追いかける ②光輝を起こす ③考える 819 ③考える (なんだか、変なことになっちゃった) 多分、ウカレメっていうのは旅をする芸人みたいなものだろう。 突然現れる私を旅の芸人だと勘違いしたのかもしれない。 (でも……) 光輝に無理をさせてまでここまできたのに、逃げ出すわけにはいかない。 私は眠った光輝を見つめる。 (光輝、しんどそうだったもんね) 今夜の宴は自分でなんとかしないといけない。 確か、守屋さんは舞とか歌とか言っていた。 (歌っていわれても……困った) ポップスとか、ロックとか、童謡とか歌えばいいんだろうか。 昔だし、和歌とか難しいのを言えっていわれてもわからない。 外からは、兵士が噂する言葉まで聞こえてくる。 「守屋様が遊行女婦を連れてきた。今宵は宴があるらしい」 「ところで、遊行女婦は美人なのか?」 「見たところ、そうでもなかったぞ」 「なんだつまらんな」 「お前では無理だろう。守屋様のお手つきだろうさ」 「しかし、女気のない守屋様が……遊行女婦とは意外なことだな」 「明日は弓が降るかもしれん」 「……それは、冗談にならんぞ」 (なんだか噂されてるし。くじけそうだよ……) その時、私を呼ぶ声が聞こえた。 ①守屋さん ②春樹 ③隆 820 ①守屋さん 「済まないな。少しいいだろうか」 守屋さんは私を手まねきして呼び寄せる。 「なんですか?」 「今宵の宴には参加できない怪我人を診てくれないか。勝手な願いとは思ったのだが、やはり君の手を借りたい」 「怪我をした人を祈祷すればいいですか?」 「ああ。協力してもらえるだろうか」 「わかりました」 (今の私の出来ることって、これくらいだしね) 案内された場所は、怪我人ばかりが集まる簡素な藁ぶきの建物だった。 その中に、数十人という傷ついた兵士が横たわっている。 (これは……) 治る見込みのある人は半分といったところだった。 もう半分の人は衛生的とは言いがたいところに居るせいで、私ではどうしようもないほどになっている。 この場所にも、死の匂いが満ちていた。 「あの……」 「言わなくてもいい。治る見込みのある者だけでいいんだ」 「わかりました」 「……ちょっと待ってくれないか」 「何ですか?」 「治らない者も真似だけでいい。せめて安らぎを与えてやって欲しい」 「痛みを取ることは出来ませんけど、どうしますか?」 「では、眠りを……。一時の安らかな眠りを与えることは出来るか」 「……やってみます」 私は守屋さんに言われるまま、一人ずつに力を使っていく。 たった六、七人を治したところで、私もフラフラになってしまった。 「無理をさせて済まなかった」 「……いいえ。もう少し頑張れるかなと思ったんですけど」 「いや、本当にありがとう。宴までの間、少し休んでくれ」 「やっぱり宴に出なきゃ駄目ですか?」 「宴の後、戦をする理由について語ることを約束しよう。 君が……素性の言えない様な遊行女婦だろうと、撫子の花ように美しく可憐な女人に変わりは無いからな」 そう言って、守屋さんは優しく私の手を取る。 (真顔でまた恥ずかしい言葉を……すごく痒いよ……) 守屋さんと一緒に建物に戻る時、今晩の宴の準備の様子を目にした。 この陣も戦場なんだけど、思ったよりも雰囲気は明るくて、少しだけ安心する。 ①戻って休む ②陣の様子を見たいという ③守屋さんと話をする
https://w.atwiki.jp/1000ed/pages/217.html
【ループ50回目②】 【ループ50回目③】 舞台演劇を観に行ったことがある。 それも偶然に同じ劇団の去年と同じ演目だった。 なのにその舞台は俺の目に全く違う物として映った。 去年と違う様に感じるのは、演出家が変わったからだとその時の母さんは言った。 俳優の演技も大袈裟なくらいの方が良い。 それも観劇で感じた事だった。 小学生の時に学芸会で王子役を演じた事もあったけど、かなり酷い出来だった。 もう二度とやりたくない、そう思っていたはずなのに。 (わざわざ手足まで縛っているんだ。姉さんも御門先輩も……上手く乗ってくれよ) 「春樹さん、ですね」 俺はゆっくり顔を上げてうなずいた。 「はい。俺が春樹です」 「…………」 「それよりさっき姉さんの声がしました。姉さんもここに来ているんですね」 「僕たちはあなたを助けるためにやって来ました」 恐らく姉さんは、御門先輩が安全な所にかくまっているのだろう。 一応、怪しまれないよう尋ねておく。 「姉さんは、どこに?」 「愛菜は無事です」 「会わせてください」 「それは無理です」 「無理……どうして?」 「春樹さん。僕はあなたを疑っていますから」 (御門先輩なら、当然そう来るよな) そんな考えとは反対に、あえて大袈裟に尋ねる。 「疑う? 何を」 「あなたが僕を殺そうとしているかもしれない、という疑いです」 「俺が御門先輩を?」 「はい」 (初回の状況を冷静に判断できれば、犯人なんて簡単に見つけられるはずだしな) ただ、姉さんは俺を信じきっている。 だから一生掛かっても犯人を見つけられないままだろう。 「春樹さんは高村の血を引く者。神宝の力が覚醒していても少しもおかしくは無い」 「俺が御門先輩を……冗談でしょう」 「……最初にショッピングモールでお会いした時から因縁のようなものを感じていました。春樹さんも同じように感じたのでは無いですか?」 「そうだな……どれだけ頑張っても御門先輩を好きになれる自信はないよ」 「殺意を抱くほど、憎いですか?」 「自分でもよくわからない。でも姉さんを守るためなら俺はいつでも鬼にだって邪にだってなるよ」 そういうと、俺は怠慢な動きで椅子から立ち上がった。 と同時に床から赤い剣を出し、手足の拘束を解いてみせる。 「それは……十種の神宝の一つ、八握の剣……それで僕を殺めたのですね」 「正解です。おかしいな。姉さんの記憶は消したはずなんだけど」 「愛菜は気づいていません」 「だろうね。以前の俺は虫も殺せない様な奴だったから」 「力を得て変わってしまわれたのですね」 「今回もわざわざ手首まで縛って小芝居したのに。見抜かれてたなんて残念だよ」 「……やはり愛菜を軟禁していたのも、春樹さんですか」 「この力を得る交換条件でね。頼まれたんだ」 「一体、誰にですか」 「鬼だよ」 「鬼……」 巫女の中の鬼の仕業だと、御門先輩もようやく気付いたようだ。 「悪意の塊みたいなものさ」 「何を頼まれたのですか? 僕を殺せと……そう言われたのですか」 「ちょっと違うかな」 「大掛かりな結界まで張って、あなたは何がしたいんですか」 「じゃあ質問するけど、俺が姉さんを軟禁して、一体何をしていたと思います?」 本当は……マナは悪意の塊なんかじゃない。 でも説明も面倒だから、彼女も俺と一緒に悪者になってもらう事にする。 「まさか……食事に、ですか」 「さすがだな。姉さんは全然気づいてなかったのに。俺の作った食事を美味しそうに食べてくれていたな。家でも食いしん坊なんだ。とてもね」 「…………」 「姉さんと同化しているせいかな。鬼も食いしん坊なんだ。一日一度より三度の方が良いから協力してほしいって。俺の夢に現れてこの力を与えてくれたんだ」 「…………」 「さすがに言葉が出ないかな。勘もいいし、食材にするには惜しい人だな」 少しのヒントで食事に自分の肉を使われてたと、すぐに気付いた。 御門冬馬。 本当に敵にはしたくない相手だ。 「愛菜が軟禁中、正気を保てていたのが解せなかったが、そういう事だったのか」 冬馬先輩は怒りを押し殺したように呟く。 「少ない情報量でそれだけ推測できていれば上出来だよ。さすがかつて一国の王だった事はある」 「一国の王……どうして春樹さんがその事を?」 「壱与も姉さんも横から掻っ攫って奪っていった。あなたは昔から姑息でズルい人だったから」 「因縁の相手……というのはもしかして」 「大昔に貴方から全てを奪われた男と言えばすぐに分かるでしょう」 「春樹さんが守屋……」 「これは永遠に終わらない復讐なんだ。もし終わるとすれば、俺の気が完全に狂った時かな。いや……もう十分狂っているか。父も兄も、気に入らない奴は全部殺したんだから」 俺は面白くなさそうに顔を歪めて笑う。 ちゃんとヴィランを演じきれているのだろうか。 (さあ、ここからが本番だ) 戸惑う御門先輩に不意打ちとばかりに斬りかかる。 すぐに御門先輩も応戦の体勢に入る。 その軌跡が赤い閃光と青い閃光が激しくぶつかり合うようにも見えた。 お互いの剣の技量を計るかのように距離を取った斬り合いが続く。 俺は大剣の遠心力を使い、重い一撃を繰り出す。 鈍い金属の爆ぜる音が響く。 と、御門先輩は細身の青い剣で受けとめ、ジリジリと力で弾き返した。 彼は身体を相当鍛えている。 力と力の競り合いでは俺には分が悪い。 低くなった体勢のまま先輩が、チャンスとばかりに大きく前に出て懐に入ろうとする。 それを察した俺は、紙一重で後ろへ飛び退いた。 「俺が火で先輩は水。やっかいな相剋だな」 「厄介という割には余裕がありそうですが」 「御門先輩、やっぱり強いね」 「春樹さんの隙のない滑らかな動き。剣を扱い尽くした相当な手練れです」 「それはそうさ。大和で一番の戦士だったんだ」 「守屋の剣士としての能力をトレースできるようですね」 「まぁね。だけど身体は俺のままだから使いすぎると次の日は動けなくなるんだけど」 (動けなくなるのは本当だ。だから戦いたくないんだよな) 技量を確かめ合い、剣と剣を激しくぶつけあう接近戦になっていった。 お互い一歩もゆずれない戦いだ。 裕也さんに体術を教えてもらっていなかったら、さっきの低姿勢の一撃をモロに食らっていたかもしれない。 (姉さんは絶対にこの様子を見ている。御門先輩に勝たなければ……俺が二人を引き裂く障害になんてなれない) ぐっと二人の距離が近づいて、そのままつばぜり合いになっていく。 「御門先輩、手強いな……今までで一番生きる事に執着してる。姉さんに何か言われたね」 「ここに来る前、誰よりも特別な人だから死ぬことは許さないと言われました」 「そうなんだ。今回の強さはそのせいだな」 「今回? どう言う意味ですか?」 「俺が先輩とこうやって一対一で戦うのは今回で9回目だからね」 「9回? そんなはずありません」 「御門先輩や姉さん達はここを夢だと思っているかもしれない。だけどここは夢でも現実でも無い」 「胡蝶の夢の最中……では無いのですか?」 本当はループしている事なんて話す気は無かった。 でも裕也さんが御門先輩は対話できるかもしれないなんて言うから、思わず、口走ってしまった。 感心な時に、余計な迷いが出てしまった。 (まずいな。これじゃ二人の障害になれないかもしれない) 「ここが胡蝶の夢? 違うさ。ここは時の狭間なんだ」 「時の狭間……」 「そう。失敗したんだ、姉さんは。というより、鬼の片棒を担いだって言った方がいいかもしれない。文化祭の前日から188日後までの間を何度も繰り返してる」 「繰り返している……ループしているという事ですか」 「食べたら無くなるからね。でもこの閉ざされた時間にいる限りーー御門先輩という食材は何度でも手に入るだろ?」 「それは……本当なのですか?」 「もちろん。殺し合いの最中に嘘を言うほど余裕は無いから」 俺はつばぜり合いを終わらせるために、力を込めて御門先輩を押し出す。 御門先輩は一歩後退して再び構えた。 「どうしてループしてると分かるのですか?」 「唯一、俺だけが記憶してるからだよ」 「なぜ春樹さんだけが? 僕も愛菜も誰も記憶していない。あの鏡だって気づいていなかった」 「観測者……とでも言えばいいかな。俺だけは姉さんに関するあらゆる記憶を保持できるんだ。可能性も時も超えてね」 「それが春樹さん自身の能力という訳ですね」 「違うよ。これは昔、姉さんが与えてくれたんだ。全く、皮肉なものさ」 「愛菜が……」 「だから鬼にとって俺は最適の協力者なんだ。姉さんが好みの料理も作れるしね」 「春樹さんはそれでいいのですか?」 「どういう意味かな」 「力を求めすぎるあまり、一番大切なものを失ってはいませんか?」 「どうだっただろう。もう以前の俺が何を大切にしていたかなんて忘れてしまったよ。軟禁して鬼に御門先輩を食べてもらい、結果、姉さんの心を守れている。過程なんてどうだっていいのさ」 そう。 最初は過程なんてどうでも良かった。 (失った物も沢山ある。でも得た物も沢山ある) もしかしたら、得た物の方が失ったものよりずっと多いかも知れない。 とにかく沢山の本を読んで、あらゆる知識を貪欲に吸収した。 何度も繰り返し解剖し、血管の位置や神経、内臓の細かい部分まで知る事ができた。 今は中途半端な医者より上手く手術する自信だってある。 今までの想いを込めて、御門先輩に斬り込んでいく。 ひ弱な身体を補うために、裕也さんから格闘術を学び、その技を叩き込まれた。 周防さんからは夢を諦めない事を教えてもらった。 御門先輩は俺の連続技の応酬に苦戦している。 彼の身体に次々と傷が刻まれていく。 ループの最中、俺は孤独だと思っていた。 だけど本当は、いつも隣にマナが居た。 皮肉屋でプライドが高く、高圧的に命令してくる生粋の鬼。 間抜け、愚図、馬鹿だのと星の数ほど罵られてきた。 下僕同然だったけど、交わされる多くの会話の中でお互いを知っていった。 散々憎んでいたはずなのに、いつの間にか大切な人になっていた。 マナには沢山良い所も可愛い所もあると、今の俺なら知っている。 「冬馬先輩!」 (姉さんか) 扉を勢い良く開けて、姉さんが入ってきた。 俺を追い越して、先輩の所まで慌てて駆け寄っていく。 「愛…菜……」 立っているのがやっとの御門先輩は満身創痍だった。 しゃべる事もキツイのか、苦しそうに大きく肩で息をしていた。 「春樹、もうやめて!」 彼の身体を支えながらすぐそばにいた俺に叫んでいた。 その悲痛な叫びで、やっぱり姉さんは御門先輩じゃないと駄目なのだと悟る。 「そうか。姉さん、覚醒したんだ」 「うん」 首を縦に振った姉さんを見て、俺は戦闘の構えを解いた。 「じゃあ俺の負けだね。御門先輩の粘り勝ちだ」 俺は自分の持っていた赤い剣を地面に投げ捨てた。 ガシャッと重い金属音を響かせた剣を、能力を解いてこの場から消し去る。 (……やっと終わった。何もかも) 「冬馬先輩、戦いながら出血を抑えていたんだ。頑張ったね」 御門先輩の身体を労るように、姉さんは声をかけていた。 「気をしっかり持って。気絶してしまったら途端に大量失血してしまうから」 先輩を抱きしめるように寝かせると、姉さんは身体全体で精気を送っていく。 御門先輩の顔色は相変わらず、悪いままだ。 「うう……」 我慢強い御門先輩でも苦痛に顔を歪ませていた。 「姉さん、そんなことしたら寿命が縮まるよ」 精気を送り続ける姉さんに俺は声を掛けた。 「わかってる。でもやらなくちゃ」 「ここは外からの霊力が届かない。それ、わかってやってる?」 「知ってるよ。そんなこと」 「たとえ元の時間に還ったとしてもさ。先輩はどうせあと数年の命なんだ。姉さんがそこまでする意味ある?」 御門先輩は短命だ。 帝は魂を神に売り渡す代償として、草薙の剣の力を貰い受けたからだ。 その魂を持った者は、帝が生きた年数しか生きる事しか出来ない。 魂を売るという愚行だけど、大切な人と共にいたいという願いはどこか崇高にも感じてしまう。 「怪我をしていたら治す。当たり前じゃない」 「だよね。姉さんならそう言うと思っていたよ」 (やっぱり、姉さんは姉さんだ) その場から動かず、黙って姉さんの様子を見守っていた。 「ねえ、春樹」 「なに、姉さん」 「ループの事、どうして私たちに話したの?」 「それは……終わらせたかったからかな。もう疲れてしまってたからさ」 「本当に?」 姉さんは抜けている時もあるけど、馬鹿ではない。 流石にある程度、気付いているようだ。 「本当だよ。最初は目新しさもあったけど、繰り返しって残酷なほど単調だからね」 「じゃあ、今、私を殺さないはなぜ? これは私の作り出した時間だから私が死んでも当然、終わるよ」 (姉さんを殺す? 冗談じゃない) 俺の気持ちなんて少しも知りもしない……姉さんらしい発言だ。 これが察しの悪い天然の恐ろしさだろう。 「覚醒した姉さんには敵わないからだよ。負け戦はしない主義なんだ」 「私は今、全霊で冬馬先輩の治療をしている。倒すなら絶好のチャンスだよ」 天と地がひっくり返っても俺が姉さんに手をかける事はない。 呆れながらも、姉さんの会話に付き合う。 「ループに慣れた今となっては人の命なんて勝手に生えてくる雑草みたいなものだけど、姉さんは殺せないよ」 「なぜ?」 「だって家族でしょ」 俺は心の中で自分から別れを告げる。 本当に大好きで全てを捧げられた。 それでも叶わない恋もあるのだと教えてもらった。 「……家族。でも、春樹。本当の父もお兄さんも春樹が……」 「殺したね。でも、あの人達は血が繋がっている、ただそれだけだよ。多少の利用価値はあったかな」 「そうなんだ……」 今回は殺していない。 でも今までは数えきれないほど、殺めてきたのも事実だ。 「姉さんは御門先輩が大切?」 「うん。とても」 「家族よりも?」 答えはもう知っている。 だけど意地悪く、あえて質問を投げかける。 「冬馬先輩が誰よりも大切だよ」 「それは帝の生まれ変わりだから?」 「違うよ。私が好きになったのは御門冬馬っていう不器用な人ただ一人だけだよ。 不器用だけど真っ直ぐで何があっても人のせいにしない。そんな人柄に惹かれたんだから」 「それだけはっきり言われると、弟としては結構複雑だな」 俺は椅子に腰を下ろしながら苦笑する。 (思ったよりもダメージが少ない。以前の俺だったら泣き喚いていたかもしれないな) すると、姉さんに抱きかかえられていた御門先輩が微かに動いた。 「愛菜……」 少し血色が戻ってきた先輩が薄く目を開ける。 「冬馬先輩」 「もう大丈夫です。愛菜、ありがとうございます」 御門先輩は姉さんからのからの精気の受け取りを拒絶していた。 「もう少し受け取って。まだ全体足りないんだから」 「本当に大丈夫です」 先輩は姉さんから身体を離し、自分の力で何とか座っていた。 「それより、春樹さん」 先輩は椅子に腰かけている俺に顔を向けた。 とても含みのある呼び掛けを、あえて軽く受け流していく。 「傷に障る。御門先輩、しゃべら無い方がいいよ」 「構いません。それより、本当の目的をなぜ言ってくださらなかったのですか?」 「俺の目的? 俺は力を手にしたかった。姉さんを鬼に渡したくなかった。あんたが気に入らなかった。ただそれだけだよ」 「なぜこの期に及んで偽るのです?」 顔色は蒼白で意識を保つことがやっとのはず。 それでもその声ははっきりしていた。 「本人が言っているのに何を決め付けてるのさ」 「春樹さんは初めから正気だった。悪意に呑み込まれて自分を失ってもいない」 「…………」 「ただ一つ、愛菜を覚醒させる目的のためだけに動いていた。違いますか?」 (やはり気付いたか。御門先輩なら当然か) 御門先輩からの問いに俺は沈黙で返した。 「何度もループしているなら、僕たちのあらゆる行動も把握済みのはず。それなのに僕たちを試すようにここまで誘導した。おかしい、そう気づきました」 「…………」 「そして軟禁の事、この世界の仕組みをわざわざ丁寧に説明したり、怒りや絶望感を煽るような言動を繰り返していた。でもまだ、春樹さんの真意を計りかねていた」 「…………」 「極め付けは僕と春樹さんの剣の実力差。剣を交えれば、格上の相手くらいすぐわかる。それで春樹さんの目的を悟った」 珍しく御門先輩の敬語が消えていた。 「御門先輩。そこまで分かっているならどうしてボロボロになるまで付き合ってくれたんです?」 俺は冬馬先輩を見据えながら尋ねる。 そう。 どうして彼はそこまで気付いているのに、俺に付き合ったのか。 そこが一番解せない部分だ。 「愛菜のため……と言いたい所ですが、春樹さん。あなたのためです」 「俺のため?」 「春樹さんの瞳に宿した覚悟が本物だった。だから僕も本気であなたの計画に乗ったのです」 「姉さんを騙してでも?」 「騙していません。僕は常に本気だった。愛菜も同じなはずです」 (裕也さんの言う通り、この人は……) 剣を交えた者同士だから分かる事がある。 俺の渾身の一振りに込められた気持ちに、彼は気付いたのかも知れない。 「言っておくけど俺も御門先輩に手加減はしてないよ」 「分かっています。危うく死ぬところでした」 「だろうね。殺しても構わないと思っていたから」 「この僕は死んでも次の僕にというわけですね」 俺だって次は無い。 失敗すれば、兄さんに殺される運命だった。 「そんな事は無いさ。一対一の真剣勝負は俺も命懸けだから毎回なんてとてもじゃないけどやれない。安全な場所で確実に殺す方法をずっと選んできた。でも今回の御門先輩に希望を見た。だから久しぶりに賭けてみたんだ」 「今回の僕に希望……ですか」 「実は姉さんの力が覚醒する条件は前から整っていた。でも上手くいかなかったんだ。どうして覚醒に至らないのかずっと分からなかったんだ」 今までの事を想う。 長い長い道のりだった。 でも思い出に浸ってみても、不思議と嫌な気分にはならなかった。 そして俺は溜め息を小さく吐く。 「今回の御門先輩はどこか今までと違っていた。生きることに執着し、自分で考えて行動していた。カッコ悪いくらい諦めが悪かった」 「だから僕達をここまで導いたのですか?」 「変わりたいって気持ちが強さに変わる。諦めの悪さが夢を叶える原動力になる。今回の御門先輩にはそれがあった。だから御門先輩が勝ったんだ」 「勝ち負けなんて僕はどうでもいい。それより一番不可解だった事を教えて欲しい。春樹さんがすべてを捨ててまでなぜ愛菜を覚醒させなければならなかったのか。本当の理由は何ですか?」 御門先輩は動かない身体を前のめりにして尋ねる。 こんな先輩、初めて見るかもしれない。 「本当の理由……一言では説明できないな」 「愛菜に関するあらゆる記憶の保存、それが関係しているのですか?」 (そこまで分かってしまったのなら、言い逃れは出来ないな) 「さすがに隠し事はできないか。ただのラスボスでいさせてくれれば楽なんだけどね」 俺は観念したように呟くと言葉を続けた。 「結界によって力を断ち、姉さんは御門先輩の復活を願い鍛錬する。姉さんの巫女の力と鬼……悪意の塊の力を借りてループさせ、何度もそれを繰り返す。膨大な時間をかけて力を蓄積し、ようやく覚醒に至る事ができた。そこまではいいよね」 「それは理解しています」 「実は他の可能性の姉さん同士も俺の記憶のように、関連がないようでいてしっかりと繋がっているんだ」 「力が繋がっている……共有しているのですか?」 「共有ではないな。姉さんお得意の夢が媒介なんだ。特に壱与に関する記憶が夢に現れた時、力を発揮する」 「壱与の夢が媒介……」 「他の可能性の姉さんの時間はここと違って有限だ。だからこのループで手に入れた覚醒した強力な力を借りる。夢を見る事で自由に覚醒した能力を引き出せば可能性の幅も広がる。だから絶対に必要なんだ」 (黄泉醜女は姉さんを上手く騙せたのかな。本人同士の接触は絶対にやっちゃいけないけど) 恐らく大丈夫だったのだ。 現に姉さんがこの場にいるのが何よりの証拠だろう。 「必要なのは分かります。ですが……」 「どうして俺がここまでしたのか、だね」 やっぱり演技が下手ですべてバレてしまった。 勘のいい御門先輩を騙すほど、俺には演技の才能なんて有りはしないのだ。 仕方がないと腹を括って説明を始める。 「俺は昔……まだ守屋と呼ばれていた頃にこの能力を姉さんに与えられた」 「守屋の頃といえば僕が帝だった今から1500年ほど前ですか。その頃になぜ愛菜に会う事ができるのですか?」 「それは別の可能性の姉さんが過去に行く夢を見たから。1500年の時を夢を使って超越した。これはとんでもない能力が必要になる。その能力の出どころはどこか……探したよ。でも、ないんだ。どこにも」 「無い……タイムパラドックスですか」 「そう。その矛盾を正そうとするのが因果律。その法則に従って俺は姉さんにそっくりな別人に未来は取って変わられた。その世界には矛盾の発端である能力自体も存在していなかった」 以前、御門先輩とも話し合った事だ。 あの時はちゃんと説明したから当然分かってもらえた。 今回は騙そうとしていたのに、この真相に持ち込める御門先輩はさすがとしか言いようが無い。 「1500年前に俺に能力を与えた姉さんは世界から忽然と姿を消した。きっと姉さんは自分のすべてを使って事を成したんだ。でも因果律に逆らってしまったせいで姉さんの存在そのものが破綻してしまった」 能力者の居ない世界を創造した姉さんは、本当は消えた訳じゃない。 だけど黄泉醜女の話をする訳にはいかない。 だから、ここは嘘をつくしかない。 「だから覚醒した愛菜の存在が必要という事ですね」 「別の可能性の姉さんも時間に干渉するような強力を使えば因果律によって同じように消えてしまう。ひいては姉さんそのもの、全てが無かったことになる」 「矛盾にならないよう覚醒した強者の愛菜を作り出す必要があった。それが春樹さんの目的だったのですね」 「そう。矛盾の解消……それが俺の目的だったんだ」 どの軸の姉さんにも力が必要な時が必ずある。 あらゆる可能性の姉さん達が皆幸せであれば、俺のやってきた事にも意味があるというものだ。 「春樹……よく分からないけど、とにかくありがとう」 物理や哲学の苦手な姉さんには少し複雑すぎたかもしれない。 でも構わない。 理解されなくても、俺が好きでした事だ。 「いいさ。それよりも……ほら、結界が解けていくよ」 強固な結界が消えていき、姉さんの身体に霊気が満ちていく。 いよいよこのループが終わる瞬間が近づいてきた。 「一郎くん達、成功させたんだ。これで私達、ここから帰れるよ」 喜ぶ姉さんと安堵の表情を浮かべる御門先輩。 でも……俺だけは素直に喜べなかった。 (ループが終わる。終わってしまう) 「どうしたの? 春樹、元気無いけど」 「姉さん。とても大切な頼みがあるんだ」 俺は意を決して姉さんに話しかけた。 無茶なお願いなのは承知の上だ。 「私に頼み? 春樹が珍しいね」 「姉さんの中の鬼……彼女を封じないで欲しいんだ」 「春樹。それは無理だよ」 (やっぱり無理なのか) 分かっていた。 彼女……マナは姉さんそのものでもあるから、無理に決まっていると。 「鬼を封じないと私達は帰れない。それに彼女は私の一部だから引き剥がすのは……本当は無理なんだよね」 「本当は?」 何か含みのある言い方だった。 「小さな頃から彼女とは夢の中でだけの友達だった。ワガママでホントすぐに怒り出すんだよ」 「そうなんだ。彼女はとても気が強いんだ」 姉さんがマナの我儘に振り回されている光景が、容易に想像できてしまう。 「でも可哀想で素敵な所も沢山あるんだ。だから……ね」 姉さんは自分の胸に手を当てる。 するとその手は姉さんの体内にズブズブと沈み込んでいき、何かを手にして再び現れた。 「私の命の一部を鬼にあげる。彼女も春樹と一緒を望んでるから」 「そんなの……もらえない」 「本体は封じないと帰れないから、本当に意識のないカケラみたいな存在になっちゃうけど……彼女の気持ちだけでも受け取ってあげて」 姉さんは持っている勾玉を俺の胸に押し当てた。 するとそれはスポンジに吸われる水のように、あっという間に跡形もなく消えてしまった。 俺は自分の胸に手を当てる。 だけど何の変化も感じなかった。 「愛菜。鏡の兄弟と香織さんです」 窓から一郎くん達が階段を駆け上がって来るのが見えた。 「みんなで……私達のいた元の世界に戻ろう」 大いなる力を手にした姉さんの身体が、まばゆい輝きに包まれていくのだった。 【15年後】
https://w.atwiki.jp/83452/pages/5822.html
ちくしょう、油断した。 まさか唯にアレをとられるなんて。 梓「また練習もせずにじゃれあって・・・」 紬「まぁまぁ、いいじゃない」 向こうでムギと梓がそんなことを言っている。 梓よ、これはじゃれあってる訳じゃない。 唯はどういうつもりか知らないが、私にとっては大切な問題だ。 唯「そんなことないよー!りっちゃん可愛いよー!」 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、唯が人のカチューシャを掲げて騒いでいる。 律「辞めろってマジで!こんなの私の柄じゃないから!恥ずかしいっての!」 アレとはカチューシャのことだ。カチューシャを唯にとられた私はかなり狼狽している。 律「頼むからカチューシャ返せって!」 唯「だって前髪下ろしてるりっちゃん可愛いよー?」 そんな訳ないだろう!前髪を下ろした自分が似合わないなんてことはとっくの昔にわかってるんだよこっちは! 律「んな訳ないだろ!私にはこんなの似合ってない!」 その気持ちを言葉に出して、私は私の大切な幼馴染――秋山澪――の方に視線を向ける。 その刹那、澪と目が合う。 律「!」 目が合った瞬間に、私は澪に目を逸らされてしまった。 だから言ったのに・・・!私はこんなの似合ってなくて、こんな姿を澪に見られたくないのに・・・! あ、やばい。これはひょっとしなくても無理だ、我慢しきれない。 思わず私は動きを止めてしまった。 唯「りっちゃん、どうしたの?」 そんな私を心配した唯に話しかけられると、 律「わ、私は前髪下ろすのなんて柄じゃなくて・・・」 律「こんなの本当に似合わなくて嫌なんだよ・・・」 やっぱり駄目だった、我慢しきれず私の目から涙が零れ始める。 唯「り、りっちゃん!?」 紬「りっちゃん!?」 梓「律先輩!?」 澪「・・・・・」 澪は先ほどと変わらず、こっちを見てくれようともしない。 だから私はカチューシャを外したくなくて、前髪を下ろしたくなんてなかったんだ。 昔、髪型を変えてみるのもいいかななんて思って一度だけ挑戦したこともあった。 でも、その結果私は自分にそういうのが似合わないなんてことを痛感させられてしまった。 そう、昔一度だけ、大好きな澪に前髪を下ろした自分を見せたあの時以来―― ―――――――――中学生時代 澪「・・・」 律「・・・」 澪「ふぅ」 お?澪宿題終わったかな? 律「あ、宿題終わった?見せて見せて」 澪「駄目」 律「別にいいじゃんよケチー」 澪「自分のためにならないだろ」 律「ぶーぶー」 澪「わからないところは教えるからちゃんと自分でやりなさい」 律「ちぇー」 律「澪、早速わからん」 澪「早っ!」 いつも通り、本当にいつもと変わらない会話を澪と交わす。 律「終わったー」 澪「お疲れ様」 律「喉渇いたー、ご褒美に何か飲ませてー」 澪「結局私が殆ど教えただろうが・・・」 そうは言いながらも、澪は飲み物をとりに行こうと部屋を出る。 律「・・・」 澪は見かけは綺麗で近寄り難い感じもするんだけど、本当はすごく優しい奴だ。 さっきみたいに勉強だって何だかんだ言いながら教えてくれるし、 私がこうやって甘えると文句を言いつつもやってくれることが多い。 素直じゃないからいつも一言多いんだけど、それがまた澪の可愛いところだったりもする。 律「・・・さて」 澪が飲み物を取りに行ってる間に私はしておきたいことがあった。 さっきも言ったように、澪は本当に可愛い。 すごく女の子らしいし、顔もそこら辺のアイドルなんかよりよっぽど可愛いと思う。 けどその幼馴染の私と言えば、まず女の子らしくなかった。 正直、澪とこんなに仲良いのが不自然だと思うくらい。 そんな時、お風呂上りに気付いてしまったのだ。私って髪下ろしたら結構女の子らしいんじゃないかってことに! これだったら澪と一緒に居てもおかしくないだろうし、私だってきっとアイドル顔負けじゃん!? なーんて言ってみたけど、正直そんなことはどうでも良かった。 澪はいつもの私が良いって言ってくれるし、アイドルがどーのなんてことも全く興味は無い。 カチューシャを外して前髪を整え始める。 ただ、私は髪を下ろしていつもより女の子らしくなった自分を見て思っただけなんだ。 これなら、澪が私のこと可愛いって言ってくれるんじゃないかなーって・・・。 ああ、こんなの私の柄じゃないかもしれない。 髪下ろして考え方までちょっと変わっちゃったか私? そんなことを考えながら髪を整えていると、階段を登る澪の足音が聞こえた。 急いで前髪を整えた後、私は慌ててドアの方に背を向けてしまった。 あんなこと考えてたから顔が赤いぞ私。早く治まってくれ。 そして足音がドアの前までやって来た。 澪「律、飲み物持って来たぞー」 律「う、うん。ありがとう」 まだ顔が赤い。早く、早く治まれ。 澪「?」 背を向けている私を不思議に思ったのか、澪は少しの間立ち尽くしていた。 その後、澪が飲み物をテーブルの上に置いた。そして私もそのタイミングで平静を取り戻した。 よし!頑張れ田井中律! 律「実は澪にもご褒美があります!」 澪「ど、どうした急に」 私が言うと、澪は驚いたようだった。 律「という訳で!じゃーん!」 そう言いながら、私は振り返った。 澪「―」 澪は振り向いた私を見て、動きを止めた。 というか、そんな止まらないでくれ。やってる私も恥ずかしいんだからさ。 律「どうだ?美少女りっちゃんのイメチェンは?」 反応を促すように言葉を続けてみる。 相変わらず澪からは反応が無い。 律「な、何で何も言わないんだよ・・・」 流石にかなり辛くなってきた。澪、お願いだから何とか言ってくれって・・・。 澪「わ、悪い」 よ、ようやく反応してくれたか! しかも澪さん、ちょっと顔が赤いですよ?これはやっぱり似合ってるってことかな? 律「自分でも結構似合ってると思うんだよなー、どう?」 澪の反応を見て、調子に乗ってくるっと回ってみせたりする。 律「澪に感想聞いて良い感じだったら今後はこの髪型で行こうかなと思っててさー」 澪がそんな反応してくれるんだったらもうこの髪型の私こそがりっちゃんってことでいいな! ありがとうカチューシャ!今まで頑張ってくれた君のことは忘れない! 律「なぁーどうなんだよ澪ー」 更に調子に乗って畳み掛けてみる。 律「なぁ澪ってば 澪「そ、そんなの駄目だ!」 澪が叫んだ。 律「・・・え」 澪「や、やっぱりいつもの髪型の方が律らしくて断然いいと私は思う!」 た、確かに私は澪と逢った頃からあの髪型だけど・・・ 澪「そういう髪型って律の柄じゃないしさ」 確かにあんまり普段は女の子らしくないかもしれないけど、偶にはこんな髪型だって・・・ 澪「正直そこまで似合ってるとは言えないと思う!」 ただ私は澪に、そういう髪型も似合うとか、言って欲しかっただけなのに・・・。 律「・・・」 やばい、駄目だ。泣きそうだ。 律「だ、だよなー・・・、やっぱりいつもの髪型の方が私らしいもんな!」 精一杯の空元気を振り絞って私は言う。 澪「う、うん!」 律「ごめんなー、急に変なこと聴いちゃって」 澪「ぜ、全然構わないよ。むしろ先にその髪型見せてくれて嬉しかったよ」 澪は優しい奴だからそんな風に言ってくれたけど、その優しさが却って今の私には辛かった。 律「澪に感想言ってもらえて助かったよ、じゃ私はそろそろ帰るわ」 無理だ、これ以上この場に居たら私は泣き出してしまう。 澪「え?律?」 澪の言葉をこれ以上聞いてしまう前にそそくさと澪の部屋を出た。 部屋に戻るなり私はベッドに飛び込んだ。 律「酷いよ澪・・・」 その瞬間、今まで何とか抑えていたものが溢れ出た。 律「私は澪に可愛いって言ってもらいたかっただけなのに・・・!」 そのまま暫く私は泣いていた。 律「・・・」 泣いて冷静になった後、私は考えた。澪は普段、あんなことを言う奴じゃない。 その澪があんなに言うくらいなんだ。本当に私にあの髪型は似合ってなかったってことなんだろう。 律「なのに一人で舞い上がっちゃって・・・馬鹿みたいだな私・・・」 もう一度私はベッドに突っ伏して泣いた。 律「おう澪、おはよー」 澪「お、おはよう」 いつも通り、本当にいつも通り、私は澪に話しかける。 律「でさー、昨日のあの番組でさー・・・」 いつも通りの他愛無い話題を澪に振る。 しかし、当の澪からは返答が無い。 律「澪?聞いてるか?」 澪「あ、悪い。ボーっとしてた」 律「ちゃんと聞けよー、全くー」 澪「ごめんごめん」 澪はいつも通りの澪だった。 昨日の私の帰り際の態度について問いただされるかとも思ったが、そんなことも特に無く普段通りの会話が交わされた。 私としては、正直昨日の話題を掘り返したくはない。 あんな風に言われたのはかなりショックだったけど、掘り返して気まずくなるのも嫌だったし、 何より私は泣いてるところや落ち込んでるところを人に見せるのなんて柄じゃない。 澪のことを素直じゃないなんて言ったけど、私も相当素直じゃないな。 我ながら辟易するけど、これが田井中律という人間なのだから仕方が無い。 澪もこの話題に触れて来ないし、こんな話はもう終わりだ。 いつも通り澪と一緒に居る時間を精一杯楽しもう。 ―――――――――――――――――― 4
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/5810.html
このページはこちらに移転しました タバコ増税 作詞/189スレ307 ぶりんくぶろんくまぺぺぺぺー 隣のあの子はしたり顔 俺の笑顔は3段ボルト 見たいの見たいの あの、こうぺいとうの裏のカリスマ 美しい草木の陰にある靴下、ムンタラバぶみゅんとりべなん