約 2,981,054 件
https://w.atwiki.jp/1000ed/pages/122.html
181 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/08/03(金) 17 25 04 ID ??? 私に手を引かれながら小走りで皆に追いつく。 まちがってた… 私は手を引かれながら~ です 182 名前:522[sage] 投稿日:2007/08/04(土) 00 27 40 ID ??? ②「遅刻しちゃうよ、行こう」 刺すような視線が私と修二君に向けられている。 「愛菜ちゃんの手って、小さくてスベスベだよね~」 そう言いながら修二君は、突然、その手に頬擦りをしだした。 「お、おい!」 「ちょっ、修二先輩」 隆と春樹が同時に叫んだ。 そこでようやく、私は修二君と手をつないでいることに気付く。 「…………!修二くん、手!」 私は焦りながら、自分の手を引っ込めた。 昨日のキスのせいで、修二君のスキンシップに対して情けないほど過敏に反応してしまう。 (あれは治療だったんだから、意識しちゃだめよ) そう思うのに、どんどん顔が熱くなっていく。 「愛菜ちゃん、赤くなってる。ホントかわいいよなぁ」 うつむいく私を修二君は楽しそうに覗き込んだ。 いつもならここで一郎君のキツイ一言が入ってもよさそうなのに、何も言葉が返ってこない。 むしろ私たちの姿を視界から外すようにして、横を向いていた。 (一郎君…?) 「愛菜。担任に嫌味言われたくないし、急ごうぜ」 修二君と手をつないだ事にムカついたのか、隆は不機嫌な声で私に声をかけた。 「う、うん…」 私たちは走って教室に向かった。 遅刻はなんとか免れ、HRを終える。 日中の授業を慌しく受けていると、いつのまにか放課後になっていた。 これから、どうしようかな。 ①今日も文化祭の準備 ②春樹の様子を見に行く ③考える 183 名前:523[sage] 投稿日:2007/08/06(月) 10 44 14 ID ??? ①今日も文化祭の準備 「香織ちゃん、準備今日は何をやればいい?」 「えっと、大きいものは大体作っちゃったし…小物係もいっぱい居るから、今日は放送委員のほうに行ってもいいわよ?」 「え、でも…」 「大丈夫大丈夫、当日放送委員は大変でしょ?ちゃんと打合せしないと、当日バタバタしちゃうわよ」 香織ちゃんはそう言ってからちょっと回りを気にして、私に顔を寄せてこそっとささやく。 「それに、いとしの一郎くんと一緒に仕事できるチャンスじゃなーい」 「…え!?」 「ふふふ、前に言ったこと覚えてるわよ?」 笑いながら、ちょっと意地の悪い笑みを浮かべて香織ちゃんが言う。 言われて1週間くらい前の会話を思い出した。 香織ちゃんに彼氏を紹介しようかと言われたとき、一郎くんのことをとっさに言葉にしてしまったのを覚えているのだ。 あの時一応否定したけれど、香織ちゃんはすっかり私が一郎くんを好きだと思い込んでいる。 (確かに嫌いじゃないけど…恋愛感情の好きとは違う、よね…?) あのときだってどちらかというと憧れが強かった。 1週間しか経っていないけど、その間にいろいろあって一郎くんへの感情も変化した。 「ま、どっちにしろこっちは目処がついてるからさ、ほらいっといで」 困った顔をしている私を、香織ちゃんは私を教室から押し出す。 「じゃ、いってらっしゃーい」 そういってヒラヒラと手まで振られて、私はあきらめて放送室へ向かう。 (もぅ、香織ちゃんってば余計な気を回しすぎよね…) 香織ちゃんの行動に苦笑する。 放送室まで来てノブに手をかけあけようとして私は動きを止めた。 戸が少し開いていて、中から話し声が聞こえる。 この声は… ①一郎くんと修二くん ②一郎くんと水野先生 ③水野先生と桐原 184 名前:524[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 00 46 40 ID ??? ②一郎くんと水野先生 耳を近づけると二人の会話がはっきりと聞こえてきた。 「それで……あなたたちの方は具体的にどうなっているの?」 水野先生は一郎くんになにかを確認するような口調で尋ねている。 「一応、現状で出来るだけのことはしているつもりです」 いつもの冷静な調子のまま、一郎くんは答えた。 (放送委員のことかな?それとも、力の話なのかな…) もし力の話だったら、なぜ私が狙われているのかわかるかもしれない。 今のままでは不安が募るばかりだ。 少しでも情報が手に入るなら、ぜひ耳に入れておきたい。 悪趣味だと思いながらも、もう少し立ち聞きをすることに決めて耳を澄ました。 「最近のあなた達、あまり協力的では無いようだけれど?」 「協力? そんなつもりは初めからありません。俺達は組織と取引をしたいだけです」 「あらあら…私に反発できるほど偉くなったつもりでいるね」 水野先生の放った一言は、まるで一郎くんを見下すような口調だった。 (やっぱり、力の話みたいだよね……) 私は緊張しながら、再びドアに耳を近づけた。 「今まで、あなた達の意見を尊重してあげていたけれど……揺さぶり程度ではなく、本格的に組織が手を下すほうが早そうね」 「待ってください。下手に時期を誤れば、困るのは組織側だと思いますが」 「悠長にあなた達だけに任してはいられないわ」 「俺達には目という手札があります。 大堂愛菜の力へとつながるカギを俺達が握っている以上、取引としては十分な対価だ。 現状維持もその時に交わした取引項目のひとつだったはずです」 (一郎くん……) 私自身が取引に使われていたと思うだけで、胸が締め付けられるように痛んだ。 入学当時からの憧れていただけに、一郎くんの言葉がつらい。 「まあいいわ。せいぜい強がっていられるのも今のうちよ。所詮は君も修二くんも道具に過ぎないのだから。 よく肝に銘じておくことね」 まだ一郎くんと水野先生の会話は続いているようだ。 私は… ①もう少し話を聞く ②逃げ出す ③放送室に入る 185 名前:525[sage] 投稿日:2007/08/07(火) 11 03 08 ID ??? ①もう少し話を聞く 一郎くんは大きなため息をついた。 「あなたも覚えておくといい。取引をしている以上、条件を一つでも破ったら取引は反故です」 「………」 一郎くんの言葉に、水野先生が沈黙する。 強く出ていても、やっぱり一郎くん達の力は必要だということだろうか。 「そうそうあなたの態度がとても不快でしたので、新たな情報が一つあったのですがこの報告はしないことにしました」 「何をいっているの!?」 水野先生のとがめるような声がする。 「そういえば、取引をする以上立場は対等であること、という条件がありましたね。 けれどあなたは俺たちを道具といった」 「ちょっと待って頂戴!」 あせる水野先生とは裏腹に、一郎くんの声はどこかすがすがしささえ感じる。 「ということで、今後一切俺たちは組織に…いえ、こういったほうがいいですね。主流派と取引しない、と」 「!あなたそれをどこでっ…」 「それに答える義理はない。ということだ。修二、大堂」 急に名を呼ばれ、私は硬直する。 「いやー、兄貴かっこいー」 硬直した私の真後ろから、修二くんの声がする。 いつから居たのだろう。一郎くんと水野先生の話に集中しすぎて気付かなかった。 修二くんは放送室の扉を開ける。 「あなたたち……まさか…?」 驚いた顔の水野先生が私たちを見ている。 先生の言葉に、私もふと思う。 (もしかして一郎くんは私たちがそろうのを待ってた?) 最初の方の会話は水野先生を引き止めるような言葉の運びだった。 それが急に組織の主流派との取引はしないとの宣言。 まるで私たちに聞かせようとしたみたいではないか。 「ま、俺はもともと組織の連中と取引する気はまったくなかったし」 修二くんは分かっていたのか、にやりと笑って一郎くんの隣に歩いていく。 「今までだって、してこなかったけど?」 「……修二」 「はいはい、分かってるよ」 一郎くんと修二くんはそろって水野先生へ手を伸ばす。 水野先生はあわてて身をよじるが、二人に腕をつかまれる。 「それじゃ先生、組織に伝言よろしくね」 修二くんがにっこり笑って言った途端、空気がピリピリと震える感じがした。 それが納まった後、先生の抵抗がピタリと止まり、私たちが見えていないかのように放送室から出て行った。 ①「先生に何をしたの?」 ②「組織に逆らって平気なの?」 ③「これからどうするの?」 186 名前:526[sage] 投稿日:2007/08/10(金) 22 03 03 ID ??? ②「組織に逆らって平気なの?」 操られるようにして立ち去る水野先生を見送りながら、私は尋ねた。 そんな私を見て、修二君は「俺の事、心配してくれるんだ?」と楽しそうに覗き込んでくる。 「だって…逆らうと怖そうだよ」 「へーき、へーき。愛菜ちゃんがいるだけで俺、がんぱっちゃうしさ」 修二君は不安がることも無く、いつもの軽口を言いながらにっこり笑った。 「組織への接触は資料の収集と力の応用に関する知識が欲しかっただけだからな。 欲しい情報がほぼ手に入った以上、ここが引き際だろうと判断したまでだ」 一郎君もさっきの出来事など意に介さず、机の上にある放送委員の資料を片付けている。 (二人とも平気そうだし、心配しなくていいのかな) 「そういえば、前にファントムを消滅させていたのは、力の応用だって言っていたよね」 私はあっという間に黒い影を退治してしまった修二君の姿を思い出す。 「どれだけ強力な力を持っていても、使い方を理解できていなければ無駄ばかり生じてしまう。 正しく使ってこそ、少ない力で最大の威力が発揮できるというものだ」 「同じことをするにしたって、少しでも楽できた方が良いしね。 さっきの水野に暗示をかけたのも力の応用だし。まあ、記憶までは弄れないからじきに上層部の耳には届くと思うけどさ」 修二君といい、一郎君といいやけに自信たっぷりに見える。 どうして組織が怖くないのだろうか。 「本当に一郎君も修二君も逆らって怖くないの?」 「だから、へーきだって。愛菜ちゃんは心配症だなぁ。俺達にこの目がある以上、主流派は手出しできないんだよ。 俺達が見つけなければ、封印を解くこと――」 「修二!」 封印と言ったとたん、一郎君が制すように叫んだ。 修二君はしまったという顔で一郎君を見た後、誤魔化すように頭を掻いている。 私は… ①「封印?」 ②「今の話、私に関係あることなのね」 ③「一郎君が話していた資料の収集ってなに?」 187 名前:527[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 14 02 44 ID ??? ②「今の話、私に関係あることなのね」 一郎くんがここまで過剰に反応するということは、きっと私に聞かせたくない話なのだろう。つまり私に関係があるということだ。 修二くんもさっきの反応をみると、私には知られたくないと思っていると見て良い。 (封印…) 私の中の何かが誰かに封じられている? それは力なのだろうか?けれど私は力を無自覚で使っているみたいだし、最近は意図的に通信をすることも出来る。 (それじゃあなんだろう…) 「愛菜ちゃん、そういえばなんか用事があって放送室に来たんじゃないの?」 修二くんが考え込む私の顔を覗き込む。 はっと我に返って顔を上げると、驚くほど近くに修二くんの顔があって思わずのけぞる。 「…?どうしたの愛菜ちゃん?」 修二くんはもともとスキンシップが激しいから、至近距離に当たり前のように踏み込んでくる。 以前はあまり気にしなかったけれど、あのキス以来過剰に反応してしまうのはどうしようもない。 不思議そうに首を傾げる修二くんから一歩下がって、私はあわてて笑ってみせる。 「あ、うん、なんでもないよ。えっと、ほら、放送委員の文化祭の準備なにかあるかなとおもって…」 私は修二くんから一郎くんへ視線を移す。 一郎くんは少し眉を寄せて私たちを見ていたが、私の言葉にいつもの表情に戻ると少し考えるようにあごに手を当てた。 「そうだな…、放送機材の点検をしなければならない。だがここの放送機材はほぼ毎日使っていて不具合はないから大丈夫だろう」 「それじゃあ、体育館とか?」 「そうだな、後はめったに使わない校庭の放送機材か」 「あれ?校庭に放送機材なんてあった?」 「運動会で使っただろう?」 「あぁ!そういえば…」 「時間的に今日はどちらか一箇所しか点検できないが」 めったに使わないからこそきちんと確認しておかなければならない。 けれど、うまく話をはぐらかされた気もする。 どうする? ①封印のことについて聞く ②体育館の機材点検に行く ③校庭の機材点検に行く 188 名前:528[sage] 投稿日:2007/08/17(金) 16 05 44 ID ??? ③校庭の機材点検に行く 児童公園でも核心に迫った話になると、必ずはぐらかされていた。 (きっと、教えてくれそうにもないよね) 封印の話は気になったけれど、今は尋ねるのを諦めた。 「じゃあ……校庭の機材点検に行ってくるよ」 私は放送室から遠い校庭側をを選ぶ。 委員長として多くの仕事を抱えている一郎君に余計な手間をかけさせる訳にはいかない。 「では、俺は体育館の点検に行ってこよう。カギはこれを持っていくといい」 一郎君はそう言うと、私に鍵を手渡して放送室を出て行った。 「修二君はどうする? クラスに戻る?」 私は体育倉庫のカギをスカートのポケットに仕舞い込む。 「俺は愛菜ちゃんについていくよ」 「え?でも、クラスの出し物の手伝いをしなくちゃ駄目だよ」 「へーきへーき。今日は買出しメインだし。俺の係りは暇なんだ」 (本当かな? またサボろうとしてるんじゃ…) そんな私の反応を知ってか知らずか、「校内デートだ~」と歌いながら一郎君は歩き出した。 校舎を出て、体育倉庫に向かう。 テニスコート沿いを歩いていると、ふと修二君が足を止めた。 「どうしたの? 修二君」 「テニス、したいなぁと思ってさ…。一週間も体動かしてないとオカシくなりそうだよ」 テニスコートのフェンスに手を掛け、だれもいないコート全体を見渡しながら呟いている。 その視線は毎日練習していていた自分自身を思い返しているようにも見えた。 (修二君は本当にテニスが好きなんだ…) 「今は文化祭期間中だし、練習できないんだよね」 「そうだ! 点検が終わったら一緒にテニスしよっか?」 私に向けられた修二君の瞳が名案を思いついた子供のように輝いている。 「でも…私、全然テニスできないよ」 「いいって、いいって。俺に任せておいてよ。手取り足取り腰とり教えちゃうからさ」 「腰とりは余計だよ! 」 「文化祭の準備ばかりしてたら腐っちゃうしさぁ。たまには羽をのばさなきゃ、ね?」 どうしようかな ①いいよという ②放送委員の仕事に戻るという ③クラスの仕事に戻るという 189 名前:529[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 09 28 25 ID ??? ②放送委員の仕事に戻るという 「ダメだよ、点検が終わったら報告もしなくちゃいけないし、他にもすることがあるでしょ。一郎くんにだけ仕事させるわけにはいかないよ」 「兄貴のことなんかどうだっていいじゃん、兄貴は好きでやってるんだからさ」 「だめです!さて、急がないと下校時間になっちゃう」 私は後ろでぶーぶーと文句をいっている修二くんをそのままに体育館倉庫へ急ぐ。 「待ってよ、愛菜ちゃん!」 修二くんがあわてて追いかけてくる。 「も~、愛菜ちゃんもまじめなんだから」 「修二くんが不真面目すぎるんです」 倉庫の鍵を開け扉をあけると、カビとホコリのにおいが鼻につく。 「うわ~」 思わず顔をしかめた私の横を修二くんがすり抜ける。 「早く終わらせちゃおう、で、俺とあそぼ」 いいながら、修二くんは壁のスイッチを押し電気をつけた。 「えっと愛菜ちゃん、機材ってどこ?」 「たしか…、奥に部屋があってそこにあったと思う」 「奥ね」 修二くんは、ずんずんと奥に進んでいく。 私もあわてて修二くんの後を追いかけた。 「この戸かな?……あ、鍵がかかってる。愛菜ちゃん」 「あ、うん…えっと……これかな」 持っていた鍵の一つを差し込んでまわすと、かすかな音と共に鍵が開く。 扉を開けると、放送機材が所狭しと置かれていた。 「さて、さくっと片付けちゃおう」 「そうだね」 修二くんの言葉に頷いて、私はコンセントを探す。 壁をぐるりと見回してみたけれど、ものが多くて壁が良く見えない。 「コンセント、コンセント…」 乱雑に置かれた機材を覗き込むようにして、壁を確認していく。 最後の一面に来た所で、ふと床に違和感を感じた。 踏んだ感じが他の場所とは違う気がする。 (?) 私は少し戻って足踏みをし、さっき違和感を感じた場所でもう一度足踏みしてみる。 そうするとやはり足の裏に返ってくる感じが違った。 よくよく床を見ると、うまくカモフラージュされているが下に収納庫らしきものがあるようだ。 私は… ①修二くんを呼ぶ ②自分で調べる ③気にせずコンセントを探す 190 名前:530[sage] 投稿日:2007/08/18(土) 15 55 39 ID ??? ②自分で調べる (なんだろ……これ) 地面に埋まるようにして、錆びた色の蓋が薄っすらと見えている。 「どうしたの? 愛菜ちゃん」 配線用の長いコードを手に持った修二君が振り向いた。 「蓋? 錆び付いているな…」 修二君は歩み寄って、首をかしげた。 私たちは肩を寄せ合うようにして、その錆びた蓋を覗き込む。 「ずいぶん古いものみたいだね。この体育倉庫が建つ前からあるのかな?」 「開けちゃおうか?」 修二君は秘密を見つけた子供のように小声で話しかけてくる。 「重そうだよ……大丈夫?」 「任せといて。伊達に鍛えてないからさ。腕の太さだってこんなに違うんだよ、ホラ」 修二君は両腕を捲り上げて私に見せてきた。 たしかに、利き手である左腕の方が右腕よりも太くなっている。 チャラチャラして見えるけれど、テニス部の練習量はかなりのものかもしれない。 「俺的には、かっこ悪いから右も鍛えてはいるけどさ。仕方ないんだよなぁ」 修二君は苦笑しながら、制服の袖を下ろした。 「収納庫みたいだよね」 「開ければわかることだって。いくよっ」 修二君は錆びた取っ手を持って、おもいきり上に引っ張った。 だけど、蓋はビクとも動かない。 「あれ? 重いな…」 「無理しなくてもいいよ」 「絶対に開けてやる。くっそー、ひらけっての! 」 負けず嫌いな修二君はそう言うと、渾身の力で引っ張り上げた。 バキッ その音を聞いたとたん、修二君の背中が勢いよく近づいてくる。 「うわぁぁ!!」 「きゃっ! 」 私達はマットにもつれ合う様にして倒れこんだ。 ドサリという音と共に砂煙が舞い上がり、走り高跳びの棒が乾いた音を立てて地面に倒れた。 私は… ①「いたた……」 ②「お、重い」 ③気を失ってしまった 191 名前:531[sage] 投稿日:2007/08/20(月) 11 07 34 ID ??? ②「お、重い」 一回り大きい修二くんの身体が上にあって身動きが出来ない。 「し、修二くん、早くどいて」 「ったた…、うわ、愛菜ちゃんごめん、すぐ退くから!」 ガコンと音を立てて、修二くんは持ったままの蓋を床に置くとあわてて立ち上がる。 「大丈夫?愛菜ちゃん?」 「う、うん。なんとか」 修二くんが差し出してくれた手を取って、立ち上がる。 制服に付いたほこりを叩きながら足元を見ると、取れてしまった蓋が置かれている。 重そうな蓋は蝶番を止める部分が錆びて弱くなっていたのか、壊れてしまったようだ。 「壊れちゃったね、どうする?」 「まあ、仕方ないよ。かなり重いし、ただ置いておくだけで大丈夫じゃない?」 軽くいいながら、修二くんは蓋の取れた床を覗き込む。 「うーん、暗くて奥が見えないな…」 「ほんとだ…」 見える部分は急な石の階段だった。3段くらいまでは見えるが、もともと薄暗い体育館倉庫だ、その先は真っ暗で見えない。 「降りてみようよ」 楽しそうな顔で、修二くんが私を振り返る。 私は… ①「うん、行ってみよう」 ②「嫌だよ、やめよう」 ③「いいけど、せめて電灯とか持ってこようよ」 192 名前:532[sage] 投稿日:2007/08/20(月) 22 49 48 ID ??? ③「いいけど、せめて電灯とか持ってこようよ」 (そういえば…ハンドライトを持っていたような) お化け屋敷で使うために偶然持ってきていたのを、ふと思い出した。 「私、ちょうど電灯を持ってきているの。ちょっと待ってて」 「あ、愛菜ちゃん待って…」 修二くんの声が聞こえたような気がしたけれど、私は教室に向かって駆け出した。 教室に戻り、自分の手荷物を探る。 「見つけた」 電灯を手に持つと、急いで体育館倉庫に戻ってきた。 「お待たせ、修二くん」 私が息を切らせて戻ってくると、すでに修二くんの手には電灯が握られていた。 「あれ…。どうして修二くんが電灯を持っているの?」 「さっきの工具箱の中に入っているのを見つけたんだ。なのに愛菜ちゃん、俺の話も聞かずに飛び出しちゃうし」 修二くんは手元の電灯をいじりながら、じーっと私を見た。 「……ご、ごめん」 「それじゃ、愛菜ちゃんが持って来た電灯を使うからさ」 修二くんはなぜか、手元の電灯を工具箱に仕舞ってしまった。 「どうして? 二つあった方が明るいでしょ?」 「えーっ、ダメだよ。こういうシチュエーションは俺の腕にしがみ付きながら怖がってもらわないと。 そのためには、電灯は一つじゃないとね」 そう言いながら、修二くんは爽やかに笑った。 (この笑顔…裏があるようにしか見えない) 「張り切って、行こう♪ ね、愛菜ちゃん」 私の手をさりげなく取ると、ゆっくり石段を降りはじめる修二くん。 少し動揺しながら、修二くんに手を引かれ一歩一歩階段を下りていった。 中に入ると真っ暗だったが、電灯で照らすと石畳に囲まれたトンネルのようになっていた。 整然と並べられた石畳は、どう考えても人工的に作った物のようだ。 地下水が染み出しているのか、全体的に湿っていて足元も悪くなっていた。 「意外と奥までありそうだね。先に進む? もう止めておく?」 強張っているのを私を見てさすがに心配したのか、修二くんが尋ねてきた。 ①先に進む ②やっぱり止めておく ③もう少し、中の様子をみる 193 名前:533[sage] 投稿日:2007/08/21(火) 13 23 28 ID ??? ①先に進む 「大丈夫だよ、行ってみよう」 せっかく教室まで戻って、ライトを持ってきたのだから何があるのか見てみたい。 身体がこわばるのは、まわりが良く見えないから本能的にそうなってしまうだけで、怖いわけではないのだ。 (なんたって、『見える』修二くんがぜんぜん怖がってないもの…) 何かよくないものが居るなら、私が行きたいと言ってもきっと止めるだろう。 それに、なぜかこの先を確認しなければいけない気がする。 「そう?それじゃ行くよ」 私の言葉に、修二くんは私の手を引いて歩き出す。 慎重に足を進めていくが、どこまで行っても石畳の通路だ。 「どこまで続いてるのかな?」 さすがに、不安になってくる。 「うーん…、まだ先があるみたいだ。ずっと一本道だし迷うことはないけど…」 修二くんは首を傾げながら、いつもの調子で話す。 「でも、距離的にもう学校の敷地はとっくに出てるね」 修二くんは言いながら、今まで来た歩いてきた方向を照らす。 すでに降りてきた階段も見えない。 それから、これから向かう道へ明かりを戻し肩をすくめた。 来た道同様、先の道も光の届く範囲は今までと変わらず石畳の通路で、その先は暗がりで見えず、どれだけ続いているのか見当もつかない。 「どこまで続いてるんだろうね?っていうか、なんでこんな通路が学校の体育館倉庫につながってるんだろ…?」 「さあ?どこにつながってるか分かれば推測することは出来るけど、どこにつながってるのか分からないままじゃね~」 う~んと、うなりながら修二くんは困ったように言う。 確かにどこにつながってるか確認できなければ、目的なんて分かるはずもない。 「そうだよね…、でもあんまり遅いと一郎くんも心配しちゃうよね」 機材の点検も結局まだやっていない。 どうしよう…。 ①このまま進む ②あと5分だけ進んでみる ③戻る 194 名前:534[sage] 投稿日:2007/08/22(水) 00 25 52 ID ??? ②あと5分だけ進んでみる 「愛菜ちゃんが不安なら、俺はここでやめてもいいよ?」 (どうしようかな…せっかくだし、もう少し先に行ってみたいかも) 「もう少しだけ進んでみようよ。一郎くんが心配する前に帰るようにしないといけないから…あと5分くらいならいいよね」 「……俺は愛菜ちゃんが大丈夫かって聞いているんだけどな」 修二くんの声色が少しだけ曇った。 「私はまだ平気なんだけど、点検が終わってないし……一郎くんに迷惑はかけられないよ」 「兄貴のことなんて、今はどうでもいいじゃん」 「どうでもいいって…そんな言い方はよくないよ。兄弟でしょ?」 「兄弟ね。顔も同じだし、時々嫌になるよ。すぐ比べられるしさ」 一郎くんのことを頼りしている時もあれば、今みたいに疎ましそうにするときもある。 昨日の一郎くんといい、二人の関係は微妙なバランスで成り立っているのかもしれない。 「一郎くんに比べられて、嫌なの?」 「別に……嫌って訳じゃないけど。それより、兄貴は放っておいても平気だよ。後から携帯で連絡すればいいしさ」 「忙しい一郎君を手伝うつもりで点検しているのに、手間をとらせるわけにはいかないよ」 「さっきから、兄貴のことばっかりだ」 「どうしたの? 修二くん」 「なんでもない」 繋がっている修二くんの手に力が篭った。 歩幅もさっきより大きくなって、私を引っ張るように歩いていく。 「修二くんってば」 「口を開けば一郎くん一郎くんって……兄貴がそんなにいい? そりゃ、兄貴はしっかりしてて頼りになるし、ずっと学年トップの成績だよ。 テニスだって中学では兄貴の方が上手かったのに、卒業と同時に辞めたちゃったし。くやしいけど、俺がどれだけ努力してもいつも兄貴の方が秀でてる」 憮然と言い放ちながら、ずんずんと歩いていく。 顔までは見えないけれど、きっと怒っているのだろう。 「しゅ、修二くん。早い。……もう、10分以上経ってるよ」 男の子の歩幅についていけず、とうとう私は音を上げてしまった。 その言葉に反応するようにピタリと歩みを止めると、修二くんは私に向き直った。 「ここには俺と愛菜ちゃんの二人きりって気付いてる? 」 一歩、修二くんは私に近づくと、手元の明かりを消してしまった。 真っ暗闇になり、完全に視界が奪われる。 ただ、繋いだ手のぬくものだけが頼りになってしまった。 「く、暗いよ……」 「前にも言ったと思うけど、愛菜ちゃんと付き合いたいと思っているのは本当だよ。キスしたのだって……まったく下心が無かったと言えば嘘になるしね」 「修二君……」 「俺が怖い? 愛菜ちゃん」 意外なほど、冷静な口調で修二くんが尋ねてくる。 私は…… ①「怖くないよ。修二くんを信じているから」 ②「怖いよ。でも、修二くんを信じているから」 ③「修二くんは卑怯だよ。私を使って一郎君に勝とうとしてる」 195 名前:535[sage] 投稿日:2007/08/22(水) 11 21 50 ID ??? ②「怖いよ。でも、修二くんを信じているから」 冷静に聞かれて私は一瞬自問する。 確かに修二くんが急変してしまう可能性を考えると怖い。 けれどそんな事にはならない、という妙な確信があった。 そう思い答えると、闇の中修二くんが笑うような気配があった。 「う~ん、妙な所で妙な信頼を得ちゃってるんだな~」 「だって、修二くんはいつも私のことを考えて行動してくれてるでしょ」 何も知らない私に水野先生のことを最初に教えてくれたのも修二くんだ。 怪我をして保健室に居た私をすごく心配してくれたし、休んだときには家まで来てくれた。 あの時のキスだって、私の調子が良ければチャンスがあっても修二くんはしなかったと思う。 「一郎くんは嫌なことがあったら、大切な人を自分が盾になって抱え込んで守ろうとするタイプだけど、修二くんは一緒に並んで一緒に乗り越えたいタイプでしょ?」 私が言うと、修二くんはうーんとうなってそうかもと答える。 「だから信頼できるよ。修二くんが私を本当に付き合いたいと思うほど好きで居てくれるなら、ね」 修二くんは一緒に歩いていきたい相手の気持ちをないがしろにするような人じゃないとおもう。 「うわ、でかい釘さされた気分」 修二くんがおどけた調子で笑い、明かりをつける。 けれど明かりに浮かび上がった顔は真剣だった。 修二くんはその明かりを、向かっていた先へと向ける。 「さてと、おしゃべりはおしまい。そろそろ出てきたらどうかな?」 「え?」 修二くんが照らした先、光がギリギリ届くあたりに人の足が見えた。 修二くんの言葉に、その足が動き近づいてくる。 光に浮かび上がったのは… ①冬馬先輩 ②周防さん ③しらない人 196 名前:536[sage] 投稿日:2007/08/23(木) 12 14 03 ID ??? ②周防さん 「よっ! 愛菜ちゃん」 片手を挙げながら、近づいてくるのは間違いなく周防さんの姿だった。 「す、周防さん!?」 「そんなに驚かなくでもいいじゃないか。幽霊かと思ったか? だったら、ちゃんと足だって付いてるぞ」 「すごく心配していたんですよ!」 私の目の前まで近づいてきた周防さんを改めて見つめる。 今は再び会えた事が、何よりも嬉しい。 「この通り、すっかり良くなったよ。心配かけて、ゴメンな」 そう言って、周防さんは私の頭の上にポンと手を載せた。 「謝らなくちゃいけないのは、私の方です。助けてくれてありがとうございました」 「いいってこと。俺は愛菜ちゃんを守るって約束していただろう? だから、気にするなって」 載せられた手が、私の髪をくしゃくしゃと撫でた。 周防さんが戻ってきてくれて、本当によかった。 「周防ってたしか……反主流派の人だっけ」 傍らにいる修二くんが呟いた。 「あ…うん。そうだよ」 修二くんが周防さんの事を知っているということは一郎くんから話をすでに聞いているのだろう。 「ところで、愛菜ちゃん。その隣にいるのは誰かな?」 周防さんは修二くんの姿を見ながら、尋ねてきた。 私が紹介しようとすると、修二くんはそれを制すように一歩前に出た。 「俺は宗像修二って言います。あなたには、コードNO.711と説明した方が早いでしょうか」 修二くんは試すような視線を周防さんに向けている。 周防さんは困ったように頭を掻くと、真剣な顔で口を開いた。 「はじめまして、宗像くん。俺はそのコードナンバーってのが、大嫌いなんだ。二度と俺の前では使わないで欲しい」 そう言って、周防さんは握手を求めるように手を前に出した。 修二くんは周防さんの言葉を聞いて、フッと緊張を解くと周防さんの手を握り返した。 「どうも。俺には兄貴もいるんで、修二と呼んでください」 「いい名前だ。じゃあ、遠慮なくそう呼ばせてもらおう、修二」 意気投合した二人は、固い握手を交わした。 周防さんに会えたし、何か尋ねようかな。 ①どうしてここにいるのかを尋ねる。 ②怪我は大丈夫だったのか尋ねる。 ③この通路について尋ねる。 197 名前:537[sage] 投稿日:2007/08/25(土) 17 46 56 ID ??? ①どうしてここにいるのかを尋ねる。 「ところで、どうして周防さんがこんなところにいるんですか?」 「うーん。それはこっちが聞きたいくらいなんだけどな」 周防さんは私と修二君を交互に見ながら、苦笑した。 「体育館倉庫で偶然この隠し通路を見つけて、ここまで歩いてきたんです。ね、修二君」 修二君は私の言葉に黙って頷いた。 そして真剣な顔で握手を解くと、口を開いた。 「高村さん、教えてください。あなたは研究所の反主流……今の組織のやり方に対抗する組織なんですか?」 「修二。おまえさんがどうしてその事を知っているんだ」 周防さんの様子も真剣なものに変わった。 「ご、ごめんなさい。私が教えたの」 私は二人の間に入るようにして言った。 「あれ? 俺、愛菜ちゃんに言ってないはずだけど…ってあいつか、無口なくせにおしゃべりだな」 周防さんはぶつぶつと文句を言っている。 「高村さん。……実は俺と兄貴は今まで、主流派に手を貸していました」 修二君は苦々しげに呟いた。 「コードナンバーを持っているなら施設出身者だし、当然だろうな」 周防さんは驚く様子もなく淡々とした様子だ。 「そしてさっき、その取引を反故にしました」 「……それはすごい勇気じゃないか。だが、殺されるかもしれないぞ?」 「今のところ、それはないです。でも、この先どうなるかわかりません。兄貴は反対するだろうけど、俺はあなたの組織に協力したいと考えています」 周防さんは黙って聞いていた。 しばらくの重い沈黙が流れ、それに耐え切れなくなった修二くんが口を開きかけた。 すると、それを制すように周防さんが人差し指を左右に振った。 「ノンノン。す・お・う」 「?」 修二君はきょとんとした顔で周防さんを見ている。 「その高村ってのだけは勘弁して欲しいんだ。仲間にしちゃ他人行儀だろ、周防でいい。もっと気楽に話していいからな」 さすがの修二君も呆気にとられていたれど、理解したようにゆっくり頷いた。 「じゃあ、勝手に呼ばせてもらうよ。周防」 「オーケー。そういうノリの方が俺も楽だしな」 そう言って、周防さんは楽しそうに笑った。 ①どうしてここにいるのかを改めて尋ねる。 ②怪我は大丈夫だったのか尋ねる。 ③この通路について尋ねる。 198 名前:538[sage] 投稿日:2007/08/26(日) 04 08 31 ID ??? ②怪我は大丈夫だったのか尋ねる。 「周防さん、あの……」 「ん?」 周防さんは以前と変わらない様子で私に目を向ける。 二人の会話に割って入るようで少し躊躇しつつも、ずっと気になっていた事を口にした。 「怪我の具合はどうなんですか?もう、あちこち動いたりして大丈夫なんですか?」 「怪我?周防が?」 横で聞いていた修二君が首を傾げる。それも当然かもしれない、こうして見る限りは周防さんは少しも体調が悪そうな素振りは見せないのだから。 「この前、私周防さんに助けてもらったの。そのせいで周防さんがとても危ない目にあって、その後どうしてたのかずっと気になってて……」 修二君に説明しながらあの時の事を思い出したのか、知らず握り締めた手が小さく震えた。 夢で出会った周防さんは私の前で大丈夫だと笑って見せた。けれど、あれから心のどこかに周防さんのことがずっとひっかかっていた。 何が出来る訳ではないけれど、会ってこの目で無事を確かめたかったのだ。 「……だから、大丈夫って言ったろ?」 そう言って周防さんは目を細めて笑った。それから私の握り締めた手をその大きな両手で引き寄せると、目線を合わせるように長身を屈めて私を見た。 「ほら、手だって冷たくない。俺は簡単に死にゃしないよ、そんなに心配しなさんな」 語りかける周防さんのゆっくりした優しい口調が、まるで何も知らない子供をあやしているようで面白くなくて、私は足元へ視線を外した。 「心配、します。心配したらいけないんですか」 「いいや、愛菜ちゃんに心配してもらえるなんてこんなに嬉しいことはないさ。ただ」 「……?」 途中で言葉を区切って続きを口にしようとしない周防さんが気になって、私は恐る恐る顔を上げた。目が合った周防さんはかすかに、そしてどこか寂しそうに笑った。 「お前さんの心配そうな悲しい顔は好きじゃない。俺はお前さんの、笑顔が好きなんだ」 「俺だってそうだけどなー」 不意に、隣りにいた修二君が口を開いた。その声は控えめに、けれどはっきりこの展開がおもしろくないと訴えている。 「……っ!」 修二君の一言で我にかえる。至近距離で手を取り合う格好になっている今の状況を思い出して一瞬で頬が熱くなった。周防さんの手をほどいて素早く一歩後ろに下がる。 「す……周防さん、相変わらずですねっ」 「相変わらず、良い男だろ?愛菜ちゃんも相変わらずの照れ屋だな、変わってなくておにーさん嬉しいよ」 それまでの悲しげな様子は消え、目の前の周防さんはいつも通りの笑顔を浮かべて片目をつぶってみせた。 (もう、ほんとに周防さんてば……) 不意に、通路の奥の暗がりから声が響いた。 「良い男はあんな無茶などしませんよ。ねえ、周防?」 背中からかけられた声に、周防さんは小さく「げっ」と漏らした。辺りに硬質な足音を響かせながら現れたのは、見覚えのない華奢な男の人だった。 周防さんと同じ歳の頃のその人は、さっき声を聞いていなければ女性と間違えそうな繊細な雰囲気の美しい細面に、薄暗い通路に場違いのとびきりの笑顔を浮かべている。 突然の登場人物に、私と修二君は二人目を見合わせた。 「美波(みなみ)、いたんなら最初から声かけろよ。物陰で盗み聞きなんて、趣味悪いな」 周防さんは振り返ってその人に向かって毒づいた。美波と呼ばれたその人は、ちらりと私に目をやってにっこり笑う。 「いたいけなお嬢さんをたぶらかすよりは幾分マシだと思いますけどね」 「たぶらかすって……お前……」 周防さんは彼の言葉に額に手を当てて盛大に溜息をついた。 (なんだかすごく打ち解けてるかんじだけれど……) 「愛菜ちゃん、あの人誰?知ってる人?」 耳元で囁く修二君に黙って首を振る。視線は周防さん達に向けたまま、修二君は独り言のように呟いた。 「隠してるっぽいんだけど、なんとなくあれは只者じゃなさそうな……」 どうしよう? ①おとなしく周防さんにその人が誰なのか聞く。 ②ずばり本人に直接誰なのか聞いてみる。 ③修二君にどう只者じゃないのか尋ねる。 199 名前:539[sage] 投稿日:2007/08/27(月) 00 15 13 ID ??? ③修二君にどう只者じゃないのか尋ねる。 「どう只者じゃないの?」 修二君は私の問いに「うーん」と首をかしげた。 そして、私だけに聞こえるほどの小声で耳打ちしてきた。 「はっきりとした事は言えないけどかなりの力を持っていると思う」 「どれくらいの力? 冬馬先輩よりも力がありそうなの?」 「それは無いよ。あれは異常だしさ」 そうやって私に説明している時も、ずっと修二君は美波さんの力を探っているようだった。 「なるほどな。修二は能力を見抜く力があるのか…」 周防さんは修二君の心でも見透かしたような口ぶりで呟いた。 「そういう周防は、変わった能力みたいだね」 さっきまで美波さんを見ていた修二君が、今度は標的を変えるように周防さんをジッと見つめる。 「俺の能力、バレちゃったのか…。その力はえらく精度がよさそうだな」 「兄貴と一緒じゃないと全然ダメなんだ。あの美波って人みたいに隠されたら見抜けないし。だけど、二人だったらこんなもんじゃないよ」 修二君と周防さんは力の事を話しているのだろうか。 私には及びのつかない会話を交わしている。 それを黙って見ていた美波さんは、微笑みながら私に話しかけてきた。 「……彼は修二君だったかな。あの力、敵にまわすと怖い能力ですね」 「え? 見える力ってそんなに怖いんですか?」 私は美波さんの言葉に疑問を感じて話しかけた。 「それは、恐ろしいですよ。それぞれに備わっている先天的な特殊能力の性質を知られるということは、死に直結していますからね。 タネを明かされた手品は、その瞬間から手品では無くなる…。だから能力者は皆、少しでも見抜かれないように隠そうとするのです」 (あれ?そういえば一郎君と修二君って私の能力を知らないのよね…。もしかして『封印』と関係があるのかな) 私がボンヤリ考えていると、隣で美波さんがクスクスと笑っていた。 「愛菜さんだったかな。君は表情が次々と変わって、見ていて飽きませんね」 「そ、そうですか?」 私は褒められているのか、からかわれているのか分からず、曖昧な返事をした。 「ああ…私としたことが、自己紹介がまだでしたね。私は大宮美波と申します。周防の考え方に共感して、行動を共にしているのです。 これから、よろしくお願いしますね」 美波さんは優雅な物腰で、私に挨拶をした。 ①美波さんのことをもっと尋ねる ②ここにいる理由を尋ねる ③この通路について尋ねる。 200 名前:540[sage] 投稿日:2007/08/27(月) 17 21 36 ID ??? ②ここにいる理由を尋ねる 「こちらこそよろしくお願いします。ところで……」 私は美波さんに改めて会釈をして、尋ねる。 「周防さんと美波さんはなぜここに?」 「それはこっちのセリフなんだけどな、愛菜ちゃん」 私の言葉に、修二くんから私に顔を向けて周防さんが苦笑する。 「なぜって……」 私は修二くんと顔を見合わせる。 「俺たちは学校の体育館倉庫でここの入口を見つけて、面白そうだから行ってみようって、ね?」 修二くんの言葉に私も頷く。 「あー……なるほど。入口に目くらましをかけてたけど、愛菜ちゃんと修二の力の前には無意味だったってことか」 周防さんは肩をすくめて笑う。 「一応一般人には分からないようにしてたんだけどな。見つけたのが愛菜ちゃん達でよかったといえばよかった、のかな?」 「結果的には良かったといえますが、本来あってはならないことですよ、周防。きちんと反省してくださいね」 周防さんの言葉に美波さんはやんわりと釘をさす。 その言葉に周防さんは苦虫をつぶしたような顔になり、がっくりとうなだれた。 「なんか周防ってあの人に頭上がらないんじゃないか?」 こっそりと修二くんが私にささやいてきたが、私はどう答えていいのか分からずあいまいに笑う。 少しの間うなだれていた周防さんだったが小さく「反省タイム終わり」と呟いて顔を上げると、いつもどおり顔を上げにっこり笑う。 「そうそうなんで俺たちがここにいるか、だったよね」 「復活早っ」 「それが俺の長所だし」 思わず突っ込みを入れた修二くんにあっさりと周防さんは言って、言葉を続ける。 「今はもう使われていなくて、知ってる人も少ないけど、昔組織が使っていた建物につながってるんだ」 「え!?」 驚く私と修二くんに、周防さんはいたずらっぽくウインクする。 「でも主流派は知らない通路なんだよ。昔、処分されることが決まった実験体にされてる人を、こっそり逃がすために反主流派が作ったものでね」 「良くこれだけの通路を、主流派に気付かれずつくれたなぁ」 「能力者の力を微妙に捻じ曲げたり、無効化する研究もされててね、その技術をフル活用して作ったんだ。今でも主流派の能力者のアンテナに引っかからないように、いろいろ仕掛けが作動したままだよ」 「現に今までこの通路を感知した能力者は居なかったんですけれどね」 そう言って、美波さんは私たちを見て首を傾げた。 質問するなら今かな? えっと… ①「今、この先はどこにつながってるんですか?」 ②「逃がした人は、どうなったんですか?」 ③「じゃあ、私たち侵入者だと思われたんですね」 201 名前:541[sage] 投稿日:2007/08/28(火) 23 18 42 ID ??? ②「逃がした人は、どうなったんですか?」 私の問いに、明るい周防さんの表情が一瞬だけ曇った。 「あー、うん。逃げ延びて、普通に暮らしている人もいるぞ」 「よかった」 逃げ延びて、元気に暮らしている人がいると思うとうれしくなる。 だけど、もし逃げられなかったらどうなるのだろうと、ふと不安になった。 「もしも、逃げ切れなかったらどうなるんですか?」 「それは……だな」 周防さんは口ごもって、頭を掻いた。 その仕草に不安が膨らんでいく。 「……逃げられずに処分された人もいるってことだ」 「そんな……」 血の気が引き視界が歪んで、膝の力が抜けていく。 「だ、大丈夫、愛菜ちゃん!」 眩暈で倒れそうになる私を、すかさず修二君が私を支えてくれた。 「ありがとう。大丈夫だよ」 私は修二君に心配をかけまいと笑顔で応え、なんとか立ち上がった。 そんな私たちの姿を硬い表情で見ていた周防さんだったが、美波さんに肩をポンと叩かれ、弾かれるように顔をあげた。 「……彼らの様子を見ていて、過去の自分自身と重なりましたか?」 「どうかな」 周防さんはとぼけるように両手を挙げる。 「素直じゃないですね」 「……あんまり昔のこと過ぎて、ここでの出来事なんてすっかり忘れちまったさ」 いつもと変わらない、明るい口調で周防さんは言った。 けれど、美波さんは試すような視線を向けながら話を続ける。 「周防の少年時代ですか。その頃の周防はさぞひねくれた少年だったのでしょうね」 「どうしてそう思うんだよ」 「子供の頃から素直だったら、こんな嘘つきな大人にはなりませんからね」 そう言って、美波さんは周防さんに添えた手をゆっくりはずした。 次は何を聞こうかな。 ①「今、この先はどこにつながってるんですか?」 ②「じゃあ、私たち侵入者だと思われたんですね」 ③「周防さんのここでの出来事って何ですか?」 202 名前:542[sage] 投稿日:2007/08/29(水) 13 38 37 ID ??? ①「今、この先はどこにつながってるんですか?」 私が周防さんたちがやってきた方向を指差すと、周防さんはいたずらっぽく笑っていった。 「どこだと思う?」 「学校からずっと南西の方向に歩いてきたはずだけど……」 周防さんの言葉に、修二くんが首を傾げながら考える。 修二くんに言われて、私も頭の中で地図を広げた。 (学校から南西って言うと、オフィス街よね。あ、でも手前は商店街か) 廻りが暗くて、用心しながらゆっくり進んできたとはいえ結構な距離を歩いてきているはずだ。 修二くんも私と同じことを考えていたらしく、ぶつぶつと呟く声にオフィス街の主な建物の名前が混じっている。 そんな私たちを、周防さんは楽しそうに見ている。 美波さんも考える私たちに助言をしてくれる様子もなく、微笑んだまま成り行きを見守っている。 (でも、完全にまっすぐって分けでもないわよね?) わずかではあるがこの通路が右にいったり左に行ったりと蛇行していたことを思い出し、ますます混乱する。 もともと組織が使っていた施設というのなら、この先につながっている場所は、出来てからそんなに時間が経っていないのではないだろうか。 最近出来た、もしくは改装された場所? それを思い出し思い浮かべる。 「さて、そろそろ分かったかな?」 周防さんが答えを促す。 えーっと… ①「病院?」 ②「百貨店?」 ③「ヒントください!」 203 名前:543[sage] 投稿日:2007/08/30(木) 00 30 27 ID ??? ①「病院?」 (たしか……以前、改装していたし) 「そ、正解。よくわかったな」 周防さんが感心したように言った。 「研究所って、建物の構造が病院に近いだろうなって思ったんです。 病院が以前改装していたのを思い出してピンときました。 あと、病院の一部が研究施設なら、周りの住民の目も欺きやすそうですよね」 私の言葉を聞いて、美波さんはゆっくり頷いた。 「鋭いですね。愛菜さんはなかなか見所がありますよ」 「愛菜ちゃんはいつも見所ありまくりだよ、ね?」 修二君が私を覗き込んで、にっこり笑った。 「そ、そんなことないよ」 褒められるのが恥ずかしくて、私は思わず下を向いた。 「愛菜さんが言う通り、あの病院は以前、研究施設が併設されていました。 そして旧研究施設は改装され、現在は病院の入院棟となっています」 美波さんは私たちによどみなく説明してくれる。 「でも、皮肉だなー。俺が子供の頃にいた施設って、家からめちゃくちゃ家と近かったんだ」 修二君はようやく謎が解けたというような声をあげた。 (そうだった。たしか、一郎君と修二君は施設にいたんだよね) 「修二君。ぜんぜん気がつかなかったの?」 私は不思議になって尋ねた。 「うん。子供の頃すぎてあんまり憶えてないけど、塀に囲まれていたから周りの様子はわからなかったよ」 「確かに、塀に囲まれて逃げられないようなっていたな」 周防さんは眉間にしわを寄せて、心底施設を嫌っているようだった。 「それだけではありませんよ。 子供は特に無垢ですから、ここから出られないと思い込ませるなんて、施設側には容易いことだったのです。 さらに深いマインドコントロールを施して、何も疑うことなく施設側の言いなりになる人間を大勢作り出していました。 ですから、多くの施設出身者は今も施設に逆らうことができないのですよ」 美波さんは施設の内情を私たちに淡々と説明してくれた。 ①美波さんに施設関係者なのか尋ねる ②主流派が私を狙う理由を尋ねる ③周防さんにこの通路で起こった出来事について尋ねる 204 名前:544[sage] 投稿日:2007/08/31(金) 03 21 44 ID ??? ①美波さんに施設関係者なのか尋ねる 「美波さんはもしかして……施設の関係者、だったんですか?」 すらすらと美波さんの口から語られる内容はどうしたって部外者は知りえない情報に聞こえる。美波さんは私をちらりと見て、目が合うとにっこり笑った。 「まああなたがそうおっしゃるのも当然でしょうね。こんな話を真顔でする部外者がいたら私も会ってみたい」 はぐらかすようにそう言って、美波さんは目を伏せた。薄明かりに照らされた長い睫毛はこころなしか少し震えているように見える。 なにか、まずいことを聞いてしまったんだろうか。 美波さんに謝らなければいけない様な気がして、私が口を開こうとした所で修二君が痺れを切らしたように言った。 「で、結局の所あなたはどういう人間なんです?施設の運営に関わっていたことでもあるんですか?」 「修二君!」 「良いんですよ、愛菜さん。素性のはっきりしない人間と共に行動などできませんからね。いずれはお話しなければならない事ですから」 美波さんの言葉に、隣りの周防さんも「そうだな」と頷いた。 「先ほどの修二さんの質問ですが、現在私の表向きの職業は医師です。表向き、と言ってもきちんと資格はありますよ」 「こいつは腕は良いんだが、治療が少々荒っぽいのが難点だ。……二人共、覚えておいたほうが良いぞ」 横でそう付け足した周防さんは、そこで何かを思い出したかのように小さく身震いした。 「……他の患者さんはあなたのように無茶はしませんからね。あなたは特別待遇なんですよ、周防。良かったですね、嬉しいでしょう」 「ああ、ほんとに」 (二人共、仲が良いんだなあ) 二人のやりとりを聞きながら美波さんにお手上げ、といったかんじの周防さんを見ているとなんだか可愛らしくて自然と笑みがこぼれた。 「さて。私は長年この不良患者と行動を共にしている訳ですが、周防との付き合いはかれこれ九年位になります。知り合ったのはご推察の通り、この施設内です」 美波さんはそう言って、辺りを見回すように周囲へ視線をめぐらせた。相変わらずあたりは暗闇に覆われている。 「私がこの施設に入所したのは小学校にあがる前でした。幸か不幸か、入所してほどなく私の能力は開花し、長年にわたって研究対象として所内で丁重に管理されることになりました。 当時の私はマインドコントロールを施されていましたから、非常に従順な良い模範でしたね。成長するに従って、研究員達の代わりに他の被験者たちの管理を任されるようになり、何の疑問も持たずに組織に都合の良い人間を次から次へと養成していた訳です」 「マインドコントロールされてた人間が、どうして反主流派に?」 修二君の問いかけに美波さんは困ったように笑った。 「修二さんは意外とせっかちですね。かいつまんで言うと、マインドコントロールが解けたからです」 「マインドコントロールって簡単に解けるものなんですか?」 「いいえ、愛菜さん。組織の施すマインドコントロールは特別強力です。なにしろ非合法ですからね、被験者の健康など省みる必要がないのですから」 それまで黙って聞いていた周防さんが、美波さんの後に静かに付け足した。 「だが、人の精神に作用するものだ。強いショックを受けると稀にマインドコントロールが解けることがある」 「幸い、研究員達は私のマインドコントロールが解けた事に気付かなかったようでした。その後自責の念に苛まれる私を救ってくれたのが、ここにいる周防です」 「よせよ、救ったなんてそんなたいした事しちゃいないだろ」 美波さんにまっすぐにみつめられて、周防さんはなんでもないというふうに両手をひらひらさせた。 「いいえ。あなたは私の罪を償う術を、妹の声を伝えてくれたんです。……それからの私は表向きはマインドコントロールされたまま、反主流として周防と共に活動するようになりました。 どうでしょう、修二さん。これで先ほどの質問の答えになるでしょうか?」 「そうですね、だいたいわかりました。愛菜ちゃんは?」 修二君が私の顔を覗き込む。そんなに何か聞きたそうな顔をしていたのだろうか。 (確かにちょっと気になることはあるけど……) どうしようかな? ①美波さんが受けた強いショックとはどんなことだったのか聞いてみる。 ②美波さんの妹さんと周防さんの関係について聞いてみる。 ③なんだか悲しそうな美波さんが気になるので何も聞かない。 205 名前:545[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 00 18 10 ID ??? ②美波さんの妹さんと周防さんの関係について聞いてみる。 「妹さんと周防さんは知り合いなんですか?」 「……ああ、綾のことはよく知っているよ」 周防さんは複雑な表情で答えた。 (妹さんは綾さんっていうのね) 「綾さんは二十歳くらいですか? 美波さんの妹さんなら、きっと綺麗な方なんでしょうね」 美波さんの妹さんなら、きっとすごい美人に違いない。 妹が欲しいな、と小さい頃から思っていたから妹さんがいる美波さんが少し羨ましく思えた。 「愛菜ちゃん……それは…」 周防さんは言いよどんで、美波さんの方を見た。 美波さんはその視線に応え、小さく頷くと私に向き直った。 「私の妹、綾は16歳から永遠に歳をとることはありません」 「え……」 美波さんが言った意味が飲み込めず、私は言葉に詰まった。 修二君も驚いた顔で、美波さんを見た。 「綾は…妹は16歳で死にました。直接的に手を下したわけではありませんが、私が殺してしまったようなものです。 それが、私が背負っている罪なのですよ」 美波さんは真っ直ぐ私を見つめたまま言った。その瞳に、嘘や偽りは無い。 16歳といえば、私と同じ歳だ。 美波さんに何か言わなくちゃいけないと思うのに、思考が停止してしまったように上手く言葉が出てこない。 「それはお前の考え過ぎだ、美波。あの頃のお前は精神を組織に支配されていただろうが。 当時の状態でマトモな判断なんて出来なかったんだよ」 自分自身を責める美波さんを咎めるように、周防さんが強い口調で言った。 「支配を受けていたとはいえ、綾の逃亡計画を組織に告発したのは、他でも無い私です。 そして、周防に瀕死の重症を負わせ、妹の命までも削る結果になってしまった。 マインドコントロール施されてもいても、いなくても、この事実がある以上は罪を背負い続けなければならないのです」 美波さんの口調に全く迷いはなかった。 きっと罪を償おうとする決意に迷いがないからだろう。 私は… ①二人の様子を黙ってみている ②「妹の綾さんって……もしかして」 ③「逃亡計画ってこの通路のことですか?」 206 名前:546[sage] 投稿日:2007/09/01(土) 12 47 58 ID ??? ②「妹の綾さんって……もしかして」 (待って、だけど……あれはこよみさんのはずじゃ) 夜の校庭の半分近くを、オレンジのような何かが照らしている夢を思い出す。 そして、私の腕の中で―――私とそう年の変わらない周防さんが傷だらけで横たわっていた。 夢で見た光景と美波さんの話はリンクしている。 逃げ出した綾さんと周防さんが通路の出口で組織に捕まったとすれば、辻褄も合う。 だけど、私が見た夢では周防さんと逃げていた女の子は綾さんではなく、こよみさんのはずだ。 「あの…周防さん。ひとつ聞いてもいいですか?」 私は顔を上げると、周防さんに話しかけた。 「ああ。なんだい、愛菜ちゃん」 「こよみさんって……誰ですか?」 私の言葉に、周防さんが一瞬息を呑んだ。 美波さんも目を見開いて、私を見つめた。 「愛菜ちゃん、どうしてその名前を知っている? 誰かから聞いたのか?」 「いいえ、夢をみたんです。周防さんは一緒にいた女の子に向かって『こよみ』と話しかけていました。 病院の中庭で一緒にいる光景や、傷ついた周防さんを抱きしめる光景――いつも周防さんの傍らには『こよみ』さんがいたんです」 「そうか……。愛菜ちゃんには隠し事はできないなー」 周防さんは参ったと言いたげな様子で、大げさに頭を掻いた。 「ご、ごめんなさい」 「いいって、いいって。少し驚いただけだから。うん、愛菜ちゃんの夢に出ていた女の子、その子は間違いなく綾だな」 「でも、周防さんはこよみと呼んでいましたよ?」 私は意味が分からず、頭の中は疑問符で埋め尽くされてしまう。 その姿を見て、美波さんがクスクスと笑った。 「綾は『こよみ』なんですよ。愛菜さん」 「え?」 「コードナンバー.543。それが綾の施設での呼び名でした。施設で名前はいりませんからね。 周防は私に会うまで、綾という本当の名前すら知らなかったのですよ」 少しだけ笑顔に影を落としながら、美波さんが呟いた。 「ふーん。そっか、そういうことか」 さっきまで黙っていた修二くんが突然閃いたように声をあげた。 「修二はわかったみたいだな。愛菜ちゃん、俺が綾を『こよみ』と呼んでいた理由はわかったかい?」 周防さんが覗き込むようにして私に尋ねてきた。 なんて答えようかな。 ①わかった ②わらない ③ヒントを要求 207 名前:547[sage] 投稿日:2007/09/03(月) 14 58 48 ID ??? ①わかった 「番号の543の言い方をちょっと変えたんですね」 「そうそう」 「何のひねりもなくて、つまらないでしょう?」 「わるかったな」 私の答えにすかさず美波さんが、周防さんを見ながら苦笑する。 周防さんも言われなれているのか軽く肩をすくめるだけだ。 (それじゃあ、あの後こよみさん、あ、綾さんって言ったほうがいいのかな、綾さんは……) 私が夢で見たとき怪我をしていたのは周防さんで、綾さんではなかった。 周防さんが気を失った後、私は目が覚めてしまってその後どうなったのかは分からないけれど、綾さんはその後亡くなったのだろう。 (そういえば……) 私は冬馬先輩の言葉を思い出す。 『僕が隔離された部屋の前の主は、力を暴走させた挙句病に冒され 再び日の光を浴びる事無く若くしてこの世を去ったと聞きました』 私はあれをこよみさん、つまり綾さんのことだと思った。 髪の長いきれいな女の子だったと、冬馬先輩も言っていたから間違いないだろう。 ならば、周防さんが気を失った後、綾さんは力を暴走させたあげく病に冒されあの部屋に閉じ込められた、ということだろうか? (気を失った周防さんを見て、綾さんは自分を責めてた……) 気を失った直後、私はすぐに目が覚めてしまったが、その一瞬叫ぶ綾さんのなかで何かが壊れたような音を聞いた気がする。 病というのも精神的なものだったのかもしれない。 「愛菜ちゃん、どうした?そんな苦しそうな顔しない」 周防さんに軽く頭を小突かれ、私ははっと顔を上げる。 いつの間にか考え込んでしまっていたようだ。 「あ、ご、ごめんなさい」 とっさに謝った私に、周防さんが優しく笑って、いつものように頭にぽんと手をのせる。 「愛菜さん、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」 その横から美波さんが少し心配そうに私を覗き込んできた。 私は…… ①「大丈夫です」 ②「ちょっと、疲れただけです」 ③「そう、ですか?」 208 名前:548[sage] 投稿日:2007/09/03(月) 23 29 53 ID ??? ①「大丈夫です」 私は心配してくれた二人に向かって、笑いかけた。 周防さんと美波さんはちょっと困ったように顔を見合わせた。 すると、今まで黙って話を聞いていた修二君が、溜息を吐くように私に向かって話しかけてきた。 「愛菜ちゃんてさ、いっつも見ていて思うけど……そんな風に無理して笑うから疲れちゃうんだよ」 「え? 別に無理してるつもりはないよ」 「無理してるさ。俺の場合、見ていれば疲れていることなんてすぐにわかるし」 修二君の見透かすような視線に、思わず目を逸らす。 「で、でも本当に無理してないよ」 私は言い訳のように繰り返して言った。 「愛菜ちゃんはこの通路にある残留思念の毒気にあてられちゃってるのに、どうして笑って誤魔化すかなー」 修二君は納得いかないのか、不満の色を露わにしている。 「誤魔化してなんかいないよ」 「茶道室での事といい…自覚がないなら、余計タチ悪いじゃん」 「タチ悪いって……」 修二君の言葉に、思わずムッとしてしまう。 修二君はそんな私を見て、「めんどくさ」と苛立たしげに言った。 「やぁ、若いってもどかしいな」 周防さんは私と修二君を見ながら、しみじみと呟く。 「こらこら、周防。そんなことを言っている場合ではないでしょう。 修二さん、心配ならもう少し優しく愛菜さんに伝えないと嫌われてしまいますよ。 愛菜さんもせっかく修二さんが心配してくれているのですから、もう少し甘えてみてはいかがですか?」 美波さんの言葉に周防さんは大きく頷いていた。 (たしかに、心配させまいとして無理してたかも) 修二君を見ると肩をすくめて憮然としていたけれど、観念したように一歩前に出てきた。 「えっと…愛菜ちゃん、ごめん」 「あ、ううん、私こそ。それに、心配してくれてありがとう」 「俺、愛菜ちゃんの気持ちを全然わかってなかったかも。疲れてるのに、嘘つくなよって思ってた」 こうやってはっきり言葉にしてしまうのも、修二君らしいのかもしれない。 私は ①「次は疲れたらちゃんと言うね」 ②「私もムカついて修二君のバカって思っちゃった」 ③「素直に言うと、実はおぶって欲しいな」 209 名前:549[sage] 投稿日:2007/09/04(火) 04 47 57 ID ??? ②「私もムカついて修二君のバカって思っちゃった」 「……」 私の言葉が余程意外だったのか、修二君は目を丸くして固まった。予想外の反応に、抱えていた修二君に対するもやもやが次第に薄れてゆくのを感じる。 (珍しいもの、見ちゃったかも) 「えーと……」 戸惑ったように何か言おうとする修二君に、ほんの少しの優越感を持って笑いかける。 「って言っても、ほんとにちょっとだけだけど!これでおあいこだから、修二君も気にしないで。ね?」 「そう、だね。うん。ほんとごめん」 「だから気にしないでってば。心配して言ってくれたのはわかったから」 反省会のように延々続く私たちのやりとりを、周防さんと美波さんはやれやれといった様子で止めに入った。二人苦笑を浮かべつつ、それでもその表情は優しい。 「はいはい、お二人さん。その辺にしときな、修二も反省したよな?」 「愛菜さんも、これからはあまり無理はしないようにね」 二人に間に入られて、ようやくその場が収まった。修二君となにやら子供っぽいケンカをしたようで、私は今更ながら恥ずかしくなってきた。修二君もバツが悪そうに頭を掻いている。 (うう、変に意地張って子供っぽいって思われただろうな……) そんな私の考えなどお見通しなのか、隣りにいた美波さんが慰めるように言う。 「相手を思うがゆえのすれ違いも、時に起こります。お互いがお互いのことを大切に思えばこそ、伝えなければならない事も出てくるものですし」 「ま、誰にも譲れないものはある。たまには本音でぶつかるのも良いだろ」 続けた周防さんはいつものように陽気にウィンクを飛ばした。 美波さんと周防さんの話を聞きながら、私はふとある人たちの事を重ね合わせていた。 私が重ね合わせていたのは…… ①一郎君と修二君 ②春樹と私 ③周防さんと美波さん 210 名前:550[sage] 投稿日:2007/09/04(火) 15 53 06 ID ??? ①一郎君と修二君 (そうだよね、大事に思ってるならちゃんと話さないと……) ふっと思いうかんだ一郎くんと修二くんの状態。 一郎くんは修二くんに何も言わず、一人ですべてを背負って行動していた。 修二くんもそんな一郎くんに何も聞くことはなく、それでも二人に一番良いと思われる行動をしている。 けれど気持ちは微妙にすれ違っているように思えて仕方がない。 (双子だって、何も言わなくても通じるわけじゃないのにね……) そう思って、修二くんを見上げると一瞬目が合ったが、何かに気付いたように振り返った。 「どうしたの?修二くん」 「あ~……あまりにも俺たちの帰りが遅いから、兄貴が来たみたいだ」 「え?」 私も振り返ったが、見えるのは闇だけで人の姿は確認できない。 (そういえば……) 病院で会ったときも、なぜか一郎くんは修二くんの場所を知っていた。 あの時一郎くんは『分かるからだ』と言っていたけれど……。 「修二のお兄さんが来るのか?」 「みたいだ」 周防さんの言葉に修二くんは肩をすくめて答える。 微妙に突き放したような答えに周防さんが苦笑する。 「では、私は戻りますね」 そのとき唐突に美波さんがきびすを返した。 「え!?」 驚く私に、美波さんはにっこり笑う。 「先ほどお兄さんと一緒のほうが良く見えると言っていましたからね。これ以上私の力を見透かされるのも困ってしまいますので」 「あ……」 「では、またお会いしましょう」 美波さんは私たちが言葉を発する前に、闇に紛れて行った。 なんとなく沈黙が落ちる。 どうしよう…… ①周防さんはここに居て良いのか聞く ②なぜ一郎くんは修二くんの場所が分かるのか聞く ③どれくらいで一郎くんが来るのか聞く 211 名前:551[sage] 投稿日:2007/09/04(火) 22 16 39 ID ??? ①周防さんはここに居て良いのか聞く 「周防さんはここに居ていいんですか?」 私は美波さんが消えていった方を見ながら尋ねた。 「俺も退散するよ。穴に入り込んだネズミ退治に来ただけだしな」 周防さんはそう言って、私と修二君を交互に見ながら笑った。 「ネズミって、俺と愛菜ちゃんのこと?」 修二君は不服そうに口を尖らせながら、抗議する。 「あの連中と勘違いしたんだよ。じゃあな、お二人さん」 そう言って周防さんは片手を挙げながら、美波さんが去っていった方向に歩き出した。 けれど、二歩ほど進むとピタリと歩みを止めてしまった。 「あーっと、忘れるところだった。この前はいきなりの襲撃で渡せなかったからな」 周防さんはポケットから紙を取り出すと、私に渡してきた。 「俺の携帯番号が書いてある。困ったときは連絡くれればいいから。あと、修二も愛菜ちゃんから聞いといてくれ」 「はい」 「りょーかい」 私と修二君は、ほぼ同時に答えた。 「それともう一つ。修二、ちょっといいか?」 周防さんはちょいちょいと手まねきをして、修二君を呼び寄せる。 そして、耳元で何かを伝えていた。 (私には内緒の話なのかな…) 置いてきぼりにあったみたいで、なんとなく面白くない気分のまま二人の様子を見つめた。 周防さんの耳打ちを聞いて、修二君の顔が段々真剣なものに変わっていく。 そして、周防さんの話を聞き終わると、修二君は声には出さずに「わかった」と口を動かした。 「て、ことなんだ」 「…マジかよ」 「あのー、私には内緒なんですか?」 一応、確認のつもりで周防さんに尋ねる。 「それは、修二の判断に任せたからな。知りたいなら、修二から直接聞いてくれ。それじゃ、またな」 周防さんは闇に溶けるように、消えてしまった。 どうしようかな。 ①修二君に内緒話の内容を尋ねる ②修二君が言うまで、内緒話の内容を尋ねない ③どれくらいで一郎くんが来るのか聞く 212 名前:552[sage] 投稿日:2007/09/05(水) 15 56 14 ID ??? ①修二君に内緒話の内容を尋ねる 「修二くん、周防さんなんて言ってたの?」 「あぁ、うん、後で説明するよ。兄貴も一緒のほうが一回で済むし」 修二くんはそう言って、一度周防さんたちが消えた方向を見据えると、いつもの顔に戻りにっこり笑った。 「それじゃ俺たちも戻ろうか」 「うん」 私は歩き出した修二くんについて、一歩踏み出す。 (……っと、っと、と?) その途端めまいがして思わず壁に手をつく。 「愛菜ちゃん!」 気付いた修二くんが、すぐに私を支えてくれる。 「だから言ったでしょ?無理してるって」 「……ごめん」 本当に修二くんの言ったとおりだった。 歩き出すまでぜんぜん自覚がなかった自分に落ち込む。 「ほら、掴まって。早くここから出よう、兄貴ももうすぐ合流するから」 「うん、ありがとう」 修二くんに支えられて歩き出してすぐに、闇の中に小さな明かりがゆれているのが見えた。 「大堂、大丈夫か?」 やって来た一郎くんは真っ先に私に尋ねてくる。 やっぱり一郎くんにも、私の状態が『見える』のだろう。 「何とかね、ちょっとふらつくけど……」 「修二、お前が付いていながらなんて無茶させるんだ」 「ごめん、配慮が足りなかったよ」 「……修二くんが悪いわけじゃないよ。私が大丈夫だって意地張っちゃったから」 一郎くんの言葉に、言い訳することもなく修二くんが謝る。 とっさに私が口を挟むと、一郎くんがなんともいえない顔で口を閉ざした。 「……とりあえず、ここから出よう。大堂はここに長く居ないほうがいい」 一郎くんは一つため息をついてすぐにいつもの表情に戻ると修二くんの反対側から私を支えた。 「行くぞ修二」 「愛菜ちゃん、ちゃんと掴まっててね」 「えっ!?」 二人が同時にかがんで私の身体を持ち上げる。 二人が組んだ両腕に座っているような状態だ。 急に視界が高くなり、慌てて両隣にある一郎くんと修二くんの肩に手を添えて身体を支える。 それを確認して、二人は走っているといっていい速度で進み始めた。 何の合図もないのに、二人の呼吸はぴったりだ。 (やっぱり双子なんだな……) 恥ずかしいのも忘れて、思わず感心してしまう。 速度が速度だっただけに、降りてきた階段まで到達するのにあまり時間はかからなかった。 降ろしてもらって体育館倉庫を出ると、すっかり日が落ちてしまっている。 下校時間も過ぎてしまっているようだ。 春樹たちも心配しているかもしれない。 どうしよう…… ①今日はもう家に帰る。 ②周防さんの話が気になるので聞く。 ③とりあえず、春樹に電話する。 213 名前:553[sage] 投稿日:2007/09/05(水) 19 19 59 ID ??? ①今日はもう家に帰る。 私が家に帰る事を告げようとする前に、二人は同時に口を開いた。 「日がすっかり落ちているな、送っていこう。大堂」 「話はまた今度でいっか……送ってくよ、愛菜ちゃん」 一郎君と修二君の視線が私の頭上でぶつかっている。 口火を切ったのは、一郎君の方だった。 「修二。さっき文化祭実行委員の藻部がお前を探していたぞ」 「げっ。それ、マジ?」 「嘘をついても仕方ないだろう」 「やばっ。アイツ、絶対に怒ってるよー。もう帰っちゃったかなぁ」 悪戯が見つかった子供のように、修二君は頭を抱えている。 「愛菜ちゃん、ゴメン。俺、やっぱり一度教室に戻るよ」 「あっ、うん。そうだね」 「ホント、ゴメンね」 私に手を合わせると、修二君はすごい速さで校舎に戻っていった。 その姿が見えなくなると、私は一郎君に向き直る。 「修二君、またクラスの仕事をサボってたのかなぁ。私には今日は暇だって言っていたのに」 「だろうな。藻部は修二が逃げ出したと言っていた」 「やっぱり」 (仕方ないなぁ……) ぼんやりそんな事を考えていると、一郎君が私の鞄を黙って手渡してくれる。 鞄までしっかり用意してある辺り、さすがとしか言いようがない。 「あ、ありがとう」 「では帰ろうか」 一郎君と私は校門に向かう。 体調の悪い私を気遣うように、一朗君がゆっくり歩いてくれている。 「大堂。大丈夫か?」 「あ、うん。へいき……」 そう言いかけたところで、さっきの修二君とのやり取りが頭をよぎった。 (私がやせ我慢しても、一郎君にはお見通しなんだよね) 私は… ①「ちょっと歩けそうにないかも」 ②「ごめん。タクシー呼んでもらっていい?」 ③「平気だよ、ありがとう」 214 名前:554[sage] 投稿日:2007/09/06(木) 16 42 08 ID ??? ①「ちょっと歩けそうにないかも」 修二くんが言うように、自分には分かっているのに無理をされるというのは気持ちのいいことではないだろう。 そう思って、素直に口にする。 正直、自分でもこんなに影響されているなんて思っていなかった。 うまく足に力が入らない。 しっかり気をつけていないと、そのまま座り込んでしまいそうだった。 「大丈夫か?」 一郎くんはすぐに私を支えると、顔を覗き込んでくる。 「だいぶ疲れているようだな」 「あの通路に居るときは特に感じなかったんだけど、戻ろうとしたら急に、ね」 「そうか。だが今回は大堂自身の気が乱れているわけではない。 外から影響を受けて、うまく気が巡らなくなっているだけだ。 気のめぐりが悪くなって疲労しているが、少し休めば回復するだろう」 そう言って、一郎くんは私の額に手を当てた。 「少し影響を取り除いておこう」 そう言って当てられた一郎くんの手がとても暖かく感じる。 「何をしてるの?」 「大堂に影響を与えている思念を散らしている。 俺の力はこういうことに向いてはいないから完全に取り除くことは出来ないが、時間がたてば自然に消えるものだから心配しなくていい」 一郎くんはしばらく私の額に手を置いていたが、しばらくしてその手をおろす。 「さっきよりは良くなったんじゃないか?」 「うん、ありがとう」 確かにさっきまでまとわり付いていた疲労感が和らいでいる。 一郎くんにお礼をいって笑うと、一郎くんも少しだけ微笑んだ。 「いや、たいしたことはしていない。さぁ、行こうか」 一郎くんは私を支えたまま促す。 私は一郎くんに支えられたまま歩き出す。 (ずっと無言って言うのも、気まずい、かな?) 私は…… ①無言のまま帰る ②どうして修二くんの居る場所が分かるのか聞く ③組織と決別してこれからどうするのか聞く 215 名前:555[sage] 投稿日:2007/09/06(木) 20 15 45 ID ??? ②どうして修二くんの居る場所が分かるのか聞く 「一郎君。よく私たちの居場所がわかったね」 背中に添えられた一郎君の手に少しだけ意識を向けながら、私は尋ねた 「……修二の意識を追っていけばわかる。ただし、集中して追わなければ場所の特定まではできないが…」 「修二君の意識?」 「俺達は双子だから、特にアクセスしやすいのだろうな」 「うーん。じゃあ、修二君の意識にアクセスするって、どんな感じなの?」 「そうだな……」 一郎君はしばらく考え込みながら歩く。 その横顔を見ながら、私はじっと待った。 「ラジオのチューニングをあわせる感覚に近いだろう。修二の周波数を合わせ、意識を受信するんだ。 あと、空間の認識と言う上では、カーナビなどのGPSシステムにも似ているのかもしれない」 (あれ……この話、どこかで聞いたことがある) どこだっけ?と真剣に考え始めたとき、突然、目がくらむほどの光を受ける。 「危ない!」という一郎君の声で我に返った。 プップープップー グイと力強い腕に導かれ、すぐ鼻先を車が横切っていく。 けたたましいクラクションの音と共に、車は勢いを保ったまま、強引に右折してしまった。 「なんて乱暴な運転だ! 大堂も何をぼんやりとしている」 「ご、ごめん…」 「あ……いや、俺の方こそすまない。君は体調が優れなかったのだな」 身を竦めている私を気遣ったのか、口調が穏やかなものに変わる。 「もしかして…今のは組織の仕業……」 急に怖くなって、私は呟く。 「それは絶対に無い。主流派は君を傷つけてはならないと命令しているはずだ」 そう言うと、一郎君の腕に力が篭った。 私たちは住宅街の十字路、電柱の影に隠れるように体を寄せ合っている。 しっかりと抱きすくめられているせいなのか、少し息苦しい。顔を上げると、一郎君の瞳とぶつかった。 淡い街灯の明かりのせいなのか、その瞳に暗い影が落ちて、ひどく悲しげに映った。 私は… ①「あ、ありがとう」 ②咄嗟に離れる。 ③一郎君の瞳を黙って見つめ続けた。 216 名前:556[sage] 投稿日:2007/09/07(金) 13 37 50 ID ??? ①「あ、ありがとう」 なぜかその目に耐えられなくなって私は一郎くんから視線を外し、お礼をいってやんわりと離れようとする。 けれど一郎くんの手は緩む様子がない。 「一郎くん?」 私はおそるおそるもう一度一郎くんの顔を見る。 一郎くんはやっぱりさっきと同じ目で私を見ていた。 私の声が聞こえていないかのように、ただ見つめてくる。 まるで私の中の別の何かを見ているような、そんな気さえする。 「ねぇ一郎くん、どうしたの?」 「……すまない、なんでもない」 もう一度声をかけると、一郎くんは目を伏せて私を放す。 それから何事もなかったかのように、私を支えなおすと今度は前を向いたまま話し出す。 「大堂、君は自分の力を使いこなせるようになったほうがいいと思う。 少なくとも、自分の身を守る方法は覚えたほうがいいだろう。 契約である程度の危険からは守られているとはいえ、今回のようなことがまったくないとは言い切れないからな」 一郎くんに促されるまま歩きながら、私は頷く。 「そうよね……、こんなふうに何度も疲れてちゃ日常生活もままならないもんね」 私はため息をつく。 いままで、ただそこに居るだけで疲れてしまう、というようなことはなかった。 力があることを自覚したからなのだろうか?それとも他の要因があるのだろうか。 (一郎くんなら、何か分かるかな……?) 「どうした?」 私のもの問いたげな顔に気付いたのか、一郎くんが私を見る。 「あ、えっと……いままで、どこに行ってもこんなに疲れることはなかったのにな、とおもって」 「……?」 一郎くんは少し首を傾げる。 「今回はあの通路の残留思念の毒気にやられてるって、修二くんが言ってたけど、そういうのって人の思いの強く残っている場所には必ずあるものなんでしょ?」 「まぁ、そうだな」 「それなのに、いままで影響を受けたことがなかったから……こんなに疲れるのだって今回が初めてだし……」 いったん言葉を切って、一郎くんの目を見る。 ①「一郎くんは理由が分かる?」 ②「私の中で何かが変わってるのかな?」 ③「『封印』が解けかけてるとか?」 217 名前:557[sage] 投稿日:2007/09/07(金) 21 54 24 ID ??? ②「私の中で何かが変わってるのかな?」 私の問いに、少し間を空けてから一郎君が口を開いた。 「大堂自身が、力を自覚したからだろうな」 「それだけ? 他に要因は無いの?」 「契約による作用も関係しているが、一番の理由は自覚することによって、力が少しずつ形を成してきている為だ」 「それは……私が力を使いこなせてきていると言う事?」 私は期待を込めて、一郎君に尋ねた。 「いや。力を使いこなすと言うよりは、ようやく目覚め始めたところだろう」 (なんだ…生まれたてみたいなものなのね) がっくりと肩を落としてしまった私に向かって、一郎君はゆっくり語りかけてきた。 「一朝一夕でどうにかなるものでもない。しかし、身を守る力は必要だ。 力を使いこなすにはまず集中力が必要になる。そこでだ……」 手のひらサイズの箱を手渡された。 「すぐにどうにかなるものではないが、努力は必要だ。 それはESPカードと言って、丸、四角、プラス、波、星の形が描かれている。 きり混ぜたカードを伏せ、コールしながら一枚ずつ図柄を当てていくのが、一人で訓練できる最も簡単な方法だろう」 カードケースを開けると、トランプのようだったが表は数字ではなく、図柄のみが印刷されていた。 「これ、テレビで見たことがあるよ。神経衰弱みたいにして当てていけばいいんだよね」 つい嬉しくなって私はカードを取り出す。 なんだか、自分が急にテレビに出ているような超能力者になった気分だ。 「それを大堂に渡しておく。カードをすべて当てることができるまで集中力を養うといい。 君は不器用だから、少し時間がかかるかもしれないが」 (不器用は否定できないにしても…。今、すべてのカードを当てるって聞こえた気がするんだけど) 「あー。私の聞き違いかな? 今、すべてのカードを当てるって聞こえたんだけど」 「聞き違いではない。伏せた25枚をすべて当てるんだ」 (そんなの、無理に決まってるよ!) 私は… ①一郎君に試しにやってもらう ②自分でやってみる ③カードを返す 218 名前:558[sage] 投稿日:2007/09/08(土) 23 04 31 ID ??? ①一郎君に試しにやってもらう 「どうした、大堂。突っ立ったままでは家に帰れないぞ」 歩き出した一郎君が、立ったままの私に振り向いて言った。 「ね、ねえ。……このカードって本当に25枚全部当てられるようにならないと駄目なの?」 数歩先にいる一郎君に追いつくために、小走りに近づく。 「それくらい初歩中の初歩だ」 「五枚のカードを当てるとかじゃなくて?」 「くどい。俺は25枚すべてを当てるように訓練するように言ったはずだ」 「……じゃあ、一郎君は出来るの?」 初歩だというけれど25枚全部当てるなんて、奇跡に近い確立だ。 そんな無茶を真顔で言う一郎君の正気を疑ってしまう。 「当たり前だろう。くだらない質問だな」 「本当に?」 疑いの眼差しを向ける私を見て、一郎君は小さく溜息を吐いた。 「確かに、確立で言えば、1/ 24,800,000,000 だ。しかし、君も俺と同じ能力者だろう。君は自分の力が信じられないのか?」 (信じるって言っても、未だに半信半疑だし。……って、そうだ) 私は道の反対側にある、一郎君と以前過ごした児童公園を指差す。 「一郎君が本当に25枚全部を当てられるのか、あの公園で見せて欲しいな。そうしたら、自分の力を信じられるかもしれない」 「仕方がない。それで大堂がやる気になるのであれば、安いものだ」 静まり返った公園のベンチに、私たちは腰掛けた。 手のひらサイズの箱から、カードを取り出して、私は慎重にきり始めた。 そして、伏せたままのカードを一郎君の目の前に置く。 「上から順にカードの図柄を当てていく方法でいいな?」 一郎君の言葉に、私は黙って頷いた。 (――す、すごい…。手品じゃないよね) 結局、一郎君は当たり前のように25枚すべてを当ててしまった。 「驚いたよ、本当だったんだね。そんな力があったらカンニングし放題だよ!」 目の当たりにした奇跡に興奮してしまい、つい声が大きくなってしまう。 「大堂はカンニングの為に力を手にしたいのか?」 私の言葉を聞いて、カードを片付けながら一郎君が眉をひそめた。 「そ、そういう訳じゃないよ……」 「勉学もスポーツも力の向上も、すべて自分自身を高める手段に過ぎないだろう」 一郎君の正論にぐうの音も出ない。 「それに、大堂は今まで散々力を見ているのだし、今更驚くこともないと思うが」 そう言われれば、ここ最近、力や組織やらで驚くことばかりだった。 けれど、現実味に欠けるようなすごい事ばかりで、夢の中の出来事のような気さえしていた。 今のは現実味があるだけに、心の底から一郎君をすごいと思ったのだ。 私は… ①自分でもやってみる ②訓練をやる気になったと言う ③やっぱり無理だとカードを返す 219 名前:559[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 14 56 26 ID ??? ①自分でもやってみる 「私も、ちょっとやってみようかな」 私の言葉に一郎君はカードを片付けていたその手を止める。 「うん?君が、今ここでか?」 「そう。一郎君を見てて、できそうって思った訳じゃないけど。一郎君に見ててもらった方がなんとなく上手くいきそうな気がするし」 一郎君は束ねたカードを手渡しながら不思議そうに言った。 「そんなものか?」 「そんなものです。それに一郎君の言う通り、私不器用だからね」 そう言って口を尖らせた私を見て、一郎君は困ったように小さく笑った。 「気にしていたのなら、悪かった。……だが、そうだな。君がそう言うのならそうなんだろう。俺でよければいくらでも力になろう」 「……」 私は一瞬言葉を忘れて一郎君に見入ってしまった。それくらい、今の一郎君の声は優しかった。 (なんだか、まるで……) 「? どうした、大堂?」 急に黙り込んだ私を前に、一郎君が気遣わしげに問いかけた。我に帰った私は取り繕うように慌てて首を振る。 「あ、ううん!なんでもないの。じゃあ、ちょっと私もやってみるね」 意識して笑顔を作ると、なんでもなかったかのように手元のカードに向かう。一郎君は何か言いたそうだったが、集中し始めた私の様子に黙ってそのまま腕を組んだ。 (よーし、集中集中……) 「一番上は……波、かな」 ゆっくりとカードをめくる。一郎君の視線に緊張しているのか、上手くめくれずに少々戸惑った。表に返されたカードの図柄をそろそろと確認する。 「……星だな」 「あれ?じゃあ、次は……丸とか」 「四角だ」 220 名前:559[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 14 58 15 ID ??? ごめんなさい、途中で書き込んじゃいました…! ↓のが続きです、失礼しました! 221 名前:559の続きです[sage] 投稿日:2007/09/09(日) 14 59 02 ID ??? 私の声に一郎君はカードをめくるよりも早く図柄を言い当てた。なんとなく焦りを感じて意識を集中するのもそこそこに次のカードに挑む。 「えーと次のは……」 「プラスじゃない」 私の心を読んだかのように、一郎君は言おうとしていた図柄を口にした。言いかけたまま一郎君の顔に目を向ける。 「一郎君……読心術も、できるの?」 「まさか。君の場合は特別だ。すぐに、顔に出る」 (私、そんなにわかりやすい?) 暗に単純だと言われたようで釈然としないまま改めて続きに挑戦したが、その後の結果はそろいも揃って目も当てられない無残なものだった。 「……ある意味、すごいな」 「うう、頑張ったのに……」 一郎君の言葉にがっくりと肩を落とす。自分でもまさかここまでとは思わなかった。 「25枚全てをはずすのもそうそうできるものではないように思う」 「すみません……」 うなだれる私にやれやれといったように一郎君が苦笑した。 「これは随分時間も手間もかかりそうだ。……またいずれ機会を見てやってみよう」 「……?また、って……またつきあってくれるの?」 「俺がいた方が上手くいくと、そう言ったのは君だろう?」 何でもないようにそう言ってふいと目をそらした一郎君を見て、自然に笑顔がこぼれた。 「一郎君、ありがとう」 「礼を言われるほどの事でもない」 チャーラーラーチャラーラーラー 不意に携帯が鳴った。慌てて制服のポケットに手を突っ込むと、お義母さんからの電話だった。 「ちょっとごめんね、一郎君。お義母さんから電話みたい。……もしもし?」 「愛ちゃん、どうしましょう!春樹が、春樹が……」 「お義母さん?どうしたの、落ち着いて」 電話の向こうのお義母さんの声は今迄聞いた事がないくらい逼迫していた。お義母さんの動揺が電話越しに私にも伝染してしまいそうな、そんなただならない様子でお義母さんは続ける。 「あの人が、春樹を連れていってしまったの。迎えに来たって、でも今になってどうして急に!春樹も大丈夫だから心配しないでって、でも……」 話すうちにお義母さんは泣き出してしまったようだ。時折しゃくりあげて言っている事は要領を得ない。一郎君は少し距離をとりつつ、心配そうにこちらに視線を投げかけている。 どうしよう? ①お義母さんに再度落ち着いて何があったのかを話してもらう ②このままでは埒があかないのですぐに家に帰る ③一郎君に事情を説明して協力してもらう 222 名前:560[sage] 投稿日:2007/09/10(月) 01 46 29 ID ??? ②このままでは埒があかないのですぐに家に帰る (……一体、何があったの?) 「うん、わかったよ。すぐに帰るから、とりあえず落ち着いて。ね?」 泣きじゃくるお義母さんをなんとかなだめ、私は携帯を切った。 「どうしたんだ?」 ただならない様子を察したのか、一郎君が心配そうに尋ねてくる。 「あっ、うん……」 (『春樹を連れていってしまった』と言っていたけれど……) 一郎君に事態の説明をしようと思ったけれど、何もわからない以上、まだ言うべきではないと思いとどまる。 「お義母さんがね、少し取り乱していたの。心配だから急いで帰らなくちゃ」 一郎君には、お義母さんの様子だけ伝える。 「そうか」 「あと、ここからは一人で平気だから」 「わかった。気をつけて帰るといい」 早く家に帰りたい私を気遣うように、一郎君はベンチから立ち上がると私の鞄を差し出してくれた。 「それといい忘れてたんだけど、今日はいろいろあって機材の点検がまだなんだ。ごめん、今度するね」 「構わない。それより、早く帰って母親を落ち着かせてあげるべきだろう」 根掘り葉掘り訊かず、ただ見送ってくれる一郎君の察しのよさに感謝した。 「一郎君、送ってくれてありがとう。また、明日」 それだけ伝えると、私はきびすを返して公園を飛び出した。 体がまだ完全に良くなったわけではなかったけれど、走って家路を急いだ。 (あの子…チハル?) 「チハル!」 膝を抱き、玄関前に座り込むチハルに向かって叫んだ。 その声を耳にしたとたん、チハルは泣いている顔を更に崩しながら顔を上げる。 そして、突進するように私に駆け寄ると、腰に抱きつきながら顔を埋めてきた。 「春樹がぁ……いなぐ…なっちゃった……」 洟をすすり、目に涙を一杯溜めていている。 「おいおい、こんなところで喧嘩か? 近所迷惑だし、中でしろよ」 着替えの入ったスポーツバッグを抱え、隆がこちらに向かって歩いてきた。 この様子だと、まだ春樹が居なくなったことを知らないみたいだ。 どうしよう? ①隆にも一緒に家に入ってもらう ②状況を説明して帰ってもらう ③チハルに話しかける 223 名前:561[sage] 投稿日:2007/09/10(月) 13 37 35 ID ??? ①隆にも一緒に家に入ってもらう 「いまお義母さんから電話が来て、春樹が連れて行かれたっていうから慌てて帰ってきたところなの」 「春樹が?」 「そしたらチハルは泣いてるし……とりあえずチハル、ぬいぐるみにもどってね」 「……うん」 いつものように軽い音を立てて、チハルはぬいぐるみに戻る。 チハルをいったん隆のスポーツバックに入れてもらって、玄関をあける。 「それでお義母さんすごく取り乱してるの……、とりあえず入っ……」 「愛ちゃん!春樹が!あの人に連れて行かれてっ」 玄関の扉を開けた途端、お義母さんがものすごい勢いで走ってきた。 サンダルも履かずに玄関から出てくる。 お義母さんはもう泣いては居なかったが、その目は真っ赤だ。 「お、お義母さん落ち着いて」 「おばさん、こんばんは」 「あ……、隆くん、こんばんは」 慌ててなだめる私の後から、隆がいつもどおりにあいさつしてくる。 それにお義母さんは我に帰ったらしく、少し笑って隆にあいさつした。 とりあえず他人の隆が居ることで、落ち着きを取り戻したらしい。 私はホッとして、感謝を込めて隆を見上げる。 隆はちょっと笑って頷いた。 「お義母さん、中入ろう?」 「うん、ごめんね愛ちゃん、隆君。そうよね少し落ち着かなくちゃ」 いいながら、お義母さんは靴下を脱ぎながら玄関を上がる。 そのまま3人でリビングまで行き、とりあえずソファに座る。 まず何から聞こうかな? ①いつ春樹が連れて行かれたのか? ②誰が連れて行ったのか? ③春樹は抵抗しなかったのか? 224 名前:562[sage] 投稿日:2007/09/10(月) 22 55 24 ID ??? ②誰が連れて行ったのか? お義母さんは電話口で泣きながら、あの人と言っていた。 今、私が一番知りたいことは誰が春樹を連れて行ったかということだ。 嫌な胸騒ぎを感じながら、なるべくお義母さんを刺激しないように優しく問う。 「お義母さん。春樹を誰が連れて行ったのか教えて」 お義母さんはその時の状況を思い出したのか、また少し涙ぐんでしまった。 私はその様子を見守りながら、お義母さんが話し出すのを辛抱強く待つ。 「……いまさらあの人が…春樹を連れて行ってしまったのよ…」 お義母さんは涙声で答えた。 「あの人って誰かな? 」 お義母さんの背中を丁寧に擦りながら、ゆっくり尋ねる。 「……高村よ。高村が春樹を連れて行ってしまったの。春樹も…春樹も大丈夫だから心配しないでって……」 「それは、春樹の父親の?」 お義母さんは涙を拭きながらコクリと頷き、「愛ちゃん、知っていたのね」と呟いた。 高村。今朝、桐原さんが言っていた言葉を思い出す。 春樹の実の父親で、立派な学者で、たいへんな権力者。 お義母さんに暴力を振るっていた人で、春樹の最も憎んでいた人……。 私はその人の事を何も知らない。 きれぎれの情報のみで判断することはできないけれど、身勝手で独断的なのは想像がついた。 「おばさん。春樹は本当に心配しないでって言ってた?」 手を前で組みながら黙って座っていた隆が、納得いかないという顔を向ける。 「……ええ。俺が望んだことだから、心配しないでって……そう、はっきり言ったわ」 「あいつ、今朝まであんな男の息子じゃないって言ってたのにな」 歯に衣着せぬ、ありのままの言葉使って隆は言った。 その顔色から、隆も相当困惑しているのが見て取れる。 (春樹の意志で父親についていったということ?) 私自身、どうしていいのかわからないほど不安で、この事実を受け止めるのが怖かった。 今も手の震えが止まらないのがなによりの証拠だ。 だけど、私は困惑しつつも心のどこかで冷静に受け止めている。 それは予感めいたものがあったからだった。 その予感とは…… ①夢を見る寸前に聞いた「…姉さんに、これ以上無理はさせない。……絶対だ」という言葉 ②今朝聞いた「もう高村春樹だった頃のような子供じゃないんだからね」という言葉 ③チハルが「きもちいい」言っていた力の事 225 名前:562[sage] 投稿日:2007/09/10(月) 23 03 40 ID ??? ②誰が連れて行ったのか? お義母さんが落ち着くまで、と思ったけれど。 (春樹……どうしちゃったの) 最近の私をとりまく状況からしても、どうしたって春樹の安否が気にかかる。 我慢できずに、何かに耐えるように目を閉じて額に手を当てたまま一向に話し出そうとしないお義母さんを促すように私はなるべく平静を装って切り出した。 「お義母さん、さっきはあの人って言ってたけど。誰が……春樹をつれていったの?」 私の問いかけに、お義母さんは怯えたように小さく肩を震わせた。それからゆっくりと顔を上げる。 「春樹を連れて行ったのは、あの人……別れた、私の前の夫」 「おばさんの……ってことは、春樹の血の繋がった実の父親が?」 それまで黙ってやりとりを見守っていた隆が心底驚いた様子で声をあげる。お義母さんは目を伏せたまま悲しげに首を振った。 「父親、きっと春樹は今迄そう思った事はないでしょうね。……あの人は、春樹に父親らしい事なんて何一つした事はなかったわ」 「そんな、そんな人がどうして今になって春樹を……?!」 春樹が昔から実の父親について固く口を閉ざして何も語ろうとしないことからも、今迄あえて聞いた事はなかったけれど。あまりの身勝手さに思わず声が大きくなった。 そんな私をなだめるように、隆が私の肩に手を置いた。 「愛菜、落ち着けって。……おばさん、春樹の父親っていうのはどこかの研究所に勤めていませんでしたか?」 「!……ええ、そうよ。隆くん、どうしてそれを?」 隆はお義母さんの質問には答えずに、黙って私を見た。 (もしかして……春樹のお父さんていうのは、主流派の……) ふと思い浮かんだ答えに、体中の血の気が失せる気がした。心臓が私の意志とは関係なく、物凄い速さで鼓動を刻みだす。 「……お義母さん。春樹、春樹は何か言っていなかった?」 「いいえ、何も。チャイムが鳴って、私がキッチンにいたものだから春樹が玄関に出たの。凄い剣幕で怒鳴る春樹の声が聞こえて、慌てて玄関に出たのだけれど」 そこでお義母さんは一旦言葉を切って深呼吸をするように深く息を吸い込んだ。 「あの人は私には目もくれなかった。ただ、あの人が春樹に一言二言耳打ちをしたと思ったら春樹があの人について行くって言い出して……!どうして、どうして急にこんな事に……」 「おばさん、大丈夫です。春樹はきっと大丈夫ですから、泣かないで」 ついに泣き出してしまったお義母さんに立ち上がってあやすように声をかける隆をみつめながら、私はその場で呆然としていた。 (私の、私のせいで春樹が?……でも、ファントムには憑りつかれないはずだったのに……) 考えても考えても頭には同じような事ばかり浮かんでは消えていく私に、お義母さんの肩を抱いていた隆が静かに言った。 「愛菜もしっかりしろ。春樹が出て行ったのは自分の意思でだろう。あいつはお前にそんな顔をさせたくてそいつについてったんじゃ絶対に、ない」 隆の言葉にはっとなった。 (そうだ、落ち込んでる場合じゃない。私がしっかりしなきゃ) どうしよう? ①お義母さんに春樹の父親について詳しく尋ねる ②チハルに春樹がいなくなった当時の状況を尋ねる ③周防さん・美波さん・冬馬先輩に心当たりがないか尋ねる 226 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/09/10(月) 23 05 31 ID ??? ヒー!見事にかぶったー!!!! お先優先だよね、スマソ!!!!! 227 名前:563[sage] 投稿日:2007/09/11(火) 13 21 36 ID ??? 久々に被ったねw ①夢を見る寸前に聞いた「…姉さんに、これ以上無理はさせない。……絶対だ」という言葉 あの時の決意を秘めた呟き。 春樹はきっと何か考えがあって、父親についていったのだろう。 それは分かっている。 春樹はお義母さんも、私も裏切るようなことは絶対にしない。 (信じているけど……) 春樹の身が心配だ。 春樹は大丈夫だといって出て行ったというけれど、今日周防さんたちに組織のやり方を聞いてしまっている。 冬馬先輩も非人道的な行為をしていると言っていた。 春樹が洗脳されてしまう可能性だって捨てきれない。 「おばさん、おばさんは春樹の父親の研究所のある場所を知ってるんですか?」 唐突に隆がお義母さんに尋ねる。 「ごめんなさい……、分からないの」 お義母さんは、悲しそうに首を振った。 もし分かっていたらお義母さんは私に電話などせず、春樹を取り戻すために直接高村の研究所に乗り込んでいたかもしれない。 「そうか……こうなったら、水野にファントムをつけるか……」 小声で隆がブツブツと言っているのが聞こえる。 「隆、それじゃあ時間がかかりすぎるよ……」 私はお義母さんに聞こえないように、隆に言う。 ファントムをつけても1週間は水野先生を操ることは出来ない。 「そうか、そうだよな……」 隆はいらだたしげに頭をがしがしとかきむしる。 どうするのが一番いいだろう? ①周防か冬馬先輩に連絡を取る ②一郎くんと修二くんに連絡する ③春樹を信じて待つ 228 名前:564[sage] 投稿日:2007/09/12(水) 01 24 36 ID ??? ①周防か冬馬先輩に連絡を取る このままじゃ、春樹が危ないかもしれない。 私はポケットから、周防さんの連絡先が書かれた紙切れを取り出した。 「どうしたんだ、愛菜?」 私の様子が気になったのか、隆が尋ねてきた。 その声にお義母さんも顔を上げ.る。 「今から、研究所に詳しい人に連絡してみる。高村周防さんって知り合いなんだけど、研究所の場所を教えてもらうね」 「高村周防? 愛菜、いつの間に組織の奴と知り合いになってんだよ」 高村と聞いた瞬間に隆は眉をひそめ、怪訝な顔を向けた。 武君の手紙で組織の存在を知った隆にとって、研究所の縁の者を信じることなんて出来ないのだろう。 「以前、私を助けてくれたの。とてもいい人だから、大丈夫」 隆にそう言うと、私は携帯を取り出して、番号を震える指で押していく。 「愛……ちゃん。今、周防さんって…。高村周防って言ったのよね」 赤い目をしたお義母さんが私に視線を向けた。 「うん。それがどうかしたの?」 私は手を止めて、お義母さんの視線を受け止める。 「春樹の従兄弟に周防という名前の子がいたわ。けれど…本当にその人は周防と名乗ったの?」 「うん。今日も会っていたよ」 どこか含みを持ったお義母さんの言い方に引っかかりを感じながも、私は頷いた。 お義母さんは目頭をハンカチで拭くと、心苦しそうに口を開いた。 「愛ちゃんを助けてくれた人に対して悪く言いたくないのだけれど、亡くなった人の名を騙るなんて悪戯にしては悪質だわ。電話をかけるのは止めて頂戴……」 「え?」 お義母さんが言った事が理解できず、呆然とするあまり携帯を落としてしまった。 「春樹より八歳年上の従兄弟に周防という子がいたの。けれど、16歳で亡くなっているのよ」 (亡くなった人?周防さんが?) 春樹は何も言わないで居なくなって……、周防さんが亡くなっていた人で……。 なぜ春樹は出て行ったの? 私が会っていた周防さんは誰? もう、何がなんだか訳が分からない。 「次に……愛ちゃんまで居なくなってしまったら……。お願い、そんな人に電話しないで」 またお義母さんは泣き出してしまった。 「わかったよ。もう電話しないから、泣かないで、ね?」 肩を抱き、そっと手を握った。 心が折れそうになる。こんな時、春樹ならどうやってお義母さんを慰めるのだろうと思った。 私は ①周防さんについて考える ②春樹について考える ③飲み物を用意する 229 名前:565[sage] 投稿日:2007/09/12(水) 11 54 37 ID ??? ①周防さんについて考える (周防さんが8年前16歳のときに亡くなってる?) 私が会った周防さんは、同姓同名の別人なのだろうか? けれど、周防さんは24歳だといっていた。 お義母さんが言った周防さんと、私が会った周防さん。8年前はどちらも16歳だ。 そしてやはりどちらも高村研究所に深く関わる人物。 そんな人物が二人、同じ名前で存在するだろうか? (亡くなって……?) ふと、夢のことを思い出す。 綾さんの腕の中で傷だらけになっていた周防さん。 力なく落ちた手。 (あの、時……?) あのときに、亡くなったというのだろうか? けれどあの少年の顔は確かに周防さんの顔だった。 年齢による差異は多少あるにしろ、どう考えても同一人物。 『周防、とは……彼が16の時に知り合いました』 ふと、冬馬先輩の言葉が脳裏によみがえる。 周防さんが亡くなったという8年前に知り合ったという冬馬先輩。 (そういえば、あの時冬馬先輩の言葉に引っかかりを覚えたんだ) 『ただ、僕に出会った頃の周防はあなたの知る周防とほぼ変わりありません』 何に引っかかりを覚えたんだっけ? ①話の内容 ②冬馬先輩の歯切れの悪い話し方 ③考えても仕方ない冬馬先輩に直接聞く 230 名前:566[sage] 投稿日:2007/09/12(水) 20 32 15 ID ??? ①話の内容 (ほぼ、変わりないって…) あの時は、何か含みのある言い方だとくらいしか思わなかった。 バラバラだったパズルのピースが繋がる。 (八年前の周防さんと今の周防さんは、ほぼ一緒の別人だったという事?) 昨日、一郎君が『あれが、高村周防……?……だが、彼は確か……』と呟いた言葉。 信じられないという態度をとても不思議に感じていた。 周防さんが亡くなっている事を知っていたとすれば、あの時の一郎君の態度に説明がつく。 研究所とは、集めた能力者やそのクローンを、洗脳し、自在に操る場所だと聞く。 冬馬先輩や美波さんも言っていたし、武君の手紙にも書いてあった。 という事は、隆と武君のように、一人の人物を二人にしてしまうことだって出来るということだ。 (……今の周防さんはクローンなのかな…) 想像したくない考えが頭をよぎる。 (だから冬馬先輩は……ほぼという言い方をしたの?) でも…。 仮に今の周防さんがクローンだとしても、八年前、更にそれ以前の記憶を持っているのは間違いない。 研究所にどれくらいの技術力があるのか知らないし、専門的な知識は皆無だから大きな事は言えないけれど、 亡くなった周防さんの記憶までも移植したり再現したり出来るものなのだろうか。 やっぱり、分からない。 クローンは一つの可能性に過ぎないし、なにより私の考えすぎかもしれない。 ①冬馬先輩に直接聞く ②思ったことを隆に話す ③お義母さんに休むように言う 231 名前:567[sage] 投稿日:2007/09/13(木) 16 17 02 ID ??? ②思ったことを隆に話す 隆は武くんのこともあるし、もしかしたら何かわかるかもしれない。これは私の考えすぎかもしれないけれど、こうして悩んでいても事態は何も変わらないのだから。 「ねえ、隆……」 「おばさん、今日はもう休んだほうがいいでしょう」 声をかけた私を制するように、隆はこちらに視線を投げてよこした。確かに私が肩を抱く今のお義母さんは、青白い顔でこうして支えていなければ今にも倒れてしまいそうだ。 (そうか、どっちにしたってお義母さんの前でこんな話はできないよね……) 「ありがとう、隆くん。でも私は大丈夫よ」 「大丈夫って顔してないよ、お義母さん。春樹が心配なのはわかるけど、お義母さんまで倒れちゃったら私お父さんに何て言ったらいいか」 「そうですよ。今のおばさんを見れば、きっと愛菜じゃなくても休めって言います」 「でも、とても今は休めるような気分じゃ……」 辺りの重い空気を振り払うように首を振って、なおも言い募るお義母さんに隆は静かに、でも力強くこう言った。 「春樹なら大丈夫です。『大丈夫』って、春樹がそう言ったんでしょう?あいつはおばさんや愛菜に心配かけるような真似は絶対にしませんよ。出て行ったってまたすぐに帰ってくるかもしれない」 「隆の言う通りだよ。もしかしたらこの後春樹から連絡があるかもしれないし、お義母さんは上で少し休んでて。何か連絡あったらちゃんと起こすから、ね?」 「二人共……」 そうしてしばらく押し問答が続いていたが、最終的に12時までこのまま連絡を待って、もし何も連絡がなければ警察に相談するという事で話はついた。 私たちが押し切る形にはなったが、お義母さんはそれまで自分の部屋で横になっていると約束してくれた。 一人で大丈夫とよろめくようにリビングを出たお義母さんの背中を見送って、振り返りながら隆が言う。 「で?愛菜、さっきは何を言おうとしたんだ?」 「ああ、えーと……ね」 「うん」 「さっきの周防さんて人のことなんだけど」 「死んだはずの、って話か?」 問いかけには頷きつつも、隆の「死んだはず」という言葉に嫌な気持ちが胸に広がる。 (隆は周防さんに会った事がないから仕方ないんだろうけど……) 「私が会ったのが、その周防さんのクローンって事はあるのかな」 隆はうーんと唸って腕を組んだ。 「どうかな、無いとは言い切れないと思うが……ただ」 「ただ、何?」 「おばさんの話は確かなのか?なんたってあのインチキくさい研究所のお偉いに連なる人間だろ?都合が悪けりゃ死んだ事にして外部の目を欺くような事もあり得るんじゃねえの?」 (そうか、もしかしたら重傷を負った周防さんを死んだ事にして……?) そういえば、美波さんも周防さんに『瀕死の重傷を負わせた』と言っていた。 「……愛菜?」 黙り込んでしまった私に、隆が声をかける。 どうしよう? ①お義母さんは上で休んでいるので周防さんに直接尋ねる ②冬馬先輩に心当たりがないか尋ねる ③ひとまずチハルに春樹が出て行った時の状況を聞く 232 名前:568[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 01 41 45 ID ??? ①お義母さんは上で休んでいるので周防さんに直接尋ねる (ゴメン。お義母さん) 私は再び、周防さんの携帯番号が書かれた紙切れを手に取る。 「愛菜。やっぱり周防ってヤツに連絡をとるのか?」 「うん。周防さんのことだし、本人に聞くのが一番いいと思うから」 そう言いながら、私は書かれた番号を押していく。 隆は複雑な表情をしていたけれど、黙って私の様子を見守っていた。 プルルル、プルルル… 無機質なコール音が今はやけに長く感じられた。 そして、何コール目かでようやく「もしもし、愛菜ちゃん?」と、周防さんの声。 「はい、愛菜です。夜遅くにすみません。今、大丈夫ですか?」 「ああ、構わないよ」 「実は、周防さんの過去についてお聞きしたい事があるんです」 「ん?」 「八年前の事についてなんですが…。あの時、一体何があったんですか?」 「そうか。八年前の事で電話があるんじゃないかなーとは思っていたんだ」 取り立てて驚く様子もなく、周防さんはいつも通り明るい声のままだった。 「愛菜。そんなまどろっこしい聞き方じゃ、いつまで経っても本題に入れないだろ」 私の聞き方が気に入らないのか、隆が横槍を入れてくる。 「隆は少し黙ってて」 「どうした?お前さん以外に誰か居るのか?」 受話器の口を手で押さえたつもりだったけれど、周防さんに私たちの会話が漏れてしまったようだ。 「あのーごめんなさい。私の幼馴染の隆って男の子も一緒なんです。隆も能力者で……」 私が隆を紹介しかけたところで、周防さんの声が被さるように聞こえてきた。 「武のオリジナルだな。よく知ってるから説明は要らないさ」 「え? 武君を知っているんですか?」 周防さんの口から武君の名が飛び出したのが意外で、思わず声がひっくり返ってしまった。 「おいおい、愛菜ちゃん…まさか武の事まで知ってるんじゃないだろうな」 「はい。話したこともあります…」 「おい、愛菜。何を話してるんだ?」 隆は私達の会話が気になるのか、話に割り込もうとしてくる。 「そうだな……。自分語りもむず痒いし、ここは美波に任せるかな。 隆君にも聞いてもらわなきゃならないし、尋ねたいこともある。美波を愛菜ちゃんの所に向わせよう。いいよな、美波?」 周防さんの声が遠くなる。どうやら、一緒に居る美波さんに確認を取っているようだ。 「いいってさ。愛菜ちゃんは今どこ?」 「自宅です。でも周防さん、私の家を知りませんよね」 「家くらい知ってるよ。ここからだと……20分ってところかな。だけど、もう夜か。愛菜ちゃんがよければ今から向わせるけど、どうする?」 ①すぐに美波さんに来てもらう ②今度にしてもらう ③やっぱりやめる 233 名前:569[sage] 投稿日:2007/09/14(金) 13 10 04 ID ??? ①すぐに美波さんに来てもらう 「急ですみませんが、お願いします」 「オッケーわかったすぐに美波を向かわせるよ、ってことだ」 最後の言葉は美波さんに言ったらしい。 「ありがとうございます」 「いやいや、愛菜ちゃんのお願いなら、出来る限りのことはするよ。命の恩人だしね。で、聞きたいのはそれだけ?」 「あ……あの、組織の場所を聞いても大丈夫ですか?」 「組織の?聞いてどうするの?」 「それが……、春樹が、私の弟が連れて行かれちゃったんです」 「愛菜ちゃんの弟……って確か……」 周防さんは考え込むように、電話の向こうで沈黙した。 「そっちは俺が調べるよ。愛菜ちゃんは危険だから組織には近づかないほうがいい。だから、俺が連絡するまで無茶なことはしちゃだめだよ」 「はい……お願いします」 「よし、それじゃ早速調べに行ってくるかな。俺のことは美波に遠慮なく聞いてくれていいから」 「ありがとうございます。あの、春樹のことお願いします」 「任せといて。じゃ、何か分かったら連絡するよ」 周防さんはそう言って電話を切った。 「どうなったんだ?」 「周防さんのことは、周防さんのお友達の美波さんって人が教えてくれるって。今、家に来てくれるの。20分くらいって言ってたかな。 春樹のことは、周防さんが調べてくれるよ。……私が組織に近づくのは危険だからって」 私の横で、電話が終わるのを待っていた隆に私は答える。 「そうか、なんにしろ少し時間があるんだな」 隆が時計を見上げる。つられて私も時計を見上げる。 美波さんがくるまであと15分くらいだ。 どうしよう? ①とりあえずご飯 ②チハルにも話を聞く ③春樹の携帯に電話してみる 234 名前:570[sage] 投稿日:2007/09/15(土) 00 24 00 ID ??? ③春樹の携帯に電話してみる 「やっぱり私、春樹の携帯に電話してみるよ」 私は持ったままの携帯を、ギュッと強く握りなおす。 「でも、もうおばさんが電話してると思うけどな」 「多分、ね。……だけど、もしかしたら今度は出てくれるかもしれないから」 「まあな」 周防さんのことを信じていない訳ではないけれど、春樹の無事をどうしても知りたい。 私は携帯を開くと、春樹に電話をかけた。 「もしもし!春樹」 「……お留守番サービスに接続します。合図の音が鳴りましたら……」 無機質なアナウンスが耳元で流れる。 (春樹、電源切ってるのかな) 私は、「心配しているからすぐに連絡して欲しい」という内容のメッセージを入れて、溜息と共に電話を切った。 「……だめだったのか?」 「うん。電源を切ってると思う」 「そうか」 「春樹、大丈夫かな…」 「12時まで連絡がなったら警察に届けることも言ったんだし、心配していることも伝えたんだ。 愛菜やおばさんのメッセージを聞けば、俺の知っている春樹なら絶対に連絡を寄越すはず。そうだろ?」 「うん、そうだね。……そうだよね」 隆の言葉に少し元気づけられる。 (隆がいてくれてよかったよ) そう思いながら隆を見ると、側に置いてあったスポーツバッグのジッパーが開いているのに気付いた。 ぬいぐるみのチハルがもぞもぞと顔を出し、バッグから自力で抜け出した。 テーブルにコロンと転げ落ちたところで、私は声をかける。 「もう人間になっても大丈夫だよ」 私の声を聞くと、ポンと軽い音を立てて泣きべそをかいた子供のチハルが現れた。 「うわぁ。な、なんだよ!急に変身するなっての!」 急に現れたチハルに驚き、隆はソファからずり落ちてしまった。 「愛菜……ぢゃ…ぁぁん……」 すがりつくチハルを抱きしめ、そっと頭を撫でた。 「チハル。もう大丈夫だよ」 「怖…かった…よぉ…。すごく怖いひとが……春樹を……春樹を…」 「ごめんね、傍にいてあげられなくて」 春樹が出て行く時に何が起きたのか分からないけれど、この怯え方は普通じゃない。 しゃくりをあげ泣きじゃくっている。 今朝の桐原さんの時みたいに、人の感情を敏感に感じ取ったのだろうか。 どうしよう? ①チハルが泣き止むまで待つ ②すぐにチハルから話を聞く ③美波さんが来るので、またぬいぐるみに戻ってもらう 235 名前:571[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 11 40 06 ID ??? ①チハルが泣き止むまで待つ 今の状態ではチハルから話を聞くことは難しい。 私はチハルを落ち着かせるために、背中を撫でる。 「そんなにこいつが怯えるって普通じゃないよな」 泣きじゃくるチハルの頭を優しく撫でながら隆が顔をしかめる。 「そうよね。そんなに怖い人なのかな……」 そんな人についていった春樹がますます心配になる。 「ほら、チハルもう怖い人は居ないんだからそんなに泣くな。男だろ?……男だよな?最初はその姿だったし」 ぽんぽんとチハルの頭をあやすように叩きながら言った隆は、自分の言葉に疑問を覚えたのか最後のほうは小さくぶつぶつと呟いている。 「……ぐすっ、うん」 最後のほうは聞こえなかったのか、隆の言葉にチハルは小さく頷くと何とか涙を止めようとごしごしと目をこする。 「あんまりこすると赤くなっちゃうよ」 私はあわてて鞄からハンカチを取り出すとこすらないようにチハルの顔をぬぐってあげる。 「大丈夫チハル?」 「うん」 まだ時々しゃくりあげるけれど、だいぶ落ち着いたらしい。 チハルはこくんと頷いて、まだ赤いままの目で少しだけ笑う。 とりあえず、チハルが落ち着いてくれたことにホッとする。 「春樹の父親ってのは、そんなに怖いやつだったのか?」 落ち着いたチハルに、隆は首を傾げながら聞く。 チハルはそのときを思い出したのか、また怯えた顔になったけれど今度は泣き出さず頷いた。 「すごい、真っ黒でどろどろしてるの。他の人のヒメイとかうウラミとかいっぱいついてた。僕たち精霊とははんたいのチカラ。つよいチカラ」 言いながら、チハルが震える。 「悲鳴?恨み?」 「精霊とは反対の力?」 私と隆は顔を見合わせる。 真っ黒でどろどろと言うのは感情のことだと予想はつく。 けれどその他の言葉は良く分からない。 ピンポーン チハルに詳しく聞こうと口を開きかけた所に、チャイムが鳴る。 時計を見ると美波さんが到着する時間になっていた。 私は玄関まで行き、外に居るのが美波さんだと確認してから扉を開ける。 「こんばんは、愛菜さん」 「こんばんは美波さん。急にすみません」 「愛ちゃん?お客さん?」 「あ、お義母さん……」 チャイムの音にお義母さんが階段を降りてくる。 美波さんは、お義母さんをみて微笑んだまま会釈をしている。 どうしよう…… ①病院の先生だという ②周防さんの友達だという ③自分の友達だと言う 236 名前:572[sage] 投稿日:2007/09/18(火) 14 36 34 ID ??? ①病院の先生だという 「えっと、こちら大宮美波先生。この前私も春樹も続けて病院に行ったでしょ?苗字が同じだったから覚えててくれたらしくて」 「そうなの。こんばんは、先生。家の子達がお世話になりまして。……それで、こんな時間にどうかなさったんですか?」 とっさに口をついて出たのは我ながら情けなくなるような怪しげな説明だった。言いながら自分でそう思ったくらいだ、お義母さんが納得できる筈が無い。 お義母さんの表情は美波さんが医者と聞いて多少は和らいだものの、やはりいつもよりは幾分険しい。 ない知恵をしぼってどうにかこの場を乗り切ろうと頭をフル回転させていた私の前で、美波さんは小さく苦笑してお義母さんに告げた。 「夜分に失礼かとも思ったのですが。春樹さんがこの前病院にいらした時に念のため精密検査を 受けて頂いたのはお母様もご存知かと思います。その時は特に異常は見られないようでしたがぶつけた場所が場所でしたので、経過を見るためにもう一度いらしてくださいとお話したのですけれど」 美波さんがそこで言葉を切ると、お義母さんは春樹がその後病院に行っている様子が無いのに思い当たったらしい。 「まあ、そのためにわざわざ?お忙しいところこんな所までご足労頂いて……」 頭を下げるお義母さんに美波さんはとんでもないというように首を振った。 「どうかお気になさらず。私も帰宅の途中ですし、春樹さんの担任……近藤先生ですか、彼からもよろしく頼むと言われていましたので」 (……近藤先生ってあの、近藤先生?美波さん、近藤先生と知り合いなの?) 何でもないように美波さんが口にした言葉に、私の頭の中にふと疑問が浮かぶ。 そう思ってみれば確かに近藤先生と美波さんの年齢は同じくらいだし、真面目そうな雰囲気や生徒・患者思いなかんじは似ているような気がしないでもない。 思わず凝視していた私の視線に気がついたのか、美波さんは内緒話をする子供みたいにいたずらっぽく笑った。 「彼とは大学の同級生なんです。私はてっきり彼も医者になるものと思っていたのですが、彼が教師とは生徒さん達もなかなか大変でしょうね。……ところで、春樹さんは?もうお休みですか?」 「え…ええ、今日はなんだか文化祭の準備で疲れたらしくて。せっかくお越し頂いたのに」 まるで事情を知らない素振りで問う美波さんに、お義母さんは申し訳なさそうに頭を下げた。 外の人間に春樹がいなくなったとは言う気にならないのだろう。美波さんはそうですか、と答えてお義母さんの顔に目を止めた。 「……おや。お母様、お顔の色が優れませんね」 「そうですか?嫌だわ、少し疲れているのかしら」 誤魔化すように無理矢理笑顔を浮かべて元気な振りをするお義母さんの様子に、胸が痛くなった。春樹のことが心配でたまらないはずなのに。 「お薬はお出しできませんが、お手をよろしいですか?」 不意にそう言って美波さんがお義母さんの手をとった。透き通るように白い両手でお義母さんの手を包むと、目を閉じて額にあてる。その姿はまるで祈りを捧げているかのようだった。 「あれ?お義母さん?」 美波さんが手を離すと、お義母さんはこちらに目もくれずにふらふらと階段を登っていった。表情はぼんやりとしてまるで眠っているかのようだ。 振り返って美波さんを見ると「これで明日の朝までぐっすりお休みになれますよ」と笑った。 美波さんに…… ①お義母さんに何をしたのか聞く ②近藤先生について尋ねる ③時間が惜しい、周防さんのことを話してもらう 237 名前:573[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 02 21 44 ID ??? ①お義母さんに何をしたのか聞く 「美波さん。お義母さんに何をしたんですか?」 お義母さんの空ろな瞳に不安を感じて、私は尋ねた。 「お疲れのようでしたので、まじないを施しておきました。今、お母様に必要なのは、あなたの支えと睡眠ですからね」 (そうだ。私がいつまでも悩んでいたら、お義母さんを支えてあげられないもんね) 「ところで……、そろそろお話させて頂きたいのですが、上がってもよろしいですか?」 玄関に立ったままの美波さんが困ったように笑いかけてきた。 「き、気がつかなくてすみません。どうぞ」 美波さんを居間に通し、私たちは簡単な挨拶をすませた。 紅茶を持って居間に戻ると、隆と美波さんは春樹のことについて話し合っていた。 「春樹はやっぱりあのインチキくさい連中の所に居るのか……」 「今は周防が調べています。その報告があるまでは動かない方が賢明でしょう」 「くそっ。わかってるのに助けにいけないのかよ」 「今は堪えてください。私たちも出来る限りのことをさせてもらいます」 「春樹のやつ……戻ってきたら一発殴ってやらなくちゃな」 隆と美波さんのやりとりを聞きながら、私は人数分の紅茶をテーブルに置いていく。 すべての紅茶を置き終わり、ようやくソファーに腰を下ろした。 「ねえ、隆。春樹が戻ってきたら、私も殴るのに参加していい?」 「お、おい?……愛菜?」 突然の私の発言に、隆は目を丸くしている。 「ボクもナグっていい?」 チハルは意味が分かっているのかいないのか、参加を申し出る。 「じゃあ。チハルも含めてみんなで殴ろっか」 「うん。春樹ナグル」 少し元気が出てきたのか、チハルはようやく笑顔を見せた。 驚いていた隆も笑いながら、「おう、でかくなって殴ってやれ」と言ってチハルに右ストレートを見せている。 「春樹さんは戻ってきたら袋叩きですか。それはある意味主流派より恐ろしいですね」 美波さんは穏やかな笑みを浮べたまま、私に向って話しかけてきた。 「美波さんも参加されますか?」 私は冗談で美波さんに尋ねる。 「そうですねぇ。私は一応医者ですし……殴られた春樹さんの傷口に塩でも塗っておきますよ」 (……それが一番怖いかも) 何から聞こうかな? ①周防さんの過去 ②近藤先生とのこと ③チハルが言っていた反対の力の心当たり 238 名前:574[sage] 投稿日:2007/09/19(水) 11 02 45 ID ??? ①周防さんの過去 「あの、早速なんですけれど、周防さんの過去について聞いてもいいですか?」 「ええ、そのために来たのですからね」 とりあえず会話が一区切り付いた所で、私は本題を切り出す。 「どこから話しましょうか……とりあえず、私が周防を知ったのは彼が7歳、私が10歳のときです」 美波さんはそう言って過去を思い出すように頬に手を当てる。 (美波さんて周防さんより3歳年上なんだ……あ、近藤先生と同級生ならそのくらいで当然だよね) 「といっても、私が周防を知ったというだけで周防が私のことを私として認識していたかはわかりません。 私も周防に実際に会ったわけではありませんでしたから」 「要するに、周防って子供が居るって話を誰かに聞いたんだな?」 「少し違いますが、そう思っていただいて差し支えはありません」 隆がの言葉に、美波さんは微笑んで頷いた。 (あ、美波さんだって能力者だもんね、どんな力か分からないけど力を使って周防さんのことを知ったのかも……) 「実際に彼に会ったのは私が16歳、彼が13歳のときです」 13歳という年齢に、ふと以前見た夢の光景が思い浮かぶ。 病院の中庭のような場所に座っている周防さん。美波さんが会ったのはあのくらいの年齢の周防さんなのだろう。 そう言って美波さんは懐かしむように微笑んだ。 「彼は昔から組織のあり方について疑問を抱いていました。 けれど当時はおおっぴらにそれを公言することはなく、表向きはそれなりに従順でした」 何かを思い出したのか、美波さんがくすっと笑う。 「彼は高村の直系ではありませんが、その能力は高いものだったので親元をはなれ、直系の能力者と共に生活をしていたそうです」 私はその言葉に周防さんに聞いた言葉を思い出す。 『うん、知ってるよ。というか、組織を作ったヤツを知ってる』 夢の中で周防さんがそう言っていた。 と言うことは、組織自体はそんなに古いものではないのだろうか? 「とりあえずここまで、よろしいですか?」 えっと…… ①「大丈夫です」 ②「組織っていつからあるんですか?」 ③「隆は何か聞きたいことある?」 239 名前:575[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 03 04 46 ID ??? ②「組織っていつからあるんですか?」 私はふと疑問に思ったことを口に出した。 「今の組織は、周防の祖父にあたる方が創設者なのですが、旧組織の歴史はもっと古いと聞いています。第一次世界大戦から生物兵器の研究していたようです」 「……そうですか」 ずいぶん歴史のある組織なのはわかったけれど、いまいちピンとこない。 そんな怪しい研究所が現代にあることすら、未だに納得できないところがある。 「ていうか、どうしてそんなアブナイ研究している所を放っておくんだ? どう考えても犯罪だろ」 隆は美波さんに向って、身を乗り出すようにして訴えた。 「ええ、その通りです。しかし、表向きは極めて合法的かつ良心的な研究所ということになっています。研究所の裏の姿は一部の人間しか知りません」 「じゃあ、俺達が裏の研究について警察に言えばいいんじゃないのか?」 「だけど……証拠がないよ」 私も以前、その事を考えたことがあった。 だけど、そんな突拍子もない話を信じてくれるとも思えない。 「残念ながら、警察に届けても、マスコミに公表しても、潰されてしまうでしょうね」 美波さんは苦笑を隠すように、紅茶に口をつけてながら言った。 「どういうことだよ?」 「元々高村というのは、明治時代に財閥の一つとしてあげられる企業家だったようです。爵位を獲て華族として政界にも参加していきました。ですから現代になっても、政界、財界、マスメディアに大きな影響力を持っているのです」 「なんだよ……それ」 にわかには信じられないという様子で、隆は美波さんを見ている。 『優秀な能力者であり、研究者であり、権力者でもある……それが高村の名を持つ者なのです』 冬馬先輩の言葉を思い出す。 そして、桐原さんが言っていた『たいへんな権力者』という言葉も。 「でも、そんなの昔の話だろ。財閥や華族なんて現代では関係ないじゃないか!」 権力を振りかざす大人を最も嫌う隆には、この話は許せないのだろう。 けれど、美波さんは首を振って否定する。 「隆さん。名だたる企業の多くは旧財閥ですし、世襲政治家ばかりが総理大臣になっている。それでも関係ないと言えますか?」 美波さんの問いに、隆は何も言えなくなってしまった。 私や隆が思っている以上に、世の中には見えない権力が渦巻いているのかもしれない。 「現在の高村は、製薬会社、病院、医療機器メーカーなど、医療を牛耳る存在となっています。……話が少し逸れてしまいました。周防の話に戻りますね」 そう言って美波さんは、紅茶のカップをソーサーにゆっくりと置いた。 次は何を聞こうかな ①13歳の周防さんの様子を聞く ②16歳の周防さんに何が起きたのか聞く ③綾さんと周防さんの関係について聞く 240 名前:576[sage] 投稿日:2007/09/20(木) 12 08 27 ID ??? ①13歳の周防さんの様子を聞く 「13歳の頃の周防さんはどんな感じだったんですか?」 「……そのあたりのことは実は私は良く分かりません」 「え?」 「彼が13の頃に始めて会ったといいましたが、本当に会っただけなのですよ。 会話もなく、視線すら合わすことはありませんでした」 「すれ違った、とかそういうことか?」 「そうですね……同じ空間に居た、と言うのが正しいでしょう」 美波さんは笑うと言葉を続けた。 「私がその頃の周防を知らない理由は、私が施設を離れたからです」 「施設を離れた?」 「ええ。私は従順な研究対象でしたので、外部の高校へ編入する事になったのです」 そういえば、美波さんは小学校に上がる前に施設へ入ったと言っていた。 その間はずっと施設に居て外に出ることはなかったということなのだろう。 「それから二年あまり、私は外の世界を体験し高校を卒業と共に施設へ戻りました。 もちろん、高校へ通っている間も定期的に施設へ通い報告もしておりましたが、周防に会うことはありませんでした」 だからその頃の周防さんのことは分からないのかと、私は納得する。 「ですが、妹が送ってくれる言葉に、時々周防の名が出てきました」 「綾さんの?」 「ええ。物心付く前に私と共に施設に入った綾は、能力が高くなかったため、主に薬による実験を受けておりました」 「……」 「私と綾は血のつながりがあったためか、どれほど遠くに居ても言葉を交わすことが出来ました。 といっても、綾は薬によってほぼ自我はありませんでしたので、時々薬が切れたときのみの会話でしたが」 美波さんは寂しそうに笑う。 「そして高校を卒業し大学に入学した私は、大学へ行く以外は組織で被験者たちの管理をするようになりました。 それと同時に私と周防の付き合いが始まります。私が18、周防が15ですね」 今日地下で聞いたかれこれ9年の付き合い、というのはこの時からということなのだろう。 「13の頃の周防のことはあまり話せず申し訳ありません。 ここまでで何か質問はありますか?答えられるかは分かりませんが」 ①特にない、話を続けてもらう ②綾さんは周防さんをどう言っていたのか? ③これからの話が美波さんにとってつらい話ではないのか聞く 241 名前:577[sage] 投稿日:2007/09/21(金) 13 13 47 ID ??? ②綾さんは周防さんをどう言っていたのか? 「綾さんは周防さんの事をどう言っていましたか?」 私が夢でみた綾さんは自我を失っていたのか、気持ちまで分からなかった。 亡くなった綾さんの心を覗くみたいで気が引けるけれど、知らなければならない事のような気がする。 「最初の頃は怖い人だと言っていました。綾にとってはじめての友達でしたし、接し方がわからなかったのでしょう。 綾は精神的に少し幼い子でした。薬のせいで、なかなか心が成長できなかったのです」 美波さんは下を向き、自分の手を見つめながら話していた。 その綺麗な手も綾さんと似ていたのか訊こうと思ったけれど、美波さんの気持ちを考えると何も言えなくなってしまった。 「その内、綾に変化が現れてきました。周防と会えるのが嬉しいと言いだしたのです。 兄としては焦りましたが、綾本人の心境としては、ようやく周防を友達として認めることができただけのようでした」 夢に出てきた少年の周防さんは、すでに綾さんのことを好きだったように見えた。 けれど、綾さんの心はそれを受け入れるほど成長していなかったのかもしれない。 「二年あまりが経ち、私が研究所に戻った時、綾はすでに特別棟に入れられていて会う事はできませんでした。 投与される薬もより強いものになってしまい、思念の伝達もままならない状態だったのです」 「綾さんの事が心配だったでしょうね……」 「はい。心配でしたね。ちょうどその頃、すでに研究員として綾の担当をしていた周防と知り合ったのです。 綾の様子を伝え聞くようになり、私たちは親しくなっていきました。もちろん、その時に周防の気持ちを知ることになります。 そして……綾を一途に想う周防の気持ちを、知れば知るほど…私は恐ろしくなっていったのです」 「恐ろしいだって?なんで怖がる必要があるんだよ」 腑に落ちないのか、隆が美波さんに問いかける。 「周防は高村の血筋の者ですから、実験体の綾に乱暴しようと、処分しようと咎めることは出来ません。 綾がもし周防を拒むことがあれば、どうなるか……周防が一途ゆえに余計恐ろしかったのです」 「で、でも……周防さんはそんな事をする人じゃ……」 「愛菜さんが言いたいことはわかります。ですが皮肉なことに、当時の私の精神もまた、洗脳によって侵されていたのです。 研究員達の代わりに何の疑問も持たず、組織に都合の良い人間を次から次へと養成していたような人間でしたからね。 本来ならば組織のあり方に疑問を抱くはずなのですが、正常な判断に欠いていた私は、周防を憎み、なんとかして綾を助け出したいと考えるようになっていきました。 そんなある日、綾から久しぶりに思念による連絡が入ってきました。それが逃亡計画だったのです」 「あの…美波さんは、洗脳されて組織に従順だったんですよね。なのに組織にいる周防さんに従おうとはしなかったんですか?」 私は疑問に感じて、周防さんの話に割り込んだ。 「洗脳といっても万能ではありません。特定の研究員達には従順でしたが、周防に従うようには洗脳を受けていませんでした。 さらに組織のあり方に疑問を抱く周防を、私は異分子としても敵視しはじめていたのです」 (組織全員に従うという訳ではなかったのね) 美波さんは一旦、話を区切って紅茶を飲んだ。 「……どうしましょうか。その頃の周防の話をしましょうか? それとも、続きを聞きますか?」 ①話を続けてもらう ②15~16歳の周防さんの様子を詳しく話してもらう ③隆に理解できているか尋ねてみる 242 名前:578[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 13 24 01 ID ??? ③隆に理解できているか尋ねてみる 「隆、話についてきてる?」 よく考えれば、隆は私のように夢を見ているわけではないし、地下で周防さんや美波さんに会っているわけではない。 今の話で理解できているかどうかふと気になって尋ねてみる。 「なんとかな。 要するに、この人は周防ってやつの好きだった女の兄貴で、元組織の被害者で今は組織に対立してるんだろ?」 「ま、まあそうかな……」 あまりにも大雑把に要約されて私は苦笑する。 けれど間違っているわけでもない。完全に真ん中をすっ飛ばしている気はするけれど……。 とりあえず一応隆にも理解できているようなので、美波さんに向き直る。 美波さんも、隆の言葉に苦笑めいた微笑を浮かべていた。 「長々と話していましたが要約するとそうなりますね。では、続けましょうか」 「お願いします」 「ここから愛菜さんが聞きたいといった16年前の話になります」 美波さんの言葉に、私は無意識に背筋を正す。 「私は綾から逃亡計画を聞きました。綾の思念は一週間後に計画が実行されると伝えてきました。 私はその時、自我とマインドコントロールによって洗脳された意識の間で葛藤が起きたのです。 今組織にこのことを伝えれば、高村である周防は軽い処分で済むだろう。 けれど綾は本当の意味で処分されてしまう可能性が高い。 しかしこの事を組織に伝えないわけにはいかない。けれど伝えたら綾が……、といったふうにグルグルと思考がループしていました」 当時のことを思い出したのか、美波さんはかすかに眉根をよせる。 マインドコントロールされていても、家族が大事だと言う意識は消えなかったんだろう。 ましてやずっと同じ境遇、いや綾さんのほうが過酷な環境で過ごしていたのだから当然かもしれない。 「こうして私は表向きは普通に今までの生活を続けながら、内心ではずっとこの葛藤を続けていました。 そして、結局組織に何も言えないまま当日がやってきました」 そう言って美波さんは押し黙る。 私は… ①美波さんが話しだすのを待つ ②美波さんを促す ③無理して話さなくていいと言う 243 名前:579[sage] 投稿日:2007/09/25(火) 22 52 33 ID ??? ①美波さんが話しだすのを待つ (美波さんにとって辛い過去のはずだよね。だけど……) そんな私の様子を見て、美波さんは「大丈夫」と声を出さずに頷いてくれた。 そして、ソファーに深く座りなおすと、また口を開いた。 「当日を迎え、私は葛藤しつつも組織に逃亡計画を伝えました。 その時、この情報を提供する代わりに、妹を見逃してくれるように懇願しました。 組織の幹部達は、綾の自由を約束してくれました」 「けど、その約束は守られなかった…そうなんだろ?」 顛末のみえた物語のように、隆は淡々と言った。 「ええ。隆さんの仰る通り、約束が守られることはありませんでした。 何も知らない周防は綾を連れ、通路を出たところで組織に捕まりました。そして、殺されそうになる綾を庇って、周防が…」 そこで、美波さんは話すのをやめてしまった。 (やっぱり、話したくないよね) 私がもういいですと言いかけたところで、美波さんが私の名前を呼んだ気がした。 「今、私を呼びましたか?」 「はい。愛菜さん、すみませんが……ナイフなどの刃物と消毒液を頂きたいのです」 「??」 「出来れば、血で汚れてもよさそうな物をお願いします」 「……わ、わかりました」 私は意味も分からないまま、言われた通りにカッターナイフと消毒液を用意し、美波さんに渡した。 美波さんはカッターの刃を出し、刃に消毒液を垂らした。 「実際に見ていただくのが一番早いと思います。少しグロテスクなので、愛菜さんは見ない方がいいでしょう」 自分の腕を捲くりながら、美波さんは言った。 「何をするんですか?」 「すぐに終わります」 美波さんはそう言うと突然、私の手を握った―― 「――さん、愛菜さん」 「え?」 私はぼんやりしていたのか、美波さんの声で我に返った。 「終わりましたよ」 何が終わったのか分からないまま、頭を振って二人を見た。 「隆さん、綾も私と同じ特殊能力を持っていました。わざと力を暴走させ、生命力のすべてを周防のために使ったのです」 美波さんはさっきと全く同じ様子だったけれど、隆は黙り込んでいた。 (何? 隆、顔色が悪いみたいだけど……) 私は…… ①隆に何があったのか尋ねる ②美波さんに何があったのか尋ねる ③黙って二人の様子を見る 244 名前:580[sage] 投稿日:2007/09/26(水) 11 37 43 ID ??? ②美波さんに何があったのか尋ねる 「何が、あったんですか?」 顔色の悪い隆を気にしつつ、美波さんに尋ねる。 「私の力を見てもらっていたんですよ。私の力は治癒能力に特出しています。もちろんそれだけではありませんが」 美波さんは微笑んで人差し指を立てた右手で、すっと左腕をなぞる仕草をする。 「先ほどこのようにカッターで切って見せたのです。 ソファーは汚れないようにしておりましたので大丈夫ですご安心ください」 そういった美波さん腕は滑らかで傷一つない。 半信半疑で隆を見ると、隆は小さく頷いた。 「この人の言ってることは嘘じゃない。言われただけじゃ信じられなかったが、見ちまったからな」 隆はそう言って、深くため息をつく。 「綾の力は強くないものでした。自分の傷を癒すのも、他の人より幾分早いという程度の。けれど綾は周防が傷つき倒れたあの時、自らの命を削り暴走させることでその力を最大限に発揮しました。 その場に居合わせた私は、綾の暴走した力の余波によってマインドコントロールを解かれました」 美波さんはそう言っていったん口を閉じ、静かに目を閉じた。 数呼吸後、美波さんは言葉を続ける。 「周防の傷は綾の力で癒えました。けれど周防はそれから三ヶ月あまり意識を取り戻さなかったのです。 組織は肉体は綾の力によって癒されたけれど、精神はすでに死んでいるものと判断しました」 「それで、周防さんは死んだっていうことになっているの…?」 「そうです。けれど周防が死んだという通達が組織に回ったその一週間後、周防は目覚めました。 その三ヶ月の間に周防の中で何があったのかは分かりません。けれど、目が覚めた周防は完全に反主流派として組織と相対する姿勢を示すようになりました」 美波さんは穏やかな顔で私を見た。 その瞳が質問はありますか?と尋ねているように見える。 ①「組織は周防さんが生き返ったことをなぜ公表しなかったの?」 ②「周防さんに意識がない間、何があったのか聞かなかったの?」 ③「意識がない間のことを周防さんは何も言わなかったの?」 245 名前:581[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 04 05 42 ID ??? ①「組織は周防さんが生き返ったことをなぜ公表しなかったの?」 「身内から反逆者が出たとあっては、権威に関わりますからね。 組織にとって、死んだままのほうが好都合だったのでしょう」 「で、でも……周防さんはちゃんと生きているのに……」 「それが組織のやり方なのですよ」 美波さんは苦笑を浮かべた。 「あ、あの…力を使った綾さんは、一体どうなったんですか?」 綾さんの事がどうしても気になって、私は美波さんに尋ねた。 「綾は脱走犯として隔離棟の厳重な監視下に置かれ、二ヶ月後、誰にも会うこと無くこの世を去りました」 私は何も言葉をかけることが出来ず、冷めた紅茶に口をつけた。 隆も黙ったまま、美波さんをジッと見つめている。 「綾の死後半年以上が経ち、私は周防と面会の機会を得ました。 本来、会わす顔も無いのですが、一言でも詫びたいと思ったのです。 周防はとても冷静に私を迎え入れてくれました。 そして、『俺が死ぬ間際、こよみに“兄を許して欲しい”と頼まれた。だから、お前を許すことにした』と、言ってきたのです。 また、『こよみと似た境遇の人達を助けること。それがこよみを救えなかった俺に与えられた罰だと三ヶ月間寝ていて気付いた。だから、力を貸して欲しい』とも。 私に罪を償う術を、妹の声無き願いを、周防は伝えてくれたと思いました」 「それで反主流派になったんですね」 「はい。私たちはまず、隔離棟の少年に的を絞りました。この少年は能力がとても高く、前に居た部屋を破壊し、綾の部屋に移ってきたばかりでした」 「その少年って……」 「コードNO.673。現在は御門冬馬と名前ですね。少々強引な手を使って、私たちは少年の自由を手に入れました。 そして、信用のおける女性にその少年を託したのです」 「私のお母さん……ですか?」 「ええ、あなたのお母様です。彼女も研究員の一人で、人文学の見地から能力の解明を進めるチームの主任をしていました」 人文学。聞き慣れない言葉が美波さんの口から出てきた。 (そうだ。お母さんの居場所が分かるかもしれない) けれど、このままお母さんの居場所を聞いていいものかと考える。 お父さん、お義母さん、春樹は何て思うだろう。 まして、春樹もお父さんも居ない今、心細いお義母さんを支えるのは私しか居ないのだ。 どうしよう… ①お母さんの居場所を聞く ②話しの続きを聞く ③考える 246 名前:582[sage] 投稿日:2007/09/27(木) 11 08 10 ID ??? ②話しの続きを聞く 「あなたのお母様は表の研究に携わっていました」 「表の研究?」 「はい。研究所は表向きは普通の研究所です。当然裏の事情を知らない普通の研究者も多数存在します。 力の解明の研究と言いましたが、あなたのお母様の研究はいたって健全なものでした。 あなたのお母様はとても優秀な方で、研究所に来て半年もたたないうちに主任に抜擢されるほどでした」 お母さんが研究所にいたということで、不安になった私に気付いたのか美波さんは微笑んで言葉を続けた。 「そうですね例をあげると、言霊などの研究ですね」 「ことだま?」 隆が不思議そうな顔をしたが、私は以前周防さんに似たようなことを聞いていたのですぐに理解する。 「言葉に力が宿るっていう?」 「そうです。たとえば『がんばれ』と応援されたら力がわいてくるような気がするでしょう?そういう言葉・語学なども、人文学の範囲です」 美波さんは隆に軽く説明をする。 「ですから、あなたのお母様は裏の仕事には携わっていませんでした。ご安心ください」 「そんな愛菜の母親に、周防先輩を預けたのか?危険だろ?」 最もな隆の意見に、私も頷いて美波さんを凝視する。 「確かに彼女が何も知らなければ私たちも周防を預けたりはしなかったでしょう。 けれど、彼女はどこで聞きつけたのか裏の研究についても知っていました。そして周防に接触してきたのです」 美波さんは交互に私と隆の顔をみて続ける。 「あなたのお母様は周防にこう言ったそうです『私の大切なものを守るために、あの子を助ける手伝いをさせてくれませんか?』と」 「それって、愛菜を守るために周防先輩を助けたいって言ったってことか?」 「おそらくそうです。あなたのお母様にも何か力があったか、もしくは幼少の愛菜さんがお母様に何か伝えたか……どちらかでしょう」 「愛菜が……?」 「私はなにも……」 「まだ小さくて覚えていないと言うこともありえます。あなたのお母様が組織へ入ったのは9年前。 事件の起こる1年前です。何者かの意図が感じられませんか?」 お母さんが私の前にから消えたのは10年前。 その1年後に組織に入り、さらに1年後に周防先輩を助けた。 言われて見れば、繋がっているように感じられなくもない。 ①「きっと偶然ですよ」 ②「何者かのって、一体誰の?」 ③「私が何かしたと思っているんですか?」 247 名前:583[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 17 42 04 ID ??? ②「何者かのって、一体誰の?」 「さぁ、私にも分かりません。あなたかもしれないし、あなたのお母様かもしれないし、他の誰かかもしれませんね」 美波さんはゆっくりした口調で答え、一呼吸置いてから言葉を続ける。 「……周防について話を戻しますね。事実上死んだことになっている周防は地下に潜って、現在も反主流で活動をしています。 それは愛菜さんもご存知ですね。長くなりましたが、これが私の知っている周防の過去です」 そう言って、美波さんは私を見た。 相変わらず、穏やかな表情を大きく崩す事は無い。 だけど、周防さんにとってつらい過去を話させる結果になってしまった。 「あの……美波さん。ごめんなさい」 「気分を沈ませてしまって、私こそ申し訳なかったですね。 でも、綾の事をあなた達に話せてよかったと思っています。あの子を知るものはごく僅かの人間だけですから」 美波さんは寂しそうに笑って、今度は隆に向き直った。 「隆さんにも、気持ち悪いものを見せてしまいましたね」 「別に気持ち悪くなんてなかったさ。あれくらい、どうって事無いぜ」 顔色は悪いままだったけれど、隆は空元気で答えた。 (隆なりに、気を使ったのかな) 「なあ、美波さん……だっけ」 隆は美波さんに向って、話しかけた。 「はい。何でしょう?」 「愛菜の母親は、今どこに居るんだ? 愛菜は長い間、母親の帰りをずっと待っていたんだ。もし知ってるなら、教えてくれないか」 「すみません、私は知らないのです。愛菜さんのお母様は反主流に属しているわけではないし、研究所もすでに辞められている。 もしかしたら周防なら知っているかもしれませんが……」 今の生活を壊すことになるなら、お母さんの居場所について知らないままの方がいいのかもしれない。 けれど、冬馬先輩を引き取ったのは私のためだと判った以上、会わなければならない気もする。 私の横で寝息を立てるチハルの頭を撫でながら、お母さんについて考えた。 美波さんは腕時計で時間を確認すると、ソファーから腰を上げた。 「では、時間も遅いですしそろそろ失礼させていただきます。最後に何か尋ねたいことはないでしょうか?」 私は ①もう無い ②美波さんは周防さんをどう思っているのか ③隆に尋ねるとこは無いか聞く 248 名前:584[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 13 42 19 ID ??? ③隆に尋ねるとこは無いか聞く 「いいえ、私はもう大丈夫です。隆は何かある?」 私は美波さんにお礼を言って、チハルを起こさないように注意しながら立ち上がり、ふと隆を振り返って聞いてみる。 隆はソファに座ったまま、美波さんをじっと見つめて口を開いた。 「ところで、組織って言うのは今現在何を目的として動いてるんだ?」 「……」 美波さんはその問いに一瞬考え込むように目を閉じた。 「目的まではわかりませんが16年前の春までは……能力者の人工的な作製と能力者の力の増大について研究がなされていました。 けれど16年前に何が起きたのか、能力者を人工的に作る研究は既存のものを除き新規研究は突然打ち切られ、能力者の力の増大についての研究と、力の解析についての研究に重点がおかれるようになりました」 「16年前の春……?」 その言葉に隆が一瞬眉をしかめ、それから私を見た。 「愛菜が生まれたとき、か?」 「え……?」 言われて私もハッとする。 確かに16年前の春……3月は私が生まれた年だ。 「組織は、愛菜が生まれたときから愛菜を狙っていたってことか?」 「わかりません。私には上層部が何を目的として動いているかは知らされておりませんので……」 美波さんは考えるようにそう言って、隆を見返す。 「けれど、可能性はありますね。隆さんのクローンが作られたのはその約半年前、学年で言えば愛菜さんと同じ学年ですが、ぎりぎり既存の研究対象ということで残されたのでしょう」 美波さんはそう言って小さく呟く。 「周防は当時8歳ですか……おそらく詳しいことは分からないでしょうね」 そういう美波さんだって当時は11歳だったはずだ。 私の心の内を察したのか美波さんは、チラリと私をみて微笑んだけれど何も言わずに隆に視線を戻す。 「この件については私ではお役に立てないと思います。周防に直接聞いたほうがいいでしょう。 反逆者として扱われているとはいえ、彼は高村の名をもつ能力者ですから、経緯はともあれ現在の組織の目的は知っているかもしれません」 そう言って美波さんは再度時計を見る。 「では、これで失礼いたしますね」 私は美波さんを玄関まで送っていく。 「ありがとうございました」 「いいえ、何かありましたら周防に連絡してこき使ってやってください」 再度お礼を言うと、美波さんは微笑んで出て行った。 閉まった戸をなんとなく見つめていると、リビングから隆が私を呼んだ。 「おい、愛菜!携帯なってるぞ!」 「え、あ、うん」 隆の言葉に、慌ててリビングに戻ってディスプレイを覗く。 相手は ①春樹 ②周防さん ③修二くん 249 名前:585[sage] 投稿日:2007/10/01(月) 20 08 30 ID ??? ①春樹 (……春樹からだ!) 私は急いで通話ボタンを押した。 「は、春樹!?」 「もしもし……姉…さんだよね」 いつもの春樹の声だった事に、とりあえず安心する。 「どうして黙って出て行ったの? お義母さんもすごく心配してるんだよ!」 「……ごめん」 春樹に謝られて、ようやく冷静さに欠いていた自分自身に気付いた。 心配そうに見つめる隆に向って、春樹は無事だと目で訴える。 「……今、どこにいるの?」 「実の父親の所だよ。しばらく家には帰らないけど、心配いらないから」 「それって、高村の研究所なの?」 「……………」 春樹は何も答えない。この沈黙は恐らく肯定だろう。 「俺のこと、警察に届けないで欲しいんだ。あと、学校には病欠ってことで連絡しといて。 色々勝手言ってるけど、必ず戻るから」 「お願い。すぐ戻ってきて」 「……それは出来ないよ」 「どうして? 」 暫く沈黙が続いた。 受話器の向こう側にいる春樹は、私に伝えるべき言葉を選んでいるのかもしれない。 そして、またポツリと話し出した。 「ここには、俺にも出来ることがあるから」 (ここにはって……私の傍じゃだめって事なの?) 「研究所なんて、危険だよ。春樹に何かあったら、私……」 「大丈夫だよ。あんな人でも父親だし、俺に無茶なことはしないと思う。もう、足手纏いにはなりたくないんだ。 無力なままじゃ、姉さんを守る事はできないからね」 その声は静かだったけれど、有無をいわせぬ響きがあった。 いつだって春樹は私を守っていてくれた。 『ずっと守る』と約束してくれてから、5年。 どんな時も傍にいてくれたのに。 春樹がいるだけで心強かったのに。 春樹の望む守ると、私の願う守るは違うのだろうか。 『これ以上無理はさせない。……絶対だ』と呟いた春樹の決意に気付けなかった事が、今になって悔やまれる。 私は ①正直な気持ちを言う ②春樹を信じてみる ③隆に替わってもらう 250 名前:586[sage] 投稿日:2007/10/03(水) 13 49 18 ID ??? ③隆に替わってもらう 春樹の決意は固いみたいだ。 助けを求めるように隆に視線を向けると、側で聞いていた隆が私に手を差し出してきた。 「春樹、隆が変わってほしいって、いま変わるから」 隆に電話を渡すと、隆はくるりと私に背を向け話しだした。 「春樹、俺だけど……あぁ……あのな、お前の母さん倒れそうなくらいショックを受けてたぞ」 隆の声だけが部屋の中に響く。 「……当たり前のことを言うな。だけどな、お前が思ってるほどお前は無力じゃない。……お前にだって……はぁ?」 春樹の声は聞こえないが、突然隆が驚いたような、あきれたような声を上げる。 (なにを話してるんだろう……?) 「……なにを言い出すかと思えば。はははっ……いや、バカにしてるわけじゃない。 お前も年相応な所があるんだと思っただけだ。いやー、安心した。 普段やけに大人びてるからなお前。いや考えすぎるだけか?」 再度笑いを洩らした隆が、次の瞬間にはまじめな声に戻る。 「お前の考えは分かった。けど、今回のお前の選択は誤りだ。 ……いいから最後まで聞け。誰もお前にそういう力を望んでないんだ。 お前にはこういうのとは違う別の力があるだろう。早く気付け、そして戻って来い」 隆の言葉は、春樹が特別な『力』を欲しがっていることをうかがえた。 けれど隆が言うとおり、私は春樹に隆や一郎くんたちのような『力』は望んでいない。 ただそばに居てくれるだけでいい。 普通で居られるならそれが一番だと思う。 私だって力を欲しいと昨日までは思っていたけれど、周防さんや美波さんの話を聞くうちに以前のように『力』が欲しいと思わなくなった。 以前冬馬先輩が言った言葉の意味が少し分かった気がする。 「……はぁ、分かったよ。けど、無茶するなよ。組織はヤバイとこだ。 いくらお前の本当の父親だからって、信用するな。……あぁ、それじゃ」 そういって、携帯の通話を終わらせた隆は、私に携帯を返してくる。 「とりあえず、しばらくは戻ってくる気はないんだと」 「え!?」 「春樹には春樹なりの考えがある。お前の思ってることはちゃんと伝えてやった。 それを聞いても春樹の考えは変わらなかったんだ。後は春樹のしたいようにさせてやれよ」 隆はそう言って私の額を軽く小突く。 私は、 ①頷く ②文句を言う ③春樹がなんといったのか聞く。
https://w.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/1998.html
DQⅦ 神に仕える【四精霊】の一人。 その名の通り炎を司り、エンゴウの北にある【炎の山】に眠っている。 【エンゴウ】の民は彼を「炎の神」として崇め、毎年「ほむら祭」という盛大な祭を開催している。 姿からして暑苦しい真っ赤な巨人で、性格も精霊の中で最も好戦的。 DISC2では四精霊に協力を要請して回ることになるが、その際には主人公たちに対して「力を証明してみろ」といかにもボスらしく挑みかかり、精霊の中で唯一クリア前から戦うこととなる。 なおこの時の表記は『炎のせいれい』となっている。 その攻撃手段はマグマ、火ばしら、メラミ、メラゾーマ、激しい炎、おたけびと、案の定炎系の技オンリー。 物理攻撃は一切行わず、とにかく炎系攻撃をつかいまくる。 よって炎耐性さえきっちり整えればさほど怖くない。マジックバリアでも貼ってやれば余裕。 だがたまに使う【ひばしら】は、失敗する可能性があるものの、この時期に食らうとほぼ一撃必殺なので注意。 【更なる異世界】では、『ほのおのせいれい』と名前を微妙に変更して再戦することになるが、 この時の炎の精霊は4人で挑んでくることもあってか、HPが5000→2900とダウン。 それ以外のステータスは一応上がっているが、スズメの涙のような強化値である。 それはともかく、大幅に強くなっているパーティ側に対し、攻撃手段がマグマ、火ばしら、メラゾーマ、激しい炎と全く変化がないのが痛い。 恐怖のれんごく火炎をくぐりぬけてきたパーティにとって、こんなものは火傷にもならない。せめて灼熱を使えよ。 オマケにおたけびを使わなくなったので、いやらしさも薄れた。 ちなみにここでは通常攻撃も行う。 DQMCH 【ひのせいれい】という同系統の精霊が登場する。 こちらの詳細は該当記事を参照のこと。
https://w.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/4546.html
DQMCH 黄色い体の熊のような顔と、竜のような白い尻尾が特徴のモンスター。エレメント系のBランク。 性格は温厚で、優しそうな老人のような口調で話す。 シルバーオーブを多く捧げるとオーブのダンジョンの最深部にて出会うことが出来る。 訪れると、他の精霊と同じように願い事を叶えてくれる。 内容は心がほしい場合はひかりのせいれい、ドラゴンマシン、キラーマシン2の心のどれか。 ステータスを上昇してほしい時は賢さを+30してくれる。 オーブが欲しい場合、こいつと戦うことになる。 ただし、ギスヴァーグを倒していないと「まだダメだ」と言われて叶えてくれない。 ギガデインやイオナズンで全体攻撃してくるのでマジックバリアで防御しよう。 オーブの場合、8ターン以内なら光のオーブ、9~12ターンならメタルオーブをくれる。 仲間にする場合は【やみのせいれい】にひかりのせいれいとゴールデンスライムの心で作れる。 攻撃力の伸びは普通だが、それ以外は非常によく、他の精霊が低くなりがちな素早さも高い。 デイン系とマホトーンに強いのが長所。てんかいじゅうとわたぼうの心で【てんかいじゅう】が作れる。 覚える特技はデイン、イオ、ひかりのはどう。
https://w.atwiki.jp/imasss/pages/407.html
タイトル P「スピードラーニングのせいで貴音が英語しか喋れなくなった」 執筆開始日時 2012/08/06 元スレURL ログ速URL 概要 貴音「……」 P「おーい貴音!」 貴音「Mysterious・・・」 P「どうしたんだ?貴音」 貴音「Why・・・why・・・」 P「?」 貴音「It became impossible to talk except English. 」 P「!?」 タグ ^四条貴音 ^我那覇響 まとめサイト エレファント速報
https://w.atwiki.jp/1000ed/pages/126.html
91 名前:718[sage] 投稿日:2008/02/23(土) 20 14 27 ID ??? ②思わない 「なにそれ……なんでそんなこと言うの? 思うわけないじゃない!」 修二くんの言葉に、ふつふつと怒りが湧いてくる。 「修二くんは道具じゃないよっ、修二くんだけじゃない冬馬先輩だってちゃんと人なんだから。 感情があるから悩むんでしょう? 心が痛くなるんでしょう? だからそんなに辛そうな顔をしてるんでしょ!? 先輩も先輩だよ……寂しいと感じてはいけない、喜んではいけない、ないてもいけないってっ、なんでそんな事いうのよ。 そう思ってる段階で、寂しがったり喜んだり泣いたりしてるって、どうしてわからないの!?」 怒りと、言葉にしているうちに湧き上がってきた悔しさに涙が浮かぶ。 「愛菜ちゃん……っぃて」 「はいはい、そこまで、ちょっと愛菜を泣かさないでよ。それから手を放しなさいっ」 パシンっといい再度音がして、修二くんが少し離れる。 「香織ちゃん……?」 「愛菜、大丈夫? まったくコレだから男は!」 「え? なんで香織ちゃんがここに……?」 「もう男どもに愛菜を任せておけないって思ったのよ」 「え? え?」 べりっと、修二くんを引き剥がしてかわりにぎゅーっと抱きしめられる。 呆然とした修二くんが傘の外へでてぬれていく。 「とうとう力を取り戻したんだね、愛菜。 もう封印は解けたから、私のことも思い出すと思うけれど……」 「え……? まさか、香織ちゃんが勾玉?」 「あたり! 本当はあなたに前世のことで苦しんでほしくなかったから私のことを封印していたんだけれど……。 思い出しちゃったものは仕方ないわよね」 そう言った香織ちゃんは、一転真面目な顔になると修二くんを振り返った。 「まったく、過去はどうでも良いって言いながら、一番こだわってるのはキミでしょ? 愛菜が本当に好きなら無理強いなんてしないでよ?」 「……香織ちゃんが勾玉? 本当に?」 「ウソ付いてどうするのよ」 「でも、俺には力が見えないんだけど?」 「そりゃ隠してるもの」 香織ちゃんは肩をすくめる。 (神様は、私を支えてくれる人っていってた。確かに香織ちゃんは親友だし私を支えてくれてる。じゃあ、本当に?) 「私だって鏡と剣と同じ、ずっと前から自分が勾玉って自覚もあったし、力を隠すくらいするわよ。過去の記憶も少しはあるしね」 「俺に過去はない」 「そう思ってるだけよ。ちゃんと振り返りなさいな。 怖くて振り返れないなら、過去を引きずらないことね。自分で言うとおり、前だけ見据えなさいよ?」 いったいどこから話を聞いていたのか、辛辣に言い放って香織ちゃんは私を振り返る。 「さあ、愛菜。私にして欲しいことを言って?」 「え?」 「何をして欲しい? 勾玉として力を貸して欲しい? それとも親友として励まして欲しい?」 そういって私を見つめる香織ちゃんは、とても優しい目をしている。 私は…… ①力を貸して欲しい ②励まして欲しい ③力を確認する 92 名前:719[sage] 投稿日:2008/02/25(月) 11 50 01 ID ??? ①力を貸して欲しい 「力を貸してほしい……けど……」 「けど?」 「香織ちゃんまで危険な目にあうのは嫌だよ……」 「~~~~~あ、い、なっ。本当に可愛い子ねぇ。大丈夫大丈夫」 思い切りぎゅっと抱きしめられ、さらに頭を撫でられ勾玉でも香織ちゃんは香織ちゃんだと、ホッとする。 けれど、ふと昨日のことを思い出して心配になる。 「昨日、熊谷さんにファントムつけられてたけど大丈夫? なんともない?」 「ああ、平気平気。あの時はまだ愛菜の封印が解けてなくて、私の力も封印されたままだったから、相手には私が勾玉だってわからなかっただろうし、今は封印が解けてるから、あの程度干渉なんてなんてことないわよ」 「……つまり、愛菜ちゃんの勾玉に関する封印をしたのは香織ちゃんで、ついでに愛菜ちゃんの封印と一緒に自分の力も封印。 愛菜ちゃんの封印が解けたら自分の封印も一緒に開放されるってカラクリだったわけだ?」 修二くんが憮然とした表情で、私たちを見ている。 「そうよ。私は愛菜には普通に生きてほしかったし、愛菜が普通に生きる限り私の力は不要なものだったからね」 それに、と香織ちゃんは私から離れると修二くんに向き直って言葉を続けた。 「私が始めて愛菜に会ったとき、すでに愛菜の力は自己暗示で使えないのと同じ状態だったもの。それをちょっと強化しただけよ」 「香織ちゃんに初めて会ったときって……」 「そう、小学の3年に上がったときね」 香織ちゃんは元は転入生で、小学3年から同じクラスになった。 「一目見て分かったわ。私は鏡みたいに見る力は強くないけれどね」 その言葉に、私は不意に不安になる。 「……じゃあ、香織ちゃんは私が壱与だから親友になってくれたの?」 「…………はぁ、おばかさんねぇ。そんなわけないでしょう?」 香織ちゃんは盛大にため息をつくと、軽く私の頭を小突く。 「過去なんてどうでもいいのよ。確かにきっかけは、愛菜が壱与だから引かれたのもあるかもしれない。 でも、愛菜をしれば知るほど、過去の壱与なんかどうでもよくなったわよ。あんたもそうでしょ?」 最後の言葉は、修二くんへ向けて。 その言葉に修二くんは頷いた。 「俺はずっといってるよ、愛菜ちゃんだから好きなんだって。 信じてもらえてなかったみたいだけど?」 「ご、ごめん……」 「まぁまぁ。さて、と、てゆーかこんなにのんびり話しなんてしててもいいの? 私には見えないけど、なんとなーく嫌なピリピリした空気をあっちから感じるんだけど?」 香織ちゃんが指差したのは、私の家の方向だ。 修二くんに詰め寄られたり、香織ちゃんが勾玉だったりと展開についていけずすっかり忘れていた。 ①修二くんに家の状況を聞く ②とりあえず家に戻る ③神器をそろえるために一郎くんを呼ぶ 93 名前:720[sage] 投稿日:2008/03/05(水) 14 11 05 ID ??? ①修二くんに家の状況を聞く 「ねえ修二くん、向こうがどうなってるか分かる?」 「ん~……」 修二くんは家の方向を見て、少し目を細めた。 「とりあえず片方は勝負がついたみたいだな。もう片方は逆に熾烈になってる。 勝負がついたほうの勝者がもう一方に向かってるな」 「どっちの勝負がついたの……?」 「愛菜ちゃんの家に近いほうの勝負はついてるね。ついてないのは、そこから少し離れた場所のほうだ。 けどまあ、この力は剣だよね。問題ないんじゃない?」 修二くんはどこか突き放したように言うと、肩をすくめて見せる。 (じゃあ、周防さんの方は決着がついたんだ……) 周防さんは大丈夫って言っていたけれど、熊谷さんに勝ったのだろうか? それに敵だといっても、熊谷さんがひどい怪我をしていないか心配だ。 「どうする?行ってみる?」 香織ちゃんが私にたずねてくる。 「危険だろ?やめたほうが良いって。愛菜ちゃんがケガしたらどうするのさ」 修二くんは顔を顰める。 「私が居れば大丈夫よ。私の力は護りの力だもの。宗像くんはちゃんと覚えていないみたいだけれど、見えてるでしょ?」 「見えてるよ、でもせっかく安全な場所にいるんだ。わざわざ危険なところに飛び込まなくてもいいよ」 「まぁ、確かにその言い分にも一理あるわね。どうする愛菜? 行くのやめる? なんなら委員長も呼んで皆でいく?そうすれば、古の契約が履行されるから、愛菜にとってはプラスになるかもしれないわよ」 香織ちゃんは私に判断をゆだねてくる。 どうしよう…… ①すぐに行く ②一郎くんを呼んで行く ③行かない 94 名前:721[sage] 投稿日:2008/03/06(木) 12 44 36 ID ??? ②一郎くんを呼んで行く 「修二くん。一郎くんがどこか教えてくれないかな? 香織ちゃんが勾玉だって教えてあげなきゃいけないし、神器が揃っていた方がいいと思うんだ」 「……兄貴はひと足先に愛菜ちゃんの家に向ったよ」 「一郎くんも……。じゃあ、急がなきゃ」 「そうね。行くわよ、愛菜、宗像くん」 香織ちゃんは一足先に私の家に向って走り出した。 「ま、待ってよ。香織ちゃん!」 数歩走ったところで、修二くんが全く動いていない事に気づいて足を止めた。 私は再び修二くんの傍まで駆け寄る。 「早く行こう。みんなが心配だよ」 「……………ど」 修二くんは私から視線を落しながら、小さく何かを言っていた。 「どうしたの? 修二くん」 「さっきの答え、まだ教えてもらってないんだけど」 「さっきの答え?」 「付き合ってもらえるかどうかの返事を、まだちゃんと聞いてないんだけどな」 (そういえば、香織ちゃんが突然現れてきちんと返事してなかったんだっけ。 修二くんは全部終わってからでもいいって言ってくれだけど……。こんな状態じゃ恋愛どころじゃないし、先のことなんてもっと考えられないよ) 「やっぱり無理だよ。その……ごめんなさい」 私は頭を下げて、けじめをつけるためにきっぱりと断った。 すると、修二くんは苦しそうに笑い出だした。 「バカみたいだな、ったく……。最初は兄貴へのあてつけのつもりだったのに、なんでこんなに悲しいんだ……」 「愛菜。宗像くんも何してるの? 急ぐわよ」 香織ちゃんが少し離れたところから、私たちを呼んだ。 「香織ちゃんが呼んでる……。みんなが心配だし、行こう?」 私の言葉が聞こえているはずなのに、修二くんは一歩も動こうとしない。 そして、私を見据えながらゆっくり口を開いた。 「他人の心配ばかりして、愛菜ちゃんは優しいね。でも知ってる? その優しさって時にはすごく残酷なんだって事」 「私が残酷……」 「そうだよ。俺を突き放しておいて一緒に行こうだなんて、愛菜ちゃんは残酷だ。 『道具なんかじゃない』って声高に言うわりに、結局は俺を鏡として利用しようとして……矛盾してるよね。 俺はね、ずっと兄貴に、愛菜ちゃんが納得できるやり方にするべきだって言ってきた。けど、間違いだったみたいだ。 もうどんな手を使ってでも解決していくことに決めたよ。たとえ、愛菜ちゃんや兄貴と敵対することになってもね。 だから……本当にさよならだ、愛菜ちゃん」 修二くんはそう言うと、学校の方へ歩きだした。 私は…… ①香織ちゃんの方へ走っていく ②修二くんを追いかける ③立ち尽くす 95 名前:722[sage] 投稿日:2008/03/07(金) 14 30 22 ID ??? ②修二くんを追いかける とっさに修二くんを追いかけて、腕を掴む。 修二くんは私の腕を振り払いはしなかったけれど、振り返った顔には何の感情も浮かんでいなかった。 (修二くんじゃないみたい……) 「なに?」 感情を感じさせない声。 無表情の顔と声にふと冬馬先輩の姿が重なる。 けれどどこか優しい冬馬先輩とは違い、今の修二くんはただ無機質な冷たさしかない。 「用がないなら、手を離してくれる?」 豹変した修二くんの態度に硬直していた私に、さらに感情の削げ落ちた声がかけられる。 「あ……」 雨が降っていて乾燥しているわけでもないのに、口の中がからからに乾いていく気がする。 (でも今の私には神器の力が必要なんだよ……) 修二くんの言うとおり、不本意だけれど今は鏡の力を利用することになる。 一郎くんと香織ちゃん、そして冬馬先輩は今までの態度から私に力を貸してくれるだろう。 (けど、修二くんが鏡として扱われるのがいやなら……) 壱与の記憶がよみがえる。 物に宿った力を別のものに移すための儀式。 鏡や勾玉はその性質上この儀式を行うことは無かったけれど、剣は戦でつかわれ、破損や劣化するために古い剣から新しい剣へと力を移す儀式を数十年に一度行っていたらしい。 「修二くんが望むなら、鏡としての役割を終わらせることが出来るよ……」 「……どういうこと?」 無表情だった修二くんの顔に少しだけ疑問が浮かぶ。 「内に宿った力を、別のものに移す儀式があるの。その儀式をすれば、修二くんの中から鏡の力は消える。普通の人になるよ」 (その儀式を今の私がやって無事でいられるかは分からないけど……) 最後の言葉は口には出さない。 巫女としての知識のみある今の私が、巫女として修行をした壱与と同じ事が出来るかといわれれば、難しいだろう。 それに、壱与は知識はあるが実際にこの儀式を行ったことはない。 先代の巫女が剣の力を移したばかりだったことと、鏡は壱与の意思で壊したため新たな鏡に力を移す儀式は行わなかった。 けれど鏡の力があるために修二くんがつらいのなら、鏡を割ってしまった過去の私の責任だ。 「本当に?」 修二くんの言葉に私はただ頷いた。 (移す器が無いから、しばらくは私が力をあずかることになるだろうけど……) 儀式は、古い器から力を一旦自分の中へ取り込み、それから新しい器へと移すものだ。 新しい器となるものが無い以上、修二くんがこの儀式を望むなら私の内に力をとどめておくことになる。 生まれつきこの力を宿して生まれた一郎くんや修二くん、香織ちゃんと冬馬先輩と違う私が、別の力を宿してどうなるかなんて分からない。 (でも、こんな修二くん見たくないよ……) 私は…… ①「どうする?」 ②「考えておいて」 ③修二くんが何か言うのを待つ 96 名前:723[sage] 投稿日:2008/03/08(土) 01 15 08 ID ??? ②「考えておいて」 今の私には、これだけ言うのが精一杯だった。 思い出した儀式の記憶も説明しようかと思ったけれど、今の修二くんにはどうしても言えなかった。 「わかった。考えておくよ」 相変わらず射抜くような視線だったけど、話し方だけはいつも通りに戻っていた。 (よかった。一応、私の言葉に耳を貸してくれた。あっ、そうだ……) 「あの……あと、もう一ついいかな……」 「なに?」 「余計なお世話かもしれないけど……修二くん、風邪ひかないようにね」 傘をさしているけれど、さっきの告白で修二くんの制服はすっかり濡れてしまっていた。 もう傘をさしている意味がないほど酷い有様になっている。 私の言葉を聞いて、修二くんは冷ややかに視線を上下させた。 そして、呆れたように口を開く。 「……愛菜ちゃんもずぶ濡れじゃない」 「あっ、そういえば……そうだね」 「何? もしかして、気づいてい無かったとか?」 「必死だったからすっかり忘れてたよ。……クシュン」 修二くんに指摘されて、急に寒気を覚えた。 「くしゃみしてる」 「平気。それじゃ、香織ちゃんが待ってるから行くね」 私はきびすを返し、香織ちゃんの方へ走ろうとして――手を掴まれている事に気づいた。 次の瞬間、グイッとその手を引き寄せられた。 すぐ目の前に修二くんの顔が迫っていて、思わず身を強張らせギュッと目を瞑る。 (……あれ?) また何か怖いことをされるんじゃないかとビクついていたけれど、これといって何もされることはなかった。 むしろ、心なしか身体のだるさが無くなったような気がする。 「……これって、修二くんの気を少し分けてくれたんだよね。あ、ありがとう」 目を開けた私は、修二くんにお礼を言った。 けれど修二くんは不機嫌な顔で押し黙ったまま、私の手を離した。 そして、何事も無かったように校舎の方へ歩いて行ってしまった。 どうしよう… ①香織ちゃんのところへ行く ②もう一度修二くんにお礼を言う ③黙って背中を見送る 97 名前:724[sage] 投稿日:2008/03/10(月) 17 26 22 ID ??? ②もう一度修二くんにお礼を言う 「本当にありがとう、修二くん!」 最後にもう一度お礼を言って修二くんの反応を見ずにきびすを返すと、香織ちゃんの元まで走る。 「ごめん、香織ちゃん」 「宗像くんは来ないんだ?」 「……うん」 「そう。ま、いいわ。いきましょ」 香織ちゃんが私の手を取る。 それに驚いて視線を上げると、優しい香織ちゃんの視線とぶつかった。 「大丈夫よ愛菜」 「香織ちゃん?」 まっすぐに前を向いて歩く香織ちゃんに手を引かれるままに、歩き出す。 「愛菜、覚えてる?」 「?」 「勾玉の力」 「あ、うん……護りの力だよね」 剣が戦うための攻めの力、鏡が相手を見極める補助的な力とすると、勾玉は身を守る護りの力だ。 「そう、だから私は戦うための力は極端に低いの」 「う、うん」 「それに人になって知ったんだけど……」 香織ちゃんはそう言いながら、少しだけ私を振り返る。 振り返った香織ちゃんの目には、強い決意が見える。 「強力な護りに入ったら私は動けなくなる。 もとは勾玉で護るべき対象が身に付けてたから、動けなくてもぜんぜん問題なかったんだけどさ。 だからね愛菜、私の側を離れないで? 強い力を使っている間は私は動けないけど、その間は絶対に守るから」 「う、うん……」 「まぁ、軽い護法なら平気だけどね。でも、私が呼んだら私から離れないでよ? 離れてても、守れるけどやっぱり近くにいたほうが守りやすいもの」 「わかったよ」 「ということで愛菜、私から離れないでね」 「え?」 「ん~、囲まれてるっぽい?」 「えええ?」 肩をすくめながら、香織ちゃんはゆっくりと確認するように辺りを見回す。 「ん~、見えないけど……悪意は感じるのよね。あーあ、鏡がいればなぁ」 香織ちゃんはため息を付く。 そのとき軟らかい感触が手を叩いた。 「え?」 手元を見ると、修二くんにぬいぐるみに戻されてピクリとも動かなかったチハルが私の手をぽふぽふとたたいている。 「チハル!」 手のひらにのせるように持ち直すと、ポンいう音と共にチハルが人の姿に代わる。 今回は子供の姿だ。 「愛菜ちゃぁぁぁん」 「ええええ!? うそ、かわいい!」 私にしがみつくチハルの姿を見た香織ちゃんが、歓声を上げる。 さっきまで廻りを囲まれてるかも、と言っていた割には緊張感がない。 えっと…… ①チハルを紹介する ②廻りは大丈夫なのか聞く ③チハルに大丈夫か聞く 98 名前:725[sage] 投稿日:2008/03/11(火) 10 57 15 ID ??? ③チハルに大丈夫か聞く 「チハル。身体は大丈夫? なんともない?」 「うん。ビックリしたけどへいきだよ。それより、愛菜ちゃん」 「ん? どうしたの?」 「くるしい……」 よく見ると、香織ちゃんはしゃがみ込み、チハルを力の限り抱きしめている。 頭を撫でたり頬擦りしたりして、すごい歓迎ぶりだ。 「ホントかわいい! ほっぺもぷにぷに~」 「愛菜ちゃん。たすけてぇ」 香織ちゃんの過剰な可愛がり方に、さすがの人懐っこいチハルもお手上げのようだ。 「香織ちゃん。チハルが苦しがってるよ」 「あっ! ごめんごめん。つい我を忘れちゃったわ」 (さすが、かわいいものに目が無い香織ちゃんだ……) ショッピングモールで買い物する時も、まずファンシー雑貨屋に行きたがる香織ちゃん。 ここ数年は『ブーさん』と『ハローキャティ』にはまっている。 辛いカレーも大の苦手だし、大人っぽくみえて、意外と少女のままなのだ。 「ボクは精霊のチハルだよ。おねえさんのことは知ってるんだ。香織ちゃんだよね!」 チハルが元気に挨拶すると、今度は香織ちゃんの瞳がうるうるとしだした。 「私の名前を呼んでくれるのねぇ! もうっ最高!!」 香織ちゃんは感動のあまり、またチハルをひしっと抱きしめて頬擦りしていた。 (私でも止められそうにないな。あっ、でもそういえば……) 「香織ちゃん。そういえば、廻りを囲まれているって言ってたよね」 「あっ、忘れてた」 (だ、大丈夫かな) 香織ちゃんはすくっと立ち上がると、廻りを探るように意識を集中させだした。 なんて言おうかな… ①「香織ちゃん。チハルには少し見える力があるみたいなんだけど」 ②「チハル。敵は何人かわかる?」 ③「チハル。香織ちゃんを助けてあげて」 99 名前:726[sage] 投稿日:2008/03/13(木) 13 09 25 ID ??? ②「チハル。敵は何人かわかる?」 「んーとね。三人だよ」 「あら? チハルくん。もしかして、鏡みたいに見える力があるの?」 香織ちゃんが不思議そうに、チハルを覗き込んでいた。 「うん。少しならわかるよ。えーっと、あっ、この人……」 突然、チハルが怯えたように黙り込んだ。 「どうしたの? チハル」 「すごく怖い人がみえる……」 「まずいわね……。あの児童公園で結界を張るわ。私についてきて」 香織ちゃんに手を引かれ、児童公園までやってきた。 私はチハルの手を取っていたけれど、小さく震えているのがわかった。 「チハル。大丈夫?」 「う、うん……」 「嫌な感じ。私にも威圧するような気配が伝わってくるわ。愛菜、チハルくん、少しそこに立ってくれる?」 私とチハルは香織ちゃんに言われるまま、公園の中央にある広場に立った。 地面は雨でぬかるんで、水溜りが出来ている。 「私が良いっていうまで、そのまま立っててよ」 そう言うと、香織ちゃんは小さな声で呪文を唱え、指を組みながら印をきりだした。 ただ、日本語ではない全く聞いた事の無い不思議な言葉が紡がれている。 (香織ちゃん、違う人みたい……。これが勾玉……) 「香織おねえさんは神様の言葉でお願いしているだけだから、心配ないよ」 私が不安な顔をしていたのを見て、チハルが話しかけてくれた。 「さてっと、それじゃ……頼むわよ」 香織ちゃんはぬかるんだ地面を手のひらでグッと押さえつけた。 すると、私とチハルと香織ちゃんを取り囲むように、青い光を帯びた魔方陣が浮き上がった。 「すごいよ! 香織ちゃん」 「まぁねー。これは護りの魔方陣なのよ。でも、よかったわ。成功し……」 香織ちゃんが地面から手を離そうとして、そのまま糸が切れたように崩れ落ちた。 バシャンという音と共に、香織ちゃんの身体が地面に横たわる。 地面に描かれた魔方陣が、跡形も無く消滅してしまった。 「香織…ちゃん……?」 「この程度の干渉に耐え切れなかったとは……八尺瓊勾玉もたいしたことは無い」 顔を上げると、そこには人影があった。 その人は…… ①秋人 ②春樹の父親 ③美波さん 100 名前:727[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 10 39 20 ID ??? ①秋人 「こんにちは。大堂愛菜さん」 黒い傘をさした秋人さんが、ゆっくり私に近づいてくる。 倒れた香織ちゃんの横を通り、私の前で立ち止まった。 「秋人さん……」 「おや? 私の名前を知っているとは。光栄だな」 秋人さんは穏やかな笑みを浮べていたけど、相変わらず眼鏡の奥の瞳は冷え切っていた。 「愛菜ちゃんは……ボクが守るんだからね!」 震えていたチハルは私の前に出て、精一杯の虚勢を張っていた。 「……ダメだよ。チハルじゃこの人には敵わない。うしろに下がってて」 「愛菜ちゃん?」 「ごめんね、チハル。もう私のために誰かが傷つくところは見たくないんだ」 私はチハルを諭すと、目の前の秋人さんを見る。 「秋人さん。一体、何をしたんですか。香織ちゃんは大丈夫なんですか?」 「さあ? 無事かどうかは自分で確認するといい」 秋人さんの言葉を聞き流しながら、私は香織ちゃんの元へ駆け寄って肩を抱いた。 香織ちゃんの顔は青白く、微かな息が口から漏れていた。 (わかる……。このままじゃ香織ちゃんが危ない…) 香織ちゃんが行っていた術が暴走した跡があった。 多分、秋人さんの干渉で香織ちゃんは術を自分の身に受けてしまったのだろう。 私は目を閉じ、私の内にある生命力を香織ちゃんの身体に流し込んでいく。 香織ちゃんを支えていた腕の力が入らなくなり、酷い倦怠感が全身を蝕んでいく。 「自らの命を削るとは……愚かな」 私は秋人さんの言葉には答えず、代わりにチハルを呼んだ。 「チハル。香織ちゃんを連れて、なるべく遠くまで逃げて」 「でも……」 「お願い。今は私の言うことに従って」 チハルが青年に変身し、香織ちゃんを背負う。 それを確認して、私は再び秋人さんに向き直った。 ①「投降します。だから、このふたりを見逃してあげて」 ②「私は戦う。秋人さんの好きにはさせない」 ③「もう止めてください。秋人さんはなぜこんなことをするの?」 101 名前:728[sage] 投稿日:2008/03/14(金) 23 52 56 ID ??? ③「もう止めてください。秋人さんはなぜこんなことをするの?」 チハルと香織ちゃんを庇うように、私はふらつきながらも両手を広げる。 「そんな抵抗をしても無駄だ。ようやく見つけた勾玉は逃がさない。道具として必要だからね」 「香織ちゃんを道具なんて言わないで」 「壱与、いや大堂愛菜さんも大切な道具として生まれてきたんだ。気高い鬼の姫君の器としてね」 「壱与でも、鬼の姫でもない! 私は、大堂愛菜。あなたの弟、大堂春樹の姉。ただそれだけです!」 言い放つ私をあざけるように、秋人さんは薄笑いを浮かべる。 「……春樹か」 「春樹は……私の弟は無事なんですか?」 「ああ、もちろん。私にとっても大切な弟だからね」 「早く春樹を返して!」 「では、私について来るといい。春樹に会わせてあげよう」 (春樹に会える……でも……) 私が躊躇っていると、秋人さんが哀れむように深い溜息を漏らす。 そして、一歩、また一歩と私に向かって近づいてきた。 私はチハルと香織ちゃんを守りながらも、ジリジリと後退していく。 「怯える必要は無い。君に……渡したいものがあるだけだ」 「私に?」 「いい子だから、手を出してごらん」 (手を……) 私は言われるまま、ゆっくり手を差し出す。手の平には、赤茶色の小さな石が置かれた。 「この赤い石はもしかして……」 「やはり、身に覚えがあるようだな」 (赤い石といえば、夢で見た出雲のメノウだ。秋人さんはもしかして……帝?) 私の知っている帝と秋人さんは、雰囲気が違う。 だけど、壱与と帝だけしか知りえない事を秋人さんは知っている。 「これは君がプレゼントした石だ」 「え?」 (違う。赤い石の勾玉は帝がプレゼントしてくれた物のはず……。じゃあ、これは、一体?) 「何を驚いているんだ。コード№673に、君が買い与えたものだろう?」 手の中の石は、降り注ぐ雨に洗われて本来の姿を取り戻していく。 乳白色のムーストーン。 私の手首を、鉄の匂いを帯びた赤い液体が伝い落ちていく。 「その血で汚れた石は、草薙剣がとても大切にしていた物だ。捨てるには忍びなくてね」 「冬馬……先輩の血……」 「そうだ。三種の神器は滅多なことでは死なないために、ついやり過ぎてしまったのだよ。 これでは、草薙剣も八尺瓊勾玉も当分は道具として使い物にならないだろうな」 私は…… ①動揺のあまり、気を失った ②怒りにまかせて鬼の力を使う ③手の中の石を握りしめる 102 名前:729[sage] 投稿日:2008/03/15(土) 16 18 12 ID ??? ③手の中の石を握りしめる (冬馬先輩……) 「その石を見つけた時も、私に奪われまいと気を失う寸前まで抵抗していたんだ。 健気な剣じゃないか。どう手なずけたのか知らないが、たいした忠誠心だよ」 秋人さんは哀れむように、首を左右に振っていた。 「……冬馬先輩は無事なんですか?」 「コード№673は、私たちと違って高い自己回復力を備えている。問題は無いだろう」 「え?」 「彼の出生は特殊だからな。前例がない分、現存していた剣の遺伝子からまた剣が生まれるとは、当時の研究員も半信半疑だったようだが。 ただ、研究員が望んだような力の発現は無く、結果としては失敗だったようだな」 (まさか……冬馬先輩がいつも自分を粗末に扱っていたのは、特別な身体を持っているから……) 「秋人さん。組織は……冬馬先輩のような人を生んでまで、何をしようとしているの?」 私の問いかけに、秋人さんが眉根を寄せた。 「さきほど、説明したばかりだろう」 「三種の神器を使い、壱与を復活させる事……」 「わかっているなら、くだらない質問をしないでくれるか。不愉快だ」 「では、あなたも……十種の神宝だから……壱与にこだわるんですか」 秋人さんを見据えながら、私は問いかけた。 「ほう? そこまで思い出しているとは、伝承に綴られた巫女の中でも、君は壱与に最も近い存在なのかもしれないな。 そうだ。十種の神宝としての魂を授かった高村の者は、出雲の王族、とりわけ鬼の力が強い壱与を求める。 これは仕方のないことだ。それに、壱与は研究材料としての価値も高い。 伝承の中だけに住まう鬼が、君の中に眠っている。それを見たいと思うのは、この分野を研究する学徒としては当然の欲求だよ」 (十種の神宝……。でも、おかしい。神器がこんなにも簡単に倒されるなんて) 道具としての一つ一つの力は、十種の神宝よりも三種の神器の方が上回っていたはずだ。 なのに、秋人さんの力は神器の力を遙かに凌駕している。 (もしかして……) 「もしかして、神宝の圧倒的な力は……」 「待ってよ、愛菜ちゃん。あの人!」 今まで、ずっと黙っていたチハルが話しかけてきた。 私は、チハルが見ている視線の先を追う。 雨の向こう、佇む人影と、足元に倒れた人影が二体あった。 「あれは……。足止めすらできないとはな。全く使えない力の器どもだ」 秋人さんは視線を向けながら、苦々しげに呟いていた。 その人影は、真っ直ぐ私の方へ歩いてくる。 そして、私のすぐ横にまでやってきた。 「神宝の圧倒的な力は、十種の神宝の内、八種類の神宝の力を、すでにこの男が手に入れてしまっているせいだ」 現れた人物とは…… ①一郎くん ②周防さん ③春樹 ④冬馬先輩 103 名前:730[sage] 投稿日:2008/03/16(日) 02 48 56 ID ??? ③春樹 「春樹か。やはりお前も神宝だったのか」 「はい。姉の覚醒と同時に発現しました」 「もう一つ見えるのは……神器。いや、違うな」 「兄さん、教えてください。あなたが自分の身体も省みず、八種類もの力を次々と自分のものにした事も、 神器と姉を手に入れようとしている事も、すべて、鬼が治めていた国を再興のため……違いますか?」 「なぜそう思う」 「すべて思い出しました。高村一族もまた、鬼の末裔だったんですね」 目の前には、間違いなく春樹が立っていた。 突然の出来事に、なかなか言葉が出てこない。 それどころか、段々、今が夢なのか現実なのか、よくわからなくなってしまう。 「春樹だぁ。ぶじだったんだね」 「チハル……」 「ボクね、春樹のことすごく心配だったんだ。けど、げんきみたいでよかった!」 「ずっと俺を守ってくれていたのに、置いていって…ごめんな」 (本当に……春樹なの?) 「……春樹?」 「姉さん……」 私の呼びかけで、春樹がようやくこちらに向き直った。 その顔は、嬉しそうにも、辛そうにも見えた。 「ホントに……本当に春樹なの?」 「姉さん。心配掛けてごめん」 「夢じゃなく、本当の春樹なのね」 「うん……」 目の前に居るはずの、春樹の顔が滲んでいく。 胸が熱くなって、次々と涙が溢れ出て、止められない。 「すごく……すごく心配したんだから!!」 「うん。わかってる」 私は力の限り、春樹を抱きしめる。 「春樹……春樹……会いたかったよ……」 春樹は苦しいのか、少しだけ身体を強張らせている。 けれど、静かに息を吐いたあと、私の身体に腕がまわされた。 「……俺も会いたかった」 懐かしい匂いに、顔を埋めて泣く。 たった数日なのに、離れている時間はとても長く感じられた。 (本当に……よかった) 「さあ。感動の再会も済んだようだし、壱与を渡してもらおうか。春樹」 秋人さんの声で、私たちはゆっくりと身体を離す。 「……姉さん、また無茶したんだね。だけど、もう大丈夫だよ。何があっても俺が守るから」 どうしよう…… ①春樹のうしろに隠れる ②チハルたちと逃げる ③様子をみる 104 名前:731[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 13 15 22 ID ??? ③様子をみる 「だけど……秋人さんはとても強いよ。春樹の力では勝てない……」 「力では圧倒的に負けてるのは分かってる。けど、兄さんに持っていないものを俺達は持ってるんだ。 だから、大丈夫だよ」 春樹の目に、失望の色は無い。 (春樹を信じよう) 「もう一度言う。壱与の器を渡してもらおうか」 「できません」 「それは……私に逆らうということだな」 秋人さんの言葉には、静かな怒りが含まれていた。 「兄さんに従うつもりはありません」 「馬鹿な弟を持ったものだ。お前の力で私に勝てると思っているのか」 「多分、勝てないと思います。けど、負けるつもりもありません」 春樹は一歩踏み出し、私の前に立った。 「祖父や父、そして兄さんがしようとしている事も全部知りました。多くの人たちを不幸にさせ、命を弄ぶ……。 こんなやり方、人間の出来ることじゃありません」 「人間か。私を愚劣極まりない者達と一緒にしないで欲しいな」 「兄さんがどれだけ人間を嫌い、否定しても、あなた自身が人間なんだ。もう、本物の鬼は遙か昔に滅んでいるんです」 「この娘と神器を使って、本物の鬼を復活させれば済むことだ」 春樹の背中が、怒りに震えている。 「だから……!科学の力を使って、命を弄ぶ計画が間違っていることに、なぜ気付かないんですか! 伝承に記された高村の祖先も、兄さん達も……高村の人間はみな狂っています」 「伝承……。神宝の力を得たお前も、見たのだな」 秋人さんは腕を組み、春樹を見つめていた。 「はい。高村の祖先は、壱与の魂をもった鬼の化身と交わることで、時代と共に薄まっていく鬼の力を維持し続けていたんですね。 神宝の力は陰の力。高村にとって、力を誇示するためには失ってはならないものだったんだ。 そして兄さんたちは、巫女を守る神器を利用し、より純粋な鬼の化身を得るために画策していた――そういうことですね」 「ああ、その通りだ」 「もうこれ以上、神器と神宝の馬鹿げた小競り合いに、姉さんを巻き込まないでください。 俺も姉さんも……神器のみんなだって、本当に欲しいのは力なんかじゃない。当たり前の日常なんです」 (春樹……) ①春樹に話しかける ②秋人さんに話しかける ③黙っている 105 名前:732[sage] 投稿日:2008/03/17(月) 20 56 11 ID ??? ①春樹に話しかける 「待って春樹……壱与の魂をもった鬼の化身って…私のこと…なのよね?」 「……うん」 「……鬼の化身って? もしかして…私は人ではなく、鬼なの?」 春樹は何も答えてくれない。 その代わりに、春樹の向こう側にいる秋人さんが口を開いた。 「弟に代わって私が教えてあげよう。その通りだ。君はもう人ではなくなっている。 もし人であったなら、勾玉に生命力を分け与えた時に、君は倒れているはずだからね」 「でも、周防さんが言ったんです。力を使いすぎるとこよみさんのようになるって……。 それは嘘なんですか」 秋人さんは数秒黙り込み、再び話し出した。 「こよみ……? ほう、そうか。コードNo543とは懐かしい。 一時は壱与の器かもしれないと目されていた娘だったな。まあ、周防の言うことが嘘か本当かと問われれば、本当だろうな。 力を使いすぎると、コードNo543のように死んでしまうからな。ただ……」 「ただ?」 「内包する力の容量が違うのだよ。一般の能力者と、覚醒済みの壱与の器である君とではね。 三種の神器と契約するということは、君の身も心も壱与、すなわち鬼に近づくということだ。 君はすでに剣と契約を交わしている。後は…言わなくてもわかるな」 (神器と契約するって……壱与そのものになっていくってことなの……? じゃあ……私自身はどうなってしまうんだろう……) 「愛菜ちゃん。香織おねえさんが…!」 その言葉でうしろを見ると、チハルにおぶさったままの香織ちゃと目が合った。 「香織ちゃん! 目が覚めたのね」 「な、なんとかね。でもすぐには加勢できそうにないわ」 「無理しないで。そのまま安静にしてて」 私の言葉に、香織ちゃんの顔がいつになく真剣になる。 「愛菜、そんなこと言ってる余裕はないわよ? 春樹くんはこの男と刺し違えてでも、あんたを守るつもりだもの。勝てないけど、負けないってそういう意味だろうからね。 それだけの覚悟を春樹くんは持っていることに気づいてあげるべきよ」 「えっ……」 前を向いて、春樹を見る。 春樹にも聞こえているはずなのに、何も言ってはくれなかった。 「……春樹、教えて。香織ちゃんが言っていることは……本当なの?」 私に注がれていた悲しげな視線は、逸らされる様に、ゆっくり下へ移動していく。 嘘をつくことが苦手な春樹は、言いたくないことや都合の悪い話になると、いつもこんな風に黙り込んでしまう。 私は…… ①「春樹、ちゃんと答えて」 ②「絶対にそんなこと許さないよ」 ③「春樹だけにはさせないよ。私も戦う」 106 名前:733[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 11 29 03 ID ??? ①「春樹、ちゃんと答えて」 (春樹だけが犠牲になるなんて…耐えなれない……) 春樹がゆっくり顔を上げる。 その顔は、胸が苦しくなるくらい綺麗な微笑だった。 「あの日、家族になった時に交わした約束を……守らせて欲しいんだ」 「『母さんだけでなく姉さんも、父さんも守れるくらいに強くなる。ずっと守る』……だっけ」 「よく憶えてるね。恥ずかしいな」 春樹は照れくさそうに笑って、また私を見る。 「姉さん。ひとつ尋ねてもいいかな」 「うん。いいよ」 「家族になってから今日まで……姉さんにとって俺は『良い弟』だった?」 「春樹……?」 「いつも迷ってたんだ。『良い弟』にならなくちゃって……。あの日から、ずっと考えてた。『弟』である俺の姿を。 俺、ヘンじゃなかったよね」 なぜこんな質問を投げかけてくるのか春樹の気持ちが読めなかった。 黙ったままの私に、うしろから香織ちゃんの声がする。 「答えてあげなよ、愛菜」 しっかりもので、口うるさくて、いつも優しい春樹。 真っ直ぐで、素直すぎるせいで、少し損をすることもある。 けど、弟としてだけじゃなく、ひとりの人間としても尊敬できる男の子だ。 「私にとって、勿体ないくらい春樹は『最高の弟』だよ。 でもね、一つだけ不満があるんだ」 私は一度大きく息を吸って、吐いた。 そして、今度は後ろを振り向く。 「香織ちゃん。お願いがあるんだ」 「わかってるわ。私と契約するのね」 私は黙って、香織ちゃんにうなずいた。 その姿を見て、不意に春樹が叫んだ。 「それだけは、絶対に駄目だ!姉さんは契約の意味をわかってないよ! さっきも兄さんが言っていたじゃないか。 契約は、身も心も鬼に近づくことなんだ。 姉さんが姉さんで無くなる……もしかしたら、姉さんの自我が失われるかもしれないんだよ!」 春樹が私を止めようとしたが、秋人さんによって阻まれていた。 「邪魔するな、春樹。さあ、壱与の器よ。八尺瓊勾玉と契約を交わせ」 私は…… ①契約する ②やめる ③考える 107 名前:734[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 15 31 13 ID ??? ①契約する 春樹が言うように、私は身も心も鬼に近くなるのかもしれない。 けれどには一つだけ確信があった。 「香織ちゃん」 「ええ……チハルくん降ろしてくれる?」 「う、うん」 チハルからゆっくりと降りた香織ちゃんは、私の右手を両手で包むように握る。 「姉さん!」 秋人さんに阻まれた春樹の声に私は笑ってみせる。 「大丈夫だよ春樹。私は自我を失わない」 「なんで、そんな事が言えるんだ!」 「だって契約は「壱与」とするんじゃないもの。「愛菜」との契約だよ。ね、香織ちゃん」 私の言葉に、香織ちゃんは少し微笑んだ。 「冬馬先輩との契約も「壱与」とじゃない「愛菜」としたんだよ」 あの時の私は壱与の事なんて知らなかった。私は「愛菜」として先輩と契約したんだ。 あの契約によって、私の本質は人では無くなったかもしれない。 けれど、私の自我が失われることはなかった。たとえ、身も心も鬼になっても、私は私だ。 「香織ちゃん」 香織ちゃんに呼びかけると、香織ちゃんは握った私の手を掲げる。 「私は誓う」 「姉さん!」 香織ちゃんが宣言をはじめる。 悲痛な春樹の声が聞こえたけれど、私は香織ちゃんから視線を話さない。 「我が友と定めし、愛菜。私は愛菜の為に愛菜の望む道を共に進む。愛菜を護り、私の力が向かう先を愛菜へ託す。そして……」 香織ちゃんはそこで一旦言葉をきるといたずらっぽく私を見て、それから挑戦的に秋人を見る。 「古の契約を破棄、これより新たな契約をここに宣言する。この生が終わるまで、愛菜の親友として!」 香織ちゃんが高らかに宣言を終えると、一瞬なんとも言えない喪失感を覚えた。 けれどそれを喪失だと認識する前に、新たに優しくて暖かい感覚が身を支配する。 あの喪失感は壱与との契約が破棄された証、そして新たな契約。 私はその暖かい感覚に促されるように香織ちゃんに微笑む。 「よろしくね、香織ちゃん」 私の言葉に香織ちゃんは微笑むと、私を引き寄せて少し伸び上がると額に唇を寄せた。 香織ちゃんが触れた場所から暖かいものが流れてくる。きっとそこには契約の印が現れているだろう。 「勾玉め……」 その時、秋人さんが毒づくのが聞こえた。 その声に、香織ちゃんが笑うような気配がする。 「あなたの思い通りになるなんて思わないことね? もし、これから「愛菜」の自我が失われて「壱与」になったら勾玉の力は使えないわ。それから三種の神器の力もね」 そうだ、三種の神器の力は壱与が使うためには3つが揃っていなければいけなかった。 けれどいま勾玉と壱与との契約は破棄され、壱与は3種の神器の力を使うことが出来なくなったのだ。 それに、私もまだ鏡とは契約をしていない。修二くんとの事がある以上鏡との契約は難しいだろう。 結果、今この世界に三種の神器をまとめて扱える人はいなくなった。 ①「もう神器をまとめられる人はいなくなったわ」 ②「ほらね、春樹、私自我を失っていないよ」 ③「香織ちゃん、ありがとう」 108 名前:735[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 18 28 59 ID ??? ②「ほらね、春樹、私自我を失っていないよ」 「よかった……。姉さんはいつも無茶するんだから」 春樹は安堵したように、深い溜息をついた。 「お取り込み中のところ悪いんだけど、愛菜……。私、もう駄目かも……立ってられないわ……」 気丈に立っていた香織ちゃんがフラフラとよたついた。 香織ちゃんの膝が折れ、チハルがそれを支える。 「ごめん。香織ちゃんに無理させちゃったね」 「そんなの、平気よ。だって、友達でしょ?」 「香織ちゃん。本当にありがとう」 「なんのなんの……。だけど、しばらくは……動けそうにも無い……かも」 香織ちゃんは笑うと、静かに目を閉じた。 術を身に受けて消耗しているのに、契約までして力尽きてしまったのだった。 だけど、気を失ってしまった香織ちゃの顔は、どこか満足げに見える。 (ありがとう。香織ちゃん) 香織ちゃんの頑張りで、巫女としての力を得た。 と同時に、私はまた一つ鬼へと近づいていく。 「契約の更新でなく、新たな契約を行ったか。伝承の壱与というものを見てみたかったが、仕方がない。 大堂愛菜。君自身を鬼の姫として迎え入れるしかないな」 秋人さんの望みは潰えたはずなのに、言葉に余裕すら感じる。 眼鏡の奥の瞳が、鈍くギラついていた。 「どういうこと?」 「君が十種の神宝と契約するのだよ。そして、永きに渡る高村の悲願、国の再興を果たす。 私が八種も力を入手している事の、これが……本来の意味だ」 不敵な笑みさえ浮べている秋人さんを、春樹は睨みつけている。 「姉さん、少し離れてて。兄さんの狙いは……俺だから」 「春樹……?」 「馬鹿な娘だな。正直、弟を殺すのは心苦しいが、君の選択が招いた結果だ。 恨むなら、軽率な行動をとった己を恨むがいい」 「えっ……」 秋人さんの姿が消えたと思った刹那、春樹が顔をゆがめた。 いつの間にか春樹を押さえ込んでいて、秋人さんの放つ赤黒い光が春樹を裂いた。 「ぐぁぁああ!!」 春樹は絶叫しながら、ぬかるんだ地面に叩きつけられる。 私はぐったりと横たわる春樹に駆け寄った。 「春樹!」 私は…… ①春樹を回復させる ②自分から立ち向かっていく ③秋人さんに話しかける 109 名前:736[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 10 24 36 ID ??? ③秋人さんに話しかける 「契約は成立しないわ。私があなたとの契約を受けないもの」 以前冬馬先輩が言っていた、一方的に契約は出来ない。 拒否しなければ、仮契約と言う事で一応履行はされるようだけれど、その事実を知っている今の私が秋人さんとの契約を承諾するわけがない。 「もしあなたが春樹を、私の大切な人たちをこれ以上傷つけるなら、これから先、絶対にあなたとの契約はしないわ」 私は春樹の上半身を抱き上げる。 もう服も泥だらけになってしまっている。 「春樹、大丈夫?」 私の言葉に、春樹はうっすらと目を開く。 「姉さん、逃げるんだ」 「春樹を置いていけるわけ無いじゃない」 「俺のことは、いいから。姉さんだけでも」 「春樹、さっきわたし一つだけ不満があるって言ったよね」 「……え?」 唐突に話を変えた私に、春樹は一瞬言葉を失う。 「春樹は私には勿体ないくらいの最高の弟だけど、私にぜんぜん頼ってくれないのが不満なの」 「姉、さん……?」 「確かに春樹は約束通り私を守ってくれる。でも、私だって春樹を守りたいよ? 大切な家族だもん。一人で苦しんでいるのを見ると、私だって苦しいよ」 「…………」 「だから、今は私に守られててよ? 私にだって出来ることがあるんだから」 「なにを、する気なのさ」 「秘密。チハル、ごめん春樹も頼めるかな?」 「うん、わかった」 チハルは香織ちゃんを背負い直し片手で支えると、もう片方の手で器用に春樹を支えた。 私はチハルに春樹を託すと、秋人さんに向き直る。 「何をする気かな? 鬼の姫」 秋人さんは笑みを浮かべたまま私を見ている。 「なにも?」 私は緊張で震えそうに鳴る声を何とか押える。 チャンスは一度だけ。失敗したら二度は無いだろう。 けれど香織ちゃんと契約したことで鬼に近くなった私なら、成功率は上がっているはずだ。 とりあえず、秋人さんを油断させなければいけない。 「この先、春樹たちに手を出さないって誓うなら、今あなたについて行ってもいいわ」 「姉さん!」 「ほぅ……?」 「偽りの誓いは許さない」 「だが、それでは神宝との契約はなされないぞ鬼の姫」 「そんな事無いわ。春樹と、もう一つの神宝とも契約をそれぞれ行えばいい」 「春樹が契約をすると思うのか?」 「するわけ無いだろ!?」 「説得するわ」 「姉さん!」 「もう一つの神宝も承諾はしまい」 「なんとかする」 「…………」 私の言葉に、秋人さんが考え込むように沈黙する。 もう一息かもしれない。 ①ただ待つ ②更に一言言う ③秋人さんに近づく 110 名前:737[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 12 57 56 ID ??? ①ただ待つ 私は、秋人さんの答えをジッと待ち続ける。すると、呻くような春樹の声が聞こえた。 「……絶対に、行っちゃ駄目だ。姉さん」 「私を信じてくれないの?」 「信じているに決まってるだろ。でも、姉さんはこの人の本性を知らないんだ」 「秋人さんの、本性?」 「そうさ。きっと姉さんの心を壊してでも、契約を果たすよ。今だって俺を殺して、力を奪おうとしているんだから。 兄さんは現代に蘇らなかった神宝を得るために、何千もの高村の遺伝子を持つ胎児を人工的に作り続けていた。 常識は通じないんだ。心を壊すことも、命を奪うのも、笑いながらやってしまう人なんだよ」 「酷いな、春樹。私はそこまで非情ではないぞ」 「どうだか。……くっ」 よく見ると春樹の脇腹に血が滲んで、制服が大きく裂けていた。 私は春樹に近づき、その傷口に触れながら祈る。 裂けてえぐれた皮膚が、ゆっくりと再生していった。 「……姉さん?」 「私って、意外とすごいんだよ? これでも信じてくれないかな」 目を見開いて驚いていた春樹だったけれど、治った傷口に触りながら笑い出した。 そして、観念したように口を開く。 「……わかった、俺の負けだ。だけど、姉さんだけに背負わせたりしない。一緒に家に帰ってもらわなきゃいけないからね」 春樹はチハルから離れ、静かに私の横に立つ。 そして、神の言葉をつむぎながら、空にすばやく印をきっていった。 春樹の周りに小さな赤い光がいくつも現れ、手元に集まっていく。 その発光体は握り拳八個分の長さをもった、光の剣になった。 「八握剣か」 「そのようですね。上手くいったことに、自分でも驚いていますよ」 「お前ごときが足掻いても、私に傷一つ付けることは出来ないぞ」 「神器との戦いで疲弊していて、兄さんの身体はあまり持たないはず。 八種類もの神宝を封じ込んだひずみが必ず現れる。その隙をつけばいい」 「ハハハッ……威勢のいいことだ」 秋人さんは冷たく笑って、私を見る。 「鬼の姫よ。私を油断させて攻撃するつもりだったのだろう? 春樹の機転で命拾いしたと気づいているのか。不用意に近づいた瞬間、目でも潰してやろうかと考えていたんだからな」 (震えが止まらない。怖い。でも、もう香織ちゃんに頼るわけにはいかない…私が……春樹を守らなきゃ) その時、ふと私の頭の中に、ひとつの声が聞こえてくる。 (愛菜ちゃん……愛菜ちゃん……) 頭の中で、誰かが私を呼んでいる。 (愛菜ちゃん……ボクだよ……) (チハル?) (そうだよ。あのね……ボクのそばに……。春樹と愛菜ちゃんの力に……なるよ…) 私はチハルの傍に寄っていく。 (……ボク…がんばるからね……) チハルは香織ちゃんを近くのベンチに寝かせると、ポンと音を立てて変身した。 変身した姿とは…… ①盾 ②鉾 ③弓 111 名前:738[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 23 43 31 ID ??? ③弓 私の手には、弓と一本の矢が乗っていた。 (弓矢……これ、梓弓だ) 梓弓は神に奉る神具として扱われる、梓の木で作った弓だ。 弓矢は昔から武器だけでなく、破魔矢などの魔物を打ち倒す道具として、呪具の意味合いも持っている。 (これを……私が…) 壱与が神楽弓を練習していたのは知っているけど、私は触ったことも無かった。 壱与の記憶だけは残っているものの、まったく自信がない。 (おまけに、矢が一本だけなんて……ねぇ、チハル……) 私は頭の中でチハルに話しかける。 (愛菜ちゃん。どうしたの?) (私、弓を扱ったことが無いけど大丈夫かな。矢も一本だけだし) (矢が一本なのはボクがまだ精霊だからだよ。チカラがたりないんだ、ごめんね) (ううん。ありがとう、チハル) 弓は弦を引くだけでも技術が必要だと、弓道部の友達が言っていたのを思い出す。 私は試しに、スッと弦を引いてみた。 (わっ、すごい……) 身体が勝手に動く。 やはり壱与が学んだ身体の記憶までも、魂が継承しているのだろう。 「姉さん。なんで弓矢なんて持っているんだよ」 「チハルが変身して……」 「それは梓弓だな。まさか私を射抜こうというのか」 「そ、そうよ」 「震えているぞ。せいぜい春樹を射抜かないよう、気をつけるんだな」 春樹はチラリと私を見て、大きく息を吐いた。 そして、再び秋人さんに対峙しながら、私に声をかけてきた。 「危ないから、後ろに下がってて。弓矢だし、距離を取った方がいい。 それと……姉さんを高村の騒動に巻き込んでしまったこと、悪いと思ってるんだ。 黙って家を出てった事も含めて、家に戻ったら、怒ってくれて構わないから」 (春樹……) 「来い、春樹。お前の望みどおり、相手になってやろう」 「姉さんを守ってみせる! 絶対、一緒に帰るんだ……。いくぞ!!」 赤く光る剣を両手に持ち直すと、春樹は秋人さんの懐へ飛び込んでいった。 どうしよう…… ①少し離れて構える ②香織ちゃんを見る ③考える 112 名前:739[sage] 投稿日:2008/03/20(木) 11 59 26 ID ??? ①少し離れて構える 弓を番え構えるが、春樹が近くて打つことが出来ない。 (それに、本当にこの弓で秋人さんをとめることができるの?) 秋人さんの内にあるものは、魔ではない。 この弓も、そして秋人さんの内にあるものも、どちらも神具だ。 そして神具の格としては、間違いなく秋人さんのほうが上。 チハルの矢は、けん制にしかならないだろう。 (その間に春樹が何とかしてくれる……? だめだめ、いけない春樹だけを頼っちゃ) 春樹だって動いているのがつらいはずなのだ。 いまこうして、弓を放つタイミングを計っている間だって顔をしかめている。 (他に方法はないの? もっと確実な……) めまぐるしく位置が変わる春樹と秋人さんの戦いに、弓を打つことも出来ずじりじりとした時間が過ぎる。 「大堂! こんなところで何をしている。それに、この力……これは」 そのとき名前を呼ばれ、そちらに顔を向けると一郎君が立っていた。 一郎君は、春樹と秋人さんを見定めるように目を細めている。 「一郎君……春樹が……」 「……言わなくてもいい大体わかった。 それに、勾玉との契約も行ったようだな……。 ところで、修二はどうした? まだ学校に気配があるが一緒に来たんじゃないのか」 「修二君は……」 修二君のことを口にしようとして、修二君との会話を思い出す。 (そうだ、力の移行の儀式……。あれを秋人さんに……) 儀式と契約は違う。 契約は双方の同意が必要だが、儀式は手順さえふめば相手の意思は関係ない。 秋人さんの内にある神宝の力を、取り上げてしまえばいい。 そうすれば、少なくとも秋人さんは普通の人になる。 普通の人になった秋人さん相手なら、記憶の消したり、操作したりすることが出来るはずだ。 「うっ……」 「……春樹!」 考え込んでいる間に、春樹は秋人さんの力に弾き飛ばされ地面に叩きつけられていた。 今、隙を作れば、儀式を行うことが出来る。 ①矢を放つ ②一郎に協力を求める ③秋人にしがみつく 113 名前:740[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 02 04 13 ID ??? ②一郎に協力を求める 「春樹!」 「平気だ。姉さんが来なくても、大丈夫……」 秋人さんは春樹に攻撃されていても、着衣ひとつ乱していない。 まるで、見えない壁にはばまれているようだ。 春樹は汚れた顔を袖で拭い、口に入った砂を吐き出していた。 (儀式は手順さえふめれば……) 儀式は祝詞を捧げ、神に願わなければならない。 根本から解決するには一番いい方法だと思ったけれど、手順に時間が取られる。 今それを行うほどの時間は……やはり、無い。 秋人さんが纏う見えない壁に阻まれ、春樹がせっかく剣を振るっても全く届いていない。 見えない壁を打った剣から、赤い光が火花のように飛び散り、舞う。 秋人さんの放つ一撃に、またも春樹は身体ごと吹き飛ばされてしまった。 (もう見ていられない。けど、確実な方法も無い……) 「あれは……高村の者だったな。君の弟も……そういうことか。 にしても、あの男。なんて神宝の力だ。あんな力を身体に宿していたら、肉体が持たないだろうに」 「一郎くん、いい方法を教えて!? 儀式は無理だし……このままじゃ、春樹が……!」 「落ち着いてよく見てみろ、大堂。君の弟の連続攻撃に対して、あの男の動きが怠慢になってきている。 力の消耗が激しくて、決定的な反撃ができなくなっているんだ」 たしかに、動きがさっきよりも鈍く感じる。 春樹の無謀とも思えた捨て身の行為も、策があってのことだったのだ。 「大堂。その矢を貸してくれないか」 「えっ。うん……」 私は矢を一郎くんに手渡す。 一郎くんは矢をグッと握り締めると、青白く輝き始めた。 「さあ、この矢を。致命傷を与えるほどではないが、威力は増したはずだ」 私は矢を掴むと、構えをとった。 息を整え、ゆっくり弦を引きわける。 すると、一郎くんがスッと私のすぐ傍らに立った。 (一郎くん?) 「俺に弓道の心得はない。しかし、あの男が纏っている壁の一番脆い場所は見えている。 俺の指が示す方向に矢を放て。君の弟が離れた瞬間がチャンスだ」 私の左手に一郎くんの手が添えられた。 二人の人差し指が、秋人さんという同じ的に向う。 春樹がまた地面に倒れこんだ。体力の限界が近いのか、春樹は膝を立て息を切らしている。 「大堂なら、必ずやり遂げられる。君の弟が与えてくれた機会を無駄にするな。 俺が目になっているんだ。自信を持って思い切り、放て」 私は…… ①放つ ②迷う 114 名前:741[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 09 53 10 ID ??? ①放つ (お願い!) 私はそう願いながら、光り輝くチハルの矢を放った。 光の矢は雨粒を切り裂きながら、真っ直ぐにとんでいく。 そして、秋人さんの肩の付け根ぎりぎりのところでく、見えない壁に阻まれて減速した。 (届いて……) 矢先はより強い光を帯びていく。 そして、秋人さんの肩を見事に射抜き、その光を失った。 「私の矢が……当たった……」 「……ぐっ!」 秋人さんの顔が苦痛で歪む。 「障壁は無くなった。今だ!」 一郎くんの声で、弾かれるように春樹が動く。 両手で剣を握り、春樹は秋人さんの首にめがけて剣を突き立てた。 (春樹……!) ふたりは揉みあうように、同時に倒れこむ。 春樹は射抜かれた秋人さんの肩を掴むと、馬乗りに押さえ込んだ。 炎にも似た八握剣が、秋人さんの喉もとでピタリと止った。 「終わりです。兄さん」 「残念だが、そのようだな」 「……………」 「どうした、春樹。私を仕留める絶好の機会だぞ」 「………なぜ…昔の兄さんはこんな人じゃ…なかった…のに…」 「私は私だ」 「そんな事わかってる……! でも……」 赤い剣先は震え、まるで定まっていなかった。 「どこまでも甘い奴だ。私を殺せなかったことをあの世で後悔するがいい」 赤黒い光を纏った秋人さんの右手が、春樹の胸を狙う。 「詰めが甘いのはお前だ。高村秋人」 いつの間にか、一郎くんが私の傍らから消えていた。 春樹と秋人さんに向ってゆっくり歩きながら、一郎くんは指をパチンと鳴らす。 「くっ。身体が…この拘束は……」 「逃げられはしない。矢に仕込んだ呪術、これが鏡の力だ。さあ、大堂。力の移行の儀式を」 私は…… ①儀式をする ②しない ③修二くんをみつけた 115 名前:742[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 13 39 27 ID ??? ①儀式をする 私は一郎くんに頷くと、元の姿に戻ったチハルを見る。 「チハルお願い、鈴になってくれるかな」 「すず?」 「そう、巫女神楽で使う鈴」 「わかった!」 チハルが軽い音を立てて、私の手に納まる。 「姉さん……? 一体何を」 私は春樹には答えず、ただ笑ってみせる。 目を閉じ、チハルを胸の前まで持ち上げて、神へ祝詞を捧げる。 祝詞が終わると今度は、奉納の舞。そしてそれは力を私に降ろす舞でもある。 手を動かすたびに、シャンシャンと鈴の澄んだ音が響く。 (懐かしい……) 壱与が何度も何度も練習して来た舞。 そして、流れ込んでくる力。 そのどちらもが、とても懐かしいものだった。 (そっか、神宝は鬼の力に近いから……) だからこんなに懐かしいのだろう。 「な、なんだこれは……力が……!」 秋人さんの驚愕する声が聞こえる。 けれど、今の私にそれを気にしている余裕は無い。 (なんて、大きな力なの……) この八種の神宝の力が一人の人間の内にあったなど、にわかには信じられない。 鬼として目覚め、神宝の力に近い私だからこそ自我を保っていられるけれど、普通の人ならば心が歪んでしまうだろう。 (それに……力が大きすぎる……) どんどん流れ込んでくる力に、息をするのも苦しいくらいだ。 けれどここで舞を止めるわけには行かない。 流れ込んでくる力に、腕を動かすのもつらくなってくる。 一体どれだけの時間が経ったのか、気付くと流れ込んでくる力が止まっていた。 (終わった……?) 朦朧とする頭で、次の行動を思い返す。 通常ならばこの後、別の器に力を移す舞を舞うけれど別の器が無い今は、その舞を踊ることが出来ない。 私は再度最初の姿勢に戻ると、祝詞を唱えた。 (無事全部、おわった……) 自分の内にある強大な力に、どんな動作をするにも尋常ではない精神力を使う。 舞を終え疲労した私には、ただ立っているそれだけが出来なくて、身体が倒れそうになる。 貧血を起こした時のように、視界が一瞬闇に飲まれた。 (あ、倒れる) 思考だけがやけに明瞭で、はっきりした意識で地面にぶつかるのを覚悟する。 もう受身を取るだけの力がない。 けれど地面にぶつかる前に誰かに抱き止められた。まだ暗い視界を凝らして、相手を見る。 抱きとめてくれたのは…… ①一郎 ②春樹 ③チハル ④秋人 116 名前:743[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 15 34 31 ID ??? ④秋人 (秋人さん……) 私を抱きとめてくれたのは、意外にも秋人さんだった。 「……えっ、あの……」 私はとても驚き、恐ろさも手伝ってか身体を強張らせてしまう。 何も答えず私の顔をジッと見た後、秋人さんはポツリと漏らす。 「こんな平凡な少女が、最も高貴で、最強と恐れられた鬼とは。 私の心に棲まう闇こそが、本物の鬼……だったという訳か」 それだけの言葉を残して、秋人さんは公園を出て行ってしまった。 私も春樹も一郎くんもチハルも、あえてその空しい背中を追おうとする者は無かった。 「大堂。君はこれからずっと、強大な力を留めておくつもりか」 「うん。代わりの器がないからね」 「このままでは、君の身体が持たないだろうな」 そう言うと、一郎くんは私の前に跪く。 「過去の契約を破棄し、大堂愛菜を我が主と定める」 私の右手に自分の額を当てて、言葉を紡ぎだした。 「八咫鏡の半身として、尊き願いの為に、千里を見通す目となろう。 そして、知恵と力を貴女のために振るうことを誓う。主たる君の望みのままに……」 私の手の甲に唇を寄せられ、私は少しだけ気恥ずかしくなった。 「一郎くん……。ありがとう」 「いや。君を危険な目に遭わせてしまった。それに、君と修二の間に何かトラブルがあったようだな。 学校での気配も俺から隠すようにしていたし、気も酷く乱れていた。 俺の言うことを聞くかはわからないが、大堂と契約するように言っておこう」 「うん。お願い」 (修二くんと仲直りできるといいな……) 次は…… ①チハルを見る ②春樹を見る ③香織ちゃんを見る 117 名前:744[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 17 40 41 ID ??? ③香織ちゃんを見る ベンチに横たわったままの香織ちゃんは、まだやまない雨ですっかり濡れて真っ青だ。 (濡れてるのはみんな一緒だけど……) 「チハル」 「なに、愛菜ちゃん?」 私に呼ばれて、子供の姿になったチハルが私を覗きこむ。 「香織ちゃんの所まで運んでくれる?」 「うん、いいよ」 即座に成年の姿になったチハルに抱き上げられて、香織ちゃんのいるベンチまで運ばれる。 腕を動かすのも億劫だけれど、香織ちゃんの負担を少しでも軽くしてあげたかった。 神宝の力を取り込んだ今の私なら、命を削ることなく香織ちゃんへ力を分け与えることが出来る。 取り込んだ神宝の力は陰の力が強い。 そして勾玉である香織ちゃんも陰の力が強い存在だ。 術を返されたダメージを癒すことが出来るだろう。 私は香織ちゃんの手を握り念じた。 ゆっくりと私の中の陰の力が香織ちゃんに流れていく。 力を流し込んでいると、徐々に香織ちゃんの顔色が良くなってくる。 「ん………」 小さく呻いて、香織ちゃんが目を開けた。 「香織ちゃん、大丈夫?」 「あい、な?」 ぼんやりとした目で、香織ちゃんが私を見上てくる。 「もう大丈夫だよ。今はゆっくり休んで、ね?」 「……うん」 私の言葉に、少し微笑んで香織ちゃんは再度目を閉じた。 すっかり元の顔色に戻った香織ちゃんに安心すると、どっと疲れが押し寄せてくる。 「姉さん?」 「大丈夫、ちょっと疲れただけだよ」 「大堂、無理をするな。いくら大堂とはいえ、八つの神宝を身に宿したままではつらいだろう」 心配そうな春樹の声に、こたえると、間髪入れずに一郎くんが私の状態を見極めて反論する。 「姉さん……無理しないでっていってるだろう?」 「ご、ごめん」 「今は大堂と長谷川を休ませるのが先だが……、修二とも契約を交わせば少しは大堂も楽になるだろう」 陰の力の強い神宝と違い、陽の力のつよい神器。 神器との契約が正式になされれば、陽の力で陰の力が多少は中和される。 とりあえず…… ①家に帰って休む ②修二くんに会いに行く ③周防さんがどうなったか聞く 118 名前:745[sage] 投稿日:2008/03/21(金) 23 22 13 ID ??? ①家に帰って休む 「家に帰るよ。ちょっと疲れたしね」 「そうだな。無理は禁物だ」 一郎くんも納得してくれたのか、私の答えに頷いてた。 私はこの中で一番元気そうなチハルに声をかける。 「ねぇ、チハル。香織ちゃんを家まで送ってあげてくれないかな?」 「でもボク、香織おねえさんのお家を知らないよ」 「それならば、俺が道案内をしよう。俺も家に帰って、身体を休めたいと思っていたんだ」 当然のように言った一郎くんに、私は驚いてしまう。 「え? 一郎くん、香織ちゃんの家を知っているの?」 「ああ。長谷川の家は帰路にあるからな」 気を失った香織ちゃんを、チハルが背負う。 私は帰ろうとする一郎くんに、ひと言だけ声をかける。 「今日はありがとう。一郎くんもゆっくり休んでね」 「大堂らしい言葉だな。だがその言葉、そっくりそのまま君に返そう」 「一郎くん……。また私が無理をしてるって言いたいの?」 「自覚があるなら、少しは悔い改めることだ」 そう言うと、一郎くんにしては珍しく、とても穏やかな笑みを浮べた。 緊張の糸が切れ、素の顔が出たのかもしれない。 私は手を振りながら、先に公園を出ていった三人を見送る。 「さてと、俺たちも帰ろうか」 一郎くんと香織ちゃんの背中が見えなくなったところで、春樹が話けてきた。 「そうだね」 「はい。乗って」 「ん? どうしたの春樹」 「姉さんは鈍感だなぁ。おぶってあげるって言ってんだよ」 少しだけ耳を赤くしながら、春樹が背中を差し出してきた。 「でも、春樹だってたくさん怪我してるよ」 「平気だって」 「ほんとに?」 「いいから。はやく」 春樹はぶっきら棒に言いながら、私の身長にあわせて姿勢を低くした。 私は…… ①肩車してもらう ②断る ③タクシーを拾う 119 名前:746[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 00 15 19 ID ??? 肩車なのか?おんぶじゃなく?w まあいいやw ①肩車してもらう 「わかったわよ……」 私は春樹の背中に体を預ける。 「ちゃんとつかまってなよ」 「わかってるって」 「よっと」 軽く声をかけて立ち上がった春樹は、いつもと変わらない足どりで歩き出す。 いつもより少し高い視界で、景色が違ってみる。 何気なく後ろから春樹の顔を見ると、あちこちに擦り傷が出来ていた。 「あ、傷になってる……」 私は無意識のうちに、春樹の傷に手をかざしていた。 この程度の傷を癒すのは神宝の力と、鬼の力、そして神子の力のほとんどが目覚めた今の自分には息をするのと同じくらいにたやすい。 特に鬼に近い神宝の力は、時間がたつにつれ身になじんでいくようだ。 「姉さん、なにしてるのさ」 「春樹の治療」 「そんなことしなくてもいいよ。どうせすぐ治るんだし」 「でも、怪我してるのを見たらお義母さんが心配するじゃない。見えるとこだけでも治しておかないと……」 「……母さん怒ってるかな」 「怒ってないよ、すごく心配してたけど……。あ……」 「なに?」 「隆が……、春樹がもどってきたらぶんなぐってやるって言ってた」 「はは……、まぁ殴られるだけのことはしたし甘んじてうけておくよ」 「ついでに、私とチハルも便乗することになってるから」 「なんだよそれ……」 眉を顰めた春樹が少しこちらを振り返る。 至近距離から春樹と視線がぶつかった。 「ねえ、さん……?」 「どうしたの?」 一瞬驚いたように呆然とつぶやいた春樹に、私は首をかしげる。 「……なんか違和感が、いや気のせい……だよ」 けれどすぐに、何事も無かったかのように前を向いて歩き出す。 「変な春樹……」 ため息混じりにつぶやいたら、春樹は何かいいたげに再度私を見たが結局何も言わずに私を背負い直す。 一定のリズムで進む春樹の背中は思いのほか心地よくて、疲弊しきった私の意識がゆっくりと薄れていく。 このまま眠ってしまいたい気もするけれど…… ①寝てしまう ②春樹に話しかける ③眠らないように何か考える 120 名前:747[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 02 38 31 ID ??? 間違えたwww おんぶに直してくれー ③眠らないように何か考える (春樹が言ってた違和感って?……ん、ポケットに何か入ってる……) それは秋人さんから渡された、ムーンストーンだった。 (そうだ。冬馬先輩……!) 『冬馬先輩。冬馬先輩……返事して』 私は心の中で冬馬先輩に何度も呼びかける。 そして、何度目かの呼びかけで、ようやく冬馬先輩の意識と繋がった。 『愛菜……。愛菜ですか』 『無事だったんだね。冬馬先輩、怪我は大丈夫?』 私の問いかけに、冬馬先輩はしばらく黙り込んだ後、ゆっくり答えた。 『……今は動くことが出来ませんが、心配は要りません。美波と周防が治療にあたってくれています』 『動くことが出来ないって……そんなに悪いの?』 石にべっとりと付いた血を思い出し、とても不安になった。 けれど、冬馬先輩は何事もなかったかのような口調で話し出す。 『僕の場合、三日もあればそれなりに動くことが出来るようになるはずです』 『よかった。はやく元気になってね』 『はい。ありがとうございます』 (僕の場合か……やっぱり、秋人さんが言っていた通り冬馬先輩の身体は特別なのかも……) 私は冬馬先輩の身体のことに触れるに躊躇い、別の話題を探す。 なるべく明るい話題をと思い、文化祭の話を振ってみた。 『三日後といえば、ちょうど文化祭ですよ。あっ、でも冬馬先輩はたしか不参加でしたよね?』 再び、しばしの沈黙が続いてから答えが返って来る。 『愛菜が参加するよう薦めてくれたので、今は有志の企画に混じって仕事を手伝っています。 途中参加なので、雑用程度ですが』 『え? 聞いてないよ』 『あなたが尋ねてこなかったので、何も言わなかったのです』 『そ、そうなんだ……。それで、参加してみてどう? 楽しい?』 『楽しいかどうか分かりません。ですが……』 また冬馬先輩は何も言わない。 以前はそのことが無性に不安だったけれど、今はその沈黙も怖くない。 『ですが……、悪くないと思えます』 『悪くないんだ。うん。そう思ってくれることが、素直に嬉しいよ』 急に楽しめと言われても、無理なのかもしれない。 少しずつでも、先輩が学校生活に溶け込んでいければ、それで良いような気がする。 『愛菜。あなたはやはり、お母様によく似ています。 あなたのお母様も僕のために、喜んだり、悲しんだりしてくれました」 私は…… ①お母さんについて尋ねる ②もう少し文化祭について話す ③考える 121 名前:748[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 09 37 59 ID ??? ①お母さんについて尋ねる 『ねえ、私のお母さんって今どうしてるの?』 『………』 『冬馬先輩?』 『……あなたのお母様は5年前になくなりました』 『そっ……か……もしかして組織に……?』 なんとなく覚悟をしていたから、思っていたよりショックを受けていない。 『いいえ、あなたのお母様は車に轢かれそうになった子供をかばって亡くなりました。組織とは関係ありません』 『子供をかばって……』 『当時、新聞にも載ったそうです』 『新聞に……』 それじゃあ、もしかしてお父さんはお母さんが事故で死んだことを知ったのかもしれない。 (だから春樹のお母さんとの再婚を決めた……) もしお母さんが生きていたら、きっとお父さんは再婚を考えなかっただろう。 いつまでも私のお母さんを待ち続けていたはずだ。 本人に確認したわけではないけれど、きっとそういうことなのだろう。 『すみません』 『え?』 『僕がそばにいながら、あなたのお母様を助けることが出来ませんでした』 『まさか、事故の現場にいたの……?』 『はい』 5年前といえば冬馬先輩は中学に上がったばかりだったはずだ。 『あなたのお母様は最後まで僕を気にかけてくれました。置いていってしまうことを許して欲しいと』 『……そう』 『そして、愛菜をよろしく頼むと』 『………』 「ねえさん? どうしたの!?」 「え?」 春樹の声に、冬馬先輩とつながった意識が途切れる。 「どこか痛いの? 体がつらいとか……」 すごく心配そうに私を見る。 私はいつの間にか泣いていたらしい。 ①「お母さん5年前に亡くなってたよ」 ②「大丈夫、どこも痛くないよ」 ③「そういえば春樹のお父さんどうしたの?」 122 名前:749[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 11 40 57 ID ??? ②「大丈夫、どこも痛くないよ」 私は春樹を心配させまいと、涙を拭って答えた。 「辛かったら言うんだよ。わかった?」 「うん……」 (お母さん。せめて一度だけでも会いたかった……) 『愛菜……愛菜……』 『冬馬先輩、どうしたの?』 『意識が途切れたようですが……』 『春樹が話しかけてきたから、しゃべっていたんだ。急に閉じてごめんね』 『いいえ』 それきり、また冬馬先輩の声が聞こえなくなる。 『冬馬先輩、聞こえてる?』 『今、お母様の言っていたことを思い出していました。 愛菜は……お母様が言霊の研究していたのは知っていますか?』 (そういえば美波さんが言っていたっけ……) 『うん、知ってるよ。それがどうかしたの?』 『名前はその人を表す、最も強い言霊なのです。 あなたの名前の由来について、お母様から教えてもらった事がありました』 そういえば、自分の名前について考えたことが一度もなかった。 もし冬馬先輩が私の名前の意味を知っているなら、ぜひ聞きたい。 (私とお母さんを繋ぐもの……) 『名前に込められた意味……お母さんが私に何を望んでいたのか教えて?』 『はい。あなたの名前の『愛』、これは『かけがえのないもの、いつくしむ心』 そして、『菜』は『自然物やすべての者』という意味が込められているそうです』 (かわいい名前でお気に入りだったけど、愛菜って、すごく立派な名前だったんだ。 名前負けしてるかも……) 『要は、すべてを愛するってことだよね……。立派過ぎて、ちょっと気後れしちゃった。 けど、お母さんが望んでいたことなら、少しでも近づかなきゃね』 (残酷……修二くんは私に向かってはっきりそう言っていた。 今のままでは、お母さんに顔向けできないな……) 『僕は……今の愛菜をお母様が見たら、きっと喜んでくれると思います』 『えっ。そ、そうかな』 『はい』 『本当に、本当にそう思う?』 『……………』 『先輩?』 『すみません。少し褒めすぎました』 (うーん。なんだか悲しくなってきた) ①冬馬先輩の名前についてきく ②話を終える ③別の話をする 123 名前:750[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 12 50 09 ID ??? ②話を終える 気づくともう家の前まで来ている。 『先輩、お母さんのこと教えてくれてありがとう。ゆっくり休んで早く元気になってください』 『はい』 先輩の少し微笑むような気配を感じながら、私は現実へと意識を戻す。 「さ、ついたよ姉さん」 言いながら、春樹が家の戸に手をかける。 急いで出てきたから、カギは開けっ放しだった。 一旦春樹に玄関で下ろされて、私は自分だけではもう立っていることも出来ないことに気づく。 (変だな……もう、体が疲れてるとか……そういう感じは全然ないのに) 精神的にはいろいろ疲労しているけれど、意識のほうは疲れすぎて逆に鮮明になっている気もする。 体の方だって、どちらかというと力が満ちていて不調という感じはしない。 けれど、動かそうとするとうまくいかないのだ。 「ちょっと、姉さん、本当に大丈夫なの?」 立つことも出来ない私を春樹は慌てて支えてくれる。 「うん……どっちかというと、すごく体調はいいと思うんだけど……」 「確かに顔色が悪いわけでもないし、熱があるようにも見えないけど……」 「なんていうか……、いまちょっと体と意識がつながってない感じなんだよね」 「……そう」 春樹はため息をつくと、私を玄関に座らせて、靴を脱がせてくれる。 「どっちにしろ、姉さんはがんばりすぎだよ。早く着替えて今日はおとなしく寝ててよ」 「う、うん……」 確かに今動けないのは、神宝を移す儀式をしたからだ。 まさかこんなふうに、なるなんて思いもしなかった。 (壱与も儀式はしたことなかったもんね) 春樹に抱えられて、部屋までたどり着く。 「……っていうか、姉さん、自分で着替えられる?」 「え……」 言われて思わず顔を顰める。 何とか腕を動かすのはできるから、上は着替えられるだろう。 けれど…… 「チ、チハルが戻ってきたら手伝ってもらうよ」 「なんでそこでチハルがでてくるのさ……? って、自分じゃ無理なんだね」 「だって、チハルならぬいぐるみのときから私の部屋にいて、チハルの前で着替えなんて今更だし……」 子供の姿のチハルの前では今までだって普通に着替えていた。 「チハルを待ってたら風邪引くだろ。とりあえずぬれてるからちょっと廊下座ってて、中はいると部屋の絨毯ぬれるから」 そう言って私を廊下にゆっくり座らせると、私の部屋に入っていく。 「はい着替え」 春樹が持ってきたのは、私がいつも来ている部屋衣だ。 「ありがと……自分でやるから……」 「できないんだろ?」 「な、なんとかなるよ」 「本当に……」 春樹の疑いのまなざしが痛い。 ①「大丈夫だってば」 ②「ごめんなさい、できません」 ③「どうしようもなくなったら呼ぶよ」 124 名前:751[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 15 47 33 ID ??? ③「どうしようもなくなったら呼ぶよ」 私は気恥ずかしくて、春樹の顔がまっすぐ見られなかった。 (弟なのに……私、意識してるんだ……) 「わかった。もし何かあったらすぐに呼ぶんだよ」 春樹からバスタオルを受け取り、私はうなずく。 春樹はもう一度念を押すと、廊下から去っていった。 私はゆっくりした動作で、ブレザーを脱ぎ、リボンを解く。 (あっ、下着まで濡れてる。……はぁ、仕方がない) 「春樹……」 「どうしたの? 姉さん」 呼ぶと、着替えを終えている春樹が現れた。 春樹はまだ着替え終わっていない私を見て、驚いている。 「まだ着替え終わってないの? だから、俺がやるって……」 「下着を……持ってきて欲しいの。私の部屋、チェストの二段目……」 「あ、うん。わかった」 下着という言葉で春樹の小言の勢いが無くなり、大人しくなる。 春樹は素直に頷くと、階段を上って行った。 (最悪かも……って、あれ……) 不意に両手まで動かなくなって、瞼が重くなっていく。 意識だけはハッキリしていても、身体全体の自由が利かない。 視覚だけが奪われてあとは恐ろしく冴え渡っている、そんな状態になってしまった。 「姉さん……!」 下着を持ってきたはずの春樹が飛びつくと、私の肩を掴みながら揺する。 「ビックリした。なんだ、寝てるだけか……。もう、何やってんだよ。 あっ、これどうしようか。……でも、俺がやるしか……ないのか…やっぱり…」 春樹の溜息が聞こえ、考え込む様子が伝わってくる。 (ますます最悪に……) ①頑張って身体と意識を繋げてみる ②誰かが帰ってくる音が聞こえた ③諦める 125 名前:752[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 17 37 52 ID ??? ①頑張って身体と意識を繋げてみる そうだ、以前にも似たようなことがあった。 あの時は修二君が、不調だった私を戻してくれた。 今ならうまくつながっていない心と体をつなげる方法は知っている。 私は意識的に力をコントロールしようと、集中をする。 (あれ……おかしいな) 力は正常に私の内にある。 不調の原因となるようなゆがみはどこにもない。 「仕方ないよな……このままじゃ風邪、ひくし……」 そういう春樹の声の後に、躊躇いがちに服に手がかかるのを感じた。 (きゃぁぁぁ春樹ストップストップ!) けれどいくら心の中で叫んでも、春樹に聞こえるはずも無い。 慌てていると玄関の戸が開く音がした。 「愛菜ちゃん、香織おねえさんおくってきたよ」 (チハルーーーーー) 私は慌ててチハルに話しかける。 「愛菜ちゃん? どうしたの……?」 「姉さんつかれて寝てしまったみたいなんだ」 「なに言ってるの春樹? 愛菜ちゃん起きてるよ」 「チハルこそなに言ってるんだ、どうみたって寝てるだろう?」 (起きてるわよ……体が動かないだけなんだってば!) 「愛菜ちゃん体が動かないだけだっていってるよ?」 「言ってるって……」 「頭の中に声がするの。春樹には聞こえないの?」 「俺にはぜんぜん……」 (着替えはチハルに手伝ってもらうからって春樹に言って、チハル!) 「着替えは僕に手伝ってもらうっていってるよ」 「そう、っていうか体が動かないって……どういうことさ姉さん!」 (分からないわよ、別に力にゆがみとかあるわけじゃないし……) 「分からないっていってるよ、力にゆがみはないって」 「そんな、それじゃあ姉さんはずっとこのままだって言うのか?」 (まだそうと決まったわけじゃないよ、ただ疲れてるだけかもしれないし、寝たら元通りになってるかもしれないし、ね) 原因はきっと神宝だろうけれど、解決策は分からない。 本当に寝て起きたら明日は元通りの可能性もある。 「疲れてるだけかもしれないって、寝たら元通りになってるかもしれないっていってるよ」 「本当に……? ……まあ、姉さんをこのままにしておくわけにもいかないし、チハル、姉さんの着替え手伝ってやって」 「うん、わかった」 一人分の足音が遠ざかっていく。 「愛菜ちゃん、ここにおいてある服に着替えるの?」 (うん、そうだよ。ごめんね) 「なんで謝るの? えっと……ボタンって結構難しい……」 なんとかチハルに着替えさせてもらって、ほっとする。 体は相変わらず動かないけれど、濡れて冷たい服を着ていたときより、楽になった気がする。 着替えも終わったしどうしようかな…… ①部屋に運んでもらう ②春樹のところに運んでもらう ③春樹とも話せないか試してみる 126 名前:753[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 18 54 02 ID ??? ①部屋に運んでもらう (チハル。私を部屋に運んでくれるかな) 「うん。いいよ」 私はチハルに自室まで運んでもらい、ベッドに寝かせてもらった。 動かない体のまま、私はチハルに話しかける。 (チハル、今日はありがとう。チハルが弓矢になってくれなかったら、私はここにいなかったかもしれないよ) 「ううん。ボクは少しだけお手伝いしただけだもん。愛菜ちゃんとか、春樹とか他の人達がいっしょうけんめいだったからだよ」 少しだけ動いた気配がすると、チハルはポンという音を立てた。 そして、私のベッドに小さな体が潜り込んでくる。 「一緒にねてもいい?」 (もちろん。チハルが居てくれると落ち着く) 「ボクもぉ」 擦り寄ってくるチハルを、今は抱きしめてあげることができない。 そんな私の気持ちを感じたのか、チハルが私にギュッと抱きついてきた。 「あのね。愛菜ちゃんにあたらしく入った、ドロッていうのも好きだよ」 (チハル……?) 「ドロドロもザラザラもほわほわもぬくぬくも、ぜんぶ愛菜ちゃんだもん。だから、だいすき」 (すごく嬉しいよ。ありがと) 「えへへ、よかったぁ」 楽しそうに笑い終えると、チハルは「ふぁ~」と大きなあくびをした。 (今日は疲れたでしょ? もう休んでいいよ) 「うん。おやすみなさい」 寝息が聞こえ始めてすぐに、チハルはぬいぐるみに戻ってしまった。 きっと、人間の姿を維持できなかったのだろう。 その時、ドアをノックする音が聞こえた。 次に、ゆっくりとドアが開く音がする。 入ってきた気配は多分…… ①春樹 ②隆 ③お継母さん 127 名前:754[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 20 50 40 ID ??? ①春樹 「姉さん、起きてる?」 (起きてるよ) 「チハル、寝たのか? 困ったな、これじゃあ姉さんが起きてるのか寝てるのか分からないじゃないか……」 そう言いながら春樹がベッドに近づいてくる気配がある。 「姉さん……?」 思いのほか近くで春樹の声が聞こえた。 どうやら私を覗き込んでいるようだ。 「本当に、いつも無茶ばかりするんだから………。 ねえ、本当に大丈夫なの? ちゃんと起きられるようになる? もし、ずっとこのままだったら俺は……」 そっと額にかかった髪を払われる。 「額のしるし、それに、両手のしるし……神器が契約した証……」 (春樹?) 「俺もの中にも力はあった……けど、なぜ誰も気づけなかったんだろう。 父さんも、兄さんも……同じ神宝だったはずなのに」 春樹は自分の意思で力を隠していたわけではない。 それなのに、誰も気づかなかったというのは確かに不思議だった。 一郎君や修二君でさえ春樹は普通の人だと言っていた。 少しベッドのきしむ音がして、春樹の手が私の頭をなで始める。 どうやら、ベッドの端にすわったらしい。 「俺は過去に何があったのか分からない。自分の過去で思い出した事も無い。 でも姉さんの封印が解けるのと同時に、俺の力は目覚めた。きっと過去の姉さんと会ったことがあるんだろうね」 (そういえば、公園でそんなこと言ってたね……) 「きっと俺たちは出会うべくして出逢ったんだろうな」 春樹の手が離れ、立ち上がるような気配がした。 「でもきっとそれは俺だけじゃない、姉さんにかかわる力のある人たち全員がそういう運命みたいなものでつながってるんだ」 春樹の手が右の頬をなでる。、 「それはもう終わったのかな? それとも……」 春樹は最後まで言うことは無かったけれど、それは私も思うところだ。 まだすべては終わっていない。そんな気がする。 そのとき、かすかに玄関のあく音がした。 目を閉じている分、音に敏感になっているらしい。その音に春樹は気づかなかったようだ。 しばらくして誰かが階段を上ってくる音がする。 「誰かきた……? 母さんがもどってきたのか?」 春樹もようやく気づいたらしい。トントンとノックの音が聞こえ、それから扉が開く音がした。 入ってきたのは…… ①周防さん ②修二君 ③お義母さん 128 名前:755[sage] 投稿日:2008/03/22(土) 23 45 42 ID ??? ③お義母さん 「愛ちゃん。具合は……」 「……母さん」 「は、春樹! 春樹が戻って来たわ。愛ちゃん起きて」 私の体をゆさゆさと揺すり、お継母さんはかなり興奮しているようだ。 (お継母さん。私、返事できないんだ) 「母さん、ただいま。心配掛けて、ごめん」 「もう戻ってこないかと……春樹を…取られてしまうかと……」 「あの人は、最期を俺と過ごしたかったんだって。母さんのことも含めて、後悔しているみたいだったよ」 「何を言っているの?」 「姉さんが寝てるし、詳しい話はリビングでしようか」 「そう……そうね」 「先に行ってて。すぐに行くから」 「ええ……。わかったわ」 先にお継母さんが部屋を出て行く気配がする。 ドアが閉まったのを待っていたように、春樹が話し始める。 「俺、母さんに嘘をついてくるよ。嘘は嫌いだけど、割り切らなきゃね。 って……寝てるかもしれない姉さんに愚痴っても仕方ないか」 春樹が乾いた笑いを漏らし、そっと掛け布団を直してくれる。 そして、ドアの閉まる音がした。 私はまた、春樹が言っていた運命の話を思い返す。 私たちは何かを成し遂げるために集まったのだろうか。 (迷わず進めって神様が言ってたけど……迷うよね、普通) 思わず、神様に文句のひとつでも言ってやりたいような気持ちになる。 (そういえば、神器と神宝を鎮めることのできるのは、私だけって言ってたっけ。 鎮めるって……どういうことなんだろう) そんな事を考えている内に、段々眠くなってくる。 闇に引き込まれるようにして私は夢の中へ落ちていった。 みた夢とは…… ①壱与の夢 ②高村家の夢 ③お母さんの夢 ④一郎と修二の夢 129 名前:756[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 01 56 23 ID ??? ①壱与の夢 「壱与、何か食べないと体が持たない。少しでいいから何か口にしてくれないか?」 人影が私の横に立つ。 私はぼんやりと空を見上げたまま、その言葉を黙殺する。 故郷がなくなった事を知ったあの日の激情のあと、私は抜け殻のように過ごしていた。 今は、何も考えたくない。 三種の神器は解放されたけれど、その力は契約を結んだ私の近くにとどまっている。 考えてしまったら、力を使ってこの悲しみをこの世界へぶつけてしまいそうだった。 そんなことはできない。 この世界には多くの人が住んでいる。 人だけじゃない、他の生き物もたくさん暮らしている。 私の悲しみですべてを終わらせていいものではない。 だから、私は何も考えない。隣に居るのが誰かも知る必要はない。 ……もっと冷静になれるまで。 「壱与……、お願いだ僕を見てくれないか?」 声の意味を考えてはいけない。 「……………いて」 「壱与?」 「放っておいて、私は世界を壊したくない。まだ……早いの」 「壱与……」 そっとぬくもりに包まれる。 「すべて僕の責任だ。恨むなら僕を恨んでくれてかまわないから……だから、お願いだ、少しでいい、何か食べてくれ」 懇願する声にふと意識が向く。 だめ、見てはいけない。 本能がそれ以上意識を向けることをとめる。 ①声を無視する ②声の主を確かめる ③再度放って置くように言う 130 名前:757[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 10 43 11 ID ??? ①声を無視する もう何日も食べ物を口にしていない。 飢えと乾きは、とっくに限界を超えていた。 けれど、何も考えない。考えてはいけない。 「このままでは、君が死んでしまう。お願いだから、食べてくれ」 この声に、耳を貸してはいけない。 「こんなに細くなってしまって……」 私を包むぬくもりが強くなる。 この匂いに包まれていると、何もかもが馬鹿らしくなってくる。 ……もっと欲しいと願う。 「ほら、口をあけて食べてごらん」 口許に穀物が差し出される。 けれど、こんなもので私は満たされない。 「どうして口を開けてくれない。本当に死ぬつもりなのか」 保っていた理性が沈殿する。 心を埋めていた悲しみが、本能に塗り替えられていく。 「間違ったことをしたとは思わない。けれど……君を失いたくない」 前も感じたことのある、どす黒い何かが心を埋める。 「君の望む事だったらなんでもしよう。だから、お願いだ。食べてくれ……」 「たべる……」 懇願する声が耳に届き、私の中で何かが弾けた。 私は包んでいたぬくもりを、優しく解いていく。 折箸が床に落ちて、乾いた音を立てた。 「とてもおいしそう。あなた」 「なっ!」 抵抗できないように、ゆっくり組み敷いた。 首元に舌を這わせて、味を確かめる。 「……くぅ」 「おいしい。もっとちょうだい」 「何を……まさか……!」 「そう。たべるの……あなたを……」 私は獲物の肩に犬歯を立てた。 だめ、いけない……。 ①夢から去る ②食べる ③止めるに入る 131 名前:758[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 12 33 18 ID ??? ③止めるに入る (だめだよ!壱与!) 私は必死に壱与に呼びかける。 (お願い、やめて! 私の声を聞いて!) 壱与の犬歯が皮膚を少し食い破ったのか、ほんの少し血の香りが辺りに漂う。 (そのまま本物の鬼になったらだめ! 元の壱与にもどって、お願い!) 「……だれ? 懐かしい、あなただれ?」 「壱与……?」 私の呼びかけに壱与が動きを止める。 唐突につぶやいて動きを止めた壱与に帝が心配そうな声をかけた。 自分を食べようとした壱与の変化に帝は戸惑っている。 どうやら壱与が本当の鬼になってしまう事に驚きこそすれ、壱与を畏れているわけではないらしい。 「懐かしい、お父様と同じ力……お父様?」 (同じ力……あ、神宝の力のことかな?) 壱与は私を探して視線をさまよわせる。 部屋の上のあたりから様子を見ていた私に、壱与が気づいた。 不思議そうに私を見る。 「いち、よ?」 帝には私が見えていない、急に宙を見据えて動かなくなった壱与を心配そうに見ている。 「ねえ、だれ? お父様と同じ力を持つあなた、懐かしい……」 壱与はまだ完全に自分を取り戻していないようだ。 たどたどしい言葉遣いでたずねてくる。 (私は……) ①未来のあなただという ②大堂愛菜だという ③答えない 132 名前:759[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 15 15 16 ID ??? ③答えない 壱与が私の存在を父親だと勘違いしているなら、その方がいい。 壱与は失ったものの大きさに負けているだけだ。 私は壱与の父親であった出雲国王の口調を思い出しながら、ゆっくり語りかける。 (壱与……。私だ……壱与) 「お父様。やっぱりお父様なのね!」 (ああ、そうだ。よくお聞き、壱与) 「お父様……壱与もお父様と一緒にそちらへ行きます……。お願いです。黄泉へ連れて行ってください……」 涙を流しながら懇願する壱与が、小さな頃の自分と重なる。 お母さんに捨てられたと、泣き腫らした日々をフッと思い出した。 (来てはならない。お前にはまだやるべき事が残っている) 「やるべき……こと?」 (お前はもう、大和の者だ。すべての民の幸せを祈り、巫女としての役目を果すのだ) 「出雲を滅ぼした国のために、祈ることなんて出来ません」 (憎しみや恨み、復讐からは何も生まれない。お前はそれらの心の闇に打ち勝たなければならないのだ) 「無理です。だから、一緒に連れて行って……」 「壱与……」 心配そうに見つめながら、帝は血に濡れた肩を押さえている。 私はその姿を見ながら、壱与に再び語りかける。 (すべてに感謝する心、愛しむ心を忘れず、生きていきなさい) 「私一人では出来ません。お父様が居ないと、壱与は何もできません。だから、私の前に姿を現してください!」 (お前はもう一人ではない。お前を想い、支える者がすぐ傍らにいる……) その言葉で、壱与ははじめて帝を見る。 壱与は私自身でもある。だから、憎みきれていない事も、密かに想っている事も知っている。 (壱与。その者と手を携え、役目を果たすのだ。私は…いつでもお前を見守っているよ……) 「待って! お父様、行かないで!」 私は壱与と意識を閉ざすと、溜息をつく。 (はぁ……疲れた。お姫様に向って、説教しちゃったよ……) お母さんが私につけてくれた「愛菜」という意味を冬馬先輩から聞いておいてよかった。 かなり適当に言ったけれど、壱与は信じてくれているようだ。 これも壱与が父親を尊敬しているからこそ、素直に信じたのだろう。 (私なんかで良かったのかな……。壱与、ちゃんと立ち直ってくれるよね……) 私は…… ①続きを見る ②夢からさめる ③考える 133 名前:760[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 20 26 52 ID ??? ①続きを見る (大丈夫かな……) 私は壱与に入り込むと、壱与自身になりながら傍観し始める――。 目の前には、傷ついた帝の姿があった。 口内に広がる鉄の味が、すべてを物語っている。 「わ、私……あの……」 「壱与……」 帝は肩を押さえながら、私の名前を呼んだ。 そして、一歩、また一歩と近づいて来る。 私は帝から逃れるように、壁を伝いながら後ずさりをしていく。 「壱与。さっき君は父親と話しをしていたんだね? よかったら、内容を僕に教えてくれないか。 すっかり嫌われてしまったけれど、せめて罪を償わせて欲しいんだ」 「来ないで……お願い」 「どうして!? もう、僕を見るのも嫌なのか」 「違う。違う……」 (見られてしまった。一番知られたくない人だったのに……) 私の中の本性、人喰い鬼の姿を帝に知られてしまった。 美しいと賞賛される外見は、人を食べるための罠。 人間を誘惑し、喰らっていた頃の名残に過ぎない。 (お父様は帝と生きていくようにと、遺言を残された。だけど……それも叶わない) 「なぜ、なぜ僕から逃げる!」 「知られてしまった……。もう、一緒に居ることは出来ないの」 「何を怯えているんだ。僕はここに居るだろう」 (とても憎い人。大嫌いだけど、こんなに心が痛いのは、強く強く惹かれているから……) 部屋の端まで追い詰められて、もう逃げ場がなくなってしまった。 帝は私の腕を掴むと、ぐいと引き寄せる。 帝の身体に勢いよくぶつかると、苦しいくらいに抱きしめられる。 「嫌われているとわかっていても、君を求めずにはいられない。 君の国を滅ぼした酷い男だが、必ず君を大切にすることを誓うよ」 「離して……」 「離さない。納得できる理由を教えてくれるまでは」 「私は……。私は……」 「僕を喰らいたいのなら、今、ここで片腕を君に差し出してもいい」 「何を……言って……」 「もし全身を欲しいというのなら、少しだけ待って欲しい。 今は死ねないけど、この国に平穏が訪れた時、この命を必ず君に差し出そう。 それが罪を償うことになるのなら、僕は……喜んでその罰を受けるつもりだ」 (壱与。どうするつもりなの?) 私は…… ①さらに続きを見る ②夢からさめる ③考える 134 名前:761[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 21 02 53 ID ??? ①さらに続きを見る 「私は……あなたは……」 壱与は混乱している。 なぜ帝がこんなことを言っているのか分かっていない。 (壱与……帝はあなたを畏れていないのよ。ただあなたを求めてるだけなの) 「私は、あなたに……あの姿を知られたくなかった……知ったらすべてが壊れてしまう」 「なぜ?」 「私は鬼だから……人ではないから……」 「鬼でも人でも魔でも壱与は壱与だ、関係ない。いったい何が壊れるというんだ」 「……私が、怖くないの?」 「壱与が? なぜ僕が壱与を怖がるんだ?」 帝は心底分からないというように、首をかしげ壱与を覗き込む。 「僕が壱与を怖がることはない。こんなに愛しいのに」 そういって帝はさらに強く壱与を抱きしめる。 それを聞いた壱与の頬を新たな涙が伝う。 「本当に?」 「今まで君にはたくさんの嘘をついたけれど、これだけは本当だ。壱与、君が好きだよ」 「…………」 「だから、この国が平和になったら、君にこの命をあげるよ」 「いらない」 「壱与……そこまで僕は嫌われてしまったのか……」 「命はいらない……おねがいずっとそばに居て。もう一人にしないで……」 「壱与……本当に? 僕の都合のいいように解釈してしまうよ?」 (……もうこの二人は大丈夫ね) 私は壱与の体から抜け出す。 最後にふれた壱与の想いは、帝と同じもののはずだ。 さて…… ①そろそろ夢から覚める ②別の夢へ行く ③考える 135 名前:762[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 22 39 38 ID ??? ③考える 帝も私の時代で生まれ変わっているのだろうか……。 壱与と帝を目の前にして私はふと思った。 神宝や神器が私のすぐ近くで蘇っている。 だとしたら帝ももしかしたらいるのかもしれない。 そう思うと私はなぜか春樹と秋人さんの顔が脳裏を横切った。 帝の目的の為なら非情になれる所は秋人さんに 帝の壱与の為に献身的に尽くす所は春樹に 一郎君や修二君じゃあるまいし一つのものがそう簡単に二つに分かれるなんてそうそうあるものじゃない。 それに彼らは神宝なのだから帝のはずがない……。 秋人が帝だったら鬼の国を再建なんて考えるはずがないだろうし、 春樹だって帝の壱与に対する恋愛感情と違って私に対するのは家族愛。 頭ではわかってるのに私は帝の中に2人を重ねてみていた。 なんだか2人のこと考えてると彼らのことが気になってきた。 ①秋人のことを考える ②春樹のことを考える ③他に候補者を考えてみる ④考えても仕方ないので夢から覚める 136 名前:763[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 23 26 55 ID ??? ①秋人のことを考える (そういえば、秋人さんあの後どうしたんだろう……) 最後に私を抱きとめてくれた秋人さん。 きっと神宝の力で、心がゆがめられてしまっていたのだ。 (本当はもっと優しい人だったんじゃないかな……?) 最後に見た秋人さんの目は、とても澄んでいて穏やかだった。 そう思ったとき、視界が急激に変わった。 (ここは……) どうやらどこか部屋の中らしい。 部屋の中は薄暗く、片隅に置かれた電気スタンドがその辺りだけ淡く照らしている。 ふと、人の気配を感じて私は振り返った。 「なぜここへ来た?」 (え?) 私は驚いて、声の主を見る。部屋の隅に置かれたソファに秋人さんが座っている。 「アンタの内から力が消えているのを確認しにね」 私が何か答える前に、部屋の入り口から人影が現れる。 (周防さん……?) 「ふん、悪趣味だな」 「何とでも言えばいいさ。で、気分は?」 「悪くはない」 「自分の内から力がなくなるって言うのはどういう気分なんだろうね?」 「さあ? お前もあの鬼の姫に頼んだらどうだ?」 「それはおいおい頼むとして、今はそれどころじゃないからね」 「まあ、そうだろうな」 秋人さんは意味ありげに笑う。 「お前も気をつけることだ。闇は俺の中から消えた。だが、鬼の姫の内へ移ったわけでもないらしい」 「へぇ?アンタが俺に忠告とはね。明日は雪かな」 「ふん……、まあせいぜい気をつけることだな、従兄殿」 「はいはい、忠告ありがとさん」 周防さんはいつもの調子でヒラヒラとてをふると、部屋を出て行った。 (闇? 闇ってなに……?) その闇というのが、鬼の国を再建させようとしていたのだろうか。 高村も鬼の一族だったと言っていた。けれど、本来の鬼の力は失って久しい。 (あ……) 考え込んでいると、ふと体が引っ張られるような感じがした。 目が覚める前兆。誰かが呼んでいるようだ。 その声は…… ①春樹 ②隆 ③チハル ④お義母さん 137 名前:763[sage] 投稿日:2008/03/23(日) 23 48 25 ID ??? ④考えても仕方ないので夢から覚める (きっとその内わかるよね。今までだって不思議とそうなってきたし) 春樹が言っていた運命なら、帝にも出会えるはず。 なぜか確信に近い、予感がする。 焦って考えなくてもいいかな、と思いつつ私は夢から覚めた。 (目が開かない。体が動かない。ということは、まだ駄目なんだ) がっかりしていると、声が聞こえてくる。 「うーん。こりゃ、チハルが復活するのに、二、三日かかりそうだな」 「そうですか。困ったな」 (隆と春樹の声だ……) 「しかしなぁ、俺が授業を受けてる間に、そんな事があったなんて驚いたぜ」 「無事に帰ってこれて、本当によかったですよ……」 春樹の溜息が聞こえる。 そして、隆が動く気配がして、また話が始まる。 「俺が加勢してたら、もっと楽だったのかもな。呼んでくれりゃよかったのに」 「そんな暇ありませんよ。突然、力が覚醒したと思ったら、高村の伝承が頭の中に入って。 すごく嫌な予感がしたんで、兄さんを追ったら……冬馬先輩が倒されてたんです」 「で、秋人って奴との兄弟喧嘩が始まったわけだな」 「まぁ、そうですね。後はさっき言った通りですよ」 隆が「うーん」と唸っている。 まるで、納得できないという感じだ。 「ていうかお前……ホントに力使えるのか? 何も感じないんだけどな」 (使えてたよ。すごかったんだから) そんな私の声も届かず、話は進んでいく。 「一応は……。高村家の血筋の者だけが使える、十種の神宝って力なんですけど……」 「で、具体的にどんな力なんだ?」 「八握剣って赤い剣が出るんです」 「そんだけか? あんまり使えないな」 「そうですね。訓練すれば色々使いこなせるみたいですけど……俺は要らないです」 「訓練って面倒そうだしな。ていうかさ、ここでその剣を出してみてくれよ」 「嫌ですよ。物騒じゃないですか」 「もったいぶらずに、いいだろ」 私は…… ①(疑われてるなら、剣を出してみたらいいのに) ②(春樹の言うとおり、物騒だよ) ③(隆って、好奇心旺盛よね) 138 名前:764[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 00 23 40 ID ??? 被った。 763の後に投下した方はナシでお願いします ②隆 「おい! 愛菜起きろ!! ホントだなビクともしない」 「じゃあ、チハルはどうですか」 「うーん。こりゃ、チハルが復活するのに、二、三日かかりそうだぞ」 「そうですか。困ったな」 (隆と……もう一人は春樹の声だ) 覚醒したはずなのに、相変わらず目も開かないし体も動かなかった。 (はぁ……まだ駄目なんだ) がっかりしていると、また隆の声が聞こえる。 「しかしなぁ、俺が授業を受けてる間に、そんな事があったなんて驚いたぜ」 「無事に帰ってこれて、本当によかったですよ……」 「俺が加勢してたら、もっと楽だったのかもな。呼んでくれりゃよかったのに」 「呼ぶ暇なんてありませんよ。突然、力が覚醒したと思ったら、高村の伝承が頭の中に入って。 すごく嫌な予感がしたんで、兄さんを追ったら……冬馬先輩が倒されてたんです」 「で、秋人って奴との兄弟喧嘩が始まったわけだな」 「まぁ、そうですね。後はさっき言った通りですよ」 隆が「うーん」と唸っている。 まるで、納得できないという感じだ。 「ていうかお前……ホントに力使えるのか? 何も感じないんだけどな」 (使えてたよ。すごかったんだから) そんな私の声も届かず、話は進んでいく。 「一応は……。高村家の血筋の者だけが使える、十種の神宝って力なんですけど……」 「で、具体的にどんな力なんだ?」 「八握剣って赤い剣が出るんです」 「そんだけか? あんまり使えない力だな」 「そうですね。でも、能力者は訓練しだいで別の力も使えるようになるみたいですよ」 「訓練って面倒そうだよな。ていうかさ、ここでその剣を出してみてくれないか」 「嫌ですよ。物騒じゃないですか……」 「もったいぶらずに、いいだろ?」 私は…… ①(疑われてるなら、剣を出してみたらいいのに) ②(春樹の言うとおり、物騒だよ) ③(隆って、好奇心旺盛よね) 139 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 10 30 48 ID ??? ぶった切りすみません、時々wiki編集している者ですが、wiki管理者様へ ページ名間違って作成してしまいました、登録メンバー以外修正出来ないようなので修正お願いしますosz ストーリーを読む 3ページ目 > ストーリーを読む 4ページ目 お手数をおかけいたしますがよろしくお願いします。 140 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 12 20 47 ID ??? 139 wiki編集乙であります 肩車からおんぶに直っててホッとしたw 141 名前:765[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 13 33 56 ID ??? ③(隆って、好奇心旺盛よね) 結構何にでも興味を示して追求するのは子供の頃から変わらない。 (でも、飽きやいんだよね……) よっぽど気に入ったことでもなければ、隆が飽きるのはやい。 逆に気に入ったことならとことんのめりこむのだ。 「にしても、このままじゃヤバイだろ? おばさんだって心配するし」 「そうなんですよね……でもどうしたらいいのか……」 (そうよね……お義母さんだって心配するよ。もし入院とかさせられたら困るし……) 隆や春樹の様子からして、夕食が終わった後らしい。 「うーん、美波さんに連絡が取れれば……」 「美波さん?」 「あー、お前が出て言った後にいろいろ世話になった人だよ。組織の反主流派で、医者でもある能力者だ」 「組織の……?」 「ああ、でも信用できる人だと思うぜ。 治癒能力が高くて、もしかしたら愛菜を元に戻してくれるかもしれない」 「そうなんですか……?」 「ああ、以前愛菜が電話してたな……リダイヤルで繋がるんじゃないか? あ、いや……最初にかけてたのは別の奴にだったかな……たしか、春樹の従兄ってやつだ。 でも、ま、そいつにかければ美波って奴にも連絡取れるだろ」 (ああ、待ってどこかに不調があるわけじゃないのよ!) 美波さんが来ても何も解決しないだろう。 おそらくこれは神宝を内に宿しているために起こったことだ。 (隆や春樹ともはなせればいいのに……) 周防さんや冬馬先輩、それに秋人さんは、きっと力の使い方を訓練したからお互い念じれば話せるのだろう。 力の使い方の応用もできる一郎くんと修二くんともきっと話せる。。 過去の記憶がある香織ちゃんももしかしたら声が届くかもしれない。 一番いいのはここにいる二人に声が届くことだけれど…… (でも、冬馬先輩と香織ちゃんはケガしたりしてたし、無理させちゃだめだよね) 誰に話しかけよう ①隆か春樹 ②一郎か修二 ③周防さんか秋人さん 142 名前:766[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 15 36 35 ID ??? ②一郎か修二 (一郎くんとは契約しているし、繋がるかも) 私は一郎くんに念じてみる。 何度も名前を呼んだり、その姿を思い浮かべてみたり、色々試してみた。 けれど、何も返ってこない。 (一郎くんじゃ駄目なのかな。よし、次は修二くん) 修二くんにも繋がらない。今度は周防さんを試してみる。 私が念じている間に、隆と春樹の会話は続いていく。 「愛菜の携帯か。制服の中かな……」 ゴソゴソと物色する音がして、「あった」と声がした。 「あったぞ。さてと……」 「でも、いいんですか? 姉さんの携帯を勝手に触ってしまって」 「緊急事態だよ。うわ、俺の知らない男の名前を発見……。おい、春樹。この名前知ってるか?」 「……知りませんよ」 「お前、保護者だろ。ちゃんと知っとけよ」 「保護者じゃなくて、弟です。ていうか……、なんでアドレス見てるんですか」 「ちょっと気になるじゃないか」 「後から姉さんに怒られても知りませんよ」 「寝てるんだし、平気だって」 「起きてるかもしれないのに……」 (起きてるし! 全部聞こえてるし!) 隆と春樹に叫んでみても、やっぱり声は届かなかった。 結局、一郎くんも修二くんも隆も春樹も周防さんも香織ちゃんや冬馬先輩まで、 知っている能力者に全員に試してみたけど駄目だった。 (困ったな。神宝に問題があるのかな……) そうしている間に、隆は周防さんを見つけ出して電話を掛けていた。 電話が終わり、春樹が隆に声を掛けている。 「どうでした?」 「ああ。今日は無理だけど、明日の午前中に来てくれるってさ」 「明日……。そうですか」 「まぁ、疲れてるだけかもしれないしさ。今夜は様子をみようぜ」 私は…… ①(なぜ誰とも繋がらないのだろう) ②(勝手にアドレス見るなんて。隆、許さないんだから) ③(そういえば、春樹は隆に殴られたのかな) ④諦めてまた夢に入る 143 名前:767[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 16 37 05 ID ??? ②(勝手にアドレス見るなんて。隆、許さないんだから) いくら緊急事態だと言っても、勝手にアドレスを見るなんて許せない。 周防さんに連絡してくれたのはいいけれど、だからと言って他の人のアドレスまで見る必要なないはずだ。 「にしても、俺も春樹も知らない奴の登録があるなんて思わなかったな」 「……姉さんにだって付き合いくらいあるでしょう」 「そうだけどさ、俺とは同じクラスだし、春樹は家で毎日一緒だろ? それらしい男の影なんてなかったじゃないか」 (ちょっと、いいたい放題言ってくれるじゃないの!) それらしい男の影というなら、そりゃ無かったかもしれないけど……。 きっと隆も春樹も知らない名前と言うのなら、委員会関係の人か香織ちゃんつながりの人だろう。 「もうちょっと見てみようぜ」 (ちょっと! 隆、いい加減にしなさいっ!!!!) 心の中で、絶叫した時。 パァンと空気のはじける音がした。 「うあっ!?」 「っ!?」 (!?) 突然の音に、一瞬の静寂。 「……な、なんだ?」 「……もしかして姉さんじゃないですか? 勝手に見たから怒ってるんですよ」 「てことは、起きてるのか?」 (起きてるわよっ) 自分がやった自覚は無いけれど、とりあえずこれ以上携帯を見られることはなくなったらしい。 「なんだ、起きてるなら起きてるって言えよな」 「そんな無茶なこと言わないでください。話せたらとっく話してますよ」 ため息をつきながら春樹が近づいてくる気配がする。 「姉さん、とりあえず母さんにはうまくごまかしておきました。明日から土曜日までは仕事で夜も遅くなるそうですから、その点は心配しなくても大丈夫です。明日もこのままなら土曜日までに何とか解決策を見つけます」 (そっか、お義母さん仕事忙しいんだ。 まぁそのおかげで、こうして寝てても余計な心配させなくてすむんだけど) とりあえず、ホッとしていると隆が話しかけてきた。 「ところで愛菜、おまえチハルと話せるってことは、精霊となら意思疎通が出来るってことか?」 (?) 隆の言葉に首を傾げていると、隆が言葉を続けた。 「ったく、反応が無いってやりにくいな……精霊と話せるなら、お前に好意を持ってそうな道具にお願いして、そいつを通じて会話が出来ないかと思ってな」 「なるほど……でも、チハルと同じ位姉さんと一緒にいて、姉さんに大事にされてるものなんて、あるかな……それにチハルだってすぐに人の姿になれなかったんだ、その精霊が人の姿になれるかなんて分からないよ」 「確かにそうだけどさ、やらないよりはマシだろ?」 「それはそうかもしれませんが……」 私が返事を出来ないために、二人は勝手に話を進めていく。 今の話し私は…… ①やってみる価値はある ②気が進まない ③考える 144 名前:wiki”管理”人[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 17 30 50 ID ??? 豚ギリスマソ 139 編集乙です。直しておきました。 後、デザイン変えてみましたが使いにくければまた言ってください。 145 名前:768[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 18 31 52 ID ??? 144乙です! ③考える (何か引っかかる……) 私は何かを忘れているような気がする。 チハルと同じ位ものを探すより、もっと手っ取り早い……何か。 『愛菜ちゃんに新しいリボンもらったから、こっちのリボンをあげる』 『ボクがずっと身につけてたから、御守!』 『愛菜ちゃんがいままでだいじにしてくれたぶんもおかえしするよ』 『とりかえっこだね』 そして、夢の中でチハルと指きりした。 (そうだ。チハルの古いリボン……もしかしたら……) けど、どこに置いたか思い出せない。 チハルに新しいリボンを結んであげた。 そして昔の水色のリボンを……。 (あっ!……思い出した。でも、二人にどうやって……。よし、決めた!) さっきの要領で怒れば、同じことが起きるはず。 (隆のバカ!乙女のメアドを勝手にみるなんて、絶対に許せない!!!!) (春樹のアホ!少しは私のこと頼りにしろ!!!!) (普通の生活を送らせろ!ボケェ!!!) (冷蔵庫に残しておいた私のプリン食べたの誰よ!!!!) 思いつく限りの腹を立てた出来事を心の中で叫びまくる。 パァンと空気のはじける音がした。 「うあっ!? またかよ!!」 「っ!? 白い羽毛が……たくさん……」 (イタタッ! でも、成功!!) 私の枕が弾け、部屋中に真っ白の羽毛が舞っている……はず。 あとは、古いリボンを見つけてくれれば。 「これ……この水色のリボン」 「ん? なんだ?」 「チハルのリボンですよ。このリボンをまたチハルにつけてみれば……」 「そっか……ナイスだ春樹! チハルが目を覚ますかもしれないぞ」 隆の力の波動が伝わってくる。 明るい隆らしい感じだ。 ①隆の願いも聞こえてきた ②様子を見守る ③チハルに話しかける 146 名前:769[sage] 投稿日:2008/03/24(月) 22 11 18 ID ??? 144 修正ありがとうございます ③チハルに話しかける (チハル、チハル? ねえ聞こえる?) 何度か呼びかけると、眠そうなチハルの声が響いた。 (愛菜、ちゃん? どーしたの?) (疲れてるところごめんね、私の声がチハルにしか聞こえないみたいだから) (うん、ボクは愛菜ちゃんとずーっと一緒に居たから、愛菜ちゃんの思ってることが分かるんだ。 愛菜ちゃん、ボクには色々な気持ちを話してくれたし) (そうなんだ?) 確かに子供のころからチハルには楽しかったことや、悲しかったこと、怖かったことなど色々話していた。 それが、今とても助かることになるとは思いもしなかったけれど。 (それで、何を伝えればいいの?) (あ、あのね、春樹に伝えて、前にも言ったけど私は体調が悪いわけじゃないって。 力の乱れから動けなくなったわけじゃないから、美波さんじゃ治せないとおもうって) (うん、わかったよ) チハルが頷くのと同時に、耳元でポンという音が聞こえた。 どうやら人の姿になったらしい。 「お、チハル起きたか」 「うん、愛菜ちゃんがね、体調が悪いわけじゃないって、チカラの乱れから動けなくなったわけじゃないから、みなみさんじゃなおせないとおもうって言ってるよ」 「姉さんがそう言ってるの?」 「うん」 (神宝が原因だと思う) 「シンポウが原因だとおもうって」 「神宝って……結局、姉さんがこうなったのは高村の俺達のせいなのか……」 苦しそうな春樹の声が聞こえた。 私は慌てる。 (は、春樹のせいじゃないよ……!) 「ばかだなあ、春樹のせいじゃないだろ? それにお前はもう高村じゃない、大堂春樹だって自分でも言ってたじゃないか」 私が否定するのと同時に、隆が否定する。 「愛菜ちゃんも春樹のせいじゃないって言ってるよ」 「……でも」 「いいからお前、それ以上なにも言うな。 で、愛菜原因は神宝って分かってるんだろ?解決方法に心当たりは無いのか?」 隆は強引に春樹を黙らせると私に話しかけてくる。 (心当たり……) いわれて考える。 解決方法…… ①神器との契約を完成させる ②残りの二つの神宝を取り込む ③内にある力を別のものに移す ④やっぱりわからない 147 名前:770[sage] 投稿日:2008/03/25(火) 09 54 22 ID ??? ①神器との契約を完成させる (神器と契約すれば、この体の不調も収まるはず) まったく体が動かない理由は、まだ神宝と神器が馴染んでいないからだと思う。 神宝と神器が馴染んで体が動くようになったとしても、神器と契約しないことには不調は続くだろう。 私がもっと鬼に近づかないことには、神宝の力を体に留めておくことは難しい。 儀式ではなく、契約をしなければ鬼には近づけない。 だから、最後の神器と契約する以外に解決方法はないのだ。 私はチハルに頼んで、そのことを二人に伝えた。 「最後の神器が宗像弟かよ。やっかいだな」 「修二先輩は姉さんに対して協力的だったし、大丈夫じゃないですか?」 (でも、修二くんに嫌われちゃったんだよね……) 「あのね。『道具として扱われるのが嫌だ』ってシュウジが言ったんだって。 それでね、『協力しない』って断られたんだって」 「契約は神器と巫女の合意で初めて成立する……そうだったよね、姉さん……」 (うん) 「なんだそりゃ!? 宗像弟以外、愛菜を治せないってことか」 「そうですね」 「それじゃあ、愛菜はずっとこのままだっていうのかよ……」 「そんなこと絶対にさせません」 「春樹。なにか良い手があるのか?」 春樹の気配が黒く変わっていく。 「最後まで協力しないと言い張るのなら……修二先輩の心を壊してでも……」 (駄目ぇ!! 春樹戻ってきて!!) 私はチハルを介して、黒くなりかけていた春樹を急いで止める。 「冗談だって。なに真に受けてんのさ」 (びっくりさせないでよ。もう!) 「けど……修二先輩が協力しないのは本当に困りましたね」 「だな。宗像兄と仲が良いって訳でもなさそうだし、他の誰かの説得も……聞くはず無いよな」 私は…… ①私からもう一度頼んでみる ②二人に頼む ③考える 148 名前:771[sage] 投稿日:2008/03/25(火) 13 29 54 ID ??? ①私からもう一度頼んでみる (私から修二くんにもう一度頼んで見るよ。だから明日学校が終わってから家に来てくれるように伝えてくれない?) チハルが私の言葉を春樹たちに伝える。 「分かりました、何が何でも連れてきます」 「任せとけ、ちゃんと連れてきてやるよ」 (二人とも、無理やりはダメだからね……) 二人とも修二くんが嫌がったら、気絶させてでも連れてきそうな勢いだ。 (そういえば、明日は周防さんが来てくれるって言ってたよね?) 「明日スオウがくる?」 「ああ、そうそう。お前の寝てる原因が分からなかったから、とりあえず呼んでおいた。原因が分かったから断っておくか?」 (ううん、聞きたい事があるから) さっき見た夢が気になる。きっとあれは普通の夢じゃない。 「愛菜ちゃん、スオウに聞きたい事があるって」 「聞きたいこと? なんだ?」 (うん、ちょっと気になることがあって……、ねえ春樹、秋人さんって急に性格が変わったんだよね?) 「ええ、以前はもっと優しい人だったよ。 そんなに態度には出さないようにしてるようだったけど、気がつくと助けられてたってことも結構あったな」 (やっぱりだいぶ性格が変わったみたいだね) 秋人さんが言っていた「闇」と言う言葉が気になった。 周防さんはそれが何か分かっているような口ぶりだったから、明日来たら聞きたいと思ったのだ。 (それにさっき一瞬春樹の気配が黒く変わった……それも気になる) いまは全く感じないけれど、あの時確かに今までの春樹なら口にしないことを言った。 (周防さんにそのことも確認したいし、ね) (愛菜ちゃん……?) 不安そうにチハルが心に話しかけてくる。 チハルにも春樹の異常が分かったのかもしれない。 ①チハルを安心させる ②もっと秋人さんのことを聞く ③今日はもう寝る 149 名前:772[sage] 投稿日:2008/03/25(火) 15 34 08 ID ??? ③今日はもう寝る (周防さんに来てから尋ねればいいか……) 神宝と神器を体に馴染ませるためには、少しでも休んだ方が良い。 いくらチハルとの会話でも、少しは力を使っている。 (チハル。ちょっと疲れたらかもう寝るね。春樹と隆にも言っておいて) (わかったー。おやすみ、愛菜ちゃん) (おやすみ。チハル) 意識が落ちて、また夢が現れた。 (これは壱与の中。……でも、あれから数年経ってるみたい……) 大堂愛菜の意識は壱与の中で、また静観しはじめる――。 あれから、私たちはお互いの気持ちを封印し、強い信頼関係を築いていった。 けれど、三種の神器はその拠り所を失い、力を弱めていく一方だった。 人間に与えられた祝福だったけれど、私が壊してしまったのが原因だ。 託宣も最近は得られず、巫女としての使命に限界を感じ始めていた。 「壱与!」 「帝……!」 久しぶりに現れた帝は、少しやつれ気味だった。 天災続きで、政にも影響が出ているのだろう。 「今日は面白いものを持ってきた。見てくれないか」 顔色とは裏腹に、帝は子供のようにはしゃぎながら私にある竹簡をみせる。 「これはなんでしょう?」 「大陸から贈られたものだ。しかし、文字というのは難しいな……」 「えーっと……これは経典ですね」 「なぜ分かる? まさか、君は大陸の文字が読めるのか!?」 「ええ。出雲と楽浪郡は貿易が盛んでしたので……」 「すごいぞ! 頼む、僕に文字を教えてくれないか」 (教えてしまってもいいのかしら……) ①教える ②教えない ③考える 150 名前:773[sage] 投稿日:2008/03/25(火) 18 50 03 ID ??? ①教える 「いいですよ」 「本当か!? ありがたい」 これを期に、私は帝に文字を教えることになった。 大和が大陸と本格的に貿易を始めたのが、最近だという話だった。 帝は要領がいいのか、砂が水を吸うように文字を覚えていく。 そして、数ヶ月もしない内にほとんどの文字が読めるようになっていた。 「この仏教というのは、興味深い教えだな」 帝はしみじみと竹簡を見ながら、呟いている。 「どういった内容なんですか?」 「うーん。色々なことが書いてあるな」 「色々……」 「一言でいうと、心の在り方を説いている……というところだ」 「心の在り方?」 「個である意識の問題かな。たとえば、思うようにならない苦しみがあるだろう?」 「はい」 (災厄に疫病……思うようにならないことばかり) 「なぜ苦しむのか。それは、比べているんだ。思い通りになった自分と。そして嘆く」 「なんとなく……わかります」 「苦しむことも嘆くことも比べる事自体が無意味なんだ。自分自身も原因と結果の一つに過ぎないのだから。 その大きな流れの中で自分は生かされている。けれど、自分の行いもまた原因を作り結果を生む。 だから、身の丈にあった出来ることを精一杯すればいい。要約すればそんな感じだろうな」 「難しいですね」 「まあな。僕は絶対者である神の系譜だ。だが、この教えは絶対神を否定している」 「神であることに、疲れているのですか?」 「そうだな……。きっと、そうなのだろうな」 「でも……」 そう言いながら、私は言葉を続ける。 「でも……すべての中に神はいます。小川のせせらぎの中にも。風の中にも。 たとえ祝福がなくなってしまったとしても、人はその美しい声を聞くことが出来るはずです」 「そうか。やはり君は …気高く…強いな……」 帝は私を見ながら、穏やかに笑った。 (二人が何を言っているのか全然わからなかった……) 私は…… ①夢を終える ②続きを見る ③考える 151 名前:774[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 11 08 18 ID ??? ③考える 二人が何を言っているのかは分からなかったけれど、壱与の言った言葉は私も知っていることだ。 (すべての中には神がいる……) 壱与が言っている神には精霊も含まれているのだろう。 チハルは、精霊は力が強くなると神に昇格すると言っていた。 つまり、すべてのものは神になれる可能性を秘めているのだ。 壱与にとってそれは当たり前で、帝がなぜそんな事を言うのか不思議に思っている。 私はふと、壱与のいるこの時代の風景を見たくなった。 大和に来てから壱与の記憶はほとんどが神殿の室内で、外の景色はその窓から見える範囲に限られていた。 (ちょっと見て見たいな……) ふとそう思うと、不意に視界が変わった。 (ここは……?) どうやら森のなからしい。 現代の日本では限られた場所でしか感じることが出来ない濃い緑の香り。 重さを感じてしまうくらい濃密な空気。 そして、そこここに感じる力の気配。 (この力の一つ一つが精霊なのかな? ……あれ?) 澄んだ力の気配とは異質な気配を感じて私はそちらに意識を向けた。 (なんだろう……懐かしい感じもするのに、嫌な感じもする……) 確認したいけれど、かすかに感じる嫌な気配にためらってしまう。 どうしよう…… ①行く ②行かない 152 名前:775[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 12 40 20 ID ??? ①行く (せっかく来たんだしね) 私は湿り気を帯びた空気を吸いながら、深い森をさらに進んでいく。 すると、鏡のように澄んだ池が見えてきた。 「お前は……誰だ」 うしろから声がして私は振り向く。 すると、隆が立っていた。 「隆!!」 「……人間じゃないな。何者だ」 「隆……なんでこんな所に? 迎えに来てくれたの?」 「タカシ? それはどんな食べ物だ。うまいのか?」 「何言ってるの? それに……そんな裸みたいな格好してたらお腹痛くなるよ」 「貴様……よく見ると鬼だな」 隆はそういうと、途端に敵意むき出しにして私を睨む。 (ヘンな隆……) それに……格好だけじゃなくて、いつもの隆とは決定的に違っているものがあった。 「耳……だ」 「鬼め。ここの精霊たちを喰いにきたのだろううが、そうはいかないからな」 「よく出来てる耳。隆が作ったの?」 「この土地を守護する者として貴様を倒す!」 「何の変装…わかった! お化け屋敷のだ」 私はその良く出来た耳をギュッと触る。 すると生きているみたいに暖かくて、ピクンと動いた。 「わ! 本当に生えてるみたい」 「気安く触るな!」 「狼男のつもり? だけど、香織ちゃんから聞いてるでしょ。うちクラスは和風だよ」 「俺の話も完全に無視とは……大した度胸だ。死んでから後悔するんだな!」 そう言うと、隆は私に掴みかかってきた。 どうする? コマンド ①たたかう ②にげる ③ぼうぎょ 153 名前:756[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 14 46 32 ID ??? ③ぼうぎょ 私はとっさにぎゅっと目を瞑り、顔の前で手を交差して頭をかばう。 けれど、衝撃は来なかった。 (あれ?) 不思議に思って、おそるおそる目を開ける。 目の前に隆はいなかった。 あわてて周りを確認すると、私の後で呆然と立っている隆がいた。 「すり抜けた? ……貴様、普通の鬼でもない、のか?」 悔しそうに唇をかみしめる隆に、私はふと疑問を覚える。 (そういえば隆に、私が鬼になったこと言ってないよね……? 何で知ってるの?) 春樹が隆に言ったのだろうか? いや、春樹がわざわざそういうことを言うとは思えない。 それにあの耳も、温かくて血が通っているようだった。 「何者だ……その強い力……」 敵意をむき出しにしたまま、警戒するように隆は幾分腰を落として私を見ている。 いつでも飛びかかれるような態勢だ。 それに、すり抜けたってどういうことだろう? 私はさっき普通に触ることが出来た。 「ね、ちょっと聞いていい? あなた隆じゃないの?」 「だからそれはなんだ?」 「そっか、違うのか……」 けれど、見れば見るほどそっくりだ。 (耳だけは違うけどね……そういえばさっき……) ここを守護するものとか、精霊を喰いにきたとか言っていたような? 「ちょ、ちょっと、もしかして私が精霊を食べるとでも思ってるの!?」 「食べないとでも言うのか? 貴様鬼だろう……ちょっと変わってるが」 「食べるわけ無いじゃない!」 そりゃあ、野菜なんかにも精霊がいるのだからそういう意味では食べてると言えるけど……。 「野菜とか果物とかは食べるけど、それにも精霊がいるんだろうけど……むやみに食べたりしないわよ」 私の言葉に、隆のそっくりさんはぴくっと耳を動かした。 けれどそれは私の言葉に反応した分けでは無いらしい、私もすぐに異変に気付く。 「なに、この嫌な感じ……」 さっき感じた嫌な感じがこちらに近づいて来る。 「敵が来る」 「え?」 「お前の仲間だろう」 「……鬼ってこと? でも、鬼の一族は壱与以外……まさか、高村の一族?」 力の弱くなった鬼、それが高村の一族だといっていた。 突然空気が震える。まるで、何かが引き裂かれたかのような感じがした。 「な、なに!?」 「くそっ、鬼めっ」 隆のそっくりさんが、ものすごい勢いで嫌な感じがする方へと走って行く。 私は…… ①追いかける ②この場にいる ③考える 154 名前:777[777ゲットsage] 投稿日:2008/03/26(水) 15 55 37 ID ??? ①追いかける 「隆! 待ってよ!!」 私は急いでその背中を追いかけた。 (足、早すぎ……) 「見つけた……手負いの鬼だ」 隆のそっくりさんが草むらに隠れる。 私もそれにならった。 陰から覗いたその姿は、それなりの地位を持っているであろう男性だった。 小川の脇、大木に座り込んでその身を隠している。 身体から止めどなく血が流れ、酷い怪我をしていた。 (助けなきゃ……) 「おい、お前!ちょっと待てって!!」 そっくりさんの制止を振り切り、草むらから飛び出すと男性の前に立つ。 「大丈夫ですか? すぐに祈祷を……名前を教えてもらっていいですか?」 祈りを捧げるためには対象者の名前が必要だった。 「……守…屋」 「わかりました。それ以上はしゃべらないでください」 私はその男性の身体に触れ、祈り始める。 「見つけたぞ! こっちだ!!」 その時、男性を追ってきた兵のひとりに見つかってしまった。 (どうしよう……このままじゃ、この人死んじゃうよ) もぞもぞと草むらが動いて、隆のそっくりさんが現れる。 そして男性を背負うと、私に向かって口を開いた。 「こっちこい。見つからないとこまで走れ!」 私は…… ①ついていく ②やめる ③考える 155 名前:778[sage さっき番号間違ってたorz] 投稿日:2008/03/26(水) 17 13 20 ID ??? ①ついていく 私はあわてて隆のそっくりさんについていく。 人を一人背負っているとは思えない速さで走って行く彼に、付いて行くのが精一杯だ。 「おい、お前たち侵入者だ、かく乱しろ」 そっくりさんは走りながら周りに向かって声をかけている。 その声に反応するように、精霊のものと思われる力が幻影を作り出していく。 「すごい……」 振り返って見ると、幻影に惑わされた兵士が別の方向へ走って行く。 しばらく走り、繁みに囲まれて隠れるのによさそうな木の根元で、そっくりさんは守屋さんを降ろした。 「ここまでくれば平気だろ」 「………っ」 「! すぐに癒します」 私はあわてて傷の上で手をかざす。 守屋さんの名前を唱え、神に祈る。 身の内にある、神宝の力が守屋さんを癒していく。 鬼ということもあるのか、力はすぐに守屋さんの傷を塞ぐ。 流れた血はさすがに戻せないけれど、これで命に危険は無くなったはずだ。 守屋さんはぐったりとしていて、まだ話す元気は無いようだ。 「あんた、その力……巫女? いや、だが間違いなく鬼の気配が……」 隆のそっくりさんがぶつぶつと言っているのに気付いて、私は振り変える。 「私は鬼だけど、巫女でもあるの……昔ね」 「昔?」 「うーん、なんて説明すればいいのかな? 前世?」 「ふーん……?」 そっくりさんは納得したのかしないのか、あいまいに返事をする。 とりあえず、このそっくりさんに名前を聞いてみようと、私は立ち上がってむきあう。 「私、愛菜っていうの。あなたは?」 「アイナ? 変な名前だな……。 俺は……」 そっくりさんはそこで言葉を濁し、視線をさまよわせふと一点で視線を止めた。 そちらをみると、木の枝が風で揺れ葉に光が反射してている。 「俺のことは光輝とでも呼べばいい」 「コウキ?」 「そうだ」 「ていうか、いま思いついたみたいな答えなんだけど?」 「あたりまえだ、良く知りもしない相手に本名を教える精霊がいるわけ無いだろう」 いわれて、記憶がよみがえる。 そういえば、真名とはとても大切なものだった。 現代でこそ普通に名乗りあっているが、この時代では真名を握られると言う事は命を握られるのと同意だった。 (普通に名前教えちゃったよ……ま、いいか) 光輝が私の真名をしって、何かするとは思えない。 とりあえず…… ①ここはどこか聞く ②守屋さんの様子を見る ③追っ手が来ないか探って見る 156 名前:779[sage] 投稿日:2008/03/26(水) 18 56 18 ID ??? ②守屋さんの様子を見る (守屋さん。大丈夫かな……) 守屋さんの身なりは、ちゃんとしていた。 材料の乏しいこの時代でも、上等なものはすぐにわかる。 (若く見えるけど……この人、身分が高い) だけど、なぜ追われていたんだろう。 あの兵は、たぶん大和も者だ。 (ということは……出雲の民……?) 大和の兵に追われている鬼ならば、逃げ延びた出雲の民に違いない。 けれど壱与の記憶を遡ってみても、王族で思い出すことは出来なかった。 (身分は高いけど、きっと王族じゃないんだ……) その時、守屋さんの口から意外に名前が漏れる。 「おやめ……くだ……さ…い…帝…」 「え?」 驚いた私を見て、光輝が振り向く。 「どうした。何を驚いているんだ?」 「この守屋さんが、今、おやめください帝って……。まるで…家臣みたいに…」 それを聞いて、光輝が腕を組んで首を振った。 「あんたの聞き間違いだろ。鬼と大和の帝といえば、いくさで殺しあった国同士だ。 森の中に住んでる俺でも知ってる事だぜ」 「うん。そうだね……」 (でも、たしかにそう聞こえたんだけどな) 「ところで……鬼の女」 私が考え込んでいると、光輝が声をかけてきた。 「あのさー。鬼じゃなくって、愛菜って呼んで欲しいんだけどな」 光輝はキョトンとした顔で私を見て、鼻の頭を掻いている。 「どうしたの?」 「あ、いや……。なんでもない……」 ①「何、気になるじゃない」 ②「名前が呼び辛いの?」 ③「それにしても、隆にそっくりだね」 157 名前:780[sage] 投稿日:2008/03/27(木) 10 18 54 ID ??? ③「それにしても、隆にそっくりだね」 鼻の頭を掻く仕草もそっくりだ。 もしかしたら、隆と同じで照れてるのかもしれない。 「そのタカシってのはなんだ?」 「私の幼馴染だよ」 「じゃあ鬼なのか」 途端不機嫌そうに、光輝は顔を顰める。 「違うよ。人間。精霊と話をすることが出来るけど、鬼じゃないよ」 「なんで鬼に人間の幼馴染なんているんだよ」 「なんでといわれても……私が鬼になったのだって最近だし……」 「はぁ? 元々はお前も人間だったって言うのかよ」 意味が分からないと言うように、光輝は首をかしげる。 「うん、そうだよ。三種の神器と契約しちゃったから、鬼として目覚めたんだって」 「わけわかんね。大体、神器は大和が管理してるだろ。最近はその力もやけに弱くなってるが……。 それに、お前の中にあるのは神器じゃないだろう」 「分かるの?」 「あのなあ……俺はこの地を任されてるんだ。 それなりに地位が高いんだよ。 これくらい分からないでどうする」 「へぇ……光輝ってえらいんだ」 隆と同じ顔だからあまりそういう感じはしないけれど、そういえばさっき周りの精霊に命令していた。 「当たり前だろ? まったく礼儀を知らない奴だな」 「ご、ごめんね」 そうだ、隆とそっくりだけど光輝は隆じゃない。 地位の高い精霊みたいだし、隆と同じ感じで話していたらすごい失礼なことなのかもしれない。 (って、あれ? ……これって夢、だよね?) これは過去の私の夢ではないのか? けれどここに壱与はいない。壱与はあの神殿から出られない。 そして壱与の記憶のどこにも光輝のことは無かった。守屋さんのことも。 どういうこと? ①実際に過去に来ている ②他の誰かの夢 ③気にしない事にする 158 名前:781[sage] 投稿日:2008/03/27(木) 13 48 23 ID ??? ①実際に過去に来ている (壱与から抜け出して、過去に来てるのかな……) よくわからない。 でも、今までの夢から現実での謎が解けてきている。 だったら、今回もこの夢に意味があるのかもしれない。 「くっ……ここは…」 どうやら守屋さんが目覚めたみたいだ。 私は守屋さんの傍まで、急いで駆け寄る。 「…一体…どこ…なん…だ…」 「ここは……えっと光輝。ここはどこ?」 光輝は「はぁ?」という顔をして、仕方なさそうに口を開く。 「ここは穴虫峠の外れだ」 「……そうか、俺は……君らに助けられたのか……」 「怪我をしていたので、治療しておきました」 「……すま…ない」 そして、守屋さんはまた目を閉じてしまった。 ジッと睨みつけるように見ていた光輝に、私は顔を向ける。 「どうしたの怖い顔して?」 「……鬼の女、この守屋ってヤツの手を見てみろよ」 光輝に言われて、私は守屋さんの手を見る。 二十五歳過ぎくらいに見える年齢のわりにゴツゴツとしていて、無骨な手をしている。 マメやタコの跡らしきものもあって、お世辞にも綺麗とは言えなかった。 「それ、剣ダコだぜ。きっと、かなりの使い手のはずだ」 「剣ダコ?」 「剣の握りのことに出来るタコだよ。んなことも知らないのか?」 「知らないよ……」 「うぅ……」 守屋さんが微かな唸り声を上げている。 傷口は塞いでも、痛みまで取り除くことは出来ない。 (壱与に比べると鬼の力は弱い……けど、さすがに鬼だ…) 普通の人間だったら、私が治療しても間に合わなかっただろう。 特に失血が酷かったのか顔色は青白く、身体が小刻みに震えている。 きっと、体温が下がっているのだろう。 私は…… ①もういちど治療する ②身体を温める方法を探す ③光輝に話しかける 159 名前:782[sage] 投稿日:2008/03/27(木) 15 24 55 ID ??? ②身体を温める方法を探す (とにかく暖めなくちゃ……) 私はとりあえず自分の着ている服を見下ろす。 今まで気にしていなかったけれど、私は制服を着ていた。 (これじゃあ暖められないよ……) せめてコートとか来ていれば毛布代わりになったと思うが、無い物はしかたない。 火をおこすことも考えたけれど、追っ手がいる今煙なんて見えたらこちらの場所がばれてしまう。 (どうしよう……こういうとき使えそうな術とかなかったかな……) 私は必死に記憶を探る。 火を操る術ばかりが頭をよぎる。 (だから、火じゃ駄目なんだってば……) 結局何も思い浮かばす、私は原始的な方法を取ることにする。 「?」 不思議そうな顔をする光輝を尻目に守屋さんの手を取る。 「うわ、冷たい……」 血が足りないのだろう。すっかり体温が下がっている。 私はあわてて守屋さんの手をさする。 手の皮が厚くごつごつとしていて、ところどころささくれている為、さすっていると私の手も痛くなってきたが気にしていられない。 「……おい」 「なによ」 「放って置けよ。鬼なんだ、そんな簡単に死にやしない」 「分かってるけど、でも何か出来るならしたいじゃないの」 背後からかけられる光輝の声は、不機嫌そうだったがこの状態の守屋さんをただ見ているだけなんて出来ない。 (どうしよう……ぜんぜん暖かくならないし、なんだかさっきよりつらそう?) 「なんでそんなに必死になるんだ? 同じ鬼だからか?」 光輝が私の横に立つ。 なぜって…… ①「そうかも?」 ②「ケガ人だもの」 ③「理由なんて考えなかったよ」 160 名前:783[sage] 投稿日:2008/03/27(木) 17 27 07 ID ??? ②「ケガ人だもの」 「手負いの獣は放っておくのが普通だろう。変わってるな」 「そうなの?」 「そうさ。下手に助けたら、今度は自分がやられちまうからな」 「確かに……私も危なかったもんね」 そこでふと思う。 大和の兵に見つかったとき、なぜ光輝は助けてくれたんだろうか。 「じゃあ、光輝は…なぜ私と守屋さんを助けようと思ったの? 普通だったら、助けないんだよね」 「普通だったらな」 「普通じゃなかったってこと??」 「そりゃ……お前を死なせるのが……急に惜しくなったんだよ」 光輝はそう言うと、私の横に静かに座った。 「鬼のくせに……いい匂いだったからさ……」 「えっ…」 「ホワホワするっていうか……」 そして、私の髪の間に指を絡ませる。 裸みたいな隆が、私の髪の匂いを嗅いで目を細めている。 (ななななな、なに!?) 私は混乱して、光輝を思い切り突き飛ばした。 光輝は勢いよく転がり、後ろにあった倒木に頭をぶつけていた。 「いってぇー!!」 「だ、大丈夫?」 「大丈夫なわけあるか! この暴力鬼!!」 「ごめんね。本当にびっくりしただけなんだ」 (ゴンって、すごい音してたし……) 私が何度も謝ると、光輝はようやく許してくれた。 「ちっ、仕方ねェな。二度とすんなよ」 「ほんと、ごめん……」 その後も、私はしつこいくらいに守屋さんを暖め続けた。 けれど、顔色は一向に良くならない。 「おい……」 「何?」 「そんなに、鬼の男を助けたいのか」 「うん」 「まったく、仕方ねぇな……」 光輝は守屋さんを背負うと、ぶっきら棒に言葉を続ける。 「付いて来い。俺のねぐらはここより暖かいからな」 どうしよう? ①付いて行く ②やめる ③守屋さんを見る 161 名前:784[sage] 投稿日:2008/03/27(木) 19 25 07 ID ??? ①付いて行く 「ありがとう、光輝」 守屋さんを背負って前を歩いていく光輝にお礼を言う。 「なんで、お前が礼を言うんだよ?」 「だって、この人を助けてくれたもの」 「だから、なんでお前が礼をいうんだ? こいつはお前とまったく関係ない鬼なんだろう?」 「でも、私が助けたいって言ったから助けてくれるんでしょ?」 「……気が向いただけだ」 そういう光輝の顔が赤い。 (なんか、こういう素直じゃない反応もそっくりだよね、本当に隆を相手にしてるみたい……) 光輝のねぐらという場所はさっきの場所からそれほど離れていなかった。 けれど…… 「ちょっと、光輝、これがねぐら、なの?」 「おう」 光輝は短く答える。私は呆然とそれを見た。 (おっきい……) 神社でみるような御神木よりもはるかに大きな木だ。 いったい何百年、いやもしかしたら千年以上生きているのかもしれない。 光輝はその木の枝をひょいひょいとジャンプして上へ上へと登っていく。 「ちょ、ちょっと!」 あっという間に姿の見えなくなった光輝に、私は呆然と立ち尽くす。 けれどすぐに光輝が戻ってきた。守屋さんはもう背負っていない。 「なんだ、登れないのか? 仕方ないな」 光輝は立ち尽くす私を見て肩をすくめると、掬うように私を抱き上げる。 いわゆるお姫様抱っこだ。 「ちょ、ちょっと!?」 「登れないんだろ? おとなしくしてろ」 私よりも重い守屋さんを軽々運んでいただけあって、まるでなんでもないことのように再度ひょいひょいと木を登っていく。 思わず下を見てしまった私は、思わず光輝の首にしがみついて目を閉じた。 「た、高い高いっ!」 「うあ、急に首を締めるな! びっくりするだろ!? ……ほら、ついたぞ」 言われてなるべく下を見ないように恐る恐る目を開く。 「わぁ……」 この木は回りの木よりも大きいため、そこから見える景色は緑色のじゅうたんのようだった。 思わず感嘆の声を上げ、ふと思い出す。 ①「守屋さんは?」 ②「お、おろして」 ③「ここに住んでるの?」 162 名前:785[sage] 投稿日:2008/03/27(木) 21 05 08 ID ??? ③「ここに住んでるの?」 「さっきから、ねぐらだって言ってるだろ……」 呆れたように言いながら、光輝はゆっくり下ろしてくれた。 喜んでいる私を見つめながら、呆れながらも満足そうに鼻の頭を掻いている。 「柔らかい……踏んでも平気なんだよね」 「ああ」 私は緑色のじゅうたんを踏みしめながら、先に歩いていく。 「ちょっと待て!」 「な、なに……うわぁ!」 緑のじゅうたんの底が抜けて、片足が落ちそうになる。 光輝が咄嗟に私の手を掴んでくれた。 「危ないだろ! よく見て歩けよ」 「あ、ありがとう。気付かなかったよ……」 敷き詰められた緑の中に、ところどころ黄色や、茶色になっている場所がある。 葉が腐って落ちてしまった場所もあるようだった。 「葉っぱ、腐ってたんだね」 「この大木は特に土地の恩恵を受けているんだ。けど、酷い有様だろ」 「どういうこと?」 「最近、ここの土地もすっかり痩せちまってんのさ」 光輝はそれだけ言うと、私を守屋さんのところまで黙って案内してくれた。 (なんのことだろ……) 「ほら、鬼の男だ」 「うわぁ……ここは……」 「ここなら、身体の回復も早いだろう」 (世の中に満ちるエナジー。一郎くんや武くんが言ってたのはこれだったんだ……) 蛍のような光が渦巻く場所に、守屋さんは寝かされていた。 その薄緑色の光は数千、数万という膨大な数だった。 光の塊が渦を巻いたり広がったりしながら、守屋さんの周りを漂っている。 どうしよう…… ①光輝に話しかける ②守屋さんに近づく ③考える 163 名前:876[sage] 投稿日:2008/03/28(金) 11 14 57 ID ??? ②守屋さんに近づく 守屋さんの横に座って、顔を見ると先ほどより少しは顔色が良く見える。 この場所のおかげなのだろう。 「よかった……」 試しにその手を触ってみる。けれど体温は相変わらず低い。 私はさっきと同様その手をさする。 後から光輝が近づいてきて、私の横に胡坐を掻いて座る。 「……なに?」 その手が伸びてきて私の髪を触ってくる。 守屋さんの手をさすりながら、顔だけ光輝に向ける。 「……気にするな」 「気にするなって……気になるに決まってるじゃない」 「そうか、だけど本当に気にしなくていいぞ。 お前に触ってると力が回復する気がする。ほわほわして気持ちいいし、不思議な奴だな」 言いながら髪に触ってくる。けれどそれ以上近づいてこないのは、さっきのことを警戒しているのかもしれない。 (そういえば、チハルもそんなこと言ってるよね。やっぱり光輝も精霊だから感じるのかな?) 私の中の何がそんなに精霊に心地いい物なのか分からない。 (でも、隆と同じ姿って言うのがちょっとねぇ……そういえば) 「ねえ、光輝。もしかして子供の姿になれたりする?」 「ん? まあな」 どうしてそんなことを聞くのかと、首を傾げる光輝に私は…… ①「聞いて見ただけ」 ②「変わってみて?」 ③「それじゃ、毛布とかにも変われるよね」 164 名前:名無しさん@板設定投票日決定!詳細は自治スレへ[sage] 投稿日:2008/03/28(金) 11 15 28 ID ??? ああ、番号間違い786ですorz 165 名前:787[sage] 投稿日:2008/03/28(金) 12 18 11 ID ??? ③「それじゃ、毛布とかにも変われるよね」 「モウフ? それは美味いのか?」 「違うよ。食べ物じゃなくて、寝てる人に掛けたりする物なんだけど」 私が説明に困っていると、光輝が閃いたようにポンと手を叩く。 「わかった。ムシロの事だな」 「ムシロって言うんだね。光輝お願い、それに変わってもらって守屋さんを……」 「ヤダ」 「どうして? いいじゃない」 はっきりと断る光輝に対して、私は言い募る。 でも、光輝は「嫌だ」の一点張りだ。 「寒そうにしてて、可哀想だよ」 「ムシロに変身してても、男と一緒に寝るなんてごめんだ。諦めるんだな」 「変身してくれないの?」 「当たり前だ」 そう言うと、光輝は不機嫌に立ち上がる。 「助けたのはお前がいい匂だったからだ。鬼の男がどうなろうと俺には関係ない」 「じゃあ、守屋さんが辛そうでもいいって事?」 「手負いの獣が死ぬのは天命だしな」 「そんな……」 「同属同士なんだ。お前がこの男を暖めればいいだろ」 「でも……」 「俺がしてやるのはここまでだ。これ以上はお前でどうにかしろ」 「お願い。今頼れるのは、光輝しか居ないんだよ」 「じゃあ、俺の女になれ」 (……へ?) 「鬼だが、お前は気持ちいい。女になるのならこの男を助けてやる」 な、なんだって―!! ①仕方がないので私が暖める ②光輝の女になる ③考える 166 名前:788[sage] 投稿日:2008/03/28(金) 14 49 17 ID ??? ③考える (光輝って以外にプレイボーイ……?) 隆に似た外見のため、つい右手で拳をつくってしまう。 「それ、本気でいってるわけ?」 「な、なんだよ……」 一瞬光輝はひるんだが、すぐにぷいっとそっぽを向く。 「嫌ならいいんだ。さっきも言ったように別に俺はこの鬼がどうなろうと、しったこっちゃないからな」 隆なら私が少し怒った様子を見せれば妥協案を提示してくるけれど、さすがに光輝だとそうはいかない。 「……ちなみに光輝の女になるってどう言う事?」 光輝は精霊だ、女になるっていう意味ももしかしたら人とは違うかもしれない。 「なんだ、その気になったのか? 俺の女になるって言うのはずっとそばに居るってことだ」 「そ、そっか……」 (あいまいすぎて、深い意味があるのかどうかわからないよ……でも……) 今は過去に来ているのかもしれないが、いつ目が覚めるか分からない。 ずっとという約束は出来ないのだ。 「ごめん、ずっと一緒にいる約束はできないや」 「どうしてだ?」 「だって、私ここにずっといられないもの。たぶん急にもとの場所に戻されるだろうし」 「なんだよそれ?」 「うまく説明出来ないけど、元の所に戻らなくちゃいけないの」 「誰かに無理やり、連れて行かれるってことか?」 うーん、なんて説明しよう ①「えっとね、本当の私は眠ってるの」 ②「誰かってわけじゃないけど、私の意思じゃどうにもならないよ」 ③「違うよ、私は本来ここにいない人だから」 167 名前:789[sage] 投稿日:2008/03/28(金) 21 14 48 ID ??? ③「違うよ、私は本来ここにいない人だから」 「じゃあ、本来はどこに居るんだ?」 当然の質問だ。 私だって同じことを尋ねるだろう。 「未来……ずっと未来から来たんだよ」 光輝はキョトンと目を丸くした後、段々不機嫌な顔になっていく。 「嘘にしても、もっと上手い嘘つけよ……」 「本当なんだよ」 「俺のこと、バカにしてるんだな」 「バカになんてしてないってば」 「なら、ふざけてんのか? 鬼だからって、精霊の俺を見下してんだろ」 「質問してきたから答えただけなのに、なんで怒られなくちゃいけないの?」 「くだらねぇ。もうお前だけでどうにかしろ。俺は知らないからな」 光輝はプイと私から背けて歩き出す。 そして、この場所から黙って去ってしまった。 (怒らせちゃった……) 残ったのは、私と青白い顔をした守屋さん。 守屋さんの手をさすりながら、自分のブレザーを身体に掛ける。 だけど私のブレザーでは、大きさが全然足りない。 「どうしよう……」 独り言を呟いていても、助言はない。 自分でどうにかしないと、守屋さんが辛そうだ。 私は…… ①添い寝をする ②木の葉をむしる ③守屋さんを触る 168 名前:790[sage] 投稿日:2008/03/29(土) 01 22 08 ID ??? ②木の葉をむしる (火を使ったら、この木が燃えちゃうよね……) 今、ここには私しか居ない。 傷は治したけど、低体温での命の危険も十分あり得る。 私が諦めてしまったら、守屋さんが死んでしまうかもしれない。 (ごめんね。少し摘ませて) 私は黄色や茶色になった木の葉をしゃがみ込んで千切っていく。 あちこちの別の場所に散らばった枯れ葉を拾い集めるのは大変だ。 水分の少ない葉を出来るだけ沢山にしないと、身体が湿ってしまっては逆に体温が奪われてしまう。 (こ、腰が……) 小山が出来るほど貯める頃には、腰が痛くなってしまった。 私は守屋さんの着ている服をなるべく緩める。 そして、大量の枯れ葉を守屋さんの上に掛けていった。 (よし。これでオッケーかな) 守屋さんの身体は枯れ葉にすっぽり覆われた。 毛布とまではいかないけど、まったく無いよりはいいはずだ。 (やっぱり、するしかない。よしっ、決めた) 私はリボンを解いて、ブラウスを脱ぐ。 キャミソールは……最後の防衛線なのでさすがに脱げなかった。 とりあえずブラウスも枯れ葉の上に乗せてみる。 (変態みたいだけど……失礼します) 枯れ葉のベッドにモゾモゾと潜り込む。 そして、素肌がなるべく触れ合うように身体を密着させた。 (こんな格好で男の人にくっついたことなんて、初めてだよ) 泣きたくなるけど、目の前で守屋さんが亡くなってしまうのは絶対に嫌だ。 私はチハルがするみたいに、しっかりと守屋さんに抱きついた。 私は思う…… ①守屋さん。はやく元気になってください ②お父さんやお継母さんや春樹が見たらなんて言うだろう ③そういえば、光輝はどこへ行ったんだろう 169 名前:782[sage] 投稿日:2008/03/29(土) 10 47 55 ID ??? ①守屋さん。はやく元気になってください 祈りながら、少しずつ鬼の力も送る。 すると、熱に反応したのか鬼の力に反応したのか守屋さんは身じろぎすると、私をぎゅっと抱きしめてきた。 守屋さんの冷たい身体に私の体温が奪われ、思わず身震いする。 その目は堅く閉ざされたままだ。 (無意識、なのかな?) きっと本能がそうさせたんだろう。 自分で熱を生むことが出来ない身体が、近くにある熱を欲するのは自然のことだ。 私は守屋さんの顔を見る。こころもちさっきより顔色がいいように見えた。 (この場所のおかげでもあるかな?) さっきまで眉間に刻まれていた皺も、いまは無く呼吸も少し穏やかになっている。 と、守屋さんの瞼がピクリと動いた。 それからゆっくりと目が開いて、守屋さんを見ていた私と視線が合う。 守屋さんは、どこかぼんやりした感じで瞬きをすると少し首をかしげた。 「……ひ、め?」 「え?(ひめ、って姫のことよね……壱与と間違えてる?)」 守屋さんは鬼なのだから、私が知らなくても壱与を知っている可能性はある。 私が鬼の力を分けているから、意識がまだはっきりしていない守屋さんは勘違いしているのかもしれない。 「姫、申し訳、ありません、王をお守り、できず…………生き恥を……さらし……」 やはり私を壱与と間違えているようだ。 「……人間と偽り姫を……お助け……と………鬼の国を………お慕い……」 途切れ途切れにの言葉にが、だんだんと小さくなっていく。 最後の方の言葉はほとんど聞こえず、何を言っているのかわからなかった。 そして開いていた目もまたゆっくりと閉じられる。 (出雲の王様を守っていた人、なのかな?) 光輝の言葉を思い出す。 守屋さんの手は剣を扱う手だと。かなりの使い手であろうとも。 それに、少し気になる言葉を言っていた。 ①人間と偽って、って…… ②鬼の国を、って…… ③お慕い、って…… 170 名前:名無しさん@板設定投票日決定!詳細は自治スレへ[sage] 投稿日:2008/03/29(土) 10 49 14 ID ??? ↑ああああ、また番号逆行orz 791です
https://w.atwiki.jp/smoksang2/pages/165.html
何もかもが青春のせい ED「やっぱ青春」の2番の歌詞。 影山輝の登場により一概にも、 「影山のせい」と言えなくなってしまったが、 この曲にこのような歌詞がある事で、 これからこう言ったら良いのでは無いだろうか? ……はっきり言えば、君も僕も青春だからと同意である。
https://w.atwiki.jp/tsvip/pages/1238.html
1.春の海沿いの道は、さわやかで、どこまでも続いて行くようだった。 時折強い海風が吹き、俺の気分も何処か遠くに吹き飛ばしてくれる。 2.俺の隣で車を運転する親父は、やはりどこか楽しそうだった。 俺の名前は佐々木康太。 中学まで住んでいた東京を離れ、地方の高校に4月から通うことになった。 親父から離れて一人暮らしとなる。いや、一人暮らしでは無いか。 横を見ると、親父がタバコに火をつけるところだった。 3.「なぁ。」 「ん?なんだ。」 「俺にも一本くれ。」 「構わんが・・・。身長伸びなくなるぞ。」 「別にこれ以上大きくなろうとは思わん。」 「お前には向上心てものがないのか。」 「使い方違うだろう・・・。170あれば充分だ。却ってでかすぎると面倒臭い。」 そういいつつタバコを取り出し火をつける。 窓から煙が抜け出す。車内にいるのを嫌がって、逃げていくようだ。 俺と一緒だな。 4.「康太。」 「なに?」 「今更だが、本当に良かったのか?」 「・・・。本当に今更だな。」 「まぁ、そうなんだが。なんというか、俺が無理矢理行かせることにしちまったみたいでな・・・。」 「何度も言ってるだろ。俺だってこっちの高校の方が良いんだよ。」 「なら、良いんだが・・・。」 俺はその話は終わりだと言う様にタバコをもみ消した。丁度信号で車が止まり、親父もそれに習う。 5.お前も、俺の通ってた高校に行かないか? そんなことを親父が突然言い出したのは去年の11月頃だったか。 聞くところによると、親父の旧友が今度海外に転勤になったそうな。 息子は日本に置いて行くつもりだが、一人にしておくのも不安だと、ルームシェアの相手を探していたらしい。 その話に乗ったのが親父だ。 そう、俺はこれから高校生活3年間、親父の旧友の息子と2人暮らしになるのだ。 6.名前は相原五月(さつき)。五月に生まれたからという、何のひねりもない名前だ。 小さいころは親父に連れられて相原さん家に行ったときはよく一緒に遊んだものだ。 確か、妹もいたような気がする。 最後に会ったのは小学3、4年の時か。 おとなしくて、室内遊びを好むやつだった。 逆に外で大暴れするのが日常だった俺とは180度性格が違うような気がしたが、不思議と馬が合った。 良くも知らないやつと二人暮らしはごめんだが、五月とならばまあ、いっか、ってところだ。 男二人なら気楽なもんだし。 7.「着いたぞ。」 「おっ、結構いいアパートじゃん。」 「まぁ、男二人住まいだからな。それなりに広いところを用意した。」 「そりゃどうも。早速中に入ろうぜ。」 「そうだな。とりあえず、持てるだけの荷物持て。」 「おう。宅配便は何時着くんだっけか?」 「明日には着くはずだ。」 そんな会話をしながら階段を上がっていく。 部屋は3階。階段の奥の少々死角になった場所にエレベーターもあるが使う必要はないな。 8.303号室。名札はまだ入っていない。 親父の言うとおりなかなかの広さだ。 二部屋。ダイニングキッチン。トイレ、バス別。 まだテレビや、冷蔵庫、レンジすらない状態だが、 明日荷物がくればそれらの問題もなし。 そして、なにより窓からは綺麗な海が見えた。 逃亡者の潜伏場所としては十分過ぎる 9.「五月・・・相原さん達も今日来るんだよな?」 「あぁ、そうだ。入学式まで一週間。丁度いいぐらいだろ?」 「まぁね。」 「五月君はタバコ嫌いだったっけか?」 「親父の煙から逃げてたような気はする。」 「なら、お前も吸うときは気を使えよ。」 「分かってるよ。部屋を黄色くするわけにもいかないし。」 そういいながらも遠慮無く二人してタバコに火をつける。 まだ、暫くは来ないだろう。二人して意味も無くそう考えていたが・・・。 10.ピンポーン! 「チャイム?相原の奴、もうきやがったのか。」 「そうみたいだな。」 ガチャッ。 ドアが開く。そこには俺の記憶と変わらない相原さんがいた。 11.「よっ、佐々木。久しぶり!」 「相原ぁ!元気だったか。」 「おうよ。お前も元気そうだな。」 「当たり前だ。それだけが取り柄だからな。」 「はっは。確かにな。あがるぞ。」 「おう。あれ?五月君は?」 「・・・。すぐに上がってくる。」 「そうか。」 「なぁ、相原。実はちょっと今回の件に問題が起きてな。」 「仕事の話か?」 「違う。・・・まぁ、康太君なら大丈夫だと俺は思っているんだが。 いかんせん理由が理由だからな・・・。」 「歯切れが悪いな?どうした?」 「実は・・・。」 そんな相原さんの言葉はドアが開く音と、明快な声に遮られる。 「あっ、康ちゃん!お久しぶり!」 12.うん・・・。なんだ、ちょっと待て。 俺を“康ちゃん”などと、可愛らしい呼び方をするのはこの人生で一人しか出会っていない。 でも、今俺を“康ちゃん”と呼んだのは明らかにそいつではない。 セミロングの黒髪にロングのスカートを来た美少女。 俺の人生でこんな子と出会ったことは断じてない。 「相は・・・ら?」 「佐々木、すまん。五月は、・・・女になっちまった。」 15、16まで童貞だった男は一部女になる。 どうやら、今、その不思議な現象を俺は目の当たりにしているようだ。 13.「康ちゃん久しぶりだね〜。康ちゃん全然変わってない♪」 「そりゃ、ね。・・・お前は随分大げさに変わったな・・・。」 「うん。どう?可愛くなったかな?」 「そういう話ではなくて、もっとちゃんと最初から説明しろ。」 「う〜ん。私的には、康ちゃんが男で嬉しいの半分、切ないの半分ってとこかな?」 「何を言っているんだ?」 「だって、康ちゃん、女にならない行為をしているってことでしょ?」 「・・・。まだ、16前だ。分からんだろ、そんなことは。」 不意に触れられたくないものに触れられ心に黒いものが広がる。 それを打ち消すように、そっぽを向いて、タバコに火をつけた。 奥の部屋では親父と相原さんがなにか話しているようだ。 14.確かに、五月は女々しい所が存分に有った。 それでも何処か強い意志を持ち、自分が決めたらガンとして譲らない、立派な男だった。 それが今や、どう見ても女にしか見えない。 聞いたところ、変わったのはつい一週間前の話だそうだ。 誕生日の2ヶ月前だったため、本人、家族含めて大いに驚いたとのこと。 女体化するとそれに伴い、精神的というか考え方も女性化するという話しは聞いたことがある。 事実、中学の早いうちに女体化した奴の中にはすでに彼氏がいる奴すら存在する。 だから、変わるのもそうおかしくは無いはずだが、たった一週間でこれっておかしくないか? 15.「康太。ちょっと来い。」 「何?」 「おまえさ、これ、どうする?」 「親父がうろたえるな。みっともない。」 「そうだが・・・。まぁ、可能性としては有り得たよな。考えて無かった。」 「奇遇だな。俺も全然考えてなかった。相原さんはなんて?」 「相原は、お前を信じていないわけではないが、やはり二人っきりにするのには抵抗があると。」 「そりゃ、そうだ。じゃ、どうする?どちらかが別に家探すか?」 「それが筋なんだろうが、今から探すのは厳しいだろう。」 「確かにね。」 「なにより、五月く・・・いや、五月ちゃんはお前と一緒に暮らすのを楽しみにしているそうだ。」 「ちょっと、待て・・・。それって・・・。」 「取り敢えず、予定通りに行く。学校には俺がなんとか説明しておく。」 「待て。俺の意見は?」 「ウチだって裕福じゃない。お前の言いたいことは十二分に分かるが。」 金の話しを出されるとつらいが、良いのか、これ? 16.何かあればすぐに連絡をよこせ。そう言葉を残し、親父と相原さんは帰っていった。 部屋には五月と俺だけが残されている。 楽しそうに鼻歌を唄いながら荷物を片付けている五月を横に取り敢えず、ベランダでタバコをふかす。 どうしろと、言うのよ、これ。 吐き出した紫煙はまるで俺の思考のようにまとわりついて離れない。 春の日差しは暖かく、風すら吹いていなかった。 17.学校の制服を取り出した五月はそれを持ったまま俺に近づいてくる。 「どう?康ちゃん。セーラー服だよ。」 「・・・そうだな。見れば解る。」 「そうじゃなくて。似合う?」 「辞めろ。こちらはまだ、色々と混乱してる。」 「う〜ん、当ててるだけじゃ解らないね?」 「そうじゃなくて・・・。」 ガサゴソ。 「何してる。」 「いや、着てみようと。」 「俺の目の前で脱ぐ気か?」 「いや〜。康ちゃん赤くなってる〜。今更そんなの気にする仲じゃないじゃない。」 「誤解を生むような発言は止めろ。わかった。タバコは終わりにするから。」 「ヘっヘ〜。さすが康ちゃん。判ってるう!」 携帯灰皿に放り込む。今度足つきの灰皿を買ってベランダにつけよう。 完全に室内で吸う事が出来なくなった俺はそう考えた。 18.学校が始まるまでの一週間は天国であり地獄であった。 完全に女性化したと思っていた五月だが、やはり、まだ男だった頃の名残が消えないようだ。 人が着替えていても平気で部屋に潜入してくる。 俺がわざわざノックしているのに着替え中でも平気で俺を招きいれようとする。 ひどい時にはドアを開けっ放しで着替え始める。 最初の2〜3日は一緒に風呂に入ろうと言い出す始末。 こちらが照れていると、『康ちゃん可愛い〜!!可愛すぎる!!』と抱きついてくる。 などなど・・・。挙げれば切りが無い。 確かに昔っからの付き合いとはいえ、 5年近く会っていなかったのだから、俺にとっては女にしか見えない。 そして、今日からの学生生活を考えるとまた気が重くなる。 ベランダでのタバコも増えた気がする。 今日も煙は俺からまとわりついて離れないのだった。 19.「康ちゃん〜。準備できた?もうそろそろ時間だよ〜。」 「とっくに出来てるよ。」 ガラッ 「お前も準備万端だな。」 「まぁね♪どう?セーラー似合うかな?」 「いいんじゃないの。」 「へっへ〜。ありがとう。康ちゃんもようやく素直になってきたね。」 「違うな。慣れただけだ。」 「ふ〜ん。つまんないの。学校どうかな〜?楽しみ!」 「そうだな。」 「一緒のクラスになれるといいね!」 そう笑う五月の顔をまともに見ることが出来ない。 親父以外で、俺に好意のこもった顔をくれる奴はここ3年ぐらいずっといなかったからだ。 どうしたの?と心配そうな五月に、何でもないと返すと二人で家を出る。 20.「そういやさっ、五月。」 「なに?」 「おまえん所、妹さんがいたよな。確か・・・淳ちゃん。」 「・・・うん。」 「元気にしてるか?」 学校へと行く道すがら。なんでこんなことを聞いてしまったのか。 いや、いつかは聞いていたことなのだが。何故このタイミングで聞いてしまったのか。 21.「淳はね・・・。」 「・・・どうした・・・?」 「淳、死んじゃった。」 五月はうつむくと小さく呟いた。 22.俺の記憶の淳ちゃんは明るく、優しい子だった。 確か、誕生日は五月の1週間後だったはず。まとめてお祝いされると、二人して文句を言ってたな。 俺らの2つ下。小学校時代の2つ差は大きい。 その為、そんなにいつもつるんでいた訳ではないが、たまに三人で遊んだものだ。 今思い返しても元気な笑顔が蘇る。 死んだ・・・? 23.「一年前の話。交通事故で。」 「そう・・・、だったのか・・・。」 「うん。いつまでも引きずるわけには行かないんだけどね・・・。」 「ごめん。」 「謝らないで。大丈夫だから。」 行こう?という声。つらそうな笑顔の五月に付いて初めて高校の門をくぐるのだった。 24.その日の五月はずっと落ち込んでいた。 俺が淳ちゃんのことを思い出させてしまったからであろう。 せっかくの入学式だというのに、五月の笑顔を校内で見ることはついに無かった。 五月の笑顔。それはこの一週間であっという間に俺の日常になっていたようだ。 あんなに楽しみにしてたのにな。友達とか出来るかな、五月。 幸運にも同じクラスになった五月の座った後ろ姿をずっと見つめていた。 25.そうか。解った気がする。 何故五月がああも、女の子になりきろうとしたか。 俺と一緒だったのだ。 26.大事なものを無くし。逃げ出したくって。 俺にとってはココに来たこと。 五月にとって女になったこと。 27.それでも一人になりたくなくって。誰かに必要とされたくて。 俺にとって、それが五月であったように。 五月にとってそれが俺で。 28.なんだかんだで、俺も五月も楽しく学生生活を送っている。 慣れない地方生活の俺。 慣れない女性生活の五月。 それでも友達は出来て。 笑顔も浮かべ。 それが例え偽りでも、いつか本物になるはずだから。 29.五月の誕生日を一週間後に控え、誕生日どうしようかなと放課後の教室で考える。 五月は今や俺の一部だ。あの笑顔は俺の一部だ。 まとまらない考えに、俺の身体はニコチンを欲し、学校を後にする。 30.ニコチン補給と、夕飯の食材補給のために一度家で着替え、近くのスーパーに繰り出す。 その前に駅前の喫煙所で一服。 夕陽は澄み切ってとても綺麗だった。 31.すいません。の声に振り返る。 黒髪ポニテの可愛いお姉さんがいた。 火、貸してもらえませんか? うなずいてライターを渡す。 ありがとう。と火をつけて旨そうに紫煙をくゆらす。 しばらく見とれていると、いつの間にかお姉さんの近くにひょろっとした男があらわれた。 先輩、タバコいつやめるんですか。 いや、これは・・・。ちょっと・・・あの・・・。シュウ!ちょっと待って! あきれ顔の男の後を追って、お姉さんは吸殻を灰皿に捨てて走っていった。 吸殻は灰皿から外れて地面に落ちる。 俺はそれを拾って灰皿に捨てる。 うらやましいなと、思い。 それを自分がまだ望んでいるのに驚き。 そして、その思いに五月がいるのにも驚いた。 32.いつものように階段を上がり、ドアを開ける。 お帰り〜。の声。 誰かがいる幸せ。 まだセーラー服の五月が部屋から出てくる。 荷物を抱えて部屋に上がろうとすると、 五月が手伝おうと近づいてくる。 ドサッ。 33.「いててて・・・。」 「何故、俺にタックルをかます?恨みでもあるのか?」 「足がもつれただけだよ。」 「いいからどけ。重い・・・。」 「シツレイな。よっと・・・。あっ!」 ドフッ! 「いててて・・・。」 「それはこっちの台詞・・・。」 言葉が止まる。五月の声が近くて、俺の声も近かったから。 34.夕陽を浴びた五月の顔は一面真っ赤だった。 俺の顔も真っ赤だろう。 それを夕陽のせいにするのは、少々卑怯だろうか。 ごめん。と退こうとする五月を引き寄せる。 かたわらで見れば影のシルエットが、英語の時間に習っただまし絵のようかもしれない。 35.「康ちゃん・・・。」 「嫌か?」 「えっと・・・。」 「横、向くな。」 「だって、恥ずかし・・・」 五月の言葉は俺の口によって途切れた 36.12時間ずれてなった目覚し時計により、俺と五月はそこまでで止まった。 ご飯作ろっ!と慌てた五月に、おうっ、旨いの作るぞ!と慌てた俺。 今日ばかりは、台所でタバコをふかす俺にお咎めは無しのようだ。 換気扇に消える紫煙を見つめた後、 もう太陽沈んでるよな?っと五月と自分が写る鏡に心の中で問い掛けてみた。 37.五月の誕生日。 五月より一足早く帰宅した俺は帰り道で購入したケーキとクラッカーを準備する。 金もないし、大したプレゼントも買えないけど、五月ならきっと喜んでくれるはずだ。 暫くしてドアの空く音。 それが五月であることを確認すると、クラッカーを鳴らす。 38.パ〜ン!! 「うわっ!」 「よっ。誕生日おめでとう。」 「びっくりした〜。康ちゃん、どうしたの?」 「だから、誕生日。」 「!ケーキまで用意してくれたの?」 「おう。」 「ありがとう!」 五月が俺に抱きついてくる。 39.ボフッと五月を抱きかかえる。 えへっ、と笑いこちらを見上げる五月。 優しい笑顔で五月を見る俺。 自然に顔が近づき・・・。そして・・・。 40.ぴたっと、五月の顔が止まる。 「どうした?」 何も言わない五月。 「えっと、ごめん。嫌だったか?」 五月の両目からは、つっと涙が流れていた。 「・・・どうし・・・た?」 ドンっと俺を突き飛ばすと、五月はドアを開け、外へと飛び出していった。 41.あまりの事態に驚き、取り敢えず、五月を追い、外へ出た。 五月はすでにいなかった。 一通り、近所も探したが、見つけることは出来ず。 もしかすると、もう帰っているかもと、願いをかけて家にもどる。 しかし、出迎えてくれたのは五月ではなくて、電話のベルだった。 42.「もしもし・・・。」 「やぁ、康太君か?」 「相原さん!・・・お久しぶりです。」 「五月はいるか?誕生日のお祝い。電話ぐらいしか出来ないからな。」 「えっと・・・すみません。今ちょっと出かけてて。」 「そうか・・・。それは残念だ。仕方ない、また夜にでもかけ直すよ。」 そういう相原さんに、待ってください!と続ける。 いい機会だ。ヒントを少しでも集めておきたかった。 43.「どうした?」 「・・・五月から聞きました。」 「ん?何をだい?」 「淳ちゃんのこと・・・。」 「そうか・・・。」 「はい。なんと言っていいか・・・。」 「・・・辛いことだったよ。俺にも、家内にも、五月にも、そして淳にも。」 暫く、相原さんと淳ちゃんの思い出を語る。 44.「五月はね、康太君には自分が言うからって言ってな。黙っていてすまなかった。」 「そうなんですか・・・。」 「あぁ。五月と淳は仲良かったからな。五月は淳のことを何でも知っていた。」 「確かに、仲の良い兄妹でした。」 「・・・。俺が言うことではないかもしれないが、淳のために言っても良いかい?」 「何をですか?」 「淳はな、康太君のことが好きだったんだ。」 45.あぁ、そうか。なんとなく解った。 本当に仲の良い兄妹だったもんな。 お互いの幸せの為なら、お互いを犠牲にしてしまいそうな。 なにも起こらない、平凡な人生ならそれは大した形を持たないだろうが。 五月はそれを形にしてしまったのか? どうやって、相原さんの電話を切ったかは覚えていない。 ベランダでタバコふかしているウチに五月は帰ってきたようだ。 それを確認する気は無い。 連休中に五月と買いに行った足つき灰皿を汚すのが嫌で、 親父からもらった携帯灰皿に入れた吸殻はもう満タンで、今にもこぼれ落ちそうだった。 トイレに行くために通ったダイニングには、食べたあとも無いのにケーキが無くなっていた。 46.入学式前の一週間とは、まるで質の違う一週間が過ぎていく。 いつの間にかエレベーターを使って3階までを往復する俺。 また、何か大切なものを失くしてしまったようで。 次はどこへ逃げればいいのだろうか。 五月のことを勝手に解った気になった自分に呆れる。 もう何本目になるかわからないタバコに火をつけた所でベランダの窓をノックする音が聞こえる。 47.「康ちゃん・・・。」 あぁ、五月の声をちゃんと聞くのはいつ以来だろうか。 「ちょっといいかな?」 いや、五月は“声”は出してたか。俺が認識していなかっただけだ。 「今日、放課後、ちょっと付き合ってくれる?」 どこに?なんで?今更俺と?聞きたいことはたくさんあった。 それでも、それが嬉しくって、俺の口からはにごった煙と肯定の言葉がもれていた。 48.2週間前と同じく今日も夕陽は綺麗だった。 俺の心とは違うな、と思いつつ、 五月が向かっていく場所に検討がついた時から夕陽が綺麗なのも当然だと思い始めた。 彼女のそばに行くのに、曇り空は似合わないから。 いつの間にか、俺と五月の目の前には“相原”と書かれた無機質な石が存在していた。 49.「お誕生日おめでとう。」 淳ちゃんにケーキを差し出す五月。それは俺がお前にあげたケーキだよ、五月。 「今日は康ちゃんと一緒に来たよ。」 淳ちゃん、お前の兄貴は大バカヤロウだよ。 「康ちゃんのおかげで、今年は一緒にお祝いできたね。」 君のことしか考えていないから。 「でもね、淳。ゴメンネ。お兄ちゃん、もう我慢できない。」 何をだよ。何を我慢しているんだよ。 50.五月は淳ちゃんから振り返り、俺の顔をじっと見る。 あぁ、五月がいる。俺が好きになった二人目の女の子。 そして、今は一番好きな女の子。 夕陽を逆光にした五月の顔は何か決意に満ちたものだった。 51.「康ちゃん、ごめんなさい。」 なにを謝るの? 「私の勝手に康ちゃんを振り回して。」 やめてくれ。 「お父さんに聞いたでしょ?淳、康ちゃんのことが大好きだったんだ。」 言葉にしないでくれ。 「淳が死んだって聞いて暫くなんにも出来なかった。」 ヤメロ。 「私は淳のためになにか出来たかな?って、ずっと考えてた。」 行かないでくれ。 「でね、思いついたんだよ。淳のために出来ること。」 五月。 「私ね、彼女いなかった。淳のこと大好きだったし。」 俺の心からいなくならないでくれ。 「だから、都合が良かった。」 耐え切れず、タバコに火をつける。 「入学前に女体化したのも好都合だったよ。」 俺は動けないのに、風に吹かれ、紫煙は逃げ出す。 「康ちゃんがね、誰か他の人のものにならないようにしようって。」 聞きたくないよ、五月。 康ちゃんがね、女になることは無いって言うのはうすうす気づいてた。」 俺の過去もえぐるのかい? 「最初はね、上手くいってて、それがすごい嬉しかった。」 。 「康ちゃんが、私に惹かれてくれて。私を大事にしてくれて。」 。 「すごい、嬉しかった。」 もう、いいよ・・・。灰を落とすのを忘れたタバコはいつの間にか根元まで燃え尽きていた。 52.「でもね。私の誕生日の一週間前。私、ちょっと気付いっちゃった。でね、それを必死に否定した。」 「いつの間にかね、嬉しい理由が変わってたの。」 「康ちゃんが私を大切にしてくれる。いつの間にかね、それが嬉しくなってた。」 五月の誕生日に見た涙。それと同じものが五月の両目に浮かんでいる。 53.「誕生日の日、康ちゃんが“私”のために準備してくれて。」 「“私”のことを見てくれて。」 「なんで、私は“私”として康ちゃんを見れないんだろうって。」 五月は淳ちゃんのほうへ振り返る。 「ゴメンネ。駄目なお兄ちゃんで。五月の願い一つ叶えられなかった。」 「しかも、それを奪うのが“私”かもしれない。」 気付くと俺は五月を後ろから抱きしめていた。 54.泣きながら五月が続ける。 「康ちゃん。大好きです。」 「俺もだ。」 「ちゃんと、言葉にして。」 「五月、俺もおまえが大好きだ。」 もう口にすることはないと思っていた言葉。 気付けば俺はそれをとどめていくことが出来なかった。 いまだ、嗚咽を続ける五月の口を優しくふさいでやった。 55.ライター貸してという、五月から逆に線香を奪うと火をつける。 五月にも火をつけたことなんて無かったから、これは淳ちゃんに対してだけの特別な行為だ。 五月はずっと淳ちゃんに謝っていた。 でも、そんなことを気にする必要は無いと思う。 淳ちゃんは優しい子だったから。 淳ちゃんの願いはきっと、五月と俺が幸せになること。 それは、淳ちゃんのおかげで叶ったんだと思う。 帰り道、右手に感じる五月のやわらかい左手の感触が、なんだかすごく照れくさくって、 五月の言葉に「それは夕陽のせいさ。」と答えていた。 おしまい。
https://w.atwiki.jp/yuiazu/pages/413.html
「唯先輩の部活での写真が欲しい・・・?」 それは蒸し暑い七月初めのことだった。放課後、下敷きをうちわ代わりにして パタパタ忙しなく顔を仰いでいた私にクラスメイト数人が暑苦しい勢いで詰め寄る。。 モブA「お願い!唯先輩と梓ちゃんっていつも仲良いじゃん!」 モブB「写真の十枚や二十枚撮るの簡単でしょ?」 モブC「報酬はタイヤキ五つでどう?」 つまり彼女らは熱狂的な唯先輩の大ファンだということらしい。 秋山澪ファンクラブほどの大所帯ではないため、あえて組織化させず 少数精鋭が水面下で唯先輩を追っているというのだ。 モブA「あの天然で明るくてポワっとしてる所がたまんない!」ハアハア モブB「年上なのに母性本能ガンガン刺激されるんだよねー!」ハアハア モブC「私なんて廊下でぶつかったふりして頭なでちゃった!」ハアハア 私は何故か彼女達が夢中で唯先輩の話をしているのを聞いていると こめかみがピクピクと脈打ち、顔が引きつるのを感じた。 モブA「それじゃデジカメ渡すから好きなだけ撮ってきて!」 モブB「できれば少しくらい露出多い写真も欲しいかも」ハアハア モブC「梓ちゃんなら、きっと大丈夫だよね!」ハアハア 彼女達は半ば強引にデジカメを私の両手に押しつけると 返事も聞かずにキャーキャー言いながら自分達の席に戻っていった。 純「・・・梓ァ、大丈夫?」 自分の席からずっと、こちらの様子を窺っていた純が心配そうに 私の顔を覗き込んでくる。 あのクラスメイト達はクラスでも特に大人っぽいグループで 実質このクラスで一番目立っているグループだった。 秋山澪ファンクラブ会員のような大人しめな妹タイプとは違って メイクばっちりのお姉さんタイプ。どう見ても唯先輩より年下には見えない。 きっと、ああいう子達だからこそ唯先輩のようなタイプに弱いのだろう。 梓「・・・写真を撮るくらい平気だよ。」 別にタイヤキに釣られたわけではない。彼女達の熱気に押されてしまったのと やはりクラスを仕切るグループの頼みは断り辛いというのも多少あった。 私は先ほどから喉に何か詰まっているような不快感と、胸の中のモヤモヤを 暑さのせいだと思うことにして、なんとなく重い足取りで唯先輩達の待つ 部室へと向かった。 唯「よさこい!」 私が気まずそうに事情を説明すると唯先輩は、いつも通り屈託のない笑顔で 勝手にいろいろなポーズを取り始めた。 梓「い、いいんですか?写真いろいろ撮らせてもらって・・・」 唯「あずにゃんのお願いなら全然オッケーだよ~」 そう言いながら唯先輩は、いつも通り私に抱きついてくる。 唯「あ~つ~い~。でも、か~わ~い~い~!」 少し汗ばんだ唯先輩に頬擦りされて、私の胸はタイムリミット寸前の 爆弾みたいにと高鳴る。きっとこれも暑さのせいだ。 しばらく口から涎が垂れそうなほどの思考停止状態になってしまったが 周りでニヤニヤしている律先輩やムギ先輩の視線に気付いて、慌てて唯先輩を 突き飛ばすようにして離れた。 唯「あう・・・」 律「おいおい梓~それが頼み事した人に対する態度か~?」 紬「あらあらまあまあ」 まだニヤニヤしながら律先輩がイジワルな事を言ってくる。 私は最後の砦である澪先輩に助けを求める視線を送ったが 澪先輩は今手がけているサマーソングの作詞に頭をひねらせており こちらの騒ぎに全く気付いていなかった。 唯先輩撮影会は当初のゴタゴタが嘘のように順調に進んだ。 笑顔でギターを弾きながら歌う唯先輩。 みんなと談笑しながらケーキを頬張る唯先輩。 様々な唯先輩の姿をデジカメに納めていくうちに私のテンションは どんどん上がっていく。もっと可愛い唯先輩の姿が見たいと躍起になる。 なんだろうコレ。コレも、きっと夏のせいだ。 「それじゃ次は少しセクシーなのも撮ってやるです!」 いつもなら絶対に言えないようなセリフも勢いでポンと出てしまう。 だがその瞬間、予想していた唯先輩の軽い反応とは違うリアクションが 返ってきた。 唯「・・・え?せくしーって・・・ど、どんなのかなァ?」 梓「え、あ、あの唯先輩・・・」 律「いつも唯とか紬がやってるスク水とかのコスプレだろ?」 頭に冷水を浴びせられたような衝撃ですぐに我に返った私がフォローしようと したのを律先輩の呑気な声が遮る。 律「いつもみたいにチャチャっとやってやればいいんじゃないか?」 紬「梓ちゃん友達に頼まれちゃったんでしょ?」 唯「あ、でも写真ってあずにゃんの友達に渡すんだよね・・・?」 律「そうだぞー?それがどうかしたか?」 紬「梓ちゃん友達に頼まれちゃったんだものね♪」 律先輩とムギ先輩は唯先輩の微妙な変化に気付かないのだろうか? 私には分かる。いつも唯先輩に抱きつかれて一番近くで唯先輩の鼓動を 体温を感じている私には唯先輩が今明らかに恥ずかしがっていることが 手に取るように分かる。 唯「だ、だよね!あずにゃんが友達に嫌われちゃったら大変だもんね」 唯「そ、それじゃ着替えてくるからチョット待っててね?」 そう言うと唯先輩は、さわ子s衣装シリーズからスクール水着を取り出すと トボトボとトイレに歩いていってしまった。 ほどなくして唯先輩の撮影会セクシー編が始まった。 恥ずかしがる唯先輩の水着姿にカメラを向けた瞬間、痺れのような不思議な 感覚が私の全身を駆け抜ける。 さっきまでの申し訳ないと思っていた気持ちは完全に消え失せて 私は無我夢中で何度も何度も執拗に水着姿の唯先輩にカメラを向けた。 自分でも異常なまで鼻息が荒くなっているのが分かる。 なぜだろう。きっと七月のせいだ。 その時、ふとカメラから外した私の目と唯先輩の目が合った。 唯先輩の目は羞恥のためか赤く潤んでる。 頭の中に今まですっかり忘れていたどうしようもない事実が浮かぶ。 この唯先輩は・・水着姿で目を赤らめている唯先輩の写真は・・・ わ・た・し・以・外・の人・間・の・手・に・渡・る・ん・だ。 彼女達は、この唯先輩の写真をどうするのだろう。 興奮するのだろうか。私の唯先輩が水着姿で恥ずかしがっている写真で。 ナニをするのだろうか。私の唯先輩で。私の唯先輩で。私の唯先輩で・・・ 「そんなのダメダメですーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」 ドッカーン。私の頭で何かが大爆発した。 「ど、どうしたの!?あずにゃん!?」 慌てて駆け寄ってくる唯先輩に私は脱ぎちらかされていた服を投げつける。 「さっさと服を着るです!はしたないです!」 「な、なに言ってんだ!?唯は梓のために・・・」 「うっさいです!律先輩も今の唯先輩の姿は全部忘れるです!」 「む、無茶いうなーーーーーーーーっ」 「あらあら♪まあまあ♪」 「他人事じゃないです!ムギ先輩も忘れるです!」 「い♪や♪恥ずかしがる唯ちゃん良かったわ~」ハアハア 「ダメーーーーー!忘れるったら忘れるですーーー!」 ワーーー!ドッタンバッタンリッチャンムッギュン!ヤッテヤルデスーーー! 唯「・・・ふぇ?」 (今日、私が唯先輩に感じた熱い気持ちは何だったんだろう) (きっと全部、夏のせいです!) 澪「・・・で、できた!け、傑作だぞコレは!」 澪「・・・ん?あいつら、なに騒いでるんだ?」 澪「ま、いっか。それにしても我ながら良い詩だな!」 澪「なんか曲のインスピレーションまで沸いてきたぞ!」 ♪この胸の高鳴りは なんなんだろう ♪この頬の熱さは なんなんだろう ♪あなたの言いたいことは わかってる ♪だけど これは きっと恋じゃない ♪だって恋には熱すぎる 私の恋は宇治金時 ♪きっと それは夏のせい 永遠の夏が見せた幻ね ~~えんど!~~ …………宇治金時? -- (佐藤) 2010-06-16 00 58 02 宇治金も良いが夏はやっぱり白熊 -- (名無しさん) 2010-06-16 08 16 09 アイスいいねアイス -- (名無しさん) 2010-06-22 22 10 55 あずにゃんかわいい -- (名無しさん) 2010-06-23 16 30 13 渋い恋いだな -- (名無しさん) 2010-08-05 00 54 41 モブの気持ちすごくわかるわ -- (名無し) 2012-09-23 11 31 26 宇治金時w -- (名無しさん) 2013-10-29 00 54 49 名前 感想/コメント: すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/1000ed/pages/116.html
1 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 23 21 37 ID ??? ・リレー形式で話を作れ。 ・話の最後には選択肢をつけること。 ・次に進める人は選択肢を選んだ後それにあった話を作り、1000スレ目でED。 ・誰とくっつけさせようが話を作る人の自由 ・途中にキャラ追加、話まとめなどO.K. 初期キャラ設定 大堂愛菜:高校二年の主人公 大堂春樹:主人公の義理の弟(高1) 主人公よりしっかりものなので兄にみられがち OP 部屋のカーテンが開けられる。 光が差し込みたまらず私は布団をかぶった。 春樹「朝だ。いいかげん起きてくれ、姉さん。」 ①春樹に抵抗する ②無視 ③起きる 2 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/18(土) 23 34 55 ID ??? ちょwさすがに1000スレは多いww とりあえずつ③起きる 春樹「今日は学校に早く行かなきゃならないって言ってただろ?」 愛菜「!そうだった!今日は…」 ①一時間目から数学のテスト! ②委員会の集まりがあったんだ ③転校生が来るんだっけ… こんな感じ? 3 名前:1[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 00 02 18 ID ??? そんな感じ。 ②を選ぶ 愛菜「バカ、春樹のバカ!!早く起こしてっていったでしょ。」 春樹「起こしたよ!!姉さんが起きなかっただけだろ。」 愛菜「私も、バカだ~。着替えるからでてけ~。」 愛菜はすばやく着替えると朝食も食べないまま学校目掛けて駆け出していく。 春樹もそれに続いていく。 春樹のため息が聞こえた気がしたが反応している暇はなかった。 それだけ遅刻すると委員長が怖いのだ。 ①近道する ②通学路をいつも通り行く ③春樹に先行ってもらって事情を話してもらう 4 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 04 27 10 ID ??? ①近道をする 時計を見ると委員会まで後10分…。 愛菜「えっ?!普通に行ってたらもう間に合わないじゃない! …今日くらい仕方ないわよね?」 校則で通学路以外の道は禁止されているのだが、時間がない。 愛菜は仕方なく普段は使わない近道の路地を行く事にした。 愛菜「きゃっ!!」 時計で時間を確認しつつ路地を暫く走っていると、何者かにぶつかり転んでしまった。 愛菜「いったぁ……」 ?「‥大丈夫か?」 涙目になりつつも何とか立ち上がろうとした愛菜に手を差し出したのは…。 ①委員長 ②幼馴染み ③見知らぬ男の子 5 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 08 48 21 ID ??? →幼馴染み 手を差し伸べた相手は幼馴染の隆だった 「だ、大丈夫!ごめんねっ!」 愛菜は彼に謝ると、慌ててその場から走り出した。 例の一件以来、隆とは気まずく顔もまともに見れない状態だったのだ。 例の件というのは… 1.愛菜は思い切って隆に告白したが振られてしまった 2.隆から告白されたものの、どうすればいいか分からず避け続けている 3.隆が女教師とキスしているのを偶然見てしまった 6 名前:1[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 10 05 13 ID ??? 2 スマソ、正しくは1000レス目でED 今出ているキャラ 大堂愛菜:高校二年の主人公 大堂春樹:主人公の義理の弟(高1) 主人公よりしっかりものなので兄にみられがち 隆:主人公の幼馴染(性格?) 委員長:??? 今までのあらすじ 朝寝坊して委員会に遅刻しそうな愛菜は近道するも、 幼馴染の隆とぶつかる。 隆とはある一件以来すれちがっていた。 5の続きを書くべし。 みたいに話の整理をつけるも良し。 では、続きをドゾー。 7 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 13 51 08 ID ??? 3,隆が女教師とキスしているのを偶然見てしまった。 「ごめん、隆…」 愛菜とてこの状況がよいものだとは思っていない。 しかし彼を見ると、数日前の偶然入った音楽室での光景が蘇ってくるのだ。 若くてそのわりに妖艶な雰囲気を持つあの音楽教師との濃厚な… 生々しい男女の関係にショックを受けたのか それとも仲の良かった幼なじみが遠くに行ってしまうことが寂しいのか。 愛菜の気持ちも未だ整理がつかない。 「おっはよ、愛菜」 「香織ちゃん…おはよ」 クラスメートで親友の長谷川香織が声をかけてくる。 「あんたまだ隆と気まずい感じなの?」 「うっ、うん…」 「あんたたち仲が良すぎたのよ。ここでこの香織様が彼氏を紹介してあげようか?」 1、テニス部のエース 2、バンドのボーカリスト 3、漫研のコスプレ美少年 8 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 17 11 58 ID ??? 1、テニス部のエース 香織の言葉で頭に浮かんだのは、テニス部のエース宗像修二。 宗像はテニスの実力は確かだったが、それを鼻にかけて 他人を見下し、平気で何人もの女の子と同時に付き合うような いわば絵に描いたような女の敵。愛菜のもっとも嫌いなタイプだった。 (なんであんなヤツのことなんて…!) 思いがけず頭に浮かんだ相手に動揺する愛菜。 でもそれには理由があった ・宗像の双子の兄、一郎が気になってる ・認めたくないけど宗像が気になる 9 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 17 41 16 ID ??? ・宗像の双子の兄、一郎が気になってる 修二の兄の一郎は委員会の委員長で、 同じ顔をしていても宗像とは違って誠実で優しい人だった。 愛菜は入学当時からの憧れで同じ委員会に入れたことがなにより嬉しかった。 「怒ると怖いけどね。」 「なにが怖いの。」 香織に突っ込まれて現実に戻り頭に浮かんだ人物を振り払う。 「宗像君、人気あるし紹介しようか。」 「冗談でしょ。一郎君とは似ても似つかないのに!! 」 「あぁ、委員長のこと考えてたんだ。」 自分から漏らしてしまい、愛菜の顔が朱に染まる。 「ち、違うよ。た、ただ今日遅刻して怒られたから反省してただけだもん。」 「あいなちゃ~ん。」 「大堂。」 声を掛けられて振り向くとちょうど話にでてきた二人が声をかけてきた。 「大堂、放課後委員会に来てくれ。朝片付けられなかった仕事を手伝って欲しい。」 「今日、俺の試合応援しに来て欲しいな。愛菜ちゃんに応援してくれたら頑張れるから。」 同じ顔が二人見合わせてにらみあって一触即発。 「兄貴一人でできるでしょ。頭がいいんだから。」 「本当に自分勝手な奴だな。」 二人の間に香織が入って止めるとチャイムがなった。 二人は愛菜の返事も聞けずにそれぞれのクラスに戻っていった。 -放課後- 「姉さん、今日は買い物手伝ってくれる。」 「春樹!えっと……。」 1.委員会に出席する 2.気が進まないが応援に行く 3. 春樹の買い物に付き合う 10 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/19(日) 23 34 25 ID ??? 1.委員会に出席する 「ごめんね春樹、今日は委員会に出なきゃならないの」 「そっか…うん、まあしょうがないよな。じゃあ俺先に帰ってるから」 春樹は少し寂しそうな顔をして去ってしまった。 「すまないな、わざわざ放課後までつき合わせて」 「ううん、これも仕事だし」 ところで、二人の所属している委員会とは… ①風紀委員 ②放送委員 ③実は生徒会執行部 11 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/20(月) 00 38 32 ID ??? ②放送委員 レコーディングスタジオ並みの機材が揃った部室に夕焼けの赤い光が射し込んでくる。 ようやく仕事を終えた二人はやっと向かい合うことが出来た。 「これで学園祭の打ち合わせは完璧だな」 「ええ…お疲れさま」 いくら祭りと名付けられた行事とはいえ、当日の放送委員会の仕事は山のようにある。 念入りに繰り返された打ち合わせもとりあえずの形にはなったようだ。 二人は他の委員に手渡す資料を整えながら帰宅の準備を始める。 そのとき突然放送室の扉が開かれて、誰かが顔を覗かせる。 その人は放送委員会の顧問を務める… 1、気さくで優しい宮本先生(男) 2、厳格だが生徒想いの近藤先生(男) 3、隆とキスをしていた音楽の女教師 12 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/20(月) 22 49 36 ID ??? 3、隆とキスをしていた音楽の女教師 扉から顔を出したのは、放送委員会の顧問を務める音楽教師、水野だった。 水野は帰宅の準備をしている二人を見て、にっこりと微笑む。 「もう仕事は終わったみたいね? ご苦労さま。残すはリハーサルと本番のみね」 「委員への資料の配布もまだ残ってはいますけどね」 書類を整え終わった一郎の律儀な答えに、水野は大袈裟に肩を竦めて笑ってみせる。 それから「ほらほら」と手をひらめかせるようにして二人を追いたてた。 「早く帰る用意済ませちゃいなさい。最終下校時刻が迫ってるんだから……ってアラ」 何かに気付いたように水野は言葉を止め、俯き気味だった愛菜の顔をひょいっと覗き込んだ。 「どうしたの、大堂さん。なんだかしんどそうよ。気分でも悪い?」 愛菜の脳裏を数日前に目撃した、あの映像が掠めていく。愛菜は… 1.「気のせいですよ」と笑ってごまかす。 2.「気のせいですよ」とつっけんどんに答える。 3.「ちょっとお腹が…」とこの場から逃げようとする。 13 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/21(火) 17 40 10 ID ??? 3.「ちょっとお腹が…」とこの場から逃げようとする。 「あら大変…保健室、一人で行ける?」 「あ、すぐ帰りますんで、心配しないでください。 それじゃあ一郎君、また次の委員会で」 「あぁ、無理するなよ」 愛菜はそそくさと放送室を抜け出した。 (やっぱり、気まずいよね…) ため息をつく愛菜。 その時、衝撃的な言葉が愛菜の耳に飛び込んできた ①水野「やっと二人きりになれたわね、一郎君」 ②宗像「で?先生、口止め料は持ってきたんでしょうね?隆君とのキスの…」 14 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/21(火) 23 29 39 ID ??? 数秒待つと出現する選択肢・3 水野「ちゃんと隆君の事、捕まえておいているんでしょうね?」 「え・・・?」 ひどく衝撃的な言葉が愛菜の耳に飛び込んできた。 「あら、そんなに私って信用無いの?…それとも魅力が無いのかしら?」 先ほどの、愛菜の体調を気遣う教師らしい優しげな声とは少し違う 艶めいたニュアンスの水野先生の声が聞こえる。 どくん…どくん… この二人は何を話しているのだろう… (一郎君が…先生と隆君の事を知っている…?) それどころか一郎が水野先生をけしかけているようにも取れる。 どくん… どくん… (なんだか、これ以上…聞くのは怖い…) 愛菜は震える足を動かしてその場から離れた。 鼓動の音だけが耳に響くような感覚。周りの音が聞こえない。 愛菜の足取りははだんだん早足になり、気付いた時には駆けていた。 ただひたすら、何も目に入らずに。 廊下の曲がり角に差し掛かったとき…誰かと衝突した。 衝突した相手は… 1、隆君 2、宗像修二 3、厳格だが生徒想いの近藤先生(男) 数秒待ち出現選択肢、ありですか? 無しでしたら華麗にスルーで次の人ヨロ。 15 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/21(火) 23 31 55 ID ??? あ、出現選択肢、水野じゃなくて宗像です。スマソ。 16 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/22(水) 00 27 48 ID ??? 面白ければ何でもいい希ガス。ダメなら 1対応してくれ。 3、厳格だが生徒想いの近藤先生(男) 「うわっ、」 ぶつかった勢いのまま廊下に倒れこんだ愛菜は、聞こえてきた声に驚いて顔を上げる。 落とした眼鏡をかけ直しているのは、直接授業を受けたことはないが校内一厳しいと評判の教師だった。 (どうしよう…お、怒られる…) 「あ、あのっ!すみません、私の不注意でした!」 先手必勝とばかりに勢いよく頭を下げると、ぽんと大きな掌が頭を撫でた。 (…え?) 「怪我はないか?…今度から気をつけるように」 「あ…はい、すみませんでした」 前評判から、当然頭ごなしに怒られるものだと思っていた。 しかし怒られもせず、逆に心配までされてしまった。 愛菜は意外な心境で、ぼんやりと去っていく背中を見つめた。 折りよくそこに、最終下校を告げるチャイムが流れる。 愛菜は… 1 真っ直ぐ帰宅する 2 その場でぼんやりする 3 …やっぱり放送室に戻る 17 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/22(水) 01 19 09 ID ??? 1 真っ直ぐ帰宅する 「よお、お帰り」 自宅には買い物を済ませた春樹が戻っていた。 両親は仕事が忙しいらしく、今日は奴が夕食を作ってくれていたらしい。 「オムライス。好きだろ」 「あっ…ありがと…」 脳内も心の中もぐしゃぐしゃな愛菜にとって、弟の優しさが胸に染みる。 そのせいか、急に春樹に対して甘えたいような気持ちになってきた。 「ねえ、春樹」 「ん?」 「男の人ってさ、やっぱり女教師みたいな大人の女に惹かれるものなのかな」 1、「…なにかあったのか?」 2、「おいおい、高校生と教師じゃ犯罪じゃん。危ないことには首はつっこまねーよ。」 3、「まーな。俺の初恋は幼稚園の先生だったし。」 18 名前:1[sage] 投稿日:2006/02/22(水) 09 42 22 ID ??? 14 別にかまわないが、 他の人も選択肢選んで欲しくて書いてるだろうから できるだけ選んでくれまいか。 今出ているキャラ 大堂愛菜:高校二年の主人公 大堂春樹:主人公の義理の弟(高1) 主人公よりしっかりものなので兄にみられがち 隆:主人公の幼馴染(性格?) 宗像一郎:放送委員の委員長。 誠実で優しい優等生だが、裏あり? 宗像修二:一郎の双子の弟でテニス部エース 他人を見下しているところがあり、不誠実 近藤先生:厳格だが生徒思いの男性教師 水野先生:隆とキスしていた音楽教師、 一郎と裏で繋がっているかも 長谷川香織:愛菜の親友 今までのあらすじ 隆と水野のキスを見て以来隆と疎遠になっている愛菜。 憧れの一郎と二人で委員会の仕事をしていると水野が入ってくる。 水野から遠ざかるように部屋を出て行った後の二人の会話に衝撃を受ける。 一郎は隆と水野の関係に何か関わりがあるらしい。 重い気持ちのまま帰宅すると春樹の何気ない優しさに癒される自分がいた。 愛菜の質問に春樹はなんと答えるのか……。 17の選択肢を選んで続きを書くべし。 というわけで次の人ドゾー 19 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/22(水) 13 18 40 ID ??? 1、「…なにかあったのか?」 春樹は心配そうに私の顔を覗き込む。 その目はどことなく、父に似ていた。 血はつながってないのに、不思議だなと思う。 夫婦はだんだん似てくるというけれど、春樹の場合もそうなのだろうか。 「別に何があったってわけじゃないんだけど…。 そういえば春樹ってモテるのにその手の話全然しないね。好きな子とかいないの?」 さっと春樹の表情が変わる。どうしたんだろう? 1)気になるので追求する 2)興味ないし、放っておく 3)からかってみる 20 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/23(木) 19 05 12 ID ??? 3)からかってみる 「もしかして、今まで好きになった子いないとか。 まだ春樹には早いのかな」 ムッとした表情になった春樹を見て、 思わず笑ってしまう。 「…ちょっと酷いよ。だって俺は…」 真剣な表情の春樹に戸惑っていると チャーラーラーチャラーラーラー 私の携帯がなった。 電話の相手は 1)隆 2)宗像一朗 3)長谷川香織 21 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/23(木) 19 08 58 ID ??? スマソ名前間違った ×一朗 ○一郎 22 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/23(木) 21 19 47 ID ??? 1)隆 隆からの電話…無視しようかとも思ったが いつまでも避け続けるわけにいかない。 愛菜は思い切って出ることにした。 「もしもし…」 「俺だけど」 「うん」 「……なあ、お前最近俺のこと避けてない?」 いきなりの問いかけにドキッとする 1.隆の気のせいだよ 2.……… 3.私、見ちゃったんだ 23 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/23(木) 22 07 49 ID ??? 3.私、見ちゃったんだ 思わず声が震えてしまった。言ってしまって良かったのかと今更 ながらに後悔する。でも、このまま隆を避け続けていくのも私の精神上 良ろしくない。気まずいのは、嫌だから。 携帯越しに、隆の息を飲む音が聞こえた気がした。 「……は?見たって、何を?」 何をって…これはとぼけているのだろうか。努めて明るい声で隆は 聞き返してきた。 もしかしたら隆は追求してほしくないのかもしれない。どうしようか… 1.更に追求する(先生と隆が…キスしてるとこ、とハッキリ言う) 2.話を逸らす(いや、隆がこないだ肥だめに落ちたところ見ちゃってさ) 3.言葉につまり泣き出す 24 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/23(木) 22 31 48 ID ??? 1.更に追求する(先生と隆が…キスしてるとこ、とハッキリ言う) 「ごめん、覗くつもりはなかったんだけど…音楽室にたまたま入った時に、ね…」 「…そうか」 しばしの沈黙。 「そ、そういうことだから…それじゃ、また…」 「待て!切るな!」 重い雰囲気に耐え切れなくなった愛菜が電話を切ろうとした瞬間、隆が叫んだ。 「その事実を否定するつもりはない…でも、あれには理由があるんだ! 今まで誰にも言えなかったけど、お前には知っていて欲しい… なぁ、今からちょっと会えないか?話がしたいんだ…頼む」 「え…」 ①「…わかった。近くのファミレスでいいよね?」 ②「そんなの、聞きたくないよ…ごめん」 ③「…もしかしてそれって、一郎君と何か関係があるの?」 25 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/23(木) 23 53 24 ID ??? ③「…もしかしてそれって、一郎君と何か関係があるの?」 電話の向こうから、隆が息を飲む気配が伝わってきた。 「……一郎? 一郎って、あの宗像一郎か?」 「え、うん。そうだけど…?」 妙に真剣な隆の声に戸惑いつつもそう言葉を返すが、 電話越しに聞こえてくるのは考え込むような沈黙のみ。 どういうことだろう。隆の口調から察する限りでは、 彼は一郎の名前が出てきたことに驚いているようだが…。 困惑しながら泳がせた視線の先で、心配そうにこちらを窺っている春樹の姿が見えた。 ねぇ、と愛菜は電話口に声をかける。 「知っていて欲しいことがあるんでしょ? なら直接会って話そうよ。 私もそこで一郎くんのこと、話すから」 待ち合わせを近くのファミレスに決め、愛菜は電話を切った。 さあ、これから… 1.すぐにファミレスに行こう。 2.春樹が心配そうな顔をしている。隆に会うだけだから、と説明しなくちゃ。 3.少し近所を歩いて頭を冷やしてから、ファミレスに行こう。 26 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/24(金) 01 29 20 ID ??? 2.春樹が心配そうな顔をしている。隆に会うだけだから、と説明しなくちゃ。 「隆と話があるから行ってくるね。」 「でも姉さん…話、少し聞こえてたけど大丈夫なのか?」 「大丈夫よ。心配ないって。」 春樹に心配かけたくないという思いで、笑顔で大丈夫という愛菜。 内心は、隆にどんな話をされるかとビクビクしているが、そんな表情をおくびにもださなかった。 春樹はまだ何か言いたそうだったが、愛菜はそれを振り切って家をでた。 ファミレスへと向かう道を急いで歩いていると、公園が見えてきた。 あの公園の角を曲がれば、もうファミレス…というところで愛菜の耳に聞き覚えのある声が届いた。 その声は… 1.一郎と修二 2.一郎と香織 3.修二と水野 27 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/24(金) 12 28 53 ID ??? 横レス悪いが、これって途中バッドエンド(ゲームオーバー)もアリ? 28 名前:1[sage] 投稿日:2006/02/24(金) 13 46 47 ID ??? 27 私はBADかまわないよ。 その次のレスは選択肢を選びなおして続けるでどうだろうか。 29 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/24(金) 17 10 48 ID ??? 3.修二と水野 (あの声は…!) 愛菜は思わず立ち止まった。 (水野先生…もう一人は、修二君?) 「いい加減にしてくださいよ、先生」 「そうやって、いつまで意地を張り続けるつもりかしら?修二君」 (なんか、修二君いつもと違う…?) 思わず愛菜は聞き耳を立ててしまう。 「一郎君と違って、あなたはあまり賢くないようね?」 「俺は…兄貴とは違う!!あんたの言いなりにはならない!」 修二はそう叫び、公園の出口に向かって駆け出した。 (!見つかっちゃう!!) 愛菜は茂みに隠れようとしたが、運悪く公園を飛び出してきた修二と 鉢合わせしてしまった。 「愛菜ちゃん…」 1、とにかく逃げ出す 2、聞いてなかったふりをしてとぼける 3、二人の話の内容について聞いてみる 30 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/25(土) 00 07 28 ID ??? 2、聞いてなかったふりをしてとぼける 「あっ、しゅ…修二くんっ! 偶然だね!」 「……」 お約束のように素知らぬ振りを決め込んでみるが、衝撃と動揺で心なしか声が震える。 愛菜のそんな素振りに気付いているのかいないのか、 修二は眉を寄せるようにして顔を歪めると、くるりと踵を返してしまう。 「えっ、ちょ、修二くん…!?」 そのまま何も言わずに歩いて行ってしまう修二を思わず呼び止めようとした愛菜の耳に、 公園内から誰かが近づいてくる音が聞こえてきた。 (うわっ、やばい!) 反射的にすぐ傍にあった電柱に身を隠すと、案の定公園入り口から出てきたのは水野だった。 水野は公園前を通る歩道で足を止め、修二が歩き去った方角を見ながら「あーあ」と声を上げる。 「やっぱり一郎くんの名前を引き合いに出したのは失敗だったかー……。 対抗心でも燃やすかと思ったんだけど、難しいお年頃なのねぇ」 はーあ、とため息をつきながら前髪を掻き上げ、水野は携帯を取り出した。 どこかに電話をかけるのだろうか。 手早くボタンを押し耳に当てながら、再び公園内に足を向ける水野の背中を見ながら、愛菜は…。 1.水野の電話を盗み聞きする。 2.ファミレスに向かう。 3.家に帰る。 31 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/25(土) 09 41 37 ID ??? 2.ファミレスに向かう。 (気になるけど、今はそれどころじゃない。隆が待ってるんだから) ファミレスに到着し、店内を見渡して隆を探す。 私は一番奥の席でぼんやりと外を眺めている彼を見つけた。 「話って何?」 隆の向かいの席に座りながら、すばやく私は聞く。 しかし頭の中はさっきの光景のことで一杯。 だから隆の口から出た言葉を聞いたときは思わず自分の耳を疑った。 いや、例えさっきの光景に気をとられていなかったとしても 同じく唖然としてしまっただろう。 「……ここ数日、お前に避けられて気づいた。お前が好きだ」 彼はそう言ったのだ。 1)冗談はよして 2)ごめん。聞こえなかった。もう1回言ってくれる? 3)水野先生のことは? 32 名前:まとめ[sage] 投稿日:2006/02/25(土) 11 01 14 ID ??? 今出ているキャラ 大堂愛菜:高校二年の主人公 大堂春樹:主人公の義理の弟(高1) 。好きな人がいるらしい。 主人公よりしっかりものなので兄にみられがち 隆:主人公の幼馴染(性格は不明。口調はぶっきらぼうな感じ) 宗像一郎:放送委員の委員長。 誠実で優しい優等生だが、裏あり? 宗像修二:一郎の双子の弟でテニス部エース 他人を見下しているところがあり、不誠実 近藤先生:厳格だが生徒思いの男性教師 水野先生:隆とキスしていた音楽教師、 一郎と裏で繋がっている模様。修二にも何やらちょっかいをかけたが拒まれた 長谷川香織:愛菜の親友 一人称・呼び方 愛菜:一人称→私。春樹と隆は呼び捨て、その他キャラは君付け 春樹:一人称→俺。愛菜に対しては姉さん 隆:一人称→俺。愛菜に対してはお前 一郎:一人称→?。愛菜に対しては大堂 修二:一人称→俺。愛菜に対しては愛菜ちゃん、一郎に対しては兄貴 香:一人称→?。愛菜や隆に対して呼び捨て 今までのあらすじ 隆と水野のキスを見て以来隆と疎遠になっている愛菜。 憧れの一郎と二人で委員会の仕事をしていると水野が入ってくる。 水野から遠ざかるように部屋を出て行った後の二人の会話に衝撃を受ける。 一郎は隆と水野の関係に何か関わりがあるらしい。 隆と話し合いをするためにファミレスに向かう愛菜は 途中で言い争う水野と修二を見かける。 気になりつつもその場から立ち去り、隆と対面すると 彼はいきなり好きだと告白してきて…… 33 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/25(土) 18 42 03 ID ??? 1)冗談はよして 隆の言葉が頭の中で反芻する。 混乱した頭でようやく理解できると 顔がみるみるうちに赤くなっていった。 「じょ…冗談はよしてよ」 笑って言うはずの声が上手く出せない事に、 うるさい心臓の音に愛菜自身戸惑う。 告白した隆の方は、黙ったまま 真剣な面持ちでこちらを見つめていた。 二人の間に沈黙が流れる。 隆は何も言わない。 愛菜は手持ちの鞄を掴むと立ち上がった。 「私は隆と水野先生のこと聞きに来たのに! 何か悩んでるんじゃないかって心配してたのに。 そんなことではぐらかすなんて。バカにしないでよ!」 自分でも思っていない言葉に驚き、唖然としたが、 そのまま立ち去ろうと出口に向かう。 「待てっ」 後ろから隆に腕を掴まれた。 1)振りきって帰る 2)そのままでいる 3)振り返って殴る 34 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/25(土) 20 44 01 ID ??? 3)振り返って殴る ドカッ!!!!! 愛菜が振り向いた瞬感隆の顔面に愛菜の鉄建が炸裂した。 隆「いってーな!!!!人がまじめな話してんのに何すっ・・・!!!」 隆は息を呑んだ、愛菜が泣いていたからだ。 幼馴染で付き合いの長い隆でさえ愛菜の泣き顔をあまり見たことがない。 そんな気丈な愛菜が目の前でぼろぼろ泣いているのだから驚くのも当然だ。 隆「おっおい・・」 愛菜「なんで・・・」 隆「え?」 愛菜「なんであたしの事好きなら先生とキスなんてしてんのよ・・・」 隆「それは・・・」 愛菜「馬鹿!!最低!!スケベ!!エロ魔人!!キス魔!!死んじゃえ馬鹿!!! ・・・・・嘘・・・死んじゃえは嘘・・・死んじゃ嫌だ・・・嘘だから」 隆「・・・うん。」 そう言って隆は愛菜を静かに抱きしめた。 愛菜「良い訳位してよ・・・このままじゃ隆がよく分かんないよ」 隆「うん・・・話す・・・全部お前に話すから・・・」 ???「何・・・やってるんだ・・お前ら・・・」 抱き合ってる二人のめの前に現れたのは・・・ 1)春樹 2)一郎 3)修二 35 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/26(日) 00 40 20 ID ??? 1)春樹 「春樹……。」 愛奈は隆から慌てて離れる。 「うわっ。」 「春樹、ど、どうしたの。」 春樹は慌てて目線をそらしうろたえていた。 「えっと、ごめん。姉さんが心配で後追いかけて……。 そっか姉さんは隆さんと付き合って、俺知らなくて。」 「ち、違うの春樹!!隆となんて付き合ってないわよ。」 「そんな力いっぱい否定しなくても。」 隆の傷ついた声が耳に入ったが春樹の表情の方がつらそうでたまらず春樹に駆け寄った。 「とにかく、今日は帰るわ隆。私も混乱してるし……行きましょう春樹。」 「あぁ、でも俺の気持ちは本当だからこれだけは、本当に。」 隆の言葉、真剣な表情に春樹は体が震えた。 春樹の視線は隆を一瞥し、愛奈へと移動する。 「隆さん……。」 「隆、じゃまた明日学校で。」 「隆さん失礼しました。」 いつもは誰にでも明るく接する春樹の声と表情が冷たく隆に突き刺さる。 「は……るき。」 「行こう、姉さん。」 「……えぇ。」 帰り道、先ほど修二と水野と出会った公園に差し掛かり愛奈は足を止めた。 公園に目をやるとすでに水野の姿はなかった。 「なにを考えているの、姉さん。」 「えっ。」 春樹の冷たい声が後ろからかけられ、 愛奈はいつもとは違う弟の姿にようやく気づく。 「隆さんのこと……考えてたの。」 愛奈は春樹の変化に戸惑いながら言った。 1)春樹、ちょっと怖い。どうしたの? 2)隆のことじゃなくて水野先生のことを。 3)うん、実は隆に告白されて……。 36 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/26(日) 04 36 50 ID ??? 1)春樹、ちょっと怖い。どうしたの? 「さっき、姉さんが電話で話してた内容、少し聞こえたんだけど」 「…うん」 「隆さんが、先生とキスしてたって。水野先生って、あの音楽の先生だよね」 「…うん」 「びっくりしたよ。隆さんとは付き合いも長いし」 「そうだね。私も、びっくりした」 「…じゃあ、どうして」 隆は急に語気を強めた。 「どうして姉さんと隆さんが抱き合ってるんだよ!水野先生とキスしてたんだろ? 付き合ってるんじゃないのかよ!?」 いつになく真剣な春樹の瞳に愛菜は言葉が出ない。 「春樹…」 「姉さんが辛い思いするの、黙って見てるなんて俺にはできないからな…!」 その時、愛菜の頭に浮かんだのは… 1.春樹がこんなにも私を大切に思ってくれてたなんて知らなかった 2.そうだよね…これ以上あの人達に関わるのはよそう… 3.事態は良くわからないけど、隆が苦しんでるのをほっとくわけにはいかない! 37 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/26(日) 07 43 51 ID ??? 2.そうだよね…これ以上あの人達に関わるのはよそう… 「ありがとう、春樹。大丈夫だから。さ、早く帰ろう」 納得できない顔でいる春樹の手を引き、家路を急いだ。 早朝。眠い目を擦りながら、とぼとぼと学校へ向かう。 愛菜は昨日の一件で一睡もしていなかった。 また、いつも朝から、うるさく口を出してくる春樹が やけに静かでよそよそしい態度をとってくることも 少なからず愛菜の気分を落ち込ませていた。 「おはよう」 愛菜に声を掛けてきたのは 1)水野先生 2)一郎 3)修二 38 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/26(日) 18 26 09 ID ??? 3)修二 「ねえ、今日こそ放課後俺とデートしない?」 「ちょっと、修二くん! 私達との約束は?」 「修二先輩酷いです!」 修二の両側にいた後輩らしき女の子たちが修二を睨むが その目は本気で怒っていない。 彼がそういう男だと知っているからだ。 いつもと変わらない修二の態度… 昨日の光景は何だったのか。少し引っかかりはしたが、 ヘラヘラと後輩に弁解している修二の姿を見ていると バカバカしさを感じる。 愛菜は女の子たちに問い詰められてる修二を無視して教室へ向かった。 隆と会ったらどうしよう…昨日からそればかり考えていた愛菜だったが 隆はその日学校へ来なかった。 学校に来なければ来ないで気になってしまう。 1.電話する 2.メールを送る 39 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/26(日) 20 24 14 ID ??? 2 メールを送る 「メールくらいなら大丈夫かな……。『隆、どうしたの? 風邪でも引いた?』っと。送信」 手早くメールを打ち、愛菜は携帯電話を閉じた。しばらく してから明るい着メロがメールの到着を告げた。電話を 開けばそこには 1 隆からの返信メール 2 知らないアドレスからメール 40 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/26(日) 20 51 59 ID ??? 1 隆からの返信メール メールを見て私は駆け出した。 それは隆のお姉さんからのメールで 隆が交通事故に遭い、病院に運ばれたという衝撃的な内容だった。 メールに書かれていた病院は 偶然にも学校からはそれほど離れていなかった為 私は10分後には病院に到着していた。 きっと軽い怪我に違いない、絶対にそうに決まってる… 自分にそう言い聞かせて恐ろしい想像をかき消そうとする。 しかし、私を待っていたのは眠った隆に縋り付きながら 号泣する隆のお母さんだった。 呆然とその場に立っていることしか出来ない私の肩を誰かが叩く。 振り返った私が見たのは、隆のお姉さんの美由紀さんだった。 1、美由紀と話す 2、隆のもとへ駆け寄る 41 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/27(月) 00 48 50 ID ??? 1、美由紀と話す 「あ、あの…」 何か言おうと唇を開いてから、何を言うべきなのかわからないことに気付いた愛菜は愕然とした。 病室には隆の母親の泣き声だけが響いている。 ヒステリックなその声は、愛菜の脳にわんわんと打ちつけるように反響する。 なんだか、ひどい眩暈を感じた。自分がこの世界に立てていないかのような。 「愛菜ちゃん」 そっと手を引かれ、愛菜はぼんやりと目の前に立っている美由紀を見た。 泣き腫らした赤い目の彼女が、ぎこちなく唇を上げる。痛々しい笑顔。 「ちょっと、廊下出よう? お母さん、一人にさせてあげたいんだ」 掠れた声でそう言われ、愛菜はこくりと頷いた。 そのまま手を引かれて病室を出る間際、 そっと肩越しに振り返った白い室内は、滲んでよく見えなかった。 愛菜が後ろ手で扉を閉めたと同時に、 背を向けていた美由紀がくるりと振り返り真正面から愛菜を見つめた。 そして低く震え、引きつった声で呟いた。 「愛菜ちゃん……もしかしてあなたの学校に、水野 咲という教師が……いる?」 「……え?」 1.どういうことなのか、積極的に事情を訊く。 2.もう関わらないと決めたので、水野という名前の教師はいることだけを答える。 42 名前:sage[sage] 投稿日:2006/02/27(月) 10 20 00 ID ??? 2.もう関わらないと決めたので、水野という名前の教師はいることだけを答える。 「ええ、うちの学校の先生ですが…。 そんなことより隆の容態は?お医者さんはなんて?」 実際、今は水野先生のことより隆自身のことが心配だ。 「あ…ええ、そうよね」 愛菜の言葉に、美由紀もハッと我に返ったようだった。 美由紀が言うには、隆は今は意識がなく昏睡状態で、とにかく命はとりとめたので、 あとは意識が戻るのを待つしかないとのことだった。 「しっかりして下さい。 今は隆が早く目覚めるよう皆で信じて見守りましょう。ねっ」 「ありがとう、愛菜ちゃん…」 美由紀と話していると、向こうからバタバタと人がかけて来る足音が。 振り返った愛菜は思わず叫んだ。 1.「水野先生!?」 2.「修二くん!まさか私のこと追いかけて来たの?」 3.「春樹、どうしてここへ…」 43 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/02/27(月) 10 24 48 ID ??? 間違えた。すみません。 44 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/03/01(水) 02 57 04 ID ??? 2.「修二くん!まさか私のこと追いかけて来たの?」 「くそっ…遅かったか」 修二がガン、と音を立てて病院の壁を殴る。 愛菜の存在を知ってか知らずか、その表情はいつもの能天気なものとは違う。 (修二君の顔…昨日の夜見たのと同じ…?) 愛菜は困惑しながらも、壁に押し付けたままの修二の拳が震えているのに気づいた。 (隆の事故は…偶然じゃなかったとでも言うの?) 修二に声をかけるべきかどうか迷う愛菜。その横を美由紀がすっと通りぬけた。 修二の肩に手をかける美由紀。 「あなたは、悪くないわ…いつかこういう日が来ることを、私もあの子も理解していたのだから」 「でも、俺が…俺が、もっと早く気づいていれば!」 (二人は知り合いなの?…ていうか、二人は何を話しているの?) 困惑に反応するかのように、色々な言葉や情景が愛菜の頭の中を駆け巡った。 『隆君のこと、ちゃんとつかまえてるんでしょうね?』 『全部、お前に話すから…』 突然、愛菜は体中の毛が逆立つような感覚をおぼえた。 (…まさか、隆は) 足が震える。 (私に秘密を話そうとして、それで…!!) たどり着いてしまった結論を必死に否定しようとするが、それが無駄な努力であることは 愛菜自身が一番良くわかっていた。 (これから、私はどうしたら良いんだろう…) 1.美由紀と修二に全てを話して欲しいと頼む 2.耐え切れなくなり、その場から逃げ出す 3.自分なりに水野や一郎を探ることを決意する 45 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/03/02(木) 17 31 08 ID ??? 2.耐え切れなくなり、その場から逃げ出す その場にいるのが耐えられなくて、私は逃げ出した。 何も聞きたくなかった。何も知りたくなかった。 けれど、逃げた私に待ちうけてたものは、容態が急変し 春樹が亡くなったという知らせだった。 『死んじゃえ馬鹿!!!』 彼に向けて放ったあの言葉が頭の中で幾度とくなく繰り返される 死んじゃえ馬鹿!!! 死んじゃえ馬鹿!!! 死んじゃえ馬鹿!!! … あのときちゃんと話し合っていれば彼は死なずに済んだのかもしれない… しかし、いくら後悔しても、彼は戻ってこない BADエンド ( 31に戻る) 46 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/03/02(木) 17 32 24 ID ??? うわー春樹じゃなくて隆だった ごめんなさい… 47 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/03/06(月) 05 20 48 ID ??? →3)水野先生のことは? 「…水野先生とキスしてたのは何なの?」 数日前にあんな光景を見て、素直に信じる方がどうかしてる。 私の問いかけは自然とトゲのあるものになっていた。 「あ、あれは、その…。その場の雰囲気つーか…」 「雰囲気でしたの!?」 「違う! いや、違わないんだが何ていうかさ…。 とっ、とにかく。さっき言ったことは嘘じゃねぇから」 隆は左手の甲で鼻のあたりを隠しながら、最後の言葉を強調する。 それは幼い頃から何度も目にしてきた彼の癖だった。 恥ずかしいときにいつもする、照れ隠し。 そんな隆の姿を見て ・受け入れた ・保留した ・断った 48 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/04/20(木) 04 29 23 ID ??? →受け入れた ドクン、と鼓動が高鳴る。 水野先生の一件があるまでは、隆のこと「ちょっとイイな」なんて 思ってたことだってあったから。 隆を……信じてみたい。そう思った。 「私も、隆のこと好き……だと思う」 一瞬の間があった後、隆が思いっきり私の手をつかんだ。 「それは付き合ってくれるってことか!?」 私はゆっくりうなずく。 「信じていいのよね? もし水野先生とまた何かあったら、その時は隆のこと……もう信じられない」 「わかった。俺にはお前だけだと、証明してみせるよ」 隆は心から嬉しそうな、それでいて安心したような笑顔になった。 隆と一緒に夜の道を帰る。 と、その時。 1.隆が手をつないできた 2.春樹が現れた 3.水野先生が現れた 49 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/05/07(日) 17 29 39 ID ??? →隆が手を繋いできた 何だかドキドキする。二人で、ただ歩いているだけなのに。 幼馴染が急に彼氏になって――相手の肩書きが変わっただけで、 まるで別人と歩いているような気持ちだった。 (こんな事、初めて……) 「愛菜…」 「…何?」 返事をした途端、手に触れてきた――熱。 それが、隆の手だと解るまでに1秒もかからなかったと思う。 私は驚いてしまい、慌てて手を引っ込めた。 「あっ…隆、ごめんね!その、嫌とかじゃなく、ね…ただ…」 真っ赤になって言い淀む私。 でも隆の方も私以上に照れているようだった。 「い、いや、俺の方こそ……いきなりゴメン」 少しだけ立ち止まっいた私たちは、どちらともなく再び歩き始めた。 「愛菜…」 「…何?」 「手、繋いでも、いいか?」 「えっ?」 「さっきは驚かせたよな。 だから、今度前もって承諾を貰おうと思って……ダメか?」 私は…… ①手を繋ぐ ②断る ③誰かが、向こうからやって来るのが見えた 50 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/05/12(金) 01 11 58 ID ??? ③誰かが、向こうからやって来るのが見えた 暗闇の向こうから見えた人影は愛菜と隆の前で立ち止まった。 「い、一郎くっ……。」 水野先生と二人で話していた一郎のことを思い出し愛菜は怖くなる。 「あぁ、大堂偶然だな。湯野宮も一緒か……、本当うらやましいぐらい仲がいいな。」 「えっ、あぁ。幼馴染だしな。」 愛菜は一言も声が出ず、隆の服のすそを掴んだ。 隆が愛菜を見ると愛菜の表情は固く、体は震えていた。 今までの憧れの宗像一郎をみる愛菜の表情は隆が嫉妬するぐらいに良い表情をしていたのに、 今日の愛菜はいつもと違っていた。 隆の頭に1時間前の愛菜との電話が脳裏を掠めた 「…もしかしてそれって、一郎君と何か関係があるの?」 水野先生と自分の関係についての電話で愛菜は一郎の名前を出していたのを思い出す。 「……幼馴染という関係なのは知っている。だが、俺にはそれ以上に見えるのは気のせいか。」 「うっ……。」 隆の頬が朱に染まる。 「大堂がずいぶん君に寄り添っているように見えたからカマをかけたんだが、 見事的中したみたいだな。」 「宗像兄には関係ないだろ、確かに俺達は付き合っているよ!!」 隆の言葉に一郎はため息をついた。 ①確かに俺には関係ないね。 ②関係……ね。 ③あるさ。君達が付き合ったら何のために水野先生にけしかけたらわかったものじゃない。 ④修二が君のこと好きだって言うから協力してたんだ。大堂に恋人ができたら困るよ。 51 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/05/12(金) 21 35 15 ID ??? ちょい質問だが、これって主人公(愛菜)以外の選択も有りなの? 前一回春樹の選択もあったけど・・・ 52 名前:1[sage] 投稿日:2006/05/12(金) 23 54 01 ID ??? 51 私的にはかまわないんだが、 やっぱり乙女ゲーだったら主人公の選択の方がいいか? 男の心情も選べるってなかなか面白そうな気がしたんだが……。 53 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/06/16(金) 15 11 44 ID ??? 視点に関してはどうなんだろ? コロコロ変わりすぎてもアレだし やっぱり愛菜で統一した方がいいよね 54 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/08/18(金) 20 11 54 ID ??? 統一でいいんじゃね。 乙女ゲーだし。 55 名前:名無しって呼んでいいか?[age] 投稿日:2006/09/20(水) 00 04 06 ID ??? 良スレの予感 56 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 00 15 34 ID ??? こんなにすぐに隆とくっつくと1000ではどうなってくるんだろう? 彼氏いるのにアプローチされてうけいれるのかなあ? 57 名前:50[sage] 投稿日:2006/09/21(木) 20 31 28 ID ??? 56 それは書き手に関わってくるだろう。 書き手がどういう選択してくるか楽しみだ。 50だが自分の作品無視してくれていい。 自分の間違いの所為で話が続かなくてスマソ。 49の選択からお願いする。 58 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 02 31 04 ID ??? 50= 56が責任もって書きなおしって事で、お願いしたいんだが 59 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 02 31 50 ID ??? 50= 57が責任もって書きなおしって事で、お願いしたいんだが 60 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 02 46 30 ID ??? 56 スレタイに反したこと言うけど 台本スレみたく定期的に終わらせた方がいいと思う。 100レスとか 61 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 03 04 56 ID ??? →修二が君のこと好きだって言うから協力してたんだ。大堂に恋人ができたら困るよ。 「でも、こうなった以上に僕に協力できることは何もないし、修二にもそう伝えておくよ。 君も恋人がいる身で修二から付きまとわれるのも迷惑だろ?」 一郎はそう言うと、すぐにその場から立ち去った。 「何なんだよあいつ……」 一郎に挑発され大声で彼に恋人宣言をしてしまった隆は 急に恥ずかしくなったのか、そわそわしている。 そんな隆を見て愛菜は… ・隆ってカワイイ ・修二くんが私を好き? ・一郎くん、どうでもよさそうだっなた… 62 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/23(土) 03 05 47 ID ??? ・一郎くん、どうでもよさそうだっなた… ↓ ・一郎くん、どうでもよさそうだったな… 63 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/26(火) 00 53 46 ID ??? 流れ切る様で悪いが、なかなか面白そうなスレだし 1-100の間でルールを 話し合ってみればいいんじゃないだろうか。 何レスで区切るのか、選択肢は主人公の行動や受け答えについてのみにするのか それとも周囲の状況についてでもおkなのか キャラもどんどん増殖させていいのか制限設けるのか 色々細かいとこ決めてかないと後々続かないと思う まぁそんなのどうでもいいと思うんだったらこのレスはスルーして 61に答えて欲しい 64 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/26(火) 18 16 31 ID ??? 私はある程度ルール決めた方がいいと思うよ 制限なさすぎると逆に困る。 65 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/27(水) 22 16 52 ID ??? 選択肢は主人公の行動や受け答えについてのみにするのか って点は、主人公のみでFAジャマイカ キャラ増殖は、肝心なもの以外できるだけ控える・・・としか決められないような。 まだこの物語の真相を決めている人はいないと思うしww 66 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/09/28(木) 12 06 28 ID ??? 真相はなかなか決められないんじゃないかな。 もし、真相を決めてる人がいても話をうまく持ってこられないかもしれないし。 だったらむしろ、人数制限した方が話を作りやすいかも 67 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/10/02(月) 20 24 26 ID ??? →隆ってカワイイ 少し前までは、ただの幼馴染だったのに いつの間にか私の中で隆はこんなに大きな存在になっていたんだ。 「…何、笑ってるんだよ?」 隆は真っ赤な顔でそっぽを向いている。 私がクスクス笑うと、隆は私にデコピンをした。 しばらく、いろいろな話をしていて 隆は急に黙り込んでしまった。 「・・・・・・なぁ、これから俺のウチに来ないか?今、誰もいないしさ。 ほ、ほら、冷えてきたしっ、なっ?」 私は… 1・普段通り、遊びに行く 2・「幼馴染」から「恋人」になったので少し迷いつつも、隆を信じて行く 3・春樹が家でご飯を作ってくれてる事を思い出し、断る 4・意識してしまい、話を無理やりそらす 選択肢って何個までオケなの? 68 名前:名無しって呼んでいいか?[] 投稿日:2006/10/03(火) 18 21 37 ID FhGLTbMf age 69 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 18 24 56 ID ??? 3つか4つが限度だろうけど・・・ やっぱりスタンダードに3つか?? 70 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 18 47 00 ID ??? じゃあ基本は3つで 場合によっては2つや4つって事でおk? 71 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/10/03(火) 21 16 58 ID ??? んじゃ、それで。 72 名前:名無しって呼んでいいか?[] 投稿日:2006/10/04(水) 15 33 13 ID hkhJsALF 無料オンラインゲーム情報サイト http //www.geocities.jp/muryouonlinegame/ 73 名前:名無しって呼んでいいか?[] 投稿日:2006/12/08(金) 20 10 50 ID r7HzoGzD ホッシュ 74 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/12/10(日) 09 58 17 ID ??? BADエンド止めないか? さっき発見して全部読んだんだけど、せっかく書いてくれたのに台無しになるのは可哀想だと思う。 75 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/12/10(日) 22 22 07 ID ??? ↑同意 そして内容がドロドロしすぎたとオモw なにか秘密が…的な話にすると みんな各自違う内容考えちゃうから 流れに身をまかせたのほほんとした話にしないか?w 76 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2006/12/17(日) 17 19 56 ID ??? 自分は、三択、主人公視点でいいと思う。 3・春樹が家でご飯を作ってくれてる事を思い出し、断る 「だめだよ。春樹が待ってるから」 私が断ると、ごまかすように笑いながら 「あっ、そうだよな、ごめん。それじゃ送っていくよ」 家の前に着くと、玄関から春樹が出てきた。 「あれ、出かけるの?」 「何言ってんのさ、姉さんを迎えに行こうとしたんじゃないか」 隆が後ろにいるのを気付き 春樹の顔が… ①怒っているように見えた。 ②無表情に見えた。 ③わざとらしく笑っているように見えた。 77 名前:名無しって呼んでいいか?[age] 投稿日:2007/01/03(水) 20 27 26 ID ??? あげ 78 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/03(水) 23 20 42 ID ??? 1 怒っているように見えた。 春樹「姉さんが中々戻って来ないから、心配したんじゃないか。最近物騒だしさ。」 私「ごめん、春樹。」 隆「悪い、俺が引き止めちゃったから…」 私がちょっと頼り無いせいか、春樹にはいつも心配をかけてしまう。何だかんだと 面倒見の良い春樹のそばは居心地が良く、つい甘えてしまっていた。 でも… 1 彼氏も出来たんだし、弟離れしなきゃな 2 もっと、お姉さんらしくしっかりしなきゃ 3 彼氏が出来ても、春樹との関係は変えたくないな… 79 名前:名無しって呼んでいいか?[] 投稿日:2007/01/07(日) 00 33 30 ID 8V7qcVuS ②もっと、お姉さんらしくしっかりしなきゃ いつまでも春樹に心配ばかりはかけていられない。私の方がお姉さんなんだから。 送ってくれた隆にお礼を言って春樹を家に入るよう促す。 玄関をくぐる時に肩越しに振り返ると、暗がりの中で隆が私の方に軽く手をあげて 元来た道へと帰っていくのが見えた。 扉を閉めた所で後ろから憮然とした様子の春樹に声をかけられた。 「メシ、どうすんの?」 私は… ①食べてない。春樹もまだなら、一緒に食べよう? ②ごめん、今日はいいや。 ③どうして遅くなったか、聞かないの? 80 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/09(火) 12 56 38 ID ??? →①食べてない。春樹もまだなら、一緒に食べよう? すっかりさめてしまったオムライスを温めなおし、 春樹と向かい合ってテーブルに座る。 春樹が作る料理はおいしい。 私と違って、何でも器用にこなす春樹は自慢の弟であるが、 時々自分がとても不出来な人間である錯覚を覚えてしまう。 今食べているオムライスも絶品だ。私ではこうは出来ない。 少し、自己嫌悪に陥りつつ、目を上げると春樹と目が合った。 怒っているような、何かを探るような目に思わず息を止める。 何かを言わなくてはいけない。無性にそんな気になる。 ①「憎たらしいくらい、おいしいわよね。春樹のご飯」 ②「・・・怖い顔してどうしたの?」 ③「あのね私、隆と付き合うことになったの」 81 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/10(水) 16 11 48 ID ??? ②「……怖い顔してどうしたの?」 さり気なく言ったつもりだったけれど、春樹の表情は尚も固い。 「姉さんさ、最近勝手なんじゃないの?」 春樹らしくない突き放した言い方に、私は思わず手を止めた。 「勝手って……」 「勝手だよ。今見たく急に出てったり、俺の立場も考えて欲しい」 どうしたんだろう、突然。私が馬鹿をやって春樹を怒らせるのはいつものことだ。 だけど今日のはいつもとは違う。春樹は本気で怒っている。 「ごめんね、心配かけて」 私は、春樹の顔が直視できずに俯く。 カタンと、春樹が席を立つ音がした。 私は… ①「春樹!」と慌てて呼びかけた。 ②どうしていいか分からず、ただ呆然としていた。 ③身勝手な春樹に腹がたった。 82 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/11(木) 13 36 13 ID ??? ②どうしていいか分からず、ただ呆然としていた。 春樹はそのまま乱暴に部屋を出て行く。 春樹の言葉が頭の中でぐるぐると回っている。 勝手だよ! 確かに今日の行動は、せっかく晩御飯を用意してくれていた 春樹から見れば勝手以外の何者でもない。 もし晩御飯の用意を、春樹ではなく父や母がしていたら、 私は外出することを考え付きもしなかっただろう。 姉らしくしようと思っいても私は春樹に甘えているのだとおもう。 今日は全面的に、私が悪い。 もし逆の立場なら、私だって怒る。 春樹に謝りに行こうと、立ち上がった所に電話が鳴った。 電話を見ると、修二くんからだ。 修二に伝えておくよ 一郎くんの言葉が、ぱっと脳裏に浮かぶ。 私は ①とりあえず春樹に謝るのが先。電話は無視する。 ②修二からの電話に出る。 ③なんとなく恥ずかしくて出られない。伝言モードにしておいて用件を聞く。 83 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/12(金) 15 42 47 ID ??? ③なんとなく恥ずかしくて出られない。伝言モードにしておいて用件を聞く。 きっと一郎君に話を聞いて、電話をしてきたのだと予想をつける。 なんとなく気恥ずかしくて電話に出ずにいると、伝言モードに切り替わった。 アナウンスが流れ電話に伝言が録音された。 伝言を再生させると、修二君らしくない、暗い声。 『修二だけど、さっきはごめん。ちょっと、むしゃくしゃしててさ‥‥。 ちょっと話したいことがあるんだ。遅くてもいいから電話‥‥‥』 プツッっと音がして、伝言が切れた。 録音時間が途中で終わってしまったらしい。 隆に会う前に、公園の前で修二君に鉢合わせをした事を思い出す。 水野先生と何かもめていたみたいだった。 一郎君と別れてから、時間がそう経っていないことを考えれば、 隆とのことはまだ修二君には伝わっていないのかもしれない。 そういえば告白されて舞い上がってしまったため、 隆に一郎と水野先生のことを話すのも忘れていた。 さて、どうしよう? 1.すぐ修二に電話をかける。 2.まず春樹に誤りに行く。 3.忘れないうちに、隆に電話する。 84 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/13(土) 20 30 12 ID ??? 2.まず春樹に誤りに行く。 でも、とにかく今は春樹に謝らなきゃ。 あの春樹が本気で怒っている。 この事実に、思った以上にショックを受けている自分がいる。 「……本当に、姉失格だよね。」 ぐちゃぐちゃした気持ちのまま春樹の部屋の前へ立った。 コンコン 「春樹……?あの、ごめんね。私、本当に勝手だったと思う。」 ドア越しに話しかけるものの、春樹からの返事はない。 春樹と姉弟になってから、こんなこと一度もなかった。 どうしよう。 1 「もう寝てるのかな…」謝るのは明日にする。 2 「このままじゃ嫌だ。」ドアの前で話し続ける。 3 「春樹、お願い。ドアを開けて、ちゃんと話をさせて」と説得する。 85 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/13(土) 22 48 05 ID ??? 2 「このままじゃ嫌だ。」ドアの前で話し続ける。 「ねえ、春樹。私が悪い。ちゃんと謝るから」 …やっぱり返事は無い。涙が滲んだ。 「…私どうしたらいいの?」 私はドアの前でしゃがみこんだ。嫌だ。春樹と喧嘩したままなんて嫌だ。 出来がいいとか悪いとか関係なくて、ただ大切な弟なんだ。 「…姉さん」 驚いて顔を上げると、春樹が立っていた。 「春樹…」 くしゃりと、春樹の顔がゆがむ。 「何泣いてるのさ?」 「何って、だって春樹が!」 馬鹿にしたような物言いに反射的に怒ろうとしたけれど、 春樹の手がすっと伸びてきて、私は口を噤んだ。 春樹は手を私の頭に置いて、髪の毛をくしゃくしゃにした。 「…まったく、姉さんはしょうがないな」 可愛くない言い方。そう思う。 でも、そう言う春樹の顔は何だか泣きそうに見えた。 「春樹だってしょうがないよ」 春樹はやれやれと言うように、肩を竦めた。 その顔は、もう怒ってはいなかった。私は初めて春樹の顔を見て謝る。 「…春樹、ごめんね」 「分かってるよ」 春樹はほんの少し顔をそむけて、呟いた。 「…ちゃんと分かってる」 そう言って春樹は、いつも通りの顔でほほえんで見せた。 そう言えば… 1.隆に言わなきゃいけないことがあるんだった。 2.修二君、電話待ってるかもしれない。 3.春樹と喧嘩するのなんて、初めてじゃない? 86 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/13(土) 23 55 20 ID ??? 3.春樹と喧嘩するのなんて、初めてじゃない? 仲直りできたことにほっとして、春樹につられるように微笑む。 そういえば、春樹とこんな喧嘩をしたのは始めてかもしれない。 そういうと、春樹は苦笑する。 「そりゃあね…」 言葉を続けようとした春樹の視線が一瞬泳ぐ。 「…姉さんと兄弟になったのだって小さな子供のころってわけじゃないし、 普通の兄弟とは違うんだから、当たり前だよ」 けれど戻ってきた視線は、いつもの春樹で…。 でも何か引っかかった。 それを考えようとする前に春樹が思い出したように言葉を続けた。 「そういえば俺、食器片付けないままきちゃったな、姉さんは?」 「あ、わたしも…」 春樹に謝ることしか考えていなかったから、食器はそのままテーブルの上だ。 「仕方ないな。俺片付けてくるよ」 苦笑しながら、春樹は歩いていった。 春樹が見えなくなって、私は体の力を抜いた。 思った以上に緊張していたみたいだ。 気が抜けると、電話のことを思い出した。 どうしよう? ①隆に一郎くんと水野先生のことを話す。 ②修二くんに折り返し電話をする。 ③ちょっと落ち着きたい。お風呂に入る。 87 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/17(水) 13 13 09 ID ??? ②修二くんに折り返し電話をする。 部屋にもどり、修二くんに電話をすることにした。 いつもの修二くんらしく無かったことが、気にかかる。 リダイヤルで発信すると、1コールで修二くんが出た。 「あ、私、愛菜だけど」 「あ、愛菜ちゃん、かけてもらっちゃってごめん。 また、こっちから連絡してもよかたんだけど…」 電話にでた修二くんの声は、やはりいつもより歯切れが悪い気がした。 そのまま、修二くんは沈黙してしまった。 私は沈黙に耐えきれなくなって… 1、「うん、伝言聞いたよ。話ってなに?」 2、「伝言の話って、公園でのこと?」 3、「そういえば、一郎くんに、隆との話はきいた?」 88 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/18(木) 08 19 02 ID ??? 1、「うん、伝言聞いたよ。話ってなに?」 「あー、うん。今日はもう遅いし、話長くなりそうだから明日の昼休みに話せないか?」 「明日?うん、いいよ」 それじゃ、と電話をきる。 「明日ね。」 ベットに入り、明日の予定を考えながら眠りについた。 1、「久しぶりに早起きして春樹のために朝食作ろうかな」 2、「修二くんの話って何だろう」 3、「隆に水野先生のことを話してないなぁ。明日会うから、いいかな」 89 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/18(木) 11 16 25 ID ??? 3、「隆に水野先生のことを話してないなぁ。明日会うから、いいかな」 明日絶対に話そうと思いつつ、眠りに落ちる。 そして、夢を見た。 朝起きるとまったく覚えていない、予知夢。 覚えていないから、現実になって初めて、 「これはどこかで見たことがある」と感じる。 そして「夢で見た」と思い出す。 (ぜんぜん使えない) いつもそう思う。 覚えていれば、もしかしたら変えられた事柄もあるかもしれない。 そして、今日見た夢は… 1.一郎くんと修二くんが喧嘩している夢。 2.水野先生と隆が楽しそうに話をしている夢。 3.春樹と隆と修二くんが深刻そうに話をしている夢。 90 名前:まとめ[sage] 投稿日:2007/01/18(木) 12 31 05 ID ??? <現在の登場人物> 大堂愛菜:高校二年の主人公 。使えない予知夢を見る 大堂春樹:主人公の義理の弟(高1) 。好きな人がいるらしい。 主人公よりしっかりものなので兄にみられがち。 湯野宮隆:主人公の幼馴染(性格は不明。口調はぶっきらぼうな感じ) 宗像一郎:放送委員の委員長。 誠実で優しい優等生だが、裏あり? 宗像修二:一郎の双子の弟でテニス部エース 他人を見下しているところがあり、不誠実とおもわれているが… 近藤先生:厳格だが生徒思いの男性教師 水野先生:隆とキスしていた音楽教師、 一郎と裏で繋がっている模様。修二にも何やらちょっかいをかけたが拒まれた 長谷川香織:愛菜の親友 一人称・呼び方 愛菜:一人称→私。春樹と隆は呼び捨て、その他キャラは君付け 春樹:一人称→俺。愛菜に対しては姉さん 隆 :一人称→俺。愛菜に対してはお前 一郎:一人称→俺。修二は呼び捨て、他は苗字 修二:一人称→俺。愛菜に対しては愛菜ちゃん、一郎に対しては兄貴 香織:一人称→?。愛菜や隆に対して呼び捨て 今までのあらすじ 隆と水野のキスを見て以来隆と疎遠になっている愛菜。 憧れの一郎と同じ委員会だったが、ひょんなことから、 隆と水野の関係に一郎が何か関わっているらしいことを知る。 隆と話し合いをするためにファミレスに向かう愛菜は 途中で言い争う水野と修二を見かける。 気になりつつもその場から立ち去り、隆と対面すると 彼はいきなり好きだと告白してきた。 隆を憎からず思っていた愛菜は、隆の思いを受け入れ付き合う。 その夜、修二から電話が。 大事な話があるということで明日の昼休みに話をすることに。 そして夜、愛菜は予知無を見る。 その夢は…… では 89のつづきをどうぞ~ 91 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/18(木) 19 00 14 ID ??? 2.水野先生と隆が楽しそうに話をしている夢。 隆はほとんど後ろを向いていて、顔はよく見えないが、笑い声が聞こえる。 呆然と立ち尽くす私に水野先生がきづいた。 私と目があうと、何かを隆に言い、ゆっくりと顔を近づけていく。 隆もそれを制するそぶりは見せない。 「・・・・さん、姉さん!」 目を開けると、春樹が心配そうな顔で覗き込んでいた。 「どうしたの?春樹」 春樹は、ほっとしたように、息を吐きそれから眉をひそめていった。 「どうしたって・・・時間になっても起きてこないから起こしにきたんだ。 そしたら、すごくうなされてるし・・・・」 そういって、そっと手が伸びてきて、ほほをなでた。 「泣くほど怖い夢だったの?」 言われて初めて、自分が泣いていることに気づいた。 「・・・・覚えてない、けど・・・・・」 起き上がりながら、軽く頭を振る。 覚えてないけれど、きっと夢の名残はある。 胸の奥に、もやもやとした感情。 1「多分、すごく悲しい夢だっとおもう」 2「ものすごく怒ってる夢だったとおもう」 3「だれかに、裏切られた夢だったとおもう」 92 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/19(金) 12 42 43 ID ??? 3「だれかに、裏切られた夢だったとおもう」 この感情は一度経験している。 私の実の母が、父と私をおいて家を出て行ったとき。 それと良く似ていた。 怒りと悲しみと絶望といろいろがごちゃ混ぜになった感情。 思わず身震いする。あんなこと二度と経験したくない。 「大丈夫だよ、それは夢だろ?」 春樹が優しく、私を安心させるように頭をなでながら言う。 「……うん」 「それに誰が裏切っても、 俺だけは絶対に姉さんを裏切らないって約束するよ。 ……ね?それなら安心だろ?一人じゃないんだから」 よほど私は不安そうな顔をしていたらしい。 春樹が励ますようにぽんぽんと背中をたたいてくれる。 「……そう、だね」 やっと笑った私に、春樹も微笑む。 「さ、早く起きて。学校行かないと」 「うん!」 準備を済ませ春樹と家を出ると、隆が玄関の前に立っていた。 私と見ると照れくさそうに「おはよう」と挨拶をする。 そういえば隆は彼氏になったんだ、と思い出してこちらも恥ずかしくなる。 そして、思い出した。一郎君と水野先生のことを話さなくては。 ①「春樹、隆と話があるから、先に行ってて」 ②春樹にも相談したい「二人に話したいことがあるんだ」 ③話はあとでいいや、3人で学校に行く。 93 名前:名無しって呼んでいいか?[age] 投稿日:2007/01/19(金) 15 35 18 ID ??? 嗚呼 94 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/19(金) 17 22 05 ID ??? ①「春樹、隆と話があるから、先行ってて」 私は、つとめて明るい声でそう言った。 本当は、春樹にも聞いてもらったほうがいいのかもしれない。 けれど、その話をすれば、隆と水野先生のことにも触れることになる。 それは避けた方がいいと思った。 「…そう。なら俺は先に行ってるよ」 春樹は微かに俯いた。日差しが微妙な陰影を作り、一瞬寂しげな表情に見える。 けれど、顔を上げた春樹はやんわりと笑って言った。 「隆さん。姉さんをよろしく」 言われた隆は、あっと言う間に顔を紅くした。 「あ、ああ、もちろん!」 …春樹ってば。 姉思いなのは嬉しいけれど、改めてやられると、どうにも気恥ずかしい。 先を行く春樹の背中を見送って、私は隆の顔を見あげた。 ①「水野先生と一郎君のことなんだけど…」 ②「…何だか照れちゃうね」 ③「昨日の話、覚えてる?」 95 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/20(土) 11 13 16 ID ??? ③「昨日の話、覚えてる?」 「え?き、昨日?」 まだ、春樹の不意打ちから立ち直っていなかった隆が何の事かと首をかしげる。 「うん、昨日隆が電話をくれたときに、一郎くんの話をしたでしょ?」 隆は、ハッとして愛菜を見る。 「そういえば、宗像兄の話をしてたな。どういうことだ? 愛菜は、昨日の放課後のことをかいつまんで隆に話した。 「そんなこと言ってたのか・・・どういうことだろう?」 眉をよせて考え込む隆と一緒に歩きながら、ふと疑問が浮かび上がる。 隆は電話で水野先生とキスをしたのには「あれには理由がある」と言っていた。 だが、ファミレスで会ったときには「その場の雰囲気で」と言葉を濁した。 「理由」が「雰囲気」だったのだろうか? 何かかみ合っていない気がする。 自分の気にしすぎなのだろうか…… ①「隆、キスした本当の理由は、何?」隆に問いただす。 ②「隆、私に何か隠してない?」遠まわしにたずねる。 ③気にしないことにする。 96 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/22(月) 11 31 08 ID ??? ③気にしないことにする。 隆を見ると真剣に考え込んでいた。 その顔を見たら、ふと浮かんだ疑問が消えていく。 (隆は私のこと好きって言ってくれたし、水野先生とのことは もう深く追求しないことにしよう…) 今、隆が隣に居ることがうれしい。 「そういえば宗像兄、昨日の帰りに宗像弟が お前の事好きだから協力してたとか言ってたよな?」 「あ…」 確かに、昨日偶然会ったときにそんなことを言っていた。 「その、協力ってやつの一環だったんじゃないのか? …その、水野先生が……」 隆は言いにくそうに口ごもる。 「そう、なのかな……?」 隆が言いにくい理由がわかるので愛菜もあいまいに頷く。 (でもどうして水野先生だったんだろう? 先生だって、一郎くんに協力しても何の利益も無いはず…) それどころか、他の先生にばれたら水野先生だって 停職か免職になってしまう危険があった行為だとおもう。 (先生じゃなく、他の女子生徒のほうが協力してもらいやすかったんじゃ…?) ぐるぐると、疑問が渦を巻いてだんだんわけがわからなくなってくる。 愛菜は… ①「……どうして水野先生だったんだろう?」 ②「……なにか変」 ③「……まぁ、いいか」 97 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/25(木) 11 25 11 ID ??? ①「……どうして水野先生だったんだろう?」 愛菜の口からでた言葉に、隆が不思議そうな顔をする。 「放送委員の顧問だからじゃないのか?」 隆は疑問を抱いていないようだ。 「そう、だよね・・・・」 (修二くんも関係してるみたいし、生徒に言っちゃうと噂が広がるとかそういう心配したのかも・・・・) どんなに口止めしても、生徒相手ならどこからか秘密は漏れるものだ。 その点、先生ならその危険性は低い。 放送委員長と放送委員顧問という関係なら、二人きりで話をしていても不自然ではない。 とりあえず、納得したところへ隆がはなしかけてきた。 「なあ、昼休み一緒に食べないか?」 「え、お昼・・・・?」 今日の昼休みと聞いて、修二くんと約束していることを思い出す。 ①「ごめん、先約があるんだ・・・・」 ②「昼は修二くんと約束が・・・」 ③「う~ん、どうしようかな」 98 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/27(土) 22 21 50 ID ??? ①「ごめん、先約があるんだ・・・・」 (修二くんは、何か知っているみたいなんだよね) 隆と一緒だと話してくれないだろう。 「ごめんね。明日は絶対大丈夫だから、明日、一緒に食べよう?」 「急だったもんな。じゃあ、明日な」 疑う様子もなく笑顔で答える。 昨日の電話で、屋上で話しをすることになっていた。 昼休みになり、愛菜は屋上に来た。 ①「私の方が早かったみたいね」 ②「修二くん、もう来ていたんだね」 ③「早めに来たし、ご飯食べとこう」 99 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/28(日) 11 12 40 ID ??? ①「私の方が早かったみたいね」 私は近くの縁に腰掛けて、修二君が来るのを待った。 話って何だろう? どれだけ頭を捻っても、心あたりなんて、昨日の一朗君の件だけ。 でも、冷静に考えてみると、修二君が私のことを好きだなんて、ありえないことだと思う。 特別に仲が良い訳ではないし、たまにちょっかいかけられるのだって、私だけという訳じゃない。 どう考えても、修二君が私を好きだなんて、恥ずかしくなるくらいのひどい自惚れだ。 かといって、わざわざ私に相談事をする理由も思い当たらないし……。 私が首を傾げていると、屋上の扉が開く音がした。 そこに立っていたのは、 ①修二くん ②一朗くん ③水野先生 100 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/28(日) 12 43 00 ID ??? ①修二くん 修二くんは私をみつけるとにこっと笑って歩いてきた。 「ごめん、待たせたかな?」 「ううん、さっき来たばっかりだよ」 「そっか、よかった」 そういって、修二くんはぐるりと周りを見渡した。 「だれも、いないかな?」 「私が来てからはだれもきてないよ」 ずっと扉を気にしていたが、私の後には修二くんだけだ。 「そう、でも、ま、念のためあっちに行こう」 「う、うん(そんなに聞かれたくない話なのかな)?」 周りに人が居ないことを確認してから、修二くんが言った。 「水野に気をつけろ」 水野、と言われて一瞬だれのことかわからなかった。 先生という敬称がついていなかったので水野先生のことだとわかるまで、少し時間がかかる。 聞きたいことはいろいろある。 ①「水野、って水野先生のこと?」 ②「一郎くんと水野先生が話してるのを聞いたよ」 ③「昨日、水野先生と何を話していたの?」 101 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/01/29(月) 11 57 50 ID ??? ②「一郎くんと水野先生が話してるのを聞いたよ」 そのときの様子を修二くんに話す。 なぜ一郎くんは水野先生をけしかけるようなことを話していたのか? 「兄貴がそんな事を……?……そうか……兄貴は……」 少し何か考えていた修二くんの瞳が明るくなる。 修二くんは何かに安心したらしいが、私にはさっぱりわからない。 「…くそっ、何もかも一人でやるつもりか!」 一人で納得して、今度は怒り出す。 私には何がどうなっているのかさっぱりわからない。 まだ聞きたいこともある。 1、「私にもちゃんと説明して!」 2、「修二くん、どうしたの…?」 3、「隆と水野先生がキスしてたのは一郎くんのせいなの?」 102 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/03(土) 19 36 35 ID ??? 3、「隆と水野先生がキスしてたのは一郎くんのせいなの?」 するりと一番聞きたかったことが口からすべりでた。 修二くんは一瞬動きを止め、それから難しい顔で言った。 「キス?水野は隆にキスまでしたのか?」 「う、うん。私みちゃったんだ…」 「そうか…。兄貴のせいかと言われれば半分はそうだろうな」 修二くんはいつもの不誠実な物言いではなく真剣に答えてくれる。 「半分は、水野の独断だとおもう。兄貴は方法までは指示していないだろうから」 そこでチャイムがなった。 昼休みが終わる。 さて、どうしよう? 1.午後の授業をサボってもっと話を聞く。 2.放課後もう少し話を聞かせてほしいと頼む。 3.教室に戻る。 103 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/05(月) 15 32 44 ID ??? 2.放課後もう少し話を聞かせてほしいと頼む。 また聞きたいことはたくさんある。 けれど午後の授業をサボるのは気が引けるので、放課後にもっと話をしたいと修二くんに頼む。 「かまわないよ。俺が答えられることなら、答えてあげる。放課後もここでいいかな?」 「うん」 にこっと修二くんは笑うと、私を促した。 「それじゃ、先に行って。俺は少し間を空けてからもどるから」 「あ、うん。それじゃあ放課後に」 階段を下りていく途中でチャイムがもう一度鳴った。 「やばい、普通に戻ったんじゃ間に合わない…」 1、1学年教室の中を突っ切る 2、特別教室棟を突っ切る 3、あきらめてゆっくり行く 104 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 11 51 05 ID ??? とりあえず 103の1を選択したが、これは廊下を突っ切るっていう解釈でおけ? その方向で進めるけど間違ってたら責任もって書き直すよ。 1、1学年教室の中を突っ切る (1学年の教室を突っ切れば、まだ間に合うかも……) そう思った私は急いで階段を下りて、すぐ先の1学年の教室へと駆け出した。 授業開始前だからなのか廊下に生徒の姿はもうない。 (どうしよう、本当にまずいかも) 焦りだけが募っていく。 「急がなきゃ……」 誰もいないのをいい事にさらにスピードを上げようとしたそのとき、 すぐそばの教室から誰かが出てきた。 「え、あっ」 それは解ったけれど、それだけでどうすることもできない。 (だめ、危ない!お願いよけて!) どんっ 私の心の声は届くことなく(当然と言えば当然だけど)、結局そのままぶつかった。 「わっ」 ぶつかった反動で、私はそのまま床にしりもちをつく。 「いたた……ご、ごめんなさい」 慌てて謝りながら、ぶつかった相手を確かめる。 そこにいたのは…… 1、春樹 2、春樹の親友の男の子 3、全然知らない男の子 105 名前:103[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 12 28 46 ID ??? 104 わかりにくくてスマソ。その解釈でおkです。 1、春樹 「……姉さん?」 春樹のほうはなんとか転ぶのは免れたらしい。 「こんなところで何してるんだよ?」 言いながら手を差し出される。 「ごめん、時間なかったから、ここを突っ切ろうとおもって……っいた…」 春樹に差し出された手を掴んで立ち上がろうとしたが、左足に激痛が走る。 「ひねったのか!?」 あわてて春樹もしゃがみこむ。 「だ、大丈夫……ぅ…ぃたぁ」 「ぜんぜん大丈夫じゃないだろ!?」 そっと触られたが、その瞬間痛みが駆け抜ける。 「保健室いこう姉さん」 春樹が私を立たせてくれる。 立ってしまえば、何とか歩けそうだった。 春樹にだって授業はあるし、保健室はすぐそこだし…どうしよう? 1、「大丈夫、一人で行けるよ」強がる 2、「ごめんね迷惑かけちゃって」素直に連れて行ってもらう 3、「それじゃ、おんぶしていって」茶化す 106 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 12 30 06 ID ??? 3、全然知らない男の子 視線の先にいたのは全然知らない男の子だった。 彼は私のようにしりもちをついたりなんかしていなくて、じっと私を見下ろしている。 無表情なような、だけどどこか驚いたような顔で。 「……………」 何かを呟くように彼の唇がかすかに動く。 だけどその呟きのようなものは私には聞こえない。 「え?」 私が聞き返すと、彼の表情から驚きのようなものがなくなった。 ただ無表情に私を見下ろし続ける。 「……………立てますか、とお聞きしたつもりだったのですが」 彼はしばらく間をおいてそういった。 「あ、はいっ」 私がそう答えると、彼は私に手を差し伸べてくる。 彼に支えられて私は立ち上がった。 「本当にごめんなさい」 「いえ、今後は気をつけてください。では」 彼は私に軽く一礼すると、そのまま去っていった。 (そうだ、私も急がないと!) 自分も急いでいたのを思い出し、駆け出そうとした時つま先に何かが当たった。 「誰かの落し物かな……」 そこには生徒手帳が落ちていた。 確認のためにちょっとだけ中を見てみる。 「えっと、なになに…… 御門、冬馬、くん?」 そこに貼ってある顔写真はさっきぶつかった彼のものだ。 もしかしたらさっきぶつかったときに落としてしまったのかもしれない。 「うーん、どうしよう?」 ①なくしたことに気がついたら困るかも。すぐに追いかけて届ける ②気にはなるけど授業が優先。とりあえず届けるのは後回し。 ③必ずしも自分が届ける必要性はない。誰かに頼んで渡してもらう。 107 名前:106[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 12 33 16 ID ??? スマソ。被ってしまった。 先に書いた 105が優先だろうから 106は忘れて。 105の続きドゾー↓ 108 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 14 22 05 ID ??? もしかしてかぶったのって今回が初めて? これからかぶったときも前者優先でおk? もしも 106の展開だったら新キャラ出てたんだな。ちょっと勿体ない気がス。 109 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 14 51 36 ID ??? 被ったら最初のでいいんでないかな? でも、もったいないので、新キャラ生かすように話しを進めるw 1、「大丈夫、一人で行けるよ」強がる 春樹だってこれから授業のはずだ。 私のせいで遅刻なんてさせられない。 「でも……」 春樹は心配そうに私を見たが、私は努めて平静を装う。 「大丈夫大丈夫、保健室すぐそこだし、春樹遅刻しないように行って」 「……そこまでいうなら」 春樹は私を気にしながら、歩いていった。 それを見送ってから保健室へ向かって歩く。 「あぁ~、でも痛い、失敗したかなぁ…」 大丈夫だと思ったが2,3歩歩いただけで、激痛が走る。 壁にすがりながら、何とか歩いていると、急に体を支えられた。 「え!?」 驚いてみると、見たこともない男の子。 無表情に私を見下ろしている。 無言のまま、その男の子は保健室に歩き出す。 そのまま引きずられるように、私は保健室にたどり着いた。 「先生、けが人です」 その男の子が保健室の中に向かって言う。 「あら?御門くん?と……大堂さん?」 保健の先生が男の子を見て、それから私を見る。 御門くんと呼ばれた男の子は、私を先生に預けるとすぐに出て行ってしまった。 「あらあら…、これは結構はれるわね。少し安静にしておいたほうが良いわ」 私の足を見て先生が言う。 1.保健室で休む 2.授業に戻る 3.さっきの男の子について聞く 110 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/06(火) 20 47 51 ID ??? 1.保健室で休む そのまま保健室で休ませてもらうことにする。 「それじゃ先生、あなたの教室まで行って来るわね。先生に伝えてくるから」 「あ、はい、ありがとうございます」 「ちょっと、ひどくひねっているから、熱が上がるかもしれないわ。寝ていてもいいわよ。 あ、暇なら、この本読んでてもいいし。図書室から借りたものなんだけどね」 そういって、先生は本を渡してくれる。 「そうそう、ちょっと職員室よってきたりするから、少し遅くなるかも知れないけれど、ちゃんと安静にしてるのよ?」 「はい、わかりました」 先生が保健室を出て行く。 ひねった左足の熱が全身に回ってきているようでだるい。 静かになった保健室で私はすることもなく… 1.寝る。 2.ぼーっと窓の外を眺める 3.借りた本 シ○トン動物記を読む 111 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 10 52 33 ID ??? 2.ぼーっと窓の外を眺める 私は窓際のベッドに腰掛けたままなんとなく外を眺めた。 校庭では体育の授業が行われている。 どれくらいボーっとしていたのか、ふと時計を見るともうそろそろ授業が終わる時間だった。 「あ、もうこんな時間だ、…先生帰ってこないな」 そのとき、ふと視線を感じて、窓の外を見る。 校庭の隅、少しはなれたところから、私を見ている人がいる。 それは… 1.隆 2.御門くん 3.水野先生 112 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/07(水) 21 34 49 ID ??? 2.御門くん さっき、保健室までつれてきてくれた男の子だった。 (確か、御門くんっていったっけ……) その男の子……御門君は、制服姿のままそこに佇んでいる。 私が見ていることに気がついていないのか。 それとも……気がついていて、なおそうしているのか。 御門くんは私を見つめ続けていた。 1.窓を開けて声をかける 2.見つめ返す 3.視線をさえぎるようにカーテンを閉める 113 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 01 39 37 ID ??? 2.見つめ返す まだチャイムも鳴っていないのに御門君は校庭でなにをやっているんだろう? 体育の授業の見学にしては不自然だし、かといって参加するわけでもない。 サボるにしたって、目立ちすぎるし。まじめそうな外見で実は問題児だったりして……。 そんな他愛のないことを考えていると、ふと御門君と目が合った。 ジッと私に見つめられていることに気付いたのか、無愛想にきびすを返すと、御門君はその場から去ってしまった。 あ……そういえば御門君にお礼言ってないな。 一年生だったら、春樹が知っているかもしれない。帰ったら訊いてみようかな。 そんな事を考えながら、傍らの本をぺらぺらとめくっ 授業の終わりを告げるチャイムと同時に、ガラッとドアが開いた。 「ちょっと! 大怪我したって大丈夫なの?」 「香織……ちゃん」 私を見るなり飛びつくようにして、突然、香織ちゃんが近づいてきた。 「足首ひねったって、ちゃんと歩けるの?」 「うん……た、たぶん」 「熱もあるっていうじゃない。私が送ってってあげるわよ」 「大丈夫……平気」 「もう……本当に心配したのよ」 そう言いながらも、少し安心したのか香織ちゃんの顔に笑顔が戻っていた。 「ありがとう、香織ちゃん。でも本当にたいした事でもないから安心して。ホームルームまでにはちゃんと戻るから」 「ダメよ。先生から帰宅の許可も下りているんだから、愛菜は大人しく帰りなさい。わかった?」 放課後には修二君との約束があるけど、どうしよう? 1.素直に帰宅する 2.保健室に残る 3.教室に戻る 114 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 09 15 15 ID ??? 2.保健室に残る 香織ちゃんの気遣いはうれしいけれど、修二くんとの約束がある。 でも、香織ちゃんを心配させるのも心苦しいので、保健室で休んでいることにする。 「ありがとう、でももう少し休んでるね」 香織ちゃんはちょっと頬を膨らませると、ため息をついた。 「仕方ないわね。次の授業終わったら鞄持ってきてあげるから、おとなしくしてるのよ?」 「わかってるって」 何度も念を押しながら香織ちゃんが出て行く。 次の授業のチャイムが鳴った。保健室の先生はまだ戻ってこない。 私はベッドに横になった。 …いつの間にか眠っていたらしい。 ふと、額にひんやりしたものが触れて目が覚めた。 「あ、姉さん、起きた?」 目を開けると、春樹がいた。 「あれ?春樹?」 「足は大丈夫?さっきまで長谷川先輩が居たんだけど、姉さん寝てたから鞄置いていったよ」 「香織ちゃん来てたんだ…、起こしてくれればよかったのに」 私は時計を見て、あわてて飛び起きる。 修二君との約束の時間が過ぎている。 「姉さん?どうしたの?」 急に起き上がった私にびっくりした春樹が私を押しとどめようとする。 「…いったぁ……」 床に足をつけたとたん、痛みが走った。 「急に動くからだよ、仕方ないなあ姉さんは」 あきれたように春樹が言う。 どうしよう… ①春樹に屋上へ連れて行ってもらう。 ②春樹に修二君を連れてきてもらう。 ③がんばって一人で屋上へ行く。 115 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 09 53 47 ID ??? ②春樹に修二君を連れてきてもらう。 「あのね、放課後に修二君と会う約束してたの」 「修二先輩と?」 訝しげに問われた。 「そう。時間すぎちゃったから、今も待ち合わせの屋上で待っているはずだから会いにいかないと…いたっ」 足をベットからおろしたらまたしても痛みが走った。 「そんな足で何やってんだよ。あーもう、先輩をこっちに連れてくるから、姉さんはおとなしくしてて」 そういいおいて保健室を出ていった。 ほっとしたが、よく考えると春樹と一緒だと修二に話しが聞けないのではないだろうか? (だけど、この足だと寄り道なんて春樹が許さないだろうな) 春樹のこと、どうしよう… ①修二君に判断してもらおう。 ②私に関係あることだし家族の春樹にも聞いてもらおう。 ③今日は事情を話して家に帰る 116 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 12 25 12 ID ??? ②私に関係あることだし家族の春樹にも聞いてもらおう。 私だけでは煮詰まってしまいそうだし、春樹は信頼できる。 修二君にお願いして、一緒に話を聞いてもらえるようにしようと思ったとき。 廊下を走る音が近づいてきた。 「愛菜ちゃん!怪我したってほんと?」 息を切らせて保健室に入ってきたのは修二君。 その少しあとに、春樹がこちらも息を切らせて入ってくる。 「修二先輩、さすが、足、はや……」 「二人とも、どうしたの…?」 「俺も何がなんだか…、姉さんが怪我をして保健室にって言ったら、血相変えて走って行って…」 「誰かにやられたの!?」 私の言葉も春樹の言葉も修二君の耳には届いていないみたいだった。 「ちがうって、私が不注意で春樹にぶつかっちゃったの、ね?」 最後は春樹に同意を求める。 「うん、姉さん廊下走ってたから…」 「な、なんだ、そうか」 ホッとしたように修二君は笑う。 「それで、話のことなんだけど、春樹も一緒に聞いてもいい?春樹は家族だし」 修二君に頼んでみると、修二君はじっと春樹を見つめた。 「……姉さん変なことに巻き込まれてるのか?」 それを見つめ返しながら、まじめな顔で春樹が問う。 「どうしてそう思う?」 「さっき、修二先輩が「誰かにやられたの?」って言ってたから」 それに、修二君は苦笑する。 「あー、俺としたことが、失態だわ。まあ、いいや君は信用できそうだし。で、何が聞きたい?」 聞きたいことは… 1、水野先生のこと 2、一郎君のこと 3、隆のこと 117 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 21 52 02 ID ??? 2、水野先生のこと 水野先生とことが、やっぱり気になる。 一郎君と人目を盗んでコソコソと話し合ったり、修二君を誘惑してみたりする。 目的は何? そして、隆まで誘惑してどうしようっていうの? 「水野先生の事を教えて……」 語尾が震えてしまった。私、緊張してるんだ。 「水野か。水野の事を話す前に兄貴と水野の関係を話しておいたほうがいいか」 そういいながら、修二君はベッドのそばにあるパイプ椅子に腰掛けた。 「一郎先輩と水野先生? どういう事だよ、一体……」 春樹はまったく話が見えていないようだ。 無理もないか。春樹は何も知らないんだし。 「ああ……弟君はとりあえず適当に聞いといて」 修二君は片手をヒラヒラさせながら言った。 「……」 春樹は馬鹿されたと思ったのか、何も答えず、ムッとしている。 やっぱり、こういう仕草が軽薄にみえちゃうんだろうな。実は親切なところもあるのに、損してるよ。 だけど、一郎君と水野先生の関係って……何だろう。 「昼休みに兄貴と水野が二人きりでいる所を放送部で見かけたって言ってたよな? 愛菜ちゃんは、 二人の様子について……どう感じた?」 えっと…… ①恋人同士のように親しくみえた ②一郎君が先生を利用しているようにみえた ③先生が一郎君を利用しているようにみえた 118 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/08(木) 22 56 00 ID ??? ②一郎君が先生を利用しているようにみえた どちらかというと、一郎君が水野先生をけしかけてる、利用してるみたいだった。 見た感じはそうだった。でもすぐにその場を離れてしまったので自信はない。 「うん、それアタリ。「兄貴は、水野を利用してる。でも、水野は兄貴から聞き出したいことがある」 修二君はそこで言葉を切って、じっと私を見つめた。 「いってみれば、水野と兄貴は化かしあいをしてるんだ。今は、ね」 少しの間をおいて、言葉を続ける。 「そして、それは俺も同じ。水野は俺からも聞きだしたいことがある」 修二君は私と春樹を順番に見ていった。 「兄貴はそれをネタに水野を利用して、俺は水野を拒絶した」 小さく笑って、修二君はまたじっと私を見る。 「水野は探し物をしている。とても、とても見つけにくいものだ」 「その情報を、一郎先輩と、修二先輩がもっているということですか?」 それまで、黙って聞いていた春樹が口を挟む。 「ん~、情報そのものじゃないんだけどね。たぶん情報へとつながる…カギ、かな?」 修二君はしっくり来る言葉を捜すように視線をさまよわせる。 「さて、そろそろ下校の時間だ、最後に聴きたいことはある?」 時計を見て、修二君が言った。時間的に今日聞けるのは後一つだけだ。 1、「水野先生が探しているものは何?」 2、「一郎君の目的はなに?」 3、「修二君はどうしてそれを私に教えてくれるの?」 119 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 02 29 11 ID ??? 1、「水野先生が探しているものは何?」 私は最後の質問を修二君にぶつけた。 水野先生が探しているものは、とても見つけにくいもの―― それを知る手がかりを一郎君と修二君が握っている―― 水野先生の探しているものを知れば、水野先生と隆の事も分かるかもしれない。 「水野の探しているものは、ごく一部の人にしかないものだ。それは水野を含む普通の人には見えない。 だけど……兄貴と俺は分かる。それが俺たち双子の力だから」 力って、何? もう、わけが分からないよ。 「じゃあ、水野先生は一郎君と修二君を利用して、それを探そうとしているって事?」 「まぁ、そんなに上手くいかないから、逆に、兄貴に利用されてるんだけどな」 そういいながら、薄い笑みを浮かべた。 とても優しくて、冷たい表情。 その顔が一郎君とダブって見えて、やっぱり双子なんだと思い知らされる。 「さて、そろそろ時間だ」 そう言って、修二君はパイプ椅子からゆっくり立ち上がった。 「ちょっと、待て! そんな話じゃ、姉さんが巻き込まれている理由にはならないだろっ」 そう言って、春樹は修二君の前に立ち塞がった。 「春樹……」 修二君はやれやれといった表情の後、ため息を吐くように漏らした。 「愛菜ちゃんも部外者じゃないって事くらい、気付けよ……」 そして、修二君は春樹を睨みつけると、私だけに何か耳打ちをして、保健室を去っていった。 今、修二君は私に何って言っていたのかな…… ①「湯野宮隆の力が利用されようとしている。気をつけろ」 ②「湯野宮隆は水野の手駒だ。気をつけろ」 ③「湯野宮隆も愛菜ちゃんの力を狙っている。気をつけろ」 120 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 09 27 31 ID ??? ③「湯野宮隆も愛菜ちゃんの力を狙っている。気をつけろ」 (隆が私をねらっている?) 不意に耳打ちされた言葉に、呆然とする。 隆は幼馴染だ。小さいときから知っている。 でもそんなそぶりは一切ない。 でも、修二君がウソをついているようにも見えない。 修二君の言葉をすべて信じるとしたら……。 (私、もしかしてすごく大変なことをしたのかも…?) 修二君の言葉をすべて正しいものだとするなら、私は隆に一郎君と水野先生のつながりを話してしまった。 でも、修二君が私にウソをついている可能性もある。 「……姉さん」 呼ばれてハッと顔を上げる。心配そうな春樹。 「あ、ご、ごめん…。ちょっと考え事してた」 「うん……帰ろう、姉さん」 そう言って春樹が私を支えてくれる。 保健室を出ると、向こうから隆が走ってきた。 「愛菜!怪我をしたって!?」 私は思わず、春樹の制服をぎゅっと掴む。 「姉さん?」 一瞬不思議そうな顔をした春樹は、次の瞬間何かに気づいたように険しい顔になる。 「愛菜、送っていくよ」 隆が言う。どうしよう 1.隆に送ってもらう 2.春樹に送ってもらう 3.3人で一緒に帰る 121 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 10 05 40 ID ??? 3.3人で一緒に帰る さっき修二くんが言った言葉は気になるけれど……。 仮に修二くんの言葉が本当であったとしても、今いきなり態度を変えたりしたら怪しまれてしまうかもしれない。 ……それに、何より私の中にまだ隆を信じたいって気持ちがある。 だからと言って、完全に信じられるかといえば……酷い話だけど、そういうわけじゃない。 今はまだ、何もわからなすぎる。 私は今だ握り締めたままの春樹の制服をじっと見つめる。 「……」 何かに気がついたのか……春樹はこちらに視線を向けた。 そして僅かに頷く。 (ごめんね、頼りないお姉ちゃんで……) 都合のいいときにだけ春樹を頼ってしまう自分を恨めしく思う。 内心で春樹に謝りながら、私はそっと頷き返した。 「じゃ、じゃあ、3人で帰ろうよ。ね?」 顔を上げて私はそういった。 「あ、ああ」 「わかった」 私の言葉に二人はそれぞれ了承してくれた。 ……隆は戸惑うように、春樹はその言葉がわかっていたかのように。 そうして、帰ることにはなったものの。 「「「………………」」」 保健室を出てからというもの、誰も一言も話さない。 なんとなく、隆に支えてもらうのも、春樹に支えてもらうのも悪い気がしてしまって、私は自分で歩いていた。 とはいえ、歩みはまさに亀のような速度。 二人が気を使ってくれるのはわかるんだけど……だからこそ、余計に沈黙が辛く長く感じる。 ①隆に話しかける ②春樹に話しかける ③何もいえなくてなんとなくあたりの景色に目をやる 122 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 10 52 13 ID ??? ①隆に話しかける なんとなく沈黙に耐え切れなくなって、隆に話しかける。何も話さないのは不自然だ。 「そういえば、隆」 「ん?なんだ?」 「どこで私が怪我したって聞いてきたの?」 とりあえず、当たり障りのない話題を振る。 (香織ちゃんか、クラスの誰かだとはおもうけど……) 半ば答えの分かっている質問だった。 「どこって……………クラスのヤツだよ。迎えに行ったら居ないしさ」 (まぁ、そうだよね) 予想通りの言葉が返ってくる。 「……にしては、遅かったですね、隆さん」 唐突に春樹が言う。言葉にわずかな棘がある。 「え?」 春樹の言うことが分からず、私は春樹を見る。 「迎えに行ったって、もう下校時間ギリギリですよ?」 (あっ!) 私は反射的に隆を見る。 そう、遅すぎだ。 私を迎えにきてクラスの誰かに私の怪我のことを聞いたとしたら、保健室に来るのはもっと前。そうでなければおかしい。 私は委員会がない限り、すぐに帰宅するのが普通なのだから、わざわざ下校時間近くになって迎えに行くなんて、おかしい。 幼馴染の隆がそれを知らないわけはない。 「それは……」 隆が言いよどむ。 疑問が頭の中で渦巻く。足から発生した熱が、全身に回ってボーっとする。 「姉さん大丈夫?熱あがってるんじゃない?タクシー拾おうか?」 見かねた春樹が、私を支える。 1、タクシーを拾って帰る 2、このまま歩いて帰る 3、少しどこかで休んでいく 123 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 19 54 17 ID ??? 1、タクシーを拾って帰る 頭のなかがぐるぐるする。本格的に熱が上がってきたみたいだ。 疑問だけどんどん湧いてきて、答えが全然でてこない。 「ごめん、春樹……おねがい」 一人で歩いているのもつらくなっていた。そのまま春樹にすがる。 「愛菜…」 「隆さんすみません、このまま帰りますのでここで」 隆が何かを言いかけたが、ちょうど来たタクシーをとめた春樹が言葉をさえぎった。 「姉さん大丈夫?」 「うん、ごめん……」 ぼんやりする意識で、春樹に謝る。私は本当に春樹に頼りっぱなしだ。 タクシーに乗り、春樹が行き先を告げる。 「姉さん、つらかったら俺によりかかってていいから」 「うん……」 別れ際隆を見ることができなかった。声をかけることもできなかった。 (信じたいのに……) ぼんやりとしたまま、家に帰り着き、春樹に助けられながら部屋へとたどり着く。 そのまま、着替えてベッドに倒れこんだ。 いろいろなことがありすぎて、すぐには眠れそうにない。 今日は休んだほうがいいのはわかっているけれど… 1.自分で今日聞いたことを整理する。 2.春樹を呼んで一緒に考える。 3.無理をしてでも寝る。 124 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 20 58 47 ID ??? 本当はたくさん考えたいこと……考えなきゃいけないことはあった。 だけど、その「考えなきゃいけないこと」は次々と浮かんでは消えていく。 ぼんやりとして、何一つまとまってはくれない。 「私、どうしたらいいのかな……? これから、どうなるのかな……?」 ふと、不安になって呟く。 自分以外誰もいない部屋。 答えなんて、帰ってくるはずも無かった。 (とりあえず、無理してでも寝なきゃ……。 これ以上みんなに心配をかけたくないもの) そう思った私は、布団を頭から被り目を閉じる。 やがて、だんだんと薄れていく意識の中で私は…… 1、どこかから物音がするのを聞いた気がした。 2、今日はどんな夢を見るのだろうと思った。 3、今日一日のことを思い出していた。 125 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 21 00 32 ID ??? ごめん、選択抜けてた。 124は 123の3.無理をしてでも寝る。 を選択。 では、 124の続きをどうぞよろしく。 126 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/09(金) 21 40 25 ID ??? 2、今日はどんな夢を見るのだろうと思った。 私は使えない予知夢をみることがある。 あまり覚えていないし、今朝みたいに夢の名残として感情だけが残ることの方が多い。 だけど、現実になって初めて、「これはどこかで見たことがある」と何度も感じることがあった。 デジャビュっていうんだっけ……こういうの。 いい夢だといいな。 今朝みたいな悲しい気分にならない楽しい夢を見たい。 だけど、まったく思い通りにならないから本当に困る。 こんな使えない力なんて、いっそ無くなれば楽なのに。 こんなチカラ―― そういえば、修二君が私に耳打ちした時、「湯野宮隆も愛菜ちゃんの力を狙っている」って言っていた。 もしかして、私の力ってこの予知夢の事なのかな? まさかね。よく覚えてもいない私の予知夢じゃ、馬券の一つだって当てることは出来ない。 それに、修二君が本当の事を言っているとは限らないのだ。 本格的に意識が薄れていく…… そこで見た夢は 1.私と隆がキスをしている夢 2..私と修二がキスをしている夢 3..私と春樹がキスをしている夢 127 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/10(土) 08 08 01 ID ??? 2..私と修二がキスをしている夢 気がつくと目の前に修二くんの顔。 驚いて目を見開く私。 キスをしている、と気づくまで一瞬の間があり……、気づいた時には修二くんは離れていった。 修二が何かを言う。 けれどその声は私には聞こえない。 (何?何をいってるの?) 聞き取ろうと意識を凝らす。 「……なんだ、ありがとう愛菜ちゃん」 やっと聞こえた声、胸が苦しくなるくらい綺麗に微笑む修二くん。 修二くんは私に背を向けて歩いていってしまう。 追いかけようと思って……… 「あ……」 目が覚めた。 ぼんやりと明るい部屋の中。 そろそろ起きないといけない。 何か夢を見た気がする、少し胸が痛い。 「なんだったんだろう……?」 体を起こし、とりあえず着替えようと床に足をつけ…… 「いったぁ……そういえば、捻挫してたんだ……」 熱は下がっているが、これでは歩くのも一苦労だ。 どうしよう…? ①学校を休む ②病院へ行ってから学校へ行く ③学校へ直行する 128 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 10 40 12 ID ??? ②病院へ行ってから学校へ行く 熱も下がっているし、一応病院へ行ってから学校へ行こうと決める。 (そろそろ学園祭だし、休んでられないもんね) 色々気になることは多くて不安だけれど、放送委員としての準備とクラスでの出し物の準備もある。 この先学園祭に向けてどんどん忙しくなるんだ。 制服に着替え終わると同時にノックの音。 「姉さん起きてる?」 「春樹?起きてるよ」 「入るよ」 「うん」 春樹は私が制服に着替えていることに驚いたようだ。 「姉さん、今日は休んだほうがよくない?」 心配そうに足を見る。 「大丈夫だよ。それに学園祭も近くて準備も忙しくなるしね。大丈夫、ちゃんと病院にいってから学校行くから」 「そう…それなら……。ところで姉さんのクラスは学園祭なにするの?」 1、喫茶店 2、お化け屋敷 3、町の歴史展 129 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 11 19 25 ID ??? 2、お化け屋敷 「お化け屋敷だよ」 私が答えると、春樹が悪戯っぽく笑った。 「……ふーん。姉さん、大丈夫なの?結構怖がりじゃなかったっけ?」 「大丈夫だよ!私、お客さんじゃないんだから!」 からかうようなその言葉に、ちょっとムッとしながら言い返す。 すると、なぜか春樹はやさしく笑った。 「ごめんごめん。 ……じゃあ、下で朝食の用意してくるから。準備できたら下りてきて」 それだけ言って部屋を出て行った。 「もう……」 春樹が出て行った後、大きくため息をついた。 呆れたような言葉とは裏腹に、私はなんだか明るい気持ちになれていた。 (どうしてかな……) 知らなかった。 何気ないやり取りで、こんなにも救われるなんて。 「ありがとう、春樹……」 一人呟く。 聞こえないとはわかっていたけれど、言わずにはいられなかった。 階段を下りてリビングへ行くと、春樹はもう座って待っていた。 「ああ、来た。歩くの辛いかなって思って、タクシー呼んでおいたから。 来るまでに朝食済ませよう。さ、座って」 春樹に促されて、席に着く。 朝食はトースト、ハムエッグ、サラダ。それとスープ。 「「いただきます」」 二人で挨拶をしてから、朝食に手をつけようとして――― (……そうだ、春樹に話したいことがあったんだっけ) 不意に、そんなことを思い出す。 「……あのね、春樹」 手を止めて春樹に話しかける。 「ん?何、姉さん?」 春樹も食事の手を止めて、こちらを見た。 ①「隆のことなんだけど……」 ②「昨日も予知夢を見たよ」 ③「御門君って男の子、知ってる?」 130 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 11 49 01 ID ??? ③「御門君って男の子、知ってる?」 「御門?うーん……」 私に言われて、春樹が考えるようなしぐさをする。 「……ごめん、俺は知らないな。 1年のヤツ?」 考えこんだ様子のまま、申し訳なさそうに春樹が言ってきた。 そして逆に問われる。 「うん、たぶん……」 そう答えたものの、彼が1年生なのかはわからない。 ただ、1年生の教室の近くであったからそうなのかと思っただけ。 (お礼言いたかったし、気になることもあったから、会いたかったんだけど……。 御門君のこと、全然わからないや……) 素性も、保健室の外からのあの行動も。 御門君についてもまた、謎が多かった。 (なんて、1回……2回かな?会っただけだし、当然か) 「何?何かあったの?」 春樹が訝しげに聞いてくる。 昨日のこともあるから、余計に心配しているのかもしれない。 私は…… ①素直に話す ②ごまかす ③話をそらす 131 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 12 04 22 ID ??? ②ごまかす とりあえず保健室へ運んでもらったことだけ話し、校庭で見たことは伏せた。 「そう……俺が知らないだけかもしれない。他のやつに聞いてみるよ」 春樹はそういいながら、まだ自分の記憶を探っているみたいだった。 ぴんぽーん そこでチャイムが鳴る。 「あ、タクシーがきたのかな?姉さん準備して、ちょっと待っててもらうように言ってくるから」 「わかった」 春樹が玄関へ向かう。 私もなるべく急いでかばんを取りに行き、玄関へ向かう。 「ですから、姉さんは病院に……」 玄関へ行くと春樹の硬い声が聞こえた。 「春樹?どうしたの?」 「あ、愛菜!」 「……隆」 (そうだ、一応付き合ってるんだし、昨日も来たんだから、今日だって迎えに来て当然よね…) 「あ、あの、よ、足、大丈夫か?」 「うん、大丈夫。一応これから病院にいくし…」 「それじゃ、俺がついていくよ」 「え!?」 突然の隆の申し出に驚く。 「隆さんが付き添うのはおかしいですよ。家族でもないんですから病院の人が変に思います。 付き添いが必要なら俺が付き添いますから大丈夫です」 すかさず春樹が口を挟む。 プップッー ちょうどそこでタクシーが到着した。 どうしよう… 1、隆につきそってもらう 2、春樹につきそってもらう 3、一人で行く 132 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 13 48 30 ID ??? 3、一人で行く 「もぅ、二人とも、私だって子供じゃないんだから、一人でいけるって」 微妙な雰囲気の二人に、つとめて明るく笑う。 「私に付き合う口実で、サボろうとしてるんでしょ?まったくもぅ」 やれやれと、肩をすくめてみせて靴を履く。 「それじゃ、二人とも遅刻しないようにね?」 「うん、姉さんも、無理しないで痛かったら休むんだよ?」 「…………」 「はいはい」 春樹が苦笑ながら言う。隆は何かをいいたそうだったが、無言で頷いた。 タクシーのドアが閉まる。 行き先を告げ、走り出したタクシーの中で思わずため息をつく。 隆へどう接していいのかわからない。 修二くんの言った事が本当かどうかわからない今、態度を変えるのはおかしいことだとわかってはいるけれど…。 診察を終え、会計を済ませる。 湿布を張り替えてもらい、万が一また熱が上がったときのための薬ももらった。 病院を出ようとして、ふと視界の先に見知った顔。 それは… ①一郎くん ②御門くん ③厳格だが生徒思いの近藤先生 133 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 17 03 23 ID ??? ②御門くん 御門くんだった。 「……」 玄関の柱に背を預けて、時間を確認している。 (……何してるのかな?) 疑問に思いながらじっと見ていると、不意にその視線がこちらを向く。 (わっ!) 私は思わず見えないように隠れてしまった。 御門くんは見回すようにこちらを眺めていたが、やがて視線を手元に戻す。 (はぁ……よかった) ほっと、息をつく。 (って、よく考えたら、別に隠れる必要なかったんだよね……) ふとその事実に気がつき、なんとなく恥ずかしくなる。 だけど、なんとなく出て行くタイミングがつかめいまま、私はそのまま御門くんの様子を見ることにした。 (それにしても、どうしてこんなところにいるんだろう?今日は普通に学校のはずなのに) しばらく様子を伺っていると、今度は胸元から何か小さなものを取り出した。 そして、それを手の平に乗せてじっとみつめている。 「……」 その顔は相変わらず無表情のまま。 なのに、なぜだろう。御門くんから何かの感情が伝わってきた気がして。 ……どこか気になった。 (何、見てるんだろう……?) 1、話しかける 2、そっと近づく 3、気にせず学校へと向かう 134 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 18 26 48 ID ??? 1、話しかける よく考えれば昨日のお礼を言ういい機会だ。 「あ、あの、御門くん?」 思い切って声をかけながら近づく。 私の呼びかけに顔を上げた御門くんは相変わらず無表情だ。 「あ、あの昨日保健室に連れて行ってもらった大堂愛菜です。昨日はありがとう」 「………」 (覚えてない、ってことはないよね、昨日のことだし…… あ、でも少しの間だったし、向き合ってたわけでもないから、顔は覚えてないのかも…) 「……いえ、足の具合はいかがですか?」 少しの沈黙の後、感情の伺えない声で御門くん。 「あ、うん、湿布もお薬ももらったし、大丈夫。まだ痛いけどね」 「そうですか、それは良かったです」 そういいながら、御門くんは持っていたものを胸ポケットにしまう。 (何だろう?金属?) ちらりと見えたものはなにか金属の破片のように見えた。 そのまま会話が途切れる。 えーっと… ①「ここで何をしているの?」 ②「今のはなに?」 ③「今から学校へ行くんだけど、良ければ一緒に行かない?」 135 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 21 59 32 ID ??? ①「ここで何をしているの?」 金属片の仕舞われたポケットを見つめながら、私は尋ねた。 「…………」 御門くんは無表情のまま、何も答えず私の顔を見つめている。 「学校はどうしたの?」 「…………」 御門くんは何も言わず、無表情にこちらをジッと見ている。 「どうしてこんな所にいるの? 教えて」 ポケットに仕舞われた金属片。 保健室で見た光景。 隠し事をしているような態度。 「どうしてここにいるの? ここで何をしているの? お願い、教えて」 助けてくれた御門くんを信じたい。 だから私は、心の中に生まれた『監視されているかもしれない』という疑念を振り払うために尋ね続けた。 それでも御門くんはずっと黙ったまま、私を見つめ続けている。 「答えて!」 取り乱した私を見て、御門くんがようやく重い口を開いた。 「…………わかりました」 そう言うと突然、御門くんはネクタイに手を掛け、シュルッという音をさせながら一気に外した。 ブレザーを手早く脱ぎ捨て、真っ白なシャツのボタンを外していく。 「なっ、何?」 病院の前で何を始める気なの!? 自動ドアから出てきたおばさんが奇異の目で私たちを見ている。 「まっ、待って!」 私は御門くんを止めようと必死になってその腕をつかんだ。 上半身が露わになった御門くん。 そこで私が見たものは…… ①肩に巻かれた包帯 ②体に埋め込まれた金属片 ③文化祭用のボディペイント 136 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/12(月) 22 15 11 ID ??? ①肩に巻かれた包帯 「今朝、自転車とぶつかってしまって肩を痛めたので病院へ来ました」 淡々と話す御門くん。 「あ、そう、なんだ…」 私が納得したと確認すると、何事もなかったかのように制服を着る。 (そう、だよね。私の考えすぎ…、病院だもん怪我とか病気の治療に来てるに決まってるじゃない……) 取り乱してしまったことにいまさらながら恥ずかしくなる。 「ご、ごめんなさい」 御門くんは何も言わず、じっと私を見ている。 昨日も校庭から私を見ていた。 その視線に落ち着かなくなる… 1、「わ、私の顔に何かついてる?」 2、「昨日も見てたよね?」 3、「御門くんは一年生?」 137 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 01 29 55 ID ??? 2、「昨日も見てたよね?」 「昨日も私の事を見ていたよね?」 私はどうしても昨日の不可解な行動が気になって思わず尋ねた。 「はい。あなたが廊下で怪我をしている姿を見かけました」 御門くんは冷静な口調で答えた。 「そうじゃないの。えっと……」 「以前にもお会したことがありましたか?」 「昨日、初めて会ったよ」 「いつ、どこで、何を見ていたのかもう一度、明確に教えてください」 淡々と御門くんは言った。 「昨日、この怪我の後にね……保健室から制服を着たまま校庭にいる御門くんを見かけたんだ。授業中だったから、少し気になって」 あの時、お互いの目が合っていたような気がする。確か、御門くんは私の視線に気付いて去っていったんだ。 「昨日は、五時限目も六時限目も教室で授業を受けていました。校庭には行ってません」 有無を言わせない、はっきりとした言い方だ。 「……そうなんだ。私の見間違いだったのかもしれないよ。ありがとう」 確かに御門くんだったような気がするけど、本人が否定しているのならきっと私の勘違いだったんだろう。 それにしても、御門くんって…… ①少し変っているな ②何を考えているか分からないな ③すごく真面目だな 138 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 09 18 27 ID ??? ②何を考えているか分からないな 表情に変化が乏しいのが一番の原因だと思う。 声にも感情が入っていなくて淡々としているし…。 人をじっと見るのはクセなのかな? チャラリ~ン 「あ…」 私の鞄の中から音がする。 メール着信の音だ。 (あぶない、あぶない、マナーモードにし忘れてた…) 携帯電話を取り出す。 「では、これで」 「えっ?」 メールを確認しようと携帯電話に視線を落としたところで、御門くんは行ってしまった。 (誰かを待っているみたいだったのに……?) 疑問に思いながらメールをチェックする。 メールの送信者は… ①春樹 ②隆 ③知らないアドレス 139 名前:まとめ[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 10 30 28 ID ??? <現在の登場人物> 大堂愛菜:高校二年の主人公 。予知夢を見る(但し起きると内容は忘れている) 大堂春樹:主人公の義理の弟(高1)。好きな人がいるらしい。 主人公よりしっかりものなので兄にみられがち。 湯野宮隆:主人公の幼馴染で愛菜の彼氏。愛菜を狙っている? 宗像一郎:放送委員の委員長。水野を利用している。「見える力」がある 宗像修二:一郎の双子の弟でテニス部エース。一郎と同じく「見える力」をもっている。 他人を見下しているところがあり不誠実とおもわれているが、愛菜にはなぜか協力的。 近藤先生:厳格だが生徒思いの男性教師 水野先生:隆とキスしていた音楽教師。一郎に接近してなにかを探しているらしい。 長谷川香織:愛菜の親友 御門冬馬:表情の変化に乏しい。言葉遣いは丁寧。 一人称・呼び方 愛菜:一人称→私。春樹と隆は呼び捨て、その他キャラは君付け 春樹:一人称→俺。愛菜に対しては姉さん、隆はさん付け 隆 :一人称→俺。愛菜に対してはお前 一郎:一人称→俺。修二は呼び捨て、他は苗字 修二:一人称→俺。愛菜に対しては愛菜ちゃん、一郎に対しては兄貴 香織:一人称→私。愛菜や隆に対して呼び捨て 冬馬:一人称→僕。 <未実現の夢> ① 91 水野先生と隆が楽しそうに話をしている夢 ② 127 私と修二がキスをしている夢 今までのあらすじ 愛名は隆と水野のキスを見て以来隆と疎遠になっていた。 ひょんなことから、隆と水野の関係に一郎が何か関わっているらしいことを知る。 隆からの呼び出しに応じ告白され、水野との事はこれ以上詮索しないと決め付き合い始める愛菜。 しかし修二から、水野と隆は愛菜を狙っていると告げられショックを受ける。 修二の話の正否が分からず、隆への態度も決めかねる愛菜。 不注意で足を怪我した愛名は病院へ行き、保健室へ運んでくれた御門に会う。 不可解な行動に疑問を持ちつつ、メールを確認する愛菜。 そこには……? では 138の続きをどうぞ 140 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 17 44 ID ??? ②隆 それは隆からのメールだった。 『昨日からお前……、俺のこと避けてないか? 放課後ゆっくり話をしたいんだ。 ちゃんと水野との誤解も解いておきたいし、音楽室まで来れるか?』 音楽室……。 もう気にしないって決めていたのに、偶然見てしまった光景を思い出して心臓がはねた。 隆と水野先生の濃厚なキスシーン。 私と付き合う以前の出来事なのに、今でもこんなにも心を乱されてしまう。 もちろん、避けているだけじゃ恋人になった隆をいつまでも信じることは出来ない。 だけど、修二くんが耳打ちした言葉を考えると、少しだけ会うのが怖い。 私は携帯を握り締めながら、メールを隆に送る。 その内容は…… ①『用事がある』と誤魔化して断る ②『わかったよ』と承諾する ③『音楽室だけは嫌なの』と牽制する 141 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 14 40 57 ID ??? ②『わかったよ』と承諾する (でも、このままで良いはずがない…) 承諾の返送をして、病院を出る。 病院の前に並んでいるタクシーに乗り学校へ向かう。 学校へ着いたときには昼休みが終わるところだった。 教室へ向かう途中で丁度昼休み終了のチャイムが鳴る。 教室へ戻って行く集団と一緒に教室に入る。 「あ、愛菜!今日は休むかと思ってたよ。足は大丈夫?」 すぐに私を見つけて、香織ちゃんが近づいてくる。 「うん、病院に寄ってきたら遅くなっちゃった」 「そっか、こんな時間になるなら休んじゃえば良かったのに。っと、先生来ちゃった、じゃ」 先生が入ってきて香織ちゃんが席に戻っていく。 授業が始まるが、隆とどうやって話そうかということばかり考えていて集中できない。 そんな事ばかり考えていたら、すぐに放課後になってしまった。 音楽室へ行かなくては… ①少し早いけどに行く ②時間ぎりぎりに行く ③やっぱり行かない 142 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 15 40 49 ID ??? ①少し早いけどに行く 少し早いけど、音楽室へ行こう。 私は鞄に荷物を入れると、足を引きづりながら音楽室へ向かった。 (つ、疲れた……) 壁を這うようして、ようやく音楽室の前までたどり着くことが出来た。 深呼吸をして、乱れた息を整える。 (まだ少し早いけど、待っていればいいよね) そう思いながら音楽室の扉に手を掛けた瞬間、二つの人影に気付いた。 隆と水野先生? ほとんど後ろを向いていて、隆の顔はよく見えないが、笑い声が聞こえる。 呆然と立ち尽くす私に水野先生がきづいた。 扉越しの私と目があうと、何かを隆に言い、ゆっくりと顔を近づけていく。 隆もそれを制するそぶりは見せない。 この光景―― めまいで視界が歪む。 夢がフラッシュバックする。 わたしは思わず…… ①逃げ出した ②その場にへたり込む ③鞄を落としてしまう 143 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 15 56 36 ID ??? ①逃げ出した きびすを返し足を引きずりながら音楽室を離れる。 怒りと悲しみと絶望とぐるぐると胸の奥で感情が渦巻く。 (どうして?) それだけが頭の中でぐるぐると回っている。 頬を涙が伝うがそれをぬぐおうとすら思わなかった。 早くここから離れたい、そう思うのに思うように足が動かない。 数歩あるいて思わずよろける。 転びそうになった私の腕を誰かが掴んで支えてくれる。 あわてて振り替えるとそこには… 1、春樹 2、一郎 3、近藤先生 144 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 17 26 14 ID ??? 2、一郎 そこには、私を支えてくれいてる一郎くんの姿があった。 「一郎……くん……」 「泣いているのか。可哀想に……」 ポケットからハンカチを取り出すと、一郎君は私に差し出してくれた。 いろんな感情が渦巻いていて、ただ涙がこぼれる。 隆の事を信じていたかったのに、決定的な光景を見てしまった。 どうしてこうなっていまったの? なにもかもわからない……。 信じたくない、認めたくない。 だけど……もしこれが本当の出来事なら、もう隆とは笑い合えない。 付き合い続けることなんて……絶対にできない。 差し出されたハンカチを握り締め、目を覆う。 石を飲み込んでしまったように、喉の奥が鈍く痛み続けている。 嗚咽でうまく息が出来ない。 まぶたが熱く火照って、重い。 「こんな所で盛大に泣いていると……他の生徒に見られてしまう。 ここから近い屋上に行こう」 そう言うと、一郎くんは私を支えながら歩き出す。 私は…… ①一郎に支えられるまま屋上に向かった。 ②不安を感じて、咄嗟に一郎から体を離した。 ③もう一度確認するために、音楽室へ戻った。 145 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 17 48 35 ID ??? ③もう一度確認するために、音楽室へ戻った。 「っ…ごめん、ちょっとだけ…」 しゃっくりあげながら、やんわりと一郎君から離れる。 (今言わないと…、今……) 何を言いたいのか分からなかった。 けれど、言わなければ、という思いがわきあがる。 音楽室へもどり、扉を開ける。 「……!あい、なっ」 隆の驚いたような顔。 「あら、大堂さん」 そして水野先生の妖艶な微笑み。 「何を…ッ…驚いて、るの?隆、私と約束……してたでしょ?」 うまく言葉が出てこない。 「……そう、だな」 隆の声が低くなる。 (言わなければ…) 何が言いたいのか分からないまま言葉が滑り出す 1、「隆、さようなら」 2、「水野先生何をさがしているの?」 3、「隆は何がしたいの?」 146 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 19 26 21 ID ??? 3、「隆は何がしたいの?」 私は嗚咽をこらえながら、言った。 水野先生といるところを私に見せ付けて、どうしようっていうの? 「それは……」 隆は言いよどんで、うつむいてしまう。 「水野先生と仲良くして、なにやっているのよ!!」 もう嫌だ。何もかも。 「大堂さん。湯野宮くんと私が男女の関係と誤解しているようだけど……それは勘違いよ」 いきなり、口を開いたのは水野先生だった。 水野先生はすべて知っているような口調で話を続けた。 「湯野宮くんと私が口付けしている所を偶然あなたが見かけてしまったと、湯野宮くんから聞いたわ。 でも、それは誤解なの。少しだけ冷静になって、私たちの話を聞いてちょうだい」 こんな状況でも、水野先生は大人の笑みを絶やさない。 「そ、そうなんだ! あれは……かこ……」 隆はそう言って、水野先生を見る。 「湯野宮くんが言いたいのは過呼吸。過呼吸状態になったの私を口を塞いで救ってくれたのよ」 かこきゅう……って、何? でも、言い訳なんてもう聞きたくない気もする。 私は…… ①もう少しだけ、水野先生と隆の話を聞く。 ②隆に別れを告げる。 ③隆と二人で話がしたいと言う。 147 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 19 56 24 ID ??? ②隆に別れを告げる。 「そう、でも、もういい!!」 私は叫んでいた。 「隆、私言ったわよね?もし水野先生とまた何かあったら、隆のこと信じられないって!!」 涙がとまらない。 「前のことは許してたのに!なのに、今のはなに!?」 「……そ、れは」 「もう、信じない!隆のことなんて信じないっ。さようなら!」 「愛菜!」 隆が叫んで、私に近づいてくる。 私は隆をにらんだまま、後ろに下がる。 と、何かにぶつかった。 「湯野宮、君はそんなに大堂を傷つけたいのか?」 一郎君だった。ずっと廊下にいたんだろう、怒りを含んだ声で隆に言う。 「俺は……」 隆が何かを言いかけ、それから口をつぐむ。 「大堂、行こう」 私は一郎君に促されるまま音楽室を離れる。 一郎君は屋上に向かっているみたいだった。 涙はとまりそうに無い。けれど妙に頭が冴えている。 (そうだ、水野先生、水野先生が何かを探していることから始まったんだ) そして、一郎君と修二君に接触した。 一郎君は何をしたくて水野先生を利用したのだろう? ①「一郎君は何がしたいの?」 ②「水野先生は何を探しているの?」 ③「なんで隆に水野先生をけしかけたの?」 148 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/13(火) 23 41 50 ID ??? ①「一郎君は何がしたいの?」 屋上へと続く階段の途中で立ち止まって、私は問いかける。 「……? 大堂が何を言っているのか、よくわからないな」 同じように立ち止まり、不思議そうに聞き返してくる一郎君。 そのまま……短いような、長いような沈黙が訪れる。 数日前の私なら、ありのままの一郎君を信じていただろう。 一郎君は何も知らなくて、ただ隆に怒りを感じながらも私を慰めようとしてくれているだけなんだって。 だから、一郎君にはこの質問は理解できないもので、私のしていることは無意味なんだって。 そう思っただろう。 ……でも、今は。 ほんの一部だけだけど……知ってしまったことがある、今は。 私は思っていることを言葉にするために、口を開いた。 ①「私が何も知らないって、思ってるの?」 ②「私、一郎君がわからない……信じられないよ」 ③「私だって無関係じゃないんでしょ?お願いだから話して」 149 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 06 34 42 ID ??? ②「私、一郎君がわからない……信じられないよ」 涙が止まらない。 私は何を信じれば良いのだろう。 「そう、か、修二か。修二が話してしまったんだな……」 ため息をつきながら一郎君がふとつぶやく。 ふっと一郎君の表情が変わる。 どこか硬く線を引いたような表情が消えた。 「すまない、大堂。君を泣かせることになってしまった」 苦しそうに一郎君が私に手を伸ばす。 とまらない涙をぬぐってくれる。 「守りたかっただけなのにな……」 言葉にかすかな後悔。 「行こう」 涙をぬぐっていた手を離し、そっと手を差し出す。 どこへ?屋上?私は… 1、ついて行く 2、どこへ行くのかたずねる 3、家に帰る 150 名前:名無しって呼んでいいか?[sage] 投稿日:2007/02/14(水) 11 45 44 ID ??? 1、ついて行く 私は頷いてその手をとった。 一郎君が微笑む。 そうして笑うと修二君とそっくりになった。 同じ顔なのに絶対に見間違うことがなかったのは、やっぱり雰囲気がぜんぜん違うからなんだな、とぼんやりと思う。 「足は大丈夫か?」 「うん…」 一郎君と私の間にさっきまであった見えない壁みたいなものが消えている。 一郎君がそれを消してくれたのだと分かる。 今の一郎君なら信じられる、そんな気がした。 私たちはそのまま屋上への階段を上る。 屋上の扉の前までたどり着いたとき、向こう側から誰かが扉を開けた。 それは… 1.修二くん 2.御門くん 3.春樹
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/50418.html
【検索用 せかいかふきようなせいて 登録タグ VOCALOID おやまだやま かごめP せ 曲 曲さ 鏡音レン 雲丹】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:雲丹 作曲:雲丹 編曲:雲丹 絵:おやまだやま(Twitter) マスタリング:かごめP 唄:鏡音レン 曲紹介 本当のコトって君と僕とでこんなに違うたったそれだけで今日も世界はよろめいてる 曲名:『世界が不器用なせいで』(せかいがぶきようなせいで) EP『2U22 EP』収録楽曲。 第12回プロセカNEXT応募楽曲。 歌詞 (PIAPROより転載) 薄めた文字で 探り合うカンケイ 嘘で出来たジェンガ 崩さぬように 捺印(スタンプ) 大人たちは今日も 騙しあってる 五感も思考も捨て去って もっと感情を殺して ほら 上手に笑えているでしょう? 世界が不器用なせいで 僕らは器用にさせられて ぶつかり合う孤独の群れの中じゃ ジブンの形とかどうせ 他人(だれか)が決めることなんで 用済みになった僕はバイバイ 心の檻にきつく縛った 吊るした文字で 貶し合う光景 すり替えた中身 気取られぬように 押下(タップ) 大人たちは今日も 奪いあってる 四角い絵 丸く切って ばら撒きゃ札束に変わる ペテンな現世の シンジツのレシピ 大人が不器用なせいで 僕らは大人にさせられて 余白を読み取ることばかり長けて ジブンらしさなんてとうに 歪められてしまったんで この笑顔が貴方との距離だ 心の澱をまさぐらないで 本当のコトって 君と僕とでこんなに違う たったそれだけで今日も 世界はよろめいてる 世界が耳を塞ぐせいで 僕ら祈り叫んだって 清らかなままで消えてしまうだけ 手を重ねて交わし合った 約束さえあっけなく 血と嘘で塗り替えられた 世界が不器用なせいで 僕らは器用にさせられて ぶつかり合う孤独の群れの中じゃ ジブンの形とかどうせ 他人(だれか)が決めることなんで 用済みになった僕はバイバイ 心の檻にきつく縛って 心の澱に深く沈めた コメント 名前 コメント