約 24,179 件
https://w.atwiki.jp/teamifk/pages/790.html
chemistろぐ/2008年08月04日/懸念事項消化 #blognavi
https://w.atwiki.jp/childreninfukushima/pages/150.html
2011年06月17日 08 12 福島第1原発事故に伴う放射線物質の飛散を懸念する福島市や郡山市の住民から、本県への避難要望が多く寄せられていることを受け、県は16日、民間ア パートを借り上げて避難者へ無償提供する制度などの対象を福島県全域の自主避難者に拡大し、募集を始めた。本県への避難者が新たに増えていく見通しだ。 県建築住宅課によると、本県への避難の問い合わせは5月中旬ごろから寄せられ、1日数十件に上るケースもあった。相談者は福島市や郡山市など中通り地域 の住民が多い。避難の理由は放射線への懸念がほとんどで、仕事を持つ父親が福島県内にとどまり、妻や子どもが本県への避難を希望する形態が目立ち、主に、 行き来しやすい置賜地方への居住を望んでいるという。 今後も避難者が増える見通しとなったことから、県は学校などでの子ども受け入れも想定し、各部局間の連携を図っている。 県が実施している民間アパートの借り上げは、これまでは罹災(りさい)証明書を持つ世帯や避難指示区域からの避難者が対象だった。県は職員公舎の提供や ホテル・旅館への避難についても同様に対象を拡大。アパートや職員公舎の募集締め切りは6月30日から7月29日に延長した。また現在、自己負担で県内の アパートに避難している福島県民についても賃料(6万円以内)の条件が合えば、借り上げ制度への切り替えも可能だという。 問い合わせは県避難者支援班023(630)3100
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/268.html
総括所見:スイス(OPSC・2015年) 第1回(2002年)/第2~4回(2015年)OPAC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/CHE/CO/1(2015年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1963回会合(CRC/C/SR.1963参照)においてスイスの第1回報告書(CRC/C/OPSC/CHE/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合(CRC/C/SR.1983参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/CHE/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書に関する総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会はさらに、締約国がとくに以下の文書を批准したことに評価の意をもって留意する。 (a) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2014年3月) (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2006年10月) (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2006年10月) (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2006年10月) 5.委員会は、選択議定書の実施の分野で締約国がとった、以下のものを含むさまざまな措置を歓迎する。 (a) 数次の刑法改正により、人身取引の定義が拡大され、自発的買春に関する年齢制限が16歳から18歳に引き上げられ、かつ児童ポルノを所持することなく消費する行為が犯罪化されるとともに、とくに人身取引、子どもとの性的行為および子どもとの性的行為を掲載した一定の態様のポルノグラフィ―へのアクセスについて有罪判決を受けた者が、子どもと常時接する活動を行なうことまたは子どもと接触しもしくは接近することを禁じられたこと。 (b) 連邦憲法および刑法の改正により、とくに思春期前の子どもを関与させた性犯罪を訴追する権利およびこのような犯罪の処罰は時効の対象とされないことが保障されたこと。 6.委員会はさらに、選択議定書の実施を促進する、以下のものを含む制度の創設ならびに国家的計画およびプログラムの採択に関して達成された進展を歓迎する。 (a) 人身取引と闘う国家行動計画(2012~2014年)の採択 (b) サイバー犯罪調整部、ならびに、連邦警察のスイス人身取引・移民密輸対策調整部および子どもに対する犯罪・ポルノグラフィ―部がそれぞれ2003年および2007年に設置されたこと。 III.データ データ収集 7.委員会は、包括的なデータ収集システムおよび選択議定書上のすべての犯罪を網羅する細分化されたデータが締約国に存在しないために、議定書上の犯罪を監視しかつ評価する締約国の能力が限られていることを懸念する。 8.条約に基づく総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4、パラ16および17)を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野についてデータ収集、分析、監視および影響評価を行なう包括的かつ体系的な機構を設置しかつ実施するよう、勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい立場に置かれた集団の子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在ならびに社会経済的地位ごとに細分化されるべきである。犯罪の性質によって細分化された、訴追件数および有罪判決件数についてのデータ収集も求められる。 IV.一般的実施措置 国家的行動計画 9.委員会は、防止、意識啓発、刑事訴追、被害者の保護および支援ならびに連携の分野で23の措置を掲げた、人身取引と闘う国家行動計画(2012~2014年)の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書で対象とされているすべての問題を含んだ、子どもに関する包括的な政策および戦略が存在しないことを遺憾に思うものである。 10.条約に基づく総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4、パラ10および11)を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書で求められているすべての分野における包括的措置を掲げ、かつ、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供される包括的な政策および戦略を採択するよう、勧告する。防止、被害を受けた子どもの保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に、特段の焦点が当てられるべきである。委員会はまた、締約国に対し、このような政策および戦略が定期的に評価の対象とされることを確保するよう奨励する。 調整および評価 11.委員会は、さまざまな連邦省庁および社会問題カントン長官会議から構成され、委員会の勧告のフォローアップを担当する作業部会の設置を構想しているという、締約国から提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、連邦およびカントンのレベルで諸議定書の実施の全般的調整が行なわれていないことを懸念するものである。 12.条約に基づく総括所見(CRC/C/CHE/CO/2-4、パラ12および13)を参照しつつ、委員会は、締約国が、選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の監視および評価について、各部門を横断し、かつ連邦、カントンおよびコミューンのれべるで指導力を発揮しかつ効果的な一般的監督を行なう能力を備えた調整機関を指定するよう勧告する。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的活動のために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するべきである。 普及および意識啓発ならびに研修 13.委員会は、人身取引に関する意識啓発のための全国キャンペーンの計画(2017~2018年)が現在作成されている最中である旨の情報に留意する。委員会はまた、若者とメディアに関する全国的プログラムの実施等も通じて、ニューメディア関連のリスクに関する意識啓発を目的とした情報の普及および研修の実施のために行なわれているさまざまな努力にも留意するものである。しかしながら委員会は、とられた措置が体系的ではなく、かつ選択議定書のすべての分野を網羅しているわけではないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に体系的に周知するための努力を強化すること。 (b) 関連の政府機関、市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に効力しながら、選択議定書で対象とされているすべての問題およびそのような慣行への対策として国内法で定められている保護措置についての意識啓発プログラムを発展させること。 (c) 研修活動を拡大しかつ強化するとともに、このような活動が体系的かつ学際的であること、選択議定書で対象とされているすべての分野を含んでいることならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家(とくにあらゆるレベルの裁判官、検察官、ソーシャルワーカー、法執行官および出入国管理官)を対象として実施されることを確保すること。 資源配分 15.委員会は、締約国が、選択議定書に基づく活動のためにとくに配分される予算についての十分な情報を提供していないことを懸念する。このような情報が存在しないことは、選択議定書の実施にとって相当の障壁である。 16.委員会は、締約国が、連邦およびカントンのレベルにおける選択議定書の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源を配分するよう勧告する。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 17.議定書で禁じられている犯罪を防止するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、諸措置が断片的であり、かつ議定書のすべての分野を網羅しているわけではないことを懸念する。とくに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国に、被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子どもをとくに対象とするプログラムが存在しないこと。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子どもを特定しかつ監視するために設けられた機構が不十分であること。 (c) 防止活動が、締約国の財政的支援が限られたなかで非政府組織によって行なわれていることが多いこと。 18.委員会は、締約国が、選択議定書のすべての分野を網羅した防止措置を拡大しかつ強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子ども(ロマの子どもまたは他の民族的マイノリティの子ども、施設に措置された子ども、路上の状況下で暮らしている子ども、移住の影響を受けている子ども、子どもの庇護希望者および難民ならびに家族間暴力の被害者である女子を含む)を対象とする特別防止プログラムを確立すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を特定するための機構および手続を確立し、かつ、これらの子どもを対象として心理社会的支援および意識啓発プログラムを行なうこと。 (c) 関連の非政府組織を支援すること。 (d) 子どもの性的搾取および人身取引(とくに、とりわけインターネット上の児童買春および児童ポルノ)の規模を評価する目的で研究を実施すること。 児童セックス・ツーリズム 19.委員会は、観光業における性的搾取から子どもを保護するために締約国、オーストリアおよびドイツが合同で行なっている教育キャンペーンおよび「旅行・観光業における性的搾取からの子どもの保護に関する行動規範」の策定など、児童セックス・ツーリズムを防止するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、効果的な規制の枠組みが存在せず、かつ、国外における児童セックス・ツーリズムの防止およびこれとの闘いを効果的に進めるためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。 20.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 児童セックス・ツーリズムを防止しかつ撤廃する目的で、効果的な規制枠組みを確立しおよび実施し、ならびに、あらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとること。 (b) 児童セックス・ツーリズムの防止および撤廃を目的とする多国間、地域間および二国間の取り決めを通じた国際協力をさらに強化すること。 (c) 児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、かつ、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。 (d) これらの企業に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条第2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 21.選択議定書の規定をよりよく反映させるために行なわれた連邦憲法および刑法の改正は歓迎しながらも、委員会は、選択議定書上のすべての犯罪が刑法に十分に明記されているわけではないことを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 選択議定書第2条(a)および第1条第1項(a)(i)で対象とされているすべての形態の子どもの売買が、人身取引とは異なる犯罪として分類されているわけではないこと。 (b) 締約国において、情報通信技術を利用して性的目的で子どもを勧誘すること(グルーミング)および性的メッセージまたは写真を交換すること(セクスティング)をとくに取り上げた法律が定められていないこと。 (c) 児童ポルノ〔に関連する禁止行為〕の定義に、裸の子どもを映しているものの特定の文脈に照らしてポルノ的とはみなされない画像およびビデオの製造、販売および配布が含まれていないこと。 (d) 選択議定書上の犯罪を処罰する刑法の規定のなかに、いまなお16歳までの子どもしか保護の対象としていないもの(とくに子どもをポルノ的資料に接触させることを処罰する規定)があること。 22.委員会は、締約国が、刑法その他の関連の法律を、選択議定書第2条および第3条と完全に一致させる目的で引き続き検討しかつ改正するよう勧告する。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 子どもの売買――人身取引と類似してはいるものの同一ではない概念――を議定書第3条にしたがって定義し、規制し、かつ犯罪化すること。 (b) 情報通信技術を利用して性的目的で子どもを勧誘すること(グルーミング)および性的メッセージまたは写真を交換すること(セクスティング)ならびに特定の文脈における裸の子どもの画像またはビデオの製造、販売および配布を含む、選択議定書上のすべての犯罪が明示的に犯罪とされることを確保すること。 (c) 18歳未満のすべての子どもが刑法によって全面的に保護されることを確保すること。 域外裁判権 23.刑法第5条に掲げられた子どもに対する犯罪を訴追する際の域外裁判権の行使に双方可罰性が必要とされていないことは歓迎しながらも、委員会は、双方可罰性要件の不適用が、18歳未満のすべての子どもの被害者または選択議定書で対象とされているすべての犯罪を網羅しているわけではないことを懸念する。 24.委員会は、締約国が、国内法において、選択議定書で対象とされているすべての犯罪および18歳未満のすべての子どもの被害者について域外裁判権(双方可罰性の基準を満たさない場合の域外裁判権を含む)を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および第4項) 被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 25.連邦被害者支援法で被害者への援助に関する最低基準が定められていることには留意しながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) これらの基準の実施に関してカントン間に格差があること。 (b) 児童ポルノとの関連で被害者の特定が不十分であり、人身取引の被害を受けた子どもが法執行機関によって被害者と認められないことが多く、かつ、搾取されまたは物乞いもしくは盗みを強要された子どもがしばしば被害者とみなされないこと。 26.委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための措置を強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 連邦被害者支援法で定められた基準がすべてのカントンで平等に適用されることを確保すること。 (b) 議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが犯罪者ではなく被害者とみなされること、および、被害を受けた子どもの特定に責任を負う者(裁判官、検察官、法執行機関、ソーシャルワーカー、医療スタッフ、移民担当職員および被害を受けた子どもを支援するその他の専門家を含む)が子どもの権利、子どもの保護および事情聴取技法についての研修を受けることを確保すること。 刑事司法制度における保護措置 27.刑事訴訟法に子どもの被害者および証人のための特別規定が置かれていることは歓迎しながらも、委員会は、幼い子どもが十分に保護されていないこと、および、子どもの被害者を支援するスタッフが十分な訓練を受けていないことを懸念する。委員会はさらに、選択議定書が対象とする犯罪の加害者のためのプログラムについての情報がないことを懸念するものである。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪の被害を受けたまたは犯罪の証人であるすべての子どもに対し、選択議定書で求められている保護が提供されることを確保すること。 (b) 裁判官、検察官、警察、ソーシャルワーカー、医療スタッフならびに子どもの被害者および証人を支援するその他の専門家が、刑事手続および司法手続のすべての段階における子どもにやさしいやりとりに関する研修を受けることを確保すること。締約国は、この点に関して、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである。 (c) これらの犯罪の加害者のためのプログラムを導入すること。 被害者の回復および再統合 29.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの回復および再統合を確保するための措置が限定的であることを懸念する。とくに委員会は、被害を受けた子どものための専門のサービスおよびセンターがすべてのカントンで利用可能とされておりかつ資金を提供されているわけではなく、かつ、安全な収容施設が存在しないことを懸念するものである。 30.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもに対して適切な援助(その身体的および心理的回復ならびに全面的な社会的再統合のための援助を含む)が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子どもに短期的、中期的および長期的支援を提供するためのプログラムを発展させること。 (b) 人身取引、性的搾取もしくは経済的搾取を目的とする売買の対象とされた子どもまたはその他の形で選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに必要とされる専門サービスおよび十分な援助を、直接またはサービス提供機関を通じて自国の領域全体で確立するとともに、十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 (c) 犯罪の被害を受けた子ども(とくにもっとも被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を対象として適切な宿泊施設へのアクセスを促進しかつ強化するために必要な措置をとるとともに、このようなインフラが質量ともに十分に利用可能とされ、かつ十分な設備を備えることを確保すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 31.委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪の防止ならびにその摘発および捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 32.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 33.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 34.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2016年1月24日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/308.html
総括所見:イスラエル(OPSC・2015年) 第1回(2002年)/第2~4回(2013年)OPAC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/ISR/CO/1(2015年7月13日)/第69会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年5月28日に開かれた第2007回会合(CRC/C/SR.2007参照)においてイスラエルの第1回報告書(CRC/C/OPSC/ISR/1)を検討し、2015年6月5日に開かれた第2024回会合(CRC/C/SR.2024参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/ISR/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の部門横断型代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、東エルサレムを含むパレスチナ被占領地域(以下OPT)およびシリア領ゴラン高原被占領地域に住んでいる子どもについての情報およびデータの提供を締約国が提供しなかったために、選択議定書の実施に関する同国の説明責任に影響が生じている旨の従前の懸念(CRC/C/ISR/CO/2-4、パラ3参照)をあらためて表明する。委員会は、締約国に対し、OPTにおける壁の建設の法的帰結に関する国際司法裁判所の勧告的意見 [1] を遵守し、かつ、イスラエルおよびOPT(ヨルダン川西岸およびガザ地区を含む)ならびにシリア領ゴラン高原被占領地域において選択議定書の全面的適用を確保する自国の義務にしたがうよう、促すものである。 [1] 国際司法裁判所「パレスチナ被占領地域における壁の建設の法的帰結」(2004年7月9日付の勧告的意見)、パラ163(3)A参照。 4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づいて締約国が提出した第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/ISR/CO/2-4、2013年6月14日採択)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づいて提出された第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/ISR/CO/1、2010年1月29日採択)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 5.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった、以下のものを含む措置を歓迎する。 (a) 刑法第214条(b3)の改正(改正第118号(2014年)-わいせつな刊行物へのアクセス)。 (b) セクシュアルハラスメント防止法(法律第5758-1998号)の改正(改正第10号(2013年)-第3条(a)(5A))。 (c) 「未成年者の画像を含むわいせつ物の刊行、所持およびこれへのアクセスに関する事件の扱い」と題した刑事問題担当検事副総長のガイドライン(2014年12月11日付)。 (d) 押収および没収に関する共助条件に関する国際司法共助法の改正(2010年10月)。 (e) 性暴力軽罪被害者援助法(法律第5769-2008号)の制定(2008年)。 (f) 人身取引禁止(法改正)法(法律第5766-2006号、人身取引禁止法)が制定され(2006年10月)、かつその規定のほとんどが刑法に編入されたこと。 6.委員会は、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を締約国が批准したこと(2008年7月)に、評価の意とともに留意する。 7.委員会は、選択議定書の実施を促進する、以下のものを含む制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 警察内にサイバー犯罪部が設置され、かつ未成年者間のサイバーセックス犯罪を捜査する特別班が設けられたこと(2013年)。 (b) 児童買春への対処方法を改善するための協働行動計画を策定する特別省庁間チームが設置されたこと(2012年)。 (c) 買売春に関与している未成年者の特定およびリハビリテーションの促進を目的として、社会問題・社会サービス省によって「積極的発見計画」および「路上捜索と開放空間」プログラムが開始されたこと。 (d) 性犯罪の被害を受けた子どもを対象として、2008年以降、国民保険機関およびラシ財団が設置し、かつ社会問題・社会サービス省が運営する無償の心理治療プログラムが実施されていること。 データ収集 8.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪を網羅した、細分化されたデータを包括的に収集するシステムが設置されていないことを懸念する。 9.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野の分析、監視および影響評価を確保するための包括的なデータ収集機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国籍、民族的出身、社会経済的背景および都市部・農村部の居住別に細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、起訴件数および有罪判決件数についてのデータを収集することも求められる。 III.一般的実施措置 国家的行動計画 10.委員会は、選択議定書で対象とされているすべての問題を包摂した、子どもに関する包括的な政策および戦略が定められていないことを遺憾に思う。 11.条約に基づく総括所見(CRC/C/ISR/CO/2-4、パラ10)を参照しながら、委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野でとるべき必要な措置を含み、かつその実施のための十分な人的資源、技術的資源および財源によって裏づけられた、子どもに関する包括的な政策および戦略を採択するべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。防止、〔ならびに、〕被害を受けた子どもの保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合にとくに焦点が当てられるべきである。委員会はまた、締約国に対し、このような政策および戦略が恒常的に評価されることを確保するようにも奨励する。 調整および評価 12.委員会は、締約国から提供された、選択議定書の実施には多くの政府機関が関与している旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の実施に関してさまざまな政府機関間の調整を確保する全般的機構が設置されていないことを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が、条約およびその〔2つの〕選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の監視および評価に関して指導的役割を果たし、かつ効果的な一般的監督を行なえる調整機関を指定するよう勧告する。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的運用のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。 普及ならびに意識啓発および研修 14.委員会は、情報の普及、研修の実施(子どもとともにおよび子どものために活動している捜査官、警察の少年担当捜査官ならびに教育心理学者を対象とするものを含む)、および、小中学校における防止プログラムを通じた意識啓発のために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、一般公衆の意識啓発のための全般的計画が存在せず、かつ、これらの取り組みで選択議定書の全分野が網羅されているわけではないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書の規定を、子ども(子どもにやさしい方法による)、その家族およびコミュニティを含む公衆一般に対して体系的に周知するための努力をさらに強化すること。 (b) 関連の政府機関、市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に効力しながら、選択議定書で対象とされているすべての問題および選択議定書上の犯罪からの保護措置(国内法で定められているものを含む)についての意識啓発プログラムを発展させること。 (c) 研修活動が、体系的かつ学際的であり、かつ選択議定書で対象とされているすべての分野を含んでいること、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家(とくに、締約国全域の、あらゆるレベルの裁判官、検察官、ソーシャルワーカー、法執行官および出入国管理官)を対象として実施されることを確保すること。 資源配分 16.委員会は、締約国から、選択議定書に基づく活動のためにとくに配分されている予算についての情報が提供されていないことを懸念する。このような情報が存在しないことは、選択議定書の実施を評価することの妨げとなる。 17.委員会は、締約国が、選択議定書の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源を配分するよう勧告する。 独立の監視 18.人権の保護および促進のためにさまざまな機関が果たしている役割は認知しながらも、委員会は、条約およびその〔2つの〕選択議定書に基づく進展を恒常的に監視しかつ評価する任務を委ねられた独立の機構を設置するべきである旨の従前の勧告(CRC/C/15/Add.195、パラ17およびCRC/C/ISR/CO/2-4、パラ16)以降、締約国によって限られた進展しか達成されていないことを懸念する。 19.委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがって、国および地方のレベルにおける条約の実施の進展の監視および評価、ならびに、子どもからの苦情に対する、子どもに配慮した迅速なやり方による対応を目的とした子どもオンブズパーソンを設置するためのプロセスを速やかに進めるよう勧告する。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条(1)および(2)) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 20.選択議定書で禁じられた犯罪を防止するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、これらの措置において選択議定書上の犯罪がすべて網羅されているわけではないことを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 締約国が、被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子どもをとくに対象とする十分なプログラムを実施していないこと。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子どもを特定しかつ監視するための十分な機構が整備されていないこと。 (c) 締約国における子どもの性的搾取、とくに児童買春および児童ポルノ(インターネット上のものを含む)の規模に関して存在する情報が不十分であること。 21.委員会は、締約国が、選択議定書のすべての分野を網羅した防止措置を拡大しかつ強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 被害を受けやすい状況および周縁化された状況に置かれた子ども(性暴力および家族間暴力の被害者である女子、路上の状況にある子ども、施設で暮らしている子ども、ベドウィン人、パレスチナ人およびアラブ系イスラエル人の子どもならびに移住労働者および庇護希望者の子どもなど)を含む、締約国の領域全体の子どもを対象とした特別防止プログラムを確立すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれがある子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を特定するための機構および手続を確立し、かつ、これらの子どもを対象として心理社会的支援および意識啓発プログラムを行なうこと。 (c) 子どもの性的搾取、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノ(インターネット上のものを含む)の規模を評価する目的で研究を実施すること。 児童セックスツーリズム 22.委員会は、イスラエル観光業者・旅行代理店協会が世界観光機関の世界観光倫理規範を採択することにつながった観光省による努力を含めて、児童セックスツーリズムの防止のために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、効果的な規制の枠組みが存在せず、かつ、国外における児童セックスツーリズムの防止およびこれとの闘いを効果的に進めるためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童セックスツーリズムのあらゆる事案を防止しかつこれに対処するため、効果的な規制枠組みの確立および実施を進め、かつあらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとること。 (b) 児童セックスツーリズムの防止および撤廃を目的とする多国間、地域間および二国間の取り決めを通じた国際協力をさらに強化すること。 (c) 児童セックスツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを継続するとともに、旅行代理店および観光業者の間で世界観光機関の世界観光倫理規範を普及すること。 (d) あらゆる関係者に対し、「旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範」への署名およびその遵守を奨励すること。 出生登録 24.委員会は、とくに子どもの移住者、庇護希望者および難民が出生証明書を有していないことにより、選択議定書上の犯罪を捜査する際の被害者の年齢確認ならびに被害者による医療サービスおよびリハビリテーションへのアクセスが妨げられる可能性があることを懸念する。 25.委員会は、締約国が、締約国の領域内にいるすべての子どもが出生証明書にアクセスできることを確保するための措置を緊急にとるよう勧告する。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2)および(3)、第5条、第6条ならびに第7条) 現行刑事法令 26.人身取引禁止(法改正)法(法律第5766-2006号、人身取引禁止法)および刑法の関連規定には留意しながらも、委員会は、刑法において選択議定書上のすべての犯罪が十分に明記されているわけではないことを懸念する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 選択議定書第2条(a)および第1条第1項(a)(i)で対象とされているすべての形態の子どもの売買が、人身取引とは異なる犯罪として分類されているわけではないこと。 (b) 子どもの強制労働が子どもの売買のひとつの形態として犯罪化されていないこと。 (c) 刑法第199条、第201条、第202条および第203条に基づく児童買春関連の犯罪について刑の加重が行なわれるのは、被害者が14歳未満である場合または被害者が14歳以上であって当該犯罪者のケアおよび責任のもとにある場合のみであること。 27.委員会は、締約国が、刑法その他の関連の法律を引き続き改正し、選択議定書第2条および第3条と完全に一致させるよう勧告する。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 子どもの売買を選択議定書第3条にしたがって定義し、規制しかつ犯罪化すること。これには、子どもの売買――人身取引と類似してはいるものの同一ではない概念――のひとつの形態である子どもの強制労働の犯罪化も含まれる。 (b) 18歳未満のすべての子どもが刑法によって全面的かつ平等に保護されることを確保すること。 28.国際的な代理母出産の取決めを規制するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、隠れた子どもの人身売買および(または)性的虐待の可能性の防止を目的とした、国外の代理母が出産した子どもの親になる予定の者の適性審査を行なう適切な手続が存在しないことを懸念する。 29.委員会は、締約国が、国際的な代理母出産の取決めを通じて生まれた子どもの保護を確保するため、より厳格な政策を整備するよう勧告する。 加賀者の訴追 30.委員会は、選択議定書上の犯罪事件の捜査件数が少ないこと、これらの事件のうち訴追に至るのはわずかな割合にすぎないこと、ならびに、児童買春および児童ポルノ関連の犯罪に対する刑罰が犯罪の重大性に常に相応しているわけではないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 加害者が十全な捜査の対象とされ、かつ訴追されることを確保すること。 (b) 児童買春および児童ポルノ関連の犯罪に対する刑罰が犯罪の重大性に相応するものとなることを確保するとともに、とくに、未成年者から性的サービスを受けることについて厳罰化を図ること。 域外裁判権 32.委員会は、選択議定書上の犯罪に関する域外裁判権の行使を可能とする具体的な法的根拠が存在しないことを懸念する。 33.委員会は、締約国が、とくに犯罪を行なったとされる者が締約国の国民でありもしくは締約国の領域に常居所を有する者である場合または被害者が締約国の国民である場合に選択議定書第3条第1項に基づく犯罪についての域外裁判権を設定するため、法律を見直すよう勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条(3)および(4)) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 34.証拠法(法律第5715-1955号)改正(子どもの保護)法(子どもの保護法)の採択およびクライシスセンターの設置をはじめ、刑事手続において子どもの被害者および子どもの証人を保護するためにとられている広範な措置は歓迎しながらも、委員会は、子どもの保護法の規定が14歳未満の子どもにしか適用されないことを懸念する。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 証拠法(法律第5715-1955号)改正(子どもの保護)法を選択議定書および適用される他の国際法に全面的に一致させること等の手段により、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護し、かつ、とくに、18歳未満のすべての子どもが選択議定書上の犯罪からの全面的保護を享受できることを確保すること。 (b) 18歳に達していない子どもの被害者および子どもの証人全員に対し、刑事手続における特別保護措置が義務的に適用されることを確保すること。 (c) 十分な法律の規定および規則を通じて、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもおよび(または)当該犯罪の証人である子ども全員に対し、条約および選択議定書上で要求されている保護が提供されることを確保すること。 (d) 子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮すること。 被害者の回復および再統合 36.委員会は、選択議定書上のすべての犯罪についてその被害を受けた子どもの回復および再統合を確保するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、これらの措置は改善しうると考えるものである。 37.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもに対して適切な援助(その身体的および心理的回復ならびに全面的な社会的再統合のための援助を含む)が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けたすべての子どもに短期的、中期的および長期的支援を提供するためのプログラムを発展させること。 (b) 人身取引または性的搾取もしくは経済的搾取を目的とする売買の対象とされ、またはその他の形で選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものための専門サービスおよび十分な援助を、直接またはサービス提供機関を通じて自国の領域全体でさらに強化するとともに、このような目的で十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保すること。 (c) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(とくにもっとも被害を受けやすい状況に置かれた子ども)を対象として適切な宿泊施設へのアクセスを促進しかつ強化するために必要な措置をとるとともに、このようなインフラが質量ともに十分に利用可能とされ、かつ十分な設備を備えることを確保すること。 VII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 38.選択議定書第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされているすべての犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 VIII.通報手続に関する選択議定書の批准 39.委員会は、締約国が、締約国における子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 IX.フォローアップおよび普及 40.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会(クネセト)ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 41.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 42.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、〔子どもの権利〕条約条約第44条にしたがって提出される次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年4月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/296.html
総括所見:ポーランド(OPSC・2009年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2015年)OPAC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/POL/CO/1(2009年10月22日)/第52会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年9月22日に開かれた第1436回および第1437回会合(CRC/C/SR.1436およびCRC/C/SR.1437参照)においてポーランドの第1回報告書(CRC/C/OPSC/POL/1)を検討し、2009年10月2日に開かれた第1453回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、時宜を得た形で提出された、締約国の第1回報告書および委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/POL/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国の報告書が議定書に基づく報告についてのガイドラインにしたがっていなかったことを遺憾に思うものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回報告書に関する従前の総括所見(CRC/C/15/Add.194)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 A.積極的側面 4.委員会は、以下の立法上その他の措置がとられたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 刑法第101条第4項の改正(2008年12月)。 (b) ペドフィリア(小児性虐待)に関する新たな規制を導入し、かつこのような犯罪に対する刑罰を引き上げたその他の法改正(刑法、刑事訴訟法および行政刑法)。 5.委員会はさらに、締約国が以下の文書を批准したことに評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2005年4月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(2005年2月)。 II.データ 6.委員会は、人身取引、児童買春および児童ポルノなどの問題に関して委員会に提供されたデータに留意する。しかしながら委員会は、人身取引および子どもの売買の問題が、別個の問題であるにもかかわらず相互互換的に扱われており、かつ、締約国が、法律において、人身取引とは別に子どもの売買の定義を定めていないことを懸念するものである。委員会はまた、選択議定書で対象とされているすべての分野でデータを収集するための体系的機構が設けられていないことも懸念する。委員会はまた、セックスツーリズムに関する統計がないことも遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野のデータ収集、分析、監視および影響評価のための一貫した方法論および包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう、勧告する。これには、人身取引、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの加害者および被害者双方に関するデータが含まれることになろう。データは、とくに犯罪の性質ごとならびに性別、年齢および都市部/農村部の別ごとに、かつ被害を受けやすい状況に置かれた集団の子どもに特段の注意を払いながら、細分化されるべきである。委員会はまた、締約国が、セックスツーリズム、および、選択議定書で扱われている問題とセックスツーリズムとの関連についてのデータを収集しかつ分析することも勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの売買および児童買春の原因および規模を特定するため、選択議定書で対象とされている問題についての調査研究を実施するよう勧告するものである。 III.実施に関する一般的措置 条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条 8.選択議定書に基づいて締約国がとっている実施措置の立案および適用において子どもの権利条約の一般原則がある程度考慮に入れられていることには留意しながらも、委員会は、それが十全なものではないことを懸念する。委員会は、子どもに影響を与えるすべての事柄(政策およびプログラムの形成を含む)について子どもの意見が正当に考慮されていないこと、および、これが、自己の意見を表明し、かつその意見を正当に重視される子どもの権利の原則の適用が不十分であることの結果である可能性があることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、被害を受けやすい状況に置かれた一部の子ども(ロマの子どもおよび庇護希望者を含む)が直面している差別的態度により、その保護に影響が生じ、かつ選択議定書に掲げられた権利の全面的享受が妨げられる可能性があることも懸念する。 9.委員会は、子どもの権利条約の一般原則、とくに差別の禁止の原則および子どもの意見の尊重の原則が、選択議定書を実施するために締約国がとるすべての措置(司法上または行政上の手続を含む)に含まれるべきことを勧告する。 国家的行動計画 10.委員会は、子どもの性的搾取の問題が2004~2012年国家子ども行動計画に含まれていることに、関心をもって留意する。しかしながら委員会は、選択議定書で扱われているすべての分野を包括的に網羅した具体的行動計画がないことを遺憾に思うものである。 11.委員会は、締約国が、あらゆる関係者との協議および協力に基づき、選択議定書で対象とされているすべての問題に包括的に対処することを目的とした国家的行動計画を策定し、かつ、その実施のために十分な人的資源および財源を提供するよう、勧告する。その際、締約国は、それぞれ1996年、2001年および2008年にストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に特段の注意を払うべきである。 調整および評価 12.委員会は、「人身取引との闘いおよびその防止のための省庁横断チーム」が2004年に任命されたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、諸活動を調整し、かつ選択議定書の実施を体系的に評価するための機構または手続が存在しないことを遺憾に思うものである。 13.委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている問題に対処するための体系的なかつ一貫したアプローチを創造し、かつとられた措置の定期的評価を確保する目的で、省庁間ならびに国および地方の当局間で調整を図るための効果的な制度的機構を設置するよう奨励する。このような調整は、選択議定書で対象とされている分野における戦略および政策の策定のためにも活用されるべきである。 普及および研修 14.委員会は、選択議定書で扱われている問題についての広報活動および教育研修活動が行なわれていることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、選択議定書の促進および普及が十分ではないこと、ならびに、子ども、親および専門家が、選択議定書に掲げられた子どもの権利が侵害されるおそれおよびこれらの侵害からの子どもの保護を向上させるための戦略について十分な知識を有していないことを、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 警察官、検察官、裁判官、医療スタッフ、メディアおよび他の関連の専門家集団を含む専門家を対象として、選択議定書のすべての分野を網羅した普及活動および研修活動(研修資料および研修課程の開発を含む)を強化すること。 (b) とくに、選択議定書の規定をあらゆる段階の教育制度の学校カリキュラムに統合すること、ならびに、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の危険性および有害な影響に関する意識啓発キャンペーンおよび研修を実施することを通じて、選択議定書の規定を公衆、とくに子どもおよびその家族に対して広く知らせること。 資源配分 16.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪の防止および被害を受けた子どもの保護に対応するいくつかのプログラムを、人的資源および財源によって支えてきたことに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の実施のために具体的資金が配分されてきたわけではないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国が、国家予算を策定する際、選択議定書の実施をとくに目的とする財源の配分を行なうよう勧告する。 独立の監視 18.委員会は、子どもオンブズマンが、与えられた任務により、選択議定書の違反に関して子どもからまたは子どもに代わって申し立てられる苦情を受理できることに、評価の意とともに留意する。しかしながら、子どもオンブズマンがその活動の遂行に際して市民社会と連携しているのかどうか、委員会にとっては明確でなかった。 19.委員会は、締約国が、子どもオンブズマンに対し、その任務(選択議定書の実施の監視に関連する任務を含む)を遂行するための十分な財源および人的資源を引き続き提供するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、この点に関する子どもオンブズマンと市民社会との連携を奨励するよう勧告するものである。 市民社会の役割および貢献 20.委員会は、市民社会との協議が行なわれておらず、かつ、非政府組織に対して締約国報告書の作成への参加が呼びかけられなかったこと、ならびに、選択議定書で対象とされている問題に取り組んでいる市民社会の豊かな経験および専門性が全面的には活用されてこなかったことに、遺憾の意とともに留意する。委員会は、選択議定書上の問題に関連した政策立案、計画策定および政府プログラム予算の策定の分野で市民社会の参加が弱いままであることを懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、選択議定書の実施のさまざまな側面(政策および法律の策定、監視および評価ならびに被害を受けた子どもの保護および回復のためのサービス提供を含む)に、子ども団体を含む市民社会の全面的関与を得るよう勧告する。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止 選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置 22.委員会は、選択議定書上の犯罪である行為を防止するために国および自治体の公的機関が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、子どもの搾取(買春およびポルノを含む)をとくに対象とした防止措置、および、問題の原因および規模を特定するための措置が限られたままであることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) リスクの高い状況に置かれている子どもを特定し、かつ問題の根本的原因および主要なリスク要因に対処することを目的として、すでにとられている防止措置の成果ならびに子どもの性的搾取(児童買春および児童ポルノを通じて行なわれるものを含む)の性質および規模についての調査研究を実施すること。 (b) 前述の調査研究に基づいて、防止ならびに影響を受けた子どもの回復および再統合のための措置を組み合わせることにより、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに対処するための、いっそう目標を明確にしたアプローチを採用すること。 特定の集団を対象とするプログラム 24.委員会は、締約国が、2003年に「ポーランドにおけるロマ社会のためのプログラム」を採択したことに留意する。これは、10年間継続することを意図し、かつ子どもを含むロマ・コミュニティのかなりの部分に影響を与えている社会的排除に対応することを目的とするものである。委員会はまた、締約国が、被害を受けやすい状況に置かれたその他の集団(親の出稼ぎの際に自国に残された子ども、入所型養護施設の子ども、および、保護者のいない子どもであって国境を越えて入国した後に措置された養護施設から脱走した者など)の問題に対処するための措置をとってきたことにも留意する。 25.委員会は、締約国に対し、特定の集団の子どもを選択議定書上の犯罪から保護するため、これらの子どもを対象とした組織的な防止活動を引き続き行なうよう奨励する。 意識啓発 26.委員会は、インターネット関連の犯罪から子どもを保護するためにいくつかの意識啓発キャンペーンが実施されてきたこと、および、一般公衆を対象として、子どもに対する暴力に関する広報啓発キャンペーンが実施されてきたことに、関心をもって留意する。委員会はまた、ポーランドの教育制度の基礎的一般教育カリキュラムに人身取引の問題が導入される旨の締約国の説明も歓迎するものである。 27.委員会は、締約国に対し、選択議定書で扱われている問題についての意識啓発キャンペーン、および、親および子どもを対象とする訓練を引き続き実施するとともに、この点に関して市民社会と効果的な形で協力するよう奨励する。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止 現行刑事法令 28.委員会は、選択議定書で対象とされている犯罪からの子どもの保護を相当に強化する関連法の改正に、評価の意とともに留意する。これには、人身売買の定義を掲げ、かついわゆる「勧誘」を処罰することを目的とした2008年の刑法改正、および、新外国人法(2006年)が含まれる。しかしながら委員会は、締約国の法律で、選択議定書第2条および第3条により犯罪を構成するすべての行為が犯罪化されているわけではないことを依然として懸念するものである。具体的には、委員会は、子どもの売買をとくに取り上げた法律が存在しないことを遺憾に思うとともに、刑法で「児童買春」および「子どもの売買」の定義が定められていないこと、ならびに、刑法で15~18歳の子どもが児童ポルノまたは児童買春から明示的に保護されていないことを懸念する。委員会はまた、法律の実際上の実施が依然として問題となっていることにも懸念を表明するものである。 29.委員会は、締約国に対し、ポーランド刑事法制において「児童買春」および「子どもの売買」の定義を定め、かつ、15~18歳の子どもが児童買春および児童ポルノから明示的に保護されることを確保するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、児童ポルノ、児童買春および子どもの売買からの子どもの保護を定めた法律が効果的かつ効率的に実施されることを確保するためにあらゆる努力を行なうようにも奨励するものである。 法人の刑事責任 30.委員会は、対話の際に提供された、刑法には法人の責任に関する規定が存在しない旨の情報について懸念を覚える。 31.委員会は、締約国が、選択議定書第3条第4項に一致する形で、法人の責任に関する規定を刑法に含めるよう勧告する。 養子縁組の法的側面 32.ポーランドで施行されている養子縁組法制には留意しながらも、委員会は、選択議定書第3条第1項(a)(ii)で定められているように、養子縁組事案において不適切な形で同意を引き出すことが締約国の刑事法制の対象とされていないことを遺憾に思う。 33.委員会は、締約国が、選択議定書第3条第1項(a)(ii)で規定されているとおり、養子縁組事案において不適切な形で同意を引き出すことの定義が刑事法制に編入されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 34.委員会は、人身取引の被害者または証人に対して物的、医学的および心理的支援を提供する、人身取引の被害者/証人を対象とした援助および保護のためのプログラムに、関心をもって留意する。委員会は、被害者が18歳に達した時点から5年以内に刑事手続を開始する可能性を認める刑法改正案が作成されたことに留意するものである。 35.委員会は、締約国が、前述の改正を遅滞なく採択するとともに、ある者が18歳に達した後に刑事手続を開始できる期間を5年よりも長くすることを検討するよう勧告する。 刑事司法制度における保護措置 36.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関わる事件では録音および動画による子どもの事情聴取が活用できるとされていること、ならびに、これらの事情聴取は、子どもにやさしい事情聴取室で、特別な訓練を受けた警察官によって実施されなければならないとされていることを歓迎する。しかしながら委員会は、適切な備えのある子どもにやさしい事情聴取室の数および子どもの事情聴取を行なう訓練を受けた要員の人数が、締約国の領域のすべての地域で利用できるほどではないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、子どもにやさしい事情聴取室が設けられている場合でさえ、それが常に活用されているわけではないことも懸念する。委員会はさらに、人身取引事件に関する司法手続が不当に長く、平均して2年かかっていることを懸念する。 37.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもの保護を確保する目的で、子どもにやさしい事情聴取室に適切な備えがなされること、および、子どもの事情聴取を行なう職員がこの点に関して適正な訓練を受けていることを確保するために十分な資源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪に関わる事件の司法手続の期間を短縮し、一方で被害を受けた子どもの全面的回復および再統合のほうに焦点を当てなおすこと等の手段により、選択議定書上の犯罪の被害者がこうむるトラウマを軽減するために必要な措置をとるよう、促すものである。 被害者の回復および再統合 38.NGOが人身取引被害者のためのシェルターを運営できるようにするための空間および資金が提供されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、シェルターの数が依然として不十分であり、かつ、被害者に医学的、心理的および法的援助を提供するための一時的受け入れがしばしば活用されていることを、依然として懸念する。委員会はまた、性的搾取の被害を受けた子どもの回復および再統合のためのプログラムが存在しないこと、ならびに、この問題の全範囲に対処していくことに対する包括的かつ体系的アプローチが欠けていることにも、遺憾の意とともに留意するものである。 39.委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもを対象とした、回復および再統合を援助するためのプログラムおよびサービスを創設するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、これらのプログラムおよびサービスに対して十分な財源および訓練を受けた人的資源が配分されることを確保するよう促すものである。委員会はまた、締約国が、省庁横断チームの行動計画に基づいて策定され、警察部局における試行プログラムとして機能する予定の人身取引被害者援助指針の採択を速やかに進めるとともに、当該試行プログラムに対し、その実施のための十分な財源および人的資源が提供されることを確保するようにも勧告する。 ヘルプライン 40.委員会は、子どもおよび若者を対象とする無償の全国的ホットラインが2008年11月に開設されたことを歓迎する。 41.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもに対してヘルプラインが十分な援助を提供することを確保するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、子どもがヘルプラインの存在を知り、かつ容易にアクセスできることを確保することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、ヘルプラインと、子どもに焦点を当てた非政府組織および警察ならびにヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を奨励しかつ促進するよう勧告する。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 42.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連する国際的または地域的な協力プログラムおよびイニシアティブに締約国が関与していることに、評価の意とともに留意する。 43.委員会は、締約国に対し、人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約および性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討するよう奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 44.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、国民議会、最高裁判所ならびに国家当局および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 45.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 46.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月28日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/281.html
総括所見:ネパール(OPAC・2012年) 第1回(1996年)/第2回(2005年)/第3回~第5回(2016年)OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/NPL/CO/1(2016年7月8日)/第72会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2016年5月20日に開かれた第2112回会合(CRC/C/SR.2112参照)においてネパールの第1回報告書(CRC/C/OPAC/NPL/1)を検討し、2016年6月3日に開かれた第2132回会合(CRC/C/SR.2132参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPAC/NPL/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門にまたがる締約国の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国が条約に基づいて提出した第3~5回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/NPL/CO/3-5、2016年6月3日採択)、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいて提出された締約国の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/NPL/CO/1、2012年6月15日)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな積極的措置、とくに以下の措置を歓迎する。 (a) 軍隊による子どもの徴募を禁じた2015年憲法の諸規定。 (b) 真実和解委員会および強制的失踪調査委員会の設置(2015年)。 (c) 学校と平和地帯に関する国家的枠組みおよびその実施ガイドライン(2011年)。 (d) 紛争の影響を受けた子どもの再統合に関する国家行動計画(2010年)。 III.一般的実施措置 調整 5.委員会は、締約国におけるすべての平和構築プロセス(これには武力紛争への子どもの関与に関する問題も含まれる可能性がある)を促進する目的で、2006年11月に平和復興省が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに関連する問題について関連機関間の調整を促進する主要な機関である中央子ども福祉委員会に意思決定の権限がないことを懸念するものである。そのため、十分な権限および明確な任務を有する調整機構が存在しない状況になっている。 6.委員会は、あらゆるレベルのあらゆる機関間で調整を図るための機構を設置する、選択議定書に基づく義務に対して締約国の注意を喚起する。委員会はまた、締約国が、中央子ども福祉委員会であれ今後設置された他の機構であれ、このような機構に対し、選択議定書に基づく活動の実施および評価を調整するための十分な能力および権限が与えられることを確保するとともに、あらゆるレベルでその任務を遂行するために必要なあらゆる人的資源、技術的資源および財源を提供することも勧告するものである。 包括的な政策および戦略 7.委員会は、2010年に発表された、紛争の影響を受けた子どもの再統合に関する国家行動計画を歓迎する。委員会はまた、武力紛争の影響を受けた子どもを就学させ、かつ奨学金を提供するプログラムも歓迎するものである。しかしながら委員会は、実際には、武力紛争の影響を受けたすべての子ども(とくに子ども兵士だった者および紛争中の人権侵害被害者)がこれらの取り組みの利益にアクセスできているわけではないことを懸念する。 8.委員会は、紛争の直接の影響を受けた子ども(子ども兵士または被害者など)および一方または双方の親を失ったことにより間接的影響を受けた子どもを全員包摂することを目的として、国家行動計画の評価を実施するよう勧告する。締約国は、その際、ダリットおよびマイノリティの子どもならびに(または)農村部の子どもを含む、被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払うべきである。 資源配分 9.委員会は、選択議定書の実施のための具体的な予算配分が行なわれていないことを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国が、選択議定書のあらゆる分野の効果的実施のために十分なかつ対象を明確化した資源が配分されることを確保するよう勧告する。 普及および意識啓発 11.委員会は、締約国が、平和教育、人権教育および公民教育を初等中等教育のカリキュラムおよびカリキュラム資料に統合したことを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書が広く知られていないことを懸念するものである。委員会はまた、関連の専門家カテゴリーに属する者が選択議定書についての十分な研修を受けていないことも懸念する。 12.委員会は、締約国が、メディア等を通じ、とくに子どもを対象としながら、一般公衆の間で選択議定書の原則および規定を広く普及するよう勧告する。さらに、締約国は、関連するすべての専門家集団(とくに法執行に責任を負う者、裁判官、出入国管理担当者、ソーシャルワーカーおよび医療要員)を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的かつ包括的な研修活動を発展させるべきである。 データ 13.委員会は、選択議定書が対象とするすべての分野についてデータ収集、分析および監視を行なうための組織的機構が設けられていないことに、懸念とともに留意する。 14.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関連するすべての分野についての包括的なデータ収集システムを確立するとともに、収集された情報を、武力紛争の影響を受けている子どもおよび武力紛争に関与している子どもの保護に関わる包括的な政策およびプログラムの立案の基礎として活用するよう、勧告する。 IV.防止 年齢確認手続 15.委員会は、締約国の王立陸軍採用規則(1962年)に基づき、18歳未満の子どもには軍隊への入隊資格がないことに留意する。しかしながら委員会は、実際には、すべての者を対象とする実効的な出生登録が現在行なわれていないため、ネパール治安部隊に入隊する者の年齢確認に信頼が置けないことを懸念するものである。この結果、不正規な出生登録または出生証明書の偽造により、18歳に達する前の者が治安部隊に採用されている可能性がある。 16.委員会は、締約国に対し、軍隊への子どもの採用を効果的に防止するため、個々の新規入隊者の年齢が一貫した体系的なやり方で確認されることを確保するよう促す。委員会はさらに、条約に基づく総括所見(CRC/C/NPL/CO/3-5、パラ25)を再確認し、締約国が、締約国のすべての子どもを対象として普遍的な出生登録および身分証明書類へのアクセスを確保するための努力を引き続き強化するよう促すものである。 人権教育および平和教育 17.委員会は、徴集兵および現役兵に対し、選択議定書の規定に関する定期的かつ義務的な教育が実施されているか否かについての情報がないことを遺憾に思う。 18.委員会は、締約国が、徴集兵および現役で軍務に就いている者を対象とする義務的カリキュラムに選択議定書の規定に関する教育が含まれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 V.禁止および関連の事項 現行刑事法令 19.委員会は、軍隊による子どもの採用を禁じた新憲法第39条第6項を歓迎する。委員会はさらに、国の治安部隊(ネパール陸軍、ネパール警察および武装警察隊)による志願隊員採用の最低年齢は18歳であること、および、これらの治安部隊による採用は、志願に基づいて、かつ自由参加の競争を通じて行なわれなければならない旨の、締約国の説明に留意するものである。しかしながら委員会は、治安部隊または国以外の武装集団による子どもの採用を処罰する具体的法律がないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が、軍隊、国以外の武装集団ならびに民間警備会社および軍需産業による18歳未満の子どもの採用および使用ならびに敵対行為における子どもの使用を例外なく明示的に禁止しかつ犯罪化する目的で、刑法改正のプロセスを速やかに進めるよう勧告する。締約国はまた、15歳未満の子どもの徴募を戦争犯罪として定義しかつ処罰するとともに、国際刑事裁判所ローマ規程の批准を検討するべきである。 不処罰 21.委員会は、強制的失踪調査、真実および和解委員会法(ビクラム暦2071年)(2014年)の一部規定を無効とした2015年2月の最高裁判所判決を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の平和復興省による継続的活動には留意しながらも、軍隊および国以外の武装集団による子どもの使用および採用に関連した事件の捜査、訴追および有罪判決の件数および結果に関する情報がないことを遺憾に思うものである。委員会は、同法において、国の軍隊または国以外の武装勢力による子どもの採用が明示的に犯罪とされておらず、これらの行為が処罰されないままになってしまうおそれがあることを深く懸念する。 22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 強制的失踪調査、真実および和解委員会法に関する2015年2月の最高裁判所判決を全体として尊重しかつ実施すること。 (b) 軍隊および武装集団による子どもの採用および使用について迅速かつ公平な捜査が行なわれること、ならびに、実行犯とされる者が訴追されることおよび有罪判決を受けた者が十分に処罰されることを確保すること。 (c) 過去の国内武力紛争の際に行なわれた選択議定書上の犯罪の実行犯を捜査し、訴追しかつ処罰するための努力を強化すること。 域外裁判権および犯罪人引渡し 23.委員会は、締約国の法律で、締約国において永住許可を有さない外国人が締約国の利益に反してまたは締約国の住民に対して行なった犯罪についての域外裁判権が定められていることに留意する。しかしながら委員会は、双方可罰性が犯罪人引渡しの要件とされていることを懸念するものである。 24.委員会は、締約国が、選択議定書で禁じられている行為(軍隊もしくは武装集団への子どもの徴集もしくは採用または敵対行為に参加させるための子どもの使用を含む)について、当該犯罪がネパール国民もしくはその他の形で締約国と緊密なつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を設定するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、選択議定書上で対象とされている犯罪を理由とする犯罪人引渡しについて双方可罰性要件が適用されないことを確保することも勧告するものである。 VI.保護、回復および再統合 被害を受けた子どもの権利を保護するためにとられた措置 25.委員会は、締約国に入国する子どもの難民、庇護希望者および移住者(保護者のいない子どもを含む)であって、国外において徴募されまたは敵対行為で使用された可能性のある子どもを早い段階で特定するための機構が設けられていないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、過去に武力紛争があった国または現在武力紛争が生じている国から来た子どもの難民、庇護希望者または移住者(保護者のいない子どもを含む)であって、敵対行為に関与させられた可能性のある子どもを早い段階で特定するための機構を整備するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、このような特定の担当者が子どもの権利、子どもの保護および事情聴取スキルについての訓練を受けていることを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、そのような子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための適切な援助が提供されることを確保するための対応要綱および専門的サービスを発展させるよう勧告する。 身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための援助 27.委員会は、ネパール政府、ネパール共産党統一毛沢東主義派および国際連合との間で2009年に調印された具体的な除隊およびリハビリテーションのための枠組みにおいて、当初2973名の子ども兵士が対象とされたことに留意する。しかしながら委員会は、これらの子どもについて教育上の措置しかとられておらず、心理社会的処遇、武力紛争への直接の関与から生じた精神的トラウマについてのカウンセリング、または紛争被害者としての適切な補償が提供されていないことを懸念するものである。委員会はまた、多くの子ども兵士がこのプログラムの対象とされておらず、現在、被害者として認知されることならびに適切な援助および補償にアクセスすることに関して多くの阻害要因に直面していることも懸念する。 28.委員会は、軍隊もしくは武装集団に採用されていた子どもまたは敵対行為で使用された子ども全員に対し、身体的および心理的回復のためのサービスが提供され、かつリハビリテーションおよび再統合のためのプログラムへのアクセスが保障されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。このような措置には、これらの子どもが置かれている状況の慎重なアセスメント、これらの子どもが利用可能な法的助言サービスの強化、ならびに、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、即時的な、文化的に敏感な、子どもおよびジェンダーに配慮した、かつ学際的な援助の提供が含まれるべきである。締約国は、子どもの権利条約に基づく次回の報告書で、この点に関してとられた措置および当該措置を享受した子どもの人数についてのさらなる情報を提供するよう求められる。 VII.国際的な援助および協力 国際協力 29.委員会は、包括的和平合意およびその他の取決めの実施を支援するため、2007年1月にネパール平和信託基金が設置されたことを歓迎する。 30.委員会は、締約国が、赤十字国際員会および子どもと武力紛争に関する事務総長特別代表との協力を継続しかつ強化するとともに、選択議定書の実施における国際連合児童基金その他の国際連合機関との協力の強化を模索するよう勧告する。 VIII.通報手続に関する選択議定書の批准 31.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 IX.フォローアップおよび普及 32.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁(国防省を含む)、最高裁判所および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 33.委員会は、選択議定書ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 34.選択議定書第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国が、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年1月25日)。
https://w.atwiki.jp/catreport/pages/15.html
国民少数派、少数民族、宗教的少数派およびその他の弱者グループ 18. 委員会は、チベット人、ウイグル人、法輪功メンバーなどの中国の国民少数派、少数民族、宗教的少数派、その他の弱者グループをターゲットに行われる拷問、虐待、そして誘拐の申し立てについて深く憂慮している。加えて、北朝鮮の亡命者および難民の送還も、以下に明示されるように、委員会による弱者グループに関する懸念の範囲に含まれる。 (A)チベット自治区および隣接するチベット人居住地区での事件―申し立てられている過度の武力行使とその他の拷問の蔓延 委員会は、中国政府が恐怖感を深め、さらに説明責任を阻害しているチベット自治区、および隣接するチベット人居住地区での最近の弾圧に関する報告について深く憂慮している。これらの報告に続いて、役人、公安および国家警備員、また役人に煽動、黙認あるいは承認された民兵、民間人によるとりわけチベット人僧侶・尼僧に対する拷問・殴打・手枷足枷、その他の虐待的処置の報告が続出している。2008年3月のチベット自治区、および隣接するチベット人居住区での事件の後に、逮捕および懲役を受けた人々の数は、中国政府によって公表されているものの、委員会はその人々についてのさらなる情報の欠如を懸念している。特に、中国政府は1,231人の容疑者が「罪を贖い、教育と行政処分を受けた後に釈放された」と報告しているが、これらの事例や彼らの処置に関するそれ以上の情報は提供されていない。特に、委員会が懸念を表明するのは以下の点である。 (a) 委員会が入手した数々の申し立てと信頼できる報告によると、2008年3月のチベット自治区および甘粛省・四川省・青海省の隣接チベット人居住区でのデモや関連事件の後に、多数の人々が拘束あるいは逮捕されたこと。そして、チベット人の処置方法に対する抑制欠如 (b) 甘孜地方、ンガバ(中国名:アバ)地方およびラサの非常に平和的だと報告されたデモ群集への警察による無差別発砲の犠牲者に対する調査の欠如 (c) 拘束あるいは逮捕された多数のチベット人の中に拷問や残酷、非人道あるいは品位を傷つける処置を受けた者がいるという申し立てについての独立した公平な調査の欠如 (d) 独立した公平な調査団のチベット入りの不許可 (e) 逮捕者の中に親族に連絡ができなかった者、独立した医師または独立した弁護士に即座に接見できなかった者がいること。弁護を引き受けた弁護士が警告を受け、聞き入れなければ法的な助力の提供を阻止されたこと。そして、69人のチベット人が迅速な裁判で省略的なやり方によって判決を下されたという一貫した申し立て (f) 逮捕された後、行方が分からず、委員会からの文書および口頭の要求にも関わらず、中国政府がその行方を明示できない多数の人々(項目2、11、12) {中国政府は、甘孜地方、ンガバ(中国名:アバ)地方およびラサの平和的なデモ参加者、特に僧侶に対するものを含む報告されている過度の武力行使についての全面的な独立した調査を行なわなければならない。 中国政府は、全ての拷問および虐待の申し立てを、早急、公平かつ効率的に調査し、その責任者は起訴されるようにしなければならない。} 中国政府は、2008年3月のチベット自治区および隣接するチベット人居住区での事件の後に拘束あるいは逮捕された人々が、独立した弁護士と早急に接見でき、独立した医療を即座に利用でき、かつ報復や嫌がらせを受けることなく信頼できる雰囲気の中で、苦情を申し立てる権利を持てることを保証しなければならない。 中国政府は、強制的失踪が条約違反の性質を持つため、強制的失踪を禁止・抑止し、ゲンドゥン・チューキ・ニマ(パンチェン・ラマ11世)などの行方不明者の現状を明るみに出し、加害者を起訴・処罰するよう必要な全ての対策を導入しなければならない。 中国政府は、拘留中の死亡を含めた2008年3月のチベット自治区および隣接するチベット人居住地区の事件における犠牲者の調査あるいは死因の取り調べを行わなければならない。 (B)国民少数派、少数民族あるいは宗教的少数派に対する差別と暴力 委員会は、少数民族、特にチベット人や Ablikim Abdureyim などのウイグル人に対する差別行為と暴力に関する申し立てと、警察および公的機関側がこのような差別行為あるいは暴力を、早急、公平かつ効率的に調査することに対して消極的であることについて懸念している。(項目2、12、16) 委員会の概評2 (CAT/C/GC/2, para. 21) で述べたように、中国政府は、少数民族に向けられた行為など民族が動機となった暴力および差別の早急、公平かつ効率的な調査を保証することによって、虐待の危険性が特に高いグループに属する人々に保護を与えなければならない。中国政府は、このような行為の責任者を起訴および処罰し、積極的な抑止対策および保護対策を実施しなければならない。 中国政府は、法執行機関への少数民族の採用増加を早急に検討しなければならない。 (C)法輪功メンバーに関する申し立て 2006年の臓器移植に関する一時規制と、2007年の臓器移植令に関する中国政府の情報を認識した上で、臓器移植手術の増加と「(法輪功メンバーの)起訴が始まった時期」とが重なっていると述べ、かつ矛盾を明確にし、臓器摘出の申し立てに反証するために「臓器移植の出所に関する全面的な説明」を求める「拷問に関する国連特別報告者」による申し立てを委員会は認識する (A/HRC/7/3/Add.1) 。委員会はさらに、法輪功メンバーが刑務所で重い拷問および虐待を課されており、かつ、その中には臓器移植に利用された者もいるという情報について懸念している。(項目12、16) 中国政府は、法輪功メンバーが拷問を受けたという主張、および臓器移植に利用されたという主張に対する独立した調査を、直ちに実行あるいは委託し、適切な場合には、そのような虐待の責任者が起訴および処罰されるよう対策を早急に導入しなければならない。 (D)ノン・ルフールマン(追放・送還禁止原則)および拷問のリスク 委員会は、個々の事例のメリットを調査することなく、多くの人々が朝鮮民主主義人民共和国に強制送還され、その結果として、公的機関による拷問や残酷、非人道あるいは品位を傷つける処置を受けたという申し立てについて深く懸念している。委員会は、これらの人々が中国政府によって「密入国者」あるいは「スネークヘッド」と認定され、そのようなレッテルを貼られた人々はいかなる保護にも値しないと見なされていることを問題視する。同様に、近隣諸国から引き渡される、あるいは、近隣諸国に送還される人々は、拷問を受ける危険性があるにも関わらず、送還に対する法的保障措置の恩恵を受けない。委員会はさらに、中国政府が、それを国内法令にどのように取り入れているのかの明示をしていないことや、拷問を受ける危険性が高い国に人物を送還することを禁止していないこと、それによって、中国政府が条約第3条について負う義務を果たしていないことを懸念している。(項目3) いかなる状況下でも、中国政府は、ある人物がある国で拷問を受ける危険性があると考えるに十分な根拠がある場合に、その人物をその国に追放、返送、あるいは送還してはならない。 条約第3条について中国政府が負う義務の適用性を決定する際、中国政府は、とりわけ朝鮮民主主義人民共和国を非公式に出国することは、犯罪行為と見なされると報じられている事実を考慮に入れつつ、送還される人々が、拷問を受ける危険性が高いかどうかを見極めるための適切な(難民)認定の選考過程を設立し、国連難民高等弁務官事務所を国境地域入りさせ、送還される人物を委ねなければならない。中国に越境した北朝鮮市民が多数に上ることを考慮に入れ、中国政府は第3条の義務を完全に果たすことにもっと積極的になる必要がある。中国政府はまた、決定を再調査する適切な司法機構の完備および送還されるそれぞれの人への十分な法的防御の提供、かつ送還後の効率的な監視手配を保障しなければならない。 中国政府は、近隣諸国への追放者数および送還者数に関するデータを提供しなければならない。 中国政府は、条約第3条に課された義務を国内法令に全体的に組み込むための適切な法律の適用への努力を続行し、それによって何者も拷問を受ける危険性があると考え得る十分な根拠のある他国へ追放、返送、あるいは送還されることのないようにしなければならない。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/249.html
総括所見:バチカン(第2回・2014年) 第1回(1995年)OPAC(2014年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/VAT/CO/2(2014年2月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年1月16日に開かれた第1852回(CRC/C/SR.1852参照)において法王聖座(Holy See)の第2回定期報告書(CRC/C/VAT/2)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、法王聖座の第2回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/VAT/Q/2/Add.1)の提出を歓迎する。しかしながら委員会は、報告書の提出が相当に遅延したことにより、委員会が、法王聖座による条約の実施を14年間審査できなかったことを遺憾に思うものである。 3.委員会は、法王聖座の他部門型代表団との間に持たれた、開かれた、かつ建設的な対話、および、多数の分野について代表団が行なった積極的な誓約を歓迎する。とくに委員会は、態度および慣行を変革することについて法王聖座の代表団が表明した前向きな姿勢に、積極的側面として留意するものである。委員会は、これらの誓約を具体的に実施するために迅速なかつ確固たる措置がとられることを期待する。 4.委員会は、法王聖座に対し、この総括所見は、いずれもやはり2014年1月31日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて法王聖座が提出した第1回報告書についての総括所見(CRC/OPAC/VAT/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく法王聖座の第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/VAT/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、以下の立法措置がとられたことを歓迎する。 (a) 「刑事上の問題に関する補完的規範-第2編:子どもに対する犯罪」を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第8号。 (b) 刑法および刑事訴訟法の改正を掲げた、2013年7月11日のバチカン市国法第9号。 6.委員会はまた、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の批准(2012年1月25日)も歓迎する。 7.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。 (a) 子どものための安全な環境プログラムの発展に関する新たな取り組みを提案し、かつ世界中の虐待被害者のパストラルケアのための努力を向上させることを目的として、未成年者保護司牧委員会を創設したこと(2013年12月5日)。 (b) バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局をバチカン市国政庁内に設置したこと(2013年8月10日)。 III.条約の実施における特殊性 8.委員会は、法王聖座による子どもの権利条約の批准が、バチカン市国政府としての行為であるとともに、いかなる領域的権力または司法権力からも独立した原有的かつ非派生的法人格を有する国際法の主権的主体としての行為でもあるという、二重の性質を有するものであることを承知する。司教および宗教施設の主要な高位者がローマ法王の代理人または代表として行動するわけではないことは十分に承知しながらも、委員会は、カトリック修道会に所属する者が、カノン法典第331条および第590条にしたがい、法王に対する忠誠に拘束されていることに留意する。したがって委員会は、法王聖座に対し、条約を批准するにあたり、法王聖座は、条約を、バチカン市国の領域内のみならず、カトリック教会の最高権機関として、その権威のもとにある個人および施設を通じて世界中で実施することを誓約したことを想起するよう、求めるものである。 IV.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条(第6項)) 委員会の前回の勧告 9.委員会は、法王聖座の第1回報告書に関する1995年の総括所見(CRC/C/15/Add.46)に掲げられた勧告のほとんどについて十全な対応がとられていないことを遺憾に思う。 10.委員会は、法王聖座に対し、条約に基づく第1回報告書についての総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの(とくに差別の禁止、自己の意見を表明する子どもの権利および家族問題に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 留保 11.委員会は、条約に付した留保を撤回する可能性について現在検討中である旨の、法王聖座の代表団による発言を歓迎する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.46、パラ10)に照らし、委員会は、権利の主体としての子どもの全面的承認を妨げ、かつ、条約の適用についてバチカン市国の法源との両立性を条件としている、法王聖座が条約に付した留保についての懸念をあらためて表明するものである。 12.委員会は、法王聖座が、条約に付したすべての留保を撤回し、かつ条約が国内法令に優越することを確保するために必要な措置をとるよう勧告する。 立法 13.バチカン市国の法律が条約に一致することを確保することに対する法王聖座のアプローチは歓迎しながらも、委員会は、カノン法を含む内部法との関係で同じアプローチがとられていないことを遺憾に思う。委員会はまた、カノン法の一部の規定が条約の規定、とくに差別、暴力ならびにあらゆる形態の性的搾取および性的虐待から保護される子どもの権利に関連する規定と一致していないことも懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、条約との全面的一致を確保する目的でその規範的枠組み、とくにカノン法の包括的再検討を行なうよう勧告する。 調整 15.委員会は、条約の実施を調整する任務を委ねられた機構の設置を法王聖座として検討する旨の代表団の発言に、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、そのような機構がまだ設けられていないことを遺憾に思うものである。 16.委員会は、法王聖座が、すべての評議会および司教会議を横断して、かつ法王聖座の権威のもとに活動している個人および宗教的性格を有する施設との関連で子どもの権利の実施を調整する任務および能力を有する機構を、高いレベルに設置するよう勧告する。この機構に対しては、その任務を履行するための十分な人的資源、財源および技術的資源が提供されるべきである。 資源配分 17.委員会は、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもを支援しおよび保護し、ならびに、このような子どもに対し、とくに教育の機会、保健ケア、社会的ケアおよびその他の家族支援サービスを提供する目的で、草の根レベルで行なわれ、かつ世界中のカトリックの教会、財団および団体によって資金が拠出されている多数の活動を評価する。しかしながら委員会は、子どもを支援するための資源配分について包括的な子どもの権利基盤アプローチがとられておらず、かつ、法王聖座ならびに法王聖座が勢力および影響力を有している締約国の教会関連団体・施設が行なっている子どもに関する支出を追跡するシステムが存在しないことに、留意するものである。 18.「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) バチカン市国における子どもの権利の実施ならびに他の締約国においてカトリックの団体および施設が行なう子どもの権利の促進および保護のために必要な資源の包括的評価を実施すること。 (b) 被害を受けやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、子どもの最善の利益に奉仕するために配分された資源の効果を評価するシステムを確立すること。 独立の監視 19.委員会は、バチカン市国が当事国である国際的取り決めの実施を監督するための特別部局が2013年8月に設置されたこと、および、2013年12月に創設された委員会に、性的虐待に関する子どもの苦情を受理する権限が与えられる予定であることに留意する。しかしながら委員会は、法王聖座が、その権威のもとに世界中で活動している個人および施設(すべてのカトリック学校を含む)による、かつバチカン市国における、子どもの権利の遵守および尊重を監視するための機構を設置していないことを懸念するものである。 20.子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮に入れながら、委員会は、法王聖座が、子どもの苦情を、子どもに配慮したやり方で、かつ被害者のプライバシーおよび保護を正当に尊重しながら受理しかつ調査する明確な任務を与えられた、子どもの権利を監視するための独立機構を設置するよう勧告する。法王聖座はまた、カトリック教会が提供する学校、サービスおよび施設に出席しまたは関係しているすべての子どもが当該機構にアクセスできることも確保するべきである。法王聖座の特別な性質に鑑み、この機構と国内法執行機関との関係および連携に関する指針も定められ、かつ広く普及されるべきである。 普及および意識啓発 21.委員会は、法王聖座の報告書で説明されている意識啓発の取り組み、とくにインドのカトリック学校で設けられている人権についての教育講座を歓迎する。しかしながら委員会は、法王聖座が、報告対象期間中に、1995年に委員会が勧告したとおり(CRC/C/15/Add.46、パラ11参照)、条約の幅広い普及および世界中で話されている言語への条約の翻訳を促進するための十分な措置をとっていないことを懸念するものである。 22.委員会は、法王聖座が、とくに具体的かつ長期的な意識啓発プログラムを策定しかつ実施すること、ならびに、子どものためにとくに作成された適切な教材を活用しながら、あらゆる段階のカトリック教育制度の学校カリキュラムに条約の規定を含めることを通じ、条約のすべての規定を、とくに子どもおよびその親に対して広く知らせるための努力を強化するよう勧告する。 研修 23.カトリック学校の教員を対象として子どもの権利についての研修を行なう、オーストリアで2007年以降実施されている取り組み等のプロジェクトが進められていること、および、法王聖座が、研修は子どもの根本的保護のための望ましい実践であると認めていることは歓迎しながらも、委員会は、法王聖座が、その権威のもとに活動しており、かつ子どもとともにおよび子どものために働いている個人および施設(カトリック学校の教員および神学校の聖職者を含む)を対象として条約に関する研修を組織的に行なうための措置をとっていないことを、依然として懸念する。 24.委員会は、法王聖座に対し、すべての聖職者ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働いているカトリック修道会およびカトリック施設の構成員を対象として条約の規定に関する組織的研修を実施し、かつ、教員養成プログラムおよび神学校に子どもの権利についての必修単位を含めるよう、促す。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、法王聖座が、カノン法(とくに第1139条)に掲げられた「非嫡出子」という差別的表現を撤回する目的で法律の見直しを開始した旨の、双方向的対話の際に法王聖座の代表団から提供された情報を歓迎する。2013年に法王が行なった進歩的発言にも積極的対応として留意しながらも、委員会は、同性愛に関して法王聖座がこれまで行なってきた発言および宣言が、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーの青少年ならびに同性カップルによって育てられている子どもへの社会的スティグマおよび暴力を助長していることを懸念するものである。 26.委員会は、法王聖座が、すべての法律および規則ならびに政策および実践を条約第2条に一致させるとともに、婚外子を非嫡出子として差別的に分類することを速やかに廃止するよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの性的指向またはその親の性的指向に基づく子どもへのあらゆる形態のいやがらせ、差別または暴力を非難するためにその道徳的権威を全面的に活用し、かつ、同性愛の非犯罪化のために国際的に行なわれている努力を支持することも促すものである。 27.ジェンダーの基づく差別についての前回の懸念(CRC/C/15/Add.46、パラ8)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が引き続き、補完性および尊厳の平等の促進を重視していることを遺憾に思う。この2つの概念は、条約第2条で定められた法律における平等および慣行とは異なるものであり、かつ、差別的な立法および政策を正当化するのに利用されることが多い。委員会はまた、法王聖座が、委員会から1995年に要請されたように、女子と男子の平等を促進し、かつカトリック学校で使用されている教科書からジェンダー上のステレオタイプを取り除くためにとられた措置に関する正確な情報を提供しなかったことも遺憾に思うものである。 28.委員会は、法王聖座に対し、女子と男子の間にある差別に対応し、かつ、女子と男子の平等に異議を唱えることになりうる用語の使用を行なわないため、権利基盤アプローチをとるよう促す。委員会はまた、法王聖座に対し、カトリック学校で使用される教科書で、男子および女子の才能および能力の発達を制限し、かつその教育上の機会および人生の危害を阻害しかねないジェンダー上のステレオタイプ化が行なわれないことを確保するために積極的措置をとることも促すものである。 子どもの最善の利益 29.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての法王聖座の対応が、立法上、行政上および司法上の手続において、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて不十分であることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待の訴えに対応するにあたり、法王聖座が、いくつかの国内調査委員会から指摘されているように、教会の信用の維持および加害者の保護を子どもの最善の利益よりも一貫して優先させてきたことを、とりわけ懸念するものである。 30.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利に関する委員会の一般的意見14号(2013年)に対して法王聖座の注意を喚起するとともに、法王聖座が、この権利が立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連し、かつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合され、かつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、法王聖座は、子どもの最善の利益があらゆる分野で(子どもの性的虐待の事案に対応する場合を含む)第一次的に考慮されることを確保するため、あらゆる関連の権威者に指針を示すよう奨励されるところである。委員会はまた、法王聖座に対し、そのような指針を世界中のあらゆるカトリック系の教会、団体および施設に配布することも促す。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、法王聖座が、自己に影響を与えるあらゆる事柄について意見を表明する子どもの権利ならびに表現、結社および宗教の自由に対する子どもの権利について制限的解釈を行なっていることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が引き続き、条約第12条に掲げられた権利は親の権利および義務を損なうものであると考えていることも、懸念するものである。 32.委員会は、法王聖座に対し、自己の意見を自由に表明する子どもの権利は子どもの尊厳のもっとも本質的な要素のひとつであり、かつ、この権利を確保することは条約に基づく法的義務であって締約国の裁量は認められていないことを想起するよう、求める。委員会はまた、子どもが自己の意見を自由に表明でき、かつ子どもの意見がもっとも幼いころから正当に重視される家庭は重要なモデルであって、子どもがいっそう幅広い社会で意見を聴かれる権利を行使するための準備につながることも強調するものである。意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 意見を聴かれるすべての子どもの権利の実現に対する否定的態度と闘い、かつ、子どもが権利の保有者として認められることを促進すること。 (b) 関連の法的手続において、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律が効果的に実施されることを確保するための措置をとること。 (c) 親および子どもの保護者が子どもに耳を傾け、かつ子どもに関係する事柄について子どもの意見を正当に重視する機会を、立法および政策を通じて奨励するとともに、すでに存在する積極的な行動および態度をもとにした親教育プログラムを促進すること。 (d) カトリック系の団体および施設が家族および子どもに対して提供しているすべてのサービス、ならびに、カリキュラムおよび学校プログラムの計画における子どもの積極的役割を促進するとともに、意見を聴かれる子どもの権利が規律に関わる事柄において全面的に尊重されることを確保すること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 親を知り、かつ親によって養育される権利 33.委員会は、カトリック司祭が父親である子ども(多くの場合は父親の身元を知らない)の状況について懸念を覚える。委員会はまた、子どもが経済的に自立するまで教会から定期的給付を受ける計画を母親が獲得できるのは、子どもの父親または当該計画についていかなる情報も公にしない旨の秘密保持契約に母親が署名した場合のみであることも、懸念するものである。 34.委員会は、法王聖座が、カトリック司祭が父親である子どもの人数を評価し、それが誰であるのかを調べるとともに、父親を知り、かつ父親によって養育されるこれらの子どもの権利が適宜尊重されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、法王聖座が、今後、子どもを扶養するための金銭支給計画を母親に付与する条件として教会が秘密保持契約を課さないことを確保するようにも勧告するものである。 アイデンティティに対する権利 35.法王聖座が、親とともに暮らし、かつ自己の身元を知る子どもの権利を重視していることは歓迎しながらも、委員会は、いわゆる「赤ちゃんボックス」の利用を通じていくつかの国でカトリック団体が行なっている、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行が続いていることを懸念する。 36.条約第6条、第7条、第8条および第19条に照らし、委員会は、法王聖座に対し、匿名による赤ん坊の遺棄の慣行の根本的原因を明らかにするための研究に協力するとともに、条約第7条で定められているとおり、自己の生物学的な親およびきょうだいを知る子どもの権利を全面的に考慮に入れながら、これに代わる手段を速やかに強化しかつ促進するよう、強く促す。委員会はまた、法王聖座に対し、子どもの遺棄および(または)死亡を防止する最後の手段として病院で秘密に出産する可能性を導入しながらも、家族計画、リプロダクティブヘルスケア、ならびに、計画外の妊娠を防止し、かつ困窮している家族を援助するための十分なカウンセリングおよび社会的支援を提供することにより、赤ん坊の遺棄への対応に貢献するよう促すものである。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条(第3項)、第28条(第2項)、第34条、第37条(a)および第39条) 拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 37.委員会は、4つのカトリック女子修道会が1996年まで運営していたアイルランドのマグダレン洗濯所に家族、国家機関および教会によって恣意的に措置された女子を保護し、かつこれらの女子に対して正義を確保するために必要な措置を、法王聖座がとってこなかったことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。 (a) これらの施設に措置された女子が、奴隷のような条件下で働くことを強制され、かつ、非人道的な、残虐なおよび品位を傷つける取扱いならびに身体的および性的虐待をしばしば受けていたこと。 (b) 女子が、そのアイデンティティ、教育、ならびに、しばしば食料および必須医薬品を剥奪され、沈黙の義務を課され、かつ、外界との接触を禁じられていたこと。 (c) 洗濯所への入所前または洗濯所での監禁中に出産した未婚の女子が赤ん坊を強制的に取り上げられていたこと。 (d) 関係する4つのカトリック修道会は法王聖座の権威のもとで活動していたのに、洗濯所を運営する修道女らの行為を調査するための措置、または当該人権侵害の責任者、および、女子の無償労働を組織し、かつ事情を承知のうえでそこから利益を得ていた者の責任を問うにあたって法執行機関に協力するための措置がなんらとられていないこと。 38.加害者を訴追し、かつ行なわれた犯罪の重大性にふさわしい刑罰をもって処罰するとともに、すべての被害者が救済措置の対象とされ、かつ補償を受ける執行可能な権利を有することを確保するべきである旨の、拷問禁止委員会が2011年にアイルランドに対して行なった勧告(CAT/C/IRL/CO/1、パラ21)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう促す。 (a) アイルランドのマグダレン洗濯所およびこのような制度が存在していたすべての国で活動していた宗教関係者の行為について内部調査を実施するとともに、このような犯罪について責任を負うすべての者が制裁の対象とされ、かつ訴追のために国内司法当局に通報されることを確保すること。 (b) 被害者およびその家族に対し、修道会自身を通じて、または教会の最高権機関であってその権威のもとにあるカトリック修道会の構成員について法的責任を負う法王聖座を通じて、完全な補償が行なわれることを確保すること。 (c) これらの犯罪の被害を受けた者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するためにあらゆる適当な措置をとること。 (d) このような慣行をもたらした事情および理由についての評価を実施するとともに、今後、いかなる理由があっても女性および子どもがカトリック施設に恣意的に監禁されないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 体罰 39.あらゆる場面における子どもの体罰の禁止について検討するよう法王聖座に提言する旨の代表団の発言は歓迎しながらも、委員会は、子どもの儀式的殴打を含む体罰が一部のカトリック系施設で広く行なわれてきており、かつ依然として広く行なわれていること、および、とくにアイルランドのライアン委員会によって明らかにされたように、一部の国々ではこのような体罰がエンデミックの水準に達していることを懸念する。委員会はまた、法王聖座が、体罰が条約によって禁じられているとは考えておらず、したがって、カトリック学校または子どもとともにおよび子どものために活動しているカトリック系施設ならびに家庭における子どもの体罰を明確に禁じた指針および規則を定めていないことも、懸念するものである。 40.委員会は、法王聖座に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力はいかに軽いものであっても受け入れられないこと、および、条約は子どもに対していかなる水準の暴力を振るう余地も残していないことを想起するよう求める。委員会はまた、法王聖座に対し、あらゆる形態の身体的または精神的暴力から子どもを保護するためにあらゆる適当な措置をとる、条約第19条に基づく自国の義務を想起することも求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰に反対するのと同様に、子どもに対する体罰に明示的に反対すること。 (b) カノン法およびバチカン市国法を改正し、子どもに対するあらゆる体罰(家庭におけるものを含む)を明示的に禁止すること。 (c) カトリック系のすべての学校ならびに子どもとともにおよび子どものために活動している施設(バチカン市国の領域内の学校および施設を含む)でこの禁止規定を実効的に執行するための機構を設置するとともに、子どもに対する暴力について責任が問われることを確保すること。 (d) その権威を活用して積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育てを促進するとともに、聖書は体罰を容認していないという解釈が、教会の教育その他の活動に反映され、かつあらゆる神学教育および神学研修に編入されることを確保すること。 虐待およびネグレクト 41.委員会は、法王聖座が、世俗の公的機関について、親の義務および権利に干渉しないよう、虐待が行なわれたことが証明された場合以外は過程の現場に介入するべきではないという立場をとっていることを懸念する。このような立場は、子どもの虐待およびネグレクトを防止するための国際的な努力および措置を深刻に阻害するものである。委員会はまた、法王聖座が、カトリックの家族に相当の影響力を有しているにもかかわらず、家庭における虐待およびネグレクトを防止するための包括的戦略をまだ採択していないことも懸念する。 42.委員会は、子どもの保護はあらゆる形態の暴力の積極的防止から開始されなければならないこと、ならびに、虐待およびネグレクトから保護される子どもの権利が親の特権によって損なわれることはけっしてあるべきではないことを強調する。したがって委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもの虐待およびネグレクトを防止し、かつこれと闘うための包括的な戦略を策定するとともに、子どもの関与を得ながら、意識啓発および教育のためのプログラム(キャンペーンを含む)をさらに強化すること。 (b) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得て、かつこれらの者を訓練する等の手段も用いながら、ドメスティックバイオレンス、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに取り組むことを目的とした、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 (c) 子ども、その代理人その他の者が子どもに対する暴力を通報できるようにするため、これらのものを対象とした、安全な、十分に広報された、秘密が守られ、かつアクセスしやすい支援機構を発展させること。 (d) 虐待およびネグレクトの事案をいつ、どのように捜査機関に付託すべきかについての明確な指針および研修を発展させること。 性的搾取および性的虐待 43.委員会は、すべての子どもの尊厳および全人格を不可侵なものにする旨の、法王聖座の代表団によって表明された誓約に留意する。にもかかわらず、委員会は、法王聖座の権威のもとに活動するカトリック教会の構成員によって行なわれた子どもの性的虐待(聖職者が世界中で数万人にのぼる子どもの性的虐待に関与していた)について、深い懸念を表明するものである。委員会は、法王聖座が、行なわれた犯罪の規模を認めることも、子どもの性的虐待の事案に対応しかつ子どもを保護するために必要な措置をとることもせず、聖職者による性的虐待の継続および加害者の不処罰を可能にする政策および慣行を採用してきたことに、重大な懸念を覚える。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 子どもの性的虐待を行なっていることをよく知られた者が、そのような犯罪を隠蔽しようとする教会の試みにより、教区から教区へまたは他の国へと転任させられてきたこと。この慣行の証拠は多数の国内調査委員会によって記録されている。加害者を移動させるというこの慣行により、多くの聖職者は子どもとの接触を維持して子どもを虐待し続けることができ、かつ、多くの国の子どもが聖職者から性的虐待を受ける危険性が高い状態に置かれている。子どもに対する性的犯罪を行なった数十名の加害者がいまなお子どもと接触しているという報告がある。 (b) 法王聖座が、聖職者による子どもの性的虐待事件に関する全面的裁判権を1962年に設定し、かつ2001年には教理省がこれらの事件について排他的権限を有するとしたにもかかわらず、法王聖座が、報告対象期間中に把握したすべての子どもの性的虐待事件およびこれらの事件に関する内部手続についてのデータを委員会に提供しないこと。 (c) 子どもの性的虐待について法王聖座による対応が行なわれた事案で、当該虐待が、懲戒措置について定めた内部手続を通じて道徳に対する重大な違背として扱われており、その結果、虐待を行なった者の圧倒的多数および子どもの性的虐待を隠蔽した者のほぼ全員が、当該虐待が行なわれた国の司法手続を免れ得てきたこと。 (d) 聖職者全員に、違反すれば破門という条件のもとで沈黙の掟が課されていることから、子どもの性的虐待事件について当該犯罪が行なわれた国の法執行機関に通報が行なわれた例がほとんどないこと。それどころか、委員会のもとには、沈黙の義務を尊重しなかったという理由で修道女および司祭が追放され、降格されまたは聖位を剥奪された事案が報告されている。カストリヨン・ホヨス枢機卿がピエール・ピカン司教に宛てた2001年の書簡で述べられている、子どもの虐待を行なった者の告発を拒否したという理由で司祭が祝福を受けた事案についても同様である。 (e) 国内法執行機関への通報が義務的とされたことは一度もなく、かつ、マヌエル・モレノ司教およびルチアーノ・ストレロ大司教がアイルランド司教協議会の構成員に宛てた公式書簡(1997年)でこのような通報が明示的に否定されたこと。多くの場合、法王聖座の最上級段階にある機関を含む教会機関は、司法機関および国内調査委員会への協力について消極的であり、かつこのような協力を拒否した例も複数ある。 (f) 性的虐待から身を守れるよう、カトリック系の学校および施設に登録されている子どものエンパワーメントを図るために、限られた努力しか行なわれてこなかったこと。 44.委員会は、過去に何が起きたかの真実を確実に明らかにすること、再発防止のために必要な措置をとること、正義の原則が全面的に尊重されることを確保すること、ならびに、とくに、被害者およびこれらの言語道断の犯罪の影響を受けたすべての者に癒しをもたらすことの重要性に関する法王聖座の発言を認知する。このような観点から、委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう強く促すものである。 (a) 2013年に創設された委員会が、あらゆる子どもの性的虐待事件およびこれに対応する際のカトリック全聖職団の行為を独立の立場から調査することを確保すること。市民社会および被害者団体に対して委員会への参加を呼びかけること、および、国際人権機構に対して同委員会の活動への支援を呼びかけることを検討すること。調査の結果は公開され、かつカトリック教会の構成員による子どもの性的虐待の再発の防止に役立てられるべきである。 (b) 子どもに性的虐待を行なったことがわかっている者およびそのような疑いがある者全員を直ちに職務から外すとともに、捜査および訴追のために事案を関連の法執行機関に付託すること。 (c) 子どもに性的虐待を行なった者、ならびに、そのような犯罪を隠蔽した者および事情を承知のうえで犯罪者を子どもに接触する立場に置いた者全員の責任を問うために使用できる公文書が透明な形で共有されることを確保すること。 (d) 子どもの性的虐待が「道徳に対する違背」ではなく犯罪とみなされるようにし、かつ、被害者およびそのような犯罪について知るに至ったすべての者に沈黙の義務を課している可能性があるすべての規定を削除する目的で、カノン法を改正すること。 (e) 子どもに対する性的な虐待および搾取が疑われるすべての事案を法執行機関に義務的に通報することについて、明確な規則、機構および手続を確立すること。 (f) 法王聖座の権威のもとに活動するすべての司祭、宗教関係者および個人が、自己の通報義務について、かつ抵触がある場合には当該義務がカノン法の規定に優越することについて、知っていることを確保すること。 (g) それぞれストックホルム、横浜(日本)およびリオデジャネイロ(ブラジル)で開催された子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された成果文書にしたがって、このような犯罪の防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策を発展させること。 (h) 性的虐待に関する子どもの意識を高め、かつ自分のみを守るために必要なスキルを教えるための教育的防止プログラムを発展させること。 (i) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 45.委員会は、法王聖座が女性および女子の尊厳の促進にとくに注意を払っていることの表れが見られることを歓迎する。しかしながら、ドメスティックバイオレンスが大規模に行なわれており、かつ子どもに破壊的な影響を与えていること、および、ドメスティックバイオレンスにはジェンダーの要素がしばしばあることに鑑み、委員会は、2013年の女性の地位委員会の際、宗教、慣習または伝統は、国が女性および女子を暴力から保護する義務を免れるための弁明として用いられるべきではない旨を提案した最終草案に法王聖座が反対したことを深刻に懸念するものである。 46.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)を想起しつつ、委員会は、法王聖座が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、法王聖座が、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) あらゆる形態のドメスティックバイオレンスおよびジェンダーに基づく暴力と闘うことを目的とした努力および措置(これらの形態を正当化するものとしてしばしば機能する態度、伝統、慣習および行動習慣に対応する措置を含む)を支援するため、その権威および影響力を活用すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための包括的な国家的戦略を策定すること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための調整枠組みを採択すること。 (d) 暴力のジェンダーの側面にとくに注意を払って対応すること。 (e) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国連機関と協力すること。 ヘルプライン 47.委員会は、法王聖座が、諸締約国におけるヘルプラインの創設を促進し、その存在に関する意識を高め、かつ子どもにその利用を奨励するよう勧告する。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 48.近い将来、カノン法の家族関連規定の改正に歩を進める旨の、法王聖座代表団によって提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、法王聖座および教会運営施設が、多様な形態の家族の存在を認めておらず、かつ、家庭の状況を理由として子どもをしばしば差別していることを懸念する。 49.委員会は、法王聖座が、カノン法の規定が家庭環境の多様性を認め、かつ子どもが暮らしている家庭の態様を理由として子どもを差別しないことを確保するよう勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 50.委員会は、法王聖座が、子どもの人格の全面的かつ調和のとれた発達のために家庭環境のもとで成長することの重要性を重視していることを歓迎する。しかしながら委員会は、「キリストの軍団」(Legion of Christ)および他のカトリック系の施設に勧誘され、徐々に家族から引き離されて外界から孤立させられる青少年の状況について懸念を覚えるものである。子どものために学校および神学校を選択する親の権利および義務を強調する法王聖座の回答には留意しながらも、委員会はまた、2013年11月、フランス司教協議会の会長が、カトリック系の一部の施設および修道会における個人の道義心の操作を認めたことにも留意する。 51.委員会は、法王聖座に対し、心理的操作によって家族から引き離された子どもおよび青少年に関するすべての訴えを適切に調査するとともに、青少年を操作した責任者がその責任を問われ、かつ活動をやめることを確保するよう、促す。 52.委員会は、カトリック系団体において子どもの施設措置がいまなお広く行なわれていること、および、多くの国で新たな施設が開設されていることに表れているように家庭型の代替的選択肢がいまなお優先されていないことを、懸念する。委員会はまた、法王聖座が、カトリック系の代替的養護施設における子どもの措置およびモニタリングについてのガイドラインを採択しておらず、かつ、カトリック系団体に措置された子どもの脱施設化のための政策をいまだに定めていないことも懸念するものである。 53.委員会は、法王聖座に対し、カトリック系の施設に措置されている子どもの脱施設化を図り、かつ可能なときは子どもが家族と再統合できるようにするための政策を採択するよう促す。委員会はまた、法王聖座が、3歳未満の子どもが施設に措置されないことを優先的に確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。法王聖座はまた、基準が適用されることを確保し、かつ虐待を防止する目的で、カトリック系のすべての代替的養護現場における子どもの措置、十分な定期的再審査およびモニタリングについてのガイドラインも採択するべきである。その際法王聖座は、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日の総会決議64/142付属文書)を考慮に入れるよう求められる。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)および第33条) 健康 54.委員会は、ブラジルの9歳の女子が義父から強姦された後に緊急救命妊娠中絶手術を受けた事件(2009年)で、ペルナンブーコ(ブラジル)の大司教が女子の母親および中絶を行なった医師を処罰したことに、このうえなく深い懸念を表明する。当該処罰はその後、ローマカトリック教会司教省長官によって承認された。 55.委員会は、法王聖座に対し、妊娠した女子の生命および健康に明らかなリスクを付加している、中絶に関する法王聖座の立場を再検討するとともに、中絶サービスへのアクセスが認められうる状況を明らかにする目的で中絶に関するカノン法第1398条を改正するよう促す。 青少年の健康およびHIV/AIDS 56.委員会は、避妊手段ならびにセクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する〔サービス〕および情報に対する青少年のアクセスを否定する法王聖座の立場および実践の悪影響について深刻な懸念を覚える。 57.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利に関する一般的意見15号(2013年)、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)およびHIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)を参照しつつ、委員会は、法王聖座が、とくに思春期の女子の妊産婦有病率および妊産婦死亡率を高めることにつながる若年妊娠および望まない妊娠ならびに非公然の中絶の危険性、ならびに、思春期の女子および男子がHIV/AIDSを含む性感染症(STD)に感染しかつその影響を受ける特別なリスクを想起するよう求める。委員会は、法王聖座が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 到達可能な最高水準の健康を青少年が享受することに対して法王聖座の立場が及ぼす深刻な影響について評価を実施するとともに、性および生殖に関する情報(家族計画、避妊手段、若年妊娠の危険性、HIV/AIDSの予防ならびにSIDの予防および治療に関する情報を含む)への青少年のアクセスを妨げている、思春期のセクシュアリティを取り巻くすべての障壁およびタブーを克服すること。 (b) 青少年の健康および発達意影響を与えるすべての決定(青少年の健康を左右する根底的要因に影響を与える政策および介入策の実施に関する決定を含む)の中心に青少年の最善の利益を位置づけること。 (c) 自己の健康および発達にとって必要不可欠な十分な情報にアクセスする青少年の権利を確保し、かつ、青少年が社会に意味のあるやり方で参加できるようにすること。これとの関連で、法王聖座は、セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関する教育ならびにHIV/AIDS予防が、カトリック学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ、若年妊娠およびSTDの予防にとくに注意を払いながら思春期の女子および男子を対象として進められることを確保するべきである。 (d) 妊娠した10代の最善の利益を保障するとともに、リプロダクティブヘルスの分野で、妊娠した10代の意見が常に聴かれ、かつ尊重されることを確保すること。 (e) 早期婚および若年妊娠が引き起こしうる害についての情報の普及に積極的に貢献し、かつ、カトリック系の団体が妊娠した子ども、思春期の母親およびその子どもの権利を保護することを確保するとともに、これらの子どもに対する差別と闘うこと。 (f) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任ある親のあり方および性行動についての意識を高め、かつこれを促進するための措置をとること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条) 売買、取引および誘拐 58.委員会は、とくにスペインにおいておよびアイルランドのマグダレン洗濯所においてそうであったように、数千人の赤ん坊が、多くの国のカトリック修道会の構成員により母親から強制的に引き離され、かつ孤児院に措置されまたは国外の養親に引き渡されてきたことを深く懸念する。委員会は、責任のある修道会が法王聖座の権威のもとに活動していたにもかかわらず、法王聖座がこれらの事件について内部調査を実施せず、かつ責任者に対する行動をとらなかったことをとくに懸念するものである。委員会はまた、法王聖座が、これらの子どもの所在を追跡し、かつ可能なときは生物学的母親と再会させるためにとられた措置についての情報を提供しなかったことも懸念する。 59.委員会は、法王聖座に対し、赤ん坊が母親から引き離されたすべての事件について内部調査を開始し、かつ、責任者の責任を問うにあたって関連の国内法執行機関と全面的に協力するよう、促す。委員会はまた、法王聖座に対し、関係のカトリック修道会が、可能なときはこれらの子どもを生物学的母親と再開させる目的で、その所在について有しているすべての情報を全面的に開示することを確保するとともに、今後同様の慣行が生じないようにするためにあらゆる必要な措置をとることも、促すものである。 犯罪の被害者および証人である子ども 60.委員会は、法王聖座が、さまざまな形態の虐待の被害を受けた子どもに対応するにあたり、被害を受けた子どもの保護よりも教会の信用の維持および加害者の保護を組織的に優先させてきたことに、深刻な懸念を表明する。委員会は、法王聖座が、文書回答においておよび双方向的な対話の際に国内司法機関の第一義的権限を認めながらも、引き続き、被害を受けた子どもの保護、支援、リハビリテーションおよび補償について定めていないカノン法上の手続を通じて虐待事件に対処していることを、とりわけ懸念するものである。委員会はまた、以下のこともとりわけ懸念する。 (a) とくにウェストチェスター郡の大陪審(アメリカ合衆国)、ライアン委員会(アイルランド)およびウィンター委員会(カナダ)が留意しているように、被害を受けた子どもおよびその家族が、宗教的権威を有する機関によってしばしば非難されかつ信用を貶められ、告発の継続を思いとどまるよう促され、かつ、場合によっては屈辱を与えられてきたこと。 (b) 被害を受けた子どもおよびその家族に対し、金銭的補償の前提条件として秘密保持および沈黙が課されてきたこと。 (c) 法王聖座が、法王聖座自らが関わる事件については時効を延長したにもかかわらず、場合により、子どもの性的虐待についての時効を延長しようとする一部の国の努力を妨害してきたこと。 61.委員会は、法王聖座が、被害者および証人である子どもの取扱いに関わる事柄について、子どもの最善の利益の尊重および「子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針」(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである旨、勧告する。委員会は、法王聖座に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 性的虐待その他の形態の虐待の被害を受けた子どもを早期に発見するための包括的手続を発展させること。 (b) 性的虐待の被害者または証人である子どもを対象とした、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ効果的な通報のための回路を確保するとともに、性的虐待または他のあらゆる犯罪の被害を受けた子どもが、虐待を通報した際、将来の虐待および報復から保護されることを確保すること。また、親に対し、その子どもが受けた虐待について裁判所に訴えを起こす際の援助を提供すること。 (c) 犯罪の被害者および証人である子どもに対し、その身体的および心理的リハビリテーションならびに社会的再統合のための支援が提供されること、ならびに、このような措置について、子どもが国内法執行機関に虐待を通報することの妨げとなる秘密の和解が条件とされないことを確保すること。 (d) 法王聖座の権威のもとにある個人および機関によって行なわれた性的虐待の被害者に対し、いかなる秘密保持または沈黙の義務も課さずに補償を行なうとともに、これとの関連で被害者のための補償制度を確立すること。 (e) 子どもの性的虐待の被害者が正義および救済を求めることが時効によって阻害されている国々において、時効制度の改革を促進すること。 (f) 性的な搾取および虐待の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施すること。 H.国際人権文書の批准 62.委員会は、法王聖座が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約および両規約の選択議定書、ならびに、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約およびその選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する条約、障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書を批准するよう、勧告する。 I.フォローアップおよび普及 63.委員会は、法王聖座が、とくにこれらの勧告を法王、法王庁、教理省、カトリック教育省、カトリック保健ケア関連施設、家庭評議会、司教協議会ならびに法王星座の権威のもとに活動する個人および機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 64.条約第45条(a)および(b)に照らし、委員会は、法王星座が、性的虐待および性的搾取に関連する委員会の勧告の実施にあたり、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者、子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表ならびに拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する特別報告者に対して専門的助言を求めることを検討するよう、勧告する。 65.委員会はさらに、条約ならびにその実施および監視に関する議論の喚起および意識の促進を図る目的で、法王星座が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびにこの総括所見を、インターネット等を通じ、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 66.委員会は、法王聖座に対し、第3回~第6回統合定期報告書を2017年9月1日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、法王聖座が、今後の報告書は当該ガイドラインを遵守すべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、法王聖座に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 67.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を一体となって構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2014年4月28日)。
https://w.atwiki.jp/wiki7_sera/pages/28.html
回想の間/2005年12月27日/クリスマスパッチの撤去に伴うパッチサーバーの不具合が懸念されています(苦笑) #blognavi
https://w.atwiki.jp/alicewonder113/pages/118.html
【経済ニュース】 2013/07/26(金) 17 27 PDF版→https //www.monex.co.jp/static/jpmorgan/er/economic_20130724_1.pdf 7月24日レポート「日本の財政赤字を減らす確実な方法」について多くの賛意を示すフィードバックを頂いたが、批判的なご意見も頂戴した。その中の一つが、「日本の債務残高が200兆円以上増加しているのを勘案していない」である。 「日本の債務残高」という言葉使いが正確ではないが、メディアに登場する識者の中にも「政府債務は1000兆円を超えているから、日本の財政は深刻な状態」という言説を度々見かける。これを強調する識者は、一刻も早く増税すべきと唱えることが多い。 霞が関発の情報に頼る大手新聞からもこの点が頻繁に報道されるが、実際に日本政府の債務残高は1000兆円を超え、GDP比率で2倍以上という国は主要先進国の中で日本だけである。ただ、膨らんだ債務残高がなぜ問題なのかが、冷静に議論されることは余りない。 理論上、政府債務の返済は将来世代によって行われるため、政府債務拡大は「将来世代の負担」である。その負担を減らすために、現役世代の負担である増税で、政務債務の拡大を止めて、将来世代の負担をなるべく軽くする、というのは当たり前である。 筆者も、将来世代の負担を真剣に考えている。ただ、増税で税収が増える経済状況なら良いが、先日のレポートでも述べたが、増税でデフレ圧力が再び強まり名目GDPが縮小すれば税収は減る。再び1990年代後半と同様に公的債務が増えるリスクを懸念しているわけである。増税のタイミングとその程度を間違えれば、将来世代の負担が更に増える。 それでは、先の読者が懸念するような、「政府の債務残高の増大」が日本の財政問題に及ぼす影響はどの程度深刻なのか?メディアに登場する識者も大抵そうなのだが、それがどの程度深刻な問題で、日本経済の脅威であるかは実は曖昧である。「借金が増えて大変」という感情論ではなく、この点をデータを踏まえて考えてみよう。 政府債務残高が膨らみ過ぎることが引き起こす問題の一つは、債務による利払い負担が増えて、それが財政赤字を拡大させることである。利払い増加で財政赤字が増えてしまい、更に政府債務が積み上がる、という悪循環に陥ると財政政策が機能しなくなり弊害が甚大になる。 それでは、国債などの利払い負担が、日本の財政収支にどの程度影響しているのか?公的債務が増え続けているため、利払い負担も大きく増えていると思っている方も多いかもしれない。グラフでは、政府の利払い負担である、「財産収支(利子等の受取ー利子等の支払)」を示している。 最新データは2011年度だが、財産収支は3.8兆円の支払い超(支払>受取)である。2008年以降支払超が増えているが、1990年代よりも政府の財政負担は小さい。これは、公的債務残高が増えても、国債利子が大きく低下して利払い金額が減っているためである。 政府の利払い負担(財産収支の支払い超)は、公的債務残高が増えても、金利水準が低いままであれば大きく増えない。グラフで示しているように、財産収支よりも、経済成長や景気循環で税収は大きく動き、これが財政収支を最も動かしている。 名目金利の上昇で政府の利払い負担が増えて、それで更に政府債務残高が増えることが懸念されている。もちろん、名目金利「だけ」が上昇すればそういったことも起こるが、通常は名目金利が上昇する時は経済成長率が高まるので、税収がより大きく増える。だから、景気回復によって2000年代半ばに起きたように財政赤字は縮小する。このグラフが示す、税収と財産収支のデータを踏まえれば、それがなぜ起こるかは明白だろう。 政府債務残高が増え過ぎて、日本の財政が危機的な状況が起きているという認識は、「経済成長が起きず名目金利だけが上昇して、財政赤字が増え続ける」という特異な状況を懸念しているのだろう。ただ、なぜがそうした状況が起こるのか、筆者は真っ当な説明をほとんど聞いたことがない。ちなみに現在南欧諸国ではそれが起きているが、それは金融政策が南欧諸国のためだけには機能しないからである。 最新レポートの詳細(グラフ入り)を読む (執筆者:村上尚己 マネックス証券チーフ・エコノミスト 編集担当:サーチナ・メディア事業部)