約 24,181 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/229.html
総括所見:アイルランド(第2回・2006年) 第1回(1998年)/第3回・第4回(2016年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IRL/CO/2(2006年9月29日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年9月20日に開かれた第1182回および第1184回会合(CRC/C/SR1182 and 1184参照) においてアイルランドの第2回定期報告書(CRC/C/IRL/2)を検討し、2006年9月29日に開かれた第1199回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の包括的な報告書の提出、および、アイルランドにおける子どもの状況についてさらなる情報を提供してくれた、事前質問事項に対する詳細な回答(CRC/C/IRL/Q/2 and Add.1)を歓迎する。委員会はさらに、締約国のハイレベルな代表団との間に持たれた実りのある開かれた対話に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によるフォローアップ活動および達成された進展 3.委員会は、以下のような新法および政策措置が採択されたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 地位平等法および教育(福祉)法(2000年)。 (b) 人権委員会法(2000年および2001年)。 (c) 子ども法(2001年)。 (d) 子どもオンブズマン法(2002年)。 (e) 特別なニーズを有する者のための教育法(2004年)。 (f) 「われらが子どもたち――その生活」と題する国家子ども戦略(2000年)、「位置について、用意、さあ遊ぼう」(Ready, Steady, Play)と題する国家遊び政策(2004年)、および、2001年に検証が実施された国家貧困対策戦略。 4.委員会は、以下のものを含む、子どもの権利の保護に関連する国際条約が批准されたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年11月)。 (b) あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(2000年12月)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2002年4月)。 5.委員会は、条約の実施に関する第1回報告書の検討後、委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.85)をフォローアップするためにとられたさまざまな措置、とくに以下の措置を歓迎する。 (a) 国家子ども局(NCO)および国家子ども諮問評議会が設置されたこと(2001年)。 (b) 子どもオンブズマンが任命されたこと(2004年)。 (c) 子ども大臣官房が設置されたこと(2005年)。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会の前回の総括所見をフォローアップしかつ実施するためにとられたさまざまな措置は歓迎しながらも、委員会は、表明された懸念および行なわれた勧告の一部(とくに権利の保有者としての子どもの地位、および、政策および実務における子どもの権利基盤アプローチの採用に関するもの)について、まだ十全な対応がとられていないことを遺憾に思う。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告のうちまだ十全な対応が行なわれていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法および実施 8.委員会は、法的枠組みをさらに発展させるためにとられた措置は歓迎するものの、とくに1997年および2001年の子ども法における具体的規定の制定のペースが遅いことから法的枠組みの効果的実施が阻害されていることを、依然として懸念する。委員会は、前回の総括所見で委員会が勧告したように条約が国内法に編入されていないことに、遺憾の意を表明するものである。 9.委員会は、締約国に対し、関連の子ども法で未制定のままとなっている子どもの権利の保護のための規定を制定するため、優先的課題としてあらゆる必要な措置(資源の配分を含む)をとるよう促す。委員会は、締約国に対し、条約を国内法に編入するためにさらなる措置をとるよう奨励するものである。 国家的行動計画 10.委員会は、子どもたちの生活向上およびその権利の保護の増進のための主要な文書として、2000年に国家子ども戦略が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、同戦略に掲げられた行動および目標の指針となる総括的原則、ならびに、その策定に際して行なわれた裾野の広い協力および公的協議(非政府組織(NGO)および学界とのものを含む)にも、評価の意とともに留意するものである。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 権利基盤アプローチがすべての活動に適用されることを確保するため、同戦略の達成状況を評価すること。 (b) 同戦略の目標および活動の実施に関する具体的期限を定めること。 (c) 同戦略の実施のために具体的予算配分を行なうこと。 12.委員会は、締約国が、同行動計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ、子どもに関する国連総会特別会期(2002年5月)で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」が考慮されることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国家子ども戦略の実施および監視を参加型のかつホリスティックな方法で進めるとともに、これらの活動の状況および効果に関する情報を次回の報告書で提出するよう、勧告するものである。 独立の監視 13.委員会は、アイルランド人権委員会および子どもオンブズマン(人権一般の促進および保護ならびにとくに子どもの権利および福祉に対応する同オンブズマンの事務所を含む)が設置されたことを歓迎する。子どもからまたは子どもに代わって提出される苦情を調査する権限が具体的に含まれていることは歓迎しながらも、委員会は、いくつかの制限が課されていることにより、刑務所および警察署に収容された子どもに関わる調査において子どもオンブズマンの権限が妨げられる可能性があることを、懸念するものである。 14.委員会は、子どもの権利侵害を生じさせるおそれがある間隙の可能性を解消する目的で、締約国が、子どもオンブズマンとともに、オンブズマン事務所の調査権限の範囲を制限する特定の規定を再検討し、かつその改正を提案するよう勧告する。 15.オンブズマン事務所が独立して職務を遂行できることを確保するため、委員会は、締約国が、ウラクタス(国民議会)および財務省を通じてオンブズマン事務所に直接財源を提供する方法および手段を追求するよう、勧告する。委員会はまた、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に対しても、締約国の注意を喚起するものである。 データ収集 16.委員会は、とくに国家子ども戦略の枠内におけるNCOの調査研究機能を通じて達成された、統計データの収集における進展に留意するとともに、アイルランドの子どもたちの生活を探求する「全国子ども縦断研究」が委託されたことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、文書回答において締約国から提供された情報および新たな国家データ戦略への言及(CRC/C/IRL/Q/2/Add.1)にも、評価の意とともに留意するものである。しかしながら委員会は、年齢、性別、民族ならびに農村部および都市部の別によって細分化された、子どもに関する体系的かつ包括的なデータが存在しないことを依然として懸念する。このようなデータは、アイルランドでとくに脆弱な立場に置かれた子ども(虐待、ネグレクトまたは不当な取扱いの被害者、ストリートチルドレン、障害のある子どもおよび施設養護を受けている子どもを含む)の状況の分析を可能としてくれるはずである。 17.委員会は、締約国が、細分化されたデータの体系的かつ包括的な収集を条約に一致する形で発展させるためのさらなる措置を、中央統計局ならびに他の政府省庁および政府機関の役割の強化等も通じてとるよう勧告する。このようなデータは、子どものための政策およびプログラムの創設、実施および監視のために活用されるべきである。 普及、研修および意識啓発 18.委員会は、締約国が、前回の勧告に応じ、関連の公的機関および公衆一般の間で条約を普及しかつ周知するためのさらなる措置をとったことに、評価の意とともに留意する。とくに委員会は、条約が国家子ども戦略とあわせて普及されていること、ならびに、NCOおよび子どもオンブズマン事務所がそれぞれのウェブページ等を通じて意識啓発活動を行なっていることを歓迎するものである。 19.委員会は、締約国に対し、子どもにやさしい資料も含んだ定期的なかつ全国規模の意識啓発キャンペーン、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに学校、保健サービスおよび社会サービスで働く専門家ならびに法曹および法執行官)を対象とする重点対象型のキャンペーンおよび必要な研修等を通じ、条約の規定がおとなおよび子どもの双方によって広く知られかつ理解されることを確保するための努力をさらに強化するよう、奨励する。 3.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) (訳注)番号の振り間違いは原文ママ。 差別の禁止 20.委員会は、人種主義と闘う国家行動計画の策定(2005年)、および、とくに同計画の5つの目的(保護、包摂、供給、承認および参加)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国のすべての子どもが差別の禁止の原則を平等に享受しているわけではないおそれがあり、かつ、異なる民族性を有する子どもおよびマイノリティに属する子どもがいっそう高い水準の人種主義、偏見、固定観念および外国人嫌悪に直面していることを、懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、人種主義と闘う国家行動計画が全面的に実施され、かつ、子どもたちの間の、とくに初等中等教育における人種主義、偏見、固定観念および外国人嫌悪に対応するための措置に具体的注意が向けられることを確保するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 22.委員会は、子どもの最善の利益の尊重を確保するための措置が一部の分野でとられたことに留意するものの、この原則への対応がいまなお不十分であることを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの最善の利益の一般原則がいかなる区別もなく第一義的に考慮され、かつ子どもに関連するすべての法律に全面的に統合されることを確保すること。 (b) この原則が、政治上、司法上および行政上のすべての決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいても適用されることを確保すること。 子どもの意見の尊重 24.委員会は、子ども議会および若者議会等も通じて子どもの意見の尊重を促進するためにとられた措置、および、中等学校における実効的な生徒評議会の設置に関して見られた進展に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、訴訟後見人に関する具体的規定が定められていないこと、ならびに、これらの措置が体系的かつ包括的なやり方でとられていないこと、および、地方レベルの公的機関および主題別の公的機関への対応が行なわれていないことを、懸念するものである。委員会はまた、子どもオンブズマンが受理する苦情の多くが子どもの意見が尊重されていないことに関わるものであることにも、留意する。 25.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが、とくに家庭、学校その他の教育施設、保健部門およびコミュニティにおいて、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を表明し、かつその意見を正当に重視される権利を有することを、憲法上の規定等も通じて確保するための努力を強化すること。 (b) 子どもに対し、自己に影響を与えるいかなる司法上および行政上の手続においても意見を聴かれる機会が与えられ、かつその意見が子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に重視されることを確保すること。これには、とくに子どもが親から分離される事案において、1991年子どもケア法で定められた独立代理人(訴訟後見人)が利用されることの確保も含む。 (c) 意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された勧告を考慮すること。 4.市民的権利および自由(第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) プライバシーの保護 26.子ども裁判所で訴追される子どものプライバシーが保護されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、上級裁判所で訴追される子どもに対して同一の保護が与えられていないことを懸念する。 27.委員会は、締約国が、プライバシーの保護を子どもが関係するすべての法的手続に拡大するために必要な措置をとるよう、勧告する。 4.家庭環境および代替的養護(第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) (訳注)番号の重複は原文ママ。 親の責任 28.委員会は、家族支援制度の分野における多くの発展、とくに家族支援庁の設置、6歳未満の子どもがいる家庭への四半期給付の導入および有給産前産後休暇の段階的延長を歓迎する。しかしながら委員会は、これらの制度において裾野が広い子ども中心のアプローチがとられておらず、かつ、支援プログラムについての責任および支援サービスの提供責任が異なる政府機関に割り当てられていることを懸念するものである。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 異なる政府省庁のもとで提供されている支援サービスについて、これらのサービスの質および到達度を評価し、ならびに存在する可能性がある欠点を特定しおよびこれに対応するための徹底的検証を行なうこと。 (b) 危険な状況にある家族および子どもに提供されるソーシャルワークサービスを拡大し、週7日・24時間体制のサービスとすること。 家族再統合 30.委員会は、1996年難民法で、家族再統合に関する十分な法的枠組みが定められていることに留意する。しかしながら、条約第10条にしたがって行なわれる家族再統合は、移民を含む他の状況にも適用されるものである。委員会は、再統合を求める家族構成員が手続上の情報にアクセスできないこと、および、意思決定過程で子どもの最善の利益の原則が考慮されていないことを懸念する。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族に関する理解の発展によりよく対応する目的で、1996年難民法における家族の定義の見直しを検討すること。 (b) 難民法で定められた状況以外の家族再統合に関する法的枠組みの確立を検討すること。 (c) いかなる法律上または行政上の手続においても、子どもが関わる決定を行なう際には子どもの最善の利益の原則が常に第一義的に考慮されることを確保すること。 親のケアを受けていない子どものための代替的養護 32.委員会は、里親養護、ならびに、親のケアを受けていない子どものために法定機関および非法定機関によって運営されている入所センターの査察を行なう社会サービス査察官が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、社会サービス査察官が、まだ法律上の根拠に基づいて設置されておらず、委任された職務を遂行するために必要な資源を欠いており、かつ親のケアを受けていないすべての子どもを保護するわけではないことを、懸念するものである。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会サービス査察官がその職務を遂行するための法律上の根拠を創設し、かつ、その権限を、必要とされている養護に関わらず、親のケアを受けていないすべての子どもに拡大するための措置を検討すること。 (b) 養護センターを退所する若者のフォローアップおよびアフターケアを確保し、かつそのための対応を行なうための努力を強化すること。 養子縁組 34.委員会は、現行法が、とくに国際養子縁組における保護との関連で国際基準に全面的に一致しているわけではなく、かつ子どもの最善の利益を考慮していないことを、依然として懸念する。委員会はまた、現行法を見直すためにとられている措置に時間がかかっていることも懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、法改正を実行しかつ実施するための努力を速やかに進めるとともに、関連するすべての法律が国際基準に一致することおよび子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保するよう、勧告する。 暴力、虐待およびネグレクト 36.児童虐待およびネグレクトの問題に対応するために締約国が行なっている努力(児童虐待通報ガイドラインの策定、通報されたすべての児童虐待事案の詳細な調査および子どもの性的虐待に関する全国規模の意識啓発キャンペーンの開始を含む)は歓迎しながらも、委員会は、児童虐待の防止のための包括的な国家的戦略または措置が整備されていないこと、および、支援サービスへのアクセスに時間がかかることを、依然として懸念する。 37.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「子ども最優先:全国ガイドライン」を引き続き見直すとともに、法的根拠に基づいて当該ガイドラインを確立することを検討すること。 (b) 通報された虐待およびネグレクトのすべての事案について十分な調査および訴追が行なわれること、ならびに、虐待およびネグレクトの被害者が身体的回復および社会的再統合についてのカウンセリングおよび援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 虐待、ネグレクトおよびドメスティックバイオレンスに対する十分な対応を発展させること、地域的、全国的および国際地域的調整を促進することならびに感受性強化、意識啓発および教育のための活動を実施することを含む、包括的な児童虐待防止戦略を策定すること。 (d) 子どもとともに働くすべての被用者およびボランティアについて採用前の評価が実施されること、ならびに、就業期間中、これらの者に対して十分な支援および研修が提供されることを確保すること。 38.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究を背景として、委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告する。加えて委員会は、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書(A/61/299)に対して締約国の注意を喚起し、かつ、同報告書に掲げられた全般的勧告および場面に応じた勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう、奨励したい。 体罰 39.家庭内の体罰の禁止について見直しが進められており、かつ親教育プログラムが開発されてきたことには留意しながらも、委員会は、家庭内の体罰がいまなお法律で禁じられていないことを深く懸念する。 40.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.85、パラ39)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 家庭におけるあらゆる形態の体罰を明示的に禁止すること。 (b) 体罰が受け入れられないことについて、親および一般公衆の感受性強化および教育を進めること。 (c) 体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけを促進すること。 (d) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を考慮すること。 5.基礎保健および福祉(第6条、第18条3項、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 41.2005年障害法および国家障害戦略(2004年)のような立法上および政策上の進展は歓迎しながらも、委員会は、法的枠組みにおいて、障害のある子どもの具体的ニーズならびに必要な保健サービスおよび教育上の便益への障害児によるアクセスについて不十分な対応しかとられていないこと、ならびに、子ども法の規定の多くがまだ全面的に制定されていないことを、依然として懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの具体的ニーズに対応する、インクルーシブなかつ権利基盤型の法的枠組みを採用するとともに、現行法の規定のうち障害のある子どもに関連するすべての規定を実施すること。 (b) 予防およびインクルージョン、障害のある子どもを対象とする利用可能な支援およびサービス、ならびに、障害のある子どもに対する社会の否定的な態度との闘いに焦点を当てた意識啓発キャンペーンを、子どもたちの関与を得ながら行なうこと。 43.委員会はまた、締約国に対し、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議(1997年10月6日)の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れながら、障害のある子どもに関連する現行の政策および慣行を見直すことも促す。 健康および保健サービス 44.委員会は、国家子ども戦略の目標第3号およびプライマリーケア戦略の策定を含む、締約国が多くの政策文書で表明している決意を歓迎する。しかしながら委員会は、この点に関する包括的な法的枠組みが存在しないこと、および、条約第24条に規定された保健ケアサービス(とくに、脆弱な状況に置かれた子どもを対象とするもの)の質およびこれらのサービスへのアクセスを保障する法定指針が策定されていないことを、依然として懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの健康上のニーズに対応する総括的な法律を採択すること。 (b) 対象を明確にした資源を提供し、かつ保健ケアサービスの質に関する法定指針を確立することにより、保健ケアサービスの利用可能性および質が国内全域で維持されることを確保すること。 (c) 子どものための既存の保健ケアサービスに対して配分される資源が、全部門、すなわち公共部門、コミュニティ部門およびボランティア部門の利益となる、戦略的なかつ調整のとれたやり方で活用されることを確保すること。 (d) 子どもの難民および庇護希望者のニーズに対して、かつ現行の「トラベラーの健康に関する国家戦略」を実施することによりトラベラー・コミュニティに属する子どものニーズに対して、特段の注意を払うこと。 46.2001年精神保健法を歓迎し、かつ、締約国が、子どもおよびその家族の精神保健に関連する十分なプログラムおよびサービスがないことを認識していることには留意しながらも、委員会は、精神保健上の困難を有する子どもが、スティグマに対する恐れから既存のプログラムおよびサービスにいまだにアクセスできておらず、かつ、18歳未満の一部の子どもが精神医学施設で成人として取り扱われていることを、懸念する。 47.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.85、パラ20および38)をあらためて繰り返すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健省担当国務大臣が2003年に任命した精神保健政策専門家グループの知見を全面的に活用し、かつその勧告を実施すること。 (b) スティグマを防止するための意識啓発キャンペーンおよび感受性強化キャンペーンを行なうとともに、早期介入プログラムに焦点が当てられることを確保すること。 (c) 精神保健上の困難を有する子どもが18歳未満の子どもをとくに対象とするサービスから利益を得られることを確保するための努力を、引き続き行なうこと。 思春期の健康 48.子どもによるアルコールの消費に対処するための多くの政策措置(国家アルコール政策、アルコール問題戦略特別委員会、および、子ども・若者に関する議会委員会がこの問題に対して払っている注意を含む)には留意しながらも、委員会は、青少年によるアルコールの消費水準が高いことを依然として懸念する。 49.委員会は、締約国が、とくに包括的戦略(これには、意識啓発活動、〔ならびに、〕子どもによるアルコールの消費および子どもを対象とする広告の禁止が含まれるべきである)を策定しかつ実施することにより、子どもによるアルコールの消費に対処するための努力を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会はまた、思春期の健康に関する委員会の一般的意見4号(2003年)に対しても締約国の注意を喚起するものである。 50.アルコール問題戦略特別委員会の創設は歓迎しながらも、委員会は、男子および思春期の男性の自殺率が上昇しているという報告について懸念を覚える。委員会はまた、法定年齢に満たない段階での有害物質の濫用と自殺率との間に関連があると思われることも懸念するものである。 51.委員会は、締約国に対し、新たな10か年計画「自殺防止に関する国家行動戦略」、および、アルコール問題戦略特別委員会の第2次報告書の勧告を実施するよう促す。 52.社会的・人格的保健教育が中等学校のカリキュラムに編入されていることには留意しながらも、委員会は、リプロダクティブヘルスに関する必要な情報に対し、青少年が十分にアクセスできていないことを懸念する。当該教育は選択科目であり、親は子どもに当該教育を受けさせないことが可能である。委員会はまた、過去10年間に性感染症が目立って増加したことが報告されており、かつ若い女子の感染リスクがとりわけ高いことも、懸念する。 53.委員会は、締約国が、リプロダクティブヘルスおよびセクシュアルヘルスに関する、とくに青少年を対象とする情報およびサービスへのアクセスを増進させるための努力を強化するとともに、これらの情報およびサービスを学校カリキュラムに限定するのではなく、広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンに加えて青少年の日常的な生活環境でもアクセスできるようにすることを、勧告する。 有害な伝統的慣行 54.委員会は、一部の移民コミュニティがアイルランドで女性性器切除(FGM)を行ない続けていることに、懸念とともに留意する。委員会は、FGMが条約違反であることを強く強調するものである。 55.委員会は、締約国に対し、たとえば法律でFGMを禁止すること(域外裁判権の設定を可能とすることも含む)、および、FGMの著しく有害な影響についてすべての層の住民の感受性強化を図る、対象の明確なプログラムを実施することを通じて、FGMの慣行を終わらせるための努力を引き続き行なうよう促す。委員会は、締約国が、FGMの慣行を防止するために、地方レベルのあらゆる関連のパートナー(教員、助産婦、伝統的保健従事者、宗教的指導者および共同体の指導者を含む)の関与および動員を図るよう、勧告するものである。委員会はまた、1995年1月21日に行なわれた、女子に関する一般的討議の際に採択された勧告(CRC/C/38参照)に対しても、締約国の注意を喚起する。 生活水準 56.委員会は、順調な経済的発展が全般的な貧困水準の削減に寄与してきたことを認識する。しかしながら委員会は、とくに脆弱な状況に置かれた多くの子どもが、所得が全国的な所得中央値よりも相当に低いままの世帯で暮らしていることを、依然として懸念するものである。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困が削減され、かつ、経済的苦境が発達に及ぼす悪影響から子どもが保護されることを確保する目的で、国家貧困対策戦略を効果的に実施し、かつ経済的苦境下で暮らしている家族への支援を強化すること。 (b) 最高水準の貧困を経験している家族を援助するための追加的かつ重点対象型手当として、現行の普遍的子ども手当給付への補足手当を導入すること。 (c) 現行の政策および戦略を全面的に実施するとともに、とくに脆弱な立場に置かれた子どもがいる家族を対象とするサービス(保育、保健ケアおよび住宅を含む)およびその補助のための予算配分を増額すること。 (d) 低所得家庭を対象とする負担可能な社会住宅への投資を増額すること。 6.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 58.委員会は、教育に対する権利についての法律上および政策上の枠組みを発展させかつ強化するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、公立初等学校における教育および教材の「事実上」の費用が親の負担とされている例があること、子どもの意見および具体的ニーズが常に十分に考慮されているわけではないこと、ならびに、トラベラー・コミュニティに属する子どもおよび障害のある子どもの間でとりわけ高い中退率が見られることを、懸念するものである。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、子どもの具体的ニーズに関する適切な専門的評価を実施し、特別なニーズを有する子どもに対して技術的および資料的支援を提供し、学校の子どもが自己のウェルビーイングに関わるすべての事柄について意見を聴かれる権利を有することを確保し、かつ、すべての子どもに平等を基礎として教育を提供する目的で全般的な学級規模を縮小するための努力を継続することにより、子どもの特別なニーズが考慮される教育環境を創設するための措置を引き続きとること。 (b) 校舎、レクリエーションのための設備および便益ならびに学校の衛生環境の改善および向上に対しても予算配分が向けられることを確保すること。 (c) いじめの現象と闘うために必要が措置がとられること、および、いじめの影響について敏感なかつ子どもに配慮したやり方による対応がとられることを確保すること。 (d) 作成された「トラベラー教育戦略」を刊行しかつ普及するとともに、トラベラーの問題および異文化間アプローチに関する教員の感受性を高めるため、教員を対象とした研修活動を実施すること。 60.委員会は、締約国の第1回・第2回定期報告書に関する総括所見(CERD/C/IRL/CO/2)で人種差別撤廃委員会が提起した、非宗派学校または多宗派学校が初等教育施設総数の1%に満たない旨の懸念をあらためて表明する。 61.委員会は、締約国に対し、非宗派学校または多宗派学校の設置を促進し、かつ学校への受入れにおける差別を解消するために現行法の枠組みを改正するよう奨励した人種差別撤廃委員会の勧告(CERD/C/IRL/CO/2、パラ18)を全面的に考慮するよう、奨励する。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 62.多数の政府省庁、地方当局および保健委員会を対象とするいくつかの活動および責任を掲げ、かつ子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動を享受する機会を増進する「国家遊び政策」のような取組みは歓迎しながらも、委員会は、レクリエーション施設の創設が政治的および財政的にほとんど重視されておらず、かつ、住宅に対する需要の高まりによって遊び場および公共空間の発展がさらに阻害される可能性があることを、懸念する。 63.委員会は、締約国が、子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動を享受するための施設の創設をいっそう重視するよう勧告する。 7.特別な保護措置(第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条b~d、第32~36条) 子どもの難民および庇護希望者 64.2006年出入国管理・在留・保護法案を通じた、庇護希望手続に関する最近の視点には留意しながらも、委員会は、保護者のいない子どもまたは親から分離された子どもが、とくにサービスおよび独立の代理人へのアクセスとの関連で、庇護手続の際にいまなお十分な指導、支援および保護を受けられていない可能性があることを懸念する。 65.委員会は、締約国が、政策、手続および実務を国際法上の義務および他の文書(国連難民高等弁務官およびセーブ・ザ・チルドレンが作成した「望ましい実務に関する声明」を含む)に掲げられた原則と一致させるために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもが公的機関または親のどちらの養護下にあるかに関わらず、支援サービスに関する同一の基準および当該サービスへの同一のアクセスが適用されることを確保するよう、奨励するものである。委員会はまた、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対しても、締約国の注意を喚起する。 少年司法の運営 66.委員会は、2001年子ども法で刑事責任年齢が7歳から12歳に引き上げられ、かつ反証がないかぎり当該最低年齢は14歳と推定されることになったことを歓迎するものの、同法のこの部分が施行されなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、子ども法のこの部分が、重大な犯罪についての刑事責任年齢を10歳に引き下げた2006年刑事司法法に移管されたことに、深い失望を覚えるものである。 67.委員会は、締約国が、2001年子ども法で定められた刑事責任年齢に関する規定を復活させるよう勧告する。 68.委員会は、法務・平等・法改正省のもとにアイルランド青年司法局が設置されたことは歓迎するものの、これが法的根拠に基づいて設置されたわけではないことを遺憾に思う。委員会はまた、2006年刑事司法法に定められた反社会的行動命令が、とくに命令違反が犯罪とみなされることから、「危険な状況に置かれた」子どもを刑事司法制度にさらに接近させる効果を有するであろうことも、懸念するものである。さらに委員会は、命令の種類および内容に関する裁判官の裁量が広く認められていることから、非難対象の行動に比例しない措置につながる可能性があることを懸念する。 69.委員会は、以下のことを勧告する。 (a) 締約国が、アイルランド青年司法局の法的根拠を定めるとともに、当該司法局が、条約に基づいた、子ども志向および権利基盤型の青年司法政策を起草し実施することに高い優先順位を与えるべきこと。 (b) 反社会的行動命令が、緊密な監視の対象とされ、かつ、防止措置(ダイバージョン制度および家族会議を含む)が尽くされた後の最後の手段としてのみ利用されるべきこと。 70.委員会は、2002年に施行された2001年子ども法で法律により定められた警察ダイバージョン・プログラムの設置に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、2006年法によって、当該プログラムの適用が「反社会的行動」を行なった10歳以上の子どもにまで拡大されたことを懸念するものである。委員会はさらに、当該プログラムへの受入れが、将来の刑事手続において刑の言い渡しとみなされうることを懸念する。 71.委員会は、「反社会的行動」を行なった子どもを警察ダイバージョン・プログラムの対象にできないようにし、かつ、当該プログラムの受入れが将来の刑事手続において刑の言い渡しとみなされることはけっしてできないようにすべきことを、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、自由の剥奪が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられることを確保するため、一連の代替的措置を優先課題として実施するよう促すものである。 72.拘禁される18歳未満のすべての子どもは別個の拘禁施設――いわゆる「子ども拘禁院」――に収容されるよう定めるという締約国の意図には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、16歳および17歳の子どもが、18~21歳の男性を対象とする閉鎖型の中度警戒拘禁センターである聖パトリック施設に拘禁されており、教育のための便益もなんら提供されていないことを深く懸念する。加えて委員会は、子どもオンブズマンが、当該施設から提出される苦情の調査および警察署の査察から除外されていることを懸念するものである。 73.委員会は、締約国が、拘禁を最後の手段として用いるためにあらゆる努力を行なうよう勧告する。拘禁が避けられないと考えられる場合、委員会は、締約国が、18歳未満の子どもに対して別個の拘禁施設を用意するよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもが現に収容されているすべての拘禁場所を子どもオンブズマンの調査権限および査察権限の対象に含めるため、あらゆる努力を行なうよう奨励する。 性的搾取および性的虐待 74.性犯罪者からの公衆の包括的保護について定めた2001年性犯罪者法には留意しながらも、委員会は、買春の被害を受けた子どもおよび児童ポルノに関する情報がないことを懸念する。 75.委員会は、締約国が、焦点の明確な措置を策定する目的で児童買春、児童ポルノならびにその他の形態の子どもの性的搾取および性的虐待に関する情報収集および調査研究を実施するよう勧告するとともに、締約国に対し、この点に関する詳細な情報を次回の報告書で提供するよう要請する。 売買および取引 76.子どもの人身取引・児童ポルノ法(1998年)および人身取引・性犯罪法案(2006年)には留意しながらも、委員会は、誘拐および売買または取引(目的または形態の如何を問わない)の被害を受けた子どもの状況に関する具体的情報がないことを遺憾に思う。 77.条約第34条および第35条に照らし、委員会は、とくに、人身取引と闘うための包括的戦略の採択および実施、ならびに、人身取引被害者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置(シェルター、カウンセリングおよび医療ケアの提供を含む)の整備に関する女子差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/IRL/CO/4-5)をあらためて繰り返す。委員会は、締約国に対し、人身取引に関するさらなる情報およびデータ(とくに子どもに関するもの)を次回の報告書で提供するよう要請するものである。 マイノリティに属する子ども 78.委員会は、締約国報告書(とくに差別の禁止および児童福祉に関する第3章)および事前質問事項に対する文書回答(とくにトラベラー問題に関するハイレベル部会報告書に関するもの)で提供された情報に留意する。しかしながら委員会は、トラベラー・コミュニティに属する子どもの権利の享受を増進させること、ならびに、とくに教育、住居および保健サービスへのこれらの子どもによるアクセスを促進することを目的とする、十分な承認、対応および積極的措置がまだ図られていないことを、依然として懸念するものである。 79.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人種差別撤廃委員会から求められたとおり(CERC/C/IRL/CO/2、パラ20)、トラベラー・コミュニティを民族的集団として承認することに向けていっそう具体的に行動すること。 (b) 子どものウェルビーイングの向上を目的とした政策および戦略ならびに具体的措置のさらなる基礎とするため、保健、住居および教育の分野において、トラベラー・コミュニティに属する子どもにとくに焦点を当てながら、調査研究または包括的ニーズ評価を実施しまたは既存の調査研究および評価を活用すること。 (c) トラベラー・コミュニティ特別委員会の勧告を実施すること。 (d) とくに教育、保健サービスおよび居住施設の享受ならびにこれらへのアクセスとの関連でトラベラー・コミュニティに属する子どもの権利の享受を増進させるためにとられた措置に関する詳細な情報を、次回の報告書で提供すること。 80.委員会は、子どもおよび若者の間でアイルランドの言語および文化を促進するための努力、ならびに、ロマの子どもの周縁化および社会的排除を防止するために行なわれている努力についての具体的情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。 81.委員会は、締約国に対し、次回の報告書でさらに詳しい情報を提供するよう要請する。 8.子どもの権利条約の選択議定書 82.委員会は、締約国が表明したとおり、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書についての第1回報告書(提出期限・2004年12月)を受領することを待望する。 83.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書への署名(2000年)を歓迎するとともに、締約国の意思にしたがってこの選択議定書を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 84.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連省庁、ウラクタス(国民議会)および関連の地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 85.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 86.委員会は、締約国に対し、2009年4月27日(すなわち第4回報告書の提出期限)までに第3回・第4回統合定期報告書を提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年受領する報告書が多数にのぼることを理由とする、例外的措置である。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2013年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/285.html
総括所見:アイルランド(第3~4回・2016年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/IRL/CO/3-4(2016年3月1日)/第71会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 I.序 1.委員会は、2016年1月14日に開かれた第2064回および第2066回会合(CRC/C/SR.2064 and 2066参照) においてアイルランドの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/IRL/3-4)を検討し、2016年1月29日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104)において以下の総括所見を採択した。 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/IRL/Q/34/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下の文書の批准を歓迎する。 (a) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(2014年)。 (b) 国際労働機関(ILO)の家事労働者条約(2011年、第189号)(2014年)。 4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a) 子どもを憲法上の権利の保有者として明示的に認めた、第31次憲法改正(子ども)法(2012年、署名による法制化は2015年)。〔訳者注/第42a条を指す。日本語訳はこちらを参照〕 (b) 子どもの保護のための措置を向上させた、子ども最優先法(2015年)。 (c) 多様な家族の子どもの状況に対応するために家族法を包括的に改革した、子どもおよび家族関係法(2015年)。 (d) 成人刑事施設での子どもの拘禁を認めた現行法令集の規定をすべて廃止し、かつ関連の措置について定めた、子ども(改正)法(2015年)。 (e) 16歳以降に本人が選択したジェンダーが国によってあらゆる目的について全面的に承認される旨を定めた、ジェンダー承認法(2015年)。 (f) 教員の身元調査に関する制定法上の手続における教員評議会の役割について明確な制定法上の根拠を定めた、教員評議会(改正)法(2015年)。 (g) アイルランド人権平等委員会を設置し、かつ人権および平等に関わる公的機関の積極的義務を導入した、アイルランド人権平等委員会法(2014年)。 (h) 特定の例外的事情がある場合を除いて出生記録への父の名の登録を義務化し、かつ姓について合意が成立しない場合の出生登録の機構について定めた、民事登録(改正)法(2014年)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) アイルランド人権平等委員会が設置されたこと(2014年)。 (b) 子ども・家族機関が設置されたこと(2014年)。 (c) 「よりよい成果、よりよい未来:子ども・若者のための国家政策枠組み(2014~2020年)」が採択されたこと。 6.委員会は、人権擁護者の状況に関する特別報告者の訪問(2013年)および人権と極度の貧困の問題に関する独立専門家の訪問(2011年)を歓迎する。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6)) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国が、前回の勧告(2016年、CRC/C/IRL/CO/2)のうち十分に実施されていないもの、とくに立法および実施、独立の監視、障害のある子ども、健康および保健ケアサービス、思春期の健康、生活水準、子どもの難民および庇護希望者、少年司法の運営ならびにマイノリティに属する子どもに関するものに対応するために、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 条約の法的地位 8.委員会は、前回の勧告(CRC/C/IRL/CO/2、パラ9)にもかかわらず、条約が国内法に全面的に編入されていないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国に対し、優先的課題として、条約を国内法に全面的に編入するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 10.委員会は、国内法と条約との調和を向上させるために締約国が行なってきた最近の努力に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、子ども最優先法と子どもおよび家族関係法(2015年)がまだ全面的に施行されていないことを懸念するものである。さらに委員会は、関連の行政手続および意思決定過程において条約の規定を尊重する公的機関の制定法上の義務を定めた法律が存在しないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が、子どもの権利に影響を及ぼす法律が条約とどの程度一致しているかについての詳細な評価を実施するとともに、行政手続および意思決定過程等において条約が尊重されることを確保するための具体的な法律および(または)改正法を実施するよう勧告する。その際、締約国は、前述の2つの法律および子どもの権利の保護のための関連法におけるその他の未施行の規定を速やかに施行するために、十分な資源が配分されることを確保するべきである。 包括的な政策および戦略 12.委員会は、締約国の「子ども・若者のための国家政策枠組み(2014~2020年)」(「よりよい成果、よりよい未来」)を歓迎する。委員会はまた、同枠組みは枠組み助言評議会を通じて市民社会との共同事業として実施されていく旨、締約国が明らかにしたことも歓迎するものである。委員会は、締約国に対し、「よりよい成果、よりよい未来」枠組みを実施するための行動計画に、条約に基づいてまとめられた指標および目標を含めるよう奨励する。その際、締約国は、条約で対象とされているすべての分野が含まれること、および、同枠組みの実施が十分な人的資源、技術的資源および財源によって裏づけられることを確保するべきである。 調整 13.委員会は、締約国が、条約の実施を調整するために子ども・若者問題局を設置したことを歓迎する。しかしながら委員会は、特定の問題、とくに分野横断的な問題についてどの政府機関が主たる責任を負うのかが十分に明確でない状態が続いていることを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、内閣の正式な構成員としての子ども・若者大臣の職位を維持するとともに、特定の問題についてどの機関が責任を負うのかが明確になることを確保するよう、勧告する。締約国はまた、子ども・若者問題局に対し、さまざまな部門を横断して、国、広域行政圏および地方のレベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源も与えるべきである。 資源配分 15.委員会は、締約国が国際通貨基金および欧州連合の金融救済プログラムからの離脱に成功したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、とくに条約の実施を目的とした予算の配分を行なっていないことを懸念するものである。委員会はまた、2009年の景気沈滞以降、多数の政府部局および国の機関(子どもオンブズマン事務所および保健局を含む)の予算が削減されてきたことも懸念する。委員会はさらに、子ども手当および障害児支援給付を含む社会福祉給付が、生活費の上昇を十分に反映する均衡的なやり方で引き上げられていないことを懸念するものである。委員会はまた、トラベラーおよびロマの子どものための予算配分の減額が発表されたことも懸念する。 16.「子どもの権利のための資源配分:国の責任」に関する2007年の一般的討議に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているか、すべての行政段階において予算全体を通じて追跡するためのシステムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。 (b) 子どもの予算上のニーズについて包括的評価を実施し、かつ社会部門に配分される予算を増額するとともに、子どもの権利に関わる指標の適用を通じて格差に対応すること。 (c) 子どもの権利の保護および促進のために配分される資源が十分であることを確保するとともに、これとの関連で、子どもの権利の実現に関わるプロジェクトの定期的評価を含めること。 (d) トラベラーおよびロマの子ども、ならびに、積極的是正のための社会的措置を必要とする可能性がある障害児に関する具体的な予算科目を定めるとともに、当該予算科目が経済危機の時期にあっても保護されることを確保すること。 (e) 財政上および予算上の決定が条約上の義務と合致することを確保する目的で、統合社会的影響評価の枠組みに子どもの権利影響評価を含めること。 データ収集 17.委員会は、トラベラーおよびロマの子ども(その社会経済的状況を含む)に関する細分化されたデータがないことを懸念する。 18.実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、データ収集システムは条約のすべての分野を対象とするべきであり、かつ、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれている子ども)の状況についての分析を容易にするため細分化されるべきであることを、締約国に対してあらためて繰り返す。その際、締約国は、そのようなデータが、トラベラーおよびロマの子どもの状況のモニタリングがはっきりと可能になるように細分化されることを確保するべきである。さらに委員会は、これらのデータおよび指標が、関係省庁の間で共有され、かつ、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のために用いられるべきことを勧告する。締約国はまた、統計的情報の定義、収集および普及の際、「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators a guide to measurement and implementation)と題する国際連合人権高等弁務官事務所の報告書に掲げられた概念上および手法上の枠組みも考慮に入れるべきである。 独立の監視 19.委員会は、対話の際に締約国から行なわれた、子どもオンブズマン事務所の資金体制に関する説明(議会が直接の支出を行なうことは憲法上不可能であること)に留意する。しかしながら委員会は、子ども・若者問題局を通じた現在の資金拠出体制により、同事務所の独立性および自律性が制限されていることを依然として懸念するものである。委員会はまた、子どもオンブズマン法(2002年)にしたがい、同事務所は、公的機関の行動について、当該行動が庇護、出入国管理、帰化および市民権に関する法律の運用に関わるものであるときは調査を禁じられていることも懸念する。 20.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、パリ原則との全面的一致を確保する目的で、子どもオンブズマン事務所の独立性(資金および権限との関連を含む)を確保sるよう勧告する。その際、締約国は、同事務所に対し、子ども・若者問題局を通じてではなく直接財源を提供する方法および手段をさらに検討するべきである。さらに委員会は、締約国が、難民、庇護希望者および(または)非正規移住者の状況に置かれた子どもからの苦情申立てについて子どもオンブズマン事務所が調査することを禁じた、子どもオンブズマン法(2002年)の規定の改正を検討するよう勧告する。 普及、意識啓発および研修 21.委員会は、初等学校および中等学校双方のカリキュラムに子どもの権利および人権が含まれていること、ならびに、子ども・若者問題局のウェブサイトを通じて、締約国が委員会に提出した定期報告書および委員会の総括所見が普及されていることに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、公的機関の間で認識が欠けており、これらの機関が必ずしも子どもの最善の利益の原則を適用しておらず、または子供の意見が適切に考慮されることを確保していないことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、人権機構に関する認識および子どもの権利に関する理解が一般公衆の間で依然として低水準であることも懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、条約を、被害を受けやすい状況に置かれた子どもをとくに対象として、子どもにやさしい補助手段およびデジタルメディア等も通じ、かつソーシャルメディアを含むマスメディアの支援を得ること等の手段により、可能なかぎり広く促進するよう奨励する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象として十分かつ体系的な研修および(または)意識啓発を実施するための努力を強化することも勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 23.委員会は、ビジネスと人権に関する国家行動計画(2016~2019年)についての締約国の作業大綱を歓迎する。しかしながら委員会は、当該文書において、子どもの権利に対する確固たる決意が何ら表明されておらず、かつ、企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)も十分に考慮されていないことを懸念するものである。 24.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての委員会の一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、企業セクターが国際的および国内的な人権基準、労働基準、環境基準その他の基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を遵守することを、公共調達の場合も含めて確保するための規則を定めかつ実施するよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国で操業する産業および企業を対象とした、その活動が子どもの権利に悪影響を及ぼしまたは環境基準その他の基準を脅かさないことを確保するための規制枠組みを強化すること。 (b) 企業による国際的および国内的な環境基準および健康基準の実施を監視するための独立機構を設置し、違反があった場合には適切な制裁を科すとともに救済措置を提供し、かつ、適切な国際的認証が追求されることを確保すること。 (c) 企業に対し、自己の企業活動により生ずる環境面、健康関連および人権面の影響ならびにこのような影響に対処するための計画についてのアセスメント、協議ならびにその全面的な公的開示を行なうよう、要求すること。 (d) 以上の勧告を実施する際、人権理事会が2008年に全会一致で採択した国際連合「保護・尊重・救済」枠組みを指針とすること。 B.子どもの定義(第1条) 25.委員会は、婚姻最低年齢(18歳)についての例外規定を廃止するための家族法(1995年)改正が進行中である旨の、対話の際に締約国が行なった発言に留意する。しかしながら委員会は、当該改正が行なわれるまでの間、18歳未満の子どもがなお婚姻できることを懸念するものである。 26.委員会は、締約国が、18歳未満の婚姻を認めるすべての例外規定を廃止するため、家族法(1995年)の改正を速やかに進めるよう勧告する。 C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 27.委員会は、トラベラーおよびロマの子どもならびにその家族に対する構造的差別(公人が公に行なった差別的発言が処罰されないとされていることを含む)について懸念を覚える。委員会は、人種主義対策国家行動計画(2005~2008年)で開始された機構および資金の流れの維持に関する締約国の説明には留意するものの、適切な最新の国家行動計画が策定されていないことを依然として懸念するものである。委員会はまた、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに対する差別についても懸念を覚える。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) トラベラーおよびロマの子どもに対する、ならびに、子どもの性的指向またはジェンダーアイデンティティを理由とする差別、スティグマおよび社会的排除と闘うための努力を強化すること。 (b) 人種主義対策国家行動計画(2005~2008年)の後継計画として、適切に高い位置づけを与えられた包括的な計画を策定すること。 子どもの最善の利益 29.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、関連のあらゆる法律ならびに行政手続および意思決定過程における積極的義務としていまなお全面的に実施されているわけではないことを懸念する。 30.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を締約国が強化するよう、勧告する。これとの関連で、締約国は、権限を有するすべての関係者にに対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう奨励されるところである。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、「意思決定への子ども・若者の参加に関する国家戦略」を歓迎する。委員会はまた、締約国が、意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の規定を有していることにも留意するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 当該法規定が効果的に実施されているわけではないこと。 (b) 子どもおよび家族関係法(2015年)に基づき、家族法手続において子どもの意見を聴くための専門家の費用は親が負担しなければならないこと。 (c) 教育法において、個別事案で意見を聴かれる子どもの権利が定められていないこと。 (d) 締約国が、投票年齢を18歳から16歳に引き下げることに関する国民投票を実施する旨、「子ども・若者のための国家政策枠組み(2014~2020年)」において表明しているにもかかわらず、当該国民投票がまだ実施されてないこと。 32.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ソーシャルワーカーおよび裁判所がこの原則を遵守するようにするための制度および(または)手続を定める等の手段により、関連の法的手続、とくに家族法手続で意見を聴かれる子どもの権利を認めた法律の効果的実施を確保するための措置をとること。 (b) 子どもの養育に関するすべての手続で子どもの意見が聴かれることを保障するため、家族法手続において子どもの意見を聴くための専門家の費用の負担に関連する規定が子どもおよび家族関係法(2015年)に設けられることを確保すること。 (c) 個別事案で意見を聴かれる子どもの権利を確保するための教育法改正を確保すること。 (d) 従前の決意表明にしたがい、投票年齢の16歳への引き下げに関する国民投票を実施する計画の実行を検討すること。 D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条) アイデンティティに対する権利 33.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 生殖補助医療(とくに代理母が関与するもの)によって生まれた子どもの権利および利益に対して十分な注意が払われていないこと。 (b) カトリックの司祭を父とする子どもが父親の身元に関する情報にアクセスできることを確保するための措置がとられていないこと。 (c) 民事登録(改正)法(2014年)で、婚外子に与えられるべき姓について十分に明確に定められていないこと。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 生殖補助医療(とくに代理母が関与するもの)を通じて生まれた子どもが、自己の最善の利益を第一次的に考慮されることおよび自己の出自についての情報にアクセスできることを確保すること。締約国は、その際、代理母および親となる予定の者に対する適切なカウンセリングおよび支援の提供を検討するべきである。 (b) カトリックの司祭を父とする子どもが、父を知り、かつ適切なときは父によって養育される自己の権利を自ら擁護することを援助するための措置を確保するとともに、このような子どもが必要な心理的治療を受けられることを確保すること。 (c) 婚外子が自己の姓に関して法的安定性を有することを確保するための措置(考えられる法改正を含む)を実施するとともに、これらの措置が、このような子どもが直面しうるスティグマまたは差別を最小限に抑える目的でとられることを確保すること。 思想、良心および宗教の自由 35.委員会は、子どもに対し、宗教の授業を実効的に免除され、かつ当該授業に代わる適切な授業を受ける権利が確保されていないことを懸念する。 36.委員会は、締約国が、少数宗派としての背景または非宗派的背景を有する子どものニーズにしたがって、子どもに対し、宗教の授業を免除され、かつ当該授業に代わる適切な授業を受ける、アクセスしやすい選択肢を確保するよう勧告する。 E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条) 虐待およびネグレクト 37.委員会は、子どもの保護に関するガイドライン「子ども最優先:子どもの保護および福祉のための国家指針」が2011年にあらためて発行されたことを歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) 当該ガイドラインにしたがって行なわれた子どもの保護に関連する付託への対応を担当する子ども・家族機関に対し、当該ガイドラインの遵守を確保するための十分な権限または資源が与えられていないこと。 (b) 実際上、業務時間外のソーシャルワーク緊急サービスが不十分であり、かつ、虐待の影響を受けている子どものためのアクセスしやすいカウンセリングサービスが十分に存在しないこと。 (c) ドメスティックバイオレンスの被害者のための避難施設が十分に存在しないこと。 38.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)に照らし、かつ持続可能な開発目標16のターゲット2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)に留意しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう促す。 (a) 子ども・家族機関が、子どもの保護に関連する付託への対応および危険な状況にある子どものニーズへの対応を時宜を得たやり方で行なえるようにするため、同機関への十分な人的資源、技術的資源および財源の配分を確保するとともに、暴力および虐待の根本的原因に対処するための長期的プログラムを実施すること。 (b) ドメスティックバイオレンスの影響を受けている者およびその子どものために、24時間対応できる十分な避難施設を確保するとともに、これらの被害者に対して救済措置およびリハビリテーションを提供すること。 (c) 元被害者、ボランティアおよびコミュニティの構成員の関与を得て、かつこれらの人々の研修を支援する等の手段により、ドメスティックバイオレンス、子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれに対処していくための、コミュニティを基盤とするプログラムを奨励すること。 有害慣行 39.委員会は、締約国がジェンダー承認法(2015年)を採択したことに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、インターセックスの子どもに対し、十分な情報に基づく同意を与えられるようになる前に医学的に不必要な手術その他の治療(これは不可逆的な影響をともなうことが多く、かつ深刻な身体的および心理的苦痛を引き起こしうるものである)が行なわれる事案があり、かつ、このような事案において救済および補償が行なわれていないことを、依然として懸念するものである。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 何人も乳児期または児童期に不必要な手術または治療の対象とされないことを確保し、当事者である子どもに身体的不可侵性、自律および自己決定を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。 (b) 十分な情報に基づく同意を得ないままインターセックスの子どもに対して行なわれた手術その他の医学的治療の事案を調査するとともに、そのような治療の被害者に対して救済措置(十分な補償を含む)を提供するための法的規定を採択すること。 (c) さまざまな性的多様性ならびに関連の生物学的および身体的多様性について、またインターセックスの子どもに対する不必要な手術その他の医学的介入がもたらす影響について、医療専門家および心理専門家を教育すること。 F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)~(2)、第20条、第21条、第25条および第27条(4)) 家族法手続 41.委員会は、家族法事件を担当する裁判官を対象として子どもに関わる事件に対応するための体系的研究が実施されていないこと、および、このような事件の処理に長期の遅れが生じていて当事者である子どもに有害な影響を与えていることを懸念する。 42.委員会は、締約国が、子どもが関わる家族法事件に関する裁判官の研修を奨励し、かつそのための十分な資源を提供するとともに、これらの事件が裁判所制度において優先的に扱われることを確保するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 43.委員会は、子ども・家族機関法の採択を歓迎する。これは、子どもが家庭環境を奪われることにつながりうる手続において締約国が子どもの最善の利益を確保するための基盤を向上させるものである。しかしながら委員会は、代替的養護に措置された子どもについて以下のような状況が存在することを依然として懸念する。 (a) 個別のニーズ評価および養護計画のための措置ならびに記録の保管が不十分であること。 (b) 特別なニーズを有する子どものための代替的養護サービスが不十分であることから、このような子どもが締約国外の代替的養護施設に収容されなければならない状況が生じていること。 (c) 特別養護区画における単独隔離措置が不適切に利用されていること。 (d) 子どもの保護、精神保健および障害を担当する締約国の諸機関の間で調整が十分に行なわれていないために、このような状況に置かれた子どもに対して提供される養護が断片化されたまたは不十分なものになっていること。 (e) 養護を離脱する子ども(とくにホームレス経験のある子ども)に提供される養護終了後のサービスおよび支援が不十分であること。 44.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、締約国が、施設に入所した子どものリハビリテーションおよび社会的再統合を最大限可能な範囲で促進する目的で、代替的養護施設および関連の子ども保護機関に対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 代替的養護を受けている子どもに関する個別のニーズ評価、養護計画および記録の保管の効果的実施を確保すること。 (b) 特別養護サービスの発展に優先的に取り組むことにより、このような子どものニーズに対する対応がとられること、これが締約国の領域全体で行なわれること、および、単独隔離措置が不適切な形で利用されないことを確保すること。 (c) 代替的養護を受けている子どものうち障害または精神保健上のニーズを有する子どもについて、そのニーズへの対応が統合的かつ包括的なやり方でとられることを確保するための措置を実施すること。この目的のため、締約国は、締約国の子ども・家族機関と保健サービス局の関連部署との間で実効的な機関間協力を確保するための適切な調整機構を設置するべきである。 (d) リービングケアの前に、若者が移行計画の立案に早い段階から関与するようにし、かつ養護の離脱後に援助を利用できるようにすることにより、若者に十分な準備の機会および支援を提供すること。 (e) 子ども養護法(1991年)においてホームレス経験のある子どものニーズが十分に対応されることを確保するため、必要に応じて法改正を行なうこと。 養子縁組 45.委員会は、締約国の養子縁組法制の統合および現代化を図った養子縁組法(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、養子とされた子どもが自己の出自に関する情報および家族追跡のためのサービスにアクセスできることを確保する包括的な法的枠組みがないことを、依然として懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、国際基準にしたがい、情報開示、家族追跡および縁組後の支援に関する規定を養子縁組法(2010年)に編入することを検討するよう勧告する。 G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23条、第24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条) 障害のある子ども 47.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 普通教育への障害のある子どものインクルージョンおよび障害のある子どもの自律の奨励に関する包括的戦略が定められていないこと、ならびに、特別な教育上のニーズを有する者の教育法(2004年)がまだ全面的に施行されかつ実施されていないこと。 (b) 障害のある子どものケアを、入院または施設措置ではなく、可能または適切な場合には自宅環境で行なうことを容易にするための措置が不十分であること。 (c) 障害のある子どもが乳幼児期教育サービスに十分にアクセスできていないこと。 (d) 特別なニーズを有するすべての子ども(視覚障害および聴覚障害がある子どもを含む)を対象として、点字および手話のような合理的配慮が行なわれているわけではないこと。また、国家試験との関係で、締約国の国家試験委員会が障害のある子どもに合理的配慮を行なうための明確かつ客観的な枠組みが存在しないこと。 48.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害に対する人権基盤型アプローチを採用し、かつ、障害のある子どものインクルージョンに関する包括的戦略を定めること。 (b) 自宅環境における障害児のケアを容易にするための十分な措置を確保すること。その際、締約国は、領域全体を通じてそのような措置に関する一貫性および十分な基準を確保する目的で、国家的な政策および枠組みの採択を検討するべきである。 (c) 障害のある子どもに対して特別ニーズ教育支援および乳幼児期教育を提供する目的で、十分な人数の専任教員および専門家を養成しかつ雇用すること。 (d) 障害のある子どもを対象として、その教育上のニーズへの合理的配慮(国家試験に関連するものを含む)が行なわれることを確保するための、明確かつ客観的な枠組みを確立すること。 健康および保健ケアサービス 49.委員会は、ひとり親家庭の子ども、貧困下の子どもならびにトラベラーおよびロマの子どもの健康状態が全国平均よりも相当に悪いことを深く懸念する。委員会は、トラベラーおよびロマの子どものうち、締約国において負担不可能な費用を請求されずに医療ケアにアクセスするために必要な医療カードを有している子どもの割合が低いことを、とりわけ懸念するものである。 50.委員会は、締約国に対し、とくにひとり親家庭の子ども、貧困下の子どもならびにトラベラーおよびロマの子どもが保健ケアサービスへのアクセスから排除される根本的原因となっている社会経済的不利益に対処するよう、促す。委員会はまた、締約国が、このような子どもが保健ケアサービスに他の子どもと同様にアクセスでき、かつ他の子どもと同一のサービスの質を享受できることを確保するため、あらゆる必要な措置(トラベラーおよびロマの子どもに医療カードを発行するためのプログラムを含む)を実施することも勧告するものである。 母乳育児 51.委員会は、「ヘルシーアイルランド枠組み」のもとでとられている母乳育児促進措置に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 生後6か月までの赤ちゃんの完全母乳育児率が、とくにトラベラーの女性の間で低いこと。 (b) 完全母乳育児に関する保健専門家を対象とした研修が不十分であること。 (c) 締約国に存在する赤ちゃんにやさしい病院の数が不十分であること。 (d) 乳幼児への栄養補給または母乳育児に関する国家的戦略が定められていないこと。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 母乳育児の重要性および人工栄養のリスクに関する資料にアクセスできるようにすることおよび意識啓発を行なうことにより、完全かつ継続的な母乳育児を促進するための努力を強化すること。とくに、トラベラーのコミュニティを対象とする措置が含まれるべきである。 (b) 完全母乳育児の重要性に関する保健専門家を対象とした研修を再検討し、かつ強化すること。 (c) 赤ちゃんにやさしいと認証された病院の数をさらに増やすこと。 (d) 乳幼児への栄養補給慣行に関する国家的戦略を策定しかつ実施するとともに、その際、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を、その執行のための十分な措置とあわせて実施することを検討すること。 精神保健 53.委員会は、「入院中の子ども・青少年のための精神保健サービス」が最近強化されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 医学的治療、とくに精神保健ケアサービスに対する子どもの同意および拒否についての包括的法律が定められていないこと。 (b) 子どものための精神保健ケア施設が十分に利用可能とされていないため、子どもが成人精神病棟に入院させられていること。また、精神保健支援にアクセスするまでの待機者リストが長く、かつ、精神保健上のニーズ(とくに摂食障害)を有する子どもおよび青少年のための時間外サービスが不十分であること。 (c) 精神保健上の困難を有する子どものための、子どもに焦点を当てた権利擁護および情報提供のサービスが存在しないこと。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 医学的治療に対する子どもの同意および拒否について明確かつ包括的に定めた法律を制定するとともに、当該法律が、条約の趣旨にのっとり、かつ子どもの発達しつつある能力の明確な承認を含むものであることを確保すること。 (b) 子どもおよび青少年のための精神保健ケアサービスの対応能力および質を向上させるための措置を実施すること。その際、締約国は、院内治療のための精神保健ケアサービス、時間外施設および摂食障害治療施設の対応能力の強化に優先的に取り組むべきである。 (c) とくに子どもを対象とし、かつ、しかるべき形でアクセスしやすくかつ子どもにやさしい、精神保健に関わる権利擁護および情報提供のサービスの設置を検討すること。 自殺 55.委員会は、締約国が最近、自殺防止戦略を採択したことに留意する。しかしながら委員会は、思春期の子どもの自殺件数が多いことを依然として懸念するものである。 56.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が、自殺の防止に関する措置(そこでは子どもおよび青少年の特有のニーズが考慮されるべきである)をさらに強化し、かつ、その効果的実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されることを確保するよう勧告する。 思春期の健康 57.委員会は、妊娠期生命保護法(2013年)が、母親の生命に「真のかつ相当な危険」がある場合にしか中絶を認めておらず、かつ、妊娠が強姦もしくは近親姦の結果である場合または重度の胎児障害がある場合でさえ中絶を犯罪としていることを懸念する。さらに委員会は、「真のかつ相当な危険」という文言により、医師が客観的な医療実務にしたがってサービスを提供できなくなってることを懸念するものである。委員会はまた、思春期の子どもが、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育および緊急避妊法に深刻なほどアクセスできないことも懸念する。 58.思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、子どもが安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で法律の見直しを行なうこと。また、中絶に関する決定において、妊娠した女子の意見が常に聴かれ、かつ尊重されることを確保すること。 (b) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの女子および子どもに対する差別と闘うための政策を策定しかつ実施すること。 (c) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。 (d) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置をとること。 生活水準 59.委員会は、一貫して貧困下で生活している子どもの人数が相当に増加していること(このような貧困が、トラベラー、ロマおよび難民としての背景を有する子どもならびにひとり親世帯で暮らしている子どもに不均衡な影響を及ぼしていると報告されていることを含む)を深く懸念する。 60.委員会は、締約国に対し、被害を受けやすい状況に置かれた子ども、とくにトラベラー、ロマおよび難民である子どもならびにひとり親世帯で暮らしている子どもの貧困を削減するための努力をさらに強化するよう、促す。委員会はまた、締約国が、2020年に向けた貧困削減達成目標の改訂において、一貫して貧困下で生活している子どもの人数の増加が考慮に入れられ、かつ、当該目標が定められた期限内に達成されるようにするための詳細な行動計画が整備されることを確保することも、勧告するものである。 61.委員会は、ホームレスであることの影響を受けている家族が、社会住宅へのアクセスに関して相当の遅延に直面しており、かつ、不適切な、一時的なまたは緊急の宿泊施設で長期間生活していることが多い旨の報告があることを深く懸念する。 62.委員会は、締約国に対し、より多くの社会住宅および緊急住宅支援が利用できるようにするための措置を実施するよう促す。その際、締約国は、これらの措置を通じて提供される住宅および支援が、当事者である子どものニーズにふさわしいものであり、かつ十分な保障措置、再審査および評価の対象とされることを確保するべきである。 H.教育、余暇および文化的活動(第28~31条) 63.委員会は、締約国で子どもが多様な態様の学校を利用できる必要性への対応を試みるために「民間セクターにおける多元主義と宗派教育フォーラム」(訳者注/「初等教育部門における宗派教育と多元主義フォーラム」の誤り〕が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、非宗派学校の数がきわめて少ないことを依然として懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。 (a) 学校が、子どもの宗教を理由としておよび(または)子どもの親が学校の元生徒であるか否かを理由として差別的な受け入れ方針を実践し続けていること。 (b) 苦情申立ての取扱いについて教育部門で設けられている体制が不十分であること。 (c) 修学認定試験が子どもに圧力をかけていること。 (d) すべての生徒が楽しむことのできる、学校における身体的活動が不十分であること。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 非宗派学校または多宗派学校の利用可能性を相当に高め、かつ、学校への受け入れにおける差別を解消するための現行法の枠組み(平等地位法を含む)を改正するための具体的措置を速やかにとること。 (b) 学校の生徒のための効果的な苦情申立て機構を設置すること。 (c) 子どもに生ずるストレスを軽減する目的で、修学認定試験の改革を検討すること。 (d) すべての生徒が楽しむことのできる、身体的余暇活動のカリキュラムを開発すること。 I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 子どもの難民および庇護希望者 65.委員会は、庇護希望者または難民の状況に置かれた子どもの大多数が、子どもに関連する国の基準の対象とされていない民間運営施設に受け入れられており、かつ、これらの施設の査察および評価の大多数が、十分に独立していない内部査察担当者によって実施されているという報告があることを懸念する。委員会は、難民および庇護希望者への直接支給政策に関連する苦情に対応するための不服申立て担当官が1名任命されている旨の、対話の際に提供された情報に留意するものである。しかしながら委員会は、これによって独立の監督が確保されているわけではないこと、および、これが子どもに対して十分に周知されておらずまたは子どもにとって十分にアクセスしやすいものとなっていない可能性があることを、依然として懸念する。このことに照らし、委員会は、以下の点に関する報告があることを懸念するものである。 (a) 多数の施設が、乳幼児のいる家族のための十分な設備を備えていないこと。 (b) 庇護希望者および難民の受け入れ施設で、子どもの保護のための十分なサービスが提供されておらず、子どもに教育への十分なアクセスが保障されておらず、または全般的に適切な衣服および食料(そのような施設に受け入れられている少数宗派の子どものための文化的に適切な食料を含む)への十分なアクセスが保障されていないこと。 (c) 庇護希望者に支給される子ども手当の額が、締約国における生活費の上昇およびインフレに追いついていないこと。 66.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)に照らし、委員会は、締約国が、庇護および難民に関する政策、手続および実務を、国際法上の義務および他の文書(国連難民高等弁務官が作成した「望ましい実務に関する声明」を含む)に掲げられた原則と一致させるために必要な措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、庇護希望者および難民の状況に置かれた子どもに対し、支援サービスに関して、アイルランド国籍の子どもと同一の基準およびアクセスが保障されることを確保するための措置を強化するよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、すべての難民受け入れ施設の独立した立場からの査察を確保するよう促す。さらに委員会は、締約国が、庇護希望者および難民の受け入れ施設について以下のことを確保するための措置をとるよう勧告するものである。 (a) これらの施設が、乳幼児および家族にとって適切な設備(レクリエーション区画を含む)を備えること。 (b) これらの施設が、子どもの保護のための十分なサービス、子どものための十分な教育ならびに子どものための十分な衣服および食料(十分な品質の、かつ少数宗派の子どもにとって文化的に適切な食料を含む)を有すること。これらの施設はまた、食事に関する配慮が必要な子どものニーズにも対応するとともに、可能なかぎり、入所者が自分たち自身の食料を保管しかつ調理することも認めるべきである。 (c) 子ども手当が締約国における生活費に対応することを確保するため、庇護希望者に支給される子ども手当を均衡的に増額すること。 移住の状況にある子ども 67.委員会は、締約国が国際保護法(2015年)を採択したことに留意する。しかしながら委員会は、同法がまだ施行されていないことから、締約国にいる子どもの移住者のニーズへの全面的に対応に関する枠組みが依然として不十分であることを懸念するものである。委員会は、その結果、非正規な移住状況にある者に移住者としての地位を付与する、明確なかつアクセスしやすい手続が設けられていないことを懸念する。委員会はまた、移住者としての地位が非正規な状況にあって養護の対象とされている子どもが独立の立場からの法的助言を受けられることを確保するための措置が不十分であることから、このような子どもが自己の移住者としての地位を時宜を得た形で確認できない事態がしばしば生じていることも懸念するものである。 68.すべての子どもが条約に基づく自己の権利の全面的保護および実施に対する権利を有していることを強調しながら、委員会は、締約国に対し、条約に掲げられた権利が、移住者としての子どもまたはその親の地位にかかわらず、締約国の管轄下にあるすべての子どもに対して保障されることを確保し、かつ、これらの権利のあらゆる侵害に対応するよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 締約国にいる子どもの移住者のニーズに対応するため、国際人権基準にしたがった包括的な法的枠組みを速やかに採択すること。 (b) 当該法的枠組みに、非正規な移住状況にある子どもおよびその家族に移住者としての地位を付与するための、明確なかつアクセスしやすい正式な手続が含まれることを確保すること。 (c) 非正規な移住状況にある子どもに対し、独立の立場からの法的助言および自己の移住者としての地位に関する時宜を得た説明が提供されることを確保するための措置をとること。 マイノリティ集団に属する子ども 69.委員会は、トラベラーおよびロマの子どもに対する構造的差別(教育、保健および十分な生活水準へのアクセスに関するものを含む)について深い懸念を覚える。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 締約国がトラベラーおよびロマをマイノリティ集団として認めていないことから、とくに、十分なデータが存在せず、かつ、その結果として、対象が明確な支援プログラムおよび支援措置のための基盤が脆弱な状態が生じていること。 (b) 移動住宅または仮設住宅にいるトラベラー世帯の相当数が、給水および衛生のための十分な施設または安全かつ適切な遊び場にまったくアクセスできていないこと。 (c) トラベラーの子どもおよびその家族の住宅のための資金供給が劇的に減額されたこと。 (d) 住宅(雑則)法(2002年)にしたがって移動生活が犯罪化されており、かつ、これとあいまって一時定住サイトの供給が不十分であることから、強制立退きおよび文化的慣行としての移動生活の抑圧が生じていること。 (e) 締約国の「国家トラベラー/ロマ統合戦略」の実施に関して人権が基盤とされておらず、かつ、同戦略のための目的、達成目標、指標、時間枠および資金供給機構が設けられていないこと。また、同戦略のさらなる策定および実施に関するトラベラーおよびロマのコミュニティとの協議が不十分であること。 (f) 定住条件のために子ども手当給付の受給資格が妨げられていること。 70.委員会は、締約国に対し、とくに教育、保健ケアおよび十分な生活水準へのアクセスとの関連で、トラベラーおよびロマの子どもに対する構造的差別に対応するための具体的かつ包括的な措置を実施するよう促す。このことに照らし、委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) トラベラーおよびロマを締約国の民族集団として法的に認めることを検討すること。また、その際、対象が明確な支援プログラムおよび支援措置の提供を促進するため、これらのコミュニティに関する細分化されたデータ収集を行なうこと。 (b) トラベラーおよびロマの世帯が滞留するサイトに、給水および衛生のための十分な施設ならびに子どものための安全かつ適切なレクリエーション設備が備えられることを確保すること。 (c) トラベラーおよびロマの子どもおよびその家族のニーズに対応する住宅施設に配分される資金を増額するとともに、そのような資金が効果的かつ時宜を得たやり方で使用されることを確保する機構および手続を用意すること。 (d) 移動生活の文化的慣行が犯罪とされないことを確保するために関連の法律を廃止しまたは改正する等の手段により、このような文化的慣行に対する権利を尊重すること。その際、締約国はまた、強制立退きに対する十分な保障措置、ならびに、このような強制立退きの被害者のための時宜を得た救済および相応の賠償へのアクセスも確保するべきである。 (e) 「国家トラベラー/ロマ統合戦略」のさらなる策定および実施にトラベラーおよびロマのコミュニティが効果的に参加することを確保するため、これらのコミュニティとの透明な、アクセスしやすくかつ意味のある協議を、これらの協議が当該戦略において人権が明確に基盤とされることのきっかけとなることを確保しながらさらに実施するとともに、これを基盤として、目的、達成目標、指標、時間枠および資金供給機構のあり方を定めること。 (f) 子ども手当給付を、定住条件の充足を要件としない普遍的給付とすること。 少年司法の運営 71.委員会は、刑事司法法(2006年)にしたがい、刑事責任年齢が重大な犯罪については10歳に引き下げられた旨の前回の懸念(CRC/C/IRL/CO/2、パラ66)をあらためて繰り返す。委員会はまた、成人刑事施設に拘禁されている17歳の男子がいまなお存在するという報告についても懸念を覚えるものである。 72.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)に照らし、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約その他の関連基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 2001年子ども法で定められているとおり、刑事責任年齢を14歳とした規定を復活させること。 (b) 拘禁が避けられない場合、当該拘禁が可能なもっとも短い期間で行なわれること、これらの子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準に合致すること(教育および保健ケアサービスへのアクセスとの関連を含む)を確保すること。 (c) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、国際連合児童基金、国際連合人権高等弁務官事務所および非政府組織を含む)が開発した技術的援助ツールを活用するとともに、必要に応じ、当該パネルの構成機関に対して少年司法分野における技術的援助を求めること。 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ 73.委員会は、締約国が軍隊への志願入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げたことを歓迎する。委員会はまた、国際刑事裁判所法(2006年)によって、国際刑事裁判所規程ならびに国際刑事裁判所の特権および免除に関する協定が国内法に編入されたことにも、肯定的対応として留意するものである。しかしながら委員会は、締約国が、以下の点に関して、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書について委員会が前回行なった勧告を考慮していないことを遺憾に思う。 (a) 選択議定書に関する広報、普及および研修活動が軍隊および軍事研修に限定されていることに関する勧告(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ7)。 (b) 選択議定書の実施に関する独立の監視機構を設置するべきこと、および、子どもオンブズマン事務所が、依然として、子どもの権利侵害の訴えが国の安全保障または軍事活動に関連しまたは影響するものである場合にはこれを調査できないとされていることに関する勧告(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ8)。 (c) 18歳未満の子どもの徴募および敵対行為における使用(国以外の武装集団によるものを含む)を明示的に犯罪化する国内法の制定に関する勧告(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ15)。 74.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団(保健従事者、ソーシャルワーカー、教員、公務員、検察官、裁判官、ならびに、武力紛争の影響を受けている国からやってきた子どもの庇護希望者および難民のためにならびにこれらの子どもとともに働く公的機関など)を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修のためのプログラムを発展させること。さらに委員会は、締約国が、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じて、公衆一般ならびにとくに子どもおよびその親に対し、選択議定書の規定を広く知らせるよう勧告する(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ7)。 (b) 18歳未満の子どもとの関連で国防軍がとった行動について十分な説明責任が課されることを確保する目的で、子どもオンブズマン法(2002年)第11条1項(b)の改正および(または)他の適切な監督機構の設置を検討すること(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ9)。 (c) 選択議定書の精神を全面的に尊重し、かつあらゆる状況下で子どもを全面的に保護する目的で、国の内外にかかわらず18歳未満の者を敵対行為に直接関与させることを明示的に犯罪化する法律を制定すること(CRC/C/OPAC/IRL/CO/1、パラ15)。 75.委員会は、締約国に入国する子どものうち武力紛争にさらされた可能性のある子どもの早期特定および支援のための措置が不十分であることを懸念する。 76.締約国は、締約国に入国する子どものうち武力紛争にさらされた可能性のある子どもの早期特定および支援のための措置を強化するべきである。当該制度には、心理社会的援助、リハビリテーション、社会的再統合、および、このような子どもが直面するトラウマに対応するための他の関連の措置を含めることが求められる。 J.国際人権文書の批准 77.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう勧告する。 K.地域機関との協力 78.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における〔子どもの権利〕条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。 V.実施および報告 〔訳者注/IVが抜けているのは原文ママ〕 A.フォローアップおよび普及 79.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第3回・第4回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。 B.次回報告書 80.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2021年10月27日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。 81.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年2月11日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/306.html
総括所見:ベルギー(第2回・2002年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2006年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.178(2002年6月13日)/第30会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年5月23日に開かれた第782回および第783回会合(CRC/C/SR.782-783参照)においてベルギーの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.2)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2002年6月7日に開かれた第804回会合において。 A.序 2.委員会は、報告書が報告ガイドラインにしたがっていることに評価の意とともに留意する。委員会は、報告書が時宜を得て提出され、また包括的かつ自己批判的な性格のものであったことおよび事前質問事項(CRC/C/Q/BELG/2)に対する文書回答も同様であったことに留意するとともに、付属文書で提供された追加情報を歓迎する。委員会の従前の勧告のフォローアップについて報告書に記載されていた議論は、とりわけ評価されるところである。委員会はまた、ハイレベルな代表団の出席が、開かれた対話およびベルギーにおける条約の実施に関する理解の向上に寄与したことにも、評価の意とともに留意する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 子どもの保護に関する憲法第22条bisが採択されたこと。 締約国が、子どもの保護、児童労働、後見および家族調停に関する諸新法を採択したこと。 人身取引および子どもの性的搾取と闘うために多数の取り組みが行なわれていること。とくに、ユーロポール条約に基づく共同行動が導入されたこと、子どもの性的搾取について研究する国家専門家委員会が設置されたこと、行方不明の子どもおよび搾取された子どもに関する欧州センター「チャイルドフォーカス」が設置されたこと、1995年に性的搾取と闘うための法律が3本採択されたこと、ならびに、刑法改正が行なわれたこと。 武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書が批准されたこと。 最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約が批准されたこと。 C.主要な懸念事項および勧告 委員会の前回の勧告 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.4)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.38)の一部、とくにパラ8、9、11および13~16に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書においてあらためて繰り返されているところである。 5.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうちまだ実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 1.実施に関する一般的措置 留保および宣言 6.委員会は、締約国が、前回の総括所見にしたがい、条約第2条に関して行なった宣言および第40条第2項(v)に付した留保〔訳者注/解釈宣言。以下同〕を再検討したことを評価する。にもかかわらず、委員会は、締約国に当該宣言および留保の撤回の意思がないことを懸念するものである。第2条に関して、委員会は、条約に定められた差別の禁止の一般原則によって、恣意的であって客観的に正当化できない事由(国籍を含む)による異なる取扱いが禁じられていることに留意しつつ、第2条に関する宣言によって、ベルギーにいる子どもであってベルギー国民ではない者による条約に掲げられた権利の享受が制限される可能性があることを懸念する。委員会は、条約における差別の禁止の保障は「(締約国の)管轄内にある子ども1人ひとり」に適用されることを強調するものである。第40条に付された留保に関して、委員会は、陪審裁判所(第1審および最終審を兼ねる裁判所)によって言い渡された判決および措置について破棄院に上告できるのは法律上の論点がある場合に厳格に限定されていることから、被告人が自己の主張に関して上級裁判所による全面的審理を受けられなくなることを懸念する。このことは、陪審裁判所がもっとも深刻な事件を扱い、かつ相対的に重い刑を言い渡していることから、なおさら重要である。 7.委員会は、締約国に対し、自国の宣言および留保を、ウィーン世界人権会議(1993年)の宣言および行動計画にしたがって撤回する方向で見直すよう奨励する。 立法 8.委員会は、子どもの権利に関連する諸法案(養子縁組、保護者のいない未成年者の後見、裁判所へのアクセスおよび適正手続の保障に関するものを含む)について締約国から提供された情報を歓迎する。 9.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの法案を厳密に再検討するとともに、これらの法案および子どもに関連する他の法律ならびに行政規則が権利を基盤としており、かつ条約を含む国際人権基準に一致していることを確保すること。 (b) これらの法律の効果的実施のための十分な対応(予算の配分を含む)がとられることを確保すること。 (c) これらの法案の迅速な公布を確保すること。 調整 10.委員会は、第1回報告書の検討以降、「子どもの権利の保護に関する省庁間会議」が設置され、かつ、国家子どもの権利委員会の創設について合意がなされたことに留意する。しかしながら委員会は、子どもの権利に関する総合的ビジョンおよびそれを国家的行動計画の形で具体化したものが存在しないこと、異なる行政管轄区を異なる法律が規律しているため、締約国全体で子どもの権利の享受における差別が生じる可能性があること、および、ベルギーにおける条約の実施を調整する中央機構が存在しないため、子どもの権利政策の包括性および一貫性を達成しにくくなっていることを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家子どもの権利委員会を設置するため、前述の合意の正式な承認および全面的実施を速やかに進めるとともに、同委員会に対して十分な人的役務および財政的役務を提供すること。 (b) 可視性が高く、容易に特定可能であり、かつ十分な任務および十分な資源を与えられた常設機関を、条約の実施の調整機関に指定すること。 (c) もっとも被害を受けやすい集団に属する子ども(たとえば貧困世帯、庇護希望者)に特段の注意を払いながら、開かれた、建設的なかつ参加型のプロセスを通じて、条約の実施のための包括的な国家的行動計画を作成しかつ実施すること。 (d) 予算および政策の立案において、子ども影響評価の活用を継続しかつ拡大すること。 監視機構 12.委員会は、第1回報告書の検討以降、フラマン語共同体で子どもの権利コミッショナーが設置されたことに留意する。委員会は、フランス語共同体の子どもの権利総監の活動および機会均等・人種主義反対センターの活動を認知するものである。しかしながら委員会は、ドイツ語共同体においても連邦レベルでも、条約の実施を監視するための、かつ子どもの苦情を受理しかつこれに対応する権限を有する独立の機構が存在しないことを懸念する。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施における進展の監視および評価を目的として、パリ原則(総会決議48/134)にしたがい、ドイツ語共同体および連邦レベルで独立の人権機関を設置すること。これらの機関は、子どもにとってアクセスしやすいものであるとともに、子どもの権利の侵害に関する苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査し、かつこれに効果的に対応する権限を与えられるべきである。 (b) すべての人権機関がそれぞれの立法機関に対して正式な諮問機関としての機能を果たし、かつこれらの人権機関同士が相互に正式な関係を確立することを確保すること。 データ収集 14.委員会は、事前質問事項〔への回答〕とともに付属資料として提供された統計を歓迎し、庇護申請を処理している部局でデータ収集を向上させるための措置が進行中であることに留意し、かつ、少年司法に関する全国研究フォーラム内に統計に関する作業部会が設けられる旨の情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会はなお、前回の総括所見を参照しながら、条約で対象とされている分野についてのデータを収集しかつ分析する全国的機構が設置されていないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、条約で対象とされているすべての分野について、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた集団(たとえば国民でない者、障害のある子ども、経済的に不利な立場に置かれた世帯の子ども、法律に抵触した子ども等)を含む18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータが収集される全国的システムを確立するとともに、これらのデータを、進展の評価のためおよび条約実施を目的とする政策の立案のために活用するよう勧告する。 研修/条約の普及 16.委員会は、締約国が、第1回報告書、同報告書についての討議が行なわれた会合の議事要録および委員会の総括所見をまとめた資料を利用可能とした旨の情報を歓迎する。委員会はまた、障害のある子どものための特別出版物に関する情報も歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国が、条約に関する十分な普及、意識啓発および研修のための活動を、組織的なかつ対象を明確にしたやり方で実施していないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約に関する情報を普及するためのプログラム、および、子どもたちおよびその親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の統治機関の間におけるその実施(新規移住者など、被害を受けやすい状況に置かれた集団に情報を届けるための取り組みを含む)を強化しかつ継続すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 18.委員会は、2000年3月の政令によって機会均等・人種主義反対センターの任務が拡大され、ジェンダー、性的指向出生、民事上の地位、健康障害、年齢および障害を理由とするものを含むあらゆる形態の差別が含まれるようになったことを歓迎する。委員会は、マイノリティに対する人種主義的事件が発生していることとともに、貧しい子ども、ベルギー国籍を有さない子ども(保護者のいない未成年者を含む)および障害のある子どもが、経済的および社会的権利(とくに保健および教育)の享受に際して格差を経験していることを懸念するものである。 19.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 否定的な社会的態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンなどのあらゆる適切な措置をとるとともに、人種差別撤廃委員会の勧告(2002年3月)を実施すること。 (b) 自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に定められたすべての権利を差別なく享受できることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 引き続き、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた集団に属する子どもに優先的に対応し、かつ資源および社会サービスをこれらの子どもにとくに振り向けること。 (d) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもに関する一般的討議において採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に顧慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および実務(法律案を含む)を見直すこと。 20.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条第1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 21.委員会は、締約国の支援を得て、子どもが自分たちの意見を知らしめることのできる機構がいくつか設置された旨の情報を歓迎する。これには、会議、子どもの権利に関する講座、学校およびコミュニティにおける評議会ならびに「あなたはどう思う?」プロジェクトが含まれる。しかしながら委員会は、子どもが、自分たちに影響を与える政策についてどのように意見を述べられるのかについても、意見を求められた後にそれがどのように考慮されるのかについても十分に情報を提供されておらず、かつ、初等中等学校の児童生徒による学校運営への参加(校則および規律管理等の分野におけるものを含む)に対して十分な注意が向けられていないことを懸念するものである。子どもに影響を与える裁判手続または行政手続に関して、委員会は、裁判法第931条に基づき、意見を聴かれる権利がもっぱら裁量的なものであり、かつ子どもに対して十分に保障されていないことを懸念する。委員会は、この点に関する法案についての情報を歓迎するものである。 22.委員会は、締約国が、第12条にしたがい、子どもが社会(学校を含む)に意味のある形で参加することを促進しかつその便宜を図るためにさらなる措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、裁判所における手続および行政手続について定めた法律で、自己の意見を形成する力のある子どもが意見表明権を有することおよびその意見が正当に重視されることを確保するよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 23.委員会は、未成年者刑事保護法(2000年11月28日)、刑法改正、および、子どもの道徳的、身体的および性的不可侵性の保護に関する憲法第22条bisの採択など、子どもの虐待(性的虐待を含む)の分野で進められてきた多数の取り組みに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、体罰が法律で明示的に禁じられていないことを依然として懸念するものである。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および施設における子どもの体罰を禁止するための立法措置をとること。 (b) 引き続き、体罰の悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施し、かつ積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進すること。 (c) 苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的な手続および機構を確立するとともに、必要に応じて介入を行なうこと。 (d) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事件について訴追を行なうこと。 (e) 被害者のケア、回復および再統合のための対応をとること。 (f) 虐待された子どもに秘密を守りながら対応するセンターを全面的に支援することを通じて通報制度を強化するとともに、教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家を対象として、不当な取扱いの事案の特定、通報および管理に関する研修を実施すること。 人権教育 25.委員会は、条約第29条に掲げられた教育の目的(人権、寛容、両性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの平等の尊重の発展を含む)が、締約国全域のカリキュラムの一部であると明示されていないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮に入れ、子どもの権利を含む人権を、とくに人権、寛容、両性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの平等の尊重の発展との関連で、すべての初等中等学校のカリキュラムに含めるよう勧告する。 4.特別な保護措置 保護者のいない未成年者 27.委員会は、保護者のいない未成年者の滞在申請を取り扱うために、外国人局内にこれらの未成年者のための特別部署が創設されたことを歓迎する。委員会はまた、その他の多数の活動(とくに、保護者のいない未成年者を対象とする特別受け入れセンターの設置、ならびに、保護者のいない未成年者に関する規定も掲げた、後見制度の創設、教育へのアクセスおよび行方不明者に関する法案に関する活動)にも留意するものである。しかし、政府も認めるように、保護者のいない未成年者(庇護を希望しているか否かは問わない)に関する具体的規則はまだ定められていない。 28.条約の原則および規定(とくに第2条、第3条および第22条)にしたがい、かつ保護者のいない18歳未満の未成年者との関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引および(または)性的搾取の被害を受けた未成年者に特段の注意を払いながら、保護者のいない未成年者を対象とする特別受け入れセンターを設置する努力を速やかに進めること。 (b) これらのセンターでの滞在が可能なもっとも短い期間に留められ、かつ、受け入れセンターでの滞在中および滞在終了後に教育および保健へのアクセスが保障されることを確保すること。 (c) 保護者のいない未成年者に対し、庇護手続の開始時から、かつその後も必要があるかぎり後見人が任命されることを確保するため、後見制度の創設に関する法案を可能なかぎり早期に承認するとともに、同制度が全面的に独立したものとなり、当該未成年者の最善の利益にかなうと後見人が考えるいかなる対応もとれるようにすること。 (d) 保護者のいない未成年者が、自己の権利について告知され、かつ庇護手続において代理人弁護士にアクセスできることを確保すること。 (e) 外国人局および他の関連の公的機関、警察、審判所、受け入れセンターならびにNGOを含むあらゆる関係者の協力および情報交換を向上させること。 (f) 家族再統合が実施されるときは、それが子どもの最善の利益にかなう形で行なわれることを確保すること。 (g) 保護者のいない未成年者であって送還された者のフォローアップを拡大しかつ向上させること。 性的搾取および人身取引 29.委員会は、子どもの性的搾取および人身取引と闘うために締約国がとった多数の措置への満足感をあらためて表明する。にもかかわらず、委員会は、性的その他の搾取を目的とする人身取引がいまなお問題となっていることを懸念するものである。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家専門家委員会の勧告を全面的に実施すること。 (b) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントにしたがった政策およびプログラムを引き続き実施すること。 (c) 売春の仕事をしている外国人の女子および女性との意思疎通および接触を改善するため、女性警察官を引き続き採用すること。 (d) この分野の政策およびプログラムに対して十分な資源(人的資源および財源)が配分されることを確保すること。 (e) 出身国における意識啓発キャンペーンを引き続き行なうこと。 (f) 出身国および通過国との協力を拡大すること。 (g) 国際移住機関と引き続き協力すること。 少年司法の運営 31.委員会は、第1回報告書の検討以降に受け取った、死刑が1996年に廃止された旨の情報、最高15日の未決拘禁を定めていた1965年青年保護法第53条が廃止された旨の情報、および、全国少年司法研究フォーラム(統計に関する作業部会を含む)が設置された旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、非行少年の一時拘禁およびエーフェルベルグ〔一時拘禁〕センターの創設に関する2002年3月1日の暫定法(2002年10月31日失効)により、1965年法第53条に代わって、より制限的ではないにしても同様の制度が導入されたことを懸念するものである。さらに委員会は、1965年法第38条に基づき、18歳未満の者が成人として審理される場合があることを依然として懸念する。全体として、委員会は、条約で唱道されている、少年犯罪の問題への対応に関するホリスティックなアプローチが、防止、手続および制裁との関連も含め、締約国によって十分に考慮されてこなかったことを懸念するものである。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)、ならびに、北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関するウィーン指針などのこの分野における他の関連の国際基準を法律および実務に全面的に統合した少年司法制度を確立すること。 (b) 18歳未満の者が成人として審理されないことを確保すること。 (c) 2002年3月の法律および2002年10月に行なわれるその見直しに関して、条約第37条にしたがい、自由の剥奪が最後の手段として、可能なもっとも短い期間でのみ用いられること、適正手続の保障が全面的に尊重されること、および、18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。 5.選択議定書 33.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう奨励する。 6.報告書の普及 34.最後に委員会は、条約第44条第6項に照らし、締約国が提出した第2回報告書を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、委員会が提起した事前質問事項に対する文書回答、関連の討議の要録、および、報告書の検討後に委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布することが求められる。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
https://w.atwiki.jp/bigface/pages/505.html
#blognavi 証拠が出ているのに認めないって、ある意味すげぇーって思いまして。 この騒動で解雇された力士とのいざこざがあったかどうかは知りませんが、科学が進歩したこのご時勢。 動かぬ証拠が突きつけられてもあの態度って…。 ある種、現在の科学に対して挑戦状を叩きつけているようにしか思えません。 昨年から何かと騒動を起こして記者会見する人は皆、最初は『知らない』って言うけど、最後は『御免なさい』。 今の世の中、悪い事をしたら、隠せるだけ隠して、駄目なら謝る。 そういう風潮になってきているんで、これからの子供たちに顔向け出来ないなぁって。 学力低下を懸念されているが、それ以上に懸念すべき事が今の日本にはある、そう思いますね。 カテゴリ [なし] - trackback- 2008年09月09日 08 00 50 名前 コメント #blognavi
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/103.html
総括所見:モンゴル(OPSC・2010年) 第1回(1996年)/第2回(2005年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPAC/MNG/CO/1(2010年3月3日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年1月12日および13日に開かれた第1458回および第1460回会合(CRC/C/SR.1458およびCRC/C/SR.1460参照)においてモンゴルの第1回報告書(CRC/C/OPSC/MNG/1)を検討し、2010年1月29日に開かれた第1501回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/OPSC/MNG/Q/1 and Add.1)に応じて提供された回答の提出を歓迎する。委員会はまた、代表団との間に持たれた率直かつ建設的な対話についても評価の意を表明するものである。しかしながら委員会は、締約国の報告書が、選択議定書に基づく報告に関する改訂ガイドラインにしたがっていなかったこと、および、代表団に司法省の職員が含まれていなかったことを遺憾に思う。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回・第4回統合定期報告書の検討後、2010年1月29日に採択された総括所見(CRC/C/MNG/CO/3-4)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、報告書の作成に際し、市民社会組織および子どもたちを含む関係者が協議の対象とされたことに、評価の意とともに留意する。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書に加入しまたはこれを批准したことも称賛する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2006年)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2001年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2008年)。 II.データ データ収集 6.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する統計データおよび調査研究が限られていることに、懸念とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、議定書が対象とする問題に関して調査研究が実施されること、ならびに、データがとくに年齢、性別、社会経済的背景および地理的集団およびマイノリティ集団ごとに細分化されること、および、データが体系的に収集されかつ分析されることを確保するよう、勧告する。このようなデータは政策の実施状況を測定するために必要不可欠な手段だからである。締約国は、この点に関して、国連児童基金(ユニセフ)を含む国連の機関および計画の援助を求めるべきである。 III.実施に関する一般的措置 立法 8.委員会は、選択議定書に掲げられた規定の一部がすでにモンゴル法に編入されている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、精確な定義が定められていないこと、および、選択議定書上のすべての犯罪が編入されているわけではないことに、懸念を表明するものである。 9.委員会は、締約国が、選択議定書の原則および規定に国内法を調和させるプロセスを継続しかつ完了させるよう勧告する。 国家的行動計画 10.性的搾取を目的とする子どもおよび女性の人身売買からの保護に関する国家計画(2005年)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、同計画において選択議定書のすべての規定の違反が網羅されているわけではないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が、性的搾取を目的とする子どもおよび女性の人身売買からの保護に関する国家計画を効果的に実施するとともに、十分な人的資源および財源の裏づけを得ながら選択議定書の規定のあらゆる違反に対処する目的で、同計画の拡大を検討するよう勧告する。 調整および評価 12.委員会は、性的搾取を目的とする子どもおよび女性の人身売買からの保護に関する国家計画の実施を国家評議会が担当していることに留意する。しかしながら委員会は、同評議会の実績について体系的評価が行なわれていないことを懸念するものである。 13.委員会は、国家評議会がその任務を効果的に遂行し、かつ同評議会に十分な人的資源および財源が提供されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 普及および研修 14.委員会は、研修プログラム、人身取引に関するおよび性的搾取からの子どもの保護に関する本および広報資料の刊行等を通じ、選択議定書の促進に関して締約国が非政府組織(NGO)と連携しながら行なっている努力を評価する。しかしながら委員会は、そのような努力を締約国全域で強化しかつ体系化する必要があることに留意するものである。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる関連の専門家集団を対象として、選択議定書の規定に関する体系的な教育および訓練を継続しかつ強化すること。 (b) とりわけ学校カリキュラムおよび子ども向けにとくに立案された適切な資料を活用することにより、住民、とくに子どもおよび親の間で選択議定書の規定を普及するための措置を強化すること。 (c) 選択議定書第9条2項に照らし、かつ市民社会と協力しながら、あらゆる適当な手段による情報伝達、教育および研修を通じ、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の防止措置および有害な影響に関する意識を公衆一般、とくに子どもたちの間で促進すること。そのための手段として、とりわけ、そのような情報伝達、教育および研修のためのプログラムへの、コミュニティならびにとくに両性の子どもおよび被害を受けた子どもの参加を奨励すること。 資源配分 16.委員会は、選択議定書の実施のための予算配分額に関して提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、配分された予算が十分ではなく、かつ選択議定書のすべての分野が網羅されていないことを、依然として懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、条約第4条に関する2007年の一般的討議を受けた委員会の勧告を正当に考慮しながら、選択議定書のすべての分野を網羅する目的で国および地方のレベルにおける予算配分額を増加させるよう勧告する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 防止、被害者の保護、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合ならびに選択議定書が対象とする犯罪の訴追を目的とする、とくに地方レベルにおける計画およびプロジェクトの策定および実施のため、必要な人的資源および財源を提供すること。 (b) 人権アプローチを採用するとともに、委員会の総括所見(CRC/C/MNG/CO/3-4、パラ18)に示された予算策定手法を導入すること。 独立機関 18.委員会は、国家人権委員会が国内のすべての子どもにとってアクセス可能または利用可能となっていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもが自ら苦情を申し立てられないことを懸念するものである。 19.委員会は、締約国が、すべての子どもが自己の権利(選択議定書で対象とされているものを含む)のいずれかの侵害について主張を行なう目的で国家人権委員会に容易にアクセスできることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、国家人権委員会が子ども自身による苦情を受理する権限および能力を有することを確保するよう、勧告するものである。 IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止 20.委員会は、貧困および子どもの性的虐待の増加が締約国における商業的性的搾取の増加に関して重要な役割を果たしている旨の情報について、深い懸念を覚える。 21.委員会は、売買、買春、ポルノグラフィーおよびセックス・ツーリズムに対する子どもの脆弱性を助長する根本的原因(貧困、低開発および文化的態度など)に対処することを目的としたプロジェクトに対し、締約国が引き続き十分な注意(人的資源および財源の配分を含む)を払うよう勧告する。委員会はまた、締約国が、この分野における、とくに近隣諸国との国際協力を強化する努力を増強させることも勧告するものである。 V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項 現行刑事法令 22.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの禁止が、選択議定書第2条および第3条にしたがって締約国の国内法に明示的に掲げられていないことを懸念する。とくに委員会は、選択議定書にしたがった児童買春の明確な定義が存在しないことにより、多くの事案について十分な対応が妨げられていることを懸念するものである。 23.委員会は、国内法体系と選択議定書との間の不一致および乖離を明らかにするため法的研究を行なうとともに、ユニセフその他の関連の国際機関の援助を求めるよう、勧告する。委員会はさらに、選択議定書第2条および第3条にしたがってあらゆる目的および形態の子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春を全面的に対象とする目的で国内法の規定を改正するため、締約国があらゆる措置をとるよう勧告するものである。 裁判権 24.委員会は、選択議定書第4条にしたがって締約国が裁判権を行使できることは歓迎しながらも、選択議定書が対象とするすべての犯罪に対処するために用いられている手続についての詳細な情報がないことを、依然として懸念する。 25.委員会は、締約国が、国内法において選択議定書第4条に全面的に一致する形で域外裁判権が定められることを確保するため、必要な立法上の措置をとるよう勧告する。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 26.委員会は、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもが、選択議定書第8条で定められているとおり常に被害者と見なされかつそのように扱われているわけではない可能性があることを、懸念する。委員会はまた、女性および女子の人身取引および搾取の発生件数が増加していることならびに訴追率が低いことについて2008年11月に女性差別撤廃委員会が提起した懸念(CEDAW/C/MNG/CO/7、パラ27および28)と見解を一にするものである。委員会はさらに、被害を受けた子どもが社会的再統合ならびに身体的および心理社会的回復のための措置をほとんど利用できないことに、懸念とともに留意する。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書第8条にしたがい、被害を受けた子どもが刑事司法手続のすべての段階で現行法による保護の対象とされること、および、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保すること。これとの関連で、締約国は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(国連経済社会理事会決議2005/20付属文書)を指針とするべきである。 (b) 被害を受けた子どもの法的代理を向上させる目的で十分な人的資源および財源が配分されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者である子どもがそのこと自体を理由として犯罪者にも処罰の対象にもされないこと、および、このような子どもがスティグマを付与されかつ社会的に周縁化されることのないようあらゆる可能な措置がとられることを確保すること。 (d) 選択議定書第9条3項にしたがい、被害を受けた男女双方の子どもが十分なサービス(全面的な社会的再統合ならびに全面的な身体的および心理的回復のためのサービスを含む)を利用できることを確保すること。 28.委員会はさらに、法制度および社会制度の障壁を特定し、かつ研究の成果を効果的かつ包括的な政策の策定および実施のために活用する目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害を受けた子どもが通過するプロセス(被害者が司法制度の対象となった時点から警察段階を経てリハビリテーションの段階に至るまで)についての研究を実施するよう、勧告する。 29.委員会は、締約国が、被害を受けた子どもを援助するためのさまざまなチャイルドラインへのアクセスを引き続き確保するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、子どもがヘルプラインについて知り、かつこれにアクセスできること確保するとともに、ヘルプラインと、子どもに焦点を当てて活動しているNGOおよび警察ならびにヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を促進するよう、勧告するものである。 被害者の回復および再統合 30.委員会は、もっとも脆弱な立場に置かれた子ども(選択議定書上の犯罪の被害者も含む)に対してケア、支援および保護を提供するうえで市民社会組織が行なっている称賛すべき活動についての情報を歓迎する。しかしながら委員会は、被害を受けた子どもの権利およびニーズにいっそう包括的なかつ調整のとれたやり方で対応できる、体系的なかつ調整のとれた機構が州およびコミュニティのレベルに存在しないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 選択議定書第8条4項にしたがい、選択議定書で禁じられた犯罪の被害者とともに働く者を対象とした適切な研修、とくに法律面および心理面の研修を確保するための措置をとること。 (b) 選択議定書第9条4項にしたがい、選択議定書に掲げられた犯罪の被害を受けたすべての子どもが、法的責任を有する者に対する損害賠償を差別なく求めるための十分な法的手続にアクセスできることを確保すること。 VII.国際的な援助および協力 多国間、地域的および二国間協定 32.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムに対する子どもの脆弱性を助長する根本的原因(貧困および低開発など)に対処する目的で、国連の専門機関および計画ならびに市民社会組織との協力を継続し、かつ二国間協定を通じての協力も引き続き行なうよう、奨励する。 法執行 33.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを防止しかつこれと闘う目的で、他の国々との地域的および国際的な司法共助、捜査共助および被害者中心の協力の活動を行なうとともに、条約に基づく次回の定期報告書でより詳細な情報を提供するよう、奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 34.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、最高人民会議および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 35.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、メディアおよび専門家グループならびに子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 IX.次回報告書 36、第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。
https://w.atwiki.jp/jijipedia/pages/42.html
全世界同時株安の原因とは何か? リスク回避って何? 関連ニュース 米債市場が発する株安シグナル(NY特急便)(写真=AP) - 日本経済新聞 米国株式市場=下落、オミクロン株やテーパリング巡る懸念で - ロイター 株安で米10年債利回り大幅低下 米雇用統計は強弱まちまち フラット化加速=NY債券概況 - ニュース・コラム - Y!ファイナンス - Yahoo!ファイナンス NY株反落、59ドル安 新変異株の流行懸念 - 47NEWS NY商品、原油が反落 米株安でリスク回避の売り、金は反発 - 日本経済新聞 メタ株が下落、弱気相場入りへ-時価総額2300億ドル吹き飛ぶ - ブルームバーグ ロンドン株式市場=続落、鉱業株の下落が重し - ロイター 「パウエル・プット」不在再び 年末株安を恐れる投資家 - 日本経済新聞 来週の日本株はどうなるか?さすがに漂う「売られすぎ」感 | 会社四季報オンライン - 会社四季報オンライン アジア株式市場サマリー:引け(3日) - ロイター 中国・香港株式市場・前場=中国株上昇、香港は滴滴の米上場廃止で下落 - ロイター インド株式市場・序盤=続伸、IT株やエネルギー株が高い - ロイター 〔東京株式〕小安い=時間外での米株先物安など映す(3日後場寄り付き)(時事通信) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 株価下落時こそ「長期・積立」を再確認、リーマンショック時の対応で投資成果に差(モーニングスター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 〔マーケットアイ〕株式:新興市場は7日続落、オミクロン株警戒根強い 需給悪化懸念も重し - ロイター (まとめ)日経平均は米国株安を受けて反落 一時プラスとなるも上値は重く182円安 - 市況概況 - ダイヤモンド・オンライン 日経平均は反落、オミクロン株への警戒感根強く 戻り売りが重し - ロイター 前日の海外市況ほか|ドル・円:11月ISM製造業景況指数が予想を下回り、米国内で初のオミクロン変異株の感染が確認されたことから、113円59銭から112円67銭まで円高・ドル安推移。 - 外為どっとコム 〔東京株式〕反落=米株安を嫌気(2日前場寄り付き)(時事通信) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 寄り付きの日経平均は反落、米株安を嫌気 - Reuters Japan 今日の株式見通し=反落、オミクロン株への警戒感高まる 米株安に追随 - ロイター 東証4日ぶり反発、113円高 変異株警戒も割安株に買い(共同通信) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース <東証>ソフトバンクGが年初来安値 アリババ株安など重荷 - 日本経済新聞 世界を駆け巡る“オミクロン株ショック”国内でも初の感染者確認[新聞ウォッチ](レスポンス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米株安重荷、オミクロン型に警戒(先読み株式相場) - 日本経済新聞 東京株式(大引け)=462円安、後場リスク回避の売りがかさみ大幅安 - 株探ニュース 「ワクチン効果」巡り市場動揺、日経平均の終値2万8000円割り込む(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米株高追い風もオミクロン型警戒(先読み株式相場) - 日本経済新聞 訂正:米国株式市場=上昇、オミクロン株巡る懸念が後退(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 世界同時株安は「オミクロン株の蔓延」だけが要因ではない | 会社四季報オンライン - 会社四季報オンライン 中国恒大株8.8%安 - 日本経済新聞 5円安の2万8746円49銭 29日午前の平均株価(時事通信) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日経平均は413円下落で取引開始 オミクロン株懸念、世界的に株安(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 〔東京株式〕大幅続落=前週末の欧米株安映す(29日前場寄り付き)(時事通信) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 「オミクロンショック」は、株の買い場かもしれないと言えるこれだけの理由(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース メルトアップの米株、下落の余地大か-新変異株でコロナ懸念持続なら(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース オミクロンの感染力 向かいの部屋に滞在だけで…(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 新変異株確認で世界同時株安の様相…NYダウ終値は今年最大の下げ幅 - 読売新聞 南ア変異株で世界株安連鎖、日経平均747円安・NYダウは一時900ドル超下落 - 読売新聞 UPDATE 1-中国・香港株式市場・大引け=中国下落、コロナ懸念で 香港は7週ぶり安値 - ロイター 東証、変異株で747円安 警戒感から1カ月ぶり安値 (2021年11月26日) - エキサイトニュース 中国・香港株式市場・前場=下落、新型コロナ懸念が重し - ロイター 好決算で株価急上昇、「AIアルゴリズム」ベンチャー銘柄(会社四季報オンライン) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 〔米株式〕NYダウ小反落、9ドル安=長期金利上昇に警戒感(24日) 差替(時事通信) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日経平均株価は、75日・200日移動平均線を上回っている限り「強気一択」だが、難易度の高い相場が継続!株価が下落中の銘柄の“安易な押し目買い”には注意! - ダイヤモンド・オンライン 日経平均は急反落、ハイテク株安が重し 米金利上昇を警戒 - ロイター 欧州市場の主要指標11時半 ユーロ横ばい 欧州株安 - 日本経済新聞 日経平均は今週いきなり3万円超えで寄り付く可能性も。不安要因は欧米のコロナ拡大(LIMO) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 東京株式(寄り付き)=売り優勢でスタート、欧米株安を引き継ぎリスクオフ - ニュース・コラム - Y!ファイナンス - Yahoo!ファイナンス 金利が上昇しても株安にはならない 投資の教科書はもう古い【ベテラン証券マンが教える株のカラクリ】(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日本株に割安感?2022年に向けた買い余地はあるか - トウシル 米国株式市場=ナスダック、初の1万6000ポイント乗せ ダウ続落 - ロイター 〔東京株式〕小幅続落=米株安や円安一服で売り先行(18日前場寄り付き) - ニュース・コラム - Y!ファイナンス - Yahoo!ファイナンス リビアン株下落、IPO後の連騰ストップ-時価総額230億ドル消失(Bloomberg) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日経平均、米株安が重荷(先読み株式相場) - 日本経済新聞 明日の株式相場に向けて=ポストFRONTEOは?「AI関連」に輝き - minkabu PRESS 欧州株式市場=7営業日ぶり反落、石油・ガス株安響く - ロイター NY市場サマリー(17日)米国株下落、ドル下落、利回り低下(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米国株式市場=下落、インフレ・供給網巡る懸念で - ロイター 16日の日経平均株価が小幅ながらも4日続伸となったワケ | 会社四季報オンライン - 会社四季報オンライン 日経平均株価とマザーズ指数は「短期・中期・長期」で上昇トレンド発生中! 毎年10月末~翌年春にかけて株価が上がる“ハロウィン効果”のアノマリーに期待! - ダイヤモンド・オンライン 韓国株16日 3日ぶり小反落 米株安、国内のコロナ感染高止まりで 起亜が安い - 日本経済新聞 ダメダメの「日本株」で唯一の光明…「自社株買い」で“大きくハネそう”な最強10銘柄(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース ◎〔東京株式〕上げ幅縮小=中国株安など受け利食い売り(15日後場寄り付き) 投稿日時: 2021/11/15 12 36[時事通信社] - みんなの株式 ナスダックが11連騰!高値更新の米国株に大きな崩れは想定しづらいワケ(MONEY PLUS) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 東証、午前終値は2万9325円 恒大利払いで反発、米株安は重荷(共同通信) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 10日の日経平均がついに「4日続落」になってしまった事情 | 会社四季報オンライン - 会社四季報オンライン 日経平均が4日続落、終値178円安の2万9106円 - 日本経済新聞 日経平均は5日ぶり反発、下げの反動で押し目買い 円安も支援 - ロイター 明日の株式相場に向けて=EV関連株に流れ込む投資マネー - minkabu PRESS 日本株4日続落、中国の不動産債務問題を懸念-非鉄金属など素材安い - ブルームバーグ 今日の株式見通し=一進一退、米株安が重し 物色意欲が支え - ロイター 米国株式市場=下落、インフレ懸念で連日の最高値更新に終止符 - ロイター 9日の日経平均は続落、円高と米株先物安が重し - ロイター 東証大引け 続落、安値引け 建設株安や恒大不安が重荷 - 日本経済新聞 金融所得課税強化の株式市場への影響をどう予測するか - ダイヤモンド・オンライン 避けられない「株価の大暴落」ははたしていつ起きるのか | 会社四季報オンライン - 会社四季報オンライン NY市場サマリー(5日)ドル上昇、国債利回り低下 株は最高値更新(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース エヌビディア株高にみるメタバース期待(NY特急便)(写真=AP) - 日本経済新聞 日経平均は反落、利益確定売りに押され 米雇用統計前の週末で(ロイター) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 日経平均182円安 利益確定で売り注文(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 米国株式市場=S&Pとナスダックが最高値更新、半導体株が高い - ロイター 米株安重荷 ファナック株も注目(先読み株式相場) - 日本経済新聞 日経平均、米ハイテク株安が重荷(先読み株式相場) - 日本経済新聞 米国株式市場=S&P最高値、IBM株安がダウ圧迫 - ロイター 日経平均は反落、米株安を嫌気 円安で輸出株の物色も - ロイター 東京株、一時900円超下落 米株安で市場心理悪化 - 時事通信 米株安が重荷 日銀短観で銘柄選別も(先読み株式相場) - 日本経済新聞 東京株、一時800円超安 米株安で利益確定売り - 時事通信 世界的株安が波及、日経平均が一時600円超の下落…中国不動産大手の経営危機が影響 - 読売新聞 中国株安と米国株調整を後目に上昇の勢いが続く日本株、地域別の分散投資も考えどころ - モーニングスター 日経平均、米株安が重荷か(先読み株式相場) - 日本経済新聞 日経平均急反落、米株安・感染拡大の警戒感で売り優勢 - ロイター 東証大引け 続伸、米株高を好感 中国株安が重荷に - 日本経済新聞 午前の日経平均は続落、米株安を嫌気 デルタ株も警戒 - ロイター 日経平均、米株安とコロナが重荷に(先読み株式相場) - 日本経済新聞 日経平均、米株安や金利低下が重荷に(先読み株式相場) - 日本経済新聞 日経平均、米株安が重荷に(先読み株式相場) - 日本経済新聞 日経平均、米株安重荷も円安が支え(先読み株式相場) - 日本経済新聞 日経平均、米株安と感染増が重荷に(先読み株式相場) - 日本経済新聞
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/185.html
総括所見:タイ(第3~4回・2012年) 第1回(1998年)/第2回(2006年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/THA/CO/3-4 and CRC/C/THA/CO/3-4/Corr.1(2012年2月17日) 原文:英語(平野裕二仮訳) ※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年1月24日および25日に開かれた第1682回および第1683回会合(CRC/C/SR.1682 and 1683)においてタイの第3回・第4回定期報告書(CRC/C/KOR/3-4)を検討し、2012年2月3日に開かれた第1697回会合(CRC/C/SR.1697参照)において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、これらの文書が率直なものであったことにより、締約国における子どもの状況に関する理解を向上させられたことを称賛する。委員会は、ハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた、開かれた、率直な、かつ実りのある対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/THA/CO/1)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、報告対象期間中に見られた多くの積極的進展を歓迎する。これには、以下のもののような、条約を実施するためにとられた立法上の措置の採択も含まれる。 (a) 子どもの養子縁組法(第3号((2010年)。 (b) 少年家庭裁判所およびその手続法(2010年)。 (c) 人身取引禁止法(2008年)。 (d) 住民登録法(2008年)。 (e) ドメスティックバイオレンス被害者保護法(2007年)。 (f) 障害者の生活の質促進法(2007年)。 (g) 国家的な子どもおよび若者の発達促進法(2007年)。 5.委員会は、以下の人権文書について批准または加入が行なわれたことに、評価の意とともに留意する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年2月27日)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年1月11日)。 (c) 障害のある人の権利に関する条約(2008年7月29日)。 (d) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2007年10月2日)。 6.委員会はまた、以下のものを含む、子どもの権利およびウェルビーイングを促進する政策およびプログラムの採択も歓迎しかつ称賛する。 (a) 「子どもおよび女性の国内的・国際的人身取引の防止、抑止およびこれとの闘いに関する国家的計画および政策(2012~2016年)」。 (b) 「子どもおよび青少年のための国家的課題」(2008年)。 (c) 「国家子ども・若者育成計画(2007~2016年)」。 II.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/THA/CO/2)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた多くの勧告について十分なフォローアップが行なわれていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(データ収集、差別の禁止、国籍、プライバシーの保護、家庭における体罰、代替的養護、母親とともに刑務所にいる子ども、思春期の健康、子どもの難民および庇護希望者、移住労働者の子ども、児童労働ならびに少年司法のような問題に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップすることも促すものである。 留保 9.委員会は、締約国が、条約第7条に関する留保を2010年12月に撤回したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が第22条に関する留保を撤回していないことを遺憾に思うものである。 10.委員会は、締約国が、条約第22条に関する留保を撤回するとともに、国内のすべての子どもの庇護希望者および難民の権利を保護し、かつこれらの子どもを援助するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 立法 11.委員会は、条約の原則および規定との国内法の調和化に貢献する、子どもの権利の分野におけるいくつかの法律(この文書のパラ4で挙げたもの)が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、現行法が憲法および条約と一致するようにさらにその改正を図る目的で、国家子ども・若者委員会のもとに小委員会が設置されたことも歓迎するものである。にもかかわらず、委員会は、実際の執行および実施が弱くかつ不十分であることを深く懸念する。委員会はとくに、2003年の子ども保護法がそれ以降見直されておらず、かつ、実施も、中央から地方のレベルに至るさまざまな機関の役割および責任についての指針も欠いていることを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、現行法が条約の原則および規定と一致するようにその見直しを継続するための措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、あらゆるレベルで国内法が全面的かつ効果的に実施されることを確保するための適切な措置をとるとともに、子どもの権利の保護を向上させる目的で2003年の子ども保護法を見直し、かつその実施に関する明確な指針を定めるよう、促すものである。 調整 13.委員会は、社会開発・人間安全保障省(MSDHS)が条約の実施の調整およびフォローアップを担当する主務機関であることに留意する。しかしながら委員会は、子どもの権利に関する政策およびその実際の実施が、MSDHS内の諸機関および種々の法律に基づいて設置された多数の委員会に割り当てられていることから、政策レベルにおける断片化、および、中央から地方のレベルに至る過程における実施上の障害が生じていることを、遺憾に思うものである。委員会はさらに、プログラムおよびプロジェクトの策定ならびにその監視および評価のための制度の指針となる、子どもの権利に関する包括的政策が定められていないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会(社会開発・人間安全保障省内のものを含む)の間でよりよい調整が行なわれることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの権利に関する活動の実施の監視および評価について、部門別省庁を横断し、かつ中央政府から地方政府のレベルに至るまで指導力を発揮しかつ有効な一般的監督を行なうことのできる単一の部局を指定するよう、勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、プログラムおよびプロジェクトの策定の指針を提供し、かつそれらの監視および評価のための制度を確立する目的で、子どもの権利に関する包括的政策を策定するよう、勧告する。 国家的行動計画 15.「国家子ども・若者育成計画(2012~2016年)」および「子どもおよび青少年のための国家的課題」(2008年)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、これまでの「子どもの発達のための国家政策および戦略計画(2007~2016年)」の中間評価に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会はまた、新規計画が子どもおよび25歳までの若者の両方を対象としており、条約に掲げられた子どもの権利を実現するための十分なかつ焦点の明確な枠組みを提供していないことも、懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、「子どもの発達のための国家政策および戦略計画(2007~2016年)」のレビューおよび評価の結果を提供するとともに、新規計画に、条約に掲げられた子どものすべての権利の実現について十分な内容が盛りこまれることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、この行動計画において、18歳未満の子どもに具体的に焦点が当てられ、かつ部門別の諸行動計画および第11次経済社会開発計画との調整が図られるべきことも勧告するものである。 独立の監視 17.国家人権委員会が活動しており、かつ子どもおよび一般公衆によるアクセスが可能である旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、子どものためのアクセス方法および子どもが苦情申立てを行なう機会が限られていること、ならびに、十分な人数の専門家および訓練を受けた職員を擁する子どものための特別部局が存在しないことを、懸念する。委員会はまた、同委員会に地域事務所がないことも懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、同委員会に関する公衆(とくに子ども)の意識啓発を向上させ、かつ同委員会の活動に関する知識を高めるための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、アクセスしやすい子どものための特別部局を設置するとともに、秘密を適切に保持しながら苦情を受理し、かつ子どもの権利の侵害によりよい形で対応できるようにするために必要な人的資源、技術的資源および財源を当該部局に提供するよう、促すものである。委員会は、同委員会の活動を領域全体で強化するため、締約国が地域事務所を設置するよう勧告する。 資源配分 19.委員会は、さまざまな費目によるMSDHSへの予算配分額および基礎教育への予算配分額(2010/2011年度)に関する締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、あらゆる範囲の子どもの権利を実施するために他の部門および分野に配分されている予算額についてのさらなる詳細が欠けていることを、遺憾に思うものである。委員会は、MSDHSに配分される国家予算の割合が低い(0.5%)状態が数年間変わっておらず、子どもの権利に関する調整機関がその職務を効果的に遂行できるようにするための対応がとられていないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が、今後の予算策定において、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議に基づく委員会の勧告を考慮するとともに、具体的に以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第4条にしたがい、利用可能な資源を可能なかぎり最大限に用いながら、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに社会部門に配分される予算を増額すること。 (b) 国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用する能力、および、あらゆる関連の部門および地方レベルのあらゆる機関が予算全体を通じて子どものための資源をどのように配分しかつ使用しているかを追跡し、監視しかつ評価するためのシステムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとするための能力の構築を図ること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門または地方レベルにおける投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (c) 予算上のニーズに関する包括的アセスメントを実施し、かつ、諸指標(ジェンダー、障害、保健、教育、生活水準および子どもの権利に関わる地理的所在など)における不平等および格差に漸進的に対応する分野への明確な配分額を確立すること。 (d) 一般的な戦略的予算科目、ならびに、一時的な社会的措置(積極的差別是正措置を含む)を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子どもを対象とした部門別および地方政府別の配分額を定めるとともに、これらの予算科目および配分額が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 汚職 21.汚職と闘うために締約国が行なっている努力には積極的対応として留意しながらも、委員会は、とくに自治体および地方政府の職員ならびに法執行官の間で汚職が依然として蔓延しており、そのため子どもの権利を実施するための政府の政策およびプログラムの有効性を増進させうる資源が流用されていることを示す報告について懸念を覚える。 22.委員会は、締約国に対し、強力な反汚職政策を策定しかつ実施すること、反汚職キャンペーンを行なうこと、ならびに、汚職事件を効果的に摘発し、捜査しかつ訴追する制度的能力を強化すること等の手段により、あらゆるレベルおよび部門において汚職と闘うための努力を強化するよう、促す。 データ収集 23.委員会は、国家情報センターおよび国家統計局が設置され、子どもの権利の一部分野におけるデータおよび障害のある子どもに関するデータベースが維持されていることに留意する。しかしながら委員会は、条約に基づいた子どものための法律、政策、計画およびプログラムの事前評価、分析および事後評価を可能とする、条約のすべての分野を網羅した効果的なデータ収集システムが存在しないことを懸念するものである。 24.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実現に関して達成された進展に関するデータの分析および評価、ならびに、条約を実施するための政策およびプログラムを立案するための基盤の提供に関する能力構築を図り、かつそのような能力を備えた包括的なデータ収集システムを設置するよう、促す。データは、すべての子どもの年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 普及および意識啓発 25.委員会は、子どもおよびその家族を含む公衆一般の意識啓発を継続的に図るための、子どもの権利に関するキャンペーンを含む体系的かつ持続的な公衆教育プログラムが存在しないことを懸念する。 26.委員会は、締約国が、条約の原則および規定に関する公衆(子どもを含む)の意識を強化する目的で、キャンペーンを含む適切な広報プログラムおよび伝達プログラムを実施するために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、さまざまな社会経済的および社会文化的コミュニティの子ども向けにとくに適合された適当な資料等も通じて親、より広範な公衆および子どもに対して、かつ、条約の原則および規定が立法上および司法上の手続において適用されることを確保する目的で立法者および裁判官に対して、条約を普及するための努力を強化するよう奨励するものである。これとの関連で、委員会はさらに、締約国に対し、とくに国連児童基金(ユニセフ)、国連人権高等弁務官事務所(UNHCR)および国際議員連盟の技術的援助を求めるよう、奨励する。 研修 27.締約国が、法執行官、地方政府および司法機関を対象とした、人権およびとくに子どもの権利に関する数度の研修を組織していることには留意しながらも、委員会は、このような研修が体系的なものではなく、かつ正規の専門家養成プログラムの中核カリキュラムに含まれていないことを、依然として懸念する。 28.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団(とくに裁判官、弁護士、警察および軍隊の要員、国、県および地方のレベルにおける保健、教育および福祉ならびにあらゆる形態の代替的養護の関係者)が、子どもの権利に関して十分かつ体系的な研修を受けるよう勧告する。 子どもの権利と企業セクター 29.委員会は、経済界および産業界が社会福祉(子どもの保健ケアおよび教育を含む)に対して資源面および便益面で貢献している旨の締約国の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、経済界ならびに急成長している重工業、製造業、繊維業および輸出農業が子どもに与えている影響について十全な評価が行なわれていないことを懸念するものである。委員会はとくに、観光業が同国の経済で大きな位置を占めている一方で、観光客の活動および観光客向けの便益から生ずる児童セックスツーリズム、児童買春、児童ポルノおよび児童ポルノで生じているもののような権利侵害から子どもを保護するための包括的措置がまだとられていないことを、懸念する。委員会はまた、子どものウェルビーイングを阻害する可能性がある、健康および栄養、経済的および性的搾取、汚染ならびに環境悪化の問題に対して効果的対応が行なわれることを確保する目的で、タイで事業を展開する企業および国外で活動するタイの企業の活動を規制するための、法的な制度的枠組みが設けられていないことも遺憾に思うものである。 30.「保護・尊重・救済」枠組み報告書を採択した2008年の人権理事会決議8/7および新たな作業部会に対してこの問題のフォローアップを要請した2011年6月11日の同決議14/7(いずれの決議も、ビジネスと人権との関係を模索する際に子どもの権利が含められるべきことに留意している)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) タイに本社を置く企業に対して、国内外におけるその活動から生じる人権への悪影響を防止しかつ緩和するための措置をとるよう、とくに観光業界に注意を払いながら求める立法上の枠組み(行動規範を含む)を定めること。 (b) 子どもの権利に関わる指標および変数を報告に含めることを促進し、かつ事業および産業が子どもの権利に及ぼす影響についての具体的アセスメントを提供すること。 (c) 自国の企業が領域内においても国外で事業を行なう際にも子どもの権利を尊重し、かつ、権利侵害の際に賠償を含む適切な救済措置が追求されることを確保するための措置をとること。 (d) 自由貿易協定の交渉および締結に先立ち、子どもの権利を含む人権についての評価が実施され、かつ人権侵害を防止するための措置がとられることを確保すること。 B.子どもの定義(条約第1条) 31.婚姻に関する法定最低年齢が男女とも17歳であることは歓迎しながらも、委員会は、子どもが性的に虐待され、かつその後に加害者と婚姻する可能性がある場合にはこの年齢制限を13歳まで引き下げることができ、そのため加害者は当該犯罪に関するいかなる刑事訴追も回避する結果になることに、懸念を表明する。 32.委員会は、締約国が、最低婚姻年齢を18歳に引き上げることを検討するとともに、あらゆる状況下で、とくに子どもが性的に虐待された事案において当該年齢を維持するよう、勧告する。委員会は、締約国が、子どもに対する性的虐待の加害者をいかなる例外もなく訴追しかつ処罰するよう、勧告するものである。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、教育および保健へのアクセスに関する格差を一定程度解消するためにとられた措置、および、不利な立場に置かれた東北部および南部の子どもに関してとられた特別措置に留意する。にもかかわらず、委員会は、とくに女子、障害のある子ども、先住民族コミュニティ、宗教的または民族的マイノリティのコミュニティの子ども、難民および庇護希望者の子ども、移住労働者の子ども、路上の状況にある子ども、農村部に住んでいる子どもならびに貧困下で暮らしている子どもとの関連で、子どもに対する直接間接の差別を根絶するための努力が不十分であることに懸念を表明するものである。委員会は、とくに東北部および南部における、子どものための社会サービス、保健サービスおよび教育サービスへのアクセスに関わる地域格差について、依然として深い懸念を覚える。 34.委員会は、前回の勧告(CRC/C/THA/CO/2、パラ25-26)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、以下の目的のためにいっそう効果的な措置をとるよう促す。 (a) 差別の禁止の原則を保障した現行法を効果的に実施することにより、自国の管轄内にあるすべての子どもが、差別の禁止を基礎として、条約に掲げられたすべての権利を享受することを確保すること。 (b) 社会サービスを優先させ、かつこれに対して十分な資源を配分するとともに、パラ33に挙げたもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもたちを対象とした、保健および教育その他のサービスに対する平等な機会の提供をいっそう迅速に進めること。 (c) あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (d) 事実上の差別の効果的監視を可能とし、かつ是正措置のための基礎とすることを目的として、適切な形で細分化されたデータを収集すること。 子どもの最善の利益 35.子どもに影響を与えるさまざまな法律に子どもの最善の利益の原則が編入されている旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、司法上および行政上の手続および決定ならびに代替的養護の措置および管理に関わる決定においてこの原則が全面的には適用されていないことを、懸念する。 36.委員会は、条約第3条1項にしたがい、すべての法規定、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定、政策ならびにプログラム、プロジェクトおよびサービスにおいて子どもの最善の利益の原則が全面的に適用されることを確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。 生命、生存および発達に対する権利 37.委員会は、子どもおよび乳児の死亡率を出生1000件あたり34(1990年)から14(2010年)に削減するうえで締約国が達成した相当の成果を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの主要な死因として報告されている事故およびケガ(溺死および交通事故を含む)について懸念を覚えるものである。 38.委員会は、締約国が、とくに子どものケアに関する政策を強化し、かつ家庭、養育者間、学校および一般公衆の間で子どもの安全確保措置に関する意識啓発を図ることにより、ケガおよび事故を防止するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 39.国、地方および地区のレベルで子ども・若者評議会が設けられている旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、伝統的な態度があることも理由として、すべての子どもが、家庭、コミュニティならびに行政上および司法上の手続で行なわれる自己に影響を与える決定に関して自由に自己の意見を表明しかつ参加する機会を得ているわけではないことを、懸念する。委員会はまた、子ども・若者評議会が、活動を組織するための資源および人員に関する支援を得ていないことも懸念するものである。 40.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校およびコミュニティで行なわれる自己に影響を与える決定に、18歳に至るまでのすべての子どもが積極的に参加しかつ関与することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどの程度考慮されており、かつそれが政策立案、裁判所の決定およびプログラム実施にどの程度提供を与えているかについて定期的検討を行なうことも、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、子ども・若者評議会に対する支援を総経するための措置をとるよう勧告する。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 名前および国籍/アイデンティティの保全 41.委員会は、1972年に国籍を無効にされた者(その子どもも含む)のための救済措置および特定のカテゴリーに属する者(里親養護を受けている子どもおよび養子となった子どもならびに1992年以前にタイで出生した不法移民の子どもを含む)の帰化について定めた2008年国籍法を歓迎する。近隣諸国と二国間協定を締結するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、子ども(とくに先住民族集団およびマイノリティ集団の子どもならびに移住労働者、難民および保護希望者)を含む相当数の者が現にまたは潜在的に無国籍のままであることを、依然として懸念するものである。 42.委員会は、締約国に対し、無国籍となるおそれがあるすべての子ども(パラ41で挙げた、不利な立場に置かれた集団に属する子どもを含む)がタイ国籍へのアクセスを提供されることを確保するため、法律をさらに見直しかつ制定するよう促す。委員会は、締約国が、無国籍者の地位に関する1954年の条約および1967年の同議定書〔ママ〕ならびに無国籍の削減に関する1961年の条約の批准を検討するよう、勧告するものである。 出生登録 43.委員会は、期限後の登録および多数の規則(高地民族集団および遺棄された乳児への登録証の発行に関するものを含む)について定めた2008年住民登録法を歓迎する。しかしながら委員会は、相当数の子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、先住民族集団および移民の子どもが未登録のままであることを懸念するものである。委員会はまた、締約国が期限後の子どもの登録に対する罰金を維持していることも、たとえ低額とはいえ、依然として懸念する。 44.委員会は、締約国が、自国の領域で生まれたすべての子ども、とくに親の経済的地位、民族および出入国管理上の地位を理由として登録されていない子どもの出生登録を確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、公衆教育プログラム(締約国の領域ですでに生まれたものの未登録のままである子どもについて出生登録を行なうためのキャンペーンを含む)を実施するとともに、期限後の登録に対するいかなる金銭的処罰も廃止し、かつ時宜を得た新生児の登録を確保するための代替的措置をとることも、勧告するものである。 プライバシーの保護 45.メディアにおける子どもの権利についての意識を高めるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、メディアが報道において子どものプライバシー権を全面的に尊重しているわけではないこと、および、とくに子どもの虐待および搾取ならびに少年司法制度に関わる配慮の必要な事案において、メディアが提供する関連情報(姓、住所および写真など)を通じて子どもの素性がしばしば確認可能とされることを、懸念する。 46.委員会は、締約国が、子どものプライバシー権がとくにマスメディアにおいて常に尊重されることを確保するための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国が、あらゆる形態のメディアにおける報道から子どもの素性を保護するための法律を制定し、かつ、遵守を確保するための効果的な監視機構を設置するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国が、マスメディアに従事する専門家の子どもの権利に関する感受性を引き続き強化するとともに、子ども向け番組に関する決定およびその制作への子どもの関与を促進することも、勧告する。 子どもに対する暴力(体罰を含む) 47.委員会は、家庭における体罰が依然として合法であることを懸念する。さらに、民商法第1567条では、子どもに対して親としての権威を有する者はしつけのために「合理的な」処罰を行なう権利を有すると述べられている。 48.委員会は、前回の懸念および総括所見(CRC/C/THA/CO/2、パラ40および41)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の暴力と闘うための措置を採択するに際し、あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)および体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する一般的意見8号(2006年)を考慮するよう、奨励する。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 家庭および代替的養護の現場における子どもの体罰(しつけのためのものを含む)を法律で明示的に禁止すること。 (b) 態度を変革し、かつ体罰に代わる積極的かつ非暴力的な形態の子育ておよびしつけを促進する目的で、体罰の有害な影響に関する公衆教育および意識啓発ならびに社会的動員のための持続的プログラムを、子ども、家族およびコミュニティの関与を得ながら導入すること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むとともに、子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)の勧告の効果的実施を確保すること。 (d) 前掲研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および不当な取扱いを防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を、ジェンダーにとくに注意を払いながら、各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 49.委員会は、国内移住の増加にともなって家族の結びつきが弱まり、かつ多くの子どもが祖父母とともに農村部に残されていて、祖父母が十分な支援またはサービスを受けることもなくこのような子どもの主たる養育者となっていることに、懸念とともに留意する。 50.委員会は、締約国に対し、親の責任に関する法改正のための努力を引き続き行なうとともに、家族の解体の防止および家族の強化のための措置を発展させるよう、促す。委員会は、締約国が、親および養育者の支援のために設けられている便益を再検討するとともに、条約第18条および第27条にしたがい、そのような便益を強化するために適当な措置をとるよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、関連のハーグ条約、とくに親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する第34号条約の批准を検討するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 51.委員会は、締約国が年間3000世帯の里親家庭を支援するための予算を配分しており、かつ「家庭を基盤とする一時的養護に関する国家戦略」を起草中である旨の締約国の情報に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭環境を奪われた子どもについて施設養護への過剰な依存(29施設に7000名の子どもが在籍)が報告されており、かつこのような施設の監視および監督が行なわれていないことを、懸念するものである。委員会はさらに、施設および里親養護制度(親族養護を含む)を規律する規則が定められていないこと、および、代替的養護の環境に置かれた子どものためのパーマネンシー・プランニングが行なわれていないことを、懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活条件、養護計画および提供されているサービスも含む)を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) 既存の施設および里親養護制度についての明確な基準(条約第9条にしたがって意思決定プロセスに子どもおよびその親の関与を得るための規則を含む)を定めるとともに、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、「家庭を基盤とする一時的養護に関する国家戦略」を、子どもの最善の利益を確保しながら完成させかつその運用を開始するよう、奨励する。 (c) 子どもの権利の保護を確保する目的で、すべての代替的養護施設およびプログラムが十分に監視されること(独立した苦情申立て機構および非政府組織による監視を含む)を確保するとともに、子どもがこれらの苦情申立て機構に容易にアクセスできるようにすること。 (d) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族に復帰できるようにし、かつ施設への子どもの措置を最後の手段として用いるようにするため、あらゆる必要な措置を追求すること。 (e) 子どもの広範な施設措置を防止する目的で家族を強化しかつ維持するための積極的措置をとること。 委員会は、締約国が子どもの代替的養護に関する指針(2009年11月20日の総会決議64/142付属文書)を考慮するよう、勧告するものである。 養子縁組 53.委員会は、2010年子どもの養子縁組法を歓迎するとともに、締約国が国際養子縁組よりも国内養子縁組を優先させ、かつ国際養子縁組に関する規則を定めたことに、積極的対応として留意する。脆弱な状況に置かれた子ども(とくに障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、路上の状況にある子どもおよび無国籍の子ども)が締約国に多数存在し、かつ人身取引の発生件数も多いことに鑑み、委員会は、締約国が養子縁組手続の効果的監視システムを確保するよう、勧告するものである。 虐待およびネグレクト 54.委員会は、締約国が2011年に開始した、子どもに対する暴力の状況に関する大規模な研究を歓迎する。しかしながら委員会は、都市部への親の移住またはAIDS関連の死亡を理由として相当数の子どもがネグレクトの状態にあることを、依然として懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、移住のために別離した家族が再統合するための条件づくりを目的とした必要な措置(親が子どもを都市部に同伴できるようにすることも含む)をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、両親を失った子どもに対して特段の注意を払うとともに、このような子どもが時宜を得た形で里親家庭を得られることを確保することも、勧告するものである。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 56.委員会は、「障害者の生活の質の発展に関する国家計画(2007~2011年)」および障害者教育法(2008年)の採択によって障害のある人の生活の質を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。委員会はまた、障害のある子どもを対象としたインクルーシブ教育を行なう学校の数が増えていることも歓迎するものである。にもかかわらず、委員会は、就学していない障害児が多数存在すること、および、青少年政策において障害児が特別な対象集団として位置づけられていないことを、深刻に懸念する。委員会はまた、就学前段階以上の教育を受ける障害児の割合が限られていることも懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、教育へのアクセスの観点から障害児の状況を再検討するとともに、特別施設への子どもの措置よりもインクルーシブ教育の発展を実効的に優先させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮しながら、青少年政策において障害のある子どもを適切な形で対象とすることも勧告するものである。 保健ケアおよび保健サービス 58.委員会は、子どもを含むタイ国民全員に対してほとんどの疾病についての無償の治療を確保する「保健ケア完全保障計画」の実施および全般的な子どもの栄養状態の向上に関して締約国が達成した成果を歓迎する。しかしながら委員会は、家族の経済的状態、母親の教育歴、言語的背景および地理的所在によって子どもの栄養状態に重大な格差があることを、依然として深刻に懸念するものである。委員会はまた、若干の改善にも関わらず、ヨウ素欠乏症が依然として広く存在することも懸念する。 59.委員会は、締約国に対し、家族の経済的状態、母親の教育歴、言語的背景(タイ語またはそれ以外)および地理的所在(都市部、農村部または遠隔地)に関わらず、すべての子どもの栄養状態を向上させるための措置をいっそう速やかに進めるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、不利な立場に置かれた社会的集団の子どもの低栄養の原因および規模についての分析を行なうよう、奨励するものである。加えて委員会は、締約国が、とくにヨウ素欠乏症を統制すること(そのための手段として、とくにヨウ素添加塩の完全普及(USI)を達成するための法律および政策を導入することが求められる)を通じて子どもの栄養状態を向上させ、かつ、法律の遵守およびヨウ素添加塩の普遍的消費を確保するよう、勧告する。 母乳育児 60.委員会は、生後6か月の時点における母乳育児率が著しく低い(5%)一方で、早期の母乳育児開始率も50%と低いことを懸念する。委員会はさらに、自主的措置がとられているとはいえ、母乳代替品の攻撃的な販売促進および宣伝が法的に規制されていないことを懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、母乳育児の重要性および人工栄養のリスクについて公衆(とくに母親)の意識啓発および教育を図ることにより、早期の母乳育児開始および生後6か月間の継続的完全母乳育児を促進するための努力を強化しかつ拡大するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」にしたがって母乳代替品の販売促進活動に関する法的規制を採択し、かつ実効的な遵守および効果的な監視を確保するよう、促すものである。加えて委員会は、締約国に対し、すべての妊産婦施設を、母乳育児を支援する赤ちゃんにやさしい病院に転換し、かつ、妊産婦のための活動に従事する保健ケア専門家が母乳育児に関する研修を受けることを確保するための措置をとるよう、促す。 思春期の健康 62.委員会は、抗レトロウィルス薬の使用により、HIV/AIDSで死亡する人の数が減少していることを歓迎する。ただし、とくに脆弱な状況にある移民、難民および庇護希望者のようなタイ国民以外の住民には、抗レトロウィルス薬の使用が十分に広がっていない。委員会はとくに、HIV/AIDSの感染を予防する主要な方法のすべてを知らない女性が多く、かつ、HIV/AIDSとともに生きているまたはその影響を受けている人々(両親を失った子どもを含む)に対するスティグマおよび差別が継続していることを、とくに懸念する。さらに委員会は、10代の妊娠の問題が増加しており、それが違法な妊娠中絶件数の増加にもつながっていることを、深刻に懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSその他の性感染症についてさまざまなコミュニティの子ども、青少年およびその家族を教育するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 必要不可欠な保健サービスおよび社会サービスをもっとも周縁化された子どもおよび家族に対して拡大するとともに、いかなる形態のスティグマおよび差別とも精力的に闘うこと。 (c) 早期の妊娠および妊娠中絶の悪影響に関する意識啓発の努力を強化すること。 (d) ライフスキル教育を含む青少年向けリプロダクティブヘルス・プログラムを強化すること。 (e) 妊娠した女子を対象とする包括的な保健サービス、秘密が守られるカウンセリングおよび支援を確保するとともに、リプロダクティブヘルス法案の採択を迅速に進めること。 薬物および有害物質の濫用 64.委員会は、20歳未満の者に対するアルコール飲料の販売を禁じた2008年アルコール飲料統制法を歓迎する。しかしながら委員会は、とられた措置にも関わらず、アルコールおよび薬物を濫用する子どもが依然として相当数にのぼることに、深刻な懸念とともに留意するものである。 65.委員会は、締約国に対し、とくに青少年を対象としたタバコ、アルコールおよび薬物の悪影響に関する意識啓発キャンペーンを含む、あらゆる適当な措置をとるよう促す。これには、予防介入に関するピア・エデュケーションおよびライフスキル訓練が含まれるべきである。委員会はまた、締約国が、薬物およびアルコールに依存している子どもおよび青少年に対し、治療およびリハビリテーションのためのプログラムを引き続き提供することも勧告する。 生活水準 66.委員会は、報告されているところでは都市部の家族の10%がスラムに住んでいること、および、所得の不平等が増大しており、かつ、栄養、衣服、住居、水および衛生のような基礎的サービスへのアクセスに関して問題を有する家族の割合が高いことを、懸念する。委員会はまた、地域ごとの所得水準、とくに北部および東北部ならびに南部における所得水準の格差の大きさが依然として問題になっていることについての前回の懸念も、あらためて表明するものである。 67.委員会は、締約国が、とくに北部、東北部および南部における効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分するべきである旨の前回の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) とくに、十分な栄養、衣服、住居、水および衛生ならびに社会サービス、保健サービスおよび教育への公平なアクセスを確保しながら、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を策定しかつ監視するための能力増進の努力を強化すること。 (b) 不利な立場に置かれた住民の生活水準を向上させるための、暫定的な特別措置および積極的差別是正措置(貧困の影響を不相応に受けている子どもおよび家族を支援するための、使途をとくに指定した資金および具体的援助の提供を含む)をとること。 (c) 格差を是正し、かつ人生において良好なスタートを切る平等な機会を一人ひとりの子どもに与えるために、普遍的な子ども手当制度の導入の実現可能性を研究しかつ検討すること。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 68.委員会は、すでに教育に関するMDG〔ミレニアム開発目標〕を達成したこと、万人のための無償義務教育(15年間)プログラムを採択したこと、および、乳幼児期の発達を増進させるための政策および措置を開始したことについて、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを遺憾に思うものである。 (a) 就学前教育を受けている3~5歳の子ども(とくにタイ語以外の言語を用いる世帯または貧困世帯の子ども)の人数が少なく、かつ重大な地域格差が根強く残っている(たとえば、北部では乳幼児の78%が就学前教育施設に通っているのに対し、南部では58%となっている)こと。 (b) 初等学校相当年齢(6~11歳)の子ども60万人以上が学校に通っていないこと(2010年)。 (c) すべての段階で継続的在学率および進学率が低い状態が続いており、相当数の子どもが中等教育を受けていない(純就学率(NER)は72.2%に留まる)こと。 (d) とくに南部国境県において、より多くの男子が中等学校を中退していること。 (e) 学校制度における、低学年からの民族言語およびマイノリティ言語の使用が著しく不十分であること。 (f) とくに、とりわけ遠隔地および危険地帯で教員、教育用資料および便益が不足していることを理由として、教育の全般的質が依然として貧弱であること。 (g) 2009年の生徒の学習到達度調査(PISA)で明らかにされたように教育成果が小さく(タイの15歳の子どものうち読解力および科学について合格点をとったのはわずか43%であり、数学では53%に過ぎなかった)、かつ都市部と農村部との間に相当の格差があること。 69.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)および乳幼児期における子どもの権利の実施に関する同7号(2005年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 出生時から就学年齢に至るまでのすべての子どもが、その全面的発達を確保することを目的とした必須の保健サービス、栄養サービス、教育サービスおよび保護サービスの効果的支援をともなうホリスティックな乳幼児育成(ECD)にアクセスできることを確保するため、効果的な政策およびその他の措置を採択すること。 (b) ECDを担当する地方政府によって適用される、良質なかつ国際的に受け入れられるECDの基準を策定すること。 (c) タイ語以外の言語を用いる世帯および貧困世帯の子ども、とくに北東部および南部の子どもが乳幼児育成プログラムに通うことを奨励し、かつそのためのインセンティブを設けること。 (d) 現在学校に行っていない多数の初等学校相当年齢の子ども(6~11歳)に教育機会を提供するため、緊急の措置をとること。 (e) 教育制度における中退の多さおよび継続的在学率の低さの原因および規模に関する包括的研究を実施するとともに、ジェンダーに関わる諸側面、格差および防止措置にとくに注意を払いながら、この問題を解決するための、明確な期限を定めた行動計画を策定すること。 (f) 子ども、とくに南部国境県の男子に対し、中等学校で教育を続けるよう奨励すること。 (g) 条約第30条にしたがい、とくにタイ語以外の言語を話す子どもを対象とした、早期からの効果的な二言語教育を確保するため、国家言語教育政策(2010年)を実施すること。 (h) 教育の質を大幅に改善し、かつあらゆる段階における教育成果を向上させるための明確かつ具体的な措置をとること。そのための手段としては、教育および学習のための資料および便益の提供、教員の養成および研修ならびに監督の増進、資格のある教員(とくに女性ならびにマイノリティ集団および先住専属集団の出身者)の採用増、教育省における能力構築の増進、ならびに、子どもの学習のモニタリングシステムの改善が挙げられる。 (i) ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 70.若干の福祉サービスの提供に関する締約国の情報には留意しながらも、委員会は、一時的難民(いわゆる「国外避難民」)がいるキャンプの環境が不十分であると報告されていること、および、キャンプ外および都市部にいる難民および庇護希望者は不法と見なされ、かつ不法入国および(または)不法滞在を理由として逮捕、拘禁および(または)退去強制の対象とされていることを、懸念する。さらに委員会は、締約国の代表団が述べたように、締約国が2009年以降新たに到着した庇護希望者の登録を行なっていないことを懸念するものである。 71.委員会は、締約国に対し、一時的難民に対して十分な基礎的必需品を提供することによって一時的難民のためのキャンプの環境を向上させるため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国が、新たに到着した庇護希望者が有している可能性があるニーズを記録する目的で、これらの庇護希望者の登録を復活させることも勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、庇護希望者および難民をその地位にしたがって取り扱い、拘禁またはその生命が危険にさらされる可能性がある国への退去強制の対象としないよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の技術的援助を求めるよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同選択議定書を批准するとともに、難民の保護のための国家的な法律上および制度上の枠組みを確立することも、勧告する。 移住の状況にある子ども 72.委員会は、移民が合法的に就労し、かつ社会福祉にアクセスすること(保健および教育へのアクセスを含む)を可能にした労働保護法改正(2008年)を歓迎する。しかしながら委員会は、多くの移住労働者が非正規な状況に置かれており、かつ、その子どもが、送還が安全であるかどうかに関するいかなるリスク評価も行なわれることなく逮捕および退去強制に直面させられていることを、懸念するものである。加えて、移住労働者の子どもは劣悪な環境で暮らしていることが多く、危険な条件下で長時間労働をさせられている子どもも多い。 73.委員会は、締約国が、移民およびその子どもを出身国に送還することが安全であるかどうかについてのリスク評価研究を実施するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、さまざまな移住の状況にある子どもを搾取および危険な労働条件から保護するために必要な立法上および政策上の措置をとるよう、勧告するものである。 経済的搾取(児童労働を含む) 74.委員会は、15歳以上の子どもの雇用条件、最低賃金および安全な労働環境の保護について定めた家内労働者保護法(2011年採択)、および、「最悪の形態の児童労働を根絶するための国家政策および計画(2009~2014年)」に留意する。しかしながら委員会は、15歳未満の子ども(とくに外国人の子どもおよび路上の状況にある子ども)がもっぱら従事している農業、観光業、物乞いおよび家事労働で働くインフォーマルな労働者に対し、締約国の法律が保護を提供していないことを依然として懸念するものである。 75.委員会は、締約国が、農業、観光業、物乞いおよび家事労働のようなインフォーマル部門における子どもの就労について研究し、かつ次回の定期報告書でこの点に関する情報を提供するとともに、これらの部門で働く子どもを監視しかつ発見する目的で労働監察制度を強化するための措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、外国人の子どもおよび路上の状況にある子どものような脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとくに注意を払いながら、子どもがインフォーマル部門に従事することを禁止するための法改正を行なうよう、促すものである。委員会は、締約国が、家事労働者のためのディーセント・ワークに関する条約ILO第189号条約(2011年)の批准を検討するよう勧告する。 性的搾取および虐待 76.委員会は、被害者の年齢を理由とする強姦罪についての刑罰を定めた2007年の刑法改正(第19号および20号)を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国において、男女を問わず子どもの性的搾取および虐待が広く行なわれていることを深刻に懸念するものである。委員会はさらに、とくに家庭において、被害を受ける子どもが加害者から保護されていないことを懸念する。この懸念は、性的虐待に関する刑事事件で捜査および手続に時間がかかることによっていっそう強まるところである。委員会はまた、近隣諸国から性的搾取目的でタイに連れてこられる外国人の子どもの人身取引が増えており、同国における大規模な児童セックスツーリズム産業を助長している一方で、タイの子どもが性的目的の人身取引によりしばしば外国へ連れ出されていることも、懸念する。さらに委員会は、子ども、とくに貧困家庭、資格外滞在移民および民族的マイノリティの子どもが国内で人身取引の対象とされていることに、懸念を表明するものである。 77.一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 公衆の意識を高め、かつ早期発見および防止のための機構を強化する努力を引き続き行なうとともに、性的搾取および虐待(家庭の内外におけるものを含む)の被害を受けたすべての子どもの全面的保護を確保すること。 (b) 子どもの性的虐待に関する刑事事件の捜査および手続の期間を短縮するために必要な措置をとり、かつ、被害を受ける子どもが加害者から適切に保護されることを確保すること。 (c) タイ人の子どもおよび締約国にいる外国人の子どもの双方を関与させる形で行なわれている、あらゆる場面における男女の子どもの性的搾取および虐待の根本的原因、性質および規模に関する包括的調査を実施するとともに、この点に関して行なわれた申立て、捜査および訴追の件数に関するデータを提供すること。 (d) 委員会は、その際、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の勧告(CRC/C/OPSC/THA/CO/1)、および、とくに女性および子どもの人身取引に関する特別報告者が締約国の訪問(2011年8月)後に行なった勧告を実施するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、それぞれストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された1996年、2001年および2008年の「子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議」で採択された成果文書を考慮することも、勧告するものである。 ヘルプライン 78.委員会は、社会サービス局および国家子ども評議会が、子どもを援助するための2つのヘルプラインを運営していることに留意する。委員会は、締約国が、効率性を高めるため、これらのヘルプラインを単一の全国的ヘルプラインに統合することを検討するよう、勧告する。当該ヘルプラインは、国全体を網羅し、24時間アクセスでき、覚えやすい3~4ケタの番号を有し、かつ、十分な財源および技術的資源、ならびに、子どもに対応し、かつ適切な行動のために通話を分析する訓練を受けた要員を備えたものであるべきである。委員会はさらに、締約国が、この点に関してとくにユニセフおよびチャイルド・ヘルプライン・インターナショナルの技術的援助を求めるよう、勧告する。 少年司法の運営 79.委員会は、全国に少年裁判所および家庭裁判所を設置し、かつ修復的司法を可能とする少年家庭裁判所およびその手続法(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、7歳から10歳に引き上げられた刑事責任に関する年齢がいまなお国際的に受け入れられる水準よりも下のままであることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、裁判官および司法関係者を対象とした子どもの権利に関する研修が十分でない可能性があること、および、場合によって子どもが成人とともに拘禁される可能性があることも、懸念する。 80.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)ようなこの分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が以下の措置をとるべきであることをあらためて指摘するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げ、いかなる状況下でも12歳未満には定めないこと。 (b) 自由を奪われるすべての子どもが最後の手段としてかつ可能なかぎり短い期間でのみ拘禁され、かつ、その拘禁が法律を遵守して行なわれることを確保すること。 (c) 普遍的定期審査に基づく作業部会が勧告したとおり子どもが成人とは別に拘禁されること、そのような子どもに対して安全な、子どもに配慮した環境が与えられること、および、そのような子どもが家族との定期的接触を維持することを確保すること。 (d) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。 (e) 条約および選択議定書の原則および規定に関する、裁判官および司法関係者の研修を強化すること。 (f) 法律に抵触した子どものための社会的再統合プログラムを発展させること。 (g) 国連・少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(国連薬物犯罪事務所、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的助言および援助を求めること。 犯罪の被害者および証人である子ども 81.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、国および国以外の主体によって行なわれたものも含む犯罪の被害を受けた子どもおよび(または)そのような犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 82.委員会は、先住民族、部族民およびマイノリティのコミュニティに属する子どもが、その特徴的な生活習慣および言語のためにしばしばスティグマおよび差別の両方の対象とされていることを懸念する。委員会はさらに、先住民族およびマイノリティの間で貧困が広がっていること、および、同国の山岳民族に関する人口動態データが存在しないことを懸念するものである。 83.委員会は、締約国が、以下の目的のために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) マイノリティおよび先住民族の文化に関するタイ国民の意識を高め、かつその生活習慣およびライフスタイルに関する寛容を醸成すること。 (b) マイノリティおよび先住民族のコミュニティに対していっそうの経済的機会を提供し、かつ基礎的社会サービスに対するこれらのコミュニティのアクセスを確保すること。 (c) 山岳民族に関する細分化されたデータを体系的に収集すること。 (d) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)を考慮すること。 タイ南部国境県の子ども 84.委員会は、締約国が南部国境県の子どもおよび若者の保護および発達に関する行動計画を起草中であることに留意するとともに、中等教育および高等教育のための奨学金等を通じた教育支援のためにとられた措置を歓迎する。しかしながら委員会は、現在進行中の武装暴力を背景として以下のような問題が生じていることを懸念するものである。 (a) 子どもが、国以外の武装集団による、および、ときとしてタイ治安部隊による、爆破、不法な殺害その他の暴力的攻撃の被害を受けていること。 (b) 国以外の武装集団が政府立学校および教員を攻撃目標とし、かつ学校近辺に政府軍および準軍事部隊が駐留することにより、教育へのアクセスが途絶されていること。 (c) 親の一方または朗報を失った子ども、暴力により負傷した子ども、事件を直接に目撃した子どもまたはとくにメディアで事件についての情報を得た子ども、ならびに、事件により生活に影響を受けている子どもおよび家族を含む多数の子どもが、心理的または間接的な影響を受けていること。 85.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 南部国境県の状況が子どもに直接間接の悪影響を及ぼさないことを確保するための即時的措置をとること。委員会は、その際、締約国が、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく委員会の勧告(CRC/C/OPAC/THA/CO/1)を遅滞なく実施するよう、勧告する。 (b) 学校が、国の軍隊および準軍事部隊によってその運営を妨げられず、かつ国以外の武装集団による攻撃から保護されることを確保すること。 (c) 武装暴力の影響を受けている子どもに対し、優先的課題として心理社会的支援およびサービスを提供すること。 (d) 「南部国境県の子どもおよび若者の保護および発達に関する行動計画」を速やかに採択すること。 I.国際人権文書の批准 86.委員会は、締約国に対し、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう促す。委員会はまた、締約国が、まだ加盟国となっていない国連の中核的人権文書を批准することも勧告するものである。これらの文書とは、とくに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、市民的および政治的権利に関する国際規約の第1および第2選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約などである。 J.地域機関および国際機関との協力 87.委員会は、締約国が、とくにASEAN〔東南アジア諸国連合〕女性および子どもの権利の促進・保護委員会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 88.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 89.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 90.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年10月25日までに提出するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 更新履歴:ページ作成(2012年4月10日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/70.html
総括所見:中国(第1回・1996年) 第2回(2005年)/第3回・第4回(2013年)OPSC(2005年)/OPAC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.56(1996年6月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年5月28日および29日に開かれた第298回~第300回会合において中国の第1回報告書を検討し、以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書が一般指針に従って作成されていることに留意する。委員会は、報告書の自己批判的な要素を評価するものである。ただし、報告書においては、国内の法律上および行政上の規定の実際の適用状況よりその内容のほうに焦点が当てられていることも留意される。委員会はまた、委員会が提示した事前質問事項に対する締約国の回答も歓迎するものである。 3.委員会は、報告書の作成にさまざまな省庁その他の機関が関与したことに、満足感とともに留意する。委員会は、委員会の前で報告書の説明を行なう代表団にこれらの省庁の多くの代表が参加するようにしてくれたことに対して、締約国に謝意を表するものである。委員会は、委員会との建設的な対話に携わることに関して締約国および代表団が前向きな姿勢を見せたことを歓迎する。委員会は、代表団が、条約において規定されている権利および原則が中国のすべての子どもたちに保障されるようになるまでには克服すべきさまざまな困難が残されていると率直に認めたことを、評価するものである。 B.積極的な要因 4.委員会は、近年、一般的な生活水準の目ざましい向上が記録されてきたことに留意する。委員会は、さらに、子どもに関する事業概要が国レベルで策定されかつ30の省および自治区のすべてにおいても策定されつつあり、かつ、1990年の子どものための世界サミットで採択された宣言および行動計画に掲げられた目標のフォローアップとして実施されつつあることに、留意する。北京で開かれた第4回世界女性会議のフォローアップとしての政策概要が作成されつつあることも、留意されるところである。 5.乳幼児死亡率の削減に関して、とりわけ予防接種の実施範囲の維持、予防接種率の向上および子どもの栄養不良に焦点を当てた多大な努力によって、締約国が目ざましい成果を達成したことは、称賛に値する。母乳育児の保護、促進および支援ならびに子ども病院の設置に関する締約国の積極的姿勢も、歓迎されるところである。 6.就学率の向上のために締約国が行ないかつ支援しているさまざまな活動も、注目に値する。締約国が、社会的および経済的発展を促進する方途として教育を支える重要性を認識していることも、留意されるところである。貧困地域の子どもたちの援助を目的とした「希望計画」、および、女子の就学または復学による初等教育の修了を促進するための「春の蕾計画」には、とくに言及しなければならない。 7.委員会は、また、報告書に、子どもの権利に関わるさまざまな法律および行政規則が発展させられかつ導入されてきたという情報が記載されていることにも留意する。義務教育法、未成年保護法ならびに障害者保護法および「障害者援助運動」による活動が留意されるところである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 8.中国の子どもの数が世界の子ども人口の5分の1を占めていること、および、人口が締約国の広大な領土全体に広がっていることを考慮に入れ、委員会は、管轄下にあるすべての子どもたちのニーズを満たす上で中国が抱えている任務は、経済的および社会的領域に限らず、膨大な課題を提示していることに留意する。 9.締約国が述べたように、締約国の一部で歴史的な封建的伝統が若干引き継がれていることおよび他の有害な態度が根強く残っていることが、子どもたちの生活および健全な成長に悪影響を与えている。 D.主要な懸念事項 10.委員会は、子どもの権利条約の実施を促進しかつ調整するためにさまざまな機構が設置されていることに留意する。ただし、国、省および地方の各レベルにおける条約の実施状況を監視することに関しては、それが効果的であるようにするために十分な措置がとられていないことを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、教育、保健および社会保障を始めとする社会サービスの提供およびこのようなサービスへのアクセスに関して、都市部と非都市部の間および地域間に広く格差が存在することを、懸念する。 12.社会保障の領域で十分な措置がとられていないことが、親に対する将来の養護および支援に関して子どもに過剰に依存する状況につながってきたのではないかというのが、委員会の見解である。このことが、男子優先のような、女子および障害児の権利の保護および促進に好ましくない影響を与える有害な伝統的慣行および態度が変わらず続く原因になってきた可能性もある。 13.委員会は、刑事責任年齢に関するものを始めとする子どもの定義についての問題を検討し、国内法および関連の手続が、条約の規定および一般原則、とくに子どもの最善の利益を正当に考慮に入れたものになるようにすることが必要であると感ずるものである。 14.委員会の見解では、子どもとともにまたは子どものために働く専門職を始めとする大人の間で、および、子どもたち自身の間で、条約の規定および原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条に関する意識を喚起するための措置が十分にとられていない。 15.ジェンダーおよび障害を理由とする差別の問題に取り組むための措置には留意しながらも、委員会は、選択的な嬰児殺に結びつく慣行が根強く残っていることを、依然として懸念する。 16.世帯登録を通じてすべての子どもたちが登録されるようにするための措置が効果的であるかどうかについて、深刻な懸念が残る。締約国が認めるように、登録がなされないのは、関連の法律および政策ならびに登録の欠如が子どもの法的地位に与える悪影響に関して、親が知らないことが原因かもしれない。伝統的な居住地から人々が移住してくることも、同様の困難を生ぜしめる可能性がある。登録制度に欠陥があることは、子どもの取引、誘拐、売買および不当な取扱い、虐待もしくは放任といった領域を始めとして、子どもたちの権利を促進しかつ保護するための基本的な法的保障が奪われることにつながる。これとの関連で、「未登録女子」の状況も、彼女たちの保健および教育への権利に関して、委員会の懸念するところである。 17.委員会は、依然として、子どもたちの市民的権利および自由の実際の実施状況に関して懸念する。委員会は、思想、良心および宗教の自由に関する子どもの権利は、条約をひとつのものとしてとらえるアプローチに照らして確保されるべきであること、および、この権利の行使に関する制限は条約第14条3項と一致したものしか課すことができないことを、強調したい。 18.委員会は、福祉施設で養護されている子どもたちの状況をとりわけ深刻に懸念する。委員会は、そのような施設におけるきわめて高い死亡率は、真剣に懸念すべき理由となると考えるものである。委員会は、とくに、施設において子どもたちが成人から分離されるようにするためにとられた措置および職員に研修を施す上でとられた措置を評価しながらも、条約第3条3項によって求められている、子どもたちに質の高い養護が提供されるようにするためにとられた措置が不十分であることについて、依然として深く懸念する。 19.委員会は、いまだに通学していない子どもたちが中国において多数存在することについて、締約国が表明した懸念を共有するものである。委員会は、また、チベット自治区を始めとするマイノリティ地域において通学状況が他の地域よりも悪く、教育の質が劣悪であり、かつ、中国語による十分な教育を始めとするバイリンガル教育制度を発展させるために十分な努力が行なわれていないという報告があることも、懸念する。このような欠陥は、中等レベルおよび高等レベルの学校に進もうとするチベット人その他のマイノリティの生徒を不利な立場に置く可能性がある。 20.マイノリティに属する子どもたちによる宗教の自由への権利の行使に関しては、委員会は、条約第30条に照らし、チベットの宗教的マイノリティの人権侵害との関連で深刻な懸念を表明する。宗教的原則および手続に対する国家介入は、チベット人の少年少女世代全体にとって、きわめて不幸な事態のように思える。 21.委員会は、国内法において、16歳から18歳の間の子どもたちに対して2年間の執行猶予付で死刑を科すことが認められているように思えることを、依然として懸念する。子どもたちに執行猶予付の死刑を科すことは、残虐な、非人間的なまたは品位を傷つける取扱いまたは罰を構成するというのが委員会の見解である。さらに、刑法において、罪を犯した14歳から18歳の間の少年に対し、とくに深刻な犯罪については合法的に終身刑を科すことができるとされていることも、留意されるところである。終身刑は「改悛」または「報奨」を理由に減刑できるとされており、かつ、中国の司法の状況に照らせば終身刑が減刑措置の利益を得られるということもわかるとはいえ、委員会は、条約が、18歳未満の者が犯した犯罪に対しては死刑も釈放の可能性のない終身刑も科してはならないと規定していることを強調したい。上記の国内法規定は、条約の原則および規定、とくに第37条(a)に一致しないというのが委員会の見解である。 22.加えて、委員会は、中国の現行少年司法制度において十分な法的保護がどの程度整っているかについても、依然として懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもの審判前拘留の間の親によるアクセス、子どもに対する法的援助の提供の可能性、および、子どもの弁護のための準備に充てられる時間が十分かどうかということについて、かつ、無罪推定の原則、および、第40条2項(a)に反映された「法律なしに犯罪なし、法律なしに処罰なし」の原則に関して、懸念を表明する。 23.委員会は、近年子どもたちの誘拐が急増しているという締約国の懸念を共有するものである。これとの関連で、委員会は、子どもの売買、取引および性的搾取の問題を防止しかつそれと闘うためにとられた措置が十分とは思えないことについて、深刻な懸念を表明したい。 E.提案および勧告 24.条約第6条に締約国が付した留保が依然として必要かどうかという点に関して委員会で交わされた議論、および、締約国によって提供された、留保に関して調整を検討することはいとわないという情報に照らし、委員会は、締約国に対し、条約への留保を撤回の方向で再検討するよう奨励する。 25.委員会は、国内の法的枠組みの包括的再検討を行なうよう勧告する。そのような再検討の際には、条約の規定および原則を指針としても支えとしても活用すること、および、国レベルのみならず、子どもの権利に影響を与える地方レベルの立法上のおよび行政上の措置をも包含することが、必要である。 26.委員会は、締約国が、子どもの権利のためのオンブズパーソンのような独立機関の設立の可能性について検討するよう勧告する。このような機構は、福祉、教育および少年司法の領域を始めとする子どもの権利の領域で活動する機関を監視する上でも、こうした領域で浮上する問題のより迅速な発見に貢献して建設的な解決策を可能にする上でも、重要な役割を果たしうるものである。 27.委員会は、子どものための世界サミットのフォローアップのための事業概要を発展させかつ実施するために全国で行なわれている活動に留意しながらも、子どもの権利に関する将来の事業概要、開発計画、プログラムまたは行動計画は、条約のすべての規定および原則に基づいて作成するよう勧告する。 28.締約国は、子どもの状況に関して、細分化された統計的データその他の情報を収集することに対し、系統だったアプローチで望むための力を強化するためさらなる措置をとるよう、促されるものである。委員会は、締約国がこの問題を真剣に検討するよう勧告する。そのようなデータおよび情報の分析は、子どもの権利の実施のためのプログラムを立案する上で、もうひとつのかつ重要な手段となるからである。 29.子どもの権利に関する条約の原則および規定を、ラジオおよびテレビといったマスメディアの活用を始めとして、全国で広く普及すべきだというのが委員会の勧告である。この点で、委員会は、締約国が国連児童基金の協力を要請してはどうかと提案する。国内の主要なマイノリティの言語に条約を翻訳することは、このような普及活動に欠かせない部分である。 30.委員会は、また、条約の原則および規定に関する教育を、子どもたちとともにまたは子どもたちのために働いているさまざまな専門職の研修プログラムに組み入れるための措置をとるようにも勧告したい。このような専門職には、ソーシャルワーカー、福祉施設職員、医師、保健および家族計画事業の従事者、教員、裁判官、弁護士、警察官、矯正施設職員ならびに軍隊関係者、および、政府の職員ならびに意思決定者が含まれる。 31.委員会は、条約第4条の実施のために現在とられている政策の再検討を勧告する。委員会は、そのような再検討を行なうに当たっては、子どもの権利のための資源の配分、とくに保健および教育に関わる資源の配分における、地域ごとのおよび都市部と非都市部との格差を削減するための措置に関して焦点が当てられるべきだと強調したい。 32.同様に、委員会は、社会保障の提供に関してさらに注意を向け、かつ、検討を行なうよう勧告する。家族が子どもたちに、とくに自分たちが老年に達したときの養護の提供に関して過剰に依存することを避けるため、対応策がとられるべきだというのが委員会の見解である。 33.条約の一般原則の実施を確保するために、さらなる措置が求められる。条約第12条に関しては、子どもたちに対し、参加し、かつ、自分たちの意見が聴かれれかつ考慮に入れられる機会を提供することにさらなる関心が払われるべきだというのが、委員会の見解である。保護を受ける存在としてだけではなく、権利の主体としての子どもに関する意識を発展させることが重要である。委員会は、虐待または放任の苦情の申立ておよび調査に関して、そのような侵害がとくに家庭内暴力および施設または矯正施設における虐待から生じている場合に、子どもたちが利用できる手続が効果的なものになっているかどうかを再検討することに対して、さらなる関心を払うよう提案する。 34.委員会は、女子が直面している問題に取り組むために一致した行動が求められているという締約国の見解に、同意する。女子および男子の平等に関するキャンペーンを行ない、かつ、そのような平等に関する意識を人々の間に喚起するために締約国がとっている措置は認めながらも、委員会は、女子に対する差別を防止しかつ撤廃し、かつ、この点で共同体に対して指導を与えるための努力を支援する上で、地方の指導者その他の指導者に対してもっと積極的な役割を果たすよう要請することを提案する。 35.締約国によって提供された情報から、委員会は、子どもの間での障害の発生率は低いものの、障害児が遺棄および差別の犠牲者になっていることに留意する。この点で、委員会は、障害を理由とする差別を防止しかつそれと闘うために必要とされる措置に関して、締約国がさらなる調査を行なうよう勧告する。 36.家族計画に関する政策は、子どもたち、とくに女子の生命をいかなる形でも脅かすことのないように策定されなければならないというのが、委員会の見解である。委員会は、この点で、その政策が促進する目的が第24条を始めとする条約の原則および規定に沿ったものになるようにするため、大衆および家族計画政策の従事者に対し、はっきりとした指導を行なうよう勧告する。締約国は、女子の遺棄および嬰児殺ならびに女子の取引、売買および誘拐と闘うための力強くかつ包括的な措置を維持するため、さらなる措置をとるよう促される。 37.委員会は、1982年および1990年に行なわれた2度の人口調査の結果に関して締約国から提供された情報を認め、かつ、新たに生まれた女子が登録されないことが、子どもの男女比率の不均衡の主要な原因となっていることに留意する。委員会は、女子の出生の過少報告を削減するための措置を締約国がとっていることに留意しながらも、登録の重要性に関する意識をさらに広げるための緊急措置をとるよう勧告する。人口の国内移動といった最近の変化に照らし、委員会は、締約国は、既存の登録制度が効果的なものかどうかについて再検討する可能性を検討するようにも勧告する。 38.子どもたち、とくに遺棄された子どもたちが、とくに里親託置および養子縁組を通じて家庭的な環境で成長できる可能性を促進するために、締約国はさらなる措置をとるべきであるというのが委員会の見解である。委員会は、また、締約国が、国内養子縁組を容易にする上で国内法が効果的なものになっているかどうかを評価するため、条約の原則および規定、とりわけ第20条および第21条に照らして、養子縁組に関する現行法の再検討を行なうようにも提案する。 39.締約国は、福祉施設における子どもたちの状況を改善するため、さらなる措置をとるよう促される。この点で、委員会は、条約の原則および規定、とくに第3条3項および第25条に、締約国の特段の注意を促したい。委員会は、このような施設の職員に施されている研修をさらに見直すよう、勧告する。研修は、養護を提供する上で最も効果的な教育的、専門的および子ども中心のアプローチを確保するという観点から見直されるべきである。職員が効果的に監督され、かつ、そのような施設の子どもたちの処遇が定期的に見直されるようにするための措置も必要とされている。締約国との対話の過程で提起されたその他の問題に照らし、委員会は、また、福祉施設を監視し、かつ、そのような施設に十分な財源を供給するための現行制度の見直しに関しても、さらに考慮するよう提案する。条約第4条、第23条、第24条、第28条および第45条にも照らしながら、委員会は、こうした問題に関する知識へのアクセスを容易にし、かつ、専門知識および経験を共有するという枠組みの中で、国連児童基金、世界保健機構および国連教育科学文化機関に対し、この点における締約国との協力を要請する可能性について、検討するよう提案する。 40.委員会は、チベット自治区その他のマイノリティ地域の子どもたちが自分たちの言語および文化に関する知識を発展させ、かつ、中国語を学習する機会を全面的に保障されるようにするための措置を再検討するよう、提案する。こうした子どもたちを差別から保護し、かつ、高等教育へのアクセスを平等に確保するための措置がとられるべきである。 41.委員会は、締約国が、上記20項で表明された懸念に対する建設的な対応を模索するよう勧告する。 42.委員会は、18歳未満の子どもたちの状況に関する点が指摘された、拷問禁止委員会によって採択された所見の内容に同意するものである。委員会は、少年司法に関わる締約国の現行法ならびに行政上の措置および手続を、条約、とりわけ第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営の領域に関わる他の文書、とくに「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則の原則および規定と一致するようにするため、全面的に見直すよう勧告する。委員会は、この点に関して締約国が、〔国連〕人権センターを始めとする関連の国連機関に対し、援助を要請する可能性を検討するよう提案したい。 43.児童労働の問題に関しては、委員会は、締約国に対し、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の締約国となる可能性を検討するよう奨励する。 44.最後に、委員会は、締約国の報告書、委員会における同報告書の議論および委員会が報告書の審査後に採択した総括所見を、最大限に広く普及するよう勧告する。 45.条約第44条4項の規定に照らし、委員会は、この総括所見のパラ18、21、22および23で提起された懸念に関して、委員会に対してさらに文書による情報を提供するよう要請する。委員会は、この情報を1997年12月までに受領することを望むものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月13日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/303.html
総括所見:ベルギー(OPSC・2010年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/BEL/CO/1(2010年6月18日)/第44会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年6月2日に開かれた第1521回および第1523回会合においてベルギーの第1回報告書(CRC/C/OPSC/BEL/1)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書が提出されたこと、および、委員会の事前質問事項に対する回答が時機を失することなく提出されたことを歓迎する。委員会はまた、部門を横断した代表団の出席、および、代表団との率直なかつ開かれた対話も評価するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国が、選択議定書に基づく報告についてのガイドライン(2006年採択)にしたがわなかったことを遺憾に思う。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回・第4回定期報告書について2010年6月11日に採択された総括所見(CRC/C/BEL/CO/3-4)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書への締約国の第1回報告書について2006年6月9日に採択された総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、以下の法令が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 人身取引および人の密輸ならびに搾取的施設経営者の行動との闘いを強化する目的でさまざまな提案〔規定〕を改正する2005年8月10日の法律。 (b) 人身取引および人の密輸との闘いに関する2004年5月16日の勅令。 (c) 刑事案件についての国際司法共助に関する2004年12月9日の法律。 (d) 刑事犯罪からの未成年者の保護の範囲を拡大する2000年11月28日の法律。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことも称賛する。 (a) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2009年4月27日)。 (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2005年5月26日)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2004年8月11日)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(2002年5月8日)。 6.委員会はさらに、以下の措置を歓迎する。 (a) 人身取引・人の密輸対策国家行動計画(2008年7月)。 (b) 人身取引・人の密輸情報分析センター(CIATTEH)の設置。 (c) 人身取引および人の密輸との闘いに関する省庁間調整班(主管庁:司法省)の再開。 (d) 判事、連邦警察および締約国の軍隊を対象として実施されている、選択議定書で対象とされている分野についての具体的研修。 (e) 選択議定書で対象とされている分野における国際的な援助および協力のための幅広い活動。 II.データ データ収集 7.条約およびその選択議定書で対象とされているすべての分野についてのデータ収集の調整を〔国家〕子どもの権利委員会が担当するようになったことには留意しながらも、委員会は、利用可能なデータおよび調査研究が限られていること(とくに、児童セックスツーリズムについて、子どもの売買、児童買春および児童ポルノ目的の人身取引の対象とされた子どもについて、ならびに、選択議定書上の犯罪の被害者に対する回復および再統合のための援助ならびに補償についての、信頼できるデータが存在しないこと)を遺憾に思う。 8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに被害者および加害者の年齢、性別、出身別に細分化されたデータを収集するための機構を設置すること。 (b) 国家子どもの権利委員会に対し、データに関する調整役を効果的に果たすために必要な財源および人的資源を提供すること。 (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノ対策の実施状況を評価する目的で、収集されたデータが注意深く検討されることを確保すること。 III.一般的実施措置 立法 9.委員会は、司法機関がいまなお選択議定書の適用可能性について決定する手続を終了していないことに懸念を表明する。委員会はまた、締約国の法律で人身取引と売買が混同されている結果、選択議定書第3条で定義されている子どもの売買が、締約国の刑法において、具体的に犯罪とされていないことも懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、国内法体系において選択議定書が直接適用されることを保障するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施するためには、法律において子どもの売買(この概念は人身取引に似てはいるものの同一ではない)に関わる自国の義務が充足されていなければならないことを想起するとともに、選択議定書上の犯罪であるこの行為に明示的に言及されることを確保するよう、求めるものである。 11.委員会は、子どもの調達および児童ポルノに関する事件で手続を打ち切るための法的事由(「社会的影響が限られていること」、「散発的行為であること」または「事件を調査する能力が制限されること」など)が存在していることに、深刻な懸念を表明する。委員会は、これらの法的事由が、被害を受けた子どもが救済を得る権利を侵害するものであり、かつ加害者の不処罰につながると考えるものである。 12.委員会は、締約国に対し、子どもの調達および児童ポルノに関する事件で刑事手続を打ち切るための法的事由を見直し、かつ、選択議定書出対象とされているすべての犯罪が適正に訴追されることを確保するよう、促す。 国家的行動計画 13.委員会は、具体的な「人身取引・人の密輸対策国家行動計画」が2008年7月11日に採択されたことに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の実施ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの撤廃のための全般的戦略が締約国で定められていないことに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、2001年の「子どもの商業的性的搾取対策国家行動計画」および同計画の評価に関する情報がないことを懸念する。 14.委員会は、締約国に対し、2001年の「子どもの商業的性的搾取対策国家行動計画」が部門横断アプローチを基礎とし、かつ選択議定書のすべての分野に関する行動のための一貫したかつ包括的な枠組みのもとであらゆる関係者を結集させることを確保することにより、同計画を速やかに改訂するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、同計画の実施のために十分な資源が配分されかつ監視機構が確立されること、ならびに、同計画の活動および同計画の評価に市民社会および子どもたちが高い水準で参加することを確保することも促すものである。 選択議定書の実施の調整 15.言語共同体レベルで調整機構が設置されていることには留意しながらも、委員会は、さまざまな省庁および言語共同体レベルの関係公的機関の間で子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連する政策の調整を担当する特定の機構が連邦レベルで設けられていないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、締約国による選択議定書の実施を、連邦レベルでならびに省庁間および公的機関間(言語共同体レベルの機関を含む)で、子どもたちの積極的参加を得ながら調整しかつ評価するための機関を設置するよう勧告する。さらに、締約国が、当該調整機関に対し、その任務を効果的に遂行できるようにするための具体的かつ十分な資源を提供することも勧告されるところである。 普及および意識啓発 17.委員会は、2004年と2005年に実施された子どもの性的搾取に関する意識啓発キャンペーン、および、人身取引に関する意識啓発のために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、関連の専門家集団、子どもたちおよび公衆一般の間で選択議定書の具体的規定に関する意識を高めるための努力が不十分であることを懸念するものである。 18.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) とくに、教育制度のあらゆる段階の学校カリキュラムに選択議定書の規定を統合し、かつとくに子どもを対象とする適切な資料を作成することにより、選択議定書の規定を、公衆一般、とくに子どもたちおよびその家族に対して引き続き広く知らせること。 (b) 市民社会と協力しながら、かつ選択議定書第9条第2項にのっとり、あらゆる適切な手段、教育および研修による情報提供を通じて、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の有害な影響に関する公衆一般(子どもたちを含む)の意識を強化しかつ促進するとともに、このような意識啓発プログラムおよび広報・教育プログラムへの、コミュニティならびにとくに男女双方の子どもおよび被害者である子どもの参加を奨励すること。 研修 19.人身取引に関する若干の研修活動が実施されてきたこと(連邦警察の人身取引担当部署が外交職員向けに実施した研修会など)には留意しながらも、委員会は、このような研修において、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家が対象とされているわけではなく、または選択議定書のすべての規定が十分に含まれているわけではないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連のすべての専門家および公衆一般を対象とする、選択議定書で対象とされているすべての分野についての研修資料および研修課程の開発に対し、十分な、かつ使途指定された資源を配分すること。 (b) 警察官、検察官、裁判官、医療スタッフ、社会福祉職員ならびにメディアおよび他の関連の専門家集団を含む専門家を対象として、選択議定書のすべての分野を網羅した研修活動(研修資料および研修課程の開発を含む)をを継続しかつ強化すること。 資源配分 21.委員会は、選択議定書を実施するために行なわれる活動に割り当てられる、明確に特定可能な予算配分が行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、警察および司法制度に対し、選択議定書で対象とされている犯罪についての告発を捜査するための十分な人的資源および財源が提供されていないことも懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関連する活動のための予算配分額を明確に特定するよう求める。委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている犯罪の防止、時宜を得た捜査および効果的訴追ならびに被害を受けた子どもの保護、ケアおよび社会的再統合を国内全域で確保する目的で、使途指定をともなう予算基金を通じ、さまざまな地方行政地域間で平等に資源を配分するよう促すものである。 IV.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーの防止 選択議定書で禁じられている犯罪を防止するためにとられた措置 23.委員会は、「ベルギー・インターネット安全向上プロジェクト」および不法養子縁組を防止するための措置など、非政府組織(NGO)と提携した防止措置の発展を歓迎する。しかしながら委員会は、ベルギーにおけるこれらの現象の発生件数は比較的少ないため、言語共同体はこれまでのところ選択議定書の主題をとくに対象とする政策を定めまたはこのような政策に投資していない旨の、締約国の発言について懸念を覚えるものである。 24.委員会は、締約国に対し、児童買春に関する現象学的研究を実施するべきである旨の国家子どもの権利委員会の勧告をフォローアップするとともに、この研究の範囲を、選択議定書出対象とされているすべての分野(これらの現象の根本的原因を含む)に拡大するよう奨励する。 セックスツーリズム 25.委員会は、セックスツーリズムに関連した刑法上の域外適用規定の存在について外交官全員の注意を喚起した外務省の通達、および、セックスツーリズムと闘うためにフランドル地域でとられているさまざまな措置に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、児童セックスツーリズムに関与したベルギー国民に対してとられる措置についての情報がないことを懸念するものである。 26.委員会は、締約国に対し、児童セックスツーリズムの防止およびこれとの闘いについて第一義的責任を負うのは締約国であることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、この点に関していっそう実際的な行動をとるとともに、とくに、観光客をとくに対象とする大規模な啓発キャンペーンを組織し、かつ、旅行および慣行におけるあらゆる形態の子どもの性的搾取と闘うために旅行手配業者、メディア、NGOおよび市民社会組織と緊密に協力するよう、促すものである。 V.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーならびに関連する事項の禁止 現行刑事法令 27.委員会は、刑事司法制度における未成年者の保護に関する新たな法律(2000年11月28日)、および、人身取引および人の密輸ならびに搾取的施設経営者の行動との闘いを強化する目的でさまざまな提案〔規定〕を改正する2005年8月10日の法律の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の批准時に締約国が行なった宣言および同意に関する締約国の国内法(2006年2月9日)に掲げられた児童ポルノの定義が、子どもを視覚的に表現したものに限られていることを懸念するものである。 28.委員会は、児童ポルノに関する国内法において、実際のまたはそのように装ったあからさまな性的活動に従事する子どもをいかなる手段によるかは問わず描いたあらゆる表現または主として性的目的で子どもの性的部位を描いたあらゆる表現が対象とされることを確保するため、締約国が刑法を改正するよう勧告する。 29.第3条第3項にしたがい、選択議定書上の犯罪が適切な刑罰による処罰の対象であることには留意しながらも、委員会は、子どもに対する性的犯罪に関する有罪事件で禁固刑が言い渡される割合がきわめて低いことに懸念を表明する。委員会はまた、子どもが関わる買春のための売春宿を経営していたとして2000~2007年に有罪判決を言い渡された者のうち収監刑に処された者がひとりもいないことに、特段の懸念とともに留意するものである。 30.委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている犯罪がベルギー刑法においても犯罪とみなされること、および、これらの犯罪が科料または自由の剥奪をともなわない制裁のような軽い刑による制裁の対象とされないことを確保する目的で、刑法の規定の改正を検討するよう促す。 裁判権および犯罪人引渡し 31.委員会は、2000年11月28日の法律によってベルギーの裁判所および審判所の域外裁判権限が拡大されたこと、および、たとえ被害申立てまたは正式な通告が行なわれていない場合、不法行為がその行為地国で犯罪とされていない場合および当事者がベルギー国籍を有していない場合であっても、裁判官には子どもの性的搾取の事件を審理する権限があることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の域外裁判権において被害を受けた16~18歳の子どもが対象とされていないことを懸念するものである。委員会はまた、締約国が裁判権を設定した事件に関する情報がないことも懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、ベルギーの裁判所および審判所の域外裁判権限が16~18歳の子どもの性的搾取にも適用されることを確保するために法改正を行ない、かつ、この選択議定書をこれらの犯罪に関する犯罪人引渡しの法的根拠とみなすよう促す。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 33.委員会は、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもの保護のためにとられた措置(連邦警察内に人身取引対策部署が設けられていること、あらゆる形態の子どもの虐待を担当する付託判事が裁判管轄区ごとに指名されていること、および、被害を受けた子どもの二次被害を防止する目的で2000年から聴聞の録画が使用できるようになったことを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、保護者のいない外国人の子どもの事件で、子どもの聴聞の録画を認めた規定がほとんど活用されていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための努力を強化するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、聴聞の録画の使用を認めた規定が保護者のいない外国人の子どもにも平等に適用されることを確保することも求めるものである。 35.委員会は、人身取引の被害を受けた外国人の子どもが締約国で十分に保護されていないことにより、子どもが選択議定書上の犯罪の被害をいっそう受けやすくなっていることに、深い懸念を表明する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) これらの子どもが、捜査に協力した場合に限って在留を認められていること。 (b) 2004年5月の後見法において、保護者のいないヨーロッパ出身の子どもが、後見人による援助を受けることから排除されていること。 (c) 1999年から2005年にかけて、人身取引の被害を受けた数百人の子どもが受け入れセンターから失踪していること。 (d) とくに小規模都市において、子どものための受け入れセンターの定員が不足しているために、人身取引の被害者であって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもが成人とともにセンターに措置されていること。 36.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪(人身取引を含む)の被害を受けたすべての子どもに対して保護を提供する自国の義務を遵守し、かつ、これらの子どもに対し、法的手続に協力する意思または能力の有無にかかわらず在留許可を付与すること。 (b) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもであるすべての庇護希望者に対し、その国籍にかかわらず、庇護手続の期間中、後見人が任命されることを保障すること。 (c) 養育者から分離された子どもおよび保護者のいない子どもの保護、とくにその特定、年齢鑑別、登録、家族追跡、後見、最善の利益の判断、処遇および治療を向上させること。 (d) 受け入れセンターおよびシェルターに収容された子どもがすべての言語共同体で十分な援助を受け、かつ人身取引または再度の人身取引のおそれにさらされないことを確保するため、被害を受けた子どもにこれらのセンターで対応する専門家の、子どもの権利に関する知識およびスキルを増進させること。 (e) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに援助を提供する入所施設を増設すること。 (f) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮すること。 VII.国際的な援助および協力 多国間、地域間および二国間の取り決め 37.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、(とくに近隣諸国との)多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 法執行 38.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックスツーリズムをともなう行為の防止、摘発、捜査、訴追および処罰を目的とする多国間、地域間および二国間の取り決めによって国際協力を強化するための努力を継続するよう、奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 39.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見を内閣、議会(上院および代議院)ならびに該当するときは言語共同体および州レベルの政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、この総括所見が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 40.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択したこの総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、締約国のすべての公用語で子どもおよびその親が入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、締約国が、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、選択議定書を子どもおよび公衆一般に広く周知することも勧告するものである。 IX.次回報告書 41.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第5回・第6回統合定期報告書(提出期限・2017年7月14日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/310.html
総括所見:イラク(OPSC・2015年) 第1回(1998年)/第2~4回(2015年)OPAC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/IRQ/CO/1(2015年3月5日)/第68会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1962回会合(CRC/C/SR.1962参照)においてイラクの第1回報告書(CRC/C/OPSC/IRQ/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/IRQ/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IRQ/CO/2-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/IRQ/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった以下の措置を歓迎する。 (a) 人身取引対策法(法律第28号、2012年)。 (b) アフターケアおよび家族統合プログラム。 (c) 2つのチャイルドヘルプラインの開設。 (d) 被害者支援部署、人身取引被害者のための国営シェルターおよび家族保護部署の設置。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年2月)。 (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年2月)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2008年3月)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2001年7月)。 III.データ データ収集 6.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪についての体系的データを収集するためのいかなる機構も有していないことに、懸念とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野のデータ収集、分析、監視および影響評価のための包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的背景別に細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、起訴件数および有罪判決件数についてのデータを収集することも求められる。 IV.一般的実施措置 立法 8.選択議定書のさまざまな規定を締約国の法律に統合しようとする努力は歓迎しながらも、委員会は、このような努力において、ほぼ人身取引および買売春だけにしか焦点が当てられていないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が現行法で明示的に取り上げられているわけではないこと、および、締約国の法律における子どもの売買の定義が議定書と一致していないことも懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、選択議定書を国内法体系に全面的に編入し、かつ、選択議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買(これは人身取引と類似してはいるものの同一ではない)の定義を改正するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 包括的な政策および戦略 10.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と闘うための包括的な政策および戦略を直ちに採択し、かつ、その作成および実施に市民社会の関与を得るよう勧告する。 調整および評価 11.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と効果的に闘うための調整機構を速やかに設置するよう勧告する。 市民社会との協力 12.被害者を保護サービスに付託するために法執行官が時として非政府組織(NGO)および国際機関と協力していることには留意しながらも、委員会は、選択議定書の実施に関して締約国と市民社会との間で全般的に協力が行なわれていないことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) NGOに対し、選択議定書の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子ども全員の収容保護が認められているわけではないこと。 (b) NGOが、国から必要な保護を与えられないまま、依然として過激主義集団による暴力の脅威にさらされていること。 (c) 被害者に保護サービスを提供しているNGOに対し、締約国が資金または現物による援助を提供していないこと。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関する市民社会との協力を強化するとともに、選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となった子どもに保護および支援を提供しているNGOに対し、十分な技術的資源および財源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、NGOが過激主義集団による攻撃から全面的に保護され、かつ活動の遂行に際していかなる法的障害にも直面しないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促すものである。 普及、意識啓発および研修 14.委員会は、裁判官、法執行官ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働く専門家を対象とする研修が不十分であることを遺憾に思う。委員会はまた、親および子どもたち自身を含む公衆の間で子どもの性的搾取に関する意識が欠けていること、ならびに、慣習および伝統により、性的虐待および性的搾取の被害を受けた子どもおよびその家族が辱めの対象とされており、そのためこれらの犯罪の通報が十分に行なわれていないことも、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、選択議定書を広く周知するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 裁判官、法執行官(とくに警察)ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働くその他の専門家が、選択議定書で対象とされている犯罪から子どもを保護するために自己の知識およびスキルを効果的に実践できるようにすることを目的として、これらの専門家を対象とする学際的な研修プログラムを発展させること。 (b) コミュニティ、地元の教員、若者グループおよび子どもグループの関与を得ながら、選択議定書の規定に関する集中的な意識啓発活動(マスメディア上のキャンペーンを含む)を実施すること。これらの意識啓発活動においては、性的搾取の防止、被害者に付与されるスティグマへの対処、ならびに、とくに被害者がアクセスできるすべての通報方法についての情報を被害者に提供することによるこれらの犯罪の通報の強調および奨励に対し、特段の注意が払われるべきである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(選択議定書第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 16.委員会は、現行の政策およびプログラムが、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因(ジェンダーを理由とする深刻な差別および暴力、貧困、マイノリティに属する子どもの差別、国内避難および移住、教育へのアクセスの欠如、ならびに、子どもが路上で生活しかつ(または)働くことを余儀なくされる状況を含む)に対応するためには不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、以下のことを著しく懸念するものである。 (a) 多くの子どもが依然として登録されていないために、選択議定書上の犯罪の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。 (b) シリア・アラブ共和国からイラクに帰還した子どものイラク人難民(とくに女子)が、帰るべきコミュニティを持たないことが多く、かつ国からのいかなる種類の支援にもアクセスできないために、あらゆる形態の搾取および人身取引の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。 17.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対応し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれている家族および子どもを明確に対象とするために包括的アプローチおよび具体的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 委員会が条約に基づいて行なった勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4)、とくに生活水準(パラ63)、差別の禁止(パラ17)、子どもの国内避難民および難民(パラ67)、路上の状況にある子ども(パラ75)、職業訓練および職業指導を含む教育(パラ65)ならびに家庭環境を奪われた子ども(パラ47および49)に関連するものの全面的実施を確保すること。 (b) いわゆるイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配下にある子どもを救出するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、これらの子どもが回復および再統合のための十分なサービスにアクセスできるようにすること。 (c) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための措置を継続しかつ強化すること。 (d) 帰還民に対して支援へのアクセスを確保するとともに、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもを対象とする防止プログラムを発展させ、かつ、とくに、子どもの国内避難民、移住の状況にある子どもおよび路上の状況にある子どもに対して十分かつ安全なシェルター、保健ケア、教育および衣服が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 子どもの売買 18.委員会は、いわゆるISILの支配下に置かれたままの子どもが多数にのぼっており、かつ、誘拐された子どもおよび女性(とくにマイノリティ集団出身の子どもおよび女性)がISILの構成員間で性奴隷として売買される「市場」が存在することに、深い懸念とともに留意する。委員会はまた、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 女子が引き続き「贈り物」「報酬」または「取引手段」として利用され、または部族間の紛争解決のための「賠償品」として交換されていること。 (b) 婚姻した後に女子に売春を強要するための「一時的婚姻」であるムタア(muta a)の慣習が締約国でふたたび行なわれるようになり、多数の家族が、しばしば貧困および(または)失業をきっかけとして、娘(11歳という低年齢の女子も多い)をこのような結婚のために売り渡していること。 (c) 誘拐および(または)売買の被害者となった女子が深刻なスティグマに直面するために、これらの女子に対して行なわれた犯罪の通報が十分に行なわれず、かつ、これらの女子が家族から拒絶され、誘拐犯との婚姻を余儀なくされ、またはいわゆる「名誉」の名のもとに行なわれる犯罪の被害者となるおそれが高まっていること。 (d) 女子が締約国の内外で(国外の目的地国にはヨルダン、シリア・アラブ共和国、アラブ首長国連邦およびイエメンが含まれる)売買および取引の対象とされており、かつ、シリア・アラブ共和国に逃亡したイラク人女子の多くが性産業に売られているという報告があること。 (e) 女子(非常に低年齢の者を含む)が、偽造旅券により、かつ(または)「夫」とされる者と同伴してきわめて容易に渡航しえいると報告されていること。 19.委員会は、締約国に対し、女子および女性のいかなる形態の売買(とくに、奴隷市場におけるもの、ムタアによるものおよび部族裁判所または宗教裁判所における紛争解決を背景として行なわれるものを含む、女子および女性の売買もしくは交換または贈り物もしくは賠償品としての使用)も全面的に犯罪化され、捜査されかつ訴追されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、委員会が条約に基づいて行なった早期婚および強制婚についての勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4、パラ42)に対する注意も喚起し、かつ、締約国に対し、貧困下で暮らしている家族を支援するためにあらゆる必要な措置をとることおよび以下の措置をとることを促すものである。 (a) 売買および(または)誘拐の被害者となった女子に対する差別的態度を変革するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 国境を越える女子の売買と闘い、入国審査を強化し、かつ女子の身元を同伴者とは別に確認するため、近隣諸国と緊密に協力すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(選択議定書第3条、第4条第2項および3項ならびに第5~7条) 現行刑事法令 20.委員会は、人身取引が最近犯罪化された一方、締約国の国内法で選択議定書上のすべての犯罪(子どもの売買など)が網羅されているわけではないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、刑法(法律第111号(1969年))第398条において、子どもに対する性犯罪の加害者が被害者である子どもと有効に婚姻したときは罪を免除されると定められていることを、非常に懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪が全面的に犯罪化されることを確保するために迅速な法的措置をとるとともに、刑法(法律第111号(1969年))第398条、および、子どもの性的虐待の加害者の罪を免除するために用いられうるすべての法的規定を速やかに廃止するよう、促す。 不処罰 22.委員会は、選択議定書上の犯罪に関する捜査、訴追および有罪判決の件数がきわめて限られていることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、警察その他の法執行当局が子どもの人身取引の共犯者になっているという多数の報告(政府職員による書類の偽造の援助および警察官による売春宿の庇護を含む)について深い懸念を覚えるものである。委員会は、政府職員が人身取引関係の犯罪の共犯者となった事件に関する捜査および訴追がきわめてまれにしか行なわれないことを懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の実行犯(政府職員を含む)の捜査、訴追および処罰を精力的に進めるよう促す。 域外裁判権および犯罪人引渡し 24.委員会は、刑事訴訟法において、選択議定書第3条第1項に掲げられているすべての犯罪についての明示的な域外裁判権が設定されているわけではないことに、懸念とともに留意する。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪を行なったとされる者が締約国の国民でありまたは締約国の領域に常居所を有する者である場合または被害者が締約国の国民である場合に、選択議定書第3条第1項に基づく犯罪についての域外裁判権を設定すること。 (b) 二国間条約の存在を条件とすることなく、選択議定書を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることを検討すること。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(選択議定書第8条ならびに第9条第3項および第4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 26.委員会は、15歳未満の子どもが犯罪の被害者または証人である場合、その証言が正当に考慮されないことがあり、かつ15歳未満の子どもは親の同意がなければ告訴ができないことを非常に懸念する。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意するものである。 (a) 人身取引および買春の被害者が、尋問中に不当な取扱いまたは虐待を受け、かつ、売春および出入国管理法違反のような不法行為を理由として収監され、罰金を科され、有罪判決を受け、退去を強制されまたはその他の形で処罰されているという報告があること。 (b) 買売春のために売られた女子が、家族/コミュニティに恥をかかせたことに対する報復から「保護」するために刑務所に収容されたままとなる場合があること。 (c) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもを特定するための機構が整備されておらず、かつ、官吏に対し、被害を受けた子どもまたはとくにリスクの高い状況にある子ども(在留資格を有していない外国籍の子どもの移住者または買春容疑で逮捕された子どもなど)を特定するための研修または指針の提供が行なわれていないこと。 27.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの証言が完全な証拠とみなされることおよび子ども自身による告訴が認められることを確保するために迅速な措置をとること。 (b) 保護のためと称して拘禁されているすべての女性および女子を刑務所から直ちに釈放するとともに、これらの女性および女子に対し、必要なあらゆる支援を提供すること。 (c) 子どものプライバシーおよび尊厳が全面的に保護される、子どもに配慮した調査手続および司法手続を備えた効果的な通報制度を確立すること。 (d) 被害を受けやすい状況に置かれていて選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれのある子どもを特定し、発見しかつモニターするための効果的機構を確立するとともに、これらの機構に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子どもを特定するために必要な人的資源、財源および技術的資源ならびに研修の機会を提供すること。 (e) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者となったすべての子どもが、いかなる場合にも犯罪者として扱われず、常に被害者として扱われること、ならびに、これらの子どもに対し、必要な保護、支援ならびに再統合および回復のためのサービスにアクセスする機会が提供されることを確保すること。 (f) 人身取引の被害者が、法執行官と接触する際にいかなる形態の不当な取扱いおよび虐待からも保護され、かつ通報のための経路にアクセスできることを確保すること。 被害者の回復および再統合 28.人身取引被害者のための国営シェルターが設置され、かつ虐待および人身取引の被害を受けた女性および子どもを援助する家族保護部署が警察署内に設けられたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国に人身取引被害者が存在するにもかかわらずシェルターに入所者がいないと報告されていること、および、保健省によって運営されている支援部署が、2013年の設置以降、人身取引被害者を特定しかつ援助するためのいあkなる努力も行なっていないことを懸念する。委員会はまた、以下のことを懸念するものである。 (a) 買春の被害を受けた子どもが、刑務所からの釈放と同時に、援助をなかなか見つけられない状況に置かれること(とくに、家族によって買売春のために売り渡された場合)。 (b) 人身取引被害者の付託のための全国的機構が2012年に創設されたものの、まだ完成および実施の段階に至っていないこと。 (c) 保健ケア施設が性的搾取の被害者を治療するための体制を整えておらず、または治療に後ろ向きである事例が報告されていること。 29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもの効果的特定のためのプログラムおよび政策を策定すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに支援および保護を提供するとともに、これらの子どもが心理的援助およびカウンセリングならびに医療ケアにアクセスできることを確保すること。 (c) 保健サービスにおいて、選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに対し、その身体的および精神的回復のためのあらゆる便宜が提供されることを保障するために、すべての必要な措置(法的措置を含む)をとること。 ヘルプライン 30.委員会は、バグダード県で2つのチャイルドヘルプラインが――カルフ地区の家族福祉局に1か所、および、ルサファ地区に設けられたコミュニティ基盤型の家族保護警察署に1か所――開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、全国的なヘルプラインが設置されておらず、かつ、既存のヘルプラインおよびその安全な利用に関して子どもの意識を高めるための十分な取り組みが展開されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、全国的な単一のヘルプラインの設置に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するためにあらゆる必要な努力を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の防止およびこれへの対応を効果的に進めるため、既存のヘルプラインの運営担当者を対象として体系的な研修および能力構築を実施すること。 (b) 全国的ヘルプラインが、国全体のすべての子どもにとって全面的にアクセス可能でありかつ知られた存在となるよう、当該ヘルプラインにアウトリーチの要素が備えられることを確保するとともに、当該ヘルプラインと、子どもに焦点を当てるNGO、警察、ヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を促進すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 32.委員会は、締約国と近隣諸国との間で選択議定書上の犯罪と闘うための地域的取り決めが締結されていないことに、懸念とともに留意する。 33.締約国が地域的取り決めを締結していないことに照らし、かつ選択議定書第10条第1項に鑑み、委員会は、締約国に対し、議定書上の犯罪を防止し、摘発しかつ訴追するための、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じて、引き続き国際協力を確立するよう奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 34.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 35.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.通報手続に関する選択議定書の批准 36.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 XI.次回報告書 37.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年5月18日)。