約 24,220 件
https://w.atwiki.jp/catreport/pages/17.html
補償とリハビリ 22. 国家補償に関する法律に被害者が補償を受ける権利が想定されているという情報を認識してはいるものの、委員会はこのような補償を実際に受けた人がごく少数であることを問題視している。委員会は、性的暴行を含む拷問、人身売買、近親者による暴力および虐待の被害者のリハビリへの有限措置についての懸念を表明する。(項目14) 中国政府は、拷問および虐待の被害者に対する十分な補償と、性的暴行を含む拷問、人身売買、近親者による暴力および虐待の被害者に対する治療、および精神的援助を含む適切なリハビリ・プログラムを保証しなければならない。 拷問執行の刑事免責および適切な刑罰 23. 委員会は、警察職員による拷問、または虐待の申し立てが、ほとんど調査・起訴されていないことを深く憂慮している。「比較的軽犯罪」とされる行為を含む拷問の事例で、懲戒処分あるいは行政処分を受けるのみにとどまるものがあることを委員会は深く懸念している。(項目2、4、12) 中国政府は、全ての拷問および虐待の申し立てを早急、効率的かつ公平に調査することを保証しなければならない。中国政府はまた、拷問執行はその深刻さを考慮に入れた上で、条約の第4条第2節にあるように適切な処罰を課されるように保証しなければならない。 拷問の定義 24. 条約第1条で「拷問」と見なされ得る範囲内の全行為が、中国においては処罰されるという中国政府の主張を認識してはいるものの、委員会は中国政府が条約の定義と全面的に適合する拷問の定義を中国国内法令に組み込んでいないという以前の結論および提案 (A/55/44, para. 123) を繰り返す。 委員会は、拷問に関する条款が、身体的虐待のみを扱い、深刻な精神的苦痛や苦悩を含まないことを懸念している。委員会はまた、刑法第247条、刑事訴訟法第43条および義務と権利の損害刑事訴訟の出願放棄の条件についての最高人民法院条款が、拷問執行の禁止を司法官および監禁施設の役人の行為に限定しており、役人の煽動、承認あるいは黙認を得た上で行なわれた行為を含む「その他の公的な立場で活動する人々」による行為を含んでいないことについて懸念している。さらに、これらの条款は自白を引き出すため以外の目的で行なわれる拷問を扱っていない。(項目1) 中国政府は、あらゆる種類の差別を含む、条約第1条が扱う要素すべてを含めた拷問の定義を法律に組み込まなければならない。中国政府は、司法官や監禁施設の役人ではないが公的資格を持って行動する人々あるいは役人の承認または黙認を得て行動する人々が、拷問の罪で起訴されるように保証しなければならない。中国政府はまた、法律によってどのような意図および目的の拷問執行も禁じなければならない。
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/522.html
693 :名無しさん:2011/10/21(金) 18 46 24 とりあえずコピペを張っておく。 日本人の怒りのレベル。 ──(仏のニッポン)── Lv1 推移を見守りたい Lv2 対応を見守りたい Lv3 反応を見守りたい ──(意思表示するニッポンの壁)── Lv4 懸念を表明する Lv5 強い懸念を表明する ──(怒りを示すニッポンの壁)── Lv6 遺憾の意を示す Lv7 強い遺憾の意を示す ──(キレ気味のニッポンの壁)── Lv8 真に遺憾である ──(キレちまったよ・・・)── Lv9 甚だ遺憾である ──(大日本帝國)── Lv10 朕茲ニ戦ヲ宣ス
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/199.html
総括所見:シリア(第2回・2003年) 第1回(1997年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.212(2003年7月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.子どもの権利委員会は、2003年6月3日に開かれた第883回および第884回会合(CRC/C/SR.883 and 884参照)において、2000年8月15日に受領されたシリア・アラブ共和国の第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.2)を検討し、2003年6月6日に開かれた第889回会合(CRC/C/SR.889参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告書の時宜を得た提出を歓迎するとともに、報告書そのものは法律偏重的な性質のものであったとはいえ、当該報告書が報告ガイドラインにしたがっていることに留意する。委員会は、豊かな情報を含んだ文書回答の提出および補足報告書を評価するものである。委員会は、ハイレベルな、きわめて適任の部門横断型代表団の出席が、締約国における条約の実施プロセスに関する理解の向上に寄与したことを評価する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 女性に対するあらゆる形態の差別に関する条約および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約を含む諸国際文書の批准。 (b) 委員会はさらに、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の議会承認を歓迎する。 (c) 就業が認められるための最低年齢の、15歳への引き上げ。 (d) 義務教育〔修了〕年齢の、12歳から15歳への引き上げ。 (e) 子どもの問題に関する新たな機関(すなわち文化局、乳幼児教育局および特別教育局)の設置。 (f) とくに保健および教育の分野で、子どものための世界サミットの目標の多くが達成されたこと。 (g) 子ども期高等評議会の設置(1999年)。 (h) 国内法で条約が考慮されていること、すなわち、民事訴訟法および刑事訴訟法において、シリアが加盟する国際条約に反する規定は適用できないと明示的に述べられていること。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、占領下にあるシリア領ゴラン高原においてシリア人の子どもの権利を確保する際の困難に関する締約国の懸念を共有する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 前回の総括所見 5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.2)の検討を受けて表明された勧告および行なわれた勧告(CRC/C/15/Add.70)の多く、とくに条約の原則の法律への統合、予算配分における子どもの権利の優先および子どもの不当な取扱いに関連するものへの対応が不十分であることを懸念する。委員会は、同じ懸念表明および勧告の多くがこの文書でも行なわれていることに留意するものである。 6.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保 7.委員会は、第1回報告書が提示されて以降、留保に関して何の再検討も行なわれてこなかったことを遺憾に思う。報告書における締約国の理由説明に留意しつつ、委員会は、一般的留保の性質のために条約の規定の多くが無効にされる潜在的可能性がある旨の懸念をあらためて表明するとともに、条約の趣旨および目的との両立性に関わる懸念を提起するものである。とくに、第14条に関しては、当該留保は思想、良心および宗教の自由の侵害を生ぜしめるものであり、第20条および第21条に関しては、当該留保は不要である。委員会は、条約第20条3項において、代替的養護のひとつの形態としてカファラが明示的に承認されていることを指摘する。第21条は、養子縁組制度を「承認および(または)許容している」国に明示的に言及しており、締約国は養子縁組制度を承認していないのでこの規定は適用されない。 8.委員会は、締約国が、ウィーン宣言および行動計画にしたがい、かつ自由権規約委員会の一般的意見22号を考慮し、とくに第14条、第20条および第21条に関する留保を撤回の方向で精査するよう、勧告する。 立法 9.委員会は、締約国が、条約との関係で国内法を見直す旨の公約を行なっていることに留意する。委員会はさらに、子どもの権利との関連で最近さまざまな立法措置がとられかつ提案されていること(たとえば身分関係法の改正、および、義務教育法の違反に対する処罰の強化の追求)に留意するものの、これらの立法措置において、条約の実施に対する包括的な人権基盤アプローチが十分に反映されていないことを懸念するものである。さらに委員会は、身分関係の分野で、異なる宗教的コミュニティ(すなわちイスラム教徒、ドゥルーズ教徒、キリスト教徒およびユダヤ教徒)を規律する異なる法律(たとえば1953年民事関係法)が適用されており、そのために異なる裁判制度(たとえばシャリーア裁判所、madhabi裁判所およびruhj裁判所)が利用されていることから、子どもの権利の享受における差別につながる可能性があることを、懸念する。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自国の法律、行政規則および訴訟規則が条約を含む国際人権基準に一致することを確保するため、その包括的見直しをいっそう速やかに進めること。 (b) 宗教法の解釈を基本的人権と一致させるため、あらゆる可能な措置をとること。 (c) 法律が、十分に明瞭かつ正確であり、公表され、かつ公衆にとってアクセス可能であることを確保すること。 調整 11.委員会は、子ども期高等評議会(1999年の決定第1023号)が条約の実施の調整を担当していることに留意する。委員会は、HCC〔子ども期高等評議会〕が県段階に支部を設置する予定であり、かつHCCに対して独自の予算が提供される可能性がある旨の情報を歓迎するものである。委員会はさらに、2003年10月に新たな国家的行動計画が採択される予定である旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、現行の調整が不十分であることおよびHCCが独自の予算を有していないことを依然として懸念するものである。委員会は、中央および地方の行政段階における部門間の調整に欠陥があるため、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策を達成するのが困難になっている旨の懸念を、あらためて表明する。 12.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくにHCCに対して十分な人的資源および財源を提供することにより、HCCを、条約の実施を調整するための有効かつ効率的な機関とするための努力を継続しかつ強化するとともに、設置が予定されている支部とHCCとの間で良好な協力関係および調整を確保すること。 (b) 新たな国家的行動計画の全面的実施のために必要な支援(十分な人的資源、財源その他の資源を含む)を提供するとともに、当該計画が条約の実施に与えた影響を定期的に評価すること。 データ 13.委員会は、保健、栄養および教育の分野におけるデータ収集が改善されたことに留意するとともに、中東統計局内に子ども情報部が設置された旨の情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とする分野についての信頼できる統計データの不足および利用可能性について依然として懸念を覚えるものである。 14.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する統計(遠隔地に住んでいる子ども、虐待の被害者、障害のある子ども、思春期の健康、罪を犯した少年等に関するデータも含む)を収集すること。 (b) 子ども情報部を強化するとともに、当該部局に対して十分な人的資源および財源を提供すること。 (c) とくにさまざまな政府省庁間で統計上の定義を調和させることにより、データの信頼性を向上させるための方法を検討すること。 (d) 引き続きユニセフの援助を求めること。 監視体制 15.委員会は、HCCが、調整機能に加え、少年裁判所所長(1998年の決定第134号)および司法委員会(1999年の決定第2108号)とともに実施の監視も担当していることに留意する。委員会は、これらの種々の機構間で調整が行なわれていないことを懸念するものである。さらに委員会は、条約の実施における進展を恒常的に監視しおよび評価することを任務とし、かつ子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた独立の機構が存在しないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、パリ原則および委員会の一般的意見2号にしたがい、国および地方のレベルで条約の実施における進展を監視しおよび評価するための独立した国内人権機関を設置するよう、勧告する。この機関は、十分な資源を有し、子どもがアクセスしやすく、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しおよび調査しならびにこれに効果的に対応する権限を与えられたものであるべきである。 資源配分 17.委員会は、条約が対象としている分野、とくに保健、教育および子どもの保護に対する予算配分が低額であることを依然として懸念する。このことは、子どもの経済的、社会的および文化的権利を「利用可能な資源を最大限に」用いて実施することに関わる条約第4条に対し、十分な注意が払われてこなかったことを示すものである。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 利用可能な資源を最大限に用いてすべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を確保すること。 (b) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえば同国の北部および東北部に住んでいる子ども)を対象とする社会サービスへの予算配分を優先させ、かつその対象を明確にすること。 (c) 予算配分額が子どもの権利の実施に与える影響を体系的に評価すること。 市民社会との協力 19.委員会は、政府が開発部門および福祉部門の国内団体ならびに国際機関と良好な協力関係にある旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、とくに市民的権利および自由の分野において、条約の実施に市民社会を積極的に関与させるための努力がほとんど行なわれてこなかったことを懸念するものである。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の実施(市民的権利および自由との関連における実施も含む)の全段階を通じて子ども団体を含む市民社会の関与を得ることに対し、組織的アプローチをとること。 (b) NGOの参加を促進しかつ強化する一歩として、NGOを規制する法律(たとえば民間団体・機関法(1958年法律第93号))が条約第15条および結社の自由に関する他の国際基準に一致することを確保すること。 研修/条約の普及 21.委員会は、条約を普及するために締約国が行なっている努力、および、これらの努力の有効性を評価するための研究を歓迎する。これとの関連で、委員会は、子どもの市民的権利および自由との関連でもっとも意識が低いことに留意するものである。 22.委員会は、締約国に対し、引き続き以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもおよび親ならびに市民社会の間でならびにあらゆる行政部門および行政段階において(市民的権利および自由に注意を向けながら)条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字者であるまたは正規の教育を受けていない脆弱な立場に置かれた集団を対象とするための取り組みを含む)を拡大し、かつ継続的なものとすること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 (c) この点に関してとくにOHCHRおよびユニセフの援助を求めること。 2.子どもの定義 23.委員会は、女子の最低婚姻年齢(17歳)を男子のそれ(18歳)まで引き上げる点についてなんらの進展も見られないことを遺憾に思う。この差異は差別的であり、かつ条約第2条に反するものである。委員会は、農村部における早期婚を引き続き懸念する。 24.委員会は、締約国が、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げるために法律を改正し、かつ、とくに農村部でその法律を執行するためにいっそうの努力を行なうよう、勧告する。 3.一般原則 差別の禁止に対する権利 25.委員会は、条約第2条に反して、とくに以下の点に関して、子どもまたはその親もしくは法定保護者に対する直接間接の差別が根強く残っていることを懸念する。 (a) 女子、婚外子およびマイノリティに属する子ども。 (b) 保健サービスおよび教育サービスへのアクセスに関する農村部と都市部間の格差、および、とくに同国の北部および東北部が社会指標の面で後れをとっていること。 26.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に定められたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、必要なときは法律を制定しまたは廃止すること、格差削減プログラムを実施すること等の効果的措置をとること。 (b) この点に関する社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。 (c) 男女間の権利の平等に関する自由権規約委員会の一般的意見28号を正当に考慮すること。 (d) そのような努力を支援するために宗教的指導者を動員すること。 27. 委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 28.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が、子どもに関わるすべての法律に明示的に編入されておらず、かつ、実務上、常に考慮されているわけではないことを懸念する。たとえば委員会は、ある法案において、身分関係法第146条に定められた年齢の引き上げが提案されていることに留意するものである。委員会は、監護に関する判断が、どのような取決めが子どもの最善の利益にかなうかではなく年齢のような基準によって行なわれていることを、依然として懸念する。 29.委員会は、締約国が、条約第3条を立法および実務に全面的に編入するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、間もなく子ども議会が設置される予定である旨の情報を含め、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、とくに家庭および学校において子どもの意見の尊重が制約される可能性があり、かつ、子どもが自己に影響を与える裁判手続および行政手続において制度的に意見を聴かれているわけではないことを、懸念するものである。 31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設および裁判所における子どもの意見の尊重ならびに自己に影響を与えるすべての事柄への子ども参加を引き続き促進し、かつそのための便宜を図ること。 (b) 十分な情報を得たうえでの子どもの意見および見解の表明を支援し、かつこれらの意見を考慮するためのスキル訓練プログラムを、親、教員、ソーシャルワーカーおよび地方官吏を対象として、コミュニティのなかで発展させること。 4.市民的権利および自由 国籍 32.委員会は、シリア国籍法(1969年法律第276号)第3条により、外国人と婚姻したシリア人女性の子どもに対しては、父がシリア人である場合とは異なって自動的に市民権が付与されないことを懸念する。さらに委員会は、シリアで出生した無国籍のクルド人親から生まれ、かつ出生時に他のいかなる国の国籍も有していない子どもが、条約第2条および第7条に反して、シリア国籍を付与されないままであり、かつ差別の対象とされていることを遺憾に思うものである。 33.委員会は、条約第2条および第7条において、締約国の管轄内のすべての子どもが、子どもまたはその親もしくは法定保護者の性別、人種、宗教または民族的出身に関わらず、登録されかつ国籍を取得する権利を有するべきことが求められていることを、あらためて強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) いずれかの親の性別に基づいて差別することなく、国籍に対する子どもの権利を確保すること。 (b) シリアで出生したクルド人親の子どもに対してシリア国籍を取得する権利を保障するため、緊急の措置をとること。 (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)を批准すること。 表現、思想、良心および宗教〔ならびに〕結社および集会の自由、プライバシーに対する権利ならびに情報にアクセスする権利 34.委員会は、報告書において第1回報告書に掲載された情報を参照するよう求められているのは、これらの問題に関する条約第13条~17条の実施との関連でほとんどまたはまったく進展がなかったことの表れであることを懸念する。 35.委員会は、締約国が、とくにこれらの権利に関する子どもたちの意識を高め、かつ日常的実践におけるこれらの権利の積極的活用を推進することによってこれらの権利の実施を積極的に促進するとともに、次回の報告書でこの点に関する進展を報告するよう、勧告する。 5.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 36.委員会は、家庭における子どもの不当な取扱いならびにドメスティックバイオレンスおよびそれが子どもに与える影響に関する研究および意識啓発に関して、締約国においてほとんど進展がなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、学校における体罰が法律で禁じられていないことを懸念するものである。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの不当な取扱いおよび虐待ならびにドメスティックバイオレンスの性質および規模を評価するための包括的研究を実施するとともに、この問題に対応するための政策およびプログラムを立案するために当該研究の結果を活用すること。 (b) 子どもの虐待およびネグレクトを防止するために必要な措置(たとえば子どもの不当な取扱いの悪影響に関する教育的公衆キャンペーン、子育て教室)をとるとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進すること。 (c) あらゆる形態の暴力(家庭、学校その他の施設における子どもの体罰および性的虐待を含む)を禁止するための立法措置をとること。 (d) 苦情を受理し、監視しかつ調査する(必要なときは介入することも含む)ための、効果的かつ子どもに配慮した手続および機構を設置すること。その際、被害者が援助を求めることの妨げとなる社会文化的障壁への対応およびその克服に特段の注意を払うこと。 (e) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けないことおよびそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事案を捜査しかつ訴追すること。 (f) 被害者のケア、回復および再統合を行なうこと。 (g) 教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家を対象として、不当な取扱いの事案の発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。 (h) とくにユニセフおよびWHOの援助を引き続き求めること。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 38.委員会は、障害者に関する法案が作成されつつあり、かつそこで障害者評議会の設置が提案されている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、専門的なサービスおよび教育に対する障害のある子どものアクセスが全般的に不十分であり、かつ家族への支援が不十分であることを懸念するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの障害の原因および規模を評価するための調査を実施すること。 (b) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および「障害のある子ども」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に考慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および実務を見直すこと。 (c) 必要な専門的資源および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうこと。 (d) コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しかつ拡大するためにいっそうの努力を行なうこと。 (e) あらゆる形態の障害のある子どもを普通教育に包摂するためにいっそうの努力を行なうこと。 (f) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 保健 40.委員会は、小児期疾病統合管理戦略の採用、および、さまざまな取り組み(共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」など)に対する締約国の支援を歓迎するとともに、最近の複数指標クラスター調査で明らかにされた、児童保健および妊産婦保健における達成に留意する。しかしながら委員会は、以下のことをなお懸念するものである。 (a) 同国の保健センターのサービスの範囲および質が限定的であること。 (b) 訓練を受けた保健従事者の立ち会いがない出産が約14%にのぼっていること。 (c) ケアの質に関して官民の保健サービス間に相当の隔たりがあること、および、ほとんどの人は保険に加入していないために民間サービスにアクセスできないこと。 (d) 北部の母親のうち、経口保水療法を用いて子どもの下痢に正しく対応している親が25%にすぎないこと。 (e) ヨウ素添加塩を使用している世帯が約60%にすぎないこと。 (f) 農村部において、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスが不十分であること。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公的プライマリーヘルスケアに対する締約国のコミットメントに相応した、人的資源および財源の十分な配分が行なわれ、かつ、とくに農村部のすべての子どもが保健ケアにアクセスできることを確保すること。 (b) 小児期疾病統合管理戦略を国全域で実施するための努力を引き続き行なうこと。 (c) 乳幼児期の家庭看護実践の向上を促進するためにいっそうの努力を行なうこと。 (d) 共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」を引き続き支援しかつ拡大すること。 (e) 引き続き、とくにユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。 思春期の健康 42.委員会は、HIV/AIDS啓発キャンペーンに対する締約国の支援を歓迎する。しかしながら委員会は、思春期の健康に関して利用可能な、リプロダクティブヘルスおよび精神保健関連のカウンセリング・サービスが不十分であることを懸念するものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年が、リプロダクティブヘルスその他の思春期の健康に関わる問題に関する教育および子どもに配慮しかつ秘密が守られるカウンセリング・サービスにアクセスでき、かつこのような教育およびサービスを提供されることを確保すること。 (b) 学校制度において、思春期の健康教育の分野における努力を強化すること。 (c) HIV/AIDS啓発予防キャンペーンを継続しかつ強化すること。 (d) 引き続き、ユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。 7.教育 44.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 初等学校および中等学校を中退する児童生徒、とくに農村部の子どもおよび女子の割合が高いこと。 (b) 教科書および教材が足りない学校が多いこと。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 校舎の衛生設備の不十分さ、早期婚、通学にともなう間接費用および学校送迎の欠如といった問題に対応することにより、とくに農村部におけるおよび女子による初等中等段階での学校中退の問題を食いとめるための取り組みを強化すること。 (b) 学習教材および備品の供給を確保するために必要な資源配分のため、いっそうの努力を行なうこと。 46.委員会は、基礎教育の質向上を目的とした「グローバル教育イニシアティブ」が採択されたこと、および、カリキュラム改革に向けて若干の努力が行なわれてきたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、報告書で提示された教育の目的には条約第29条に掲げられた目的が十分に反映されていないこと、および、とくに以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 公教育制度が、分析的スキルの発達よりも暗記学習を引き続き重視しており、かつ子ども中心のものとはなっていないこと。 (b) 人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することが明示的にカリキュラムの一部とされていないこと。 47.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 批判的思考および問題解決スキルの発達の重要性を強調する、カリキュラムおよび教授法の改革プロセスを――子どもの全面的参加を得ながら――進めること。 (b) 教育において、子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることが指向されるようにすること。 (c) とくに人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することとの関連で、学校カリキュラムに人権教育(子どもの権利を含む)を含めること。これとの関連で宗教的指導者の動員が図られなければならない。 (d) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 8.特別な保護措置 難民および庇護希望者 48.委員会は、とくに保護者のいない未成年者、教育へのアクセスおよび出生登録の確保との関連で、締約国が難民の子どもに関して行なっている努力に評価の意とともに留意する。委員会は、難民の子どもの保護を確保するうえで重要な一歩となるUNHCRとの了解覚書に関する進展を歓迎するものである。しかしながら委員会は、庇護に関わる問題についての立法上または行政上の規定が存在しないことを懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第2条および第22条にしたがい、難民および庇護希望者である子どものすべての権利を確保するための効果的な措置を引き続きとること。 (b) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書の批准を検討すること。 (c) 国際基準に合致した国内難民法を導入するための措置をとること。 (d) UNHCRとの協力を継続しかつ強化すること。 経済的搾取 50.委員会は、ILO第138号条約の批准を歓迎する。委員会はさらに、就労が認められるための最低年齢を15歳に引き上げることを目的とした1959年労働法の改正を歓迎するものである。しかしながら委員会は、14歳未満の子どものおよそ7%が労働者として雇用されていること、および、まさに多くの児童労働が集中しており、かつ多くの場合に危険な条件をともなうインフォーマル部門(すなわち家族経営事業、農業)での労働に従事している子どもには効果的な監察を含む労働法の規定が適用されないことを、依然として懸念する。さらに委員会は、1958年農業関係法の改正案においてこれらの懸念への対応が十分に行なわれていないことに留意するものである。 51.条約第32条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ILO第146号勧告を考慮し、十分な人的資源および財源ならびに研修の提供を通じて労働査察を強化し、かつ防止およびリハビリテーションのためのあらゆる必要な措置をとりながら、子どもの権利条約第32条およびILO第138号条約が法律上も実際上も実施されることを確保するための即時的かつ効果的な措置をとること。 (b) ILOおよびユニセフの援助を求めること。 少年司法の運営 52.委員会は、締約国が少年司法制度の改革プロセスを開始した旨の情報には留意するものの、この改正が子どもの権利を基盤とする包括的な計画ではないこと、および、現在、以下のもののようなさまざまな問題が存在していることを、依然として懸念する。 (a) 犯罪を行なった7~15歳の子どもが(必ずしも収監刑ではないとはいえ)刑を言い渡される可能性があること。 (b) 物乞いのような子どもの問題行動が地位犯罪として犯罪化されていること。 (c) 審判前勾留に対する厳格な制限が実際には遵守されていないように思われること。 (d) 身柄拘束刑に代わる措置の利用が稀にしか行なわれないこと。 (e) 少年を対象とする拘禁所の環境がしばしば過酷なものとなっていること。 (f) 条約で唱道されている、少年犯罪問題への対応((たとえば根本的な社会的要因への対応)に対するホリスティックなアプローチ(防止、特別手続およびダイバージョンを含む)が締約国によって十分に考慮されてこなかったこと。 53.委員会は、締約国が、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)およびこの分野における他の関連の国際基準(北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針など)を法律および実務に全面的に統合した少年司法制度を設置するための、包括的な国家的戦略を策定しかつ実施するよう、勧告する。委員会は、締約国が、以下の目的のために特段の努力を行なうよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を15歳のまま維持するとともに、法律に抵触した15歳未満の子どもに対し、刑事司法制度を通じてではなく子ども保護手続を通じて対応するための措置をとること。 (b) 18歳未満の者が成人として審理されないことを確保すること。 (c) 自由の剥奪が、最後の手段としてのみ、可能なもっとも短い期間で用いられ、かつ裁判所による認可の対象とされること、および、18歳未満の者が成人とともに収容されないことを確保すること。 (d) 子どもが法的援助および独立のかつ効果的な苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (e) 司法制度、政策および社会的支援体制の連携を強化すること。 (f) 子どもの社会的更生の分野で専門家の研修を行なうこと。 9.報告書の普及 54.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる段階の統治機構および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 55.報告の定期性に関して委員会が採択した勧告(CRC/C/114 and CRC /C/124参照)に照らし、かつ締約国の第3回定期報告書の提出期限が第2回報告書の検討後2年以内であることに留意し、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を、2009年2月13日(すなわち条約にしたがって定められた提出期限の18か月前)〔まで〕に提出するよう慫慂する。当該報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/214.html
総括所見:イタリア(第2回・2003年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.198(2003年3月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年1月16日に開かれた第840回および第841回会合(CRC/C/SR. 840 and 841参照)において、2001年3月21日に提出されたイタリアの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.13)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合(CRC/C/SR.862参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、委員会の報告ガイドラインにしたがった、付属文書をともなう第2回定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、報告書の批判的性格およびその作成に至るまでの参加型プロセスを歓迎するものである。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/ITA/2)への文書回答が時宜を得た形で提出されたことにより、締約国における子どもの状況に関していっそう明確な理解を得られたことにも留意する。委員会はまた、締約国代表団との間に持たれた前向きな対話にも留意するとともに、条約の実施に直接従事するハイレベルかつ大規模な代表団の出席により、締約国における子どもの権利に関する理解を向上させられたことを認知するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の2つの選択議定書が批准されたこと。 (b) 子どもに関する特別議会委員会および国家子ども・青少年監視機関(法律第451/97号)が設置されたこと。 (c) 国家子ども・青少年資料分析センターが設置され、子どもに関する印象的な量のデータおよび調査研究を収集してウェブサイトで利用可能としていること。 (d) 子どもおよび青少年の権利および機会の促進について取り上げ、国家子ども・青少年基金の設置について定める規定を掲げた法律第285/97号が採択されたこと。 (e) 子どもに被害を与える買春、ポルノおよびセックスツーリズムの搾取を禁じた法律第269/98号が採択されたこと。 (f) 女性性器切除反対キャンペーンが展開されていること。 (g) 障害のある子どもが普通学校に広く包摂されていること。 (h) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が批准されたこと。 (i) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約が批准されたこと。 C.主要な懸念事項および勧告 前回の総括所見 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.18)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.41)の一部、とくに、パラ13~15および22に掲げられた、条約の実施の調整、差別の禁止および子どもの不当な取扱いに関するものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。これらの懸念および勧告はこの文書でもあらためて繰り返されているところである。 5.委員会は、締約国に対し、まだ実施されていない前回の勧告およびこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 1.実施に関する一般的措置 立法 6.委員会は、多くの実体的法律が採択されてきたこと、および、その一部で条約に言及されていることに留意する。加えて委員会は、検討中の法案(少年司法および教育に関するものを含む)について締約国から提供された情報を歓迎するものである。 7.委員会は、締約国が、引き続き法律を厳密に見直すとともに、国および地方の法律が、権利を基盤とし、条約を含む国際基準に一致し、かつ効果的に実施されることを確保するよう、勧告する。 資源 8.委員会は、若い世代の育成は投資分野のひとつであるという展望を提示した、「子ども・青少年問題に関するイタリアの協力の指針」が採択されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が、条約第4条で定められているとおり「利用可能な資源を最大限に用いて」実施されていないことを、依然として懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、子どもおよびその家族に配分される資源を引き続き可能なかぎり増加させるとともに、子どもに支出される予算の割合を分析し、優先課題を特定し、かつ「利用可能な資源を最大限に用いて」資源を配分する目的で、締約国全域のあらゆる部門別予算および総予算の分析を行なうよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、外務省の国際開発援助協力によって行なわれる活動にこの原則を適用することも勧告するものである。 調整 10.委員会は、子どもに関わる政策およびプログラムを国、州および地方のレベルで調整する国家子ども・青少年監視機関(法律第451/97号)が設置されたことを歓迎する。加えて委員会は、この国家的監視機関が、子どもに関わる優先順位の設定および子どもに関わるすべての行動の調整を目的として2年ごとに子どものための国家的行動計画を起草する責任を負っていることに、評価の意とともに留意するものである。委員会はさらに、国と州の間で諸活動を調整し、かつ州および国のレベルにおける政策の実施を監視することを目的として、国・州会議(Conferenza Stato-Regioni)の定期的会合が開かれていることに留意する。委員会は、このような調整が十分ではないこと、および、いくつかの具体的問題に関する調整がこの国家的監視機関の外で行なわれていることを懸念するものである。委員会はまた、非政府組織(NGO)との調整が構造化された形で行なわれていないことも懸念する。 11.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 前回勧告した(CRC/C/15/Add.41、パラ13)ように、子どもの促進および保護のための政策の実施に関する、国、州および地方のレベルにおける政府機関内および政府機関間の効果的調整(とくに国家監視機関および国・州会議によるもの)を強化すること。 (b) とくに地方レベルで、子どもの権利のために活動しているNGOとのいっそう緊密かつ積極的な協力が行なわれることを確保すること。 (c) 国家監視機関の活動に対する子ども参加を奨励すること。 国家的行動計画 12.委員会は、子どものための新たな行動計画に関する討議が議会で行なわれる予定であること、および、締約国が、子どもに関する国際連合総会特別会期(UNGASS)の成果文書である「子どもにふさわしい世界」を実施するための別の計画を策定する可能性について検討していることに、留意する。委員会は、これらの2つの計画の間で不一致が生じる可能性があることを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家行動計画を採択するため、その検討を速やかに進めること。 (b) 国家行動計画と、UNGASS成果文書を実施するための計画との調和を確保すること。 (c) 子どもに関して達成された進展の効果的な監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の効果的評価を行なうこと。 独立の監視体制 14.委員会は、4つの州に子ども時代護民官事務所が設置され、かつ国の子ども護民官を設置するための努力(とくに議会上程中の法案を含む)が行なわれていることに留意するものの、州および地方のレベルで子ども個人の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた、条約の実施を監視するための独立した中央機構が存在しないことを、依然として懸念する。 15.委員会は、締約国が、条約の実施を監視しかつ当該実施における進展を評価するため、独立した国内人権機関の一部として(独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号参照)、かつ人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(「パリ原則」、国連総会決議48/134付属文書)にしたがって、可能であれば国レベルの独立した子どもオンブズマンを設置するための努力を完了させるよう、勧告する。当該オンブズマンは、子どもがアクセスしやすく、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限を与えられ、かつ、これらの苦情に効果的に対応する態勢を備えたものであるべきである。委員会はさらに、国および州の機関の間で適切な連携を発展させるよう勧告する。 データ収集 16.委員会は、とくに国家子ども・青少年資料分析センターの設置を通じてデータ収集を向上させるために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約が対象とする一部領域についてのデータが不十分であることを依然として懸念するものである。委員会はまた、データ収集がいまなお家族中心アプローチに基づいて行なわれており、子どもが自律した人間としてとらえられるアプローチが採用されていないことも、懸念する。委員会はさらに、データ収集を担当するさまざまな機関およびさまざまな州の間で一貫性が欠如していることを懸念するものである。 17.前回の勧告(前掲パラ14)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の勧告をあらためて繰り返す。 (a) もっとも脆弱な立場に置かれた集団(障害のある子ども、ロマの子ども、移住者家族に属する子ども、保護者に付き添われないままイタリアに入国した子ども、暴力の被害を受けた子どもならびに経済的および社会的に不利な立場に置かれた世帯の子どもを含む)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータを体系的に収集しかつ分析するための機構を強化すること。 (b) 条約の実施および監視のための政策およびプログラムを立案しかつ評価するにあたって、これらの指標およびデータを有効に活用すること。 (c) 国および州の双方のレベルで、さまざまな機関によるデータ収集プロセスの一貫性を確保すること。 研修/条約の普及 18.委員会は、とくに国家子ども・青少年資料分析センターを通じて条約普及のための努力が行なわれていること、および、とくに、公民教育に子どもの権利が含まれていることに評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、普及、意識啓発および専門家の研修に関わる活動が常に体系的かつ対象の明確なやり方で行なわれているわけではないことを、依然として懸念するものである。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府機関の間で条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラムを強化しかつ継続すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止 20.委員会は、締約国で差別に関するいくつかの監視機関が設置されたこと、および、法律第40/98号(出入国規則および外国人の状況に関する規則)に差別についての規定が掲げられていることに留意する。にもかかわらず、委員会は、マイノリティに対する人種主義的事件、公的発言におけるヘイトスピーチの使用、および、とくに保健、社会福祉、教育および居住の分野で貧しい子ども、ロマの子ども、イタリア人以外の子ども(保護者のいない未成年者を含む)および障害児が経験している、経済的および社会的権利の享受における格差について懸念を覚えるものである。 21.条約第2条およびその他の関連条項ならびに前回の勧告(前掲、パラ17および18)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンのようなあらゆる適当な措置をとるとともに、人種差別撤廃委員会の勧告(A/56/18、パラ298および320)を実施すること。 (b) 人種主義、人種差別、外国人排斥および関連の不寛容のいかなる行為も犯罪とし、かつこれらの行為に対して適当な刑事制裁を科すための努力を強化すること。 (c) 子どもによる権利の享受における既存の格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、この評価に基づき、積極的措置を通じて差別を防止しかつ解消するための必要な措置をとること。 (d) 地方自治体への権限委譲プロセスにより、子どもが属する州の豊かさに基づく子ども間の格差の解消が増進されることを確保すること。 (e) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもへの資源および社会サービスを引き続き優先させ、かつその対象を明確化すること。 (f) 拘禁されている外国人の子どもの状況を速やかに研究し、これらの子どもの全面的権利(とくに教育に対する権利)を差別なく確保し、かつ社会への統合に対するこれらの子どもの権利を確保すること。 22.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」(2001年)で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち条約に関わるものについて、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書で記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 23.委員会は、憲法裁判所が子どもの最善の利益の原則を憲法上の原則と位置づけたことを歓迎するものの、締約国の政策およびプログラムの実施において子どもの最善の利益の一般原則(第3条)が全面的には適用されておらずかつ適正に統合されていないことを依然として懸念する。 24.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則がすべての法律および予算ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、条約第12条に掲げられた一般原則が実際上全面的には適用されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、意見を聴かれる子どもの権利が、子どもに影響を与える手続(とくに親の別居、離婚、養子縁組もしくは里親養護の事案)または教育において不十分にしか保障されていないことを懸念するものである。 26.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 裁判所における手続および行政上の手続を規律する立法において、自己の意見を形成する能力のある子どもがその見解を表明する権利を認められ、かつ当該見解が正当に重視されることが確保されるべきこと。 (b) 脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般におけるすべての子どもの参加権がとくに重視されるべきこと。 (c) この原則の実施に関する、公衆一般の意識啓発ならびに専門家の教育および研修が強化されるべきこと。 3.市民的権利および自由 アイデンティティに対する権利 27.委員会は、養子が、成年に達した後にかつその子どもの最善の利益であることが証明された場合でさえ自己の実親の素性を知ることができないことを懸念する。委員会はさらに、婚外子が、母および(または)父によって認知されなければ、法律上は母も父も有しないことになるのを懸念するものである。 28.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子であるか、いずれの親からも認知されていない婚外子であるかに関わらず、自己の親の素性を知る子どもの権利が尊重されることを可能なかぎり確保すること。 (b) (マルクス対ベルギー(Marckx v. Belgium)事件における欧州人権裁判所の決定および「母親は常に確定している」(mater semper certa est)という原則にしたがって)婚外子が出生時から法的に母を有することを確保し、かつ(「安易な」子どもの遺棄を防止する方法として)父によるこれらの子どもの認知を奨励する目的で、法律を緊急に見直しかつ改正すること。 (c) 婚外子の法的地位に関する欧州条約を批准すること。 思想の自由 29.委員会は、締約国報告書(パラ147)で述べられているように、子ども、とくに小学生の子どもが、主としてカトリックの信仰を取り上げている宗教の授業を欠席した場合に周縁化されるおそれがあることを、懸念する。加えて委員会は、親、とくに外国出身の親が、宗教の授業が義務的なものではないことを常に理解しているわけではないことを懸念するものである。 30.条約第2条、第14条および第29条に照らし、委員会は、締約国が、親(とくに外国出身の親)が関連の書式に記入する際、カトリックの信仰に基づく授業は義務的ではないことを確実に理解するようにすることを勧告する。 拷問および不当な取扱い 31.委員会は、法執行官が子どもに対する不当な取扱いを行なっているという訴えがあること、および、とくに外国人およびロマの子どもに対する虐待が蔓延していることを、深く懸念する。 32.前回の勧告(前掲パラ20)にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の犯罪を刑法に編入すること。 (b) 逮捕、尋問および警察留置の際にならびに拘禁センターにおいて行なわれる不当な取扱いについての法執行官に対する苦情を受理するための、子どもに配慮した機構を設置すること。 (c) 警察および憲兵隊ならびに拘禁センターの専門家を対象として、子どもの人権に関する体系的研修を実施すること。 4.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 33.委員会は、養子縁組および里親養護に関する法律第184/83号(法律第149/2001号による改正法)が締約国全域で広く実施されていないこと、および、いまもなお里親養護よりも施設に措置される子どものほうが多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、社会的保護の目的で施設に措置され、かつ時として罪を犯した少年とともに施設に措置される子どもが多いことにも、懸念を表明するものである。加えて委員会は、国家子ども・青少年資料分析センターによる1998年の研究によれば、施設入所期間がきわめて長くなる場合があること、家族との接触が常に保障されるわけではないこと、および、これらの施設のうち19.5%は適正な認可を受けていないことを、懸念する。 34.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法律第184/83号の実施を確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 防止措置として、親の教育およびカウンセリングならびにコミュニティを基盤とするプログラム等を通じ、子どもの養育責任に関して家族を援助するための社会的な援助および支援を向上させること。 (c) 里親養護、家庭的里親ホームおよび家族を基盤とする他の代替的養護のような、施設措置に代わる諸形態を発展させるために効果的措置をとるとともに、子どもの施設措置は最後の手段としてのみ行なうこと。 (d) 独立機関による施設の定期的査察を確保すること。 (e) 養護を受けている子どもからの苦情を受理しかつこれに対応する効果的機構を設置し、養護の水準を監視し、かつ、条約第25条に照らし、措置の定期的審査を確立すること。 養子縁組 35.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を締約国が批准したことを歓迎するものの、関係する認可斡旋機関によって国内養子縁組の手続および費用が異なることを依然として懸念する。 36.条約第21条に照らし、委員会は、締約国が、以下のことのために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国全域の認可斡旋機関の間で国内養子縁組の手続および費用を調和させること。 (b) 前掲ハーグ条約を批准していない(送り出し)国との間で二国間協定を締結すること。 暴力、虐待およびネグレクト 37.委員会は、子どもの不当な取扱い、虐待および性的搾取に関する行動の調整のための国家委員会が設置されたこと、および、総合的戦略が採択されたことを歓迎する。加えて委員会は、性暴力に関する法律第66/96号およびドメスティックバイオレンスに関する法律第154/2001号が制定されたことを歓迎するものの、子どもの虐待および(または)ネグレクトに関する包括的なデータおよび情報が存在しないことを、依然として懸念するものである。さらに委員会は、子どもに対する暴力に関して法律に年齢制限が定められており、14歳または16歳(加害者との関係による)以上の子どもは同一の保護から利益を受けられないことを、懸念する。 38.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) このような慣行の規模、範囲および性質を評価する目的で、子ども、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する、とくに家庭および学校で行なわれる暴力、不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)についての研究を実施すること。 (b) 子どもの虐待を防止しかつこれと闘う目的で、子どもたちの関与を得ながら意識啓発キャンペーンを発展させること。 (c) 子どもに対するあらゆる形態の暴力からの特別な保護について設けられている年齢制限に関する法律を改正すること。 (d) 現行諸制度の活動に関する評価を実施し、かつこれらのタイプの事案に関与する専門家に対して研修を行なうこと。 (e) 被害を受けた子ども(そのプライバシー権も含む)の保護の向上を確保する目的で、ドメスティックバイオレンスならびに家庭における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の事案を、子どもに配慮した調査手続および司法手続を通じて効果的に調査すること。 5.基礎保健および福祉 基礎保健 39.委員会は、「病院における子どもの権利憲章」の採択を歓迎するとともに、交通事故による子どもの死亡件数およびHIV/AIDSに感染した子どもの人数が劇的に減少したことに留意する。しかしながら委員会は、脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもが保健サービスの利用にためらいを覚えていることを懸念するものである。 40.委員会は、締約国が、すべての子どもを対象として保健サービスへのアクセスを促進し、かつ、すべての子どもが利用可能な保健サービスを求めるように親に対して奨励するための積極的措置をとるよう、勧告する。 思春期の健康 41.委員会は、青少年の間で心理的障害(とくに摂食障害)が広く蔓延していること、および、青少年(とくに外国系の青少年)の中絶件数が相対的に多いことを、懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスが思春期の子どもにとってアクセスしやすく、かつこれらの子どもに配慮したものであることを確保しながら強化するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、青少年の心理的障害の原因および背景に関する研究を実施すること。 (b) とくに性教育を含む健康教育を学校カリキュラムの一部とし、かつ避妊手段の利用に関する情報キャンペーンを強化することによって10代の妊娠率を削減するために、さらなる必要な措置をとること。 6.教育 43.委員会は、義務教育期間を8年から10年に延長する法律第9/99号が採択され、かつ教員の養成および研修を改善するためのさまざまなプログラムが実施されていることを歓迎するものの、後期中等教育における中退率が高く、かつ、子どもの文化的および社会経済的背景ならびにジェンダー(女子のほうが男子よりも中等教育修了証書を取得する人数が多い)、障害および民族的出身のようなその他の要因によって子どもの教育上の成果に差異があることを、依然として懸念する。加えて委員会は、学校でいじめが蔓延していること、および、教育において子どもの意見が考慮されていないことを懸念するものである。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 後期中等教育における中退率を削減するための努力を強化すること。 (b) 女子および男子の間ならびに異なる社会的、経済的または文化的集団の子どもの間に見られる教育上の達成についての不平等を解消し、かつすべての子どもに良質な教育を保障するために、あらゆる必要な措置をとること。 (c) 学校におけるいじめその他の形態の暴力を防止するための十分な機構および体制を、子どもたちの参加を得ながら設置するための措置をとるとともに、これらの戦略の策定および実施に子どもたちを含めること。 (d) 締約国全域の法律において、条約第12条が反映され、かつ、自己の教育に関するあらゆる事柄(学校規律を含む)について意見を表明しかつそれを正当に重視される子どもたちの権利が尊重されることを確保すること。 7.特別な保護措置 保護者のいない未成年者 45.委員会は、外国人の子ども保護委員会が設置されたこと、および、出入国管理に関する法律第40/98号で、保健へのアクセスに関わって条約への具体的言及が見られることを歓迎する。しかしながら委員会は、保護者のいない未成年者を受け入れる十分な態勢が整えられていないこと、さまざまな州で保護者のいない未成年者に対応する手続の調和が図られていないこと、法律第189/2002号の新たな規定で資格外移民の拘禁が認められていること、政令第113/99号の実施によって十分なフォローアップが行なわれない送還が増加していること、および、未成年者の在留許可に関して2000年に変化が生じたことを、依然として懸念するものである。 46. 条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ、子どもが庇護を希望しているか否かにかかわらず、委員会は、締約国が子どもに関して以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引および(または)性的搾取の被害を受けた者に特別な注意を払いながら、保護者のいない未成年者のための特別受け入れセンターを十分な数だけ設置するための努力を強化すること。 (b) これらのセンターにおける滞在が可能なもっとも短い期間に留められ、かつ、受け入れセンターでの滞在中および滞在後に教育および保健へのアクセスが保障されることを確保すること。 (c) 締約国全域で保護者のいない未成年者に対応するための、子どもの最善の利益にかなう調和化された手続を可能なかぎり早期に採択すること。 (d) 子どもの最善の利益にかなう場合には援助をともなう送還が構想され、かつこのような子どもについてフォローアップが保障されることを確保すること。 経済的搾取 47.委員会は、締約国における児童労働について国立統計研究所が最近発表した報告書に留意するとともに、この現象が締約国で広く蔓延していることに懸念を表明する。 48.委員会は、締約国が、最近の研究に基づき、とくに意識啓発活動および関連する要因の発見を通じて児童労働を防止しかつこれを解消することを目的とする、具体的かつ対象の明確な目標を掲げた包括的戦略を策定するよう、勧告する。 性的搾取および人身取引 49.委員会は、子どもを対象とする買春、ポルノおよびセックスツーリズムの搾取を禁じた法律第269/98号が採択され、かつ、「児童虐待ならびに性的目的の未成年者および女性の人身取引に対抗する政府の行動についての省庁間調整委員会」が設置されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において性的目的で人身取引の対象とされる子どもが多いことを、依然として懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1996年および2001年の〔子どもの〕商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントにしたがい、性的目的の子どもの人身取引を防止しかつこれと闘うための努力を強化すること。 (b) 法律第269/68〔ママ〕号の実施状況を、とくに同法が性的搾取の「需要側」の問題を扱っている点について監視すること。 (c) この分野の政策およびプログラムに対し、十分な資源(人的資源および財源の双方)が配分されることを確保すること。 少年司法の運営 51.委員会は、少年司法制度の改革が行なわれようとしていることに留意する。委員会は、少年司法制度において外国系の子どもおよびロマの子どもに対する差別が行なわれていること、子どもの拘禁環境を監視する独立の体制が設けられていないこと、ならびに、少年司法制度関係者の研修が不十分であることを、懸念するものである。 52.委員会は、締約国が、少年司法制度の改革に際し、条約の規定および原則、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準を全面的に統合するよう、勧告する。 53.とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 外国系の子どもおよびロマの子どもに対する差別を防止しかつ解消するため、意識啓発キャンペーンおよび関係者の十分な研修によるものも含むあらゆる必要な措置をとること。 (b) 未成年者を対象とする受け入れセンターおよび刑事施設への、公平な独立機関による定期的訪問を認めるとともに、自由を奪われたすべての子どもが、独立の、子どもに配慮したかつアクセスしやすい苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (c) 少年司法の運営に責任を負う者を対象として、子どもの権利に関する研修を実施すること。 マイノリティ集団に属する子ども 54.ロマの子どもの状況を向上させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、ロマの子どもが困難な社会的状況にあり、かつこれらの子どもによる教育および保健サービスへのアクセスが不十分であることを、依然として懸念する。加えて委員会は、この集団の子どもに対し、時として締約国の職員からも差別が行なわれていることを、深く懸念するものである。 55.委員会は、締約国が、社会的排除および差別を防止し、かつロマの子どもがその権利(教育および保健ケアへのアクセスを含む)を全面的に享受できるようにするための包括的かつ積極的な政策およびプログラムを、ロマのNGOと協力しながら発展させるよう勧告する。 8.報告書の普及 56. 最後に委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した定期報告書を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、委員会が提起した事前質問事項に対する文書回答、関連の議事要録および報告書について委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 9.次回報告書 57.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2008年10月4日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
https://w.atwiki.jp/goodgames/pages/762.html
The Open 仕様変更5 いわゆる芋蹴り設定を行った時だったと思いますが、 過去にゲーム展開の悪化に関する懸念について記載しました。 残念ながら懸念は現実のものになっているようで、 実質的には40名程度でプレイしているのと変わらない状況に なってしまっているようです。 あまり良い傾向ではないので何らかの対策が必要ですが、 何も制限しないか入場規制にするか。 または芋蹴り方式のまま、判定基準を大幅緩和するなど。 この場合は、期限付きBanの期間を大幅に延長するべきかもしれません。 現行は12時間ですが、例えば1週間など。 本日は予想外のアクシデントにより時間を失いましたので 近日中に再検討いたします。 ( - )
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/43.html
総括所見:韓国(第2回・2003年) 第1回(1996年)/第3回・第4回(2011年)/第5回・第6回(2019年)OPAC(2008年)/OPSC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.197(2003年3月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年1月15日に開かれた第838回および第839回会合(CRC/C/SR.838 and 839参照)において、2000年5月1日に提出された大韓民国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.14)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/REPKO/2)に対する詳細な文書回答の提出により、締約国における子どもの状況についてより明確な理解が得られたことを歓迎する。委員会はさらに、締約国がいくつかの部門から選ばれたハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、討議中に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約をさらに実施するために制定された法律、とくに、児童虐待事案の調査および通報について扱うドメスティック・バイオレンスの処罰のための特別法(1997年)、および、19歳未満の者からの性的サービスの購入に関与した者を犯罪化する青少年保護法(2000年)を歓迎する。 4.委員会は、2001年に国家人権委員会が設置されたことを歓迎する。 5.委員会は、委員会が過去に勧告したように、締約国がそれぞれ1999年および2001年にILO第138号条約および第182号条約を批准したことならびに最低就業年齢を15歳に引き上げたことを歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、1997年のアジア金融危機およびその後に行なわれた国際通貨基金の構造調整改革プログラムにより締約国が経済的および財政的制約に直面し、そのため経済的、社会的および文化的権利を実施する締約国の能力に影響が生じてきたことを認知する。委員会はまた、厳格な財政緊縮措置によって締約国が時宜を得たやり方で国際融資を返済できてきたこと、および、経済がおおむね回復したことにも留意するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.21)の検討を受けて採択された総括所見(CRC/C/15/Add.51)の勧告のほとんど、とくに以下の事項に関わる勧告が不十分にしか対応されていないことを遺憾に思う。 (a) 留保の撤回(パラ19)。 (b) 女子、障害児および婚外子に対する差別的態度と闘うための公衆教育キャンペーンの発展(パラ20)。 (c) 家庭、学校および社会生活への子どもの参加を促進するための措置(パラ26)。 (d) あらゆる形態の体罰の禁止(パラ22)。 (e) 条約第29条に掲げられた教育の目的を全面的に反映させることを目的とした、締約国の教育政策の見直し(パラ29)。 8.委員会は、これらの懸念をあらためて表明するとともに、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために持続的努力を行なうよう、促す。 留保 9.委員会は、第9条第3項、第21条(a)および第40条第2項(b)(v)に対する締約国の留保を、依然として非常に懸念する。 10.委員会は、犯罪を行なったことを理由として刑を言い渡された少年が上訴権を有することに留意しつつ、締約国に対し、第40条第2項(b)(v)に対して付した留保を可能なかぎり早期に撤回するよう奨励する。締約国はまた、1993年に採択されたウィーン宣言および行動計画にしたがって第21条(a)および第9条第3項に対する留保を撤回する目的で、子どもおよび親の双方が相互に接触を維持する権利を保障されるように民法改正のプロセスを進捗させること、および、国内養子縁組に対する公衆の態度を変革するための努力を強化することも奨励されるところである。 立法 11.委員会は、国内法の改正に留意しながらも、国内法がいまなお条約の規定および原則に全面的に一致していないことを依然として懸念する。 12.委員会は、締約国に対し、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう奨励する。 調整 13.委員会は、第8次社会経済開発5か年計画(1998~2002年)に、子どもに関する国家行動計画が含まれていることに留意する。しかし委員会は、種々の行政段階においてさまざまな省庁が運営している子どものためのあらゆる政策およびプログラムを調整する全面的権限を与えられた常設の中央機構が存在しないことを、依然として懸念するものである。 14.委員会は、締約国が、2001年に策定された「子どもの保護および子育てのための包括的計画」の適用範囲を拡大し、条約に基づくあらゆる権利、および、子どもに関する国際連合総会特別会期(2002年5月)で行なわれ、かつ「子どもにふさわしい世界」と題された成果文書に記載されたコミットメントを含めるよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、子どものためのあらゆる政策およびプログラムの調整を担当する常設の中央機構をひとつ指定するとともに、当該機構がその責務を効果的に履行するのに必要な権限ならびに十分な財源、人的資源および物質的資源を有することを確保するよう、勧告するものである。 公的機関による監視 15.委員会は、締約国が条約の実施を監視するための常設機関を政府内に設置することを検討している旨の、代表団から提供された情報を歓迎する。 15.委員会は、締約国がそのような監視機構の設置を進捗させ、かつ条約実施におけるその活動を積極的に監視するよう、勧告する。 独立の監視 17.委員会は、前掲パラ4に述べたとおり、国家人権委員会が設置されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、同委員会が子どもの権利についての専門性を何ら有していないことを懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(「パリ原則」)(国連総会決議48/134付属文書)および国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがって、次のことをするよう勧告する。 (a) 人権委員に子どもの権利の専門家が少なくとも1名いること、または同委員会が子どもの権利に関する小委員会を設けることを確保すること。 (b) とくに、子どもによる苦情申立てを子どもに配慮した方法で受理し、調査しかつこれに対応する同委員会の権限に関する意識を啓発することにより、国家人権委員会が子どもにとってアクセスしやすいものであることを確保すること。 資源配分 19.委員会は、この2年間の経済的回復にもかかわらず、子どものための中央予算の配分が、とくに健康および教育の分野において1997年以来着実に減少していることに、懸念とともに留意する。現在の支出水準は、子どもの権利の保護および促進に関する国および地方の優先課題に対応するには不十分であり、かつ、同様の経済発展水準にある他の国々の予算配分に匹敵していない。 20.委員会は、締約国が、以下の対応をとることにより、条約第4条の全面的に実施に特段の注意を払うよう勧告する。 (a) 「利用可能な資源を最大限に用いることにより」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させること。 (b) 支出の影響を評価する目的で、かつさまざまな部門で子どもに提供されているサービスの費用、アクセス可能性、質および実効性の観点からも、公共部門、民間部門およびNGO部門において子どもに用いられている国家予算の額および割合を特定すること。 データ収集 21.委員会は、締約国がその文書回答で表明した、現行のデータ収集機構では条約のあらゆる分野における18歳未満のすべての子どもが対象とされていない旨の懸念を共有するとともに、子どもの権利指標を開発する計画があることに留意する。 22.委員会は、締約国に対し、とくに18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータを収集するための効果的システムを確立する努力を継続しおよび強化し、かつ条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの策定、監視および評価のためにこれらのデータおよび指標を活用するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、条約の実施に関して達成された進展を継続的に評価できるようにするため、子どもの権利指標に関する活動を可能なかぎり早期に完了させるようにも奨励するものである。 市民社会との協力 23.子どもに対するサービスの提供における締約国と市民社会との協力には留意しながらも、委員会は、必要な基準設定が行なわれていないこと、および、政策立案レベルまたは報告プロセスにおける市民社会との協力が限られてきたことを懸念する。 24.委員会は、委員会は、条約の規定の実施におけるパートナーとしての市民社会の重要な役割を強調するとともに、締約国が、国および地方のレベルにおける条約実施のすべての段階(政策立案を含む)ならびに条約実施に関する将来の定期的報告書の作成に、より体系的かつ調和のとれた方法で非政府組織を関与させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、「サービス提供者としての民間セクターおよび子どもの権利の実施におけるその役割」をテーマとして2002年に開催された一般的討議の勧告(CRC/C/121、パラ121)を考慮に入れ、かつ、とくにサービス提供者の登録認可制度を改善することにより民間のサービス提供機関の監督を向上させるようにも勧告する。 普及 25.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に認識していないことを懸念する。 26.子どもの権利に関する情報を普及するためにNGOおよび国際組織が行なっている活動には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定ならびに条約の実施に関する自国の報告書を広く知らせるという、第42条および第44条に基づく自国の義務を想起するよう求める。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 一般公衆およびとくに子どもを対象とした、子どもの権利に関する公的意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教職員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を実施すること。 2.子どもの定義 27.委員会は、女子(16歳)および男子(18歳)の最低婚姻年齢が異なることを依然として懸念する。 28.委員会は、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げるべきである旨の、締約国に対する前回の勧告をあらためて繰り返す。 3.一般原則 29.委員会は、差別の禁止に対する権利(第2条)、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない旨の原則(第3条)、子どもの生命、生存および発達に対する権利(第6条)、ならびに、自己の意見を自由に表明し、かつその意見を年齢および成熟度にしたがって考慮される子どもの権利(第12条)のような、条約に掲げられた一般的原則および権利が、国および地方のレベルにおける締約国の法律、政策およびプログラムに全面的に反映されていないことを、懸念する。 30.委員会は、締約国が以下の対応をとるよう勧告する。 (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関するあらゆる関連の法律に適切に統合すること。 (b) 政治上、司法上および行政上のあらゆる決定ならびにすべての子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて、これらの原則を適用すること。 (c) あらゆるレベルにおける計画および政策立案、ならびに社会機関、保健福祉機関、教育機関、裁判所および行政機関による行動において、これらの原則を適用すること。 差別の禁止 31.委員会は、人種差別に関する情報が締約国報告書に存在しないこと、および、ひとり親家庭の子ども、婚外子、障害のある子ども、女子および移住者家族に対する差別行為についての情報量が限られていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、憲法において、条約において述べられているように人種、皮膚の色、言語、政治的その他の意見、民族的もしくは社会的出身、障害、出生またはその他の地を理由とする差別が明示的に禁じられていないことも、懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、条約第2条に列挙されたすべての事由を含める目的で、差別を明示的に禁ずる法律を制定するよう勧告する。加えて委員会は、締約国が、とくに公衆の教育および意識啓発のためのキャンペーンを通じて、とりわけひとり親家庭の子ども、婚外子、障害のある子ども、移住労働者の子どもおよび女子に対する社会的差別と闘うため、あらゆる必要な積極的措置をとるよう勧告する。 33.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重がいまなお制限されていることを懸念する。 35.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2000年に改正された児童福祉法が、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利を含めるために改正されることを確保するとともに、裁判所、行政機関、学校および教育制度の懲戒手続において、子どもに影響を与えるすべての事柄に関して子どもの意見の尊重を促進しかつ子どもの参加の便宜を図るために、立法を含む効果的措置をとること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうこと。 4.市民的権利および自由 表現および結社の自由 36.委員会は、管理者による生徒会の厳格な統制、および、初等中等学校の生徒が学外で行なう政治的活動を制限しまたは禁止する校則により、生徒の表現および結社の自由が制限されていることを懸念する。委員会はさらに、10代が独自に立ち上げたインターネットのチャットルームが公的機関によって恣意的に閉鎖させられてきたという訴えについて、懸念するものである。 37.条約第12条~第17条に照らし、委員会は、締約国が、学校内外の意思決定プロセスおよび政治的活動への子どもの積極的参加を促進し、かつすべての子どもが結社および表現の自由を全面的に享受することを確保するために、法律、教育部が発する指針および校則を改正するよう勧告する。 体罰 38.委員会は、学校における体罰が公式に容認されていることに、大きな懸念とともに留意する。委員会は、体罰は、とくにそれが子どもの尊厳の重大な侵害であることから、条約の原則および規定に一致しないという見解に立つものである(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の同様の見解も参照。E/C.12/1/Add.79, para. 36)。教育部の指針によって、学校で体罰を用いるか否かの決定が個々の学校管理者に委ねられていることは、一部の形態の体罰は受け入れられていることを示唆するものであり、したがって積極的かつ非暴力的な形態の規律を促進する教育上の措置を阻害するものである。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連の法律および規則を改正し、家庭、学校その他のあらゆる施設における体罰を明示的に禁止すべきであるという、国家人権委員会の勧告を実施すること。 (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について公衆教育キャンペーンを実施するとともに、そのような罰に代わる手段として、学校および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 5.家庭環境および代替的養護 代替的養護 40.委員会は、締約国が、家族から分離された子どもの施設措置に代わる手段としてグループホームを設置していることに留意する。しかしながら委員会は、グループホームの設置および里親養護制度の発展が依然として限定されており、かつ民間の代替的養護施設が政府の規制または定期的査察の対象とされていないことを、懸念するものである。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに里親家庭への金銭的支援を拡充し、かつ里親家庭を対象とするカウンセリングおよび支援のための機構を増やすことにより、グループホームの数および里親養護制度を引き続き拡大すること。 (b) 公立および私立のすべての施設にいる子どもについて、子どもの意見および最善の利益を考慮に入れ、かつ可能なときは常に家庭的環境への子どもの再統合を目的とする、措置の定期的審査が行なわれることを確保すること。 (c) ソーシャルワーカーを増員し、かつ、代替的養護を受けている子どもおよび脆弱な状況に置かれた家族に援助を提供するソーシャルワーカーの技術および能力を向上させること。 養子縁組 42.委員会は、否定的な文化的伝統が蔓延していることにより、国内養子縁組が権限ある公的機関の認可または関与なしに手配される場合があること、および、そのような手配においては子どもの最善の利益または適当なときは子どもの意見が必ずしも考慮されていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、国際養子縁組の件数が多いこと(これは、この形態の養子縁組が必ずしも最後の手段とされていないことを示唆するものである)にも懸念とともに留意し、前回の総括所見で述べた、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をまだ批准していないという懸念を繰り返すものである。 43.委員会は、締約国に対する前回の勧告を繰り返すとともに、以下のことを求める。 (a) 子どもの権利条約の原則および規定、とくに第21条に全面的に一致させるために国内法を改正することを目的とする、国内養子縁組および国際養子縁組の制度の包括的見直し。 (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准。 児童虐待およびネグレクト 44.委員会は、児童虐待およびネグレクトの通報に対応し、かつ被害者にカウンセリングおよび援助を提供する児童虐待防止センターが同国の多くの地域で設置されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、児童虐待およびネグレクトの苦情申立てを受理して効果的に対応し、かつ被害者に援助を提供する全国的システムが存在しないことを懸念するものである。 45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童虐待およびネグレクトの苦情申立てを受理し、監視しおよび調査し、ならびに必要なときは子どもに配慮したやり方で事案を訴追するための全国的システムを確立するために法改正を含むあらゆる適当な措置をとるとともに、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象としてこの点に関する研修を行なうこと。 (b) 介入または処罰だけではなく、適当なときは家族間暴力の被害者および加害者の双方に支援および援助を提供することを目的とし、かつ暴力の被害者全員がカウンセリングならびに回復および再統合に関する援助にアクセスできることを確保する全国的対応システムを発展させる目的で、児童虐待防止センターを設置する努力を強化すること。 (c) これらの問題の規模を適正に評価し、かつこれらの懸念に対応するための政策およびプログラムを立案する目的で、虐待およびネグレクトの加害者および被害者に関する、ジェンダーおよび年齢によって細分化されたデータを収集するための機構を確立すること。 子どもの扶養料 46.委員会は、離婚した親およびひとり親(主として母親)であって、法的に受け取る資格を有する子どもの扶養料の支払いを受け取っていない者の人数が多いことを懸念する。 47.第27条および子どもの最善の利益の原則(第3条)に照らし、委員会は、締約国が、裁判所の命令または当事者間の取決めに基づく子どもの扶養債務を、子どもおよびその監護権者である親にスティグマを与えないやり方で執行するため、あらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。たとえば締約国は、執行措置が定められるまでの間、支払期限が過ぎた子どもの扶養債務が監護権者に対して支払われることを確保するための国家基金の設置、または、子どもの扶養債務を負う被雇用者の給与から子どもの扶養料が自動的に天引きされる制度の導入を検討することが考えられる。 6.基礎保健および福祉 48.委員会は、子どもの保健指標が非常に良好であることを心強く感ずる。にもかかわらず、委員会は、保健に配分される政府予算の割合が1%に満たないこと、および、全保健ケア施設の9割は民間によって運営されていることを懸念するものである。委員会はまた、子どもを母乳で育てる母親の割合が1990年代以降顕著に減少していること、および、喫煙する青少年およびアンフェタミンその他の不法な物質を使用する青少年の人数が増えていることも懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 保健に配分される資金を相当水準まで増加させるとともに、低所得家庭が費用負担なしに保健制度にアクセスできるよう公的ケア施設制度を確立すること。 (b) 生後6カ月間は乳児に母乳のみを与えることを母親に奨励し、かつその利点について母親を教育するための措置をとるとともに、母乳育児に関する国家的規則を採択すること。 (c) 子どもを母乳で育てる女性の雇用にいかなる悪影響も生じないようにするための効果的対策をとること。 (d) とくにHIV/AIDSその他の性感染症に関する教育、10代の喫煙および薬物濫用の問題ならびに他の関連する問題に対応する包括的な青少年保健政策を策定する目的で、青少年の健康に関する研究を実施すること。 障害のある子ども 50.委員会は、〔障害のある〕子どもに対する社会的差別が広範に行なわれており、これらの子どもによる、「尊厳を確保し、自立を促進し、かつ地域社会への積極的な参加を助長する条件の下で(の)十分かつ人間に値する生活」に対する権利の享受が妨げられていることを、著しく懸念する。委員会はとりわけ、相当数の障害のある子どもが毎年遺棄されており、多くは学校に通うことができず、かつ学校に通う際は他の生徒から隔離されているという報告があることを懸念するものである。 51.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的討議(1997年)の勧告および障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)にしたがって以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親、子ども、教職員および一般公衆を対象とする意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン等を通じ、障害のある子どもに対する差別の文化と闘うための効果的措置をとること。 (b) 障害のある子どもの教育上のニーズおよび教育その他の社会サービスへのアクセスについて評価する、障害のある子ども(現在通学していない子どもも含む)の人数についての包括的調査を実施すること。 (c) 公共の建物および場所(学校およびレクリエーション施設を含む)に対する障害のある子どもの物理的アクセスを改善するための現行プログラムを拡大し、かつ初等前、初等、中等および高等教育段階における統合教育プログラムの数を増やすこと。 7.教育 52.委員会は、締約国の経済発展水準が相対的に高いにもかかわらず初等教育しか無償とされていないことを懸念するものの、締約国が中学校教育の無償化を進めているという情報を歓迎する。同様に、初等教育においては女子および男子の就学率に格差は存在しないものの、高等教育に進む女子は男子よりも相当に少ない。最後に、委員会は、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されるおそれがあるという懸念をあらためて繰り返す。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校に提供される物質的資源を増加させ、かつ授業の質を向上させることにより、私立学校に比べて低い公立学校の質を高めること。 (b) 初等前教育および中等教育の費用負担を軽減しかつ撤廃するための、期限を定めた戦略を策定すること。 (c) 女子の就学を促進し、かつ根強く残るジェンダーの固定観念に対応することにより、すべての者が能力に基づいて高等教育にアクセスできることを確保するための効果的措置をとること。 (d) 競争を軽減し、かつ条約第29条第1項ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた教育の目的を反映させるため、教育政策を見直すこと。 8.特別な保護措置 性的搾取 54.委員会は、子どもから性的サービスを購入した者の処罰を目的とする青少年保護法が2000年に制定されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、同法が効果的に実施されていないこと、および、子どもの性的搾取の蔓延度に関する利用可能なデータが限られていることを懸念するものである。委員会はまた、思春期の女子が金銭と引き換えに年上の男性と性的関係を結ぶ「援助交際」(Wonjokyuje)現象が広がっているという報告があることも懸念する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) それぞれ1996年・2001年に開催された第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で合意されたとおり、効果的なデータ収集措置を含む「子どもの商業的性的搾取に関する国内行動計画」を策定すること。 (b) 子どもに配慮した方法で苦情申立てを受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を研修すること。 (c) 性的虐待および性的搾取の被害を受けたすべての者が、回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。 (d) 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。 少年司法 56.委員会は、法律に違反したとして申し立てられかつ保護処分の対象とされた少年が、刑事手続を経ることなく、かつ弁護士による援助にもアクセスできないまま自由を奪われる可能性があることを懸念する。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保するとともに、少年司法制度に関与する職員を対象として専門的研修を実施すること。 (b) 自由の剥奪を最後の手段としてのみ用いるようにするとともに、自由の剥奪に至る可能性がある保護処分に関与するすべての少年が早期に弁護人にアクセスできることを確保すること。 (c) 未成年者を刑事手続または保護処分のいずれに付すかを決定する検察官の裁量権を撤廃するため、法律を改正すること。 移住労働者の子ども 58.委員会は、教育および社会福祉に関する法令に外国人の子ども、とくに資格外移住労働者の子どもの福祉および権利について定めた具体的規定が含まれていないことを懸念する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内法、とくに教育および社会福祉に関する法律を改正し、外国人の子ども(資格外移住労働者の子どもを含む)全員に対してサービスへの平等なアクセスを確保する具体的規定を含めること。 (b) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(1990年)の批准を検討すること。 9.子どもの権利条約の選択議定書および条約第43条第2項の改正 60.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書に署名したものの、批准はしていないことに留意する。 61.委員会は、締約国が子どもの権利条約の2つの選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 62.委員会は、条約第44条第6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般およびとくに子どもが入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回の報告書 63.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2008年12月19日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう促す。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年8月14日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/87.html
総括所見:インドネシア(第2回・2004年) 予備的所見(1993年)/第1回(1994年)/第3回・第4回(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.223(2004年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年1月13日に開かれた第920回および第921回会合(CRC/C/SR.920 and 921参照)において、2002年2月5日に提出されたインドネシアの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.23)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、提出が遅かったとはいえ締約国の第2回定期報告書が提出されたことおよび詳細な補足報告書が提出されたことを歓迎する。委員会はとくに、さまざまな分野の権利に関するほとんどのパラグラフに、達成された進展、締約国が直面している困難および今後5年間の優先事項に関する所見が記載されていることを評価するものである。委員会はさらに、締約国が大規模かつハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、率直な対話、ならびに議論の最中に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、報告書が参加型プロセスを通じて起草されたことを歓迎する。とくに、委員会は、非政府組織(NGO)および大学が関与したことならびに最終草案が公刊されたことを歓迎するものである。 4.委員会は、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(1998年批准)、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(1999年批准)、国際労働機関の最低年齢条約(1973年採択、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年採択、第182号)(それぞれ1999年および2000年に批准)のような多くの人権文書が批准されたこと、ならびに、憲法が改正されたこと(2002年)および人権の保護に関わる多くの法律が採択されたことを歓迎する。 5.委員会は、子どもの権利条約が翻訳されたことならびに相対的に広く公刊されかつ頒布されていることを心強く思う。 6.委員会は、民主化プロセスが進行中であり、かつ法律および政策に人権問題(子どもの人権を含む)が含まれていることをおおいに心強く思う。 7.委員会は、以下のような、子どもの権利および保護の促進を目的とした法律の採択およびさまざまな機構の設置を歓迎する。 (a) 2002年憲法に、子どもの権利を含む権利章典が盛りこまれたこと。 (b) 子どもの保護に関する2002年の法律第23号。 (c) 全国的教育制度に関する2003年の法律第20号。 (d) 「子どものための国家行動計画」。 (e) 子ども保護庁(1998年)。 (f) インドネシア子どもの保護委員会(Komisi Perlindungan Anak Indonesia)。 (g) 少年裁判所に関する1997年の法律第3号。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 8.委員会は、国内武力紛争、テロリズム、および、1万7000以上の島々から構成される締約国の地理的形態の特有の性質といった、締約国が直面する課題を認知する。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 9.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.10)の検討時に行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.25)の一部、とくに児童労働に関する国内法改正(パラ17)、子どもの権利の実施を監視する必要性(パラ19)、少年司法制度の包括的改革(パラ20)、子どものための十分な資源の配分(パラ21)、子どもに対するあらゆる形態の差別と闘うために必要とされる緊急の措置(パラ22)および子どもに対する暴力(失踪および恣意的拘禁を含む)を防止するために必要とされる措置(パラ24)に関わるものの実施が不十分であることを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保 11.委員会は、子どもの保護に関する2002年の法律第23号によって、締約国が条約第1条、第14条、第16条、第17条、第21条、第22条および第29条に関して行なった留保が不必要になり、したがってすべての留保がほどなくして撤回されるであろう旨の情報を歓迎する。 12.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.25)にしたがい、かつ1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、すべての留保の撤回を優先的課題とし、かつそのために必要な手続的措置をとるよう勧告する。 立法 13.委員会は、現在行なわれている、民主義および人権(とくに子どもの権利)を基盤とする国家の基礎を整備するであろう重要な法改正を歓迎する。委員会はまた、条約の批准が議会法による裏づけを得ていないという、締約国が表明した懸念も共有するものである。 14.委員会は、締約国に対し、議会法によって条約の批准を裏づける可能性を検討するよう奨励する。 15.委員会はまた、締約国に対し、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約ならびに国際刑事裁判所ローマ規程のような他の人権文書の批准を検討し、かつ、その際は議会法による裏づけを得ることも奨励する。 地方分権化 16.締約国が進めている地方分権化のプロセスは歓迎しながらも、委員会は、それが人権および子どもの権利の保護に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念する。 17.委員会は、締約国が、州の法律および実務が条約に一致することを確保するための対応を行なうよう勧告する。 調整および国家的行動計画 18.委員会は、子どもに関する国連総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」を考慮した「子どものための国家行動計画」が起草されたことを歓迎するとともに、女性エンパワーメント省が条約および「子どものための国家行動計画」の実施を調整する担当機関とされたことに留意する。 19.委員会は、以下のことを勧告する。 (a) 「子どものための国家行動計画」が条約のあらゆる分野および規定を網羅し、かつ同行動計画の規定が州および地区のレベルのプログラムに編入されるようにすること。 (b) 女性エンパワーメント省が州および地区のレベルの初機構を調整すること。 (c) 調整機関にNGOのような他の関係主体の関与を得ること。 独立の監視 20.委員会は、インドネシア子どもの保護委員会(Komisi Perlindungan Anak Indonesia)および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会の設置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、国家人権委員会(Komnas HAM)の独立性および公平性の保障が不十分であることにより、同委員会がその任務を全面的に遂行することが妨げられるのみならず、国家子どもの保護委員会の活動も阻害される可能性があることを懸念するものである。 21.委員会は、締約国が、国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号にしたがい、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家人権委員会、国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会の間の調整を確保すること。 (b) とくに、調査を実施しならびに子ども(とりわけ紛争の影響を受けている子ども)からの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会に与えることにより、これらの機関が子どもにとってアクセス可能であることを確保すること。 (c) 国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会に対して十分な資源が提供されることを確保すること。 (d) 国家人権委員会(Komnas HAM)、国家子どもの保護委員会および最悪の形態の児童労働撤廃国家委員会の独立性、客観性、実効性および公的説明責任を強化するために即時的措置をとるとともに、検事総長に対するこれらの機関の報告書が時宜を得たやり方で公表されることを確保すること。 データ収集 22.委員会は、とくに保育、教育、ネグレクトされている子ども、ストリートチルドレンおよび障害児に関するさまざまなデータが補足報告書で提供されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、条約が対象とするすべての領域に関する、細分化された質的および量的データの体系的かつ包括的収集を可能とする十分なデータ収集機構が締約国に存在しないことを、依然として懸念するものである。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約のすべての分野を網羅するため、データ収集システムを引き続き改良すること。 (b) すべてのデータおよび指標が、条約の効果的実施を目的とした政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保すること。 (c) これらの統計および情報を広く配布すること。 (d) この点に関して、とくにユニセフとの連携を継続すること。 条約の普及 24.委員会は、条約の原則および規定を幅広く広報誌、かつ子どもとともにまたは子どものために働くさまざまな専門家集団の研修を行なうために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。たとえば委員会は、2003年7月23日の全国子どもの日のテーマを歓迎する。しかしながら委員会は、これらの措置をさらに強化し、かつ継続的、包括的および体系的に実施する必要があるとの見解に立つものである。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の普及および関連のすべての専門家を対象とした条約に関する研修についての措置を強化するとともに、当該措置を継続的かつ体系的に実施すること。 (b) 条約をすべての子ども、とくに民族的マイノリティに属する子どもに対して利用可能としかつ周知するために具体的措置をとること。 2.子どもの定義 26.委員会は以下のことを懸念する。 (a) 委員会の前回の勧告にも関わらず、法定婚姻年齢(女子16歳・男子19歳)が依然として差別的であること。 (b) 15歳までに婚姻する子ども(とくに女子)の割合がきわめて高く、かつ、これらの子どもがこれによって成人とみなされ、すなわち条約の適用対象ではなくなること。 27.委員会は、法律が条約の原則および規定と一致することを確保するため、締約国が、さまざまな法律によって定められた、子どもに影響を及ぼす諸年齢制限を見直すよう勧告する。委員会はまた、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 性別を理由とするいかなる差別も残存しないこと、および、女子の婚姻年齢が男子のそれと同一であることを確保すること。 (b) 早期婚を防止するため、他のあらゆる必要な措置をとること。 (c) 早期婚から生じる害および危険性に関する意識啓発キャンペーンを行なうこと。 3.一般原則 28.委員会は、子どもの保護に関する2002年の法律第23号の第2条で条約の基本原則に言及されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)の一般原則が、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、ならびに、連邦、州および地方のレベルならびに紛争の影響を受けている地域における子ども関連の政策およびプログラムに全面的に反映されていないことを、依然として懸念するものである。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約の一般原則、とくに第2条、第3条、第6条および第12条を、子どもに関するあらゆる関連の法律に適切な形で統合すること。 (b) 政治上、司法上および行政上のあらゆる決定ならびにすべての子どもに影響を及ぼすプログラム、サービスおよび復興活動においてこれらの原則を適用すること。 差別の禁止 30.委員会は、女子ならびに脆弱な立場に置かれた他の集団の子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、婚外子、紛争により避難民となった子どもおよびマイノリティの子どもに対する社会的差別が根強く残っていることに、懸念とともに留意する。 31.委員会は、締約国に対し、国内法における差別の禁止の原則の適用および条約第2条の遵守を全面的に保障する目的ですべての法律の詳細な見直しを行なうとともに、すべての事由に基づくおよび脆弱な立場に置かれたすべての集団に対する差別を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するよう、促す。 32.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 33.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が、家族法に関する事柄(たとえば、法律上の監護権は子どもの最善の利益よりもむしろ子どもの年齢によって決定される)も含め、子どもに関わるすべての行動において第一義的に考慮されていないことを懸念する。 34.委員会は、条約第3条が法律および行政上の措置に適正に反映され、かつ領域内のすべての場所で実施されることを確保するため、締約国が法律および行政上の措置を見直すよう勧告する。 子どもの意見の尊重 35.委員会は、子どもが、条約第12条に反し、家庭、学校およびコミュニティにおいて、子どもに関わる事柄についてさえ、めったに意見を聴かれていないことを懸念する。 36.委員会は、「自己の見解をまとめる力のある」いかなる子どもも、自己に影響を与えるあらゆる行政上および司法上の手続における場合も含めて自由に意見を表明できるよう、締約国が、法律を改正して条約第12条を全面的に反映させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、とくに地方レベルおよび伝統的コミュニティにおいて子どもの参加権に関する公衆の意識を高めるための全国的キャンペーンを発展させるとともに、家庭、学校ならびにケア制度、行政制度および司法制度における子どもの意見の尊重を奨励することも、勧告するものである。 4.市民的権利および自由 出生登録および国籍に対する権利 37.委員会は、出生証明書が政府によって無償で発行されると定めた、子どもの保護に関する2002年の法律第23号に掲げられた規定を歓迎する。しかしながら委員会は、出生登録率が低く、かつそれを高めるための具体的措置がほとんどとられていないことを依然として懸念するものである。 38.1999年人権法により国籍に対する子どもの権利が保障されていることには留意しながらも、委員会は、場合によって以下のような状況が生じ得ることを懸念する。 (a) 婚外子が父を知る権利を否定される可能性があること。 (b) 外国人の父を持つ子どもがインドネシアの市民権を否定される可能性があること。 39.委員会は、締約国が、出生登録に関する国および地方の法律をすべて改正するとともに、ユニセフその他の国際機関と協力すること等も通じ、2015年までに100%の出生登録を達成するための包括的戦略を実施するよう、勧告する。 40.委員会は、母系および父系の双方により市民権が継承されることを確保するため、締約国が、国籍に関する1958年の法律第62号を含む市民権法を改正するよう勧告する。 子どもに対する暴力 41.委員会は、学校、公共の場所、拘禁センターおよび家庭において暴力、虐待およびネグレクト(性的虐待も含む)の被害を受ける子どもの人数が多いことを懸念する。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの虐待およびネグレクト(性的虐待も含む)の問題に対処するために現在行なっている努力を拡大するとともに、苦情を受理し、監視しおよび調査し、ならびに、必要なときは、子どもに配慮した、かつ被害者のプライバシーを確保するやり方で事件を訴追するための、全国的システムが存在することを確保すること。 (b) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできること、ならびに、虐待の訴えを理由として家庭から分離された子どもに対して代替的な保護および養護が提供されること、および、施設措置が最後の手段としてのみかつ可能なかぎり短い期間で用いられることを確保すること。 (c) 子どもに対する暴力の加害者が適正に訴追されることを確保すること。 体罰 43.委員会は、家庭および学校における体罰が広がっており、文化的に受け入れられており、かついまなお合法的であることを深く懸念する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校および子どものケアの現場を含むすべての場所で体罰を禁止するため、現行法を改正すること。 (b) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段としての積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 5.家庭環境および代替的養護 親の責任 45.委員会は、インドネシアのイスラム教徒に適用されるイスラム法にしたがい、離婚手続において、子どもの監護権に関わる決定が子どもの最善の利益よりもむしろ子どもの年齢に基づいて行なわれることを懸念する。委員会は同様に、子どもは実親が法律上の婚姻関係になければ法律上の父を持つことができないことを懸念するものである。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての決定が、条約第3条および第12条にしたがって子どもの最善の利益の原則に基づいて行なわれることを確保するため、子どもの監護に関する法律を見直すこと。 (b) 子どもの親子関係の確定を促進し、かつ、可能なかぎり実の両親を知りかつ実の両親によって育てられる子どもの権利を保障するため、あらゆる必要な措置をとること。 家族の再統合 47.委員会は、家族から分離された東ティモールの子どもに関する持続的解決の促進に関して締約国が表明した決意および締約国が行なっているいっそうの協力を歓迎する。しかしながら委員会は、1999年以降、これらの子どもたちの帰還がどちらかといえば限定されていることを依然として懸念するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親から分離されたすべての子どもが迅速かつ安全に東ティモールに帰還できることを確保するための措置を強化すること。 (b) この点に関するUNHCRとの連携を継続すること。 家庭環境を奪われた子ども 49.委員会は、施設に措置される子どもの多さおよび当該施設における生活環境、ならびに、親によって遺棄される子どもの増加について懸念を表明する。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活環境および提供されているサービスを含む)を評価するための包括的研究を行なうこと。 (b) とくにもっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供しかつ意識啓発キャンペーンを実施することによって子どもの施設措置を防止するためのプログラムおよび政策を発展させること。 (c) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族のもとに復帰できるようにするためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもの施設措置を最後の手段と見なすこと。 (d) 既存の施設に関する明確な基準を定め、かつ、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。 養子縁組 51.委員会は、現行養子縁組法制が、民族的出自の異なる集団間で差別を行なっており、濫用的慣行(子どもの人身取引を含む)に対して十分な保護措置を用意しておらず、かつ、子どもの最善の利益の原則を十分に考慮していないことを懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組に関する現行法が条約第2条および第3条に一致することを確保するため、その改正を行なうこと。 (b) 子どもの最善の利益の原則にしたがって子どもの養子縁組制度を効果的に監視しかつ監督するために必要な措置をとること。 (c) 国際養子縁組における子どもの保護および協力に関するハーグ条約に加入すること。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 53.障害のある子どものための特別サービスおよびリハビリテーション・センターの発展は認知しながらも、委員会は、ごく少数の障害児しかこれらのサービスにアクセスできていないことを懸念する。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どものための政策およびプログラムの発展のため、十分に細分化された包括的なデータが収集されかつ活用されることを確保すること。 (b) 適切な保健ケア、教育サービスおよび雇用機会へのアクセスの観点からこれらの子どもの状況を見直すとともに、障害のある子どものためのサービスを強化し、その家族を支援し、かつこの分野における専門家の研修を行なうため十分な資源を配分すること。 (c) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96付属文書)および障害のある子どもに関する一般的討議の日に採択された委員会の勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に留意すること。 (d) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 保健および福祉 55.保健ケア部門に対する予算配分が改善されていることは認知しながらも、委員会は、妊産婦死亡率、子どもの栄養不良発生率、低出生体重児の割合ならびに感染症および蚊媒介性疾病(マラリアを含む)の有病率が高く、予防接種率が低く、かつ、とくに紛争の影響を受けている地域で安全な飲料水および衛生施設にアクセスできないことを、依然として懸念する。 56.委員会はさらに、健康問題および保健ケアに関する政策がばらばらであるため、子どもおよび青少年の健康に対する包括的アプローチの調整および実施が阻害されていることを懸念する。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 農村部および紛争の影響を受けている地域におけるものも含め、プライマリーヘルスケア、とくに母子保健に関するサービスおよび便益への完全なアクセスを確保すること。 (b) 飲料水および衛生サービスの提供に優先的に取り組むこと。 (c) 栄養不良、マラリアその他の蚊媒介性疾病を予防し、可能なかぎり多くの子どもおよび母親に予防接種を行ない、コンドームその他の避妊手段を国全体で入手できるようにし、かつ母乳育児を促進するために現在行なっている努力を強化するとともに、紛争の影響を受けているすべての地域にこれらのプログラムを拡大すること。 (d) 子どもおよび青少年を対象とするホリスティックかつ包括的な保健政策の策定を通じ、子どもおよび青少年の健康および発達に関してライフコース・アプローチがとられることを確保すること。 (e) この問題に関してとくにWHOの協力を求めること。 思春期の健康 58.委員会は、とくに思春期の健康、HIV/AIDS予防および家族計画の問題を取り扱うリプロダクティブヘルス委員会が1999年に設置されたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、これらが依然として思春期の子どもにとっての問題であり、かつ、若者向けに、リプロダクティブヘルスに関する相談およびサービスのためのシステムも、HIV/AIDSおよび性感染症(STI)に関する教育も整備されていないことを懸念するものである。委員会はさらに、青少年の喫煙者が多いことを懸念する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮しながら、思春期の健康に関する包括的な政策および計画を策定すること。 (b) リプロダクティブヘルス委員会の勧告の実施を強化すること。 (c) HIV/AIDSおよびSTIならびに性教育に関する公式・非公式の教育制度を確立するため、国の機関とNGOとの連携を促進すること。 (d) HIV/AIDSに感染した子どもおよびHIV/AIDSの影響を受けている子どもの権利を促進しかつ保護するため、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する改訂国際指針を考慮すること。 (e) すべての青少年を対象として、リプロダクティブヘルスに関する相談および情報ならびにサービスへのアクセスを確保すること。 (f) タバコの使用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を青少年に提供するとともに、タバコの広告を包括的に規制することにより、誤った有害な情報から青少年を保護すること。 7.教育、余暇および文化的活動 60.委員会は、教育に対する権利および教育への最低予算配分が憲法に盛りこまれていることを歓迎する。委員会はさらに、初等教育年限を6年から9年に引き上げ、かつ授業水準の向上を試みている、締約国が1994年に会した教育改革も心強く思うものである。委員会はさらに、貧困家庭出身の子どもに対して奨学金が授与されることも歓迎する。 61.しかしながら委員会は、以下のことを非常に懸念する。 (a) 教育が初等段階においてさえ無償ではなく、かつ高等教育の費用が多くの家庭にとって負担可能ではないこと。 (b) 中退率および留年率が高いこと。 (c) 婚姻した子どもおよび妊娠した10代は教育を継続しないのが一般的であること。 (d) 教員ひとりあたりの生徒数が多く、かつ教員の能力水準が低いこと。 (e) 学校における子どもへの暴力(生徒間のいじめおよび喧嘩を含む)の発生件数が多いこと、ならびに、学校の規律を規制しかつ学校における暴力および虐待から子どもを保護するための特別法が存在しないこと。 62.委員会は、マドラサ〔イスラム学校〕および寄宿学校における教育の質を監視するために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、これらの学校で提供されている教育の幅が狭いことおよびそのカリキュラムの監督が行なわれていないことを懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 無償の完全初等教育を達成するための措置を強化すること。 (b) 都市部、農村部およびもっとも発展が遅れている地域の女子および男子がいかなる金銭的障壁もなく教育機会に平等にアクセスできることを、漸進的に確保すること。 (c) すべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにするための追加的措置を実施すること。 (d) 中退率、留年率および非識字率を低下させるための効果的措置をとること。 (e) 婚姻した子どもおよび妊娠した10代に対して教育機会を提供すること。 (f) 教員が十分な訓練を受けることを確保するための努力を追求すること。 (g) 子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムに導入するために適当な措置をとること。 (h) 学校における暴力を減少させるための措置をとること。 (i) 教育部門を向上させるため、ユネスコ、ユニセフ、アジア開発銀行および市民社会と引き続き協力すること。 64.委員会は、マドラサおよび寄宿学校が普通公教育とより両立したものとなることを確保し、かつ良質な教育を確保するためにより教育な監視システムを確立する目的で、締約国が、これらの学校における教育を合理化するための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 8.特別な保護措置 子どもの難民 65.委員会は、難民キャンプで暮らしている子どもの難民および国内避難民の状況を非常に懸念する。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもの避難民および難民ならびにその家族が基礎的な保健サービスおよび教育サービスにアクセスでき、かつ、条約に掲げられた、このような子どものすべての権利(出生時に登録される権利を含む)が保護されることを確保するため、即時的措置をとること。 (b) 家族から分離されたすべての東ティモールの子どもが迅速かつ安全に東ティモールに帰還できることを確保するための措置を強化すること。 (c) 1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書、無国籍者の地位に関する条約ならびに無国籍の削減に関する条約に加入すること。 (d) とくにUNHCRとの連携を継続すること。 武力紛争の影響を受けている子ども(子ども兵士を含む) 67.委員会は、アチェ、西カリマンタン、中部スラウェシ、マルクおよびアンボンにおける死亡者の多さならびに1999年の東ティモール紛争における紛争による死亡者について憂慮する。委員会はさらに、武力紛争の影響を受けている子どもが依然としてとくに脆弱な立場に置かれた集団であること、および、これらの子どもの人権を(とくに紛争中に)侵害した加害者が稀にしか訴追されないことを懸念するものである。 68.委員会は、アチェにおける戒厳令が子どもの権利の保護および実施に悪影響を及ぼす可能性があることを懸念する。 69.委員会は、とくにアチェおよびマルクならびに1999年までの東ティモールにおける子ども兵士の使用の報告について、深い懸念を覚える。 70.委員会はさらに、武力紛争の結果、非常に多数の子どもが避難民化していることに重大な懸念を覚える。 71.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの生活および権利に影響を及ぼす暴力、とくにアチェ、マルクおよび西パプアにおける暴力を防止しかつ終わらせるための措置をとること。 (b) アチェにおける戒厳令の適用が、いかなる状況においても、子どもの権利条約で保障された権利と矛盾しないことを確保すること。 (c) 国内外の援助機関および人道機関がとくにアチェにおいて子どもおよびその家族にアクセスできるよう便宜を図るための即時的措置をとること。 (d) 正規軍、準軍事集団および反政府集団が武力紛争において子どもを使用することを防止すること。 (e) 人権法および国際人道法の原則ならびにインドネシアが締約国となっている条約を誠実に遵守すること。 (f) 兵士としてもしくは性奴隷として子どもを使用しまたは子どものいずれかの権利を侵害する軍事作戦または準軍事活動を後援し、計画し、扇動し、これに資金を提供しまたは参加したすべての者(上級職員を含む)が、1999年の東ティモールで虐待を行なった者も含め、訴追されることを確保すること。 72.委員会は、締約国が、紛争の影響を受けてきた子どもの権利を実施するための包括的な政策およびプログラムを発展させるよう、勧告する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 紛争の影響を受けた子ども、とくに子どもの戦闘員、保護者のいないIDP〔国内避難民〕および難民、帰還民および密輸された子どもに、そのプライバシーも確保しつつ心理社会的支援および援助を提供する包括的システムを、NGOおよび国際機関と連携しながら発展させること。 (b) 紛争の影響を受けた子どもが、非公式の教育プログラムを提供すること等も通じ、かつ紛争の影響を受けた地域で校舎および学校施設の再建ならびに水、衛生設備および電気の供給を優先させること等により、教育制度に再統合できることを確保するために効果的措置をとること。 (c) いかなる軍隊または武装集団によるものであっても、軍事目的で子どもを徴募することおよび使用することを犯罪とすること。 (d) とくに難民としての離散状態および部族地域にあって脆弱な立場に置かれている子どものための就労機会および教育機会を増やすことも含め、軍隊等への入隊に代わる選択肢を提供すること。 薬物濫用 73.委員会は、薬物または麻薬を使用している子どもが多く、かつこれらの子どもが被害者ではなく犯罪者として扱われていることを懸念する。 74.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対し、有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を提供すること。 (b) 薬物および麻薬を使用する子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保すること。 (c) 有害物質濫用の被害者である子どもを対象とする、回復および再統合のためのサービスを発展させること。 (d) WHOおよびユニセフの協力および援助を求めること。 少年司法 75.委員会は、少年司法に関する1997年の法律第3号の採択を歓迎する。 76.委員会は、たとえ軽罪であっても、かつ人権に関する1999年の法律第39号第66条4項の規定にも関わらず、収監刑を言い渡される子どもが非常に多いこと、ならびに、これらの子どもがしばしば成人とともに拘禁され、かつたとえ子ども用の拘禁センターであっても劣悪な条件下で拘禁されていることを、非常に懸念する。 77.委員会は、刑事責任に関する最低年齢(8歳)が非常に低いことについての深刻な懸念をあらためて表明する。 78.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 拘禁された子どもが成人から常に分離されること、および、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。 (c) 自由の剥奪が避けられない場合は、逮捕の手続および拘禁環境を向上させるとともに、法律に触れた子どもの事案を取り扱う特別部局を警察内に設置すること。 (d) 少年司法の運営に関する委員会の1995年の一般的討議にも照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)ならびに第40条2項(ii)-(iv)および(vii)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 ストリートチルドレン 79.委員会は、「ストリートチルドレンのための社会的セーフティネット・プログラム」および「バンドン・ラヤ・ストリートチルドレン解放プログラム」の導入を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、路上で生活している子どもが多いこと、および、このような子どもがとくに一斉摘発活動中に暴力を受けていることを懸念するものである。 80.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 国の機関がストリートチルドレンに対して行なう暴力、恣意的逮捕および拘禁を終わらせること。 (b) このような暴力の責任者を裁判にかけること。 (c) とくにストリートチルドレン(とりわけ家出をしている子ども)が公式の身分証明カードを入手できることを確保することにより、ストリートチルドレンの社会的再統合を容易にすること。 性的搾取 81.委員会は、「子どもの商業的性的搾取撤廃のための国家行動計画」の開始(2002年)を歓迎する。しかしながら委員会は、現行法が効果的保護を提供しておらず(たとえば性的同意の年齢制限が12歳に定められているのは低すぎる)、かつ、性的搾取の被害を受けた子どもが十分な保護および(または)回復のための援助をしばしば受けていないことを懸念するものである。委員会はまた、国家行動計画が州および地区のレベルでどのように実行されているのかに関する情報が存在しないことも懸念する。 82.委員会は、性的虐待および搾取の被害を受けた子どもがその行為の責任または罪を問われることはあり得ないという見解をあらためて表明したい。 83.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引、ポルノグラフィーおよび買春を含む性的搾取の被害を受けた子どもを十分に保護する法律(性的同意に関する最低年齢の相当の引き上げも含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 被害者のプライバシーを尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情申立てを受理し、監視し、調査しかつ加害者を訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を研修すること。 (c) 回復のための援助を優先し、かつ被害者に対して教育および訓練ならびに心理社会的援助およびカウンセリングが提供されることを確保するとともに、家族のもとに帰ることができない被害者に対して十分な代替的解決策が用意され、かつ当該被害者の施設措置は最後の手段としてのみ行なわれることを確保すること。 (d) 「子どもの商業的性的搾取撤廃のための国家行動計画」に対してその実施のための適当な資源が配分され、かつ当該計画が州および地区のレベルで効果的に実行されることを確保すること。 経済的搾取 84.委員会は、「最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画」が策定され、かつ、締約国がそれぞれ1999年および2000年にILOの第138号条約および第182号条約を批准したことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、いまなおインフォーマル部門で、魚の水揚げ場で、工場で、家事労働者として、プランテーションで、製靴・食品・玩具産業で、採鉱・採石部門でならびに路上で働いている子どもが多いこと(その多くは15歳未満である)を、依然として懸念するものである。 85.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家委員会が、インフォーマル部門で就労している子ども、とくに家事労働者、買春されている子どもおよびその他のタイプの搾取的労働に従事している子どもを対象としかつ保護することを確保すること。 (b) 「最悪の形態の児童労働の撤廃に関する国家行動計画」に対して十分な資源が配分され、かつその実施が適切に監視されることを確保すること。 86.委員会は、締約国が、とくに貧困根絶および教育へのアクセスを通じて子どもの経済的搾取の根本的原因に対処することにより、かつNGO、コミュニティ団体、法執行官、労働監察官およびILO/IPECと連携しながら包括的な児童労働監視システムを発展させることにより、児童労働を撤廃するための努力を引き続き行なうよう勧告する。 売買、取引および誘拐 87.委員会は、子どもの商業的性的搾取に反対する東アジア・太平洋地域の地域的コミットメントおよび行動計画(2001年)ならびに横浜グローバル・コミットメント(2001年)のような、関連の国際的および地域的合意に対する締約国の支持を歓迎する。委員会はさらに、子どもの商業的性的搾取の撤廃ならびに女性および子どもの人身取引の撤廃に関する両行動計画の開始(2002年)を歓迎するものである。 88.にもかかわらず、委員会は、締約国においてこの現象に関する意識が欠けていること、人身取引被害者の法的保護が不十分であること、および、売買、取引および誘拐を防止しかつこれらの行為から子どもを保護するための措置がほとんどとられていないことを懸念する。 89.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態の子どもの売買、取引および誘拐を網羅するためにデータ収集システムを改良するとともに、すべてのデータおよび指標が政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保すること。 (b) 人身取引の適切な定義を確立し、被害を受けた子どもの法的保護を増進させ、法執行を強化するための効果的措置をとり、かつ、子どもの売買、取引および誘拐に関するコミュニティの意識を高めるための努力を強化すること。 (c) 子どもの売買、取引および誘拐を防止するために近隣諸国と二国間および多国間の協定を締結するよう努めるとともに、子どもの保護および家族のもとへの安全な帰還の便宜を図ること。 (d) とくにユニセフおよびIOMの協力および援助を求めること。 マイノリティまたは民族的集団に属する子ども 90.委員会は、宗教および礼拝の自由に対するすべての者の権利を認めた1999年人権法の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、マイノリティまたは民族的集団に属する子どもの権利が同法で認められておらず、かつ、これらの子どもが教育、保健サービスおよび社会サービスにも十分にアクセスできていないことを、なお懸念するものである。 91.委員会は、コミュニティ社会福祉プログラムをさらに実施するとともに、民族的集団に属する子どもに特別に配慮しながらこのようなプログラムをさらに発展させるよう、勧告する。 9.条約の選択議定書 92.委員会は、締約国が条約の両選択議定書に署名したものの批准はしていないことに留意する。 93.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を可能なかぎり早期に批准するよう勧告する。 10.文書の普及 94.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 95.委員会は、締約国の報告の遅れを認識しつつ、条約第44条に定められた規則を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調したい。子どもの権利の実施における進展の定期的審査を担当する国連委員会がその機会を有することは、子どもたちの権利である。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、締約国が条約上の報告義務をふたたび全面的に遵守できるようになることを援助するため、締約国に対し、例外的に、条約に基づいて定められた第4回報告書の提出期限である2007年10月4日に次回報告書を提出するよう慫慂する。当該報告書は第3回および第4回定期報告書を統合したものとなろう。当該統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月28日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/warawara08/pages/41.html
藁谷郁美研究会 2008年度春学期 メディア発表【s07870mm 】 更新履歴 更新はまだありません。 個人研究 分類タグ [2008年度][-] 本文はまだありません。 メディア発表内容 分類タグ:[2008年度][経済・企業] Arbeit Thema 原油価格高騰によるアメリカの経済不安 ■使用したメディア■ 読売新聞、日本経済新聞、、朝日新聞、FAZ.NET http //www.faz.net/s/homepage.html 6月27日 新s(あらたにす)http //allatanys.jp/ 6月28日 ■調査期間■(もしくは日付) 6月28,29日 ■国・地域■ アメリカ ■概要■ FAZ.NET 失業率の高さを懸念 政府の動き次第で(公定歩合の引き上げで)改善される希望がある 新s(あらたにす) 70年代の石油危機と比較 →80年代世界経済が停滞したように、中印を始めとする急成長中・一次加工産業の盛んな国々の経済停滞がくるのでは 読売新聞(6月20日) ドルの暴落懸念 日本経済新聞(6月28日) 「米景気 停滞長期化も」「原油高 個人の購買力そぐ」 米消費者信頼感指数は1992年以来最低値を記録。社会全体の購買意欲が急落。 朝日新聞(6月30日) 他国に比べて日本は現状では差し迫っていない。今後より厳しくなる。デフレから回復しきれていない日本経済の後退を懸念。 物価上昇 欧米→3~4% 日本→1,5% ロシア→10%以上
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/189.html
総括所見:モルディブ(第2~3回・2007年) 第1回(1998年)/第4回・第5回(2016年)OPAC(2009年)/OPSC(2009年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/MDV/CO/3(2007年7月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2007年5月23日に開かれた第1233回および第1234回会合(CRC/C/SR.1233 and 1234参照)においてモルディブの第2回・第3回統合定期報告書(CRC/C/MDV/3)を検討し、6月8日に開かれた第1255回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の子どもの状況に関する理解をいっそう明確なものとすることを可能にしてくれた、締約国の第2回・第3回統合定期報告書および事前質問事項(CRC/C/MDV/Q/3/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。 3.ハイレベルな代表団の出席により、委員会は、条約の実施を直接担当する人々との率直かつ建設的な対話に携わることができた。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、子どもの権利の実施に積極的な影響を与える、締約国による以下の文書の批准/これへの加入を歓迎する。 (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、ならびに、市民的および政治的権利に関する国際規約およびその選択議定書(2006年9月19日)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2006年3月13日)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約(2004年4月20日)およびその選択議定書(2006年2月15日)。 (d) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノ(2002年5月10日)ならびに武力紛争への子どもの関与(2004年12月29日)に関する子どもの権利条約の両選択議定書。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、締約国(26の環礁に分類される1190のサンゴ島から構成されている)の地形が有する特有の性質、および、多くの場合孤立していてサービス等の提供が困難である環礁に住む子どものために十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで締約国が直面している困難を認知する。 6.委員会は、2004年12月26日のインド洋津波が引き起こした例外的な自然災害によって締約国の低海抜の島々が大部分壊滅したため、多くの経済的および社会的困難が生じ、かつ多くの子どもの生活に影響が生じていることを認知する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/8/Add.33 and 37)の検討後に行われたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.91)に対して立法措置および政策を通じて対応するため、締約国が行なった努力に留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに締約国の留保、条約の規定および原則を全面的に遵守するための国内法の調和化、障害のある子ども、婚外子および女子に対する差別、性的虐待を含む子どもの不当な取扱いの防止、栄養不良の蔓延、薬物濫用の問題ならびに少年司法の運営に関わるものについては、十分な対応が行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回・第3回統合報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国が子どもの権利に関わる関連のハーグ諸条約および国際労働機関(ILO)諸条約を批准しまたはこれらに加入することも、勧告するものである。 留保 9.委員会は、条約に対して付されている留保を撤回の方向で見直すよう、ジェンダー・家族省から司法省に対して要請が行なわれたことには関心をもって留意しながらも、条約第14条1項に対する締約国の留保が幅広いものであることを遺憾に思う。条約第21条に対する締約国の留保について、委員会は、締約国が留保において表明している懸念は、第21条が「養子縁組の制度を承認および(または)許容している」に明示的に言及していることによって十分に配慮されていることに留意するものである。 10.委員会は、条約第51条2項および前回の勧告(CRC/C/15/Add.91、パラ6および25参照)に照らし、締約国が、世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画にしたがって留保を撤回するために留保の性質を見直すべきである旨を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、同様の留保を撤回し、または条約に対していかなる留保も付さなかった他のイスラム教諸国に示唆を求めるよう勧告するものである。 立法 11.委員会は、たとえば委員会が勧告したように(CRC/C/15/Add.91、パラ33)最低婚姻年齢を18歳と定めた家族法の施行(2001年7月)を確保することによって国内法を条約と一致させるために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約に掲げられた規定および原則を全面的に遵守するために子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正する必要があることについての懸念をあらためて表明するものである。 12.委員会は、締約国が、条約を国内法に編入するとともに、子どもに関わるすべての国内法および行政規則が権利を基盤としたものとなり、かつ条約、その選択議定書ならびに他の人権文書および人権基準の規定および原則と一致することを確保するための努力を引き続き再検討しかつ強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、「イスラム法の観点から見たモルディブ共和国におけるCRCの適用」に関する報告書でも勧告されているように子どもの権利保護法(法律第9/91号)を改正するための即時的措置をとるとともに、この法律ならびに子どもに関わるその他の法律および行政規則をもっとも効果的に実施するため、あらゆる必要な人的資源および財源を利用可能とするよう、勧告するものである。 13.刑事司法手続のあらゆる段階における子どもの被害者および証人の保護について、委員会は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)に対して締約国の注意を喚起する。 国家的行動計画 14.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の採択を歓迎するものの、この行動計画を実施するためにとられた具体的措置およびその採択以降に達成された進展に関する情報がないことを遺憾に思う。 15.委員会は、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」をあらゆる段階で全面的かつ効果的に実施するために十分な人的資源および財源が提供されるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、実施プロセスのあらゆる側面において、子どもを含む市民社会の幅広い参加を確保することも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、国家行動計画の実施、成果および評価に関する情報を次回の定期報告書で提供するよう、要請する。 調整 16.条約の実施に関して、委員会は、再編されたジェンダー・家族省に対して調整の主たる任務が委ねられていること、および、さまざまな関係者および利用可能な諸サービス間の調整を強化する目的で子どもの保護に関する多部門型作業部会も設置されたことに、関心をもって留意する。委員会はまた、諸環礁に子ども保護システム/センターを設置する計画があることにも留意するものである。 17.委員会は、締約国が、ジェンダー・家族省の再編を、その機能を強化する目的のみならず、条約の実施に関わるあらゆる活動の調整および評価のための単一かつ部門横断型の機構を設置する目的でも活用するよう、勧告する。このような機関に対しては、調整機関としてのその役割を効果的に遂行するための強力な権限ならびに十分な人的資源および財源が与えられるべきである。委員会は、締約国が、条約の実施の調整および評価に際し、市民社会の構成員、子どもの権利の専門家その他の専門家の関与を得るよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、地方段階における調整を強化する目的で、十分な人的資源および財源を有する子ども保護システム/センターを諸環礁に設置するための努力を加速させるよう、勧告するものである。 独立の監視 18.委員会は、2003年にモルディブ人権委員会が設置されたこと、および、人権委員会法改正(2006年)によりその権限が強化されたことを歓迎する。委員会は、人権委員会が人権侵害の訴えに関する苦情を受理する権限を有していることに、評価の意とともに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、人権委員会が直面している課題(完全に独立した地位の獲得および一部職種の採用に関わる困難を含む)に懸念とともに留意する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) パリ原則(総会決議48/134付属文書)にしたがい、モルディブ人権委員会が、条約の実施を促進しおよび監視しならびに子どもを含む個人からの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応するための完全に独立した監視機構となることを確保するための努力を、引き続き行なうこと。 (b) 人権委員会に対して十分な人的資源および財源が提供され、かつ、その関係者を対象とした、委員会の権限に関わる職務を遂行するための定期的な人権研修が行なわれることを確保すること。 (c) 人権委員会、とくに個人を対象としたその苦情申立て機構が子どもにとって容易にアクセスできるものであることを確保すること。 (d) 同委員会がパリ原則にいっそう一致すること、および、同委員会が国内人権機関国際調整委員会による認証を求めることを確保するため、とくに国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の助言および援助を引き続き求めること。 20.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2)を考慮するよう奨励する。 資源配分 21.委員会は、条約第4条に照らし、「利用可能な資源を最大限に用いて」子どものための予算資源の配分を行なうことに対して十分な注意が払われていないことを懸念する。委員会は、保健および福祉ならびに教育部門に対する締約国の最近の配分額が、割合としては減少していていることを遺憾に思うものである。 22.条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることによって、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものための予算配分額を監視し、かつ子どもの実際のニーズの充足に関する効率性の水準を定義する目的で、子どもの権利の視点から、とくに社会部門に関わる予算の包括的再検討を行なうよう奨励するものである。 データ収集 23.委員会は、「モルディブ・インフォ」の設立を歓迎するとともに、国連児童基金(ユニセフ)と連携しながら子どもの状況に関する情報を収集するためにジェンダー・家族省が行なっている努力、および、とくにマレにおけるデータ収集の相当の改善に、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、条約で対象とされているすべての分野に関する全国的案データ収集システムが存在しないことから、とくに孤立した環礁に住む子どもとの関連で、十分な政策およびプログラムを採択し、かつ採択された政策の効果を評価する締約国の能力が制限されていることを、遺憾に思うものである。委員会は、十分な訓練を受けた要員が存在せず、かつ国の当局と児童福祉機関との調整が不十分であるためにデータ収集における進展が阻害されていることに、懸念とともに留意する。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約で対象とされているすべての分野についてのデータが収集され、かつ、当該データがたとえば年齢、性別ならびに都市部および遠隔地の別ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団(すなわち、十分なサービスが提供されていない地域に住んでいる子ども、障害のある子ども、婚外子、暴力、虐待および搾取の被害を受けた子ども、栄養不良の子ども、有害物質濫用の被害を受けた子ども、法律に抵触した子ども等)ごとに細分化されることを確保するため、子どもに関する全国的な中央データベースを設立し、かつ条約にしたがった指標を開発するための努力を強化すること。 (b) これらの指標および収集されたデータを、条約を実施するための政策およびプログラムの立案を促進する目的で活用すること。 (c) 関連の専門家集団を対象として、データ収集に関する研修を引き続き行なうとともに、国および地方のレベルで子どもの権利に関与するさまざまな政府機関および政府機構間の調整を強化すること。 (d) 現在進められているユニセフの国別協力プログラムに関して、ユニセフに対し、細分化されたデータの収集および管理を向上させるための技術的協力を引き続き求めること。 条約の普及/研修 25.委員会は、条約についての情報を普及するために締約国が行なっている努力(たとえば2005年のラマダーン月にクイズ番組形式で行なわれたもの)を心強く思う。しかしながら委員会は、子どもの市民的権利および自由ならびに国際人権基準一般の普及およびこれらに関する意識啓発を、体系的なかつ対象を明確にしたやり方で図るためにとられた措置が不十分であることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国が第1回報告書および(または)委員会の総括所見を公刊せず、公衆一般の間で普及もしていないことを遺憾に思う。 26.委員会は、締約国が、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約に関する情報を体系的に普及するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。委員会は、締約国が、専門家を対象として、条約の規定および原則ならびに国際人権基準一般に関する、対象の明確な定期的研修を行なうよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、メディアに対して子どもの権利についての情報を普及するよう奨励し、このようなやり方で子どもの権利に関する公衆一般の意識を促進することも勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもの市民的権利および自由に注意を払いながら、モルディブのすべての子どもに対して条約を入手可能としかつ周知させるための具体的措置をとるとともに、この点に関してユニセフと引き続き協力するよう、勧告するものである。 非政府組織との協力 27.ジャーニー(薬物依存者の回復を目的としてコミュニティを基盤とするアフターケアおよび再発防止の取り組みを行なう、モルディブで初めてのNGO)に対する金銭的および技術的支援のような、政府機関と非政府組織との連携の例には留意しながらも、委員会は、非政府組織との協力をさらに促進しかつ強化すべきであることに留意する。 28.委員会は、市民的権利および自由との関連も含めて条約の規定を実施する際のパートナーとして市民社会が果たす重要な役割を強調し、非政府組織とのいっそう緊密な協力を奨励する。委員会は、締約国が、市民社会組織の設立を促進するとともに、条約実施のあらゆる段階を通じて、非政府組織(とくに権利を基盤とするもの)ならびに子どもともにおよび子どものために活動する市民社会のその他の部門の関与およびエンパワーメントをいっそう制度的に進めるよう、勧告するものである。 国際協力 29.委員会は、ジェンダー・家族省が家族および子どものために実施しているプログラムおよびプロジェクトの資金が、ほぼ完全にユニセフ、国連人口基金(UNFPA)、国連開発計画(UNDP)ならびにその他の国際的な政府間機関および非政府組織ならびに二国間パートナーによって拠出されていることに、留意する。 30.これとの関連で、委員会は、締約国が、国際的、地域的および二国間協力の枠組みにおける措置を引き続きとる一方、同時に、当該協力を通じ、条約実施のための制度的体制の強化に努めるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実施のために充てられる国際支援の金額および割合を年次ごとに明らかにするよう要請するものである。 2.子どもの定義(第1条) 31.締約国が子どもの定義に関する法定年齢および婚姻に関する最低法定年齢を16歳から18歳に引き上げたことには満足感とともに留意しながらも、委員会は、締約国の法律が、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関して条約その他の関連の国際基準と全面的には一致していないことを懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、子どもに関わるすべての分野について、とくに刑事責任に関する最低年齢および就業が認められるための最低年齢に関わって、明確に定義された最低年齢を法律で定めるよう促す。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、婚外子が平等な権利を与えられておらず、かつ日常生活で事実上および法律上の差別に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの子どもが実父に関する情報への法的アクセスを否定されており、かつ、父の名を名乗ることも父方からの相続もできないことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、現行の命名習慣によって婚外子にさらなるスティグマが付与されていることにも、懸念とともに留意する。 34.第2条にしたがい、委員会は、締約国が、その管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、とくに実父に関する情報へのアクセス、父親の姓に対する権利および父方からの相続に対する権利との関連で婚外子に対するいかなる差別も解消するため、締約国が法律を改正するよう勧告するものである。加えて委員会は、締約国に対し、婚外子のスティグマに終止符を打つために立法上、政策上および教育上の措置(感受性の強化および意識啓発を含む)を活用するよう奨励する。 35.男女平等の問題に対応するため、「モルディブ・ビジョン2020」等を通じて締約国が行なっている努力にも関わらず、委員会は、女性および男性の役割および責任に関する固定的態度が根強く残っていることにより、女子によるすべての人権および基本的自由の全面的享受がいまなお阻害されていることに、引き続き失望を覚える。とくに委員会は、一部の宗教的集団の間で女子を学校に行かせない傾向が強まっていることに、懸念とともに留意するものである。 36.委員会は、締約国が引き続き、女子が直面している諸問題に対応し、かつ女子および男子の平等に関するキャンペーンおよび住民の意識喚起を進めるよう、勧告する。委員会は、女子に対する差別を防止しおよび解消しならびにこの点についてコミュニティを指導するための努力を支えるうえで、地域の指導者、宗教的指導者その他の指導者がいっそう積極的な役割を果たすよう求めることを、提案するものである。委員会はまた、締約国が、とくに女性差別撤廃委員会から2007年1月に勧告されたように(CEDAW/C/MDV/CO/3、パラ17-18)学校における教科書および教材の開発を図ることによって、社会における女性の包摂的役割を促進することも、勧告する。 37.委員会は、障害のある子どもが直面している事実上の差別について依然として懸念を覚える。委員会は、障害のある子どもによる社会サービスおよび保健ケアサービスへのアクセスが限定されており、かつこのような子どものためのインクルーシブな教育の機会がきわめて少ないことに、懸念とともに留意するものである。加えて委員会は、社会的スティグマが障害のある子どもの取扱いに影響を及ぼし続けており、かつ社会に参加するこのような子どもの能力を制限しているという締約国の懸念を共有する。 38.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しかつ禁止するとともに、法律第9/91号第5条および国内法のその他の関連規定を実施することによって、障害のある子どもが生活のあらゆる分野に全面的に参加する平等な機会を確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、あらゆる関連の政策立案および国家的計画に障害の諸側面を含めるよう勧告するものである。 39.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が行なった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 40.子どもの権利保護法(法律第9/91号)が条約第3条の精神を体現していることには留意しながらも、委員会は、国内の法律および政策においてこの原則に十分な注意が向けられておらず、かつ、子どもに関わる意思決定(たとえば監護に関する決定)においてこの原則が第一次的に考慮されてないことを、懸念する。委員会はまた、この原則の重要性に関する、政策立案者、立法者ならびに規定、規則および政策を執行する司法職員および行政職員の意識が低いことにも、懸念とともに留意するものである。 41.委員会は、締約国が、子どもに関わるすべての法律および実践に条約第3条を全面的に編入するとともに、子どもの最善の利益の原則の意味および実際の適用に関する意識啓発を図るよう、勧告する。委員会は、条約の主旨、すなわち子どもは自分自身の権利の主体であるという考え方が国内法に十分に反映され、かつ、子どもに関わるすべての意思決定(監護に関する決定を含む)において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するため、締約国が法律を批判的に見直すよう勧告するものである。 生命、生存および発達に対する権利 42.委員会は、婚外妊娠に対する強い社会的非難が不衛生な環境での妊娠中絶および嬰児殺の増加につながっていることを示唆する報告に、懸念とともに留意する。 43.委員会は、締約国が、条約第6条の全面的に実施に努めるとともに、婚外子の母親を支援する等の手段により、嬰児殺の防止および抑止ならびに婚外子である乳児を保護するための措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、婚外妊娠から生ずるいかなる悪影響も解消し、かつ社会の態度を変革する目的で、教育および意識啓発のプログラムを導入するよう勧告するものである。 子どもの意見の尊重 44.委員会は、少年司法の運営の際の議論に対するすべての当事者、とくに子どもの参加を促進する目的で締約国が家族会議を導入したこと、および、教育法案において、自己の教育に影響を与える決定への子どもの参加が奨励されていることに、評価の意とともに留意する。家族法(法律第4/2000号)において、子どもに対し、自己の権利に影響を及ぼす可能性があるいかなる手続においても意見を聴かれる権利が定められていることには留意しながらも、委員会は、法律と実務との間に乖離があることを懸念するものである。委員会は、司法手続において意見を聴かれる子どもの権利が基本的に監護事件に限られていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、モルディブにおける一般的慣行において子どもの表現の自由が奨励されていないことにも、懸念とともに留意するものである。 45.条約第12条に照らし、かつ、意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対し、その権利に影響を及ぼす可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる行動(地方レベルにおけるものも含む)において意見を聴かれる権利をその子どもの年齢および成熟度にしたがって認める目的で、家族法(法律第4/2000号)の実施を強化するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励する目的で、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(とくに教員およびソーシャルワーカー)ならびに市民社会(コミュニティの指導者、宗教的指導者および非政府組織を含む)の関与を得ながら、体系的なアプローチおよび政策の発展に努めること。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 46.出生登録データベースの設置および親の意識啓発等の手段により出生登録制度を改善しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、現行の出生登録制度が引き続き困難に遭遇していることに、懸念とともに留意する。 47.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が、とくに出生登録の必要性について世論を敏感にしかつ動員するための努力を強化することならびに出生登録データベースおよび出生登録担当者の研修を発展させることによって、出生登録制度を引き続き改善するよう勧告する。当面、出生を登録されていない子どもおよび公式の身分証明書類を持たない子どもに対しては、適正な登録がなされるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスが認められるべきである。 宗教の自由 48.委員会は、締約国の憲法およびその他の法律規定が宗教的一体性を基礎としており、イスラム教以外のいかなる宗教の実践も禁じられていることに留意する。宗教の自由に関する特別報告者が2006年8月にモルディブを訪問した際の知見(A/HRC/4/21/Add.3参照)および締約国が条約第14条に付した留保を参照しつつ、委員会は、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が全面的には尊重されかつ保護されていないことを懸念するものである。 49.条約第2条および第14条に照らし、委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進することにより、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するよう、勧告する。 結社および平和的集会の自由 50.委員会は、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には全面的に保障されているわけではないことを懸念する。 51.委員会は、締約国が、条約第15条にしたがい、結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利の全面的実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、子どもたちに対し、自らが主導して団体を結成することを奨励するよう、勧告する。 情報へのアクセス 52.委員会は、国内外の多様な情報源からの情報および資料へのアクセスが、締約国の子どもにとって限られていることを懸念する。委員会は、環礁に図書館が設けられていないため、読み物への子どものアクセスがきわめて制約されていることに、特段の懸念とともに留意するものである。 53.委員会は、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的福祉ならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスを向上させるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、オンライン媒体等も通じ、環礁に住んでいる子どもが子ども向けの書物および雑誌にアクセスできるようにすることを、勧告するものである。 54.委員会は、締約国が、メディアに対し、子どもの権利(子どものプライバシー権を含む)を尊重しながらよりよい報道を行ない、かつメディア番組への子どもたち自身の参加を促進する目的でいっそう多くの子ども向け作品を制作することを奨励するよう、勧告する。 拷問および残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 55.委員会は、新刑法案第44条で家庭、学校および施設における子どもの体罰が合法化される旨の情報について懸念を覚える。委員会はまた、条約第37条(a)に反し、締約国の適用可能な法律のもとで、第二次性徴期に達した者は笞打ちの対象とされる可能性があることも、深刻に懸念するものである。 56.新刑法案の検討状況に照らし、委員会は、締約国に対し、18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の体罰(犯罪に対する刑としての体罰を含む)の対象ともされず、かつ、家庭、代替的養護の現場および少年施設、学校ならびに職場環境における、しつけおよび規律としての体罰が法律で禁止されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会は、子どもが有する、人間の尊厳および身体的不可侵性の尊重に対する平等なかつ不可譲の権利に直接抵触するこの慣行を解消するため、締約国が、積極的な教育プログラムおよび研修プログラムならびに意識啓発キャンペーンなど、他の適切な措置をとるよう勧告するものである。最後に委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/C/GC/8)に対して締約国の注意を喚起する。 5.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 親の責任 57.委員会は、たとえば離婚率の高さによって引き起こされている家庭の不安定さが、効果的な子育てに悪影響を及ぼしてきたことを懸念する。 58.締約国は、条約第18条に照らし、とりわけ、親の指導および父母の共同責任に関する親(とくにひとり親)向けの研修を含む支援の提供を通じ、家庭に関する教育および意識を発展させる努力を強化するよう奨励される。 代替的養護および施設養護 59.委員会は、子どもの養護および保護に責任を負う公私のすべての施設、サービスおよび便益に関する基準を定め、かつ子どもの最善の利益の原則を強調する、「モルディブにおける18歳未満の子どものための施設およびグループホームについての指針」の起草を歓迎する。委員会は、2004年にビリンギリで新たな子どもホームが設立されたこと、および、ジェンダー・家族省がモルディブにおける養子縁組および里親委託(カファラ)について検討する実現可能性評価を実施したことに、留意するものである。委員会は、親および保護者が金銭的扶養を行なえないこと、離婚、別居および再婚によって家族構造が変化しつつあること、ならびに、家庭で子どもの虐待およびネグレクトが生じていることなどを含むいくつかの理由により、代替的養護を必要とする子どもの人数が増えていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、発展中である締約国の代替的養護制度が、これらの子どものニーズに対応するうえで複合的な課題に直面していることにも、懸念とともに留意するものである。 60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが代替的養護に措置されることを防止するための、学際的アプローチに基づいた包括的政策(適切な法律、家族への金銭的援助および補足的サービス制度を含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 代替的養護(里親養護、入所型養護、その他の形態の代替的養護)への子どもの措置が、権限のある学際的専門家集団によって慎重に実施される、子どものニーズおよび最善の利益に関するアセスメントに基づいて行なわれることを確保すること。 (c) 恣意的な措置および裁量に基づく措置を避けるため、子どもを代替的養護に措置する旨の決定が、権限のある公的機関によってかつ法律に基づいて行なわれ、かつ司法審査の対象とされること、および、条約第25条にしたがって措置が定期的再審査の対象とされることを確保すること。 61.委員会は、条約で認められた諸権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払いながら、家族/コミュニティを基盤とする代替的養護のような伝統的里親養護制度を発展させるよう奨励する。最後に委員会は、親のケアを受けていない子どもに関する委員会の一般的討議(2005年9月)の際に採択された勧告(CRC/C/153、パラ636-689)に対して締約国の注意を喚起するものである。 暴力、虐待およびネグレクト、不当な取扱い 62.委員会は、締約国が子どもヘルプライン・サービスの設置を進めている旨の情報を歓迎する。委員会は、締約国における子どもに対する暴力、児童虐待(性的虐待を含む)および子どもの不当な取扱いの深刻な問題に対応するためにとられている措置が不十分であることを、遺憾に思うものである。委員会は、法的枠組みにおいて性的虐待からの全面的保護が提供されておらず、かつ挙証責任も被害者に転嫁されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、ドメスティックバイオレンスがモルディブ社会で広く容認されていること、および、モルディブ法で家庭における体罰が明示的に禁じられていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家が、子どもの虐待および不当な取扱いの事案を発見し、通報しかつ処理するための十分な訓練を受けていないこと、および、メディアが子どもの保護に関わる問題をセンセーショナルに取り上げ、被害者に付与されるスティグマおよび恥辱を悪化させていることに、懸念とともに留意する。 63.条約第19条その他の関連規定に照らし、かつ子どもと暴力に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/100、パラ866およびCRC/C/111、パラ701-745)を考慮に入れながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力(家庭における性的虐待を含む)を禁止する目的で、この問題の規模および性質ならびに子どもに対する暴力に対応するための法的措置の効果を評価する、家庭におけるドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待についての全国的研究を行なうこと。 (b) 「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」の一環として、ドメスティックバイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび児童虐待を防止しかつこれに対応するための包括的な国家的戦略を策定するとともに、態度の変革に寄与する十分な措置および政策をさらに採択すること。 (c) 親ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教員、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカーおよび裁判官など)を対象として、子どもの虐待および不当な取扱いの発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。 (d) 苦情を受理し、監視しおよび調査し(必要なときの介入を含む)、ならびに、虐待された子どもが法的手続で被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保しながら不当な取扱いの事案を訴追するための、効果的な手続および機構を設置すること。 (e) 暴力および虐待の被害を受けたすべての子どもが、十分なケア、カウンセリング、ならびに回復および再統合のためのサービスをともなう援助にアクセスできることを確保すること。 (f) 暴力、虐待および不当な取扱いの被害を受けた子どもの報道にメディアが前向きな形で関与することを奨励しかつ促進するとともに、メディアが子どものプライバシー権を全面的に尊重することを確保すること。 (g) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。 64.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 南アジア地域協議(パキスタン、2005年5月19~21日)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の独立専門家報告書(A/61/299)に掲げられた全般的勧告および場面に応じた勧告を実施するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの関与を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) ユニセフ、OHCHRおよびWHOの技術的援助を求めることを検討すること。 6.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 65.委員会は、若干の関係者とともに国家障害政策を起草するために締約国が行なっている努力を心強く思う。しかしながら委員会は、障害を発見し、かつ障害のある子どもに早期介入サービスを提供するための努力が締約国では十分でない可能性があることを、懸念するものである。委員会は、十分かつ適切なサービス、財源および訓練を受けた専門の人材が存在しないことが、障害のある子どもがすべての人権および基本的自由を全面的に享受することに関わる重要な障壁であり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、利用可能なほとんどのサービスは標準化されておらず、かつ十分な監視および評価の対象ともされていないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会は、普通教育に包摂されている障害児の人数がきわめて限られていることを遺憾に思う。加えて委員会は、回復のためのサービスを提供している市民社会組織が十分な人的資源、技術的資源および財源を有していないことに、懸念とともに留意するものである。 66.委員会は、締約国が、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年、CRC/C/GC/9)を考慮しながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する十分な統計データを収集するとともに、社会における障害者の機会均等を促進する、障害に関する包括的かつ具体的な国家的政策を策定するにあたってそのような細分化されたデータを活用すること。 (b) 障害のある子どもが、十分なかつ標準化された社会サービスおよび保健サービス(早期介入サービス、心理サービスおよびカウンセリング・サービスを含む)ならびに十分な物理的環境、情報およびコミュニケーションにアクセスできるようにすること。 (c) 障害のある子どものためのサービスの質を監視しかつ評価するとともに、利用可能なすべてのサービスについての意識啓発を図ること。 (d) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (e) 島のコミュニティが独自のリハビリテーション・プログラムおよび親支援グループを設置することを奨励しかつ援助する目的で、CARE協会その他の市民社会組織と連携しながらコミュニティ・リハビリテーション・プログラム(CBR)を支援しかつ拡大すること。 (f) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分に訓練されることを確保すること。 (g) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書に署名し、かつこれを批准すること。 (h) とくにユニセフおよびWHOとの技術的協力を追求すること。 健康および保健サービス 67.委員会は、拡大予防接種プログラムの成功を歓迎するとともに、5歳未満児死亡率および乳児死亡率の削減に関する締約国の進展に評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、マレと諸環礁間で削減率に相当の差があることに、懸念とともに留意するものである。ユニセフの支援を得てコミュニティ基盤型の栄養教育・発育監視システムが設けられていること、および、締約国が2015年までに低体重児の割合を半減させるというMDG〔ミレニアム開発目標〕を達成できる可能性が高い見込みであることは歓迎しながらも、委員会は、モルディブにおける子どもの栄養不良率が高いことを懸念する。委員会は、締約国が、世界のどこよりも地中海貧血症(遺伝性の血液疾患)の発生率が高い国のひとつとして知られていることに留意する。加えて、妊産婦保健ケアの質および利用可能性、伝統的医療慣行の蔓延、感染症によって引き起こされる脅威、ならびに、多くの小島における必須医薬品の欠乏が、懸念の対象となるところである。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施する目的で、適当な資源が保健部門に配分されること、ならびに、締約国が子どもの健康状態を向上させるための包括的な政策およびプログラムを策定しかつ実施することを確保すること。 (b) とくに産前産後保健に関わる良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障することにより、乳児および5歳未満児の死亡を削減するための措置(助産婦および伝統的産婆の研修プログラムを含む)を引き続きとること。 (c) 健康的な摂食習慣の教育および促進を通じ、子どもの栄養状態を改善するための努力を強化すること。 (d) 国内全域の母子が良質なプライマリーヘルスサービスにいっそうかつ平等にアクセスできることを促進するとともに、とくにより小さな島々に住んでいる子どもが保健ケアおよびカウンセリングならびに必須医薬品にアクセスできることを確保する目的でコミュニティヘルスワーカーのネットワークを確立すること。 (e) 引き続き、地中海貧血症の子どもに十分な治療および保健サービス(移動保健班の活用等によるものも含む)を提供し、かつ、地中海貧血症の治療にかかる高額の負担をまかなえるよう家族その他の養育者に対して金銭的支援を提供すること。 (f) 引き続き、この問題に関してとくにWHOおよびユニセフと協力し、かつその技術的援助を求めること。 思春期の健康 69.全般的に、委員会は、締約国において青少年の性的な発達、行動、関係および態度に関する知識が限定されていることを懸念する。委員会は、望まない妊娠および早すぎる妊娠を防ぐ方法ならびに性感染症(STI)の予防方法に関する情報およびサービスについての知識およびこれへのアクセスが限られていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、親の同意を得ずに法律上および医療上の相談を行なうことができる年齢が18歳であることも遺憾に思う。 70.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年、CRC/GC/2003/4)を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年の性的な発達、行動、関係および態度も含む包括的な全国的若者研究を実施するとともに、この研究の結果に基づき、青少年に対し、そのプライバシーを尊重しながら、適合を図った、かつ若者に配慮した保健サービスおよびカウンセリングを提供すること。 (b) 学校および青少年が頻繁に訪れる他の適当な場所で青少年の健康を促進する(性教育およびリプロダクティブヘルス教育も含む)とともに、教員が性およびリプロダクティブヘルスに関わる問題について話し合うための十分な訓練を受けていることを確保すること。 HIV/AIDS 71.委員会は、包括的な「国家AIDS統制プログラム」が1987年に開始されたこと、および、「モルディブの子どもの福祉のための国家行動計画(2001~2010年)」において、とくに、乳児および青少年のHIV/AIDS感染件数を削減し、かつ、同世代による、とくに若者に向けたHIV/AIDS情報にアクセスできるようにすることが目指されていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、HIV/AIDSおよびその予防に関する意識啓発のために締約国がイスラム問題最高評議会と共同で行なっている努力にも、評価の意とともに留意するものである。締約国におけるHIV/AIDS有病率が低いことには留意しながらも、委員会は、移動性の高さ(教育および就労の目的で国外に行くモルディブ人が多い)、薬物濫用の増加、国外観光旅行の成長および観光労働者の増加、ならびに、環礁における保健サービスへのアクセスの制約のような、既存のリスク要因について懸念を覚える。 72.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(注1)を考慮しながら、以下のを措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの罹病および拡散を防止するため、「国家AIDS統制プログラム」を実施するための努力を強化すること。そのための手段としては、たとえば、前述した既存のリスク要因のすべてに対応するため同プログラムを改訂すること、および、青少年に対し、学校および青少年が頻繁に訪れる他の場所において、HIV/AIDS、その感染経路、治療および予防措置に関する正確かつ包括的な情報を提供することなどが挙げられる。 (b) 子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保するとともに、子どもが、要請があるときは子どものプライバシーが全面的に尊重される、子どもに配慮した、かつ秘密が守られるHIV/AIDSカウンセリングにアクセスできることを確保すること。 (c) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕、WHOおよびUNFPA〔国連人口基金〕の技術的援助を求めること。(注1)HR/PUB/06/9, United Nations publication (sales No. E.06.XIV.4)(オンラインで右記からも入手可能:http //www.ohchr.org/english/issues/hiv/docs/consolidated_guidelines.pdf) 生活水準 73.委員会は、モルディブにおける貧困削減のための締約国の努力が功を奏していることを心強く思うとともに、「ビジョン20/20」、第7次国家開発計画および第1次貧困削減戦略文書(PRSP)を含む、住民の生活水準を向上させるための国家的な諸戦略および諸計画が採択されたことを歓迎する。委員会はまた、締約国が、世界銀行と連携しながら、貧困下で暮らしている子どものニーズに対応する社会的セーフティネット・プログラムを策定中であることにも留意するものである。しかしながら委員会は、所得水準の地域格差が大きく、北部環礁が経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域であることを懸念する。委員会はまた、子どもの多い世帯が最貧層に属していること、および、多くのセーフティネット・プログラムが、しばしば臨時に実施されかつ戦略枠組みを欠いており、低所得家庭に保護を提供できていないことにも、留意するものである。 74.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、マレと諸環礁との間にある地域格差および北部環礁と南部環礁との間で増大しつつある格差に対応することにより、効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分すること。 (b) とくに、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を実施しかつ監視する能力の増進を図ることにより、貧困下で暮らしている住民の生活水準に対応するための努力を強化すること。 (c) セーフティネット・プログラムに対する年間支出を増加させ、かつもっとも脆弱な立場に置かれた集団を対象とするセーフティネット・プログラムを開発することにより、貧困下で暮らしている子どもおよび家族の支援を目的とした、使途指定による資金および具体的援助を提供するための努力を強化すること。 (d) 貧困下で暮らしている子どもに対し、社会サービス、保健サービス、教育および十分な住居へのアクセスが提供されることを確保すること。 (e) 貧困下で暮らしている子どもに対し、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減プログラムを計画しかつ実施する際に、意見を聴かれかつ意見を表明する機会を提供すること。 7.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 75.委員会は、2004年12月のインド洋津波によってモルディブの数百の学校(学校用家具、校内設備および書籍を含む)が損壊したことを認知する。委員会は、国際社会、国連専門機関(とくにユニセフおよびユネスコ)、ドナー諸国、非政府組織および地方コミュニティと連携しながら、学校の再建および整備のために迅速な措置がとられたことについて、締約国を称賛するものである。 76.委員会は、人が住んでいるすべての島で無償の初等教育が利用可能とされており、かつ初等学校就学率および識字率が高いことに、満足感とともに留意する。締約国が法律で初等教育を義務化しようとしていることには留意しながらも、委員会は、この点に関わる立法プロセスに時間がかかっていることを遺憾に思うものである。委員会は、バウチャー・プログラムが実施されているにも関わらず、教科書および学校用制服の費用が低所得家庭にとって負担となっており、教育に対する子どもの平等なアクセスを危うくしていることに、懸念とともに留意する。中等教育に関して、委員会は、その利用可能性が限られており、かつ就学率がいまなお満足のできる水準に達していないことを懸念するものの、2010年までにすべての子どもが中等学校にアクセスできるようにするために締約国が行なっている努力を心強く思うものである。委員会は、職業教育が国家的優先課題のひとつに位置づけられており、かつ2006年から中等学校の選択科目として導入されたことに留意する。委員会は、学校で不適切な行動をした子どもが最後の手段として退学させられる可能性があることを、懸念するものである。 77.委員会は、学校教科書、カリキュラムおよび学校運営においてジェンダーに関わる先入観および固定観念が見られること、ならびに、適切な衛生設備(男女別のトイレを含む)が設けられていないことにより、教育、とくに中等学校への女子の完全参加が阻害されていることを懸念する。 78.条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を引き続き配分するよう、勧告する。 (a) 初等教育を義務化する目的で教育法の承認および制定を急ぐとともに、7年間の初等学校の枠を超えて義務教育を拡大することを検討すること。 (b) たとえば追加的費用をまかなうためのバウチャー・プログラムを強化することにより、すべての子どもがいかなる金銭的障害もなく平等に教育にアクセスできることを確保すること。 (c) 学校教科書からジェンダーに関わる先入観および固定観念を取り除き、かつすべての学校で女子用の衛生設備が整備されることを確保するとともに、学校管理者および学校職員を対象としてジェンダー研修も行なうこと。 (d) たとえば寄宿学校の設備を提供することにより、中等教育の利用可能性および中等教育就学率を高め、かつ中等教育へのアクセスを促進するための漸進的措置を引き続きとること。 (e) 中等学校段階における職業訓練の便益を拡大すること。 (f) 教育に対する子どもの権利を確保する目的で、退学以外の手段で子どもを懲戒する方法および手段を見出すこと。 (f)〔ママ〕 教育部門をさらに改善する目的で、とくにユネスコおよびユニセフとの協力を追求すること。 79.委員会は、ユニセフの乳幼児期発達プログラムに留意するとともに、子どもの約半数が初等前教育施設に就学していることに留意する。委員会は、マレと諸環礁との間に初等前教育へのアクセスに関する地域格差があること、初等前教育が非公式なものとして位置づけられていること、および、訓練を受けた教員が欠乏していることに関する締約国の懸念を共有するものである。 80.委員会は、締約国に対し、初等前学校教育の位置づけを公式なものとし、かつすべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにするよう、奨励する。委員会は、締約国が、乳幼児期における子どもの権利の実施に関する委員会の一般的意見7号(CRC/C/GC/7)を考慮に入れることにより、就学前教育施設および早期の学習機会に関する親の意識および動機を高めるとともに、乳幼児期教育を促進し、発展させ、かつ調整する(教員の養成および研修を含む)ための全国的機構を設置するよう、勧告するものである。 教育の目的 81.「良質教育プログラム」、および、ユニセフによる教員リソースセンターの設置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、訓練を受けていない教員の割合が高いために教育の質に深刻な影響が生じていること、および、政府立学校とコミュニティ学校およびマレの学校と諸環礁の学校との間に地域格差があることに、懸念を表明する。委員会はまた、人権教育がカリキュラムの不可欠な一部とされていないことにも、懸念とともに留意するものである。 82.条約第29条に照らし、かつ教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教員を対象として適切な着任前研修および現職者研修を行なうことを通じ、マレおよびすべての諸環礁の政府立学校およびコミュニティ学校のいずれにおいても教育の質を向上させるための努力を、さらに強化すること。 (b) 教員に対してしかるべき生活賃金を確保するとともに、たとえばメディアを通じて教育職の世評を高めるように努めること。 (c) すべての教育段階の公式カリキュラムに人権教育、とくに子どもの権利に関する人権教育を含めること。 (d) とくにユネスコ、ユニセフおよび非政府組織との技術的協力を引き続き追求すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 83.委員会は、子どものスポーツおよび文化的活動を推進するために青少年スポーツ省がとっている措置にも関わらず、子どもの遊び、休息および余暇が締約国において全体的には支持されていないことを懸念する。 84.条約第31条に照らし、委員会は、締約国に対し、休息、余暇および遊びに対する子どもの権利の実施(子どものための遊び場の創設を含む)に対していっそうの注意を払いかつ十分な資源(人的資源および財源の双方)を配分するよう、奨励する。委員会は、締約国が、親その他の養育者を対象として、子どもの遊びの奨励を目的とした、創造的遊びおよび探索的学習の価値に関する研修を行なうよう、勧告するものである。 8.特別な保護措置(条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条および第30条) 経済的搾取(児童労働を含む) 85.委員会は、モルディブが国際労働機関(ILO)への加盟およびILO諸条約の批准を検討している旨の、締約国から提供された情報に留意する。14歳未満の子どもの雇用が一般的に禁じられている(法律第9/91号)ことに関わりなく、委員会は、児童労働の使用を防止し、かつ経済的搾取、とくに危険な労働から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。しかしながら委員会は、新たに作成された労働法案が2006年2月に議会に提出されたことに留意する。 86.経済的搾取から子どもを保護する法的枠組みが存在しないことから、委員会は、職を求めてまたは家事労働者として働くために諸環礁からマレへやってくる子どもが多いことを深刻に懸念する。加えて委員会は、マレにおいて中等教育を提供する寄宿学校の数が不十分であることから、子どもが家庭に寄宿し、かつ部屋および食事の対価として家事を行なうことを余儀なくされていることに、懸念とともに留意するものである。 87.条約第32条その他の関連条項にしたがい、委員会は、締約国に対し、ILOに加盟し、かつ就業が認められるための最低年齢(第138号)ならびに最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動(第182号)に関する両ILO条約を批准するとともに、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 労働法の承認および制定を速やかに進めるとともに、労働法の規定が、条約の規定および原則ならびに最低就労年齢および労働条件に関する国際労働基準に全面的に一致することを確保すること。 (b) 新労働法の規定で、この〔児童労働の〕現象がより蔓延しているインフォーマル部門で働く子どもも対象とされることを確保すること。 (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないこと、および、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限が労働監察制度に与えられることを保障する目的で、労働監察制度を改善すること。 (d) 学業中の子どもがマレにおける家庭寄宿の対価として経済的な搾取および虐待の対象とされることを防止するため、子どもが適切かつ良質な寄宿学校および安全なかつ監視の対象とされる家庭寄宿にアクセスできるようにするとともに、マレ以外の他の環礁に寄宿学校施設を建設すること。 (e) ILO/IPEC〔児童労働撤廃国際計画〕の技術的援助を求めること。 麻薬および向精神薬の不法な使用 88.委員会は、モルディブにおいて薬物依存の問題が急速に拡大しつつあることを深刻に懸念する。委員会は、薬物を最初に使用する平均年齢は12歳であるものの、それより幼い子どもでさえ薬物の使用を開始していることがわかっていること、および、とくに、多くの子どもが最初に使用する薬物がヘロインであることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、子どもの薬物依存の問題に対し、子どもを被害者ではなく犯罪者として扱うことによって対応しようとする締約国のアプローチを遺憾に思う。委員会はまた、現在のところ、16歳未満の子どもがとくに関わる薬物濫用問題に対応する権限を国家麻薬統制局(NNCB)が有しておらず、かつ、麻薬および向精神薬を使用する子どものための、とくに子どもを対象とした回復・再統合サービスが存在しないことも、遺憾に思うものである。加えて、麻薬を使用する子どものハイリスクな性的行動、および、麻薬に関連した集団的暴力は、深刻な懸念の理由となる。 89.条約第33条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 薬物を誤用する子どもへの、より子どもに配慮した回復志向のアプローチをとる目的で、麻薬および向精神薬に関する国内法を見直しかつ改訂すること。 (b) 麻薬の不法な使用から子どもを保護し、かつこのような物質の不法な取引における子どもの使用を防止するため、あらゆる適当な措置(行政上、社会上および教育上の措置を含む)をとること。 (c) 薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもに適合した、再統合および回復のための学際的なプログラムを緊急に導入すること。 (d) 子どもに伝えられる情報を強化するために家族およびコミュニティも包摂した、子どもをとくに対象とする防止プログラムを導入すること。 (e) 刑事的措置に限られるのではなく、青少年間の薬物に関連する集団的暴力および犯罪の根本的原因にも対応する包括的な戦略(周縁化された青少年を社会的に包摂するための政策も含む)を採択すること。 (f) とくに国連薬物犯罪事務所(UNODC)、ユニセフおよびWHOの指導および技術的援助を求めること。 性的搾取 90.観光がモルディブにおける主要な収入源であることに照らし、委員会は、子どもが児童買春および児童ポルノを含む性的搾取の被害を受けやすくなる可能性があること、および、性的搾取を防止しかつ犯罪化するための法的枠組みが不十分であることを、懸念する。たとえば委員会は、ひとり暮らしをしている子どもまたはマレを訪問する子どもがさまざまな形態の搾取の被害を受けやすいことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、とくに国外居住労働者が関与している場合に、子どもの性的搾取に関する通報が不十分でありかつ選択的に行なわれていることにも留意する。委員会は、ポルノグラフィーの製造、頒布および所持が一般的に禁じられていることに留意するものの、児童ポルノを禁じた具体的な法規定が存在しないことを遺憾に思うものである。 91.委員会は、警察の家族・子ども保護部(FCPU)が子どもの性的搾取に関わるすべての事件に対応していることに評価の意とともに留意するものの、FCPUが置かれているのがマレに限られていること、および、環礁警察署では子どもの性的搾取、児童買春および児童ポルノの重大事犯を発見しかつこれに対応する資源が限られており、かつそのための訓練も不十分であることに、懸念とともに留意する。 92.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、適切な政策および措置(性的搾取の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進することも含む)を立案しおよび実施し、ならびに、被害を受けた子どもの犯罪化を回避する、より焦点が絞られた方法で子どもの性的搾取を防止しおよびこれと闘う目的で、締約国が、子どもの性的商業的搾取に関する全国的研究を行なうよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、第1回(ストックホルム、1996年)および第2回(横浜、2001年)の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮するよう、奨励するものである。 93.委員会は、締約国が、地域におけるセックス・ツーリズムの増加のような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、旅行および観光における性的商業的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた行動規範の遵守を向上させる目的で、この点に関するモルディブ観光振興委員会(MTPB)および観光業者と引き続き連携するよう、勧告する。 94.委員会は、締約国が、全環礁の警察に対して十分な資源および訓練を提供することにより、性的搾取の事件を捜査するための努力を強化するよう勧告する。最後に委員会は、締約国に対し、インターネット上の児童ポルノについてのインターネット・サービス・プロバイダの義務に関する特別法の採択を検討するよう、奨励するものである。 搾取目的の子どもの人身取引 95.委員会は、子どもの人身取引はモルディブでは問題となっていないという見解を締約国が根強く維持していること、および、この点に関する防止措置(立法上の措置を含む)がとられていないことを遺憾に思う。 96.委員会は、締約国に対し、モルディブにおける子どもの人身取引の規模、性質および態様変化に関する調査研究を実施し、かつ包括的な統計データを提供するよう、促す。委員会はまた、締約国が、人の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に定められたあらゆる形態の人身取引を犯罪化する目的で、包括的な人身取引禁止法を制定することも勧告するものである。 少年司法の運営 97.委員会は、締約国が少年司法の運営の改革中である(少年司法法を起草する計画も含む)こと、ならびに、締約国が「家族会議」プログラムを導入したことおよび警察署内に家族・子ども保護部を設置したことに、留意する。委員会はまた、締約国が、ユニセフの支援を得て、アッドゥの少年裁判所および警察署に少年司法の運営に関するデータベースを設置し、さらに、収集されたデータをこれらのデータベース内で分類しかつ細分化していることにも留意するものである。委員会はまた、国家刑事司法行動計画(2004~2008年)にも留意する。 98.これらの前向きな措置がとられたにも関わらず、委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 少年司法の運営が、依然として、法律に抵触した子どもの更生および再統合のための措置を提供する修復的モデルではなく、処罰および拘禁の原則に基づいて行なわれていること。 (b) 刑事責任に関する最低年齢(10歳)が依然として低すぎること。 (c) 7歳以上の子どもがハッド罪に問われる可能性があり、したがって死刑の対象とされる可能性があること。 (d) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰が合法とされていること。 (e) 家族会議プログラムが導入されたにも関わらず、自由の剥奪に代わる措置および刑の選択肢が用意されていないこと。 (f) 少年裁判所がマレにしか設けられておらず、かつ訓練を受けた少年裁判官がいないこと。 (g) 現行の少年司法規則が、刑事手続の際の子どもの聴聞について規定していないこと。 (h) 家族会議の結果または裁判所の決定に如何に関わらず、学校が、教育省の定めた規則を遵守する必要性から、法律に抵触した子どもを退学させることを余儀なくされていること。 (i) 子どもがドゥーニドゥ拘禁センターにおいてきわめて劣悪な環境で拘禁されていること。 99. 委員会は、締約国が、委員会が新たに採択した少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(CRC/C/GC/10)を考慮しながら、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 少年司法法を起草しかつ制定するための努力を加速させるとともに、この法律の規定が条約および少年司法の運営に関する他の国際基準の規定および原則と全面的に一致すること(刑事司法手続の際の子どもの聴聞も含む)を確保すること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段としてのみ用いられることを確保するため、地域奉仕命令、家族会議および修復的司法介入のような代替的措置の包括的システムを引き続き発展させかつ実施すること。 (c) 刑事責任に関する最低年齢を少なくとも12歳まで引き上げること。 (d) 18歳未満の者が行なったハッド罪について死刑を廃止すること。 (e) 犯罪に対する刑としての体罰および懲戒目的の体罰の使用を廃止すること。 (f) 十分な訓練を受けた専門家(専門の裁判官、検察官および警察官など)を擁する専門の少年裁判所を可能なかぎり設置するとともに、移動裁判所の設置を検討すること。 (g) 法律に抵触した子どもが教育にアクセスできるようにするため、教育省が定めた規則を見直すこと。 (h) 法律に抵触した子どもを対象とする拘禁施設および行刑施設の環境を改善するための効果的な措置をとるとともに、子どもに対し、成人とは別の拘禁施設を用意すること。 (i) 拘禁環境の独立した監視、および、苦情申立て、調査および執行のための効果的な機構へのアクセスを確保すること。 (j) UNODC、ユニセフ、OHCHRおよび非政府組織も参加する国連・少年司法に関する機関横断パネルの技術的援助を求めること。 9.子どもの権利条約の選択議定書 100.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書が2004年6月以降、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書が2007年1月以降、期限を過ぎても未提出であることを想起するよう求める。委員会は、定期的なかつ時宜を得た報告実践の重要性を強調するものであり、したがって、これらの報告書を速やかに(可能であれば、審査プロセスを容易にするために同時に)提出するよう奨励する。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 101.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会および国民議会(マジリス)の構成員ならびに適用可能なときはすべての環礁に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 102.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回・第3回統合定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 103.委員会は、締約国に対し、2011年9月12日(すなわち第5回定期報告書の提出期限の18か月前)までに第4回・第5回統合定期報告書を提出するよう慫慂する。これは、委員会が毎年多数の報告書を受領することを理由とする例外的措置である。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 104.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された、国際人権条約上の報告に関する統一指針(HRI/MC/2006/3 and Corr.1)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、コア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月20日)。/前編・後編を統合(10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/147.html
総括所見:デンマーク(第2回・2001年) 第1回(1995年)/第3回(2005年)/第4回(2011年)OPAC(2005年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.151(2001年7月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2001年5月22日に開かれた第699回~第700回会合(CRC/C/SR.699 and 700参照)において、1998年9月15日に受領したデンマークの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.6)を検討し、2001年6月8日に開かれた第721回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、子どもの状況に関する理解をより明確なものとすることを可能にしてくれた、締約国の第2回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/DEN/2)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書が、グリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載しておらず、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがっていなかったことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国との間に持たれた建設的かつ開かれた対話を心強く思うとともに、議論の際に行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。委員会は、条約の実施に直接関与する代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利についていっそう十全な評価が行なえたことを認知するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全般的進展について締約国を称賛する。委員会の第1回総括所見および勧告(CRC/C/15/Add.33)を子どものための立法、政策およびプログラムに適用しようとした締約国の努力が留意されるところである。 4.委員会は、国際協力および開発援助の分野における締約国の傑出したコミットメントに、評価の意とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国が、主として後発開発途上国への支援として、国内総生産の相当割合を対外援助に配分していることに留意するものである。 5.委員会は、保育施設の質を向上させるため、法律により導入され、かつ自治体および教育専門家と協力しながら行なわれている、子どものケアに関する取り組みを歓迎する。 6.委員会は、子どもに対して体罰を用いる親の権利が1997年に廃止されたことに、満足感とともに留意する。委員会は、この新法について親に情報を提供するために行なわれた全国規模の意識啓発キャンペーンについて、さらなる満足感を表明するものである。委員会は、キャンペーンのフォローアップとしてマイノリティ言語による資料を含める取り組みに留意する。 7.委員会は、国家子ども評議会が1998年に法律によって常設機関とされ、かつ、条約の原則および規定に照らして締約国における子どもの状況を独立の立場から評価する権限を与えられたことに、満足感とともに留意する。 8.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を1997年に批准したことに、満足感とともに留意する。批准によって養子縁組法の改正が必要となり、とくに自己の養子縁組への子どもの参加の拡大が確保されることとなった。委員会はさらに、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO条約(第182号)および就業が認められるための最低年齢に関するILO条約(第138号)を批准したことに留意する。 9.委員会は、締約国が最近、第2回デンマーク若者議会の開催の便宜を図ったことに留意するとともに、若者議員の決定および勧告を検討しかつ回付する内閣の取り組みを歓迎する。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 報告 10.委員会は、報告書が、グリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載しておらず、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがっていなかったことを遺憾に思う。 11.委員会は、次回の定期報告書がグリーンランドおよびファロー諸島の子どもの状況に関する十分な情報を記載し、かつ条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがうことを確保するため、締約国があらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。 留保 12.委員会は、締約国が、手続法に関する常任委員会を通じ、条約第40条2項(b)(v)に対する留保を見直す手続を開始したことに留意する。 13.ウィーン世界人権会議のウィーン宣言および行動計画(1993年)に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第40条2項(b)(v)に対する留保を撤回する目的で、当該留保の見直しの手続を完了させるよう奨励する。 立法 14.委員会は、法務大臣が、子どもの権利条約を含む中核的国際人権条約をデンマーク法に編入することに関わる利点および不利益について検討するための人権専門家委員会を設置したことに留意する。委員会は、専門家委員会の勧告がまだ完成していないことには留意しながらも、国内法における子どもの権利条約の法的地位について依然として懸念を覚えるものである。 15.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約を含む中核的国際人権文書を国内法に編入することを検討するよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、すべての国際人権文書を平等に重視するよう促すものである。締約国は、この問題に関する専門家委員会の勧告および政府の決定についての情報を次回の定期報告書に記載するよう、勧告される。 国際人権文書の批准 16.委員会は、締約国が現在、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加入の可能性を検討していることに留意する。 17.委員会は、締約国に対し、同条約に加入するよう奨励する。 調整 18.省庁間子ども委員会の委任事項が1997年に更新されたことには留意しながらも、委員会は、条約がまだ省庁間委員会の活動の枠組みとして定められていないことを依然として懸念する。委員会はまた、子ども政策および子どもプログラムの一般的考慮事項に条約を明示的に含めるために締約国が行なった努力が不十分であることも懸念するものである。 19.委員会は、締約国に対し、条約を省庁間委員会の活動の枠組みとして定めることを検討するよう、奨励する。加えて、締約国は、子どもの権利条約に基づく、子どものための包括的戦略の策定を検討するよう奨励されるところである。 データ収集 20.委員会は、現行のデータ収集機構が、条約のすべての側面に関する細分化されたデータの収集を確保し、かつ、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の評価を効果的に行なうには不十分であることに、懸念とともに留意する。 21.委員会は、条約の実施に関して達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の効果の評価を効果的に行なうため、締約国が、データ収集システムを強化しかつ指標を開発するよう、勧告する。データ収集システムが、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とりわけ脆弱な立場に置かれている子どもをとくに重視しながら18歳未満のすべての子どもを網羅することを確保するための努力が行なわれるべきである。 独立の苦情申立て機構 22.委員会は、締約国が、オンブズマン事務所および電話ホットライン等を通じ、自己の権利侵害に関する子どもの苦情申立てを促進するための多くの取り組みを設けてきたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国内のすべての子どもにとってのこれらの苦情申立て機構のアクセス可能性および利用可能性について、依然として懸念を覚えるものである。 23.委員会は、子どもの権利侵害に関する苦情申立てに対応し、かつこのような侵害に対する救済を提供するための独立した苦情申立て機構がすべての子どもにとって容易にアクセスできかつ利用者にやさしいものとなることを確保するため、締約国があらゆる効果的措置をとるよう提案する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもによる苦情申立て機構の効果的利用を促進するための意識啓発の取り組みを強化するよう、奨励するものである。子どものために別個の苦情申立て機構を設けることへの消極的姿勢には留意しながらも、委員会は、締約国に対し、国家子ども評議会の権限を強化して個別の事案および子どもからの苦情への対応を含めることを検討するか、オンブズマン事務所内に子どもの権利担当部署を設置するよう、奨励する。 条約およびその原則の普及 24.委員会は、学校においておよび子どもとともに働く専門家(教員、学校管理者および警察職員を含む)の間で、インターネット等も通じ、条約の原則および規定を普及するために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家が条約およびそこに掲げられた原則について十分な意識を有していないことを、依然として懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、条約の原則および規定を体系的にかつ継続的に普及し、かつ、条約が学校カリキュラム、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く、社会のあらゆるレベルの専門家集団および行政機関の研修活動に体系的に編入されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。 2.一般原則 差別の禁止 26.委員会は、とくに刑法改正ならびに民族的マイノリティと警察に関するパンフレットの作成および配布を通じ、差別の禁止を促進するために締約国がとった措置を認識する。しかしながら委員会は、一部集団の子ども、とくに民族的マイノリティに属する子ども、子どもの難民および庇護希望者、移住者家族に属する子ども、障害のある子どもならびに社会的および経済的に不利のある家族に属する子どもに対する事実上の差別および排外主義的感情が、教育制度におけるものも含めて引き続き懸念の対象となっていることに、留意するものである。 27.条約第2条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、とくに継続的な意識啓発キャンペーンを組織することにより、マイノリティ集団、とくに移住者家族に属する子ども、子どもの難民、障害のある子どもならびに社会的および経済的に不利のある家族に属する子どもに対する態度の変革ならびに事実上の差別および排外主義的感情の解消のための措置(民族平等委員会を通じての措置を含む)を強化するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 28.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則(第3条)が、締約国の政策およびプログラムの実施において全面的に適用されかつ適正に統合されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、しばしば親の権利のほうが子どもの最善の利益よりも重要だと考えられていることに留意するものである。 29.委員会は、子どものための法律、政策およびプログラムならびに子どもに関わるあらゆる司法上および行政上の決定における子どもの最善の利益の原則の実施を確保するため、締約国がさらなる努力を行なうよう勧告する。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利について法律にさまざまな規定が置かれていること、および、この点に関わる法定最低年齢が12歳であることを認識する。しかしながら委員会は、条約第12条の実施が不十分であること、および、12歳未満の子どもは意見を聴かれる権利を有しないことを、依然として懸念するものである。 31.委員会は、裁判手続のみならず、子ども保護サービス、監護手続および子どもの施設措置に関するものを含むさまざまな行政上の決定においても条約第12条の効果的実施を確保するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。さらに、締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがって、かつ条約第12条に照らし、12歳未満の子どもの意見の尊重を効果的に促進しかつ奨励するよう促されるところである。 3.家庭環境および代替的養護 親の指導および責任 32.ひとり親を対象とする金銭的援助および特別援助のプログラム(自治体レベルのものを含む)が確立されたことには留意しながらも、委員会は、ひとり親家族に属する子どもが脆弱な状況に置かれていることを依然として懸念する。民族的マイノリティの家族に属する子どもの状況についても懸念が表明されるところである。 33.委員会は、締約国が、ひとり親家族および民族的マイノリティの家族を支援するプログラムおよび取り組みを強化するよう、勧告する。 家庭における児童虐待およびネグレクト 34.委員会は、性的虐待に関する省庁間作業部会の提案の実施を含め、子どもの虐待およびネグレクトに対応するためにとられたさまざまな措置に留意する。しかしながら委員会は、この現象の規模および実施されたさまざまな措置の効果に関する情報が存在しないことを依然として懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、児童虐待(性的虐待を含む)およびネグレクトのあらゆる事案の通報および付託に関する効果的システム、とられたさまざまな措置の成果の定期的評価、ならびに、子どもにさらなるトラウマを負わせることを回避するための、十分な訓練を受けた専門家による、子どもにやさしい部門横断型の手続を確保するための法律を含む、包括的な政策を策定しかつ実施するよう、勧告する。 4.基礎保健および福祉 思春期の健康 36.締約国の努力には留意しながらも、委員会は、思春期の子どもが直面している健康上の問題、とくに、とりわけ10代の女子の間で多数発生している摂食障害、薬物、アルコールおよびタバコの濫用ならびに自殺について、依然として懸念する。 37.委員会は、締約国が、とくに若者の自信を強化し、かつ健康に悪影響を及ぼす可能性がある行動を防止するための予防教育、カウンセリングおよびリハビリテーション・プログラムを通じて、思春期の身体的および精神的健康に関わるこれらの懸念に対応するための努力を強化するよう、勧告する。 5.教育、余暇および文化的活動 施設における子どもへの暴力 38.この点に関して締約国が行なっている活動は認知しながらも、委員会は、学校におけるいじめの水準がやや高いこと、および、保育施設その他の施設における虐待(性的虐待を含む)からの子どもの保護が不十分であることを、依然として懸念する。 39.委員会は、締約国が、この点に関する国家子ども評議会の勧告を考慮に入れ、かつ子どもの参加を得ながら、学校における暴力およびいじめを防止しかつこれと闘うための措置を強化するよう、勧告する。さらに、締約国は、子どもに対する犯罪について有罪判決を受けた者が子どものためのケア施設その他の施設で働くことを防止するために必要な措置をとるよう、奨励されるところである。 6.特別な保護措置 少年司法の運営 40.少年司法の分野における締約国の努力には留意しながらも、委員会は、15~17歳の子どもが成人用の拘禁施設に収容され、かつ独居拘禁下に置かれる可能性があることを依然として懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、少年司法を規律する法律および政策が条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のようなこの分野における他の関連の国際基準に全面的に一致することを確保するため、当該法律および政策を見直すよう促す。条約第3条、第37条、第40条および第39条に照らし、委員会はさらに、子どもが拘禁施設で成人から分離され、かつ子どもが独居拘禁の対象とされないこと(これが子どもの最善の利益にかない、かつ裁判所による審査の対象とされる場合を除く)を確保するため、締約国があらゆる効果的措置をとるよう勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、法律に抵触した子どもの更生および再統合のためのプログラムを強化するよう、奨励する。 性的虐待および搾取 42.委員会は、性的虐待に関する情報収集システムを最近確立したことを含め、性的虐待および搾取を防止しかつこれと闘うための締約国が行なっている努力を認識する。委員会は、子どもの虐待および搾取に関する意識が欠けており、かつ児童ポルノに対応するための努力が不十分であることを懸念するものである。委員会はまた、虐待の被害を受けた子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家(警察官、弁護士およびソーシャルワーカーを含む)を対象とした研修の必要性があることにも留意する。 43.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、これらの現象を防止しかつこれと闘うための現行の政策および措置(ケアおよびリハビリテーションを含む)を強化するための努力を増強するよう、勧告する。委員会は、締約国が、虐待および搾取の被害を受けた子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家の研修を導入しかつ(または)強化するため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告するものである。 44.委員会は、社会の規範および規則への適応の面で困難を経験している可能性がある15~17歳の子ども、とくに法律に抵触したこれらの子どものための支援を提供する法案が提案されたことに留意する。しかしながら委員会は、このような子どもの状況について依然として懸念を覚えるものである。 45.委員会は、締約国に対し、これらの子どもおよびその親に対して十分な支援を提供する努力を継続し、かつ必要なときは強化するよう、奨励する。 7.選択議定書の批准 46.委員会は、締約国が、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書に署名していることを認識する。 47.委員会は、締約国に対し、両選択議定書を可能なかぎり早期に批准するよう奨励する。 8.文書の普及 48.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月20日)。