約 24,225 件
https://w.atwiki.jp/monosepia/pages/3074.html
★ハイパーインフレ到来か!2010年3月14日 12 03 この指摘は正しい。 「ブラック・スワン」著者、ハイパーインフレを懸念-債務増大で不確実性が市場に及ぼす影響を取り上げてベストセラーとなった「ブラック・スワン」の著者、ナシーム・タレブ氏は、世界各国の当局が債務を増やし、金融を緩和しているとして、ハイパーインフレーションの懸念があると述べた。 タレブ氏は12日のニューデリーでの講演で、「われわれは巨額債務を抱える状況に直面している」と指摘。「次なる失敗は紙幣の刷り過ぎにあるだろう」とし、「それが、わたしがハイパーインフレを恐れる理由だ」と語った。 公的債務の増加については、債券ファンド大手、米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の共同最高投資責任者(CIO)、モハメド・エルエリアン氏も11日、各国政府がインフレやデフォルト(債務不履行)を通じて巨額債務を削減する可能性を指摘し警告している。【ブルームバーグ03/13】 これまで再三述べてきているので、多くは言わないが、最後のPIMCOの警告は、巨額債務を帳消しにするために意図的に行う可能性があるということを示唆している。 各国が"協調"してハイパーインフレを引き起こそうというわけである。 すなわち、世界同時ハイパーインフレが起きるということだ! 日・欧・米の財政危機懸念の真意がそこにある。 それに備えた対策が火急であることは言うまでもない...。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/198.html
総括所見:シリア(第1回・1997年) 第2回(2003年)/第3回・第4回(2011年)OPSC(2006年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.70(1997年1月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1997年1月16日および17日に開かれた第360回~第362回会合(CRC/C/SR.360-362)においてシリア・アラブ共和国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.2)を検討し、委員会の総括所見を採択した。 (注)1997年1月24日に開かれた第371回会合において。 A.序 2.委員会は、政府代表団との間で交わされた建設的対話に対して評価の意を表明したい。委員会は、シリア・アラブ共和国によって第1回報告書および事前質問票(CRC/C/Q/SYR.1)への文書回答が提出されたことを歓迎しながらも、条約の原則および規定が実際にどのように実施されているかに関する情報が提供されず、同国の子どもの状況に関するより詳細な全体像を得ることができなかったことを、遺憾に思うものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約が国内法に全面的に受容されており、かつ、民法および刑事手続法において、その規定がシリアで効力を有する国際条約の規定と矛盾する場合には適用されないと明示的に規定されていることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、条約の原則および規定との一致を確保するために国内法の多くの規定が現在見直されつつあることも歓迎するものである。 4.委員会は、子どもの福祉のための高等委員会を閣僚レベルに設置したこと、シリアにおける条約の実施を監視するために国内子ども委員会を設置したこと、および、1990年代における子どもの生存、保護および発達に関する世界宣言を実施するための国内行動計画を採択したことなど、政府によって行なわれた取り組みを歓迎する。 5.委員会は、教育があらゆる段階で無償であることおよび1981年の義務教育法(第35号)によって初等段階の教育が義務的であることに、評価の意とともに留意する。 6.委員会はさらに、政府が第1回報告書、委員会との議論の議事要録およびここに採択された総括所見を刊行するつもりであることに、評価の意とともに留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、領土の一部が占領されている結果、締約国が全領土に管理権を行使する立場になく、そのため締約国のあらゆる地域で条約の実施を確保することはできないことに留保する。この文脈において、委員会はまた、軍事支出に相当の予算が割り当てられ、かつ社会部門に配分される予算が不十分であるために、条約に基づく権利を子どもが享受することが阻害される可能性があることにも留意するものである。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、締約国が条約第14条、第20条および第21条に付した留保が幅広い性質のものであることにより、これらの条項で対象とされている権利を実施することに対する締約国の決意の性質に関して誤解が生じかねないことを懸念する。 9.全国レベルで子どもの福祉の問題を取り扱う権限を有した政府機関が存在することは歓迎しながらも、委員会は、条約の実施に対する包括的なアプローチを発展させるにあたり、こうした機関の間ならびに全国機関および地域機関の間での調整が不十分であることに、懸念を表明する。 10.委員会は、教育、保健、児童労働、難民である子どもおよびマイノリティに属する子ども、女子、少年司法の運用の対象となった子ども、障害児、虐待または不当な取扱いの犠牲となった子どもならびに路上で暮らしかつ/または働いている子どもにとくに力点を置いて、達成された進展を評価しかつ子どもに関わってとられた政策の影響を評価できるように、あらゆる集団の子どもとの関わりで、かつ条約が対象としているすべての領域について、信頼しうる量的および質的データを体系的に収集するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。 11.条約の原則および規定に関する意識を促進するために行なわれた取り組みは認めながらも、委員会は、その原則および規定が子ども、親、行政職員ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に広く知られるようにするための措置が不十分であることを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会はとくに、警察の構成員およびその他の法執行官、司法職員、あらゆる教育段階の教員、ソーシャルワーカーならびに医療従事者を対象として子どもの権利の分野で行なわれた研修が不十分でありかつ体系的なものでないことを懸念するものである。委員会はまた、公衆の間で、子どもおよびおとなの双方に向けた形式で、かつその教育レベルにしたがって条約の本文を刊行しかつ普及するための措置がとられていないことも懸念する。 12.委員会は、子どもの最善の利益、差別の禁止ならびに子どもの意見の尊重および家庭、学校および社会生活に参加する子どもの権利が国内法に全面的に反映されておらず、かつ現実に実施されていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、関連の国内法が条約に基づく子どもの定義と一致していないこと、とくに刑事責任年齢(7歳)および雇用にアクセスできる年齢が低いことを懸念する。 13.委員会は、女子に対する差別的態度(早期婚の慣習を含む)および婚外子に対する差別的態度が依然として残っていることに対し、懸念を表明する。さらに、女子の婚姻年齢が男子のそれより低いことは、条約、とくに第2条との両立性に関して疑問を生ぜしめるものである。 14.条約第4条の実施に関して、委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を、とくに保健および教育に力点を置いて、締約国が利用可能な手段を最大限に用いて確保するためにとられた措置が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会はとくに、最も脆弱な立場に置かれた子ども、とりわけ貧困下で暮らしている子ども、女子、障害児、虐待の被害を受けた子ども、マイノリティ集団に属する子どもおよび路上で暮らしかつ/または働いている子どもの権利を保護するための政策、措置およびプログラムが不十分であることを懸念するものである。 15.難民である子どもおよびシリアで生まれたクルド人の子どもの状況は、条約第7条に照らし、委員会の懸念の対象である。これとの関連で、委員会は、シリアで生まれた難民の子どもを登録するための便益が存在しないこと、および、シリアで生まれたクルド人の子どもが、シリア当局によって外国人またはマクトゥーミーン(未登録者)のいずれかと見なされ、かつ、出生時に他の国籍は有していないにも関わらず、シリア国籍を取得する上で行政上および実際上の困難に直面していることに、留意する。 16.教育に関して、委員会は、中等教育段階の中退率がとくに女子の間で高いこと、教員/生徒の割合が高いことならびに十分な学習用および教育用の便益が存在しないことに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、学校カリキュラムでいまなお人権教育および子どもの権利教育のプログラムが掲げられていないことに留意するものである。 17.委員会は、家庭における不当な取扱いおよび虐待を防止しかつそれと闘い、かつそのような不当な取扱いおよび虐待の犠牲になった子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を提供するための適切な措置がとられていないこと、および、この件に関して情報が提供されていないことを懸念する。委員会はまた、体罰は法律で禁じられているにも関わらず、学校における規律の維持のための措置としてしばしば体罰が行なわれていることにも、懸念とともに留意するものである。 18.委員会は、子どもの最低雇用年齢が低すぎること、および、家内制産業で働く子どもが最低雇用年齢、夜業の禁止および有害な職業に関する他の保護措置を含む労働法(1959年第91号法)の関連規定で保護されていないことに、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、農業部門で児童労働の搾取が行なわれているという報告があること、および、この現象と闘いかつそれを防止するために利用可能な手段が農村部において存在しないことに、懸念を表明するものである。 19.委員会は、締約国の少年司法の運用の制度が条約第37条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則といったこの分野における他の関連の国連基準に一致していないことに、懸念を表明する。委員会はとくに、子どもが非常に低い年齢から自由を奪われうること、および、子どもの施設ケアに代わる措置を見つけることにこれまで十分な注意が払われてきていないことに、留意するものである。 E.提案および勧告 20.委員会は、締約国に対し、条約第14条、第20条および第21条に関する留保を再検討するよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国が解釈宣言を行なうことにより、これらの特定の権利に関する締約国の立場を明確にする上で望ましい効果が得られる可能性があることを強調するものである。 21.児童福祉高等委員会および全国子ども委員会の設置を歓迎しながらも、委員会は、これらの委員会を通して、子どもの権利の保護ならびにそれに関するさまざまな政策およびプログラムの実施に携わる、中央および地方の行政機関と諸機関との間の縦の調整を増大させかつ組織化するために、さらなる努力を発展させるよう勧告する。 22.委員会は、データ収集システムを改善するとともに、当該システムにより、さらなる行動が必要とされている部門の特定および達成された進展の評価を、条約が対象としているすべての領域において、全国で、かつとくに困難な状況にいる子どもも含めたあらゆる集団の子どもとの関わりで可能にするため、適切かつ具体的な細分化された指標を特定するよう勧告する。 23.委員会はまた、締約国が、条約第42条に照らして、条約の原則および規定に関する公衆の意識を促進する分野でその活動を継続しかつ強化すること、および、子どもとともにおよび子どものために働く行政職員および専門家(警察の構成員およびその他の法執行官、司法職員、あらゆる教育段階の教員、ソーシャルワーカーならびに医療従事者を含む)の継続的な研修のためのプログラムを創設することを、勧告する。委員会はまた、現在進められている学校カリキュラムの見直しのなかで、教育プログラムへの条約の一般原則の導入がとくに重視されるべきことも勧告するものである。 24.委員会は、締約国が、条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益、差別の禁止ならびに子どもの権利の尊重および家族、学校および社会生活に参加する子どもの権利に関わる原則を正当に考慮しながら、条約と国内法との全面的一致を確保する目的で努力を継続するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、適切な場合にはいつでもこれらの原則を反映した具体的規定を法律に導入すること、および、女子の最低婚姻年齢、刑事責任年齢ならびに雇用および家内制手工業での仕事にアクセスできる最低年齢に関わる規定を優先課題として見直し、かつ条約の原則と一致させることを勧告するものである。 25.委員会は、広く存在している女子差別を防止しかつそれと闘うための情報キャンペーンを開始するよう勧告する。委員会はまた、婚外子の保護のために適切な積極的是正措置をとるようにも勧告するものである。 26.委員会はまた、条約第4条に照らし、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現の予算配分に、保健および教育ならびに最も不利な立場に置かれた集団に属する子どもによるこれらの権利の享受をとくに重視しながら、優先順位を与えるようにも勧告する。これとの関連で、委員会は、児童福祉高等委員会および全国子ども委員会の決定が予算に直接かつ即時の影響を与えるようにすることを目的として、全体的な計画および予算配分に責任を持つ省庁がこれらの機関の活動に全面的に関与するよう提案するものである。 27.シリアで生まれた難民である子どもおよびシリアで生まれたクルド人の子どもが条約第7条に基づく権利を享受することに関して、委員会は、登録される権利および国籍を取得する権利は、条約第2条にしたがい、とりわけ子どもまたはその親もしくは法定保護者の人種、宗教または民族的出身に関わりなく、いかなる種類の差別もなしに、シリア・アラブ共和国の管轄下にあるすべての子どもに保障されるべきであることを強調する。委員会はまた、締約国が、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同条約の議定書ならびに1961年の無国籍の削減に関する条約の批准を検討するようにも勧告するものである。 28.委員会は、当局が、家庭における不当な取扱いおよび虐待ならびに学校における体罰の問題に特段の注意を向けるよう勧告する。これとの関連で、委員会は、家庭または学校におけるあらゆる形態の身体的または精神的罰を防止しかつそれと闘うための情報キャンペーンおよび教育キャンペーンを行なうこと、および、そのような不当な取扱いまたは虐待の被害を受けた子どもが利益を得られるようにすることを目的とした苦情申立ての仕組みを創設することの必要性を強調するものである。委員会はさらに、そのような不当な取扱いおよび虐待の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための仕組みを創設するよう、勧告する。 29.委員会はさらに、労働法(1959年第91号法)のうち雇用に関わる子どもの保護規定を見直し、かつ条約、とくに第32条と一致させるよう勧告する。委員会は、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するよう提案するものである。 30.委員会は、締約国が、条約第37条、第39条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則といったこの分野における他の国連基準の精神にしたがって少年司法制度の改革を行なうことを構想するよう、勧告する。この目的で、委員会は、締約国が〔国連〕人権高等弁務官/人権センターおよび事務局の犯罪防止刑事司法局の技術援助プログラムを利用するよう提案するものである。委員会はさらに、少年司法の運用の対象となった子どもの苦情を受け付けかつ検討する独立監視機関の設置を、シリア当局がしかるべき形で検討するよう提案する。 31.委員会は、条約の原則および規定の精神にしたがって締約国が行なっている法律の見直しおよび政策の採用を踏まえ、とくに保健および家族計画、教育および人権教育ならびに子どもの虐待(早期婚および家庭における子どもの性的虐待を含む)の分野で、ユニセフならびに国内の非政府組織および国際的非政府組織と緊密に協力しながら研究を行なうよう勧告する。 32.最後に、締約国がその第1回報告ならびに委員会との議論の議事要録およびここに採択された総括所見を刊行する意図があることを想起しながらも、委員会は、条約第44条6項に照らし、政府、議会および関心のある非政府組織を含めた一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起することを目的として、そのような刊行物を公衆一般が広く利用できるようにするよう勧告する。 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/175.html
総括所見:フィンランド(第3回・2005年) 第1回(1993年)/第2回(2000年)/第4回(2011年)OPAC(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.272(2005年10月20日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月22日に開かれた第1068回および第1069回会合(CRC/C/SR.1068 and 1069参照)においてフィンランドの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.5)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第3回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/FIN/3)に対する文書回答の提出により、委員会がフィンランドの子どもの状況に関する理解をいっそう明確なものにできたことを歓迎する。委員会は、部門横断型の代表団が出席し、追加的情報を提供してくれたことを評価するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の点に評価の意とともに留意する。 (a) 未成年者の事情聴取に関するガイドラインの採択(2002年3月)。 (b) 子どもオンブズマン職の設置(2005年9月)。 (c) 国家行動計画「子どもにふさわしいフィンランド」の採択(2005年)。 (d) 人身取引対策行動計画の完成(2005年3月31日)。 4.委員会はまた、以下の文書の批准も歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2002年5月10日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(2000年1月17日)。 (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2000年12月29日)。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.3)の検討後に表明されたさまざまな懸念および勧告(CRC/C/15/Add.132参照)への対応が立法上、行政上その他の措置を通じて行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、一部の懸念表明および勧告、とくに子どもに関わる調整のとれた政策、子どもに対する暴力(性的虐待を含む)および民族的マイノリティに属する子どもに関するものについて不十分なまたは部分的な対応しかとられていないことを、遺憾に思うものである。 6.委員会は、締約国に対し、第2回定期報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた一連の懸念表明に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 調整/国家的行動計画 7.委員会は、子どもの権利のいっそう全面的な実施を達成しようとするいくつかのプログラムに留意するとともに、子どもに関する総会特別会期(2002年5月)で採択された最終文書「子どもにふさわしい世界」に基づく包括的な国家行動計画「子どもにふさわしいフィンランド」を歓迎するものの、これらの諸計画間の調整が十分ではないことを懸念する。 8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家行動計画において、条約に掲げられた子どもの権利に対する志向が明確にされることを確保すること。 (b) その実施のために十分な予算を用意すること。 (c) 子どもの権利の実施に対する縦割り的アプローチを克服するため、他のあらゆる行動計画およびプログラムを国家行動計画の調整下に置くこと。 (d) 新たに設置された子どもオンブズマンに対し、国家行動計画を監視し、かつ達成された進展を評価する権限を与えること。 独立の監視 9.委員会は、2005年9月の段階で子どもオンブズマン職が設置されたこと、および、幅広い専門領域を代表し、かつNGOの代表も参加する諮問委員会が――オンブズマンの活動を支援する目的で――設けられたことを歓迎する。しかしながら委員会は、オンブズマンの権限が主として条約に関する普及促進活動および助言サービスに焦点を当てたものとなっており、個別事案には対応しない(個別事案の調査は依然として議会オンブズマンの権限であるとされる)ことにも留意するものである。 10.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)にしたがって子どもオンブズマンの権限を拡大し、子どもからの苦情を受理しかつ調査する権能も含めること。 (b) 子どもオンブズマン事務所が国内全域で条約の実施を効果的に監視できるよう、締約国が、十分な人的資源および財源をもって同事務所を支援すること。 (c) 子どもオンブズマンの年次報告書は、その勧告を実施するために政府がとろうとしている措置についての情報とともに議会に提出され、かつ議会における討議の対象とされるべきこと。 子どものための資源 11.委員会は、地方当局が広範な自治権限を有していることから、国内全域で子どものための資源の平等性およびサービスの利用可能性を確保するために変革が必要である旨の、締約国の懸念を共有する。 12.委員会は、締約国が、子どものために提供される資源について評価しかつ分析するための研究を行なうとともに、必要に応じ、すべての子どもが、どの自治体に住んでいるかに関わらず、サービスに平等にアクセスできかつサービスを利用できることを確保するための効果的措置を引き続きとるよう、勧告する。 データ収集 13.委員会は、子どもに関する統計の作成において、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子ども(とりわけ障害児、子どもの庇護希望者、法律に抵触した子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもなど)との関連で調整および恒常性が欠けていることに、懸念とともに留意する。 14.委員会は、子どもの生活条件およびその権利の実施に関する詳細な分析を可能とする目的で、子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもについてのデータを包括的に収集するためのシステムを発展させる努力を引き続き行なうよう、勧告する。 研修/条約の普及 15.委員会は、条約に関する情報の普及をおおむね市民社会が担当しているままであることに留意するとともに、条約が、マイノリティおよび移民が使用している言語によって容易に入手可能とされていないことを懸念する。さらに委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした条約に関する研修が依然として不十分であることを、懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、移民および先住民族マイノリティ、民族的または言語的マイノリティのような脆弱な立場に置かれた集団の間における普及にとくに注意を払いながら、学校カリキュラム等も通じて条約をさらに普及するとともに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続するよう、奨励する。 2.一般原則 差別の禁止 17.2005年2月に反差別法が施行されたことは歓迎しながらも、委員会は、移民およびその他のマイノリティ集団(とくにロマ)との関連で、差別的および排外主義的態度ならびに日常生活における事実上の差別が残っており、かつ若者の間で高まりつつあることを懸念する。 18.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子ども(ロマおよび外国人の子どもを含む)に対するあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための努力を継続しかつ強化するとともに、差別的態度に関わる若者の教育にとくに注意を払うよう、勧告する。 19.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。 子どもの最善の利益 20.子どもの最善の利益が法律でしばしば考慮されていること(たとえば、新外国人法第6条で子どもの特別な状況が明示的に認められていることを含む)には留意しながらも、委員会は、この原則が、子どもに影響を与えるすべての政策領域において、実際上も十分に尊重されかつ実施されているわけではないことを、懸念する。 21.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の一般原則が理解され、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに直接間接の影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて適切に統合されかつ実施されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 22.委員会は、法的手続、たとえば監護または子どもの保護に関する措置において子どもの意見を聴くための規則に関する情報に留意するものの、裁判官/裁判所によって直接意見を聴取される権利を有しているのは15歳以上の子どものみであることを懸念する。当該年齢に満たない子どもについては、直接意見を聴取するかどうかは裁判官の裁量に委ねられている。直接の意見聴取が行なわれず、子どもの意見が第三者を通じて裁判所に提出される場合、子どもが当該第三者によって直接意見を聴取されていない場合がある。 23.委員会は、条約第12条が全面的に実施されること、とくに、子どもに影響を与える司法上および(または)行政上の手続において決定が行なわれなければならない際、子どもが裁判官に対して直接自己の意見を表明する権利が認められることを確保するため、締約国が立法上その他の措置をとるよう勧告する。 3.市民的権利および自由 適切な情報へのアクセス 24.マスメディアにおける表現の自由の行使に関する法律(第460/2003号)をはじめ、締約国がこの点について行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、とくにインターネットを通じて、子どもが暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされていることについて懸念を表明する。 25.委員会は、締約国が、移動通信技術、ビデオ映画およびゲームその他のテクノロジー(インターネットを含む)を通じて暴力、人種主義およびポルノグラフィーにさらされることから子どもを効果的に保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、移動通信技術、メディア広告およびインターネットを、子どもの福祉にとって有害となる情報および資料について子どもおよび親双方の意識を高めるための手段として活用するためのプログラムおよび戦略を発展させるよう、勧告するものである。締約国は、メディアの有害な情報にさらされることから子どもを保護し、かつ子ども向けの情報の質を向上させる目的で、ジャーナリストおよびメディアとの取決めおよびプロジェクトを発展させるよう、奨励される。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 26.委員会は、フィンランドにおける監護紛争が非常に長く続き、そのための子どもに悪影響が生じる可能性があることに留意する。 27.委員会は、子どもの監護をめぐる紛争が適当な期間内に解決されるべきこと、および、離婚家族の支援活動に、訓練を受けた専門家による支援サービスが含まれるべきことを勧告する。 代替的養護 28.委員会は、子どもがしばしばその意見を十分に考慮されることなく代替的養護に措置されていることに留意するとともに、公的機関が根本的な親子のきずなの維持を必ずしも十分に支援していないことを懸念する。さらに、新たな「子どもの福祉発展プログラム」には留意しながらも、委員会は、代替的養護に措置される子どもが増えていることについての前回の懸念をあらためて表明するものである。 29.委員会は、締約国が、親に対する十分な支援等も通じ、代替的養護に措置される子どもの人数の増加の根本的原因に対応するよう勧告する。締約国はまた、子どもが施設で育てられるときは、小集団で生活し、かつ個別のケアを受けることも確保するべきである。 30.委員会はまた、締約国が、代替的養護への措置に関わるいかなる決定においても子どもの意見を十分に考慮に入れることも勧告する。さらに委員会は、代替的養護への措置によって親子関係に悪影響が生じるべきではないことを勧告するものである。 暴力、虐待およびネグレクト 31.1997~2002年の暴力防止キャンペーンおよび2004~2007年に予定されている第2回キャンペーンは称賛しながらも、委員会は、子どもに対する暴力および家庭内の性的虐待がフィンランドにおける子どもの権利の全面的実施を妨げるもっとも重大な要因のひとつになっているという、フィンランド議会オンブズマンの懸念を共有する。 32.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態の子どもの虐待を防止しかつこれと闘う目的で、子どもの関与を得ながら意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを強化すること。 (b) フリーダイヤルの全国的ヘルプライン「子ども・若者フォン」に対する支援およびこれとの連携を増強すること。 (c) 子どもの虐待の事案の通報を奨励し(代替的養護を受けている子どもにそのための機会を与える等の手段によるものも含む)、かつこれらの行為の加害者を訴追するための措置を強化すること。 (d) 暴力の被害を受けた子どもに対し、ケア、全面的な身体的および心理的回復ならびに再統合を引き続き提供すること。 33.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の継続的かつ詳細な研究および政府に対して送付された関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、同地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 健康および保健ケア・サービスへのアクセス 34.委員会は、子どものアルコール消費が増えており、かつ体重過多および肥満の子どもの人数が増加していることに懸念を表明する。 35.委員会は、思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)に照らし、締約国が、子どもおよび青少年の健康、とくに子どものアルコール消費の問題に対応するための措置を強化するとともに、保健プログラム(とくに青少年の間で健康的なライフスタイルを促進することを目的としたものであるべきである)についての活動をさらに進めるよう、勧告する。 36.この点に関する締約国の努力は認知しながらも、委員会は、青少年の自殺率が高いことをいまなお懸念する。 37.委員会は、締約国が、青少年の自殺を防止し、かつ精神保健ケア・サービスを強化するための措置を増強するよう勧告する。 38.委員会はまた、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)について誤診が行なわれており、そのため、精神刺激薬の有害な作用に関する証拠が増えているにも関わらずこれらの薬が過剰に処方されているという情報があることも懸念する。 39.委員会は、ADHDおよびADDの診断および治療についてさらなる調査研究(子どもの身体的および心理的ウェルビーイングに対する精神刺激薬の悪影響の可能性も含む)を行なうとともに、これらの行動障害への対応に、できるかぎりその他の形態の管理および治療を用いることを勧告する。 生活水準 40.貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画(2003~2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもがいる家族のうち貧困下で暮らす家族の数が増えていること、および、金銭的援助および支援が必ずしも経済成長と軌を一にしていないことを、懸念する。 41.委員会は、締約国が、貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画を効果的に実施するとともに、金銭的援助およびそれ以外の援助を提供することにより、貧困が削減され、かつ経済的苦境が子どもの発達に及ぼす悪影響から子どもが保護されることを確保する目的で、経済的苦境下で暮らしている家族のための支援を強化するよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 42.この点に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は、ロマの子どもが高い率で学校から中退しており、かつ教育へのアクセスの面で困難に直面しているため、その発達および将来の雇用へのアクセスに悪影響が生じていることに懸念を表明する。加えて、委員会はまた、ロマ語の教員および就学前教材が存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。 43.委員会は、締約国が、条約第28条および第29条が国内全域のすべての子ども(ロマの子どものような、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもも含む)を対象として全面的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 44.委員会は、初等中等学校の全国カリキュラムに人権教育が統合されたことを歓迎するものの、この科目を含めるかどうかがいまなお最終的には教員の決定次第とされていることから、すべての子どもが人権教育(子どもの権利に関するものも含む)を受けているわけではない可能性があることを、懸念する。 45.委員会は、締約国が、人権教育が学校でどの程度利用可能とされているかについて検討するとともに、すべての子どもが、人権について教えられるのみならず、人権に関する基準および価値観が家庭、学校またはコミュニティのいずれであっても現実に実施されるプロジェクトにも参加することを確保するよう、勧告する。 46.委員会は、学校における暴力およびいじめに取り組むために締約国がとった措置(すべての学校がいじめおよび暴力に反対する行動計画を策定しなければならないとする要件の導入も含む)は歓迎しつつ、これらの行動が、とくに障害のある子どもおよび親が障害者である子どもに対していまなおきわめて一般的に行なわれていることを懸念する。 47.委員会は、締約国が、学校で醸成されている友人関係の質について生徒、職員および親に対する定期的調査を行なう等の手段により、子どもの全面的参加を得ながら、学校におけるいじめおよび暴力の現象と闘うための適当な措置を引き続きとるよう勧告する。障害のある子どもおよび親が障害者である子どもに対するいじめおよび暴力に対し、とくに焦点が当てられるべきである。 7.特別な保護措置 子どもの庇護希望者 48.委員会は、子どもの庇護希望者の地位を向上させ、かつそのニーズに対していっそう注意が払われることを確保する目的で、〔欧州連合〕理事会指令2003/9/ECを編入する、移民の統合および庇護希望者の受け入れに関する法律の改正が、2005年6月に採択されたことに留意する。しかしながら委員会は、現行外国人法に基づいた一部カテゴリーの庇護申請に適用されるいわゆる「迅速手続」が、子どもに悪影響を及ぼす可能性があることを懸念するものである。 49.保護者のいない子どもの申請を処理するために要する期間が相当に短縮されたことは歓迎しながらも、委員会は、家族再統合のために必要な期間が依然として長すぎることをいまなお懸念する。 50.委員会は、締約国が、いわゆる「迅速手続」において庇護希望者のための適正手続および法的保障が尊重されることを確保するよう、勧告する。 51.委員会はまた、締約国が、条約第10条にしたがい、家族再統合を目的とする申請を積極的、人道的かつ迅速な方法で取り扱うことも勧告する。 性的搾取および人身取引 52.フィンランド法に人身取引罪を導入した最近の刑法改正、ならびに、子どもの商業的性的搾取と闘う国家行動計画(2000年)および人身取引対策行動計画(2005年)は歓迎しながらも、委員会は、子どもを含む人が、同国へおよび同国を通過する形で引き続き取引されている旨の情報があることを懸念する。 53.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、性的目的およびその他の搾取的目的で行なわれる子どもの人身取引を発見し、防止しかつこれと闘うための努力をさらに強化するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 国連・国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書への加盟を検討すること。 (b) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約への加盟を検討すること。 少年司法の運営 54.委員会は以下のことを懸念する。 (a) とくに重大な事情がある場合に子どもが「無条件の収監」刑を言い渡される可能性があること。 (b) 条約第37条(c)の全面的実施を阻害する可能性がある、市民的および政治的権利に関する国際規約第10条2項(b)および3項に対する留保を、締約国が維持していること。 55.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約(とくに37条、第40条および第39条)および少年司法分野における他の国連基準(少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む)ならびに委員会が少年司法に関する一般的討議の際に行なった勧告(CRC/C/46、パラ203-238)と全面的に一致させるよう、勧告する。これとの関連で、委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 18歳未満の子どもの自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い期間でのみ行なわれ、かつ、このような子どもが収容中に成人から分離されることを確保するため、引き続きあらゆる必要な措置をとること。 (b) 条約の全面的実施を確保するため、市民的および政治的権利に関する国際規約第10条2項(b)および3項に付した留保の撤回を検討すること。 マイノリティ集団に属する子ども 56.委員会は、フィンランド人の子どもとロマの子どもとの間の格差が引き続き存在し、ロマの子どもによる権利(とくに住居および教育に対する権利)の全面的享受に深刻な影響が生じていることに、懸念を表明する。 57.委員会は、締約国が、ロマの子どもの社会的包摂に向けた措置を引き続きとり、かつロマの子どもの周縁化およびスティグマと引き続き闘うよう、勧告する。さらに、ロマの子どもが条約に掲げられた権利を(とくに教育へのアクセスおよび十分な生活水準との関連で)全面的に享受することを確保するため、追加的措置が必要である。 8.子どもの権利条約の選択議定書 58.委員会は、対話の際に締約国が表明した、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が間もなく批准される旨の言明を歓迎する。 59.委員会は、締約国が、可能なかぎり早期に子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の加盟国となるよう、勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 60.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府の構成員、議会ならびに適用可能なときは自治体の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 61.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 62.委員会は、締約国の定期的なかつ時宜を得た報告を評価するとともに、締約国に対し、2008年7月19日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/118参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年3月23日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/148.html
総括所見:デンマーク(第3回・2005年) 第1回(1995年)/第2回(2001年)/第4回(2011年)OPAC(2005年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/DNK/CO/3(2005年11月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月26日に開かれた第1072回および第1073回会合(CRC/C/SR.1072 and 1073参照)においてデンマークの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.3)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定期報告書の作成に関するガイドラインにしたがって作成された締約国の第3回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/DNK/3)に対する文書回答が時宜を得た形で提出されたことにより、デンマークにおける子どもの状況に関する理解を向上させることができたことを歓迎する。委員会は、締約国に対し、グリーンランドにおける子どもの状況に関する情報を記載してくれたことについて評価の意を表するものである。しかしながら委員会は、ファロー諸島に関する十分な情報が報告書に含まれていなかったことを遺憾に思う。 3.委員会は、関連省庁の専門家を含む締約国代表団との率直かつ建設的な対話に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、代表団にグリーンランドの代表が1名参加していたことについても評価の意を表するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下のものを含む、報告対象期間中に見られた多くの積極的発展を歓迎する。 (a) 子どもの権利条約の実施について全般的進展があったこと。 (b) 子どもの権利の促進および保護に関するものも含む政府開発援助に対し、引き続きコミットメントを示していること。 (c) 外国人法および統合法が改正され、保護者のいない子どもの庇護希望者の法定代理人について定められたこと。 (d) 子どもの性的虐待に関わる刑事手続の進行に関して司法運営法が改正されたこと。 (e) 若者関連の問題について政府に助言を行なう若者フォーラムが設置されたこと。 5.委員会はまた、以下の文書の批准を歓迎する。 (a) 武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書(それぞれ2002年9月および2003年8月) (b) 国際刑事裁判所ローマ規程(2001年6月)。 (c) 国際組織犯罪防止条約を補足する、人、とくに女性および子どもの取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2003年9月)。 C.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.6)の検討後に表明されたさまざまな懸念および勧告(CRC/C/15/Add.151参照)への対応が立法上、行政上その他の措置を通じて行なわれてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、一部の懸念表明および勧告、とくに国内法への条約の編入、条約の普及、思春期の健康および少年司法制度に関するものへの対応が十分ではないことに留意するものである。 7.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしか実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。 留保 8.委員会は、締約国が法改正を行なう予定であり、それによって第40条に付した留保の適用範囲を限定できる可能性がある旨の、代表団によって提供された情報を歓迎する。 9.委員会は、ウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、第40条に付した留保の全面的撤回に向けた努力を継続するよう、勧告する。 立法および実施 10.委員会は、条約が国内法に正式に編入されていない理由についての報告書および事前質問事項への文書回答における締約国の説明、および、締約国は条約の全面的実施のために精励している旨の代表団の発言に留意する。委員会はさらに、締約国が、欧州人権条約を含む他の地域的文書を国内法に編入していることに留意するものである。 11.委員会は、締約国が、国内法令が条約と全面的に一致することを確保するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、国内法の規定が条約に掲げられた権利に抵触するときは常に条約が優先するべきことを勧告するものである。 調整 12.委員会は、条約の実施を調整する任務を委ねられた家族・消費者問題省の設置を歓迎するとともに、テーマ別の調整のための臨時省庁間委員会が役割を果たしていること、および、自治体が2006年中に一貫した子ども政策を策定しなければならないことに留意する。しかしながら委員会は、国レベルにおいておよび国と地方レベルとの間で包括的調整がどのように確立されるのかがいまなお不明確であることを、懸念するものである。 13.委員会は、締約国が、条約の包括的かつ効果的実施を国の全域で確保する目的で締約国のすべての政策を効果的に調整する、家族・消費者問題省の能力を強化するよう、勧告する。 国家的行動計画 14.委員会は、さまざまな部門別行動計画には留意しながらも、包括的な国家的行動計画がいまなお存在しないことを懸念する。 15.委員会は、締約国が、さまざまな部門別行動計画を包含し、条約のすべての分野を網羅する包括的な国家的枠組みにこれらの行動計画を位置づけることによってこれらの計画間に存在する可能性がある食い違いに対応し、かつ、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」を考慮に入れた、国家的行動計画を策定しかつ実施するよう勧告する。 データ収集 16.委員会は、とくに事前質問事項に対する文書回答で提供されたデータの量に評価の意とともに留意するものの、これらのデータにはいまなお欠落があるという締約国の懸念を共有する。委員会はさらに、グリーンランドおよびファロー諸島における条約の実施についての統計データがないことを懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、条約の実施の全体像を理解するために必要なデータを収集するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、グリーンランドおよびファロー諸島における条約の実施についての詳細なデータを次回の定期報告書で提供するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告するものである。 子どものための資源 18.条約の実施に振り向けられた資源配分について利用可能とされた情報は歓迎しながらも、委員会は、グリーンランドに関する情報がきわめて限られていることを懸念する。 19.委員会は、締約国が条約第4条に基づく義務をどの程度満たしているかに関する適正な評価が行なえるようにする目的で、とくにグリーンランドおよびファロー諸島における条約の実施に関わる国家予算の額および割合についての具体的情報の提供を継続しかつ強化するよう、勧告する。 独立の監視機構 20.委員会は、国家子ども評議会が監視の役割を担っており、かつ、その役割および職務について現在締約国で議論が行なわれている旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、同評議会の財源が削減されたことを懸念するものである。 21.国内人権機関に関する一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が、条約の実施を監視するための独立機関(オンブズマン事務所または国家子ども評議会など)を指定し、またはそのための別個の機関を設置するよう、勧告する。当該機関に対しては、個別の苦情申立てに対応する権限が与えられ、かつ必要な人的資源および財源が提供されるべきである。 研修/条約の普及 22.締約国が努力を行なっていること、および、条約の普及が継続的プロセスであり、かつ国家子ども評議会の活動において高い優先順位を与えられていることには留意しながらも、委員会は、条約に関する体系的なかつ一貫した教育が学校で行なわれていないことを依然として懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 条約その他の関連の人権条約をカリキュラムに編入するとともに、初等学校および中等学校の双方においてこれらの条約に関する教育を強化すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカーおよび保健従事者)およびとくに子どもたち自身を対象とする、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止 24.委員会は、人種または民族的出身を理由とする直接間接の差別を禁止し、かつ嫌がらせおよび差別するよう指示することを禁止する規定を含む民族平等法が2003年5月に採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、民族的マイノリティの子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに移住者家族に属する子どもに対する事実上の差別ならびに人種主義的および排外主義的態度についての前回の懸念(CRC/C/15/Add.151参照)をあらためて表明するものである。これとの関連で、委員会は、社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.102参照)および人種差別撤廃委員会が表明した懸念と見解を一にする。 25.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、すべての子どもに対するあらゆる形態の事実上の差別を防止しかつ撤廃するための努力を強化するよう、勧告する。 26.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするための行動計画の作成が進められているという情報を歓迎する。委員会は、当該計画の内容および実施に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請するものである。 子どもの意見の尊重 27.委員会は、行政上の意思決定プロセスにおいて、12歳の未満を含む子どもの意見がいっそう考慮されるようになっていることを歓迎する。 28.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どもとともに働くすべてのおとなが、自己の意見を表明する力のある子どもに対してそのための十分な機会が提供され、かつその意見が効果的に考慮されるようにするための訓練を受けることを確保すること。 (b) すべての自治体が、子どもおよび若者による積極的参加の要件を満たし、かつ、子どもの意見がどの程度考慮されているか(子どもの意見が関連の政策およびプログラムに及ぼした影響を含む)について定期的に検討することを確保すること。 3.市民的権利および自由 適切な情報へのアクセス 29.子どもによるインターネットの利用について研究し、かつそのような利用に関する一連の「交通安全規則」を策定しようとするメディア評議会の取り組みは歓迎しながらも、委員会は、インターネット上で発見しうる不適切な資料および違法な資料の量が多いことを懸念する。 30.委員会は、締約国に対し、条約第17条(e)にしたがって子どもがその福祉にとって有害な情報および資料から保護されることを確保するよう、奨励する。 4.家庭環境および代替的養護 家族再統合 31.委員会は、家族再統合の資格を認められる子どもの年齢制限を18歳から15歳に引き下げる法改正について、依然として懸念を覚える。 32.委員会は、締約国が、家族再統合の手続が条約第1条と全面的に一致することを確保するためにあらゆる措置をとるよう、勧告する。 代替的養護 33.委員会は、家庭外養護に措置される子どもが増えていることに懸念とともに留意する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) 家庭外措置の必要性に関する徹底したアセスメントが常に行なわれているわけではないこと。 (b) 若年の子ども(0~7歳)の相当数が3回以上の措置を経験していること。 (c) 民族的マイノリティの子どもが、人口比に照らして過剰に代替的養護施設に措置されていること。 (d) 子どもとその親との接触がきわめて限られていること。 34.委員会は、締約国が、家庭外養護への措置を可能なかぎり回避する目的で、子どもおよびその親を支援するための努力を強化するよう勧告する。とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 子どものいかなる措置も、当該措置の必要性に関する全面的アセスメントの後に行なわれることを確保すること。 (b) すべての事案で、子どもの措置の前に作成される行動計画に目標およびその達成手段が盛りこまれること、および、当該計画が子どもの積極的参加を得て策定されることを確保すること。 (c) 家庭外養護の対象とされた子どもにとっての継続性を確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (d) デンマーク系以外の民族的出身の里親家庭および施設職員を募集するため、あらゆる必要な措置をとること。 (e) 子どもとその親との定期的接触を、当該接触が子どもの最善の利益に反しないときは常に積極的に促進しかつ支援すること。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 35.委員会は、児童虐待と闘うための行動計画を社会問題省が採択したこと(2004年)を含むさまざまな取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、字王虐待およびネグレクトその他の形態の家族間暴力が高い水準で発生していることを、依然として懸念するものである。 36.委員会は、締約国が、以下の措置をとること等を通じ、児童虐待の被害者である子どもに十分な援助を提供するための度慮kを継続しかつ強化するよう、勧告する。 (a) 児童虐待をともなう事案の早期発見および処理。 (b) あらゆる形態の児童虐待を防止しかつこれと闘うための、子どもの関与を得て行なう公衆意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン。 (c) 子どもを虐待するおそれがある家庭をとくに対象とした子育て訓練プログラム。 (d) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (e) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (f) 全国的なヘルプライン「ボーネ・テレフォン」への支援およびこれとの連携を強化すること。 37.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 38.委員会は、一部自治体で障害のある子どもの保育に関する政策が定められていない可能性があること、および、子どもの最善の利益が常に尊重されているわけではないことを懸念する。 39.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どものニーズがすべての自治体の政策で全面的に考慮されることを確保すること。 (b) 障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービスへの平等なアクセスが提供されることを確保すること。 (c) 必要な支援を提供し、かつ、教員が普通学校で障害のある子どもを教育する訓練を受けることを確保する等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。 健康および保健サービス 40.委員会は、とくに学校および保育所における健康促進プログラムならびに喘息、アレルギーおよび全般的ウェルビーイングに関わる問題防止のための取り組みを含む保健プログラム「健康な生涯」が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、運動の少なさおよび栄養バランスの悪い食事があいまって生じる体重過多の問題がデンマークの子どもの間で増大しつつあることを懸念するものである。委員会はまた、グリーンランドで乳児死亡率が高くかつ栄養不良の発生件数が多いことも懸念する。 41.委員会は、締約国が、子どもの体重過多および肥満に対応するための努力を継続しかつ強化するとともに、条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)に細心の注意を払うよう、勧告する。とくに締約国は、肥満を予防しおよびこれと闘うための努力ならびにグリーンランドにおける栄養不良を削減しおよび予防するための努力を強化するよう、促されるところである。委員会は、締約国が、乳児死亡率が高い問題に対処するため、遠隔地および農村部における出産前ケア政策を引き続き改善するよう、勧告する。 精神保健サービス 42.精神保健ケアサービスを強化するためにとられた措置は認知しながらも、委員会は、相当数の子どもおよび若者が成人向けの精神医学センターに措置されていることなどの課題が残されていることを懸念する。委員会は、グリーンランドにおける自殺率がとくに青少年の間で高いことを深く懸念するものである。 43.委員会は、締約国に対し、子どもおよび若者が成人向けの精神医学センターに措置されることを回避する目的ですべての子どもおよび若者に十分な治療/ケアが提供されることを確保するため、精神保健ケアの発展を継続しかつ強化するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、とくにグリーンランドにおける青少年の自殺を防止するための措置を強化するよう、勧告するものである。 44.委員会は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)および注意欠陥性障害(ADD)について誤診が行なわれており、そのため、精神刺激薬の有害な作用に関する証拠が増えているにも関わらずこれらの薬が過剰に処方されているという情報があることを懸念する。 45.委員会は、ADHDおよびADDの診断および治療についてさらなる調査研究(子どもの心理的ウェルビーイングに対する悪影響の可能性も含む)を行なうとともに、これらの行動障害への対応に、できるかぎりその他の形態の管理および治療を用いることを勧告する。 十分な生活水準 46.委員会は、締約国が貧困および社会的排除の防止のための行動計画を策定したこと、および、この計画に子どもおよび若者に関する節が設けられていることに留意する。しかしながら委員会は、社会的に不利な立場に置かれた家庭の子どもおよび民族的マイノリティの子どものニーズが同計画に全面的に反映されていない可能性があることを、懸念するものである。 47.委員会は、締約国が、すべての子どものニーズが満たされることを確保するとともに、子ども、とくに社会的に不利な立場に置かれた家庭の子どもおよびデンマーク系ではない民族的出身の子どもが貧困下で暮らすことのないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 48.委員会は、すべての若者がその民族的背景に関わりなくデンマークの教育制度において平等な教育機会を享受できるようにすることを目的とする統合向上作業部会および「すべての若者が必要とされている」キャンペーンを含め、締約国がとっているさまざまな措置を歓迎する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもが初等中等教育にアクセスできることを確保するために必要な措置をとること。 (b) 民族的マイノリティの教育の促進に特段の注意を向けながら、教育における人種的格差を是正するための努力を強化すること。 50.学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置(教育環境法を含む)は歓迎しながらも、委員会は、この現象が学校で根強く生じており、かつ子どもおよび若者の関与/包摂が不十分であることを依然として懸念する。 51.委員会は、締約国が、いじめと闘うための措置を強化し、かついじめの削減を目的とした取り組みへの子どもの参加を確保するよう勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民および庇護希望者 52.子どもの庇護希望者の法的地位を向上させ、かつそのニーズに対していっそうの注意が払われることを確保するために外国人地位向上法および統合法が改正されたことには留意しながらも、委員会は、受入れセンターにおける環境について依然として懸念を覚える。委員会はとくに、十分な心理的支援およびレクリエーションの機会を提供する能力が限られていることを懸念するものである。委員会はまた、保護者のいない子どもの庇護希望者が受入れセンターから多数失踪していることも懸念する。 53.委員会は、締約国が、受入れセンターの環境を向上させ、かつ、保護者のいないすべての子どもの庇護希望者に資格のある後見人が任命されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、受入れセンターから失踪する保護者のいない子どもに関する研究を実施するとともに、これらの子どもの権利の尊重に関してその研究の成果を指針とすべきことを勧告するものである。委員会は、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対して締約国の注意を促す。 薬物およびアルコールの濫用 54.委員会は、締約国において薬物およびアルコールを消費する子どもの人数が多いことに、懸念とともに留意する。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親に対し、薬物およびアルコールの濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を提供すること。 (b) 薬物を使用している子どもおよびアルコールを濫用している子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保すること。 (c) 薬物およびアルコールの濫用の被害を受けた子どもを対象とした、回復および再統合のためのサービスを発展させること。 性的搾取 56.委員会は、国家警察庁長官官房によって、インターネットを通じて行なわれる犯罪、とくに児童ポルノに関する事件の捜査に対応する特別IT捜査部局が設置された旨の、事前質問事項に対する文書回答で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、性的虐待を描写する画像が製造されていることおよび子どもを関与させるポルノが増加していることを深く懸念するものである。委員会はさらに、インターネット上に「児童エロチカ」画像が存在すること、および、子どもが性的サービスを提供するよう奨励されかつ操作されていることを懸念する。 57.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で合意されたとおり子どもの商業的性的搾取に関する国家的行動計画を策定する等の手段を通じ、子どもの商業的性的搾取を防止するための努力を強化すること。 (b) 子どもを関与させたエロチックな画像の配布を犯罪化する等の手段により、児童ポルノと闘うための十分な措置をとること。 (c) 被害者の回復および再統合のための措置を強化すること。 (d) 子どもに配慮したやり方で性的搾取の事案を受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象とする研修を行なうこと。 少年司法の運営 58.委員会は、少年〔司法〕運営法が最近(2004年)修正され、法律に触れた15歳未満の子どもに対してとることのできる措置について明確かつ網羅的な規則が盛りこまれたことを歓迎する。しかしながら委員会は、独居拘禁が行なわれていること、および、深刻な行動上の問題を抱えた18歳未満の者が青年施設に収監されていることを懸念するものである。 59.委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の一般的討議にも照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)が全面的に実施されることを確保するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 現在行なわれている独居拘禁の慣行を優先的課題として見直し、この措置の使用をきわめて例外的な事案に限定し、この措置が認められる期間を短縮し、かつその最終的廃止を追求すること。 (b) 困難な行動を示す18歳未満の者を収監しまたは施設に収容する慣行を廃止するための措置をとること。 (c) 法律に触れた15歳未満の子どもに関する規則を全面的に実施するとともに、条約第40条にしたがい、このような子どもが適正な手続きを経ずに自由を剥奪されないことを確保すること。 8.フォローアップおよび普及 フォローアップ 60.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、国の議会ならびに適用可能なときは州または地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 61.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回〔ママ〕定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 9.次回報告書 62.委員会は、締約国の定期的なかつ時宜を得た報告を評価するとともに、締約国に対し、2008年8月17日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/148参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、次回の定期報告書に、グリーンランドおよびファロー諸島に関する情報が含まれることを期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/71.html
総括所見:中国(第2回・2005年、香港・マカオ特別行政区を含む) 第1回(1996年)/第3回・第4回(2013年)英領香港(当時、1996年) OPSC(2005年)/OPAC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/CHN/CO/2(2005年11月24日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月19日および20日に開かれた第1062回~第1065回会合(CRC/C/SR.1062-1065参照)において、2003年6月27日に提出された中国の第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.9, Parts I and II)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、3部構成により本土ならびに香港・マカオ両特別行政区(SAR)を網羅した、包括的かつ豊富な情報を記載した締約国の定期報告書、および、委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/CHN/2 and Parts I and II)に対する詳細な文書回答が提出されたことを歓迎する。これにより、締約国における子どもの状況についての理解をより明確なものにすることができた。委員会はさらに、代表団が、本土ならびに香港・マカオ両特別行政区の代表によって構成された、大規模かつハイレベルな部門横断型のものであったことに、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、主要なミレニアム開発目標のいくつかに予定よりもはやく到達することを可能にした貧困削減における目覚ましい達成に、評価の意とともに留意する。 4.委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の批准(2001年)を歓迎する。 5.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(第33号)を2005年9月16日に批准したことを歓迎する。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.7および連合王国属領としての香港についてはCRC/C/11/Add.9)の検討を受けて行なわれたさまざまな懸念の表明および勧告(CRC/C/15/Add.56および香港についてはCRC/C/15/Add.63参照)への対応が立法措置および政策を通じて行なわれてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部については十分な対応が行なわれていない。たとえば以下のとおりである。 (a) 本土について、委員会は、国内人権機関の設置(CRC/C/15/Add.56、パラ26)および差別の禁止(同、パラ34および35)をめぐる勧告に関してほとんど進展がなかったことを懸念する。 (b) 香港SARについて、委員会は、調整および評価に関する委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.63、パラ20)は実際的ではないと考えられた旨の締約国の説明に留意する。にもかかわらず、委員会は、国内法および国内政策においては条約の実施に対するホリスティックかつ包括的なアプローチがとられなければならず、そのためには子どもの問題が優先されなければならないこと、このような政策は積極的に調整されなければならないこと、および、政策決定が子どもに及ぼす潜在的影響について評価が行なわれなければならないことを見解として維持するものである。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保および宣言 8.委員会は、香港SARに適用される、第22条に対する締約国の留保が撤回されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、第6条に関する留保が維持されておりかつ締約国全域に適用されること、ならびに、香港・マカオ両SARについて第32条および第37条(c)に関する留保が引き続き効力を有することを、遺憾に思うものである。 9.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域について条約に対するすべての留保を見直し、かつ撤回するよう勧告する。 立法 10.中国本土で法改正に関する相当の進展が見られたことは歓迎しながらも、委員会は、子どもに適用されるすべての法律が条約に全面的に一致しているわけではないことを懸念する。 11.委員会は、締約国が、本土に関して、法律が条約の原則および規定に全面的に一致することを確保するための見直しを引き続き行なうよう勧告する。この総括所見のパラ33、40、45、48、53、82、93および94、ならびに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書についての委員会の総括所見(CRC/OPSA/CO/2)のパラ11および13で強調されているとおりである。 調整および国家的行動計画 12.委員会は、第2次国家的行動計画である「中国児童発達計画」(2001~2010年)が本土について策定されたことに評価の意とともに留意し、かつ、子どもの権利を監視しおよび実施するために国、地域および省のレベルで設置される委員会および作業部会の数が増えていることに留意する。しかしながら委員会は、調整が断片的であること、「計画」が本土のすべての地域および地方で統一的に実施されているわけではないこと、および、地方および地域のレベルにおける実施の調整が時として不十分であることを懸念するものである。 13.前掲パラ6(b)のとおり、委員会は、条約を実施するための包括的行動計画が香港SARに存在しないこと、ならびに、現行のプログラムおよび政策の調整がどちらかといえば縦割りでありかつ断片的であることを懸念する。委員会は、包括的行動計画について議論が行なわれている最中であるという、マカオSAR代表から提供された情報に留意するものである。 14.委員会は、あらゆる地域および省における統一的実施を確保するため、本土において、締約国が、「中国児童発達計画」(2001~2010年)の実施に取り組んでいるあらゆるレベルの機関間の調整をさらに強化するよう勧告する。 15.委員会は、締約国が、香港SARに関する行動計画を策定しおよび実施することにより、香港SARにおいて条約の実施に関する活動の調整を改善するべきであるという従前の勧告をあらためて繰り返す。委員会は、締約国が、マカオSARにおいてこの点に関わる議論を迅速に進めるとともに、マカオSARに関する包括的行動計画を策定しかつ実施するよう勧告するものである。 独立の監視 16.委員会は、本土のさまざまな省庁が公衆からの苦情を受理することができる旨の情報に留意するものの、条約の実施を監視する明確な権限を与えられた独立の国内人権機関が存在しないことを懸念する。委員会は同様に、本土ならびに香港・マカオ両SARにおいて、子どもの権利に関する具体的権限を与えられた独立の国内人権機関が存在しないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国が、1993年12月20日の国連総会決議48/134の付属文書である人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがい、本土ならびに香港・マカオ両SARにおいて、国、地域および地方のレベルで子どもの権利を監視しかつ条約を実施する明確な権限を与えられた国内人権機関を設置するよう勧告する。委員会は、独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に対して締約国の注意を促しつつ、このような機関に対しては、個々の子どもも含む公衆からの苦情を受理し、調査しかつ対応する権限が認められ、かつ十分な財源、人的資源および物的資源が提供されるべきであることに留意するものである。香港SARについては、既存のオンブズマン事務所内に専門部署を設けてこのような機関とすることもできる。 資源配分 18.委員会は、近年、義務教育、母子保健ケア、社会的救済および人身取引対策プログラムに配分される予算資源が本土で相当に増額されていることについて締約国を賞賛するものの、教育のような一部のきわめて重要な分野が引き続き資金不足に陥っていることを依然として懸念する。委員会は、より貧しい地域の開発に相当の資源が配分されていることに留意しながらも、もっとも脆弱な立場におかれた集団に十分に的を絞る形でこれらの資源が活用されていないことを、依然として懸念するものである。 19.委員会は、香港SARにおいて貧困削減に十分な資源が配分されていないこと、および、所得格差が住民の間で拡大しつつあることを懸念する。委員会は、1997年アジア金融危機の経済的苦境の結果押して縮小された社会福祉体制が、経済がその勢いを取り戻したのにともなって再調整されていないことを懸念するものである。 20.委員会は、本土において、締約国が、子どものための主要分野(とくに保健および教育)に配分される予算額が政府歳入の増加と軌を一にすることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、配分される予算がもっとも脆弱な立場におかれた集団のために効果的に用いられ、かつ、とくに農村部と都市部間および東部諸省と西部諸省間の地域的格差の縮小につながることを確保するための十分な監視システムを発展させるよう、勧告するものである。 21.委員会は、香港SARにおいて、予算配分の焦点が所得格差の縮小(社会的セーフティネットのための資金を増額させることによるものも含む)に当てられるべきことを勧告する。委員会はまた、配分される予算がもっとも脆弱な立場に置かれた住民の利益となることを確保するため、十分な監視システムが設置されるべきことも勧告するものである。 データ収集 22.委員会は、締約国のあらゆる場所で統計データの収集を改善するための締約国が行なっている努力を歓迎し、かつ、代表団から提供された、細分化されたデータを収集するための新たな機構がまもなく本土で設置される旨の情報に評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、本土において、条約が対象とするあらゆる分野についての信頼できかつ包括的な統計データに公衆が限られた形でしかアクセスできないことを、依然として懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、条約が対象とするあらゆる分野についての信頼できかつ包括的な統計データを収集する努力をさらに強化するとともに、このようなデータが、締約国のあらゆる場所で、時宜を得た形でかつ体系的に、公衆に対して利用可能とされることを確保するよう勧告する。委員会はさらに、統計データが子どものための適切な政策およびプログラムの策定、実施および監視のために活用されることを確保するため、締約国が、本土および両SARについて、子どもに関する統計の中央データバンクを発展させる可能性を模索するよう勧告するものである。 条約の普及 24.委員会は、条約が締約国で用いられている主要な少数民族言語に翻訳されたことに留意する。しかしながら委員会は、香港SARおよび本土において、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに子どもおよび親自身が、条約について限られた意識および理解しか有していないことを懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域で以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約をすべての言語で、かつ子どもにやさしい資料および学校カリキュラムも活用しながら普及するための努力をさらに強化すること。 (b) 条約に関する親および子どもの意識を高めるためのプログラムを拡大すること。 (c) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修を行なう努力を強化すること。 市民社会との協力 26.委員会は、非政府組織が中国本土においてますます活発になりつつある旨の情報に留意するものの、非政府組織が活動を展開できる余地およびその活動の範囲が依然としてきわめて限られていることを懸念する。 27.委員会は、中国本土において、締約国が、とくに、非政府組織が条約の実施に自由にかつ積極的に参加すること(報告書の作成への参加ならびに委員会の総括所見および勧告の実施への参加も含まれる)を確保することにより、非政府組織、とくに子どもの権利の促進および保護のために活動している組織による活動の独立性および拡大を促進しかつ奨励するよう勧告する。 2.一般原則 生命に対する権利 28.委員会は、中国本土において選択的中絶および嬰児殺を禁止するためにとられた法的措置に、満足感とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、現行家族計画政策および社会的態度の悪影響として、選択的中絶および嬰児殺ならびに子ども(とくに女子および障害のある子ども)の遺棄が続いていることを依然として懸念するものである。 29.委員会は、締約国に対し、領域内のすべての子どもの生命、生存および発達に対する権利を保障するための努力を継続しかつ強化するよう、促す。委員会は、締約国が、選択的中絶および嬰児殺を禁じた現行法の実施を強化するとともに、家族計画政策から生ずるいかなる悪影響(子どもの遺棄および不登録ならびに出生時の不均衡な男女比を含む)をも解消するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 差別の禁止 30.差別に関する委員会の前回の懸念に対応するために締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、本土において一部の集団(女子、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子ども、障害のある子ども、チベット族・ウイグル族・回族のような民族的および宗教的マイノリティの子どもならびに国内移住民の子どもなど)に対する差別が行なわれていることを依然として懸念する。 31.委員会は、香港SARで子どもの難民、庇護希望者および資格外移民に対する差別が根強く残っており、かつ、人種または性的指向に基づく差別を具体的に禁ずる法律が存在しないことを懸念する。委員会は、マカオSARにおける条約第2条の実際的実施について利用可能な情報が存在しないことを遺憾に思うものである。 32.委員会は、本土において、締約国が、以下の措置をとることにより、女子、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子ども、障害のある子ども、チベット族・ウイグル族・回族の子どもならびにその他の民族的および宗教的マイノリティに属している子ども、国内移住民の子どもならびにその他の脆弱な立場に置かれた集団に対する差別を解消するための努力を強化するよう、勧告する。 (a) これらの子どもが基礎的サービス(保健、教育その他の社会サービスを含む)に平等にアクセスでき、かつ、これらの子どもが利用するサービスに対して十分な財源および人的資源が配分されることを確保すること。 (b) 格差を特定しかつ解消する目的で、地方当局によるプログラムおよびサービスの監視を強化すること。 33.委員会は、香港SARにおいて、締約国が、人種または性的指向に基づく差別を禁ずる法案を起草しかつ採択する努力を迅速に進めるよう勧告する。委員会は、マカオSARにおける第2条の実際的実施についての具体的情報を、次回的報告書に記載するよう要請するものである。 34.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち、子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 35.委員会は、子どもに関わるすべての行動において子どもの最善の利益の原則がどのように第一次的考慮事項として活用されているかに関して締約国から提供された情報が、その管轄下にあるすべての地域について限られていたことを懸念する。 36.委員会は、締約国に対し、第3条がどのように実施されているか、および、子どもに関わるすべての行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることをどのように確保しているかに関するより詳細な情報を、次回定期報告書に記載するよう促す。 子どもの意見の尊重 37.委員会は、中国本土において、子どもが裁判所に苦情を申し立て、または親の同意を得ることなく裁判所による直接の協議の対象となることができないこと(子どもが16歳以上であって自ら生計を立てている場合を除く)に、懸念とともに留意する。委員会は、学校において生徒がどのように代表され、かつその意見がどのように考慮されているかに関して限られた量の情報しか提供されなかったことを遺憾に思うものである。 38.委員会は、子ども評議会作業委員会など、子どもを代表する団体を支援するために締約国が香港SARで行なっている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもに影響を与えるすべての政策およびプログラムについて子どもの意見が制度的に求められているわけではないことを、依然として懸念するものである。委員会は、マカオSARにおいて、子どもの意見があらゆる場面でどのように考慮されているかについての情報が存在しないことを遺憾に思う。 39.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が、子どもが自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつ政策立案、行政手続、学校および家庭においてその意見を正当に重視される権利を認められることを確保するための努力を、本土ならびに香港・マカオ両SARにおいて強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、次回定期報告書で、その管轄下にあるすべての地域についてこの問題に関するより詳細な情報を提供するよう奨励するものである。 40.さらに委員会は、子どもが自己に影響を与えるいかなる司法上および行政上の手続においても聴聞される機会を与えられ、かつ子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見が正当に重視されることを確保する目的で、締約国が、本土において、子どもに影響を与える法律を見直すよう勧告する。 41.委員会は、締約国が、香港SARにおいて、現在進められている教育改革のような自己に影響を与える政策またはプログラムの策定に子ども団体が積極的に参加することを制度的に確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、政治的プロセスにおいて子どもたちの意見を代弁する常設機関の設置を検討するよう奨励するものである。 3.市民的権利および自由 出生登録 42.委員会は、子どもの出生登録が行なわれないことに関する委員会の前回の懸念に対応するために締約国が行なった相当の努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、現行家族計画政策のせいもあり、中国本土においてすべての子どもが出生後ただちに系統的に登録されているわけではなく、かつ、その影響が女子、障害のある子どもおよび一部の農村地帯で生まれた子どもに不相応な形で生じていることを、引き続き懸念するものである。 43.委員会は、すべての子ども、とくに女子および障害のある子どもが出生後ただちに登録されることを確保し、かつ、登録されなかった年長の子どもが登録を受けられるようにするための柔軟な措置を、とくに農村部を重視しながら中国本土全域で提供するための努力を、締約国が引き続き強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような取り組みを強化する目的で戸口登記管理制度の改正を検討するよう提案するものである。 宗教の自由 44.中国本土の少数民族に対して宗教の自由を保障する民族区域自治法が2001年に採択〔改正〕されたことには留意しながらも、委員会は、子ども、とくにチベット系仏教徒、ウイグル族および回族の子どもが自己の宗教の学習および実践を制限されており、かつ宗教的活動への参加を理由として拘禁された事例も存在するという報告に懸念を覚える。委員会はまた、自己の宗教、とくに法輪功を実践する家族が、嫌がらせ、脅迫その他の敵対的行為(労働を通しての再教育を含む)の対象とされているという報告に懸念を覚えるものである。委員会は、ゲンドゥン・チューキ・ニマに関して提供された情報に留意するものの、この情報を独立の専門家に確認させることがまだ可能になっていないことを、依然として懸念する。 45.委員会は、締約国が、民族区域自治法の全面的実施を確保するためあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。とくに、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 限られた数の公認宗教と結びつけられたものではない宗教の自由を18歳未満の者に対して明示的に保障し、かつ、この点に関わる権利の行使にあたって子どもの発達しつつある能力と一致する方法で子どもを指導する親の権利および義務を尊重する法律を制定すること。 (b) いかなる年齢の子どもについても、子どもがチベットの宗教上の祝祭に参加することまたは宗教教育を受けることを禁じた地方当局の命令を廃止すること。 (c) いかなる年齢の子どもについても、子どもがモスクに通うことまたは宗教教育を受けることを禁じた地方当局の命令を本土全域で廃止すること。 (d) 子どもが宗教または無神論の授業に参加するかどうかを選択できることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (e) ゲンドゥン・チューキ・ニマおよびその両親のプライバシーを尊重しつつ、独立の専門家がゲンドゥン・チューキ・ニマと面会しかつその安寧を確認することを認めること。 体罰 46.委員会は、中国本土で、学校における体罰を禁じた現行規則の実施が不均等であることを懸念する。委員会はまた、家庭における体罰が禁じられておらず、かつ社会的に容認され続けていることも懸念するものである。 47.委員会は、香港・マカオ両SARで、家庭における体罰が法律で禁じられておらず、かつ家庭で実践され続けていることを懸念する。 48.委員会は、締約国に対し、その管轄下にあるすべての地域で以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校、施設その他のあらゆる場面(刑事施設を含む)における体罰を法律で明示的に禁止すること。 (b) 体罰についての公衆の態度を変革するため、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律に関する公衆教育および意識啓発のキャンペーンを、子どもの関与を得ながら拡大すること。 4.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 49.委員会は、締約国が本土について行なった努力、とくに「子どものための社会福祉施設に関する基準」の採択(2001年)を歓迎する。しかしながら委員会は、本土において相当数の子どもが遺棄されていることおよび多数の子どもが施設で暮らしていることを、依然として懸念するものである。委員会は、そのような施設における子どもの入退所件数についての正確な統計データが存在しないことを遺憾に思う。 50.委員会は、本土から香港・マカオ両SARへの入域について設けられている人数割当、および、両SARに居住する権についての規制により、子どもが親から分離されることが助長され、かつ家族再統合が妨げられていることを深く懸念する。 51.委員会は、本土において、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 里親養護および国内養子縁組のような成功しているモデルを本土全域で移植しかつ拡大することにより、家庭を奪われた子どもの代替的養護を向上させる努力を継続すること。 (b) 危険な状況にある家族および子どもを早期発見し、かつソーシャルワーカーが直接介入して家族を援助できるようにすることも含む、子どもの遺棄を防止するための効果的戦略を策定すること。 (c) 子どもが施設に送致されるときは、小規模集団に統合され、かつ家庭的環境のなかで個別にケアされることを確保すること。 (d) 効果的な監視機構(第25条にしたがって行なわれる各措置の定期的再審査および子どもがアクセスしやすい苦情申立て機構を含む)を設置し、かつ、すべての施設、プログラムおよびサービスが適正な訓練および認証を受けた職員を有することを確保することにより、あらゆる形態の代替的養護が条約に一致する質の基準を満たすことを確保すること。 (e) 代替的養護の対象とされた子どものすべての死亡が適正に記録されおよび調査され、ならびに必要なときは適切なフォローアップ措置がとられることを確保すること。 養子縁組 52.前掲パラ5のとおり、委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(第33号)が批准されたことに評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、本土における国際養子縁組件数および国際養子縁組の斡旋機関数に関して入手可能な情報が不十分であることを遺憾に思うものである。委員会はさらに、出生証明書を持たない子どもが養子縁組手続全体を通じてアイデンティティに対する権利を維持する旨の明示的保障が存在しないことを懸念する。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 1993年ハーグ条約の適用を、可能なかぎり早期に香港・マカオ両SARにも拡大すること。 (b) 1993年ハーグ条約の法的規定が本土ならびに香港・マカオ両SARの国内法に統合されることを確保すること。 (c) とくに子どもの人身取引の可能性ならびに養親が支払う手数料および寄付の使用との関連で、国際養子縁組斡旋機関の監視をさらに強化すること。 (d) 出生証明書を持たないすべての子どもが養子縁組手続全体を通じてアイデンティティに対する権利を保障されることを確保するため、立法上および行政上の措置をとること。 (e) 親のケアを受けていない子どもともに働く政府職員その他の専門家に対し、養子縁組(とくに国際養子縁組)は代替的養子縁組の選択肢としては例外的なものであり、かつ、そのような決定を行なう際には差別の禁止および子どもの最善の利益の原則が考慮されなければならない旨を通知すること。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 54.委員会は、中国本土における子どもの虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いに関して入手可能な情報が限られていること、および、暴力と闘いかつ被害者を援助するために利用可能なプログラムの数が限られていることを、懸念する。 55.香港SARでソーシャルワーカーを増員するために行なわれた努力には留意しながらも、委員会は、暴力の被害を受けた子どもを援助するための政策およびプログラムが十分に効果的でないことを懸念する。 56.委員会は、医師、教員およびソーシャルワーカーのような子どもとともに働く職員に対して通報義務要件を課し、かつ子どもがアクセスしおよび利用することのできる具体的ヘルプラインを開設すること等も通じて、虐待、ネグレクト、暴力および不当な取扱いと闘う努力を締約国のすべての場所で強化するよう勧告する。 57.本土に関して、委員会は、締約国が、家庭、学校および施設で子どもに対して行なわれるさまざまな形態の暴力についてのさらなる調査研究を実施するとともに、その知見を以下の目的で活用するよう勧告する。 (a) あらゆる形態の暴力から子どもを保護することに関する現行法を強化すること。 (b) さまざまな形態の暴力に対処する子どもの意識およびスキルを高めることを目的とした、学校を基盤とする教育プログラム等も通じて、暴力を防止しかつこれと闘うための戦略および介入策を発展させること。 (c) 暴力の被害を受けたすべての子どもがケアおよび回復に関わる適切な援助を受けられることを確保するためのプログラムを発展させること。 58.香港SARに関して、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的虐待の形態をより明示的な形で定義するとともに、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした、あらゆる形態の発見、処理および防止に関する教育および研修を増加させること。 (b) 虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの個別事案の調整およびフォローアップを強化するとともに、いずれかの形態の虐待の被害を受けたすべての者およびその家族が社会サービスおよび社会援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 加害者とされる者が家族の一員であるかないかを理由とする差別なしに調査が処理されることを確保すること。 59.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、締約国の文書回答、および、東アジア・太平洋地域協議(タイ、2005年6月14日~16日)への中国本土および香港SARの代表の参加を、評価の意とともに認知する。委員会はさらに、2005年5月16日~17日に北京で全国レベルの協議が開催されたことを評価するものである。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および精神的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための、具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 60.本土について、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 障害のある子どもに関する、細分化された具体的なデータが存在しないこと。 (b) 障害の定義が狭いこと。 (c) 障害のある子どもの人数が都市部と農村部で相当に異なること。 (d) 一人っ子政策の例外として、障害のある子どもがいる家族は第2子を設けることが認められていること。このことは、障害のある子どもに対する事実上の差別を助長するものである。 61.委員会は、締約国が、自国の管轄内にいる障害のある子どもを対象として条約のすべての原則および規定の実施を確保するため、障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れるよう、勧告する。委員会はさらに、本土において、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 性別、年齢、農村部・都市部の別、生活形態および障害の種別によって細分化された、障害のある子どもに関する正確なデータが利用可能となることを確保するため、データ収集システムを強化すること。 (b) 国際的に受け入れられた基準に忠実な定義を定めること。 (c) 障害のある子どもに対する事実上の差別、とくにこのような子どもの遺棄を解消するためにあらゆる必要な措置をとること。 健康および保健サービス 62.保健ケア指標の顕著な改善には留意しながらも、委員会は、乳幼児の死亡、栄養その他の子どもの保健指標に関わって、本土において農村部と都市部の間、東部諸省と西部諸省の間ならびに漢人と少数民族との間に格差が存在することについての前回の懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国全域で栄養不良が根強く残っており、子どもの肥満が発生してきており、かつ母乳育児政策が不十分であることも懸念するものである。 63.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子ども(登録されていない子どもも含む)が母子保健サービスに普遍的にアクセスできるようにするため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの栄養不良および肥満の問題に十分に対応するための政策およびプログラムを発展させるとともに、締約国のすべての場所で「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の実施(中国版・母乳代替品の販売促進に関する基準を含む)を強化することおよび香港SARで赤ちゃんにやさしい病院を推進することにより、母乳育児を促進するよう促すものである。 思春期の健康 64.委員会は、中国本土およびマカオSARにおいて利用可能な思春期保健サービスに関する情報が存在せず、かつ、香港SARにおける10代の妊娠および中絶の件数が多いことを懸念する。 65.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康および適切な思春期保健サービスの提供に細心の注意を払うとともに、学校で性教育およびリプロダクティブヘルス教育を提供することも含めて思春期の健康を促進し、かつ学校保健サービス(若者に配慮した、秘密が守られるカウンセリングおよびケアを含む)を導入するための努力を強化するよう、勧告する。 精神保健 66.委員会は、若者の自殺の多発に対処するために締約国が香港SARでとった措置を評価する。委員会は、本土およびマカオSARで子どもが利用可能な精神保健サービスならびにタバコ、アルコールおよび薬物の濫用に関するデータおよび情報が存在しないことを依然として懸念するものである。 67.委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域において、思春期の子どものための予防的および治療的精神保健サービスを拡大するとともに、とりわけ思春期の子どもをとくに対象として立案された健康行動上の選択およびライフスキルに関するキャンペーンを発展させることにより、思春期の子どもの喫煙、アルコール消費および薬物濫用を減らすためのプログラムを開発するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、香港SARにおいて、若者の自殺を防止するための努力を引き続き強化するよう勧告するものである。 HIV/AIDS 68.委員会は、本土における、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもを対象とした政策およびプログラムの発展を歓迎する。それでも委員会は、これらの政策およびプログラムの実施が不十分であることを懸念するものである。 69.委員会は、締約国が、以下の措置をとることにより、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもを対象として本土で設けられている政策およびプログラムの実施を強化するよう、勧告する。 (a) これらのプログラムに配分される財源を増やすこと。 (b) 地方当局が、条約の最善の利益の原則(第3条)に一致する形でプログラムおよび政策を実施するための十分な訓練を受けかつその用意を整えることを確保する目的で、地方当局との協力を強化すること。 (c) この疾病に関する意識を高め、かつ、この総括所見のパラ32で述べられているようにHIV/AIDSに感染した子どもに対する差別を解消するための、公的情報キャンペーンを強化すること。 70.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針に照らし、委員会は、締約国が、本土および両SARの双方においてHIV/AIDSの蔓延を予防するための努力を強化するとともに、思春期の子ども、とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの間でHIV/AIDSに関する意識啓発を引き続き行なうよう、勧告する。 生活水準 71.委員会は、中国本土で印象的な経済的達成が見られたこと、および、近年、貧困下で暮らす人々のための資源配分が増やされていること(不利な立場におかれた子どもに対する奨学金の供与を通じてのものも含む)について、締約国を賞賛する。しかしながら委員会は、とくに一部の地域および特定の人口集団(移民または「流動」人口など)との関連における貧困、ならびに格差の拡大が、依然として深刻な問題であることを懸念するものである。 72.同様に、委員会は、香港SARにおける経済的達成にも関わらず、失業者、移民およびひとり親家庭のような脆弱な立場に置かれた層で子どもの貧困が存在すること、および、貧困線が定められていないために貧困と闘うための適切な政策の立案が阻害されていることを、依然として懸念する。 73.委員会は、締約国が、本土において、均衡のとれた経済的発展(この文書のパラ20で述べられている予算配分の調整、および子どもの貧困に関するデータベースの整備によるものも含む)を達成するための努力を引き続き強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、不利な立場におかれた子ども(「流動」人口および中国西部の貧困地域にすむ人々のような脆弱な立場に置かれた住民の子どもを含む)のための奨学金のような手当を拡大するよう促すものである。 74.委員会は、締約国が、香港SARで貧困線を定めるとともに、脆弱な立場に置かれたすべての住民(新たな移民を含む)を対象として社会福祉手当へのアクセスを拡大しながら所得格差の拡大に対処する、子どもの貧困と闘うための適切な政策を策定するよう勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 75.中国本土で締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、教育へのアクセスおよび教育の利用可能性に関して依然として格差があり、女子、学習障害のある子ども、少数民族の子ども、農村部および西部諸州に住む子どもならびに移民の子どもに悪影響が生じていることを懸念する。委員会はまた、義務教育について諸費用の徴収が行なわれていること、生徒数と教員数の比が高いこと、初級・高級中学における中退率が高いこと、および、本土全域で教育の質が低いことを具体的に懸念するものである。 76.香港SARについて、委員会は、中等学校における中退率、学校制度の競争的性質および学校におけるいじめについて懸念を覚える。委員会は、マカオSARにおけるこれらの問題について利用可能とされた情報の量が限られていることを遺憾に思うものである。 77.委員会は、締約国が、中国本土において以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 初等教育が真に無償であることを確保するため、初等教育についてのすべての諸費用その他の「隠れた」費用の徴収を解消すること。 (b) 教育法が命じるとおり、GDP増にあわせて教育への資源配分を増加させるとともに、すべての子ども、とくに女子、学習障害のある子どもならびに少数民族の子どもおよび移民の子どもが9年間の義務教育を修了し、かつ乳幼児期教育発達プログラムに平等にアクセスできることを確保するために、これらの資源を重点的に用いること。 (c) とくに貧困または移住を理由として学校を中退した子どもが義務教育を修了し、かつ非公式な経路を通じて適切な資格認定を得られるように柔軟な学習制度の発展を促進するとともに、技術および職業に関する適切な教育訓練の利用可能性およびアクセス可能性も確保すること。 (d) 初等中等段階のすべての教授用資料および教材が少数民族言語でも入手でき、かつ文化的配慮のある内容であることを確保すること。 (e) 教員研修および教員数と生徒数の比の改善等も通じて教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。 (f) とくに、子どもの主体的学習能力を促進し、かつ遊びおよび余暇に対する子どもの権利にも焦点を当てたカリキュラムの開発を通じて、「全面発達」政策の実施を強化すること。 (g) この点に関して、とくにユニセフおよび関連の国内機関の技術的援助を求めること。 78.委員会は、締約国が、香港SARにおいて以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 中等教育における中退率に対処するためのプログラムを発展させること。 (b) 生徒自身の参加も得ながら、学校における暴力に対処するための現行プログラムをさらに強化すること。 (c) 教育制度の競争性の低減に努め、かつ主体的学習能力ならびに遊びおよび余暇に対する子どもの権利を促進するような方法で、教育の質を高めること。 79.マカオSARについて、委員会は、締約国に対し、無償の義務教育を12年間に延長する計画を迅速に実施するよう奨励する。委員会は、次回定期報告書に、教育の質に関する情報および学校における暴力を減少させるためのプログラムに関する情報を記載するよう要請するものである。 7.特別な保護措置 子どもの難民および移民 80.委員会は、約30万人のインドシナ難民が中国本土に永住できるようにするために締約国が行なってきた努力に留意する。しかしながら委員会は、これらの元難民の子どもが中国で出生した場合に中国の市民権を与えられないことを懸念する。委員会はさらに、朝鮮民主主義人民共和国から中国本土に入国した子どもが一律に経済的移民と見なされ、帰還後に子どもに回復不能な被害が生じるおそれがないかを検討されることなく朝鮮民主主義人民共和国に送還されることを懸念するものである。 81.香港SARについて、委員会は、子どもの難民および資格外移民である子どもが教育へのアクセスを保障されていないことに留意する。 82.委員会は、締約国が、本土および両SARのいずれにおいても、憲法および条約で保障されているすべての人権をその管轄内にあるすべての子ども(難民、庇護希望者および他の資格外移民を含む)に拡大して適用するよう勧告する。とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 国内法を改正し、中国本土において、元インドシナ難民の子どもが中国で出生した場合に中国の市民権を取得できるようにすること。 (b) 保護者のいない未成年者に関する委員会の一般的意見6号(2005年)にしたがい、保護者のいないいかなる子ども(朝鮮民主主義人民共和から来た子どもを含む)も、たとえば出入国管理法違反を理由とする比例性を欠いた処罰により子どもに回復不能な被害が生じる真のおそれがあると考える相当の理由があるときは、国に送還されないことを確保すること。 (c) 法令改正により、香港SARにいる子どもの難民、庇護希望者または資格外移民全員が不当に遅延することなく通学できることを確保すること。 経済的搾取 83.委員会は、ILO第138号条約および第182号条約がそれぞれ1998年と2002年に批准されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、児童労働が広く行なわれていることを示す報告がある一方で、本土における児童労働についての具体的データが存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、有害な労働を定義し、かつそのような労働における搾取から子どもを保護する法律および具体的な行政規則がないことも懸念する。委員会はさらに、労働を通しての再教育が広く行なわれていることを懸念するものである。 84.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、ILO第138号条約および第182号条約の実施をさらに強化するよう勧告する。 (a) 児童労働に関する具体的かつ細分化されたデータを収集するとともに、当該データを活用し、働く子どもと協力しながら、あらゆる形態の児童労働を防止しかつ撤廃するための効果的措置を発展させること。 (b) 影響を受けている子どもと協議しながら、18歳未満のいかなる者も従事すべきではない有害な労働および危険な労働の形態についての詳細な規則を策定すること。 (c) 労働を通しての再教育の結果、子どもがILO第138号条約および第182号条約の原則および規定に違反して働くことにつながらないことを確保すること。 ストリートチルドレン 85.中国本土における締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、相当数の子どもが路上で生活しかつ働いていることを懸念する。 86.委員会は、本土において、締約国が、とくに以下の措置をとることによりストリートチルドレン関連の努力を強化するよう勧告する。 (a) 路上で生活しかつ働く子どもの状況についてさらなる調査研究を実施するとともに、このような調査研究を活用して、ストリートチルドレンの人数を減らしかつこのような子どもに適切な援助を提供するための適切なプログラムおよび政策を発展させること。 (b) これらの子どもが家族に成功裡に再統合できるようにするための、家庭およびコミュニティを基盤とする介入策を優先的に実施すること。 (c) ストリートチルドレンおよびその家族にサービスを提供している地方当局に対し、より多くの資源を提供すること。 性的搾取および人身取引 87.中国本土およびマカオSARについて、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書が提出されたことに評価の意とともに留意し、かつ、締約国に対し、同報告書に関する総括所見(CRC/C/OPSA/CO/2)に掲げられた関連の勧告を参照するよう促す。委員会は、選択議定書の適用がまだ香港SARに拡大されていないことを遺憾に思うものである。ポルノグラフィーからの子どもの保護を強化することを目的とした刑事犯罪条例改正を歓迎しながらも、委員会は、香港SARにおける児童買春についてのいかなるデータも存在せず、かつ報告された事例もないことを懸念する。 88.性的搾取その他の搾取を目的とする子どもの人身取引を防止しかつこれと闘うため、委員会は、締約国が香港SARにおいて以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 性的搾取および人身取引の早期防止システムをさらに発展させかつ増進させること。 (b) 人身取引の事案を発見しおよび捜査し、人身取引問題に関する理解を向上させ、ならびに加害者が訴追されることを確保するための努力をさらに強化すること。 (c) 子どもの性的搾取および人身取引(子どもがそのような搾取のおそれにさらされる根本的原因および要因を含む)を防止しかつこれと闘うための包括的政策を策定しかつ採択すること。 (d) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバルコミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 (e) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。 少年司法の運営 89.委員会は、締約国が、中国本土において、18歳未満のときに犯罪を行なった者に対する死刑を廃止したことを歓迎する。しかしながら委員会は、終身刑は引き続き18歳未満の者に対して科されうることを、たとえ適用されることが多くないとはいえ、懸念するものである。未成年者保護法のような少年司法関連の法律を改革しようとする努力には留意しながらも、委員会は、現行の法令および行政手続において、法律に触れた子どもをあらゆる段階で保護するための公的機関および司法機関の詳細な義務が十分に定められていないことを、依然として懸念する。 90.香港SARにおいて締約国が刑事責任に関する最低年齢を引き上げたことには留意しながらも、委員会は、10歳という年齢が低すぎることを依然として懸念する。委員会はさらに、16~18歳の子どもが法律に触れた際に一貫して特別な保護を与えられているわけではないことを、懸念するものである。 91.委員会は、法律に触れた子どもを対象とする修復的司法が行なわれていないというマカオSAR代表の懸念を共有するとともに、少年司法制度改革の計画について同代表から提供された情報を歓迎する。 92.少年司法に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/46、パラ203~238)に照らし、委員会は、締約国が、その管轄下にあるすべての地域で、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準が全面的に実施されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての法域において、少年司法の運営に責任を負う者を対象として関連の国際基準に関する研修を行なうよう勧告するものである。 93.中国本土について、委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満のときに犯罪を行なった者について終身刑を廃止すること。 (b) 法律を改正し、自由を奪われたすべての子ども(労働教養所に収容された場合を含む)が、弁護人その他の者による適切な援助に速やかにアクセスし、かつ、その自由の剥奪の合法性を、裁判所または他の権限ある独立のかつ公平な機関において時機を失することなく争う権利を有することを確保すること。 (c) 自由の剥奪が常に最後の手段として用いられることを確保するとともに、調停、保護観察、社会奉仕活動または刑の執行猶予のような代替的刑の可能性を強化しかつ拡大すること。 (d) 18歳未満の者の全面的発達を支えるため、刑を言い渡された者および釈放された者の双方が教育の機会(職業訓練およびライフスキルの訓練を含む)ならびに回復および社会的再統合のためのサービスを提供されることを確保すること。 (e) とくにOHCHR、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびユニセフに対し、技術的協力および援助を求めること。 94.香港SARについて、委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に容認可能な水準まで引き上げること。 (b) 18歳未満のときに犯罪を行なった者について終身刑を廃止すること。 (c) 法律に触れた18歳未満のすべての子どもが一貫して特別な保護を与えられること、および、その事件の審理が、専門の少年裁判所で、適切な訓練を受けた判事によって行なわれることを確保すること。 (d) 自由の剥奪が常に最後の手段として用いられることを確保するとともに、調停、保護観察、社会奉仕活動または刑の執行猶予のような代替的刑の可能性を強化しかつ拡大すること。 95.マカオSARについて、委員会は、締約国が、少年司法制度改革の計画を迅速に進めるとともに、当該改革に以下のことが含まれることを確保するよう、勧告する。 (a) 自由の剥奪が常に最後の手段として用いられることを確保し、かつ、調停、保護観察、社会奉仕活動または刑の執行猶予のような代替的刑の可能性を拡大するための措置。 (b) 家族集団会議のような修復的司法の可能性。 (c) 罪を犯した少年の社会的再統合を、子どもの健康、自尊心および尊厳を育くむ環境のなかで援助するためのサービスの拡大。 8.子どもの権利条約の選択議定書 96.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の適用を香港SARに拡大するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、2001年3月15日に署名した武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准し、かつその適用を香港・マカオ両SARに拡大するよう勧告するものである。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 97.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を本土の国務院および全国人民代表大会、香港SARの行政会議および立法会ならびにマカオSARの行政会議および立法会の構成員ならびに適用可能なときは関連する省および地方の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 98.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 99.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得たやり方で定期的な報告を行なううえで困難を経験している締約国があることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2009年3月31日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月13日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/223.html
競争主義的教育等に関する国連・子どもの権利委員会の勧告 関連:日本に対する国連・子どもの権利委員会の勧告(教育一般関連) 韓国 第1回(1996年) 16.委員会は、教育制度において、条約第29条に反映されている教育の目的が充分考慮されていないことを懸念する。教育制度が高度に競争主義的な性格を有していることは、子どもの能力および才能を最大限可能なまで発達させること、および、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすることを阻害する危険がある。 29.委員会は、同国に対し、条約第29条に掲げられた教育の目的を全面的に反映させることを目的として、教育政策を再検討するよう奨励する。 第2回(2003年) 52.……最後に、委員会は、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されるおそれがあるという懸念をあらためて繰り返す。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校に提供される物質的資源を増加させ、かつ授業の質を向上させることにより、私立学校に比べて低い公立学校の質を高めること。 (b) 初等前教育および中等教育の費用負担を軽減しかつ撤廃するための、期限を定めた戦略を策定すること。 (c) 女子の就学を促進し、かつ根強く残るジェンダーの固定観念に対応することにより、すべての者が能力に基づいて高等教育にアクセスできることを確保するための効果的措置をとること。 (d) 競争を軽減し、かつ条約第29条第1項ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた教育の目的を反映させるため、教育政策を見直すこと。 第3回・第4回(2011年) 62.生徒のストレスを軽減するために締約国が行なっている努力、および、子どもが遊び、かつレクリエーション活動および文化的活動を行なえることを確保するためのプログラムの採用にも関わらず、委員会は、締約国の教育制度において、深刻なほど競争的な状況がいまなお蔓延していることを懸念する。委員会はまた、課外で行なわれる民間の追加的指導を子どもが広く受けている結果、子どもが深刻かつ不相応なストレスを受けており、かつその身体的および精神的健康に悪影響が生じていることも懸念するものである。さらに委員会は、このような民間の指導の金銭的負担のためにすでに存在する社会経済的非対称性が悪化していること、および、これによって余暇および文化的活動に対する子どもの権利の十分な充足が阻害されていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、とくに外国系の子どもに対するいじめの深刻さおよび頻度が増しており、かつ、そのようないじめの実行に携帯電話およびインターネットが利用されていることも懸念するものである。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第29条、および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を正当に考慮しながら、現行教育制度および関連の試験についての評価を行なうこと。 (b) 民間の課外教育に対する幅広い依存の根本的原因およびその結果として生ずる高等教育へのアクセスの不平等に対応する目的で、公教育制度を強化するための努力を倍加すること。 (c) 条約第31条にしたがい、十分な余暇、文化的活動およびレクリエーション活動を享受する子どもの権利を確保すること。 (d) 学校へのアクセスの平等の達成に関わる具体的成果についての情報を体系的に収集し、かつ締約国の次回定期報告書に当該情報を記載すること。 (e) 外国系の子どもにとくに注意を払いながら、いじめと闘うためにとられる措置を強化するとともに、いじめを削減するための取り組みへの子どもの参加を確保すること。このような措置においては、教室または校庭の外で行なわれる新たな形態のいじめおよびいやがらせ(携帯電話によるものおよびバーチャルな会合場所におけるものを含む)への対応も行なわれるべきである。 香港 第1回(1996年、英領) 31.委員会は、学校におけるプレッシャーと思春期の子どもの健康問題との関連の可能性を、報告に関する議論の中でこれらの問題に関して表明された懸念を踏まえて調査するよう提案する。委員会はまた、若者の自殺の理由および子どもの自殺を防止するための事業の効果もさらなる研究に値するのではないかとも提案する。 32.委員会は、子どもの権利に関する条約についての教育も含めた人権教育を、すべての学校のコア・カリキュラム課目として導入するよう勧告する。委員会は、そのためには学校の時間割においてこの課目に充分な時間を割り当てる必要があることに、留意する。委員会はまた、子どもに生活の手段を備えさせ、かつ子どもの意思決定および人権の視点に立った分析的思考能力を奨励する上でこのような取組みがどの程度効果的だったかを判断するため、人権に関する意識啓発および人権教育についての評価を将来行なうようにも提案したい。委員会はまた、条約第12条の精神を踏まえ、懲戒措置およびカリキュラムの発展に関する議論への参加も含めて、学校における子どもの参加により高い優先順位を与えるよう勧告したい。条約第31条がより全面的に実施されるようにするための方法および手段についても、さらなる研究の価値があるように思える。 第2回(2005年、中国特別自治区) 76.香港SARについて、委員会は、中等学校における中退率、学校制度の競争的性質および学校におけるいじめについて懸念を覚える。…… 78.委員会は、締約国が、香港SARにおいて以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 中等教育における中退率に対処するためのプログラムを発展させること。 (b) 生徒自身の参加も得ながら、学校における暴力に対処するための現行プログラムをさらに強化すること。 (c) 教育制度の競争性の低減に努め、かつ主体的学習能力ならびに遊びおよび余暇に対する子どもの権利を促進するような方法で、教育の質を高めること。 第3回・第4回(2013年、中国 77.中国領香港について、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 学校におけるいじめおよび学校制度の競争的な性質により、子どもの間で不安または抑うつが生じており、かつ遊びおよび休息に対する子どもの権利が侵害されていること。((b)(c)略) 78.委員会は、中国領香港が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校におけるいじめに生徒自身の参加も得ながら対処するための措置、および、教育制度の競争性を低減させ、かつ主体的な学習能力の促進ならびに遊びおよび余暇に対する子どもの権利の促進を図るための措置(教員の研修、学校におけるソーシャルワーカーおよび心理学者の増員ならびに親および保護者の感受性強化等の手段によるものを含む)をとること。((b)~(d)略) シンガポール 第1回(2003年) 42.……委員会はまた、教育制度の高度に競争主義的な性質によって子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されるおそれがあることも、懸念する。最後に、委員会は、学童保育所が提供するサービスの質の監視について懸念を覚えるものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法の適用を拡大し、締約国内のすべての子ども(定住者以外の者も含む)を対象に含めるとともに、すべての子どもの通学を確保するため同法の実施を監視すること。 (b) 締約国のすべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保し、かつ、低所得層の家族が就学前教育にアクセスできることを確保すること。 (c) 学校関連のストレスおよび学校制度の競争主義を軽減するための効果的措置をとるとともに、学校における文化的生活および芸術ならびに遊びおよびレクリエーション活動を促進すること等も通じ、子どもの人格、才能および能力が最大限可能なまで発達することを促進するための努力を強化すること。 (d) 学童保育所および始業前および放課後にケアを提供するその他の機関の質が包括的に監視されることを確保するための措置をとること。 (e) カリキュラムの一環として人権教育を含めること。 第2回・第3回(2011年) 58.委員会は、締約国の学校制度によって達成されている、学業面における高度な優秀性を認識しかつ称賛する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 前回の総括所見の勧告(パラ43)にも関わらず、締約国の管轄内にあるすべての子ども(とくに市民でない者)が義務教育法の対象とされ、かつ無償の初等学校にアクセスできているわけではないこと。 (b) 教育制度の高度に競争主義的な性質によって過度なストレスが生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害される可能性があること。 (c) マイノリティ、とくにマレー系の生徒が教育指標面で立ち遅れていること。 (d) 学校カリキュラムに人権教育を含めるために十分な努力が行なわれてこなかったこと。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 義務教育法の適用を拡大し、締約国の管轄内にあるすべての子ども(市民でない者も含む)を対象に含めるとともに、この目的のため、条約第28条に付した留保を見直すこと。 (b) すべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 学校関連のストレスおよび学校制度の高度な競争主義を軽減するために学校制度を見直すとともに、学校における文化的生活および芸術ならびに遊びおよびレクリエーション活動を促進すること等も通じ、子どもの人格、才能および能力が最大限可能なまで発達することを促進するための努力をさらに強化すること。 (d) たとえば、すでに存在する遅れを取り戻すための特別かつ一時的な積極的差別是正措置プログラムを通じ、学業面での発達についてマイノリティ(とくにマレー系)の生徒を支援するための努力を強化しかつ加速すること。 (e) 教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を考慮しながら、あらゆる教育段階の公式カリキュラムに人権教育を含めるための努力を強化し、かつ子どもの教育における人権の促進について教員の研修を行なうこと。 タイ 第2回(2006年) 64.委員会は、部分的には教授法の質が貧弱であることおよび資格のある教員が足りないことにより、教育の全般的質が低いことを懸念する。委員会は、とくに子どもがより高い学習段階に進むにつれて高まる、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもにさらなる負担が課されており、かつ子どもが可能な最大限度まで発達することが損なわれている可能性があることに、懸念とともに留意するものである。これとの関連で、委員会は、一部の子どもが放課後に塾に通っていることにより、休息、余暇、遊び、文化的活動およびレクリエーション活動の可能性が制限されており、かつ追加的費用が生じていることに、留意する。さらに、委員会は、多くの学校でスポーツおよびレクリエーションの機会が不十分であることに留意するものである。委員会はまた、人権および子どもの権利に関する教育学習活動が教員の裁量に委ねられており、すべての学校で義務的とされていないことも懸念する。 65.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)を考慮に入れながら、以下の目的のためにあらゆる措置をとるよう勧告する。 (a) 教員養成および資格のある教員(とくに女性ならびにマイノリティおよび先住民族集団の出身者)の採用拡大等も通じ、教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。 (b) 教育制度の競争性の緩和に努め、かつ主体的学習能力を促進するような方法で教育の質を増進させるとともに、学校における文化的生活、芸術、遊びおよびレクリエーション活動の促進等も通じ、子どもの人格、才能および能力を可能な最大限度まで発達させることを促進するための努力を強化すること。 (c) カリキュラムの一部としてスポーツおよびレクリエーション活動を提供すること。 (d) 子どもの権利に関する教育も含む人権教育の授業が、あらゆる教育段階の、公立および私立双方の学校で義務的とされることを確保すること。 ウクライナ 第3回・第4回(2011年) 68.第9学年段階で人権教育が義務的とされていることには積極的対応として留意しながらも、委員会は、人権の尊重および促進ならびに異文化間の理解および寛容が締約国における教育の基本的原則としてとくに挙げられていないことを懸念する。委員会はさらに、学習上の困難、学校倦怠感、同じ学校の生徒との関係における心理的不安感および教員から拒絶されているという感覚を有する子どもが多数にのぼることにかんがみ、現行の教育制度が子どもの学習スキル、自尊感情および自信を十分に発達させていないことを懸念するものである。 69.委員会は、締約国に対し、人権教育のための世界プログラムで勧告されているように人権教育に関する国家的行動計画を策定するよう、促す。これとの関連で、委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国がユネスコ、ユニセフおよびOHCHRの援助を求めるよう勧告する。 シリア 第2回(2003年) 46.委員会は、基礎教育の質向上を目的とした「グローバル教育イニシアティブ」が採択されたこと、および、カリキュラム改革に向けて若干の努力が行なわれてきたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、報告書で提示された教育の目的には条約第29条に掲げられた目的が十分に反映されていないこと、および、とくに以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 公教育制度が、分析的スキルの発達よりも暗記学習を引き続き重視しており、かつ子ども中心のものとはなっていないこと。 (b) 人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することが明示的にカリキュラムの一部とされていないこと。 47.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 批判的思考および問題解決スキルの発達の重要性を強調する、カリキュラムおよび教授法の改革プロセスを――子どもの全面的参加を得ながら――進めること。 (b) 教育において、子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることが指向されるようにすること。 (c) とくに人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することとの関連で、学校カリキュラムに人権教育(子どもの権利を含む)を含めること。これとの関連で宗教的指導者の動員が図られなければならない。 (d) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 更新履歴:ページ作成(2012年12月4日)。/香港の第3回・第4回を追加(2014年9月10日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/210.html
総括所見:ネパール(第2回・2005年) 第1回(1996年)/第3回~第5回(2016年)OPSC(2012年)/OPAC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.261(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月20日に開かれた第1032回および第1033回会合(CRC/C/SR.1032 and 1033参照) においてネパールの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.30)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、率直かつ豊かな情報を含んだ締約国の第2回定期報告書、および、事前質問事項(CRC/C/Q/NPL/2)に対する文書回答の提出を歓迎する。報告書の提出が遅れたことは遺憾であるものの、これらの文書は、締約国における子どもの状況をいっそう明確に理解させてくれた。委員会はさらに、代表団との間に開かれたかつ建設的な対話が持たれ、かつ、議論の最中に行なわれた提案および勧告に対して積極的な反応があったことに、評価の意とともに留意するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、条約の実施の増進を目的とした以下の法律の採択に留意する――(a) 危険な労働の定義を定め、かつ16歳未満の子どもの雇用を禁じた児童労働(禁止および規制)法(2000年)、および、(b) 債務労働者の解放を成文化し、カマイヤ(債務労働者)の労働慣行に関与していた使用者を処罰し、かつ政府によるカマイヤ救援基金を設置したカマイヤ禁止法(2002年)。 4.委員会は、条約の実施の増進を目的とした、以下の条約の批准を歓迎する――(a) 人身売買および他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(2002年)、ならびに、(b) 〔国際労働機関の〕強制労働条約(1930年、第29号)(2002年)、最低年齢条約(1973年、第138号)(1997年)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2002年)。 5.委員会は、子どものための国家行動計画(2005~2015年)の採択を歓迎する。 6.委員会はまた、第9次計画(1997~2002年)に、条約にしたがった子ども開発政策が含まれたことも歓迎する。 7.委員会はさらに、その任務に条約の実施の増進を含む以下の機関が設置されたことを歓迎する――(a) 国家人権委員会(2000年)、とくに子どもの権利デスク、(b) 国家女性委員会(2002年)、(c) 国家ダリット委員会(2002年)、(d) 20以上の郡に設置された子どもクラブ、および、(e) 国家貧困緩和基金。 8.委員会は、締約国が、「同国における暴力の雰囲気および国内武力紛争に留意しながら人権および国際人道法の遵守を監視する」国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の事務所を設置する旨を定めた協定を、2005年4月11日にOHCHRと締結したことを歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、武力紛争のために不安定および暴力が蔓延する全般的情勢に関わって締約国が直面している諸課題を認知する。委員会はまた、貧困水準がきわめて高く、それが重い債務負担によって悪化していること、ならびに、多くの伝統的な信仰および慣習ならびにカースト制度が存在していることにも留意する。これらはいずれも、条約に掲げられた子どもの権利の全面的実現における進展を阻害する要因である。 D.主要な懸念領域および勧告 武力紛争が条約の実施に及ぼす影響 10.委員会は、締約国とネパール共産党(毛沢東主義派)との間で行なわれている武力紛争がネパールの子どもたちに著しい悪影響を及ぼしており、かつ、これによって最低限の条約の実施さえ困難な状態が生じてきたことに留意する。委員会は、武力紛争ならびに2000年および2004年非常事態宣言により生じた恐怖、不安定および不処罰の雰囲気が、締約国の子どもの健全な発達に対して深刻な身体的および心理的悪影響を及ぼしてきたことに留意するものである。委員会は、毛派の反乱兵による、学校の大規模な爆撃、破壊および閉鎖について著しい懸念を覚える。これは、子どもの教育に対する基本的権利の侵害である。委員会はまた、この総括所見でも概観されているとおり、紛争が、締約国における条約の実施について既に存在している諸問題の悪化にもつながってきたことにも、深い懸念とともに留意する。 11.委員会はさらに、議会が2002年に解散させられて存在しないことにより、締約国が法律を制定しもしくは改正することも、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を含む国際条約を批准することもできないことに、深刻な懸念とともに留意する。 12.締約国の領域の諸地域を国家以外の主体が事実上の統制下に置いていることに留意しつつ、委員会は、締約国が全面的責任を負っていることを強調するとともに、ネパール共産党(毛沢東主義派)に対し、同党が展開している地域で子どもの権利を尊重するよう促す。委員会は、締約国に対し、いかなるときにも条約を尊重し、かつ、非常事態を含む例外的状況下にあってさえ条約のいかなる規定からも逸脱しない、自国の義務を想起するよう求めるものである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもに対する暴力に関わる不処罰と闘うためにいっそう強力な措置をとるよう、勧告する。 13.委員会は、締約国に対し、議会を含む締約国の通常の機能を回復し、かつ条約の両選択議定書を批准するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 1.実施に関する一般的措置 前回の勧告 14.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.34)の検討後に委員会が採択した総括所見の勧告の一部、とくにパラ25(立法)、26(差別の禁止)、29(データ収集)、30(子どものための資源配分)、31(出生登録)、32(基礎的サービスへのアクセス)、33(難民の子ども)、34(虐待およびネグレクト)、35(ストリートチルドレン)、36(児童労働)、37(売買および取引)および38(少年司法)に掲げられたものについて、十分なフォローアップが行なわれていないことを遺憾に思う。これらの勧告は、この総括所見でもあらためて繰り返されているところである。 15.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を実施するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 16.委員会は、条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で国内法(とくに挙げておくべきものとして1992年子ども法)を改正しようとする締約国の計画を歓迎する。しかしながら委員会は、このような作業の進行速度について若干の懸念を表明するものである。 17.委員会はまた、法律、とくに地方法、慣習法および宗教法における相違によって子どもの権利の保護および促進が不均衡かつ差別的なものとなっていることに関わる前回の懸念も、あらためて表明する。 18.委員会は、締約国が、法律(とくに1992年子ども法)と条約の原則および規定との全面的一致を達成するプロセスを引き続き強化するよう、勧告する。委員会はさらに、すべての年齢の子どもが裁判所に保護を求められることを確保するため、締約国が、子ども法に定められた現行の年齢制限を撤廃するよう勧告するものである。 19.委員会は、締約国に対し、とくに法執行および意識啓発活動を通じ、子どもの権利の保護および促進を目的とした現行法の実施を強化するよう、促す。 国家的行動計画 20.委員会は、子どものための国家行動計画(2005~2015年)の採択は歓迎しながらも、締約国に現在存在する治安上の懸念によって資源が基礎的社会サービスから相当に転用されており、そのためこの国家行動計画の実施が阻害される可能性があることを、依然として懸念する。 21.委員会は、締約国に対し、国家行動計画の効果的実施のために十分な資源を配分するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が、とくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求め、かつ同計画の実施に市民社会の関与を得るよう、勧告するものである。 調整 22.委員会は、郡子ども福祉委員会、中央子ども福祉委員会、女性・子ども・社会福祉省、〔同省の〕女性開発局、郡女性開発部および郡開発委員会のいずれもが、条約の実施に関わる事柄について役割を果たしていることに留意する。委員会は、最近採択された国家行動計画の実施におけるものも含め、これらの機関間で十分な体制に基づく明確な調整が行なわれていないことに、懸念を表明するものである。委員会はまた、これらの機関に現在配分されている資源がそれぞれの職務を効果的に遂行するために十分ではない可能性があることも、懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関わるあらゆる活動の調整、監視および評価のための、省庁および諸部門を横断した単一の機構を指定しまたは設置するよう、勧告する。このような機関は、国家計画委員会との緊密な調整の対象とされ、かつその職務を効果的に遂行するための強力な権限ならびに十分な人的資源および財源を提供されるとともに、市民社会の構成員、子どもの権利の専門家その他の専門家ならびに政府代表の参加を得るべきである。 独立の監視 24.委員会は、締約国に、国家人権委員会(とくに子どもの権利デスク)ならびに国家女性委員会および地区子ども福祉委員会が設置されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国内のすべての子どもがこれらの苦情申立て機構にアクセスでき、およびこれを利用できるかについて、ならびに子どもの権利デスクの権限が限られていることについて、懸念を覚えるものである。委員会はまた、これらの機関がその権限を履行するために締約国が与えている政治的および財政的支援が不十分であることも、懸念する。さらに委員会は、現に活動中である郡子ども福祉委員会の数が限られていることを懸念するものである。 25.国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、国家人権委員会および他の独立の監視機関が条約の実施を効果的に監視できるよう十分な人的資源および財源を配分されることを確保するともに、これらの機関が子どもにとって容易にアクセスできかつ利用者にやさしいものであることを確保するためにあらゆる効果的な措置をとるよう、奨励する。委員会は、締約国が、子どもの権利デスクの権限を拡大して個別事案および子どもからの苦情への対応も含めることを検討するよう、提案するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもが苦情申立て機構を効果的に活用することを促進するため、意識啓発の努力を強化するよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、郡子ども福祉委員会の権限の強化を検討するよう提案するものである。 26.委員会は、締約国に対し、現在の委員会の任期が2005年5月25日に終了して以降も、国家人権委員会の有効性および独立性を維持するよう、強く促す。 子どものための資源 27.委員会は、締約国が直面している経済的および政治的困難、ならびに、基礎的社会サービスおよび教育への支出を増額するために行なわれている努力は承知しながらも、子どものためにおよび子どもの権利の実施のために十分な予算配分が行なわれていないことを懸念する。 28.条約第4条の実施を強化する目的で、かつ第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国が、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ権利を基盤とするアプローチを活用しながら子どもの権利の実施を確保するための予算配分を優先させるよう、勧告する。これとの関係で、委員会は、締約国に対し、国際協力の枠組みのなかで資源が効率的かつ効果的に配分されることを確保するよう、促すものである。 データ収集 29.委員会は、締約国に包括的かつ最新の統計データが存在しないこと、および、条約で対象とされているすべての分野についての十分な全国的データ収集システムが設置されていないことを、懸念する。 30.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢、地方行政区および被扶養関係によって細分化されたデータ収集および指標のシステムを発展させるよう、勧告する。このシステムは、とくに脆弱な立場に置かれた子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子どもおよびひとり親家庭の子どもを含む)をとくに重視しながら、18歳に達するまでのすべての子どもを対象とするべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための法律、政策およびプログラムの立案に際してこれらの指標およびデータを活用するよう、奨励する。委員会は、締約国が、この点に関してとくにユニセフの技術的援助を求めるよう勧告するものである。 普及 31.定期報告書の作成に市民社会の構成員(子どもを含む)を関与させ、かつ条約についての情報を普及するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、条約の原則および規定に関する意識を高めるためのこれらの措置が不十分であることを懸念する。とくに委員会は、条約の原則および規定がすべての教育段階のカリキュラムに編入されておらず、かつ、子どものためにおよび子どもとともに働く専門家の研修および啓発を導入する体系的計画がないことを、遺憾に思うものである。 32.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなおよび子どもの間で同様に広く認識されかつ理解されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもおよびその親ならびに子どものためにおよび子どもとともに働く専門家集団(とくに議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員、保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象として、条約の権利に関する体系的な教育および研修を実施することも勧告するものである。これとの関連で、委員会は、すべての教育段階の公式カリキュラムに人権教育が含まれるべきことを勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関してユニセフおよびOHCHRの技術的援助を求めることを検討するようにも勧告するものである。 市民社会との協力 33.委員会は、公的機関によって市民社会組織に課されている広範な制限(再登録要件、検閲、渡航禁止、および、ドナーから助成金を受領する前に政府の認可を得なければならないとする要件など)について懸念を表明する。 34.委員会は、条約の全面的実施における市民社会の役割の重要性を強調するとともに、締約国が、締約国における市民社会組織の自由な活動を妨げるすべての法律上、実際上および行政上の障壁を撤廃するよう、勧告する。 2.一般原則 差別の禁止 35.差別が憲法その他の関連法で禁じられていること、および、差別解消のために締約国がさまざまな努力を行なっていることには留意しながらも、委員会は、女子およびもっとも脆弱な立場に置かれた集団(ダリット・コミュニティ、先住民族または民族的マイノリティ集団に属する子ども、子どもの難民および非ぼ希望者、ストリートチルドレン、障害のある子どもおよび農村部に住んでいる子どもなど)に対する事実上の差別が広く蔓延していることについて、あらためて深い懸念を表明する。委員会は、差別的態度が蔓延している結果、脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもが虐待および搾取の被害者にとりわけなりやすいことに、重大な懸念とともに留意するものである。 36.とくに、教育、雇用、婚姻、公共の場所(水場および礼拝場所を含む)へのアクセスの面でダリットに対して根強く行なわれている事実上の差別についての人種差別撤廃委員会の懸念(CERD/C/64/CO/5)を参照しつつ、委員会は、このような形態の差別の蔓延が締約国におけるダリットの子どもの身体的、心理的および情緒的ウェルビーイングに及ぼす有害な影響について、深刻な懸念を表明する。 37.委員会は、第2条にしたがい、管轄内のすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保する目的で、締約国が、差別の禁止に対する権利を保障した現行法の実施を確保し、かつ必要な場合には適切な法律を採択するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どものための社会サービスを優先させ、かつ対象を明確にしながら提供するとともに、これらの子どもが搾取から保護されることを確保するためにあらゆる効果的な措置をとるよう、促すものである。委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆情報キャンペーンを開始するよう奨励する。 38.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 39.意見を聴かれる子どもの権利を促進するため、締約国が市民社会の構成員と協力しながら行なっている取り組みは留意しながらも、委員会は、子どもの生活のあらゆる分野において子どもの意見が十分に考慮されておらず、かつ、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、または子どもに関連する政策およびプログラムに、第12条の規定が全面的に統合されていないことを懸念する。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、社会のあらゆる分野、とくに家庭、学校およびコミュニティにおいて、自己に影響を与えるすべての事柄について子どもの意見の尊重を促進しかつそのための便宜を図り、かつ子どもの参加を確保すること。 (b) とくに監護権をめぐる紛争および子どもに影響を与えるその他の法的手続において、子どもの権利〔意見〕が聴かれ、かつその意見が考慮されるよう、法律を改正すること。 (c) 子どもの意見が考慮されるようにし、かつ子どもの参加を可能とする目的で、とくに親、教員、政府行政機関の職員、司法関係者および社会一般に対し、子どもの権利に関する教育的情報を提供すること。 3.市民的権利および自由 出生登録および国籍に対する権利 41.出生登録が法律で義務づけられていることには留意しながらも、委員会は、締約国の努力にもかかわらず、低い出生登録率が、とくに農村部において依然として問題となっており、かつ、出生登録を含む「行政サービス」を遂行する地方公的機関の能力を減少させてきた紛争によって悪化していることを、懸念する。委員会は、出生時に登録されなかった子どもが、年齢の立証が不可能なために、武装集団への徴募を含む虐待および搾取の被害をより受けやすいことを懸念するものである。 42.委員会はまた、多くの集団の子どもが登録されず、かつ(または)ネパール市民権を得る資格を有していないことも懸念する。これにより、これらの子どもによる基本的権利および自由(とくに親を知り、かつ親によって養育される権利)の全面的享受に重大な悪影響が生じている。委員会は、出生、死亡その他の身元事項(人口動態登録)法(1976年)の現行規定上、母が子の登録に際して困難を経験する場合があり、かつ、同様に、市民権法(1964年)が子どもに対して母の名による国籍請求を認めていないことを、とりわけ懸念するものである。その結果、父が外国人である子ども、遺棄された子ども、両親がいない子ども、シングルマザーの子どもおよびバディ・コミュニティの子どもは、父の身元を明らかにできない場合、市民権を取得できない。加えて、委員会は、ブータン難民の出生登録が公的機関によって行なわれていないことに懸念を表明する。 43.条約第7条に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための努力(意識啓発キャンペーンを含む)を強化するよう促す。これとの関連で、委員会は、出生登録の事務を委ねられた地方政府当局が、出生が時機を失することなく実効的に登録されることを確保するために積極的に地域コミュニティの関与を得ることを、締約国が確保するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフ、非政府組織および市民社会の他の構成員の援助を求めるよう促す。 44.委員会はさらに、締約国に対し、条約第7条および第8条との全面的一致を確保するため、関連の法律、とくに出生、死亡その他の身元事項(人口動態登録)法(1976年)、市民権法(1964年)ならびに憲法第9条1項、2項および5項を優先的課題として改正するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、難民の出生登録に関する政策を優先的課題として見直すとともに、締約国で出生した難民および庇護希望者の子ども全員に対して出生証明書が発行されることを確保するようにも、勧告するものである。 プライバシーの保護 45.委員会は、「罪を犯した子ども、強姦被害者または困難な状況にある子どもの素性がメディアで明らかにされ続けている」(〔締約国報告書〕パラ124)ことに、懸念とともに留意する。これは条約第16条の明確な違反である。 46.委員会は、締約国に対し、ネパールで放送されるすべての資料において子どものプライバシー権が尊重されることを確保するための、行動規範および(または)自主規制などの機構を設置するとともに、メディア専門家を対象として、子どものプライバシー権に特段の関心を払いながら適切な人権研修が行なわれることを確保するよう、促す。 体罰 47.委員会は、子どもの体罰および不当な取扱いが家庭、学校その他の施設において蔓延していることを懸念する。委員会は、1992年子ども法および1963年ムルキアイン(民法)の規定で、家庭、学校その他の施設および諸形態の子どものケアにおける体罰が規定されていることを懸念するものである。これは条約第19条に明確に違反している。委員会は、子どもにとって有害な伝統的慣行を法律によって具体的かつ法的に〔重複ママ〕禁止することの重要性を強調するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校その他の施設における子どもの体罰および不当な取扱いを法律で明示的に禁止すること。 (b) 条約第19条との一致を確保するため、子ども法および1963年ムルキアインの関連規定の改正プロセスを加速させること。 (c) 体罰および不当な取扱いが子どもに及ぼす悪影響についての情報を、親、教員および子ども(とくに施設の子ども)とともに働く専門家に対して提供するための意識啓発キャンペーンを強化するとともに、このプロセスに子どもおよびメディアを積極的に関与させること。 (d) 前向きな、参加型の、非暴力的形態のしつけおよび規律の維持が、体罰に代わる手段として、社会のあらゆるレベルで、子どもの人間の尊厳と一致する方法でかつ条約(とくに第28条2項)にしたがって行なわれることを確保すること。 4.家庭環境および代替的養護 親からの子どもの分離/家庭環境を奪われた子どもと代替的養護 49.委員会は、締約国で現在行なわれている武力紛争の結果、ますます多くの家族および子どもが家族の解体および分離のおそれに直面していることを深く懸念する。委員会は、武力紛争のみならずHIV/AIDSの結果としてもますます多くの子どもが入所型養護施設に措置されており、かつ、これらの子どもの多くにはまだ両親の双方もしくは一方および(または)近親者がいることを、同様に懸念するものである。さらに委員会は、これらの入所型養護施設が締約国の定めた基準を満たしておらず、かつその多くは登録されていないことを懸念する。委員会はまた、これらの施設の質に関する十分かつ効果的な監視が行なわれていないことも懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親としての義務の履行に関して親を支援するための、コミュニティの組織および社会保障手当を通じたプログラムを策定しかつ実施するとともに、これとの関連で、武力紛争の影響を受けている家族およびもっとも脆弱な立場に置かれた家族(ひとり親世帯など)に特段の注意を払うこと。 (b) 拡大家族のような既存の組織を強化するためのプログラムを実施することによって分離された家族の再統合を図り、かつ、十分な資源および十分に訓練されたスタッフを備えた里親養護制度を導入するために、効果的措置をとること。 (c) 入所型養護施設が条約に一致した質的基準を満たすこと、これらの施設が登録されかつ定期的に監視されること、および、このような措置が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられるようにするため、条約第25条にしたがい、これらの施設への子どもの措置が定期的に再審査されることを、確保すること。 親が収監されている子ども 51.委員会は、相当数の子どもが、しばしば国際基準を満たさない劣悪な環境のもと、親とともに成人刑務所で生活していることを懸念する。 52.委員会は、締約国に対し、子どもが親とともに刑務所で生活するという現在の慣行を、このような滞在をそれがその子どもの最善の利益である場合に限定し、かつ刑務所における生活環境が子どもの調和のとれた発達のためのニーズにとってふさわしいものであることを確保する目的で、見直すよう勧告する。委員会はまた、親が収監されている子どもが、たとえば拡大家族における十分な代替的養護を提供され、かつ親との定期的接触を認められるべきことを勧告するものである。 養子縁組 53.相当数のネパール人の子どもが外国人によって養子とされていることにかんがみ、かつ締約国で現在行なわれている武力紛争の文脈において、締約国は、国際養子縁組に関する明確な政策および適切な法律がなく、そのため赤ちゃんの取引および密輸のようなさまざまな慣行が行なわれていることを懸念する。委員会は、親の責任の停止をともなう事案について、適正な司法手続が(親または保護者の養育能力に関する技術的アセスメントを含む)存在しないことをとりわけ懸念するものである。委員会はまた、家事労働者としての子どもの搾取をともなう可能性がある、いわゆる非公式養子縁組の慣行についても懸念を表明する。 54.委員会は、締約国に対し、国際養子縁組の慣行が条約の原則および規定、とくに第21条と全面的に一致することを保障するため、この形態の養子縁組に関する政策および法規定を策定しかつ実施するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) とくに子どもの取引および密輸を防止する目的で、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准すること。 (b) 養子縁組事案を担当する専門家が、事案をハーグ条約に照らして審査しかつ処理するために必要な技術的専門性を全面的に備えることを確保する目的で、国内養子縁組および国際養子縁組に関する現行の機構および手続、とくに国および郡の段階の意思決定機関の役割および責任を見直すこと。 (c) ネパール人の子どもの養子縁組に関する厳格な基準を策定しかつ実施し、とくに武力紛争の結果として親族から分離された子どもの親または近親者を効果的に追跡するための合理的期間を確保するとともに、子どもの親の貧困が養子縁組のための法的根拠になりうると定めた「ネパール人の子どもを外国国民による養子縁組の対象とするための条件および手続」(2000年)の規定を廃止すること。 (d) すべての養子縁組関連事案において、親の責任の停止および(または)子どもの分離を防止するためにあらゆる手段が尽くされたことが明確な基準のひとつとされることを確保すること。 (e) 子どもが搾取されることを防止し、かつ子どものすべての権利(教育および保健ケアに対する権利を含む)が全面的に尊重されることを確保するため、近親者その他の者に子どもを措置する慣行を規制しかつ監視すること。 虐待およびネグレクト(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 55.子ども法で、親、保護者または教員による子どものいかなる残虐な取扱いも禁じられていることには留意しながらも、委員会は、締約国で子どもの虐待およびドメスティックバイオレンスが蔓延していることを危惧するとともに、締約国で現在施行されている国内法は、子どもおよび女性に対し、虐待およびドメスティックバイオレンスからの十分な保護を与えていないという見解に立つ。とくに委員会は、子どもを残虐な取扱いから保護している子ども法が効果的な救済機構について定めていないこと、および、同法の違反が国法上の犯罪とみなされておらず、そのため民事訴訟手続に基づく救済措置しか提供されないことに、留意するものである。委員会はさらに、議会が解散前の2002年4月に通過させたドメスティックバイオレンス統制法案が正式に制定されなかったことを遺憾に思う。委員会は、締約国において、法律で処罰される犯罪としての女性および子どもに対する暴力に関する意識が、法執行官等の間においても不十分であることを懸念するものである。 56.委員会は、子ども法において児童ホーム、リハビリテーションセンターおよび孤児院で提供されているケアの査察についても規定されていることには留意しながらも、適切な苦情申立て手続が設けられていないこと、および、虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもの安全な避難所が指定されていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの虐待およびネグレクトの訴追が、法制度に重要な制度基盤上の問題があることによって阻害される可能性があることも、懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、とくに以下の手段をとることによって、子どもの虐待およびネグレクトを防止するために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) この現象を防止しかつ減少させる目的で、その原因および範囲についての研究を行ない、かつ、子どもの虐待、ネグレクトおよびドメスティックバイオレンスの事件の多発および増加に対応するための包括的戦略を確立すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家に対し、虐待およびネグレクトが疑われる事案についての通報義務を必須とする法律を導入するとともに、これらの専門家を対象として不当な取扱いの発見、通報および対応についての研修を実施すること。 (c) 被害者が援助を求めることを妨げる社会文化的障壁に対応しながら、子どもの不当な取扱いの影響、および、子どものしつけおよび規律のための代替的措置についての意識を高める公衆教育キャンペーンを実施すること。 (d) 子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的機構を設置するとともに、子どもの虐待およびネグレクトの加害者が適正に訴追されることを確保し、かつ証人および被害者の保護のための適切な制度を設けること。 (e) 性的虐待の被害者、および、虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害を受けた他のあらゆる子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのサービスを提供するとともに、NGOとの協力等も図りながら、被害者の犯罪者扱いおよびスティグマを防止するために適切な措置をとること。 (f) とくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めること。 5.基礎保健および福祉 障害児 58.障害のある人に関する国家政策が策定されたこと、および、障害のある子どもの権利について定めた法律(1982年障害者保護福祉法、1971年教育法および1992年子ども法を含む)が存在すること、ならびに、障害のある人のためのプログラムを発展させかつ支援する国家障害者サービス調整委員会が設置されたこと(2000年)は認知しながらも、委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) これらの法律およびプログラムの実施が不十分であり、かつ、必要な資源が締約国によって配分されていないこと。 (b) 障害のある子どもに関わる全国的な早期発見・早期介入システムが設けられていないこと。 (c) 障害のある子どもの教育制度および社会一般へのインクルージョンを促進するための努力(障害のある人に対する伝統的態度を変革し、かつ情報、医療施設等へのアクセスを向上させるための努力を含む)が不十分であること。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 障害のある子どもに関する包括的な政策の策定プロセスを速やかに進めるとともに、必要な措置、とくに効果的実施のための十分な資源の配分を行なうこと。 (b) 障害の原因および予防方法を明らかにするための研究を実施し、かつ、早期の発見、付託および介入のための全国的システムを設置すること。 (c) 適当な保健ケア、教育サービスおよび就労機会へのアクセスの観点からこれらの子どもの状況を評価するとともに、障害のある子どものためのサービスを強化し、その家族を支援し、かつこの分野における専門家を訓練するための十分な資源を配分すること。 (d) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に照らして、とくに、教員を対象とする特別訓練に対していっそうの注意を向け、かつ物理的環境(学校施設、スポーツ施設および余暇施設ならびに他のあらゆる公共の場所を含む)を障害のある子どもにとってアクセス可能なものとすることにより、障害のある子どもの普通教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励すること。 (e) 親、および、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門スタッフ(教員を含む)を対象とする訓練のための技術的協力を、とくにユニセフおよびWHOに対して求めること。 健康および保健サービス 60.委員会は、児童期疾病統合管理戦略を実施するための作業部会の設置(1997年)を歓迎するとともに、5歳未満の子どもの予防接種率を向上させるための締約国の努力(包括的なはしか予防接種キャンペーンが最近完了したことを含む)を称賛する。にもかかわらず、委員会は、保健サービスおよび社会サービスの資源が著しく制約されており、かつ、締約国の子どもが利用できる保健ケアの全般的な質および利用可能性が、とくに貧しい家族の間でおよび農村部において深刻なほど不十分であるという、締約国の懸念を共有するものである。とくに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 乳児死亡率、5歳未満児死亡率および妊産婦死亡率が高く、かつ締約国における平均余命が短いこと。 (b) 予防可能な児童期疾病(下痢、栄養不良、貧血症、腸感染症、細菌感染症、はしかおよび肺炎を含む)により、引き続き子どもの生存および発達が脅かされていること。 (c) 産前産後のケアが不十分であり、やはり子どもの生存および発達を阻害する要因となっていること。 (d) とくに全般的なサービスの欠如に苦しんでいる農村部において、衛生設備および安全かつ清潔な水へのアクセスが不十分であること。 (e) とくに農村部において健康、個人衛生および公衆衛生に関する意識が低く、かつ、子どもの健康にとって有害となるおそれがある伝統的慣行(近代的医療施設ではなく呪術医に相談すること、および、下痢をわずらっている子どもに水を与えないことなど)が蔓延していること。 61.委員会はまた、危険な状況に置かれた子ども(ストリートチルドレン、児童労働者、子どものセックスワーカーおよびダリットの子どもを含む)が有する健康面の特別な脆弱性およびニーズに対応するための取り組みがほとんど行なわれていないことにも、懸念とともに留意する。 62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 適切な資源(すべての子どものための基礎的医薬品を含む)を十分に提供され、かつとくに農村部を重点的に対象とする基礎的な保健ケアおよび保健サービスへのアクセスを確保する目的で、国際協力等も通じ、保健インフラを向上させるためのあらゆる適当な措置を引き続きとること。 (b) 予防接種の実施範囲を同国全域に拡大するための努力を引き続き強化すること。 (c) プライマリーヘルスケアサービスへのいっそうのアクセスを促進すること。 (d) ハイリスク集団に属する子どものニーズに特段の注意を払いながら、児童期疾病と闘うための措置を引き続き強化すること。 (e) 一般公衆、とくに家族、子どもおよび保健ケアの提供に従事する者(伝統的保健従事者を含む)に対し、基礎的な救急ケアおよび保健ケアに関する適切な知識を提供するための意識啓発の努力を進めること。 (f) 量的データおよび質的データ双方の適時性および信頼性を確保しながら、とくに重要な保健指標との関連でデータ収集システムを強化するとともに、条約の効果的実施のための、調整のとれた政策およびプログラムの立案のために当該システムを活用すること。 (g) 子どもの健康を向上させるための協力および援助の追加的経路を、諸機関のなかでもとくにWHOおよびユニセフとの間で追求すること。 思春期の健康 63.委員会は、思春期の健康に関わる問題(発達保健、精神保健およびリプロダクティブヘルスに関わる懸念を含む)に対し、締約国が不十分な注意しか向けていないことを懸念する。委員会は、青少年が身体的および精神的健康に関わる特別なリスク(性的虐待、暴力、薬物およびアルコールの濫用、ならびに、HIV/AIDSを含む性感染症によるものを含む)に直面していること、および、リプロダクティブヘルスに関わる問題についての青少年の意識水準が低いことに、懸念を表明するものである。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康問題の性質および規模を評価するための包括的な研究を実施するとともに、青少年の全面的参加を得ながら、思春期の健康に関する政策およびプログラムの立案のために当該研究結果を活用すること。その際、とくにリプロダクティブヘルス教育および子どもに配慮したカウンセリングサービスを通じて性感染症を予防することに特段の焦点を当て、かつ、これとの関連で思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮すること。 (b) 発達保健および精神保健に関するカウンセリングサービスならびにリプロダクティブヘルス・カウンセリングを提供するとともに、これを青少年に対して知らせ、かつ青少年にとってアクセスしやすくすること。 (c) 学校カリキュラムにリプロダクティブヘルス教育を編入するための措置をとるとともに、リプロダクティブヘルスについての権利(HIV/AIDSを含む性感染症および早期妊娠の予防を含む)について十分な情報を青少年に提供するための意識啓発キャンペーンを実施すること。 (d) 青少年に関わる健康問題についての専門性を有する国際機関、とくにUNFPA〔国連人口基金〕、ユニセフおよびWHOと引き続き協働すること。 早期婚 65.女子の最低婚姻年齢が18歳であることは認知しながらも、委員会は、とくに一部の民族的および宗教的コミュニティにおいて早期婚の慣習が広く実践されており、かつ、いったん婚姻した女子は、条約に掲げられた子どもとしての権利(教育に対する権利を含む)を享受するための保護を与えられていないという、締約国の懸念を共有する。 66.委員会は、締約国が、早期婚を防止するための現行法の執行を強化するとともに、早期婚の慣行を抑制するための感受性強化プログラムを、コミュニティの指導者、宗教的指導者および社会一般(子どもたち自身を含む)の関与を得ながら発展させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法定年齢未満で婚姻した女子が条約に掲げられた権利(教育に対する権利を含む)を引き続き享受することを確保するための措置をとるようにも勧告するものである。 有害な伝統的慣行 67.委員会は、一部の有害な伝統的慣行(とくにもっとも顕著なものとしてカースト制度ならびにデウキ、クマリ、ジュマ、バディ、カムラリおよびチャウパディのような伝統)が締約国において引き続き蔓延しており、女子に対する極度の危険、健康上の危害および虐待を引き起こしていることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの伝統的慣行がその影響を受けている子どもによる権利の享受に及ぼしている有害な影響に対処するため、締約国が法律による禁止および十分な介入を行なっていないことを遺憾に思うものである。 68.委員会は、締約国が、意識啓発プログラムを強化することにより、子どもの身体的および心理的ウェルビーイングにとって有害であるすべての伝統的慣行を根絶するために必要な措置を、緊急にとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、このような慣行を禁止する法律を採択するよう勧告するものである。 HIV/AIDS 69.委員会は、HIV/AIDSの予防および統制のために締約国が行なっている努力(全国AIDS・性感染症統制センターの設置を含む)を歓迎するものの、とくにハイリスク集団の間で感染件数が増加しておりかつHIV/AIDSが広く蔓延していることを、依然として懸念する。委員会は、HIV/AIDSが、、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもの文化的、経済的、政治的、社会的および市民的権利(条約の一般原則を含む)に与えているきわめて深刻な影響について、とくに差別の禁止、保健ケア、教育、食糧および住居ならびに情報および表現の自由に対する権利を参照しながら、懸念を覚えるものである。 70.委員会は、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもについての一般的討議の日に採択された勧告(CRC/C/80、パラ243)を考慮に入れる等の手段により、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どものための、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重をさらに統合するとともに、この戦略の実施に際して子どもたちの関与を得るよう、勧告する。 社会保障、保育サービスおよび保育施設ならびに生活水準 71.委員会は、締約国において高水準で蔓延している貧困について懸念を表明する。このような貧困は、子ども(とくに農村部に住んでいる子ども、スラムおよび不法占拠地に住んでいる子どもならびに低層カーストおよび民族的マイノリティの子ども)の権利の尊重および充足、ならびに、子どもに十分な保護を提供する家族の能力を阻害している。 72.貧困下で暮らしている子どもの割合が相当に達することにかんがみ、委員会は、社会保障を受給する子どもの権利についての情報が欠乏していることに遺憾の意とともに留意するとともに、条約第26条と全面的に一致した、法令に基づく包括的な社会保障制度が存在しないことに、懸念を表明する。 73.条約第26条および第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困と闘うための戦略を、子どもの権利に対する影響の監視を正当に重視しながら強化するとともに、その戦略の実施を確保するために十分な人的資源および財源(国際援助を通じてのものも含む)を配分すること。 (b) 経済的に不利な立場に置かれている家族(とくに農村部、スラムおよび不法占拠地で暮らしている家族)に対して支援および物的援助を提供し、かつ十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するための努力を強化すること。 (c) 貧困指標および公式の貧困線を定めること。これにより、締約国は、貧困の程度を定義し、かつ、貧困の緩和および締約国の子どもの生活水準の向上における進展を監視しかつ評価することができるようになるはずである。 (d) 社会保障政策を、明確なかつ一貫した家族政策とあわせて確立し、かつ社会的セーフティネットとしての諸給付を子どもの権利の促進のために用いるための効果的戦略を定めるとともに、社会保障制度に十分な財源を提供すること。 74.したがって委員会は、締約国が、社会保障政策を、貧困削減戦略の枠組みのなかで、明確なかつ一貫した家族政策とあわせて確立するとともに、社会的セーフティネットとしての諸給付を子どもの権利の促進のために用いるための効果的戦略を定めるよう、勧告する。〔訳者注/パラ73(d)との重複は原文ママ〕 6.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 75.万人のための教育に関する国家行動計画ならびに基礎初等教育基本計画(1997~2002年)および第2次基礎初等教育基本計画(1999~2004年)の策定は歓迎しながらも、委員会は、初等教育が義務的とされていないこと、および、初等教育の完全普及を2000年までに達成するという締約国の目標が、まったく満たされないまま2015年まで延長されたことを、深刻に懸念する。委員会はまた、教育に関する公共支出額が低く、かつ資源が構造的に欠乏していること(これがもっぱら原因となって、資格のある教員の不足、劣悪な物理的インフラ、学校における過密および学校における物質的不足が生じている)ことも、依然として懸念するものである。委員会はまた、中退率が高いこと、通学に関連する隠れた費用の問題もあって教育へのアクセスの面で相当の不平等が存在すること、および、女子および不利な立場に置かれた背景を有する子ども(ダリットの子どもおよび障害のある子どもなど)の相当の割合が教育機会を奪われたままであることも、懸念する。 76.委員会は、締約国が、この分野における予算配分およびとられた措置を、それが教育および余暇活動に対する子どもの権利の漸進的実施に及ぼす影響との関連で注意深く検討するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 初等教育を、すべての子どもに対して義務的かつ無償とし、かつ5年のみの初等学校期間よりも長期のものとすること。 (b) 就学率および学校出席率を高め、かつ初等中等教育における高い中退率を減少させるための措置を引き続き強化するとともに、子どもが、受ける資格を有する学校教育を全面的に受けられることを確保すること。 (c) 教育に配分される予算の増額のために追加的努力を行なうこと。 (d) 女子および男子ならびに都市部および農村部の間に蔓延している格差を解消する目的で、とくに女子を対象として、すべての子どもにとっての教育へのアクセス可能性を向上させるためのさらなる措置をとること。 (e) とくに学校の増設、物理的インフラの改善および学校における十分な設備の確保を図ることにより、教育の質を向上させるための措置をとること。 (f) 教員養成の取り組みを優先的に進めるとともに、資格のある教員、とくに女性およびあらゆる民族集団の出身者の採用を拡大すること。 (g) 貧しい家庭の子どもおよび周縁化された集団の子どもを重点的対象とするプログラムを導入し、かつ全面的に実施すること。 (h) とくに農村部における公的な乳幼児期教育の提供を引き続き強化するとともに、訓練を受けた就学前教育教員を増員し、かつ乳幼児期教育の価値に関する親の意識を高めること。 (i) 学校における体罰の使用と闘うために適切な立法上の措置をとること。 (j) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、あらゆる教育段階の学校カリキュラムに、子どもの権利を含む人権教育を含めること。 (k) 教育差別禁止条約(1960年)および技術教育および職業教育に関する条約(1989年)を批准すること。 (l) とくにユニセフおよびユネスコのさらなる技術的援助を求めること。 77.委員会はさらに、締約国に対し、紛争(および非常事態)が教育制度に及ぼす悪影響を解消し、かつ、学校の再建および再開ならびに教員および児童生徒の学校復帰を促進するためのあらゆる措置を優先的にとるとともに、これらの目的のために十分な資源が提供されることを確保するよう、勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民/庇護希望者および国内避難民 78.委員会は、ノンルフールマンの原則に根ざした公式の政策が2004年8月に採択されたことを歓迎するものの、締約国が、難民の地位に関する条約、無国籍者の地位に関する条約または無国籍の削減に関する条約をまだ批准しておらず、かつ、難民および庇護希望者の権利を取り上げた国内法が定められていないことを、遺憾に思う。これとの関連で、かつこのような者の多数が子どもであることにかんがみ、委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) ネパールのブータン人キャンプで差別および不当な取扱い(女性および子どもの性的虐待が多数発生していることをふくむ)が行なわれているとの報告があること。 (b) チベット人庇護希望者(保護者のいない未成年者を含む)がネパールによって中国に送還されているとの報告があること、および、チベット難民福祉事務所が2005年1月に閉鎖されたこと。 (c) 一定のカテゴリーの庇護希望者(具体的には、1990年にネパールに到着したチベット人、およびブータン人)しか難民申請を行なえないのが原則とされていること。 (d) ブータン難民が、移動の自由ならびに健康および教育に対する権利の享受を制約されていること。 79.委員会は、継続中の武力紛争により自宅を強制退去させられた国内避難民(子どもを含む)の状況について締約国から情報が提供されなかったことに、遺憾の意とともに留意する。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 難民の地位に関する条約、無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約を優先的課題として批准すること。 (b) 国内避難民、難民および庇護希望者であるすべての子どもならびにその家族が保健サービスおよび教育サービスにアクセスでき、かつ、条約に掲げられたこれらの子どものすべての権利(出生時に登録される権利を含む)が保護されることを、優先的課題として確保するように努めること。 (c) 自国の管轄下にある、国内避難民および難民であるすべての女性および子どもがあらゆる形態の性的搾取から保護され、かつ加害者が適正に訴追されることを確保するために、即時的措置をとること。 (d) 子どもの国内避難民、難民および庇護希望者(保護者のいない未成年者を含む)の状況に関する詳細な情報を次回の定期報告書に記載すること。 (e) 諸機関のなかでもとくにUNHCRとの連携を引き続き強化すること。 武力紛争下の子ども(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 81.委員会は、締約国における武力紛争で殺害される子どもが多数にのぼることを著しく危惧する。委員会は、政治的洗脳、ならびに、戦闘員、密告者、調理人または荷物運搬人および人間の盾としての使用を目的として、武装集団が子どもの誘拐および強制的徴集を行なっている旨の報告があることに、重大な懸念ともに留意するものである。委員会は、政府軍が、武装集団の構成員の疑いがある18歳未満の者を攻撃対象としていること、ならびに、失踪および恣意的拘禁が行なわれており、かつ政府軍が子どもをスパイおよび伝令として使用している疑いがあるという、著しく危惧される報告があることを、同様に懸念する。委員会はまた、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令の2004年改正に基づいて子どもが拘禁されているという報告があることも、深く懸念するものである。委員会は、このような暴力が被害を受ける子ども(子どもの戦闘員を含む)に対して及ぼす直接の影響、ならびに、このような子どもがこうむる深刻な身体的および心理的外傷について懸念を覚える。委員会はまた、子どもが武力紛争のために家族から分離されていること(インドに避難した子どもを含む)、および、これらの家族の再会のために締約国がほとんど努力していないことに、懸念を表明するものである。委員会はまた、武力紛争が食糧供給、教育および保健ケアに及ぼす悪影響についても懸念する。 82.委員会は、締約国が、武力紛争の影響を受けている子どもの権利を実施するための包括的な政策およびプログラムを策定し、かつしかるべき人的資源および財源を配分するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) いかなる軍隊または武装集団によるものであれ、軍事目的の子どもの誘拐、徴募および使用を犯罪化すること。 (b) 治安部隊を対象とする、子どもに関する独立の部隊行動規則を定めること。 (c) 少年司法に関する国際的な基準および規範に照らして、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令を改正しまたは廃止すること。 (d) 武力紛争の影響を受けている子ども(とくに子どもの戦闘員、保護者のいない国内避難民および難民、帰還民)を対象とする心理社会的支援および援助のための包括的システムを、NGOおよび国際機関と連携しながら発展させること。 (e) 紛争の影響を受けている子どもが教育制度に再統合できることを確保するための効果的措置をとること。そのための手段には、非公式教育プログラムを提供すること、ならびに、紛争の影響を受けている地域における校舎および諸施設の復旧ならびに水、衛生設備および電気の供給が含まれる。 (f) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約を批准すること。 (g) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を、優先的課題として批准すること。 (h) この点に関してとくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めるとともに、新たに設置されたOHCHRネパール事務所に対して最大限可能な協力を行なうこと。 搾取的状況にある子ども(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 有害物質濫用 83.委員会は、子どもによるアルコール消費が広く蔓延していること、および、子どもによる有害物質濫用(大麻、ヘロインおよびアヘンの使用ならびに静脈注射による薬物使用を含む)の件数が増えていることに、懸念を表明する。委員会はまた、親によるアルコールおよび有害物質の消費が締約国の子どもの身体的、情緒的および心理的発達およびウェルビーイングに与える有害な影響についても、懸念を覚えるものである。アルコール法で16歳未満の子どもに対するアルコールの販売が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、同法では違反の場合の罰則についてなんら定められておらず、かつ、未成年者によるアルコールの使用を禁じた法律の実施が全般的に有効ではないことに、懸念を表明する。委員会はまた、子どもによる統制薬物の販売、使用および取引を禁じた具体的法律が存在せず、かつこの点に関する治療プログラムも提供されていないことも、懸念するものである。 84.委員会は、締約国が、公的な教育啓発キャンペーン等も通じて子どもによる薬物およびアルコールの濫用と闘い、かつ、アルコールを濫用する子どもおよび(または)薬物その他の有害な物質を使用する子どもが、治療、カウンセリング、回復および再統合のための効果的な機構および手続にアクセスできることを確保するための取り組みを進めるよう、勧告する。委員会はさらに、親によるアルコールおよび統制薬物の使用が子どもの発達およびウェルビーイングに与える有害な影響について、とくに意識啓発キャンペーンを通じ、親を対象とする教育が行なわれるべきことを勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもによる統制薬物の販売、使用および取引を禁止するために必要な法律を採択するとともに、子どもによるアルコールおよび有害物質の使用を禁じたすべての法律の効果的実施を確保するよう、促す。 ストリートチルドレン 85.路上で生活しかつ働く子どもの人数が増えており、かつ、このような子どもが虐待、ネグレクトおよび搾取の主要な被害者に挙げられていることを締約国が認めていることにかんがみ、委員会は、このような子どもが置かれた状況に対応するための具体的なプログラムおよび措置に関する情報が不足していることを、遺憾に思う。 86.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象を防止しかつ減少させる目的で、この現象の原因および範囲に関する研究を実施するとともに、ストリートチルドレンの多発および増加に対応するための包括的戦略を確立すること。 (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支える目的で、このような子どもに対し、十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)が提供されることを確保するための効果的措置をとること。 (c) これらの子どもが、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用の被害者であるときは回復および社会的再統合のためのサービスを提供され、警察による陵虐から保護され、かつ、家族およびコミュニティとの和解のためのサービスを提供されることを確保すること。 (d) この点に関してとくにユニセフの技術的援助を求めること。 性的搾取および性的虐待 87.子どもの性的搾取の現象を解消するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、締約国の多数の子どもが性的に搾取されていることについて重大な懸念を覚える。委員会は、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもを性的搾取から保護するために行なわれている努力が不十分であるとの見解に立つものである。具体的には、委員会は、セックスワーカーの間で低層カーストの子どもが不相応に多いこと、および、バディとして知られる、バディ・カーストの幼女が売春を強要される慣習的慣行が根強く残っていることに、懸念とともに留意するものである。 88.委員会はさらに、残虐な取扱いまたは拷問から子どもを保護する子ども法第7条の規定が、残虐な取扱いまたは拷問の基準に達するとはかぎらない性的虐待事件には適用されないことに、留意する。委員会はまた、子どもの性的虐待を行なった加害者の訴追率が低いこと、および、性的搾取について定めた法律に関して住民を教育するための公的キャンペーンがほとんど進められていないことも、懸念するものである。 89.委員会は、締約国が、以下の措置をとるための資源を優先的に配分するよう勧告する。 (a) 18歳未満の男子および女子が性的虐待および搾取から保護されることを確保する適切な法律を制定すること。 (b) 子どもの性的搾取について検討するための包括的研究を実施し、その蔓延度に関する正確なデータを収集すること。 (c) 子ども、とくにバディその他の低層カーストに属する子どもがそのような搾取の対象とされる危険性を高める要因も含めて子どもの性的搾取に対応する、適切な立法上の措置の採用および効果的かつ包括的な政策の策定を進めること。 (d) 性的搾取の被害を受けた子どもが犯罪者として扱われないようにし、かつ加害者の適正な訴追を確保すること。 (e) 第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領、ならびに、第2回世界会議で採択された「横浜グローバルコミットメント2001」にしたがい、子どもの被害の防止、被害を受けた子どもの回復および再統合のための適切な政策およびプログラム(すべての地域にリハビリテーションセンターを設置することも含む)を実施すること。 (f) とくにユニセフの援助を求めること。 子どもの経済的搾取(児童労働を含む) 90.委員会は、最悪の形態の児童労働を撤廃するため、締約国が、市民社会の主体、ドナーコミュニティおよびとくに国際労働機関と協力しながら行なっているさまざまな努力(関連のILO諸条約の批准および国内法の制定(前掲パラ3および4参照)、ならびに、予定されている国家基本計画および期限付撤廃プログラムの採択を含む)に、満足感とともに留意する。 91.にもかかわらず、委員会は、締約国の相当割合の子どもが、著しく危険な労働にしばしばフルタイムで従事していることについて、依然として重大な懸念を覚える。委員会はまた、この分野における国内法の執行が弱いままであることも懸念するものである。委員会は、締約国に財源がないために労働査察官が不足していることを懸念する。委員会はまた、子どもを含む人口の大多数はインフォーマル経済で働いているにも関わらず、子どもの不法な雇用を禁じた児童労働法は経済のフォーマル部門にしか適用されないことも、懸念するものである。 92.カマイヤ債務労働制が2000年に廃止され、かつカマイヤ禁止法が2002年に制定されたことは歓迎しながらも、委員会は、多数のカマイヤの子どもが解放されないまま債務労働者として働き続けており、かつ、子どもを含む数千人のダリット債務労働者(ハリヤ)がネパール西部の農場でおよび平野部で働いていると報告されていることを、懸念する。委員会は、これらの債務労働者が住居、土地、労働および教育に対する権利の分野で深刻な困難に直面し続けていることを、とりわけ懸念するものである。 93.委員会は、締約国に対し、子どもによる債務労働の慣行の根絶を目的とした現行の法律および政策の執行を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、労働に従事するこれらの子どもが、子どもにとって有害な条件下で働くことのないようにし、かつ引き続き教育にアクセスできることを確保するため、防止措置をとることを含むあらゆる努力を行なうようにも促すものである。委員会は、締約国に対し、児童労働の必要な規制があらゆる分野の労働(経済のインフォーマル部門を含む)に適用されるよう、児童労働基本計画、児童労働法その他の関連の法律を改正するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、とくに子どもの権利の保護に関する公衆意識啓発キャンペーンおよび公衆教育を通じ、児童労働に関わるすべての政策および法律を全面的に実施するための措置をとるよう、勧告するものである。 94.さらに委員会は、締約国に対し、カマイヤ禁止法の実施を強化するとともに、解放されたカマイヤ労働者の社会的統合を確保するために効果的措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国が、この点に関してとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう勧告するものである。 売買、取引および誘拐 95.委員会は、子どもの人身取引と闘うために締約国が行なっているさまざまな努力に留意するとともに、警察官が女性および子どもの性的搾取および人身取引に関わる問題についての研修を受けている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、ネパール国内においておよび国境を超えて、性的搾取および債務労働を目的とする子どもの取引および売買の現象が頑強に残っていることを、依然として深く懸念するものである。委員会は、一部の集団の子ども(女子、子どもの国内避難民、ストリートチルドレン、孤児、農村部出身の子ども、子どもの難民、および、より脆弱な立場に置かれたカーストに属する子どもを含む)にとって、売買および取引の対象とされる危険性がとりわけ高いことに、重大な懸念とともに留意する。委員会はさらに、現行法(とくに人身取引統制法)による人身取引被害者の保護が不十分であり、かつその実施が深刻なほど不十分であることに懸念を表明するものである。委員会はまた、性的搾取の被害を受けた子どもが十分な保護および回復援助を与えられていないことも懸念する。 96.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの売買、取引および誘拐に関するデータ収集システムを改良するとともに、すべてのデータおよび指標が政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価に活用されることを確保すること。 (b) 子どもを人身取引から保護するための包括的な法的枠組みを発展させること。 (c) 法執行を強化するための効果的措置をとるとともに、子どもの売買、取引および誘拐に関するコミュニティの意識を高めるためになおいっそう努力すること。 (d) 包括的かつ効果的なアプローチを完遂する目的で、HIV/AIDSに関する国家戦略(2002~2006年)、万人のための教育プログラム(2004~2009年)および児童労働基本行動計画のいずれについても、その実施が国家人身取引行動計画と関連づけられることを確保すること。 (e) 被害を受けたすべての子どもに対し、適切な援助および支援(送還を待っている子どもが基礎的サービスにアクセスできるようにすることを含む)が提供されることを確保すること。 (f) 子どもの売買、取引および誘拐を防止し、かつこのような子どもの保護および安全な家族復帰を促進する目的で、近隣諸国、とくにインドとの二国間協定の締結に努めること。 (g) 国連・国際組織犯罪防止条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。 (h) とくにユニセフおよび国際移住機関との協力を追求し、かつこれらの機関の援助を求めること。 少年司法の運営 97.法に抵触した子どもに関わる事案に対処するための少年裁判部がすべての郡裁判所に設置されたこと、および、法執行官を対象とする研修プログラム(警察学校におけるものを含む)が整備されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の法律および政策が少年司法に関する国際基準に一致していないという見解を依然としてとるものである。委員会は、刑事責任に関する最低年齢が10歳という低さに定められていること、および、公式な年齢確認制度が設けられていないことについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、拘禁環境について、および、少年拘禁施設が存在しないため、ほとんどの場合、18歳未満の者が拘禁中に成人から分離されていないことについても懸念を覚えるものである。委員会はまた、子どもがしばしば「適正な捜査を経ずに」審判の対象とされていること、および、少年事件のうち、準司法機関である郡行政事務所によって処理されているものがかなりの割合にのぼることも、危惧する。委員会はまた、刑務所で教育のための便益が提供されていないことも懸念するものである。 98.委員会はまた、最低年齢を定めておらず、かつ、武装集団との関係が疑われるいかなる者(子どもを含む)でも逮捕しかつ拘禁する広範な権限を治安部隊に与えるテロ活動および破壊活動(統制および処罰)令に基づいて、18歳未満の者が収容されているという報告があることも懸念する。 99.委員会は、締約国が、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)ならびに第40条2項(b)(ii)~(iv)および(vii)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(総会決議40/33)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(総会決議45/112)の全面的実施を確保する目的で、かつ少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、法律および政策を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 18歳未満の被拘禁者が常に成人から分離され、かつ、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。 (b) 18歳未満の者を対象とする独立の施設(児童矯正センター)および拘禁施設内の独立房の建設を速やかに進め、これらの施設がすべての郡に存在することを確保すること。 (c) 自由の剥奪が回避不可能であり、かつ最後の手段として、もっとも短い適当な期間で用いられる場合、逮捕の手続および拘禁環境を向上させるとともに、法に抵触した子どもの事件を扱う特別部局を警察内に設けること。 (d) 18歳未満の者が反テロリズム法に基づいて責任を問われ、拘禁されまたは訴追されないことを確保すること。 (e) 法律に違反したとして申し立てられまたは罪を問われた18歳未満のすべての者に対し、条約第40条2項に定められた公正な裁判を受ける権利が全面的に保障されることを確保する目的で、郡行政事務所の手続を含むすべての手続(司法手続、法的手続および保護手続)を見直し、かつ必要なときは改正すること。 (f) 司法専門家を対象として、少年司法の運営と人権に関する公式な研修を実施すること。 (g) とくにユニセフおよびOHCHRの技術的協力を求めること。 100.委員会は、締約国が、少年司法に関する国際的な基準および規範に照らし、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令を改正しまたは廃止するよう勧告する。 8.子どもの権利条約の選択議定書 101.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書または武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に署名したものの、まだ批准していないことに留意する。 102.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 103.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関ならびに適用可能なときは州〔ママ〕の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 104.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 105.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)で説明した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、締約国に対し、第5回報告書の提出期限である2010年3月13日までに、単一の統合報告書として第3回、第4回および第5回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/82.html
総括所見:フィリピン(第3~4回・2009年) 第1回(1995年)/第2回(2005年)OPAC(2008年)/OPSC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/PHL/CO/3-4(2009年10月22日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年9月15日に開かれた第1428回および第1429回会合(CRC/C/SR.1428 and 1429参照) においてフィリピンの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/PHL/3-4)を検討し、2009年10月2日に開かれた第1452回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/PHL/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答が提出されたことにより、フィリピンにおける子どもの状況についての理解を向上させることができたことを歓迎する。 3.委員会は、さまざまな省庁の専門家も参加したハイレベルな締約国代表団との、開かれたかつ建設的な対話を評価する。 4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して2008年6月6日に採択された委員会の総括所見(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、以下のものをはじめとして、報告対象期間中に見られた、子どもの権利の保護および促進を目的とする多くの積極的進展を歓迎する。 (a) 女性大憲章(共和国法第9710号)が制定されたこと(2009年8月)。 (b) 包括的な少年司法福祉制度を確立し、かつ法務省に少年司法福祉評議会を創設した少年司法福祉法(共和国法第9344号)およびその実施細則(IRR)が採択されたこと(2006年)。 (c) 死刑を科すことを禁じた共和国法第9346号が制定されたこと(2006年)。 (d) 武力紛争および避難に焦点を当てながら子どもの福祉を促進することを任務とする、武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会(SC CAACD)が子ども福祉評議会内に創設されたこと(2006年2月)。 6.委員会は、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書が批准されたこと(2007年11月20日)および障害のある人の権利に関する条約が批准されたこと(2008年4月15日)を歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、フィリピンが群島国であること、および、このことが、同国が自然災害(とくにタイフーン)の被害をとくに受けやすいこととあいまって、子ども、とくに農村部および遠隔地に住んでいる子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施することに対する客観的な困難および課題を生み出していることを、認識する。 8.委員会は、フィリピン南部のミンダナオ地方で集中的に行なわれてきた十数年にわたる武力紛争が、子どもの権利の実現も含む締約国の全般的人権状況に悪影響を及ぼしてきており、かついまなお及ぼし続けていることを遺憾に思う。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 9.委員会は、締約国の第2回定期報告書の検討(2005年)後に表明されたいくつかの懸念および勧告、とくに少年司法の運営に関わる勧告について対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、勧告の多くが不十分にまたは部分的にしか対応されていないことを遺憾に思うものである。 10.委員会は、締約国に対し、部分的にもしくは不十分にしかまたはまったく実施されていないこれまでの勧告(性的同意に関する最低年齢、婚外子差別、児童ポルノ、拷問の禁止、ならびに、家庭、学校、官民の施設および代替的養護制度における体罰その他のあらゆる形態の暴力の禁止に関するものを含む)に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、次回定期報告書において、この総括所見に掲げられた勧告の十分なフォローアップを行なうようにも促すものである。 立法 11.締約国で多くの立法上の提案が行なわれてきたことには留意しながらも、委員会は、体罰の禁止、拷問の禁止および婚外子の地位に関する法律が存在しないことを依然として懸念する。委員会はまた、締約国で相当に先進的な一般的法的枠組みが採用されていることにも留意するものの、子どもに関する法律、とくに1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の実施および法的執行が行なわれていないことを依然として懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、子どもの権利の保護を向上させる目的で国内法の全面的かつ効果的実施を確保し、かつ、自国の法律を条約の規定および原則と全面的に調和させるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。後者の目的のための手段には、体罰禁止法(法案第682号)、拷問を犯罪化する法案第5846号、児童ポルノ禁止法(法案第2317号)ならびに制定法上の強姦年齢および性的虐待行為法(法案第2172号)を迅速に採択することも含まれる。委員会はまた、締約国が、婚外子の地位に対応するための法律を制定することも勧告するものである。 調整 13.委員会は、子ども福祉評議会(CWC)の権限が2009年6月8日の大統領令第806号で確認されたこと、および、CWCが、フィリピンにおいて、子どもに関するあらゆる法律、政策、プログラムおよび措置の実施および執行を調整する権限を与えられた、子どもについての中心的機関横断型機関であり続けていることに留意する。委員会は、大統領人権委員会(PHRC)の存在、および、フィリピンにおける人権の実施に関わるその活動にも留意するものである。委員会は、バランガイ、自治体、都市および州のレベルに子ども保護地方評議会(LPCP)を設置することによって、地方レベルで実施が進められていないことに締約国が対処しようとしていること、および、子どもの福祉地方小委員会(RSCWC)が17か所に設置されて国の政府と地方政府部局とを結びつけていることを歓迎する。しかしながら委員会は、CWC、LCPCおよびRSCWCに人的資源および財源が配分されていないことから、これらの機構の効果的運用が妨げられている可能性があることに、懸念を表明するものである。 14.委員会は、締約国に対し、子どものための努力の一貫性、とりわけ既存の機関(とくにCWCおよびPHRC)間の効果的調整を、それぞれの具体的地位および能力を考慮しながら向上させるための措置を継続しかつ強化するよう、促す。委員会は、締約国が、子どもに関する主たる調整機関としてのCWCの権能を強化するとともに、とくにCWCならびにLCPCおよびRSCWCに対し、これらの機構の効果的運用を確保するための十分な人的資源、財源および技術的資源が配分されることを確保するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、全領域が網羅されることを達成するため、残りのバランガイ、自治体、都市および州にLCPCを設置することも奨励する。 国家的行動計画 15.委員会は、締約国が「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」の実施のための国家行動計画(NPAC)を策定したことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、NPACの地方版の策定を促進し、かつ地方開発計画の主流に子どもの権利を位置づけるための第6次および第7次国別プログラム(CPC 6/7)を実施するため、締約国がユニセフに技術的援助を求めたことも評価するものである。しかしながら委員会は、現行の資源および機構が、とくに地方レベルにおけるNPACの実施、監視および評価のためには不十分であることを、依然として懸念する。 16.委員会は、締約国が、国家予算においてNPACの実施のための予算線ならびに関連のあらゆる部門別および地域別プログラム全体の予算線を定めかつ明確に特定することにより、NPACが主流に位置づけられることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が〔これらの計画の〕全面的実施を確保するための十分なフォローアップ機構を設置することとともに、部門および地域の枠を超えて、達成された進展を定期的に評価しかつ存在しうる欠陥を明らかにして是正措置をとることを目的とした評価および監視のための機構がこれらの計画に組み込まれるべきことも、勧告するものである。委員会はさらに、すべての自治体、都市および州の地方行政単位(LGU)に対してNPACおよび条約を実施するための十分な資源が提供されるべきこと、ならびに、これが開かれた、協議を中心とする参加型の方法で行なわれるべきことを勧告する。さらに委員会は、締約国が、NPACの監視および評価に関して、より積極的に非政府組織の参加を得るよう勧告するものである。 独立の監視 17.委員会は、フィリピン人権委員会(CHRP)内に設置された子どもの権利センターが、子どもからの苦情を受理する権限を有する子どもオンブズマンとして機能していることに評価の意とともに留意するものの、同センターが、これらの活動のための十分な人的資源および財源または十分な法的根拠を有していないことを懸念する。 18.子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を参照しつつ、委員会は、子どもの権利センターがその権限を効果的にかつ独立して行使できることを確保するため、締約国が、CHRPを通じ、同センターに対して十分な人的資源および財源を提供するよう勧告する。委員会はまた、子どもの権利の保護および促進を強化するため、締約国が、議会による承認待ちとなっているCHRP憲章の迅速な通過を支持するようにも勧告するものである。 資源配分 19.委員会は、低所得家庭を対象とし、かつミレニアム開発目標(MDG)および「子どもにふさわしい世界」の目標(WFFC)を達成することを目的とした、貧困削減のためのさまざまな戦略および取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための社会サービス、保険サービスおよび教育に対する予算配分が、国家予算に占める割合の点からは減少していることに、懸念とともに留意するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が国家予算の30%以上を債務元利払いに配分していること、および、ここ数年、債務元利払いに配分される予算割合が上昇していることに対する深い懸念をあらためて表明する。委員会はまた、子どもの権利(教育および健康に対する権利を含む)の促進および保護を効果的に向上させるための、すでに限られている資源の配分に対し、汚職が悪影響を及ぼしている可能性があることも留意するものである。 20.委員会は、締約国に対し、国および地方のレベルで子どものための予算配分を優先させかつ増額するよう促す。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。 (b) 不利な立場に置かれたまたはとくに脆弱な立場に置かれた子どもおよび積極的な社会的措置(出生登録など)を必要とする可能性がある状況に置かれた子どもに関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。 (c) 締約国で現在進められている地方分権化のプロセスにおいて、公の対話および(とくに子どもの)参加を通じ、かつ地方当局の適正な説明責任の面で、透明かつ参加型の予算策定を確保すること。 (d) 透明性および廉潔性を志向する政策を強化すること等も通じ、社会のあらゆる部門における汚職を防止しかつ撤廃するための行動を増進させること。 (e) とくにユニセフおよび世界銀行に対し、これらの目的のための技術的援助を求めること。 21.委員会は、世界でもっとも鉱物資源が豊かな国のひとつであり、かつ外国投資を求める中所得経済国であるフィリピンが、1995年鉱業法が社会的におよび環境面で及ぼす影響、とくに子どもの状況に対する影響にいまなお対処していないことに、懸念とともに留意する。同法は、最高100%外資により所有されている企業に対し、規制を受けることなく、鉱物、石油およびガスの大規模な探査、開発および利用に投資することを認めたものである。委員会はとくに、家族が採掘地域から立ち退かされ、先住民族が先祖伝来の土地を奪われ、かつきわめて汚染度の高い技術が用いられているために子どもが深刻な影響を受けているという、非政府組織および国際機関からの報告に懸念を覚える。 22.外国投資の必要性には留意しながらも、委員会は、同国における規制の枠組みに、国際的企業および国内企業が子どもの権利の尊重および充足について意識しかつそれに参加するようにさせる、社会的責任および環境保護の要件が含まれるべきことを勧告する。 データ収集 23.委員会は、データ収集システムを改善しようとする締約国の努力を認知するとともに、とくに、国レベルの主要な政府機関と連携したスバイバイ・バータ〔子ども観察〕監視システム(SBMS)がCWCによって開発されたこと、子どもの権利の主要7分野について143の指標が開発されたこと、および、「フィリピン子ども白書」が発行されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、地域別、ジェンダー別および年齢別に細分化されたデータが存在せず、かつ、特別な保護を必要とする子ども、とくに極度の貧困下で暮らしている子ども、虐待およびネグレクトの対象とされている子ども、法律に触れた子どもならびにマイノリティおよび先住民族集団に属する子どもについてのデータが不十分であることに対する懸念を、あらためて繰り返すものである。 24.委員会は、締約国が、既存のデータ収集システムをさらに拡大するとともに、データが地域別、ジェンダー別および年齢別に細分化されること、ならびに、データが更新されかつそこに特別な保護を必要とする子どもについての情報も含まれることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、「フィリピン子ども白書」が国全体で広く普及されかつアクセス可能とされることを確保するよう勧告するとともに、締約国に対し、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価する際の基盤として、かつ、条約およびその2つの選択議定書を実施するための政策立案に役立てる目的で、当該白書を活用するよう奨励するものである。その際、このプロセスにおいて子どもが意見を聴かれかつ協議の対象とされることを確保することが求められる。 普及、研修および意識啓発 25.委員会は、地方レベルにおけるものも含め、条約に関する知識を促進しかつ強化するために締約国が行なっているさまざまな取り組みを歓迎するものの、その意識啓発キャンペーンおよび研修活動が、農村部および遠隔地を含む同国のすべての場所および子どもとともにまたは子どものために働くすべての者とを対象とするには不十分であることを、懸念する。 26.委員会は、締約国が、意識啓発キャンペーンを引き続き強化するとともに、当該キャンペーンにおいて、先住民族コミュニティおよびマイノリティに属する子どもを含む農村部および遠隔地が対象とされることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、このような普及および意識啓発に関してメディアと緊密に協働するとともに、メディアに対し、子どもの権利(プライバシーに対する子どもの権利を含む)を尊重しながら子どもについての取り上げ方を向上させるためにいっそう子ども志向の記事および番組等を発展させ、かつメディア番組に対する子ども自身の参加を促進するよう奨励することも、勧告するものである。委員会は、締約国が、この点に関わるメディア向けの倫理綱領の採択を促進するよう勧告する。 27.委員会はさらに、締約国が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての者(たとえば検察官、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子ども自身)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての継続的研修プログラムを引き続き開発しかつ強化するよう、勧告する。 市民社会との協力 28.委員会は、締約国が、条約の促進ならびに子どものためのサービスおよびプログラムの提供に関して多数の国内的および国際的非政府組織と連携していることを歓迎するとともに、政府がとる行動においてこれらのINGOおよびNGOがしばしば協議の対象とされていることに留意する。委員会は、締約国に対し、国内的および国際的非政府組織を含む市民社会との協力を引き続き強化するとともに、子どもの権利の促進および保護に関わるあらゆる分野で幅広い協力を確保するよう、奨励するものである。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 29.子どもに対する差別を解消するために締約国が行なっている努力(「女子計画」ならびに先住民族およびマイノリティの子どもを対象とした多くのプログラムを通じてのものも含む)には留意しながらも、委員会は、多くの子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもが、とりわけ社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して差別に直面していることに対する懸念を、あらためて表明する。委員会はまた、主として女子および女性に対する社会的態度を理由として、事実上の差別がいまなお女子に影響を及ぼしており、かつその権利の全面的享受を阻害していることも、依然として懸念するものである。委員会はさらに、「非嫡出」として分類されることおよび相続の権利を制限されることのような差別的慣行にいまなお直面している婚外子の状況に対し、締約国がまだ対応をとっていないことに懸念を表明する。 30.委員会は、締約国に対し、子どもに対する差別を撤廃するための努力を強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 脆弱な立場に置かれたすべての集団の子どもに対するあらゆる形態の差別(複合的形態の差別を含む)に対処する、かつ、女子、貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもに対する社会の差別的な態度と闘うことを目的とした、包括的戦略を採択しかつ実施すること。 (b) 女子が平等な取り扱いおよび自己の権利の全面的享受に対する権利を有することを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が「女子計画」を主流に位置づけ、かつ特に地方レベルにおけるその実施を強化するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、差別的慣行の被害を受けた女子が司法にアクセスできることを確保するよう勧告するものである。 (c) とくに婚外子を「非嫡出」子として分類することを廃止し、かつ相続に対する権利を含む婚外子の平等な権利を承認することによって平等な取り扱いに対する権利を婚外子に確保するため、国内法を改正すること。 31.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れた情報が、締約国の報告書に記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、次回の定期報告書で、このような具体的情報が、2009年のダーバン・レビュー会議をフォローアップするためにとられた措置に関する情報とともに提供されることを要請する。 生命、生存および発達に対する権利 32.委員会は、国内武力紛争を背景とするものも含む子どもの生命権侵害の態様について、あらためて重大な懸念を表明する。委員会は、締約国が超法規的処刑を「きわめて重大な懸念」として認知していることに留意するとともに、超法規的、即決または恣意的処刑に関する特別報告者その他の情報源が強調しているように超法規的殺害(子どもの殺害を含む)の事案が報告されており、かつ、このような超法規的殺害がフィリピン軍、フィリピン国家警察およびダバオで活動する死の部隊によって行なわれていることに、深い懸念を表明するものである。委員会は、メロ委員会および〔フィリピン国家警察〕迫害特別捜査班の設置ならびに救済令状(Writ of Amparo)規則および情報提出令状(Writ of Habeas Data)規則適用法の公布(2007年10月)のような、締約国が行なったいくつかの積極的取り組みには留意するものの、訴追件数が少ないことおよび加害者を裁判にかけたことによる成果が存在しないことに重大な懸念を覚える。 33.前回の総括所見をあらためて繰り返し、かつ条約第6条その他の条項を参照しながら、委員会は、締約国に対し、とくに子どもの超法規的殺害を防止することならびに殺害が疑われる事件を徹底的に捜査しかつ加害者を裁判にかけることを目的としたあらゆる必要な措置をとることにより、生命、生存および発達に対する子どもの権利の保護を強化するためにあらゆる努力を行なうよう促す。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、CHRPに対し、その任務を遂行しかつ報告された事件を調査するための十分な財源を提供することも勧告するものである。委員会は、次回の定期報告書に、苦情申立て、捜査、訴追および有罪判決に関するデータも含む具体的情報を記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 34.委員会は、子ども参加に関する国家的枠組み(NFCP)を採択したこと、ならびに、サングニアン・カバタアン(SK)〔若者村評議会〕および学校における生徒評議会等も通じ、地方および国の双方のレベルで子どもの関与を進めていることなど、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっているさまざまな取り組みおよび努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、子どもが自分たちの権利の保護および充足に関して意見を表明しかつ勧告を作成できるようにするため、委員会に提出する締約国報告書の起草過程でCWCの主催により行なわれた、子どもおよび子ども団体との協議会合(2007年)も歓迎するものである。しかしながら委員会は、子ども、とくにマイノリティおよび先住民族に属する子どもが意見を聴かれることは締約国ではいまなお一般的に困難であり、かつ、自己に影響を与える手続において意見を聴かれる子どもの権利が制限される可能性があることを、懸念するものである。 35.条約第12条に照らし、かつ意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国に対し、子どもの意見の尊重および自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を、家庭、学校、施設、裁判所および行政機関において、立法等も通じて促進しかつその便宜を図るための努力を、さらに強化するよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国が、マイノリティおよび先住民族の子どもに特段の注意を払うよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 36.委員会は、出生登録プロジェクト(BRP)の実施、草の根レベルでの登録を容易にするためのバランガイ民事登録制度(BCRS)の設置、および、バランガイ民事登録担当者を対象とした民事登録法および移動出生登録手続に関する研修をはじめ、出生登録を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されていない子どもが同国に260万人存在すること(そのほとんどはミンダナオに住むイスラム教徒および先住民族の子どもである)に、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、出生登録が無償ではなく、かつ登録遅延の場合は罰金を払わなければならないことも懸念する。 37.委員会は、締約国が、すべての子どもを対象とする、効率的かつ無償の出生登録制度を発展させるための努力を追求しかつ強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、草の根レベルで民事登録制度をよりアクセスしやすいものとするため、BCRSを強化するよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、登録所に十分な財源、人的資源その他の資源が配分されることを確保するとともに、ミンダナオに住むイスラム教徒および先住民族の子どもにとくに注意しながら住民(同国の最遠隔地に住む人々を含む)が登録に容易にアクセスできることを確保するため、移動サービスを含むさらなる措置をとることも促す。委員会はさらに、締約国が、期限後の登録を奨励しかつ無償で行なえるようにするための機構を設けるよう勧告するものである。 名前、国籍およびアイデンティティ 38.委員会は、親の就労国のフィリピン大使館および領事館、多数の政府機関、ならびに、親を対象として出生登録の必要性および価値に関する意識啓発会合を実施している「移住労働者その他のフィリピン人海外就労者リソースセンター」(MWCFRC)を通じ、国外で生まれた、登録されておらずかつ身分証明書類を有していないフィリピン人移住労働者の子どもの登録を向上させるために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されておらずかつ身分証明書類を有していない子どもが多いこと、および、このような子どもが未登録を理由として名前および国籍に対する権利を奪われる可能性があることを、依然として懸念するものである。 39.前回の勧告をあらためて繰り返しながら、委員会は、締約国に対し、親がその在留資格に関わらず国外で生まれた子どもを登録できるようにするためさらに便宜を図るよう、奨励する。委員会はまた、締約国が、登録されておらず正規の身分証明書類を有しない子どもが、フィリピンへの帰国と同時に、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスを認められることを確保するようにも勧告するものである。 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰 40.委員会は、2006年少年司法福祉法第5条(a)が少年司法の運営における拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは処罰の行為を禁じていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、締約国がこのような犯罪をあらゆる場面で禁ずる法律を制定していないことを、遺憾に思うものである。拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰に関する特別報告者の最近の報告書およびその他の情報源を参照しながら、委員会は、子ども、とくに拘禁されている子どもの拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取り扱いの報告件数が多数にのぼることを深く懸念する。委員会は、現行法は子どもに対して拷問および不当な取り扱いからの十分な水準の保護を提供していないという見解をとるものである。さらに、委員会は、訴追および有罪判決に至った事件が少ないことを懸念する。 41.条約第37条(a)に照らし、委員会は、締約国に対し、拷問および他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは処罰の行為をあらゆる場面で禁止するため、拷問禁止法案第5846号を迅速に通過させるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、拷問が行なわれたというすべての訴えが効果的かつ迅速に捜査されること、加害者が訴追されかつ処罰されること、ならびに、被害を受けた子どもに対して十分な賠償が行なわれることを確保するよう、求めるものである。さらに、委員会は、締約国が、拷問禁止条約の選択議定書の批准を検討するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの拷問、非人道的なおよび(または)品位を傷つける取り扱いが公的機関または関連機関に報告された件数、そのような行為の加害者のうち裁判所による刑の言い渡しを受けた者の人数および言い渡された刑の性質に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 体罰 42.あらゆる現場における体罰を禁止する体罰禁止法案が現在議論されていることには留意しながらも、委員会は、家庭における体罰が法律で明示的に禁じられておらず、かつ体罰に関する規定が子ども・若者福祉法に含まれていない旨の懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、社会、とくに家庭における体罰が蔓延していることに対しても懸念を表明するとともに、前回の総括所見(CRC/C/15/Add.25、パラ42)で委員会が勧告した、この問題に関する包括的研究が行なわれていないことを遺憾に思うものである。 43.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 家庭、学校、子どもの代替的養護、職場および拘禁場所を含むあらゆる場面における体罰を法律で明示的に禁止するため、体罰禁止法案を通過させること。 (b) このような慣行の有害な影響について親および家族、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうこと、ならびに、子どもの尊厳と一致する方法による、かつ条約(とくに第28条2項)にしたがった、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律の活用を促進することを目的とした、意識啓発キャンペーンを強化すること。 (c) さまざまな場面における体罰の性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (d) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を正当に考慮すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 44.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究〔の勧告〕を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を撤廃するため、以下の勧告に特段の注意を払いながら、同研究の勧告の実施に優先的に取り組むこと。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。 (ii) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての者の能力を増進すること。 (iii) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (iv) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報の制度およびサービスを創設すること。 (v) 説明責任を確保するとともに、加害者の責任を問われない状態に終止符を打つこと。 (vi) 国レベルの体系的なデータ収集および調査研究を発展させ、実施すること。 (c) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながらおよびとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 45.委員会は、自国の法律上、司法上および行政上の枠組みを改善しようとする締約国の努力に留意する。しかしながら委員会は、移民流出数が多くかつ増加していること、ならびに、国外で働く母親または父親が自国に残していく子どもが多くかつ増加していることを理由とする、家族状況の崩壊および変化に懸念を覚えるものである。委員会はさらに、自国に残される子どもの人数に関する体系的データがないこと、および、女性の移民が増加している状況またはその影響を評価する包括的研究が実施されていないことを遺憾に思う。 46.移住労働者委員会が採択した総括所見(CMW/C/PHL/CO/1、パラ45-46)を想起しながら、委員会は、締約国が、移民家族の子どもの保護およびその権利の全面的享受を、とくにコミュニティ支援プログラム、教育広報キャンペーンおよび学校プログラムを通じて確保するための十分な戦略を策定する目的で、これらの子どもの状況に関する包括的研究を行なうよう勧告する。委員会は、移住労働者委員会(パラ20)とともに、締約国が、細分化されたデータも含む「移民に関する共有政府情報システム」(SGISM)を設立するよう勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 47.委員会は、施設に措置される子どもが多いこと、入所型養護を受けている子どもの身体的および情緒的虐待の事例が報告されていること、ならびに、代替的養護に関する良質なケア基準および監視が存在しないことを、依然として懸念する。 48.委員会は、締約国に対し、子どもの脱施設化を進展させかつこのような子どもに家庭的環境を提供するため、里親擁護法案第263号を優先的課題として採択しかつ実施するよう求める。委員会はまた、締約国が、里親養護または入所型養護に措置されている子どものケア基準およびその状況の監視を増進させることも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、「親のケアを受けていない子ども」に関する一般的討議(2005年)の際に委員会が行なった勧告を正当に考慮するよう勧告する。 養子縁組 49.委員会は、2009年3月に採択された共和国法第9523号によれば、子どもの養子縁組が法的に可能であることを証明する権限が社会福祉開発省に与えられていることに留意する。しかしながら委員会は、養子縁組手続の費用負担を理由として、養子縁組手続を回避するため、「出生の偽装」または実親ではない者が行なう不正登録を利用する者が多いという報告に懸念を覚えるものである。委員会はまた、国際養子縁組に関する枠組みおよび条件についての情報、ならびに、受け入れ国ならびに養子とされた子どものジェンダーおよび年齢に関する細分化されたデータが存在しないことも懸念する。 50.委員会は、締約国に対し、データ収集に関わる点も含め、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を全面的に遵守するよう求める。委員会はまた、すべての養子縁組が子どもの権利条約の原則および規定ならびに他の関連の国際基準に全面的にしたがって、かつ子どもの最善の利益にかなうように行なわれることを確保するため、締約国があらゆる努力を行なうよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、いわゆる「偽装出生」を防止しかつこれと闘うため、このような慣行の規模に関する意識啓発キャンペーンを市民社会の関与も得ながら実施することおよび責任者を処罰すること等も通じ、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、国際養子縁組に関する枠組みおよび条件についての情報、ならびに、受け入れ国ならびに養子とされた子どものジェンダーおよび年齢に関する細分化されたデータを次回の定期報告書で提供するよう、要請するものである。 虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱い 51.委員会は、女性およびその子どもに対する暴力禁止法(共和国法第9262号)等も通じ、子どもの虐待および不当な取り扱いに対処するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら、締約国報告書でも認知されているように、委員会は、子どもの身体的虐待、ネグレクトおよび性的虐待も含むドメスティック・バイオレンスの件数が増加しており、かつ、同法が制定されたにも関わらず、家庭における暴力はほとんど通報されないままとなっていることに、深い懸念を表明するものである。委員会はまた、宗教上の制度の枠組みのなかで子どもの性的虐待が行なわれているという訴えがあることについての懸念をあらためて繰り返す。1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の改正には留意しながらも、委員会はさらに、ドメスティック・バイオレンスおよび子どもの虐待の事案が子どもにやさしい手続のもとで調査されていないこと、虐待された子どもがそのような手続で被害を受ける可能性があること、および、証人である子どもが脅迫から保護されていないことを懸念する。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 女性およびその子どもに対する暴力禁止法の実施および普及を増進させかつ強化すること。 (b) 虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱いを含むドメスティック・バイオレンスについて包括的研究を実施すること。 (c) 宗教上の制度における性的虐待の規模について調査すること等により、このような虐待を防止しかつこのような虐待から子どもを保護するために効果的措置をとること。 (d) 加害者を裁判にかけるため、児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について、子どもにやさしい手続のもとで時宜を得た十分な調査を行なうとともに、虐待された子どもが法的手続において被害を受けないことを確保するためにこのような手続において子どもに支援サービスを提供し、かつ、証人である子どもを脅迫から保護するために現行の証人保護プログラムを強化すること。 (e) 虐待およびネグレクトを防止する目的で、虐待を行なう親のための家族支援サービスが提供されることを確保すること。 (f) 暴力および虐待の被害を受けた子どもが十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保すること。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 53.締約国が2008年に障害のある人の権利に関する条約を批准したことは歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもが社会サービス、教育サービス、保健サービスその他のサービスに平等にアクセスできることを確保するための包括的政策が存在しないことに、懸念を表明する。委員会はまた、多くの原因(極度の貧困の結果として生ずる栄養不良および非衛生的な生活条件を含む)により、フィリピンの子どもの障害発生率が高いことも依然として懸念するものである。委員会はさらに、これらの子どもが事実上の差別に直面し続けており、かつこれらの子どもの役割が社会で不可視化されていることを懸念する。 54.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を強化するよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための包括的政策を策定しかつ実施するとともに、障害のある子どもが社会サービス、教育サービス、保健サービスその他のサービスに平等にアクセスできることを確保するために現行法を執行すること。 (b) 障害のある子どもに関する既存のデータベースおよびモニタリング・システムを強化すること。 (c) 障害のある子どもおよびその家族構成員が、プログラムの計画、実施および評価に参加することを確保すること。 (d) 障害(精神障害を含む)のあるすべての子どもにプログラムおよびサービスを提供し、かつこれらのサービスに対して十分な人的資源および財源が与えられることを確保するため、あらゆる努力を行なうこと。 (e) 障害のある子どもの権利および特別なニーズに関する講習の感受性を強化し、かつ社会への障害児のインクルージョンを奨励するための意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (f) 教員、ソーシャルワーカー、医療従事者、準医療従事者および関連要員のような、障害のある子どもとともに働く専門的職員を対象として研修を行なうこと。 (g) 条約第23条、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)および障害のある人の権利に関する条約を考慮すること。 健康および保健サービス 55.締約国の「健康に関する国家的目標(2005~2010年)」、乳児死亡率の低下(出生1000件あたり43(1990年)から23(2007年)へ)および妊産婦死亡率の若干の低下(出生10万件あたり172(1997年)から167(2005年)へ)には留意しながらも、委員会は、乳児および妊産婦の死亡率が高いことならびに死亡率に関わる進展の達成について地域格差があることを依然として懸念する。委員会はまた、新生児死亡および流産の登録および報告に欠陥があることも依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもの間で低栄養(低体重、低身長および痩せ)が生じており、かつ同国の遠隔地において良質な保健サービスへの子どものアクセスが全般的に限られていることに対する懸念をあらためて表明する。加えて、委員会は、援助を必要とする子どもおよび青少年のための精神保健サービスおよび関連サービスの問題に関する情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思うものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施するため、引き続き、保健部門に適切な資源が配分されることを確保し、ならびに子どもの健康状態を向上させるための包括的政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。 (b) 同国の農村部および遠隔地に特段の注意を払うことにより、産前産後の良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障するための措置(助産師および伝統的出産立会人を対象とする研修プログラムも含む)を強化しかつ実施すること。 (c) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率を低下させるため、引き続きあらゆる必要な措置をとること。 (d) 新生児死亡および流産について、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ28)を想起し、締約国が、とくに遠隔地において民事登録官へのアクセスを容易にするよう勧告する。 (e) 十分な栄養のある食料および補給剤ならびに幼少期からの健康的習慣に関する教育を提供することにより、低栄養の問題に効果的に対処すること。 (f) 精神的健康の促進、一般的に見られる精神保健上の問題ならびに外来および入院のサービスを含む、子どもおよび青少年の精神保健に関する包括的政策を策定しかつ実施すること。 (g) この問題に関して、とくにWHO、ユニセフおよび国連人口基金(UNFPA)と引き続き協力し、かつその技術的援助を引き続き求めること。 母乳育児 57.母乳育児を奨励するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、母乳育児の実践率が低いことに対する懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、母性休暇期間が不十分であること、および、労働者が母性休暇の取得を権利として認められる基準が公共部門と民間部門で異なることも、懸念するものである。 58.委員会は、締約国が、ミルク・コード(大統領令第51号)および2007年RIRR(改正ミルク・コード実施細則)の効果的実施を確保するために必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ59(f))を想起し、締約国が、生後6か月間は母乳のみを与え、その後はこれを修正して適切な乳児食を与えることをさらに奨励するとともに、健康的な摂食習慣の教育および促進を通じて子どもの栄養状態を改善するための措置をとるよう、勧告するものである。委員会はまた、母性保護に関するILO第183号条約(2000年)にしたがい、推奨されている14週間の母性休暇を与えることによって公共部門および民間部門で働く女性を平等に支援するため、母性保護に関する法律を見直すことも求める。 環境衛生 59.締約国がとった立法上その他の措置には留意しながらも、委員会は、大気および水の汚染ならびに環境悪化のような環境問題が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることに対する懸念をあらためて表明する。委員会はまた、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関して地域格差があることも、依然として懸念するものである。締約国がとりわけ自然災害の被害を受けやすいことには留意しながらも、委員会は、そのような災害の影響を受けた子どもを保護しかつ援助するために用意されているいずれかの行動計画または戦略についての情報が存在しないことを懸念する。 60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 環境関連の国内法の実施を強化することにより、汚染および環境悪化を低減させるための努力を引き続き強化すること。 (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。 (c) とくに農村部およびスラムにおいて安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させるために効果的措置をとること。 (d) 自然災害の影響を受けた子どもの援助および保護に関する行動計画または戦略を策定しかつ実施すること。 思春期の健康 61.委員会は、リプロダクティブヘルスに関するサービスおよび情報が不十分であること、避妊手段使用率が低いこと(現代的家族計画手法を利用している女性は2006年で36%)、ならびに、人工的避妊手段へのアクセスが困難であることから、締約国における高い10代妊娠率および妊産婦の死亡が助長されていることを、依然として深刻に懸念する。委員会は、女性大憲章の制定を歓迎するものの、女性および女子のリプロダクティブライツを促進するための効果的措置がとられておらず、かつ特定の信条および宗教的価値観によってその履行が妨げられていることを、依然としてとくに懸念するものである。同国のHIV感染率が低いことには留意しながらも、委員会は、フィリピン国家AIDS評議会(PNAC)が、HIV/AIDSの状況の特徴について、潜在化しておりかつ増加しつつあると説明していることに懸念とともに留意し、かつ、フィリピンの青少年の間でHIV/AIDSおよび性感染症(STI)に関する意識水準が不十分であることを依然として懸念する。 62.委員会は、締約国に対し、思春期の健康の分野でより子どもにやさしいプログラムおよびサービスを設置し、かつ、とくにこの問題に関する研究を通じて思春期の健康に関する有効なデータを入手するための努力を強化するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 議会による承認待ちのリプロダクティブヘルス法案を緊急に採択するとともに、条約に掲げられた子どもおよび青少年の権利が同法案に反映されることを確保すること。 (b) 10代の妊娠を予防する目的で、リプロダクティブヘルスに関する相談へのアクセスを確保し、かつ、正確かつ客観的な情報ならびに文化的配慮のあるサービスをすべての青少年に提供すること。このための手段には、幅広い種類の避妊手段にいかなる制限もなく広くアクセスできるようにすること、ならびに、家族計画に関する知識および意識を向上させることが含まれる。 (c) 若年妊娠の予防、STIおよび家族計画に焦点を当てた、女子および男子を対象とする公式・非公式の性教育を強化すること。 (d) HIV/AIDSに関する意識啓発キャンペーンを強化するとともに、子どもがHIVおよびSTIへの感染のしやすさに対処しかつこれを低減させるためのライフスキルを身につけられるよう、学校内外で、子どもを対象とした、HIV/AIDSに関する年齢にふさわしい教育および情報にアクセスできることを確保すること。 (e) とくにWHO、国連エイズ合同計画およびUNFPAの技術的協力を求めること。 (f) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)および子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を正当に考慮すること。 生活水準 63.委員会は、パンタウィド・パミーリャン・ピリピーノ・プログラム(4Ps)、飢餓緩和促進プログラム(AHMP)、条件付現金給付(CCT)プログラムおよび締約国報告書パラ49で説明されているその他の取り組み、ならびに、ユニセフの「子どもの貧困および格差に関する世界的研究」への締約国の参加をはじめ、貧困と闘うために締約国が行なっているさまざまな取り組みおよび措置を歓迎する。しかしながら委員会は、国の貧困線以下の世帯で暮らしている子どもが多いこと、とくに、子どもおよびその家族が農村部の貧困を逃れようとして都市で極度の貧困状況に直面していることについての懸念をあらためて繰り返すものである。委員会はまた、異なる地域間の生活水準レベルおよび基礎的サービスへのアクセスに関して大きな格差が存在することにも、懸念を表明する。 64.委員会は、締約国が、包括的かつ全国的な貧困削減戦略を策定しおよび実施し、ならびに、子どもがどこに住んでいるかに関わらず、貧困下で暮らしている子ども(とくに極度の貧困に直面している子ども)の生活水準を向上させるためにあらゆる必要な措置をとるべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ67)をあらためて繰り返す。委員会は、当該戦略には子どもの参加が含まれるべきであることを強調するものである。委員会はまた、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた子どもおよびその家族に物的援助および支援を提供する努力を強化することも要請する。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 65.委員会は、就学率および学校修了率の悪化に関わる近年の傾向、ならびに、とくに初等学校の第1年次および第2年次で脱落する子どもまたは学校に行かない子どもの人数の増加に、懸念とともに留意する。委員会はまた、脆弱な立場に置かれた一部の集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、働く子ども、武力紛争下にある子ども、先住民族の子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)が教育に平等にアクセスできていないことも、依然として懸念するものである。委員会は、教室の席、教科書およびその他の学用品の数が不十分であることも含め、とくに遠隔地のバランガイにおいて就学のための便益が貧弱であることに対する懸念を、あらためて表明する。さらに委員会は、幼児ケアを受けている子どもの人数が若干増加している一方で、就園率がいまなお非常に低いこと(3~4歳児の13%)、および、この点に関して0~3歳児が看過されていることを懸念するものである。 66.条約第28条および第29条ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために必要な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。 (a) 初等中等学校における中退率を削減し、学校教育未修の背景にある理由(文化的伝統および貧困を含む)に対処し、かつ中等学校への進学者数を増加させるための具体的措置をとること。 (b) 初等教育が完全に普及し、直接間接の費用負担をともなわず、かつすべての子どもにとってアクセス可能であることを確保するため、あらゆる必要な措置を緊急にとるとともに、最遠隔地にあるバランガイにおける就学機会および脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの教育上のニーズに対し、教育に対するこれらの子どもの権利を充足する目的で特段の注意を払うこと。 (c) 初等中等学校における教員ひとりあたり生徒数を改善し、同時に教員が十分な訓練を受け、十全な資格を有し、かつ十分な給与を支払われることを確保することを通じて、教育の質を増進させること。 (d) 学校および教室を新設し、教科書その他の学用品を開発し、教員の養成および研修を増進させ、ならびに、学習の前提条件が異なる子どもに適合した革新的かつ双方向的な学習手法を採用することにより、教育制度の基盤を発展させおよび改良すること。 (e) 乳幼児期の教育およびケアに関する包括的政策を策定し、かつ、就学前学校および早期の学習機会に関する親の意識を高めること。 (f) 初等中等教育を修了していない子どもを対象とするものも含む非公式な学習および職業教育の促進を引き続き強化するとともに、労働市場で必要とされることおよび市民的責任に関して子どもが学校で体系的に準備を整えられるようにする職業訓練校を設立すること。 (g) ユニセフおよびユネスコの技術的援助を求めること。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条) 子どもの難民 67.委員会は、締約国における子どもの難民の状況に関する情報が存在しないことを遺憾に思うとともに、子どもの庇護希望者および難民の具体的ニーズに対応した国内法が存在しないことに関する懸念をあらためて繰り返す。 68.委員会は、締約国が、子どもの庇護希望者および難民のニーズに対応し、かつ、保護者のいないおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民に関する特別手続を定めた、特別な法律および行政規則を導入するべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。これとの関係で、委員会は、締約国が引き続きUNHCRと協力するよう勧告するものである。 武力紛争下の子ども 69.委員会は、「武力紛争に関与した子どもに関する包括的プログラム枠組み」(CP-CIAC)の継続的実施、SC CAACD〔子ども福祉評議会・武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会〕の活動、および、武力紛争の影響を受けている子どもの状況に対応するためのさまざまな取り組みを歓迎する。委員会はまた、武力紛争と子どもに関する事務総長特別代表が2008年12月にフィリピンを訪問したこと、および、モロ・イスラム解放戦線(MILF)が、2009年7月、子どもの徴募を防止しかつ民間人としての生活への子どもの再統合を促進するための具体的かつ期限を定めた措置をともなった行動計画に調印したことも歓迎するものである。これらの積極的措置には留意しながらも、委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書を2008年5月/6月に検討した際に表明した懸念(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)をあらためて繰り返す。とくに、子どもの徴募を禁じた共和国法第7610号第10条22項(b)が曖昧であり、違反に対する懲罰的制裁を定めていないことをひとつの理由として、戦闘員、諜報要員、警備兵、調理担当または衛生兵として働かせるために武装集団が子どもを徴募しているという報告が引き続きあること、および、このような犯罪の加害者が訴追されていないことが、懸念の対象である。 70.委員会はまた、国内武力紛争の悪影響のため、子どもが避難を余儀なくされる状況が継続しおよび悪化しており、ならびに、これらの子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達に対して限られた形でしかアクセスできていないことにも、深い懸念を表明する。さらに、委員会は、敵対行為に関与していない子ども、とくにミンダナオに住んでいる子どもに対して国内武力紛争が与えている影響について、依然として懸念を覚えるものである。 71.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書を2008年5月/6月に検討した際に行なった勧告(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)を想起し、締約国に対し、当該勧告を全面的に実施するよう促す。とくに、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることを禁止しかつ犯罪化した現行法の効果的実施のための勧告、ならびに、被害者の動員解除、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を目的とする措置(子どもが避難を余儀なくされる状況に対応し、かつ、このような子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達にアクセスできることを確保するための措置も含む)の継続および強化のための勧告を実施することが求められる。委員会はまた、締約国に対し、子どもの徴募を禁じた共和国法第7610号第10条22項(b)の曖昧さに対処するために必要な立法上の措置をとることにより、このような侵害の加害者が処罰されることを確保するよう求めるものである。委員会はさらに、締約国が、武力紛争下の子どもが法律に触れた子どもとして扱われないことを確保し、かつ、国際刑事裁判所ローマ規程、および、国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(第1議定書)を批准するよう、勧告する。 児童労働を含む経済的搾取 72.サギップ・バータン・マンガガーワ〔児童労働者救援〕(SBM)救援機構およびSBM迅速行動班(QAT)の設置を含め、児童労働と闘うために締約国が行なっているさまざまな努力には留意しながらも、委員会は、締約国における子どもの労働者(5~14歳)の人数が多いことを深く懸念する。委員会はとくに、これらの子どもが有害なまたは危険な条件下で働いており、かつさまざまな形態の性的および経済的搾取(最悪の形態の児童労働を含む)にさらされていることを懸念するものである。 73.委員会は、締約国に対し、児童労働と闘い、かつあらゆる形態の性的および経済的搾取(最悪の形態の児童労働を含む)から子どもを保護するための努力を強化するよう促す。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 国際基準にしたがい、児童労働を禁止する国内法を強化すること。 (b) 最悪の形態の児童労働撤廃法(共和国法第9231号)を含む国内労働法および諸プログラムを効果的に実施するとともに、この問題の解決に関する議論に子どもの労働者が参加することを確保すること。 (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するため、労働査察官の人数を増やすこと等も通じて労働監察制度を改善するとともに、とくに、当該制度に対し、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限を付与すること。 (d) 不法な児童労働を利用した者に罰金および刑事的制裁が科されることを確保すること。 (e) 法執行官、検察官および裁判官を対象とする義務的研修を実施すること。 (f) 元子ども労働者の回復および教育機会へのアクセスを促進するためにあらゆる適当な措置をとること。 (g) 国際労働機関/児童労働撤廃国際計画に対し、引き続き技術的援助を求めること。 ストリートチルドレン 74.委員会は、路上で生活している子どもが多数(25万人近く)存在し、かつ、このような子どもがさまざまな形態の暴力および虐待(性的および経済的搾取を含む)の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることを、依然として深刻に懸念する。委員会はまた、子どもが路上で生活することの防止、このような子どもの人数の削減および保護の必要性に対処するための体系的かつ包括的戦略が引き続き存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、マニラのさまざまな地域で実施されている一部の救援活動(「窮乏者救済」、「路上生活者一掃」または「一斉摘発」とも呼ばれる)およびこれらの活動に対するフォローアップの欠如について懸念を覚える。 75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象の根本的原因に対処し、ならびにストリートチルドレンの人数を減らしかつ路上で生活している子どもを保護するための包括的戦略を策定するとともに、当該戦略にしたがい、問題の根本的原因に対処する地方レベルの具体的プログラムを策定すること。当該戦略およびプログラムは、とくに地方レベルで、子どもたち自身、市民社会および関連の専門家の協力を得ながら策定されるべきである。 (b) 家族、コミュニティおよびストリートチルドレン自身が国の支援を得ながら子どもの教育に注力できるよう、とくに教育を条件付現金給付(CCT)プログラムと関連させることによって、教育に対する子どもの権利を確保することを重視すること。 (c) ストリートチルドレンが法律に触れた子どもとして扱われないことを確保すること。 (d) ストリートチルドレンが十分な栄養、衣服およびシェルターならびに社会サービスおよび保健サービスならびに教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練など)を提供されることを、訓練を受けたストリートワーカーおよびストリートカウンセラー等も通じながら確保すること。 (e) ストリートチルドレンに対し、身体的および性的虐待に関わる回復および社会的再統合のための十分なサービスを提供するとともに、実現可能なときは家族との再統合を促進すること。 性的搾取および虐待 76.「子どもに目を向けた観光」(Child Wise Tourism)キャンペーンおよびパーソナル・セーフティ・レッスン(PSL)プロジェクトのような、子どもの性的搾取および虐待に対処するための締約国の努力には留意しながらも、委員会は、ストリートチルドレン、(たとえば授業料を稼ぐための)「学費売春」(prosti-tuition)を行なっている子ども、「コールガール/ボーイ」(もっぱら家族の緊急のニーズに対処するためまたは自分自身の生活維持のためにシーズン限定の売春を行なう子ども)および「興行」従事者として働く若い女性の海外フィリピン人労働者(OFW)を含む多くの集団が商業的性的搾取の被害を受けやすい状態に置かれているという情報に対し、懸念を表明する。 77.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 商業的性的搾取および児童ポルノの原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) 性的搾取の被害を受けたすべての子どもに平等な保護を提供する目的で、このような搾取(ポルノグラフィーのために子どもを使用することも含む)からの子どもの保護に関する国内法を見直すこと。 (c) 親が子どもの福祉および安全確保を促進できることを確保するため、1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の改正法を効果的に実施すること。 (d) 第1回・第2回・第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取の対象とされた子どもに対して、援助、回復および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 売買、取引および誘拐 78.締約国がとったさまざまな立法上、行政上および政策上の措置には留意しながらも、委員会は、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および労働目的の人身取引の対象とされ続けていることに懸念とともに留意する。委員会は、人身取引を行なった者の訴追件数および有罪判決数が少ないことをとりわけ懸念するとともに、固定化された貧困、一時的な海外移住、セックス・ツーリズムの増加、犯罪者の噴処罰および締約国における法執行の弱さのような、人身取引活動を助長する既存のリスク要因についても懸念するものである。委員会はさらに、子どもの人身取引が違法でありかつ秘密裏に行なわれることならびに効果的なデータ収集機構が存在しないために、人身取引の被害者数および目的を確認することが困難であることを懸念する。 79.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、人間、とくに女性および子どもの取引(性的搾取および労働を目的とするものも含む)を防止しかつこれと闘う努力を強化するよう勧告する。 (a) 人身取引の被害者数および目的を確認するためのデータを収集する目的で強力かつ体系的な監視機構を設置すること。 (b) 人身取引を防止するためのプログラムおよび広報キャンペーンを支援するとともに、法執行官、検察官および裁判官を対象として人身取引禁止法制に関する義務的研修を行なうこと。 (c) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点について観光省および観光サービス業者と引き続き連携すること。 (d) とくに被害者に対する医療面、心理面および法律面の支援の提供を増強することにより、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を実施すること。 (e) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の批准を検討すること。 少年司法の運営 80.委員会は、2006年に共和国法第9344号(少年司法福祉法、JJWA)が採択されたことにより、刑事責任に関する最低年齢が9歳から15歳に引き上げられるとともに、法律に触れた子どもに対する拷問および不当な取り扱いの行為が禁じられかつ犯罪化されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、JJWAの実施ペースが遅いこと、ならびに、とくに、拘禁されている子どもが多いこと、および、法律に触れた子どもが実質的に法的保障を有せずかつ医療ケアにもアクセスできないことを懸念するものである。委員会はまた、ダイバージョンの利用が限られていること、および、子どもの審判前拘禁が広く行なわれているとされることにも懸念を表明する。委員会はさらに、専門の裁判所および職員が存在しないことを遺憾に思うとともに、過密な施設に、成人とともに、劣悪な条件のもとで収容されていることが多い子どもの拘禁環境について深刻な懸念を表明するものである。加えて、委員会は、子どもの刑事責任年齢引き下げに関する最近の提案について懸念を覚える。 81.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう促す。委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任年齢が引き下げられないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) JJWAおよび大統領令第633号の規定にしたがい、微罪を行なった子どもを引き続き釈放すること。 (c) ダイバージョン、保護観察およびカウンセリングならびに地域奉仕活動のような、自由の剥奪に代わる措置の活用を拡大すること。 (d) 子どもの拘禁が最後の手段として、可能なかぎり短い期間でのみ行なわれることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) 拘禁が行なわれるときは、拘禁措置が法律を遵守して適用されることおよび条約に掲げられた子どもの権利が尊重されること、ならびに、未決拘禁の際も刑の言い渡しを受けた後も子どもが成人とは別に収容されることを確保するため、効果的な措置をとること。 (f) 子どもが拘禁中に不当な取り扱いを受けず、通信および面会を通じて家族との接触を保つ権利を有し、かつ、少年が関わる事件の審判が可能なかぎり迅速に行なわれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (g) 拘禁された子どもが、逮捕後直ちにおよび拘禁のあらゆる段階を通じて弁護人および医療ケアにアクセスできることを確保すること。 (h) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)にしたがい、先住民族の子どもの場合には必要に応じ無償で通訳が提供されること、および、子どもが文化的に配慮のある方法で法的援助を保障されることを確保するための措置をとること。 (i) 関連の国際基準に関する研修プログラムを引き続き実施するとともに、JJWAに関する理解、意識および知識を増進させるため、一般公衆およびとくに少年司法制度に関わる活動をしているすべての専門家(警察官を含む)を対象としてJJWAの規定を広く普及すること。 (j) UNODC、ユニセフ、OHCHRおよびNGOも参加する「少年司法に関する国連機関横断パネル」の技術的援助その他の協力を求めること。 犯罪の証人および被害者の保護 82.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、武力紛争、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。 マイノリティおよび先住民族に属する子ども 83.フィリピン中期開発計画(MTPDP)(2004~2010年)に先住民族の関心事を初めて盛りこんだことなど、先住民族の子どもの不安定な状況に対処するためにとられた措置は認知しながらも、委員会は、マイノリティおよび先住民族の間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、1997年先住民族権利法(IPRA)の適用が子どもに与えた実際の影響に関する情報が、締約国報告書においても代表団との対話の過程でも提供されなかったことも懸念するものである。 84.委員会は、一般的意見11号(2009年)を考慮し、締約国が、先住民族の子どもおよびマイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、IPRAを実施するための努力を強化するとともに、先住民族およびマイノリティの子どもに対して文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう、勧告するものである。委員会はまた、子どもの具体的権利が擁護されることを確保するため、IPRAおよびMTPDPの見直しの過程で一般的意見11号が指針とされるべきことも勧告する。委員会はさらに、マイノリティおよび先住民族の子どもの人権の享受に関して存在する格差および障壁を特定し、かつそのような格差および障壁に対応するための法律、政策およびプログラムを発展させる目的で、締約国が、これらの子どもに関するデータ収集機構を強化するよう勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、フィリピン社会の多文化的性質、および、さまざまな民族集団の伝統、言語および見方に対して敏感になるための教育の必要性に関する意識をコミュニティおよび学校において高めるよう勧告する。 8.国際人権文書の批准 85.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、とくに強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問禁止条約の選択議定書、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を内閣、議会および最高裁判所ならびに適用可能なときは地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 87.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第3回・第4回統合定期報告書、締約国が提出した文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 88.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年9月19日までに提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 89.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。/前編~後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/208.html
総括所見:オーストラリア(OPSC・2012年) 第1回(1997年)/第2回・第3回(2005年)/第4回(2012年)OPAC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/AUS/CO/1 and Corr.1(2012年9月24日/2012年10月12日) 原文:英語(平野裕二仮訳)※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2012年6月5日に開かれた第1709回会合(CRC/C/SR.1709参照)においてオーストラリアの第1回報告書(CRC/C/OPSC/AUS/1)を検討し、2012年6月15日に開かれた第1725回会合(CRC/C/SR.1725参照)において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/AUS/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成される締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第4回定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/AUS/CO/4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPAC/AUS/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことに、懸念とともに留意するものである。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で進められているいくつかの積極的取り組み、とくに以下の取り組みを歓迎する。 (a) 「人身取引と闘うための国家行動計画」。 (b) 「明日の子どもたち:子どもの商業的性的搾取に反対するオーストラリア国家行動計画」。 (c) 「人身取引と闘うためのオーストラリア治安維持戦略(2011~2013年)」。 5.委員会はさらに、締約国が、開発協力および政府間協力を通じ、アジア太平洋地域で選択議定書上の犯罪を根絶するために行なっている支援を歓迎する。 III.データ 6.委員会は、選択議定書が対象とする子どもの売買、児童買春または児童ポルノのあらゆる側面に関するデータを収集するための体系的機構が存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、選択議定書に関わる犯罪についての包括的データが連邦レベルで存在しないことに、懸念とともに留意するものである。 7.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての分野を網羅したデータの収集、分析、監視および影響評価のための、包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう、勧告する。データは、もっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとりわけ注意を払いながら、とくにジェンダー、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位によって細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集することが求められる。委員会はまた、締約国が、さまざまな州および準州を対象とした、データを収集する際の共通指標システムを確立することも勧告する。 IV.実施に関する一般的措置 立法 8.委員会は、国内法が、選択議定書上のすべての犯罪を全面的に編入しているわけではなく、かつこれらの犯罪の禁止および犯罪化について調和化されていないことを懸念する。 9.委員会は、締約国に対し、国内法を選択議定書と調和させるための努力を継続するよう促す。とくに委員会は、締約国が、選択議定書第1条、第2条および第3条に基づく自国の義務にしたがい、子どもの売買、児童買春および児童ポルノのあらゆる事案を定義しかつ禁止するよう、勧告するものである。 国家的行動計画 10.「子どもの商業的性的搾取に反対する国家行動計画」、「人身取引と闘うための国家行動計画」および「人身取引と闘うためのオーストラリア治安維持戦略」は歓迎しながらも、委員会は、このような国家的政策で、選択議定書を実施し、かつこれらの計画の成果を測定するための日程表、指標、鍵となる活動および具体的措置が定められていないことを懸念する。委員会はまた、これらの計画間の調整に関する情報がないことも遺憾に思うものである。 11.委員会は、締約国が、「人身取引と闘うための国家行動計画」および「子どもの商業的性的搾取に反対する国家行動計画」に、選択議定書で取り上げられているすべての問題をとくに対象とする別個の包括的行動計画が含まれることを確保するとともに、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、国家的行動計画を通じて選択議定書を実施するための日程表、指標、鍵となる活動および具体的措置を定めることも、勧告するものである。 調整および評価 12.委員会は、選択議定書の実施に関する調整機関が存在しないことに、懸念とともに留意する。ニューサウルウェールズ州およびビクトリア州では、警察署のみが実施機関に挙げられている。このことは、防止および保護のための努力(意識啓発活動、研修、カウンセリングおよび再統合のための努力を含む)の効果的な全般的調整に関する懸念を生じさせるものである。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施の調整を担当する調整機関または調整機構を国および州/準州の双方のレベルで設置するとともに、これらの機関または機構に対し、その任務を効果的に遂行するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。 普及および意識啓発 14.委員会は、公教育制度において、子どもの権利の問題に関する教員および生徒の意識を高めるために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国において選択議定書が体系的かつ包括的に普及されていないことにより、公衆、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の間における、選択議定書に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを、懸念するものである。 15.委員会は、選択議定書第9条2項にしたがい、締約国が、公衆、とくに子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家の間で選択議定書の規定を広く知らせるため、適切な媒体、教育キャンペーンおよび専門家研修キャンペーン等も通じてあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 研修 16.委員会は、法執行官を対象として行なわれている、人身取引被害者の発見および捜査実務に関するさまざまな研修プログラムに、積極的対応として留意する。にもかかわらず、委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの被害者のカウンセリングおよびリハビリテーションの分野で、適切なスタッフの養成および研修が行なわれてないことを懸念するものである。 17.委員会は、コミュニティおよびその他の関係者の関与を得た参加型のプロセスを通じて開発された、選択議定書で対象とされているすべての分野に関する学際的な研修プログラムに対し、締約国が、使途が指定された十分な資源を配分するよう勧告する。このような研修は、子どもとともにおよび子どものために働く、連邦および州/準州段階のすべての関連の専門家集団、省庁および機関を対象として行なわれるべきである。委員会はさらに、締約国に対し、研修プログラムの効果および関連性を高める目的で、選択議定書に関するすべての研修プログラムについて組織的評価が行なわれることを確保するよう、促す。 資源配分 18.委員会は、連邦、州および準州の段階で選択議定書を実施するための活動に割り当てられた、明確に特定可能な予算配分額についての情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思う。 19.委員会は、締約国が、選択議定書の実施のために特定可能な予算配分を行なうよう勧告する。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 20.国際人身取引と闘うための締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、選択議定書上の具体的犯罪に関わる防止措置が依然として不十分であることを遺憾に思う。とくに委員会は、子どもの商業的性的搾取を防止するための措置がとられておらず、かつ、アボリジナルの女子およびホームレスの子どものような脆弱な立場に置かれた集団を保護するための措置が不十分であることを、懸念するものである。さらに委員会は、貧困など、選択議定書上の犯罪の基底にある根本的原因に対する十分な対応が行なわれていないことを懸念する。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第9条1項で求められているとおり、選択議定書上の犯罪のいずれかの被害者にとくになりやすい子どもの保護に特段の注意を払うため、あらゆる可能な措置をとること。これとの関連で、委員会は、締約国が、とくにそのような脆弱な立場に置かれた集団を対象とする意識啓発プログラムを実施するよう、勧告する。 (b) 根本的原因、問題の規模ならびに保護措置および防止措置の存在を明らかにする目的で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの性質および規模に関する調査研究を実施するとともに、目的および対象の明確な措置をとること。 児童セックス・ツーリズム 22.委員会は、児童セックス・ツーリズムに対応するために締約国が行なっている取り組みを歓迎するものの、さらなる努力がなお必要であることに留意する。とくに委員会は、旅行〔・観光〕業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範に署名した締約国の企業がほとんどないことを懸念するものである。 23.委員会は、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムと闘うための努力を強化するよう促す。これとの関連で、委員会は、締約国が、児童セックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間でUNWTO〔国連世界観光機関〕の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、勧告するものである。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(2項および3項)ならびに第5~7条) 現行刑事法令 24.人身取引、性的搾取およびオンラインの性的虐待について連邦、州および準州の法的枠組みで定められている規定には積極的対応として留意しながらも、委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 締約国が、選択議定書第1条、第2条および第3条で定められたすべての犯罪を具体的に定義しかつ禁止していないこと。とくに委員会は、子どもの売買が、選択議定書で求められているように具体的犯罪として定義されかつ犯罪化されていないことを懸念する。 (b) 選択議定書上の犯罪に関する立法が州および準州の間で非常に異なっていること。とくに委員会は、締約国にいる16~18歳の子どもの一部が選択議定書上の犯罪から全面的に保護されているわけではないことを懸念する。委員会は、多くの州および準州において、児童買春および児童ポルノが16~18歳の子どもについて犯罪とされるのは被告人が信頼または権威を有する立場にある場合のみであることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、選択議定書上の関連の犯罪の一部について、その犯罪化が性的同意年齢(ほとんどの法域では16歳)と関連づけられていることも懸念する。 25.委員会は、締約国に対し、国内法の規定を見直し、かつこれが選択議定書の規定に全面的に一致することを確保するよう、促す。とくに、締約国は以下の措置をとるべきである。 (a) 選択議定書にしたがって、子どもの売買(とくに、選択議定書第3条1項(a)(i)bおよびc、1項(a)(ii)ならびに第5条にしたがい、不法な養子縁組、強制労働に子どもを従事させること、および、利得を目的とした子どもの臓器移植のための子どもの売買)を選択議定書にしたがって定義しかつ犯罪化すること。 (b) 18歳未満のすべての子どもが全面的に保護されるよう、選択議定書上のすべての犯罪を定義しかつ犯罪化すること。 26.児童ポルノおよび児童セックス・ツーリズムの加害者が訴追されかつ有罪判決を受けた事案には積極的側面として留意しながらも、委員会は、選択議定書上の他の犯罪、とくに子どもの売買および児童買春について捜査および訴追が行なわれていないことを懸念する。 27.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪が捜査されること、および、加害者とされた者が訴追されかつ適正な制裁を受けることを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪の加害者の捜査、訴追および処罰に関する具体的情報を次回の定期報告書で提供するよう、勧告するものである。 法人の責任 28.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連した作為または不作為についての法人(企業を含む)の責任を限定された形でしか問えないことに、懸念とともに留意する。とくに委員会は、企業については奴隷制に関わる意図的なまたは無謀な行為の責任しか問えないことを懸念するものである。 29.委員会は、選択議定書第3条4項にしたがい、選択議定書に関連した犯罪について法人の責任を問えることを確保するため、締約国が国内法を改正するよう勧告する。 裁判権および犯罪人引渡し 30.委員会は、オーストラリア市民が国外で児童セックス・ツーリズムに関与した事件において、締約国が域外裁判権を行使していることに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、域外裁判権が及ぶのは、オーストラリアの市民または永住者が16歳未満の子どもとの性的活動に関与し、その便宜を図りまたはそれから利益を得た犯罪のみであって、16~18歳の子どもについては、被告人が信頼または権威を有する立場にある場合にしか域外裁判権が適用されないことに、懸念とともに留意するものである。 31.委員会は、締約国が、選択議定書が対象とするすべての犯罪(被害を受けた子どもが16~18歳である場合のセックス・ツーリズムも含む)について裁判権を確保するため、国内法を改正するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約上、子どもは18歳未満のすべての者と定義されていることを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国が、1996年、2001年および2008年にそれぞれストックホルム、横浜およびリオデジャネイロで開催された、子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された成果文書を考慮するよう勧告する。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条3項および4項) 被害者の回復および再統合 32.委員会は、オーストラリア赤十字社が運営する「人身取引被害者支援プログラム」のようなプログラム、および、さまざまな州警察部隊内に設置された被害者支援部局に留意する。しかしながら委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の 被害者について、その回復および再統合のための措置を整備していないことを懸念するものである。とくに委員会は、締約国が、選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者となりやすいホームレスの子どもおよび路上の状況にある子どもについて、その再統合のための具体的措置をとっていないことを懸念する。 33.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害者に対して適切な援助(このような被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的、心理的および心理社会的回復を含む)を確保するための措置をさらに強化するよう、促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 締約国の領域全体で児童精神保健専門家へのアクセスおよび利用可能性を確保する等の手段により、被害を受けた子どもに対して医学的、心理社会的および心理的ケアを提供する専門のサービスを引き続き発展させること。 (b) 社会サービスの利用可能性を高めること。 (c) 選択議定書第9条4項にしたがい、被害を受けたすべての子どもが、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを確保すること。 (d) 〔正誤表により削除〕 (e) これらの勧告の実施について国連児童基金(ユニセフ)および国際移住機関(IOM)の技術的援助を求めること。 (f) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害をとくに受けやすいホームレスの子どもおよび路上の状況にある子どもについて、その再統合のための具体的措置をとること。 VIII.国際的な援助および協力 34.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 35.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を政府の構成員、議会、地域機関および適用可能な場合には他の地方政府に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 36.委員会はさらに、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.次回報告書 37. 第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2012年10月23日)。/正誤表(CRC/C/OPSC/AUS/CO/1/Corr.1 of 12 October 2012)にしたがい、パラ33(d)を削除およびパラ35を修正(11月5日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/99.html
総括所見:モンゴル(第2回・2005年) 第1回(1996年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.264(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月26日に開かれた第1040回および第1041回会合(CRC/C/SR.1040 and 1041参照)においてモンゴルの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.32)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書を歓迎するものの、その提出が遅かったことおよび当該報告書が報告ガイドラインに全面的にしたがっていないことを遺憾に思う。委員会はまた、有用な統計データその他の詳細な情報が記載され、かつ締約国における子どもの状況についていっそう明確な理解を与えてくれた、委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/MNG/2)に対する文書回答の提出も歓迎するものである。委員会はさらに、率直な対話の過程で追加的情報の提供のためハイレベルな代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のもののような、子どもの権利の保護および促進を目的とする法律が採択されたことに留意する。 (a) 子どもの特別な保護に関する行動のための法的枠組みを定めた子どもの権利保護法の採択(1996年)。 (b) とくに両親を失って法定後見人のいない子どもおよび障害のある子どものための社会手当の種別および適用範囲について定めた社会福祉法の採択(1998年)。 (c) とくに子どもに対する専門的医療ケアの提供について定めた保健法の採択(1998年)。 (d) とくに未成年者の雇用およびその労働条件について規制する労働法の採択(1999年)。 (e) とくに親の責任ならびに養子縁組、監護および養育費に関する規則について定めた家族法の採択(1999年)。 (f) モンゴル国家人権委員会法の採択(2000年)および同委員会の設置。 (g) 少年が行なった犯罪ならびに子ども、家族および社会に対して行なわれた犯罪について独立の条項を導入した刑事訴訟法改正(2002年)。 (h) ドメスティック・バイオレンスと闘いおよびこれを防止することならびに被害者(被害を受けた子どもを含む)の人権を保護することを目的とする、ドメスティック・バイオレンス禁止法の採択(2004年)。 4.モンゴルにおける子どもの権利および地位に関して、委員会は、数次のテーマ年(1997年の子ども年、1998年の若者年、2000年の子どもの発達年、2001年の障害市民支援年など)を宣言しかつ全国子どもサミット(2004年)を開催することにより、この問題の重要性を強調しようとする締約国の継続的努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、子どもの社会サービスのための予算配分を増加させるための締約国の努力にも、満足感とともに留意するものである。 5.委員会はまた、以下の条約が批准されたことも歓迎する。 (a) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ第33号条約(2000年4月)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(1999年)(2001年2月)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2002年1月)。 (d) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2002年3月)。 (e) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)(2002年12月)。 (f) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2003年6月)。 (g) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書(2004年10月)。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、1991年にモンゴルで始まった経済的移行が相対的に迅速であり、かつモンゴル社会に広範な影響をもたらしてきたことに留意する。経済的不安定、失業および貧困の増加は、家族、とくに子どもが多い家族および遠隔地に住んでいる家族に影響を及ぼしてきた。 委員会は、土地面積が広大であり、かつ人口密度がきわめて低いという、締約国の特有の性質に留意するものである。加えて、委員会は、1999年から2001年にかけての例外的に困難な気候条件(厳しい冬および雪害ならびに夏季の旱魃と冬季の著しい寒さおよび吹雪の組み合わせ)も多くの経済的および社会的困難を発生させてきたことを認知する。これらの要因は締約国の全般的発展に悪影響を及ぼし、とくに最遠隔地の数千人の子どもの生活に影響を与えてきた。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.32)の検討後に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.48)について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに農村部における男子の学校中退およびこれらの子どもが児童労働に関与することの防止(パラ23)、農村部の子どもによる基礎的サービス(保健、教育および社会的養護)へのアクセスの強化(パラ23)、障害児による基礎的サービスへのアクセスの国全体での強化(パラ23)、子どもの難民の権利の促進および保護(パラ26)、中央および地方のレベルにおける資源の賢明な配分(パラ27)ならびに法律に触れた子どもの権利(パラ29)に関するものについては、十分な対応が行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告に対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 9.委員会は、子どもの権利の保護を強化するためにとられたさまざまな立法措置を含む、締約国における包括的な法改正を歓迎する。国内法の分野で締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、実施措置の数が不十分であることによって法律と実践が乖離する傾向にあることを懸念するものである。加えて、委員会は、国内法に矛盾する規定が若干ある(たとえば、義務教育〔修了〕年齢が17歳であるのに対し、労働法は14歳および15歳の子どもが週30時間を上限として働くことを認めている)ことから、子どもが十分な保護を受けられないままになっていることを懸念する。 10.委員会は、締約国が、最近採択された法律を含む国内法の効果的実施のため、十分な財源および人的資源の提供を含むあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの保護に関して存在する可能性がある乖離を特定するため、国内法の見直しを行なうことも勧告するものである。 調整および国家的行動計画 11.委員会は、子どもの発達に関する国家行動計画(1990~2000年)の実施において獲得された積極的成果に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、締約国が採択した第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)、および、子どもに関する総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」のフォローアップに対する締約国のコミットメントも歓迎するものである。委員会は、2004年9月に採択された国家子ども局の新しい体制および戦略に留意するものの、部門横断型のおよび国以下のレベルにおける調整を促進するための包括的な戦略計画が存在せず、かつ、国家子ども局の新しいアプローチに関する、あらゆるレベルの機関を対象とした研修が限られていることを、懸念する。 12.委員会は、締約国が、第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)の全面的および効果的実施のために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供し、かつ、同計画の実施のために権利を基盤とする、開かれた、協議に基づく参加型のプロセスを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、条約の実施に関わるあらゆるレベルでの調整を目的とした包括的な戦略計画を策定し、国家子ども局の新しいアプローチに応じた十分な情報提供および研修を行ない、かつ、国家子ども局の調整活動について次回の報告書で委員会に情報を提供するよう、勧告するものである。 独立の監視 13.委員会は、国家人権委員会が2001年に設置されたこと、および、とくに、3名の委員のうち1名に子どもの権利に関する権限を委ねると決定されたことを歓迎する。委員会はまた、現在、別個の子どもオンブズパーソンの設置が検討されていることにも留意するものである。 14.独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、国家人権委員会が十分な人的資源、財源および技術的資源を提供されること、ならびに、条約の実施における国および地方のレベルでの進展を監視しおよび評価しならびに子どもからの苦情を受理し、調査しおよびこれに対応する便益を有することを確保するよう、促す。委員会は、締約国が、別個の子どもオンブズパーソンの設置の検討に関わって進められている議論を加速させるよう提案するものである。さらに、委員会は、締約国が、グッド・ガバナンスのための戦略を策定しかつ汚職と闘うために適当な措置をとるよう勧告する。 資源配分 15.委員会は、子どもの福祉のための予算策定および国内資源の動員に関する20/20イニシアティブを実施することにより、締約国が、子どもの社会サービス、保健および教育への資源配分を優先させていることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための予算配分額が、子どもの権利の促進および保護に関する国および地方のニーズに応えるにはいまなお不十分であることに、懸念を表明する。委員会は、子どもに提供されるサービスに関する農村部と都市部間の格差について、とりわけ懸念するものである。 16.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利の実現のために配分される予算の割合を増やすとともに、この流れにおいて、権利の享受に関する農村部と都市部間の差別を解消する目的で、農村部の小規模コミュニティおよび遠隔地の子どもにとくに注意を払いながら十分な人的資源の提供(国際協力を通じてのものも含む)を確保し、かつ子ども政策の実施が優先されることを保障すること。 (b) 国際金融機関および国連機関ならびに二国間ドナーと引き続き協力すること。 データ収集 17.委員会は、モンゴルの経済移行期により統計システムの相当な変更が必要となったことを認知する。委員会は、とくに第2次国家子ども行動計画(2002~2010年)のための基準データを提供する「子ども発達調査2000」のような、統計の編纂における締約国の努力に、評価の意とともに留意するものである。締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、データ収集が十分に発展しておらず、かつ条約が対象とするすべての分野に関して細分化されたものとなっていないことに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とりわけ脆弱な立場に置かれた子ども(障害のある子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、農村部に住んでいる子ども、移住者の子ども、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、ストリートチルドレン、法律に触れた子どもおよびマイノリティに属する子どもなど)をとくに重視しながら18歳に達するまでのすべての子どもを対象とし、かつ条約のすべての分野を網羅する目的で、国家的統計システムにおける体系的データ収集を引き続き発展させること。 (b) すべてのデータおよび指標が、条約を効果的に実施するための政策、プログラムおよびプロジェクトを立案し、監視しかつ評価する目的で活用されることを確保すること。 (c) これらの統計を公表し、かつ統計情報を公衆が広く利用できるようにするための革新的方法を追求すること。 (d) この点に関してとくに国連児童基金(ユニセフ)と引き続き連携すること。 条約の普及 19.とくにモンゴル子ども全国フォーラム(1998年および2001年)、子どもの問題に焦点を当てたテーマ年ならびに定期的な研修活動を通じ、条約の原則および規定に関する情報を普及するために行なわれた努力を歓迎しつつ、委員会は、これらの措置が望ましい程度の効果を発揮していないことに懸念を表明する。条約が社会のすべてのレベルで普及されているわけではなく、かつ、とくに農村部においておよびマイノリティの間で地域格差が存在する。 20.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が、国際機関および非政府組織と連携しながら実施されてきたことに留意する。しかしながら委員会は、これらの措置をさらに強化し、かつ継続的、包括的かつ体系的に実施する必要があるとの見解に立つものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに地方レベルでおよびマイノリティの間でならびにメディアを通じて条約を促進するための、より創造的かつ子どもにやさしい手法を発展させること。 (b) 条約、その原則および規定を学校カリキュラムに含めること。 (c) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、保健従事者、教員、学校および施設の管理者ならびにソーシャルワーカーおよびジャーナリストなど)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を実施するための努力を引き続き強化すること。 (d) とくにユニセフ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)および国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の技術的援助を引き続き求めること。 2.一般原則 差別の禁止 22.委員会は、モンゴル憲法(1992年)および子どもの権利保護法(1996年)の制定のような、子どもに対する差別の禁止の原則を促進するためにとられた措置を評価する。これらはいずれも、モンゴル法の適用においてすべての子どもが平等の地位にあることを保障するものである。しかしながら委員会は、障害のある子ども、貧困下で暮らしている子ども、法律に触れた子ども、ストリートチルドレン、農村部に住んでいる子どもおよび農村部から移住して公式に登録されることなく首都で生活している子どもが、とくに十分な社会サービスおよび保健サービスならびに教育上の便益のアクセスに関して、根強い事実上の差別に直面していることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法を効果的に実施することにより、第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、あらゆる事由による、および脆弱な立場に置かれたあらゆる集団の子どもに対する事実上の差別を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するとともに、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを対象とする社会サービス保健サービスならびに平等な教育機会を優先させるよう、勧告するものである。 24.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に意見を表明しかつ社会に参加する子どもの権利の促進および尊重のために締約国がとった行動に、大いなる評価の意とともに留意する。締約国がそのためにとった手段には、一連のミニ国連会議、ミニ議会およびミニ政府(1998年および1999年)、モンゴルの子ども全国フォーラム(1998年および2001年)ならびに全国子どもサミット(2004年)の開催、ならびに、モンゴルの10代の権利に対応しようとする試みが含まれる。しかしながら委員会は、締約国における伝統的態度により、家庭、学校およびコミュニティ一般で自由に意見を表明する子どもの権利が制約されている可能性があることを、依然として懸念するものである。 26.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が、すべての子ども、とくに女子の意見の尊重を促進するとともに、家庭、学校その他の施設における、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加の便宜を図るための努力を引き続き強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつ政策立案および裁判所の決定ならびにプログラムの実施および子どもたち自身にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうことも勧告するものである。 3.市民的権利および自由 出生登録 27.委員会は、出生後直ちに登録される子どもの権利の実施における欠陥についての懸念をあらためて表明する。委員会は、新生児の登録に際して課される手数料が、貧困家庭にとっては金銭的障壁となる場合があり、かつ出生登録を妨げないまでも遅らせる傾向があることに、特段の懸念とともに留意するものである。加えて、出生登録の遅延は追加の手数料の対象となる。 28.委員会は、締約国が、領域内の最遠隔地まで対象とするための移動出生登録班および意識啓発キャンペーンの導入等も通じ、締約国の領域を完全に網羅した、効率的な、かつあらゆる段階で無償の出生登録制度を実施するよう、勧告する。 体罰 29.委員会は、子どもの体罰がモンゴルで依然として社会的に受け入れられており、かつ、家庭において、かつ学校その他の施設のような体罰が公式には禁じられている場所においても、いまなお行なわれていることを懸念する。委員会はさらに、モンゴル法が家庭における体罰を明示的に禁じていないことにも、懸念とともに留意するものである。 30.委員会は、締約国に対し、家庭、学校その他の施設における子どもの体罰の慣行を防止しかつこれと闘うとともに、家庭における体罰を法律で明示的に禁止するよう、促す。委員会は、締約国が、体罰に関する公衆の態度を変革する目的で、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律に関する公衆教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを子どもの関与を得ながら導入するとともに、この点に関する非政府機関との協力を強化するよう、勧告するものである。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 31.委員会は、ひとり親が世帯主である家族の数が増えており、かつこのような家族が社会経済的困難に直面していること、および、一般的に父親は限られた限度でしか親責任を担っていない場合が多いことを懸念する。 32.委員会は、締約国が、ひとり親家族およびとくに困難な状況下で暮らしている家族に注意を払いながら、親および家族に対して可能なかぎり必要な金銭的その他の支援を提供するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。子どもの養育および発達については双方の親が責任を有するという原則に関して、委員会は、共同親責任の考え方を支えかつ促進する法律、政策および教育プログラムを発展させるよう締約国に対して促した、女性差別撤廃委員会が2001年に採択した勧告(A/56/38、パラ269-270)を支持するものである。 家庭環境を奪われた子ども 33.委員会は、自宅を逃げ出して児童養護センターに措置された子どもを含む、施設養護の対象とされる子どもの人数が増えていることを懸念する。家族法第25条9項を参照しつつ、委員会は、措置手続が条約の原則および規定に全面的に一致していないとの見解に立つものである。 34.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭環境から子どもを分離することを回避し、かつ施設で暮らす子どもの人数を減らすための防止措置を直ちにとること。 (b) 施設養護への子どもの措置について、権限のある学際的権威者グループによるアセスメントが常に行なわれること、ならびに、当該措置がもっとも短い期間で行なわれかつ司法審査に服すること、および、条約第25条にしたがって当該審査がさらなる再審査の対象とされることを確保すること。 (c) 条約で認められている権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払うことによって伝統的な里親養護制度を発展させ、かつ家族を基盤とするその他の形態の代替的養護を発展させるための努力を強化すること。 (d) 親を対象とする教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラム等も通じ、親および法定保護者が子どもの養育責任を遂行するにあたって適切な援助および支援サービスを提供すること。 養子縁組 35.委員会は、養子縁組に関する家族法の規定の制定(1999年)、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の批准(2000年)および「モンゴル国籍の子どもを養子縁組のために外国人市民に与えること」に関する規則の採択を含め、国内養子縁組および国際養子縁組の双方を規制するために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の古くからの伝統、および国際養子縁組の相対的少なさに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、里親養護および養子縁組の手続に関する締約国の国内法がまだ条約の原則および規定に全面的に一致していないことを、依然として懸念する。 36.委員会は、締約国が、里親養護および養子縁組の手続が条約の原則および規定に全面的に一致する形で、かつ資格および権限のある、効率的かつ学際的な人材および機関によって処理されることを確保するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 37.締約国が、子どもに対する虐待および暴力の甚大な規模および否定的影響を認識しており、かつ防止のための措置をとってきたことは認知しながらも、委員会は、この問題が根強く残っていることを依然として懸念する。委員会は、子どもを近親姦から保護するための法的枠組みが存在しないことをとりわけ懸念するものである。 38.家庭および学校における子どもへの暴力(CRC/C/111参照)ならびに子どもに対する国家の暴力(CRC/C/100参照)に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに2004年5月に採択されたドメスティック・バイオレンス禁止法を実施することにより、家庭における家族間暴力(身体的か精神的かは問わず、かつ女性に対する暴力を含む)に対応しおよびこれを予防し、ならびに子どもがこの種の暴力から全面的に保護されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 家族間暴力の現象および社会一般における暴力を防止しかつ減少させる目的で、子どもに対する暴力の問題の根本的原因および規模に関する研究を行なうこと。 (c) 近親姦から子どもを保護するための法的枠組みを確立すること、通報機構に対する子どもおよびおとなのアクセスを向上させること、3ケタの電話番号で24時間開設されているフリーダイヤルの電話ヘルプラインを全面的に支援すること、ならびに、事案の捜査および有責者の訴追の件数を増やすこと等も通じ、子どもの性的虐待を終わらせるための措置をとること。 (d) 被害者、とくに女性および女子の通報を妨げる公衆の態度および伝統を変革することを目的として、家族間暴力の問題に関する公衆の意識啓発を図るとともに、この分野で活動している非政府組織(全国暴力反対センターなど)との協力を強化すること。 (e) 子どもにやさしい司法手続を通じて家族間暴力および性的虐待の事案を捜査するとともに、プライバシーに対する子どもの権利の保障を正当に考慮しながら、加害者に対して制裁が科されることを確保すること。 (f) 子どもに対する性的虐待および暴力の被害を受けた子どもおよび加害者がカウンセリングならびに回復および再統合に関連するその他のサービスに十分にアクセスできるようにするため、児童精神科医、心理学者、ソーシャルワーカーその他の専門家の不足に対応すること。 保育サービス 39.委員会は、保育施設および就学前施設のようなサービスで利用可能な定員が不十分であるように思われ、かつこの点に関して顕著な地域格差があることを懸念する。 40.条約第18条3項に照らし、委員会は、締約国が、地域間の平等に特段の注意を払いながら、保育施設および就学前施設の定員を増加させるために即時的措置をとるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 41.委員会は、障害のある子どもの状況について重大な懸念を表明するとともに、これらの子どもに対する差別を遺憾に思う。障害のある子どものためのサービスの大多数が都市部に存在することには留意しながらも、委員会は、国の農村部に住んでいる障害児およびこれらの子どもが直面している困難な社会経済的境遇について、とくに懸念を覚えるものである。障害のある人の権利について定めた法律および1999年に採択された障害市民状況改善国家計画には留意しながらも、委員会は、障害のある子どもを支援する効果的な政策、基礎k的サービスおよび調整が存在しないことを懸念する。委員会は、障害のある子どもが物理的環境にアクセスできるようにするための法的枠組みが存在しないことに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、社会サービスおよび保健サービスにも教育サービスにも十分にアクセスできていない障害児が多いことにも、懸念とともに留意する。さらに、委員会は、障害のある子どもに関する十分な統計データが存在しないこと、および、障害のある子どもへの偏見が存在することに懸念を表明するものである。 42.委員会は、締約国に対し、障害者の機会均等化に関する基準規則および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らして以下の措置をとるよう促す。 (a) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を主導しかつ計画するとともに、当該計画を実施するために必要な財源および人的資源を配分すること。 (b) 国の農村部に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関する十分なかつ細分化された統計データを収集するとともに、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際に当該データを活用すること。 (c) 障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止し、ならびに生活のあらゆる分野に障害のある子どもが完全に参加するための平等な機会を確保すること。 (d) 障害のある子どもを可能なかぎり主流の学校制度に包摂するためにあらゆる必要な措置とり、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (e) 障害のある子どもが物理的環境、情報および通信にアクセスできるようにするための措置をとること。 (f) 公衆の否定的態度を変革する目的で、障害のある子ども(その権利、特別なニーズおよび潜在的可能性も含む)に関する、モンゴル社会に深く根づいた障害児に対する偏見を理由とする〔不十分な〕意識を高めること。 健康および保健サービス 43.プライマリーヘルスケアを向上させるための締約国の努力、とくに全国予防接種計画(1993~2000年)の実施が成功した結果としての感染症(はしか、髄膜炎および下痢など)の予防には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、保健サービスへのアクセスの面で地域格差があること、妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率がともに高く、かつこの点に関して地域的差異があること、ならびに、子どもの間で栄養不良が蔓延している状況があることを懸念する。委員会は、完全母乳育児率が下降していること、および、締約国がまだ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択していないことに、懸念とともに留意するものである。医薬品の使用および作用に関する知識が貧弱であり、かつ負担可能な小児薬へのアクセスが限られていることは、若干の深刻な懸念の理由となる。委員会は、同国において衛生状態が劣悪であること、環境汚染の問題が生じていること、および清潔かつ安全な飲料水へのアクセスが限られていることに、懸念を表明するものである。さらに、委員会は、同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが、保健サービスおよび社会サービスにきわめて限られた形でしかアクセスできていないことを、懸念する。 44.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう強く勧告する。 (a) 同国のすべての地域の子ども(同国の最遠隔地に住んでいる子どもも含む)が良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保するため、保健部門に対して財源および人的資源を優先的に配分すること。 (b) 同国の遠隔地に住んでいる母子に特段の注意を払いながら、産前ケアを改善し、かつ妊産婦死亡率および5歳未満児死亡率を相当に削減するための努力を継続すること。 (c) 「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採択するとともに、生後6か月間は母乳のみを与え、その後適切な乳児食を加える育児を奨励すること。 (d) 農村部の子どもに特段の注意を払いながら、たとえば学校栄養プログラムを通じて子どもの栄養状態を向上させること。 (e) 子どものさまざまな健康状態の予防および治療に用いられる安全かつ負担可能な薬への平等なアクセスを確保するとともに、医薬品の使用および作用に関する意識を高めること。 (f) 同国のすべての地域で安全かつ清潔な飲料水および衛生設備へのアクセスを確保し、かつ環境汚染の影響から子どもを保護すること。 (g) 同国の農村部から移住してきて公式に登録されないまま首都で生活している子どもが保健サービスおよび社会サービスに平等にアクセスできることを促進するため、これらの子どもの健康状況に注意を払うこと。 思春期の健康 45.委員会は、「生徒と青少年の健康に関する国家リプロダクティブ計画」および「健康推進学校」キャンペーンを実施することにより、学校で思春期の健康および健康教育を促進するために締約国が行なった努力に留意する。しかしながら委員会は、定期的身体検査が行なわれていないことおよび学校の児童生徒の健康に関する統計データが存在しないことを含め、学校保健サービスの数が限られていることを懸念するものである。加えて、委員会は、喫煙、アルコール消費および薬物濫用のような、生活様式の要因に関連した非感染性疾患に関わる思春期の健康に対し、十分な注意が向けられていないことを懸念する。 46.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康に細心の注意を払うとともに、学校におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育等も通じて思春期の健康を促進し、かつ学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアも含む)を導入する努力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国が、学校に通っていない青少年に対して健康に関する同一の教育、情報およびサービスが提供されることを確保するよう、勧告するものである。青少年の喫煙、アルコール消費および薬物濫用を減らすため、委員会は、締約国が、とくに青少年のために考案された、健康的行動に関する選択についてのキャンペーンを開始するよう勧告する。 HIV/AIDS 47.委員会は、同国のHIV感染率が相対的に低いことに留意するとともに、とくにHIV/AIDS対応国家戦略、公衆衛生国家政策、国家リプロダクティブヘルス計画、HIV/AIDS予防法および国家感染症計画を実施することにより、HIV/AIDSおよび性感染症(STI)を予防するために締約国が行なった努力を心強く思う。締約国がとった前向きな措置にも関わらず、委員会は、若いセックスワーカーが増えていることのような、これらの若者をHIVに感染しやすくするリスク要因が存在することに、懸念を表明するものである。 48.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、委員会は、締約国が、HIV/AIDSの流行を予防するための努力を強化し、かつ、青少年、とくに脆弱な立場に置かれた集団に属する青少年の間で引き続きHIV/AIDSに関する意識啓発を図るよう、勧告する。 生活水準 49.委員会は、締約国の貧困率が根強く高いままであることを深く懸念する。委員会は、農村部からの移住の増加の結果、貧困がいっそう都市化されつつあり、かつ、このような変化によって、路上で生活する子どものような一連の新たな社会問題が生み出されていることに留意するものである。とくに、最低限の所得しか得ていない家庭で暮らしている子どもと対象とした「希望のお金」手当制度の採択(2004年)、ならびに、貧困削減のための計画、プログラムおよびプロジェクトを実施するための締約国の努力には留意しながらも、委員会は、十分な生活水準(十分な住居その他の基礎的サービスを含む)に対する権利を享受していない子どもが同国の都市部においても農村部においても多いことについての懸念を、あらためて表明する。 50.条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、支援および物的援助を必要としている経済的に不利な立場におかれた家族に特段の注意を払いながら、貧困削減のための国家的計画およびプログラムを引き続き優先的課題として実施するとともに、十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障するよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 51.1995年に採択された改正教育法を実施することにより、教育水準を向上させ、かつ教育へのアクセスを保障しようとする締約国の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、とくに同国の農村部の子どもが教育へのアクセスおよび通学への面で依然として困難に遭遇していることを懸念する。とくに農村部において、初等学校相当年齢の未就学児が多いこと(就学面のジェンダー格差および地域格差も含む)、非識字率が上昇していることおよび学校中退率が高いことは、深刻な懸念の理由となるものである。 52.委員会は、牧民家族に属する子どもおよび農村部に住んでいる男子の間で、学校を中退し、かつ児童労働に従事するようになるおそれがより高いことについての懸念をあらためて表明する。委員会は、学校で徴収される追加費用が多くの子どもにとって金銭的障壁となっており、かつ教育への平等なアクセスの否定につながっていることに、特段の懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、子どもが学校で暴力を受ける事件が報告されていること、および学校の便益に欠陥があること(教室の定員数が不十分であることおよび教科書の質が低いことを含む)を懸念する。委員会は、学校寮を建設しかつ改修しようとする締約国の努力には留意するものの、その環境が劣悪であることおよび子どもの受け入れ能力が限られていることを懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、以下の目的で十分な財源および人的資源を配分するための措置を直ちにとるよう勧告する。 (a) 同国全域のすべての子どもが、ジェンダーによるいかなる区別もいかなる金銭的障壁もなく良質な教育に平等にアクセスできることを漸進的に確保するとともに、子どもが教育に容易にアクセスできるようにする目的で、子どもの居住地にある学校の地位を回復させることも検討すること。 (b) 初等中等教育における就学率をいかなる地域格差もなく高めることを目的とした措置を強化し、かつ、すべての子どもが教育を修了する平等な機会を有することを確保すること。 (c) とくに農村部の子どもの学校中退率を低下させるための効果的措置を採択しかつ実施する努力を強化すること。 (d) 非識字率の上昇に対応するための追加的措置をとること。 (e) 中等学校段階における、かつ一度も学校に通ったことのないまたは修了前に中退した青少年を対象とした、職業訓練のための便益を拡大すること。 (f) 教員に対して適切な研修を行なうことにより、教授法の質を高めること。 (g) 学校を新設し、かつ、学校における暖房設備および電気設備、教科書の質および学校寮の環境を改善すること等の手段により、学校の便益を向上させること。 (h) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮に入れながら、人権一般およびとくに子どもの権利を引き続き学校カリキュラムに盛りこむとともに、安全かつ非暴力的な学校環境を促進すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 54.委員会は、都市に住んでいる子どものためのレクリエーション活動および文化的活動ならびに関連の便益の数が不十分であること、ならびに、子どものために建設された遊び場の多くがこの10年間で解体されたことに、懸念とともに留意する。 55.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、遊びに従事する子どもの権利に注意を払うとともに、都市に住む子供のために安全な遊び場を設計しかつ建設すること等により、この権利の実施のために十分な人的資源および財源を配分することによって、休息、余暇、文化的活動およびレクリエーション活動に対する子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を強化するよう、勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民 56.委員会は、ノン・ルフールマンの原則を尊重し、かつ持続可能な解決策の追求を援助することにより、子どもの難民、とくに朝鮮民主主義人民共和国から来た子どもの難民を保護するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、モンゴルで難民としての地位を求める子どもが、条約上の権利の享受に関して適切な保護および援助を必ずしも受けていないことを、懸念するものである。 57.条約第22条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)および同議定書(1967年)に加入し、庇護に関する特別法(これにはとくに子どもの庇護希望者、とりわけ保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの保護および処遇に関する規定が含まれるべきである)を策定し、かつ、無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約に加入するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.48、パラ26参照)をあらためて繰り返す。 経済的搾取 58.委員会は、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)を2002年に、かつ最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約(1999年)を2001年に批准したこと、就労の最低年齢を16歳と定めた労働法の規定を採択したこと(1999年)、未成年者の雇用が禁じられる職場の一覧を採択したこと(1999年)、ならびに、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)との了解覚書に調印したこと(1999年)およびIPECの活動に参加していることのような、児童労働の搾取から保護される子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意する。 59.締約国がとった積極的措置にも関わらず、委員会は、モンゴルにおいて働く子どもの割合が高いこと、および、児童労働の搾取からさまざまな悪影響(学校中退、および有害かつ危険な労働による健康への悪影響を含む)が生じていることを懸念する。子どもの家事労働者および農村労働者、ならびに、金鉱および炭鉱において非常に有害な条件下で働いている子どもの人数が多いことは、深刻な懸念の理由となるものである。 60.さらに、委員会は、伝統的スポーツから、子どもの虐待および搾取につながる特徴を備えた妙味のあるビジネスへと相当に変貌した伝統的競馬において、有害な状況下における子どもの参加および搾取がますます行なわれるようになっていることを懸念する。とくに、委員会は、ときには8歳という幼さの子どもが参加させられており、かつこのような参加が重傷のみならず死亡にさえつながりうることを懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、以下の目的のために即時的かつ効果的な措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの権利条約第32条ならびに締約国が批准したILO第138号条約(1973年)および第182号条約(1999年)を実施し、かつILO第146号勧告および第190号勧告を考慮することにより、有害なまたは危険な労働で子どもを雇用することの禁止および児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の効果的防止を含む児童労働関連の規定の全面的実施を確保すること。 (b) 訓練を受けた労働査察官を増員することにより、同国における児童労働の監視を向上させること。 (c) 働く子どもが良質な教育(職業教育および非公式教育を含む)にアクセスでき、かつ、教育ならびに休息、余暇およびレクリエーション活動に対する権利を享受するための十分な休暇および休憩時間を与えられることを確保すること。 (d) 児童労働(児童家事労働および児童農村労働を含む)の搾取から生じるさまざまな種類の悪影響に関する、とくに子ども、親その他の養育者を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうことにより、児童労働に関する公衆の態度に影響を及ぼすこと。 (e) 競馬産業における子どもの搾取の性質および規模を評価するための包括的研究を実施し、かつ、労働法に定められた最低年齢にしたがい、これらのレースで16歳未満の子どもを騎手として雇用することを明示的に禁止することによって、伝統的競馬における子ども騎手の問題に対応すること。 (f) ILO/IPECの援助を引き続き求めること。 ストリートチルドレン 62.委員会は、締約国報告書でストリートチルドレンの状況に関する十分な情報が提供されなかったことを遺憾に思う。路上で生活している子どものためのセンターが開設されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、非常に厳しい条件下で生活するストリートチルドレンの人数が増えていること、および、この現象をもたらす原因がしばしば虐待的な家庭状況であることを懸念するものである。1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」によれば、家出をした子どもは最長1週間収容される可能性がある。委員会は、締約国の国内法がこの点に関して条約の原則および規定に全面的に一致しないままであることを懸念するものである。さらに、委員会は、ストリートチルドレンに対する公衆の否定的態度および偏見がその困難な状況を悪化させていることに、懸念とともに留意する。 63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ストリートチルドレンの状況に対応するため、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に特段の注意を払いながら包括的な国家的戦略を採択するとともに、これらの子どもに十分な援助(身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復および再統合のためのサービス、ならびにこれらの子どもの全面的発達を支えるための職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供すること。 (b) 1994年7月に採択された「監督者のいない子どもの一時的収用に関する法律」の実施に関して、家出した子どもの収容は行なわないことを方針とするとともに、条約の規定と全面的に両立する、収容に代わる選択肢を追求すること。 (c) この現象を防止する目的で、この現象の根本的原因および規模ならびにストリートチルドレンの個人的特徴を明らかにするための行動志向型研究を行なうとともに、ストリートチルドレンに対し、そのニーズに適合したサービスを提供し、かつ家族と再統合する機会も提供すること。 (d) 路上で生活している子どもに関する公衆の否定的態度を変革するため、これらの子どもについての意識啓発を図ること。 (e) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織および子どもたち自身と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 性的搾取および人身取引 64.委員会は、売春に従事する子どもの人数が増えていることを深く懸念する。モンゴルにおいて子どもの人身取引が比較的新しい人権問題であることには留意しながらも、委員会は、子どもの性的搾取および人身取引を増加させる可能性があるいくつかのリスク要因(根強い貧困、高い失業率、家出につながる困難な家庭事情および観光業の成長を含む)について懸念を覚えるものである。 65.性的その他の搾取を目的とする子どもの人身売買を防止しかつこれと闘うため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的搾取および人身取引(子どもをこのような搾取のおそれにさらす根本的原因および要因を含む)を防止しかつこれと闘うための包括的な国家的政策を策定しかつ採択すること。 (b) 人身取引事件を発見しおよび捜査し、人身取引の問題に関する理解を向上させ、ならびに加害者が訴追されることを確保するための努力および法律を強化すること。 (c) それぞれ1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して、援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 (d) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に署名し、かつこれを批准すること。 少年司法の運営 66.委員会は、法律に触れた子どもの権利の保障を向上させるために締約国が行なった努力に留意する。これには、「子どもの犯罪および子どもに対する犯罪の防止に関する国家計画」を1999年に採択したこと(刑事警察局子ども課の再編により子ども犯罪防止部を設置したことを含む)、および、18歳未満の者に特別な法的手続を保障する刑法の規定を2002年に採択したことが含まれる。しかしながら委員会は、18歳未満の者を長期間の未決勾留の対象とし、かつ初犯の少年による軽罪に対して収監刑を科すことが実務として確立されていることを、深く懸念するものである。委員会はまた、法律に触れた18歳未満の者に対し、適切な法律扶助および法的援助へのアクセスが提供されていないことも懸念する。18歳未満の者の拘禁および収監の環境を改善するためにとられた若干の積極的措置にも関わらず、委員会は、これらの施設における子どもの生活環境が依然として劣悪であることに、懸念とともに留意する。 67.委員会は、18歳未満の男子がウランバートルに設けられた別個の少年刑務所で刑に服しているのに対し、女子はいまなお成人女性と同じ刑務所で刑に服していることに留意する。委員会は、刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者を対象とする社会的再統合のためのサービスが少数であることを懸念するものである。少年司法の運営に関する国内法について、委員会は、保護観察により釈放された18歳未満の者が困難に直面していることに懸念を表明する。さらに、委員会は、裁判所が依然として、子どもに配慮し、かつ条約の規定に敏感となる訓練を十分に受けているとは言えない状態にあることを懸念するものである。 68.少年司法に関する一般的討議の際に委員会が採択した勧告(CRC/C/46、パラ203-238)に照らし、委員会は、締約国が、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準の全面的実施を確保するよう、勧告する。これとの関連で、締約国はとくに以下の措置をとるべきである。 (a) 少年司法の運営に関する包括的な国家的プログラム(同国のすべてのアイマグ(県)を網羅する、適切な訓練を受けた専門職員を擁した少年裁判所の設置を含む)を策定しかつ実施すること。 (b) 18歳未満の者の自由剥奪の期間を法律で制限すること。 (c) 18歳未満の者の未決勾留が真に最後の手段としてもっとも短い期間で用いられるよう、その期間を法律で制限するとともに、その決定が可能なかぎり早期に裁判官によって行なわれ、その結果審査されることを確保すること。 (d) 保護観察、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、18歳未満の者の自由の剥奪に代わる措置の使用を奨励すること。 (e) 自由の剥奪が避けられず、最後の手段として用いられる場合について、逮捕の手続および拘禁の環境を改善すること。 (f) 18歳未満の者が適切な法律扶助および弁護人ならびに独立の、子どもに配慮した効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (g) 少年司法の運営を担当する者に対して関連の国際基準に関する研修を行なうとともに、法律に触れた子どもを援助するため刑務所にソーシャルワーカーの職を設けることを検討すること。 (h) 刑を言い渡されたおよび釈放された18歳未満の者の全面的発達を支えるため、両者に対して教育の機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)ならびに回復および社会的再統合のためのサービスが提供されることを確保すること。 (i) とくにOHCHR、国連薬物犯罪事務所およびユニセフの技術的協力および援助を求めること。 マイノリティに属する子ども 69.委員会は、報告書に情報が存在しなかったことにより、カザフ人およびツァータン人のようなマイノリティに属する子どもに関する、条約第30条で保障されている権利についての締約国の義務の遵守状況を審査することがほとんどできなかったことを遺憾に思う。委員会は、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して、このような子どもの人権の享受が制約されていることを懸念するものである。 70.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、マイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。委員会は、国民的または民族的、宗教的および言語的マイノリティに属する子どもについての条約第30条の実施に関して、締約国が次回の定期報告書で具体的かつ詳細な情報を提供するよう、要請するものである。 8.子どもの権利条約の選択議定書 71.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が2003年7月に、かつ武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書が2004年10月に批准されたことを歓迎する。 72.委員会は、選択議定書の実施についての審査を可能にするためには、定期的かつ時宜を得た報告の実践が重要であることを強調する。委員会は、締約国が、選択議定書および条約の報告条項に基づく報告義務を全面的に履行するよう勧告するものである。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 73.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは県の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 74.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 75.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月1日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月14日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。