約 24,225 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/123.html
総括所見:スウェーデン(第4回・2009年) 第1回(1993年)/第2回(1999年)/第3回(2005年)/第5回(2015年)OPAC(2007年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/SWE/CO/4(2009年6月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2009年5月27日に開かれた第1403回および第1404回会合(CRC/C/SR.1403 and 1404参照)においてスウェーデンの第4回定期報告書(CRC/C/SWE/4)を検討し、2009年6月12日に開かれた第1425回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.248)のフォローアップに関する情報を記載した、締約国の第4回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/SWE/Q/4/ and Add.1)に対する締約国の文書回答により、スウェーデンにおける子どもの状況についての理解を向上させることができたことも歓迎するものである。 3.委員会は、さまざまな省庁の専門家を擁する、締約国のハイレベルな代表団との率直かつ開かれた対話に、評価の意とともに留意する。 4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して2007年6月8日に採択された総括所見(CRC/C/SWE/OPAC/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 5.委員会は、報告対象期間中に見られた、以下のものを含む多くの進展を歓迎する。 (a) 差別事由のひとつに年齢を含み、かつ教育制度のあらゆる部分における差別を禁止した反差別法(2009年1月1日施行)、およびその実施を担当する平等オンブズマン事務所の設置。 (b) 子どもの保護を強化するため、2008年4月に社会サービス法(2001 453)および青少年ケア(特別規定)法(1990 52)に導入された新たな規定。 (c) 犯罪の結果死亡した子どもについての調査に関する法律(2007 606、2008年1月1日施行)。 (d) 国家犯罪防止委員会(BRA)による、スウェーデン刑法第6章への新たな性犯罪規定の導入(2007年)。 (e) 保護者のいない未成年者の受け入れおよび居住に関する責任がスウェーデン移民庁から市町村へと移管されることにつながった、2006年7月1日に導入された法改正。 (f) 子どもの権利の促進および保護に関する具体的プログラムを含んだ第2次国家人権行動計画(2006~2009年)の採択および実施、ならびに、スウェーデンにおける人権の全面的尊重を確保する活動の支援を目的としたスウェーデン人権代表団の任命(2006年3月)。 6.委員会はまた、2005年に第3回報告書が検討されて以降、締約国がとくに以下の文書を批准しまたはこれに加入したことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2008年)。 (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2005年)。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.1)の検討後に表明された懸念および勧告(CRC/C/15/Add.248参照)の多くが立法上、行政上その他の措置を通じて対応されてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、その他の懸念および勧告(独立の監視、データ収集、研修および条約の普及、家庭環境を奪われた子ども、健康および保健サービス、教育ならびに性的搾取および人身取引のような問題に関するものを含む)が十分に対応されまたは実施されていないことを遺憾に思うものである。 8.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 9.委員会は、条約が国内法体系に正式に編入されていない理由について、報告書および事前質問事項に対する文書回答で締約国が行なっている説明に留意する。しかしながら委員会は、条約が引き続きスウェーデン法として正式に承認されていないことにより、条約に掲げられた諸権利および当該権利の適用に影響が生じうることを懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、国内法が条約と全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう慫慂するとともに、締約国が、条約をスウェーデン法として正式に承認することに向けた努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、国内法の規定が条約に掲げられた法律〔ママ〕と抵触するときは常に条約が優先するべきことを勧告するものである。 調整 11.委員会は、政府内に監視部局である子どもの権利政策調整局が設けられていること、政府と子どもとともにおよびこどものために活動しているNGOとの構造的対話の場として「子どもの権利フォーラム」が設置されたこと(2005年6月)、および、組織的比較が適用されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どものための取り組みの調整および一貫性が中央においても地方レベルでも不十分であることを懸念するものである。さらに、市町村および県が高度の自治権を享受していることには留意しながらも、委員会は、条約の実施に関して市町村、県および広域行政圏の間で大きな格差が残っていること(子どもの貧困の水準、危険な状況にある子どものための社会サービスに対して利用可能とされている資源ならびに学校間および広域行政圏間の学業成績の違いとの関連を含む)を懸念する。 12.委員会は、中央および地方の公的機関の間の十分な協力ならびに子ども、親および非政府組織との協力を確保するため、締約国が、子どものための取り組みの一貫性および調整を向上させるための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はまた、依然として残る格差に対応し、かつあらゆるレベルでの条約の実施(レーンを通じてのものも含む)を確保するため、締約国が、市町村および広域行政圏のレベルで行なわれる決定を監視しかつフォローアップするための措置を強化することも、勧告するものである。 国家的行動計画 13.子どもの権利に関わる多くの措置が掲げられた第2次国家人権行動計画(2006~2009年)の採択は歓迎しながらも、委員会は、子どもに関する具体的な国家的行動計画が存在しないことに、遺憾の意とともに留意する。 14.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な国家的行動計画を採択するとともに、当該計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ2002年総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」および中間レビュー(2007年)が正当に考慮されることを確保するよう、勧告する。 独立の監視 15.委員会は、子どもの権利の実施のために子どもオンブズマンが行なっている多くの活動に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもがオンブズマンに対して個別の苦情を申し立てられないことを懸念するとともに、パリ原則にしたがい、オンブズマンの役割を政府から明確に独立したものとする必要があることも懸念するものである。 16.委員会は以下の措置を勧告する。 (a) 締約国が、子どもオンブズマンに対し、個別の苦情申立てを調査する権限を与えることを検討すること。 (b) 子どもオンブズマンの年次報告書を、子どもオンブズマンの勧告を実施するために政府がとりうる措置についての提案とともに、リクスダーゲン(議会)に提出すること。 (c) 子どもオンブズマンがその権限を効果的にかつ独立して行使するための十分な人的資源および財源を有することを確保するために必要な措置を、締約国が引き続きとること。 (d) とくに県および広域行政圏間の資源格差を考慮に入れながら、すべての子どもが子どもオンブズマンにアクセスできることを確保する目的で地方事務所を設置するために必要な支援を、締約国が子どもオンブズマンに対して提供すること。 資源配分 17.条約の実施に充てられている資源の配分について利用可能とされた情報は歓迎しながらも、委員会は、子どものためのサービスへのアクセスおよびその利用可能性について、子どもが住んでいる場所により、当該サービスの内容についても執行についても格差が存在することに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が条約第4条に基づく義務をどの程度履行しているかに関する適正な評価を可能にする目的で、締約国が、条約の実施に関わる国家予算の金額および割合についての具体的情報の提供を継続しかつ強化するよう、勧告する。締約国はまた、すべての子どもが、どこに住んでいるかに関わらず、サービスに平等にアクセスできかつサービスを平等に利用できることを確保するための措置も強化するべきである。これとの関連で、委員会は、締約国が、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議を受けて委員会が行なった勧告を考慮するよう、勧告する。 データ収集 19.委員会は、保健福祉庁の統計報告書およびスウェーデン統計庁(SCB)の活動を含め、さまざまな措置がとられていることに留意する。委員会はまた、子どもの権利政策における取り組みの状況を測定しかつ監視するための指標開発を委ねられた作業部会が、条約に基づく一連の目標を活用したフォローアップ制度を提案していることにも、留意するものである。しかしながら委員会は、障害のある子どもの総数および虐待の被害を受けた15~18歳の子どもに関するデータが存在せず、かつ性的搾取の被害を受けた子どもの総数が精確でないことに対し、あらためて懸念を表明する。 20.委員会は、締約国が、子どもに関するデータを収集するあらゆる機関間で調整のとれたアプローチを確立し、かつ、あらゆる子どもの状況、とくに障害のある子ども、虐待の被害を受けた15~18歳の子どもおよび性的搾取の被害を受けた子どもに関する細分化されたデータの体系的収集を向上させるための努力を強化するよう、勧告する。 条約の普及および研修 21.政府の資金による「条約実施ハンドブック」スウェーデン語版の発刊(2008年1月)およびエーレブルー大学におけるスウェーデン子どもの権利アカデミーの設置(2007年3月)は歓迎しながらも、委員会は、条約およびその2つの選択議定書に関する子どもの意識が依然として低いままであり、かつ子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、すべての子どもが条約およびその2つの選択議定書について知り、かつ自己の権利の擁護のためにこれらの文書を活用できることを確保するための措置を強化するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子どもたち自身)を対象とする、子どもの権利も含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを確保するよう、勧告するものである。 国際協力 23.委員会は、子どもの権利の促進および保護に関するものも含む政府開発援助および国際協力への継続的コミットメントについて、締約国を称賛する。これとの関連で、委員会は、締約国が国内総生産の0.7%以上を政府開発援助に配分していること(ODA目標)に、評価の意とともに留意するものである。 24.委員会は、締約国に対し、子ども影響評価を実施すること、および、他の締約国との二国間協力において条約および選択議定書ならびに当該国に関する委員会の総括所見および勧告に特段の注意を払うこと等の手段により、国際協力の分野における活動を継続しかつ強化するよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議後に発表された勧告を考慮するよう、慫慂するものである。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 25.委員会は、新たな反差別法を含む立法上の保障が採択されたにも関わらず、差別の禁止の原則が実際には全面的に尊重されていない旨の前回の懸念をあらためて表明するとともに、民族的マイノリティの子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに移住者の家族に属する子どもに対する事実上の差別ならびに排外主義的および人種主義的態度について、とくに懸念を覚える。 26.委員会は、締約国が、条約第2条の全面的遵守を監視しかつ確保するとともに、差別の禁止の原則を保障した現行法が自国の管轄内にあるすべての子どもとの関連で実施されることを確保するよう、勧告する。 子どもの最善の利益 27.委員会は、外国人法(スウェーデン法典-SFS 2005 716)、および監護権、居所およびアクセスに関連する子どもおよび親法の規定の改正を含む、子どもの最善の利益の原則を編入する新たな立法措置に留意する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益の原則が、行政領域等において実際には十分に実施されていないことを懸念するものである。委員会はまた、庇護希望者および移民である子どもの最善の利益が庇護手続において十分に考慮されていないことも、依然として懸念する。 28.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の原則の意味および実務的適用に関する意識を高め、かつ条約第3条が立法および行政措置に適正に反映されることを確保するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はまた、とくに移民庁および社会福祉機関の職員に対して定期的研修を行なう等の手段により、とくに子どもが関わる庇護事件において子どもの最善の利益の原則が基盤とされかつ手続および決定の指針となることを確保するため、締約国が適当かつ効果的な措置をとることも勧告するものである。 子どもの意見の尊重 29.意見を聴かれる子どもの権利を増強するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、学校、施設ならびに子どもおよび若者のための社会的養護サービスにおける子どもの積極的参加に関して地域格差および不十分さが残っていることを懸念する。委員会はまた、社会で自己の生活に関わる事柄についての真の影響力を何ら有していないと感じている子どもがいることも、依然として懸念するものである。 30.条約第12条にしたがい、かつ、意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、子どもの意見の尊重および自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を、家庭、学校、施設、裁判所および行政機関において、立法等も通じて引き続き促進しかつその便宜を図ること。 (b) 意見を表明する力のある子どもに対してそのための十分な機会が提供されることおよびその意見が正当に重視されることを効果的に確保するための研修を、子どもとともに働くおとなが受けることを確保すること。 (c) 子どもによる積極的参加の要件をすべての市町村が満たすことを確保するとともに、子どもの意見がどの程度考慮されているか(子どもの意見が関連の政策およびプログラムに与える影響も含む)に関する定期的検討を行なうこと。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 適切な情報へのアクセス 31.委員会は、インターネット上で身元を偽って(すなわちおとなが子どものふりをして)子どもに接近しようとするいかなる意図も犯罪とする新法の制定(2009年7月1日施行予定)、および、政府委員会であるメディア評議会(Medieradet)が、インターネット上の不法なおよび有害なコンテンツと闘うことを目的として、とくにスウェーデン学校改善庁と協力しながら行なっている活動を、歓迎する。 32.委員会は、締約国に対し、条約第17条(e)に一致する形で、子どもの福祉にとって有害となる情報および資料から子どもが保護されることを確保するため、適切な法律の執行、親教育の提供、学校における教育および子どもの意識啓発によるものを含むあらゆる必要な措置を引き続きとるよう、奨励する。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 33.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。とくに、委員会は、締約国が以下の勧告に特段の注意を払うよう勧告する。(i) 防止を優先すること。 (ii) 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。 (iii) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (iv) 子どもの参加を確保すること。 (v) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報制度およびサービスを創設すること。 (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的なかつ期限を定めた行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と協力し、かつ同代表を支援すること。 (d) 次回の定期報告書において、締約国による同研究の勧告の実施に関わる情報を提供すること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 34.委員会は、家族から分離され、かつ里親ホームその他の施設で生活している子どもの人数が多いことを懸念する。委員会はまた、家出をする子どもまたは自宅を離れることを余儀なくされる子どもの人数についても懸念を覚えるものである。 35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族から分離される子どもおよび家出をしまたは自宅を離れることを余儀なくされる子どもの人数が多いことの原因に対応する措置をとるとともに、家出をしまたは自宅を離れることを余儀なくされた子どもがサービスにアクセスできかつ必要な助言および支援を受けることを確保すること。 (b) とくに、もっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供すること、脆弱な立場におかれた家族の親を対象とする親訓練プログラムを発展させ、これらのプログラムに資金を拠出しおよびこれらのプログラムを提供することならびに意識啓発キャンペーンを実施することによって子どもの施設措置を防止するためのプログラムおよび政策を、さらに発展させかつ実施すること。 (c) 自然な家庭環境の保護を優先するとともに、家族からの分離および里親養護または施設への措置は子どもの最善の利益にかなう場合にのみ用いられることを確保すること。 家庭環境を奪われた子ども 36.委員会は、代替的養護施設(民間の代替的養護または養護居住ホームを含む)の監督および監視が不十分であること、および、親のケアを受けていない子ども(民間の代替的養護に措置された子どもを含む)のための効果的な苦情申立て機構が存在しないことに、懸念を表明する。 37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 里親ホームまたは施設(民間の代替的養護または養護居住ホームを含む)に措置された子どもの状況の十分な監督および監視を確保すること。 (b) 親のケアを受けていない子どものために効果的な、十分に周知された、独立のかつ公平な苦情申立て機構が提供されることを確保するため、必要な措置をとること。 (c) 施設養護を離れた子どもに対し、フォローアップおよび再統合のための十分な支援およびサービスを提供すること。 虐待およびネグレクト 38.スウェーデン子どもヘルプラインの存在を含め、子どもの虐待およびネグレクトに関する意識を高めかつこれを減少させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、子どもの虐待およびネグレクトその他の形態の家族間暴力が高い水準にあることを依然として懸念する。委員会はまた、家庭で暴力にさらされている子どもが必ずしも十分なケアおよび援助を受けていないことも懸念するものである。 39.委員会は、締約国が、以下の措置をとることも含め、児童虐待の被害を受けた子どもに十分な援助を提供するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。 (a) 児童虐待がともなう事案を早期に発見しかつ対応すること。 (b) 子どもを虐待するおそれがある家族をとくに対象とする子育てプログラム。 (c) すべての暴力被害者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (d) 家庭で虐待の被害を受けている子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (e) スウェーデン子どもヘルプラインを支援し、子どものために24時間対応のヘルプライン・サービスを提供できるようにすること。 (f) 不当な取り扱いの悪影響に関する公的な意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン、ならびに、積極的かつ非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する防止プログラム(家族発達プログラムを含む)。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 40.締約国が障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を批准したことは歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもが文化的活動およびレクリエーション活動への参加を制約されていることに、懸念とともに留意する。委員会は、障害のある子どものための個別支援計画数が増加したことには留意するものの、締約国報告書によれば、障害のある子どもが目に見えない存在となっており、かつ社会は子どもではなく障害自体に焦点を当てることが多いことを懸念するものである。委員会は、締約国が、障害のある子どもに関する細分化されたデータの収集についての勧告を実施していないことを遺憾に思う。 41.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがい、かつ一般的意見9号(2006年)ならびに障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を考慮に入れながら、とくに以下の措置をとることにより、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を引き続き強化するよう、勧告する。 (a) 障害のある子どもの保護および社会サービス、教育サービスその他のサービスに対する障害児の平等なアクセスに関する包括的な政策を策定しかつ実施すること。 (b) 障害者の機会均等に関する基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービスへの平等なアクセスが提供されることを確保すること。 (c) 障害のある子どもに関する、細分化された正確な統計データを収集するために必要な措置をとること。 (d) 必要な支援を提供し、かつ教員が普通学校で障害のある子どもの教育を行なうための訓練を受けることを確保する等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。 健康および保健サービス 42.委員会は、補完代替医療(CAM)がヨーロッパにおいても世界的にも承認された医療分野のひとつであることに留意する。そのため委員会は、締約国が、8歳未満の子どもならびに妊婦および分娩時の女性の検査、治療およびケアにおけるCAMの利用を禁じていることを、懸念するものである。委員会は、このような禁止が、治療手段を選択する締約国のすべての個人(子どもを含む)の権利に異を唱えるものであり、かつ到達可能な最高水準の健康に対する権利の剥奪につながる可能性があることを懸念する。 43.委員会は、年齢によって区別されることなくすべての子どもがCAMの検査、治療およびケアにアクセスでき、かつ到達可能な最高水準の健康に対する権利を享受できることを確保するため、締約国が現行法の見直しおよび改正を検討するよう、勧告する。 思春期の健康 44.バーチャル青年クリニックの設置を含む努力が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、青少年の摂食障害、具体的には女子の過食症および拒食症の発生件数が多いことを依然として懸念する。さらに委員会は、運動の少なさと劣悪な食事があいまってスウェーデンの子どもの体重過多および肥満の問題が増大していること、および、現在の研究によれば、自覚されたストレスがいまなお青少年の間で問題となっていることを懸念するものである。 45.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に細心の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下のことのための措置を強化するよう勧告するものである。 (a) 過食症および拒食症を含む摂食障害の発生に対応すること。 (b) 体重過多および肥満の問題に対応し、かつ青少年の間で運動を含む健康的なライフスタイルを促進すること。 (c) 青少年のストレス水準を低減させ、かつ青少年がストレスの影響に対処するのを援助すること。 (d) 治療およびカウンセリングのための措置がジェンダーに配慮したものであり、かつ部門を超えた統合的アプローチの対象とされることを確保すること。 46.委員会は、性感染症(STI)が蔓延していること、および、15~19歳の女子の間で10代の望まない妊娠率および妊娠中絶率が上昇していることに、懸念を表明する。 47.委員会は、締約国が、STIの蔓延について分析しかつこれと闘うための措置を増強するとともに、10代の望まない妊娠および妊娠中絶の件数を減らす目的で、青少年を対象とする、学校内外におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育を強化し、かつ、妊娠した10代の女子に対して必要な援助ならびに保健ケアおよび教育へのアクセスを提供するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、妊娠中絶および早期妊娠に関して保健福祉庁が実施した調査に関心をもって留意し、締約国に対し、次回の定期報告書にこの調査の成果に関する情報を記載するよう慫慂する。 薬物およびアルコールの濫用 48.薬物およびアルコールの濫用の防止を目的として多数の取り組みが行なわれていることには留意しながらも、委員会は、18歳未満の薬物使用者について治療の可能性が制約されていることを懸念する。委員会はまた、18歳未満の強度の薬物使用者が何名おり、かつそのうち何名が薬物の静注を行なっているかに関する統計が存在しないことも懸念するものである。委員会はまた、親の薬物濫用により苦しんでいる子どもが多いことも懸念する。 49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を子どもおよび親に提供するための努力を強化すること。 (b) 有害物質濫用の影響を受けているすべての子ども(18歳未満の薬物使用者および親の薬物濫用により苦しんでいる子どもを含む)に対し、当該濫用の有害な影響を効果的に低減させることを目的とした、証拠に基づく必要な支援ならびに回復および再統合のためのサービスが提供されることを確保すること。 (c) この現象の蔓延状況を判断する目的で研究を実施しかつデータを収集すること。 精神保健サービス 50.委員会は、精神保健サービスを強化するための措置がとられたこと(小児・思春期精神医学へのアクセス向上のための措置を通じて当該精神医学に特別な焦点が当てられることへの投資が開始されたこと、および、締約国がスウェーデン統計庁に対して子どもおよび若者の精神保健に関する全国調査の実施を委託したことを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、精神保健上の問題および精神疾患を有する子どもが必要な治療およびケアを受けられるようになるまでの待機期間が相当に長いこと、10代(とくに女子)の自殺および自殺未遂が多数発生していること、ならびに、異なる部門(保健、教育、社会福祉)のサービス間でいまなお欠落がありかつ調整が行なわれていないことなど、課題が残っていることを懸念するものである。 51.委員会は、締約国に対し、十分な治療およびケアがそれを必要とするすべての子どもに対して不当に遅延することなく提供されることを確保するため、防止プログラムおよび介入プログラムの双方を含む精神保健ケア制度を強化するよう、奨励する。加えて、締約国は、関連のサービス(学校、社会的養護ホーム、少年司法制度、薬物・アルコール濫用治療センター等)間の調整の改善を確保するべきである。委員会は、締約国に対し、自殺の危機にある人々のための保健ケア資源を強化するとともに、危険な状況におかれた集団の自殺を防止するための措置をとるよう、促す。 生活水準 52.近年、貧困下で暮らしている子どもの人数が全体として減少していることには留意しながらも、委員会は、市町村内および市町村間ならびに都市町村間で子どもの貧困水準の格差が大きいことに懸念を表明する。委員会はまた、一貫して低所得の世帯で暮らす移民の子どもの割合が非常に高く、かつ、非スウェーデン系の子どもおよびひとり親世帯で暮らす子どもの経済状況が継続的に悪化していることにも、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、金融危機が、脆弱な立場に置かれたこのような集団の子どもの状況に重大な影響を与えかねないことも懸念する。 53.委員会は、締約国が、すべての子どもが貧困線以下の生活を送らないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、子ども、とくに社会的に不利な立場に置かれた家庭(ひとり親世帯を含む)の子どもおよび非スウェーデン系民族の子どもが、その居住地に関わらず貧困下で生活しないことを確保するため、締約国が特別支援措置を含む十分な措置をとることも勧告するものである。締約国は、経済危機の時期に子どもの貧困と闘うための行動計画の策定を検討するべきである。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 54.条約に掲げられた目標を保障するために締約国が教育分野で行なっている多数の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、在留許可のない子ども、とくに「隠れた子ども」および在留資格証明書のない子どもが教育に対する権利を享受していないことを依然として懸念する。しかしながら委員会は、事前質問事項に対する回答で締約国が行なった、政府はどのようにすれば教育に対する権利をさらに拡大できるかについて提案するための補足的検討の担当者を任命する計画である旨の説明に留意するものである。委員会はまた、条約に関する体系的かつ一貫した教育が学校で行なわれていないことも懸念する。 55.委員会は、締約国が、すべての子ども(「隠れた子ども」および在留資格証明書のない子どものような在留許可のない子どもを含む)が教育に対する権利を享受することを確保するための努力を追求するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、新教育法の流れを踏まえてカリキュラムに条約その他の関連の人権条約を編入するとともに、初等・中等教育のいずれにおいてもそのような教育を強化するよう、勧告するものである。 56.委員会は、教育庁が、初等中等学校の生徒に対して労働市場および雇用の前提条件に関する情報を提供していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、学校修了後に失業したままであり、学校から労働市場への移行に関していっそう対象の明確な援助を必要とするであろう青少年の人数が多いことを懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、職を見つけるために必要な職業上の能力および資格を青少年が獲得するのを支援する措置を拡大しかつ強化するよう、勧告する。労働市場へのアクセスに関して困難を有する青少年を訓練しかつさらなる資格を与える学校および施設に対しては、学校から労働市場への移行に際してそのような青少年を効果的に援助するために十分な金銭的および人的資源が与えられるべきである。 いじめ 58.学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置、とくに、児童生徒の差別その他の形態の品位を傷つける取り扱いを禁ずる法律(2006 67)の関連規定、スウェーデン教育庁の責任のもとで行なわれるいじめに関する取り組みおよび児童生徒オンブズマン(BEO)による取り組みを歓迎しながらも、委員会は、学校におけるこの現象、とくに障害のある子どもおよび外国系の子どもに対するものが根強く残っていることを依然として懸念する。 59.委員会は、締約国が、いじめと闘うためにとられる措置を強化し、かつ障害のある子どもおよび外国系の子どもに対して特段の注意を払うとともに、いじめを削減するための取り組みへの子どもの参加を確保するよう、勧告する。このような措置においては、教室外または校庭で行なわれる新たな形態のいじめおよびいやがらせ(携帯電話によるものおよびバーチャルな会合場所におけるものを含む)への対応も行なわれるべきである。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 60.委員会は、庇護希望者および元庇護希望者または「隠れた子ども」に対し、同国に合法的に在留している子どもと同一の条件で保健ケアおよび医療サービスを受ける権利を認めた、庇護希望者の保健ケアに関する新法(2008 344)を歓迎する。しかしながら委員会は、在留資格証明書のない子どもは緊急医療ケアに対する権利しか有しておらず、補助金も得られないことを懸念するものである。 61.委員会は、在留資格証明書のない子どもを含むすべての子どもが、同国に合法的に在留している子どもと同一の条件で保健ケアおよび医療サービスを受ける権利を有することを確保するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。 62.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れおよび居住に関する責任がスウェーデン移民庁から市町村に移管されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国の受け入れセンターから失踪する、保護者のいない子どもの庇護希望者が多いことを引き続き懸念する。委員会はとくに、これらの子どもが虐待および搾取の被害を受けやすいことを懸念するものである。後見人の問題に関する締約国の立場には留意しながらも、委員会は、保護者のいない子どもそれぞれについて、同国への到着後24時間以内に、子どもが置かれている法的状況および利用可能な法的移民手続について子どもに情報を提供することを任務とする一時的後見人(または「被信託人」)を任命することに関する法律を締約国が導入していないことを、依然として懸念する。 63.委員会は、締約国に対し、受け入れセンターで生活している子どもへの十分な支援および監督の提供、ならびに、トラウマを受けた子どもの庇護希望者への十分な心理的および精神医学的ケアを確保するための措置を強化するよう、促す。委員会は、締約国に対し、保護者のいない子どもそれぞれについて、同国への到着後24時間以内に、子どもが置かれている法的状況および利用可能な法的移民手続について子どもに情報を提供することを任務とする一時的後見人(または「被信託人」)が任命されることを確保するために必要な立法上の措置をとるよう、促すものである。委員会はまた、当該後見人の適格性および十分な資格を確保するための努力を強化することも勧告する。委員会は、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対し、締約国の注意を喚起するものである。 家族再統合 64.委員会は、締約国が、外国籍市民および無国籍者の家族移住の条件として、2010年1月1日以降、扶養要件を導入することを検討していることに、懸念とともに留意する。 65.委員会は、締約国が、認定難民の家族再統合手続への対応が積極的、公正、人道的かつ迅速なやり方で行なわれ、かつ当該手続において条約上の子どもの権利が侵害されるおそれが生じないことを確保するためにとられる措置を強化するべきであるという勧告を、あらためて繰り返す。 性的搾取および人身取引 66.委員会は、子どもの性的搾取に関する国家的行動計画の更新および売買春と性的目的の人身取引に対抗する国家的行動計画の採択、ならびに、国家犯罪防止委員会(BRA)による、スウェーデン刑法第6章への新たな性犯罪規定の導入(2007年)のような、人身取引と闘いかつ人身取引被害者に援助を提供するために締約国がとった措置を歓迎する。委員会はまた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書についての締約国の第1回報告書が最近提出されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、とくに性的および経済的搾取を目的とする子どもの人身取引が蔓延していること、および、性的搾取、売買春および人身取引の規模および様式に関して入手できるデータが限られていることを、懸念する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 人身取引から子どもを保護するため、売買春と性的目的の人身取引に対抗する国家的行動計画を全面的に実施すること。 (b) 子どもの性的搾取に関わる新たなおよび出現しつつあるリスク状況を監視しかつ予見するための措置を強化すること。 (c) 人身取引および買春を含む性的搾取の被害を受けた子どもを保護し、かつ性的虐待および搾取の加害者を裁判にかけるための措置を強化するとともに、このような犯罪の規模および様式に関するデータを次回の定期報告書で提供すること。 (d) 秘密を尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ捜査する方法について、法執行官、裁判官および検察官に対する研修を行なうこと。 (e) 第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された成果文書にしたがい、子どもの被害の防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを実施すること。 (f) 人身取引の被害を受けた子どもに対し、教育および訓練ならびに心理的援助およびカウンセリングが提供されることを確保すること。 (g) 子どもの売買、取引および誘拐を防止するための二国間協定および多国間協定に関する交渉を関係国(近隣諸国を含む)と行なうとともに、関係国間で合同行動計画を策定すること。 68.委員会は、国外で子どもの性的搾取に関与したスウェーデン市民の人数および犯罪種別に関するデータが存在しないことを懸念する。委員会はまた、加害者の捜査、訴追および処罰に関して提供された情報が限られていることも懸念するものである。委員会はさらに、保釈金の供託後に釈放された者へのパスポートの再発行を禁ずるための措置が何らとられていないとされることにも、懸念とともに留意する。 69.委員会は、締約国が、以下の手段をとること等により、子どもセックス・ツーリズムという憂慮すべき現象を防止しかつこれと闘うための努力を増強するよう勧告する。 (a) 国外で行なわれた犯罪について、犯罪者がスウェーデンに帰国したときに一貫した訴追を行なうこと。 (b) セックス・ツーリズムに関するデータおよび情報(捜査、訴追および処罰に関するものを含む)を体系的に収集するための機構を設置すること。 (c) 貧困下で暮らしている外国の子どもを虐待しかつ搾取するのは受け入れられるという考え方のような態度に取り組むための意識啓発を行なうこと。 (d) 観光における性的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた指針の遵守を向上させるため、非政府組織および観光業界との協力を強化すること。 (e) 国外で行なわれた子どもに対する性犯罪および関連の犯罪をスウェーデンで訴追するために必要な、現存するすべての双方可罰性要件を廃止する目的で、法律の見直しおよび改正を検討すること。 少年司法の運営 70.委員会は、少年司法の分野で締約国が達成したさまざまな成果を歓迎する。しかしながら委員会は、現行規則(青少年ケアに関する特別規定法(法1990 52)第15条Cおよび閉鎖型少年ケア執行法(法1998 603)第17条)上、青年拘禁センターに措置されている子どもが暴力的な行動を示し、または全般的秩序を危うくするほどに薬物の影響を受けている場合、その子どもを隔離できることに懸念を表明するものである。加えて、委員会は、このような処遇が懲罰としても用いられているという報告があることに懸念を表明する。委員会は、独居拘禁はやむを得ず必要とされると判断されないかぎり用いられるべきではなく、かつ隔離期間は24時間を超えてはならないという見解に立つものである。 71.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(2007年)および刑事司法制度における子どもに関する行動についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 適切なときは現行法を改正することも含め、独居拘禁に関する現行の実務の見直しを優先事項として行なう。 (b) この措置の使用をきわめて例外的な場合に限定し、それが認められる期間を短縮し、かつその最終的廃止を追求すること。 (c) 観護措置をとられたすべての子どもに対し、十分な法的代理が提供されることを確保すること。 犯罪の証人および被害者の保護 72.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティックバイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。 8.国際人権文書の批准 73.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。 9.フォローアップおよび普及 74.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告をリクスダーゲン(議会)、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 75.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 76.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2011年9月1日までに提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。 77.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認され、かつHRI/GEN/2/Rev.5に掲載されている「国際人権条約に基づく報告についての統一指針(共通コア・ドキュメントおよび条約別文書についての指針を含む)」に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するようにも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/62.html
総括所見:ノルウェー(第3回・2005年) 第1回(1994年)/第2回(2000年)/第4回(2010年)OPSC(2005年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.263(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月24日に開かれた第1036回および第1037回会合(CRC/C/SR.1036およびCRC/C/SR.1037参照)においてノルウェーの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.1)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.126)のフォローアップに関する情報を含む締約国の第3回定期報告書が時宜を得た形で提出されたことを歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/NOR/3)に対する締約国の文書回答により、ノルウェーの子どもの状況についての理解を深めることができたことも歓迎するとともに、締約国の代表団との率直かつ開かれた対話に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下のものを含む、報告対象期間中に見られた多くの積極的発展を歓迎する。 (a) 子どもの権利条約の実施について全般的進展があったこと。 (b) 条約が2003年に国内法に編入されたこと。 (c) 意見を聴かれる子どもの権利の適用範囲をさらに強化しかつ増進させる改正が特定の子ども関連法について行なわれたこと。 (d) 子どもの間で条約に関する意識を高め、かつ報告プロセスに子どもの参加を得ることを目的とする「18歳になるまでの人生」(Life Before 18)プロジェクトが開始されたこと。 (e) 国家人権行動計画(2000~2005年)が採択されかつ実施されていること。 (f) 2003年4月に刑法が改正され、人身取引がとくに犯罪化されたこと。 (g) 締約国が、とくに教育分野における国際援助および国際協力に対し、継続的かつ傑出したコミットメントを示してきたこと。 (h) 子どもの権利の保護を強化するための多くのプログラムおよび国家的行動計画が実施されていること(2001年「子ども・若者とインターネットに関する行動計画」、2002年「移民の背景を有する子ども・若者に関する行動計画」、2003年「女性および子どもの人身取引と闘うための行動計画」、「児童青少年犯罪と闘うための行動計画(2000~2004年)」、「人種主義および差別と闘うための行動計画(2002~2006年)」、ならびに、「女性性器切除と闘う政府の努力-2002年」および「強制婚と闘うための新たな努力-2002年」と題されたプログラムを含む)。 (i) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への関与に関する子どもの権利条約の選択議定書がそれぞれ2001年および2003年に批准されたこと。 C.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、勧告の多くが実施されてきたことに評価の意とともに留意するものの、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.2)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.126)の一部、とくにパラ19(条約に関する研修および教育)、21(差別の禁止)、27(思想、良心および宗教の自由)、31(親の分離)、41(精神保健サービス)および43(保育サービス)に掲げられたものへの対応が不十分であることに、遺憾の意とともに留意する。 5.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう促す。 立法および実施 6.委員会は、国内法を条約に全面的に一致させるためにとられた多くの措置を歓迎する。しかしながら委員会は、出入国管理、運営機関への子ども参加および宗教的自由のような一部分野の国内法については、実際の実施が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するためにさらなる注意が必要とされることに留意するものである。 7.委員会は、締約国に対し、国内法が条約と全面的に一致しかつ一致し続けることを確保するための努力を継続するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、裁判官に対して子どもに関わる事件における条約の直接適用可能性についての研修を、かつ中央政府および自治体の職員に対して条約についての研修を行なうよう奨励するものである。 調整 8.委員会は、中央および地方の両方のレベルにおいて、とくに地方当局との関連で、子どもおよび若者のための努力の調整および一貫性を向上させる必要があるという懸念を締約国と共有する。 9.委員会は、中央および地方の公的機関間の十分な協力ならびに子ども、若者、親および非政府組織との協力を確保するため、子どもおよび若者のための努力の一貫性および調整を向上させるための努力を引き続き強化するよう勧告する。 独立した監視体制 10.子どもオンブズマンが行なっている重要な貢献は認知しながらも、委員会は、子どもオンブズマンが子ども家族問題省に依存しているように思われることから、その活動を行なううえで制約に直面していることに留意する。 11.委員会は、締約国が、子どもオンブズマンの独立性をさらに高めるよう勧告する。 データ収集 12.委員会は、十分に整備された締約国のデータ収集システムを高く評価するものの、暴力を受けた子どもおよび後期中等学校に入学せずまたは後期中等学校を中退した子どもの状況に関する統計データが存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、移民の子どもならびに施設および里親家庭で暮らしている子どもに関して利用可能なデータが限られていることも、遺憾に思うものである。 13.委員会は、締約国に対し、子どもの状況に関するデータ、とくに暴力および虐待を受けた子ども、後期中等学校に入学せずまたは後期中等学校を中退した子ども、代替的養護制度の対象とされている子どもならびに移民の子どもに関するデータの体系的収集を向上させるため、引き続き努力するよう勧告する。 資源配分 14.この点に関してとられた措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもが利用可能なサービスの範囲が、サービスの内容面でも実行面でも、子どもが国内のどこに住んでいるかによってさまざまであることを懸念する。 15.委員会は、締約国が、子どもに提供されている資源の水準および内容を評価しおよび分析するための研究を実施するとともに、必要なときは、自治体の地理的所在または規模にかかわらずすべての子どもに対してサービスへの平等なアクセスおよびサービスの平等な利用可能性を確保するための措置をとるよう、勧告する。 研修/条約の普及 16.委員会は、この分野で締約国がとったさまざまな措置にもかかわらず子どもおよび若者の間で条約に関する意識が低く、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。委員会は、これとの関連で、学校では人権について後期中等教育の選択科目としてしか教えられていないことを遺憾に思うものである。 17.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもの権利に関する教育を初等教育および中等教育双方のカリキュラムに編入すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子ども自身)を対象とする、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的研修プログラムを確保すること。 (c) 委員会の一般的意見が普及されかつ翻訳されることを確保すること。 2.一般原則 差別の禁止 18.この分野で締約国がとっている継続的措置にも関わらず、委員会は、一部の子どもがその宗教的または民族的背景を理由として学校および社会で直面している差別について懸念する。 19.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の事実上の差別を防止しかつ解消するための努力を引き続き強化するよう勧告する。 3.市民的権利および自由 思想、良心および宗教の自由 20.委員会は、学校科目「キリスト教の知識と宗教・倫理教育」の教授に関する、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書に基づく自由権規約委員会の見解(2004年11月3日、CCPR/C/82/D/1155/2003)に留意する。これとの関連で、委員会は、「キリスト教の知識と宗教・倫理教育」の教授を条約第15条に掲げられた宗教の自由に対する権利と全面的に一致させるため、教育法の改正が計画されている旨の締約国の情報を歓迎するものである。委員会は、締約国に対し、これらの改正を採択しかつ制定するプロセスを加速させるよう奨励する。 4.家庭環境および代替的養護 21.委員会は、ノルウェーに子どもがいる外国籍の者が重大犯罪を行なった結果として恒久的に退去を強制される事案において、子どもの最善の利益が十分に考慮されていないことを懸念する。 22.委員会は、締約国に対し、親の退去強制に関わる決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう促す。 家庭環境を奪われた子ども 23.委員会は、家庭から分離されて里親家庭または他の施設で暮らしている子どもが多いことを懸念する。これとの関連で、委員会は、家庭環境からの子どもの分離に関わる実務を見直すことに対する締約国の前向きな姿勢に留意するものである。 24.委員会は、締約国が、実親に対する十分な支援等も通じ、家庭から分離される子どもの人数が増加している原因に対応するための措置をとるよう勧告する。〔委員会は、〕締約国に対し、自然な家庭環境の保護を優先するとともに、家庭からの分離および里親養護または施設への措置が、それが子どもの最善の利益にかなう場合に最後の手段としてのみ用いられることを確保するよう、奨励するものである。 措置の定期的審査 25.子ども家族問題省の努力は歓迎しながらも、委員会は、監督担当者の人数が十分でなく、かつ監督担当者が研修を受けていないために、里親家庭に措置された子どもの定期的審査が不十分であることを懸念する。 26.委員会は、締約国が、里親家庭または施設に措置された子どもの状況が十分に監督されることを確保する努力を追求するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 27.委員会は、家庭内暴力にさらされている子どもが常に十分なケアおよび援助を受けているわけではないことを懸念する。 28.委員会は、締約国が、家庭内暴力にさらされている子どもまたは親が精神病患者および(もしくは)薬物濫用者である子どもに十分な援助を提供するための努力を引き続き強化するよう勧告する。そのための手段には以下のものが含まれる。 (a) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (b) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (c) 周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭における暴力の根本的原因に対応するための措置を強化すること。 (d) 不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育キャンペーンおよび防止プログラム(積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する家族発達プログラムを含む)を実施すること。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 29.委員会は、障害のある子どもによる文化的活動およびレクリエーション活動への参加が制約されていることに、懸念とともに留意する。 30.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に採択した委員会の勧告(CRC/C/69, paras. 310-339)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービス(文化的活動およびレクリエーション活動を含む)への平等なアクセスが提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 基礎保健および福祉 31.委員会は、摂食障害(過食症および拒食症)の発生件数が多いことを依然として懸念する。さらに委員会は、運動の少なさおよび栄養バランスの悪い食事があいまって生じる体重過多の問題が子どもの間で増大しつつあることを懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に細心の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が、摂食障害の発生に対応し、かつ思春期の子どもの間で健康的なライフスタイルを促進するための措置を強化するよう勧告するものである。 精神保健サービス 33.子どもおよび若者を対象とした精神保健サービスを強化するためのとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、援助およびケアを受けるまでの待機時間のような課題が残されていることを懸念する。委員会はまた、子どもおよび青少年を専門とする精神医学者および心理学者が足りないことも懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、支援を必要としている子どもおよび若者に対して十分な治療およびケアが遅滞なく提供されることを確保するため、精神保健ケアの発展の速度を速めるよう奨励する。 35.委員会は、子どもおよび青少年の自殺件数が多く、若い女性および男性の死亡の4件に1件が自殺であることを、依然として深く懸念する。 36.委員会は、締約国に対し、自殺の危機にある人々のための保健サービス資源を強化し、かつ、危険な状況に置かれた集団内で生ずる自殺を防止するための措置をとるよう促す。 十分な生活水準 37.委員会は、継続的低所得世帯で暮らしている移民の子どもの割合が高いことに、懸念とともに留意する。 38.委員会は、締約国が、すべての子どものニーズが満たされることを確保するとともに、いかなる集団の子どもも貧困線以下の生活を送ることがないことを確保するためあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 39.委員会は、学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置、とくに子どもオンブズマンによる取り組みを歓迎するものの、この現象が多くの学校で根強く生じていることを依然として懸念する。 40.委員会は、締約国が、いじめと闘うための措置を強化し、かついじめの削減を目的とした取り組みへの子どもの参加を確保するよう勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民 41.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者のうち締約国の受入れセンターから失踪する子どもが多いこと(2003年には33名)に懸念を表明する。委員会は、このような子どもが虐待および搾取の被害を受けやすいことをとりわけ懸念するものである。委員会はまた、保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)の監督およびこのような子どもに提供されるケアならびに受入れセンターで暮らす子どもに提供される心理的および精神医学的サービスが不十分であることも懸念する。さらに、委員会は、庇護申請の処理があまりにも遅いことを懸念するものである。 42.委員会は、締約国に対し、受入れセンターで暮らす子どもに対する十分な支援および監督、ならびに、トラウマを負った子どもの庇護希望者に対する十分な心理的および精神医学的ケアが提供されることを確保するための措置を強化するよう促す。委員会は、受入れセンターにおける保護者のいない子どもの庇護希望者のための援助およびケアが児童福祉制度下の他の施設で提供されているものと同一の水準に達するよう、受入れセンターにおけるこれらの子どもの状況を、資源および十分な訓練を受けた有能な職員の面で向上させるよう勧告するものである。締約国はまた、庇護申請がより迅速に処理されることを確保するためにさらなる措置をとることも求められる。 薬物濫用 43.委員会は、締約国において薬物およびアルコールを消費する子どもの人数が多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、親の薬物濫用のために苦しむ子どもの人数が多いことも懸念するものである。委員会は、これとの関連で、子どもおよび青少年の薬物濫用問題を防止するための試験的プロジェクトが多くの自治体で開始されていることに留意する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親に対し、有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を提供するための努力を強化すること。 (b) 薬物および麻薬を使用している子どもが(犯罪者ではなく)被害者として扱われ、かつ回復および再統合のための必要なサービスを提供されることを確保すること。 (c) 子どもおよび青少年の薬物濫用問題の防止に関するプロジェクトを拡大し、より多くの自治体が対象とされるようにすること。 性的搾取および性的虐待 45.委員会は、締約国において子どもおよび若者の性的虐待が発生していることを懸念するとともに、この問題に関する最近の研究が存在しないことを遺憾に思う。 46.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的虐待の性質および規模、ならびに、虐待の被害をとくに受けやすい集団を特定する目的で虐待された子どもの特質を評価するための、包括的研究を実施すること。 (b) 子どもおよび青少年の性的虐待と闘うための措置を強化すること。 (c) 子どもの証言が適切な方法で記録されること、および、事情聴取を行なう者が必要な専門的資格を有することを確保すること。 売買、取引および誘拐 47.女性および子どもの人身取引と闘うためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、性的搾取目的の女性および子どもの人身取引が締約国で依然として問題であることを懸念する。 48.委員会は、締約国に対し、性的搾取および人身取引と闘うための計画を効果的に実施するための努力を強化するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、この分野で深刻な問題に直面している国々/地域への協力を拡大するとともに、子どもの人身取引および性的搾取の性質および規模を評価し、かつこの形態の搾取の被害をとくに受けやすい集団を特定するための研究を実施するよう、奨励するものである(注)。 (注)この問題に関する委員会のその他の懸念および勧告は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に基づいて提出されたノルウェーの第1回報告書に関する委員会の総括所見に記載されている。 8.フォローアップおよび普及 フォローアップ 49.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 50.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 9.次回報告書 51.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、この点に関する締約国の実績を評価するとともに、締約国に対し、条約で予定されているとおり2008年2月6日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/148参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年9月5日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/75.html
総括所見:タイ(第2回・2006年) 第1回(1998年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/THA/CO/2(2006年3月17日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2006年1月24日に開かれた第1113回および第1115回会合(CRC/C/SR.1113 and 1115参照) においてタイの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.15)を検討し、2006年1月27日に開かれた第1120回会合(CRC/C/SR.1120)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および事前質問事項(CRC/C/THA/Q/2)に対する文書回答を歓迎するとともに、多くの懸念領域を明らかにするうえで締約国がとった、開かれたかつ自己批判的な報告アプローチに評価の意を表明する。委員会はさらに、対話の過程で追加的情報を提供するためハイレベルな部門横断型代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、2003年に子ども保護法(B.E. 2546)を採択したことについて締約国を賞賛する。同法は、子どもを、18歳未満であり、差別の禁止および子どもの最善の原則に一致する保護および福祉的援助を受ける資格のある者として定義したものである。委員会はまた、条約の実施を増進させることを目的としたいくつかの法律の採択および改正、とくに国家教育法(1999年)および義務教育法(2002年)ならびに刑事事件における被害者の救済ならびに犯罪者に対する賠償命令および費用支払命令に関する法律(2001年)、ならびに、18歳未満のときに行なわれた犯罪について子どもに死刑および終身刑を科すことはできない旨の刑法改正(2004年)も歓迎する。加えて、委員会は、国家人権委員会および子ども・青少年・家族小委員会、国家子どもの保護委員会ならびに県子どもの保護委員会をはじめ、同国における子どもの権利の促進および保護を増進させる諸機構が設置されたことに、評価の意とともに留意するものである。 4.委員会は、多くの国際人権文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。 (a) 経済的、社会的および文化的権利に関する1966年の国際規約(1999年9月5日)。 (b) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する1999年のILO第182号条約(2001年2月16日)。 (c) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する1980年のハーグ第28号条約(2002年8月14日)。 (d) あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する1965年の国際条約(2003年1月28日)。 (e) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ第33号条約(2004年4月29日)。 (f) 就業が認められるための最低年齢に関する1973年のILO第138号条約(2004年5月11日)。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、2004年12月26日のインド洋津波によって引き起こされた異例な自然災害によってタイ東南部沿岸が大規模に破壊された結果、多くの経済的および社会的困難が生じ、かつ多くの子どもの生活が影響を受けたことを認知する。委員会はまた、タイ最南部諸県の騒乱が同国における全般的な人権の発展に悪影響を与えた結果として締約国が直面している課題も、認知するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.13)の検討後に採択された総括所見(CRC/C/15/Add.97)に掲げたさまざまな懸念および勧告について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに刑事責任に関する最低年齢、出生登録、無国籍、子どもの難民および庇護希望者に関するそれについては、十分な対応が行なわれていない。 7.委員会は、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、これらの懸念および勧告に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を実施するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。 留保 8.委員会は、締約国が自国の留保を見直すために努力を行ない、かつ条約第7条および第22条を部分的に遵守していることには留意するものの、これらの留保が維持されていることを遺憾に思う。 9.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国が留保を付さずに批准した、市民的および政治的権利に関する国際規約第2条および第24条に対して締約国の注意を促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、世界人権会議(1993年)のウィーン宣言および行動計画(A/CONF.157/23)にしたがって、条約第7条および第22条に付した留保を撤回するよう促すものである。 立法 10.委員会は、国内法を条約に一致させるために締約国がとった措置、とくに子ども保護法に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、条約の原則および規定の全面的遵守を確保するため、法律に触れた子ども、人身取引、児童労働および子どもに対する暴力のような分野における、とくに地方レベルでのこれらの法律の実施および執行に対し、さらなる注意を払う必要があることに留意するものである。委員会はまた、一部の現行法(たとえば刑事責任に関する最低年齢を7歳と定めた刑法)においていまなお条約が遵守されていないことにも留意する。 11.委員会は、締約国に対し、自国の法律を条約の原則および規定と全面的に調和させるための努力を継続するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の保護を向上させる目的で、とくに議員および法執行官に対する普及ならびに意識啓発活動を通じ、国内法の全面的かつ効果的実施を確保するための努力を継続するようにも奨励するものである。 12.委員会は、同国における子どもの権利の促進および保護に多数の政府省庁その他の機関が関与していることに留意する。国家青少年局の役割は認識しながらも、委員会は、とくに県、郡および地方のレベルでこれらの機関間の調整が限られていることを懸念するものである。 13.委員会は、国内法および条約の全面的かつ効果的実施を確保する目的で、締約国があらゆるレベルで調整システムを強化するよう勧告する。 国家的行動計画 14.委員会は、2002年の国連総会子ども特別会期で採択された「子どもにふさわしい世界」と題する成果文書を実施するための国家戦略および行動計画(2005~2015年)が導入されたことを歓迎する。 15.委員会は、国家戦略および行動計画において条約のすべての領域が対象とされ、かつ、あらゆる段階で当該戦略および行動計画を全面的かつ効果的に実施するために十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、実施プロセスのあらゆる側面に市民社会(子どもおよび若者を含む)が広く参加することを確保するようにも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、国家戦略および行動計画の実施、成果および評価に関する情報を次回定期報告書で提供するよう要請する。 独立の監視 16.委員会は、独立の監視機構、とくに議会オンブズマンならびに国家人権委員会および子ども・青少年・家族小委員会が設置されたことを歓迎する。委員会はとくに小委員会が行なっている活動、とりわけ、子どもの権利の促進および保護に責任を負う機関および施設に対する査察訪問および監視、ならびに、子どもおよび若者に関する苦情の調査のための活動に留意する。にもかかわらず、委員会は、国内のすべての子どもがこれらの機関にアクセスしかつこれを利用できるかどうか、ならびに、これらの機関にどの程度の資源が配分されているかについて懸念を覚えるものである。委員会はまた、国家人権委員会の勧告が関連の公的機関によって十分に実施されかつフォローアップされていないことも懸念する。 17.委員会は、締約国が、独立した国内人権機関の役割の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年、CRC/GC/2002/2参照)を考慮に入れながら、国家人権委員会および議会オンブズマンがすべての子どもにとって容易にアクセス可能であり、かつ利用者にやさしいものとなることを確保するため、あらゆる効果的な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、締約国に対し、子どもが既存の苦情申立て機構を効果的に利用することを促進するための意識啓発の努力を強化するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、国家人権委員会および議会オンブズマンに対して十分な人的資源および財源が提供されること、ならびに、その勧告が全面的にかつ真剣にフォローアップされることを確保するようにも勧告する。 資源配分 18.委員会は、教育、公衆衛生および社会サービスを対象とする社会開発への予算配分が報告対象期間中に増加したこと、および、子どもとその家族に対して福祉的援助を提供し、かつ県の機関が実施する子どものためのプロジェクトおよび活動を支援する子ども保護基金が創設されたことに留意する。しかしながら委員会は、多くの分野で、とくに県および郡のレベルにおける予算配分ならびにもっとも脆弱な立場におかれた集団の子どもに対して配分されている資源の割合に関する情報が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、社会開発・人間の安全保障省が郡レベルで出先機関を有していないこと、および、タムボンまたはコミュニティのレベルで社会福祉サービスを提供する政府の能力が限られていることにも、懸念とともに留意するものである。 19.委員会は、締約国が、次回定期報告書で、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもに重点を置きながら、国および県以下の双方のレベルにおける予算配分について情報を提供するよう勧告する。委員会は、条約第4条に照らし、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および必要な場合には国際協力の枠組みの中で」子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団の子どもの権利の実施を確保するための予算配分を、あらゆるレベルで優先させるよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、タイにおける子どもの権利の実施を促進する目的でマルチセクター的対応をさらに強化するため、国および県以下の双方のレベルにおいて社会開発・人間の安全保障省への十分な資源配分を確保するよう、奨励する。 データ収集 20.委員会は、同国のすべての子どもに関するデータ収集を改善するために行なわれた努力および取り組みに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、データ収集機構が依然として縦割りであり、かつ、条約が対象とするすべての分野についての細分化されたデータの体系的かつ包括的収集を確保するには不十分であることを、懸念するものである。 21.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、データ収集システムを強化しかつ中央集権化し、ならびに、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(たとえば先住民族およびマイノリティの子ども、最南部諸県の子ども、障害のある子ども、虐待およびネグレクトの対象とされた子ども、貧困下で暮らしている子ども、法律に触れた子ども、子どもの移民および難民、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもならびにセックスワーカーの子どもなど)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての子どもに関する細分化されたデータを体系的に統合しかつ分析するよう、促す。委員会は、締約国に対し、条約の効果的実施を目的とした法律、政策およびプログラムの立案のためにこれらの指標およびデータ効果的に活用するよう、奨励するものである。 条約の普及 22.委員会は、定期報告書の作成に市民社会の構成員(子どもを含む)の参加を得るために締約国が行なった努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、条約がタイ語およびさまざまな地方方言に翻訳されたことならびに音声および点字で利用可能とされていることを含め、条約を普及するために締約国が行なった努力にも、評価の意とともに留意するものである。委員会は、条約および子どもの権利一般に関するさまざまな研修講座および研修プログラムが開発されており、かつ、子どもの権利の問題が初等中等段階における国全体の公立学校カリキュラムの一部となっていることを、心強く思う。これらの努力にも関わらず、委員会は、条約に関する子どもおよび一般公衆の意識が全体として不十分なままであることを依然として懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなによっても子どもによっても広く認識されかつ理解されることを確保するための努力を継続しおよび強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに遠隔地において、子どもおよびおとなの間で引き続き条約を普及しかつ条約に関する意識を高めるよう、奨励するものである。委員会はまた、締約国に対し、条約を促進しおよび教授するための創造的かつ子どもにやさしい手法を引き続き開発することも慫慂する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止に対する権利 24.委員会は、とくに女子、先住民族および宗教的または民族的マイノリティ・コミュニティの子ども、難民および庇護希望者の子ども、移住労働者の子ども、ストリートチルドレン、障害のある子ども、農村部に住んでいる子どもならびに貧困下で暮らしている子どもとの関連で、条約第2条に反し、子どもに対する直接差別および間接差別の双方が根強く残っていることを懸念する。委員会はまた、とくに最南部諸県において、社会サービス、保健サービスおよび教育サービスへのアクセスの面で地域格差が存在し続けていることも懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障する現行法を効果的に実施することにより、条約第2条にしたがい、その管轄内にあるすべての子どもが差別の禁止を基盤として条約に掲げられたすべての権利を享受できることを確保するため、より効果的な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(イスラム教徒、移民および難民の子どもを含む)のための社会サービスおよび保健サービスに優先的に取り組み、かつこれらの子どもに平等な教育機会を確保するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆教育キャンペーンを実施するよう勧告する。 26.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年、CRC/GC/2001/1)も考慮にいれながら、次回定期報告書に記載するよう要請する。 生命、生存および発達に対する権利 27.委員会は、同国最南部諸県における暴力および騒乱が子どもおよびその家族に重大な影響を及ぼしており、かつ生命、生存および発達に対する子どもの権利を危険にさらしていることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの諸県で暴力を生き残りおよび目撃した子どもを対象とする、リハビリテーション、カウンセリングその他の援助のためのプログラムが存在しないことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、同国の元子ども兵士(その一部は難民キャンプにいる可能性がある)の状況についても懸念を覚える。 28.委員会は、締約国に対し、対象を明確にした政策、プログラムおよびサービスを通じて、とくに元子ども兵士および同国最南部諸県の子どもとの関係で締約国のすべての子どもの生命、生存および発達に対する権利の保護を強化するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、騒乱の影響から子どもを保護し、かつ社会への子どもの再統合を確保することも促すものである。委員会はまた、締約国に対し、暴力および紛争の影響を受けた子どもを心理社会的に支援しかつ援助するための包括的システムを、非政府組織および国際機関と連携しながら発展させることも促す。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、とくに年1回の子どもの権利フォーラムの開催ならびに青少年評議会および青少年ネットワークの設立を通じ、自己の意見を自由に表明しかつ社会に参加する子どもの権利を促進しかつ尊重するために締約国がとっている行動を、心強く思う。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ひとつには社会の伝統的態度を理由として、自由な表現および参加に対する子どもの権利が締約国においてはいまなお制限されているという見解に立つものである。委員会はまた、子どもが被害者、証人または犯罪容疑者として関与する裁判手続において、子どもの意見の尊重が全面的に考慮されていない可能性があることも、懸念するものである。 30.委員会は、条約第12条、第13条および第15条にしたがい、締約国が、家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもが自己に影響を与えるすべての決定に積極的に参加しかつ関与することを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどのぐらい考慮されており、かつ政策立案、裁判所の決定およびプログラムの実施にどのような影響を与えているかについて、定期的検討を行なうことも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20)にしたがい、子どもに配慮した裁判手続を改善するよう勧告する。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 31.子ども関連法改正小委員会による立法上の提案および「法的地位およびアイデンティティに対する権利の問題に対応するための戦略」の採択(2005年1月)をはじめ、締約国がこの分野で行なっている努力にも関わらず、委員会は、とくに同国の最遠隔地および津波の影響を受けた地域で、出生を登録されないままの子どもが多数存在することを懸念する。委員会はまた、移住労働者、難民および庇護希望者の子どもならびに先住民族およびマイノリティのコミュニティの子ども、とくに病院外で出生したこれらの子どもの登録を確保するうえで困難が根強く残っていることも懸念するものである。委員会はさらに、法執行が弱いことならびに出生登録の重要性および利益についての公衆の意識が限定的であることを懸念する。 32.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、条約第7条にしたがい、締約国が、締約国の全領域のすべての子ども、とくに移民および難民である子ども、先住民族およびマイノリティのコミュニティに属する子どもならびに最遠隔地または津波の影響を受けた地域に住んでいる子どもが出生登録システムに平等にアクセスできることを確保するため、国内法、とくに1991年住民登録法(B.E. 2534)の見直しを引き続き進めるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、以下の措置をとることによって現行出生登録システムを改善するよう勧告するものである。 (a) 領域内の最遠隔地も対象とすることができるようにするため、移動出生登録班および公衆意識啓発キャンペーンを導入すること。 (b) 同国における出生登録率の向上を達成するため、出生登録担当機関と産婦人科診療所、病院、助産師および伝統的出産立会人との間の協力を強化すること。 (c) 引き続き、出生登録に関する明確な指針および規則を策定し、かつ国および地方レベルの官吏に向けて広く普及すること。 (d) 出生を登録されておらず、かつ公式な身分登録書類を有していない子どもが、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスにアクセスできることを確保すること。 名前、国籍およびアイデンティティ 33.委員会は、タイに在留している相当数の子どもが無国籍のままであり、そのため、このような子どもが、教育、発達ならびに社会サービスおよび保健サービスへのアクセスを含む権利を全面的に享受することについて悪影響を受け、かつ虐待、人身取引および搾取の被害を受けやすい状態に置かれていることを懸念する。 34.委員会は、締約国が条約第7条および第22条に付した留保を撤回するべきであるという前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、タイで生まれかつその管轄下で暮らしているすべての無国籍者がいずれかの国の国籍を取得できること(タイ国籍を取得する可能性も含む)を確保するための措置を引き続き実施するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、無国籍者が社会サービスおよび保健サービスならびに教育にアクセスできることを確保するための具体的措置をとることも促すものである。 プライバシーの保護 35.プライバシーに対する子どもの権利を保護する国内法が存在することには留意しながらも、委員会は、締約国の努力にも関わらず、被害を受けた子どもの身元および写真がメディアで公表されていることに、懸念とともに留意する。これは、条約第16条および子どものプライバシーを尊重する国内法の明白な違反である。 36.委員会は、締約国に対し、タイで放送されるすべての素材においてプライバシーに対する子どもの権利が尊重されることを確保するため、行動規範および(または)自主規制のような機構を確立するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、メディアの専門家を対象として、プライバシーに対する子どもの権利に特段の注意を払いながら、適切な人権研修が行なわれることを確保するようにも促すものである。 情報へのアクセス 37.委員会は、メディアの子ども向け番組を増やすために締約国がとった措置、および、ゴールデンタイムに放送される子ども、若者および家族向け番組の時間数を評価する。しかしながら委員会は、番組の質について懸念を覚えるものである。刺激的素材抑止措置法案が内閣で検討されていることには留意しながらも、委員会は、メディアで公表される素材およびインターネットで利用可能な素材のなかに子どもにとって有害なものがあることを懸念する。さらに委員会は、情報通信技術省の努力には留意しながらも、メディアおよびインターネットを通じて送出される暴力およびポルノ等の有害な情報にさらされることから子どもを保護するための体系的なメディア監視機構が国および国以下のレベルでなんら存在しないことに、懸念を表明するものである。 38.委員会は、ラジオおよびテレビの放送事業者との協力を通じ、主として子どもおよび若者向けに制作されるメディア番組の質および適正さを監視しかつ向上させるための機構を設置するよう、勧告する。さらに委員会は、条約第17条に照らし、締約国が、メディアおよびインターネットを通じて送出される暴力およびポルノ等の有害な情報にさらされることから子どもを保護するため、親、保護者および教員向けの助言キャンペーンならびにインターネット・サービス・プロバイダとの協力を含む、あらゆる必要な法的その他の措置をとるよう勧告するものである。 体罰 39.委員会は、学校における体罰の使用を禁止しようとする締約国の努力に留意し、かつ、刑事施設における体罰の使用を禁じた最近の省令に留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭および代替的養護環境における体罰が法律で明示的に禁じられていないことを遺憾に思うものである。さらに、委員会は、被害を受けた子どもは恐れて苦情申立てを行なわないことが多く、かつ被害を受けた子どもに対して援助が利用可能とされることもめったにないことを締約国が認めたことに留意する。 40.委員会は、体罰は条約の規定と両立せず、かつ、条約第28条2項でとくに求められている子どもの尊厳の尊重の要件と一致しないことをあらためて指摘する。したがって委員会は、締約国に対し、家庭および学校における子どもへの暴力についての一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/111参照)を考慮に入れながら、家庭および代替的養護環境におけるあらゆる形態の体罰を法律で禁止するよう、促すものである。 41.委員会は、締約国が、体罰の有害な影響に関する公衆意識啓発キャンペーンを実施することにより、親その他の養育者、法執行官ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、体罰に代わる手段として、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、子どもに配慮した特定の苦情申立て機構およびサービスを設置し、かつ、すべての子どもがこれらの機構にアクセスできることを確保するようにも勧告する。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 代替的養護 42.委員会は、さまざまな政府省庁によって運営されている、子どもに代替的養護を提供するためのさまざまなプログラムおよび機構(里親養護制度、福祉ホームおよびその他の施設)に留意する。しかしながら委員会は、代替的養護施設に措置された子どもの状況ならびにこのような施設を規律する基準および規則についての情報が存在しないことを懸念するものである。委員会はまた、このようなプログラムおよび施設を監視しおよび監督する機関についての情報が存在しないことも懸念する。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設に措置された子どもの状況(その生活条件、養護計画および提供されているサービスも含む)を評価するための包括的研究を実施すること。 (b) 既存の施設および里親養護制度についての明確な基準(条約第9条にしたがって意思決定プロセスに子どもおよびその親の関与を得るための規則を含む)を定めるとともに、条約第25条に照らし、子どもの措置の定期的再審査が行なわれることを確保すること。 (c) 子どもの権利の保護を確保する目的で、すべての代替的養護施設およびプログラムが十分に監視されること(独立した苦情申立て機構および非政府組織による監視を含む)を確保するとともに、子どもがこれらの苦情申立て機構に容易にアクセスできるようにすること。 (d) 施設に措置された子どもが可能なときは常に家族に復帰できるようにし、かつ施設への子どもの措置を最後の手段として用いるようにするため、あらゆる必要な措置を追求すること。 暴力、虐待、不当な取扱いおよびネグレクト 44.締約国が行なっている努力は認め、かつタイ憲法(1997年)第53条には留意しながらも、委員会は、同国におけるドメスティック・バイオレンス、児童虐待およびネグレクトの報告件数が増えていることを深く懸念する。委員会は、性的虐待を含むあらゆる形態の虐待、ネグレクトおよび不当な取扱いの処罰に関する国内法の顕著な欠陥(たとえば刑法の規定では強姦の被害を受けた女性しか保護されない)に懸念を表明するものである。委員会はまた、子どもに対する暴力事案についての全国的なデータ収集システムが存在しないことにも懸念を表明する。 45.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の虐待(性的虐待を含む)、ネグレクト、不当な取扱いおよび暴力を処罰し、かつ子どもを対象としたこれらの犯罪の定義を明確に定める目的で、国内法を見直すこと。 (b) 児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について時宜を得た十分な調査を行なうとともに、暴力および虐待の被害を受けた子どもが、十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 性的虐待の被害者および虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害を受けたその他のすべての子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のために利用可能なサービスを設置しまたは拡大すること。 (d) 非政府組織との協力等も通じ、被害者が犯罪者として扱われかつスティグマを付与されることを防止するためにあらゆる適当な措置をとること。 (e) 被害者が援助を求めることを抑止する社会文化的障壁についても取り上げながら、子どもの不当な取扱いの影響に関する公衆教育キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを実施すること。 (f) 子どもに対する暴力についてのデータ収集システムを確立するとともに、この現象を防止しかつ減少させることを目的とした、この問題に関するさらなる分析を行なうこと。 46.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、締約国がアジア・太平洋地域協議(2005年6月14日~16日)の受入れ国を務め、かつアンケートに対する文書回答を提出したことを、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的または精神的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための、具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう勧告するものである。 母親とともに刑務所にいる子ども 47.委員会は、タイにおける女性の収監率が高く、そのなかには妊娠している者または子どもがいる者もいることに、懸念とともに留意する。委員会は、量刑に関する決定において、子どもの最善の利益、および、子どもの養育責任を有する母親としての女性の役割が一貫して考慮されていないことを懸念するものである。委員会はまた、死刑を言い渡された妊婦が分娩後に処刑される可能性があることにも、特段の懸念とともに留意する。母親とともに刑務所で暮らしている子どもについて、委員会は、子どものいる女性は一般の受刑者から分離されていることに留意するものの、過密した劣悪な拘禁環境および不十分な職員体制について懸念を表明するものである。 48.委員会は、被告人が子どもの養育責任を有しているときは、子どもの最善の利益の原則(第3条)が、権限のある専門家によって注意深くかつ独立の立場から考慮され、かつ、拘禁に関するあらゆる決定(公判前の勾留および刑の言い渡しを含む)ならびに子どもの措置に関する決定において考慮されるべきことを勧告する。委員会は、収監された母親から分離された子どもの代替的養護が定期的に再審査され、かつ子どもの身体的および精神的ニーズが適切な形で満たされるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、代替的養護において子どもが収監されたままの母親との個人的関係および直接の接触を維持できることを、引き続き確保するよう勧告する。母親とともに刑務所で暮らしている子どもについて、委員会は、締約国が、条約第27条にしたがい、刑務所の生活条件が子どもの乳幼児期の発達にとって十分であることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この点についてとくにユニセフその他の国連機関の援助を求めるよう奨励するものである。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項)) 障害のある子ども 49.委員会は、障害のある子どもがすべての人権および基本的自由(普通教育および特別教育ならびに職業訓練へのアクセスを含む)を全面的に享受することを促進するため、締約国が多くの具体的措置をとってきたことに、評価の意とともに留意する。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、同国の遠隔地に住んでいる障害児が十分な保健サービスおよび社会サービスならびに教育にアクセスできていないことを懸念するものである。委員会はまた、障害のある子どもに関するデータが不十分でありかつ整合性を欠いていること、ならびに、これらの子どものための官民のサービスが標準化されていないことに関する締約国の懸念も共有する。 50.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)を考慮に入れながら、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関する包括的な国家的政策を策定しおよび採択し、ならびに計画の実施のために必要な財源および人的資源を配分すること。 (b) 障害のある子どもの権利、特別なニーズおよび可能性に関する意識啓発を図ること等により、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止するとともに、障害のある子どもが生活のあらゆる領域に完全に参加するための平等な機会を確保すること。 (c) 障害のある子どものための官民のサービスを標準化し、かつ、これらのサービスのアクセス可能性および質を監視すること。 (d) 障害のある子どもに対し、学校への物理的アクセスおよび適当な情報通信手段へのアクセスを提供すること。 (e) 国内の遠隔地に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関するデータ収集機構を確立し、かつ、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際にこれらのデータを活用すること。 健康および保健サービス 51.プライマリーヘルスケアを向上させるために締約国が行なっている努力、とくに予防接種プログラムに評価の意とともに留意し、かつ、乳幼児および妊産婦の死亡率の削減に関して達成された進展にも留意しながらも、委員会は、にもかかわらず、保健サービスのアクセス可能性に関する地域格差、子どもの栄養不良(とくにヨウ素欠乏症および鉄欠乏症)の蔓延状況ならびに同国における地中海貧血の発生について懸念する。委員会はまた、母乳育児率が低いことも懸念するとともに、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の規定が法制化されていないことに、懸念の意とともに留意するものである。 52.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 同国のすべての地域の子ども(遠隔地に住んでいる子どもも含む)が良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保すること。 (b) 同国の遠隔地に住んでいる母子に特段の注意を払いながら、産前ケアを向上させ、かつ妊産婦、乳児および5歳未満児の死亡率を削減するための努力を継続すること。 (c) とくに、締約国がヨウ素添加塩完全普及(USI)および鉄欠乏症根絶に関する目標を達成することを確保するための法律および政策を導入することを通じ、子どもの栄養状態を向上させること。 (d) 働く母親が必要している支援を考慮に入れながら、生後6か月間は母乳のみを与え、その後適切な乳児食を加える育児を引き続き奨励すること。 (e) 早期発見治療プログラム等も通じ、同国における地中海貧血の発生件数を削減するための努力を継続すること。 (f) この問題に関して、とくに世界保健機関(WHO)および国連児童基金(ユニセフ)と引き続き協力し、かつその技術的援助を求めること。 思春期の健康 53.委員会は、青少年による薬物の使用が犯罪の問題ではなく医学的問題として扱われるようになったことに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、タバコおよびアルコールの広告が禁止されるようになったことを評価するものである。しかしながら委員会は、青少年による薬物およびアルコールの消費率が高いままであることを懸念する。 54.委員会は、子どもおよび青少年をとくに対象とした、薬物およびアルコールに関する意識啓発およびその使用の防止のための効果的プログラムを引き続き促進するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、薬物およびアルコールに依存する子どもおよび青少年に対し、治療およびリハビリテーションのためのプログラムを引き続き提供するようにも勧告するものである。 環境衛生 55.委員会は、大気汚染および環境悪化のような広範な環境問題(自治体廃棄物および産業廃棄物の処理に関わる欠点も含む)が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることを懸念する。とくに農村部の家庭にとって水および衛生設備の状況が改善したことには留意しながらも、委員会は、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関する地域格差に懸念を覚えるものである。 56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに同国の遠隔地において、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させるための効果的措置を引き続きとること。 (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。 HIV/AIDS 57.委員会は、ミレニアム開発目標6を期限前に達成したことについて締約国を賞賛する。委員会は、HIV/AIDSの予防および削減のためにとられたさまざまな部門横断型の措置を歓迎するとともに、妊婦を対象として任意の相談および無償のHIV検査を実施するHIV/AIDS母子感染予防(PMTCT)国家プログラムに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、HIV/AIDSの母子感染のおそれがある状況のもとで出生する子どもの年間割合が相対的に高いことに、懸念を表明する。委員会は、HIV/AIDSに関する青少年の意識水準が低下する一方で、青少年のHIV感染リスクが高まりつつあることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、セックスワーカーが多数存在することのような、HIV感染の可能性を高めるリスク要因が存在することも懸念する。さらに、委員会は、他のいくつかの国々との間で現在交渉が進められている自由貿易協定により、負担可能な医薬品、とくに抗レトロウィルス薬へのアクセスに悪影響が生じる可能性があることを懸念するものである。 58.委員会は、締約国が、HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年、CRC/GC/2003/3)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、引き続き以下の措置をとるよう勧告する。 (a) コミュニティ段階の現実をとくに反映した政策およびプログラムを採択しおよび実施し、ならびに、地域レベルにおけるプログラムの立案、実施および監視に対していっそうの技術的および財政的支援を提供することにより、HIV新規感染を予防するための部門横断型の措置をとること。 (b) すべての妊婦に十分な保健サービスおよび社会サービスを無償で提供し、かつ、HIV陽性の母親に抗レトロウィルス薬および乳児用調合乳を提供することにより、HIV/AIDS母子感染予防(PMTCT)国家プログラムを全面的に実施すること。 (c) HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもに対する差別を防止しかつ禁止するとともに、これらの子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (d) 子どもが必要とするときは、親の同意を得ることなく、子どもに配慮し、かつ秘密が守られるHIV/AIDS相談にアクセスできることを確保すること。 (e) 学校および高等教育段階のカリキュラムに、HIV/AIDSに関する正確かつ包括的な情報および性教育(コンドームの利用促進を含む)を体系的に含めるとともに、教員その他の教育担当職員を対象としてHIV/AIDSに関する教育および性教育についての研修を実施すること。 (f) 地域的その他の自由貿易協定が、健康に対する権利の子どもによる享受に悪影響を及ぼさないことを確保すること。より具体的には、当該協定により、子どものための医薬品の入手可能性に悪影響が生じないことを確保すること。 (g) とくに国連合同エイズ計画の技術的援助を求めること。 59.委員会はまた、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/80、パラ243)を考慮すること等により、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重を統合し、かつ当該策定および実施に子どもの参加を得るようにも勧告する。 生活水準 60.タイにおける貧困削減のために締約国が行なっている努力(子ども保護基金の設置を含む)がきわめてうまくいっているにも関わらず、委員会は、貧困者の36%が子どもであること、および、地域によって所得水準に大きな格差があること(北部および東北部ならびに最南部3県が経済的にもっとも不利な立場に置かれた地域である)に、懸念とともに留意する。委員会は、貧困下で暮らしている子ども、とくに親を失った子ども、ストリートチルドレン、障害のある子どもならびに先住民族およびマイノリティのコミュニティに属している子どもが、社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスを含む人権の全面的享受に関して困難に直面していることを、深く懸念するものである。 61.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、とくに北部、東北部および最南部3県における効果的な貧困削減措置のために引き続き資源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国が、とくに、地方およびコミュニティのレベルで貧困削減戦略を策定しおよび実施する能力を増進させ、かつ、社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに十分な住居へのアクセスを確保することを通じ、貧困下で暮らしている人々の生活水準を向上させるための努力を強化するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、貧困下にある子どもおよび家族に対して使途が指定された資金ならびに具体的な援助および支援を提供するための努力を強化することも要請する。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 62.委員会は、義務教育の就学年数を6年から9年に延長し、最長12年間の無償教育を提供し、ならびに教育へのアクセスを拡大し、教育上の便益を改善しおよび地方言語またはマイノリティ言語で教育を提供するための、さまざまな立法上、行政上、政策上および予算上の措置を歓迎する。とくに委員会は、登録されていない子ども(登録されていない移民の子どもを含む)および無国籍の子どもが普通教育制度にアクセスできるようにする旨の、2005年7月5日の内閣決議を歓迎するものである。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、一部の子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもがいまなお良質な教育に平等にアクセスできていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、就学前教育のための便益が限られていることおよび初等中等段階における中退率が依然として高いことも懸念するものである。 63.委員会は、締約国に対し、登録されていない子どもが普通教育制度にアクセスできるようにする旨の内閣決議を全面的に実施し、かつ、地方レベルで同決議を十分に実施するために十分な資源を配分するよう促す。条約第28条に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告するものである。 (a) 同国のあらゆる地域で、就学前教育のための負担可能な便益を拡大すること。 (b) 初等中等学校における中退率を減らすための効果的措置をとること。 (c) 先住民族およびマイノリティの子どもが、それぞれに異なる文化的様式を尊重し、かつ先住民族およびマイノリティの言語を使用する良質な教育に平等にアクセスできるようにするための努力を継続すること。 (d) 自己の言語および宗教を学ぶマイノリティの権利を尊重しつつも子どもが同一の教育カリキュラムによる教育を受けることを確保し、かつ、教育を受けるすべての子どもが急進的な政治的または宗教的イデオロギーから保護されることを確保するため、締約国の管轄内にあるすべての学校が教育省によって監督されることを確保すること。 (e) もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する、締約国の最南部諸県の子どもたちに対して良質な教育への平等なアクセスを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。 (f) 職業教育の利用可能性を拡大し、かつその質を向上させること。 (g) 教育部門の改善のため、とくに国連教育科学文化機関(ユネスコ)およびユニセフ、ならびに非政府組織と協力すること。 教育の目的 64.委員会は、部分的には教授法の質が貧弱であることおよび資格のある教員が足りないことにより、教育の全般的質が低いことを懸念する。委員会は、とくに子どもがより高い学習段階に進むにつれて高まる、教育制度の高度に競争主義的な性質によって、子どもにさらなる負担が課されており、かつ子どもが可能な最大限度まで発達することが損なわれている可能性があることに、懸念とともに留意するものである。これとの関連で、委員会は、一部の子どもが放課後に塾に通っていることにより、休息、余暇、遊び、文化的活動およびレクリエーション活動の可能性が制限されており、かつ追加的費用が生じていることに、留意する。さらに、委員会は、多くの学校でスポーツおよびレクリエーションの機会が不十分であることに留意するものである。委員会はまた、人権および子どもの権利に関する教育学習活動が教員の裁量に委ねられており、すべての学校で義務的とされていないことも懸念する。 65.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)を考慮に入れながら、以下の目的のためにあらゆる措置をとるよう勧告する。 (a) 教員養成および資格のある教員(とくに女性ならびにマイノリティおよび先住民族集団の出身者)の採用拡大等も通じ、教育の質を向上させるための努力をさらに強化すること。 (b) 教育制度の競争性の緩和に努め、かつ主体的学習能力を促進するような方法で教育の質を増進させるとともに、学校における文化的生活、芸術、遊びおよびレクリエーション活動の促進等も通じ、子どもの人格、才能および能力を可能な最大限度まで発達させることを促進するための努力を強化すること。 (c) カリキュラムの一部としてスポーツおよびレクリエーション活動を提供すること。 (d) 子どもの権利に関する教育も含む人権教育の授業が、あらゆる教育段階の、公立および私立双方の学校で義務的とされることを確保すること。 8.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 難民および庇護希望者の子ども 66.タイで生まれた子どもの出生登録および国籍に関する法律の起草が現在進められていることには留意しながらも、委員会は、タイにおいて難民および庇護希望者の子どもを保護するための法的枠組みが存在せず、かつ国際法に違反する送還の可能性があることを深く懸念する。委員会はまた、虐待および搾取の被害をとくに受けやすい、保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもについても懸念を覚えるものである。さらに、委員会は、難民キャンプに収容される可能性がある元子ども兵士を含む子どもの安全について懸念を覚える。委員会は、締約国が1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書を批准しておらず、かつ条約第7条および第22条に付した留保を撤回していないことを遺憾に思うものである。 67.委員会は、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民を保護するための法律の採択および実施、ならびに、これらの子ども、とくにキャンプにいる子どもの安全を保障する政策およびプログラムが実施されることの確保を緊急に行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、これらの子ども、とくに元子ども兵士に関わる決定にノン・ルフールマンの原則が反映されることを確保するよう促すものである。委員会はまた、前回の勧告をあらためて繰り返し、締約国に対し、1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書を批准するよう促す。 移住労働者の子ども 68.移住労働者の子どもを登録するために締約国が行なっている努力は認めながらも、委員会はなお、このような子どもがタイにおいて脆弱な立場に置かれていることを深く懸念する。地方警察による恣意的逮捕および拘禁のような、移住労働者およびその家族構成員に対する人権侵害の訴えがあることは、重大な懸念の理由となるものである。委員会は、多くの家族が、幼い子どもがいる妊婦でさえも、迫害されるのではないかという恐怖を有しているにも関わらず送還されていることを遺憾に思う。加えて、委員会は、移住労働者の子どもがさまざまな保健サービスおよび教育サービス(HIV/AIDSの予防およびケアに関するものを含む)にアクセスできておらず、その生活環境がしばしば著しく劣悪であり、かつ、その多くが有害な条件下で長時間働いていることに、特段の懸念とともに留意するものである。 69.委員会は、移住労働者の子どもまたはその家族構成員、とくに登録されていない移住者が恣意的に逮捕され、拘禁されまたは迫害されないこと、および、これらの者が出身国に送還されるときはノン・ルフールマンの原則が尊重されるべきことを確保するため、締約国が緊急の措置をとるよう勧告する。委員会は、差別の禁止の原則にしたがい、移住労働者の子どもが保健サービスおよび社会サービスならびに教育へのアクセスを保障されるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利に関する国際条約を批准するよう勧告する。 経済的搾取および児童労働 70.委員会は、最悪の形態の児童労働を撤廃するための国家行動計画(2004~2009年)が導入されたことに留意する。委員会はまた、締約国が国際労働機関の児童労働撤廃国際計画(ILO/IPEC)と協力していることにも、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的な措置にも関わらず、委員会は、締約国において児童労働を含む経済的搾取が広範に生じていることを依然として懸念する。委員会はまた、労働保護法においてインフォーマル部門(たとえば農業、小規模家内企業および家事労働)で働く子どもが対象とされていないことも懸念するものである。 71.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内の労働法を効果的に実施すること。 (b) 労働保護法の適用範囲を拡大することにより、インフォーマル部門で働く子どもの保護を確保すること。 (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するために労働監察制度を改善するとともに、当該制度が子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告できるようにすること。 (d) 労働に従事する子どもが引き続き教育、訓練およびレクリエーションにアクセスできることを確保すること。 (e) 引き続き、ILO/IPECの地域活動および地域間活動に積極的に参加すること。 性的搾取および子どもの人身取引 72.委員会は、売買春防止・抑止法(1996年)ならびに「商業的性的搾取の防止およびこれとの闘いに関する行動計画」の採択をはじめ、子どもの性的搾取と闘うために締約国が行なっている真剣な努力に留意する。しかしながら委員会は、締約国において児童買春、セックス・ツーリズムおよび児童ポルノを含む性的搾取が広範に生じていることに、懸念を表明するものである。 73.人身取引防止・抑止国家委員会の設置(2005年3月)、子どもおよび女性の人身取引問題に対処するための6か年国家計画および行動計画の採択(2003年)ならびに近隣諸国との了解覚書の締結のような、子どもの人身取引と闘うための努力を締約国が強化しているにも関わらず、委員会は、タイが性的搾取および強制労働目的の子どもの人身取引の送り出し国、通過国および目的地国となっていることに、深い懸念を表明する。委員会は、少数民族および部族民に属する女子が北部から南部へ取引されるなどの国内人身取引の事案が報告されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、脆弱な立場に置かれた集団の子どもにとって人身取引および搾取のおそれがいっそう高まり、かつ人身取引の被害を受けた子どもが送還されていることに、懸念とともに留意する。さらに、締約国において法執行および人身取引対策の実施が弱いことは深刻な懸念の理由となるものである。 74.委員会は、締約国に対し、1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して十分な援助および社会的再統合のためのサービスを提供する努力を強化するよう、促す。 75.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連の法律の効果的執行を確保することにより、国内でおよび国境を越えて行なわれるあらゆる形態の人身取引と闘うための措置を強化すること。 (b) 子どもの人身取引を防止するため、他の送り出し国および通過国との二国間および多国間の協定ならびに協力プログラムを強化しかつ拡大すること。 (c) すべての人身取引事案が捜査され、ならびに加害者が告発されおよび処罰されることを確保すること。 (d) 人身取引の被害を受けた子どもが保護されるのであって犯罪者として扱われないこと、ならびに、このような子どもに対して回復および社会的再統合のための十分なサービスおよびプログラムが提供されることを確保すること。 (e) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点についてタイ国政府観光庁(TAT)および観光サービス業者と引き続き連携すること。 (f) 子どもの人身取引と闘いかつこれを防止するため、子どもの人身取引の悪影響に関する公衆の意識を引き続き高め、かつ、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに一般公衆の研修を継続すること。 (g) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2000年)を批准すること。 (h) とくにILO/IPEC、国際移住機関および非政府組織との協力を強化すること。 少年司法の運営 76.委員会は、最近行なわれた少年家庭裁判所設置および少年家庭手続導入法(1991年)の改正を歓迎する。2005年2月に施行されたこの改正は、少年家庭裁判所が設けられていない県においてはすべての刑事裁判所で少年家庭裁判所の手続が適用されなければならない旨、定めたものである。委員会は、刑事施設における体罰を禁じた最近の省令に留意する。委員会はまた、罪を犯した少年を対象とするシェルター・ハウスおよびダイバージョン・プログラム、ならびに、修復的司法の概念を促進する家族集団会議プログラムの利用も歓迎するものである。委員会は、毎年、罪を犯した約4500名の少年が拘禁センターに送致されていることに留意する。しかしながら委員会は、一部地域には少年拘禁施設が存在しないために子どもが引き続き成人とともに収容されていることを懸念するものである。委員会はまた、刑事責任に関する最低年齢が低い(7歳)旨の懸念もあらためて繰り返す。 77.委員会は、前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、少年司法に関する法律および実務が、条約の規定、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(国連総会決議45/112)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(国連総会決議45/113)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針(1997年7月21日の国連経済社会決議1997/30添付文書)のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致することを確保するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑法の関連規定を改正し、刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 国内法を改正し、刑事施設における体罰の使用の禁止を強化すること。 (c) 18歳未満の被拘禁者が成人から常に分離されること、および、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。 (d) 18歳未満の者のための別の施設および(または)別の拘禁房の整備を迅速に進めることによってこれらの設備があらゆる地区に存在することを確保するとともに、被収監者に対して教育、職業訓練および治療のためのプログラムを提供すること。 (e) ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、家族・共同体集団会議、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を引き続き実施すること。 (f) とくに脆弱な立場に置かれた子どもとの関連で、防止のための戦略および措置を支援しかつ強化すること。 (g) 法律に触れた子どもおよびその社会への再統合を援助するためのコミュニティを基盤とするプログラムおよびサービスを支援すること。 (h) とくにユニセフおよびOHCHRの技術的協力を求めること。 先住民族およびマイノリティのコミュニティに属する子ども 78.委員会は、スティグマおよび差別の両方を受けている、先住民族、部族民およびマイノリティの子どもに属する子どもの状況について懸念を表明する。とくに、委員会は、先住民族およびマイノリティの間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることを、懸念するものである。委員会はまた、先住民族およびマイノリティの子どもに無国籍でありかつ(または)出生登録をされていない者が多く、虐待および搾取の危険性が高まっていることも懸念する。委員会はさらに、タイの山岳民族に関する人口動態データが現時点で不十分であることに留意するものである。 79.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、先住民族およびマイノリティの子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、自己の歴史的および文化的アイデンティティ、慣習、伝統および言語を維持する先住民族およびマイノリティの子どもの権利を保護するため、先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年9月)の日に委員会が採択した勧告を考慮に入れながら十分な措置をとるよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを引き続き策定しかつ実施するようにも促す。委員会はまた、締約国が、すべての先住民族およびマイノリティの子どもが出生登録にアクセスできることを確保するとともに、無国籍の問題に対処するための措置を引き続き実施するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、山岳民族ならびにすべてのマイノリティおよび先住民族の集団に関する人口動態調査を実施し、かつデータを性別、年齢および県によって細分化するよう勧告する。 9.子どもの権利条約の選択議定書 80.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約選択議定書に2006年1月に加入したことを歓迎する。委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に加盟するという内閣の最近の決定に留意し、締約国が同選択議定書を批准するよう勧告するものである。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 81.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を内閣の構成員、議会、関連省庁ならびに適用可能なときは県および郡の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 82.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、同国の言語で、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 83.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2009年4月25日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/210.html
総括所見:ネパール(第2回・2005年) 第1回(1996年)/第3回~第5回(2016年)OPSC(2012年)/OPAC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.261(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月20日に開かれた第1032回および第1033回会合(CRC/C/SR.1032 and 1033参照) においてネパールの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.30)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、率直かつ豊かな情報を含んだ締約国の第2回定期報告書、および、事前質問事項(CRC/C/Q/NPL/2)に対する文書回答の提出を歓迎する。報告書の提出が遅れたことは遺憾であるものの、これらの文書は、締約国における子どもの状況をいっそう明確に理解させてくれた。委員会はさらに、代表団との間に開かれたかつ建設的な対話が持たれ、かつ、議論の最中に行なわれた提案および勧告に対して積極的な反応があったことに、評価の意とともに留意するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、条約の実施の増進を目的とした以下の法律の採択に留意する――(a) 危険な労働の定義を定め、かつ16歳未満の子どもの雇用を禁じた児童労働(禁止および規制)法(2000年)、および、(b) 債務労働者の解放を成文化し、カマイヤ(債務労働者)の労働慣行に関与していた使用者を処罰し、かつ政府によるカマイヤ救援基金を設置したカマイヤ禁止法(2002年)。 4.委員会は、条約の実施の増進を目的とした、以下の条約の批准を歓迎する――(a) 人身売買および他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(2002年)、ならびに、(b) 〔国際労働機関の〕強制労働条約(1930年、第29号)(2002年)、最低年齢条約(1973年、第138号)(1997年)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2002年)。 5.委員会は、子どものための国家行動計画(2005~2015年)の採択を歓迎する。 6.委員会はまた、第9次計画(1997~2002年)に、条約にしたがった子ども開発政策が含まれたことも歓迎する。 7.委員会はさらに、その任務に条約の実施の増進を含む以下の機関が設置されたことを歓迎する――(a) 国家人権委員会(2000年)、とくに子どもの権利デスク、(b) 国家女性委員会(2002年)、(c) 国家ダリット委員会(2002年)、(d) 20以上の郡に設置された子どもクラブ、および、(e) 国家貧困緩和基金。 8.委員会は、締約国が、「同国における暴力の雰囲気および国内武力紛争に留意しながら人権および国際人道法の遵守を監視する」国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の事務所を設置する旨を定めた協定を、2005年4月11日にOHCHRと締結したことを歓迎する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、武力紛争のために不安定および暴力が蔓延する全般的情勢に関わって締約国が直面している諸課題を認知する。委員会はまた、貧困水準がきわめて高く、それが重い債務負担によって悪化していること、ならびに、多くの伝統的な信仰および慣習ならびにカースト制度が存在していることにも留意する。これらはいずれも、条約に掲げられた子どもの権利の全面的実現における進展を阻害する要因である。 D.主要な懸念領域および勧告 武力紛争が条約の実施に及ぼす影響 10.委員会は、締約国とネパール共産党(毛沢東主義派)との間で行なわれている武力紛争がネパールの子どもたちに著しい悪影響を及ぼしており、かつ、これによって最低限の条約の実施さえ困難な状態が生じてきたことに留意する。委員会は、武力紛争ならびに2000年および2004年非常事態宣言により生じた恐怖、不安定および不処罰の雰囲気が、締約国の子どもの健全な発達に対して深刻な身体的および心理的悪影響を及ぼしてきたことに留意するものである。委員会は、毛派の反乱兵による、学校の大規模な爆撃、破壊および閉鎖について著しい懸念を覚える。これは、子どもの教育に対する基本的権利の侵害である。委員会はまた、この総括所見でも概観されているとおり、紛争が、締約国における条約の実施について既に存在している諸問題の悪化にもつながってきたことにも、深い懸念とともに留意する。 11.委員会はさらに、議会が2002年に解散させられて存在しないことにより、締約国が法律を制定しもしくは改正することも、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を含む国際条約を批准することもできないことに、深刻な懸念とともに留意する。 12.締約国の領域の諸地域を国家以外の主体が事実上の統制下に置いていることに留意しつつ、委員会は、締約国が全面的責任を負っていることを強調するとともに、ネパール共産党(毛沢東主義派)に対し、同党が展開している地域で子どもの権利を尊重するよう促す。委員会は、締約国に対し、いかなるときにも条約を尊重し、かつ、非常事態を含む例外的状況下にあってさえ条約のいかなる規定からも逸脱しない、自国の義務を想起するよう求めるものである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもに対する暴力に関わる不処罰と闘うためにいっそう強力な措置をとるよう、勧告する。 13.委員会は、締約国に対し、議会を含む締約国の通常の機能を回復し、かつ条約の両選択議定書を批准するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 1.実施に関する一般的措置 前回の勧告 14.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.34)の検討後に委員会が採択した総括所見の勧告の一部、とくにパラ25(立法)、26(差別の禁止)、29(データ収集)、30(子どものための資源配分)、31(出生登録)、32(基礎的サービスへのアクセス)、33(難民の子ども)、34(虐待およびネグレクト)、35(ストリートチルドレン)、36(児童労働)、37(売買および取引)および38(少年司法)に掲げられたものについて、十分なフォローアップが行なわれていないことを遺憾に思う。これらの勧告は、この総括所見でもあらためて繰り返されているところである。 15.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告を実施するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 16.委員会は、条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で国内法(とくに挙げておくべきものとして1992年子ども法)を改正しようとする締約国の計画を歓迎する。しかしながら委員会は、このような作業の進行速度について若干の懸念を表明するものである。 17.委員会はまた、法律、とくに地方法、慣習法および宗教法における相違によって子どもの権利の保護および促進が不均衡かつ差別的なものとなっていることに関わる前回の懸念も、あらためて表明する。 18.委員会は、締約国が、法律(とくに1992年子ども法)と条約の原則および規定との全面的一致を達成するプロセスを引き続き強化するよう、勧告する。委員会はさらに、すべての年齢の子どもが裁判所に保護を求められることを確保するため、締約国が、子ども法に定められた現行の年齢制限を撤廃するよう勧告するものである。 19.委員会は、締約国に対し、とくに法執行および意識啓発活動を通じ、子どもの権利の保護および促進を目的とした現行法の実施を強化するよう、促す。 国家的行動計画 20.委員会は、子どものための国家行動計画(2005~2015年)の採択は歓迎しながらも、締約国に現在存在する治安上の懸念によって資源が基礎的社会サービスから相当に転用されており、そのためこの国家行動計画の実施が阻害される可能性があることを、依然として懸念する。 21.委員会は、締約国に対し、国家行動計画の効果的実施のために十分な資源を配分するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が、とくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求め、かつ同計画の実施に市民社会の関与を得るよう、勧告するものである。 調整 22.委員会は、郡子ども福祉委員会、中央子ども福祉委員会、女性・子ども・社会福祉省、〔同省の〕女性開発局、郡女性開発部および郡開発委員会のいずれもが、条約の実施に関わる事柄について役割を果たしていることに留意する。委員会は、最近採択された国家行動計画の実施におけるものも含め、これらの機関間で十分な体制に基づく明確な調整が行なわれていないことに、懸念を表明するものである。委員会はまた、これらの機関に現在配分されている資源がそれぞれの職務を効果的に遂行するために十分ではない可能性があることも、懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関わるあらゆる活動の調整、監視および評価のための、省庁および諸部門を横断した単一の機構を指定しまたは設置するよう、勧告する。このような機関は、国家計画委員会との緊密な調整の対象とされ、かつその職務を効果的に遂行するための強力な権限ならびに十分な人的資源および財源を提供されるとともに、市民社会の構成員、子どもの権利の専門家その他の専門家ならびに政府代表の参加を得るべきである。 独立の監視 24.委員会は、締約国に、国家人権委員会(とくに子どもの権利デスク)ならびに国家女性委員会および地区子ども福祉委員会が設置されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国内のすべての子どもがこれらの苦情申立て機構にアクセスでき、およびこれを利用できるかについて、ならびに子どもの権利デスクの権限が限られていることについて、懸念を覚えるものである。委員会はまた、これらの機関がその権限を履行するために締約国が与えている政治的および財政的支援が不十分であることも、懸念する。さらに委員会は、現に活動中である郡子ども福祉委員会の数が限られていることを懸念するものである。 25.国内人権機関に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、国家人権委員会および他の独立の監視機関が条約の実施を効果的に監視できるよう十分な人的資源および財源を配分されることを確保するともに、これらの機関が子どもにとって容易にアクセスできかつ利用者にやさしいものであることを確保するためにあらゆる効果的な措置をとるよう、奨励する。委員会は、締約国が、子どもの権利デスクの権限を拡大して個別事案および子どもからの苦情への対応も含めることを検討するよう、提案するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもが苦情申立て機構を効果的に活用することを促進するため、意識啓発の努力を強化するよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、郡子ども福祉委員会の権限の強化を検討するよう提案するものである。 26.委員会は、締約国に対し、現在の委員会の任期が2005年5月25日に終了して以降も、国家人権委員会の有効性および独立性を維持するよう、強く促す。 子どものための資源 27.委員会は、締約国が直面している経済的および政治的困難、ならびに、基礎的社会サービスおよび教育への支出を増額するために行なわれている努力は承知しながらも、子どものためにおよび子どもの権利の実施のために十分な予算配分が行なわれていないことを懸念する。 28.条約第4条の実施を強化する目的で、かつ第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国が、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ権利を基盤とするアプローチを活用しながら子どもの権利の実施を確保するための予算配分を優先させるよう、勧告する。これとの関係で、委員会は、締約国に対し、国際協力の枠組みのなかで資源が効率的かつ効果的に配分されることを確保するよう、促すものである。 データ収集 29.委員会は、締約国に包括的かつ最新の統計データが存在しないこと、および、条約で対象とされているすべての分野についての十分な全国的データ収集システムが設置されていないことを、懸念する。 30.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢、地方行政区および被扶養関係によって細分化されたデータ収集および指標のシステムを発展させるよう、勧告する。このシステムは、とくに脆弱な立場に置かれた子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子どもおよびひとり親家庭の子どもを含む)をとくに重視しながら、18歳に達するまでのすべての子どもを対象とするべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための法律、政策およびプログラムの立案に際してこれらの指標およびデータを活用するよう、奨励する。委員会は、締約国が、この点に関してとくにユニセフの技術的援助を求めるよう勧告するものである。 普及 31.定期報告書の作成に市民社会の構成員(子どもを含む)を関与させ、かつ条約についての情報を普及するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、条約の原則および規定に関する意識を高めるためのこれらの措置が不十分であることを懸念する。とくに委員会は、条約の原則および規定がすべての教育段階のカリキュラムに編入されておらず、かつ、子どものためにおよび子どもとともに働く専門家の研修および啓発を導入する体系的計画がないことを、遺憾に思うものである。 32.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなおよび子どもの間で同様に広く認識されかつ理解されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもおよびその親ならびに子どものためにおよび子どもとともに働く専門家集団(とくに議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員、保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象として、条約の権利に関する体系的な教育および研修を実施することも勧告するものである。これとの関連で、委員会は、すべての教育段階の公式カリキュラムに人権教育が含まれるべきことを勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関してユニセフおよびOHCHRの技術的援助を求めることを検討するようにも勧告するものである。 市民社会との協力 33.委員会は、公的機関によって市民社会組織に課されている広範な制限(再登録要件、検閲、渡航禁止、および、ドナーから助成金を受領する前に政府の認可を得なければならないとする要件など)について懸念を表明する。 34.委員会は、条約の全面的実施における市民社会の役割の重要性を強調するとともに、締約国が、締約国における市民社会組織の自由な活動を妨げるすべての法律上、実際上および行政上の障壁を撤廃するよう、勧告する。 2.一般原則 差別の禁止 35.差別が憲法その他の関連法で禁じられていること、および、差別解消のために締約国がさまざまな努力を行なっていることには留意しながらも、委員会は、女子およびもっとも脆弱な立場に置かれた集団(ダリット・コミュニティ、先住民族または民族的マイノリティ集団に属する子ども、子どもの難民および非ぼ希望者、ストリートチルドレン、障害のある子どもおよび農村部に住んでいる子どもなど)に対する事実上の差別が広く蔓延していることについて、あらためて深い懸念を表明する。委員会は、差別的態度が蔓延している結果、脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもが虐待および搾取の被害者にとりわけなりやすいことに、重大な懸念とともに留意するものである。 36.とくに、教育、雇用、婚姻、公共の場所(水場および礼拝場所を含む)へのアクセスの面でダリットに対して根強く行なわれている事実上の差別についての人種差別撤廃委員会の懸念(CERD/C/64/CO/5)を参照しつつ、委員会は、このような形態の差別の蔓延が締約国におけるダリットの子どもの身体的、心理的および情緒的ウェルビーイングに及ぼす有害な影響について、深刻な懸念を表明する。 37.委員会は、第2条にしたがい、管轄内のすべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保する目的で、締約国が、差別の禁止に対する権利を保障した現行法の実施を確保し、かつ必要な場合には適切な法律を採択するための努力を強化するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どものための社会サービスを優先させ、かつ対象を明確にしながら提供するとともに、これらの子どもが搾取から保護されることを確保するためにあらゆる効果的な措置をとるよう、促すものである。委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための包括的な公衆情報キャンペーンを開始するよう奨励する。 38.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 39.意見を聴かれる子どもの権利を促進するため、締約国が市民社会の構成員と協力しながら行なっている取り組みは留意しながらも、委員会は、子どもの生活のあらゆる分野において子どもの意見が十分に考慮されておらず、かつ、締約国の法律ならびに行政上および司法上の決定、または子どもに関連する政策およびプログラムに、第12条の規定が全面的に統合されていないことを懸念する。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第12条にしたがい、社会のあらゆる分野、とくに家庭、学校およびコミュニティにおいて、自己に影響を与えるすべての事柄について子どもの意見の尊重を促進しかつそのための便宜を図り、かつ子どもの参加を確保すること。 (b) とくに監護権をめぐる紛争および子どもに影響を与えるその他の法的手続において、子どもの権利〔意見〕が聴かれ、かつその意見が考慮されるよう、法律を改正すること。 (c) 子どもの意見が考慮されるようにし、かつ子どもの参加を可能とする目的で、とくに親、教員、政府行政機関の職員、司法関係者および社会一般に対し、子どもの権利に関する教育的情報を提供すること。 3.市民的権利および自由 出生登録および国籍に対する権利 41.出生登録が法律で義務づけられていることには留意しながらも、委員会は、締約国の努力にもかかわらず、低い出生登録率が、とくに農村部において依然として問題となっており、かつ、出生登録を含む「行政サービス」を遂行する地方公的機関の能力を減少させてきた紛争によって悪化していることを、懸念する。委員会は、出生時に登録されなかった子どもが、年齢の立証が不可能なために、武装集団への徴募を含む虐待および搾取の被害をより受けやすいことを懸念するものである。 42.委員会はまた、多くの集団の子どもが登録されず、かつ(または)ネパール市民権を得る資格を有していないことも懸念する。これにより、これらの子どもによる基本的権利および自由(とくに親を知り、かつ親によって養育される権利)の全面的享受に重大な悪影響が生じている。委員会は、出生、死亡その他の身元事項(人口動態登録)法(1976年)の現行規定上、母が子の登録に際して困難を経験する場合があり、かつ、同様に、市民権法(1964年)が子どもに対して母の名による国籍請求を認めていないことを、とりわけ懸念するものである。その結果、父が外国人である子ども、遺棄された子ども、両親がいない子ども、シングルマザーの子どもおよびバディ・コミュニティの子どもは、父の身元を明らかにできない場合、市民権を取得できない。加えて、委員会は、ブータン難民の出生登録が公的機関によって行なわれていないことに懸念を表明する。 43.条約第7条に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための努力(意識啓発キャンペーンを含む)を強化するよう促す。これとの関連で、委員会は、出生登録の事務を委ねられた地方政府当局が、出生が時機を失することなく実効的に登録されることを確保するために積極的に地域コミュニティの関与を得ることを、締約国が確保するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフ、非政府組織および市民社会の他の構成員の援助を求めるよう促す。 44.委員会はさらに、締約国に対し、条約第7条および第8条との全面的一致を確保するため、関連の法律、とくに出生、死亡その他の身元事項(人口動態登録)法(1976年)、市民権法(1964年)ならびに憲法第9条1項、2項および5項を優先的課題として改正するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、難民の出生登録に関する政策を優先的課題として見直すとともに、締約国で出生した難民および庇護希望者の子ども全員に対して出生証明書が発行されることを確保するようにも、勧告するものである。 プライバシーの保護 45.委員会は、「罪を犯した子ども、強姦被害者または困難な状況にある子どもの素性がメディアで明らかにされ続けている」(〔締約国報告書〕パラ124)ことに、懸念とともに留意する。これは条約第16条の明確な違反である。 46.委員会は、締約国に対し、ネパールで放送されるすべての資料において子どものプライバシー権が尊重されることを確保するための、行動規範および(または)自主規制などの機構を設置するとともに、メディア専門家を対象として、子どものプライバシー権に特段の関心を払いながら適切な人権研修が行なわれることを確保するよう、促す。 体罰 47.委員会は、子どもの体罰および不当な取扱いが家庭、学校その他の施設において蔓延していることを懸念する。委員会は、1992年子ども法および1963年ムルキアイン(民法)の規定で、家庭、学校その他の施設および諸形態の子どものケアにおける体罰が規定されていることを懸念するものである。これは条約第19条に明確に違反している。委員会は、子どもにとって有害な伝統的慣行を法律によって具体的かつ法的に〔重複ママ〕禁止することの重要性を強調するものである。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校その他の施設における子どもの体罰および不当な取扱いを法律で明示的に禁止すること。 (b) 条約第19条との一致を確保するため、子ども法および1963年ムルキアインの関連規定の改正プロセスを加速させること。 (c) 体罰および不当な取扱いが子どもに及ぼす悪影響についての情報を、親、教員および子ども(とくに施設の子ども)とともに働く専門家に対して提供するための意識啓発キャンペーンを強化するとともに、このプロセスに子どもおよびメディアを積極的に関与させること。 (d) 前向きな、参加型の、非暴力的形態のしつけおよび規律の維持が、体罰に代わる手段として、社会のあらゆるレベルで、子どもの人間の尊厳と一致する方法でかつ条約(とくに第28条2項)にしたがって行なわれることを確保すること。 4.家庭環境および代替的養護 親からの子どもの分離/家庭環境を奪われた子どもと代替的養護 49.委員会は、締約国で現在行なわれている武力紛争の結果、ますます多くの家族および子どもが家族の解体および分離のおそれに直面していることを深く懸念する。委員会は、武力紛争のみならずHIV/AIDSの結果としてもますます多くの子どもが入所型養護施設に措置されており、かつ、これらの子どもの多くにはまだ両親の双方もしくは一方および(または)近親者がいることを、同様に懸念するものである。さらに委員会は、これらの入所型養護施設が締約国の定めた基準を満たしておらず、かつその多くは登録されていないことを懸念する。委員会はまた、これらの施設の質に関する十分かつ効果的な監視が行なわれていないことも懸念するものである。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 親としての義務の履行に関して親を支援するための、コミュニティの組織および社会保障手当を通じたプログラムを策定しかつ実施するとともに、これとの関連で、武力紛争の影響を受けている家族およびもっとも脆弱な立場に置かれた家族(ひとり親世帯など)に特段の注意を払うこと。 (b) 拡大家族のような既存の組織を強化するためのプログラムを実施することによって分離された家族の再統合を図り、かつ、十分な資源および十分に訓練されたスタッフを備えた里親養護制度を導入するために、効果的措置をとること。 (c) 入所型養護施設が条約に一致した質的基準を満たすこと、これらの施設が登録されかつ定期的に監視されること、および、このような措置が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられるようにするため、条約第25条にしたがい、これらの施設への子どもの措置が定期的に再審査されることを、確保すること。 親が収監されている子ども 51.委員会は、相当数の子どもが、しばしば国際基準を満たさない劣悪な環境のもと、親とともに成人刑務所で生活していることを懸念する。 52.委員会は、締約国に対し、子どもが親とともに刑務所で生活するという現在の慣行を、このような滞在をそれがその子どもの最善の利益である場合に限定し、かつ刑務所における生活環境が子どもの調和のとれた発達のためのニーズにとってふさわしいものであることを確保する目的で、見直すよう勧告する。委員会はまた、親が収監されている子どもが、たとえば拡大家族における十分な代替的養護を提供され、かつ親との定期的接触を認められるべきことを勧告するものである。 養子縁組 53.相当数のネパール人の子どもが外国人によって養子とされていることにかんがみ、かつ締約国で現在行なわれている武力紛争の文脈において、締約国は、国際養子縁組に関する明確な政策および適切な法律がなく、そのため赤ちゃんの取引および密輸のようなさまざまな慣行が行なわれていることを懸念する。委員会は、親の責任の停止をともなう事案について、適正な司法手続が(親または保護者の養育能力に関する技術的アセスメントを含む)存在しないことをとりわけ懸念するものである。委員会はまた、家事労働者としての子どもの搾取をともなう可能性がある、いわゆる非公式養子縁組の慣行についても懸念を表明する。 54.委員会は、締約国に対し、国際養子縁組の慣行が条約の原則および規定、とくに第21条と全面的に一致することを保障するため、この形態の養子縁組に関する政策および法規定を策定しかつ実施するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) とくに子どもの取引および密輸を防止する目的で、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准すること。 (b) 養子縁組事案を担当する専門家が、事案をハーグ条約に照らして審査しかつ処理するために必要な技術的専門性を全面的に備えることを確保する目的で、国内養子縁組および国際養子縁組に関する現行の機構および手続、とくに国および郡の段階の意思決定機関の役割および責任を見直すこと。 (c) ネパール人の子どもの養子縁組に関する厳格な基準を策定しかつ実施し、とくに武力紛争の結果として親族から分離された子どもの親または近親者を効果的に追跡するための合理的期間を確保するとともに、子どもの親の貧困が養子縁組のための法的根拠になりうると定めた「ネパール人の子どもを外国国民による養子縁組の対象とするための条件および手続」(2000年)の規定を廃止すること。 (d) すべての養子縁組関連事案において、親の責任の停止および(または)子どもの分離を防止するためにあらゆる手段が尽くされたことが明確な基準のひとつとされることを確保すること。 (e) 子どもが搾取されることを防止し、かつ子どものすべての権利(教育および保健ケアに対する権利を含む)が全面的に尊重されることを確保するため、近親者その他の者に子どもを措置する慣行を規制しかつ監視すること。 虐待およびネグレクト(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 55.子ども法で、親、保護者または教員による子どものいかなる残虐な取扱いも禁じられていることには留意しながらも、委員会は、締約国で子どもの虐待およびドメスティックバイオレンスが蔓延していることを危惧するとともに、締約国で現在施行されている国内法は、子どもおよび女性に対し、虐待およびドメスティックバイオレンスからの十分な保護を与えていないという見解に立つ。とくに委員会は、子どもを残虐な取扱いから保護している子ども法が効果的な救済機構について定めていないこと、および、同法の違反が国法上の犯罪とみなされておらず、そのため民事訴訟手続に基づく救済措置しか提供されないことに、留意するものである。委員会はさらに、議会が解散前の2002年4月に通過させたドメスティックバイオレンス統制法案が正式に制定されなかったことを遺憾に思う。委員会は、締約国において、法律で処罰される犯罪としての女性および子どもに対する暴力に関する意識が、法執行官等の間においても不十分であることを懸念するものである。 56.委員会は、子ども法において児童ホーム、リハビリテーションセンターおよび孤児院で提供されているケアの査察についても規定されていることには留意しながらも、適切な苦情申立て手続が設けられていないこと、および、虐待およびネグレクトの被害を受けた子どもの安全な避難所が指定されていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの虐待およびネグレクトの訴追が、法制度に重要な制度基盤上の問題があることによって阻害される可能性があることも、懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、とくに以下の手段をとることによって、子どもの虐待およびネグレクトを防止するために必要な措置をとるよう勧告する。 (a) この現象を防止しかつ減少させる目的で、その原因および範囲についての研究を行ない、かつ、子どもの虐待、ネグレクトおよびドメスティックバイオレンスの事件の多発および増加に対応するための包括的戦略を確立すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家に対し、虐待およびネグレクトが疑われる事案についての通報義務を必須とする法律を導入するとともに、これらの専門家を対象として不当な取扱いの発見、通報および対応についての研修を実施すること。 (c) 被害者が援助を求めることを妨げる社会文化的障壁に対応しながら、子どもの不当な取扱いの影響、および、子どものしつけおよび規律のための代替的措置についての意識を高める公衆教育キャンペーンを実施すること。 (d) 子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ調査するための効果的機構を設置するとともに、子どもの虐待およびネグレクトの加害者が適正に訴追されることを確保し、かつ証人および被害者の保護のための適切な制度を設けること。 (e) 性的虐待の被害者、および、虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害を受けた他のあらゆる子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのサービスを提供するとともに、NGOとの協力等も図りながら、被害者の犯罪者扱いおよびスティグマを防止するために適切な措置をとること。 (f) とくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めること。 5.基礎保健および福祉 障害児 58.障害のある人に関する国家政策が策定されたこと、および、障害のある子どもの権利について定めた法律(1982年障害者保護福祉法、1971年教育法および1992年子ども法を含む)が存在すること、ならびに、障害のある人のためのプログラムを発展させかつ支援する国家障害者サービス調整委員会が設置されたこと(2000年)は認知しながらも、委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) これらの法律およびプログラムの実施が不十分であり、かつ、必要な資源が締約国によって配分されていないこと。 (b) 障害のある子どもに関わる全国的な早期発見・早期介入システムが設けられていないこと。 (c) 障害のある子どもの教育制度および社会一般へのインクルージョンを促進するための努力(障害のある人に対する伝統的態度を変革し、かつ情報、医療施設等へのアクセスを向上させるための努力を含む)が不十分であること。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 障害のある子どもに関する包括的な政策の策定プロセスを速やかに進めるとともに、必要な措置、とくに効果的実施のための十分な資源の配分を行なうこと。 (b) 障害の原因および予防方法を明らかにするための研究を実施し、かつ、早期の発見、付託および介入のための全国的システムを設置すること。 (c) 適当な保健ケア、教育サービスおよび就労機会へのアクセスの観点からこれらの子どもの状況を評価するとともに、障害のある子どものためのサービスを強化し、その家族を支援し、かつこの分野における専門家を訓練するための十分な資源を配分すること。 (d) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69、パラ310-339)に照らして、とくに、教員を対象とする特別訓練に対していっそうの注意を向け、かつ物理的環境(学校施設、スポーツ施設および余暇施設ならびに他のあらゆる公共の場所を含む)を障害のある子どもにとってアクセス可能なものとすることにより、障害のある子どもの普通教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励すること。 (e) 親、および、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門スタッフ(教員を含む)を対象とする訓練のための技術的協力を、とくにユニセフおよびWHOに対して求めること。 健康および保健サービス 60.委員会は、児童期疾病統合管理戦略を実施するための作業部会の設置(1997年)を歓迎するとともに、5歳未満の子どもの予防接種率を向上させるための締約国の努力(包括的なはしか予防接種キャンペーンが最近完了したことを含む)を称賛する。にもかかわらず、委員会は、保健サービスおよび社会サービスの資源が著しく制約されており、かつ、締約国の子どもが利用できる保健ケアの全般的な質および利用可能性が、とくに貧しい家族の間でおよび農村部において深刻なほど不十分であるという、締約国の懸念を共有するものである。とくに、委員会は以下のことを懸念する。 (a) 乳児死亡率、5歳未満児死亡率および妊産婦死亡率が高く、かつ締約国における平均余命が短いこと。 (b) 予防可能な児童期疾病(下痢、栄養不良、貧血症、腸感染症、細菌感染症、はしかおよび肺炎を含む)により、引き続き子どもの生存および発達が脅かされていること。 (c) 産前産後のケアが不十分であり、やはり子どもの生存および発達を阻害する要因となっていること。 (d) とくに全般的なサービスの欠如に苦しんでいる農村部において、衛生設備および安全かつ清潔な水へのアクセスが不十分であること。 (e) とくに農村部において健康、個人衛生および公衆衛生に関する意識が低く、かつ、子どもの健康にとって有害となるおそれがある伝統的慣行(近代的医療施設ではなく呪術医に相談すること、および、下痢をわずらっている子どもに水を与えないことなど)が蔓延していること。 61.委員会はまた、危険な状況に置かれた子ども(ストリートチルドレン、児童労働者、子どものセックスワーカーおよびダリットの子どもを含む)が有する健康面の特別な脆弱性およびニーズに対応するための取り組みがほとんど行なわれていないことにも、懸念とともに留意する。 62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 適切な資源(すべての子どものための基礎的医薬品を含む)を十分に提供され、かつとくに農村部を重点的に対象とする基礎的な保健ケアおよび保健サービスへのアクセスを確保する目的で、国際協力等も通じ、保健インフラを向上させるためのあらゆる適当な措置を引き続きとること。 (b) 予防接種の実施範囲を同国全域に拡大するための努力を引き続き強化すること。 (c) プライマリーヘルスケアサービスへのいっそうのアクセスを促進すること。 (d) ハイリスク集団に属する子どものニーズに特段の注意を払いながら、児童期疾病と闘うための措置を引き続き強化すること。 (e) 一般公衆、とくに家族、子どもおよび保健ケアの提供に従事する者(伝統的保健従事者を含む)に対し、基礎的な救急ケアおよび保健ケアに関する適切な知識を提供するための意識啓発の努力を進めること。 (f) 量的データおよび質的データ双方の適時性および信頼性を確保しながら、とくに重要な保健指標との関連でデータ収集システムを強化するとともに、条約の効果的実施のための、調整のとれた政策およびプログラムの立案のために当該システムを活用すること。 (g) 子どもの健康を向上させるための協力および援助の追加的経路を、諸機関のなかでもとくにWHOおよびユニセフとの間で追求すること。 思春期の健康 63.委員会は、思春期の健康に関わる問題(発達保健、精神保健およびリプロダクティブヘルスに関わる懸念を含む)に対し、締約国が不十分な注意しか向けていないことを懸念する。委員会は、青少年が身体的および精神的健康に関わる特別なリスク(性的虐待、暴力、薬物およびアルコールの濫用、ならびに、HIV/AIDSを含む性感染症によるものを含む)に直面していること、および、リプロダクティブヘルスに関わる問題についての青少年の意識水準が低いことに、懸念を表明するものである。 64.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 思春期の健康問題の性質および規模を評価するための包括的な研究を実施するとともに、青少年の全面的参加を得ながら、思春期の健康に関する政策およびプログラムの立案のために当該研究結果を活用すること。その際、とくにリプロダクティブヘルス教育および子どもに配慮したカウンセリングサービスを通じて性感染症を予防することに特段の焦点を当て、かつ、これとの関連で思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮すること。 (b) 発達保健および精神保健に関するカウンセリングサービスならびにリプロダクティブヘルス・カウンセリングを提供するとともに、これを青少年に対して知らせ、かつ青少年にとってアクセスしやすくすること。 (c) 学校カリキュラムにリプロダクティブヘルス教育を編入するための措置をとるとともに、リプロダクティブヘルスについての権利(HIV/AIDSを含む性感染症および早期妊娠の予防を含む)について十分な情報を青少年に提供するための意識啓発キャンペーンを実施すること。 (d) 青少年に関わる健康問題についての専門性を有する国際機関、とくにUNFPA〔国連人口基金〕、ユニセフおよびWHOと引き続き協働すること。 早期婚 65.女子の最低婚姻年齢が18歳であることは認知しながらも、委員会は、とくに一部の民族的および宗教的コミュニティにおいて早期婚の慣習が広く実践されており、かつ、いったん婚姻した女子は、条約に掲げられた子どもとしての権利(教育に対する権利を含む)を享受するための保護を与えられていないという、締約国の懸念を共有する。 66.委員会は、締約国が、早期婚を防止するための現行法の執行を強化するとともに、早期婚の慣行を抑制するための感受性強化プログラムを、コミュニティの指導者、宗教的指導者および社会一般(子どもたち自身を含む)の関与を得ながら発展させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法定年齢未満で婚姻した女子が条約に掲げられた権利(教育に対する権利を含む)を引き続き享受することを確保するための措置をとるようにも勧告するものである。 有害な伝統的慣行 67.委員会は、一部の有害な伝統的慣行(とくにもっとも顕著なものとしてカースト制度ならびにデウキ、クマリ、ジュマ、バディ、カムラリおよびチャウパディのような伝統)が締約国において引き続き蔓延しており、女子に対する極度の危険、健康上の危害および虐待を引き起こしていることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの伝統的慣行がその影響を受けている子どもによる権利の享受に及ぼしている有害な影響に対処するため、締約国が法律による禁止および十分な介入を行なっていないことを遺憾に思うものである。 68.委員会は、締約国が、意識啓発プログラムを強化することにより、子どもの身体的および心理的ウェルビーイングにとって有害であるすべての伝統的慣行を根絶するために必要な措置を、緊急にとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、このような慣行を禁止する法律を採択するよう勧告するものである。 HIV/AIDS 69.委員会は、HIV/AIDSの予防および統制のために締約国が行なっている努力(全国AIDS・性感染症統制センターの設置を含む)を歓迎するものの、とくにハイリスク集団の間で感染件数が増加しておりかつHIV/AIDSが広く蔓延していることを、依然として懸念する。委員会は、HIV/AIDSが、、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもの文化的、経済的、政治的、社会的および市民的権利(条約の一般原則を含む)に与えているきわめて深刻な影響について、とくに差別の禁止、保健ケア、教育、食糧および住居ならびに情報および表現の自由に対する権利を参照しながら、懸念を覚えるものである。 70.委員会は、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもについての一般的討議の日に採択された勧告(CRC/C/80、パラ243)を考慮に入れる等の手段により、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どものための、HIV/AIDSに関する政策および戦略の策定および実施に子どもの権利の尊重をさらに統合するとともに、この戦略の実施に際して子どもたちの関与を得るよう、勧告する。 社会保障、保育サービスおよび保育施設ならびに生活水準 71.委員会は、締約国において高水準で蔓延している貧困について懸念を表明する。このような貧困は、子ども(とくに農村部に住んでいる子ども、スラムおよび不法占拠地に住んでいる子どもならびに低層カーストおよび民族的マイノリティの子ども)の権利の尊重および充足、ならびに、子どもに十分な保護を提供する家族の能力を阻害している。 72.貧困下で暮らしている子どもの割合が相当に達することにかんがみ、委員会は、社会保障を受給する子どもの権利についての情報が欠乏していることに遺憾の意とともに留意するとともに、条約第26条と全面的に一致した、法令に基づく包括的な社会保障制度が存在しないことに、懸念を表明する。 73.条約第26条および第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困と闘うための戦略を、子どもの権利に対する影響の監視を正当に重視しながら強化するとともに、その戦略の実施を確保するために十分な人的資源および財源(国際援助を通じてのものも含む)を配分すること。 (b) 経済的に不利な立場に置かれている家族(とくに農村部、スラムおよび不法占拠地で暮らしている家族)に対して支援および物的援助を提供し、かつ十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するための努力を強化すること。 (c) 貧困指標および公式の貧困線を定めること。これにより、締約国は、貧困の程度を定義し、かつ、貧困の緩和および締約国の子どもの生活水準の向上における進展を監視しかつ評価することができるようになるはずである。 (d) 社会保障政策を、明確なかつ一貫した家族政策とあわせて確立し、かつ社会的セーフティネットとしての諸給付を子どもの権利の促進のために用いるための効果的戦略を定めるとともに、社会保障制度に十分な財源を提供すること。 74.したがって委員会は、締約国が、社会保障政策を、貧困削減戦略の枠組みのなかで、明確なかつ一貫した家族政策とあわせて確立するとともに、社会的セーフティネットとしての諸給付を子どもの権利の促進のために用いるための効果的戦略を定めるよう、勧告する。〔訳者注/パラ73(d)との重複は原文ママ〕 6.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 75.万人のための教育に関する国家行動計画ならびに基礎初等教育基本計画(1997~2002年)および第2次基礎初等教育基本計画(1999~2004年)の策定は歓迎しながらも、委員会は、初等教育が義務的とされていないこと、および、初等教育の完全普及を2000年までに達成するという締約国の目標が、まったく満たされないまま2015年まで延長されたことを、深刻に懸念する。委員会はまた、教育に関する公共支出額が低く、かつ資源が構造的に欠乏していること(これがもっぱら原因となって、資格のある教員の不足、劣悪な物理的インフラ、学校における過密および学校における物質的不足が生じている)ことも、依然として懸念するものである。委員会はまた、中退率が高いこと、通学に関連する隠れた費用の問題もあって教育へのアクセスの面で相当の不平等が存在すること、および、女子および不利な立場に置かれた背景を有する子ども(ダリットの子どもおよび障害のある子どもなど)の相当の割合が教育機会を奪われたままであることも、懸念する。 76.委員会は、締約国が、この分野における予算配分およびとられた措置を、それが教育および余暇活動に対する子どもの権利の漸進的実施に及ぼす影響との関連で注意深く検討するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 初等教育を、すべての子どもに対して義務的かつ無償とし、かつ5年のみの初等学校期間よりも長期のものとすること。 (b) 就学率および学校出席率を高め、かつ初等中等教育における高い中退率を減少させるための措置を引き続き強化するとともに、子どもが、受ける資格を有する学校教育を全面的に受けられることを確保すること。 (c) 教育に配分される予算の増額のために追加的努力を行なうこと。 (d) 女子および男子ならびに都市部および農村部の間に蔓延している格差を解消する目的で、とくに女子を対象として、すべての子どもにとっての教育へのアクセス可能性を向上させるためのさらなる措置をとること。 (e) とくに学校の増設、物理的インフラの改善および学校における十分な設備の確保を図ることにより、教育の質を向上させるための措置をとること。 (f) 教員養成の取り組みを優先的に進めるとともに、資格のある教員、とくに女性およびあらゆる民族集団の出身者の採用を拡大すること。 (g) 貧しい家庭の子どもおよび周縁化された集団の子どもを重点的対象とするプログラムを導入し、かつ全面的に実施すること。 (h) とくに農村部における公的な乳幼児期教育の提供を引き続き強化するとともに、訓練を受けた就学前教育教員を増員し、かつ乳幼児期教育の価値に関する親の意識を高めること。 (i) 学校における体罰の使用と闘うために適切な立法上の措置をとること。 (j) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、あらゆる教育段階の学校カリキュラムに、子どもの権利を含む人権教育を含めること。 (k) 教育差別禁止条約(1960年)および技術教育および職業教育に関する条約(1989年)を批准すること。 (l) とくにユニセフおよびユネスコのさらなる技術的援助を求めること。 77.委員会はさらに、締約国に対し、紛争(および非常事態)が教育制度に及ぼす悪影響を解消し、かつ、学校の再建および再開ならびに教員および児童生徒の学校復帰を促進するためのあらゆる措置を優先的にとるとともに、これらの目的のために十分な資源が提供されることを確保するよう、勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民/庇護希望者および国内避難民 78.委員会は、ノンルフールマンの原則に根ざした公式の政策が2004年8月に採択されたことを歓迎するものの、締約国が、難民の地位に関する条約、無国籍者の地位に関する条約または無国籍の削減に関する条約をまだ批准しておらず、かつ、難民および庇護希望者の権利を取り上げた国内法が定められていないことを、遺憾に思う。これとの関連で、かつこのような者の多数が子どもであることにかんがみ、委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) ネパールのブータン人キャンプで差別および不当な取扱い(女性および子どもの性的虐待が多数発生していることをふくむ)が行なわれているとの報告があること。 (b) チベット人庇護希望者(保護者のいない未成年者を含む)がネパールによって中国に送還されているとの報告があること、および、チベット難民福祉事務所が2005年1月に閉鎖されたこと。 (c) 一定のカテゴリーの庇護希望者(具体的には、1990年にネパールに到着したチベット人、およびブータン人)しか難民申請を行なえないのが原則とされていること。 (d) ブータン難民が、移動の自由ならびに健康および教育に対する権利の享受を制約されていること。 79.委員会は、継続中の武力紛争により自宅を強制退去させられた国内避難民(子どもを含む)の状況について締約国から情報が提供されなかったことに、遺憾の意とともに留意する。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 難民の地位に関する条約、無国籍者の地位に関する条約および無国籍の削減に関する条約を優先的課題として批准すること。 (b) 国内避難民、難民および庇護希望者であるすべての子どもならびにその家族が保健サービスおよび教育サービスにアクセスでき、かつ、条約に掲げられたこれらの子どものすべての権利(出生時に登録される権利を含む)が保護されることを、優先的課題として確保するように努めること。 (c) 自国の管轄下にある、国内避難民および難民であるすべての女性および子どもがあらゆる形態の性的搾取から保護され、かつ加害者が適正に訴追されることを確保するために、即時的措置をとること。 (d) 子どもの国内避難民、難民および庇護希望者(保護者のいない未成年者を含む)の状況に関する詳細な情報を次回の定期報告書に記載すること。 (e) 諸機関のなかでもとくにUNHCRとの連携を引き続き強化すること。 武力紛争下の子ども(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 81.委員会は、締約国における武力紛争で殺害される子どもが多数にのぼることを著しく危惧する。委員会は、政治的洗脳、ならびに、戦闘員、密告者、調理人または荷物運搬人および人間の盾としての使用を目的として、武装集団が子どもの誘拐および強制的徴集を行なっている旨の報告があることに、重大な懸念ともに留意するものである。委員会は、政府軍が、武装集団の構成員の疑いがある18歳未満の者を攻撃対象としていること、ならびに、失踪および恣意的拘禁が行なわれており、かつ政府軍が子どもをスパイおよび伝令として使用している疑いがあるという、著しく危惧される報告があることを、同様に懸念する。委員会はまた、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令の2004年改正に基づいて子どもが拘禁されているという報告があることも、深く懸念するものである。委員会は、このような暴力が被害を受ける子ども(子どもの戦闘員を含む)に対して及ぼす直接の影響、ならびに、このような子どもがこうむる深刻な身体的および心理的外傷について懸念を覚える。委員会はまた、子どもが武力紛争のために家族から分離されていること(インドに避難した子どもを含む)、および、これらの家族の再会のために締約国がほとんど努力していないことに、懸念を表明するものである。委員会はまた、武力紛争が食糧供給、教育および保健ケアに及ぼす悪影響についても懸念する。 82.委員会は、締約国が、武力紛争の影響を受けている子どもの権利を実施するための包括的な政策およびプログラムを策定し、かつしかるべき人的資源および財源を配分するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) いかなる軍隊または武装集団によるものであれ、軍事目的の子どもの誘拐、徴募および使用を犯罪化すること。 (b) 治安部隊を対象とする、子どもに関する独立の部隊行動規則を定めること。 (c) 少年司法に関する国際的な基準および規範に照らして、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令を改正しまたは廃止すること。 (d) 武力紛争の影響を受けている子ども(とくに子どもの戦闘員、保護者のいない国内避難民および難民、帰還民)を対象とする心理社会的支援および援助のための包括的システムを、NGOおよび国際機関と連携しながら発展させること。 (e) 紛争の影響を受けている子どもが教育制度に再統合できることを確保するための効果的措置をとること。そのための手段には、非公式教育プログラムを提供すること、ならびに、紛争の影響を受けている地域における校舎および諸施設の復旧ならびに水、衛生設備および電気の供給が含まれる。 (f) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約を批准すること。 (g) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を、優先的課題として批准すること。 (h) この点に関してとくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めるとともに、新たに設置されたOHCHRネパール事務所に対して最大限可能な協力を行なうこと。 搾取的状況にある子ども(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む) 有害物質濫用 83.委員会は、子どもによるアルコール消費が広く蔓延していること、および、子どもによる有害物質濫用(大麻、ヘロインおよびアヘンの使用ならびに静脈注射による薬物使用を含む)の件数が増えていることに、懸念を表明する。委員会はまた、親によるアルコールおよび有害物質の消費が締約国の子どもの身体的、情緒的および心理的発達およびウェルビーイングに与える有害な影響についても、懸念を覚えるものである。アルコール法で16歳未満の子どもに対するアルコールの販売が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、同法では違反の場合の罰則についてなんら定められておらず、かつ、未成年者によるアルコールの使用を禁じた法律の実施が全般的に有効ではないことに、懸念を表明する。委員会はまた、子どもによる統制薬物の販売、使用および取引を禁じた具体的法律が存在せず、かつこの点に関する治療プログラムも提供されていないことも、懸念するものである。 84.委員会は、締約国が、公的な教育啓発キャンペーン等も通じて子どもによる薬物およびアルコールの濫用と闘い、かつ、アルコールを濫用する子どもおよび(または)薬物その他の有害な物質を使用する子どもが、治療、カウンセリング、回復および再統合のための効果的な機構および手続にアクセスできることを確保するための取り組みを進めるよう、勧告する。委員会はさらに、親によるアルコールおよび統制薬物の使用が子どもの発達およびウェルビーイングに与える有害な影響について、とくに意識啓発キャンペーンを通じ、親を対象とする教育が行なわれるべきことを勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもによる統制薬物の販売、使用および取引を禁止するために必要な法律を採択するとともに、子どもによるアルコールおよび有害物質の使用を禁じたすべての法律の効果的実施を確保するよう、促す。 ストリートチルドレン 85.路上で生活しかつ働く子どもの人数が増えており、かつ、このような子どもが虐待、ネグレクトおよび搾取の主要な被害者に挙げられていることを締約国が認めていることにかんがみ、委員会は、このような子どもが置かれた状況に対応するための具体的なプログラムおよび措置に関する情報が不足していることを、遺憾に思う。 86.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象を防止しかつ減少させる目的で、この現象の原因および範囲に関する研究を実施するとともに、ストリートチルドレンの多発および増加に対応するための包括的戦略を確立すること。 (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支える目的で、このような子どもに対し、十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)が提供されることを確保するための効果的措置をとること。 (c) これらの子どもが、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用の被害者であるときは回復および社会的再統合のためのサービスを提供され、警察による陵虐から保護され、かつ、家族およびコミュニティとの和解のためのサービスを提供されることを確保すること。 (d) この点に関してとくにユニセフの技術的援助を求めること。 性的搾取および性的虐待 87.子どもの性的搾取の現象を解消するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、締約国の多数の子どもが性的に搾取されていることについて重大な懸念を覚える。委員会は、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもを性的搾取から保護するために行なわれている努力が不十分であるとの見解に立つものである。具体的には、委員会は、セックスワーカーの間で低層カーストの子どもが不相応に多いこと、および、バディとして知られる、バディ・カーストの幼女が売春を強要される慣習的慣行が根強く残っていることに、懸念とともに留意するものである。 88.委員会はさらに、残虐な取扱いまたは拷問から子どもを保護する子ども法第7条の規定が、残虐な取扱いまたは拷問の基準に達するとはかぎらない性的虐待事件には適用されないことに、留意する。委員会はまた、子どもの性的虐待を行なった加害者の訴追率が低いこと、および、性的搾取について定めた法律に関して住民を教育するための公的キャンペーンがほとんど進められていないことも、懸念するものである。 89.委員会は、締約国が、以下の措置をとるための資源を優先的に配分するよう勧告する。 (a) 18歳未満の男子および女子が性的虐待および搾取から保護されることを確保する適切な法律を制定すること。 (b) 子どもの性的搾取について検討するための包括的研究を実施し、その蔓延度に関する正確なデータを収集すること。 (c) 子ども、とくにバディその他の低層カーストに属する子どもがそのような搾取の対象とされる危険性を高める要因も含めて子どもの性的搾取に対応する、適切な立法上の措置の採用および効果的かつ包括的な政策の策定を進めること。 (d) 性的搾取の被害を受けた子どもが犯罪者として扱われないようにし、かつ加害者の適正な訴追を確保すること。 (e) 第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領、ならびに、第2回世界会議で採択された「横浜グローバルコミットメント2001」にしたがい、子どもの被害の防止、被害を受けた子どもの回復および再統合のための適切な政策およびプログラム(すべての地域にリハビリテーションセンターを設置することも含む)を実施すること。 (f) とくにユニセフの援助を求めること。 子どもの経済的搾取(児童労働を含む) 90.委員会は、最悪の形態の児童労働を撤廃するため、締約国が、市民社会の主体、ドナーコミュニティおよびとくに国際労働機関と協力しながら行なっているさまざまな努力(関連のILO諸条約の批准および国内法の制定(前掲パラ3および4参照)、ならびに、予定されている国家基本計画および期限付撤廃プログラムの採択を含む)に、満足感とともに留意する。 91.にもかかわらず、委員会は、締約国の相当割合の子どもが、著しく危険な労働にしばしばフルタイムで従事していることについて、依然として重大な懸念を覚える。委員会はまた、この分野における国内法の執行が弱いままであることも懸念するものである。委員会は、締約国に財源がないために労働査察官が不足していることを懸念する。委員会はまた、子どもを含む人口の大多数はインフォーマル経済で働いているにも関わらず、子どもの不法な雇用を禁じた児童労働法は経済のフォーマル部門にしか適用されないことも、懸念するものである。 92.カマイヤ債務労働制が2000年に廃止され、かつカマイヤ禁止法が2002年に制定されたことは歓迎しながらも、委員会は、多数のカマイヤの子どもが解放されないまま債務労働者として働き続けており、かつ、子どもを含む数千人のダリット債務労働者(ハリヤ)がネパール西部の農場でおよび平野部で働いていると報告されていることを、懸念する。委員会は、これらの債務労働者が住居、土地、労働および教育に対する権利の分野で深刻な困難に直面し続けていることを、とりわけ懸念するものである。 93.委員会は、締約国に対し、子どもによる債務労働の慣行の根絶を目的とした現行の法律および政策の執行を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、労働に従事するこれらの子どもが、子どもにとって有害な条件下で働くことのないようにし、かつ引き続き教育にアクセスできることを確保するため、防止措置をとることを含むあらゆる努力を行なうようにも促すものである。委員会は、締約国に対し、児童労働の必要な規制があらゆる分野の労働(経済のインフォーマル部門を含む)に適用されるよう、児童労働基本計画、児童労働法その他の関連の法律を改正するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、とくに子どもの権利の保護に関する公衆意識啓発キャンペーンおよび公衆教育を通じ、児童労働に関わるすべての政策および法律を全面的に実施するための措置をとるよう、勧告するものである。 94.さらに委員会は、締約国に対し、カマイヤ禁止法の実施を強化するとともに、解放されたカマイヤ労働者の社会的統合を確保するために効果的措置をとるよう、勧告する。委員会は、締約国が、この点に関してとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう勧告するものである。 売買、取引および誘拐 95.委員会は、子どもの人身取引と闘うために締約国が行なっているさまざまな努力に留意するとともに、警察官が女性および子どもの性的搾取および人身取引に関わる問題についての研修を受けている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、ネパール国内においておよび国境を超えて、性的搾取および債務労働を目的とする子どもの取引および売買の現象が頑強に残っていることを、依然として深く懸念するものである。委員会は、一部の集団の子ども(女子、子どもの国内避難民、ストリートチルドレン、孤児、農村部出身の子ども、子どもの難民、および、より脆弱な立場に置かれたカーストに属する子どもを含む)にとって、売買および取引の対象とされる危険性がとりわけ高いことに、重大な懸念とともに留意する。委員会はさらに、現行法(とくに人身取引統制法)による人身取引被害者の保護が不十分であり、かつその実施が深刻なほど不十分であることに懸念を表明するものである。委員会はまた、性的搾取の被害を受けた子どもが十分な保護および回復援助を与えられていないことも懸念する。 96.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの売買、取引および誘拐に関するデータ収集システムを改良するとともに、すべてのデータおよび指標が政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価に活用されることを確保すること。 (b) 子どもを人身取引から保護するための包括的な法的枠組みを発展させること。 (c) 法執行を強化するための効果的措置をとるとともに、子どもの売買、取引および誘拐に関するコミュニティの意識を高めるためになおいっそう努力すること。 (d) 包括的かつ効果的なアプローチを完遂する目的で、HIV/AIDSに関する国家戦略(2002~2006年)、万人のための教育プログラム(2004~2009年)および児童労働基本行動計画のいずれについても、その実施が国家人身取引行動計画と関連づけられることを確保すること。 (e) 被害を受けたすべての子どもに対し、適切な援助および支援(送還を待っている子どもが基礎的サービスにアクセスできるようにすることを含む)が提供されることを確保すること。 (f) 子どもの売買、取引および誘拐を防止し、かつこのような子どもの保護および安全な家族復帰を促進する目的で、近隣諸国、とくにインドとの二国間協定の締結に努めること。 (g) 国連・国際組織犯罪防止条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准すること。 (h) とくにユニセフおよび国際移住機関との協力を追求し、かつこれらの機関の援助を求めること。 少年司法の運営 97.法に抵触した子どもに関わる事案に対処するための少年裁判部がすべての郡裁判所に設置されたこと、および、法執行官を対象とする研修プログラム(警察学校におけるものを含む)が整備されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国の法律および政策が少年司法に関する国際基準に一致していないという見解を依然としてとるものである。委員会は、刑事責任に関する最低年齢が10歳という低さに定められていること、および、公式な年齢確認制度が設けられていないことについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、拘禁環境について、および、少年拘禁施設が存在しないため、ほとんどの場合、18歳未満の者が拘禁中に成人から分離されていないことについても懸念を覚えるものである。委員会はまた、子どもがしばしば「適正な捜査を経ずに」審判の対象とされていること、および、少年事件のうち、準司法機関である郡行政事務所によって処理されているものがかなりの割合にのぼることも、危惧する。委員会はまた、刑務所で教育のための便益が提供されていないことも懸念するものである。 98.委員会はまた、最低年齢を定めておらず、かつ、武装集団との関係が疑われるいかなる者(子どもを含む)でも逮捕しかつ拘禁する広範な権限を治安部隊に与えるテロ活動および破壊活動(統制および処罰)令に基づいて、18歳未満の者が収容されているという報告があることも懸念する。 99.委員会は、締約国が、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)ならびに第40条2項(b)(ii)~(iv)および(vii)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(総会決議40/33)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(総会決議45/112)の全面的実施を確保する目的で、かつ少年司法の運営に関する委員会の一般的討議(1995年)に照らし、法律および政策を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 18歳未満の被拘禁者が常に成人から分離され、かつ、自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられることを確保すること。 (b) 18歳未満の者を対象とする独立の施設(児童矯正センター)および拘禁施設内の独立房の建設を速やかに進め、これらの施設がすべての郡に存在することを確保すること。 (c) 自由の剥奪が回避不可能であり、かつ最後の手段として、もっとも短い適当な期間で用いられる場合、逮捕の手続および拘禁環境を向上させるとともに、法に抵触した子どもの事件を扱う特別部局を警察内に設けること。 (d) 18歳未満の者が反テロリズム法に基づいて責任を問われ、拘禁されまたは訴追されないことを確保すること。 (e) 法律に違反したとして申し立てられまたは罪を問われた18歳未満のすべての者に対し、条約第40条2項に定められた公正な裁判を受ける権利が全面的に保障されることを確保する目的で、郡行政事務所の手続を含むすべての手続(司法手続、法的手続および保護手続)を見直し、かつ必要なときは改正すること。 (f) 司法専門家を対象として、少年司法の運営と人権に関する公式な研修を実施すること。 (g) とくにユニセフおよびOHCHRの技術的協力を求めること。 100.委員会は、締約国が、少年司法に関する国際的な基準および規範に照らし、テロ活動および破壊活動(統制および処罰)令を改正しまたは廃止するよう勧告する。 8.子どもの権利条約の選択議定書 101.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書または武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に署名したものの、まだ批准していないことに留意する。 102.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 103.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関ならびに適用可能なときは州〔ママ〕の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 104.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 105.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)で説明した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、締約国に対し、第5回報告書の提出期限である2010年3月13日までに、単一の統合報告書として第3回、第4回および第5回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/148参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/94.html
総括所見:カンボジア(第1回・2000年) 第2回(2011年)OPAC(2015年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.128(2000年6月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年5月24日に開かれた第629回および第630回会合(CRC/C/SR.629-630参照)において、2000年5月24日に提出されたカンボジアの第1回報告書(CRC/C/11/Add.16)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2000年6月2日に開かれた第641回会合において。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/CAM.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国の代表団との建設的対話を心強く思うとともに、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する反応を歓迎するものである。委員会はまた、条約の実施に直接関与する高位の代表団が出席してくれたことにより、委員会が締約国における子どもの権利の状況を十全に評価できたことも歓迎する。 B.積極的側面 3.委員会は、カンボジアが、人権保護のための6つの主要国際文書の締約国であることを歓迎する。締約国が、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約を批准したこと(1999年)も歓迎されるところである。 4.委員会は、締約国が、子どもの権利条約に掲げられた権利の保護を1993年憲法(第48条)に盛りこんだことを歓迎する。 5.カンボジア政府と人権高等弁務官事務所が調印し、人権に関する技術的援助および助言サービスのプログラムを開設した了解覚書(1996年)は、委員会の歓迎するところである。 6.委員会は、ILO最低年齢条約(第138号)の批准(1999年)およびカンボジア政府とILO/IPECによる了解覚書の調印(1997年)のような、児童労働と闘うために締約国がとった措置を歓迎する。 7.委員会は、締約国の第1回報告書の作成および条約の実施に非政府組織が参加していることを歓迎する。 C.条約の実施における進展を阻害する要因および困難 8.委員会は、とくに20年以上に及ぶジェノサイド、武力紛争および政治的不安定ならびに長年にわたる締約国の孤立を理由として、締約国が条約の実施に関して多くの困難に直面していることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国のきわめて困難な社会経済的状況により、子どもを含むもっとも脆弱な立場に置かれた集団に影響が生じており、かつその権利の享受が妨げられていることにも留意するものである。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 9.締約国の立法上の枠組みにおいて条約のいくつかの規定が網羅されており、かつ新法を起草するための努力が行なわれていることは認識しながらも、委員会は、条約を全面的に尊重するためには国内法をなお見直し、かつ新法を制定する必要があることを依然として懸念する。現行法が執行されていないことも懸念の対照である。 10.委員会は、現行法を条約の規定、とくに一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)と一致させる目的で、その見直しを行なうよう勧告する。その際、出生登録、家庭および代替的養護ならびに少年司法の分野に特別な注意を払わなければならない。委員会はさらに、締約国が、現在進行中のおよび今後の法律起草プロセス、とくに民法草案、刑法草案および刑事訴訟法草案に、子どもの権利に関わる問題を盛りこむよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を求めるよう奨励する。 調整 11.委員会は、条約の実施の調整を担当するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)が設置されたことは歓迎するものの、その任務を締約国全域で全面的にかつ効果的に履行する同評議会の能力について懸念を表明する。とくに、評議会が人的資源および財源を欠いていることに対して懸念が表明されるところである。 12.委員会は、締約国が、国、地域および地方のレベルで条約の実施を調整することに関するカンボジア国家子ども評議会(CNCC)の役割を強化するため、国際協力等も通じて効果的な措置をとるよう勧告する。CNCCに対してより実質的な人的資源および財源を提供し、かつ子どもの権利の分野で活動する非政府組織とのより緊密な協力および調整を確立するため、いっそうの努力が行なわれるべきである。 監視 13.委員会は、条約の実施を監視する締約国の能力が限られていること、および、条約に基づく権利の侵害についての子どもからの苦情を登録しかつこれに対応する独立の機構が存在しないことを、懸念する。 14.委員会は、締約国が、条約の実施を監視し、ならびに、自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情に子どもにやさしい方法でかつ迅速に対応し、かつそのような侵害に対して救済を提供する独立の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)の設置を検討するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもが当該機構を効果的に活用することを促進するための意識啓発キャンペーンを実施するよう提案するものである。 データ収集 15.委員会は、教育管理情報システムおよび保健情報システムのような、データ収集の分野で締約国がとった措置を歓迎する。にもかかわらず、条約が対象とするすべての分野(子どもの虐待および不当な取扱い、マイノリティ集団に属する子ども、女子、農村部の子どもならびに売買、取引および買春の被害を受けた子どもを含む)についての体系的、包括的かつ細分化された量的および質的データを収集するための機構が存在しないことに、懸念が表明されるところである。 16.委員会は、条約が対象とするあらゆる分野を包摂する目的で、データ収集システムの開発および強化を継続するよう勧告する。当該システムは、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価する基盤として、18歳未満のすべての子どもを含み、かつ脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視するべきであり、かつ、条約の規定の実施を向上させるための政策立案の一助として活用されるべきである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにユニセフの国際援助を求めるよう奨励する。 予算配分 17.数十年間の戦争の結果、締約国のインフラおよび社会サービスのほとんどが破壊されたことは認識しながらも、委員会は、「利用可能な資源を最大限に用いて」予算を配分することに関わる条約第4条の規定に十分な注意が払われていないことに、懸念を表明する。 18.委員会は、締約国が、利用可能な最大限の資源が子どものための保健サービス、教育サービスおよび社会サービスに配分され、かつ、脆弱な立場に置かれたおよび周縁化された集団に属する子どもの保護に特段の注意が払われることを確保することを優先するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくにドナーによる「カンボジア協議グループ」の調整枠組みのなかで、国際社会との開かれた協力を継続しかつ醸成するよう奨励するものである。 条約の普及 19.学校カリキュラムに条約を含めることなど、条約の原則および規定に関する広範な意識を促進するためにとられた措置は認識しながらも、委員会は、これらの措置を強化する必要があるという見解に立つ。 20.委員会は、子どもの権利に関する社会の感受性を高めるため、締約国が、条約の原則および規定を普及するための努力を強化するよう勧告する。マイノリティ集団の間ならびに農村部および遠隔地における条約の普及がとくに重視されるべきである。委員会は、締約国に対し、この分野に関してとくにユニセフおよびOHCHRの技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。 専門家の研修 21.委員会は、子どもともにおよび子どものために働く専門家を対象とする研修に関して、締約国がOHCHRおよびユニセフと協力しながら行なっている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、現行プログラムをさらに発展させてすべての専門家集団を対象にしなければならないとの見解に立つものである。 22.委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(とくに議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、自治体職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカー)を対象とする、条約の規定に関する体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを、引き続き実施するよう奨励する。これとの関連で、とくにOHCHRおよびユニセフの技術的援助を引き続き要請することが考えられる。 2.子どもの定義 23.委員会は、締約国の法律で子どもの法的定義が明確に定められていないことを懸念する。とくに、性的同意および刑事責任に関する法律上の最低年齢が定められていないことに懸念が表明されるところである。 24.条約の原則および規定に照らし、委員会は、締約国が法律に子どもの定義を設けるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、新法の起草過程で、刑事責任および性的同意に関する最低年齢の編入を考慮するよう勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、婚姻の最低年齢に関する法律を執行するよう勧告する。 3.一般原則 25.委員会は、締約国の国内法に条約の一般原則を編入するためにとられた措置が不十分であることを懸念する。 26.委員会は、条約の一般原則(すなわち差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、生命、生存および発達に対する権利(第6条)ならびに子どもの意見の尊重(第12条)が、子どもに影響を当たるすべての関連の法律に掲げられ、かつ、子どもに関連するすべての行政上および司法上の決定ならびにすべての政策およびプログラムにおいて考慮されるよう、勧告する。子どもを権利の主体ではなく客体としてとらえる伝統的な見方を変革するため、コミュニティの指導者および宗教的指導者を含む公衆一般の意識啓発およびこれらの原則の実施に関する教育プログラムが強化されるべきである。 差別の禁止 27.条約第2条に関して、委員会は、ジェンダー、民族的出身、HIV/AIDSの感染の有無および障害を理由とする差別の様式が存在することに、懸念を表明する。とくに、締約国の憲法がクメール系市民の権利にしか触れていないことに対し、懸念が表明されるところである。 28.委員会は、締約国が、条約に掲げられたすべての権利がいかなる区別もなくすべての子どもによって享受されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、とくに女子による教育へのアクセスとの関連で、女子差別を解消するための効果的措置をとるよう勧告するものである。路上で生活しかつ(または)働いている子どもおよびマイノリティ集団に属する子ども(とくにベトナム系の子ども)に対する差別を解消するための努力が行なわれなければならない。さらに、委員会は、これに関連して自由権規約委員会(1999年、CCPR/C/79/Add.108、パラ17)および人種差別撤廃委員会(1998年、CERD/C/304/Add.54、パラ11~13)が締約国に対して行なった勧告を支持する。 4.市民的権利および自由 出生登録 29.条約第7条の実施に関して、委員会は、出生登録が義務ではなく、そのためすべての子どもが出生時に登録されているわけではないことに懸念を表明する。 30.委員会は、締約国が、いかなる種類の差別もなくすべての子どもにとって出生登録を義務的なものとする目的で、条約の原則および規定にしたがって国内法を見直すよう勧告する。クメール系ではない市民の子ども(その法的地位は問わない)または難民も、カンボジアで出生したときは、たとえカンボジア国籍を得る権利がない場合でも、出生時に常に登録されるべきである。委員会はさらに、締約国が、とくに出生時に登録されなかった子どもが登録されることを確保するため、住民票(閣僚会議令第73号)および戸籍(同第74号)に関する現行閣僚会議令(いずれも1997年)を執行するための効果的措置をとるよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、出生時にすべての子どもを登録することを奨励する意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告するものである。委員会は、締約国に対し、この目的のためにユニセフその他の国際機関の国際協力を求めることを検討するよう、奨励する。 国籍 31.委員会は、締約国の国籍法(1996年)がクメール系ではない子どもに対する差別につながるおそれがあり、かつ、条約第7条に違反して、マイノリティ集団に属する子どものような、カンボジアで出生した多数の子どもが無国籍のままとなるおそれがあることを懸念する。 32.委員会は、差別となる可能性があるすべての事由を撤廃し、かつ子どもが無国籍となることを防止する目的で、締約国の国籍法を条約に照らして見直すよう勧告する。 子どもの参加権 33.子どもの参加権に関しては、家庭、コミュニティ、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するために締約国がとった措置が不十分であることに対し、懸念が表明される。 34.条約第12~17条に照らし、委員会は、家庭、学校その他の社会施設における子どもの参加を促進し、かつ、意見、表現および結社の自由を含む子どもの基本的自由の効果的享受を確保するため、法改正を含むさらなる措置をとるよう勧告する。子どもの参加権に関する公衆の意識が、家庭、コミュニティ、諸施設および学校において高められなければならない。 適切な情報へのアクセス 35.委員会は、子どもの福祉および発達にとって有害な情報および資料から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための法律が存在しないことを懸念する。 36.条約第17条に照らし、委員会は、締約国が、有害な情報、とくに残酷な暴力およびポルノグラフィーを含むテレビ番組および映画から子どもを保護し、かつ適切な情報に対する子どものアクセスを保障するための特別法を制定するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもとメディアに関する一般的討議(1996年)の際に行なった委員会の勧告(CRC/C/57)を考慮するよう勧告するものである。 5.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 37.委員会は、子どもが里親に委託されまたは養子とされるよりも児童福祉センターまたは児童ホームに措置される傾向にあること、このようなセンターの運営に関する規則が存在しないこと、ならびに、HIV/AIDSの流行によって両親を失う子どもの数が増えていること、および、この状況に対処するために利用可能な措置が限られていることを、懸念する。 38.委員会は、児童福祉センターへの措置を回避するため、締約国が、相談およびコミュニティを基盤とするプログラムを通じて子どもにとって最善の環境としての家族を促進し、かつ子どもの世話をできるよう親のエンパワーメントを図るために、効果的措置をとるよう勧告する。 39.委員会は、締約国が、子どもの施設その他の形態の代替的養護に関する政策および規則を策定するよう勧告する。より多くの子ども、とくにHIV/AIDSの流行によって両親を失った子どもを対象とすることができるよう、社会サービスを強化しおよび拡大しなければならず、ならびに里親家族のような代替的形態の養護を発展させなければならない。委員会はさらに、これらの目的のために十分な財源および人的資源を配分するよう勧告する。この点に関わる国際的な技術的および財政的援助も勧告されるところである。 養子縁組 40.条約および国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に一致した新たな国際養子縁組法の起草に関する締約国の努力には留意しながらも、委員会は、国内養子縁組に関する現行法が条約にしたがっていないこと、および、現行の養子縁組手続は尊重されないのが通例であり、かつ汚職および虐待が顕著に見られる旨の報告があることを、依然として懸念する。違法な非公式の養子縁組が蔓延していることに対しても、懸念が表明されるところである。 41.委員会は、締約国に対し、国際養子縁組に関する法律を制定するプロセスを継続し、かつ国内養子縁組に関する現行法の法改正を行なうよう、奨励する。これとの関連で、委員会は、国際養子縁組についての子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)への加入を検討することに対する締約国の前向きな姿勢に留意し、これを奨励するものである。さらに、委員会は、締約国が養子縁組局を強化するよう勧告する。これとの関連で、とくにユニセフの国際的援助を求めることが考えられる。 子どもの虐待および不当な取扱い 42.家庭の内外における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の規模および有害な影響に関する意識が不十分であること、児童虐待を防止しかつこれと闘うための資源が財源および人的資源ともに不十分であること、ならびに、ケアおよびリハビリテーションのための措置(虐待の被害を受けた子どもが利用可能な便益を含む)が不十分であることに対し、懸念が表明される。 43.とくに条約第19条および第39条に照らし、委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設および社会一般における児童虐待および子どもの不当な取扱いを防止しかつこれと闘うための効果的措置(学際的プログラムの設置ならびにケアおよびリハビリテーションのための措置を含む)をとるよう、勧告する。委員会はとくに、このような犯罪に関する法執行が強化されるべきであること、ならびに、子どもが司法に迅速にアクセスできるようにし、かつ犯罪者が処罰されないことを回避するため、児童虐待の苦情に対応する、十分かつ子どもにやさしい手続および機構が設立されるべきであることを、提案するものである。さらに、この問題に関する社会の伝統的態度と闘うための教育プログラムを設置することが求められる。委員会は、締約国に対し、この目的のためユニセフおよび国際的非政府組織の国際協力を求めることを検討するよう、奨励するものである。 6.基礎保健および福祉 生存および発達に対する権利 44.委員会は、とくにポリオに対する全国的な予防接種プログラムを発展させることに関する政府の能力の再構築を目的とした、保健省ならびにいくつかの国連機関(WHO、ユニセフ、UNDPおよびUNFPA)との国際協力イニシアティブである「保健制度の強化」を歓迎する。にもかかわらず、締約国の乳児死亡率および5歳未満児死亡率が依然として地域で最高の部類に入ることについて、懸念が表明されるところである。子どもの栄養不良も懸念される領域である。 45.委員会は、締約国が、現在の小児期疾病の発生態様において非識字、清潔な水が供給されないことおよび食糧事情が不安定であることが果たす重要な役割を認識した部門横断型アプローチをとることにより、小児期の罹病および死亡の問題に対処するよう勧告する。注意深くかつ包括的な調査研究により収集された基準データをもとに、優先領域が特定されなければならない。このような戦略においては、ほとんどの保健ケアが保健施設外でおよび国の統制の及ばないところで行なわれていることを考慮しなければならず、かつ、とくに隔離されたコミュニティのニーズも認識しなければならない。加えて、委員会は、効率的なプライマリーヘルスケア部門を確立するための措置(小児期疾病に関する医師等への相談を奨励するための戦略も含む)を整備するよう勧告する。これの関連で、委員会は、締約国に対し、引き続き国際機関と協力しながら活動するよう奨励するものである。 HIV/AIDSの影響を受けまたはこれに感染した子ども 46.HIV/AIDSの予防および感染者のケアのために締約国がとった措置は認識しながらも、委員会は、締約国におけるHIV/AIDS感染率の増加の度合いが地域最大であり、かつ、とくに母子感染を理由として子どもがもっとも影響を受けている集団のひとつに数えられることに、深い懸念を表明する。 47.委員会は、締約国が、HIV/AIDS予防のための効果的措置(意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーンを含む)を引き続きとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、HIV/AIDSが存在する世界で暮らす子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/80)を考慮するよう勧告するものである。これとの関連で、とくにユニセフ、WHOおよびUNAIDSの国際的技術的援助を引き続き要請することが求められる。 障害のある子ども 48.委員会は、長期に及んだ武力紛争の結果、締約国における障害の水準が世界で最高レベルのひとつであることに深い懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、障害のある子どものためのサービスのほとんどがNGOによって提供されており、かつ、これらのNGOがケアおよびリハビリテーションのためのサービスの水準を現状どおり高いまま維持するためには相当の資源が必要とされることに、留意するものである。 49.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発見させ、障害のある子どもの施設措置に代わる措置を実施し、差別を減少させるための意識啓発キャンペーンを計画しおよび実施し、特別教育のためのプログラムおよびセンターを設置しかつ教育制度および社会への障害児のインクルージョンを奨励し、ならびに、障害のある子どものための私立施設の十分な監視を確立する目的で、この分野で活動しているNGOと緊密に連携し、かつその活動を支援するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の研修について技術的協力を求めるよう勧告するものである。 健康および保健サービスに対する権利 50.とくに、とりわけ農村部において医療従事者および公衆衛生従事者が不足しておりかつプライマリーヘルスセンターの数が不十分であることを理由として、保健サービスへの子どものアクセスが限られていることに対し、懸念が表明される。また、保健ケアおよび医薬品の費用負担が大きいことにより、家族が債務を負いかつさらなる貧困に陥ることに対しても、懸念が表明されるところである。 51.委員会は、貧困家庭および周縁化されたその他の集団に属する子どもによるアクセスを保障するため、保健ケア・サービスおよび医薬品を改善しかつ拡大するよう勧告する。 思春期の健康 52.委員会は、妊産婦死亡率が高く、リプロダクティブヘルスおよびセクシュアルヘルスに関する教育および相談サービス(学校制度外のものを含む)に対する10代のアクセスが限られており、かつ避妊手段の使用水準が低いことに懸念を表明する。また、思春期の精神保健の問題に対して十分な注意が向けられていないことについても、懸念が表明されるところである。 53.委員会は、締約国が、思春期の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブヘルス教育を強化するための基盤として、思春期の健康問題(精神保健を含む)の規模を判断するための包括的かつ学際的な研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、青少年を対象とする子どもにやさしいカウンセリング・サービスならびにケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるため、さらなる努力を行なうことも勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 54.教育制度を改善するため、国際機関と協力しながら締約国が現在進めている努力は歓迎しながらも、委員会は、初等教育が義務とされていないこと、初等学校の就学率は相対的に高いものの、農村部および遠隔地に学校が設けられていないため良質な教育に対する平等なアクセスが確保されていないこと、通学に関してジェンダー格差があること、留年率および中退率が高いこと、ならびに、マイノリティ集団に属する子どもの過半数がいかなる形態の教育にもアクセスできていないことに対し、懸念を表明する。 55.委員会は、初等教育をすべての子どもにとって無償かつ義務的なものとすること、就学率を高めかつ中退率および留年率を減少させること、ならびに、とくに貧しい子ども、女子、マイノリティ集団に属する子どもおよび遠隔地に住んでいる子どもによる学校へのアクセスを向上させることを目的として、締約国が引き続き効果的措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、教育部門に対する予算配分を増額し、教員の能力を向上させるための研修を提供し、学校カリキュラムを子どものニーズにより関連したものとし、職業訓練および非公式教育(就学前および中等段階におけるものも含む)の機会を拡大し、かつ、教育制度の効果測定のための評価システムを確立することにより、教育制度を改善するための措置を引き続きとるよう勧告するものである。 8.特別な保護措置 子どもの難民 56.保護者のいない子ども、子どもの庇護希望者および難民を保護するための法的枠組みが存在しないことについて、懸念が表明される。 57.委員会は、締約国が、関連の国際基準にしたがって子どもの難民の権利を保護するための法律を導入し、かつ、家族から分離された可能性がある子どもの難民を援助するための家族再統合手続を策定するため、必要な措置をとるよう勧告する。この点に関して、UNHCRの技術的援助を求めることが考えられる。 武力紛争の影響を受けている子ども 58.18歳未満の子どもを軍隊に徴募することを禁じた法律の制定、および、軍隊に残っている未成年兵士の動員解除に対する締約国の前向きな姿勢は歓迎しながらも、委員会は、元子ども兵士の社会的再統合および身体的リハビリテーションのための措置が不十分であることに懸念を表明する。また、最近の武力紛争の間に締約国の領域に多数の地雷が埋設され、子どもたちの生命を脅かしていることに対しても、懸念が表明されるところである。 59.委員会は、締約国が、子ども兵士の特定、動員解除および心理的リハビリテーションならびに社会への再統合のための効果的措置をとるとともに、子ども兵士のさらなる徴募を防止するため、軍の職員を対象とする意識啓発キャンペーンを行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、未成年兵士のリハビリテーションおよび再統合のために引き続きユニセフと協力しながら活動するよう勧告するものである。 60.地雷の問題に関して、委員会は、締約国が、紛争後の地域における地雷除去のための予算配分を増額し、かつ、地雷関連の事故を防止するための意識啓発キャンペーンを実施するよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、地雷撤去のために引き続き国際機関と協力しながら活動するよう勧告するものである。 経済的搾取 61.委員会は、インフォーマル部門、農業および家族の文脈におけるものも含む、働く子どもの人数が多いことを懸念する。現行労働法の執行が不十分であることに対しても、懸念が表明されるところである。 62.委員会は、締約国が就労へのアクセスについての最低年齢に関わる労働法の規定を執行し、労働査察官に対して児童労働を監視するための研修および手段を提供し、かつ、違反者に対して適当な制裁を適用するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、危険な形態の労働から子どもを保護する法律を制定するよう勧告するものである。委員会は、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する新たなILO条約(第182号、1999年)の批准を検討していることを認知し、批准を奨励する。 性的搾取および人身取引 63.性的搾取と闘うための特別法の制定および子どもの性的搾取に対抗する5か年行動計画(2000~2004年)の採択ならびにこの分野における他の関連の措置は歓迎しながらも、委員会は、児童買春ならびに子どもの売買および取引が広範な現象となっており、これらの問題に関する新法の執行が不十分であり、かつ、被害者にリハビリテーションを提供するための訓練を受けた人材および施設が不足していることに、懸念を表明する。 64.委員会は、締約国が、法律を強化する方向でその見直しを行ない、かつ当面は性的搾取を禁ずる現行法を全面的に執行するとともに、行動計画を全眼的に実施すること、計画の実施のために人的資源および財源の双方を十分に配分すること、性的搾取の被害を受けた子どものリハビリテーションのための社会サービスを強化しおよび拡大すること、違反者を訴追すること、ならびに、とくに近隣諸国との二国間協力を強化しおよび国境管理を増強することを勧告する。委員会は、締約国が、とくにOHCHRおよびユニセフのさらなる技術的援助を求めるよう、提案するものである。 少年司法の運営 65.法律に触れた子どもの状況に関しては、この分野における特別の法律、政策およびプログラムの欠如、子どもが成人とともに収監されている旨の報告、告発されず、かつ弁護士または裁判所にもアクセスできないまま長期にわたって拘禁されている子どもの状況、ならびに、拘禁されている子どもが殴打その他の不当な取扱いを受けている疑いがある旨の報告に対し、懸念が表明される。 66.委員会は、締約国が、条約の原則および規定、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような、この分野における他の関連の国連基準を考慮に入れながら、少年司法制度を確立するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、自由を奪われた子どもの状況および少年非行の防止にとくに注意を払いながら、法律に触れた子どもの状況に関する包括的な政策およびプログラムを策定するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、締約国に対し、とくに少年司法に関する調整パネルを通じてOHCHR、国際犯罪防止センター、ユニセフおよび少年司法国際ネットワークの技術的援助を求めることを検討するよう、勧告する。 報告書の普及 67.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年10月8日)。/表示がおかしくなっていたため再保存(2015年12月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/305.html
総括所見:ベルギー(第3~4回・2010年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)OPAC(2006年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/BEL/CO/3-4(2010年6月18日)/第54会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年6月2日に開かれた第1521回および第1523回会合においてベルギーの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/BEL/3-4)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の状況に関する理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/BEL/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会はさらに、部門を横断した代表団の出席および同代表団との率直なかつ開かれた対話について、評価の意を表明するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書への締約国の第1回報告書について採択された総括所見(CRC/C/OPSC/BEL/CO/1)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書への締約国の第1回報告書について採択された総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1、2010年6月9日)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の法令が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 障害者が社会の主体的かつ集団的生活に参加する目的でアクセスする場所における合理的配慮を確保することにより、障害者の社会的および職業的インクルージョンを向上させる目的で、締約国の法律に「合理的配慮」の概念を導入した、2003年2月25日の法律の施行令(2006年10月11日)。 (b) 親が離婚した場合の子どもの共同親権を促進する2006年7月18日の新法。 (c) 破片弾の使用、製造および輸送を禁じた2006年の法律。 (d) 人身取引に関する2005年8月10日の法律。 5.委員会はまた、以下の条約の批准も歓迎する。〔訳者注/号番号が前項より連続しているのは原文ママ〕 (e) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年3月17日)。 (f) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2009年7月2日)。 (g) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(2005年5月26日)。 (h) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2004年8月11日)。 (i) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2004年6月17日)。 (j) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する1996年のハーグ条約(2003年4月1日)。 6.委員会はまた、ドイツ語共同体でオンブズパーソンが任命されたこと(2010年5月17日)、国家子どもの権利委員会が設置されたこと(2006年)、および、「子どものための国家行動計画(2005~2012年)」が採択されたことも歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回報告書に関する委員会の総括所見(2002年、CRC/C/15/Add.178)を実施するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら、一部の勧告については十分なフォローアップが行なわれていない。 8.委員会は、締約国に対し、締約国の第2回定期報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの(とくに、調整、データ収集、貧困下で暮らしている子どもに対する差別、意見を聴かれる子どもの権利、体罰および少年司法に関するものを含む)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。この文脈において、委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号(2004年〔2003年〕)に対して締約国の注意を喚起するものである。 留保および宣言 9.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則に関する第2条についての宣言(ベルギー国民ではない子どもによる条約に掲げられた諸権利の享受を制限するもの)、および、刑事上の決定の上級司法機関による再審査に関する第40条についての宣言を維持していることに留意する。 10.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ7)にのっとり、かつウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、条約第2条および第40条について行なった宣言を撤回する手続を速やかに進めるよう勧告する。 立法 11.自国の法律を条約の原則および規定と調和させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、立法上の進展が3つの言語共同体間で異なっており、一部の共同体の子どもが、同国の他の共同体の子どもが享受している諸権利を全面的に享受できない状況が生じていることに留意する。とくに委員会は、ドイツ語共同体における立法上の進展が他の2つの共同体における進展に追いついていないことを懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、すべての言語共同体における立法および行政規則が条約の規定および原則と全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 調整 13.2006年に国家子どもの権利委員会が設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、条約の実施の全国的調整が行なわれていないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利政策の包括性および一貫性を達成する目的で、条約の実施を調整する効果的制度を設け、かつ、連邦レベルおよび共同体レベルで設置された調整機構の協力を確保するよう勧告する。 子どものための国家的行動計画 15.委員会は、子どものための国家的行動計画に関する勧告(CRC/C/OPAC/BEL/CO/1、パラ9)が実施されていないことを深く遺憾に思う。とくに委員会は、「子どものための国家行動計画(2005~2012年)」に明確な目標、達成目標、指標またはタイムテーブルが掲げられておらず、目標の達成における進展を監視するためのいかなる機構も設けられておらず、かつ同計画に対していかなる特別予算も配分されていないことを懸念するものである。子どもに直接影響を及ぼす同国の貧困その他の格差を減らしていく政策を進めなければならないことを考慮に入れ、委員会は、締約国の一般的開発政策枠組みおよび計画立案環境において「子どものための国家的行動計画」が考慮されていない可能性があることに、さらなる懸念を表明する。 16.委員会は、締約国が以下のことを確保するよう勧告する。 (a) 「子どものための国家行動計画」が、子どもの権利によって下支えされ、かつ異なる地域的環境を正当に考慮した、開発計画の不可欠な一部に位置づけられること。 (b) 「子どものための国家行動計画」において具体的な目標、達成目標、指標およびタイムテーブルが掲げられ、かつ、達成された進展の評価および存在する可能性がある欠点の特定を目的とする監視機構が設置されること。 (c) 国家行動計画の全面的実施のために十分な予算配分が行なわれること。 (d) 条約の原則および規定、条約の両選択議定書、ならびに、2002年5月の特別会期で総会により採択された行動計画「子どもにふさわしい世界」および2007年の「子どもにふさわしい世界+5」レビューの宣言が考慮されること。 独立の監視 17.フラマン語、フランス語およびドイツ語の各共同体に独自のオンブズマンが存在することには留意しながらも、委員会は、これらの機関の根拠法、任務および能力がそれぞれ異なること、ならびに、連邦レベルで2つの異なるオンブズマン機関が存在することにより、締約国のすべての地域の子どもに対し、その権利の平等な保護およびその苦情に対する対応が保障されない可能性があることを懸念する。 18.委員会は、締約国に対し、すべてのオンブズマン機関の任務の調和を図るとともに、共同体レベルの諸オンブズマンの十分な調整ならびに連邦レベルおよび共同体レベルで活動している諸オンブズマン機関間の十分な調整を確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、オンブズマン機関が、子どもにとってアクセスしやすいものであり、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限およびこれに効果的に対応する権限を有することを確保するよう、促すものである。 資源配分 19.委員会は、締約国における社会支出が他の経済協力開発機構(OECD)諸国との関連で相対的に少ないこと、および、貧困下で暮らしている子どもの割合が高く、かつ近年上昇していることを懸念する。委員会はまた、締約国において一貫した予算分析および子どもの権利影響評価が実施されていないために、国および言語共同体のレベルで子どもに配分されている支出を特定し、かつ公共支出が子どもの生活に及ぼしている影響を評価することが困難になっていることにも懸念を表明するものである。 20.委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年)後に採択された委員会の勧告(CRC/C/46/3参照)を考慮しながら、以下の措置をとるよう促す。 (a) 予算全体を通じて子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているかを追跡するためのシステムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定に際して子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、いずれかの部門における投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のために、当該投資が女子および男子に与える異なる影響について測定が行なわれることを確保しながら、この追跡システムを活用することも促す。 (b) 子どもに関する優先的予算科目が資源水準の変化から保護されることを確保すること。 (c) 公的な対話および参加(とくに子どもたちによる対話および参加)参加ならびに地方当局の適正な説明責任を確保するための対話および参加を通じて、透明なかつ参加型の予算策定を確保すること。 (d) 不利な立場に置かれた子どもまたはとくに被害を受けやすい状況に置かれた子ども、および、社会的な積極的差別是正措置を必要とする可能性がある状況に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機の状況またはその他の緊急事態下にあっても保護されることを確保すること。 データ収集 21.事前質問事項に対する回答とともに付属資料として提供された統計は歓迎しながらも、委員会は、データ収集に対するアプローチが断片的である(条約のすべての分野が網羅されておらず、かつ、広域行政圏および言語共同体のレベルで不均衡な形で行なわれている)ことを依然として懸念する。委員会はまた、国家子どもの権利委員会に対し、データ収集の調整責任に対応するために必要な資源が提供されていないことも懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、常設のデータ収集機構を国レベルで設置するプロセスを速やかに進めるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、とくに、締約国のすべての広域行政圏および言語共同体の比較研究の基礎となりうる統一的なデータ収集システムを創設する目的で2009年に設置された作業部会の活動を支えるため、国家子どもの権利委員会に対し、子どもに関するデータの収集を調整するための十分な人的資源および財源が提供されるようにすることも求めるものである。 普及および意識啓発 23.条約の普及および条約に関する意識啓発のために締約国が行なっている取り組み(とくに、条約を子どもにやさしく書き直したものの刊行)には留意しながらも、委員会は、締約国が、条約に関する普及活動および意識啓発活動を、体系的なかつ対象を明確化したやり方で進めていないことを遺憾に思うものである。 24.前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ17および26)にのっとり、委員会は、締約国が、条約のすべての規定が大人によっても子どもによっても同様に広く知られかつ理解されることを確保するための努力を強化するとともに、この目的のため、ベルギーで暮らしている子どもたちおよび若者たちが委員会に提出した2010年2月の第1回報告書で行なった提案を考慮するよう、勧告する。 研修 25.若干の研修活動が実施されてきたことには留意しながらも、委員会は、この研修において、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家が対象とされているわけではなく、かつ条約のすべての規定が含まれているわけでもないことを懸念する。委員会はまた、人権教育がいまなお締約国全域の学校カリキュラムで明示的に位置づけられていないことへの懸念をあらためて表明するものである。 26.委員会は、締約国に対し、子ども、親ならびに子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、教員、保健ケア従事者およびソーシャルワーカーを含む)を対象とした、条約の原則および規定に関する体系的な教育プログラムおよび研修プログラムを実施するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どもの権利を含む人権教育をすべての初等中等学校のカリキュラムに含めるよう求めるものである。 市民社会との協力 27.委員会は、国家子どもの権利委員会に市民社会の代表がいることおよびその活動に市民社会が関与していることを含む締約国と市民社会との協力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、締約国報告書に対する市民社会の意見が十分に反映されていないことを遺憾に思うものである。 28.委員会は、締約国が、子どもの権利の促進および保護への市民社会(NGOおよび子どもの団体を含む)の積極的かつ組織的な関与を促進するための努力を強化するとともに、政策の計画段階、委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成に対する市民社会の意見が全面的に考慮されかつ反映されることを確保するよう、勧告する。 国際協力 29.委員会は、ベルギー開発協力法(2005年)、および、2008年に議会に送付された子どもの権利に関する戦略ペーパーの起草を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの権利が――子ども兵士の使用など、いくつかの特定の子どもの権利侵害以外は――開発協力の主流に位置づけられていないように見えることを遺憾に思うものである。委員会はまた、締約国が2009年には国内総生産(GDP)の0.55%を国際援助に振り向けており、かつ、国際合意目標であるGDPの0.7%に2010年までに到達する決意を示していることに留意する。 30.委員会は、締約国に対し、2010年までにGDPの0.7%に到達するという決意を達成し、かつ可能であればそれを超えるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の実現が、開発途上国との間で締結される国際協力協定の最優先課題のひとつとなることを確保することも奨励するものである。その際、委員会は、締約国が、当該受領国に関する子どもの権利委員会の総括所見および勧告を考慮するよう提案する。 2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 31.委員会は、差別(とくに教育へのアクセスに関する差別)と闘うために言語共同体レベルで行なわれている取り組みに留意する。しかしながら委員会は、貧困下で暮らしている子どもが締約国で受けている複合的形態の差別(とくに教育、保健ケアおよび余暇へのアクセスに関わるもの)についての深刻な懸念をあらためて表明するものである。委員会はまた、障害のある子どもおよび外国出身の子どもが受けている継続的差別についても懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、事実上の差別の効果的監視を可能とする目的で細分化されたデータを収集するとともに、あらゆる形態の差別(被害を受けやすい状況に置かれたすべての集団の子どもに対する複合的形態の差別を含む)に対応し、かつ差別的な社会の態度(とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子どもおよび外国出身の子どもに向けられるもの)と闘う包括的な戦略を採択しかつ実施するよう、求める。 子どもの最善の利益 33.子どもの最善の利益の原則が、とくに養子縁組および被用者家族手当に関する法律に統合されていることには留意しながらも、委員会は、同原則がいまなお子どもに関わるすべての法律に一般的原則として反映されているわけではないことに、懸念を表明する。 34.委員会は、子どもの最善の利益の原則が、条約第3条にしたがい、すべての法規定、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定ならびにプロジェクト、プログラムおよびサービスに十分に統合されることを確保するために、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 35.委員会は、さまざまな分野で子どもの参加を促進するために多数の取り組みが行なわれていること(とくに、国家子どもの権利委員会の活動に子どもの関与を得ていること、および、ドイツ語共同体で2005年に「生徒議会」が創設されたこと)を歓迎する。しかしながら委員会は、ベルギーの子どもたちが、自分たちに直接関わる事柄についての意見がめったに考慮されないと感じていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、被害を受けやすい状況に置かれた子ども(すなわち貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、精神医療施設の子ども)が参加型のプロセスからしばしば排除されていることも懸念する。委員会は、報告プロセスへの子ども参加が連邦政府またはフラマン語共同体によって支援されなくなったことに、さらなる懸念を表明するものである。 36.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が引き続き、条約第12条にしたがって意見を聴かれる子どもの権利の実施を確保し、かつ、被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払いながら、すべての行政段階ならびに家庭、学校およびコミュニティにおけるすべての子どもの参加を促進するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、報告プロセスへの子ども参加を引き続き支援することも求めるものである。 37.委員会はさらに、司法上および行政上の手続において意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の勧告を実施するために必要な措置を締約国がとっておらず、実施がもっぱら裁量的なものに留まっていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、離婚の際の居所および面会権に関して12歳以上の子どもの意見を聴取する青少年裁判官の義務が、実際には実効的なものとなっていないことも懸念するものである。 38.委員会は、裁判所における手続および行政手続について定めた法律で、自己の意見を形成する力のある子どもが意見表明権を有することおよびその意見が正当に重視されることが確保されるべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ22)をあらためて繰り返す。 3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条および第37条(a)) 体罰 39.委員会は、締約国が、家庭および非施設型の子どもの養護環境における体罰が法律で明示的に禁じられることを確保するために必要な措置をとっていないことを懸念する。 40.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)および前回の勧告(CRC/C/15/Add.178、パラ24(a))に照らし、委員会は、締約国に対し、すべての場面、とくに家庭および非施設型の子どもの養護環境における子どもの体罰を、優先的課題として禁止するよう促す。委員会はまた、締約国が、非暴力的な代替的形態のしつけおよび規律維持が子どもの人間の尊厳と一致するやり方で行なわれることを確保するため、意識啓発キャンペーンおよび親教育プログラムを実施することも勧告するものである。 子どもに対する暴力に関する国際連合研究のフォローアップ 41.委員会は、家庭における暴力に対応するための新たな行動計画が2008年12月15日に採択されたこと、および、その他の態様のジェンダー特有の暴力(女性性器切除、強制婚および名誉犯罪など)にもその範囲を拡大することが構想されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、ブリュッセル地域において、緊急の状況下にある女性の暴力被害者およびその子どもを収容するシェルターが設けられていないことに、さらなる懸念を表明するものである。 42.委員会は、締約国に対し、女性差別撤廃委員会から2008年に勧告されたように(CEDAW/C/BEL/CO/6、パラ32)、女性および女子に対するあらゆる形態の暴力と闘うための包括的なかつ調整のとれた国家的戦略を速やかに策定するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、女性およびその子どもが締約国全域で専門の緊急宿泊施設を利用できるようにすることも求めるものである。 43.子どもに対する暴力に関する国際連合研究について、委員会は、締約国が、ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国際連合研究の勧告(A/61/299)を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の勧告に特段の注意を払うよう勧告するものである。 (a) 子どもに対するあらゆる暴力を禁止すること。 (b) 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。 (c) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (d) 体系的かつ全国的なデータ収集および調査研究を発展させかつ実施すること。 (e) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保すること、ならびに、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的なかつ(適切であれば)期限を定めた行動に弾みをつけることを目的として、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、同研究の勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (f) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表を支援すること。 4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 家庭環境 44.委員会は、家族および子どものための社会サービスが広く利用可能とされていることは認知しながらも、緊急の援助を日露とする多くの子どもが、適切な社会サービスを受けるまでに長期間待機しなければならないことに留意する。委員会は、現在の保育サービスの供給が需要をはるかに満たせておらず、フランス語共同体では、主として保育に振り向けられる資金が不十分であるために、需要の27.2%しか満たせていないことに懸念を表明するものである。委員会は、この供給不足により、もっとも不利な立場に置かれた家族の子どもおよび障害のある子どもがとりわけ影響を受けていることに懸念を表明する。委員会はまた、フラマン語共同体において、保育職員のうち保育の訓練を受けた者が80%に満たないことも懸念するものである。 45.委員会は、締約国が、適切な社会サービスを受けるまでに長期間待機しなければならない理由についての包括的な調査研究を実施するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、より多くの保育サービスを速やかに設置するとともに、子どもの特別な教育上のニーズまたはその家族の社会経済的状況にかかわらず、すべての子どもがアクセスできることを確保するようにも求めるものである。委員会は、締約国に対し、条約の原則および規定に照らして、障害のある子どものためにこれらの子どもが必要とする特別な援助を備えた保育体制を整備するとともに、保育サービスが訓練を受けた職員によって提供することを確保し、かつ乳幼児期の発達を促進するよう求める。 家庭環境を奪われた子ども 46.委員会は、子どもの養護においていまなお主として入所施設への子どもの措置に焦点が当てられていること、および、フランス語共同体における3歳未満児の施設措置率がヨーロッパでもっとも高いことを懸念する。委員会はさらに、措置までの待機期間が長いことおよび措置変更が頻繁に行なわれることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国が、施設への子どもの措置を防止するために法的枠組みを見直すとともに、この目的のため、家族に対し、必要に応じて子育てのための社会的および経済的援助ならびに法的援助を提供するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、施設措置よりも家庭的な養護環境を優先させるとともに、条約第25条で要求されているように措置の定期的再審査を行なうことも勧告するものである。委員会はさらに、2009年11月20日〔12月18日〕に採択された総会決議64/142に掲載されている、子どもの代替的養護に関する国連指針に対して注意を喚起する。 虐待およびネグレクト 48.委員会は、締約国における児童虐待の規模について、深刻な懸念とともに留意する。委員会は、フランデレン地域で虐待が乳児死亡の原因の第2位になっていること、および、締約国で児童虐待による死亡率が非常に高く、ほとんどのOECD諸国よりも高いことに、特段の懸念とともに留意するものである。委員会はまた、全事案の3分の1が性的虐待事案であること、および、性的虐待がいまなお、刑法において、暴力犯罪ではなく道徳に対する犯罪として位置づけられていることも懸念する。 49.国内全域における虐待およびネグレクトの規模に鑑み、委員会は、締約国に対し、児童虐待と闘いかつこれを防止するために必要な措置を緊急にとるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、虐待およびネグレクトに対抗する包括的な国家的行動計画を策定するとともに、防止および虐待防止の調整のための直接支援介入を行ない、かつ不当な取扱いを受けた子どもに具体的ケアを提供するサービスを相当に増加させるために必要な資源を確保するよう、求めるものである。委員会は、締約国に対し、女性差別撤廃委員会からすでに2008年に勧告されたように(CEDAW/C/BEL/CO/6、パラ30)、性的虐待を暴力犯罪として位置づけるよう求める。 養子縁組 50.国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約第21条との一致を図るために法改正が行なわれたことには留意しながらも、委員会は、国内養子縁組に比して国際養子縁組の割合が高いことに懸念を表明する。 51.委員会は、締約国に対し、とくに国内養子縁組手続を容易にすることにより、子どものいっそうの国内養子縁組を奨励するよう促す。 52.自己の出自を知る子どもの権利を保障するための法律を採択する意図が締約国にあることには留意しながらも、委員会は、養子縁組の一件書類に含まれる情報(両親の身元ならびに子どもおよびその家族に関する医療情報を含む)を収集し、保存しかつこれにアクセスするための明確な方式が定められていないことを懸念する。 53.委員会は、締約国が、養子となった子どもの出自に関する情報を収集し、保存しかつこれにアクセスするための具体的方式を速やかに定めるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(第1~3項)) 障害のある子ども 54.障害のある子どもの普通教育への統合に関する政令(2009年2月5日)がフランス語共同体で採択されたことには留意しながらも、委員会は、インクルーシブ教育が不十分であることおよび特別教育の定員数が足りないことにより、障害のある子どもがいかなる就学の可能性も奪われる可能性があることに、深刻な懸念を表明する。委員会はさらに、障害のある子どものなかでももっとも困難な状況を経験している子どもが、独自の基準にしたがって子どもを選抜する私立の保育所および入所ケアサービス施設からしばしば排除されていることを懸念するものである。 55.条約第23条および障害のある子どもの権利についての委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害のある子どもを対象とするインクルーシブ教育および保育所への統合を確保するためにいっそう実際的な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、障害のある子どもに対して配分される資源が、そのすべてのニーズ(普通学校において障害のある子どもを支援する専門家、とくに障害のある子どもを支援する教員の訓練のために設けられるプログラムを含む)を網羅するのに十分であること――および他の目的に流用されないように使途指定されたものであること――を確保するようにも求めるものである。 健康および保健サービス 56.委員会は、もっとも不利な立場に置かれた家族の子どもの健康状態について深刻な懸念を表明する。とくに委員会は、所得申告のない家族の子どもが生後1年以内に死亡する率が共稼ぎ家族の子どもの3.3倍であることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、医療保険に適切に加入していない家族のもとで暮らしている子どもが多いことも懸念する。委員会は、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を執行するために締約国が行なっている努力についての情報が乏しいことに、さらなる懸念を表明するものである。 57.委員会は、締約国に対し、もっとも不利な立場に置かれた家族の子どもの健康状態を生後1年間監視し、すべての子どもに対して保健サービスへのアクセスを確保し、かつ、自己の子どものために利用可能な保健サービスを求めるよう親に奨励する目的で、対象を明確化した緊急の措置をとるよう促す。委員会はまた、もっとも不利な立場に置かれた家族を対象とする保健サービスの費用負担を引き下げる目的で、健康保険制度の見直しを行なうことも勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」の執行を国内のすべての地域で強化するよう勧告する。 精神保健および精神医療を受けている子ども 58.子どもの精神的な健康およびウェルビーイングを向上させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、精神医療を受けている子どもの状況について深刻な懸念を表明する。委員会は、入院精神保健サービスを受けている子どもが、自己の見解を限られた形でしか表明できないこと、ならびに、外の世界からしばしば切り離されており、かつ、制限が正当である理由を明確に説明されないまま、家族および友人と定期的に面会する機会を制限されていることに、特段の懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、隔離措置が一般的に用いられていること、および、子どもの不可侵性を制限する可能性がある投薬が広く行なわれていることなど、入院精神保健サービスを受けている子どもに不当な取扱いが行なわれているという報告があることを深刻に懸念する。委員会は、精神保健ケアサービスを必要とする子どもの待機期間が長いことを懸念する。さらに委員会は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)と診断された子どもに対する精神刺激薬の処方が短期間に急速に増加していることを示す情報について懸念を覚える。 59.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 入院精神医療施設の需要を減少させ、かつ子どもが家族から分離されることなく必要なサービスを受けられるよう、子どもおよび若者を対象とする精神保健ケア制度のあらゆる構成要素(プライマリーヘルスケアにおける精神障害の予防および治療ならびに専門的アウトリーチサービスを含む)を引き続き発展させること。 (b) 待機期間を短縮し、かつ必要とするサービスに子どもがアクセスできることを確保する目的で、あらゆるレベルの精神保健ケア制度に人的資源および財源を配分すること。 (c) 入院精神保健ケア施設に措置された子どもが、自己の状況(精神医療のための入院期間を含む)に関する適切な情報を提供され、家族および外の世界との接触を維持し、かつその意見を聴かれかつ尊重されることを確保すること。 (d) 市民社会と連携しながら、精神医療を受けている子どもの権利を独立の立場から監視するしくみを実施するとともに、子どもの不当な取扱いに関するすべての苦情および訴えを透明なやり方で調査すること。 (e) 子どもに対する精神刺激薬の過剰処方現象を調査するとともに、ADHDと診断された子どもならびにその親および教員が広範な心理的、教育的および社会的措置および治療にアクセスできるようにするための取り組みを行なうこと。 思春期の健康 60.委員会は、締約国における青少年の薬物および有害物質の濫用について懸念を覚える。委員会はまた、締約国で子ども、とくに青少年の肥満が増加していることも懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、青少年の薬物および有害物質の濫用と闘い、かつ子どもの過体重および肥満に対応するための努力を継続しかつ強化するとともに、条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に緊密な注意を払うよう勧告する。委員会は、締約国が、薬物およびアルコールの濫用を防止するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 有害な伝統的慣行 62.委員会は、有害な伝統的慣行の状況に関する意識啓発および監視を図り、かつ、これらの観光と闘うための努力において、これらの慣行が蔓延している国々と協力するために締約国が最近行なっている努力に留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国で暮らしている数百人の女子が女性性器切除の対象とされており、かつ、このような慣行を禁止する法律が、ヘルスワーカーにさえ依然として知られないままであることを懸念するものである。委員会はまた、この問題に関して正確な情報が収集されていないことおよび有罪判決例が存在しないことにも懸念を表明する。 63.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 女性性器切除を禁じた法律を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) ベルギーで、またはベルギーに暮らしている女子を対象として国外で実行されている女性性器切除の規模および性質に関する研究を実施するとともに、このような研究に、この分野で活動しているNGOの関与を得ること。 (c) このような慣行を防止するため、同研究の結果を考慮に入れながら広報プログラムおよび意識啓発プログラムを組織すること。 (d) 有害な伝統的慣行の撲滅に関する国際協力を強化すること。 生活水準 64.委員会は、締約国から提供された、子どもの貧困が国家的優先課題に位置づけられてきた旨の情報、ならびに、権利を基盤とする「貧困と闘うための国家行動計画」について連邦、言語共同体および広域行政圏のレベルで合意が成立し、かつ同計画に子どもの貧困に関する独立の章が設けられている旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、子どもの16.9%以上が貧困線以下の生活を送っていること、ならびに、この割合が上昇しており、とくに外国出身の家族およびひとり親家族に影響を与えていることに、深刻な懸念を表明するものである。ホームレスの子どもに冬の間の宿泊施設を提供するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、ホームレスの女性および子ども(保護者のいない外国出身の子どもを含む)の人数が増えていると報告されていること、ならびに、このような女性および子どもの状況に対処するための統合的対応がとられていないことに、懸念を表明する。 65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 来たるべき欧州連合議長国担当期間中に、子どもの貧困に優先課題として引き続き焦点を当てること。 (b) 人権に裏打ちされ、かつ科学的根拠に基づいた包括的な貧困戦略を策定する目的で、子どもに影響を及ぼす貧困の複雑な決定要因、そのような貧困の規模および影響についての詳細な分析を実施すること。 (c) とくにひとり親ならびに多子家族および(または)親が失業中の家族など不利な立場に置かれた家族を対象とした、家族給付および子ども手当の制度の強化に対して多面的アプローチをとること。 (d) ホームレスの女性および子どもならびに保護者のいない外国出身の子どもを、貧困戦略(これらの者に適切な住居およびその他のサービスを提供するために緊急のかつ持続可能な措置をとることを含む)の優先的受益者に含めること。 6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育、職業訓練および職業指導 66.フラマン語共同体における教育の機会均等に関する政令の採択(2002年6月)および無償教育に関する2006年の通達を含め、教育への権利を確保するために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、締約国の子どもの間に存在する教育への権利の享受における相当の不平等、および、とくに子どもがアクセスできる教育機会およびその学業成績に社会経済的地位が及ぼす影響について、懸念を表明する。委員会は、以下のことに特段の懸念をもって留意するものである。 (a) 無償教育が憲法で保障されているにもかかわらず授業料が課されていることにより、教育へのアクセスにおける差別が非常に助長されていること。 (b) 貧困家庭の子どもおよび外国人である子どもは特別教育プログラムに付託される可能性が高いこと。 (c) 学校中退が犯罪視される傾向にあり、学校に行っていない若者が司法機関に通報されていること。 (d) フラマン語共同体において、学校に通っていない子どもの就学手当を削減する動きが出ていること。 67.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 自国の憲法にしたがって授業料を廃止するために必要な措置をとること。 (b) すべての子どもがその社会的地位にかかわらず教育にアクセスできること、および、貧困家庭の子どもが今後特別教育プログラムに付託されないことを確保すること。 (c) 外国出身の子どもの教育の促進に特別な注意を払いながら、成績格差を削減するための努力を強化すること。 (d) 経済的および社会的にもっとも不利な立場に置かれた家族に悪影響を及ぼし、かつこのような家族による学校制度への関与の拡大に寄与する可能性が低い抑圧的措置をとることを控え、これに代えて、教員、親および子どもの関与を得ながら学校中退の根本的原因に対応する一貫した戦略を構築すること。 68.委員会は、学校でいじめ(とくに外国出身の子どものいじめ)が蔓延していることを懸念する。 69.委員会は、締約国が、学校におけるいじめおよび他のあらゆる形態の暴力と闘うための包括的な防止啓発プログラムを策定するよう、強く勧告する。 休息、余暇、レクリエーションおよび文化的活動 70.委員会は、休息、余暇ならびに文化的および芸術的活動への子どものアクセスを向上させるために地域レベルで進められている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、とくに農村部および遠隔地において子どものための遊び場ならびに非公式な集まりおよびレクリエーションのための場所が不十分にしか利用できず、かつ、この点に関して自治体レベルで行なわれる決定への子どもの関与が限られていることに留意するものである。委員会は、もっとも不利な立場に置かれている家庭の子ども、難民受入れセンターの子ども、障害のある子どもおよび精神医学的ケアを受けている子どもがしばしばいかなる余暇活動へのアクセスも奪われているという懸念を表明する。委員会は、フランス語共同体で設けられていた、所得が不安定な家庭に手当を支給する「スポーツ小切手」が廃止されたことに、懸念とともに留意するものである。 71.委員会は、締約国に対し、すべての子どもの、休息および余暇に対する権利、子どもの年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に従事する権利ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を保障するための努力を強化するとともに、この点に関するいかなる意思決定プロセスにも子どもの全面的関与を得るよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、難民受入れセンターの子ども、障害のある子どもおよび精神医学的ケアを受けている子どもが遊びおよび余暇活動を行なうための十分かつアクセス可能な遊び場空間を提供されることを確保するよう、求めるものである。委員会はさらに、締約国に対し、不利な立場に置かれている家庭に、その子どもが条約第31条にしたがって自己の権利を全面的に行使できるようにするために必要な資源を提供するよう求める。 7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第37条(b)~(d)および第38~40条) 路上で物乞いをする子ども 72.委員会は、ブリュッセル控訴裁判所第14法廷が2010年5月26日に行なった、関与している成人が親であるかぎりにおいて物乞いのために子どもを使用することを禁止しない旨の決定(判決第747号)について懸念を表明する。 73.委員会は、締約国に対し、関与している成人が親であるか否かにかかわらず、路上での物乞いのために子どもを使用することを明示的に禁止するよう求める。 保護者のいない子ども 74.委員会は、締約国における現在の受け入れ危機に対処するために行なわれている取り組み(とくに、単独渡航の未成年者に関する部門横断型タスクフォースが設置されたこと、ならびに、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者を受け入れるセンターが2か所で開設されたこと)を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どものうち、13歳以上であって庇護申請を行なっていない子どもが、受け入れセンターへのアクセスを拒否されて路上に追いやられていること。 (b) 受け入れセンターに利用可能な空きがないため、保護者のいない子どもが成人向けの庇護センターに収容されることがあり、かつ、場合によってはいかなるタイプの援助からも排除されることがあること。 (c) 2004年5月の後見法において、保護者のいないヨーロッパ出身の子どもが、後見人による援助を受けることから排除されていること。 (d) 時間および費用がかかる手続によって家族再統合が阻害されていること。 (e) 無国籍と認定された子どもに、締約国に在留する権利が認められていないこと。 75.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 庇護を申請しているか否かにかかわらず、保護者のいないすべての子どもに対して特別な保護および援助を確保する義務を遵守すること。 (b) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもであるすべての庇護希望者に対し、その国籍にかかわらず、庇護手続の期間中、後見人が任命されることを保障すること。 (c) 条約第10条にしたがい、かつ子どもの最善の利益を正当に考慮しながら、家族再統合への対応が積極的、人道的かつ迅速な方法で行なわれることを確保すること。 (d) 新たな無国籍認定手続に関する2008年5月の政府の宣言を実施するとともに、無国籍の認定を受けた者――子どもを含む――に対する在留許可の付与および無国籍の削減に関する1961年の条約の批准を検討すること。 庇護を希望している家族の子ども 76.委員会は、2008年10月1日以降は子どものいる家族を閉鎖型センターにもう収容しない旨の移住政策・庇護大臣の決定にもかかわらず、子どもにふさわしくない施設において不安定な条件下でいまなお収容されたままの子どもおよびその親がいることに懸念を表明する。委員会はまた、ソーシャルワーカー、非政府組織および面会者がこれらの施設にアクセスできないことも懸念するものである。委員会はさらに、庇護申請を棄却された家族が施設から出なければならず、しばしば路上へと追いやられていることを懸念する。 77.委員会は、締約国に対し、閉鎖型施設への子どもの収容を取りやめ、庇護を希望している家族のために収容に代わる措置を創設し、かつ、庇護申請を棄却されて路上で生活している家族を対象として一時的居住の解決策を緊急に見出すために必要な措置をとるよう、促す。 武力紛争における子ども 78.委員会は、上院が、武力紛争における子どもに関する詳細な決議を2006年4月に採択したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、兵士の徴集について定めた法律(とくに戦時において、対象者が17歳に達する年の1月から民兵として採用することができるとするもの)の廃止のための措置をとっていないことを遺憾に思うものである。 79.委員会は、締約国が、前掲決議を政府の政策に統合することによってその全面的実施を進めるよう勧告する。委員会はまた、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の報告書の審査後に行なった、締約国が、戦時およびあらゆる態様の緊急事態下において18歳未満の者の軍隊への採用を認めたすべての法律を廃止するべきである旨の勧告(CRC/C/OPAC/BEL/CO/1、パラ11)もあらためて繰り返すものである。 売買、取引および誘拐 80.委員会は、強瀬労働および商業的性的搾取を目的とする子どもの人身取引と闘うために締約国が行なっている相当の努力(とくに、2008年7月11日に「人身取引・人の密輸対策国家行動計画」が採択されたこと、および、国際平和維持活動に派遣される軍隊を対象として人身取引対策に特化した研修が実施されていること)を歓迎する。しかしながら委員会は、人身取引の被害を受けた子どもが締約国で十分に保護されていないことに懸念を表明するものである。委員会は、子どもに在留許可が付与されるのは人身取引犯の捜査に協力する場合に限られていることに、特段の懸念とともに留意する。委員会はまた、人身取引の被害を受けた子どものシェルターへの収容または保護がしばしば十分でないために、これらの子どもが受け入れセンターから失踪し、かつ(または)しばしば路上へと追いやられていることも、深刻に懸念するものである。 81.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 問題の規模を評価すること等を通じ、性的目的の子どもの人身取引の発生を減少させかつ防止するための努力を強化すること。 (b) 人身取引の被害を受けたすべての子どもに保護を提供する義務を遵守し、かつ、これらの子どもに対し、その国籍および法的手続に協力する意思または能力の有無にかかわらず、在留許可を付与すること。 (c) 人身取引の被害を受けた子どもに援助を提供する入所施設を増設するとともに、社会サービスによる養護の対象とされた子どもが十分な援助を受け、かつ人身取引または再度の人身取引のおそれにさらされないことを確保するため、受け入れセンターおよびシェルターで被害を受けた子どもに対応する専門家の、子どもの権利に関する知識およびスキルを増進させること。 (d) それぞれ1996年、2001年および2008年に開催された第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議の成果文書、および、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮に入れること。 少年司法の運営 82.2006年5月15日および6月13日の法律によって少年司法制度に加えられた修正には留意しながらも、委員会は、条約で唱道されている、少年犯罪の問題への対応に関するホリスティックなアプローチを防止、手続および制裁との関連も含めて採用するべきである旨の以前の勧告が、締約国によって十分に考慮されてこなかったことを懸念する。委員会は、以下のことについて特段の懸念を表明するものである。 (a) 罪を犯した16~18歳の子どもが、いまなお成人裁判所における審理の対象とされ、かつ、刑を言い渡された場合に成人用の刑務所に収監される可能性があること。 (b) 子どもの弁護人選任権が、予審判事による尋問を受ける際に常に尊重されているわけではなく、かつ警察による取り調べの際には認められていないこと。 (c) 子どもが自ら法的手続きを開始できないこと。 (d) 拘禁は最後の手段として用いられるべきであるところ、締約国が、子どもを対象とする閉鎖型施設の収容定員を倍増させたことに表れているように、厳格な拘禁方針をますます適用するようになっていること。 (e) 閉鎖型施設と主要都市との間に距離があるため、家族が、拘禁された子どもとの定期的接触を維持するうえで困難に遭遇していること。 (f) 未成年者の一時的収容のための連邦閉鎖型施設(エーフェルベルグ)で独居拘禁がいまなお科されていること。 (g) 子どもに対し、反社会的行動を理由とする自治体の行政罰が、少年司法制度の枠外で科される可能性があること。 83.委員会は、締約国に対し、少年司法関連の基準、とくに条約第37条(b)、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則が全面的に実施されることを確保するよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れるよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもが成人として審理され、かつ成人とともに拘禁される可能性を解消する目的で法律を見直すとともに、成人刑務所から子どもを直ちに退所させること。 (b) 手続のあらゆる段階(警察官による取り調べ中を含む)で、子どもが弁護士および信頼する大人の立会いを得ることを確保すること。 (c) 子どもが少年法弁護士の援助を得て法的手続を開始できるようにするための法的根拠を設けること。 (d) 子どもの拘禁が最後の手段として、かつもっとも短い期間でのみ行なわれることを確保するため、罪を犯した少年に対する代替的制裁についての包括的政策を、優先的課題として策定すること。 (e) 自由を奪われた子どもが居住地の近くの施設に収容されることを確保するための方法を模索するとともに、これらのすべての施設に公共交通機関でアクセスできることを確保すること。 (f) 言い渡された刑が定期的に再審査されることを確保すること。 (g) 子どもが今後は事実上の隔離の対象とされないことを確保すること。 (h) 行政罰と条約との両立可能性について評価を行なうこと。 8.国際人権条約の批准 84. 委員会は、締約国が、まだ加盟国となっていない国際連合の中核的人権条約およびその選択議定書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問ならびに〔および〕他の残虐な、非人道的なおよび〔または〕品位を傷つける取扱いおよび刑罰に関する条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する〔国際〕規約の選択議定書を批准するよう勧告する。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 85.委員会は、とくにこれらの勧告を内閣、議会(上院および代議院)ならびに該当するときは言語共同体および広域行政圏レベルの政府および評議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 86.委員会はさらに、条約、その選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会、若者グループ、メディアその他の専門家グループおよび子どもが同国のすべての公用語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 87.委員会が採択し、かつその報告書(CRC/C/114およびCRC/C/124)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、また締約国の第5回定期報告書の提出期限が第3回・第4回定期報告書の検討後4年を待たずに到来することに留意し、委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年7月14日(すなわち、条約で定められた第6回定期報告書の提出期限の18か月前)〔まで〕に提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではなく(CRC/C/118参照)、かつ、この総括所見のフォローアップ、ならびに、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書の実施に関する情報を記載したものであるべきである。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 88.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/105.html
総括所見:ドイツ(第2回・2004年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2014年)OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.226(2004年2月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年1月16日に開かれた第926回および第927回会合(CRC/C/SR.926 and 927参照)においてドイツの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.7)を検討し、2004年1月30日に開かれた第946回会合(CRC/C/SR.946)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがった締約国の第2回報告書が提出されたことを歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/DEU/2)に対する文書回答の提出にも留意するものである。委員会は、条約に実施に直接携わっているハイレベルな代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利の実施に関する理解を向上させることができたことに謝意を表する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の法律の採択等を歓迎する。 (a) 外国籍の子どもがよりよい形で統合されることを可能にする、1999年7月15日に採択された国籍および市民権法。 (b) 監護権および面接交渉権に関する婚内子と婚外子関の差別を抑止する、1997年12月16日(1998年7月1日施行)の家族法改正(Reform zum Kindschaftsrecht)。 (c) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准(2001年)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の批准(2002年)。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、ドイツの再統一およびそれにともなう結果が、締約国全域における条約の実施に引き続き影響を与えていることに留意する。 D.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 5.委員会は、締約国が、委員会のさまざまな勧告を実施しないと報告書のいくつかの箇所で述べていることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.5)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.43)の一部、とくにパラ21~26および29~35に掲げられたもの(独立の監視機構の設置など)への対応が不十分であることを遺憾に思うものである。これらの懸念および勧告はこの文書にもあらためて掲げられている。 6.委員会は、締約国に対し、まだ実施されていない前回の勧告およびこの総括所見で表明された懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保/宣言 7.委員会は、とくに最近の立法により、締約国が批准時に行なった留保および宣言は不必要になった旨の情報(CRC/C/83/Add.7のパラ84および844ならびに文書回答の46~47ページ)を認知する。しかしながら委員会は、これらの留保および宣言の撤回を受託することについて過半数の州が前向きでないことを、依然として懸念するものである。 8.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/43、パラ22)にしたがい、委員会は、締約国が、同国が行なった留保および解釈宣言を次回の定期報告書の提出までに撤回する手続を迅速に進め、かつ、とくに当該撤回の必要性について州を納得させるための努力を強化するよう、勧告する。 立法 9.委員会は、第1回報告書の検討以降、子どもの権利に関わる多数の法律が採択されたことを認識しつつも、条約が、第1回報告書の時点で予期されていたとおり基本法に編入されていないことを、依然として懸念する。 10.前回の勧告(パラ21)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 基本法への条約の編入をあらためて検討すること。 (b) 適切な機構を通じ、国および州のすべての法律が条約に全面的に一致することを確保すること。 (c) 予算配分等も通じ、これらの勧告の効果的実施のために十分な対応が行なわれることを確保すること。 調整 11.委員会は、家族問題・高齢市民・女性・青少年省が条約の実施の調整を担当しており、かつ、州の間に、各州最高青少年当局協議会および各州青少年大臣会議のような調整機関が存在することに留意する。しかしながら、条約の実施が多くの省を横断する課題であることを考慮し、委員会は、国ならびに州および地方のレベルで締約国における条約の実施を調整する中央機構が存在しないために、包括的なかつ首尾一貫した子どもの権利政策を実現することが困難になっていることを、依然として懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、連邦レベル、連邦レベルおよび州レベルの間ならびに州の間で条約の実施を調整するための、十分なかつ常設の国家的機構を確立するよう、勧告する。 国家的行動計画 13.委員会は、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」にしたがった国家的行動計画の起草作業が現在進められていることに満足感とともに留意しつつも、この国家的行動計画で条約のすべての分野が対象とされない可能性があることを依然として懸念する。 14.委員会は、締約国が、国家的行動計画の採択を迅速に進めるよう勧告する。当該計画は、条約のすべての分野を網羅し、包括的かつ分野横断型であり、かつ調整および監視のための機構について定めたものであるべきである。委員会はさらに、この行動計画の採択および実施が、開かれた、協議を基調とする、かつ参加型のプロセスで進められるべきことを勧告する。 独立の監視体制 15.委員会は、子どもの権利も対象とするさまざまな人権機関、ならびに、州レベルの子どもコミッショナー、ドイツ連邦議会子ども委員会、および、子ども・若者の状況に関する定期的報告を担当する独立委員会(Kinder-und Jugendbericht)が存在することに留意する。しかしながら委員会は、州および連邦のレベルで子どもの個別の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた、条約の包括的監視のための独立した中央機関が存在しないことを、懸念するものである。 16.委員会は、締約国に対し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、総会決議48/134付属文書)にしたがって、かつ子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮しながら、国および地方のレベルにおける条約の実施の進展を監視しかつ評価するための独立した国内人権機関を設置することを検討するよう、奨励する。加えて、委員会は、当該機関に十分な人的資源、技術的資源および財源が配分されること、ならびに、子どもに配慮したやり方で子どもの権利侵害の苦情を受理し、調査しかつ効果的に対応する権限がその任務に含まれることを勧告するものである。 データ収集 17.委員会は、締約国報告書の付属文書で提供された豊富な統計データに評価の意とともに留意するものの、条約が対象としている一部分野についてデータが不十分であることを依然として懸念する。 18.委員会は、締約国が、条約に一致し、かつジェンダー、年齢ならびに都市部および農村部の別に細分化されたデータ収集システムおよび指標を発展させるよう、勧告する。当該システムは、外国人の子どものようにとくに脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視しつつ、18歳未満のすべての子どもを対象とするべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約の効果的実施のための政策およびプログラムを立案するにあたってこれらの指標およびデータを活用するよう奨励する。 研修および普及 19.委員会は、条約の規定および原則を普及するために締約国が行なっているさまざまな活動に留意するものの、最近の研究によれば、ほとんどの子どもおよびおとな(とくに脆弱な集団に属する者)が条約に掲げられた権利について認識していないことを、依然としてとりわけ懸念する。したがって委員会は、締約国が、条約に関する普及、意識啓発および研修のための十分な活動を、体系的かつ対象を明確にするやり方で行なっていないことを懸念するものである。 20.前回の勧告(パラ26、27および36)ならびに条約第42条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 庇護希望者、難民および民族的マイノリティのような脆弱な立場に置かれた集団に確実に情報を届けるための取り組みも含め、子どもおよび親の間、市民社会の間ならびに政府のあらゆる部門およびレベルにおける、条約およびその実施に関する情報の普及を相当に拡大すること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、施設で働く職員、教員および保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 国際協力 21.委員会は、「貧困削減行動計画2015」の承認、および国際協力・援助の分野で行なわれている他の多くの活動に留意するものの、締約国が国内総所得の0.27%しか政府開発援助に充てていないこと、および、2006年に予定されている0.33%への増加が遅々としていることを、依然として懸念する。 22.前回の勧告(パラ25)に照らし、委員会は、締約国に対し、国内総生産の0.7%を海外開発援助に配分するという国際連合の目標を可能なかぎり早期に実施するよう奨励するとともに、〔1995年社会開発サミットで確認された〕コペンハーゲン20/20イニシアティブの目標を達成するための基礎的社会サービスに関する委員会の懸念を強調する。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 23.基本法(第3条)で差別が禁じられていることは認知しながらも、委員会は、外国人の子どもが事実上差別されており、かつ人種的憎悪および外国人排斥の事件が子どもの発達に悪影響を及ぼしていることを懸念する。委員会はまた、実務および提供されるサービスならびに子どもによる権利の享受に関する諸州間の格差の一部が差別に相当する可能性があることも、懸念するものである。 24.条約第2条にしたがい、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、当該評価に基づき、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、外国人の子どもまたはマイノリティに属する子どもに対する事実上の差別を防止しかつ撤廃するための行政上および司法上の措置を強化することも、勧告するものである。 25.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 26.委員会は、子どもの最善の利益の原則(第3条)を考慮するために発展させられてきたさまざまな取り組みに留意するものの、この一般原則が、締約国の政策およびプログラムの実施においても、行政上および司法上の原則においても全面的に適用されかつ正当に統合されているわけではないことを、依然として懸念する。 27.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、すべての立法および予算ならびに子どもに影響を与える司法上および行政上の決定ならびにプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 28.委員会は、自己の意見を表明する子どもの権利を認めたさまざまな法規定により、条約第12条の実施に関して達成された進展に留意するものの、同条に掲げられた一般原則が、締約国全域の政策およびプログラムの実施において、実際上、全面的に適用されかつ正当に統合されているわけではないことを依然として懸念する。 29.委員会は、子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するため、さらなる努力が行なわれるべきことを勧告する。これとの関係で、脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般に参加するすべての子どもの権利がとりわけ重視されるべきである。この一般原則は、子どもに関わるすべての政策およびプログラムにも反映することが求められる。この原則の実施に関する公衆一般の意識啓発ならびに専門家の教育および研修が強化されるべきである。 3.市民的権利および自由 宗教の自由 30.委員会は、2003年9月24日の憲法裁判所決定(2 BvR 1436/02, Case Ludin)に留意するものの、現在いくつかの州で議論されている、教職員が公立学校でヘッドスカーフを着用することの禁止を目的とした法律について懸念する。このことは、宗教の自由に対する権利についての子どもの理解、および、条約第29条の教育の目的において促進されている寛容の態度の発達に寄与しないためである。 31委員会は、締約国が、とりわけ特定の宗教的集団を選び出して異なる取り扱い方をするような措置を避けることにより、とくに宗教、良心および思想の自由の分野において理解および寛容の文化を発達させることを目的として、子ども、親その他の者を対象とした教育上その他の措置をとるよう、勧告する。 情報へのアクセス 32.有害な印刷媒体および電子通信媒体から子どもを保護するための締約国の努力(たとえば青少年保護法およびメディアにおける未成年者の保護に関する州間協定(2003年))は歓迎しながらも、委員会は、法的文書の増加によって法的状況が複雑化しているおそれがあること、および、連邦レベルと州のレベルの間における責任分担が明確でないことを、依然として懸念する。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 有害な情報からの子どもの保護に関して新たに採択された規則の全面的実施を確保するとともに、この点に関わる法的状況をいっそう透明なものとする方策を見出すこと。 (b) 子どもにとって有害となる可能性がある情報から子どもを保護するさらなる手段(親に対する助言の提供によるものも含む)を検討すること。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 34.委員会は、連邦児童手当法の第3次改正法(2001年1月1日施行)の採択によって双方の親が親休暇をとる可能性が向上したこと、および、親権に関する法律の改正によって、両親が離婚し、別居しておりまたは婚姻していない場合についても親権(Sorgerecht)を共有できるようになったことに評価の意とともに留意するものの、司法制度において後者の法律を全面的に実施する準備がまだ整っていないことを、依然として懸念する。 35.委員会は、締約国が、とくに判事を対象とする十分な研修を通じ、親権法に関する新たな立法の全面的実施のために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。 国際養子縁組 36.委員会は、締約国が2001年に国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を批准したことを歓迎し、かつその実施のためにとられた措置に留意するものの、締約国報告書(パラ476)で述べられているように、これらの養子縁組事案で不正が行なわれている可能性があることを依然として懸念する。 37.委員会は、締約国が、とくに国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を全面的に実施し、かつ、ドイツ人の養子とされた子の出身国のうちまだ当該条約に加入していない国による当該条約の批准を促進することにより、国際養子縁組の事案で行なわれる可能性がある不正に対処するため、引き続きあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 子どもの国外への不法移送および不返還 38.委員会は、ドイツが国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の締約国であることに満足感とともに留意するものの、親のいずれかによる子どもの奪取の問題が増大しつつあることを依然として懸念する。 39.委員会は、締約国が、ドイツに奪取されてきたすべての子ども(1980年ハーグ条約の締約国ではない国から奪取された子どもも含む)に対して当該条約を全面的かつ効果的に適用するとともに、まだ当該条約に加盟していない国に対して批准または加入を奨励し、かつ、必要なときは、国際的な子の奪取に十分に対応するための二国間協定を締結するよう、勧告する。委員会はさらに、国外への子どもの不法移送の事案の解決のため、外交ルートおよび領事ルートを通じて最大限の援助を提供することを勧告するものである。 暴力、虐待、ネグレクトおよび不当な取扱い 40.委員会は、子どもの養育における暴力を禁じた法律(家庭における体罰も禁止)が2000年に導入され、かつドメスティック・バイオレンスと闘うための他のさまざまな法的文書(たとえば子どもの権利のいっそうの改善のための2002年法)が導入されたことを歓迎するものの、新法の影響に関する包括的なデータおよび情報が存在しないことを依然として懸念する。委員会はさらに、締約国においてさまざまな形態の暴力(とくに性的虐待および問題として増大しつつある学校における暴力)が引き続き存在していることを懸念するものである。 41.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの慣行の規模、範囲および性質を評価するため、暴力、とくに性的虐待および学校における暴力に関する包括的研究を行なうこと。 (b) 児童虐待を防止しかつこれと闘うため、子どもたちの関与を得ながら意識啓発キャンペーンを強化すること。 (c) 現行体制の活動を評価し、かつこれらの事案に関与する専門家の研修を行なうこと。 5.基礎保健および福祉 42.委員会は、子どもの間で薬物、アルコールおよびタバコの濫用が広がっていること、胎児性アルコール症候群を持って生まれる新生児が多いこと、および、親のいずれかが薬物依存者である子どもの人数が300万人と推定されていることに、懸念を表明する。 43.委員会は、締約国が、とくに集中的な教育キャンペーンを行なうことおよび十分なリハビリテーション・サービスを設けることによって子どもおよび親の薬物およびアルコールの濫用と闘うため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 思春期の健康 44.委員会は、精神疾患を有する子どもが精神医療施設の成人病棟で治療されていること、および、精神医学に関わる倫理的問題が十分に考慮されていないことを懸念する。委員会はさらに、子どもおよび青少年の自殺件数が非常に多いことを深く懸念するものである。 45.委員会は、精神医療施設において子どもが成人から分離されることを確保し、かつ精神医学倫理に関する国際基準をより十全に考慮するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、思春期保健サービス、とくにカウンセリング・サービスおよび自殺予防プログラムを強化するよう、勧告するものである。 有害な伝統的慣行 46.委員会は、女性性器切除の慣行の禁止が刑法で取り上げられていることに留意するものの、締約国においてサハラ以南のアフリカ諸国出身の女子に対して女性性器切除が行なわれているという報告について懸念を表明する。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ドイツ在住の女子に対して締約国でまたは国外で行なわれる女性性器切除の規模および性質に関する研究を行なうこと。 (b) 研究の結果を考慮しながら、この慣行を防止するための広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを組織すること。 (c) この活動に、この分野で活動している非政府組織の関与を得ること。 (d) とくに、女性性器切除が行なわれている出身国であってこの慣行の撤廃のための積極的プログラムを有する国への財政的および技術的援助を拡大することにより、国際協力プログラムにおける女性性器切除の撤廃に優先的に取り組むこと。 保育サービスおよび保育施設 48.委員会は、とくに国の西部において十分な保育施設が存在しないこと(CRC/C/83/Add.7、パラ584、585および630参照)およびこれらの施設に関する全国的基準が存在しないことについての締約国の懸念を共有する。 49.条約第18条3項および第25条にしたがい、かつ経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の勧告(E/C.12/1/Add.68、パラ44)に照らし、委員会は、締約国が、働く親のニーズを満たす目的でいっそう多くの保育サービスを設け、かつ、すべての子どもが良質な保育を利用できることを確保する目的で全国的な基準を定めるための措置をとるよう勧告する。 十分な生活水準に対する権利 50.委員会は、資金移転から貧困家庭のための適切なインフラの構築の重視へと政策が転換されたことに留意する。委員会はまた、貧困に関する初の国家的報告書(2001年)も歓迎するとともに、ここ数年の児童手当の増額、および、子どものいる家族を援助するための措置を整備する所得税改革に留意するものの、第11次青少年白書で明らかにされているとおり、貧困が蔓延しており、そのことによって主として大家族、ひとり親家族および外国出身の家族に対する影響ならびに締約国の東部出身の家族に対する不相応な影響が生じていることを、依然として懸念する。 51.委員会は、前回の勧告(パラ31)にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに国の東部と西部間の格差を解消する目的で子どもの貧困の解消を迅速に進めるため、「利用可能な資源を最大限に用いて」あらゆる必要な措置をとること。 (b) 十分な生活水準に対する子どもの権利を保障するため、経済的に不利な立場に置かれている家族、とくにひとり親家族および外国出身の家族に対し、引き続き物的援助および支援を提供すること。 (c) 社会政策の転換を適切な形で評価すること。 6.教育、余暇および文化的活動 52.委員会は、教育の地方分権化により、条約第28条および第29条の実施の面で若干の格差が生じる可能性があることに留意する。加えて、委員会は、学習障害のある子どもの教育のための十分なサービスが存在しないことを懸念するものである。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第28条および第29条が州全域で全面的に実施されることを確保するため、とくに教育計画および研究振興に関する連邦政府・州間委員会(BLK)を通じてあらゆる必要な措置をとること。 (b) 前掲パラ23および24を参照し、かつ第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮に入れながら、人権教育をさらに発展させること。 (c) 学習障害のある子どものためのサービスをさらに発展させること。 (d) すべての学校に公民教育プログラムを導入すること。 7.特別な保護措置 子どもの難民 54.条約第22条に関して締約国が行なった宣言についての懸念に加え、委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) 16~18歳の子どもの難民が、青少年福祉法に掲げられた権利の利益を享受していないこと。 (b) ロマの子どもおよび民族的マイノリティに属するその他の子どもが、その家族の避難元である国に強制送還される可能性があること。 (c) 子どもが兵士として徴募されることが、庇護手続において子どもに特有の迫害として認められていないこと。 (d) 難民の地位に関する条約(1951年)で定義された難民家族の家族再統合に関する国内的要件および手続が複雑であり、かつ長すぎること。 (e) ベルリン州における庇護希望者の子どものなかに、親が提供した書類が不完全であることを理由として出生証明書に対する権利を否定される者がいたこと。 55.条約第7条、第22条その他の規定に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 青少年福祉法の規定を、18歳未満のすべての子どもの難民に対して全面的に適用すること。 (b) 締約国で庇護を希望するロマの子どもおよび民族的マイノリティに属するその他の子どもについての法律および政策を見直すこと。 (c) 子どもが兵士として徴募されることを、庇護手続において子どもに特有の迫害として認めることを検討すること。 (d) とくに1951年難民条約で対象とされている難民家族について、難民の家族再統合に関する要件および手続を緩和すること。 (e) 締約国の領域で生まれた難民および庇護希望者の子ども全員に出生証明書が発行されることを確保すること。 性的搾取および人身取引 56.委員会は、「性暴力および性的搾取から子どもと青少年を保護するための連邦政府行動計画」(2003年1月)が採択されたことを歓迎するものの、成人が子どもに対して行なう犯罪によってさまざまに異なる年齢が刑法で維持されていることを、依然として懸念する。 57.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連のすべての法律で定められている性的搾取および人身取引からの保護を、18歳未満のすべての男子および女子に拡大すること。 (b) 子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領(1996年)ならびにグローバル・コミットメント(2001年)にしたがって、自国の行動計画を効果的に実施することにより、子どもの性的搾取および人身取引と闘うための努力を続行すること。 ストリートチルドレン 58.この点に関して行なわれている努力には留意しながらも、委員会は、締約国でストリートチルドレンの人数が増加していること、および、そのなかで外国人の子どもが占める割合が高いことに、懸念を表明する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに外国人の子どもの保護を重視しながら、その根本的原因に対処することによってこの現象を防止しかつこれと闘うための努力を続行すること。 (b) ストリートチルドレンの全面的発達を支える目的で、これらの子どもに対して十分な食料、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。 (c) これらの子どもに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復およびリハビリテーションのためのサービスならびに家族と和解するためのサービスが提供されることを確保すること。 少年司法の運営 60.第40条2項(b)(ii)および(v)に対する留保に加え、委員会は、拘禁措置の対象とされる子どもの人数が増えており、かつ外国出身の子どもが不相応な影響を受けていること、および、拘禁または勾留の対象とされた子どもが25歳までの者とともに措置されていることを懸念する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の国連基準にしたがった少年司法制度を実施するため、あらゆる適当な措置をとること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間でのみ用いられること、適正手続の保障が全面的に尊重されること、および18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。 (c) 前掲国際基準で述べられているとおり少年司法手続に代わる選択肢を発展させること。 8.条約の選択議定書 62.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に関連して締約国が〔軍隊への徴募等に関する最低年齢は例外なく18歳に定めるべきであるという〕「ストレート18」の立場を支持していること、および、締約国が条約第38条に関して宣言を行なったことを認知する。これとの関連で、委員会は、締約国で批准のためのプロセスが開始されたことに留意するとともに、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する条約の両選択議定書を批准しかつ実施するよう、奨励するものである。 9.文書の普及 63.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。委員会は、締約国がこの点に関して国際協力を要請するよう勧告する。 10.報告書の定期的提出 64.最後に、委員会が採択し、かつ第29会期(CRC/C/114)および第32会期(CRC/C/124)に関する報告書に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、締約国が、次回の定期報告書を2009年4月4日〔まで〕に提出するよう勧告する。この報告書は、第3回および第4回定期報告書を統合したものであるべきである。当該報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。 更新履歴:ページ作成(2011年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/120.html
総括所見:スウェーデン(第2回・1999年) 第1回(1993年)/第3回(2005年)/第4回(2009年)/第5回(2015年)OPAC(2007年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/65/Add.3(1999年5月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1999年1月22日に開かれた第521回~第522回会合(CRC/C/SR.521-522参照)においてスウェーデンの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.3)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1999年1月29日に開かれた第531回会合において。 A.序 2.委員会は、第2回定期報告書が時宜を得た形で提出されたことを歓迎し、かつ、その間にも委員会に対して自発的に追加的情報を提出したことに関して、締約国を称賛する。委員会は、報告書が包括的なものであることに対する評価の意を表明する一方で、報告書が委員会の指針に完全に従っているわけではないことを遺憾に感ずるものである。そのことは、とくに、報告書が第1回報告書にすでに含まれていた情報を繰り返していること、および、当該報告書の審査後に委員会が公にした総括所見およびその実施に関する言及がきわめて限られていることに、表れている。報告書は立法措置の説明にあまりにも焦点を当てすぎており、子どもの実情に関する統計的その他の情報の記載は限られていた。委員会はまた、事前質問票(CRC/C/Q/SWE/2)に対する文書回答、および対話の過程で提供された追加的情報にも留意する。これにより、委員会はスウェーデンにおける子どもの権利の実施に関する進展を評価することができた。委員会は、締約国の代表との建設的対話を歓迎するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、条約の原則および規定との一致を確保するため現行法を見直す議会委員会が設置されたことを評価する。 4.委員会は、委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ12参照)を実施するための締約国の努力を評価し、かつ、条約、とくに第37条、第39条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の関連の国際基準と少年司法制度との両立を向上させるために法律を見直しかつ適切な措置をとることに関して達成された進展を歓迎する。 5.委員会は、子どもの商業的性的搾取と闘う国際的努力をスウェーデンが支援していることを称賛し、かつ、「子どもの商業的性的搾取撲滅のための国内行動計画」が1997年に採択されたことを歓迎する。 6.委員会は、開発協力プログラムにおける子どもの権利への継続的コミットメントに関して締約国を称賛し、かつ、締約国が、GDPの0.7%を開発援助に充てるという国際連合の目標を満たしかつ超えている数少ない国のひとつであることに、満足感とともに留意する。委員会は、外務省およびスウェーデン国際開発庁で働く職員に対し人権および子どもの権利に関する研修を提供するための締約国の努力を歓迎するものである。 C.主要な懸念事項および委員会の勧告 7.自治体によるサービス提供における地方分権化の積極的側面には留意しながらも、委員会は、地方分権化が、政策における矛盾、および子どもおよび家族へのサービスの提供またはアクセス可能性における格差をもたらしてきたことを懸念する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ10参照)に沿い、委員会は、条約の実施におけるいかなる差別からも子どもを全面的に保護することを目的とした政府の政策の枠組みを自治体が尊重することを確保するため、締約国がいっそうの努力を行なうよう勧告するものである。 8.委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ10)にしたがって1993年に子どものためのオンブズマンが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国との対話中に提起された、子どものためのオンブズマンの役割、自律性および構造的立場に関する多くの論点について懸念する。委員会は、1人委員会によって遂行される、オンブズマンの効果についての調査が開始されたことを歓迎し、かつ、締約国に対し、その結果を注意深く検討しかつ子どものためのオンブズマンの役割および自律性について見直しを行なうことを検討するよう、奨励するものである。 9.委員会は、締約国が1991年~1993年に経験した景気後退の影響が予算緊縮措置につながり、それが子どもに影響を与えかつ条約の実施における進展の達成に関して懸念を引き起こしていることに、留意する。特別な支援のニーズを有する子どもたちに対する追加的な資源の利用を優先させるという締約国の決定は歓迎しながらも、委員会は、予算緊縮措置の結果として、一部自治体が提供する教育サービスおよび社会サービスが有償化されかつ縮小されていることを依然として懸念するものである。委員会は、条約第4条にしたがって利用可能な手段を最大限に用いて条約を実施する努力をあらためて行なうため、締約国が予算削減の影響を再検討するよう勧告する。 10.委員会は、他国に居住する子どもまたは他国の国籍を有する子どもの婚姻年齢を低く設定した法律を見直すという締約国の決定を歓迎する。委員会は、締約国に対し、早期婚の有害な影響に対する保護を強化し、かつその管轄内にある子どものあいだでの差別を解消するため、当該法律の改正を検討するよう奨励するものである。 11.条約第2条および委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ7および13参照)に関して、委員会は、不法移民の子ども、いわゆる「隠れた子ども」を対象として差別の禁止の原則が全面的に禁止されていないことに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国に対し、不法移民の子どもが利用可能なサービスを緊急保健サービスの提供以外にも拡大するため、政策を見直すよう勧告するものである。 12.委員会は、人種主義および外国人嫌悪の増加が報告されていることに懸念を表明し、かつ、「不法な差別」および「民族グループに敵対する煽動」に関する現行法の効果に関して締約国が抱いている懸念を共有する。委員会は、締約国に対し、当該法律を見直すという決意表明にしたがって行動するよう奨励し、かつ、条約第2条2項で規定されているように子どもがあらゆる形態の差別から保護されることを確保するため、あらゆる適切な措置をとるよう促すものである。 13.国籍を取得する権利に関して、委員会は、無国籍の子どもに関する現行法について懸念する。委員会は、締約国に対し、市民権法の改正を完了させるよう奨励し、かつ、結果として行なわれる改正において条約第7条が全面的に考慮されるよう促すものである。 14.措置の実行および議論が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、ポルノグラフィー的題材へのアクセスからの子どもの保護について依然として懸念する。委員会は、締約国に対し、条約第13条、第17条および第18条の規定を念頭に置きながら引き続きあらゆる適切な措置をとるよう奨励するものである。 15.条約第11条との関係で、委員会は、スウェーデンが、子の監護の決定の承認および執行ならびに子の監護の回復に関する欧州条約および国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約の加盟国であることに、満足感とともに留意する。委員会は、締約国に対し、上記の2つの条約に加盟していない国と同趣旨の二国間協定を締結する努力を引き続き行なうこと、監護権に関する外国の決定の承認に関する現行法を見直すこと、および、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ条約(1996年)の批准を検討することを、奨励するものである。 16.一部の自治体が無償で家族カウンセリング・サービスを提供していること、および他の自治体で課されている料金も高すぎはしないように思えることには留意しながらも、委員会は、相当数の家庭にとって、そのような料金が必要な助けおよび援助を求めることをためらわせる要因になっていることを懸念する。委員会は、とくにもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループを対象として家族カウンセリング・サービスへのアクセスを容易にするため、締約国がこの点に関する政策を見直すよう勧告するものである。 17.委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ9および11参照)に関して、児童虐待の発生の義務的通報制度について専門家への研修の提供を強化するうえで行なわれた努力は評価しながらも、委員会は、この制度が満足に機能していないことを懸念する。委員会は、条約第19条にしたがってあらゆる形態の虐待からの子どもの保護を向上させるため、締約国が引き続き努力しかつさらなる措置をとるよう勧告するものである。 18.締約国はもっとも広範な公的支援制度を有している国のひとつであるが、自治体間および社会階層間の格差は広がっており、その結果、社会的排除および緊張、ならびに経済的に不利な立場に置かれたグループに供給されるサービスの貧困がもたらされているように思える。委員会は、とくにより貧しい家庭を対象として社会手当に万人がアクセスできることを確保するため、条約第2条、第26条、第27条および第30条にしたがってあらゆる適切な措置をとること、および、この点についての公衆に対する情報提供を強化することを、勧告するものである。 19.1999年の年次学校監査をいじめの問題に集中して行なうという締約国の計画は歓迎しながらも、委員会は、締約国に対し、学校におけるいじめを防止するための努力を継続すること、この現象の規模に関する情報を収集すること、および、とくに、この問題への充分な対応およびその解決に子どもが参加できるようにするための具体的な体制を確立することを、奨励する。 20.委員会は、予算削減が子どもの教育への権利に与える影響について依然として懸念する。委員会は、締約国に対し、補習教育に対するより高い水準の資金拠出を回復し、かつ、特別な援助のニーズを有する子どもたちへと対象を拡大する決定を行なうよう奨励するものである。委員会はまた、条約第2条、第3条、第28条および第31条にしたがって教育および余暇活動に対する子どもの権利を考慮にいれ、とりわけ就学前センターおよび保育センターの教育的役割を向上させようとする現在の努力との関連で、働いていない親の子どもの保育サービスへのアクセスに関する政策を見直すようにも勧告する。 21.前回の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ13)に関して、委員会は、青少年による薬物濫用の件数が増加していることを懸念する。委員会は、薬物濫用、およびとくにそれがより傷つきやすい立場に置かれたグループに与える影響に関するデータ収集および監視を行なうため、締約国が体系的努力を行なうよう勧告するものである。 22.国外犯立法に関する「双方可罰性」の要件を解消するために現在行なわれている国内法の見直しの努力を含め、委員会の勧告(CRC/C/15/Add.2、パラ8および11)にしたがって性的搾取からの子どもの保護を向上させるため締約国が行なってきた法律の見直しその他の措置は評価しながらも、委員会は、とくに15歳以上18歳未満の子どもを対象として性的搾取からの保護を強化させる必要があることを、懸念する。委員会は、締約国に対し、18歳までの子どもを対象とした保護の向上を確保するための努力を継続しかつ強化するよう奨励するものである。 23.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに公衆が広く利用できるようにすることを勧告する。そのような幅広い配布は、とくに政府、関連省庁、議会および非政府組織のあいだで、条約およびその実施状況に関する議論および意識を喚起するようなものであるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/109.html
総括所見:フランス(第2回・2004年) 第1回(1994年)/第3回・第4回(2009年)/第5回(2016年)OPAC(2007年)/OPSC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.240(2004年6月30日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2004年6月2日に開かれた第967回および第968回会合(CRC/C/SR.967 and 968参照)においてフランスの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.26)を検討し、2004年6月4日に開かれた第971回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58)にしたがって作成された締約国の第2回定期報告書の提出を歓迎するものの、当該報告書に海外県および海外領土についての情報が記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、若干遅れて提出されたものの、締約国における子どもの状況についていっそう明確な理解を与えてくれた、事前質問事項(CRC/C/Q/FRA/2)に対する文書回答を歓迎するものである。委員会はさらに、ハイレベルな代表団の参加に評価の意とともに留意するとともに、率直な対話、および、提起された多くの質問に対して代表団のメンバーが提供した回答を歓迎する。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書が締約国によって批准されたこと、ならびに、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が批准されたことを歓迎する。委員会は、以下の者のような、条約の実施に関連した積極的進展に、評価の意とともに留意するものである。 (a) 締約国が近年行なった、多数の法令の採択(とくに以下のもの)。性犯罪の防止および抑止ならびに未成年者の保護に関する1998年6月17日の法律の規定。 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年5月29日のハーグ条約(1998年3月7日の法律第98-147号)の発効(1998年10月1日)を受けてとられた措置、および、関連の、国際養子縁組に関する2001年2月6日の法律。 離婚の際の補足手当に関する2000年6月30日の法律。 相続権に関わる婚外子差別を撤廃する、遺族配偶者および遺児の権利に関する2001年12月3日の法律。 親の権威に関する2002年3月4日の法律。 姓に関する2002年3月4日の法律。 子ども時代の保護に関する2004年1月2日の法律。 (b) 委員会の勧告のフォローアップとしてとられた措置、とくに、子どもオンブズマンの設置(2000年3月6日の法律)、フランスにおける子どもの権利調査委員会および子どもの権利に関する議会代表団の設置(2003年2月13日の法律)ならびに危機にさらされる子ども時代に関する国家監視機関(2004年1月2日の法律)の設置。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.15)の検討後に委員会が行なった懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.20)の一部、とくにパラ11、17(第30条への留保)、13、19、20(地域間格差)、14(自己の出自を知る権利)、22(最低婚姻年齢)、23(子どもによる意見表明およびその正当な重視)、24(児童虐待の防止)、26(少年司法)および27(義務教育を修了していない子ども)に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思う。委員会は、これらの懸念および勧告がこの文書でもあらためて繰り返されていることに留意するものである。 5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するために、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、権利の主体としての子ども観をすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに編入することも促すとともに、締約国に対し、留保および両方の宣言を撤回するようあらためて慫慂するものである。 立法 6.委員会は、立法と条約の整合性を確保する目的で国家人権諮問委員会が立法に関して果たしている助言の役割、および、非政府組織がこの点に関して果たしている積極的役割に留意する。委員会はまた、子どもの権利に関する法改正のプロセスも歓迎するものである。 7.委員会は、締約国に対し、研修の必要性、監視機構および十分な資源の提供を考慮に入れながら、条約に関連するすべての法律の実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、生命倫理の分野で法律を採択するための努力を続行することも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、条約の直接適用可能性に関する情報を次回の報告書で提供するよう要請する。 実施、調整、評価および国家的計画 8.委員会は、重層的な主体が条約の実施に関与していることに留意するものの、締約国も留意しているとおり、これらの主体間で調整が行なわれていないことを懸念する。とくに委員会は、県の責任が増大していることにより、調整の不十分さとあいまって、条約の実施における重複および相当の格差が生じかねないことを懸念するものである。特定の問題に責任を負う権限ある期間を特定することも困難になる可能性がある。条約第2条に照らし、委員会はまた、締約国報告書が海外県および海外領土について簡単にしか触れていないことも懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、条約の実施に関して格差または差別が生じるいかなる可能性も減少させかつ解消する目的で、国レベルと県レベル(海外領土および海外県も含む)との間で条約の実施を全般的に調整するための機関を設置するよう、促す。締約国は、当該機関に対し、その任務を効果的に遂行するための十分な人的資源および財源ならびに十分かつ定義の明確な権限が与えられることを確保するべきである。 資源配分 10.委員会は、とくに社会的援助の配分の調和を図るためにとられた措置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、前回の結論(CRC/C/15/Add.20、パラ13)でも留意したように、とくに移住者の家族のような貧困家族の居住との関連で、社会でもっとも脆弱な立場に置かれた集団の状況ならびにその経済的および社会的権利に対応するためにとられた措置が不十分であることを、依然として懸念するものである。 11.委員会は、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を「利用可能な資源を最大限に用いて」確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うべきである旨の、締約国に対する前回の勧告をあらためて繰り返す。 データ収集 12.委員会は、自国の管轄下にある地域全体を通じ、条約が対象とするすべての分野に関する細分化されたデータの収集について締約国が消極的であることを遺憾に思う。このようなデータは、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関わる政策の影響評価にとってきわめて重要である。 13.委員会は、締約国に対し、データ収集のための中央登録機関を設置するとともに、条約が対象とするあらゆる分野を編入した包括的なデータ収集システムを導入するよう促す。当該システムは、とくに脆弱な立場に置かれた子どもを具体的に重視しながら、18歳未満のすべての子どもを網羅したものであるべきである。このような情報には海外県および海外領土も含めることが求められる。 研修/条約の普及 14.委員会は、条約の普及、および条約を周知するためにさまざまな省庁がとった措置に関して報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が条約の精神を十分に知りかつ理解しているわけではない可能性があるという見解に立つものである。 15.委員会は、締約国に対し、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(とくに議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者および必要に応じて他の者)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を施すための努力を引き続き行なうよう、奨励する。 2.子どもの定義 16.委員会は、条約第40条3項(a)の明示的規定にも関わらず、締約国が刑事責任に関する最低年齢を定めていないことを懸念する。委員会はまた、国内法が、女子(15歳)と男子(18歳)で異なる最低婚姻年齢を定めていることに関する懸念もあらためて表明する。このような法律は、性別に基づく差別であり、かつ若年女子の生存および発達に影響を及ぼす可能性があることに加え、強制婚との闘いをいっそう困難にするものである。 17.委員会は、締約国が、国際的に受け入れられる水準であり、かつその年齢に達しない子どもは刑法に違反する能力を有しないと推定される、刑事責任に関する最低年齢を定めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が最低婚姻年齢を見直すことにより、強制婚との闘いに資する条件を整備し、かつ子どもの発達を可能なかぎり最大限に確保すべく、女子についての年齢を男子についての年齢まで引き上げることを検討するよう勧告するものである。 3.一般原則 差別の禁止 18.委員会は、あらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うための独立機関を2004年に設置する計画を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに経済的および社会的権利の分野で差別が根強く残っており、とりわけ海外県および海外領土に居住している子ども、外国人の子どもおよびいわゆる「サン・パピエ」〔資格外滞在者〕ならびに婚外子との関連で社会的統合が疎外されていること、および、実際には一部地域で出身、皮膚の色、宗教、名前その他の地位に基づく差別がいまなお続いていることを、懸念するものである。 19.委員会は、前回の懸念および勧告(CRC/C/15/Add.20、地域格差に関するパラ19)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、現行法を条約と一致させかつその効果的実施を確保する(出身、皮膚の色、宗教、名前その他の地位に基づく差別が実際には根強く残っている状況を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとることも含む)目的で、現行法を見直すよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、法律から差別的用語を削除するための立法手続を迅速に進めることを勧告するものである。 20.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの意見の尊重 21.委員会は、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利を強化するため、締約国が行なった立法上の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、法律が一貫していないこと、および、実際上、立法の解釈および子どもの「分別能力」の有無の判断によって子どもがこの権利を否定される可能性が残り、または子ども自身の要請が条件とされるおそれがあるために差別が生じる可能性があることを、依然として懸念するものである。加えて、委員会は、実務上、ほとんどの裁判官は子どもの聴聞について積極的ではなく、かつ、これまで性的虐待の被害を受けた子どもが裁判によって救済されてこなかった旨の、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者の結論(E/CN.4/2004/9/Add.1、パラ85および89)について懸念を覚える。 22.委員会は、締約国が、子どもの意見の尊重に関わる矛盾点を解消する目的で法律を見直すよう勧告する。さらに、条約第12条にしたがい、自己に影響を与えるすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子どもの参加を、単なる可能性ではなく子どもにも知らされた権利として、家庭、学校、施設ならびに司法上および行政上の手続において引き続き促進しかつその便宜を図ることが、奨励されるところである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもが自由に意見を表明でき、かつその後はこれらの意見が正当に重視されることを奨励するような雰囲気をつくり出す目的で、親、教員および校長、政府の行政職員、司法機関、子どもたち自身および社会一般に教育的情報を提供するよう、奨励する。 4.市民的権利および自由 出生登録 23.委員会は、2002年1月22日に採択された、自己の出自を知る権利についての法律に留意する。しかしながら委員会は、条約第7条に掲げられた権利が締約国によって全面的に尊重されていない可能性があること、および、母が希望する場合にはその身元を秘匿する権利が認められていることは条約の規定と一致しないことを、依然として懸念するものである。さらに、委員会は、仏領ギアナにおける出生登録水準が低いことを懸念する。 24.委員会は、差別の禁止の原則(第2条)および子どもの最善の利益の原則(第3条)に照らして第7条の規定、とくに可能なかぎり自己の親を知る子どもの権利が全面的に執行されることを確保するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、仏領ギアナにおける出生登録の状況に対応するための努力を継続しかつ強化することも奨励するものである。 宗教の自由 25.委員会は、憲法で宗教の自由が定められていること、および、教会と国の分離に関する1905年の法律が信仰に基づく差別を禁じていることに留意する。委員会は同様に、締約国が公立学校の非宗教性を重視していることを認識するものである。しかしながら、条約第14条および第29条に照らし、委員会は、宗教に基づくものを含む差別が増加しているという訴えについて懸念を覚える。委員会はまた、公立学校における宗教的標章および服装に関する新法(2004年3月15日の法律第2004-228号)が、子どもの最善の利益の原則および教育にアクセスする子どもの権利をないがしろにすることによって逆効果となり、所期の成果を達成できない可能性があることも懸念するものである。委員会は、同法の規定が、同法の施行から1年後に評価の対象とされる予定であることを歓迎する。 26.委員会は、同法の効果を評価する際、締約国が、条約に掲げられた子どもの権利の享受状況を評価プロセスの重要な基準として用いるとともに、個人の権利が侵害されないことおよび子どもがこのような法律の結果として学校制度その他の場面から排除されまたは周縁化されないことを保障しつつ、公立学校の非宗教的性質を確保する代替的手段(調停を含む)も検討するよう、勧告する。学校の服装規則については、子どもの参加を奨励しながら公立学校自身が対応するほうが、望ましい結果につながる可能性がある。委員会はさらに、締約国が、新法の結果学校を退学させられた女子の状況を引き続き注意深く監視し、かつこれらの女子が教育にアクセスする権利を享受できることを確保するよう、勧告するものである。 情報へのアクセス 27.委員会は、CD-ROM、ビデオカセットおよびゲームならびにポルノ的出版物の販売またはこれらの媒体へのアクセス可能性に関する適切な法律または指針が存在しないことにより、子どもがその福祉に有害となるおそれのある情報および資料にアクセスすることが容易になっていることを懸念する。 28.委員会は、とくに印刷媒体、電子媒体および視聴覚媒体における暴力およびポルノグラフィーの有害な影響から子どもを保護するため、締約国が法的措置を含む必要な措置をとるよう、勧告する。 拷問その他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いおよび処罰(第37条(a)) 29.委員会は、第37条(a)に関する情報、および、自由を奪われた子どもならびに官吏による不当な取扱いの行為および不当な取扱いに相当する可能性がある拘禁環境についての前回の勧告(CRC/C/15/Add.20、パラ26)に関する情報が、締約国報告書に記載されていないことを懸念する。 30.委員会は、締約国に対し、子どもの拘禁環境および取扱い、ならびに、あらゆる形態の不当な取扱いを根絶するという決定について行なわれたいずれかのフォローアップについての具体的情報を、次回の定期報告書に記載するよう促す。委員会は、自由の剥奪は常に、真に最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で構想されるべきであり、かつ心理的回復および社会的再統合にも特段の注意がはらわれるべきであることを想起するものである。 5.家庭環境および代替的養護 家族再統合 31.委員会は、認定を受けた難民を対象とする家族再統合手続の期間が長く、しばしば1年を超えることもあることを懸念する。 32.委員会は、締約国が、家族再統合手続への対応が積極的に、人道的にかつ迅速に行なわれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 養子縁組 33.委員会は、国際養子縁組の過半数が1993年ハーグ条約を批准していない出身国との間で行なわれていることに留意するとともに、認証機関を通じてではなく個人的経路を通じて行なわれる国際養子縁組の割合が高いことを懸念する。 34.委員会は、仏領ポリネシアにおける国内養子縁組についての法律および慣行が条約の規定と全面的に一致していない可能性があることを懸念する。 35.条約第21条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 実務が養子縁組の分野における新法と一致することを確保すること。 (b) 法律の実施のために必要な国のプログラムおよび補完的規制のための文書が策定されることを確保すること。 (c) 法律の効果的実施および監視のために十分な人的資源その他の資源が利用可能とされることを確保すること。 (d) 国際養子縁組の事案への対応が、条約(とくに第21条)およびフランスが批准している1993年ハーグ条約の原則および規定に全面的にしたがって行なわれることを確保すること。 (e) 人権侵害を生起させるおそれがある慣行を回避し、かつ子どもの権利が擁護されることを確保するため、仏領ポリネシアで国内養子縁組に関する法律および慣行を採択すること。 虐待およびネグレクト 36.委員会は、2000年9月に発表された児童虐待と闘うための行動計画に関して締約国報告書で提供された情報を歓迎する。委員会はまた、医療従事者が懲戒的制裁の対象とされることなく虐待および不当な取扱いの事案を通報することを認めた、子どもの保護に関する2004年1月2日の法律第2004〔-1〕号も心強く思うものである。しかしながら、憂慮すべき状況下で死亡する15歳未満の子どもの1週間ごとの人数に関する情報は、委員会にとって重大な懸念の理由となる。委員会はまた、とくに被害者の証言の録画または録音を認めた1998年6月17日の法律第98-468号が実施されていないことも、とりわけ懸念するものである。 37.委員会は、虐待およびネグレクトのさらなる発生を防止し、かつその被害者に対して十分な治療プログラムを提供することを目的として、締約国が、児童虐待およびネグレクトを防止しおよびこれと闘いならびに問題の規模について住民(子どもとともにおよび子どものために働く専門家を含む)の感受性を強化するための努力を続行するよう、勧告する。さらに、委員会は、締約国に対し、1998年6月17日の法律を全面的に実施し、かつこの点についての研修が行なわれることを確保するよう、促すものである。 体罰 38.委員会は、締約国が、体罰は全面的に受け入れ不可能であり容認できないと考えていることを歓迎する。しかしながら委員会は、家庭、学校、施設その他の子どもの養育現場における体罰が明示的に禁じられていないことを依然として懸念するものである。 39.委員会は、締約国が、家庭、学校、施設その他の子どもの養育現場における体罰を法律で明示的に禁止するよう、勧告する。委員会はさらに、条約第28条2項に照らし、とくに家庭、学校および養育施設において、積極的かつ非暴力な形態のしつけおよび規律に関する意識を高め、かつこのようなしつけおよび規律を促進するよう勧告するものである。 6.基礎保健および福祉 障害のある子ども 40.委員会は、「プラン・アンディスコール」(Plan Handiscol)のような、障害のある子どもを普通学校に統合するためのプログラム、およびこの点に関して見られた進展を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、これらのプログラムが依然として不十分であること、および、これらの努力の対象とされず、主な負担を家族のみが負いながら適切なケアを受けないままでいる子どもが多すぎることを、懸念するものである。さらに、委員会は、障害を発見するための努力が十分ではない可能性があることを懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、現在の努力を積極的に続行し、かつ引き続き以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/86)および障害のある子どもに関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に考慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および慣行を見直すこと。 (b) 子どもの障害を発見するための努力および生徒の全般的ニーズがよりよく評価されることを確保するための努力を教育制度内で行なうこと。 (c) 障害のある子どもが教育に対する権利を可能なかぎり最大限に行使できることを確保し、かつ普通教育制度へのこれらの子どもの統合を促進するための努力を続行すること。 (d) 必要な専門的資源(障害の専門家)および財源をとくに地方レベルで利用可能とし、ならびにコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しおよび拡大するため、いっそうの努力を行なうこと。 (e) 公衆の否定的態度を変革するための意識啓発キャンペーンを強化すること。 健康および保健サービス 42.委員会は、母親、乳児および学齢の子どもの保護について締約国報告書に記載された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、保健ケアおよび保健サービスのこの側面が県の責任とされていることに留意するとともに、これとの関係で、諸地域圏間で不平等が生じる可能性があることを懸念するものである。委員会は、とくに以下の点について懸念を覚える。 (a) 精神医学サービスが存在しないこと。 (b) 資格外移住者による保健ケアへのアクセスが「条件付」とされていること。 (c) 母乳のみの育児を促進しかつ奨励する全国機関が設けられていないこと。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 十分かつ持続可能な資源(人的資源および財源)が供給されることを確保するための努力を強化すること。これには、十分な人数の保健ケア専門家の養成、保健ケアワーカーに対する十分な給与の提供、および、とくにもっとも不利な立場に置かれた地域における保健ケア・インフラへの投資のための資源配分も含む。 (b) 母乳育児を促進するための全国的機構(評価および調整を含む)を設置すること。 思春期の健康 44.委員会は、思春期の子どもに焦点を当てて2004年6月に開催される予定の家族に関する会議、ならびに、とくに16歳未満の子どものタバコの使用を減らすための行動など、締約国がとっている立法上の措置その他の行動を歓迎する。委員会は、自殺率が高いこと(この年齢層の死因の第2位に位置している)、10代の妊娠数が相対的に多いこと、精神保健サービスが不十分であること、および、提供されているサービスが青少年のニーズに適合していない可能性があり、そのためプライマリーヘルス・サービスにアクセスする青少年の意欲の低減につながっていることについての締約国の懸念に留意するものである。 45.委員会は、締約国が、思春期の健康政策を促進し、かつ学校における健康教育プログラムを強化するための努力を増強するよう勧告する。委員会はさらに、健康教育訓練プログラムの有効性をとくにリプロダクティブヘルスとの関連で評価し、かつ、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意を得ずにアクセスすることのできる、若者に配慮した、秘密の守られるカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるための措置(十分な人的資源および財源の配分を含む)を勧告するものである。委員会はさらに、思春期の子どもを対象とする精神保健プログラムおよび精神保健サービス(専門の精神医学サービスを含む)を発展させるよう、勧告する。 生活水準 46.委員会は、子どものために必要な生活条件を確保する第一次的な責任は親にあることに留意しながらも、貧困水準が悪化していることについての経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の懸念(E/C.12/1/Add.72)を共有する。委員会は、このような状況が子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的および社会的発達に悪影響を及ぼしていることを懸念するものである。委員会はまた、一部の集団の子どもについて家族手当へのアクセスに関する制限が設けられていることも懸念する。 47.委員会は、締約国に対し、条約第27条にしたがってすべての子どもの生活水準を向上させかつ物的援助および支援プログラムを提供するための努力を強化することにより、親および子どもに責任を負う他の者を援助するための措置をとるよう、奨励する。家族に対する配分に際しては、子どもがフランスの領域に入国した態様が条件とされるべきではない。 7.教育、余暇および文化的活動 48.委員会は、締約国が16歳まで無償の義務的学校教育を提供するために努力していること、および、学校が統合および平等の場所と見なされていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、一部の学校に対して「要注意」校のレッテルが貼られていること、および、学校における意思決定プロセスへの意味のある子ども参加が行なわれていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、障害のある数千人の子どもが教育に対する権利を奪われていることを懸念する。 49.委員会は、締約国に対し、条約第28条および第29条に一致する形ですべての子どもが教育に対する権利を享受し、かつ、条約第3条に一致する形で障害のある子どもが可能なかぎり普通教育に統合されることを確保するための努力を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮に入れながら続行するよう促す。委員会は、締約国に対し、義務教育に対する公共支出の水準を高めるよう奨励するものである。さらに、締約国は、学校生活に関わる意思決定プロセスへの子どもの参加に寄与し、かつこれを促進するよう奨励される。 8.特別な保護措置 保護者のいない未成年者 50.委員会は、保護者のいない未成年者が収容区域に収容されている間、法定代理人に代わる「特別管理人」による援助を提供することによってこれらの未成年者の状況に対応しようとしている、締約国の努力に留意する。しかしながら、委員会はまた、このような状況にある未成年者の人数が着実に増加していること、および、新法の実施が依然として課題となっていることにも留意するものである。保護者のいない外国人未成年者は、引き続き自由を奪われ、かつ成人ともに拘禁されている。委員会はまた、空港に到着した保護者のいない子どもが、司法が介入せず、かつその家族の状況についての評価も行なわれないまま、出身国に創刊される場合があることも懸念する。委員会はさらに、これらの子どもによる、その権利を保護するための基礎的サービスへのアクセスを調整しかつ促進するための明確な指示が存在しないことを懸念するものである。これに加えて、年齢決定手続には誤認の余地があり、未成年者に対して本来受ける資格のある保護が与えられないことにつながるおそれが生じている。 51.委員会は、締約国が、この分野における努力を続行し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ニーズに応じた対応ができるよう、情報および統計の収集に関して調整のとれたアプローチを確保すること。 (b) 基礎的サービス、とくに教育、保健および法的援助を保障することを目的とした措置の方向性を定め、かつこれらの措置を調整する規範を確立すること。 (c) 現在用いられている方法よりも正確であることが証明されている最近の年齢決定法の導入を検討すること。 経済的搾取 52.委員会は、子どもを経済的搾取から保護するための立法上その他の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、不法な強制労働ネットワークが活動を続けており、かつ、外国人の子どもが、十分精力的な対策がとられていないネットワークの犠牲になっていることを懸念するものである。 53.委員会は、締約国が、条約第32条ならびに締約国が批准した就労の最低年齢に関するILO第138号条約および最悪の形態の児童労働に関する第182号条約にしたがって、とくに外国人の子どもを対象として活動を続けている人身取引・搾取ネットワークを解体し、かつ、この分野で活動している非政府組織との協力およびこれらの組織に対する支援を強化するための措置を、国内的および国際的レベルで精力的に続行するよう勧告する。 性的搾取、人身取引 54.委員会は、子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(ストックホルム、1996年)の後、子どもを虐待および不当な取扱いから保護するための国内行動計画が採択されたことに留意する。翌1997年には、虐待された子どもの保護が国家的優先課題である旨、宣言された。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する特別報告者が2002年11月のフランス訪問後の報告書で指摘したとおり、子どもの人身取引、売買春および関連の問題が生じていることを懸念するものである。 55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの人身取引および商業的性的搾取の原因、性質および規模を評価するため、包括的研究を実施すること。 (b) 子どもの性的虐待および人身取引の問題に関する専門家および一般公衆の感受性を、メディア・キャンペーンを含む教育を通じて強化し、かつ協力関係を確立する等の手段により、性的搾取および人身取引の発生を減少させかつ防止するための措置をとること。 (c) 子どもの人身取引の送り出し国の公的機関との協力関係を確立し、またはすでに存在する協力関係を強化すること。 (d) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、非政府組織との協力を増進させることも含む調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護(防止、証人保護、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)を増強すること。 (e) すべての子ども(15~18歳の子どもを含む)の個別の苦情を受理しかつこれに効果的に対応するための、秘密が守られ、アクセスしやすくかつ子どもに配慮した機構が確立されることを確保すること。 (f) 子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視し、調査しかつ訴追する方法について、法執行官、ソーシャルワーカーおよび検察官を対象とした研修を実施すること。 有害物質濫用 56.委員会は、薬物濫用一般およびとくに低年齢の子どもの薬物濫用が増えていることを懸念する。 57.委員会は、締約国に対し、有害物質濫用の防止の分野における活動を継続しおよび拡大し、ならびに薬物濫用の被害者である子どもに対応するリハビリテーション・プログラムを支援するよう、奨励する。 少年司法 58.委員会は、とくに司法の方向性および計画に関する2002年9月9日の法律第2002-1138号および犯罪の進化に対する司法の適応に関する2004年3月9日の法律第2004-204号との関連で、教育的措置よりも抑圧的措置を優先させる傾向にある、少年司法分野における立法および実務についての懸念をあらためて表明する。法律の規定には、警察による未成年容疑者の留置期間を4日まで延長できること、および、警察が10~13歳の子どもの身柄を最長24時間拘束できることが含まれる。委員会はまた、危険な状況にある子どもを保護する責任が行政機関に転嫁され、そのため司法機関には抑圧的機能しか委ねられない可能性があることについてオンブズマンが表明した懸念にも留意するものである。委員会は、未成年の刑務所収容者数が増加していることおよびそれにともなって環境が悪化していることとの関連で子どもオンブズマンが表明した懸念を共有する。さらに、閉鎖型教育施設を導入したことの影響がまだ明らかになっていない。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の一般的討議も踏まえながら、少年司法に関する基準、ならびに、とくに条約第37条、第40条および第39条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 拘禁(未決勾留を含む)は最後の手段としてのみ、可能なかぎり短い期間で用いるとともに、未成年者が成人から分離されることを確保すること。 (c) 懲罰的措置は、適正手続および法的援助を保障したうえで司法機関のみがとることを確保するため、国内法を見直すこと。 (d) 第39条に照らし、少年司法制度に関わることになった子どもの回復および社会的再統合を促進するための適当な措置(当該再統合を促進するための十分な教育および認証を含む)をとること。 (e) 非行、犯罪および薬物依存のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。 マイノリティ集団に属する子ども 60.委員会は、フランスのすべての子どもは法律の前に平等であり、宗教の自由に対する権利、私事について自己の言語で表現する権利および文化的活動に対する権利を有している旨の、締約国報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、法律の前における平等では、事実上の差別に直面している可能性がある一部のマイノリティ集団(ロマなど)による平等な権利の享受を確保するためには不十分であるおそれがあることを、依然として懸念するものである。委員会は、締約国が、自国の立場の再検討および条約第30条に付した留保の撤回を検討していないことを遺憾に思う。 61.委員会は、締約国に対し、とくに国連条約機関および人種主義と不寛容に反対する欧州委員会(ECRI)の勧告、とりわけ子どもに関わる勧告がフォローアップされることを確保することにより、人種主義、外国人嫌悪、差別および不寛容を防止しかつこれらと闘うための措置を引き続きとるよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、マイノリティ集団に属する子どもについての立場を再検討し、かつ第30条に付した留保の撤回を検討するよう促すものである。 9.報告書、文書回答、総括所見の普及 62.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる行政レベルおよび一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。全国子どもの権利の日(11月20日)を、とくに県を含む国の代表、非政府組織、子どもオンブズマンその他の参加を奨励することにより、条約の実施(とくにこの総括所見の実施を含む)に弾みをつける目的で活用することが求められる。 10.次回報告書 63.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合的報告書(この報告書は120ページを超えるべきではない。CRC/C/118参照)を2007年9月5日までに提出するよう慫慂するとともに、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待する。当該報告書には、フランス海外県および海外領土における条約の実施についての情報が記載されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2010年11月1日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/51.html
総括所見:英領マン島(2000年) イギリス・第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2008年)/第5回(2016年)英領香港(当時、1996年)/イギリス海外領土(2000年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.134(2000年10月16日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年9月21日に開かれた第647回会合(CRC/C/SR.647参照)において、1998年4月15日および1999年9月14日に受領されたグレートブリテン・北アイルランド連合王国(マン島)の第1回報告書(CRC/C/11/Add.19 and Corr.1)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2000年10月6日に開かれた第669回会合において。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがって作成されたマン島に関する締約国の第1回報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/UK-IM/1)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。委員会は、締約国との間に持つことができた建設的な、開かれたかつ率直な対話を心強く思うとともに、議論中に行なわれた提案および勧告への積極的反応を歓迎するものである。委員会は、条約の実施に直接関与しているマン島の代表が代表団に含まれていたことによって同島の子どもの権利の状況に関してより十全な評価ができたことに、満足の意を表明する。 B.積極的側面 3.委員会は、とくに障害のある子ども、子どもの保護、入所型養護、里親養護および養子縁組、少年司法ならびに家族支援に関する事項を扱った子ども家庭サービス計画(1997~2001年)および同計画の改訂(1999年)に留意する。 C.懸念事項および委員会の勧告 1.実施に関する一般的措置 報告 4.委員会は、締約国がまだ自国のすべての王室属領、具体的にはジャージー島およびガーンジー島に条約の適用を拡大していないことに、懸念とともに留意する。 5.委員会は、締約国が、すべての王室属領に条約の適用を拡大するためにとった措置に関する情報を、次回定期報告書で提出するよう勧告する。 条約に対する留保 6.委員会は、子どもの権利条約第32条および第37条(c)に関して締約国が付した留保がまだ撤回されておらず、かつマン島にも依然として適用されていることを懸念する。委員会は、条約に付されたすべての留保を撤回する可能性についてさらに議論することに対する同島のコミットメントを歓迎するものである。 7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、マン島との関連も含めて留保を全面的撤回の方向で見直す可能性を検討するよう奨励する。条約第37条(c)に対する留保の撤回を妨げていると思われる要因を取り除くため、マン島は、自由を奪われた子どもを対象とする別個の保安措置区画の建設を完了させる努力を強化するよう、奨励されるところである。 立法 8.委員会は、マン島が、新たな子ども若者法案、ならびに、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)および欧州人権条約を編入するための法案を議会の次回会期に提出する予定であることに留意する。しかしながら委員会は、マン島の国内法に条約の原則および規定が全面的に反映されていないことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、子ども若者法案が子どもの保護およびケアに対する権利基盤アプローチよりも社会福祉・社会サービス型アプローチに焦点を当てていることに、懸念を表明する。 9.委員会は、締約国に対し、法律が条約の原則および規定に全面的に一致し、かつ子どもの保護およびケアに対する権利基盤アプローチが法律に反映されることを確保する目的で、法律の見直しおよび改正の分野における努力を継続するよう奨励する。 調整 10.委員会は、保健社会保障省がマン島における子どもの福祉を担当する主務機関であることに留意する。委員会はさらに、1997年に導入された「子どものケア戦略」の策定および実施において同省が果たした役割にも留意するものである。しかしながら委員会は、条約を促進しおよび実施し、ならびに、子どもとともにおよび子どものために活動するすべての政府機関ならびにより幅広い市民社会がそのプロセスにいっそう関与することを確保するための、より包括的な調整機構を設置するために十分な努力が行なわれていないことを懸念する。また、マン島の報告書の作成に非政府組織(NGO)が含まれなかったことに対しても、懸念が表明されるところである。 11.委員会は、マン島が、条約を促進しおよび実施するための調整機構を設置し、ならびにその効果的運用を確保するために十分な資源(人的資源および財源)を配分するよう勧告する。委員会は、マン島に対し、「子どものケア戦略」をさらに5年間延長するための努力を継続するとともに、関連のあらゆる政府機関のいっそうの参加を確保する目的で同戦略をさらに発展させるよう、奨励するものである。マン島が、条約実施のための包括的行動計画の作成を検討することも、勧告される。加えて、マン島は、子どもプログラムの促進、調整および実施にNGOを含めるための努力を強化するよう奨励されるところである。また、マン島の次回定期報告書の作成にNGOが参加することを確保するための努力も求められる。 データ収集 12.委員会は、マン島のデータ収集機構に15歳までの子どもに関するデータの収集しか含まれていないことを懸念する。 13.委員会は、マン島が、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とりわけ脆弱な立場に置かれている子ども(少年司法制度の対象とされている子ども、婚外子、性的虐待およびネグレクトの被害を受けた子ども、施設に措置されている子ども、薬物濫用の被害者である子どもおよび障害のある子どもを含む)をとくに重視しながら18歳未満のすべての子どもを網羅する包括的なデータ収集機構を発展させるため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 監視機構 14.委員会は、警察による人権侵害に対応する警察苦情委員会の創設が警察法で定められていることには留意しながらも、同委員会内に、警察による子どもの権利侵害の苦情申立てに対応する子どもの権利窓口を設けるために十分な努力が行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、苦情の陳述を聴取するときに関連の成人が立ち会っていなければ子どもが警察苦情委員会に苦情を提出することが認められていないことに、懸念とともに留意するものである。子どもに影響を与える行政上の決定を審査し、かつ、警察以外の政府関係者による権利侵害についての子どもの苦情に対応する、独立の、子供にやさしい人権監視機構を設置するために十分な努力が行なわれていないことに対しても、懸念が表明される。 15.委員会は、警察苦情委員会内に子どもの権利窓口を設けることを勧告する。委員会はまた、希望する子どもに対し、成人の立会いなしで委員会に苦情を申し立てる便宜を図る措置の導入を検討するようにも勧告するものである。委員会はさらに、マン島が、パリ原則(国連総会決議48/134)にしたがい、自己の権利侵害に関する子どもの苦情に対応しかつそのような侵害に対する救済措置を提供する、警察苦情委員会とは別の、独立した、子どもにやさしい、アクセスしやすい機構の設置をあらためて検討するよう勧告する。これとの関連で、子どもによるこれらの機構の効果的利用を促進するための意識啓発キャンペーンの導入が奨励されるところである。 普及 16.委員会は、マン島が、とくに条約を含む国際協定についての情報へのアクセスを規律する、政府情報へのアクセスに関する実務規範を導入したことに留意する。委員会はまた、マン島が、国連人権条約機関に対するすべての定期報告書をウェブサイト上で利用可能とし、かつ、子どもの権利を含む人権についての研修を導入しようとしていることにも留意するものである。しかしながら委員会は、条約の原則および規定を積極的に普及するための努力が十分に行なわれておらず、かつ、専門家集団、子ども、親および公衆一般が、全般的に、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に理解していないことを、懸念する。 17.委員会は、条約の規定がおとなによっても子どもによっても広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力を行なうよう勧告する。委員会は、マン島に対し、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、教職員、学校管理者、心理学者およびソーシャルワーカーを含む保健従事者、ならびに子どものケアのための施設の職員を含む)を対象として条約に関する研修および(または)感受性強化措置を導入するための努力を強化するよう、奨励するものである。子どもの権利に関するメディアの意識を高めるための努力も求められる。委員会はまた、マン島が、あらゆる段階の教育制度のカリキュラムに条約を統合するようにも勧告するものである。 2.子どもの定義 18.委員会は、子ども若者法案において、10~14歳の子どもは責任無能力者である(犯罪を行なう能力がない)という推定を廃止することが提案されてること、すなわち法的には全面的刑事責任に関する最低年齢が14歳から10歳に引き下げられることに、懸念とともに留意する。委員会は、マン島における法定刑事責任年齢が低いこと(10歳)について懸念を表明するものである。加えて、委員会は、17歳に達した子どもの特別な保護およびケアについて法律に十分な定めが置かれていないことを懸念する。 19.委員会は、マン島が、幼い子どもについての責任無能力推定原則を廃止する旨の決定を再検討するよう強く勧告する。委員会はまた、マン島が、刑事責任年齢を引き上げ、かつ条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で法律を見直すようにも勧告するものである。委員会はさらに、18歳未満のすべての子どもに対して十分な保護およびケアが保障されるよう、現行法の見直しを行なうことを勧告する。 3.一般原則 20.委員会は、マン島が、立法、行政上および司法上の決定ならびに子どもに関連する政策およびプログラムにおいて、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生存および発達)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された条約の一般原則を全面的に考慮していないように思われることについて、懸念を表明したい。 21.委員会の見解では、あらゆる法改正ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスに条約の原則が適切に統合されることを確保するため、さらなる努力が行なわれるべきである。委員会は、子どもの権利に関わる政策についての議論および決定において条約の一般原則、とくに子どもの意見の尊重の原則が指針されることを確保するため、マン島があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 差別の禁止 22.委員会は、マン島が、立法、行政上および司法上の決定ならびに子どもに関連する政策およびプログラムにおいて条約第2条(差別の禁止の一般原則)を全面的に考慮していないように思われることに、懸念を表明する。この文脈において、性的指向を理由とする差別に対して十分な努力が行なわれていないことに、懸念が表明されるところである。マン島が同性間の関係に関する法定同意年齢を21歳から18歳に引き下げようとしていることには留保しながらも、委員会は、異性間の関係に関する同意年齢(16歳)と同性間の関係に関する同意年齢との間に乖離が存在し続けていることを、依然として懸念するものである。 23.性的指向を理由とする差別を防止し、かつ条約第2条を全面的に遵守するため、マン島はあらゆる適当な措置(立法上の措置を含む)をとるよう勧告される。 4.家庭環境および代替的養護 ドメスティック・バイオレンス、不当な取扱いおよび虐待 24.委員会は、とくに「子ども保護政策」の導入、危険な状況にある家族を対象として活動する家族援助員の雇用および子育てに関する訓練を提供する家庭センターの設置を通じ、児童虐待(性的虐待を含む)ならびに子どもの不当な取扱いおよびネグレクトを防止するためにマン島が行なっている努力に留意する。これとの関連で、委員会はまた、児童虐待について有罪とされた成人加害者を対象とする性犯罪者治療プログラムが設置されたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待(性的虐待を含む)ならびに子どもの不当な取扱いおよびネグレクトの発生件数が依然として増えていることを懸念する。 25.第19条に照らし、委員会は、マン島が、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待(性的虐待を含む)ならびに子どもの不当な取扱いおよびネグレクトを防止しかつこれと闘うための努力を強化するよう勧告する。さらに、マン島が、ドメスティック・バイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび性的虐待の事案が子どもにやさしい司法手続において適正に捜査され、かつ加害者に対して制裁が科されることを確保するためにあらゆる適当な措置をとることも、勧告されるところである。加えて、条約第39条にしたがい、被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を保障するため、あらゆる適当な措置をとることも求められる。 体罰 26.教育法案(2000年)で学校における体罰の使用が禁じられ、かつ刑事司法法案(2000年)で少年司法における体罰の使用が禁じられることには留意しながらも、委員会は、マン島において体罰がなお実践されており、かつ広く受け入れられていることに重大な懸念を抱く。 27.委員会は、マン島が、学校、ケアのための施設および少年司法制度における体罰の使用を法律により禁止しかつ根絶するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、マン島が、家庭における体罰の使用を禁止するためにあらゆる適当な措置をとるよう勧告するものである。この文脈において、公衆の態度を変革するとともに、代替的形態によるしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約、とくに第19条および第28条2項にしたがって行なわれることを確保する目的で、意識啓発および教育のためのキャンペーンを実施することが提案される。 5.基礎保健および福祉 思春期の健康 28.委員会は、とくにアルコール濫用の分野で、思春期の健康に関わる問題に対応するためにマン島が行なっている努力に留意する。これとの関連で、委員会は、アルコール戦略が策定されたこと、および、中等学校および大学段階でアルコール予防プログラムが開発されていることに留意するものである。子どもの喫煙を防止しかつこれと闘うために初等学校および前期中等学校段階で導入された「スモーク・バスターズ」プログラムを歓迎しながらも、委員会は、喫煙がいまなお学齢の子ども、とくに女子の間で蔓延していることに懸念を表明する。委員会は、2000年4月に施行された精神保健法の制定に留意しながらも、子どもの精神保健サービスを強化するためにさらなる努力が必要とされていることを懸念するものである。委員会はさらに、とくに10代の妊娠および性感染症(STD)との関連で思春期のリプロダクティブヘルスに関わる問題への対応を改善するためにも、さらなる努力が必要とされていることに留意する。 29.委員会は、マン島に対し、思春期の子ども、とくに学齢の女子の薬物濫用、アルコール濫用および喫煙に対処する努力を強化するよう奨励する。委員会は、リプロダクティブヘルス教育(男性が避妊手段の使用を受け入れることの促進も含む)を強化するためにあらゆる適当な措置をとるよう勧告するところである。委員会は、思春期のリプロダクティブヘルスに関わる問題(STDの発生を含む)の規模を理解するため、包括的かつ学際的な研究を実施するよう提案する。加えて、マン島が、思春期の子どもに対して若者にやさしいケア、カウンセリングおよびリハビリテーションのサービスが提供されることを確保し、かつ子どもの精神保健サービスを強化するため、十分な人的資源および財源の配分を含むさらなる措置をとることが勧告されるところである。 障害 30.委員会は、障害のある子どもを対象とするプログラム(統合およびコミュニティを基盤とするケアのためのプログラムを含む)を確立するためにマン島が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、身体的障害のある子どもの十分な法的保護を確保するための努力が不十分であることを懸念するものである。 31.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96付属文書)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議で委員会が採択した勧告(CRC/C/69, chap. IV.D)に照らし、委員会は、障害を予防するための早期発見プログラムを増進させ、障害のある子どもを対象とする特別教育プログラムを強化し、かつ、可能な場合には、障害のある子どもの、普通学校制度およびより一般的に社会へのインクルージョンを奨励するためにさらなる努力を行なうよう、勧告する。障害のある子どもを対象とするプログラムの効果的実施を確保し、かつこれらの子どもともにおよびこれらの子どものために働く専門家を対象とするさらなる研修を奨励するために、十分な資源が配分されるべきである。委員会はまた、身体的障害のある子どもの権利を保障するための法律を制定するよう勧告する。 社会保障 32.委員会は、マン島の社会保障制度において、子どものいる家庭に対する財政的支援ならびにひとり親および低所得家庭に対する追加的援助が提供されていることに留意する。委員会はまた、社会保障制度において、就労先を見つけることのできない16~17歳の若者の訓練、教育および雇用に関する対応が行なわれていることにも留意するものである。しかしながら委員会は、18歳未満のすべての子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実施を確保する目的で社会保障制度を強化するため、さらなる努力が必要とされていることを懸念する。 33.委員会は、マン島に対し、経済的に不利な立場に置かれた18歳未満の子どもに対して社会保障を通じて十分な支援および援助を提供するための努力を強化するよう、奨励する。 6.教育、余暇および文化的活動 34.委員会は、行動上の問題を有する生徒に対して追加的支援を提供する「INCLUDE」プログラムおよび「ブリッジ」プロジェクトを歓迎する。学校環境におけるこのような子どもの参加を奨励するため、生徒会が設置されていることにも、評価の意とともに留意されるところである。委員会は、現在、マン島ゲール語がすべての初等学校で2年間の選択科目として教えられていること、および、現在、教育省がゲール語学校の設置の可能性(2002年開校予定)を再検討していることに留意する。義務教育年齢の生徒の定期的通学を確保するため、マン島が無断欠席生徒指導員を任命したことには留意しながらも、委員会は、怠学率および中退率ならびにこれらを防止しかつ抑制するために実施されているプログラムについて提供された情報が不十分であることを懸念するものである。委員会は、14~16歳の生徒向けの学校カリキュラムに全英職業資格協議会(NCVQ)のコースを含めようとする努力が、遺憾ながら成功していないことに留意する。生徒が自己の権利侵害に関わるいかなる懸念についても親を通じて校長と話し合えることには留意しながらも、委員会は、権利を侵害された生徒を対象とする正式な苦情申立て手続を設置するための努力が不十分であることを懸念するものである。 35.委員会は、マン島に対し、学校でゲール語を促進する努力を継続するよう奨励する。委員会は、マン島が、教育の現状、とくに怠学率および中退率に関する追加的情報を次回定期報告書で提供するよう勧告するものである。委員会は、マン島に対し、14~16歳の子どもの職業上の選択肢を発展させる努力を継続するよう奨励する。委員会はさらに、マン島に対し、権利を侵害されたあらゆる段階の生徒を対象とする苦情申立て手続を学校制度内に設置するよう奨励するものである。 7.特別な保護措置 児童労働 36.委員会は、マン島が条約第32条に関して付した留保に留意するとともに、児童労働および子どもの経済的搾取に関わる同島の状況についての情報および十分なデータが欠けていることを懸念する。 37.委員会は、マン島に対し、条約第32条に対する留保の撤回を検討するよう奨励する。委員会は、締約国が、児童労働に関わるマン島の状況を評価するために包括的研究を行なうよう勧告するものである。加えて委員会は、マン島に対し、適切な場合には、労働法の執行を確保し、かつとくにインフォーマル部門における経済的搾取から子どもを保護するための監視機構を導入しおよび(または)強化するよう、奨励する。委員会はまた、締約国が、最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約の適用をマン島に拡大することを検討するようにも提案する。委員会はさらに、締約国が、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の適用をマン島に拡大することを検討するよう提案するものである。 薬物および有害物質の濫用 38.委員会は、マン島が薬物に関する5か年戦略を策定し、かつ中等学校および大学段階で薬物防止プログラムを開発したことに留意する。しかしながら委員会は、同島の若者の間で薬物濫用の発生件数が増加していることを懸念するものである。委員会は、「逮捕者送致制度」の導入に留意するとともに、薬物濫用の被害を受けた子どもの刑事司法制度からのダイバージョンを進めるためのすべての措置を歓迎する。 39.条約第33条に照らし、委員会は、マン島が、麻薬および向精神薬の不法な使用からの子どものいっそうの保護を保障し、かつこれらの物質の不法な製造および取引における子どもの使用を防止するためのプログラムを強化するよう勧告する。マン島はまた、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもを対象とするリハビリテーション・プログラムを強化するための努力を継続するようにも奨励されるところである。 少年司法 40.委員会は、少年司法の分野におけるマン島の努力、とくに最近の警察権限手続法(1998年)の制定に留意する。同法は、とくに、法律に触れた17歳未満の子どもを対象とする追加的保護措置を導入するものである。委員会は、同法において、18歳未満のすべての子どものための十分な法的保護が提供されていないことを遺憾に思う。委員会は、マン島議会が現在、とくに同島の裁判所が刑として体罰を科すことを禁ずることを意図した刑事司法法案(2000年)を検討中であることに留意する。委員会は、とくに以下の点に関して、少年司法制度においてとられている立法上および政策上の取り組みの実際の実施に関する情報が不足していることを懸念するものである。 (a) 少年事件の審理が開かれるまでの期間を短縮するための試み、法律に触れた子ども(女子を含む)のための施設の適切さ、および、この点に関わって子どもとともに活動している、訓練を受けた職員の利用可能性。 (b) 教育、保健、カウンセリング、および更生のためのその他のサービスへの十分なアクセス、ならびに、権利を侵害された子どものための苦情申立て機構の利用可能性。 41.委員会は、締約国が、次回定期報告書において、次のことを確保するためにマン島の少年司法制度においてとられている立法上および政策上の取り組みの実際の実施に関する追加情報を提出するよう勧告する。 (a) 少年司法制度が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のようなこの分野における他の国連基準の精神に照らして改革されること。 (b) 少年司法制度に関与するすべての専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムが導入されること。 (c) 自由の剥奪が最後の手段として、かつ可能なかぎり短い期間でのみ考慮され、自由を奪われた子どもの権利(プライバシーに対する権利を含む)が保護され、かつ、少年司法制度の対象とされている間も子どもがその家族との接触を維持すること。 42.委員会は、マン島に対し、同島の裁判所が刑として体罰を科すことを法律によって禁ずる刑事司法法案(2000年)を制定するための努力を強化するよう奨励する。 8.選択議定書の批准 43.委員会は、締約国が、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の2つの選択議定書を批准し、かつマン島にも適用することを検討するよう勧告する。 9.報告書の普及 44.委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、委員会が採択した総括所見および関連の議事要録とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府および一般公衆(NGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年8月24日)。