約 24,225 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/60.html
総括所見:ノルウェー(第2回・2000年) 第1回(1994年)/第3回(2005年)/第4回(2010年)OPSC(2005年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.126(2000年6月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年5月22日に開かれた第625回および第626回会合(CRC/C/SR.625-626参照)において、1998年7月1日に提出されたノルウェーの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.2)を検討し、2000年6月2日に開かれた第641回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書の提出、追加情報の提供、および質問事項(CRC/C/Q/NOR/2)に対する締約国の文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書に記載された有益な統計的情報、および、対話の過程で追加情報を提供するために代表団が行なった率直かつ建設的な努力に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全体的な進展について締約国を賞賛する。 4.委員会は、加えて、子どもオンブズパーソン事務所が果たしているきわめて積極的かつ独立した役割について締約国を賞賛する。委員会はまた、締約国が、自国の開発援助プログラムにおいても、かつ関連する国際的な場への参加を通じても社会部門を優先していることも、特筆に値すると考えるものである。同様に、委員会は、締約国が研究組織「チャイルドウォッチ・インターナショナル」の発足を支援したこと、および、対話および協力の精神にのっとり、とくに人権問題に関して国内の専門家による援助の提供を促進することを目的としてNORDEMを発展させていることを、賞賛する。 5.委員会は、締約国報告書の作成におけるものも含めて政府とNGOとのあいだに建設的対話が存在すること、および、代替的報告書の作成に関してNGOに支援が与えられたことを、心強く感ずるものである。 6.委員会は、刑事訴訟法の改正を受けて、条約第40条2項(b)(v)に対する締約国の留保が1995年に撤回されたことを歓迎する。加えて、委員会は、子ども法の改正により子どもの立場およびその権利の保護が強化されたことも心強く感ずるものである。 7.委員会はまた、国際的な経済不況傾向が(報告対象期間の一部において)広範に広がり、かつ社会サービスの地方分権化が進展しているにも関わらず、児童福祉プログラムのための予算が締約国において増加していることに、満足感とともに留意する。委員会はさらに、児童福祉プログラムの実施に関して自治体によってとられた政策および措置を監視するシステムが、県知事の報告手続を通じて設置されていることにも留意するものである。 8.委員会は、外国人に対する不寛容の傾向と闘い、かつ人種主義および排外主義の問題に対応するために、締約国が、青少年の関与および参加によるものも含めて相当の努力を行なっていることに留意する。委員会はまた、このような問題に対する同様のアプローチを奨励するうえで、締約国が地域的な場で積極的な役割を果たしていることも歓迎するものである。 9.委員会は、締約国報告書の刊行以降に行なわれた市民法改正が行なわれたこと、および、ノルウェー市民その他のノルウェー在住者によって養子縁組された外国人の子どもの状況にそれが積極的影響を及ぼしていることに、満足感とともに留意する。委員会はさらに、1995年の法律の採択によって女性器切除が禁止されたこと、および、1994年の婚姻法の改正により、婚姻の一方の当事者が、婚姻を強制されたときは当該婚姻を無効と宣言するための手続を開始できるようになったことに留意するものである。加えて、委員会は、親に対する広範な支援および介入のプログラムが用意されていることを歓迎する。 10.委員会は、発展途上国における子どもの権利を支援することに対し、国際協力その他の援助を通じて締約国が豊かな貢献を行なっていることに関して、締約国を賞賛したい。 11.委員会は、締約国報告書において、締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見が頻繁に言及されていること、および勧告の一部に対応するための努力が行なわれたことを歓迎する。 C.主要な懸念事項 1.実施に関する一般的措置 立法 12.委員会は、条約の一般原則および規定がいまなお勧告にしたがって国内法に全面的に編入されていないことを、依然として懸念する。 13.委員会は、締約国がこの問題に関してひきつづき継続的議論を行なうよう奨励し、かつ、1999年5月21日の人権法によって他の地域的および国際的人権文書が編入されたのと匹敵する方法で条約を国内法に編入することを検討するよう、勧告する。 地方レベルにおける実施 14.締約国において意思決定、行政およびサービス提供が大規模に地方分権化されていることを認識し、委員会は、国レベルから自治体への相当の権限委譲が、すべての自治体が条約を全面的に考慮していないという意味で、締約国の条約実施における弱点となっているように思えることに留意する。 15.委員会は、締約国が自治体による条約のすべての側面の実施の評価を行なうこと、および、自治体レベルにおける条約の効果的実施を確保するためあらゆる努力を行なうことを、勧告する。 予算配分 16.委員会は、低所得層の子どもに対して地方の公的機関が提供する福祉サービスの範囲および水準、ならびにその結果としてもたらされる一部の子どもの生活水準が、同国全域のさまざまな自治体において不平等となっていることを懸念する。そのような不平等は、部分的には、異なる自治体機関が利用可能な財源が相当に異なること、これらの機関が定める優先順位が異なること、および、ニーズを評価しかつ援助を与えるシステムが異なっていることから生ずるものである。このような格差は、子どもの居住地域によって、子ども、とくに障害をもった子どもに対して不平等なアクセスまたは異なる水準の福祉援助を提供する効果を有する。 17.委員会は,締約国に対し、福祉サービスの提供の文脈において、たとえば条約実施のための全国的な基準および条約実施に対する全国的な資源配分を確立することにより、居住場所に関わらずすべての子どもが同じ水準のサービスに平等にアクセスできることを保障できる方法を検討するよう促す。 条約に関する研修 18.委員会は、子どもに関わる可能性がある業務を行なっている専門家の研修が組織的なものではないこと、および、多くの専門家がそのような研修を受けていないことに留意する。 19.委員会は、締約国が、教職員、弁護士および警察官を含むさまざまな専門家グループの適切な役割に関する子どもの権利研修のための指針を、関連する場合には委員会が提起した懸念に力点を置きながら発展させるよう勧告する。委員会は、とりわけ、自治体の委員会の委員および公的機関に対し、子どもの権利条約全体の実施に関する訓練を提供することに注意を向けるよう勧告するものである。 2.一般原則 差別の禁止 20.委員会は、ノルウェーの管轄下にある子ども(その在留が法的要件を満たしていない子どもも含む)が条約に定められた権利から実際上利益を得ることを確保するために締約国が行なっている努力を評価する。にも関わらず、委員会は、この原則があらゆる国内法において確立されているわけではないこと、法的保障が存在しないことにより、ノルウェー国籍を有しない一部の子どもが権利を奪われる可能性があること、および、このような子どもによる保健および教育サービスへのアクセスが若干制限されていることに、懸念を表明するものである。 21.委員会は、締約国が、ノルウェー国籍および法的地位を有せずにノルウェーの管轄内で暮らしている子どもの権利にこの状況が及ぼす、長期的影響も含む全面的影響を考慮するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約第2条の全面的適用を確保する国内法改正を検討するよう奨励するものである。 最善の利益 22.委員会は、最善の利益原則を尊重しようとする締約国の相当の努力を認知しながらも、改善の余地があることに留意する。とりわけ、委員会は、自治体機関の役割の文脈で子どもの最善の利益がかならずしも全面的に考慮されていないこと、および、さらに、収監された親、保護者のいないまま庇護を申請している子どもまたは難民の子どもの最善の利益がかならずしも第一義的に考慮されていないことを、懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、オンブズパーソンおよび市民社会と協議しながら、上記の状況を背景として最善の利益原則が何を意味するかについて検討すること、および、子どもに影響を及ぼす決定においてこの原則が第一義的に考慮されることを確保するためにさらなる努力を行なうことを、勧告する。 自己の意見を自由に表明する子どもの権利 24.委員会は、とくに自治体レベルにおける子ども代理人の任命によるものも含めて、意見を聴かれる子どもの権利を尊重するための努力を締約国が行なっていることに対し、締約国を賞賛する。しかしながら、委員会は、締約国と同じく、実際には子どもの意見が充分に聴かれかつ考慮されていないという懸念を表明するものである。委員会は、条約および国内法にもとづいてこの分野で保障されている権利、または子どもの意見の表明のために創設された機会を知らない子どもが多いことを懸念する。 25.締約国の最近のコミットメントに留意し、委員会は、締約国が、子どもの意見表明権およびそのために存在している機構その他の機会を子どもその他の者(親および法曹を含む)に知らせる努力をひきつづき行なうよう勧告する。委員会は、さらに、子どもの意見が考慮されている度合いおよびそれが政策、プログラムの実施および子どもたち自身に及ぼしている影響を定期的に見直すよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 思想、良心および宗教の自由 26.委員会は、初等教育、前期中等教育および後期中等教育に関する締約国の1998年7月17日の第61号法(「宗教・知識・倫理教育」に関する新たな共通カリキュラムを導入するもの)においてとられているアプローチが差別的になる可能性があることを、懸念する。委員会は、とくに、授業の一部に参加したくないと考える子どもおよび親に免除を認める手続を懸念するものである。 27.委員会は、締約国が新カリキュラムの実施を見直し、かつ既存のものに代わる免除手続を検討するよう勧告する。 暴力および有害情報 28.委員会は、社会およびとくに若者(年長の子どもを含む)のあいだで暴力行為が増加しているという締約国の認識を認知する。 29.委員会は、締約国が、そのような暴力の原因に対応し、かつその発生件数を減らすための努力を追求するよう勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親からの分離 30.委員会は、刑務所で刑に服している親との接触を維持することとの関連で、子どもの最善の利益、とくに親からの分離に関わる子どもの権利が全面的に尊重されていないことを懸念する。委員会はさらに、締約国の積極的な努力にも関わらず、刑事犯罪で有罪とされた外国人を退去強制する決定が行なわれるさい、退去強制の対象とされる者の子どもに当該決定が及ぼす影響に関する専門家の意見が制度的に参照および考慮されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、それが子どもの最善の利益である場合には子どもが収監された親との個人的関係および直接の接触を維持することを確保するため、締約国が、非収監者の家族との接触に関わる規則をもっと柔軟に適用するよう勧告する。委員会はまた、退去強制が親から子どもを分離することを意味する場合には子どもの最善の利益が考慮されることを確保するため、締約国が、退去強制決定が行なわれる手続を再検討するよう勧告するものである。 家族の再統合 32.ノルウェー国民ではない子どもの家族の再統合に対して締約国が非常に積極的なアプローチをとっていることは支持しながらも、委員会は、家族の再統合について定めた重要な国内法の規定が最大限に適用されていないことを懸念する。とりわけ、委員会は、手続的遅延のために子どもが家族の再統合の可能性について情報を得ていないこと、または手続が組織的でないことのいずれかを理由として、子どもがこれらの規定をかならずしも利用できていないことを懸念するものである。 33.委員会は、締約国に対し、子ども、および親または法定保護者のようなその他の関係者に家族の再統合のための可能性および手続に関して情報を知らせるための標準的手続を定め、かつ、これらの手続を定められた指針にしたがって組織的に実施するよう促す。 家庭環境を奪われた子どもの保護 34.委員会は、とくに非公式な自発的措置手続を通じて親の家庭外に措置される子どもの人数が増えていることを懸念する。このような手続は、子どもの最善の利益が遵守されることを必ずしも保障しない可能性がある。 35.委員会は、締約国が、親の家庭外に子どもを措置しなければならなくなる要因および非公式な措置の慣行そのものの双方を慎重に分析し、かつ、家庭生活に対する子どもの権利および子どもの最善の利益が尊重されることを保障するための効果的措置をとるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 36.委員会は、拒食症および過食症の発生件数が多いこと、および思春期の青少年のあいだでアルコールの消費が蔓延していることを懸念する。委員会はまた、子ども、とくに男子による自殺がひきつづき発生していることに対しても、懸念を表明するものである。 37.委員会は、締約国に対し、医療上の問題でも心理的問題でもある拒食症および過食症のケースに対応する努力をひきつづき行なうよう奨励する。加えて、委員会は、思春期の青少年のアルコール消費水準を減らすために締約国が行なっている努力に留意するとともに、締約国が、思春期の青少年の健康なライフスタイルをひきつづき促進するよう勧告するものである。さらに、子どもによる自殺をすべて特定することが困難でありうることを認識し、かつ1994年の総括所見(CRC/C/15/Add.23)のパラグラフ17の勧告にしたがって、委員会は、締約国が、子どもの自殺(10歳未満の子どもによるものも含む)の発生件数および原因に関する調査を継続するとともに、当該調査の結果を活用して、締約国の1994年の自殺防止プログラムの参考にし、かつ当該プログラムをさらに発展させるよう勧告する。 障害のある子ども 38.委員会は、障害のある子どもが、同世代の仲間と最大限可能な形で社会的に統合できていないことを懸念する。 39.障害のある子どもの権利が全面的に実現されることを確保するために締約国が行なっている努力を認識し、かつ、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に採択した委員会の勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、締約国の第2次行動計画で強調されているように、障害のある子どもが他の子どもたちと時間を共有できることを確保するための努力をひきつづき行なうよう勧告する。 精神保健サービス 40.委員会は、締約国と同様に、子どもを対象とした精神保健サービスおよび精神保健の専門家にアクセスするために待機する人数が多く、かつアクセスが遅れていることに対して懸念を表明する。これは、心理学者および精神科医の人数が不充分であることによるものである。 41.委員会は、締約国に対し、子どもが精神保健サービスにもっと時宜を得た形でアクセスできるようにするための手段を模索し、かつ、とくに、精神科医および心理学者の不足に対応するよう奨励する。 保育サービス 42.委員会は、締約国と同様に、保育定員の増加がひきつづき必要とされていること、および、利用可能な手当の現金支給計画ではこのニーズを埋め合わせることにはならないことに、懸念を表明する。 43.委員会は、締約国と同様に手当の現金支給計画の評価を勧告し、かつ、さらに、すべての子どもが保育を受けられることを確保するというそもそもの目的を締約国が追求するよう勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育への権利 44.委員会は、締約国と同様に、一部教員の教育上の背景に限界があることおよび専門的訓練が欠如していることに懸念を表明するとともに、そのような限界が教育および児童に悪影響を及ぼしていること、および、そのような限界は教員の低賃金を含む膨大な要因の結果であることに留意する。 45.委員会は、締約国が、教員の低賃金その他の要因が締約国の教育に及ぼしている影響を研究し、かつ、特定された問題に対応するための努力を行なうよう勧告する。 教育へのアクセス 46.委員会は、締約国に存在する多くのロマの子どもおよびその他の移住性集団の子どもが義務教育の必要年限を修了していないことを懸念する。 47.委員会は、締約国が、移動通信施設の使用および遠隔学習プログラムなどを通じ、1年の一定期間を移動して過ごす子どもが正規の教育にいっそうアクセスしやすくする手段を模索するよう勧告する。 7.特別な保護措置 保護者のいない子ども、子どもの庇護希望者および子どもの難民 48.委員会は、子どもの庇護希望者との関係で条約の規定および原則が完全に尊重されているわけではないことを懸念する。具体的には、委員会は、庇護を申請した子どもが申請手続に参加する充分な機会を提供されていないこと、およびその意見が充分に考慮されていないことを懸念するものである。委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者ひとりひとりに個人的後見人を任命するなどの積極的制度が、全面的に実施されていないと考える。さらに、委員会は、庇護申請の処理が遅延していること、および、地方教育制度に統合されていない子どもの申請者がいることを懸念するものである。 49.これらの手続への子ども参加を向上させるために締約国が継続的計画を進めていることを認識し、委員会は、締約国に対し手これらの努力を追求するよう奨励するとともに、子どもが手続に参加しかつその関心事を表明する充分な機会を提供されることを確保するため、締約国が、子ども(保護者がいるかいないかは問わない)の庇護申請を審査する手続を見直すよう勧告する。さらに、締約国が発展させている後見人制度が貴重な貢献を行ないうることを認識し、委員会は、当該制度を実施し、かつ、後見人に対する適切な研修の提供などにより、意図された当該制度の機能が発揮されることを確保するために、追加的努力を行なうよう勧告するものである。 50.委員会は、締約国が、申請の処理および子どもの定住のための手続が遅延する理由を、その短縮を図る目的で検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもが通常の学校制度に迅速に統合されることを確保するため、さらなる努力を行なうようにも勧告するものである。委員会は、加えて、手続の見直しにおいて締約国が条約の規定および原則を考慮するよう勧告する。 51.子どもの難民および庇護希望者に心理社会的援助を提供するために締約国が行なっている追加的努力に留意し、委員会は、締約国と同様に、そのような援助を必要としているすべての子どもがそれを受ける機会を得ているわけではないことに懸念を表明する。委員会はまた、締約国に到着した時点で子どもの難民および庇護希望者のあいだに栄養不良が生じている場合があることも懸念するものである。 52.委員会は、締約国が、現在利用可能な心理的援助を拡大していっそう広範な人数の子どもおよびその親を対象とし、かつ、そのような援助が必要とされる子どもを締約国への到着と同時に特定するためにあらゆる努力を行なうという計画を追求するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、栄養不良の問題に対応する努力をひきつづき行なうよう奨励するものである。 少年司法 53.委員会は、罪を犯した子どもに対して締約国が現在とっている対応において、児童福祉上の措置、または子どもが15歳以上の場合には罪を犯した成人にふさわしい対応のいずれかにのみ焦点が当てられることが多く、少年司法における防止およびリハビリテーションの側面が充分に重視されていないことを懸念する。 54.委員会は、締約国が、少年司法手続の文脈において子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保する努力を追求し、罪を犯した子どもの防止およびリハビリテーションのニーズをいっそう考慮するよう勧告する。 性的搾取および虐待 55.委員会は、締約国で性的虐待が生じていること、および、そのような問題に対応するための締約国の既存の予算がもっとも効果的な形で活用されていないことを懸念する。 56.委員会は、締約国に対し、利用可能な資源(子どもを対象に働く成人職員の雇用を適切に審査するための資源も含む)を増加させること、児童虐待の告発に対応する法的手続を通じて監視すること、法曹関係者その他の関連の専門家を研修すること、およびそのような行為の被害者に時宜を得た形でケアを提供することによって、性的虐待の事案を防止しかつそれに対応する努力をひきつづき行なうよう促す。 7.報告書の普及 57.委員会は、1993年の第1回締約国報告書が広範にかつ早期に普及されたことに関し、締約国を賞賛する。しかしながら、委員会は、1998年の報告書は同じように広範な配布の対象とはなっていないこと、および、とくに、報告書が充分に早くノルウェー語で出版されなかったため、ノルウェーのNGOによるコメントの提出を促進できなかったことを懸念するものである。 58.委員会は、条約第44条6項に照らし、第2回報告書、委員会が提示した質問事項および締約国が提出した文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のあるNGOを含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年8月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/78.html
総括所見:フィリピン(第2回・2005年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2009年)OPAC(2008年)/OPSC(2013年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.259(2005年9月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年5月18日に開かれた第1028回および第1029回会合(CRC/C/SR.1028 and 1029参照) においてフィリピンの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.31)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国が提出した、定められた報告ガイドラインにしたがった第2回定期報告書、および委員会の事前質問事項に対する文書回答を歓迎する。委員会は、締約国との間に持たれた建設的対話を心強く思うとともに、条約の実施に関与する省庁横断型の代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利の状況のより十全な評価が可能となったことを認知するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、近年、子どもの権利の保護および促進を目的としたいくつかの法律が採択されたこと、とくに以下のことに留意する。 (a) とくに女性および子どもの人身取引を根絶するための政策を制定し、人身取引の対象とされた者を保護しおよび支援するための制度的機構を設置し、人身取引を行なった者に対する刑罰を定め、かつ、フィリピンまたは国外における武装活動に従事させるための子どもの徴募、移送または養子縁組も禁じた、人身取引防止法(共和国法第9208号)の採択(2003年)。 (b) 最悪の形態の児童労働の根絶を定め、かつ働く子どもに対してより強力な保護を与える、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法(共和国法第7610号)を改正した共和国法第9231号の採択(2003年)。 (c) フィリピン家族法(大統領令第209号第176条)を改正し、非嫡出子が父の姓を用いることを認めた共和国法第9255号の採択(2004年)。 (d) 女性およびその子どもに対する暴力を定義し、かつ被害者の保護措置およびこのような暴力の加害者に対する刑罰を定めた、女性およびその子どもに対する暴力防止法(共和国法第9262号)の採択(2004年)。 (e) この総括所見全体で言及されている国際的条約および議定書の批准など、条約の実施を促進するためにとられたその他の法律上または行政上の措置。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 4.委員会は、7100以上の島々から構成されている締約国が、地理的形態の面で特有の性質を有しており、かつ、同国の農村部および遠隔地(多くの場合、これらの地域は孤立しており、サービス等の対象とすることが非常に困難である)に住んでいる子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで課題に直面していることを認知する。 5.委員会はまた、トロピカル・ストームによる自然災害および2004年末に発生したいくつかの破壊的タイフーンによって同国のいくつかの州のインフラが崩壊し、そのため経済的および社会的困難が増しつつあることも認知する。とくに政治的不確定性および反政府運動によって引き起こされる国内の不安定さは、締約国における全般的な人権の発展に悪影響を及ぼしてきた。 D.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.23)の検討時に採択された総括所見(CRC/C/15/Add.29)に掲げたさまざまな懸念および勧告について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに刑事責任および性的同意に関する最低年齢、婚外子差別、包括的な少年司法制度の欠如、条約に関する監視制度の欠如ならびに拷問等の禁止については、十分な対応が行なわれていない。 7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告に対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 立法 8.委員会は、比較的先進的な法的枠組みに留意するとともに、子どもの権利の保護および促進を向上させることを目的とした多くの立法上の提案、新法の制定および法改正の採択を心強く思う。しかしながら委員会は、とくに地方レベルで法律が十分に実施されていないことを深く懸念するものである。委員会はまた、国内法が条約のすべての規定および原則に完全に一致しているわけではないことにも留意する。 9.委員会は、締約国が、子どもの権利の保護を向上させる目的で国内法の全面手的かつ効果的実施を確保し、かつ、たとえば刑事責任に関する現行の最低年齢および法律に触れた子どもとの関連で、自国の法律を条約の規定および原則と全面的に調和させるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 国家的行動計画 10.委員会は、「子ども21」として知られる「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」が開始され、かつ、子どもの権利に関する問題ならびに関連の進展および欠点に対応するためにホリスティックなアプローチがとられていることを歓迎する。委員会は、既存の監視機構が、同計画の実施を一貫したやり方で監視しかつ評価するためには不十分であることを懸念するものである。さらに、委員会は、地方レベルで同計画およびその目的についての意識が限定されていることを懸念する。 11.委員会は、締約国が、とくに十分な人的資源、財源および技術的資源を提供することにより、「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」の全面的実施のためにあらゆる必要な措置をとるとともに、同計画の実施に関して、地方レベルでの同計画の実施に特段の注意を払いながら、権利を基盤とする、開かれた、建設的かつ参加型のプロセスを確保するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、同計画の実施に関わる活動の効果的調整ならびにこの実施プロセスの監視および評価を可能ならしめるのに必要な資源を国家子ども福祉評議会に提供することにより、同評議会を全面的に支援するよう勧告するものである。加えて、締約国は、とくに同計画および子どもの権利条約一般の実施における重要な手段となるだけの十分な資源を提供された子どもの保護のための地方評議会の設置を、とくに都市、自治体およびバランガイ(最小地方行政単位)においてできるかぎり促進するよう促される。委員会はまた、締約国が、実施プロセスの過程でとくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めることも勧告するものである。 独立の監視 12.委員会は、人権の実施を独立の立場から促進しかつ監視する権限を与えられたフィリピン人権委員会(PCHR)が1997年に設置されたことを歓迎するとともに、他のいくつかの機関に対しても子どもの権利の実施に関する監視の役割が与えられていることに留意する。委員会は子どもの権利に関わるPCHRの活動を認知するものの、その権限および資源が限られていることを懸念するものである。 13.委員会は、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を参照しつつ、締約国に対し、子どもが申し立てた個別の苦情の調査を子どもに配慮したやり方で強化するため、子どもの権利の監視に関わるPCHRの権限を拡大することおよびPCHRに十分な資源を提供することを検討するよう、勧告する。 資源配分 14.委員会は、子どものための社会サービスに対する予算配分が若干増額されたこと、締約国が予算策定に関して20/20イニシアティブを実施するために努力していること、および、たとえば貧困緩和基金を通じて低所得家庭および貧困との闘いに優先順位が与えられていることに留意する。委員会はまた、締約国の債務元利払いが国家予算の30%以上を占めていること、ならびに、子どものための十分な予算配分、および、利用可能な資源を最大限に用いて子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施することに対する予算配分に関わる条約第4条について十分な注意がはらわれていないことにも、深い懸念とともに留意するものである。 15.委員会は、とくに子どもの権利の実現ならびにとりわけ子どもの経済的、社会的及び文化的権利の実施に対する予算配分を増額できるようにするため、締約国が、債務元利払い水準を低減させるための努力を強化するよう勧告する。子どもに関する支出の影響を評価できるようにするため、委員会は、締約国が、予算配分が子どもの権利の実施に与える影響の体系的評価を確立し、かつ、18歳未満の者に支出される年間予算の額および割合を明らかにするよう、勧告するものである。 データ収集 16.委員会は、データ収集改善のためのさまざまな努力を歓迎するものの、条約が対象としている一部の領域(障害のある子ども、移住者の子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、虐待およびネグレクトの対象とされている子ども、少年司法制度における子どもならびにマイノリティに属する子どもおよび先住民族の子どもを含む)で、データが存在せずまたは不十分であることを依然として懸念する。 17.委員会は、条約のすべての領域に関するデータが収集され、かつ、これらのデータが、とくに、18歳未満のすべての者について年齢別、ジェンダー別、都市部および農村部の別ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団別に細分化されることを確保するため、締約国が、既存のデータ収集機構を強化しかつ条約と一致した指標を開発するとともに、必要なときは追加のデータ収集機構を設置するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための政策およびプログラムを立案する目的でこれらの指標およびデータを活用するよう、奨励するものである。 条約の普及 18.委員会は、条約普及特別委員会が設置されたことに評価の意とともに留意し、かつ、たとえば出版物、放送メディアおよび専門家の研修を通じて条約の原則および規定に関する情報を普及するうえで、締約国が、ユニセフ、その他の国際機関ならびに国内外の非政府組織と連携しながら行なっている努力を心強く思う。にもかかわらず、委員会は、条約が社会のあらゆるレベルで普及されているわけではないことを懸念するものである。加えて、委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が系統だって行なわれておらず、むしろ場当たり的になっていることに留意する。 19.委員会は、締約国が、条約を促進する創造的かつ子どもにやさしい手法を引き続き発展させるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、遠隔地の子どもおよびおとなの間で条約に関する意識を高めるとともに、少なくとも主要な言語で、かつできるだけその他の先住民族およびマイノリティの言語でも条約を利用可能とするよう、奨励するものである。委員会はさらに、裁判官、弁護士、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団の系統だった研修を勧告する。条約の普及に関して、委員会はまた、締約国が、とくに国連人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めることも勧告するものである。 2.一般原則 差別の禁止 20.とくに子ども・若者福祉法(大統領令第603号)、家族法および子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定ならびに第3次初等教育プログラムのようないくつかのプログラムの実施を通じて子どもに対する差別を撤廃するために締約国がとった措置にも関わらず、委員会は、多くの子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもが、とりわけ社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して差別に直面していることを懸念する。委員会は、女子が日常生活で直面している事実上の差別(これはジェンダーに基づく複合差別であることが多い)についてとくに懸念を覚えるものである。委員会は最後に、とくに相続の権利および「非嫡出」という差別的分類に関する婚外子の不平等な地位についての懸念をあらためて表明する。 21.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の効果的実施を確保するための努力を強化するとともに、脆弱な立場に置かれたすべての集団の子どもに対するあらゆる形態の差別(諸形態の複合差別を含む)を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するよう、勧告する。委員会は、締約国が、女子の平等な地位ならびに女子によるすべての人権および基本的自由の全面的享受に対して特段の注意を払うよう勧告するものである。婚外子に関して、委員会は、締約国に対し、平等な取り扱いに対する婚外子の権利(相続の権利を含む)を保障し、かつこれらの子どもを「非嫡出」と分類する差別的慣行を廃止する目的で、国内法を見直すよう要請する。 22.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 生命に対する権利 23.委員会は、とくに国内武力紛争を理由とする子どもの生命権の侵害に重大な懸念を表明する。軍の兵士による子どもの超法規的殺害が2004年にブラン(ソルソゴン州)で行なわれたとされること、および、近年、ダバオおよびディゴスの両都市でもいわゆる死の部隊による同様の事件が起きたとされていることは、きわめて重大な懸念の理由となるものである。 24.改正刑法(共和国法第3815号)および改正刑法を修正した一部の凶悪犯罪に対する死刑適用法(共和国法第7659号)の規定で、犯罪を行なったときに18歳に達していなかった者に死刑を科すことが明示的に禁じられていることには留意しながらも、委員会は、子ども、すなわち18歳未満の者が確固たる年齢証明のないまま死刑囚とされている事案があることに深い懸念を表明する。 25.委員会はまた、民事登録官へのアクセスが制約されていることを理由として新生児死亡および流産の報告制度に欠陥が生じていることにも、懸念とともに留意する。 26.委員会は、条約第6条その他の条項を参照しながら、締約国に対し、とくに子どもの超法規的殺害を防止することならびに殺害が疑われる事件を徹底的に捜査しかつ加害者を裁判にかけることを目的とする効果的措置をとることにより、生命、生存および発達に対するすべての子どもの権利の保護を強化するためにあらゆる努力を行なうよう促す。 27.委員会はまた、締約国に対し、死刑を言い渡された子どもの処刑を防止し、かつ死刑に代えて条約および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)に一致する制裁を適用するためにあらゆる必要な措置をとることも促す。締約国はまた、18歳未満の者が死刑または成人を対象とする他の刑罰を言い渡されないことを確保する目的で、警察、検察官、弁護人、裁判官およびソーシャルワーカーのような公的権限を行使する者に対し、被告の正確な年齢に関する証拠を法廷に提出すること、またはそれが不可能な場合には被告に灰色の利益を与えることを義務づけるため、即時に立法上その他の措置をとることも求められる。 28.新生児死亡および流産の報告について、委員会は、締約国が、とくに同国の遠隔地において民事登録官へのアクセスを容易にするよう勧告する。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、締約国の国内法令のなかに、たとえば司法上および行政上の手続における子どもの同意および意見を明示的に尊重しているものがあり、かつ、締約国が、とくに全国若者議会(共和国法第8044号)および生徒評議会を通じ、子どもの参加を促進してきたことに留意する。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ひとつには社会における伝統的態度を理由として、参加および自由な意見表明に対する子どもの権利が締約国においていまなお制限されているという見解に立つものである。 30.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、学校およびその他の施設において子どもの意見の尊重を促進し、かつ、とくに子どもおよび若者の評議会、フォーラム、議会等を通じ、子どもに影響を与えるすべての事柄への子どもの双方向的参加の便宜を図るための努力を強化すること。その際、脆弱な立場に置かれた集団の子どもに特段の注意を払うことが求められる。 (b) 子どもおよびその親、養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対し、子どもが自己に関わる問題について影響を及ぼす機会を追求しかつ強化するよう奨励することにより、意見を聴かれかつ参加する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを行なうこと。 31.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ〔子どもの味方〕163」の活動に、評価の意とともに留意する。これは、子どもが自己の関心事および意見を表明し、かつ援助および助言を求めるための重要な手段である。しかしながら委員会は、同ヘルプラインにアクセスできるのが首都圏に住んでいる子どもだけであり、かつ、同ヘルプラインを同国の農村部にまで拡大するための基本的資金が存在しないことを懸念するものである。 32.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ163」を全国的にアクセス可能なフリーダイヤルとし、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源を提供することにより、締約国が同ヘルプラインの拡大を支援するよう勧告する。ヘルプラインに関する子どもの意識について、委員会は、締約国が、子ども関連のプログラムに同ヘルプラインについての情報を含めるよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 出生登録 33.出生登録率の上昇の見込みおよび締約国がこの点についてとっている措置(プラン・インターナショナルおよび国家統計局が連携して実施している「未登録の子どもプロジェクト」を含む)には留意しながらも、委員会は、子ども、とくに宗教的その他のマイノリティ集団または先住民族に属している子どもおよび同国の遠隔地に住んでいる子どもの時宜を得た出生登録を確保するうえで困難が生じていること、および、出生登録が無償ではなく、かつ締約国全域のすべての親にとって平等にアクセス可能なものとなっていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、出生証明書の偽造についても懸念を覚えるものである。 34.子どもがすべての人権および基本的自由を全面的に享受することを確保し、かつ100%の出生登録を達成するため、委員会は、締約国が、領域内の最遠隔地にサービスを提供する移動出生登録班をより効果的に活用すること等も通じて、締約国の領域を完全に網羅した、効率的な、かつあらゆる段階で無償の出生登録制度を発展させるための努力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもが婚外子である親および宗教的その他のマイノリティまたは先住民族に属する親による早期の出生登録へのアクセスを向上させることに、特段の注意を払うよう要請するものである。 35.委員会は、同国における出生登録率の向上を達成するため、締約国が、公衆の態度を変革し、かつ親、産婦人科診療所および病院、助産師ならびに伝統的出産立会人の感受性を強化することを目的とした意識啓発キャンペーンを導入するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、この点に関する国際機関および非政府機関との協力を深めるよう勧告するものである。委員会は、締約国が、とくに社会福祉開発省のような政府機関に関連の規定の実施およびすべての偽造事件の記録を担当させることによって、出生証明書の偽造を防止する効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、出生時からのアイデンティティに対する子どもの権利および家族のなかで成長することに関する広報キャンペーンを、とくに地方レベルで開始することも勧告するものである。 名前、国籍およびアイデンティティ 36.海外で働くフィリピン人が多いことに関して、委員会は、国外で生まれたフィリピン人移住労働者の子どもについて懸念を覚える。これらの子どもは、登録されないことにより、名前、国籍およびアイデンティティならびに基礎的サービスに対する権利を奪われている。 37.委員会は、締約国に対し、親がその在留資格に関わらず国外で生まれた子どもを登録することを奨励し、かつそのための便宜を図るよう勧告する。委員会はまた、締約国が、登録されておらず正規の身分証明書類を有しない子どもが、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスを認められることを確保するようにも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、出生登録の必要性および価値に関する親の意識を高めるよう勧告する。 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰 38.委員会は、フィリピン憲法が拷問を禁じており、かつ子ども・若者福祉法(大統領令第603号)の規定で拷問および不当な取り扱いからの子どもの保護が定められていること、ならびに、すべての病院、診療所、関連施設および開業医に対し、子どもの拷問および不当な取り扱いのすべての事案を書面で報告する義務が課されていることに、留意する。にもかかわらず、委員会は、子ども、とくに拘禁されている子どもの拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いの報告件数が多数にのぼることを深く懸念する。委員会は、法律による拷問の禁止および犯罪化に関する前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、現行法は子どもに対して拷問および不当な取り扱いからの十分な水準の保護を提供していないという見解をとるものである。 39.拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰に関して、委員会は、締約国に対し、家庭ならびに官民のすべての施設における拷問および不当な扱いからの子どもの保護を向上させ、かつ法律により拷問を犯罪とする目的で、国内法を見直すよう促す。委員会は、締約国が、虐待された子どもが法的手続で被害を受けないことおよびそのプライバシーが保護されることを確保しながら、子どもの拷問および不当な取り扱いのすべての事案を捜査しかつ訴追するよう、勧告するものである。締約国は、被害を受けた子どもに対し、ケア、回復および再統合のための適切なサービスが提供されることを確保するよう求められる。委員会は、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教員、法執行官、ケアを提供する者、裁判官および保健従事者を含む)に対し、不当な取り扱いの事案の特定、通報および管理についての研修を行なう努力を継続するよう勧告する。 40.委員会は、締約国に対し、子どもの拷問、非人道的なおよび(または)品位を傷つける取り扱いが公的機関または関連機関に報告された件数、そのような行為の加害者のうち裁判所による刑の言い渡しを受けた者の人数および言い渡された刑の性質に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 体罰 41.種々の関連規定を実施することにより学校、刑務所、施設および諸形態の子どものケア現場における体罰の使用を禁止しようとする締約国の努力には留意しながらも、社会で体罰が蔓延していることは重大な懸念の理由となる。委員会は、体罰に関する規定が子ども・若者福祉法に含まれていないことを懸念するとともに、家庭における体罰が法律で明示的に禁じられていないことを遺憾に思うものである。 42.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)および家庭および学校における子どもへの暴力に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/111参照)に照らし、委員会は、体罰は条約の規定と両立せず、かつ、条約第28条2項でとくに求められている子どもの尊厳の尊重の要件と一致しないことをあらためて指摘する。したがって委員会は、締約国が、家庭、学校および官民の施設、少年司法制度ならびに代替的養護制度におけるあらゆる形態の体罰を法律で禁止するよう勧告するものである。 43.委員会は、締約国に対し、さまざまな場面(家庭環境を含む)における体罰の性質および規模を評価するための包括的研究を実施するよう、勧告する。さらに、委員会は、締約国が、暴力的形態の「しつけおよび規律」の有害な影響に関する公衆教育キャンペーンを実施することによって親、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうとともに、体罰に代わる手段として、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進するよう、勧告するものである。 4.家庭環境および代替的養護 親の責任 44.子どもの養育および発達に対する親の責任について、委員会は、フィリピンの子どもの多くが、少なくともいずれかの親が海外で働いているために家族の絆が緊密ではない状況下で暮らしていることを懸念する。 45.委員会は、海外就労に関する政策を定めることならびに移住労働者、その家族および窮状にある海外在住フィリピン人の福祉の保護および促進に関する基準を向上させること等に関する法律(共和国法第8042号)の効果的実施を求めるとともに、締約国に対し、海外で就労するフィリピン人が女性も男性も平等に親としての責任を果たせることを(就労先の国々と二国間協定を締結する等の手段も通じて)確保し、かつ家族の再統合および子どもの養育のための安定した家庭環境を促進するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、海外就労フィリピン人およびその子どものための、子どもに配慮した家族カウンセリング・サービスを発展させかつ提供するための努力を引き続き行なうよう勧告するものである。 扶養料の回復 46.親の一方または双方が海外で働いているフィリピン人の子どもが多いこと、海外移住中に国外で出生するフィリピン人の子どもが増えていることおよび父親が確定されない場合があることに留意しながらも、委員会は、締約国が、実際上、扶養料の回復を十分に確保していないことを懸念する。委員会は、国内法(たとえば家族法および子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法)の関連規定の不十分な実施ならびにこの点に関わる裁判所命令の執行について懸念を覚えるものである。加えて、委員会は、扶養命令の相互執行に関する二国間協定が実際には十分に実施されていないこと、および、このような協定が締結されていない場合もあることを懸念する。 47.委員会は、締約国が子どもの扶養料の回復を実際に確保するよう勧告する。国外で働いている親に関して、委員会は、締約国に対し、扶養命令の相互執行に関する二国間協定を締結するとともに、扶養料の回復が行なわれない場合に扶養料の支払いを保障する基金の設置を検討するよう、奨励するものである。 里親養護および養子縁組 48.委員会は、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准したことを歓迎し、かつ、国際養子縁組法(共和国法第8043号)および国内養子縁組法(共和国法第8552号)の規定に評価の意とともに留意する。委員会は、里親養護に関する政府法案が数年間議会で未決案件となっていることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、子どもの養子縁組許可宣言の手続に時間がかかるため、施設での滞在が長期化する結果になっていることを懸念する。委員会はまた、国際養子縁組が最後の手段として用いられていないことに、懸念とともに留意するものである。 49.委員会は、すべての養子縁組が条約の原則および規定ならびに他の関連の国際基準に全面的にしたがって、かつ子どもの最善の利益にかなうように行なわれること、ならびに、国際養子縁組が最後の手段として用いられることを確保するため、締約国があらゆる努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国に対し、里親養護法を優先的課題として採択しかつ実施するよう奨励するものである。委員会は、締約国に対し、養子縁組手続が施設における子どもの長期滞在につながる要因を特定するよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、里親および里子に対して十分な審理社会的サービスを提供するよう勧告するものである。 虐待およびネグレクト、不当な取り扱い、暴力 50.委員会は、締約国において児童虐待およびネグレクトの報告件数が増えており、かつ、あらゆる形態の虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱い(性的虐待を含む)の処罰に関して国内法に顕著な欠陥があることを、深く懸念する。加えて、委員会は、宗教上の制度の枠組みのなかで子どもの性的虐待が行なわれているという訴えがあることを深く遺憾に思うものである。 51.委員会は、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の虐待(性的虐待を含む)、ネグレクト、不当な取り扱いおよび暴力を処罰し、かつ子どもに対するこれらの犯罪(近親姦を含む)を明確に定義するため、国内法を見直すよう促す。委員会は、締約国に対し、宗教上の制度の枠組みのなかで行なわれる性的虐待および搾取を防止し、かつこれらの行為から子どもを保護するために効果的措置をとるよう勧告するものである。そのための手段には、このような事案の規模について調査を行なうとともに、このような虐待の加害者が裁判にかけられること、および、このような性的虐待の事案および未成年者の搾取の事案について宗教上の制度の役職者の責任が問われることを確保することが含まれる。 52.委員会は、締約国に対し、加害者を裁判にかけ、かつ暴力および虐待の被害を受けた子どもが十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保する目的で、たとえばビデオに録画された証言を証拠として認めることによって被害を受けた子どもの権利を法的手続において全面的に実践しながら、児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について時宜を得た十分な調査を行なうよう促す。 母親とともに刑務所にいる子ども 53.母親とともに刑務所で暮らしている子どもに関して、委員会は、十分な社会サービスおよび保健サービスに対するこれらの子どものアクセス、ならびに、とくに、劣悪でありかつ国際基準に達していないことが多いその生活条件について懸念を覚える。 54.委員会は、締約国が、条約第27条にしたがって、刑務所における生活条件および保健サービスが子どもの乳幼児期の発達にとって十分であることを確保するとともに、子どもが拘禁される母親とともに滞在するようになる前および滞在している期間中に、子どもの最善の利益の原則(条約第3条)が権限のある専門家によって注意深くかつ独立の立場から考慮されることを確保するよう、勧告する。委員会は、収監中の母よあから分離された子どもの代替的養護が、子どもの身体的および精神的ニーズが適切な形で満たされることを確保しながら、定期的に見直されるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、代替的養護において、子どもが収監されたままの母親との個人的関係および直接の接触を維持できることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この点についてとくにユニセフその他の国連機関の援助を求めるよう奨励するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 55.とくに「コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム」を実施することによって、障害のある子どもに対する差別を撤廃し、かつ障害のある子どもが平等な機会に基づいて社会に統合することを促進するために締約国が行なっている努力を歓迎しつつ、委員会は、障害のある子どもが事実上の差別に直面していることおよびこのような子どもの役割が社会で不可視化されていることを懸念する。委員会は、障害に関する国内法、たとえば障害者大憲章(共和国法第7277号、1992年制定)および子ども・若者福祉法の関連規定がとくに地方レベルで十分に実施されていないことに、懸念とともに留意するものである。委員会は、障害のある子どもの多くが貧困下で暮らしており、かつ社会サービスおよび保健サービスならびに教育への障害児のアクセスが限られていることを懸念する。さらに、フィリピン社会に深く根づいている、障害のある子どもに対する誤った考え方および広範な偏見は、懸念の理由となるものである。 56.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らし、委員会は、締約国が以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害に関する国内法および全国的な「コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム」を実施し、かつ、あらゆる関連の政策立案および国家的計画策定に障害の側面を含めることにより、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止し、かつ、障害のある子どもが生活のあらゆる領域に完全に参加するための平等な機会を確保すること。 (b) 国内の最遠隔地に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関する十分な統計データを収集し、かつ、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際にこれらの細分化されたデータを活用すること。 (c) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。 (d) 障害のある子どもが、十分な社会サービスおよび保健サービスならびに物理的環境、情報および通信にアクセスできるようにすること。 (e) 公的情報キャンペーンを開始しかつ支援することによって障害のある子どもに対する否定的態度、誤った考え方および広範な偏見を変革する目的で、障害のある子ども(その権利、特別なニーズおよび潜在的可能性も含む)に関する意識啓発のための努力を強化すること。 (f) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分な研修を受けることを確保すること。 (g) 国家障害者福祉評議会の職務および活動、ならびに、フィリピン障害者団体全国連合および障害問題の分野で活動している非政府組織との協力を強化すること。 (h) とくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的協力を求めること。 57.さらに、委員会は、締約国に対し、大統領布告第240号(2003年)で宣言された「フィリピン障害者の10年(2003~2012年)」の文脈において障害のある子どもの権利および地位に特段の注意を払うよう、奨励する。 健康および保健サービス 58.委員会は、健康および保健サービスの分野において、とくに予防接種との関連で締約国が達成した進展(ポリオの撲滅および新生児破傷風の根絶など)を心強く思うとともに、「保健部門改革アジェンダ」に評価の意とともに留意する。農村部では出産10件のうち8件が専門家による保健上の便益を受けることなく行なわれており、かつ乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率が相対的に高いことに留意しつつ、委員会は、とくに同国の農村部において産前産後の保健ケアが不十分であることに、深い懸念を表明する。母乳育児の普及率が低いこと、子どもの間で栄養不良が生じていること(学齢期の子どもの微量栄養素不足問題も含む)、および、同国の遠隔地において良質な保健サービスへの子どものアクセスが全般的に限られていることは、重大な懸念の理由となるものである。委員会は最後に、他の国々との間で現在交渉中である自由貿易協定によって負担可能な医薬品へのアクセスに悪影響が生じるおそれがあることに、懸念を表明する。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「保健部門改革アジェンダ」を全面的に実施するために必要な立法上、行政上および予算上の措置をとるとともに、改革プロセスが、子どもの最善の利益および子どもの権利の全面的享受を第一次的に考慮することによって進められることを確保すること。 (b) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施するため、保健部門に適切な資源が配分されることを確保するとともに、子どもの健康状態を向上させるための包括的政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。 (c) 同国の農村部に特段の注意を払いながら、産前産後の良質な保健サービスおよび保健上の便益へのアクセスを保障するための措置(助産師および伝統的出産立会人を対象とする研修プログラムも含む)を実施すること。 (d) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率を低下させるためにあらゆる必要な措置をとること。 (e) 予防接種プログラムを効果的に実施することにより、できるかぎり多くの子どもおよび母親に予防接種を行なうために現在行われている努力を強化すること。 (f) 生後6か月間は母乳のみを与え、その後はこれを修正して適切な乳児食を与えることを奨励するとともに、健康的な摂食習慣の教育および促進を通じて子どもの栄養状態を改善するための措置をとること。 (g) とくに貧困層のおよびもっとも脆弱な立場に置かれた子どもおよびその親を対象として負担可能な医薬品へのアクセスを確保するため、自由貿易協定の交渉において、第4回世界貿易機関閣僚会議(ドーハ)が採択した「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定と公衆衛生に関する宣言」で再確認されたあらゆる柔軟条項および締約国が利用可能な諸機構を活用すること。 (h) この問題に関して、とくにWHO、ユニセフおよび国連人口基金(UNFPA)と引き続き協力し、かつその技術的援助を引き続き求めること。 環境衛生 60.委員会は、締約国がとった立法上その他の措置にも関わらず、大気および水の汚染ならびに環境悪化のような環境問題が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることを懸念する。安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関して、委員会は、地域格差があることを懸念するものである。さらに、子どもの間でも親の間でも衛生的習慣に関する知識が貧弱であることは、懸念を覚える理由となる。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 環境に配慮した固形廃棄物処理法(共和国法第9003号)および大気浄化法(共和国法第8749号)を含む環境関連の国内法の実施を強化することにより、汚染および環境悪化を低減させるための努力を引き続き強化すること。 (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。 (c) とくに同国の遠隔地において安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させ、かつ衛生に関する子どもおよびその親の意識を高めるための効果的措置をとること。 思春期の健康 62.委員会は、「リプロダクティブヘルス・プログラム」、および、人口委員会およびUNFPAとの連携による思春期の健康に関する合同プロジェクトの実施等も通じ、思春期の健康を促進するために締約国が行なっている努力に評価の意とともに留意する。委員会は、青少年の間でアルコール、タバコおよび薬物の濫用が広がっていること、若年妊娠が発生していること、ならびに、これとの関連で、リプロダクティブヘルスに関する相談および(たとえば避妊法に関する)正確かつ客観的な情報への青少年のアクセスが限られていることを懸念する。アルコールの購入および消費に関する最低年齢を定めた法律が存在しないことは、懸念の理由となるものである。委員会はまた、青少年の自殺を防止する措置がとられていないことに関する締約国の懸念も共有する。 63.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「リプロダクティブヘルス・プログラム」のような、思春期の健康に関する国家的な政策及び計画を実施するとともに、思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を考慮することにより、思春期の健康のあらゆる分野を網羅した新たな政策および計画を策定すること。 (b) 10代の妊娠および関連する中絶を予防する目的で、リプロダクティブヘルスに関する相談へのアクセスを確保し、かつ、正確かつ客観的な情報およびサービスをすべての青少年に提供すること。 (c) セクシュアリティ、HIV/AIDS、性感染症および家族計画に関する公式・非公式の教育を強化すること。 (d) アルコールの購入および消費に関する最低年齢を法律で定めること。 (e) アルコール、薬物およびタバコの使用の有害な影響に関する情報を青少年に提供すること。 (f) 青少年に適合した十分な精神保健サービスを設置すること。 (g) とくにWHO、国連エイズ合同計画およびUNFPAの技術的協力を求めること。 HIV/AIDS 64.委員会は、同国におけるHIV感染率が相対的に低いことに留意するとともに、AIDS予防統制法(共和国法第8504号、1998年採択)の実施および全国AIDS予防統制プログラム(1998年)の設置等も通じ、HIV/AIDSの感染予防および削減に対処するために行なわれているさまざまな努力を歓迎する。〔しかしながら、〕委員会は、セックスワーカーが多いことのような、HIV感染の可能性を高めるリスク要因が存在することを懸念するものである。AIDS予防統制法が、学校におけるHIV/AIDSについての完全な情報へのアクセスを保障していることには留意しながらも、委員会は、フィリピンの青少年の間でHIV/AIDSに関する意識水準が不十分であることに懸念を表明する。 65.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、委員会は、締約国が、引き続き以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの症状を予防しかつ治療するため、AIDS予防統制法を実施するための努力を強化すること。 (b) たとえばいかなる形態の差別的行為も禁ずるフィリピンAIDS予防統制法を実施することによって、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもに対する差別を防止するとともに、これらの子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保すること。 (c) 学校で、HIV/AIDSに関する正確かつ包括的な情報(コンドームの利用も含む)を青少年に提供すること。 (d) 子どもが必要とするときは、親の同意を得ることなく、子どもに配慮し、かつ秘密が守られるHIV/AIDS相談にアクセスできることを確保すること。 (e) とくに国連合同エイズ計画の技術的援助を求めること。 生活水準 66.委員会は、国の貧困線以下の世帯で暮らしている子どもが多いこと、および、異なる地域間の富の格差が大きいことに、懸念とともに留意する。委員会は、貧困下で暮らしている子どもが、社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスを含む人権の享受に関して困難に直面していることを深く懸念するものである。委員会はまた、締約国の劣悪な住宅状況、および、たとえばインフラが十分に整っていない都市のスラムおよび不法居住区に住んでいる家族についても懸念を覚える。 67.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、とくに貧困削減戦略の実施およびコミュニティ開発(子どもの参加を含む)を通じ、貧困下で暮らしている農村部および都市部の人々の生活水準を向上させるために緊急の努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた子どもおよびその家族に物的援助および支援を提供する努力を強化するよう要請する。さらに、締約国は、貧困下で暮らしている子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに十分な住居へのアクセスを提供されることを確保するべきである。 6.教育、余暇および文化的活動 教育 68.委員会は、小学校および中等学校に関する新学校カリキュラム、ならびに、ユニセフとの連携による乳幼児期カリキュラム、「万人のための教育行動計画」および「子どもにやさしい学校制度」を実施する等の手段により、教育の水準および目的を向上させるために締約国が行なっている努力に留意する。これらの積極的措置がとられたにも関わらず、委員会は、いまなお子どもに小学校教育を提供することのできないバランガイが残っており、かつ、小学校教育に平等にアクセスできていない、脆弱な立場に置かれたいくつかの集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、子どもの労働者、武力紛争下にある子ども、先住民族の子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)が存在することに、依然として重大な懸念を覚えるものである。委員会は、通学にかかる費用負担(食費、移動費、制服代および学用品費など)が貧困家庭の多くの子どもにとって金銭的障害となっており、このような子どもにとって教育への平等なアクセスが否定されていることを、懸念する。初等教育を就労しない子どもの割合が高いことは、中等教育における中退率が高いこととともに、深刻な懸念の理由となるものである。委員会はまた、就学前学校での早期教育を享受する子どもの人数が少ないことにも留意する。 69.委員会は、とくにリンガ・フランカ・プロジェクト等も通じ、先住民族、マイノリティおよび地方の言語を促進しようとする締約国の努力を心強く思う。委員会は、教室の席、教科書およびその他の学用品の数が不十分であることも含め、とくに遠隔地のバランガイにおいて就学のための便益が貧弱であることを懸念するものである。委員会は、中等教育就学率が低く、かつ遠隔地のバランガイに住んでいる子どもは中等教育へのアクセスが非常に制限されている旨の懸念を、あらためて繰り返す。委員会は、締約国が、子ども参加を奨励する課題および教授法にかける時間を増やすことによって教育の質を向上させるために熱心な努力を行なってきたことに、評価の意とともに留意するものである。委員会はまた、教員の着任前研修および現職者研修の拡大および改善も歓迎する。委員会はまた、教育の質を日常的に監視しかつ評価しようとする試みが行なわれていることも認識するものである。 70.条約第28条および第29条ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。 (a) 低所得家庭の子どもがあらゆる段階の教育に平等にアクセスできることを確保するため、このような子どものための予算配分、政府補助金および援助プログラムを増加させること。 (b) すべての者を対象とする無償の完全初等教育を確保するため、あらゆる必要な措置を緊急にとるとともに、最遠隔地にあるバランガイにおける就学機会および脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族の子ども、子どもの労働者、武力紛争下にある子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)の教育上のニーズに対し、教育に対するこれらの子どもの権利を充足する目的で特段の注意を払うこと。 (c) 初等中等学校における中退率を迅速に下降させるための効果的措置をとること。 (d) すべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにする(そのための費用は貧困家庭にも負担可能なものとすることが求められる)とともに、就学前学校および早期の学習機会に関する親の意識を高めること。 (e) 学校および教室を新設し、教科書その他の学用品を開発し、教員の養成および研修を増進させ、ならびに、学習の前提条件が異なる子どもに適合した革新的かつ双方向的な学習手法を採用することにより、教育制度の基盤を発展させおよび改良すること。 (f) とくにリンガ・フランカ・プロジェクトを通じ、先住民族の子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもが、それぞれの異なる文化様式を尊重し、かつ教育において地方の先住民族言語およびマイノリティ言語を用いる良質な教育に、平等にアクセスできるようにすること。 (g) 初等中等教育を修了していない子どもを対象とするものも含め、非公式な学習および職業訓練のための便益をより多く提供するための努力を引き続き行なうこと。 (h) 中退者数を減少させ、かつ中等教育を修了する子どもの人数を増やすための努力を引き続き行なうこと。 (i) 労働市場で必要とされることおよび市民的責任に関して子どもが学校で体系的に準備を整えられるようにする職業訓練校を設立すること。 (j) 子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムの主流に位置づけること。 (k) 教育部門の改善のため、とくにユネスコ、ユニセフおよび非政府組織と協力すること。 (l) 教員の着任前研修および現職者研修を引き続き拡大すること。 余暇、レクリエーションおよび文化的活動 71.子どものためのスポーツおよび文化的活動を発展させかつ組織しようとする締約国の努力にも関わらず、委員会は、子どものためのレクリエーション活動および文化的活動ならびに関連の便益の数が不十分であり、かつ、この点に関してバランガイ間に格差があることに、懸念とともに留意する。委員会は、休息および余暇に対する権利を享受する権利も、遊び、スポーツ、レクリエーション活動および文化的活動を行なう権利を享受する権利も平等に有していない子どもの集団(初等教育に参加していない子ども、子どもの労働者およびストリートチルドレンなど)がいくつか存在することを、懸念するものである。 72.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、休息、余暇、文化的活動およびレクリエーション活動に対する子どもの権利を保護するため、あらゆる必要な努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、遊びのための創造的な便益を子どもに提供することにより、遊びを行なう子どもの権利を促進する努力を強化するよう勧告するものである。委員会は、この権利の実施に対して十分な人的資源および財源が配分され、かつ、教育制度の外にある子ども、子どもの労働者およびストリートチルドレンのような脆弱な立場に置かれた集団の子どもに特段の注意が払われるよう、要請する。 7.特別な保護措置 子どもの難民 73.子どもの難民の処遇およびその権利の実施がフィリピン人の子どもに一般的に適用される法律に照らして考えられてきたとはいえ、委員会は、子どもの庇護希望者および難民の具体的ニーズに対応した国内法が存在しないことを懸念する。委員会は、たとえば、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定のうち緊急事態下にある子どもに関する規定が武力紛争の状況下にある子どもに限定されていることに留意するものである。 74.委員会は、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民のニーズに対応し、かつ、保護者のいないおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民に関する特別手続を定めた、特別な法律および行政規則を導入するよう勧告する。これとの関係で、委員会は、締約国が引き続きUNHCRと協力するよう勧告するものである。 武力紛争下の子ども 75.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を締約国が2003年8月に批准し、かつ、国軍への入隊に関する最低年齢を18歳と定めたこと(ただし訓練目的の場合を除く)を歓迎する。委員会はまた、武力紛争に関与した子どもの救助、回復および再統合を促進する「武力紛争下の子どもに関する包括的プログラム枠組み」(2001年、大統領令第56号)が採択されたことに、評価の意とともに留意するものである。締約国がとったこれらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ときには11歳という幼さの子どもが新人民軍、モロ・イスラム解放戦線およびアブ・サヤフ・グループのような武装反政府運動によって徴募され、戦闘員、諜報要員、警備兵、調理担当または衛生兵として働かされていることに、深い懸念を表明する。 76.委員会は、締約国が身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのサービスを提供できるのは拘束された子ども兵に対してのみであり、武力紛争に関与しまたはその影響を受けている子どもの大多数に対してはまったく手が差し伸べられていないことを懸念する。さらに委員会は、国内武力紛争の悪影響のため、子どもが避難を余儀なくされる状況が続いており、かつ、これらの子どもが、社会サービスおよび保健サービス、教育ならびにとくに発達に対して限られた形でしかアクセスできていないことを懸念するものである。加えて、委員会は、敵対行為に関与していない子ども、とくにミンダナオ地域に住んでいるイスラム教徒の子どもに対して国内武力紛争が与えている影響について懸念を覚える。 77.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもについて、条約に掲げられたすべての権利をいかなるときも尊重しおよび確保することを約束したことを想起する。条約第38条、第39条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国に対し、武力紛争における子どもの徴募および武力紛争への子どもの関与を即時停止するよう促す目的で武装反政府勢力との和平の努力を継続するとともに、武力紛争に関与させられたすべての子どもの保護を確保するよう、促すものである。委員会は、締約国に対し、武力紛争に関与した子どもおよび武力紛争によって傷を負った子どもに対し、国内的および国際的非政府組織ならびにユニセフのような国連機関と協力しながら、その身体的および心理的回復ならびに社会への社会的再統合のための十分な援助およびカウンセリングを提供するよう、勧告する。委員会は、締約国が、女子の子ども兵に対し、リハビリテーションおよび再統合のための、ジェンダーに固有の十分なサービスを提供するよう勧告するものである。 78.委員会はまた、締約国が、武力紛争下の子どもの取り扱いに関するフィリピン国軍向け指針の実施に特段の注意を払うとともに、拘束された子どもが定められた期限内に軍事拘禁から釈放されること、および、子どもが十分な治療を提供されかつ自己の権利について告知されることを確保するようにも勧告する。避難民の子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもに関して、委員会は、締約国に対し、十分な社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達を含む基礎的サービスにこれらの子どもがアクセスできることを確保するために効果的措置をとるよう、促すものである。最後に、委員会は、締約国が、武装交戦の影響を受けている地域に住んでいるすべての子どもがいかなる差別もなく平等に人権を享受できることを確保するよう、勧告する。 経済的搾取 79.委員会は、〔ILOの〕最低年齢条約(1973年、第138号)が1998年6月に、および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)が2000年11月に批准されたことを歓迎する。委員会は、たとえば全国児童労働対策プログラムの実施、労働法実施雑則、地方レベルの児童労働プログラム実施委員会の設置ならびに国際労働機関およびその児童労働撤廃国際計画との実りのある協力を通じ、児童労働と闘うために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的努力にも関わらず、委員会は、締約国における子どもの労働者の人数が多いこと(働く子どもが370万人)を深く懸念する。委員会は、児童労働に関する文化的態度および慣行ならびに労働法の執行の弱さに懸念を覚えるものである。 80.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国内法ならびに全国児童労働対策プログラムおよびその下位プログラム(たとえばタバコ産業における児童労働撤廃プロジェクト)を効果的に実施するとともに、この問題の解決に関する議論に子どもの労働者が参加することを確保すること。 (b) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するために労働監察制度を改善するとともに、とくに、当該制度に対し、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限を付与すること。 (c) 元子ども労働者に対し、回復および教育のための適切な機会を提供すること。 (d) 国際労働機関/児童労働撤廃国際計画に対し、引き続き技術的援助を求めること。 薬物および有害物質の濫用 81.とくに2002年包括的危険薬物法(共和国法第9165号)の実施を通じて麻薬取引ならびに薬物および有害物質の濫用と闘おうとする締約国の努力、ならびに、子どもを対象とする治療および社会的再統合のためのサービスの増加には留意しながらも、委員会は、フィリピンで麻薬売買が大規模に行なわれており、かつそれが子どもおよび青少年に悪影響を与えていることを深く懸念する。委員会は、薬物および有害物質の濫用(ストリートチルドレンの間で行なわれている接着剤およびシンナーの吸引を含む)が多数発生していることに関する締約国の懸念を共有するものである。さらに、委員会は、薬物回復再統合センターにおける治療を自発的に求めた子どもがしばしば治療費の支払いを求められることにより、資力の限られている子どもにとって克服不能な障害が生じ、かつ治療および再統合へのアクセスが否定されていることを懸念する。 82.委員会は、締約国が、以下の目的のために行なっている努力を引き続き強化するよう勧告する。 (a) たとえば2002年包括的危険薬物法を効果的に実施することによって、子どもおよび青少年の間で行なわれている薬物および有害物質の濫用と闘うとともに、法の適正手続を確保すること。 (b) 子どもおよび青少年に対し、公立学校プログラムおよびメディア・キャンペーンを通じて薬物および有害物質(の使用に関する正確かつ客観的な情報を提供するとともに、正しくない有害な情報および有害なモデルから子どもを保護すること。 (c) 薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもを対象とする、薬物濫用の治療および社会的再統合のための無償かつ容易にアクセス可能なサービスを発展させること。 (d) ストリートチルドレンに適合した、特定の薬物濫用(接着剤およびシンナーの吸引を含む)からの回復および社会的再統合のためのプログラムおよびセンターを設けるとともに、この点に関して非政府組織と協力すること。 (e) 既存の薬物回復再統合センターに十分な予算を配分すること。 (f) とくに国連薬物犯罪事務所およびWHOの技術的援助を求めること。 ストリートチルドレン 83.委員会は、路上で生活している子どもが多く、かつ、このような子どもがさまざまな形態の暴力および虐待(性的虐待および搾取、経済的搾取および有害物質濫用を含む)の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることに対する重大な懸念を、あらためて表明する。委員会は、このような状況に対処し、かつ路上で生活している子どもを保護するための体系的かつ包括的戦略が存在しないことに留意するものである。委員会は、ストリートチルドレンの不法な逮捕および拘禁は条約の規定および原則の重大な侵害であることを強調する。締約国ならびにストリートチルドレンとともにおよびストリートチルドレンのために活動している多くの非政府組織(たとえばチャイルドホープ・アジア・フィリピン)が行なっている努力にも関わらず、委員会は、十分な栄養、衣服、住居、社会サービスおよび保健サービスならびに教育サービスへのストリートチルドレンのアクセスが制限されていることを懸念するものである。さらに委員会は、ストリートチルドレンが直面している健康上のリスク(毒性・有害廃棄物ならびに大気汚染のような環境衛生上のリスクを含む)について懸念を覚える。 84.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) この現象を縮小させかつ防止する目的で、ストリートチルドレンの多さに対処するための包括的戦略を、ストリートチルドレン、非政府組織および関連の専門家の積極的参加を得ながら策定すること。 (b) 路上で生活している子どもが不法に逮捕されかつ拘禁されないことを確保し、このような子どもを警察による蛮行から保護し、かつ、必要なときはこのような子どもに対して十分な法律サービスへのアクセスを保障すること。 (c) このような子どもの全面的発達を支え、かつこのような子どもに十分な保護および援助を提供する目的で、ストリートチルドレンが、訓練を受けた、路上で活動する教育者およびカウンセラーを通じて支援の対象とされ、かつ、十分な栄養、衣服およびシェルターならびに社会サービスおよび保健サービスならびに教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。 (d) ストリートチルドレンに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復および社会的再統合のための十分なサービスを提供するとともに、実現可能なときは家族との再統合を促進すること。 (e) とくに、環境衛生上のリスクに関するストリートチルドレンの意識を高め、かつこのようなリスクから身を守るための適切な行動について指導することを通じ、路上で生活している子どもが直面する環境衛生上のリスクを削減しかつ防止すること。 (f) ストリートチルドレンの自尊感情を高めるため、このような子どもたちの自己組織化の努力を支援すること。 (g) ストリートチルドレンとともにおよびストリートチルドレンのために活動している非政府組織と連携し、かつこのような組織を支援すること。 性的搾取、児童ポルノおよび人身取引 85.委員会は、児童買春が増えていることおよび児童ポルノの事案が報告されていることを含む、締約国における子どもの性的搾取について重大な懸念を表明する。委員会は、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定が主として児童買春に関連したものであり、他の形態の性的搾取の被害者を十分に保護していないことに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、性的同意に関する最低年齢が締約国の国内法で十分明確に定められておらず、かつ、改正刑法(共和国法第3815号)が、被害者が12歳に達していないときはもっとも重い刑を科しているのに対し、12歳以上の未成年者に対する性犯罪についてはより軽い刑罰を科していることに、懸念とともに留意する。 86.委員会は、新たな人身取引防止法の採択(2003年)、ならびに、人身取引の防止および被害者の保護の分野で締約国がとったその他の措置(不法な募集防止調整評議会の設置、「労働組合・働く子どもの権利擁護者」イニシアティブ、および、とくに女性および子どもの人身取引を抑止するための執行委員会の設置など)を歓迎する。しかしながら委員会は、国内のおよび国境を越えた人身取引の対象とされるフィリピンの子どもについて重大な懸念を覚えるものである。委員会は、固定化された貧困、一時的な海外移住、セックス・ツーリズムの増加および締約国における法執行の弱さのような、人身取引活動を助長する既存のリスク要因について懸念を表明する。 87.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 性的搾取の被害を受けたすべての子どもに平等な保護を提供する目的で、とくに子どもに対する性犯罪のすべての加害者に対する平等な制裁を法律に含めることにより、性的搾取(ポルノグラフィーのために子どもを使用することも含む)からの子どもの保護に関する国内法を見直すこと。 (b) 国内法において、性的同意に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準でおよび明確に定義された形で定めること。 (c) 子どもの商業的性的搾取および人身取引の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 (d) 第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して、援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。 (e) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点について観光省および観光サービス業者と引き続き連携すること。 (f) 子どもに関わる人身取引、性的搾取およびポルノグラフィーを防止する目的で、子ども、親その他の養育者を対象とする意識啓発キャンペーンを開始するとともに、人身取引被害者とともにおよび人身取引被害者のために働く職員の感受性を高めること。 88.フィリピンにおける、国内のおよび国境を越えた子どもの人身取引に関して、委員会は、関連の法律の効果的執行を確保し、かつ責任があると認められた者に対して制裁を科すことによってあらゆる形態の人身取引と闘うために適当な措置をとることに関する、自由権規約委員会が第79会期(2003年)に採択した勧告(CCPR/CO/79/PHL、パラ13)を支持する。 少年司法の運営 89.委員会は、締約国において犯罪水準が高く、かつ18歳未満の者の拘禁が多数行なわれていること、法律に触れた子どもの権利侵害が根強く行なわれていること、拘禁されている18歳未満の者に対して拷問、性的虐待を含む虐待およびその他の形態の品位を傷つける取り扱いが行なわれているとされること、ならびに、フィリピンの少年司法制度の運営に全般的欠陥があることを深刻に憂慮する。委員会は、少年司法を規律する十分な法律が存在せず、かつ提案中の「包括的な少年司法制度および非行防止プログラム法」案が1999年以来議会の審議待ちになっていることに、深い懸念とともに留意するものである。2000年2月に発布された省令により地区裁判所が家庭裁判所として指定されたことには留意しながらも、委員会は、子どもに配慮し、かつ十分な訓練を受けた〔専門家による〕少年裁判所が存在しないことを懸念する。 90.さらに、委員会は、刑事責任に関する最低年齢(9歳)が非常に低いことを懸念する。子ども・若者福祉法ならびに若年犯罪者の逮捕、捜査、訴追および更生に関する細則(大統領令第603号)のうち青年拘禁ホームに関する規定について、委員会は、これらの規定の実施が不十分であり、かつ18歳未満の者が拘禁場所で成人とともに収容されていることを懸念するものである。子ども(たとえばストリートチルドレン)が長期にわたって不法に拘禁され、かつ、適当な法律上の扶助および援助ならびに十分な社会サービスおよび保健サービスに対して限られた形でしかまたはまったくアクセスできないことは、重大な懸念の理由となる。加えて、委員会は、法外な額の保釈金が求められるために子どもおよびその親にとって克服不能な金銭的障害が生じていること、刑の執行猶予が制限されていること、および、拘禁環境(いわゆる秘密房も含む)が劣悪であることを懸念するものである。 91.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する法律および実務が、条約の規定、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(国連総会決議45/112)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(国連総会決議45/113)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針(1997年7月21日の国連経済社会決議1997/30添付文書)のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致することを確保するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 提案中の「包括的な少年司法制度および非行防止プログラム法」案を緊急に採択するとともに、刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。 (b) 自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられること、ならびに、18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。 (c) 十分な人数の、適切な訓練を受けた専門職員が配置された少年裁判所を設置すること。 (d) 18歳未満の者が法律扶助および独立のかつ効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。 (e) 保護観察、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、自由の剥奪に代わる措置を実施すること。 (f) 子どもの回復および社会的再統合の分野に関して専門家の研修を行なうこと。 (g) とくに国連人権高等弁務官事務所、国連薬物犯罪事務所およびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。 マイノリティおよび先住民族に属する子ども 92.先住民族権利法(共和国法第8371号)の規定ならびにマイノリティおよび先住民族に属する子どものためのプログラムおよびプロジェクト(先住民族文化コミュニティに属する子どものための代替的教育制度、保育開発プログラムおよびリンガ・フランカ・プロジェクトなど)には留意しながらも、委員会は、 マイノリティおよび先住民族の間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることを懸念する。委員会は、先住民族コミュニティで行なわれている、親の取決めによる早期婚についての締約国の懸念を共有するものである。加えて、委員会は、イスラム教徒に対してより著しい差別が行なわれていることに、懸念とともに留意する。 93.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、先住民族の子どもおよびマイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、先住民族権利法(共和国法第8371号)を実施するための努力を強化するとともに、先住民族およびマイノリティの子どもに対して文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、マイノリティおよび先住民族の子どもの人権の享受に関して存在する格差および障壁を特定し、かつそのような格差および障壁に対応するための法律、政策およびプログラムを発展させる目的で、締約国が、これらの子どもに関するデータ収集機構を強化するよう勧告する。 94.自己の言語を用いる子どもの権利に関して、委員会は、締約国に対し、先住民族およびマイノリティの子どもの言語上のニーズに対応するための努力を引き続き行なうよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、先住民族およびマイノリティのコミュニティならびにそれぞれの指導者と緊密に連携しながら、早期婚のような、先住民族およびマイノリティの子どもの健康および福祉にとって有害な伝統的慣行を廃止するための効果的措置を追求するよう、勧告するものである。 8.子どもの権利条約の選択議定書 95.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が2002年5月に批准されたこと、および、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書が2003年8月に批准されたことを歓迎する。 96.委員会は、選択議定書の実施についての審査を可能にするためには、定期的かつ時宜を得た報告の実践が重要であることを強調する。委員会は、締約国が、選択議定書および条約の報告条項に基づく報告義務を全面的に履行するよう勧告するものである。 9.フォローアップおよび普及 フォローアップ 97.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 98.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 10.次回報告書 99.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月19日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。/前編~後編を統合(2010年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/dq10_dictionary/pages/1676.html
概要 高レベルの【魔法の迷宮】において高レベルのプレイヤーが【みのがす】を使って敵を逃がしてしまう問題。 みのがす方は戦闘を楽に終わらせたいのだが、無言で行うプレイヤーが多く、トラブルの元となりネット上においては地雷扱いされてきた。 冒険者の広場でも迷宮のみのがすを禁止にしてほしい旨の提案が複数挙がってきたが、 2013年10月22日のDQXTVにおいて藤澤Dは「最初から使えないようにするべきだった」として開発サイドのミスを認め、 ver2.0で魔法の迷宮や神話篇の【闇の溢る世界】などオートマッチングのダンジョンで「みのがす」が使えないようにする修正をすると発表したが、同年11月30日のDQXTVで魔法の迷宮では予定通り実装し、闇の溢る世界については実装しない方向で決定した事が発表された。 メタルコインを持ち寄りで回すプレイヤー達にとっても時間短縮の手段として重宝されているのでこちらも困るという懸念もある。 道中の戦闘においては【ガニラス】戦で苦戦するようになるという懸念もよく取り上げられるが、逆に懸念材料はそれしかないとも言える。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/116.html
総括所見:バヌアツ(第1回・1999年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.111(1999年11月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1999年9月24日に開かれた第566回~第567回会合(CRC/C/SR.566-567) においてバヌアツの第1回報告書(CRC/C/28/Add.8) を検討し、1999年10月8日に開かれた第586回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書、および委員会の事前質問票(CRC/C/Q/VAN/1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、締約国と行なった建設的かつ開かれた対話に心強い思いを感じ、かつ、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する積極的な反応を歓迎するものである。委員会は、条約の実施に直接携わる代表が出席したことにより、締約国における子どもの権利の状況をいっそう十分に評価できたことを認める。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国が、権利を侵害された子どもによる苦情を処理する権限を与えられたオンブズマン事務所を設置する取り組みを行なったことを評価する。これとの関連で、委員会は、学校における体罰の使用の禁止を促進し、かつ条約の原則および規定に関する警察の意識の向上を促進するためオンブズマンが行なっている努力に留意するものである。 4.委員会は、条約が英語およびフランス語で入手可能とされたこと、および締約国が条約をビスラマ語に翻訳したことに留意する。 5.委員会は、プライマリーヘルスケアのサービスの分野で締約国が行なった努力により、子どもの生存および発達の機会が向上したことに留意する。 C.条約の実施を妨げる要因および困難 6.委員会は、締約国が直面する社会経済的、地理的および政治的困難により条約の全面的実施が妨げられてきたことを認める。とりわけ、委員会は、孤立しておりかつきわめて連絡困難なものもある分散した島々の地域共同体の子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで、締約国が課題に直面していることに留意するものである。委員会は、締約国がサイクロン、タイフーン、津波および洪水のような天災の被害を受けやすいこと、およびこの点に関して課題に直面していることを認める。委員会はさらに、人的資源の利用可能性が限られていることも条約の全面的実施に悪影響を与えてきたことに留意するものである。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 D.1 実施に関する一般的措置 7.委員会は、国内法および慣習法が条約の原則および規定を全面的に反映していないことに懸念を表明する。委員会は、締約国が、条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で国内法の見直しを行なうよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が包括的な子ども法の制定を検討するようにも勧告する。これとの関連で、委員会はさらに、締約国がとくに人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めるよう勧告するものである。 8.締約国が子ども事務所および国家子ども委員会の設置提案を作成したことには留意しながらも、委員会は、その提案がまだ実施されていないこと、およびこれらの機関の作業方法が明確に規定されていないことを依然として懸念する。委員会は、当該提案が可能なかぎり早期に実行に移されること、および当該事務所および委員会が効果的に設置されることを確保するため十分な資金が配分されることを確保する目的で、締約国があらゆる必要な措置をとるよう強く勧告するものである。 9.委員会は、締約国が、保健、人口および家族計画、栄養、水の供給および環境衛生、農業、牧畜および漁業ならびに教育に焦点を当てた子どものための国内行動計画(1993~2000年)を作成したことに留意する。しかしながら、委員会は、この計画を実施するための予算が具体的に配分されていないことを懸念するものである。委員会は、締約国に対し、子どものための国内行動計画を実施するためにあらゆる適切な措置をとるよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国がとくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めるよう勧告するものである。 10.委員会は、達成された進展の監視および評価、ならびに子どもに関わって採択された政策の影響の評価を行なう目的で、条約が対象とするあらゆる領域についてかつあらゆるグループの子どもとの関連で細分化されたデータを体系的かつ包括的に収集することを可能とするデータ収集機構が、締約国に存在しないことを懸念する。委員会は、締約国が、条約に一致した包括的なデータ収集システムを発展させるよう勧告するものである。このシステムは、18歳に達するまでのすべての子どもを対象とし、かつ、障害をもった子ども、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、および、離島および都市部の不法占拠地域で生活する子どもを含む、とくに傷つきやすい立場に置かれた子どもを具体的に重視するべきである。 11.委員会は、条約第4条に照らし、子どもにために予算を配分することに対して十分な注意が払われていないことを依然として懸念する。条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利が利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで実施されることを確保するために予算を優先的に配分することにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励するものである。 12.委員会は、条約に関する情報の普及に関して締約国が行なっている努力に留意し、かつ、とくに人口の82%が離島地域で生活していることに照らして直面している課題を認識する。しかしながら、委員会は、条約およびそこに掲げられた権利中心アプローチに関する一般層の認識が依然として不十分であることを懸念するものである。委員会は、締約国が、絵本およびポスターのような視覚的補助具によるものも含め、条約を促進するためにいっそう創造的な方法を発展させるよう勧告する。加えて、委員会は、条約の原則および規定を促進するにあたって伝統的なコミュニケーション手段を用いるよう勧告するものである。委員会はまた、裁判官、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として十分かつ体系的な訓練および(または)感受性増進を行なうようにも勧告する。委員会はさらに、地域共同体の首長、宗教的指導者、NGOおよびメディアを含む市民社会の子どもの権利に関する感受性を増進し、かつ条約の普及および促進へのその参加を促進するために努力するよう勧告するものである。締約国がとくに人権高等弁務官事務所、ユニセフおよびユネスコの技術的援助を求めることが提案されるところである。 D.2 子どもの定義 13.委員会は、刑事責任年齢(10歳)が低いことに関して懸念を表明する。委員会はまた、男子の法定最低婚姻年齢(18歳)と女子のそれ(16歳)とのあいだに格差があることも懸念するものである。委員会は、締約国が、国内法を条約の規定および原則と全面的に一致させるためその見直しを行なうよう勧告する。 D.3 一般原則 14.委員会は、締約国が、子どもに関わる立法、行政上および司法上の決定ならびに政策およびプログラムにおいて条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を全面的に考慮にいれていないように思えることを、懸念する。条約の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、あらゆる法改正、司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与える事業、プログラムおよびサービスに適切に統合されることを確保するためにさらなる努力が行なわれなければならないというのが、委員会の見解である。 15.委員会は、伝統的な慣行および態度が条約、とくに第12条の全面的実施をいまなお制限していることを懸念する。委員会は、子どもの参加権に関する公衆の意識を高め、かつ家庭、学校および社会一般における子どもの意見の尊重を奨励するため、締約国が、地域共同体の首長、宗教的指導者および市民社会の関与を得て体系的アプローチを発展させることを追求するよう、勧告するものである。 D.4 市民的権利および自由 16.学校における体罰が法律で禁じられていることは承知しながらも、委員会は、伝統的な社会の態度が家庭、学校、ケア制度および少年司法制度ならびに社会一般における体罰の使用をひきつづき奨励していることを、依然として懸念する。委員会は、締約国が、体罰の悪影響に関する意識を喚起し、かつ、家庭、学校、ケア施設その他の施設において代替的形態の規律の維持およびしつけが子どもの尊厳に一致する方法でかつ条約にしたがって行なわれることを確保するための措置を強化するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、親、教員および施設で働く専門家を対象として、代替的形態の処罰の使用を奨励するためカウンセリングその他のプログラムを提供するよう勧告する。加えて、委員会は、学校における体罰の禁止の全面的かつ効果的実施を確保するため、あらゆる必要な措置をとることを強く勧告するものである。 D.5 家庭環境および代替的養護 17.子どもの性的虐待を含む家族間暴力を防止しかつそれと闘うためのデータ、適切な措置、機構および資源が存在しないことは、委員会にとって重大な懸念の対象である。条約第19条に照らし、委員会は、これらの慣行の規模および性質を理解し、十分な措置および政策を採択し、かつ態度を変えることに資する目的で、締約国が性的虐待を含む家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待に関する研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、家族間暴力ならびに子どもの不当な取扱いおよび虐待(家庭における性的虐待も含む)の事件が、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しつつ、子どもに優しい司法手続のなかで適切に調査され、かつ加害者に対して制裁が科されるべきことも勧告するものである。法的手続において子どもに支援サービスを提供すること、条約第39条にしたがって強姦、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合すること、および、被害者が犯罪者扱いされかつスティグマ(烙印)の対象となるのを防止することを確保するための措置も、とらえるべきである。委員会は、締約国がとくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めるよう勧告する。 D.6 基礎保健および福祉 18.委員会は、健康状況全般を向上させるため締約国が行なっている努力に留意する。とりわけ、委員会は、過去10年のあいだに乳児死亡率および5歳未満児死亡率のいずれもが急速に減少したこと、および、予防接種の対象範囲が相当に拡大したことに留意するものである。委員会はまた、締約国が食糧栄養プログラムを実施したことにより、栄養不良の発生件数が減少したことにも留意する。しかしながら、委員会は、マラリア、呼吸器系感染症および下痢性疾患によって締約国の子どもの生存および発達がひきつづき脅かされていることを懸念するものである。委員会はまた、訓練されたヘルスワーカーの人数が不十分であること、保健従事者の分布に地域共同体間で大きな格差があること、一部の島の地域共同体において保健サービスへのアクセスが限られていること、および、とくに遠隔地において衛生状態が悪くかつ安全な飲料水へのアクセスが限られていることも、懸念する。委員会は、子どもの健康状態を改善し、かつプライマリーヘルスサービスへのアクセスの向上を促進するため、締約国が適切な資源を配分し、かつ包括的な政策およびプログラムを発展させるよう勧告するものである。委員会は、締約国が、妊産婦、子どもおよび乳児の死亡件数を減少させ、母乳育児の実践を向上させ、かつ、とくに傷つきやすい立場および不利な立場に置かれたグループの子どもの栄養不良を防止しかつそれと闘うための努力をひきつづき行なうよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、安全な飲料水へのアクセスを高め、かつ衛生状態を改善するために追加的な措置をとるようにも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、プライマリーヘルスケアを向上させるためにユニセフ、WHOその他と行なっている技術的協力プログラムを継続するよう奨励する。 19.障害をもった子どもへの援助およびそのリハビリテーションに関する「バヌアツ障害者協会」の活動には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、障害児の権利を保護するために行なわれてきた努力が不十分であることを依然として懸念する。委員会は、締約国が、障害児のためのプログラムおよび施設に対して必要な資源を配分するよう勧告する。障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および「障害のある子どもの権利」に関する一般的討議の日に採択された委員会の勧告(CRC/C/69)に照らし、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ障害児の教育制度への統合および社会へのインクルージョンをさらに奨励することも、勧告されるところである。委員会は、締約国が、とくにユニセフおよび世界保健機関に対し、障害児とともにおよび障害児のために働く者の訓練のための技術的協力を求めるよう勧告する。 20.委員会は、事故、自殺、暴力および中絶を含む青少年の健康の分野において、プログラムおよびサービスの利用可能性が限られていることおよび十分なデータが存在しないことに懸念を表明する。委員会は、10代の妊娠および性行為感染症(STD)の発生件数が多くかつ増加していること、および、青少年のあいだでアルコールおよびタバコの使用が蔓延していることをとくに懸念するものである。委員会は、とくに事故、自殺、暴力、アルコール消費およびタバコの使用との関連で、締約国が青少年の健康に関する政策を促進するための努力を増進するよう勧告する。委員会はさらに、若年妊娠およびSTDの悪影響を含む青少年の健康上の問題に関して、包括的かつ学際的な研究を行なうように提案するものである。加えて、子どもの最善の利益にかなう場合は親の同意なしでアクセス可能な子どもに優しいカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、締約国が十分な人的資源および財源の配分を含むさらなる措置をとることも勧告されるところである。締約国は、青少年を対象としたリプロダクティブ・ヘルス教育プログラムを強化し、かつ、リプロダクティブ・ヘルスに関するあらゆる訓練プログラムに男性が含まれることを確保するよう、促される。 D.7 教育、余暇および文化的活動 21.委員会は、とくに離島の地域共同体における伝統的教育の役割の重要性に留意する。委員会は、初等教育がいまなお締約国のすべての子どもを対象として義務的かつ無償のものになっていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、教育へのアクセスが限られていること、女子の就学率が低いこと、識字率が低いこと、教育の質が貧弱であること、全体的に関連の教材その他の資源が存在しないこと、および、訓練を受けた/資格のある教員の人数が不十分であることに、重大な懸念を表明する。教育カリキュラムに地方言語を導入するための努力が行なわれていないことも懸念されるところである。教育が子どもの行動に悪影響を与えると依然として考えている親が多い。条約第28条1項(a)に照らし、すべての者を対象とした無償の義務教育を合理的な年数内に漸進的に実施するための詳細な行動計画を締約国が2年以内に作成し、採択し、かつ委員会に提出するよう約束することが、勧告されるところである。委員会はさらに、制度のあらゆる段階における教育へのアクセスを向上させ、女子の就学率をとくに中等段階で高め、追加的な指導手段として地方言語を導入し、かつ教育の全体的質を改善する目的で、締約国が教育制度の研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、教育の重要性を促進し、かつこの点に関する文化的態度に前向きな影響を及ぼすため、公衆教育キャンペーンを行なうようにも勧告するものである。締約国がとくにユニセフおよびユネスコの技術的協力を求めることが勧告されるところである。 D.8 特別な保護措置 22.委員会は、児童労働および子どもの経済的搾取に関するデータが不十分であることを懸念する。中等教育へのアクセスが限られていること、およびその結果として子どもが早期に雇用されていることを踏まえ、委員会は、締約国がとくにインフォーマル部門における児童労働および経済的搾取に関する研究を行なうよう提案するものである。 23.委員会は、少年司法手続を含む司法との関連で締約国が直面している問題について懸念する。委員会は、少年非行を取り扱う伝統的な方法に関して提供された情報を認知し、かつ締約国が以下のことを行なうよう勧告する。 (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならび少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の国際連合基準の精神にのっとり、少年司法制度を改革するための措置をとること。 (b) 少年司法制度に携わるすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する訓練プログラムを導入すること。 (c) 少年司法および警察の訓練の分野において、とくに人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワーク、ユニセフおよび少年司法技術的助言援助調整委員会の技術的援助を求めることを検討すること。 24.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府および関心のある非政府組織を含む一般公衆のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、幅広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年11月15日)。
https://w.atwiki.jp/trivia-mike/pages/4615.html
北アイルランドでアイルランド統一を目指す団体だ。 イギリスとアイルランドがEU加盟したことで収束していた。しかしイギリスがEU離脱するとIRA復活を懸念。そこで北アイルランドの経済圏をイギリスより切り離しアイルランドと1つとした。しかしこれでは北アイルランドの親イギリス派が切り離される結果となり、第二のIRAが誕生懸念だ。
https://w.atwiki.jp/youkin2/pages/17.html
ソブリンリスク ソブリン(sovereign)とは、英語辞書で「君主、統治者、国王、主権団体」という意味で、ソブリンリスクは、国家(国)に対する信用リスクのことをいう。本リスクが高まると、格下げ不安やデフォルト(債務不履行)懸念の台頭によって、国債などの需給悪化に影響し、国の資金調達が厳しくなる。また、国の債務残高が大きく、短期債での資金調達の度合いが高い国ほど、利回り上昇によって利払い負担が増大することになる。 一般に新興国において、過大な経常赤字や政情不安などによって国(政府)の債務返済能力が懸念される場合にソブリンリスクが高まることが多いが、近年では、国の規模にかかわらず、財政赤字や公的債務残高の規模が大きい国に対して、支払い能力の低下やリファイナンスに対する懸念が高まっている。例えば、2009年-2010年のギリシャの財政危機では、ソブリンリスクが欧州の周辺国へも伝播し、一時緊張感が大きく高まった。なお、ソブリンリスクがどれだけ高まっているかを表すのが、デフォルトに備える保証コストを示す「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の保証料率であり、これが上がるとソブリンリスクも高くなると受け止められる。 http //www.ifinance.ne.jp/glossary/investment/inv164.html
https://w.atwiki.jp/rebelinc/pages/37.html
難易度 ★★ 概要 3番目に開放されるマップ。 大部分の人口は川の近くに住んでいる 南西の区域は遠隔地なので反乱軍は強い 発生しやすい懸念は水道 本部は真ん中のここがおすすめ。 攻略 基本的にはサフロンフィールドと同じ戦術で構わない。 発生しやすい懸念は水道なので最序盤に取得しよう。 川の近くには人口が多いのでなるべく守ろう。 動画
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/131.html
総括所見:ベラルーシ(第3~4回・2011年) 第1回(1994年)/第2回(2002年)OPAC(2011年)/OPSC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/BLR/CO/3-4(2011年4月8日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月25日に開かれた第1596回および第1597回会合(CRC/C/SR.1596 and 1597参照)においてベラルーシの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/BLR/3-4)を検討し、2011年2月4日に開かれた第1612回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の報告書および事前質問事項(CRC/C/BLR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルな代表団の出席および積極的対話により、締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことに、評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2011年2月4日に採択された、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/BLR/CO/1)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての総括所見(CRC/C/OPSC/BLR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法上の措置を積極的な対応として歓迎する。 (a) 犯罪防止法(2009年)。 (b) 外国人市民および無国籍者に対する難民資格、追加的保護および一時的保護の付与に関する2008年6月23日の法律第354-3号。 (c) 機能不全家族の子どもの国による保護に関して一部法律を完成させかつ改正することに関する法律(2008年1月5日施行)。 (d) 両親を失った若年者または親のケアを奪われたその他の若年者の社会的保護に関する2005年12月21日の法律第73-Z号。 (e) 特別な発達上のニーズを有する者の教育(特別教育)に関する2004年5月18日の法律第285-Z号。 (f) 子どものネグレクトおよび少年非行の防止システムの基盤に関する2003年5月31日の法律第200-Z号。 5.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2006年)。 (b) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の選択議定書(2004年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約、および、同条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2003年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、条約に基づく締約国の第2回定期報告書の検討時に行なわれたさまざまな懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.180)への対応が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返すものである。 7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書に関する総括所見の勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの、とくに、条約との一致を確保するための法律の見直し、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがった独立した監視機構の設置、条約の実施における非政府組織(NGO)の関与、NGOの登録および活動の促進ならびに少年司法の運営に関するものに対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.委員会は、締約国が、2002年に委員会から勧告されたように、法律を条約と調和させることを目的とする法律の完全な見直しを行なっていないことを遺憾に思う。委員会はさらに、締約国における子どもの権利が、議会が制定する法律ではなく主として大統領令によって規律されているように思われることを懸念するものである。委員会は、これらの大統領令がすべて議会により採択される法律に移行されるわけではなく、かつこのプロセスに時間がかかり過ぎることを懸念する。 9.委員会は、締約国が、条約の規定および原則との全面的一致を確保するため、すべての国内法および関連の行政指針の包括的見直しを行なうべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。委員会はさらに、締約国が、大統領令を議会制定法に移行するプロセスを加速することにより、子どもの権利の促進および保護に関していっそうの安定を確保するよう、勧告するものである。 調整 10.委員会は、省庁間にどのような調整機構が設けられており、かつ、どの省庁が条約の実施を調整する主務機関なのかに関する情報が存在しないことを遺憾に思う。委員会はさらに、この2年間、国家子どもの権利委員会が機能していなかったことを懸念するものの、2011年から構成の異なる新たな国家子どもの権利委員会が設置される計画である旨の、締約国代表団の情報に留意するものである。 11.委員会は、締約国が、国家子どもの権利委員会を強化しかつその再活性化を図るか、または条約の実施を調整するための新たな効果的制度を設置するとともに、国、広域行政圏および地方のレベルで効果的な調整機構が設置されることを確保するよう、勧告する。 国家的行動計画 12.委員会は、子どもの権利に関わるいくつかの計画およびプログラムが採択されたことに留意する。これには、子どもの状況の改善およびその権利の保護のための国家的行動計画(2004~2010年)、2006~2010年の期間で実施される大統領プログラム「ベラルーシの子どもたち」(2015年まで実施期間が延長されるとともに、定期的評価のためのシステムが設置され、かつ実施のための資源が配分される予定)および20以上の部門別プログラムが含まれる。しかしながら委員会は、国家行動計画についてその実施のための十分な資源が提供されていないこと、および、このように多数の計画およびプログラムが存在するために取り組みの混乱および重複が生じる可能性があることを懸念するものである。 13.委員会は、締約国が、種々の計画およびプログラムを、条約およびその選択議定書のすべての分野を網羅した、子どもに関する単一のかつ包括的な国家的行動計画に統合するとともに、同計画に対してその実施のための十分な資源を提供し、当該計画の効果的実施を確保するための確固たる監視評価システム(地方レベルにおけるものを含む)を確立し、かつ、市民社会および子どもたち自身を含むすべての関係パートナーのいっそうの関与を促進するよう、勧告する。 独立の監視 14.委員会は、条約およびその選択議定書の実施を監視する任務を委ねられた、国レベルの独立した機構が締約国に存在しないことを懸念する。委員会は、この役割は国家子どもの権利委員会によって履行されており、したがって新たな独立機構は必要ないという締約国の立場に懸念を覚えるものである。 15.委員会は、締約国が、パリ原則に全面的に一致し、かつ子どもの権利の保護および促進における独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を反映した、条約およびその選択議定書の実施の監視を任務とする独立のかつ効果的な国レベルの機構を設置するよう、勧告する。締約国は、当該機構が、18歳未満のすべての子どもによってアクセス可能であり、子どもの権利侵害に関する苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限を与えられ、かつこれらの苦情に効果的に対応するための人的資源、財源および技術的資源を有することを確保するべきである。締約国は、この点に関して国連人権高等弁務官(OHCHR)の技術的援助を求めるよう、奨励される。 資源配分 16.2011~2015年を対象とする諸計画で子どものために配分される国内総生産(GDP)の割合を高めようとする意思があることは歓迎しながらも、委員会は、締約国における予算策定手続において子どもに配分される資源を明確に特定することができないため、子どもに関する支出の追跡およびその効果の評価が妨げられていることを、遺憾に思う。 17.委員会は、締約国が、子どもの権利の実施のための戦略的配分を行ない、その実施を追跡し、かつ配分の結果および効果を監視することを可能にするような予算策定の試行を開始するよう、勧告する。政策、戦略およびプログラムの実現に予算配分がどのように役立ったかを評価するため、子どもの権利に関わる効果評価が定期的に実施されるべきである。その際、締約国は、子どもの権利のための資源配分――国の責任に関して2007年9月21日に行なわれた一般的討議の際の委員会の勧告(2007年)を考慮するとともに、とくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めることを検討するべきである。 データ収集 18.委員会は、とくに国レベルの社会経済データベース「ベラルーシインフォ」の創設を通じ、子どもに関わる分野のデータ収集を強化しようとする締約国の努力を評価する。しかしながら委員会は、マイノリティ集団に属する子ども(とくにロマの子ども)の状況ならびに無国籍の子どもおよび子どもに対する暴力のような、条約で対象とされている多くの具体的分野について情報が存在しないことを懸念するものである。 19.委員会は、委員会〔ママ〕が、子どもに対する暴力、少年非行、児童労働、遺棄、移住、マイノリティ集団(とくにロマ)に属する子ども、無国籍の子どもならびにHIVに感染しおよびHIVの影響を受けている女性および子どもにとくに注意を払いながら、細分化されたデータの収集を強化するよう、勧告する。 普及、研修および意識啓発 20.委員会は、同国の学校で子どもの権利の課程が教えられていることには留意するものの、子どもとともにおよび子どものために働く専門家ならびに一般公衆の間で条約に関する意識の水準が低いことを懸念する。 21.委員会は、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(法執行官、教員、ヘルスワーカー、ソーシャルワーカーおよびあらゆる形態の代替的養護に従事する者を含む)を対象として、子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修が行なわれるべきことを勧告する。委員会はさらに、締約国が、条約で定められた権利に関する一般公衆、とくに子ども(学校に行っていない子どもを含む)の意識を高めるための努力を増強するよう、勧告するものである。 22.委員会はまた、締約国が、メディアが子どもの権利(とくに子どもの尊厳およびプライバシーに対する子どもの権利)を尊重し、条約の普及を支援し、かつ番組に子どもの意見を含めることを確保することも、勧告する。委員会はさらに、締約国が、メディアに対し、とくに子どもの権利に関する専門職倫理綱領を定めることを奨励するよう、勧告するものである。 市民社会との協力 23.委員会は、市民社会組織の登録(および再登録)のための委員会が閉鎖され、かつその職務が法務省に移管されたこと(市民社会組織およびその連合体(協議会)の登録に関わるいくつかの問題についての2006年10月6日の大統領法第605号)に留意する。しかしながら委員会は、実際には、とくに登録のために必要とされる手数料が高額であることにより、締約国の市民社会組織が登録に際して困難を経験していることを、依然として懸念するものである。委員会はまた、登録を受けないまま活動するNGOの活発な構成員である者が刑法第193条により犯罪者とされることを含む、NGOの困難な活動条件についても懸念を覚えるものである。 24.前回の勧告(CRC/C/15/Add.180、パラ23)を参照しつつ、委員会は、締約国に対し、非政府組織の登録および活動を促進しかつ非登録NGOの構成員であっても犯罪者とされないようにする目的で、法令ならびに司法上および行政上の実務を見直すよう促す。 子どもの権利と企業セクター 25.法人の法的責任に関する法律案を策定するための努力は歓迎しながらも、委員会は、同法がまた議会に提出されていないことを懸念する。 26.委員会は、法人の法的責任に関する法律を速やかに制定するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、国連・ビジネスと人権枠組みにしたがい、企業セクターが、とくに子どもの権利との関連で、企業の社会的責任に関する国内外の基準を遵守することを確保するための規則を策定しかつ実施するよう、勧告するものである。人権理事会によって2008年に全会一致で採択された国連・ビジネスと人権枠組みは、企業による人権侵害に対する保護を提供する国の義務、人権を尊重する企業の責任、および、人権侵害が生じた際、救済措置にいっそう効果的にアクセスできる必要性について簡潔に述べたものである。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 27.委員会は、ジェンダーの平等に関する国家的行動計画(2008~2010年)が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、ジェンダーに基づく差別が締約国で大規模に行なわれており、かつ性別に基づく差別をとくに禁ずる法律が定められていないことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、ロマの子どもに対するいやがらせが行なわれており、かつこれらの子どもが保健ケア、教育および社会サービスへのアクセスとの関連で差別を経験していることも、懸念する。 28.委員会は、締約国に対し、性差別主義的および人種主義的態度および行動を含む差別と闘うための努力を強化するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、子ども(とくにロマの子ども)に対する差別を、とりわけ教育制度およびメディアを通じて防止しかつ根絶することに高い優先順位を置くよう、勧告するものである。委員会はまた、2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書に対しても、締約国の注意を促す。 子どもの最善の利益 29.委員会は、子どもの最善の利益の原則が締約国の法律、とくに外国人市民および無国籍者に対する難民資格、追加的保護および一時的保護の付与に関する2008年法に体系的に反映されていないことを懸念する。 30.委員会は、締約国が、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の原則が、子どもに影響を与えるすべての法令ならびに司法上および行政上の手続に反映されることを確保するための検討を実施するとともに、実際にも、子どもに影響を与えるすべての行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 31.委員会は、自己に影響を与える決定についての子どもの意見が、とくに家庭においてめったに正当に考慮されないことを懸念する。委員会はさらに、子どもに対し、自己に影響を与えるすべての司法上および行政上の手続(親の権利の剥奪の事案を含む)において、その年齢および成熟度にしたがって意見を聴かれる機会が提供されていないことを懸念するものである。委員会は、子どもが親の同意を得ずに裁判所に訴えを起こし、かつ法的援助を求めるために達していなければならない年齢が高いこと(14歳)を懸念する。 32.委員会は、一般公衆を対象とする意識啓発プログラム等も通じ、子どもが、公使双方の領域で、自己に影響を与えるすべての事柄について意見を表明する権利を認められ、かつこれらの意見が正当に重視されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、関連の法改正等も通じ、子どもが司法上および行政上の手続に参加し、かつ自己の見解を知らせることができることを確保するよう、勧告するものである。これとの関連で、委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を促す。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 名前および国籍 33.委員会は、締約国における無国籍者の人数の多さに留意するとともに、締約国に在留する無国籍の子どもの人数および状態についてのデータが存在しないことを懸念する。 34.条約第7条にしたがい、委員会は、締約国に対し、無国籍を防止する目的で、可能なかぎり国籍を取得するすべての子どもの権利の実施を確保するよう、促す。とくに、締約国は無国籍の子どもに関するデータを収集するべきである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の技術的援助を求めるよう奨励する。委員会はさらに、締約国が、無国籍者の地位に関する1954年の条約、無国籍の削減に関する1961年の条約、国籍に関する1997年の欧州条約、および、国家承継に関連する無国籍の回避に関する2009年の欧州評議会条約の批准を検討するよう、勧告するものである。 表現の自由、結社および平和的集会の自由ならびに適切な情報へのアクセス 35.国家青少年政策の基盤に関する法律が2009年に施行され、青少年の結社の自由について追加的保障が定められたことには留意しながらも、委員会は、表現の自由(情報を受ける自由を含む)ならびに結社および平和的集会の自由に対する子どもの権利が法律上も実務上も保障されていないことを懸念する。委員会はさらに、2010年12月の大統領選挙との関連で行なわれたデモの際に青少年が拘禁されたことも懸念するものである。 36.委員会は、条約第13条、第15条および第17条にしたがい、表現の自由、結社および平和的集会の自由ならびに適切な情報へのアクセスに対する権利の全面的実施の保障を確保するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 思想、良心および宗教の自由 37.委員会は、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利が締約国で正当に尊重されかつ保護されていないことを懸念する。委員会は、とくに以下のことについて懸念を覚えるものである。 (a) 市民部隊として組織され、一般教育学校および職業訓練学校を含む教育施設の巡回を行なっているとされる情報提供者の目的および活動。 (b) 礼拝しまたは宗教もしくは信念との関係で集会を開く自由ならびにこれらの目的のための場所を設置しおよび維持する自由も含む宗教の自由に対して課されている制限。 38.委員会は、条約第14条3項にしたがい、かつ宗教または信念に基づくあらゆる形態の不寛容および差別の撤廃に関する宣言(1981年)を考慮に入れ、締約国が、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するよう勧告する。 体罰 39.犯罪に対する刑としての体罰は違法であり、かつ教育施設の規則で体罰が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、体罰が、家庭では合法とされており、刑事制度および代替的養護の現場を含む施設では明示的に禁じられておらず、かつ社会で広く受け入れられていることを、依然として懸念するものである。 40.委員会は、締約国が、家庭、学校その他の施設におけるあらゆる形態の体罰を禁止し、かつ体罰の有害な影響に関する意識を高めるための措置を発展させるとともに、子どもの尊厳と一致する方法でかつ条約にしたがって行なわれるべき、家庭、施設および刑事制度における代替的形態のしつけおよび規律を促進するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.180、パラ40(d))をあらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2007年〔ママ〕)に対して締約国の注意を促すものである。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 41.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表、ユニセフ、OHCHR、世界保健機関(WHO)および他の関連の機関、とくに国際労働機関、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、UNHCRおよび国連薬物犯罪事務所ならびにNGOパートナーと協力し、かつその技術的援助を求めること。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 42.委員会は、経済的困窮およびアルコールの濫用が、家族の解体、ネグレクト、虐待および親のケアの剥奪の高い発生件数につながる主要な要因に数えられていることを懸念する。委員会はさらに、血縁の家族から分離される子どもの人数が多いこと、および、子どもの養育責任を遂行する親の能力を高め、分離を防止し、かつ家族の再統合を奨励するための措置が十分な効果を上げていないことを、懸念するものである。さらに委員会は、大統領令第18号にしたがって行なわれる子どもの親からの分離が、必ずしもその子どもの最善の利益にのっとって行なわれるわけではない可能性があることを懸念する。 43.条約第9条および第18条にしたがい、委員会は、締約国が、家族という単位を子どもの成長およびウェルビーイングのための自然な環境として認め、親および法定保護者に対し、子どもの養育責任を遂行するその能力を高めることを目的とした支援サービスを提供するための措置を強化するよう、勧告する。さらに、大統領令第18号は法律に移行されるべきであり、当該法律においては、子どもの最善の利益のために分離が必要な場合を除いて子どもが親から分離されないことを確保するための、あらゆる必要な保護措置が定められるべきである。 44.委員会は、締約国が、扶養義務に関する判決の承認および執行に関する条約、扶養義務の準拠法に関する条約、および、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約の批准を検討するよう、勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 45.いくつかの入所型養護施設が閉鎖され、それにともなって家庭型養護制度の拡大および国内養子縁組件数の増加に向けた進展が見られることには留意しながらも、委員会は、多数の子どもが依然として入所型養護を受けていることを懸念する。 46.委員会は、締約国が、代替的養護を必要とする子どもが施設ではなく家庭型養護に措置されることおよび可能なときは常に家庭に復帰することを確保するための努力を増強するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、条約第25条および総会が採択した子どもの代替的養護に関する指針〔PDF〕に照らし、代替的養護に措置された子どもに関する包括的な定期的再審査機構を確保するよう、勧告するものである。 養子縁組 47.委員会は、養子縁組に関する法律において、子どもの最善の利益、および、生物学的親または保護者の十分な情報に基づく同意を得る必要性が十分に考慮されていないことを、懸念する。 48.委員会は、締約国が、すべての養子縁組案件において、子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされ、かつ親または法定保護者が当該養子縁組について十分な情報に基づく同意を与えていることを確保するよう、勧告する。 虐待およびネグレクト 49.子どもを虐待およびネグレクトから保護するために締約国が行なっている努力、ならびに、回復およびリハビリテーションのためのサービスを提供しているシェルターおよびセンターが利用可能であることには留意しながらも、委員会は、締約国において防止の水準が低く、かつ虐待およびネグレクトの被害を受ける子どもの人数が多いことを懸念する。 50.委員会は、締約国が、ドメスティックバイオレンスを防止しかつこれと闘い、ドメスティックバイオレンスの防止および抑止に関する法律を採択し、かつ、ドメスティックバイオレンスの事案への対処法について専門家を体系的に訓練するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 E.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 51.委員会は、障害のある子どもの社会への統合を促進するためのリハビリテーション・プログラムおよび職業訓練プログラムが実施されていることに、積極的側面として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 障害のある子どもに関する国レベルの包括的政策が締約国で定められていないこと。 (b) 障害のある子どもに関する近代的なデータ収集システムが存在しないこと。 (c) 知的障害のある多くの子どもがいまなお入所型施設で生活しており、教育その他のコミュニティを基盤とするサービスへのアクセスを享受していないこと。 (d) とくに農村部において、子どもの養護の専門家が十分に存在せず、かつ良質なサービスへのアクセスが困難であること。 (e) 全障害児の半数近くが普通教育制度の枠外に留まっていること。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 明確な目標を定めた、障害のある子どもに関する国家的政策を策定すること。 (b) 障害のある子どもの分野で近代的なデータ収集システムを発展させること。 (c) 知的障害のある子どもおよび若者ならびにその家族の健康に関するWHOヨーロッパ宣言(2010年11月、ブカレストにおいて、ベラルーシを含むWHOヨーロッパ地域の保健大臣全員が支持)にしたがい、知的障害のある子どもに関する政策を策定すること。 (d) 重度障害のある子どもが家族とともに暮らせるようにするため、このような子どもの親に十分な支援を提供すること。 (e) 専門家に対して体系的研修を行なうとともに、障害のある子どもが良質なサービスにアクセスできることを確保すること。 (f) 障害のあるすべての子どもが教育にアクセスできることを確保するとともに、可能なかぎり、障害のある子どもを主流の教育に統合すること。 健康および保健サービス 53.委員会は、子どもの健康水準を向上させるための措置、とくに妊産婦死亡率および新生児死亡率の削減を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、第一に呼吸器疾患(2008年に72%)、ならびに事故、怪我および中毒を主な理由として、子どもの有病率が依然として高いことを懸念するものである。委員会はさらに、子どもの権利法第5条が子どもに対する無償の治療について規定しているにも関わらず、一時在留許可を有する外国籍および無国籍の子どもが無償の治療の利用に際して困難に直面していることを、懸念する。 54.委員会は、締約国が、締約国での一時在留許可を有するすべての子ども(外国籍および無国籍の子ども双方)に対して無償の治療を保障する等の手段により、すべての子どもの健康状態を向上させるための努力を引き続き強化するよう、勧告する。 55.委員会は、やがて確実に死にいたる疾病または生命を脅かす疾病に罹患した子どもの緩和ケアに対する締約国のコミットメント、および、最近の「子どもの緩和ケアに関する命令」の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、緩和ケアの大部分はNGOによって提供されており、十分な財政支援も行なわれていないことを懸念するものである。 56.条約第4条、第6条および第24条に照らし、委員会は、締約国が、子どもに緩和ケアを提供するための資金拠出機構を設置し、かつ、NGOが提供する緩和ケアサービスを支援するよう、勧告する。 環境保健 57.締約国が、チェルノブイリ原発事故の影響を受けている地域で復興のために相当の努力を行なってきたことには留意しながらも、委員会は、チェルノブイリ原発事故が子どもの健康に根強く悪影響を及ぼしていることに関わる懸念、とくにヨウ素欠乏症に関連して被災地で子どもの甲状腺がんが多発していることに対する懸念を、あらためて表明する。 58.委員会は、締約国が、チェルノブイリ原発事故の影響を受けている子どもに提供される専門的保健ケアを引き続き向上させ、かつ放射能汚染関連疾患の早期発見および予防のための努力を強化するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 思春期の健康 59.委員会は、性感染症の発生件数が多いこと、思春期女子による妊娠中絶の水準が高いこと、ならびに、喫煙、過度なアルコールの消費および薬物の使用が青少年にとって重大な健康上のリスク要因となっていることを懸念する。委員会はまた、青少年がHIVの流行にとくに影響を受けやすいことも懸念するものである。委員会はさらに、若者にやさしい医療カウンセリングおよびHIV検査が、すべての子どもにとって、かつ締約国の領域全体で平等に利用可能となっていないことを懸念する。 60.委員会は、締約国が、性感染症、望まない妊娠の防止、喫煙および有害物質の濫用、ならびに健康的なライフスタイルの促進をとくに重視しながら、思春期の健康の向上に関する国家的戦略を策定しかつ採択するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、包括的なHIV広報啓発キャンペーンならびに若者にやさしいHIV検査およびカウンセリングを促進しかつ拡大するよう、勧告するものである。 精神保健 61.自殺の防止および自殺未遂者への援助の提供のための措置が承認されたこと(2007年7月9日の命令第575号)および国家自殺防止プログラム(2008~2012年)が策定されたことには留意しながらも、委員会は、防止措置が有効ではなく、かつ子どもの自殺件数が増えていることを依然として懸念する。 62.委員会は、締約国が、国家自殺防止プログラムを実施し、青少年の自殺を防止するための措置を増強し、かつ精神保健ケアサービスを強化するよう、勧告する。 生活水準 63.委員会は、最低生存費以下で暮らしている子どもの人数が減少したことを歓迎する。子どものいる家庭に対して児童手当その他の給付が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、貧困の影響を不相応に受け続けている、子どもが3人以上いる家庭およびひとり親世帯の状況について懸念を覚えるものである。 64.委員会は、発達に対する子どもの権利を確保する目的で、とくにもっとも周縁化されかつ不利な立場に置かれた家族に焦点を当てながら、領域内のすべての子どもに対して十分かつ持続可能な生活水準を確保するための努力を増進させるよう、勧告する。委員会は、貧困の根本的原因を調査し、かつこれに対応することを勧告するものである。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 65.委員会は、就学前教育施設が都市部で広く利用可能であり、かつ農村部においても程度は劣るものの利用可能であることを歓迎する。初等教育が9年間でありならびに義務的および無償であることには留意しながらも、委員会は、相当の割合(10%)の子どもが学校に行かないままであること、および、隠れた費用負担が残っていることを懸念するものである。 66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 農村部における就学前教育施設の利用可能性を高めること。 (b) 義務教育から脱落した子どもが学校に復帰することを確保するための努力を行なうこと。 (c) 初等教育が、教科書および学校教材も含めて完全に無償であることを確保すること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~36条、第38~40条ならびに第37条(b)および(d)) 子どもの庇護希望者および難民 67.委員会は、外国人市民および無国籍者に対する難民資格、追加的保護および一時的保護の付与に関する法律が2008年に採択されたことを歓迎する。同法は、子どもの庇護希望者および難民がベラルーシ市民と同等な立場で保健上および教育上の便益に平等にアクセスできること、および、難民が家族再統合に対する権利を有していることを明示的に定めたものである。しかしながら委員会は、同法が、庇護の正当事由としてジェンダーに関連する迫害を含めておらず、または子どもの最善の利益の原則を反映していないことを、遺憾に思うものである。 68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 在留資格のない子ども、保護者のいない子どもまたは養育者から分離された子どもの庇護申請を審査する際、子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として明示的に特定するとともに、これらの子どもを収容センターに措置しないこと。 (b) 庇護および移民を担当する職員を対象として、庇護および補完的保護を規律する法律の適用に関する研修(子どもに特有の形態の迫害を考慮することに関する研修を含む)を行なうこと。 (c) 適切な保護措置を掲げた二国間協定の調印等も通じ、保護者のいないベラルーシ国籍の子どもの送還および再統合に関する決定が、子どもの最善の利益を第一次的に考慮しながら行なわれることを確保すること。 (d) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)に掲げられた委員会の見解を考慮すること。 性的搾取および人身取引 69.人身取引、不法な移住および関連の不法行為に対する対策プログラム(2008~2010年)は歓迎しながらも、委員会は、締約国が依然として、性的搾取をとくに目的とする人身取引被害者である女性および子どもの送り出し国、通過国および受け入れ国であることを懸念する。 70.委員会は、締約国が、とくに子どもの性的搾取および人身取引と闘うための努力を引き続き行なうよう、勧告する。委員会は、被害を受けたすべての子どもに対し、十分な保護、ならびに、迅速な回復およびコミュニティへの再統合のための専門的援助が提供されるべきことを勧告するものである。 少年司法の運営 71.委員会は、子どもによる犯罪が減少し、およびこれに応じて収監刑に服する子どもの人数も減少していること、ならびに、地域奉仕活動のような収監刑に代わる措置の使用が増えていることを、歓迎する。少年司法の概念に関する大統領令案には留意しながらも、委員会は、締約国がいまなお包括的な少年司法制度の設置に着手していないことを懸念するものである。委員会はさらに、罪を犯した少年に対して長期の自由剥奪刑が科されていること、再犯の水準が高いことおよび釈放後のプログラムが存在しないことを懸念する。 72.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する国際基準、とくに条約第37条(b)、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう、促す。委員会は、締約国に対し、少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮するよう促すものである。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 締約国のすべての地域で少年裁判所を設置し、かつ訓練を受けた少年裁判官を任命することも含め、包括的な少年司法制度を設置すること。 (b) 可能なときは常に、調停、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような拘禁に代わる措置をいっそう活用しながら、少年犯罪の問題に対し、条約で唱道されているホリスティックなアプローチで臨むこと(たとえば根本的な社会的要因に対応すること)。 (c) 自由の剥奪が最後の手段として、重大な犯罪に対して、かつ可能なもっとも短い期間で〔のみ〕用いられることを確保すること。 (d) 社会への再統合を促進し、かつ再犯を防止する目的で、再統合のための釈放後のプログラムを実施すること。 (e) ユニセフおよび少年司法に関する機関横断パネルに対し、少年司法の分野における技術的援助を求めることを検討すること。 犯罪の被害者および証人である子ども 73.委員会は、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引のような犯罪の被害を受けたすべての子どもおよび(または)そのような犯罪の証人が条約で求められている保護を提供されることを確保するとともに、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての〔国連〕指針を全面的に考慮するよう、勧告する。 H.国際人権文書の批准 74.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書、とくに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、障害のある人の権利に関する条約およびその議定書、ならびに、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。 I.フォローアップおよび普及 75.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、国民議会、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 76.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 J.次回報告書 77.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2017年10月30日までに提出するよう慫慂する。同報告書にはこの総括所見のフォローアップについての記載が含まれるべきである。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促すものである。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 78.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう求める。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月26日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/226.html
総括所見:スイス(第1回・2002年) 第2~4回(2015年)OPAC(2006年)/OPSC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.182(2002年6月13日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年5月29日に開かれた第790回および第791回会合(CRC/C/SR.790 and 791参照)においてスイスの第1回報告書(CRC/C/78/Add.3)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)2002年6月7日に開かれた第804回会合において。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがった締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/SWI/1)に対する文書回答が時宜を得て提出されたことにより、締約国における子どもの状況をより明確に理解できたことにも留意するものである。委員会はまた、締約国代表団との間で持った積極的対話にも留意する。委員会は、条約の実施に直接関与する、高度な資質を有する代表団の出席により、締約国における子どもの権利の状況に関する理解を向上させることができたことを認知するものである。 B.積極的側面 3.委員会は、以下の法律の採択を歓迎する。 (a) 子どもの権利に関する規定(とくに第11条)を掲げた、1999年の新憲法。 (b) 離婚および認知に関する新法(2000年施行)。 (c) 児童ポルノを含むハードコアポルノの所持の禁止を導入した、刑法改正(2002年施行)。 (d) 連邦犯罪被害者援助法の改正(2002年施行)。 (e) 生殖補助医療法(2001年施行)。 4.委員会はまた、条約を裁判所で直接援用することが可能であり、かつ、連邦裁判所が何度か条約の規定および原則を参照してきたことも、歓迎する。 5.委員会は、締約国が子どもの権利に関して市民社会と緊密に協力していることを歓迎する。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 留保 6.委員会は、第5条、第7条、第10条および第37条に締約国が付した留保ならびに第40条に関する4つの留保について懸念を覚えるものの、憲法その他の関連法について最近行なわれた改正および現在進められている改正のおかげで、締約国が、対話の際に提示された暫定的予定にしたがい、ほとんどの留保の撤回を検討している旨の情報を歓迎する。このような情報にも関わらず、委員会は、この撤回プロセスがやや遅々としたペースで進められていることについて、かつ、一部の留保についてはまったく、またはまたは遠い将来にしか撤回されない可能性があることについてはなおいっそう、懸念するままである。 7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 無償の通訳の提供(第40条2項(b)(vi))に関する留保の撤回プロセスを可能なかぎり速やかに進めるとともに、締約国によれば、第5条に付した留保は解釈宣言にすぎず、第5条の意義に影響を及ぼすことを意図したものではないことに鑑み、このプロセスを活用して第5条に付した留保を可能なかぎり早期に撤回すること。 (b) 現在行なわれている帰化法の改正を速やかに進め、この改正の承認後、第7条に付した留保を可能なかぎり早期に撤回すること。 (c) 現在行なわれている外国国民法(旧・外国人の永住および一時的在留に関する連邦法)の改正を速やかに進め、この改正の承認後、家族再統合に関する第10条1項に付した留保を可能なかぎり早期に撤回すること。 (d) 新少年刑事法の承認および制定を速やかに進め、その後、法的援助に関する第40条2項(b)(ii)および自由を奪われた少年の成人からの分離に関する第37条(c)の留保の撤回を可能なかぎり早期に開始すること。 (e) 調査担当および量刑担当の裁判官を同一の少年裁判官に務めさせる可能性に関して付された留保を再検討すること。独立のかつ公平な公的機関または司法機関の要件(第40条2項(b)(iii))は、調査担当および量刑担当の少年裁判官が同一人物であってはならないことを、必ずしも、かつあらゆる状況下において意味するものではないためである。 (f) 現在行なわれている、連邦裁判所の第1審裁判所としての権限を廃止する法改正を速やかに進め、この改革の承認後、第40条第2項(b)(v)に付した留保を可能なかぎり早期に撤回すること。 8.委員会は、締約国に対し、次回の報告書の提出までにすべての留保の撤回を完了させるよう、促す。 立法 9.委員会は、カントン(州および準州)を含む締約国において、子どもに関連する多数の法律の改正が進められていること(未成年者に適用される刑事手続に関する連邦法案、未成年者の刑事上の地位に関する連邦法案および外国国民法など)を認識する。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国に存在する格差から生じる可能性のある差別を回避するため、適切な機構を通じ、国およびカントンの法律が条約に一致することを確保すること。 (b) これらの法律および子どもに関わるその他の法律ならびに行政規則について徹底した見直しを行なうとともに、これらの法令が、連邦およびカントンのレベルのいずれにおいても、権利を基盤とし、かつ条約ならびに国際人権に関するその他の文書および基準に一致することを確保すること。 (c) これらの法令の効果的実施のために十分な対応(予算配分を含む)がとられることを確保すること。 (d) これらの法令が順調かつ速やかに公布されることを確保すること。 調整 11.委員会は、連邦参事会が、1997年10月15日付の決議において、条約の実施の調整は連邦内務省が担当し、かつ、カントン間ならびにカントンおよび連邦政府間の調整機構を設ける旨、定めたことに留意する。しかしながら委員会は、締約国における条約の実施を調整するための中央機構が存在しないため、包括的なかつ一貫した子どもの権利政策を達成するのが困難になっていることを、依然として懸念するものである。 12.委員会は、締約国が、連邦レベルで、連邦およびカントンのレベル間でならびにカントン間で条約の実施を調整するための、国レベルの十分な常設機構を設置するよう勧告する。 13.委員会は、連邦内務省が、子どもおよび若者に関わるスイスの政策の諸要素をとりまとめたことに留意するものの、この政策において、条約で認められている子ども(とくに年少の子ども)のすべての権利が取り上げられていないことを、依然として懸念する。 14.委員会は、締約国が、開かれた、協議に基づく参加型のプロセスを通じて、条約を実施するための包括的な国家的行動計画を作成しかつ実施するよう、勧告する。この国家的行動計画は、権利基盤アプローチをとるべきであり、保護および福祉に限定されるべきではない。加えて委員会は、年少の子どもおよび年長の子ども双方に平等な注意が払われるべきことを勧告するものである。最後に委員会は、締約国が、法律、予算および政策の策定に当たって子ども影響評価を活用するよう勧告する。 監視体制 15.委員会は、多くのカントンで行政斡旋官が設置されており、かつ多くのカントンおよび都市で子どもの問題に関する専門の機構が設けられていることに留意する。委員会はまた、連邦国家人権機関の設置を求める多数の議会動議が提出されてきたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、条約の実施を監視するための、かつ、カントンおよび連邦のレベルで子どもの個別の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた、独立の中央機構が存在しないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関するパリ原則(総会決議48/134)にしたがい、条約の実施における進展を監視しかつ評価するための、独立の連邦人権機関を設置するよう勧告する。当該機関は、子どもにとってアクセスしやすく、子どもの権利の侵害に関する苦情を子どもに配慮したやり方で受理しかつ調査する権限を有し、かつ、このような苦情に効果的に対応するようなものであるべきである。 データ収集 17.委員会は、とくに全国調査研究プログラムを通じて、データ収集を向上させるために進められている措置に留意する。しかしながら委員会は、統計――とくに国勢調査――で用いられている年齢層が条約に掲げられた子どもの定義と一致していないこと、および、条約のすべての分野が網羅されているわけではないことを、依然として懸念するものである。 18.委員会は、締約国が、とりわけ脆弱な立場に置かれた子どもおよび現在のデータでまだ網羅されていない分野をとくに重視しながら、条約のすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する細分化されたデータを体系的に収集するとともに、進展を評価し、かつ条約実施のための政策を立案する目的で当該データを活用するよう、勧告する。 研修/条約の普及 19.委員会は、締約国が、第1回報告書および総括所見を報告書要旨とあわせて刊行する予定である旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、条約が締約国の第4国語(すなわちロマンシュ語)に翻訳されていないこと、ならびに、普及、意識啓発および研修のための活動が常に体系的なかつ重点対象型のやり方で行なわれているわけではないことを、懸念するものである。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府の間で条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(脆弱な立場に置かれた集団、とくに子どもの移民および庇護希望者に情報を提供するための取り組みを含む)を強化しかつ継続すること。 (b) 条約をロマンシュ語に翻訳すること。 (c) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば連邦およびカントンの議員、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを開発しかつ実施すること。 2.一般原則 差別の禁止 21.憲法で差別が禁じられていること(第8条)は認知しながらも、委員会は、外国人の子どもに対する事実上の差別が行なわれていること、および、子どもの発達に悪影響を及ぼす可能性がある人種的憎悪および外国人排斥の事件が起きていることを、懸念する。委員会はまた、実務およびサービスの提供ならびに子どもによる権利の享受に関してカントン間に存在する格差の一部は差別に相当する可能性があることも、懸念するものである。 22.条約第2条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、子どもによる権利の享受に関して存在する格差を注意深くかつ定期的に評価するとともに、当該評価を基礎として、差別的格差を防止しかつこれと闘うために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、外国人の子どもまたはマイノリティに属する子どもに対する事実上の差別を防止しかつ解消するための行政上の措置を強化することも、勧告するものである。 23.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 24.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則(第3条)が、締約国の政策およびプログラムの実施において全面的に適用され、かつ正当に統合されているわけではないことを懸念する。 25.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、あらゆる法律および予算ならびに司法上および行政上の決定、ならびに、子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスに適切な形で統合されることを確保するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 子どもの意見の尊重 26.子どもがその成熟度にしたがって自己の権利を行使できることを認めた憲法第11条2項および自己の意見を表明する子どもの権利を認めた多数の法律上の規定を歓迎し、かつ、カントンまたは自治体のレベルでさまざまな若者議会が設置されていることには留意しながらも、委員会はなお、条約第12条に定められた一般原則が、締約国の政策およびプログラムの実施において全面的に適用され、かつ正当に統合されているわけではないことを懸念する。 27.委員会は、子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するためにさらなる努力が行なわれるべきことを勧告する。これとの関係で、脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭、学校、その他の施設および機関ならびに社会におけるすべての子どもの参加権がとりわけ重視されるべきである。この一般原則を、子どもに関わるすべての政策およびプログラムに反映させることも求められる。この原則の実施に関する、公衆一般の意識啓発ならびに専門家の教育および研修が強化されるべきである。 3.市民的権利および自由 自己のアイデンティティを知る権利 28.委員会は、生殖補助医療法第27条にしたがい、子どもがその父の身元について情報提供を受けられるのはその子どもが「正当な利益」を有している場合のみであることに留意するとともに、この点に関する「正当な利益」の意味について懸念を覚える。 29.条約第7条に照らし、委員会は、締約国が、自己の親の身元を知る子どもの権利が尊重されることを可能なかぎり確保するよう、勧告する。 拷問および不当な取扱い 30.委員会は、外国人の子どもに対して法執行官が不当な取扱いを行なう事例があるとの主張があること、および、虐待が蔓延していることを深く懸念する。 31.委員会は、この点について拷問禁止委員会が行なった勧告(A/53/44、パラ94)を支持するとともに、条約第37条に照らし、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 逮捕、尋問および警察留置中の不当な取扱いに関する法執行官に対する苦情を受理するための、子どもに配慮した機構をすべてのカントンに設置すること。 (b) 警察隊を対象として、子どもの人権に関する体系的研修を実施すること。 体罰 32.学校における体罰が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、連邦裁判所の判例によれば、体罰は、社会によって一般的に受け入れられている水準を超えないときは身体的暴力とみなされないことを懸念する。加えて委員会は、家庭における体罰が法律で禁じられていないことを懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、家庭、学校および施設における体罰のあらゆる実践を明示的に禁じるとともに、とくに親、子ども、法執行官および司法職員ならびに教員を対象とし、この点に関する子どもの権利を説明し、かつ、子どもの人間の尊厳と一致するやり方による、かつ条約(とくに第19条および第28条2項)にしたがった代替的形態のしつけおよび規律の使用を奨励する、広報キャンペーンを実施するよう勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親が働いている子どものための保育サービス 34.保育施設の増設を目的とする議会の発議は歓迎しながらも、委員会は、締約国から提供された情報(CRC/C/78/Add.3、パラ481)によれば、現在提供されている保育サービスはニーズを満たすには程遠いことに、懸念とともに留意する。 35.条約第18条3項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 働く親のニーズを満たす目的でより多くの保育サービスを設置するための措置をとること。 (b) 条約の原則および規定に照らし、提供される保育サービスにおいて乳幼児期の発達が促進されることを確保すること。 養子縁組 36.委員会は、養子が自己の生物学的親を知ることを認める民法第268条(c)が施行されたこと、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年5月29日のハーグ条約の批准手続が2003年には完了する見込みであることを歓迎する。しかしながら委員会は、国外で養子とされる子どもが正式な縁組までに2年間待機しなければならず、これが差別および無国籍につながりうることを、依然として懸念するものである。加えて委員会は、十分なフォローアップが行なわれていないために、養親による子どもの不当な取扱いが報告されていることを懸念する。 37.委員会は、国外で養子とされた子どもが、締約国への到着から正式な養子縁組まで時間がかかるために無国籍となりまたは差別されることがないようにするため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会はさらに、締約国が、不当な取扱いおよび権利侵害を解消する目的で十分なフォローアップの手段をとることにより、これらの子どもの状況を体系的に検証するよう提案するものである。 虐待およびネグレクト/暴力 38.家庭、学校およびスポーツにおける子どもへの暴力に対処するために行なわれている多数の取り組みは歓迎しながらも、委員会は、子どもの虐待および(または)ネグレクトに関する包括的なデータおよび情報が存在しないことを依然として懸念する。 39.条約第19条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) これらの慣行の規模、範囲および性質を評価する目的で、性的虐待(とくに家庭におけるもの)および学校におけるいじめを含む、子ども(とくに脆弱な立場に置かれた集団の子ども)に対する暴力、不当な取扱いおよび虐待についての研究を実施すること。 (b) 子どもの虐待を防止しかつこれと闘うため、子どもたちの関与を得ながら意識啓発キャンペーンを発展させること。 (c) 既存の諸機関の活動を評価するとともに、これらのタイプの事案に関与する専門家を対象とした研修を行なうこと。 (d) 被害を受けた子どもの保護(プライバシー権の保護を含む)の向上を確保する目的で、ドメスティックバイオレンスならびに家庭における子どもの不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)の事案を、子どもに配慮した調査および司法手続を通じ、効果的に調査すること。 5.基礎保健および福祉 思春期の健康 40.先進的な保健ケア制度、きわめて低い乳児死亡率およびHIV/AIDS有病率の低下には留意しながらも、委員会は、それでもなお、青少年の自殺件数が多く、かつこの現象を防止するための措置が限定されていること、および、学校外におけるものを含むカウンセリングサービスへの青少年によるアクセスが不十分であることを、懸念する。加えて委員会は、アルコールおよびタバコの使用が――とくに女子の間で――広く蔓延しており、かつ増加していることを懸念するものである。さらに、死亡率が低下していることには留意しながらも、委員会は、交通事故で死亡しまたは負傷する子どもの人数が多いことをなお懸念する。最後に委員会は、国外で女性性器切除が行なわれる事案について懸念を覚えるものである。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSの有病率を低下させるための努力を続行するとともに、青少年の自殺を防止するため、情報の収集および分析、意識啓発キャンペーンの開始ならびに特別プログラムおよびカウンセリングサービスの設置を含む、あらゆる必要な措置をとること。 (b) とくにアルコールの消費およびタバコの使用との関係で、思春期の健康政策を促進するための努力を増強すること。 (c) 交通事故の被害を受ける子どもの人数を減少させるための努力を続行すること。 (d) 女性性器切除の慣行に終止符を打つための、関連する層を重点対象とする意識啓発キャンペーンを発展させるとともに、この問題についての包括的研究を実施すること。 障害のある子ども 42.障害を理由とする差別が憲法で禁じられていること(第8条)は歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもに関する統計が欠けており、かつ、これらの子どもを普通教育に統合する統一の実務がさまざまなカントンで行なわれていないことを、依然として懸念する。加えて委員会は、在宅ケアに関するかぎり、障害を持って生まれた子どもと障害児になった子どもとの間に区別があることを懸念するものである。 43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに関するデータ収集を強化すること。 (b) 普通教育への障害児の統合に関して全国的に存在する格差についての評価を実施するとともに、差別に相当する可能性もあるこれらの差異を解消するためにあらゆる必要な措置をとること。 (c) 障害を持って生まれた子どもと、疾病または自己の結果障害児になった子どもとの間にある事実上の差別を解消するため、在宅ケア支援制度を見直すこと。 健康保険 44.委員会は、社会保障制度の継続的改革に留意するものの、社会保険および保健の費用負担がきわめて高く、低所得家庭に影響が生じている可能性があることを依然として懸念する。 45.委員会は、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の総括所見(E/C.12/1/Add.30、パラ36)を支持するとともに、締約国が、たとえば保険料の減額によって保健サービスの費用負担を低下させる目的で、健康保険制度の見直しを行なうよう勧告する。 生活水準/社会福祉 46.締約国の経済的豊かさおよび高い生活水準には留意しながらも、委員会は、人口の5.6%が貧困の影響を受けており、かつ、締約国から提供された情報(「子どもおよび若者に関するスイスの政策の諸要素」)によれば、若年家庭、ひとり親家庭および多子家庭がもっとも影響を受けていることを懸念する。加えて委員会は、家族手当または家族給付がカントンによってさまざまであり、かつ受給者が有給の雇用についていることが条件とされていることを、懸念するものである。 47.委員会は、締約国が、条約の原則および規定(とくに第2条、第3条、第6条、第26条および第27条)に照らして貧困を防止するためにあらゆる適切な措置をとり、かつ、資力調査制度を正当に考慮しながら、とくに有給の雇用についていない家族および自営業である家族を対象とした家族手当および家族給付の制度を見直すよう、勧告する。 6.教育 48.委員会は、条約第29条、および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に照らし、教育の目的、とくに人権教育が、締約国のすべてのカントンの学校カリキュラムにどのように反映されているかについての情報が存在しないことを懸念する。 49.委員会は、締約国が、カントン段階のカリキュラムに教育の目的がどのように反映されているかに関する情報を、次回の報告書で提供するよう勧告する。 7.特別な保護措置 子どもの難民および庇護希望者ならびに保護者のいない子ども 50.連邦庇護法制(連邦庇護法および庇護手続に関する政令第1号)が1999年10月1日に施行されたことは歓迎しながらも、委員会は、保護者のいない未成年者を対象として用いられている手続が、常にその最善の利益にかなっているわけではなく、かつ条約の関連規定に全面的に一致しているわけでもないことを、依然として懸念する。加えて、条約第10条に付された留保との関連で、委員会は、家族再統合に対する権利が制限されすぎていることを懸念するものである。 51.委員会は、締約国が、庇護申請手続に関するアプローチを単純化するとともに、当該手続を迅速化し、かつ、子ども、とくに保護者のいない子どもの特別なニーズおよび要求が当該手続で考慮されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。このような措置には、法定代理人の指定、このような子どものセンターへの措置、ならびに、保健ケアおよび教育に対するこのような子どものアクセスが含まれる。加えて委員会は、締約国が、とくに締約国に長期間滞在している難民について、家族再統合のための制度を見直すよう勧告するものである。 性的搾取および性的虐待 52.児童ポルノを含むハードコアポルノの所持を禁止した刑法改正、および、新たなサイバー犯罪対策センターの設置(2003年)は歓迎しながらも、委員会は、締約国における子ども(とくに脆弱な立場に置かれた集団)の性的搾取の規模が知られていないことを依然として懸念する。 53.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が、売買春および児童ポルノ(インターネット上のものを含む)も含む子どもの性的搾取および人身取引の規模を評価する目的で研究を実施するとともに、子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領(1996年)ならびにグローバルコミットメント(2001年)にしたがって、防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを実施するよう、勧告する。 薬物濫用 54.青少年による薬物の使用を防止しかつこれと闘うために締約国が現在とっている政策には留意しながらも、委員会は、青少年の間で不法な薬物の使用および売買が増加していることを懸念する。 55.委員会は、締約国が、意識啓発および防止のための措置(学校における、薬物の危険性に関する意識啓発を含む)を続行するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、とくに子どもおよび青少年向けの防止、治療ならびに回復および社会的再統合のためのサービスに関する児童福祉サービス制度に対し、いっそうの資源を配分するよう勧告するものである。 少年司法の運営 56.委員会は、未成年者の刑事上の地位に関する連邦法案、未成年者に適用される刑事手続に関する連邦法案および連邦司法組織法の改正に関する議論が進められていることを歓迎するものの、刑事責任年齢が低すぎること(7歳)を依然として懸念するとともに、新たに提案されている刑事責任年齢(10歳)もなお低すぎると考える。加えて委員会は、一部のカントンで未決勾留中の法的援助に関する規定が存在しないこと、ならびに、未決勾留中および収監中に子どもが成人から分離されていないことを、懸念するものである。 57.委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関するウィーン指針を含む、少年司法分野における他の国連基準にしたがって少年司法の法制および制度を改革するため、追加的措置をとるよう勧告する。 58.この改革の一環として、委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を10歳以上に引き上げるとともに、未成年者の刑事上の地位に関する連邦法案をこれにしたがって修正すること。 (b) 未決勾留中のすべての子どもに対する法的援助の提供を制度化すること。 (c) 未決勾留中または拘禁中、子どもを成人から分離すること。 (d) 少年司法制度に関与するすべての専門家を対象とした、関連の国際基準に関する体系的な研修プログラムを導入すること。 (e) 少年司法に関する一般的討議の際に委員会がまとめた討議内容(CRC/C/46、パラ203-238)を考慮すること。 マイノリティ集団に属する子ども 59.委員会は、締約国におけるロマおよびトラベラーズならびにその子どもに関する情報がないこと、および、これらの子どもに関する政策が定められていないことを懸念する。 60.委員会は、締約国が、マイノリティであるロマおよびトラベラーズに属する子どもの状況を評価するためにこれらの子どもに関する研究を実施するとともに、社会的排除および差別を防止し、かつこれらの子どもがその権利を全面的に享受できるようにする(教育および保健ケアへのアクセスを含む)ための政策およびプログラムを発展させるよう、勧告する。 8.条約の選択議定書 61.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准しかつ実施するよう、奨励する。 9.文書の普及 62.最後に委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。加えて委員会は、締約国が、作成した締約国報告書の要約版も広く入手可能とするよう勧告するものである。このような文書は、政府および一般公衆(NGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布することが求められる。 更新履歴:ページ作成(2012年12月26日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/209.html
総括所見:ネパール(第1回・1996年) 第2回(2005年)/第3回~第5回(2016年)OPSC(2012年)/OPAC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.57(1996年6月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年5月29日および30日に開かれた第301回~303回会合(CRC/C/SR.301-303)においてネパールの第1回報告書(CRC/C/3/Add.34)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1996年6月7日に開かれた第314回会合において。 A.序 2.委員会は、ネパール政府に対し、第1回報告書、事前質問事項(CRC/C.12/WP.3)に掲げられた質問への回答としての文書による情報、および、委員会との対話の過程で締約国によって提供された追加的情報の提出に、謝意を表する。対話の過程で、締約国の代表は、政策およびプログラムの方向性のみならず、条約の実施の過程で直面した困難も、自己批判的な形で明らかにしてくれた。 B.積極的な側面 3.委員会は、法改正の領域で政府がとった努力、とくに、子どもの権利を確保するための特別な節を設けた新憲法、および、子どもの権利に関わる多くの領域を対象とする子ども法の採択に、留意する。委員会は、拷問および他の残虐な、非人間的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰の禁止ならびに被害者補償制度に関するものを始めとして、政府が現行法の再検討に前向きな姿勢を見せていることに、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、政府が国際労働機関第138号条約の批准に前向きであることを代表団が認めたことも、歓迎する。 4.委員会は、子どもの問題および子どもの権利の問題に対処する機構、とくに中央子ども福祉委員会および郡子ども福祉委員会を設置するための政府の努力を歓迎する。委員会はまた、「女性および子どもの発達のための国家評議会」および国家計画委員会事務局内の「子ども女性開発部」が最近設置されたことに、満足感とともに留意するものである。 5.委員会はまた、差別、児童労働、子どもの取引、子どもの売買および少年司法の運営の領域に関するものを始めとして、子どもの権利に関する条約の規定が全面的に実施されるようにするための国際的助言および技術的援助に関して、締約国が開かれた態度をとっていることにも、評価の意とともに留意する。 6.委員会は、締約国が国家行動計画を採択し、かつ、「1990年代における子どもと開発のための10か年国内行動計画」を策定したことに、満足感とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、子どもたちの組織を始めとする非政府組織との協力に前向きであることを歓迎する。このことは、政府報告書の作成過程に、かつ対話の過程で非政府組織の子ども代表が出席した事実に、反映されているものである。 8.委員会は、子どもの権利を促進しかつ保護するために行なわれている国際的な取り組みに関して一般大衆の意識を喚起する手段として、政府が、委員会による第1回報告書の検討に先立ってネパールで記者会見を開くと決定したことを歓迎する。委員会は、ネパールへの帰国にともなってあらためて記者会見を開き、委員会の総括所見を公にすると代表団が述べたことに、さらに心強い思いを感ずるものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、ネパールが、人口の半数以上が絶対的貧困下で暮らしている世界の最貧国のひとつであることから、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に主として影響が生じ、かつ子どもの権利の享受が阻害されていることに留意する。この現実は、対外債務および債務調整措置に加えて、条約に基づく政府の義務の履行の程度に影響する深刻な困難を代表するものである。 D.主要な懸念事項 10.委員会は、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致するようにするための措置が十分でないことを懸念する。委員会はとくに、差別の禁止(婚姻、相続および親の財産に関するものを含む)、拷問および体罰に関わる法規定が条約との一致を欠いていることに留意するものである。委員会はまた、現行法とその実際の実施との間に乖離が存在することについても懸念する。 11.委員会は、締約国が、条約の一般原則──第2条(差別の禁止の原則)、第3条(子どもの最善の利益の原則)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)──を、立法および政策立案において全面的には考慮に入れていないことに、懸念を表明する。 12.委員会は、差別の禁止の原則が効果的に実施されるようにするためにとられた措置が不十分であることを、とりわけ懸念する。委員会は、息子優先の風潮が支配的であること、早期婚が根強く残っていること、女子の通学率が男子よりも目立って低いことおよびその中退率が男子よりも高いことに表れているように、女子に対する差別的態度が根強く残っていることに留意するものである。婚姻年齢が女子と男子で異なることも、条約第2条と一致しておらず、懸念される。委員会はさらに、デウキ、クマリおよびデビスといったカーストの制度および伝統について懸念を覚えるものである。委員会はまた、子ども法第7条により、親、家族構成員および教員が「子どもの利益にかなうと思われる場合」に子どもを叩くことが許されていること、および、締約国の報告書が認めるように、子どもの意見が尊重されることがないという事実にも、懸念を表明する。このような伝統的な慣行および態度が根強く残っていることは、子どもの権利の享受を深刻な形で阻害するものである。 13.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための政策を実施するに際し、関連省庁間ならびに中央当局と地方当局との間に効率的な調整機構を確立することに関して、締約国の歩みが遅いことを懸念する。 14.委員会は、体系的かつ包括的なデータの収集および適切な指標の確立、ならびに、条約が対象としているすべての領域およびすべての集団の子ども(マイノリティに属する子ども、低層カーストに属する子ども、きわめて貧しい家庭の子ども、農村部の子ども、障害児、施設に措置されている子ども、売買、取引および買春の被害を受けた子どもならびに路上で生活しかつ/または働いている子どもを含む)に関する監視機構の設置に対し、十分な注意が向けられていないことを懸念する。 15.条約第4条の実施に関して、委員会は、利用可能な資源を最大限に用いて子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施することに対し、政府が優先順位を与えていないことを懸念する。委員会は、都市部においても農村部においても、もっとも不利な立場に置かれた集団に十分な注意が向けられていないという見解に立つものである。 16.委員会は、とくに遠隔地に住んでいる子どもについて、子どもの出生登録を確保するために十分な措置がとられておらず、かつ、そのためにこのような子どもの基本的権利の享受に悪影響が生じていることを、懸念する。 17.委員会は、学校中退率がとくに農村部に住む女子の間で高いことおよび児童労働が数多く行なわれていることを憂慮する。委員会はまた、保健、社会サービスおよび教育といった基礎的サービスを確保するうえで農村部および遠隔地に住む子どもならびに障害児が困難に直面していることも懸念するものである。 18.第28条に照らし、委員会は、初等教育がすべての子どもにとって義務的となっていないことに、深い懸念を表明したい。委員会はまた、子どもおよび成人の間で非識字率が高いことも懸念する。 19.委員会は、いかなる形態のものであれ、家庭における子どもの不当な取扱いおよび体罰を効果的に防止しかつそれと闘うための適切な措置が、いまなおとられていないことを懸念する。委員会は、条約第39条に照らし、被害を受けた子どもの回復および復帰を確保することを目的とした十分な立法および機構が存在しないことを深刻に憂慮するものである。 20.農村部からの集団移住、極度の貧困ならびに家庭における暴力および虐待のために路上で暮らすことを余儀なくされ、かつ、基本的権利を奪われてさまざまな形態の搾取にさらされる子どもが多数存在し、かつその人数が増加していることは、深い懸念の対象である。 21.委員会は、インフォーマル部門(とくに家事労働、農業および家族内労働)におけるものを含む児童労働に従事する子どもが多数にのぼることを憂慮する。 22.子ども、とくに女子の売買および取引の問題の規模にかんがみ、委員会は、この現象と闘うための具体的な法律および政策が存在しないことを深く懸念する。 23.委員会は、児童買春の現象がますます増加しており、とくに低層カーストに属する子どもに影響を与えていることを、懸念する。委員会は、この現象と闘うための措置がとられていないことおよびリハビリテーションのための措置が欠けていることを憂慮するものである。委員会はまた、薬物依存の子どもの状況に取り組むための措置が十分ではないことも懸念する。 24.少年司法の運営の状況、および、とくに、条約第37条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような他の関連の基準にその状況が一致するかどうかは、委員会にとって懸念の対象である。委員会はとくに、刑事責任年齢が低すぎること、国法典(ムルキアイン)第2号の規定によって精神病の子どもを収監しかつ鎖で拘束することが認められていること、および、拷問の法的定義が条約第37条(a)に一致していないことを、懸念する。 E.提案および勧告 25.委員会は、締約国が、条約のすべての規定と法律との全面的な一致を確保するため、とくに条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)を考慮にいれながら、あらゆる必要な領域で十分な法改正を行なうよう勧告する。 26.根強く残って女子に影響を与えている差別的な態度および好ましくない伝統と効果的に闘うため、委員会は、締約国に対し、社会における、かつ、とくに家庭における子どもの権利を促進することを目的として、包括的かつ統合的な広報キャンペーンを行なうよう奨励する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(教員、ソーシャルワーカー、保健従事者、裁判官および法執行官を含む)を対象とした、条約に関する具体的研修を確保することも勧告するものである。この目的のため、とくに〔国連〕人権センターおよび国連児童基金との国際協力を求めることが考えられる。 27.委員会は、条約第12条および第42条に照らし、条約の規定および原則が子どもにも大人にも同様に広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力が必要とされているという見解をとるものである。委員会は、締約国に対し、子どもの参加権に関する公衆の意識をさらに高めるとともに、学校カリキュラムに条約を編入することを考慮するよう、奨励する。 28.委員会は、子どもの権利に関わるさまざまな政府機構間の調整を中央レベルにおいても地方レベルにおいても強化し、かつ、非政府組織との密接な協力を確保するために、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 29.委員会はさらに、締約国が、条約が対象とするさまざまな領域について、かつ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを含むすべての集団に関して、子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を収集するよう勧告する。委員会はまた、経済政策が子どもたちに与える悪影響に特段の注意を払いつつ、条約が認める権利を中央レベルおよび地方レベルで実現するにあたって達成された進展および直面した困難を評価するための、学際的監視システムを確立するよう提案するものである。このような監視システムは、締約国が、適切な政策を策定し、かつ、蔓延する社会的格差および伝統的偏見と闘うことを可能にするはずである。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の実現を監視し、かつ、これに関する個別の苦情申立てに対処するために、オンブズパーソンまたは人権委員会のような独立の機構の設置を検討するよう奨励する。 30.条約第4条の実施に関して、委員会は、差別の禁止および子どもの最善の利益の原則に照らし、経済的、社会的および文化的権利を実施するための予算配分を、利用可能な資源を最大限に用いることにより確保する必要性に対して特段の注意を向けるよう、勧告する。国際協力に基づく資源は子どもの権利の実現に向けられるべきであり、かつ、対外債務および債務調整が子どもたちに与える悪影響を軽減するための努力が追求されるべきである。 31.すべての子どもが人として認められ、かつその権利を全面的に享受できることを確保するために、子どもの出生登録に優先順位が与えられるべきである。委員会は、移動登録所および学校登録部の設置を含む、子どもの出生登録を確保するためのさらなる措置を奨励する。 32.条約第2条に照らし、委員会は、農村部および都市部における女子の中退率を削減し、女子が児童労働または買春に関与することを防止し、かつ、基礎的サービス(保健、教育および社会的ケア)に対する農村部の子どもおよび全国の障害児のアクセスを強化する目的で、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。政府はとくに、最低層カーストに属する子どもをいかなる形態の搾取からも保護するために、好ましくない態度を変えるための意識向上キャンペーンを含む具体的措置をとるべきである。 33.難民の子どもの保護を促進するため、委員会は、締約国に対し、難民の地位に関する1951年の条約の批准を検討するよう奨励する。 34.条約第19条に照らし、委員会はさらに、家庭におけるものを含むいかなる形態の子どもの不当な取扱いおよび性的虐待とも闘う目的で、政府が、立法上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、この問題の性質および規模に関する理解を深め、かつあらゆる態様の児童虐待およびネグレクトを防止するための社会プログラムを確立する目的で、公的機関が情報を収集し、かつ包括的な研究に着手するよう提案するものである。 35.委員会はさらに、ネパールのすべての子ども(路上で暮らしかつ/または働いている子どもを含む)の生存権を確保するために確固たる措置をとるよう、勧告する。このような措置においては、あらゆる形態の搾取、とくに児童労働、買春、麻薬関連の活動ならびに子どもの取引および売買から子どもを効果的に保護することが目的とされるべきである。 36.児童労働の問題に関して、委員会は、ネパールが、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するとともに、国内法を子どもの権利条約その他の関連の国際基準に一致させる目的で、関連するすべての国内法を見直すよう、提案する。児童労働に関する法律が執行されるべきであり、査察制度が確立されるべきであり、苦情申立てが調査されるべきであり、かつ違反については厳しい処罰が課されるべきである。家事労働を含むインフォーマル部門の労働に従事している子どもの保護に対し、特段の注意を払うことが求められる。委員会は、政府が、この分野に関してILOに協力を求めることを検討するよう、提案する。 37.子どもの国際的取引および売買と効果的に闘うため、委員会は、ネパールが立法上および行政上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう提案するとともに、締約国に対し、このような現象を防止しかつ解消するために二国間の措置をとることを検討するよう、奨励する。コミュニティ段階における意識啓発キャンペーンを発展させ、かつ、徹底した監視制度を確立するべきである。 38.少年司法の運営の分野において、委員会は、法改正を追求し、かつ、子どもの権利条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則といった他の関連の国際基準を全面的に考慮にいれることを勧告する。その際、刑事責任に関する最低年齢の引き上げ、少年裁判所の設置、現行法の執行、少年非行の防止、自由の剥奪および施設養護に代わる措置、少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利および法的保護の尊重、ならびに、少年司法の完全な独立性および公平性に対し、特段の注意が払われるべきである。精神障害を有する子どもを刑務所に措置することを認めた法律は、緊急に見直されなければならない。 39.委員会は、子どもの権利の分野における法改正および子どもとともに働く専門職の研修の分野等において、〔国連〕人権センターとともに技術的援助プログラムを発展させるよう、提案する。その際、とくに裁判官、法執行官、矯正担当官およびソーシャルワーカーを対象とした、関連の国際基準に関する研修プログラムに特段の注意が払われるべきである。子どもの権利条約についての意識啓発キャンペーンおよび情報提供キャンペーンにも注意を向けることが求められる。さらに、子どもの権利に関わる問題がどのぐらい実現されているかを監視するための、人権委員会その他の独立の機構の設置に関して引き続き検討が行なわれるべきである。 40.委員会が懸念を指摘した分野および委員会が行なった勧告に照らし、委員会は、政府が、国際労働機関、国連難民高等弁務官、国連児童基金、世界保健機関を含む関連の国際機関に対して技術的援助を求めることを検討するよう、提案する。条約に規定された権利を促進しかつ保護する目的で、締約国で活動している国際機関のタスクフォースの設置を検討することも考えられる。委員会はまた、国際社会に対し、締約国が現在行なっている努力を援助するよう奨励するものである。 41.委員会は、締約国に対し、第1回報告書、討議の議事要録、および、報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を広く普及するよう奨励する。委員会はまた、委員会による提案および勧告のフォローアップを確保する手段として、これらの文書に対して議会の注意を喚起するよう提案したい。 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。