約 24,225 件
https://w.atwiki.jp/casino100q/pages/30.html
カジノ合法化の中で最も懸念されている事項が、犯罪に関連するものである。カジノ合法化によって懸念される犯罪種は1)組織犯罪に絡むもの、2)ゲーミング犯罪、3)周辺地域の治安、4)マネーロンダリング、の4つに集約される。中でも最大の懸念事項とされるのが、組織犯罪に絡むものである。 カジノはその歴史の中で長らく組織犯罪の資金源として使われてきた。その点でカジノから組織犯罪の影響を排除することは産業を健全に育成するための最低必要条件であり、むしろ昨今の世界の国々におけるカジノ合法化の歴史は組織犯罪との戦いの歴史であると言い換えても良いだろう。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/153.html
総括所見:オーストラリア(第1回・1997年) 第2回・第3回(2005年)/第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.79(1997年10月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1997年9月24日および25日に開かれた第403回~第405回会合(CRC/C/SR.403-405)においてオーストラリアの第1回報告書(CRC/C/8/Add.31) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1997年10月10日に開かれた第426回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、委員会のガイドラインに全面的にしたがって作成されたきわめて詳細な報告書に関して、かつ事前質問票(CRC/C/Q/AUS/1)に対する文書回答の提出に関して、評価の意を表する。委員会は、締約国の代表団との建設的かつ開かれた対話、および、対話の過程で代表団から受け取った詳細な回答に、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、報告書の検討の過程および検討後に代表団から提供された補足的情報にも留意する。しかしながら、委員会は、締約国が、締約国により行政管理されている外部領域に関する情報をその報告書に全面的に記載していなかったことを、遺憾に感ずるものである。委員会は、条約第2条が、その管轄下にある地域において条約の実施を確保するよう締約国に求めており、したがってあらゆる領域において達成された進展について報告する義務も含んでいることに留意する。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約で認められている子どもの権利の実施のための措置を採択することに対し、締約国が固い決意を有していることを評価する。委員会は、具体的には、子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、万人を対象とした無償教育の提供、および先進的な保健システムに留意するものである。 4.委員会は、法改正の分野で締約国が行なった努力に留意する。委員会は、1975年家族法および1994年刑法(子どもセックス・ツーリズム)修正法の最近の改正を歓迎するものである。 5.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准しようという締約国の意思を歓迎する。 6.国際協力の分野で締約国が行なってきた長期間の努力に留意しながらも、委員会は、締約国に対し、発展途上国に対する国際援助をGDPの0.7%にするという目標を達成するよう奨励したい。 C.主要な懸念事項 7.子どもの権利条約が1986年人権平等機会法のもとで関連の国際文書として宣言され、そのことにより人権平等機会委員会は苦情の検討の際に条約に言及することが可能になっているとはいえ、委員会は、このことが、行政上の決定が同文書の要請にしたがって行なわれるという正当な期待を生ぜしめていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの権利条約を根拠に地方裁判所に苦情を申し立てる権利が市民にないことも懸念するものである。 8.委員会は、条約第37条(c)に付された締約国の留保に、懸念とともに留意する。委員会は、この留保が条約の全面的実施を阻害するのではないかということに留意するものである。 9.委員会は、連邦レベルで子どものための包括的政策が存在しないことを懸念する。委員会はまた、連邦および地方のレベルで監視機構が存在しないことも懸念する。そのような機構は、子どものための政策およびプログラムの発展の評価および促進にとって不可欠な重要性を有するものである。予算配分も含む各州の立法および運用に格差が存在することは、委員会の懸念するところである。 10.委員会は、権利の概念は知られているとはいえ、条約およびその原則が一般的に公衆に知られていないことに留意する。委員会は、条約の原則およびそのホリスティックかつ相互関連的なアプローチならびに条約が家族の役割を重視していることに関する十分な理解がコミュニティの一部の層の間に欠けているように思えることを、遺憾に感ずるものである。 11.委員会はまた、連邦レベルおよびすべての州における雇用法制が、子どもの雇用が許されない最低年齢を特定していないことに懸念を表明する。法律はまた、まだ義務教育期間中の子どもの雇用も禁じていない。委員会は、刑事責任年齢が、州により7歳から10歳というきわめて低い水準に一般的に設定されていることを深く懸念する。 12.委員会は、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)および子どもの意見の尊重(第12条)に関わる原則が全面的に適用されていないことを懸念する。 13.アボリジナルおよびトレス海峡諸島民の健康水準を向上させるための多くのプログラム、および2年間の反人種主義を開始しようという締約国の意思に関して締約国の代表団から提供された情報には留意しながらも、委員会は、それでもなお、同じ生活水準、およびとくに教育および健康に関する同じレベルのサービスの享受に関して、アボリジナルおよびトレス海峡諸島民ならびに英語圏以外の背景を持った子どもがいまだに特別な問題に直面していることを懸念する。 14.委員会は、親のいずれかが市民権を失った状況下で子どもも市民権を奪われる場合があることを懸念する。 15.委員会は、学校、家庭および施設における体罰の使用が、たとえ軽いものであれ、地方の立法によって禁じられていないことに懸念を表明する。委員会の見解では、このことは条約の原則および規定、とくに第3条、第5条、第6条、第19条、第28条2項、第37条(a)および(c)ならびに第39条に違反するものである。委員会はまた、家庭におこる子どもの虐待および暴力が存在することも懸念する。 16.委員会はまた、地方立法により、集合している子どもおよび若者を地方警察が排除することが認められていることも懸念する。これは、集会への権利を含む子どもの市民的権利の侵害である。 17.委員会は、民間部門で働いている女性が母性休暇の権利を制度的に保障されていないことを懸念する。このことは、国の被雇用者およびその他の部門で働いている者の子どもが異なる取扱いを受けることにつながる可能性がある。 18.居住、教育および保健サービスも含めてホームレスの子どもに提供されている支援サービスには留意しながらも、委員会は、若者の間でホームレスの状況が広がっていることを依然として懸念する。委員会は、このことが、売買春、薬物濫用、ポルノグラフィー、またはその他の形態の非行および経済的搾取に関与する危険に子どもをさらすのではないかと不安に感ずるものである。若者の間で自殺が発生していることも、委員会にとってもうひとつの懸念の原因である。 19.委員会は、一部地域で女性性器切除の慣行が続いていること、およびどの州にもそれを禁ずる立法が存在しないことを、懸念する。 20.委員会は、庇護申請者および難民ならびにその子どもの扱いについて、かつ彼らが収容センターに措置されることについて、懸念する。 21.少年司法制度に関わる状況、および自由を奪われた子どもの取扱いは、とくに条約および北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の基準の原則および規定に照らして、委員会の懸念するところである。 22.委員会はまた、アボリジナルの子どもが、正当化しえない、不相応に高い割合で少年司法制度において扱われていること、および、その保釈申請が通常は拒否される傾向が存在することも、懸念する。委員会はとりわけ、アボリジナルが高い割合で住んでいる2つの州で新しい立法が制定されたことを懸念するものである。この立法は少年の全件収容および懲罰的措置を規定するものであり、したがってアボリジナルの少年が高い割合で収容されることにつながる。 D.提案および勧告 23.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約第37条(c)に付した留保を撤回の方向で見直すよう奨励する。委員会は、第37条(c)が、子どもの最善の利益にかなう場合には、自由を奪われた子どもを成人から分離する必要性を免除することを認めていることを強調するものである。 24.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の実施のためのプログラムおよび政策の立案およびその実施の監視に責任を持つ連邦機関を創設するよう勧告する。委員会は、子どもの権利の分野における、非政府組織およびアボリジナルおよびトレス諸島民のコミュニティと公的機関との間の協力もさらに強化するよう提案するものである。 25.委員会は、締約国に対し、国際協力に関するプログラムおよびスキームにおいて子どもに対して特別財源を配分するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、条約の原則および規定を国際開発援助プログラムの枠組みとして活用するようにも奨励するものである。 26.委員会は、締約国が、私立学校および家庭における体罰を禁止するために、法的なものも含むあらゆる適切な措置をとるよう提案する。委員会はまた、代替的形態のしつけおよび規律の維持が、子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約にしたがって行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうようにも提案するものである。委員会はまた、家庭における性的虐待も含む子どもの虐待および不当な取扱いの事案は適切に調査され、加害者に対しては制裁が課され、かつ行なわれた決定は広報されるべきであると信ずる。条約第39条にしたがい、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の犠牲者の身体的および心理的回復および社会的再統合を確保するため、さらなる措置がとられるべきである。 27.委員会は、子どもの権利条約についての意識啓発キャンペーンを、とくにその一般原則および条約における家族の役割の重視に力点を置いて、行なうよう勧告する。委員会は、アボリジナルおよびトレス諸島民ならびに英語圏以外の背景を持った者が用いる言語によっても条約を普及するよう提案するものである。委員会はまた、子どもの権利を学校カリキュラムに編入するようにも提案する。委員会はさらに、法執行官、司法関係者、教員、ソーシャルワーカー、ケアの提供者および医療従事者に対して提供される研修に条約を編入するよう勧告するものである。 28.委員会は、条約第12条にしたがい、参加しかつ意見を表明する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを行なう必要があると考える。委員会は、子どもの参加および親と子の対話の重要性について親を教育するため、特別な努力を行なうよう提案するものである。委員会はまた、専門家、とくにケアを提供する者および少年司法制度に携わっている者の、子どもの意見を引き出しかつ子どもが意見を表明する手助けをする能力を高めるための研修を行なうようにも勧告する。 29.委員会は、あらゆるレベルの政府において、子どもの雇用に関する具体的な最低年齢を設定するよう勧告する。委員会は、最低雇用年齢以上で働いている子どもの最長許容労働時間に関する明確なかつ一貫した規則もすべての州で必要とされていると提案するものである。委員会はまた、締約国に対し、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するようにも奨励する。連邦政府が、刑事責任年齢を調和させかつそれをあらゆる州で10歳に引き上げようと計画していることは認めながらも、委員会は、この年齢はなお低すぎると信じるものである。 30.委員会は、庇護申請者および難民の子どもが迅速な方法でその親と再統合されることを保障されるために、立法および政策の改革を導入するよう勧告する。委員会はまた、いかなる子どもも、その親の地位に関わらず、いかなる根拠によっても市民権を奪われないようにも勧告するものである。 31.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則および条約第24条2項に照らして、立法を見直しかつ有給母性休暇をあらゆる部門の雇用者に対して義務づけるよう奨励する。 32.委員会は、締約国に対し、不利な立場に置かれた集団、とくにアボリジナル、トレス諸島民、新移民、および農村部および遠隔地で暮らす子どもの健康および教育の水準を引き上げるためにさらなる措置をとるよう奨励する。委員会はまた、アボリジナルおよびトレス諸島民の子どもの拘禁率が高い原因に取り組むための措置をとる必要があるという見解に立つものである。委員会はさらに、この不相応に高い割合の原因を特定するための調査を続けるよう提案する。これには、これらの子どもに対する、その民族的出身を理由とする法執行官の態度が助長要因になっている可能性を調査することも含まれる。 33.委員会は、とくに若者および子どもの間でホームレスの状況が広がっている原因を、とりわけ子どもおよびその家族の社会経済的背景も含めて特定し、かつ、性的虐待も含む虐待、児童買春、児童ポルノおよび子どもの取引とホームレスの状況との間に存在するつながりを特定するために、さらなる調査を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、貧困緩和政策をさらに採択し、かつ、ホームレスの子どもに提供する支援サービスをさらに強化するようにも奨励する者である。 34.委員会は、女性性器切除の慣行を禁じ、かつ立法の十分な実施を確保するために具体的な法律を制定するよう勧告する。委員会はまた、この慣行の結果として生ずる危険性および害についてコミュニティを敏感にするために、さまざまなコミュニティと協力してさらなる意識啓発キャンペーンを行なうようにも勧告するものである。 35.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行するよう、勧告する。そのような文書は、政府、国民議会および関心のある非政府組織を含む一般公衆の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年1月30日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/114.html
総括所見:ミクロネシア(第1回・1998年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.86(1998年2月4日)) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年1月14日に開かれた第440回~第441回会合 (CRC/C/SR.440-441) においてミクロネシア連邦の第1回報告書(CRC/C/28/Add.25)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年1月23日に開かれた第453回会合において)。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、第1回報告書および事前質問リストへの文書回答の提出に関して謝意を表する。委員会は、報告書および対話が率直な、自己批判的なかつ協力的な基調であったことに心強い思いを感ずるものである。しかしながら委員会は、報告書のデータが最新のものでなかったことに遺憾の意とともに留意する。委員会はまた、回答されなかった質問があったことも遺憾に感ずるものである。委員会は、これらの質問に文書で回答するという代表団の約束を歓迎する。 B.積極的な側面 3.委員会は、「大統領国家子ども諮問評議会」(PNACC)が、州レベルの「子ども諮問評議会」とともに1995年に設置されたことに留意する。 4.委員会は、子どもの性的な虐待および搾取に関する法案が現在議会に提出されていることに留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.委員会は、連邦が特有の性格を有していること、地形が607の島々から構成されていること、人口が比較的少数であり、かつ多様なかつ点在する多くの共同体から構成されていること、および経済構造が変化していることに留意する。 D.主要な懸念事項 6.委員会は、国内法が条約の規定および原則に全面的に一致していないことを懸念する。とくに委員会は、最低雇用年齢を規定することにより児童労働を規制する立法が存在しないこと、刑事責任に関する最低年齢の明確な定義が存在しないこと、性的同意に関する最低年齢が低いこと、4つの州の間で異なる性的同意年齢が調和させられていないこと、および、放任、虐待および性的搾取に関する立法が存在しないことを、懸念するものである。委員会はまた、とくに婚姻および養子縁組に関して、慣習法と制定法が衝突する可能性があることも懸念する。 7.委員会は、「子どものための国家行動計画」(1995年~2004年)がまだ草案段階であることを懸念する。 8.委員会は、「利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みの中で」予算配分を行なうことに関する条約第4条の規定に対して充分な注意が払われていないことを懸念する。 9.委員会は、「大統領国家子ども諮問評議会」の運営予算が存在しないこと、その人的資源が欠けていること、および、条約が対象とするあらゆる領域をあらゆるグループの子どもとの関わりで監視することについてその役割が不明瞭であることを、懸念する。 10.委員会は、さまざまな州の立法および実務に格差が存在することを懸念する。委員会はまた、中央レベルおよび4つの連邦州との間の調整が不充分であることも懸念するものである。 11.委員会は、体系的な、包括的なかつ細分化された質的および量的データを全国、州および地方のレベルにおいて収集することに対して、および、条約が対象とするあらゆる領域、とくに子どもの虐待または不当な取扱いのような最も目に見えにくい領域に関して、かつ女子も含むあらゆるグループの子どもとの関わりで、採択された政策および措置の進展および影響を評価するための適切な指標および機構を特定することに対して、充分な注意が払われていないことを懸念する。 12.条約を普及するための締約国の努力は認識しながらも、委員会は、大人および子どものいずれも対象として条約の原則および規定に関する幅広い意識を促進するためにとられた措置は不充分であるとの見解に立つものである。委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として充分なかつ体系的な研修が行なわれていないことを、依然として懸念する。 13.委員会は、出生登録制度が条約第7条と一致していないこと、および死亡登録制度が信頼できるものではないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に掲げられた一般原則を、立法、行政上のおよび司法上の決定、および子どもに関わる政策およびプログラムにおいて全面的に考慮に入れていないように思えることを、懸念する。 15.条約第2条の実施に関して、委員会は、条約で認められた権利を女子が全面的に享受することを確保するためにとられた措置が不充分であることを、とくに懸念する。委員会は、最低婚姻年齢に関して男女格差が存在すること、および女子が16歳未満で婚姻する可能性があることを、懸念するものである。委員会はまた、とくにヤップ州においてカースト制度が存在すること、およびそれが条約第2条と両立しないことも、懸念する。 16.条約第17条に照らし、委員会は、印刷メディア、電子メディアおよび視聴覚メディアの有害な影響、とくに暴力およびポルノグラフィーから子どもを保護するための適切な措置がとられていないことを、懸念する。 17.児童虐待・放任プログラム(CAN)のような締約国による努力には留意しながらも、委員会は、家庭の内外における不当な取扱いおよび虐待(性的虐待も含む)に関する意識が不充分でありかつそれに関する情報が存在しないこと、すべての州に具体的な法律が存在せずかつ適切な資源が財政面でも人材面でも存在しないこと、および、そのような虐待を防止しかつそれと闘うための充分に訓練された職員が存在しないことを、懸念する。そのような子どものためのリハビリテーションの措置が存在しないこと、および司法へのそのアクセスが限られていることも、懸念の対象である。 18.委員会は、慣習法および制定法のいずれに基づく養子縁組(国際養子縁組も含む)も、条約の原則および規定、とくに第21条と全面的に一致していないことを懸念する。 19.ビタミンA欠乏症および寄生虫に関するチューク州とユニセフの共同プログラム(VADV)が肯定的な結果をもたらしたことには留意しながらも、委員会は、締約国において栄養不良およびビタミンA欠乏症が蔓延していること、および、安全な水および充分な衛生手段へのアクセスが限られていることを、懸念する。委員会はまた、青少年の健康上の問題、とくに若年妊娠の発生率が高くかつ増加していること、リプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびサービスへの10代によるアクセスが限られていること、HIV/エイズの予防措置が不充分であること、および学校における性教育が不充分であることも、懸念するものである。4州に電話ホットラインが存在することなど締約国の努力は留意されるものの、10代の自殺率が高いこと、およびその防止のための財源および人的資源が不充分であることは、とくに懸念される。学校および地域を基盤とした教育プログラムのような締約国の努力には留意しながらも、委員会は、若者の間で薬物およびアルコールの濫用が生じていること、および、このような問題に対応するための法的枠組みが不充分であることおよび社会的および医学的プログラムが不充分であることを、懸念するものである。 20.条約第29条1項に照らし、委員会は、学校カリキュラムに子どもの権利に関する教育が含まれていないことを懸念する。余暇の機会が不充分であることも、懸念の対象である。 21.少年司法の運営に関わる状況、および、それが条約第37条、第39条および第40条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のような他の関連の基準と両立するかどうかは、委員会にとって懸念の対象である。とくに委員会は、刑事責任に関する最低年齢の定義が不明瞭であること、および、罪を犯した少年のための特別な法的手続が存在しないように思えることを、懸念するものである。 E.提案および勧告 22.委員会は、条約の原則および規定と立法との全面的一致を確保するための充分な法改正を行なうことを目的として、締約国が、全国および州のいずれのレベルにおいても、現行法の包括的見直しを開始するよう勧告する。委員会は、婚姻および養子縁組に関わるもののような慣習的な慣行および法律を条約の原則および規定と調和させるために、締約国が意識啓発キャンペーンも含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。慣習法と制定法が衝突した場合には、差別の禁止(第2条)および子どもの最善の利益(第3条)の原則が第一義的に考慮されるべきである。委員会はまた、締約国が、とくに子どもおよび青少年を対象とした法典または立法を採択し、かつ、特別な保護を必要とする子どもに関して独立した章を設けることを構想するようにも提案する。この目的で、とくに〔国連〕人権高等弁務官事務所およびユニセフの国際協力を求めることが可能である。 23.委員会は、国内行動計画を制定するよう勧告する。 24.委員会は、締約国に対し、他の主要な国際人権条約、とくに、市民的および政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、拷問または他の残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰を禁止する条約、および女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約を含む子どもに関わる条約、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約に加入するよう奨励する。 25.委員会は、締約国に対し、条約第4条の全面的実施にとくに注意を払い、かつあらゆるレベルで適切な資源配分を確保するよう奨励する。経済的、社会的および文化的権利の実施のための予算配分は、利用可能な資源を最大限に用いることにより、必要な場合には国際協力の枠組みにおいて、かつ、差別の禁止および子どもの最善の利益の原則(第2条および第3条)に照らして確保されるべきである。 26.委員会は、「大統領国家子ども諮問評議会」に対してその権限を遂行するために充分な財源および人的資源を提供すること、およびその構成を拡大することを勧告する。委員会は、この機関に対し、非政府組織とのさらなる協力を発展させるよう奨励するものである。委員会はまた、あらゆるレベル間の調整を確保し、条約で認められた権利の実現に関して達成された進展および直面した困難を監視しかつ評価し、かつ、とくに経済的移行が子どもに与える影響を定期的に監視するため、同評議会の能力を強化する必要性があることも強調する。 27.委員会はさらに、もっとも傷つきやすい立場に置かれたグループに属する子どもに関するものも含めて、条約が対象とするさまざまな領域における子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を集める目的で、締約国が、細分化されたデータの収集のための包括的なシステムを発展させ始めるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この目的でとくにユニセフの国際協力を求めるよう強く奨励するものである。 28.委員会は、締約国に対し、条約第42条に照らして、条約の原則および規定を大人および子どもに対して同様に広く知らせるための努力を強化するよう強く奨励する。委員会は、締約国に対し、印刷メディア、電子メディアおよび視聴覚メディアを通じて子どもの権利に関する公衆の意識をさらに向上させ、かつ、条約をできるかぎり学校カリキュラムに編入するよう、奨励するものである。委員会はまた、締約国が、条約をさらに促進するための適切な資料を作成する努力を継続するようにも提案する。委員会は、締約国が、この点でとくにユニセフおよびユネスコの援助を求めるよう提案するものである。 29.委員会は、締約国に対し、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループに研修を行なう努力を継続するよう奨励する。委員会は、締約国が、この点でとくに〔国連〕人権高等弁務官事務所およびユニセフの援助を求めるよう提案するものである。 30.条約の実施にさいして市民社会のあらゆる層とのパートナーシップを強化するため、委員会は、締約国に対し、非政府組織との協力を強化するよう強く奨励する。 31.委員会は、締約国が、条約第7条に照らして出生登録を向上させ、かつ死亡登録を向上させるために、あらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 32.条約の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる司法上のおよび行政上の手続においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業、プログラムおよびサービスの発展および実施においても適切に反映されることを確保するために、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。委員会はまた、現行法が差別を禁じていることには留意しながらも、条約第2条に掲げられている差別の禁止の原則が、女子、州の間の格差および社会的地位との関わりも含めて、全面的に実施されなければならないことも強調する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、カースト制度に関する追加的情報を送付するよう奨励するものである。委員会は、締約国に対し、条約第12条に照らして、子どもの参加権に関する公衆の意識を向上させることに対する体系的なアプローチをさらに発展させるよう奨励したい。 33.委員会は、印刷メディア、電子メディアおよび視聴覚メディアの有害な影響、とくに暴力およびポルノグラフィーから子どもを保護するために法的措置も含むあらゆる措置をとることを目的として、締約国が研究を行なうよう勧告する。 34.子どもに対して自分たちの問題を議論する環境を提供していた「拡大家族」の制度に生じている変化を考慮に入れ、委員会は、学校における青少年ピアカウンセリング・グループ、アルコールおよび自殺のような青少年の問題についての地域共同体啓発プログラム、および親教育プログラムのような、補完的取組みを奨励するよう提案する。 35.条約第19条に照らし、委員会はさらに、締約国が、とくに家庭および施設におけるものも含む子どもの不当な取扱い、および性的虐待を防止しかつそれと闘うために、法改正も含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、公的機関が、問題の性質および規模に関する理解を向上させ、あらゆるタイプの児童虐待を防止するための社会プログラムを強化し、かつ、被害を受けた子どものリハビリテーションを行なうために、虐待、不当な取扱いおよび家族間暴力に関する包括的な研究に着手するよう提案するものである。子どもの不当な取扱いに関する苦情に対応するための充分な手続および機構が発展させられなければならない。 36.委員会は、養子縁組に関する立法および慣習的養子縁組の慣行を、条約の原則および規定、とくに第21条と一致させるよう勧告する。 37.委員会は、締約国が、栄養不良およびビタミンA欠乏症と闘うための努力を継続するよう提案する。委員会はまた、締約国が、リプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびサービスを強化することにより、青少年保健政策を促進するようにも提案するものである。委員会はさらに、若年妊娠および自殺のような青少年の健康上の問題に関する現象の規模を理解するため、包括的かつ学際的な研究を行なうよう提案する。委員会はまた、青少年の健康上の問題の予防およびケアならびに被害を受けた者のリハビリテーションのために、青少年および家族の双方を対象としたカウンセリング・サービスの発展のような、財政面および人材面のいずれも含むさらなる努力を行なうようにも勧告する。 38.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、学校における文化的および芸術的活動、レクリエーション活動および余暇活動を発展させるよう勧告する。 39.委員会は、最低雇用年齢との関わりも含め、条約第32条の規定を実施するために法律の制定も含むさらなる措置をとるよう勧告する。経済的搾取、または危険となり、または子どもの教育を阻害し、もしくは子どもの健康または身体的、精神的、道徳的または社会的発達にとって有害となる恐れのあるいかなる労働をも防止しかつそれと闘うために、努力が行なわれるべきである。家族とともに働く子どもを保護するため、その環境にとくに注意が払われなければならない。委員会は、締約国が、この領域でとくにユニセフの技術的援助を求めることを構想するよう勧告する。 40.委員会は、締約国が、子どもによる薬物および有害物質の濫用を防止しかつそれと闘うための努力を強化し、かつ、学校およびその他の場所における広報キャンペーンを含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どものためのリハビリテーション・プログラムを支援するようにも奨励するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに世界保健機構の技術的援助を求めることを検討するよう奨励する。 41.少年司法の運営の分野において、とくに刑事責任に関する最低年齢および罪を犯した少年のための特別手続との関わりで、委員会は、法改正にあたり、子どもの権利条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護のための国際連合規則のようなこの分野の他の関連の基準を、全面的に考慮に入れるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、少年司法に関する調整委員会を通じて、とくに国際連合人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、国際少年司法ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討するようにも勧告するものである。 42.委員会は、締約国に対し、締約国報告書、委員会における同報告書に関する議論の議事要録、および同報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を広く普及するよう奨励する。 更新履歴:ページ作成(2011年11月15日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/140.html
総括所見:ウクライナ(第3~4回・2011年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)OPSC(2007年)/OPAC(2011年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/UKR/CO/3-4(2011年4月21日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年1月28日に開かれた第1602回および第1603回会合(CRC/C/SR.1602 and 1603参照)においてウクライナの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/UKR/3-4)を検討し、2011年2月3日に開かれた第1611回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/UKR/3-4)および委員会の事前質問事項(CRC/C/UKR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎するとともに、報告書の自己批判的性格によって締約国における子どもの状況についての理解を向上させることができたことを称賛する。委員会は、締約国の部門横断型の代表団との建設的かつ開かれた対話について評価の意を表明するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/UKR/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、以下の立法上その他の措置を積極的な対応として歓迎する。 (a) 後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律(2010年12月)。 (b) 児童ポルノ対策法(2010年1月)。 (c) 両親を失った子どもおよび親のケアを奪われた子どもの社会的保護に関する法律(2005年)。 (d) 子どものための国家行動計画法を通じた、子どものための国家行動計画(2010~2016年)の策定。 (e) HIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画(2010年5月)。 (f) 子どものホームレス化およびネグレクトの防止のための国家プログラム(2006~2010年)。 5.委員会はまた、以下の文書について批准または加入が行なわれたことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2010年2月)。 (b) 死刑の廃止を目指す、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書(2007年7月)。 (c) 扶養義務に関する判決の承認および執行に関する条約(2007年4月)。 (d) 親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関する条約(2007年4月)。 (e) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(2006年)。 (f) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2010年9月)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、前回の締約国報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.191)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1)を実施するために締約国が行ない、前向きな成果をもたらしてきた努力を歓迎する。しかしながら委員会は、委員会の懸念表明および勧告の多くについて不十分なまたは部分的な対応しか行なわれていないことを遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見の勧告のうち未実施のものまたは実施が不十分なもの(資源配分、データ収集、条約およびその議定書との国内法の調和、拷問および不当な取扱い、少年司法の運営、家庭環境を奪われた子ども、性的搾取および虐待ならびにマイノリティ集団の子どもに関わるものを含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告について十分なフォローアップを行なうため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 立法 8.条約その他の国際条約と国内法との間に矛盾がある場合は前者が優越することを歓迎し、かつ子ども保護法(2001年)および児童養護の施設、サービスおよび専門施設に関する法律の改正(2007年)に留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する国内法が依然として不十分であり、条約およびその選択議定書を立法面でさらに実施する余地が相当あることを懸念する。 9.委員会は、締約国に対し、すべての国内法の包括的見直しを行なって条約の全面的一致を確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、条約およびその選択議定書の規定を全面的に編入した包括的な子どもの権利法の採択を検討するよう、勧告するものである。 調整 10.委員会は、2010年12月に開始された行政改革(大統領令第1085/2010号)を背景として、子どもに関わる締約国の政策およびプログラムの持続可能性に課題が生じていることを懸念する。行政の改革および合理化の必要性は認めながらも、委員会は、家族・青少年・スポーツ省が解散し、その職務が教育科学・青少年・スポーツ省の下に置かれた国家青少年・スポーツ局に移管されたことおよび解散した省と結びついていた中央政府諸機構が解体されたことにより、子どもの保護の分野における既存の専門的および技術的能力が脅かされていることを、とりわけ懸念するものである。加えて委員会は、当該改革に先んじて、子どものケアおよび保護に関わる責任および職務の移譲についての明確な計画が策定されなかったことに、懸念とともに留意する。 11.委員会は、行政改革により、子どものための政策の効果的な調整および実施がさらに阻害され、かつもっとも危険な状況に置かれた子どもの支援、保護および防止のためのサービスが悪化する可能性があることを、懸念する。これとの関連で、委員会はさらに、子ども関連の国の政策の立案および実施に関わる行動を調整する省庁間子ども期保護委員会の役割が、特定の問題に関する情報交換に限定されているという報告があることを懸念するものである。委員会はさらに、同省庁間委員会が常設機関ではないことを遺憾に思う。 12.現在進行中の行政改革との関係で、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの権利について責任を負う中央および地方の政府機関についてその機能を包括的に見直すとともに、新体制において諸責任が適切に移譲されかつ明確に定義されることを確保すること。 (b) 政府の子ども政策の主要な優先事項、とくに児童養護改革の実施における継続性を確保すること。 (c) 改革にしたがって教育科学・青少年・スポーツ省による子ども政策の効果的調整を確保するとともに、これとの関連で省庁間子ども期保護委員会の役割および権限を見直すこと(高級レベルの国家機関を委員会の議長に指定することを検討し、かつ、省庁を横断した効果的調整を確保するために同委員会を常設機関とすること等の手段をとることも含む)。 (d) 前掲勧告の検討に際して国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めること。 国家的行動計画 13.委員会は、子どものための国家行動計画法を通じ、締約国が2009年に子どものための国家行動計画(2010~2016年)を採択したことを歓迎する。同法を実施するための2010年度国家プログラムが支持されたことには留意しながらも、委員会は、2010年に当該国家プログラムに配分された資金が限られていること(承認されたプログラム予算の0.3%)、および、実施面で限られた進展しか見られなかったことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、2011年については同法の実施のための資金拠出が保障されており、かつ、中央および地方のレベルで実施状況を監視するための一連の指標がユニセフの協力を得て開発された旨の、締約国代表団から提供された情報に満足感とともに留意する。 14.委員会は、締約国に対し、子どものための国家行動計画(2010~2016年)の効果的実施を確保するとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 国家行動計画を実施するための年次国家プログラムに対し、2016年まで十分な資金を配分するとともに、各年次の予算法で、同計画に対する資金拠出を独立の予算項目として確保すること。 (b) 省庁間子ども期保護委員会による諸活動の調整を確保すること等の手段により、子どものための国家行動計画の実施が効果的に監視されることを確保すること。 独立の監視 15.委員会は、議会の人権コミッショナーによって子どもの保護、平等および差別の禁止に関する特別代表が任命されたこと、および、コミッショナー事務所に子どもの保護およびジェンダーの平等担当部局が設置されたことに、積極的措置として留意する。委員会は、同コミッショナーが子ども・女性に対する暴力ならびに子ども・女性の人身取引を優先分野としたことを歓迎するとともに、ウクライナにおける子どもの権利の国による遵守および保護に関する同事務所の特別報告書(2010年)を称賛するものである。さらに、コミッショナー事務所が子どもの苦情を受理しかつ検討する権限を有しており、かつ同事務所のすべての部局にそのような苦情の審査を担当する専門家が1名ずつ配置されていることには留意しながらも、委員会は、条約およびその選択議定書の実施を審査するための具体的任務および十分な資源を与えられた独立の機構が存在しないことについての懸念(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ27)をあらためて表明する。 16.委員会は、子どもの権利の包括的かつ体系的な監視を確保する目的で、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関に地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがった個別独立の国家的機構を設置するために必要な措置をとるよう、強く勧告する。この目的のため、委員会は、締約国が、ウクライナにおける子どもオンブズマンの導入に関する法律の採択を検討するよう、勧告するものである。委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがい、締約国が、この国家的国内機構に対してその独立性および有効性を確保するための十分な人的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。 資源配分 17.委員会は、官民の制度または組織を通じて子どもに用いられている国家予算の額および割合を体系的に明らかにするよう求めた前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ18(d))が実施されていないことを懸念する。貧困削減・防止プログラム(2010~2015年)草案には留意しながらも、委員会は、子どもおよび子どものいる家族が当該草案で目立った扱いを受けていないことを懸念するものである。加えて委員会は、必要な社会サービスの資金拠出が個々の行政圏の財政力に基づいて行なわれていること、および、締約国もこの制度が適切に実施されていないと認めていることを、懸念する。 18.委員会は、締約国に対し、子どものための資源配分に関する政策および分析を向上させ、かつ、中央および地方のレベルにおける予算配分が実際のニーズおよび実施の有効性に相関して行なわれることを確保するよう、促す。委員会はさらに、締約国が、貧困削減改革において、低所得家庭への社会的援助および手当ならびに子どもの保護に焦点が当てられることを確保するよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、その際、子どものいる家族の貧困に対する具体的対応が貧困削減・予防プログラム(2010~2015年)で行なわれることを確保するよう、促す。 データ収集 19.委員会は、国家行動計画の実施を監督する開発情報(DevInfo)システムの設置等を通じ、子どもの保護政策を監視しかつ評価することを目的とする効果的なデータ収集システムを確立するために締約国が現在行なっている努力を評価する。にもかかわらず、委員会は、子どもに関する包括的なかつ細分化されたデータを備えた国レベルのデータベースが引き続き存在しないことを、依然として懸念するものである。とくに委員会は、拷問、ドメスティックバイオレンスその他の形態の虐待および不当な取扱いを受けるおそれがある子ども、性的搾取および虐待の被害を受けた子ども、マイノリティ集団の子どもならびに子どもの難民および庇護希望者に関する統計が存在しないことを、懸念する。 20.委員会は、年齢、性別ならびに民族的および社会経済的出身によって細分化された、子どもの権利の遵守に関する包括的データを備えた国レベルのデータベースを創設するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。とくに、当該システムにおいては、権利を侵害されやすい状況にあって特別な保護措置が必要な可能性のある子どもに十分な注意が向けられるべきである。 普及、研修および意識啓発 21.委員会は、条約に関する広報資料の現在の量が少なくかつ質も悪いこと、および、子どもに対応する専門家集団の研修が不十分であることを懸念する。とくに委員会は、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカー、教員、出入国管理官、司法関係者およびメディア代表を対象とした子どもの権利に関する研修が限られていることを、懸念するものである。 22.委員会は、締約国が、公に配布するための条約に関する広報資料の量および質をさらに高めるよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国に対し、法執行官、保健専門家、ソーシャルワーカー、教員、出入国管理官、司法関係者およびメディア代表に焦点を当てながら、子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とした条約に関する研修を強化することも、奨励するものである。 市民社会との協力 23.子どもNGO連合が設置されたことおよび国家行動計画の策定に市民社会組織の積極的参加を求めたことなど、子どもの権利の保護における市民社会の役割の強化を目的とした措置は評価しながらも、委員会は、市民社会の代表との締約国の協力が、相当程度、国際機関または民間部門の団体との協力を通じて間接的に行なわれていることを、懸念する。 24.委員会は、締約国が市民社会との直接の協力を強化するよう勧告するとともに、締約国が、市民社会(非政府組織および子ども団体を含む)が子どもの権利の促進および実施に積極的かつ体系的に関与することを求めかつ奨励するべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ24)をあらためて繰り返す。これには、政策およびプロジェクトの計画段階ならびに委員会の総括所見のフォローアップおよび次回の定期報告書の作成に市民社会が参加することも含まれる。 B.子どもの定義(条約第1条) 25.委員会は、前回の勧告にも関わらず、婚姻に関する法定最低年齢について男女間に差別があること(男子18歳・女子17歳)を懸念する。委員会はさらに、子どもの最善の利益にかなう場合には14~18歳の子どもの婚姻を登録することが民法で認められていることを懸念するものである。委員会はまた、性的同意に関する明確な法定最低年齢がまだ定められていない旨の懸念(CRC/C/15/Add.191、パラ25)も、あらためて表明する。 26.委員会は、締約国に対し、国内法で女子および男子双方について18歳が最低婚姻年齢とされることを確保するため、民法を改正するよう促す。委員会はさらに、締約国が、例外として認められている最低婚姻年齢を16歳に引き上げる目的で法律を見直すとともに、そのような例外的事情とは何なのかについて法律で明確に規定するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、性的同意に関する明確な法定最低年齢を確立するよう求める。 C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 27.委員会は、締約国で人種的動機に基づく犯罪の件数の増加が報告されていること、とくに過激な若者グループおよびスキンヘッズによる排外主義的および人種主義的活動の報告があることを懸念する。この流れで、委員会は、子ども団体および若者団体を支援する国の資金の配分において「愛国教育」が優先事項に挙げられるのが一般的であることを懸念するものである。委員会はさらに、差別の禁止の原則が、障害のある子ども、マイノリティ集団の子ども(とくにロマの子ども)、路上の状況にある子ども、HIV/AIDSとともに生きている子どもならびに子どもの庇護希望者および難民との関係で、実際上、全面的には実施されていないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもの権利の保護との関連における差別の禁止の原則への明示的言及が国内法にないことを懸念するものである。 28.委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもが、いかなる事由による差別もなく条約上の権利を享受することを確保するよう、促す。委員会はさらに、同国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 異文化間の対話、寛容および多様性の尊重を促進するプログラムを、子ども団体および若者団体を支援する国の資金拠出の優先的プログラムに挙げることなどにより、若者の人種主義的および排外主義的活動と闘うための効果的措置をとること。 (b) 前掲の集団に属する子どもの状況の監視を強化するとともに、これに基づき、これらの子どもおよび脆弱な立場に置かれたその他の集団の子どもに対するあらゆる形態の差別の解消を目的とした、具体的かつ十分に的を絞った行動を掲げる包括的戦略を策定すること。 (c) 差別の禁止の原則、および、条約第2条に掲げられたあらゆる事由に基づく子どもに対する差別の禁止を国内法に編入すること。 子どもの最善の利益 29.委員会は、国の政策およびプログラムが子どもの最善の利益の観点から体系的に分析されていないことを懸念する。とくに委員会は、親のケアを奪われた子どもおよび法に触れた子どもに関わる法律および政策への同原則の統合が不十分であることを懸念するものである。 30.委員会は、国の政策の計画およびプログラム立案の際、子どもの最善の利益が十分に考慮されることを確保するためのシステムおよび手続を確立するよう、勧告する。委員会はとくに、少年司法および児童養護制度に関わる法律、政策およびプログラムについて、そこに子どもの最善の利益が全面的に統合されることを確保する目的で見直しを行なうよう、勧告するものである。 生命、生存および発達に対する権利 31.委員会は、締約国の乳幼児死亡率、子どもの死亡率および妊産婦死亡率が依然として高いことを懸念する。産前ケアおよび分娩直後のケアを向上させるために現在行なわれている努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、2003年以降、乳幼児死亡率が上昇していることに懸念を表明するものである。加えて委員会は、赤ちゃんにやさしい妊産婦施設の数が限られており、農村部の保健施設の8%にしか達していないことを懸念する。 32.委員会は、締約国が、産前ケア、産科ケアおよび新生児期ケアに関わる保健ケアサービスを強化することにより、乳幼児、子どもおよび妊産婦の死亡に対処するための努力を増強するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、産前ケア、産科ケアおよび新生児期ケアに従事する有資格の保健専門家を増員するとともに、これらの専門家が、子どもに敏感に対応する子育ておよび健康的なライフスタイルについての研修を受けることを確保し、かつこのような子育ておよびライフスタイルを促進するよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、プライマリーヘルスケアにおける「赤ちゃんにやさしい病院」イニシアティブの拡大を促進するよう勧告する。締約国は、このような取り組みにおいて農村部を優先するよう促されるところである。 子どもの意見の尊重 33.養子縁組との関係で子どもの意見を聴くことを認めた家族法の修正には積極的対応として留意しながらも、委員会は、民事上および行政上の手続ならびに少年司法の運営との関係では子どもの意見が依然として聴かれていないことを、懸念する。この流れで、委員会は、立法上、行政上および司法上の決定ならびに家庭および学校において子どもの意見の尊重がどのように保障されているかに関する情報がないことを、遺憾に思うものである。委員会はさらに、2007年の勧告(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ6)を想起しつつ、コミュニティおよび公的生活への子どもの真正な参加が行なわれていないこと、および、締約国が、意思決定プロセスへの子どもの参加は依然として原則ではなく例外であると認めていることに、懸念とともに留意する。 34.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 司法上および行政上の手続の影響を受ける可能性がある子どもに意見を表明しかつ聴かれる権利を認めるため、民事訴訟法の改正を検討すること。 (b) 新たな「少年に関わる刑事司法の発展の概念」に、意見を表明しかつ聴かれる子どもの権利が公式に含まれることを確保すること。 (c) 意見を聴かれかつ表明する権利が教育法で明示的に規定されることおよび教育法が生徒評議会の設置について定めることを確保するため、教育法を見直すこと。 (d) 家庭、学校およびコミュニティにおいて意見を聴かれる子どもの権利の尊重の原則を促進し、その便宜を図りかつ実施するとともに、自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を確保すること。 D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 35.子どもの登録を義務化した家族法改正は心強く思いながらも、委員会は、1か月以内に子どもを登録しなかった場合に非課税最低賃金の1~3〔か月〕分のの過料が科されることを懸念する。さらに、ロマの子どもが登録されないことは稀であるという締約国からの情報には留意しながらも、委員会は、教育、保健サービスおよび雇用にアクセスするために必要な身分証明書類を持たないロマが多いことに関する人種差別撤廃委員会の懸念(CERD/C/UKR/CO/18、パラ11)をあらためて繰り返すものである。 36.委員会は、締約国に対し、民族および社会的背景に関わらずすべての子どもが無償のかつ義務的な出生登録を効果的に利用できることを確保するため、積極的誘引策をとるよう促す。委員会は、締約国がその際、親が子どもを登録しないことに対するいかなる懲罰的過料も廃止するよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、ロマのすべての子どもの登録を奨励しかつ確保するための意識啓発キャンペーンを強化するよう、求める。 名前および国籍 37.委員会は、締約国報告書(CRC/C/UKR/3-4)パラ58で述べられているように、以下の事情があるときは子どもが締約国によって市民権を離脱させられる可能性があることに、懸念を表明する。(a) 子どもおよび少なくとも一方の親が国外永住のために出国し、かつ少なくとも一方の親がウクライナ市民権を放棄するとき。(b) 子どもが出生時にウクライナ市民権を取得し、かつ出生時に少なくともいずれかの親が外国人または無国籍者であった場合、当該市民権は、子どもの居所に関わらず、いずれかの親の申請によって離脱することができる。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国籍に対する子どもの権利、および、いかなる事由によってもかつ親の地位に関わらず国籍を剥奪されない子どもの権利を法律上も実務上も保障するため、法律を改正すること。 (b) 無国籍者の地位に関する1954年の条約および無国籍の削減に関する1961年の条約を批准すること。 表現ならびに結社および平和的集会の自由 39.委員会は、表現の自由に対する子どもの権利が国内法で明示的に保障されていない旨の締約国の情報に、遺憾の意とともに留意する。結社および平和的集会の自由に関して、委員会は、若者および子どもの公的団体に関する法律で、政治的な集会およびデモへの子どもの参加ならびに政治的および宗教的主義にのっとった子どもの結社(CRC/C/UKR/3-4、パラ62)が禁じられていること、および、このような規定は条約第15条2項に掲げられた制限の範囲と両立しない可能性があることを、懸念するものである。 40.条約第13条に照らし、委員会は、締約国に対し、表現の自由に対する子どもの権利が国内法で明示的に保護されることを確保するよう、求める。委員会はさらに、締約国に対し、条約第15条で保障された結社および集会の自由に対する子どもの権利との両立性を確保するため、若者および子どもの公的団体に関する法律の包括的見直しを行なうよう、促すものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 41.委員会は、とくに地区警察署における最初の尋問の際に、子どもを含む被拘禁者が不当な身体的取扱いを受けているという訴えが相当数にのぼることを、深く懸念する。とくに委員会は、民警隊員が自白を引き出す目的で少年に対して行なう拷問および不当な取扱い、ならびに、ウクライナ国境警備隊による収容中に移住者の子どもに対して行なわれる拷問および不当な取扱いの訴えがあることに、重大な懸念を覚えるものである。委員会はさらに、家庭、学校、刑事制度および代替的養護の現場における体罰が禁じられているにも関わらず、家庭で体罰が広範に用いられているという報告があることを懸念する。この文脈において、子どもの権利に関するおよびこのような行為が禁じられていることに関する子どもおよび公衆の意識および理解の水準が低いことは、委員会にとって深刻な懸念の対象である。 42.委員会は、締約国に対し、子どもに対する拷問およびあらゆる形態の不当な取扱いを禁止しかつ撤廃するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。 (a) 民警およびウクライナ国境警備隊の隊員を対象とした、拷問および不当な取扱いの禁止ならびに少年司法に関わる国際基準についての包括的研修を開始すること。 (b) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書に基づき、締約国が国レベルの防止機構を公式に設置するまでの間、「移動グループ/チーム」(CCPR/C/UKR/CO/6/Add.1、パラ11およびCAT/C/UKR/CO/5、パラ12参照)等による、自由を奪われた子どもに関する独立した監視を強化すること。 (c) 子どもに対する拷問または不当な取扱いが訴えられているすべての事件について迅速な、独立のかつ効果的な調査が行なわれることを確保するとともに、適当なときは犯罪者を訴追すること。 (d) 拷問および不当な取扱いを防止する法的保護措置の尊重を向上させる目的で、自由を奪われた子どもによる司法へのアクセスに関する研究を行なうこと。 (e) 前向きかつ非暴力的な子育てを促進する意識啓発キャンペーンおよび公衆の教育等を通じ、現行法の禁止規定の効果的実施を確保することにより、家庭その他の場におけるあらゆる形態の体罰を終わらせること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 43.子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299参照)に関して、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告の実施を確保する等の手段により、ジェンダーにとくに注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。 (c) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表と協力し、かつその技術的援助を求めるとともに、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)ならびに他の関連の機関、とくに国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)およびNGOパートナーの技術的援助も求めること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 44.委員会は、出生時および子ども時代のその後の段階で家庭環境を奪われる子どもの割合が高いことを懸念する。これとの関連で、委員会は、家族法(第143条3項)が、重度の身体的または精神的障害をもって生まれた子どもおよびその他の「重要な事情」がある子どもの遺棄を許容していることに、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、子どものいる家族の保護および援助を目的とする国の機関の数が不十分でありかつ質が劣悪であること、ならびに、このような機関を監視しかつ評価するシステムが存在しないことを、深く懸念する。親の権利を停止する裁判所の判決がこの3年は減少していることに留意しながらも、委員会は、親の権利の剥奪が依然として多数行なわれており、家庭環境を奪われる子どもの人数が容認しえないほど多数にのぼっていることを憂慮するものである。 45.委員会は、締約国に対し、家族法第143項3項を改正して条約第9条と一致させるよう促す。委員会は、締約国に対し、とくに、親の義務の懈怠に関わる懲罰的措置から、子どもの養育責任を履行する能力の増進を目的とする、有子家庭のための支援システムおよび社会手当の強化へと移行することによって家族を強化するために必要な支援および資源を提供する努力を強化するよう、促すものである。これとの関連で、委員会は、代替的養護または施設への子どもの措置は最後の手段として、かつ子どもの最善の利益にかなう場合にのみ行なうべきである旨の前回の勧告(CRC/C/15/Add.191、パラ48(d))をあらためて繰り返す。委員会はまた、締約国が、窮乏している家族(ひとり親を含む)に対する国のサービスおよび支援を効果的に監視しかつ評価するためのシステムを整備することも勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 46.委員会は、貧困、失業、家族解体および労働移住によって家庭環境を奪われる子どもの人数が激増していることを、深く懸念する。子ども保護制度改革のための国家プログラムが承認されたこと(内閣決議第1242号)、および、里親家族および家庭型子どもホームのような代替的養護制度をさらに発展させるための取り組みが強化されていることには留意しながらも、委員会は、改革のための明確な戦略が存在しないため、焦点がいまなお脱施設化へと転換させられていないことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、入所型養護のもとに留まっている子どもが多数にのぼること、および、家族の再統合のためのサービスが存在しないことを懸念する。委員会はさらに、とくに施設養護への子どもの措置を監視する子ども問題局の人的配置水準が不十分であることを懸念するものである。 47.委員会は、締約国に対し、子ども保護制度改革のための国家プログラム(内閣決議第1242号)にしたがって脱施設化政策を強化するとともに、以下の措置をとるよう促す。 (a) 拡大家族、里親家庭およびその他の態様の家庭型措置先への子どもの措置を拡大すること。 (b) 家族の再統合の促進を目的とした法令上の枠組みを強化すること。 (c) とくに子ども問題局の技術的資源、人的資源および財源を強化する等の手段により、子どもの養護に関わるすべての取り決め、とくに障害または特別なニーズを有する子どもの施設措置を効果的に監視すること。 (d) 上述の勧告の実施において、子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)〔PDF〕および「親のケアを受けていない子ども:緊急に行動する必要性」に関する欧州評議会議員会議決議1762(2010)を考慮すること。 養子縁組 48.委員会は、両親を失った子どもおよび家庭環境を奪われた子どもの国内養子縁組を奨励するための努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、実親がその同意の結果について十分な情報を提供されることを確保するための保障が存在しないこと、および、養親となろうとする者が自ら子どもを選択できることを含め、法律に乖離があることを懸念するものである。委員会はさらに、締約国が、委員会の前回の勧告(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ30)どおり、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をまだ批准していないことを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会は、批准のための法案が2010年12月に提出され、議会による緊急の検討が求められた旨の情報を心強く思うものである。 49.委員会は、締約国に対し、実親が手続についておよび自己の子どもの養子縁組に対する同意の意味するところについて十分な情報の提供を受けることを確保するための法律を制定するよう、求める、委員会はさらに、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)に加入するよう勧告するものである。 虐待およびネグレクト 50.2005年以降、家庭内暴力事案の統計的記録が作成されていること、および、子ども期保護法で子どもに対するあらゆる形態の暴力が禁じられたことには積極的対応として留意しながらも、委員会は、あらゆる場面で子どもの虐待およびネグレクトが大規模に行なわれており、かつ増加していることを憂慮する。委員会はまた、子どもの虐待およびネグレクトの事案のうち通報および調査の対象となるものの割合が低く、かつこのような犯罪の訴追件数がきわめて限られていることも、懸念するものである。さらに委員会は、被害を受けた子どもおよび家族のすべての構成員(暴力を振るわない親または虐待もしくはネグレクトを行なう親を含む)が利用可能な心理社会的支援およびカウンセリングのプログラムを含め、親の責任の強化を目的とする保健上および社会上の防止措置が不十分であることを、懸念する。加えて委員会は、家庭外でのケア(特別教育および社会的更生のための施設を含む)で生じた虐待およびネグレクトの事案に関するものも含め、子どもの虐待に関する体系的な調査研究およびデータ収集が行なわれていないことを懸念するものである。委員会はさらに、14歳以上の子どもが裁判所に直接保護を求める家族法(第18条)上の権利が周知されていない可能性があることを懸念する。 51.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の子どもの虐待およびネグレクトを防止しかつこれと闘うための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう、促す。 (a) 子ども期保護法に関する公衆の意識を向上させ、ならびに、同法の違反を発見しかつ調査するソーシャルワーカーおよび法執行官のスキルおよび能力を増進させる等の手段により、子ども期保護法の効果的実施を確保すること。 (b) カウンセリングおよび親としてのスキルの訓練のような防止措置をとり、かつ虐待およびネグレクトの悪影響に関する公衆教育プログラムを実施すること。 (c) 被害を受けた子ども、虐待またはネグレクトを行なう親および他の家族構成員に対し、十分な保護、および心理社会的支援のような十分なサービスを提供すること。 (d) 子どもとともに働く専門家が、子どもの虐待およびネグレクトの発見ならびに子どもの虐待およびネグレクトが疑われる事案を通報しかつ適切な行動をとる義務についての研修を受けることを確保すること。 (e) 子どもの虐待に関する包括的データを体系的に収集しかつ分析するための十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。委員会はさらに、虐待およびネグレクトの発生を少なくするための適切な措置を締約国が編成する際、かつ、虐待およびネグレクトが行なわれた事案に対応するための適切な責任追及の機構を設置する際、このようなデータが参考にされるべきことを勧告する。 (f) 子ども、親および子どもとともに働く専門家の間で家族法第18条に関する意識を高めるための、焦点の明確な取り組みを促進すること。 F.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)) 障害のある子ども 52.委員会は、障害のある子どもおよびその家族を対象とした教育サービス、社会サービスおよび保健サービスが依然として不十分であることを懸念する。とくに委員会は、知的障害のある子どが教育に平等にアクセスすることを確保するうえで多くの障壁が残っていること、および、早期介入および特別教育が行なわれていないために障害のある多くの子どもが施設に措置されていることを、遺憾に思うものである。さらに委員会は、子どもが障害の有無に関わらず生後3年間は乳児院に措置されており、かつこのような子どもが病状を有していると認定されるために、その発達および生活の質に悪影響が生じ、かつ施設化がさらに強化されることを懸念する。 53.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがい、かつ非政府組織と協力しながら、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの権利を保護し、かつ、このような子どもが自分自身の家庭環境およびコミュニティ環境で教育サービス、社会サービスその他のサービスに平等にアクセスできるようにするための、包括的政策を策定すること。委員会は、締約国が、その際、知的障害のある子どもおよび若者ならびにその家族の健康に関するWHOヨーロッパ宣言(2010年にWHOヨーロッパ地域加盟国が支持)で強調されたすべての優先事項に対応するよう、勧告する。 (b) 子どもの施設措置を防止するため、親の組織と協力しながら、障害のある子どものための早期介入サービスおよびその家族に対する支援を発展させかつ強化すること。 (c) 障害のある子どもを対象とした入所施設におけるこれらの子どもの権利の状況を緊密に検討する監視システムを設置するとともに、当該監視において市民社会組織の参加が重視され、かつ行動に関する勧告をフォローアップするための具体的措置が組みこまれることを確保すること。 健康および保健サービス 54.委員会は、保健部門への予算配分額が低いまま(国内総生産(GDP)の3.6%)であり、無償の保健ケアサービスに関する憲法上の規定が絵に描いた餅となっていることを懸念する。現在進められている保健ケア改革および保健ケアに関する義務的社会保険法案には積極的対応として留意しながらも、委員会は、プライマリーヘルスケア制度の基盤が不十分であり、かつ保健ケアサービスの費用負担が高いために、貧しい家族、とくに農村部で生活している家族による保健サービスへのアクセスに悪影響が生じていることを、懸念するものである。同国の乳児死亡率および子どもの死亡率が高いことにかんがみ、委員会は、生後6か月までの乳児に対する母乳育児が減少していること、および、母乳代替品の販売促進に関する国際基準が十分に執行されていないことを懸念する。加えて委員会は、近年、公衆が予防接種に対する不信感を抱くようになっており、2009~2010年の子どもの予防接種率が急激に減少したという報告があることを懸念するものである。 55.条約第24条に照らし、委員会は、締約国に対し、保健部門への予算配分額を増やし、かつ資金の透明性を確保するよう促す。委員会は、現在進められている保健ケア改革において、プライマリーヘルスケア制度および農村部における保健サービスの質が優先されるべきことを勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、母乳育児の促進を強化し、かつ母乳代替品の販売促進に関する国際基準を執行するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの予防接種に対するコミットメントを新たにするとともに、この点に関する事実に基づいた情報を一般公衆に提供することも、促すものである。 思春期の健康 56.若者の間で健康的なライフスタイル、責任ある親のあり方およびリプロダクティブヘルスを促進するクリニックが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、思春期の健康が悪化しており、かつクラミジアのような一部の性感染症が増加しているという報告があることを懸念する。委員会は、意識水準が低いこと、サービスが存在しないことおよび思春期の健康を専門とする保健実務家の人数が限られていることが主要な助長要因であることを懸念するものである。委員会はさらに、10代の妊娠中絶件数が多く、妊産婦死亡の主たる原因となっていることを懸念する。これとの関連で、委員会は、14~18歳の子どもの妊娠中絶に関わる決定が親と共同で行なわれることに留意するものである。 57.委員会は、締約国が、思春期の健康問題に関する包括的研究を実施するとともに、これを思春期の健康政策および学校カリキュラムにおけるプログラムを立案する際の基盤として活用するよう、強く勧告する。委員会は、このようなプログラムにおいて、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、10代の妊娠、危険な妊娠中絶および性感染症の予防に焦点が当てられるべきことを、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、とくに農村部において、思春期の保健ケアのための人員、便益およびサービスに投資するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、10代の妊娠中絶に関わる妊産婦の死亡を削減するために緊急の措置をとるとともに、妊娠中絶に関わる決定において子どもの意見が常に聴かれかつ尊重されることを法律上も実務上も確保するよう、勧告するものである。委員会は、締約国がユニセフの技術的援助を求めるよう勧告する。 精神保健 58.2009~2010年における精神医学的援助の向上を目的とする保健省令第176号が2009年に採択され、かつ児童精神医学がその優先課題のひとつに挙げられたことは歓迎しながらも、委員会は、成人および子どもと対象とする国レベルの包括的な精神保健政策が存在しないことを懸念する。委員会はさらに、子どもの自殺の件数が多く、とくに農村部で暮らしている子どもおよび男子がその影響を受けていることを懸念するものである。 59.委員会は、締約国が、WHOによる中核的勧告のすべての義務的要素(精神保健の促進、カウンセリング、プライマリーヘルスケア、学校およびコミュニティにおける精神保健障害の予防、ならびに、外来および入院による子どもにやさしい児童精神保健サービスを含む)を備えた、包括的かつ全国的な児童精神保健政策を策定するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、学校で利用可能な心理相談サービスおよびソーシャルワーカーを増やす等の手段により、子どもおよび若者の自殺の防止を目的とした努力を強化することも、勧告するものである。委員会は、締約国がWHOの技術的援助を求めるよう勧告する。 薬物、タバコ、アルコールその他の有害物質の使用 60.委員会は、子どもの間で薬物注射が行なわれることが増えており、とくに収監されている子ども、移住労働者の親に置いていかれた子どもおよび路上の状況にある子どもがその影響を受けていること、および、薬物の使用がHIV感染の主要な理由のひとつになっていることを、深く懸念する。委員会は、危険な状況に置かれたこれらの子どもの治療およびリハビリテーションを目的とする、若者にやさしい専門のサービスが存在せず、かつ、法律上および態度上の障壁によりそのようなサービスへのアクセスが妨げられていること(2011年1月18日付内務省麻薬執行局命令第40/2/1-106号など)を、深く懸念するものである。委員会はまた、締約国の麻薬戦略(2010~2015年)においてこれらの問題が十分に考慮されておらず、かつ、薬物所持者に関する新たな規則によって、危険な状況に置かれた青少年が刑事司法制度と関わりになることが増える可能性があることも、懸念する。加えて委員会は、子どもに対するタバコおよびアルコールを販売を禁じた現行法が有効でなくかつ十分に執行されていないこととも関連して、子どもによるタバコおよびアルコールの使用が高率にのぼっており、かつ使用開始年齢が低いことを深く懸念するものである。 61.委員会は、締約国が、非政府組織と連携しながら、子どもおよび若者の薬物使用に関わる憂慮すべき状況に対応するための包括的戦略を策定し、かつ、条約にしたがった、科学的知見に基づく広範な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSに関する最近の立法上の進展、および、ユニセフの主導により成果を収めている、もっとも危険な状況に置かれた青少年を対象とする試行プログラムをもとに、子どもおよび若者を対象とする、薬物依存の治療および健康被害軽減のための、若者にやさしい専門的サービスを発展させること。 (b) 薬物の所持または使用を理由として子どもを犯罪者として扱う法律を改正する等の手段により、刑法によってこのようなサービスへのアクセスが妨げられないことを確保すること。 (c) 危険な状況に置かれた子どもとともに働く保健従事者および法執行官がHIV予防について十分な研修を受けること、ならびに、危険な状況に置かれた子どもに対する法執行官による虐待が捜査されおよび処罰されることを確保すること。 (d) 子どもに対するアルコールおよびタバコの犯罪を禁じた規定の執行を強化するとともに、子どもおよび若者による有害物質の使用および濫用の根本的原因に対処すること。 HIV/AIDS 62.委員会は、子どものHIV感染率およびAIDSに起因する死亡率が高いこと、ならびに、予防面の進展にも関わらず、母子感染率が依然として高いことを憂慮する。国家HIV/AIDSプログラム(2009~2013年)および最近採択された後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律は歓迎しながらも、委員会は、2006年にはHIV/AIDSとともに生きている登録済みの子どもの半数強しか抗レトロウィルス治療を受けていなかった旨の情報(CRC/C/UKR/3-4、パラ108)が示すように、HIV/AIDSとともに生きる子どもがケアおよび支援のためのサービスにアクセスできていないこと、ならびに、HIV/AIDSに関わる必須の技術、設備および治療のための資金が限られていることを、懸念するものである。HIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画には留意しながらも、委員会はさらに、もっとも危険な状況に置かれた15~19歳の青少年(薬物使用者、路上の状況にある子どもおよびセックスのために搾取されている子ども)がますますHIV/AIDSに感染しやすくなっていることを懸念する。委員会はまた、学校における、HIV/AIDSとともに生きている子どもに対する事実上の差別についても懸念を覚えるものである。 63.委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号を想起しながら、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 国家HIV/AIDSプログラム(2009~2013年)およびHIV感染のリスクを有するおよびHIVに感染しやすい子ども・若者の間でのHIV予防ならびにHIV/AIDSの影響を受けている子ども・若者のケアおよび支援のための国家戦略行動計画の効果的実施を、これらのプログラムに対して十分な公的資金および資源を配分することによって、確保すること。 (b) HIV/AIDSの影響を受けているまたはHIV/AIDSのリスクに直面している子どもおよび若者(路上の状況にある子どもおよび有害物質濫用に苦しんでいる子どもを含む)の人権の尊重にとくに焦点を当てながら、後天性免疫不全症候群(AIDS)の予防および住民の社会的保護に関する法律を実施するためにあらゆる措置をとるとともに、秘密が守られ、かつ若者にやさしいサービスへのアクセスを確保すること。 (c) 青少年および一般公衆を対象とした、HIV/AIDSその他の賤感染症に関する広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを強化すること。 生活水準 64.家族、子どもおよび若者への支援が2010年度国家経済社会開発計画の社会的優先課題に挙げられていることは歓迎しながらも、委員会は、子どものための締約国の社会保護制度が不十分であることに重大な懸念を覚える。委員会は、多子家庭または3歳未満児のいる家庭の登録貧困発生件数が最大であることに、特段の懸念とともに留意するものである。汚職対策法案には評価の意とともに留意しながらも、委員会はさらに、締約国における汚職の水準が高いことを深刻に懸念する。 65.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、国家経済社会開発計画およびその後の貧困削減プログラムの実施に際し、子どものための国家行動計画を子どもに関する戦略的政策ツールとして位置づけるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、貧困戦略および保護のための戦略において、脆弱な立場に置かれた有子家庭をとくに明確な対象とするよう促すものである。汚職と効果的に闘う目的で、委員会は、締約国に対し、ウクライナにおける汚職の防止および汚職対策の原則に関する法律を遅滞なく採択するよう、促す。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 66.委員会は、学齢の子どもの人数が減少していることにより、教育施設がとくに地方で削減されており、かつ農村部にすんでいる子ども、ロマの子どもおよび障害のある子どもによる教育へのアクセスが制限されていることを懸念する。委員会はさらに、就学前教育施設の数が減少しており、子どもの61%しか就学前教育施設に就学していないことに、特段の懸念とともに留意するものである。締約国が教育に対する公的支出の水準を相対的に高いまま維持していること(GDPの6.2%)は認めながらも、委員会は、締約国において公教育制度に対する資金拠出が不十分であり、かつ教員の給与が低いことに関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/UKR/CO/5、パラ30)をあらためて繰り返すとともに、教育インフラの質が貧弱であることについて懸念を表明する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 教育部門に配分される支出の対GDP比を高めることにより、公教育制度に対して十分な資金が拠出されることを確保すること。 (b) 教育施設数および学校その他の教育機関に通う子どもの全般的人数が減少していることの原因およびこれに関して考えられる解決策についての分析を行なうこと。 (c) インクルーシブ教育を導入し、かつ特別なニーズを有する子どもの社会的統合を促進するとともに、脆弱な立場に置かれた集団の子ども(前掲の集団を含む)が教育制度において差別されないことを確保すること。 (d) 農村部における就学前教育および一般教育の利用可能性、アクセス可能性および質を高めること。 (e) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。 教育の目的 68.第9学年段階で人権教育が義務的とされていることには積極的対応として留意しながらも、委員会は、人権の尊重および促進ならびに異文化間の理解および寛容が締約国における教育の基本的原則としてとくに挙げられていないことを懸念する。委員会はさらに、学習上の困難、学校倦怠感、同じ学校の生徒との関係における心理的不安感および教員から拒絶されているという感覚を有する子どもが多数にのぼることにかんがみ、現行の教育制度が子どもの学習スキル、自尊感情および自信を十分に発達させていないことを懸念するものである。 69.委員会は、締約国に対し、人権教育のための世界プログラムで勧告されているように人権教育に関する国家的行動計画を策定するよう、促す。これとの関連で、委員会は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国がユネスコ、ユニセフおよびOHCHRの援助を求めるよう勧告する。 休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動 70.委員会は、所得が不十分であること、文化的施設およびプログラムが設けられていないことおよび機会がないことを理由として、文化的生活および活動に参加できない子どもが多数にのぼることを懸念する。この流れにおいて、委員会は、子どもの間でテレビの視聴ならびにコンピュータークラブ通いおよびゲームセンター通いが増えていること、ならびに、これに応じて、効果的な監視制度が設けられていないために、そのような場所に子どもが訪れることについての規制が遵守されていないことを懸念するものである。 71.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、休息および余暇に対する子どもの権利、子どもがその年齢にふさわしいスポーツ、遊びおよびレクリエーション活動に従事する権利ならびに文化的生活および芸術に自由に参加する権利を保障するための努力を強化するよう、強く勧告する。とくに委員会は、締約国が、スポーツ、教育および文化的活動のための機関、便益およびプログラムの数を領域全体で増やすよう勧告するものである。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条) 子どもの庇護希望者および難民 72.難民および援助または一時保護がふさわしい者に関する法案、および、保護者のいない子どもの庇護希望者に関わる国の機関間の協力についての訓令案には留意しながらも、委員会は、医学的および心理的治療ならびに通訳のような国の援助およびサービスに対する子どもの庇護希望者および難民のアクセスとの関連で法律上および行政上の欠陥があることを、懸念する。委員会は、締約国が法定代理人を任命しないために、保護者のいない子どもおよび身分証明書類を持たない子どもの庇護希望者による庇護手続へのアクセスが制限されていることを、とりわけ懸念するものである。保護者のいない子どもの庇護希望者がときには数か月間にわたって収容され、かつ退去強制の対象とされていることは、委員会にとって特段の懸念の対象である。委員会はさらに、 15~18歳の子どもの難民数に関する公式な統計が利用可能とされていないことを懸念する。この流れにおいて、委員会はまた、締約国の出生登録手続が、条約第7条に基づく権利を子どもの庇護希望者に対して保障していない可能性があることも懸念するものである。 73.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 難民および援助または一時保護がふさわしい者に関する法案を遅滞なく採択するとともに、当該新法において、認定難民の子どもに対して派生的に難民資格が保障されることを確保すること。 (b) 保護者のいない子どもの庇護希望者が庇護手続ならびに援助および保護(無償の通訳へのアクセスを含む)に効果的にアクセスできるよう、このような子どもに対して迅速に法定代理人が任命されることを確保すること。 (c) いかなる子どもの庇護希望者または難民もその自由を奪われないことを確保すること。 (d) 保護者のいない子どもの庇護希望者に関わる国の機関間の協力についての訓令案を採択すること。 (e) 難民および庇護希望者の登録に関わるデータ収集および情報保存のための効果的システムを設置し、かつ庇護希望者である子どもおよび難民に関する公式統計において18歳未満のすべての者が網羅されることを確保するため、迅速な措置をとること。 (f) 締約国で生まれた庇護希望者の子どもの出生登録およびこのような子どもに対する出生証明書の発行を確保するため、現行規則を改正すること。 児童労働を含む経済的搾取 74.締約国で最悪の形態の児童労働が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、インフォーマル経済および違法経済活動、とくに違法な炭鉱、セックス産業および路上物乞い組織で働く15歳未満の子どもの人数が多いことに関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/UKR/CO/5、パラ21)をあらためて繰り返す。委員会は、対話の際に締約国代表団が認めたように、炭鉱で働く子どもの人数が多いこと、および、インフォーマル部門における児童労働の実態を明らかにするうえで課題が存在することを、依然として深く懸念するものである。委員会はさらに、子どもに関する現行労働法の違反(困難なおよび危険な条件下における子どもの雇用を含む)が大規模に行なわれていることを懸念する。ゴスナゾルトルーダ(Gosnadzortruda、国家労働法遵守監督局)が行なっている労働監察について事前質問事項に対する文書回答で提供された情報は歓迎しながらも、委員会は、同局がインフォーマル経済部門、および家庭における児童労働を監視する権限を有していないことを懸念するものである。 75.委員会は、締約国に対し、とくにインフォーマル部門における搾取的児童労働を撤廃するためにすべての適当な措置をとるよう、促す。具体的には、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) ゴスナゾルトルーダが児童労働に関する法律の厳格な順守を確保する体系的かつ効果的な観察を行なえるようにするため、同局に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を提供すること。 (b) ゴスナゾルトルーダの権限を拡大し、インフォーマル経済部門および家事領域も網羅することを検討すること。 (c) 児童労働撤廃国際計画が運用している児童労働モニタリングシステムの活用を通じ、インフォーマル部門における児童労働の監視を増進させること。 (d) とくに、ゴスナゾルトルーダおよび他の法執行機関の監察官を対象として児童労働に関する国際基準についての研修を行なうことを通じ、児童労働に関する現行法に違反した者に対して適用可能な制裁の効果的執行を確保すること。 (e) 違法な炭鉱で働く子どもならびに露天で石炭の分別および運搬に従事する子どもの特定に関してILO・条約勧告適用専門家委員会が行なった、最低年齢条約(1973年、第138号)に関する2010年の個別意見に掲げられた勧告を、締約国におけるこのような最悪の形態の児童労働をいかなるものであれ根絶する目的で、全面的に実施すること。 路上の状況にある子ども 76.委員会は、締約国も「深刻な」問題として認めている(CRC/C/UKR/3-4、パラ12)、路上の状況にある子どもの人数が多いことを深く懸念する。委員会は、このような子どもがHIV/AIDS、性的搾取、強制労働および警察による暴力のような、健康関連のリスク(有害物質および薬物の濫用に関わるものを含む)にさらされやすいという報告があることを、深刻に懸念するものである。これとの関連で、委員会は、路上の状況にある子どもの保護および社会的再統合のための社会サービス(衣服、宿泊所、保健ケアおよび教育の提供を含む)の利用可能性およびアクセス可能性が限定されていること、ならびに、薬物を濫用する子どもを対象とするリハビリテーションセンターの本格的ネットワークが存在しないという情報があることを、懸念する。委員会はさらに、路上の状況にある子どものためのシェルターの収容能力が著しく不十分であることを懸念するものである。加えて委員会は、路上の状況にある子どもの権利の保護およびその社会への再統合の促進に関して、非政府組織との協力が全般的に行なわれていないことを懸念する。 77.委員会は、締約国が、国際のおよび国際的な非政府組織と協力しながら以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもが路上の状況に置かれることの防止、このような子どもの支援および社会的再統合のための国家的戦略を策定すること。 (b) 路上の状況にある子どもが利用可能なシェルターおよび心理社会的リハビリテーションセンターの数を増やし、かつその質を高めること。 (c) 路上の状況にある子どもの全面的発達を支援するため、このような子どもに対し、十分な栄養、衣服、住居、保健ケアおよび教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)が提供されることを確保すること。 性的搾取および虐待 78.委員会は、2010年に児童ポルノ対策法が採択されたことを、性的虐待からの子どもの保護の増進、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書との国内法の調和に向けたきわめて重要な一歩として歓迎する。さらに、刑法の改正によって売買春への関与に対する刑罰が引き上げられ、かつ被害者が青少年または若年であることが加重要素と位置づけられたこと(第303条)を歓迎しながらも、委員会は、締約国がまだ児童買春の明確な禁止を法律に編入していない旨の懸念(CRC/OPSC/UKR/CO/1、パラ17)をあらためて表明するものである。委員会は、これとの関連で、児童買春を含む売買春対策法案、および、選択議定書上のすべての犯罪に関わる地方政府の協力を強化するための訓令集に留意する。委員会はさらに、以下の点について重大な懸念を覚えるものである。 (a) 子どもの性的虐待、搾取ならびに売買春およびポルノ的資料への子どもの関与の事案数が増えていること。 (b) インターネットで児童ポルノを利用する者の人数が憂慮すべきほど多いこと(1か月あたり500万人)、および、ポルノ的ウェブサイトが締約国における全インターネット・トラフィックの70%を占めていること。 (c) これとの関連で刑事事件の手続が開始されることがきわめて少なく、かつ訴追の成功例に関する情報も存在しないこと。これとの関連で、委員会は、未成年者問題を担当する警察部局に十分な要員が配置されていないことの悪影響に、懸念とともに留意する。 (d) 性的搾取および虐待の被害を受けた子どもに援助を提供することをとくに目的とするリハビリテーションセンターの数が著しく限られていること。 (e) 性的搾取および人身取引の被害を受けた子どもに関する、年齢、性別ならびに民族的および社会経済的出身ごとに細分化された統計が存在しないこと。一方で委員会は、内務省がこの目的のためのデータベースを設置する計画であることに留意する。 79.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) とくに児童買春および他のあらゆる形態の子どもの性的搾取との関連で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と国内法とを調和させるための努力を引き続き増進させること。 (b) 開発情報(DevInfo)システムとの関連も踏まえながら、性的搾取および虐待ならびに選択議定書上のその他の犯罪の被害を受けた子どもに関するデータ収集のシステムを設置するとともに、この点に関わるデータベースを設置しようとする内務省の計画を進めること。 (c) 地方レベルで選択議定書上の犯罪を効果的に防止しかつこれと闘うための訓令集を採択するとともに、これとの関連で、性的虐待および搾取に関わるすべての防止活動および保護活動において、根本的問題である貧困に対応すること。 (d) 未成年者問題を担当する警察部局屁の技術的資源、人的資源および財源を増加させる等の手段により、性的搾取および虐待ならびに児童ポルノの事件を摘発しかつ調査するソーシャルワーカーおよび法執行機関の能力を強化すること。 (e) 性的搾取および虐待ならびに選択議定書上のその他の犯罪の被害を受けた子どもへの援助の提供を専門とするリハビリテーションセンターの利用可能性およびアクセス可能性を高めること。 (f) 前掲の勧告を実施するため、ユニセフその他のパートナーの援助を引き続き求めること。 売買、取引および誘拐 80.「未成年者」に関する特別規定を掲げた、人身取引に関する刑法第149条の改正には留意しながらも、委員会は、刑法がいまなお子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と全面的に一致していないことを、依然として懸念する。さらに、人身取引の分野で、人身取引対策国家プログラム(2007~2010年)の採択を含む多数の取り組みが行なわれていることは認めながらも、委員会は、ウクライナがヨーロッパにおける人身取引の最大の送り出し国のひとつであり続けていることを、依然として懸念するものである。これとの関連で、委員会は、子どもの人身取引に関与した者の訴追に関する情報がないことを遺憾に思うとともに、必要不可欠な防止手段として、対象を明確にした広報およびのための意識啓発キャンペーンを行なう必要があることに留意する。 81.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施のための規則を実施するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、当該措置に関して次回の定期報告書で報告すること。 (b) 子どもの人身取引および売買に関する国内法を選択議定書と一致させるための努力を引き続き行なうこと。 (c) とくに国外での仕事、モデル業、留学および美人コンテストへの参加の約束を通じて誘惑されることの危険性に焦点を当てながら、子どもの人身取引に関する広報および意識啓発のためのキャンペーンを強化すること。 (d) 内務省下のサイバー犯罪・人身取引対策局に対して必要な資源を配分する等の手段により、子どもの人身取引として訴えられたすべての事件の捜査を強化するとともに、責任者が裁判にかけられることを確保すること。 (e) ユニセフ、国際移住機関その他のパートナーの技術的援助を求めること。 ヘルプライン 82.委員会は、委員会が勧告した(CRC/C/OPSC/UKR/CO/1、パラ34)ように、危険な状況に置かれた子どもまたは保護を必要とする子どものための無償のヘルプラインが設置されたこと(トラストライン、およびラ・ストラーダ・ウクライナが設置したものなど)を歓迎する。 83.委員会は、締約国が、非政府組織と協力しながら子どものためのヘルプラインをさらに強化しかつ拡大するとともに、これらのヘルプラインが、3ケタの番号であり、ヘルプラインにとっても利用者にとっても費用負担がなく、かつ24時間利用可能であることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子ども関連のプログラムおよび学校における情報提供により、利用可能なヘルプラインに関する子どもの意識を高めるよう勧告するものである。 少年司法の運営 84.子どものための国家行動計画(2010~2016年)に掲げられた少年司法制度体制は歓迎しながらも、委員会は、この点に関わる改革のペースが遅いことを懸念する。とくに委員会は、少年司法の発展の構想を実施するための作業部会が2010年4月に廃止され、この取り組みに代わって、ウクライナにおける少年に関わる刑事司法の発展の構想が導入された旨の情報に、懸念を覚えるものである。委員会は、法に触れた子どもに関わる懲罰的アプローチへの後退の危険性があることを深く懸念する。このような危険性は、子どもの未決拘禁および審判中の拘禁が頻繁に行なわれていること、収監刑を言い渡される少年の割合が高いこと、ならびに、収監者に占める子どもの割合が高いことにも表れているところである。委員会はさらに、刑法第102条1項および3項(e)に基づき、法に触れた16歳および17歳の子どもが最長15年という長期の収監刑の対象となることを懸念する。 85.加えて委員会は、刑事責任に関する最低年齢が14歳と定められているにも関わらず、締約国が、「社会的に危険な行動」をとった11~14歳の子どもを対象とする社会的更生施設を運営していることに、深刻な懸念を覚える。委員会はさらに、議会人権コミッショナーがこれらの施設を「特別少年拘置施設」と呼んでいること、および、2009年には1000人以上の子どもがこれらの施設に送致されたことに、最大の懸念とともに留意するものである。さらに、罪を犯した子どもの再非行率が高いことにかんがみ、これらの子どもの社会的再統合のためのサービスおよび支援(職員配置も含む)の水準が低いことは、委員会にとって特段の懸念の対象である。 86.委員会は、締約国に対し、子どものための国家行動計画に掲げられたとおりの少年司法制度を設置するよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、新たな「ウクライナにおける少年に関わる刑事司法の発展の構想」およびその実施のために採択される予定の法律が、条約その他の関連の基準(少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む)に全面的にしたがったものとなることを確保するよう、促すものである。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 実際の少年司法制度が、懲罰的な制度から、可能なときは常に調停、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような自由の剥奪に代わる措置を促進する修復的な少年司法制度へと発展することを確保すること。 (b) 少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)にしたがい、刑事責任に関する単一の年齢を法律により定め、かつ実務上も確立すること。 (c) 前号の勧告にしたがい、社会的に危険な行動を行なったという理由で有罪と認定された11~14歳の子どもが拘置されうる社会的更生施設の廃止を検討するとともに、ケアのための代替的措置を発展させること。 (d) 法律に触れた子どものための心理社会的リハビリテーションおよびプログラムを確保するため、家族、子どもおよび若者のための社会センターの専門家を対象とする研修の実施およびその増員等を通じ、社会的支援サービスを強化すること。 (e) 前掲の勧告の実施に際し、ユニセフを含む国連国別チームおよびOHCHRの技術的援助を求めること。 子どもの犯罪被害者および証人 87.刑事手続参加者の安全法の規定には留意しながらも、委員会は、国内法が刑事司法手続における子ども特有の保護措置について定めていないことを懸念する。たとえば、売春に関与した子どもは法執行機関および裁判所によって被害者として扱われるのが通例である旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、これが法律によって義務づけられていないことを懸念するものである。 88.委員会は、締約国が、犯罪の被害を受けたまたは犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを法律上も実務上も確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、犯罪の被害者および証人である子どもは公的機関によってけっして犯罪者として扱われるべきではないという委員会の立場をあらためて表明するものである。 マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども 89.締約国に多数の民族的マイノリティが存在することにかんがみ、委員会は、民族的マイノリティが直面する問題を特定しかつ解決するための措置が締約国によってとられておらず、かつ、教育、雇用、住居および社会サービスへのアクセスに関わるこれらのマイノリティの状況に関するデータ収集システムが設けられていないことを、懸念する。委員会はさらに、民族的マイノリティに属する子どもに対して警察が行なう暴力を終わらせるための措置について、事前質問事項に対する文書回答に情報が記載されていないことを遺憾に思うものである。ロマの子どもを普通教育制度に統合するための努力には留意しながらも、委員会は、ロマおよびクリミア・タタールの子どもが教育、保健ケアその他の社会サービスにアクセスしようとする際の障壁が根強く残っていることを、懸念する。 90.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 人種差別撤廃委員会が勧告しているように(CERD/C/UKR/CO/18、パラ7)、反差別法案を遅滞なく採択すること。 (b) 締約国における民族的マイノリティの状況および当該マイノリティによる権利の享受についての包括的研究を行なうとともに、その研究の知見に基づき、自国の政策、措置および文書が差別なく適用され、かつ、その際、すべてのマイノリティに属する子どもの権利(条約上の権利を含む)の保護が目的とされることを確保するための介入策を発展させること。 (c) 普通教育および中等教育においてインクルーシブ教育体制を導入すること等の手段により、ロマおよびクリミア・タタールの子どもに焦点を当てながら、マイノリティに属するすべての子どもに対して教育への権利を確保するための努力を強化すること。 I.国際人権文書の批准 91.委員会は、締約国が、まだ加盟していない中核的国連人権条約およびその議定書、とくに、すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約および強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。 J.地域機関および国際機関との協力 92.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における条約の実施に向けて欧州評議会と協力するよう、勧告する。 K.フォローアップおよび普及 93.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会(ヴェルホーヴナ・ラーダ)、関連省庁、最高裁判所および適用可能なときは地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 94.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 95.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2018年9月26日までに提出するとともに、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求める。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 96.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2011年1月4日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/30.html
国連・子どもの権利委員会の勧告:教育一般関連(日本) 参考:CRC総括所見:競争主義的教育等 第1回総括所見(1998年) (一般原則) 13.……委員会は、高等教育機関へのアクセスにおける不平等がコリアンの子どもたちに影響を与えていること、および社会のあらゆる分野、とくに学校制度において、一般の子どもたちが参加権(第12条)を行使する上で困難に直面していることを、とりわけ懸念するものである。 35.条約の一般原則、とりわけ差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)の一般原則が、政策に関する議論および意思決定の指針となるのみならず、いかなる法改正ならびに司法上のおよび行政上の決定においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業および計画の発展および実施においても適切に反映されることを確保するために、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。……委員会はまた、コリアンおよびアイヌを含むマイノリティの子どもの差別的な取扱いを、それがいつどこで生じようとも全面的に調査し、かつ解消するようにも勧告する。…… (プライバシー) 15.委員会は、とくに家庭、学校およびその他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために締約国がとった措置が不充分であることを懸念する。 36.委員会は、締約国に対し、とくに家庭、学校、ケアのための施設および他の施設において子どものプライバシーへの権利を保障するために、法的措置も含めて追加的措置を導入するよう勧告する。 (障害のある子ども) → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 (教育) 22.識字率がきわめて高いことに表れている通り締約国が教育を重視していることに留意しながらも、委員会は、競争が激しい教育制度のストレスにさらされ、かつその結果として余暇、運動および休息の時間が得られないために子どもたちの間で発達障害が生じていることを、条約の原則および規定、とくに第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして懸念する。委員会はさらに、学校忌避の事例が相当数にのぼることを懸念するものである。 43.競争の激しい教育制度が締約国に存在すること、ならびにその結果として子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じていることを踏まえ、委員会は、締約国に対し、条約第3条、第6条、第12条、第29条および第31条に照らして、過度のストレスおよび学校忌避を防止しかつそれと闘うために適切な措置をとるよう勧告する。 23.委員会は、条約第29条に従い、人権教育を体系的に学校カリキュラムに導入するために締約国がとった措置が不充分であることを、懸念する。 44.委員会は、締約国に対し、条約第29条に従って、人権教育を体系的に学校カリキュラムに含めるために適切な措置をとるよう勧告する。 24.委員会は、学校における暴力が頻繁にかつ高いレベルで生じていること、とくに体罰が広く用いられていることおよび生徒の間で非常に多くのいじめが存在することを、懸念する。体罰を禁ずる立法、およびいじめの被害者のためのホットラインのような措置も確かに存在するものの、委員会は、現行の措置が学校暴力を防止するためには不充分であることに、懸念とともに留意する。 45.とくに条約第3条、第19条および第28条2項に照らし、委員会は、学校における暴力を防止するため、とくに体罰およびいじめを解消する目的で包括的な計画を作成し、かつその実施を注意深く監視するよう勧告する。加えて、委員会は、家庭、ケアのための施設およびその他の施設における体罰を法律で禁止するよう勧告するものである。委員会はまた、代替的形態によるしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつこの条約に従って行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうようにも勧告する。 (参考)人種差別撤廃委員会の勧告(2001年) 14.委員会は、韓国・朝鮮人、主に児童、学生を対象とした暴力行為に係る報告及びこの点に関する当局の不十分な対応に対し懸念を有するものであり、政府に対し、当該行為を防止し、これに対処するためのより毅然たる措置をとることを勧告する。 15.在日の外国国籍の児童に関し、委員会は小学及び中学教育が義務的でないことに留意する。委員会は、更に、「日本における初等教育の目的は、日本人をコミュニティのメンバーたるべく教育することにあるため、外国の児童に対し当該教育を受けることを強制することは不適切である。」との締約国の立場に留意する。委員会は、強制が、統合の目的を達成するために全く不適切であるとの主張に同意する。しかしながら、本条約第3条及び第5条(e)(v)との関連で、委員会は、本件に関し異なった取扱いの基準が人種隔離並びに教育、訓練及び雇用についての権利の享受が不平等なものとなることに繋がり得るものであることを懸念する。締約国に対し、本条約第5条(e)に定める諸権利が、人種、皮膚の色、民族的又は種族的出身について区別なく保障されることを確保するよう勧告する。 16.委員会は、韓国・朝鮮人マイノリティに対する差別に懸念を有する。韓国・朝鮮人学校を含む外国人学校のマイノリティの学生が日本の大学へ入学するに際しての制度上の障害の幾つかを除去するための努力は払われているが、委員会は、特に、韓国語での学習が認められていないこと及び在日韓国・朝鮮人学生が高等教育へのアクセスについて不平等な取扱いを受けていることに懸念を有している。締約国に対し、韓国・朝鮮人を含むマイノリティに対する差別的取扱いを撤廃するために適切な措置をとることを勧告する。また、日本の公立学校においてマイノリティの言語での教育へのアクセスを確保するよう勧告する。 (参考)社会権規約委員会の勧告(2001年) 31.委員会は、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることを懸念する。 58.委員会は、締約国が、委員会の一般的意見第11号および第13号ならびに子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号を考慮にいれながら、教育制度の包括的再検討を行なうよう強く勧告する。このような再検討においては、あらゆる段階の教育がしばしば過度に競争主義的でストレスに満ちたものとなっており、その結果、生徒の不登校、病気、さらには自殺すら生じていることにとくに焦点が当てられるべきである。 32.委員会は、マイノリティの子どもにとって、自己の言語による教育および自己の文化に関する教育を公立学校で享受する可能性がきわめて限られていることに懸念を表明する。委員会はまた、朝鮮学校のようなマイノリティの学校が、たとえ国の教育カリキュラムを遵守している場合でも公的に認められておらず、したがって中央政府の補助金を受けることも大学入学試験の受験資格を与えることもできないことについても、懸念するものである。 59.委員会は、締約国に対し、学校教科書その他の教材において、諸問題が、規約第13条1項、委員会の一般的意見第13号および子どもの権利に関する委員会の一般的意見第1号に掲げられた教育の目的および目標を反映した公正なかつバランスのとれた方法で提示されることを確保するよう、促す。 60.委員会は、言語的マイノリティに属する生徒が相当数就学している公立学校の正規のカリキュラムに母語による教育を導入するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、マイノリティの学校およびとくに朝鮮学校が国の教育カリキュラムにしたがっている状況においては当該学校を公的に認め、それによって当該学校が補助金その他の財政援助を得られるようにすること、および、当該学校の卒業資格を大学入学試験の受験資格として承認することを勧告するものである。 第2回総括所見(2004年) 広報および研修 20.……委員会は、子どもおよび公衆一般、ならびに子どもとともにおよび子どものために働いている多くの専門家が条約およびそこに体現された権利基盤型アプローチについて充分に理解していないことを、依然として懸念するものである。 21.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公衆一般および子どもを対象として、条約、およびとくに子どもが権利の主体であるということに関する意識啓発キャンペーンを強化すること。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働いているすべての者、とくに教職員、裁判官、弁護士、議員、法執行官、公務員、自治体職員、子どもを対象とした施設および拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者、ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修をひきつづき実施すること。 (c) 意識啓発キャンペーン、研修および教育プログラムが態度の変革、行動および子どもの取扱いに与えた影響を評価すること。 (d) 人権教育、およびとくに子どもの権利教育を学校カリキュラムに含めること。 子どもの意見の尊重 27.子どもの意見の尊重を向上させようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、家庭、学校、その他の施設および社会一般における子どもの意見の尊重が制限されていることを依然として懸念する。 28.委員会は、条約第12条にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭、裁判所および行政機関、施設および学校ならびに政策立案において、子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して子どもの意見の尊重を促進しかつ子どもの参加の便宜を図ること。また、子どもがこの権利を知ることを確保すること。 (b) 子どもに影響を及ぼすあらゆる事柄に関して意見を考慮されかつ参加する子どもの権利について、とくに親、教育者、政府の行政職員、司法関係者および社会一般に対し、教育的情報を提供すること。 (c) 子どもの意見がどのぐらい考慮されているか、またそれが政策、プログラムおよび子どもたち自身にどのような影響をあたえているかについて定期的検討を行なうこと。 (d) 学校、および子どもに教育、余暇その他の活動を提供しているその他の施設において、政策を決定する諸会議体、委員会その他のグループの会合に子どもが制度的に参加することを確保すること。 表現および結社の自由 29.委員会は、学校内外で生徒が行なう政治活動に対する制限を懸念する。委員会はまた、18歳未満の子どもは団体に加入するために親の同意を必要とすることも懸念するものである。 30.委員会は、条約第13条、第14条および第15条の全面的実施を確保するため、締約国が、学校内外で生徒が行なう活動を規制する法令および団体に加入するために親の同意を必要とする要件を見直すよう勧告する。 プライバシーに対する権利 33.委員会は、とくに子どもの持ち物検査との関連でプライバシーに対する子どもの権利が全面的に尊重されていないこと……を懸念する。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 個人的通信および私物の検査との関連も含め、プライバシーに対する子どもの権利の全面的実施を確保すること。 (b) (略) 体罰 35.委員会は、学校における体罰は法律で禁止されているとはいえ、学校、施設および家庭において体罰が広く実践されていることに懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 施設および家庭における体罰を禁止すること。 (b) 体罰に関する態度を変革するため、子どもの不当な取扱いの悪影響について教育キャンペーンを実施すること。また、そのような罰に代わる手段として、学校、施設および家庭において積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 (c) 施設および学校の子どもを対象とした苦情申立てのしくみを強化することにより、不当な取扱いの苦情が効果的に、かつ子どもに配慮した方法で対応されることを確保すること。 障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 教育、余暇および文化的活動 49.委員会は、教育制度を改革し、かつそれをいっそう条約に一致させるために締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。 (a) 教育制度の過度に競争的な性質によって、子どもの身体的および精神的健康に悪影響が生じ、かつ子どもが最大限可能なまで発達することが阻害されていること。 (b) 高等教育進学のための過度な競争のため、学校における公教育が、貧しい家庭出身の子どもには負担できない私的教育によって補完されなければならないこと。 (c) 学校における子どもの問題および紛争に関して、親と教職員とのコミュニケーションおよび協力がきわめて限られていること。 (d) 日本にある外国人学校を卒業して大学進学を希望する者の資格基準が拡大されたとはいえ、依然として高等教育へのアクセスを否定されている者が存在すること。 (e) とくにドロップアウトした生徒を対象として柔軟な教育機会を提供している東京都の夜間定時制高校が閉鎖されようとしていること。 (f) マイノリティの子どもたちにとって、自己の言語で教育を受ける機会がきわめて限られていること。 (g) 審査手続の存在にも関わらず、一部の歴史教科書が不完全または一面的であること。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 高校を卒業したすべての生徒が高等教育に平等にアクセスできるよう、高い水準の教育の質を維持しつつも学校制度の競争的性質を緩和する目的で、生徒、親および関連の非政府組織の意見を考慮にいれながらカリキュラムを見直すこと。 (b) 生徒および親と連携しながら、学校における問題および紛争、とくに(いじめを含む)学校における暴力に効果的に対応するための措置を発展させること。 (c) 東京都に対して夜間定時制高校の閉鎖を再検討するよう奨励し、かつ代替的形態の教育を拡大すること。 (d) マイノリティ・グループの子どもが自己の文化を享受し、自己の宗教を表明しまたは実践し、かつ自己の言語を使用する機会を拡大すること。 (e) 教科書でバランスのとれた見方が提示されることを確保するため、教科書の審査手続を強化すること。 性的搾取および人身取引 51.パラ3で述べたように、委員会は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(1999年)の制定および実施を歓迎する。しかしながら、委員会は以下の点について懸念するものである。 (a)~(b) (略) (c) 被害を受けた子どもが犯罪者として取り扱われているという報告があること。 (d) 「援助交際」すなわち対償をともなう交際が行なわれているという報告があること。 (e) 〔性的〕同意に関する最低年齢が低いこと。このことは「援助交際」を助長している可能性があり、また子どもの性的虐待の訴追を妨げている。 52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)~(c) (略) (d) 未成年者の性的虐待および性的搾取に関連する法律についての資料、および教育プログラム(健康的なライフスタイルについて学校で実施されるプログラムを含む)のような、性的サービスの勧誘および提供を行なう者を対象とした防止措置を発展させること。 (e) 性的同意に関する最低年齢を引上げること。 (参考)人種差別撤廃委員会(2010年)〔PDF〕 13.……また、在日韓国・朝鮮学校(Korean schools)に通う生徒を含むグループに対する不適切で下品な言動、及び、インターネット上での、特に部落民に対して向けられた有害で人種主義的な表現や攻撃という事象が継続的に起きていることに懸念をもって留意する(第4条(a)及び(b))。 ……委員会は締約国に以下を勧告する。 (a) 本条約第4条の差別を禁止する規定を完全に実施するための法律の欠如を是正すること。 (b) 憎悪的及び人種差別的表明に対処する追加的な措置、とりわけ、それらを捜査し関係者を処罰する取組を促進することを含めて、関連する憲法、民法、刑法の規定を効果的に実施することを確保すること。 (c) 人種主義的思想の流布に対する注意・啓発キャンペーンを更に行い、インターネット上の憎悪発言や人種差別的プロパガンダを含む人種差別を動機とする違反を防ぐこと。 22.委員会は、バイリンガル相談員や7言語による就学ガイドブックといった締約国による少数グループへの教育を促進する努力に評価をもって留意する。しかしながら、教育制度における人種差別克服のための具体的施策の実施に関する情報が欠如していることを遺憾に思う。さらに、委員会は以下の事項を含め、子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為について懸念を表明する: (a) アイヌの子どもやその他の国のグループの子どもが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受ける適切な機会の欠如 (b) 締約国における義務教育の原則が、日本が締約国となっている本条約第5条の(e)の(v)、児童の権利条約第28条並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条2に適合した形で、外国人の子どもに完全には適用されていない事実 (c) 学校の認定、教育課程の同等性や高等教育への入学に関連する障害 (d) 締約国に居住する外国人及び韓国・朝鮮系(Korean)、中国系の学校に対する公的支援や補助金、税制上の優遇措置に関する異なる扱い (e) 締約国において現在国会にて提案されている公立及び私立の高校、専修学校(technicalcolleges )並びに高校に相当する課程を置く多様な機関の授業料を無償とする法制度変更において、北朝鮮の学校を除外することを示唆する複数の政治家の姿勢(第2条及び第5条) 委員会は、非市民に対する差別に関する一般的勧告30(2004年)に照らして、教育機会の提供において差別がないこと、締約国の領域内に居住する子どもが学校への入学や義務教育就学において障壁に直面しないことを締約国が確保することを勧告する。また、委員会は、この点において、外国人のための学校に関する種々の制度や、国の公的学校制度の外で別の枠組みを設立することが望ましいかについての調査研究を締約国が行うことを勧告する。委員会は、締約国の少数グループが自らの言語に関する教育や自らの言語による教育を受けられるように適切な機会を提供するとともに、締約国がユネスコの教育差別防止条約への加入を検討することを慫慂する。 25.委員会は、本条約において保護されているグループによる日本社会への貢献に関する正確なメッセージを伝えることを目的として教科書を改訂するために、締約国によりとられた措置が不十分であったことを懸念する(第5条)。 委員会は、締約国がマイノリティの文化や歴史をよりよく反映するために既存の教科書を改訂することやマイノリティが話す言語で書かれたものを含む歴史や文化に関する書籍及びその他の出版物を奨励することを勧告する。特に、義務教育において、アイヌや琉球の言語教育及びこれらの言語による教育を支援することを慫慂する。 第3回総括所見(2010年) 差別の禁止 33.……委員会は、男女平等の促進に言及していた教育基本法第5条が削除されたことに対する女性差別撤廃委員会の懸念(CEDAW/C/JPN/CO/6)を繰り返す。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。 (b)とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。 生命、生存および発達に対する権利 41.(略) 42.委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。 子どもの意見の尊重 43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、……学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。 44.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。 体罰 47.学校における体罰が明示的に禁じられていることには留意しつつ、委員会は、その禁止規定が効果的に実施されていないという報告があることに懸念を表明する。委員会は、すべての体罰を禁ずることを差し控えた1981年の東京高等裁判所判決に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、家庭および代替的養護現場における体罰が法律で明示的に禁じられていないこと、および、とくに民法および児童虐待防止法が適切なしつけの行使を認めており、体罰の許容可能性について不明確であることを懸念する。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a)家庭および代替的養護現場を含むあらゆる場面で、子どもを対象とした体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律により明示的に禁止すること。 (b)あらゆる場面における体罰の禁止を効果的に実施すること。 (c)体罰等に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律について、家族、教職員ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の専門家を教育するため、キャンペーンを含む伝達プログラムを実施すること。 障害のある子ども → 国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連 メンタルヘルス 60.委員会は、著しい数の子どもが情緒的ウェルビーイングの水準の低さを報告していること、および、親および教職員との関係の貧しさがその決定要因となっている可能性があることを示すデータに留意する。委員会はまた、発達障害者支援センターにおける注意欠陥・多動性障害(ADHD)の相談数が増えていることにも留意する。委員会は、ADHDの治療に関する調査研究および医療専門家の研修が開始されたことを歓迎するが、この現象が主として薬物によって治療されるべき生理的障害と見なされていること、および、社会的決定要因が正当に考慮されていないことを懸念する。 61.委員会は、締約国が、子どもおよび思春期の青少年の情緒的および心理的ウェルビーイングの問題に、あらゆる環境における効果的支援を確保する学際的アプローチを通じて対応するための効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、ADHDの診断数の推移を監視するとともに、この分野における調査研究が製薬産業とは独立に実施されることを確保するようにも勧告する。 教育(職業訓練および職業指導を含む) 70.委員会は、日本の学校制度によって学業面で例外的なほど優秀な成果が達成されてきたことを認めるが、学校および大学への入学を求めて競争する子どもの人数が減少しているにも関わらず過度の競争に関する苦情の声があがり続けていることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、このような高度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性があることも、懸念する。 71.委員会は、学業面での優秀な成果と子ども中心の能力促進とを結合させ、かつ、極端に競争的な環境によって引き起こされる悪影響を回避する目的で、締約国が学校制度および大学教育制度を再検討するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)を考慮するよう奨励される。委員会はまた、締約国が、子ども同士のいじめと闘う努力を強化し、かつそのような措置の策定に子どもたちの意見を取り入れるよう勧告する。 72.委員会は、中国系、北朝鮮系その他の出身の子どもを対象とした学校に対する補助金が不十分であることを懸念する。委員会はまた、このような学校の卒業生が日本の大学の入学試験を受けられない場合があることも懸念する。 73.委員会は、締約国に対し、外国人学校への補助金を増額し、かつ大学入試へのアクセスにおいて差別が行なわれないことを確保するよう奨励する。締約国は、ユネスコ・教育差別禁止条約の批准を検討するよう奨励される。 74.委員会は、日本の歴史教科書においては歴史的出来事に対する日本側の解釈しか記述されていないため、地域の異なる国々出身の子どもの相互理解が増進されていないという情報があることを懸念する。 75.委員会は、締約国が、検定教科書においてアジア・太平洋地域の歴史的出来事に関するバランスのとれた見方が提示されることを確保するよう勧告する。 武力紛争選択議定書・第1回総括所見(2010年) 人権教育および平和教育 10.委員会は、平和教育との関連も含め、あらゆる段階のあらゆる学校のカリキュラムで締約国が提供している具体的な人権教育についての詳しい情報が存在しないことに、懸念とともに留意する。 11.委員会は、締約国が、すべての児童生徒を対象とする人権教育およびとくに平和教育の提供を確保するとともに、これらのテーマを子どもの教育に含めることについて教職員を研修するよう勧告する。 性的搾取議定書・第1回総括所見(2010年) 普及および研修 14.委員会は、選択議定書の規定に関する意識啓発活動が不十分であることに、懸念とともに留意する。 15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)選択議定書の規定が、とくに学校カリキュラムおよびキャンペーンを含む長期的な意識啓発プログラムを通じ、とくに子ども、その家族およびコミュニティを対象として広く普及されることを確保すること。 (b)議定書第9条第2項にしたがい、議定書に掲げられた犯罪の有害な影響および被害者が利用可能な救済手段についての意識を、研修および教育キャンペーンを通じ、子どもを含む公衆の間で促進すること。 (c)選択議定書に関連する諸問題についての意識啓発活動および研修活動を支援するため、市民社会組織およびメディアとの協力を発展させること。 (参考)社会権規約委員会の勧告(2013年) 13.委員会は、締約国で根深く残るジェンダー役割についてのステレオタイプのため、女性による経済的、社会的および文化的権利の平等な享受が妨げられ続けていることを懸念する。委員会はまた、数次にわたる男女共同参画基本計画の採択のような措置がとられたにも関わらず、ジェンダー役割に関する社会一般の態度の変革を狙った十分な措置がとられてこなかったことに、懸念をもって留意する。さらに、委員会は、締約国の称賛すべき努力にも関わらず、労働市場における垂直および水平のジェンダー分離がいまなお徹底していること……に表れているように、進展がなかなか見られないことを懸念する。委員会は、第3次男女共同参画基本計画で締約国が控えめな目標しか設定しておらず、規約上の権利の行使に関する平等の達成が加速されることはないであろう点を遺憾に思う。(第3条) 委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) ジェンダー役割に関する社会のとらえ方を変革するための意識啓発キャンペーンを実行すること。 (b) 伝統的にいずれかの性が多数を占めてきた分野以外の分野での教育の追求を促進する目的で、女子および男子に対して平等な就業機会に関する教育を行なうこと。 (c) 男女共同参画基本計画において男女双方を対象とするいっそう大胆な目標を採択するとともに、教育、雇用ならびに政治的および公的意思決定の分野においてクオータ(割当枠)制等の一時的措置を実施すること。(以下略) (d) コース別雇用管理制度および妊娠を理由とする解雇のような、女性差別である慣行を廃止すること。 (e) 待機児童ゼロの達成をいっそう速やかに進めるとともに、保育が負担可能な料金で利用できるようにすること。 26.委員会は、「慰安婦」が受けてきた搾取により、彼女たちによる経済的、社会的および文化的権利の享受ならびに彼女たちの賠償請求権に対する悪影響が永続していることを懸念する。(第11条、第3条) 委員会は、搾取の永続的影響に対応し、かつ「慰安婦」による経済的、社会的および文化的権利の享受を保障するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、「慰安婦」にスティグマを付与するヘイトスピーチその他の示威行動を防止するため、締約国が「慰安婦」の搾取について公衆を教育するよう勧告する。 27.委員会は、締約国の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である。(第13条、第14条) 差別の禁止は、教育のあらゆる側面に全面的かつ即時的に適用され、また国際的に定められたすべての差別禁止事由を包含していることを想起しつつ、委員会は、高校教育授業料無償化プログラムが朝鮮学校に通う子どもたちにも適用されることを確保するよう、締約国に対して求める。 28.委員会は、多数の外国人児童が学校に通っていないことに、懸念をもって留意する。(第13条、第14条) 委員会は、締約国に対し、義務教育の状況の監視を、法律上の地位に関わらず締約国の領域内にいるすべての子ども(国民ではない子どもを含む)に対して適用するよう促す。 29.委員会は、規約第13条(b)にしたがって完全無償の中等教育を漸進的に提供するため、締約国が、可能なかぎり早期に、入学料および教科書費を授業料無償化プログラムの対象に含めるよう勧告する。 30.委員会は、アイヌ民族が先住民族として認められ、かつその他の進展が達成されたにも関わらず、経済的、社会的および文化的権利の享受に関してアイヌ民族が不利な立場に置かれたままであることを依然として懸念する。委員会は、アイヌ語が消滅の危機にあることをとりわけ懸念する。(第15条、第2条第2項) 委員会は、締約国が、アイヌ民族の生活水準を向上させるための努力を強化し、かつ、とくに雇用および教育の分野において追加的な特別措置を実施するよう勧告する。委員会は、これらの措置を、北海道外在住のアイヌ民族に対しても適用するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、アイヌ語を保全しかつ振興するためにとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2011年6月3日)。/~/社会権規約委員会の勧告(2013年)を追加(2013年10月31日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/142.html
総括所見:ロシア(第1回・1993年) 第2回(1999年)/第3回(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.4(1993年2月18日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1993年1月21日および22日に開かれた第62回、第63回および第64回会合(CRC/C/SR.62-64)においてロシア連邦の第1回報告書(CRC/C/3/Add.5)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1993年1月28日に開かれた第73回会合において。 A.序 2.委員会は、ロシア連邦の第1回報告書が時宜を得た形で提出されたこと、および、同報告書が率直に、自己批判的にかつ包括的に作成されたことに満足感を表明する。委員会は、報告書について議論するために高級レベルの代表団が派遣されてきたことに評価の意とともに留意するものである。このことは、ロシア連邦政府が条約上の義務を重視していることを示すものであり、かつ、代表団との対話の特徴であった開かれた、包括的なかつ建設的なアプローチにとって役立つものとなった。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約で規定された権利の実施を阻害する問題を定義しかつ識別すること、およびそれらの問題に立ち向かう充分な解決策を模索することに対する政府の前向きな姿勢を心強く感ずる。この点に関して、委員会は、条約の適用を改善するための立法措置をにおける進展、および少年裁判所および家庭裁判所の設置の提案に、満足感とともに留意するものである。同様に、委員会は、子どもの権利の実施に責任を負うことへの地方および地域の公的機関の関与、子どもの権利を実施するためのプログラムへの非政府組織の参加、ソーシャルワーカーおよび子どもおよび家族に関連する問題に直接対応しているその他の職員の訓練、家族および両親の平等責任に関する重要性についての意識、および子どもの権利に関する情報の普及を発展させるためにとられた措置の重要性を認める。 4.委員会はまた、条約第4条に照らし、軍縮の経済効果の結果として子どものためにさらなる資源が配分されるようになったことに、満足感とともに留意する。 5.締約国が決定的な変革の時期にあること、および代表団によって提供された情報にかんがみ、委員会は、締約国が、子どものために積極的な変化を導入すること、および構造調整の時期にあって子どものニーズを考慮に入れた政策を引き続き追求することを重視していることを認識する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 6.委員会は、社会変革および経済危機の情勢下で政治的移行期にあるロシア連邦が直面している困難を認識する。同様に、委員会は、子どもの権利の実施を妨げる一定の態度の残滓があることも認識するものである。その態度とは、とくに、子どものケアの施設中心主義、障害者および家族的責任の問題に関連している。 7.委員会は、代表団が挙げたさまざまな改革の重要性は認めながらも、新たな立法上のその他の変革およびその提案が子どもの状況に与える影響を現段階で評価することはできないことに留意する。 D.主要な懸念事項 8.委員会は、経済危機が子どもに与える影響を懸念する。これとの関連で、委員会は、条約第3条および第4条に照らし、経済改革の犠牲になることから子どもを保護するために充分かつ適切な措置がとられているかどうかをとくに懸念するものである。 9.委員会は、条約第2条に照らし、障害児のようなとくに傷つきやすくかつ不利な立場に置かれたグループの子どものニーズおよび状況に対して社会が充分に敏感ではないことを懸念する。 10.委員会は、ロシア連邦において家族生活に深刻な問題が生じていることが優先的な懸念領域であると考える。委員会は、子どもの遺棄、中絶、離婚率、養子縁組の件数、婚外子の数および扶養義務の回復との関連で家族文化の崩壊に向かう傾向があることに、特段の懸念をもって留意するものである。 11.同様に、委員会は、家庭環境を奪われた子どもが、とくに子どもが遺棄された場合および孤児となった場合に寄宿学校に施設措置される慣行を懸念する。 12.委員会は、予防接種プログラム、妊娠期間中のケアの水準、家族計画プログラムおよび地域のコミュニティ・ヘルスワーカーの訓練に関して締約国が直面している問題に懸念を表明する。委員会はまた、中絶が家族計画のひとつの方法であるかのように頻繁に利用されていることにも懸念を表明するものである。 13.条約第28条の実施に関して、委員会は、農村部における女子の状況に懸念を表明する。 14.委員会は、少年司法および刑務施設の状況が条約第37条と両立するかどうか、および、そのような状況下で、余暇および家族との接触に対する子どもの権利および子どもの最善の利益がどのように保護されるのかについて、懸念を表明する。委員会はまた、少年司法の運営の制度の現行の組織形態、および条約第37条および少年司法に関するその他の基準と両立しているかどうかについても懸念を表明するものである。 15.委員会は、子どもの間で犯罪率が高まっていること、および、子どもが性的搾取、薬物濫用およびアルコール嗜癖に関してとくに被害を受けやすい立場に置かれていることに、懸念とともに留意する。 E.提案および勧告 16.委員会は、構造調整の時期にあっては経済的変化が子どもに与える影響を定期的に監視することがとりわけ重要であることを勧告する。委員会はまた、子どもの権利のための立法上その他の措置の実施における政府の進展を追跡するための指標の特定および活用が適切であることを強調するものである。 17.委員会は、政府が、条約の実施およびその監視を調整する目的で国内委員会または類似の体制の設置を検討するよう提案する。委員会は、子どもの権利に関する活動の動員のため、地方その他の非政府組織に支援が与えられるべきことを勧告するものである。委員会はまた、子どもの権利の実施の改善のために態度を変えかつ態度に影響を与えるにあたり、非政府組織ならびに子どもグループおよび青少年グループの積極的な参加も勧告する。 18.委員会は、家族生活に関する教育を提供し、社会における家族の役割についての議論を組織し、かつ両親の平等責任についての意識を発展させるために、さらなる努力が行なわれるべきであると考える。 19.委員会は、里親託置のような、寄宿学校への施設措置に代わる手段を積極的に模索するよう勧告する。委員会はまた、社会援助、法律問題および教育を担当するワーカーのような、すべての施設の職員にさらなる訓練を行なうよう勧告するものである。そのような研修においては、子どもの尊厳の意識の促進および保護、ならびに子どもの放任および不当な取扱いの問題が強調されるべきである。子どもに対応する職員の継続的訓練を評価するための機構も必要とされる。 20.委員会は、とくに妊娠期間中のケア、性教育を含む保健教育、家族計画および予防接種プログラムの効果との関係で、プライマリー・ヘルスケアの制度を改善するよう勧告する。とくに予防接種プログラムに関わる問題に関して、委員会は、ワクチンの調達および製造への支援に関してめ国際協力を求めるよう提案するものである。 21.委員会は、家庭の内外で子どもに対して行なわれる不当な取扱いおよび残酷な行為の発生を懸念し、かつ、自己に対して行なわれた不当な取扱いまたは残酷な行為に関する子どもの苦情に対応する手続および機構を発展させるよう提案する。 22.刑法およびこの分野の立法を改正するためにとられている積極的な措置を考慮にいれ、委員会は、締約国が、少年司法の運営に関して包括的な司法改革を行ない、かつ、その改正にあたって「北京規則」、「リャド・ガイドライン」および自由を奪われた少年の保護に関する〔国際連合〕規則のようなこの分野の国際基準を指針とするよう勧告する。施設措置に代わるアプローチに関しては、条約第39条に沿って、社会復帰のための措置、心理的回復および社会的再統合に特段の注意が払われるべきである。 23.委員会はまた、法執行官、裁判官その他の司法運営に携わる職員の訓練の一部が少年司法に関する国際基準の理解に充てられるようにも提案する。 24.委員会は、子ども売買春と闘うためにより断固たる措置がとられなければならないことを強調する。たとえば警察は、そのような事件の捜査、および条約第39条に掲げられた規定を実施するためのプログラムの発展に高い優先順位を与えるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/217.html
総括所見:イタリア(第3~4回・2011年) 第1回(1995年)/第2回(2003年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/ITA/CO/3-4(2011年10月31日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2011年9月20日に開かれた第1642回および第1643回会合(CRC/C/SR.1642 and 1643参照)においてイタリアの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/ITA/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの状況についての理解を向上させてくれた、締約国の定期報告書(CRC/C/ITA/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/ITA/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた、建設的なかつ開かれた対話について評価の意を表明するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置がとられたことを前向きな対応として歓迎する。 (a) 収監されている母とその未成年の子との関係の保護に関する法律第62/2011号(2011年4月)。 (b) 子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンの設置に関する法律第112/2011号(2011年7月)。 (c) 子どもの性的搾取および児童ポルノ(インターネットを通じてのものを含む)との闘いに関する法律第38/2006号。 (d) 親の別居および子どもの分担監護に関する規定についての法律第54/2006号(2006年2月)。 (e) 義務教育期間を10年以上とし、かつ最低労働年齢を15歳から16歳に引き上げた法律第296/2006号(2006年12月)。 (f) 女性性器切除の慣行の防止および禁止に関わる規定についての法律第7/2006号(2006年1月)。 4.委員会はまた、以下の文書の批准またはこれへの加入も歓迎する。 (a) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2010年)。 (b) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2009年)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2000年)を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2006年)。 (d) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2007年)。 5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 国家子ども・青少年監視機関の権限の更新(直近の更新は2010年)。 (b) 発達年齢にある者の権利および発達を保護するための国家行動介入計画(2010~2011年)。 (c) 乳幼児期の社会-教育サービスに関する全国的制度の発展のための特別介入計画(2007~2009年)。 (d) 人権保護についての政策および戦略指針に関する閣僚委員会の設置(2007年4月13日付首相令)。 (e) 政府による人身取引対策活動調整委員会(2007年)、人身取引、暴力および深刻な搾取の被害者支援に関する省庁間委員会(2007年)および人身取引監視機関(2007年)の設置。 (f) 貧困および社会的排除に対抗する国家行動計画(2006~2008年)。 III.主要な懸念領域および勧告 A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 委員会の前回の勧告 6.委員会は、締約国の前回の報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.198、2003年)ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/C/OPSC/ITA/CO/1、2006年)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1 and Corr.1、2006年)に基づく第1回報告書についての総括所見を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。しかしながら委員会は、委員会の懸念および勧告の多くについて対応がとられておらず、または不十分な対応しかとられていないことを、遺憾に思うものである。 7.委員会は、締約国に対し、未実施の勧告または十分に実施されていない勧告(調整、資源配分、条約に関する組織的研修、差別の禁止、子どもの最善の利益、アイデンティティに対する権利、養子縁組、少年司法ならびに子どもの難民および庇護希望者に関するものを含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた勧告について十分なフォローアップを行なうために必要なあらゆる措置をとるよう、促す。 調整 8.委員会は、統治の中央レベルから州その他の下位レベルへの権限移譲により、地方レベルにおける条約の不公平な実施が助長されていることを懸念する。この文脈において、国家子ども・青少年監視機関を含む種々の調整機構が存在し、かつ、これらの機構が、子どもの権利の実施に関連する多くの主体の政策およびプログラムを効果的に調整する適切な権限を有していない可能性があることは、委員会の懸念するところである。委員会はさらに、国・州会議に、子どもの権利に関連する政策の計画および実施を調整する作業部会が設置されていないことを懸念する。 9.条約の実施の調整を確保すること、ならびに、州政府に対し、この点に関するリーダーシップを示しおよび必要な支援を提供することの責任は中央政府にあることを想起し、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連するすべての省庁および諸機関間ならびにすべての段階で子どもの権利に関する政策およびプログラムの実施を調整するため、国家子ども・青少年監視機関の役割を見直し、かつ明確化すること。その際、締約国は、同国家監視機関が強化され、かつ、国、州および自治体のレベルで包括的な、一貫したかつ相互に齟齬のない子どもの権利政策を実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供されることを確保するよう、促される。 (b) 国および州のレベル間の調整を強化することにより、あらゆる州で条約の一貫した適用を確保するための効果的機構を発展させるとともに、「社会サービスの提供に関する必須水準」(Livelli Essenziali delle Prestazioni Sociali、LIVEAS)のような全国的基準を採択すること。 国家的行動計画 10.発達年齢にある者の権利および発達を保護するための国家行動介入計画(2010~2011年)が採択されたことには留意しながらも、委員会は、同計画がまだ実施されていないこと、予算がまったく配分されていないこと、および、州レベルで同行動計画のための資金を配分するプロセスによりその実施がさらに遅れる可能性があることを、懸念する。さらに委員会は、同行動計画が監視および評価のための具体的システムを欠いていることを懸念するものである。 11.委員会は、締約国が、国レベルで同行動計画を実施するための資金を遅滞なく配分するとともに、州に対し、州レベルでの活動のために必要な資金を配分するよう、可能なかぎり最大限に奨励するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が同行動計画を改訂し、監視および評価のための具体的システムを含めることも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、現在の(および今後の)行動計画にこの総括所見のフォローアップが統合されることを確保するよう、勧告する。 独立の監視 12.委員会は、子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンが法律によって設置されたこと(2011年7月)に満足して留意する。いくつかの州で子どもオンブズパーソンが設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの制度が権限、構成、体制、資源および任命の面で相当に異なっており、かつ、個別の苦情を受理しかつ検討する権限をすべての州オンブズパーソンが有しているわけではないことを、懸念するものである。委員会は、独立の国内人権機関の設置に相当の時間がかかっていることを遺憾に思う。 13.委員会は、締約国が、子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンの新たな事務所が速やかに設置され、かつ、同事務所に対し、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)にしたがってその独立性および有効性を保障するための十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての州で子どもの権利が統一的かつ有効に保護されかつ促進されることを確保する(子どもおよび青少年のための国家オンブズパーソンによる、既存の州子どもオンブズパーソンに対する援助およびこれらのオンブズパーソンの調整を含む)よう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、子どもの権利を含む人権の包括的かつ体系的な監視を確保する目的で、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがった独立の国内人権機構を設置しかつ運用するプロセスを迅速に進めるよう、促す。 資源配分 14.委員会は、締約国および諸州全体のあらゆる部門別予算を子どもに特化した形で分析することに関する従前の勧告(CRC/C/15/add.198、パラ9)の実施について、締約国報告書に情報が記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、教育予算が最近削減されたこと、社会サービスおよび教育サービスの発展のための特別計画(2010年)に対して資金が提供されていないこと、ならびに、家族政策、国家社会政策基金および国家子ども・青少年基金のための資金が削減されたことを、特に懸念するものである。委員会はまた、乳幼児期、教育および保健の分野におけるものも含め、子どものための配分および子どもに関する支出に州間格差があることにも懸念を表明する。委員会はさらに、汚職に関する締約国の国際的順位が最近になって下降したこと、および、これが子どもの権利に与える可能性がある影響について懸念するものである。イタリアが直面している現在の財政状況に照らし、委員会は、子どものためのサービスの保護および維持が行なわれなくなる可能性があることを懸念する。 15.委員会は、国および州のレベルにおける子どものための資源配分について包括的分析を行なうように求めた前回の勧告(CRC/C/15/add.198、パラ9)をあらためて繰り返す。このような分析の知見に基づき、締約国は、乳幼児期、社会サービス、教育、および、移住者その他の外国人コミュニティの子どものための統合プログラムに焦点を当てながら、20州全体を通じて子どものための公平な予算配分が行なわれることを確保するべきである。委員会は、締約国が、汚職の問題に効果的に対応するとともに、現在の財政状況のもとで行なわれる支出削減から子どものためのすべてのサービスが保護されることを確保するよう、勧告する。 データ収集 16.委員会は、子どもおよびその家族のケアおよび保護に関する全国的情報システムが創設され、2012年に完成する予定であることに留意する。にもかかわらず、委員会は、子どもの権利の享受に関する利用可能なデータ、とくに暴力の被害を受けた子ども、家庭環境を奪われた子ども(里親養護を受けている子どもを含む)、経済的搾取の被害を受けた子ども、障害のある子ども、養子縁組された子どもならびに子どもの難民および庇護希望者に関する統計が限られていることを、依然として懸念するものである。委員会は、州のデータ収集機構の能力および有効性に関して相当の格差があることに懸念を表明する。 17.委員会は、締約国に対し、子どもおよびその家族のケアおよび保護に関する全国的情報システムが全面的に稼働すること、ならびに、当該システムに対し、子どもの権利を促進しかつ保護する締約国の能力を強化する目的で国全域の関連情報を効果的に収集するために必要な人的資源、技術的資源および財源が与えられることを確保するよう、促す。とくに委員会は、締約国が、州間の格差を効果的に測定しかつこれに対応する目的で、すべての州を通じて全面的に一貫したアプローチを確保するよう勧告するものである。 研修 18.法執行官および憲兵隊を対象として若干の研修が行なわれているという情報にもかかわらず、委員会は、締約国が、子どものためにまたは子どもとともに働くすべての専門家(法執行官、憲兵隊、検察官、裁判官、弁護士、子どもの法廷後見人(curatori)、公務員、ソーシャルワーカーおよび保健専門家、地方政府職員、教員ならびに保健従事者を含む)を対象とした、子どもの権利および条約に関する体系的研修についての従前の勧告(CRC/C/15/Add.198、パラ19(d)〔(b)〕および31〔32(c)〕)をまだ実施していないことを遺憾に思う。 19.委員会は、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家(とくに法執行官、憲兵隊、裁判官および刑務所吏員)を対象とした、子どもの権利に関する体系的、義務的かつ継続的研修を確保するべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 子どもの権利と企業セクター 20.委員会は、憲法が、憲法に掲げられた原則を尊重する企業の一般的義務を定めていることを歓迎するとともに、自主的な企業の取り組みに基づき、企業の社会的責任が促進され、規制されかつ実施されていることに留意する。委員会はまた、企業の社会的責任についてのさらなる法律(一定の基準を満たした会社を対象とする免税措置も含む)が元老院および代議院で議論されている(それぞれ法律第386号および法律第59号)ことにも留意するものである。にもかかわらず、委員会は、このような法律において子どもの権利が十分に考慮されていないことを懸念する。加えて委員会は、欧州諸国(イタリアを含む)が輸入している綿の収穫において子どもの強制労働が利用されており、これらの国々はこれによって輸出国における児童労働の搾取を促進している可能性があるという訴えがあることを懸念するものである。委員会は、この問題について国際労働機関(ILO)による調査が行なわれており、かつ、欧州議会が、とくに欧州理事会および欧州委員会に対し、綿産業部門における一般特恵関税制度の一時停止(ILOによる調査報告が可能になるまで)をともなう調査委員会の設置を求める決議案について討議していることに、留意する。 21.国および国以外の主体による子どもの権利の保護および尊重を確保する第一次的責任は国にあることから、委員会は、人権に関する企業の責任についての基準を定める目的で元老院および代議院が検討している法律に、子どもの権利に関わる問題を、子どもの権利条約にとくに言及しながら具体的に含めるよう勧告する。さらに、これらの法律において、子どもの権利および人権の侵害が行なわれた場合(イタリアに本社を置く会社およびその国外提携事業者の活動に関する事案も含む)を司法機関に付託することのできる監督機関について定めておくことが重要である。加えて委員会は、締約国が、欧州の諸貿易協定において子どもの権利が尊重されることを確保するためにその影響力を活用しながら、児童労働に由来する綿(欧州またはその他の場所で生産されたもの)が欧州市場に持ちこまれないことを確保する、欧州連合における自国の責任を果たすよう勧告する。加えて、締約国は、イタリアに本社を置く企業が国外のサプライチェーンまたは提携事業者を通じて児童労働の使用を助長しないことを確保するための効果的監視について、現在提案されている法律に基づく明確な枠組みを定めることもできるはずである。 国際協力 22.委員会は、締約国が、2006年に国民総所得(GNI)の約0.20%を国際援助に振り向け、かつ対国民総生産(GNP)比0.7%という国際合意目標を2015年までに達成するという決意を表明していることに留意する。しかしながら委員会は、国連児童基金(ユニセフ)への拠出金を含む政府開発援助の水準が、2006年に最高に達したのち一貫して下降しており、2010年には国際合意目標額の半分に達しなかったことに、懸念とともに留意するものである。 23.多くの国が直面している財政的制約に留意しつつ、委員会は、締約国に対し、対GNP比0.7%という国際合意目標を2015年までに達成する目的で、政府開発援助の減額を是正し、かつ成長路線を回復するために力を尽くすよう、奨励する。委員会はさらに、締約国に対し、開発途上国と締結する国際協力協定において子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するとともに、子どもの権利について扱っている国際機関(とくにユニセフ)への支援を強化するために力を尽くすよう、奨励するものである。委員会は、その際、締約国が、当該援助供与国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう提案する。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.委員会は、脆弱な状況に置かれた締約国の子どもを差別する政策、法律および慣行について深刻な懸念を覚える。とくに委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) とくに健康、教育、十分な生活水準および社会保障に対する権利の充足との関連における、ロマ、シンティおよびカミナンティの子ども(以下「ロマの子ども」)に対する差別。 (b) 委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.198、パラ21(b))に違反して、人種的または民族的優越を唱道する宣伝についての刑を短縮した刑法改正。 (c) 嫡出子(準正によるか出生時からかは問わない)と婚外子との間に依然として残っている取扱いの格差。これとの関連で、委員会は、締約国が欧州評議会・婚外子の法的地位に関する欧州条約を批准していないことを遺憾に思う。委員会は、この点に関して提案されている法律について対話の際に提供された情報に留意し、かつこれを歓迎するものである。 25.条約第2条に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国のすべての子どもがいかなる理由による差別も受けることなく条約上の平等な権利を享受できることを確保するとともに、この目的のために以下の措置をとるよう、促す。 (a) 人種差別撤廃委員会の勧告(CERD/C/ITA/CO/15、パラ20)にしたがい、ロマ系の子どもに対するいかなる形態の差別(とくに教育制度および必須サービスの提供における差別)も効果的に解消されることを確保するため、あらゆる必要な措置を速やかにとること。 (b) ダーバン宣言および行動計画のあらゆる関連規定を全面的に考慮にいれ、かつ子どもの権利条約第2条をとくに重視しながら、人種主義、人種差別、外国人排斥および不寛容の防止に関する包括的な国家的行動計画を有効な形で採択すること。 (c) とくに子どもに対する人種主義的および排外主義的行為に関するデータの体系的収集の面で、国家人種差別対策局の権限を強化すること。 (d) 刑法第61条に、加重事由として憎悪に基づく動機を編入すること。 (e) 婚内子と婚外子との間に残っているいかなる差別も解消するため、適切な立法上の措置をとること。 (f) 婚外子の法的地位に関する欧州条約の批准を速やかに進めること。 子どもの意見の尊重 26.委員会は、憲法裁判所が、条約第12条は国内法体系において直接適用可能である旨を宣言したこと、および、子どもが手続当事者とみなされる可能性があることを歓迎する。委員会はさらに、親の別居、離婚および監護関係の事件における子どもの意見聴取について定めた法律第54/2006号、養子縁組手続および親の権利の判断における子ども担当弁護士の任命義務について定めた法的規定、ならびに、保護者のいない子どもに意見を聴かれる権利があることを認めた立法令第25号(2008年1月28日付)に、肯定的に留意するものである。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念する。 (a) 民事上、刑事上および行政上のすべての手続において意見を聴かれる子どもの明示的権利が認められていないこと。 (b) 養子縁組事件における子どもの弁護人/特別後見人(curatori speciali)の任命に関する、法律第149/2001号の実施のための指針が存在しないこと。 (c) 国、州または地方のレベルで子どもに影響を与える法律および政策の策定過程で子どもたちとの組織的協議が行なわれておらず、かつ、子どもに関わる今後の行動計画の策定への子ども参加に関する、より具体的な指針が存在しないこと。 27.条約第12条、および、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに影響を与える事柄に関してすべての裁判所、行政機関、施設、学校、保育施設および家庭に適用される、意見を聴かれる子どもの権利について定めた包括的な法規定を導入すること。また、子どもの意見を直接聴けるようにするための措置をとるとともに、その際、そのような参加が、効果的にかつ操作または威嚇を受けることなく行なわれ、かつ、適切なときは関連機関の専門的意見によって裏づけられることを確保するための、十分な保障措置および機構を整備すること。 (b) 養子縁組事件における子どもの弁護人/特別後見人(curatori speciali)の任命についての指針を作成すること。 (c) 州レベルのまたは全国的な支援体制を設置することにより、子どもに関連する法律および政策の策定に子どもたちが含まれることを確保するための措置(子ども評議会の強化を含む)をとること。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 登録および国籍 28.委員会は、外国系の子どもの登録される権利に関する法律上および実務上の制限について懸念を覚える。とくに委員会は、公の安全に関する法律第94/2009号により、イタリア国民でない者が全員、身分事項の記録を取得するために在留許可証の提示を義務づけられていることを懸念するものである。委員会はさらに、事実上の無国籍者である子どもの状況(数百名のロマの子どもが無国籍であるという報告も含む)について懸念を覚える。 29.委員会は、普遍的定期審査の際に行なわれた、イタリア市民権に関する法律第91/1992号はイタリアに住むすべての子どもの権利を保全するようなやり方で実施するべきである旨の勧告第40号(A/HRC/14/4/Add.1, p.5)を締約国が受託したことを想起しながら、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) イタリアで出生しかつ暮らしているすべての子どもの出生登録の義務を法律で確保し、かつ実務上促進すること。 (b) 社会的および民族的背景ならびに親の在留資格に関わらず出生時に登録されるすべての子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンを行なうこと。 (c) 市民権が取得できなければ無国籍となる可能性がある子どもを対象として、市民権へのアクセスを促進すること。 思想、良心および宗教の自由 30.委員会は、就学前学校、初等学校および中等学校において宗教の授業を受けまたは受けないことを選択する子どもの自由が、妥当な代替的授業が存在しないこと、および、カトリックの信仰に基づく授業に出席しないことを決めた生徒に必要な履修辞退届の入手方法および配布に関する情報が提供されていないことにより、実際には阻害される可能性があることを懸念する。 31.委員会は、締約国に対し、宗教の授業が真に選択制となることを実際上確保するための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう求める。 (a) 宗教の授業が選択制であることを、公立学校に通う生徒のすべての親が全面的に承知することを確保するとともに、もっとも一般的な外国語で情報を利用可能とすること。 (b) カトリックの信仰に基づく授業に代わる選択肢の模範的実践を研究し、特定しかつ記録するとともに、このような調査研究の知見に基づき、関連の代替的授業を全国カリキュラムで利用可能とすることを検討すること。 適切な情報へのアクセス 32.印刷メディアおよび放送メディアについてさまざまな自主規制規則が設けられており、かつメディアと未成年者委員会が設置されたことには肯定的に留意しながらも、委員会は、条約第17条に基づく子どもの権利の享受に資する、包括的な法律上および教育上の枠組みが設けられていないことを懸念する。委員会は、女性および若い女子が性的対象として描写されることについてイタリアのメディアおよび広告が果たしている役割に関する、女性差別撤廃委員会の懸念を共有する。このような描写は、子どもの発達および同世代への関係に悪影響を及ぼすからである。委員会は、とくに以下のことを懸念する。 (a) 「インターネットと子ども規則」の遵守が任意であり、かつ、同規則の実施を監視するために設置された委員会が、2007年の委任期間終了以降、復活させられていないこと。 (b) 子どもたちの間で、プライバシー権をいっそう保護され、かつインターネットの利用に関する情報を子どもにやさしい言葉づかいおよび形式で提供される必要が明らかにあること。 (c) 学習および志望に関する女子の選択に影響を及ぼす可能性があるジェンダー上のステレオタイプ、ならびに、女性および若い女子が性的対象として描写されることについてイタリアのメディアおよび広告が果たしている役割。 (d) メディアにおける、移住者およびマイノリティの否定的描き方。このような描き方は、これらの者の社会的統合およびこれらのコミュニティの子どもの権利の効果的享受に影響を及ぼしている。 (e) 食品、薬、おもちゃその他の物を有害となるおそれがあるやり方で消費することにつながっている広告内容。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 社会的および文化的に有益な資料の普及の奨励等も目的としながら、条約第17条の規定および目的を全面的に編入した、子どもとメディアに関する規則の策定を促進しかつ支援すること。 (b) 「インターネットと子ども規則」を監視する委員会を復活させるとともに、同規則に違反に対して効果的な行政上および法律上の制裁が科されることを確保すること。 (c) 人種主義および不寛容と闘う力のある、責任感と積極性を備えたメディアを確保するための措置をとるとともに、その効果的実施を確保する監視システムを設けること。 体罰 34.委員会は、家庭における体罰が蔓延していること、とくにしつけの手段として平手で叩くことをいまなお適切と考えている親が多いことを、懸念する。委員会はまた、体罰の禁止に関する最高裁判決にも関わらず、あらゆる場面(家庭を含む)におけるあらゆる形態の体罰を明示的に禁ずる法律(CRC/C/15/Add.41、パラ20)をまだ成立させていないことも、懸念するものである。 35.委員会は、締約国が、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)を考慮にいれながら、あらゆる場面におけるあらゆる形態の体罰が明示的に禁止されることを確保する目的で、国内法改革を行なうよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、体罰が子どものウェルビーイングに及ぼす有害な影響、および、子どもの権利にしたがった、体罰に代わる積極的なしつけおよび規律のための手段に関する、親および一般公衆の意識啓発を図るよう勧告するものである。 D.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条) 家庭環境 36.第1次国家家族計画の採択に関わる進展、および、子どもの養育責任に関して親および法定保護者を支援するためのさまざまな措置(それぞれ大家族および低所得家族を対象とする課税控除および子ども手当を含む)は歓迎しながらも、委員会は、これらの措置が第一義的には金銭的なものであり、子どもの発達上のニーズならびに子どもの養育およびしつけを行なう最適な方法について学習することにより子育て能力を高める親のニーズに対応していないことを、懸念する。委員会は、公的保育の機会が限られていることおよび私的保育の費用が高いことを、とりわけ懸念するものである。 37.委員会は、締約国が、大家族および低所得家族への支援に際してホリスティックなアプローチ(所得支援を含む)がとられ、かつ親教育を通じた子育てのあり方に焦点が当てられることを確保するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が、欧州連合の「欧州2020戦略」および欧州委員会の2011年の報告書「乳幼児期の教育およびケア:明日の世界のために、私たちの子ども全員に最善のスタートを」にしたがい、乳幼児期の教育およびケアのためのプログラムのアクセス、負担可能性および質を高め、かつ学校外活動についても同様の対応をとるよう、勧告するものである。 家庭環境を奪われた子ども 38.委員会は、法律第149/2001号にしたがい、家庭環境を奪われた子どものための養護の脱施設化が進展していることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、家族型の代替的なコミュニティまたは施設で提供されるサービスおよび養護の最低基準が設けられていないこと、ならびに、このようなコミュニティの独立の監視および登録に関する法律の実施が弱いことを、懸念するものである。委員会は、提供されるサービスの質の評価が行なわれていないこと、および、子どもの受け入れのために受領した公的資金についての会計責任が問われていないことを、とりわけ懸念する。さらに委員会は、里親養護の利用に関して州間の格差があること、ならびに、里親養護に関する共通の指針および法律が採択されかつ遵守されていないことを、懸念するものである。 39.外国籍の子どもがイタリアで暮らしている家族と再結合する権利に関して、委員会は、手続に時間がかかること、および、欧州連合理事会指令2003/86/ECを国内法化する法律において締約国で暮らしている核家族が除外されていることを、懸念する。 40.委員会は、締約国が、法律第149/2001号の効果的かつ平等な実施を、その権限の及ぶ範囲ですべての州において確保するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家庭環境を奪われた子どものためのすべての代替的養護施設(家族型コミュニティのような「入所型施設」も含む)を対象として、サービスおよび養護に関する全国的に合意された最低基準を採択すること。 (b) 家庭環境を奪われたすべての子どもの措置について関連の機関による独立の監視が行なわれることを確保するとともに、そのような子どもの受け入れのために公的資金を受領する者に会計責任を果たさせる機構を設置すること。 (c) 家庭環境を奪われたすべての子どもに関する包括的調査を実施し、かつこのような子どもの全国的な登録制度を創設すること。 (d) 家族の再統合に対する権利、および、この権利を有するすべての外国人(イタリアで形成された家族を含む)へのその適用について明示的に定める目的で、移民統一法典を改正すること。 (e) 里親家庭の適正な選抜、研修および監督を確保するとともに、これらの家庭に対して十分な金銭的支援および地位を与えること。 (f) 子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)を考慮すること。 養子縁組 41.委員会は、国内養子縁組および国際養子縁組において子どもの意見および見解に耳を傾ける必要があることについての義務的規定を歓迎する。しかしながら委員会は、2003年以来の「開放型養子縁組」の慣行に留意しつつ、このような養子縁組についての確固たるかつ一貫した法的根拠がないこと、および、里親家庭への無期限の措置が行なわれるおそれがあることに、懸念を表明するものである。さらに委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の非加盟国との国際養子縁組が、二国間協定が締結されていないにも関わらず続けられていることについて、あらためて懸念を表明する。国際養子縁組委員会がとった措置には留意しながらも、委員会は、民間養子縁組斡旋機関が多数存在すること、監視制度が不十分であること、および、養子縁組の過程で一部当事者が金銭的利得を得ているという報告があることを、依然として懸念するものである。 42.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 養子縁組を規律する法律(法律第184/1983号および第149/2001号を含む)および手続に、子どもの最善の利益が最高の考慮事項である旨の原則を導入すること。 (b) 1993年ハーグ条約をまだ批准していないすべての送り出し国と二国間協定を締結すること。 (c) ハーグ条約および子どもの権利条約第21条(d)にしたがって、すべての民間養子縁組斡旋機関の効果的かつ組織的な監視を確保し、民間養子縁組斡旋機関の数を管理しまたは限定するための選択肢を考慮し、かつ、養子縁組プロセスがいかなる当事者の金銭的利得ともならないことを確保すること。 (d) これまでに養子とされた子どものウェルビーイングならびに縁組の崩壊の原因および結果に関する組織的フォローアップを確保すること。 子どもに対する暴力(子どもの虐待およびネグレクトを含む) 43.委員会は、あらゆる形態の身体的および精神的暴力からの子どもの保護ならびにこのような暴力の防止を目的とする全国共通の制度および枠組み、ならびに、これに対応した監視および調整のための実施機関が存在しないことを、深刻に懸念する。これとの関連で、委員会は、14~17歳の子ども(ほとんどはイタリア北部および中部の子ども)の過半数が子どもの不当な取扱いを経験しまたは目的したことがあるというある調査の結果に、深刻な懸念とともに留意するものである。とくに、データ収集(ピエモンテ州およびベネト州)ならびに防止(エミリアロマーニャ州)に関わる一部州での肯定的経験には心強い思いを感じながらも、委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力についての、包括的かつ全国的なデータ収集システムおよび登録制度が存在しないこと。 (b) 子どもに対する暴力についての指針の存在および実施、ならびに、暴力の防止、取扱いおよび根絶に関して、州間に格差があること。 (c) 困難な状況に置かれた母親によって子どもが遺棄されていること。 44.委員会は、前回の懸念および総括所見(CRC/C/15/Add.198、パラ37および38)をあらためて繰り返すとともに、一般的意見13号を想起しながら、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、スロベニア・リュブリャナ)の成果および勧告を考慮し、かつジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。 (b) 前掲研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。(i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力および不当な取扱いを防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。 (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力および不当な取扱いの明示的な法的禁止を、国レベルで導入すること。 (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムならびに子どもに対する暴力および不当な取扱いに関する調査研究事項を強化すること。 E.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項)および第33条) 障害のある子ども 45.委員会は、締約国の報告書で、障害のある子どもに関する情報が限られていることを遺憾に思う。障害のある子どもを学校制度に統合しようとする努力は歓迎しながらも、委員会は、障害がいまなお「ハンディキャップ」として概念化されており、障害のある子どもの社会的インクルージョンを確保する目的をもったアプローチがとられていないこと、および、学校への専門教員の配置に関して州間格差があることを、懸念するものである。委員会はさらに、障害のある子どもの特別なケアを乳幼児期に確保することに関して不十分さおよび遅れが見られること、ならびに、障害のある0~6歳の年齢層の子どもに関する統計データが整備されていないことを、懸念する。 46.委員会は、締約国が、障害のある子どもとの関連で権利基盤アプローチを確保するために現行の政策およびプログラムを見直すとともに、関連の政府職員およびコミュニティ一般がこの点に関する感受性を高めることを確保するための広報および研修の取り組みを検討するよう、勧告する。委員会はまた、障害のあるすべての子どもが質の高いインクルーシブ教育へのアクセスを享受できるよう、締約国が、十分な人数の専門教員を全校に配置することも勧告するものである。さらに委員会は、このような特別なニーズにしたがって政策およびプログラムを適合させるため、障害のある子ども(0~6歳の年齢層を含む)に関する具体的なかつ細分化されたデータを収集するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、これとの関連で障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)を考慮するよう、奨励するものである。 健康および保健サービス 47.委員会は、保健ケアに関する権限が州レベルに委譲されたことにともなって保健ケアの必須水準(Livelli Essenziali di Assistenza、LEA)が定められていないことにより、締約国の南部諸州と北部諸州との間で保健ケアシステムの質および効率性に格差が生じ、到達可能な最高水準の健康に対する子どもの権利に影響が及んでいることに、懸念とともに留意する。子供の肥満率が高くかつ上昇していること、ならびに、アレルギー性疾患および(または)呼吸器系疾患に罹患した子どもが相当数にのぼることも、委員会にとって懸念の対象である。委員会はさらに、イタリア人である母親に比べ、外国人である母親の間で死産率および周産期死亡率が高く、かつ救急部または救急病院での治療が必要となる可能性が高いことを懸念する。これは、ひとつには、在留資格を有しない外国人が犯罪者として扱われるために、在留資格を有しない外国人である母親が、妊娠前および妊娠中に、必要な産科学的治療および検査を受けないことによるものである。 48.委員会は、締約国が、すべての州のすべての子どもを対象として共通の水準の保健ケアサービスを促進するために即時的措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 健康に対する子どもの権利との関連で国家保健計画(2006~2008年)の実施状況を分析し、かつ、これに基づき、子どものために十分な保健ケア支出を配分すること。 (b) 保健ケアの必須水準(LEA)を遅滞なく定めること。 (c) 子どもの権利に一致するやり方で、すべての保健専門家の養成および研修のためのプログラムを改善すること。 (d) 運動、健康的な食事習慣およびライフスタイルの重要性を強調しながら、学校および家庭を対象とするアドボカシーおよび意識啓発のプログラムを行なう(国家予防計画(2010~2012年)の効果的実施を含む)とともに、初等中等学校のカリキュラムにおける体育の時限数を増やし、かつその質を向上させること。 (e) とくに外国人コミュニティがアクセスしている保健ケア施設を対象として、外国系の子どもを含むすべての子どもの、保健ケアに対する権利についての広報キャンペーンおよび意識啓発キャンペーンを発展させかつ実施すること。 母乳育児 49.委員会は、生後6か月間の完全母乳育児率が低く、かつ、乳児に対して生後4か月から離乳食を与える慣行があることを懸念する。委員会はさらに、乳幼児および青少年向けの食品の販売促進が規制されておらず、かつ母乳代替品の販売促進の監視が不十分であることを懸念するものである。 50.委員会は、関連の政府職員(とくに産科部で働く職員)および親を対象としたキャンペーン、広報および研修を含む意識啓発措置を通じ、生後6か月間の完全母乳育児の慣行を向上させるための行動をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子ども向けの食品に関する現行の販売促進規則および母乳代替品(哺乳瓶およびその乳首部分を含む)の販売促進に関する規則の監視を強化するとともに、これらの規則についての恒常的監視が行なわれ、かつ違反者に対して対応がとられることを確保するよう、勧告するものである。 精神保健 51.委員会は、子ども(とくに青少年)の精神保健状況を評価しかつ監視する、国レベルの包括的な戦略またはシステムが存在しないことを懸念する。委員会は、これとの関連で、国家精神保健指針(2008年)がまだ実施されていないことを遺憾に思うものである。委員会はさらに、資源が不十分であることから、地方保健当局および児童青少年神経精神医学サービスが、子どもの精神保健上の問題に社会心理学的な立場から対応するための学際的チームを設置できていないことを懸念する。子どもが使用している精神活性剤のなかに自殺念慮を増大させる副作用を有するものがあることも、委員会にとって懸念の対象である。委員会はまた、子どもの自殺につながる可能性がある抑うつが蔓延していることも懸念する。 52.委員会は、思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を参照しつつ、締約国が、精神保健に関する利用可能かつ良質なサービスおよびプログラムを強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 国家精神保健指針を遅滞なく実施しかつ監視すること。 (b) 青少年の精神保健にはっきりと焦点を当てた、国レベルの包括的な精神保健政策を策定するとともに、公的な資金および資源を十分に配分し、かつ監視システムを発展させかつ実施することにより、その効果的実施を確保すること。 (c) 妥当なかぎりで親、家族および学校が関与する、子どもの精神保健ケアの統合的システムを確立することにより、子どもの心理的および心理社会的健康不良および障害の治療に対する学際的アプローチを実施すること。 薬物および有害物質の濫用 53.委員会は、締約国の青少年の間で不法な薬物(とくにアンフェタミン)の使用が増加していることを深く懸念する。委員会は、このような薬物がしばしば、学校の成績を上げることおよび抑うつと闘うことを目的として使用されていることに、懸念とともに留意するものである。さらに委員会は、子どもによるアルコールの消費および喫煙の水準が高いこと、ならびに、直接の宣伝またはマスメディア一般を通じて広告が悪影響をもたらしていることを、懸念する。 54.委員会は、一般的意見4号を参照しつつ、締約国が、情報伝達のためのプログラムおよびキャンペーン、青少年に対するライフスキル教育の提供ならびに教員、ソーシャルワーカーその他の関連の職員の研修を通じ、子どもによる不法な薬物の使用を解消するための関連の措置をとるよう勧告する。これには、アルコールおよびタバコの使用を防止するために青少年の間で健康的なライフスタイルを促進することに関するプログラム、および、子どもを対象とするこのような製品の広告の規制を執行することが含まれなければならない。委員会は、締約国に対し、委員会に提出する次回の定期報告書で、このような努力に関する情報および子どもによる不法な薬物の使用に関するデータを提示するよう奨励する。 親が収監されている子ども 55.収監されている母とその未成年の子との関係の保護に関する法律第62/2011号が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、収監された親の一方または双方から分離される子どもの多さ、母親とともに刑務所で生活している赤ん坊の状況、および、母親が自宅監禁の要件を満たさない場合に子どもが母親から分離されるおそれがあることについて、懸念を覚える。 56.委員会は、条約第9条にしたがって個人的関係、十分なサービスおよび適切な支援を確保する目的で、締約国が、親が収監されている子どもの家庭環境に対する権利についての状況に関する研究を行なうよう、勧告する。 生活水準 57.委員会は、締約国において貧困下で暮らしている子どもが多いこと、および、子どもの貧困がイタリア南部に不相応に集中していることを、深く懸念する。委員会はまた、とくに子どもの貧困が女性の失業と密接に関係していることにかんがみ、締約国の女性就労率が欧州連合で2番目に低い(50%未満)ことにも、懸念とともに留意するものである。低所得家庭を対象として2008~2009年に実施された最近の政策介入(家族ボーナスおよび社会消費カード)を評価しながらも、委員会は、このようなプログラムによる不平等および貧困の削減がわずかなものに留まったことを懸念する。委員会は、締約国のプログラムが所得面の措置に焦点を当てており、貧困削減を左右する社会的、文化的、地理的その他の構造的要因については限られた形でしか考慮していないように思えることに、懸念とともに留意するものである。 58.委員会は、締約国に対し、(とくに子どもの)貧困および不平等に対処しかつこれを根絶するための努力を強化するとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 貧困削減を左右する社会的、文化的および地理的要因を考慮した学際的アプローチを用いながら、子どもの貧困に持続可能なやり方で効果的に対応する目的で、現行の政策およびプログラムの体系的改革を検討すること。 (b) 現行プログラムが貧困緩和にもたらした成果を評価するとともに、今後の政策および計画に関連の指標および監視のための枠組みが掲げられることを確保すること。 (c) 保育の供給を増加させる等の手段により、労働市場への女性の参加を高め、かつ双方の親を対象とする柔軟な労働配置を促進すること。 (d) 子どもがいる低所得家庭向けの所得支援を増強しかつ維持するとともに、このような支援が外国系の家族にも拡大して提供されることを確保すること。 F.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 59.前回の勧告(CRC/C/15/Add.198、パラ43)を実施しようとする努力は認めながらも、委員会は以下のことを懸念する。 (a) とくに南部においておよび社会経済的困難を有する家族の子どもの間で、依然として高校中退率が高いこと。 (b) 校舎および学校施設の状態が劣悪であり、時として安全不備を理由とする事故死につながっていること。 (c) 学校で暴力およびいじめが蔓延しており、これに対して主として心理社会的および教育的措置ではなく懲戒措置による対応がとられていること、および、被害者による苦情申立て率が低いこと。 (d) 諸州間で同質性が欠けており、かつ職業訓練へのアクセスを延期する法律の成立が遅れていること。 (e) 外国人の子どもおよびマイノリティに属する子どもを学校制度に全面的に統合できていないこと。 (f) 子どもが、教育制度における自己に関連する意思決定プロセスに参加しておらず、かつこのような意思決定プロセスとの関連でなんら意味のある協議の対象とされていないこと。 60.加えて委員会は、州が保障するよう求められている、教育および職業訓練におけるサービスの必須水準について定めた立法令第226号(2006年)が停止されており、かつ、教育支援措置に関する標準化された全国的枠組みがなんら設けられていないことを、懸念する。委員会は、この10年間で私立学校向けの資金が倍増した一方で、2009年の学校改革以降、教育部門に対する公の資金が相当に削減されたこと(教員数の相当の削減を含む)に、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、教育資金の供給源(欧州連合および国内の諸財団を含む)が多様化していることにも留意する。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) 教育部門におけるこれ以上の予算削減を行なわないとともに、学校に対し、すべての子どもに良質な教育を提供するための十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保すること。 (b) 経済的に不利な立場に置かれた家族の子どもを対象とする教育支援の機構を導入すること。 (c) 学校における暴力およびいじめに対し、対応を懲戒措置および懲罰的措置に限るのではなく、カウンセリング、校則および「生徒規則」に関する意識啓発、対話の場ならびに子どもがそのような事件を報告する機会へのアクセスのような社会-教育的措置を通じて、効果的に対処すること。 (d) 学校との関連における職場の安全についての立法令第81/2008号を法律として成立させること。 (e) 職業訓練へのアクセスに関する法律を成立させるための措置をとること。 (f) 学校における外国人およびマイノリティの子どもの統合を向上させるためのプログラムを発展させること。 G.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条) 移民の状況にある子ども 62.委員会は、締約国が特有の地理的場所に位置しており、かつこれにともなう固有の制約を有していることを認めるとともに、締約国が最近、出身国における戦争、政治的混乱および貧困から避難してきた数千人の難民が予期しない形でかつ前例のない規模で到着する事態に立ち向かうため、緊急の状況下において、かついかなる種類の援助もなく採択しかつ実施しなければならなかった努力および措置を、評価する。しかしながら委員会は、子どもが難民、保護者のいない未成年者または移民のいずれであるかに関わらず、これらの子どもが条約上有する権利にかんがみ、このような状況が子どもにとって有害であることを依然として懸念するものである。 子どもの庇護希望者および難民 63.委員会は、締約国の移民法に基づき、18歳未満の者および妊娠している女性の追放または送還が禁じられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、公の秩序および国の安全を理由として外国出身の子どもを同国から追放できること、および、締約国が、2009年の移民遮断政策(「押し戻し」政策)を実施する際、保護者のいない子どもを含む子どもを、子ども一人ひとりの個別の事情を審査しまたは子ども一人ひとりに対して庇護申請の可能性を与えることなく送還していることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、押し戻された移民のなかには国際的保護を必要とする者として特定された者もおり、これは締約国が負うノンルフールマンの義務の違反であることを、深く懸念する。締約国が、移民を強制的に送還する際、庇護申請の可能性を認めないまま子どもを家族とともに収容していることは、委員会にとってさらなる深刻な懸念の対象である。 64.立法令第25/2008号には留意しながらも、委員会は、締約国が政治的庇護に関する枠組み法を定めていないことを懸念する。委員会は、子どもを対象とする受け入れセンターの定員および利用可能性が限られていること、これらのセンターが過密であることならびにその環境がきわめて劣悪であることから、18歳未満の者を対象としていない受け入れセンターに子どもが措置される状況が生じていることを懸念するものである。委員会は、2011年の春から夏にかけてランペドゥーサその他の場所に到着した移民(子どもを含む)の受け入れ環境および生活環境が水準以下である旨の報告に、特段の懸念とともに留意する。 65.以上のことに照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 公海上にいるか領域内にいるかに関わらず自国の管轄下にあってイタリアへの入国を希望する子ども一人ひとりが、自己の事情を個別に審査され、かつ、庇護手続ならびに他の関連の国内的および国際的保護手続への速やかなアクセスを認められる権利を有することを確保すること。 (b) 国内法を見直し、かつ、子どもに回復不可能な害が生ずる現実の可能性があると信じるに足る実質的根拠があるときは、たとえ公の秩序および国の安全を理由とする場合であっても18歳未満の者の追放が禁じられることを確保すること。 (c) 保護のニーズを有するすべての子ども(子どもの庇護希望者および難民を含む)に関する効果的なデータ収集および情報保管のためのシステムを遅滞なく整備すること。 (d) 前掲勧告の実施に際し、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)を参照すること。 保護者のいない子ども 66.委員会は、保護者のいない子どもに関して締約国でホリスティックなかつ共通のアプローチがとられていないこと(保護者のいない子どもに関する包括的な指針および法的枠組みが存在しないことも含む)を懸念する。委員会は、保護者のいない子どもの後見人の任命およびこのような子どもに対する在留許可の発布について設けられている法的な保護および手続が、締約国の諸州間で一様に適用されていないことを懸念するものである。委員会は、イタリアで一時的に受け入れられた未成年者の状況を向上させるために外国人未成年者委員会が行なっている努力には留意するものの、委員会の権限が庇護を申請しない子どもに限られていることに留意する。保護者のいない未成年者の年齢判定のために医学的アプローチが用いられることが増えており、疑わしきは申請者の利益に解するべきであるという原則の適用が実際には危うくされていることも、懸念の対象である。 67.委員会は、締約国が、一般的意見6号に掲げられた原則を参照しながら、保護者のいない子どもの援助および保護を確保する包括的法律を導入するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が、保護者のいない子どもの状況を監督し、そのニーズを特定しかつ現行制度の課題に対応し、かつ、保護者のいない子どもに関する実務指針(受け入れ、特定、ニーズ評価および保護戦略に関するものも含む)を策定するための、特定のかつ常設の国家機関を設置するよう、勧告するものである。委員会は、締約国が、保護者のいない子どもの年齢判定のために、学際的であり、かつ疑わしきは申請者の利益に解するべきであるという原則を全面的に擁護する統一手続を採択するよう、勧告する。 移民家族の子ども 68.委員会は、在留許可を有しない家族が社会サービスに対する権利をまったく認められていないことに留意しつつ、非正規移民の子どもによる保健ケア、教育その他の社会サービスへのアクセスに関して制限が設けられていることに、深い懸念を表明する。委員会は、これとの関連で、在留資格を有さずにイタリアに入国することおよび滞在することを犯罪化し、締約国に合法的に在留していない子どもおよび家族の経済的および社会的権利の享受に深刻な悪影響を及ぼしている、公の安全に関する法律第94/2009号が公布されたことをとりわけ懸念するものである。委員会はさらに、締約国における移民家族の子どもの人数が相当に増えていることに留意しつつ、「移民の社会的包摂基金」への資金拠出が2008年と2009年に削減されたことを遺憾に思う。委員会はまた、締約国に合法的に在留していない家族の子どもが鑑別追放センターに収容される可能性があり、かつ、このようなセンターに子どもが入れられることについて国内法による規制が行なわれていないことにも、深刻な懸念とともに留意するものである。 69.委員会は、締約国に対し、条約に定められた権利は締約国の市民である子どもに限定されるべきではなく、出入国管理上の地位に関わらすすべての子どもに適用されなければならないことを想起するよう求めるとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2010年7月の憲法裁判所判決にしたがい、移民の子どもに対して教育、保健その他の社会サービスに対する平等の権利を確保する目的で、移民法を見直すこと。 (b) 外国人の在留許可に関する決定の際、子どもの最善の利益が常に最高の考慮事項とされることを、法律上も実務上も確保すること。 武力紛争における子ども 70.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書第1条~第4条にしたがって、(a) 軍隊および武装集団による15歳未満の者の徴募および敵対行為における使用を国内法で明示的に禁止し(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1、パラ12)、かつ、(b) 国内法で「直接参加」を定義するべきである(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1、パラ11)旨の前回の委員会の勧告を、締約国がまだ実施していないことを懸念する。 71.条約第29条にあわせた修正は評価しながらも、委員会は、締約国で運営されている4つの軍事学校のカリキュラムに、人権、条約および選択議定書に関する授業が具体的に含まれていないことを遺憾に思う。委員会はさらに、子どもが武力紛争に関与している国への小型武器および軽兵器の販売の禁止および犯罪化を国内法に導入するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/OPAC/ITA/CO/1、パラ17〔18〕)が、締約国によって実施されていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どものリハビリテーションおよび社会的再統合に関する情報が締約国報告書に記載されていないことも、遺憾に思う。 72.委員会は、これまでの勧告を想起しつつ、締約国に対し、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を実施するための努力を強化し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 最低年齢を18歳と定めた国内法との一致を図るため、入隊に関する最低年齢についての、選択議定書に基づく宣言を修正すること。 (b) 刑法改正により、軍隊および武装集団による18歳未満の者の徴募および敵対行為における使用を明示的に禁止しかつ犯罪化すること。 (c) 子どもが武力紛争に関与している国への小型武器および軽兵器の販売を国内法で禁止しかつ犯罪化すること。 (d) 国内法上の難民認定事由のひとつに、子どもの徴募および武力紛争における使用を含めること。 (e) クラスター弾に関する条約を批准すること。 性的搾取 73.委員会は、ペドフィリアおよび児童ポルノとの闘いのための監視機関、インターネット上の児童ポルノと闘うための全国センターおよび売買春・関連犯罪監視機関の創設を歓迎するとともに、子どもに対して行なわれた性的加害行為を加重事由のひとつとした法律第11/2009号の採択に肯定的に留意する。しかしながら委員会は、これらの機関の活動を調整し、かつその資金を拠出するための資源および計画が存在しないことを懸念するものである。これとの関連で、かつ締約国の主要都市で路上売買春が増えていることに留意しつつ、児童買春に関するデータおよびその撤廃に焦点を当てた活動が限られていることは、委員会にとって相当の懸念の対象である。さらに、性的搾取、児童ポルノおよび児童買春を禁止する国内法が強化されたこと(法律第38/2006号)には肯定的に留意しながらも、委員会は、この法律で、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書で求められているように児童ポルノの定義がいまなお定められていないことを、遺憾に思う。 74.委員会は、選択議定書の実施のための資金が2000年以降半減させられていること、および、焦点が主として人身取引に当てられていることを懸念する。委員会はさらに、とくに脆弱な立場に置かれた集団の子どもの性的な虐待および搾取の防止を目的としたプログラムの数が限られており、かつ、児童ポルノおよび児童買春の被害者特定において困難が生じていることを、懸念するものである。 75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a) とくに刑法に児童ポルノの定義を導入することにより、国内法を子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書と全面的に調和させること。 (b) ロマの子どもを含む脆弱な立場に置かれた集団の子どもに焦点を当てながら、性的な搾取および虐待の防止のための戦略を策定しかつ実施すること。 (c) 児童ポルノ資料専門分析部に対して専門的研修およびいっそうの資源を提供する等の手段により、被害者を特定しかつ保護すること。 (d) ペドフィリアおよび児童ポルノとの闘いのための監視機関の効果的職務遂行を確保する(その構成員を任命することも含む)とともに、この犯罪を監視するためのデータベースの運用を開始すること。 (e) 児童買春および児童虐待が監視されることを確保する目的で、売買春・関連犯罪監視機関を復活させ、またはその権限および活動を既存のいずれかの機関に委任すること。 少年司法の運営 76.委員会は、締約国の少年司法制度において代替的措置および再統合が重視されていることに、肯定的に留意する。にもかかわらず、委員会は、少年司法制度による対応のさらなる多様化を目的とした少年刑務所制度法案がまだ採択されておらず、かつ資金削減によって現行制度が脅かされていることを、懸念するものである。これとの関連で、委員会は、拘禁が過度に使用されているという報告があること、子どもの審判前拘禁が長期に及んでいること、ならびに、少年矯正施設(IPM)で自由を奪われている子どもが教育および訓練に十分アクセスできていないことを、懸念する。 77.委員会は、外国人の子どもが、在留資格書類を所持していないというだけの理由で少年矯正施設および受け入れセンターに措置されているという報告があることに、深い懸念を表明する。司法機関による処理の対象とされた外国人およびロマの子どもの人数が報告対象期間中に増えたことは、これらの子どもが法律によって定められたダイバージョンその他の代替的措置から利益を享受することが、イタリア人の子どもに比べてはるかに少ないことと同様に、さらなる懸念の対象である。 78.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。 (a) 少年刑務所制度法案を不当に遅延することなく採択すること。 (b) 恣意的拘禁に関する作業部会から勧告されたとおり(A/HRC/10/21/Add.5、パラ116および122)、ダイバージョン、および自由の剥奪に代わるその他の措置に引き続き焦点が当てられることを確保するため、少年司法制度に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (c) 少年司法制度において外国人およびロマの子どもが過剰に対象とされている問題の徹底的分析を行なうこと。 (d) 子どもが自由を奪われている場所への定期的訪問を行なう独立の監視機構を設置すること。 マイノリティ集団に属する子ども 79.委員会は、乳児死亡率がより高く、慢性疾患および感染症の発生率がより高く、かつ予防接種率が低いことに表れているとおりロマの子どもの健康状態がよくないこと、ならびに、保健ケアその他の社会サービスへのアクセスが限られているのはある程度自業自得であるとみなされていることを、深刻に懸念する。委員会はさらに、初等学校およびとくに中等学校に就学するロマの子どもの人数がきわめて限られていることを懸念するものである。ロマ・コミュニティの経済的状況および社会的排除が憂慮すべき事態にあることに留意しつつ、委員会は、締約国が、ロマが置かれている状況に対し、主として、参加を基盤とする協調のとれた社会的包摂措置ではなく治安維持措置(2006年の治安維持協約、2008年の非常事態令)を通じて対応しようとしていることを、危惧する。これとの関連で、委員会は、非常事態令に基づいてとられた措置によってロマの生活条件がさらに悪化し、「一時居住コンテナ」の建設を通じて事実上の隔離が激化していることを、深く懸念するものである。委員会は、環境がきわめて劣悪なロマの「不法」キャンプでこの1年間に6名の子どもが死亡したこと、ならびに、立退き強制、強制送還、および、保護を目的としてロマの子どもを親から分離させようとする政府の取り組みが行なわれていることに、このうえない懸念とともに留意するものである。委員会はまた、とくにロマの子どもの間で物乞いが増えていること、および、子どもの物乞いと組織犯罪との間に関係があることに、懸念を表明する。委員会はさらに、イタリアのロマの間で早期婚が蔓延しているという報告があること、および、これに対応するための措置について締約国から提供された情報が限定的であることを、懸念するものである。 80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 遊動民コミュニティの定住地に関わる非常事態および2008年5月30日付の布告を停止すること。 (b) ロマの子どもがとくに保健および教育との関連で置かれている脆弱な状況を正当に考慮し、かつ当事者であるコミュニティの参加を得ながら、イタリア社会へのロマの真正な社会的統合のための国家的行動計画を策定しかつ採択すること。 (c) ロマの子どもの社会経済的状況の持続可能な向上を確保するため、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 (d) 早期婚のような有害な慣行に対応するための措置をとること。 (e) ロマの文化に関する理解を増進し、かつロマの子どもに対する差別的かつ固定的な見方を防止するため、政府職員を対象とする関連の指針を策定しかつ研修を実施すること。 (f) 地域言語またはマイノリティ言語に関する欧州憲章を批准すること。 H.国際人権文書の批准 81.委員会は、締約国が、まだ加盟国となっていない中核的国連人権条約およびその選択議定書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書、および、無国籍の削減に関する1961年条約を批准するよう、勧告する。 I.地域機関および国際機関との協力 82.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施のため、欧州評議会と協力するよう勧告する。 J.フォローアップおよび普及 83.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに州および地方の当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 84. 委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにその実施および監視についての議論および意識を喚起する目的で、締約国による第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 次回報告書 85.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年4月4日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 86.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年11月17日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/228.html
総括所見:アイルランド(第1回・1998年) 第2回(2006年)/第3回・第4回(2016年)OPAC(2008年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.85(1998年2月4日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年1月12日および13日に開かれた第436回~第438回会合(CRC/C/SR.436-438)においてアイルランドの第1回報告書(CRC/C/11/Add.12)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年1月23日に開かれた第453回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国に対し、委員会のガイドラインにしたがって作成された包括的な報告書、会期前に送付された事前質問事項への文書回答の提出、および、議論の過程で提供された詳細な追加情報に関して、謝意を表する。これにより、委員会は、アイルランドにおける子どもの権利の状況を評価することが可能になった。委員会はさらに、締約国の代表団との建設的な、率直なかつ開かれた対話を歓迎するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約で認められた子どもの権利の実施のためにさらなる措置をとることに対する締約国の決意を評価する。委員会は、子どもおよびその家族のために確立されている福祉サービスに、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、締約国において高いレベルの教育制度および先進的な保健制度が確立されていることも評価する。 4.委員会は、法改正の分野で締約国が行なった最近の努力に留意する。委員会は、条約の原則および規定を編入するための憲法改正が計画されていることを歓迎するものである。委員会はまた、子ども養護法(1991年)および同修正法(1997年)、家族法(1995年)、ドメスティックバイオレンス法(1996年)ならびに家族(離婚)法(1996年)が制定されたこと、ならびに、教育法案および養子縁組法案が起草されたことも歓迎する。 5.委員会は、セックスツーリズムを含む性的搾取から子どもを保護するために締約国が行なった多大な努力および具体的措置を称賛する。委員会はまた、海外で子どもセックスツーリズムに関与した市民および(または)定住者ならびに締約国において子どもセックスツーリズムを組織しかつ宣伝した者の訴追に関する管轄権を国内裁判所に与える、性犯罪(管轄)法(1996年)の制定および児童人身取引・児童ポルノ法案(1997年)の起草をとくに歓迎するものである。 C.主要な懸念事項 6.委員会は、条約の原則および規定を全面的に編入し、かつ条約が対象とするすべての領域を網羅した包括的な国内政策が存在しないため、子どもの権利に対する締約国のアプローチがやや断片的になっているように思えることを、遺憾に思う。 7.委員会はまた、締約国で広く行なわれている福祉政策および慣行が、条約に掲げられた子どもの権利中心のアプローチを十分に反映していないことも懸念する。加えて委員会は、防止措置に十分な力点が置かれていないことを懸念するものである。 8.子どもの福祉を担当するさまざまな政府機関が国内および地方のレベルに設置されていることには留意しながらも、委員会は、子どもの権利の促進および保護に関してこれらの機関の間で十分な調整が行なわれていないことを遺憾に思う。 9.監督機構として社会サービス監察官を設置するという決定は歓迎しながらも、委員会は、子どもがアクセス可能で、かつ、その権利の侵害に関する苦情に対応しかつ救済を提供する、オンブズパーソンまたは子どもの権利コミッショナーのような独立した監視機構が存在しないことを依然として懸念する。 10.委員会は、条約の原則および規定の実施を監視する指標の選択および開発に関するものも含めて、締約国が収集する統計的その他の情報に一部欠落が存在することに、締約国の注意を促す。委員会は、子どもの状況に関する統計が15歳未満の子どもについてしか収集されていない場合があることに留意するものである。 11.委員会は、条約に関する幅広い意識を促進するためにとられた措置が不十分であるという見解に立つものであり、かつ、裁判官、弁護士、警察官を含む法執行官、保健従事者、教職員、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカーおよび子どものための施設で働く職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として、条約の原則および規定に関する十分かつ体系的な研修が行なわれていないことを、依然として懸念する。 12.締約国が非政府組織との協力に前向きであることは歓迎しながらも、委員会は、子どもの権利の発展に貢献しうる非政府組織の潜在的可能性が全面的に認識されていないことを懸念するものである。 13.子どもの定義(条約第1条)に関して、委員会は、締約国の国内法で設定されているさまざまな年齢制限が低いことを懸念する。 14.差別の禁止の原則(条約第2条)に関して、委員会は、教育および保健サービスへのアクセスに関して格差が存在することを懸念する。すでにとられた措置には留意しながらも、委員会は、トラベラーズ・コミュニティに属する子ども、貧困家庭の子どもおよび難民である子どもを含む、脆弱なおよび不利な立場に置かれた集団の子どもが、教育、住居および保健サービスへのアクセスも含む基本的権利の享受に関していまだに困難に直面していることに、懸念とともに留意するものである。 15. 条約第12条の実施に関して、委員会は、家庭、学校および社会も含め、子どもの意見が一般的に考慮に入れられていないことを懸念する。委員会はまた、子どもの意見を聴く手続が法律で全面的に考慮されていないことも懸念するものである。 16.委員会は、家庭における体罰が法律で禁じられていないことを懸念する。委員会の見解では、これは条約の原則および規定に矛盾するものである。委員会はまた、家庭において児童虐待および暴力が存在すること、ならびに、児童虐待の事案に関して義務的通報の機構が存在しないことも懸念する。 17.委員会は、子どもの出生登録にあたって父の名前を記載する適切な手続が存在しないことから、非婚の親から生まれた子どもが不利な状況に置かれていることを懸念する。このことは、現行規則では養子縁組は父の同意なしで行ないうることから、養子縁組に関わる他の権利の実施にも悪影響を与えるものである。委員会はさらに、子どもが離婚後に双方の親と接触を維持する保障が存在しないことを懸念する。 18.委員会は、締約国における母乳育児の割合が低いこと、および、母乳育児が子どもの健康に与える肯定的影響に関する意識が欠けていることを懸念する。 19.委員会は、10代の自殺が発生していることを懸念する。委員会はまた、薬物およびアルコールの濫用ならびに若年妊娠のような青少年の健康関連の問題に取り組む十分なプログラムが存在しないことも、懸念するものである。 20.委員会は、障害のある子どもの権利を確保するための国家政策が存在しないこと、ならびに、子どもおよびその家族の精神保健に対応する十分なプログラムおよびサービスが存在しないことを、懸念する。 21.国家貧困対抗戦略の存在は認めながらも、委員会は、締約国において子どもの貧困およびホームレスの子どもが生じていることをとくに懸念し、かつ、締約国に対し、もっとも脆弱な立場に置かれた子どもの権利を保護するための措置およびプログラムを強化するよう奨励する。 22.委員会は、教職員によって科された制裁によって退学となる子どもの状況、および、それによって発生する、ときには脱落率および出席率にも影響を与えかねない悪影響について懸念する。 23.委員会は、刑事責任年齢の低さおよび自由を奪われた子どもの処遇に関して、とくに条約および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の国際基準の原則および規定に照らして、懸念を覚える。 E.提案および勧告 24.委員会は、締約国が、条約のすべての原則および規定を憲法に含めるべきであるという憲法再検討グループの勧告の実施および1997年子ども養護法の実施を速めるためにあらゆる適切な措置をとり、そのことにより、権利の全面的主体としての子どもの地位を強化するよう勧告する。 25.裁判所において条約が国内法の解釈手段としてしか参照されえないことを踏まえ、委員会は、締約国が、第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を正当に考慮に入れながら、条約が国内法の一部として全面的に編入されることを確保するためにさらなる措置をとるよう勧告する。 26.委員会は、締約国に対し、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、拷問および他の残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰の禁止に関する条約、および、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を検討するよう、奨励する。 27.委員会は、締約国に対し、条約第4条の全面的実施を確保するよう奨励する。条約の一般原則、とくに子どもの最善の利益に照らし、委員会はまた、子どもの貧困の問題に取り組み、かつあらあらゆる家族が十分な資源および便益を有することを確保するために、即時的措置をとる必要があることも強調するものである。委員会はまた、締約国に対し、国際開発援助のプログラムの枠組みとして条約の原則および規定を用いるようにも奨励する。 28.委員会は、締約国が子どものための包括的な国内戦略を採択し、あらゆる政策およびプログラムの立案に条約の原則および規定を体系的に編入するよう提案する。 29.締約国の立場には留意しながらも、委員会は、オンブズパーソンまたは子どもの権利コミッショナーのような、子どもの権利侵害に対応するための独立監視機関の設置について再検討するよう勧告する。 30.委員会は、子どもの権利に対応するさまざまな政府機関間の調整を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、子どもの権利を保護するための調整および適切な決定を行なう権限を単一の機関に集中させるよう、勧告するものである。 31.委員会は、条約が対象としているあらゆる領域を編入する目的で、18歳未満のすべての子どもを対象とするためにデータ収集および指標開発のシステムを修正するよう勧告する。そのようなシステムはすべての子どもを対象とすべきであり、かつ、脆弱な立場に置かれた子どもおよびとりわけ困難な状況に置かれている子どもがとくに重視されなければならない。子どもの権利の実現に関して達成された進展を監視しおよび評価し、ならびに条約の規定の実施を強化するために採択される政策の立案に役立てることを目的として、細分化された十分なデータが収集されかつ分析されるべきである。 32.委員会は、締約国に対し、非政府組織(NGO)とのより緊密な関係を発展させるための努力を継続しかつ強化するよう、奨励する。 33.委員会は、締約国が、同国において人権教育を促進し、かつ、条約の原則および規定に関するより幅広い意識および理解を喚起するよう勧告する。委員会はまた、子どもおよびおとなの双方を対象とした、子どもの権利に関する体系的な情報キャンペーンを発展させるために締約国が現在行なっている努力の継続も奨励するものである。さらに、すべての教育機関のカリキュラムに子どもの権利が編入されるべきであり、かつ、裁判官、弁護士、警察官を含む法執行官、出入国管理官、保健従事者、教職員、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカーおよび子どものケアのための施設で働く職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループを対象として、条約に関する包括的な研修プログラムが実施されるべきである。 34.委員会は、トラベラーズ・コミュニティに属する子ども、貧困下で暮らしている子どもおよび難民である子どもを含む、脆弱なかつ不利な立場に置かれた集団の子どもが、教育、住居および保健サービスへのアクセスを促進することを目的とした積極的措置から利益を得ることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。 35.委員会は、締約国が、条約第12条、第13条および第15条に照らし、とくに家庭、学校および社会における対話を通じて、自己に影響を与える決定および政策における子どもの参加および子どもの意見の尊重を体系的に促進するよう勧告する。 36.委員会は、締約国が、非婚の親から生まれた子どもの出生証明書にできるかぎり父の名前を記載する手続を確立するために、適切な措置をとるよう勧告する。 37.委員会は、締約国に対し、乳児の授乳に関する世界保健機関の決議を実施するよう勧告する。 38.委員会は、締約国が、条約第23条に照らし、障害のある子どもが地域社会に積極的に参加することを促進するためのプログラムを発展させるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、精神保健に関する統合的なプログラムおよびアプローチの実施を確保し、かつそのような活動に必要な資源および援助を利用可能とするために、さらなる努力を継続するようにも奨励するものである。 39.委員会は、締約国が、家庭における体罰の使用を禁止しかつ解消するために、法的措置も含むあらゆる適切な措置をとるよう提案する。委員会はまた、代替的形態のしつけが子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約にしたがって行なわれることを確保するために、意識啓発キャンペーンを行なうことも提案するものである。委員会はまた、家庭における性的虐待も含む子どもの虐待および不当な取扱いの事案が適正に調査され、加害者に制裁が科され、かつ、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しながら、そのような事案に関して行なわれた決定が広報されるべきであると考える。 40.委員会は、締約国が、1996年子ども法案の迅速な制定をとくに少年司法制度の運営との関わりで確保するために、あらゆる実施可能な措置をとるよう勧告する。そのさい、条約、および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のような他の関連の国際基準の原則および規定が正当に考慮されるべきである。 41.最後に委員会は、条約第44条6項に照らして、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会がここに採択した総括所見とともに同報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のあるNGOを含む一般公衆の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するために、広く普及されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2013年1月19日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/144.html
総括所見:ロシア(第3回・2005年) 第1回(1993年)/第2回(1999年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/RUS/CO/3(2005年11月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2005年9月28日に開かれた第1076回および第1077回会合(CRC/C/SR.1076 and 1077参照)において、ロシア連邦の第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.5)を検討し、2005年9月30日に開かれた第1080回会合(CRC/C/SR.1080)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.110)のフォローアップに関する情報を含む締約国の第3回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/RUS/3)に対する締約国の文書回答により、ロシア連邦の子どもの状況についての理解を深めることができたことも歓迎するとともに、締約国の代表団との有益かつ建設的な対話に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、立法面における以下の進展を歓迎する。 (a) とくに有害な労働条件からの未成年者の保護を強化した新労働法が2001年12月に採択されたこと。 (b) 罪を犯した子どもの審判の手続におけるいっそう人間的なアプローチについて定めた刑事訴訟法改正が2002年7月に行なわれたことにより、子どもの権利に焦点が当てられ、かつこれらの権利が尊重される旨の保障が整備されるとともに、刑事司法制度の対象となる未成年者の人数および自由剥奪刑を言い渡される未成年者の人数の減少につながったこと。 (c) 拷問の定義を定めた、「ロシア連邦刑法の修正および改正の導入について」の連邦法が2003年12月に採択されたこと。 (d) 締約国の刑法に、最近、人身取引を禁ずる規範が導入されたこと。 (e) 刑法が(連邦法第162号により)改正され、ポルノの製造で子どもを使用することに関する責任の度合いを引き上げられたこと。この法律により、売買春関連の活動で未成年者を搾取することに対する刑罰も引き上げられ、かつ同意年齢も14歳から16歳に引き上げられた。 4.委員会は、人権に関する教育も含む「公民」の科目が学校カリキュラムに導入されたことを歓迎する。 5.委員会は、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約が2003年12月に批准されたことを歓迎する。 6.委員会はまた、子どもの権利条約を実施するための多数の具体的措置および対象の明確なプログラムも歓迎する。 C.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.5)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.110参照)の一部、とくに条約に関する情報の普及、差別の禁止、拷問ならびに体罰、不当な取扱い、ネグレクトおよび虐待からの保護、子どもの措置の再審査、障害のある子ども、子どもと武力紛争および子どもの回復、ストリートチルドレン、性的搾取および虐待ならびに少年司法の運営に関するものへの対応が不十分であることを、遺憾に思う。 8.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう、促す。 立法および実施 9.締約国における条約の実施の向上を確保する目的で法律の採択および改正が行なわれてきたことには留意しながらも、委員会は、連邦法第122号が締約国の子どもの権利の享受に及ぼしうる悪影響について懸念を覚える。委員会は、社会サービスおよび社会手当の利用可能性およびこれらへのアクセスに関する全国的最低基準を設けようとする締約国の努力を歓迎しつつ、これらの基準の効果的実施に関する具体的情報がないことを依然として懸念するものである。 10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) さまざまなレベルにおける種々の役割および能力を評価しながら、地方分権化プロセスの結果およびそれが社会サービスの提供に及ぼす影響についての包括的分析を行なうこと。 (b) 子どもの権利の享受および保護に関する格差を防止するため、連邦法第122号で予定されている地方分権化の流れのなかで、子どもの権利の享受に関する最低基準が全面的にかつ効果的に実施されることを確保すること。 調整 11.子どもの権利条約の実施の調整に関する政府省庁間委員会の創設を通じ、政府が子どもの権利に関わる調整機構を向上させてきたことには留意しながらも、委員会は、この機関が2004年3月に廃止されたこと、および、連邦法第122号に基づく最近の地方分権化にともなって必要な調整手段がとられていないことに、懸念とともに留意する。 12. 委員会は、中央および地方の公的機関間の十分な協力ならびに子ども、若者、親および非政府組織との協力を確保するため、締約国が、子どもおよび若者のための努力の一貫性および調整を向上させるための努力を引き続き強化するよう勧告する。委員会はまた、この目的のため、子どもの権利条約の実施のための調整機関を再設置することも勧告するものである。このような機関に対しては、連邦レベルと地域レベルとの間で効果的調整を確保できるようにするための権限ならびに必要な人的資源および財源を提供することが求められる。 独立した監視体制 13.委員会は、連邦人権委員会が設置されたこと、および、38〔ママ〕の地域圏中18の地域圏で子どもの権利オンブズマン地域事務所が設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、連邦子どもの権利オンブズマン事務所がまだ設置されていないことに、懸念とともに留意するものである。 14.委員会は、締約国が、すべての地域圏に子どもの権利オンブズマン地域事務所を設置する努力を引き続き行なうとともに、これらの事務所に対し、その職務を効果的に遂行できる十分な資金および人員が提供されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、連邦子どもの権利オンブズマン事務所の設置をさらに検討することも勧告するものである。これとの関連で、締約国は、独立した人権機関の役割に関する一般的意見2号(2002年)を考慮することが求められる。 国家的行動計画/調整 15.委員会は、2000年以降、締約国が全般的な国家的行動計画を定めていないことに、懸念とともに留意する。とはいえ、委員会は、さまざまな部門別行動計画に条約の実施のための国家的諸原則を含めるよう求めた、「ロシア連邦における子どもの状況の改善のための基本的指令」と題する国家戦略が定められた旨の情報を歓迎するものである。しかしながら委員会は、さまざまな部門別行動計画との関係における、同戦略の統合的かつ調整のとれた実施について懸念を覚える。 16.委員会は、締約国が、新しい国家戦略および関連の行動計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ、子どもに関する総会特別会期(2002年)の成果文書「子どもにふさわしい世界」が考慮されることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、とくに不当な格差を防止する目的で、連邦レベルおよび地域レベルで当該国家戦略および関連の行動計画の実施が包括的かつ効果的に調整されることを確保するようにも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、当該国家戦略の時宜を得たかつ効果的な実施のために十分な人的資源および財源が配分されることを確保するとともに、子どもおよび若者、親、NGOならびに関心および関連のある他の機関の積極的参加を促進しかつそのための便宜を図るよう、勧告する。委員会はまた、当該戦略の監視および評価のための指標および基準を開発することも勧告するものである。 データ収集 17.データ収集の分野で締約国が行なった努力には留意しながらも、委員会は、子どもに関わって達成された進展を監視しおよび評価しならびに子どもに関わって実施された政策の効果を評価する目的で、条約が対象とするすべての分野についての細分化された量的および質的データを、すべての集団の子どもとの関連で体系的かつ包括的に収集することを可能とする十分なデータ収集機構が存在しないことを、依然として懸念する。 18.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とくに脆弱な立場に置かれた子ども(障害のある子ども、法律に触れた子ども、難民および人身取引の対象とされた子ども)を重視しながら18歳に達するまでのすべての子どもを網羅する、性別、年齢ならびに農村部および都市部の別によって細分化されたデータを収集するための包括的な常設機構を国家的統計システム内に設置する努力を強化するよう、勧告する。締約国はまた、条約の実施における進展を効果的に監視しおよび評価しならびに子どもに影響を与える政策の効果を評価するための指標も開発するべきである。 子どものための資源 19.委員会は、連邦法第122号の導入により、子どもが利用可能なサービスの範囲が締約国の地域圏間で相当に異なるようになる可能性があることを、懸念する。委員会はまた、地域レベルでは子ども関連のプログラムおよび政策に不十分な資源しか配分されないであろうことも懸念するものである。委員会はまた、とくに保健・教育部門および養子縁組手続において広範に行なわれている汚職が、権利の全面的享受の面で子どもに影響を及ぼしていることも懸念する。 20.委員会は、子どものための社会サービスその他のサービスの利用可能性およびこれらのサービスへのアクセスに関する不当な格差を防止する目的で、締約国が、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払い、かつ、国の全域で均衡のとれた資源配分を確保するよう、勧告する。締約国はまた、「利用可能な資源を最大限に用いることにより、および、必要な場合には国際協力の枠組の中で」、子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分も優先させるべきである。締約国は、真剣に対応し、かつこれを防止するためのあらゆる必要な措置をとることを求められる。 研修/条約の普及 21.委員会は、この分野で締約国がとった措置にもかかわらず子どもおよび若者の間で条約に関する意識が依然として低く、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。 22.委員会は、締約国が、条約の規定および原則がおとなによっても子どもによっても同様に広く知られかつ理解されることを(たとえばラジオおよびテレビを活用しながら)確保するための努力を強化する目的で、包括的な政策を定めるよう勧告する。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団、とくに法執行官、教員、保健従事者、心理学者、ソーシャルワーカーおよび子どものケアのための施設の職員の十分かつ体系的な研修を強化することも、勧告するものである。 2.一般原則 差別の禁止 23.委員会は、さまざまな宗教的および民族的マイノリティに属する子どもに対して差別が行なわれているという報告について懸念を覚える。委員会はまた、マイノリティに属する子どもおよびとくにロマの子どもが、とくに保健サービスおよび教育サービスとの関連で、その権利の全面的享受を制約される可能性が高いことも懸念するものである。委員会はまた、在留許可を有しない子どもおよび家族が直面している差別についても懸念を覚える。 24.委員会は、締約国が、宗教的および民族的マイノリティに属する子ども、ロマの子どもならびに在留許可を有していない親の子どものようなもっとも脆弱な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、とくに全国的および地域的な意識啓発キャンペーンならびにあらゆる差別事件への効果的な介入を通じてあらゆる形態の差別を防止しかつこれと闘うため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 25.委員会はまた、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 26.締約国における法律およびプログラムの大多数で子どもの最善の利益の原則に言及されていることには留意しながらも、委員会は、実際には、十分な財源および研修コースの欠如ならびに社会の態度を理由としてこの原則が制限されていることを懸念する。 27.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が理解され、かつ、すべての法規定ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を与えるプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて適切に統合されかつ実施されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。 生命に対する権利 28.委員会は、締約国における嬰児殺の発生(その件数は減少していない)に関する前回の懸念をあらためて表明する。 29.委員会は、締約国に対し、締約国における嬰児殺の原因に関する研究を行ない、かつあらゆる必要な防止措置をとるよう促す。 子どもの意見の尊重 30.委員会は、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎しつつも、条約第12条が、家庭、学校その他の施設において十分に適用されておらず、かつ、司法上および行政上の決定ならびに法律、政策およびプログラムの策定および実施において実際には全面的に考慮されているわけではないことを、依然として懸念する。 31.委員会は、子どもの意見の尊重の原則の実施を確保するためにさらなる努力が行なわれるべきであることを勧告する。これとの関連で、脆弱な立場に置かれた集団およびマイノリティ集団の構成員である子どもを含むすべての子どもの、家庭、学校その他の施設および機関ならびに社会一般における参加権がとくに重視されるべきである。この権利を、子どもに関わるすべての法律、司法上および行政上の決定、政策ならびにプログラムに編入することも求められる。締約国はまた、子どもおよび若者とともに働くおとなが子どもに敬意を示し、かつ、子どもが自己の意見を効果的に表明できるようにすることおよびその意見が考慮されるようにすることを確保するための研修を受けることも、確保するべきである。締約国はまた、子どものニーズに関する電話を受けるため、24時間利用可能な、3ケタの番号のフリーダイヤル電話サービスを提供することも求められる。 3.市民的権利および自由 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰 32.委員会は、18歳未満の者が、多くの場合には警察による留置中にまたは法的手続の審判前段階で拷問および残虐な取扱いの対象にされ続けているという訴えがあることを懸念する。弁護人および(または)医療サービスならびに家族へのアクセスも、警察により留置されている若者に対しては制限されているように思われる。委員会はまた、これらの虐待について苦情を申し立てるための手続についても、当該手続が子どもに対する配慮を欠いている可能性があること、子どもが親/法定代理人の同意なく苦情を申し立てることが認められていないこと、および、その有効性が証明されていないことに関して懸念を覚えるものである。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに警察隊の研修を通じて、拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の行為を防止するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 子どもおよび若者に対して拷問または非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰の行為を行なった者を捜査し、訴追しかつ処罰するための措置をとること。 (c) 被害者の回復および社会的再統合のためのプログラムを設けること。 (d) 子どもが苦情を申し立てるための機構を強化するとともに、親/法定代理人の許可を要件とすることなく子どもが苦情を申し立てられるようにすること。 34.委員会はまた、締約国の寄宿学校その他の教育施設において拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰が用いられていることも懸念する。 35.委員会は、締約国に対し、教育者および施設で働くその他の専門家が、子どもを拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰の行為の対象とすることの禁止について十分に知らされることを確保するよう、促す。 体罰 36.委員会は、家庭および代替的養護の現場で体罰が禁じられていないことを懸念する。委員会はまた、締約国において子どもの体罰が依然として社会的に受け入れられており、かつ、家庭および体罰が公式には禁じられている場所(学校等)でいまなお実践されていることも懸念するものである。 37.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 家庭および代替的養護の現場におけるあらゆる形態の体罰を法律で明示的に禁止すること。 (b) 法律の効果的実施により、家庭、学校その他の施設における子どもの体罰の実践を防止しかつこれと闘うこと。 (c) 体罰に反対する意識啓発キャンペーンおよび公衆教育キャンペーンを実施するとともに、非暴力的な、参加型の形態のしつけおよび規律を促進すること。 4.家庭環境および代替的養護 家庭環境を奪われた子ども 38.委員会は、施設養護の対象とされる子どもの人数が増えていること、および、脱施設化に関する国家政策を実施する努力がうまくいっていないことを懸念する。委員会はまた、家庭的な代替的養護体制を促進するために十分な努力が行われていないことも懸念するものである。 39.条約第20条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって援助および支援サービス(親を対象とする教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラムを通じてのものを含む)を提供することにより、家庭環境から子どもが分離することを回避し、かつ施設で暮らす子どもの人数を減らすことを目的として、包括的戦略を採択しかつ即時的な予防措置をとること。 (b) 施設養護への子どもの措置について、権限のある学際的な複数の公的機関によるアセスメントが常に行なわれること、ならびに、当該措置がもっとも短い期間で行なわれかつ司法審査に服すること、および、条約第25条にしたがって当該審査が再審査の対象とされることを確保すること。 (c) 子どもがいっそう全面的に発達することおよび子どもがあらゆる形態の虐待から保護されることを可能とするような環境づくりのための措置をとること。子どもが施設に措置されている間の家族との接触も、これが子どもの最善の利益に反しないときは、さらに奨励されるべきである。 (d) 条約で認められている権利(子どもの最善の利益の原則を含む)に特段の注意を払うことによって、伝統的な里親養護制度および家庭を基盤とするその他の代替的養護を発展させるための努力を強化するとともに、後見機関および管財機関の能力構築を目的とした措置を強化すること。 (e) 子どもが代替的養護プログラムの評価に参加すること、および、子どもが苦情を申し立てることを可能にする苦情申立て機構が創設されることを確保すること。 養子縁組 40.委員会は、自己の本来の身元を知る養子の権利が締約国で保護されていないことに、懸念とともに留意する。 41.委員会は、締約国に対し、自己の本来の身元を知る養子の権利を保護するとともに、この目的のための適切な法的手続(推奨される年齢および専門家による支援措置を含む)を定めるよう、奨励する。 42.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約(第33号)に2000年に署名したことに留意する。委員会は同様に、養子縁組のために必要とされる書類、不当な支払い、および、養親になろうとする者に対して養子としようとする子どもの選択を認めていることとの関連で、連邦当局が外国の養子縁組斡旋機関を十分に統制できていないことに留意するものである。委員会は、2003年には国際養子縁組件数が初めて国内養子縁組件数を上回ったことに、懸念とともに留意する。 43.委員会は、締約国が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約を批准するよう勧告する。それまでの間、委員会は、締約国が、養親の適格性および養子縁組後のフォローアップを確保するため受け入れ国の当局と協定を締結するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国が、外国の養子縁組斡旋機関の認証および統制のためのシステムを確立するとともに、国内養子縁組を促進するための措置を発展させかつ実施することも勧告する。 措置の定期的再審査 44.委員会は、施設および里親家庭への子どもの措置の定期的再審査が不十分であることを懸念する。委員会はまた、子どもの施設において独立の査察機構がまだ整備されていないことも懸念するものである。 45.委員会は、締約国が、里親家庭または施設に措置された子どもの状況が十分に監督されることを確保するよう、勧告する。締約国はまた、市民社会との調整を図りながら、子どもの施設を独立のかつ公的な立場で査察するための機構も発展させるべきである。 虐待およびネグレクト、不当な取扱い、暴力 46.委員会は、施設において多数の子どもが教育担当者による虐待を受けているという報告があることを懸念する。委員会はまた、家庭および施設で暴力にさらされた被虐待児が必ずしも十分なケアおよび援助を受けていないこと、および、この分野における防止(および予防介入)ならびに意識啓発との関連で十分な取り組みが行なわれていないことも、懸念するものである。 47.委員会は、締約国が、以下の措置をとる等の手段により、家庭および施設で暴力にさらされた子どもに十分な援助を提供するための努力を引き続き強化するよう、勧告する。 (a) 施設における暴力の規模を評価するための研究を行ない、かつこれらの行為の責任者を処罰するための措置をとること。 (b) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 身体的および情緒的虐待の事案に関する通報の手続および子どもからの苦情申立てを効果的に調査するための手続を確立すること。 (d) 予防介入のための法的枠組みを強化すること。 (e) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。 (f) 不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育キャンペーンおよび防止プログラム(積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する家族発達プログラムを含む)を実施すること。 48.子どもに対する暴力の問題に関する事務総長の詳細な研究および政府に対する関連のアンケートとの関係で、委員会は、当該アンケートに対する締約国の文書回答、および、2005年7月5~7日にスロベニアで開かれたヨーロッパ・中央アジア地域協議への締約国の参加を、評価の意とともに認知する。委員会は、すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的または精神的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、締約国が、市民社会と連携しながら、この地域協議の成果を行動のためのツールとして活用するよう、勧告するものである。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 49.委員会は、障害のある子どもは矯正目的の「補助学校」および「強制学級」に送致されるのが通例であるため、これらの子どもを主流の教育制度に包摂するために行なわれている努力が不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会はまた、寄宿学校における障害のある子どもの割合が人口比に照らして相当に過剰であることも懸念するものである。 50.委員会は、締約国が、以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもに対する差別の問題に対応すること。 (b) 障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもがサービスに平等にアクセスできることを確保すること。 (c) 障害のある子どもの寄宿学校への措置について、このような措置はそれが子どもの最善の利益にかなう場合に限定することを目的として見直しを行なうこと。 (d) 「矯正学校」および「補助学校」の慣行を廃止すること、必要な支援を提供すること、および、教員が普通学校における障害のある子どもの教育に関する研修を受けることを確保すること等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。 基礎保健および福祉 51.委員会は、子どもの健康向上のために行なわれた多数のプログラムおよび措置に関する情報に留意するものの、締約国における健康水準について依然として懸念を覚える。しかしながら委員会は、結核の発生率が減少しているにも関わらず、結核の罹患件数が多いままであることを依然として懸念するものである。委員会はまた、ヨード欠乏症の発生件数が多いこと、および、締約国における母乳育児の実施率が低いことも依然として懸念する。 52.委員会はまた、改革された制度のもとで設けられたサービスおよびプログラムが、とくにプライマリーヘルスケアの発展との関連で条約第24条と全面的に一致していないことも懸念する。 53.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。 (a) プライマリーヘルスケアにおける予防介入を増進させること。 (b) 保健に対する公共支出を増加させること。 (c) 食塩の完全ヨウ素添加に関する法律を制定し、かつその実施を確保すること。 (d) 結核を理由とする有病率を削減するための努力を継続すること。 (e) 全国母乳育児委員会の創設、医療専門家の研修および母乳育児実践の向上を検討すること。 思春期の健康 54.アルコールおよびタバコの消費水準が高い問題に対応するための措置および新法については認知しながらも、委員会は、青少年によるタバコおよびアルコールの消費水準が高いことを懸念するとともに、締約国における望ましい健康習慣の促進が不十分であり、栄養、喫煙、アルコール、身体的健康および個人衛生にほとんど焦点が当てられていないことに留意する。 55.委員会はまた、とくにリプロダクティブヘルスとの関連で、思春期の健康に関する情報が不十分であることも懸念する。委員会はまた、避妊手段の費用が万人に負担可能なものとなっていないために締約国におけるその使用が制限されており、かつ、十代の妊娠および妊娠中絶が多数発生していることも、懸念するものである。 56.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら思春期の健康に細心の注意を払うとともに、学校におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育の提供ならびに学校保健サービス(若者に配慮し、かつ秘密が守られるカウンセリングおよびケアも含む)の導入等も通じて、思春期の健康を促進する努力を強化するよう、勧告する。青少年の喫煙およびアルコール消費を減らすため、委員会は、締約国が、とくに青少年のために考案された、健康的行動に関する選択についてのキャンペーンを開始するよう勧告するものである。 57.委員会は、締約国における青少年の自殺率が高いこと、および、青少年の自殺を防止するために相応の努力がまったく行なわれていないことに対する懸念をあらためて表明する。 58.委員会は、締約国に対し、保健サービスの資源を強化しかつ精神保健サービスを向上させるとともに、自殺防止のためにあらゆる必要な措置をとるよう、促す。 HIV/AIDS 59.委員会は、締約国でHIV/AIDSが流行していること、および、若者のハイリスク行動(すなわち注射器による麻薬の使用および危険な性的行動)のより今後HIV/AIDS感染者の人数がさらに増える可能性があることを、深刻に懸念する。委員会はまた、予防措置にほとんど関心が向けられていないことも懸念するものである。 60.委員会はまた、締約国でHIVの母子感染が増加していることも懸念する。委員会はまた、HIVに感染した母親の子どもが子ども自身のHIV感染の有無に関わらず根強く差別されていること、ならびに、このような子どもが母親によってしばしば遺棄されおよび長期にわたって入院させられていることにも、懸念を表明するものである。 61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針を考慮に入れながら、HIV/AIDSの拡散を防止するための努力を強化すること。 (b) 母子感染の予防措置を強化すること。 (c) 母親がHIVに感染している新生児に対する抗レトロウィルス治療およびHIV陽性の母親の産後モニタリングを保障すること。 (d) 差別の禁止の原則を全面的に尊重する十分な医学的、心理的および物的支援を提供することにより、HIVに感染した子どもまたはAIDSによる親の死亡を理由として孤児となった子どもに特段の注意を払うこと。 (e) 締約国で行なわれている、HIV陽性の母親の子どもを病棟または特別孤児院に隔離する慣行およびHIV陽性の子どもが普通孤児院、医療ケアおよび教育上の便益へのアクセスを拒否される慣行についての研究を行なうこと。 (f) HIV陽性の母親に対し、このような母親による新生児の遺棄を防止し、かつこのような母親が子どもを養育できるようにするための十分な支援を提供すること。 (g) HIV/AIDSに感染した子どもおよび(または)HIV/AIDSの影響を受けている子どもに対する差別およびスティグマを削減する目的で、青少年(とくに脆弱な立場に置かれた青少年)および一般住民の間でHIV/AIDSに関する意識を高めるためのキャンペーンおよびプログラムを開始すること。 (h) とくにUNAIDS〔国連エイズ合同計画〕、WHOおよびユニセフの技術的援助を求めること。 6.社会保障ならびに保育サービス・施設/生活水準 十分な生活水準 62.委員会は、低所得世帯で暮らす子どもが多数にのぼること、および、文書回答で提供された情報によれば子どものいる市民向けの予算配分額が相当に減少していることに、懸念とともに留意する。委員会は、劣悪な生活条件のため、家庭、学校、友人との活動および文化的活動における子どもの権利の享受が深刻に制限されていることを懸念するものである。 63.委員会は、十分な生活水準に対するすべての子どもの権利を保障する目的で、締約国が、経済的に不利な立場に置かれた家庭に支援および物的援助を提供するためにあらゆる必要な措置(もっとも脆弱な立場に置かれた集団の家族に関わる、対象を明確にしたプログラムを含む)をとるよう、勧告する。 7.教育、余暇および文化的活動 教育(職業訓練および職業指導を含む) 64.学校を中退する子どもの人数を減らすための措置など、心強い思いを抱かせる若干の進展が最近見られたにも関わらず、委員会は、無償の初等教育が法律で保障されているにも関わらず初等学校について種々の費用負担が求められ続けていることを、依然として懸念する。委員会はまた、連邦法第122号がもはや就学前の子どもに対する金銭的および物的支援を保障していないこと、および、同法により農村部で働く教員を対象とした若干の奨励策が中止されたことも、懸念するものである。委員会は、成人の非識字者数が減少したことおよび女性の非識字者の割合が低下したことについて締約国を称賛するものの、青少年の非識字者が多いことおよび青少年の非識字者に女子が占める割合が上昇していることを懸念する。委員会はまた、職業訓練制度に透明性が欠けていることも懸念するものである。 65.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもが初等中等教育にアクセスできることを確保するために必要な措置をとること。 (b) 教科書、改修および安全対策のようなすべての直接費および間接費を考慮に入れながら、初等教育が無償であることを確保するためにあらゆる適当な措置をとること。 (c) マイノリティ言語を使用する人々の教育の促進に特段の注意を向けながら、教育における人種的格差を是正するための努力を強化すること。 (d) (着任前および現職時の)教員研修に向けた努力を強化するとともに、(とくに連邦法第122号に照らして)教員の給与および労働条件の問題に対応すること。 (e) 職業訓練制度を拡大し、かつそのあり方を改善すること。 (f) とくに非公式な教育機会を提供することにより、若者の非識字を解消するための措置を全面的に実施すること。 8.特別な保護措置 子どもの難民および国内避難民 66.モスクワ地域圏で子どもの難民および庇護希望者に対して教育へのアクセスが提供されていることは歓迎しながらも、委員会は、他の地域圏でこのようなアクセスが提供されていないことを懸念する。委員会はまた、保護者のいない未成年者が、後見人がいないことを理由として国の難民認定手続にアクセスできないことも懸念するものである。委員会はまた、難民および庇護希望者のもとに生まれた子どもに対する出生証明書の発行において登録が条件とされていることが多いことを懸念する。 67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの難民、庇護希望者および国内避難民がロシア連邦のすべての地域で教育へのアクセスを享受することを確保するため、必要な立法上および行政上の措置をとること。 (b) 具体的かつ明確な手続を設けることにより、保護者のいない未成年者および養育者から分離された未成年者が国の難民認定手続およびその後の援助にアクセスできることを確保すること。 (c) 保護者のいないまたは養育者から分離された子どもに法定後見人を任命することについて明確な行政上の責任を負う、国の特定の機関を指定すること。 (d) ロシア連邦に在留する難民および庇護希望者のもとに生まれた子どもがその出生を自動的に登録されかつ出生証明書を発行される旨を定めた特定の行政規則または行政命令を導入するとともに、チェチェンのすべての国内避難民に対し、イングーシで生まれた子どもについての出生証明書が発行されることを確保するために必要な措置をとること。 紛争の影響を受けている子ども 68.委員会は、チェチェンおよび北カフカースに住んでいる子ども(およびとくに国内避難民である子ども)が、とくに教育および健康に対する権利との関連で、紛争の影響をいまなおきわめて深く受けていることを依然として懸念する。委員会はまた、反乱集団との関係を疑われた若者の、治安部隊員による逮捕および失踪が報告されていることも懸念するものである。委員会は、過度に傷害を与えまたは無差別の効果を有することがあると認められる通常兵器の禁止または塩湯制限に関する条約の改正議定書IIを締約国が最近批准したにも関わらず、地雷敷設地帯の特定および標示または地雷除去の努力が限られていることを懸念する。 69.委員会は、締約国が、子どもの権利条約第38条1項にしたがい、とくに健康および教育に対する権利との関連で、チェチェンおよび北カフカースにおける紛争の影響から子どもを保護するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、治安部隊による子どもの身体の安全の侵害がなくなることを確保するための措置をとることも促すものである。委員会はさらに、締約国が、地雷除去の努力をさらに進めるとともに、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を批准するよう、勧告する。 70.委員会はまた、「軍部隊の隊員として未成年のロシア連邦市民を入隊させかつ当該隊員に必要な手当を支給することについて」の規則で、14~16歳の男子の志願採用および軍部隊への配属が認められていることも懸念する。 71.委員会は、締約国に対し、普通教育を修了していない子どもが軍部隊に採用されることを防止する目的で、「軍部隊の隊員として未成年のロシア連邦市民を入隊させかつ当該隊員に必要な手当を支給することについて」の規則が子どもの権利条約を全面的に一致するための見直しを行なうよう、促す。 児童労働 72.委員会は、子どもに対する特別な保護を拡大する目的で、締約国が、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を批准したことを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の子どもが、路上、家庭その他の場所において搾取的な状況下でまたは定期的通学を妨げられるほどに働いているという報告があることにも留意するものである。 73.委員会は、条約第32条、ならびに、締約国が批准した、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約および第182号条約にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) ILOの最低年齢勧告(1973年、第146号)および最悪の形態の児童労働勧告(1999年、第190号)を正当に考慮しながら、条約第32条ならびにILO第138号条約および第182号条約の実施を確保するための措置をとること。 (b) 児童労働(規制対象とされていない労働を含む)の規模を監視するための統制機構を確立し、防止を増進させる目的でその原因に対応し、ならびに、子どもが合法的に雇用されているときは、その労働が搾取的なものではなくおよび国際基準にしたがっていることを確保するための努力を強化すること。 (c) この点に関してILO児童労働撤廃撤廃国際計画の協力を求めること。 ストリートチルドレン 74.委員会は、ストリートチルドレンの人数が増えており、かつこれらの子どもがあらゆる形態の虐待および搾取の被害を受けやすいこと、ならびに、これらの子どもが公共の保健サービスおよび教育サービスにアクセスできていないことに、懸念を表明する。このような状況に対応し、かつこれらの子どもを保護するための体系的かつ包括的戦略が存在しないことも、委員会にとって懸念の対象である。 75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) あらゆる形態の虐待および搾取を防止しかつこれと闘うための包括的な戦略および政策を立案しかつ実施する目的で、路上で暮らしかつ働く子どもの人数、構成および特徴に関する包括的な全国的調査を行なうこと。 (b) 子ども自身の意見を考慮に入れながら、ストリートチルドレンが親その他の親族と再統合することを促進しかつその便宜を図り、または代替的養護を提供すること。締約国は、これらのサービスを提供するための十分な資源が地方政府に与えられることを確保するべきである。 (c) ストリートチルドレンの全面的発達を支援するため、これらの子どもに十分な栄養およびシェルターならびに保健ケアおよび教育機会が提供されることを確保するとともに、これらの子どもに十分な保護および援助を提供すること。 (d) 路上で暮らしている子どもに関する公衆の否定的態度を変革するため、これらの子どもについての意識啓発を図ること。 (e) 締約国のストリートチルドレンとともに活動している非政府組織および子どもたち自身と連携し、かつ、とくにユニセフの技術的援助を求めること。 薬物濫用 76.委員会は、子どもの薬物濫用を防止しかつこれと闘うためにさまざまな措置がとられたことで薬物依存が減少していることを歓迎しつつ、締約国において薬物を消費する子どもの人数がいまなお多いことを依然として懸念する。委員会はまた、子どもが薬物取引に関与していることも懸念するものである。 77.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 薬物濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を子どもに提供するとともに、子どもが薬物取引に関与することを防止するための措置をとること。 (b) 薬物を使用した子どもが犯罪者ではなく被害者として扱われ、かつ適切な援助およびカウンセリングを提供されることを確保すること。 (c) この現象の原因および影響を注意深く分析するための研究を行ない、かつ、その研究の成果を活用して薬物の使用を防止するための努力を強化すること。 (d) 薬物濫用の被害を受けた子どもの回復および再統合のためのサービスを発展させること。 性的搾取および性的虐待 78.委員会は、締約国で性的に搾取されている子どもおよび若者の人数が多いことを懸念する。委員会は、締約国で10代の売買春が深刻な問題となっていることを懸念するものである。委員会はまた、14~18歳の子どもが売春およびポルノへの関与から法的に保護されていないことも懸念する。 79.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの性的搾取および虐待を防止しかつこれと闘うための措置を強化すること。 (b) 性的搾取および性的虐待の事案の報告が(被害者の権利を正当に考慮しながら)捜査されること、ならびに、加害者が適切に訴追されおよび処罰されることを確保すること。 (c) 子どもの証言が適切な方法で記録されること、および、聴取を行なう者が必要な専門の資格を有することを確保すること。 (d) 14~18歳の子どもが売春およびポルノへの関与から法的に保護されることを確保するための措置をとること。 (e) 性的搾取、人身取引およびポルノにおける子どもの使用に対処するための戦略を策定する目的で、子どもの虐待の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。 売買、取引および誘拐 80.人身取引を禁ずる規範が最近になって刑法に導入されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの規定を効果的に実施するための十分な取り組みが行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、人身取引被害者のための保護措置が十分に整備されていないこと、および、人身取引を行なう者と国の職員の共謀行為の報告が全面的に捜査されかつ制裁の対象とされていないことにも、懸念を表明するものである。 81.委員会は、締約国に対し、人身取引に関する新たな規定の全面的実施における効果的な機関間の調整を確保するための努力を強化するよう、奨励する。締約国は、人身取引の被害者が保護され、かつその地位および権利がさらに詳しく定義されることを確保するべきである。委員会はまた、締約国に対し、そのプログラム活動において防止活動にいっそう焦点を当てるとともに、人身取引を行なう者と国の職員の共謀行為の報告を捜査するよう、奨励する。 82.委員会は、締約国が、まだ批准はしていないものの、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書に署名したことに留意する。 83.委員会は、締約国に対し、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書および人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約を批准するよう、奨励する。 少年司法の運営 84.委員会は、締約国が、いくつかの立法上の試みにも関わらず、罪を犯した少年が司法制度のもとで別に対応されるようにするための特別な連邦手続および連邦裁判所をまだ確立していないことを懸念する。 85.委員会はまた、以下のことを懸念するものである。 (a) 防止活動に関するまたは現行の措置の妥当性に関する調査研究および評価を行なうための機構が不十分であること。 (b) 法律に触れた子どもにスティグマが付与されること。 (c) 法律に触れた子どものための、拘禁に代わる措置および諸形態の再統合〔のための措置〕が存在しないこと。 (d) 自由を奪われた18歳未満の者を対象とする適切な場所が存在せず、これらの者がしばしば成人とともに拘禁されていること。 (e) 自由を奪われた18歳未満の者の拘禁の物的環境が劣悪であること。 (f) 拘禁された18歳未満の者による教育へのアクセスが不十分であること。 (g) 法律に触れたものの自由剥奪刑を言い渡されず、かつ十分な治療措置および教育措置の利益を得ていない未成年者の状況を監視するための措置が不十分であること。 86.委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の討議(1995年)にも照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針を含む、少年司法の分野における他の関連の国連基準が全面的に実施されることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、以下の措置を優先的にとるよう奨励するものである。 (a) 刑事責任年齢に達しない子どもが犯罪者として扱われないことを確保すること。 (b) 18歳未満の者が普通司法制度ではなく特別の少年司法制度によって審理されることを可能にするため、少年司法制度改革の作業を迅速に進めること。 (c) 自由の剥奪が最後の手段として用いられることを確保する目的で、法律に触れた18歳未満の者を対象とする効果的な代替的量刑制度(地域奉仕活動または修復的司法など)を発展させること。 (d) すべての子どもが適切な法的援助および弁護人に対する権利を有することを保障すること。 (e) 未決拘禁に関する刑事訴訟法の規定を適用すること。 (f) とくに刑の執行猶予および条件付釈放を活用することにより、自由の剥奪を適切なかぎり短期間とするために必要な措置をとること。 (g) 18歳未満の者が拘禁時に成人から分離されることを確保すること。 (h) 18歳未満の者が、少年司法制度の対象とされている間もその家族との定期的接触を保つことを確保すること。 (i) 裁判官および法執行官を対象として継続的研修を行なうこと。 (j) 拘禁されている18歳未満の者が教育および再統合プログラムを利用できることを確保すること。 (k) 少年拘禁センターにおける生活環境に関する基準および監視機構(独立機関による訪問も含む)を確立しかつ実施すること。 (l) 刑の言い渡しを受けたすべての子どもに対し、必要なときはカウンセリングその他の社会的援助措置へのアクセスを提供すること。 (m) 関連の国連機関、とくにUNDP〔国連開発計画〕、UNODC〔国連薬物犯罪事務所〕およびユニセフの援助を求めること。 9.条約の選択議定書 87.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書に締約国が署名し、かつその批准を予定していることを歓迎するとともに、締約国が子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書への署名を検討していることに留意する。委員会は、締約国に対し、この点に関わる計画を遂行しおよび完了させ、ならびに条約の2つの選択議定書を批准するよう、促すものである。 10.フォローアップおよび普及 フォローアップ 88.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、連邦議会ならびに適用可能なときは州または地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 89.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 11.次回報告書 90. 委員会は、締約国に対し、次回の定期報告書を、第5回定期報告書について条約で定められた提出期限、すなわち2012年9月14日までに提出するよう慫慂する。この報告書は第4回および第5回定期報告書を統合したものであるべきである。しかしながら、委員会が毎年多数の報告書を受領しており、かつ、その結果として締約国報告書の提出日から委員会による検討までに相当の遅延が生じていることから、委員会は、締約国に対し、第4回・第5回統合報告書を提出期限の18か月前、すなわち2011年3月14日に提出するよう慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年1月12日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/197.html
総括所見:イラク(第1回・1998年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.94(1998年10月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年9月23日および24日に開かれた第482回~第484回会合(CRC/C/SR.482-484) においてイラクの第1回報告書(CRC/C/41/Add.3) を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年10月9日に開かれた第505回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/Q/IRAQ/1) への文書回答の提出を歓迎する。委員会は、にもかかわらず、報告書が委員会によって定められたガイドラインにしたがっていないことを遺憾に思うものである。委員会は、締約国代表団との間に持った建設的対話および議論の過程で代表団から受け取った回答に留意する。 B.積極的な側面 3.委員会は、条約が締約国において自動執行力を有しており、かつその規定が裁判所において援用できることに留意する。 4.委員会は、子どものための国家的行動計画が作成されたことに留意するとともに、家族計画連盟および保健省によってリプロダクティブヘルスのためのプログラムが実施されていること、および、中央統計局内に母子部が設置されたことを歓迎する。委員会はまた、締約国において義務教育が導入されていることおよび非識字と闘うプログラムが開発されたことも歓迎するものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 5.経済的、社会的および文化的権利に関する委員会が採択した一般的意見8号(1997年)および差別防止および少数者保護に関する小委員会の決定1998/114に照らし、委員会は、安全保障理事会が科している禁輸措置によって経済および日常生活の多くの側面に悪影響が生じており、したがって締約国の住民、とくに子どもによる、生存、保健および教育に対する権利の全面的享受が阻害されていることに留意する。委員会はまた、現在、北部の領域が締約国当局の統治下にないことにも留意するものである。その結果、当該地域における子どもの権利条約の実施についての情報が存在しないことは、委員会の懸念の対象である。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 6.委員会は、締約国が条約の批准時に第14条1項に留保を付したことに、懸念とともに留意する。ウィーン宣言および行動計画(1993年)に照らし、委員会は、締約国に対し、留保を撤回の方向で見直す可能性を検討するよう奨励するものである。 7.締約国が立法上の枠組みを相当に発展させてきていることには留意しながらも、委員会は、条約の規定および原則が全面的に法律に反映されていないことをなお懸念する。委員会は、締約国が、たとえば条約との全面的両立性を確保する目的で子ども法を制定することにより、必要な場合に法改正プロセスに携わるためのあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。 8.委員会は、条約が対象とするあらゆる領域において法執行を強化する必要があることを懸念する。委員会は、締約国が、十分なサービス、救済およびリハビリテーション・プログラムを通じて現行法の執行および実施を保障するような多くの政策およびプログラムを、適切な場合には国際協力の枠組みにおいて導入することを検討するよう、提案するものである。 9.条約の実施を担当する機関である子ども福祉庁が政府の最高レベルで支持を得ておりかつ大統領府に設置されていることには留意しながらも、委員会は、その権限が限られていることを依然として懸念する。委員会は、締約国が、同庁の予算配分額ならびに条約を実施するためのその権限および権威を増大させることにより、子ども福祉庁の強化に努めるよう勧告するものである。 10.プログラムおよび政策の調整に関して、委員会は、子どもとともにおよび子どものために活動しているさまざまな機関のあいだの調整が不十分であることを懸念する。委員会は、国および地域のレベルの双方で子どもの権利に関与しているさまざまな政府機関間の調整を強化するため締約国がさらなる措置をとること、および、子どもの権利の分野で活動している非政府組織とのより緊密な協力を確保するためさらなる努力を行なうことを、勧告するものである。 11.委員会は、条約に基づく権利の侵害に関する子どもからの苦情を登録しかつそれに対応する独立した機構が存在しないことに懸念を証明する。委員会は、その権利の侵害の苦情を処理しかつそのような侵害に対する救済を提供する独立した機構に子どもがアクセスできるようにすることを勧告するものである。 12.中央統計局内に母子部が設置されかつ拡大されたことには留意しながらも、委員会は、子どもに関わって達成された進展を監視しおよび評価しならびに子どもに関わってとられた政策の影響を評価することを目的として、あらゆる集団の子どもとの関連で、条約が対象とする領域に関する指標を発展させかつ細分化された量的および質的データを体系的に収集するための十分な措置がとられていないことを、なお懸念する。委員会は、条約が対象とするすべての領域を編入することを目的として、データ収集システムを見直すよう勧告するものである。そのようなシステムは、あらゆる子どもをその対象としつつ、虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、働いている子ども、少年司法の運営の対象となった子ども、女子、ひとり親家庭の子どもおよび婚外子、遺棄されかつ(または)施設措置された子どもならびに障害のある子どもを含む、脆弱な立場に置かれた子どもをとくに重視するようなものであるべきである。委員会は、締約国が、そのようなデータ収集システムの発展に際してとくにユニセフの技術的援助を求めることを検討するよう、勧告する。 13.条約第4条に照らし、委員会は、子どものための予算資源を「利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで」配分することに対して向けられた注意が不十分であることを懸念する。委員会は、締約国に対し、とくに条約第2条、第3条および第4条を考慮にいれて、子どもの経済的、社会的および文化的権利の保護を確保するための予算配分を優先するよう勧告するものである。これとの関連で、委員会はまた、締約国が都市部と農村部との間および諸県間の格差を解消するよう努めることも勧告する。 14.委員会は、専門家集団、子どもおよび公衆一般が条約およびその原則について十分に認識していないことに留意する。委員会は、条約の原則および規定がおとなおよび子どもの間で同様に広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、条約をあらゆるマイノリティの言語に翻訳するよう努力を行なうことが勧告される。委員会はまた、裁判官、弁護士、法執行官、軍の士官および兵員、教職員、学校管理者、心理学者を含む保健従事者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政職員ならびに子どもをケアする施設の職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、子どもの権利に関する、かつ国際人権法および国際人道法の領域における、体系的な研修および再研修プログラムを組織することも勧告するものである。非政府組織、マスメディアおよび子ども自身を含む公衆一般を対象とした条約の原則および規定の体系的普及が強化されるべきである。委員会は、締約国が条約を学校および大学のカリキュラムに編入するよう提案する。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、とくに国連人権高等弁務官事務所、国際赤十字委員会およびユニセフの技術的援助を求めることを検討するようにも、提案するものである。 15.条約の規定および原則、とくに子どもの最善の利益(第3条)ならびに生命、生存および発達に対する権利(第6条)の両原則に照らし、委員会は、軍隊への志願入隊に関する法定最低年齢が低いことを深く懸念する。委員会は、締約国が、国際人権法および国際人道法に照らし、軍隊への志願入隊に関する法定最低年齢を引き上げるよう勧告するものである。 16.委員会は、締約国が、子どもに関わる立法、行政上および司法上の決定または政策およびプログラムにおいて、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を全面的に考慮にいれていないように思えることに、懸念を表明したい。条約の一般原則が、政策および意思決定の指針となり、かつ、あらゆる法改正ならびに司法上および行政上の決定、ならびに、子どもに影響を与えるあらゆる事業およびプログラムの開発および実施において適切に反映されることを確保するため、さらなる努力が行なわれなければならないというのが委員会の見解である。 17.委員会は、締約国で主流となっている福祉政策および福祉実務が、条約に掲げられた権利基盤アプローチを十分に反映していないことを懸念する。これとの関連で、委員会はまた、差別の禁止の原則(第2条)が憲法その他の国内法に反映されていることに留意するものである。しかしながら委員会は、国民的または民族的出身、政治的その他の意見および障害に基づく差別が国内法において明示的に禁じられていないことを懸念する。イラクの立法は性別に基づく差別を禁じているが、委員会は、実際には、とくに相続権および教育への権利に関して男女間になお格差があることを懸念するものである。委員会は、締約国に対し、社会のあらゆるレベルで差別の禁止を確保しかつ男女平等を奨励するため、立法措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう奨励する。これとの関連で、委員会はさらに、とくに農村部における女子の就学を確保し、かつとくに義務教育期間における女子の脱落率を減少させるため、追加的な措置をとるよう勧告するものである。 18.委員会は、子どもの参加権に関して懸念を表明する。委員会は、締約国に対し、条約の促進および実施において積極的な役割を果たすことを子どもに奨励するよう、促すものである。委員会は、イラク学生青年全国連盟のような非政府組織が条約の促進においてより重要な役割を与えられるよう提案する。 19.委員会はさらに、市民権に関する締約国の立法に照らし、子どもは父が知れない場合または無国籍である場合を除いてイラク人である父の国籍しか取得できないことを、懸念する。委員会は、イラク国籍の取得が条約の規定および原則、とくに第2条、第3条および第7条に照らして決定されることを保障するため、国内法を改正するよう勧告するものである。 20.条約第19条に照らし、委員会は、体罰が国内法で明示的に禁じられていないことに懸念を表明する。委員会は、締約国が、社会のあらゆるレベルで体罰を禁止することを目的として、立法措置も含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。委員会はまた、代替的形態のしつけおよび規律の維持が、子どもの人間の尊厳に一致する方法で、かつ条約、とくに第28条2項にしたがって行なわれることを確保するため、意識啓発キャンペーンを行なうことも提案する。 21.委員会は、家庭の内外における不当な取扱いおよび虐待(性的虐待を含む)について意識が不十分であり、情報が欠如しておりかつ社会の態度に問題があること、法的保護措置が不十分であること、適切な資源が財政的にも人的にも不十分であること、および、そのような虐待を防止しかつそれと闘うための十分な訓練を受けた人材が存在しないことを、懸念する。条約第19条に照らし、委員会は、締約国が、不当な取扱いおよび虐待に関する研究を行ない、かつ、とくに伝統的な態度を変えることを目的として十分な措置および政策を採択するよう勧告するものである。また、家庭内の性的虐待を含む子どもの虐待および不当な取扱いの事件が適切に調査され、加害者に対して制裁が科され、かつ、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しつつそのような事件において行なわれた決定を広報することも、勧告されるところである。法的手続において子どもに支援サービスを提供すること、条約第39条にしたがい、強姦、虐待、ネグレクト、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合できるようにすること、および、被害者が犯罪者として取り扱われかつスティグマ(烙印)を付与されることを防止することを確保するため、さらなる措置がとられるべきである。 22.委員会は、子どもの健康状況が悪化していること、とくに乳幼児死亡率が高くかつ上昇していることおよび栄養不良が長期的かつ深刻であることに、重大な懸念とともに留意する。このような状況は、母乳育児の貧弱な実践および共通小児疾病によってさらに悪化している。委員会は、締約国に対し、母乳育児の実践を促進しかつ向上させるための包括的政策およびプログラムを発展させること、とくに脆弱なおよび不利な立場に置かれた子どもの栄養不良を防止しかつこれと闘うこと、ならびに、小児疾病統合管理および子どもの健康の向上のためのその他の措置に関してとくにユニセフおよびWHOから技術的援助を受けることを検討するよう、奨励するものである。 23.委員会は、10代の妊娠、中絶、自殺、暴力および有害物質の濫用に関するものも含め、青少年の健康に関するデータが存在しないことをとくに懸念する。委員会は、締約国が、青少年の健康に関する政策ならびにリプロダクティブヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービスの強化を促進するよう勧告するものである。委員会はさらに、青少年の健康上の問題に関して包括的かつ学際的な研究を行なうよう提案する。委員会はまた、青少年のための、子どもにやさしい予防、ケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、財政的にも人的にもさらなる努力を行なうようにも勧告するものである。 24.委員会は、子どもも含む障害者のための施設およびサービスの利用可能性に関して懸念を表明する。障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児の施設措置に代わる措置を実施し、障害児に対する差別を減少させるための意識啓発キャンペーンを構想し、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ、普通学校制度および社会へのそのインクルージョンを奨励するよう、勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、親ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門職員の訓練のための技術的協力を求めるよう勧告する。この目的のため、とくにユニセフおよびWHOからの国際協力を求めることも可能である。 25.締約国における最近の経済状況に照らし、委員会はまた、労働に従事するため時期尚早にも関わらず退学する子ども、とくに女子の人数が多いことも懸念する。委員会は、教育へのアクセスを平等にし、子ども、とくに女子に対して学校に留まるよう奨励し、かつ早期に労働力に加わることを抑制するため、あらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。 26.委員会は、子どもの経済的搾取がここ数年で劇的に増加したこと、および、自分自身および家族を支える目的で働くためにときには幼くして退学する子どもの数が増えていることに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会はまた、義務教育が修了する年齢(12歳)と就業に関する法定最低年齢(15歳)との間に乖離が存在することも懸念するものである。委員会は、問題の原因および規模を特定するため、締約国における児童労働(危険な労働への子どもの参加も含む)に関わる状況について調査を行なうよう勧告する。子どもを経済的搾取から保護する立法は、インフォーマル労働部門も対象とすべきである。委員会はさらに、締約国が、義務教育が修了する年齢を引き上げて法定最低就業年齢と一致させることを検討するよう提案する。 27.委員会は、路上で暮らしかつ(または)働いている子どもの状況に、とくにそれが経済的および性的搾取に関わるがゆえに、懸念とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、防止措置ならびにこのような子どものリハビリテーションおよび再統合を確保するための努力を増大させるよう奨励するものである。 28.締約国が行なっている努力は考慮にいれながらも、委員会は、地雷に関わる状況および地雷が子どもの生存および発達に対してもたらしている脅威に、懸念とともに留意する。委員会は、地雷の危険性について親、子どもおよび公衆一般を教育すること、および、地雷の被害者のためのリハビリテーション・プログラムを実施することの重要性を強調するものである。委員会は、締約国が、国連諸機関からのものも含む国際協力の枠組みのなかで、地雷に関わる状況を再検討するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)に加盟するよう提案するものである。 29.委員会は、少年司法の運営に関わる状況について、かつ、とくにそれが条約および他の関連の国連基準と両立しないことについて、懸念する。委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護のための国連規則のようなこの分野の他の国連基準の精神にのっとり、少年司法制度を改革するために追加的な措置をとることを検討するよう勧告するものである。自由の剥奪は最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間でのみ考慮すること、自由を奪われた子どもの権利を保護すること、法の適正手続ならびに司法の完全な独立および公平性に対し、特段の注意を払うことが求められる。少年司法制度に関与する専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムが組織されるべきである。委員会は、締約国が、少年司法における技術的助言および援助に関する調整委員会を通じ、とくに国連人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討するよう、提案する。 30.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く利用できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。そのような文書は、政府および関心のある非政府組織を含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2012年5月28日)。