約 24,225 件
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/224.html
国連・障害者権利委員会の総括所見抜粋:子ども・教育関連(1) 2011年~:一般的意見2号抜粋/チュニジア/スペイン/ペルー/アルゼンチン/中国/ハンガリー/パラグアイ/オーストリア/オーストラリア/エルサルバドル/スウェーデン/アゼルバイジャン/コスタリカ原文は国連・障害者権利委員会のサイト(Sessions)を参照。 関連国連・子どもの権利委員会の勧告:障害児関連(日本) 国連・子どもの権利委員会:一般的意見9(障害のある子どもの権利) 国連・障害者権利委員会:一般的意見4(インクルーシブ教育を受ける権利) 一般的意見2号「第9条:アクセシビリティ」(2014年)抜粋 39.学校へのアクセシブルな移動手段、アクセシブルな校舎ならびにアクセシブルな情報およびコミュニケーションがなければ、障害のある人は教育に対する権利(条約第24条)を行使する機会を有しないことになろう。したがって、学校は、条約第9条第1項(a)で明示的に指摘されているように、アクセシブルでなければならない。ただし、アクセシブルでなければならないのはインクルーシブ教育のプロセス全体なのであって、建物のみならず、すべての情報およびコミュニケーション(環境総合支援型(ambient)またはFM活用型の支援システム、支援サービスおよび学校における合理的配慮を含む)についてもこれが当てはまる。アクセシビリティを促進するため、教育、および学校カリキュラムの内容は、手話、点字、代替文字、ならびに、コミュニケーションおよび移動誘導のための拡張型・代替型の形態、手段および様式(第24条第3項(a))を推進するようなものであるべきであり、かつ、これらによって遂行されるべきである。その際、盲、聾および盲聾の生徒が使用する適切な言語ならびにコミュニケーションの形態および手段に特別な注意を払うことが求められる。授業の形態および手段はアクセシブルであるべきであり、かつアクセシブルな環境において遂行されるべきである。障害のある生徒が置かれる環境全体が、インクルージョンを促進し、教育プロセス全体におけるこれらの生徒の平等を保障するようなものでなければならない。条約第24条の全面的実施は、他の中核的人権文書、および、教育における差別を禁止する条約(国際連合教育科学機関)の規定とあわせて検討されるべきである。(原文英語〔PDF〕/全文日本語訳〔日本障害者リハビリテーション協会仮訳〕) チュニジア(2011年) 障害のある子ども(第7条) 16.委員会は、2~14歳の子どもの94%が家庭において暴力的手段(言語的暴力、身体的暴力または剥奪のいずれによるかは問わない)よるしつけを受けていることを明らかにした複数指標クラスター調査(MICS2006)の結果に鑑み、危険な事態に達する可能性もある、子ども(障害のある子どもを含む)に対する常習的な不当な取扱いの通報(signalement)率が低いことをとりわけ懸念する。 17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある男子および女子に対する暴力の現象について評価を実施するとともに、このような現象との闘いを改善する目的で体系的なかつ細分化されたデータ(後掲パラ39参照)を集積すること。 (b) 障害のある子どもをケアしている施設が、適切な基準にしたがうことを条件として特別な訓練を受けた職員を配置され、定期的な監視および評価を受け、かつ、障害のある子どもがアクセスできる苦情申立て手続を設置することを確保すること。 (c) 独立のフォローアップ機構を設置すること。 (d) 障害のある男子および女子の施設措置に代えてコミュニティを基盤とするケアを提供するための措置をとること。 教育(第24条) 30.委員会は、障害のある子どものインクルーシブ教育に関する国家プログラムに留意する。しかしながら委員会は、インクルージョン戦略が実際には学校において平等に実施されていないこと、普通学校における子どもの人数およびインクルーシブな学級の運営に関する規則の違反が当たり前になっていること、ならびに、同一県内の諸地域間で学校が公平に分布していないことに、深い懸念とともに留意するものである。 31.委員会は、多くの統合学校において障害のある子どもを受け入れる設備が整っておらず、かつ、障害に関する教員および管理者の研修が締約国において依然として懸念事項のひとつとなっていることを、同様に懸念する。 32.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある者が、他の者との平等を基礎として表現および意見の自由に対する権利を行使できることを確保するための措置をとるとともに、これとの関連で、一般公衆向けの情報をアクセシブルな形式で提供し、ならびに、――とくにろう者、難聴者および盲ろう者との関係で――手話の使用を承認しおよび促進すること。 (b) 障害のある女子および男子を対象としたインクルーシブ教育をすべての学校で施行するための努力を増強すること。 (c) 教員および管理者を含む教育関係者を対象とした研修を強化すること。 (d) 障害のある子どものインクルーシブ教育に関する国家プログラムを実施するため、十分な財源および人的資源を配分すること。 スペイン(2011年) 障害のある子ども(第7条) 23.委員会は、障害のある子どもの虐待率が他の子どもに比して高いと報告されていることをとりわけ懸念する。委員会は、障害のある子どもの早期発見、家族的介入および十分な情報を提供したうえでの支援が行なわれているために障害児の全面的発達および意見表明能力が危機にさらされていること、ならびに、とくに社会サービス、保健サービスおよび教育サービスにおいて利用可能な資源および調整のとれた行政が欠けていることを、同様に懸念するものである。 24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害のある子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を増強するとともに、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究を実施して、このような権利侵害を根絶するための措置をとること。 (b) 自分自身の意見を表明する障害児の権利を確保するような政策およびプログラムを確立すること。 (c) 十分な情報を提供したうえでの治療、リハビリテーションおよびハビリテーションのためのサービスを含む支援サービス、ならびに、とくに乳幼児期における障害児の健康上、心理社会上および教育上のニーズに対応するケアへのインクルーシブなアクセスを確保するため、十分な資源をともなう、調整のとれた公共政策を策定すること。 教育(第24条) 43.委員会は、特別な教育ニーズを有する生徒の学校教育がインクルージョンの原則によって規律されていること、教育における差別が禁じられていること、および、障害のあるほとんどの子どもが普通教育制度に包摂されていることを歓迎する。委員会は、専門の教員、有資格の専門家ならびに必要な教材および資源の提供を教育当局に対して義務づけた教育に関する組織法第2/2006号、ならびに、障害のある生徒のために必要なカリキュラムの修正および多様化を学校に対して義務づけた諸法律の制定を称賛するものである。しかしながら委員会は、合理的配慮が行なわれないとされる事案、隔離および排除が継続しているとされる事案、差別を正当化するために財政的主張が利用されているとされる事案ならびに子どもがその親の意思に反して特別教育に編入される事案に鑑み、これらの法律の実際の実施について懸念を覚える。委員会は、障害のある子どもの特別教育への措置について異議を唱える親に不服申立ての可能性が認められておらず、かつ、このような親にとっての唯一の選択肢は、自己の費用により子どもの教育を行なうか、または普通教育制度における子どもの合理的配慮のための費用を支払うことであることに、懸念とともに留意するものである。 44.委員会は、合理的配慮の否定は差別であること、および、合理的配慮を行なう義務は即時的に適用されるものであって漸進的実現の対象ではないことを、あらためて指摘する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) インクルーシブ教育に対する権利を実施するために十分な財源および人的資源を配分し、専門の資格を有する教員を手配できる可能性の評価に特段の注意を払い、ならびに、地方政府の教育部局が条約上の義務を理解しおよび条約の規定にしたがって行動することを確保することにより、教育において合理的配慮を行なうための努力を増強すること。 (b) 障害のある子どもを特別学校もしくは特別学級に措置し、またはこのような子どもに対して水準を緩和したカリキュラムによる教育のみを提供する旨の決定が、親との協議に基づいて行なわれることを確保すること。 (c) 障害のある子どもの親が教育のための費用または普通学校における合理的配慮措置のための費用の支払いを義務づけられないことを確保すること。 (d) 子どもを隔離された環境に措置する旨の決定に対し、速やかにかつ効果的に不服申し立てが行なえることを確保すること。 ペルー(2012年) (注)未編集版に基づいて訳出 障害のある子ども(第7条) 16.子どもおよび青少年法(法律第27337号)において障害のある子どもの一定の権利が認められていることには留意しながらも、委員会は、これらの権利の事実上の享受について懸念を覚える。委員会は、締約国の統計データにおいて、障害のある子ども、とくに先住民族の子どもが不可視化されていることを懸念するものである。 17.委員会は、締約国が、障害のある子ども(とくに先住民族の子ども)に対する特別なケアおよび援助に優先度の高い課題として取り組み、かつ利用可能な資源を最大限に投資しながらこれらの子どもに対する差別の解消を図るとともに、これらの子どもの権利の擁護状況を監視するために正確なデータを収集するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、障害のある子どもに対する暴力、その虐待および極度の遺棄を防止するための措置をとるよう、勧告するものである。 教育(第24条) 36.インクルーシブ教育の制度の枠組みを定めることを目的とした多くの省令には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、これらの規定の事実上の実施に関して存在する欠陥、とくに、先住民族およびアフリカ系ペルー人コミュニティにおける非識字率ならびにこれが先住民族およびマイノリティの障害児に与える可能性がある影響について、懸念を覚える。 37.委員会は、締約国が、障害のある子どもおよび青少年を対象のためのインクルーシブ教育の制度に向けた進展における前進を達成するために十分な予算財源を配分するとともに、障害のある子ども、とくに先住民族およびアフリカ系ペルー人の子どもの非識字を特定しかつ減少させるために適切な措置をとるよう、勧告する。 アルゼンチン(2012年) 障害のある子ども(第7条) 15.委員会は、子どもおよび青少年の権利の包括的保護に関する法律第26.061号に障害のある子どもについての具体的規定が掲げられていないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国における障害児の状況に関する情報がないことも懸念するものである。 16.委員会は、締約国が、優先的課題として、法律第26.061号ならびに子どもおよび青少年の権利の包括的保護のための制度に、障害の視点を編入するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、障害のある子どもに対する差別を終わらせることに対して可能な最大限の量の利用可能な資源を投資するとともに、障害のある子どもが健康保険制度の対象とされ、かつ受給資格のあるサービスおよび手当(年金および住宅など)を受給することを確保するよう、促すものである。 教育(第24条) 37.委員会は、締約国における教育を規制する法律上の枠組みにおいて、インクルーシブ教育の原則が明示的に認められていること(法律第26.206号第11条)に留意する。しかしながら委員会は、プログラムおよびカリキュラムが障害のある生徒のニーズに適合させられていないこと、および、障害のある者が差別なくかつ他の生徒と平等な立場で教育制度にアクセスすることを妨げるあらゆる種類の障壁が蔓延していることにより、この原則の実施が実際には限定されていることを懸念するものである。委員会は、特別学校に通学している障害児の人数が多いこと、および、障害のある生徒の効果的インクルージョンを支える教育リソースセンターが設置されていないことを、深く懸念する。 38.委員会は、締約国が、インクルーシブ教育に対する権利を保障する包括的な国家教育政策を策定するとともに、障害のある生徒を包摂する教育制度の確立に向けた進展を確保するために十分な予算財源を配分するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、先住民族およびその他の農村コミュニティに特段の注意を向けながら、障害のあるすべての子どもが締約国の定める全面的義務教育を受けることを確保するための努力を強化することも、促すものである。委員会は同様に、締約国に対し、特別学校に通学している障害のある生徒がインクルーシブな学校に編入されることを確保し、かつ一般教育制度において障害のある生徒のために合理的調整を行なうために、必要な措置をとるよう促す。 中国(2012年) 障害のある子ども(第7条) 13.委員会は、締約国の障害児が、親によって遺棄される危険性が高い状況に置かれ、かつしばしば孤立した施設に措置されていることを恐れる。農村部の在宅障害児については、委員会は、コミュニティを基盤とするサービスおよび援助が存在しないことを懸念するものである。 14.委員会は、締約国に対し、障害のある男子および女子の遺棄の根本的原因と闘うため、障害のある男子および女子に関わって広く存在しているスティグマと闘い、かつ厳格な家族計画政策を改定するための措置をとるよう促す。委員会は、締約国に対し、農村部でもコミュニティを基盤とする十分なサービスおよび援助を提供するよう求めるものである。 教育(第24条) 35.委員会は、特別学校が多数設置されていること、および、締約国がこのような学校を積極的に発展させる政策をとっていることを懸念する。委員会は、実際には特定の種類の機能障害(身体障害または軽度の視覚障害)がある生徒のみ普通教育に出席できる一方で、他のすべての障害児は特別学校への就学または完全な脱落を余儀なくされていることを、とりわけ憂慮するものである。 36.委員会は、締約国が、インクルージョンの概念は条約の基本概念のひとつであり、教育の分野でとりわけ遵守されるべきであることを想起するよう望む。これとの関連で、委員会は、より多くの障害児が普通教育に出席できることを確保する目的で、普通学校におけるインクルーシブ教育を促進するために特別教育制度からの資源の再配分を行なうよう、勧告するものである。 ハンガリー(2012年) 障害のある子ども(第7条) 21.委員会は、障害のある生徒の権利を保護しかつ促進することに対する締約国の献身的姿勢の表明に留意する。しかしながら委員会は、施設環境で生活している子どもの人数が多いこと、および、障害のある子どもの多くが在宅ケアではなく施設ケアを受けていることを懸念するものである。委員会は、障害のある子どもがコミュニティで家族とともに生活し続けられるようにするために十分な資源を配分することの重要性を強調する。 22.委員会は、締約国に対し、障害のある子どもが家族とともに生活できるようにするため、子どもの権利委員会から勧告された(CRC/C/HUN/CO/2)ように、障害のある子どもおよびその家族を対象とした、コミュニティを基盤とするリハビリテーションサービスその他のサービスをそれぞれの地域コミュニティで促進しかつ拡大する目的で、とくに地方レベルで必要な専門的資源および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうよう、求める。 教育(第24条) 39.委員会は、障害のある生徒が手話および点字システムの利用を学習する機会を有していることに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、これらの教科に関する研修が教員を対象として行なわれていることにも留意するものである。委員会はさらに、締約国が、普通教育施設において障害のあるすべての生徒について合理的配慮を行ない、ならびに条約が定めるインクルーシブ教育の制度を発展させおよび促進するための十分な措置をとっていないことに、懸念とともに留意する。 40.委員会はさらに、障害のあるロマの子どもが普通教育にアクセスできることを確保するための社会的プログラムが存在せず、かつ、教育に対するこれらの子どもの権利を充足するためにどのような支援が必要かを決定するための、子どもおよびその親との十分な協議が行なわれていないことを懸念する。 41.委員会は、締約国に対し、障害のある子どものためのインクルーシブ教育の制度を発展させるために十分な資源を配分するよう、求める。委員会は、合理的配慮の否定は差別であることをあらためて指摘するとともに、締約国が、生徒の個人的必要に基づいて障害児に対する合理的配慮を行ない、障害のある生徒に対して一般教育制度において必要な支援を提供し、かつ、教員および他のすべての教育職員を対象として、インクルーシブ教育の環境で働けるようにするための研修を引き続き行なうための努力を、相当に増強するよう勧告するものである。 42.委員会は、締約国に対し、望まれる成果を得るために必要となる可能性がある合理的配慮の実施を軽視することなく、障害のあるロマの子どもが普通教育プログラムに包摂することを確保するためのプログラムを発展させるよう、促す。 パラグアイ(2013年) 障害のある子ども(第7条) 19.委員会は、「障害のある子どもおよび青少年の包括的ケア国家プログラム」が、医学モデルの障害特性の予防および早期発見だけに限定されており、障害のある子どもに認められた一連の権利を全面的に考慮していないことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、障害のある子どものインクルージョンに関する公共政策を実施するための資源が不十分であることも懸念するものである。委員会は、不当な取扱いおよび虐待を受けるおそれが高い障害のある子ども(障害のある先住民族の子どもを含む)についての情報がないことを遺憾に思う。 20.委員会は、締約国に対し、子どもの権利委員会がパラグアイの第3回定期報告書に関する総括所見(CRC/C/PRY/CO/3、パラ49)で勧告したように、障害のある子どもを対象とする、インクルーシブなかつコミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラムを発展させることによって、生活のあらゆる分野(家族生活およびコミュニティにおける生活を含む)における障害のある子どものインクルージョンについての広範な政策を実施するために必要な十分な資源を配分するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、虐待および不当な取扱いからの保護を提供する目的で、農村部および先住民族コミュニティにおける障害のある子どもの状況を調査しかつ記録することも依頼するものである。 教育(第24条) 57.委員会は、障害のある子どもの就学者数が少ないこと(1パーセント未満)、および、これらの学校のほとんどが特別学校であり、かつ、教育水準を評価する際、障害の医学モデルからとられた用語法が一貫して用いられていることを懸念する。委員会はまた、都市部および農村部における就学率についての情報ならびに教育が民族的および言語的に関連性を有しているかについての情報がないことも遺憾に思うものである。 58.委員会は、障害のあるすべての子どもおよび青少年が国の教育制度にアクセスできるようにするための戦略を締約国が実施すること、ならびに、教育はあらゆる段階および国内全域でインクルーシブなものであるべきであり、またジェンダーの視点を組みこみ、かつ民族的および言語的に関連性を有するものであるべきことを勧告する。委員会は、締約国に対し、医学モデルからとられた教育用語を修正し、かつ隔離型の特別教育からインクルーシブ・モデルへの方向転換を図るよう促すとともに、締約国がその方向に向けた行動を起こすよう奨励するものである。 オーストリア(2013年) 障害のある子ども(第7条) 19.子どもの権利委員会は、オーストリアに関する2012年の総括所見(CRC/C/AUT/CO/3-4)で、障害のある子どもの権利が多くのやり方で廃止されるおそれに直面していることについての懸念を表明した。 20.委員会は、子どもの権利委員会の勧告を支持するとともに、締約国に対し、これらの勧告を可能なかぎり迅速に実施するよう要請する。 教育(第24条) 40.委員会は、オーストリアにおけるインクルーシブ教育への進展が停滞していることを懸念する。委員会は、特別学校に在籍する子どもの人数が増えていること、および、障害のある子どものインクルーシブ教育を支援するために行なわれている努力が不十分であることを示唆する報告に、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、「インクルーシブ」教育と「統合」教育との間に若干の混同があることに留意する。しかしながら委員会は、いくつかの州でインクルーシブ教育モデルが確立されていることを称賛するものである。 41.委員会は、オーストラリアにおいて障害のある大卒者がきわめて少数であることに失望する。委員会は、高等教育段階で学生に手話通訳を提供していることについてオーストリアを称賛するものの、締約国が建設的対話の際に述べたように、聴覚障害のある学生はこれまで13名いたにすぎず、かつそのうち3名しか大学を卒業していないことに留意するものである。 42.障害のある教員および手話を使用する教員を対象とする教員養成が行なわれていないように思われる。手話の技能を有する教員が十分に存在しなければ、聾の子どもは相当に不利な立場に置かれる。 43.委員会は、幼稚園から中等学校に至るインクルーシブ教育のすべての分野で障害のある学生を支援するため、いっそうの努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はとくに、締約国が、諸州で導入されているインクルーシブ教育モデルの日常的実施に障害のある人(障害のある子どもおよびその代表団体を含む)が関与することを確保するよう、勧告するものである。委員会はさらに、障害のある学生が大学その他の高等教育機関で学習できるようにするため、いっそうの努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はまた、締約国が、オーストリア憲法においてオーストリア手話が正式に承認されていることにしたがい、聾および聴覚障害者である女子および男子の教育を増進させる目的で、障害のある教員および手話を使用する教員を対象とする質の高い教員養成を行なうための努力を向上させるようにも勧告するものである。 オーストラリア(2013年) 障害のある子ども(第7条) 18.委員会は、「オーストラリアの子どもの保護のための国家枠組み」が暴力、虐待およびネグレクトからの子どもの保護に焦点を当てていること、ならびに、子どもの権利がどのように実施され、監視されかつ促進されるべきかについて詳しく述べた、子ども(障害のある子どもを含む)のための包括的な国家的政策枠組みが定められていないことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび若者一般に適用される法律、政策、プログラム、サービス基準、運用手続および法令遵守枠組みに条約を編入することにより、障害のある子どもの権利を促進しかつ保護するための努力を向上させること。 (b) 自己に関わるあらゆる事柄について意見を表明する障害児の権利を確保する政策およびプログラムを確立すること。 教育(第24条) 45.委員会は、平等を基礎として教育へのアクセスを確保するために定められた「教育における障害基準」にもかかわらず、障害のある生徒が特別学校に措置され続けており、かつ、普通学校に在籍している障害生徒の多くは主として特別学級または特別班に押しこまれていることを懸念する。委員会はさらに、普通学校に就学した障害のある生徒が、合理的配慮が欠けているために標準以下の教育を受けていることを懸念するものである。委員会はまた、障害のある生徒の中等学校修了率が障害のない人々の約半分であることも懸念する。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 必要な質の合理的配慮を教育において行なうための努力を向上させること。 (b) 現行の教育インクルージョン政策がどの程度有効であり、かつ「教育における障害基準」が各州および準州でどの程度実施されているかに関する調査を実施すること。 (c) あらゆる段階の教育および訓練において障害のある学生の参加率および修了率を高めるための目標値を定めること。 エルサルバドル(2013年) 障害のある子ども(第7条) 19.委員会は、子どもおよび青少年保護法に、障害のある子どもの保護を確保するための具体的措置が、保健ケアに関するいくつかの措置を除いて含まれていないことを懸念する。委員会は、貧困下で暮らしている障害児が、遺棄または施設養護への措置の対象にいっそうなりやすい立場に置かれていることを懸念するものである。 20.委員会は、締約国が、農村部および先住民族コミュニティで暮らしている障害児ならびに聴覚障害、視覚障害および知的障害のある子どもにとくに注意を払いながら、障害のある子どもの権利を平等に保障するための国内法の強化および具体的プログラムの策定を進めるよう勧告する。その際、機会および有利な立場等を奪われている家族のための措置を優先させながら、これらの子どもの社会的インクルージョンの確保ならびに遺棄および施設措置の防止を図ることが求められる。 教育(第24条) 49.委員会は、障害のある子どもの就学率が低いこと、ならびに、都市部および農村部のいずれにおいても障害児が教育にアクセスできることを保障するための合理的配慮および成人教育へのアクセスを保障するための合理的配慮が行なわれていないことを懸念する。委員会は、心理社会的障害または知的障害のある子どもについて学校へのアクセスおよび在学継続の面で差別があることを懸念するものである。また、締約国が障害のある子どもを対象とする無償教育の原則を定めていないことも、委員会にとって懸念の対象となる。 50.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 都市部および農村部の双方において、あらゆる段階でインクルーシブ教育モデル(ジェンダーの視点および文化的視点、ならびに、障害のある子どもおよび青少年が教育にアクセスできることを確保するために必要な合理的配慮を含む)を発展させること。 (b) 障害のある人に関わるインクルーシブ教育の手法について教員を対象とする義務的研修を行なうための計画を採択しかつ必要な予算を配分することにより、心理社会的障害または知的障害のある子どもにとっての、アクセスおよび在学継続に関わる教育上の障壁を取り除くこと。 (c) アクセシブルな教育ツールおよび教授法を立案し、かつ障害のある生徒が新たなテクノロジーおよびインターネットにアクセスできるようにするための取り組みおよび官民共同事業を実施すること。 スウェーデン(2014年) 障害のある子ども(第7条) 15.委員会は、障害のある子どもが他の子どもよりも高い割合で暴力にさらされており、かつ子どもとともに働く職員の間で意識が欠けていることを示す報告があることを懸念する。 16.委員会は、締約国が、障害のある子どもに対する暴力についての調査研究ならびにデータおよび統計の収集を発展させるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、親のおよび子どもとともに働く職員の感受性強化および訓練ならびに一般公衆の意識啓発のための戦略および取り組みを強化するようにも勧告するものである。 17.委員会は、精神保健上および心理社会上の問題および障害の発生率が若者の間で高く、学校保健サービスに十分な資源が配分されておらず、かつ、学校心理学者および心理社会的支援制度にアクセスするための待機期間が長い旨の報告があることを懸念する。 18.委員会は、締約国が、子どもが適切な心理社会上および精神保健上の支援ならびに精神医学的保健ケアに時宜を得たやり方でアクセスしかつ当該支援およびケアを受けられることを確保するため、学校保健サービスに対して利用可能とされる資源を増やすよう勧告する。 19.委員会は、障害のある子どもが自己の生活に関わる決定に制度的に関与していないこと、および、これらの子どもが自己に関わる事柄について意見を表明する機会を有していないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が、自己に関わるあらゆる事柄について協議の対象とされる障害児の権利を保護するための現行の保障措置を確保し、かつ追加的な保障措置を採択するよう勧告する。 教育(第24条) 47.委員会は、学校が、障害のある一定の児童生徒について、組織的および経済的困難を理由に入学を拒否できる旨の報告があることを懸念する。委員会はさらに、広範な支援を必要とする一部の子どもが、そのような支援が存在しないことを理由として通学できないことを示す報告があることを懸念するものである。 48.委員会は、締約国に対し、普通教育制度におけるすべての障害児のインクルージョンを保障し、かつ、これらの子どもが必要な支援を得られることを確保するよう促す。 アゼルバイジャン(2014年) 障害のある子ども(第7条) 18.子どもの権利委員会は、アゼルバイジャンに関する2012年の総括所見(CRC/C/AZE/CO/3-4)のパラ34において、ヨーロッパで5番目に高いとされる、締約国における乳児死亡率の高さについて不快懸念を表明した。さらに同委員会は、締約国による生児出生の定義が、国際的に承認された世界保健期間の定義と一致していない旨の懸念を表明している。障害者権利委員会は、子どもの権利委員会による懸念をあらためて繰り返すとともに、さらに、締約国の高い乳児死亡率の影響を受けている先天性障害児の人数についてのデータが存在しないこと、とくにこの現状が障害のある男女の子どもの出生登録にどのように影響しているかについて、懸念を表明するものである。 19.委員会は、子どもの権利委員会の勧告をあらためて繰り返すとともに、締約国がその実施を速やかに進めるよう要請する。したがって委員会は、締約国に対し、世界保健機関による生児出生の定義の実施に一致する形で、障害のある男女の子どもの死亡率に関する研究を実施し、かつ乳児死亡率を削減するための努力を速やかに向上させるよう、促すものである。 教育(第24条) 40.委員会は、障害のある子どもが特別寄宿学校その他の特別学校に措置され続けていることを懸念する。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに支援技術および教室内支援、アクセシブルでありかつ適切な修正を加えた教材およびカリキュラムならびにアクセシブルな学校環境を提供することにより、学校その他の学習機関においてインクルーシブ教育および合理的配慮を実施するための努力を向上させること。 (b) 「インクルーシブ教育に関する国家プログラム」の実施のために十分な財源および人的資源を配分すること。 (c) すべての種別の障害児(聾および難聴の女子および男子を含む)の教育を増進させる目的で、障害のある教員を含む教員を対象として点字および手話の使用に関する良質な研修を実施するための努力を向上させること。また、インクルーシブ教育が、大学における中核的な教員養成の不可欠な一部に位置づけられることを確保すること。 (d) 現行のインクルーシブ教育プログラムがどの程度有効であり、かつアクセシビリティに関する基準が締約国でどの程度遵守されているかについての調査を実施すること。 (e) 次回の定期報告書に、障害のある生徒を就学させているインクルーシブな学校の数についてのデータ(学年度別、男女別および障害別ならびに地域別に細分化されたもの)を記載すること。 コスタリカ(2014年) 障害のある子ども(第7条) 15.委員会は、締約国が、施設に措置され、遺棄され、虐待の被害を受け、または貧困下もしくは農村環境下で生活している障害児(先住民族の子どもを含む)の状況についてまったく調査を実施していないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、国家子ども福祉庁が、援助を基調とする非正規状況モデルを反映しており、障害のある子どもの権利を軽視していることを遺憾に思うものである。委員会はまた、障害が法律第7739号(子どもおよび青少年法)に主流化されておらず、かつ、同法第62条(特別教育に対する権利)が条約第24条に一致していないことも懸念する。 16.委員会は、締約国が、障害のある子どもを虐待および遺棄から保護し、かつ施設措置を防止するための緊急の措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、障害のある子どもに対して表現および意見の自由を保障することも促すものである。委員会はまた、締約国に対し、子どもおよび青少年法を改正することにより障害を横断的テーマのひとつとして含めること、および、障害のある子どもに良質なインクルーシブ教育を保障する目的で同法第62条(特別教育に対する権利)を改正することも促す。 教育(第24条) 45.委員会は、特別教育モデルが引き続き存在していること(当該モデルのもと、障害のある子どもおよび若者は隔離され、かつインクルーシブ教育にアクセスできていない)、および、教員その他の専門職員を対象とする訓練がこのような特化された枠内で行なわれ続けていることを、遺憾に思う。 46.委員会は、締約国に対し、教員を対象としてインクルーシブ教育の訓練を行なう政策を採択するとともに、訓練を受けた教員に対する支援、点字、コスタリカ手話、コミュニケーションの代替的な手段および形態、読むことが容易なテキストならびにその他の補助用品および補助媒体を提供することによってインクルーシブ教育を保障するよう、促す。 47.委員会は、障害のある子ども、若者および成人の教育面でのインクルージョンに関する指標が存在しないことを懸念する。委員会は、障害のある成人、障害のある女性および女子、重複障害者、先住民族ならびに農村部で暮らしている人々の間で排除の度合いがいっそう高いことに、とりわけ懸念しながら留意するものである。 48.委員会は、締約国が、障害のあるすべての人を対象として、成人教育を含むすべての段階の教育において、かつ国内全域でインクルーシブ教育へのアクセスを確保するとともに、この教育モデルが最遠隔地も対象とし、ジェンダーの視点を編入し、かつ民族的および文化的に妥当なものとなることを保障するよう、勧告する。 更新履歴:ページ作成(2012年12月6日)。/パラグアイ~コスタリカを追加(2014年9月1日)。/冒頭に一般的意見2号抜粋を追加(9月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/74.html
総括所見:タイ(第1回・1998年) 第2回(2006年)/第3回・第4回(2012年)OPAC(2012年)/OPSC(2012年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.97(1998年10月26日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1998年10月1日および2日に開かれた第493回~第495回会合(CRC/C/SR.493-495)においてタイの第1回報告書(CRC/C/11/Add.13)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1998年10月9日に開かれた第505回会合において。 A.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および委員会の事前質問票(CRC/C/Q/THA/1)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。委員会は、報告書が詳細かつ包括的な構成をとっていることに留意するが、確立されたガイドラインに全面的にしたがっていないことを遺憾に思うものである。委員会はまた、締約国代表団との間で持たれた建設的な、開かれたかつ率直な対話ならびに議論の過程で受け取った追加的情報にも留意する。委員会は、締約国との対話に子どもおよび非政府組織が活発に参加したことに、評価の意とともに留意するものである。 B.積極的な側面 3.委員会は、締約国が最近新憲法(1997年)を採択したことに留意する。これは、条約で認められた子どもの権利を含む人権の促進および保護を保障し、かつ人権の監視を担当する国内人権委員会の設置を求めるものである。 4.委員会は、法改正の分野で締約国が最近行なった努力に留意する。これとの関連で、委員会は、男女双方に対するわいせつ行為に関わる改正刑事手続法、18歳未満の少年被疑者に関わる刑事手続法、女性および子どもの人身売買の防止および禁止の措置に関する法律(1997年)、売買春行為防止禁止法(1996年)、職業訓練促進法(1993年)および労働保護法(1998年)の制定を歓迎するものである。 5.委員会は、第8次国家経済社会発展計画(1997~2001年)において、子どもの保護および参加を含む人間的発展に優先順位が与えられていることに留意する。これとの関連で、委員会は、傷つきやすい立場および不利な立場に置かれたグループに対する発展の機会を拡大し、かつ、子どもの労働および売買春の領域で特別な監視システムを実施するための取組みを歓迎するものである。委員会はまた、締約国が、社会指標(最低限の基本的ニーズ)、子どもおよび青少年の発達に関する指標および子どもの権利に関する指標を含む諸指標を確立したことも歓迎する。 6.委員会は、とくに報告書の作成における締約国と非政府組織との協力、および、条約との一致を確保するため現在進められている政策および立法の見直しの取組みに留意する。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 7.委員会は、締約国が現在直面している経済的および社会的困難が子どもの状況に悪影響を及ぼし、かつ条約の全面的実施を阻害していることを認識する。とりわけ、委員会は、高水準の対外債務、構造調整プログラムの要求、および失業および貧困の水準の上昇に留意するものである。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 8.締約国が条約第29条に関する留保を撤回したことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、締約国が条約批准時に行なった(第7条および第22条に対する)残りの留保を懸念する。これとの関連で、委員会は、締約国が最近(1997年)市民的および政治的権利に関する国際規約を留保なしで批准したことに留意し、かつ、とくに規約第2条および第24条に対する注意を促したいと考えるものである。ウィーン宣言および行動計画(1993年)ならびに最近の市民的および政治的権利に関する国際規約の批准に照らし、委員会は、締約国に対し、留保を撤回の方向で見直す可能性を検討するよう奨励する。 9.委員会は、締約国が立法上の枠組みを相当に発展させてきていることに留意する。しかしながら、委員会は、国内法がいまなお条約の原則および規定を全面的に反映していないことを懸念するものである。委員会は、締約国が、条約の原則および規定との全面的一致を確保するため国内法の見直しを行なうよう勧告する。これとの関連で、委員会はまた、締約国に対し、包括的な子ども法を制定する可能性を検討するようにも奨励するものである。 10.腐敗慣習委員会が設立されたことには留意しながらも、条約が対象とするあらゆる領域において法執行を強化しかつ腐敗慣習と闘う必要性があることは、いまなお委員会の特段の懸念の対象である。したがって、委員会は、締約国が、法執行を強化しかつ腐敗慣習を防止するため研修を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 11.子どもの権利の問題に関する調整を促進しようとする国家青少年局の努力には留意しながらも、委員会は、地方レベルにおける参加および調整がいまなおやや限られていることを懸念する。委員会は、締約国が、とくに子どもの権利を促進しかつ保護するプロセスを地方分権化することにより、条約の実施に対する包括的なアプローチをとるよう勧告するものである。委員会はまた、国家青少年局による調整をとくに地方レベルにおいて強化するため、締約国がさらなる措置をとるようにも勧告する。 12.条約の実施を監視するための指標が開発されたことには留意しながらも、委員会は、子どもに関わって達成された進展を監視しかつ評価し、かつ子どもに関わってとられた政策の影響を評価することを目的として、あらゆるグループの子どもとの関連でかつ条約が対象とするあらゆる領域に関して細分化された量的および質的データを体系的にかつ包括的に収集することを確保するためには、現行のデータ収集機構では不充分であることをなお懸念する。委員会は、条約が対象とするあらゆる領域を編入するため、データ収集システムの見直しを行なうよう勧告するものである。そのようなシステムは、18歳までのすべての子どもを対象としつつ、経済的に搾取されている子ども、ひとり親家庭の子ども、婚外子、施設措置された子ども、およびノマドおよび丘陵地帯民のコミュニティの子どもを含む、弱い立場に置かれた子どもをとくに重視すべきである。 13.委員会は、条約に基づく自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情を登録しかつそれに対応する独立した機構が存在しないことに、懸念を表明する。委員会は、自己の権利の侵害の苦情に対応しかつそのような侵害に対する救済を提供する、子どもに優しい独立機構に子どもがアクセスできるようにすることを、提案するものである。委員会はまた、締約国が、子どもによるそのような機構の効果的活用を促進するため意識啓発キャンペーンを開始するようにも提案する。 14.委員会は、困難な経済条件にも関わらず締約国の社会支出への配分が増大していることに留意する。しかしながら、委員会は、条約第4条に照らし、子どものための予算配分を「利用可能な手段を最大限に用いて」行なうことに充分な注意が払われていないことを、依然として懸念するものである。条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、利用可能な手段を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みにおいて子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励する。 15.条約の原則および規定に関する意識を促進するための締約国の努力は認識しながらも、委員会は、専門家グループ、子どもおよび公衆一般が一般的に条約のことを充分に認識していないことを、依然として懸念する。委員会は、非都市部および都市部のいずれに住んでいるおとなおよび子どものあいだでも同様に条約の規定が広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、条約をあらゆるマイノリティまたは先住民の言語に翻訳し、かつそのような言語で条約が入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、裁判官、弁護士、法執行官、軍隊の士官および要員、教職員、学校管理者、心理学者を含む保健従事者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政職員ならびに子どものケアのための施設の職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループに対し、適切なかつ体系的な研修および(または)意識喚起を行なうようにも勧告するものである。委員会は、締約国に対し、メディアおよび公衆一般のあいだで子どもの権利に関する意識を向上させるための措置をとるよう奨励する。委員会はまた、締約国が、条約が学校および大学のカリキュラムに全面的に統合されることを確保するよう努めることを、提案するものである。これとの関連で、委員会はまた、締約国がとくに人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めるようにも提案する。 16.委員会は、刑事責任に関する法定最低年齢が低いことに懸念を表明する。委員会はまた、成人に達する法定年齢が定められていないことも懸念するものである。委員会は、締約国が、立法を条約の規定と一致させるためその見直しを行なうよう勧告する。 17.委員会は、締約国が、子どもに関わる立法、行政上および司法上の決定または政策およびプログラムにおいて、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された一般原則を全面的に考慮にいれていないように思えることに、懸念を表明したい。条約の原則、とくに一般原則が、政策および意思決定の指針となるのみならず、いかなる法改正および司法上および行政上の決定においても、かつ子どもに影響を与えるあらゆる事業およびプログラムの開発および実施において適切に反映されることを確保するため、さらなる努力が行なわれなければならないというのが、委員会の見解である。 18.委員会は、弱い立場に置かれたグループに手を差し伸べるため締約国が行なっている努力を認知する。しかしながら、委員会は、すべての子どもが教育および保健サービスへのアクセスを保障され、かつあらゆる形態の搾取から保護されることを確保するためにとられた措置が不充分であることを、なお懸念するものである。とりわけ、女子、障害をもった子ども、丘陵地帯民を含むマイノリティに属する子ども、非都市部で暮らす子ども、貧困下で暮らす子ども、路上で暮らしかつ(または)働いている子どもおよび庇護希望者である子ども、不法移民の子ども、少年司法制度における子どもならびに婚外子を含む、傷つきやすい立場に置かれた一部のグループの子どもが懸念の対象となる。委員会は、締約国が、とくに、傷つきやすい立場に置かれたグループとの関連で、差別の禁止の原則の実施および条約第2条との全面的一致を確保するための努力を増大させるよう勧告するものである。 19.子どもの参加権を奨励するため締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、伝統的な慣行、文化および態度がいまなお条約第12条の全面的実施を制約していることを懸念する。委員会は、締約国が、子どもの参加権に関する公衆の意識を高めるために体系的なアプローチを発展させ、かつ、家庭ならびに学校、ケア制度および司法制度における子どもの意見の尊重を奨励するよう努めることを勧告するものである。 20.委員会は、締約国が出生時の登録を保障する立法(住民登録法)を制定したことに留意するが、いまなお多くの子ども、とくにノマドおよび丘陵地帯民のコミュニティで暮らしている子どもが登録されていないことを懸念する。条約第7条に照らし、委員会は、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、締約国が、政府職員、コミュニティ指導者および親の意識を高めるための努力を増大させるよう勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、丘陵地帯民の子どもの状況を正規化し、かつ、そのような子どもに対し基礎保健、教育その他のサービスへの権利を保障しかつアクセスを促進するため証明書類を提供するよう、奨励する。 21.委員会は、学校における体罰の使用を禁止するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は、体罰がいまなお実践されており、かつ、家庭、少年司法制度および代替的養護制度ならびに社会一般における体罰の使用が国内法により禁じられていないことを、懸念するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、家庭、少年司法制度および代替的養護制度ならびに社会一般における体罰を禁止するため、法的措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、代替的形態のしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約、とくに第28条2項に従って行なわれることを確保するため、意識啓発キャンペーンを行なうよう提案するものである。 22.委員会は、締約国が、家族環境の強化を奨励しかつ父母双方の子育てのスキルを高めるためのプログラムを確立したことに留意する。しかしながら、委員会は、子ども、とくに婚外子および貧困家庭の子どもが高率で遺棄されていることを依然として懸念するものである。これとの関連で、委員会は、また、代替的養護のための充分な便益およびこの分野における資格のある人材が存在しないことにも、懸念を表明する。委員会は、締約国が、子どもの遺棄を抑制するため、親に対して訓練も含む支援を提供するための努力を増大させるよう勧告するものである。また、里親養護を含む代替的養護を促進し、ソーシャルワーカーおよび福祉ワーカーに対して追加的な研修を行ない、かつ、代替的養護施設を対象とした苦情申立ておよび監視のための独立機構を設置するために、締約国が追加的プログラムを発展させることも勧告されるところである。 23.委員会は、被害を受けた子どもに保護を提供するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、家族間暴力、(家庭の内外における)性的虐待を含む子どもの不当な取扱いおよび虐待に関する意識および情報が欠如していること、適切な資源が(財政的にも人的にも)存在しないこと、および虐待を防止しかつそれと闘うための充分に訓練された人材が存在しないことは、依然として懸念の対象である。条約第19条に照らし、委員会は、締約国が、充分な措置および政策を採択しかつ伝統的な態度を変えることに貢献することを目的として、この現象の規模および性質を理解するため家族間暴力ならびに性的虐待を含む子どもの不当な取扱いおよび虐待に関する研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、家族間暴力ならびに家庭内の性的虐待を含む子どもの虐待および不当な取扱いの事件が子どもに優しい司法手続において適切に調査され、加害者に対して制裁が科され、かつ、子どものプライバシーへの権利の保護を正当に考慮しつつそのような事件において行なわれた決定を広報することも、勧告されるところである。法的手続において子どもに支援サービスを提供すること、条約第39条に従い、強姦、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合できるようにすること、および、被害者が犯罪者として取り扱われかつスティグマ(烙印)を押されることを防止することを確保するための措置がとられるべきである。 24.幼児および乳児の死亡率を削減するため締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、母乳育児の実践が依然としてはかばかしくないことおよび栄養不良率が高いことをなお懸念する。委員会は、締約国に対し、母乳育児の実践を促進しかつ向上させる包括的な政策およびプログラムを発展させること、子ども、とくに傷つきやすい立場および不利な立場に置かれたグループの子どもの栄養不良を防止しかつそれと闘うこと、および、小児疾病統合管理その他の子どもの健康改善の措置に関してとくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めることを検討することを、奨励するものである。 25.委員会は、10代の妊娠、中絶、自殺、事故、暴力、有害物質の濫用およびHIV・エイズを含む、青少年の健康に関するデータが存在しないことをとくに懸念する。これとの関連で、委員会は、締約国が、青少年の健康に関する政策を促進し、かつリプロダクティブ・ヘルスに関する教育およびカウンセリング・サービスを強化するための努力を増大させるよう、勧告するものである。委員会はさらに、HIV・エイズおよび性行為感染症に感染した、その影響を受けているまたはそれに感染しやすい立場にある子どもの特別な状況を含め、青少年の健康上の問題に関する包括的かつ学際的な研究を行なうよう提案する。加えて、青少年を対象とした、青少年に優しいケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、締約国が充分な人的および財政的資源の配分を含むさらなる措置をとることも、勧告されるところである。 26.委員会は、締約国が障害者リハビリテーション法(1991年)をまだ全面的に実施していないことを懸念する。これとの関連で、委員会は、子どもも含む障害者のための充分な便益およびサービスが存在しないことにも懸念を表明するものである。障害者の機会均等化に関する標準規則(総会決議48/96)に照らし、委員会は、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを発展させ、障害児の施設措置に代わる措置を実施し、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ、社会へのそのインクルージョンを奨励するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の養成および研修のための技術的協力を求めるよう勧告するものである。この目的で、とくにユニセフおよびWHOの国際協力を求めることができる。 27.とくに初等段階における就学率が高いこと、および非都市部に補助学校を設置する取組みが最近行なわれていることには留意しながらも、委員会は、一部の子ども、とくに貧困下で暮らす子どもおよびノマドおよび丘陵地帯民のコミュニティで暮らす子どもが教育にアクセスできていないことをなお懸念する。最近の経済的制約に照らし、委員会はまた、労働に従事するため時期尚早にして退学する子ども、とくに女子が多いことも懸念するものである。委員会は、タイのすべての子どもに対して教育への平等なアクセスを提供するため、あらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子ども、とくに女子および貧困家庭および丘陵民家庭の子どもに対して学校に留まるよう奨励し、かつ早期の就業を抑制するために、追加的な措置を実施するよう努めることを勧告するものである。 28.委員会は、避難民の子どもに対して保護および人道援助を確保するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は、保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもの保護のための法的枠組みが依然として不明確であるという懸念を表明するものである。委員会はまた、出入国収容センターに措置されて自由を奪われた子どもの状況も、とくに収容期間が長期であることにかんがみて、懸念するものである。委員会は、人身の安全、健康および教育の分野におけるものも含めて保護者のいない子どもおよび庇護申請中の子どもの十分な保護を確保するための締約国の法的枠組みを、明確にするよう勧告する。また、家族の再統合を促進するための手続も確立されるべきである。庇護申請中の子どもが出入国収容センターに措置されることを避けるため、締約国によってあらゆる適切な措置がとられるべきである。締約国は、これとの関連でUNHCRの援助を求めることを検討することもできる。委員会はまた、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)およびその議定書(1966年)、無国籍者の地位に関する条約(1954年)ならびに無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討するようにも提案するものである。 29.労働保護法が最近採択され(1998年)、そこにおいて法定最低就業年齢が13歳から15歳に引き上げられたことは歓迎しながらも、委員会は、経済的搾取が高い割合で行なわれていること、および、自己および家族を支えるために働く目的でときには幼くして退学する子どもの数が増えていることを、依然として懸念する。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、労働法制の執行を確保する監視機構を導入するよう奨励するものである。委員会はまた、締約国が、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するようにも提案する。 30.委員会は、子どもの売買春ならびに子どもの取引および売買を含む子どもの性的虐待が依然として高い割合で生じており、そのことが男女の子ども双方に影響を与えていることに、懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、法執行を強化しかつ締約国の国内防止計画を実施するための措置を緊急にとるよう勧告するものである。さらに、締約国は、コミュニティのレベルで意識啓発キャンペーンおよび徹底した監視システムを実施する努力を、強化するよう努めるべきである。施設の内外におけるリハビリテーションがさらに強化されるべきである。委員会は、国際的な子どもの取引および売買と効果的に闘うための努力において、締約国が、取引された子どもの帰還を促進しそのリハビリテーションを奨励するため、地域会議である移住に関するメコン会議の枠組みにおけるものも含めて、近隣諸国との二国間および地域間協定の分野における努力を増大させるよう提案する。委員会は、締約国に対し、子どもの商業的性的搾取に反対するストックホルム世界会議(1996年)で採択された行動綱領に掲げられた勧告を引き続き実施するよう促すものである。委員会はまた、締約国が、人身売買および他人の売春からの搾取の禁止に関する条約(1949年)の批准を構想するようにも勧告する。 31.締約国が少年裁判所の設置に関わる立法を制定したことには留意しながらも、委員会は、少年司法の運営に関わる一般的状況、および、とくにそれが条約および他の関連の国際基準と両立するかどうかについて、なお懸念する。委員会は、とくに、少年司法制度が締約国全土で実施されていないことを懸念するものである。委員会はまた、法執行官による子どもの不当な取扱いの事例が報告されていることも懸念する。委員会は、締約国が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野の他の国際連合基準の精神にのっとり、少年司法制度を改革するため追加的な措置をとることを検討するよう、勧告するものである。自由の剥奪は最後の手段としてのみかつ可能なもっとも短い帰還でのみ考慮すること、自由を奪われた子どもの権利を保護すること、および、締約国全土が対象とされることを確保するため少年司法制度を拡大することに、特段の注意が払われるべきである。少年司法制度に関与するあらゆる専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムが組織されるべきである。委員会はまた、締約国が、拷問および他の残酷な、非人道的なおよび〔または〕品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約の批准を検討するようにも勧告する。委員会は、締約国が、少年司法における技術的助言に関する調整委員会を通じて、とくに人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討するよう、提案するものである。 32.委員会は、第1回報告書において締約国が提案している、条約の実施に関する勧告に留意する。委員会は、締約国に対し、提案されている勧告を実施するよう奨励するものである。 33.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く利用できるようにし、かつ、関連の議事要録およびこの委員会の総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。そのような文書は、政府および関心のある非政府組織を含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年9月18日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/13.html
子どもの権利委員会:総括所見:日本(第3回)〔前編〕 第1回(1998年)/第2回(2004年)/第4-5回(2019年)OPAC(2010年)/OPSC(2010年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/JPN/CO/3 配布:一般 2010年6月11日 原文:英語(PDFファイル) 【日本語仮訳:子どもの権利条約NGOレポート連絡会議】(注:〔 〕およびリンクは訳者による補足である。また、原文では勧告部分が太字になっているが、ここではパラグラフ番号のみを太字とした。) 子どもの権利委員会 第54会期 2010年5月25日~6月11日 条約第44条にもとづいて締約国が提出した報告書の検討 総括所見:日本 1.委員会は、2010年5月27日に開かれた第1509回および第1511回会合(CRC/C/SR.1509およびCRC/C/SR.1511参照)において日本の第3回定期報告書〔PDF〕(CRC/C/JPN/3)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、第3回定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/JPN/Q/3/Add.1)に対する文書回答〔PDF〕の提出を歓迎する。委員会は、部門を横断した代表団の出席および有益かつ建設的な対話を歓迎するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2010年6月11日に採択された、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書に基づく第1回締約国報告書についての総括所見(CRC/C/OPSC/JPN/CO/1)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 B.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展 4.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の批准(2004年8月2日)および子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書の批准(2005年1月24日)を歓迎する。 5.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。 (a)2004年および2008年の児童虐待防止法改正。これにより、とくに児童虐待の定義が見直され、国および地方の政府の責任が明確化され、かつ虐待事案の通報義務が拡大された。 (b)2004年および2008年の児童福祉法改正。これにより、とくに、要保護児童対策地域協議会の設置権限が地方政府に与えられた。 (c)2005年6月の刑法改正による人身売買の犯罪化。 (d)子ども・若者育成支援推進法の公布(2010年)。 (e)2010年〔2006年〕の教育基本法改正。 6.委員会はまた、人身取引対策行動計画(2009年12月)、および、自殺率削減のための取り組みの調整を促進する目的で2005年7月に採択された「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」も歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回報告書(CRC/C/104/Add.2)の検討を受けて2004年2月に行なわれた懸念表明および勧告(CRC/C/15/Add.231)の一部に対応するため締約国が行なった努力を歓迎するが、その多くが十分に実施されておらず、またはまったく対応されていないことを遺憾に思う。委員会は、この総括所見において、これらの懸念および勧告をあらためて繰り返す。 8.委員会は、締約国に対し、第2回報告書審査に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないもの(「調整および国家行動計画」に関するパラ12、独立した監視に関するパラ14、「子どもの定義」に関するパラ22、「差別の禁止」に関するパラ24、「名前および国籍」に関するパラ31、「体罰」に関するパラ35、障害に関するパラ43および「若者の自殺」に関するパラ47に掲げられた勧告を含む)に対応し、かつこの総括所見に掲げられた懸念事項に包括的に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保 9.委員会は、締約国が第37条(c)に対する留保を維持していることを遺憾に思う。 10.委員会は、締約国が、条約の全面的適用の障害となっている条約第37条(c)に対する留保の撤回を検討するよう勧告する。 立法 11.委員会は、子どもの権利の分野において、子どもの生活条件および発達の向上に資するいくつかの法律の公布および改正が行なわれたことに留意する。しかしながら委員会は、子ども・若者育成支援推進法が条約の適用範囲を完全に網羅しておらず、または子どもの権利を保障するものではないこと、および、包括的な子どもの権利法が制定されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、少年司法分野におけるものも含め、国内法の一部の側面が条約の原則および規定にいまなお一致していないことにも留意する。 12.委員会は、締約国が、子どもの権利に関する包括的法律の採択を検討し、かつ、国内法を条約の原則および規定と完全に調和させるための措置をとるよう、強く勧告する。 調整 13.委員会は、子ども・若者育成支援推進本部、教育再生会議および種々の政府審議会など、子どもの権利に関する政策の実施に携わる多くの国家機関が存在することに留意する。しかしながら委員会は、これらの機関間でならびに国、広域行政圏および地方のレベル間で効果的調整を確保するための機構が存在しないことを懸念する。 14.委員会は、締約国が、子どもの権利を実施する目的で締約国が国、広域行政圏および地方のレベルで行なっているあらゆる活動を効果的に調整するための明確な権限ならびに十分な人的資源および財源を与えられた適切な国家機構を設置するとともに、子どもの権利の実施に携わっている市民社会組織との継続的交流および協力を確立するよう勧告する。 国家的行動計画 15.委員会は、子ども・若者育成支援推進法(2010年4月)などの多くの具体的措置がとられてきたことを歓迎するとともに、すべての子どもの成長を支援し、かつ子どもを全面的に尊重するために政府の体制一元化を図ることを目的とした「子ども・子育てビジョン」および「子ども・若者ビジョン」の策定に関心をもって留意する。しかしながら委員会は、条約のすべての分野を網羅し、かつ、とくに子どもたちの間に存在する不平等および格差に対応する、子どものための、権利を基盤とした包括的な国家的行動計画が存在しないことを依然として懸念する。 16.委員会は、締約国が、地方の公的機関、市民社会および子どもを含む関係パートナーと協議および協力しながら、子どものための国家的行動計画を採択しかつ実施するよう勧告する。このような行動計画は、中長期的達成目標を掲げ、条約のすべての分野を網羅し、十分な人的資源および財源を提供し、かつ、必要に応じて成果の管理および措置の修正を行なう監視機構を備えたものでなければならない。委員会はとくに、このような行動計画において、所得および生活水準の不平等、ならびに、ジェンダー、障がい、民族的出身、および、子どもが発達し、学習し、かつ責任ある生活に向けた準備を進める機会を形成するその他の要因による格差に対応するよう勧告する。委員会は、締約国が、国連子ども特別総会の成果文書「子どもにふさわしい世界」(2002年)およびその中間レビュー(2007年)を考慮するよう勧告する。 独立した監視 17.委員会は、条約の実施を国レベルで監視する独立の機構が存在しないことに懸念を表明する。これとの関連で、委員会は、5つの自治体で子どもオンブズパーソンが任命されているという締約国の情報に留意する。しかしながら委員会は、これらのオンブズパーソンの権限、独立性および職務、効果的活動を確保するために利用可能な財源その他の資源、ならびに、(遺憾ながら2002年以来棚上げされている人権擁護法案に基づいて設置予定の)人権委員会との関係のあり方の構想に関する情報が存在しないことを遺憾に思う。 18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)早期に人権擁護法案を通過させ、かつ国内機関の地位に関するパリ原則(国連総会決議48/134)にしたがった国家人権委員会を設置できるようにするとともに、同委員会に対し、条約の実施を監視し、苦情を受け付けてそのフォローアップを行ない、かつ子どもの権利の組織的侵害を調査する権限を与えること。 (b)次回の報告書において、国家人権委員会および子どもオンブズパーソンに与えられた権限、職務および資源についての情報を提供すること。 (c)独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を考慮すること。 資源配分 19.委員会は、締約国の社会支出がOECD平均よりも低いこと、最近の経済危機以前から貧困がすでに増加しており、いまや人口の約15%に達していること、および、子どものウェルビーイングおよび発達のための補助金および諸手当がこれまで一貫したやり方で整備されてこなかったことに、深い懸念を表明する。委員会は、新しい〔子ども〕手当制度および高校無償化法を歓迎するものの、国および自治体の予算における子どものための予算配分額が明確でなく、子どもの生活への影響という観点から投資を追跡しかつ評価できなくなっていることを依然として懸念する。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。 (a)子どもの権利を実現する締約国の義務を満たせる配分が行なわれるようにするため、中央および自治体レベルの予算を子どもの権利の観点から徹底的に検討すること。 (b)子どもの権利に関わる優先的課題を反映した戦略的予算科目を定めること。 (c)子どものための優先的予算科目を資源水準の変化から保護すること。 (d)指標システムに基づいて政策の成果をフォローアップする追跡システムを確立すること。 (e)市民社会および子どもがあらゆるレベルで協議の対象とされることを確保すること。 データ収集 21.委員会は、子どもおよびその活動に関する相当量のデータが定期的に収集されかつ公表されていることを理解する。しかしながら委員会は、条約が対象としている一部の分野に関してデータが存在しないこと(貧困下で暮らしている子ども、障がいのある子どもおよび日本国籍を有していない子どもの就学率ならびに学校における暴力およびいじめに関するものを含む)に懸念を表明する。 22.委員会は、締約国が、権利侵害を受けるおそれがある子どもについてのデータ収集の努力を強化するよう勧告する。締約国はまた、条約の実施において達成された進展を効果的に監視しかつ評価することおよび子どもの権利の分野における政策の効果を評価することを目的とした指標も開発するべきである。 広報、研修および意識啓発 23.委員会は、子どもとともにおよび子どものために活動している専門家ならびに一般公衆の間で条約に関する意識を促進するために締約国が行なってきた努力には留意するものの、これらの努力が十分ではないこと、または条約の原則および規定を普及するための計画が実行に移されていないことを依然として懸念する。とりわけ、子どもおよびその親に対して情報をより効果的に普及することが緊急に必要である。委員会はまた、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家の研修が不十分であることも懸念する。 24.委員会は、締約国に対し、子どもおよび親の間で条約に関する情報の普及を拡大するよう奨励する。委員会は、締約国に対し、子どものためにおよび子どもとともに活動しているすべての者(教職員、裁判官、弁護士、法執行官、メディア従事者、公務員およびあらゆるレベルの政府職員を含む)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させるよう促す。 市民社会との協力 25.市民社会組織と多くの会合が持たれてきたことに関する締約国の情報には留意しながらも、委員会は、子どもの権利のための政策およびプログラムの開発、実施および評価のあらゆる段階で重要である継続的協力の慣行がいまなお確立されていないことを懸念する。委員会はまた、市民社会組織が、委員会の前回の総括所見のフォローアップに関与しておらず、または締約国の第3回定期報告書の作成中に意見を述べる十分な機会を与えられなかったことも懸念する。 26.委員会は、締約国に対し、市民社会との協力を強化するとともに、条約の実施のあらゆる段階(定期報告書の作成を含む)を通じて市民社会組織のより組織的な関与を図るよう奨励する。 子どもの権利と企業セクター 27.委員会は、民間セクターが子どもおよびその家族の生活に甚大な影響を及ぼしていることに留意し、かつ、子どものウェルビーイングおよび発達に関わる企業セクターの社会的および環境的責任について締約国が規制を行なっているのであれば、当該規制に関する情報が存在しないことを遺憾に思う。 28.委員会は、締約国に対し、企業の活動から生じるいかなる悪影響からも地域コミュニティ、とくに子どもを保護する目的で、企業セクターが企業の社会的および環境的責任に関する国内外の基準を遵守することを確保するための規制を確立しかつ実施するため、効果的措置をとるよう奨励する。 国際協力 29.委員会は、いまなお相当額にのぼる政府開発援助(ODA)に留意するとともに、2003年の戦略的改定によって貧困削減、持続可能性、安全保障および平和維持措置が優先されるようになったことを歓迎するが、締約国が一貫してODA予算額を削減しており、国内総生産(GDP)の0.7%をODAに支出するという国際合意よりもはるかに低い、対GDP比0.2%という水準であることを懸念する。委員会はとくに、開発途上国における気候変動対策といった特定の目的のために追加的資源の配分を行なうこと、および、アフリカ諸国向けの援助が顕著に増額されること以外には一般的改革は計画されていないと締約国が表明したことを懸念する。 30.委員会は、締約国が、とくに子どもに利益をもたらすプログラムおよび措置に対して提供される資源を増加させる目的で、ODAに関する国際的達成目標へのコミットメントを再検討するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、当該供与相手国に関する子どもの権利委員会の総括所見および勧告を考慮するよう提案する。 2.子どもの定義(条約第1条) 31.委員会は、最低婚姻年齢の男女差(男子18歳・女子16歳)を解消するよう求めた前回の総括所見の勧告(CRC/C/15/Add.231、パラ22)にも関わらず、格差が残っていることについて懸念を表明する。 32.委員会は、締約国がその立場を再検討し、婚姻年齢を引き上げて両性ともに18歳にするよう勧告する。 3.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 33.委員会は、若干の立法措置がとられたにも関わらず、無遺言相続を規律する法律上、婚外子がいまなお婚内子と同一の権利を享受していないことを懸念する。委員会はまた、民族的マイノリティに属する子ども、日本国籍を有していない子ども、移住労働者の子ども、難民である子どもおよび障害のある子どもに対する社会的差別が根強く残っていることも懸念する。委員会は、男女平等の促進に言及していた教育基本法第5条が削除されたことに対する女性差別撤廃委員会の懸念(CEDAW/C/JPN/CO/6)を繰り返す。 日本政府のコメント 男女共同参画の推進に言及した教育基本法第5条の削除に関する委員会の懸念について、日本政府は以下の見解を表明する。 教育上、男女の共学は認められなければならないと定める旧教育基本法第5条の目的は、制定以降の60年間、日本において広く理解・実践されてきた。しかし、社会における男女共同参画は十全に実現されていないことから、男女双方が、互いにその人権を尊重し、責任を分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会を実現するためには、相互の尊重および男女の協働によりより豊かな社会を築いていくために必要な能力および才能を、教育を通じて発達させていくことが重要である。これに基づき、「男女の平等」は、日本で教育を行うために求められる不可欠の目標のひとつとして、改正教育基本法第2条でとくに定められている。委員会の懸念は誤解に基づくものである。 34.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)包括的な反差別法を制定し、かつ、どのような事由であれ子どもを差別するあらゆる立法を廃止すること。 (b)とくに女子、民族的マイノリティに属する子ども、日本人ではない子どもおよび障害のある子どもに対して実際に行なわれている差別を削減しかつ防止するため、意識啓発キャンペーンおよび人権教育を含む必要な措置をとること。 35.委員会は、刑法で女性および女子しか強姦罪および関連の犯罪の被害者として想定されておらず、かつ、そのためこれらの規定に基づく保護が男子には及ばないことに、懸念とともに留意する。 36.委員会は、男子か女子かを問わず強姦の被害者全員が同一の保護を与えられることを確保するため、締約国が刑法改正を検討するよう勧告する。 子どもの最善の利益 37.子どもの最善の利益は児童福祉法に基づいて考慮されているという締約国の情報は認知しながらも、委員会は、1974〔1947〕年に採択された同法に、子どもの最善の利益の優越性が十分に反映されていないことに懸念とともに留意する。委員会はとくに、そのような優越性が、難民および資格外移住者である子どもを含むすべての子どもの最善の利益を統合する義務的プロセスを通じ、すべての立法に正式にかつ体系的に統合されているわけではないことを懸念する。 38.委員会は、締約国が、あらゆる法規定において、ならびに、子どもに影響を与える司法上および行政上の決定およびプロジェクト、プログラムならびにサービスにおいて、子どもの最善の利益の原則が実施されかつ遵守されることを確保するための努力を継続しかつ強化するよう勧告する。 39.委員会は、子どものケアまたは保護に責任を負う相当数の機関が、とくに職員の数および適格性ならびに監督およびサービスの質に関して適切な基準に合致していないという報告があることに、懸念とともに留意する。 40.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)そのような機関が提供するサービスの質および量を対象とし、かつ公共部門および民間部門の両方に適用されるサービス基準を発展させかつ定義するための効果的措置をとること。 (b)公共部門および民間部門の両方において、そのような基準を一貫して遵守させること。 生命、生存および発達に対する権利 41.「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」などを通じ、子ども、とくに思春期の青少年の間で発生している自殺の問題に対応しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、子どもおよび思春期の青少年が自殺していること、および、自殺および自殺未遂に関連したリスク要因に関する調査研究が行なわれていないことを依然として懸念する。委員会はまた、子どもの施設で起きている事故が、そのような施設で安全に関する最低基準が遵守されていないことと関連している可能性があるという情報にも懸念する。 42.委員会は、締約国が、子どもの自殺リスク要因について調査研究を行ない、防止措置を実施し、学校にソーシャルワーカーおよび心理相談サービスを配置し、かつ、困難な状況にある子どもに児童相談所システムがさらなるストレスを課さないことを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、官民問わず、子どものための施設を備えた機関が適切な最低安全基準を遵守することを確保するようにも勧告する。 子どもの意見の尊重 43.司法上および行政上の手続、学校、子ども施設ならびに家庭において子どもの意見は考慮されているという締約国の情報には留意しながらも、委員会は、正式な規則では年齢制限が高く定められていること、児童相談所を含む児童福祉サービスが子どもの意見をほとんど重視していないこと、学校において子どもの意見が重視される分野が限定されていること、および、政策策定プロセスにおいて子どもおよびその意見に言及されることがめったにないことを依然として懸念する。委員会は、権利を有する人間として子どもを尊重しない伝統的見解のために子どもの意見の重みが深刻に制限されていることを依然として懸念する。 44.条約第12条および意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国が、あらゆる場面(学校その他の子ども施設、家庭、地域コミュニティ、裁判所および行政機関ならびに政策策定プロセスを含む)において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告する。 4.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 出生登録 45.委員会は、締約国の多くの規則が、一定の状況下にある親、とくに子どもの出生を登録することのできない、在留資格のない移住者のもとに生まれた子どもの出生登録の可能性を制約する効果を有しているという、前回の総括所見(CRC/C/15/Add.231)に掲げられた懸念をあらためて繰り返す。これらの規則が存在する結果、多くの子どもが登録されず、このような子どもが法律上無国籍となる状況が生み出されている。 46.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)すべての子どもの登録を確保し、かつ子どもを法律上の無国籍状態から保護するため、条約第7条の規定にしたがい、国籍および市民権に関わる法律および規則を改正すること。 (b)無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)の批准を検討すること。 体罰 47.学校における体罰が明示的に禁じられていることには留意しつつ、委員会は、その禁止規定が効果的に実施されていないという報告があることに懸念を表明する。委員会は、すべての体罰を禁ずることを差し控えた1981年の東京高等裁判所判決に、懸念とともに留意する。委員会はさらに、家庭および代替的養護現場における体罰が法律で明示的に禁じられていないこと、および、とくに民法および児童虐待防止法が適切なしつけの行使を認めており、体罰の許容可能性について不明確であることを懸念する。 48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう強く勧告する。 (a)家庭および代替的養護現場を含むあらゆる場面で、子どもを対象とした体罰およびあらゆる形態の品位を傷つける取り扱いを法律により明示的に禁止すること。 (b)あらゆる場面における体罰の禁止を効果的に実施すること。 (c)体罰等に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律について、家族、教職員ならびに子どもとともにおよび子どものために活動しているその他の専門家を教育するため、キャンペーンを含む伝達プログラムを実施すること。 子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ 49.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a)東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b)以下の勧告に特段の注意を払いながら、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に関わる同研究の勧告の実施を優先させること。 (i)子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。 (ii)子どもとともにおよび子どものために活動しているすべての者の能力を増進させること。 (iii)回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。 (iv)アクセスしやすく、子どもにやさしい通報制度およびサービスを創設すること。 (v)説明責任を確保し、かつ責任が問われない状態に終止符を打つこと。 (vi)国レベルの体系的なデータ収集および調査研究を発展させ、かつ実施すること。 (c)すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的な(かつ適切な場合には期限を定めた)行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。 (d)次回の報告書において、締約国による同研究の勧告の実施に関わる情報を提供すること。 (e)子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と協力し、かつ同代表を支援すること。 → 子どもの権利員会:総括所見:日本(第3回)〔後編〕 注/総括所見原文は6月11日(金)の夜〔ジュネーブ時間〕に公表されたが、その後、修正が行なわれた。ここに掲載したのはその修正を反映した日本語訳である。6月14日(月)の院内集会等で配布された日本語訳とは一部内容・表現が異なるため、注意されたい。 更新履歴:ページ作成(2010年6月17日)。/パラ30「とくに子どもが受益者であるプログラム」を「とくに子どもに利益をもたらす……」に、パラ45「子どもの出生を登録することのできない資格外滞在移住者」を「子どもの出生を登録することのできない、在留資格のない移住者」に修正(2010年6月23日)。/パラ33に日本政府のコメントを追加(2011年10月4日)。
https://w.atwiki.jp/business-ethics/pages/276.html
1/21 19 00 転職 NTTレゾナントは21日、「コスト削減と働くモチベーションに関する意識調査」の結果を取りまとめ発表した。それによると、コスト削減を予定している経営層の約半数が社員のモチベーション低下を懸念し、コスト削減と社員のモチベーション向上を両立したいという思いが浮き彫りになった。社員規模10~299人の中小企業の経営層(部長職、取締役など)を対象に、インターネットアンケートを実施し、420人から有効回答を得た。また、同社では約500人の社員を対象にした調査を、1月14日に発表しており、今回の調査では社員と経営層の意識の差についても比較している。調査結果のポイントは次のとおり。 (1)交際費の削減をはじめとした様々なコスト削減策が実施されている。 08年9月以降、実施したコスト削減策のうち、「交際費の削減(お客様の接待抑制、禁止など)」をはじめとした、即効性が高く、すぐに実行できるコスト削減を実施していることが明らかになった。経営層がコスト削減の効果を早期に求めていることがうかがえる。 (2)約半数がコスト削減によって、社員間で不満が出ていると感じている。 企業が実施したコスト削減によって、社員間で不満が出ていると感じている経営層が、48.8%と約半数いる結果となった。また、その不満として「現場を理解していない」44.4%次いで「働きにくくなった」43.4%、「業務を理解していない」40.5%であった。少なくとも4人に1人が、コスト削減によって現場の業務に支障をきたしていることを把握している。 一方、「対応策を実施していますか。」という質問に対して69.8%が「実施していない」と答え、対応が遅れていることが明らかになった。 (3)コスト削減を予定している経営層の約半数が、懸念することとして「社員のモチベーション低下」をあげる。 「今後も継続的にコスト削減を実施しますか」という問いに対して、「積極的に実施する」24.3%、「実施する」65.0%と、引き続きコスト削減を実施する意向を示した経営層が約90%をしめた。その際に一番懸念することとして、「社員のモチベーションが低下すること」45.3%と最も多く、コスト削減にともなう影響が社員の業務に及ぶことを懸念している経営層が多いことがうかがえる結果となった。また、「懸念していることを解決したいですか」という問いに対して、「大変思う」・「思う」が91.2%とコスト削減にともなって発生する懸念事項をクリアにしたいと考えていることが明らかになった。 (4)約半数が、コスト削減が社員のモチベーションを下げると回答。 「コスト削減が社員のモチベーションを下げる要因になっていますか」という問いに対して、「大変思う」8.6%、「思う」45.5%と過半数が回答。コスト削減と社員のモチベーションの関係性を考えていることがうかがえる結果となった。また、「コスト削減を実施しながら、社員のモチベーション向上につながる施策があれば実施したいですか」という問いに対しては、95%の経営層が「大変思う」・「思う」と回答するなど、コスト削減しながらも、社員のモチベーションを下げない施策を模索する経営層の姿勢が明らかになった。 ■ 社員を対象とした意識調査との比較ポイント (1)経営層・社員ともにコスト削減によって働くモチベーションが低下することを強く懸念している。 中小企業で働く社員から、コスト削減を実施する際に一番考慮して欲しい点として、「社員の働くモチベーション」53.6%と最も多い結果となった。また、第二弾である本調査では、コスト削減が社員のモチベーションを下げる要因になっているかという問いに対して、「大変思う」8.6%、「思う」45.5%と過半数が、コスト削減と社員のモチベーションの関係性を考えていることがうかがえる結果となった。このことから、経営層・社員ともに、コスト削減によって働くモチベーションが低下することを強く懸念していることが明らかになった。 (2)コスト削減に伴う社員の不満を経営層が解決できていないことが課題。 コスト削減に伴って、業務が非効率になったと感じますか。という問いに対して「感じる」52.1%と過半数の社員が回答した。一方、経営層を対象とした本調査では、コスト削減によって、社員間で不満が出ていると感じている経営層が48.8%。そのうち、対応策を実施しているかという質問に対しては「実施している」が30.2%という結果にとどまった。現場の社員がコスト削減によって持っている不満に対して、認識はありながらも経営層が迅速に対処できていないという課題が浮き彫りになった。 ソース:日本人材ニュースCarrera【カレラ http //www.j-carrera.net/modules/news/storyid-795.html 【コメント欄】 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/53.html
総括所見:イギリス(第2回・2002年) 第1回(1995年)/第3回・第4回(2008年)/第5回(2016年)英領香港(当時、1996年)/英領マン島(2000年)/イギリス海外領土(2000年) OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.188(2002年10月9日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2002年9月19日に開かれた第811回および第812回会合(CRC/C/SR.811 and 812参照)において、1999年9月14日に提出された大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.3)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書が時宜を得た形で提出されたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、同報告書が委員会の報告ガイドラインにしたがっていないことを遺憾に思うものである。委員会は、事前質問事項(CRC/C/RESP/UK/2)に対する文書回答、および付属文書で提供された追加情報を歓迎する。委員会はまた、子ども若者部およびさまざまな省庁の上級職員からなる代表団(地方分権政府の代表を含む)の出席が、開かれた対話、および締約国における条約の実施に関する理解の向上に寄与してくれたことに、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は以下のことを歓迎する。 (a) 条約第32条および第37条(d)に付された2つの留保が撤回されたこと。 (b) 国際労働機関(ILO)の最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)が批准されたこと。 (c) 1998年人権法が施行されたこと。 (d) 北アイルランドにおいて聖金曜日協定にしたがって和平プロセスが進められていること、北アイルランド人権委員会を設置する1998年北アイルランド法が制定されたこと、北アイルランド警察オンブズマンが設置されたこと、および、人種関係(北アイルランド)令(1997年)が発布されたこと。 (e) 子ども若者部が設置されたこと、および、締約国全域で、子どもに焦点を当てた新たな体制が政府内で発展していること。 (f) 締約国の国際援助において子どもの権利が促進されていること。 (g) 200年子ども(リービングケア)法および2000年ホームレス法が採択されたこと。 (h) 1997年ハラスメントからの保護法、1997年性犯罪者法、および、家庭内暴力およびドメスティック・バイオレンス(北アイルランド)令(1998年)が採択されたこと。 (i) イングランド、ウェールズおよびスコットランドにおいて学校体罰の廃止が完了し、かつスコットランド学校基準等法(2000年)が採択されたこと。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.委員会は、条約の批准に内在する法的義務にもかかわらず、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.1)に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.34)に掲げられた懸念および勧告の多く、とくにパラ22-27、29-36、39、40ならびに42に掲げられたものへの対応が不十分であることを懸念する。これらの懸念および勧告はこの文書においてあらためて繰り返されている。 5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた勧告および懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。 留保および宣言 6.締約国が第37条(d)および第32条に付された留保を撤回したことは歓迎しながらも、委員会は、出入国管理および市民権に関する広範な留保(これは条約の趣旨および目的に反するものである)を撤回する意図が締約国にないことを、依然として懸念する。加えて委員会は、締約国において子どもがいまなお成人とともに拘禁されていることを理由として、締約国が第37条(c)に対する留保を撤回する立場にないことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が成人とともに拘禁される子どもの人数を減らすための努力を行なってきた一方、もはや当該留保の撤回を妨げているのは資源面での考慮のみであるように思えることを懸念する。 7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.34、パラ22および29)にしたがい、かつウィーン宣言および行動計画に照らし、締約国が、成人と同じ施設における子どもの拘禁を終わらせ、かつ第37条(c)に対する留保を撤回するためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国が、第22条に対する留保について、締約国の法律は条約第22条にしたがっているのでこの留保は形式的には不必要であるという締約国の見解を踏まえ、撤回の方向で再検討するようにも歓迎するものである。 立法 8.欧州人権条約に掲げられた諸権利を国内法に編入する1998年人権法が施行されたことには留意しながらも、委員会は、欧州条約に掲げられたものよりもはるかに幅広い子どもの権利条約の規定および原則がいまだ国内法に編入されておらず、かつ新法において条約が全面的に遵守されることを確保するためのいかなる正式な手続も存在しないことを、懸念する。委員会は、スコットランドの教育制度が第12条を遵守することおよびウェールズの保育制度における体罰が禁じられることを確保するなど、地方分権政府において条約との両立性を確保するための若干の法改正が導入されたことに留意しながらも、締約国が、国内法が領域全体で条約と両立することを確保していないことを、依然として懸念するものである。 9.委員会は、締約国に対し、すべての法律において条約が遵守され、かつ条約の規定および原則が法律上および行政上の手続で広く適用されることを確保する目的で、条約の権利、原則および規定を国内法に編入するよう奨励する。締約国はまた、条約の規定に関する研修を行ない、かつ条約をより広く普及することも奨励されるところである。 資源 10.条約を実施するための資源が増加していること、子どもに関する支出を明らかにするために予算を分析する方向に向けて若干の前向きが動きが見られること、子どもの貧困を2010年までに半減させ、かつ一世代のうちに根絶することが国家的目標とされていること、ならびに、地域的対象を明確にした子どものためのサービスを通じて子どもの貧困および社会的排除に対処するための戦略および政策がとられていることには留意しながらも、委員会は、条約が、条約第4条で定められているように「利用可能な資源を最大限に用いて」実施されていないことを、依然として懸念する。 11.委員会は、子どもに関する支出の割合を明らかにし、優先課題を特定し、かつ「利用可能な資源を最大限に用いて」資源を配分する目的で、締約国が、締約国全体のおよび地方分権政府におけるすべての部門別予算および総予算の分析を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、国際開発省の活動においてもこの原則を適用するよう勧告するものである。 調整 12.委員会は、地方分権政府で創設された他の機関に加えて2001年に子ども若者部が設置されたことは歓迎するものの、締約国全域で条約の実施を調整する中央機構が存在しないことにより、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策が実現しにくくなっていることを依然として懸念する。それぞれの地方政府に対する権限委譲プロセスが進められていることにより、北アイルランド、スコットランド、イングランドおよびウェールズのさまざまなレベルの政府間ならびに諸政府および地方当局間で、締約国全体を通じた条約の実施の効果的調整を行なう必要性が、いっそう差し迫ったものとなっている。 13.委員会は、前回の勧告(前掲、パラ23)にしたがい、締約国が、締約国全体(地方分権政府も含む)で条約の実施を調整する役割を、十分な権限および資源を有し、非常に注目されやすく、かつ容易に特定可能な恒久的機関に割り当てるよう勧告する。 行動計画 14.委員会は、ウェールズ国民議会が策定した「子ども若者戦略」において条約が枠組として用いられたことを歓迎するものの、これが締約国全体に当てはまるわけではないことを依然として懸念する。委員会は、条約に基づきかつ締約国全体で適用される全般的戦略を公表しかつ実施するという、文書回答においておよび締約国代表団主席によって行なわれた決意表明に、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、政策策定に対して権利基盤アプローチがとられていないこと、および、条約が、締約国全体のあらゆる行政段階で戦略策定のための適切な枠組みと認められてきたわけではないことを、依然として懸念するものである。委員会はまた、総合的な子どもの権利観に基づく国家的行動計画が存在しないことも懸念する。 15.委員会は、締約国に対し、締約国全域で条約を実施するための包括的行動計画を早期に採択しおよび実施するよう奨励する。その際、「ケアの前進のための道」を考慮に入れるとともに、開かれた、豊富な協議をともなう参加型のプロセスを通じ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえば貧困世帯の子ども、マイノリティ集団の子ども、障害児、ホームレスの子ども、ケアの対象とされている子ども、16~18歳の子ども、アイリッシュおよびロマのトラベラーの子どもならびに庇護希望者など)に特別な注意を払うことが求められる。 独立の監視機構 16.委員会は、ウェールズで独立した子どもコミッショナーが設置されたことを歓迎するものの、とくに権限移譲の対象とされていない事柄との関連で同コミッショナーの権限が限られていることを懸念する。委員会は、北アイルランドおよびスコットランドで子どものための独立した人権機関を設置する計画があることを歓迎するものである。しかしながら委員会は、締約国がイングランドにおいて子どものための独立した人権機関をまだ設置していないことを、深く懸念する。 17.委員会は、前回の勧告(前掲)にしたがい、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての子どもを対象として条約のあらゆる権利を監視し、保護しおよび促進するため、人権の促進および保護のための国内機関に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)にしたがい、締約国全域でおよび国レベルで、広範な任務および適切な権限ならびに資源を有する独立した人権機関を設置すること。このような機関は、子どもが容易にアクセスでき、自ら活動方針を決定することができ、子どもの権利の侵害について子どもに配慮したやり方で調査を行なう権限を与えられ、かつ、子どもが自己の権利の侵害に対する効果的な救済を得られることを確保するようなものであるべきである。 (b) すべての人権機関がそれぞれの立法機関との関係で正式な助言の職務を有すること、および、これらの機関が相互に公式なつながり(協力関係を含む)を確立することを確保すること。 (c) 国内人権機関に対して十分な資源および適切な職員を提供すること。 (d) これらの機関の設置および活動に子どもおよび子ども団体が効果的に関与することを確保すること。 データ収集 18.委員会は、事前質問事項への文書回答で提供された統計データ、最近刊行された子どもおよび若者に関する統計、ならびに、毎年「子ども白書」を刊行したいという子ども若者部の意図を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とする分野についてのデータを収集しおよび分析する全国的機構が存在しないことを、なお懸念するものである。 19.委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野について18歳未満のすべての子ども(もっとも脆弱な立場に置かれた集団を含む)に関する細分化されたデータを収集する全国的システムを設置すること、および、進展を評価しかつ条約の実施のための政策を立案する目的でこれらのデータを活用するよう勧告する。委員会は、イングランド、北アイルランド、スコットランドおよびウェールズにおけるならびに締約国全体に関する定期的報告書を作成するとともに、連合王国およびスコットランドの議会ならびに北アイルランドおよびウェールズの国民議会において、これらの報告書に関する幅広い公開の議会討議を促進するよう奨励するものである。 研修/条約の普及 20.委員会は、スコットランドで教育に対する権利基盤アプローチが採用されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、最近の研究によればほとんどの子どもが条約に掲げられた権利を知らないことを、とりわけ懸念するものである。したがって委員会は、締約国が、条約に関する十分な普及活動、意識啓発活動および研修活動を体系的な、かつ対象を明確化した方法で行なっていないことを懸念する。 21.前回の勧告(前掲、パラ26および32)ならびに条約第42条に照らし、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の行政組織の間における、条約およびその実施に関する情報の普及を相当に拡大すること(脆弱な立場に置かれた集団に積極的に情報を届けるための取り組みも含む)。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どものための施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者など)を対象とする、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.一般原則 差別の禁止に対する権利 22.人種関係(北アイルランド)令(1997年)の採択、および、国籍法における婚内子と婚外子の差別を終結させることに関する締約国のコミットメントは歓迎しながらも、委員会は、差別の禁止の原則が、締約国のすべての場所において、すべての子どもを対象として全面的に実施されているわけではなく、かつ、とくに障害のある子ども、貧困家庭の子ども、アイリッシュおよびロマのトラベラーの子ども、子どもの庇護希望者および難民、マイノリティ集団に属する子ども、ケアの対象とされている子ども、拘禁されている子どもならびに16~18歳の子どもに関して、経済的、社会的、文化的、市民的および政治的権利の享受に不平等があることを、懸念する。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 差別にさらされている子ども、とくに脆弱な立場に置かれている前掲の集団に属する子どもの状況を監視すること。 (b) イングランド、スコットランド、北アイルランドウェールズにおける子どもによる権利の享受の状況を、比較しながら監視すること。 (c) このような監視の結果に基づき、あらゆる形態の差別の解消を目的とした、対象が十分に明確化された具体的行動を掲げる包括的戦略を策定すること。 (d) 婚姻した父のみならず非婚の父を通じても国籍の承継を可能とするため、国籍法を改正すること。 24.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。 子どもの最善の利益 25.子どものケアおよび保護に関わる法律に子どもの「福祉」が掲げられていることには留意しながらも、委員会は、子どもの最善の利益を第一次的に考慮するという原則が、子どもに影響を及ぼす締約国全域の法律および政策、とくに少年司法制度および出入国管理実務に一貫した形で反映されていないことを懸念する。 26.委員会は、前回の勧告(前掲、パラ24)にしたがい、締約国が、子どもに影響を及ぼす締約国全域のすべての法律および政策、とくに少年司法制度および出入国管理実務において、最高の考慮事項のひとつとしての子どもの最善の利益を採用するよう勧告する。 生命に対する権利 27.委員会は、北アイルランドにおいて、円形プラスチック弾が暴動鎮圧手段として引き続き用いられていることを懸念する。これは子どもを傷つけるとともに、その生命を危うくさせる可能性もあるためである。 28.拷問禁止委員会の勧告(A/54/44、パラ77(d))の勧告にならい、委員会は、締約国に対し、暴動鎮圧手段としての円形プラスチック弾の使用を廃止するよう促す。 子どもの意見の尊重 29.委員会は、締約国全域の行政機関、地方当局および市民社会において子どもの参加および子どもとの協議がますます奨励されるようになっていること、地方当局のサービス計画立案において子どもとの協議プロセスが確立されたこと、子ども若者部に若者諮問フォーラムが設置されたこと、ならびに、締約国のあらゆる場所で子どもおよび若者のためのその他の場(スコットランド若者議会など)が設けられていることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国全域の法律、たとえば離婚に関わる司法上の手続、養子縁組、教育および保護に関する法律に、第12条の義務が一貫した形で編入されていないことを懸念するものである。加えて、委員会は、1989年子ども法に掲げられた、法的手続における独立の代理に対する子どもの権利が体系的に行使されていないことを懸念する。委員会はまた、教育において、児童生徒が自己に影響を与える事柄について組織だった協議の対象とされていないことも懸念するものである。委員会は、締約国の子どもの諸集団が、自分たちの意見が正当に考慮されていないという気持ちを表明していることに留意する。 30.委員会は、締約国が、条約第12~17条にしたがい、社会のすべての子ども集団の、組織だった、意味のある、かつ効果的な参加(たとえば生徒会を通じた学校における参加を含む)を促進し、その便宜を図り、かつこれを監視するために、さらなる措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、第12条の両方の項の義務を法律に一貫した形で反映させるためにさらなる措置をとるとともに、裁判手続および行政手続(離婚および別居の手続を含む)において、自己の意見を形成する力のある子どもが意見を表明する権利を認められ、かつその意見が正当に重視されることを確保するよう、勧告するものである。委員会はさらに、子どもに影響を及ぼすプログラムおよび政策の立案において、子どもが表明した意見が考慮されかつ影響を与えることを可能にするような手続を設置するよう、勧告する。 3.市民的権利および自由 名前および国籍ならびにアイデンティティの保全 31.最近の養子縁組および子ども法案(2002年)には留意しながらも、委員会は、婚外子、養子とされた子どもまたは受精補助医療を背景として生まれた子どもに、その生物学的親の身元を知る権利が認められていないことを懸念する。 32.条約第3条および第7条に照らし、委員会は、その出生の事情にかかわらずすべての子どもおよび養子とされた子どもが可能なかぎりその親の身元に関する情報を得られるようにするため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い 33.委員会は、2000年4月から2002年2月にかけて、296名の子どもが、刑務所で使用された拘束および統制措置によって傷害を負ったという最近の数字に、特段の懸念を覚える。加えて、委員会は、入所型施設および拘留施設において身体的拘束が頻繁に用いられていること、ならびに、子どもが少年拘禁施設および刑務所の独居拘禁房に措置されていることを、懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、条約、とくに第37条および第25条との一致を確保するため、締約国全域の拘留施設、教育施設、保健施設および福祉施設における拘束および独居拘禁の使用を見直すよう促す。 体罰 35.委員会は、1995年の勧告(前掲、パラ32)後、イングランド、ウェールズおよびスコットランドのすべての学校において体罰が廃止されたことを歓迎するものの、当該廃止がまだ北アイルランドのすべての私立学校を対象とするところまで拡大されていないことを懸念する。委員会は、ウェールズ国民議会があらゆる形態の保育(家庭的保育を含む)における体罰を禁ずる規則を採択したことを歓迎するものの、このような文脈におけるすべての体罰を禁止する法律がイングランド、スコットランドおよび北アイルランドではまだ整備されていないことを、非常に懸念するものである。 36.前回の勧告(前掲、パラ31)に照らし、委員会は、締約国が「合理的懲罰」の抗弁をあくまで維持するとし、家庭におけるあらゆる子どもの体罰を禁止する方向に向けた実質的な行動を何ら起こしていないことを、深く遺憾に思う。 37.委員会は、「合理的懲罰」の抗弁を削除するのではなく制限するという政府の提案は、とくにそれが子どもの尊厳の重大な侵害であることから、条約の原則および規定ならびに前掲の勧告に一致しないという見解に立つものである(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の同様の見解も参照。E/C.12/1/Add.79, para. 36)。さらに、このような提案は一部の形態の体罰は容認されることを示唆するものであり、したがって積極的かつ非暴力的な規律を促進するための教育的措置を阻害することにつながる。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 「合理的懲罰」の抗弁を削除し、かつ現行法で対象とされていない家庭その他のあらゆる文脈におけるすべての体罰を禁止するための法律を、締約国全域で緊急に採択すること。 (b) 子どもおよび親ならびにこれらの者とともにおよびこれらの者のために働くあらゆる者の関与を得ながら、積極的な、参加型のかつ非暴力的な形態のしつけおよび規律ならびに人間の尊厳および身体的不可侵性に対する子どもの平等な権利の尊重を促進するとともに、体罰の有害な影響に関する公衆教育プログラムを実施すること。 4.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 39.委員会は、家庭内暴力およびドメスティック・バイオレンス(北アイルランド)令(1998年)、虐待からの子どもの保護に関する通達10/95号、教育機関の役割、スコットランド学校〔基準〕等法(2000年)およびスポーツにおける子どもの保護部の設置(2001年)のような、児童虐待の分野で行なわれた取り組みに留意する。にもかかわらず、委員会は、家庭における暴力およびネグレクトの結果、毎週1名ないし2名の子どもが死亡していることを深く懸念するものである。委員会はまた、締約国全域で、家庭、学校、施設、ケア制度および拘禁環境における子どもへの暴力(性暴力を含む)が蔓延していることも懸念する。委員会はまた、子どものネグレクトの水準が悪化していることにも、深い懸念とともに留意する。委員会は、これらの現象の規模を抑えるための、調整のとれた戦略が存在しないことを憂慮するものである。委員会はとくに、子どもの死亡について十分かつ体系的なフォローアップが行なわれていないこと、および、16歳未満の子どもに対する犯罪が記録されていないことに留意する。ケア制度について、委員会は、私的に里親託置された子どものための一貫した保護措置が存在しないことに留意する。委員会は、法廷で証言する子どもを支援するために政府がとった措置は歓迎するものの、子ども保護制度の役割に関する公的教育が行なわれていないことに留意するものである。 40.前回の勧告(前掲、パラ31)にしたがい、かつ条約第3条、第6条、第12条、第19条および第37条に照らし、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの死亡に関する法定調査制度を導入すること。 (b) 暴力の結果による子どもの死亡を減らし、かつ子どもに対するあらゆる形態の暴力を減らすための、調整のとれた戦略を策定すること。 (c) 代替的養護下にあるすべての子ども(私的に里親託置された子どもも含む)を対象として、法律上の一貫した保護措置を確保すること。 (d) 学校等も通じ、子どもの死亡および児童虐待を減らすことを目的とした、子どもの保護における法定機関その他のサービス機関の役割に関する情報をともなう大規模な公衆教育キャンペーンおよびプログラムを実施すること。 (e) 虐待、不当な取扱いおよびネグレクトの事案を受理し、監視し、捜査しかつ訴追するための効果的な手続および機構を設置すること。その際、虐待を受けた子どもが法的手続において被害を受けず、かつそのプライバシーが保護されることを確保すること。 (f) 子どもに対するすべての犯罪を英国犯罪調査に記録すること。 (g) 被害者のケア、回復および再統合のための体制を整えること。 (h) 被虐待児のための守秘対応センターへの全面的支援を通じて通報制度を強化するとともに、不当な取扱いの事案の特定、通報および取扱いに関する研修を教員、法執行官、ケアワーカーおよび保健専門家に対して行なうこと。 5.基礎保健および福祉 41.乳児死亡率が低下したこと、および、全国的保健サービスの計画において子どもに新たに焦点が当てられるようになったことは歓迎しながらも、委員会は、健康および保健サービス(精神保健サービスを含む)へのアクセスに関する、社会経済的地位および民族と結びついた不平等(たとえばアイリッシュおよびロマのトラベラーの乳児死亡率が高いことなど)が締約国全域で根強く存在すること、母乳育児率が相対的に低いこと、および、非合法であるにもかかわらず女性性器切除が根強く行なわれていることを、依然として懸念する。 42.委員会は、健康および保健サービスへのアクセスに関する不平等を少なくし、母乳育児を促進しおよび「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採用し、ならびに、教育上その他の措置を通じて女性性器切除の禁止を執行するため、締約国があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。 思春期の健康 43.10代の妊娠件数を削減するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、締約国において10代妊娠率が高いことを依然として懸念する。委員会は、マンツーマンのメンター制度、ならびに精神保健上の問題の発見およびこれへの対応に対する学際的アプローチを歓迎し、かつ全英優先課題指針(1999~2002年)に子どもの精神保健が導入されたことには留意するものの、多くの子どもが精神保健上の問題に苦しんでおり、かつ若者の自殺率がいまなお高いことを依然として懸念するものである。委員会は、同性愛およびトランスセクシュアルの若者が、自己の性的指向にしたがって生きられるようにするための適切な情報、支援および必要な保護にアクセスできていないことを懸念する。委員会はさらに、若者の性感染症感染件数が増加していることを懸念するものである。 44.前回の勧告(前掲、パラ30)にしたがい、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに(独立の「10代の妊娠に関する助言グループ」が勧告しているように)性教育を含む健康教育を学校カリキュラムの一部とし、すべての子どもが避妊手段を利用できるようにし、ならびに、秘密が守られかつ青少年に配慮した助言および情報その他の適切な支援へのアクセスを向上させることを通じて10代の妊娠率を削減するために、さらなる必要な措置をとること。 (b) 手当の受給資格および子育て講座との関連で、16歳未満の若い母親に関する政策を見直すこと。 (c) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスが思春期の子どもにとってアクセスしやすく、かつこれらの子どもに配慮したものであることを確保しながら強化するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、自殺の原因および背景に関する研究を実施すること。 (d) 同性愛およびトランスセクシュアルの若者に十分な情報および支援を提供すること。委員会は、締約国に対し、代表団が行なった意思表明に留まらず、適用可能なときは1988年地方自治法第28条を廃止するよう奨励する。 生活水準 45.委員会は、締約国において貧困下で暮らしている子どもの割合が高いことを著しく懸念する。このことは、これらの子どもによる条約上の多くの権利の享受を制限し、かつ、これらの子どもの間で死亡、自己、妊娠、劣悪な居住環境およびホームレス化、栄養不良、教育面での失敗および自殺の発生件数が高まることにつながるものである。委員会は、子どもの貧困を解消するという締約国の決意およびこれに関連して行なわれている取り組みは歓迎するものの、締約国全域を対象とする、効果的かつ調整のとれた貧困根絶戦略が存在しないことに留意する。 46.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの貧困の解消をさらに迅速に行なうため、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」あらゆる必要な措置をとること。 (b) 若者のホームレス化の原因およびその結果に対応するための努力の調整を向上させ、かつこのような努力を強化すること。 (c) 16~18歳の者を対象とする給付および社会保障手当についての法律および政策を見直すこと。 6.教育、余暇および文化的活動 教育 47.委員会は、教育予算の増加、および、教育改善措置地区等の取り組みを通じて識字能力および数学の水準を高めるために締約国がとった措置、ならびに、幅広いシティズンシップ教育プログラムの開発を歓迎する。さらに委員会は、条約第12条を反映させるためにスコットランドで進められている法律の発展を歓迎するものの、同様の法律は締約国全域で必要とされていること、および、指針では第12条を実施するための措置としては不十分であることに留意するものである。委員会は、停退学率がいまなお高く、もっぱら特定集団の子ども(黒人の子どもを含む民族的マイノリティ、アイリッシュおよびロマのトラベラー、障害のある子ども、庇護希望者等)に影響が生じていること、および、子どもの社会経済的背景およびその他の要素(ジェンダー、障害、民族的出身または養護に関わる地位)によって子どもの教育上の成果が著しく異なることを、懸念する。さらに、委員会は、学校におけるいじめが広がっていることを懸念するものである。委員会は、刑務所および少年拘禁センターで自由を奪われている子どもが教育に対する法律上の権利を有していないこと、このような子どもの教育が教育担当省庁の責任とされていないこと、および、このような子どもが特別な教育上のニーズに対する支援を受けていないことを、とりわけ懸念する。委員会はさらに、ケア制度の対象とされている子どもの大多数および10代の母親が基礎的な教育修了資格を得ていないことを懸念するものである。委員会は、北アイルランドにおける統合学校の発展を歓迎するものの、統合されている学校は全体の4%に過ぎず、引き続き分離教育が主となっていることを、依然として懸念する。 48.条約第2条、第12条、第28条および第29条に照らし、かつ委員会の前回の勧告(前掲、パラ32)にしたがい、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国全域の法律で、第12条が反映され、ならびに自己の教育に関わるすべての事柄(学校懲戒を含む)について意見を表明しかつその意見を正当に重視される子どもの権利が尊重されることを、確保すること。 (b) 停学または退学を削減し、締約国全域の子どもが停退学の前に意見を聴かれる権利および停退学に対して異議を申し立てる権利を有することを確保し、かつ、停退学の対象とされた子どもが引き続きフルタイムの教育にアクセスできることを確保するため、適当な措置をとること。 (c) 異なる集団の子ども間における教育上の達成および停退学率の不平等を解消し、かつすべての子どもに適切な質の教育を保障するため、あらゆる必要な措置をとること。 (d) 拘禁されている子どもが教育に対する平等な法律上の権利を有することを確保し、かつケアの対象とされている子どもの教育を向上させること。 (e) 家庭および学校における子どもへの暴力に関する一般的討議で採択された委員会の勧告に照らし、いじめその他の形態の学校における暴力を防止し、かつこれらの戦略の策定および実施に子どもを含めるための措置をとり、かつそのための十分な機構および体制を設置すること。 (f) 教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮に入れながら、すべての初等中等学校および教員養成のカリキュラムに条約に関する教育および人権教育を含めること。 (g) 相当数の親の要求を満たすため、北アイルランドの統合学校の予算を増額するとともに、その増設を促進するための適当な措置およびインセンティブを導入すること。 (h) 10代の母親の継続教育を促進しおよび奨励するため、このような母親を対象とする教育プログラムを発展させること。 (i) 学校民営化が教育に対する子どもの権利に及ぼす影響の評価を実施すること。 7.特別な保護措置 子どもの庇護希望者/難民 49.委員会は、1994年に〔NGOである難民評議会に〕子ども助言者委員会が設置されたことを歓迎するとともに、家族とともにまたは自分自身で庇護を請求する子どもの人数が増えていることを認識する。委員会は、これらの子どもの収容は条約の原則および規定と両立しないことを懸念する。委員会はさらに、〔庇護希望者等の居住地の〕分散システムはよりよい統合を阻害し、かつ人種関連の事件の拡大につながる可能性があること、庇護を希望する子どもを一時居住先に措置することは保健または教育へのアクセスのような基本的権利を侵害する可能性があること、申請の処理に数年かかる場合があること、子ども助言者委員会の資金が常に十分であるわけではないこと、および、現在進められている庇護制度および出入国管理制度の改革において子どもの庇護希望者の特有のニーズおよび権利が対応されていないことを、懸念するものである。 50.条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ、子どもが庇護を希望しているか否かにかかわらず、委員会は締約国が子どもに関して以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第37条に一致する形で、保護者のいない未成年者の収容は控えることを方針とし、かつ、収容の合法性を迅速に争う権利を確保すること。いかなる場合にも、収容は常に最後の手段であり、かつもっとも短い適当な期間で用いられなければならない。 (b) 子どもの難民および庇護希望者が教育および保健のような基礎的サービスにアクセスでき、かつ、庇護を希望する家族のための手当であって子どもに影響を及ぼしうるものの受給資格に関して差別がないことを確保すること。 (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および難民に対する後見人の任命を検討すること。 (d) 特定の地域に定住した子どもが18歳に達した際に当該地域を離れることを強制されないようにするため、あらゆる必要な措置をとること。 (e) 庇護申請に対応する手続を迅速化するための努力、および、子どもを不適切な一時居住先に措置するのではなく子ども養護法制上の「援助を必要とする子ども」として居住先を手配するための努力を行なうこと。 (f) 出入国管理制度および庇護制度で対応されている保護者のいない未成年者その他の子どものための、法定代理その他の形態の独立の権利擁護の利用可能性および実効性に関する検討を行なうこと。 (g) 現在進められている出入国管理制度および庇護制度の改革において、これらの制度を条約の原則および規定と一致させるため、子どもの特有の状況に遺漏なく対応すること。 アイリッシュおよびロマのトラベラー 51.委員会は、アイリッシュおよびロマのトラベラーに属する子どもが差別されていることを懸念する。このような差別は、とくに、その他の子どもと比較した場合のこれらの子どもの死亡率の高さ、教育におけるこのような子どもの隔離、その住環境およびこのような子どもに対する社会の態度に表れているところである。委員会はまた、政策とサービス提供との間に乖離があることも懸念する。 52.前回の勧告(前掲、パラ40)にしたがい、委員会は、締約国が、これらの集団に属する子どもが権利を享受することを妨げる要因に効果的に対応するための包括的かつ建設的な行動計画を、これらの集団およびその子どもが関与する協議型および参加型のプロセスによって立案するよう勧告する。 武力紛争における子ども 53.委員会は、軍の年間新規入隊者のおよそ3分の1が18歳未満であること、陸海空軍が若者を標的としていること、および、入隊者は最低4年間軍務に就かなければならない(非常に若年の入隊者については6年間に延長される)ことを、深く懸念する。委員会はまた、若年の入隊者がいじめの被害を受けているという訴えが広く存在すること、および、18歳未満の子どもが国外で敵対行為に直接参加していることも懸念するものである。委員会はまた、北アイルランド紛争が子どもに及ぼす悪影響(北アイルランドで施行されている非常事態立法その他の法律の活用によるものも含む)について依然として懸念する。 54.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准するとともに、その趣旨および目的を念頭に置きながら、締約国が選択議定書への署名時に行なった宣言で挙げられている状況において18歳未満の者を配置しないようにするためあらゆる必要な措置をとること。 (b) 16歳に達しているが18歳には満たない者を徴募するときは、条約第38条3項に照らして最年長の者を優先させるよう努めるとともに、18歳以上の者を徴募する努力を強化しかつ増進させること。 (c) 前回の勧告(前掲、パラ34)に照らし、北アイルランドで現在運用されている非常事態立法その他の法律が条約の原則および規定と一致することを確保するため、少年司法の運営制度との関連も含めてこれらの法律の見直しを行なうこと。 経済的搾取(児童労働も含む) 55.委員会は、全国最低賃金が就業の最低年齢に達した若年労働者に適用されないこと、および、したがってこれらの若年労働者が経済的に搾取されるおそれがありうることを懸念する。委員会は、最低賃金に関する政策に、若者の学業および技能向上を奨励することを目的とした締約国のプログラムが反映されていることに留意するものである。にもかかわらず、委員会は、このような政策が働かなければならない子どもに対する差別となる可能性があることを懸念する。 56.委員会は、締約国が、差別の禁止の原則に照らし、若年労働者の最低賃金に関する政策を再検討するよう勧告する。 性的搾取および人身取引 57.委員会は、子どもを商業的性的搾取から保護するための国家計画(2001年)、および、子どもの性的搾取と闘うために締約国とフィリピン政府との間で調印された了解覚書(1997年)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、性的搾取その他の搾取を目的とする人身取引がいまなお問題となっていること、および、性的搾取を受けた子どもがいまなお法律で犯罪者とされることを、懸念するものである。 58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 児童買春の規模、原因および背景に関する研究を行なうこと。 (b) 性的搾取を受けた子どもが犯罪者とされないよう、法律を見直すこと。 (c) 子どもの商業的性的搾取に反対する会議(1996年および2001年)で採択された「宣言および行動綱領」ならびに「グローバル・コミットメント」にしたがった政策およびプログラムを引き続き実施すること。 (d) この分野の政策およびプログラムに対し、十分な資源(人的資源および財源の両方)が配分されることを確保すること。 少年司法の運営 59.委員会は、罪を犯した少年を対象として修復的司法およびコミュニティを基盤とするその他の建設的処分を導入するための取り組みを締約国が行なっていること、17歳の者がほぼ完全に少年司法制度の対象とされていること、および、罪を犯した子どもの行動に対応するための学際的チームが創設されたことを歓迎するものの、法律に触れた子どもの状況が第1回報告書の検討以降悪化していることに、重大な懸念とともに留意する。委員会は、子どもが刑事司法制度の対象とされる年齢が低いこと(スコットランドでは刑事責任年齢がいまなお8歳と定められており、締約国のそれ以外の地域では10歳と定められている)、および、責任無能力推定原則が廃止されたことをとりわけ懸念する。委員会は、スコットランドの子ども聴聞制度に異なるアプローチが反映されていること、および、16~18歳の若者を子ども聴聞制度の対象とすることに関する議論が行なわれていることを歓迎するものである。委員会は、締約国の第1回報告書以降、12~14歳の子どもが自由を奪われるようになったことをとりわけ懸念する。より一般的には、委員会は、拘禁命令および拘束命令を発令する裁判所の権限が最近になって強化された結果、より多くの子どもが、より低年齢で、より軽微な犯罪について、かつより長い刑期で拘禁されるようになっていることを深く懸念する。委員会は、したがって、自由の剥奪が、条約第37条(b)に違反して、最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間でのみ用いられていないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもが拘禁下で不十分な環境を経験していること、および、子どもが(15~17歳を対象とする)若年犯罪者施設で十分な保護または援助を受けていないことも、著しく懸念する。この点について委員会は、子どもに対する職員配置の比率が非常に低いこと、暴力、いじめ、自傷行為および自殺が高水準で発生していること、更生のための機会が不十分であること、懲戒措置としてのまたは保護のための独居拘禁が不適切な環境下でかつ長期間にわたって用いられていること、ならびに、収監されている女子および一部の男子がいまなお成人から分離されていないことに、留意するものである。 60.加えて、委員会は、以下のことに懸念とともに留意する。 (a) 1998年犯罪および秩序違反法により、イングランドおよびウェールズで、条約の原則および規定に違反する可能性のある措置が導入されたこと。 (b) 一定の状況において子どもが成人裁判所で審理されうること。 (c) 拘禁されている子どもが、独立の権利擁護サービス、ならびに教育、十分な保健ケア等の基礎的サービスに常にアクセスできるわけではないこと。 (d) 刑事司法制度に関わることになった子どものプライバシーが常に保護されるわけではなく、かつ重大犯罪の場合はその氏名がしばしば公表されること。 (e) 17歳未満の若者が再拘留に関して成人と見なされること。 61.前回の勧告(前掲、パラ36および36)にしたがい、委員会は、締約国が、条約の規定および原則、とくに第3条、第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のようなこの分野における他の関連の国際基準を立法政策および実務に全面的に統合した少年司法制度を確立するよう、勧告する。 62.とくに、委員会は締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を相当に引き上げること。 (b) 1998年犯罪および秩序違反法によって導入された新たな命令を再検討し、かつそれを条約の原則および規定と両立するようにすること。 (c) 犯罪の状況または重大性にかかわらず、いかなる子どもも成人として審理されないことを確保すること。 (d) 条約第40条2項(b)(vii)にしたがい、法律に触れたすべての子どものプライバシーが全面的に保護されることを確保すること。 (e) 子どもの拘禁が最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間でのみ用いられること、および、子どもが拘禁時に成人から分離されることを確保するとともに、自由の剥奪に代わる措置の活用を奨励すること。 (f) 自由を奪われたすべての子どもが、独立の権利擁護サービス、および、独立の、子どもに配慮した、かつアクセスしやすい苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。 (g) 拘禁の環境を見直し、かつ、自由を奪われたすべての子どもが、教育、健康および子どもの保護に対して他の子どもと同一の法律上の権利を有することを確保するため、緊急にあらゆる必要な措置をとること。 (h) 18歳未満のすべての子どもに対して特別な保護を与える目的で、再拘留についての17歳の若者の地位を見直すこと。 (i) 扱われる事件数を相当に増やせるようにし、かつ16~18歳の若年犯罪者を子ども聴聞制度の対象にできるようにするため、スコットランドの子ども聴聞制度に適切な資源を配分すること。 8.選択議定書 63.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准していないことに留意する。 64.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書、ならびに、前掲勧告のとおり、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書を批准するよう奨励する。 9.文書の普及 65.委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見の刊行を検討するよう勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のあるNGOおよび子どもグループを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 10.報告書の定期的提出 66.委員会は、締約国に対し、条約で定められた第4回定期報告書の提出期限、すなわち2009年1月15日までに次回定期報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は、第3回および第4回定期報告書を統合したものであるべきである。しかしながら、委員会は毎年多数の報告書を受領しており、その結果、締約国報告書の提出日から委員会による検討が行なわれるまで相当の遅延が生じていることから、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合報告書を、その提出期限の18か月前である2007年7月15日までに提出するよう慫慂するものである。 67.最後に、委員会は、締約国の次回定期報告書に、大ブリテンおよび北アイルランド連合王国のすべての海外属領および王室属領からの情報が記載されることを期待する。 更新履歴:ページ作成(2011年8月26日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/143.html
総括所見:ロシア(第2回・1999年) 第1回(1993年)/第3回(2005年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.110(1999年11月10日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1999年9月23日に開かれた第564回および第565回会合(CRC/C/SR.564-565) においてロシア連邦の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.5) を検討し、1999年10月8日に開かれた第586回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書が提出されたことを歓迎し、かつ、事前質問票(CRC/C/Q/RUS/2)に対して締約国が提出した詳細な文書回答に留意する。委員会は、委員会に出席した締約国の代表団が高官によって構成されていたこと、代表団が議論のなかで率直な態度を示したこと、および、対話の過程で追加的な情報を提供するため建設的な努力が行なわれたことに、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップの措置および達成された進展 3.委員会は、ロシア連邦の子どもの権利を保護するための法的基盤を強化する目的で締約国が行なった努力に留意する。このような努力には、家族法、刑法および教育法の改正、および、連邦児童虐待・少年犯罪防止法(1999年)および連邦子どもの権利基本的保障法(1998年)の制定が含まれる。 4.委員会は、人権コミッショナーが制度化されたこと(1997年)、部門横断型委員会が設置されたこと、および、5つの地域および都市で子どもの権利コミッショナーが任命されたことを歓迎する。委員会は、人権コミッショナー、連邦議会議員および国内NGOの勧告にしたがって「子どもの権利のための連邦コミッショナー事務所」を設置することに対し、締約国の代表団が表明した決意に満足感とともに留意するものである。 C.主要な懸念事項、提案および勧告 1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項) 立法 5.近年採択されかつ改正された多くの法律には留意しながらも、委員会は、国内法が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するべきであるという、委員会が1993年に行なった勧告に締約国が全面的にしたがっていないことを、依然として懸念する。 6.委員会は、とくに少年司法および刑事司法手続の運営、障害のある子どもの権利の保護、アルコール、薬物および有害物質の濫用からの子どもの保護、ポルノグラフィーからの子どもの保護、家族間暴力を含むあらゆる種類の暴力および虐待からの子どもの保護、および、子ども関連のさまざまな施設のすべてに関わる基準および監視機構の確立を向上させる改革との関連で法改正のプロセスを迅速化するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 7.委員会は、締約国に対し、必要な決議および指示を採択するプロセスを完了し、かつ、子どもに関連するあらゆる立法を効果的に実施するために必要な専門的人材および財源を配分するよう奨励する。 独立した監視機構 8.1997年に人権コミッショナーが制度化され、かついくつかの地域で子どもの権利コミッショナーに関するパイロット事業が制度化されたことは歓迎しながらも、委員会は、これらの機関の権限および地位が限られていること、および、締約国における条約の実施を審査するために締約国がどうしても独立した監視機構を用意する必要があることを、いまなお懸念する。 9.委員会は、締約国が、独立した子どもオンブズマンを連邦レベルに設置することを検討するよう勧告する。当該機関は地域レベルの同様の機構と明確なつながりを有するべきであり、かつ、それぞれの機構が明確に定義された適切な権限(ケアおよび少年司法のための機構の監視も含む)、ならびに効果を保障するのに充分な権限および資源を与えられるべきである。 調整 10.子どもの権利条約を実施するための調整委員会を設立するため締約国が行なった努力は認めながらも、委員会は、子どもに対応するさまざまな連邦政府機関間で充分な調整が行なわれていないこと、および、子どもの権利に関する締約国内の戦略、政策および活動を統括する窓口が存在しないことを、依然として懸念する。さらに、委員会は、責任および行動を連邦機関から地域機関に地方分権化する過程で、子どもの権利の保護における格差を防止するための充分な保証が存在しないことを懸念するものである。 11.委員会は、締約国に対し、子どもの権利に携わるさまざまな政府機関間の調整を連邦および地域のいずれのレベルにおいても強化し、かつ、調整の改善を促進する目的でさまざまな機関をひとつの窓口的省庁に統合することを検討するよう奨励する。委員会はさらに、締約国に対し、連邦機関および地域機関の間の責任分担において子どもの権利を可能なかぎり最大限に保護する用意が行なわれることを確保するよう、奨励するものである。 予算問題/財政状況/国の手当の配分/資金拠出 12.委員会は、長期化する財政危機が、子どもの生活条件の悪化をもたらすことによりその発達に悪影響を及ぼしていること、および、社会投資プログラムの実施、ひいては子どもの権利の尊重に悪影響を及ぼしていることを、懸念する。とりわけ、委員会は、貧困が広範囲にわたっていること、家庭の構造が弱体化していること、放任された子ども、ホームレスの子どもおよび路上で暮らしかつ働く子どもの人数が増えていること、自殺の件数が多いこと、薬物およびアルコールの濫用が大きな規模で生じていること、および少年非行が増えていることを、深刻に懸念するものである。 13.委員会は、現行の援助を一時的に最低所得家庭に「限定供与」するために締約国が行なっている努力を認めながらも、この暫定期間中に援助を受け取らない家庭および子どもが困難に苦しむであろうことをとくに懸念する。委員会はまた、国の手当、とくに児童手当の支給が行なわれていないまたは遅れていることも懸念するものである。 14.条約第2条、第3条および第4条に照らし、委員会は、子ども、とくに傷つきやすい立場におかれかつ周縁化されたグループに属する子どもを対象とした保健、教育その他の社会サービスのための予算配分が充分に保護されることを確保するため、締約国が、利用可能な資源を最大限に用いてあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 15.さらに、委員会は、締約国に対し、歳出の使途の再編成またはプログラムの優先順位の設定、および、締約国による子どもの権利条約の実施を前進させるために用いられる国際援助の割合の増加のような、予算問題を解決するための追加的な策を追求するよう奨励するものである。 16.委員会は、締約国に対し、あらゆる手当の支給が行なわれること、限定供与の対象となっている手当の使用が監視されること、および、「ロシアの子ども」に含まれるすべての大統領プログラムに対して適切な資金拠出が行なわれることを確保するよう、促す。 17.委員会はさらに、締約国が、利用可能な資源をもっとも傷つきやすい立場に置かれたグループの子どもの保護に最大限に配分するため予算配分政策を見直し、かつ、経済危機が子どもの生活水準に与える影響の注意深い監視に関わる1993年の委員会の勧告をひきつづき実施するよう、勧告するものである。 NGOの参加 18.委員会は、条約実施へのNGOの参加を支援する必要性に関わる1993年の委員会の勧告の実施が限られていることを懸念する。 19.委員会は、締約国に対し、条約に関する訓練の提供および情報の普及ならびに実施の監視を行なうNGOの努力に関して、報告プロセスにおける、およびケア施設および少年司法施設の監視におけるパートナーシップの強化によるものも含め、NGOに対する支援およびNGOとの協力を増進させるよう奨励する。 条約の原則および趣旨の普及 20.委員会は、1993年に委員会が条約の規定および原則の普及を継続するよう奨励したこととの関連で締約国がいまなお努力を強化する必要があることを、懸念する。 21.委員会は、専門家グループおよび親を含むおとなおよび子どもの間で条約の原則および規定を広報しかつ教育するため、締約国がさらなる措置をとるよう勧告する。 2.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止の原則(第2条) 22.締約国が差別を禁ずる立法を採択したことは歓迎しながらも、委員会は、とくに極北を含む地域間の格差および都市部と農村部の子どもの間の格差が、保健、教育その他の社会サービスおよび特別な保護を必要とする子どもの状況に関わる立法、予算配分、政策およびプログラムに関して増大していることを、依然として懸念する。 23.委員会はまた、農村部の女子が、とくに教育、保健、および性的虐待および性的搾取からの保護へのアクセスに関して不利な状況に置かれていることも懸念する。 24.さらに、委員会は、締約国において人種主義および外国人嫌悪の発生件数が増えているという一般的報告があることを懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、経済的、社会的および地域的格差を減少させるための措置を強化すること、および、1993年の委員会の勧告にしたがって、障害のある子どもおよび宗教的および民族的マイノリティに属する子どもに関するものも含め、子どもに対するいかなる差別または子どもの取扱いのいかなる格差も防止するためにさらなる措置をとるよう勧告する。 生命に対する権利(第6条) 26.条約第6条に照らし、委員会は、とくに男子に関わって子どもの自殺および殺害の割合が急速に上昇していることにより、生命に対する子どもの権利が脅威にさらされていることを懸念する。 27.委員会は、最近の子どもの自殺および殺害の増加を減少に転じさせ、かつ防止のための努力を促進する目的で、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。防止のための努力には、子ども、とくに青少年、および危機的状況に置かれている家族を援助することを目的とした危機介入ならびに防止のための支援およびカウンセリング・サービスを増加させるためにすでにとられている措置を強化することも含まれる。 3.市民的権利および自由(第7条、第8条、第13条~第17条および第37条(a)) 拷問からの保護(第37条(a)) 28.委員会は、体罰をともなって法執行官が行なう行為も含め、拷問および不当な取扱いが広範に行なわれており、かつ、施設一般およびとくに拘禁所または収監所で生活する子どもの環境が非人道的なまたは品位を傷つける取扱いに達しているという申立てがあることを、懸念する。 29.委員会は、これらの慣行を終わらせかつ防止し、かつそのような行為の申立ての調査および加害者の処罰を適正に行なうため、締約国が適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、これらの懸念に関して拷問禁止委員会および拷問に関する特別報告者が行なった勧告の実施も支持するものである。 30.さらに、委員会は、締約国が、施設における体罰の慣行を監視しかつ終わらせるよう勧告する。 4.家庭環境および代替的養護(第5条、第18条(1~2項)、第9条~第11条、第19条~第21条、第27条(4項)および第39条) 虐待/放任/不当な取扱い/暴力(第19条) 31.家族間暴力の危険性に関して締約国の意識が高まっていることは歓迎しながらも、委員会は、締約国において家庭を背景とする子どもの不当な取扱いおよび放任が根強く行なわれていることを依然として懸念する。委員会はまた、女性に対する暴力が広範に発生していること、およびそれが子どもに与える影響についても懸念するものである。 32.委員会は、締約国が、家庭の内外における子どもの不当な取扱い、放任および虐待(性的虐待も含む)の問題に特別な注意を向けるよう勧告する。 33.委員会は、条約第19条にしたがって、子どもに対するいかなる形態の身体的または精神的暴力も防止しかつそれと闘うため、情報キャンペーンおよび教育キャンペーンを行なう必要があることを協調する。 34.委員会はまた、治療およびリハビリテーションのためのプログラムも含む政策およびプログラムの立案を促進するため、これらの問題に関する包括的な研究を開始するようにも提案するものである。 35.さらに、1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ21に掲げた委員会の勧告に照らし、委員会は、締約国に対し、暴力および虐待の被害を受けた子どもを対象とした、苦情申立て、調査および証拠の提出のための子どもに優しい手続を促進し、かつ、行なわれた犯罪の調査ならびに加害者の訴追および適切な処罰を強化するよう奨励する。 子どもの措置の審査(第25条) 36.委員会は、施設措置の政策および慣行が支配的であること、施設で生活する子どもの人数が極端に多いこと、およびこれらの施設の生活条件に対し、深刻な懸念を表明する。条約第25条を踏まえ、委員会はまた、措置の定期的審査が制度的に保障されていないこと、および、この点に関する1993年の委員会の勧告が全面的に実施されていないことも、懸念するものである。 37.委員会は、1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ19を参照し、締約国が、脱施設化に関する国家的政策を立案すること、子どもの施設措置に代わる手段の利用を増やすこと、および地域志向型の社会サービスを強化する措置を検討することを追求するよう、勧告する。 38.この観点から、委員会は、締約国に対し、虐待、および親によるケアから子どもを分離する必要が生ずるのを防止する目的で、子どもが放任または虐待を受けるおそれのある家庭に支援、教育およびカウンセリング・サービスを提供するために効果的な措置をとるよう奨励する。委員会はまた、施設措置に代わる手段としての養子縁組および里親養護を強化するようにも勧告するものである。 39.委員会はまた、あらゆるタイプの措置が定期的に審査されるようにするため適切な手続を採択するようにも勧告する。条約第3条3項に照らし、委員会はさらに、施設の環境および施設の定期的検査に関する基準を確立すること、とくに独立した検査機構の役割および権限を強化し、かつそのような検査機構が抜き打ちで里親家庭および公立施設を検査する権利を確保することによって、法改正を含む施設制度の改革を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、とくに国際連合児童基金(ユニセフ)および世界保健機関の技術的援助を求めるよう促す。 障害のある子ども(第23条) 40.委員会は、障害のある子どもの状況、とくに精神障害児の状況および施設で生活する子どもの状況を懸念する。とりわけ、委員会は、現在の診断システムおよび慣行ならびに施設で生活する障害児の環境について、障害児の発達、治療およびリハビリテーションのための充分な専門的援助が存在しないことについて、およびメインストリーム教育への障害児のインクルージョンのプロセスが遅いことについて、懸念するものである。 41.委員会は、締約国に対し、身体的および精神的障害のある子どもの早期診断を改善し、かつ、その施設措置をできるかぎり防止するための努力を追求するよう奨励する。委員会はさらに、子どもが家庭で生活することを可能にし、かつその社会的インクルージョンを促進するため、専門的治療サービスならびに家族に提供される支援およびカウンセリングの強化を勧告するものである。 42.委員会は、締約国に対し、このような子どもの社会へのインクルージョンに関する政策を増進させる目的で、条約第23条4項にしたがって国際協力から利益を受ける努力を強化するよう奨励する。 国際養子縁組(第21条) 43.委員会は、締約国外への不法な子どもの移送および取引に対する保障が不充分であり、かつ、とくに経済的および性的搾取を目的とした国際養子縁組の濫用の可能性があることを懸念する。 44.委員会は、締約国に対し、国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の批准を検討するよう積極的に奨励する。委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の批准を締約国が検討しているという情報を検討し、かつ、締約国に対し、同条約に加入するための努力を加速するよう促すものである。条約第21条に照らし、委員会は、子どもの最善の利益を保護する目的で国際養子縁組に関わる手続を確立するための努力を強化するよう勧告する。 5.基礎保健および福祉(第6条、第18条3項、第23条、第24条、第26条および第27条1~3項) 健康に対する権利(第24条) 45.委員会は、基礎保健および福祉の分野で締約国が行なった努力、とくに周産期保健を向上させかつ乳児死亡率を減少させるための努力に評価の意とともに留意する。委員会はまた、予防接種プログラムに関して委員会が1993年に行なった勧告にしたがうなかで達成された成功も歓迎するものである。委員会は、高い乳児死亡率が根強く続いていること、および、保健のインフラストラクチャーおよびサービスが悪化していることをいまなお懸念する。さらに、寄生虫による疾患、感染性疾患および呼吸器系疾患(とくに結核)が増えていることは、栄養不良が増加していること、および母乳で育てられる子どもの割合が少ないことと同様に、委員会にとって大きな懸念の対象である。 46.委員会は、締約国が、プライマリーヘルスケアの悪化を向上に転じさせる努力をひきつづき行なうため技術的援助を求めることを検討するよう勧告する。とりわけ、委員会は、締約国に対し、結核その他の疾病を治療しかつその拡散を防止するための努力を継続し、避妊の手段としての中絶の利用を減少させるための努力を継続し、かつ、母乳育児を促進するよう促すものである。 47.HIV/AIDSおよび性行為感染症(STD)の予防キャンペーンおよびこのような疾患の発生率に関する情報が不充分であることは、委員会にとって懸念の対象である。 48.委員会は、避妊およびSTDに関する情報も含む性教育に青少年がアクセスできることを確保するための措置、リプロダクティブ・ヘルスおよび家族計画に関するサービスおよびカウンセリング・サービスを強化することにより青少年の健康を促進するための措置、および、HIV/AIDS、STDならびに10代の妊娠および中絶を防止しかつこれらと闘うための措置の効果を保障するよう勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条および第31条) 教育への権利(第28条および第29条) 49.委員会は、教育に関して締約国が行なっている努力、とりわけ、無償の義務的基礎教育の継続的提供を確保することおよび無償の中等教育へのアクセス可能性を高めることを目的とした新たな教育法の採択に、留意する。これとの関連で、委員会は、中退率が増加していること、中等課程の職業教育および技術教育への就学率が――とくに女子の間で――下降していること、および、学校のインフラストラクチャーおよび教員の労働条件が悪化していること(低賃金および遅配も含む)を、依然として懸念するものである。 50.委員会は、締約国に対し、中退率および中退の原因、ならびに規律上の理由で退学させられた子どもの状況に関する情報を収集するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、経済危機の影響から教育制度を保護するための努力を継続し、かつ、とくに、教員の労働条件にさらなる注意を向けるようにも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、子どもの権利を含む人権を独立科目として学校カリキュラムに導入するよう奨励する。 医療その他の社会サービスへのアクセス 51.委員会は、一部自治体が、法律によって禁じられているにも関わらず、居住許可を得ていない市において親および子どもが医療、教育その他の社会サービスにアクセスすることを妨げ続けているという報告があることを、懸念する。このような慣行は、国内避難民の子ども、移民および庇護申請者、ならびに路上で働きかつ生活している子どもにとってとくに有害である。 52.委員会は、締約国に対し、とくに地方政府および法執行官を対象とした訓練および意識啓発を通じて、居住許可を有しない子どもに対するこのような差別の慣行を終わらせるよう促す。 7.特別な保護措置(第22条、第38条~第40条第37条(b)~(d)および第32条~第36条) 難民の子ども(第22条) 53.委員会は、庇護申請者の取扱い、および、子どもおよび親、とくに旧ソビエト連邦の領域外からやってきた子どもおよび親に庇護申請の登録権を認めない慣行を、懸念する。 54.委員会は、締約国に対し、保健、教育その他の社会サービスへのアクセスも含めて難民の子どもの充分な法的保護を確保するよう奨励する。 55.委員会は、とくに保護者のいない子どもの代理で庇護申請を登録する権利に関わる手続、政策および慣行の見直しを行なうよう勧告する。 子どもと武力紛争ならびに子どもの回復(第38条および第39条) 56.委員会は、締約国で武力紛争が継続しているチェチェンおよびダゲスタンのような地域において子どもの権利が尊重されていないことを懸念する。委員会は、とりわけ、国際人道法の規定に違反して子どもが武力紛争に関与していること、ならびに国内避難民の子どもの人数および状況を懸念するものである。委員会はまた、チェチェンの裁判所によって、子どもに刑を言い渡すさい死刑および特定の体刑(手足の切断を含む)が適用されていることも懸念する。加えて、委員会は、同地域において子どもの即時的処刑、非自発的失踪、恣意的拘禁、拷問および不当な取扱いが行なわれている疑いがあるという報告を懸念するものである。 57.委員会は、締約国に対し、紛争時に子どもその他の文民が保護されること、および、国難避難民の子どもおよび武力紛争地域に生活する子どもが支援およびリハビリテーションのための援助(心理的援助も含む)を利用できることを確保するよう、奨励する。 児童労働(第32条) 58.委員会は、児童労働および経済的搾取が締約国の子どもにますます影響を与える問題となっていることを、依然として懸念する。加えて、委員会は、路上で働きかつ(または)生活する子どもの人数が多いことを懸念するものである。このような子どもは、犯罪組織を通じてのものも含む少年犯罪、アルコールおよび有害物質の濫用および性的搾取をますます受けやすい立場に置かれていることから、特段の注意を必要とする。 59.委員会は、締約国に対し、とくに「インフォーマル」部門における労働法の全面的実施を監視することに具体的に注意を向け、かつ売買春も含む経済的および性的搾取から子どもを保護するよう奨励する。委員会は、締約国が、路上で生活しかつ(または)働く子どもに関わる政策、慣行およびプログラムの向上を目的として、このような子どもの問題に関する調査を行なうよう勧告するものである。 60.最後に、委員会は、締約国が、増大しつつある児童労働の問題を防止しかつそれと闘うための包括的政策を発展させるさいにILO/IPECの技術的援助を求めることを検討すること、就業の最低年齢に関するILO条約(第138号条約、1973年)の規定を実施するための努力を強化すること、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関するILO第182号条約(1999年)の批准を検討することを、勧告する。 薬物濫用およびその他の形態の有害物質の濫用(第33条) 61.委員会は、子どもおよびその家族の間でアルコール、薬物その他の有害物質の濫用の問題が増大していることを懸念する。 62.委員会は、子どもによるアルコールの濫用および薬物の頒布および消費への関与を防止するため、締約国が追加的な努力を行なうよう勧告する。委員会はまた、アルコール、薬物および有害物質の濫用に携わった子どもおよびその家族に対して治療、リハビリテーションおよび支援のための充分なサービスを提供するため、さらなる措置をとるようにも勧告するところである。 性的搾取および性的虐待(第34条) 63.商業的性的搾取、性的虐待およびポルノグラフィーから子どもを保護するための立法、政策およびプログラムが不充分であることは、委員会にとって懸念の対象である。 64.1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ24に掲げた勧告に加え、委員会は、締約国が、子どもの性的搾取および性的虐待ならびにポルノグラフィーにおける使用に関する包括的な研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護を増進させ、かつ被害を受けた子どもの治療およびリハビリテーションを確保する目的で、追加的な立法措置をとることおよびサービスを拡大することも勧告するものである。委員会はさらに、締約国に対し、商業的性的搾取に対応する努力のなかで、1996年にストックホルムで開かれた子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された行動のための課題に掲げられた勧告を考慮にいれるよう奨励する。 マイノリティまたは先住民の子ども(第30条) 65.マイノリティへの支援の提供を目的とした連邦民族文化自治法(1996年)およびプログラムには留意しながらも、委員会は、とくに北部の民族的マイノリティの生活条件、および保健、教育その他の社会サービスへのアクセスについて依然として懸念する。委員会はまた、民族的マイノリティに属する子どもへの社会的差別の発生件数が増加していることも懸念するものである。 66.委員会は、マイノリティの子どもを差別から保護し、かつこのような子どもに教育、保健その他の社会サービスへの全面的アクセスを保証するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 少年司法の運営(第37条、第40条および第39条) 67.少年司法の分野は、とくに、少年司法に関する法律の採択および少年裁判所の設置を含む少年司法制度の確立の必要性に関して委員会が1993年に行なった勧告を締約国が充分に実施していないことに関わって、委員会にとって根強くかつ深刻な懸念の対象である。 68.委員会は、申し立てられた行為の捜査の過程で拘禁された少年に対して行なわれている警察による蛮行および拷問の報告があること、および、拘禁された少年の審判前拘禁の期間が検察官の裁量により延長されることをめぐって、懸念を表明する。委員会はまた、教育収容所、審判前拘禁所または特別教育施設で生活する罪を犯した少年の取扱い、および、拘禁および刑務所一般の環境の悪さも深刻に懸念するところである。 69.1993年の総括所見(CRC/C/15/Add.4) のパラ22および23に掲げた委員会の勧告、条約第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則に照らし、委員会は、締約国が、計画されている少年司法制度改革を可能なかぎり早期に実施するため特段の措置をとるよう勧告する。このような改革には、少年司法に関する包括的立法の採択、訓練を受けた少年裁判官による特別少年裁判所の導入、少年の逮捕を命令する権限を検察官から少年裁判所に委譲し、審判前拘禁の期間を制限し、かつ裁判手続を迅速化するための刑事訴訟法改正、および、子どもの権利、および条約が規定するように少年司法制度が社会復帰を目的としていることに関する法執行官および司法職員の訓練が含まれる。 70.委員会は、締約国に対し、条約が求めているとおり、少年司法を実施するにさいして自由の剥奪を「最後の手段」としてのみ用いるよう強く促す。この目的で、委員会は、締約国に対し、自由の剥奪に代わる手段を広く用いること、そのような代替的手段を運営するために必要な資源を利用可能とすること、および、非行を行なった少年の社会復帰を増進する目的で少年矯正施設の再編成を行なうことを、促すものである。 71.委員会はまた、締約国に対し、子どもに法的援助を提供すること、および審判前拘禁センターおよび教育収容所を含む拘禁場所の環境を改善することにより、自由を奪われた子どもの権利を保護するための措置をただちにとるようにも促す。さらに、委員会は、適切な、独立したかつ子どもに優しい苦情申立て機構をNGOと協力して設置すること、権利侵害が認められた場合に時宜を得た対応を行なうこと、および、釈放後に少年が社会に復帰しかつ再統合する援助を行なうためのプログラムを実施することを、勧告するものである。 72.委員会は、締約国が、国際連合少年司法委員会を通じ、少年司法に関してとくに国際連合国際犯罪防止センター、人権高等弁務官事務所、ユニセフおよび国際少年司法ネットワークの国際協力および技術的援助を求めることを検討するよう勧告する。 報告書の普及 73.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を、関連の会合の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに公衆が広く利用できるようにすることを勧告する。そのような幅広い配布は、とくに政府、関連省庁、議会および非政府組織の間で条約およびその実施状況に関する議論および意識を喚起するようなものであるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年1月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/127.html
総括所見:南アフリカ(第1回・2000年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.122(2000年2月23日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.子どもの権利委員会は、2000年1月25日および26日に開かれた第609回、第610回および第611回会合(CRC/C/SR.609, 610 and 611 参照)において、1997年12月4日に提出された南アフリカの第1回報告書(CRC/C/51/Add.2) を検討し、2000年1月28日に開かれた第615回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、定められたガイドラインにしたがい、かつ子どもの状況の批判的評価を提示した締約国の第1回報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、第1回報告書が期限どおりに提出されることを確保するために締約国が行なった努力も歓迎するものである。委員会は、事前質問票(CRC/C/Q/SAFR.1) に対する文書回答に留意する。委員会は、締約国との建設的な、開かれたかつ率直な対話に心強い思いを感じ、かつ議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎するものである。委員会は、条約の実施に直接携わる高い地位の代表団の出席を得たことにより、締約国における子どもの状況をいっそう全面的に評価できたことを認知する。 B.積極的な側面 3.委員会は、法改正の分野で締約国が行なった努力に評価の意を表明する。これとの関連で、委員会は、新憲法(1996年)、とくに、条約でも規定された多くの具体的権利および自由を子どもに保障した第28条を歓迎するものである。さらに、委員会は、国内法と条約とをいっそう調和させるために制定された追加的法律に評価の意とともに留意する。そのような法律として挙げられるのは、国家青少年法改正法(1996年)、法的扶助法改正法(1996年)、刑事訴訟法改正法(1996年)、映画出版物法(1996年)、国家教育政策法(1996年)、子ども養護法改正法(1996年)、体罰廃止法(1997年)、離婚裁判所法改正法(1997年)、家庭裁判所設置法(1997年)、扶養料法改正法(1997年)、婚外子実父法(1997年)および刑事訴訟法第2次改正法(1997年)などである。 4.委員会は、締約国で国内行動計画(NPA)が実施されていることを歓迎する。これとの関連で、委員会は、計画を特定すること、プログラムを調整および評価すること、ならびにNPAの実施および条約にもとづく義務の遵守に関する進展報告書を内閣に定期的に提出することを担当する国内行動計画運営委員会(NPASC)が設置されたことを歓迎するものである。委員会は、NPASCが、子どもの権利の促進に携わるさまざまな省庁および機関の代表、および、NGOおよび国家子どもの権利委員会を含む市民社会およびユニセフ南アフリカの代表から構成されていることに留意する。 5.委員会は、南アフリカ人権委員会が設置されたこと、および子どもの権利を担当する局長が任命されたことを歓迎する。 6.委員会はまた、人権高等弁務官事務所の支援を得て「人権制度強化プロジェクト」が実施されていることも歓迎する。委員会は、このプロジェクトに、南アフリカ警察が作成した人権研修パッケージを完成させるための助言サービスの提供、人権基準および人権実務に関する警察向けのポケット・ガイドの刊行、南アフリカ人権委員会(SAHRC)に対する助言および援助、裁判官、検察官および司法運営に携わるその他の職員の養成カリキュラムに人権を統合するための司法省司法大学に対する助言および援助、ならびに、一連の人権研修ワークショップの開発および資料センターの設置のためのフォート・ハレ大学への支援が含まれていることに留意するものである。 7.委員会は、子どもプログラムに関わる政府支出についての総合的視点を発展させ、かつ当該支出が子どもの生活に与える影響を検討することを目的として開始される「子ども予算プロジェクト」の設置のために締約国が行なっている努力を歓迎する。 8.委員会は、学校環境における締約国のとりくみを評価する。これとの関連で、委員会は南アフリカ学校法(1996年)が制定されたことを歓迎するものである。同法は、教育制度における子どもの参加権の増進、自己の学習言語を選択する子どもの権利(多言語主義)、および学校における体罰の廃止につながった。委員会はまた、すべての子ども、とくに経済的に不利な立場にある家庭の子どもの就学奨励および通学促進を目的とした、統合的な国家初等学校栄養プログラムが設置されたことにも評価の意とともに留意する。委員会はまた、「カリキュラム2005」のもとで、とくに障害児およびHIV/AIDSに感染した子どもの差別の禁止を奨励しかつそのインクルージョンを促進するためのプログラムを含む、学校環境における追加的なとりくみが構想されていることにも留意するものである。「カリキュラム2005」は、アパルトヘイト時代に設置された教育制度の不平等に対応することも目的としている。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、ひきつづき子どもの状況に悪影響を及ぼしかつ条約の全面的実施を阻害しているアパルトヘイトの残滓を克服するうえで締約国が直面している課題を認知する。とりわけ、委員会は、社会のさまざまな層のあいだにひきつづき膨大な経済的および社会的格差が存在すること、および、失業および貧困の水準が相対的に高いことが、条約の全面的実施に悪影響を及ぼし、かつ締約国にとって依然として課題となっていることに留意するものである。 D.主要な懸念事項および委員会の勧告 1.実施に関する一般的措置 立法 10.委員会は、法改正を行ない、かつ国内法と条約とのいっそうの一致を確保する措置を導入するために締約国が行なっている努力に留意する。委員会はまた、とくに家族間暴力の防止、学校におけるHIV/AIDS方針、新たな少年司法制度の設置、保育システムの拡大および性的虐待を受けた子どもの保護に関わる追加的な法改正を行なう目的で、南アフリカ法律委員会が現在、法律および慣習法の見直しを進めていることにも留意するものである。しかしながら、委員会は、法律およびとくに慣習法がいまなお条約の原則および規定を全面的に反映していないことを依然として懸念する。委員会は、締約国に対し、法改正の分野でひきつづき努力を行ない、かつ国内法が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するよう奨励するものである。 国際人権文書の批准 11.委員会は、締約国がまだ経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約を批准していないことに留意する。委員会は、この国際文書を批准することにより、その管轄下にあるすべての子どもの権利を保障する義務を満たそうとする締約国の努力が強化されるという見解に立つものである。委員会は、締約国に対し、この文書の批准を完了する努力を強化するよう奨励する。 調整 12.子どもの保護およびケアに関わるプログラムの実施を調整するため国内行動計画運営委員会(NPASC)が設置されたことには留意しながらも、委員会は、地域共同体レベルにおける充分なプログラムの導入を確保するために行なわれた努力が不充分であることを懸念する。これとの関係で、委員会はさらに、条約の促進および実施にあたって地域共同体を基盤とした団体を関与させるために行なわれた努力が不充分であることに懸念を表明するものである。委員会はまた、条約の実施を担当する省庁間で調整が行なわれていないことも懸念する。委員会は、締約国が、NPASCのプログラムおよび活動が農村部および地域共同体レベルで確立されることを確保するために効果的な措置をとるよう勧告する。地域共同体を基盤とした団体の能力構築を促進し、かつ条約の調整、促進および実施へのこのような団体のインクルージョンをさらに促進するために、締約国があらゆる効果的な措置をとることが奨励されるところである。委員会は、締約国が、条約の実施を担当する省庁および部局間でいっそうの調整を確保するための努力を強化するよう勧告する。 独立した監視機構 13.委員会は、締約国が、社会のあらゆるレベルで基本的人権の遵守を促進する権限を持った南アフリカ人権委員会を設置したことを、評価の意とともに歓迎する。委員会は、同委員会が、調査を行ない、召喚状を発し、かつ宣誓証言を行なわせる権限も有していることに留意するものである。しかしながら、委員会は、同委員会がその権限を効果的に遂行できるようにするために配分された資源が不充分であることを懸念する。加えて、委員会は、同委員会の活動が、とくに官僚的形式主義およびさらなる法改正の必要性によってひきつづき妨げられていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、条約にもとづく権利侵害についての子どもからの苦情を登録し、かつそれに対応する明確な手続が存在しないことも懸念する。委員会は、締約国に対し、南アフリカ人権委員会の効果的な職務遂行を確保するために充分な資源(人的資源および財源のいずれも)が配分されることを確保するよう、奨励するものである。委員会は、締約国が、自己の権利の侵害に関わる子どもからの苦情を登録し、かつそれに対応するための明確かつ子どもに優しい手続を確立すること、および、そのような侵害に対する充分な救済を保障することを、勧告する。委員会はさらに、締約国が、そのような機構の子どもによる効果的な利用を促進するための意識啓発キャンペーンを導入するよう提案するものである。 データ収集 14.委員会は、達成された進展の監視および評価ならびに子どもに関して採択された政策の影響の評価を行なうことを目的として、あらゆるグループの子どもとの関連でかつ条約が対象とするあらゆる領域に関して細分化された質的および量的データを体系的かつ包括的に収集するためには、現行のデータ収集機構では不充分であることを懸念する。委員会は、条約が対象とするあらゆる領域を編入することを目的として、データ収集システムの見直しを行なうよう勧告するものである。そのようなシステムは、18歳未満のすべての子どもを対象とし、かつ、女子、障害児、児童労働者、イースタンケープ、クワズルナタールおよび北部地域ならびに不利な立場に置かれたその他の黒人居住地域を含む遠隔地の農村部で生活している子ども、コイコイ人およびサン人のコミュニティに属する子ども、路上で働きかつ(または)生活している子ども、施設で生活している子ども、経済的に不利な立場に置かれた家庭の子どもおよび難民の子どもを含む、とくに傷つきやすい立場に置かれた子どもをとくに重視しなければならない。この分野における、とくにユニセフの技術的援助が奨励されるところである。 予算配分 15.委員会は、とくに財源の点で法律の持続可能性を確保するために新法の「経費見積もり」をする慣行を導入するという締約国のとりくみを歓迎する。委員会は、締約国が現在、少年法案の財政的持続可能性について判断するため同法案を「経費見積もり」していることに留意するものである。委員会は、とくにかつて不利な立場に置かれていたコミュニティのあいだに残っているアパルトヘイトの社会的および経済的残滓に対応するうえで、締約国が直面している課題に留意する。委員会はまた、支出が子どもの政策に及ぼす影響を改善する目的で、子どもプログラムとの関連で政府支出を監視する「子ども予算プロジェクト」を設置するための締約国の努力も歓迎するものである。条約第4条に照らし、委員会は、子どもプログラムおよび子ども活動のために配分される資源の充分な分配を確保するための努力が不充分であることを、依然として懸念する。条約第2条、第3条および第6条に照らし、委員会は、締約国に対し、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで子どもの経済的、社会的および文化的権利が実施されることを確保するための予算の配分および分配を優先することにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう奨励するものである。 普及および意識啓発 16.条約の原則および規定に関する意識を促進しようとする締約国の努力は認めながらも、委員会は、条約およびそこに掲げられた権利中心アプローチに関する専門家グループ、子ども、親および公衆一般の意識が全体として充分ではないことを依然として懸念する。委員会は、条約の規定が農村部および都市部の双方のおとなおよび子どもによって広く知られかつ理解されることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、条約を地方の言語で入手できるようにし、かつとくに伝統的なコミュニケーション手段の活用を通じてその原則および規定を促進および普及するための努力を強化するよう奨励するものである。委員会はさらに、心理学者を含む保健従事者、ソーシャルワーカー、中央または地方の行政職員および子どものケアのための施設の職員のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家グループ、および伝統的な地域共同体の指導者を対象とした充分かつ体系的な研修および(または)感受性の増進を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国がとくに人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めるよう提案するものである。 2.子どもの定義 刑事責任および性的同意 17.刑事責任に関する法定最低年齢を7歳から10歳に引き上げる法案を締約国が起草したことには留意しながらも、委員会は、10歳という法定最低年齢は刑事責任に関しては相対的に低いものであることを依然として懸念する。委員会はまた、性的同意に関する法定最低年齢が男子(14歳)および女子(12歳)とも低いこと、およびこの問題に関する法律が女子に対して差別的であることも懸念するものである。委員会は、締約国が、刑事責任に関して提案されている法定最低年齢(10歳)を引き上げる目的でこの問題に関する法案を再評価するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、性的同意に関する法定年齢を男女とも引き上げ、かつこの点に関して女子に対する差別の禁止を確保するようにも勧告するものである。 3.一般原則 差別の禁止 18.差別の禁止の原則(第2条)が新憲法および国内法に反映されていることには留意しながらも、委員会は、すべての子どもが教育、保健その他の社会サービスへのアクセスを保障されることを確保するためにとられた措置が不充分であることを、いまなお懸念する。とりわけ懸念されるのは、黒人の子ども、女子、障害をもった子ども、とくに学習障害児、児童労働者、農村部で生活している子ども、路上で生活しかつ(または)働いている子ども、少年司法制度の対象となっている子どもおよび難民の子どもを含む、傷つきやすい立場に置かれた一部のグループの子どもである。委員会は、締約国が、とくに傷つきやすい立場に置かれたグループとの関連で、差別の禁止の原則の実施および条約第2条の全面的遵守を確保するための努力を強化するよう勧告する。 子どもの意見の尊重 19.子どもの意見の尊重を促進しかつ子ども産科を奨励するうえで締約国が行なっている努力は認めながらも、委員会は、とくに州および地方のレベルにおいて、伝統的な慣行および態度により条約第12条の全面的実施がいまなお制約されていることを懸念する。委員会は、締約国に対し、子どもの参加権に関する公衆の意識の促進、および、学校、過程、社会制度ならびにケアのための制度および司法制度における子どもの意見の尊重の奨励を継続するよう奨励するものである。 4.市民的権利および自由 出生登録 20.委員会は、出生死亡法においてすべての子どもの出生時登録が規定されていること、および、とくに農村部において出生登録のプロセスを改善および促進するためのとりくみが最近行なわれていることに、留意する。しかしながら、委員会は、登録されない子どもがいまなお多いことを懸念するものである。条約第7条および第8条に照らし、委員会は、締約国に対し、出生登録が締約国のすべての親にとってアクセスしやすいものとなることを確保するため、とくに移動型のクリニックおよび病院を通じてひきつづき努力するよう奨励する。委員会はまた、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するため、政府職員、地域共同体の指導者および親の意識を啓発するための努力を行なうようにも勧告するものである。 拷問または他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いもしくは処罰 21.非拘禁者の処遇および不必要な実力行使の禁止について警察を研修しようとする締約国の努力は認めながらも、委員会は、警察による残酷な行為の発生件数が多いこと、および、子供がその身体的および精神的不可侵性および固有の尊厳を尊重して取り扱われることを確保するための現行法の執行が不充分であることを、懸念する。委員会は、条約第37条(a)および第39条の規定を全面的に実施するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。これとの関連で、委員会はさらに、警察による残酷な行為を防止し、かつ、被害を受けた子どもがその身体的および心理的回復および社会的再統合を促進するための充分な治療を提供されることおよび加害者が制裁を受けることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう勧告する。 5.家庭環境および代替的養護 親の指導 22.委員会は、ひとり親家庭および子どもを世帯主とする家庭の数の増加、およびそれが子どもに及ぼす(財政的および心理的双方の)影響について懸念する。親の指導および責任の分野の支援および相談が不充分であることも懸念の対象である。締約国は、条約第18条に照らし、とりわけ親、とくにひとり親の訓練を含む支援を提供することを通じて、家庭教育を発展させ、かつ親の指導および親の共同責任に関する意識を発展させるための努力を強化するよう奨励される。委員会は、子どもを世帯主とする世帯の数を減少させかつその増加を防止するとともに、すでに存在する当該世帯を支援するための充分な機構を導入するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、ひとり親家庭、一夫多妻の家庭および子どもを世帯主とする家庭の状況に関する研究を、それが子どもに及ぼす影響を評価する目的で行なうよう勧告する。 扶養料 23.子どもの扶養料の回復について規定した法律が制定されたことには留意しながらも、委員会は、扶養料支払命令の執行を確保するためにとられた措置が不充分であることを懸念する。条約第27条に照らし、委員会は、締約国が、扶養料支払命令の遵守および子どもの扶養料の回復を確保するため効果的な措置をとるよう勧告するものである。 福祉サービス 24.委員会は、経済的にもっとも不利な立場に置かれた家庭の子どもにいっそうの財政支援を行なうことを目的とした子ども支援手当を導入するため締約国が最近行なったとりくみに留意する。委員会は、扶養手当の段階的縮小、および、現在当該プログラムの利益を得ている、経済的に不利な立場に置かれた女性および子どもにそれが及ぼす可能性のある影響について、依然として懸念するものである。委員会は、締約国が、子ども支援手当を拡充しまたはそれに代わるプログラムを発展させることにより、まだ就学している18歳未満の子どもに対する支援も含まれるようにすることを勧告する。委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた家庭を対象とした支援プログラムが継続されることを確保するために効果的な措置をとるよう奨励するものである。 代替的養護 25.家庭環境を奪われた子どもの状況に関して、委員会は、かつて不利な立場に置かれていたコミュニティにおいて代替的養護のための施設数が不充分であることに懸念を表明する。措置の監視が不充分であること、およびこの分野において資格のある職員の人数が限られていることに対しても、懸念が表明されるところである。委員会はさらに、里親託置プログラムへの措置の監視および評価が不充分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、締約国が、代替的養護を促進するための追加的プログラムを発展させ、ソーシャルワーカーおよび福祉ワーカーに追加的研修を施し、かつ代替的養護のための施設を対象とした苦情申立ておよび監視のための独立した機構を設置するよう勧告するものである。また、締約国が、親を対象とした訓練を含む、子どもの遺棄を抑制するための支援を提供する努力を強化することも勧告されるところである。委員会はさらに、締約国が、里親託置プログラムへの措置が充分にかつ定期的に再審査されることを確保するよう勧告する。 国内および国際養子縁組 26.子ども養護法(1996年)で養子縁組が規制されていることには留意しながらも、委員会は、国内および国際養子縁組のいずれについても監視が行なわれていないこと、および、締約国において非公式養子縁組の慣行が広く行なわれていることを懸念する。委員会はまた、国際養子縁組を規制する法律、政策および制度が不充分であることも懸念するものである。条約第21条に照らし、委員会は、締約国が、国内および国際養子縁組のいずれについても適切な監視手続を確立すること、および伝統的な非公式養子縁組の慣行の濫用を防止するために充分な措置を導入することを、勧告する。加えて、国際養子縁組の効果的規制を確保するために、締約国が立法上および行政上の措置を含むあらゆる必要な措置をとることが勧告されるところである。委員会はさらに、締約国に対し、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約の批准を完了させる努力を強化するよう奨励するものである。 家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待 27.委員会は、子どもの保護を強化するために子ども養護法および家族間暴力防止法が制定されたことに留意する。委員会はまた、女性および子どもに対する犯罪に焦点を当てた国家犯罪防止戦略、および、虐待の被害を受けた者、とくに女性および子どものエンパワーメントを促進する被害者エンパワーメント・プログラムが最近導入されたことにも留意する。しかしながら、委員会は、子どもを対象とした家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待(家庭における性的虐待も含む)が多数発生していることに、依然として重大な懸念を覚えるものである。条約第19条に照らし、委員会は、家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待の規模および性質を理解するため、締約国がこのような慣行に関する研究を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が、家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待を防止しかつそれと闘うための包括的戦略を正式なものとする努力を強化し、かつ、態度の変化に貢献する充分な措置および政策をさらにとるようにも勧告するものである。委員会はまた、子どもに対する家族間暴力、不当な取扱いおよび虐待(家庭における性的虐待も含む)の事案を子どもに優しい司法手続において適正に調査し、かつ、子どものプライバシー権の保護を正当に考慮しながら加害者に制裁を科すようにも勧告する。法的手続において子どもに支援サービスが提供されること、条約第39条にしたがって強姦、虐待、放任、不当な取扱い、暴力または搾取の被害者が身体的および心理的に回復しかつ社会的に再統合すること、および、被害者が犯罪者として扱われかつスティグマ(烙印)を押されるのを防止することを確保するためにも、さらなる措置がとられるべきである。委員会は、締約国がとくにユニセフの技術的援助を求めるよう勧告する。 体罰 28.学校、ケアのための施設および少年司法制度における体罰が法律で禁じられていることは承知しながらも、委員会は、体罰が家庭においていまなお認められていること、一部の学校およびケアのための施設ならびに社会一般において体罰が日常的に用いられていることを、依然として懸念する。委員会は、締約国が、ケアのための施設における体罰を法律で禁ずるために効果的な措置をとるよう勧告するものである。委員会はさらに、しつけおよび規律の維持が子どもの尊厳に一致した方法で、かつ条約にしたがって行なわれることを確保する目的で、締約国が、体罰の悪影響に関する意識を高めかつ文化的態度を帰るための措置を強化するよう勧告する。締約国が家庭における体罰の使用を法律で禁止するための効果的措置をとり、かつ、この文脈において、すでに同様の法律を制定した他国の経験を検討することも、勧告されるところである。 6.基礎保健および福祉 プライマリーヘルスケア 29.委員会は、一般的健康状況および子どものための保健サービスを向上させようとする締約国の最近のとりくみに留意する。児童期疾病統合管理(IMCI)イニシアチブの導入、および、6歳未満児ならびに妊婦および授乳期の女性に対する無償の保健ケアの提供などである。しかしながら、委員会は、地区および地方における保健サービスがひきつづき充分な資源(財源および人的資源のいずれも)を欠いていることを依然として懸念する。委員会はまた、締約国における子どもの生存および発達が、急性呼吸器系感染症および下痢のような幼児期疾病によってひきつづき脅かされていることも懸念するものである。委員会はまた、乳幼児死亡率および妊産婦死亡率が高いこと、栄養不良率、ビタミンA欠乏率および発育阻害率が高いこと、衛生状態が貧弱であること、および、とくに農村部地域において安全な飲料水へのアクセスが不充分であることも、懸念する。委員会は、とくに農村部における子どもの健康状況を改善するために適切な資源を配分しかつ包括的な政策およびプログラムを発展させる努力を締約国が強化するよう勧告する。この流れにおいて、委員会は、締約国が、プライマリーヘルスケア・サービスへのアクセスの拡大を促進すること、妊産婦、幼児および乳児の死亡率を削減すること、とりわけ傷つきやすくかつ不利な立場に置かれたグループの子どもの栄養不良を防止しかつそれと闘うこと、および、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを高めることを勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、IMICイニシアチブに関連する技術的協力を継続するとともに、必要な場合には、とくにWHOおよびユニセフとともに、子どもの健康を向上させるための協力および援助の追加的手段を追求するよう奨励する。 環境保健 30.とくに大気汚染との関連で環境悪化が進んでいることに懸念が表明される。委員会は、締約国が、とくに大気汚染との関連で環境悪化を防止するために持続可能な発展プログラムの実施を促進する努力を増進するよう勧告するものである。 青少年の健康 31.委員会は、10代の妊娠、中絶、薬物および有害物質の濫用(アルコールおよびタバコの使用を含む)、事故、暴力および自殺を含む青少年の健康の分野で、プログラムおよびサービスの利用可能性が限られておりかつ充分なデータが存在しないことについて懸念を表明する。委員会は、精神保健上の問題を有する子どもの状況についての統計的データが存在しないこと、および、このような子どものための政策およびプログラムが不充分であることに懸念を表明するものである。委員会は、タバコの供給を規制する強力な立法(1991年)およびその改正法(1999年)を導入することによって締約国がタバコに反対する厳しい姿勢を示した一方で、法定年齢に満たない多くの喫煙者がいまなおタバコ製品を買えることに留意する。HIV/AIDSおよび性行為感染症(STD)とともに生きる人々を対象としたカウンセリング・治療センターの設置をとくに目的とした「HIV/AIDSと闘うパートナーシップ・プログラム」(1998年)を締約国が開始したことには留意しながらも、委員会は、HIV/AIDSおよびSTDの発生率が高くかつ増加していることを依然として懸念するものである。委員会は、とくにタバコ製品の使用との関連で法律が全面的に実施および執行されることを確保するため、締約国が効果的な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国が、とくに事故、自殺、暴力および有害物質濫用との関連で青少年の健康に関する政策を強化するよう勧告するものである。また、締約国が、精神保健上の問題を有する子どもの状況を評価するための研究を行ない、かつこのような子どもに充分なケアおよび保護を保障するプログラムを導入することも勧告される。加えて、青少年を対象として、子どもの最善の利益にかなう場合には親の同意を得ることなくアクセスできる、青少年に優しいカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションの便益を発展させるため、締約国が充分な人的資源および財源の配分を含むさらなる措置をとることが勧告されるところである。委員会は、青少年を対象とした、リプロダクティブ・ヘルス、HIV/AIDSおよびSTDに関する訓練プログラムの強化を勧告する。このようなプログラムは、知識の獲得のみならず、青少年の発達に不可欠な能力およびライフスキルの獲得をも基盤とするべきである。委員会はさらに、国、地域および地方のレベルにおけるHIV/AIDS対応戦略の策定に青少年が全面的に参加すべきことを勧告する。HIV/AIDSに対する公衆の態度を変えること、および、HIVに感染した子どもおよび青少年がひきつづき経験している差別に対応する戦略を特定することが、とくに重視されるべきである。 障害のある子ども 32.委員会は、障害、とくに精神障害のある子どものための法的保護、プログラム、便益およびサービスが不充分であることについて懸念を表明する。障害者の機会均等化に関する基準規則(総会決議48/96)および委員会が障害児に関する一般的討議の日に採択した勧告(A/53/41, chap.IV, sect.C参照)に照らし、締約国が、障害を予防するための早期発見プログラムを強化し、障害児のための特別教育プログラムを確立し、かつ障害児の社会へのインクルージョンをさらに奨励するよう勧告されるところである。委員会は、締約国が、障害児とともにおよび障害児のために働く専門職員の研修を目的としてとくにユニセフおよびWHOの技術的協力を求めるよう勧告する。 伝統的慣行 33.委員会は、男子の割礼が場合によって医学的に安全ではない条件下で行なわれていることを懸念する。委員会はまた、女子の健康を脅かし、自尊感情に影響を与え、かつプライバシーを侵害する処女性検査の伝統的慣行についても懸念するものである。女性器切除(FGM)の慣行およびそれが女子の健康に及ぼす有害な影響も、委員会にとって懸念の対象である。委員会は、男子の割礼を行なうさいに男子の健康を確保し、かつ医学的に安全ではない条件から保護するため、締約国が施術者の研修および意識啓発を含む効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、処女性検査が女子に及ぼす身体的および心理的影響を評価するため、締約国がこの慣行に関する研究を行なうようにも勧告するものである。これとの関連で、委員会はさらに、条約第16条および第24条3項に照らして伝統的な態度を変え、かつ処女性検査の慣行を抑制するため、締約国が施術者および公衆一般を対象とした感受性強化および意識啓発のプログラムを導入するよう勧告する。委員会は、締約国が、FGMの慣行と闘いかつそれを根絶するための努力、および、伝統的な態度を変えかつ有害な慣行を抑制するために施術者および公衆一般を対象とした感受性強化プログラムを実施する努力を強化するよう勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 34.委員会は、学校法(1996年)の制定、統合的な国家初等学校栄養プログラムの導入、および、とくに教育へのアクセスにおける格差の是正を目的とした「カリキュラム2005」の開始を含め、教育の状況を向上させるために締約国が最近行なってきた努力に留意する。法律では7歳~15歳の義務教育が規定されていることには留意しながらも、委員会は、初等教育が無償ではないことを懸念するものである。一部の地域で、とくに黒人の子ども、女子および経済的に不利な立場にある家庭の子どものあいだで教育へのアクセスの不平等が残っていることにも懸念が表明される。このような子どもの多くはいまなお学校に行っていない。委員会は、一部の学校で、とくに異人種共学校で学ぶ黒人の子どもに対してひきつづき差別的慣行が行なわれていることを懸念するものである。教育の一般的状況に関しては、委員会は、一部地域でひどい過密状態が見られること、中退率、非識字率および留年率が高いこと、基礎的な養成教材が存在しないこと、インフラストラクチャーおよび設備の維持が貧弱であること、教科書その他の教材が不足していること、とくに伝統的に黒人が居住しているコミュニティにおいて訓練を受けた教職員の人数が不充分であること、および教職員の志気が低いことに、懸念とともに留意する。委員会は、とくに黒人コミュニティの多くの子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動への権利を享受していないことに、懸念とともに留意するものである。締約国は、とくにこれまで不利な立場に置かれていた子ども、女子および経済的に不利な立場に置かれた家庭の子どもの通学を促進および助長する努力をひきつづき行なうよう奨励される。条約第28条に照らし、委員会は、初等教育をすべての者が無償で利用できることを確保するため、締約国が効果的措置をとるよう勧告するものである。委員会は、学校環境における差別の禁止を確保するため締約国が追加的措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、教育の質を向上させ、かつ締約国におけるすべての子どもが教育にアクセスできるようにするための効果的措置をとるよう勧告するものである。これとの関連で、締約国が、ユニセフおよびユネスコとのいっそう緊密な協力を通じて教育制度の強化に努めることが勧告される。締約国はさらに、少なくとも義務教育期間中は学校に留まるよう子どもに奨励するために追加的措置を実施するよう促されるところである。第31条に照らし、委員会は、子ども、とくに黒人コミュニティの子どもが余暇、レクリエーションおよび文化的活動への権利を享受することを確保するため、締約国が効果的な措置をとるよう勧告する。 8.特別な保護措置 難民および庇護希望者である子ども 35.難民および庇護申請者の子どもの権利のいっそうの保護を保障した最近の法改正には留意しながらも、委員会は、家族の再統合を確保し、かつ難民の子どもが教育および保健にアクセスする権利を保障する正式な立法上および行政上の措置がとられていないことを依然として懸念する。委員会は、締約国が、家族の再統合を保障および促進する立法上および行政上の枠組みを策定するよう勧告する。加えて、締約国が、難民および死後申請者の子どもに対してあらゆる社会サービスへの充分なアクセスを保障する政策およびプログラムを実施することも勧告されるところである。委員会はさらに、締約国が、難民の地位に関する条約(1951年)および議定書(1967年)の採択を完了する努力を強化するよう勧告する。 武力紛争下の子ども 36.委員会は、アパルトヘイト期に武力紛争の影響を受けた子どものリハビリテーションを促進する充分なプログラムを導入するための努力が不充分であることを懸念する。このような子どもたちの状況は、締約国における暴力および犯罪の現行水準が高いことに反映されているところである。委員会は、武力紛争の影響を受けた子どものリハビリテーションおよび再統合を促進する新たなプログラムを導入し、かつ現行のプログラムを強化するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 児童労働 37.委員会は、包括的な全国児童労働統計を作成する目的で国レベルの調査を行なうため、締約国がILOの児童労働撲滅国際計画との了解覚書に調印したことに留意する。国内法を国際労働基準に一致させようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、10~14歳の子どもの20万人以上が労働、主として商業農園労働および家事労働に現在従事していることを懸念するものである。委員会は、締約国に対し、労働法の執行を確保しかつ経済的搾取から子どもを保護するための監視機構を改善するよう奨励する。委員会はまた、締約国が、ILOの最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)を批准する努力を強化するようにも勧告するものである。 薬物および有害物質の濫用 38.委員会は、青少年のあいだで薬物および有害物質の濫用が多数発生しており、かつ増加していること、および、この点に関して利用できる心理社会的および医学的プログラムおよびサービスが限られていることを懸念する。条約第33条に照らし、委員会は、麻薬および向精神薬の不法な使用から子どもを保護し、かつこのような物質の不法な生産および取引に子どもを利用させないために、締約国が教育上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。この流れで、さらに、麻薬および向精神薬の有害な影響に関して子どもを教育するためのプログラムを学校環境において強化することが勧告されるところである。委員会はまた、締約国が、国際連合薬物統制計画の指導を得て締約国が国レベルの薬物統制計画を策定するようにも勧告する。委員会はまた、締約国に対し、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもに対応するリハビリテーション・プログラムを支援するようにも奨励するものである。委員会は、締約国に対し、とくにユニセフおよびWHOの技術的援助を求めるよう奨励する。 性的搾取 39.子どもの性的搾取を防止しかつそれと闘うための立法、政策およびプログラムを実施しようとする締約国の努力には留意しながらも、委員会は、商業的性的搾取が多数発生していることを依然として懸念する。条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、子どもの性的搾取を防止しかつそれと闘うための適切な政策および措置(ケアおよびリハビリテーションを含む)を立案および実施する目的で、締約国が研究を行なうよう勧告するものである。 子どもの売買、取引および誘拐 40.委員会は、国内法において国際的な子の奪取の民事面に関するハーグ条約を採択したことも含め、子どもの売買、取引および誘拐の状況に対応するため締約国が行なっている努力に留意する。しかしながら、委員会は、子ども、とくに女子の売買および取引の発生件数が増加していること、および、立法上の保障を執行し、かつこの現象を防止しかつそれと闘うために充分な措置がとられていないことを、懸念するものである。条約第35条その他の関連規定に照らし、委員会は、締約国が、法執行を強化するために効果的な措置をとり、かつ、子どもの売買、取引および誘拐についての地域の意識を高める努力を強化するよう勧告する。委員会はさらに、子どもの売買、取引および誘拐を防止し、かつそのような子どもの保護および家庭への安全な帰還を促進するため、締約国が近隣諸国との2国間協定の締結を追求するよう勧告するものである。 マイノリティ・グループ 41.委員会は、とくに教育および養子縁組手続との関連で、国内法において子どもの文化的、宗教的および言語的権利が保障されていることに留意する。委員会はさらに、マイノリティに対していっそうの保護を保障する第一歩として締約国が「文化的、宗教的および言語的コミュニティの権利の保護および促進のための委員会」を設置しようとしていることにも留意するものである。しかしながら、委員会は、マイノリティ・グループに属する子どもに保障された権利の全面的実現が、慣習法および伝統的慣行によってひきつづき脅かされていることを懸念する。委員会は、コイコイおよびサンを含むマイノリティ・グループに属する子どもの権利、とくに文化、宗教、言語および情報へのアクセスに関わる権利が保障されることを確保するため、締約国があらゆる適切な措置をとるよう勧告するものである。 少年司法 42.少年司法を改善するための最近の努力は歓迎しながらも、委員会は、少年司法制度が締約国の全地域を網羅していないことを懸念する。委員会はさらに、以下の点について懸念するものである。 (a) 少年司法が効率的および効果的に運営されていないこと、および、とくに少年司法の運営が条約およびその他の関連の国際連合基準と両立していないこと。 (b) 少年事件の審判が行なわれるまでに長時間かかること、および少年事件に関して守秘義務が存在していないように思われること。 (c) 拘禁が最後の手段として以外にも用いられていること。 (d) 拘禁施設が過密であること。 (e) 未成年者が成人の拘禁施設および刑務所に収容されていること、法律に抵触した子どものための充分な便益が存在しないこと、および、このような子どもとともに働く訓練を受けた職員の人数が限られていること。 (f) 少年司法制度で扱われている子どもの人数に関して信頼のおける統計的データが存在しないこと。 (g) 少年司法制度で扱われているあいだにも子どもが家族との接触を維持することを確保するための規制が不充分であること。 (h) 少年の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための便益およびプログラムが不充分であること。 委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに少年司法の運営に関する国際連合最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国際連合指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国際連合規則のようなこの分野における他の国際連合基準にしたがって少年司法制度を実施するため、追加的措置をとること。 (b) 自由の剥奪は最後の手段として、かつもっとも短い可能な期間でのみ用いること、自由を奪われた子どもの権利(プライバシーへの権利を含む)を保護すること、および、少年司法制度で扱われているあいだにも子どもが家族との接触を維持することを確保すること。 (c) 少年司法制度に携わるすべての専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムを導入すること。 (d) 少年司法技術的助言調整委員会を通じ、とくに人権高等弁務官事務所、国際犯罪防止センター、少年司法国際ネットワークおよびユニセフの技術的援助を求めることを検討すること。 9.委員会の報告書の普及 43.最後に、委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府およびNGOを含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年12月19日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/157.html
総括所見:ニュージーランド(第2回・2003年) 第1回(1997年)/第3回・第4回(2011年)/第5回(2016年)OPAC(2003年)/OPSC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.216(2003年10月27日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年9月18日に開かれた第896回および第897回会合(CRC/C/SR.896 and 897参照)において、ニュージーランドの第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.4)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合(CRC/C/SR.918参照)において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、包括的であり、優れた形式および内容を有しており、前回の勧告のフォローアップについて詳細に記述され、かつ締約国における子どもの状況についていっそう明確に理解することを可能にした、締約国の定期報告書の提出を歓迎する。委員会はさらに、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、対話についておよび議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応について歓迎の意を表するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、締約国が、ILOの最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)を2001年に批准したこと、国連・国際組織犯罪防止条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を2002年に批准したこと、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約に1998年に加入したこと、および、対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を1999年に批准したことを、歓迎する。 C.主要な懸念領域および勧告 1.実施に関する一般的措置 委員会の前回の勧告 4.締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.3)の検討後に採択された委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.71)に掲げられた勧告の実施に対して締約国が注意を払ってきたことは認めながらも、委員会は、一部の勧告について十分な対応が行なわれていないことに懸念とともに留意する。委員会はとくに、刑事責任年齢および最低就労年齢を含む国内法の条約との調和に関する勧告(パラ23)、ならびに、体罰の禁止、および、不当な取扱いおよび虐待の被害者の回復を確保するための機構の設置に関する勧告(パラ29)について懸念を覚えるものである。 5.委員会は、これらの懸念をあらためて表明するとともに、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に表明するために持続的努力を行なうよう、促す。 留保 6.締約国が条約に付した留保の撤回を検討中であることには留意しながらも、委員会は、このプロセスの進みが遅く、かつまだ留保の撤回に至っていないことに失望の念を抱く。委員会は、締約国の一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付された具体的留保について、依然として非常な懸念を覚えるものである。 7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般的留保ならびに第32条2項および第37条(c)に付された留保の撤回のために必要な、法律および行政手続の変更をいっそう迅速に進めること。 (b) 条約の適用をトケラウに拡張する目的で、トケラウの住民との議論を引き続き行なうこと。 立法 8.締約国が、1993年人権法との両立性を確保するために国内法の全般的再検討(「一貫性確保2000」)を行なったことに留意しつつ、委員会は、子どもに影響を与える法律の包括的再検討がこれに含まれていなかったこと、および、国内法が条約の原則および規定に全面的には一致していないことを遺憾に思う。 9.委員会は、締約国が、子どもに影響を与えるすべての法律の包括的再検討を開始し、かつ、法律を条約の原則および規定と調和させるためにあらゆる必要な措置をとるべきである旨の勧告を、あらためて繰り返す。 調整および国家的行動計画 10.委員会は、ニュージーランドの「子どものための課題」および「若者発達戦略」が2002年に採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための政策およびサービスの調整がいまなお不十分であるという締約国の懸念を共有するものである。 11.委員会は、締約国が、条約、「子どものための課題」および「若者発達戦略」を実施するすべての主体および関係者による活動を調整するための常設機構を設置するよう、勧告する。これらの文書が全面的に実施されかつ効果的な調整の対象とされることを確保するため、十分な財源および人的資源が配分されるべきである。 独立の監視 12.委員会は、子どもコミッショナー事務所を強化するための努力に留意するとともに、同事務所が子どものために行なっている活動および国家人権委員会の活動を歓迎する。しかしながら委員会は、国家人権委員会と子どもコミッショナー事務所との間で活動の重複が生じる可能性があること、および、後者がその活動を効果的に遂行するための十分な資源を有していないことを懸念するものである。 13.国内人権機関に関する一般的意見2号に照らし、委員会は、締約国が、子どもコミッショナー事務所および国家人権委員会が同様に独立していることおよび両機関が同一の政治的機関に報告することを確保し、かつ、これらの2つの期間の関係(それぞれの活動の明確な分担を含む)を定義する目的で、子ども法に関してコミッショナーが現在議会に提出している討論を活用するよう勧告する。加えて委員会は、締約国に対し、子どもコミッショナー事務所に対してその委任事項を遂行するための十分な人的資源、物的資源および財源が与えられることを確保するよう、促すものである。 子どものための資源 14.委員会は、貧困が根強く残っているにも関わらず、締約国が、前回の勧告どおり、経済改革政策が子どもに与える影響についての包括的研究を行なっていないことを懸念する。委員会はさらに、子どものための予算配分額に関する利用可能なデータが存在しないことを懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どものための予算配分額に関する細分化されたデータを収集し、かつ、経済政策に関わるすべての取り組みが子どもに及ぼす影響を体系的に評価するよう、勧告するものである。 データ収集 16.委員会は、収集されるデータの性質と条約の原則および規定との間に整合性が存在しないことを懸念する。 17.委員会は、締約国が、先住民族の子どもに関する細分化されたデータに特段の注意を払いながら、条約のすべての分野を網羅したデータ収集システムを発展させるとともに、すべてのデータおよび指標が、条約の効果的実施を目的とする政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されることを確保するよう、勧告する。 普及および研修 18.委員会は、子どもおよび公衆一般ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家集団が、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分な認識を有していないことを懸念する。 19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 一般公衆およびとくに子どもたちを対象とした子どもの権利に関する公衆意識啓発キャンペーンを、マスメディア等を通じて行なうこと。 (b) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家、とくに教員、裁判官、議員、法執行官、公務員、自治体職員、施設および子どもの拘禁場所で働く職員、心理学者を含む保健従事者ならびにソーシャルワーカーを対象として、条約の原則および規定に関する体系的な教育および研修を行なうこと。 2.子どもの定義 20.委員会は、刑事責任に関する最低年齢(10歳)が低すぎること、法律に抵触した18歳未満のすべての者に対して特別な保護が提供されているわけではないこと、および、就業に関する最低年齢が定められていないことに、懸念とともに留意する。 21.委員会は、締約国が、条約の原則および規定との一致を確保する目的で、子どもに影響を与えるさまざまな法律で定められた年齢制限を見直すよう勧告する。委員会はまた、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げ、かつ、これがすべての犯罪に適用されることを確保すること。 (b) 子ども、若者およびその家族法(1989年)の適用を、18歳未満のすべての者に対して拡大すること。 (c) 就業が認められるための単一のまたは複数の最低年齢を定めること。 3.一般原則 差別の禁止 22.委員会は、締約国も認めているように、マオリの子ども、マイノリティの子ども、障害のある子どもおよび市民でない者のような、脆弱な立場に置かれた集団の子どもに対する差別が根強く残っていることを懸念する。委員会は、マオリ、太平洋諸島およびアジア系の子どもに関する諸指標が相対的に低い値を示していることを、とりわけ懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、差別の禁止を保障する現行法の実施および条約第2条の全面的遵守を確保するための努力を強化するとともに、いかなる事由に基づくものであれ、脆弱な立場に置かれたすべての集団に対する差別を撤廃するための積極的かつ包括的な戦略を採択するよう、勧告する。 24.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載することも要請する。 子どもの意見の尊重 25.委員会は、たとえば若者議会を通じ、国および地方のレベルで意思決定プロセスに子どもたちを包摂するために行なわれている努力に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、自己に影響を与える行政上および司法上の手続において意見を聴かれかつ考慮される子ども個人の権利が法令に体系的に記載されていないことを、懸念するものである。 26.委員会は、条約第12条にしたがい、意見を聴かれかつ考慮される子ども一人ひとりの権利が法令に適切な形で統合されかつ適用されることを確保するため、締約国が、子どもに影響を与える法令(子ども養護法案のような提案中の法律案を含む)の再検討を行なうよう、勧告する。 4.市民的権利および自由 不当な取扱いを含む暴力 27.委員会は、児童虐待の蔓延に関する締約国の懸念を共有するとともに、虐待の防止および回復に関する援助の提供を目的としたサービスに対して十分な資源が与えられておらず、かつその調整も不十分であることに、遺憾の意とともに留意する。 28.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 虐待被害者援助のためのサービスおよびプログラムを拡大するとともに、これらのサービスおよびプログラムが、被害者のプライバシーを尊重する、子どもに配慮したやり方で提供されることを確保すること。 (b) 家庭、学校および施設における児童虐待を防止するためのプログラムおよびサービスを増やすとともに、これらのサービスを提供する、十分な資格および訓練経験を有する職員の人数を十分に確保すること。 (c) 脆弱な立場に置かれた家族および虐待被害者のためのサービスの調整を引き続き向上させること。 体罰 29.委員会は、法律の見直しが行なわれたにも関わらず、締約国が、親が子どものしつけのために合理的な有形力を用いることを認めた1961年刑法第59条をいまなお改正していないことを、深く懸念する。家庭における積極的かつ非暴力的な形態のしつけを促進するために政府が行なっている公衆教育キャンペーンは歓迎しながらも、委員会は、条約ではあらゆる形態の暴力(体罰を含む)からの子どもの保護が要求されており、かつ、これととあわせて法律および保護される子どもの権利に関する意識啓発キャンペーンが行なわれるべきであることを、強調するものである。 30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 法律を改正して家庭における体罰を禁止すること。 (b) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りながら、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび人間の尊厳に対する子どもの権利の尊重の促進を目的とした公衆教育のためのキャンペーンおよび活動を強化すること。 5.家庭環境および代替的養護 代替的養護 31.委員会は、とくにソーシャルワーク登録法(2003年)の採択および入所型施設における苦情処理委員会の設置を通じて子どもの保護および代替的養護を強化しようとする締約国の取り組みを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子ども・若者・家族サービス局がその責任を効果的に履行するのに十分な財源および人的資源を与えられていないことを、依然として懸念するものである。捜索および押収に関する警察の権限について締約国から提供された追加的文書回答は歓迎しながらも、委員会はまた、代替的養護に措置されている子どもに対して行なわれる身体検査および持ち物検査の回数が増加している旨の報告があることも、懸念する。 32.委員会は、締約国が、以下の措置をとることにより子ども保護システムを強化するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 (a) ソーシャルワーカーおよび子ども保護システムで働く要員の資質を向上させるとともに、資格のある専門的職員を職に留めておくための措置を定めること。 (b) 子ども・若者・家族サービス局と子どもにサービスを提供している機関との間の調整を改善するための効果的措置をとること。 (c) 施設養護が最後の手段としてのみ用いられることを確保しつつ、代替的養護に配分される財源を増加させること。 (d) 条約第25条にしたがい、養護措置の対象とされたすべての子どもが、その処遇についておよび自己の措置に関連するあらゆる事情について定期的再審査を受けることを保障するための努力を強化すること。 養子縁組 33.委員会は、締約国が養子縁組に関する法律を改正しようとしていることを歓迎する。ただし委員会は、予定されている改正が、条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の原則および規定に全面的には一致していないことを、懸念するものである。 34.養子縁組に関する法律の改正の検討にあたり、委員会は、締約国が、第12条および意見を聴かれ、かつ子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視される子どもの権利に対し、特段の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものでる。 (a) 一定の年齢に達した子どもについては、養子縁組に対する本人の同意を要件とすること。 (b) 自己の実親に関する情報に可能なかぎりアクセスする養子の権利を確保すること。 (c) 子どもが元のファーストネームのいずれかを維持する権利を可能なかぎり確保すること。 6.基礎保健および福祉 35.委員会は、1998年に「子ども健康戦略」が採択されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、予防接種率が100%ではないこと、ならびに、乳児死亡率および子どもの受傷率が相対的に高いことを懸念するものである。委員会はまた、子どもの健康にかかわる指標がマオリ住民の間で全般的により低くなっていることにも、懸念とともに留意する。 36.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 「子ども健康戦略」を実施するために十分な人的資源および財源を配分すること。 (b) 予防接種の完全実施を確保するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、相対的に高い乳児死亡率および受傷率に効果的に対応する、親および家族を対象とした予防保健のためのケアおよび指導を発展させること。 (c) 民族的コミュニティ間、とくにマオリ住民における保健指標の格差に対応するためにあらゆる必要な措置をとること。 思春期の健康 37.委員会は、若者の自殺率、10代の妊娠率および青少年のアルコール濫用率が高いこと、ならびに、若者向けの精神保健サービスの水準が、とくに農村部においてかつマオリの子どもおよび入所型施設の子どもに関して不十分であることについての締約国の懸念を共有する。 38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに若者自殺防止プログラムを強化することにより、若者の自殺、とりわけマオリの若者の自殺に対応するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) とくに、性教育を含む健康教育をが高カリキュラムの一部とし、かつ避妊手段の使用に関する情報キャンペーンを強化することにより、10代の妊娠率を削減するための効果的措置をとること。 (c) 青少年によるアルコール消費の増加に対応するための効果的な防止措置その他の措置をとるとともに、とくにマオリの子どもを対象としたカウンセリング・サービスおよび支援サービスの利用可能性およびアクセス可能性を高めること。 (d) 精神保健サービスおよびカウンセリング・サービスを、これらのサービスがすべての青少年(マオリの子どもならびに農村部および入所型施設の子どもを含む)にとってアクセスしやすくかつ適切であることを確保しながら、強化すること。 障害のある子ども 39.委員会は、障害のある子どもが社会のあらゆる側面に全面的に統合されているわけではないこと、および、諸サービス、とくに教育制度におけるサービスが、障害のある子どもの家族にとってしばしばアクセス困難なものとなっていることを、懸念する。 40.委員会は、締約国が、「ニュージーランド障害戦略」、とくに普通教育および社会のその他の側面への障害児の統合に関わる諸側面を実施するために十分な人的資源および財源が配分されることを確保するよう、勧告する。 生活水準 41.委員会は、締約国の子どもの相当な割合が貧困下で暮らしており、かつ、女性が筆頭者であるひとり親家庭ならびにマオリおよび太平洋諸島民の家族が不相応な影響を受けていることを懸念する。 42.条約第27条3項にしたがい、委員会は、締約国が、親(とくにひとり親)および子どもに責任を負う他の者が十分な生活水準に対する子どもの権利を実施することを援助するために適切な措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、マオリおよび太平洋諸島民の家族に提供される援助においてその伝統的な拡大家族体制が尊重されかつ支援されることを確保するよう、勧告するものである。 7.教育、余暇および文化的活動 43.委員会は、マオリを対象とする2言語教育の発展を歓迎する。しかしながら委員会は、異なる民族的集団の子どもの間で就学率および中退率の格差が根強く残っていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、退学に関する方針および隠れた教育費用負担の増加が、とくにマオリの子ども、妊娠した女子、特別な教育上のニーズを有する子ども、低所得家庭、市民でない者および新規移民にとって教育へのアクセスの制限につながっていることも、懸念する。 44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国のすべての子どもが無償の初等教育にアクセスできることを確保すること。 (b) 義務教育に関する法律を執行し、かつ妊娠のような恣意的事由による退学を禁止するとともに、義務教育年齢の生徒であって正当な理由で退学させられた者が他の場所で就学できることを確保すること。 (c) 2言語教育のためのプログラムを強化する等の手段により、就学率および中退率に関する民族的集団間の格差に対応するための効果的措置をとること。 (d) プライバシーに対する生徒の権利を尊重しつつ、生徒の行動上の問題に対応するためにあらゆる必要な措置(学校における良質なカウンセリング・プログラムの提供を含む)をとること。 8.特別な保護措置 子どもの難民 45.委員会は、子どもの難民の統合および機会均等を確保するために締約国が提供しているサービスに留意する。しかしながら委員会は、この点に関して行なわれている活動が、統合という所期の目標を達成するうえで完全に効果的なものとはなっていない可能性があることを懸念するものである。 46.委員会は、締約国が、子どもの難民を社会に統合するための努力を引き続き行なうとともに、現行プログラム、とくに語学訓練について、その有効性を向上させるための評価を実施するよう勧告する。 子どもの経済的搾取 47.委員会は、雇用における18歳未満の者の保護が条約の原則および規定に全面的には一致していないことを懸念するとともに、就業が認められるための最低年齢が定められていないことについての懸念(前掲パラ20参照)をあらためて表明する。 48.委員会は、締約国が、18歳未満のすべての被雇用者を保護する法律を再検討しかつ強化するために進められているプロセスを加速させるよう勧告するとともに、締約国に対し、ILO第138号条約を批准するよう奨励する。 少年司法 49.「青少年犯罪戦略」および青少年犯罪者特別委員会ならびに家族集団会議の活用には留意しながらも、委員会は、刑事責任年齢が低いこと、および、法律に抵触した18歳未満のすべての者に対して特別な保護が提供されているわけではないことに関する懸念(前掲パラ20参照)をあらためて表明する。委員会はさらに、罪を犯した少年が、女子であれ男子であれ成人の犯罪者から分離されておらず、かつ、警察の留置房に数か月間勾留されることさえあることを懸念するものである。 50.委員会は、パラ21に掲げた勧告をあらためて繰り返すとともに、さらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年司法の運営に関する委員会の討議(1995年、CRC/C/69)も照らし、少年司法に関する基準、とくに条約第37条、第39条および第40条ならびに少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)および少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)の全面的実施を確保すること。 (b) 法律に抵触したすべての少年が審判前および審判後の拘禁の際に成人と別に収容されるよう、十分な青少年施設が利用できることを確保すること。 (c) 少年司法における家族集団会議の活用について体系的評価を行なうこと。 9.選択議定書 51.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書に署名はしたものの批准していないことに留意する。 52.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 10.文書の普及 53.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 11.次回報告書 54.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2008年11月5日、すなわち第4回報告書の提出期限の18か月前までに、単一の統合報告書として第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。 更新履歴:ページ作成(2012年2月12日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/234.html
社会権規約委員会:日本に対する第3回総括所見 第2回総括所見(2001年) 配布:一般 2013年6月10日 原文:英語 E/C.12/JPN/CO/3 (日本語訳:社会権規約NGOレポート連絡会議)〔政府訳PDF〕 経済的、社会的および文化的権利に関する委員会 第50会期(2013年4月29日~5月17日)において委員会により採択された日本の第3回定期報告書に関する総括所見 1.経済的、社会的および文化的権利に関する委員会は、2013年4月30日に開かれた第3回および第4回会合(E/C.12/2013/SR.3-4)において日本の第3回報告書(E/C.12/JPN/3)を検討し、2013年5月17日に開かれた第28回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、日本による第3回定期報告書の時宜を得た提出を歓迎する。当該報告書は、委員会の報告ガイドラインにしたがっており、かつ、委員会が前回の総括所見で行なったいくつかの勧告の実施に関する最新情報を提供するものであった。委員会はまた、共通コアドキュメント(HRI/CORE/JPN/2012)の提出も歓迎する。 3.委員会は、委員会が受領した事前質問事項に対する詳細な文書回答(E/C.12/JPN/Q/3/Add.1)、および、締約国のハイレベルな省庁横断型代表団との建設的対話に、満足感をもって留意する。 B.積極的な側面 4.委員会は、2001年に行なわれた締約国との前回の対話以降、締約国が以下の文書を批准したことを歓迎する。 (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への子どもの関与に関する同選択議定書(それぞれ2005年1月24日および2004年8月2日)。 (b) 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(2009年7月23日)。 5.委員会は、無償教育の漸進的導入に関する、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第13条第2項(b)および(c)についての締約国の留保が撤回されたことに、満足感をもって留意する。 6.委員会は、経済的、社会的および文化的権利の実施を促進するために締約国が行なっている努力に、評価の意をもって留意する。これには以下の取り組みが含まれる。 (a) アイヌを先住民族として認めたこと。 (b) 中等教育までの授業料無償化プログラムを導入したこと。 (c) 「待機児童ゼロ作戦」を実施したこと。 (d) 2009年に国籍法を改正し(2009年施行)、婚外子が日本人父の国籍を取得できるようにしたこと。 C.主要な懸念事項および勧告 7.委員会は、締約国が国内法体系において規約の規定に効力を与えていない旨の前回の懸念をあらためて表明する。このような状況が、規約の規定は適用されないという締約国の裁判所の決定につながってきた。委員会はまた、締約国が、規約上の義務は即時的効力を有しないと解していることを懸念する。(第2条第1項) 委員会は、国内法体系において規約に全面的効力を与えるために必要な措置をとるよう、締約国に対して促す。そのための手段には、締約国が規約の規定に自動執行力がないと考える場合に関連の法律を制定することも含まれる。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、規約の国内適用に関する一般的意見9号(1998年)を参照するよう求める。 さらに、締約国の義務の性質に関する一般的意見3号(1990年)を参照しつつ、委員会は、規約上の権利には即時的性質を有する最低限の中核的義務がともなっていること、および、「漸進的実現」の語は、規約上の権利の全面的実現を可能なかぎり迅速かつ効果的に達成する義務を課すものであることを、締約国が想起するよう求める。 委員会はまた、締約国に対し、委員会の先例および一般的意見を念頭に置きながら、司法研修所のカリキュラムならびに司法専門職および弁護士を対象とする研修プログラムにおいて経済的、社会的および文化的権利の裁判適用可能性が十分に取り上げられることを確保するよう求める。 8.委員会は、締約国で国内人権機関がいまなお設置されていないことに、懸念をもって留意する。 この点に関する前回の勧告をあらためて繰り返しながら、委員会は、締約国に対し、パリ原則にしたがった国内人権機関の設置を速やかに進めるよう促す。委員会は、締約国に対し、とくに経済的、社会的および文化的権利の保護における国際人権機関の役割に関する一般的意見10号(1998年)を参照するよう求める。 9.委員会は、社会的扶助に対する予算配分額が相当に削減されたことにより、とりわけ全住民のうち不利な立場に置かれた集団および周縁化された集団にとって、経済的および社会的権利の享受に悪影響が生じていることに、懸念をもって留意する。(第2条第1項、第2条第2項、第9条および第11条) 締約国の義務の性質に関する一般的意見3号(1990年)を想起しながら、委員会は、後退的措置は利用可能な最大限の資源を全面的に活用する中でのみとられることを確保するよう、締約国に対して求める。さらに、委員会は、締約国に対し、社会的給付の削減が受給者による規約上の権利の享受に及ぼす影響を監視するよう求める。委員会はまた、社会保障についての権利に関する一般的意見19号(2007年)のパラ42、および、世界的な経済・財政危機の文脈における規約上の義務に関して委員会の委員長が締約国に送付した2012年5月16日付書簡に対して、締約国の注意を喚起する。 10.委員会は、法改正を行う際に規約上の義務との一致を確保しようとする締約国の努力にも関わらず、女性、婚外子および同性カップルに対して差別的な規定が締約国の法律に存在し続けていることに、規約上の権利が関係するかぎりにおいて、懸念をもって留意する。(第2条第2項) 委員会は、規約上の権利の行使および享受に関して法律で直接または間接の差別が行なわれないことを確保するため、法律を包括的に見直し、かつ必要であれば改正するよう、締約国に対して促す。 11.委員会は、雇用等の分野では差別の禁止に関する法規定が存在するにも関わらず、締約国の法律において、規約が禁じている事由にもとづく差別からの全面的保護が提供されていないことに、懸念をもって留意する。(第2条第2項) 委員会は、法律で、規約の規定にしたがって経済的、社会的および文化的権利の全分野における差別が効果的に禁じられ、かつそのような差別に対する制裁が定められることを確保するよう、締約国に対して求める。これとの関連で、委員会は、形式的および実体的差別を解消し、かつ特別措置の実施について規定することを目的とした、差別の禁止に関する包括的法律を制定するよう、締約国に対して奨励する。委員会はまた、締約国に対し、経済的、社会的および文化的権利についての差別の禁止に関する一般的意見20号(2009年)を参照するよう求める。 12.委員会は、締約国の雇用法において障害を理由とする差別からの全面的保護が定められていないことに、懸念をもって留意する。さらに、委員会は、必要な場合に職場で合理的配慮を行なう法律上の義務が存在しないことも懸念する。委員会はまた、労働へのアクセス可能性を高めるための措置のような措置がとられているにも関わらず、障害のある人が雇用面で事実上の差別を経験していること(基準以下の条件で保護的就労施設に配置されることを含む)に、懸念をもって留意する。(第2条第2項) 委員会は、雇用のあらゆる側面において障害のある人に対する差別を禁止し、かつ必要な場合に職場で合理的配慮を行なう義務についても定める改正障害者基本法を速やかに制定するよう、締約国に対して求める。委員会はまた、保護的就労施設で働く障害のある人に対して労働基準を適用するとともに、障害のある人を対象とした、労働市場における生産的なかつ有給の就労の機会を、クオータ(割当枠)制の適用等も通じて引き続き促進するよう、締約国に対して求める。委員会はさらに、締約国に対し、障害のある人の権利に関する条約を批准するよう奨励する。 13.委員会は、締約国で根深く残るジェンダー役割についてのステレオタイプのため、女性による経済的、社会的および文化的権利の平等な享受が妨げられ続けていることを懸念する。委員会はまた、数次にわたる男女共同参画基本計画の採択のような措置がとられたにも関わらず、ジェンダー役割に関する社会一般の態度の変革を狙った十分な措置がとられてこなかったことに、懸念をもって留意する。さらに、委員会は、締約国の称賛すべき努力にも関わらず、労働市場における垂直および水平のジェンダー分離がいまなお徹底していること、および、出産後に離職またはパートタイム就労への移行を余儀なくされる女性の割合が高いことに表れているように、進展がなかなか見られないことを懸念する。委員会は、第3次男女共同参画基本計画で締約国が控えめな目標しか設定しておらず、規約上の権利の行使に関する平等の達成が加速されることはないであろう点を遺憾に思う。(第3条) 委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) ジェンダー役割に関する社会のとらえ方を変革するための意識啓発キャンペーンを実行すること。 (b) 伝統的にいずれかの性が多数を占めてきた分野以外の分野での教育の追求を促進する目的で、女子および男子に対して平等な就業機会に関する教育を行なうこと。 (c) 男女共同参画基本計画において男女双方を対象とするいっそう大胆な目標を採択するとともに、教育、雇用ならびに政治的および公的意思決定の分野においてクオータ(割当枠)制等の一時的措置を実施すること。 (d) コース別雇用管理制度および妊娠を理由とする解雇のような、女性差別である慣行を廃止すること。 (e) 待機児童ゼロの達成をいっそう速やかに進めるとともに、保育が負担可能な料金で利用できるようにすること。 委員会は、締約国が、規約上の権利の享受に関する、性別、所得水準別および学歴別に細分化された統計データを(対話の際に代表団によって宣言されたとおり)次回の定期報告書に記載するとともに、男女平等に関する政策立案においてこのようなデータがどのように参考にされたかを説明するよう要請する。 14.委員会は、締約国の刑法が、強制労働の禁止に関する規約の規定に違反して、刑の一つとして刑務作業をともなう懲役を規定していることに、懸念をもって留意する。(第6条) 委員会は、矯正措置または刑としての強制労働を廃止し、かつ、規約第6条に基づく義務にしたがって関連の規定を改正しまたは廃止するよう、締約国に対して求める。委員会はまた、締約国に対し、強制労働の廃止に関する国際労働機関(ILO)第105号条約(1957年)の批准を検討するよう奨励する。 15.委員会は、雇用および職業における差別に関するILO第111号条約(1958年)の批准を検討するべきである旨の締約国に対する勧告をあらためて繰り返す。 16.委員会は、契約の性質に関係なくすべての被用者について同一の評価・能力認定制度を活用するよう促す奨励策を締約国がとっているにも関わらず、使用者によって有期契約が濫用されており、かつ、有期契約労働者が不利な労働条件を課されやすい状態に置かれていることを懸念する。委員会はまた、使用者が、有期契約を更新しないことにより、改正労働契約法で導入された有期契約から無期契約への転換を回避していることを懸念する。(第6条および第7条) 委員会は、締約国が、有期契約に適用される明確な基準を定める等の手段により、有期契約の濫用を防止するための措置をとるよう勧告する。同一価値労働について平等な報酬を確保する締約国の義務を参照しながら、委員会はまた、締約国が、有期契約労働者の不平等な待遇を防止するという目的が奨励金制度によって達成されているか否かを監視するよう勧告する。さらに、委員会は、有期契約労働者の契約が不公正に更新されないことを防止するため、労働契約法の執行を強化しかつ監視するよう、締約国に対して求める。 17.委員会は、使用者による自主的取り組みを奨励するために締約国がとった措置にも関わらず、相当数の労働者が著しい長時間労働に従事し続けていることに、懸念をもって留意する。委員会はまた、過労死、および、職場における心理的いやがらせを理由とする自殺が起こり続けていることを懸念する。(第7条) 委員会は、安全かつ健康的な作業条件および労働時間の合理的な制限に対する労働者の権利を保護する義務(規約第7条)にしたがい、締約国が、長時間労働を防止するための措置を強化し、かつ、労働時間の延長制限の違反に対して抑止的制裁が適用されることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、必要な場合には、職場におけるあらゆる形態のいやがらせを禁止しかつ防止するための法令を制定するよう勧告する。 18.委員会は、締約国全域の最低賃金の平均水準が、最低生活水準、生活保護給付額および上昇する生活費に満たないことを懸念する。(第7条、第9条および第11条) 委員会は、労働者およびその家族が人間にふさわしい生活を送れることを確保する目的で、最低賃金水準を決定する際に考慮される要素を見直すよう、締約国に対して促す。委員会はまた、締約国が、最低賃金以下の報酬しか支払われていない労働者の割合に関する情報を次回の定期報告書で提供するよう要請する。 19.委員会は、進展があったにも関わらず、締約国において、とくに男女間の賃金格差が依然として相当に大きいことに、懸念をもって留意する。(第7条) 委員会は、同一価値労働について男女で異なる評価額を適用することの違法性およびこの点に関する使用者の義務についての意識啓発を進め、かつ、報酬差別が行なわれた場合にアクセスしやすくかつ効果的な救済措置を提供するよう、締約国に対して求める。締約国はまた、締約国が、同一価値労働同一報酬の原則の適用について労働基準監督官に対する研修を行なうとともに、適用される法律の効果的執行を確保するためのその他の措置をとるよう勧告する。 20.2006年の男女雇用機会均等法改正以降、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する意識が高まっていることには留意しながらも、委員会は、法律上、セクシュアルハラスメントが禁じられていないことに、懸念をもって留意する。(第7条) 委員会は、締約国に対し、とくに職場におけるセクシュアルハラスメントに関して、犯罪の重大性に相応する制裁をともなったセクシュアルハラスメント罪を法律に導入するよう促す。委員会はまた、締約国が、被害者が報復を恐れることなく苦情を申し立てられることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国が、セクシュアルハラスメントに関する公衆の意識を引き続き高めるよう勧告する。 21.委員会は、移住労働者も国民と同じ労働法によって保護されているにも関わらず、移住労働者(非正規な移民資格しか有していない者、庇護希望者および難民を含む)の不公正な待遇が報告されていることを懸念する。(第7条) 委員会は、締約国が、移住労働者(非正規な移民資格しか有していない者、庇護希望者および難民を含む)の不平等な待遇を解消するために法令を強化するよう勧告する。委員会はまた、移民資格に関わらずすべての労働者に対して労働法が適用されることに関する意識啓発を進めるよう、締約国に対して求める。 22.委員会は、締約国の高齢者、とくに無年金高齢者および低年金者の間で貧困が生じていることを懸念する。委員会は、貧困が、年金拠出期間が受給資格基準に達していない高齢女性に主として影響を与えていること、および、スティグマのために高齢者が生活保護の申請を抑制されていることをとりわけ懸念する。委員会はさらに、「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律」で導入された改正により、多くの高齢者が無年金のままとなることを懸念する。(第9条) 委員会は、国民年金制度に最低年金保障を導入するよう締約国に対して求めた前回の勧告をあらためて繰り返す。委員会はまた、生活保護の申請手続を簡素化し、かつ申請者が尊厳をもって扱われることを確保するための措置をとるよう、締約国に対して求める。委員会はまた、生活保護につきまとうスティグマを解消する目的で、締約国が住民の教育を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、性別、収入源および所得水準によって細分化された高齢者(被爆者を含む)の状況に関する情報を、次回の定期報告書で提供するよう要請する。委員会は、高齢者の経済的、社会的および文化的権利に関する一般的意見6号(1995年)および社会保障についての権利に関する一般的意見19号(2008年)を参照するよう、締約国に対して求める。 23.委員会は、暴力をふるう配偶者に対する保護命令の違反が改正配偶者間暴力防止・被害者保護法で処罰対象とされている一方、配偶者間暴力および夫婦間強姦が明示的に犯罪化されていないことに、懸念をもって留意する。(第10条) 委員会は、締約国に対し、夫婦間強姦を含む配偶者間暴力を犯罪化するよう促す。委員会は、配偶者暴力相談支援センターの設置状況および自治体による基本計画の実施状況ならびにそれが配偶者間暴力の減少に及ぼした効果についての最新情報を、次回の定期報告書で委員会に対して提供するよう、締約国に対して要請する。 24.東日本大震災および福島原発事故の結果に対する救援対応の複雑さに留意しつつ、委員会は、避難の際にならびに再建および復興の取り組みにおいて、不利な立場および脆弱な立場に置かれた集団(高齢者、障害のある人、女性および子ども等)の特有のニーズが十分に満たされていないことを懸念する。(第11条、第2条第2項) 東日本大震災および福島原発事故の結果から得られた教訓により、救援および復興のための今後の取り組みにおける被災コミュニティ(脆弱な立場に置かれた集団を含む)のニーズへの対応を改善するための新たな体制が整備されたことに留意しつつ、委員会は、締約国が、災害対応、リスク軽減および復興のための取り組みに対して人権を基盤とするアプローチをとるよう勧告する。とりわけ、委員会は、締約国が、防災計画において経済的、社会的および文化的権利の享受に関する差別が行なわれ、またはそのような差別がもたらされないことを確保するよう勧告する。 委員会は、東日本大震災および福島原発事故の結果への対応に関する、ならびに、避難の際にならびに再建および復興のための活動において被害者がどのように経済的、社会的および文化的権利を享受したかに関する包括的な情報(性別および脆弱な立場に置かれた集団別に細分化された統計データを含む)を次回の定期報告書で提供するよう、締約国に対して要請する。委員会はまた、締約国に対し、裁判を受ける被害者の権利がどのように保障されてきたかについての情報を記載するよう要請する。 25.委員会は、原子力発電所の安全性に関して透明性が欠けておりかつ必要な情報が開示されていないこと、ならびに、原子力事故の防止および処理に関する地域的備えが全国的に不十分であることに関する懸念をあらためて表明する。このような状況が、福島原発事故に際し、被害者の経済的、社会的および文化的権利の享受に悪影響を及ぼすことにつながった。(第11条および第12条) 委員会は、締約国が、原子力発電所の安全性に関する諸問題についての透明性を高め、かつ原発事故に対する備えをいっそう強化するよう、再度勧告する。とくに、委員会は、潜在的危険、防止措置および対応計画に関する包括的な、信頼できる、かつ正確な情報を住民に対して提供するとともに、事故が発生した場合にはあらゆる情報が速やかに開示されることを確保するよう、締約国に対して促す。 委員会は、到達可能な最高水準の身体的および精神的健康の享受に対するすべての者の権利に関する特別報告者が締約国を最近訪問した際に行なった勧告を実施するよう、締約国に対して奨励する。 26.委員会は、「慰安婦」が受けてきた搾取により、彼女たちによる経済的、社会的および文化的権利の享受ならびに彼女たちの賠償請求権に対する悪影響が永続していることを懸念する。(第11条および第3条) 委員会は、搾取の永続的影響に対応し、かつ「慰安婦」による経済的、社会的および文化的権利の享受を保障するため、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、「慰安婦」にスティグマを付与するヘイトスピーチその他の示威行動を防止するため、締約国が「慰安婦」の搾取について公衆を教育するよう勧告する。 27.委員会は、締約国の高校教育授業料無償化プログラムから朝鮮学校が除外されていることを懸念する。これは差別である。(第13条および第14条) 差別の禁止は、教育のあらゆる側面に全面的かつ即時的に適用され、また国際的に定められたすべての差別禁止事由を包含していることを想起しつつ、委員会は、高校教育授業料無償化プログラムが朝鮮学校に通う子どもたちにも適用されることを確保するよう、締約国に対して求める。 28.委員会は、多数の外国人児童が学校に通っていないことに、懸念をもって留意する。(第13条および第14条) 委員会は、締約国に対し、義務教育の状況の監視を、法律上の地位に関わらず締約国の領域内にいるすべての子ども(国民ではない子どもを含む)に対して適用するよう促す。 29.委員会は、規約第13条(b)にしたがって完全無償の中等教育を漸進的に提供するため、締約国が、可能なかぎり早期に、入学料および教科書費を授業料無償化プログラムの対象に含めるよう勧告する。 30.委員会は、アイヌ民族が先住民族として認められ、かつその他の進展が達成されたにも関わらず、経済的、社会的および文化的権利の享受に関してアイヌ民族が不利な立場に置かれたままであることを依然として懸念する。委員会は、アイヌ語が消滅の危機にあることをとりわけ懸念する。(第15条および第2条第2項) 委員会は、締約国が、アイヌ民族の生活水準を向上させるための努力を強化し、かつ、とくに雇用および教育の分野において追加的な特別措置を実施するよう勧告する。委員会は、これらの措置を、北海道外在住のアイヌ民族に対しても適用するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、アイヌ語を保全しかつ振興するためにとられた措置の成果に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。 31.委員会は、科学の進歩およびその利用による利益を享受する権利に関して対話の際に提供された情報について、締約国に感謝する。この点について、委員会は、締約国に対し、この権利が実際にどのように実施されているかに関するいっそう詳細な情報および具体例を次回の定期報告書に記載するよう要請する。(第15条) 32.政府開発援助に対する締約国の貢献は認知しながらも、委員会は、国際的基準である〔対GNI比〕0.7%という目標を達成する目的で速やかに拠出水準を高めるとともに、開発協力政策において、規約に掲げられた権利を全面的に編入した人権を基盤とするアプローチを追求するよう、締約国に対して奨励する。 33.委員会は、締約国に対し、規約上の義務の履行に関する十分に細分化された統計データを次回の定期報告書に記載するよう要請する。 34.委員会は、締約国に対し、規約第7条(d)および第8条第1項(d)に付した留保を撤回するよう奨励する。 35.委員会は、締約国に対し、経済的、社会的および文化的権利に関する〔国際〕規約の選択議定書に署名し、かつこれを批准することを検討するよう奨励する。 36.委員会は、社会のあらゆるレベルで、またとくに公務員、司法機関および市民社会組織の間でこの総括所見を広く普及するとともに、総括所見を実施するためにとった措置について、次回の定期報告書で委員会への情報提供を行なうよう、締約国に対して要請する。委員会はまた、次回の定期報告書の提出前に国内レベルで行なわれる議論において、市民社会組織(今回の報告書審査への関心を示してきた組織を含む)の関与を引き続き得るよう、締約国に対して奨励する。 37.委員会は、締約国に対し、委員会が2008年に採択したガイドライン(E/C.12/2008/2)にしたがって、次回の定期報告書を2018年5月31日までに提出するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2013年5月23日)。/パラ26第1段落末尾を「(第11条第3項)」から「(第11条、第3条)」に修正(5月25日)。/正式な国連文書(2013年6月10日付)をもとに訳文を若干修正。基本的には技術的修正のみ(2014年11月6日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/60.html
総括所見:ノルウェー(第2回・2000年) 第1回(1994年)/第3回(2005年)/第4回(2010年)OPSC(2005年)/OPAC(2007年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.126(2000年6月28日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2000年5月22日に開かれた第625回および第626回会合(CRC/C/SR.625-626参照)において、1998年7月1日に提出されたノルウェーの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.2)を検討し、2000年6月2日に開かれた第641回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、締約国の第2回定期報告書の提出、追加情報の提供、および質問事項(CRC/C/Q/NOR/2)に対する締約国の文書回答の提出を歓迎する。委員会は、報告書に記載された有益な統計的情報、および、対話の過程で追加情報を提供するために代表団が行なった率直かつ建設的な努力に、評価の意とともに留意するものである。 B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全体的な進展について締約国を賞賛する。 4.委員会は、加えて、子どもオンブズパーソン事務所が果たしているきわめて積極的かつ独立した役割について締約国を賞賛する。委員会はまた、締約国が、自国の開発援助プログラムにおいても、かつ関連する国際的な場への参加を通じても社会部門を優先していることも、特筆に値すると考えるものである。同様に、委員会は、締約国が研究組織「チャイルドウォッチ・インターナショナル」の発足を支援したこと、および、対話および協力の精神にのっとり、とくに人権問題に関して国内の専門家による援助の提供を促進することを目的としてNORDEMを発展させていることを、賞賛する。 5.委員会は、締約国報告書の作成におけるものも含めて政府とNGOとのあいだに建設的対話が存在すること、および、代替的報告書の作成に関してNGOに支援が与えられたことを、心強く感ずるものである。 6.委員会は、刑事訴訟法の改正を受けて、条約第40条2項(b)(v)に対する締約国の留保が1995年に撤回されたことを歓迎する。加えて、委員会は、子ども法の改正により子どもの立場およびその権利の保護が強化されたことも心強く感ずるものである。 7.委員会はまた、国際的な経済不況傾向が(報告対象期間の一部において)広範に広がり、かつ社会サービスの地方分権化が進展しているにも関わらず、児童福祉プログラムのための予算が締約国において増加していることに、満足感とともに留意する。委員会はさらに、児童福祉プログラムの実施に関して自治体によってとられた政策および措置を監視するシステムが、県知事の報告手続を通じて設置されていることにも留意するものである。 8.委員会は、外国人に対する不寛容の傾向と闘い、かつ人種主義および排外主義の問題に対応するために、締約国が、青少年の関与および参加によるものも含めて相当の努力を行なっていることに留意する。委員会はまた、このような問題に対する同様のアプローチを奨励するうえで、締約国が地域的な場で積極的な役割を果たしていることも歓迎するものである。 9.委員会は、締約国報告書の刊行以降に行なわれた市民法改正が行なわれたこと、および、ノルウェー市民その他のノルウェー在住者によって養子縁組された外国人の子どもの状況にそれが積極的影響を及ぼしていることに、満足感とともに留意する。委員会はさらに、1995年の法律の採択によって女性器切除が禁止されたこと、および、1994年の婚姻法の改正により、婚姻の一方の当事者が、婚姻を強制されたときは当該婚姻を無効と宣言するための手続を開始できるようになったことに留意するものである。加えて、委員会は、親に対する広範な支援および介入のプログラムが用意されていることを歓迎する。 10.委員会は、発展途上国における子どもの権利を支援することに対し、国際協力その他の援助を通じて締約国が豊かな貢献を行なっていることに関して、締約国を賞賛したい。 11.委員会は、締約国報告書において、締約国の第1回報告書に関する委員会の総括所見が頻繁に言及されていること、および勧告の一部に対応するための努力が行なわれたことを歓迎する。 C.主要な懸念事項 1.実施に関する一般的措置 立法 12.委員会は、条約の一般原則および規定がいまなお勧告にしたがって国内法に全面的に編入されていないことを、依然として懸念する。 13.委員会は、締約国がこの問題に関してひきつづき継続的議論を行なうよう奨励し、かつ、1999年5月21日の人権法によって他の地域的および国際的人権文書が編入されたのと匹敵する方法で条約を国内法に編入することを検討するよう、勧告する。 地方レベルにおける実施 14.締約国において意思決定、行政およびサービス提供が大規模に地方分権化されていることを認識し、委員会は、国レベルから自治体への相当の権限委譲が、すべての自治体が条約を全面的に考慮していないという意味で、締約国の条約実施における弱点となっているように思えることに留意する。 15.委員会は、締約国が自治体による条約のすべての側面の実施の評価を行なうこと、および、自治体レベルにおける条約の効果的実施を確保するためあらゆる努力を行なうことを、勧告する。 予算配分 16.委員会は、低所得層の子どもに対して地方の公的機関が提供する福祉サービスの範囲および水準、ならびにその結果としてもたらされる一部の子どもの生活水準が、同国全域のさまざまな自治体において不平等となっていることを懸念する。そのような不平等は、部分的には、異なる自治体機関が利用可能な財源が相当に異なること、これらの機関が定める優先順位が異なること、および、ニーズを評価しかつ援助を与えるシステムが異なっていることから生ずるものである。このような格差は、子どもの居住地域によって、子ども、とくに障害をもった子どもに対して不平等なアクセスまたは異なる水準の福祉援助を提供する効果を有する。 17.委員会は,締約国に対し、福祉サービスの提供の文脈において、たとえば条約実施のための全国的な基準および条約実施に対する全国的な資源配分を確立することにより、居住場所に関わらずすべての子どもが同じ水準のサービスに平等にアクセスできることを保障できる方法を検討するよう促す。 条約に関する研修 18.委員会は、子どもに関わる可能性がある業務を行なっている専門家の研修が組織的なものではないこと、および、多くの専門家がそのような研修を受けていないことに留意する。 19.委員会は、締約国が、教職員、弁護士および警察官を含むさまざまな専門家グループの適切な役割に関する子どもの権利研修のための指針を、関連する場合には委員会が提起した懸念に力点を置きながら発展させるよう勧告する。委員会は、とりわけ、自治体の委員会の委員および公的機関に対し、子どもの権利条約全体の実施に関する訓練を提供することに注意を向けるよう勧告するものである。 2.一般原則 差別の禁止 20.委員会は、ノルウェーの管轄下にある子ども(その在留が法的要件を満たしていない子どもも含む)が条約に定められた権利から実際上利益を得ることを確保するために締約国が行なっている努力を評価する。にも関わらず、委員会は、この原則があらゆる国内法において確立されているわけではないこと、法的保障が存在しないことにより、ノルウェー国籍を有しない一部の子どもが権利を奪われる可能性があること、および、このような子どもによる保健および教育サービスへのアクセスが若干制限されていることに、懸念を表明するものである。 21.委員会は、締約国が、ノルウェー国籍および法的地位を有せずにノルウェーの管轄内で暮らしている子どもの権利にこの状況が及ぼす、長期的影響も含む全面的影響を考慮するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約第2条の全面的適用を確保する国内法改正を検討するよう奨励するものである。 最善の利益 22.委員会は、最善の利益原則を尊重しようとする締約国の相当の努力を認知しながらも、改善の余地があることに留意する。とりわけ、委員会は、自治体機関の役割の文脈で子どもの最善の利益がかならずしも全面的に考慮されていないこと、および、さらに、収監された親、保護者のいないまま庇護を申請している子どもまたは難民の子どもの最善の利益がかならずしも第一義的に考慮されていないことを、懸念するものである。 23.委員会は、締約国が、オンブズパーソンおよび市民社会と協議しながら、上記の状況を背景として最善の利益原則が何を意味するかについて検討すること、および、子どもに影響を及ぼす決定においてこの原則が第一義的に考慮されることを確保するためにさらなる努力を行なうことを、勧告する。 自己の意見を自由に表明する子どもの権利 24.委員会は、とくに自治体レベルにおける子ども代理人の任命によるものも含めて、意見を聴かれる子どもの権利を尊重するための努力を締約国が行なっていることに対し、締約国を賞賛する。しかしながら、委員会は、締約国と同じく、実際には子どもの意見が充分に聴かれかつ考慮されていないという懸念を表明するものである。委員会は、条約および国内法にもとづいてこの分野で保障されている権利、または子どもの意見の表明のために創設された機会を知らない子どもが多いことを懸念する。 25.締約国の最近のコミットメントに留意し、委員会は、締約国が、子どもの意見表明権およびそのために存在している機構その他の機会を子どもその他の者(親および法曹を含む)に知らせる努力をひきつづき行なうよう勧告する。委員会は、さらに、子どもの意見が考慮されている度合いおよびそれが政策、プログラムの実施および子どもたち自身に及ぼしている影響を定期的に見直すよう勧告するものである。 3.市民的権利および自由 思想、良心および宗教の自由 26.委員会は、初等教育、前期中等教育および後期中等教育に関する締約国の1998年7月17日の第61号法(「宗教・知識・倫理教育」に関する新たな共通カリキュラムを導入するもの)においてとられているアプローチが差別的になる可能性があることを、懸念する。委員会は、とくに、授業の一部に参加したくないと考える子どもおよび親に免除を認める手続を懸念するものである。 27.委員会は、締約国が新カリキュラムの実施を見直し、かつ既存のものに代わる免除手続を検討するよう勧告する。 暴力および有害情報 28.委員会は、社会およびとくに若者(年長の子どもを含む)のあいだで暴力行為が増加しているという締約国の認識を認知する。 29.委員会は、締約国が、そのような暴力の原因に対応し、かつその発生件数を減らすための努力を追求するよう勧告する。 4.家庭環境および代替的養護 親からの分離 30.委員会は、刑務所で刑に服している親との接触を維持することとの関連で、子どもの最善の利益、とくに親からの分離に関わる子どもの権利が全面的に尊重されていないことを懸念する。委員会はさらに、締約国の積極的な努力にも関わらず、刑事犯罪で有罪とされた外国人を退去強制する決定が行なわれるさい、退去強制の対象とされる者の子どもに当該決定が及ぼす影響に関する専門家の意見が制度的に参照および考慮されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、それが子どもの最善の利益である場合には子どもが収監された親との個人的関係および直接の接触を維持することを確保するため、締約国が、非収監者の家族との接触に関わる規則をもっと柔軟に適用するよう勧告する。委員会はまた、退去強制が親から子どもを分離することを意味する場合には子どもの最善の利益が考慮されることを確保するため、締約国が、退去強制決定が行なわれる手続を再検討するよう勧告するものである。 家族の再統合 32.ノルウェー国民ではない子どもの家族の再統合に対して締約国が非常に積極的なアプローチをとっていることは支持しながらも、委員会は、家族の再統合について定めた重要な国内法の規定が最大限に適用されていないことを懸念する。とりわけ、委員会は、手続的遅延のために子どもが家族の再統合の可能性について情報を得ていないこと、または手続が組織的でないことのいずれかを理由として、子どもがこれらの規定をかならずしも利用できていないことを懸念するものである。 33.委員会は、締約国に対し、子ども、および親または法定保護者のようなその他の関係者に家族の再統合のための可能性および手続に関して情報を知らせるための標準的手続を定め、かつ、これらの手続を定められた指針にしたがって組織的に実施するよう促す。 家庭環境を奪われた子どもの保護 34.委員会は、とくに非公式な自発的措置手続を通じて親の家庭外に措置される子どもの人数が増えていることを懸念する。このような手続は、子どもの最善の利益が遵守されることを必ずしも保障しない可能性がある。 35.委員会は、締約国が、親の家庭外に子どもを措置しなければならなくなる要因および非公式な措置の慣行そのものの双方を慎重に分析し、かつ、家庭生活に対する子どもの権利および子どもの最善の利益が尊重されることを保障するための効果的措置をとるよう勧告する。 5.基礎保健および福祉 36.委員会は、拒食症および過食症の発生件数が多いこと、および思春期の青少年のあいだでアルコールの消費が蔓延していることを懸念する。委員会はまた、子ども、とくに男子による自殺がひきつづき発生していることに対しても、懸念を表明するものである。 37.委員会は、締約国に対し、医療上の問題でも心理的問題でもある拒食症および過食症のケースに対応する努力をひきつづき行なうよう奨励する。加えて、委員会は、思春期の青少年のアルコール消費水準を減らすために締約国が行なっている努力に留意するとともに、締約国が、思春期の青少年の健康なライフスタイルをひきつづき促進するよう勧告するものである。さらに、子どもによる自殺をすべて特定することが困難でありうることを認識し、かつ1994年の総括所見(CRC/C/15/Add.23)のパラグラフ17の勧告にしたがって、委員会は、締約国が、子どもの自殺(10歳未満の子どもによるものも含む)の発生件数および原因に関する調査を継続するとともに、当該調査の結果を活用して、締約国の1994年の自殺防止プログラムの参考にし、かつ当該プログラムをさらに発展させるよう勧告する。 障害のある子ども 38.委員会は、障害のある子どもが、同世代の仲間と最大限可能な形で社会的に統合できていないことを懸念する。 39.障害のある子どもの権利が全面的に実現されることを確保するために締約国が行なっている努力を認識し、かつ、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に採択した委員会の勧告(CRC/C/69)に照らし、委員会は、締約国が、締約国の第2次行動計画で強調されているように、障害のある子どもが他の子どもたちと時間を共有できることを確保するための努力をひきつづき行なうよう勧告する。 精神保健サービス 40.委員会は、締約国と同様に、子どもを対象とした精神保健サービスおよび精神保健の専門家にアクセスするために待機する人数が多く、かつアクセスが遅れていることに対して懸念を表明する。これは、心理学者および精神科医の人数が不充分であることによるものである。 41.委員会は、締約国に対し、子どもが精神保健サービスにもっと時宜を得た形でアクセスできるようにするための手段を模索し、かつ、とくに、精神科医および心理学者の不足に対応するよう奨励する。 保育サービス 42.委員会は、締約国と同様に、保育定員の増加がひきつづき必要とされていること、および、利用可能な手当の現金支給計画ではこのニーズを埋め合わせることにはならないことに、懸念を表明する。 43.委員会は、締約国と同様に手当の現金支給計画の評価を勧告し、かつ、さらに、すべての子どもが保育を受けられることを確保するというそもそもの目的を締約国が追求するよう勧告する。 6.教育、余暇および文化的活動 教育への権利 44.委員会は、締約国と同様に、一部教員の教育上の背景に限界があることおよび専門的訓練が欠如していることに懸念を表明するとともに、そのような限界が教育および児童に悪影響を及ぼしていること、および、そのような限界は教員の低賃金を含む膨大な要因の結果であることに留意する。 45.委員会は、締約国が、教員の低賃金その他の要因が締約国の教育に及ぼしている影響を研究し、かつ、特定された問題に対応するための努力を行なうよう勧告する。 教育へのアクセス 46.委員会は、締約国に存在する多くのロマの子どもおよびその他の移住性集団の子どもが義務教育の必要年限を修了していないことを懸念する。 47.委員会は、締約国が、移動通信施設の使用および遠隔学習プログラムなどを通じ、1年の一定期間を移動して過ごす子どもが正規の教育にいっそうアクセスしやすくする手段を模索するよう勧告する。 7.特別な保護措置 保護者のいない子ども、子どもの庇護希望者および子どもの難民 48.委員会は、子どもの庇護希望者との関係で条約の規定および原則が完全に尊重されているわけではないことを懸念する。具体的には、委員会は、庇護を申請した子どもが申請手続に参加する充分な機会を提供されていないこと、およびその意見が充分に考慮されていないことを懸念するものである。委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者ひとりひとりに個人的後見人を任命するなどの積極的制度が、全面的に実施されていないと考える。さらに、委員会は、庇護申請の処理が遅延していること、および、地方教育制度に統合されていない子どもの申請者がいることを懸念するものである。 49.これらの手続への子ども参加を向上させるために締約国が継続的計画を進めていることを認識し、委員会は、締約国に対し手これらの努力を追求するよう奨励するとともに、子どもが手続に参加しかつその関心事を表明する充分な機会を提供されることを確保するため、締約国が、子ども(保護者がいるかいないかは問わない)の庇護申請を審査する手続を見直すよう勧告する。さらに、締約国が発展させている後見人制度が貴重な貢献を行ないうることを認識し、委員会は、当該制度を実施し、かつ、後見人に対する適切な研修の提供などにより、意図された当該制度の機能が発揮されることを確保するために、追加的努力を行なうよう勧告するものである。 50.委員会は、締約国が、申請の処理および子どもの定住のための手続が遅延する理由を、その短縮を図る目的で検討するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもが通常の学校制度に迅速に統合されることを確保するため、さらなる努力を行なうようにも勧告するものである。委員会は、加えて、手続の見直しにおいて締約国が条約の規定および原則を考慮するよう勧告する。 51.子どもの難民および庇護希望者に心理社会的援助を提供するために締約国が行なっている追加的努力に留意し、委員会は、締約国と同様に、そのような援助を必要としているすべての子どもがそれを受ける機会を得ているわけではないことに懸念を表明する。委員会はまた、締約国に到着した時点で子どもの難民および庇護希望者のあいだに栄養不良が生じている場合があることも懸念するものである。 52.委員会は、締約国が、現在利用可能な心理的援助を拡大していっそう広範な人数の子どもおよびその親を対象とし、かつ、そのような援助が必要とされる子どもを締約国への到着と同時に特定するためにあらゆる努力を行なうという計画を追求するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、栄養不良の問題に対応する努力をひきつづき行なうよう奨励するものである。 少年司法 53.委員会は、罪を犯した子どもに対して締約国が現在とっている対応において、児童福祉上の措置、または子どもが15歳以上の場合には罪を犯した成人にふさわしい対応のいずれかにのみ焦点が当てられることが多く、少年司法における防止およびリハビリテーションの側面が充分に重視されていないことを懸念する。 54.委員会は、締約国が、少年司法手続の文脈において子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保する努力を追求し、罪を犯した子どもの防止およびリハビリテーションのニーズをいっそう考慮するよう勧告する。 性的搾取および虐待 55.委員会は、締約国で性的虐待が生じていること、および、そのような問題に対応するための締約国の既存の予算がもっとも効果的な形で活用されていないことを懸念する。 56.委員会は、締約国に対し、利用可能な資源(子どもを対象に働く成人職員の雇用を適切に審査するための資源も含む)を増加させること、児童虐待の告発に対応する法的手続を通じて監視すること、法曹関係者その他の関連の専門家を研修すること、およびそのような行為の被害者に時宜を得た形でケアを提供することによって、性的虐待の事案を防止しかつそれに対応する努力をひきつづき行なうよう促す。 7.報告書の普及 57.委員会は、1993年の第1回締約国報告書が広範にかつ早期に普及されたことに関し、締約国を賞賛する。しかしながら、委員会は、1998年の報告書は同じように広範な配布の対象とはなっていないこと、および、とくに、報告書が充分に早くノルウェー語で出版されなかったため、ノルウェーのNGOによるコメントの提出を促進できなかったことを懸念するものである。 58.委員会は、条約第44条6項に照らし、第2回報告書、委員会が提示した質問事項および締約国が提出した文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、政府、議会および関心のあるNGOを含む公衆一般のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 更新履歴:ページ作成(2011年8月31日)。