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轟――と、虚空にレーザーの軌跡を描きながら振るわれる対艦刀の一撃が、鮮血色の翼を広げた鋼鉄の巨人、トゥルーデスティニーに襲い掛かる。 迫り来る鋼鉄の刃を、トゥルーデスティニーは両手に握った大剣で受け止める――が、 「――こ、のぉっ!」 荘厳な鎧を身に纏う少女、デス子の怒号と共に、力任せに振り抜かれた対艦刀がトゥルーデスティニーの機体を野球ボールのように吹き飛ばした。 「くぅ……っそぉおっ!!」 揺れる紋章機のコクピットで、シン・アスカは悪態を吐きながらフットペダルを踏み込んだ。 トゥルーデスティニーの背面スラスターが逆噴射し、慣性を無理矢理殺して機体を制止させる。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」 体勢を立て直そうとするトゥルーデスティニーに、しかしそうはさせないとばかりにデス子が背中の翼を羽撃かせ、雄叫びを上げながら対艦刀を構えて突進する。 牽制するようにばら撒かれるバルカン砲の雨を掻い潜――らずに、そのままシンの機体目掛けて真っ直ぐ突っ込む! 「いたたたたたたたた痛い痛い痛い痛い痛いけど痛いなんて言わないっ!!」 被弾の痛みに泣き顔を見せながらも、デス子は対艦刀の柄を両手でしっかりと握り締め、怯むことなく突き進み、トゥルーデスティニーに肉薄する。 槍のように鋭く突き出された対艦刀の切っ先がトゥルーデスティニーの盾を貫通し、その奥の本体に深々と突き刺さった。 手応え――無し!? 瞬間、串刺しにした筈の敵機の輪郭が崩れ、まるで蜃気楼のように掻き消える。 「ミラージュコロイド……いつの間に!?」 驚愕したようにデス子が声を上げる、その横合いから――、 「トゥルーデスティニーなら、こんな戦い方も出来るんだよ!!」 ――ミラージュコロイドの〝隠れ蓑〟を脱ぎ捨てたトゥルーデスティニーが、シンの怒号と共に大剣を振り下ろした。 咄嗟に対艦刀を振り上げ、迎撃を試みるデス子だったが、刀身に突き刺さった盾の重みで思うように素早く動けない。 間に合わない……ならば! 迫り来る鋼鉄の刃をデス子は大口を開けて待ち構え、そして上下の歯で挟み込むように受け止めた。 「なっ……!?」 瞠目するシンに、デス子は大剣を咥えたまま不敵に笑う。 「ふごご、ふごふご、ふごごごご(今のわたしも、こーゆー戦い方が出来るんです)!!」 「何言ってるのかさっぱり解んねーよ!」 ツッコミと共に繰り出されるトゥルーデスティニーの回し蹴りを、デス子はバックステップを踏んで躱し、再び前方へ踏み込みながら左手を突き出した。 反射的に身を仰け反らせたトゥルーデスティニーの鼻先を、掌から撃ち出されたビームの飛礫が掠める。 「まだまだわたしのターンです!」 言いながらデス子は更に一歩前に踏み出し、敵の懐奥深くへ身体を捻じ込む。 対艦刀を左手に持ち替え、空いた右手で拳を握り――敵を殴り飛ばす! 弾丸のように放たれたデス子の右ストレートが、トゥルーデスティニーの横面を打ち抜いた。 「調子に……乗るなっ!!」 首が吹き飛ぶかと思う程の衝撃に揺れるコクピットで、シンは歯を食いしばりながら操縦桿を押し込んだ。 トゥルーデスティニーが背面スラスターを全開で噴かしてよろめく機体を踏み留め、その勢いを利用して大剣を振り抜く。 カウンターで繰り出された斬撃をひらりと躱すデス子に、トゥルーデスティニーは腰のビームライフルを片手で引き抜き、目測で照準を合わせてトリガーを引いた。 「――っ!」 咄嗟に胸の前で交差した両腕からバリアを発生させ、防御の体勢を整えるデス子に、フルオートで撃ち出されるビーム弾が怒涛のように押し寄せる。 全弾、命中――ドーム状に展開されたバリアの表面にビーム弾が次々と着弾し、紅蓮の炎がデス子を呑み込む。 「これだけ撃てば……!」 疲れを滲ませながら呟くシンに――、 「どうなるっていうんですか?」 「――っ!?」 返答の声は、すぐ背後からやって来た。 一拍遅れて、敵の接近を告げるアラート音がトゥルーデスティニーのコクピットにけたたましく響き渡る。 爆炎に紛れて背後に回り込んでいた……? 「そんな小細工っ!」 悪態を吐きながら振り返りざまに向けたビームライフルの銃口を、鋼鉄の籠手に覆われたデス子の掌が握り潰し――瞬間、閃光と共にライフルが爆散した。 仰け反るトゥルーデスティニーの脇腹に回し蹴りを叩き込み、デス子は刀身に盾を突き刺したままの対艦刀を、まるで鍬のように垂直に振り上げる。 「脳みそをブチ撒けちゃえぇぇぇーーーっ!!」 怒号と共に振り下ろされる鍬――もとい対艦刀を大剣の柄で弾き、トゥルーデスティニーは背面スラスターを噴射して後退した。 デス子も背中の翼を羽撃かせて虚空を舞い、両者は仕切り直すように間合いを開けて睨み合う。 厄介な相手だ……対艦刀を正眼に構えて油断なくこちらの隙を窺うデス子をモニター越しに見ながら、シンはそう思わずにはいられなかった。 ただでさえ攻撃を憚る外見である上に、ロストテクノロジーの影響なのか機体(と言って良いのか疑わしいが)性能もトゥルーデスティニーを頭一つ凌駕している。 加えてこちらの攻撃の悉くを正面から打倒し、ミラージュコロイドを応用した奇襲まで止めてみせたデス子の戦い方は、まるで――、 「――まるで、未来でも視ているかのようだ……ですか?」 「なっ……!?」 頭の中に浮かんだ科白を、まるで先読みするかのようなタイミングでぴたりと言い当てられ、シンは驚愕に目を見開いた。 愕然とするシンに酷薄に嗤い掛け、デス子は首を振りながら口を開く。 「それ違います、マスター。わたし未来なんか視てません、わたしが見てるのはマスターだけです。マスターのことならわたしは何でも知ってるんです、何でも解ってるんです。 そのガラクタの中のマスターが今何を考えてて、今どんな顔をしてるのかまで全部解っちゃうんです。だってわたしは――わたしがマスターの〝デスティニー〟なんですから!」 恍惚とした表情を浮かべ、歌うように言葉を紡ぎながら、デス子は対艦刀に刺さった盾を引き抜き――それが再戦のゴングとなった。 片手に握った盾を大きく振り被り、デス子はフリスビーのように投擲した。 回転しながら迫る盾を頭部のバルカン砲で撃ち落とし、トゥルーデスティニーは仕返しとばかりに両肩のビームブーメランを投げつける。 緩やかな弧を描いて左右から迫るブーメランを対艦刀の一振りで叩き落とし、デス子は背中の長距離砲を構えた。 「チャージなんてさせるかよ!」 背面バーニアと両翼のスラスターをフル稼働させ、シンは自分をロックオンする長距離砲の砲口を目指して機体を突撃させた。 大剣を振り上げながら高速で接近するトゥルーデスティニーに、デス子は悪戯めいた笑みを浮かべる。 腰から突き出した長距離砲を片手でしっかりとホールドし、虚空を踏み締めながら腰を大きく捻り――、 「チャージなんて……してないです、よっ!!」 次の瞬間、横薙ぎに振るわれた長距離砲の砲身がトゥルーデスティニーを野球ボールのように打ち返した。 まさに、ジャストミート。 振り抜いた砲身を文字通り砕く勢いで繰り出されたデス子のカウンターに、トゥルーデスティニーは為す術も無く吹き飛ばされる。 「言ったでしょう? マスターのことは何でも解るって。撃たれる前に潰しに来ることなんてお見通しなのです!」 半ばから折れた長距離砲を撫でながら勝ち誇ったように哄笑するデス子に、トゥルーデスティニーの中のシンが口惜しそうに歯噛みする。 「ねぇ、マスター……?」 無様に宇宙を漂うトゥルーデスティニーを見下すように眺めながら、デス子が虚ろな笑みを浮かべてシンに語りかけた。 「わたし、強いでしょう? わたし凄いでしょう? そんなガラクタなんかより、わたしの方が全然凄くて、わたしの方がずっとずっと強いでしょう? そんなの当たり前ですよね……だってわたしがマスターの剣なんですから。わたしがマスターの盾なんですから。わたしがマスターの翼なんですから」 虚空を蹴り、闇と無重力の海の中をまるで泳ぐように進んで、デス子はトゥルーデスティニーにゆっくりと近づく。 咄嗟に振り上げようとする大剣を片手で押さえ込み、自身の対艦刀も背中に納めて、デス子は両腕を広げてトゥルーデスティニーを抱き締めた。 「わたしがマスターの〝デスティニー〟なんです、わたしが本物の〝デスティニー〟なんです。〝デスティニー〟はわたし一人で十分なんです、そうでないと嫌なんです……」 鋼鉄の胸に顔を埋め、肩を震わせながらか細い声でそう口にするデス子に、シンは何も言えなかった。 本当に厄介な敵だ……緊張が途切れ、急速に鎮静化していく己の闘争心を自覚しながら、シンは小さく吐息を零した。 操縦桿を握る両手に力が入らない……この強敵を倒す絶好のチャンスだというのに、このまま大剣でデス子を貫けば全てが終わるというのに。 それで、任務完了だというのに……。 しかしシンには、出来なかった。 胸の中で泣いている女の子を殺すことなど出来る筈がなかった。 そこまで、シンは割り切れてはいなかった。 トゥルーデスティニーがまるで抱擁を返すように、ぎこちない動作でデス子の背中に両腕を回す。 既にシンの中では、この少女を敵と見ることは出来なくなっていた。 だからだろうか……トゥルーデスティニーの胸の中でデス子が口にした――、 「――だから、マスターを殺してわたしも死ぬしかないんです!」 という科白に、シンは一瞬反応が遅れた。 咄嗟に振り払ったデス子の両眼に凶悪な光が灯り、撃ち放たれた二条の光線がトゥルーデスティニーの胸部装甲を掠める。 「あなたが悪いんですよ、マスター?」 後退を試みるトゥルーデスティニーの顔面を右手で掴まえ、デス子はまるで幼子を相手するように優しい口調で語りかけた。 シンと同じ紅の双眸に、狂気の光を宿しながら。 瞬間、トゥルーデスティニーのコクピットが眩い光に包まれ、機体を揺らす激しい衝撃と共に全てのモニターが暗転する。 頭部のメインカメラが破壊されたのだ。 「あなたがわたしを裏切るから、あなたがわたしを捨てるから!」 暗闇に覆われたコクピットに、デス子の怨嗟の声が響き渡る。 再び機体を襲う衝撃……どうやら鷲掴みにされたままの頭部に、デス子がまたビーム弾を撃ち込んだらしい。 一撃で粉砕してしまわないように、威力を抑えて。 「あなたはわたしが殺すんです。裏切ったから、わたしじゃなくてガラクタを選んだから。だからあなたを殺すんです。わたしがいらないマスターなんていらないのです! でもね、マスター……あなたはわたしの宝物なのです、あなたがわたしを裏切ってもそれは変わらないんです。だからあなたを壊すんです、宝物だから壊すんです。 あれ? わたし何が言いたかったんだろう……まぁ良いです、どうで全部壊すんです。全部壊して、薙ぎ払って、消し飛ばして、何もかもを真っ白にするんです。 ガラクタも宝物も、欲しいものもいらないものも、マスターもわたしも世界も全部壊して真っ白にするのです。真っ暗はもう嫌だから、全部真っ白に変えちゃうんです」 衝撃、衝撃、衝撃、衝撃……断続的に襲う被弾の衝撃がコクピットを揺らす中、壊れたようなデス子の哄笑だけが暗闇に空しく響き続ける。 サブカメラに切り替え、視界を取り戻した全天周モニターに映し出されたデス子の顔は……泣いていた。 笑いながら泣いていた、嗤いながら哭いていた。 その時、一際大きな衝撃がトゥルーデスティニーのコクピットを襲った。 モニターの中ではデス子が黒ずんだ鋼鉄の塊を右手に握っている、どうやら遂に頭を千切り取られたらしい。 慟哭にも似た刃金の少女の哄笑を止める者は、誰も――、 「……醜い妄執ですわね」 ――否。 たった今、現れた。 ――つづく 前に戻る 次へ進む 一覧へ
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「全砲門開放、出力最大! 喰らいな――ストライクバースト!!」 全身を重火器で武装したフォルテの紋章機、ハッピートリガーが両腕を広げるように左右側面のレーザーポッドを展開し、機体に搭載したあらゆる兵装を一斉に撃ち出した。 「そんなもの……!」 雪崩のように押し寄せるビームとミサイルの群れを睨みつけ、鋼鉄の鎧を纏い刃金の翼を広げた巨人の少女、コードネーム〝デス子〟が苛立たしげに表情を歪める。 右手のライフルで迫り来るミサイルを撃ち落とし、デス子は背中の翼を羽撃かせた。 鋼鉄の両翼の内側から光の羽を噴出させ、残像を残しながら降り注ぐビームの雨を潜り抜ける。 「ちぃっ、何て出鱈目な機動性なんだ……モビルスーツとやらは化け物か!?」 敵の異常なスピードにフォルテが忌々しそうに舌打ちする中、弾幕の嵐から脱したデス子は更に加速、背中の対艦刀を左手で引き抜きながらハッピートリガーに急接近した。 「このっ、墜ちろ!!」 狼狽の声を上げるフォルテを嘲笑うように、デス子は次々と撃ち放たれるレーザーの雨の中を飛び回り、左手の対艦刀を振り上げながらハッピートリガーに肉薄する。 そのまま仕返しとばかりに振り下ろされたデス子の斬撃は、しかし――両手剣を片手で扱おうとしたせいか――手元が狂い、二連砲の銃身を斬り落とすだけで終わった。 「くぅ……っ」 致命傷こそ免れたものの被弾の衝撃に(物理的に)揺れる紋章機のコクピットで、フォルテは手元のパネルを操作、半ばから両断された二連砲を機体から切り離す。 本体から分離し、闇の中をゆらゆらと漂う二連砲は、すれ違うようにデス子の脇を通り過ぎ、その背中の向こうで爆発した。 思わず安堵の息を吐くフォルテの顔は、しかし次の瞬間、目の前の光景に愕然と凍りついた。 全天周モニター越しにフォルテの目に飛び込んできたものは、ライフルを手放した右掌にビームの光を集束させるデス子の姿だった。 「吹っ飛べえええぇーーーっ!!」 怒号を上げながらデス子が光って唸る右手を突き出し、ハッピートリガーに掴みかかる。 槍の如く突き出される鋼鉄の掌底がハッピートリガーの表面装甲に触れる、その刹那――、 「やらせるかぁぁぁーーーっ!!」 ――シン・アスカの怒号と共にトリコロールカラーの流星、紋章機トゥルーデスティニーがバーニアを全開に噴かし、デス子の横合いから弾丸のように突っ込んで来た。 文字通り渾身の敵の奇襲に、デス子はバックステップを踏むように虚空を蹴って後方へ飛び退き、トゥルーデスティニーの体当たりを回避する。 目標を見失い、しかも方向転換も今更利く筈もなく、トゥルーデスティニーはデス子とハッピートリガーの間を空しく通り過ぎる――筈だった。 「逃がすかものかぁぁ!!」 トゥルーデスティニーのコクピットで、シンは雄叫びを上げながら操縦桿を倒し、機体を90°横へ傾けた。 直後、トゥルーデスティニーはバーニアを逆噴射、主翼を軸に独楽のように回転する。 機体後部から伸びるブレード状のスタビライザーが横薙ぎに振り抜かれ、デス子を真横から殴りつけた。 予想外の敵の追撃をもろに喰らい、デス子はビリヤードの珠のように弾き飛ばされる。 だが、シンの攻撃はまだ終わっていなかった。 「――まだまだぁ!」 咆哮をコクピットに轟かせ、シンは紋章機を更に旋回、機体正面の長距離砲をデス子へ向ける。 銃口に荷電粒子が集束し、次の瞬間、撃ち放たれた破壊的な光の奔流がデス子を丸呑みにした。 瞬間、爆発の炎がモニタースクリーンを白く染め、シンは思わず眩しさに目を細める。 光が納まり、回復したモニターの中央にシンが見たものは――、 「でぇぇぇーーーいっ!!」 ――左手の盾を正面に構え、右手に持ち替えた対艦刀を振り被りながら接近するデス子の無傷な姿だった。 「墜ちろぉぉぉーーーっ!!」 「――このっ!」 絶叫と共に振り下ろされるデス子の対艦刀と、再び反転したトゥルーデスティニーのブレードが、宙空で激しくぶつかり合い火花を散らす。 不意に、まるで背筋を氷の舌で舐められたような悪寒に襲われ、シンは咄嗟にフットペダルを踏み締めた。 後部バーニアを最大に開放したトゥルーデスティニーが、まるで飛び退くようにその場から後退し――直後、 「目からビィィィーーーム!!」 ――デス子の紅の双眸から突如放たれた二条の光線が、虚空を薙ぎ払った。 「くそっ……非常識な真似しやがって!」 機体を再び反転させてデス子と正面から睨み合いながら、シンは舌打ち交じりに毒吐いた。 長い戦いになりそうな予感がした。 「凄っ……」 息もつかせぬシンとデス子の攻防に、蘭花が思わず感嘆の声を上げた。 初めての紋章機を手足のように操るシンの操縦技術も驚異的だが、何より――、 「――紋章機で本当に“格闘”戦する馬鹿なんて、アタシ初めて見た……」 接近戦用の格闘装備ならば蘭花の紋章機、カンフーファイターも搭載している。 だがその武装が想定する「格闘戦」とは「スピードを活かした一撃離脱戦法」である、間違っても「本当に零距離で殴り合う」などという変態的な戦い方ではない。 『くそっ……非常識な真似しやがって!』 「アンタが言うな」 スピーカーの向こうで戯けたことをほざく赤い眼の新入りに、蘭花はこっそりと舌を出した。 「やめて! シン君もフォルテさんもデス子ちゃんも、皆やめて下さい!!」 全天周モニターの向こうで繰り広げられる激闘にショックを受けたように顔を青ざめさせ、ミルフィーユ・桜葉がパイロットシートから身を乗り出しながら叫んだ。 「どうして……何で喧嘩しなきゃならないんですか!? こんなの絶対に間違ってます!!」 『――ミルフィーユ』 必死に制止を訴えるミルフィーユを、シンがウィンドウ越しに冷たく一瞥する。 『今回の任務の第一目的はロストテクノロジーの回収か破壊――つまりあいつの捕獲か撃墜だ。それを忘れるな』 「解ってるよ、そんなの解ってるよ! でも他にも方法はあるでしょ、話し合いとか……戦う以外の道もあるでしょ!?」 冷酷極まりないシンの物言いに悲痛な声で叫び返し、ミルフィーユはモニターの中のデス子を哀しそうな眼で見遣りながらパイロットシートに座り直した。 「撃って撃たれて、撃たれたから撃ち返して、やられた借りは百倍返しで……そんなの、哀し過ぎるよ……」 そう言って肩を震わせながら俯くミルフィーユの頬を、一筋の涙が流れ落ちた。 「デス子ちゃん! もうやめて!!」 目元いっぱいに涙を溜めて、ミルフィーユはデス子に力の限りに呼びかけた。 「わたし、デス子ちゃんを傷つけたくないんです! それはきっとシン君だって、皆だってきっと同じ気持ちです!! だからお願い、暴れるのはもうやめて!!」 「……うるさい」 「何もかもを壊して、たった一人のパートナーのシン君とも殺し合って……デス子ちゃんが欲しいのは、本当にこんな悲しい未来なの!?」 「うるさい!」 「帰ろうよ、デス子ちゃん……わたし達が戦う理由なんて、喧嘩する理由なんて無いんだから。一緒にエンジェルベースに帰ろう? 帰って、迷惑かけた人達皆に「ごめんなさい」って謝って、それで全部終わりにしようよ。それでこんな戦いは終わりにしようよ」 「うるさいうるさいうるさぁぁぁーーーい!!」 ミルフィーユの説得に拒絶の叫号を返し、デス子は右手の対艦刀を両手で握り直した。 「あなた達が……マスターを奪ったあなた達が、暗くて寒くて誰もいない闇の中に閉じ込めたあなた達が! そんな綺麗事を言うなあああああああああああっ!!」 逆上したように絶叫しながらデス子は対艦刀を振り上げ、光と刃金の翼を羽撃かせながらラッキースターに突進した。 赤い瞳の奥で憎悪の炎を燃やすデス子の気迫に呑まれ、ミルフィーユは思わず息を止める。 「あとデス子って呼ぶなぁぁぁーーーっ!!」 心からの叫びを轟かせながら、デス子は対艦刀を縦一文字に振り下ろす。 その時、凍りついたように動きを止めるミルフィーユの紋章機、ラッキースターの前に、まるで盾にでもなるかのようにライムグリーンの影が突如躍り出た。 円盤型のシールドを装備したヴァニラの機体、紋章機ハーベスターである。 「……光波防御帯シールド展開、出力最大」 ヴァニラの呟きと共に紋章機右肩部の円盤が発光し、ハーベスターとラッキースターを包み込ように形成された光の「傘」がデス子の斬撃を受け止める。 「そんなものっ!!」 刃を阻む敵のバリアに怯むことなく、デス子は対艦刀を目の前の厄介な光の「傘」へと振り下ろした。 「こんな淋しいだけの世界なんていらない! こんな空っぽの未来なんていらない! 何よりあなた達が一番いらない!! だから薙ぎ払うんです、何もかもを!!」 胸の中に溜め込んだ激情を吐き出しながら、デス子はバリアを何度も、何度も対艦刀で打ちつける。 「壊して! 薙ぎ払って! 消し飛ばして! 何もかもを真っ白で真っ平にするんです!! ガラクタも宝物も、欲しいものもいらないものも全部!!」 光の「傘」の表面に徐々に傷がつき、亀裂が広がり……そして遂に限界を超え、バリアは音を立てて砕け散った。 護りの「壁」を失ったハーベスターにデス子が容赦なく斬りかかる。 「だから……あなた達も撃つんです、あなた達も壊すんです! 今日、ここで!!」 歪んだ想いを乗せて袈裟がけに振り下ろされたデス子の斬撃が、ハーベスターのシールドを両断した。 追い討ちをかけるように、デス子は対艦刀を腰だめに構え直し、ハーベスターのコクピットへ迷いなく突き出す。 「この馬鹿!! ――アンカークロー!」 蘭花の怒号と共にカンフーファイターの両腕、アンカークローがデス子へ撃ち出された。 敵の不意打ちにデス子は咄嗟に斬撃の軌道を捻じ曲げ、無理矢理振り上げた対艦刀の刀身で左右から迫り来る鋼鉄の鉤爪を弾き返す。 「お返しですっ!!」 短く叫びながら、デス子は両肩のビームブーメランを引き抜き、カンフーファイターへ大きく振り被って投げつけた。 緩やかな弧を描いて飛来する二本のブーメランがカンフーファイターの両脇を掠め、アンカークローの射出装置を切り裂きながら通り過ぎる。 「あっぶな……」 主武装は失ったものの直撃は辛うじて免れたことに、蘭花は安堵の息を吐く――直後、 『――蘭花、避けろ!』 切羽詰まったようなシンの声が通信回線越しにやかましく響き渡る。 何事かと思わず後ろを振り返った蘭花が見たものは、Uの字を描くように大きく旋回し、再びカンフーファイターに迫る二つのブーメランだった。 紋章機後部、推進用スラスターにビームの刃が深々と突き刺さり、激しい揺れがコクピットを襲う。 「斬刑です!!」 推進部を破壊され、身動きの取れないカンフーファイターに、デス子が――とどめを刺すつもりなのか――対艦刀を振り上げながら急速接近する。 「駄目ぇぇぇーーーっ!!」 遠ざかるデス子の背中をロックオンし、ミルフィーユが咄嗟にトリガーを引いた。 機体中央の長距離砲にエネルギーが充填され、ラッキースター最強の武装、ハイパーキャノンが撃ち放たれる。 闇を呑み込みながら虚空を突き進む極太の光の奔流を、デス子が憤怒の表情で振り返る。 「あなたって人は、本当に……っ!!」 呪詛の言葉を零しながら背中の大出力砲を引き出し、エネルギーを急速充填させる。 「――本当に、何なんですかぁぁぁーーーっ!!」 怒りと憎しみを織り交ぜたようなデス子の怒号と共に大出力砲が火を噴き、二色の光の激流が正面からぶつかり合い、互いに喰らい合い、そして相討ちになるように爆発した。 「デスティニィィィーーーッ!!」 両手の操縦桿を固く握り締め、シンは紋章機のコクピットで怒号した。 パイロットシートの周囲に新たなウィンドウが無数に展開し、最後に鳥を象ったトランスバール皇国軍の紋章がシンの正面に映し出される。 ――EMBLEM FRAME NEO OPERATION SYSTEM Generation Unrestricted Network Drive Assault Module ――Combat Battle Mode…TRANSFORM STANDBY READY. G.U.N.G.A.Mとも読める文字の羅列が紋章に重なるように表示され、次の瞬間、トゥルーデスティニーが「変形」を始めた。 左右の主翼が機体背面へ折り畳まれ、胴体が「く」の字に折れ曲がる。 後部の推進部はスライドして脚になり、側面アーマー下に格納されていた腕も展開する。 最後にV字型の角飾りをつけた頭部がせり出し、変形は完了した。 「何、あれ……」 「紋章機が、変形した……?」 「嘘……」 突如人型に――鋼の巨人に姿を変えたシンの機体に、ミルフィーユ達は驚愕を隠せなかった。 しかし一番衝撃を受けていたのは、〝変形する紋章機〟という非常識を目撃したミルフィーユ達ではなく、〝自分でないデスティニー〟を目の当たりにしたデス子だった。 「デスティニー――デスティニー、ガンダム……!」 震える声で、デス子はその名を口にした。 「なぁデスティニー、お前は何がしたいんだ……?」 戦慄に顔を強張らせるデス子をモニター越しに見上げ、シンはトゥルーデスティニーのパイロットシートからぽつりと呟いた。 「お前は何を求めているんだ? お前は何が欲しくてこんなことをしているんだ……?」 淡々と紡がれる疑問の言葉は、しかしその実、答えを求めている訳ではなかった。 全てはシンの自問自答、〝目の前の敵を討つ〟ための自己暗示に過ぎない。 それとも……と、シンは続ける。 まるで凍てついた焔のように冷たく熱い、そんな矛盾した光を瞳に宿し、シンは表情を消した顔で〝敵〟を見据える。 「それとも――また戦争がしたいのか、お前は!?」 シンの怒号と共にトゥルーデスティニーが背中の大剣を引き抜き、〝二人のデスティニー〟の戦いは第二ラウンドに突入した。 ――つづく 前に戻る 次へ進む 一覧へ
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リゾットは近くにあった枝に火をつけ、洞窟の中に放り込む。 その炎は、正常に赤々と燃えている。 「・・・・・・どうやら安全なようだな。」 リゾットは洞窟内の安全を確認し、中に入っていく。 暗闇の中、気配を頼りにゆっくりと洞窟の中を進んでいく。 湿っぽい匂いが、リゾットを包み込んだ。 足元に気を使いながら、リゾットはゆっくりと道を進む。 そして、しばらく進むと何かの気配を感じ、リゾットは身構える。 「う・・・・・。」 呻く、小さな子供の声。 リゾットはポケットに入っていた、ペンライトを取り出し、目の前を照らす。 そこには、さらわれた子供達が大量に横たわっていた。 リゾットは一人一人、呼吸と脈を確認する。 全員、生きているようだが、何人かは衰弱している。 だが、一度にこれだけの人数を運ぶのは難しい。 それに・・・・・。 「殺気くらい隠したらどうだ?」 そう言って、リゾットは背後に向かってスタンドを発動する。 キンッとカミソリが、地面に落ちる。 『ほう・・・・、気づいたか。流石は閻魔の犬・・と言ったところか。』 どうやらダメージはなかったらしい、平然と喋る敵に、内心リゾットは舌打ちをする。 ゆっくりと振り向き、敵の気配を探る。 しかし、それは漠然とした者で、敵の正確な位置が分からない。 無言で、リゾットは殺気の方向全体にメタリカを仕掛けるが虚しく金属が転がる音のみが聞こえる。 『それが貴様の能力か?残念だったな・・・・。そんな物では我は殺せないぞ?』 メタリカの効果がない理由を、リゾットは思考する。 まず、敵がこちらの感覚を狂わす能力の持ち主。 もしくは、距離などを操る能力の持ち主。 とにかく、ありとあらゆる可能性が考えられる。 まずは、子供達を守ることが先決だ。 「・・・・メタリカ。」 洞窟の鉄分を使い、子供達を鉄の檻で包み込む。 細かく、堅牢に作られたそれは、子供達を戦いから守るためのものである。 敵がこちらの感覚を狂わせる能力の持ち主だとしたら・・・・。 「全包囲に攻撃すればいいこと・・・・。」 そうリゾットが呟いた瞬間、リゾットの周囲に無数のメスが浮かび上がる。 全方位に展開されたそれは、磁力を抑えられて細かに揺れている。 『っ?!』 「喰らえ。」 まるで爆発した爆弾のように、磁力操作による加速を受けてメスが飛ぶ。 それはガキッと岩壁に刺さる。 だが、メスの幾つかが、何か布のような物を裂く音がする。 「逃さん!!」 そしてさらにメスを分解し、地中から鉄の杭を何本かドンッと飛び出させる。 すると、さらにボスッと言う何かを貫く音が聞こえた。 「・・・・・やったか?!」 リゾットがペンライトで、音のした方向を照らす。 しかし、そこにはリゾットの望んだ光景はなく、ただ布切れが杭に刺さっているばかりだった。 『三流の死神だな、貴様は。』 次に瞬間、リゾットは巨体に合わぬ素早い動きで左側に身体をそらす。 だが、まるで獣に噛み千切られたかのように、右腕の二の腕が抉られた。 「ぐっ?!」 『ふむ・・・、勘だけは獣並か・・・・・・・・・・。』 とっさにリゾットはメタリカを使い、出血を抑える。 (どこだ・・・・、どこにいる・・・・・。) リゾットは姿の見えない敵の気配を、必死に探った。 彼が生まれつきの地獄の住人なら、魂をその目で見ることで敵の位置がわかっただろう。 しかし、彼は罪人であり、生前に特殊な能力を持っていたせいもあって空を飛ぶなどの僅かな能力しか、付加されていなかった。 (遠隔操作するタイプなのか・・・いや、スタンド使いと戦っているとは考えるな。もっと別の思考に切り替えろ・・・・・・・・・・・・。) 感覚を研ぎ澄ませながら、リゾットは冷静に思考をめぐらせ始めた。 「イルーゾォ、残り使い捨てに出来る鏡の数は?」 「一応、残りストックが十枚。・・・・チッ。半分くらい割れて使い物にならなくしちまったよ・・・・・・・・・。」 「おいおい!プロシュート!!右腕折れてんなら無理すんな!!」 「うっせぇ!!こんくらい何ともねぇよ!!」 「あ・・兄貴・・・、すみません・・・。俺がドジしたせいで・・・・。」 「クソッ!うじうじすんなよペッシ!!それより今は作戦道りするしかねぇだろうが!!」 「ギアッチョ、スタンドパワーは大丈夫?」 「ジェントリー・ウィープスは無理だな。まぁお前の『息子』が来たなら大丈夫だろ。」 わいわいがやがやと、暗殺チームは準備を進めていく。 その様子を、あっけに取られながらフランやチルノ、大ちゃんは眺めていた。 三人とも、普段と違う様子のチームに怯えているのか、レティの服を縋るように掴んでいる。 「ねぇ、これからどうなるの?雪女。」 不安そうに言うフランの頭を、レティは撫でる。 「・・・・・大丈夫よ。フラン、それよりあなたは気を引き締めてなさい。」 「?」 レティの言葉に、フランは不思議そうな顔をする。 「闘争の気にあてられれば、あなたの能力が暴走するかもしれないわ。・・・・そうしたら、あなたのお姉さんは二度とあなたとメローネが会うことを許してくれないわよ。」 そして、今度はチルノと大ちゃんの方を向いて告げる。 「二人とも、フランが危なくなったら助けてあげるのよ?」 「解ってるわレティ!あたいフランちゃんの友達だもの!!」 「チ・・・、チルノちゃんの友達なら私も助ける!!」 頼もしく答える二人に、レティは笑った。 「レティ!!」 先ほどまで準備をしていたギアッチョが、レティの元へ歩いてくる。 「ギアッチョ、どうかしら?」 「あぁ、大体の算段はついた。お前はこいつらをつれて空の上にいてくれ。」 「あら?私は手伝わなくていいのかしら?」 レティがそう言うと、ギアッチョはちびっ子達に聞こえないように、耳打ちする。 「・・・・わりぃが弾幕勝負どころじゃ済みそうにない。できるだけこいつらにショックを与えないようにしてろ。」 「あらあら、暗殺者さん達はやさしいのね。」 「・・・・・・・後でリゾットに殺されかけたくないだけだ。」 笑いながら言うレティに、ギアッチョはぶっきらぼうに答えた。 「それじゃあ行ってくる。」 「行ってらっしゃい。」 それだけ告げて、去っていくギアッチョに、レティはいつものように声をかける。 チルノ達を支える彼女の腕に、力が少し篭った。 「り・・・リゾットさん・・・・まだですか?!」 「えぇい!紫様!!スキマを開いて・・・・・・!!」 「あーもー!!落ち着きなさい!!」 ここは、洩矢神社。 そこには、洩矢一家のほかに、八雲一家、それに妖怪の山の面々が集まっていた。 鴉天狗の新聞記者、射命丸文が一同に調査の結果を報告する。 「・・・・・私が改めて集めた情報によると、確かに例の謎の生物によって負傷した妖怪は多数います。 しかし、彼らは人間に悪質な悪戯をする奴らのうえ、痛めつけられた後は治療がある程度施されていたようです。 妖怪の山に噂されていたような、目に付いた妖怪を、問答無用でいたぶって殺す・・・と言うのはおそらく・・・・デマでしょう。 複数の新聞でその噂が広められ、ホットな話題に他の新聞記者達も競ってその生物を取り上げるようにして・・・・・。 そして妖怪の山がその噂で持ちきりになり、上層部の面々がそちらのほうに気を向けた隙に・・・・・・・・。」 「天狗お得意の情報操作ね。誤った情報を流して、外部のことに皆が目を向けるようにして内部の不穏な空気に気づかないようにした。 例の『魂喰い』の妖怪の指示でしょうね。妖怪の山で大騒動を起こさせ、そいつらに閻魔の部下を倒させる。 なおかつ、強力な結界を大人数ではらせれば、やっかいなスキマ妖怪に対する時間も稼げる・・・・といったところかしら。」 文の説明に、厄神 鍵山雛はため息を付いた。 彼女は厄を集める為に幻想郷中を巡る為、そこで聞いた話を文に情報提供をしていたのだ。 「・・・・拙者はまんまと騙されたと言うことでござるか。まだまだ修行が足りぬ・・・・。」 心の底から悔しそうに、犬走椛は呟く。 「あれだね、こう言う所は人間も妖怪も変わらないんだねぇ。」 「外の世界の学園闘争とかを思い出すよね。」 加奈子がため息をつき、諏訪子は懐かしそうに呟く。 「それどころじゃありません!!リゾットさんは合図をしたら力を貸してくれといっていましたけど!!」 「もしかしたら一方的に・・・・!!」 東風谷早苗と八雲藍は、戦闘中のリゾットが心配なのか必死に助けようと主張する。 一応、通信は行えるが、リゾットから通信が入らない限り、通信は入れないように、といわれていた。 「だーかーらー!!妖怪の山の妖怪達とあの妖怪のはっている結界がもの凄く強力なのよ!! どうやら霊夢達が異変に気づいて、多少は結界が揺らいでるみたいだけど私でも手こずっているの!! スキマを開いても電波による通信を可能にするだけで精一杯で、まだそこと空間をつなぐのは無理なの!! だいたいねぇ!!貴方達リゾットリゾット言ってるけど割と幻想郷全体的に大変なのよ?! 今回は今までの異変と違って後処理も、妖怪の山側と色々話さなくちゃいけないし・・・・・。 あと藍!あんたは早くこの結界の綻びを探しなさい!!そんな調子だからあの天狗どもに誑かされてるなんて思われるのよ!!」 すっかりリゾットに気を取られている二人に、紫はガーッと説教をする。 彼女は必死にスキマを用いて、張り巡らされている結界を調べていた。 「ったく・・・、多分例の妖怪にまんまと天狗や河童達は利用されたんでしょうね。 幻想郷から出たことない、頭のお堅いやつらばっかりなんだから・・・・・橙!!」 「はいっ!紫様っ!!」 突然紫に呼ばれて、橙はピシッと背筋と尻尾を伸ばす。 「藍がこんなんだから、あなたがプロシュート達の元に言って、どうしてこんな事態になったか伝えてきなさい。 危なくなったら逃げて帰ってきても構わないわ、こんな事態だから無理しないで。」 「解りました!!」 そして、紫は橙の額に指をちょん、と乗せる。 すると、橙は自分の身体が急に熱くなったような感覚を覚えた。 「私の力を、少しあなたに分けてあげたわ、燃料を入れたようなものだから、気をつけなさい。」 その言葉を聞いて、橙は誇らしげな顔をする。 主の主に力を分け与えられた、こんなに光栄なことはない。 「ありがとうございます!!行ってきます!!」 次の瞬間、橙は障子を開けて、疾風のように走り去った。 「椛!!あなたも・・・・って椛?」 文も部下に指示を出そうとしたが、既にそこに椛の姿は無かった。 「・・・いつの間に・・・・・。」 「あぁ、椛は気配を断つのがうまいんですよ・・・・・。と言うか・・一言くらい上司に声をかけなさいまったく・・・。」 呆気に取られる雛に、文は苦笑しながら言った。 まっすぐな彼女は、今頃ジェラートとソルベの元に向かっているのだろう。 「さーて、後は・・・彼女を呼びますか。」 橙の背中を見送った紫は、人里へと繋がるスキマを開いた。 「ぐぅっ!!」 『どうした?!先ほどまでの勢いは!!』 リゾットは、先ほどから、一方的に攻撃を受けていた。 地中から鉄の杭を出して対抗するが、意味は無い。 そうしている間にも、リゾットの身体は敵の攻撃に食いちぎられていく。 左肩が、大きく抉られた。 『ふふふ・・・・、貴様が死んではあの子供達は私に食われてしまうぞ?どうするつもりだ?』 「いや・・・・、俺が死んだとしても、この子達は助かるさ。」 抉られた左肩を掴みながら、リゾットは笑った。 「準備は・・・、整ったからな。」 リゾットの後ろに、一際大きな杭・・・否、鉄で出来た柱が立つ。 『何だと・・・・・・?』 妖怪には、リゾットが何をしようとしているのか、理解できなかった。 「俺が無駄にこんな風に鉄柱を作り出していると思ったのか?」 ハッとして、妖怪は周囲を見渡す。 暗闇でもはっきりと物が見える妖怪の目には、その杭が規則正しく並んでいる事に気づいた。 「日本には・・・・神棚と言うものがある。簡易的な神社を、家の中に作った物だそうだ。」 おそらく、博麗の巫女や白黒魔法使いがこの状態を見れば気づいただろう。 それは、まるで上空から見た、御柱の立つ洩矢神社そのものだった。 本殿にあたる場所には、子供達を守る鉄の檻が置かれていた。 リゾットはコートの襟につけておいた、通信装置の電源を入れる。 「今だ!!やれ!!」 「解りました!!」 リゾットから入った通信に、早苗はその力を発動させる。 「早苗!!しっかりやりなさい!!」 「人里の信仰、一気にいただくよー!!」 加奈子と諏訪子が、彼女に力を与える。 青と赤のセーマンが、彼女の足元に光り輝いた。 原理は同じ、昔いた世界から、幻想郷に洩矢神社が移ったのと。 「さぁ!!行くわよ!!藍!リゾットの座標は間違ってないでしょうね?!」 「大丈夫です!!」 さらに今回はスキマ妖怪である、紫もその力を発揮し、空間に境界を作り上げる。 その座標軸の計算のサポートを、藍はする。 しかし、これだけでは力が足りない。 だから、彼女を呼んだのだ。 「今日が・・・満月でよかった・・・・・。」 そう言ったのは、緑がかった銀髪をなびかせ、頭部に二本の角を持った女性。 普段とは違い、何処か野性的な雰囲気を纏っている彼女こそ。 ワーハクタク、歴史の聖獣、上白沢 慧音である。 「私は作る・・・・!!子供達を取り戻すと言う・・・歴史を!!」 歴史を作り上げる能力により、僅かに、運が、因果律が変化する。 これで、全ては整った。 洞窟のなかの鉄柱が、光を帯び、洞窟の中を照らす。 『っ?!』 「なるほど、道理でメタリカが聞かないわけだ。」 平坦な声で、リゾットが言った。 奇跡の光に照らされた妖怪の姿は、まるで陽炎のように透けていた。 「貴様は、実態のない妖怪だったか。」 鉄杭は御柱となり、リゾットがさきほど出した二本の巨大な柱は、鳥居となる。 そして、社となった鋼の檻に、光が集中する。 妖怪が食物を逃がすまいと動こうとした次の瞬間、光が爆発する。 「くっ!!」 その眩しさに、リゾットも目を細めてしまう。 眩しさが収まる。 鉄の檻の中の子供達は、いなくなっていた。 『くそっ!!』 一気に自分に不利になったと悟ると、妖怪は洞窟の外に逃げようとする。 「逃がすか!!」 しかし、リゾットは逃がさない。 メタリカにより鉄の壁を作り、洞窟の中を密閉した。 『な・・?!正気か?!貴様も窒息死するぞ!!』 「心配するな、俺は昔金庫に閉じ込められかけた事がある。あの時は流石に焦ったな。」 リゾットの行動に、驚く妖怪を他所に、彼は平然としている。 「あの時は、あいつらが助けに来てくれた。だから、俺はお前を殺しさえすればいい。」 そう言ってリゾットはメタリカを発動させる。 彼の掌から、皮膚を切り裂いてメスが現れる。 「まったく・・・・、こう言う時、メタリカが人の形をしていないのが面倒だ。 スタンドにダメージを当てるときは、俺の血を鉄器に練りこませねばならないのだからな。」 そう言ってリゾットはメタリカが蠢くメスを投げる。 『ぐあっ?!』 それは先ほどまでの鉄杭とは違い、陽炎のような敵を切り裂いた。 「さぁ、子供はもういないんだ。思い切り激しくいくとするか。」 そう言って鉄の匂いを纏った死神は、珍しく、楽しそうにその顔をゆがめた。 前へ 目次へ 次へ
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へたれの霜天 ナルシの星空 おちゃめの曙天 苦労人の暮天 凶暴の暁天
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「み・・・見失った?!マジかよ!!」 メローネが息子から受けた報告に、イルーゾォは声を荒げる 「あぁ!!マジもマジだ!!ホルマジオだ!!」 「わけわかんねぇよ!!落ち着けよ!!」 だが、じかに報告を受けたメローネが、一番慌てていた。 訳の分からない事を口走りながら、必死にキーボードを叩く。 「バオーの移動スピードってどれくらいだっけ?!いやでも森だから・・・・。」 「落ち着けよメローネ!!とりあえず俺達は、鏡の中に入れば安全なんだからよ!!」 「そ・・・そうだな・・・・・。」 イルーゾォの言葉を聞いて、メローネは深く息をついた。 「ったく・・・、そんなんだから蛇に簡単に噛まれて殺されるんだ。」 「・・・・自信過剰で、三対一で敵に挑んで慢心と油断で死んだ奴に言われたくない。」 だが、安心しすぎたのか、イルーゾォの辛辣な一言に、メローネもいい返す。 売り言葉に買い言葉、二人は今の状況にも関わらず、喧嘩を始めた。 「んだと?!メローネ!!鏡の中でボコボコにされたいのか!!」 「いいよ!!鏡の中じゃ助け呼べないだろうからその分俺もお前に悪戯するぜ?!マンインザミラーとお前感覚共有してるんだから見てろよ!!」 「スタンドまで守備範囲なのかよこの変態!!」 「おうともさ!!そのスカートとかひらひら部分に手をつっこんでやんよ!!」 「やめろぉぉぉぉぉぉ!!」 だが、結局変態が勝った。 下手したらジョジョ中最強の能力を持つスタンド使いにも、変態は勝つのである。 \すげぇ/ 「うぅ・・・、気持ち悪い・・・・。」 「イルーゾォのスタンドっていいよね、こう・・・隠れてる感があって。」 「そんな事思いつくのはお前だけだよ・・・・あぁ、どっと疲れた・・・。」 そうため息をついて、イルーゾォは腰を地面に腰を下ろす。 「あー・・・、本当にこれからどうなるんだろ・・・・・。」 ぼやきながら、イルーゾォは空を見上げる。 森の木々の間から、月の光が漏れていた。 そういえばこんな月の日は、魔法の儀式にいい、とアリスが言っていたのを思い出す。 そんな日常に戻れるのは、あと何時間後だろうか。 「・・・・・・・・。」 気をつけたものの、天狗や河童をいたぶるのに夢中だったのか、服の端々には血がついていた。 もう、この服は着れないだろう。 「あーあ、やっちまったな・・・・。」 再びため息を付いて、イルーゾォは空を見上げる。 雲が出てきたのか、月はすっかり隠れてしまっていた。 いや、違う、今日は雲はまったくなく、星空が綺麗な夜だったはずだ。 次の瞬間、イルーゾォは反射的に動いた。 「メローネ!!伏せろ!!」 スタンドを出す余裕もなく、メローネを突き飛ばす。 次の瞬間、イルーゾォとメローネがいた上にあった枝が、ドサッと落ちてきた。 枝を切り裂いて空から降りてきたのは、腕から刃を生やしたバオーだった。 幻想郷に来てから、ジェラートは空を飛ぶ能力を手に入れた、 その能力をバオーが利用して、空を飛んでも何もおかしくない。 「メローネ!!全力で逃げろ!!A-40にいるホルマジオが一番近い!!」 「・・・・頼むっ!!ソルベ!!こっちにバオーが来た!!」 ソルベのスタンドに連絡をしてから、メローネは懐から拳銃を取り出し、引き金を引く。 そして、メローネは森の中に、イルーゾォはバオーの方へ向かっていく。 だが、バオーが素早く腕を動かすと、キンキンッと金属がぶつかり合うような音がする。 次の瞬間、メローネの撃った弾が全て、真っ二つに斬られていた。 「うおらぁ!!」 イルーゾォは隙を逃すまいと、マン・イン・ザ・ミラーでバオーに攻撃をしかける。 鏡を出す暇も、スタンドの固有能力を発動させる時間もない。 とにかくラッシュで、敵を一方的に攻撃するしかない。 幸い、スタンドでカバーできればこちらに怪我は出来ない。 何とかメローネが他の奴らを呼んでくれれば、うまく行くかもしれない。 その間の時間を、稼ぐのだ。 「うおおおおおおおおっ!!」 イルーゾォは叫びを上げながら、バオーを攻撃していく。 バオーは両腕をクロスして、イルーゾォの攻撃を防いでいる。 防御力も攻撃力も段違い、少しでも手を緩めたらあっという間にやられてしまう。 しかし、バオーも一方的に攻撃されているわけはない。 突然、バオーが防御していた両腕を、バッと広げる。 「っ?!」 そして、イルーゾォが怯んだ瞬間、バオーは思いっきり、マン・イン・ザ・ミラーの腹部を蹴り上げた。 腹部を貫かれる、という事は無かったが、その衝撃でイルーゾォは思いっきり吹き飛ばされる。 数メートル吹き飛び、木の幹に背を撃ちつけられた。 ポケットから、鏡がカタン、と地面に落ちた。 「ぐ・・・マン・イン・ザ・ミラー!!」 次の瞬間、イルーゾォは、落ちた鏡その中に潜ろうとする。 だが、バオーのスピードは尋常ではない。 「ひっ・・・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」 イルーゾォの左腕が、バオーの刃によって切り裂かれる。 だが、なんとか鏡の中に入る事には成功した。 「ぐあ・・・うぅっ・・・・。」 鏡の中で、イルーゾォは目に涙を浮かべながら、腕を押さえる。 『おい!イルーゾォ!!大丈夫か!!』 彼の肩に止まった、バタフライからソルベが声をかけてくる。 どうやらこのスタンドはメローネにはついていかず、ここに残ったらしい。 「わるい・・・・、足止めできなかった・・・・。」 血に濡れた上着を脱ぎ、それで止血する。 片腕だけだったが、マン・イン・ザ・ミラーにさせたのですぐに作業は終わった。 「うぅ・・・・腕が・・・腕が・・・・・何か胸も痛いし・・・。」 応急処置をしたとはいえ、お粗末なものである。 おそらく肋骨も折れているのだろう。背骨が無事なのが、幸いだった。 しかしこのままでは、イルーゾォの命が危ないだろう。 『無茶すんなよ!!俺達で何とかするから、お前はそこで安静にしてろ!!』 スタンドの視界を通じてイルーゾォの傷の様子を見たソルベが、動こうとするイルーゾォを制止する。 すると、青い白く輝く蝶のスタンドの姿が、どんどん光を失っていく 『っ・・・、悪いイルーゾォ!スタンドパワーが限界だ・・!!助けに行くからそこを動くなよ!!』 そういい残して、バタフライは完全に光を失い、ボロボロと崩れていった。 だが、おそらく今頃バオーは自分から目標を外して他の奴らを追ってきているだろう。 「しくじった・・・・、バオーを鏡の中に閉じ込めればよかった・・・。」 生きるか死ぬかの瀬戸際だったのだからしょうがないが、イルーゾォは自分に対して怒りを覚えた。 いつだってまっさきに自分が鏡の中に逃げてしまうのが、腹立たしかった。 イルーゾォは切られた腕を押さえながら、立ち上がる。 「追いかけないと・・・・皆が危ない・・・・。」 イルーゾォは自分のスタンドが強力なのを、よく理解している。 ゆえに、いざと言うときは自分が率先して仲間を助けなければならないのである。 たとえ腕がなくなろうとも、スタンドさえあれば、彼の自信は、誇りは揺るがない。 「いかなきゃ・・・・・・俺は、あの時何もできなかったから・・・・今度こそ・・・。」 バオーが残した破壊の後を頼りに、イルーゾォはバオーの後を追っていった。 『メローネ、大丈夫ですか?』 「大丈夫なもんか!!まったく・・・・・・!!」 メローネは、逃げている最中でバオーを追跡していた息子と合流したのだ。 『フランドールを呼びましょうか?彼女なら・・・・・。』 「馬鹿!!フランを危ない目にあわせられるか!!そもそもフランの能力じゃジェラートが死んじまうだろ!!」 余裕のない様子でメローネは目的の場所に向かう。 「とにかく合流だ合流!ギアッチョはどうした!!」 『すみません、はぐれました。』 「あぁぁぁ!!もう!!」 最悪な運勢に文句を言いつつもメローネはひたすら走る。 一応、身体は鍛えてあるので体力の消耗はそれほどでもないが、そんなこと程度でどうにかなる相手ではない。 「使い捨てに出来ないしなぁ・・・・・。」 いざとなったら、昔は『息子』を囮にでも捨て駒にでもして、逃げられた。 だが、この『息子』は自分だけの息子ではない。フランの『息子』でもあるのだ。 『・・・・・?!メローネ!!逃げてください!!』 そう言われて、メローネはバッと振り返る。 そこに現れたのは。 「メロォォォォネェェェェェエ!!」 本日二回目、メローネは再びフランドールに激突された。 「げほっ・・ぐぼえぇえぇ・・・・。」 今度は思いっきりフランの頭が腹に命中したせいか、メローネは咳き込む。 「・・・・またやっちゃった・・・・。」 しょぼん、とフランは落ち込む。 『力』の使い方は最近だいぶ改善されてきたが、自分の身体能力は、いまだもてあましたままだ。 「ふ・・・・フラン・・・・、危ないからきちゃ駄目だって言っただろ・・・?レティ達はどうした?」 痛みに目に涙を浮かべながらもフランを注意する。 すると、フランは自信満々に言った。 「レティ達なら置いてきたわ!本気を出せばそこらの妖怪なんて平気で振り切れるもの!!」 『フランドール・・・・・・・。』 フランの言葉に、無表情かつ冷静に育った彼には珍しく、ベイビィ・フェイスは呆れた様な表情をする。 「フランッ!!」 だが、メローネの怒鳴り声にフランはビクッと怯える。 おずおずとフランがメローネの表情を伺うと、その表情は明らかに怒っていた。 「ふざけるなッ!!今はそんな場合じゃないって分かるだろうッ!!」 本気で怒るメローネに、フランはおずおずと言い出す・・・・。 「うぅ・・・・、だって・・・。」 「だってじゃない!!」 メローネは一際大きい声で、フランを怒る。 だが、今度はフランは怯えるのをやめ、キッとメローネを見つめる。 「黙って聞いて!!」 フランは、メローネの目を見つめてはっきりとそう言った。 予想だにしていなかったフランの行動に、メローネは思わず怯んでしまう。 フランは拳をぎゅっと握り締めながら叫ぶ。 「わたしね!!自分の力、自分の為にしか使わなかったの!!自分が遊びたいから!!自分が気に入らないから壊してたの!! ずっと一人ぼっちだったからそれ以外の使う必要がなかったの!! でもね!今はメローネが外に出してくれたから、チルノとか大ちゃんとか、友達が出来たの!!お日様の下は無理だけど!! かくれんぼとかおいかけっことかはじめてして・・・・。」 フランは必死に、五百年近く生きてて、今までなかったくらいに必死に話す。 「一人じゃできないことって、いっぱいあったの!!遊びでもそれ以外でも!!私を閉じ込めてたのは、外が大変だからって事がわかったの!! お姉さまがいっぱいいっぱいわたしの分まで外で頑張ってくれてたってわかったの!! いままで私はいっぱいいっぱいお姉さまとか咲夜とかパチュリーとか美鈴に甘えてて!!」 感情が昂ぶりすぎて訳が分からなくなっているのか、フランの目から涙がポロポロとこぼれる。 「でも今の私は違うの!!レティを見てて思い出したの!!私は・・・今の私は・・・・『お母さん』だから!! お母さんは家族を守るものだって、ご本で読んだもの!!だからベイビィ・フェイスもメローネも、私が守るの!!」 そう言ってフランは、泣きながら笑う、吸血鬼に似つかわしくない、明るい笑顔だった。 「私の心配なら大丈夫よ!メローネよりベイビィ・フェイスより、ずぅっと私は強いんだから!!」 その表情を見て、メローネは呆気に取られる、ベイビィ・フェイスも同じような表情だった。 メローネとベイビィ・フェイスが顔を見合わせる。そして、お互いに呆れたような笑みを浮かべた。 「分かった、じゃあ手伝ってもらおうかな。」 『弾幕ごっこと同じと思っていると、痛い目に遭いますよ。』 「わかってるわよ!もう!!」 場の雰囲気に似合わない和やかさで、三人は森の中で笑いあった。 「あぁ・・・・もう!!」 ソルベから、バオーを見失ったと言う連絡を受けてレティは大妖精、それにチルノを連れて、森の中を低空で移動していた。 三人とも空を飛ぶのは慣れているので、木々の間をすいすいと飛んでいく。 よりによってそんなタイミングで、フランドールが何処かに行ってしまったのだ。 そのスピードはレティより遥かに早く、追いかけたがあっという間に見失ってしまった。 「とりあえずギアッチョと合流・・・・っ?!」 そう言ってレティは固まる。 「レティ?!どうしたの?!」 「レティさん?!」 固まったレティに、チルノと大妖精が声をかける。 レティは、わなわなと震える。 「そんな・・・ギアッチョ・・・ギアッチョ・・・・。」 彼女が感じたのは、ある一つの喪失感だった。 使い魔の契約のパスから流れてくるスタンドパワーを、一切感じなくなったのだ。 今は寒いため、レティはギアッチョのスタンドパワーを必要としていないが、それでも契約は続いているので、スタンドパワーがほんの少し供給されている。 その感覚が、急になくなってしまったのだ。 スタンドを失ったギアッチョは、ただの人間でしかない。 そんな彼が、バオーと遭遇してしまったら・・・・・。 また、既に遭遇していて戦闘との消耗の末、スタンドパワーがなくなってしまったとしたら。 「ギアッチョ!!」 レティは必死に希薄なったギアッチョの気配を辿り、飛んでいく。 チルノと大妖精も必死に、レティについていく。 「レ・・・レティさん・・・・、急にどうしたのかな・・・・?」 三人の中で一番力の弱い大妖精が、息も絶え絶えに言う。 すると、チルノはきょとんとしながら言った。 「大ちゃんわからないの?だめねぇ、そんなのだからいつまでたってもさいきょーになれないのよ。」 妖精としては破格の力を持つチルノは、平然としながら大妖精に答えた。 「な・・・・・、何・・・・?」 「"こいするおとめはないすぼーと”って奴よ!!」 自信満々に、チルノはそう大妖精に告げた 前へ 目次へ 次へ
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暗い闇の中、血の匂いがその狭い空間に広がっていた。 「ハァッ・・・・ハァッ・・・・・。」 リゾットは荒い息をつきながら、その空間に立っていた。 彼の身体はあちこちが食いちぎられており、骨が見えかけている部分さえある。 身体に対するダメージはほとんどないが、四肢はボロボロだった。 立てるのが不思議な程、彼はダメージを喰らっていた。 (暗殺者失格だな・・・・、仕留められないとは・・・。いや、むしろ人としては失格の方がいいのか・・・・?) ぼんやりとした頭でリゾットは思考する。 (それにしても・・・、紫達はまだか・・?) 少なくとも、自分が気を失う前には来て欲しい、とリゾットは思う。 『クッ・・・、まだ死なんのか・・・・。』 だが、妖怪もリゾットの攻撃に消耗しているのか、霞のようなその姿は、消えかかっている。 「どうした化け物・・・・、もう仕舞いか・・・・・?」 そう言って、リゾットはニヤリと笑う。 既に余裕などないのだが、不思議とリゾットの心は落ち着いていた。 その様子に、反対に妖怪の心に焦りが生まれる。 まるで自分に言い聞かせるように妖怪はリゾットに告げた。 『抜かせ・・・、既に貴様は満身創痍・・・。このまま放っておいても死ぬだろう。 私は呼吸は必要にない上、貴様が死んだらその肉体を喰らえば多少は回復する。味は不味いだがな。』 そう言って、クックックッと妖怪は笑う。 だが、リゾットはその様子を、鼻で笑った。 「ふん・・・・、そんな事を言えるのは貴様が幻想郷を知らないからだ。」 『何?』 リゾットは妖怪に返すかのように、フッと再び笑う。 「いいか?ここでは『異変を起こした妖怪は、人間に退治される。』それがここのルールだ。」 『何を言う、人間ごときに俺が倒せると思うか?』 それを聞いて、リゾットの瞳が妖怪を捉える。 その目には、瀕死とは思えない意志が見て取れた。 「倒せるさ。人間は、神も自然も滅ぼすんだ、化け物なんて滅ぼすのは簡単だろう?」 『馬鹿にしおって・・・・・・。』 どうやら、目の前の妖怪は自分に留めを指すことを決めたらしい。 リゾットもまっすぐ妖怪を見返す。 『うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』 だが、次の瞬間、リゾットが作った鉄の扉が破壊された。 氷の塊から降り、椛、ソルベ、ジェラートは地面で休んでいた。 二人はよほど疲れたのか、地面に寝転がり寝ている。 「?!」 突然、カッとジェラートの目が突然開く。 そして、ガバッと勢いよく起き上がった。 「ぐあっ?!」 おきがった拍子にジェラートの頭が、彼を抱きかかえていたソルベの顎に突撃する。 そして、キョロキョロと、辺りを見渡す。 ドンッとソルベを突き飛ばし、立ち上がった。 「ジェラート殿?!」 驚いた椛が、叫ぶがジェラートはそれを意に介さず辺りを見渡し続ける。 「聞こえる・・・・、匂う・・・・・・。」 そして、辺りを見渡す代わりに自分の掌を見つめた。 「戻った・・・・、全部!!全部!!」 そう言って、ジェラートははしゃぐ。 椛はその様子を呆然と見ており、ソルベはジェラートに手荒く扱われてのびている。 「あ・・・あの、ジェラート殿?戻ったとは・・・?」 すると、ようやく椛に気づいたのか、ジェラートはそちらの方を向いた。 「戻ったんだよ!!俺のスタンドが!!戻ってきたんだ!!」 そう言ってジェラートは満面の笑みを浮かべながら、椛に抱きつく。 「な!!ジェラート殿っ!!」 思わず、椛は大慌てして取り乱す。 ジェラートはそのまま椛を抱きかかえ、くるくると回り始めた。 「あはははははっ!!やったぁっ!!やったぁっ!!」 騒ぐジェラートに、おろおろとする椛。 そんな五月蝿さに、ソルベも目を覚ました。 「ジェラート!!気がついて・・・・。」 「ソルベ!!あれ出して!!」 心配するソルべに、ジェラートは椛を抱きかかえたまま、詰め寄る。 「は・・・・?」 「あれだよあれ!持ってるんでしょ?!」 ジェラートに物凄い勢いで迫られて、ソルベは彼に指定された物を胸のポケットから取り出した。 「ほ・・・ほらよ・・・。」 ソルベの手から放り投げられたのは、携帯音楽プレイヤーだった。 ジェラートは椛を地面に下ろし、それを受け取り、弄る。 「よし・・・、よし・・・!!いける!!」 そのジェラートの様子をソルベはしばらくぼうっと見ていたが、ハッとしてすぐに気を持ち直す。 「お・・・・、おい、まさか・・・・・!!」 「うん!スタンドが・・・・『サウンド・ガーデン』が戻ってきたんだ!!」 「バオーは?」 「落ち着いてる・・・・・、全然制御出来てる・・・・・。」 そう言って、ジェラートは満足げに、自分の手のひらを眺める。 「・・・・じゃあ、今の全員の状況も分かるか?」 「任せといて!!」 次の瞬間、ジェラートは高く高く跳躍し、そのまま森の木のてっ辺に掴まる。 「な・・・・・っ、ソルベ殿・・・・?ジェラート殿のあれは・・・?」 空を飛ぶ能力を使っている訳ではない、あれは純粋な運動能力だ。 それを聞いて、ソルベは椛に説明を始めた。 「・・・・元々、ジェラートはバオーの為に作られた人間だ。 つまり、ジェラートの身体とバオーの相性は、一寸の狂いも無くぴったりだった。 だが、俺とジェラートがこの肉体を与えられたとき、ほんの僅かな差異が生まれた。 どんな方法で俺達を生き返らせたかしらねぇが、その時、バオーも一緒によみがえった。 だが、その時ジェラートとバオーの身体に僅かな違いが生まれた。 それによって、相性が大きく変動しちまったんだ。 まぁ、それと『殺し』をしてなかったストレスも、あって制御できなかったんだ。 もちろん、今までも制御できなかった事はある、だが奴のスタンドで制御できたんだ。 今回は、万々歳だな。どういう理屈かわかんねえがスタンドも復活したし、いいだろ。」 長い説明に疲れたのか、ソルベはごろんっと地面に寝転がった。 一方、ジェラートは木の上に居た。 彼は感じ取る、その鋭敏な感覚で、仲間達の状態を。 「プロシュートとペッシは・・・・動いてないけど心臓の音・・・寝てるのかな? ギアッチョは血の流れが少し弱い・・・・でも大丈夫っぽいな。近くにホルマジオと・・・この止まった空気みたいなのはレティ? イルーゾォは・・・・相当重症みたいだけど・・・近くに誰かいるな?小柄な・・・女の子二人?アリスちゃんと魔理沙ちゃんだなぁ。 仲間達の状態をジェラートは『匂い』で感じ取る。 そして、まったく行方の分からないリゾットの居場所を、感じ取ろうとする。 だが、リゾットの気配は感じ取れない。この世界から、リゾットがすっぱり切り取られたようだった。 「・・・あからさまだな。」 しかしジェラートは気づいた。はっきりと分かる。 一部分だけ、すっぽりと『匂い』の分からない地域があるのだ。 視覚でも見えるし、嗅覚も、聴覚でもそこの部分は感じ取れるが・・・バオーの特殊な感覚は誤魔化せない。 「ソルベ!!リゾットのいる場所が分かった!!」 木の上から、ジェラートはソルべに叫ぶ。 それを聞いて、ソルベは飛び起きる。 「何処だ?!」 「それが・・・・方向はわかるんだけど、具体的な位置は・・・・・・。」 すると、椛が会話に入ってくる。 「ジェラート殿、それはどちらの方向でござるか?」 「あっちの方!!」 そう言ってジェラートは、指で気配が遮断された方向を指す。 「そうでござるか、ところでそれは幻術の類かどうか、分かるでござるか?」 椛の言葉に、ジェラートはしばらくんーっと考え込んだあと、首を振った。 「何ていうか・・・・、俺は詳しくないけど多分他の感覚は違和感がなかったから・・・何ていうか、そこがよく分かんなくなる奴じゃない? そこに行こうとか、そこにたまたま入っちゃうと、自然と外に出ちゃう感じだと思う。」 必死に無い語彙から、自分が感じ取った感覚を、ジェラートは説明しようとする。 だが、何となく椛は理解したらしい。 頷いて身体を浮かせ、空高く舞い上がった。 「ならば拙者の能力ならば・・・・・。」 椛は瞳を閉じ、精神を集中させる。 千里をも見渡す、彼女の能力が発揮される。 冷たい風が、彼女のほおを流れていった。 その風に促がされるように、カッと椛は瞼を開く。 彼女の視界は、森の木々を潜り、川を飛び越し、はるか彼方にたどり着く。 「あちらの方向で・・・・相当な数の人間の子供を隠せる場所・・・・。」 椛は風の速さで、周囲の様子を探っていく。 すると、森の中の目立たない位置にある洞窟を見つけた。 その中は暗く、視界で中の状況を捉えるのは難しいだろう。 「おそらく・・・・、ここだな。」 見当をつけ、椛はふわり、と地面に降りたった。 そして、椛はずっこけた。 「ソルベー、みんなの居場所分かったんだからスタンドで連絡してよー。」 「だーかーらー、駄目だって。誰かさんのせいでてこずって、スタンドパワーぜーんぶ使いきっちまったからな。」 「何だよー、それくらしか役に立たないのにさー。」 いきなり、二人はイチャついていたからだ。 「ソルベ殿!ジェラート殿!!」 椛はその二人の様子に、思わず叫んでしまう。 すると平然としてジェラートと答えた。 「心配しなくても大丈夫だよ、全員ボロボロだけど無事だから。」 「しかし・・・・・・。」 不満げな椛に、ジェラートは笑いかける。 「さっきね、全員の近くで変な風に空気が揺れたのを感じたんだ。真っ二つに割れて、突然別の空気がなだれ込む動き。」 椛はジェラートの言葉に小首をかしげた。 「イルーゾォ・・・ッ!!イルーゾォ!!」 自分を呼ぶ声と、上から落ちてくる雫に、イルーゾォはゆっくりと目を開いた。 そこには、見慣れた顔が、見慣れない表情でイルーゾォの顔を見ていた。 「アリス・・・・?何泣いてんだよ?」 瞳をぎゅっと閉じて、顔をくしゃくしゃにして泣いていたアリスは、その声にハッとして目を開ける。 「イルーゾォ?!気づいたの?!」 「大丈夫か?!」 気づかなかったが、魔理沙もいたらしい。 アリスと共に、イルーゾォの顔を覗き込んでいた。 「あぁ・・、俺気を失っちまったのか・・・・。」 そう言ってイルーゾォは起き上がろうとする・・・・が。 「ぐぅっ?!」 身体に走る鋭い痛みに、イルーゾォは悲鳴をあげた。 「動かないで!!腕が一本なくなってるし、血もたくさん無くなってるのよ!!」 アリスは泣いたまま、起き上がろうとするイルーゾォを抑える。 「傷口は一応薬を塗っておいたぜ。まぁ、私の薬だから永琳ほどの効果はないがな。」 そう言われてイルーゾォは自分の身体を見ると、血まみれだった上着は脱がされ、包帯などで治療されていた。 「ほら、あとこれを飲んでくれ。」 そう言って魔理沙は、丸薬と水の入った水筒を見せる。 「これ何だ?」 「霧雨印の増血剤だ。ほら、飲ませてやるから口を開け。」 魔理沙はそう言って、無理やりイルーゾォに薬を飲ませる。 「ん・・・んぅっ!!」 それを何とか飲み込み、イルーゾォは息をつく。 「う・・・・苦い・・・・な・・・。」 そう言って、イルーゾォは顔をしかめる。 「我慢しなさい!!馬鹿!!」 アリスは涙を堪えながら、イルーゾォを叱る。 だが、再び、顔をくしゃくしゃにして、泣き出した。 「もう・・・っ!!何やってんのよへタレのくせに!人間のくせに!イルーゾォの癖に!!」 泣きながら、アリスはイルーゾォの胸のぽかぽかと殴る。 「ちょ・・・アリス怪我人に・・・・・・。」 「うるさいわね馬鹿!!もう黙ってなさい!!」 「あ・・アリス!落ち着けよ!!イルーゾォマジでやばいって!!」 すっかり騒いでいる三人は、気づかなかった。 背後に迫る、空間に出来たスキマに。 ブオンと奇妙な音が、空気を振るわせる。 ジェラート達の頭の上には、リボンで結んだ奇妙な空間の切れ目が現れた。 「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」」 するとそこから、ぼとぼとっと大量の人間が落ちてくる。 下の方にはたいした怪我をしていない面々が、上の方には大怪我をした面々が。 スキマから現れたのは、暗殺チームとその他の面々だった。 「あ、皆来たー。」 のんびりとした調子でジェラートが落ちてきた一同に言う。 「お・・・おめぇ・・・・・・、紫・・・。集めてくれたのはいいがもう少し優しく落とせ!!」 一番下に下敷きなったプロシュートが、呻きながらスキマを開いた諜報人を呼ぶ。 「我が侭言わないで頂戴!私だって大変なんだから!!」 そう言って、一同が出てきたから隙間から、紫のドレスを風になびかせた、八雲紫が現れた。 しかしその髪はボサボサであり、ドレスの裾も汚れている。 その姿は普段の余裕に満ちた彼女からは想像できないものだった。 「はぁ・・・、結界を破るのだけでもうヘトヘトよ・・・。」 そう言って、紫は深いため息をつく。 その顔からは、疲労が見て取れた。 「ほら、あなた達も組み体操してないで降りなさい。」 そう言って紫は、積み重なった一同を、怪我した面々はそーっと、大した傷の無い面々をぽいっと降ろしていく。 「イルーゾォ!!ギアッチョ!!」 ジェラートは慌てて、重症の二人の元へ走っていく。 その際、思いっきりソルベを突き飛ばした時は気になっていないようだ。 「ごめん!!本当にごめん!!」 そして、その二人の前で頭を大地に撃ちつけるように、思いっきり土下座した。 その様子を見て、ギアッチョはイラついたように、イルーゾォは暗い瞳でジェラートを見る。 「まったくだぜ!!ったく・・・・・。まぁ、首に鉄がブッ指すよりマシだがな。」 「ドロドロに解かされるよりはマシだけどな・・・・、お前腕一本だぞ?臓器がどれくらいか相場は知ってんだろ?だったら腕一本てさぁ・・・。」 燃え盛る炎のようなギアッチョの怒りと底なし沼のようなイルーゾォの怒りをぶつけられてすっかり萎縮していた。 ジェラートは思いっきり萎縮してしまい、幽香に睨まれたリグルのようになっている。多分お嬢様のガードみたいな感じで萎縮してる。 「ったく・・・、大したことねえだろ腕の一本や二本。」 「兄貴・・・、そんなこと言えるのは兄貴だけですぜ。」 そんな二人の様子を見てため息をつくプロシュートに、ペッシがため息をつく。 「なっ!こーゆー時俺のスタンドは役立つんだよ!!」 「むぅ・・・、まぁ認めざるを得ないな・・・。」 ホルマジオは、嬉しそうにメローネに話しかける。 自分がほとんど無傷だったのを、メローネに自慢しているらしい。 「ふあぁぁ・・・・、いっぱい動いたから眠くなっちゃった・・・・・。」 フランはふわぁ、と大きなあくびをする。 「そろそろ朝だしね。・・・・皆無事で良かったわ・・・・・。」 レティはギアッチョが無事で安心したのか、ニコニコとしている。 「あたいお腹すいた・・・。」 「わたしも・・・。」 チルノと大妖精は、食べれるはずだったおやつにありつけず、お腹が空いてしまったようだ。 ほのぼのとした空気が、一同の間に流れる。 「「「何和んでるかぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」 次の瞬間、ほのぼのとしていた一同に弾幕が降りかかる。 「「「「のうわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」 それらの弾幕をかするもの、あたるもの、安置の場所にとっとと非難する物、あっという間に辺りは弾幕地獄になった。 それは開きっぱなしだったスキマから飛び出てきた藍と早苗、それに慧音の弾幕だった。 「何やってるんですか!!まだリゾットが戦っているんですよ?!」 「リゾットさん、きっと今頃大変な事に・・・・・敵の妖怪に変な事されるとか!!」 「リゾットが死んでしまったら私の生徒達も悲しむ!!何より私が・・・・・。」 行き成り飛び出てきた三人はがぁーっと一同に捲し上げる。 弾幕を喰らってさらに、ボロボロだった一同はさらにボロボロになった。 「そ・・・そうでござる!!リゾット殿が現在何処にいるか、目星がついたでござるよ!!」 椛はスクッと立ち上がり、叫ぶ。 弾幕を避け切れなかったため、先ほどよりもかなりボロボロになってしまっていて恰好がつかないが。 「あら、居場所なんてもう分かってるわよ。」 あっさりと紫に言われてコケッと思わず椛はずっこける。 せっかくカッコよく決めたのに、やはり大妖怪には敵わないようだ。 「ただ、その結界がひどく強力なのよ・・・・・・。力の大半を使い果たした私がその結界を打ち砕くのでは遅すぎ・・・・。」 そう紫が言おうとした瞬間。 「・・・・・?あんた達、こんな所に大集合して何やってんのよ?」 はるか上空から、一同に声がかけられる。 闇の中で存在を主張する、赤と白の衣装。 その髪は夜より黒く、重力に捕らわれることなく、ふわりふわりと浮いている。 「霊夢!!」 魔理沙は思わず、その友人の名前を呼んだ。 「・・・・何だか見かけない顔ばかりね・・・・。」 少し機嫌悪そうにそんな事をいいながら、博麗の巫女はふわりと地面に降り立った。 背中には、なにやら重そうな物を背負っている。 よく見ると、上にかけられた黒い布から、銀色の髪が見えている。 「リゾット!!」 その正体にいち早く気づいたソルベが、霊夢に駆け寄った。 他の動けるチームの面々もリゾットの元に大急ぎで駆け寄る。 「わりぃな嬢ちゃん・・・、そいつはうちの身内だ。手間掛けさせたな。」 「そうなの?じゃあ早く連れ帰りなさい。大怪我してたから、一応応急処置はしたわ。」 謝るソルベに、霊夢は淡々とした様子でリゾットを渡す。 「メローネ!運ぶぞ!!」 「りょーかい。」 そう言って、メローネとソルベは、そぉっとリゾットを運ぶ。 よく見ると、霊夢の服には、包帯かた染み出たリゾットの血がついていた。 「悪いな・・・、服は弁償させてもらうわ。」 ホルマジオが、霊夢に謝る。 すると、霊夢はませた様子でそれに答える。 「別にいいわよ。どうせまた霖之助さんに作ってもらえばいいんだから。」 霊夢はそう言うなりふんわりと再び空を飛ぶ。 「あら、もう行くの?」 紫は、宙に浮いた霊夢に声をかける。 「まぁね、今回の異変の結界は厄介だったけど、妖怪自体は大したこと無かったわ。・・・・・そうだ、あんたに渡そうと思ってたのよ。」 そう言って霊夢は、紫に小瓶を放り投げた。 紫は少し慌てた様子で、その小瓶を受け取る。 その小瓶には、蓋の部分を覆うようにお札が貼られていた。 「今回の異変の妖怪。私じゃ退治しきれないから、封印しておいたの。あんたに任せるわ。」 そして霊夢はんーっと伸びをし、あくびをする。 「あー・・、まったく。もうそろそろ夜が明けちゃうじゃない・・・。てこずらせてくれたわ。じゃあね。紫。」 それだけ言い残して、そのまま霊夢は、博麗神社へと帰ってしまった。 すると、リゾットの治療をしていた魔理沙が、ふと呟いた。 「・・・なーんかさ。」 その言葉に、治療の手伝いをしていたホルマジオが答える。 「どうしたよ?」 魔理沙ははぁっとため息をついた。 「事情は分からないけどよ、この怪我から見てリゾットの大将、相当ねばって戦ったんだと思うぜ。 なのに霊夢にあっさり手柄奪われちゃうのは・・・・・何かなぁ・・・・?」 魔理沙の不満げな言葉に、同じようにリゾットを治療していた早苗が頷く。 「そうです!!リゾットさん一生懸命に頑張ったのに・・・・・。」 「おいおいおい・・・・、早苗。てめえは何にも分かってねぇなぁ。」 そんな早苗に、プロシュートが声をかけてきた。 紫にスキマで出してもらったのか、お気に入りの煙草を吸いながら、早苗を見下ろしている。 「こいつはな、任務を成功させる為なら命張れる男だ。こいつだけじゃない俺達は全員そうだ。」 そう言って、プロシュートは煙を吐く。 「リゾットは、多分相手と自分の能力の相性が悪いと自覚した瞬間、時間を稼ぐことを決めたんだろうな。 腕がもげようが、足が取れようが・・・・・どんなにみっともなくとも、時間を稼ぐ。 そうすりゃ誰かが、確実にそこへ来てくれる状況だったからな。それが任務を果たすのに一番確実だ。 そう判断したから、こいつはこんな怪我をしてんだ。哀れまれる理由はねえよ。」 プロシュートの言葉に、魔理沙は神妙な、早苗は複雑そうな顔をする。 「ま、何はともあれ、これで・・・・全部解決ってことか?」 藍に治療の術をかけられながら、ギアッチョが疲れたため息をつく。 その傍では、レティが心配そうに治療の様子を見ていた。 「・・・・事後処理を考えなければな。」 憂鬱そうに、普段結界の管理をしている藍が答える。 「大丈夫です藍様!私もお手伝いします!!」 橙はペットショップとドルチの治療をしながら、胸を張りながら藍に言った。 「・・・妖怪の山も、揺れそうですな・・・・。」 おそらく、当事者として自分に待ち受けているであろう後々の事を考えて、椛も憂鬱そうな顔をする。 「俺、絶対映姫さまに怒られるよ・・・・。頑張ったつもりけど多分絶対一人くらい殺しちゃってるし・・・・・。 しばらく地獄行きかな・・・?それとも・・・・・・・・。」 「ジェラートは大丈夫だろ・・・、不可抗力だし。それより俺達の方が・・・。」 ジェラートは怒り狂った映姫を想像しビクビクと怯え、ペッシこれから待ち受けるであろう説教に頭を抱えた。 「もう!!今度心配させたらあんたを蝋人形にするわよ!!」 「分かってる・・分かってるって・・・・。」 まだ泣きながら怒っているアリスの頭を、イルーゾォは困ったような顔をしながら撫でつづける。 「メローネ・・・、眠くなっちゃった・・・・。」 「あたいも・・・・眠い・・・。」 「チルノちゃん、フランちゃん・・・寝たら迷惑・・・・でも・・私も眠い・・・。」 「寝ちゃいなよ。家には俺達がちゃんと送っていくからさ。ベイビィ・フェイス、日傘。」 『はい、メローネ。』 うとうとしているフラン達に身体を預けられて、メローネは苦笑する。 ベイビィ・フェイスは朝日が昇ってきたときの為に、フラン用の日傘に変身する。 「はぁー、疲れた!!色々ありすぎてすっげぇ疲れた!!」 おそらく今日一番色々としたであろうソルベは、疲れを誤魔化すように叫ぶ。 「私は一足先に人里に戻らせてもらう。皆が心配しているだろうからな。」 慧音は、紫にそう告げた。 既に日が昇り始めたせいか、彼女の角と尻尾はなくなっていた。 「あら・・・、リゾットが心配じゃないの?」 「・・・・・意地悪なことを言わないうな。」 ニヤニヤしながら言う紫を、慧音は恨めしそうに見る。 そして、そのまま何かを振り切るように、一気に人里の方向へと飛び立った。 「ま、今日は働きついでに全員スキマで送ってあげるわ。それくらいはまだ出来るからね。」 紫の言葉に、一同が歓声を上げる。 既に、空は白み始めていた。 そんなばら色になる空を背景に、一同を見ている二人の影。 「あややややや・・・・・、随分大変みたいだったですねぇ。」 「そうね。」 その影は、天狗の新聞記者 射命丸文と、厄神 鍵山雛だった。 「さて、私は行くわ。」 くるり、と一回点して雛は空に浮く。 「いいんですか?」 「いいのよ。彼らは厄・・穢れの塊のようだから、少し気になっていたのだけど心配なさそうだわ。 だったら私の役目は、あの妖怪に触れて厄を受け取ってしまった子供達の厄を引き受ける事。」 そう言って、厄神はくるりくるりと舞うように、人間の里の方へと飛んでいった。 一人になり、素の口調に戻り、文はため息をつく。 「はぁ・・、私も多分事後処理で厄介なことになるわね。」 だが、彼女は笑った。 「ま、それでもこの大スクープは独り占めだからいいか。」 文は笑いながら、パシャッとシャッターを切る。 その写真には、ボロボロになった一同の和やかな時間が閉じ込められた。 前へ 目次へ 次へ
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「はぁっ・・・・はぁっ・・・・・!!」 ギアッチョは必死に空を飛んでいた。 地上を逃げていては、おそらくバオーに掴まるだろう。 幸い、自分は曲がれないが飛ぶ速度は早い。 スタンドパワーが切れた以上、これ以上戦闘を続けるわけにはいなかった。 そして、しばらく飛んだ後、そこで止まり後ろを振り返る。 「ま・・・撒けたか・・・・?」 息も絶え絶えになりながら、ギアッチョは言う。 こんな風に空を飛ぶのは、ギアッチョにとって滅多にない。 弾幕勝負などほとんどする機会はなかったし、訓練でも被弾ばかりしていた。 「くそっ・・・・・、他の奴らは大丈夫か・・・・?」 もはやスタンドパワーを失った彼は、ただの青年である。足手まといでしかない。 「せめて多少の・・・・・・・・・。」 息を落ち着けさせた所で、ギアッチョはスタンドを出そうと精神を集中させる。 スタンドと精神はリンクする。先ほどまでは余裕がなかったが、落ち着いたので多少は回復しているはずだ。 「ホワイトアルバ・・・・・・・っ?!」 ギアッチョは気配を感じ後ろを振り向く。 次の瞬間、ギアッチョの横を、三日月型の刃が通り過ぎていった。 「・・・・っ!!やっぱり撒けなかったか!!」 ギアッチョがそうぼやく。 おそらく、バオーは地上から自分の匂いを辿ってきたのだろう。 攻撃があたらない、と言うことはまだ明確な場所 「ホワイトアルバムが装着できれば・・・・・クソッ!!」 毒づくが、ギアッチョにはどうしようもない。 ソルベのスタンドパワーが切れた今、今は仲間との連絡手段もないのだ。 彼に出来る事は、この場から一刻も早く逃げ出すことだ。 ふたたび、ギアッチョは空を全力で飛行する。 調節が苦手な彼が飛ぶ姿は、さながら弾丸のようである。 だが、弾丸は何かに当たるまで、止まることはない。 「ぐあっ!!」 「きゃっ!!」 そして、ギアッチョは空中で見事に何かにぶつかってしまった。 「っ!!」 敵かと思い、ギアッチョはすぐに体制を立て直す。 だが、その相手は、突然ギアッチョに抱きついてきた。 「うわっ!!」 「ギアッチョ!!無事でよかった!!」 そう叫ぶのは、聞きなれた女性の声。 彼にぶつかったのは、チルノ達を連れて非難していたはずのレティだった。 「レティ!どうしたんだよ?!」 ギアッチョは驚いて、腕の中のレティに話しかける。 すると、レティは目に涙を浮かべながら言う。 「だって・・・・スタンドパワーが切れたから・・・・・・。」 どうやらレティはギアッチョのスタンドパワーがきれたのを感じて、飛んできたらしい。 「馬鹿!!あぶねぇのは分かってるだろう!!」 「うるさい!!あなたの方が心配よ!!今はただの人間なんだから!!」 怒るギアッチョに、負けじとレティも言い返す。 ギアッチョの胸板を、ぽかぽかと殴る。 「お・・おい!!こんな事してる場合じゃねえんだよ!!」 「うるさい!うるさい!」 そんなやり取りをするレティをギアッチョを、チルノと大妖精はどきどきしながら見ていた。 「本当に・・・!そんな場合じゃねえっつってんだろ!!」 ギアッチョは乱暴に、ドンッとレティを突き放した。 「きゃっ!!」 ソレを見て、大妖精とチルノはギアッチョに突っかかろうとする。 「お前!レティに何すんだ!!」 チルノはレティを庇う様に立ちふさがり、大妖精はよろけたレティを支える。 だが、ギアッチョはふんっとその様子を鼻で笑い、振り返りもせずに下に下りていった。 「何だあいつ!!」 チルノは冷たいギアッチョの態度に憤る。 「レティさん、大丈夫ですか?」 突き飛ばされたレティを、大妖精が気遣った。 「私は大丈夫・・・、それより早くギアッチョを追いかけなくちゃ・・・・。」 「レティ!あんな奴ほっとけばいいのよ!」 それでもギアッチョを追おうとするレティを、チルノは止める。 だが、レティはチルノの声を聞こうとはしない。 「駄目!!」 そう叫んで、レティはチルノと大妖精の静止を振り切り、ギアッチョを追う。 「待ってください!!」 「どうしてレティ!!」 二人も慌てて、レティを追う。 「二人とも・・・、どうしてギアッチョが、私たちに一度も背中を一度も見せなかったか分かる?」 「え・・・・・?」 レティは苦々しげに、顔をゆがめる。 (もうっ・・!!私の馬鹿!!冷静にしていればすぐに分かったじゃない!ギアッチョが何かから逃げてるって事・・!!) つまり、自分達はギアッチョの逃走の邪魔をしてしまったのだ。 そして、ギアッチョは決してこちらに背中を向けなかった。 「お願い・・・!!間に合って・・・!!」 そう言って、レティは必死に森の中に入っていったギアッチョの気配を探った。 「あぁ・・・、クソッ!!こんな所で終わりかよ・・・・。」 そうぼやいて、ギアッチョは地面に降りる。 その背中には、三日月型の刃が、ざっくりと刺さっていた。 幸い、肺にも脊椎にも当たっていないが、治療しないと致命傷な事には間違いない。 「あの時とどっちがマシだって話だな・・・・・。」 ギアッチョは、自分が死ぬ寸前の事を思い出す。 あの時はスタンドパワーも切れておらず、なおかつ相手もただのスタンド使いである。 「あー、あっちの方が断然マシだな・・・クソッ、まあ、お前ほどじゃねえだろうけどなぁ、ジェラー。」 そう言って、ギアッチョは目の前に立っている、バオーに話しかけた。 化け物が何を考えているか分からないが、何故かまだ、止めを刺されずにいる。 もしかしたら、ジェラートが精一杯抵抗してくれているのかもしれない。 「こーゆータイミングで、誰か助けに来てくんねーかなー・・・・。まぁ無理・・・・。」 ギアッチョがぼやいた瞬間、空から大量に巨大なツララが落ちてきた。 バオーはそれを避けるため、ギアッチョから距離をとる。 だが、次の瞬間、バオーの上にちょっとした建物ほどもある巨大な氷の塊が落ちてきた。 「大丈夫か?!ギアッチョ!!」 そう言って草むらから飛び出してきたのは、ホルマジオだった。 「なっ・・・・ホルマジオ!!チルノ達と合流しやがったのか?」 「・・はぁ?ちげえよ・・・、アレは・・・・。」 キエーーーッと声を上げて、ギアッチョの前に降り立ったのは、自分達を散々な目に合わせた鳥だった。 「ペットショップ?!」 思わずギアッチョは、大きな声を上げてしまう。 「俺もいるぜー。」 そう言って、ペットショップの背中から、ぴょこっと猫が顔を出す。 「ドルチ?!何やってんだてめぇ!!」 予想外の展開に、ギアッチョはただただ驚くばかりである。 「いやいや、ペットショップが突然家に来て、『闘争の匂いがする、だが俺は夜は目が効かん、手伝え。』とか言ってこうやって無理やり駆り出されたってわけだ。」 そう言って、ドルチはニャアと鳴く。 「まあこうやってあんたらが助かったから、俺としては結果オーライ何だが・・。 何だかよく分からないが、どうやら自分は助かったらしい。 ギアッチョは安堵の息をつく。 「っ?!」 だが、緊張が解けた瞬間、一気に鋭い痛みが背中を襲う。 「ぐうっ・・・!?」 「おい!急に動くな!!」 そう言ってホルマジオは、ギアッチョの背中を見る。 「おいおい・・・、こりゃ相当深く刺さってるぞ・・・。抜いたら血が出ちまうから、そのまましばらく我慢するんだな。」 「マジかよ・・・・。」 今更、痛みに思考が追いついてきた。 「とにかくソルベを探してとっとと・・・・・。」 次の瞬間、ピシィッと、何かに罅が入ったような音が聞こえた。 振り返ると、バオーを押しつぶした氷塊に、罅が入っている。 「・・・やべぇ!!逃げろ!」 そう言うなり、ホルマジオはギアッチョに肩を貸し、逃げ出す。 一方、ペットショップとドルチは空高く舞い上がり、様子を見る。 「クア?」 ペットショップが、様子を報告するようドルチに促がす。 「あぁ、氷塊に罅がどんどん入っている。多分、割ってでてくるんじゃねえか?」 ドルチの報告に、ペットショップは頷く。 そして、彼の後ろに同じように羽ばたくは、骨の怪異のヴィジョン、ホルス神である。 ペットショップの周囲に、次から次へと先ほどと同じくらい巨大な氷の塊が現れる。 次の瞬間、バオーを閉じ込めていた氷が割れる。 間着かずに、ペットショップは氷の塊を地面目掛けて発射した。 木々をなぎ倒し、巨大な氷の塊が次から次へと落ちていく。 だが、ペットショップは容赦なく、氷の塊を発射する。 気がつくと、周囲は氷の塊で埋め尽くされていた。 木々は無残にも押しつぶされてしまい、氷が解けたあとはまるで戦場のあとのようだろう。 「まあ、こんだけやりゃあ奴さんも逃げるのに時間が掛かるな・・・・・。むしろ他の奴らがだいじょうぶなのか・・・?」 この惨事に、ドルチは呆れにも近い感情を覚える。 一方、ペットショップは何処か得意げな表情だ。 「こんだけやればすぐにここで何かあったか分かるだろうし・・・そろそろ帰ろうぜ?」 いい加減疲れたのか、ドルチがそうペットショップに言う。 ペットショップも気が済んだのか、暗殺チーム邸に飛んでいこうと旋回する。 次の瞬間、ペットショップの翼を、何か針のような物が貫いた。 「ギャッ?!」 「ペットショップ?!」 ボッと言う音が聞こえたかと思うと、その針は翼に突き刺さったまま、燃え出した。 「ギッ!!」 ペットショップは針を凍らせ、とっさに全身が燃え上がることを防いだが、そのまま落下していってしまう。 「お・・・・おい!!!!」 ドルチが慌てるが、どうにもならない。 ペットショップも必死にバランスを整え、落下速度を落とそうとするがどうにもならない。 このままでは、氷に激突してしまう。 「ちぃっ!!」 舌打ちして、ドルチはひらりとペットショップの背中から降りた。 ペットショップの首根っこを掴み、空中でくるんくるんと回転する。 そして、足の爪を立て、なんとか氷の上に着地することに成功した。 だが、何本か足の爪がやられたのか、足元の氷が赤く染まっていた。 「はぁ・・はぁ・・・・・。」 思わぬ急展開に、ドルチは荒く息をつく。 どうにかして生き残れたが、このあとが問題だ。 そう思いながら、彼は別の氷塊の上に佇む、バオーの姿を見た。 どうやら先ほどの針は、こいつの仕業らしい。 「あの化け物みたいなペットショップがやられるなんて・・・・清く正しい猫の俺にどうしろってんだよ?!」 どう考えても、勝てるはずがない。 「くそっ・・・!!」 見逃してくれればありがたいが、そうも行かないらしい。 こちらにどんどん近づいてくるバオー。 出来れば逃げたいが、負傷して移動できないペットショップを見捨てるわけにも行かない。 「あぁ!随分とお猫好しになったもんだ!!」 悪態をつきながらも、動けないペットショップをかばうようにドルチはバオーを威嚇する。 意味など無いと分かっていても、彼はその行為をやめる気はなかった。 そんな彼の前に、突然、風が巻き起こった。 「ふむ、猫ながらも中々でござるな。」 「何だと!お前!猫を舐めるなよ!!」 そう言ってドルチの前に立ったのは、黒の耳と二つの尻尾を持つ少女。 さらに、白い耳と尻尾を持つ少女が、巨大な剣でバオーに切りかかっていた。 「橙・・・!」 「大丈夫か?逃げるぞ!!」 そう言って橙は、ドルチとペットショップを抱える。 「任せたぞ犬天狗!!」 「犬ではござらん!白狼だ!!」 橙は二匹を抱えて、その場から離れる。 一方、椛はバオーと退治していた。 彼女の鼻は、目の前の怪異がジェラートであることを証明していた。 「ジェラート殿!!目を醒ましてくだされ!!」 椛が語りかけるが、バオーは容赦なく両腕についた刃を振り下ろす。 それを椛は、盾で受け止める。 「ふっ!!」 そしてバオーのわき腹を狙い、刀を薙ぐ。 だが、その剣はバオーの肌を傷つけるだけで決定的な攻撃にはならない。 「くっ!!」 舌打ちをしながら、椛は後ろに跳び、バオーから距離をとる。 バオーも椛を強敵と見ているのか、むやみに追撃をしようとはしなかった。 (何と言う強度だ・・・。片腕ではとても・・・・・。) そして椛は冷静に、現在の状況を見極める。 足元が氷なのは障害にはなりえない、彼女は普段からすべりやすい滝の近くの警備をしており、そこで鍛錬を積んでいるからだ。 純粋に問題なのは敵だ。 おそらく報告を受けてきた妖怪が目の前のアレなら、多少の対策は考えてあるが・・・。 そして、椛は様子見のために弾幕を放つ。 渦潮のような青い弾幕が、バオーに襲い掛かる。 だが、バオーは見事に弾幕の間を潜り、椛に接近をする。 (よし・・・、距離をとれば・・・?!) 椛がそう思った瞬間、バオーの頭部から椛に向かって何かが発射された。 獣の反射神経で、椛はとっさに盾でそれを防御する。 河童の技術で作られた特殊素材の盾が、いとも簡単に貫かれる。 完璧に貫通はしなかったが、それでもその針が恐るべき強度を持っており、かなりの速度で放たれたことがわかる。 そして椛がその針に触れると、その針は一気にボウッと燃え上がった。 (これは・・・・、受け損ねたら仕舞いか・・・。しかしあの肌を貫こうとするなら両手で刀を構えなければ・・・・。) 椛が考えあぐねていると、突然肩に、ふわりと青い蝶が舞い降りる。 それは椛には見えなかったが、何かの気配が現れたことを、椛は感じ取っていた。 『よぉ椛!妖怪が妖怪退治か?!』 突然耳元で聞こえたソルベの声に、椛は驚く。 「ソルベ殿?!一体どこに・・・・。」 『あぁ、お前らが戦っているのが見えるとこまで来てるんだが・・・。このバタフライも最後の一匹でなぁ、正直真正面から戦える状態じゃない。』 椛は弾幕を放ち、バオーを牽制しながらソルベと会話する。 『だが、一応そっちに頼りになる奴が向かってるからな。そいつに指示をしてやってくれ。』 次の瞬間、バオーの乗っていた氷塊が、赤い光りで真っ二つに切り裂かれた。 バオーはとっさに、すぐ一つ向こうの氷塊に飛び移る。 「あー!!逃がした!!」 『フランドール、それではジェラートを殺してしまいます。』 そう話すのは、光り輝く宝石のような羽を羽ばたかせる少女に、その背に背負うのは異形の赤子。 満月を背景に、二人は無邪気な笑みを浮かべる。 その姿に、椛は驚愕する。 「な・・・・悪魔の妹?!フランドール・スカーレット?!」 「いえす!あいあむ!!」 椛の言葉に、フランはビシッとポーズを決める。 『自分はメローネのスタンド、ベイビィフェイスです。以後お見知りおきを。』 「あ、これはどうもご丁寧に。拙者は犬走 椛でござる。」 丁寧なベイビィ・フェイスの言葉に椛も思わず返す。 『知っています、以前ジェラートと戦っている所を見ていましたから・・・・。』 「それはそれは、失礼いたした。」 『いえ、気にしないでください。』 「ちょっと!!何話してるのよ!!」 フランドールの言葉に、二人は戦闘中であったことを思い出し、ハッとする。 フランはその強烈な弾幕で、バオーを見事に抑え込んでいた。 「あれをやっつけるんでしょ?あんたはどうするつもりだったの?」 フランは、先ほどまで戦闘していた椛に話を聞く。 「あぁ・・・、接近できればおそらく致命傷を与えられるんだが・・・・。」 「殺しちゃ駄目なんでしょ?!」 「無論だ!!拙者とてジェラート殿を殺すつもりはない・・・。だが、奴の動きを止める術を思いつかないのだ・・・。」 そう言って椛は歯軋りをする。 「ベイビィ・フェイス、あいつバラバラに出来る?」 フランは今度は、ベイビィ・フェイスに尋ねる。 『そうですね・・・・、自分の能力は直接触れなければならないので、やはり難しいです。』 おそらく、近づいて攻撃できたとしても相手をバラバラにするまでに彼はやられてしまうだろう。 『それだったら安心してくれていいぜ。』 「「「うわっ!!」」」 突然聞こえてきたソルベの声に、三人は思わず叫ぶ。 『人の事忘れんなよ、いくらベイビィフェイス以外に姿が見えないとはいえ・・・。』 「びっくりしたー・・・・。」 「す・・すまないソルベ殿?それで?何か策でも?」 ドキドキする心臓を押さえながら、フランと椛はソルベに問いかける。 『まあな、バオーはまだ氷の上にいるんだろ?』 「うん、今は私と椛の弾幕で抑えこんでるよ。」 ソレを聞いて、ソルベは満足したらしい。 『じゃあ丁度いい、スタンドパワーも弾薬もないなら、身体一つで勝負だからな。』 バタフライ越しに、ソルベが笑ったのを三人は感じる。 「何か手段があるの?」 『あぁ、ナイスポジションだ。バオーを今の場所から、動かないようにしておいてくれ!! そうそう!あとフランドールの嬢ちゃんは飛んだままでいる事!いいな?!』 そう言って、青白い蝶は風に乗って消えていった。 「今の場所・・・かぁ。このまま弾幕だと避けてるうちに移動しちゃうよね?」 「ならば拙者が再び白兵戦を挑むでござる。フランドール殿は弾幕を放ちつつあいつの飛ばす針を破壊してくだされ。ベイビィ・フェイス殿は拙者の援護を。」 そう言うなり、椛は弾幕を放つのを止め、まっすぐバオーの方へ跳ぶ。 慌ててベイビィ・フェイスも、その背中に飛び乗った。 椛は盾を捨て、両手で刀を構える。 「防御のサポートを頼む!!」 『了解しました。』 そう二人が会話した後には、既に椛はバオーの目前に迫っていた。 「はぁぁぁぁっ!!」 思いっきり振りかぶった刀に体重をのせ、バオーに振りかざす。 バオーはそれを、右手で受け止めようとする。 「?!」 だが、予想以上に威力があったのか、あわてて両腕で刀を受け止めた。 そのままバオーと椛は、つばぜり合いする形となる。 しかし僅かにバオーの力が上だったか、椛はその攻撃を弾かれることとなった。 そこに、バオーの好きが出来る。 『はぁっ!!』 ベイビィ・フェイスがバオーに向かって拳を振り下ろす。 だが、ベイビィ・フェイスに向かってバオーの頭部から、針が飛んできた。 「させないっ!!」 次の瞬間、弾幕の檻を作っていたフランが、針をその視界におさめる。 拳を開き、握る。 「キュッとして・・ドカーン!!」 ベイビィ・フェイスに届く前に、その針は粉々になって風に飛んでいった。「おー、やってるやってる。」 ソルベは大量の氷塊がならぶ、森の一角までやってきていた。 氷はちょうどいい具合に溶け出し、表面は水に包まれている。 そして、ソルベは足音も立てずに、バオー達が戦っている氷塊の元へくる。 「はーっ・・・・。」 一つ、息をついてから、ソルベは拳を構える。 それはまるで、中国拳法のような構えだった。 そしてその体制のまま、ソルベは奇妙な呼吸を始める。 たった一秒の間に、十回も呼吸をするのだ。 ソルベの身体の中に、膨大なエネルギーが溜まりつつあった。 紅魔館の門番がみたら、驚いただろう。何と膨大な量の陽の気だ、と。 「いまだ!椛!飛べ!!」 下から聞こえてきたソルベの言葉に、ベイビィ・フェイスは椛の背に飛び移り、椛は空へと舞い上がる。 そして、椛が飛び上がった瞬間、ソルベは拳を氷塊へと突き上げた。 「オーバードライブッ!!」 膨大な量の陽の気・・・・波紋が氷の表面の水を流れる。 そして、それは氷の上に立っていた、バオーへと伝わる。 「?!?!?!?!?!」 全身に走る不可解な電流に、バオーはもがく。 だが、ソルベは容赦なく、波紋を氷に流し続ける。 「ジェラート!!しっかりしろ!!」 そう叫んで、ソルベはさらに水に波紋を流し込む。 「あ・・・・・・・・・・が・・・・。」 バオーが、声を発した。 次の瞬間、長く伸びた髪の毛は短くなり、腕に着いた刃は消えうせる。 額の赤い複眼状の触覚は引っ込み、肌は硬いそれから、やわらかい人間の肌へと戻っていく。 「・・・・つぁっ!!」 ソルベが声を上げて、氷から手を離す。 「はーっ・・・はーっ・・・、ちくしょー・・・、久々にやったからうまくいったか・・・・?」 荒い息をつきながら、ソルベは氷の上をみる。 すると、上にいる人影が、倒れるのが見えた。 「ジェラート!!」 ソルベは疲労した身体に鞭打って、飛翔する。 そして、倒れこんだジェラートを何とか腕の中に収めた。 元の姿に戻ったジェラートはバオーになることでエネルギーを使ったのか、疲労した様子でソルベの腕の中で眠っていた。 その様子を、フランたちは空の上から見ていた。 ソルベは三人に手を振り、もう大丈夫だと告げる。 ゆっくりと、椛とフランが降りてくる。 「ソルベ殿・・、ジェラート殿は・・・?」 「平気だ、気を失ってるだけだ。」 そういいながら、ソルベはジェラートの頭を撫でる。 「じゃあ、私メローネとチルノちゃん達のところ言ってくる!!」 「あぁ、ついでに他の奴らも呼んできてくれ。多分ここの近くにいると思うから。」 「分かった!!行こう、ベイビィ・フェイス。」 『はい、フランドール。』 フランドールに呼ばれ、ベイビィ・フェイスは彼女の背中に飛び移る。 そして、メローネとチルノ達を探しに、二人は森の中へと消えていった。 「あー、もう駄目だ。本当に一匹もバタフライだせねーし、久々に波紋使ったから節々痛いし・・・・。」 そういいながら、ソルベは巨大な氷の上に座る。 椛もその隣に座り、ジェラートの顔を覗き込む。 「ジェラート殿が起きたら真っ先に謝らねば・・・・・・。」 椛は耳と尻尾を垂らしながら、落ち込んだ様子で呟く。 「あー、是非ともそうしてくれ。でも、出来たらでいいぜ。」 「?」 以前とはまったく違うソルベの反応に、椛は小首をかしげる。 その椛の仕草に、ソルベは笑いを浮かべる。 「あんたも知ってるだろうが、こいつの感覚は獣以上だ。あんな状態になっても、ちゃーんとあんたが自分の為に何をしてくれたか分かってるのさ。」 ソルベの言葉に、再び椛はジェラートの顔を見る。 その顔は、どこか幸せそうな寝顔だった。 前へ 目次へ 次へ
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わたしの声が、聞こえますか? あなたの心に、届いていますか? ここは暗くて、寒くて、誰もいません。 誰の声も、聞こえません。 淋しいです……。 わたしを見つけて下さい。 わたしの声を聞いて下さい。 わたしを、必要として下さい……。 それとも……、 あなたの心に、もうわたしはいないんですか……? 「――という訳で、遅れに遅れていたシン君の紋章機なんですが、よーやく最終調整が完了したそうです」 「本当ですか!?」 好々爺然とした笑みを浮かべた初老の男、エンジェル隊司令官ウォルコット中佐の通達に、シン・アスカ――ではなく隣のミルフィーユ・桜葉が目を輝かせた。 「はい。先程本部から連絡がありまして、もう間もなく第一格納庫に搬入される予定です」 「わーい! やったぁー!」 ウォルコットの言葉をあたかも自分のことのように喜ぶミルフィーユの傍で、しかし当のシン本人は、まるで事態が呑み込めていないかのように赤い両眼を白黒させていた。 「な、ちょ……俺の紋章機って、えっ!?」 事実、司令官の言葉はシンにとってはまさに青天の霹靂、寝耳に水とも言える突発的かつ衝撃的なものだった。 自分専用の紋章機……? 何だそれは、俺はそんなことは一言も聞いていないぞ!? 「やったね、シン君!」 困惑するシンの心情に頓着することなく、ミルフィーユが満面の笑みを浮かべてシンを振り返る。 「今日からシン君もわたし達と同じ、正義の味方ギャラクシーエンジェルの仲間入りだねっ!」 そう言って屈託なく笑いかけるミルフィーユに、シンは思わず口を噤む。 それがいけなかった。 「アスカの紋章機かぁー。見に行こ、見に行こう!」 「やっぱ最新型なんだろーねぇ……どんなモンが来るのか楽しみだよ。特に主砲とか、ミサイルポッドとか、レーザーとかバルカン砲とか」 「銃の話ばかりですわね、フォルテさん。でもアスカさんの機体が気になるのはわたくしも同じですわ。搬入は第一格納庫でしたわね……」 「……神の祝福を」 「あー、皆さんズルイです! わたしも行きます、待って下さーい!」 ぞろぞろと格納庫へ見物に出掛けるエンジェル隊の仲間達を、ミルフィーユも慌てて追いかける。 ブリーフィングルームには、シンとウォルコットの二人だけが残された。 「これで貴方も名実共にギャラクシーエンジェル隊の一員ですよ、シン君。頑張って下さいね」 期待しているような笑顔で激励の言葉を口にするウォルコットから、シンは思わず視線を逸らした。 「紋章機は、ありがとうございます……。俺、頑張ります……!」 絞り出すように口にした感謝の言葉は、酷く歪で、震えていた。 紋章機を、「戦う力」を与えて貰えるというのは純粋に嬉しかった。 これまでミルフィーユ達に守られるだけだった自分が、これからはミルフィーユ達の隣で共に戦うことが出来ると考えると、それだけで心地よい充足感が胸の中に満ち溢れる。 今度こそ何かを守れるかもしれない、という期待に酔い痴れてしまいそうになる。 ただ一つだけ、たった一本だけ残った小さな不安の棘が、シンの心の奥に深々と突き刺さっていた。 「あの、中佐……デスティニーは、どうなるんですか?」 遠慮がちに尋ねるシンを見下ろし、ウォルコットは何の感情も読み取れぬ仮面じみた笑みを浮かべたまま――、 「シン君。これからは貴方の紋章機、GA-X01〝トゥルーデスティニー〟が貴方の機体です」 と、答えになっていない答えを返すだけだった。 わたしの声が、聞こえますか? あなたの心に、届いていますか? ここは暗くて、寒くて、誰もいません。 誰の声も、聞こえません。 でもあなたの声だけは聞こえます。 暗い闇のずっと奥、冷たい壁の向こうにあなたを感じています。 だって、あなたは〝わたしの世界〟そのものなんですから……。 あなたは、どうですか? わたしの声が聞こえていますか? わたしを感じてくれていますか? それとも……、 あなたの世界に、もうわたしはいないんですか……? 「ぅわっ、赤い!?」 「ぬをっ、青い!?」 「いえいえ、ちゃんと白いですわ」 バラバラの声を上げる蘭花とフォルテ、そしてミントの科白通り、その紋章機は青く、赤く、そして白かった。 蒼を基調とした胴体に鮮やかな紅の両翼、更に本体後部のスラスター部分は純白と、トリコロールカラーが見事に調和している。 トゥルーデスティニー、それがこの機体の名前だった。 鋼鉄の翼を左右に広げ、背中の大剣を尾のように後方へのばした刃金の巨鳥、〝真の運命〟と名付けられたシンの剣となり翼となる新型紋章機に、その場の誰もが見惚れていた。 「うわぁ、綺麗……」 感嘆の声を零す傍らのミルフィーユに、目の前の新しい機体を見上げていたシンは大いに同意した。 喜悦と戦慄を混ぜ合わせたような、とにかく〝熱い衝動〟が全身を駆け巡る。 懐かしい感覚だった。 最初にこの感覚を体験したのは、アカデミーを卒業してすぐ、「アーモリーワン」のモビルスーツ・ハンガーで初めて〝インパルス〟を見た時のことだった。 二度目は自分の力が議長に認められ、〝モビルスーツのデスティニー〟を与えられた時、そして今回が三度目だった。 エンジンは停止しているというのに、こうして見上げているだけでトゥルーデスティニーの息吹を感じる。 本能的にシンは理解していた……この機体は「強い」と。 自分とトゥルーデスティニーなら、「エンジェル隊のシン・アスカ」なら、「ZAFTのシン・アスカ」に出来なかったことが出来るような気がする。 今まで守れなかった何かが、守れるような気がする。 そんな増長すらも抱いてしまう程に、シンはこの〝新しいデスティニー〟に魅せられ――、 〝古いデスティニー〟の存在は、いつの間にかシンの心から消え去っていた……。 誰もわたしを見てくれません。 誰もわたしの声を聞いてくれません。 ここは暗くて、寒くて、誰もいません。 誰の声も、聞こえません。 誰もわたしを助けてくれません。 あなたもわたしを助けてくれないんですね。 わたしの声は、もうあなたには届かないんですね……。 あなたの心に、もうわたしはいないんですね。 あなたの世界に、もうわたしはいらないんですね。 だったら……、 わたしも、こんな世界はいらないです……! ――轟! まるで直下型の地震でも起きたかのように、格納庫が――否、エンジェル隊基地全体が大きく震撼する。 「うわぁ、っと!」 「きゃあ!?」 バランスを崩し、床に倒れ掛かるミルフィーユを、シンが咄嗟に抱き止める。 「何だ……隕石か!?」 非常警報がけたたましく鳴り響く中、通路脇の手摺で身体を支えながら周囲を見回すフォルテに、ウォルコットが「いいえ」と首を振った。 「――事態はもっと深刻なようです。管制室からの報告なんですが、第二格納庫に未確認のロストテクノロジー反応が突如出現、保管していた機動兵器を奪って脱走したそうです」 「「「「「「!!」」」」」」 ウォルコットの言葉に、その場の全員が息を呑んだ。 エンジェル隊基地には複数の格納庫とカタパルト・デッキが点在する。 紋章機専用に設計され、エンジェル隊の機体が――トゥルーデスティニーも含めて――全て納められた、この第一格納庫。 そして第二格納庫に保管――否、封印されている機動兵器というのは――、 「デスティニー……!」 真紅の双眸を限界まで見開いたシンが、乾ききった唇で呟いた科白は、背後の紋章機とは似て非なる〝愛機〟の名前。 「機体が着いて早々ですが、早速出番がやって来ましたね。シン君?」 放心したような顔でその場に佇むシンを横目で見遣り、ウォルコットが有無を言わさぬ口調で声をかける。 ウォルコットは続いてミルフィーユ達エンジェル隊員を見渡した。 「――ギャラクシーエンジェル、出動! ロストテクノロジーに寄生されたZGMF-X42S〝モビルスーツ・デスティニー〟を回収、もしくは破壊しなさい」 「「「「「了解!」」」」」 第一格納庫に高らかに響くウォルコットの命令に、ミルフィーユ達は敬礼で応えた。 ここは地球から遥か何万光年も離れた銀河の果て、トランスバール皇国。 古代文明の遺産〝ロストテクノロジー〟の回収を主な任務とし、銀河の平和と安全を守るために日夜戦い続ける特殊部隊が存在した。 その名は――ギャラクシーエンジェル! 六人目の翼を新たに加えた銀河の天使が、今、無限の宇宙に飛び立とうとしていた……。 ――続く 次へ進む 一覧へ
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『各紋章機、全システムの起動を確認』 『ハッチ開放、カタパルトを展開。射出推力正常です』 着々と進められる発進シークエンスの状況報告を、シン・アスカは受領したばかりの新しい自分の機体、紋章機トゥルーデスティニーのコクピットで聞いていた。 周りを囲む全天周モニターには、機体コンディションや環境情報、その他様々なデータのウィンドウが表示されては消えていく。 メインシステムから呼び出した操縦マニュアルを流し読みしながら、シンは静かに出撃の瞬間を待つ。 操縦桿を握る両手は、じっとりと汗ばんでいた。 『――緊張してますか? アスカさん』 新たなウィンドウが目の前に展開し、通信用ヘッドセットを着けたミントの顔が映し出される。 シンを新たに加えたエンジェル隊の管制のため、ミントはオペレーターとして基地に残ったのだ。 「緊張? ……ああ、緊張してるさ」 『あら? 意外と素直なんですね』 あっさりと肯定の返事を返すシンに、ウィンドウの中のミントが意外そうに目を瞬かせる。 拍子抜けしたような表情を浮かべるミントに「俺を何だと思ってるんだ」とぼやきつつ、シンは表情を引き締めた。 「戦闘機に乗るのはコアスプレンダー以来だからな……久し振りだし、そもそも慣れてないし、実戦が演習通りにいかないのは身を以て知ってるし」 それに……と続きそうになった己の言葉を、シンは寸でのところで呑み込んだ。 今はおしゃべりに興じているような時ではないし、出撃前の今この場で話すような内容でもない。 緊張を殺ぐような真似は慎まなければならない、気を引き締めなければ墜とされるのはこちらなのだ。 『アスカさん?』 怪訝そうな顔で首を傾げるミントに「何でもない」とぶっきらぼうに返し、シンは操縦桿を握る両手に力を籠めた。 思考を戦場の兵士のそれに切り替え、「話は終わりだ」とばかりにウィンドウから逸らした視線を正面に固定する。 『ラッキースター、カンフーファイター、ハッピートリガー、ハーベスター、トゥルーデスティニー、各機発進準備完了。カウントダウン開始します』 発信シグナルが次々光を灯し、最後の一つが――点灯した。 『進路クリア。ギャラクシーエンジェル隊、発進どうぞ』 「シン・アスカ、トゥルーデスティニー行きます!」 力強い掛け声と共にシンはフットペダルを踏み締め、両手の操縦桿を前方へ押し出した。 機体背部のバーニアから噴射炎を吐き出しながらトゥルーデスティニーが銀河に飛び発つ。 カタパルトから射出されたトゥルーデスティニーの左右を、左右から四機の紋章機が取り囲む。 右側に並ぶのは長距離砲を装備した機体と猛禽の爪のような左右のアンカークローガ特徴的な紋章機、ミルフィーユが乗るラッキースターと蘭花が駆るカンフーファイター。 左側を飛ぶのは過剰な程の重火器類が目立つ重武装機と楯のような円盤状のパーツを装着した機体、フォルテの愛機ハッピートリガーとヴァニラが操るハーベスター。 エンジェル隊の紋章機に左右を護られながら、トゥルーデスティニーは光の軌跡を残しながら虚空を翔ける。 『やっほー、シン君! 初めての紋章機はどうですか?』 僚機との通信チャンネルが開き、展開されたウィンドウの中でミルフィーユが朗らかに笑った。 ミルフィーユに続くように新たなウィンドウが次々と表示され、フォルテや蘭花、そしてヴァニラとノーマッドの顔が映し出される。 『初陣なんだ。素人があんまり無理するんじゃないよ?』 『そうそう。目立とうなんて生意気なことは考えんじゃないわよ、アンタはアタシ達先輩の背中にしっかり隠れてれば良いんだから!』 『まぁそんなこと言われて大人しく引き退がる貴方でもないでしょうけどね。寧ろ敵を見つけた瞬間真っ先に突撃するのは目に見えてます。 どうせ何を言っても無駄でしょうから敢えて何も言いませんから、お荷物にならない程度に勝手にやって下さい。フォローはしてあげますから』 『……神のご加護を』 『シン君、頑張ろうね!』 それぞれの形で激励の言葉を贈る仲間達を見渡しながら、シンは力強く首肯を返した。 「お荷物になんてならないさ……デスティニーは俺が止める、このトゥルーデスティニーでな」 シンの返答に、ウィンドウの中のミルフィーユ達も満足そうな顔で頷いた。 自分にとって、デスティニーとは何なんだろうか……トゥルーデスティニーのコクピットに座り、全天周モニターの端に表示されたマップを眺めながら、シンはふと自問した。 マップの中央で明滅する赤い光点に、五つ固まった青い光点が少しずつ接近している。 青い光点が自分達エンジェル隊、そして赤い光点がこの任務の目標――ZGMF-X42S、通称モビルスーツ・デスティニー。 果たしてデスティニーは自分の何だったのか、シンは再び己に問う。 ギルバート・デュランダルの野望〝デスティニー・プラン〟の象徴、〝インパルス〟の代わりに与えられた「戦う力」、ZAFTの技術の粋を集めた最強の兵器……。 運命と名付けられたあの機械仕掛けの巨人を表す「記号」ならば、他にも様々な言葉が当て嵌まるだろう……だがそれらは決して、今自分が求めている「答え」ではない。 シンがデスティニーへ向ける感情は複雑だった。 好きか嫌いかと問われれば躊躇いなく「嫌い」と即答するだろう、それどころか憎んでいると言っても過言ではない。 だが同時に、シンがあの機体に精神的に依存し、短い間ながら同じ戦場を共に駆け抜いたあのモビルスーツに愛着を感じていることもまた事実だった。 だから余計に分からなくなる……。 ZAFTどころかコズミック・イラという世界そのものから離れた今、自分が未だデスティニーに執着している理由が。 トゥルーデスティニーという新たな「戦う力」を手に入れた今、デスティニーを壊すことに躊躇いを感じる理由が。 自分にとって、デスティニーというモビルスーツは一体何だったのか……。 どれだけ考えても、悩んでも、その「答え」を見つからない、寧ろ考えれば考える程袋小路に迷い込んでしまう。 否――もしかしたら初めから、「答え」など存在しないのかもしれない。 ただ一つ、だけ分かっていることがある――デスティニーは「兵器」だ。 戦う力、人殺しの道具……たとえどのような言葉で形容しようとも、デスティニーが「兵器」であることに変わりはない。 そしてシン・アスカの定義する「兵器」とは、決して――、 「あなた達は一体、何なんですかぁぁぁぁーーーっ!!」 ――決して、逆ギレ気味の雄叫びを轟かせながら宇宙警備隊の巡航艦隊を対艦刀で薙ぎ払う、モビルスーツ級に巨大な謎の少女ではない。 「いい加減にぃ……っ!」 繰り返そう。 デスティニーは断じて、腹立ちまぎれに長距離砲を乱射する身長十数メートルはあるモビルスーツ級の巨大少女ではない。 「終わらせるんです……何もかもを!!」 ……決して、八つ当たりで宇宙艦隊を壊滅させるモビルスーツ級な(以下略)。 ないと言ったら、ない……と信じたい。 『シン……そろそろ気は済んだかい?』 ウィンドウの中のフォルテが、同情するような視線を送りながらシンに尋ねる。 フォルテの問いを受け、シンは現実に立ち返った。 「……ああ、そうだな。もう大丈夫だ」 まるで己に言い聞かせるように呟きながら、シンは片手で顔を覆った。 指の隙間から覗く真紅の瞳の奥では、眼前の「理不尽な現実」への明確な敵意が焔となって揺らめいている。 『うわぁ……何かちょっと見ない間にすごく可愛くなりましたね、あの娘』 スピーカーから流れ出る感嘆したようなミルフィーユの声が、今のシンには酷く耳障りなものに感じられた。 「……うるさい」 固く噛み締めた奥歯の隙間から、苦々しそうな呟きが零れ落ちる。 『ホント、見違えちゃったわぁ……あれもロストテクノロジーの影響なんでしょうかね? フォルテさん』 『さぁねぇ……でも素質は最初からあったと思うよ? ちょっとしたきっかけで大化けするからねぇ、女ってのは』 「うるさい……!」 再び紡ぎ出される拒絶の声。 目の前の現実から逃げるかのように顔を伏せるシンに、しかし追い討ちをかけるように非情な言葉が次々と突き刺さる。 『それで、どうするつもりですか? シン・アスカ。撃つんですか、撃たないんですか。いや、それ以前に――貴方に彼女が撃てますか?』 『神よ、罪深き者達をお赦し下さい』 「うるさいうるさいうるさぁぁぁーーーぁいっ!!」 その瞬間、我慢の限界を突破したシンの絶叫が銀河に木霊した。 癇癪を起こした子供のように喚き叫ぶシンの視線の先には、鋼鉄の鎧を纏い刃金の翼を広げた、クロガネの巨人―― 「デスティニー……」 ――っぽいコスプレをした、女の子がいた。 かつての愛機の変わり果てた姿を目の当たりにし、シンの目尻に涙が浮かぶ。 『取り敢えず、「鉄腕少女デス子」とでも命名しときましょうか』 『あ、それ良い名前ですね蘭花さん。デス子ちゃんっぽくて可愛いです』 まるで他人事のように目の前のデスティニー(のなれの果て)に勝手に名前をつける蘭花とミルフィーユに、シンは本当に泣きそうになった。 『気持ちはお察ししますが、アスカさん……』 ウィンドウの中のミントが、憐憫と呆れを混ぜ合わせたような顔で息を吐いた。 『――前、見た方が良いですよ?』 「へ?」 ミントの言葉に顔を上げたシンの目に、その時飛び込んできたものは――至近距離で対艦刀を振り下ろす、デス子(蘭花命名)の姿だった。 「このぉぉぉーーーっ!!」 「のぉぉぉーーーおっ!?」 デス子の怒号とシンの悲鳴が、その瞬間ぴたりと重なった。 慌ててシンは操縦桿を倒し、フットペダルを全力で踏み込む。 瞬間、トゥルーデスティニーの機体が蜻蛉を切るようにその場でくるりと一回転し、勢い良く振り上げられたブレード状の尾がデス子の対艦刀を弾き返した。 衝撃でデス子が仰け反った隙に、シンはバーニアを最大噴射、機体を後退させてデス子との距離を稼ぐ。 『お見事ですわ』 『なんつー出鱈目な……』 曲芸紛いの機動で敵の奇襲を凌いだシンにミントが賞賛の言葉を贈り、蘭花は舌を巻いたように唸る。 「紋章機……ギャラクシーエンジェル隊……」 それまでの荒々しい咆哮とは打って変わったような抑揚の無い声で呟きながら、デス子は虚ろな瞳で五機の紋章機を見渡した。 右手の対艦刀を背中の鞘に戻し、代わりに黒光りする無骨なライフルを取り出す。 「あなた達がいるから、あなた達みたいなのがいるから……」 ライフルを握る右腕をゆっくりと持ち上げ、眼前の「敵」にぴたりと銃口を固定する。 シンと同じ紅蓮色の瞳に憎悪と敵意の光を宿し、デス子は次の瞬間、躊躇なく引き金を引いた。 「ちぃ……問答無用かい!」 次々と虚空を奔るビームの銃弾を躱しながら、フォルテが苦々しげに舌打ちする。 目標は明らかな敵意を持って自分達エンジェル隊に攻撃を仕掛けてきた、言葉による説得は望めないだろう。 戦闘による目標の捕獲、または撃墜しか選択肢は無い。 「気は進まないんだけどね……」 サイズこそ紋章機並ではあるが明らかに「人の形」をした目標を撃つことに、良心の呵責を感じない訳ではない。 しかし軋む己の心から敢えて目を逸らし、フォルテは前を見据える。 割り切れなければ、死ぬのは自分達なのだ。 「ギャラクシーエンジェル隊、戦闘開始! 目標、敵――えーと――デス子!!」 「「「「了解!!」」」」 フォルテの号令を合図に、エンジェル隊の反撃が始まった。 ――つづく 前に戻る 次へ進む 一覧へ
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シナリオ攻略 第26話 『冥府への転落』 勝利条件 前編 敵の全滅。 後編 アブドラU6の撃墜。 敗北条件 前編 ボスの撃墜。 後編 味方戦艦の撃墜。 甲児の撃墜。 インサラウムによるアブドラU6の撃墜。 SRポイント獲得条件 後編 3ターン以内に他のケドラ、インサラウムを全て撃墜した後、アブドラU6を撃墜する。なお、それまでに双方の敵部隊が互いを1機も撃墜しないようにする。 初期配置・増援 前編 初期 初期味方 ボスボロット(ボス) 初期敵 アブドラU6(機械獣) 初期敵 グロイザーX10(人工知能)×12 初期敵 タロス像(人工知能)×12 後編 初期 初期味方 タワー(隼人) 初期味方 プトレマイオス2(スメラギ) 初期味方 マジンガーZ(甲児) 初期味方 ボスボロット(ボス) 初期味方 出撃選択×20 初期敵 アブドラU6(ケドラ) 初期敵 グロイザーX10(ケドラ)×12 初期敵 タロス像(ケドラ)×12 初期第3軍 サフィアーダ(ウェイン) 初期第3軍 人造次元獣アダモン(人造次元獣)×2 初期第3軍 次元獣ライノダモン改(制御次元獣)×3 初期第3軍 次元獣ブルダモン改(制御次元獣)×6 初期第3軍 次元獣ダモン改(制御次元獣)×8 敵データ 前編 初期 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP ユニット数 獲得ボーナス 備考 アブドラU6 機械獣 38 (19050) 4(4) 1 - グロイザーX10 人工知能 37 (6650) 5(3) 2800 6 12 - タロス像 人工知能 37 (5650) 4(4) 2500 4 12 - 後編 初期 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP ユニット数 獲得ボーナス 備考 アブドラU6 ケドラ 39 (37050) 4(4) 10000 18 1 - グロイザーX10 ケドラ 37 (6650) 5(3) 2800 6 12 - タロス像 ケドラ 37 (5650) 4(4) 2500 4 12 - 初期第3軍 機体名 パイロット LV HP 最大射程(P) 獲得資金 PP ユニット数 獲得ボーナス 備考 サフィアーダ ウェイン 39 (36900) 7(4) 12500 24 1 DMユニット MAP兵器 人造次元獣アダモン 人造次元獣 38 (19550) 7(3) 6500 10 2 - D・フォルトHP回復(小)EN回復(小) 次元獣ライノダモン改 制御次元獣 38 (12550) 7(3) 3500 8 3 - 次元獣ブルダモン改 制御次元獣 38 (8150) 6(3) 2700 6 6 - 次元獣ダモン改 制御次元獣 37 (6150) 5(-) 2200 4 8 - イベント・敵撤退情報等 前編 2PPを迎えるor敵ユニットを4機撃墜で強制終了。後編へ。難易度ノーマルだと、気合と加速を使って西方面に動かせば1EPの反撃で4機撃墜可能。 ABを得た状態ならば勇気+気合+狙撃をかけて西のタロス像の前に配置すると、最初のタロス像の攻撃(南東)がちょうど射程4になるので熱血をかけた反撃で落とせる。あとはくろがね五人衆で反撃して残り三体を落とせばいい 後編 ブラスタが出撃すると会話イベント。「SPIGOT-VX」が使用不可。「SPIGOT-VX」封印は本シナリオのみ。次話以降は問題なく使用できる。 敵軍VS第3軍の交戦による最初の撃墜で会話イベント。被撃墜ユニットがインサラウムかケドラかにより内容が異なる。 攻略アドバイス 敵軍はMAP南西から東、第3軍はMAP西から北東にかけて展開。アブドラU6は南東の岩山、ウェインは北西に位置する。 初期配置と、1PPでの戦力の振り分けが重要。 SRポイントを狙うなら、部隊を北西と南東に分ける必要があり、特に北西には火力が必要。スーパー系を多めに出すとよい。ウェインに加えて、ライノダモン3体とアダモン2体がいる北西側の方が厳しいので、こちらに多めに戦力を分けよう。 ウェインとアブドラに「脱力」が有効なので、「脱力」使いを多めに出すと、少し楽になる。 敵軍と第3軍は攻撃し合うので、PPや資金を稼ぐなら注意。初期配置の北東と南西に、シン、アスラン、ゲイナー、アレルヤなどを2機1組で配置し、それぞれ北東と南西に向かわせれば、敵軍と第三軍との衝突は、ほぼ避けられる。 SRポイントを狙う場合、MAP北東のタロス像がダモン改に近く、危険。足の速い機体を北側に配置し、1PPのうちに沈めておきたい。アクエリオンをある程度改造してあれば、MAP北東のタロス像を、初期配置(北東)から無限拳で処理できる。アポロの気力135、武器改造2段階、難易度Hardで撃墜可能を確認。 あとはどれだけ効率良く反撃で削り、落とせるかがポイント。SRポイントを取得するなら、3PPで終了するMAPなので、SPは積極的に使用してよい。 サフィアーダはもちろん、アブドラU6も「ガード」+岩山(防御+15%)で中々に固い。アブドラは北方向、すなわちMAP西側に誘導すれば、3PPには岩山の外に出せる。自軍を南に進ませすぎず、西に多めに進ませればよい。 「脱力」を使える回数が多い(6回程度以上)なら、ウェインとアブドラ(ケドラ)のうち、一方の気力を限界まで下げるよりも、両方の気力を130未満まで下げたほうが、スキルを封じることができるので、効果的。 戦闘前会話 前編 初戦闘:ボス 後編 ケドラ(アブドラU6):甲児、ボス、シモン、號、クロウまたはランド ウェイン:クロウ、ランド 隣接シナリオ 第25話 『終わらない約束』 第27話 『ゼロVSゼロ』