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ここは地獄、といって罰を当てる場所ではなく事務仕事などを行う建物である。 そこは地獄の住民の居住区に立っており、地獄の暗いイメージとはかけ離れており燦燦とした何かしらの術による幻の太陽が降り注いでいる。 「相変わらず、気持ち悪ぃな・・・・。」 生まれつき死神ではないプロシュートにとってその光景に違和感が拭えない。 緑はあまりに緑で、光は理想の心地よさでありすぎる。 「家が外で良かったぜ・・・・・。」 そう言ってプロシュートは、手元の書類を見る。 どうやら、今度は幽霊を捉える妖怪が現れたらしい。 魂をコレクションするのが目的らしいのだが・・・・・・。 おそらく、そういう手合いは幻想郷に来る前から死神は大いに相手にしているだろう。 と、なるとおそらくそいつが対応できない相手、つまり自分達が借り出されるかもしれない。 「面倒だなぁ・・・・、代わりにあいつらが・・・って片方のスタンドが戦闘向けじゃねえのか。」 新しくこちらに来た親衛隊の二人を思い出し、プロシュートはため息をついた。 最近、うちのチームは、リーダーの調子がおかしいことで、色々と大変なのだ。 そして、歩いていると向こうから映姫がこちらに歩いてくる。 どうやら午前の分の裁判は終わったらしい。 「プロシュート。」 映姫が彼に気づいたのか、話しかけてくる。 「少し時間はありますか?話したいことがあるのです。」 「おー、別に構わないぜ。ちょうど書類渡し終わったら休憩だしな。] そう言って、二人は場所を移動する事にした。 場所は変わって、ここはカフェテラス。 食堂とは違い、オープンカフェ形式でお洒落な雰囲気で、女性には人気があるのだが飯はめっぽう不味い。 サンドイッチやデザート類などはまだいいのだが、カレーはお母さんが水の分量間違えてドロドロになっちゃったカレーのような味である。 なのでプロシュートは、エスプレッソだけ頼み、映姫は紅茶と季節のかぼちゃのムースを頼んだ。 「で?話って何だ?」 帰りにジャンプ買って帰ろうとか、どうでもいいことを考えながらプロシュートはカップに口をつけた。 「それは・・・リゾットの事です。」 映姫の言葉を聴いて、プロシュートはどうでもいい思考をやめた。 「リゾットが・・・・どうした?」 「最近、彼はおかしくありませんか?」 「・・・・・・・・・どの辺が?」 プロシュートのそういわれると、映姫は話し出した。 「・・・・仕事の書類は誤字脱字だらけ、何もないところで転ぶ。 うっかりコーヒーをこぼす・・・・・・。仕事中に居眠りをする・・・・・。」 彼らしくないミスだらけだと、映姫は呟いた。 「そうなんだよなぁ・・・・・・・。最近寝坊しまくるから、朝飯も俺達が準備してるし。多分、あいつ寝てないな・・・・・・。」 そう言ってプロシュートは、小さくため息をついた。 「まさかこの間のアレであんなにダメージ喰らうなんてな・・ったく。」 「この間の・・・・?何かあったのですが。」 映姫の言葉に、プロシュートは面食らったような顔をする。 「・・・・・・知らないのか?すっかりあの鏡で知ってると思ったぜ。」 「・・・私だって部下のプライベートくらい守りますよ。大体、浄瑠璃の鏡は過去を見る鏡ですから。」 そう言って映姫はやれやれ、と呟いた。 「で?この間の・・・と言うのは?」 「あぁ、実はこの間、そっちにも報告したけどよ・・・・・・・。」 プロシュートは、この間のチルノとフランが家に来た時の話をした。 「・・・・・なるほど、そう言うことですか。」 それを聞いて、映姫は納得したように頷いた。 「しかし、困りましたね・・・・・・・。」 「何でだよ?まぁ、確かにミスは多いがしばらくガキから離して置けば・・・・・。」 「いえ、それが、上の方からあなた達に特別任務が来てまして・・・・・。」 「・・・・・・何で日本でハロウィンをやるんだよぉぉぉぉぉ!!」 そう、吸血鬼の格好をしたプロシュートが悲鳴を上げた。 その日の晩、暗殺チーム一同は、上から用意された衣装に着替えていた。 「ハロウィンで家を回る子供達の護衛ねぇ・・・・・。大体リアルで妖怪とかいるのに仮装する意味はあるのか?」 包帯をグルグルと全身に巻いたホルマジオが、思わずぼやいた。 「まぁ、確かに夜の人間の里にはよく妖怪がいるしなー。大人はともかくガキは危ないんだろ。」 そう言って猫の耳をつけたソルベはぼやいた。 その隣では気に入ったのか、ずっとジェラートが自分につけた狼の尻尾と耳を触っている。 「・・・楽しそうだなぁ、ジェラート。」 「うん、もみちゃんとお揃いだから、後で見せに行くんだー。」 「そうかそうかー。」 無邪気に言うジェラートに対し、ソルベからドス黒い気が漂う。 「男の嫉妬は見苦しいぞ、ソルベ。」 「解ってる・・・解ってるぜ・・・・プロシュート。狙い打つぜ・・・。」 「解ってんならそのライフルを閉まってこい。護衛なんだから近接戦闘することを考えて拳銃とショットガンだけで十分だろ。」 プロシュートはポンッとソルベの肩を叩いて落ち着かせようとする。 「大体よぉ、俺たちまでくだらない仮装に付き合わなくちゃいけないのかよ・・・・。」 ギアッチョはめんどくさそうに、頭についた悪魔の角をいじった。 「あら?いいじゃない。それにギアッチョ、とっても似合っててかわいいわよ?」 そう言って白い丈の短い着物に、薄い青の帯のレティがギアッチョを褒める。 「ところでレティ、その服、どうした?人形サイズの服なんて・・・。」 「メローネが作ってくれたのよ。サイズ測られるのはお姉さんちょっと恥ずかしかったわー。」 いやーんといっておどけるレティに、ギアッチョはメローネに対して殺意の波動を燃やしていた。 「俺は結構こういうの好きだなぁ。」 そう言って頭にボルトをつけたペッシが楽しそうに笑う。 「うぅ・・・・・どうせハロウィンなら皆に似合いそうな衣装・・いっぱい用意してたのに・・・。」 「おめーのはコスプレだろうが!!!」 魔法使いのローブを着たメローネに、ギアッチョがつっこんだ。 ローブの下にはシャツを着ており、星のマークのついた金色の止め具で前をとめている。 「あれ?そういえばリーダーとイルーゾォは?」 ペッシはそう言ってキョロキョロとあたりを見渡した。 (ぜひ、ここから先は荒木先生の絵柄で想像することをお勧めいたします) 「おまたせー。」 そう言ってイルーゾォは上から降りてきた。 「おせぇ・・・・・・・。」 文句を言おうとしたプロシュートは言葉を失った。 むしろ、イルーゾォのその姿を見て全員が言葉を失った。 赤い衣装に、銀の鎧のようなパーツ。 頭部を覆うマスクにはトンボのような巨大な目がついており、それをさらに銀色の、羽根のようなパーツが覆っている。 そして全体のあちこち、龍をイメージしたであろう装飾がされている。 そう、それはまさしく・・・・・・。 「仮面○イダーりゅ・・・・・・・。」 「わーわーわーわーわー!!」 思わず呟きそうなったギアッチョの口をメローネが塞ぐ。 「・・・・鏡にちなんだモノを探した結果がこれだよ!」 やけくそ気味にイルーゾォが叫ぶ。 すっかりマスクドライダーのレイヤーさんになったイルーゾォの後ろでは、マン・イン・ザ・ミラーが龍の昇りを棚引かせていた。 地獄の上層部は、何を考えてこの衣装を彼の支給したのだろうか?よっぽど特撮好きの閻魔なのだろう。 「本当にその格好でいくのか・・・・・?」 「仕方がないさ・・・、仕事だし・・・・。」 ホルマジオの問いかけに、盛大にため息をついてイルーゾォはうな垂れた。 「妖怪に襲われた瞬間に、武器が折れるかもしれないから気をつけろよ?」 「何の話だ、何の。」 メローネの言葉に、イルーゾォが疲れたように言った。 (何度も繰り返しますが、ぜひ、ここから先は荒木先生の絵柄で想像することをお勧めいたします。) 「みんな、待たせたな。」 全員がイルーゾォの格好について騒いでいると、リゾットもやってきた。これで全員揃った。 「リーダー、遅い・・・・・・・・・・・・。」 リゾットの声がした瞬間、、一同は言葉を失った、背景はベタフラになる。 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・・・・・・・・・・・と言う音が、どこからともなく響き渡る。 そこには、二メートル近い巨大メタリカが、立っていた。 ?! 驚愕の表情のまま、全員の動きが固まる。 「リ・・・・・リゾット・・・・・?」 おそるおそるソルベが話しかける。 「何だ?」 巨大メタリカから、リゾットの声が聞こえてくる。 「着ぐるみか・・・それ?」 「あぁ、そうだが。」 そういってのったのったと、巨大メタリカが一同の方へ歩いてくる。 「・・・・それ、中から見えてるのかしら?」 「よく見えないが、気配は感じれるので問題ない。」 レティの呟きに、淡々とリゾットは答える。 「ほら、早くいくぞ。早く行かないと指定の時間に遅れてしまう。」 そう言ってのったのったと巨大メタリカが入り口の方に向かった。 「い・・・・いや待て!!それはだめだ!!」 次の瞬間、ギアッチョがリゾットを止めた。 「どうしてだ?」 「あーそれはあれだ・・あんたのキャラ的な問題というか・・・・あれだ!!そんなんじゃ戦闘に支障がでるだろ!!」 何がわるい、と言わんばかりのリゾットを、必死にギアッチョが説得しようとする。 「しかし、特に問題はないぞ?意外と軽いし・・・・・。」 「いいから着替えやがれこの野郎!!」 何故かメタリカの着ぐるみを脱ごうとしないリゾットを、無理やりプロシュートが剥ごうとグレイトフルデッドを出現させる。 「俺はこれ以外、仮装衣装なんて持ってないし任務なのだから・・・・。」 「そんなもの仲間に無理やり脱がされたって言え!仮装ならあんたの任務用の服なら十分仮装だぞ!!」 「解った・・・・・。」 そう言って巨大メタリカはのしのしと自室に戻っていく。 「寒いからきちんとコートの下に服を着るんだぞ!」 「その服はうっかりメタリカ発動させちまったとでも言って切り裂いとけ!」 仲間たちは思い思いの台詞を言ってリゾットをせかせる。 そして、その後いつもの任務のコートの下に白いハイネックの服を着て戻ってきたのを見て、彼らは安堵のため息をついた。 「わーすげー!なにこれ!!」 「俺外の本で見たことあるぜ!!」 「ねー、私のリボンしらない?!」 「あーん!!たろうが殴ったー!!」 暗殺チームの面々は、既に帰りたくなっていた。 目の前には、あちこちの里からやってきたという幻想郷中の子供と言う子供が集められていたのだ。 どうやら、この行事はあちこちの里の子供達の交流を深めるための行事らしい。 「はいはい!静かに!!」 パンパンッと手を叩く声と、女性の声が響く。 すると子供達は水を打ったように静かになった。 「すみません、閻魔様に以前少し相談したのですが・・まさか人員を送ってくれるとは思ってもいませんでした。」 そう言って暗殺チームの前にいたのは僅かに青く光を反射する、長い銀髪の美しい女性だった。 「私は上白沢慧音、この里で寺子屋の教師をやっていますが、別の里に出張する事もあります。」 慧音となのった女性は、そう言って右手を差し出してくる。 「リゾット・ネエロだ。」 リゾットが代表として前に出て、慧音と握手をした。 それに続いて、次々に暗殺チームの他のメンバーも挨拶を知る。 「・・・・・何でお前がそこにいる。レティ・ホワイトロック。」 そして、その中に混じっていた見覚えのある冬の妖怪に、疑わしげな目を慧音は向ける。 「あら?旦那様の仕事手伝っちゃいけないかしら?私結婚したのよ。」 そう言ってレティは、元の大きさに戻ってギアッチョに抱きついた。 豊満な胸が思いっきりギアッチョの腕に押し付けられる。 「はぁっ?!何言ってんだ!!」 レティの発言にギアッチョは顔を真っ赤にして硬直する。 「あら?いけないかしら、だ・ん・な様。」 そう言ってレティはウィンクをした。 ギアッチョは思わず仲間に助けを求めるように、振り向く。 「びゅーんびゅーん♪びゅーんびゅーん♪」 「わたーしのかれーはあんさーつしゃー♪」 メローネとジェラートが歌を歌ってギアッチョをからかう。 「・・がぁぁぁぁぁぁっ!!ホワイトアルバムッ!!」 次の瞬間、ギアッチョはホワイトアルバムを装着し、辺りが一瞬にして凍りついた。 「さー、お兄さん達の言うこと聞かないとこうなるぞー?解ったかー?」 そうプロシュートは子供達に、凍りついたジェラートとメローネをこちこち叩きながら子供達に話しかける。 子供達はおびえたように、刻々とうなづく。 「それでは、そろそろ行くぞ。ギアッチョ、二人を解凍しろ。」 「えぇ、子供達をよろしくお願いします。」 リゾットが全員に出発するように促がすと、慧音は丁寧にお辞儀をした。 閻魔様の部下という事で、信用しているのだろう。 そして、一同はぞろぞろと歩き始める。 先頭はプロシュートで、それぞれ子供達が全員目に入る位置に他のメンバーも散った。 そしてしんがりはリゾットである。 子供達が、楽しそうに笑いながら列を成して歩いていく。 リゾットの目の前では、少女が友達と楽しそうに話していた。 「あのねー、お兄ちゃんにねー、いっぱいお菓子持って帰ってあげるんだ!」 『お兄ちゃん。』 その言葉を聴いた瞬間、目の前の黒髪の少女が、まったく似ても似つかない少女の姿と被る。 「・・・・っ?!」 『お兄ちゃん。』 彼の目の前に、一人の少女が立っていた。 彼女は、責める様にリゾットを見つめる。 『どうして、私を、他の人を、殺したの?』 次の瞬間、少女の後ろに無数の目が、手が現れる。 「・・・リゾット?!」 自分を呼ぶ、誰かの声が聞こえた気がしたがリゾットの意識は急速にフェードアウトした。 前へ 目次へ 次へ
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「と、言うわけで今日から皆さんに英吉利の言葉を教えてくれる、リゾット先生です。」 「リゾット・ネエロだ。宜しく頼む。」 「リゾット先生は外から来た人間で、今では閻魔様の所で働いている方。 悪い事をすると、閻魔さまに報告されてしまいますから、きちんといい子にしているんですよ?」 「「「「「はーい!」」」」」 慧音に釘を刺されて、子供達は元気よく声をあげた。 そして、リゾットの授業が始まった。 「まず、日本語と英語の文字が違うのは・・・・・・・。」 「メローネ、どうだリゾットは。」 ずっと画面を見続けているメローネにギアッチョがコーヒーを持ってくる。 「うーん、授業も結構普通に続けてるし、大丈夫っぽいけど・・・・・。 微妙に黒板の文字が普段より汚いから、緊張してるなぁ。」 メローネがモニター越しに、リゾットの細かい変化から、彼の心境を読み取る。 良い母親を見極めるための技能は、別に女性だけに限った話ではない。 彼は人間・・・いや、人の形をした生物なら細かい動作から、その意思を殆ど読み取れるだろう。 「まぁ、感情に関してならジェラートの野生の感が一番だと思うけどな。 “におい”とか言うので殺気の数から、非戦闘員と戦闘員の違いまではっきり分かるのはどんな原理なんだか。」 そう言ってメローネは、ギアッチョの持ってきたコーヒーに口をつけた。 「あ、ストロベリー入ってる?」 「おうよ、こっちだとフレーバーシロップ売ってないから、プロシュートの奴に頼んで八雲紫に色目使ってもらって手に入れたんだぜ?」 「勿体無いよなぁ、こんなに美味しいのに。」 「前、レティに勧めたら凄い嫌な顔されたぜ。」 そう言って二人は再び、モニターに顔を向けた。 「先生、この言葉はどうしてこういう意味なんですか?」 「それは『お休み』と言う意味だが、「good」と言うのは良い、と言う意味の形容詞だ。 『夜』と言う意味、「night」と合わせて「良い夜を。」つまり夜の時間を、眠りをと言う事、意訳して「お休み」と言う意味だ。」 リゾットはいつも道りの淡々とした口調だが、子供にも分かりやすいように丁寧に説明していく。 「日本人が英語を覚えるに当たって、問題なのは文法・・つまりそれぞれの単語の並べ方だ。 あまり難しい事は慧音先生に習っていないから簡単に説明すると・・、そうだな。 英語などのヨーロッパの言葉は、その結論から、大事な単語から並べる、と考えてくれればいい。」 そう言ってリゾットは黒板に説明を書いていく。 「まず、日本語でも英語でも主語・・・つまり行動を行う人物は・・・。」 すると、突然ゴーンゴーンと言う音が聞こえる。人間の里で時刻を知らせる、寺の鐘である。 「・・・・今日の授業は、ここまでだ。時折、抜き打ちで試験をするから復習するように!」 リゾットはそう言ってチョークを置く。 「きりーつ」 そう、学級委員の位地にいるであろう、少年が言う。 そして、生徒が一斉に立つ。 「きおつけー。れーい。」 「「「「「「ありがとうございましたー」」」」」」 そう言って子供達は授業が終わった喜びで、次々に外に出て行く。 「リゾットせんせー!また明日ー!!」 「あぁ、また明日。」 そうして、最後の子供が教室を出て行った。 そして子供の気配が完全になくなると、リゾットはその場にしゃがみこんだ。 息が急に荒くなり、心臓の音が大きく聞こえる、俯いた顔は苦しそうに歪んでいた。 「情けない・・・・・・・。」 そう呟いて、リゾットは立ち上がる。 余ったプリントや、授業進行を書いたノートをまとめ、教室を出ようと扉を開けた。 そして、廊下に出るとちょうど慧音がこちらに向かってきていた。 「リゾットさん、お疲れ様でした。」 そう言って慧音はててててて、と駆け寄ってきた。 「あの子達、ご迷惑はかけなかったでしょうか?」 「大丈夫だ。貴方以外に教えてもらうのが初めてだったので、緊張したのだろう。」 二人は並んで、廊下を歩いて慧音の居住スペースまで向かう。 「日本では授業が午後もあると聞いたが、こちらはどうなんだ?」 「幻想郷でも授業は午前だけです。家の手伝いがある子が多いですから。」 世間話をしながら、二人は話す。 「それにしても、教え方が随分うまいですね。とっても分かりやすかったですよ。」 時折、リゾットの授業の様子を覗き込んでいた慧音が彼を褒めた。 「・・・・・・俺の部下には、まともに学校に行けなかった奴がそれなりにいるんでな。そいつらにも英語を教えていたんだ。」 あの子供達のように素直ではない部下どもに、任務の為に必死に英語を教え込んでいた時のことを思い出す。 「何せ長時間集中して人の話を聞くという事自体に耐えられないのか、寝るわ、キレるわ、スタンドを発動して逃げ出すわ・・。」 ぶつぶつぶつぶつとリゾットの精神が暗黒面に沈んで行く。 「あ・・あの・・・・。お弁当お持ちでしたら、今日の反省会もかねてこの後一緒にお昼はどうですか?」 「・・・っ!!そ・・・そうだな・・・、お言葉に甘えよう。」 慧音の声に意識を取り戻したのか、リゾットはワンテンポ遅れてから、慧音の言葉に反応した。 「・・・・・・・いいなー、リゾット。美人とランチだって。」 「・・・・・何でわざわざ俺の方を見ながら言うんだよ・・・・・。」 「ギアッチョも勝ち組だから。」 すっかりコーヒーも飲み終わり、二人は談笑しながらモニターを見続けていた。 「お前だってその気になれば女くらいいくらでもひっかけてこれるだろ?」 「映姫様うるさいんだよ、そういうの。幻想郷の子は古臭い考えの子を多いから、一回やっただけで結婚しろとか言われそうだし。」 そう言ってメローネは、ため息をついた。 「いいよなぁ、皆美人と知り合いになってさぁ。俺なんて収穫は幼女と腐女子だぜ? まぁ、確かにリアルプ○ンセスメーカーするのは楽しいけど、成長しないらしいしー。」 つまんないよなー、といってメローネはベイビィ・フェイスの蓋をたたく。 「そういや、最近全然連絡とってねぇな。お前とあのガキ。」 「いやね、ハロウィンの時に仕事であんまり構って上げられなくて拗ねちゃってるみたい。 でも、チルノが最近こっそり遊んでくれてるみたいだから、寂しくないと思うけど。」 「寂しいのは、むしろお前だろ。」 ギアッチョの指摘に、うっとメローネは言葉を詰まらせた。 珍しくからかう方に回れたのが嬉しいのか、ギアッチョはニヤニヤと笑いながら言う。 「おーおー、天下の変態暗殺者がたったガキ一人に寂しいねぇー・・。」 「う・・うるさい!!そういうアンタこそレティに頭上がらないくせに!!どうせ夜は使い魔プレ・・・・・。」 「ブチ壊れろぉぉぉぉぉ!!」 それから十二分後、氷付けにされたメローネはお昼が出来たと呼びに来たホルマジオに救出された。 ここは慧音の寺子屋についている彼女の居住スペース。 ハロウィンの日にリゾットが運び込まれたのもここだった。 「はい、どうぞ。」 「すまない。」 畳にちゃぶ台と言う、いかにも日本的な部屋で、リゾットと慧音は昼食を取っていた。 慧音は熱い緑茶を、リゾットに渡す。 「それにしても・・・ずいぶん美味しそうですね・・・・・。」 リゾットの弁当箱を覗き込み、慧音が思わずつばを飲み込んだ。 そこにはビーフとスライスオニオンのサンドイッチや、いわゆるBLTサンド、さらに普通のタマゴサンドなどなど。 様々な種類のサンドイッチが所狭しと、しかし決してお互いを押しつぶさないように詰め込まれていた。 「今日の朝食当番は・・・イルーゾォか。こっちに来てからあいつは随分料理のレパートリーが増えたな・・・。」 おそらく、今付き合っている彼女の影響だろう、とリゾットは結論付けた。 「食べてみるか?あまり美味くはないかもしれないが・・・・。」 「いいんですか?・・・・・というか駄目ですよ!せっかく作ってくれたのにそう言う事言っちゃ!!」 「・・・・・食べてみれば分かる。」 そういわれて、慧音はビーフとスライスオニオンのサンドイッチを一つ取り出す。 「・・・頂きます。」 そう言って慧音はサンドイッチを一口かじった。 そしてよく噛み、飲み込んだ。 慧音はそして、一言。 「・・・・・っ!!普通だ!!」 驚愕の表情で、慧音はそういった。 「そうだ、普通なんだ・・・・。」 リゾットは何やら深刻そうに俯く。 そう、イルーゾォには決定的な謎の欠点がある。それは、『どんな料理を作っても「普通」としか感想を言わせない程度の能力』である。 「お・・・美味しそうなのに。普通に美味しそうなのに・・・・・。」 「食べると普通としか言えないんだ・・・・・・・。」 何となく、二人の空気が暗くなる。 「へーっくし!!」 イルーゾォが、思いっきりくしゃみをした。 「どうしたのよ?イルーゾォ。ほら、それより魔導書のそこの文章を早く解釈しなさい。」 アリスがトントンと、魔導書のコピーの一部にマーカーで線を引く。 「風邪かなぁ・・・・・・。昨日結構遅くまで仕事やってたから・・・。」 そんな事を呟きながら、イルーゾォは再びラテン語の辞書を開いた。 「あ・・・!そうだ!私もお昼用におにぎりとお味噌汁を今朝に作ってたんですよ!いま暖めてますから良かったらそれと半分こにしませんか?」 「あ・・あぁ、お言葉に甘えるとしよう。」 そして、リゾットと慧音の穏やかなランチタイムが始まった。 リゾットが穏やかな時間を過ごしている同時刻、暗殺チームの何名かは、森の中を進んでいた。 そこは、妖怪の山の麓に広がる広大な森である。 「ここにも妖力反応なし・・・か。」 そう呟いたのは、なにやら奇妙な形をした計器を持ったソルベだった。 「ったく、何でこう言うときに機動力のあるギアッチョがいねぇんだよ・・・ま、こんな森の中じゃスケートは無理だな。」 ソルベの肩に、ふわり・・・と青白い蝶、彼のスタンドが止まる。 そして彼の周りを取り囲むように、次々にバタフライが現れる。 それらは全て、ソルベが持っていたのと同じ計器を持っている。 「それにしても、半径2km全部反応なしか・・・・。本当にこの機械動くのか?」 彼が調査してるのは、近頃ここら辺に外からやってきて住みついたと言う、『魂』を食べる妖怪である。 別にソルベはそいつの事はどうとも思わないし、食われる魂にしてもよっぽど間抜けな奴だと思ってるから同情はしない。 だがしかし、今の勤め先にとって魂を食われるというのは、お客を殺されると言う事である。 あの世もこの世も不景気な中、出来るだけ財源を確保したいのだろう。 「・・まぁ、俺達もお金なくて雇えなくなったから地獄行きーってなる訳にはいかねぇからなぁ。」 そう言ってソルベはスタンド達から計器を回収する。 すると、無数の蝶の中の二体が、彼の耳元に飛んでくる。 腹にあたる部分についている赤いランプがチカチカと点滅した、別のバタフライと通信している証だ。 「プロシュート、ペッシ、お前らの方も、何もなかったか?・・そうか。ジェラートと合流したらそっちに向かう。休憩したらさらに上の方を見てみる。 そこら辺は河童の勢力範囲だが、時々機械に関して色々教えてやってるから俺とジェラートの名前出せば多分分かるさ。 ま、閻魔様直属の死神だって分かればこの幻想郷で逆らえる奴はそうそういねぇよ。川を汚さないようにしろよ。」 そう言ってソルベはスタンドを解除する。 使い慣れたスタンドだとはいえ、この数を完璧に制御するのは気がいるのだ。 「ソルベ・・・・・・・・。」 何かを引きずるような音と共に、彼に何者かが彼に近づいてくる。 その音を聞いて、ソルベはため息をついた。 「やっぱ限界だったか・・・・、ジェラート。」 そう言って彼が後ろを振り向くと、そこには血まみれになったジェラートがいた。 だが、彼には外傷は一切なく、その手にはずたずたになった、一体の妖怪が掴まれていた。 「うん、だって全然こっちに来てから殺してなかったし、殺しちゃいけなかったからさ。 もみちゃんや美鈴と戦ってごまかしてたつもりだけど、ごめん、無理だった。限界だったっぽい。」 まるで感情の篭ってない様子で、ジェラートはドサッと妖怪を落とした。 「・・・一応、永琳先生に頼み込んで記憶を消す薬と、治す薬は貰ってあるぜ。」 ソルベはそう言って、鞄の中から二つのピルケースを取り出した。 「ありがとう、と言うか永琳先生、よく出してくれたね。」 「興味あるんだろ、地球の科学がどんなもん作り出しちまったかよ。」 そう言ってソルベは妖怪の口に、無理やり薬を突っ込んだ ジェラートは、相変わらず無表情のままである。 「ほら、ジェラート。着替え、あとこれ。」 ソルベはジェラートに、上着と携帯音楽プレーヤーを渡す。 「プロシュート達と合流する前に、落ち着けとけよ。」 「うん。」 そう言って、ジェラートは耳にヘッドホンをつけた。 前へ 目次へ 次へ
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「あぁ、そうだ。ローマではそのように民衆の不満を別の方向に向けていたんだ。」 「なるほど・・・・、それでこの当時の英吉利は?」 「あぁ、この時は・・・・・・・。」 リゾットは慧音の家で、世界史についての質問に答えていた。 今日、たまたまリゾットは授業中にローマ帝国の事を例に出した。それに慧音は興味を持ったらしいのだ。 彼女は歴史を司る妖怪だが、日本史はともかく世界史、特に西洋史にはうとい。 そこで彼女は、リゾットに様々な質問をしているのだ。 「そうだな・・・、そして次の皇帝が・・・・。」 そしてリゾットが次の話を切り出そうとした途端、扉が突然、ものすごい勢いで叩かれる。 「?!」 驚いて慧音は、大急ぎで土間に降り、扉を開けた。 「慧音様!!」 そこには、中年の男が息を切らして立っていた。 「諭吉?!どうしたというんだ!!」 慧音はその男と知り合いらしく、その様子に驚いている。 「うちの・・・・うちのお夢が・・・攫われちまった!!」 その言葉に、慧音は目を見開く。 リゾットも、その名前に聞き覚えがあった。慧音の教え子の、一人だった。 「お夢だけじゃねえ!平吉も与作もいなくなったって話だ!!」 「まさか・・・・・・、例の妖怪がここまで?!」 そう言うと、慧音は彼らに指示をする。 「急いで子供達を学校に集めてくれ!あと妖怪退治屋もだ!!そしていない子供達を把握するんだ!!」 「はいっ!」 そう慧音は男に指示すると、男はすぐさま駆け出して行った。 「・・・・・すみません、リゾット。これから忙しくなります・・・今日は。」 「いや・・・、構わない。」 そう言った途端、リゾットはおもむろに立ち上がり、コートを着て外に出ようとする。 「その妖怪には心当たりがある。おそらく、我々が探索していた妖怪だろう。今から探せば、妖力の痕跡程度は見つかる。 それを追跡すれば、おそらく子供達は見つかるだろう。」 淡々とした調子で、リゾットは告げた。 「な・・・駄目です!!確かにあなたは死神ですが、身体能力は人間とそう同じなのでしょう?! あなたが特殊な能力を持っていようと妖怪は肉体的な攻撃は聞かないんですよ?! もし戦闘になったら・・・・・・・・・。だから!私がその妖怪を退治します!!」 慧音は必死に、リゾットを止めようとする。 「・・・・慧音、君は何だ?」 「え・・・・・・・・・・・・・?」 リゾットは慧音の方を向き、彼女を見つめた。 「慧音、貴方は確かに、妖怪であり、俺より長く生きており、力も、敵に対する知識もあるだろう。 ・・・・・だが、君は教師だ。人に先人の知恵を伝え、新たな未来を作る芽を育てる人だ。 血に濡れた手で、子供の頭を撫でてはいけない。殺し合いを・・・・してはいけない。」 リゾットはまっすぐ慧音を見ながら、言う。 「そんな事をいったらあなただってそうでしょう?!」 慧音の言葉に、リゾットは静かに首を振る。 「俺は死神だ、慧音。」 そう言って、リゾットは空を見上げる。 その瞳は、いつの間にか赤と黒の、悪魔のような目に戻っていた。 リゾットは、月を見ながら呟いた。 「リゾット・ネエロは死神だ。今も、昔も。」 月は、シチリアとも、ネアポリスとも同じように輝いていた。 黒いコートを翻しながら、リゾットは空を飛んでいく。 その手には慧音から渡された計器を持っていた。 その針は、非常に大きな数値を指していた。 「・・・反応している・・・・。」 それは今までなかったような反応である。 「・・・罠か・・・・・・。」 そうリゾットは推測する、敵は、自分達をおびき出そうとしている。 リゾットが思考の海に沈もうとした瞬間、携帯電話が震える。 「pront?」 『リゾット?!無事だったのですね?!』 携帯からは、映姫の声が聞こえてくる。 「映姫さま。調度良かった。今例の妖怪を見つけまして追跡中です。」 『それ所ではありません!!プロシュート達と連絡がつかない上、調査をしていた地域で交戦が確認されたそうです!!』 「そうですか。では自分は追跡を続けます。」 『リゾット!!』 冷酷なリゾットの言葉に、映姫は思わず声を荒げる。 「・・・映姫様、里の子供達がその妖怪に攫われました。早く助けなければ命取りになります。」 『っ?!』 それを聞いて、映姫は息を呑む。 『しかしそれはあくまで人間の里の問題でしょう?!あなたが手出しすべきではありません!!』 「・・・・・・自分の目の前で、あの子は死にました。自分の判断ミスで、あいつらは死にました。」 リゾットが、呟く。 『だったら!!』 「ですが、あいつらには、今は他にたくさん、支えてくれる人達が出来ました。だから、俺は必要ないでしょう。追跡を再開します。」 そう言って、リゾットは携帯を切った。 目の前に飛び出してきたのは、黒い雲・・・・・鴉天狗の群れである。 そこから伝わっている空気は、鋭い殺気を孕んでいる。 もちろん、リゾットはそんなものを相手にする気はない。 「・・・・・・・・・・・・。」 一気に急降下しながらリゾットはメタリカを発動させる。 そしてしばらくすると、敵はリゾットが森の中に入ったと思ったのであろう。 敵の一群は、森の中へと消えていった。 (単純だな・・・・。こちらの能力を把握していないのか・・・・。妖怪の慢心だな。) 最も、自分の仲間もあまり人の事が言えないが。 「・・・・・・・?」 すると向こうから、何やら一匹の鴉が飛んできた。 「む?」 その鴉は、何故か背中に季節外れのカエルと蛇が乗っている。 そして、その上には小さな無線機が載っていた。 リゾットはそれを取り、インカムを着け小さい声で尋ねる。 「・・・・早苗と藍か・・・・?」 『良かった!ようやく見つけたぞ!!』 『非常に強力な結界が張られていたものですから・・でも流石幻想郷の賢者ですね。紫さんのおかげで何とかなりました。』 聞こえてきた藍と早苗の声に、リゾットは安堵した。 そのまま小さい声で会話をしつつ、敵を追跡していく。 「・・・・・助かる。映姫様には助けを要請するわけには行かなかったのでな。 早苗、君なら・・・・あいつらが誰に襲われているか知っているか?」 リゾットの言葉に、早苗は真剣に答える。 『はい、彼らは妖怪の山の保守派・・・その中でも過激な面々です。 主に最近の幻想郷の変化を良く思っていない古参の妖怪と、それに煽動された若い妖怪で構成されています。 私達もあまりよく思われていませんが・・・・それでも襲撃を受けるなんて事にはなりませんでした。』 『あー・・・、多分お前達が紫様やフランドールとか・・・強力な妖怪と親しくなっているのが問題なんだろう。』 「・・・・・別にそんなの、博麗の巫女も、魔理沙も一緒だろう・・?」 リゾットの疑問に、藍は戸惑いながら答える。 『それは・・・お前らが外来人であるのと・・・・・・。』 「あるのと?」 微妙に戸惑う藍の声を聞いてリゾットは問い返す。 『男だからだ。』 「は?」 藍の言葉に、リゾットは状況に合わない間の抜けた声を上げた。 『まぁ、紫様もどう考えても青春だのなんだのを通り過ぎてる年だとしても女。 それもお前らは幻想郷の垢抜けない野暮ったい男達と違って外見にもきちんと気を使うイタリアの伊達男。 幻想郷の少女達を、誘惑していると考える物も出てくるだろう。』 それを聞いて、リゾットは頭を抱える。 「ここの連中は・・・そんなくだらない理由で殺し合いが出来るのか?」 『いや、そうでもないぞ。紫様を筆頭に幻想郷で力のある妖怪は、女性である事が多いんだ。 なおかつ・・・、あんまりに強すぎるため男っ気が一切ないという・・・・・・。』 その話に、リゾットはなんとも言えない顔をするが、すぐに意識を持ち直す。 「・・・・・・分かった。早苗、藍、貴方達にはやってもらいたい事がある。まず、出来ればあいつらにこの事を伝えて欲しい。 あとそれから・・・・・・・・。」 リゾットは静かに話し始めた。 「ほーいよっ!!」 そう言ってソルベは手榴弾を投げる。 地面と衝突したそれは、高温と、閃光を放ち破裂する。 人間より優れた五感を持つ妖怪は、人間より遥かにその影響を受ける。 敵が怯んでいる隙に、ソルベはサプレッサーをつけたオートマチック拳銃で、敵を撃ちぬく。 別に敵を全て撃ちぬかなくても構わない。適当な奴を何人か選び、そいつの急所を狙えば、そいつを助ける為に他の奴は足を食う。基本である。 「ったく・・・、リアルMGSかクライシスか・・・・・・・。俺は精々リアルCODとかそこら辺だっつの!!」 そんな事をぼやきながら、ソルベは森の中を移動する。 移動スピードが落ちるであろうギリースーツは、今回は装備していない。 空は飛ばず、森の中を隠れるように走り抜ける。 実際、彼のスタンドは障害物を無視できるため、こう言った所での行動はうってつけである。 しかし、先ほどからスタンドで仲間を探索しつつ行動しているので、疲労が激しい。 「まったく・・・、しばらく暗殺以外してなかったから勘が鈍ったか・・・・・。森の中を進むのはあれだ、十年ぶり・・・くらいかぁ。年取ったなぁ、俺も。」 そうため息をついて、ソルベはスタンドを増やし、周囲の敵を探索する。 しばらくすると、どうやら周りに敵はいないらしい。 「おっ・・・・・・。」 それ所か、メローネとレティ、それにギアッチョが何やら身を隠しながら話し合っているのを発見した。 全員、多少は怪我はしているものの、行動に支障はなさそうだ。 空の方には、この異変を聞きつけたらしい人物が、何人か飛んでいるのが見えた。 (・・・・・よし、これで敵は何人かあっちの方に気が向くな。 しかもあいつらは幻想郷のちゃんとした住人、時間がいるスペルカードルール以外で戦うわけにはいかない。) それをいい事に、ソルベは自身のスタンドをメローネ達の方に向ける。 (ん・・・・・・?) だが、同時に空に、ここにはいてはいけない人物が飛んでいるのを、彼は発見してしまう。 (・・・おいおい!メローネの奴、息子にちゃんと指示出したのか?!) ソルベはそのまま、自身のスタンドでメローネに連絡を取る。 『おい!!メローネ!!』 「ソルベ!!助けに来てくれたのか?!」 ふわり、と飛んできた青い蝶が、メローネ、レティ、ギアッチョの中心に浮かぶ。 『あぁ、まぁな。それよりお前ら、色々と面倒なことになったみたいだぞ。』 「・・・・詳しく説明してくれる?」 レティの言葉に、ソルベは簡単に説明する。 『1、妖怪の山の妖怪が、俺達を襲いに来た。 2、ジェラートが例の状態になっちまって、何処にいるか分からねぇ。 後3は・・・・・・・・・・。』 ソルベがそう言うと、赤い塊が、空から急降下してくる。 「めろーねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 「ぐぼらっ!!!」 そして、それは見事にメローネに激突した。 『てめぇのお姫様が見事に追いかけてきたぞ・・・・・・。』 そう言ってメローネをぎゅっと抱きしめているのは、フランドール・スカーレットだった。 「どーすんだよ・・・・。リゾットが知ったらお前今度こそ殺されるぞ・・・・・。」 ギアッチョは今現在の状況より、 「やばいね・・・・、スイス辺りに逃げるか・・・・・・。」 くすんくすんと泣いているフランを慰めながら、メローネはギアッチョの言葉に本気で答える。 「ベイビィ・フェイス?どうしてフランを連れて来た?」 「申し訳ありません、メローネ。フランを連れて行かなければ、自分がフランに殺されそうだったので。」 ベイビィ・フェイスも、フランに脅され仕方なくフランをつれてきたらしい。 随分いい子に育った彼は、素直にメローネに謝る。 「あーあー、俺しらねーぞ。ジェラート助けるだけで精一杯だからな。その嬢ちゃんが力を使わないようちゃんと見張ってろよ。」 ソルベは、その様子を他人事のように見ながらため息をついた。 「ねぇ、ソルベ。ジェラートが例の状態になったって言ってたけど・・・・、例の状態って・・・・?」 「・・・・・まぁ、会えば分かるさ。ただ、会ってもジェラートの意識が残ってるかどうか、微妙だがな。」 そう言って、ソルベは背負っていた小さめのバッグをさぐる。 「まぁ、お前ら。大分色々消耗しただろ。一応ゼリー飲料とか持ってきたから食え。 メローネには弾持って来たぞ。どうせ撃ち尽くしちまって逃げてきたんだろう? 後は怪我の治療だな・・・・。ギアッチョ、お前足捻ってるな?テープとシップだ。 ん?レティもほら、食え。食欲ないとか言ってる場合じゃないぞ。 赤い嬢ちゃん、悪いな。あいつらの分きっかりしか持ってきてないんだ。」 しかし、ソルベは何だかんだいってテキパキと、全員の面倒を見る。 全員の状況を把握し、それぞれに指示をだす。 「ん・・・・?あぁ、なんだ。イルーゾォか。指示を出す、こっちに来てくれ。 後は・・・・プロシュートとペッシか・・・・おっ!木が枯れてやがる・・・。 ったくいつも気をつけろって言ってるのにそう言う所が適当だからな、あいつは。 何でも殺せばいいって訳じゃねぇっていつも言ってるのに・・・・・・・・・・・・。」 ぶつぶつと呟きながらも、ソルベは全員を合流させようと行動を進める。 その様子を、レティはあっけに取られながら見ていた。 「・・・・彼、あんなキャラだったかしら?」 「一応、ソルベとジェラートはリゾットと同時期に入った初期からのメンバーでな。」 「リゾットがいない時は、大体ソルベが指示をだすことになってた・・いや、なってるんだよ。」 ゼリー飲料を吸いながら、ギアッチョとメローネが答える。 「普段はめんどくさいからリゾットに投げっぱなしなんだけどね。・・・・・・ソルベ、皆見つかった?」 「おぉ、プロシュートとペッシも見つかった。戦闘中だから、ホルマジオとイルーゾォが助けに行った。 まーあいつら二人がいればとっとと逃げて来られるだろ。」 やれやれ、とソルベはため息をつく。 「さて、全員揃ったら作戦会議だな・・・・。リゾットとの連絡はまず無理だろうし・・・・・。」 「・・・ソルベ、お願いがあるんだけど・・・・。」 「ん?」 ソルベが今後の事をどうするか考えていると、レティが唐突に話しかけてきた。 「・・・・出来れば、チルノと大ちゃんも探してくれない? 他の妖精はともかく、あの二人は力が強いから下手に手を出して追いかけられているかもしれないの。」 レティにそう言われて、ソルベは即座に断ろうと考える。 妖精は死んでも元に戻るが、自分達は一人でも死んだら全員お陀仏である。 出来ればそんな手間は取りたくないが・・・・・。 「お願い・・・・・。」 レティの目が、じっとソルベを見上げる。 はぁ、と小さくため息をついた。 状況は、大分好転してる、といっても出来るだけスタンドパワーは使いたくないが・・・・。 「分かった。その代わり戦闘になったらあんたに頑張ってもらうからな。覚悟しとけよ。」 自分が甘くなった事を痛感しながら、ソルベは自分のスタンドの数を増やした。 「ここか・・・・・・・。」 リゾットはかなり、長い距離を飛び、ようやく妖怪の住処であろう場所を発見した。 計器が示すのは、木の板でふさがれた洞窟だった。 そこは木などで補強されており、何か鉱物の採掘場だったと分かる。 リゾットにとっては好都合な場所だったが、それはどう考えても罠だろう。 だが、こちらにも策が無いわけではないし、今更ここで足踏みするわけには行かない。 すっかり腐った木の板を蹴破る。 どうせ位置はばれている、どれだけ派手にやっても構わないだろう。 そういえば、誰かの為に殺す、と言うのは久しぶりだ。 「・・・・・・行くか。」 冷たい風が、黒いコートを揺らした。 前へ 目次へ 次へ
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慧音と授業の問題点や世間話をしているうちに、すっかり日は赤くなっていた。 もう帰って、地獄の方の仕事を少しでも手伝ってやらなければならない。 「それでは、リゾットさん。今日はありがとうございました。」 「あぁ、またな。」 そう言って、リゾットは慧音に礼をして、寺子屋から去っていった。 もう夕飯の時間なのか、いい匂いがあちこちから漂ってくる。 「おっ!リゾットの大将じゃないか!!」 そう言って彼に話しかけてきたのは、白黒魔法使い、魔理沙だった。 「魔理沙か・・・。人間の里で会うのは珍しいな。いつもホルマジオが世話になってる。」 「いやいやいや!むしろ世話してもらってるのは私だぜ!!」 そう言って魔理沙はリゾットの横を歩いていく。 「今日は一人なのか?」 「あぁ、特別な仕事でな。人間の里で教師をする事になった。」 「へぇ!すごいじゃないか!!人に物を教えるってのは結構大変なんだぜ。」 「そうでもない。あいつらに比べれば楽なものだ。」 「あはははははは!確かにな!」 そんな会話をしながら、二人は人間の里を歩いていく。 「今日はうちで飯を食べて行くか?」 「いや、今日はアリスの家に二人で新しい魔導書の解読をするために泊り込むんだぜ。」 愉しそうに魔理沙は笑う。 一人暮らしをしているが、彼女は決して一匹狼ではない。むしろ寂しがり屋の部類である。 ゆえに彼女にとってアリスは、霊夢と並ぶ同じくらい大切な友人なのだ。 「じゃ、そろそろ私は行くぜ。」 そして人間の里の外れまで来ると、魔理沙は箒に飛び乗った。 リゾットも同じように身体を浮かす。 「じゃあな!」 そう言って魔理沙は魔法の森の方向へ飛んでいった。 リゾットも魔理沙に向かって手を振り、空へと飛び立った、 すっかり寒くなり、頬を切るような風が彼の横をぬけて行く。 レティが家を出て行く日も、そう遠くないだろう。 「冬物はこの前の休みに出したから・・・、メタリカでスキマ風が入る部分を修復しなくては。」 そんな事を考えながら、リゾットは空を飛んで行く。 「あ!リーダー!!」 声をかけられて、後ろを振り向くとそこにはイルーゾォが飛んでいた。 飛行スピードが暗殺チーム一速い彼は、あっという間にリゾットに追いついた。 「・・・またあの魔法使いの所か?」 「う・・・っ!いいだろ!!きちんと仕事はこなしてるし!魔法を教えてもらう事はいい事だろう?!」 「まぁな・・・・。だがあいつに会いに行く為に仕事を夜遅くまで身体を壊したら元も子もないだろう。」 「わ・・・分かってるさ!体調管理くらいちゃんとしてるよ!先行ってるよ!!」 そう言ってイルーゾォはさらにスピードを上げて、家の方向へと飛んでいった。 「・・・・マスターオブパペットはスウィート・アンバーと言った所か。お互いに自覚がないのが何ともな・・・・。」 部下の恋愛事情を見て、思わずリゾットはため息をついた。 「リゾット!お帰り!」 「リゾットさん!お帰りなさい!!」 「リ・・・リゾット、お疲れ様でした・・・。」 帰ってきたリゾットを出迎えたのは、藍、早苗、映姫だった。 全員、エプロンをつけており、台所からはいい匂いがしている。 「さ・・・・三人とも?何でここに・・・?早苗と藍は加奈子や紫はどうした?」 リゾットは居間で三人に出迎えられて、大いに戸惑う。 「加奈子様は紫様達と親睦を深められるために外で食事だそうです!!」 「だから何も心配はないぞ!!」 そう言って早苗と藍は胸を張る。 ーーーーーーーーーーーーー外の世界・どっかの居酒屋ーーーーーーーーーー 「いらっしゃいませ!お客様は何名様ですか?」 「四人ですー。」 正しくは二柱と一人と一匹、諏訪子と加奈子と紫と橙である。 一同は、親睦を深めるという名目で久々に外の居酒屋にのみに来たのだ。 ちなみに橙はお母さんの飲み会に無理やり連れてこられた感じであり、退屈する事間違いなしである。 彼女もその事を予感してか、既にDSとポケットモ○スタープラチナをきっちり持ってきている。 「いやー、すっかり藍ったら恋する乙女よ。仕事はしっかりしてくれるけど何かと話すとリゾットリゾットって。」 「うちの早苗もそうよー。まぁ、確かに私達の都合で幻想郷に来たようなものだから早苗が愉しいならそれでいいんだけどねぇ。」 日本酒(燗)を呑みながら紫が、そして加奈子が梅酒(ロック)を飲みながらお互いの近況を話す、むしろ愚痴る。 紫にとって外の事情が分かる加奈子と諏訪子は、意外といい飲み仲間らしい。 何かとハプニングを彼女達が起こしても、幻想郷を追い出されないのはそこら辺の事情があるのだろう。 スキマ妖怪とて、万能ではない。 外で買い物するときはもちろん外の金を稼がなければいけないし、幻想郷の中で買い物するにも幻想郷で金を稼がなければならない。 幻想郷におけるコーヒーや砂糖などの、幻想郷では手に入らない物の流通はほぼ彼女達八雲家が担っているのだ。 そして幻想郷に流れ着いてきた、外ではマニアが欲しがるような物や骨董品を売りさばき、生計を立てている。 といっても外の世界が不景気で、物価も高い。最強の妖怪だって不景気の影響は受ける。 だからと言って境界を弄ってしまえばそれこそ経済バランスが大いに崩れて外の世界は滅茶苦茶になる。 「いやぁ、世知辛いわ。ほんっっとに世知辛いわ。」 そう言って、紫はお猪口の酒を一気に飲み干した。 「つまんない・・・・。」 「ごめんね、加奈子も結構溜まってるみたいでさ・・・。デザートもあるから何か頼みなよ。」 「うん・・・・・・。」 そして諏訪子は、退屈そうにしている橙の面倒を必死に見ていた。 ーーーーーーーーーーーーーーそして場面は暗殺チーム邸に戻るーーーーーーーーーーーー 「わ・・・・私はあなたを労おうと思いまして・・!!」 映姫はそう言って顔をそらす。 どこの漫画雑誌に出しても恥ずかしくないラブコメの風景である。 「さ、リゾットさん。疲れたでしょうから座ってください!」 「甘酒を作って来たんだ。飲むといい。」 「きょ・・・・今日は鍋にしましたよ!!」 三人に押されて、リゾットは無理やり席に座らせる。 もちろん、居間には他の暗殺チームメンバーもいる。ついでに、映姫にくっついてきた小町もいる。 「・・・・・・・・・・てんてれれれんれん♪」 突然、ソファに座ってリゾットの様子を観察していたプロシュートが緑眼のジェラシーを、歌い始めた。 「・・てれーれんてれーれん」 それを、ベイビィ・フェイスをいじっていたメローネが繋げる。 「てれーてれれれれれーてれーてれれー♪」 さらに、DSをいじっていたイルーゾォがそれを繋げた。 「「「「「てれーてれれれれれてーれーてれーてれれれれー♪」」」」」 しまいにはその場にいるメンバー全員での大合唱となった。 「な・・・何だお前達!!」 一同の行動に、リゾットは戸惑った。 「・・・べっつにー。モテモテのリゾットさんよぉ。」 プロシュートが、微妙に拗ねたようにジト目でリゾットを見る。 「さびしいよなぁ、ホルマジオ。俺達は一人身だってのにリゾット、三人もモテモテだぜ。」 「そうだなぁ、しかも主婦に女子高生に仕事場の美人上司。どこのAVだって話だな~。」 イルーゾォとホルマジオがひそひそと、しかりリゾットに聞こえる声の大きさで話す。 「心配して損しちゃったわねぇ。」 「まったくだぜ。俺達なんて心配しなくても構わなかったな。」 「夕飯、外に食べにいかないか?台所はリーダーのハニー達に占領されちまったし。」 レティ、ギアッチョ、メローネが隅っこの方に固まって何やらこそこそと話している。 「ペッシ、実際どうなんだい?リゾットは・・・・・・。」 「た・・・確かにカラオケとか行っても一人だけ絶対歌わないで飲み物頼んでたり延長してたり・・・・。」 「うわぁー、なにそれ!!」 小町がそして、普段のリゾットの様子をペッシに聞く。 「ソルベー、ソルベは彼女が出来たからってそっちにうつつ抜かしてチームの仲間の事無視したりしないよねー。」 「あぁ、もちろんだジェラート。俺達は運命共同体だぜ。」 ジェラートがソルベに抱きつき、ソルベはジェラートの腰に手を回した。 そして一同はぞろぞろと外に出て行く。 「あーあ、やってらんねー。メローネの意見に賛成!飯外に食いにいこうぜ!」 「ついでにカラオケも行かないか?」 「日本の曲わかんねーし、イタリアの曲は入ってないだろうなぁ。」 「洋楽でメジャーなのなら入ってるだろ。ビートルズとか。」 わいわいと外に出て行った一同とは対照的に、リゾットはぽつりと残された。 「あれ?皆さん何処かいっちゃったんで・・ってリゾットさん?!何か周りにはさみが散乱してますよ?!」 「早苗!近づかないでください!!スタンドを暴走させている!! 「リゾット・・・!!何と言う負の気だ・・・・・!!」 (・・・・・・・・・・シチリアの海で泳ぎたい。魚食いたい。オレンジジュースのみたい。) 濁った魚の目で、リゾットは宙を眺めていた。 「いやあ!そりゃあよぉ!あいつは今まで彼女がいる事もなかったし! 結婚して綺麗な嫁さん貰ってくれればいいと思ってたよ!! だけど何?!人には散々小言言っといてその結果があれだぜ?!」 「何で・・・・何でリーダーだけ・・あんなに・・・モテるんだろう・・・。 俺なんてアリスに全然気づいて貰えないし、異性としてさえ見て貰ってないのに・・・。」 「俺なんてガキに懐かれただけだぜ?!いや、たしかに猫が結構懐いてくれるのは幸せなんだが・・・。」 「ギアッチョは私がいるからいいわよね?」 「う・・・・・・・・うるせぇなっ!!」 「ぱるーぱるぱるりらー!!ギアッチョとリーダーレねばいいのにー!!」 「あたいも職場の関係が全然男っ気なくてさー、合コン誰かセッティングしてくんね?」 「・・・・・小町はそもそも、あんまり女らしくないんだよ。」 「ソルベー、ソルベー、ソルベー・・・・。」 「あ?何だ?トイレか?」 「・・・・・・・・・何でいつの間にか来てるのよあんたら。」 何故かいつの間にか隣の席で飲み会していたチームを見て、紫が突っ込んだ。 ちなみに加奈子は既につぶれて突っ伏しており、諏訪子は相変わらず、暇そうな橙に構ってあげている。 紫はため息をついて、その飲み会に混ざる事にした。 加奈子を置いて暗殺チームが飲み会しているテーブルに近づく。 そして、紫はプロシュートの隣の席に座った。 「ねぇ、プロシュート。」 「何だよ?お酌してくるのか?」 「違うわ、聞きなさい。真面目な話よ。」 あくまで真剣な表情の紫に、プロシュートは手に持ったグラスをテーブルに置いた。 「何だ?」 「閻魔は、【魂を食べる妖怪】について、どう言う対応をしてる?」 それを聞いて、プロシュートはため息を付いた。 言ってもいいかもしれないが、あまり詳しい事を話してしまうと情報漏洩である。 「・・・ただいま調査中、としか言えないな。ただ、あっちでも結構事態を重く見てるぜ。」 そう言ってプロシュートはワインに移った自分の顔を見つめた。 「そう・・・・・・・。困ったわ・・・・・・。」 紫はプロシュートの肩に身体を預ける。プロシュートも抵抗しない。 「霊夢は・・・本気で殺し合いはしたことない・・・いいえ、あの子に殺しをさせる訳には行かないわ。だから、あの妖怪は霊夢では対処できないし・・させない。」 「おい、博麗の巫女ってのは異変を解決するんだろ?幽霊が少し消えたくらいで・・・。」 「・・・最近、幻想郷のあちこちの里で、行方不明者が出てるの。」 それを聞いて、プロシュートの表情が硬くなる。 「このままじゃ・・・霊夢は異変だと思ってそいつを退治しにいく・・・・でもそいつは・・スペルカードルールになんか従う気はない。」 「・・じゃあ、あんたが直接退治しに行ったらどうだ?」 「私にも分からないのよ・・・・・。あの妖怪は長い間あちこちの冥界から逃げていた存在。隠れる技術は天下一品ね。」 そう言って紫はプロシュートの腕に抱きついた。 「おい・・・・・あんたにしちゃあ珍しく弱気じゃねえか。」 「私だって女の子ですもの。皆からスキマ妖怪って怖がられてちゃ、疲れるわ。」 「女の子って外見でもねえだろ。」 普段なら紫は怒る所だろうが、相当酔っているのかそういう気にはならなかった。 「ひどいわね、私はいつだって少女よ。」 「馬鹿か、『一人前の女』って意味だよ。」 ガキ扱いされたいならしてやるぜ、と言ってプロシュートは紫の頭を撫でた。 「うわー・・、紫様が・・・・。」 「橙ちゃん、見ちゃだめだよ。多分このままあの男はキスまで持ってくと思う。 多分これが合コンとかだったら間違いなく紫は食われてるね。」 そう言って諏訪子は、橙の目を自分の手で塞いだ。 「・・・・・っ?!」 だが、突然黒い気配を感じて諏訪子は後ろを振りむく。 そこには、凄い表情をして、プロシュートに甘える紫をにらみつける加奈子がいた。 『紫・・・・、何だかんだ言っといて、てめぇもか!!』 そう、彼女の視線は語っていた。 「お・・落ち着いてよ加奈子!あんたには私がいるじゃな・・・あっ!!橙ちゃん!泣かないで!!加奈子ちょーっとイラついてるだけだから!!」 こうして諏訪子は、遺憾なく子持ちの世話スキルを発揮するのであった。 朝、どんなに二日酔いが酷くとも、喉が痛くとも、彼らは社会人、出勤しなければならない。 まばゆい朝の光が妬ましい、そんな朝、彼らは出勤するなり映姫の執務室に呼び出しをくらった。 「まったく・・・・・、飲んだ後徹夜カラオケですって?!仕事の前日に自堕落すぎます!!」 一同の頭を、ベシベシと一回ずつ叩いてから映姫はお説教を始めた。 「ちゃんと遅刻しないで来たぜ?」 「ペッシとギアッチョとイルーゾォが二日酔いで今でも倒れそうなんですが?! しかもジェラートに至っては家で休んでる?!ソルベはそれを看病?!いい加減にしなさい!!」 ケロッとしているプロシュートに対し、映姫がフラフラしている三人を示す。 「いや、大丈夫だ。ギアッチョは前39度の熱を出しつつも任務を遂行した事がある。」 「貴方達の前の職場と一緒にしないでください!細かいミスが全体に関わるんですよ?!」 「いやいや、前の職場なんて細かいミスで生死に関わったからなぁ。」 「・・・・分かりました!!だったら今日は全員調査を命じます!!例の【妖怪】を今日中に見つけ出してきなさい!!」 そう叫びながら、映姫は弾幕を放る。 「「「「「「失礼しやしたー。」」」」」」 まるで何処かの怪盗三世のように、一同はスタコラサッサと逃げ出した。 そして、廊下を歩きながら全員で計画を立てる。 「しっかしなぁ・・・・、今日中ねぇ・・・・・。この間の調査で何処まで調べたんだ?」 調査に参加していなかったホルマジオが、調査に参加していたメンバーに尋ねる。 「えーっと、妖怪の山の麓の森にいる事が分かってるんけど・・・・・五分の一くらいしか調べ終わってませんぜ。」 前回の調査の資料を見て、ペッシがそれに答えた。 二日酔いとはいえ、ペッシは比較的軽い方に入るらしい。 「そんなにまだあるのか?!クソッ・・・・・。いくら人数が増えたとはいえ、探索に有利なスタンドなんて、俺らソルベくらいだろ・・・・。」 頭を抱えながら、ギアッチョが悪態をついた。 「んー、もっと人数が必要だな・・・・・。皆で知り合いに頼み込んで・・・それでも無理があるな。」 メローネが素早く頭の中で、調査する面積の人数を計算するが、それにしても広すぎる。 「ねぇ、調査だったら機械を持って飛んで、見るだけでいいのよね?だったらチルノと大ちゃんに頼んで妖精を集めてもらえばどうかしら?」 レティも昨日体力を使い果たしたのか、人形サイズでギアッチョの横を飛ぶ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 イルーゾォは既に、目が完全にイっている。ただ、歩いているだけである。 「・・・・・・・・・大丈夫なのか、あいつら。」 寺子屋に行く前に、部下の様子を見に来たリゾットが、ぽつりと呟いた。 前へ 目次へ 次へ
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11/07/16(土)17 51 52 No.6838384 del ■魔法少女ロワイヤル!■ 鶴木 銀音(つるぎ しろがね) 鉄の属性を持つ精霊「ストレガ」と契約した13歳の少女 極めて大雑把で真っ直ぐな性格をしており、魔法少女になった動機も 「悪い奴をぶん殴っていいんだろ?」という大雑把な解釈に起因する物である 変身、というよりは銀色のガントレットとブーツを召喚、装備する事で戦闘形態となり、 あらゆる敵に蹴る殴るの物理的暴行で対処するとても乱暴な戦闘が可能になる 固有能力の「破壊」も攻撃手段と相まって途轍もない威力を発揮するため攻撃力は非常に高い なお、先述の装備以外はその時着ていた服そのままで、制服+装備など非常にマニアックな姿にもなる 11/07/16(土)21 22 43 No.6838889 del [#rc55efef] ソフトボール部っぽい感じに それにしても魔法少女分がなさ過ぎるなっ! 11/07/17(日)02 42 48 No.6841114 del [#rc55efef] ごめん絵化被った・・・。 だが、何か新しい絵柄に目覚めた気がする。 魔法少女だわー。 どっからどう見ても13歳魔法少女だわー。 とりあえず、FA扱いということで一つ。
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ここはマウンテンエリア。この地に停車する長足クラウン号の中に、ロキューダと三遊亭鏡はいた。 「…………」 放送を聞いた彼らの表情は、沈痛なものだった。彼らの分身である全世界地雷原(ワールドイズマイン)、その名が呼ばれてしまったのだ。 「覚悟していたとはいえ……。なかなかに堪えるものだな」 「ええ。ですが、我々が落ち込んでいたところで彼女が喜ぶはずがありません」 「ああ、そのとおりだ」 鏡の言葉に、ロキューダは大きくうなずく。 「俺たちのやるべき事は、あいつの分までボマー商会の仕事をやり遂げることだ」 「ですな」 「では行くとするか。長足クラウン号、発進!」 ロキューダの号令と共に、クラウン号は勢いよく走り始めた。 ◇ ◇ ◇ 同じく、マウンテンエリアの一角。山と山の間の平坦な道を、一組の男女が歩いていた。 ディフォアと最速兄貴の二人である。 「それにしても困りましたねえ。這い寄る鬼面さんや空気王さんとはぐれてしまうなんて……」 「まったくです。おかげで、また私一人であなたのボケに対応しなければならない羽目に……」 「おや? この音は……。気をつけてください、最速兄貴さん。向こうから何か来ます」 「私の発言は無視ですか。ああ無視ですか」 愚痴をこぼしつつも、最速兄貴はディフォアの指示に従い警戒心を強める。 やがて彼らの前に、奇妙なデザインの電車が現れた。 「あれは……」 目の前にやってきた電車を見て、ディフォアは目を輝かせる。 「長足クラウン号!! まさか実物を見られるなんて!!」 「ああ、ちょっと待ってください!」 ためらうことなくクラウン号に駆け寄っていくディフォアを、最速兄貴は慌てて追いかける。 彼も元漫画ロワ書き手、クラウン号に感動するディフォアの気持ちはわからないでもない。 だが誰が乗っているかわからない以上、迂闊に近寄るのは危険すぎる。 彼はそう考えたのだが、結論から言えばそれは杞憂であった。 「よう。乗っていくか?」 ドアの向こうから姿を見せた、蝶々仮面の男が気軽に話しかけてくる。 「パピヨン! ひょっとして、あなたも漫画ロワの書き手さんですか?」 「ああ、俺はロキューダだ。『あなたも』ってことは、そっちも漫画ロワの出身だな? エレオノールになってるってことは……。ディフォアか?」 「そのとおりです! 一発で当てるとは素晴らしい! ぜひとも我がしろがねサーカス団に!」 「サーカス団か……。悪くない……。だがNON!」 ディフォアからの誘いを、ロキューダは手で大きく×を作って拒絶した。 「俺はあくまで、運び屋ボマー商会としてこのロワを生きる。というわけで、さっそく商談だ。 何か支給品を一個貰えれば、好きなエリアまで送っていってやるが?」 「うーん、入団していただけないのは残念ですが……。クラウン号にはぜひとも乗ってみたいですね。 ここは乗せていってもらいましょう」 「私には意見すら聞かないんですか……」 背後で最速兄貴がぼやくが、もちろんディフォアは聞いていない。 「さて、それでは支給品をお払いいたしませんと……。何にしましょうねえ」 「あ、それなら私が支払いましょうか? どうせ支給品が余ってましたし」 「え?」 悩むディフォアの耳に、最速兄貴でもロキューダでもない声が届く。 驚いたディフォアが周囲を見渡すと、いつの間にか彼女の側にクソ長いお下げの少女が立っていた。 「はちゅねまして! 私、ウィーヴといいます!」 ◇ ◇ ◇ 長足クラウン号は、タウンエリアに向かって走っていた。 できるだけ中心部に近く、人が集まりそうなところ、というディフォアのリクエストに応えた結果である。 そしてクラウン号の乗客席には、ディフォア、最速兄貴、ウィーヴの三人が座っていた。 「さて、ウィーヴさん。最初にお会いした時から、どうしてもお聞きしたいことがあったのですが……」 「しろがねサーカス団にぜひ入団を……!」 「団長、それは後にしてください」 ディフォアをたしなめ、最速兄貴は本題に入る。 「あなたは漫画ロワ書き手のはずですよね? なのになぜ、漫画ロワにまったく関係のない初音ミクの姿になっているのですか?」 「当然の疑問ですね。わかりました、少し長くなりますがお話ししましょう」 真剣な表情で、ウィーヴは語り始める。 「私に与えられた称号は【無貌】……。その名のとおり、私は最初決まった姿を与えられませんでした。 その代わり、最初に出会った書き手の姿をコピーする能力を与えられたのです。 そして私が出会ったのが、初音ミクの姿をした書き手さんだったんです。 残念ながらその書き手さんは、名前を聞く間もなくマーダーに殺されてしまいましたが……」 「そうだったんですか……。あなたも苦労したんですね」 ウィーヴの話を聞いたディフォアは、目にうっすらと涙を浮かべながらウィーヴの手を握りしめる。 ウィーヴも、無言で手を握り返した。 (ふふ、ずいぶんあっさりと騙されちゃったねえ……。まあ、そっちの方が都合がいいけど) 感動のシーンを演出しながら、ウィーヴはその心中でほくそ笑む。 もちろん今述べた話は、全くの作り話。ウィーヴがあらかじめ考えておいた捏造エピソードだ。 (第一放送までは、結局暗殺ばっかりだったからねえ……。今度こそは、黒幕として暗躍させてもらうよ。 そして、あわよくば彼女を……) ウィーヴの口元が、かすかに歪む。彼の本質はフェイスレスである。エレオノールの姿をしたディフォアと出会って、何も思わないわけがない。 (これから先が楽しみだねえ……) 表面上は穏やかな列車の中。だがその場には、少しずつ不穏な空気が満ちてきていた。 ◇ ◇ ◇ 「ん?」 一方その頃、車掌のロキューダは何かに気づき怪訝な表情を浮かべていた。 「どうしました?」 「いや、今そこの山を何かが走っていったような……。まあ見間違いかもしれんし、気にすることはないだろう」 鏡の言葉にそう返すと、ロキューダは再び列車の運行に意識を集中し始めた。 しかし、彼が見たものは決して見間違いではなかった。 ◇ ◇ ◇ 「あ? 今、何か走ってたか? まあいいか……」 グリモルディを操り山道を駆けるシナクは、いったん停止してそう呟いた後再び走り始めた。 単純な移動手段としてならヘルダイバーの方がいいのだが、今の彼はデイパックを持っていない。 つまりカラオケボイスから受け取ったドスをしまうことができないわけで、これでバイクに乗るのは危険極まりない。 そこでグリモルディを具現化し、その腕にドスを持たせているわけである。 (しかし俺、外見鳴海なのになんで阿紫花のフル装備再現してるんだ……。 まあ、そんなことはどうでもいい。一刻も早く、あのガキを見つけないとな……) 悪魔の表情を浮かべたまま、シナクは駆け続ける。 エレオノール、フェイスレス、そして鳴海。 「からくりサーカス」の主演を張る者の姿を持つ書き手たちが集まりかけ、しかし集まらなかった。 今後、改めて彼らが集結することはあるのか。それは、機械仕掛けの神のみぞ知る。 【一日目・朝/マウンテンエリア】 【しろがねサーカス団】 担当:団長兼アクロバット 【【命熱】ディフォア ◆d4asqdtPw2@漫画ロワ】 【状態】健康 【装備】ヴィルマの投げナイフ@漫画ロワ(2/2) 【道具】支給品一式、生命の水(三人分)、不明支給品0~2 【思考】 基本:バトロワ? そんなことよりサーカスしましょう! 1:最速兄貴の担当を決める。 2:団員を勧誘する。 3:這い寄る鬼面と空気王を探す。 【備考】 ※外見は才賀エレオノール@からくりサーカスです ※しろがねサーカス団への入団条件は『銀髪であること』。銀髪の人を積極的に勧誘します。 しかし銀髪でなくても、才能や熱意のあるものは『生命の水』で強制的に銀髪化することも……。 担当:石食い男(?) 【最速兄貴@マルチジャンルバトルロワイアル】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 基本:やりましょうサーカス! 1:新人を勧誘して『石食い男』を押し付ける。 2:とのさ~ん!!貴方もサーカスにご招待しますからね~! 【備考】 ※とのさんとは、想いのとと@マルチジャンルバトルロワイアルのことです ※外見はストレイト・クーガー@マルチジャンルバトルロワイアルです 【【無貌】ウィーヴ@漫画ロワ】 【状態】健康、初音ミクの姿 【装備】リシュウの仕込み杖@ロボロワ、北高の制服@kskロワ 【道具】支給品一式×6、カラオケマイク@ライダーロワ、光成の服@初期装備、防弾チョッキ@原作 竜殺し@アニロワ、犯人追跡眼鏡の発信機@漫画ロワ、鋼鉄の斧@DQロワ、バーニィシューズ@AAAロワ、ヤンデレ妹の包丁@ニコロワβ DMカード(カタパルト・タートル)@ニコロワ、キャスターのローブ@ギャルゲ2、ミニ八卦炉@LSロワ、スモールライト@アニロワ 不明支給品0~3 【思考】基本:「黒幕」を演じ、他の参加者をもてあそぶ 1:しろがねサーカス団に潜り込み、惨劇を起こす 2:ゆくゆくはディフォアを…… ※デフォルトの外見は徳川光成@グラップラー刃牙、能力と性格はフェイスレス@からくりサーカスです 【運び屋『ボマー商会』】 【【恋哀】ロキューダ ◆6YD2p5BHYs @漫画ロワ】 【状態】健康。長足クラウン号の車掌状態 【装備】ニアデスハピネスの核鉄@漫画ロワ、『ボマー商会』の旗@自作、長足クラウン号@漫画ロワ、 【道具】支給品一式、不明支給品1~4、ブラックラグーン号@LSロワ、 爆熱ゴッドカレーパン(食べかけ)@二次スパ、ゼロのマント@コードギアス 【思考】 基本:まともにロワの相手をせず、適当に楽しくやる。 1:しろがねサーカス団をタウンエリアまで送り届ける。 2:……これで『ボマー商会』もあと2人か。 3:ま、仕事中の安全は俺が『ニアデスハピネス』で守るか。 [備考]: 多少はマジメなパピヨンです。 【三遊亭鏡 ◆G/G2J7hV9Y氏@らきロワ】 【状態】健康。長足クラウン号に乗車中 【装備】『ボマー商会』の襷@自作 【道具】支給品一式、フラップター@らきロワ、不明支給品1~3 【思考】 基本:まともにロワの相手をせず、適当に楽しくやる。 1:えー、今度こそここらで一席……。 2:商会内での私の立ち位置はまるで山田君……雑用係ですな。ま、それもいいでしょう。 [備考]: 笑点のピンクです。 [ボマー商会 共通思考] 1:真面目にロワの相手をしない。マーダーも対主催もしない。仇討ちとかも考えない。 2:とりあえずは『運び屋』として他の参加者の長距離移動を支援しつつ、テキトーに過ごす。 3:客の運搬中はその安全を全力で保障。ただ、着いた先で何が起きてもそれは知らない。 4:戦闘はできるだけ避ける。客がルール破ったらそのときだけ本気出す。 5:運賃はどこに行く場合でも支給品1個。複数セット支給の品物は「支給品枠1つ分」で。内容は不問。 6:余ってる支給品の交換にも随時応じます。これも「支給品枠1つ分」同士の交換で。 【【車輪】シナク@漫画ロワ】 【状態】悪魔<デモン>状態 【装備】グリモルディ(能力により具現化したもの)@漫画ロワ、阿紫花のドス@ロボロワ 【道具】なし 【思考】 基本:熱血対主催! 1:悪魔のフラグ建築士を殺す ※外見は加藤鳴海@からくりサーカスです。 ※【車輪】は「漫画ロワに登場した、車輪の付いたアイテムを具現化する」能力です。 時系列順で読む Back 呪い付き魔船旅行! Next 破壊者たちの集い 投下順で読む Back 呪い付き魔船旅行! Next 破壊者たちの集い 狭い関東そんなに急いでどこへ行く 【命熱】ディフォア ? 狭い関東そんなに急いでどこへ行く 最速兄貴 ? 今にも落ちてきそうな空の下で 【無貌】ウィーヴ ? 続・温泉少女/続・○○少女 【恋哀】ロキューダ ? 続・温泉少女/続・○○少女 三遊亭鏡 ? 恐山ル・ヴォワール 【車輪】シナク ?
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エレオノール(えれおのーる) 【PROFILE】 本名、才賀 エレオノール。 1910年1月1日、黒賀村にて生まれる。 しろがねの才賀 正二、アンジェリーナの間に誕生し、0歳で生命の水を飲みしろがね化する。 母アンジェリーナの胎内で柔らかい石を受け継ぎ、フランシーヌ人形とともに井戸に落下した際それが発動し、生命の水を飲みしろがねとなる。 誕生した直後に、フランシーヌとフランシーヌ人形の苦しみの記憶を部分的に受け継いだため、エレオノールの心に暗い影を残してしまうことになる。 ギイと正二は、「アンジェリーナの娘エレオノール」は産後に死亡し、アンジェリーナと柔らかい石の行方はわからないという嘘をしろがね本部に伝えた それから20年エレオノールは黒賀村に幽閉されるが、正二とギイはフランシーヌの記憶によるエレオノールの精神崩壊を危惧し、1人の「しろがね」としてエレオノールを育てる決意をする。 それから15年間ギイとともに旅を続け、7歳でフランスのキュベロンにてルシール達のもとで「しろがね」としての訓練を受ける。 しかしエレオノールは白銀の記憶を持たないため、人形を操るための厳しい訓練を受けることになり、徐々に彼女の心を閉ざしていった。 その中、ディーン・メーストル(白金)に目をつけられ、笑うことの出来ない"人形"として洗脳されてしまう。 その後、ファイナル・ムーヴが発生し、東欧の戦闘へ参加することとなり、しろがねとして自動人形と戦い続ける。
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編集の前に参戦作品でガイドラインを読んでから編集してください。ガイドライン違反の内容は削除対象となります。 概要 ストーリー 登場人物兜 甲児 弓 さやか ボス ムチャ ヌケ 弓弥之助 もりもり博士、のっそり博士、せわし博士 錦織 つばさ クロス ジャンゴ イタチの安 菊ノ助 先生 暗黒寺 闇太郎 ゼウス神 ローリィ ロール 大出 政雄 東 しゅん Dr.ヘル あしゅら男爵 ブロッケン伯爵 ピグマン子爵 ガミアQ ローレライ・ハインリッヒ シュトロハイム・ハインリッヒ ハーデス神 暗黒大将軍 登場機体マジンガーZ ビューナスA ボスボロット ミリオンα1 バイオンβ2 ダイオンγ3 機械獣ブロッケンV2シュナイダー 機械獣あしゅら男爵 エネルガーZ ドナウα1 グロイザーX10 ダブラスM2 タロス像 飛行要塞グール 地獄王ゴードン 過去参戦作品 概要 2009年に生まれた「マジンガーZ」のリメイク的作品。雰囲気は永井豪の漫画版に近い。 主役の兜甲児も含め、ほぼ全員の声優が東映版のものより変更されている。 また、ストーリーにも大幅な改変が行われ、甲児達の新たな拠点「くろがね屋」や 「グレートマジンガー」の剣鉄也が序盤から登場するなど、独自の物語が展開されている。 ストーリー 世界征服を狙うDr.ヘルの機械獣軍団が熱海へと侵攻を始める。 弟のシロー、祖父の十蔵と暮らしていた甲児は十蔵が作り上げたマジンガーZで戦う事になるが、 それは祖父より続く光子力の因縁をも受け継ぐ事になると、甲児には知る由が無かった。 登場人物 兜 甲児 マジンガーZのパイロット。バイクが趣味だが素行が悪い訳ではなく、家事全般が得意で家族関係は良好だった。特に料理の腕前はプロ級であり、兜家の食卓は大体甲児の手料理が並ぶ。というか家庭料理の範疇を超えている。 技名を叫ぶ際に途中で区切るのが特徴。 女心はよく分からない方。永井豪作品でよくあるスケベではない。 好青年なのでそんな感じはしないが、悪魔も裸足で逃げそうな良いスマイルの持ち主。見たい方は第3次Zをどうぞ。 弓 さやか 弓博士の娘で物語のヒロイン担当。気が強く自らもロボットに乗り甲児をサポートする。…なのだが、真マジンガーは光子力研究所の影が薄い。結果彼女の影も薄くなってしまった。 ボス 甲児に対抗心を燃やす不良の番長。本当の名前は永井豪氏も知らない。第3次Z時獄篇では本名を言う場面があるが飛ばされてしまう。 ムチャ ボスの手下その1。 実は指弾の使い手。指弾とは石などを指で弾いて飛ばす技。某超能力女子中学生がコインを弾いて飛ばす場面をイメージすればだいたいあってる。 ヌケ ボスの手下その2。 実は酔拳の日本チャンピオン。 弓弥之助 光子力研究所の所長でさやかの父。しかし光子力研究所の影が薄い本作ではやはり彼の影も薄い。が、最後は親心を爆発させた。 もりもり博士、のっそり博士、せわし博士 光子力研究所の三博士。 錦織 つばさ 熱海の温泉旅館「くろがね屋」を仕切る女将。何故かマジンガーZの事に詳しい。実は甲児とはとんでもない関係にある。 遂にくろがね5人衆に混じって攻撃に参加しだし、更には戦術指揮/応援にも参加するに至った。 クロス 顔に十字傷を刻んでいるゴツい男。くろがね屋の番頭として働いている。今作では序盤から同行し、主人公の師の一人になるという意外な見せ場がある。 ジャンゴ ガンマン風の衣装に身を包む奇怪な人物。くろがね屋の送迎係。 よくネットで見かける「変な奴がいるぞ!」とは彼を見た敵兵士の発言。 イタチの安 爆発物を扱い、その肉体にも光子力爆弾を仕込んでいる危険な人間。くろがね屋では湯殿で背流しをしている。 菊ノ助 くろがね五人衆最強の仲居頭。妙齢ながら超合金Zで作られた糸を巧みに扱う。 先生 一切喋る事の無い寡黙な板前長。戦闘では超合金Z製の日本刀で敵を切り刻む。というか声優が設定されてない。 暗黒寺 闇太郎 やや正義感に欠ける熱海署の警部。事件を追う内Dr.ヘルの陰謀に巻き込まれる。 ゼウス神 古代ミケーネ三大神の一柱。マジンガーを優に越える程の巨体。古代ミケーネの神々で唯一地球人に味方し、他の機械神に反旗を翻した存在。 元ネタはマジンガーZのリメイク漫画「Zマジンガー」。第3次Zにおいては時空を超えてプレイヤー部隊に参加し、主役級とは違う意味で神がかった強さを発揮できた。 今回は残念ながらNPC。回想の中の過去の存在…と思いきや? ローリィ ミリオンα1のパイロット。ロールとは双子のブロンド姉妹で共にさやかの友人として登場する。 ロール ミリオンα1のパイロット。なお原作での声優はロールとローリィで別人となっている。 大出 政雄 バイオンβ2のパイロット。 東 しゅん ダイオンγ3のパイロット。元々は大出、ロールらと一緒に原作漫画に登場していた人物。 Dr.ヘル 世界制服を狙う悪の科学者。 あしゅら男爵 Dr.ヘルの一味で半身が男、半身が女のサイボーグ。原作では真の主人公と言っても過言ではない程に活躍する。 本作では生身ユニットとして参加はしていない。エーアイ的に参加してもおかしくないポジションだったが、他に遠慮したとみるべきか。 ブロッケン伯爵 Dr.ヘルの一味で首と身体が分離したサイボーグ。元ナチス将校で残虐非道な性格。第3次Z時獄篇に続き、序盤に登場し主人公との因縁を築く。 ピグマン子爵 Dr.ヘルの一味。幻術を得意とする。 ガミアQ 暗殺を目的とした女性型アンドロイド。全部で五体居り、切れ味の鋭い頭髪を武器にする。うち1体は修復され、暗黒寺の相棒として活動する。 ローレライ・ハインリッヒ シュトロハイム博士の娘。シローと友達になるが、その体にはアンドロイドという残酷な秘密が眠っている。今回も条件を満たせば仲間に加わる。第2次Zと違い味方になった彼女は台詞が全変更される。 シュトロハイム・ハインリッヒ ローレライの父である天才科学者。 ハーデス神 人類側についたゼウスを抹殺すべく地球に出現したオリュンポスの機械神。本作では回想の中で出演。こちらも「Zマジンガー」初出のキャラクター。 暗黒大将軍 あしゅら男爵の「血の儀式」により復活を遂げたミケーネ神の一柱。第3次Z・CCではハーデス神が原作でのポジションを担っていたが、本作にて遂に初登場。 登場機体 マジンガーZ ご存知、神にも悪魔にもなれるスーパーロボット。 旧作と比べると全長24m・重量32tと大きくなったが、機体そのものの改造は一切無し。旧作のグレートとほぼ同等の全長と同等の重量である。 本作では光子力を重視した結果、光子力ビームがとんでもない破壊武器に変貌を遂げた。一応旧作でもトドメとして使われる事は多かったのだが、はっきり言ってスケールが違いすぎる。俺の知ってる光子力ビームじゃない。 ゴッドスクランダーを装着する事によって、必殺技・ビッグバンパンチを放てるようになる。ちなみにその際マジンガーが変形する。金色の輝きといい、出自を考えると「よみがえった」感じである。 なお、ジェットスクランダーはたった1話でオシャカに。BXではプロローグから第2話までの間に破壊されたため影も形もない。 マジンカイザーSKLとの共演に合わせてなのか、マジンガーZとしては初めてブレストファイヤーが射撃属性扱いとなった。同様に対応しているルストハリケーンや光子力ビームも射撃属性である。ただし、この2つはマジンカイザー(OVA)がスーパーロボット大戦Lへ参戦した際に射撃属性扱いとなった事はある。 第3次Z時獄篇・天獄篇、そしてBXと、味方ユニット同士によるとんでもないイベント戦闘に定評がある。 ビューナスA アフロダイAの後継機としてさやかをモデルに作られた機体。飛べる様になり、火力も強化されている。 ボスボロット 元は光子力研究所の作業用ロボット。ヌケ、ムチャを含めたボス達の手により改造された。 Zシリーズでは長かったパワーアームが物凄く短くなり、射程も格闘より短くなった。変な奴が増えた。追加イベントの熱さ含めて必見である。 ミリオンα1 光子力電磁砲を備えた量産型マジンガー軍団の一機。ビューナスAの武装での参戦。 ミリオンαから改造され下半身が付き、胸の様な危険なコクピットもパイルダーの様に分離可能となった。 バイオンβ2 ルストハリケーンを備えた量産型マジンガー軍団の一機。ビューナスAの武装での参戦。 緑色でやや細身なデザインの方。バイオンβの改造機。 ダイオンγ3 ブレストファイヤーを備えた量産型マジンガー軍団の一機。ビューナスAの武装での参戦。 青くずんぐりとした体形の方。ダイオンγの改造機。 機械獣ブロッケンV2シュナイダー ブロッケン伯爵の頭部の形をした機械獣。首にあたる部分から伸ばした触手で攻撃する。 機械獣あしゅら男爵 あしゅら男爵そのものの姿をした機械獣。 エネルガーZ 過去に作られたマジンガーZのプロトタイプにあたる機体。光子力がメルトダウンすると機体が赤熱した姿に変わる。そして何故か飛ぶ。更に亀裂から光子力ビームが飛び出まくる。 しまいにはさっさと自爆させられそうになる。 ドナウα1 シュトロハイム博士によりマジンガーZを越えるべく作られたロボット。ローレライと合体する事で完成する。 原作漫画でも本作でも最終的には胸に付いた顔を破壊される。 グロイザーX10 熱海を消滅するために造られた爆撃獣。元ネタはダイナミックプロ原作のアニメ「グロイザーX」。記念すべき光子力ビーム最初の犠牲者。 原作において同型機が存在したが故か、スパロボではタロス像共々量産機に。 ダブラスM2 機械獣の中でも2番目に有名であろう双頭の機械獣。1番有名なガラダK7は今回はお休み。かくいうダブラスもイベントシーンのみの登場。BXで実質登場する「機械獣」は幹部2人の乗機のみである。 タロス像 中に機械獣を隠している巨大な像。スパロボでは量産機として大量に登場する。 飛行要塞グール ブロッケン伯爵が指揮を執る飛行要塞。本作最初のネームド機となる。 旧作設定で登場した時は序盤からあっさり撃墜されて、大量の資金を落としてくれる貯金箱扱いされていた。 地獄王ゴードン Dr.ヘルが繰り出した切り札とも言うべき超巨大兵器。光子力エネルギーを吸収する機能を備えている。 過去参戦作品 第2次スーパーロボット大戦Z破界篇/再世篇 スーパーロボット大戦Operation Extend 第3次スーパーロボット大戦Z時獄篇/天獄篇 スーパーロボット大戦Card Chronicle
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「はっ!!」 リゾットは傷口から染み出た自分の血から、鉄製のワイヤーを作り出す。 メタリカが練りこまれたそれは、スタンドパワーにより実態のない敵を捉えようと抑えかかる。 『くっ!!』 妖怪は自身の身体をうまくねじり、その攻撃をかわしていく。 「ほら、どうしたどうした!!かわすだけか?!」 赤い目をギラギラと輝かせ、リゾットは凶暴な笑みを浮かべた。 そして自身の血液と周囲の鉄分を混ぜ合わせ、鉄製ワイヤーに、刃を纏わせる。 蛇のように動き回る蛇腹剣となったそれは、妖怪を切り刻まんと縦横無尽に動き回る。 リゾットは、一方的に妖怪を追い詰めているかのように見えた。 だが、彼が敵に攻撃をするには、メタリカを鉄器に宿さなければならない。 そしてメタリカは、リゾットの体内に出現するスタンドである。 その身体からさらに離れた場所に出現させるには、身体の一部を切り離すか自身の血液を付着させる、などの方法がある。 今のリゾットが取っている方法は、作り出す鉄器に自分の血液からの鉄分を練りこむ事によってメタリカを鉄器に宿らせている。 つまり、血液の鉄分を、常に消費しているのだ。 だが、そこで敵に自分の体力を悟られてはいけない。 ここはあえて激しくせめて、時間を稼ぐべきなのだ。 (と・・・いってもいつまで持つかな・・・・・・。) 笑みを浮かべながらも、リゾットは内心焦る。 どんどん血が流れ出ているのを感じているし、呼吸も苦しい。 しかし、ここで引くわけにはいかない。 自分の役目は、他の皆がたどり着くまでこいつを痛めつけ、ここに留める事だ。 「これでどうだっ!!」 かすむ視界を無視して、リゾットは自身の身体から、さらにメスを出現させた。 「うぅ・・・・、面倒なことになったなぁ・・・・・。」 夜の空気に、息を白くしながら、イルーゾォはため息をつく。 隣には、ベイビィ・フェイスのPCをカチカチといじっているメローネがいる。 「おーい、しっかりしてくれよ。お前、俺の護衛なんだから。」 「分かってるよ。息子はともかくお前自身がてんで無防備なのが弱点だからなぁ。」 そう言って、イルーゾォはため息をつく。 今、ベイビィ・フェイスの息子はメローネの指示を受けて、『バオー』の元へ向かっていた。 一緒に向かっているのは、ギアッチョである。 全身に鎧をまとい、機動力もある上、メローネとの連携はお手の物と言うことで、彼が抜擢されたのだ。 その他の面々は、茂みに隠れ、サポートである。 「あー、うまく行くかな・・・・・。ったく、プロシュートがスタンドパワー残しておいてくれれば楽だったのに・・・。」 「確かに老化させればすぐにやっつけられるもんなぁ・・・・。マン・イン・ザ・ミラーじゃ駄目なんだっけ?」 「無理だな、急に引き剥がしたショックで、ジェラートが死ぬから。普通に引き込んでも俺瞬殺されそうだし。」 そう言って、イルーゾォとメローネはため息をつく。 「フランとこのメイドさんとかいれば楽そうなんだけどなぁ・・・・。」 カチカチとベイビィ・フェイスの親機のキーボードを叩き、メローネは息子に指示を出す。 「今回の息子は攻撃力はそこそこだけど、能力で補えるから・・・・フランとの普段の戦闘で回避力と防御力はかなりあるし、まぁバオー相手にはいい具合に育って・・・・・来た!!」 「?!」 メローネの言葉に、イルーゾォもベイビィフェイスの画面を覗き込む。 そこには次々と、息子からのメッセージが送られてきていた。 『来ます!!』 ベイビィフェイスの息子の言葉に、ギアッチョは纏っている氷の鎧を強固にする。 次の瞬間、彼の目の前に風を切って何かが飛んでくる。 「っ!!」 ギアッチョはとっさの判断で、それを凍らせる。 氷に包まれたそれは、何か動物の毛のような物だった。 次の瞬間、ベイビィ・フェイスの息子が地面を叩き、厚い壁を作る。 そしてそれが、真っ二つに切り裂かれた。 ギアッチョと息子はそれぞれ反対の方向に飛び、距離をとる。 ズドォンと音を立てて、切り裂かれた壁が倒れる。 奇妙に光る相貌が、ギアッチョとベイビィ・フェイスを捉えた。 二人の背筋に、ぞくっと寒い緊張が走る。 そこに立っていたのは、長い髪に、両腕に刃を持った異形、バオーだった。 『ジェラートを元に戻すには・・・・これが必要だ。。』 ソルベが、レティたちに説明をする。 一応は子供達の面倒を見てくれと頼んだが、危なくなったら彼女に加勢してもらう事も考えなければならないからだ。 『まずは、これをあいつのヘッドホンで音楽を聞かせる事。 あいつに寄生しているバオーはある周波数と音の揺らぎをジェラートの身体を介して聞かせる事で眠るんだ。』 そう言ってソルベは携帯音楽プレイヤーとイヤホンを取り出す。 そこからは、一見リラクゼーション音楽のような、民俗音楽のような奇妙な音楽が流れていた。 『スピーカーとかで流すのは駄目なの?』 『バオーが目覚め始めた時とかなら大丈夫だがな、・・ああなると他の音が混じると無理だ。普段ならある程度ジェラートの気合でどうにかなるからな・・・・・。 それを当てにしちまって、無理してんのに気づいてやれなかった・・・・・・・・・。』 自分自身にいらついているのか、ソルベはチッと舌打ちをする。 そんなソルべに、レティは不安そうな顔で問いかけた。 『そこまで接近しなくちゃなんて・・・・・他に方法は?』 話を聞いたところ、バオーはそこら辺の妖怪より遥かに高い身体能力を持つらしい。 そんな相手に、満身創痍に近い暗殺チームの面々で大丈夫なのか、レティは不安なのだ。 そんなレティに、渋い表情をしながらソルベは言う。 『あんたに言っても解らないかもしれないが・・・一応説明しておくか。ジェラートと、バオーの話だ。』 そう言って、ソルベは、静かに話を始めた。 『・・・・ジェラートに寄生しているバオーは、南米にあったナチの研究施設で研究されてた奴でな。 本来のバオーってのは旧日本軍から続くドレスって組織で生み出された生物兵器なんだ。 俺は昔、傭兵・・・って言えばいいのか?そんな感じで裏家業をやっていた。 まぁ、俺がどうしてそんな道を進むことになったかと言うと・・・・三部作映画でも足りないくらい長ーくなるからまた今度ということで。 で、そんな俺はある日、とある事情でその南米にある、ナチの研究施設を、知り合いの傭兵部隊と一緒にぶっ潰す事になったんだ。 そうだな・・・、今から大体十年くらい前の話だ。』 話しながら、ソルベは懐から煙草の箱を取り出す。 『まぁ、その研究所はバオーなんてもんを研究してて、なおかつナチの研究施設。 R18なんてレベルじゃない研究記録やら、その成果の産物やらが大量にあった。 投薬などによる改造人間の研究から、世界各国の生物兵器に関する研究、さらに超古代の超生命体まで・・・・その中の一つが、バオーだ。 もともとドレスとそこの研究施設は協力体制にあったらしくてな、日本にあるドレスの基地は壊滅したって話だが、データのバックアップがそこに残されていた。 バオーの遺伝子サンプルも、そこに保存してあった。 そして、その基地の研究者達は、さっそくバオーの改良に取り掛かった。 バオーは寄生しなくちゃその力を発揮できない。 宿主がその意志でバオーの力を自由に使う事も、うまく行けば出来るようになる。 ・・・・・・そして、そんなバオーの宿主に、ドレスは壊滅させられた。 バオーの宿主は、何でもドレスに家族を殺され、自身も実験材料にされた。だからドレスは潰された。まあ、インガオウホウだっけ?それだな。 そんな報告を受けて、その研究施設のやつらは考えた。強力な兵器を、手放すのは惜しい。だが、死ぬのは怖い。』 ソルベは箱から煙草を取り出し、安物のライターで火をつけた。 レティは黙って、ソルベの話を聞いている。 『だから、そこの研究員の奴らは考えた。 自我のある、個として確立した青年にバオーを植えつけさせたから悪いのだ。 一が作り出せばいい、バオーに最適な身体を持つ、『生命体』を。 ・・・・・・・・それが、ジェラートだ。』 ソルベは煙草の煙を思いっきり吸い、吐き出す。 『ジェラートは、その研究所で生まれたデザインベイビー・・・・あんたにも分かりやすく言えば、ホムンクルスって奴だな、人工人間。 あいつは、兵器として最適な思考、嗜好をもつように、バオーに合う身体になるように生まれた人工人間の一人だ そして生まれた無数の固体の中で、最も優れた物として、あいつは選ばれた。 窓の一切ない部屋に入れられ、人間との接触を断たれ、部屋に送り込まれるのは猛獣やら拳銃を持った人間やら。 そんな中で、ジェラートは育った。 あいつの中に生まれたときからいたバオーは、自分以外の物を全てを、少しでも殺意を持つ物を殺戮の対象とするよう、記憶していった。』 ソルベは煙草を地面に落とし、ブーツでグリグリと火を消す。 レティはソルベの話に、嫌悪感を覚えずには入られなかった。 外の人間は、もう大概なものだとは思っていたが、まさかここまでとは、彼女は思っていなかったのだ。 『で、俺はその研究施設に侵入して、データを回収すると共にそいつらを破壊しまくった。 気分は悪かったな、何せ襲い掛かってくるのは散々ナチに弄繰り回された化け物の他に・・・・・ジェラートと同じデザインベイビーの子供だったんだから。 まあ俺も死にたくないからよ、研究員もそいつらも、一切区別なくぶっ殺していって、一番厳重な場所にたどり着いたわけだ。 あー、ここに何か重要なもんがあるんだなー。と思った俺は、そこに向かったわけだ。 もう施設はあらかた制圧して、あとは生き残ってる研究員から情報聞き出すだけ聞き出して殺すだけだったからな。 安心してそこの扉をC4爆弾とか色々使ってぶっ壊した。』 ふぅ、とソルベが小さく息をつく。 『で、そこにいたのがジェラートだ。』 『それで・・・・、あなたはジェラートを殺そうとしたの?それとも、ジェラートがあなたを殺そうとしたの?』 ソルべに、レティは問いかける。 すると、ソルベは首を振った。 『いーんや、その時ジェラートは寝てたからな。俺が扉を爆破しても気づかないほどに。』 『それで・・・・・・?』 『・・・・・・あんまりにかわいいんで、連れてかえることにした。』 『はぁ?!』 予想もしていなかったソルベの言葉に、レティはすっとんきょうな声を上げる。 いやー、危ないようなら頭に一発鉄砲玉打ち込めばいい話だし、もうあの時戦闘の後でいろいろ麻痺してたからなー。もう犬猫拾う気分だった。』 あっけらかんとしたソルベに、レティは呆れを通り越して関心してしまう。 『で、その後ジェラートは俺が育てた。始めは言葉も覚えてなかったから大変だったなぁ・・・・・。 何せ殺人兵器として作られたから、定期的に人をいたぶったり殺したりしないと調子狂っちまうし・・・・・。』 うんうん、と頷きながら、ソルベは回想をする。 そしてレティは改めて、ソルベとジェラートのイカレっぷりを実感するのだった。 『そ・・・・、それで?他にジェラートを元に戻す方法は?』 『そうそう、それだったな。』 ソルベはクルクルと、今度はリボルバー拳銃を回し始める。 『さっき言ったように、ジェラートのバオーはナチスが独自に開発したものだ。 音波によるコントロールを計画していたのか、元々持っていた水の中では仮死状態になると言う性質が排除されている。 まあ、後は俺が・・・・・いや、これは現実的じゃないな。まぁ、確かに水の中に誘い込めばなんとかなるんだが・・・・・。』 曖昧なソルベの言葉に、レティは業を煮やす。 『もう!ようするに音楽を聞かせる以外の方法はないのね!!』 『まあそうだな。うまく幻想郷のやつらが協力してくれてくればいいんだが・・・期待できないしな。』 そして、まるでコンビニに言ってくる、とでも言うような、軽い口調で言った。 『もし、俺達が駄目だったらあんたがあいつを・・・・・・。』 『止める?』 『いや、もう殺してくれ。幻想郷を滅ぼされたくなかったらな。』 そう言ってソルベは、森の闇の中へと消えていった。 星空を背景に、レティ、チルノ、大妖精、そしてフランは空を飛んでいた。 空気が張り詰めているのは、寒さだけではないのだろう。 大妖精だけではなく、チルノも不安そうな顔をしている。 レティは、二人の頭を優しく撫でる。 「・・・もうほとんど戦闘の気配はないわ。・・・湖に帰ってもいいのよ?」 レティがそう言うと、ブンブンとチルノは首を振る。 「やだ!!あたいもレティと一緒にギアッチョ達を待つ!!そんでフランちゃんと一緒に帰るわ!!」 「わ・・・私もチルノちゃんとフランちゃんと一緒にいる!!」 そう言って二人は、気丈に声を上げる。 その様子を見て、レティは小さく微笑んだ。 この二人は、どうやら心配なさそうである。 だが、一番不安なのは・・・・・・。 「あ・・・・あ・・・・・・。」 レティの後ろに隠れながら、フランはレティにすがり付いていた。 その手は、まるで引き裂かんとばかりにレティの服を強く握り締めている。 その息は荒く、目は血走っている。 吹きすさぶ風に運ばれてくる、血の匂い、蹂躙される命の匂い。 そう言ったものに、吸血鬼としての本能が反応しているのだ。 だが、それでも彼女は必死にその衝動に耐えている。 「・・・・・・・・・フランドール。」 そう言って、レティは自分がしていたマフラーを、フランにふわっとかける。 「もしかしたら日が昇るかもしれないからね、一応少しは日よけ代わりになるから。」 レティに言われて、フランはレティを見上げる。 それは、今まで見た事のない種類の、優しい笑みだった。 「まあ、きっとお日様が昇る頃にはギアッチョ達がカッコよくジェラートを助けてるだろうけどね。」 そう言って、レティはフランにパチンッとウィンクをした。 ギアッチョとベイビィ・フェイスは森の中へと逃げ込み、バオーはそれを追う。 ベイビィ・フェイスの息子の行動は、常にメローネの持っている親機に映し出される。 そして、その周囲の木には、色のついたテープが張られており、その色、張り方によって何処の場所にいるか分かるようになっていた。 『現在位置:A-24、バオーは僕を追ってB-24の位地へ向かっています。推定到達時40間秒後。』 「了解。プロシュート、ペッシの方に行った、追っているのはベイビィ・フェイスだ。」 息子から来た情報を、メローネがプロシュート達に伝える。 連絡に仕様するのは、ソルベのスタンドである『バタフライ』である。 メローネから連絡受けたソルベが仲介して即座にそのことを伝える。 「ペッシ!やれ!!」 「へい!!」 プロシュートの支持を受けて、ペッシがビーチ・ボーイの棹を引っ張る。 その糸の先には、大量の『木の実』をつけた、奇妙な木があった。 他の木は一切実をつけていないというのに、その木には大量の『木の実』が実っていた。 すると、プチンッと何かが切られたような音がする。 月の光を反射するのは細い細いワイヤーである。そして、ビーチボーイが次々に木に張り巡らされたワイヤーを切断していく。 金具によって固定されていたソレは、張り詰めた状態から開放され、宙を舞い、するすると金具の間を潜り抜ける。 そして、その木の下に、バオーが現れた次の瞬間。 『?!』 ワイヤーにつながり、ぶら下がっていた『木の実』が、次々に落ちてきた。 木の枝には、『木の実』についていたと思わしき多数のピンが、ワイヤーに繋がれ寂しく揺れていた。 バオーの動体視力は、そんな光景とともに次々に落ちてくる『木の実』・・・手榴弾を捉えていた。 次の瞬間、巨大な閃光と爆音が、周囲に響き渡った。 「ちょ・・・・・、やりすぎじゃねえかソルベの野郎・・・・・。」 響いた轟音に、思わずプロシュートが言葉を漏らす。 彼とペッシが受けた指令は、あくまでビーチボーイを設置し、ワイヤーを切ることのみである。 罠は全て、自身のスタンドを使用し、ソルベが設置した。 これと同じような罠が、まだ森の中に数箇所あるというのだ。 スイッチ式の地雷や様々なものがあるが、同じようにまず人間ならこげたミンチになるような物ばかりである。 「本当にジェラート生かす気あんのかよ・・・、一人でも死んだらアウトなんだぞ・・・。」 そう言って、プロシュートは肩に止まっていたバタフライに話しかける。 「おいソルベ。大丈夫なんだろうな・・・・・。」 『こんだけやりゃあダメージがあるわ。腕の一本は飛んで・・・・・っ?!』 急に、ソルベの声が止まる。 「どうした?!」 『まずい・・・・・!!爆煙にまぎれて・・・ジェラートを見失っちまった!!』 「なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉっ?!」 プロシュートの絶叫が、火薬の匂いを運ぶ風に乗った。 前へ 目次へ 次へ
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轟――と、虚空にレーザーの軌跡を描きながら振るわれる対艦刀の一撃が、鮮血色の翼を広げた鋼鉄の巨人、トゥルーデスティニーに襲い掛かる。 迫り来る鋼鉄の刃を、トゥルーデスティニーは両手に握った大剣で受け止める――が、 「――こ、のぉっ!」 荘厳な鎧を身に纏う少女、デス子の怒号と共に、力任せに振り抜かれた対艦刀がトゥルーデスティニーの機体を野球ボールのように吹き飛ばした。 「くぅ……っそぉおっ!!」 揺れる紋章機のコクピットで、シン・アスカは悪態を吐きながらフットペダルを踏み込んだ。 トゥルーデスティニーの背面スラスターが逆噴射し、慣性を無理矢理殺して機体を制止させる。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」 体勢を立て直そうとするトゥルーデスティニーに、しかしそうはさせないとばかりにデス子が背中の翼を羽撃かせ、雄叫びを上げながら対艦刀を構えて突進する。 牽制するようにばら撒かれるバルカン砲の雨を掻い潜――らずに、そのままシンの機体目掛けて真っ直ぐ突っ込む! 「いたたたたたたたた痛い痛い痛い痛い痛いけど痛いなんて言わないっ!!」 被弾の痛みに泣き顔を見せながらも、デス子は対艦刀の柄を両手でしっかりと握り締め、怯むことなく突き進み、トゥルーデスティニーに肉薄する。 槍のように鋭く突き出された対艦刀の切っ先がトゥルーデスティニーの盾を貫通し、その奥の本体に深々と突き刺さった。 手応え――無し!? 瞬間、串刺しにした筈の敵機の輪郭が崩れ、まるで蜃気楼のように掻き消える。 「ミラージュコロイド……いつの間に!?」 驚愕したようにデス子が声を上げる、その横合いから――、 「トゥルーデスティニーなら、こんな戦い方も出来るんだよ!!」 ――ミラージュコロイドの〝隠れ蓑〟を脱ぎ捨てたトゥルーデスティニーが、シンの怒号と共に大剣を振り下ろした。 咄嗟に対艦刀を振り上げ、迎撃を試みるデス子だったが、刀身に突き刺さった盾の重みで思うように素早く動けない。 間に合わない……ならば! 迫り来る鋼鉄の刃をデス子は大口を開けて待ち構え、そして上下の歯で挟み込むように受け止めた。 「なっ……!?」 瞠目するシンに、デス子は大剣を咥えたまま不敵に笑う。 「ふごご、ふごふご、ふごごごご(今のわたしも、こーゆー戦い方が出来るんです)!!」 「何言ってるのかさっぱり解んねーよ!」 ツッコミと共に繰り出されるトゥルーデスティニーの回し蹴りを、デス子はバックステップを踏んで躱し、再び前方へ踏み込みながら左手を突き出した。 反射的に身を仰け反らせたトゥルーデスティニーの鼻先を、掌から撃ち出されたビームの飛礫が掠める。 「まだまだわたしのターンです!」 言いながらデス子は更に一歩前に踏み出し、敵の懐奥深くへ身体を捻じ込む。 対艦刀を左手に持ち替え、空いた右手で拳を握り――敵を殴り飛ばす! 弾丸のように放たれたデス子の右ストレートが、トゥルーデスティニーの横面を打ち抜いた。 「調子に……乗るなっ!!」 首が吹き飛ぶかと思う程の衝撃に揺れるコクピットで、シンは歯を食いしばりながら操縦桿を押し込んだ。 トゥルーデスティニーが背面スラスターを全開で噴かしてよろめく機体を踏み留め、その勢いを利用して大剣を振り抜く。 カウンターで繰り出された斬撃をひらりと躱すデス子に、トゥルーデスティニーは腰のビームライフルを片手で引き抜き、目測で照準を合わせてトリガーを引いた。 「――っ!」 咄嗟に胸の前で交差した両腕からバリアを発生させ、防御の体勢を整えるデス子に、フルオートで撃ち出されるビーム弾が怒涛のように押し寄せる。 全弾、命中――ドーム状に展開されたバリアの表面にビーム弾が次々と着弾し、紅蓮の炎がデス子を呑み込む。 「これだけ撃てば……!」 疲れを滲ませながら呟くシンに――、 「どうなるっていうんですか?」 「――っ!?」 返答の声は、すぐ背後からやって来た。 一拍遅れて、敵の接近を告げるアラート音がトゥルーデスティニーのコクピットにけたたましく響き渡る。 爆炎に紛れて背後に回り込んでいた……? 「そんな小細工っ!」 悪態を吐きながら振り返りざまに向けたビームライフルの銃口を、鋼鉄の籠手に覆われたデス子の掌が握り潰し――瞬間、閃光と共にライフルが爆散した。 仰け反るトゥルーデスティニーの脇腹に回し蹴りを叩き込み、デス子は刀身に盾を突き刺したままの対艦刀を、まるで鍬のように垂直に振り上げる。 「脳みそをブチ撒けちゃえぇぇぇーーーっ!!」 怒号と共に振り下ろされる鍬――もとい対艦刀を大剣の柄で弾き、トゥルーデスティニーは背面スラスターを噴射して後退した。 デス子も背中の翼を羽撃かせて虚空を舞い、両者は仕切り直すように間合いを開けて睨み合う。 厄介な相手だ……対艦刀を正眼に構えて油断なくこちらの隙を窺うデス子をモニター越しに見ながら、シンはそう思わずにはいられなかった。 ただでさえ攻撃を憚る外見である上に、ロストテクノロジーの影響なのか機体(と言って良いのか疑わしいが)性能もトゥルーデスティニーを頭一つ凌駕している。 加えてこちらの攻撃の悉くを正面から打倒し、ミラージュコロイドを応用した奇襲まで止めてみせたデス子の戦い方は、まるで――、 「――まるで、未来でも視ているかのようだ……ですか?」 「なっ……!?」 頭の中に浮かんだ科白を、まるで先読みするかのようなタイミングでぴたりと言い当てられ、シンは驚愕に目を見開いた。 愕然とするシンに酷薄に嗤い掛け、デス子は首を振りながら口を開く。 「それ違います、マスター。わたし未来なんか視てません、わたしが見てるのはマスターだけです。マスターのことならわたしは何でも知ってるんです、何でも解ってるんです。 そのガラクタの中のマスターが今何を考えてて、今どんな顔をしてるのかまで全部解っちゃうんです。だってわたしは――わたしがマスターの〝デスティニー〟なんですから!」 恍惚とした表情を浮かべ、歌うように言葉を紡ぎながら、デス子は対艦刀に刺さった盾を引き抜き――それが再戦のゴングとなった。 片手に握った盾を大きく振り被り、デス子はフリスビーのように投擲した。 回転しながら迫る盾を頭部のバルカン砲で撃ち落とし、トゥルーデスティニーは仕返しとばかりに両肩のビームブーメランを投げつける。 緩やかな弧を描いて左右から迫るブーメランを対艦刀の一振りで叩き落とし、デス子は背中の長距離砲を構えた。 「チャージなんてさせるかよ!」 背面バーニアと両翼のスラスターをフル稼働させ、シンは自分をロックオンする長距離砲の砲口を目指して機体を突撃させた。 大剣を振り上げながら高速で接近するトゥルーデスティニーに、デス子は悪戯めいた笑みを浮かべる。 腰から突き出した長距離砲を片手でしっかりとホールドし、虚空を踏み締めながら腰を大きく捻り――、 「チャージなんて……してないです、よっ!!」 次の瞬間、横薙ぎに振るわれた長距離砲の砲身がトゥルーデスティニーを野球ボールのように打ち返した。 まさに、ジャストミート。 振り抜いた砲身を文字通り砕く勢いで繰り出されたデス子のカウンターに、トゥルーデスティニーは為す術も無く吹き飛ばされる。 「言ったでしょう? マスターのことは何でも解るって。撃たれる前に潰しに来ることなんてお見通しなのです!」 半ばから折れた長距離砲を撫でながら勝ち誇ったように哄笑するデス子に、トゥルーデスティニーの中のシンが口惜しそうに歯噛みする。 「ねぇ、マスター……?」 無様に宇宙を漂うトゥルーデスティニーを見下すように眺めながら、デス子が虚ろな笑みを浮かべてシンに語りかけた。 「わたし、強いでしょう? わたし凄いでしょう? そんなガラクタなんかより、わたしの方が全然凄くて、わたしの方がずっとずっと強いでしょう? そんなの当たり前ですよね……だってわたしがマスターの剣なんですから。わたしがマスターの盾なんですから。わたしがマスターの翼なんですから」 虚空を蹴り、闇と無重力の海の中をまるで泳ぐように進んで、デス子はトゥルーデスティニーにゆっくりと近づく。 咄嗟に振り上げようとする大剣を片手で押さえ込み、自身の対艦刀も背中に納めて、デス子は両腕を広げてトゥルーデスティニーを抱き締めた。 「わたしがマスターの〝デスティニー〟なんです、わたしが本物の〝デスティニー〟なんです。〝デスティニー〟はわたし一人で十分なんです、そうでないと嫌なんです……」 鋼鉄の胸に顔を埋め、肩を震わせながらか細い声でそう口にするデス子に、シンは何も言えなかった。 本当に厄介な敵だ……緊張が途切れ、急速に鎮静化していく己の闘争心を自覚しながら、シンは小さく吐息を零した。 操縦桿を握る両手に力が入らない……この強敵を倒す絶好のチャンスだというのに、このまま大剣でデス子を貫けば全てが終わるというのに。 それで、任務完了だというのに……。 しかしシンには、出来なかった。 胸の中で泣いている女の子を殺すことなど出来る筈がなかった。 そこまで、シンは割り切れてはいなかった。 トゥルーデスティニーがまるで抱擁を返すように、ぎこちない動作でデス子の背中に両腕を回す。 既にシンの中では、この少女を敵と見ることは出来なくなっていた。 だからだろうか……トゥルーデスティニーの胸の中でデス子が口にした――、 「――だから、マスターを殺してわたしも死ぬしかないんです!」 という科白に、シンは一瞬反応が遅れた。 咄嗟に振り払ったデス子の両眼に凶悪な光が灯り、撃ち放たれた二条の光線がトゥルーデスティニーの胸部装甲を掠める。 「あなたが悪いんですよ、マスター?」 後退を試みるトゥルーデスティニーの顔面を右手で掴まえ、デス子はまるで幼子を相手するように優しい口調で語りかけた。 シンと同じ紅の双眸に、狂気の光を宿しながら。 瞬間、トゥルーデスティニーのコクピットが眩い光に包まれ、機体を揺らす激しい衝撃と共に全てのモニターが暗転する。 頭部のメインカメラが破壊されたのだ。 「あなたがわたしを裏切るから、あなたがわたしを捨てるから!」 暗闇に覆われたコクピットに、デス子の怨嗟の声が響き渡る。 再び機体を襲う衝撃……どうやら鷲掴みにされたままの頭部に、デス子がまたビーム弾を撃ち込んだらしい。 一撃で粉砕してしまわないように、威力を抑えて。 「あなたはわたしが殺すんです。裏切ったから、わたしじゃなくてガラクタを選んだから。だからあなたを殺すんです。わたしがいらないマスターなんていらないのです! でもね、マスター……あなたはわたしの宝物なのです、あなたがわたしを裏切ってもそれは変わらないんです。だからあなたを壊すんです、宝物だから壊すんです。 あれ? わたし何が言いたかったんだろう……まぁ良いです、どうで全部壊すんです。全部壊して、薙ぎ払って、消し飛ばして、何もかもを真っ白にするんです。 ガラクタも宝物も、欲しいものもいらないものも、マスターもわたしも世界も全部壊して真っ白にするのです。真っ暗はもう嫌だから、全部真っ白に変えちゃうんです」 衝撃、衝撃、衝撃、衝撃……断続的に襲う被弾の衝撃がコクピットを揺らす中、壊れたようなデス子の哄笑だけが暗闇に空しく響き続ける。 サブカメラに切り替え、視界を取り戻した全天周モニターに映し出されたデス子の顔は……泣いていた。 笑いながら泣いていた、嗤いながら哭いていた。 その時、一際大きな衝撃がトゥルーデスティニーのコクピットを襲った。 モニターの中ではデス子が黒ずんだ鋼鉄の塊を右手に握っている、どうやら遂に頭を千切り取られたらしい。 慟哭にも似た刃金の少女の哄笑を止める者は、誰も――、 「……醜い妄執ですわね」 ――否。 たった今、現れた。 ――つづく 前に戻る 次へ進む 一覧へ