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4. それは、記憶の霞むような昔。でも、それはつい最近のことで。想い出は色あせることの証明のようで、イヤだと、心のどこかで思った。 『……ねえ、ジュン』 銀色の髪の彼女。彼女の好きな黒い服とのコントラストが、僕はとても好きだった。 『私は――』 ……これは、夢。終わった夢。過去。変えられない、結末のわかっている物語。 『私は、あなたのことが、大好きよ』 その、涙ながらの告白に、僕は、何と答えたのだったか――。 だから、これは、記憶の霞むような昔の話。霞んで、忘れてしまったと思うような昔。 ――終わった物語。 「……あー」 朝。目が覚める。何か夢を見ていた気がして――すごく、体がだるかった。 「起きなきゃ……」 僕は、起きて薔薇水晶を起こさなければならない。薔薇水晶はねぼすけだから、僕が起こさなければ、それこそ一日中寝てるのだ。そのかわり、僕が起こせば素直に起きてくれるけど。 「あ、れ……?」 ぐらり、と世界が揺れる。 「何で……天井が前に?」 おかしい、思考が鈍い。目が霞む。まるで、今朝見ていた夢のようだ。夢と、現が交じり合って――どっちが夢なのか、わからなくなってしまうような。 夢を、現実だと期待してしまいそうな、気分。 「――“ ”」 彼女の名前を呼んだ。最愛の彼女。銀色の髪で、眼帯をした――? あれ、違う? 銀色の髪。だけど、眼帯なんて、してたっけ? 確か、彼女は、黒い服を好んで着て。それがまるで、天使のようで―― 意識がにぶくなっていくにつれ、世界が遠くなっていく。そんな時。僕は、彼女の幻影を見た。 「――ジュンッ!?」 ああ――来てくれたのか。 「すい、ぎん、……とう」 フェード・アウト。 それは、日常だった。 「ほらぁ、ジュン、朝よぉ」 「……んあ?」 「もう、だらしないわぁ。今さら幻滅なんてしないけど、他の女の子の前でしたらドン引きよぉ?」 「こんなの、水銀橙の前でしかしない……」 「あらぁ、嬉しいこと言ってくれるじゃなぁい」 本当に、嬉しそうに優しく微笑んでくれる彼女。幼なじみだった。異性の幼なじみで、こんなに付き合いが長いのは奇跡だと、思う。しかも、毎朝起こしに来てくれるなんて。 「僕は、恵まれてるなぁ」 「そうよぉ? こんなかわいい女の子がいつも一緒に居てくれるんだもの。もっとありがたみを感じなさいよねぇ?」 「うわー、自分でかわいいとか言ってるよ」 「何よぅ。かわいく、ないの?」 そんなはずはない。いつもいつも、何度見たって彼女の顔を見飽きたことなんてない。 「……かわいい」 だけど、恋人でもない僕は、それをぶっきらぼうに言うしかない。愛をささやくなんて、照れくさくてできない。 「……ありがとう」 それに、彼女も恥ずかしがりやだった。学校のみんなは気付いてないけど。彼女は、見た目よりずっとシャイなのだ。 「見た目よりって、何よぉ?」 「心を読んだっ!?」 「うるさいわねぇ。――もうこんな時間じゃなぁい。まったく、ジュンが朝から私を口説くからぁ」 「誰も口説いてません」 「あらそうなの? ざんねぇん……」 時々、わからなくなる。彼女の本心が。幼なじみとしてそばに居てくれるのか――あるいは、女の子として、そばに居てくれるのか。 それが、僕にはわからないのだって、日常。いつもと、なんら変わりの無い、日常だった。 「…………?」 朝。目を、開く。 「ジュン……?」 いつも起こしに来てくれるジュンが居なかった。……おかしいな、と思う。私の方が先に目覚めたのなんて、ただの一度もないのに。 そうなのだ。ジュンったら、少しは寝顔を見せてくれてもいいと思うのだ。いつもいつも私ばかり寝顔を見られるのは、不公平だと思う。たまに一緒に寝た時だって、ずっと私の顔を見てるみたいだし―― 「……あれ?」 ふと、部屋に飾ってあるジュンの写真を見る。それだけなのに、胸騒ぎがした。時計を見ると、もう学校には遅刻の時間。ジュンも、寝坊? それとも、何か用事があるって言ってたっけ? 「ジュ、ン?」 無意識に問いかけていた。大好きな人。一番大好きで、絶対失いたくない人。その人のことで、胸騒ぎがするなんて―― 「――ジュンっ」 そして、私は走り出した。胸に、よくない種類の予感を抱えながら。 いつから、日常が変わったのだろう。 「ジュン、帰りましょう?」 「ああ、わかった」 ふと気付けば、自然に二人が寄り添っていた。どんな時だって。でもそれは、気付いただけで。気付く前からそうだった。 僕の隣には当たり前に水銀橙が居たし、水銀橙の隣には、当たり前に僕が居たのだ。それが当たり前だったから、意識しなかっただけのこと。 意識したきっかけは、何だっただろう。きっかけすらも覚えてないが、でも、今の変わった日常が好きだった。前と、同じ距離。だけど、きっと違う距離。 「……ねえ、ジュン、変なこと聞いていい?」 「うん?」 「――ジュンって、好きな子とか居るの?」 でも、その距離は、曖昧な距離で。名前がついていない距離だった。後一歩で、名前がつくのに。僕たちの関係に、名前がつく。 それを、僕はしなかった。別に、このままでもいいと思ったから。……嘘だ。勇気がなかった。もし、壊れてしまったらどうしようか、と思っていた。こんなにも近くに居るのに、そんなことさえ自信を持てなかった。 だから、僕は彼女の緊張した顔を見て、愛しく思う。だって、彼女だって怖いに違いないと思うから。それなのに、踏み出そうとしてくれたことを、嬉しく思う。 なら、僕の答えは、もう決まっていた。 「……えっと、水銀橙」 「え?」 「アレだ。こういうのは、やっぱり、男から言うべきで――」 本当は、もうちょっとちゃんとした場面で言いたかったな、なんて乙女チックなことを思いながら、僕は、万感の想いを込めて言う。 「君のことが、好きです。僕と、付き合ってください」 「……嘘」 「嘘じゃないけど」 「だって、唐突すぎ……」 「それは、そうだけど」 あれ? もしかして、言うタイミング、ミスった……? そう、僕が不安になった時。 「水銀――うわっ!?」 「……ホントなのね!?」 その言葉と共に、僕は、強く、抱きしめられた。ふわっと、彼女の良い匂いが鼻腔をくすぐった。かぎなれた匂い。だけど、こんなにも近くで感じたことなんて、ない。 「ホントに、私のこと好き!?」 「も、もちろん好きだ!」 「……よかったぁ」 脱力。そのまま、水銀橙は僕に寄りかかってきた。 「本当に、どんなにアプローチしても無反応なんですもの……。なんとも思われてないんじゃないかって、不安になったわぁ」 「いや、アプローチって、あれに反応するとなんだかすごいえっちな人間に思われると思って」 「なぁに? ……くすくす。そんなこと気にしてたのぉ?」 「普通、気にする」 「……これからは、別に、えっちでもいいけどね? もちろん、私限定でよぉ?」 「あー……うん」 すごい、気恥ずかしかった。このままの勢いで、死ねる。穴があったら入りたい。本当にそんな気持ちになるとは、思わなかった。 「そうだ。私、返事してなかったわよね」 そして、水銀橙は僕の顔を見る。抱きしめられたままだから、すごい近い距離。思わず、目をそらしたくなるような。 「だぁめ。目をそらさないで」 制された。本当に何でもお見通しだ。 「……私、水銀橙は」 それは、今まで見たどんな笑顔よりも眩しくて―― 「あなたのことが、大好きです」 自然と、僕はその笑顔に唇を重ねていた。 ……そして。僕たちは、恋人になった。 「……んっ。ジュンっ」 「う、ん……」 ……ひどく、体が重かった。頭の中も、ごちゃごちゃしているような気がした。 「あれ……僕」 「ジュン、大丈夫……?」 そう心配そうに聞くのは、誰だろう? ――長い、銀色の髪。ああ、彼女か。今、夢に見ていた。 「……今、君の夢を見ていた」 「え? ……私?」 「うん、恋人同士になった時の夢」 「……素敵な、夢だね」 彼女の柔らかい指が、僕の髪を梳く。とても、気持ちがよかった。 「このまま、寝てもいい?」 「もちろん。隣に、居るからね」 「うん、ありがとう――」 そして、僕は名前を呼んだ。愛しい彼女の名前。 「ありがとう、水銀橙」 「ありがとう、水銀橙」 ――え? 「……ジュン?」 私は、名前を呼ぶ。だけど、返事は返ってこない。 「違う……」 でも、私はそれでも言わなければならなかった。……もしかしたら、何かの間違いかもしれない。熱があるみたいだから、そのせいで勘違いしたのかもしれない。 だけど、だけど、私は言わなければならなかったのだ。彼は、もしかして、私の長い髪を見て、間違えたのではないか、なんて、信じられないような考えが、頭の中に浮かんだから。 それは、もしかして、もしかして――彼が、“あの人”のこと、を? 「――違うよ! ジュン! 私は、薔薇水晶だよ!」 だけど、返事は返ってこない。苦しそうな寝息が、返ってくるだけ。 そうだ。だから、落ち着け。違う。彼は、私をあの人と、勘違いしただけ。風邪でベッドで寝ているから、頭がぼーっとしているだけなんだ。 「……お願いだから、そうだと言って……っ」 怖かった。どうしようもなく怖かった。すがるように言う私に、彼が反応してくれないのが怖かった。 私は、一人でこの世界に放り出されてしまったのではないか。だから、彼が反応しない。彼が反応するのは、“あの人”だけ――。 「い、やだ……いやだよぅ」 涙が出てきた。……いつもなら、彼が抱きしめて慰めてくれる。心のどこかで。それを期待していた。だって、いつも彼は優しかったから。 だけど―― 「すい、ぎんとう」 やっと返ってきた言葉は、待ち望んだ言葉ではなく。――ただただ、残酷な言葉だった。 「薔薇水晶? 大丈夫?」 あれからしばらくして、銀姉さまが来てくれた。 「……ごめんなさい」 「いいわよぉ。かわいい妹の頼みだもの。それに、もともと来るつもりだったしね」 「……そう、なんだ?」 「ええ、朝来てみたら、ジュンが倒れているんですもの。びっくりしたわぁ」 銀姉さまは、よく朝ジュンを起こしに来るらしい。……そんなこと、私は全然知らなかった。 つらかった。ジュンは、何で教えてくれなかったのか。そしたら、私だって、早起きするように頑張ったのに。ジュンのためならば、どんなことだって出来ると思うのに。 「……大丈夫よぉ。そんなつらい顔しないでぇ。かわいそうに。ずっと泣いていたのねぇ」 銀姉さまが、優しく抱きしめてくれる。でも、違うんです。銀姉さま。私の憧れの人。小さいころから、ずっと憧れてた人。理想の人。 そんな銀姉さまだからこそ、私は、泣いていたんです。勝てないから。私では、あなたに勝つなんて、できないから。 そう思ってしまう自分が悲しかった。ジュンを、誰にも譲りたくないのに。それなのに、ただ私は怯えることしかできない。 ……そんな私を、銀姉さまは強く抱きしめてくれる。きっと、心の底から私を心配して。ジュンが大変な時に、こんな醜いことを考える私を。 「さあ、看病してあげましょう。こぉんなかわいい恋人が看病してくれるんだもの。すぐによくなるわぁ」 「……あ、の、銀姉、さま」 私は、醜い。だけど、それでも、確かめさせて。それで、安心できるかもしれないから。……それで、ますます不安になってしまうかもしれないけど。 「銀姉さまは、ジュンのこと、好きですか?」 「えぇ? なぁに、突然」 驚いた顔をしていたが、私の真剣の顔を見て、ちゃんと答えてくれた。そんな、気配りができるところも、すごく、素敵だと思う。 「んー、そりゃあ、好きよ? 幼なじみだしね」 それは、本当に、幼なじみとして――? 私は、本当は、そう聞きたかった。だけど。聞けなかった。だって。 「じゃあ……もし、ジュンが、銀姉さまのことを、好きだと言ったら、どうしますか?」 「――え?」 だって、私がそう言ったとき、一瞬だけ銀姉さまの瞳に映った期待の色を、私は見つけてしまったから。 「……おかしな、子ね。そんなこと、ジュンが言うはずないじゃなぁい……」 それは、私に言うというより、自分に言い聞かせている感じだった。……こんなに狼狽している銀姉さまを見るのは、初めてだった。 「あなたも、疲れてるのよ。少し、休みなさいな」 もちろん、銀姉さまは、私のことを心配してその言葉を言ってくれたんだろう。 だけど、私が思ったのは、とてもひどいことで。 私が居ない間に、ジュンを奪ってしまう気なのではないですか――? それは、とても、最低なことだ。……ひどく、悲しかった。私は、自分がこんなにも醜い人間だとは知らなかった。 私は、幸せな場所に居たと思ったのに。温かい、温かい場所。それは、私の勘違いだったのだろうか。こんなにもあっさりと崩れ去るものだったのだろうか。 私は――迷子になってしまった。 だから、お願いです。心の底から思う。他に、何もいらないから、どうか、この願いだけは叶えて欲しい。 ――お願いだから、もう一度その優しい声で、愛を囁いて。 あれから一週間が経った。 「…………はぁ」 私とジュンは、気まずい空気になっていた。正確には、私だけだけど。私に勇気がないから。 ジュンは、必死に私に話しかけてくれる。そのたびに、大した反応も出来ないのが、つらい。傷つけてしまっている。私のせいで。 だけど――あの言葉が、頭から離れないのだ。 『すい、ぎんとう』 ジュンが、熱にうなされた時求めたのは、私じゃなくて。私の憧れの、あの人で――。 「どうしたら、いいのかなぁ?」 「……薔薇水晶?」 「蒼星石……」 見れば、蒼星石が居た。そうか、中庭は、園芸部が管理してたのか。 「……手伝おうか?」 「いいよ。……それより、元気がないね。何かあった?」 「……うん。ちょっと、」 「ジュンくんと、喧嘩でもした?」 「……蒼星石ぃ」 「え、え、ちょっと……泣かないで? 僕でよかったら聞くから」 ……私は、蒼星石に話した。 「……ジュンくんと、水銀橙かぁ」 「私、わからない……。ごめんね……しっかりするって、言ったのに」 「ああ、それは、いいよ。……あの二人はさ、特別なんだ」 え? 私が聞き返すと、蒼星石は教えてくれた。 「阿吽の呼吸ってあるでしょう? あ、だけで、うん、と言える。言葉の要らない関係。それが、あの二人の関係なんだよ」 「ジュンと――銀姉さまが?」 「そうだよ。あの二人は、幼なじみでしょう? だからってこともないだろうけど、ジュンくんは、水銀橙が今何をしたいのかすぐにわかるし、水銀橙も、ジュンくんのことがわかる。僕は、それがすごく羨ましかったなぁ」 そんなこと、私は知らない。まったく、知らない。 「……それなのに、どうしてか、あの二人は別れちゃったんだ。誰よりも、幸せなカップルだったのに。それは、僕もどうしてか知らない」 「――え?」 イマ、ソウセイセキハ、ナンテイッタノカ。 「仲睦まじい、理想的な恋人同士だったよ。ああ、いや、薔薇水晶とジュンくんが理想的じゃないという意味ではなくてね?」 「……ジュンと、銀姉さまは、付き合ってた、の?」 「え? あ、そうか。あれは、中学の頃だから、薔薇水晶は知らないんだね。――うん、付き合ってたよ」 蒼星石の言葉が、胸をえぐる。どうして、教えてくれなかったの? いや、銀姉さまは言っていた。とても、好きな人が居るって。……そして、大好きだから、別れてしまったって。 それって、それって――銀姉さまは、今でも、ジュンのことが。 「薔薇水晶?」 「……ねえ、二人が、何で別れたか知っている人は、いる?」 「理由を? そうだな――」 蒼星石は、少し悩んで言った。 「知っているとすれば、あの二人の幼なじみの、真紅くらいだろうね」 「……はぁ」 どうも、最近薔薇水晶の態度がおかしかった。僕が、風邪で休んでからだ。その間の記憶が曖昧で、何があったかわからない。謝ろうにも、そもそも自分が何をしたのかわからなかった。 「あらぁ……元気ないわね。どうしたのぉ?」 「水銀橙……」 「悩み事? 相談のるわよぉ」 そうだ、薔薇水晶と仲のいい、水銀橙なら知っているかもしれない。それに、水銀橙なら余計な気遣いもいらないだろう。素直に、話せる。 「――薔薇水晶の、ことなんだ」 「……ああ、そうねぇ。ちょっと、最近おかしいわねぇ」 「僕のことで、何か聞いてない?」 「ごめんなさぁい。私も、避けられてるっぽいのよねぇ」 ……そうなのか。でも、真紅とか翠星石とかとは普通に話しているように思える。 「じゃあ、僕と、水銀橙だけ?」 「そうみたい、ねぇ」 二人で、ため息をつく。何で、この二人なんだろう? 「僕が風邪ひいていたとき、何かあった?」 「……あ」 水銀橙がひらめいたように言った。 「心当たりが、ないわけでもないわぁ」 「何?」 「……とりあえず、家に帰りましょう。あんまり二人で居られるのを見たら、まずいでしょう?」 「そうだな……そうしよっか」 水銀橙は、目立つ。学内でも、ファンクラブがあるくらいだ。そんな彼女が、放課後、男と二人っきりで居たら噂もたつだろう。今この状況でそれはまずい。 「ふふ……」 「どうかしたか?」 「別にぃ。ジュンと二人で帰るのも、久しぶりだなぁって思っただけよ」 「……ああ、確かにな」 でも、それは、……しょうがないこと、なんだろうに。 「……ごめんなさい。そういう意味で言ったのではないの。気にしないでぇ」 「……ああ、わかってる」 わかってるから、そんな悲しそうな顔を、しないでくれ――。 蒼星石に言われたとおり、真紅を探す。真紅は、もう帰ってしまっただろうか。 「あ、真紅!」 「……薔薇水晶? 珍しいわね、貴女が息を切らしているなんて」 真紅は、ちょうど帰り支度をしている時だった。 「それで? 何か私に用かしら?」 「ジュンと、銀姉さまのことで、聞きたいことがあるの」 「――あら、変なことを聞くのね」 今、真紅は嘘をついた。私から、視線をそらした。何か、知っている。 「どうして、あの二人は――」 「じゃあ、聞くけど、薔薇水晶。貴女はそれを知って、どうするつもりなのかしら?」 「え?」 「貴女は、今が幸せではないの? ジュンと恋人で、水銀橙と姉妹のように仲が良くて。これ以上、何を望むのかしら?」 真紅は、怒っている。いや、……私を、気遣っている? 「……知りたい。私は、それでも知りたいの」 「貴女の望むような答えはないとしても?」 「私は、何を望んでいるのかすら、今わからないから……だから、お願い、真紅」 「……そうね。貴女が知りたいというのなら、教えてあげるわ」 真紅は、目を閉じて、慈しむように言った。何を思っているのだろう。……わからない。 「さあ、薔薇水晶。貴女は何を知りたいの?」 「……ジュンと、銀姉さまは、何故別れたのか」 「――そう。そうよね。当然、知りたがるはずね」 真紅の声は、ただ、辛そうだった。 「何から話せばいいのかしら。――そうね。私たち、三人の話からになるのかしら。 私たちは、いつも一緒に行動していたわ。私と水銀橙が喧嘩をして、それをジュンが宥めて。それで、バランスが取れていた。三人が、永遠に続く幸せだと信じていた。 ……だけど、バランスは崩れたわ。ジュンと水銀橙は、付き合いだした。私を、独り残してね。……いいの。それは、もう、いいのよ。 もちろん、私は祝福したわ。内心、複雑な心境だったけれど。私のプライドと、水銀橙になら、と思う心があったから。 それからの二人は、幸せそうだった。前にも増して、息がぴったりで。一心同体なのかもしれないと、思うほど。 だから――誰も気付かなかったの。水銀橙の、危うさ。誰も知らなかったの。私だから、水銀橙は大丈夫だった。三人で居られるのは、私だったからなの。水銀橙が、心を許していた、私。 つまり、水銀橙は壊れていた。ジュンを、好きになりすぎて。その好きの方向が、人とは違う好きだった。……ただ、独占したいと思ってしまう。存在の全てを、独占したい。そう、水銀橙は思ってしまう。 よくよく考えれば、すぐにわかることだったわ。水銀橙は、私以外の女がジュンに近づくことを、ひどく拒んだわ。世界の終わりのような、拒否。それに気付いた時には、もう遅かった。 水銀橙は、もうあと一歩で戻れないところまで来ていた。……ジュンを、独り占めしようとして、監禁しようとした」 「……それ、で? 銀姉さまは?」 「ジュンは、それを受け入れたの。水銀橙が望むのであれば、と。……それが、終わり。水銀橙は、気付いた。ジュンを、傷つけてしまう。 それは、水銀橙にとって、何よりも恐ろしいことだったのでしょう。もう、ジュンなしでは生きていけないと言ってもいいくらいだったのに。ジュンのために、手放した。 それだけよ。……どこから、歯車が狂ったのかはわからない。きっと、今でも水銀橙は、ジュンのことを好きよ。間違いない。今でこそあんなだけど、当時はひどかったわ。 自惚れでなく、私が居なければ自殺していたかもしれない。……そのくらい、水銀橙はジュンを好き。いえ、愛しているのよ」 ……それは、あんまりといえばあんまりな話で。 「……だけどね、薔薇水晶。これだけは覚えておいて。ジュンが今好きなのは、私でも、水銀橙でもなく――あなたなの」 そんな強い想いを聞かされて、私に、何が出来るというのだろう――。 「それで、心当たりっていうのは?」 「……これは、他意はないの。だけど、答えてね。ジュン、最近私とのことを、薔薇水晶に話した? あるいは、私とのことを、独り言で言ったとか」 「水銀橙との、こと?」 それはつまり、あの時の、こと。 「……夢なら、見た。寝込んでいるときに」 「それかしらねぇ。ジュンが、私のことを好きって言ったらどうする、ですって。薔薇水晶が言ってたわぁ……」 「……もしかして、水銀橙。二回目起こしてくれたのは」 「私は、起こしてないわ」 ……なんて、ことだ。それは、どんなに傷つく言葉だろう。自分の好きな人に、自分ではない名前を、呼ばれる。 「何て、謝ればいいんだ……」 「あはは……ジュンも、ダメねえ。まるで、私に未練あるみたいじゃなぁい?」 その時、僕は気付かなかった。水銀橙の、声の質が変わっている事に。それは、忘れもしない。あの、壊れた、水銀橙の声で――。 だから、僕は言ってしまった。嘘ではなくて。本当に、そう思っていたから。 「……そうかもしれない。もしかしたら、本当にそうなのかもしれないなぁ」 「へぇ――そうなんだ」 ……かちり、とどこかで音がした。それは、鍵を閉める音。水銀橙が、ドアの鍵を閉めた音。 「すいぎん、とう?」 「ねえ、ジュン。ねえ、ジュン。私ねぇ。私ね? あなたのことが――」 「あなたのことが、大好きよ」 「……はぁ」 こんなにも寂しい帰り道は、今まであっただろうか。きっとない。どんな時だって、ジュンは一緒に居てくれた。……ひとりで泣いていた私と、一緒に。 『だから、言ったのに。ジュンに、期待なんてしなければいいって』 うるさい。……心のどこかが、本当にうるさいことを言う。 『まあ、なんでもいいけど。あは……じゃあ、引っ込むよ。ああ、可哀想な薔薇水晶。可哀想、可哀想――』 ……それは欠片だった。私が泣いていた時の、欠片。ジュンが居れば、決して出てくることのない。イメージは、白い。何もない、空間。 私は、それに負けるわけにはいかない。負けたくないのだ。私が好きになった人は、そんな人ではない。同情で、私と一緒に居てくれたわけではない。 まだ、不安はある。銀姉さまのことが、未だに好きなのではないかと、思う心が、ある。 だけど。それよりも、何よりも。私の中には、ジュンを愛しく想う気持ちが、ある。 ジュンを信じ、想う。私の大好きな人。ちょっといじわるで、鈍感で。みんなに優しい、ジュン。 だから、私はもう、迷子にならない。ただ、ジュンを目指してみせる。……絶対。何があっても。 私は、ジュンの家に向かった。 「落ち着け、水銀燈」 「何がぁ? 私は、落ち着いてるわぁ」 じりじりと、水銀燈が迫ってくる。何故か、狩猟者の目を連想した。追い詰められる。獲物は――僕か? 「何で、鍵を閉めたんだ?」 「えぇ? 別に、意味はないわよ。だって、すぐ開けられるじゃない」 意味がないのに、閉めた? それは、おかしい。矛盾している発言だ。……ダメだダメだ。この空気はダメだ。再現。別れの日の、再現だ。 このままじゃ、また、水銀燈が――傷ついてしまう。 「ジュン」 なのに。そうわかっているのに。身体が、動かなかった。逃げなければいけないのに。水銀燈の、匂い。懐かしい、初恋の人の、匂い。 「……だぁい好き」 唇が、重ねられた。なんて、甘い、キス。頭の芯が、とろけてしまいそうだった。 ……ダメだ。だから、それはダメだ。僕は、君のことが好きだけど。だけど、ダメだ。 「水銀燈――僕は」 「あは、ダメよ、ジュン。もう――逃がしてあげなぁい」 そして。僕は捕まってしまった。黒い、天使に。 「ジュン」 私は、呟きながら、キスをする。身体のいたるところに。首筋、頬、目、唇。胸。ジュンの身体がべたべたになってもやめない。 とても、楽しい。とても、幸せ。ジュンが、私のそばに居る。……なんで、私は離れてしまったんだっけ。思い出せない。とても、バカなことをしたものだ、と思う。 こんなにも愛しいのに。こんなにも大好きなのに。心も身体も、全て捧げたのに。 「ジュン」 ジュンの存在を犯したい。全て犯して、私のものにしてしまいたい。誰も見ないように。私のことだけを、愛してくれるように。 「……水銀燈」 「そうよぉ。私の名前は水銀燈。ねえ、もっと名前を呼んでよ。ジュン、ジュン。ジュン。大好きよ。愛してる」 「……水銀、燈」 どうして、泣くんだろう。どうして、私のことを想って泣くんだろう。ジュンの想いが伝わる。……どうしてだろう。本当に、わからない。 「ねえ、一つになりましょう。一緒に居ましょう。ずっと。ジュンと一緒なら、きっと幸せだと思うわぁ」 「僕は――」 「あなたを、犯したいの。愛したい。それに、あなたに犯されたいし、愛されたい。めちゃめちゃにしてほしいと思うし、大事にしてほしいと思う。そうしないと、ダメなの。私は、あなたを……壊してしまいそう」 だからお願いよ、ジュン抱きしめて。私を強く。痛いくらい、それこそ、壊れてしまうくらい。 「――水銀燈」 そして――ジュンは、私を抱きしめてくれた。 「あは、……嬉しいわぁ」 ジュンの身体は、温かかった。思わず、涙が溢れてしまうほどに。 「……ねえ、水銀燈。どうしてあの時、別れようって言ったんだ?」 あの時……? ああ、あの日。 私が、壊れて。ジュンのことが愛しくて愛しくてどうしようもなくて。ただただ、ジュンを自分のものにしようとした時。 『私は、あなたのことが、大好きです。……だから、お願い。もう、終わりにして。私のことを見ないで。こんな、壊れた私を、ジュンに見て欲しくないから――』 そう、確か、そう言った。心の底からイヤだった。私のせいで、ジュンが壊れちゃうなんて。どんなことよりも、イヤだった。 「あの時、僕は頷くしか出来なかったけど――」 ジュンは抱きしめた身体を離し、私の瞳を見て、言った。 「君は、壊れない。壊れてなんか、いない」 「――え?」 ……あはは、ジュンは、何を言ってるのかしら。おバカさぁん。だって、今の状況、考えてみればいいのに。私が、陵辱したのも同然なのに。 なのに――ジュンは、私のことを、想ってくれている。 「今なら言える。壊れている? 違う、それなら、どうして、僕のために別れるなんて言えるんだ。――それは、水銀燈が、僕のことを想ってくれたからだろう!? なあ、だから、頼むよ。水銀燈、思い出してくれよ。僕は、君のことが好きだ。初恋だった。今でも、そうかもしれない。……そんなことを言う資格はないけど。でも、思い出してくれ。君の、選択を。つらい、だけど、どんな選択よりも綺麗な選択を!」 「……ジュン」 「大丈夫なんだ。自分を信じられないなら、僕を信じてくれ。水銀燈が好きになってくれた、僕を信じて。絶対、どんなことがあっても――君は、壊れない」 ……あ、はは。 「……やぁだ。そんなこと、言わないでよ」 「…………」 「そんな優しいこと言われたら――何も出来なくなっちゃうじゃない。ジュンのこと、壊してやろうと思ったのに。私なしでは、生きられなくしてやろうと思ったのに」 本当に、どうして、ジュンはそんなに私を想ってくれるんだろう。それは、まるで奇跡のような、それは、まるで幻のような、信じられない優しさ。 「そんなの――水銀燈が大事だからに決まっているだろう」 「あはは……心を、読まないでよ」 ……どこで、歯車が狂ったんだろう。私は、ジュンのことが好きで、どうしようもなく、好きで。 「……ねえ、ジュン。これだけは信じてね?」 「うん」 「私はね、ジュンのことが、誰よりも、好きよ。これからも、ずっと、ずっとね――」 そして、私は、泣いた。ジュンの胸の中で。ただ、赤子のように。ジュンに包まれて――。 「……ごく」 つばを飲み込む。少し、勇気が居る。ジュンは私の家によく来るけど、私はあまり来たことがない。 私は結構人見知りする性質だから、まだ、ジュンのお姉さんには、慣れていない。ちょっと、苦手かもしれない。 「でも、頑張らなきゃ――」 「あれ……? 薔薇水晶」 「…………むぅ」 人が、意気込んでる時に、誰―― 「――ジュンっ!?」 「あはは……珍しいな、薔薇水晶が家に来るなんて」 「……ジュン?」 ジュンの様子が、いつもと違う。元気がない。……もしかして、私のことを怒っているのだろうか。愛想を、つかしてしまったのだろうか。 いや――これはきっと、 「泣いているの?」 「……ああ、うん、泣いてる」 悲しくて、悲しくて、涙を流しているんだろうと、想った。 「……悲しいことがあったんだね」 「ああ、……なあ、薔薇水晶」 「うん」 ジュンに近づいて、頭を抱えるように抱きしめる。それは、ジュンがいつも私にしてくれること。私を癒してくれる、ジュンの魔法。 「僕は、……ひどいヤツだな」 「……違うよ。ジュン」 それは、違う。何があったのか知らないけど―― 「私は、ジュンほど優しい人を、知らないよ」 「私がひとりで泣いているとき、そばに居てくれた。私が抱きしめて欲しいとき、抱きしめてくれた。私が孤独を感じたとき、癒してくれた」 それに、どれだけ助けられただろう。それを、どれだけ嬉しく想っただろう。目を閉じるだけで思い浮かべることが出来る。 ジュンと出逢ったこと。ジュンと初めて手を繋いだこと。ジュンが、初めてキスをくれたこと。全てが、私の心を潤す宝物だった。 「そんなジュンが、私は大好きなの。ジュンだから、好きなんだよ。ジュンはひどい人なんかじゃないよ。それにね、ジュン。私は、ジュンがひどい人でも、ずっと、ずっと、好きだよ」 心からの想いだった。これだけは、譲れない想い。……どうしても、伝わって欲しい想い。 「ねえ、薔薇水晶?」 「うん、なぁに?」 「少しだけ、泣かせてほしい。……そしたら、頑張る。僕は、あいつの想いを、背負うから。だから、少し、胸を貸してくれ……」 「いいよ。……私と一緒に泣こう。きっと、悲しみは、半分になるよ」 「ありがとう――」 そして、私たちは二人で泣いた。何が悲しいのか、私にはわからなかったけど。だけど、それはきっととても悲しいことで。 だから、私はジュンのために泣いた。あと――どこかの、見知らぬ誰かのためにも、泣いた。 エピローグ:サイド【水銀燈と真紅】 「水銀燈」 「……あらぁ、真紅ぅ。どうしたのぉ?」 薔薇水晶の話を聞き、私は水銀燈の部屋を訪れた。 「――ちょっと、言い忘れたことがあったの」 部屋の様子で、わかった。まるで、あの日と同じだった。……だから、私は、あの日に伝えられなかったことを、伝えようと思う。 「なぁに?」 「あなたは――壊れた子(ジャンク)なんかじゃ、ないわ」 「…………」 きょとん、とした、水銀燈の顔。 「な、何よ、その顔は。そんなリアクションをされると、恥ずかしくなるのだわ」 「……あ、あははははっ。なぁに、真紅。あなた――」 そう言った水銀燈の瞳からは―― 「あなた、私を泣かせに来たわけぇ?」 ――綺麗な、涙が零れていた。 「……ええ、それもいいわね。水銀燈を泣かせたなんて、後でからかいのネタに出来るものね」 「おあいにくさまぁ。でも、そうね。――泣いてみるのも、いいのかもしれないわね」 私は、水銀燈に近づき、何も言わずに抱きしめる。ひとりじゃないと、伝えたくて。 「――ありがとうね、真紅」 「うるさいのだわ。喧嘩の相手が居ないのは、退屈なだけよ。……早く、元気になりなさい」 きっと、大丈夫。 「ええ、……あはは、大好きよぅ、二人とも」 そう、笑うことが出来たのなら、もう水銀燈は、大丈夫だ。 エピローグ:サイド【薔薇水晶とジュン】 「……もう、大丈夫だ」 「えー」 「そこで何で不満そうな顔をするんだ……」 だって。ジュンがあたしに甘えてくるなんて、滅多にないのに。 「もっと、一緒に居たい」 「……僕も」 「というわけで、えっちしよ」 「……はい?」 唐突に思った。そうだ、そうしよう。今すぐ、ひとつになりたい。 「本気?」 「うん。ジュンと、ひとつになりたい。愛しくて、恋しくて。本当に心の底から想ったの」 「あー……」 何故かジュンは空を見上げ、これはないだろ、反則だ、とかぶつぶつ言った。……ジュンもいろいろ大変なんだろう。 「……えっと、薔薇水晶」 「うん?」 「よろしく」 「――こちらこそ、よろしく」 きっと、大丈夫。そう、きっと大丈夫だ。ジュンと私なら、乗り越えられる。それを信じさせてくれるジュンの笑顔。 「ねえ、ジュン」 「ん? ……何だよ、今すごい緊張してるんだけど」 「大好き」 「……あーもー。ホント、僕も、大好きだよ」 そんな私たち。なんて――幸せな二人。 end
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GAME30の状況・実況(07/11/28-07/12/05) Game29終了 負けたー。Game30は絶対勝とう!! (2007-11-28 19 44 51) 早速2位ですよ (2007-11-28 20 30 23) 勝つ? 現在の版画はノリだけで勝てる相手じゃないでしょ 本部すら団結力の無い日本には無理です (2007-11-29 00 58 56) 認証2文字!! 吉と出るか凶と出るか!? (2007-11-29 20 36 27) 認証変化キタ。4~5桁英数 (2007-11-30 03 32 41) 認証変更。背景にいろんな色が出るようになった。毒々しいやつ (2007-11-30 23 22 34) 捕捉まで後20分!抜かした後もkskして差を付けるぜ! (2007-12-01 00 38 27) 逆転!! (2007-12-01 00 47 53) きもちいい!!11 (2007-12-01 00 51 55) 認証変化 英数8桁。2位転落 (2007-12-01 05 56 19) 8文字認証で版画減速。すぐに1位奪還! (2007-12-01 06 17 32) 天は2物を与える 某kskDJのリアルタイム絵画ラジオ耐久継続中 (2007-12-01 09 17 49) 何でこの国は何でも強いんだ。 (2007-12-01 16 47 44) 3時間耐久作戦中。1時間経過。 (2007-12-01 22 03 09) 貯金が800万しかなくなってきた (2007-12-03 12 13 02) 2位転落 (2007-12-04 04 10 12) ocn全規制で本スレ書き込めねええええ でも、しっかり認証やってるぜ (2007-12-04 08 40 44) 同じく規制に巻き込まれてるorz フォーラムに代理書き込み依頼スレもあるから利用してね (2007-12-04 18 23 56) 認証変わった。英数3~4文字。すりガラスみたいなの (2007-12-04 23 05 57) 6窓OKみたい (2007-12-04 23 40 38) 認証が再び変更!文字種変更無!英数5文字の超ぼかし! ハンガgnsk中!残り3時間! (2007-12-05 00 49 25) 本スレ書き込めないからこっちに。深夜組超GJ!!日本始まったな!!!イアン空気嫁よ!!!今から加勢するぜ! (2007-12-05 04 31 14) まだ諦める必要はない!全力で加速!! (2007-12-05 16 41 34) 日本逆転劇始また!!! (2007-12-05 16 44 30) 日本逆転まであと約一時間三十分の予定 (2007-12-05 22 04 45) GAME30優勝おめでとう!!! (2007-12-05 23 30 01) 久しぶりにのぞいたらすげえ好勝負www火連立ち上げてただけだけど一緒にガッツポーズするお (2007-12-05 23 41 06)
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今の装備やステータス STR 5 2 DEX 35 20 VIT 5 2 AGI 105 45 INT 5 0 LUC 100 27
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5.エメラルドライツの洞穴 #ref error :ご指定のファイルが見つかりません。ファイル名を確認して、再度指定してください。 (top.png) 詳細 No ステージ名 階層 出現モンスターパターン EXP ドロップアイテム 5-1 5-2 5-3 5-4 5-5 5-6 5-7 5-8 必要レベル ?~? 必要カルティア BOSS攻略
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【恋をしたら】 恋をしたら、世界が変わるという。 それは、本当だと思う。 白黒だった世界に色が付くように。 今まで気付かなかったことに気付けるように。 君が僕の世界を変えたんだ。 離れていても、想いは変わらない。 問題なのは、距離ではなくて。 ただ…僕が君を想うということ。 君は君の道を。僕は僕の道を。 その先にあるものを手に入れるものでなくて 同じ道を歩こうと約束することでもなく。 向かう場所が似ていればいいと思う。 君もあのオリオン星をきっと見ているだろう。 二人並んで眺めたあの日から、また同じ季節を迎える。 この空に消えることのないオリオンが現れる。 僕は君に嘘をついた。 それを知ったら君は怒るかもしれないけど。 覚えているかな…最後に会ったときのことを。 言いかけてやめたことばは、今も僕の胸の中にある。 君が好き。 あう~…上手くいかなかったorz スランプでしょうか… あれだね、会話がないと長く書けない(ぇ) まあ、そんなこんなで。 悲恋…かな。 主人公は満足?してる恋だけど。 一方通行ってやつですな。 「僕たちが恋をする理由」/坂本真綾 より 何かありましたら、以下からどうぞ。 名前 コメント
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ビル・ゲイツ / 人体肥料 【まじかよ】遺体を溶解し、下水に廃棄したり肥料にする法案が米で承認される!死体を飲み食いすることに!? ビル・ゲイツの死体農場🤮 https //t.co/ZUtdDFSUaw — 世界銀行300人委員会(コロナ詐欺をぶっ潰せ👊) (@someone5963) July 21, 2021 ■ 【まじかよ】遺体を溶解し、下水に廃棄したり肥料にする法案が米で承認される!死体を飲み食いすることに!? 「TOCANA」より / 米ウィスコンシン州で「水火葬」が認められたことに対し、宗教関係者が怒りの声をあげている。 米「Life Site」(5月13日付)によると、今年5月初旬、ウィスコンシン州上院が、遺体を溶解し、下水に廃棄する法案を承認した。この法案は、アルカリ加水分解、または「水火葬」と呼ばれる行為を許可するもので、水、熱、化学薬品の混合物を使って人体を液化し、骨だけを残す。液体は下水に流すか蒸発され、骨は砕いて骨壷に納めるという。 (※mono....中略、詳細はサイト記事で) 遺体の取り扱いは文化や宗教によって大きく異なるが、肥料として利用されるということは、死体水で野菜を作るということだろうか……。無菌であるし、理屈では健康になんら問題はないことだとわかるが、イメージは良くない。また、下水も巡り巡ってわれわれの飲料水になる。直接的な関係はないとはわかっていても、目の前のコップに死体水の影がちらつきそうである。 参考:「Life Site」、ほか Wisconsin Senate approves bill to dissolve dead bodies, dump them in sewer .
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子どもの森への想い 私達は『子どもの森』の土地返還にあたり、お借りした元の状態になるよう解体作業をすすめました。 しかし、その後の森の残念な様子をしばらくして聞くことになりました。 里山整備はとても手間がかかります。しかし、一度、破壊してしまった森林をもとに戻すことは簡単でありません。それ以上に手間や時間がかかります。 「今ある自然を活かしつつ過ごす」ということがどんなに素敵なことか。本当に残念でなりません。 以下は TBS 「噂の東京マガジン」 http //www.tbs.co.jp/uwasa/genba/20160228.html の引用です。筑波山での太陽光発電設置について放送されました。 2016年2月28日放送 〜これでいいのか!?太陽光発電の思わぬ落とし穴!〜 福島の原発事故をきっかけに国が普及を推進する再生可能エネルギー。 自然を生かして作る電力は環境に良い…と世間は原発に代わる電力源として期待した。つまり、我々にとって手放しで喜ぶべきものだったはず。 ところが、これまで何度も取材してきた産廃処分場や名義貸しの墓地と同じく、 太陽光発電がいつの間にか、いわゆる『迷惑施設』になっていた…というのが、取材した率直な感想だ。 そして、深沢さんが取材中に語っていたように、自然を生かした電力なのに、 地域住民が大事にしてきた自然、森林を伐採してしまうことに違和感を覚える。 これは推進を唱ってきたあまり、規制を考えなかった国の罪だ。 太陽光発電を『迷惑施設』にしてしまった国の責任は極めて重い。開発事業者も原発に代わる電力として、その使命感のもと開発を行っているはず。そんな開発業者ですら、地域住民からは敬遠されてしまうようなことを起こしている。 この現実に目を背けず、早く法整備をすべきだ。 国会議員、経済産業省の役人…問題が起きているのは、筑波山だけでない。 山梨県北杜市では、すでに訴訟も起きている。 法整備が遅れている現実と、その罪を認め、早急な対応をして欲しいと痛感した。 (ディレクター 奥田幸紀) facebook 筑波山の自然、生活を守り隊さん でもその後の様子を伺い知ることができます。 すでに工事が開始されている『子どもの森』の土地を含め、筑波山中腹の国定公園内で計画されていた太陽光発電施設は4カ所ありました。 建設に反対する地元の声などを考慮してか、建設を計画していた民間の業者のうち、1社が計画の許可の申請を取り下げました。 残り2カ所についても、茨城県が不許可とした旨の通知をつくば市環境保全課が2016年2月25日付けで発表しています。 つくば市で筑波山及び宝篋山における再生可能エネルギー発電設備の設置を規制する条例(案)についての パブリックコメントの募集がありました。結果は コチラ から。 2016年5月25日 市原市長が,電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)を所管する経済産業省に対して,太陽光発電設備などの再生可能エネルギー発電設備の適正な設置に関する基準等を定めるよう星野経済産業大臣政務官に要望書を手渡しました。 このページトップへ
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概説 学生達の臨死体験談と臨死体験研究 死後の世界への確信 サイコマンテウム(鏡の部屋)実験の手順 概説 レイモンド・ムーディ(Raymond Moody、1944年6月30日-)は、アメリカの精神科医で心理学者。1969年にヴァージニア大学大学院で哲学博士号を取得。1972年にジョージア州立大学医学部に入学し医学博士号を取得している。1975年、著書の『Life after Life』(邦題 『かいまみた死後の世界』)を発表し、エリザベス・キューブラー=ロスとともに臨死体験の先駆者とみなされる。 学生達の臨死体験談と臨死体験研究 ムーディは、哲学科で学んでいた大学2年の終わりに、優等学位プログラムへ参加する事となり、大学院哲学科の授業を聴講した。その時、死後の生命に関するジョン・マーシャルの授業で、精神科医のジョージ・リッチーがかつて医学的に死を宣告されたが、その間、体から抜け出して光るという不思議な体験をしたという話を聞いた。 そして、イースト・カロライナ大学で学生に哲学を教えていた際、ある日の授業の後、ひどい交通事故に遭ったという学生が死に瀕し自分の人生を変えてしまった体験をしたという事をムーディに話した。ムーディは、その体験をプラトン『国家』に登場する兵士エルやリッチーの体験と同様のものと考え、その後、学生達にそのような証言を多く求め、その事例を多く確認している。ジョージア医科大学に入学後も死後生命に関する話を聞き、入学7箇月後に招かれてミルトン・アンソニー医学会で講演をしているが、この頃、臨死体験という言葉を使い始めた。 そして、臨死体験に関する『Life after Life』の出版後、エリザベス・キューブラー=ロスとも会談し、臨死体験についての互いの研究結果がほとんど一致していた事で、相互に感銘、共感しあったという。また、1980年代頃から臨死体験が周囲の人々にも共有されるという臨死共有体験の事例の収集も行い、これについてもかなりの報告数があるが、ムーディ自身も母の死の際に臨死共有体験をしているという。 死後の世界への確信 ムーディはテレビ出演の相次ぐキャンセルや甲状腺機能低下からくる精神疾患により、「自殺だけがこの苦しみからの出口」という考えが頭から離れなくなり、鎮痛剤を大量に飲んで自殺を図った。その際、臨死体験をして自分の肉体に引き戻されたというが、それは言葉では表現できないものであったといい、周囲に霊達の存在を感じたという。そして、それまで他人の証言から臨死体験を分析してきたムーディが自分自身も1つの臨死体験をした事で、その真実性を確信するに至っている。この事は、『Life after Life』の出版当時は、死後の世界の存在の証拠はないとする立場をとっていたが、2014年9月、NHKが放送した「臨死体験 立花隆 思索ドキュメント 死ぬとき心はどうなるのか」に出演した際の心境の変化からも窺える。 サイコマンテウム(鏡の部屋) 意識としての魂は死後も生き続けると信じるようになったムーディは、霊媒師を介さずに、故人と交流する方法の開発に着手し、サイコマンテウムという鏡の部屋を作り、故人との再会に成功したと発表している。サイコマンテウムとは誰もいない静かな部屋で、大きな鏡に向かって座り、再会したい故人を思い浮かべながら、鏡を見つめていると故人の魂が姿を現すというものである。サイコマンテウムは古代ギリシャ時代の民間信仰に基づくもので、ムーディは父と再会しただけでなく抱擁も交わす事ができたという。 実験の手順 前日はカフェインや乳製品の摂取を控え、主に野菜を食べる。静かな部屋を選び、夕方など薄明かりのある時間帯を選ぶ。部屋の電気製品、電話のプラグを抜き、楽な服装で身に着けている時計、貴金属類は外す。 1部屋に大きな鏡を置き、その正面に座った時にまっすぐ鏡に目線が行くように椅子を置く。 2自分の背後にキャンドルの火を灯す。 3会いたい故人の写真や形見などを手元に置き、親愛の気持ちでその人のことを想い出す。 4椅子に楽な姿勢で座り、15分ほど、美しいサウンドを聴きながらリラックスして意識の変容を導く。 ムーディによると、慣れると故人との面会時間は長くなるという。 参考文献 エリコ・ロウ『死んだ後には続きがあるのか 臨死体験と意識科学の最前線』扶桑社 2016年 レイモンド・ムーディ『かいまみた死後の世界』中山善之 訳 評論社 1989年 レイモンド・ムーディ『続 かいまみた死後の世界』駒谷昭子 訳 評論社 1989年 レイモンド・ムーディ/ポール・ペリー『永遠の別世界をかいま見る 臨死共有体験』堀天作 訳 ヒカルランド 2012年 レイモンド・ムーディ/ポール・ペリー著、矢作直樹監修『生きる/死ぬ その境界はなかった 死後生命探究40年の結論』堀天作 訳 ヒカルランド 2013年 参考サイト https //lifeafterlife.com/
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暴走端末のその後 長門有希は団活を終えて自宅に帰ったところだった。 「あら、今日は遅かったわね、長門さん」 部屋には誰もいなかったが、聞こえてきた声は空耳ではない。 「なぜここにいるの? あなたには、天蓋領域のインターフェースを観測する任務があるはず」 「だって、あの九曜って娘、全然動きがないんだもん。つまんないわよ」 「任務を怠っていては、有機身体の再構成の許可も期待できないものと思われる」 「分かってるわよ。でも、同じく暴走したのに、私は有機情報連結を解除されて再構成されず、長門さんはそのまんまなんて、不公平だと思わない?」 「私も、あなたの再構成については何度も申請している。しかし、許可が下りない。単純に主流派と急進派の勢力の差に起因するものと思われる」 「全く気に入らないわね。もう一回暴走しちゃおうかしら」 「再度暴走すれば、喜緑江美里が今度こそ黙ってはいない。私がいくらかばっても、あなたは情報生命構成を消去されて『死ぬ』ことになる。そもそも、あのときだって、私が彼女の侵入をブロックしてなければ、確実にそうなっていた。穏健派は、主流派や急進派と比べて、暴走に対しては寛容ではない」 「はいはい。分かってるわよ。じゃあ、退屈な九曜ちゃんの観測に戻るわ」 朝倉涼子が「出ていく」気配を感じて、長門有希は素早く付け加えた。 「天蓋領域の出方によっては、あなたの戦闘能力が必要になる可能性もある。そのときがあなたが再構成される可能性が最も高いときかもしれない」 「期待しないで待ってるわ」 朝倉涼子は、そういい残して「去って」いった。 期待しないで待っているわ──その言葉の意味を、長門有希も充分に理解していた。 朝倉涼子の戦闘能力が必要になる事態というのは、自分にとっても、情報統合思念体にとっても、そして、SOS団にとっても、決していいことではない。 そんな事態は発生しないに越したことはないのだ。
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第6話 壊れてしまった光景 今でもはっきりと覚えている。 わたしが暗い闇の中で泣いていた時、差し伸べられた彼女の手。 その手は、とても温かくて。 きっと彼女の心も、こんな風に温かいんだろうなって、思った。 それからも、ずっと。 何度も泣きそうになったり、挫けそうになったわたしを、彼女はその手で助けてくれた。 彼女とわたしのいる光景は、いつまでも変わらないと思っていたのに。 ―――でも、それは、あっけなく壊れてしまった。 ――――彼女はもう、わたしに手を差し伸べてはくれないだろう。 1 「…カオルちゃん!この新作のドーナツ、ちょー美味しいよ!!何個でも食べれちゃいそう!!」 「ラブ、口の周りにクリームいっぱいついてるわよ…ほら、ハンカチ」 「……全く…子供じゃないんだから。もうちょっと落ち着いて食べられないの?」 「ふふ、ラブちゃんよっぽどお腹空いてたのね」 夏の日の夕方。 ダンスレッスンの終ったわたし達4人は、カオルちゃんのドーナツ屋さんで、恒例になりつつある、練習後のおやつパーティをしていた。……程々にしないと、太っちゃうかな……。 それはいつもの光景。 わたしたちの、ずっと繰り返されてきた変わらない日常。 「あれ?美希たん、ドーナツ食べないで、何飲んでんの??」 「……パインジュースよ。あたしはモデルだから、ラブみたいに食べ過ぎたりしないの」 「へえ、美味しそうね。ねえ美希、一口だけ飲ませてくれない?」 「―――――…ヤだ」 せつなちゃんの言葉に一瞬動きを止めたあと、それを断わり、美希ちゃんはまたストローでパインジュースを啜る。珍しいな。いつもなら飲ませてあげそうなものなのに。 ……わたしだったら、喜んで飲ませてあげるのにな…そ、それにか、間接キスって事になるし…。 「……それはそうと、やっぱりその帽子、似合ってるじゃない、せつな」 そう言うと、美希ちゃんは左隣に座ってるせつなちゃんのかぶっている帽子へ目をやる。 「ええ、素敵なものをありがとう、美希」 大きな赤いリボンのついた、広つば帽子。 この間の大雨の日、無理を言って美希ちゃんに付き合ってもらって、買ってきたもの。 せつなちゃんがクローバー、そしてプリキュアに入った記念、って彼女にプレゼントしたものだけど、実際かぶっている所を見るのは今日が初めて。 ……思った通り、すごく良く似合ってる。 わたしは内心、自分が選んで贈ったものをせつなちゃんが身に付けてくれたことが嬉しくて仕方なかった。 ほんの少しでも、彼女の傍に近づけた気がして。 いつでもせつなちゃんの近くに、わたしが存在しているような気がして。 「……お礼はあたしより、ブッキーに言ってあげて。あたしは選ぶのに付き合っただけだし。…大体、元はと言えば、プレゼント贈るって言い出したのもブッキーだしね」 美希ちゃんは素っ気なくも見える感じで言う。…今日の美希ちゃん、何かいつもと違う感じ…?それともせつなちゃんにお礼を言われて照れてるだけなのかしら…? 「そうだったの…ブッキー、本当にありがとう…」 「そ、そんな、お礼なんて……でもその帽子、きっと似合うって、わたし信じてた……」 真っ直ぐにわたしを見つめて、真剣な顔でお礼を言うせつなちゃん。 わたしは嬉しいような、くすぐったいような、そんな感じで彼女の顔から目線を外して。 でも…喜んでもらえたみたいで、良かった……。 何か贈り物をしたわたし自身が、せつなちゃんに幸せな気持ちをプレゼントされたみたい……。 「―――ホントありがとうね、ブッキー!せつなにこんな素敵なプレゼントしてくれて!!」 一瞬、わたしの思考が止まる。 ―――なんで、ラブちゃんが、ありがとうを、言うの? そんなわたしの気持ちに気付く訳も無く、ラブちゃんは明るい声で続ける。 「良く似合ってるよ、せつな~!なんかお嬢様っぽくて、イメージぴったり!」 「ふふ、ラブ、そんなに褒めると逆に嘘っぽいわよ」 「ウソじゃないよ!まあせつなは何でも似合うけどね。なんたってデキが違うもん!」 「……もう、あんまり言われると恥ずかしいわよ……」 「へへ…でもホントのホントに、せつなは何着ても、何つけても可愛くて、あたしの自慢だよ!」 わたしの中の幸せな気持ちはかき消えていた。 心の中に、代わりに嫌な思いが霧のように広がっていく。 ―――わたしのプレゼントは、ラブちゃんにあげた訳じゃないのよ……? ―――あなたの恋人を着飾らせて、あなたを満足させる為じゃないのよ……? ―――どうしていつもせつなちゃんとわたしの間に入ってくるの……? ―――わたしのささやかな幸せすら、あなたは許してはくれないの……? ―――わたしは…… 「……ちょっと!惚気るんなら家に帰ってからにしてくれない?……正直、一緒にいるこっちが一番恥かしいんだけど!」 美希ちゃんが、呆れたような少し強めな口調で、二人をたしなめる様に言った。 「タハハ…ごめ~ん、美希たん。そんなに怒んないで~」 「ご、ごめんなさい、美希……」 「……ったく。少しは周りの目を気にしたらどうなの?」 そう言って、美希ちゃんはチラッとわたしの方を見る。 ―――え? なんだろう、今の……。 もしかして、わたし、嫌な思いが顔に出てたかしら……? * 「……とにかく、今後そういった行為は慎むように!いいわね、二人とも!」 「は~い……」 「精一杯、慎むわ……」 二人の反省した様子に、さすがに美希ちゃんも言い過ぎたと思ったのか、気まずそうにジュースを飲む。 ラブちゃんとせつなちゃんも、無言でドーナツを口に運んで。 わたしはといえば、さっきまでの嫌な霧が、美希ちゃんの言葉のおかげか、ちょっと薄れてきた事にホッとしていた。 (ありがとう、美希ちゃん……) 心の中でお礼を言う。危なくまた自己嫌悪になるところだった。 せつなちゃんと一緒の場所に立っている事で満足しようって決心したのに。 ……まだわたしは完全に想いを振り切れてはいない。 ……せつなちゃんにプレゼントなんてしたのがその証拠だ。 (……しっかりしなきゃ) 自分に言い聞かせる。このままじゃわたしだけじゃなく、ラブちゃんまで嫌いになっちゃいそうだから。 わたしの勝手な片思いで親友まで失うなんて、最低だ…。 自分のせいで、この光景を壊したくない……。 そう考えながらラブちゃんとせつなちゃんへと目を向ける。 「…あれ?せつなちゃん、口にドーナツついてるよ?」 上品に食べる彼女には珍しく、せつなちゃんの唇にドーナツの欠片がついている。 「あ、や、やだ……ちょっとボーっとしてたから……。ラブ、さっきのハンカチ……」 「―――いいよ。動かないで、せつな」 そう言ってラブちゃんはせつなちゃんの顔に自分の顔を近づける。 一瞬の出来事で、わたしは目を逸らす事も出来ず――――。 せつなちゃんとラブちゃん。 チュッ という軽い音と共に。 二人の、唇が重なった。 あまりの衝撃に、わたしはただ茫然とする事しかできなかった。 顔が、離れた。 せつなちゃんもラブちゃんの行動にビックリしたらしく、目を見開いたままで。 その顔が、どんどん赤くなっていく。 「……これで取れたよ。せつな味のドーナツ、GETだね!」 ラブちゃんは屈託なく言うと、唇をペロッと舐めた。 「ラ、ラ、ラブ!人前ではやめろって美希にさっき言われたばっかりじゃない!」 「あ!そうだった!!ご、ゴメンね、美希たん!」 よっぽど動揺したのか、彼女らしくなく慌てた様子のせつなちゃん。 さすがのラブちゃんも、怒られたばかりなのを思い出したのか、焦って美希ちゃんに謝る。 「…………」 かなり怒っているのか、美希ちゃんは無言。 わたしは、衝撃が去って行くのと同時に、どんどん悲しみが溢れてきて。 このままだと、それが瞳から流れ出してしまいそう。 そう思って、それを見られたくなくて、俯いた。 ギュッ。 (え……?) 俯いたわたしの右手を、美希ちゃんの左手が握り締める。 まるで、わたしの涙の栓を止めようとするように。 美希ちゃんは相変わらず、無言のまま。 わたしはそんな彼女を、伺うように上目遣いで見た。 「…………」 美希ちゃんは何も答えず、少し遠い目をして、ジュースを口に運ぶ。 チュッ っという音と共に、彼女はストローに軽く口をつけた。 2 「まったく、ラブにも困ったものだわ……ブッキーからも何か言ってあげればいいのよ。あの子、あたしが何か言ったところで、もう慣れちゃってて効きやしないんだから」 こんな事言っている美希ちゃんの顔も、わたしにとって昔からの光景の一つ。 練習からの帰り道。わたしは「新しい香水作ったから、感想くれない?」っていう美希ちゃんの誘いに応じて、彼女の部屋へ遊びに来ていた。……一人でいたら、さっきのラブちゃん達のキスシーンを思い出して、また暗い気分になってしまいそうだったし……。 それに……。 「ま…まあラブちゃんだって悪気があってやってる訳じゃないんだし……」 「悪気が無かったら許されるってものじゃないの!天真爛漫だろうと、純粋無垢だろうと、周りに迷惑な行為をしてる時点で反省……ううん、猛省すべきなのよ」 子供の頃から、ラブちゃんが何かする度に、美希ちゃんはこうやって呆れたような、それでいてちょっと諦めたような口調でわたしに言うのだ。もっとも、わたしは彼女の言うようにラブちゃんに意見した事など一度もなく……大抵、今みたいに少し困った顔で微笑むことしか出来ないのだけれど。 「……あ、折角来てくれたのにゴメンね、ブッキー。今飲み物持って来るから」 そう言って美希ちゃんは部屋を出て行った。 わたしは小さな溜息をついて、心の中で尋ねる。 (……どうしてさっき、わたしの手を握ってくれたの?) わたしの心の中を読んだかのように、握られた手。 泣き出しそうだったわたしを、支えてくれた、手。 小さな時からずっと変わらない、差し伸べられた、あの温もり。 その答えを聞きたいのもあって、わたしはここに来たのだけれど。 美希ちゃんの勢いに押されて、何も言えなかった。 いや―――それだけじゃない。 怖かった、んだ。 (美希ちゃんは、知ってるの?……わたしの、せつなちゃんへの想いを……) それを確認するのが、怖い。 自分の邪な恋に、彼女は気付いているのだろうか。 女の子に、しかも親友の恋人に対する哀れで、報われない恋に。 だとしたら、きっと、美希ちゃんに嫌われてしまう―――。 ……もしかしたら、もう軽蔑されているかも……。 (それは…それだけは、嫌だ……) わたしの中の美希ちゃんは、気高くて、真面目で、潔癖な女の子のイメージで。 わたしの歪な恋など、許してはくれそうではない。 だから……たった一言が、聞けなかった。 彼女を失いたくないから。 隣に彼女のいる光景を、失いたくないから。 (美希ちゃんが、いなくなっちゃう……) その想像が恐ろしくて、思わず自分の肩を抱く。 (聞けないよね……やっぱり……) 今度は深く、大きな溜息をわたしはついた。 「お待たせ、ブッキー。紅茶で良かったわよね?……どうかしたの?」 美希ちゃんが飲み物の乗ったお盆をもって戻ってきた。 「あ、う、ううん!な、何でもないの!気にしないで!」 「……本当?なんかこの世の終わりみたいな顔してたけど……?」 慌てて首を振るわたしを怪訝そうに見る美希ちゃん。 「……何かあるなら相談してよね。……友達、でしょ?」 彼女は少し淋しそうに言う。 その言葉と表情が、わたしの胸を締め付ける。 でも……。 「わたしなら大丈夫だから……。そ、それより美希ちゃんの新作の香水に興味あるんだけど!?」 ……わざとらしく話題を変える。 今なら……答えが聞けたかもしれないのに。 臆病な子だ、わたし……。 「…そう―――分かったわ。ちょっと待ってね」 美希ちゃんはお盆をテーブルに置くと、ドレッサーの引出しから、黄色い小ビンを取り出した。 そのままベッドに腰を下ろす。 「こっち来て、ブッキー。つけてあげる」 言われるがまま、彼女の隣に座る。 彼女はわたしの左手を取ると、手首に香水を、シュッ、っと軽く吹き付けた。 「……試してみて」 わたしは手首を顔に近付け、その香りを吸う。 不思議な香りだった。 甘酸っぱくて、ほろ苦くて、なぜか胸が切なくなる……。 「……変わった香り……。美希ちゃん、これ何か効果とかあるの?」 「効果……は特に無いと思うわ。ただテーマを決めて作っただけだし……」 「テーマ?」 聞き返そうと顔を上げると、美希ちゃんの顔がすぐそばにあった。 彼女は、少し驚いているわたしの両手首を握ると、そのまま押しかかってくる。 (―――あれ?) そう思ったときには、わたしは彼女に覆い被さられるように、ベッドの上に倒れていた。 * 視界の中には美希ちゃんしかいなくなっていた。 澄んだ青い瞳。すっと高く整った鼻梁。そして、綺麗な…唇。 それらがスローモーションのように近付いてきて。 羽毛が舞い落ちるように、柔らかく、静かに。 唇同士が、触れた。 一瞬、わたしの頭の中が真っ白になった。 何が起きているのか、まるで理解できない。 その行為を拒否する、という当たり前の選択すら思いつかなくて。 ただ甘んじて彼女の唇を受け入れていた。 そんなわたしの無抵抗ぶりを、了承の印とでも思ったのだろうか。 最初はただ、わたしの存在を確認するだけみたいに、軽かった彼女の唇の感触が、変わる。 ただがむしゃらに、わたしの唇に押し付けてくるものへと。 それは、奪う、って言葉が相応しいように、強引で粗暴な、圧力。 そのうちに、それにも飽き足らなくなったのか、彼女の舌が、わたしの内へと侵入してきた。 それすらも、放心してるわたしに拒む事は出来ず。 わたしの口内を、手探りでなぞるように、彼女の舌が這い回る。 やがて、わたしの舌を見つけたそれは、歓喜したかのように絡み付いてきて。 その動きは、まるで暗闇ではぐれた恋人に、やっと会えたかのよう。 激しくて、一方的な抱擁を、わたし達の舌はずっと交わし続ける。 まるで軟体動物の交尾みたい……。 わたしは、ただそんな事を考えていた。 どれくらいたったのだろう。 視界の中から、美希ちゃんが消えていた。 ただ荒い息遣いだけが、わたしの左耳から聞こえている。 ちょっと、重いな。美希ちゃんって軽いイメージだったんだけど。あ、でも、わたしより身長あるし、こんなものなのかしら……。それとも―――もしかして太った? そうだとしたら、やっぱりカオルちゃんのドーナツ屋さんに行き過ぎなのがいけないと思うのよ。美希ちゃん、ドーナツ食べなくてもジュース飲むから…。それだって、結構カロリーあるわけだし……。 モデルさんなんだから、そういうとこも気をつけなくちゃ。烏龍茶とか、そういうのにした方がいいんじゃないかしら?余計なお世話って怒られちゃうかもしれないけど。 明日、言ってあげよう。 明日。 変わることの無い光景の中で。 「……喉、渇いちゃったね……。ブッキー、紅茶、飲む?」 美希ちゃんは疲れたような口調でそう言うと、わたしの上から身を起こした。 ショックで飛んでいた思考が戻ってきた。 「………………」 声が、出ない。 身体が、美希ちゃんがどいたのに、まだ重さを感じている。 彼女の方へ顔を向ける事すら出来なくて、わたしは、ただ天井だけを見つめていた。 そこで初めて頬に違和感を感じる。 濡れてるんだ……知らないうちに泣いてたみたい。 今までの事が、現実なんだって、徐々に認識する。 悪い夢でも見ていたと思っていたかったけど。 ―――だって、こんな事あり得る筈が筈が無いから。 美希ちゃんがわたしにこんな事をするなんて、あっていい筈がないから。 わたしの心の光景の中で、子供の頃の美希ちゃんが微笑んでいる。 その彼女なら、わたしに手を差し伸べて、ここから起こしてくれる筈。 何よりも、私の事を心配して、大切にしてくれる筈。 でも、そう思う一方で、分かってもいた。 その光景は、もう砕かれてしまったんだと。 もう修復する事の出来ないくらい、粉々に。 他ならない、彼女自身の手によって。 新しい涙が、頬を伝い、流れる。 わたしの心になど気付かないように、彼女は続ける。 「その香水ね、良かったらあげるわ。元々その為に作ったものだから。……せつなにプレゼントあげたのに、ブッキーは何も貰ってないでしょ。……だから、あたしからの、プレゼント」 美希ちゃんは淋しそうに、ちょっとだけ笑った。 違うよ、美希ちゃん。 わたしが聞きたかったのはそんな言葉じゃない。 わたしが聞きたかったのは――――。 「―――『片思い』がテーマなのよ。それ」 わたしは何も言わず、ノロノロとベッドから起き上がった。 そのまま、置いてあった鞄を持ち、ノブを回し、部屋のドアを開ける。 その間、わたしが彼女を振り向く事も、彼女がわたしに何か言う事も無かった。 後ろ手にドアを閉める。 なぜか見ていないのに、美希ちゃんも今のわたしと同じ表情をしてる事が分かった。 悲しい、顔を。 「……やっぱり、知ってたんだね。美希ちゃん」 わたしはそう呟いて、重い足を引き摺るように、彼女の家を後にした。 3 あれはいつの事だったろう。 ……確か、小学校に入ったばかりの事だったと思う。 近所の子供達と遊んでいて、草むらの陰にあった小さな―って言っても子供には充分大きくて深い―穴に落ちてしまった事があった。 這い上がろうとしても、湿った土のせいで滑るばかり。助けを呼んでも誰も来てくれなくて。 泣き疲れて、幼いながらに、わたしはここで死んじゃうのかな、って思った。 そのまま、日も落ちて辺りも暗くなりかけた頃。 彼女の―――美希ちゃんの声が聞こえた。 「ブッキー、そこにいるの!?」 「……み、ミキちゃん!」 「ちょっとまってて!」 少しして、古びたロープがわたしの前に下ろされる。 「それつかんで、のぼってきて!!ここまできたら、あたしがひっぱってあげる!」 わたしは必死に、そのロープを掴んでよじ登った。 そして、わたしの前に差し伸べられた、彼女の手。 それに縋って、わたしは穴から出た。 「……だいじょうぶ!?どこもケガしてない!?」 わたしに声をかける美希ちゃん。 その姿を見たとき、逆にわたしの方が不安になった。 「ミキちゃんこそ……ボロボロじゃない!!」 おそらくわたしを探してる最中、転んだり、引っ掛けたりしたのだろう。 いつもオシャレだった彼女の服はあちこち破けてボロボロで。 身体も、いたる所擦り傷や切り傷だらけ。 とても、将来モデルになりたい、って夢を持っている子の姿ではなかった。 それでも彼女は、わたしの手を握り締めたまま言ったのだ。 「いつもとかわらないよ!あたし、かんぺき!!」 ……いつもそうだった。 わたしが不安そうにしていたり、怯えたりすると彼女はいつもそう言って、笑う。 「でも、ち、でてるし……おようふくだって……」 「こんなのいたくないよ!ふくだってっこれしかないわけじゃないし!」 「でも……」 なおも心配するわたしを、彼女はギュッっと抱き締めた。 「ブッキーがぶじなら、いいの!それがあたしの、かんぺきなんだから!」 そんな彼女の目は、わたしを探している間ずっと泣いてたのか、真っ赤に腫れてて。 わたしはそれを見て、また泣き出した。 「なかないでよ、ブッキー……。」 「……だって……」 「あたし、ブッキーのわらってるかおがみたくて、がんばったんだから。だからわらって。これからだってブッキーがなきそうになったら、いつだってたすけてあげる。だから……」 わたしは涙を拭うと、心配そうな彼女に笑いかけた。 「……うん!わたし、しんじてる!」 その約束は、破られる事は無かった。 彼女は、それからも、いつもわたしを守ってくれていた。 辛いときや悲しいとき、真っ先に駆けつけて手を差し伸べてくれるのは美希ちゃんだった。 幼い頃からわたしにとって、彼女は何より頼れる存在であり、憧れであり、親友だったのに。 * 「あら、お帰りなさい、祈里。早かったのね。美希ちゃんのとこに寄って来るんじゃなかったの?」 「……ただいま……お互い練習で疲れてたから、帰ってきちゃった……」 涙の跡をお母さんに見られないように、と顔を伏せたまま、わたしは自分の部屋へと入った。 背中でドアを閉め、崩れ落ちそうになる足を懸命に動かし、明かりも点けずベッドへと飛び込む。 「…………」 頭の中がグルグルと回っている。 美希ちゃんはどうしてわたしの想いを知っていたのか? なぜそれでも彼女はいつも通りに振舞っていたのか? わたしを嫌いになっていないのか? ……疑問ばかりだ。なんの答えも浮かばない。 (それに―――) どうして、わたしに、キス、したの? 一番大きくて厄介な疑問。 それを考えた時、何故だか可笑しくなった。 キス、なんて言葉が今まで思い浮かばなかった事に。 それは―――あまりにもかけ離れすぎていたから、だと思う。 わたしの中での、キス、ってイメージと。 した事は無いけど、それはもっと甘くて、ロマンチックで、素敵なものだと思っていた。 ……今日見たラブちゃん達みたいに……。 ――わたしは頭を振ってその影像を打ち消すと、美希ちゃんと交わしたそれを思い出す。 あれは…違う。最初こそ優しいものだったが、その後の荒々しさはまるで嵐のようだった。 乱暴で、いやらしくて、深い――――――。 (……蹂躙、って言うんだっけ) あの行為には、その言葉が一番しっくり来る。 そうじゃなければ、略奪、だ。 涙が滲んでくるのが分かる。 まだ残っているあの感触を消し去ろうと、左手の甲で唇を擦る。 (……どうして、こんなヒドイ事……) わたしの知っている彼女は、こんな事をするような子じゃなかったのに。 (……美希ちゃんがわたしを泣かせた事なんて、あの時だけだったな……) わたしの信頼は裏切られてしまったんだろうか。 ―――違う、わたしが彼女を裏切っていたんだ。 自分の許されない恋を、彼女に告げずにずっと隠していた。 一番最初に相談すべき相手なのに、それも出来ずに。 ―――だから美希ちゃんは怒って、わたしにあんな事したんだ。 だとしたらこれは―――美希ちゃんを傷付けた分、わたしが負うべき、罰。 (―――もう、美希ちゃんに会えない………) それを考えた時、なんともいえない喪失感を感じた。 胸に……埋める事の出来ない大きな穴があいたみたい……。 プリキュアも、クローバーも、今後一緒にやって行く事は……出来ない。 彼女の隣に、わたしが立つ事も。 彼女の前に、姿を見せる事も。 ……きっと美希ちゃんは許してはくれない。 「…ごめんね、美希ちゃん……ごめんなさい……」 わたしの目から、また涙が零れ始めた。 * その時、左手首から、フッ、と香水が香った。 『―――『片思い』がテーマなのよ。それ』 美希ちゃんの、淋しそうな声。 その声が、もう一つの意味をわたしに教えてくれる。 混乱して見失っていた、最初に思いつくべき真実に。 「―――美希ちゃん、もしかしてわたしの事…………」 そう思った途端、全ての疑問が氷解していく。 美希ちゃんはどうしてわたしの想いを知っていたのか? ―――彼女は、見ていたんだ。いつでも、わたしだけを。 なぜそれでも彼女はいつも通りに振舞っていたのか? ―――彼女もわたしと一緒で、必死に想いを隠していたから。 わたしを嫌いになっていないのか? ―――有り得ない、だって・……。 どうして、わたしに、キス、したの? ―――………好き、だから。 なんでそれに気が付かなかったのだろう。 ……わたしが彼女の方を見ていなかったから、だ。 わたしには、せつなちゃんしか見えてなかったから……。 そこまで思い至った時、嫌悪しか感じていなかった彼女との行為が、胸の痛む、愛しいものへと変わる。 抑えていた感情を爆発させたような、不器用で、哀しいキス。 もしせつなちゃんに……キス……するような事があったら、わたしも同じようにするかも知れない。 一瞬でも永く、強く、自分の存在を相手に焼き付けるために。 「……美…希…ちゃん………」 暗い部屋の中で、わたしは美希ちゃんを今までないくらいに近くに感じた。 ずっと『親友』って枠の中に入れていたから分からなかったんだ。 美希ちゃんもわたしと同じように苦しんでいた事に。 こんなにすぐ傍にいた事に。 「……………」 自分の左手を、見つめる。 今でもはっきりと覚えている。 わたしが暗い闇の中で泣いていた時、差し伸べられた彼女の手。 その手は、とても温かくて。 きっと彼女の心も、こんな風に温かいんだろうなって、思った。 それからも、ずっと。 何度も泣きそうになったり、挫けそうになったわたしに、彼女はその手で助けてくれた。 彼女とわたしのいる光景は、いつまでも変わらないと思っていたのに。 ―――でも、それは、あっけなく壊れてしまった。 ――――彼女はもう、わたしに手を差し伸べてはくれないだろう。 ――――――……だったら。 ―――――――だったら今度は、わたしが手を差し伸べる番なのかもしれない。 同じ闇の中で迷っている今のわたしに、可能なんだろうか。 でも、おそらくそれが出来るのは、わたしだけなんだ。 子供の頃に彼女がしてくれたように、わたしが彼女を引き上げてあげたい。 わたしは涙を拭いて、ベッドから起き上がった。 ―――美希ちゃんに会わなければいけない……。 どうすればいいのか、何を言っていいのかも分からない。 でも―――。 リンクルンを取り出し、彼女の番号を押す。 変わらないと思っていた、今までの光景は壊れてしまったけれど。 ここからまた新しい光景が作られていく事を……わたしは、信じたい。 リンクルンに彼女が出るのを、暗闇の中、わたしはずっと待ち続けた。 了 第7話 その手の中にあるものへ続く