約 488 件
https://w.atwiki.jp/seisoku-index/pages/453.html
8月22日(午前2時00分)第7学区のとある病院 とある病室 フルチューニングが意識を取り戻した時、既に時間は深夜を過ぎていた。 痛む体を無理やり起こして辺りを見回す。 そしてどうやらここは病院らしい、と判断を下した時。 「…目が覚めましたね、とミサカは声をかけます」 「!」 唐突に自分と同じ声が聞こえてきたので、フルチューニングはビクリと反応した。 暗くて見えづらいが、足元の方に妹達の1人がいるのが分かった。 「殺される前に、1つ聞きたいのですが」 「?」 「レイが意識を失う直前、天草式のみんなの声が聞こえた気がするのです。…見かけませんでしたか?」 「天草式?…ひょっとしてあのクワガタみたいな奇妙な髪色の男と、その仲間達の事ですか、とミサカは確認します」 フルチューニングはコクリと頷いた。 (やっぱり、みんなもここに来ていたのですね) (なのに、ここに妹達がいると言う事は、もしかして…) (まさか、まさか、殺され…) 一瞬で、フルチューニングの脳裏に最悪の結末が描かれた。 「彼らなら今廊下で仮眠をとったり、思い思いの事をしていますが、とミサカは率直に告げます」 「…え」 「それと、あなたは何か勘違いをしています、とミサカは溜息をつきます」 「勘違い?」 「ミサカはあなたを殺すつもりはありません、とミサカは少々あきれて誤解を解きます」 「どういう事ですか?」 「…ミサカの検体番号は10032号です。つまり、今日の実験に使われた個体です、とミサカは事実を明らかにします」 「どうしてあなたが…実験の結果殺される予定だったはずでは?」 「その実験が中止になりました、とミサカも未だ信じられない事をお知らせします」 その言葉を聞いて、フルチューニングは思わず力が抜けてしまった。 「中止…何があったのですか?」 「あなたと同じように、実験を止めようとある人が来て…」 そこで一旦言葉を区切る御坂妹。 まるで大切なものを自分の中だけに隠しておきたいような、そんな子供っぽい逡巡をして―― 「このミサカの為に、命懸けであの第1位『一方通行』を倒し、計画を中止させました、とミサカは正直に語ります」 「そんなことが…」 信じられない奇跡を目の当たりにしたかのように、2人とも無言になった。 いや、確かにそれは奇跡的とも言っていい出来事である。 なにせあの『最強』は、世界で最も強い超能力者なのだから。 (一体、誰がそんなことを成し遂げたのでしょうか?) (誰が、救われないはずの妹達を救ってくれたのでしょうか?) ほんの僅かな時間。 静寂がこの病室を包んでいたが、コンコン、というノックが時間を動かした。 「では、ミサカは研究施設へ一旦戻る事にします、とミサカは空気を読める事を証明します」 「あ、そういえばあなたと戦ったミサカ達から伝言です」 「伝言…なんですか?」 「『高レベルとはいえ、廃棄された素人相手に大人げない事をしました。ごめんなさい』」 「な……」 あまりの言葉に、カチンときて無言になるフルチューニング。 「『悔しかったら、またいつでも相手になります。まあ、ミサカ達が負ける事はありえませんが』」 「『ミサカ達にも、死ねない理由が出来ましたから』」 「…」 「と、ミサカは一字一句正確に伝えます」 「…」 「まあ、ただ単に“長女”ともう一度会いたいという意味でしょう、とミサカは事実を暴きます」 「長女…」 「「妹達」最初の個体なのですから、長女で合っていますよね、とミサカは告げて部屋を後にします」 ぎこちない笑顔を浮かべて立ち去る御坂妹と入れ替わるように、建宮と五和が病室に入ってきた。 「建宮さん、五和さんも…」 「おー、大事に至らなくて良かったのよなー」 「心配しましたよレイちゃん!」 ヒシ、と抱きついてくる五和の背中に手を回しながら、フルチューニングは質問した。 「レイが気絶した後、何があったのですか?」 「ソレが俺にも良く分からんのよ」 「しばらく私たちとあのクローンの子たちが睨みあっていたんですけど」 「突然『風車を回します!』ってみんないなくなっちゃって…」 どうやら、五和も事情を把握していないらしい。 「で、とりあえずお前さんを病院に連れてきた訳よな」 「その後しばらくしたらさっきの子が来て、『もう戦う事はありません』って」 事情はよく分からないが、どうも天草式と妹達が戦う前に実験が中止に追いやられたらしい。 誰も死ななくて良かった、とフルチューニングは安堵して…重大な疑問に気が付いた。 「ところでどうして、みんながここにいたのですか?」 あー、それは…と言葉を濁しつつ、諦めたように建宮が回答する。 「五和がおまえさんに渡したお守りは、一種の護符になっていたのよ」 「ゴフ?」 「おまえさんが危ない状況になると我らにそれを教えてくれる、発信器のようなものよな」 「結局、レイちゃんが心配だったのでみんなで近くまで来ていたんですよ」 2人の言葉に、フルチューニングは呆気にとられた。 (なんだかんだ言って、みんなはずっと傍にいたのですか) (レイがやられたのを知って、あんなカッコ付けた登場をしたのですね) (まったく…あれ?) 「…建宮さん、確かあなたはまだお仕事の途中だったのでは?」 ギックウ!と反応する建宮を、ジト目で睨むフルチューニング。 あはははー、と誤魔化し笑いをする教皇代理(今一番偉い人)。 結局、建宮が降参してゴメンナサイすることで、この話題は片づけられた。 「とりあえず、ここのお医者さんは優秀だから、明日には退院できるって話ですよ」 「だから我らも一泊して、明日全員で帰る事にしようと思うのよ。ちょうど新しい拠点に行くころ合いだしな」 「…分かりました」 その後、五和が仮眠をとるため病室を後にし、フルチューニングは建宮と2人きりになった。 (何も、聞いてこないのですね) 不思議な事に、建宮は今回の事件について何も聞こうとしなかった。 (レイと同じクローンが他にもいて、しかも戦っていたというのに、どうしてでしょう) 「あの」 「言っておくが、俺から聞く事は何もないのよ」 「…」 「お前さんが、誰かを助けるために手を伸ばした」 「それだけ知っていれば、十分なのよな」 どこまでも優しく、労わるような心地よい空気。 けれども、フルチューニングは自分の手をギュッと握りしめた。 「…ダメなんです」 建宮が、目だけ動かしてその独白に耳を傾ける。 「レイは、何も出来なかったんです」 「あの子を助けたかった、救いたかったのに!」 「レイは、役立たずでしかありません」 「…」 自分を言葉で傷つけるフルチューニングを見て、それでも建宮は返事をしない。 「だから、お願いがあります“教皇代理”」 「!」 「レイに、戦い方を教えてください」 「もう役立たずは嫌です。このまま倒れたままなのは嫌です!」 「レイは、助ける力が欲しいです!」 歯を食いしばり、瞳を揺らして絶叫するフルチューニング。 建宮はしばらく無言だったが、やがて笑顔を浮かべて“あるモノ”をフルチューニングに放り投げた。 「これは…?」 「我ら天草式十字凄教が使う、『蜘蛛の糸』と呼ばれる鋼糸なのよな」 「お前さんなら、きっと誰よりもうまく扱えるようになる」 「しかもそれは、“通電性”が高い特別製なのよ」 「あ…」 渡された鋼糸を、フルチューニングは大切そうに抱き込んだ。 (もしかしたら、この人は待っていてくれたのかもしれない) (無様に負けた自分が、それでも立ち上がろうとするのを) 「とは言え、それ以外にも覚えるべき魔術、戦術は山ほどあるが…」 「レイは優秀ですから、きっちりこなして見せます!」 「…それはそれで、イロイロ問題なのよなー」 「?」 天草式十字凄教の中でも、フルチューニングを戦闘に参加させるかどうかは議論されていた。 大能力者(レベル4)が戦力となってくれれば、もちろん嬉しい。 だが、当然ながらこの無垢な女の子を自分たちの都合で戦士にしてしまう訳にはいかない。 みんなが悩んでいる時、建宮は厳然と告げた。 このまま自分たちと一緒に行動すれば、いつかレイを戦いに巻き込むことになる、と。 ならば、レイと別れる覚悟、またはレイを戦わせる覚悟が必要になる、と。 彼らプロの魔術師は知っていたから。 戦場は、戦う意思のない人間が生き残れるほど甘くは無いことを。 自分たちの実力では、レイを守りきることが難しいことを。 当初は、その事実をハッキリ説明してレイ自身にどうするか選ばせようと思っていたのだが… (まさかレイの方から、戦う事を選ぶとはなー) (やると決めた以上、本当に戦う術を叩きこむことになる) (…対馬や諫早あたりが知ったら、やっぱり怒ると思うのよな…) 明日のみんなの反応を考えて、ちょっとだけ憂鬱になる現教皇代理であった。 8月22日(午前10時00分)第7学区のとある病院 退院手続きを終了し、ようやく拠点へ向けて出発しようとした天草式は、建宮が来るのを待っていた。 その建宮は、今もカエル顔の医者とレイの体調について話し合っている。 「だから、クローンとはいえ他の「妹達」と違って調整の必要はないね」 「そもそも基本コンセプトが異なっているから、当然と言えば当然なんだけどね」 「…良く分かりませんが、このまま素直に退院ってことで大丈夫なのよな?」 「そういう事だね。ただ、もし何かあったらすぐに僕の所へ連れてきてほしい」 「ちゃんと覚えておくのよな。じゃ、どうもお世話になりました」 笑顔で握手を交わし、走り去る男の姿を見て、カエル顔の医者は表情を曇らせた。 (確かに、あの子は「妹達」と違って細胞の成長速度に異常は無い) (あの子を作った研究者が、出来る限りの対処を施したみたいだね) (そう…) (あの子の体が抱える問題は“そんなレベル”じゃない) (能力補佐の為、体中に得体の知れない部品が取り付けられている) (しかも脳の中には、僕にも手を出せないマイクロチップが埋め込まれている…) (間違いなく、アレイスターの仕業だね) (すでに彼女は、いつ“壊れて”もおかしくはない) (…それでも、何とかするのが医者(ボク)の仕事なんだ) カエル顔の医者は、新たな決意を胸に病院へ戻って行った。 同時刻、窓の無いビル 闇に包まれたその空間で、『人間』アレイスターは1人佇んでいた。 彼が見つめる先にはモニターがあり、天草式のメンバーをリアルタイムで映している。 「おい、これで良いんだな?」 突然、案内人のテレポートで出現した土御門元春がアレイスターに詰めよった。 「…ああ、ご苦労だったね」 「一体、どんな理由があったのか教えてもらおうか?」 「ふむ。理由とは?」 「なぜ廃棄処分されたクローンを、天草式とつるませたのかって事だ」 そう。天草式十字凄教にフルチューニングの売買をリークしたのは、土御門であった。 「大したことではないよ」 「では理由を聞かせろ」 アレイスターは、何でもない事のように淡々と告げた。 「あの検体番号00000号は、特殊なチップを脳に埋め込んである」 「チップ?なんの?」 「能力者が、魔術を使えるようになるチップだ」 「なんだと!」 土御門は驚いて声を上げた。 彼自身もそうであるように、能力開発を受けた人間は魔術を行使できない。 能力者は『回路』が異なるので、無理に魔術を使うと体が爆砕する危険すらあるのだ。 「とはいえ、検体番号00000号以外には使用できないものだがね」 「どういう意味だ?」 「あのチップを使うには、ミサカネットワークが必要不可欠。この意味が分かるか?」 「…確か同一脳波による並列型ネットワークだったな」 「そうだ。あのチップはそれを利用した変圧器みたいなものでね」 「魔力の流れを、ミサカネットワークを通じて強引に適合させることが出来る代物だ」 「しかも各個体が受ける影響は、極めて軽微で無視できるレベルだと予測されている」 「まあ結果、検体番号00000号自身はミサカネットワークに接続できない状態らしいが、大したことではない」 本当にどうでもよさそうに答えるアレイスターに、土御門は嫌悪感を隠そうともしない。 「だから、魔術結社と接触させたかったのか?」 「そんなところだ」 「だが、“何故”天草式を選んだ?」 「一応魔術師とはいえ、本場イギリスの『必要悪の教会』のような連中とは趣が異なるぞ?」 「さて、ね。気になるなら予想してみたまえ」 アレイスターは、土御門の苛立ちをどこか楽しげに眺めつつ呟いた。 「私としては、コレに大して重きは置いていないのだよ。…プランとは関係の無い話だからな」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2249.html
「はい当麻、あーん」 「あーん」 「元春、あーん♪」 「あーん」 「○○様、あーんですの!!」 「あーん」 「はい、翔太あーん♪」 「あ……あーん」 自分が用意したお弁当を相手に食べさそうとしている美琴たち四人。 ちなみに、翔太が少しだけ戸惑った理由はその食べさせようとしたものが原因である(かわいそうな卵みたいなもの) この様子を見ていたクラスメイト達が嫉妬のオーラを出していたのは言うまでもない。 「……よくみんなが見てる前であんなことできるよね、真昼さん」 「まあ、俺たちも見てなければできるけどな!」 バカップル達を見て妙な対抗意識を持つ真昼。 真夜はどうかここから変な方向に進まなければいいなと淡い期待を抱いていた。 なお、隅の方で紫木が 「俺もいつか吹寄と………」 と、ぼやいていた………。 ―――――――――― すこし時間が戻り、常盤台保健室。 その扉の前にいたのは、メン子こと心理掌握に連絡が終わった翠嵐だった。 ここにきた理由は一つ。 第一試合で怪我をさせてしまったリーダーを見舞うためである。 「………はいるわよ、リーダー」 病室の中から入室を促す声が聞こえ、翠嵐は病室へと足を踏み入れた。 「…リーダー、その怪我……。」 「別に、大したことないって。軽い打撲だってさ。」 「でも……。」 「それよりもすまなかった、試合を中止にまでしてしまって。俺がもっと根性出して試合を続けていたら……」 「いいの。それよりリーダーはしっかり体を休めて。」 「でも、お前はあんなに先輩たちのことを倒そうと努力してきたじゃないか。その努力が報われなかったのは俺のせいだろ。」 翠嵐はすぐさま否定した。 「そんなことない!リーダーに怪我を負わせたのは私。だからリーダーのせいなんかじゃないわ」 「いや、でも……」 翠嵐はそれに、と前置きして 「一人も欠けることなく戦う事にこそ意味があるわ。 リーダーに無理をさせて勝ったとしても意味ない。そんな勝利よりだったら私は迷わず貴方を選ぶわ。」 「翠嵐……」 「リーダー。確かに負けたことは悔しいわ。でも、それ以上に貴方を守れてよかったと思う。だって……---------」 そこまで言って翠嵐は病室を後にした。伝えられなかった自分に多少腹が立った。目尻が熱くなる。そこへ 「---…嵐---」 彼が呼ぶ声が聞こえた。何かに引っ張られるように足を止め、翠嵐纏は病室へと踵を返す。 病室の中にはきっと二人が勝利よりも強く望んだ世界が広がっている。 ―――――――――― そして時間は再びお昼の常盤台、彼女持ちながらもいちゃつけず昼食を摂っているのは一方通行、浜面、服部。 恋人が隣に居ない3人は自分達の弁当を比較するという、分かりやすい暇つぶしを実行中。 「滝壺って思ったより料理上手なんだな。郭には少し劣るけど」 「てめっ半蔵! さり気なく俺のお気に入りの卵焼きをつまむんじゃねぇ! つーわけで流れ的にアクセラの弁当……はパス」 「浜面ァ、そのパスってのはどうゆう意味だ? まさか打ち止めが頑張って作った弁当がつまめねェとか言わねェよなァ?」 3人の恋人の弁当に順位を付けるなら滝壺、郭、打ち止めといったところだが3人とも自分の恋人の弁当が1番だと自負している。 しかし打ち止めの弁当は焦がしたりしてるので基本真っ黒、お世辞にも美味いとは言えないが頑張りだけは1番である。 「そっ、そんなわけねーだろ! 俺はただ、アレだ。打ち止めちゃんがアクセラの為に作った弁当を食べるのは忍びないって思っただけで」 「遠慮すンな。俺のから揚げとお前のから揚げ、交換だ。ホラよっ」 すかさず一方通行が自分のから揚げ(らしき物体)を浜面の口に放り込むと、自分は浜面の弁当から手早くから揚げを取って食べた。 ジャリッ!! という音を立てるから揚げに悶絶してる浜面を尻目に一方通行は滝壺お手製のから揚げを堪能した。 「ヘェ、打ち止めのから揚げよりジューシーじゃねェか。滝壺のやつ、なかなかやるじゃねェか。……どうした? 浜面ァ」 打ち止めのから揚げにノックダウン寸前の浜面、から揚げについて抗議しようとしたが止めた。 というのも今の今まで一方通行が打ち止めのほぼ真っ黒弁当を普通に食べてるのを見て下手なことは言ってはいけないと防衛反応が働いたからである。 それは服部も同じで一方通行の不満の無い顔を見たらそれ以上の追求が出来なくなったのだ。 (郭のやつ、俺が言ったとおり特大兵糧丸は入れなかったな。栄養価は高いけどすっげー不味いんだよな、あれ) 兵糧丸とは忍者の携帯保存食で栄養価満点だが、色々と味に問題があるものを使っているので不味い代物。 しかし明日、その兵糧丸が弁当に入れられることなど夢にも思わない服部は気持ちを切り替えて一方通行と浜面と楽しく昼食を食べるのだった。 ―――――――――― 「ふーっ、ようやくひと段落したのよ。まさか球技大会専用メニューのスタミナ定食がここまで人気を博すとは……」 場所は変わって友愛高校食堂、食堂のおじさんこと建宮は昼食ラッシュを捌き切って一休みの最中だった。 ちなみに上条のクラスで唯一こちらのブロックに居る吹寄率いるバレー組は居ない、茜川が持ってきた真夜製の豪華五段重ね弁当を食べているので。 「このスタミナ定食も飾利姫に食して頂きたかったがこればっかりは無理な注文か。……そういえば」 建宮は思い出す、今朝出かける前に初春にかかってきた電話について。 当然ながら会話内容を立ち聞きするなど出来るわけもなく、ただ初春が楽しそうな笑顔を浮かべているのは分かったのだが、 「あの愛らしい笑顔をGWが終わるまで見られない理不尽な展開が待ってる気がしてならんのよね。俺の思い過ごしであってくれればいいのだが……」 しばらく初春と会えないという建宮にとっては嫌すぎる予感を感じていた。 そのことについて考えようとした建宮、しかしそれどころでは無くなる来訪者の声が聞こえてきた。 「ごーはんごはん♪ さいじのごはんたっべほーだーい♪」 「この変な歌は……禁書目録! なぜここにというかどーして食べ放題とか歌ってるのよ! 俺にツケるつもりか!」 インデックスの声を聞いた建宮はすぐさま臨戦態勢(?)に入ると、食堂に【歩く教会】チームが現れた。 ―――――――――― 「さいじ、ご飯食べさせてほしいんだよ!!」 「あ、建宮私達の分も超お願いしますよ、もちろん建宮のツケで」 「ぎゃーー!!絹旗、なぜお前さんまでいるのよなああああ!!!!しかもツケってお前ええええ!!!!」 ひょっこり現れたインデックスと絹旗の発言にギャーギャー騒ぎ出す建宮。 すると、さらに入り口から麦野、ステイルそして御坂妹が入ってきた。 「建宮、当然僕らだから料金タダでおかわり自由ぐらいのサービスはつけてくれるよね?」 「ちょっとステイル!!そんなことしたら俺は金欠で死ぬから!!!!」 「誰だか知らないけど私にもサービスしてくれるわよねぇ?」 「当然、ミサカにもその権利はありますよね、とミサカはさも当然のように席に座ります」 食堂で好きなようにやり始める『歩く教会』チーム一同。 このとき、建宮にできることはたった一つだけだった。 「………不幸だァーーーー!!!」 そう、幻想殺しの少年の口癖を真似ることだけだった。 ―――――――――― 一方、上条のクラスのバレー組。 彼らはそんな建宮の叫び声を聞きながら赤音が持ってきた真夜製の豪華五段重ね弁当を食べていた。 「そういえば、ついさっき聞いたんだけどバスケになんか乱入チームが入ってきたらしいわよ」 「へぇ~、私が聞いたのはこっちの野球組の試合時間がすごく押してるらしいよ~」 楽しそうに会話を続ける吹寄と赤音。 その一方でバレー組のリベロたる野原が隅っこの方で縮こまっていた。 「スパイク怖い…スパイク怖い…スパイク怖い…」 彼が縮こまっている理由、それは少し前の試合が原因であった。 その試合で相手の選手が放った光の屈折を利用した分身スパイクを見事に顔面に食らってしまい、一時的に気絶してしまった。 しかも、その気絶した状態を治すために赤音が【鼓膜破砕】を使用してたたき起こしたためこんな状態になってしまったのである。 「……野原、いい加減戻れ」 「野原君、さっき【鼓膜破砕】を使ったのは謝るからさ~」 しかし、一向に戻らない野原のために吹寄は最後の手段を使った。 ―――――――――― 「そういえば野原。さっきあたしの所に数名の女子が来たわ。あのレシーブしてる男子のこと、紹介してくれって」 吹寄の言葉を聞いた野原はガバッ! と起き上がり吹寄の肩を掴むが頭突きをくらう羽目に。 痛みに耐えながらも期待の眼差しを送る野原に辟易しつつも、吹寄は言葉を続ける。 「貴様の頑張りを認めてくれる女子が今の貴様の姿を見たら幻滅するわね。そしてその女子は流れるように上条に」 「頑張る! 俺頑張る! 俺に惚れてくれた女の子達の為にも!」 吹寄の言葉を曲解して復帰した野原は真夜製の豪華五段重ねを食べ始める、誰が作ったのかも知らずに。 その様子に吹寄と茜川だけでなく他のチームメイトも引いていた。 「うまっ! この弁当マジうまっ! この弁当作ってきたの吹寄か?」 「あたしじゃないわよ。というか野原、貴様この弁当誰が作ったのか聞いてないの?」 「しょうがないよ、私がこのお弁当出した時にはもう野原君あの状態だったし。真夜君が作ったって説明聞いてないんだよ」 茜川から真夜が作ってきたと聞き、野原の手が止まった(口の中のものは飲み込んでいる)。 そして少しして野原は号泣しながらどこかへと走り去ってしまう。 「ど、どうしたの? 野原の奴」 「きっと女の子が作ってきたと思ってたんだろうね~。朝から頑張ってこのお弁当を作ってきたって妄想して萌えたんじゃないかな~」 「ああ、それで真実を知ってああなったのね。本当に大馬鹿ね、野原って。それより茜川さん、このお弁当のレシピだけど教えてもらえる?」 吹寄のお願いに茜川は迷うことなくOKを出して後日、真夜からレシピを渡すことを約束する。 真夜製の豪華五段重ね弁当を完食した吹寄たち、残り試合も勝利して準決勝へと駒を進めるのだった。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1600.html
こちらは特訓終わりの青ピ、ボロボロの体の彼の所に白子と赤見の変態予備軍の二人が駆け寄って土下座すると、 「「お願いです師匠! 弟子にして下さいっ!」」 さらに人生を踏み外すようなことを言ってのけるのだった。 「おいおい、どいうことだ?あの青髪に弟子なんて」 「どうせ。変態としての弟子。もうあの子たちは手遅れ」 浜面と姫神その他はその光景を哀れむような目で見ていた 「居た居た、まったくあのアホ二人は他所の高校に来てまで何で土下座してんだ」 浜面達はおろか体育館に居た当事者以外が哀れんでる中、白子と赤見を探しに来た朝陽が体育館へと入ってきた。 ズカズカと入ってきた朝陽を見て、浜滝と半郭はようやく白子と赤見のことを思い出す。 「ああっ! あの二人よく見りゃあアクセラの彼女のクラスメートじゃねーか!」 「しかもこんな所で朝陽氏を目にするとは思いもしませんでした。しかしどうして私達、揃ってあの二人のことを忘れていたんでしょう?」 「だってそりゃあの時のあの二人、特にツインテールの方はドン引きレベルの変態だったからな。無意識のうちに記憶の片隅に追いやっただけだろ」 「はっとりの言う通りだけどそれ以上にあそこでの出来事は私達にはインパクト大きかった。だから忘れることが出来たと思う」 浜滝と半郭が当時(打ち止めの転入日)のことを思い出してる間に、朝陽が白子と赤見の背後に立つ。 青ピは初見の朝陽をきれいなお姉さんと思い、白子と赤見は土下座中で後ろを見ていないにも関わらず朝陽の気配だけで震え出した。 「く、くくく黒井はん、僕、今すっごい命の危険感じてんねんけど……」 「いいいいいけませんわ! ここは、あえて気付かない振りをして」 「気付いていない振りしても無駄だぞ白子。勝手に行動した罰だ、素直に受け入れろ。まずは善萌からだ」 「後生です! 後生ですからつま先、しかも襟は勘弁して下さい! お願いやから朝陽せぎゃーーーーーーーーーっ!!」 土下座している赤見の襟をつま先に引っ掛けた朝陽は赤見を持ち上げると、バレーコートのネットへと投げ飛ばした。 ショックのあまりに気絶した赤見に戦慄した白子は逃げようとしたが、朝陽の踏みつけに「ぴぎゃっ!」という断末魔と共に意識を失った。 「すまなかったな、私の生徒が迷惑をかけたようだ。それにしても善萌によく似てるな。お前、間違いなく変態だろ?」 「いえいえボクは別に……って勝手に変態って決めつけんといで下さい! ボクは」 「変態なのは私は咎めはしないが、せめてあの二人が反応しない程度に変態を抑えてくれ。あいつらが今以上の変人になるのは私も困るしな」 謝罪の後の容赦無く変態の烙印を押されて涙目の青ピに「これからもあの二人を頼む」と言った後で、朝陽は立ち尽くしている災誤へと近づく。 実は災誤、朝陽が現れてから直立不動状態で、そのことも生徒達は疑問に思っていたがここで真実が明かされる。 「久しぶりだなゴリラ」 「ハッ! 朝陽センパイもお変わりなく! 今日はアンチスキルの皆に稽古でも?」 「違う違う。私は自分の生徒を迎えに来ただけだ。けどまあ、久々に組手でもするか?」 「滅相もございません! 自分では今でも朝陽センパイには敵いませんので!」 「冗談だ冗談。ゴリラ、自信を持て。お前は充分に強い。お前と黄泉川が居たから私は心置きなくアンチスキルを引退出来たんだからな」 あの災誤が誰かにあそこまで敬意を払っているのを初めて目の当たりにした生徒達は、朝陽をそれだけで只者じゃないと位置づけるのだった。 ―――――――――― 「さて、特に異常らしい異常は見られなかったな」 こちらは校舎の見回りをしている闇咲、ますます教師が板に付いてきたようだ。 あと少しで全ての見回りを終えようとしていたが、曲がり角で誰かとぶつかり相手を倒してしまう。 「あうっ。う~っ、い、痛いの……」 「すまない。大丈夫か? どこも怪我はしていないか? ……む、君はうちの生徒では無いな。それにその制服は初春の」 「おじさん初春さんのこと知ってるの? あたし、初春さんを探しに来たの。あっ、自己紹介が遅れたの。あたしは春上衿衣なの」 「私は闇咲逢魔、ここの高校の教師だ。春上、君は初春を探しているようだな。ならば一緒に来なさい、私も一緒に探してあげよう」 迷子の春上、闇咲と一緒に初春を探すことに。 「あ、いたいた。春上さん急にいなくなっちゃうから心配したよ」 そこに春上を探していた佐天と合流した 「佐天さんごめんなさいなの。初春さんを探そうと思ってたら迷子になっちゃって、そこで闇咲さんにあったの」 「そうなんだ。あ、闇咲さんおひさしぶりです」 「ああ、佐天、久しぶりだな」 二人は軽くあいさつし、闇咲と佐天の関係を春上に少し説明して三人で初春を探すことになった ―――――――――――――――――――――――――――――――― そのころ神裂は滝壺から初春の居場所を聞き出し食堂に来ていた そしてシェリーとの初春の奪い合いを開始していた 「飾利!!こっちです……っ!!」 「いやいや、そこはこ……っち!!」 「うわああ!!止めてください~」 初春のひっぱりっこ、もはや日常茶飯事とも言えるこうけいに、建宮が入ってきた。 「ならそこは間をとってこの建宮k 「「仕事しろ!!」」 「はいー……」 が、すぐに追い返されてしまった。 そんな建宮を見て初春は、とうとう怒った。 「いい加減にしてくださーーーーーーーーーーーーッ!!」 初春の怒号、にしては可愛い感じはするが彼女の怒りに神裂とシェリーは引っ張り合うのを止めた。 そして初春の説教が始まるわけだが、ついさっきも説教されたばかりで二度目の説教、本当に神裂とシェリーは初春絡みだとポンコツである。 「どーしていつもいつも私なんかのことで喧嘩するんですかっ! 火織お姉ちゃんもシェリーさんも私は大好き、それでいいじゃないですかっ!」 「そ、それはそうなのですがわ、私としてはやはりシェリーごときよりも飾利が大好きなわけですから負けたくないというか……」 「飾利、あんたは自分のことを過小評価しすぎだよ。飾利には私達が好きという感情の強さを比べたいと思う魅力があるんだ、自信を持ちな。それと神裂……誰に向かってごときとほざきやがったぁ!」 初春の説教中にも関わらず、自分をバカにされたシェリーはオイルパステルで神裂に攻撃、神裂も何とか七天七刀(納刀状態)で防いだ。 土属性魔術を応用して強化されたとはいえオイルパステルで神裂の七天七刀(納刀状態)と渡り合うシェリー、何気に戦闘力が上がっているようだ。 その様子を伺っていた建宮、自分は免れてラッキーと思っていたが神裂とシェリーがプチバトルを始めたことで完全に巻き込まれる。 「いい加減にしましょうか二人とも♪ まずは正座して下さい。建宮さん、建宮さんも逃げずに正座しましょう♪」 久々に見せる初春の裏モードに神裂、シェリー、建宮は恐怖しながらも素直に正座した。 周囲に居たギャラリー達は初春の裏モードは当然初めて見るわけだが、騒いだら自分達も巻き込まれると思って静かにする。 「火織お姉ちゃん、シェリーさん。私はとってもとーっても悲しいです。どうしてか分かってくれていますよね?」 「そ、それは……わ、私とシェリーが飾利の一番を巡って事あるごとに喧嘩をし、してしまうから……」 初春のドス黒いオーラに震えながらも神裂はちゃんと正答してみせる、シェリーも神裂に同意するようにコクコクと頷く。 神裂とシェリーは初春がさらにニッコリ笑ったのを見て許してくれたなどと甘い考えを抱くがそんなものは幻想に過ぎない。 「つまりお二人は分かっててやってるんですね♪ 私が悲しいって思うことを知りつつもいつもいつも……」 「ご、ごめんなさいっ! もう、二度と……極力はシェリーとは飾利のことでは喧嘩はしません! 約束します!」 「わ、私もだ! 神裂とは飾利のことに関してだけは絶対に……出来るだけ喧嘩はしないって誓うよ! だから頼む、もう許してくれっ!」 神裂とシェリーの心からとは完全には言い難いが誠意がそれなりに見られる謝罪を受け、何だかんだで二人に甘い初春は裏モードを解除して許すことにした。 言葉にはせずに二人の頭を優しく撫でることで許すという形を見せた初春、今度はいつもの調子で建宮を嗜める。 「建宮さんも二人の喧嘩に乗っかったりしちゃダメですよ? 建宮さんはお父さんみたいなポジションなんですから♪」 「め、面目次第も無い……。ですがプリエステスとシェリーを見てると何というかドサクサに紛れて飾利姫の一番にそれとなく……」 「だからそれは止めて下さい! 火織お姉ちゃんはお姉ちゃんとして、シェリーさんは親友として、建宮さんはお父さんとして私は好き。それでいいんです♪」 「むぅ、そう飾利姫に言われてしまえばわしはもう何も言えんのよね。……ところでプリエステス、シェリー。二人はどうしてわしの仕事着を見て笑いを堪えてるのよ?」 完全に初春の説教が終了して周囲に気を配れるようになった神裂とシェリーは建宮の姿を見て必死に笑いを堪えていた。 今現在、建宮は食堂で仕事中でありそんな彼の姿は頭に初春の花飾りに合わせた花柄模様の三角巾、そして純白の割烹着といった感じだ。 「そんなに可笑しいですか? 私は建宮さんによく似合ってると思いますよ♪ それとなく溶け込んでますし」 「そのような嬉しい言葉を言ってくれるのは飾利姫だけなのよな。この高校のわしの知り合い共はそろって大爆笑しやがるし……。しっかしここに絹旗や佐天が来てたら……げっ!」 初春が素直に褒めてくれたのは嬉しかったが、床をゴロゴロ転がり、時には床を叩いて大笑いするのを我慢してる神裂とシェリーを見て一思いに笑ってくれと思った建宮。 ふと顔を上げると神裂に置いていかれたので遅れてやって来た絹旗がニヤニヤしながら建宮の今の姿を携帯で撮っていた。 「飾利を探しにここまで来たら超面白いものが見られてラッキーです♪ 建宮、今は笑うのは超控えましょう。今の画像を涙子に送って、合流してから超馬鹿にしてやりましょう♪」 そうして絹旗は建宮の仕事スタイルの画像を添付して、佐天にメールを送るのだった。 「ん?最愛からメールだ。なになに……春上さん、飾利は食堂にいるって」 「え?ほんとなの?じゃあすぐに行くの」 「ちょっと待って。何か添付ファイルが……ッ!!」 佐天は絹旗から送られてきた写メを見ると驚いてしまった そして必死に笑いをこらえようとした 「どうした?佐天」 「どうしたの?佐天さん」 佐天は必死に笑いをこらえながら答えた 「い、いやなんでもないよ……クフッ……は、はやく食堂に行こう」 「「?」」 二人は疑問に思ったが先を行く佐天についていく事にした (やばい!あんなの実物みたら笑い死んじゃいそう!) その後三人は食堂に着くのだが三人とも笑い死にそうになるのだった ―――――――――――――――――――――――――――――――― 一方、迷子の打ち止めを捜している一方通行が体育館に来ていた 「おーい、打ち止めー?ここにいンのかァ?ン?」 一方通行はそこで何かに気づいた その何かとは朝日に頭の上がらない災誤の姿だった 「オイオイ、一体全体何だってンだァ? 朝陽のやつ、災誤の野郎とも知り合いだったのかよ?」 「おっ、アクセラじゃねーか。何でも朝陽さん、元アンチスキルらしくてよ、あのゴリラが今でも敵わねぇ強さらしいぜ」 「成程なァ、俺らに対処する暇を与えずに蹴り入れられるのも、女の癖に威力のある蹴り放つのも納得だ」 「朝陽さんがアンチスキル引退してくれて助かったぜ。俺らの代でもまだやってたら……考えたくもねぇ」 浜面から聞いた朝陽の情報に、一方通行は今まで喰らってきた蹴りに納得がいった。 半蔵は朝陽がアンチスキルを引退したことを幸運と思っており、浜面や郭も同意するように頷いていた。 「ま、それはともかくだ。お前ら打ち止め見なかったか? 上条と御坂と手分けして探してンだがよォ」 「大丈夫。らすとおーだーらしきAIM拡散力場を保健室辺りで感知した。近くにレベル5らしきAIM拡散力場も居る、誰かまでは分からないけど」 「そンだけ分かりゃ充分だ、ありがとよ滝壺。じゃあ俺は行くぜ。っとそうだ、朝陽に伝えとけ。てめェン所の双子が探してるってよォ」 一方通行は言いたいことを言い終えると滝壺の情報を元に保健室へと向かうのだった、近くに居るレベル5が誰かを気にしつつ。 そこへ災誤の会話を終えた朝陽が白子と赤見を引きずりながら、青ピを従えてこっちにやって来た。 「いやー、久しぶりにゴリラに会ってついつい長話になっちゃったな。元気してたか? 仕上、理后、半蔵、郭。他に知らない顔もチラホラ居るみたいだな」 「あ、朝陽さんこそお変わりないようで何よりです。それと朝陽さん家の双子が朝陽さん探してるみたいっすよ」 「そうなのか? じゃあさっさと合流して家に帰るか。けど困ったな、白子と善萌をこのままというわけにもいかんし」 「浜面くん。この朝陽って人。もしかして」 姫神の疑問に答えようとした浜面だが、 「おばさま!」 「赤音、お前ここに居たのか。どうやら私の子供達が私を探してるみたいだから一緒に来い」 「今日はおばさまの当番でしたよね。早くおばさまの負担を減らせるように私も真昼ちゃんも頑張らないといけませんね」 赤音がやって来て朝陽と会話したことで、その会話内容を聞いて疑問の答えに納得した姫神。 しかし納得はしていても驚くことには変わりなく、朝陽のフルネームを知らない姫神、麦野、赤音に付いて来た吹寄は目が点になる。 「そういやぁその三人とは初対面だな。私は井ノ原朝陽、真昼と真夜の母親をやっている普通の41歳の小学校教師だ。よろしくな」 朝陽の自己紹介を聞いた姫神、麦野、吹寄は驚きのあまり体育館に響き渡るほどの声量で「えええええええっ!」と叫んだ。 なお姫神は高校生の子供達が居るとは思えない見た目の若さに、麦野は化け物(真夜)の母親ということに、吹寄はポリアモリーカップルを認めた人ということに驚いている。 ―――――――――― 「あの人とパパとママの学校を探検だー♪ ってミサカはミサカははしゃぐと共に後でアサヒ先生に勝手に行動したことを謝ろうって思ったり」 一方、友愛高校を探検している打ち止めは滝壺の【能力追跡】の探査どおり、保健室の前をスキップしていた。 そこへ打ち止めの前方から考えごとをしているとある生徒が打ち止めの姿を捉えると、歩みを止めた。 (あの子はアク様の……! もしかして迷子になっているのでしょうか? だとしたら放ってはおけませんわね) とある女性こと心理掌握、打ち止めが迷子になったと思い込み(ほぼ正解)一方通行の所へ連れて行こうと動き出した。 そこに二割くらいは一方通行と会ういい口実が出来たと打算的なことは考えているが、残りの八割は単なる親切心ということを付け加えておこう。 だが行動を起こそうとした瞬間、打ち止めが一瞬でその場からいなくなった 「あ、あれ……?」 どうしてかと考えようとしたとき、遠くからその答えが返ってきた 『おィ、テメェ勝手にいなくなンじゃねェよ』 『おお、一方通行がミサカを探しに……ってミサカはミサカは何気に喜んでみたり』 『喜ンでじゃねェよ。まァ、俺もうれしいけどなァ。ってか、上条たちに迷惑かけちまったじゃねェか』 『ごめんなさーい、ってミサカはミサカはテヘッってしながら謝ってみたり』 『謝るンなら上条たちに謝れ。ったく、じゃあ、上条たちに合流して帰ンぞ。(結局、レベル5ってのは見なかったな。まァいいか)』 『はーい♪』 そして廊下に響く遠くからの声は聞こえなくなった 「うう、わたくしの善意の行為が……。(後、アク様と会う口実がぁ……)」 そのあと、心理掌握はしばらくうなだれていた 体育館では朝陽の自己紹介でざわつく生徒達を不思議に思う朝陽が白子と赤見を何故か青ピに託していた。 「そこの青善萌(あおよもき)、この二人に好かれた人間性を見込んで、後のことはお前に任せよう」 「あ、そ、それは別にかまへんけど井ノ原姉弟のお母さんはいだっ!」 「朝陽でいい。私はこの赤音と一緒にうちの子供達と合流して家に帰る。というわけで今日はなかなか楽しかったぞ。じゃあな」 白子と赤見を青ピに渡すと、朝陽は赤音と一緒に体育館を出て行こうとした。 しかしその前に浜滝、半郭にあることを伝える。 「そういえば元春に3万円渡していてな、それはお前らのバイト代みたいなもんだ、あの時のな。後で確認するといい」 朝陽が伝えるべきことを伝えて赤音と一緒に去った後、浜滝&半郭は先に出て行った二人を追い越して土御門を探しに行った。 理由はいたってシンプルで土御門ならそのことを誰にも言わずに独り占めすると思い、それを阻止する為である。 ―――――――――― 「うーん、ようやく終わったじゃん。まったく、特別な生徒が増えたせいで球技大会マニュアルを今日渡せなくなったじゃんよ」 「ごめんなさい黄泉川先生。私の生徒たちのせいで」 「こ、小萌先生は何も悪くありませんよ。悪いのはどちらかと言うと規制を設けないとやりたい放題しそうな連中が多いってだけで……」 「うちの一方通行なんかはその典型的な例よねぇ。育て方、変えようかしら?」 職員室では球技大会用のルールが書かれたマニュアルを完成させた黄泉川、小萌、芳川がおしゃべりしていた。 そこに木山が自分の分も含めた人数分のコーヒーを差し入れに来た。 「三人ともお疲れ様です」 「木山先生こそお疲れ様ですー。でも良かったんですか? 翔太ちゃんと真夜ちゃんの分を作らなくて」 「あの二人なら心配いりません。私が口で言うだけで了承してくれますよ。問題はこの特別マニュアルを見ても守るかどうか微妙な生徒がいることですね」 四人はコーヒーに口を付けながら机に並べられた特別マニュアルを眺めていた。 その特別マニュアルにはそれぞれ『○○用』とあり、対象者は一方通行、結標、心理掌握、月夜、赤音である。 ―――――――――― その頃、食堂では一しきり笑い終わった佐天が絹旗と一緒に周りが気の毒に思うくらい、建宮の仕事着を馬鹿にしていた。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2619.html
失ってしまった幸せ 行間 天草式十字凄教元教皇代理、建宮斉字は上条のお見舞いに来ていた。 五和は上条が意識不明ということにショックを受けていて、お見舞いも落ち着いてからにさせるつもりだ。 上条の病室へ向かう途中、ある病室から1人の少女が出てきた。 その少女はとても悲しそうだ。 その病室はたしか上条当麻の彼女の病室ではなかったか。 「どうしたのよな?」 建宮は少女に話しかけてみる。 「あなたは?」 「上条当麻の知り合いだ。そこは上条当麻の彼女の病室のはずだが何があった?」 「私では、お姉さまを救えません。このままではお姉さまは後悔の念で潰されてしまいますの」 少女は今にも泣きそうな顔をしている。 このままでは彼女も救われない。 「俺に任せろのよな」 「え?」 ならば救ってみせよう。 我らが女教皇の教えに従って。
https://w.atwiki.jp/deruta_sanbaka/pages/145.html
(ヤバイ、美琴が今までで一番可愛い……。いや、美琴が可愛いのは当たり前だけど。結婚したらこんな美琴が見られると思うと……幸せだー!) (つ、月夜、なんつー美しさだ! まさに雪の女王!) (……何だァ、あのちっこいのは。あれがあのクソガキなのかよ。まるで可憐な妖精……って何考えてンだァ!) 美琴、月夜、打ち止めのウエディングドレス姿に程度の差はあれど当麻、土御門、一方通行は感動していた。 それはさっき話を聞いていた青ピと浜面も同じである。 (なんやボクの想像力って思ったより貧困やったみたいやな。現実の黒子はんの白無垢姿、ホンマに綺麗でサイコーや!) (おおおおっ! 滝壺の白無垢、世界一だぜ! これでウサ耳……って思ったけど必要ねーな。いや、むしろこのままで!) 主賓の男性陣もそれぞれタキシードと紋付袴羽織でビシッとしてるはずなのだが、鼻血を見られないようにそっぽを向いているのでイマイチ決まらない。 当麻がそっぽを向いてることに気付いた美琴が当麻にウエディングドレスの感想を聞くのだが、 「ね、ねえ当麻。どう、かな? 私、このドレスに、似合ってる? ……ちょっと、何でこっちをまともに見ないのよ」 「いや、み、見たいけど見られないっつーか……(お願いです! 今の美琴さんの破壊力は上条さんにはきついのです! 落ち着くまで時間を……!)」 「な、何よそれ! せ、せっかくみんながこんな素敵なドレスを用意して、メイクもしてくれたのに……」 今の当麻にはまともな感想など出るわけも無く、それは残りの4人にも言えることで全員が当麻と同じ反応をしてるのだ。 ちゃんとした感想を言ってくれない彼氏達に落ち込む彼女達を救ったのは刀夜だった。 「すまないねお嬢さん方。彼らはみんな君達があまりに綺麗だからのぼせちゃっただけなんだ。大丈夫、後でちゃんとした返事をくれるよ」 「ほ、本当なの? 当麻」 美琴の問いに当麻はただ頷くしかなかったわけだが、それでも美琴には充分だった。 嬉しさのあまり抱きつこうとした美琴だったが、それは初春に止められる。 「当麻お兄ちゃんがカッコいいから抱きつきたいのは分かりますけど、せっかくのドレスが鼻血で汚れちゃいますよ? 美琴お姉さん」 「飾利さん……。むぅ、じゃあ後でいっぱい抱きついて甘えるからいいもん」 「彼らの鼻血が止まるまでお嬢さん方を待たせるのも悪いから先に彼女達を会場に向かわせてはどうだろう?」 「そうですね。では花嫁さん達、お名残惜しいとは思いますが会場に戻りましょう。そして花嫁姿のお披露目です!」 旅掛の提案に乗った初春の元気な言葉に元気良く反応したのは打ち止めだけで、残る4人は恥ずかしそうに頷くだけだった。 しかし最年少の打ち止めの元気の良さに感化された4人は意を決して、花嫁姿のお披露目の為に会場に戻って行った。 「さて、そのままでも充分いいのだが……」 「うむ。軽いメイクを施せば更に良くなるだろう」 「さすが騎士団長なのよね。これで彼女達が更に喜び、パーティーも盛り上がる寸法ってわけなのよな!」 「まあ、そうゆうことだ。では皆さん、彼らを彼女達が見惚れるような素敵なメイクをお願いします♪」 そして当麻には詩菜、一方通行には美鈴、青ピには芳川、土御門には騎士団長、浜面には黄泉川がそれぞれメイクを担当することになった。 土御門は自分一人だけ男がメイクを担当することにごねていたが、相手が相手なので仕方なく折れることに。 その頃、会場に戻った花嫁一行(+メイド4人と執事一人)はというと…… 「さっきから思ってたけどこの家大きすぎない?」 「まあ、確かに大きいですよね…」 「えーっと…ここら辺で一番高い物件みたいですよ。」 「さすが飾利H…」 「だから!!初春さんに手を超出すなって言ってるでしょう!?」 「大体今の飾利Hって何ですか!?わざと大文字にしたでしょう!?」 「いや、それはさくs…」 「「言い訳(超)いりません!!」」 「そんn…だぐばぅあ!?」 「建宮さん今何もしてないんじゃ…」 「超レールガン御姉ちゃん!!これにそんな情けは超いらないです!!」←名前いらないまでに格下げ 「全くその通りです!!」 「ちょっ、理不尽なのよね!?」 「御愁傷様ですの…」 「はまづらがこういうのになりませんように…」 「あの人がこんなに積極的だったらな~ってミサカはミサカは考えて…」 「そんな事考えるんじゃないの!!」 「まあ確かに元春がこのくらい一途だといいんだけどな…」 「浮気っていうか…上条くんみたいに公開型はまだいいんだけど元春は秘密の関係みたいなのは駄目だよ…」 「公開型もいいもんじゃないわよ…今日なんか英国女王様なんかと知り合いだったなんて驚きよ?」 「私が驚いたのは元春に巨乳の知り合いが多いことだよ…」 「巨乳の知り合いなんて当麻には何人もいるかもしれないわね…」 「巨乳は女の敵だー!!」 「そうなるとうちの母も敵って事になるんだけど…」 「いや!!美琴ちゃんのお母さんは敵じゃないよ!?」 「でもうちの母親ってどうやって若さを保ってるのかしら?」 「上条くんのお母さんもそうだよね」 「「気になる…」」 この年にしてお肌の事を心配する二人であった。 そこへ偶然か必然か、このパーティー最大のトラブルの素が現れる。 「あら、神裂に建宮。ちょうどそなたらを探してた所なりけるよ」 1 ローラの脅威をこの場で一番知っている二人は露骨に嫌そうな顔をするが、ローラはムカッとしながらも平静を装う。 しかしそこはイギリス清教の最高権力者、上に立つ者の礼儀として丁寧に(自分なりに)挨拶しようとするが、 「最大主教。一つ宜しいでしょうか?」 「何かや? 私はイギリス清教の長としてお初にお目にかかりし娘達に挨拶をしようとしただけなのよん?」 「だったら余計なこと、つまり魔術のことは一切触れないようにお願いします! 彼女達は科学側の人間ですから」 「分かりきったことを言わなくてもよいではないか。それくらい私が分からぬと思うておったのかしら?」 ローラの意外な反応に神裂と建宮は驚いているが、それでも相手が相手なだけに油断はしていない。 「お初にお目にかかりたる。私はローラ=スチュアート、そこな神裂と建宮、そして土御門の仕事の上司であらせられるのよ。以後よしなに」 しかし思った以上にまともな挨拶をしたことに神裂も建宮も安心した。 「と・こ・ろ・で♪ 土御門の懸想せし女子はどなたかしらん?」 「あ、私です」 「そう。なかなかに美しき相貌よな。そなたのお名前は?」 「白雪月夜です。あの、元春とは本当に仕事の上司と部下の関係なんですか?」 「ふむ。土御門にはあ~~~~~れ~~~~~~~~」 ローラが月夜に接触を図ったことに嫌な予感を感じた神裂は建宮に指示を送ると、二人がかりでローラを月夜から遠ざけた。 いきなりのことにローラはふくれっ面だったが、神裂はそんなことはお構いなしに注意する。 「何を考えてるんですか最大主教! あれ程トラブルは起こすなと厳命した筈です! 彼女が土御門を凍り付けにした所を貴女も見たでしょう!」 「神裂に信用されてない私、悲しきて涙が出そうなのよん。もとよりそんな気は持ちておらぬ。かようなことをすればそなたらに折檻されるではないか」 「え? では一体何が目的で土御門のステディと接触を図ろうとしてるのよ?」 「かような当たり前のことを聞きたるのか? 普通に土御門のことを任せる旨を伝えやうとしただけなのよ。あと建宮、ステディはきもし」 納得した神裂は月夜を除く4人の主賓達を英国王室サイドの所へ佐天と一緒に向かわせた後で、ローラに話すように促した。 ちなみに初春は建宮の意向で、建宮と絹旗はローラが余計なことをした時の為の防衛線として残しておいた。 しかし神裂の考えは本当に杞憂で、これから始まるのはローラによる真面目な挨拶&土御門に対する愚痴みたいなものだった。 「先ほどは恥ずかしけるところを見せしにつき。許されたれ」 「は、はあ(この変な日本語どうにかならないの?)。ところでさっき聞きかけたんですが元春とはどういう??」 「仕事の上司と部下。とはいうたれどあやつは自由人につき、定時連絡もよこせず。」 「あ~、確かに(私が打ったメールの3本に2本は電話で返事済ませようとするし残り1本に至っては全く返事しないし……)」 「あと。私の日本語変なりけるかの?」 「え?いや、その、え~と…」 「隠したらずともよろし。この日本語を教えたるのが土御門なるのよ。」 「なるほど。それでそんな変な日本語に…(にゃーにゃー以外のレパートリーもあるって事??)」 「ムッ!!やはり変と思いたるな!!おのれ土御門!!そなた月夜というたりけるかの、これから土御門が変なことをせんようにしかと支えてたも。」 「はいっ!!」 「そのかわり。」 「へっ」 ローラがその年齢不詳な笑みでズイと近づいてくる。 それだけで月夜は引いてしまった。 が、ローラが行ったのは単純なことであった。 「私に変な日本語を教えたる罰を与えてたもれ。」 「了解しました♪」 そのころドタバタしながらもどうにか化粧が大体終わった男どもはというと…。
https://w.atwiki.jp/index-ss/pages/1420.html
4 「シスター・アンジェレネ、あなたは何をやっているのですか?」 アンジェレネは背後から突然聞こえてきた声にビクッとしながら、後ろを振り向く。 「シ、シスター・ルチア…あ、あのーこれは…」 この二人のシスターが現在いるのは女子寮の厨房。 ルチアは昼飯前なのに何故か厨房のドアが半開きになっているのが見えたので、覗いてみると… そこには、冷蔵庫(学園都市製)をゴソゴソと漁るアンジェレネの姿が!……… というのが、ことの成り行きである。 「シスター・アンジェレネ、もう一度聞きますが何をやっていたんですか?」 ルチアはそう言ってアンジェレネをキッと睨む。 「あ、あのあれですよ!今日の昼飯の下ごしらえをですね…」 あたふたしながらも、アンジェレネは言い訳を考えるも… 「シスター・アンジェレネ、口の横にチョコがついてますよ。」 「え?ああ、ありがとうございます。いやーチョココロネって食べるときチョコがでてきちゃいますよn…」 そこでアンジェレネは見た、怒りに震えルチアの鬼の形相を… 「シスター・アンジェレネ、私も鬼ではありません。素直に白状したら許してあげますよ…?」 ルチアはなんとか怒りを抑えながら、必死に笑顔を造る。 「え…あぁ…すいません、早食いしました…」 アンジェレネがこうして罪を吐いたところで、ルチアの方からジャカッという音がする。 「え…?」 驚いたアンジェレネがルチアの方を見ると、そこには車輪をもち臨戦態勢のルチアがいた。 「シスター・アンジェレネ…あなたは一回ぐらい痛い目を見たほうがいいですね…」 そう言って、ルチアは世にも恐ろしい笑顔を浮かべる。 「ッ…、ギャーーーー!!鬼です!鬼がここにいますー!」 アンジェレネは叫びながら厨房の外へ飛び出す。 「待てェェェェェ!アンジェレネェェェェェ!」 性格が歪むほど怒り狂ったルチアがアンジェレネを追う。 「腹減ったすね…」 いろいろと頑張って腹が減った香焼は神裂の部屋を出た後、女子寮の食堂へと向かっていた。 ロンドンで十本の指に入る旨さだという噂もたつ、オルソラのご飯を食べてみようと思ったのだ。 「なんか、騒がしいっすね…」 なにやらドッタンバッタンと音が食堂のほうから聞こえる。 (まぁ、人数多いっすもんね、この寮は…) 勝手な解釈に自分で納得した香焼が食堂のドアを開けると… 「アンジェレネェェェェェェ!」 「ひー!許してください、許してください!神様ー!」 「普段教えに背く行為をしているような貴方に神のご加護があるわけ無いでしょうがぁぁ!」 「きゃー!」 そこでは、そのツンとした態度と整ったボディで天草の男衆からの人気の高い(「これぞ、イタリア式ツンデレ!」というのが建宮の評価) ルチアが怒り狂いながら、腹ペコシスター2の異名をとるアンジェレネを追い掛け回していた。 (何やってんすか…この人たちは…ルチアさんなんてあまりの怒りでパンツ見えてるのに気がついてないっすよ…) あまり見たことの無いシスターの姿に戸惑いながらも、香焼は声をかけてみた。 「あのー!ルチアさん!ルチアさん!」 香焼は大声をだすもルチアの反応は無い。しかし、アンジェレネは香焼の存在に気付いたようで、 「ひー!香焼さん!シスター・ルチアを止めてくださいー!」 そう言ってアンジェレネは香焼の影に隠れる。しかし怒りで何も見えていないルチアは止まる気配が無い。 「え?ちょっ!ルチアさん!」 無反応…ルチアの足は止まらない。 (ちくしょう!何でこんな目に!) そう思いながらも香焼は何か使えるものは無いかとポケットを漁る。 (…ッ!) 何かの感触を感じた香焼はその物体をポケットから引きずり出す。手に握られていたのは、先程フロリスがくれた、霊装・独鈷だった。 (これは…たしか、魔術的効果は”煩悩を消す”だったはずっす!) 「香焼さん!速くしないと、シスター・ルチアが!」 焦りと恐怖に震えるアンジェレネが香焼の後ろから情けない声を出す。 「任してくださいっす!これでなんとか…ッ!」 「アンジェレネェェェェ!」 香焼は独鈷を握り、突進してくるルチアに向かい手を突き出す。 (確か煩悩には「怒り」”忿・ふん”があったはずっす!) 独鈷がルチアの体に触れる。次の瞬間、ルチアの動きがフッと止まる。 「た、助かったー…」 アンジェレネは床にヘナヘナと座り込む。 「シスター・アンジェレネ、」 ニコニコとまんべんの笑みを浮かべたルチアがアンジェレネに呼びかける。 「は、はい!」 その声にビクッとしながらもアンジェレネは返事をする。 「お尻をだしなさい、シスター・アンジェレネ。」 「えっ?」 そう言って問答無用でルチアはアンジェレネの腰をつかみ、そしてパーンっと言う音とともに尻をたたき始める。 「あなたは、何度言ったら、わかるのですか!」 「ごめんなさいー!」 (独鈷だけじゃ、ルチアさんの怒りを消しきることはできなかったぽいっすね…) 「ごめんなさいー!」 食堂では昼食前までアンジェレネの悲鳴と尻をたたく音が響いていた。 5 一騒動あった後無事にオルソラの昼飯をご馳走になった香焼は、女子寮から日本人街の自分の部屋に帰っていた。 「ふー、疲れたっすねー。」 そう言って部屋の床に寝転がる。 (ちなみに香焼に親はいない、彼は一人暮らしである。飯は五和の作るご飯をわざわざ食べにいったりしている) ふと、香焼が顔をあげ机の上を見ると…そこには! 「えー何でこれが机の上にあるんすか!」 かれの机の上にあったのは通称”天草男衆パーフェクト・コレクション”(エロ本)であった。 この”天草男衆パーフェクト・コレクション”というのは男のロマン・夢が詰まったモノである。 しかし、これが女衆にばれると大変なことになるので、一番女が寄り付かないであろう香焼の部屋に隠してあったのだ。 「な、なぜ…これが…」 その”天草男衆パーフェクト・コレクション”(建宮命名)が堂々と机の上にあることは天草にとって大問題なのだ。 ふと気付くと、この”天草男衆パーフェクト・コレクション”のあいだに何か紙が挟まっている。 (最低ね!バッカじゃないの!? フロリス) 「あんの野郎…」 香焼は部屋をでて、管理人室へと駆け込んでいった。ちなみに香焼が住むアパートの管理人は対馬である。 「対馬さん!アンタ勝手に俺の部屋にフロリス入れたっすね!?」 香焼がかなりの勢いで対馬を問い詰める。 「あら、駄目だった?フロリスちゃんが掃除してくれるって言うんだもん。どうせアンタの部屋汚いと思ったし」 対馬はニヤニヤとしながら答える。 「なんか、赤い顔して走って帰っていったけどねー、なにがあったのかしら?」 対馬のニヤニヤがどんどんいやらしくなっていく。 「ちくしょぉぉぉぉぉ!」 フロリス同様顔を真っ赤にした香焼が対馬の下を走り去る。 「あ!そういえば、フロリスちゃんランベス宮に用事があるって言ってたわよー」 対馬は相変わらずのニヤケ顔であった。 「ふむ、香焼が遠征メンバーに入りたいといいけりなの?」 そのころランベス宮では神裂・建宮・ローラの3人による会議が行われていた。 「まったく、女教皇様、香焼の意見なんてどうでもいいのよな。」 建宮は相変わらず香焼の遠征には反対であるようだ。 「しかし、彼には並ならぬ熱意がありましたし…ひき受けてしまったので。」 神裂は困ったような顔をしている。 「ふむ、やはり香焼とフロリスはできていたると思ふのだが。」 ここでローラの爆弾発言。 「「え!?」」 神裂と建宮は驚いて素っ頓狂な声を出す。 「何をいっているのですか?最大主教?」 あまり事を把握していない神裂が質問する。」 「いや実はな、王室派も今度の遠征に参加したりとの意見がありけってな、その王室派の護衛に"新たなる光”がつきしことになったのよな」 「「はぁ。」」 「それで、私が聞きし所によりけるとな、最近フロリスが香焼という天草の少年の話ばかりをしたるるというところにありけりなのよ」 「では香焼は、フロリスの為にこの遠征メンバーに応募したということですか?」 神裂は改めて、事実確認を行う。 (そういう理由でしたか…、私としてもその気持ちは分からなくもないのですが…) 「だめ!ダメなのよな!色恋沙汰で遠征についてきてもらっては困るのよな!」 建宮は相変わらず反対を表明している。 「いいではないでぬか、なんか面白きしにありけるし」 最大主教にあるまじき発言をするローラであるが 「ダメダメ!そんな恋にうつつ抜かしているヤツが…」 「あなたに何が分かるのですか!建宮!あなたに香焼の何が分かるんですか!」 恋する乙女である神裂は声を荒げて、建宮の発言を遮る。 「そうにありしよ、建宮。おぬし、自らが結婚適齢期を過ぎしにも縁が無いにけるといって僻みたりているのではないの?」 ここでローラの言葉が建宮の心へザクっと突き刺さる。 「う、うるさいのよな…」 会議の結果、多数決で香焼の遠征参加が可決された。精神的にフルボッコにされた建宮はしばらく落ち込んでいた。 「フロリスゥゥゥゥゥ!」 ランベス宮近くで、フロリスを見つけた香焼は猛スピードで駆け寄った。 「な、何よ!」 若干顔の赤いフロリスが香焼を見る。彼女は先程この目の前の少年に関するビッグニュースをローラに聞いたばかりで その興奮さめやらぬ中でのご対面だった。 「何よじゃないっすよ!何で人の部屋勝手に掃除してるんすか!」 しかしそんなフロリスの心の高ぶりにも気付かず、香焼は例の件でフロリスを問い詰める。 「い、いやだって、アンタの部屋汚いと思って…」 「掃除してくれるのはありがたいんすけどね!お母さんみたいなことしないでっていいたいんすよ!」 「は?何のこと?お母さん?」 フロリスはビッグニュースを聞いたお陰で”天草男衆パーフェクト・コレクション”のことを忘れていたようだ。 さらにイギリスのお母さん方はエロ本探しなるものをやっていない可能性があり、イギリスっ子のフロリスには伝わらなかったようである。 「だーかーらー、って覚えてないんすか?」 「いや、だから何のこと?」 フロリスは”天草男衆パーフェクト・コレクション”のことなど完璧に吹っ飛んでいるようだ。 「い、いや覚えてないならなんでもいいんす…」 香焼も若干顔を赤らめながら、答える。 「それよりさ!アンタ、ビッグニュース聞きたくない?2つあるんだけど!」 急な話題転換と共に、かなりハイテンションなフロリスが早口でまくし立てる。 「な、なんすか…?」 いきなりのフロリスのテンションについていけない香焼だが 「実はね?なんとこの私とアンタの学園都市遠征メンバー入りがきまったのよ!」 「えぇ!?マジッすか!?ヤッター!つかフロリス!?」 香焼に喜びとともに疑問が生まれる。 「な、何よ?私と一緒が嬉しくないって言うの!?」 「いや…そういうわけじゃ…」 「バッカじゃないの!?私だってそこまで嬉しくないし!じゃあね!」 喜怒哀楽様々な表情をうかべ、フロリスは走り去っていった。 「何すか…あいつ…」
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/318.html
(ヤバイ、美琴が今までで一番可愛い……。いや、美琴が可愛いのは当たり前だけど。結婚したらこんな美琴が見られると思うと……幸せだー!) (つ、月夜、なんつー美しさだ! まさに雪の女王!) (……何だァ、あのちっこいのは。あれがあのクソガキなのかよ。まるで可憐な妖精……って何考えてンだァ!) 美琴、月夜、打ち止めのウエディングドレス姿に程度の差はあれど当麻、土御門、一方通行は感動していた。 それはさっき話を聞いていた青ピと浜面も同じである。 (なんやボクの想像力って思ったより貧困やったみたいやな。現実の黒子はんの白無垢姿、ホンマに綺麗でサイコーや!) (おおおおっ! 滝壺の白無垢、世界一だぜ! これでウサ耳……って思ったけど必要ねーな。いや、むしろこのままで!) 主賓の男性陣もそれぞれタキシードと紋付袴羽織でビシッとしてるはずなのだが、鼻血を見られないようにそっぽを向いているのでイマイチ決まらない。 当麻がそっぽを向いてることに気付いた美琴が当麻にウエディングドレスの感想を聞くのだが、 「ね、ねえ当麻。どう、かな? 私、このドレスに、似合ってる? ……ちょっと、何でこっちをまともに見ないのよ」 「いや、み、見たいけど見られないっつーか……(お願いです! 今の美琴さんの破壊力は上条さんにはきついのです! 落ち着くまで時間を……!)」 「な、何よそれ! せ、せっかくみんながこんな素敵なドレスを用意して、メイクもしてくれたのに……」 今の当麻にはまともな感想など出るわけも無く、それは残りの4人にも言えることで全員が当麻と同じ反応をしてるのだ。 ちゃんとした感想を言ってくれない彼氏達に落ち込む彼女達を救ったのは刀夜だった。 「すまないねお嬢さん方。彼らはみんな君達があまりに綺麗だからのぼせちゃっただけなんだ。大丈夫、後でちゃんとした返事をくれるよ」 「ほ、本当なの? 当麻」 美琴の問いに当麻はただ頷くしかなかったわけだが、それでも美琴には充分だった。 嬉しさのあまり抱きつこうとした美琴だったが、それは初春に止められる。 「当麻お兄ちゃんがカッコいいから抱きつきたいのは分かりますけど、せっかくのドレスが鼻血で汚れちゃいますよ? 美琴お姉さん」 「飾利さん……。むぅ、じゃあ後でいっぱい抱きついて甘えるからいいもん」 「彼らの鼻血が止まるまでお嬢さん方を待たせるのも悪いから先に彼女達を会場に向かわせてはどうだろう?」 「そうですね。では花嫁さん達、お名残惜しいとは思いますが会場に戻りましょう。そして花嫁姿のお披露目です!」 旅掛の提案に乗った初春の元気な言葉に元気良く反応したのは打ち止めだけで、残る4人は恥ずかしそうに頷くだけだった。 しかし最年少の打ち止めの元気の良さに感化された4人は意を決して、花嫁姿のお披露目の為に会場に戻って行った。 「さて、そのままでも充分いいのだが……」 「うむ。軽いメイクを施せば更に良くなるだろう」 「さすが騎士団長なのよね。これで彼女達が更に喜び、パーティーも盛り上がる寸法ってわけなのよな!」 「まあ、そうゆうことだ。では皆さん、彼らを彼女達が見惚れるような素敵なメイクをお願いします♪」 そして当麻には詩菜、一方通行には美鈴、青ピには芳川、土御門には騎士団長、浜面には黄泉川がそれぞれメイクを担当することになった。 土御門は自分一人だけ男がメイクを担当することにごねていたが、相手が相手なので仕方なく折れることに。 その頃、会場に戻った花嫁一行(+メイド4人と執事一人)はというと…… 「さっきから思ってたけどこの家大きすぎない?」 「まあ、確かに大きいですよね…」 「えーっと…ここら辺で一番高い物件みたいですよ。」 「さすが飾利H…」 「だから!!初春さんに手を超出すなって言ってるでしょう!?」 「大体今の飾利Hって何ですか!?わざと大文字にしたでしょう!?」 「いや、それはさくs…」 「「言い訳(超)いりません!!」」 「そんn…だぐばぅあ!?」 「建宮さん今何もしてないんじゃ…」 「超レールガン御姉ちゃん!!これにそんな情けは超いらないです!!」←名前いらないまでに格下げ 「全くその通りです!!」 「ちょっ、理不尽なのよね!?」 「御愁傷様ですの…」 「はまづらがこういうのになりませんように…」 「あの人がこんなに積極的だったらな~ってミサカはミサカは考えて…」 「そんな事考えるんじゃないの!!」 「まあ確かに元春がこのくらい一途だといいんだけどな…」 「浮気っていうか…上条くんみたいに公開型はまだいいんだけど元春は秘密の関係みたいなのは駄目だよ…」 「公開型もいいもんじゃないわよ…今日なんか英国女王様なんかと知り合いだったなんて驚きよ?」 「私が驚いたのは元春に巨乳の知り合いが多いことだよ…」 「巨乳の知り合いなんて当麻には何人もいるかもしれないわね…」 「巨乳は女の敵だー!!」 「そうなるとうちの母も敵って事になるんだけど…」 「いや!!美琴ちゃんのお母さんは敵じゃないよ!?」 「でもうちの母親ってどうやって若さを保ってるのかしら?」 「上条くんのお母さんもそうだよね」 「「気になる…」」 この年にしてお肌の事を心配する二人であった。 そこへ偶然か必然か、このパーティー最大のトラブルの素が現れる。 「あら、神裂に建宮。ちょうどそなたらを探してた所なりけるよ」 (*1) ローラの脅威をこの場で一番知っている二人は露骨に嫌そうな顔をするが、ローラはムカッとしながらも平静を装う。 しかしそこはイギリス清教の最高権力者、上に立つ者の礼儀として丁寧に(自分なりに)挨拶しようとするが、 「最大主教。一つ宜しいでしょうか?」 「何かや? 私はイギリス清教の長としてお初にお目にかかりし娘達に挨拶をしようとしただけなのよん?」 「だったら余計なこと、つまり魔術のことは一切触れないようにお願いします! 彼女達は科学側の人間ですから」 「分かりきったことを言わなくてもよいではないか。それくらい私が分からぬと思うておったのかしら?」 ローラの意外な反応に神裂と建宮は驚いているが、それでも相手が相手なだけに油断はしていない。 「お初にお目にかかりたる。私はローラ=スチュアート、そこな神裂と建宮、そして土御門の仕事の上司であらせられるのよ。以後よしなに」 しかし思った以上にまともな挨拶をしたことに神裂も建宮も安心した。 「と・こ・ろ・で♪ 土御門の懸想せし女子はどなたかしらん?」 「あ、私です」 「そう。なかなかに美しき相貌よな。そなたのお名前は?」 「白雪月夜です。あの、元春とは本当に仕事の上司と部下の関係なんですか?」 「ふむ。土御門にはあ~~~~~れ~~~~~~~~」 ローラが月夜に接触を図ったことに嫌な予感を感じた神裂は建宮に指示を送ると、二人がかりでローラを月夜から遠ざけた。 いきなりのことにローラはふくれっ面だったが、神裂はそんなことはお構いなしに注意する。 「何を考えてるんですか最大主教! あれ程トラブルは起こすなと厳命した筈です! 彼女が土御門を凍り付けにした所を貴女も見たでしょう!」 「神裂に信用されてない私、悲しきて涙が出そうなのよん。もとよりそんな気は持ちておらぬ。かようなことをすればそなたらに折檻されるではないか」 「え? では一体何が目的で土御門のステディと接触を図ろうとしてるのよ?」 「かような当たり前のことを聞きたるのか? 普通に土御門のことを任せる旨を伝えやうとしただけなのよ。あと建宮、ステディはきもし」 納得した神裂は月夜を除く4人の主賓達を英国王室サイドの所へ佐天と一緒に向かわせた後で、ローラに話すように促した。 ちなみに初春は建宮の意向で、建宮と絹旗はローラが余計なことをした時の為の防衛線として残しておいた。 しかし神裂の考えは本当に杞憂で、これから始まるのはローラによる真面目な挨拶&土御門に対する愚痴みたいなものだった。 「先ほどは恥ずかしけるところを見せしにつき。許されたれ」 「は、はあ(この変な日本語どうにかならないの?)。ところでさっき聞きかけたんですが元春とはどういう??」 「仕事の上司と部下。とはいうたれどあやつは自由人につき、定時連絡もよこせず。」 「あ~、確かに(私が打ったメールの3本に2本は電話で返事済ませようとするし残り1本に至っては全く返事しないし……)」 「あと。私の日本語変なりけるかの?」 「え?いや、その、え~と…」 「隠したらずともよろし。この日本語を教えたるのが土御門なるのよ。」 「なるほど。それでそんな変な日本語に…(にゃーにゃー以外のレパートリーもあるって事??)」 「ムッ!!やはり変と思いたるな!!おのれ土御門!!そなた月夜というたりけるかの、これから土御門が変なことをせんようにしかと支えてたも。」 「はいっ!!」 「そのかわり。」 「へっ」 ローラがその年齢不詳な笑みでズイと近づいてくる。 それだけで月夜は引いてしまった。 が、ローラが行ったのは単純なことであった。 「私に変な日本語を教えたる罰を与えてたもれ。」 「了解しました♪」 そのころドタバタしながらもどうにか化粧が大体終わった男どもはというと…。
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/1734.html
第一五学区学区の繁華街、姫神の存在を感じ取る特訓中の浜面と半蔵だが三十分経過しても彼女を見つけられずにいた。 浜面は正直な話、半蔵も一緒ということもあり10分あれば姫神の姿を見つけることが出来ると思っていたがそれがいかに甘い考えだったかと痛感していた。 「おいあいつ、ホントにどこいんだ!?」 浜面は姫神が一向に見つからないことに叫んだ 「黒い髪が見えたと思って、近づいて捕まえてみると人形だからな。どうなってやがんだ」 半蔵も訳がわからないという感じになっていた そこで浜面の携帯が唐突に鳴り出した 相手は姫神だった 「なんだ?俺達をバカにしにかけたのか?」 『それも。面白そうだけど。ある意味重要な事を。伝えるつもりでかけた』 「なんだよ、重要な事って」 『君達は。かれこれ30回以上は私に触れている。こっちが。ひやひやする』 「まじかよ!?どんだけ影が薄いんだお前は!?」 浜面はもう驚くを越して関心しそうになっていた 『そのうえ。浜面には胸を揉まれた』 「!!!???どうすんだ、俺!?滝壺に会わせる顔がねぇ!」 『……というのは。嘘。ということでがんばって私を。探して』 「嘘かよ!?っておい!きりやがった……」 姫神との会話は単に疲れるだけだったと浜面は後悔するのだった 「なんだった、あいつ?」 「俺達はあいつに何度も触れてるらしい。」 「……マジか」 「さぁ、気を取り直して姫神を探すぞ」 「……おお」 二人は気を取り直したが、すごく疲れきった顔で姫神の探索を続けるのだった 「どうですか? インデックスさん。変化は見られましたか?」 「ううん、大丈夫。発動した形跡も他の術者が術式を解除した後で組み直した跡も見られないんだよ。特に変化は無いね」 「これで巡回は全て終了。シェリーさんの構築した術式のトラップが作動した様子も目立った変化も無し。お疲れ様ですインデックスさん。さすがの完全記憶能力ですね♪」 「かざり、できれば言葉よりも何か食べさせて欲しいんだよ……。ちょっとお腹が空いてきたし」 第七学区の外れ、誰も寄り付きそうに無い雰囲気を醸し出している路地裏で話し込んでいるのはインデックスと初春。 彼女達二人、正確には二人では無いが夏に始まる魔術師達との私的な戦争の為の巡回をしていたのだ。 とはいえあくまで初春のジャッジメントの巡回と合わせて行なっているので怪しまれてはいない。 「超だらしないですよインデックス。この程度でお腹が空くだなんて燃費が超悪いにも程があります」 「そ、そうはいっても今日はステイルが食事当番だから一緒じゃないし巡回前に1ホールしかショートケーキ食べてないから……」 「……巡回始めたのって一時間前ですよ」 「さいあいは分かってないかも。私のお腹は常に食事を欲して止まないの! というわけでかざりには何か奢ってもらうんだよ!」 インデックスと初春の付き添いというよりボディーガードとして一緒に行動を共にしている絹旗、インデックスの胃袋にただただ呆れるばかり。 呆れられているインデックスが初春に謝礼を求めたが、当の本人はもう一人の同行者と話し込んでいる最中だった。 「今日はありがとうございました対馬さん。シェリーさんの代わりに付いて来てもらって」 「いいのよ気にしなくて。初春、貴女も私達の大切な仲間なんだから。ところで今日シェリーさんは?」 「シェリーさんならGWの間に開かれる個展の打ち合わせで第九学区です」 ちなみにシェリー、彗星の如く現れた新進気鋭の彫刻家として第九学区では少し噂になっていたりする。 しかし第九学区は実力至上主義、シェリーが認められて個展を開けたのは彼女の並大抵じゃない努力があったればこそだ。 「でもシェリーさん、最後まで駄々こねてたわよね……。貴女に付いて行くって」 「あはは……」 「かーざーりーっ! そんなことはいいから早く私に何か食べさせて欲しいんだよ!」 インデックスの大声でようやく彼女の存在に気付いた感じの初春と対馬、自分達もお腹が空いてきた気分に。 「そうですね。じゃあ第一七七支部に行きましょう。確か牛乳プリンがあったはずです」 「おおっ、固法先輩お手製の超珠玉の一品ですね! バストアップ効果が超期待できると噂の!」 「噂って……それ言ってるのって最愛さんと涙子さんだけじゃないですか。インデックスさんには量が足りないかもしれませんけど……あれ?」 念のため、インデックスに数量のことを伝えようとした初春だったがいつの間にかインデックスは前にいた、対馬と一緒に。 「かざりもさいあいも急ぐんだよ! 牛乳プリンが私達を待ってるんだよ!」 「わ、私は別にバストが大きくなるかもって期待してるわけじゃないわよ! ただ、絹旗が珠玉の一品って言うからその……」 「だ、大丈夫ですよ二人とも。一個も無いということはありませんから。牛乳プリンは逃げたりしません」 (インデックスはともかく対馬さんまで……。二人の気持ち、超痛いほど分かります!) バストアップという言葉に釣られてテンションを上げたインデックスと対馬に初春は少し驚き、絹旗はそんな二人に共感していた。 急かす二人に追いついた初春はインデックスに、 「インデックスさん、今後も今日のような巡回を手伝ってもらえますか? とはいっても白井さんがお休みの時だけなんですけど」 「分かったんだよ。これで私もとうま達にニート扱いされないし、かざりはちゃんとお礼してくれるからむしろ歓迎するべきかも」 今日のような巡回を依頼すると、インデックスにも思う所があるらしく快く受け入れてくれた。 現金なインデックスに三人は呆れながらも実に彼女らしいと思いながら、第一七七支部へと向かうのだった。 その頃の友愛高校食堂、仕事中の建宮に神裂と佐天が飲み物を催促していた。 「建宮、あたしにヤシの実サイダー奢って」 「建宮、私にも。」 「女教皇も佐天もひどいのよ! 今、財布の中には諭吉一枚しかいないのよ!」 実は建宮、また新たなゲテモノメイド服を買い込んだために金欠であった。 「建宮の金欠など知ったことではありません。 諭吉が一枚いるならそれを崩せばいいだけです。 それに金欠の理由もどうせ新しいゲテモノメイド服を買ったとかそんな理由なのでしょう?」 「!!!女教皇、なぜそのことを!!」 「まさか本当にそうだったとは… 佐天、どうしますか?」 「とりあえず飾利に連絡を…」 「待って!いや、待ってください! 奢ります!奢りますから! どうか、飾利姫だけには言わないでください!」 佐天と神裂は泣きながら懇願する建宮がさすがにかわいそうと思い、初春に報告するのはやめることにした。 しかし、今回建宮が購入したゲテモノメイド服が更なる波乱を巻き起こすことになるが、それはまた別の話
https://w.atwiki.jp/deruta_sanbaka/pages/135.html
「何ですか建宮さん?」 『もしも、もしもなのよね!!上条当麻に似合うこっ恥ずかしいコスプレって何なのよね!?』 「上条さんに似合うコスプレ?そうですね…♂∴∞$§@*#%♀>◆□◎※(その時までのお楽しみ!) 何てどうでしょう?って言うか何でそんなこと聞くんですか?」 『おお!!成る程!!さすが五和なのよね!!』 「一体どういう意味ですか?って切れちゃいました…」 「はまづら、またういはるからメールがきた。」 「何だって?」 「『ドレスと着物どっちがいいですか?』だって、ちなみにバニーは選択肢にない。」 「ん~着物が似合うんじゃないか?」 ちなみに浜面は郭の事を思い出した。 「じゃあ着物って送っておこう。」 滝壺白無垢に決定♪ 昼ごろ。 学園都市の外へと通じる出口で。 「「「「「「「「「「何であんたらがここにいる!?」」」」」」」」」」 10人=5バカップルは偶然同じゲートから同じタイミングで外に出ようとしていた。 「「「「「「「「「「帰省あとパーティーにお呼ばれ。」」」」」」」」」」」 「あン?テメエラもかよォ。うちらにはこんな感じのメールだけどよォ。あの初春ってやつなンで知ってたンだァ??」 「にゃにゃ?差出人内容ともうちらとおんなじだぜい。」 「こっちもだ。」 「…って事は…全員同じパーティーに出席ですの??」 「そうなるわね。」 「はまづら、そういえば何でうちらも呼ばれたんだろ?」 「なんでだろうなあ…絹旗あたりが原因じゃね?」 「ったくよォ。クリスマスまで同じ所かよォ。」 「まあまあ。なんか面白そうだしいいんじゃないでせうか。」 そんな会話をしつつ彼らは外へ出る。 「そういや時間までだいぶあンぞォ。俺はこのガキが『東京ってとこ行きたい』ってからちょいと行って来るンだけどよォ。テメエラはどォすンだァ??」 「「「「「「「「東京ねえ…」」」」」」」」 ちなみに上条と美琴の実家は神奈川県である。 「「「「行ってみたい!!」」」」 と言ったのは女性陣で理由は簡単、おしゃれな服ゲットである。 「「「賛成!!」」」 と言ったのは上条以外の男性陣である。理由はもちろん秋葉原!! 「上条さん的には不幸な予感がしますが…OK!!」 ちなみにこの不幸な予感は観光中のとある団体に会うことになる。 「「「「「「「「「「じゃあレッツゴー!!」」」」」」」」」」 その頃とある二人は… 「一方通行め~!!トイレ行ってくるって言ったと思ったら先行ってるって素っ気ないメールがきたじゃんよ!!」 「外は警備委員の権限使えないからパーティーで落ち合うことになるわね。」 置いてかれた。 「あっ、みなさんからの返事が来ました」 「それでそれで? 結果は?」 「慌てないで下さい佐天さん。今はおかわりを貰うのが先ですから。美鈴さんおかわりお願いします」 パーティー前の腹ごしらえをしていた主催者一同、そこに初春が送ったメールの返事が返って来た。 すぐに結果を言うかと思われたが、お腹がとても空いていた初春は美鈴にご飯のおかわりをねだった。 その食べっぷりに料理を作った美鈴、詩菜、神裂は感心し、それに釣られるように佐天、絹旗もおかわりを求める。 「いやー、それにしてもいい食べっぷりねー♪ 作る甲斐があるってものだわ」 「あらあら~、美鈴さん的には新しい娘を持った気分なのかしら~」 「あ、それいいわね。じゃあ当麻君と美琴ちゃんに『新しい妹が出来ました』ってメール送らないと♪」 「「「「ええええええええええっ!!!!」」」」 幸いなことに食べ物を口に含んでいなかったので惨事は免れたが、美鈴の行動に大いに驚いた3人+神裂。 慌てて取り消しを求めようとしたが、主犯の母親達だけでなく父親達も嬉しそうにしているので諦めることにした。 「ところでさっきのメールの件なんだが結果を教えてくれないか?」 「は、はい! 御坂さん、白雪さん、アホ毛ちゃんがウエディングドレス。白井さん、滝壺さんが白無垢です」 「ウエディングドレス派のパートナーにはタキシード、白無垢派のパートナーには紋付羽織袴でいいんだね? 初春さん」 「はい、よろしくお願いします旅掛さん」 勘のいい旅掛は男性陣に着せる衣装のことにすでに気付いており、すぐさまどこかに電話をかけ始めた。 「じゃあみんなこの辺でお昼は終わり! さあいよいよ忙しくなるから頑張るわよー」 「「「「「「おーーーーっ!」」」」」」 「ところで建宮君はどこだい? 旅掛も電話に行ってしまって男手は私一人なんだが」 「あ、私が見てきます。絹旗さんは建宮さんを連れて来るまで刀夜さんを手伝って下さい」 旅掛が電話のために席を外してる為、男は刀夜一人になってしまったので新居に到着してない建宮を呼びに行こうとした初春。 しかしそれを佐天、絹旗が真剣な表情で止めに入る。 「ダメだって! 建宮さんに一人で会いに行ったら初春が汚されちゃうよ!」 「そうです! あの浜面クラスの超キモいおっさんを呼びに行くなら私がボディーガードになります!」 「ダメですよ二人とも。二人にはパーティーのゲームを考える役目があります。初春のことは私に任せて下さい」 佐天、絹旗の代わりに初春のボディーガードを買って出た神裂は、美鈴と詩菜に説明をした後で初春と共に建宮を呼びに行った。 取り残された佐天、絹旗は神裂に軽いやきもちを焼きつつも、自分達の担当のゲームを考える為に、 「よーっし! いいゲームを考えるには新居探検が一番! 行こう絹旗♪」 「超了解です佐天さん! それではパパさん一号にママさんズ、今から新居超探検に行って来ます!」 上琴の新居探索に乗り出した二人、特に絹旗は上琴の両親をそれぞれパパとママと呼ぶほどノリノリに。 刀夜は絹旗のはしゃぎように自分の手伝いのことは何も言えなかったものの、その表情には柔らかな笑みが浮かんでいた。 ちょうどその頃、美鈴からのメールを貰った上琴の反応は…… 「「はいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!」」 「何だよォ!!電車の中では静かに知ろって親に言われなかったのかァ!!」 そんなことお構い無しに 「美鈴さん妊娠してたのか…」 その言葉を聞いた8人は 「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」」」 大変な勘違いをしていた…。 「そうなると…産着でも買ってあげなきゃなんないわね…」 話の流れとは恐ろしいもので 『美鈴に子供ができた』 は完全に事実として認識されてしまっていた。 「う~ん、そのあたりよくわかんないからさ、美琴とか白雪あたりで頼むわ。」 「にゃー。おっカミやんそろそろ駅に着くぜい。」 「ヤッホー!!着いたで着いたでー」 そこは・・・・・・・・・・・
https://w.atwiki.jp/kinsho_second/pages/2718.html
前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者 第3章 ②本質が呼ぶ戦いと残された謎 「…これは拙いぞ」 「どうしたのよな?」 「オルソラと建宮が指名手配された」 「俺とオルソラ嬢が指名手配ってどういうこと…って何で俺の名前を!?」 上条は訳が分からないといった様子の男…建宮に携帯に送られてきたメールを見せる。 「確かにこれは俺の名前と顔写真… 何時の間に!?」 「…なあ建宮、言いたくはないが」 「…分かってるのよな。 俺達の仲間から裏切りものが出ることはない。 となると考えられるのは拷問か何かで…」 建宮の言葉に美琴とオルソラは顔を蒼くする。 「どうする? こうなった以上、学園都市から出ることはおろか学園都市内を移動することすらままならないぞ」 「それについては考えがある。 俺達天草式は隠密性に秀でた魔術師だ。 俺とオルソラ嬢は秘伝の偽装魔術を用いて脱出する。 お前さん達はこれ以上関わり合いにならないほうがいいのよな。 協力を申し出てくれたことに感謝する」 「他の天草式の連中はどうするんだよ!?」 「天草式も十字教の一派である以上、恐らく…すぐに殺されるということはないはずだ」 「すぐにってことは、いつかは…」 美琴は顔を蒼くしたまま俯く。 「建宮さん、私のことはいいから天草式の皆さんを…」 「いい加減にしろ!!」 オルソラの言葉に建宮は苛立ちを隠せぬまま叫んだ。 「…オルソラ嬢に罪がないことは分かってる。 だが俺の仲間の覚悟を侮辱することだけは許さんのよな。 オルソラ嬢を救うために戦ったアイツらの覚悟を無駄にするな!!」 「建宮、天草式とローマ正教の部隊はここからどの方角で戦ったんだ?」 「学園都市から見て真っ直ぐ北東の方角よな。 だけどそれが…」 「…いや、少し気になっただけだ。 建宮、何としてもオルソラを逃がしてやれよ」 「あ、ああ」 「それと美琴、俺はこれから少し一方通行と会う約束があるから。 部屋はこんな状態だし、悪いけど何処かホテルか何かで休んでてくれ。 一方通行との約束が終わったら連絡するから…」 「…分かった」 「建宮、包囲網が敷かれる前に出来るだけ早く脱出したほうがいい。 あとこれはイギリス清教の俺の知り合いの番号だ。 何かあったら使ってくれ」 「本当に世話になった。 いつか窓ガラスを弁償しに戻るのよな」 建宮とオルソラは上条に深く頭を下げると上条の部屋を出て行った。 そして二人に続いて出ていこうとする上条の手を美琴が繋ぎとめる。 「美琴?」 「…嘘が下手にも程があるでしょ。 私が当麻だけで危険な場所に行かせると思う?」 「…今回だけは駄目だ」 「どうして!?」 「この間の魔術師との戦闘は自衛っていう言い訳が立つ。 でも今回の件に関しては学園都市と協定を結んでるローマ正教を相手に戦うことになる。 無能力者の俺なら正体がバレる可能性が少ないが、美琴は学園都市でも有名な超能力者だ。 イマイチ科学とか魔術とかのバランス関係は分からないけど、美琴が手を出すと多分拙いことになる」 「でも、当麻一人を危険なところに向かわせる訳には…」 「建宮が言っていた通りなら天草式はまだ生きてる可能性が高いはずだ。 別に戦うわけじゃなくて、天草式を解放することだけに集中する。 天草式を解放することさえ出来たら、後は混乱に乗じて逃げ出すだけだ」 「だったら私も能力を使わないで…」 「美琴、分かってくれ。 美琴は超能力がある以外は普通の女の子なんだ。 危険があると分かってる場所に普通の女の子を連れていくわけにはいかないだろ?」 「…」 「大丈夫、そもそもローマ正教の部隊と遭遇できる可能性だって低いんだ。 別に俺は全能なわけじゃないんだ、もし無理なようなら諦めるよ」 しかし美琴の体はカタカタと振るえ、その目には涙が浮かんでいる。 上条はそんな美琴を抱き寄せるとその唇に自分の唇を重ねる。 「俺は必ず帰ってくる、美琴を一人残して死ぬことだけは絶対にしない。 だから俺の帰りを待っててくれ」 これは我侭だということを上条も分かっている。 本当に美琴のことが大事なら放っておくという選択肢もあるのだ。 しかし上条当麻の中に眠る本質がそれを許さない。 そして上条のことを誰よりも深く理解する美琴もそのことを分かっていた。 だから美琴は上条の背中を見送る。 上条が帰ってきたら思い切り文句を言い、そして愛し合うために… 美琴は普段祈ることのない神様に上条の無事を願うのだった。 上条は部屋を出ると真っ直ぐに学園都市の北東のゲートに向かう。 建宮の話によると天草式とローマ正教の戦いは学園都市の北東で行われたらしい。 学園都市はとても巨大な街なのでわざわざ遠回りをして他のゲートを使うよりも、 そのまま真っ直ぐ北東のゲートに来る可能性が高かった。 しかし上条が北東のゲートに辿りつくと違和感を感じる。 本来警備の人間が多数配置されてるはずのゲートに人の気配が感じられない。 こんなことがある筈がない。 上条の頭の中にはふと協力者と名乗って二人組の謎の人物の姿が思い浮かぶ。 そして上条の考えを肯定するように、ゲート内にアナウンスが流れる。 機械音で学園都市外のある住所がアナウンスされた。 このタイミングで告げられた謎の住所… 罠である可能性は高いが、元々ギャンブルのような確率でローマ正教の部隊に遭遇することを望んでいた上条だ。 この情報に乗らない手はなかった。 「こんな形でオルソラ教会を利用する形になるとは思ってなかったですよ」 まだ11、2歳にしか見えない少女のシスター…アニェーゼ=サンクティスは皮肉げに呟く。 「異教の地とはいえ一つの教会を任せられるほどの人望がある人間が正教の教えに背くようなことをするなんて、 私からは恵まれた人間が火遊びをしたようにしか見えねえってわけですよ。 そしてそんな道楽者を助けようとしたアンタらも私からは滑稽な道化にしか見えませんよ」 そう言うアニェーゼの前には数十人の日本人が体を縛られ地面に横たわっている。 そしてその中の一人の少女が吼えるように言った。 「オルソラさんは人にとって害にしかならない、魔道書の原典を消し去る方法を探そうとしただけです。 それなのに、あなた達ローマ正教は!!」 「まあ確かに法の書はローマ正教でも扱い方が分からない邪魔なもんでしかありません。 しかしあの女がしたことは結果としてアンタ方を巻き込み犠牲にしただけじゃねえのかって私は思うわけですよ」 アニェーゼはそう言って少女のわき腹を蹴りつける。 「うぐっ!?」 「アンタ達天草式は困っている人なら理由も聞かずに手を差し伸べるのをモットーにしてるんでしたっけ? いやいや、同じ十字教に所属する人間として尊敬せずにはいられませんよ。 でもアンタ等にその教えを説いた聖人の女教皇とやらも助けに来ない。 一体アンタ等の救いはどこにあるんでしょうかね!!」 アニェーゼに蹴られ続け少女は反論する気力も失い、抵抗することをやめた。 少女は天草式でも人一倍正義感が強い少女だった。 それ故に、他の天草式への見せしめの材料として選ばれた。 「それにしても学園都市はいつになったら私らが学園都市に入るのを許可するんですかね? 確かに科学と魔術サイドが簡単に折り合いをつけるのが難しいことは分かってるんですが… まああの女と天草式の現首領の指名手配はしたみたいですし、間単に逃げられることはねぇんでしょうけどね」 アニェーゼの顔には苛立ちが目立ち始めていた。 もしオルソラに逃げられるようなことがあれば、正教での自分の立場は完全になくなることになる。 そうなればあの頃の生活に逆戻りだ。 それだけは絶対に嫌だとアニューゼは心の中で叫んでいた。 そして天草式の信念もすでに折れかかっていた。 自分達は今まで誰かを救うためだけに戦ってきた、そのことに疑問を持ったことはなかった。 しかし絶望の淵に立たされて、初めて自分達に救いがない状況に疑問を生じた。 このままではアニューゼ部隊と天草式の精神の均衡が崩れ大惨事になろうとしたまさにその時… ヒーローは遅れてやって来た。 何かが壊れるような音とともに教会の扉が開いた。 教会の内部にいたアニェーゼ部隊の人間達は困惑と混乱に陥る。 教会に張り巡らせていた結界はアエギディウスの加護と呼ばれる個人で敗れるよな代物ではない。 しかし教会の扉に立つ人間は正真正銘一人しかいない。 扉に立つ少年が何をしに来たのか、その理由ですら彼女達は理解することが出来なかった。 上条が告げられた住所を頼りにやって来た場所はまだ建造途中の教会だった。 そして上条が教会の扉に触れると何か異能を打ち消す感覚が右手に伝わった。 情報が正しかったことを確信すると、上条は教会の中に足を踏み入れる。 そこには200人を超える修道服を着たシスターと、恐らく日本人だと思われる数十人の人間が縛られ横になっていた。 上条は呆けているいるシスター達を余所目に冷静に状況を分析する。 何となくだが大勢のシスター達は一人の幼いシスターを囲むように立っているように見える。 恐らくそのシスターがこの部隊を纏め上げるリーダーなのだろう。 上条がこの状況を打破するためにしなければならないのは、決して倒れずに敵のリーダーを一撃で倒すことだった。 上条はシスター達が呆けている隙をついて教会の中を駆け抜ける。 そしてワンテンポ遅れてアニェーゼは部下のシスター達に命令を下す。 「な、何をやってるんですか!? 敵襲です、迎撃を開始しやがりなさい!!」 そしてアニェーゼに向かって突進する上条に向かって炎や謎のエネルギーが放たれる。 上条はそれを出来る限り右手で打ち消しながら尚も直進を続ける。 しかしながら全てを打ち消すには至らず大きな衝撃が上条のことを襲う。 だが上条は怯まない。 ただ前へ前へと進み続ける。 そしてアニェーゼまで残り数mといったところで宙を舞う車輪と小袋が上条に向かってきた。 小袋は円を描くように上条の背後に回り上条の後頭部を叩きつけ、車輪は爆発して無数の鋭い破片が上条の体に突き刺さる。 しかし上条は足を止めることをしなかった。 チャンスは一度きり、まだ敵が上条に狙いに気づいてない段階で勝負を決しなければならない。 上条は卑怯な作戦だと思いながらも敵のリーダーを打ち倒して彼女を人質に天草式のメンバーの解放を迫るつもりだった。 とてもヒーローの採る作戦じゃないが、自身をヒーローなどとは全く思ってない上条には関係ない。 戦いにおいて敵の将をまず狙うのは戦術のセオリーである。 上手くいけばこの部隊の戦意を削ぐことも出来る可能性があった。 しかし事はそう簡単には進まない。 上条の狙いに気付いたのかシスター達はアニェーゼを取り囲むように陣形を組む。 (ちっ、このままじゃ…) 上条が目論見が外れてどうするか迷った時、上条の体が不自然に宙に浮いた。 上条の穿いているズボンの金属で出来たボタンが何か見えない力に引っ張られているようだった。 (…サンキューな) 見えない位置から自分をサポートしてくれた恋人に心の中で感謝を述べつつ、上条の宙に浮いた体はアニューゼに向かって直進する。 そして上条の右拳が何が起こっているか理解出来ない様子のアニューゼの顎を打ち抜くのだった。 上条は完全に意識を失ったアニューゼを人質に取り、アニェーゼ部隊に対して天草式を解放するよう迫る。 しかし簡単に取引に応じるわけにもいかず、どうするべきかアニェーゼ部隊は困惑していた。 そんな緊張状態が張り詰める中、突然一人の男の声が教会内に響き渡った。 「いいだろう、俺様の権限で許可する」 教会の入り口から赤を基調とした服を着て髪型はゼミロングである一人の男が、足音を響かせて上条たちのもとに近づいてくる。 上条はシスター達の部隊の一人かと思ったが、シスター達も男を怪しむ様子で見つめていた。 そんなシスター達に男は一枚の紙を見せる。 アルファベットで書かれた内容を上条は理解することが出来なかったが、 シスター達は紙に書かれた内容を確認すると男に道を開けるように両脇にそれた。 「まさか気紛れでやって来た極東でこんなに面白い見世物が見れるとは思わなかった」 男の態度は特に威圧的なものではないのだが、上条は男が自然に纏う底知れぬ冷たい雰囲気に背筋が凍る思いだった。 「それに実に興味深い右手だ。 俺様の力と合わせればあるいは…」 男は目の前にいる上条を意に介した様子もなく、その場で一人考えに耽っている。 そして何か思いついた様子で言った。 「なあ、学園都市など捨てて俺様と共に来ないか?」 「なっ!?」 「貴様と俺様の力を合わせれば世界を真の意味で救うことが出来る。 もちろん俺様の権限を使って外にいる貴様の女も保護してやる」 隠れている美琴の存在にも気付いている!? 上条は直感で目の前の男に今の状態では勝てないことを悟っていた。 そして美琴と力を合わせても、決してこの男に届かないことも… しかしすぐに回答できる問題ではない。 これが旅掛が言っていた反撃のタイミングなのかもしれないが、どうもそうは思えない。 何にしろいずれ学園都市と決別する覚悟があるとはいえ、決断するには時間が必要だった。 そんな上条の心中を察したように男は言った 「確かにすぐに決断できる問題ではあるまい。 しばし時間を与えるからゆっくりと考えるがいい。 俺様の誠意として、オルソラ=アクィナスの捕縛命令も撤回させよう。 それほどオルソラ=アクィナスに価値があるとも思えないからな」 男はそれだけ言い残すと踵を返して、教会の入り口へと戻っていく。 シスター達も男の後に続くように気を失っているアニェーゼ担ぎ上げ教会から出て行った。 後に残された上条は縄で縛られた天草式を解放すると、天草式の面々は上条に向かって諸々に感謝の言葉を述べる。 やがてローマ正教がオルソラから手を引いた知らせを受けた建宮も駆けつけ、オルソラも含めてささやかな宴が開かれた。 宴には影の立役者である美琴も参加した。 天草式の一人の少女が上条に熱い視線を送るのを牽制しながらも、美琴は上条が無事であったことを上条の隣で喜ぶのだった。 しかし学園都市に帰った上条は思ったよりも重症であったことが発覚し、再び入院を余儀なくされるのだった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある二人は反逆者