約 36,197 件
https://w.atwiki.jp/shosensyojodokusen/pages/544.html
927 :名無したちの午後 (JP 0Hcb-aISN) [↓] :2021/02/10(水) 15 05 01.62 ID M0RMhRzSH [H] それよりもっと建設的な話しようぜ といってもクソNTR作品報告だけどな ガラス姫と鏡の従者が駄目だわ ヒロイン達は大丈夫なんだけど√次第でエラとオットーが婚約する 結局最後はどうなったのか何の説明もないけどなんで脇カプなんて入れるんだよ……
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2580.html
人と神姫と混沌としたナニカ 前書き どうも、作者のクロムと申します。この作品は、作者が書いてゆく行き当たりばったりなSSとなっています。 初めに、この作品はやむなく更新ストップする事になった前作の設定やキャラも再利用していますので同じ名前のキャラも出てきます。 あと、キャラや設定等々を借りたい御方がおりましたらどんどん使って頂いてかまいません。 ただ、キャラの死亡やこちらのシナリオに重大な影響を与えるようなのは勘弁していただきたいです。 それ以外であればコラボは大歓迎です ……心機一転頑張っていきます(汗 ※※以下、一部設定をお借りしている別作者様方の作品※※ 「Mighty Magic」 「深み填りと這上姫」 11/5 やっと…やっと……Ⅰの1投稿。 概要 人と神姫の数だけある物語、その物語の一部を、垣間見る物語………になる予定。 本文目次 「Ⅰ-0」※ほぼ会話文のみで短いです。 「Ⅰ-1」 今日 - 人 昨日 - 人 総計 - 人の来場者です 感想等はこちらへどうぞ 体調等に気をつけて、続きをお願いします。 -- ノーマル (2012-08-01 11 56 33) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sengoku_muramasa/pages/1281.html
[出立]咲姫とみの吉 バレンタイン台詞 み「こ、これは……甘くておいしそうですよ!!」さ「どうじゃ??おぬしの為に作ったのじゃ!!」 --
https://w.atwiki.jp/isekaikouryu/pages/377.html
「こちら側」の海は、主要な移動の道程であると同時に、未知と危険にも溢れた浪漫の領域でもある。 「向こう側」の海がヒトの知恵と力でほぼ制覇されているのとは違い、「こちら側」には今だ余人の立ち入らぬ海域も広く残っている。 海の危険といえば悪天候による転覆や強大な海生生物というのが相場だが、そのほかにもある。それは「海賊」。 「海賊」という存在は、「向こう側」では今や浪漫を追い求める創作の産物か、現実的な意味では海上を主な活動場所とする反政府・犯罪組織の別称であるが、「こちら側」では浪漫を求める海運業兼破壊活動集団として世に広く知られた存在である。 そんな海賊達の根城は、雪に覆われた北の諸島群。 戦神であり闘神であるウルサを信奉し、浪漫と無法を愛する者達の楽園、ドニー・ドニー。 水夫と海賊は紙一重、というのは「こちら側」の常識。 渡航客を乗せることのなくなった船が船員ごと即日海賊船に転向することも日常茶飯事なこの世界、旅客船に乗ったと思ったら、旅程半ばで海賊に転向されて身包み剥がされ海に放り捨てられる、ということもない話ではない。 そんな海賊だが、本家本元ドニー・ドニーの由緒正しき海賊達は、生まれながらにして男も女も海賊気質。 仁義と義侠に溢れた気骨者の集団である。 それゆえに、味方であれば頼もしく、敵であれば恐ろしい。 水夫崩れとは一味も二味も違う奴ら、それこそドニー・ドニーが誇る真の海賊。 ・・・ではあるのだが、悲しいことに、それでも略奪専門の職業海賊もまた存在してしまい、なおかつそれすら許容する度量があるのもまた事実。 さもありなん、究極的に言ってしまえば「力こそ全て」「力こそ正義」、まさに戦神の寵愛を受ける地ならではの志向である。 そういうわけで、主要国家を臨む内海地域にあっては、海上の脅威として海賊は猛威を振るっているのだ。 しかし、そんな海賊達の、誰もが恐れる事象、そして存在というのが、確かに<こちら側>にはあるのだ。 星と月が燦然と輝く宵闇の海上にあって、その場に集ったすべてのものが、ただ一つの事象から、目を離すことが出来なくなっていた。 その場に満ちるのは、海を激しく波立たせるに飽き足らず、割らんとするほどに迸る、神威の力。 常人であれば、遠くにあって正気を失い、近くにあれば狂死しかねない、濃密にして濃厚、絶大なる破壊の意思の発露。 逃げなくてはならない。 己の、そして仲間の持ちうる力の全てを以ってして、この場から立ち退かねばならない。 その意思はあっても、肉体と本能が「それは不可能だ」と諦観に縛られる。 ひとりの鬼人が剥製の如くに動かなくなってより、時間にすれば僅かな間だが、その場に居た者からすれば永劫にも感じられた時間の果て。 剥製に皹が入り、内より破られる。 闘神の顕現。 ヒトは己の死を覚悟した。 未来王と海賊船 エリスタリアは春の国の港より、ラ・ムールを経由しイストモスへと向かう旅客船舶が出航して二日。 ルミコーブ大河の河口にあるラ・ムール最大の貿易港コマルクル・カ・ムールへの海路は順調であった。 「・・・いや、これは何かの罠だな。 ここまで順調だとすれば、近々面倒があるはずだ」 「デルさんは考えすぎなんですよぉ。 そんなに気を張ってたら疲れちゃいますよ?」 国境を越えたというのに小ゲートに未だに呑まれていないまま二日が過ぎたという事実に警戒の色を隠せないディエル=アマン=ヘサー(16)と、エリスタリア王妃ユミルムからの依頼にて同行の徒となり冒険旅行に心躍らせる妖精の少女チカ=シズニペリ(79)は、まるで対照的な心持で潮風に身を晒していた。 「にしても、この『びーふじゃーきー』とかいう肉はアレだな、保存食としてはいいんだろうが、こう何時までもガジガジ齧ってるとさもしさを感じてくるな・・・」 「ウチの国の人たち以外は不便ですねぇ、ご飯食べなきゃ生きていけないなんて」 「俺らからすれば、日光浴だけで生きていけるっつーお宅らの体のつくりに、疑念を感じずにはいられんがなぁ」 ふよふよと浮ぶチカの、背中に生える翠玉の煌き放つ羽をしげしげと見ながら、ディエルは引き続き干し肉を齧る。 「『えげれす』っていう<向こう側>のお国からいらした学者さんは、『ふぉとしんせしすのきせきだー!』とか何とか言ってましたよ。 よくわかんないですけど」 「まぁ学者のセンセが奇跡だとまで言うんなら、オマエに理解出来るレベルの話じゃないだろうからなぁ」 「かっちーん! まるでヒトを馬鹿呼ばわりしてるみたいじゃないですかぁ!」 「違うのか?」 「違いませんけど!」 「なら何の問題もないな」 「ですね!」 船舶の旅二日目も、甲板でこんな間抜けな話を繰り広げつつ、日暮れの海を眺めながら、過ぎていくのであった。 そして日が暮れる。 豪華客船ではない一般的な民間船舶であるため、食堂などといった小洒落た設備などあるわけもなく、乾物中心の仕出し弁当とチカ用に蜂蜜少々(渡航費内で支給される最低限の食事だが)を手に客室へ戻ったディエルとチカは、少々早めの晩餐を摂る事にした。 「ミズハに寄ったときに異人のおっちゃんが持ってたみたいな釣具でもありゃ、魚釣って食えるんだけどなぁ・・・向こうに着くまでは、生肉焼肉はまだまだお預けかぁ」 「お肉って、そんなにオイシイんですか? 私なんかだと、体のつくり的に食べられないので分からないんですけど」 「そりゃまぁ、俺らは肉食ってナンボな生き物だからな。 <向こう側>だと・・・確か『べじたりあん』っつったかな? 野菜果物以外は食べねぇ!肉なんて以ての外だ!なんて言ってるヤツもいるらしいけど」 「ふ~ん・・・ところで、毛玉ちゃんは何も食べないんですか?」 「ああ、コイツは動物霊の霊的進化体《エヴリム》だからな。 羽虫を齧るのは好きだがメシはいらんっつー、実に有り難いヤツだ」 「ほへ~・・・」 蜂蜜を頬張って満腹になったのと、日が落ちて生命維持に必要となる日光浴の効率が落ちてきたことで、妖精種であるチカは休眠状態に陥りつつあるのを、ディエルは察する。 「む、眠いならとっとと寝ろよ?」 「はいなぁ~・・・」 眠気で意識朦朧としてきたチカを、戦装束《ヴァルカ・トラジェ》備え付けの、半ばチカ用移動家屋と化したウェストバッグに誘導してやる。 チカがバッグの中に設えた寝袋に包まって眠りに付いたの確認し、ディエルはバッグの口を閉めて客室から出ることにした。 「さて、っと。 夜風にでも当たってくるかね」 甲板より夜空をディエルが見上げれば、そこには満天の星空に、紅月が浮かび上がり、星神の加護に満ち満ちた光景が繰り広げられている。 「確か<向こう側>だと、あの星ひとつひとつがウチュウとかいうところに浮んでるんだっけか・・・でっけぇ鉄の船とか鉄の箱の巨人とかがいっぱいいるって話だもんな。 すげぇもんだね」 「左様に御座いますな、カー・ディエル」 「それに比べてこっちの星は、言ってみりゃテミランの目だわな。 ま、どっちにせよ、あの星が掴める距離まで行ってみたいもんだね。 世界樹のてっぺんより遥か上なんて、ワクワクするな?」 「・・・成程! それは素晴らしい試練に御座いますな! では早速」 「しねぇよ!」 「何故にで御座いますか!? ご自身より申し出られた試練だというのに!」 「おいハリム、コロナが遊んでくれって言ってるぞ」 「言っておりませ・・・わ、や、やめ、ふぎゃ、むぐ」 どんなときでも一に試練二に試練な神霊コロナにかかれば、行住坐臥、生きること全てが試練である。 無論、毛玉に齧られじゃれ付かれるのも試練である。 「ま、そんなことはともかく、だ・・・なーんか、懐かしいような、あんまり嬉しくないような、そんな気配がしてきたな」 気が付けば、あたりには薄っすらと霧が立ち込め始めている。 「この空気の臭い、感触、これは確か・・・」 ディエルは旅程を想い、身に纏わりつく空気の正体を確かめる。 「お嬢! 前方に客船と思しき船影が見えましたぜ!」 「ふっふっふっふっふ・・・今日はちょっと無理して足を伸ばしてみた甲斐があったわね! それと、私のことは御頭か姉御と呼びなさい、って何度言ったら分かるのよ!」 「へい、了解しやしたぜ、お嬢!」 「絶対了解してないわよね、あんた・・・ま、いいわ。 船員に通達、『だいいっしゅせんとうはいび』よ!・・・どういう意味かよくわかんないけど、これ一度、言ってみたかったのよねぇ!」 「つまりはいつもどおり、ってことでやんすね! ところで、御客人はどうするので?」 「・・・加減を理解してるのかが気になるところだけど、まぁ大丈夫でしょ。 せっかくの御招待にイベントもなく遊覧だけじゃ、本人はともかく、あの方にも面子が立たないわ!」 「では、事の次第を伝えてきやすぜ、お嬢!」 「よろしく頼むわ!」 結局『お嬢』と呼ばれていることについてはどうでもいいのか、『お嬢』と呼ばれた少女は、自前の船の甲板へと歩を進める。 「あ、見て見て! 向こうにお船が見えるよ! おーい!」 なぜか甲板の船首付近で、御客人が声を張り上げつつぶんぶか両手を振っている。 「アンタ、なんでここにいんのよ・・・?」 「お部屋の中じゃタイクツだから、おさんぽしてたの! そしたらお船が見えたから!」 「どんな目してんのよ・・・船なんて私にゃ見えないけど。 つか聞こえやしないし、聞かれたら困るから大声は禁止!」 「ほへ? でもでも、パパも『しゅくじょたるもの、ごあいさつはしっかりできるようになるのだぞ』って言ってたよ?」 「・・・他所のお宅の教育方針に口出しする気はないからどうでもいいけど。 ま、いいわ。 さて、これからひと暴れするんだけど、アンタも付き合いなさい」 「わーい! それじゃ、おにもつとってきまーす!」 ぴょんこぴょんこと飛び跳ねた後、御客人の少女は猛烈な健脚で客室へと向かいだす。 「お嬢、全員揃いやしたぜ!」 御客人が船室に戻ってより少しして、舵を預かる操舵長を除く船員一同が甲板に集う。 「揃ったわね、やろーども! 久しぶりに暴れるわよ!」 『お嬢』の檄に、船員も檄を以って返礼とする。 「さぁ行くわよ! アニー海賊団、全速前進! よーそろー!」 「御頭、前方に客船と思しき船が見えやすぜ」 「ふっふっふっふっふ・・・久しぶりの獲物だなぁ、おい?」 「ですねぇ・・・商売あがったりで倒産寸前のところで、ようやく手頃な獲物が見つかりましたな」 「これも戦神様の思し召しだな。 よし、寝ているやつが居たら叩き起こせ! 我々バーハン海賊団は、これより略奪行為に移る!」 「アイサー!」 斜陽ながらも何とか機動船舶一隻分は動かすのに問題ない程度の人員は残ったハーバン海賊団。 もしこれで成果無く帰港するとなれば、お声掛けを貰っている他所への移籍や下船を検討する船員も多く、このメンツで暴れるのもこれが最後かもしれないという思いは、誰しもの中に潜んでいた。 団長ハーバンの召集に応じ甲板に集まった団員達を前に、ハーバンは声高らかに叫ぶ。 「お前ら、たとえ他所に移るとしても、手土産の一つでもあったほうがいいだろう! 違うか?」 団員は無言を以って返答とする。 「オーケーオーケー、分かってる。 ま、これが俺たちの最後かも知れねぇ。 こんなだらしねぇオレに今日まで付いて来てくれたお前らに、オレは本当に感謝してるんだぜ」 団員達は無言のまま。 だがそれは、口に語ることも憚られる雰囲気を感じていたからだ。 「さぁ行くぜ、全速前し」 振り替えるや否や目の前に突如現れたありえない光景に、ハーバンは声を詰まらせる。 進軍の号令を発しようとしたハーバンと、彼より先にそれを見て絶句していた団員達の前に現れたのは、自分達の乗る機動船舶にも匹敵する、巨大な虎。 「よっと、邪魔するよ。 アンタが船長だな?」 「お、おう・・・?」 巨大すぎる虎が消えるのと同時に、猫人の少年が飛来する。 浮世離れした事象に、ハーバンの思考は半ば停止していた。 「おうおう、物騒なモン構えちゃって。 ひょっとして、これからこのちょっと先にいる客船でも襲おうとしてたか?」 「ぐ、ぬ・・・!」 図星にも程がある猫人の指摘に、ハーバンは返答せずとも悟られるような態度が表に出てしまう。 「お・・・おうおう、坊主、ここが何処だか分かってんのか!」 正気に戻った船員達が、再び得物を構えなおし、猫人の少年に向き直る。 その中で、声を荒げたオーガの男がひとり、猫人の前に歩み寄る。 「おい、何とか言ってみろや小僧!」 「なんでこう、オーガの皆様は喧嘩っ早いのかね。 だったらその血気盛んなところを、チンケでロクな見入りのない客船より、もっといいトコロにぶつけてみないか?」 「・・・話を聞こう」 即答するバーハン。 猫人を挟んでバーハンの対岸に位置する団員からは、当然批難の声が上がるが 「お前らもちょっとは考えてみろ。 さっき見たクソでっかい虎、あんなデカいヤツが船首ギリギリに来るまでに気付いたヤツ、この中にいるか?」 の一声に、団員は沈痛な面持ちで返す。 「つまりだ、『殺る気になりゃあえて身を晒すまでもなく殺れた』のにそうしなかったって事は、今の俺たちゃこの小僧に『生かされてる』んだよ。 さて・・・すまねぇ、話の続きを聞こうか」 「物分りが良くて助かるわ。 さて、そいじゃ船長、早速『びじねす』の話をしようぜ?」 猫人の少年は、懐から光り輝く鉱石をいくらか手に握り出し、改めてバーハンと相対した。 怪しい黒き霧が客船を取り囲むと同時に、甲高い声が響く。 「さぁさぁさぁさぁ来た来た来たわよぉ! 我ら、名高きアニー海賊団! これより略奪を開始いたしまsきゃー!」 客船お抱えの武装船員のひとりが、口上が長くなりそうな空気を察して炎精術の炎をアニーに撃ち込むのを以って、客船とアニー海賊団との船上戦の火蓋は切って落とされることとなった。 「ちょっとちょっとちょっとぉ! ヒトが名乗りを上げてるときは黙って聞くのがルールってもんでsきゃー!」 甲板に集結した武装船員が、とりあえず手近なところにいるアニーから掃討するため、得意とする攻撃的精霊術の掃射を開始する。 アニーが無駄に頑丈なのは良く分かっているためさして気にも留めることなく、アニー海賊団員は次々と客船へと飛び移る。 水棲生物の特性を持つ死徒は船底より攻めるために次々と闇夜の海へ潜り始める。 武装船員が甲板でアニー海賊団の第一陣と交戦する間に、一般の船員は客室の一室一室へ、事の次第を伝えると共にドアに込められた防護の術式を展開していく。 死徒には彼ら特有のルールである死殺罰《マーダー・ペナルティ》が課せられているが、だからといって船員や客の身の安全が保障されているわけではない。 「死ななきゃ何したっていい」的な思考を持つ者が居た場合、身を護る術を持たない者は、最悪命以外の全てを奪われることにもなる。 そんな中、一般船員のひとりがとある客室へと向かう。 「お客様、失礼致しま・・・す?」 もぬけの殻だ。 客室内には私物と思しき物も残っている様子はない。 ここには確かに客がいるはず、なのに何故・・・? 思いを巡らせる時間も惜しいを思い直し、次の客室へと向かおうとした船員だが、運が悪いことに武装船員の精霊術の砲火を潜り抜け船室へ侵入してきた死徒と鉢合わせとなってしまう。 船員たるもの乗客の安否を最優先に考えるべきではあるのだが、死の臭いを撒き散らす死徒を目の前にして、そうそう平静で居られるものでもない。 喉が詰まり、声を発することも出来ない。 じりじりと詰まっていく船員と死徒の距離。 だが、不意に死徒は動かなくなる。 心の臓が埋まっているべきあたりに刃が突き抜け、死徒は活動を停止する。 「ふぅ、間に合ったか。 よっしゃ、オル、ダリ、お前ら俺に付いて来い。 他に船室に入り込んだヤツを始末すんぞ! ドク、負傷者がいたら治療を頼む! 他は全員表で暴れろ、但しこれ以上船室には入れるなよ!」 「「アイサー!」」 鬼族の男が、ゴブリンのお供に声をかけ、船室の奥へ向かおうとする。 「あ、あの、あなた方は・・・?」 すっかり腰の抜けてしまった船員は、なんとか疑問を口にする。 「あ? ああ・・・俺らはハーバン海賊団。 義によって助太刀しに来た!」 「会計屋ぁ!」 ハーバンは、猫人から差し出された奇怪な鉱石を手に、ハーバン海賊団及びプロパーダロブ商会の会計であるアバコを呼びつける。 「何でしょう、御頭?」 「その小僧が『前払いの報酬だ』っつって寄越してきたブツだが・・・コレ、何だか分かるか」 「へいへい、ちょっとお借りしますぞ・・・」 アバコはルーペを取り出し、しげしげと鉱石を角度を変えたり、叩いてみたり、金の音を聞いてみたり、色々と試した結果、出た言葉は 「小僧、コレを何処で手に入れた!?」 「ゴブのおっちゃん、そんな事言うくらいなんだから、察しは付いてるんでしょう?」 猫人の少年は直接的な返答を避けたが、既に目検討が付いているアバコとしては、半ば回答を得たようなものである。 「おいおい会計屋、ソレ、何なんだ?」 「御頭、コイツは・・・日長石《ヘリオライト》でさぁ。 それも神の御業級に高純度。 テミランの落し物である隕鉄《メテオライト》と並ぶ、神鉄《Gマテル》のひとつですぜ」 「で、それは会計屋がそんなびっくらこくほどの価値があるのか?」 「簡潔に言えば、たったこれっぽっちに見える量でも、需要のあるところに売りに出せば、豪級艦一隻、資材費に建造費、処女航海までの費用を全部捻出して釣りがきますぜ・・・?」 「な、なんだとぅ!?」 アバコの言葉に、バーハン含め、金銭価値を理解している船員全員が慄く。 「・・・いやぁ、挑みかからなくてよかったっすね、御頭。 ウチラみたいな海賊風情にぽいっと投げて寄越すことに何の躊躇いもないほどにこんなもの持ってるってことは」 「ことは?」 「この猫人、我らの及び至れないレベルの試練を、それも恐ろしい数突破しているってことでさぁ。 日長石がなぜ価値が高いかと言えば、高難度試練の褒章だから売りに出そうなんて考えるヤツ自体が居ないってのと、贈与されるに足る試練を果たせるヤツがそうそう居ないからでさぁ」 「・・・なぁ小僧、ホントにコレ、俺らに寄越すってのか?」 内輪話を中断し、ハーバンは猫人に尋ねる。 「やるとは言ってないって。 ソレを報酬に一仕事受けてくれって話。 何、単純な話さ。 お宅らが目をつけた客船に、別のご同輩が目をつけてるから、ちょっとあしらってくれってだけさ」 「俺らに他所の海賊団と殺り合え、ってのか」 猫人の返答に、特に反目する理由もなく報酬のみで同輩と矛を交えろと要求された怒りを、バーハンは真正面からぶつける。 「おっと、これは失礼。 正確に言えば、お宅らの真似事してる死徒の船団と、だな」 「成程、南海を縄張りにしてるヤツらが偶に口にしてるアレか。 よし乗った! 会計屋、念書を書いて小僧に渡してやんな!」 「あいさー・・・坊主、コレに署名を書け。 先に言っとくが、この証文に偽名は通じないぞ。 然るべき手法で作られた、躍字の証文だからの」 「りょーかい、っと・・・ほい、これでいいかい?」 「ふむ、流石はラ・ムールの子だの。 しっかり書けとる。 ウチには自分の名前も書けないから血判で代用するヤツもいるというのにのぉ」 「よっしゃ、多分もう現地じゃ始まってるだろうから先行くわ! 待ってるからなー!」 猫人の少年は、船首から闇夜の海原へ向けて飛び降りて行く。 「なんだかよく分からんが、念書がちゃんとあるってことは、現実の話だってことだよな?」 「ええ、間違いございやせんぜ」 「なら、念書があるならやるこたぁ一つだ! 路線変更、これからスラヴィアの真似っ子どもを叩きに行くぞ!」 ハーバンは船員に改めて檄を飛ばす」 「たとえ落ちぶれたといえど、俺らも一角の海賊団だ! 死に腐れ野郎どもに、真の海賊の心意気と腕っ節、見せ付けてやろうじゃねぇか!」 「「「「オォーーーーーーーーーーー!!!!」」」」 ハーバン海賊団は一丸となり、スラヴィアンの海賊気取りどもに一撃くれてやるべく、暗海に帆を張り、風精に頼り、機動船舶を進める。 「ぜぇ・・・ぜぇ・・・全く、酷い目にあったわ! ええい、やろーども! とっととやってしまいなさい!」 精霊術の一斉掃射から、持ち前の不必要なまでな頑丈さを生かして離脱してきたアニーは、部下どもを叱咤する。 「あ、アニーちゃんだ! やっとみつけたよぉ~」 「ちょっとアンタ、今まで何やってたの! ま、いいわ。 アンタも行くわよ!」 「がってんだ!」 アニーはようやく合流した御客人と共に、再度客船への進攻を開始する。 その一方、客船の甲板上では 「いやはや全く、『饗宴』に似た空気がしてきたと思ったら、ホントにヤツらの海賊船だったとはねぇ。 何にしても、手近なところに金銭契約できる相手が居て助かったわ」 死徒相手なら勝手知ったる何とやら、生身で「饗宴」に出場したこともあるディエルとしては、そこが船上であろうとやるべき事は変わらない。 適度にあしらって追い返してやれば、あとはバーハン海賊団に客船を護衛させてラ・ムールまで行けばそれで万事終了、というわけだ。 船一隻分の死徒を相手にするとして、参加者以外には原則被害の及ばない『饗宴』と違い、闘うことが出来ない者が同じ土俵に立っている上に、狭い船上でろくな逃げ場もない以上、手数には手数で対するのが一番の策である。 日長石《ヘリオライト》をダシに交渉をしかける点について当初コロナは反対したが、ディエルは「先にそれをしたオマエが文句言うな」で黙らせた。 ろくすっぽ金の持ち合わせもないディエルとしては、あの場だけでも凌げればと思って出したアレのウケが想像以上によかったのは幸いだった。 「さて・・・やっこさん方のお船はアレだな」 蜘蛛人死徒が数人がかりで繰り出した糸により作られたネットが、両船を繋ぐ足場として形成されている。 蜘蛛の糸はその特性を十分に理解している蜘蛛人でなければ絡め捕られるのは必定、安易に渡り歩くのは芳しい手ではない。 「ふむ・・・あのネットは足場にならんし、アレを落としちまうと戻れなくなった連中はこっちで処理せんといかん。 おそらくは向こうの頭目が制御権を持ってるんだろうが、戻れなくなったから制御権放棄しましたー、とかなったら夜明けまで面倒だし」 両船舶間の距離を見比べつつ甲板上の死徒を薙ぎ倒したディエルは、 「よし、跳ぶか!」 甲板を駆け、縁に足をかけ踏み込み、両脚に脚力と熱風の神気を溜め、一気に飛び立つ! 「一体何なのよ、もう! なんでこう私ばっかり狙い撃ちされるのよ!」 またしても精霊術攻撃の雨霰にしてやられて自船に戻ってきたアニーの愚痴は止まらない。 「それになんでドニーの海賊がいきなり横槍入れてくるのよ! はっ、まさか、あの船には奪い合いになるほど魅力的なお宝が!?」 アニーの思考回路に突如火が灯る。 お宝発見!⇒持ち帰れば大手柄!⇒でもレシエお姉さまにあげちゃう!⇒ステキよアニー!こっちへいらっしゃい・・・ 「えへ、えへ、えへへへ・・・」 思考回路がピンク色に染まり完全に自分の世界に没入したアニーには、周囲の喧騒や「邪魔だ、どけぇ!」と叫び迫る猫人の声など、もはや耳にも入らない。 「ああ、だめおねえさま、そこはグホアァッッ!?」 アニーの緩みきった顔面に、飛来猫人もといディエルの着地の足が見事にクリーンヒット! そのまま縁まで持っていかれ、ディエルの足と甲板の縁のサンドイッチとなったところでようやく停止する。 アニーの顔面からバック宙で降り立ったディエルは、さっそくアニー海賊団員に包囲される。 「邪魔だっつったのに・・・ま、頑丈みたいだしまぁいいか」 目を回して昏倒するアニーを尻目に、ディエルはアニー海賊団員に相対し 「さて、こちらの船長さんはどちらかな? それとも向こうに行っちゃってる?」 と質問すると、アニー海賊団員は皆指でディエルの背後を指差す。 「・・・へ? コレ? ・・・マジで?」 「マジ」 居合わせたアニー海賊団員全員からの肯定の返答に、ディエルは頭を抱えざるを得ない。 「う~ん、あのさ、今さっき思いっきり顔面に蹴りブチこんで、ここヘコむくらい派手に後頭部激突させちまったんだけど、大丈夫かな?」 「そりゃ大丈夫でさぁ」 「お嬢は不必要なくらいに頑丈やし」 「お味噌もないから問題ないで、あんさん」 「そか、それはよかった」 どうやらこの変な船長ルックというか船長の少女死徒は、<向こう側>風に言えば「ユルかわ愛され」船長というやつらしい。 まぁ無事というのなら、起きた所で脅しかけるなり交渉するなりでとっとと引いてもらおう。 あるいは客船はバーハン達に任せて、日の出まで長期戦に持ち込む覚悟を見せてやるのもいいかもしれない。 そんな中、アニー海賊船の中央マストの天辺から 「とぉぉぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 という迫力の微妙に足りない裂帛の掛け声と共に、豪斧が振り下ろされる! 「うぉあぁ!?」 「どっせぇぇぇぃやぁぁぁぁぁぁ~~・・・・・・」 寸でのところで爆音張り上げて甲板に激突した豪斧を避けたディエルは、船舶の中でも特に丈夫な甲板の床板を豪快にブチ抜いた穴に戦慄すると共に、 「・・・誰だか知らんが、大丈夫か」 開いた穴にそのまま落ちて行った豪斧の主の安否を、穴からのぞいて気遣う。 アニー海賊船の甲板の上には、妙な空気が漂っていた。 とある世界の境界線。 『うむ、前に頼んだ例の件、良い頃合なので宜しく頼む』 『にゃはは、先に上質の謝礼を貰った以上、やらずにおるわけにもいくまい。 万事わらわに任せておくがよいぞ!』 『うむ、試練だ』 『にゃふふ、試練試練、大いに結構! では、ひっさびさに大殲滅祭《デストラクト》としゃれ込むとしようかの! 腕が鳴るのう! にゃあっはっはっはぁ!』 相手方のネットワーク接続と共にSkypeの通話も終わり、男は別のゲームを開始する。 そのタイミングを見計らっていたように、背後で休むことなく規則的に続いていた判子を捺す音が一時止まる。 「主よ、今どなたかと話をされていたようですが、何かなされるのですか」 「試練だ」 「左様でございますか。 試練であれば仕方ありますまい」 また判子を捺す音が鳴り、男はゲームに没頭する。 世は事もなし。 【まえのおはなし】 【おまとめはこちら】 【後編へつづくのじゃよ!】 ディエル諸国放浪記ですが彼並みかそれ以上にフットワークの軽さと広さを見せ付けるアニーの作品を越えた活躍は凄いですね。体育会系なディエルは相手も同じ体育会系であればすぐに通じ合える資質を感じます。あと食べ物に弱い -- (名無しさん) 2013-10-06 17 47 47 名前 コメント すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/fukumotoroyale/pages/98.html
姫と双子の紳士 ◆uBMOCQkEHY氏 『・・・では、以上で放送を終了する。 諸君の健闘を祈る』 淡々とした語り口調で放送は終了した。 板倉は一条の方向を振り向く。 「今の放送でアンタの知り合いの名前はあったか?」 一条は柔和に微笑む。 「おや・・・あなたこそ、誰か、知り合いの方が参加されているのですか?」 ――ふん、早速、探りを入れてきたか・・・! 板倉は一瞬、目を歪めるも、すぐに落ち着き払った笑顔で対応する。 「いや・・・!」 嘘である。 今の放送で、共にドリームキングダムの王の試験を戦った、末崎と標の名前があった。 しかし、一条の腹の内が分からない時点では、必要以上の情報を話すつもりはない。 「さっきも話したが、俺達を裏切った佐原という男・・・ この男の知り合いで伊藤カイジという男が参加している。 どうも、このゲームはある種の繋がりを持つ者が集められているようだ・・・」 「伊藤・・・カイジ・・・」 一条の心にヘドロにも似た怨嗟が溢れ、それが激流のように体内を駆け巡る。 一瞬、一条から笑みが消えた。その瞬間を板倉は見逃さなかった。 「おや・・・もしかして、お知り合いか?」 一条は再び、柔和な笑顔を繕う。 「いいえ・・・!」 嘘である。 帝愛グループに7億円もの損害を出し、幹部入りを果たすはずであった一条の未来を潰した男、伊藤カイジ。 一条はカイジを殺すために、このゲームに参加していると言っても過言ではない。 しかし、板倉としづかには殺し合いに参加していないと公言している。 二人に疑念を持たせるような情報を話すつもりはない。 二人は複雑に絡み合った糸を慎重に解すかのように、相手から情報を得ようと、水面下でやり取りを繰り広げていた。 そのやり取りをかき消したのは、しづかの一言であった。 「もう、これからどうするんだよ・・・!」 しづかは周りを見てみろと言わんばかりに、手を広げる。 「こんなに暗いんだぞ・・・!これからどうするべきか考えた方がいいんじゃないのか・・・!」 二人は周囲を見渡す。西日は沈みかけ、東から林全体を覆うかのように、薄暗い闇が広がり始めている。 「確かにその通りだ・・・」 「ふふ、我々としたことが・・・」 一条と板倉は談笑するかのように、しづかの意見に同意する。 その様子を見て、しづかは呆れ顔を浮かべ、ため息をつく。 「もっと緊張感を持て・・・!ここは殺し合いの場なんだぞ・・・!」 しづかの脳裏に、秀峰と勝広の殺し合い、勝広の爆死、和也との遭遇が光のように駆け巡る。 噴水の水しぶきのように舞う血のビジョンが、何度、頭の中で繰り返されてきたことか。 次はあの血が自分のものであってもおかしくはない。 先が分からない恐怖。しづかは二人に気づかれないように右手で左腕を掴み、心の奥から地震のように響いてくる震えを抑えた。 そのような凄惨な体験をしているからこそ、二人の和んだ雰囲気が歯痒かった。 自分がしっかりしなければ、一条と板倉は誰かに殺されてしまうかもしれない。そのような危機感さえあった。 「これから、どうしましょうか・・・?」 「そうだな・・・」 二人からすれば、しづかは囮程度の利用価値しかない。 むしろ、相手の情報を引き出すための駆け引きを妨害され、不愉快なくらいである。 それでも、しづかの存在を重要視するにはある理由があった。 一条も板倉も、相手が胸に一物を抱えているのは承知しており、その一物が何であるかを白日の下に晒そうとしている。 それを制する鍵を握っているのが、しづかなのである。 二人の関係はまるで、お互いの頭に銃を向けあい、いつ引き金を引くのか分からないガンマンの決闘のような状態である。 この牽制しあう関係は、しづかがどちらかにこう言えば、大きく覆されてしまうのだ。 「お前、何を企んでいる・・・!」 その直後、しづかの言葉を大義名分にし、もう片方がしづかを擁護しながら、相手を糾弾し始めるだろう。 だからこそ、今、ここでしづかの機嫌を損ねてはならないのである。 一条が閃いたかのように、しづかに提案した。 「そうだ・・・今夜はあのホテルで一晩を明かしませんか?」 一条が指をさしたホテルは、勿論、板倉と佐原が先ほどまで拠点としていたホテルである。 この言葉に、しづかもそうだが、板倉も言葉を失った。 反論の口火を切ったのはしづかだった。 「な、何を考えているんだ・・・!あのホテルには裏切り者がいるんだぞ・・・!」 しづかは首元を押さえる。再び、あの震えがこみ上げてくる。 「しづかさん・・・」 一条はしづかと同じ目線になるように、やや体を屈めると、穏やかに語り始めた。 「確かに、あなたの気持ちも分かります。けれど、よく考えてください。 今まで、あのホテルには佐原という男と板倉さんだけしかいなかった。 逆に言えば、佐原がいなくなれば、あのホテルは安全と言えるのではないでしょうか。 佐原はしづかさんと板倉さんに裏切りを示すため、しづかさんを狙撃した。 そのような裏切りを公言した者が同じ場所に長居をすると思いますか? 私が佐原の立場であれば、目的が何であれ、場所が割れてしまったところからはとりあえず、移動すると思いますよ・・・」 ――ほう、これは面白い・・・。 板倉も口を開く。 「それは一理ある。それに、この周囲にはギャンブルルームと病院があるが、 病院は今の時間帯であれば、傷を負った参加者が治療するために訪れる可能性があり、 その弱った参加者を狙った優勝目的の参加者が潜んでいるかもしれない・・・。 また、ギャンブルルームの場合は、ゲームの棄権費用稼ぎ目的の参加者が、そこへ訪れる人間は金に余裕がある者が多いと踏んで、その付近に潜んでいる可能性が・・・ それらを考慮すれば、下手に動くより、ホテルを拠点として明日に備えた方が安全・・・ということか・・・一条さん?」 板倉の援護射撃に一条は微笑んで同意する。 「そういうことです・・・それに、野宿される訳にはいきませんしね・・・我らの姫様をね・・・」 「なっ・・・!」 この言葉で、しづかの顔が火照ったように真っ赤になる。 「何が姫様だぁー!」 しづかは声を荒げると、一条を力いっぱい突き放した。 もうお前の話は聞かないと言わんばかりに、そっぽを向いてしまう。 一条は体勢を立て直すと、板倉と顔を見合わせ苦笑した。 「不愉快にさせてしまったことは謝りますし・・・あなたの気持ちも理解しています。 ただ、今はホテルを拠点にすることが、危険に思えて、実は安全・・・ あなたの身は私が守ります。どうか理解していただけませんか?」 「俺もそう思うよ・・・しづかさん。 とにかく早い段階で、夜を過ごす場所は決めてしまった方がいい・・・ それに、もし、ホテルに佐原がいないということが分かれば、後は確実に出入りできる唯一の場所である正面入り口を警戒すればいい・・・ 危険を未然に防ぐこともできる・・・!」 ――安全・・・守る・・・危険を防ぐ・・・。 しづかは二人の言葉に心が動いているのを感じた。 ホテルどころか、この島全体に安全という言葉がないことは、しづかも承知している。 しかし、今のしづかはこれらの言葉に縋りたかった。 何より、正常な精神と判断力を持つ二人の男性の自信に満ちた説明と口調が、しづかに事実を曇らせ、安全が目の前に存在しているという根拠を芽生えさせてしまっていた。 ふて腐れたような表情で睨みつけながらも、一条に尋ねる。 「と・・・とにかく、ホテルに佐原がいなければ安全なんだな・・・?」 これは事実上の同意といっても良かった。 「そうです・・・!理解していただけて嬉しいですよ・・・!」 「ナイス判断力・・・!やっぱり、しづかさんは理解してくれると思っていたよ・・・!」 二人はしづかを誉めあうが、思惑は別の場所にあった。 板倉はこの時点で、佐原に裏切るメリットが見当たらないため、実はしづかの件は誤射だったのではないのかという予感があった。 そのため、ホテル内で遭遇したとしても、佐原の方から弁明してくる可能性が高いと踏んでいた。 仮に、本当に裏切りであったとしても、一条が何らかの武器を持っており、それなりに対応はできる。 佐原がどのようなスタンスを持っているのかに応じて、協力体制を組むなり、殺すなり、手段を選べばいい。 どちらに転んでも、板倉には悪くはない状況ではあった。 それに対して、一条はカイジを知る佐原の存在が気になっていた。 佐原からカイジの情報が聞きだせるかもしれない。 聞き出した後は、佐原がどのようなスタンスを持っているのかに応じて、協力体制を組むなり、殺すなり、手段を選べばいい。 どちらに転んでも、一条には悪くはない状況ではあった。 二人の思考は恐ろしいほど、そっくりなものであった。 目的のためなら、どのような駆け引きにも応じ、相手にはその匂いを感じさせないように、紳士の仮面を常に身に付ける。品がよく見えても、それをめくれば、裏で生きる獣の顔がそこにはあった。 その時、しづかが声をあげた。 「武器はどうするんだよ・・・!私は武器になりそうなものなんて持っていないぞ・・・!」 その言葉に板倉が突如、あちゃあっ・・・!と声を出し、頭を押さえた。 「それを忘れていた・・・! 残念ながら、俺も戦闘の役に立ちそうな武器を持ち合わせてはいない・・・アンタはどうなんだ・・・一条さん?」 ――この場面で、情報を集める気か? 一条は口元こそ笑ってはいるものの、その瞳は苦々しそうに板倉を見据える。 しかし、ここで情報を拒否すれば、しづかがそれは卑怯だと反論するのも目に見えている。 しづかの言葉によって、立場が危うくなるのは避けたい。 「あぁ、私の武器ですか・・・銃器を・・・ 板倉さんこそ、銃器は持ち合わせてはいなくとも、何か役に立ちそうなものは持っているのではないのですか・・・?」 その言葉を待っていたと言わんばかりに、板倉は自分のディバックを一条へ差し出す。 「良かったら、見てくれないか・・・大したものは入っていない・・・!」 一条はその中身を確認する。 ディバックの中身は通常支給品と手に収まるくらいに小さいジュラルミンケース型の箱が入っていた。 一条は箱を手に持ってみる。 「これは?」 「それか・・・それはハブの猛毒だ。三時間ほどで相手を死に至らしめることができる。 こんな注射じゃ、相手を脅すこともできない・・・まったく使いどころに困った武器だ・・・」 一条はあることに気づいた。 「リュックの中身が記載されている説明書がないようですが・・・どうなされたのですか?」 板倉は満面の笑みで即答する。 「なくしちまった・・・!」 ――嘘をつけ・・・! 説明書には毒の情報もだが、スタート時点でディバックに入っている持ち物の情報が書かれている。 説明書という信憑性が高い情報がない限り、手の内を見せたことにはならない。 ほかの支給品をスーツの中に隠している可能性もあるし、毒の話自体も怪しい。 そもそも板倉は必要以上の情報が洩れることを恐れるこの状況において、 何の躊躇いもなく、ディバックという命綱とも言うべき情報を見せた。 ――板倉の情報は疑ってかかった方がいい・・・。 そんな一条の苛立ちを知ってか知らずか、板倉は更なる要求をする。 「一条さんはどんな武器を持っているんだ?もし、差し支えがなければ・・・見せてくれないか?」 ――ふざけるな・・・!一方的に見せておいて・・・! 一条にとって、ディバックの中身を見せるのは自滅行為と言っても良かった。 しかし、ここでそれを拒否すれば、それこそ、しづかから非難を浴びることになる。 板倉は差支えがなければと言ったが、一条には見せる以外、選択肢はなかった。 「・・・どうぞ・・・」 板倉は一条からディバックを受け取ると、その中身を確認する。 「トカレフに、タバコ、スタンガン・・・おや・・・」 板倉は改造エアガンを取り出した。 「もし、良かったらで構わないんだが・・・ これから裏切り者がいる可能性があるホテルへ戻るのだから身を守るための武器が必要だ・・・ トカレフはアンタの身を守るために必要・・・だから、こっちを貸してくれないかい・・・一条さん?」 ――このチンピラが・・・! 一度、手放してしまった武器は何かと理由をつけられて、一条の手元に戻ってくることはないだろう。 目の前の男は、武器の調達と一条の情報収集をわずかなやり取りで、同時にやり遂げてしまった。 板倉の都合のいいように手玉に取られてしまったという屈辱が、カイジへの恨みに近い毒々しい感情として溢れてくる。 この場で絞め殺してしまいたい衝動に駆られる。しかし、紳士の仮面を剥がすわけにはいかない。 一条は表面上ではあるが、快く貸した。 「すまないな・・・一条さん。 いやぁ、これで俺も果たすことができそうだ・・・姫を守るナイトの役をね・・・!」 その言葉にしづかは、お前も姫なんて言うな・・・!と一喝し、再び、顔を真っ赤にする。 しづかの怒りを板倉はまあまあと子供をなだめるように受け流す。 ――あぁ、白々しい・・・この狐が・・・。 今の一条には、その二人のやりとりが遠いものにしか感じられない。 一条にある考えが過ぎった。 ――この男、頭が切れる・・・いや、切れすぎる・・・いずれ・・・私を踏み台にする・・・! 我が復讐の障害、板倉・・・奴に利用価値があるとするなら・・・。 「返すぜ、一条さん・・・」 板倉はディバックを返そうと、一条の前に差し出した。 しかし、一条の手はディバックを通り越し、その先にある腕を掴んだ。 「このスーツ・・・ドーメル・スキャバルですね・・・」 ドーメル・スキャバルとは、イギリスの老舗の高級スーツブランドであり、細番手の糸を使った光沢のある生地を使い、型崩れをしないことが特徴である。 一条はさらに強く板倉の腕を掴む。 「実にいいスーツだ・・・私のものなんか、安物でしてね・・・」 一条はスーツの襟を広げて見せる。 「ほら・・・血が下のシャツにまで染みてしまっている・・・ そのような上等なスーツ・・・機会があれば着てみたいものですよ・・・」 ――当然とはいえ、こいつ、そうとうキレていやがるな・・・! 板倉は目をやや歪ませつつも、冷静に笑みを浮かべながら対応する。 「あぁ、アンタなら、似合うと思うぜ・・・もし、落ち着いたら、俺のものでよければ着てみるか? 丁度、俺達は身長も肩幅も同じくらいだしな・・・」 「機会があれば・・・」 一条は板倉の腕を離し、ディバックを受け取った。 両者はお互いを見据えあう。 一条は柔和に微笑みながら、口を開く。 「確かに・・・我々は身長も、肩幅も同じくらい・・・そして、思考も・・・ まるで、生き別れの兄弟・・・いや・・・双子に会ったような気分ですよ・・・」 板倉もその言葉にふっと笑みをこぼす。 「確かに・・・俺もそう考えていた・・・」 「もう、いい加減にしろよ・・・!ホテルへ行くんじゃないのかよ・・・!」 二人の水面下の宣戦布告を遮断するかのように、しづかが声を出す。 二人はしづかの存在を忘れていたことを、詫びるかのように同時に手を差し出す。 「さぁ、参りましょう・・・我らのお姫様・・・!」 「どこまでもふざけやがって・・・!」 あまりの緊張感のない二人の行動に、しづかは肩をぶるぶる震わせ、二人の間をわざと割り込むように前へ進んでいった。 二人は顔を見合わせ、再び、苦笑すると、しづかの後を追うように、ホテルの方へ歩みだしたのだった。 【F-6/ホテル前/夜】 【板倉】 [状態]:健康 [道具]:毒液入り注射器 ※ハブの毒?(偽りの可能性あり、本人確認済み) 改造エアガン、不明支給品0~2 通常支給品 [所持金]:1000万円 [思考]:仲間を利用して生き残る 宇海零を探す 対主催者と合流する ※佐原が自分達を裏切ったと判断したと同時に誤射の可能性も考慮しています ※しづかは重要と考えていますが、いざとなれば切り捨てる気でいます ※一条を信用していません、彼を利用する気でいます ※一条に道具を確認させていますが、どこかに隠している可能性もあります ※一条の道具は不明支給品含めて、全て確認済みです 【一条】 [状態]:健康 [道具]:黒星拳銃(中国製五四式トカレフ)、毒付きタバコ(残り19本)、マッチ、スタンガン、包帯 不明支給品0~1(本人確認済み) 支給品一式×4 [所持金]:4000万円 [思考]:カイジ、遠藤、涯、平田(殺し合いに参加していると思っている)を殺し、復讐を果たす 復讐の邪魔となる(と一条が判断した)者を殺す 復讐の為に利用できそうな人物は利用する 佐原からカイジの情報を得る 板倉を復讐の障害と認知、殺したい ※しづかは復讐の為に利用できる駒としか見ていません ※板倉に不明支給品含めて、道具を全て確認されています ※板倉のスーツに興味を持っているようです 【しづか】 [状態]:首元に切り傷(止血済み) 健康 [道具]:不明支給品0~2(確認済み、武器ではない) 通常支給品×2 [所持金]:2000万円 [思考]:板倉、一条と行動を共にする ゲームの主催者に対して激怒 ※このゲームに集められたのは、犯罪者ばかりだと認識しています ※板倉と一条を信用していますが、自分がしっかりしなければとも考えています ※和也に対して恐怖心を抱いています 068 計画 投下順 070 陰陽 070 陰陽 時系列順 071 それぞれの試金石(前編)(後編) 055 魔弾 板倉 086 猛毒 055 魔弾 一条 086 猛毒 055 魔弾 しづか 086 猛毒
https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/47860.html
登録日:2021/04/20 Tue 01 12 27 更新日:2024/04/10 Wed 03 56 03 所要時間:約 3 分で読めます ▽タグ一覧 GRIDMAN UNIVERSE SSSS.GRIDMAN SSSS.GRIDMAN 姫とサムライ コミカライズ スピンオフ サムライ・バリアギア サムライ・キャリバー ツツジ台 戸流ケイ 新条アカネ 月刊コミックアライブ 漫画 ツツジ台の異変ありふれた日常を侵食する異形の存在たち立ち向かうのは平凡な中学生と黒いスーツを着た‘’サムライ”!? ■概要 『SSSS.GRIDMAN 姫とサムライ』は『SSSS.GRIDMAN』のスピンオフ漫画。 著者は戸流ケイ。 月刊コミックアライブ2019年12月号より連載開始。既刊2巻。 舞台はアニメと同じくツツジ台で、六花など一部の登場人物も共通しているが様々な相違点が見られる。 ■あらすじ ツツジ台に転校して来たばかりの九月姫は、空から落ちてくる謎の発光体を目撃。 目前に落ちた光に気付かない周囲の人々の態度に異常を感じた彼女は独自に調査を始め、街に佇む巨大な怪獣と怪獣と戦う使命を持つと語るサムライ・キャリバーと出会いツツジ台防衛軍を結成。 調査の途中に出会ったアカネもメンバーに加え、怪獣から街を護りながら異変の原因を追う。 ■登場キャラクター 九月姫 本作の主人公。ツツジ台に転校して来たばかりの中学1年生。考えるより先に行動するタイプ。 ツツジ台で起こる異変を調査する途中、サムライ・キャリバーと出会い協力することを決めた。 キャリバーに授けられた刀と融合しサムライ・バリアギアに変身する力を得るが、それ以前からアスファルトをも抉る怪獣の攻撃を生身で防ぐなど無意識に不可思議な力を見せている。 サムライ・キャリバー ご存知グリッドマンを支える新世紀中学生の一人。 行方不明の仲間達を探す途中、姫と出会い彼女に宿った素質を見抜き刀を一本託す。 新条アカネ 記憶喪失の中学生の少女。街の異変に気付き怯えて調査していた際に姫に怪獣から助けられたことをきっかけにツツジ台防衛軍に加入。 気弱だが善良な性格で情報の分析が得意。複雑な状況を端的に纏めたり、一見無敵な怪獣の攻略法を見抜くなど頭脳面で姫をサポートする。 霧を操り周囲の地形を操作したり、人物の記憶を書き換えるなど不可思議な力を持つ。当初は無意識に行っていたが自覚してからは能動的に使用できる。 原作に登場した同名の人物と姿も同一で、怪獣好きの嗜好も共通だが関連は不明。キャリバーや六花も特に反応を見せていない。 + その正体は キャリバーがツツジ台に侵入した余波で管理人から欠落した一部分。 本人に自覚はなく、管理人に正体を告げられた後も姫達の味方に付くことを決めている。 九月かぐや 姫から分離し実体化したサムライ・バリアギアの力。 姫と瓜二つな姿をしていたが、同一視されることを嫌い前髪を姫カットにスカートを大胆に短く切断している。 管理人 本作の敵対者。ツツジ台の管理人を名乗る謎の存在。胸部など女性的特徴がはっきりした白いエネルギー体のような姿をしている。 計算高く理路整然とした性格の持ち主で、姫達を分析し的確に弱点を突いて行く。 カッターナイフを放ち刺した人間の負の感情を具現化し怪獣に変身させる力を持つ。 自身の役割や能力を「設定された」と語っており何者かに創られた存在であることがうかがえる。 怪獣 ツツジ台の住人が管理人に変身させられる。大きさは人間大~民家の塀程度。 負の感情が原動力であり、変身する直前に不満を抱いていた対象に襲いかかる性質を持つ。 その他、原作同様に街を修復する霧の怪獣が佇んでいる。 宝多六花 アカネを捜索していた姫がゲームセンター前で知り合った女子高生。その後も時折姫と出会っている。 本作では街の修復に伴う記憶の修正を受けている。 ■登場ヒーロー サムライ・バリアギア 九月姫がスマホのアプリにアクセスコード「キャリバー」を入力し変身するヒーロー。グリッドマンに騎士の要素を加え女性化したような外見。長剣を武器とする。 等身は人間体のままだが機動力など怪獣と渡り合う力を持つ。 ■用語 ツツジ台 本作の舞台となる街。管理人には「忘れられた街」と呼ばれている。 + 世界の真実 創造主が理想の世界を創る過程で創られた試作品であり、とある部屋でゴミ袋に埋もれ忘れ去られた小さな怪獣の甲羅の中に存在している。 追記・修正は、異変の原因を解き明かしてからお願いします。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/llss_ss/pages/701.html
元スレURL ありあ「本の虫、鮫と海月と梅雨事情」 概要 梅雨のありとまマル短編集 関連作 前作:ありあ「本の虫、鮫と海月に絡まれる」 タグ ^澁谷ありあ ^ウィーン・マルガレーテ ^鬼塚冬毬 ^ほのぼの 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/miraclequest/pages/108.html
エミュー一覧『冬の国の姫と異界の魔王』 ■エミュー一覧 『冬の国の姫と異界の魔王』 名前 社交場分類 Lv HP MP 特技 説明書き 備考 シュネム Lv HP MP 特技 冬の国を統べる心優しき姫。そのありあまる才能が原因で氷漬けになっていた。[冬の国の姫と異界の魔王限定アイテム!!] イベント期間中に姿見の欠片1~16と交換itm9334 名前 社交場分類 Lv HP MP 特技 説明書き 備考 [更新履歴] 2011-01-06 16 56 46 (Thu);
https://w.atwiki.jp/llss_ss/pages/689.html
元スレURL ありあ「本の虫、鮫と海月に絡まれる」 概要 結ヶ丘新一年生ズのほのぼの学園ライフ 関連作 次作:ありあ「本の虫、鮫と海月と梅雨事情」 タグ ^澁谷ありあ ^ウィーン・マルガレーテ ^鬼塚冬毬 ^ほのぼの 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/p_ss/pages/1696.html
砂浜が… 太陽が… 海が… ゆかを呼んでいる。 「う〜み〜!」 新しく買った水着に小さ目のパーカーを羽織り、そのまま、波打ち際まで。 波が遠慮がちにゆか足を撫でた。 「のっち!海!」 振り返れば、白い砂浜にパラソルを立ててるのっち。 「はいw海です」 相変わらず、のっちは暑そうな執事服のまま。 ジャケットは流石に着てないものの、Yシャツにベストを羽織って、シャツの袖と、スーツパンツの裾を捲ってる。 「そこまで着崩すんなら、着替えてくれば良いのに」 「いえ!ひつじですから!」 「…生真面目」 「はい?何か言いました?」 「のっち、浮き輪ふくらまして」 「はいw」 いそいそと、パラソルの下に帰って行く姿はどことなく浮かれているように見えた。 のっちが浮き輪をふくらませている間、砂でお城でも造ってみる。 幼かったあの時のようにバケツやスコップなんて持ってないけど、きっとあの頃より上手く造れる。 てか、高校生にまでなって海でハシャぐってどうなの? アリ?ナシ? チラッと見たのっちは一生懸命浮き輪をふくらませている。 目があったかと思えば、浮き輪の空気口を口にくわえたまま、クシャっと笑った。 爽やかに笑っちゃって…。 誰かに見られたらどうするのよ。なんて、辺りを見回してみる。 久しぶりに来た海岸は、プライベートビーチと言っても良いほど人が居ない。 まぁ、前からそんなに人気のある海岸では無かったけど、小さいし。 「ゆかお嬢様っ」 すっぽりと頭から浮き輪を通され、斜め上。 のっちが得意げに笑ってた。 「出来ました」 さも、褒めて下さいと言わんばかり。 「よし!行こう」 でも、そう簡単に褒めてなんかあげない。 「あれ?」 その代わり、のっちの腕を掴んで海まで全力疾走。 「ゆかお嬢様っ!?」 波打ち際で足を止めて、それでも勢い付いたのっちは急には止まれず。 ゆかは腕を振って、離した。 …バシャン 見事に海にダイブ。 「お、お嬢様っ!」 「ふふふっ、、あはははっ」 「お嬢様!」 荒々しく水しぶきをあげてのっちが近付いてくる。 あれ?怒った? 「ご、ごめ!わぁっ!」 ふわりと抱えられて、 「え?ちょっと!のっち!」 「とりゃっ」 ヒョイッと投げられた。 あっ、空。 と思った次の瞬間には、キラキラ光る海面と浮き輪の影 コポコポッ… ゆかからの空気が登っていく。 それを追いかけて、ゆかも登る。 「ぷはぁっ」 浮き輪の中から顔を出すとのっちがしてやったりの顔。 「何すんのよw」 「ゆかお嬢様が仕掛けたことですよw」 「執事のくせに〜」 砂浜にでも押し倒してやろうかと、思った。 思ったけど… 「お嬢様っ!」 気付いたら、海の中だった。 side N 必死だった。 ゆかお嬢様が波に飲み込まれて、姿を消した。 「お嬢様!ゆかお嬢様!」 side K 波に飲み込まれて、でもそんなに焦っては無かった。 助けてくれる。 のっちなら助けてくれる。 ほら、 誰かに腕を引かれてる。 誰かが抱きかかえてくれてる。 ううん、誰かじゃない。 のっちが、だよね? 「ぷはぁ」 「ばぁはっw」 ほら、やっぱり。 少し高い位置でのっちに抱えられて、私は嬉しくなった。 「あははっびっくりした〜w」 「コッチがビックリですよ!」 のっちを見下ろして、のっちの顔に張り付いた髪をはらってあげる。 「ありがとうw」 「…はい///」 「帰ろっか」 「はい」 沈みそうな太陽を背にして、 頭の上から足の先までずぶ濡れにして、 手を繋いで、帰ろう。 帰って、シャワーを浴びよう。 明日は何が起こるかな。 避暑地二日目終了。