約 20,666 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3108.html
これは【口裂け女】を倒した後の、いつかの出来事。まだ朝早くに、ある親子2人がジョギングをしていた。 光彦「正義(せいぎ)、疲れていないか?」はっ、はっ タッタッタ 正義「大丈夫だよ。」はっ、はっ タッタッタ この少年、[黄昏 正義(たそがれマサヨシ)]はある時から休日は父親の[光彦(ミツヒコ)]と一緒にジョギングをするようになった。まだ小学生なのに立派である。 朝日は、親子2人の影を映し出す。いや、3人・・・。【恐怖の大王】もである。 大王も正義少年とともにジョギング、いや飛んでいるのでフライングか、をしていた。 都市伝説も体を鍛える事は可能らしい。昔よりも高く、速く飛べるようになったかもしれない。 ジョギングが終わり、3人は自宅に戻った。例によって1番疲れているのは大王である。 しかし摂食はせずとも大王の体力は自然と回復する、ある意味経済的な都市伝説である。 光彦「正義、だいぶ良くなってきたな。ちょっと前まですぐバテてたのに。」 正義「もう、昔の事でしょ。ボクも鍛えてるんだよ。」 ふーん、と光彦は答えた。その後、正義ははと気付き、すぐさま正義はTVの前へと向かう。 TVには特撮戦隊ヒーロー番組が映し出されていた。正義は特撮好きなのであった。そしてその父も。 OPが流れている時、ふと横を見ると正義の兄、[裂邪(レツヤ)]がいた。 正義「あ、お兄ちゃん居たんだ。」 裂邪「だから『居たんだ』はねぇだろ!」 光彦「仕方ないだろ。正義はジョギングに行ってたんだ。起きるのが遅いお前が悪い。なぁ正義。」 明美「はいはい、朝ごはんですよ。」 正義の母、[明美(アケミ)]が朝食を配る。その時、明美は夫にこんな事を言う。 明美「ねぇミツ、いいかげん[マサヨシ]と呼んだら?」 光彦「別にいいだろ。オレは[セイギ]の方が良かったんだ。」 正義「ボクも[セイギ]でいいと思うよ。」 「なー」と相槌を打つ夫を見て、「もう」言いつつ微笑む妻。そうしている内にCMが明け、また正義とその父がTVを見る。 大王は思う。なんて家族なんだと。 大王「(普通、主人のいう事は絶対なんだぞ。にもかかわらず妻のいう事を聞いて妥協するだと?) (父親からなって無いじゃないか!そもそも息子に[正義]と名付けている時点でダメか。) (家庭崩壊しかけだったら、簡単に誘惑できたんだがなぁ・・・)」 大王はまだ世界征服を諦めてはいない。 だが、正義少年が枷となり、その活動をする事ができないでいる。 正義少年のおかげで【恐怖の大王】は恐怖を与えられずにいた。 食事も特撮ライダーも終わり、TVを消したところで、父が言う。 光彦「よし、そろそろ買い物に行くとするか。」 正義「わーい、ボクも行く!」 裂邪「あ、俺は散歩行くから。」 光彦「全く、裂邪は正義と違って可愛げがないなぁ。」 裂邪「別にいいじゃん。」 大王「(俺はついて行かないとな。)」 そして3人+大王は車で某デパートに着いた。食材を買いに来たはずが、約2名は玩具売り場に行っていた。 明美の説得もむなしく買い物袋の中には特撮系の玩具が入っていた。男のくせに玩具なんて買うとは、大王は情けないと思った。 店員「ひったくりだぁー!!」 不意に店員の声が響く。「別にほっといてもいいだろ」という大王の意見は親子2人には届かなかった。 光彦と同時に走る正義。さらに大王に視線を送る。 大王「はいはい、あれだな・・・。」 大王が念じると店の天井ぐらいに雲ができる。その下を犯人が通ろうとした時に、急に液体が降ってくる。 犯人「うわっ!」ズルッ 犯人は床で滑ってしまった。犯人はすぐに立ち上がろうとしたが滑って立てない。 もがいている内に正義の父が来てしまい、取り押さえられてしまった。 その場にいた者にも分からなかったようだが、大王は『油』を降らせたのである。 床が平らな店内では効果抜群で、時間が経てば証拠ごと消えるため正義が良く使う手である。 実際、周りの人間も何が降ってきたか分からず、周りも濡れていないので幻覚だと思っている。 つまり、大王は捕り物の手伝いをさせられている訳である。 犯人がもがく姿を見るのは楽しいが、何が悲しくてこんな偽善行為をしていられようか。 大王は少々自分が悲しくなっていた。 ここで、正義少年に『正義』のためと称して犯人を傷つけさせたりしたらいいと思った方はおられるだろうか? なかなか良い手だが、正義には無駄である。なぜなら、 正義「いい?こんな事しても(中略)だから盗んじゃダメだよ。それに(後略)」ペラペラ 犯人「・・・。はい、はい、・・・。」コク、コク この『地獄の説教タイム』があるからである。はたして少年の説教で更生する人間はいるのだろうか。 大王「(おそらく人を殺させようとしてもしないだろうな。まずこの性根から叩き折らなければ。) (しかし少年の父よ、頷くな感心するな。)」 こうして、犯人は少年の説教から解放され、警察に連行されるのであった。 その後、この犯人は更生して立派な社会人になったらしいがそれは別のお話。 帰る道中、大王は車の中で考え事をしていた。 大王「(何故、こんな人間と契約なんかしてしまったのだろうか。) (せめてもっと強い人間と契約していればよかったのだが。) (おかげで毎日利用されてばかり・・・。)」 ふと、何かに気付く。 大王「(ん?そういえば、俺と契約してから少年が戦った事はあったか?) (まさか俺が戦っているだけで強くなったと思いこんでいないだろうな。) (よし、次に都市伝説が来たら―――。)」 失敗なら、それでも良い。ただ上手くいけば、或いは・・・。大王の顔に、自然と笑みが浮かんだ。 都市伝説よ、早く現れよ。そう願っていたが、今日は日が沈み、また明日を待つことにするのであった。 正義「おやすみ、大王。」バサッ 大王は黙ったままだったが、正義はそのまま寝ようとした。だが、なかなか寝付けない。いつか感じた事のある、何かの気配を感じる。 正義「大王。」 大王「あぁ、【都市伝説】だな。」 しかしどこから?そう考えている時、正義が言う。 正義「大王、ベッドの下に『石』を1つ降らせてくれない?」 大王「何故だ?まぁ、やってみるが。」 大王の能力で石の落ちる音がする―――と思ったら、何かが暴れる音がした。 急にベッドの下から人が飛び出した。どうやら顔に命中したらしい。ベッドの下にいた男は混乱したのか、窓から飛び出していった。 正義「追いかけるよ。」 大王「了解。」 大王と正義は窓から出て、大王が正義を抱えて飛んだ。 正義「大王、今日機嫌良いね。」 大王「ん?まぁな。」 すぐにあの男に追いついた。男も戦う気のようである。家でよく見る刃物を持っている。 正義「やっぱり、【ベッドの下の男】かな?」 大王「そのようだな。」 【ベッドの下の男】とは、凶器を持った男の事で、『1人はベッドで、その友人は床に布団を敷いて 寝ている時に突然友人は外へ出ようと誘い、しぶしぶ外へ出ると、友人は血相を変えて彼女に 「ベッドの下に包丁を握った男がうずくまっている」と言う。』という話である。 アメリカが始まりとされているが、他の国でも語られていたり、 日本の鎌倉時代の説話集『古今著聞集』にも似た話があるので事実か分からない。 近くに勇弥はいないが、彼が簡潔に話してくれた気がした。 正義「よし、じゃあ行くよ!」 大王「待て。今回、俺は相手にいっさい攻撃しない。」 正義「えっ!なんで?」 大王「理由なんてどうでもいいだろ。さぁ、がんばれ。」 大王が言い終わった頃、正義が文句を言う前に【ベッドの下の男】は攻撃を仕掛けてきた。 自慢の包丁が煌めき、正義を切り刻もうとする。しかし正義はとっさに横へ転がって回避し、大王に言う。 正義「じゃあどうやって戦えって言うのさ!相手は武器を持っているんだよ?」 大王「自分で考えろ。」 正義「だってボクは武器を・・・。そうだ!大王、『剣』を降らせてよ!」 大王「は?だから俺は攻撃しないと」 正義「『攻撃』はしなくていいよ。ただ降らしてくれるだけでいいから。」 自分無しでどれぐらい戦えるか、という意味で言ったのだが。大王はそう思ったが、武器無しではまともに戦えない、下手に戦って死なれるのも困る。おとなしくここは妥協しておく事にした。 大王「“チッ”仕方ないな。」 【ベッドの下の男】の前、少年より若干高いところに紫がかった黒い雲ができる。【ベッドの下の男】は不審に思い後ろに飛んで距離を置く。 逆に正義は雲に近づく。正義が雲の前に来た時、雲から剣が刃を下にして降ってくる。 正義は右手でその剣の柄を掴み、回転させて下に持っていき、剣を両手で構える。 正義「(かっこいい・・・。)」 少年の頭には、魔法か何かで出した剣を持つ勇者が浮かんでいた。しかしどこの世にパジャマの勇者が存在するのだろうか? そんな事も忘れ、正義は【ベッドの下の男】に斬りかかる。 正義「えぇぇい!」ブン! 下男「・・・!」カキンッ! 【ベッドの下の男】はその攻撃を防ぐが、すぐに次の攻撃が来るため、防戦一方である。 大王はふと、正義の武器の扱いの上手さに気付く。 大王「(武器の扱いなんか練習させた覚えは無いのだが・・・。まさかあの特撮ごっこのおかげか!?) (・・・もしそうならば、俺の手下には必ずあの番組を見せる事にするか。)」 打ち合いの果てに、正義の剣が【ベッドの下の男】の腹部を斬る。致命傷ではないが、初めて正義少年が都市伝説に与えたダメージ。 何故か正義が大王のところへ駆け寄る。 正義「どう?ボクだってやるでしょ?」 大王「油断するな。余所見をしているとやられるぞ。」 前を見ると、【ベッドの下の男】がいない。ただ自販機の音が“ヴゥゥーン”と鳴り響くだけである。逃げられた!? 大王「・・・たく、まだ遠くないはずだ!追うぞ!」 正義「うん!」 そう言って2人は急いで追いかけた。正義が自販機の前を通りすぎようとした時、その下から黒いものが出てきた。 とっさに正義は離れたが、どうやら脚を少し斬られたようだ。 正義「つ、た・・・・。何で?!」 大王「『ベッドの下にいる』という事が改変されて、狭い所ならどこでも入れるようになったのかもしれん。」 【ベッドの下の男】は走りだした。どうやら逃げる気のようだ。 正義「くっ、まて!」 【ベッドの下の男】は角を曲がる。怪我をした脚でしっかり走れない正義が何とか曲がろうとした時―――その光景を見て唖然とした。 路上駐車の列だ。ただでさえ問題なのに、今回はさらに何倍も問題だ。 大王「通りすぎたら斬られる、か。下手に覗き込むのも不安だな。」 正義「でも放っておいたら犠牲者が出る。」 大王「小学生が小難しい言葉を。お前も怪我したんだからここは一度退いて」 正義「ボクもやられたから!だから放っておけないんだよ。」 大王は、正義のこの性格を直しておこうと思ってはいたが、やはり直せそうにないようだ。 味方思いとなって良い方向に傾いてくれればいいか。今日は妥協の多い日だ。 大王「“フゥ・・・”分かった。では、どうやってここから追い出す?」 正義「んー、囮はあまり好きじゃないし・・・。大王、『攻撃しなければ』何でもしてくれるよね?」 大王「(またか・・・。)で、何を降らせれば良い?」 一方、【ベッドの下の男】は予想通り車の下で、ただ正義達がこの横を通ろうとするのを待ちつつ隠れていた。 下男「・・・?」 後から妙な気配を感じる。何かに突かれた?何に? 【ベッドの下の男】の頭に最悪のシナリオが浮かぶ―――まさか、あの子どもが?!まずい、刺される!逃げろ! 【ベッドの下の男】は出せる限りの速度で走る。逃げろ逃げろ逃げろ―――。 急に何かにぶつかる。壁?何故こんなところに?いや待て、閉じ込められた?! 後は針、前は壁、左も壁、右は―――光!【ベッドの下の男】はとっさに右に飛び出す。助かっ――― 正義「ボクの勝ちだよ。」 【ベッドの下の男】が出たところには、正義がもう既に剣を構えていた。そして――― 正義「―――いい、だからこんな事をするぐらいだったら(中略)それに包丁は人を斬るためのものじゃなくて(後略)」 下男「・・・。」コク、コク 現在に至る。簡単に説明すると、まず遠目のところに『鉄板』を降らせ、その後『棒』で突いただけである。 暗いところで何かされても、詳しくは分からないので大抵逃げると予想し、 次に鉄板で相手の出口を操作する。これは同時に相手に追い詰められたと錯乱させる事もできた。 もっとも、これは相手が人間のような精神を持っていないと効果は無いのだが。 さらに、正義は剣を【ベッドの下の男】の顔の前、つまり地面に突き刺しただけであった。その後、恒例の説教をしている、という訳である。 無論、正義少年の声は大人達にも聞こえているのだが、もう町の人は当たり前のように思っているらしく、あまり気にしていないようだ。 正義「(前略)だから、キミも良い都市伝説として人を助けたりする事。分かった?」 下男「・・・。」コクコク 正義「じゃあ、もう帰ってもいいよ。またねー。」 こうして、【ベッドの下の男】は正義から解放され、夜の闇に消えてゆくのだった。 大王「本当に良かったのか?逃がしておいて。」 正義「不安だったら大王が倒したら?」 大王「おっと、そうだった・・・。少年、お前は『俺が居るだけで強くなった』と思い込んでいなかったか?」 正義は、はっとした顔で大王の顔を見る。大王は話を続ける。 大王「『虎の威を借る狐』というのか、そういうやつはあまり好きでは無くてな。 (幹部候補の)自分の契約者がそんな人間だと思うと情けないと思ったんだ。」 正義はうつむいてしまった。それでも話は続く。 大王「本当は完全に俺無しで倒してほしかったんだが、少年は自分の力で倒したんだよな。 それはすごい事だ。 それにお前は俺の能力を最大限に引き出す事もできる。それが分かったから俺は充分だ。」 正義「・・・。大王、ありがとう。ボク、分からなかったんだ。 本当に今のままで良かったのか。でもこれで分かったよ。」 大王「(よし順調だな。これで少年を幹部に・・・。)」 正義「大王だけに戦わせてたら、大王に悪いよね。 これからはボクも、都市伝説と戦うよ。『正義』のために!」 うーん、残念。ここからが本番だったんだが、ここでその言葉が出るとは。しかし、俺の能力もまだ限界に達していないようだな。 降らせた武器を手下に持たせて戦わせるとは考えもしなかったからな。 それにしても、【ベッドの下の男】が悪事をしたら、少年はどうする気なのだろうか? ―――数日後、ある泥棒が捕まった。その犯人は、こんな訳の分からない事を言っていたそうだ。 “犯人「ベッドの下から、包丁を持った男が出てきたんだ! そしてその男に追いかけられて、気がついたら交番に・・・。本当なんだ!信じてくれ!」” ―――世界征服への道は遠い。 第3話「晴れ時々鉄」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/bentouwiki/pages/69.html
技名 消費MP 効果 大王の砲撃 280 全体に150前後のダメージ。 これを使うよりウイングスターを使おう。
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4168.html
光彦「よぅ正義、[明美(アケミ)]。元気にしていたか。」 駅から出ると、懐かしい声が聞こえる。そう、正義の父親、[黄昏光彦(ミツヒコ)]である。 正義「あ、お父さん!」 半年と軽く言うが、それも結構長い時間。正義は嬉しそうに父親に駆け寄った。 しかしいつかのように抱きつくでなく、ただ話しかけるだけ。そう、正義はもう中学生なのだ。もう子どもではない、という事らしい。 正義「お兄ちゃんとはどうだった?」 光彦「あぁ、飯は上手だったな。少なくとも、明美以上だな。」 明美「えぇ、ミツ、それは酷いんじゃない?」 大王「(いつまでこの会話は続くんだ?)」 少々長かった団欒も、ふいに正義の母の言葉で止まる。 明美「そろそろ家に行きましょうよ。足が疲れちゃった。」 光彦「まったく、親子の再会をじゃまするとは。」 明美「なによ。それなら私も裂邪と感動の再会をさせてよ。『ママぁー!』『裂邪ぁー!』って。」 正義「えー、お兄ちゃんはそんなんじゃないよ。」 約2名の笑いが起こったところで3人を、いや、【恐怖の大王】を含めて4人を乗せた車は走り出した。 大王「(思えば、俺が世界征服に乗り出せないのは、この両親の所為でもあるな。子ども思いで、明るくて。おかげで少年もこの始末か。)」 正義「そういえば、なんでお兄ちゃんは来なかったの?」 光彦「また散歩と言って出て行ったよ。よほど正義に会うのが恥ずかしいんだろうな。」 明美「いや、きっとこの綺麗な私に会うのが」 光彦「そういえば正義、学校はどうだったんだ?」 正義「楽しかったよ!あ、そういえば修学旅行のお土産まだだったね。あとで渡すよ。」 明美「もう、マサヨシまで無視?お母さん寂しいんですけどぉ。」 ―――なんだかんだで、これから正義が住む事になる家に着いた。 光彦「よし、じゃあ荷物を家に入れるか。」 正義「ねぇ、お兄ちゃん探しに行ってもいい?」 光彦「ん?別にいいが、なんでだ?」 正義「だってお土産、一緒に渡したいから。じゃあ行ってきまーす。」 明美「いってらっしゃーい。気をつけるのよ。」 光彦「(まぁ、大丈夫だろうな。)」 外へ出て少し経った頃に、大王が正義に話しかけてくる。 大王「少年。あんなやつに、プレゼントを渡すのか?」 正義「・・・別にいいじゃん。『罪を憎んで人を憎まず』って言うしさ。」 大王「煮込む煮込まないは分かったが、アメと鞭は大事だと思うぞ。俺なら良い事をしてから、だと思うが。」 正義「『悪い子だからあげない』って言っても逆に悪くなる方が多いよ。それより、『少年』って呼ぶのはもう止めてよ。」 大王「あぁ分かったよ、『少年』。」 正義「だから!もうボクは中学生だよ!子どもじゃないんだよ。」 大王「そう言っているうちは子どもだ。そうだな、俺が大人になったと認めた時に『少年』と呼ぶのを止めてやる。」 正義「うぅ、うん、分かった。でもどうやったら認めるんだよ?」 大王「無論、『幹部になったら』だ。」 正義「やっぱり大王には認めてもらわなくていい。まだ世界征服狙ってたのか。」 大王「(まったく、いつまで経っても少年は『少年』のままだな。)そういえば、何故『大王』なんだ?」 正義「え?大王は大王じゃん。」 大王「友やコインは『くん・ちゃん』付けだろ。なら俺は『大王様』、少なくとも『大王さん』じゃないのか?」 正義「えぇ、じゃあ大王が世界征服を諦めたら“バッサァァァ・・・”考えてあげても・・・。」 突如、目の前に謎の生物が現れた。都市伝説である事はすぐに分かる。 しかしゴミ袋かと思っていたら赤く光る目があり、蛾のような羽があり、さらに脚がある、というリアクションに困る姿をしているのだ。 いったい何の都市伝説なんだ?考えている暇もなく奴は急降下して攻撃をしようとしてくる。 ?都市伝説「・・・、喰、う。」 大王「・・・、戦うのみだな。」 正義「そうみたいだね。大王、いくよ!」 その言葉に反応し、大王が上空に黒雲を広げる。 大王「さて、何で行く?」 正義「んと、『槍の日』で行こう。あれなら避けられないはず。」 大王「なるほど、では行くか!」 黒雲にスパークが走り、大量の槍が降ってくる。まさに『槍の日』。しかしあの都市伝説は槍をするすると避けていく。 大王「これを避けるとは、なかなかだな。」 正義「でも、これならどう!?」 正義はおもむろに降ってくる槍の1つを手に取り、敵へと投げつける。 正義「(上に気を取られている隙に横から来る、下手に避ければ上の攻撃に当たる。これを避けられるか?)」 正義の作戦さえも、あの都市伝説は軽く避けてしまう。遂に雲の外に出てしまった。 大王「くっ!想像より速いようだな。もっと量が多ければ避けられんだろうが、修行不足か。」 不意に向こう側、おそらく槍を投げた方向から、悲鳴のような叫びが聞こえる。 大王「ん?さっきの槍が通行人にでも当たったか?」 裂邪「正義ィ!お前か!?こんな所で槍投げんな!」 その声は、どう聞いても正義の兄、裂邪の声だった。その声に正義が反応するが、 ?都市伝説「あ゛、さっきの・・・。」 正義「あ、お兄ちゃんいたのッ、って増えてるゥ?!」 声の方を向くと、裂邪の後に都市伝説と思わしきものがシェイドの他に3体ほどいた。 正確には火の玉、謎の小動物、あと正義が反応している事から、おそらくあの小学校高学年ほどの少女も都市伝説だろうか。 裂邪「無視すんな!まぁいい、そこの【モスマン】もろとも―――」 ?小動物「なぁ主、あのおっさんは誰バク?」 大王「(まさか更に契約したというのか?それともあの少女も契約者なのか?って)『おっさん』?!」 シェイド「アイツカ?【恐怖の大王】ダ。」 ?都市伝説×3「えッ!?【恐怖の大王】ッ?!」 大王の正体を知ると突然、あの3体が慌てふためきだした。何故かは黄昏兄弟とシェイド、大王も分からなかった。 大王「ん?俺はそんなに有名なのか?」 正義「コインちゃんも知ってたからね。最近生まれた都市伝説は知っている、とかかな。」 シェイド「落チ着ケ。契約者ニ恵マレズ、今デハタダノ『おっさん』ダ。」 大王「だから何故『おっさん』なんだ!?」 相手にされないのでつまらなくなったのか、急にあの【モスマン】という都市伝説が裂邪に向けて目からビームを放つ。 裂邪「あっつぅ!」 正義「お兄ちゃん!」 大王「目からビーム、か。少々厄介だな。」 モスマン「・・・、腹、減った・・・。」 裂邪「チックショウ、モスラかよ!シェイド![バク]![ウィル]!」 その命令に反応し、シェイドは長い爪のような姿に変形して裂邪の右手に付き、[バク]と呼ばれる小動物は熊ぐらい大きさのキメラのような姿に変身し、 [ウィル]と呼ばれる火の玉は急に増え、1列に連なり鞭のようになって左手に付いた。 正義「かっこいい・・・。」 大王「言うと思った。いいから戦うぞ!」 正義「分かった。大王、変身だ!」 大王「無茶を言うな!行くぞ。」 そう言うと、黒雲から剣が2本降ってくる。大王は普通に手に取り、正義は手にとってから、すぐに【モスマン】に向かって行った。 正義「てりゃあぁぁ!」 【モスマン】はゆっくりと、上へ飛翔していった。「あ。」という声は既に遅く、“ゴンッ”という鈍い音が鳴る。 向こう側からやってきた裂邪に正義がぶつかって、尻餅をついた。正義は涙目になりながら打ったところを撫でていた。 裂邪「ッつったぁ~!正義!どこ見てやがる!?」 正義「もう!策もなしに突っ込んできて!」 裂邪「バカか!俺はお前と違って大人なんだ!何の考えもなしに敵に突っ込むかバーカ!どうせお前はこの1年間なんの成長もしていないんだろ!? 俺がいなくなった後も都市伝説に説教かまして、彼女とイチャイチャしてたんだろ?!」 正義「成長したよ!もうボクは中学生だよ!?それに説教は大事な事だし、ボクには彼女なんていないし!」 大王「・・・、やっぱり、子どもだよな。特に兄の方が。」ボソッ 空腹で苛立っているのか、【モスマン】は空中からビームを乱射する。 正義と大王は修行のおかげもあって、難なく回避する。裂邪は、ふとみるとバリアで守られているようである。 大王「“チッ”便利な都市伝説だな。誰の能力だ?」 正義「あの女の子だよ。シャボン玉みたいにバリアを張ってた。」 大王「あいつも契約者か。シェイドと火の玉のを武器、そして盾付きとは豪勢だな。」 正義「ほんとだよ、いざって時に手に負えなくなりそう。でもあの子は都市伝説みたいだよ。」 大王「そうか、では4体と契約か?飲み込まれてても知らんぞ。」 裂邪はウィルを鞭のように扱うが、攻撃は一向に【モスマン】には命中しない。 こちらも策を練るが、あいにく大王は飛び道具を降らす事はできず、雷は外れた時のこちらへの被害が不安、なかなか良い手が出ない。 裂邪「―――そうだ、おいおっさん!雨降らせ!」 大王「またおっさんだと!?それが人に物を頼む態度か!」 正義「(お兄ちゃんの事だから、やはり何か手が?ここはおとなしく聞いておこうか。)大王、ここは。」 大王「・・・、仕方がないか。」 大王は上空に、太陽も隠れるほど黒雲を広げ、大量の雨を降らせる。 大王「これでお望みの量か?!」 裂邪「ウヒヒヒヒ、よくやった!ウィル!『百物語』!」 裂邪の命令に反応し、ウィルが何十体にも増え、周りに散らばり、まるで蝋燭の灯火の様になる。 ふと、少女が歌を歌いだす。おそらく『さっちゃん』であろう、おそらくそのはずだ。 ウィル「「うおぉぉぉーん!バナナ半分なんて可哀想で~い!」」 周りから鳴り響く叫びと共にウィルの炎の色が青くなる。 大王「まさか、『さっちゃん』を聞いて泣いているのではないだろうな?」 正義「あれ、寒くなってきた?あ、霧!?」 気がつくと、周りにだんだんと霧が立ち込めてきた。おそらくこれが裂邪の作戦なのであろう。 正義「この霧で視界を悪くして、隙を突く、かな?」 大王「なるほど、完敗だ。あの火の玉のに周りを冷やす能力があったのか。能力をよく理解している。」 しかし正義は霧の中を注意深く見回し、【モスマン】を探す。 正義「でも・・・、あそこか。緑色の光も見える。たぶん火の玉のやつだね。」 大王「おい、まさか横取りする気か?それは良くないんじゃないのか?」 正義「悪いけど、『同じ事』を、そう何度も繰り返させない。」 ゆっくりと放った、その言葉の重みは、誰よりも大王が知っていた。あえて黙認し、正義を【モスマン】のところへ向かわせた。 正義は駆け足で【モスマン】のところへ向かう。その姿がだいぶ見えた時、その影に跳びかかる。 正義「てぇえりゃあぁぁー!」ブン! ベシィッ! その剣を、正義は力強く、【モスマン】の頭に叩きつけた。峰打ちとでも言おうか。そのまま【モスマン】を霧の外へと弾き飛ばした。 【モスマン】は軽く気を失っているようだったが、ゆっくり起こし、そのまま説教が始まるのであった。 正義「―――だから人を食べるなんて絶対にダメ!だからといっていくら空腹でも他人の物を奪うのもダメだよ。 困っている人を助けたりしてそのお礼として食べ物を貰うんだよ。分かった?―――。」 大王「(このご時世にお礼に食事を与えてくれる、心優しい人間などいるのだろうか?)」 なにか悔しそうにしている裂邪を余所に説教は終わり、【モスマン】はフラフラと空へと戻っていった。 正義「これからは人のためにがんばるんだぞぉー!」 モスマン「分かっ、た・・・。」 正義は手を振り終えると、すぐに兄の方を向く。無論『あの悲劇』を繰り返さないためである。 あの時目を離したから、犠牲者が出た。だから次は絶対に目を離さない。それが正義の『誓い』である。 大王は、正義の気持ちや考え、今かすかに目に溜まった涙の訳は、長く共にいるためだいたい分かる。 だからこそ、その次の行動に驚かざるを得なかった。正義が、裂邪に抱きついたのである。 正義「お兄ちゃん、久しぶりぃ!」ガスッ 裂邪「“ゴキッ”おごぉ!あ・・・ばら・・・ぼね?つ・・・っか・・・足・・・痛・・・」 正義「お兄ちゃん、寂しかった?また一緒に暮らせるからね!」 シェイド「平和ダナ。」 大王「・・・?あぁ。」 大王は何故こんな事をしたか分からなかった。攻撃をするために飛びかかったのだとさえ思った。『兄だから』という理由もすぐに出たが、 なにかそれでは片付かない違和感がある。大王の疑問の回答は帰ってくる事はなく、正義は質問を投げかける。 正義「ところで、やっぱりその女の子達と契約したの?」 裂邪「・・・まぁな、『夢幻泡影四天王』、俺の世界征服のための俺の仲間だ。」 正義「まだそんな事言ってたの!?お父さんと一緒だったのに世界征服を諦めてないなんて!」 裂邪「悪いか!すぐに諦められる夢なんて見ねぇよ!俺は一生諦めない!人の夢は終わらねぇ!」 正義「最後の言葉どっかで聞いたよ?!」 やはり口喧嘩が始まった。しかし『いつも通り』ではなく、若干正義の歯切れが悪い。なにか・・・。 大王「もういいだろ、兄を見つけたんだから。親も心配するぞ?」 正義「あ、そうか。お兄ちゃん、もう帰るよ。」 裂邪「シェイド、『シャドーダイブ』で[ミナワ]達を先に俺の部屋に。」 裂邪の命令により、シェイドの能力で自分の契約している都市伝説は影の中へと溶けるように入っていった。 大王「どういう事だ?お前は帰らないのか?」 裂邪「お前らが迎えに来たんだから、俺が部屋に帰ったら不自然だろ?それに親父達にミナワ達を見られる訳にはいかんし。」 大王「ん?契約者以外でも見えるタイプなのか?」 裂邪は数分硬直し、驚いたように言葉を放つ。 裂邪「見えないやつもいるのか!?」 正義「え?う、うん。例えば幽霊系は、基本的に契約者か都市伝説の被害者にしか見えないらしいよ。」 大王「俺も見えない、はずだ。」 裂邪は何故か黙りこくっていた。考え事でもしているのだろうか。 正義「ほら、もう帰るよぉ?」 こうして、3人はゆっくりと家へ帰るのであった。 光彦「おぅ、帰ってきたか。」 正義「ただいまぁー!」ガラガラ 明美「おかえりぃ、裂邪、マサヨシ。」 裂邪「あ、母さん久しぶり。」 少々雑談があった後、正義が父親と裂邪にいつかのお土産を渡す。 正義「そしてこれが、修学旅行のお土産。水族館で買ったんだ。はい。」 そう言って、ガラスの中に白い線で作った水中生物が入っている置物を出した。父親にはイルカが、兄にはクラゲが入っているものを渡す。 光彦「ん、面白いな。何なんだこれは?」 裂邪「あら綺麗!・・・ありがとう。」 正義「ふふん。」ニコッ 光彦「ところで食い物はどこだ?クッキーとか無いのか?」 明美「もう、今いいところなのに。腐ると危ないからって買ってません。」 光彦「うっ、すまんすまん。ちょっと分からんかった。」 明美「裂邪が『ありがとう』って言ったのよ。信じられる?」ボソボソ 光彦「本当か?まいった、聞き逃したなぁ。」ボソボソ 家族が団らんしている部屋の外では、大王が考え事をしていた。何故少年とその兄の会話が変だと思えるのか?何かが違う。 本当に些細な違いだが、まるで少年らしくなく感じる。 ふと、もう1つある事に気付く。こんな事を考えているようでは世界征服なんてしていられないと。 どうやら少年の甘さがうつったようだ。ゆっくり甘さを忘れていかなければならないな。 ―――世界征服への道は遠い。 第2話「初仕事」―完― 次回予告4コマ――― ☆資料をまとめ☆ ???「『若者の骨粗しょう症に迫る』『キスをすると骨がもろくなる?』『牛乳のススメ』・・・。」 ???「おそらくこの事件によって沸いてきた記事だろうが・・・。本当にこの事件はその程度のものなのか?」 ???「何人もの人間が同じ事にあっているんだぞ。いったいどういう事なんだ?」 ―――教えてくれ 都市伝説よ――― ●謎の人物現る?!真相は、webで!(コラ では第3話に続きます。 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4178.html
いつかの件以来、少年は悪夢を見なくなったようだ。これでしばらくは安心だが、まだ全部解決した訳ではない。 だが、あの時の事を変える事は、過去にでも戻らない限り不可能だろう。 過去を変えない限り――― 勇弥「見つけたぞ!」 ある日の事。正義達はいつも通り都市伝説に関する事件を追っていた。そして今、『連続誘拐犯』の男を見つけたのだった。 男「・・・何故分かったんですか?証拠は残していないつもりだったんですが。」 奈海「こっちには色々と情報網があるのよ。」 コイン「そういう事。」 奈海の後ろにコインが現れる。 男「・・・くっ、なるほどねぇ。まさか教え子とその友達に追い詰められるとは思いませんでしたよ。十文字さん。」 楓「な、何故私の名前を、・・・まさか、先生!?」 正義&勇弥&奈海「「『先生』?!」」 今までそれなりの都市伝説を倒してきたと思っていたので、3人は意外な展開に驚いてしまった。 男「気付かなかったのですか?貴方は私の担当した児童の中でも1番の優等生だと思っていたのですがね。」 奈海「嘘、でしょ?じゃあ今までの子ども達も・・・?」 勇弥「おい!お前まさか、自分の教え子を?!」 男「当たり前じゃないですか。そうでなかったら私の能力が聞かないのでね。」 楓「なんで・・・。」 男「十文字さんも知っているでしょう?あの学校では虐めが多かった事。盗みなんかも多く、荒れていましたよね。 『昔は』。今?比べほどにならないほど平和ですよ。なぜでしょうか?」 正義「そ、そうか!悪い子どもをみんな動物に変えたのか!?」 楓「そんな自分勝手な理由で!ふざけるな!」 男「人聞きの悪い、裁きですよ。真面目な子と不真面目な子、どちらが必要かと訊かれて迷う人なんていないでしょう? だからあんな奴らには人間を辞めてもらったんですよ。」 コイン「『辞めてもらったんです。』じゃないわよ!やって良い事と悪い事があるじゃない!?」 男「まったく、どうしてそんなに私に歯向かうんですか・・・。なら、お前らも片付けてやろうか!?」 勇弥「ッ?!『温厚な人間は怒ると怖い』って奴か?」 大王「ん?聞いた事のない都市伝説だな。」 正義「大王、都市伝説じゃないと思うよ。」 男の怒りを察し、正義達は戦闘態勢を取る。 正義「よし、皆!行くよ!」 勇弥「『勇気』と『知性』の伝説融合、[ブレイブ・レジェンド]!」 正義「『正義』と『剣術』の伝説融合、[ジャスティス・レジェンド]!」 大王「き、『恐怖』と『飛来』の伝説融合、[キング・レジェンド]・・・。」 奈海「『波間』と『魅惑』の伝説融合、[オーシャン・レジェンド]。」 コイン「『硬貨』と『記憶』の伝説融合、[フォックス・レジェンド]!」 楓「『木の葉』と『柔』の伝説融合、[メープル・レジェンド]!」 勇弥&正義&奈海&コイン&楓「「6人合わせて、[レジェンドシックス]!」」 大王「・・・クス。」 奈海「って、何でこれやる必要あるの?!」 勇弥「やるなと言われてもやる。深い意味は無い。」 コイン「あ!十文字さんも作ってもらったんだぁ。」 楓「このチームでやっていくには必要だと言われてな。」 正義「あれ?大王の台詞変わった?」 大王「前は【恐怖の大王】だと知らずに付けていたから、らしい。」 男「じゅ、十文字さん、なかなかユニークなお友達を作ったようですね・・・。」 勇弥「油断している!今だ!」 奈海「油断させる戦術なの!?なら!」 大王「先制は任せた。会長は防御のため待機だな。少年、俺達はどうする?」 楓「全力で大王様を守ります!」 正義「ボク達も様子見かな。まずは剣だけ用意して。」 大王は黒雲を正義と勇弥の前に生成し、剣を降らせる。 奈海は素早くコインシューターを組み立て、男に数発発射。勇弥は剣を取り、男に切りかかる。 男「まったく。そんなもので、やれるものならやってみろ!」 十円玉が命中するという時、男が消えた。いや飛んだのだ、はるか上空へ。風圧を受けたのか、十円玉は地面に叩きつけられた。 男「お前らなんかに倒されてたまるか!」 奈海「えっ?!」 勇弥「なんだあの腕?!鳥の翼!?」 勇弥が見上げると、男の腕が鳥の翼のような形になっていた。男が着地したあと、腕は元に戻る。 男「ふふふ、私が契約したのは【サザエさんの最終回】です。」 勇弥「【サザエさんの最終回】だと!?」 【サザエさんの最終回】とは、某有名番組に関する噂で、 『ある日、カツオは商店街の福引で特等《ハワイ旅行》を当て、 磯野家初の海外旅行に一家は興奮しつつハワイへと旅立つ。 しかし、一家を乗せた飛行機は途中で海へと墜落してしまい、 海へと投げ出された一家は サザエさんは貝のサザエに、カツオは鰹に、という様にそれぞれの名前の通りの生き物として海へと帰っていった』というもの。 何故か比較的ポピュラーな都市伝説である。 男「ゆえに私は『自分の名前に応じた姿に成れる』ようになった。」 奈海「じゃあ自分の名前に鳥の名前が入っていたから腕を翼にできたの?!」 楓「もう止めて下さい![鮫島 鷹虎(さめじまタカトラ)]先生!」 大王「『鮫』と『鷹』と『虎』!?何故そんな名前になったんだ?!」 大王の疑問に答えるものはおらず、男は腕と脚を虎の脚に変える。 勇弥「はぁ?虎?!」 男「面倒なので、さっさと消えてもらおうかァ!」 楓「まずい、心星!日向!逃げろ!」 虎となった男が勇弥に猛スピードで突進する。 大王「友!」 男「そのまま地面に叩き付けられなさい。」 勇弥「ぐはぁ!?く、とりゃ。」 ふと、勇弥が宙で止まる。そのまま態勢を立て直す。 男「なっ!?」 楓「ん!?」 コイン「“で!?”」 勇弥「ふぅ、危ねぇ危ねぇ。地面に当たってたら致命傷だったか?」 正義「ゆ、勇弥くん、とうとう浮遊能力を!?」 大王「まさか多重契約か?!それとも新たな能力か?!」 勇弥「え?違う違う。空気の性質を変えたんだよ。説明すると面倒だから省く。」 男「厄介ですねぇ。なら別のガキから片付けてやる!」 手足を虎にしたまま、頭を鮫に変える。 奈海「きゃ!鮫?!」 勇弥「お前絶対人間じゃねぇ!」 男「まずは貴様からだ!」 正義「え?うわっ!」 鮫の頭を持った虎が猛スピードで正義に特攻する。 勇弥「正義ィ!」 男「噛みコロしてやるよォ!」 男が正義に噛み付こうとした瞬間。 楓「1!・・・2!」 男「んがっ!ががが・・・。」 正義「・・・ふぅ、十文字さん、ありがとう!」 十文字のおかげで男が止まる。その隙に正義が後退する。 楓「3!大丈夫か、黄昏!」 正義「うん、十文字さんありがとう。」 男「十文字さん、貴方まで私に逆らうのですか・・・。」 悲しそうにそう呟くと、男の体が人間に戻る。 男「なら、貴方にも人間を辞めてもらいましょう。」 楓「な、まさか!?」 勇弥「人攫いの能力か?!」 ふと十文字の足元から気泡のようなものが吹き出る。 男「十文字 楓!お前は『楓』になれ!」 一瞬、十文字が光ったかと思うと十文字の姿は無く、代わりに楓の葉がひらりと風に舞っていた。 男「残念ですよ。貴方まで私に歯向かうとは。」 奈海「まさか、十文字さんが葉っぱになっちゃったの?!」 正義「『名前の通りの姿に変わる』だからか。だとしたらあれは・・・。」 男がゆっくりと楓の葉に近づいていく。 男「仕方がない。あなたにはここでッ」 大王「会長ォオー!」 男が楓の葉を掴もうとした瞬間、大王の蹴りによって男が吹っ飛ぶ。そして大王の手に楓の葉になってしまった十文字が乗る。 大王「会長、大丈夫か?」 楓「(大王様・・・。ありがとうございます!)」 じわじわと楓の葉が紅くなりだした。 大王「なッ!?友、これはどういう事だ?!急に色が変わりだしたぞ!」 勇弥「落ち着いてください大王さん、それは紅葉です。ただし何故紅葉したかは訊くな。」 男「貴様ァァア!」 蹴り飛ばされた男が鷹となって舞い戻る。そしてそのまま大王に体当たりする。 大王「なっ、がッ!」 しかし大王はそれを持ち堪え、楓の葉を落とす事は無かった。男はだんだんと人間に戻っていく。 男「くそ、邪魔ばかりしやがって!そろそろ諦めたらどうです?」 大王「くぅ、大丈夫か、会長!」 楓「(はい、なんとか。)」 勇弥「く、十文字さんの事は大王さんにまかせる!行くぜ!」 勇弥が男に向かって剣を振るう。 男「貴方も歯向かうのですか。確か名前は・・・。」 勇弥「日向勇弥!動物の名前なんて入ってねぇぜ?どうだ!」 男「ほぅ、では貴方にも人間を辞めてもらいましょうか。」 男がゆっくりと息を吸い、大声で叫びだす。 男「日向 勇弥!お前は今日から[タヌキ]だ!」 勇弥「はァ!?」 男「狸になれ!」 ふと勇弥の下から巨大なリンゴの断面が現れた。どうやら下半分のようだ。 勇弥が何かを察知して上を見ると、勇弥の想像通りリンゴの上半分がそこにあった。 勇弥「しま、ぐわぁ!」 正義「勇弥くぅん!」 気付くのが遅く、勇弥は降ってきたリンゴに潰された。すると数秒後、リンゴが横に割れ、中から狸が現れた。 勇弥「てめぇ!あだ名は反則だろ!」 正義「あぁ、勇弥くんがしゃべる狸に!?」 大王「自分で付けた名前も良いのか。問題だな。」 男「さて、あとは君だけでしょうか?」 正義「う・・・。」 その時、男に向かって十円玉が飛んでくる。 奈海「私を忘れてなぁい?」 正義「奈海!お前、危ないぞ!」 男「貴方もですか。面倒な、んっ?」 突如、男の動きが鈍くなる。その様子を見て得意げにコインが現れる。 コイン「へへん、どうだ必殺『呪い攻撃』!ちょっと弱いけど。」 奈海「素早い攻撃が多かったし、動きを封じるだけでも充分よね?」 男「貴様・・・、貴方も許しておきません。【狐狗狸さん】には狐にでもなってもらいましょうか。」 大王「く、都市伝説までもか!?」 男がコインを睨みつける。しかし、何も起こらない。 男「・・・おや?」 コイン「・・・姿変わってる?うぅんきゃあ!おしりに尻尾が!耳も狐に!?」 奈海「元からじゃない。変わってないわよ何も?」 正義「なんで・・・、まぁいいや。奈海、行くぞ!」 正義が剣を構えるのを見て、奈海も戦闘準備に入る。 奈海「そうね、行くわよコインちゃん!」 コイン「OK!」 勇弥「ん?」 大王「おい・・・。」 奈海&コイン「「あ。」」 男「・・・コイン!『コイン』になれ!」 コイン「きゃあぁぁぁ!」 コインの足元から気泡のようなものが吹き出て、一瞬、体が光ったかと思うと、コインが『コイン』に変身し、地面に落ちた。 奈海「あぁ、コインちゃんがコインに!」 勇弥「・・・?」 コイン「(もぅ!なんでよりにもよって十円玉じゃないのよ!能力使えないじゃない!)」 正義「コインちゃん落ち着いてよ!」 男「・・・どうやら、呪いとやらが解けたみたいですよ。」 男は微笑みながら正義に向かっていく。 男「彼女は戦えないようなので放っておいてあげましょう。ですが君は・・・。」 大王「く、これならどうだ!?」 気が付くと、男の頭上に黒雲が広がっていた。そのまま考える時間も与えさせず雷が落ちる。 男「うっ!」ドゴォォォン! しかし雷は男を反れて地面に落ちる。 大王「これでも外れるのか・・・。」 正義「大王!大王は十文字さんをかばっていれば」 大王「そんな事言っていられる場合か?俺の目的はお前の力を使っての世界征服だ。お前がやられて困るのは俺だぞ?」 勇弥「世界征服のため、ね。そのために人を助けるとか、【恐怖の大王】が聞いて呆れるな。」 男「ほぅ。」 男がニィと笑みを浮かべる。 男「では貴方には【恐怖の大王】を辞めてもらいましょうか。」 大王「ん、来たか!」 楓「(大王様!)」 男「恐怖の大王!お前は今日から[ネコ]だ!猫になれ!」 大王の足元に巨大な蜜柑の下半分が現れ、頭上には上半分が見えた。 大王「く、脚が動かない!会長、すまない。」 楓「(あ、大王様!)」 楓を投げた瞬間に、大王は蜜柑に潰される。数秒後、蜜柑が横に割れて黒猫が飛び出す。 大王「く・・・なんと惨めな姿だ。」 楓「(大王様!お気を確かに!)」 正義「・・・そんな、大王まで・・・。」 男「ところで、君はどうするのです?よければ、お友達を皆戻してあげますよ?」 奈海「え?」 男の突然の心変わり。しかしやはり条件がついていた。 男「ただし、条件があります。『今日の事を忘れて、二度と私に関わらない事』、これが守れるならいいですよ。 無論、親や警察に言うのも禁止です。私がやってきたという事を。」 奈海「そ、それってアンタの犯行を見逃せって事?!」 男「まぁ、犯行というのは耳障りですが、そういう事ですかね。」 コイン「(いくら戻りたくても、それは無理でしょ!)」 楓「(自分達のためだけに、多くの犠牲を見捨てるわけにはいかない!)」 勇弥「ふっざけんじゃねぇ!そんなのこっちから願い下げだ!」 男「おやおや、日向君は反対ですか。では黄昏君はどうですか?」 大王「言っておくが、俺はこいつの言う事なんか聞く気は無いぞ。」 正義「・・・皆の姿を元に戻してもらうよ。」 勇弥&大王「なッ!」 奈海「落ち着いてよ正義くん!こんな奴のいう事を聞いたら」 男「そうですか、素直で宜しい。では」 正義が男に向かって斬りかかる。 正義「だから、キミを倒す!」 男「・・・それは残念です。」 男は腕を鷹の翼に、脚を鷹の脚に変え、宙返りして正義を蹴り飛ばす。 正義「うっ。」ダンッ! 男「だったら、ここで片付けてやる!」 男はそのまま蹴りを続ける。 男「貴様に何が分かる!?こうやってお前の相手をしているうちに、また子どもが虐められているんだぞ! 私自身、昔は毎日のように虐めの報告に苦しんでいた! だが実際、1番苦しんでいるのは誰だ!?虐められた子か?虐められた子の親か!? それなのに当の虐めた奴はへらへら笑って学校に来るんだぞ! あんな奴らが存在して良い訳がないだろう!だから、俺は・・・。」 だんだんと弱くなっていく蹴りを正義は受けていたがやがて剣で受け止める。 正義「キミは、キミは何をしたの?」 男「・・・俺だって努力はした!注意もした!」 正義「教え子が間違っていると思うなら、その子が良くなるまで精一杯がんばる、それが『教師』じゃないの? そうだとしたら、キミがやってきた事はただの職務放棄だ!」 子どもの道を照らす仕事―――それが教師。道を照らせない者は教師ではない。正義はそう思っていた。 だが、こんなに子どもの事を大事に思っている彼ならきっと――― 正義「キミぐらい子どもの事を大」 男「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れェェェ!」 突然、すさまじい蹴りが正義を襲う。その威力で正義は剣を落とす。 正義「くぅ。」 男「たしか『黄昏』は衰退を意味していたな。なら。」 男の姿が人間に戻り、また、男のもう1つの能力が発動する。 男「黄昏 正義!お前は年寄りになれ!」 正義「くっ!」 男の宣言に応じて、正義の足元から・・・何も起きない。 正義「あれ?」 楓「(・・・どういう事だ?)」 男「何故だ?何故姿が・・・?」 勇弥「・・・ッ!(そうか。)残念だったな!どうやら正義にはお前の都市伝説に対する抵抗があるようだ!」 男「なんだと!?そんな人間がいるのか?!・・・まぁいい、お前1人なら問題ない。」 男がまた鷹に姿を変えたかと思うと、上空まで飛び上がり見えなくなる。 数秒後、鷹が急降下、いや『鮫』が急降下してきた。 正義「鮫ッ?!」 勇弥「急降下中に姿を変えたのか!?」 とっさに後ろへステップして回避を試みる。しかし。 男「甘いんだよォ!お前は、何もかも!」 地面に落ちるという瞬間に、脚から順番に虎へと変わっていく。脚で地面を蹴って正義の方へ飛び掛り、前足の爪で引っ掻く。 正義「うわっ!」 奈海「正義くぅん!」 勇弥「正義ィ!」 楓「(黄昏!)」 男「ハハハハハ、情けねぇ!・・・だいたい、この都市伝説は私と相性がいいのですよ。 名前に3種類の生物が入っている点でも、教師という点でも。」 人間に戻った男は右腕を、鮫のヒレ・鷹の翼・虎の脚の順に変えて見せる。 男「私の名前のおかげで、私は3種類の生物に自由なタイミングで変身する事ができます。 しかしそれだけでなく、そもそもの話では1種類だけだったのせいでしょうか? 私をどの姿にすればいいか分からないのか、2種以上の生物が融合した姿に成る事もできます。」 勇弥「(あの化け物か・・・、いやあれはまだ2種だけだった。つまりまだ本気で戦っていないのか?)」 男「そして教師であれば、ターゲットの名前は労無く探し出す事ができる。 名前に生物の種が入っていないならあだ名をつければいい。全く便利な能力ですよ。」 大王「・・・職権乱用だな。」 男「子どもの個人情報を売る先生と比べれば、正しい使い方でしょう?」 正義「でも、それは間違っ」 男「黙れ!もういいうんざりだ!人間を辞めれないなら生存を止めてもらう!」 男は腕を虎の脚に変えて、正義に迫る。 男「これで・・・終わりだ!」 ―――薄れゆく意識の中――― 奈海「正義くん!」 勇弥「正義ィ!」 大王「少年!」 楓「(黄昏!)」 ―――ボクは確かにあの声を聞いた――― ???「(Yeahーーー!!)」 正義の頭にその声が響いたと同時に、正義と男の間にあったマンホールから汚水が吹き出る。 男「な、なんだ?」 正義「これは・・・?」 すると汚水の中から謎の生物が現れた。その姿はまるで、白いワニだった。 ???「シャアー!(フレンド!待たせたな。さっさとケリを付けようぜ!)」 楓「(まさか、【下水道に棲む白いワニ】か!?こんなタイミングで出てくるとは・・・。)」 勇弥「まさか、こいつ・・・?」 大王「そんな、馬鹿な・・・。」 正義「【白ワニ】・・・、【白ワニ】なの?!」 白ワニ「シャア?(What?当たり前じゃねぇか。オレはあの時助けてもらった)」 正義「白ワニィ!」 正義が白ワニに思いっきり抱きつく。 白ワニ「シャ!?シャア?(おいおい、どうしたんだフレンド?)」 どうやらあの、死んだはずの【白ワニ】のようだ。が、どうやら当の本人は現状を理解していないらしい。 男「何かは知りませんが、私の邪魔をするなら消えてもらいますよ?」 正義「そうはいかない!行くよ白ワニ!」 白ワニ「シャア!」 正義の合図で白ワニは汚水をまとって男に突っ込む。 男「そちらがワニなら、こっちは鮫だァ!」 男はほぼ全身を鮫に変え、虎の両足で突進する。 白ワニ「シャ!?(フレンド!鮫になったぜ!?)」 正義「大丈夫だよ白ワニ!キミなら大丈夫さ。」 白ワニ「シャア?・・・シャ!」 男「ゴタゴタ言っていると喰い千切るぞ!」 男が噛みつこうとする時、白ワニはまとっていた汚水を消し、背中を見せて丸くなる。男は白ワニの背中に噛み付く。 男「らぁ!が、がが・・・。」 白ワニ「シャア?(どうした?噛み切れよ。)」 男が口を開けると、歯はボロボロとなっていた。 正義「白ワニの背中は鉄以上に硬いんだ!」 男「く、うるせぇ黙ってろ!」 男は急に方向転換し、尾ひれを隣にいた正義に叩きつけようとする。 白ワニ「シャッ!」 男「ぐぁ、貴様!離せ!」 正義「う・・・、あ、白ワニ!」 正義が目を開けると、白ワニが白刃取りよろしく尾ひれ噛みをして正義を守っていた。 男が何度か尾ひれを振りまわし、なんとか白ワニを振りほどく。 白ワニ「・・・、シャア!(どうだ?オレだって強いぜ?)」 正義「白ワニ、ありがとう!でも大丈夫!?」 白ワニ「シャアシャア!(この程度の攻撃ならびくともしないぜ!)」 男「はぁ、はぁ、・・・なかなか優秀な僕を持っているようですね。」 正義「僕じゃない!友達だ!」 男「口ではそう綺麗事が言えますが、当の本人はどう思っているんでしょうか? 攻撃を強要され、盾にされた貴方自身の気持ちは!?本当は辛いんでしょう!?」 そう言いながら男は白ワニを指す。白ワニは大きく・・・首を横に振った。 男「・・・。」 白ワニ「シャアア?(オレは別に、フレンドだから戦って、守ってやったんだぜ?って言っても聞こえてないか。)」 正義「・・・うん!そうだよね。」 勇弥「よく分かんねぇけど、白ワニが本当にいい奴になったらしいな。」 奈海「正義くんをかばったり・・・、昔戦った相手とは思えないわね。」 男「ふふっ。」 正義「え?」 白ワニ「シャア?」 男「ふはははははぎゃはははは!下らねぇ事抜かしやがる!有りもしない友情を語りやがる! そんな下らねぇ事抜かしてるんなら、人間も人生もやめやがれ!」 男の体がみるみるうちに変わっていく。 鮫の頭、鷹の翼、虎の両足、鮫の尾びれ・・・。とうとうその姿はキメラのような化け物となっていた。 勇弥「なんだよこれ!?オレ絶対にあいつの存在認めねぇ!」 奈海「何よあれ、なんで人があんな姿になるのよ・・・。」 コイン「(伝承無視してるでしょ!)」 コインの文句は届く訳もなく、不意に男が高らかに笑い出す。 男「ぎゃはははは!これが俺の最終形態だ!こうなった以上お前達には消えてもらう!」 正義「・・・そうはいかない。けど・・・。」 白ワニ「(フレンド、こいつは倒せるのか?)」 正義に悩む暇も与えず、男が攻撃を始める。 その外見と図体からは想像もできないスピードで、時に牙で、時に爪で、時に風圧で、攻撃を仕掛けてくる。 楓「(黄昏・・・。)」 大王「・・・会長。」 楓「(はい、大王様。って聞こえないんですよね。)」 大王「ただの木の葉となったお前は動けもせず、戦えないな。」 楓「(・・・すみません。)」 大王「だが俺は猫で動けるから、戦えるよな?」 楓「(・・・はい?あ、ちょと、大王様ッ?!)」 大王は楓の葉となった十文字を軽く咥え、奈海の所まで歩きその傍に置く。 大王「少女、会長は任せたぞ。」 奈海「え、ちょ、それって・・・。」 質問には答えず、大王は化け物となった男の元へと走り出した。 大王「(だいたいこんな姿にされたのだから、復習ぐらいしてやらないとな。)」 楓「(大王様・・・。私に何かできる事は、そうだ!もしかすると。)」 男「どうしたァ!少し前までの意気込みは何処へ行ったんだァ!?意気『ゴミ』だけに捨てちまったのかァ!?」 白ワニ「シャッ、シャア。シャアア!(つまらないジョークだぜ。フレンド!何か手は有るか?)」 正義「ごめん白ワニ、今は何も・・・。」 大王「(少年!俺は今から奴に不意打ちする。聞こえたなら奴の注意を引いてくれ!)」 正義「ッ!(大王、・・・よし。)白ワニ!とにかく隙を見つけて攻撃するよ!」 白ワニ「シャア!」 正義が男に向かって走り出す。白ワニも汚水をまとって特攻を試みる。 男は正義を踏みつけようとするが、正義は何とか避ける。白ワニの攻撃が通るという時、翼によって白ワニが弾き飛ばされる。 白ワニ「シャアアァァ!」 正義「白ワニ!」 男「どうしたァ!そろそろ止めでも刺してほしいのかァ?!」 大王「(少年、もう少しだ。もう少し・・・。)」 大王があと少しで攻撃範囲という時。 男「ところでさァ、気付いていないと思ったかァ?!」 大王「ッ!しまっ」 男が勢いをつけて、尾びれを大王に叩きつける。通常の鮫でも威力は人の腕を奪えるほどらしい。 ましてや猫となった大王、一撃で終わる。はずだった。 男「・・・ッ、なんだ、これは・・・!?」 大王「・・・ん?どういう事、ッ!そういう事か。恩に着る。」 何故か、男の尾びれが大王に当たる寸前で止まる。 大王はその理由が分かったのか、そのまま男の脚まで走って爪で引っ掻く。 男「ッ、貴様ァ!」 大王「ち、想像ほどのダメージはないか。」 男が猫となった大王を踏みつけようとするが、何故か当たらず、そのまま大王は正義の傍へと走る。 大王「威力さえあれば、この姿も悪くないんだがな。」 正義「大王、・・・そのまま肩に乗って!」 大王「ん?・・・了解。」 大王が正義の肩に飛び乗る。 大王「たまには、こういうのもいいか。」 正義「大王、さっきのは十文字さん?」ヒソヒソ 大王「(おそらく正解だ。少なくとも俺の能力や、あいつの勝手ではなさそうだ。)」 男が突進してくるが、白ワニが突撃したおかげで標的が白ワニに変わる。 正義「なら、試してみたかった事があるんだよ。」ヒソヒソ 大王「(試す?よく分からんが、勝てるというなら乗るぞ。)」 正義「よし、白ワニ!そいつの相手、頼むよ!」 白ワニ「シャア!(任せなフレンド!)」 男「逃げられると思っているのかァ!?」 白ワニ「シャワ、シャアアア!」 白ワニが男を喰い止めている間、正義は十文字の傍へと走る。 正義「十文字さん!」 数秒ルール「(マサヨシ君、聞こえますか?楓さんがある事に気付いたみたいですよ。)」 正義「数秒ルール?うん、だいたい分かってるよ。」 大王「会長、すまなかった。恩に着る。」 楓「(そ、それほどでも・・・。)」 また楓の葉が紅葉を始めた。 大王「また・・・!?少女!これはいったい?!」 奈海「大王さん、異常事態ではないから安心して。」 数秒ルール「(―――では、次のカウントの時に私もカウントをします。)」 正義「分かった。じゃあ十文字さん、合図の後『あの男に集中して』、ね。」 そう言って、正義が男の方を向く。若干白ワニの方が押されているようだった。 大王は正義の肩に乗る。 正義「Go!」 勢いよく正義が走り出した。同時に、カウントが始まったようだ。 楓&数秒ルール「「(1・・・。)」」 正義「白ワニ!ボクの合図があるまで攻撃しないで!」 白ワニ「シャアァ?・・・シャ!(Why?・・・同時攻撃か、OK!)」 大王「では、俺は少年の合図で攻撃する。この姿でも、足しにはなるか。」 正義「大王、その姿でも雲出せる?」 大王「待ってくれ、時間がかかりそうだ。」 大王がゆっくりと黒雲を生成する。おそらく猫の姿となっては、本来の力を発揮できないのであろう。 しかし、目的の大きさになるまで、それほど時間はかからなかった。 楓&数秒ルール「「(・・・2・・・。)」」 大王「これで充分か?」 正義「うん!そろそろだから準備して。」 大王「了解。」 男「なに企んでやがんだァ!」 白ワニ「シャア!(フレンド!)」 男が正義に向かって牙を見せながら突進してくる。 楓「(・・・3!)」 数秒ルール「(今です。)」 正義「今だ!大王、白ワニィ!」 正義の発言と同時に黒雲から剣が降り、正義はその剣を取って男の翼を狙って剣を構える。 白ワニも合図に応じて、男の尾びれを狙って牙を立てる。大王も正義の肩から飛び降り、男の脚を狙って爪を伸ばす。 正義「てえぇぇい!」 白ワニ「シャアァア!」 大王「残念だが・・・時間切れ、だ!」 男「はァ?そんな程度で俺が」 (楓「黄昏、どうやらこの能力にも欠点があるらしい。」) (正義「欠点?」) (楓「この能力を使った後少しの間だけだが、相手の攻撃を倍に受けてしまうんだ。この能力の使用は控えるべきだな。」) (正義「ふぅん・・・。」) 男「なん、で・・・だ?」 この時正義は、この能力の別の使い方を発見したのである。 ―――『三秒間の猶予を与えた後、通常の倍のダメージを相手に与える』という使い方を――― 正義の剣で翼は斬り裂かれ、白ワニの顎で尾びれは喰い千切られ、大王の爪で脚に深い傷を負った。 そして男は倒れこみ、だんだんと人間の姿に戻っていった。 奈海「お、終わった・・・。」 勇弥「ふぅ、なかなか恐ろしい奴だったな。」 楓&コイン「「(ん?)」」 ふと、十文字とコインの体が輝きだし、やがて元の姿に戻る。 楓「おぉ、戻った!」 コイン「わぁ、やったぁ!」 勇弥「お!オレの姿も・・・。」 勇弥の体も輝きだし、人間の姿に戻った。 正義「良かったね、勇弥くん。」 勇弥「おぉ!でもすまねぇな。変身すると能力使えないのかと思ってたんだ。」 コイン「まぁ、私は十円玉じゃかったから絶対に無理だったんだけどね。」 楓「終わった事だし、もういいだろ?これで無事一件落着」 大王「待て!俺が戻っていないぞ!?」 そこには、今だ戻らずにいた黒猫がいた。 正義「そうか!大王、実は本当は猫だったんじゃない?」 大王「そんな訳無いだろ!?あいつが何かしたんじゃないのか?」 勇弥「そうか・・・、猫の人間に対する怨念が、【恐怖の大王】という形になったのか。」 奈海「可哀想に・・・。」 口ではそう言っているが、隠している顔を隙間から見ると、かすかに口が釣り上がっている。 大王「きィさーまーらァ!」 楓「でも、猫になった大王様、可愛いですよ。」 怒気を漏らしても全く怖くない黒猫大王を、十文字はぎゅっと抱きしめる。 楓「♪~。」 大王「ふざけるな!世界征服にルックスは必要ない!」 白ワニ「シャシャハハハ。」 正義「多分すぐに戻るって。あとは・・・。」 正義が改めて男の方を向くと、男は気を取り戻したみたいだ。 男「・・・何故、私を・・・。」 正義「どうやら元に戻ったみたいだね。早速、契約解除してもらうよ。」 勇弥「契約解除ォ?らしくない、って『元に戻った』ってどういう事だ?」 正義「あ。この人、どうやら都市伝説に支配されてたみたいなの。」 勇弥&奈海&楓「「都市伝説が契約者を支配?!」」 どうもここに来ると、新しい事の連続である。 『契約者は悪い都市伝説と戦う』と思っていれば、悪い事をする契約者が現れ 『契約者は都市伝説を利用する』と思っていれば、このような展開である。 正義「支配っていうか洗脳っていうか、この人の姿が変わっている間だけ この人の都市伝説の声がこの人の言ってる事と同じになるんだよ。」 大王「肉体を乗っ取る、といったところか。よく考えたものだ。」 コイン「じゃあ放っておいたら、都市伝説に飲み込まれちゃうの?」 勇弥「よく分からないけど、とにかく叩き出すか。」 勇弥が男の頭を掴む。 男「な、何を言われようとも、私は退きませんよ。私には彼らを裁く義務が」 勇弥「おぉそうか。じゃあこっちにだって考えがあるぜ?」 勇弥の手のひらに球体状に並んだ0と1のマークを浮かべる。 男「な、なにを・・・?」 勇弥「オレは世界をコントロールしているんだ。このオレになら、お前ぐらい簡単に消せるんだぜ?」 男「な、そんな、待ってくれ!」 勇弥「あぁ。オレ達の言う事を聞くなら考えてやってもいいぜ。」 勇弥が手のひらを男に近づける。 楓「おぉ、流石は日向。良い作戦だ。」 奈海「(いや、正義の味方の行為じゃないでしょ。)」 大王「(友よ、その手は人道的にどうなんだ?)」 男「分かった!言う事を聞く!だから命だけはッ!」 男は怯えながらに言う。 勇弥「よし。まずは、『今まで変えてきた人間を元に戻す事』。とりあえず大王さんもね。」 大王「俺をおまけにするな。」 男「わ、分かりましたッ。」 十文字に抱えられた大王が、突然輝きだし、元の大王の姿に戻った。 大王「お、やはり俺は、純正【恐怖の大王】だ。」 正義「猫の姿も気に入ってたくせに。でも良かったね。」 勇弥「あぁよかったよかった。だから十文字さん。」 楓「ん?」 勇弥「そろそろ離れません?」 よく見ると、十文字は大王の背中に抱きついたままとなっていた。 気付かなかったのであろうか。いいや気付いたはずだ。猫サイズから急に大人サイズになったのだから。 楓「・・・ぁ、す、すみません大王様!」 大王「別にどうでもいいが?」 勇弥「まぁどうでも良くないのは見てる方だがな!」 男「こ、これで良いんだなッ!では私は」 正義「待って。」 そう言いながら、正義は剣を男の首に持っていく。 奈海「ちょっと、正義くん!危ないじゃない!」 正義「いいから。さて、契約解除の方もしてもらえないかな?」 男「ふ、ふざけるな!これは護身にも使える、少なくとも悪事に使うなというなら考えて」 正義「条件は、『契約解除』。飲むの?飲まないの?」 ふと正義からとてつもない気迫を漂わせる。いつかどこかで感じたような、しかしそれとは本質が違う、不思議な気迫。 男は即座に恐怖を覚え、正義の条件を承諾する。 男「ははは、はい!さ【サザエさんの最終回】、けけ契約解除!」 男の頭上から、ふわふわと煙状のものが出てくる。 最終回「(チッ、せっかくいい器を手に入れたってのによォ!まぁまたどっか遠くでいい器を探すかァ。)」 正義「あ、待て!」 追いかけようとする正義を大王が止める。 正義「大王?」 大王「少年、あとは俺に任せてくれ。」 大王が正義から剣を奪って、【サザエさんの最終回】を睨みつける。 大王「考えて見れば、俺をあんな姿にしたのはお前だったな。」 最終回「(は?いや、その、俺だけが悪い訳じゃないじゃん?その男がだいたいだから止め)」 大王「はァ!」 彼の言い訳が聞こえる訳もなく、大王は彼を切り裂く。こうして【サザエさんの最終回】の姿は、太陽の光に掻き消された。 男「あ、そ、それではッ!」 正義「あ、コラ!」 光彦「ちょっと失礼。」 男「うぐッ!」 不意に死角から正義の父・光彦が現れて、男にラリアットを喰らわせる。 正義「あ、お父さん。どうしてここに?」 光彦「あぁ、そろそろ犯人を捕まえた事じゃないか、と思ってな。」 勇弥「(都合よく、あの戦いはバレていないのか?)えと、その人はどうなるんですか?」 光彦「無論、刑務所行きだ。人攫い、だからな。何年か懲役じゃないか?」 光彦は男の腕に手錠をかけようとする。 楓「先生!」 光彦「ッ!・・・先生だったのか、すまない。」 男「・・・なんです?十文字さん。」 楓「私は、あなたの事を尊敬していました。 あなたの教え子だった時は、あんなに子ども思いな大人なんて他にいないとさえ思っていました。 だからあなたが犯人だと知った時は、・・・いや、いつかまた先生として、あなたが子ども達の前に立つ日を信じています。」 男「・・・、私こそ、貴方を尊敬していたんですよ。 いつでしたか、虐めっ子を力強く投げ飛ばす貴方の姿はいまでも忘れられません。 思えば、最初は子ども達を守るためにあいつと・・・、いえ、忘れてください。ではお巡りさん。」 男はなにか吹っ切れたような笑みを見せながら、光彦と共に歩いていった。 勇弥「なぁ。あいつ、いつ釈放されると思う?」ヒソヒソ 正義「分からないよ。ボクが関わってきた犯人のその後なんて、あまり知らないし。」 大王「(どうであれ、【組織】とやらが強引にただの誘拐事件にするんだろうが。気に食わん。)」 楓「先生・・・。」 落ち込んでいる十文字に、ある生物が近寄る。 白ワニ「シャアァ、シャア!(ガール、そこまでへこむ事はないぜ。いつか戻ってくると信じてやれ。)」 楓「(もしかして、励ましてくれているのか?)・・・ありがとう。ところで、お前はいったい何なんだ?」 正義「あぁ、言ってなかったね。彼は」 不意に、カバンが落ちる音が聞こえる。一同がその方向を向くと、見覚えのある姿が。正義の兄、[黄昏 裂邪]だ。 正義「お兄ちゃん・・・!」 裂邪「白ワニ・・・生きていたのか?」 勇弥「あぁ。ちょっとさっきね。しかし裂邪さん、いったいどういう事なんですか?」 奈海「お、お兄さんが何かしたんですか?それとも・・・?」 全員が疑問を浮かべる中、彼の契約している都市伝説、【シャドーマン】のシェイドだけは。 シェイド「無事再会出来タノカ。」 裂邪「なっ、シェイド、お前なんか知ってんのか?!」 シェイド「マァナ。」 正義「え?ど、どういう事なの?白ワニをコロしたんじゃなかったの?」 裂邪「そうだ、あの時俺は『闇誘拐』を指示したはずだ!だから白ワニがここにいる訳が―――」 シェイド「アノ時私ガヤッタノハ『闇誘拐』デハナイ、『シャドーダイブ』ダ。」 勇弥達はシェイドの言っている事が理解できなかった。 十文字は白ワニ自体を知らないのでより理解できていないだろう。 だが正義は少しだけ理解できた。シェイドは白ワニをコロす気なんて全くなかった事を。 正義「もしかして『シャドーダイブ』って、時々お兄ちゃんがどこかへ消えたりする技?」 裂邪「・・・あぁ、そうだよ。」 正義「そうか、ただ別の場所へ移しただけだったんだ。良かった・・・。」 正義の目に涙が溜まろうとしている時、裂邪は何処かへ行ってしまった。 こうして、正義達はそれぞれの家へと帰るのであった。 ―――その道中。正義と大王が2人きりになった時、大王が話しかける。 大王「これで、兄を許せるか?」 正義「ッ!?」 大王「気付いていないと思ったか?兄の前でだけ、まるで子どものままだった事に。」 正義「・・・。」 大王「色々考えたが、兄とどう接すればいいか分からなくなったからじゃないか? あの日、兄を完全な悪だと判断したお前は、反面『あいつの弟』を人前では演じないといけない。 急に兄を嫌ったら、親に心配されるからか?」 正義「・・・うん。」 大王「そうか。だが、実際お前は自分の感情を押さえ込むために強引に兄と接してきた。 故に子ども口調のままだったんだろ?」 正義「・・・どうして分かったの?」 大王「何年お前と契約していると思っているんだ?」 大王は少し微笑みながら言う。 正義「・・・ありがとう、大王。」 大王「なぁに勘違いするな。俺はお前と世界征服がしたいだけだ。」 正義「そうだったね。・・・よし!」 正義が少し前へ行き、大王の方へ振り返る。 正義「絶対に!大王の世界征服はボクが止める!」 大王「・・・フ、止められるものなら、止めてみろ!」 数年前は苛立ちすら覚えた言葉が、今はむしろ楽しみに思えて仕方がない。 この言葉が少年を強くするからか、その答えは大王自身も分からなかった。 ―――世界征服への道は遠い。 ―――自宅前 正義「ただいまぁ!」 ふと、正義の目に裂邪の姿が映る。しかしもう中の悪い関係ではない。ただ一言。 正義「あ、『アニキ』!ただいま!」 裂邪「はァ!?」 少年、何故かは分からんが、兄が傷付いているぞ? 第8話「白い影」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4792.html
???1「はっはっはァ!どうしたァ、しっかり攻撃しろォ!」 ???2「その程度の攻撃ではァ、俺達は倒せんぞォ!?」 正義「くぅ……。」はぁ……はぁ…… 勇弥「さ、流石に、その名前は、伊達じゃあねぇか。」はぁ、はぁ…… 大王「(何故、こんな事になってしまったんだ。)」 ~数分前~ 勇弥「なるほどなぁ、ありがとよ。試験品のテストに手伝って貰って。」 正義「いいよ。修行にもなるんだし。ね、大王。」 大王「友には世話になる。しかし、友は軍事兵器でも造りたいのか?」 勇弥「いやいや、一見関係ないように見えて、実は意外な所に関係があるってものもあるのさ。」 大王「……そんなものなのか?不思議なものだな。」 ある夏の日、俺達はごく普通の道路で普通に雑談をしていた。 ……と、その時だった。 ???1&2「止まれ!そこの少年達よ!」 正義「え?」 勇弥「んっと、オレ達っぽいな。」 振り返ると、そこには筋肉隆々の男と鎧を着込んだ男が居た。 勇弥「あのぉ、どこでお会いしましたっけ?」 大王「(この気配、【タナトス】と似ている……?まさか、神か!?)」 すると、高らかに笑ってから、2人は名乗りだす。 アキレウス「我が名は【アキレウス(αχιλλευσ)】!ギリシャが誇る英雄なり!」 ヘラクレス「我が名は【ヘラクレス(ηρακλησ)】!同じくギリシャの英雄なり!」 正義「『アキレス』って、脚の?」 勇弥「あぁ、『アキレス腱』の由来は、神話のアキレスからなんだよ」 大王「(神でこそないが、神話の奴か。)で、何の用だ?」 男達は、高らかに叫ぶ。 アキレウス「少年よ、お前達に『モノメヒア(μονομαχια)』を申し込む!」 勇弥「ものめ……?何だそりゃあ?」 正義「け、『決闘』?どうして、ボク達が戦う必要があるの?」 大王「(『決闘』か。たしかに今はこいつらと戦うべきではないな。)今回ばかりは少年の言う通りだ。」 ヘラクレス「勘違いするなァ少年!『ポーレモッシュ(πολεμοσ)(戦争)』ではない!」 アキレウス「男と男の『モノメヒア(μονομαχια)』に、理由など必要かァ!?」 その言葉を聞いた瞬間、正義と勇弥がピタリと止まる。 大王「お前達が何と言おうと、俺達は」 正義「確かに、申し込まれた決闘を、断わったら男じゃないよね。」 勇弥「ん、そう言われちゃあ引くに引けないな。」 大王「はァ?!」 アキレウス「おォ!それでこそ、男だァ!」 ヘラクレス「では決闘開始だ!何処からでもかかってこい!」 勇弥「よし、行くぜ正義!」 正義「うん!やるよ、勇弥くん! 大王「な・・・何故そうなるんだァアァァ!?」 ~数分前/終~ 正義「大王、ゴメン。少し考えが浅かったと思う。」 大王「浅すぎだ!もっとじっくり考えて行動しろ!」 勇弥「しかし、どういう事だよ。あれは。」 不意に【ヘラクレス】が勇弥に殴りかかろうとする。 勇弥はとっさに0と1を並べて範囲を指定し、壁を生成する。 ヘラクレス「……はァァア!」ボガァン! 勇弥「流石によォ、これはねぇだろ?」 しかし【ヘラクレス】は、いとも簡単に勇弥の壁を粉砕した。 ヘラクレス「もろいッ!もろ過ぎるぞォ!」 勇弥「鉄の強度をはるかに上回る壁を、あっさり破壊する【ヘラクレス】……。」 正義「さらに・・・。」wind! 正義は『注入機』の『風』のボタンを押し、【アキレウス】に向かって剣を振るう。 すると、剣の軌道に沿って風が発生し、【アキレウス】をめがけて飛んでいき、腹部を切り裂く。 アキレウス「いい腕だ!だがッ!」 【アキレウス】の腹部をすぐさま光が包み、あっという間に傷が癒えていた。 正義「何処を攻撃してもすぐに再生する【アキレウス】・・・。」 勇弥「こりゃあ・・・勝ち目無いね。」 大王「なら、何故買ったァ!?もっと考えてから発言しろ!」 勇弥「だってさぁ、てっきり異名だと思って。たいそうな名前使ってるなぁ、と。」 大王「まず俺達に問えェ!都市伝説の判別ぐらい労も無いわ!」 正義「まぁ、もう終わった事だし。」 大王「終わってない!お前も何故受けたんだ?!」 絶望しているのかそうでもないのか、騒ぐ大王。それを遠巻きに見ている2柱。 アキレウス「どうしたァ!?もう降参かァ?」 勇弥「なんなら降参するか?大王さん。」 大王「ふざけるな!始まった以上、この戦闘が終わるには勝つ以外に方法はない。少年、何か無いか?」 正義「ぅうん……、勇弥くんは何か知らない?」 勇弥「おぅ、任せな!【アキレウス】とは……。」 大王「要点をまとめ、手短にな。」 勇弥「了解……、まぁだいたい分かってると思うけど、不死身なんだよ。」 正義「何か理由があるの?」 勇弥「なんでも冥界の川、『スティクス』だったか?それに浸されると不死身になれるらしい。 それに【アキレウス】は子供の時に浸されたんだと。」 大王「ならあの不死身の体に欠点は無いのか?」 勇弥「ぅんと、あ!あるぜぇ。1つだけ。その川は『浸かった部分が不死身になる』んだ。」 大王「浸かった部分……?だから何なんだ?」 勇弥「川に浸かる時、母親はかかとを掴んでいたらしい。つまり、川に浸かっていないかかとは……。」 正義「弱点。でも、あの鎧じゃあ……。」 ちらりと【アキレウス】の脚を見る。上半身は鎧を着ていないのだが、脚はしっかりと着込んでいた。 勇弥「神話じゃ鎧どころか、服も着てないのになぁ。」 大王「で、【ヘラクレス】の方はどうなんだ?」 勇弥「特になし。自分の武器の毒で死んだ、って話が精一杯だ。」 大王「おい、自滅するまで放置って事か?」 正義「それより【アキレウス】への攻撃法だよ。正直【ヘラクレス】はそんなに怖くない。 攻撃は避ける事もできるけど、鉄壁は弱点を付くしか方法が無いから。」 勇弥「そういうが……まぁそうだな。最も、鎧を貫通する手段なんて―――」 アキレウス「……。」 ヘラクレス「……。」 数分間の会議の後、彼等は動き出した。 勇弥「―――よし、それしかねぇな。」 正義「よし、じゃあ行くよ。」 大王「心配するな。覚悟はできた。」 正義「Go!」 その合図と共に、3人が走り出す。 アキレウス「動き出したかァ。」 ヘラクレス「さぁ、どう動くッ!?」 正義「大王!」 大王「言われなくとも!」 上空に、黒雲が羊雲のように大量に生成される。 大王「(量はこれで充分か?)」 正義「“コクッ”よし、行くよ!」 すると黒雲から、剣、斧、槍……数多くの武器が刃を下にして降ってくる。 アキレウス「ほぅ、だがこの程度ォ!」 自分をめがけて降ってくる大剣や大斧を【アキレウス】は虫を払うが如くあしらう。 正義「まだだ!」 その瞬間、正義は降ってきた剣を手にとり、大きく振りかぶる。 アキレウス「何ィッ!?」 ヘラクレス「ちぃ“ゲシッ”、であァ!」 反応が遅れた【アキレウス】を【ヘラクレス】が蹴り飛ばし、同時に手刀で剣を叩き割る。 アキレウス「す、すまないッ!」 ヘラクレス「なぁにこの程度ォ!」 正義「うっ!?(想像よりも簡単に……でも!)まだまだァ!」 折れた剣を投げ捨てると、正義は降ってきた斧を手にとり、大きく振りかぶる。 アキレウス「そう何度もォッ!」 大王「おっと。お前の相手は、俺がする!」 アキレウス「な、くぅううう!」 突如、大王が現れ【アキレウス】に勢いよく大鎚をぶつけようとするが、【アキレウス】はとっさに後ろへ飛び退く。 【ヘラクレス】は正義が持つ斧を破壊し、【アキレウス】の方へ走ろうとする。 ヘラクレス「アキレウスっ!?」 正義「まだだ!てええぇい!」 正義は次に槍を手に取り、【ヘラクレス】の脚を払う。 ヘラクレス「うおぉぅ!?」 アキレウス「ヘラクレスっ!大丈夫か!」 大王「人の心配をしていていいのか?たぁッ!」 正義「ボクの攻撃も終わっていない!たぁありゃあぁぁ!」 正義は【ヘラクレス】に槍を突き立てる。しかし、【ヘラクレス】は槍を叩き折る。 大王は大槌を【アキレウス】に振り下ろす。無論、粉々に粉砕された。 大王「ちぃ、だが弾ならいくらでも有るぞ!」 正義「どんどんいくよ!」 斧、剣、鎚、槍……。武器と呼べる武器を正義達は2柱に叩きつける。 その度に、豪快な音と粉々になった武器がキラキラと散らばる。 勇弥「おい、正義若干浮いてねぇか?地面に脚ついてねぇだろ?(さて、そろそろ……)」 その頃、勇弥はその光景を眺めているだけだった。と思うと、やっと動き出す。 勇弥「範囲指定、っと。雲から地面まで……。」 勇弥が指したところに0と1の線ができる。2柱が戦っている隙に正方形にだいぶ近づいてきた。 アキレウス「らぁ、たぁ!……はっ!しまったァ!少年の友達を忘れていたァ!」 勇弥「やべっ、気付かれたッ?!」 ヘラクレス「ん、あそこかァ!『スフェラ(ΣΦαιρα)』!」 勇弥の策略に気付いた【ヘラクレス】は、急に手を叩く。 すると開いた手の間に淡く光った玉が浮かんでいた。 ヘラクレス「たあああぁぁぁ!」 勇弥「ちょ、アニメじゃねぇんだから……!」 正義「勇弥くんッ!?」 アキレウス「ヘラクレスっ!少しは手加減しろォ!」 大王「ちぃッ!」 光の玉が勇弥に当たる!という瞬間に、勇弥の頭上からタライが降ってくる。 勇弥「くぅ、“ガァンッ!”ごべっ!?」ヒュウゥゥ……ゴォォォン! ヘラクレス「おォ!よくあれを避けたな。」 アキレウス「コロす気かァ!これは『モノメヒア(μονομαχια)』だぞッ!」 勇弥「だ、大王さん、ありがとう……。でも痛い。」 大王「まさか遠距離技まで所有していたとは。厄介な相手だった。」 正義「あと1歩で負けていたね。」 アキレウス「『だった』ァ?まだ負けてはいないぞ。」 ヘラクレス「まだ勝負はついていないぞォ!」 正義「勝負ならついたよ。もう既に。」 そう言いながら、正義は手に持っていた剣を地面に突き刺し、鉄製の槍を空に投げる。 アキレウス「おい、そんな所に投げていったいッ……!」 ヘラクレス「あそこは……まさかッ!?」 正義の投げた槍は、真っ直ぐ黒雲の方へと飛んでいた。その槍には紐がついており、剣に繋がっているようだった。 が、剣だけではない。その紐を辿っていくと……【アキレウス】達の足首に結ばれていた。 ヘラクレス「し、しまったァァァ……!」 アキレウス「く、早くほどけェ……!」 彼等は気付くのが遅かった。気付いてからではもう遅い。最速の一撃が彼らの足を襲う。 正義&勇弥「新必殺ッ!『ライトニング・ケーブル(雷撃線)』!」ドゴォォォ・・・ン ヘラクレス「ぐおぉぉぉ!!!」バリバリバリ アキレウス「ぬあぁぁぁ!!!」ビリビリビリ 槍の先にあった黒雲から雷が落ち、瞬間槍に巻いてあった『銅線』を伝って2柱の脚へと流れた。 数十秒流れた後、【アキレウス】達はぐったりと倒れた。 大王「(まさかここまでとは・・・流石と言うべきか。)」 ~作戦会議~ 正義「あの鎧を貫通して攻撃するなら、電撃が1番だと思うんだ。」 勇弥「なるほど。なら必殺『雷撃棺』で……。」 大王「あの技をそう簡単にやらせてくれる相手ではないと思うぞ。別の手だ。」 じっくりと考える勇弥だったが、先に正義が閃く。 正義「ねぇ大王。『銅線』って降らせれる?」 大王「ん?銅でできた紐という事か?複雑な機械でないなら可能だろうな。」 正義「なら、脚に銅線を巻きつけて、その銅線に雷を……。」 大王「どうやって巻くんだ?別の手だ。」 うぅん、と唸る正義に、勇弥が提案する。 勇弥「なら、オレが囮になるぜ?その隙になら巻けるだろ?」 正義「勇弥くん……。」 大王「すまないが、友にはあいつ等の囮は不可能だ。危険な上、5秒ともたないだろう。」 勇弥「5秒もあればやれるんじゃねぇか?」 大王「だいたい、そんな見え見えの策に乗ってくれるかも怪しいぞ。」 正義「……そうだッ!こういうのはどう?」 ~作戦会議/終~ 正義「(足首に銅線を巻くのには時間がかかるから……。)」 勇弥「(オレが『雷撃棺』を行うフリをし、注意を引きつける。)」 大王「(無論それだけでは気付かれる。なら『まるで真の目的が勇弥にあるように振舞えばいい』、か。)」 つまり、正義と大王は、勇弥に時間を与えるために派手な攻撃をしていたように見せかけて、 実際は勇弥は囮で、脚に銅線を巻きつけていたという事である。 大王「(しかし、よくあの最中に足に紐を巻くことができたな。器用な奴だ。)」 勇弥「まぁもっとも、思ったよりも気付くの遅かったから普通に決めれそうだったけど。」 正義「まぁ結果オーライで。それよりこの2人どうする?」はぁ…… と言い切った瞬間。【アキレウス】と【ヘラクレス】がムクリと立ち上がる。 正義「ッ!?」 勇弥「なっ!?」 ヘラクレス「はっはっはぁ!少年たち、なかなかやるではないかァ!」 アキレウス「まさかここまでやるとはなァ!」 起き上がった2柱は想像以上に元気で、正義は驚いたようだった。 大王「ち、だが起き上がった所で無駄だ!少年、もう1度行くぞ!」 正義「えっ、銅線なら消しちゃったけど?もう要らないと思ったし。」 大王「な、なんだとッ!?そうだ友、『雷撃棺』の準備が」 勇弥「あぁ、あれなら大王さんのタライで吹っ飛びましたぜ?」 大王「なん……だと……?」 アキレウス「よし、では……!」 ヘラクレス「そろそろ……!」 大王「(く……この窮地、いったいどうやって乗り越える?)」 1人策を練る大王。すると【アキレウス】達は立ち上がり……後ろへ振り返る。 アキレウス「帰るとするかァ!」 ヘラクレス「これだけすれば充分だからなァ!」 大王「……は?」 アキレウス「これで『スケイディオ』も安心だな!」 正義「ッ!待って!『計画』って、いったい何なの!?いったい何を……?」 勇弥「(け、『計画』?そんな事言ったか?)」 ヘラクレス「ん?あぁ!その事はまだ説明する気はないッ!使わないかもしれないからなァ!」 すると、【アキレウス】と【ヘラクレス】は空間を殴る。 と、その空間がひび割れ、言葉では表現できない暗くて禍々しい穴が空いた。 アキレウス「まぁ、時が来れば全て教えるだろう!安心しろォ!」 ヘラクレス「ではまたなァ!」 高らかに笑いながら、2柱は穴の中に入っていくと、何事もなかったように穴は消えてしまった。 正義「……。」 大王「“ふぅ……”どうやら助かったようだな。あいつ等の気まぐれに救われたな。」 勇弥「え?いや、救われたも何も、オレ達の勝ちだったじゃん。」 大王「ふざけるな。現にあの攻撃を喰らって立ち上がっただろう。あの時」 正義「今回は『コロし合い』じゃなくて『決闘』だよ。」 大王「……。」 正義「それを大王が慌てるからさぁ。びっくりしたよ。」 勇弥「そうだよなぁ。なんであんなに慌てたんだ?」 いや、都市伝説との戦いに約束などあるのか? 俺の常識が欠如したのか? そもそも今俺は子どもに馬鹿にされているのか? 大王「・・・ふぅざけるなぁぁぁあああ!」 Σχεδιο編第1話「決闘」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4157.html
これは、黄昏正義が小学2年生の頃の話。この話は夕暮れ頃から始まる。 正義「大王、そろそろ行くよ。」 大王「いつでも良い。だが、なんでわざわざこんな時間に戦わねばならんのだ?」 正義「だって夕方にしか出ないやつらもいるんだろ?」 大王「ったく、分かった。行くか。」 正義は彼の契約した都市伝説、【恐怖の大王】に抱えられて窓から飛んでいった。 正義は子どもでありながら都市伝説と戦っているのだ。 だが、世界征服を企む【恐怖の大王】にとって、この行為は無駄でしかない。 大王はすぐにも征服活動がしたいのだ。 しかし、正義少年といる事で自分の能力はどんどんパワーアップする。それに彼を放っておくと契約による死の危険もある。 結局のところ、大王は正義から離れる事はできないのだ。 大王「ところで少年、何故背中に乗らないんだ?そっちの方が楽だろ?」 正義「ん?だって、この方が飛んでるみたいで気持ち良いじゃん。」 大王が「そうか」と返した頃にはもう小学校が見えていた。 飛んでいけばあっという間なんだ、と正義は思った。 門を飛び越え、何故か鍵が開いていた扉から校内に潜入した。 正義「いい?懐中電灯持った?ボクはあっちを見に行くから大王はそっちを見に行って。」 大王「分かった。気をつけろよ。」 そう言って二人は分かれた。大王は数分ほど歩き回ったが、それといった気配は無い。 とりあえず現状報告ぐらいしておくか。スパイごっこのように・・・。 大王「ん?通信機なんて受け取ったか?懐中電灯に・・・も無いな。」 しまった、あまりに自然に言われたから受け取ったものと勘違いしていた。 これでは見つけた時報告が・・・いや、先に少年が見つけてしまっていたら? く、どうやって少年を探したら・・・。 ???「ぎぃゃあぁあぁ!!」 確実に、正義少年の声。 大王「・・・。通信機、いらないな。」ヒゥューッ ―――一方、正義は、 正義「ぅわあぁぁー!気持ち悪いよぉぉー!」 想像通り、都市伝説に追われていた。 正義「(大王から武器、貰っておけばよかった。しかもあいつ早い!) 誰かぁー!大王ぉー!助けてぇぇー!」 不意に、正義は何かにぶつかる。 ???「いてて・・・。大丈夫か?」 正義「え?あ、う、うん。そ、それより速く逃げないと・・・。」 “ピタピタピタ”という音が聞こえる。あの都市伝説がこちらに近づいてくる。 ???「“チッ”【テケテケ】のやつ、もう追ってきたのか。」 謎の少年はあの都市伝説の方に手を伸ばす。瞬間、彼の手から0と1のような何かが波紋のように広がる。 ???「よし、逃げるぞ!」 正義「えっ、で、でも」 ???「いいから!」 謎の少年に引かれて正義は走っていった。 すぐにあの都市伝説も追いかけ走る走る―――ぶつかる。 何にぶつかる?壁?とにかくここは通れない。 その都市伝説は別の道を“ピタピタ”と探しにいった。 その少し後、入れ違いになるように大王がやって来た。 大王「確かこっちだったな。おそらくここを“ガン”、た、くぅー。なんだ?透明な・・・壁?」 大王も見えない何かにぶつかる。触ってみるとガラスのような、しかし何か違う感覚がする壁が広がっていた。 辺りを見回すと、天井と床と壁に奇妙なマークが刻まれていた。 大王「(ちょうどここから壁になっているな。やはり都市伝説か? だとしたら追い込まれたら閉じ込められる、ってところか。とにかく少年を探さないと。ここを壊すか?)」 さらに辺りを見回すと、近くに階段があった。少年が行くとしたらこっちか?大王は2階へと飛んでいった。 その頃、1階にいる正義は、謎の少年に引かれながら窓際を走っていた。窓からの光が少年の顔を照らす。 正義「もしかして、勇弥くん?」 勇弥「お、やっぱり正義だったのか。」 謎の少年の正体は[日向 勇弥]だった。 彼は正義の幼稚園の頃からの1番仲の良い友人で、俗にいう親友だ。 勇弥「変な悲鳴上げてたぞ。そんなに怖かったのか?って、それより!なんでここにいるんだ!?」 正義「ん!あぁ、えっと・・・。筆箱忘れて・・・。」 勇弥「・・・そうか。」 『嘘は何とかの始まり』とは言うが、大王の言いつけで都市伝説の事は黙っておこう、と正義は考えた。 しかしそう言った後、ふと気付く。あの都市伝説を知っていた事、そして・・・。 正義「さっき、いったい何したの?」 勇弥「あ、あぁ。後で説明する。」 勇弥が困ったような顔をしているように見えたが、それを気にしている暇は無かった。 正義が何かの気配を感じる。 正義「また、なにか来る!」 勇弥「なに?!もう【テケテケ】が追いついてきたのか!?」 正義の言う通り、向こうから“ペタペタ”と音がする。勇弥はとっさに逃げる方法を考える。 勇弥「く、こうなったら・・・。正義!しっかり摑まってろよ!」 正義「うん!」 正義が勇弥につかまると、勇弥の周りにまた0と1のようなものがベールのように2人を包み込む。 例の都市伝説が“ペタペタペタ”正義たちのところへ向かう。そして―――2人がどこかへ消える。 後に残ったのは、0と1のようなものが、はじけた後、すうっと消えていくだけであった。 ―――正義が目を開けると、そこはどうやら学校の屋上のようだ。 つまり一瞬で1階から3階のさらに上まで瞬間移動したのだ。 これが人間のできる事か?いや、そんな訳が・・・。 突然、月が長い影を映す。その方向を見ると人が浮いている。 勇弥「ま、また都市伝説か!?」 勇弥は身構えるが、正義は逆に落ち着いていた。正義には何が来たかすぐに分かったようだ。 正義「勇弥くん、大丈夫だよ。ねぇ、大王!」 その影はだんだんと正義達に近づく。そして、光がゆっくりと大王の顔を照らす。 大王「都市伝説の気配を探って来てみたら・・・。 少年、大丈夫だったか。そして、少年の友達か。礼を言おう。」 表情が硬いままそう言ったあと、大王は勇弥に疑問を投げかける。 大王「だが、1つ質問をさせてもらおう。どうやってここ瞬間移動した?ただの人間にはできないはずだ。 もっとも、俺が見えている時点で、お前が契約者なのは確定だがな。」 正義「えっ、あ、そうか。じゃあ、あの時も能力を使ってたの?」 勇弥「・・・ん。バレたら仕方ないな。では、説明させてもらおうか。 オレが契約したのは【電脳世界=自然界論】だ。」 正義&大王「【電脳世界=自然界論】?」 コンピューターの基本は1と0で構成されている。これは陽と陰の二極理論と一致する。 また、陰陽を組み合わせて生じる八卦は、コンピュータの基本単位である8ビットに相当し、 16、32、64、128、256、・・・という数字にもそれぞれ意味がある。 ゆえに『コンピューターというのは、小さな箱の中で世界を再現しようとする試み』だというもの。 従って、『現実社会で起こることは基本的に電脳空間の中でも再現できる』ことになる。 それが【電脳世界=自然界論】である。 勇弥は軽やかで簡潔にこれを説明した。 大王「・・・。それでは説明になっていないはずだぞ。 今回は現実世界に影響を与えている。お前の能力は電脳世界に関する事だろ?」 勇弥「ん?あぁ、オレの能力ね。オレの能力は『現実世界のコントロール』さ。 あの時は『空気のせん断応力(?)』を高めて壁にしたんだよ。」 正義「『せんだんおうりょく』って何?」 勇弥「んー、分からん!なんかその辺りの数値をいじったら壁になった。 この能力自体は強いし便利なんだけど、頭使うから痛くなるんだ。」 正義「大変だね。」 勇弥「慣れればどうって事無いさ。ただ、1度覚えた物体のコントロールとかは簡単なんだけど、 もっと複雑な『生物』はやろうと思ったら死ぬね。たぶん。都市伝説なんかも調べるのは一苦労さ。」 大王「だから、現実世界に影響を与えられるのは何故だ?」 正義「調べてどうするの?」 勇弥「待った。んー、両方いっぺんに説明できるな。」 勇弥は手を合わせ、ゆっくりと離していく。両手の間から0と1のようなものが現れる。 勇弥「つまりオレはこの世界の管理人になったのさ。 オレは現実世界をコンピューターの設定を変えるような感覚で、 この数値を組み替えて性質を変える事ができる。 そして、そのデータを消す事もできる。ウイルスを消すワクチンプログラムのようにね。」 この事を聞いた時、正義よりも大王の方がが唖然としていた。いつ消されるか分からない不安に陥ったのだろうか。 しかし、その不安もすぐに消し飛ぶ事になった。 勇弥「ただ、さっきも言ったように1度覚えないと消す事もできない。 前に大変な事になったからもう2度とやらないだろうな。」 大王「(宝の持ち腐れ、か。心配して損したな。)さて、あの都市伝説を片付けに行くか。」 勇弥「おっと、【テケテケ】の事忘れてた。」 正義「そういえば、【テケテケ】って?」 【テケテケ】とは、下半身の無い女性の霊で、 『冬の北海道の踏み切りで女性が列車に撥ねられ、上半身と下半身が切断されたが、 あまりの寒さに血管が収縮したために出血が止まり、即死できずに数分間もがき苦しんで死んでいった』という話を聞いたものの所に3日以内に現れる、とされる。 逃げても『時速100~150キロの高速で追いかけてくる』といわれ、その異様なスピードと動きとは裏腹に 童顔でかわいらしい笑顔を浮かべながら追いかけてくるため、その恐ろしさをさらに助長するという。 勇弥「まぁ、これが大本だが、今回は違う。 『真っ二つに切られた女子高生の上半身が、犯人が持っていった下半身を捜している』 って話だったかな。これを聞いてオレはここに来たんだ。」 大王「それなら、速さに気をつければ問題ないな。」 壁を作るなどして隙を見つけ、攻撃。2人が作戦を考案中、正義はただ、腑に落ちない顔をしていた。 大王「少年、どうかしたか?」 正義「うーん・・・、とにかく行ってみよう。そうしたら分かるから。」 正義の言葉の意味も分からず、勇弥は0と1のベールを生成し、1階へと瞬間移動した。 ―――とたんに正義が何かを察知する。 正義「来るよ!」 勇弥「来たか。どっちからだ?」 正義「あっちとこっち!」 大王「2方向だと!?まさか・・・。」 正義の指した方向から“ペタペタ”“ピタピタ”と何かが来る。 片方は、勇弥の言っていた【テケテケ】。しかしもう片方は―――下半身だけの、スカートをはいた何か。 正義「あのスカートの方がボクを追いかけてたんなんだよ!」 なるほど、気持ち悪い。これがただ走っていたら【テケテケ】よりも気持ち悪い。 勇弥「く、【トコトコ】か。都市伝説2体を相手なんて・・・。」 【テケテケ】と【トコトコ】が跳びかかる。―――しかしそれらの軌道は正義達を離れ、2体がぶつかる。 よく見ると、どうやら【テケテケ】は【トコトコ】を抱擁しているようだ。これはいったい? 勇弥「どうゆう事だ?」 正義「やっぱり。ボクが聞いた話は勇弥くんとは違ったんだよ。」 (奈海「ねぇ知ってる?この辺りで殺人事件があったんだって。) ( その犯人は下半身を持って逃げたんだけど、その下半身が妖怪になって) ( 置き去りにされた上半身を捜してさまよっているんだって。」) その後は例によって3日以内に食べられる、と続いたらしい。 正義「つい『口が無いのにどうやって食べるんだよ!』って言っちゃったよ。」 勇弥「あいつ好きだなー、お前を怖がらせるの。」 大王「つまり、とうとうお互いを見つけてしまった、という事か。」 そう、【トコトコ】とは【テケテケ】の下半身版のことである。そして今回の場合、お互いに探しあっていた関係だったのだ。 【テケテケ】が【トコトコ】の体の上に乗っかる。つまり、いつかの女子高生の姿に戻ったのだ。 正義「【テケトコ】になったー!?」 勇弥&大王「「【テケトコ】?!」」 【テケトコ(正義命名)】が正義達をにらむ。嫌な予感がする。 勇弥「このままハッピーエンドだったら幸せなんだが・・・。」 勇弥の願いは彼女に届かず、【テケトコ】は攻撃を仕掛ける。 3人は何とかよけたが、彼女のパンチが廊下を破壊する。 勇弥「ふざけるなよ!なんであんな威力が出るんだよ!」 正義「たぶん、今まで走るために使ってたから腕力が上がったんだよ!」 大王「おまけに体も安定する。これであのスピードにパワーが加わった、か。」 【テケトコ】が跳び上がる。次はキックと来るのだろう。 勇弥はとっさに手を【テケトコ】に向け、空気を壁に変換する。 空気の壁に【テケトコ】の蹴りが炸裂する。想像に反し、壁が壊れそうになる。 勇弥「これも持たないな。正義!お前の都市伝説、【大王】だったか?何ができる?」 正義「色々降らせる事ができるよ。武器とか雷とか。」 勇弥「雷ィ!?すげぇじゃねぇか!」 大王「ただし、命中率が低い。ここはやつの弱点を」 勇弥「あるぜ。雷の命中率を上げる方法。あっちに行くぞ!」 正義と大王は勇弥に指示された方へ走り、勇弥もその後を走る。途中、足止めのためか壁を2枚ほど作る。 曲がり角を曲がったところで、頭に手を当てながら勇弥が言う。 勇弥「よし、ここでいい。いいか、正義、大王さん。空気ってのは普通は絶縁体なんだ。つまり電気を通さない。 だから雷は空に大量に溜まった電気を無理に地面に流そうとしているんだ。」 勇弥がそう説明した後、来た方向を指差す。すると指した場所に0と1が線のように並ぶ。 ゆっくりと線は伸びていき、最後には正六面体を作っていた。 それに勇弥が触れると、線の数値が変わりだし、囲んでいた空間にも0と1が波のように広がっていった。 何をしているかは正確には分からない。だが、だいたい想像はつく。 正義「大王、『雷』の準備!」 大王「わ、分かった。」 大王は驚いているのか、信じられないのか、少しつまりながら返事をする。 紫がかった黒い雲があの空間の上方に広がる。雷の準備は万端だ。 ―――その頃、向こう側では、【テケトコ】が空気の壁を百烈拳で破壊していた。 勇弥によって彼の知る最大値となった耐久も、この力の前では無力。 とうとう3つ目の壁も破壊され、次は襲うのみとなった。【テケトコ】がゆっくりと角を曲がると正義達がいた。 百烈拳、跳び蹴り、あるいは―――などと考えながら正義達に歩み寄る。 勇弥「今だ!」 正義「大王!」 大王「分かっている!」 【テケトコ】の頭上の黒雲にスパークが走る。まずい!そう思った頃には手遅れだった。 ―――所詮100km/h以上の速さで走れても、彼に敵う訳がなかった――― 勇弥「人々は考えた。もし空気の一部を導体にする事ができたら雷を操れるのでは、と。 それが半導体研究の始まりと言われている。そして、オレにはそれができる!」ドゴォォォ・・・ン テケトコ「あぁああぁあぁー!」ビリビリビリ 勇弥が作った正六面体の空間の中に電撃が走る。 分かった方もおられるだろうが、勇弥はあの空間の空気の電気伝導率を上げたのである。 そうする事によって大王の雷があの空間全体に広がるようになったのだ。 勇弥「へへん、名付けて『雷撃棺(ライトニング・コフィン)』!決まったね。」 正義「かっこいい・・・。勇弥くん、すごい!と、大王、そろそろ止めて。」 大王「(またあれか・・・。)分かった。」ピタッ シュゥゥ・・・ 雷が止まると、分裂した【テケテケ】と【トコトコ】が倒れていた。おそらくまだ生きているのだろう。 勇弥「おい、正義。いったい何を・・・?」 正義「いい?いくら殺されて辛かったからとはいえ八つ当たりするのは(中略)だいたい捜していたものが見つかったんだから(後略)」 やはりいつものお説教が始まった。【テケテケ】と【トコトコ】は早々に正座のような体勢をとっている。 何度も聞いている大王にとってはもう慣れた事だが、どうやら勇弥は初めてのようだ。 勇弥「まさか、いつもやっているのか?」 大王「あぁ。お人好しにもほどがある。」 勇弥「ま、それが正義らしいところなんだけどな。」 勇弥は自然と笑みを浮かべる。数分後、説教も終盤を迎えたようだ。 正義「―――だから、これからは良い都市伝説として人を助けたりする事。分かった?」 【テケテケ】と【トコトコ】は、どうやら頷いているようである。 正義「よし、じゃあもう行ってもいいよ。」 【テケテケ】は【トコトコ】の上に乗って【テケトコ】になり、廊下の向こうへ駆けていく。 途中、彼女は振り返って手を振った。かわいらしい笑顔で。 改めて考えてみれば、元はただの女子高生で、犠牲者の1人でしかなかったのかもしれない。 そして彼女の姿も、ゆっくりと、夜の闇に消えていった。 勇弥「一件落着、だな。」 正義「さてと・・・、もう晩御飯の時間だ!早く帰らないと。」 勇弥「俺ん家まで送ってやるよ。そこにならブックマーク置いてあるからワープできる。」 大王「屋上に瞬間移動した時の能力か。ネットのリンクの要領か・・・。 ん?という事はその能力でここに来たのか?」 勇弥「そうだけど、なんか問題でもあった?」 大王「では、誰がここの鍵を開けたんだ?お前の能力で開けたんじゃないのか?」 正義「そういえば開いてたっけ・・・。まさか、他に契約者が?」 勇弥「・・・ただの閉め忘れかもな。」 正義「それだったらがっかりだなぁ。いい友達になれると思ったのに。」 不意に出たプラス思考な発言に勇弥は笑い、3人は自宅へと帰るのであった。 ―――数日後、ある男が誘拐未遂で逮捕された。その時、その男がこんな事を言ったらしい。 “犯人「女子高生ぐらいの女が俺を投げ飛ばしたんだ!それから、逃げていたら、 前からその女の上半身が、鬼のような形相でやって来て、振り向いたら、女の下半身が、ぅわあぁぁー!」” ―――世界征服への道は遠い。 第4話「雷撃棺」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/faren_ency/pages/3527.html
登場シナリオ:エンゼルトゥーガ 種別:マスター 古代の大王。偉大な王であったが暴君と化した。キアムらと因縁があり不死の存在。 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3105.html
夏休みが終わり、学校もまた児童で賑わう、そんな日の出来事。 通学途中、少年は1人で歩いていた。いや、もう1人……。 正義「らんららーん♪ 今日から学校だー。」 大王「普通、学校とは忌み嫌われる存在じゃないのか?」 この少年、[黄昏(たそがれ) 正義(マサヨシ)]の横には、彼が契約した都市伝説、【恐怖の大王】がいた。 本来なら今頃、世界を支配して名の通り、恐怖の大王になっていたのだが……。 正義「え、なんで? 友達といっぱい話ができるじゃん。」 大王「お前はもっと、社会に対する反抗心を持て!」 正義が相手では流石の大王も歯が立たないようだ。 正義「ところで、なんで大王が ついてきてるの? 学校、行きたくないんでしょ?」 大王「いや、別に、お前の学校はどういう所なのかと思ってな。」 正義「ふーん。」 大王「(まったく。もしお前が死んだら、俺も死ぬんだぞ。) (家でゆったりしていたら死んだ、なんて大王の死に方じゃないだろ。) (そんな事を考えてたら、離れるのが怖くなるだろうが。)」 契約者が死ぬと都市伝説も死ぬ。その制約によって正義少年が気がかりなのだ。 そんな事を考えている内に、向こうから人が見えてきた。 正義「あ![ 勇弥(ユウヤ)]くんだー!」 どうやら正義の友達だそうだ。正義は向こうの少年のところへ走っていく。 無論、大王もその後を追いかける。 勇弥「よ、[正義(セイギ)]。どうだ?都市伝説は見つかったか?」 どうやらこの少年も都市伝説を知っているようだ。 大王はふと、正義少年と出会った時に、この少年の名前が出ていた事を思い出した。 正義少年は都市伝説の事を、この勇弥という友人から聞いていたのだ。 コイツさえいなければ、大王は心底憎んだ。 正義「それがねー。」 そう正義が言ったところで、大王が止めた。 大王「あまり都市伝説の事は、話さない方がいいと思うぞ。無用な混乱を招くだけだ。」 正義はつまらなそうな顔をしたが、おとなしく言う事を聞く事にしたようだ。 正義「べつに いなかったよ、都市伝説なんて。」 勇弥「本当か? いるはずなんだけどなぁ。」 大王「(だいたい、コイツは何処でそんな情報を仕入れてきたんだ?)」 夏休みの事を雑談している内に、正義達は学校に着いた。 正義が教室に入ると、急に少女が話しかけてきた。 奈海「[正義(セイギ)]くぅん!」 ふと大王が正義の顔を見ると、とても嫌そうな顔をしていた。コイツもこんな顔するんだな。 大王は少々驚いた。 そんな事も知らず―――あるいは知っててか―――少女は正義に抱きつく。 正義「やめてよ[奈海(ナミ)]ちゃん、暑苦しい。」 正義は奈海という子を引き離した。すると奈海はムッとなって正義に言う。 少女「だってしばらく正義くんと会えなかったんだもん。電話しても出てくれなかったしぃ。」 当たり前である。おそらくこの少女は、学校町に行っている間に電話しようとしたのだろう。 そんなに会いたかったのか、この少女は。 急に話題が変わり、勇弥はこんな事を言い出した。 勇弥「ところで。なぁ、知ってるか?【フォトンベルト】の話。」 奈海「なにそれ?」 【フォトンベルト】とは『2012年に地球はフォトンベルトに突入する』というもの。 フォトンベルトに突入すると強力な電磁波により太陽や地球の活動に大きな影響が出て 『人類の遺伝子構造が変化し人類が進化する』とも、『電子機器が使用できなくなる』とも言われている。 『20世紀末から異常気象や火山活動・地震が頻発しているのは、地球がフォトンベルトに入り始めたから』 ……という話もある。 という話を勇弥は簡潔に話した。 正義「へぇー、本当なの?」 奈海「まーた人類滅亡系の話? そんなの当たる訳ないじゃない。」 勇弥「ま、けっこう『ウソだ』っていう話も多いんだけどね。」 正義「ウソなの?」 奈海「当たり前じゃん! わたし気付いちゃったもの。人類滅亡系の話は、ぜんぶウソだって。 【恐怖の大王】も【2000年問題】も、けっきょく何もなかったし。」 大王「(おいおい、【恐怖の大王】はここにいるぞー。) (少年と契約していなければ今頃、俺はこの世界を……。) ん?【2000年問題】……、『2000年』?! 勇弥「【2000年問題】は、みんなが がんばったから、何もなかったんだけどね。」 奈海「だいたい2012年なんて8年も未来じゃない。そんなのいつか忘れられるわよ。」 2012年-8年=2004年 だから、やはり1999年ではないのか! 大王は遅刻していたのだ。 大王「(そんな、5年も遅れて来るとは……。【恐怖の大王】の名が泣くな……。)」 正義「(あれ?大王が外に行っちゃった。)」 大王はしばらく外で、たそがれる事にした。 正義は少し気になったが、急に奈海が話題を変える。 奈海「そういえば知ってる? この近くで【口裂け女】が出るんだって。」 勇弥「【口裂け女】? ベタな都市伝説だな。」 知らない人はいないだろうが、あえて説明させていただく。 【口裂け女】とは、大きなマスクをした女の事で、夕暮れに現れて通行人に自分の美しさを問い、 肯定した場合、『マスクを取り、耳元まで大きく裂けた口を晒し「こんな顔でも?」と問う』という話。 『鎌を持っていて……』というおまけもあるが。 奈海「正義くん、出会わないように気をつけてね。 もし出会っちゃったら、きっと正義くん…… 食 べ ら れ ちゃうぞぉー。」 正義を怖がらせたいのか、声色を変えてそういった。 いや、食べないだろ! そのクラスの児童は皆そう思っただろう。 正義「べつに、こわくなんか ないもん! もし見つけたら、ボクが たおしちゃうから!」 少し涙目の正義の口から強がりのような言葉が出たところでチャイムが鳴り、全員が席に着く。 そのまま特に変わった事は無く、下校時間となった。 勇弥とも分かれ、正義と2人きりになったところで、大王が問いかける。 大王「少年、あの少女はいったいなんなんだ?(窓から見ていたが)妙に話しかけてきたみたいだが。」 正義「奈海ちゃんは、保育所の時からずっといっしょなんだ。」 つまり、俗に言う幼馴染みというやつか。世の大人が聞いたら都市伝説扱いだ。 正義「でもね、ボク保育所のときに奈海ちゃんにお世話してもらっていた らしいんだよ。 ボクは、おぼえていないんだけどね。 そのせいなのかな? ボクの事、子ども扱いするんだ。 だからボク、奈海ちゃん あんまり好きじゃないんだ。」 聞けば聞くほどうらやましい、そう思われる方もおられるだろうが、大王は別のところに目をつけた。 大王「(嫌いな人間がいる。その程度の邪心だけで、人は悪に染まる事ができる。) (少年が本当にあの少女の事が嫌いなら、そこに付け込んで手下にできる!)」 正義「だからボク、奈海ちゃんを見返してやるんだ。 大きくなったら警察官になって悪い人をいっぱい つかまえて 『ボクは子ども じゃないんだぞ!』って言ってやるんだ!」 正義には付け込むスキは無かった。 正義は怒りや憎しみのエネルギーをバネにして、自分を伸ばすタイプの人間だった。 ダメだコイツ。早く何とかしないと!大王は作戦を練った。 ふと前見ると、大人の女性が1人で立っていた。そしてその女性が問いかける。 ???「私、きれい?」 どこかで聞いた言葉。 このテンプレート、顔に付けられたマスク、まさか! 大王は少年を守るために、逃げる準備をするが。 正義「……きれいだと思うよ。」 大王「(何?! まさかコイツ、本気で戦う気なのか?)」 女性がマスクを取る。想像通り口が耳元まで大きく裂けていた。やはり【口裂け女】である。 口裂け女「こ ん な 顔 でもぉ?」 正義「ぎゃあぁあー!!【口裂け女】だぁあぁー!!」 涙目になりながら悲鳴を上げる正義。 って、分からなかったのか!? 大王は見直そうとした事を後悔した。 【口裂け女】は例によって鎌を構え、正義を襲おうとしている。 大王「少年、逃げるぞ!」 大王は正義を抱えて飛ぶ。 飛ぶ、と言っても数十cm浮いているだけである。それでも走るよりも幾分か速い。 口裂け女「待ぁてぇぇー!」 だが【口裂け女】も速い。『100mを3~6秒で走るほど速い』という話もある。 誰だ、そんな設定を作ったやつ。大王は恨んだ。 大王も都市伝説だが、あくまで【恐怖の大王】。身体能力は常人よりも上なだけだ。 大王「くっ!こうなったら……。」 大王が念じると、大王の少し上ぐらいに紫がかった黒い雲が現れた。 【口裂け女】がその下を通ろうとした時、大王が叫ぶ。 大王「くらえッ!」ドゴォォォ……ン その瞬間、雲から雷が落ちる。雷は【口裂け女】の前に落ち、何とかひるませる事に成功した。 その内に大王は路地裏に隠れた。 大王「ふぅ……。少年、異常な怖がり様だったが?」 正義「ごめん、大王。幼稚園ぐらいの時に【口裂け女】の話を聞いて怖くて泣いちゃった事があったの。 それ以来どうしても【口裂け女】は……」 大王「なら何故あの時、質問に答えたんだ?答えなければ、追いかけられずに済んだんだぞ。」 正義「それは戦うためだよ。自分のニガテを克服したかったし、それに悪い都市伝説は倒さないとね。」 そうか。本当に戦う気だったんだな。しかし、いざ戦おうとなると怖くなったのか。 子どもの割にはまぁまぁ立派だ。ほめておいていやいやいやおかしいおかしい。 大王「お前、まだそんな事言っていたのか! だから俺は都市伝説と戦う気なんて」 正義「それが契約だから。ボクだって皆のために戦いたい。」 正義「だからお願い大王、ボクに力を貸して。」 目の前の悪は放っておけない『正義の心』。 それは裏を返せば、どんなに強い相手にでも立ち向かう『勇気』に変わるのかも知れない。 たとえ、本当は力があったとしても、戦う勇気が無ければ無力と同じ。 これは善であろうと悪であろうと、戦闘において重要な要素の1つ。 ここで否定するのは正義少年の成長に関わる。大王は決心する。 大王「(今回ばかりはその『正義』、買わせてもらおう!)いいだろう。貸してやる。」 正義「やった。」 正義は小声で喜ぶ。しかし、どうやってあいつを倒すのか。そもそも倒せるのかも分からない。 正義「ところで大王、さっき雷 落としてなかった?」 大王「あぁ、まだ俺の能力を言っていなかったな。俺の能力は『任意の物体を降らせる』だ。 つまり、降らせたいものを降らせる事ができる。さっきは『電気』を降らせた、という訳だ。」 正義「そうなんだ。」 人々が「何が降ってくるのか」考えた事により与えられた力。 色々なものを降らせることができるが、限界は分からない。 その能力で何ができるのか、正義は考える。 正義「ねぇ大王、前に『お菓子を降らせる事ができる』って言わなかった?」 大王「(誘惑の時のやつか)やろうと思えばできると思う。だが何をする気だ?」 正義「じゃあ『べっこう飴』を降らせてよ」 大王「はぁ?そんなもの後で」 正義「『べっこう飴』は、【口裂け女】の弱点だよ。」 大王「なるほど。好物に目を奪われている隙に雷を落とす、という事か。」 正義「待って。あれは当たりにくいんじゃない? もし外れたら次があるか分からないよ。」 何故分かったのだろうか。【口裂け女】に当てていなかったからだろうか。 確かに、雷は何故か命中率が低い。おまけに少々体力を使うようだ。 正義少年はまだ小さいその頭で考え―――そして閃く。 正義「そうだ!大王、―――できる?」 大王「ッ! 可能だが、よく考えたな。」 大王「しかし、1度も見たことも無いものを作れるかどうかはあやしい。『べっこう飴』の現物があれば……。」 正義「あるよ。」 ポケットから『べっこう飴』を取り出す。同時に、貰った時の事を思い出す。 (奈海「【口裂け女】は『べっこう飴』に弱いんだって。だからこれ。出会ったら、ちゃんと投げつけるんだよ。」) 正義「しゃくだけど、あいつのアメが役に立った。」 口裂け女「見ぃつけたぁー。」 入ってきたところから【口裂け女】が覗いている。しかし、狭い上に足場も悪い。飛べるこちらが有利。 正義は―――怖がっていないらしい。なんとか耐えている。 正義は大王に掴まり、大王は飛ぶ。速く。なるべく広く、何も無くて、人のいないところへ。 路地裏を抜けると、そこには河川敷が。広く、砂利になっていて、幸い人もいない。チャンス! 口裂け女「待ぁてぇぇー!」 【口裂け女】を河川敷に誘い込んだ。計画開始だ。 正義「よし、大王、『1つ目』いって!」 大王「了解。」 【口裂け女】の上、既に用意されていた雲から何かが大量に降ってくる。そう、『べっこう飴』の雨だ。 それを見た【口裂け女】は止まる。―――本能か、呪いか―――。『べっこう飴』に眼を奪われる。 口裂け女「アメぇ、アメぇぇぇ。」 想像通り、【口裂け女】がアメを拾おうとしている。 正義「今だ。[大王]、『次』!」 大王「分かっている!」 先ほど『べっこう飴』を降らせていた雲からまた何かが大雨のように降ってくる。 今度は液体のようだ。ただ、妙なニオイがする。 唯一分かったのは、『べっこう飴』が台無しになった事。 【口裂け女】はその身にかけられた呪いから開放された事である。 口裂け女「貴様ら……殺す!」 正義「大王!『最後』の!」 大王「了解!」パチン 大王が指を鳴らすと、雲から今度は火の粉が降る。 火の粉がチラチラと揺らめく。やがて、ずぶ濡れになった【口裂け女】の服に―――引火。 口裂け女「ギィヤァアァー!!」ボオォォ……ゥ 【口裂け女】が炎上した。これが[少年]の作戦である。 まず『べっこう飴』を降らせて気を引き、次の攻撃を絶対に当てる。 次に『ガソリン』を降らせる。これが最初でも良かったが相手の脚の速さから、確実に当てるためにこの様になった。 最後に『火の粉』を降らせてガソリンに引火させる。結果、【口裂け女】は火だるまになった、という訳だ。 これが小学1年生の発想か? コイツ、策士の才能があるかもしれない。大王は正義の才能に感動していた。 正義「おーい! もう2度と悪い事しないって言ったら助けてあげるよー!」 大王「(この甘ささえなければ完璧なのに)」 口裂け女「ふざけるなぁッ!喰い殺してやるゥゥゥ……!!」ボオォォ……ゥ だんだんと【口裂け女】の悲鳴は小さくなっていき、やがて聞こえなくなった。その後、すぅっと炎が消えた。 大王「(本当に人を食べるのか。)」 正義「どうか生まれ変わったら、いい都市伝説として生まれ変わりますように。」 正義は手を合わせて拝んだ。そんな事はしなくてもいい。大王は非情だ。 正義「そうだ。ガソリンで水、汚れないかな?」 大王「あぁ、問題ない。俺が作ったものは時間が経てば消えてなくなる。 それより、あんな作戦よく考えたな。見直したぞ。」 正義「えへへ。」 大王「その『力』を大切にな。そうだ、明日から俺が鍛えてやる。そうしたらお前も戦えるようになるしな。」 正義「本当!?やったぁー!」 大王「(こうやってゆっくり準備をしておけば、後で手下にした時に役に立つからな。)」 正義「ボク、悪い人を捕まえるためにいっぱいがんばるよ!」 うーん、道を間違えているようだが、まだ良いだろう。 今の内に鍛えておいて、隙を見つけて誘惑する。その日が来るまでゆっくり待つとしよう。 大王はそんな事を考えつつ、正義少年の家に帰るのであった。 ―――世界征服への道は遠い。 第2話「正義と勇気」―完― 前ページ次ページ連載 - 舞い降りた大王
https://w.atwiki.jp/hmnsxx/pages/16.html
全26回 あずまきよひこによる4コマ漫画 単行本は全4巻 日本のメディア芸術100選 マンガ部門 主題歌 OP:『空耳ケーキ』(作詞:畑亜貴/作曲・編曲:伊藤真澄/歌:Oranges Lemons) ED:『Raspberry heaven』(作詞:畑亜貴/作曲・編曲:上野洋子/歌:Oranges Lemons) らき☆すた と同ジャンルっぽい 少しだけ時代の差を感じる・・2002年だからかも OPテーマも現在のアニソンとは雰囲気が少し違う あずまんが大王一巻かった うっかり笑うと死にそうになる -- t (2007-10-22 17 29 06) 萌えを前面に押し出してないにもかかわらず 強い萌えを感じる・・・ なぜなんだ -- t (2007-10-23 21 19 20) それはおまいが萌えを強く求めているからだ -- 山じゅん (2007-10-23 23 11 49) おま 頭いいな -- t (2007-10-25 20 14 42) 無論!w -- 山じゅん (2007-10-25 23 06 21) サイトでサンプル見てきた てか、サンプルの癖して量多いぞ 萌え4コマの先駆けらしい。美水かがみも影響を受けた。 wikipediaより -- 山じゅん (2007-10-27 17 21 13) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/epicofbattleroyale/pages/637.html
その一瞬だけ過去も未来も消え去った。 『金色の王』と『海神』がぶつかり合う。 戯れにも見えた。死闘にも見えた。 その『勝者』の名は………… 「はい、オレの勝ち」 「……で、今回の要件はなんだ?」 「試してほしい奴がいる」 「そいつは誰だ?」 「少しばかり遠くにいる奴だが、呼び出せば来る。 何、ほんのちょっとばかし気になる奴だ」 「貴様がそこまでいうならば…… ……で、そいつのの力量の判断は俺がしていいのか?」 「構わねぇよ、それが誤りだったらそれは単なるオレのミスだからな」 「貴様にしては随分と弱気なことを言うんだな」 「オレはそんな単純なミスはしねーよ…… なんせオレの目が狂うはずなどないからな」 「………………そうだな」 黄金の王は天高く笑う。 海神は笑わず、ただ静かに見る。 この南の島でまたなんか起こる。 ◆ ◆ ◆ 「アタシの国でそんなことが……」 「色々あったけど楽しかったね、サバフェス!」 「はい!」 「アタシも行きたかったな……」 「今度は一緒に行こうね」 2018年の夏イベントを終えた立花たち。 しかし、そんな中イベントに参加できなかったサーヴァントが一体。 ハワイの大王、カメハメハである。 「……しかも、ペレ様が……」 「はい……」 「いや、まあ……そういうところあるから……」 目を泳がせるカメハメハ。 恐らくは生前にペレに出会ったことがあるのかもしれない。 それはさておきいなかった間に色々あった。 「アタシはあのセイバー……渡辺綱さんを抑えるのに必死でしたからね」 「それはご苦労様でした」 「今回は碓井さんが一緒でしたからね」 召喚してから案の定、ほぼ毎日のように行われる茨木童子と渡辺綱の命懸けの追いかけっこ。 それを大体止めるのが、頼光さん(影の風紀委員)か金時か碓井さん、たまにカメハメハ。 その光景を酒を呑みながら、楽しむのが大体酒呑童子。 「ト〇とジ〇リーみたいだよねー」 「あと最近はあの眼つきのやたら悪くて無口なアーチャーさんが……極々稀に。 でもあの人は一体……」 「ああ、あの人だけは……うん」 『……ここに奴がいるのであろう? ならば、もしもの時にだけ呼べ……! だが、心配するな、お前が呼べば俺はお前のもとに行く……それだけは約束する』 そう言って、カルデアにいるのにほぼ見当たらない。 そのアーチャーの標的は大体カルデア悪巧み四天王(四天王だが四人とは言っていない)と絡んでることが多い。 『アタシに何か用? そう、用がないなら別にいいでしょ? ほら、アンタだってアイツにアタシごと射抜かれても困るでしょ?』 『意外にに優しいんですね』 『な!? アタシが優しいわけないじゃない!』 そして、彼女はいつも大体カルデアのボイラー室の近くにいる。 何を考えてるかは……未だに分からない。 「まあ、カルデア内だし事件が起こってもたぶん大丈夫だと……」 「そうですね」 藤丸、マシュ、カメハメハの三人でそれなりにのんびりしていた。 と、そんなところでダヴィンチちゃんから 連絡が入った。 そんなわけで久々に管制室まで向かう、三人で。 「来たね」 「来ました」 「ダヴィンチちゃん、今回は……?」 「うん! 今回もまた聖杯回収だね」 「やっぱりですか、それでハワイに行くんですね!」 「……カメハメハ、頑張りたいのは分かるけど私の説明の仕事取らないでね」 カルデアスはハワイのところ指示していた。 それを立花に付いてきていたカメハメハがすでに見ていた。 「まあ、今回もハワイなんだけどね」 「なら、やはり! アタシの出番ですね!!」 というわけで、早速ハワイにレイシフトしたのであった。 ◆ ◆ ◆ 「ん~~~~やっぱ熱いな~~~~」 !? 「で、貴方はどちら様?」 「俺ちゃん? 俺ちゃんはアレだ。 サーヴァント・ユニヴァースにおいては最強の実業家の小市民らしいんだぜ~~~」 二人でレイシフトしたのだったが、その場には三人いた。 その男は! 血生臭い白衣にグラサン。 そして、何よりも胡散臭い喋り方。 そんな男! 「いや、何でいるんですか、ノーベルさん……」 「おっと、今の俺ちゃんは一般サーヴァントの布哇のバーサーカーだ。 俺ちゃんもハワイ観光に行きたかったから着いてきたぜ~~~~~」 (うーん、相変わらずの狂化EX……) 「それと栄誉ある俺ちゃんの賞を辞退したアホ二人を面白がってたらなんだか。 追いかけられてたからな、煙巻くついで、だ」 『『なんだと、コノヤロー!?』』 どこかから紳士と獅子の声が聞こえてきた気がした。 そんなわけで、バーサーカーのアルフレッド・ノーベルがいた。 「いやいや、貴方もカルデアのサーヴァントでしょ?」 「実のところはそうなんだぜ~~~~」 『……全く君って男は……』 「ダヴィンチちゃん、そう後ろ向きに捉えるなって~~~ 頭数は多い方がいいだろ?」 「確かに……けど、ノーベルさんじゃん?」 「そうだぜ、ノーベルさんだぜ?」 「あのお強いんですよね?」 「いや、俺ちゃんはどう考えても最弱クラスのサーヴァントだぜ?」 「ダメじゃないですかー!!!」 「というわけで、カメハメハちゃんがこの場で唯一無二の最大戦力だぜ~~~」 「さ、最大戦力……! なんという良い響き……!」 仕方ないからこの戦力で聖杯回収に行くことになった。 戦力的には得には問題なかった。 しばらく、ハワイを進む。 ルルハワではないこのハワイ島を。 観光しつつも、巡っていく。 「やっぱり違う島ですね……」 「何が違うの?」 「いえ、アタシの記憶にあるハワイ島はもう少し寂れた感じですね……」 その最中、街を見て、いつもと少々違う声で立花と話す。 確かに彼女がいた世界のハワイとこのハワイは違う。 『剪定事象の一つ、その可能性から生まれた彼女』。 ハワイの大王と言ってもまだまだ若い。 平和とは言えないこの島々を統一したという偉業。 その道中は決して平坦ではなかったであろう。 そんな時である。 「おっと、多分あっちだぜ~~~」 「本当ですか!?」 「俺ちゃんの勘はそこそこに当たるし、それに……さっきから何かに観られてる」 ノーベルの勘はともかくとして。何か視線を感じたのは確かだった。 砂浜の方に絶対何かいるのは確かであった。 そして、それはヤシの木の上にいた。 それは………… ――――美しき赤き怪鳥。 ⇒「ニワトリの亜種?」 「なんだ、あれ!?」 「あれはアパパネですね」 「アパパネ?」 「アカハワイミツスイの英語訳だぜ」 「なるほどね」 「ハワイの固有種の鳥ですが……ちょっと大きいですね」 「ニワトリじゃないのか……」 「ニワトリじゃないですね」 「んじゃあ、とりあえず一狩りしようぜ~~~」 あのアパパネに敵意があるのはなんとなく分かる。 ヤシの木の上から鋭い目でこちらを睨んでいる。 そして、飛翔からのこちらに向かって加速。 速い。 その速さで何体にも分身してた。 サーヴァント並みに素早い。 「全部、避けて、叩き落とすだけッ!」 一匹。二匹。三匹……。 カメハメハは大槍でどんどんと叩き落とす。 その速さはアパパネとそう変わらない。 「俺ちゃんには当たる~~~!」 「アンタ、本当に何し来たんだよ!!(カルデア制服で緊急回避)」 「だから、ハワイ観光に」 「あれ、マジだったの!?」 ノーベルは避けた。 立花が避けさせた。 「銃弾が当たらないからね」 「そうですか……!」 なんなんだ、アンタは一体。 「これでラスト!!」 アパパネの分身達は消える。 恐らく本体に攻撃が当たったのだ。 その攻撃が当たった最後の一体は。 何事もなかったようにヤシの上に戻った。 その光景にこの場の全員が目を取られた。 その刹那だった。 閃光のように『それ』はその場を駆け抜けた……。 「そこの貴様は邪魔だ、そこ退きな……!」 「ん?」 そして、一瞬だった。 閃光のように放たれた一撃。 パンチを放ったのか、キックを放ったのかこの場の誰もが検討が全くつかなかった。 その一撃でノーベルは大きく吹っ飛んだ。 「ノーベルさん!?」 「急所は外した。今の一撃で消滅はしないだろう」 「貴様……!」 アパパネはまた飛翔し、その男の右肩に乗った。 いや、男かもしれないし、女かもしれない。 定かではない。 「クーの槍を持つ少女……お前はカメハメハか?」 「そうだ!」 「お前は一体……」 ⇒「何者だ!」 右腕にアパパネが乗っているモノ。 背後には烏賊もしくは蛸のような触手。 龍を思わせるような鱗を纏った肌。 『異形の怪物』 そう思わせるには十分であった。 「カナロア……クラスはそうだな、フォーリナーだ。 ハワイの四大神の一柱を務めさせていただいている」 カナロア。 立花も名前だけはどこかで聞いたことがある。 魔法と冥界の神の側面を持つ者だと。 『この反応はフォーリナーです!』 「あ、うん……今聞いたよ」 『間違いなく神霊クラスのサーヴァントですよ!』 「なんでそんな奴が……」 カナロアはカメハメハと立花を観察するように観る。 ビビりそうになったが、それを抑える。 「……戦う前からあーだこーだと口上を垂れる必要もない。 ただ圧倒し、力でねじ伏せる……それだけだ」 凄まじいまでの闘気。 カメハメハが戦った中で桁が違う。 底が知れない。不気味さすらある。 「戦う前……つまり……」 「行くぞ、カメハメハを名乗る少女よ……!」 「そうか。どんな相手だろうとアタシは負けない……!」 両者、高速で移動していく。 一気に距離を詰めて、接近戦を始める。 「武器は?」 「必要ない」 カメハメハの振るう大型槍を躱して、カナロアは蹴りを放つ。 まさに文字通りの神速。神脚。 「引かぬか」 「タイマン勝負に必要なのは……気合いだ!」 「その心意気はよし……だが……!」 「ハワイの海神の神技に届かすには少しばかり青い……!」 大波の如き連打。 拳法使いとはまるで根底が違う。 ただ単純に純粋な力と速さで押してくる。 「我が名をその魂に刻み込めッ! 『龍王(ロード・カナロア)』ァァァッ!!!」 さらに加速していく。 荒海に飲まれるような感覚に陥る。 蹴りのラッシュで連撃していく。 初撃、二の足、三の足と……防ぐことも反応することもできないほどの乱打。 「終いだ……!」 最後の一撃。 大きく、大きく吹っ飛ばされた。 まるで風に舞う羽根のように軽々と。 そして、砂浜に叩きつけられるような形で落ちた。 「カメハメハ!!」 「大丈夫です、まだ……やれます!」 「今のを耐えたか」 「無論です……大切なものを守るためなら何度だって立ち上がってやる。 たとえ相手がカナロア神……貴方だって……!」 カメハメハは砂浜に槍を突き立て、また立ち上がる。 その眼はカナロア神がよく知っている男と同じ眼をしていた。 「………戦うことに、安心など求めるな」 「それは無理な話ですね」 「やはりな、その槍を持つ者ならばそう答える。 なんせ戦いの神のクーの奴の……いや、クーそのものだからな」 「そんなことは知っている! それよりも今回の案件を解決してカルデアに帰る、それだけだッ!」 確かに今、間違いなく…… ――――『最強の大王』がその地のその場に降臨していた。 「そうか、ならば終いだ」 強く砂浜を蹴る。 砂塵が舞い、カナロア神の姿が一瞬で消える。 もはや見ることも敵わない。 敏捷EXくらいあるだろう。 そこにいるのかすらわからないくらいにまるで消えたように。 『……ッ、先輩!?』 「どうしたの、マシュ!?」 『フォーリナーの反応が……完全に消失しました!』 「な、なんだって!?」 「逃げた……?」 その数分後であった。 砂を蹴る足音が聞こえてきた。 「おう、俺ちゃんが一人で頑張って聖杯回収してきたぜ~~~~」 !? ◆ ◆ ◆ 少々、時間は遡る。 「ハッハッハ、あのカナロア神に蹴っ飛ばされてなお無傷で生きてるなんてやるね」 「俺ちゃんの幸運はEXだからな~~~~ 俺ちゃんの飛んだ方向に『たまたま』お前さんがいたからね」 ノーベルさんは無傷だった。 いや、見た目は無傷だが肉体のダメージは割と深刻なものだった。 「で、お前さんが黒幕か?」 「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」 「随分と曖昧な答えだな~~~~~。 ――――つか、あの嬢ちゃんと同じ槍を持ってるというと…アレか?」 「まあそうだな、オレはルーラーだ、オレの国では必然的にそうなる」 「ほう、金色の王ってのはどの時代どこの国でも大差なく変わらんらしいな~~~」 圧倒的な自信。 黄金の王が笑う。 「で、やるかい?」 「いんや~~俺ちゃん、戦いは不得意なんでね~~~」 「賢明な判断だ、なんせここで一番強いのはオレだからな」 「ほぉ~~ん、あのフォーリナーよりもか?」 「そうだ、バーサーカー……いや、『アルフレッド・ノーベル』」 真名がバレている。 特に何もしていないのに。 そして、ノーベルはスタンした。 「真名看破スキルでの拘束かよ~~~。 はぁ~~~これだからルーラー連中は~~~」 「アンタのダイナマイトの威力じゃこっからあっちに攻撃が当たっちまうだろう?」 「ご名答、当てることも可能だ、なんせ俺ちゃんは稀代の天才だからな」 「だから、邪魔されたら困る」 黄金の王は見届ける。 カメハメハとカナロア神の戦いを。 そこでノーベルはピンときた。 自分の勘を過信しまくってるので分かった。 「しかし、コレで本当に来るなんてな」 「? そいつは~~~!」 その手には黄金の杯。 間違いなく聖杯。 「マカヒキで使う杯がどうやら聖杯だったらしい」 「んじゃあ、その聖杯くれ」 「ああ、いいぜ」 「!? いいのかよ~~~」 「必要なのであろう? それにオレには必要ない」 黄金の王は聖杯をノーベルに譲渡した。 特に何事もなく。 「レイデオロさんよ、サンキューな~~~~!」 「レイデオロ……『黄金の王』か、中々カッコイイな! キングであるオレを表すには丁度いい! だが……」 「いや、知ってるよ、お前さんの真名くらい……どうせあのお嬢ちゃんと同じだろ?」 「うむ」 そして、ノーベルは聖杯を入手し、立花たちのもとに戻ったのであった。 ◆ ◆ ◆ こうして、なんやかんやで目的を果たして果たしてしまった。 「目的は果たしたし、これで帰れるね……」 「…………はい」 「おっと、不完全燃焼は不味いぜ? 帰ったら……」 「トレーニングに行きますよ……! Xさんやえっちゃんさんと一緒に!」 「俺ちゃんはパスな~~~~そういうのは柄じゃねぇし~~~。 でも、一つ言っておくがちゃんと休めよ」 「言われなくても……わかってますよ!」 課題は山積み。 立ち止まってなどいられない。 だから、もし次に相対することがあるならば…… (今度は負けない……!) 小さな王は決して折れない。 自分を曲げない。 それだけは絶対に貫く。 そう決めたのであった。 特異点に戻る ◆ ◆ ◆ 「で、強かったか?」 「見所はあった。資質も悪くはない」 「そりゃあ、異世界のオレだからな!」 「女の子になってるんだぞ、異世界のお前……」 黄金の王は笑う。 海神は呆れたような表情を浮かべる。 赤き怪鳥も笑ったような鳴き声で鳴いた。 「しかし、力試しくらい何故自分でやらない」 「? それくらい言わなくても分かるだろ?」 「この国で一番強いのは――――オレだからな!」 その自信は決して揺らぐことはない。 それが自分を貫き、王になったこの男なのだから。