約 6,361 件
https://w.atwiki.jp/kenkaku/pages/67.html
新当流 開祖:塚原卜伝 直弟子:師岡一羽(一羽流)、斉藤伝鬼坊(天道流)、足利義輝、武田信玄(高坂甚太郎の主君)、上泉信綱?、林崎甚助? 分派:一羽流、天道流、天然理心流など 一羽流:諸岡一羽(開祖)、三合目陶器師(※) 天道流:斉藤伝鬼坊(開祖)、座波間左衛門 天然理心流:近藤勇、土方歳三、沖田総司など ※神州纐纈城作中では諸岡一羽は飯篠長威斎の弟子とされており、一羽流と新当流は親子ではなく兄弟関係になる ちなみに、神州纐纈城作中で塚原卜伝と三合目陶器師は互いの正体を知らぬまま何度か対決している 新陰流 開祖:上泉信綱 直弟子:柳生宗厳(柳生新陰流)、丸目長恵(タイ捨流)、足利義輝、奥山休賀斎(奥山神影流)、塚原卜伝(神州纐纈城内の設定) 分派:柳生新陰流、タイ捨流、奥山神影流、小栗流、神道無念流など 柳生新陰流:柳生宗矩(江戸)、柳生十兵衛(江戸)、柳生連也斎(尾張)、徳川吉宗(江戸) タイ捨流:東郷重位、奥村五百子 奥山神影流:中村主水 小栗流:坂本龍馬 神道無念流:斎藤弥九郎、仏生寺弥助(弥九郎の弟子)、芹沢鴨、伊東甲子太郎、新見錦 中条流 分派:富田流、鐘捲流、一刀流、巌流、二階堂平法? 富田流:富田勢源、鐘捲自斎(鐘捲流)、佐々木小次郎? 鐘捲流:鐘捲自斎(開祖)、伊藤一刀斎(自斎の弟子)、佐々木小次郎? 二階堂平法:鵜堂刃衛 一刀流 開祖:伊藤一刀斎 直弟子:小野忠明(小野派一刀流) 分派:小野派一刀流、溝口派一刀流、中西派一刀流、北辰一刀流など 小野派一刀流:小野忠明(開祖)、中村主水、山南敬助、岡田以蔵 溝口派一刀流:斉藤一? 中西派一刀流:白井亨(天真伝兵法)、千葉周作(北辰一刀流) 北辰一刀流:千葉周作(開祖)、千葉定吉(周作の弟)、清河八郎(周作の弟子)、山南敬助(周作の弟子)、伊東甲子太郎、 坂本龍馬(定吉の弟子)、千葉さな子(定吉の娘) その他:細谷源太夫(何派か不明) 示現流 剣士:東郷重位(開祖)、久慈慎之介、中村半次郎(小示現流) 無外流 剣士:辻月丹(開祖)、秋山小兵衛、斉藤一?
https://w.atwiki.jp/kfushimi/pages/31.html
奥山さんの信者・・・のはずであるが、奥山さんを炊拝(崇拝ではない)してみたり、にわかと罵ってみたりと散々なことをする男。ニンジャスレイヤーが広まったのもこの男が原因。しかし、なんやかんやでワユさんに次いでこのメンバーでの良心であり、癒し系の一面もある不思議くん。
https://w.atwiki.jp/mayshared/pages/947.html
ラノで読む 0 少年は世界を嫌悪していた。 なぜこんなにも世界は醜いのか。 なぜこんなにも大人は汚いのか。 なぜ正しい人間が死んでいくのか。 なぜ自分は無力で小さな子供なのか。 なぜ人は人を傷つけるのか。 なぜ差別があるのか。 その全てに疑問を持って生きていた。 どれだけ正義を叫んでも、結局自分は世界を変えることができない。 何を言っても子供の戯言、世間を知らない子供のワガママで済まされてしまう。 何も出来ないで、ただ布団の中で悔し涙を流すだけだ。 そんな自分にも世界にも少年はうんざりしていた。 だから少年は何もかもを諦めた。 世界も、自分も、全てを投げ出そうと思っていた。 荒神の手異聞 リトルクラウンサーカス 1 視界に映るのは、席に座る子供たち。それを囲うのは真っ赤なテント。毒々しいまでにカラフルな装飾のされたそのテントの中は、どこかパノラマのように不思議な空間を作り出している。 彼はその舞台の中心でスポットライトを浴びていた。派手な七色の服に、顔は白塗り真っ赤なペイント、頭には魔法使いの帽子のような又の分かれた奇抜な帽子。 彼はピエロだった。このサーカス団の一番人気である。 この舞台の上でおどけたように大げさなアクションを振りまき、観客席の子供たちを笑いの渦に巻き込んでいた。 だがそんな観客たちの笑顔に囲まれながらも、彼自身は表面上だけしか笑っていなかった。 (くだらねー。一体俺はいつまでこんな仕事やってりゃいいんだ) 彼の名前は葦原《あしはら》悠介《ゆうすけ》。もう三十を越えているのに、ずっとこんな風にサーカスで働いていいのかいつも悩んでいた。勿論最初はサーカスというものに憧れ、夢を持って入団した。 厳しい下積みを経て、ある種花形でもあるピエロの役を貰うことができた。だが、夢も叶ってしまってそれが“日常”になってしまえば一気に色あせてしまう。 ただ毎日の縁起を業務のようにこなしていくことに葦原はうんざりしていた。 情熱がなくなった、簡単に言えばそうなのだろう。 この葛谷《くずや》サーカスはいつ潰れてもおかしくはない規模の小さい劇団だ。そもそも今の子供たちはサーカスというものに興味がないのだろう。今回も空席が目立ち、チケットは売れ残っている。テントも小さな物のため、あまり派手な出し物は出来ないせいかもしれない。今回も町の空き地で無理を言って公演させてもらっているのだ。誰も彼らのような名の知れないサーカスを望んではいない。 だが今いる子供たちはみんな笑っている。 それは葦原のピエロとしての技量があるためであった。例え少ないとしても、そこにいる観客を満足させることが出来る葦原はやはり才能はあるのだろう。しかしもう、子供たちの笑顔見ても葦原の心に何の感動も与えなかった。ただセオリーどおりのことをこなしていくだけである。 だが、そんな子供たちの中で、一人だけ葦原の目に留まった少年がいた。 七、八歳程度の小さな男の子。一見すると女の子のようにも見えるほどに線が細く弱弱しい。どこか作り物染みた、まるでお人形のような少年だった。その少年が葦原の目に映ったのは彼が笑っていなかったからだ。 顔を伏せ、目をこちらに一切向けていない。頬をぴくりともさせずに、まるで時間が過ぎるのを待っているかのようだった。 (なんだあのガキ。なんのためにここに来てるんだ。なんだか調子狂うな) 葦原は心の中で毒づきながらもその少年が気になっていた。どんなジャグリングも、どんな玉乗りも、どんな客弄りも、どれだけおどけても彼は一切笑わなかった。 (絶対笑わせてやるこのクソガキ――!) 葦原は、年甲斐もなく意地になっていた。 ※※※ 少女は鼻の先に冷たいものが当たったのを感じ、ふっと空を見上げる。 真っ暗な夜の空から白い粒がたくさん落ちてきていた。冷たい空気に晒され、その白い粒は町の地面に落ちていく。 「雪――か。これは積もるかもね」 その少女は白い吐息をはきながらそう呟いた。 長い黒髪を後ろに結い、ポニーテールにして揺らしている。しかし毛先はこの雪のように白くなっていて、どこか神秘的な雰囲気もかもし出していた。その左手にはブレスレットが輝いている。 彼女の着ているブレザーは双葉学園という、|化物《ラルヴァ》と戦う異能者を育てる機関の制服であった。 彼女の名は難波那美《なんばなみ》。その双葉学園の高等部三年生である。 『那美ってば雪を見るの初めてかしら?』 その声はそこに那美以外の人間はいないのに聞こえてきた。その声は那美の頭に直接話しかけているのだ。那美はいつもの通りに適当に相槌を打つ。 「いや、学園に来る前はそれなりに見たわ。ただ、都心の学園じゃ見ることはないから少し得した気分ね。あんたこそ雪を見るのが初めてじゃないのミナ?」 ミナと呼ばれた彼女の頭の中の人物はくすりと笑って 『私は何百年も生きています。雪だってたくさん見ました。こんなのよりもっとすごい吹雪も』 と言い返した。 「私より人生経験抱負だもんね」 『おばさん扱いだけはやめてもらえるかしら』 二人は頭の中でそう笑って対話していた。 これは那美がおかしい人物なので断じてない。那美の中にミナという存在がもう一人いるのだから。 だがそれは二重人格ではなく、ましてや人間でもない。 ミナはラルヴァだった。那美に取り憑いている(この表現が的確かどうかは不明)ラルヴァだ。那美の左手は事故によってラルヴァと融合してしまった。 それゆえにそのラルヴァの意思であるミナが彼女の精神に宿っているのだった。だから那美はラルヴァの力を制御するために四六時中左手に拘束具《リミッター》であるブレスレットをつけている。 ラルヴァに寄生される人間など珍例なため、学園にモルモット扱いされているものの、研究者であり両親をなくした彼女の後見人である我妻啓子《あがつまけいこ》のお陰もあって、今の彼女はそれに対して不満は無かった。 だが、たった一つ、今不満を感じていることがある。 「まったく、なんで私が裏切り者をとっ捕まえなきゃならないのよ」 それは彼女に課せられた任務だった。 学園から命じられた特別な任務。 それは学園を抜け出した生徒を追いかけ、捕まえること。ただ脱走しただけならば、刑務所などではないのだからそんな風に大げさに刺客を送ることはないだろう。 だがその脱走した生徒は異能者だった。それもとてつもなく強力で凶悪なもの。 その生徒はカテゴリーFと呼ばれる規格外の力を持った異能者だった。世界に害を及ぼしかねない力を持った存在。最悪であり災厄の力。 その生徒は何人もの生徒や教員を殺し脱走したのだ。そんな強大な力と凶悪な力を持った人間が世界に放たれてしまった。 並みの異能者では太刀打ちなど出来ない。そこで“|荒神の手《ゴッドハンド》”と呼ばれる力を持つ彼女がその刺客として送り込まれていたのだ。 ラルヴァを倒すための機関が人間を相手にするなんて皮肉なことだ。那美も人間を相手にするこの任務を最初は受ける気は無かった。だが、化物と融合し、半ばお情けで飼われているような自分の立場でそんな風に断れるわけもない。 (先生に迷惑をかけたくないしね――) 自分が何か問題を起こせばきっと、恩人である我妻にも害が及ぶだろう。それだけは避けたかった。そんなことを本人に言えばきっとビンタでもされて説教されるのだろうが。 「ともかく、その生徒がこの町に逃げ込んだって情報が確かなら、ここで決着をつけてやるわよ」 那美はポケットから生徒手帳を取り出した。だがそれは普通の生徒手帳ではなくあらゆる情報やラルヴァの感知機能のついたハイテクな端末である。 そこから那美は任務に必要な情報が入ったファイルを開く。 すると、そこには一人の女生徒の顔写真とプロフィールが出てきた。 〈早乙女玲子《さおとめれいこ》〉 そう名前欄に書かれている。前髪を揃えている艶やかな黒髪に、綺麗な顔立ち。一見美人できっと異性に好かれるのだろうと思えるのだが、那美はその彼女の目を見て、鳥肌が立つのを感じた。 見覚えのあるその瞳。 深淵のようなどろどろと黒く濁った瞳。 それは世界を憎む者の眼だ。 かつて自分がしていた眼。事故に合い、ラルヴァに寄生され、視界に映る全てを憎んで、何もかもを壊したいと思ったあの日の自分の目と同じ。 恐らく自分も、我妻に会わなければこんな眼をしたまま実験体として死んでいたのかもしれない。そう思うと那美は玲子を他人のように思えなかった。 それまで彼女は優等生らしく、表向きは今まで何も問題行動を起こしたことはない。だが、数週間に何の前触れもなく異能が覚醒し、何人もの命を奪っていった。 何を思い、何をもってして玲子が人を殺して、逃げ出したのか。それは那美にはわからない。きっと、理解できないだろう。 だが、それでも那美は任務としてではなく、純粋に玲子の凶行を止めたいと思っていた。そのことを彼女は自覚していないが。 『早く見つけないと大変なことになるでしょうね』 「わかってるわよミナ」 雪の降る町を彼女はマフラーを巻きながら歩いていく。この寒さだ、持久戦になるのは避けたい。体力が人並み以上とはいえ限界がある。 だがそれも玲子も同じのはず、いや、どこか温かい場所に隠れているのかもしれないが。ともかく一般市民に被害を出させるわけにはいかない。 那美は端末にインストールされている魂源力《アツィルト》感知ソナーを展開させる。魂源力に反応するものだが、せいぜい半径二十メートル以内程度の異能者を曖昧に感知するだけなのであまり当てには出来ない。 那美は辺りを見回す、なんてことのない住宅街。同じような家が規則正しく並んでいる。夜の闇に照らす家の窓から漏れる光は、こうして一人で歩いている那美を少し寂しくさせていた。 『なに、那美ったらホームシックかしら?』 「そ、そんなんじゃないわよ。ただ寒いし早く帰りたいなーって。だから早く終わらせるわよ」 『はいはい、そういうことにしておきましょう』 「本当だからね、先生に会いたいとか思ってないからね!」 そうミナに頭の中で話しかけながらずんずんと那美は歩を進めていく。すると、何だか騒がしい音が聞こえ、角を曲がったところが明るく照らされていた。 那美はなんだろうかと急いでそこに向かうと、空き地にサーカスのテントが張られていたのだった。 寂れている看板には“葛谷サーカス”と書かれ、中から笑い声が聞こえてくる。 「わあ、サーカスだ! 初めて見た!」 那美が思い描くようなサーカスのテントよりも大分こじんまりとしているが、それは間違いなくサーカスのテントであった。 生まれてはじめてみるサーカスのテントを前にして那美は少し心が躍っていた。まるで幼い子供のように目を輝かせている。そんな珍しい一面を見せる那美に、ミナは微笑ましそうにこう言った。 『中入ってみる?』 「え、いや、でも。早乙女の奴を追わないと。私たちは遊びに来たわけじゃないし……」 那美はなごり惜しそうにテントを見つめるが、この間にも玲子の脅威が町に迫っていることを考えるとのんびりしていられない。それにチケットもないのだから入ることはできないだろう。 「うう、さよならサーカス!」 那美は諦めて、そう言いながらテントの前を走り去っていく。 ※※※ 早乙女玲子は夕食を楽しんでいた。 この町の住宅街のなんでもない一つの家、その家のリビングで玲子は椅子につきながらテーブルの上のハンバーグを食べていた。 「なかなか美味しいわね。他人の家の料理って癖があるからあまり合わないと思ったけど」 長い髪を耳にかきあげ、玲子は美味しそうにハンバーグを口に運んでいく。 「空腹は最高の調味料ってところかしら。温かいお味噌汁なんかあったら最高だったんだけどね」 料理で寒さを癒すことはできないので、玲子はエアコンのスイッチを入れて暖房を入れ始めた。 「これでよしっと」 そう言い再びハンバーグを食べ始める。 玲子はとてもリラックスした様子でこの家でくつろいでいる。だがここは彼女の家ではない。まったくの赤の他人の家であった。 「しかし、この臭いはどうにかならないのかしら」 そう独り言を呟き、玲子はリビングに転がっている“もの”をその冷たい眼で睨みつけた。 そこにはこの家の住人である夫婦と、そしてまだ小さな子供が床に転がっていた。だが眠っているのではない。 彼らの眼や口といった穴という穴から血が洪水のように溢れ出ていた。どうみても絶命している。とてつもない苦しみを味わったようで、その死に顔は壮絶なものであった。血の臭いが混じった死臭が部屋に充満している。 そんな死体が転がる中を、玲子はまるで、せいぜい虫が死んでいるくらいの調子で夕食を進めている。この彼女が食べているハンバーグもこの一家の夕飯なのであった。玲子は学園から逃れた後に、空腹を覚え、この一家を玲子の持つ異能《ちから》で皆殺しに、その空腹を満たしたのだ。 ただ食べ物を食べるためだけに、人を何人も殺す。それが早乙女玲子のスタンスであった。もはや彼女の心は人間のものとは一線を隠してしまっている。人間が持ちえる倫理観は彼女に通用しない。 「にゃー」 そんな死体の転がる凄惨な空間の中に、間抜けな鳴き声が響いた。 玲子がその方向に眼を向けると、子猫が一家の死体を見つめて不思議そうに首をかしげている。主人たちの死を理解できていないようであった。 「飼い猫か。おいで、ほら、お食べ」 玲子はハンバーグの切れ端を投げてよこした。猫は嬉しそうにそれにがっついている。玲子はそれを愛おしそうに眺める。 「動物はいいわ。人を裏切ったりしない。嘘もつかない。人間なんて、みんな死んじゃえばいいんだ」 玲子はそう呟きながら、ふと、外が騒がしいのに気づき、少しだけ窓のカーテンを開けた。まだこの一家を殺したことを誰にも気づかれてはいないだろう、そういう自信はあったのだが、それでも念のため彼女は外を覗き見た。 すると、少し離れたところからテントの先っちょが目に入る。 「サーカス? こんな時代に?」 そのサーカスのテントから子供たちの笑い声が聞こえてきた。 それを不快に思いながら、玲子はこの家に置いてあったジャンパーを着込み、そのまま玄関に向かう。 「うるさい声ね。まあいいわ。私は私のやるべきことをやるだけ」 玲子は悪魔のような微笑を浮かべ、雪の降る町へ赴いた。 2 葦原がどれだけ道化の演技を続けても、少年は笑うことがなかった。 もう自分の演目の時間も終わりに近づいている。彼に出来ることはもう何も無い。裏で猛獣使いの吉田が「時間過ぎてるぞ、そろそろ交代だ」と、声には出さず口の動きだけで葦原に伝えた。読唇術を心得ている葦原はそれを理解する。だがまだ変りたくはなく、それを無視し演劇を続けようとした。 (こんな中途半端に終われるか。あのガキだけまだ一回も笑ってない) 葦原は自分でもわからない感情に突き動かされていた。たった一人の少年のために必死になっていた。なぜだろう。少しだけ昔のような熱を取り戻しているかのような感覚を葦原は覚えていたのだ。 一つ一つの芸に身を入れ、感情を込めて演技を進める。 それでも少年は無反応だった。光の無い焦点の合わない瞳でぼーっとこちらに顔を向けているだけ。彼の周りを見ても、彼の親や友達は見当たらない。ならなぜ少年はここに来ているのか。なぜ楽しんでもいないのにわざわざサーカスに足を運んだのか。葦原は少年のことが気になってしょうがない様子である。 だが、それに見かねたシルクハットの団長がとうとう止めに入ってきた。 「さあお調子者のピエロの演技はこれで終わりだよ。さあ、お次は猛獣使いによる火野枠繰りです! お楽しみに!」 そう言って葦原を奥へと下がらせた。団長の判断は正しかった。長い時間していたため、もう既にピエロの演技に子供たちは飽きはじめていたのだから。 それに気づいた葦原は、大人しく控え室に入っていく。最後に横目で少年のほうを見るが、やはり猛獣使いの出し物を見ていても彼の感情に変化はないようであった。 (まったく、最近のガキはよくわかんねーな) 彼は控え室では道化の笑顔を解き、ごく普通の三十歳の男に戻っていた。派手な格好や派手なメイクはそのままだが、このすれた表情のこの男があの舞台上のピエロと同一人物だとはとても信じがたいだろう。 葦原はタバコに火をつけながらなぜ自分があの少年にあそこまで固執していたかを考えていた。 (そうか、あれは俺だ。ガキの頃の俺の目にそっくりだ) 葦原は自身の少年時代を思い出していた。世界に何の希望も抱いていなかった少年時代。学校に行けば無能だといじめられ、家に帰れば母親はずっと泣いていて、父親は彼を殴りつけていた。 この先もずっと何もいいことはない。自分の人生はきっとずっと灰色のままだ。 だったら世界なんか滅びてしまえ。 何度そう心の中で願ったかわからない。 だがそんな葦原の灰色の世界を一変させたのがサーカスであった。 故郷の町にやってきたサーカス団。そこで葦原は初めてサーカスというものを見たのであった。そのサーカス団は初回で無料チケットを配っていた。そのチケットを配っていたピエロを見て、葦原はサーカスというものに興味を引かれたのであった。そしてその豪華で巨大なテントの中を潜った時、そこに別世界を葦原は見たのだ。 まさにそれは楽園のよう。 猛獣に小人。 ワニ女に空気男。 手汗を握る空中ブランコに綱渡り。 様々な曲芸が彼の心を掌握していた。葦原は生まれて初めて心からの感動というものを覚えていたのだった。瞬きするのも忘れ、眼を離すことなどとてもできなかった。 そして何より彼に影響を与えたのはあのチケットを配っていたピエロだった。小太りで愛嬌のある白塗りのメイクで、彼は舞台の上に立っていた。 彼はおどけた調子で芸を初め、一言も言葉も発さずパントマイムだけで観客たちの心を掴んでいた。子供たちは大声でピエロの行動で笑い、葦原もいつしか自然に笑顔になっていた。 葦原はその時気づいた。自分が笑ったのが一体何年ぶりなのかを。 自分が笑っていることに気づいた葦原は、自然と自分の瞳から涙を流す。楽しいはずなのに、なぜ涙を流しているのかは葦原自身にもわからなかった。 だが葦原は自分が見て感じてきたあの灰色の世界は、ほんの一部でしかなかったのだと理解した。 世界には、こんなにも素晴らしいもので溢れているのだ。 葦原が涙を流していることに気づいたその小太りのピエロは、彼の下に近寄って手を握った。葦原が驚きながらそのピエロの行動を見つめていると、ピエロは手を離し、葦原に手を開くように促した。 葦原が恐る恐る手を開くと、ぽんっとその手から薔薇の花が出てきたのであった。その瞬間周りの観客の子供たちは大きな驚きの声を上げて、みんな笑っている。簡単な手品だが、子供だった葦原にはそれはまるで魔法のようにも見えた。 そしてピエロは優しく葦原の頭を撫で、舞台へと戻っていった。 少年だった葦原にとってそのピエロは道化ではなく、聖者のように思えたのだった。 この時葦原は決心していた。いつか大人になったら、サーカス団に入り自分もピエロとして子供たちに笑顔を与える人間になるのだと。 そしてそれから数年後。葦原は劣悪な家庭環境から抜け出し、夢を叶えてサーカス団のピエロになったのだった。 (なのに、なんで俺はこんなに不安なんだろうな) 葦原はタバコの煙吐きながらそう考えていた。道化の仕事はきちんとこなせているし、ミスだってほとんどない。 だが、同年代の人たちはみんな結婚したり子供がいたりとしているのに、自分はこんな風にいつまでも派手な格好をして派手なメイクをして、子供騙しの芸を続けていていいのかと焦っていた。 そして、こんな考えが頭によぎっている今の自分は、子供たちを笑わせるピエロに相応しくないのだと、自分が一番よく理解していた。 (潮時かもな) そう心の中で呟きながら、葦原はタバコを灰皿に押し当て火を消す。だが、そんな風に思う葦原の脳裏にはあの笑わない少年の顔が張り付いている。 あの少年の笑顔を、葦原は見たいと思っていた。 だが、そうこう考えているうちにサーカスは全ての演技を終え、名残惜しくも閉幕していった。 ※※※ サーカスのテントから離れ、那美はひたすら魂源力ソナーをぶんぶんと振り回して、玲子の行方を捜す。 雪の降り方が激しくなっていき、少しずつ地面に雪が積もり始める。 寒さで指が震えていく。両手に手袋をつけているが、それでも足りないくらいだった。 『那美。少し休みましょう。あまり気を張るのはよくないわ。万全じゃなければもし早乙女玲子を見つけても太刀打ち出来るかどうか……』 「何よ。やけに自身ないじゃないミナ。私は大丈夫よ、それに早乙女はきっと私たちがこうしている間にも何をしているかわからないわ」 早乙女玲子は悪魔だ、そう那美は教師たちに言われていた。自分も怪物だの化物だの、挙句の果ては荒神だのと言われてきたが、玲子は心も非情で冷酷な人間で、まさに悪魔のように人の命をなんとも思わないと教えられた。 とても一人の女子高生を指して言う言葉ではない。だが、現に玲子は学園の関係者を何人も殺している。 だが那美はその玲子に殺された人たちに違和感を覚えていた。 多くの死者の中、一番多かった犠牲者は兵器開発局という、学園付属の研究機関の研究者たちだった。 自身がラルヴァと融合した稀有な例として、兵器開発局の研究の対象にされたこともあって、那美はあの機関が少し異常なものだと感じていた。 あそこはまともな研究なんてしていない。接した研究者のほとんどが人間らしい感情を持たず科学に狂信している者ばかりだったからだ。 本来玲子と何の接点もないはずだ。 ただ、あるとすると玲子の異能関係だろう。那美は開発局が玲子に対して何らかのアクションを起こし、そして殺されたのだろうと予測していた。 自分と同じモルモット扱いをされたのかもしれない。人間扱いされず、悪魔と呼ばれた少女。早乙女玲子。 それは那美の想像の域を出ないが、もし那美が我妻に出会わなければ、玲子のように世界に牙を剥く存在になっていたかもしれない。 玲子は、那美がなっていたかもしれない可能性の存在。 今の那美を思えばそんな可能性があったことは考えたくは無い。だが誰でも、どんな人間でも世界に憎しみを抱くきっかけは存在するのだ。 それを那美は痛いほど知っている。 『那美。あなたは早乙女玲子と違うわ。違う人間よ。あなたが何かを背負うことなんてないのよ』 「わかってるわよミナ。そんなんじゃないさ、そんなんじゃ……」 少しだけ感傷的になっている自分をミナに悟られて、那美は玲子の境遇に対して考えることをやめた。たとえ彼女に何か理由や動機があったとしても那美のやるべきことに変りは無いのだ。 たとえどんな理由があろうと玲子のしたことは許されることじゃない。開発局の研究員だけではなく、何の関係も無いであろう教員や生徒たちも巻き添えを食って何人も死んでいるのだ。彼らの無念を思えば足を止めるわけにはいかない。 雪道を歩き続ける那美は道路に置かれた自動販売機を見つける。怒りと焦りと同情の混じったもやもやとする感情を落ち着かせ、身体を温めようと缶コーヒーを買った。 プルタブを開け、那美はコーヒーを口に含んでいく。少し苦めの味が口内に広がり、胃の中に温かさが広がっていく。 「こういう寒い中で飲むホットコーヒーって凄くおいしいよねえ」 『そうね。砂漠にオアシスの逆バージョンってところかしら』 そうして一息ついた那美は、何か妙な臭いが町に漂っていることに気づいた。そして、その臭いは那美のよく知るものであった。 「ミナ、この錆びた鉄のような異臭は……」 『ええ、間違いないわね……』 那美は駆け出し道路の角を曲がる、するとそこには三人の若者が顔中から血を洪水のように流して雪の中に沈んでいた。苦痛に顔を歪ませ、おびただしい血があたりに飛び散っている。 確認するまでも無く彼らは絶命している。血が白い雪ににじみ、不気味で異質な雰囲気を町に作り出していた。まさにその光景は地獄のよう。サーカスがいる平和な町が恐怖と死に染まっていく。 那美は缶コーヒーを握った左手に力を入れる。するとスチールの缶は粉々に砕け散ってしまった。 その瞬間彼女の持っていた魂源力ソナーが反応を示した。つまり近くに異能者がいるということである。 『那美、近くにいるみたいよ。気をつけてね』 「わかってるわよ」 那美は静かに感情を押し殺すようにそう呟く。 だが、その表情はまさに荒ぶる神のように憤っていた。 ※※※ 「ねえちょっとそこの姉ちゃん。こんな雪の夜に一人でどこ行くの?」 玲子が雪の降る町を歩いていると、ガラの悪い三人の若者にそう絡まれてしまった。美しい容姿を持つ玲子は、学園にいるころからもこの手の人間に絡まれることが多々あったので、彼らを無視しそのまま通り過ぎようとした。 「おい、無視すんなよ」 だが若者たちはへらへらと笑いながら素通りしようとした玲子の腕を掴み挙げた。下卑た笑い顔の彼らを、玲子はただ虫ケラを見るような眼で睨みつけているだけであった。 そんな玲子の態度が気に喰わなかった若者は、ぎりぎりと彼女の腕を締め付けている。 「おいおい。そんな眼されると俺らも怒っちゃうよ。いいじゃん、こんなとこほっつき歩いてるなんてそっちもその気なんだろ」 三人の若者は玲子を囲い、壁際に追い詰める。だが、実際に追い詰められているのは彼ら三人のほうだということに彼らは気づいていない。 玲子はふうっと溜息をつき、面倒だなという風に瞼を閉じた。 (まったく、男ってなんて気持ち悪いんだろう。どうしていつもこんなに高圧的なのかしら) そう思いながらゆっくりとその三人のほうに唇を向けた。男たちはそれを見て自分たちの言いなりになるのだと勘違いしたが、そうではなかった。 玲子はその口から息を吹き出していたのだ。 玲子がそうして息を吹くと、口から真っ黒な白い粒が大量に溢れ、空を舞い彼ら三人を囲っていった。 まるでそれは黒い雪。 天から降る白い雪に混じったその黒い雪は幻想的な雰囲気で、御伽噺の世界のようであった。 「な、なんだこりゃ」 「黒い……雪?」 「手品か?」 そんな暢気なことを言う三人を、玲子は殺虫剤をかけられ死にゆく虫たちを見るような眼で見つめていた。 「じゃあね。害虫」 その言葉を聞いた若者が、何かを玲子に言おうとしたが、その行動をとることはもう二度とできなくなっていた。 声が出ない。 彼ら三人はとてつもない苦痛を身体全身に感じ、悲鳴を上げようとしても喉から何も声を発することが出来ないことに気づく、そしてじぶんたちの死期を悟った。 「あ……が……」 彼らは何も出来ないまま、顔中の穴からごぽごぽと血を溢れ出させて地面に倒れこんでいった。あふれ出る血は積もる雪を赤く染め、玲子は汚らしい害虫の血が純白な雪に混じっていったのを不快に感じているようで、眉を少し歪めている。玲子が吐き出した黒い雪もゆっくりと地面に落ち、まるで幻のように消えていってしまった。 この黒い雪が玲子の異能の正体である。 玲子は自身のその力を“|黒死の雪《イビル・スノー》”と呼んでいた。 その黒い雪に触れた人間は、彼らやあの家の住人のように血を吐き出して苦痛の中死んでゆく。その黒い物体が何なのか玲子も理解してはいない。異能によって生み出された未知のウィルスかもしれない。いや、ウィルスならば自分も感染してしまうだろう。免疫が出来ているのかもしれないが、玲子にとって異能の原理なんてものはどうでもよかった。 ただ、この異能のせいで自分が生きていた世界が狂ってしまったことを呪っていた。 死を操る力。 彼女の異能を研究していた開発局の人間は彼女の能力をそう評していた。ほんの数週間前に何の前触れもなく彼女はその異能に目覚めたのだった。 彼女はその時のことを思いだす。 仲の良かった同級生の女の子。それが彼女の異能の最初の犠牲者だった。いつものように一緒に昼食をとっていた。だが玲子の口から溢れ出た黒い雪に触れた瞬間彼女は死んだ。 血を吐き出し、彼女の目の前で絶命した。 血に沈む友人の顔を玲子は一生忘れることはできないだろう。いや、忘れる気もない。自分が犯した罪を玲子は自覚していた。 彼女の死は玲子に責任は無い、そう学園側に言われたが、玲子は自分自身を許すことが出来なかった。何度自分の命を絶とうしたかわからなかった。 そんな彼女の能力はカテゴリーF種と認定され、一時は軟禁されたりもしていた。 そしてそれから、兵器開発局は彼女に異能の研究を申し出たのであった。それが全ての始まり。玲子が世界に敵意を向けるきっかけになった出来事だった。 (私は絶対に許さない。開発局も、学園も、この世界そのものも) 玲子がそう考えながら歩いていると、突然彼女の持っていた学生帳型の端末が鳴り響いた。玲子が驚いてそれを取り出すと、その一機能であるラルヴァ感知機能“KANNAGI”のソナーが反応を示していた。その反応は大きく、上級以上のものであった。だが、同時に異能者の反応もある。ラルヴァと異能者が同時に存在する。これはおかしなことだった。 (この近くにラルヴァが? いや、こんな町中にこんな強大なラルヴァがいるなんて考えられない、だとするとこの奇妙な反応は――) 玲子はふと思い出した。ラルヴァの力を身体に秘めた強力な異能者のことを。 (まさかあいつが……。学園側もなかなか強烈な奴を追っ手によこしてくれるじゃないか) 玲子は理解した。 すぐそこに刺客が来ているのだと、ラルヴァの力を持つ彼女が来ているのだと。そして玲子はその場を全力で駆け出した。 後編へつづけ この作品は荒神の手のシェアで本人ではありません 問題ある箇所は治します トップに戻る 作品保管庫に戻る
https://w.atwiki.jp/touhoukashi/pages/3081.html
【登録タグ CD CDた 幽閉サテライトCD】 サークル:幽閉サテライト 01 玉響咲いた背後の永久 02 Signal 03 凍明アスタリスク 04 枯れないハーモニー(神奈森ユウ+奥山ナマリ Arrange Ver.) 05 Light Line(HiZuMi+奥山ナマリ Arrange Ver.) 06 夢色フォーカス http //www.nicovideo.jp/watch/sm33659712 http //yuuhei-satellite.sakura.ne.jp/11827
https://w.atwiki.jp/tarowa/pages/372.html
少女が見た日本の原風景 ◆.WX8NmkbZ6 展望台の最上階で、二人の男が望遠鏡を覗き込む。 天下の大泥棒と、遠からぬ将来に新世界の神を目指していたはずの高校生。 ルパン三世と夜神月が互いに浮かべる表情は険しい。 見詰める方角は南――総合病院。 数十分前、その四階に人が集まっているのをルパンが発見した。 月はそれとほぼ同時刻に、F-1周辺で戦闘が起きている事に気付く。 それから二人は役割を分担し、それぞれを注視していた。 ルパンが監視する病院の北側の窓、ブラインド越しでは「人がいる」という事しか分からない。 しかし周囲に高い建物がなかった為、正面玄関の様子は良く見えた。 そして幸か不幸か、ルパンの仲間達の姿は望遠鏡越でも見間違えようもなく目立っていた。 真っ黒なスーツに同じく黒一色の帽子を目深に被った男、次元大介。 長めの黒髪に鼠色の着物と袴を着用した男、石川五ェ門。 ルパンはずっと観察していた。 ルパンは病院の外で起きた出来事の一部始終を、ずっと見ていたのだ。 病院と展望台を隔てる距離は遠い。 今から駆けつけたところで間に合わない。 せっかく得た展望台という拠点はそうそう手放せない。 かと言って月を一人にする事も出来ない。 それに、次元と五ェ門の実力を信じている。 仲間達が直面する危機をただ見ている事しか出来ない歯痒さを噛み締めながらも、足を止める理由ばかりが立ち並ぶ。 「行って下さい、ルパンさん。 今起きている戦いには間に合わなくても、貴方に出来る事はあるはずです。 それに会場は広い……この機会を逃したら、もう合流出来なくなるかも知れません」 F-1については一段落したようで、月が顔を上げてルパンを促す。 それでもなお、ルパンは動き出せずにいた。 山の中を全速力で移動して、病院に着くまでに時間はどれだけ掛かるのか? ここを離れる事が本当に最善なのか? 戦況は? ルパンは計算を重ねる。 しかし、正面玄関で起きた出来事はほんの十分程度の時間で終わりを告げた。 恐らく当事者達にとっては長い長い時間の出来事でも、ルパンと月にとっては一瞬の出来事で。 計算も行動も、何一つ間に合わないまま。 病院は炎に包まれた。 ▽ 目が醒めた時には夕方だった。 窓から見える夕焼けが、少女の頃を思い出させた。 わたしはこの空より、もっときれいな夕焼けを見たことがある。 立ち止まってその空を振り返ると、お母さまに手を引っ張られ、もっと速く走りなさいと叱られた。 まわりの人たちも、みんな夕焼けには目もくれず、必死に走っていた。 あの日こそ、日本の夕暮れだったのだ。 あの夕焼けの美しさを、わたしは生涯忘れない。 たとえわたしが死んでも、きっとわたしは風になって、あの夕焼けを忘れない。 (……撒いたか) 山中を移動していた田村玲子は後方に注意を払いながらその速度を緩めた。 思い起こしていたのは、ある日篠崎咲世子が日記に書き残した記憶の断片。 薄れる事のない鮮やかな景色。 日本がブリタニアに征服されたのは皇暦2010年。 皇暦と西暦が一致するのかは不明だが、玲子の知る日本よりも文明が進んでいる事は確かだ。 そして現在は2018年。 咲世子が見た「日本の」夕焼けは、短くとも10年近く前のものだという事だ。 それを何故、未だ鮮明に覚えているのか。 何が咲世子にとってそれを『特別』たらしめたのか。 日本が征服されようとされまいと、夕焼けはただそこにある。 気温や湿度、大気の状態に左右はされど、夕焼けは夕焼けだ。 日本の夕焼けとエリア11の夕焼けの何が違うのか、玲子には分からなかった。 だが恐らく、これは咲世子だけが特別なのではない。 痛がりの人間達の多くには、こういったものがあるのだろう。 パラサイトとは違う。 もしこの夕焼けの意味が分かったら。 人間達の事が分かったら。 それとの比較で、パラサイトについて何か新たな発見があるのだろうか。 ここで玲子は観察の限界を感じる。 最初に出会った男は問答無用で食ってしまったのだから仕方がないとは言え、咲世子を殺してしまった事は痛かった。 結果的に咲世子の記憶を得られたのだが、咲世子の抱いていた『感覚』が理解出来ないのでは記憶の有効活用は難しい。 つい先程出会った杉下右京も興味深かったが、結局ほとんど観察出来ずに逃走する事になってしまった。 そして、こうしている間にも会場にいる人間は数を減らしている。 このままでは観察はままならない。 ――我々は何者なのか? 答えを得る為に、取るべき方針を見直す必要があった。 考えながら、玲子は廃洋館に辿り着いた。 シャナから逃げている最中である以上、地図に載っている建物を利用するのは危険だ。 しかし追跡に利用出来るような痕跡は残していない。 それに逃走を始めてから時間がかなり経過しており、シャナも既に諦めた可能性が高い。 何より、玲子にはここを訪れなければならない理由があった。 破壊された壁から建物の中を覗く。 人の気配がないのを確認し、玲子は内部へ足を踏み入れた。 ギシギシと音を立てながら古びた階段を上がる。 慎重に部屋を見て回り、玲子は目当ての物を発見した。 廃洋館の一室の壁際に鎮座した、玲子の背よりも高いそれ。 戸には豪奢な彫刻が施され、見る者に重厚な印象を与える。 取っ手は外れかけていたものの戸と同じ装飾がなされており、経た年月を感じさせつつもかつての威厳を損なってはいなかった。 クローゼット。 玲子は目当ての対象の正面に立ち、開け放つ。 中には予想に違わずギッシリと洋服がひしめき合っていた。 右京の観察に失敗した原因の一端には、服がある。 咲世子の着ていたメイド服は、彼女の血で酷く汚れている。 体を自ら傷付けてその血痕を誤魔化しはしたものの、右京のような専門家の目は紛らわせない。 玲子にとって着替えは急務だったのだ。 クローゼットの中を物色しながら、これから着る服を考える。 初めに出会った男の服は着物。 彼の支給品は白衣。 咲世子はメイド服。 シャナはセーラー服。 右京はスーツ。 統一性は見られない。 そしてこのクローゼット内の服も、玲子にとって見覚えのないものばかりだった。 咲世子と住む世界が異なっていた事からも、玲子の常識で服を選ぶのは適切ではないのかも知れない。 その考えの下に、山中で動き回るのに邪魔にならない程度の機能性を考慮しつつ服を選ぶ。 頭部を触手に変形させ、その先で器用にメイド服の背中のボタンを外した。 部屋の隅にあった鏡に姿を映しながら、選び出した服を着込む。 そしてそれが終わると他にも何着か着替えを見繕い、デイパックの中へ押し込んだ。 用が済むと洋館の周囲に注意を向ける。 シャナが追ってきている様子はなく、玲子は少しの間だけこの場で休息を取る事にした。 ▽ 「ルパンさん、どうして……!!」 「……」 月が声を荒らげる。 Fー1が一段落してから、月もまた望遠鏡を病院へ向けていたのだ。 次元の死。 散り散りに逃げていく五ェ門達。 それらを呆然と見詰めながら、ルパンは未だ動き出せずにいた。 次元と五ェ門の存在に気付いてすぐに病院へ向かわなくて良かったと、ルパンは思う。 碧い髪の男が一人裏門の方へ向かったがそれだけで、恐らく現在の病院には誰もいない。 入れ違いになり、無駄足になっていただろう。 それよりはこうして事態を終始把握していられただけマシと言える。 しかし、それでも。 仲間達の危機に、死に。 何も出来ずに指をくわえて見ていただけという、その事実は揺るぎない。 ルパンは何度も望遠鏡を覗き込み、焦点を合わせる。 次元は動かない。 そもそもあの場にいたのが本当に次元だったのかを疑ってみるが、望遠鏡越であっても長年連れ添った仲間の動きを見間違えるはずがない。 そしてあれだけの規模と威力の爆発の直撃を受けては、最強のガンマンであろうと生き残れはしない。 逃げていった参加者達がどうやってやり過ごしたのかは不明だが――次元の死を、認めざるを得なかった。 「どうして……行かないんですか」 月はもう一度、ルパンに言う。 「……手遅れだ。 例え次元がまだ生きてたとしてもよ……俺が着くまでは保たねぇ」 「でも……五ェ門さん達がまだ、近くにいるかも知れません。 他にも爆発に巻き込まれて怪我をしている人がいるかも知れません……やれる事は幾らでもあります!」 必死に説得しようとする月に対し、ルパンは首を横に振った。 「ここは離れられねぇ。 それに今この会場のあちこちで起きてる事に目を向けてられてられんのは、多分俺達だけだ。 ここで得た情報は無駄にはならねぇ」 顔こそ見えなかったものの、敵味方の区別は付いた。 あの場にいた緑のスーツの人物と紫のスーツの人物は危険人物だ。 これだけでも、情報として価値がある。 「情報の為に、次元さんや五ェ門さんや、病院にいた大勢の人達を見捨てるんですか!?」 正義感の強い月が激昂するのも無理はないし、ルパンとてまだ迷っていた。 この場を離れられない理由。 それはただ情報の為、立地の為ではなく。 「……どうして僕にこの場を任せて下さらないんですか?」 これ以上は誤魔化せないかと、ルパンは深く息を吐く。 「確かに僕はカズマさんみたいな特殊な力を持っていないし、銃については教わったばかりで使いこなせていない。 でも……こんな時ですら、僕の事を信じないのは何故です?」 月はいつまでもルパンの言葉を鵜呑みにする程馬鹿ではないし、お人好しでもない。 「もしかして、ルパンさんは本気にしているんじゃありませんか? ……Lの、僕が『キラ』だなんていう妄言を……!!」 「……本気にはしちゃいねぇさ、坊主。 ただよ……坊主がこれからどう変わってくのか、俺様にも分からねぇのさ」 ルパンは観念したように両手を広げ、近くに置いてあった椅子にどっかと座り込む。 いずれは覚悟を決めて話し合わなければならなかった事だ。 「俺ぁ初めてお前さんと会って眼を見た時からよ、気になってたんだ。 道を踏み外さずにいられんのか? ってよ」 「それで……今も、僕を監視しているという訳ですか?」 「まぁ、言葉を選ばなけりゃそういうこった」 月の握った拳がワナワナと震える。 「眼を見てそう思ったから」ではとても合理的な説明とは言えず、月も納得出来ないだろう。 しかし、そうとしか説明しようがないのだから仕方がない。 「僕は、あなたを信じてみようと思っていたのに――」 月が言いかけた時、ジリリリリとけたたましいベルの音が鳴る。 ルパンが支給品や展望台内にあった品で作った侵入者用のトラップだ。 こうして最上階にいるルパンと月にその侵入を知らせる役割を担っている。 「話は後だ、行こうぜ坊主」 月は少し不満げにしたが、デイパックからマグナムを取り出す。 対するルパンは刀を出し、互いに頷き合って一階の入り口へ走った。 ▽ 休憩を終えた玲子は他の参加者と接触すべく、展望台へ向かっていた。 シャナの追跡を逃れた事もあり、移動は足跡を気にせずに咲世子の足を使っている。 展望台は会場内で最も目立つ建造物なのだから、参加者の一人や二人は必ずいるはずと期待しながら到着した。 入り口を見るとガラス扉の先の足下には紐が張られており、その先は紙製の細い道や小さなシーソーが続いている。 紐を踏めばボールが動き出し、細い道やシーソーを利用しながら進む。 最後はそのボールがゴムの力で跳び、非常用のベルのボタンを押し込む仕組みになっていた。 (侵入者の存在を伝える為のトラップか。 古典的だが……) ただベルのボタンを押すだけの仕掛けのはずだが、無駄に凝っている。 しかもそれが侵入者側から見える場所にあるのでは意味がない。 発想は子供のそれだが、技術は大人のものだ。 仕掛けたのは余程の馬鹿か、それだけの余裕がある人物なのか、読み切れない。 玲子は視界の範囲内に人がいない事を再確認してから、先端に眼球の付いた触手を形作る。 そして角度を変えて足下の紐を観察すると、その傍で何かが光った。 紐と少し間隔を空けながらも同様に張られているのは、細い糸。 (こちらが本命か……) 紐の存在には、侵入しようとした多くの者が気付くだろう。 しかしその紐を避けた先に、光の加減で見えにくくなった糸がある。 二重のトラップだった。 否、より正しくは二重三重。 糸は他にもあちらこちらへ張られており、全ては避けられない。 侵入者は糸のどこかに引っかかるか、糸に気付いて侵入を諦めるかの二択。 例え無駄に凝ったボールの仕掛けが上手く作動しなかったとしても、他にも何か罠があるのだろう。 上の階にいる人間は、少なくとも馬鹿ではないらしい。 そこで玲子は展望台の案内図を見ながら、新たな方針を打ち出した。 ▽ 月と共に階段を降りた先、展望台の入り口に立っていたのは一人の女だった。 「いやー、俺様最初に引っかかるのがこーんな美人たぁ思わなかったぜぇ」 黒髪長髪に、青と白のコートに身を包んでいる。 左腕に付けられた「HOLY」という隊証から、それが何かの組織の制服なのだろうと推測出来た。 下は裾にレースの付いたミニスカートになっており、引き締まった太股のラインが良く見える。 状況が状況ならそれを更に観察しているところだが、今はそんな場合ではない。 そして何より、女の目は。 月の目とはまた違う、底冷えするような鋭さだった。 例えるならば爬虫類のような、まるで人間でないかのような―― 「これを仕掛けたのはお前か?」 女はルパンの言葉を無視して、その目と同じく冷たい機械じみた声で問う。 「そーとも、このルパーン三世様が――」 「なるほど……この仕掛けの無駄も頷ける」 ルパンを見る目は観察者の目だ。 恐らくこの女はわざとトラップに掛かり、仕掛けた張本人を呼び寄せたのだろう。 (うひょー、顔は美人だってのにおっかねぇ……) 気を抜いたら一飲みにされてしまいそうな感覚に、背筋を冷や汗が通り過ぎる。 「僕は夜神月。 僕達は殺し合いに乗るつもりはありません、あなたは――」 「そうだろうな、そうでなければこの問答は無用だ。 安心していい、私も『殺し合いには』乗っていない」 月の問いに対する答えは、嘘とは思えなかった。 しかしそれを言葉通りに受け取っていいかは別だ。 その考えは月も抱いているようで、構えた銃を下ろそうとしない。 「私はお前達に興味が出た。 しかしそれよりも先に――」 ▽ サァァァ、と絶え間なく水が流れる音がする。 月はルパンと二人並んで扉を背にして立ちながら、うんざりしたように溜息を吐いた。 展望台三階・温泉。 扉から入ると正面奥に浴槽。 そこに至るまでに、シャワーの取り付けられた鏡台が通路を作るような形でズラリと並んでいる。 ――案内を見たが、この施設の中には浴場があるらしいな。 ――是非利用したい。 底知れない雰囲気を持つ、田村玲子と名乗った女は風呂を所望した。 これまでにどのような経緯を辿って来たのかは分からないが、この場で殺し合いが行われている事は玲子とて分かっているはずだ。 だというのに初めて出会う参加者を前に入浴したいなどと、月にしてみれば正気の沙汰ではない。 「とても信用出来ない」と言うと、玲子はデイパックを預ける事と風呂の前での監視を許す事を条件に出した。 結果月とルパンは各々銃と剣を持ったまま女湯の脱衣所の中、浴場へ続く扉の前に立っていた。 対する玲子は監視しやすいようにと扉近くのシャワーを利用している。 「……ルパンさん。 こうして立っている事に意味はあるんですか?」 病院で起きた事は勿論、F-1で起きた事もある。 悠長な事をしている暇はないはずなのだが、ルパンの関心は玲子へ向いている。 「確かにそうだな、立ってるだけじゃあ監視してる事にゃならねぇ」 そう言ってルパンはそれまで背を向けていた扉に向き直り、手を掛けて薄く開けた。 「ちょ、ちょっとルパンさん! 幾ら何でも女性の入浴中に……!!」 まさか女性の裸体を見る事が目的!? 次元さんや五ェ門さんの事よりもこれが大事なんですか!? 言いかけた言葉をかろうじて飲み込むが、ルパンへの不信は拭えない。 しかし当のルパンは飽くまで真剣な表情で、扉の隙間から中を覗き込んでいる。 「女性、ね。 坊主よ、お前さんは本当にそう思うか?」 「え?」 思いがけない答えに言葉を返せずにいると、扉の向こうから反響してくぐもった声が掛かった。 「人間の雄が雌の肉体に欲情して覗き見ている……のとは趣が違うようだ。 目的は観察か?」 「……こいつぁ驚ぇた、背中に目でも付いてるのかい?」 ルパンはおどけた言葉を使っているが、月はルパンの焦りを感じ取った。 焦るのも無理はないと、月は思う。 ルパンは玲子が背中を流す為に、扉に背を向けたのを見計らって覗き見たのだから。 玲子の質問に、ルパンは肩を竦めて正直に答える。 「なーに、お前さんが武器を持ってねぇ事がはっきりしてるうちに、腹ぁ割って話でもしようと思ってよ」 「確かに、腹を割って話すというのは私も考えていたことだ」 ルパンと月に背を見せたまま、玲子は顔だけ振り返る。 玲子の視線に射抜かれて、月はこの時ようやくルパンの警戒が大袈裟なものではない事に気付かされた。 ▽ 玲子が服の次に気に掛かけたのは、臭い。 咲世子程の嗅覚の持ち主はそう多くはいないだろうが、出来れば入浴をしておきたい。 そう思っていたところへ温泉の書かれた案内図があり、渡りに船だった。 「普通の人間の女性」を演じる事は可能だが、玲子は月とルパンを前にそうしなかった。 それが原因で訝られる事にはなったが、知能の高い人間を相手に会話すればいずれ「普通」という擬態は見抜かれてしまう。 ならば初めから素の口調と態度で接し、そしてその知能の高い相手に訪ねる。 ――我々は何者なのか? この二人の知性は低くない。 玲子が考えもしなかったような答えも出てくるかも知れない。 だからこそパラサイトである事を初めから明かし、人間の話を聞く。 それが玲子の新しい方針だった。 これまでにも、そういった考えがなかったわけではない。 パラサイトの存在を知った特殊な立場の人間、泉新一とは最初に話し合いの場を設けた。 しかしそもそも新一は『当事者』であり、忌憚ない意見を期待するにはそもそも無理がある。 雇った探偵は、寄生生物の存在を知った上で話し合いが出来る類の人間ではなかった。 この会場に来てからも、人間とは話し合いの前に失敗してしまうばかりでまともな会話が出来ていない。 これまで玲子は人間の行動を観察した上で考察を重ねてきた。 しかしそれに行き詰まった今、玲子は真剣に人間からの意見に耳を傾ける事にしたのだ。 もしも寄生生物に対し拒否反応を起こすようなら、食ってしまってもいい。 頭部の一部に眼球を形成し背後――扉の向こうの二人を観察していたところ、扉が開いてルパンの眼が見えた。 混んだ電車の中で田宮良子の肉体に触れて来た男がいたように、人間の雄は雌の身体に強い関心を抱く。 しかしルパンの視線はどうやらそれとは別種のもののようだった。 「話すにゃあ扉が邪魔なんだけどよ、開けて平気かい?」 「ちょっと、ルパンさん!! 幾ら何でもそれは――」 「ああ、好きにしろ。 声が通りにくいからな」 「た、田村さんまで何を!?」 話は入浴の後にしようと考えていたが、この場で済ませてしまった方が時間の短縮になる。 (ついでにその後で咲世子の夕焼けについても聞いてみるか……) 玲子は対話の為に、身体の向きを変えた。 ▽ 顔だけ扉の方へ向けていた玲子は身体の向きを変え、月とルパンに体の脇を見せる形になった。 熱い湯で上気して少しだけ赤みを帯びた肌から、湯気が上る。 濡れて額やうなじに張り付いた髪を細い指で掻き上げる姿には、大人の女性の魅力を自然と備わっていた。 そして玲子の身体に付く細くしなやかに鍛えられた筋肉は、逞しいがそれでいて女性らしいシルエットの妨げにならない。 鎖骨や肩から落ちた玉のような水滴が、胸の間や腕を流れた。 その水の動きを追って月が視線を下げると、横からのアングルである事によって形の整った胸のラインが際立っている。 鎖骨から滑った水滴は胸部に隠れて見えなくなったが、腕を伝った水は長い指から長い脚を辿って床のタイルへ滴る。 身体の各所に浮かぶ赤い傷は肉体の見栄えを損なわせる事なく、むしろアシンメトリーな美しさを―― 「ふ、服を着てからにして下さい!」 月はつい視線を下へ泳がせてしまった事を恥じながら、玲子に向かってバスタオルを投げる。 しかしそのバスタオルを受け止めたのは、月の見間違いでなければ玲子の髪。 「え……?」 「先程『背中に目でも付いているのか』と言ったが、それは正確な表現ではない。 頭部全体が思考する筋肉であり、眼球の役割も担える――といったところか」 玲子の髪が伸びて、空中のバスタオルを掴み取ったのだ。 「手出しされなければ、こちらから危害を加えるつもりはない。 『腹を割って話す』と先に言い出したのはそちらだ、私の話に付き合って貰おうか」 玲子は己の出自を話し出す。 それは月にとって、荒唐無稽と言っていい話だった。 しかし玲子が冗談を言うような相手でない事は明らかで、そして既にカズマという前例もある。 荒唐無稽な世界を認めるか否か、それを決断するべき時が来ていた。 しかし今、玲子を前にしながら月を悩ませているのはそれだけではなかった。 自分自身の事もまた、月を揺さぶっている。 ルパンは他の大人とは違う。 私利私欲ではなく他人を気遣えるこの聡明な大人を、信じたいと思った。 だが自分を信じてくれない人間は信じられるはずがない。 玲子の話を耳に入れながら、しかし思考は別のところへ向かってしまっていた。 ――信じていたのに。 ――信じてくれていると思っていたのに。 何より月を蝕んだのは、不安だった。 (あのルパンさんが、危険を感じ取った。 僕は何なんだ? 僕は……僕はまさか、本当に……キラなのか?) 馬鹿馬鹿しいと一蹴したはずだ。 Lの策略には乗らない。 しかし、他でもないルパンが言う事では無視出来なかった。 (僕は正義の為にと、人の命を奪ってしまえるような人間なのか?) そこで月は、朝方の自身の思考を振り返った。 ――僕は、新世界の神にな―― そして悩むべき事が『逆』だったのだと、気付く。 (僕は……然るべき力を手に入れた時「正義の為にと、人の命を奪わずにいられる人間なのか」?) 力を得た時。 本当に使わずにいられるのか? ルパンが懸念していたのは、この事なのか? 「さて、ここまで話した上で聞きたい。 私達は『何』?」 ――僕は…………何者なんだ? 玲子への対応は慎重を期さねばならない。 底知れない人物だという事は分かっていた事で、更にここまでの話が真実ならそれこそ「食われる」かも知れない。 しかしルパンに対して信頼を寄せていたからこそ。 月は今、揺らいでいる。 ▽ 出会った瞬間から警戒し、蓋を開けてみればある意味鬼よりも蛇よりも厄介な相手だった。 勘は外れていなかったとは言え、運が良かったとも言えない。 これが勘違いなら女性の風呂を覗き放題という、ルパンにとって楽園のような光景が広がっていたはずなのだから。 それに玲子の事だけでなく、月の事も早急に考えなければならない。 もしも時間が与えられていたならば。 ルパンは月と深く話し合って納得のいく答えを導き出し、再び迷いなく互いの手を取り合っただろう。 しかし玲子の来訪がそれを遮った。 現実には、ルパンは次元の死を悼む時間も五ェ門の安否を確かめる時間さえも得られなかったのだ。 「さて、ここまで話した上で聞きたい。 私達は『何』?」 ルパンは慎重に答えを探す。 玲子への返答を誤れば、殺されるかも知れない。 その予感はルパンも月も共通して抱いていた。 しかし月とルパンはもっと根本的な部分で――すれ違い始めていた。 【一日目昼/D-5 展望台三階】 【夜神月@DEATH NOTE】 [装備]なし [支給品]支給品一式、M19コンバット・マグナム(次元の愛銃)@ルパン三世、確認済み支給品(0~2)、月に関するメモ [状態]健康 [思考・行動] 1:仲間を募りゲームを脱出する。 2:Lに注意する。ルパンについても(性的な意味で)警戒。 3:情報収集を行い、終盤になったら脱出目的のグループと接触する。 4:命を脅かすような行動方針はなるべく取りたくない。 5:魔法や異なる世界の存在を信じる? 6:僕は……。 ※F-1で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。どの程度の情報が得られたかは、後続の書き手氏にお任せします。 ※ルパンから銃の扱いを教わりました。 【ルパン三世@ルパン三世】 [装備]小太刀二刀流@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚- [支給品]支給品一式、玉×5@TRICK(一部をトラップに使用)、確認済み支給品(0~1)、紐と細い糸とゴム@現実(現地調達) [状態]健康 [思考・行動] 0:次元……。 1:仲間を募りゲームを脱出する。 2:主催者のお宝をいただく。 3:月を見張るため、彼に着いて行く。 4:月の持つM19コンバット・マグナムが欲しい。 5:竜宮レナや園崎詩音の事が少しだけ気になる。 6:ロロ・ランペルージと接触したい。 7:玲子の問いに答える。 ※総合病院で起きた戦闘の一部始終を目撃しました。 緑のスーツの人物(ゾルダ)と紫のスーツの人物(王蛇)は危険人物と判断しました。 ※寄生生物に関する知識を得ました。 ※展望台の望遠鏡から見える範囲は展望台を中心におよそ7×7、A~Gの間の2~8までです。 ※展望台一階の入り口付近には侵入者用にトラップが仕掛けられています。 【田村玲子@寄生獣】 [装備]篠崎咲世子の肉体、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド [支給品]支給品一式×3(玲子、剣心、咲世子)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、不明支給品(0~2)、双眼鏡@現実、 ファムのデッキ@仮面ライダー龍騎、首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達) [状態]ダメージ(大)、疲労(中)、数カ所に切り傷 [思考・行動] 0:人間を、バトルロワイアルを観察する。 1:新たな疑問の答えを探す。 2:茶髪の男(真司)を実際に観察してみたい。 3:泉新一を危険視。 4:腹が減れば食事をする。 5:ルパンと月から寄生生物と夕焼けに関する見解を聞く。 ※咲世子の肉体を奪ったことで、彼女が握っていた知識と情報を得ました。 ※シャナ、茶髪の男(真司)を危険人物だと思っています。 ※廃洋館で調達した着替え各種の内容は、後続の書き手氏にお任せします。 【シェリスのHOLY隊員制服@スクライド】 玲子が廃洋館内で調達。 HOLY隊員のシェリスが着ている制服。 【玉×5@TRICK】 ルパン三世に支給。 上田が山田に見せた手品の小道具。 色はブルー、イエロー、グリーン、パープル、赤。 【紐と細い糸とゴム@現実】 ルパンが展望台内で調達。 どれも普通の日用品。 時系列順で読む Back 夢の終わり(後編) Next 力(ちから) 投下順で読む Back 夢の終わり(後編) Next 力(ちから) 095 絶望キネマ ルパン三世 130 運命の分かれ道 夜神月 102 緊張 田村玲子
https://w.atwiki.jp/rcmuseum/pages/400.html
[95/03/26 14 59] 河野 明敏 「第11回R.C.大会 - 第8章 - [灼熱]」 この章はクローラーロボットのみをDESERTで行いました。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - R.C. Point Display Version 3.01 Copyright 1995/2/28 A.Kawano ● Nifty大会用(P/T) 順位 ロボ名 P/T 得点 勝 敗 分 試合 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター 1 NABI-C 142.412 2421 807 470 0 1277 63.2% C SHL LSR 0 17 曽根崎 健一 2 ASUKA-04 64.244 2634 865 417 75 1357 66.5% C SHL ATM 0 41 Tactical Device Lab (Q作) 3 .ZUKU/9E 43.459 1608 537 560 7 1104 49.0% C SHL MIS 0 37 Sky Net Lab (歪王) 4 GUREY-3 34.150 2049 670 458 55 1183 59.0% C SHL SPK 1 00 Black Market(BANE) 5 AIR-J-06 21.083 1265 422 566 17 1005 42.8% C CHN LSR 1 00 奥山 純一 6 YAKKO-BH 18.640 1398 464 538 73 1075 46.6% C SHL MIN 1 15 ザポテコ(BlackRusk 人) 7 AK/C-112 13.062 849 284 545 62 891 35.4% C CHN ATM 1 05 A.Kawano(SHOUT!) 8 S.HOPE 5.649 322 114 609 5 728 16.0% C LSR ENG 0 57 横浜 鯨一 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - ●個人データ [ロボット名] NABI-C [試合結果] 総合 807勝470敗 0分 ( 勝率 63.2% )| DESERT 56勝 44敗 0分 ( 勝率 56.0% ) CHAMP| ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター AK/C-112 13 0 0 100.0% C CHN ATM 0 12 A.Kawano(SHOUT!) AIR-J-06 14 0 0 100.0% C CHN LSR 0 08 奥山 純一 S.HOPE 6 0 0 100.0% C LSR ENG 0 15 横浜 鯨一 ASUKA-04 14 10 0 58.3% C SHL ATM 0 16 Tactical Device Lab (Q作) .ZUKU/9E 8 6 0 57.1% C SHL MIS 0 16 Sky Net Lab (歪王) GUREY-3 1 13 0 7.1% C SHL SPK 0 36 Black Market(BANE) YAKKO-BH 0 15 0 0.0% C SHL MIN 0 15 ザポテコ(BlackRusk 人) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - [ロボット名] ASUKA-04 [試合結果] 総合 865勝417敗 75分 ( 勝率 66.5% ) DESERT 62勝 28敗 10分 ( 勝率 67.0% ) CHAMP ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター .ZUKU/9E 16 2 0 88.9% C SHL MIS 0 18 Sky Net Lab (歪王) AK/C-112 8 1 0 88.9% C CHN ATM 0 47 A.Kawano(SHOUT!) S.HOPE 11 2 1 82.1% C LSR ENG 0 58 横浜 鯨一 YAKKO-BH 6 2 1 72.2% C SHL MIN 0 38 ザポテコ(BlackRusk 人) GUREY-3 9 3 7 65.8% C SHL SPK 1 10 Black Market(BANE) NABI-C 10 13 0 43.5% C SHL LSR 0 16 曽根崎 健一 AIR-J-06 2 5 1 31.3% C CHN LSR 1 11 奥山 純一 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - [ロボット名] .ZUKU/9E [試合結果] 総合 537勝560敗 7分 ( 勝率 49.0% ) DESERT 48勝 52敗 0分 ( 勝率 48.0% ) CHAMP ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター AK/C-112 10 1 0 90.9% C CHN ATM 0 52 A.Kawano(SHOUT!) YAKKO-BH 12 2 0 85.7% C SHL MIN 1 10 ザポテコ(BlackRusk 人) S.HOPE 4 3 0 57.1% C LSR ENG 0 45 横浜 鯨一 GUREY-3 8 8 0 50.0% C SHL SPK 0 40 Black Market(BANE) AIR-J-06 6 8 0 42.9% C CHN LSR 0 39 奥山 純一 NABI-C 6 10 0 37.5% C SHL LSR 0 15 曽根崎 健一 ASUKA-04 2 20 0 9.1% C SHL ATM 0 17 Tactical Device Lab (Q作) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - [ロボット名] GUREY-3 [試合結果] 総合 670勝458敗 55分 ( 勝率 59.0% ) DESERT 59勝 33敗 8分 ( 勝率 63.0% ) CHAM ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター NABI-C 12 1 0 92.3% C SHL LSR 0 36 曽根崎 健一 AK/C-112 6 1 0 85.7% C CHN ATM 0 41 A.Kawano(SHOUT!) YAKKO-BH 15 3 0 83.3% C SHL MIN 1 29 ザポテコ(BlackRusk 人) S.HOPE 8 2 0 80.0% C LSR ENG 1 01 横浜 鯨一 AIR-J-06 8 8 0 50.0% C CHN LSR 0 56 奥山 純一 .ZUKU/9E 7 8 0 46.7% C SHL MIS 0 40 Sky Net Lab (歪王) ASUKA-04 3 10 8 33.3% C SHL ATM 1 12 Tactical Device Lab (Q作) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - [ロボット名] AIR-J-06 [試合結果] 総合 422勝566敗 17分 ( 勝率 42.8% ) DESERT 43勝 55敗 2分 ( 勝率 44.0% ) CHAM ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター AK/C-112 8 3 0 72.7% C CHN ATM 1 49 A.Kawano(SHOUT!) ASUKA-04 7 3 2 66.7% C SHL ATM 0 54 Tactical Device Lab (Q作) .ZUKU/9E 9 7 0 56.3% C SHL MIS 0 39 Sky Net Lab (歪王) GUREY-3 12 10 0 54.5% C SHL SPK 0 53 Black Market(BANE) YAKKO-BH 4 8 0 33.3% C SHL MIN 2 00 ザポテコ(BlackRusk 人) S.HOPE 3 7 0 30.0% C LSR ENG 1 22 横浜 鯨一 NABI-C 0 17 0 0.0% C SHL LSR 0 08 曽根崎 健一 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - [ロボット名] YAKKO-BH [試合結果] 総合 464勝538敗 73分 ( 勝率 46.6% ) DESERT 44勝 48敗 8分 ( 勝率 48.0% ) CHAMP ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター NABI-C 17 0 0 100.0% C SHL LSR 0 15 曽根崎 健一 S.HOPE 10 0 0 100.0% C LSR ENG 1 03 横浜 鯨一 AIR-J-06 6 3 0 66.7% C CHN LSR 2 03 奥山 純一 ASUKA-04 4 10 3 32.4% C SHL ATM 0 54 Tactical Device Lab (Q作) GUREY-3 5 15 0 25.0% C SHL SPK 1 28 Black Market(BANE) AK/C-112 0 8 5 19.2% C CHN ATM 2 26 A.Kawano(SHOUT!) .ZUKU/9E 2 12 0 14.3% C SHL MIS 1 10 Sky Net Lab (歪王) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - [ロボット名] AK/C-112 [試合結果] 総合 284勝545敗 62分 ( 勝率 35.4% ) DESERT 30勝 63敗 7分 ( 勝率 33.5% ) CHAMP ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター S.HOPE 11 0 0 100.0% C LSR ENG 0 42 横浜 鯨一 YAKKO-BH 10 0 6 81.3% C SHL MIN 2 26 ザポテコ(BlackRusk 人) AIR-J-06 3 9 1 26.9% C CHN LSR 1 56 奥山 純一 GUREY-3 2 8 0 20.0% C SHL SPK 0 39 Black Market(BANE) .ZUKU/9E 2 12 0 14.3% C SHL MIS 0 51 Sky Net Lab (歪王) ASUKA-04 2 16 0 11.1% C SHL ATM 0 52 Tactical Device Lab (Q作) NABI-C 0 18 0 0.0% C SHL LSR 0 12 曽根崎 健一 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - [ロボット名] S.HOPE [試合結果] 総合 114勝609敗 5分 ( 勝率 16.0% ) DESERT 19勝 80敗 1分 ( 勝率 19.5% ) CHAMP ロボット 総合勝敗 勝率 脚 wp1 wp2 M/T コンストラクター AIR-J-06 8 5 0 61.5% C CHN LSR 1 27 奥山 純一 .ZUKU/9E 3 7 0 30.0% C SHL MIS 0 42 Sky Net Lab (歪王) GUREY-3 5 15 0 25.0% C SHL SPK 0 57 Black Market(BANE) ASUKA-04 2 19 1 11.4% C SHL ATM 1 08 Tactical Device Lab (Q作) YAKKO-BH 1 14 0 6.7% C SHL MIN 1 00 ザポテコ(BlackRusk 人) NABI-C 0 9 0 0.0% C SHL LSR 0 15 曽根崎 健一 AK/C-112 0 11 0 0.0% C CHN ATM 0 42 A.Kawano(SHOUT!) - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 次回「最新鋭」をお楽しみに! 第11回大会主催者 河野 明敏 Nifty11 (24)「第11回R.C.大会 - 第9章 - [最新鋭]」へ移動 《第11回 R.C.大会 in Nifty》へ戻る
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1609.html
557 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 01 35 ID 2fnoiIIV *** 目の前が真っ黒になってから、どれぐらい経ったっけ。 いつから? お父さんが死んじゃって――ううん、私に殺されちゃってから? それとも、弟と妹が家を飛び出して行ってから? いいえ、きっと、その前。 弟と妹が二人きりでセックスしてるのを、私が目撃してからだわ。 見なければ良かった。 あの二人に対して過保護に接していたから、あんな光景を見てしまった。 それから狂ってしまったんだわ。 お父さんはお墓に。お母さんは机の上で顔を覆って。弟と妹は居なくなって。 私は、どこか、地面からとっても遠くにあるところに来てしまった。 私が悪いのよ。 隠していた二人の秘密を知ってしまった。 家族に秘密にしていることなんて、私だっていくつもあるでしょう。 だから、これは私が受けなければならない罰。 お父さんを殺してしまった私を、お母さんも弟も妹も、許しはしない。 私も、自分が許せない。 お父さんが居てくれさえすれば、きっと、今だって―――― 558 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 03 08 ID jiY4UFBL 喉が締まり、涙が浮かぶ。 右の頬に涙が伝う。遅れて左から。 お父さん。 お父さん。お父さん。お父さん。お父さん。 ごめんなさい。 恩知らずで、良い子じゃなくて、人殺しで、お父さんの気持ちを何も分かってなくて、ごめんなさい。 お父さんだって辛かったって、分かってあげられなかった。 どうして、今頃になって泣いているのよ。 泣けば良かったじゃない。あの日に、お父さんが雨の中で泣いていた日に! 一緒に泣いてあげれば、大好きなお父さんなら家族を元通りにしてくれた。 お父さんは強くない。ううん、強いけどいつも強いわけじゃない。 お酒を飲んで愚痴をこぼすことだって何回もあった。 でも、次の日には辛いことなんか何もないみたいに、おはようって言ってくれた。 あの日も、言ってくれるはず、だったのに…………なのに! もう、駄目。 お父さんがいないなら全部おしまい。 意識が沈んでいく。 悲しい曲に引かれるように。 そして二度と浮き上がることはない。 行き着く先はどこかしら。 地の底、海の底、意識の底、それとも――コンクリートの地面かしら? 潰れて、消えてなくなるのならどこでもいい。 最後にそれを望み、私は屋上から空へと、身を躍らせた。 559 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 04 24 ID jiY4UFBL *** 人は卑怯な手を使い、他人を罠にはめる。 そんな出来事は、人が知恵を身につけた時から世界に現れ始めた。 いや、もしかしたら人は知恵を持っていなくとも他人を罠にはめられるのかもしれない。 例えば、赤ん坊の鳴き声。 赤ん坊は泣くのが仕事とはよく聞く。 それ以外に自分の意志を伝える術が無いとも言えるだろう。 だから卑怯とするのは間違いかもしれない。 だが、赤ん坊の泣き声はその威力と効果が卑怯だ。 自分の親を無条件に動かさざるを得ない状態にしてしまう。 まあ、子供を持ったことがないどころか、自分で赤ん坊の世話をしたこともない俺が考えたことだ。 赤ん坊がやることを卑怯だと断じるなど馬鹿げている、と突っ込みをいれられてもおかしくない。 しかし、あえて言わせて貰おう。 弱々しい存在は卑怯なのだと。 俺のように、強くも弱々しくもない人間にとって、赤ん坊みたいな存在は卑怯な手段をとる生き物に見えるのだと。 そんな弱々しい存在に対して、俺のようなどこにでもいる人間がとる行動パターンとして、どんなものがあるか。 何も考えず、反射的に大人しく従う。 仕方ないなとぼやきつつも相手をする。 完璧に無視を決めてだんまりになる。 腹を立てて無力な存在をいたぶる。 かく言う俺がどんな反応をとるかというと、不明だ。 さっきも言ったとおり、俺は赤ん坊の世話をしたことがない。 さらに、触れれば壊れてしまうほど弱々しい存在と接する機会も皆無だった。 自分がどんな反応をするか想像できても、いざというときに身体がどんな動きをするかなんてわからない。 そう、たとえ俺が海のようにおおらかな対応をしようとも、糾弾されるような真似をしようとも、その時にならないとわからないのである。 560 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 06 16 ID jiY4UFBL 「あのさ、そろそろ服、脱いだ方がいいよ」 俺の性的嗜好はいたってノーマルである。 そう声高に叫んでも、果たして俺の言葉を信じてくれる人間がどれだけいるだろう。 今現在のシチュエーション解説。 俺、右腕を三角巾で吊していて、服装は高校の制服。 目の前にいる女の子は玲子ちゃん。小学校三年生。さっきまで一心不乱に泣いておりました。 場所、腕の治療でお世話になった病院の個室。 そんな場所で俺は、ようやく泣き止んだ玲子ちゃんに向かって先ほどの台詞を言ったわけである。 ――頭の中に住む友人が、「この犯罪者め、二度と僕に近寄るな」と言っていた。 まあ待て。 違うんだ年上好きの高橋くん、いやTAKAHASHI、じゃなくて友人Tよ。 これには理由がもちろんある。 玲子ちゃんが泣いたのだって、俺が何かしたからじゃない。 あれは不幸な、不運な出来事だったのだ。 「ひど、いよっ……ジミ……ぐす」 「……でもね、玲子ちゃん。あれが俺の正直な気持ちなんだ」 「わかんないよ、なんで嫌いなんて……いうんだよ。 ボクは、好きなのに……なんで嫌いなの」 「嘘を吐いたって、しょうがないだろう? 玲子ちゃんは俺の嘘の言葉を聞きたかったのか」 「なんで嫌いなのって、聞いてるじゃん! 答えてよ!」 以上、知り合いの男子高校生に自分の母親が嫌われていると分かって怒る9歳児との会話でした。 しかし不思議なものだ。 登場人物が一人欠けただけで一気に犯罪臭くなる。 俺と玲子ちゃんが別れ話しているみたいだったな。 本当、どうして小学三年生と痴情のもつれ的な会話が成立するのか、理解不能である。 演じるのは可能であろう。ただし台本があれば、という条件付きで。 アドリブでここまで再現できるなんて、玲子ちゃんはませているなあ。 さっきまで泣いていたせいで感情が高ぶっていたからか? 561 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 08 02 ID jiY4UFBL 玲子ちゃんが泣き出したのは、待合室からだ。 自分のパンツの色を自白してしまい、羞恥心から泣き出した訳ではない。 きっかけと言えるようなものは、あえていうなら、玲子ちゃんの母親の話だ。 玲子ちゃんは俺と母親を会わせたいらしく、真剣にお願いしてきた。 それに対する俺の返答は、ノーだ。 会いたくないのだから仕方ない。いくら俺が年下に甘いとはいえ、こればかりは譲れない。 そんな態度を取っていると、お母さんが嫌いだから会いたくないの、と質問をしてきた。 そこでどうして頷いてしまったんだろうね、俺は。 なあなあで話を終わらせて帰ってしまうか、否定するか、どちらかにすればよかったのに。 そうすれば、少なくとも玲子ちゃんが馬鹿な行動をとることもなかったのだ。 「その服、早く水に浸けた方がいいって。 ここ、お母さんの病室だったろ。着替えぐらいあるだろ?」 「……ジミーが悪いんだもん。シミになっちゃっても全部責任とってもらうもん」 それが嫌だから早く着替えて服を水洗いしてほしいんだがね。 「言っておくけど、あれは玲子ちゃんの自業自得だからね。 腹を立てて、お兄さんのコップを奪い取って、お兄さんに投げようとした君がいけない。 バチが当たったんだよ」 「ジミーが悪い。なんかぬるぬるしてたもん、あのコップ」 「エイリアンじゃあるまいし。なんなら手、握ってみる?」 「お前みたいな歩くぱんつ観測所の手なんか握るもんか」 パンツ観測所とはまた、視点の低いことで。 そもそもそう呼ばれるほど観測の実績をあげているわけではない。 妹は家族だから除外。葉月さんのは見たことない。 澄子ちゃんのも、藍川のも、花火のも記憶にない。 記憶にあるのは玲子ちゃんのぐらいのものだ。 ――あれ? ってことは、玲子ちゃんにとっては俺は観測所なのか? 違う。断じて、否。 あんな白かったり色つきだったりストライプだったりアクセントが付いたりしているものが好きな訳がない。 パンツを見られたり、うっかりパンツの色を自白してしまった玲子ちゃんの反応を見るのが面白いだけだ。 562 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 09 16 ID jiY4UFBL 「まったく運がなかったね。まさか底に溜まっていたコーヒーが首筋にかかるなんて。 驚いて椅子からずり落ちて顎で机を打ったのも災難だった。 ひっくりかえった机から玲子ちゃんのジュースが落っこちたけど、背中で受けられたのは幸いかな。 そこでしっかりキャッチできていれば良かったのにねえ」 「背中でコップをつかめるもんか!」 ごもっとも。背中でコップをキャッチできるはずがない。 できなかったから、玲子ちゃんは背中からジュースをモロに浴びることになった。 顎の痛みと背中の気持ち悪さで玲子ちゃんは泣き出してしまった。 さらに、俺が伯母を嫌っていることまで思い出して泣くのだから始末が悪い。 待合室から玲子ちゃんの母親の病室まで連れて行くのは、かなり難儀した。 人の目が気になる。 場所が場所だけに通報されたり捕えられるようなことはなかったものの、泣いた女の子の手を握りながら歩くのは、かなり神経をすり減らす。 これは、もう拷問と言ってしまっていい。 ずるいよな、女で、しかも小さい子供って。 俺に過失がなくても、全部俺が責任とることになるんじゃないか? 563 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 11 09 ID jiY4UFBL ぶつぶつ言いながら玲子ちゃんが着替えだしたので、俺は病室の外で待つことになった。 まあ、別に待つ義理はないんだが、今度玲子ちゃんに会ってしまった時、より面倒なことになるのは確実。 「……って、待ってても、面倒なことになるんだけどな」 このままここにいれば、伯母がやってくるだろう。 入院患者は基本的に夕食前には病室に戻ってくる。 この病院の夕食時間はもうすぐ。伯母が病室に戻るまでもうすぐ。 「覚悟決めてかかるしかないか、もう」 今から伯母と会話するにあたっての注意。 一つ、伯母に怒りをぶつけない。 二つ、俺と伯母の間に起こった事件について話さない。 三つ、今後二度と会わない約束をする。 俺と伯母と玲子ちゃんの関係については――話さなければいいだけか。 伯母が話すかもしれないが、それならそれでいいだろう。 玲子ちゃんの保護者は伯母なんだ。 事実を教えるのも隠すのも、伯母の好きにすればいい。 隠しておいた方がいいという思いもある。 けれど、今の玲子ちゃんはともかく、成長した玲子ちゃんなら事実にいつか気付く。 自分の父親がどんな人間で、今どこにいるのか疑い始める。 そうなるのは、所詮時間の問題だ。早いか、遅いか。 そして、早い段階で父親の正体を探り当てるだろう。 そう、俺の父親を。 「……けど、ん、あれ? この情報って」 事実として確認したんだっけ。 いや、してないよな。玲子ちゃんが持っていた写真からの推測だ。 玲子ちゃんの母と、その夫が写っている写真。 そいつと、俺の弟がそっくりだったから、俺の父親が玲子ちゃんの父親でもあると考えた。 若い頃の父と弟はうり二つだ、と母も証言している。 だけどこれ、穴だらけの証拠だ。他人のそら似で片づけることもできるじゃないか。 もしかして、俺の父親は妹に手を出した鬼畜であっても、しまいどんまんじゃないのか……? わからんぞ。妹に手を出したんだから、姉にも手を出しているのかもしれん。 いや、自分の父親を信じてやらないでどうする。 疑わしい。いや、信じられる。 あいつは黒だ。いや、白だ。 あいつはやった。いや、やってない。 564 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 12 37 ID jiY4UFBL 壁に背中を預ける。 左手のアイアンクローで頭部を圧迫する。 だがそんなことをしても答えが出るはずがない。 「う、うおお……お、俺はどうすれば……」 「とりあえず中に入ってくれないかな」 「そうだな、とりあえず落ち着いて、中でゆっくり考えて……」 顔を上げると着替えを終えた玲子ちゃんが病室の戸を開けて待っていた。 玲子ちゃんは、上から下まで全て着替えていた。 さっきまでは膝下まで延びるスカートを穿いていたが、今は丈の短いジーンズだった。 警戒されているのかもしれない。 俺はそんなに信用されていないのだろうか。 いついかなる時でも玲子ちゃんのパンツを狙っていると? 違う。そんなことはありえない。 たまに悪ノリすることもあるが、基本的に楽しく話をしたいだけだ。 「ジミー、そんながっかりしないで」 「え、がっかりしてるように見えた? あの、別にがっかりしてないよ、俺」 「置きっぱなしにしてた着がえがこれしかなかっただけだから。 ジミーがボクのパンツ見たさにスカートを希望してたのは知ってるけど、 あんまり正直すぎると思うな」 「どうして俺が君みたいなちみっ子に失望されなきゃならん」 「え……ちょっとだけでもボクから信じられてるとでも思ってたの……」 「なにこの子! 着替えたらいきなり口が悪くなったよ!? そ、そうか。その服は呪いの装備か。効果は毒舌か! ならば脱がしてやる! それとも脱がされたいか!」 「両方一緒だよ! ジミーって、やっぱり変態さんだったんだ……」 「玲子ちゃんはそんなこと言わない!」 「言うよ! もとからこんな感じだよ!」 もはや一刻の猶予もならん。 早くこの子から呪いの装備を引きはがさなくては。 次世代を担う子供がまた一人、その無垢な心を傷つけられてしまう。 「大人しくしててくれ、玲子ちゃん」 「ぜぇったいにノー! 近寄るなバカ!」 「すぐに君を元の純粋な子供に戻してあげるから。 だから服を――」 565 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 14 11 ID jiY4UFBL 続きを言おうとしたところで、唐突になにかが俺の動きに割り込んだ。 まず、首筋に。 何か尖ったものが突き立てられた。 ナイフか針かと思ったが、そうではない。 この親しみのある痛覚は――ペン。 「動かないでください。指一本動かさないでください。声を出さないでください。 呼吸は鼻以外でしないでください。さもなくばこのまま脈を穿ちます」 次に、若い女の子の声。 その声で、俺が周囲からどう見られていたかわかった。 小学生の女の子に襲いかかる男子高校生。 釈明を待たず、ペンどころか、警棒で即行打ち倒されても文句は言えまい。 だがしかし。男にはやらねばならないこともある! 「違う。これには理由があって、呪いが」 「ぷすり」 ぷすっと、ペンの先端が首の皮膚を破った。 声も上げずにひっくり返る。 右の首筋を刺されたから、左側に。 右腕が動かないから、左に転倒することになったのは不幸中の幸いだ。 首筋に手を当てる。よかった。出血は少ない。 一瞬の安堵。すぐに危険から逃れるべく、反転する。 先ほどの声の主と対峙する。 「ちっ、浅かったか。やっぱり久しぶりにやると加減を誤るわね」 「いきなり何するんだ!」 「それはこっちの台詞ですよ。いえ、何してるんだ、ですかね。 男子三日会わざれば刮目して見よと言いますけど、マイナスの意味で使うこともあるとは。 見損ないましたよ――先輩」 「は……?」 先輩だって? それにこの声、この容姿。 ――まさか。 なんでこの子がこんなところに居るんだ。 学校には顔を出していなかった。弟の前にも現れなかった。 それが、なぜ病院にいる? 566 :ヤンデレ家族と傍観者の兄 ◆KaE2HRhLms :2010/05/30(日) 00 15 24 ID jiY4UFBL 「澄子ちゃん……?」 「はぁい、そうですよ。先輩の義妹の、木之内澄子ちゃんです」 軽い口調で澄子ちゃんはそう言った。 弟を慕っていることを隠そうともしない。あけっぴろげ。 この子は、何も変わっていないのか? 弟に執心したままだと? それなら、どうして――監禁状態の弟を解放したんだ? 「なにか私に聞きたいことがありそうですね。 だ・け・ど。その前に先輩にはおしおきが必要ですよね。 ねえ、二人とも。そう思わない?」 澄子ちゃんの後ろから現れたのは、見覚えのある人物だった。 俺の交友関係の中で、唯一趣味の合うであろう女。 「そうだな。できることならかばってやりたいが、ここまで酷いとかばいようもない。 ジミー君。まさか君がそういうタイプの人間で、玲子に対して劣情を抱いていたなんて、な」 藍川の明らかに失望した視線はかなり堪えた。 が、澄子ちゃんのでも藍川のでもない第三の視線を感じた時はそれ以上の衝撃だった。 「あの、とりあえず部屋に入りましょう。 こんなところで立ち話をしていたら、病院にいるみなさんのご迷惑ですから」 俺が人生で最も出会いたくない相手が居た。 玲子ちゃんの母、伯母の冴子がそこに居た。 藍川と澄子ちゃんにさっきの光景を見られたのは不幸ではあったけど、幸いでもあった。 むしろ二人に感謝すべきだ。 母親を慕う子供の前で、明らかな憎しみの視線を向けることを我慢できたから。
https://w.atwiki.jp/yagee/pages/12.html
「あ」 相沢美奈子 朝倉泉 熱田ゆい 天野瑞希 雨宮京助 雨宮敬子 あやめ型ロボット(プロトタイプ3号機) 井笠京 井川三朗 一色明久 一色幸恵 歌登民 内部慶二郎 王滝真 大湊 大西知美 奥山歩 奥山翔 尾小屋螢 「か」 柏木亮平 北勢慶一郎 協田三紗 頸城恵 黒野恋花 「さ」 西大寺鼓 斉藤直毅 酒井紫苑 坂川睦 佐倉井清香 佐世保 篠田貴彦 下津井圭輔 ジャスミン・リー 白瀬美雪 諏訪一平 仙北慧 「た」 高田恵子 田中瑞香 田中みのり 田中美和 樽見さやか 長鯨 築地祐樹 九十九里津海 天龍響 土合まひる 栃尾啓吾 「な」 中村律子 仁科聡子 沼尻馨 根室拓 「は」 橋本和美 花巻繋馬 廣瀬導子 深町香織 藤永田麻美 古堅遥太郎 保田亀造 本間秋絵 「ま」 舞鶴 松原みどり 汀環 向丘楜 武庫川あるな 村岡美由紀 守山 「や」 八木橋裕子 魚染瀬槇 山口霞 横須賀 吉田昌弘 「ら」 「わ」
https://w.atwiki.jp/imas_cg/pages/81.html
ステージボス:浜川愛結奈 衣装コンプ:相原雪乃 初登場アイドル(ノーマル):水木聖來、大槻唯、五十嵐響子、佐々木千枝、柳瀬美由紀、姫川友紀 必要スタミナ 3000 千葉A 千葉B 千葉C 千葉D 千葉A スタミナ:-7 経験値:+7 マニー:+70~210 ファン:+4~11 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):112(16回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ノーブルグレース キュート クール パッション キュート クール パッション 19-1 本屋でサイン会 今井加奈(6) 水木聖來(10) 赤城みりあ(8) 橙 青 赤 19-2 本屋で握手会 間中美里(8) 荒木比奈(8) 赤城みりあ(8) ― ― ― 19-3 CDショップでサイン会 奥山沙織(8) 相川千夏(6) 大槻唯(10) 青 赤 橙 19-4 CDショップで握手会 五十嵐響子(10) 荒木比奈(8) 松山久美子(6) ― ― ― 19-5 イベントでキャンペーンガール 間中美里(8) 上条春菜(8) 矢口美羽(8) 黄 緑 紫 ボス:浜川愛結奈 報酬:スタミナドリンク1,エナジードリンク1,6000マニー,浜川愛結奈 千葉B スタミナ:-8 経験値:+8 マニー:+ 80~240 ファン:+ 4~12 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):136(17回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ノーブルグレース キュート クール パッション キュート クール パッション 20-1 ミニスタジオで撮影会 持田亜里沙(7) 川島瑞樹(7) 大槻唯(10) ― ― ― 20-2 デパートの屋上でミニライブ 間中美里(8) 上条春菜(8) 赤城みりあ(8) 橙 青 赤 20-3 グラビア撮影 五十嵐響子(10) 荒木比奈(8) 斎藤洋子(7) ― ― ― 20-4 CDショップでミニライブ 間中美里(8) 水木聖來(10) 赤城みりあ(8) 青 赤 橙 20-5 ラジオ収録 奥山沙織(8) 荒木比奈(8) 矢口美羽(8) ― ― ― ボス:浜川愛結奈 報酬:エナジードリンク1,鍵付きクローゼット1,6250マニー,トレーナー 千葉C スタミナ:-9 経験値:+9 マニー:+ 90~270 ファン:+ 5~14 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):162(18回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ノーブルグレース キュート クール パッション キュート クール パッション 21-1 ライブハウスでミニライブ 奥山沙織(8) 高橋礼子(5) 木村夏樹(5) 黄 緑 紫 21-2 バラエティ番組収録 間中美里(8) 佐々木千枝(10) 矢口美羽(8) ― ― ― 21-3 ストリートでミニライブ 柳瀬美由紀(10) 上条春菜(8) 赤城みりあ(8) 橙 青 赤 21-4 グラビア撮影会 椎名法子(5) 荒木比奈(8) 矢口美羽(8) ― ― ― 21-5 グルメ番組ロケ 奥山沙織(8) 上条春菜(8) 大槻唯(10) 青 赤 橙 ボス:浜川愛結奈 報酬:エナジードリンク1,スタミナドリンク1,6500マニー,トレーナー 千葉D スタミナ:-10 経験値:+10 マニー:+ 100~300 ファン:+ 5~15 各お仕事の必要スタミナ量(仕事回数):190(19回) エリア お仕事内容 見つけたもの アイドル (太字は低確率出現) 衣装:ノーブルグレース キュート クール パッション キュート クール パッション 22-1 雑誌インタビュー 奥山沙織(8) 荒木比奈(8) 矢口美羽(8) ― ― ― 22-2 アフレコ収録 間中美里(8) 神谷奈緒(7) 姫川友紀(10) 黄 緑 紫 22-3 音楽番組収録 三村かな子(7) 佐々木千枝(10) 赤城みりあ(8) ― ― ― 22-4 CM収録 間中美里(8) 上条春菜(8) 沢田麻里奈(7) 黄 緑 紫 22-5 ドラマ収録 柳瀬美由紀(10) 荒木比奈(8) 赤城みりあ(8) ― ― ― ボス:浜川愛結奈 報酬:エナジードリンク1,鍵付きクローゼット1,6750マニー,浜川愛結奈
https://w.atwiki.jp/nwxss/pages/397.html
軽子坂学園が、魔界に堕ちたのは、今から3ヶ月ほど前…学園世界が誕生するよりも前のことである。 魔界を旅して強力な力を手にし、魔神皇と名乗るようになった挟間偉出夫(はざまいでお)が引き起こした軽子坂学園の魔界堕とし。 それに巻き込まれた軽子坂学園の人間は次々とハザマの手で6つに分けられた魔界に送り込まれ、様々な責苦にさいなまれた。 文字通りの意味で地獄のような暮らし。 だが、それは最初はすぐに終わりを告げた。 軽子坂学園が魔界に落ちて1ヶ月もしないうちに、ハザマが倒されたのだ。 倒したのは悪魔召喚プログラムを入れたパソコンを持った少女と、学園一の不良少年。 この2人は用務員室のマンホールから密かに旅だち…ハザマを倒した。 詳しいことは誰にも分からなかったし、魔界から帰れるようになったわけではないが、それでも一応の平和は戻った。 生徒たちが魔界でも比較的安全な場所で魔界の住人たちと暮らしていた、そんなときである。 ハザマが復活したのは。 復活したハザマは依然以上に残虐で容赦無く軽子坂学園の生徒たちを責めた。 以前からハザマの信奉者であった大月と言う教師を手足にして生徒たちをとらえ、あるものは精神を壊して悪魔を使役する魔神皇の忠実な僕たるダークサマナーにされ、 またあるものはハザマの“実験”の犠牲者として死んでいった。 そして、そんなハザマに戦いを挑んでいたのが、パソコンに詳しい佐藤と言う少年と、玲子たち3人の“ガーディアン憑き”であった。 彼らはハザマを再び倒し、魔界から人間の世界へ帰るために戦っていた。だが… ―――傲慢界 回復の泉 「他の3人…佐藤くん、チャーリーさん、ユミさんはハザマくん…いいえ。魔神皇に捕まってしまったわ。 もう、魔神皇と戦っているのは私と桜花さんだけ…」 清浄な気の満ちた、癒しの泉。そこを管理するエルフに魔界の金を渡し、休息をとりながら、タバサは玲子に話を聞いていた。 「正直、今の私たちだけでは限界。今ここで戦い続けても、魔神皇には勝てない、いいえ。たどりつくことすら出来ない」 怜子が悔しげに唇をかみしめる。俯き、言葉を絞り出す。 「もう、私ではハザマくんは止められない…」 「…だから、私たちを、カゲモリを頼った?」 その呟きを確認するように…タバサが問う。 「はい~。私が言ったんです」 それに答えたのは、桜花だった。 「学園世界で、魔神皇と戦える“組織”は執行部かカゲモリくらい。彼らの力を借りるため、1度魔界を脱出する必要がある。 佐藤さんが作ったプログラムは元々はそのためのものだったんです~。外部のパソコンと回路を開いて、向こう側に転送するために。 完成前に佐藤さんが捕まってしまったので、転送できたのは“精霊”として悪魔召喚プログラムで召喚可能な私くらいで、 あとはマグネタイト切れの強制帰還を利用して向こうから“引きずりこむ”しかなかったんです」 そう言うと、タバサの方を見て済まなそうにいう。 「すみません~。ロクな説明もせずに巻き込んでしまって。しかし、私たちだけでは、他の帰還の方法はとれなかったもので」 「他の方法…魔神皇を、倒す?」 タバサが初めに思いついた方法を口にする。それに桜花はかぶりを振って、言う。 「いいえ~。魔神皇を倒そうと思ったらこの3人では難しいでしょうし、倒しても魔界から帰れるとは限りません。 前に倒されたときは帰れなかったわけですから」 「じゃあ、どうするの?」 タバサの問いに桜花は真面目な顔をしていう。 「実は1つだけ、この魔界から学園世界につながる道…私のここに来る時に通ってきた道があります。そこからなら学園世界の輝明学園に出られます。 けれど、そこは本当に危険な道なんです。幽霊である私だけならともかく、玲子と2人だけではまず抜けられないでしょう」 そして、言葉を継ぐように玲子が改めて、タバサに言う。 「すみません。タバサさん自身が帰るための選択肢が他にない状態で、こんなことを言うのは、ずるいことだって分かっています。 それでも言います。私たちを、学園世界へ連れて行ってください。私たちに、力を貸して下さい」 言い終え、じっと真剣な表情でタバサを見る。そこには強い意志が宿っていた。 「…分かった。それで、どうすればいい?」 その意思の強いまなざしを見て、タバサは2人を信用することにした。彼らの目に、嘘は無い。 それに、目的のために汚れることも厭わない姿勢。それはタバサには人ごとには思えなかった。 かつて、母のために様々な“汚れ仕事”を引き受けていたタバサには。 タバサの返答にほっとしたような空気が流れる。2人の緊張が目に見えてとけたのが分かる。 「はい。まずは、この傲慢界を守る悪魔を倒す必要があります」 玲子が天井を見上げながら、言う。 「桜花さんが通ってきた、魔界と学園世界をつなぐ穴は、魔神皇の封印が強すぎて人間では通れない大きさらしいんです。 それを広げるために、封印を解く鍵…堕天使ヴィネの持つ“リング”を手に入れる必要があります」 玲子と桜花、そしてタバサが立ち上がる。 「幸い、堕天使ヴィネはそんなに強くありません。私たち3人ならば、まず負けないと思います。行きましょう」 タバサがこくりと頷いた。 ―――傲慢界 1F (…気配がする) それが、タバサが最初にこの魔界に来て感じた感想だった。 「気をつけてください。ここは、魔界。いつ“悪魔”に襲われてもおかしくありません」 玲子の言葉に頷きながら、タバサは愛用の杖をしっかりと握る。 息をひそめ、襲撃に備えつつ、タバサたちは慎重に進む。 (―――来る…っ!?) タバサの感覚が何かが現れるのを察知し、杖を構え…現れた悪魔に硬直する。 あそぼ…あそぼ…あそんで…あそんで… 現れたのは何人かのおかっぱの少女たち。それだけならばこの魔界に現れるのはおかしい。 だが、普通の少女にはありえぬ特徴。 膝から先が消失し、向こう側が透けて見えると言う特徴が彼女たちを魔界にふさわしいものとしていた。 それはすなわち。 「…幽霊!?」 思わず緊張と共に声を上げる。 「はい。悪霊“ハナコさん”ですね」 対する玲子の方は落ち着き払っている。よく見ると、銃も準備していない。 「大丈夫です。この子たちは、襲ってきません」 「どういうこと?」 「ほら。あれです」 よく見ると少女たちは桜花を取り囲んでいた。 おねえちゃん…おうかおねえちゃんだ… 変に透き通った声に含まれるのは…明らかな歓喜。ハナコさんたちは桜花と戯れていた。 「はいはい~。みなさんお久し振りですね~」 彼女たちに取り囲まれた桜花は、多くの妹たちと遊ぶ姉のようにうっすらとほほ笑んでいる。 幽霊たちが舞い戯れる、怖いような微笑ましいような、なんとも言えない空間が形成される。 「…あれは?」 「えっとですね。桜花さんは悪りょ…幽霊とはすぐ友達になれるんですよ」 玲子が苦笑して言う。 悪霊は銃弾が効かないことが多く貴重なMPを消費せざるを得ない厄介な相手。 その事を知っているだけに玲子は桜花のこの“力”と言うか“人柄”に、何度か助けられ、感謝をしていた。 「それじゃあ、私たちはちょっと行かなきゃいけないところがあるので失礼しますね~」 にこやかに手を振り、桜花とハナコさんは友好的な雰囲気で別れる。 「これ、貰っちゃいました~」 そう言ってキラキラと輝く玉を2人に見せる。 「それは?」 「宝玉ですよ~。使うと体力が回復するんです。1回使うと壊れるので使い捨てですけど」 タバサの問いに答えながら桜花は玲子に宝玉を渡す。 それをポケットに入れながら、玲子がタバサに言う。 「こんな風に、話し合い次第では戦いを回避できることもあります。なんで悪魔が出てきてもいきなり攻撃はしないでください」 「分かった。任せる」 玲子の言葉にタバサがこくりと頷いた。 ―――傲慢界2F 「ふう…今日は一旦ここで休みましょう。銃弾の補給もしたいですし。それで良いですか?タバサさん」 「分かった」 思えば2人の手で魔界に来たのは夜のこと。それから考えるともう明け方くらいの時間のはず。 休まなければこの先辛いと言う玲子の判断を支持し、悪魔に襲われる心配のない魔界の村でタバサたちは泊まることにした。 武器屋で玲子の銃の銃弾を購入し、村の一角へと向かう。そこには「軽子坂学園ワンダーフォーゲル部」と書かれたキャンプ用品と焚火の跡があった。 「ここは?」 「はい。ここは元々私たちの“拠点”だったんです」 玲子が少しだけ寂しげに、言う。 「拠点?」 「はい。ダークサマナーは軽子坂学園を拠点にしてて、魔界にはほとんどやってきません。 だから、魔神皇が復活したあとは、私たちはこの魔界で魔神皇と戦うための準備をしていました」 自分と同じく死にかけたとき“ガーディアン”を得て魔法の力に覚醒めた2人の“ガーディアン憑き”と、 “あの子”ほどでは無いにせよ悪魔召喚プログラムを扱う事ができた駆けだしサマナーの佐藤。 それに玲子と“喋ることができ、自分の意思を持って動く特殊なガーディアン”である桜花を加えた5人。 「…しばらくはうまく行ってました。だけど、あるとき魔神皇の命令を受けたダークサマナーの一団に襲われて…」 魔界で力をつけ、桜花と言う強力なガーディアンがいたとは言え、多勢に無勢。このままでは全滅する。 そんな風に追いつめられたときのことだった。 「他のみんなが、私を逃がしてくれたんです。私と桜花さんが、一番魔神皇を倒せる可能性が高いって…」 「ええ。悪いとは思いましたが…私の力では私が直接護っている玲子を逃がすのが精いっぱいでした」 桜花も玲子と同じく、暗い表情で悔しそうに言う。 「他の3人がどうなったのかは分かりません。ただ、殺されずに連れ去られたと聞きました」 「ですから~、いずれ助け出そうと思っているんです~」 桜花の一見軽い口調には、強い力が込められていた。玲子と桜花。この2人の目に宿るのは、静かな決意。 「……」 その決意にタバサは自らと同じものを感じ取る。 (母さま…) ゲルマニアにある親友の実家に残してきた、母を思う。 敵地であるガリアから助け出したことですぐに身の危険に襲われることこそないが、彼女の心は未だにエルフの秘薬で壊れたままだ。 (必ず、助ける。だから、待ってて…) 2人を見て、久し振りにそれを思い出したタバサは、決意を新たにする。彼女が…“カゲモリ”になったときと、同じ決意を。 だから今は… 「今日は、もう寝る。休息をとれるときに取っておくのは、重要」 冷静に行動する必要がある。考えうる限りの最善をつくし続ける必要が。 「そうですね。疲れていては、できることもできません」 玲子が頷き、傍らの桜花を見る。眼と眼で通じあい、桜花が頷いて、言う。 「それでは~タバサさんと玲子さんはし~っかり休んでくださいね~。私は何かあった時のために見張りをしてますんで。 …ちなみに幽霊は寝ても寝なくても一緒なので、心配はご無用ですよ~」 「…分かった。頼んだ」 タバサが玲子から寝袋を受け取りつつタバサが桜花にごく自然に頼む。 少しの間とは言え、行動を共にしたことでタバサが最初に感じていた桜花への恐れは、もう無い。 「はい~それではお休みなさい~」 桜花の声を聞きながら、タバサは静かに目を閉じる。連続での戦闘と、多くの出来事。 その疲れもあり、すぐに浅い眠りへとつくことができた。 ―――傲慢界5F 支配者の部屋 傲慢界の最上層。半日の時間をかけ、何度かの交渉と戦いを経たタバサたちは支配者の部屋へとたどり着いた。 「ここです。ここに、この傲慢界の支配者がいるはずです」 玲子が緊張した面持ちで言う。堕天使ヴィネは魔界の支配者の中では弱い部類に入る。 桜花と玲子の2人に妖獣マンティコアを倒す実力を持ったすご腕のメイジであるタバサ。 実力を考えれば3人で挑んで負けるはずはないとは言え、その実力はここにたどり着くまで戦った相手とは一線を画している。 決して油断していい相手では無い。 「…おかしいですね」 部屋の前に立った桜花が首をかしげる。 「どうかしたんですか?桜花さん」 「はい~。…何かのプラーナを“2つ”感じます」 桜花の答えに玲子が首をかしげる。 「2つ?おかしいですね。ヴィネが他の誰かと一緒にいると言う事ですか?」 「分かりません。ただ…1つは非常に弱々しいプラーナです。恐らくは…殺されかけたものの」 桜花は慎重に言葉を選び、感じ取ったことを2人に説明する。 「ヴィネが何か…人か悪魔を殺しかけていると言うこと?」 タバサの問いに、桜花はふるふると首を横に振る。 「いいえ~。死にかけてる方のプラーナは悪魔なんですが…もう1つが変です。人と悪魔が混じり合ったような…」 そこまで言って、桜花は顔を曇らせ、言葉を切る。 「…とにかく~。ここで考えていても仕方ありません。どのみちこの部屋でリングを手に入れないと先には進めないんですから、行きましょう」 「そうですね。タバサさん。準備はいいですか?」 玲子の問いにタバサはこくんと頷き、3人は歩を進める。 (間違っていて欲しいんですが…多分、間違いでは無いんでしょうね…) 進みながら、桜花は顔をしかめる。プラーナの塊とでも言うべき勇者の幽霊である桜花は、かなり正確にプラーナの正体をつかんでいた。 それが人と悪魔が混じり合ったもの…侵魔や冥魔の“アモルファス”に酷似した存在であること。 そしてそれが玲子と桜花の知る人間のものであることを。 「グ…な、何故…」 傲慢界の魔界の支配者、堕天使ヴィネが自らの身に起きたことを信じられず、うめく。 1つは、自らがたった1人に殺されかけようとしていること。 そしてもう1つは… 「ふん…分からないか?お前が無能だからだ」 それが、あの魔神皇に逆らう叛逆者の一味であること。 「無能…だと?」 「そうだ」 その、眼鏡をかけたひ弱そうな少年が言う。 「お前は知っていたはずだ。僕たちが、ここに逃げ込んでいたことを。なのにそれを報告しようとしなかった。 僕たちを処分しようとすればいつでもできる。そんな“傲慢”にとらわれていたがために。 それだけじゃない。お前はより強い力を得ることを怠った。 今のお前は悪魔を指揮する並みのダークサマナー1人にも劣る雑魚…支配者なんて名乗っていい存在じゃない」 非難と侮蔑をたっぷりと込めて、少年は更に続ける。 「そして今、お前は魔神皇の与えた“チャンス”にも失敗した。残念だよ。いや、喜ぶべきか?“実験”が、成功したんだからな」 「くぅ…」 少年の言葉にヴィネは悔しそうにうめく。事実だった。 魔神皇の使者だと言う少年が、ヴィネに持ちかけたチャンス…目の前の少年に勝てば、支配者のままでいられる。 そう言われ、ヴィネは全力でこの少年と戦い…敗北した。 「と言うわけで、お前は支配者たる器では無いってことになった」 そう言って少年は腕を振り上げる。 「ひ、ひぃ!?」 それを見て慌てて逃げようとしたヴィネの背に。 「だからさ、死ねよ。負け犬」 獣のように鋭い爪を持った剛腕が振り下ろされ、ヴィネは絶命した。 「ふぅ…これで終わりだな。後は…」 少年は腕を元に戻し、ゆっくりと入口の方を見て、言う。 「久し振りだね。玲子さん、桜花さん…その子が魔神皇と戦っている“外”の人間ってやつなの?」 つい今しがた入ってきた3人に対して。 「佐藤…くん?」 その少年を見て、茫然と玲子は呟く。 「ああ、そうさ。良かった。無事だったんだね」 いつもの気弱そうな笑みを浮かべ、佐藤は玲子に言う。 「佐藤君こそ!良かった!他の2人は!?」 喜び、駆け寄ろうとした玲子の前に大きな杖が突きだされる。それに止められる形で、玲子は足をとめた。 「…タバサさん?」 「待って。様子がおかしい」 背中に流れる冷汗を感じながら、タバサが不思議そうな顔をする玲子に告げる。 長い間様々な“モンスター”と戦ってきたタバサの勘が告げている。目の前の少年は… 「…まさか、こんなことまでするなんて…」 桜花が怒りを秘めた声で、言う。 「…どういうことですか?」 2人の態度に嫌な予感を感じ、玲子が2人に問う。 それに答えたのは、佐藤だった。 「…ねぇ玲子さん。“チェフェイ”って知ってる?」 何気ない口調で玲子が問いかける。 「チェフェイ?」 「そう、こことは違う魔界…貪欲界の支配者たる悪魔。そいつがさ、この前、“外”に行って来たんだ。 魔界の悪魔の力がどれだけ外の連中に通用するかってね」 (外に行った悪魔…狐?) 佐藤の言葉で、タバサはここ最近、一狼とライズが調べていた悪魔絡みの事件を思い出す。 各所に現れては、能力を奪っていく狐の面をした女の事件を。 「で、まあチェフェイは残念ながら負けて帰って来たんだけど…チェフェイのデータから、面白いことが分かったんだ」 何でも無いことのように、佐藤は“魔神皇に近しいものしか知り得ぬこと”を話す。 「面白いこと?一体何を言ってるの?それより、他の2人は…」 そんなことをペラペラと喋る佐藤に、玲子は首をかしげ、問い返す。 「普通悪魔はそのままでは実体化を保てない。マグネタイトの供給を受け続けて初めて実体化を保てる。 だから、常に悪魔はマグネタイトの供給を受けてないと、どんどん衰弱していく」 佐藤は玲子の問いなどお構いなしに一方的に喋り続ける。 「でもね…それを防ぐ方法が分かったんだ。簡単さ。人間と悪魔を“合体”させるんだ。 もちろん誰でもいいわけじゃない。ただの人間では悪魔に飲み込まれて完全に悪魔と化しちゃうから意味が無い。 けれど、例外的に強い魂…桜花さんの言うプラーナってやつを持ってる人間と悪魔が“合体”すると、 マグネタイトなしで行動できる悪魔並みの力を持った人間…魔人が誕生スル」 佐藤の声がひび割れて行く。その肉体が膨れ上がり、異常な速度で全身に毛が生えそろう。 「覚えてイルカ?俺の最高ノ相棒…アノふろっぴーカラデテ来タけるべろす…俺ハ、アイツト合体シテ、力ヲ得タ…」 その姿は、まさに“魔獣”と人の融合。 「オレハ“魔人”ケルベロス…魔神皇サマニ逆ラウモノハ…殺ス!」 完全に変身を終え、化け物と化した佐藤が、3人に、紛れも無い殺気をぶつけ、吠えた。 ← Prev Next →