約 28,785 件
https://w.atwiki.jp/50katatubo/pages/6.html
アーカイブ @wikiのwikiモードでは #archive_log() と入力することで、特定のウェブページを保存しておくことができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //www1.atwiki.jp/guide/pages/921.html#id_2d967d6e たとえば、#archive_log()と入力すると以下のように表示されます。 保存したいURLとサイト名を入力して"アーカイブログ"をクリックしてみよう サイト名 URL
https://w.atwiki.jp/pararowa/pages/98.html
クライモリ ◆cyLXjJEN56 ―――紅い。 夜空が、紅く染まっている。 厳密に言えば、夜空にかかった雲に、地上からの光がスクリーンの様に映し出されているが為であって、空自体が紅く輝いている訳ではなく、その光源は地上に在ると言う訳だ。 では、空を紅く染める、その光源とはなんだろう。 果たして、『儀式』の会場、地図上では『B-4』の南方に位置する、古びた教会から飛び出した、赤い赤い炎こそが、その光源の正体であった。 火の手は、教会全体を覆い尽くさんとばかりの勢いで、消化せずに放っておけば、後一時間も経たずに、灰と炭と残骸だけを残して、教会は焼失してしまうだろう。 どうやら、教会内部より出火したらしいが、バリン、と音を立てて、ステンドグラスが割れる音が響き、さらに炎が、教会の内から外へと飛び出して、空を一層、紅く染めた。 そんな中、燃え盛る炎と煙により、今にも崩れ落ちんとしている教会正面の観音開きの扉が、ギィギィと嫌な軋み音を響かせて開き、その内側から、煙、炎と共に、一人分の人影を吐きだして来たのだ。 明らかに常人であれば焼け死んでしまうであろう燃える教会の内より出現したその人影は、やはりと言うべきか、『普通の人間』では無かった。 黒と白で構築された、スマートな仮面の鎧騎士。 白い線は、黒い体に、非常に尖った文様を描き、その有り様は、何処となく『三角形』を連想させる。 それは、仮面となるとより顕著で、『三角形』の意匠を交えたその仮面には、二本の角と、橙色の大きな『眼』が二つあり、その橙は、炎の赤を受けて、一層妖しく光り輝いている。 この鎧騎士……『スマートブレイン』が『王』を護る為に作り上げた三体の『守護騎士』が一体、すなわち、『デルタ』であった。 『三本のベルト』の内、一番最初に造られたこのベルトは、装着者を選ばず、人であろうと、オルフェノクであろうと、自由に変身する事ができる。 無論、何の代償も無い訳ではないが…… さて、この、燃える教会から出て来た『デルタ』の左手は、何か『大きなもの』を掴んで引き摺っており、ソレの一部には、教会内で引き摺ったせいか、幾らかの炎が燃え移っている。 『――――――――――――』 『デルタ』は無言で、まるでゴミでも捨てるかの様に、それを地面へと向けて放り投げた。 『デルタ』の怪力により、かなり重そうに見える『何か』は、しかしまるで軽いモノであるかの様に、宙に放物線を描きながら飛んで、どさりと草むらに落ちて転がった。 ここで…影に隠れて解らなかった『何か』の正体が明らかになる。 それは―――― ―――散大した瞳孔。 ―――硬直を始めた肉体。 ―――血に染まったボロボロの衣服。 ―――そして、随所が『欠損』した体躯…… それは『人間の死体』であった。 それも、推測するに、相当に残虐な方法で惨殺された死体であった。 今や、死体となってしまったその人間の名前は、『松田桃太』と言った。 ◇ ―――松田桃太。 『キラ事件』を追う、警視庁の敏腕(?)刑事であり、その能力は必ずしも低くはないが、単純な性格であり、頭の回転もそれほど速くは無く、オマケに、余り空気を読めない、調子の良い男である。 しかし一方で、確固たる正義感、卓越した射撃の技能の持ち主であり、決して無能などでは無い。 そんな松田には、正義感からも、警察官としての矜持からも、こんな極悪非道の『儀式』の存在を許す事は出来なかった。 素早く、信頼できる夜神月君や、夜神本部長、そしてついでにいけすかないLと合流して、知恵と勇気を結集して、この『儀式』をぶっ潰し、あのアカギとか言う男を逮捕せねば…… そんな事を、松田が初期出現地点であった教会の中で考えていた時である。 ―――ギシリ と、床の軋む音が、松田の耳に入る。 この教会は相当に古いと思われる木造で、故に、歩くたびに床がギシギシと鳴る。 そして、自分は今、礼拝堂の椅子に座っている所であり、よって、音が鳴ったのは、誰かが、教会の中に居る事を示すのだ。 松田は、支給品であった『マニューリン MR73』を、コートの下のホルスターから引き抜いた。 フランス製のリボルバー拳銃で、使用される357マグナム弾の殺傷力は非常に高い。 ―――ギシリ ―――ギシリ ―――ギシリ 床の軋み音は、徐々にその大きさを増して行く。 間違いなく、こちらへと誰かが近づいているのだ。 この様な状況下での、見知らぬ誰かとの接触…… 松田の額と頬に、緊張故の汗が浮かんだ。 そして遂に、その何者かはやってきた。 礼拝堂へと繋がる扉の一つが、錆びた蝶番から出る嫌な音と共に開いたのだ。 松田は、開いたドアへと向けて、銃口を擬し、言った。 「両手を後ろで組んで、ゆっくりと此方へ歩いて来るんだ!!」 「怪しい動きを見せれば、容赦なく発砲する!!」 と、松田は陰で見えない、その未だ不明な来訪者へと告げた。 この礼拝堂には、窓から覗く月明かりしか光源が無く、それ故に、開いた扉の向こうの誰かは陰でしか解らなかった。 さて、銃口こそ向けたが、無論、本当に撃ち気は松田には無い。 仮に撃たねばならぬ状況に陥ったとしても、規範通り、初弾は警告の為にわざと外すつもりでいた。 日本の警察官の拳銃は、初弾が空砲になっているのだが、この拳銃では実弾な為に、わざわざ外して撃つ必要があった。 『―――――』 それに対して、その謎の人物は、松田の指示に従う事無く、堂々と松田の方へと歩みを進めて来る。 松田が、再度の警告を発しようとした時、月明かりで、その人物の姿が初めて明らかになった。 白と黒の仮面。橙色の瞳。 言うまでも無い、『デルタ』であった。 その余りの異様な姿に、松田は思わず唖然とするも、しかし擬した銃口は外す事無く、 「もう一度警告する!!」 「両手を後ろで組んで……そこで一旦止まるんだ!!」 「指示に従わないなら……今度こそ発砲する!!」 しかし、『デルタ』はその歩みを止めない。 松田が引き金を引いた。撃鉄が落ちて、銃声。 銃弾は、床をぶち抜き、思いの外大きな穴を開けた。 警告射撃であった。 「最終警告だ」 「両手を後ろで組んで……そこで一旦止まるんだ!!」 「今度は…外さない。確実に当てるぞ!!」 そんな松田に対し、『デルタ』は、初めて歩く以外の行動を取った。 その右手が、腰元に伸びる。腰元にあるのは――― 「!!」 その形状を見て、今度こそ松田は躊躇しなかった。 覚悟を決めた時の松田の動きは恐ろしく素早い。 彼は、『デルタ』が腰に伸ばした右手へと向けて、即座に銃口を向けて、引き金を、引く。 ―――パチュォォォン! 「!?」 ―――銃弾が弾かれた。 ―――それも、怪人の着た異様な服の表面に。 余りの想定外の事態に、松田が唖然としている間に、『デルタ』は腰のモノ、『ブラスターモード』と化していた『デルタムーバー』を引き抜いて 「ふぁいあ」 と一言。それに、 ―――『 Burst Mode 』 と、電子音声が続く。 『デルタ』が、そして銃口を松田に向け、慌てて松田も茫然から立ち直って銃口を、『デルタ』の右手に向けるも 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 青く細い光線が、松田の右手に命中し、松田は絶叫を上げながら床にひっくり返った。 その右手から拳銃が弾き飛ばされたばかりか、右手は焼けただれ、その人差指と中指が欠損している。 フォトンブラッドの青い光弾に、吹き飛ばされてしまったのだ。 痛みに床でゴロゴロと転がる松田へと、『デルタ』は腰にデルタムーバーを戻しつつ、悠然と歩みよって来る。 そして…… 「うあわぁ!? 何をす――――」 『デルタ』は松田の首を捕まえて、無理矢理彼の体を引き摺り上げたのだ。 仮面の橙色の眼と、松田の眼が、正面から向き合う。 「―――――ッ!?」 この時、松田は確かに感じ取った。 何故か、それが解ってしまった。 仮面の下の誰かの顔が、確かに、嗤っているだろうと言う事を。 恐ろしく、暗い喜びによって、だ。 空いた方の『デルタ』の左手が、松田の右肩の掛り――― ―――『虐殺』が始まる。 ◇ 松田の死骸の状況は凄まじいモノだった。 右腕と両耳は根元から引きちぎられ、両脚は有り得ない方向へと圧し折られ、肋骨はグシャグシャに砕けて肺に突き刺さり、その上で、激痛と失血で朦朧とし、昏睡寸前の半死半生の所を、首をへし折られて殺されたのだ。 『デルタ』の力を使えば…松田を殺すなど容易い事であり、この様に執拗な攻撃は必要ない。 では、何故、『デルタ』がこの様な『虐殺』を行ったかと言えば、それは『デルタ』の性能を確かめる為であり、『彼女』の、異様に沸き立った血の疼きを満たす為である。 心は『闇』に支配され、最早荒れ狂う嵐の様に、体は猛っている。 しかし、それが不思議と不愉快では無い。 そんな事を考えながら、『デルタ』は除装し、その内なる姿を明らかにする。 ―――紫の長い髪。 ―――同色の暗い瞳。 ―――結ばれたリボンは血の様に赤い。 黒い亀首のセーターに、ジーンズの姿で、腰にデルタドライバーを巻き付けたこの少女は、その名を『間桐桜』と言う。 何故、彼女が、支給された『デルタギア』を着けるつもりになったのかは解らない。 今、一つだけ確かな事は、『デルタギア』の持つ『副作用』…『デモンズスレート』による影響か、それとも、それによって彼女の内側に溜めこまれていた『悪意/恨み/怨み』が噴出したのか、そのどちらが原因かは兎も角、彼女の精神の平衡は崩れ、邪悪な意思に支配されているという事だ。 「―――――うふふふふ」 「せ♪ ん♪ ぱ♪ い♪」 妖艶に一人微笑みながら、彼女は一人、暗い森にわけ入った。 その殺戮の理由は、愛する『先輩/衛宮士郎』の為か、それとも、単なる暴走した彼女の悪意の故か、それは未だ不明であった。 【松田桃太@DEATH NOTE(漫画) 死亡】 【B-4/燃え盛る教会付近の森/一日目 深夜】 【間桐桜@Fate/stay night】 [状態]:『デモンズスレート』の影響による凶暴化状態、溜めこんだ悪意の噴出 [装備]:デルタギア@仮面ライダー555(変身解除中) [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本:??? 1:??? [備考] ※『デモンズスレート』の影響で、精神の平衡を失っています ※B-4の『古びた教会』は、後1時間程で完全に焼失します ※松田の支給品はディパックもろとも、焼失しました 008 草加雅人なら大丈夫♪ 投下順に読む 010 Night of Knights 時系列順に読む 初登場 間桐桜 023 monster. ~愛故の狂気 初登場 松田桃太 GAME OVER
https://w.atwiki.jp/ratewatch/pages/105.html
『メイベル、その機体じゃもう戦闘は無理だ。 今からすぐに艦砲打撃部隊の所まで後退しろ、方角はわかるな? 西北西に真っ直ぐ走るんだ、良いな。』 『中尉の機体もそんな状態じゃ無理です!! 一緒に逃げましょう!!』 半狂乱で叫ぶメイベルにイトウは嗜めるように喋りかける。 『まずは落ち着いて深呼吸しろ。 お前はただ撤退するんじゃない、艦砲打撃部隊に増援を呼びに行くんだ。 俺の機体は無事だが無線がオシャカな上にウスノロのガンキャノンだ、脚はお前のジムの方が遥かに早いだろ。』 『でもっ!!』 『な~に俺はのんびり後ろから付いて行くさ。 それにさっさと帰っておネェちゃんと一緒に酒でも引っ掛けたいんだ、ここで死ぬ気はねぇさ。』 『…了解。』 メイベルのジムコマンドカスタムはゆっくりと西北西へと足を向けた。 後部カメラでイトウのガンキャノンが立ち上がりこちらに付いてくるのを確認してメイベルは機体の速度を上げた。 岩場を利用した砲台跡でガンキャノンが見えなくなり前方に集中した。 そのとき先ほど無力化し倒れたドムのコックピットハッチが爆発ボルトで吹き飛んだのが見えた。 恐る恐るといった感じでサバイバルキットを背負ったパイロットが這い出してきた。 身体つきから女性と分かるパイロットはこちらに気付きキットから慌てて拳銃を抜きこちらに向けた。 だがすぐに拳銃を下ろして、そしてあろうことかヘルメット越しに自分の頭に拳銃を突きつける。 メイベルのMSが駆け寄ろうとした瞬間、レイアが引き金を引こうとした瞬間夜が明けた。 深夜の闇に包まれた周囲が昼間のように明るく照らされる。 融合炉の爆発だと直感したメイベルはジムコマンドカスタムを膝まづかせ右手でレイアを掬い上げながらコックピットハッチを開けた。 「早く入って!!お願い…」 レイアをコックピットに引き摺り込みながら叫ぶが最後は搾り出すのがやっとだった。 もう目の前で人が死ぬのは見たくなかった。 今まで何機も敵MSを撃破してその度に人を殺してきていたというのに。 自覚がなかった MSというロボットを倒しただけ そのコックピットに人間が収まっているという現実を見ようとしなかった 正直に言えばゲーム感覚で戦っていた そして今言い訳にもならないそんな理由を並べながら敵パイロットを助けようとしている 彼女がこのまま拳銃を私に向ければMSを奪われて仲間を、叔父様を、妹を殺してしまうかもしれない それでも… -------- メイベル機が見えなくなると量産型ガンキャノンのコックピットでイトウは呟いた。 「嗚呼麗しのメイベル嬢よ、どうか振り返らずにお逃げくださいっとな。 さてお仕事と行きますかね…。」 メイベル機が落としたであろう90mmマシンガンを拾い上げ簡単に点検すると機を反転させた。 先ほど捉えた巨大な移動物体に向かって走り出す。 メイベルのジムコマンドカスタムのレーダーやセンサーはまともに稼動していないのか気が付いていなかったが大きさと熱分布からいけばギャロップかホバーカーゴ程度、ただしどこまで正しいか不明。 このミノフスキー粒子と砂嵐では正常に稼動していても拾えるかどうかという反応だった。 γポイントが壊滅した今比較的近いαポイントと艦砲打撃部隊のレーダー設備が反応を拾ってくれる可能性もあるが高濃度のミノフスキー粒子と砂嵐で期待はできない。 ブラッドハウンドも先程からの戦闘音でまともに音源を拾えないだろう、MSの足音やマゼラアタックのキャタピラ音と比べれば比較的静かなホバー移動だ。 距離も距離だけに余程良い耳のソナー員でも運次第といったところか。 イトウはダメージを負った通信システムの復旧を行いながら各センサーの反応をじっくりと見定める。 約2000m先ギャロップよりも熱量が少なくサイズが少し小さい、そしてその反応の影になっていて気が付かなかったがMS1機の反応もキャッチした。 内部に格納されているようで熱分布から旧ザクと当たりを付ける恐らく最低限の護衛なのだろう。 機体を止めヘッドレスト脇のスコープを引き出しスタビライズド・ギアを接地して精密射撃モードへ移行。 無事な右のキャノン砲を内部の旧ザクに照準、240mmキャノンを直撃させれば格納庫の中だろうと無事では済まない。 砂嵐が吹き荒れるこの悪条件ではFCSの杓子定規な補正ではまず当たらない、今まで61式の砲手として散々砲撃してきた経験がそう告げる。 距離、風速、湿度、気温、敵の移動速度、練度…様々な条件を計算に入れ砲弾の軌道を頭の中でシュミレートして補正する。 いける。 ニュータイプのそれとは違う計算と経験に裏打ちされた予測がそう囁く。 トリガーに掛かった指に力を入れた瞬間、真後ろから強烈な閃光が瞬いた。 驚き思わずコントロールスティックを引いてしまった。 -------- αポイントでの戦闘は既に下火になっていた。 ジオン残党のMS部隊は撃退したものの被害もそれなりに出ている。 まだ擱座したMSの内部で粘っているジオン残党兵も何人か居るがそれも時間の問題だった。 「こちらホワイトフェザー、ダカール本部応答を願います。」 無線からはザーとノイズが流れるだけである。 「粒子に溺れちまう…」 パイロットが呟いた瞬間、南西の方角から太陽が登った。 真っ白な光が現れ辺りを照らした。 同時に警報が鳴り響く。 『核だ!!コックピットに入れ!!』 外部スピーカーで叫ぶ。 桁外れの光に遅れて数秒後に衝撃波が到達する。 砂が巻き上げられ壁となって迫りあっという間に飲み込まれる。 MSから外に出ていたパイロット達が吹き飛ばされ砂塵の中に掻き消えた。 「βポイントの方角、どっちがやりやがったんだ…」 砂に埋まったパイロット達を掘り起こす準備をしながら無線の全チャンネルをオープンにして情報収集を開始した。 -------- ダカール基地からもこの爆発は観測された。 「ジョシュア准将、スペクトル分析から爆発したのはジオン製の核融合炉と思われるとのことです。」 クライリーからプリントアウトされた分析結果を受け取りジョシュアは深く溜息をついた。 そして両手を揉み解すと指揮所から各部門長に指示を出す。 「基地防衛隊から最低限を除き全ての部隊を各防衛ポイントへ急行させろ。 先行してヘリでβポイントへミノフスキー粒子散布装置を投下して被曝を防げ、パイロットの防護も忘れるな。 艦砲打撃部隊の直衛MSも前進させてαポイントとβポイントを抜けた敵MSを挟撃しろ。 例のダブデも構わんヘビーフォークの砲撃で潰せ。 捕虜を捕る必要はない皆殺しにするつもりで行け、情けも容赦も一切無用だ。」 ジョシュアは立ち上がり更に続ける。 「諸君、今の命令は全て私、ジョシュア・ホーガン准将の厳命である。 この度の作戦の一切の責任は私にある、諸君は私の命令に従っただけだ。 もう一度言う一切の責任は私にある、その上で捕虜の確保は諦めろ。 現場下士官まで徹底して伝えるように。」 指揮所に詰めていた全員の顔に緊張が走る。 今まで現場の判断で捕虜の確保せずに殺してしまうケースは多々あったが正式な命令というのは異例中の異例だった。 -------- 「ティア・アール准尉、今すぐ2番滑走路のミデアをどかせて下さい。 コア・イージーが出撃できません。」 「ちょっと待って、まだ格納庫が空いてないの!! だいたい戦闘機の発着は3番と4番でしょ、なんで2番使うのよ!?」 「3、4滑走路は先刻からの砂嵐で視界が確保出来ないんです。 1、2滑走路だけまだぎりぎりで発着可能な視界を保っているんですよ。 指示はジョシュア准将から直接出てますので出来るだけ早くお願いします。」 「あーーーもうっ!!フランッ!!さっき着いたミデアをそのまま6番滑走路に回して。 生鮮食料品以外はとりあえず積んだままで待機!!」 「協力感謝します。」 軍曹は無線機で管制塔へ準備完了の報告を行ったあと敬礼して走り去った。 返礼したティアの傍らにフランが戻ってきて呟いた。 「何が起きてるんでしょう?」 「少なくとも碌な事じゃないでしょうね。 そういえばお姉さん前線に出てるんじゃないの? 大丈夫なの?」 「お姉ちゃんはあの天下のゼファー小隊ですよ~。 大丈夫に決まってます。」 「そうね…あの ホワイト・ライトニング が率いる部隊だものね。」 この子は本当に信じているんだ。 しかしこの戦闘が始まってから頭のてっぺんから爪先まで冷水を掛けられたような悪寒が暴れ回る、この不快感が何かを暗示しているようで怖かった。 昔からそうだった、友達がエレカに跳ねられた時も祖母が亡くなった時もコロニー落としがあった時もこの悪寒が止まらなかった。 「よし、私達は出来ることをしましょう。 まずはD-5倉庫に隙間を作るわよ。」 「りょうかいで~す。」 私は思ったことを口にした。 自分に言い聞かせるために… -------- 運が良かった、と言うべきか。 砂丘越えを諦めて迂回していたその時、圧倒的な閃光と衝撃波に襲われたのだ。 砂の壁によって守られた、下手に砂丘を乗り越えようと砂丘の上部に居たならば衝撃波で吹き飛ばされて機体は甚大な損傷を負っていただろう。 「どっちがやったんだ…」 ガラッツはくらくらする頭を振りながら独りごちる。 閃光と衝撃波が同時にやって来たということは近い距離、おまけに先程から放射線の警報が鳴りっ放しだ。 テナーがやったのかそれともやられたのか、どちらにしても生きてはいないだろう。 機体のダメージをチェックし砂から這い出させながら冷静に考える。 自分でも嫌になる冷静さだった。 今の爆発のお陰かミノフスキー粒子は拡散したらしくレーダーシステムそのものは正常になっていた。 しかし巻き上げられた砂と融合炉から解放されたプラズマの影響でレーダーには砂嵐が走るだけであった、念の為に周囲の目を配りながら砂丘の影から出るとやはり砂塵が舞い視界は10m程度しかない。 フラッシュライトを点灯してカメラの補正を更に上げて周囲を捜索する。 すぐに爆心地は見つかった。 高温で砂がガラス化してキラキラとライトの光が反射してくる。 そしてその中でジムコマンドライトの残骸を発見した。 ほとんど原型をとどめていない黒い塊であったが近くに落ちていた左腕がジムコマンドライトであった事を物語っている。 コックピット周辺も熱でグズグズに溶けていた、中に居たであろうテナーはもう… ガラッツは少しだけ眼を閉じたがすぐにMSを走らせた。 ここにある残骸はMS2機分がいいところだ、爆散したMSの残骸はドム系特有の曲面を持った装甲板だ。 まだNT-1改は生きている、どころか近くに居る… 自分でも分からない何かが囁く敵はすぐそこに居る、と。 ジムカスタムは弾かれるように左に飛んだ。 同時に弾丸が着弾して砂を巻き上げる。 NT-1改がジオン製の90mmマシンガンを油断無く構え更に発砲。 シールドで90mm弾を受け止めつつこちらも銃口をNT-1改に向ける。 約70mの距離でお互いを真正面に捉えた状態で睨み合い膠着した。 時間にして10秒睨み合っただけだというのに1時間以上こうしていたように感じる。 パイロットスーツの中が汗だくになって気持ちが悪い、まだそんな事が分かるぐらいには余裕があるらしい。 ジリジリと向かい合ったMSの脚を動かしてゆく。 そしてNT-1改とジムカスタムが向かい合ったまま跳ねるように駆け出し銃撃戦を開始する。 セミオートで3連射ずつ撃ち出しされる弾丸がNT-1改に襲いかかるがお互いに走りながらの射撃でギリギリのところで外れていく。 こちらも同様だ、僅かに逸れた弾の風切音を聴覚センサーが拾いコックピットに響き渡らせる。 それでもトリガーを引き絞り銃撃戦を展開しながら左手でバックパックからビームサーベルを引き抜く。 ルナチタニウム、しかもガンダム用の最高ランクのルナチタニウム合金相手にヒートソードでは分が悪い。 一足飛びでNT-1改に急接近してビームサーベルを振るうが向こうも息を合わせたようにビームサーベル引き抜き受け止めた。 そのままお互いにビームサーベルでの斬り合いが始まる、一息で一撃、一撃が二撃、二撃が三撃、加速する斬撃の応酬。 全身の細胞が酸素をもっとよこせと呼吸と心臓の鼓動を加速させ大量の血液を送り出し続ける。 同時にMSも繰り出す斬撃が反応速度の限界へ到達し各部のフィールドモーターが悲鳴を上げ始める。 NT-1改を相手にする事が求められたジムカスタムは最初からリミッターを施されていない、警告表示されるだけで本当の機械的な限界まで突き進む。 壊れるまで戦い続ける事を求められ自らの力で自らを滅ぼす機械として致命的なエラーを抱えこんだ欠陥MS。 だがそうでもしなければならないほどジムタイプとガンダムタイプの性能の壁は厚いのだ。 NT-1改がひらりとビームサーベルを躱し後ろに飛び下がり銃撃を加えてくる。 シールドで防ぐが既に何発もの弾丸を受け止めたシールドが砕け左腕に弾丸が食い込みビームサーベルへのエネルギー供給が絶たれた。 可動そのものは失われていないが正副共にエネルギー供給システム応答なし、回復の見込みも無く火災予防も含めてエネルギー遮断。 反撃にこちらも90mm弾をばら撒くがもう残弾が無い、10発ほど残したマガジンを自動排除して走りながら腰にマウントした新しいマガジンに交換するのと同時にもう1つの新しいマガジンを活性化させ切り離し足元に落とす。 -------- この連邦のパイロットは出来る。 今まで戦ってきた連邦軍のパイロットの大半はまるで教科書通りの動きで読みやすく殺してくださいと言わんばかりだ。 と言っても地球で戦ったのは終戦直前からの約1年だけなのだが。 今思い出しても忌々しい、連邦の極秘作戦の動きを掴み強引にビグロを借用して強襲しようとしたが守備部隊の2機のジムに阻まれたのだ。 しかも損傷したビグロを回収したムサイが連邦の追撃に会い撃沈、コムサイで脱出したもののそのまま地球の重力に捕まりなんとか勢力を保つアフリカに降下した。 そのままアフリカで抵抗を続けていた同胞に合流したのだが所謂ベテラン将兵の大半は宇宙へ脱出しており宇宙でのMS運用経験を買われMS部隊の指揮を任された。 ベテランが抜ければ必然、部隊の殆どが若い兵士で一部に至っては軍学校を繰り上げ卒業した少年兵、MSはオデッサ攻防撤退戦と度重なる連邦の追撃で損傷多数。 更に北アフリカ戦線の司令部は合流したときに既に壊滅状態であの腰抜け大佐が指揮を取っていたのだ。 オデッサから敗走した部隊が持ち込んだG3ガスを封印し戦闘も避け連邦に良いように戦線突破を許している。 使い方によっては連邦をアフリカに近づかせず地上の一大拠点とすることも可能だというのに… 本当ならば今回の作戦に使ったG3ガスもスエズからポートサイドに配備していけば大陸経由での侵攻も阻めた。 後は海から上陸しようとする連邦軍を海に叩き落とせばアフリカは安泰だったのだ。 これを敗戦直後に行っておけば良いものを腰抜けドゥラームとその後ろ盾たるビッターがよしとしなかった、奴らはこの戦争に負けることを選んだ。 敗北主義者どもが…さっさと銃殺してしまえばあのような忌々しいダカール基地など造らせもしなかったのだ。 90mm弾がガンダムのギリギリの位置を掠めてゆく。 回避運動を更に大きくして躱しながら牽制射撃を繰り返す。 このガンダムも腐敗しきった連邦の象徴だ。 わざわざこちらに起動試験スケジュールと警備網の穴の情報を寄越した愚か者が居たのだ。 大体の想像は付く、ガンダムを囮にして我々を誘き寄せて潰すことで手柄にでもしようとしたのだろう。 正しく教科書通りのとんだ間抜けだ、誰がそんな罠に真正面から挑む馬鹿が居るものか。 だが少しは感謝し連邦に敬意を払おう、このMSは強力なのだ祖国の作ったMS「ゲルググ」と比べても遜色ない…いや恐らく最新鋭のゲルググイェーガーよりも… 火器やオプションが手に入らなかったのは惜しかったが連邦製MSの火器は全て共有出来るうえに機体の内部パーツまで基本的に共有出来るのだ。 ジオン製MSは整備統合計画後にようやく一定の部品共有が出来るようになったというレベルだった事からも腐っていても連邦の技術力は半端なレベルではない。 まぁジオンの技術陣が理論先行で実践を疎かにしている気来が強いという点も大きいのだが… 相手も回避運動を更に大きく早くしてゆく。 相当息が上がってきた、だがこちらが苦しい時は相手も苦しい。 60mmバルカンに切り替えて牽制しながらマガジンを交換して即座に発砲。 残りマガジンは1本だ、長期戦になるのは願ったりだがこの1機だけに構っている訳にもいかない。 もっと敵を呼び集めなければ。 例え自らの命と引換えにしてでもジオンに勝利をもたらさねばならないのだ… -------- 右に左に跳ね飛び、伏せてやり過ごす。 ガラッツは持てるスキル全てを総動員して回避運動を取り続ける。 鋭い射撃が一瞬足りとも息を抜くことを許さない。 だが負けるわけにはいかない、間隙を縫って反撃の銃弾を撃ち込む。 敵が一瞬でも気を抜けばこちらが喰ってやる、そう思いつつも敵機が早く90mmマシンガンの弾薬を使い切ってくれるように願う。 向こうにはまだ腕部75mmガトリング砲が備わっているからだ。 口径を小さくすることで集弾性の向上と携行弾数の増加を謀ったのだがそれが裏目に出ている可能性が高い、 新型の75mmガトリング砲はジオンのB-3グフが携行していた75mmシールドガトリング砲を参考に設計された。 そして参考にした75mmシールドガトリング砲の弾薬は恐らくそのまま使える、更に悪いことに先日オデッサ基地に放棄されたグフは右腕こそザクF2型のものが使われていたが機体そのものはB-3グフだったのだ。 ジオン残党軍が75mm弾を保有している可能性は非常に高くしかも内蔵火器に関しては機体にマニュアルとドライバがプリインストールされている。 強奪されたときには全ての弾薬とオプションを降ろしていたがビームサーベルすら鹵獲したジムの物をを代用してくるぐらいだ、簡単な整備補給で腕部75mmガトリング砲は使用可能になるだろう。 しかしここはガラッツのトラップがNT-1改を追い詰める。 先程10発残した弾倉とわざと落とした新品の弾倉の所に戻って来たのを確認すると10発だけ残った弾倉をNT-1改へ蹴り飛ばした。 NT-1改は瞬時に回避運動を取るがただの弾倉と確認して回避運動を中断、蹴りで動きの鈍ったジムカスタムへ90mm弾を浴びせ掛ける。 ジムカスタムは頭部の60mmバルカンを弾倉目がけてばら撒きその中の1発が残っていた弾薬に直撃し小規模な爆発を起こした。 たった10発の弾丸とはいえ90mm弾のパウダーの量はかなり多い。 NT-1改が両腕を交差し頭部とコックピットを守る構えを見せたその瞬間もう1つの新品の弾倉をジムカスタムが再び蹴り上げる。 既に活性化済みの90mm弾が満載された弾倉に同じように60mmバルカンの雨を降らせ再び炸裂、今度は先程の比ではない爆発がNT-1改の目と鼻の先で起きた。 防御の為に構えたNT-1改の腕を滅茶苦茶に弾けた弾頭と衝撃が襲いかかり引き裂く。 しかしジムカスタムも十分に距離を取っていなかったせいで出鱈目に飛んで来た90mm弾が右肩のスラスターと90mmマシンガンを直撃した。 それでも有り余る成果を得た、NT-1改の左腕の装甲が脱落し内蔵された75mmガトリング砲を破壊したうえ完全に体勢を崩させた。 確認することなくジムカスタムはNT-1改へ一気に駆け寄り隙だらけの左脇腹へ全重量を掛けた蹴りをお見舞いする。 さしものルナチタニウム合金も50tものMSの加速を付けた蹴りを喰らっては大きく歪み内部機器を露出させた。 吹き飛んだNT-1改は転がる勢いを利用して柔道の受け身のように体制を立て直し片膝立ちになる。 そして右腕を突き出すと腕の上半分の装甲がスライドして開き猛獣の唸り声のような音が響く。 ガトリング砲はまだ死んではいなかったのだ。 -------- ホバーカーゴの上部には直撃させたものの当初の狙いは完全に失敗だった。 ザクは想定通り旧ザクだったが全くの無傷でこちらに120mmマシンガンを向けて発砲してくる。 ホバーカーゴに増設された機銃とグレネードランチャーからも絶えず弾丸が吐き出される、対人用なので大した事はないのだが損傷の著しい左半身にグレネードが入ってしまえばそれなりのダメージは避けられない。 あの光量と衝撃波は何処か近くで融合炉が吹き飛んだのだろうことは分かったが今はそんな事に気を配る余裕はない。 量産型ガンキャノンを必死に操り旧ザクの120mm弾とホバーカーゴからのグレネードを躱し続ける。 「邪魔くせぇ!!」 イトウは叫ぶと走りながら右肩のキャノンをホバーカーゴに、腕の90mmマシンガンを旧ザクに向けて撃ちまくる。 目分量とはいえ比較的近い距離だ、外すようなヘマはしない。 ホバーカーゴのグレネードランチャーは沈黙し旧ザクは頭部に90mm弾をしこたま撃ち込まれその場に倒れこんだ。 あとはコイツらが何故こんな所に居たのか、ホバーカーゴに何が積み込まれていたのか… それは近づく前に分かった、ハッチは閉じられていたが2発の砲弾が着弾して破られた外壁から何かが吹き出している。 同時にコックピットの警報が鳴った、出撃直前に大気センサーに設定を追加しておいた大気検知システムが警報をがなり立てる。 案の定、予想通り、想定の範囲内、だが現物を目の前にすると背中に冷たい汗が流れた。 コックピット内気密と圧力調整は問題なしパイロットスーツも問題なし念の為に点検してから更にカーゴに接近して中を覗き込む。 1箇所のMSハンガーを除いて直径約1mの球体がGG-GASの表記の下に黄色地に黒いドクロマークが描かれているビッシリと並べられている。 強固な外殻と衝撃吸収材に包まれていても240mmキャノンのダメージは大き過ぎたらしくタンクのいくつかは砲弾の破片や構造材の脱落で破損しているのが確認できた。 そこまで確認した瞬間、異変が起きた。 ほぼ停止していたカーゴが急発進したのだ。 「んなっ!」 イトウは慌ててガンキャノンをホバーカーゴへ張り付かせ前進を阻む。 しかし凄まじい衝撃と共にガンキャノンを弾き飛ばされる、人と10tトラックが正面からぶつかるようなものだ。 だがイトウは諦めない。 先ほど覗き込んでいた外壁の穴に左手を掛け強引に掴まり90mmマシンガンと60mmバルカンをホバーカーゴに取り付けられたジェット推進機へありったけ叩き込む。 その間もまだ無事な機銃から対人用の12.7mm弾が装甲を叩き続けるが完全に無視して反対側の推進器を破壊するべくホバーカーゴにへばり付きながら移動する。 90mmマシンガンを持った右手を外壁の穴に掛けた時カメラの片隅にジオン製のパイロットスーツを着込んだ人影が動いたのを見逃してしまった。 対戦車ロケットランチャーを担いだ人影を… 「これで足止め出ぅっ!!」 先の戦闘で内部が剥き出しになった右胸の冷却装置にロケットランチャーが撃ち込まれ爆発した。 内部でも誘爆を起こしイトウの量産型ガンキャノンは肩の付け根から腕が脱落しホバーカーゴから振り落とされ地面に叩き付けられる。 「おっさんは諦めが悪い事だけが取り柄でね…」 コックピットのすぐ横での誘爆は隔壁を貫き破片がイトウに突き刺さっていた。 そんな状況でも残った左腕でホバーカーゴのスカート部分を掴み引き摺られながらも喰らいついたのだ。 砂の抵抗で引き剥がされそうになるのを必死にバーニア調整して機体を浮かせて抵抗を軽減する。 傷の状態と出血量からあと10分は騙せる。 コックピットもまだ1.1気圧に保っていたお陰ですぐにはG3ガスも入ってこない。 そしてコイツをこのまま直進させるわけにはいかない。 恐らくこれが本命だ、ダブデ級も大量のMS部隊も全てコレが前衛すり抜ける為の陽動。 この莫大な量のG3ガスがあればダカール周辺は長期に渡って生物の存在しない死の世界に変えることができる、これだけの人員と物資を投入したとしてもお釣りが出るほどの戦果だ。 連邦の対アフリカ戦略の大幅な後退と変更を余儀なくされジオン残党は体制を立て直す時間を十分稼ぐ事が出来る。 だがこの作戦を発動した指揮官は狂っている。 やはりジオンの人間は頭がおかしい、戦争と虐殺を取り違えている。 でなければコロニー内でG3ガスを使用したうえにそのコロニーを質量兵器として地球に落とし挙句の果てにコロニーそのものを巨大なレーザー砲に改造するような気違い沙汰を何度も出来るわけがない。 イトウはガンキャノンを残った左手とバーニアの噴射で何とか姿勢を整え再びホバーカーゴに取り付く。 そして60mmバルカンの残弾を全て推進器に撃ち込んだ、だが4発の推進器の内の1発が煙を吹いただけで止まらない。 まだダメージから復旧していない無線の全チャンネルと外部スピーカーに向かって叫ぶ。 『誰か応答しろ、N14.7W17.0付近にてG3ガスを満載したホバーカーゴと交戦中!! 足止めしてる内に応援を寄越してくれ!!』 左腕だけでホバーカーゴを引っ張る形でブレーキを掛けるが気休めにもならない。 スタビライズド・ギアも展開してガンキャノンを踏ん張らせるも想定外の方向に力が掛かかったスタビライズド・ギアは折れ曲がってしまう。 『N14.7W17.0付近にてG3ガスを満載したホバーカーゴを確認、交戦中!! 誰でもいい、早く応援をっ!!』 追記というかちょっと説明 G3ガスは本来GGガスでG3という表記ですが文章にすると分かりづらいのでG3ガスと表記してます G3ってだけ書くと灰色のガンダムに見えるんwww ツッコミなんかも受付中なのねん 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/3594br/pages/190.html
153 名前:幼い想い 1/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 07 27 今は夜。しかし夜のいつだろう。 曹幹につれられこの民家に入ってから、もうずいぶんの時が経っているかのように感じる。 三日目なのか四日目なのかも釈然としてない。 曹幹の支給品であるらしい白い鳩は、もう眠りに落ちていた。 だが華雄と曹幹、そして曹丕には眠ることはとうていできそうにない。 外に降り続ける豪雨の音はうるさかったし、敵が来るかもしれない、という不安もある。 だがそれらよりもずっと、曹丕の容態が第一だった。 肩の傷から病原が入ってきたのであろう。 体は紅潮し、肌はさわり続けていれば火傷するのではないのかと熱く、意識は朦朧で、目は虚空を見つめている。 華雄の存在をわかっているかもどうかすら定かではない。 ときおり全身から絞り出される、かすかな、しかし十分に苦しさを感じ取れるうめき声を聞くたびに、 曹幹はただ純粋に、彼を想った言葉で呼びかける。 とおさま、とおさま、しっかりして、くるしまないで、とおさま―― 曹丕はわかっているのか、いないのか、曹幹の声を聞くと、少し落ち着きはじめる。 ただ、時が経つにつれて、曹丕が苦しむ頻度――いや、つねに苦しんでいるのだろうが――は多くなっていった。 そんな状態では、まったく寝ることはできない。 華雄には、汗を拭くことと、手ぬぐいを替えることと、見守ることしかできない。悪くなっていく曹丕の容態に、不安は徐々に大きくなっていく。 「水だ………」 曹丕が、弱々しく呟いたのは、その不安が破裂しそうになった時だった。 それはうめき声ともわからず、豪雨の音にかき消されかけていたが、次にいった言葉は、確かに文字をなしていた。 「水が来る……早く……弟を………」 「とおさま!」 曹丕は、自分の存在を認識しているようだった。 弟と、とおさまという掛け合いは矛盾しているように思えたが、今は曹丕の言葉を理解するのが先だ。 154 名前:幼い想い 2/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 08 35 「水とはなんだ? 水が来る、とは」 しかし曹丕は、もうしゃべれないようで、またもとの様子へ戻った。 曹幹が勢いよく立ち上がった。 「おいしゃさま! とおさまをつれてって! みずがくる!」 だから水とはなんなのだ、と思いつつも曹幹の語気には鬼気迫ったものが感じとれ、華雄は曹丕の体を持ち上げ、背負った。 もしや、水とは……まさに文字通りだが…… 背負われた曹丕が、呟いた。 「わ…わたしの……ことは………」 そこで途切れたが、華雄は曹丕が言わんとしていることはわかった。なんという親子愛だろうか。いや、兄弟愛? まあこれを聞き入れれば、曹幹に殺されかねないのでしないが。 民家の戸を開け、外に出る。豪雨が容赦なく華雄と曹丕を打ち付けた。家の中を見れば、曹幹が鳩を抱えて走って来る所だった。 水が迫り来る音は、もう華雄にも聞こえていた。 まったく不運だ。 まず、AK47カラシニコフを失ったのが第一の不運だ。 あの長い銃は、よく于禁の腕になじんでくれた。 さわり心地は悪くなかったし、見た目も落ち着きがあって于禁は好きだった。当てようと思えば、よく当たってくれた。 あれがないと、なにかそわそわした気になる。 代わりに、カラシニコフと比べるとかなり短い銃(なのか?)を二丁拾ったが、なんだかこれは、持ってると馬鹿になってくる気がする。 銃に走っている赤い線も気持ち悪いし、手にもなじまない。 試し打ちもしたが、「うおっまぶしっ」となんら脈絡もないことをなぜか口走ってしまった。性能は問題なさそうだったが。 第二の不運は、鄴城に入った途端、いきなり洪水が襲ってきたことだった。 155 名前:幼い想い 3/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 09 37 曹幹が放った鳩は、この豪雨の中で信じられない力強さで空を飛び上がり、悠然と城の上空を飛び去っていった。 鳩がもし地上の風景を見下ろせば、それが見えただろう。 囂々と、迫り来る水の大群。城壁が水を受け止め、跳ね返す。しかし開け放たれていた城門からは、水が次々突入していった。 華雄たちがいるのは中心部に近い民家の集まりで、城壁に登ろうにも、距離があった。 華雄は今まで中にいた民家の屋根を見上げた。高さは大人二人分ほどか。これならいける。 「意地でもしがみつけ!」 といって、華雄は曹幹を屋根にぶん投げた。放射線を描いて屋根の上に落下し、転げ落ちずにしがみついたのを見届けると、華雄は家の中から急いで食事台を持ってきた。 台の上に乗って、飛ぶ。腕が屋根の上に届き、掴み、自分と曹丕の体を持ち上げきった。 屋根の上から、水が城に流れて来るのが見える。力強い流れだったが、ゆっくりと眺めている暇はない。 曹幹を持ち上げ、そばの別の屋根に投げる。今乗っている民家の半分ほど高かった。華雄も続いて跳躍する。 しかしそれ以上は、逃げ場がなかった。 水が、来る。 水の勢いはさほど激しくなく、民家を壊すほどではなかった。だが、屋根の端を越えるまで水位はあった。 水は入り続けているから、もっと水位は上がるだろう。 雨が水を打つ音と水流音に混じって、曹幹のツバを飲む音が聞こえてきた。この期になっても泣こうとしないとは、えらい子だ。 ふと、水とともに、遠くから太い流木が流れてくるのが目についた。 根本から抜けたようで、荒々しく伸びた太い根は存在感があった。 その木が流れにのって近づいてくる。表面の木の皮がとげとげしく、痛そうだな、と思ったが、何をどう考えても、すがるべきものはそれしかなかった。 曹幹もわかっているようで、こちらと流木を交互に見つめている。 流木は近づいてくる。水位は上がってくる。 水が屋根のほとんどを飲み込んだ時、流木はもう目と鼻と先だった。 「飛べ!」 華雄は流れゆく流木へ跳躍した。左腕で曹丕を押さえながら、右腕で幹にかじりついた。下半身が水に落ち沈み、その流れに危うく曹丕を離しそうになる。 直後、曹幹がいないことに気が付いた。流されたか? いや……… 156 名前:幼い想い 4/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 12 36 急いで曹丕の体を幹に乗せ上げ、吹毛剣を引き抜く。曹丕の右肩の傷跡に、剣を突き立てた。曹丕の肩とともに、下の幹をも貫く。 曹丕は呻きもしなかった。意識はあるはずだが、呻くだけの体力がないのか、感覚に鈍くなっているのか。 曹丕を一時でも押さえないでいい分、左腕が余った。左腕で、水中で必死に自分の脚にしがみついていた曹幹を引き上げる。 曹幹は曹丕の隣に乗せ、そのまま左腕で曹丕と曹幹を幹に押さえつける。剣は曹丕の右肩に突き刺さったままだが、曹丕の体を流さないためには必要だ。 曹幹は剣に気が付いて、華雄を責めるような目でみる。そうしなければ、自分か曹丕かが助からなかったことに気が付かないのか。 それとも、『とおさま』をこれ以上苦しめるより、自分が死んだ方がよかったというのか。 三人は長い時間、流木とともに城内を流れていた。 雨は徐々に止んでいった。しかし水の勢いは変わっていない。 さすがの華雄も、水流にかなりの体力を奪われた。曹幹は憔悴して虚ろになりかけ、曹丕は顔が真っ青になっていた。一応、死んでいない。 まだ水没しきっていない建物も少なくなく、中でも、巨大な銅雀像を備え付けた台は、堂々とそびえ立っているように見える。 そう運良くたどり着けはしないはしないだろうが。 いつ水流に呑まれるかもわからない状況、華雄は苦い実を噛み潰すかのような心境だった。 そんな心境にそぐわぬ、間の抜けた陽気な鳴き声が、突然聞こえてきた。 ぽーぽー ぽっぽー ぽーぽー ぽー それまでぐったりしきっていた曹幹が、がばっと顔を上げた。鳴き声は上空から聞こえてきたので、華雄は空を見上げる。 ぽーぽー ぽーぽっぽー ぽーぽーぽー 黒い空を背景に、白い体を輝かす鳥は、曹幹が放した白鳩だった。いや、出て行ったのだから違うのかもしれないが、少なくとも曹幹はそう信じたことだろう。 ぽーぽーぽー ぽーぽっぽー ぽー 「とおさま。もうすぐだからね。もうすぐ………」 鳩に勇気付けられたのか、曹幹は曹丕に声をかけていた。しかし、その声はすぐに遮られた。何かが軽く爆発したかのような音だった。 華雄にとっては、以前に、よく耳にしていた懐かしい音だ。 そういえば、今回はまだ機関銃の音しか聞いていない。などと思っていたら、鳩が落ちてきた。 純白だったはずの体に、赤い染みが広がっていた。 157 名前:幼い想い 5/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 13 22 まったく、うるさい鳥だ。 しかし一発で撃ち落とせるとは、この銃の精度も、俺の腕も悪くはない。 于禁は忌み嫌っていた銃を、少しだけ気に入ることにし、城壁の上に座りこんだ。 城壁の上から見た光景は、一種の爽快感があった。許都には自分の家があったが、鄴都はよく偉そうに曹丕が居座っていた所だった。 その都が、水に呑まれて沈んでいく。 威光を輝かした魏の宮殿も、その大半は沈み落ちている。水面の上にあるところも、何かがぶつかったのか、所々破壊されていた。 いきなり洪水が来たときには、完全に巻き込まれて危うく死ぬ所だったが、城壁の階段に打ち上げられて今に至れば、この不運に少しは感謝することもできる。 とはいえ、不運は不運だ。 この水は当分は引かないだろうから、その間はまったく何もできない。殺すべき敵を探すこともできずに、ただじっと待っているしかないのだ。 第一、この都に曹丕がいたとすれば、もう死んでいる可能性が高い。助かることができるのは、城壁の上か、まだ水没していない建物の上部だ。 前者はもう確認した。確実にいない。後者にしても、可能性は低いと思われる。洪水はほとんど突然来たし、わざわざ入り口から遠ざかった高い場所にいる意味はない。 勝手に自然災害で死なれても、味気がない。この手で、俺が受けた苦しみも何倍にも返してやらなければ意味がないのだ。 鳩を落とした後、こちらへ向かってきている流木が目についた。この洪水で引っこ抜かれたのだろうが、立派な木だった。 流木はこちらに向かってきた後、水流によって方向転換した。その時に、見えた。 あいつだ。 華雄は城壁の上に、その男を見つけていた。 男は殺気をまきちらしながら、口を醜くゆがめ、二つの拳銃を手に取っていた。 この殺気は間違いなく、孫堅と黄忠とともに項羽と戦っていたときのものだった。 華雄は孫堅の顔を思い浮かべた。実に楽しそうな、あの死顔だ。 そういえば、俺が先に死んだときは、あいつはどうなったのだろう。優勝してもおかしくはないし、のたれ死んでもおかしくないな、と思う。 そんなことを思うのは、まあ、俺がもうすぐ死ぬからだろう、と思う。 158 名前:幼い想い 6/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 14 48 「いいか、なにがなんでも、木にしがみつけ! 医者からの最後の忠告だ!」 華雄は左腕を曹幹達から離した。曹丕が剣の固定だけで大丈夫かと心配だったが、もう余裕はない。 両腕を使って、流木に身を乗り上げ、すぐさま二人に覆い被さった。 程なく銃声が聞こえてきた。背中に、切れ味の悪い熱した刃物を、無理矢理刺されたかのような感覚が響く。 それが何回も、何回も続く。銃声と水流音に混じって、「おいしゃさま!」という声が聞こえてくる。その声のあとも、銃声は続く。 永遠に続くかとも思ったが、そのうち、銃声と新たな痛みが対応しなくなってきた。 やがて、銃声は止んだ。 「おいしゃさま!」 もう一度曹幹の声が聞こえた。とても、悲しみが籠もった声だった。 傷は、いくつあるだろうか? 十以上はある。二十以上あるだろうか。三十以上あって、四十以上もあるかもしれない。わからない。 「しなないで!」 また曹幹の声が聞こえた。泣いている声だった。それで、この子供は、この子供なりに、自分の状況を理解しているのだろうとわかった。 自分が今、何のためにここにいるのか、それをきっと理解している。理解した上で、何をすべきかを考え、最善を尽くしている。 危険を承知で、医者を捜し、危機にあっても、純粋に『とおさま』を想う。 お前は、俺よりもずっと立派だ。そう言おうとしたが、声にならなかった。 何かにぶつかる衝撃があって、自分の体が、宙に浮くのが感じられた。 「おいしゃさま!」 それが最後に聞こえた曹幹の声。華雄は水面に叩きつけられるのと同時に、孫堅の跡を追った。 159 名前:幼い想い 7/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 15 22 殺せたか、殺せなかったか。あるいは死んでいたか。 流木の上に現れた時、曹丕はひどい状態だった。 なぜか剣が肩に刺さってたし、顔はほぼ死人だった。 もう長くはない。というより、死んでるかもしれない。どっちみち、あの流木にしがみついてるだけでは、水に呑まれるに決まっている。 それでも殺してやりたかった。死んでも殺してやりたかった。だから撃ちまくった。 曹丕を殺せたかは、大男に庇われたため、判断がつかない。 このまま、死亡者放送に曹丕の名前があったとしても、胸には釈然としないものが残るにちがいない。その場合は、怒りをどこに向ければいいのか。 まず、曹丕の死体を探し出して、弾を使い切るまで撃ってやろう。山刀で、何度も何度も切り裂こう。 だが、怒りは残る。 虞翻は探し出して、殺す。関羽も探し出して、殺す。だがそれで、怒りが消えるとも思えない。 俺はどうなる? 典韋を殺したように、あらゆる人間を殺しそうな気がする。 劉備も、孫権も、曹操も、殺しそうな気がする。荀攸も、張コウも殺しそうな気がする。 参加者リストの端から端まで、殺しそうな気がする。優勝したら、献帝だって殺しそうだ。 それは、少し、恐ろしいことのような気がする。 流木が去っていった方向を見つめる。何かが、一瞬、光った。 曹幹はするべきことを知っていた。 まず、曹丕を流木に刺し留めていた剣を抜くことにする。 剣はたいして重くもなく、曹幹の手にもするりと抜けた。不思議なことに、血はついていなかった。 剣を脇に置くと、肩に巻かれていた血まみれの湿布を外す。傷から血が流れ続けているのがわかる。 流れる水をすくい上げ、傷口を洗う。 華雄から貰っていた薬草を服の中から取り出すと、木の破片を使って磨り潰し、傷に塗る。 次に上半身の服を脱ぎ、服の一番綺麗な場所を選んで、剣で切り取る。それを、傷口の上に巻く。 曹丕の濡れた体を、手で拭う。延々とその作業を続ける。 曹丕の体は高熱を発さなくなったかわりに、ひどく冷たくなっていた。だから曹幹は拭い終えると、まだ暖かい自分の体を、曹丕にくっつけた。 「とおさま、しなないで。とおさま、幹はここにいるよ。とおさま、だから、しなないで………」 曹丕はもう呻かなかったし、意識もなかった。ヒュウ、ヒュウ、と口から風が出入りするだけだった。 160 名前:幼い想い 8/8 投稿日:2006/08/11(金) 05 16 04 パパじゃないよお兄ちゃんだよ/2名 曹丕[右肩負傷・ひどい衰弱]【なし】曹幹【吹毛剣】 ※流木は銅雀台に乗り上がったようです。曹丕の回復を待ちます。 ※他の荷物はすべて流されたようです。 @于禁[左耳破損、右手小指喪失、全身軽傷、洗脳?]【山刀(刃こぼれ、持ち手下部破損)、煙幕弾×3、ガン鬼の銃(陰陽弾×25)】 ※鄴城壁上にいます。水が引いたら、曹丕を探すようです。 【華雄 死亡確認】
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2353.html
剣と剣がぶつかり合う音が、廃墟に響き渡る。 片刃の長剣、エアロヴァジュラでと長槍の破邪顕正をはじきあげ、HMT型イーダ・ストラダーレ――個体名ヒルデガルドは距離をとった。 対する侍型紅緒――個体名藤代は地面を蹴り、こちらに一気に距離を詰め、長槍を突き出してくる。体勢を立て直す暇を与えないつもりのようだ。 『エアロチャクラムで受け流せ』 「はいですわ!」 マスターからの指示を受け、ヒルデガルドは左側のエアロチャクラムを瞬時に操作する。 パンチを打つように突き出したエアロチャクラムの表面装甲を破邪顕正が薄く削りながら流れていった。 ――西暦2036年。 第三次世界大戦もなく、宇宙人の襲来もなかった、現在からつながる当たり前の未来。 その世界ではロボットが日常的に存在し、様々な場面で活躍していた。 「そこっ!」 藤代の体勢が流れたところで、エアロヴァジュラを一閃。しかし、右肩の鎧部分を斬り飛ばすだけに終わる。――藤代がとっさに槍の石突をつかってこちらをヒルデガルドを殴りつけたからだ。 「うっ!」 「危ない危ない。だが、勝負はこれからだ!」 藤代は再び距離を詰めてくる。武装は破邪顕正から為虎添翼と怨鉄骨髄へと変わっていた。手数を重視し、こちらを押しこむ腹のようだ。 「そらそらそら!」 「くううっ!」 ヒルデガルドはエアロヴァジュラを一度放棄。エアロチャクラムを両手で操り藤代の連撃を捌いていくが、鋭い刃を持つ二振りの小太刀は容赦なく装甲を削り取っていく。 ――神姫、そしてそれは、全高15cmのフィギュアロボである。“心と感情”を持ち、最も人々の近くにいる存在。 多様な道具・機構を換装し、オーナーを補佐するパートナー。 その神姫に人々は思い思いの武器・装甲を装備させ、戦わせた。名誉のために、強さの証明のために、あるいはただ勝利のために。 「どうしたどうした! 懐に入り込まれては手も足も出ないか!?」 「……っ、うるさいですわ! えいっ!」 轟、という音を従えてヒルデガルドはエアロチャクラムを振りぬく。しかし、藤代は半身になってそれを受け流すと、為虎添翼を下から振りぬいた。 懐深くに入りこまれたせいか、ヒルデガルドは咄嗟に体をそらしたが、為虎添翼の剣先がヒルデガルドの頭部に装着されていたルナピエナガレットを叩き割る。 「あっ……」 そのまま体勢を崩し、倒れるヒルデガルド。藤代は勝利を確信した。 「これで終わりだっ――首級、頂戴!」 仰向けに倒れたヒルデガルドに、藤代は逆手に握った怨鉄骨髄を振り下ろした。 オーナーに従い、武装し戦いに赴く彼女らを、人は『武装神姫』と呼ぶ――。 第一部 ヴァイザード・リリィ 渾身の力で振り下ろされた怨鉄骨髄は横方向の衝撃に弾かれ、廃墟の壁に突き立った。 ヒルデガルドがエアロチャクラムを倒れた状態から振りまわし、怨鉄骨髄を叩いたのだ。そのままその勢いを利用してヒルデガルドは体勢を整える。 「っ……。必殺のタイミングと思ったのだがな」 悔しそうに、しかし嬉しそうに笑う藤代。 「まあいい。まだまだ楽しめるのは私にとって嬉しいことだ……。久々の強敵だ。こう早く終わっては困る」 「……くふふっ」 ヒルデガルドも笑う。 「なるほど、貴女も楽しいか。そうだろう! 我らは武装神姫。戦うために生まれた存在だ!」 「……くふふっ。もちろん楽しいですわ」 ゆっくりとヒルデガルドは立ち上がる。そして、まだ顔に引っかかっていたルナピエナガレットを素手で掴み―― 「ですが、ワタクシは戦うことが好きなのではありませんの――」 ――握砕した。粉々になったバイザーは0と1に分解され、データの海に消えていく。 露わになった紫水晶色の目が恍惚の表情に眇められる。 「――勝つことが好き。勝つことが楽しいのですわ」 「……愚かな。結果のみ求める者に碌な者はおらんぞ?」 「かまいませんわ。――もっとも、『彼女』は戦うこと自体あまり得意ではありませんが、ワタクシは違いますわ。全力でお相手いたしますわ、お武家様」 瞬間、地を蹴る。二体の神姫の距離があっという間に零になる。 「!!」 あまりのスピードに藤代は対処が遅れた。 ハイマニューバトライク型であるイーダ型は機動力には確かに定評があるが、ここまでの瞬発力は藤代にとっては前代未聞だった。 藤代はとっさに為虎添翼を眼前に立てる。 刃がかみ合う硬質音。エアロヴァジュラと為虎添翼がぶつかり合った音だ。 「……ここまでの瞬発力を出せるとは。ようやく本気になったということか?」 「本気? ……そうですわね。勝つためにワタクシはおりますの。ゆえにワタクシは常に本気ですわ」 ――エアロチャクラムがノーモーションで振られる。身を引くことが敵わず、藤代は宙を舞った。 「がっ!?」 バーチャルの空を高く舞い上がり、背中から地面に叩きつけられる。 「ぐ……くそっ」 起き上がろうとする藤代。しかしそれは直後に上から飛びかかってきたヒルデガルドに押さえられた。 「ぐっ!」 エアロチャクラムで両手首を掴まれ、地面に押さえつけられる。ヒルデガルドはエアロヴァジュラを逆手に握り、藤代の喉に突きつけていた。 「……どうした? 獲物の前で舌なめずりとは。さっさと首を切るといい」 「……くふ、くふふっ。負けが決まっても、強気な御方……。ますます気に入りましたわ」 ヒルデガルドはそう言うとエアロヴァジュラを藤代の首筋のすぐ横に突きたてたそして―― 「!?」 「いつまでそんな強気でいられるか――試させていただきますわ?」 「――っ! むぐっ!?」 ――藤代の唇を、自身のそれで塞いだ。 たっぷり十秒近く口づけを交わした後、ヒルデガルドは顔を離す。 藤代はあまりの出来事に声が出ない。 「な!? な、何――」 「貴女はワタクシの獲物――。ならば、ワタクシがどう料理しようと、ワタクシの勝手でしょう? 御安心なさいな、美味しく食べて差し上げますわ」 ヒルデガルドの右袖飾りが展開し、中の機構をむき出しにする。その起動を確認した後、ヒルデガルドは右手で藤代の身体をまさぐりはじめた。 「きっ貴様っ! 自分が何をっやっているのかっ……くぅっ、わかっているのか!?」 「勿論ですわ。さあ、早く貴女の声をお聞かせくださいな――」 「や、やめ――ひぅっ!? ふぁっ! やぁっ!?」 突如として始まった羞恥劇に、藤代はエアロチャクラムを振りほどこうともがくが、ヒルデガルドが藤代に触れるたび、藤代から力が抜けていく。 外では彼女たちのマスターが何か騒いでいたが、ヒルデガルドにとってはそれは些末事以下であった。 「くふ、くふふっ。くふふふふっ……」 「い、嫌だっ! 嫌だ! やめろ、やめろっ! やめっ、おねがい、やめてぇっ……」 藤代の願いむなしく、ヒルデガルドの指は彼女の身体の隅々までを舐めつくし、凌辱する。 そして、それが秘部に到達しようとしたときだった。 ビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ! ――Surrender A side. Winner Hildegard. 藤代側のサレンダー。ジャッジの審判が下ると同時に、藤代の身体は0と1へと変換され、バーチャルの空へと還っていく。 それを見送り、ヒルデガルドは先ほどまで藤代を嬲っていた右手を舐めて、呟いた。 「もう、あと少しの所でしたのに――無粋な殿方ですこと」 ◆◇◆ ――「また」やった……。 俺――如月幸人は筐体の前で頭を抱えた。 周囲で観戦していた他の神姫やそのマスター達はこちらをみて苦笑ともとれないような微妙な表情をしている。 その顔は全て「相手も可哀そうに――運が悪かったなあ」と語っていた。 筐体の向こう側では、紅緒型の神姫――確か藤代、といったか――のマスターが泣き崩れる彼女を必死に慰めていた。 「主っ……主ぃっ……。私、汚れてしまいました……。この身を全て主に捧げ、永久の忠誠を誓ったのに……」 「藤代っ!? 藤代! 大丈夫だ! あれは全てバーチャル空間での出来事だ! お前の身体には一片の汚れもない! あとその言い方は俺に激しい誤解が生まれるからやめてね!」 「あのイーダ型に触れられた感触が、今でも……。こんな汚れた身体では、もう主にお仕えすること叶いません。主、貴方を残して先に逝く私をお許しください――」 「藤代――ッ!?」 ……なんだかすごいことになってる。 こちらが指示したことではないと言え――ひっじょーに申し訳なくなってくるが、やっぱり謝るべきだよなあ……。 ――こちら側のインサートポッドが開き、中から相棒――ハイマニューバトライク、イーダ・ストラダーレ型「ヒルデガルド」が姿を見せる。 バーチャル空間で壊されたルナピエナガレットは何事もなかったかのように彼女の顔面を覆っていた。 俺とヒルダとの目が合う――正確にはバイザー越しにだが――。ヒルダは筐体の向こう側の惨状を見やり、俺を見やり、もう一度向こう側の惨状を見て、呟いた。 「……マスター。私、また――」 「――そう。『また』、やった」 それを聞くや否や、ヒルダは脱兎のごとく駈け出した。 全長五メートルほどの筐体の上を全力疾走して向こう側にたどり着くと、その勢いそのまま―― 「――申し訳ありませんでしたわっ!」 ――スライディング土下座をした。 一瞬の事に、藤代も、彼女もマスターもぽかんとしている。 「私、貴女にとんでもないことを……。本っ当に申し訳ありませんでしたわ!」 「え、あの、いや……」 藤代はマスターの後ろに隠れておびえている。一方のマスターはバーチャル空間でのヒルダと、今目の前で土下座をしているイーダ・ストラダーレのギャップに追いつけず、目を白黒させていた。 そしてその流れでこちらを見られても、俺も困るのだが。 「あー、えっと、どうもうちのヒルダがご迷惑をおかけしました……」 俺も頭を下げる。神姫の不出来はマスターのそれだ。 それに言っちゃああれだが――ヒルダの巻き起こす騒動に頭を下げるのも、ここ一カ月で慣れた。悲しいことだが。 「あの、いや、その……どういうこと?」 藤代のマスターは周囲のギャラリーに説明を求めた。観客たちは苦笑して互いに顔を見合わせるだけである。 「まあ、挑んだ相手が悪かったよな」 「正直、こうなる予感はしてたもんね」 「ヴァイザードの仮面をはがすなってのは、なんつーか、もうここの常識だよな」 口々に言い合うギャラリーの言葉を聞き、藤代のマスターの頭にさらに疑問符が浮かぶ。 極めつけは、ヒルダの放った一言だった。 「……責任を取れ、とおっしゃるのであれば、従いますわ。藤代様。私のこと、どうかお好きなように――」 「ひっ――!」 それを聞いた瞬間、藤代はガタガタと震えだした。 先ほどの恐怖がよみがえったのか、それとも先ほどとはまったく違うヒルダの性格のギャップに恐怖を覚えたのか。 藤代はマスターの手から飛び降り、ゲーセンの入口へと逃げだした。 「うわああああああああん!」 「ま、待て! 待つんだ! 藤代――!」 当然、それを追いかけて彼女のマスターもいなくなる。 残ったのは三つ指ついて土下座していたヒルダと、天井を仰いでため息をつく俺。そして、それを見守るギャラリー達だけだった。 「……ヒルダ、戻ってこい」 「……はいですわ」 しょんぼりと肩を落としてすごすごとヒルダは戻ってくる。足元にたどり着いた彼女を拾い上げ、胸ポケットに仕舞うと俺は荷物を手に取った。 「……どうして、私はこうなんでしょうか」 「……俺に聞かれてもなあ……」 「今の私、普通ですわよね? なのに、外れてしまうとどうしてああなってしまうんでしょう」 「…………俺に聞かれてもなあ…………」 そんなすでに二十以上は繰り返した問答を今日も繰り返しながら、近くのファストフード店で待っているであろう連れと合流すべく、俺たちもゲーセンを後にする。 ――俺の神姫は、バイザーを外すと性格が豹変する、世にも珍しい二重人格の神姫だった。 ◆◇◆ 次へ トップへ
https://w.atwiki.jp/mannensuiminbusoku/pages/14.html
姫月 華倶夜 姫月 華倶夜神姫名:姫月 華倶夜 オーナー:万年睡眠不足 素体情報 覚醒 CSC 性格等 装備情報 バトルスタイルの遍歴 特殊技能 インストール済み行動プログラム その他 神姫名:姫月 華倶夜 オーナー:万年睡眠不足 素体情報 コア:悪魔型 ボディ:騎士型 覚醒 CSC 魅了の舞姫実は、常時準覚醒状態にあった(切欠は不明) CSC。 華倶夜の異常な器用さの原因。 「バトルを盛り上げて納得の決着」と言う試合運びをする為に必要な能力として CSC 成長の方向性が決まった。 スペックの底上げをする能力ではない 120% の能力を引き出す的なことは出来ない どちらかといえば 100% を 100.00% 使いこなすための能力 絶対制御自身の素体や装備を桁違いの精度で制御する能力。 具体的には角度や出力、速度と言った各種パラメータをラグ 0、精度 0.01% でコントロールする。 自身の能力を 100.00% 出し切り制御する能力であり、能力の底上げや上限を強化するものでは無い。 日本舞踊や神楽舞の練習時に、「身体を精密・正確にコントロール」する為に養われた能力 死角認識・操作自身と周囲の人・神姫の死角となる空間を認識出来る能力。 あくまで死角となる空間を認識出来るだけで、死角が無くなる訳でも、死角で行われている事を認識出来る訳でも無い。 絶対制御能力を駆使して、自身の視線・体捌き・足捌きで相手の視線・意識を誘導して、相手にとって死角となる空間を任意に誘導しコントロール出来る。 日本舞踊や神楽舞の練習時に、「見る側の視線」を意識する為に自身の周囲を鏡で囲って練習した為に養われた能力 黒曜月蝕乃魅剣巨大な槍兼鎌を顕現させる能力 意地を貫くための力の象徴 他者を受け入れる懐の深さの具現 桁違いのエネルギー許容量を持つ 華倶夜自身を表す能力 縁結乃御霊紡ぎ重ねてきた絆そのものを力に変える能力 両者の同意の元、スペック 100% で CSC の能力を貸しあえる神姫A⇔華倶夜、神姫A⇔華倶夜(経由)⇔神姫B 複数神姫の想いを華倶夜に結集できる華倶夜自身のキャパでは受けきれないので黒曜月蝕乃魅剣で受ける 華倶夜自身が積み重ねてきた絆から生まれた能力 性格等 一人称:アタシ 他者の呼び方:アンタ、~さん、そいつ、(嫌いな神姫を呼ぶ時は「あのオンナ」)基本的にぞんざい オーナーの呼び方:アンタ、万年、アイツ 趣味プロレス観戦(万年睡眠不足との共通の趣味) 折り紙 喫茶店めぐり 利き手:両利き 「いいオンナ」であろうと常に心がけている。 基本的にはマスターである万年睡眠不足以外には興味が無い。↑の筈なのだが、妙に面倒見がいい。 継ぎ接ぎな(勝利を主眼とした性能に特化した、あまり格好よくない)装備をブサイクと呼び嫌悪している。 神姫としては無駄に器用(両手の夫々で別々の折り紙が出来る位)。 このページのトップへ 装備情報 普段着(左:夏服、右:冬服) 使用可能スキル 送信者 制作第三倉庫 デス・ヴェノムムーンライトラプソディ 軽装 使用可能スキル 送信者 制作第三倉庫 ウィンド・オブ・ディジーズデス・ヴェノムムーンライトラプソディハンティング・エッジ 重装 使用可能スキル 送信者 制作第三倉庫 デス・ヴェノムムーンライトラプソディデモニッシュ・クロー 最終装備 使用可能スキル 送信者 制作第三倉庫 魅了の舞姫黒曜月蝕乃魅剣縁結乃御霊 特殊装備 使用可能スキル 送信者 制作第三倉庫 零式禁装・夢幻泡影紫紅双閃 このページのトップへ バトルスタイルの遍歴 全時期を通じて、”魅せる”戦いを主眼においている。 初期 (Class: C ~ B 初期)サイズ・オブ・グリムリーパーの威力を頼みとした近接戦闘が主体。 参戦当初から、勝つ事よりもキャラクター性を意識したコーディネートの装備を選択していた。 中期 (Class: B 中期 ~ )サイズ・オブ・グリムリーパーでバトル序盤を組み立て、SP が溜まった段階でデス・ヴェノムやハンティング・エッジを放ち、ウィンド・オブ・ディジーズやムーンライトラプソディの追撃で止めを刺す。 ダークスラッシャー等の大技を持っていなかった(スキルを有する装備が似合わないという理由から、万年睡眠不足や華倶夜自身が装備を拒んだ)事から、勝ち負けよりも試合を組み立てる事に主眼を置くようになっていた。 試合を組み立てどんな相手でもきっちりバトルを盛り上げ、(自身の勝ち負けは別にして)納得の決着を着けていた事から、ギャラリーの中でも玄人からの評価が上がり始める。 装備の都合から攻撃パターンが限られていた。 最近プロレス技を組み合わせる事で、攻撃パターンが大幅に増えた。 予てから磨いていた試合の組み立てと合わさり、名勝負と言えるバトルを連発するようになる。通称:名勝負製造姫 プロレス技と既存のスキルを組み合わせる事で、見栄えのするバトルをするようになり、玄人以外からの評価が上がり始める。結果、実は素手でも闘える・・・というよりは結構強い神姫になった。 このページのトップへ 特殊技能 防御を”すり抜ける”攻撃・”消えたように見える”体裁き 共に覚醒 CSC 魅了の舞姫の能力を活かした技能自身の視線・(意識に残る)体捌き・足捌きで相手の視線・意識を誘導する (意識から消える)体捌き・足捌きで、相手の視線・意識の死角へ移動 or 攻撃 相手からは自分の防御を”すり抜けて”攻撃されたように見える実際は自分の視線・意識の死角から攻撃されているだけ 相手には華倶夜が消えたように見える実際は自分の”意識の中”の残像を見ていただけで、傍から見れば華倶夜は普通に移動しているだけ プロレス技 プロレス観戦を趣味としていてネイキッド素体を相手に密かに練習していた。 新たに練習台(八千代 千種、八千代 千華音)ができたので二姫を相手に練習をしていた。 そもそもバトルロンドには投げ技という概念が存在しないため、ダメージ計算は叩きつけられた際の衝撃値を元に打撃として計算される。そのため実際のダメージは少し強めの打撃と言った程度である。 投げ技の概念が存在しないため、当然受身という概念も存在しない。受身をとれる神姫もほぼ存在しない。 トラースキック 初公開: 対ツガル型戦 足の裏で擦り上げるように相手の顎を蹴り抜くため、スパーンと乾いた音が響く 華倶夜はこれで狙って相手をスタンさせ、試合の流れをひっくり返すために使う 必殺の威力は無いが、その特性上華倶夜の戦い方において生命線となる打撃 派生技三連ローリングトラース後ろ回し蹴りの要領で放つトラースキックを立て続けに三発叩き込むコンボ一撃目:相手をハーフダウンさせる 二撃目:ハーフダウンして前のめりになったところを狙う 三撃目:二撃目を喰らいそのまま地面に倒れた相手を、水面蹴りで打ち抜く 掌底猫の手の様に手を握り、手の付け根の固い部分で打ち抜く打撃 主に顎を狙い、アッパーの様にかち上げたり、フックの様に打ち抜く トラースキック同様狙って相手をスタンさせ、試合の流れをひっくり返すために使う トラースキック同様必殺の威力は無いが、華倶夜の戦い方の生命線となる打撃 ブサイクへの膝蹴り初公開: 対フィア戦 正調: ブサイクへの膝蹴り 左膝を突き出し相手の頬骨辺りにぶち当てていく、独特のフォームの膝蹴り 華倶夜認定ブサイク装備の神姫にしか使わない技 ブサイクへの顔面つぶしフルコース初公開: 対フィア戦 正調: ブサイクへの顔面つぶしフルコース ボディに左掌底 → 右頬に左掌底 → 左頬に右掌底 → 右頬にローリング裏拳 → 右側頭部に左ハイキックという連続攻撃 華倶夜認定ブサイク装備の神姫にしか使わない技 各種 ファルコンアロー 形式 初公開 備考 ファルコンアロー 対ツガル型戦 プロレスラー ハヤブサ 選手が編み出した投げ技 超高々度断崖式 対フィア戦 ビルの屋上から飛び降りつつ放つファルコンアロー 雪崩式 対ツガル型戦 ビルの屋上からカウンター気味に放つ(ブレーンバスターに捕らえない)FA。KENTAの雪崩式を意識したフォーム ファルコンエッジ初公開: 対真神 要戦(トレーニング) ハンティング・エッジ (右ハイキック→左後ろ回し蹴り→サマーソルトキック) → 各種ファルコンアローへつなぐ連続攻撃 命名は要 ストライクファルコン初公開: 対ツガル型戦 正面からのブサイクへの膝蹴り → 後頭部へのブサイクへの膝蹴り → ファルコンアローへつなぐ連続攻撃 華倶夜認定ブサイク装備の神姫にしか使わない技 命名は実況部 ストライクファルコン・フルバースト初公開: 対ツガル型戦 ブサイクへの顔面つぶしフルコースからストライクファルコンへ繋ぐ鬼の連続攻撃 華倶夜認定ブサイク装備の神姫にしか使わない技 命名は実況部 フェニックス・ソード初公開: 対千鳥戦 正調: フェニックス・スプラッシュ フェニックス・スプラッシュのフットスタンプ/ニードロップ版 地面に突き立てたグリムリーパーを踏み台にしたり、近くの建物を三角飛びの要領で背中を向けて宙に飛び、横に180°捻り前方一回転して、倒れている相手に両足で踏み抜く(或いは膝を突き刺す)技 フットスタンプ式の方が全身のバネをクッションの様に利用して威力を調整し易い。 ニードロップ式の方が落下距離が伸び威力も高い 命名は実況部 go 2 sleep正調: go 2 sleep 相手の頭が左側にうつぶせになる様ファイヤーマンズキャリーで担ぎ上げ、前方に投げ捨てながらカウンターの左ひざを胸や顎辺りに蹴り上げるデンジャラスな技 フランケンシュタイナー初公開:リバース式 対緋榴虎戦 、正調式 対メア戦 正調: フランケンシュタイナー 対神姫相手には正調、真鬼王等脳天から落としても平気な相手にはリバース式を使う。 真鬼王を一撃で解体する程の威力がある。 クレッセントパニッシュメント(CrescentPunishment)初公開: 対メア戦 正面から突っ込んでくる相手の攻撃を回避しつつ、跳躍 手を支点に180°体を捻り相手と同じ方向に向く 全身のバネを効かせて相手の後頭部目掛けて膝を叩き込む 神姫の構造的弱点(頭部と首をつなぐ部分)に大きな衝撃を与えるため、当たり所が悪いと一撃で機能停止或いは破壊に陥る危険技構造的弱点となる場所に衝撃が加わると、バトルを早期終了(安全対策)させる為にシステム的に大ダメージとする。 対メア戦 では後頭部に膝を叩き込んだため、大事には至らなかった。 あまりにも危険な技のため、 対メア戦 以降封印されている。 封印指定なのは、SS がエグ過ぎて相手神姫が可哀そうという理由もあったりする。 命名は実況部 変形フェニックスドライバー 正調: エメラルド・フロウジョン 飯綱返し” 不知火 ”(いづながえし・しらぬい)相手が飯綱落としを狙って背後から組み付いてくる 組み付いてきた相手の右手首を、左手で捕らえる(相手は自分を両腕でホールドできなくなる) 確り自分を捕らえられないまま相手が上昇するので、彼我の位置関係がずれる 相手の首を右肩の上に固定するように、右手で抱え込む そのまま一緒に上昇 頂点に到達し、相手が反った瞬間相手の体を踏み台にしてバック宙の要領で反転 空中で相手がブリッジ、自分が相手の頭、右手首を捕らえたまま腹ばいになる そのまま急降下し、飯綱落としの勢いを利用して相手の頭を地面に叩き付ける変形のリストクラッチ式 不知火 飯綱落としのリスクが SP 消費量ってのは納得がいかないと、万年睡眠不足と華倶夜でアイディアを出し、忍と華倶夜が開発した。 禁じ手直下技いわゆる垂直落下技 脳天から真っ逆さまに叩き落すため、頭部・首へのダメージが大きく、相手神姫を破壊しかねない為に自主的に禁じ手としている。 スープレックス系放った直後の姿を真正面から見られると恥ずかしいと言う超個人的理由から習得する気すらない技。 ただし一ファンとして観戦する分には結構好きらしい このページのトップへ インストール済み行動プログラム 神楽舞 日本舞踊 このページのトップへ その他 #twitter_badge このページのトップへ
https://w.atwiki.jp/tmnanoha/pages/350.html
◆ ◆ ◆ 世界は静かだった。 鞘から抜かれた二刀を抜き放った高町士郎であったが、そのまま彼はぶら下げるようにそれを持ち、無言のままにギルガメッシュと対峙した。黒く染め抜かれた彼の愛刀・八景の刀身は夜に溶けたかのようで、目を凝らさねば何も手にしていないかのようにさえ見えた。 ギルガメッシュは悠然と右手に持った剣――彼の言に拠るなら草薙之剣――を右肩の上に乗せ、立っていた。 二人の対峙する距離は十メートルほど。 この距離を越えて相手を攻め得る技術は、通常の剣術にはまずない。 相手に致命打を与えようとするのならば、一足一刀の間と呼ばれる場所にまで身をおかねばならない。それは一歩踏み込めば相手を打てる距離ということであり、相手もまた自分を斬れる場所ということである。 御神流の本義は小太刀である。ならば、その刀身の長さに見合った距離にまで接近する必要があるが―― 美由希は父とギルガメッシュを視界に収められる距離から、思う。 (だけど、御神流には飛び道具がある) 飛針。 鋼糸。 それでも、不意をつかない限りは十メートルという空間を越えて達人レベルの相手に当てるというのは不可能に近い。つい数分前にも美由希が打った鋼糸はギルガメッシュに迎撃されたのだ。 (私の場合は十五メートルあった。完璧なタイミングだと思っていたけど、あるいは風を裂く音が生じていたのかもしれない) 自分には聞き取れなかったが、そうでもなければあの機において迎撃されるというのは考えにくい。それが彼女の経験と知識に及ぶ限りでのその現象の解釈だった。他に考えようはなかった。 (心か、神速に近い集中力の高め方をしているのだとしたのなら、それができても不思議ではない――) 人間の構造は世界中何処にいっても大差はない。それならば、もしかしたら何処かで御神流に近い集中力の高め方をしている流派もあるかもしれないし、技術体系とまではしていなくとも、そのような技を実戦の合間に掴み取る者もいておかしくはない。 美由希はそのように考えた。重ねて言うが、それは彼女の経験と知識の及ぶ限りでの判断であり、それは同時に彼女の限界を示している。 御神流と同様にしてそれ以上の技術があるなどとは、彼女には想像できないでいた。 最上の剣術と、それを使う歴代において最高といわれてさえいる剣士の組み合わせは、考え得る限り最強という他はない。 漫画のような最強無敵の具現――それが、高町美由希の中での高町士郎の評価だ。あるいは願望というべきかもしれない。だが、それを妄想と断じ切れる者もまた、士郎の力を知る者の中にはいまい。 高町士郎という剣士は、それほどの存在なのだ。 その最強に挑まれた者は、「ふん」といやみな笑みを浮かべた。悔しいほどに絵になる笑顔でもあった。 「我を殺すと、そうほざいたか」 「はい」 士郎の答えは即座に返った。微塵の迷いもない声だった。 ギルガメッシュは、それでも表情を変えなかった。 「呆れ果てたものよ。当世では多少とものを知れている部類と思っていたが、それは我の買い被りであったか。――我と知りながら刃を向けるなど、そのような不敬な者などは我の時代にはいなかったぞ。我の王気も感じ取れぬほどの愚昧など、盲人にもおらなんだ」 「はい」 「偶さか己の力も図れぬ身の程知らずと会うこともあったが、そのような者とて我の一瞥を浴びれば不明を詫びて自害したものだ」 常識で考えるとありえない言葉であったが、その全てが真実なのだと、どうしてかここにいる者に伝わっていた。 この男の言っていることは紛れもない事実であると。 ギルガメッシュはそこまで言ってから。 「――いや、一人だけいたか」 微かに目を細める。 誰かを思い浮かべているのか、美由希には心当たりがあったがその名前を口にするのは憚られた。自分が如き卑小の存在がその名を呼んではいけないと、素直に思った。一瞬だが、彼が何かとても大切で尊いものを想いうかべているような気がしたのだ。 その瞬間が過ぎた後に。 「我の名を知り、我を前にして、なお殺すとほざくか――」 ぞわり、と世界が揺れた。 それは足元から背筋まで駆け抜けた怖気によってであったが、美由希と恭也はそう思わなかった。この男の怒気によって世界が揺れたのだと思った。それはつい先ほどにも感じたものであり、より強烈なものでもあった。 そして答えた士郎は、 「はい」 強く、そして静かな声だった。 鋭く、そして柔らかな声だった。 「つくづく、現世の者の度し難きことよ……此方に戻ってより我と知りながら挑むのは貴様が二人目だが、一人目はそれ相応の器を見せた。貴様はそれにも到底及ばぬ」 ギルガメッシュは怒気を発するままに笑みを深める。 「我の手ずから殺す価値もない――と言って理解できるようならば、我の前に立つこともあるまい。貴様は我に挑むということがいかなる意味を持っているのか、そのようなことすらも解っておらぬ」 「死は覚悟の上です。――我が身も剣士ならば」 するり、と士郎は歩き出した。 一歩一歩、何かを確かめるように。 夜の空の下、砂浜の上を。 歩いていく。 それは何処か殉教のために死地へと向かう聖者の如きものに見えて―― 「はっ」 とギルガメッシュは吐き捨てた。 「貴様程度が剣士を名乗るか! 我の時代なら棒も触れぬわ! 身の程をしれ!――よい。遊んでつかわそう」 かかってこい、と言ったのか否か、それは美由希には解らなかった。 ギルガメッシュが何かを発そうとした時、士郎の姿は消失したのだ! (神速――!) 美由希の視界がモノクロになった。視覚情報に全ての感覚が集約され、その上で不必要な情報はカットされたのだ。脳の処理速度は通常の十数倍に至り、一秒は十数倍にまで引き延ばされた。この状態では肉体もその枷を外され、あり得ない速度での移動を可能とする。 これこそが御神流の奥義之歩法・神速――。 御神の剣士を最強たらしめるそれは美由希にも恭也にも可能とするところだが、士郎のそれは二人のそれをなお上回っていた。 消えたと思った瞬間には、士郎はコマ落としをかけたかの如くギルガメッシュに接近していた。 空間を乗り越えたそれは瞬間移動にも似ている。 いかなる技がそれを成し得たのか、二人の間には砂煙もあがらなかった。 ――砂地に足跡すら残さぬ御神流の運足! 夜の中にあっては、その影すら見出すことは誰にもできないはずだ。 はずだった。 鋼を打ち鳴らす音は三度――常人にはほとんど一度としか聞こえなかったそれを、はっきりと二人の御神の剣士は聞き分けた。 一度目は左の小太刀を草薙之剣で打ち払った音で。 二度目は右の小太刀を別の長剣で打ち払った音だ。 そして三度目は―― 頭上に掲げた二剣をもって同時に振り下ろしたギルガメッシュの剣撃を、士郎が二刀を重ねて迎撃した音だった。 ざくり、と音を立てて四メートルほどの距離を置いて着地した士郎は、再び消え ――る前に、眼前にまで迫っていた剣を叩き落す。 「なんで!?」 美由希が思わず叫んだのは、その投じられた剣の速度ではなく。 それが左右の剣の両方だったからでもなく。 高町士郎という剣客が打ち落とすことしかできなくて、その場に立ち尽くしたからだった。 「体勢を崩された」 無言のままに戦いを見つめていた恭也が、やっと口を挟む。 しかし、それは美由希にも解っていたことだった。それだからこそ士郎は移動できなかったのだ。 だが、それは二人にしてみれば滅多に起こりえることではない。 武道に限らず、運動を能くする者は筋力の量だの反射神経だけではなくて、バランス感覚に長けていることが重要である。 重心の位置を定め、移動させ、ようやく打撃力を発揮したり高速での歩法が可能となる。 人間の体は複数の筋肉と骨によって構成されているのだが、それはつまり複数もの筋肉が作り出すエネルギーのベクトルが常に体の中で働いていることを意味していた。 ゆえにこそ、それぞれの筋肉を発達させる、増量させるということはより精妙なバランス感覚を必要とするのだ。 特に日本武道はそのバランスのラインを正中線と呼び、強く意識している。 暗殺の剣とは言え、御神流もその系譜にあり――その継承者たる高町士郎の正中線は生半になく太く、少々の衝撃で崩れるということはあり得ないのだった。 いかに弾き出されての着地、しかも砂地の上でという悪条件が重なったとは言え、さしたる術理もなく投げられた剣を叩き落した程度のことでそのようなことになるとは、美由希にしてみればまったく信じられぬことだ。 いや、それよりも。 「駄目だ」 とギルガメッシュは、右手にいつの間にか持っていた草薙之剣の切尖を士郎に向けた。 左手にもやはりいつの間にか先ほど投げたはずの長剣がある。 投げて叩き落されたはずの二本の剣が、それぞれ何事もなかったかのように戻っている。 (なんで……?) もはや驚きに声もでない。 ギルガメッシュは言葉を続けた。 「反応も、速さも、まるで遅い。話にならぬ」 「…………………、なるほど」 果たして、その言葉をどう受け止めたものなのか、士郎は右手を前に、左手を担ぐ構えをとった。 ギルガメッシュは笑っている。 「ふむ。まだ懲りぬか。よかろう。幾らでもくるがよい。だが、貴様のそれではそう何度ももたぬぞ? 無銘とはいえ、天之叢雲剣と天之羽々斬となった宝剣だ。せいぜいが十合と受けられるかどうか」 その言葉に「ハハキリ?」と声を出したのは、恭也だった。何処から取り出したのかも解らぬということ以上に、その剣の銘の方が気になったというのだろうか。 「……須佐之男命が、八岐大蛇を退治した時に使っていた剣よ」 と美由希は告げた。 八岐大蛇に関係する剣といえば天之叢雲剣が有名ではあるが、それは大蛇の尾の中より取り出した剣でもある。実際に須佐之男命が使用していたのは天之羽々斬と言われる十拳剣だった。 彼女はその剣が石上神宮に納められた後に行方知れずになったのだということまで知っていたが、口にしなかった。そこまで言っても大して意味があるとは思えなかったし、恭也にも興味はないだろう。 どちらにしても、あまり有名ではないが神話の中の剣ではある。 (ギルガメッシュが、草薙之剣と天之羽々斬を装備して戦うとかって、まるでゲームみたいな……) 思わず、そんなことを考えてしまった。 だが、それは笑い話にもならない。 現実だ。 目の前にある事実なのだ。 神話の英雄が別の神話の剣を持ち、御神の剣士を圧倒しているのだ! いや、圧倒というのはおかしいかも知れない。 未だ戦いは始まったばかりで、打ち合わせた回数とてまだ三回だ。――三回、おそらくは御神流虎乱の連撃を受けた二撃と、続く士郎の三撃目よりも速く打ち込まれたギルガメッシュの双剣の反撃――それが何を意味しているのか、まだ美由希には解らない。 解らないふりをしていた。 「さて――」 とギルガメッシュは神話の剣を諸共に掲げた。 「一剣に二刀は優るとこの国の碩学は言っていたが、二剣に二刀は優るか、試してみるか?」 再び、士郎の姿が消失する。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/1525.html
森の奥 (8) クリソーラスは、あの長い杖を片手に、森を進んでゆく。 森の中で、その裾をひらめかせ、己の影と、差し込む光と、戯れるように進む森族は、本当に身軽で、着いてゆくにも苦労するほどだ。しかもその足取りは、彼のような森族にとっては常の事で、彼が気づかなければ、人族など置いてゆかれるばかりだ。彼は、クリソーラスは、確かに高揚しているように見える。 「そこで待っていてくれ」 彼は振り返りもせずそう言った。木々が切れて、明るく日差しが差し込んでいる。その先は沼となっていた。差し渡しで二、三十碼奥行きはやや狭くて十五碼ほどか。濁った水は静かで、深さもそれほどなさそうだ。 ふわりと飛んだクリソーラスは、その水面へと舞い降りる。水しぶきの一つもなく。ただ波紋の環を広げて。彼が水に沈み込むことは無かった。水面を地のごとく踏みしめ、ただ環のような波紋の広がりを残して歩いてゆく。 彼は裾をひるがえし、身をかがめて片手を水面に着く。ひときわ大きな波紋が広がる。彼の在るところから、さざめきが追って広がり、やがて池のすべてがうねり響きあうようになってゆく。 水面に触れたままの姿のクリソーラスの姿が持ち上がる。彼の下から、水面を押して何かが浮かび上がってきているからだ。すぐにわかった。それは鉄の体もつもの。機装甲だ。それはうつ伏せに水面へ面を伏せた形のまま、浮かび上がってくる。あるいは、倒れたままというべきだろうか。 クリソーラスはその背の甲蓋を引き開けた。するりと中へと入り込む。水面が静まりきらぬうちに、また大きく波打って動く。こんどは池の縁を超えて圧し広がる。 機装甲は身を起こす。肘を上げ、両の手を水底に突き、一気に体を持ち上げる。肩から、わきから、水が流れ落ちてゆく。片膝をつき、機は立ち上がる。脛甲で水を押し割りながら機は岸へと向かう。池を進む機装甲は、パニアスも見たことのない機であった。ただ機装甲は甲を変えるとかなり違って見える。機は池の縁を踏み崩しながら上がる。機体を水が流れ落ちてゆく。 森族の作る機は、それほど多くの種類があるわけではない。パニアスはあの機を、アヴェラウ・カスク・マチュアードの眷属だろうと思っていた。オクシュタニアやリュクシュタニアで作られている機装甲だ。作られているところでいくらか形は違う。出来も違う。その力も違う。作りの良し悪しも、もちろんある。 あれはクリソーラスが何としてでも取り戻したいと思っている機なのだ。弓手には長い弓を携え、腰には矢筒がある。背、というより右肩の背後には小ぶりながら凧型の盾を負っている。左の腰には直剣がある。 「このびしょぬれを手入れするのか」 機を見上げていたギブリがあきれたように言う。 『処理する』 機から声が響く。機体から滴る水は変わらない。それどころか機を伝ううちに寄りあって、流れとなり、流れもまた互いに束ねあって、地に流れては一つとなって、自ら目指すように池へと戻ってゆく。 やがて機装甲から流れ落ちる水は絶え、足元に溜まっていた水たまりも、自ら求めたかのように池へと流れだしてゆく。塗れ跡さえ吸い込まれるように消えていった。水の魔術だ。 「このまま前進。馬車へと戻ってくれ」 マユールが呼びかける。彼は魔術にすこしも驚いていない。応えもすぐにあった。 『了解した』 森をクリソーラスの機装甲が行く。マユールとギブリの二人も、気づかわしげに機を見やっている。動きはなめらかで、クリソーラスの言う手入れはそれなりに行われているようにパニアスには思えた。パニアスは問う。 「どうかな」 「奴の言うほどではない」 むっつりとギブリが応じる。 「まるでわしらを連れてくる口実に使われたようだ」 森族のクリソーラスのことを、ギブリはやはり気に食わないらしい。マユールは笑いをこらえている風だが、言った。 「ここで一度中を見て、どこかの工房まで歩かせるほうがいいだろうね」 開ければ、どの系統の機体なのかもはっきりするし、と彼は言った。ギブリはむっつりと応じる。 「調べはお前に任せる。わしは知らぬ」 「ええ、任せてください」 そのあたりはもう、二人に任せるしかない。森の出口で、馬車とリーティアとチャディック、それに片膝を着いた機装甲サルバニアンは待っていた。 「なんだ、普通に歩いてるじゃねえか」 チャディックも不満気だ。リーティアは見たくもない、というふうにそっぽ向いている。構わずクリソーラスの機装甲は片膝をつく。その双眸から光が失われ、やがて背の甲蓋が押し上げられる。クリソーラスは身軽に伝い降りてくる。ギブリがさっそく振り向く。 「わしらの手がどこに要る」 「両膝、特に右の膝。収束帯。継ぎ手はともかく、収束帯が痛んでいる」 「見る以上のことは出来んだろうな」 ギブリはうなる。マユールは続いて言う。 「収束帯の調整くらいなら」 「まあ、出来んことはないが、継手の消耗が進んでいると、それも痛みを進めるだけだぞ」 「そのとおりですね。それも開けてみなければわからない」 「外すぞ」 ぷい、とギブリは機に背を向け、馬車へと向かってゆく。いつも通りだ。機が前にあれば、工部はそうなるものらしい。マユールはおもしろげにパニアスに目配せをして、それからクリソーラスへという。 「手伝ってくれ。知らぬ機を手癖で扱うのは危うい」 「承知した」 うなずき、クリソーラスとマユールもまた馬車へと向かってゆく。吊金具の柱を馬車から運び出す。継手で折りたたまれた木の棒だ。それを三本、頂きで繋ぎ合わせると吊三脚になる。滑車と鎖で、機装甲の甲を吊り上げるものだ。クリソーラスは、そういった仕事を少しも厭わぬふうだ。機装甲乗りが手入れを厭うようではならない、とパニアスは教えられていた。リーティアはぜんぜん違う。機装甲を動かせるし、機装甲を使って魔術も放てるけれど、好いてはいない。機装甲は、木を焼いて作るからだと言っていた。鉄を作るために焼くために育てる「焼く森」があるのだとも。ギブリはいつもの脚立を立てて機へとたてかける。クリソーラスは何事か指図している。少なくともあの機を知り尽くしているらしい。機装甲乗りには大事なことだ。 クリソーラスは、森族としても、だいぶ変わっているようにパニアスには見えていた。そもそも森族には、クリソーラスのようにいくばくかでも老いて見える者がいない。パニアスは見たことがない。彼らの森の奥にはいるのかもしれないが、パニアスにはそこまで入ることは許されていなかった。森族にはうかがい知れないことが沢山ある。 入り組んだ氏族と血族の有り様を、明かされもしないのに問うのは、もちろんとても無礼なことだ。たとえば、クリソーラスは双性であることを明かしていない。でもパニアスにはわかる。彼は、男でも女でもない。森族はそれをアールヴと言う。森族の中でも力あり、また力を握るものらだ。長命な森族の中でも、ひときわ長命を誇るとも言われている。けれどクリソーラスの面は、ひとに見るような老いを伺わせている。それでも彼の姿やうかがえる面立ち、先の尖った耳は、森族の血を濃く伺わせる。人の双性者も人としては長命だ。森族の中で生きてきただろう彼の、ほんとうの年など判るはずもない。そしてその年月の分だけ、彼には森族としてのしがらみがある。リーファも知っていたような何かが。 「どうするよ」 パニアスの背後から、チャディックが低く問う。そういう言い方をする訳も、もちろんパニアスはわかっていた。だから笑顔で振り向く。 「機体が二つあっても持て余すだけさ。たぶん、ザクソスでもね」 「おめえは、ほんとうにお人よしだわ」 チャディックはあきれたように腕組みをする。なぜか隣のリーティアが彼を蹴る。いてえないきなり何をしやがる、から始まって、うるさいのよ、と続くじゃれあいはいつもの通りだ。じゃれあいだ、とパニアスは思っている。リーティアが言わなかったことの方が多分正しい、とも。あのクリソーラスを、パニアス達が始末するのは難しいだろう。だが、クリソーラスをして、パニアス達を操ることもまた難しいのだろう。だからこそ、正面切って姿を現し、彼の手の内を見せてきたのだ。何が望みかわからないが、実は何が望みでもであまり変わらない。今のパニアス達のできることは二つに一つ。とどまるか、離れるか、だ。そして離れたところで、放って置いてくれるとは限らない。 「チャディック、君の言ってた、なんだっけ、追いかける方法。奴らがやってた」 「付け、か?だが、おめえ、連中の付けは、あいつが始末したのを見たじゃねえか」 「それで諦めて放って置いてくれるかな」 「あちらの構え次第だ。だがこの二日、付けが使いそうな小ヤサには何の気配も無え」 どうだ、リーティア、とチャディックは問う。 「地の精霊は何も聞いてないみたい。ただ精霊は鉄の塊が歩くのを嫌うから」 「もう、諦めてくれたかな」 パニアスは問う。 「チャディックだったら、諦めるかな」 「それは何を命ぜられてるかによる。ただ、ああいう構えをとっていて、簡単に諦めるとは思えねえ」 腕組みしながらチャディックは、青空へと目を向ける。 「付けが出来るような奴を二人送って始末されて、じゃあ次の構えができるかと言われれば、よほど大きな構えでもなければ難しいだろうな」 ただ、と彼は続ける。俺らは機装甲から離れられない。足跡も、足音も、精霊が嫌うくらいにはでかい。構えを立て直して追いかけてくれば、見失うほうがむずかしい、と。 「そういう相手を、俺たちだけで応じるのは難しいだろうな」 「おめえ、奴と奴らとを鉢合わせさせるつもりだったのか」 「そんなことは考えてなかったよ」 けれど一機より二機の方が良いと思わなかったといえば嘘になる。 機体は大事だが、機体を動かし続けるには部品部材も要る。それを失ってしまえば機体を諦めるしかないこともありえる。クリソーラスのように隠すことができるとは限らない。部品だけがあっても意味はない。ギブリとマユールという得難い工部の二人が居てこそだ。それ以上に二人は、大事な仲間だった。二人を乗せた部品部材の馬車と、それにリーティアは先に逃したほうがいい。けれど馬車の轍はすぐに追いかけられるだろう。 敵が機装甲を持っていなければ、蹴散らしてしまえばいい。けれど帝國には、僅かな手入れで長駆進出可能な機装甲があるのだという。帝國をして、それを機神、と呼ばしめさせている黒い機装甲が。それは黒騎士のために作られ、魔術も剣技も縦横に放てるともいう。内戦にあっても容赦なく敵を討ち、黒騎士の名を知らしめさせたと。サルバニアンが戦うべき、ほんとうの敵でもある。それは黒騎士同様、三機で一組であるとも。 「ただ、帝國には俺たちを追ってこられる機体がある」 「黒の二か」 チャディックなら知っていて当然の名だった。 「なら・・・・・・道は避ける方がいいかもな。森を統べるは森族ってやつだな」 「うん」 わかった、とチャディックはうなずき返す。 「物見に出てくる」 なあに、と彼は笑って見せる。 「機装甲で森中突破をはかってやろうなんて酔狂は、そうはいないさ」
https://w.atwiki.jp/rg7jyd/pages/608.html
最近はまだ行ったことのない食イベントに行ってみることが多くなりました。 代々木公園、日比谷公園、大久保公園など、東京の方で開催されている食イベントに多く行っているせいか、比較的近場の厚木で行われているイベントは随分とご無沙汰となっていました。 今回行こうとしている「神奈川グルメフェスタ」は、2014年を最後にずっと行っていなかった食イベントですね。 2014年までは「かながわフードバトル」という名称でしたが、2015年以降は「神奈川グルメフェスタ」と名前を変えて開催されているようです。 会場はこちらの厚木公園(はとぽっぽ公園)・・・ではなく、もう少し先にある厚木中央公園になります。 通り道なのでついでに寄ってみたのですが、こちらでは「あつぎスイーツランド2017」というイベントが同時開催されていて、たくさんのスイーツが集まってます。 あゆコロちゃんマカロン (オカリナキッチン) いちご餅 (菓匠 土門) あゆコロサブレ (しあわせのお菓子 TreeOven) 和三盆ミニシュー (キャラメル・ママ厚木店) 幸せのカップケーキ (ケーキハウス 幸せの丘) 極ふわ(ロールケーキ) (プレシア厚木工場) ふわふわディップシフォンケーキ (レンブラントホテル厚木パームツリー) アイスコーヒー (スターバックス コーヒー) あゆコロちゃんまんじゅう (菊屋政房) マジドカカオ (マジ・ドゥ・ショコラ) 早雲 (一夜城ヨロイヅカ・ファーム@4/23のみ) ここに載せたのはほんの一例です。実際にはそれぞれの店舗(括弧内)で複数の品が提供されていますので。 前回(2014年)行った時は、まず厚木公園に寄って、いきなりスイーツを頂いていましたが、今回は敢えてスルーさせて頂く所存。 また戻ってくるつもりではいるので、その時に良さそうなのが残っていれば(売り切れになっている可能性もある)購入しようと考えています。 ステージでは可愛らしい女の子達がフラダンスを踊ってますね。 厚木公園から歩くこと約10分程度、厚木中央公園に到着。 右手側には「サトザクラ」が満開です!! 青空を背景にズームして。ソメイヨシノと違って花びらが多いですね。 まあ、この辺りでも「ソメイヨシノ」はほとんど散ってしまっていますが。 先程の黄色いゲートをくぐったすぐ先に投票所があり、食べ終わった後の割り箸で投票します。重さで順位を決める感じですか。 会場はこんな感じ。投票対象外となっている品も幾つかありますね(数字が書かれていない所)。 エントリーされている品を地域ごとにまとめてみました。★印がついている品は投票対象外(特別出店、ゲスト出店、今までのグランプリ店など)です。 ◆厚木市 味噌とりから 備長炭焼 厚木チーズつくね 焼きナポリタン あつぎとん漬焼きそば 厚木カラアゲ アーバンホテル特製ローストポーク 黒てるてラーメン★ 厚木シロコロ・ホルモン★ 厚木名物 とん漬★ 愛甲三郎豆腐でんがく★ 金賞ウインナー盛合せ★ 厚木の鮎★ ◆伊勢原市 やまと豚特大あらびきフランク ◆鎌倉市 鎌倉お好み焼 ◆相模原市 神奈川グルメNO.1シェフの唐揚げ 津久井でわっしょいラーメン さがみはら香福豚のブリトー ◆寒川町 さむかわ棒コロ ◆茅ヶ崎市 湘南名物茅ヶ崎メンチ ◆静岡県浜松市 浜松餃子★ ◆大和市 かながわ やまとオムレツやきそば 俺のすじ煮 ◆真鶴町 イカ爆弾 ◆三浦市 三崎港まぐろトロちまき ◆平塚市 弦斎カレーパン 湘南しらす塩焼そば ◆藤沢市 湘南宮だこ ◆湯河原町 たんたんたぬきの担々やきそば それぞれの店舗前には結構たくさんの人が並んでいるようです。他のイベントと違う点としては、テーブル&椅子が会場内に殆ど用意されていないことでしょうか。 テーブル&椅子があると、ずっと居座る輩がいますからね。その代わりに会場内の隅っこにはシートを敷いて飲食されている方々が目立ちます。 今回は何を食べようとかは全く決めていません。見てまわって食べたいと思ったものを食べていきます。 さむかわ棒コロ まずは(応援するという意味もありますが)地元のコレにしました。前に行った時もコレでしたね。春巻きの皮で具材を包んで棒状にしたコロッケです。しっかりと味がついているので何もつけずに頂けます。 一定のルールさえ守れば、中の具材は何でも良いので、蕎麦屋→蕎麦が入ってるとか、寿司屋→のり巻き風とか、Coco壱→棒コロカレーとか。 ここで提供されているのはベーシックなやつですが、超オヌヌメですよ! 会場である厚木中央公園の東側では、神奈川県内のご当地キャラクター達を触れ合えるイベント「かなキャラ大集合!2017」も同時開催されてます。 棒コロ食べながら見に行ったら、沢山のキャラがいました。 【出世大名家康くん(静岡県浜松市)】:左側 【ゆがわら戦隊ゆたぽんファイブ@たん平(神奈川県湯河原町)】:真ん中 【出世法師直虎ちゃん(静岡県浜松市)】:右側 家康くんは何度か見たことありますが、たん平、直虎ちゃんは初めてですね。 【えぼし麻呂(神奈川県茅ヶ崎市)】 お隣の市なのに、あまり生で見た事はないな・・。 【あじさいちゃん(神奈川県開成町)】 完全に初めて見るキャラですね。 棒コロを食べ終わったので次行きましょうか。 備長炭焼 厚木チーズつくね こちらは毎年11月頃に開催されている「あつぎ国際大道芸」で頂いていますね。 備長炭で焼かれたつくねにチーズがかけられ、中にもチーズが入っています。醤油ベースのタレと温泉卵を絡めて頂くと大変美味しゅうございます。 会場のど真ん中で食べるのはすっごい邪魔なので、食べる際は隅っこの方に移動してます。かなキャラ大集合の会場(東側)は比較的空いているので、そちらで食べながら、ゆるキャラ来たら撮影して、また食べ物買ってきて・・の繰り返しです。 【えび~にゃ(神奈川県海老名市)】 みんな大好き、えび~にゃ! 【はまにゃん(自衛隊神奈川地方協力本部)】 こちらも初めて見るキャラですね。 で、 謎のキャラ・・。写真撮影に応じているということはゆるキャラの一種? この写真だと見えてないですが、右肩のところに名前が書かれていて【山田るま(全日本だるま研究会)】というキャラのようです。 確か、2014年に行った時は市役所脇で「ゆるキャラ大集合」が開催されていて、ヴィレヴァンの箱の人とかいました。 (参考写真) 箱の人 = 名称不明なので、山田るまさんの方が一歩リードでしょうか(何が?)。 はい。次のグルメを求めて西側に戻ります。 俺のすじ煮 牛すじです。あまりがっつり食べると数週間後の健康診断@体重に影響がでるので、ちょっとだけ控え目な品にしました。 あー、でも、これは、、18禁一味かけたいわー(持ってきてないけど)。 【ふっかちゃん(埼玉県深谷市)】 和光市の鍋グランプリで良く見かけます。 【あゆコロちゃん(神奈川県厚木市)】 ついに、ここ厚木のキャラクター登場ですよ! 会場内ではぬいぐるみも販売されています。これ見た後なら、もうアレしかないな。 鮎の唐揚げ 鮎の塩焼きとも迷ったのですが、骨ごと丸かじりできるこちらをチョイス。お好みで塩や醤油、明太子マヨネーズなどをかけて召し上がれ! 上にかけてきたのは明太子マヨネーズですが、強く握っても全然でてこなくて、他の人も使いたそうにしてたからちょっとだけ。 スティック状なので食べながら移動していたところ、見覚えのあるキャラを発見! 【コロ坊(神奈川県高座郡寒川町)】 一番最初に食べた棒コロの販売ブースへ応援に来たところ・・だと思いますが、既に完売してるからあまり意味ないし・・。 朝食をほとんど食べずに来たとは言え、結構食べてきたので食べ物は次でラストにします。 真ん中の毛糸みたいなのは何を意味しているのか・・。 浜松餃子 さっきの毛糸みたいなのは、この「もやし」をイメージしていたのかー。納得。 餃子のタレ(タレ&ラー油混合型)貰ってますのでかけて頂きますが、ラー油だけかけて、餃子自体の味を楽しむのも良いですよ。 ちなみに、この日は横浜赤レンガ倉庫で「宇都宮餃子祭り in YOKOHAMA」(最終日)が開催されています。そちらにもお邪魔するのは時間的に無理なので、外で餃子食べた気分だけ味わおうと〆は餃子にしました。 食べてる最中、何か赤いのがいるなと思ったら、てんとう虫だ。すっごい久しぶりに見た気がします。 恒例の食後のゆるキャラタイム。 【あいちゃん(神奈川県愛甲郡愛川町)】 一番最初の会場風景写真にちらっと写ってたけど、その後いなくなっていて、再度出てきたところです。 他には全然いなくなっちゃった代わりに、会場内の地面に「ゆるキャラの似顔絵(水画)」が!すごい、上手い!! とりあえず、沢山のキャラが見れたので、そろそろ帰りますか。 手持ちの投票券(割り箸)は3本。鮎の唐揚げ&浜松餃子は対象外ですからね。 無事、投票も済ませて、お疲れ様でしたー。 そういえば、ステージの方は全然見てなかったので、少し見ていきますか。 こっちに集まってたからあっちに全然いなかったのですね。ちなみに、この時間はシンガーソングライターの神崎隆広さんとゆるキャラたちが出演しているようです。 しまねっこ!何かポーズをとっているように見えます。 さっきの山田るまさんもいます。喋ることの出来ないキャラが多い中、この後14時半からのPRタイムでは普通に喋りますよね(さっきの写真撮影に応じてた時も喋ってたし)。ただ、その時間まではここにいないですが・・。 はい。14時半までいない理由は、こちら(厚木公園)でのスイーツ物色というミッションが残っているからです。 何か良さそうなの残っているかなー? こんなの(ケーキ屋さんの焼肉風弁当)をゲットしましたよ。すでにお腹いっぱいなのでお持ち帰りです(下写真)。 ステージでは、新橋のご当地アイドル@お茶汲みガールズ(北村香苗さん)のライブが始まりました。ガールズなのに一人なのは、相方が失踪したからとか何とか・・。 上の焼肉風弁当(生もの)持っていて長居はできないから、観るのは少しだけ。 今まで色んなイベントに行ってきましたが、このイベントのように毎年行っていないようなものも当然あります。 BBWのように物(グラス)が残るようなものは恐らく行き続けると思いますが、そうでないものは「開催日時」「場所」「天候」「体調」「気分」「資金」などの外的要因で行ったり行かなかったりする可能性がありますね。 今回のこのイベントは比較的近場だし、まだ食べたことのない品も多数残っているので、また機会が合えば行きたいですね。 おまけ 家に戻った後、生ものを冷蔵庫にしまって、近くの川に来ました。 カルガモがいました。運が良ければカルガモの親子が道路を横断している光景も見れたりしますね(数年前に一度だけ見た事がある)。 魚捕りに川の中へ入っていきました。 ここに来た理由は、カルガモではなく、近くの田んぼに咲いている「れんげ」。通勤途中の電車内からもチラっと見えるのですが、近くでじっくりと見たかったからなのですよ。 小さい頃は花びらをつまんで、中の蜜を吸ったりしてたなー(れんげのハチミツとかある位だし)。
https://w.atwiki.jp/jojost/pages/243.html
冷たい。 口の中に鉄の味がひろがっている。どうやら頬の内側が傷ついているらしい。 だが、それ以外に痛みは感じない。 生きてるのか、俺。 「オイ、オイキョン!無事か!?」 馬乗りの状態でセッコが俺の上体を揺らす。 どうやら生きているようだが、セッコが俺の体を揺するために掴んでいるのはあろうことか俺の首。 このままじゃせっかく助かったのにセッコに殺されちまう。真っ青な顔で文字通り必死に俺を掴む腕をタップする。 「ん、おお。起きてたのか」 起きてたのかじゃないだろ、ったく。何が悲しくてお前に殺されかけなくちゃならんのだ。 「ああ、つい昔の癖でな!!」 もし死んでたら謝って済まされないぞ、これ。 そう言って首を絞めていた手を払いのけ、立ち上がる。幸い内頬以外に傷は無いようだ。 その傷ももうほとんど塞がっている点を考えると、そんなにひどい傷でも無かったらしい。 傷の酷さでいえばどう見てもセッコの方が上だ。コイツ、あんなに右肩が抉れてて大丈夫なのか? 「そこが一般人とギャングの違いって奴だ!!」 セッコは嬉しそうに胸を張るが、今はそのいつも通りの自信過剰ささえむなしく見える。 能力のスケールが違いすぎるのだ。こちらと向こうでは。 流れ星を敵に当てる能力、射撃能力ってだけならまだサッカーの時と五分五分レベルだ。 しかしその弾丸の大きさと正確さ、そこから換算される威力はそれの5倍はいってるだろう。 対してこちらの能力。 セッコの泥化があるが、あれは意識外からの攻撃に対してはほぼ無意味と言える。なぜなら泥化をするしないはセッコの意志一つだからだ。 俺についてはスタンドの像は見えるもののそれだけ。神父やセッコと特訓(という名の虐待)を受けたが片鱗も見えてこない。 腕の像だけでも出そうと必死になろうと手には少し汗が浮き出るだけだ。 つまり、あれだ。センスがないって奴だろう。 そんな手も足も出ない状況でどうやって勝つって言うんだ。神でも味方につけるか? そいつぁ出来ない相談って奴だ。なんてったって神様はここに呼んじゃあいけないんだからな。 俺がこの状況を打破する手をあれこれ画策しても、命のやり取りの経験の無い俺には最善策なんて思い浮かばない。 セッコに聞いたところで『敵をぶっ殺しゃあ勝ちじゃねェか!!』とか言うだけだろう。 つまり、こうやって考えている時間は。 「まったく、逃げないのなら避けないでくれればいいのに」 無駄だったって事だ。 振り向かなくても分かる。さっきの白衣で眼鏡のキチガイだ。 どうする、今から逃げるか? 駄目だ、あいつの視界の中に居る限り俺達は隕石に狙われている。あいつが合図を出せば一発でおジャンだ。 戦うか?勝機が見えないのに戦いに行くなんて愚の骨頂だ。 じゃあどうする、死ぬか、ここで。 「オイオイ、自分から接近してくれるとはなァー。感謝するぜ、まったくよォ!!」 セッコはすぐに声のした方に拳を突き出す。しかしいつものような鋭さや速さがその一撃には感じられない。 案の定、白衣の男のスタンドによって弾き落とされてしまう。 「足りないなぁ……」 そのまま男のスタンドは逆の手を引き上げ。 「圧倒的に、速さが!!」 傷ついたセッコの肩目掛けて腕を振り下ろした。 セッコが漫画やらアニメやらの主人公ならここでカッコよく敵の攻撃を避けるんだろうが、現実はそんなに甘くない。 敵の振り下ろした一打はもろにセッコの傷跡を抉る。 「ッッつあァァァア!!」 耳をつんざくようなセッコの悲鳴。 3センチほど抉れているんだ、神経に直に触れられた可能性が高い。 セッコの悲鳴を聞きながら、男は嬉しそうに腕を上にあげる。予備動作だ、あの男が隕石を呼ぶ時の。 危ない、何とかしなければ。 「心配するな、殴りかかってこない所を見ると君は『スタンド』とやらを持っていないのだろう。このモグラ君を始末した後にゆっくり料理してやるさ」 絶体絶命ってこういう時に言うんだろうな。 男が腕をセッコの方へ向けようとする。セッコはまだ右肩を押さえたままの状態だ。 もう間に合わない。 計算通りに行くと思っていた。 モグラが動くまでは。 「ッ痛ってェーーーだろォが糞野郎ッ!!!!」 そう言って地面についていた右手で私に泥を投げてくるモグラ。やはり弱った右腕ではそれが限界か。 しかし、それをただの泥と見たのが私のミスだった。 うまく操れるようになった『スタンド』の左腕で私の顔へと迫ってくる泥を弾き飛ばそうとする。 が。 弾こうとしたスタンドの左腕に泥が纏わりつき、そのまま私のスタンドの胸と左腕を接着する。 どういう事だ。先ほどまで泥だったはずなのに、今私の胸元では泥は土、というよりは岩と同じほどの強度になっている。 つまりあのモグラは土の高度を変える事が出来るのか。しかし、そんなクズみたいな能力では私の夢は。 『一手、遅レタナ……!』 聞こえてくるのは、新しい無機質な声。と同時に背後からの強烈な一撃が私の体へと叩き込まれる。 どういう事だ、モグラと青年以外にもまだ私の夢を邪魔しようとするやつが居たのか。 もう駄目だと俺が覚悟を決めた瞬間、神は手を差し伸べた。 『一手、遅レタナ……!』 眼鏡の男の後ろから聞こえる、聞き覚えのある無機質な声。まるで、シューシューと唸る蛇のような声。 声と同時に眼鏡の男が俺とセッコの間を通り、俺達の後方へと吹き飛んでいく。 「セッコ君の叫び声を頼りに来てみれば、どうやら丁度良い瞬間だったようだね」 見覚えのある黄色と黒の警告色の大男とその傍に闇に溶け込むように佇む黒の聖人服。 神様は俺達を見捨てなかった。こうして神の忠実な使いである神父をここまで引き寄せたんだからな。 これが神父の言っていた『運命』やら『引力』という奴なのかもしれない。 ちょっと神を信仰したくなるな、この瞬間の救世主は。 「気をつけろ、神父!!どっかに隕石が着弾するはずだッ!!!!」 左手を地面に付いていたセッコが神父に警告を出す。 そうだ、あいつの攻撃はもうセット状態に入っていた。発動していてもおかしくない。 「隕石、それが能力」 そこまで言って、神父の言葉は止まる。隕石は綺麗に着弾した。 神父の太ももとセッコの脇腹を抉って。 どういう事だ。 確かにあいつの能力は隕石を呼ぶ能力。ここまでは変わらない。 しかし今の軌道、もし眼鏡があの場に残っていたらあいつの太ももを抉っていた事になる。 そんなことがあり得るのか?自分を傷つけるスタンド能力なんてものが。 ……違う、今はそんな事を考えてる場合じゃない。 神父は右太股をかすめただけだがセッコは先ほどまでの右肩の負傷に加え、右脇腹にも傷が増えた。 パッと見で分かる。脇腹の方は致命傷だ。 「ここまで強力なスタンドとは。こんな場所で、想定外だった」 そうだ。まさかここまでのスタンド使いだなんて誰が予想できた? セッコはもう駄目だ、ここから動かそうとすれば失血死しちまうだろう。 俺は、ガタガタ震えている事しかできない。頼みの綱はもう神父だけ。 神父の能力ならばなんとかなるだろうが、それでも、奴に接近するまでに撃ち殺されてしまったら終わりだ。 「ハルヒ君たちを帰しておいてよかった。ここに来られていたら色々と厄介になっていただろうからな」 そいつはありがたい。やっぱりあんたは頼りになる。 しかし今は目の前の敵について考えてほしかったな。 「そうだな、死んでしまって天国に向かえなくなったら困る」 ……こいつ、死なずに天国へ行く気なのか? 違う、それは今は問題じゃない。敵なんだ、敵を倒さなければ。 まず、なにを伝えればいい? 能力、これはいい。スタンド像、必要ない。本体の情報、なに一つ分かってない。 能力発動の時の状況か。必要なのは。 「敵を指差して流れ星を流す、か。軌道についてはなにも?」 ああ、分からない。 「そうか。まぁ、そこまで分かっていれば対策のしようがあるさ。もしそれが」 「それが本当に信じられる情報なら、か?」 どうやら、俺達が焦っている間に向こうは体勢を立て直せてたようだ。 「遠くへ行くとモグラ君の能力は効力を失うのかな?」 グジュグジュという夜露を浴びた草を踏みしめる音がいやに大きく四人の間に響く。 「それとも、致命傷……いや、モグラ君の意識が飛んだら消えるのかな?」 中指で眼鏡を持ち上げ、ゆっくりとこちらとの距離を詰める。 神父が俺の腕を掴み立ち上がらせる。足は震えているが問題はなさそうだ。 「さぁな。そんな事は関係ない。大切なのは、『お前は私の友人を傷つけた』ってトコだけだ」 「モグラが友人、寂しい男だな君も」 膝を付き、男を見上げていたホワイトスネイクが立ち上がる。 男は指で天を突き、神父の方を見据える。 一目では分からない二人の臨戦態勢。 距離にして十メートル弱。勝負は一発だ。 一発が大きい分、当たってしまえば男の勝ち。しかし男の一撃を避けられさえすれば神父の勝ち。 神父の目が細くなる。大丈夫だ。神父は頼りになる男だ。 きっと神父が何とかしてくれる。 「ホワイトスネイク!!!!」『RUUUUOHHHHHHH!!!!』 「降ってこい、流れ星ィィィィ!!!!」 ホワイトスネイクが走り出す、と同時に男の指が神父の方を突く。 タイミングはほぼ同じ。神父の方が若干速かったはずだ。 神父は同時に男の指の直線状から逃れる。 飛来する隕石は、ホワイトスネイクに。 当たらなかった。 『RUUUUUUUUOHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!』 そのまま、ホワイトスネイクのラッシュが男の胸倉に叩き込まれ、勝負あり。 「フフフ」 どう、なってるんだ。 「惜しかったな。もし最初に出会った時の私なら、今ので負けていたさ」 なんで男が立っているんだ。 「誰が、一回の予備動作で呼べるのは星一つと言った?」 なんでホワイトスネイクが膝をついてるんだ。 「そもそも、予備動作が必要なんていつ言った?」 なんでホワイトスネイクの右胸と腹に穴があいてるんだ。 「この勝負、私の勝ちだ」 神父が血を吐いて倒れる、胸と腹に隕石が突き抜けたような跡を残して。 やられたのか、神父が。あのエンリコ・プッチが 「さて、君一人になったな」 俺一人?そんなはずない。 セッコが助けてくれるはずだ。 「モグラ君は放っておけば数分で失血死」 神父だって助けてくれるさ。 「モグラ君のお友達は胸と腹の穴。助かりようもない」 長門がいる、古泉がいる、朝比奈さん、ハルヒ、皆が助けて。 「一人ぼっちじゃ寂しいだろう。すぐに二人の元に送ってやるさ」 星が二度瞬き。 俺の胸、腹を貫いた。 さて、邪魔ものは始末した。 しかし。 「やはり、流れ星をこの手に取る事は出来なかったな」 まぁ、二人と一体じゃあ足りないだろうとは思っていたし、ある意味予定調和だ。 そういえば、あのモグラ君の友人は誰かを帰してきた、と言っていたな。 「という事はそいつらはまだ近くに居るはずだな」 狙うならそいつらだ。 名前は確か……ハルヒ、だったか。 急速に体温が下がっていく。 心臓への直撃は無かったが、肺の下の方が吹っ飛ばされてしまったようだ。 息が苦しい。 もう駄目だ。 こんな事なら、あの時、動かずに待っていればよかった。これが所謂やぶ蛇なんだろうなぁ。 飛び出てきたのは蛇じゃなくて隕石だったがな。 もうこんな皮肉に笑ってる余裕もねぇよ。 「―――――流れ星――――――」 男が何か言っているが、もう耳には入ってこない。意識がもうろうとしてきた。そろそろ俺も終わりか。 今度はもうちょっと平凡に。 「――――ハルヒ―――――」 なんだって? まさかコイツ、俺達だけじゃなくてハルヒまで狙おうっていうのか。 自然と指先に力がこもる。まだ力がこもるなんて自分でも驚きだ。 このキチガイ眼鏡には分からないかもしれないが、あいつは死んじゃならない存在なんだ。 傷口が疼く。触れた夜露の冷たさを打ち消すように急速に熱が回りだす。 脳内を駆け巡る脳内物質、β-エンドルフィン、チロシン、 エンケファリン、バリン、リジン、ロイシン、イソロイシン。 そして浮かび上がる。 涼宮ハルヒを守る、守り抜くための、俺のイメージ。 今、はっきりと分かった。なんで俺がスタンドを使えなかったのかが。 甘えてたのさ、自分の境遇に。 どんな敵が来ようときっと誰かが助けてくれる、心の中でそう思い込んでた。 現に今まで、長門に助けられ、古泉に助けられ、セッコに助けられ、神父に助けられ。 俺は震えて見てるだけで十分。でも、それじゃあいけないんだ。 あいつの事だ、どうせこの先も厄介事に巻き込まれる。 こんな風にスタンド使いが絡んで来る事もあるだろう。 もしも誰もいない状況でハルヒが厄介事に巻き込まれたらどうするんだ? 誰も助けてくれなかったからって諦めるのか?傍に長門やセッコが居なかったからってそいつらを責めるのか? そうじゃない。俺が守りゃあ良いだけの話じゃないか。 気付けば、手放そうとしていた意識は先ほどよりもはっきりとしている。 そうだ。その時にハルヒを災難事から守るのは長門でも、セッコでも、神父でも無い。俺だ。 粉々だったイメージが一点に集まる。小さな粒は頭を作り、握った拳に像が重なる。 身体の奥底からふつふつと力が湧きあがってくる。体中に血と微粒子のように小さなイメージの群が巡る。 隣に膝をつく何者かが腕を突き、立ち上がる。痛みは感じるが、もう傷口は塞がっていた。 別に不思議な事じゃない、これが俺の能力。言葉では言い表せないが、心で理解した。 俺の腕とは違った腕に引かれ、立ち上がる。恐怖は無い。 今俺の心にあるのは覚悟だけだ。 誰の助けも借りられないこの状況から奴に勝たなきゃあ、守れるわけない。 有り体に言えばこれは俺の節目。助けられる側から助ける側への。 こいつを乗り越えなきゃ平穏な生活なんてない。なんてったって世界が崩壊するんだからな。 act14―awaken(目覚め) to be continued… 前の話次の話