約 128,334 件
https://w.atwiki.jp/bc5656/pages/816.html
ノルマさんが入室しました ノルマ- (某大会から一週間後。 ノルマ- (キアシス、雲ヶ丘魔法学院付属の大図書館内 ノルマ- ………。(何冊もの古びた分厚い本を机に広げ、黙々と勉学に励んでいる ノルマ- ………。(パラ、)………。 ノルマ- ………(パラ、(一度めくったページをめくり直し、前に戻る ノルマ- …………、 ノルマ- ………(小さく頭を抱える ノルマ- (駄目です……、全く…頭に入って来ません。 ノルマ- (もう、あんな失敗をする訳には行かないのに……… 流奈さんが入室しました 流奈- (こっそーりノルマの前の席に座る ノルマ- ………(流奈の到来に気付かず、本に目を落としたまま ノルマ- ……… ノルマ- ………(ふぅ、と小さく溜息 流奈- お悩み中ってとこねー…(ノルマに話しかける ノルマ- っっ!(ビクゥッ ノルマ- こ、これは。東城先輩ではありませんか。何時の間にいらしたのでしょうか。優秀な私が気付かぬとは不覚です。(図書館内なので小声で。 流奈- いーのいーの。今来たとこだから。(両肘ついて顎乗せてニコっと返す ノルマ- …そう、ですか。私に何か用事でしょうか。 流奈- ううん、そういうつもりじゃなかったけどー…(ノルマの広げた本を見て 流奈- 随分と勉強熱心じゃない? それだいぶ古い魔術書よね? ノルマ- はい。より優秀な術式を、忘れぬよう完璧に記憶したいと思いまして。 ノルマ- 簡略化された文脈の無い、最も古い魔導書を借りて暗記をしていました。 流奈- うーんっ感心しちゃうぐらい勉強熱心ねえ。 ノルマ- はい。優秀な私ですが、その為に慢心する事はありません。 流奈- うん、そうそう。 流奈- 慢心は敵だからねー。優秀なノルマちゃんらしいわよ。全く。 流奈- んーそれで、 流奈- 何かお悩み中よね? ノルマ- 、………な、何故そう思うのでしょう。 流奈- 見てればわかるわよ。(ニコっと返して ノルマ- そ、そうですか。不思議な技をお持ちですね。東城先輩は。 ノルマ- ………。 ノルマ- …いえ、大したことではありません。優秀な私ですが、己の未熟さを痛感しただけのこと。 流奈- あー、それで猛勉強してるんだ? ノルマ- はい。実践に耐え得る力をもっと身につけなくてはなりません。 流奈- そうなんだ…うん… 流奈- なんだか…もう、ノルマちゃんらしいなぁ… ノルマ- はい。もう足を引っ張る訳には行きませんから。 ノルマ- 、(言った後で無表情で固まる 流奈- はーもう。(固まったノルマちゃんを見て 流奈- もう可愛いなぁ、(席を立ってノルマの頭ぎゅっと抱き ノルマ- っ、 、、、(ぎゅっされて 流奈- 「たぶん彼はそんなに気にしてないわよ。」 流奈- 「あの状況じゃあ仕方ないもんね。」 流奈- 「ほら、彼はそんな貴女も許してくれるわ。」 流奈- でも、だからこそ、よね?(ぎゅっとノルマを抱いて 流奈- 彼に優秀で素晴らしい女だって認めてもらいたいもんね。 流奈- 「気にしてほしい」もんね? 「どんな状況だって」「許してほしくない」もんね? ノルマ- っ、 、、……せ、先輩、…… 流奈- 超優秀な貴女を、彼に認めてもらわなきゃなんないんだもんねー。 流奈- (ノルマの頭なでなでしながら呟く ノルマ- …………、、 ノルマ- はい…、そうです。失敗をいつまでも悔いているようでは駄目なのです。より優秀になる為には… 流奈- うん。 前を向いてかなくちゃね。(頭なでなでし 流奈- (っもー…強い子じゃないの… はーあ、危うく私まで月並みの慰めするとこだったわ。 ノルマ- ……はい。 流奈- (こっちのが厳しい道だってのはわかってるけど、そんな事しなくても許してもらえてるのはわかってるけど、 流奈- ……(ノルマの頭解放して 流奈- 頑張りましょっ!(親指立てて笑顔 ノルマ- …… はい。(流奈の笑顔を見上げて、小さく微笑む 流奈- っふぃー、んじゃ。 流奈- これ以上後輩の邪魔をするのも忍びないし。 私は退散と致しますかー。 ノルマ- ?邪魔と言う事はありませんが。むしろ先輩と話をして、思考が整頓された気がします。 流奈- っもー、ノルマちゃんったら人が良いんだから。 流奈- んじゃ、お勉強。頑張ってね~(手を振りながら 流奈- (その場を後にする ノルマ- はい。(ぺこりと流奈に一礼 流奈さんが退室しました ノルマ- ………。(書物に視線を戻す ノルマ- ………(が、急に詰め込もうとしても、なかなかうまくは行かぬ様子 ノルマ- ………、 ノルマ- ………(この程度の暗記、こなせなければとても優秀とはいえません……、 セドさんが入室しました ノルマ- (黙々と膨大な魔導書の中身をノートに書き写している セド- …(複数の本を重ねて持って大図書館を歩く ノルマ- ………(カリカリカリカリ セド- …(きょろきょろと空き席を探して歩き セド- …(ノルマの向かいの席へと歩み寄り セド- 前、借りるっすよ…(向かいの席に本を置き、一言 ノルマ- っ、 !(声にバッと顔を上げる ノルマ- ……、……セイロン、さん……(眉を下げて向かいを見上げる セド- ノルマさんっすね…(前に座って セド- 邪魔して悪いっすね…前の席借りるっすよ… セド- (そう言って積み上げた本の背表紙を確認していく ノルマ- ……いえ、っ、邪魔などという事は………(言いながら視線をノートに ノルマ- ………、、 セド- … セド- …(手持ちのノートに背表紙のタイトルをメモしていく ノルマ- ………(カリ、 カリ、 (シャーペンの勢いが明らかに遅くなる セド- …(本を並べ替えて背表紙一ページ目の版数をメモしていく ノルマ- ………(パラ、とページを捲る セド- … セド- …(黙々と多数の本をメモしていく ノルマ- ………(カリ、 カリ、 ノルマ- ……………。 ノルマ- ……… ぁ、 の。(蚊の鳴くような声で セド- … セド- 呼んだっすか… ノルマ- ……私、 ノルマ- ……頑張りますから…。(ぽつぽつと、小さな声で呟く ノルマ- ……次は失敗、しないように。……次はもっと、優秀な働きができるように。 ノルマ- ……もっと、頑張りますから……。 セド- … セド- 気にしないでいいっすよ… ノルマ- ……いいえ。 ノルマ- …気にします。このままでは、私が私を認められませんから…。 セド- … セド- いいっすよ。気にしないで… セド- 無茶な状況だったすから… ノルマ- ……いいえ。(繰り返す ノルマ- …気に、します。 ノルマ- ……私は、優秀ですから。 セド- … セド- そうっすね… セド- 次また… セド- いや、多分無いっすけど… セド- 次また何か組む時も… セド- お願いするっすよ… ノルマ- ………っ(俯いたままでも、気持ちの高揚が明らかに伝わる ノルマ- ……… はい。 ノルマ- ……次の機会には、迷惑を掛ける事はしません。 セド- … セド- 気にし…(言いかけて止め セド- … セド- それでは…機会があったらお願いするっすよ… ノルマ- ……きちんと、役に立ってご覧に入れます。 ……、セイロンさん、の。 セド- … セド- …(返事は返せず立ち上がり セド- …(本を重ねて束ねる セド- 邪魔したっすね… ノルマ- …、いえ。(少しだけ顔を上げて セド- …(本を持ち セド- 自分は帰るっすね… ノルマ- ………、(セドを見上げるが、上手く言葉が出てこない ノルマ- ……、は、 はい。 セド- では… セド- (その席へ背を向けて セド- (図書館の外へと歩き去っていく セドさんが退室しました ノルマ- ……、(背を見つめるのみ ノルマ- ……… ノルマ- ………(ノートに視線を移し ノルマ- ………(カリ、(書き写しを再開する ノルマさんが退室しました
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/785.html
……ハイジョン、これは犬ですか? いいえ、これは眼鏡です。 わたしの中のジョンも眼鏡だと言っていた。 わたしも眼鏡だと思う。それ以外の何にも見えないし。 そう、眼鏡。見るからに眼鏡。誰が見ても眼鏡。眼鏡祭りだ。 わっしょい、わっしょい。あはは、うひひ。わっしょい、わっしょい。 ……ちょっと落ち着こう。冷静になろう。とりあえず手に取ってみよう。 ほうほうほほう。こりゃ立派なもんね。レンズの輝きなんて、磨き上げられた宝玉も真っ青。 パッドの可動域はかなり広めに作られてる。 蝶番も九十度以上は余裕だから、小さい人も大きい人もオッケーってわけか。 しっかしこれどういう技術使えばできるんだろう。かなりの熟練職人が練成したんだろうな。 この軽さ。かといって頑丈さを犠牲にしてるわけじゃない。 本来なら両立できないはず二つの柱がでんとそびえているわけよ。すごいね。 無理に両立してるわけじゃなくて、ごく自然にそう作られている。 この屋根を支えるにはこの太さの柱が必要ってな感じで。 そして色。この色。草原の緑と素晴らしいコントラストを描く赤。 使いようによってはかなり下品になっちゃう色なんだけど、これは違う。 炎の赤? 血の赤? 夕陽の赤? 唇の赤? 髪の赤? どれも違う。 フレームに使われた赤は、わたしが見たことのない赤だ。 地面に置かれていたせいで少し土がついていた。息を吐きかけ、ハンカチで拭く。 ああ、きれい。これはきれい。日用品じゃなくて芸術品。見てるだけでうっとりしちゃう。 でもね。 「ミスタ・コルベール」 「なんだね。ミス・ヴァリエール」 「もう一回召喚させてください」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 「眼鏡は使い魔になりません」 「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない」 いやいやいやいや。いくらなんでも眼鏡は無いって。 「彼は……」 口に出してからおかしいことを言ったと気づいたんだろうね。 眼鏡に彼も彼女もないって。 「コホン。その眼鏡は……」 あ、ごまかした。 「ただの眼鏡かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。古今東西、眼鏡を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼には君の使い魔になってもらわなくてはな」 あ、また彼って言った。 「嫌です。伝統がどうこういったってわたしは嫌です」 「だからね」 「わたしは眼鏡なんて嫌です」 「はい」 「なんだね、ミス・タバサ」 「私は眼鏡が好きです」 「君ちょっと黙っててくれないか。頼むから。……ミス・ヴァリエール。眼鏡をそう毛嫌いするもんじゃない」 毛嫌いはしてないけどね。でもねぇ。 「おいおいゼロのルイズが眼鏡召喚したぜ!」 「すごいな、俺たちにゃ到底真似できないぞ!」 ここでどかんと笑いが起きた。 あーあ、自分のことでなけりゃわたしだって笑いたいよ。 でも自分のキャラってもんがあるし、とりあえずマリコルヌ睨んどこう。 「ミスタ・コルベール。やっぱり眼鏡は使い魔になりません。眼鏡は物じゃないですか」 「いやしかし。物といえば、ゴーレムだって物なわけじゃないかね」 なるほど、一理ある。あってもやだけど。 まずいな、このまま言い負かされちゃうと本当に眼鏡使い魔にするはめになる。 そんなことになったら……そんなことになったら……まずい、まずい。まずいって。 「眼鏡はゴーレムじゃありません」 「しかしだね……」 「私は眼鏡なんか嫌です」 「私は眼鏡が好きです」 「ミス・タバサ、少しでいいから黙っていてくれ」
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/725.html
「……私は…公爵家の三女として…生まれたのよ。父様も母様も姉様達だって優秀なメイジなのに… なのに…私はドットですらない…簡単な魔法ひとつまともに使うことができていないわ…!使い魔召喚の儀式ですらまともにできない私はきっとメイジではないのよ…! ……きっとこんな私を父様や母様はヴァリエール家にいることを許さないわ…!」 ルイズの独白をトリッシュはただ黙ってきいていた。ルイズの言葉からは家族に見捨てられることへの恐怖と家族の期待を裏切った自分へのふがいなさを責める気持ちがない交ぜになった悲しい気持ちを十分にトリッシュへ伝えてきた。 それは家族を失ったトリッシュにはもう失ってしまった感情のひとつだった。トリッシュはルイズを慰めるための言葉が見あたららない。 トリッシュは気がつくとベットに腰掛けてルイズの傍らでルイズの頭をなでていた。 ルイズは驚いたようにトリッシュをみたがトリッシュがはじめて見せるやさしい顔をみて、何も言わずされるがままになっていた。 なによりトリッシュになでられていると学院にきて心の休まるときがなかったルイズにかつての心のよりどころであるカトレアを思い出させた。 心地いい気持ちに身をゆだねるようにいつしかルイズはトリッシュの肩に頭を預けた。 「ねぇルイズ…使い魔がちゃんといれば…家族にも見捨てられることはないのかしら?」 「あなた…なにを…いって…」 「例えば…私があなたの使い魔になれば…ルイズ、あなたは馬鹿にされることもなく、家族にも見捨てられることはなくなるんじゃないの?」 『トリッシュ、ソレナラバ私ガルイズノ使い魔ニナッタホウガヨイノデハ?』 「スパイス・ガール…あなたではだめよ。ルイズには『なぜか』見えているようだけれど…他の奴らにはスタンドは見えないわ。それに、ルイズが使い魔として召喚し、契約したは私よ。他の奴らにもわかるように私がルイズの使い魔になるべきなのよ…!」 ルイズは顔を上げトリッシュを見上げた。そこには力強い意思の光を感じるトリッシュの目がじっと自分を見ていた。ルイズはなぜか顔を赤らめてしまった。 「…でも、いいのトリッシュ、私の使い魔になっても…?」 ルイズはとても信じられなかった。なぜなら、トリッシュがここにきてから自分の使い魔になってくれるような要因は何一つ見当たらない。 逆に『ならない』理由なら山ほど見当たったが。 「ルイズ…私は、私の居場所にやがて帰らなくてはならないと思っているわ。…でも、ルイズ…、あなたが私を元の場所に戻すために協力してくれるというのであれば…元の場所に戻るまでの間なら、ルイズ、あなたの使い魔になってもいいわ」 ルイズはこくこくと、肯定の意味を示すように首を振ると、トリッシュはルイズに微笑みながらやさしく頭をなでた。 「さぁルイズ…もう寝ましょう。ずいぶんとたくさん泣いて、疲れたでしょう?ベットに横になりましょう?」 トリッシュはルイズをベットに運び、横にさせた。 「トリッシュ…もう少しだけ…もう少しだけ…頭をなでていてくれないかしら?私が眠るまでの間でいいから…」 ルイズは顔を真っ赤にさせながらトリッシュの服をつかみながら恥ずかしそうに消え入りそうな声でトリッシュに言った。 「…ええ、いいわよ、ルイズ。ゆっくり休みなさい…」 トリッシュはやさしくそういうとルイズの頭を抱きながら、ルイズのふわふわした髪をやさしく、やさしくなで続けた。 5分ほどそうしているとルイズの口からすーすーとかわいらしい寝息が聞こえてきた。 そのルイズを起こさないように、スパイス・ガールが遠慮がちにトリッシュに聞いてきた。 「トリッシュ…ヨイノデスカ?当初ノ予定デハ、ルイズカラ召喚ノ時ノ話ヲ聞イタラ、サッサト他所ヘ移動スルハズデハ…? 使イ魔ナドニナッテ…一刻モ早クイタリアヘ帰ルタメニコウドウスベキデハ…?」 「いいのよ…スパイス・ガール、コルベールに聞いた話ではイタリアに帰るにはかなり苦労しそうだし…何よりルイズをほうっておくことが私にはできないわ…」 トリッシュはそういうともう話は終わりと目を閉じた。 (トリッシュ…アナタハ…ヤサシスギマスヨ…マッタク) 近くでスパイス・ガールのため息が聞こえたような気がしたが、トリッシュは無視してさっさと寝た。 抱きしめた、小さな少女の体温をしっかり感じながら。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/849.html
「フゴ……」 柔らかな朝日が差し込んできて、億泰は目を覚ました。 固い床で寝てすっかり凝り固まった体をボキボキと解しながら、部屋を見渡す。 そして、まだぐっすりと眠っているルイズを見て大きくため息をつく。 「冗談じゃねーよなァー、ったくよー」 そう呟きながら億泰は窓辺へ行き、窓を開け放った。 朝の新鮮な空気と日差しを全身に浴びつつ、昨日の事を思い返す。 「それ、本当なの?」 「あたりめーだろ。 んな事冗談で言ってなんだってーんだよォ~~」 十二畳程の部屋の中で、テーブルを挟んで二人は向かい合っていた。 億泰の手にはルイズから分捕った夜食用のパンが握られている。 「だって、そんな話を信じろっていう方が無理じゃない。 メイジがいない、月が一つしかないだなんて。 ね、アレでしょ?平民のくせに意地張ってるだけなんでしょ?」 「おいおい…『平民』はねーだろう? 既に名乗ったし、初対面の人間に対して『平民』とはよう! 口のきき方知ってんのか?」 「な、何よ!アンタこそ貴族に対する口のきき方知ってるの!? そんなに言うなら証拠見せなさいよ!証拠!」 「うっ……!」 そう言われて億泰は答えに詰まった。 頭の中には証拠になる景色は山ほどある。 しかし、実物として存在している物は一つとして無い。 学ランに財布しかないのだ。 鞄は『鏡』の前に落として来たし、需要が無いので携帯電話も持っていなかった。 しかも財布は補充寸前にトニオさんの所で食ってスッカラカンだ。 簡単に言うと何も無かった。 「ほら、無いんじゃない!」 「ああ、確かにねーよ。 ともかくよー、オレを元の場所に戻してくれよ。 信じてくれなくたっていいからよー」 「うん、それ無理」 その後ルイズに言われた話しは億泰に取って頭を抱えたくなる内容だった。 第一に、異世界を繋ぐ魔法なんて無い。 『サモン・サーヴァント』はこの世界の生き物を使い魔にするために召喚する魔法。 なんで億泰を召喚したのかの原理は解明不能で、 しかも『サモン・サーヴァント』は召喚の一方通行で、 一度召喚に成功すると使い魔が死ぬまで次に使う事はできない。 ルイズ様は偉大。 ルイズ様を崇めよ。 ルイズ様は貧乳ではなく微乳で美乳。 という内容を数十分に渡って言われ、その頃にはパンはすっかり消化されていた。 「とにかく、アンタが私の使い魔をやるって事は依然変わりないわね」 「……仕方ねーな。 他に帰る方法が見つかるまでやってやるぜ、『使い魔』。 で、使い魔って何すりゃーいーんだよォ~~?」 億泰としても帰る方法を知らず、しかも無いとまで言われ、 衣食住のアテも無いとくれば拒否する選択肢は無かった。 他の頭の良い連中なら逃げても生きれるかもしれないが、 自分はそこまで要領がよくないと自覚していたからである。 「まずは使い魔には目となり耳となる能力が与えられるの。 ……けど、私達には無理みたいね。何も見えないもの。 後は、秘薬とか主人の必要とする物の探索とか、 一番重要な主人の身を守る事なんだけど…… アンタじゃ無理ね、きっと。間違いなく」 オツム足りなさそうだし、とわざわざ最後に付け足された。 流石にこの時はカチンと来たので、『ザ・ハンド』の事を隠したのだった。 「んで、床で毛布に包まって寝かされて、 キャミソールとぱ、ぱぱパンティー投げつけられて……」 そう言って毛布と一緒に床に転がっているルイズの下着に目を向ける。 思いっきり転がされてると気分が風船のように萎んでいくのがよく分かった。 「めんどくせェー」 下着を持ち上げると放り投げ、『ザ・ハンド』の右手で握りつぶす。 ガオンッという小気味の良い音と共に下着はこの世から永遠に削り取られた。 仗助や兄貴に『恐ろしい能力』とまでいわれたスタンドをこんな事に使う辺りが億泰たる所以かもしれない。 それを見て満足そうに鼻で笑うと、ルイズのベッドに近づいていった。 「オラ! さっさと起きやがれダボがッ!」 思いっきりベッドを蹴り飛ばす! 衝撃に勢いよく揺れるベッドに、ルイズは寝ぼけ眼で飛び上がった。 「ふぁや!? な、なななに!?地震!?」 「朝なんでよォー、とっとと起きやがれおじょーさま」 「はうぇ?ああ、そう、朝。 で……あんた誰?」 「忘れてんじゃねーよ。 てめーが使い魔にしたんだろォ?」 寝ぼけ眼のルイズの顔を見て、こいつこの年でボケてんのかと億泰は思った。 「あ、あー。 オクヤスねオクヤス。召喚したんだっけ」 目をこすりながら起き上がると、ルイズは億泰に命令する。 「服」 椅子に掛けてあった制服をルイズへ放り投げる。 ネグリジェを脱ごうとしているのを見てつい背を向けた。 いくらペタンのルイズとはいえ、流石に直視するには免疫が足りていないのだ。 「下着」 「んな!?」 「そこのー、クローゼットのー、一番下ー」 寝ぼけ声で言われてムショーにムカついてきたが、 我慢して下着を適当に掴んで放り投げる。 「服」 クローゼットの上の段に有った予備の制服を投げてやる。 「……これ、なんのつもり?」 「服っつったじゃあねーか」 「違うでしょ!?着せてって言ってるのよ! 平民のあんたは知らないでしょうけど、召使が居たら自分でなんて着ないの」 「おめーは自分の事くらい自分でできねーのかよ」 「文句言うなら、朝ごはん抜き。 ほら、早くしなさいよ。朝ごはんに遅れるでしょ?」 そう言われるのとほぼ同時に、億泰の腹が鳴った。 「き…きたねーぞ」 そう愚痴りながら制服を手に取るしかない億泰を見て、 ルイズはふふんと満足そうに笑う。 そして、今日一日でキッチリと上下関係を叩き込むべく、 昨晩のうちに仕込だ『アレ』に億泰が引っかかる瞬間を想像し、 更に浮かび上がってくる笑みを噛み殺していた。 「ほへ~~~ こいつが食堂~~っ……!?」 学年別に並べられた豪華な飾りつけのされた長テーブル三列に、 ローソクや花、そして果物の盛られた籠が載っている。 食事の内容も丸のままの鳥のローストに、魚の形のパイ、 そしてワインまで並べられている。 「っつーか朝飯にしちゃー豪華すぎねェ~~~? しかもトニオさんのにゃ及びそーにねーがァー、 ヨダレずびっ!は間違いなさそーだぜぇ~~!」 わかりやすい位に喜ぶ億泰を見てルイズは最高にハイになっていた。 席についたルイズの隣にウヒョルンと座ろうとするのを手で制す。 そして親指立てて億泰へ向け、クルリと下に向ける。 貴族がやるにはあまりに下品だが、他の誰にも見られなければ問題ない。 「アンタのは、これ」 その先には皿が一枚。それも床の上に。 肉のかけらが虫眼鏡で見れば分かるほどの大きさで浮いているスープ。 その端に硬そうなパンが二切れだけ。 昨晩のうちに厨房に命令しといたメニューだ。 「なんじゃあこりゃあ~~? おめーはオレに食いてーもん食わせねーっつゥのかよー!」 億泰は思わず皿を持ち上げて中身を指差しながらルイズに抗議した。 その様にルイズはザマミロ&スカッと爽やかの笑みを浮かべる。 「あのね?使い魔はほんとは外。 アンタは私の特別な計らいで、床。 それに食べたい物食べさせたりしたらクセになるじゃない」 「アホ言ってんじゃね~~! オレは外に行くゼ! 草むらにでも座りながら食った方がマシだァー! クソッ!どーせお前らが食い終わる方がず~~ッと後だから問題ねーよな!」 「え、あ、ちょ!ちょっと!?」 チクショー!と言いながらそそくさと皿を掴んで億泰は出て行ってしまう。 予想外の行動をされて、ルイズは慌てて呂律が回らなかった。 その姿が廊下に消えた辺りで、ようやく悪態をつく。 「何よ、つまんない。 思い切り見せつけながら食べてあげようと思ってたのに。 っていけないいけない……今朝もささやかな……っと」 そう呟き、周囲がお祈りを始めているのを見て慌ててルイズもお祈りに参加する。 そこに有った果物の籠の中身が大幅に減っているのにも気づかずに。 「はぁ~~ったく。 毎度毎度こんな手は使ってらんねーよなァー、流石にィ」 外に出て建物に寄りかかりながら億泰は硬いパンをスープで流し込む。 そうして手にした果物を齧りだした。 食堂から出る寸前、『ザ・ハンド』で空間を『削り』幾つかの果物を 『瞬間移動』させて持ってきたのだ。 出る辺りで食前の祈りが始まったらしく、誰も注意を払っていなかったのが幸いした。 「それに肉とかも欲しかったんだけどなァ~~ タンパクとか脂肪とかよぉ~~」 次からは一際スットロそうだったあいつからパクるかのォ~~~ と、昨日一番ハイテンションにルイズをバカにしていたメイジの顔を思い出してそう呟いた。 「ぶぇっくしょぉい!」 同時刻、マリコルヌは派手にくしゃみをしてしまい、 正面に座っていたタバサに『エア・ハンマー』で吹っ飛ばされていた。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/297.html
「アンタは平民で使い魔、私は貴族で主人。以上」 場所をルイズの部屋に移し、椅子に座り、足をくみ、言った言葉がこれだった。 だがそれで分かったことは何ひとつ無く、 主人という新たな単語が形兆の心の中にある『分からない事メモ』に追加されただけだった。 「ここは何処なんだ?」 続けて最初にしたのと同じ質問をする。 「トリステイン魔法学院よ」 これで分かるでしょ?といわんばかりの態度、もちろん有名なので大抵の人はこれで分かるのだが、 「つまり何処なんだ?」 形兆には分かるはずもなかった。 「知らないの?あんた何処の平民よ?」 「平民?何だそれは?さっきの貴族とか言う言葉と関係があるのか?」 「そうよ、ってそんなことも知らないの?あんたって相当頭悪いのね」 いつもなら弟の方が言われる事を言われ、少しヘコむ。が、すぐに気を取り直して質問を続ける。 「平民と貴族の違いは何だ?」 「魔法を使えるのが貴族で、そうじゃないのが平民よ、例外もあるけどね」 「魔法だと?」 「そうよ」 ルイズは子供でも知っているような常識すら知らない使い魔の頭の悪さに…… 形兆は自分の心のメモと質問の答えを合わせ、自分の立場を理解し始めて…… 頭痛を起こした。 する方とされる方、両方が頭痛を起こしながら続いた質問を終え、 形兆は一つの『決断』をした。 自分の状況をルイズに話す、という決断を。 そして話し終わった時のルイズの反応は 「ふーん」 という冷たいものだった。 予想外の反応に驚きながらも話を続ける 「元の世界に帰る方法に心当たりは?」 「知らないわよそんなの」 「知らないだと?じゃあどうやっておれを召喚した?」 「サモン・サーヴァントでよ」 「それでおれを帰すことはできないのか?」 「無理よ、そんなの、召喚するだけだもの」 「それでも試す価値はある」 「サモン・サーヴァントはね、使い魔がいるうちは使えないの」 「つまりこういうことか?『おれが死ななきゃ使えない』」 「Exactly(そのとおりでございます) 」 このようなやり取りが続いていき、会話が終わる頃にはルイズが普段ならもう寝ている時間になっていた。 肝心の形兆がこれからどうするか、というところでは 「アンタは使い魔なんだから私に尽くしなさい」 といって聞かなかった。 形兆も使い魔にならなければ衣食住の世話をしない、ということで、渋々ながらも使い魔になることで落ち着いた。 もっとも、このやり取りだけで二時間を消費していたのだが。 そして寝るためにルイズが服を脱ぐ、正々堂々と隠しもしないで、 「おれに見られて恥ずかしくないのか?」 と形兆が言っても 「は?何で?アンタ使い魔でしょ?」 という言葉だけで着替えを続けるルイズ。 『自分には人権がない』 形兆はそれを心のメモに付け加えた。メモするのはこれが今日最後になることを祈りながら。 そして人権が無いということからルイズの次の言葉を予想する。 「アンタは床で寝なさい。毛布くらいは恵んであげるわよ」 予想どおりは気分が悪かった。 「あと、これ洗濯しときなさい」 そういって投げてよこされる衣服。 形兆のやることは掃除、洗濯、雑用といわれていたのでこれも予想どおりだった。 寝る前に洗濯道具の場所を聞こう、そう思いルイズの方を見たが、すでに寝ていた。 仕方なく形兆は床に横になり毛布を被って、状況を整理してみた。 ・ここは異世界 (月も二つあったしおそらく確定) ・スタンド攻撃の可能性はおそらく無い (こんな回りくどいことをする必要が無いから) ・魔法がある (頼んでもルイズは見せてくれなかったが) ・自分の生死も不明 (生きている気はするのだが…) ・自分のスタンドは無い (一度死んだから?)(死んでいるから?)(それ以外ということも?) ・元の世界に帰る方法もない (分からないだけであって欲しい) ・自分は使い魔で主人はルイズ (イヤだが仕方が無い) こんなところだろうか。 整理してみて自分の状況がヤバイことを再確認する。 せめて下四つの内一つでも何とかなれば大分楽になるのだろうが、今はどうしようもない。 とりあえず明日は洗濯のためにも晴れることを願いながら、形兆は眠りについた。 To Be Continued ↓↓
https://w.atwiki.jp/afkarenakouryaku/pages/140.html
目次 スペック フレーバーテキスト 必要な素材 これを素材として使用する戦利品 装備する英雄一覧 関連ページ スペック 共用 古い鏃 HP 32.18万 防御 13,700 クリティカル率 8% 命中 10 フレーバーテキスト 収蔵する価値の無い骨董品。 必要な素材 狩猟コイン200枚 これを素材として使用する戦利品 骨の鏃 装備する英雄一覧 関連ページ 神の狩猟場の戦利品一覧
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2453.html
S.H.I.Tな使い魔-01 S.H.I.Tな使い魔-02 S.H.I.Tな使い魔-03 S.H.I.Tな使い魔-04 S.H.I.Tな使い魔-05 S.H.I.Tな使い魔-06 S.H.I.Tな使い魔-07 S.H.I.Tな使い魔-08 S.H.I.Tな使い魔-09 S.H.I.Tな使い魔-10 S.H.I.Tな使い魔-11 S.H.I.Tな使い魔-12 S.H.I.Tな使い魔-13 S.H.I.Tな使い魔-14 S.H.I.Tな使い魔-15 S.H.I.Tな使い魔-16 S.H.I.Tな使い魔-17 S.H.I.Tな使い魔-18 S.H.I.Tな使い魔-19 S.H.I.Tな使い魔-20 幕間1 S.H.I.Tな使い魔-21 S.H.I.Tな使い魔-22 S.H.I.Tな使い魔-23 S.H.I.Tな使い魔-24 S.H.I.Tな使い魔-25 S.H.I.Tな使い魔-26 S.H.I.Tな使い魔-27 S.H.I.Tな使い魔-28 S.H.I.Tな使い魔-29 S.H.I.Tな使い魔-30 S.H.I.Tな使い魔-31 S.H.I.Tな使い魔-32
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1967.html
「魔法…って!ジョ、ジョルノさん、いえジョルノ様って貴族の方だったんですか!? そうとは知らず無礼な真似をして申し訳ございませんっ。」 「いや、貴族であるかないかと聞かれたら僕は貴族ではありません。 説明しにくいのですがこれは魔法ではなく……」 どう理解できるように説明すればいいか考えているとさらなる訪問者が。 「朝から騒がしいわよ、あなた達。」 部屋を覗き込んだトカゲの風貌をしたモンスターを従えるその女はキュルケという名。どうやら彼女にも僕のG・Eは見えていないようだ。 ではこの生物はどう説明できる?スタンドでは無いとすると…しかし大柄なトカゲと言い切るには尻尾の先に灯る炎が余計だ。 絵本や漫画で見るようなファンタジックなモンスターが目の前にいる。 G・Eで確認すると確かに生物としての器官や骨格を持っていることが分かる。 どうにもスタンド能力としては説明できない結果。 「へぇ、改めて見るけどなかなか整った顔をしてるわねぇ、貴方。」 なんだこの女。僕の嫌いなタイプだ。 「で・も。やっぱりアタシのフレイムの方がよっぽど使い魔として使えそうよね。 平民の使い魔なんかで役に立つことなんてあるのかしら?身の回りのお世話 意・外・に。 まぁルイズにはお似合いだけど。」 やはりこのトカゲは彼女達に“見えて”いる。 「何よ、ジョルノには物を生きも…もがもが」 ふぅ、あぶない。すんでのところで口を塞ぐことが出来た。 スタンド能力を不特定多数に知られるということは弱点を作ることに繋がる。 「ご主人様に向かって何をしてるのよ、この、馬鹿犬!」 「痛ッ!」 容赦なく向う脛を蹴り飛ばされる。酷い女だ。 「へぇ、ジョルノって言うんだ。またね、ジョルノ。」 「は、はぁ…」 キュルケという女はそのまま階段の方へと向かっていったようだ。 朝食、の時間か。そういえば昨日から何も食べていないな。 故郷ネアポリスに帰ってピッツァが食べたいな……シンプルなマルガリータを… 「あ、仕事に遅れちゃいますのでこれで失礼します、では。」 シエスタも続けて去っていった。 「ッ!何をしているんだ君はッ!?」 「何って着替えよ、着替え。あなたが着替えさせてくれないから仕方なく自分で着替えてるんでしょう。」 問題はそこじゃない、僕は一応男なんだ。その目の前でいきなり裸になる女性がいるかッ? 「別に使い魔に見られたって何も恥ずかしくは無いわ。」 ああもうッ!こいつと話していると神経が磨り減る。 バタンッと扉を閉めて廊下に出て待ってみたが、別に待つ必要も無いことに気づいたので勝手にあちこちを見て回ることにした。 G・Eを出現させたまま廊下で人とすれ違ってみるがやはり何の反応も無い。 拳を顔の前で寸止めさせても不自然な瞬きさえしない。 やはり…スタンド能力として片付けられないものなのだろうか。 ふと上着の中に何か物体の感触があることに気づく。 そうだ、携帯電話を持っていたんだった。 その方面に仕事を持つファミリー員から送られた、試作機ではあるがGPSによる位置情報確認も出来る代物だ。 最近公的利用に向けた衛星を使ったサービスの実用化が進められているという話。 そのテスターとして作られたこの携帯ならば、今いる場所がどこなのか容易に分かるはずだ。 「…おかしいな、地図のどこにも表示されないぞ…?」 ひょっとしたら電波が不安定なのかもしれない。 中庭に出てみれば少しはマシになるか? ここに来て幾度と聞いた使い魔、魔法、貴族といったふざけた単語。 そのせいでスタンドとスタンド使いの概念を他所へ一時保管して置かざるを得なかった僕の頭。 多数生まれたあらゆる疑問は中庭に出て一瞬で吹き飛んだ。 ようやく上り始めた太陽と空に淡く残る月。 この目は異常を来たしていない筈だが月は確かに二つに見える。 携帯の画面にはやはり自分の現在地は表示されていない。 ともすれば。 僕は、紛れもなく異世界に迷い込んだ訳だ。 使い魔、魔法、貴族。 その言葉は新興宗教故に拾ってきた言葉ではない。 この“世界”に在るべくしてある言葉だったのだ。 「何を空なんて見上げているのよ。珍しいものでも無いでしょうに。」 いつのまにか傍にルイズが到着していた。 ───── ────────── ──────────────────── 「ふ~ん。月が一つで、貴族と平民という概念が無ければ魔法さえ存在しない世界、ね… 面白い作り話ね。小説にすればどこかの偏屈な人間なら買っていってくれるんじゃない?」 まぁ想像通りの返答か。いや仕方ないさ、逆に彼女が一人で僕の世界に迷い込んでしまったとしたら、 誰も彼女の言う話など本気にする訳が無い。 「大体ね。あなた、あんな凄い魔法が使えるじゃない。何故隠そうとするのか理解できないけど。 でもあなたの世界には魔法なんて存在しないなんて言っておきながらいきなり矛盾してるじゃない。」 ここでルイズにスタンドの詳細を教えた方がいいのだろうか。 いや、ここが異世界であるとしても敵がいないという訳ではない。 スタンド使いだけが脅威ではない。使い魔と呼ばれるモンスター達を見れば分かる。 そしてスタンド能力を魔法と呼ばれた、ということはスタンド能力に近い何か、がこの世界にはある。 そう考えればここは黙っていた方がいいだろう。 「それにしてもさっきの魔法、一体どの系統に属するのかしら。 召喚……とはまた違った感じよね。物質自体が変化してたんだから。それにしても謎よね…」 「そんなことよりも。何故僕は床の上で食事しなければならないのです?」 「あなたは貴族じゃないから。 魔法が使える=貴族って訳じゃないし、それに自分でもそう言っていたでしょう? 平民が貴族と一緒に椅子に座って食事するなんてあり得ないことよ。 あなたは私の使い魔だから特別に床の上で食べさせてあげてるの。それが嫌なら──」 指差す方向は中庭。見れば使い魔達が揃って餌を食べている。 僕はアレと同類、ッて訳ね…… 「はぁ…大体、使い魔の能力の凄さは主人の能力の凄さってことの証明になるのに…… なんで隠したがるのかしら…ブツブツ…… むしろ無理やりにでもさっさと披露しちゃうのがいいわね…ブツブツ……」 となんだか厄介な事を言い出したが、ここは無視しておこう。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/868.html
昼食が終わり、トリッシュは一人中庭で椅子に座り紅茶を啜っていた。マリコルヌは今はいない。 モンモランシーと一緒に部屋に引き篭もるギーシュを呼びに行った為だ。 昼からの授業はなく、呼び出されたばかりの使い魔たちと親睦を深める時間に当てられている。 これもメイジとしての教育の一端なのだろう。 周りを見ると、猫のような植物に何かで打ち抜かれる者、溶かされて消えていく主人を笑う人型の生物、 ラジコン型の使い魔と追いかけっこをする者、背中を剥がされ死んでいく者など、午後の暖かな日差しが射す中庭で それぞれが使い魔たちと楽しそうに遊んでいる。 「トリッシュ、お待たせ」 「や、やあ。コンニチワ」 マリコルヌとややぎこちないギーシュが手を振りながらトリッシュの座るテーブルへとやってきた。 目の前に座ったギーシュの頬が真っ赤に腫れていることにトリッシュは気付きなんとなく聞いてみた。 「アンタ、なんで顔が腫れてんの?」 「ああ…これはだね……」 ギーシュは言い辛そうに口をモゴモゴと動かす。実際に喋り辛そうだが理由は他にあるようだ。 それに一緒に迎えに行ったはずのモンモランシーがいないことにトリッシュは気付いた。 「二股がバレたんでモンモランシーと、もう一人の子に殴られたんだよ」 「マ、マリコルヌ!アレは違うんだよ!そう!ケティが勝手に勘違いして……」 マリコルヌが代わりに答え、ギーシュがしどろもどろに言い訳する。 「サイテー。人間のクズだわ」 冷ややかな視線と共にトリッシュは冷たく言い放ち、それを聞いたギーシュは崩れるようにテーブルに突っ伏し、 ブツブツと何かを囁く。良く見ると肩を震わせ泣いているようだ。 「僕の…見せ場が……フラグが…………うう…」 トリッシュとマリコルヌは余りに哀れなその姿を見て、ギーシュをそっとしておいた。 「申し訳ございません!」 少し離れた席で黒髪のメイドが桃髪の少女に謝っていた。 「またあの桃髪か…怒られてるメイドってシェスタ?って人じゃないの?」 「シエスタだよ。いい加減に人の名前覚えようよ。ちなみに怒ってるほうがルイズね」 マリコルヌのツッコミを無視して、トリッシュは怒鳴り散らすルイズと謝り続けるシエスタを見る。 シエスタがなにをしたかは知らないが、ルイズの叱責は段々とエスカレートしていった。 それを見かねたルイズの使い魔(名前はマリコルヌも知らない)が二人の間に入って止めようとするも 股間を蹴られて撃沈する。 「あの使い魔もアンタも!貴族に対する礼儀ってものを知らないようね!!」 「申し訳ございません!何卒お許しを!」 ルイズは“生意気にも貴族と同じ席についてた!”や“私を無視した!”など、叱責の殆どがシエスタではなく 誰かの使い魔に対するものだった。要するに八つ当たりでシエスタがイジメられているのだと、トリッシュは理解した。 「アンタ、風邪っぴきと親しいみたいだけど色目でも使ったの?」 「そのようなことは……ございません」 「本当に~?そうねアンタの髪ってカラスみたいな汚らしい色してるもの。出来る訳ないわよね」 ルイズが言った言葉に、頭を下げて怯えていたシエスタの顔に怒りとも悔しさともとれる表情が現れた。 漸く怒りが収まったのかルイズはシエスタの表情に気付かずに、自慢とする桃色がかかった金髪を掻き揚げて 跪いたシエスタを見下ろし立ち去ろうとする。 しかし、ルイズの行く手に一人のメイドが立ち塞がった。 「アンタ、ちょっと待ちなさいよ」 今まで様子を見ていたトリッシュだった。 目の前に立ち塞がったトリッシュを見るもそれを無視してルイズは、股間を押さえ悶絶している使い魔を 蹴飛ばして起こすと今度その使い魔を罵倒し始めた。 「アンタ聞いてんの?」 トリッシュが問いかけるが、ルイズは無視して言い訳する使い魔の股間に蹴りを入れ、またも悶絶させる。 ルイズの肩を掴んで振り向かせよう手を伸ばすと、シエスタがトリッシュの手にしがみつき、 懇願する眼でトリッシュを抑える。 「シエスタ。アンタあの女になにやったの?」 「え…?、その、紅茶を……」 トリッシュがテーブルを見る。テーブルにはケーキとティーカップが置かれ、ティーカップから僅かだが 紅茶が零れていた。これをルイズは怒ったのだろう。 「判ったわ。アンタは離れてて」 困惑するシエスタを引き離しトリッシュはティーカップを手に取ると、使い魔を罵倒するルイズの頭に向けて、 その中身をブチ撒けた。 「うきゃ!あちちちち!!ちょっといきなりなにするのよ!!ヤケドしたら如何するつもり!!!」 「ワザとやったんじゃね~わ。寛大なお貴族様なら許してくれるでしょ?」 いきなり紅茶をかけられたルイズは当然のように怒るが、トリッシュは悪気がなさそうな顔で言い訳をする。 その顔を見て更にルイズは怒り出した。 「アアア、アンタ、貴族に対する、れれ、礼儀ってモノを、しし知らないようね」 「知ったことじゃね~わよ。なんで私がアンタに『敬意』を払わなきゃいけね~わけ?」 沸騰したヤカンのように顔を真っ赤にしたルイズがトリッシュを睨む。トリッシュもその視線を真っ向から受け止める。 「れれ礼儀を知らないって言うなら、わわ私が教えてあげるわ!けけけ決闘よ!!」 「ちょ!ちょっと待ってくれ!」 今まで傍観していたマリコルヌがルイズを止めるが、時、既に遅くルイズは『ヴェストリの広場』で待つと 言い残し足早に立ち去り、その後を回復した使い魔が追いかけていった。 「マズイよトリッシュ!いくらルイズが『ゼロ』って言ってもメイジなんだ!僕も一緒に謝るから許してもらおうよ!」 必死に説得するマリコルヌを見てトリッシュは首を振る。 「だったら、僕が決闘するよ!使い魔の不始末は主人の不始末でもあるんだ!」 今度は自分が戦うと言い出したマリコルヌの肩に手を置いて、トリッシュは澄んだ瞳で見つめる。 「それはできないわ。私が売ったケンカなんだから」 尚も食い下がるマリコルヌを放って、トリッシュはシエスタに向き直る。シエスタは怯えた表情を見せ、 マリコルヌと同じくトリッシュを止めようと口を開きかけるが、トリッシュはそんなシエスタに微笑みかけ、 それを見たシエスタは思わず口を閉ざしてしまった。 「シエスタ。お願いがあるんだけど」 「は、はひ?あ…なんでしょうか?!」 「着替えとお風呂を用意しておいて」 そう言って困惑するシエスタとマリコルヌを残して、トリッシュはルイズの待つ『ヴェストリの広場』に向かった。 「どうしよどうしよ……ギーシュ!君も止めてよ!!」 未だにテーブルに突っ伏したギーシュに頼むも、心ここに在らずと言った感じで何かを囁いていた。 「ふふふ…香水の壜さ…これを拾えば……フラグが……うう…」 妄想に耽るギーシュをそっとしておいて、マリコルヌはトリッシュの後を追いかけていった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1222.html
ドドドドドドドドドドドドドドドド………… ルイズはギーシュを睨みつけていた。 正直最初はブラック・サバスを連れ出してさっさとこの場から離れようと思っていた。 しかしギーシュから『侮辱』を受ける少女が、悔しさで肩を震わせ涙を流すのを見たとき 自分の頭の中で何かがプッツンした。 ギーシュとメイドと野次馬たちの視線が自分に集まる。 ブラック・サバスは……テーブルの上のデザートを見つめていた。おい、誰のせいでこうなったと思ってんだ。 ギーシュは芝居がかった仕草でルイズの方を向いた。 「侮辱?ミス・ヴァリエール、君には関係ないことだと思うんだけど?」 「関係あるわよ、同じ貴族としてね。もともと悪いのはあんたでしょ。それを他人のせいに……しかも相手が平民だからって馬鹿にして。 貴族にはあるまじき行為よ。あんたは貴族と平民の両方の誇りを傷つけてんの!」 「なるほど、ミス・ヴァリエール。『ゼロ』の君は平民の心がよく分かるらしい」 ギーシュのその言葉に回りからドッと笑い声が上がる。 ルイズはそれら全てを無視し続けた。 「それにあんたは私の使い魔も侮辱した」 「使い魔?…………それってコレのことかい?」 ギーシュがコレと言って指差した先で、ブラック・サバスはデザートのケーキを口の中に放り込んでいた。 「……………………そうよ」 自分の使い魔と紹介したことをちょっと後悔しつつルイズは答えた。後でオシオキね………。 「君の使い魔は召喚したと同時に死んでしまったという噂だったんだけど…… しかしメイジの実力を見るには使い魔を見ろとはよく言ったものだね この素行の悪さなんか君にそっくりじゃないか」 ギーシュの嫌味たっぷりの言葉にまたもや回りのギャラリーから笑い声が生まれる。 ルイズは悔しさを顔に出さないが、両手をグッと握り締めた。隣で泣いているメイドも嘲笑された時同じ気持ちだったのだろう。 味方がひとりもいない中、嘲笑の的にされる気持ちは誰よりも分かる。 ルイズが何か言い返そうと口を開きかけた…………が、先に口を開いたのはブラック・サバスだった。 そしてその口から出てきたケーキは、ギーシュの顔面をクリームだらけにした。 本日二度目のザ・ワールド!皆がクリームまみれのギーシュを見て唖然としている。 …………この世界で最初に動いたのはルイズだった。 「…………フ…………フフフ………」 何をやっているのだ自分の使い魔は? いきなり私を襲ってくるし、分けわかんないことをオウムみたいに繰り返すし 洗濯物食べてどこか消えるし、授業でないし、片付け手伝わないし、揉め事を大きくしてるし……でも 「フフフフフフ…………フハフハフハハハハハ!」 でも、今のは最高だったわ!最高に「ハイ!」って奴だわアアアアアア! 「アハハハハハハハハハハハハ!」 ルイズは腹を抱えて笑っていた。こんなに心の底から笑ったのは久しぶりだった。 おかげでギーシュが自分たちに決闘を申し込んだのを聞きそびれるところだった。 ばか笑いを上げるルイズをほっといて、ギーシュは他の生徒を連れて先に広場に向かって行った。 食堂に残っているのは、3人のメイジと1人のメイドと1匹の使い魔。 ルイズは一応ブラック・サバスに文句のひとつでも言おうと、笑いを抑えるのに必死だった。 シエスタは展開についていけず、ただ涙を止めようと必死だった。 ブラック・サバスはボーっとしていた。 タバサは食後の読書タイムだった。 そしてキュルケは機嫌の悪そうな顔でルイズの方に近づいてきた。 「ちょっとルイズ!説明しなさい!その使い魔は死んだんじゃなかったの!?」 キュルケがルイズに詰め寄る。ルイズは笑いを抑えるために一度大きく深呼吸してから答えた。 「あぁ…………ごめん」 「え?」 意外な返事にキュルケは言葉に詰まってしまう。 「あんたが私の使い魔のことで考えてくれてたのは分かってたけど、こっちも色々あって説明するヒマがなかったのよ」 「あら~?えらく素直じゃない?」 皮肉たっぷりに答える。 「どーせこの後決闘のやじ馬するんでしょ?辛気臭い顔で見られてたら勝てるものも勝てなくなるのよ」 キュルケの方を一切見ずに言う。 言われたキュルケは思わずポカンとした顔をしてしまう。が、しばらくしてプッと噴いた。 「何よ」 「別に…でもあんたの使い魔なかなかやるじゃない。今のはなかなか傑作だったわよ」 そう言ってニヤリと笑うキュルケに釣られて、思わずルイズも再び笑いそうになってしまう。ヤバイつぼだ。 「申し訳ありません!私なんかの為に大変なことになってしまって!」 シエスタがペコペコと頭を下げて会話に入ってきた。その顔はまさに顔面蒼白である。 「勘違いしないであんたの為に戦うわけじゃないんだから。大体あんたは何も悪くないじゃない。 ギーシュが二股して、私が文句言って、こいつが話をややこしくした。だから決闘を申し込まれた。あんたの為に決闘するんじゃないのよ。 だから…………そうね。あんたが侮辱された分は、私がギーシュを倒してあんたに謝りに来させるから、それでいい?」 ルイズは事も無げにそう答える。 「そんな!謝罪なんてけっこうです!本当にいいんです!ミス・ヴァリール!そのお心遣いだけで十分です!決闘なんて危険です!」 シエスタは数時間前のブラック・サバスの虚弱性を見ていた。 それに自分を助けてくれたこの貴族は、確か『ゼロ』のルイズ……魔法の使えないメイジ……勝てるわけ無い。 再び泣きそうな勢いでルイズに話しかけるシエスタの肩に、キュルケの手がそっと置かれた。 「貴族が決闘を申し込んだ以上、それを取りやめることはできないのよ。それに大丈夫。今は昔と違って命のやり取りをするわけじゃないんだから。それに…」 話を途中で止めたことにシエスタは訝しげにキュルケを見たが、キュルケは気にすることなく話題を変えた。 「でヴァリエール?あれだけ啖呵を切ったんだから、もちろん勝算…あるんでしょうね?」 「勝算ね」 ギーシュ・ド・グラモン 。『青銅』のギーシュ。土系統のドットメイジ。派手好きでキザでナルシスト。 決闘には錬金で作る青銅のゴーレムを使ってくるだろう。たしか5,6体は同時に作ることができたはず……… それに対して私の使える魔法は爆発のみ…はたしてゴーレムに対して効くかどうか? ふと、ブラック・サバスの方を見てみる。なにやら今度は窓から外を眺めているようだ。 ルイズもその視線を追ってみる、この時間帯にしてはかなり暗い。 どうやらあんなに昼間は晴れていたのに、いつの間にか雲が出て二つの月を隠してしまっているみたいだ。 そこまで考えてルイズは力強く答えた。 「あるわよ」 「今の間はなによ…」 キュルケが苦笑しながらつっこみを入れるが、ルイズの自信満々の様子は変わらなかった。 「ブラック・サバス!」 名前を呼ばれた使い魔はルイズの方へゆっくりと向きを変えた。 「今度は私の言うこと聞きなさいよ」 ブラック・サバスは答えなかった。ただ首を縦に振っただけだった。 「分かったなら、返事しなさい」 そう言いながらもルイズは満足そうに笑っていた。 シエスタは不思議だった。『ゼロ』のルイズと、シエスタよりも貧弱な使い魔。決闘をするというには絶望的なコンビ。 しかし彼女たちからは不思議な安心感を感じる。 今までシエスタが出会ってきた、どの貴族たちとも違っていた。爽やかささえ感じていた。 「行くわよ」 そう言って歩き出したルイズの後を、ブラック・サバスと呼ばれた使い魔はまるで影のようについていった。 To Be Continued 。。。。?