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「銀魂」より坂田銀時 侍の使い魔-1 第一訓 「ツンデレに悪い子はいない」 侍の使い魔-2 第二訓 「クロスオーバー物って大抵がラブコメ」 侍の使い魔-3 第三訓 「巨乳って頭悪いって言うけど漫画はそうでもないね」 侍の使い魔-4 第四訓 「メイドはやっぱしドジっ子」 侍の使い魔-5 第五訓 「ろくな出会い方をしてない人に限って後々仲良くなったりする」 侍の使い魔-6 第六訓 「人を見かけで判断するな中身を見ろ中身を」 侍の使い魔-7 第七訓 「飯作る人間と仲良くしといて損はない」 侍の使い魔-8 第八訓 「添え膳食わぬは男の恥というが食ったら恥どころかではすまない場合が多い」 侍の使い魔-9 第九訓 「高けりゃいいもんじゃないが安くても良い訳じゃないってのは大概買ってから気づく」 侍の使い魔-10第十訓 「嫌だと思ったときはまよわずNOと言え」 侍の使い魔-11第十一訓「たまには面倒事から逃げられない時もあるがそれはもうふんばるしかない 」 侍の使い魔-12第十二訓「真実って奴は案外拍子抜けするほど近くにある 」 侍の使い魔-13第十三訓「勝って兜の緒を締めろ 」 侍の使い魔-14第十四訓「人の縁はめぐりめぐるけどそれがいいものになるとは限らない 」 侍の使い魔-15第十五訓「アニメ化、ゲーム化しても原作のお気に入りのキャラが出るとは限らない」 侍の使い魔-16第十六訓「偉い人は常識とか足がかざりとかがわからない」
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前ページ次ページ侍の使い魔 坂田銀時の気分は最悪だった。 あの後朝までルイズとは時間無制限ルール無用の一本勝負をやることなり 結局眠れなかった。 その上二日酔いで未だに頭が痛い。 ルイズの機嫌は結局直らず銀時に鎖をつけようとする。 「だから言ってんじゃねえか、俺はロリコンじゃねえって。 てめえのその貧相な体に欲情するぐらいなら火トカゲに欲情したほうがまだましだっつーの」 「なんですってー、この馬鹿犬ー!!」 鞭を持ち出し銀時をしばくルイズ。 そんな光景が朝の教室で繰り広げられている。 -この凶暴女、神楽よりたち悪いだろ。 「全くルイズったら、ねえダーリン、あんな凶暴な御主人なんかやめて私の使い魔にならない」 「何言ってるのよ、銀時は私の使い魔なんだから!!」 キョルケとルイズはまた言い争いを始めた。 銀時の頭痛が二重の意味で痛くなった。 「ダーリンは私は馬鹿だと思う、胸の大きい私のこと馬鹿だと「うるせー!!!」 キュルケは銀時を自分の胸に誘いこもうとしたが銀時は大声を上げて拒絶した。 「てめら2人ともうるせーんだよ、こっちは二日酔いで頭痛がひどいんだ。 俺は寝る、もう寝る、絶対寝る、おこしたら殺すかんね」 そう言ってあいてるせきをベッド代わりにして銀時はいびきを立てて眠った。 ルイズは最初は他の生徒達と同じように唖然としていたが、銀時の態度に腹を立てて おこそうとしたがちょうどその頃教室の窓が開きミスタ・ギトーが入ってきた。 ミスタ・ギトー、冷たい雰囲気と自分の魔法の才能を鼻にかけるその態度から 学園でも1、2を争う不人気教師である。 「では、授業を始める、知ってのとおり私の2つ名は『疾風』のギトーだ」 教室はシーンとしてその様子を満足げに見たギトーはことばを続けようとしたが 「グー!!」 教室には銀時の大きないびきが響いた。 ギトーはこめかみを引きつらせながらゴホンとせきをして 「最強の系統は知ってるかね?ミス・ツ「ガー!!」 ついには銀時のいびきがギトーの言葉をさえぎった。 ルイズははらはらした目で銀時を見るが相変わらずよだれをたらして気持ちよさそうに眠っている。 ギトーはついに教壇からおり銀時の眠っている席まで来た。 「この男はミス・ヴェリエールの使い魔ではないかね。 ミス・ヴェリエール君は使い魔の躾もできないのか」 「も、申し訳ありません」 ルイズは青い顔をしながらあやまる。 「ふん、まあ『ゼロ』という二つ名をもつ君にはぴったりの使い魔ではあるがな」 今度はルイズの顔が赤くなった。 -くやしい 実際教師達がルイズを魔法も使えない無能なメイジだと思っているのは知っていたが こうまで露骨に言われたのは初めてだ。 「全く主人も主人なら使い魔も使い魔だ、ほら、起きろこの平民」 体を揺らして銀時を起こそうとするギトー。 「ん、・・う・・うるせー!!」 「ごは!!」 起き上がった銀時はギトーに思いっきりヘッドバットをかけた。 後に吹っ飛び尻餅をついたギトーに銀時は『洞爺湖』を手に取り叩きつける。 「うるせーんだよ、おこしたら殺すって言ったじゃねえか、もう少しでパフェ食えるとこだったのに 食えなかったじゃねえか」 「おい、やめ、ゴフ!!痛い!!やめ」 杖を出す暇もなく銀時にぼこぼこにされたギトー。 ようやく落ち着いた銀時はギトーを見る。 「ん、誰だ、こいつ」 「教師のミスタ・ギトーよ」 キュルケが銀時に教えた。 「貴様、メイジに暴行ふるってただで済むと思ってるのか!!ミス・ヴェリエールとも この学園から追い出してやる」 「ルイズ」 「な、何よ」 「穴掘っててくれねえか、人1人分入るくらいの・・」 その言葉に回りはざわざわする。 しかし、誰も止めようとする者はいない。 むしろ、巻き込まれたらたまらんと皆目線をギトーからはなし無視するようにする。 銀時は今度は『洞爺湖』ではなく立てかけていたデルフをギトーに突きつけた。 「チョ、待て・・」 ギトーはガタガタふるえ怯えだした。 「まあ、アニメ版や漫画版で存在ごとスルーされたキャラが一人いなくなっても たいした影響はないよな」 銀時の言葉にギトーは泣きながら立ち上がった。 「ちくしょー!!どうせ俺なんか名前のあるだけのモブキャラだよ。 二次創作ではかませ犬キャラだよ」 泣きながら教室から出て行った。 「あ、自覚はしてたんだ」 銀時はとりあえず剣をおさめた。 「相棒、えげつねえな」 「ちょっと、なんて事してくれたのよ、私が退学になったら・・・」 「貴族のお嬢ちゃん、その心配はねえよ、もしあいつが嬢ちゃんを退学しようとしたら 自分が平民にぼこぼこにされたって周りにばらすようなものだ、そしたらあいつはメイジとして 死んだも同然、それを知った上で相棒はさらに脅して念には念を入れたのさ」 キュルケはデルフのその言葉に驚いた。 「じゃあ、さっきのは・・」 「嘘に決まってんだろ、たががこいつのために殺人犯になる気はねーっての」 また教室のドアが開いた。 「あのー、どうしましたか、さっき廊下で血まみれのミスタ・ギトーが 泣きながら走ってしましたが」 教室に入ってきたのは妙な仮装をしたコルベールだった。 「ああ、大したことないっすよ、コッパ、コルベールのおっさん」 「ちょっと今コッパゲって言おうとしなかった、ねえ」 「そんなことないっすよ、コル、コッパゲのおっさん」 「何でわざわざ言いなおすんだ!!コルベールで良いだろうが」 そんなこんなで授業は中止になり、トリスティンの姫が視察に来ることを知らされた。 窓際には生徒達が集まっている。 どうやらお姫様が到着したらしい。 「トリスティン王国王女、アンエリッタ姫殿下のおなーーりーー!!」 馬車から降りたアンエリッタに姫に生徒達は歓声を送る。 「あれがトリスティン王女、ふん?あたしのほうが美人じゃない」 キュルケはつまらなさそうに呟く。 「ねえ、ダーリンはどっちが綺麗だと思う?」 キュルケの問いに銀時はさらにつまならさそうにあくびをしながら答える。 「可愛いだけのガキに興味はねえよ、くだらねえ事聞くな」 そしてまた席をベッド代わりにして眠り始めた。 そんな銀時と同じように今回の姫の来訪に興味がない生徒が1人だけいた。 タバサは寝ている銀時の横で静かに本を読んでいた。 夜 ルイズの部屋 あの姫が来てからルイズの様子がおかしかった。 どことなく落ち着きがなく、上の空という感じだった。 銀時も変だとは思った。 いつもだったら銀時がやったことを散々叱り飛ばし、 部屋の隅を指で掬い埃を見せ、『掃除がなっちゃいないわ、使い魔失格ね』 とお前は姑かというようなことを言うはずなのに。 -考えてみたら実害がない分、今のほうがましか。 銀時はルイズをほっとくことにした。 ドアからノックする音が聞こえる。 妙に法則性のあるノックの仕方だった。 ルイズはそのノックの音にはっとするが すでに銀時がドアを開けていた。 「どなたさんっすか、こんな夜遅く」 そこにいたのは真っ黒な頭巾をかぶった少女だった 少女は出てきた銀時に驚いたようで、 「え、どなたですか?」 「おーい、ルイズ、客みたいだぞ」 銀時は少女の問いに答えずルイズを呼んだ。 「あなたは・・・」 ルイズは少女を見て驚いたような声を上げた。 少女は杖を取り出すと、短くルーンをつぶやいた。 「・・ディティクトマジック?(探知魔法)」 ルイズの問いに少女はうなずく。 「どこに耳が目が光っているのかわかりませんからね」 少女はそういいながら頭巾を取った。 銀時はその少女の顔に見覚えがあった。 -ああ、アンなんとか姫じゃなかったけ。 「姫殿下!」 ルイズはその顔を見ると慌ててひざをついた。 「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」 前ページ次ページ侍の使い魔
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前ページ次ページ侍の使い魔 ルイズの部屋に現われたアンエリッタは感極まったように ひざをつくルイズを抱きしめる。 「ああ、ルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ!」 「姫殿下、いけません、こんな下賎な場所におこしになられるなんて・・」 銀時は最初何が起こったのかわからなかったが 2人の話に聞き耳を立てるとどうやら2人は幼馴染らしいということがわかった。 ルイズもかなり偉い貴族の娘と聞いているからトリスティンの姫と幼馴染でも おかしくはない。 2人とも思い出話に花を咲かせている。 元々姫に興味がない銀時は女の話に男が関わるもんではないと部屋の隅の 藁のベッドに腰を下ろし壁に背を預けた。 そのまま寝てしまおうかと思った。 「貴方が羨ましいわ、自由って素敵ね。ルイズ・フランソワーズ」 「なにをおっしゃいます。貴方はお姫様じゃない」 アンエリッタはルイズに近々結婚することを伝えた。 ルイズも一応祝福の言葉をだすが、アンエリッタの口調からそれが 望んだ結婚ではないというのはわかっていた。 黙って聞いていた銀時はなんとなくアンエリッタが気にいらなかった。 銀時の周りの女性は強い女ばっかりだった。 どんなつらい状況でも自分からつらいなどと言う女は一人もいなかった。 道場の存続のため、遊郭まがいの店に身を売ろうとしていた新八の姉、妙しかり 自分の命が短いにもかかわらず愛する人から身を引いた沖田の姉、ミツしかりである。 アンエリッタはいかにも同情がほしいという口調に銀時は少しイラッときた。 今の状況が嫌なら戦えば良い。 ルイズですらも魔法が使えないという状況から抜け出そうと必死に戦っているのは 銀時も良くわかっている。 だからこそルイズの味方でいようとしているのだ。 だが目の前のアンエリッタは恐らく戦おうとすらせず同情がほしいらしい。 -自己憐憫がここまでくるとイライラするな。 そんな風に自分を見ている銀時にアンエリッタは気づく。 「あら、ごめんなさい。もしかしてお邪魔だったかしら」 「お邪魔?どうして?」 「だって、そこの彼、貴方の恋人なんでしょう、いやだわ「ちょと待てぃ!!」 アンエリッタの言葉をさえぎり大声が上がったのにルイズとアンエリッタは 驚いた。 「このピンクの凶暴な生き物と俺が恋人だぁ!!冗談も休み休み言えよ。 姫さんよぅ」 銀時はアンエリッタを見て凄む。 アンエリッタは呆然としていた。 今まで自分にこんな無礼な口をきいた人間は初めてだった。 「ちょっとあんた姫になんて口を・・その前にピンクの凶暴な生き物って 誰のことだぁぁ!!」 「どう見てもお前のことだろう、クギミー目、ヒンニュー科、ツンデレー種のルイズさんよぉ」 「そんな生き物いるかぁぁ!!あんたなんかスギタ目、テンパー科、ダメニンゲン種のギントキじゃない」 「ルイズ・・?」 アンエリッタはルイズの豹変振りにも驚いた。 「え・・いやー!!違うんです、全部こいつのせいなんです。こいつが悪いんです」 姫の前でとんでもないところを見せてしまったルイズは大慌てで取り繕うとする。 「っていうか、こっちのほうが素だろ、どう考えても・・」 「もうあんたはしゃべるな!!」 「クスクス・・」 「姫様?」 アンエリッタはそんな銀時とルイズの様子を見て笑い出した。 「とても仲がよろしいんですね、2人とも」 「ちがうんです、こいつはただの使い魔なんです」 「使い魔?」 アンエリッタは再度銀時をみた。 「どう見ても人にしか見えませんが?」 「一応人です、姫様」 -一応ってなんだよ、一応って 心の中で銀時は毒づく。 「そうよね。はぁ、ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど あいかわらずね」 「好きであれを使い魔にしたわけではありません」 「あれって言うな!!って言うか俺も好きで使い魔やってるわけじゃないからね」 「もういいからしゃべるな」 そんなやり取りの後にアンエリッタはため息をつく。 なにやらアンエリッタには悩みがあるらしい。 しかし銀時はそのため息にわざとらしさを感じた。 ルイズはアンエリッタの悩みを聞こうとしている。 銀時は嫌な予感がした。 このパターンからいくと又なんかに巻き込まれる前振りだと気づいたからだ。 アンエリッタはなんでも無いと言っていたが結局ルイズの説得で話すことになった。 -この女最初から話す気だったんじゃねえか、話す気がなかったんならため息なんかつくなよ。 無意識でやってるとしたらなおさらたちが悪い。 「席をはずそうか」 銀時の言葉にアンエリッタは首を振る。 「いや、メイジにとって使い魔は一心同体、席をはずす理由はありません」 「チッ」 銀時は舌打ちをした。 うまく逃げようとしたが、これで巻き込まれること決定らしい。 -空気読めよな、姫さんよ。 アンエリッタの話を聞くと、アンエリッタは近々ゲルマニアの皇帝の元に嫁ぐという。 それは今内戦中のアルビオンのレコンキスタに対抗するためにもどうしても必要だという。 そのためレコンキスタはその婚姻を妨げる材料を血眼で探しているらしい。 そしてその材料とやらがあるらしい。 「おお、始祖ブリミル・・この不幸な姫をお救いください・・」 銀時はルイズとアンエリッタの演技のような掛け合いにますますイライラした。 -貴族って奴はいちいちこういう喋り方しないと話せないのか。 -っていうか姫もどこまで自分をかわいそうだと思えば気が済むんだ。 -良いから早く本題に入れ!! その後、銀時が根気よく2人の話を聞いていくと その材料とやらはアルビオンのウェールズ皇太子がもっている手紙らしい。 話を聞いて銀時はピンときた。 ようはアンエリッタは自分達に自分の色恋沙汰の尻拭いをやれということらしい。 強制するようなことは言ってないが、ここまで聞いて 『それは大変だな、まあがんばれや』と言えるだろうか。 銀時だったら言うかもしれないが、ルイズの性格を考えると 100%無い。 案の定、ルイズはアルビオンに行くと言い出した。 銀時はため息をつく。 -この姫さん、わかっててやってるのか。あんな言い方だとルイズの性格考えれば行くって言うに決まってる ルイズとアンエリッタは又芝居じみた掛け合いをしながら友情を確認しあっている。 それはまるで自分達自身に酔っている様だった 銀時はそれになに白々しいものを感じながら、冷めた目で問うた。 「ああ、ちょっと良いか」 「あによ」 「そのアルビオンって俺も行くんだろう」 「当たり前じゃない」 銀時はうんざりした声で言った。 「俺もいろいろ忙しいんだけど」 「あんたいつも暇そうにしてるじゃない」 「俺は仮○ライダーとかやらないといけないし、結構忙しいの お前だってガ○ダムとハ○テが終わったとはいえ、第2期で出番があるかもしれないし 今期は主役のやつだってあるんだろう」 「ちょっとう!!!そのネタはいい加減に自重しなさいよ!!!!」 「日○君によろしく言っといてくれ」 「だからぁぁ!!」 「あのさっきから何を?」 「いえ、姫様には関係ないことです」 銀時は正直アルビオンへは行きたくなかった。 しかし、ルイズが行くと言う以上、ついていかざる得ない。 それが銀時にとっての武士道だからだ。 -やれやれ、俺はどの世界でもピンク色の髪をした女の子の面倒みる星の下にでもいるのかね。 ルイズは友情のためだと思っっているが、銀時はとてもこれが友情だとは思えなかった。 友情というのは対等な関係で初めて成り立つ物だ。 銀時の親友、桂小太郎も良く銀時に助けを求めたり、仲間になれといってきたりするが あくまで対等な関係においてである。 万事屋としてお願いするときは報酬も払うし、飯をおごってもらったりもする。 そして、必ず銀時と共に戦う。 しかし、今回は命がけの任務のわりに報酬もない上にこの姫は何のリスクも背負わないらしい。 こんな一方的な友情があるのだろうか。 ルイズは早朝にでも出発するという。 朝早いと聞いて銀時は、藁のベッドで寝ようとしていた。 「あの、頼もしい使い魔さん」 「ん・・」 アンエリッタの言葉にめんどくさそうに返事をする銀時 「私の大切な友達を、これからもよろしくお願いします」 アンエリッタはそっと左手を差し出した。 銀時は心底めんどくさそうな顔で頭を掻く。 「じゃあ、あんたが行けよ、姫さん」 「え!?」 もうこれにはアンエリッタは絶句するしかなかった。 ここまで自分に対して無礼な態度をとったのは銀時が初めてだったからだ。 「姫さん、実はセ○バーの英霊(サーヴァント)で宝具にエクス○リバーが 使えるとかって特技ない。それだったら姫さんが行ったほうが・・・」 ルイズはワナワナ震えている。 「あんた姫様になんて口を・・そしてそのネタはいい加減自重しなさいって行ったでしょう!!」 ルイズの怒りが頂点に達しようとしたとき突然ドアが開いた。 「きさまー!!恐れ多くも姫殿下に、なんて無礼なー!!」 入ってきたのはギーシュだった。 ギーシュは銀時に飛びかかろうとするが銀時はすでに『洞爺湖』を かまえギーシュに向けて振った。 「ぐええ!!」 ギーシュは部屋の隅まで吹っ飛んだ。 「ああ、何かさっきからドアの向こうで覗いている奴がいるなとは思っていたけどよ」 「ちょっとこいつ盗み聴きしてたの、ギントキも気づいてたらなんで言わなかったのよ」 「めんどかったから」 「あんたねー」 「うぐぐ・・」 倒れたギーシュが立ち上がろうとする。 銀時はその顔を見て 「ところでお前誰だ?」 「何ぃー!!」 「あんた本気で行ってるの」 銀時の言葉にギーシュとルイズは驚きの声を上げる。 「どっかで見たことあるなぁとは思うんだけどよ」 「僕だよ、ギーシュだよ、ギーシュ・ド・グラモン。ほら決闘しただろう」 「ん?ショーユ・デ・グラタン?何か不味そうな名前だな」 「違ぁーう!!ギーシュ・ド・グラモンだ」 「ああ、大島君ね、久しぶり、ところでペットのポチは元気にしてる」 「原形すらとどめてねーだろう、誰だよ大島君って」 やいのやいの騒ぐギントキ達にアンエリッタは完全に置き去りにされている。 ここまで無視されたのも初めてだった。 死んだ魚のような目をしたルイズの使い魔は、マイペースの上相手のペースを 崩すのが得意らしい。 そしてルイズもだんだんその影響を受けているようだった。 この後ギーシュも姫に懇願し、ルイズについていくことになった。 さらにめんどくさいことになったと銀時はため息をついた。 -どいつもこいつも一時のテンションに身をまかせやがって 前ページ次ページ侍の使い魔
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「げっ!!マジでか」 ルイズの部屋から空に浮かぶ2つの月を見て銀時は自分が異世界に来た事を自覚した。 ―なんちゃって幕末SFものから今度は異世界ファンタジーものですか。 ―どういうてこ入れですかこれは。 銀時は混乱お余り余計なことを考えていた。 ―そういや昔ジャンプで似たような展開の話があったな、結局打ち切られたけど。 ―もしかしてこれって打ち切りの前フリか。 タ○ヤのことはもうそっとしといてやれよ。 銀時は混乱のあまり変な電波を受信した。 「つまりあんたは異世界のエドって所から来たって言うのね」 「ああ、そういうことだ」 「信じられないわ」 「俺だって信じられねえよ、俺がいたところは月は1つしかなかったの。 こっちには2つありやがる、金玉ですか、このやろー」 「なっ、あんたなんて下品なの!!」 ルイズは顔を真っ赤して叫ぶ。 基本的にウブなルイズには銀時の下ネタは刺激が強すぎた。 ただ銀時の周りにはほとんどそういうのを気にしない女性に囲まれていたため 基本的に銀時にデリカシーと言う言葉は存在しない。 女性の中には変態そのものもいるのだからいたし方あるまい。 銀時が聞いた話ではここはハルケギニアのトリステイン魔法学院と言う全寮制の魔法を 教える学校だと言う。 この世界の王侯貴族はメイジとよばれ、魔法が使える、使えない者は平民と呼ばれている。 そして自分はその使い魔召喚の魔法で呼び出されたと言う。 いくら天人達によってオーバーテクノロジーがもたらされたとはいえ、銀時にとって 魔法などアニメや映画の世界の話でしかない。 「まじでハ○ーポッターなのかよ」 銀時はうんざりした。 今まで厄介なことにはたびたび巻き込まれていたが、今回は最大級である。 「何だってこんなピンクのガキに・・」 「ガキって、私は16歳なのよ」 「マジでか!?新八と同い年かよ、下手したら神楽より年下かと思ったわ」 「何だかわかないけど、むかつくわね、それにガキじゃないわよ 私にはルイズって名前があるんだからね」 「ああ、世界的有名な配管工の目立たねえ緑の弟のほうか」 「誰がルイー○よ!!」 なぜルイズがルイー○を知ってるのかは突っ込んでほしくない コンプレックスの塊と言う点ではあってるかもしれない。 「はあ、あんたとしゃべってると疲れるわね」 ルイズはぐったりしている。 「それより俺を元に戻す方法はねえのか」 「無いわね」 「即答かよ」 銀時は頭を抱えたがこの状況を打破する方法が思いつかない。 「わかったよ、お前の使い魔とやらになってやるよ」 「口の利き方がなっていないわね、使い魔になるんだから 私のことはご主人様って言いなさい」 「いや、俺そういうプレイには興味ないから」 「プレイって何よぁぁ!!」 「そんなにご主人様って言われたければメイド喫茶にでもいけよ」 「何言ってんのよ、あんたはぁぁ!!」 突っ込み疲れてルイズは息を切らす。 「おいおいこれぐらいの突っ込みで息切れか、新八だったらもっといけるぜ」 「とにかく私の使い魔になったんだからそれなりには役に立ってもらうわよ」 「つーか使い魔って何すんの?」 銀時は当然の疑問を呈する。 「まずは使い魔は主人の目となり耳となる能力が与えられるの」 「どういうことですか?」 「使い魔が見たものは主人が見ることができるのよ」 「へ~」 銀時は興味なさげに相槌を打つ。 「でもあんたには無理みたいね、私何にも見えないもん!」 「そうみてえだな」 銀時は耳をほじりながら聞いていた。 その態度にルイズはどうにか怒りをこらえながら説明を続ける。 「それから、使い魔は主人の望む物を持ってくるのよ、たとえば秘薬とか」 「秘薬?」 「特定の魔法に使う触媒よ、硫黄とか、コケとか・・・」 「ああ、無理無理無理、俺そういうのわかんないから」 手を横にブンブン振りながら答える銀時。 そのやる気の無い態度にルイズのイライラが募る。 銀時は常時こんな感じではあるのだがそんなことはルイズは知らない。 ―なんでこんなのが私の使い魔なのよ。 「そして、これが一番なんだけど・・、使い魔は主人を守る存在であるのよ。 その力で主人を敵から守る、でもあんたじゃ無理っぽそうね」 「んなこたぁねえよ・・」 このとき初めて銀時からしゃべり始めた。 「目の前にいるお前ぐらいなら俺が守ってやらぁ、こいつでよ」 腰にぶら下げていた『洞爺湖』と彫られた木刀を掲げる。 心なしか目にも生気が戻っている。 普段とのギャップにルイズは少しドキッとするが。 「とっ、とにかくあんたにはできそうなことやってもうらから、洗濯、掃除、その他雑用」 「ちっ、しょうがねえな」 銀時は頭の掻きながらいつもの調子に戻る。 ―ん、ちょっと待て、使い魔になったてことは俺定春やエリザベスと同じポジション。 ―おいおいまじかよ、勘弁してくれよ。 人間としてぎりぎり底辺にいた銀時だったがついに獣以下まで堕ちたのである。 「うぉぉぉい!!お前後で体育館裏に来いやぁぁ!!」 地の文に突っ込むな、痛い奴だと思われるだろうがぁぁぁ!! 「ああ大丈夫だよ、クロスオーバーの二次創作なんて書いてる時点で十分痛いから」 フォローになってねえぇんだよ!!って言うかここのスレの全住民を敵に回すようなことを言うじゃねぇぇ!! 皆さん嘘ですからね、なんて言うかすいません。 「あんたさっきから誰に向って言ってるの・・」 「あ、そういうかわいそうなものを見る目で俺を見るのやめてくれる。 銀さん結構繊細だよ、ガラスのハートだよ、壊れかけのレディオだよ」 「あんたとしゃべると疲れるから、もう寝るわ」 ルイズは心底疲れたようにベッドのほうに向う。 「俺の寝る場所は?」 「あんたは床よ」 そう言ってルイズは床を指差した。 「お前はあれか、どっかのアニメの契約したら王の力を与えてくれる女みたいに 『童貞男は床で寝ろ』っていうタイプか、俺は童貞じゃねえぞ!!」 「何に対して切れてんのよ!!わけわかんない」 ルイズはうんざりしながら服を脱ぎ始める。 「うぉおおい!!お前!!」 ルイズが服を脱いで下着姿になるのを見て銀時はあからさまに動揺する。 「何よ・・」 ルイズはもしこの使い魔が自分の裸を見て動揺してるのならいい気味だと思った。 自分が使い魔であることを自覚させて主導権を握ろうとした。 「いや、分かるよ、銀さん良い男だから惚れちゃうのも分かる」 「はっ?」 銀時がわけわかんないことを言い出したのにルイズは声を上げる。 「だけどそういう関係になるのは早すぎると思うし、ガキに手を出す趣味はないし、 俺的にはもうちょっとそのまな板みたいな胸が膨らんでから、それに女は慎ましいほうが・・」 ようやく銀時の言わんととしていることが分かったルイズは顔を真っ赤にする。 「何勘違いしてるのよ、この馬鹿!!!」 ルイズはベッドの横に置いてある置時計を銀時に投げつけた。 それはそのまま銀時の頭をクリーンヒットする。 「グハッ!!」 銀時はそのまま意識を手放し気絶する。 薄れ行く意識の中で銀時は『それ洗っときなさいよ』と下着を投げつけられた気がした。
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「くそー、あのじじい、今度あったらぜってえ殺す!!」 江戸の侍こと坂田銀時は原付から投げ出され腰を抱えていた。 原付を平賀源外に修理してもらって帰ろうしていた。 後で源外が『修理代払え』と言ってたのは軽くスルーする。 無線から源外の声が聞こえる。 『おい銀時、メータの横についてるボタンあるだろ』 「これか」 そのままポチッと押す。 『それは絶対押すんじゃねえぞ、自爆するから』 「先に言え!!っていうかなんで原付に自爆装置!?」 そのまま原付は吹っ飛び銀時は目の前に現れた光の鏡に吸い込まれた。 所変わって異世界はハルケギニアのトリステイン魔法学院前では 春の使い魔召喚の儀式が行われていた。 「宇宙の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさい!」 桃色がかったブロンドの髪の少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは 叫ぶかのように呪文を唱えた。 この魔法を成功させて、今まで自分を馬鹿にしてた連中を見返してやるとの思いをこめて。 爆発がおこり、そこにいたのは妙な格好をして髪の毛がモジャモジャで死んだ魚のような目を した男だった。 なにやら腰を抱えながらぶつぶつ言っている。 「あんた誰?」 ―何だこのガキ。 ―髪の毛ピンク色だぞ。 ―声誰か似てんな、すげー身近にいる奴だと思うけど誰だったけ。 ―それとここどこだよ、江戸にこんなところあったか。 ―周りの連中も変な格好しているし。 ―ハ○ーポッターか?ハ○ーポッターファンの集まりですか!? 「誰って言われてもなー、つーかここどこだよ?おめえこそ誰だよ?」 「聞いてるのは私のほうなのよ、いいから答えなさい!!」 ルイズの怒気のこもった声に押され銀時はしぶしぶ答えた。 「俺は銀時、坂田銀時だ」 「ギントキ、変な名前ね、どこの平民?」 「ほっとけ、っていうか俺の質問にも答えろよ」 銀時の言葉も周りにいるルイズと同じようなハ○ーポッターの格好をしている少年少女達に かき消された。 「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を召喚してどうすんだよ」 「しかも見ろよ、そいつ、死んだ魚みたいな目してるぜ」 「平民でしかも駄目人間、ルイズにはピッタリだな」 次々とはやしたてる人垣にルイズは顔を真っ赤にして怒鳴る。 「う、うるさい!ちょっと間違っただけよ」 ―何なのよもう!! ルイズは心底いらだっていた。 今まで何度失敗してようやく成功した『サモン・サーヴァント』 なのに出てきたのは全身から駄目人間オーラを放つ平民の男だった。 期待してたぶん落胆も大きい。 「ミスタ・コルベール、もう一回やらせてください」 ルイズは教師風の男に懇願する。 ―何だあのハゲのおっさん、いい歳してコスプレかよ。 銀時は前に出てきたコルベールを見て思った。 「それはできません、ミス・ヴァリエール、春の使い魔召喚は神聖な儀式だ。 そう簡単にやり直しは認められない、いずれにせよ彼を使い魔にするしかない」 「でも平民ですよ」 ―平民?使い魔?さっきから何言ってんだこいつら、春のなんだって、パン祭りですか、このやろうー。 「それでもだ、例外は認められない、さあさっさと契約したまえ、君のおかげで 次の授業の時間がおしているのだよ」 「そんな・・」 ルイズはがっくり肩を落とす。 ―最悪・・ 銀時は何か嫌な予感がした。 生粋のトラブル体質である銀時はことあるごとにろくでもないことに巻き込まれている。 扇風機買い行っては世界征服を企む悪の組織と戦うはめになったり、ゴミ捨て場でメイドロボの首を 拾ってはメイドロボ軍団に襲われたりとろくな目にあったためしが無い。 「あんた感謝しなさいよ、普通平民が貴族にこんなことされるなんて一生無いんだからね」 ルイズは銀時に近づいて目をつぶる。 「はっ?」 銀時は間抜けな声を上げる。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 「うぉぉぉい!!何する気だ、銀ちゃんそっちの(ロリ)の趣味は無いから!!」 「いいから少し黙ってなさい!!」 ルイズは怒りながら、自分の唇を銀時の唇に重ねた。 ―え、なになに、おれキスされてるの!? 銀時は混乱している。 そして唇を離してしばらくたつと銀時の体が熱くなった。 「ぐぉ!アチチチチ、何この郷ひ○みもびっくりの熱さは!?」 微妙に古いネタでたとえる銀時。 「使い魔のルーンが刻まれてるだけよ、あんた少しうるさいわよ」 銀時の左手には文字が現れる。 ハゲのおっさんことコルベールはものめずらしそうにそのルーンを見た。 「ふむ・・珍しいルーンだな」 「あんたら一体なんなんだ!」 「さてと、じゃあ皆教室戻るぞ」 銀時の叫びは無視された。 「何これ、いじめ、いじめなのか、俺が天パーだからか、天パー差別だ、馬鹿野郎!!」 コルベールをはじめ生徒達は宙にうき空をとんだ。 ルイズだけがそのまま地上に残っている。 「ルイズお前は歩いて来いよ」 「あいつ『フライ』はおろか『レビテーション』もまともにできないんだぜ」 「その平民の駄目人間、あんたの使い魔にはお似合いよ」 残されたのはルイズと銀時だけになった。 「うぉぉい!!今日びのハ○ーポッターファンは空も飛べんのか」 「うるさいわね、さっきからわけのわかんないことばかり言ってあんた一体なんなのよ!」 「坂田銀時、江戸で万事屋をやってるってそうじゃなくて、それよりここはどこでおめえは 一体誰なんだ」 「そんなことも分からないの、田舎者ね」 「田舎?江戸は大都会だぞ、大江戸砂漠っていうくらいな、おかげで皆心が渇いちまった。 あー潤いがほしい、特に髪に」 「あーうるさい、何なのよこいつ」 こうして坂田銀時の使い魔ライフが始まった。
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銀時が目覚めたのは朝日が出てきたばかりの早朝だった。 「くっ、頭痛てー、昨日は飲んでねえはずだぞ・・」 目覚めて銀時が初めて目にしたのは自分の頭を打った置時計と下着だった。 「そういやあ、俺召喚されたんだっけ」 実は夢オチという展開も期待していたのだが現実はそう甘くないらしい。 コブができた頭をさすりながらベッドの方を見る。 「っん・・」 そこにはルイズが寝息を立てて寝ていた。 その寝顔に銀時は同居人のことを思い出した。 「2人とも寝顔だけは可愛いだけどな、寝顔だけは・・」 銀時はため息をつく。 「胸がまな板な女は凶暴ってのはどこの世界も共通ですか?」 同居人とその同僚の姉を思い出しながら言った。 「洗っとけって言ってたな・・」 銀時はルイズのパンツを指をクルクル回し弄びながら部屋を出た。 洗濯しなかったらなんと言われるか分からない。 ここがかぶき町だったら近くのそういうの買い取ってくれる店にでも売り飛ばしているところだが あいにくここはハルケギニアだ。 一応世話になるのだからそれなりの義理は果たすことにした。 「ドンだけ広いんだよ、ここは」 洗濯できる場所を探して銀時は学院をウロウロしていた。 「あの・・」 不意に後から声をかけられ銀時は振り返る。 そこにはメイドの格好をした少女が立っていた。 「げっ!メイド」 銀時は思わずびくつく。 「あの、どうされました」 その銀時の様子に驚くメイドの少女。 「あ、いや、悪い、メイドにあんまり良い思い出がなくてな」 「はあ・・もしかして貴方が噂のミス・ヴェリエール使い魔ですか」 彼女は銀時の左手にあるルーンに気づいたらしい。 「ヴェリエール?・・エリエー○ってティシュなら知ってけど・・」 「?・・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール様です」 銀時のボケが分からなかったシエスタは顔をしかめる。 「あいつそんな長ったらしい舌噛みそうな名前なのか、そういやぁ最初の時 言ってたな、あんたも良く覚えてんな、ところであんた誰?」 「私こちらでご奉公させていただいているメイドのシエスタと申します」 シエスタは丁寧に銀時にお辞儀をした。 「あっ、ああ、俺は坂田銀時って言うんだ」 今まで周りにいなかったタイプの女性に出くわし銀時は少し戸惑った。 「サカタギントキ様、変わったお名前ですね」 「様なんかいらねえよ、俺はそんなに高尚な人間じゃねえ、 銀さんでいいよ、周りからはそう呼ばれている、何なら銀ちゃんでもいいぜ」 「はい、わかりました」 フランクな感じな銀時にシエスタは少し好感を覚えた。 「それにしてもマジもんのメイドかよ、実は耳にアンテナつけるロボットだとか 秋葉原にいるズラが行きそうなメイド喫茶のなんちゃってメイドじゃないだよな」 「?・・よく分かりませんが私は本物のメイドですよ」 銀時はシエスタとは話しやすいと思ったが、シエスタの声を聞くと 何故か頭に『たい焼き』という単語がよぎったが無視することにした。 「それにしても本当に・・・いえ、何でもありません」 思わず出た言葉にシエスタはあわてて口を閉ざす。 「何?本当にって?、銀さん気になって気持ち悪いよ、くしゃみが出そうで出なかった時より 気持ち悪いんですけど」 「あの、怒りません」 「怒ねえから言ってみろ」 「本当に死んだ魚みたいな目をしてるんだなあと思いまして・・」 「・・・・・」 ―やっぱり怒らせた。 ミス・ヴェリエールの使い魔は死んだ魚みたいな目をしている。 その噂を思い出して思わず口に出した自分の軽率さを恥じた。 「ああ、こいつはいざって時には輝くようになってるから、普段はこうなの 充電してんの、充電」 「ジュウデンですか・・」 「そ、充電、俺は無駄にエネルギー使わないエコロジー思考なんだよ」 「フッ、ウフフフ、ギンさんって面白い方なんですね」 シエスタは銀時の言葉に屈託の無い笑顔を浮かべた。 「ところで何かお探しのようでしたが・・」 「そうだった、うっかり忘れるところだったぜ、これ洗濯しろって言われてんだ。 洗濯する場所分かるか」 銀時は懐にあった下着を取り出した。 「それでしたら私も洗濯に向うところですから、一緒に行きましょう」 「ああ、悪いな、サンキュー」 「サンキュー?」 シエスタは小首をかしげた。 シエスタと洗濯が終わった後、銀時はルイズの部屋に戻った。 洗濯物は乾いたら部屋に持っていくとシエスタが言ったので銀時は手ぶらだ。 「そろそろ起こすか」 銀時は眠っているルイズの頬をペチペチ叩いた。 「おい、起きろ」 「イ、イタッ、イタイ、痛いわね!!ってあんた誰よ!?」 「坂田銀時だ、お前が召喚したんだろうがぁぁ」 「そういえばそうって、あんたもうちょっと普通に起こしなさいよ!?」 ルイズの頬は二つとも真っ赤に腫れてヒリヒリしている。 「礼なら入らんからな」 「誰がするか、あんた頭おかしいんじゃない、次やったら許さないんだから」 「わかったよ、次から濡れタオル顔に被せといてやるよ」 「遠まわしに死ねっていってんのおぉぉぁ!!永眠するわよぉぉぉ!!」 そんな怒鳴り声でルイズの朝は始まった。 「はあ、朝からなんでこんなに疲れるのよ」 「そりゃあ、朝からそんなに怒鳴るからだろ」 「誰のせいだと思ってるのよってもう良いわ、とりあえず着替え」 「ホラよ」 銀時はタンスから出した服をルイズのほうに投げた。 「ちがうわよ、着替えさせてって言ってんのよ」 「あんた何歳児いぃぃ!!」 「平民のあんたにはわかんないと思うけど、貴族は下僕がいる時は自分で着替えないのよ」 「服ぐらい自分で着ろよ」 「へ~、そんなこと言うんだ、生意気な使い魔にはお仕置きね、朝ごはん抜きよ」 「さあてと可愛いご主人様を着替えさせるか」 銀時は白々しい台詞をはきながらルイズを着替えさせる。 「言っとくけど俺は平民じゃないぞ」 銀時はルイズを着替えさせながら言った。 「じゃあ何なのよ、まさか貴族って言うつもりじゃないでしょうね」 「違う、俺は侍だ」 「サムライ?何それ?」 ルイズと銀時が部屋から出るとルイズの部屋から3番目の部屋のドアが開いた。 そこから出てきたのは燃えるような真っ赤な髪とルイズと比べ物にもならない 大きな胸を持つ褐色肌の少女だった。 彼女はルイズを見るとニヤッと笑った。 「おはよう、ルイズ」 「おはよう、キュルケ」 ルイズは心底嫌そうに挨拶を返す。 「貴方の使い魔ってそれ?」 銀時を指差し馬鹿にしたように言う。 「そうよ」 「あっはっはっはっ、本当に人間で死んだ魚みたいな目をしてるのね!すごいじゃない!」 銀時は少しカチンと来た。 ―なんだこの胸のでけーねーちゃんは、おっぱい星人か。 「『サモン・サーヴァント』で平民喚んじゃうなんて、貴方らしいわ、 さすがゼロのルイズ」 「うるさいわね」 ルイズはイライラしながら言った。 「あたしも昨日、使い魔召喚したのよ、誰かさんと違って一発で成功よ」 「どうせ、使い魔にするなら、こうゆうのが良いわねぇ~。フレイムー」 勝ち誇ったようなキュルケの声に呼び出され、部屋から出てきたのは 真っ赤な巨大なトカゲだった。 ただ銀時は珍しい宇宙生物を見慣れているため、(実際家にいる) それほど驚かずまじまじと見つめるだけだった。 ―ハ○ーポッターの次はポ○モンですか! ―あのバカ皇子なら喜びそうだな。 何故かフレイムは銀時に擦り寄ってくる。 「アチッ、近寄んなよ」 「あら、めずらしいわね、この子が私意外になつくなんて、使い魔同士気が合うのかしら」 「なあ、これって中におっさん入ってるってことはねえよな」 「おっさん?何言ってるの彼」 キュルケは銀時の不可解な発言に顔をしかめながらルイズのほうを見る。 「気にしないで、時々変な事を言うのよこいつ」 ルイズはため息をつく。 「これってサラマンダー?」 ルイズは悔しそうに聞いた。 「そうよ、火トカゲよ、火竜山脈のサラマンダーよ、好事家に見せたら値段なんかつかないわよ」 「そりゃあ、良かったわね」 「素敵でしょう、あたしの属性ぴったり」 「あんた『火』属性だもんね」 「ええ、微熱のキュルケですもの、ささやかに燃える情熱は微熱、でも、男の子はそれで イチコロなの、貴方と違ってね」 「あんたみたいに色気振りまくほど暇じゃないわよ」 そんなルイズにキュルケは余裕の笑みを見せる。 「貴方お名前は?」 「俺か?俺は坂田銀時」 「サカタギントキ?変な名前」 「うるせえ」 「じゃあね」 結局自慢するだけしてキュルケは行ってしまった。 ―なんつーか脳みその中身胸にいったような女だったな。 何気にひどいこと思う銀時。 「悔しいー!何なのあの女、自分が火竜山脈のサラマンダー召喚したからって、ああもう!」 「別にそんなに怒る事じゃねえだろ」 「怒ることよ!メイジの実力はかるには使い魔見ろっていわれるぐらいよ! 何であのバカ女がサラマンダーで、わたしがあんたなのよ!」 「何か傷つくんだけど、その発言、いいじゃねえかあのでっけえトカゲに比べたら 人間のほうが偉いだろ」 「メイジと平民じゃ、オオカミと犬ほどの違いがあるのよ、あんたの場合は虫かもね」 「人の傷口にカラシ塗って楽しい」 銀時はやれやれという顔をした。 「そういやあ、あいつお前のことゼロって言ってたけどどういう意味だ」 「別にあんたが知らなくても良いことよ」 ルイズはバツが悪そうに答える。 ―聞かれたくねえ事なのかよ、それにしても・・・ 銀時はルイズの胸を見て、さっきのキュルケの胸を思い出した。 話しぶりから同級生といった感じだから同じ年かそんなには変わらないだろう。 しかし、発育は圧倒的物量の差があった。 ―神様って奴は残酷なことをしやがる。 銀時は信じてもいない神様のことを思った。 「なっ、何よ」 銀時がこちらを見ているのに気づいたルイズが問う。 「ああ、なんて言うか、強く生きろよ」 「どこ見て言ってるのよ、このバカ犬!!」 胸を見ながら言った銀時の台詞にルイズは怒って銀時を殴った。
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トリステイン魔法学院の食堂は、学院の一番高い、真ん中の本塔にある。 食堂には生徒、先生問わず学院のメイジ達が集まっており、百人は優に座れるであろう、 テーブルが三つ並んでいる。 内装は豪華絢爛であり、テーブルにはロウソクや花が飾られている。 だが銀時は特に興味はなさそうだ。 「メイジはほぼ全員が貴族だから。だからトリステイン魔法学院では貴族たるべき教育を存分に受けるのよ。 だから食堂も貴族の食卓にふさわしいものでなければならないのよ」 「へ~」 隣でルイズが得意げに何か言っているが銀時はそれを冷めた目で見ている。 「わかった、ホントならあんたみたいな平民『アルヴィーズの食堂』には一生入れないのよ。感謝してよね」 「ああ、わかった。庶民の血税がこんなところに消えているのが良くわかった」 銀時は鼻をほじりながら皮肉をかました。 「ぐっ!ちょっとあんた鼻なんかほじらないでよ、恥ずかしいわね、ホントに下品なんだから」 「うるせえな、お前は俺の母ちゃんですか」 ―とにかくこいつに自分が使い魔って事を自覚させてやるんだから。 ルイズはこの生意気でとらえどころの無い使い魔に質素で貧しい食事を床で食べさせることによって 自分がいかに上の立場にいて、銀時がいかに下の立場か自覚させようとしていた。 「いいから、椅子引いてちょうだい、気がきかない使い魔ね」 「へいへい」 そう言って銀時は椅子を引く。 「あんたのはそれだから」 ルイズは床にある皿を指差した。 「なあ、ルイズ」 「何よ」 ―文句言ってきたらひどいんだから。 「これってどういう差恥プレイ?」 銀時の言葉に回りはざわつく。 「聞いたかよ、差恥プレイだって」 「使い魔相手に・・」 「さすが(?)ゼロのルイズだな」 「不潔・・」 周りから聞こえてくる声にルイズは耳まで真っ赤になる。 「ん、どうした、ゆでたこみたいになってぞ」 ワナワナ震えるルイズに銀時は話しかける。 「で・・」 「で?」 「出てけー!!!」 銀時は食堂から追い出され結局廊下で食べることになった。 「なあ、さっき悪かったから機嫌直してくんない」 「うるさい、話しかけないで、全く信じられない」 食事の時間が終わった後、教室に向うルイズと銀時。 ルイズはまだ怒っている。 教室に入るとすでに来ていた生徒達はルイズと銀時に注目する。 そしてなにやらコソコソ何か言っていたり、クスクス笑っている者もいる。 周りには銀時以外の使い魔がいたが銀時は特に気にしなかった。 とりあえずルイズの隣の空いてる席に座る。 ルイズがこちらを睨んだが話すのも嫌なのか何も言わなかった。 「・・・・・成功ですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に、 様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」 授業が始まり、中年の女性の魔法使いが講義を始めた。 ルイズは気まずそうにうつむく。 「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴェリエール」 シュヴルーズが銀時を見てとぼけた声でいうと、教室に笑い声がおきる。 「ゼロのルイズ!召喚できないからってその辺に歩いていた平民連れてくるなよ」 「違うわよ、きちんと召喚したもの!こいつが来ちゃっただけよ」 「嘘つくな、『サモン・サーヴァント』ができなかっただけだろう」 その言い争いを見て銀時は思った。 ―おいおい、こいつら小学生か? 良い争いの内容は小学校低学年のやるものとなんら変わらんかった。 これならいつも神楽と遊んでいるガキどものほうが大人だ。 第一ルイスがムキになって言い返すからますますエスカレートする 女教師のとりなしでどうにか場が納まり、授業が再開された。 ―そういやあ、授業なんて松陽先生の寺小屋以来だな。 授業を聞きながら、ぼんやりとそんなことを思う。 なにやら四大系統やら『火』『水』『土』『風』という単語が飛び交うが 魔法に興味が無く、勉強が嫌いな銀時にとって退屈そのものでしかない。 「ふわぁぁぁ」 眠くなり銀時は大きなあくびをした。 「ちょっと、みっともないわね、やめなさいよ」 あくびをした銀時をルイズは注意する。 「ミス・ヴェリエール」 「は、はい!」 「授業中の私語は禁止ですよ」 「すいません・・・」 「おしゃべりする暇があったら何かやってもらいましょう、ここにある石ころを 何か望む金属に変えてごらんなさい」 「え?わたし?」 ルイズは困ったようにもじもじする。 周りの生徒は急にざわつき始めた。 「やめといたほうが良いと思いますけど・・・」 「どうしてですか」 「危険です」 キュルケはきっぱりといった。 しかしその言葉にルイズは逆に意地になった。 「やります」 「ルイズ、やめて」 他の生徒達も何だか怯えているようである。 銀時は何故周りがおびえ始めたのか分からない。 一体これから何が起こるというのだ。 ルイズが教壇に立ち呪文を唱える。 その間に生徒達は机の下に避難し始めた。 ルイズの呪文名を唱え終わると爆発が起こった。 「いいぃぃ!!」 爆発に巻き込まれた銀時はコントみたいなアフロになっていた。 「ちょっと失敗したみたい」 「ちょっとじゃないだろう!ゼロのルイズ」 「いつだって成功の確率、ほとんどゼロじゃないかよ」 この時銀時はルイズが何故ゼロと呼ばれるか理解した。 その頃ミスタ・コルベールは図書館であることを調べていた。 ミス・ヴェリエールの使い魔の青年に刻まれたルーンがどうしても気になり 書物を読み漁っている。 「これは・・」 ある書物に目を通すとコルベールの顔色が変わった。 彼はそのまま本を抱えたまま図書館から出ていった。 本塔の最上階にある学院長室で学院長オールド・オスマンは秘書のミス・ロングビルに セクハラをかましたおかげで折檻を受けていた。 「オールド・オスマン」 突然入ってきたのは先ほどのコルベールである。 いつの間にか2人とも何事も無いように振舞っているのはさすがだ。 「たた、大変です」 「大変なことなどあるものか、すべては小事だ」 「これを見てください」 コルベールはオスマンに『始祖ブリミルの使い魔たち』と書かれた 書物を先に見せる。 次にコルベールの描いた銀時の手に現われたルーンのスケッチを見せた。 それを見たオスマンの眼光は鋭くなり、秘書のロングビルに席をはずすように言った。 「詳しく説明するんじゃあ、ミスタ・コルベール」 「ったく、何で俺がこんなことを、アフロになるのはド○フのコントだけで十分だっつーの あれ俺高○ブー・・」 銀時はぶつぶつ言いながら壊れた教室の掃除をしていた。 あの後当然のように授業は中止となり、罰としてルイズと銀時は教室の片づけを命じられた。 万事屋の経験のおかげで銀時はなれた手つきで机や椅子を直した。 ルイズは自分の机を拭いている。 ふとルイズと銀時の視線が合った。 「な・・何よ・・どうせあんたも心の中じゃあ私のこと笑ってるんでしょう」 銀時は泣きそうな声で言うルイズに銀時は言った。 「笑わねえし、笑えねえよ」 「え?・・・そんな事言って本当はどうだか・・」 一瞬意外そうな顔をしたルイズだったがいまだ疑いの目を銀時に向ける。 「言っとくけど俺はなあ、一生懸命生きてる奴を笑うぐらい人間腐っちゃいねえんだよ」 自分も天然パーマというコンプレックス抱えているためルイズの気持ちがなんとなく分かった。 ただそのことをルイズが知ったら一緒にするなと確実に怒るだろう。 今までそんなふうに言ってくれた人がいなかったルイズは戸惑い呆然とした。 銀時の言葉が決して嘘やその場を取り繕うためにいった事ではないというのはルイズでも分かる。 ルイズは胸から何か暖かい感情が沸き起こるのを感じていた。 「そ、そうよね、使い魔が自分の主を笑うなんてありえないし・・」 しかしルイズはそれを素直に表現できるほど大人じゃなかった。 まあツンデレだから仕方あるまい。 「そうだルイズ牛乳を飲め」 「は?」 ルイズは突然の銀時の言葉に呆然とする 「カルシウムだ、カルシウムさえ取っときゃあすべてうまくいくんだよ。 魔法だって使えるようになるしそのまな板みたいな胸も膨らむ。 とりあえずカルシウムさえとっときゃあすべてうまく・・」 「いく分けないでしょぉぉ!!まな板みたいな胸で悪かったわね、あんた飯抜き」 銀時はルイズを慰めたつもりだったが逆効果だった。 「くそー、腹減った」 重労働の上に飯抜きにされた銀時はフラフラ廊下を歩いている。 空腹もそうだが、糖分が足りてないことが一番の原因だった。 銀時はここに来てから一切甘いものを口にしていない事に気づいた。 飯すら碌によこさないルイズに頼んでも無駄だという事は分かっている。 ついに銀時は廊下の壁にもたれうずくまった。 「はあ、誰か恵まれない俺に甘い物を恵んでやろうというカインドネスなマインドに 満ちあふれた奴はいねえのか」 廊下を歩く生徒達は銀時を珍獣を見るかのような目で遠巻きに見ているだけだった。 「ギンさん、大丈夫ですか」 そんな銀時に声をかけたのはシエスタだった。 「ああ、銀さんもうだめだ、シエスタ、俺が死んだら墓に『坂田銀時糖分切れでここに死す』 ってきざんどいてくれねーか、お供え物は甘い物で頼むわ」 「そんな、ギンさんしっかりしてください」 「ああもう俺千の風にとかに乗っちゃいそう、何だか眠くなってきたよ、パ○ラッシュ。 とっつあん、真っ白だぜ、真っ白に燃え尽きた」 瀕死の割には余裕のボケをかます銀時だった。 「ギンさん、貴族に出すデザートが少しあまっていますからそれ食べます?」 「マジでか、いいのか」 「ええ」 「あんたどこの女神ですか」 「女神ってそんな・」 シエスタはポッと頬を染める。 シエスタに案内され銀時は厨房でデザートの残りのケーキやフルーツを平らげた。 ついでにまかないのシチューまでご馳走になった。 うめえ、うめえと食べる銀時をシエスタは微笑みながら見つめる。 「あーうまかった、こんなヒューマンに満ち溢れた人がまだこの世にいるとは思わなかったぜ」 「ヒューマン?それよりご飯いただけなかったんですか」 「ああ、あのまな板女、人がせっかく慰めてやったのに・・」 「まな板って、貴族にそんなこと言ったら大変ですわ」 「別にいいだろう、事実なんだから、第一魔法が使えんのがそんなにえれーか」 「ギンさんって勇気がありますわね・・」 シエスタは唖然とした顔で銀時を見つめている。 「そうか?それよりうまかったぜ、ありがとう」 「いえ、またいつでも食べにきてください」 「ううう、ここに来てこんなに優しくされたの初めてだ」 銀時は感動のあまり涙ぐんだ 「義理は果たすぜ、何か手伝えることはねーか」 「ならデザートはこぶの手伝ってもらえます」 こうして銀時はデザートを運ぶのを手伝うこととなったが これがこの後銀時がこの世界で初めての『喧嘩』に発展することに なるとはこの時誰も思わなかった。
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銀時はその後、軽い治療を受けた。 ケガといっても口の中を軽く切った程度である。 殴られた頬にシップを張る程度で終わった。 「本当に大丈夫ですか・・」 「ああ、たいしたことはねえ」 「ふん!勝手に決闘なんかするからよ、自業自得よ、そもそも私に無断で・・」 シエスタが心配そうに見ている横でルイズはブツブツ言っている。 「良いじゃねえか、勝ったんだから」 銀時はルイスをたしなめるように言った。 「でもよかった、ギンさんが無事で、私のせいでギンさんに何かあったら・・・ ごめんなさい・・あの時勝手に逃げて・・」 自分がしたことを思い出してシエスタは涙ぐみ始める。 女に泣かれるのになれていない銀時は慌てる。 「別にシエスタのせいじゃないって言っただろう、あん時シエスタが『洞爺湖』 持ってきてくれなかったほうがやばかったんだからな、むしろ感謝してるつーの」 「へえ、その平民のメイドには優しいのね」 ルイズは顔は笑っているが頭には青筋が出ている。 「何だ、妬いてんのか」 銀時はニヤリとルイズを見る。 「誰が妬くか!!あんた私の使い魔なんだからメイドなんかにへらへらしないの。 やってもらうことは腐るほどあるんだからね」 そう言ってルイズは銀時に洗濯物を投げつけた。 洗濯と掃除が終わった銀時はしばらく暇ができた。 とりあえず学院をブラブラしてみることにした。 行き着いた場所は図書館だった。 銀時は自分には縁のない場所だと思い出ようとしたが ふと目に入った少女が気になった。 ―確かルイズと同じクラスの・・ 教室で見たことがある少女はタバサだった。 タバサは本を読んでいたが銀時に気づいたようだ。 「よう・・確か・・田中・・」 「タバサ・・」 「タバサか・・」 「・・・・」 「・・・」 会話が途切れた。 銀時はものすごい息苦しさを感じた。 「その本なんつー本だ」 「・・・・」 タバサは無言で銀時に本を見せる。 しかし、この世界の文字が読めない銀時には意味がないことだった。 「その本おもしれーのか」 「ユニーク・・」 また会話がなくなった。 ただ銀時はものすごいデジャヴ(既視感)を感じた。 ―ん、なんか前にもこうゆうことあったような。 ―記憶にはないけど『俺』じゃねえ『俺』が体験したような。 銀時は妙な感覚に襲われていた。 ま、あんまり深く突っ込んでほしくない。 「あなた・・使い魔の・・」 「ああ、俺坂田銀時っていうんだ、何の因果か今はルイズの使い魔やってる」 どうにか会話が成立してほっとする銀時。 「さっき・・戦ってた・・」 「見てたのか・・」 「サムライって・・何?」 タバサは銀時が只者ではないと見抜き、銀時が言ったサムライという言葉を調べた。 もちろんそんな言葉はどの本にも載っていない。 タバサが自ら他人に興味を持つのは非常に珍しいことである。 銀時はその質問に少し困った顔をした。 「う~ん、言葉で説明すんのは難しいんだけど。。 そうだな、あえて言うなら、自分の中でこれだけはゆずれねえっていう真っ直ぐな信念持っていて そいつを貫き通そうとする奴のことじゃねえかな」 「信念?」 「まあ、武士道ってやつだ」 「ブシドウ?」 「う~ん、どう言やあいいんだろうな、ま、今度あったらまた話してやるよ。じゃあな」 銀時はタバサの頭をポンポン叩いて図書館から出て行った。 ―不思議な人。 タバサは銀時にそういう感想を持った。 あれだけの腕を持ちながら、普段は殺気が微塵も感じないのだ。 銀時がここに来てから一週間が過ぎようとしていた。 ギーシュに勝ったからと言って待遇が変わったわけ無いが、元々銀時はギーシュ程度に 勝ったからといって待遇が変わるとは期待していなかった。 寝る場所は相変わらず床だが、シエスタがくれた藁とルイズに恵んでもらった毛布の おかげでずいぶん寝ごごちは良くなった。 元々布団で寝ていた銀時は床に寝るのにそれほど抵抗は無い。 ただたまに畳が恋しくなるが。 雑用もそれほど銀時にとって苦ではなかった。 元々1人暮らしが長い上に、万事屋をやっていたのでむしろ手馴れた感じだ。 元いた世界では家賃も碌に払えず、喰う事さえままならないことが日常茶飯時だった 銀時にとっては働けばそれなりに飯が食えるのはむしろありがたかった。 ただ銀時は退屈だった。 この世界はテレビもなければ、ラジオも無い、パチンコ店もなければ、少○ジャ○プも売っていない。 もし銀時が吉○三だったら思わず東京さ出ているところだろう。 雑用するとき以外、たいてい部屋でゴロゴロしてルイズに怒られている。 「我らの剣が来たぞ」 あの日以来、銀時はちょくちょく厨房に足を運んでいる。 ここにくればルイズの飯よりは豪華で量の多いものが食える。 その上甘い物だって食えるのだ。 銀時はかってに厨房のことを糖分摂取場と思っている。 貴族のギーシュを平民である銀時が倒したので、銀時は厨房では大変な人気だ。 シエスタ以外で、銀時のことを特に気にいってるのがコック長のマルトーである。 マルトーが自分達の料理も魔法の一つだと熱弁しているのを適当にうなづく。 「いいやつだな!お前は全くいいやつだな!死んだ魚みたいな目をしているけど」 ―関係ねえええだろうだろうがあぁぁ!! 銀時は心の中で突っ込む。 どうしてここの連中は皆同じ事言うんだと思った。 「なあ我らの剣、俺はお前の額に接吻するぞ!なあ!いいな!」 「いや!マジでやめて!」 銀時はマルトーの顔をぐっと押しのける。 「どうしてだ?」 「いや、俺はオヤジに接吻されて喜ぶ趣味はねえんだよ!」 「はは、こいつは参った」 マルトー以下、厨房は笑い声に包まれる。 「なあ、お前どこで剣を習った?どこで剣を習ったら、あんな風に触れるのか、 俺にも教えてくれよ」 「別に誰から習ったわけじゃねえ、いつの間にか覚えてたんだよ」 銀時の剣は我流であり、実戦によって鍛えられたものだ。 戦いの中を生きていくうちに銀時はいつの間にか剣の達人になっていた。 「聞いたか!お前達!やっぱり本当の達人は言うことが違う!己の腕を誇ったりしない」 銀時はなんかむずかゆかった。 ほめられるのは悪い気がしないが、あんまりほめられたことが無い銀時は どうにもこの状況が慣れなかった。 厨房をふと見ると、小麦粉やら卵が置いてある。 「そういやあ、あんた、料理も魔法の一つだって言ってたな、だったら俺も魔法が 使えるぜ」 「何?」 銀時はいつの間にか三角巾とエプロンをつけている。 卵やら小麦粉を泡だて器でかき混ぜる。 そして数十分後銀時がつくったケーキができた。 「ん、うめえ」 「すげえな、お前ケーキも作れるのかよ」 「ギンさん、すごい」 「趣味と実益を兼ねた特技だけどな」 糖分摂取が趣味の銀時にとってお菓子作りは必要に迫られて会得した特技ともいえる。 銀時が部屋に戻るとルイズは不機嫌な顔をして待っていた。 「どこ行ってたのよ」 「いいじゃねえか、どこでも、仕事はちゃんとしてんだしさ」 「あんたは私の使い魔なんだからちゃんと私の目の届くところにいなさい」 「へいへい、わかったよ、ほれ・・」 銀時はルイズにクッキーの入った袋を渡す。 「なによ、これ」 「みやげだ」 ルイズは袋を取り出してクッキーを食べる。 「おいしい!どうしたのこれ」 「厨房で貰ったんだよ」 正確には銀時が作ったものだが。 しかし、二人の会話が浮気を怪しむ奥さんとそれを土産でごまかそうとする夫 のものにしか聞こえないというのは2人とも気づいていない。 銀時は授業中はたいてい寝ている。 最初は怒っていたルイズだったが、それは銀時を人間として認めることなので 最近は怒らなくなった。 「う~ん、ルイズ・・」 ルイズは銀時に名前を呼ばれてドキッとする。 ―なんだ、寝言か。 「そのお菓子よこせよ、独り占めはずりぃぞ、今なら4分の3殺しで勘弁してやるから・・」 銀時の寝言に周りからは失笑がこぼれる。 ルイズは顔を真っ赤にして 「どういう夢見てんのよ!この馬鹿使い魔!!」 銀時を殴った。 そんな日々をすごしつつ、銀時は元の世界に帰る方法を探しているのだが いかんせん手がかりの『手』の字も出てこない。 ―新八と神楽の奴心配しってかなあ。
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ヴィエストリ広場、そこは『火』と『風』の塔の間にある中庭である。 普段日も差さないことから人の行き来も少ない、逆に決闘には最適の場所である。 しかし、どこから噂を聞きつけたのかすでに広場は野次馬でいっぱいになっている。 「諸君!決闘だ」 ギーシュはきざったらしくバラの造花を掲げている。 周りからは歓声が巻き起こる。 普段娯楽の少ないトリステイン魔法学院の生徒にとって決闘はある意味最大のショーかもしれない。 「ギーシュが決闘するぞ、相手はルイズの平民だ」 銀時は自分が見世物にされてるようで、やれやれと頭を掻く。 派手な喧嘩は好きだがこれは何か違うような気がする。 いい加減平民と呼ばれるのにもなれてきた。 ギーシュは周りの歓声に答えて腕を振っている。 ―いい加減さっさとはじめろよ。 銀時はだんだんめんどくさくなってきた。 「とりあえず、逃げずに来たことは、ほめてやろうじゃないか」 「逃げねーよ」 ギーシュの芝居がかった台詞に銀時はうんざりとした声で答える。 「さてと、では始めるか」 とりあえず銀時は先手必勝で行くことにした。 相手がどんな魔法が使ってくるか分からない以上先に動いたほうが有利。 駆け出した銀時をみてギーシュは余裕の笑みを浮かべ、バラを振る。 花びらの一枚が銀時の前に舞ったかと思うとそれは甲冑を着た女戦士のゴーレムとなった。 「なっ、こいつが魔法ってやつか」 「僕はメイジだ、だから魔法で戦う。文句をあるまいね」 「ねえよ」 銀時は少しほっとした。 まだゴーレムなら戦いようがある。 ルイズみたいにいきなり大爆発を起こされるよりはましだ。 「言い忘れたが僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム、 ワルキューレがお相手するよ」 「『青銅』ってゴー○ドセ○ントより下じゃねえか、ペガ○ス流○拳でも打てるのか?」 銀時は軽口を叩きながら腰に手を当て居合い抜きの体勢をとる。 スカッ 「あり?」 ここでいつものあの感触が無いのだ。 銀時の愛刀である『洞爺湖』が腰にかかってないのだ。 この時銀時は思い出した。 さっき飯を食うとき、邪魔だからという理由で腰からはずして厨房に置いてきたことを。 すでにワルキューレは眼前に迫ってきている。 「あ・・え・・ちょっ・・まっ・・げふっ!」 まずは顔面を殴られた、そして次に腹を殴られた銀時は地面に倒れる。 「なんだよ、もう終わりかい」 「へへ良いパンチしてんな、世界をねらえるじゃねえか」 あきれるようなギーシュの言葉に銀時は今だに軽口で答える。 ―今から『洞爺湖』取りに戻っていいって言っても無理だよな。 今この状態でそんなことを言っても逃げる言い訳にしか聞こえないだろう。 殴られた銀時は口から血が出ている。 「ギーシュ!」 ギーシュを叫ぶように呼んだのはルイズだった。 「おおルイズ、悪いな君の使い魔をちょっとお借りしているよ」 「いい加減にして、大体ねえ、決闘は禁止じゃない」 「禁止されてるのは貴族同士の決闘だ。平民と貴族の決闘は誰も、禁止なんかされていない」 ルイズは言葉に詰まった。 「そ、それは、そんなこと今まで一度も無かったから・・」 「ルイズ、君はそこの平民が好きなのかい」 ギーシュの冷やかすような言葉にルイズは顔を真っ赤にする。 「誰がよ!やめてよね!自分の使い魔が怪我するのを黙ってみてられないだけよ!」 「ルイズ、心配してくれてるところに悪りいんだけどこいつは俺の『喧嘩』だ」 「だ!誰があんたの心配なんか・・」 「そうかい、お前意外に優しいなあとおもったんだけどよ」 「な!何いってるの!!」 ルイズはさらに顔を真っ赤にして怒る。 「俺は俺なりの筋を通さねえといけねえんだ、悪いけど邪魔すんな」 「ギントキ!」 「何だ、はじめて会った時以来だな、俺の名前を呼ぶの」 シエスタは走っていた。 ―あの人に届けなきゃ。 野次馬を書き分けシエスタは前に出た。 「ギンさん!!これを」 シエスタは抱えていた木刀『洞爺湖』を投げた。 『洞爺湖』は回転して銀時の前に突き刺さった。 銀時はニヤリと笑う。 「サンキュー、シエスタ」 「ほう、木刀か、良いだろうそれぐらいのハンデが無ければつまら無いからな。 平民がせめてメイジに一矢報いようと磨いた牙だ、未だ噛み付く気があるのなら その木刀を取りたまえ。ま、もっともそんな物で僕に勝てるとは思えないが」 「だめ!絶対駄目なんだからね!それを握ったらギーシュは容赦しないわ!」 ルイズは止めようとするが銀時は全く意に介さない。 「うるせえよ、キザ野郎」 銀時は口について血をぬぐいながらゆっくりと立ち上がった。 「メイジだかチョコレートだかブリガリアヨーグルトだが知んねえけどよ ちょっと力があるからって無い奴のこと『ゼロ』だの『平民』だのって 見下す権利があるのかよ」 銀時の言葉を聞いてルイズやシエスタははっとする。 銀時はもしや自分達のために戦っているのではないかと。 銀時のいる地球は今、天人(あまんと)と呼ばれる宇宙人達に支配されている。 その昔、銀時はそれに対抗して天人達と攘夷戦争で戦った。 しかし、その結果は敗北。天人達は幕府を実質支配し、街を我が物顔で歩いている。 別にそれはかまわない、銀時は桂のように『革命だ』『体制の打破だ』と言う気は 到底無い。 しかし、それでも周りにいる人間の命や尊厳が踏みにじられるのを黙って見てられる わけでもないのだ。 それは異世界に来ても同じことだった。 「んなもん、誰にもねえんだよ、それをこいつで教えてやるよ」 銀時は『洞爺湖』を手に取った。 その時銀時の左手のルーンが光りだした。 時間は少しさかのぼる。 学院長室ではコルベールがオスマンに熱弁をふるっていた。 「始祖ブリミルの使い魔『ガンダールヴ』に行き着いた、というわけじゃな?」 「そうです、あの青年の左手のルーンは、伝説の使い魔『ガンダールヴ』に刻まれた物と まったく同じであります!」 「で、君の結論は?」 「あの青年は『ガンダールヴ』です。これが大事じゃなくてなんなんですか! オールド・オスマン!」 オスマンは異常にテンションの高いコルベールに少し引き気味ながら、慎重に 判断するように言った。 するとそこにロングビルが入ってきてヴィエストリ広場で決闘が始まったことを伝えた。 決闘の現場にいたメガネをかけた青い髪の少女タバサは決闘には興味が無いのか 本に視線を集中させている。 今この場にいるのも隣にいるキュルケに半ば無理やり連れてこられたからだ。 ただルイズの使い魔が木刀を手にした瞬間、彼女は初めて銀時を見た。 「あの人・・・強い」 「え、タバサ、何か言った」 木刀を手にした瞬間、銀時の目が変わったのがわかった。 それまでの死んだ魚の目から獣のような目に。 シュバリエであるタバサだけが分かった。 あの目は幾多の戦場を駆け抜けた歴戦の戦士の目であることを。 『洞爺湖』を手にした銀時にワルキューレが襲い掛かる。 ワルキューレは再び銀時の顔面を狙ってパンチするがふっと銀時が目の前から消えた。 「遅せえ」 いつの間にか銀時は横にいた。 そして『洞爺湖』を思いっきりワルキューレの顔面に振りぬく。 ワルキューレの頭部はあっさり砕け散った。 「そんな馬鹿な!!」 「嘘でしょう・・」 ギーシュやルイズは驚く、いや、今この場にいるすべての人間が同じ気持ちだろう。 青銅でできているワルキューレを銀時は木刀で打ち砕いたのだから。 銀時も自分の体に起こった異変に驚く。 『洞爺湖』を持った瞬間から体が軽くなりいつも以上に力がわいてくる。 ギーシュは慌ててバラを振る。 花びらからワルキューレが6体生まれ、銀時の周りを囲むように襲う。 しかし銀時の一振りで3体ものワルキューレが吹っ飛び動かなくなった。 銀時の強みは常人を上回る身体能力と圧倒的戦闘経験から来る戦闘スキルだ。 その上『ガンダールヴ』の力が上乗せされているのだ。 常に多数相手に戦ってきた銀時にとってワルキューレが1体だろうと6体だろうと かわらなかった。 最後の1体も銀時によって破壊された、戦闘が始まって1分もたってないかもしれない。 周りは呆然としている。 「ひぃぃぃ」 ギーシュは腰を抜かしている。 そんなギーシュを見て銀時は 「はぁい、終了ォ、終わりィ、撤収ゥ」 『洞爺湖』を腰に納めたのである。 このままギーシュをボコルこともできる。 刀を突きつけて降伏を迫る事だってできるはずなのに銀時はそれすらしなかった。 「な、平民、僕に情けをかけたつもりか」 「情けだぁ、そんなもんお前にかけるぐらいならご飯にかけるわ。 『喧嘩』ってのはよぉ、何かを護るためにやるもんだろが、俺はもう護った」 「護ったって、君は何を護ったっていうんだ」 「俺の武士道(ルール)だ」 そう言って銀時はギーシュに背を向けて歩き出した。 途中にいるルイズの頭を触る。 「こいつの誇りもだな」 その言葉を聞いてギーシュはひざを地面ににつけてうなだれる。 ちっぽけなプライドを護ろうとしていた自分が到底勝てるわけ無かったのだ。 「僕の負けだ、完敗だ」 ギーシュが自らおこなった敗北宣言により周りからは歓声が起こる。 この場から出て行こうとする銀時にギーシュは言った 「待て、君は一体何者なんだ!」 銀時はピクリととまり、振り返らず言った。 「俺は坂田銀時、ただの侍だ」 遠見の鏡で一部始終を見ていたオスマンとコルベールは顔を見合わせた。 『ドット』とはいえ、平民がメイジに圧勝したのである。 「オールド・オスマン。早速王室に報告して指示を仰がないことには・・」 「それには及ばん」 オスマンはきっぱりと言った。 もしあの青年が本物の『ガンダールヴ』なら偉いことである。 それを利用しようとするものもたくさん出てくるであろう。 王室とて例外ではない。 その上現段階では謎が多すぎる。 「ははあ、学院長の深謀には恐れ入ります」 「この件は私が預かる、他言は無用じゃ。ミスタ・コルベール」 「は、はい、かしこまりました」 コルベールが出て行った後、オスマンはアゴヒゲを触りながら考える。 「しかしあのサムライという言葉どこかで聞いたような・・」
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ルイズは夢を見ていた、子供の頃の夢を。 あの頃自分は優秀な姉と比べられ、いつも叱られていた。 「ルイズ、ルイズ、どこに行ったの? ルイズ! まだお説教は終わっていませんよ!」 この日も魔法の成績が悪いと母親に叱られていたのだ。 「ルイズお嬢様は難儀だねえ」 「まったくだ、上の2人のお嬢様は魔法があんなにおできになるというのに」 召使の陰口に歯噛みしながら、ルイズはいつもの場所に向った。 彼女が秘密の場所と呼んでいる中庭の池、そこに浮かぶ小さな池。 ここにはめったに人がくることも無く幼い頃のルイズは落ち込むといつもここへ来ていた。 そしていつものように船に乗り、毛布をかぶった。 「泣いているのかい、ルイズ」 声をかけてきたのはルイズより歳が10歳ぐらい上の子爵だ。 最近近所の領地を相続したその貴族はルイズにとって憧れの君だった。 「子爵様、いらしてたの?」 「今日は君のお父上に呼ばれたのさ。あの話のことでね」 「まあ!」 それを聞いてルイズは頬を赤く染めうつむく。 「いけない人ですわ。子爵さまは……」 「ルイズ。ぼくの小さなルイズ。きみはぼくのことが嫌いかい?」 おどけた調子で言う子爵の言葉にルイズは首を振る。 「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」 そんなルイズに子爵はにこりと笑い手を差し伸べる。 「子爵様・・・」 「ミ・レィディ。手を貸してあげよう。ほら、つかまって。もうじき晩餐会が始まるよ」 「でも・・・」 「また怒られたんだね? 安心しなさい。ぼくからお父上にとりなしてあげよう」 ルイズはその子爵の手を握る。 「くくく・・・」 突然子爵が笑い出した。 「子爵様?」 「ぶひゃひゃひゃ・・」 とても貴族とは思えない下品な笑いにルイズは困惑する。 子爵は帽子をばっとはずす、帽子は風で飛んでいった。 その下の髪は子爵の持つ綺麗なストレートの髪ではなくモジャモジャの天然パーマだった。 そう、子爵だと思った人物はルイズの使い魔、坂田銀時だった。 ルイズの姿もいつの間にか16歳に戻っている。 「なんであんたが・・・」 「ひー腹いてー・・よう、じゃじゃ馬娘、おめえの憧れの子爵様のちょっとまねやったら 簡単に引っかかるんだもんなー、何が『いけない人ですわ。子爵さまは……』だよ。 普段そんな言葉一言使わねえくせに癖に笑わせてくれるな」 銀時は腹を抱えて笑いすぎて涙目になっている。 「ギントキのくせに・・使い魔のくせに・・・」 ルイズは顔を赤くしながら怒る。 「ぷぷ・・そんなこといってほんとはわかってるんだぜ」 憧れの子爵の格好をした銀時はニタリと余裕たっぷりの笑みを見せる。 「何よ?」 「ルイズ、おめえはこの銀さんに惚れてんだろ」 「ば・・ばかじゃないの! 何ちょっと一緒に踊ったからって、調子に乗らないで! あんたのことなんか大嫌い!!」 「そうかい、そうかい、そいつは良かった」 「え?」 銀時の意外な言葉にルイズはさらに困惑する。 「ガキなんざ最初から興味ねえし、惚れられてもうぜえだけだし 元々居たくてこんなところに居るわけじゃねえし」 「ちょっと・・・」 ルイズは何か言おうとするが言葉が出てこない。 もしここで反論したら惚れていることを認めてしまうようなものだ。 「じゃあな、ルイズ、俺は神楽のところに帰るわ」 「ちょっと待ちなさいよ、あんたは私の使い魔なのよ、勝手に帰るのは駄目」 「別にいいだろう、嫌いな男となんか一緒にいたくねえだろうし、じゃあなルイズ」 そう言って銀時は船から高くジャンプしそのまま消えてしまった。 ルイズは一人船に取り残される。 船はいつの間にか池の中央まで来ていた、魔法が使えないルイズはここから出られなくなってしまった。 「ギントキ、待ちなさいよ、勝手に帰るなー!!せめて船元の場所に戻しなさい」 ルイズの叫びに答える者は誰も無く、池の中に消えていくだけだった。 「うぃー、今けーったぞ、銀さんのお帰りだぞ、ひっく」 銀時は酔っ払いながらルイズの部屋のドアを開けた。 今日はマルトーと飲んで帰ってきた。 かなり遅い時間のためルイズはベッドに寝ている。 「何だ、寝てんのか」 「うわ、お前酔っ払ってんな、相棒」 部屋の隅に置かれたデルフは呆れたように銀時を見た。 「いいじゃねえか、マダケン、っと」 銀時はフラフラしながら部屋の中に入る。 「おい、相棒そこは・・」 銀時はルイズのベッドに倒れこんだ。 銀時は酔っ払って家に帰ったとき、ソファーにそのまま寝る癖があり、 その癖がそのまま残ってルイズのベッドに潜り込んでしまったのだ。 そのままいびきをかきながら銀時は眠ってしまった。 「ん~、ギントキ、待ちなさい・・」 眠っていたルイズは目を覚ました。 「何だ夢か・・そうよね、使い魔が主人をおいて勝手に帰るなんて・・」 ルイズはほっとしたように横に寝返りをうつ。 ルイズの顔には何か白くてモジャモジャしたものが当たった。 ―なにこれ・・ ルイズはそれを良く見る。 それは人の髪の毛のような物だった。っていうか髪の毛だ。 そして自分の目に銀時の寝顔のドアップがうつる。 銀時は自分のすぐそばで寝ているのだ。 「きゃああああ!!ああああんたなんでここにいるのよ」 「んだよ、うっせえな、人が気持ちよく寝てんのに・・ん、ルイズ、お前夜這いか?」 ルイズの悲鳴を聞いてそれまで寝ていた銀時は目を覚ます。 「夜這いはあんたでしょうがぁぁぁ!!」 ルイズは銀時の股間を思いっきり蹴飛ばす。 「ぐおおおぉぉ!! 何しやがるこのブス!!もう一人のデリケートな俺が今大変なことになってんぞ。 パー子か、俺をパー子にする気か!!」 「ブスですって!!ゼロといわれてもブスって言われたことは無いのに」 ルイズの怒りが最早違う方向に向っている。 「うっせえブス」 「このー!!」 ルイズは銀時の首にギロチンチョークをかける。 「うおおお、ちょっとぉぉ!!俺の首と胴体が離婚寸前なんだけど、ふざけんな、俺はまだ別れねえぞ」 こうしてルイズの部屋では深夜のプロレス大会もしくはSMプレイが始まった。 その頃フーケが囚われているチェルノボーグの監獄 「ぐっ、まだ顔がひりひりする、あの使い魔、人の顔面思いっきり叩きやがって」 牢屋の中ではフーケが悪態をついていた。 銀時もさすがに加減はしたが、それでもフーケにとっては死ぬほど痛かった。 痕に残らなかったのは奇跡といってもいいだろう。 フーケは悔しかった。 あの使い魔の徹底的に人を馬鹿にした態度が、その上普段はちゃらんぽらんである。 そんな使い魔に自分は捕まったのだ。 フーケは銀時とは喋ったことは無いが何度か見たことはある。 ちゃらんぽらんなくせに学院で働く平民からは妙に人気があった。 最初はギーシュを倒したからだと思ったがどうもそれだけではないようだ。 人当たりがいい風にも見えない。 実際顔は好みだった。 あの天パと死んだ魚の目を除けば結構見れる顔だ。 キュルケが自分の素性を聞いてきたとき、庇うような事をいってくれたのは 正直嬉しかった。 ―って何考えてるんだ私は。 フーケは今思ったことを振り払った。 「くっ、もしここから出られるならあの男をギャフンと言わせてみたいね」 フーケはうなだれながらそんなことを口にした。 そんなことは不可能なのはわかっている。 杖を没収されている上、裁判にかけられたらよくて島流し、悪くて縛り首だ。 誰かが近づいてくる音が聞こえる。 見回りの看守の足音にしては妙だ。 来たのは白い仮面をかぶった貴族の男だった。 「お前の願い叶えてもよいぞ」 「聞いてたのかい、趣味が悪いね」 男は自分を脱獄させてやるといってきた。 話を聞く限り、今アルビオンでクーデターを起こした貴族派の一味らしい。 自分たちの仲間になれというのだ。 フーケにとっては断る理由が無かった。 正直あまり乗り気ではないが断ったらどの道殺されるか、縛り首だろう。 「これから旗を振る組織の名前ぐらいは、教えてもらってもいいんじゃないかい」 フーケの問いに白仮面の男は鍵を開けながら答えた。 「レコン・キスタ」