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5 策謀の代償 ハルケギニアの本は高い。 印刷技術の問題もあれば、紙そのものの値段も相当なものなのである。 手の平に乗る程度の小さな本が銀貨で50枚ということも少なくない。平民の一ヶ月の生活費がエキュー金貨で10枚程度。スゥ銀貨は100枚で1エキューと同等の価値があることから、本を一冊買うと生活費の20分の1が消えるということだ。 そんな出費をすれば、食卓からおかずが一品消えることは間違いない。 トリスタニアの書店を利用するのは、本の高価さも関係して貴族が殆どである。中にはどうしても欲しい本を求めて、平民がお金を出し合って購入するということもあるが、基本的に、平民の半分以上が文字の読み書きが出来ないため、そういった例は貴重と言えるだろう。 本は高いものである。それは、世界の常識なのだ。 「はあぁあ!?こんなガキの読むような本が、5エキューもするだと!?」 看板に王宮御用達などという言葉が添えられている本屋の店員に、ホル・ホースが一冊の本を手にして詰め寄っていた。 手にしている本のタイトルはイーヴァルディの勇者。シャルロットが大切にしていたものと同じ本である。 シャルロットへの謝罪の意味を篭めてプレゼントを用意しようと考えていたのだが、厚く丈夫な装丁で飾られた大きな児童書は、その内容の稚拙さにも係わらず、財布を容赦なく攻め立てる高額さを誇っていた。 頭の禿げた細身の店主は、納得がいかないといった様子のホル・ホースに冷や汗を流しつつ、本が高額である理由を語る。 「実はですね、このイーヴァルディの勇者という本は、二年前に一度中身を改訂しておりまして、古いほうは絶版になっておるのですよ。お客さんが求めておられる本は貴重なもので、在庫にある数点を残せば、もう手に入らないものなのです」 希少なものは高い。その内容がなんであろうと。需要を満たせない供給は、必然的に高くなるものなのだ。 ぐぬぬ、と歯を食い縛ったホル・ホースは、本を店員に持たせると、ポケットから取り出した自分の財布の中身を見て、ガックリと肩を落とす。 ”緑の苔”亭の女主人から貰った駄賃は、銀貨60枚。随分と太っ腹な額を持たしてくれたが、”魅惑の妖精”亭の飲食代と昨日の宿賃を払ってしまうと、残ったのは銅貨が数枚だけ。 正直に言えば、今日の昼食にも困っている。 「ああ、クソ!しょうがねえ。店員さんよ、あとでその本を必ず買いに来るから、他の客に売るんじゃねえぞ!」 「ええ、はい。またのお越しをお待ちしております」 吐き捨てるように言って店を出て行くホル・ホースの背中に、店員がマニュアル通りの挨拶を送った。 それほど大きくない店の中には本棚に沢山の商品が並べられている。特に高額なものはガラスケースに入れられて、店員の許可がなければ手に取ることは出来なくなっているようだ。庶民向けの低俗とされるものは比較的店の外に近く、その一角で若い女性達がひそひそと相談事をしていた。 その様子を横目に見つつ店の外に出ると、布で全身を覆っているエルザが退屈そうに欠伸をしているのを発見した。 「よう、終わったぜ」 ホル・ホースの姿を見つけてぱっと表情を輝かせたエルザが小走りに駆け寄り、両手を伸ばして抱っこを要求した。ホル・ホースの腕の中は、もうエルザの特等席なのだ。 小さな体の両脇に手を入れて抱き上げたホル・ホースは、帽子をエルザの頭に被せて結果を報告した。 「ダメだな。今のオレには逆立ちしても買えそうにねえや」 その言葉に、エルザは予想していたことのように苦笑いをしてホル・ホースの首に抱きついた。 春を迎えて少し時間が経ったせいか、日差しが強くなっているのを感じる。 往来を行く人々も薄着が目立つようになっていた。ハルケギニアの夏は過ごしやすいものだと聞いていたが、この分ではあまり当てになりそうにはない。 熱いのは勘弁して欲しい。 かつて横断した砂漠を思い出して、溜息をつく。 ホル・ホースは自分の帽子をエルザに被せると、さて、と呟いて足を動かした。 本来ならガリアに戻る予定だった二人だが、そういえば、と思い出したのがトリステインにある魔法学院の存在だ。 シャルロットは普段、学院で寮生活を送っている。自分達を追うためにまだガリアに居る可能性はあるが、そう何日も滞在してもいられないはずだ。学院に戻っている可能性は高いだろう。 なら、徒歩でガリアに戻るよりも近い場所にある学院へ足を運び、シャルロットに謝罪するついでにシルフィードで送ってもらえばいい。 そう考えて未だにトリステインにいるのだが、学院に赴くにしても手土産の一つもなければシャルロットの機嫌も簡単には直らないだろうと、こうしてトリスタニアの書店をに足を向けているのだ。 実のところ、入った書店はこれで三軒目。店の主人が言うように、確かに貴重な本らしい。改訂された薄い本ばかりが並んでいて、肝心の厚手の羊皮紙で書かれた古いものはここにしかなかったのだ。 やっとのことで見つけても、超がつくほどの高級品。 肩透かしを受けた気分だった。 「まあ、こうしてても仕方がねえ。ちょいと一仕事見つけてくるか」 ホル・ホースはそう呟いて、胸のポケットにしまった一枚の紙を取り出した。 “魅惑の妖精亭”のジェシカから聞いた、傭兵達が集まる酒場がメモされている。血生臭いことを専門に扱う職業斡旋所も兼ねていて、新参者でもなにかしら仕事が手に入るだろうと紹介された場所だ。 なんでそんな場所を知っているのかと疑問に思ったが、そこは蛇の道は蛇。同じ酒場の関係でどこがどういう役割を担っているのかを、歓楽街に住む人間達は良く理解しているらしい。 一概に酒場と言っても裏ではイロイロあるのだなあ、と感心しつつ、トリスタニアの外周に近いチクトンネ街の端に向けて歩き出す。 「やっとまともに仕事するの?」 「ああ、そういえば、お前とコンビを組んでからは何もしてなかったなあ」 エルザと出会って、そろそろ二週間。いい加減、コンビとしての力を確認しておいたほうがいいだろう。 仕事と言えるような仕事を新参者が貰えるかどうかは、別の話だが。 「ここを、右か」 人通りの多いブルドンネ街を横道に逸れて一つ奥に入ると、すぐにチクトンネ街が見えてくる。左手に“魅惑の妖精”亭を確認して、ホル・ホースは進路を右に向けた。 首都の構造は至って単純。中心にある王城付近が最も発展しており、外周に近づくに連れて金の匂いが少ない平民達の家が広がっていく。この辺りはトリステインもガリアもあまり変わらない。 トリスタニアの入り口から王城までの道を歩く間、比較的見栄えのいい建物が多く見えるのは、国外の客を迎える場合などを考慮して意図的に手を加えているのだろう。表の大通りであるブルドンネ街と裏の大通りであるチクトンネ街を歩き比べてみると、それが良く分かる。 町の外に向かって建物の背が低くなり、道行く人々にも変化が見られた。貧困層とまでは言わないが、あまり身なりが良いとは言えない人間の割合が増えていくのだ。 紙切れを片手に歩くホル・ホースが一つだけ妙に大きい酒場に辿り着いたとき、エルザが不快そうに眉を寄せた。 「鉄臭い」 血中に含まれる鉄分の臭いが、錆び付いた異臭を放っているようだ。ホル・ホースには分からなくとも、吸血鬼であるエルザにははっきりと認識できるらしい。 なるほど、とホル・ホースが呟いて、店の看板を見上げた。 “跳ね兎”亭。名前に似合わない、飢えた狼さんが沢山いそうな雰囲気である。 どこの酒場にもある羽扉をいつものように開いて、店内に足を踏み入れたホル・ホース は予想外の光景に戸惑った。 客がいないのだ。いや、それどころか、店員すら居ない。 木造の広いフロアには丸いテーブルがいくつもあるが、それも床に倒れ、椅子と一緒に散乱している。一見争った後のようにも見えるが、それにしては壁や床の傷が少ない点が不自然だった。 カウンターの奥に目を向けると、大抵の酒場でボトルやワインの瓶が並んでいるはずの壁掛けの棚には、それらしいものは一つも見当たらない。商売自体をやっていないようだ。 床やテーブルに埃が積もっていないということは、つい最近まで掃除がされていた証拠だろう。 閉店したのか、それとも店を間違えたのか。 もう一度看板を確認しようと振り返るホル・ホースに、全身を覆うローブで姿を隠した人物がぶつかってきた。 「邪魔だよ。どきな」 自分でぶつかっておきながらキツイ言い方をする人物だ。 揉め事を起こす気も無いホル・ホースが道を譲ると、そのまま店の中へと入っていく。 客か店員か、どちらにしてもあまり良い印象ではない。 「なんだい、これは」 足を止めてフードを取ると、緑色の長い髪を晒したメガネの女が顔を見せ、その場で呆然と呟いた。 目尻が尖り、瞳には少し暗い色を湛えている。真っ当な仕事をしているようには見えない人種だ。となると、ホル・ホースと同じように、裏家業と呼ばれるような事を生業としているのだろう。 そんなことよりも、ホル・ホースにとってはもっと重要な点があった。 スッと筋の通った鼻に薄く血色のいい唇、流れるような眉。少し気の強さを感じさせるが、女は上物の美人だったのだ。 マントの上からでも分かるボリュームのある胸、丸い尻はいわずもがな、顎のラインを考えれば、体全体は脂肪の少ない細身であることも推測できる。 しっかりと手入れがされた髪が艶を持っているということは、貴族か、あるいはその周囲で重要な位置にいる人間のはずだ。 ハルケギニアの平民達が身を清めるために使う入浴施設は、サウナ風呂か水浴びくらいのもので、髪の手入れなど濡れた布で拭くくらいに過ぎない。それでは、彼女のような艶のある髪にはならないはずだ。 それだけではない。身体から少し甘い香りがするのだ。香水か、入浴剤を使っている証拠だろう。それだけで、女が裕福であることを確信させる。 見た目だけなら、良い女であることに間違いはない。こんな曰くつきの酒場に用のある人間でなければ、すぐにでも口説いていただろう。 「姐さん、こんなところに何の用だい?」 ホル・ホースの声に振り向いた女は、胡散臭そうなものを見る目で鼻を鳴らした。 「誰かになにかを聞くときは、自己紹介くらいするもんだよ」 世間話程度の質問でも簡単には答える気は無いらしい。 警戒心の強さに感心しつつ、ホル・ホースは店内の日陰に寄ってヒヒと笑った。 「そりゃ、失礼。オレはホル・ホース。こっちは、エルザだ」 エルザの頭に被せられた自分の帽子を取って、布に包まれた少女の姿を晒す。 前にも同じようなやり取りをしたためか、エルザも心得た様子でホル・ホースの腕の中で小さくお辞儀の真似をした。 「エルザです。よろしくね、お姉ちゃん」 今回は毒舌は無いらしい。 内心でホッとするホル・ホースを余所に、女が感嘆の息を吐いた。 「へえ。ホル・ホースと言えば、最近噂になってるメイジ殺しじゃないかい。子連れって話は聞いてないけどねえ」 ホル・ホースのつま先から頭頂部まで値踏みするように見る女に、ホル・ホースは首を傾げる。 子連れは誤解を受けることも以前にあったが、メイジ殺しというのは聞きなれない呼び名だった。不名誉極まりない名前を幾つも付けられた覚えはあっても、そんな、どことなくカッコイイ呼び名には覚えが無い。 それが自分のことかどうか判断が付かないホル・ホースに、女は人を間違えたのかと眉を顰める。 「ああ、なるほど。そう呼ばれてもおかしくないか」 二人を眺め見ていたエルザが、納得したように手をポンと叩いた。 「なんだそりゃ?」 まったく心当たりの無い様子のホル・ホースに、得意げに胸を反らしたエルザが解説を始める。 「メイジ殺しっていうのはね、一対一でメイジを殺せる技能を持った平民のことを指して言う言葉なのよ。お兄ちゃん、以前に暗殺請け負いしてたって言ってたじゃない。そのときの標的の中にメイジも混じってたんだと思うわ」 ああ、と声を洩らして、記憶の中で仕留めた目標を思い出す。 杖を持っている相手が何人か居た気がする。敵を前にブツブツ言っていたのは、後で魔法の詠唱をしているのだと知ったが、その時は頭のおかしい人間かと思って気にしていなかった。あれを仕留めたから、メイジ殺しなどという二つ名がついたらしい。 しかし、不思議に思う。 「メイジなんて、魔法を使う前に殺っちまえば雑魚じゃねえか」 ホル・ホースの能力は銃だ。見えず、聞こえず、発射された弾丸はホル・ホースの意思によって弾道に変化すら与えられる。 メイジも遠距離による攻撃を可能としているとはいえ、普通に考えれば詠唱の時間が致命的となる。特に、瞬き一回分の時間があれば銃の引き金を引けるホル・ホースにとっては、まさに敵ではない。 しかし、まだ銃というものが発明されて間もないハルケギニアでは、平民がメイジを打倒するには、やはり剣や弓に頼るしかないのだ。銃は、その能力を信用するにはまだ精度が低すぎる。 そこまで理解していないホル・ホースにとって、メイジが脅威などという感覚は理解の範疇から外れたものだった。 「お兄ちゃんは特別なの!もう、実力のあるメイジにそんなこと言ったら怒られるよ?」 「そういうもんかねえ」 呆れたようにエルザが言うが、やはりホル・ホースには実感がわかなかった。 メイジ殺しがメイジを殺した凄さを理解していない。そんな事実に女も呆れている様子で深く溜息を吐いていた。 「まあいいさ。そっちが話した以上、こっちも名前くらいは名乗ろうかね」 面倒くさそうに肩を竦めて、女は度の入っていないメガネを取った。 「フーケ。アンタたちも、名前くらいは聞いたことがあるだろう?貴族専門の盗賊、土くれのフーケってのは、あたしのことさ」 ふ、と鼻で笑うフーケに、ホル・ホースとエルザが首を傾げた。 元々近い顔を更に近づけて、お互いに尋ねる。 「エルザ、知ってるか?」 「ううん。知らない。ガリアじゃ聞いたこと無いよ」 ぼそぼそと小声でやり取りをする二人に、フーケのこめかみに青筋が浮かんだ。 「し、知らないのかい?トリステインやアルビオンじゃ、盗賊と言えばあたしの名前が最初に挙がるくらい有名なのに?ガリアにだって噂くらい届いてるだろう!?」 少しずつ語気を強めていくフーケを見て、ホル・ホースとエルザは申し合わせたかのように同時に首を横に振った。 元々噂話になど興味の無い二人だ。外国の犯罪者の名前など、気にしたことも無い。噂話に係わったことと言えば、エルザがヴェルサルテイル宮殿でホル・ホースのあだ名に関しての話を集めたときくらいだろう。 思った反応を得られなかったフーケが、小さく舌打ちして顔を逸らした。 「おかしい。なんであたしの噂が広がってないのさ。今までに襲った数は20は下らないはずだよ。ああ、でも、相手にした貴族が小物過ぎたか。もしかして、やり口が地味?いまいち土じゃぱっとのしないのかねえ。もっと派手にやるべきか……」 小声で独り言を始めるフーケを気味悪く思い、この場を離れようとするホル・ホースを止めてエルザが口を開いた。 「それよりも、お姉ちゃん。このお店に何の用だったの?」 ぴくり、と肩を震わせたフーケが顔を上げてエルザを見る。 「そうだよ。酒場に来ただけなのに、なんであたしが落ち込まなきゃなんないのさ」 頭を振って意識を切り替えたフーケは、店内を見渡して小さく息を吐いた。 見渡す限り、目に付くようなものは何も無い。人が存在していた痕跡はあるが、それもかなり時間が経っているように思える。 店の前でエルザが感じた鉄の臭いは、恐らく建物自体に付いているもので、誰かの体から感じたものではないのだろう。 店の住人がどこへ行ったのか、それが今の問題だ。 フーケが店の中を歩き出し、視線を彷徨わせる。 「あんたたちはこの店の事情か何か、聞いてないかい」 「いや。知らねえな」 カウンターの中や店の奥を覗きながら尋ねてくるフーケに、ホル・ホースは否定の言葉を返した。 事情も何も、今日初めて店の存在を知って、今日初めて来たのだ。知るはずが無い。 ホル・ホースもフーケ同じように店の中を歩き回ってみるが、コレといったものは見つからなかった。 一つ分かったことがあるといえば、金目のものが一つもないということくらいか。 棚の板に指を滑らせて、指先に付いた少量の埃を、フッと息を吐いて吹き飛ばす。 「これは……夜逃げかも知れねえな」 「夜逃げ?」 ホル・ホースの呟きに、隣に並んで店の中を見ていたフーケが聞き返す。 「ああ。経営不振かなんかじゃねえか?立地条件も良いとは言えねえし、最近は客の数も少なかったみたいだしな」 「なんで、そんなこと分かるの?」 エルザが首を傾げた。 「臭いだ。酒場なのに酒の匂いがしねえ。客が入っていれば、もう少しアルコールの匂いがあってもいいはずだ。それに、血の臭いらしい臭いもしねえ。てことは、だ。近い間に血生臭いことは起きていないってことになる。でも、埃はあまり積もっちゃいねえ」 人の居た気配が最近まであるのに、争った形跡が無い。それはつまり、店の人間が自主的に出て行った、と考えてもおかしくは無い。 そう説明するホル・ホースに、フーケが感嘆の息を洩らした。 「へえ。さっきは冴えない男かと思ったけど、なかなか頭が回るじゃないさ」 そんな言葉にホル・ホースは自慢げにヒヒと笑う。 同じように笑いを洩らしたフーケが、おもむろに懐に手を伸ばした。 ホル・ホースの鼻先に短い木の棒が突きつけられる。 フーケの杖だ。 目を寄せてそれを見るホル・ホースに、フーケが胡散臭そうなものを見るようにして口元を歪めた。 「ただの馬鹿なら見逃そうかと思ったけど。そうじゃないなら、あたしの正体を知ってそのまま帰すわけには行かないねえ」 殺気を帯びたフーケの目に、ホル・ホースが頬を引き攣らせた。 なんで、ハルケギニアで会う女はどいつもこいつも……! 女難の相でも出ているのではないかと思うくらい、碌な女に出会わない。今まで自分に一度として敵意を向けてこなかったのは、イザベラや”緑の苔”亭の店主など、関係の薄い人間ばかり。少し興味を持って近づくと、これだ。 もしかしたら、これがハルケギニアの標準的な女なのかもしれない。エギンハイム村に 居た翼人のアイーシャは貴重な例外だったが、あれは例外なのだろう。 本気でそう思い始めるホル・ホースを余所に、エルザがにっこりとフーケに微笑んだ。 「お姉ちゃん」 「ん?命乞いかい、お嬢ちゃん。悪いけど、あたしはガキでも容赦しないよ」 構わず魔法の詠唱を始めるフーケに、エルザが笑みに黒さを混ぜて首を横に振った。 「ううん、違うの。詠唱はわたしのほうが早かった、って言いたかったの」 ふいに、フーケの意識が朦朧とする。 鼻につく空気が妙に甘い。頭の中が真っ白に染まり、手から杖が零れ落ちた。 やられた。眠りの魔法か。 気づいた時にはもう遅く、全身から力が抜けていた。 崩れ落ちるフーケに目を向けて、エルザがクスクスと笑った。 「見た目に騙されちゃダメよ、お姉ちゃん。これで、一つ賢くなったでしょう?」 強制的に閉じられる瞼の向こうで、少女の口元に浮かぶ妙に長い犬歯を見つける。 帽子を深く被ってヒヒと軽薄に笑うホル・ホースとエルザに、フーケは残った意識を向けて舌打ちをした。 「ま、さか……吸血……鬼だった、とは……ね」
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日本テレビ 日曜 CODE-願いの代償- スポンサーリスト 2023年9月3日 #10[終] 0'30"…小林製薬、WOWOW、P G、PROMISE 🔷(9/6・17)
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70巻 > 第293話 第293話 「出奔の代償!!」 掲載期間:2019年8月26日~2019年9月1日 AAを貼る場合上段のメニュー→「編集」→「このページを編集」。 AAの前に #aa{{ を、AAの後ろに }} をつけてください。 コラを載せる場合上段のメニュー→「編集」→「このページにファイルをアップロード」。 アップロード後に「編集」→「このページを編集」し、 #ref(添付ファイル名) または #ref(ファイルのURL) を記入してください。 まるで成長していない・・・ これがブロッケンの新必殺技だ! ウルフマンだけを殺す技かよ! 家庭崩壊 至高の勇気 待ってるぜ!
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今日 - 合計 - ブラザー イン アームズ 名誉の代償の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月12日 (金) 13時19分12秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
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78巻 > 第374話 第374話 「笑顔の代償!!」 掲載期間:2022年2月21日~2022年3月6日 AAを貼る場合上段のメニュー→「編集」→「このページを編集」。 AAの前に #aa{{ を、AAの後ろに }} をつけてください。 コラを載せる場合上段のメニュー→「編集」→「このページにファイルをアップロード」。 アップロード後に「編集」→「このページを編集」し、 #ref(添付ファイル名) または #ref(ファイルのURL) を記入してください。
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020.天才の代償 「俺は天才だ……何とか生き残る方法を考えるんだっ」 ♂セージは考えていた、なんとか生き残る方法はないか。 「誰かが俺の変わりに全員皆殺しにしてくれればいいんだけどなあ……そうだっ」 彼は閃いた、アブラカタブラがあったではないか、これでボスを召還してしまえば、あとは自分は安全地帯に身を潜めていればいい。勝手に召還したボスが→召還したボスが勝手に殺しまわってくれるので自分は安全に生き残ることができるというわけである。 「ふふ、やはり俺って天才かもしれないな」 そう思うと早速アブラカタブラを開始した。 「マグニフィーカート」 「メテオストーム」 「アンゼルス」 「ディボーション」 「なかなかクラスチェンジがでないな」 30分後 「クラスチェンジ!」 よっしゃきたああああああああああああ! さあボスを召還……しようと思ったのだが周りにモンスターがいない事が→に、今になって気づいた、→。動いてしまったらせっかくクラスチェンジが出たのに無駄になってしまう、彼はしばらくその場に突っ立っていることにした。 しばらくすると近くに♂のクルセイダー→♂クルセイダー、クルセイダーの男が通りかかった。 「あー、すいません。よかったら適当なモンスター連れて来てもらえないかな?」 しかし彼は無視して走り去ってしまった、まあ当然である、殺し合いのゲームの途中なのだ。 「だーもうしょうがないっ、自分で探そう、またクラスチェンジ出すのめんどいいけど仕方がないな」 彼はとりあえず周りを散策することにした。 すると一匹のルナティックがいるではないか。 「ちょうどいい、こいつでいいや」 彼はルナティックを捕まえると再びアブラカタブラを開始した。 「ストームガスト」 「ボウリングバッシュ」 「うーんなかなかでないな」 30分後…… 「ファイアーピラー」 「インスタントデス!」 「あ……しまった……インスタントデスがあったのをすっかり忘れていた、やっぱ俺って馬鹿だわ……」 彼の魂は天に召されて逝った。 ♂セージ死亡、箱の中身イエロージェムストーン大量、片方不明 残り45名
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日テレ系日曜ドラマ CODE-願いの代償- 共通事項 放送時間…日曜22 30~23 25 全社絨毯の上にカラー表記 提供クレジットは日本テレビ送出 ポスター記載スポンサー P G PROMISE 小林製薬 他 固定スポンサー PROMISE プロミス 小林製薬 P G 2023年7月2日 ♯01[新] 0’30”…PROMISE プロミス、小林製薬、SUNTORY、P G 2023年9月2日 ♯10[終] 0’30”…小林製薬、WOWOW、P G、PROMISE プロミス
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地下道の中をカインはランプをかざして進んでいた。 彼もまた、地面の陥没にあい、この地下道に迷い込んでいたのだ。 空中戦を得意とするカインにとって、このトンネルは戦いにくい事この上ない、早く抜け出したいが、 肝心の出口が見当たらない。 そんな状況で困惑してたところに、だしぬけに響いた爆発音、もしかすると誰かに出会えるかも。 そう思って先を急ぐカインだった。 「爆発音がしたのはこの当たりだったはず」 わずかだが血の匂いもする…その匂いを辿ってカインはさらに地下道を進む。 やがて彼は、とある部屋の前に辿りつく、血の匂いと火薬の匂いがぷんぷんする。 ここに待ちがいなさそうだ。 扉を開けると、一面瓦礫だらけの中に、1組の男女が倒れ伏していた。 「おい!大丈夫か!?」 闇の中、ランプの光をかざすとわずかに2人のまぶたが動く、意識はほとんど無いが、 まだ死んではいないようだ、早速カインは2人の傷の状態を確認する。 女の方は両手足と肋骨が折れているらしく、出来そこないの人形のような、 奇妙な姿で横たわっている、外傷についてはそれほど多くも無く、出血も少ない。 おそらく爆風を受けて壁にたたきつけられたのだろう。 男の方は女とは逆で、骨折はしていないようだが、その代わり全身にくまなく外傷があり、 おびただしい量の出血が認められる…。 そして2人に共通して言えるのは、このままだと、あと数時間も保たないという事、 傷が傷だけに運び出す事も出来なければ、助けを見つけて戻って来れるかもかなり微妙だ。 彼のバックの中には、この数日間、山野で摘んで歩いた薬草が1通り揃ってはいるのだが とてもじゃないが今の2人に使ったところで、どうにかなるとは思えなかった。 重苦しい思いでカインは頭を抱える。 だが……カインの脳裏につい数時間前の光景が甦る。 かなわぬであろうと知りながらも、あの銀髪の剣士に立ち向かっていった少年の姿を。 「そうだな…また逃げるわけにはいかないな」 カインはせっせと薬草を煎じ、すりつぶし、口に含ませ、様々な方法で彼らに処方していく その甲斐があったか、男の方は意識が戻ったようだ。 しかしクラウドはカインに感謝の言葉を言う前に、床に転がっている槍へと手を伸ばす。 「それを…その槍を貸してくれ」 カインから槍を受け取ると、クラウドはマテリアのはまった槍を自分の身体の前にかざし、 回復呪文の語句をたどたどしくも唱えていく。 「ケアル」 温かい癒しの光が周囲を覆っていく、 だがそれは同時にクラウド自身の命の光を奪う行為でもあった。 「おい!やめておけ!ムチャだ」 だがカインの制止も聞かず、クラウドはさらに2度・3度と魔法を唱える。 しかし…何回目かで、彼はおびただしい量を吐血し、そのまま倒れてしまった。 だが、それでも確かに効果はあったようだ、それからすぐに女の方がゆっくりと目を開いて きょろきょろと周囲を見渡しはじめている、どうやら彼女も命の危機を脱したようだった 「あなたが助けてくれたの?」 横になったままの姿勢でアリーナはカインに話しかける。 「感謝なら俺じゃなくて、この男に言うべきだな、見ろよ」 カインはランプの向きを変えて、クラウドの傷だらけの身体をアリーナに見せる 「この傷の状態や爆発の状況からみて、多分…爆発から身を呈して君を守ったんだ、それに お前がこうしてしゃべれるのも、こいつが回復魔法を唱えたおかげだ」 「そ…そんな…私っ助けを呼び!あああっ」 立ちあがろうとしたアリーナは、その瞬間身体を走った激痛に身悶えする。 「ムチャだ!重傷であることには変わりは無いんだぞ」 「でもでもっ!私っ、ねぇ助けてよ…出来るんでしょう、お願いよ!」 そのアリーナの涙まじりの視線に絶えられず、カインは顔を逸らす。 「俺は白魔法を使えない…薬草でなんとか傷だけは塞げた、だがもうそれだけではどうしようもない…出血が多すぎる さらに衰えた体力で魔法まで唱えている、もう俺にはどうしようもない」 ランプの光の下、クラウドの顔は青白く、まるで古ぼけたマネキンのような印象を受ける。 あとわずかの時間で、本当にクラウドは2度と物言わぬ無残な姿に成り果ててしまうのか。 そう思うとアリーナはやりきれなかった。 「私…守られてばかりだ…ごめんね…ごめんね」 どれほどの時間が経過しただろうか? すすり泣くアリーナの声が聞こえる中、意を決したようにカインが呟く。 「1つだけ…方法がある、この男の生命力に賭けてみるか」 と言うなりカインは自分の手首を切り裂くと、そこから滴る血をクラウドの口へと運ぶ。 「俺の身体にはわすかだが龍の血が流れている、その血をもし受け入れる事が出来れば救えるかもしれん」 だが、そういうカイン自身も半信半疑だ、所詮それは伝承の中の話に過ぎなかったし、 そんなことで命を救えるというのなら、誰一人として彼の仲間は命を落とさなかっただろうし、 それに彼の得意技である超人的な跳躍力にしても、それは血の力だけではなく、凄まじいまでの修練の賜物だし、 何より彼自身の力は通常の人間となんら変わらないのだ。 地下道の中をカインはランプをかざして進んでいた。 彼もまた、地面の陥没にあい、この地下道に迷い込んでいたのだ。 空中戦を得意とするカインにとって、このトンネルは戦いにくい事この上ない、早く抜け出したいが、 肝心の出口が見当たらない。 そんな状況で困惑してたところに、だしぬけに響いた爆発音、もしかすると誰かに出会えるかも。 そう思って先を急ぐカインだった。 「爆発音がしたのはこの当たりだったはず」 わずかだが血の匂いもする…その匂いを辿ってカインはさらに地下道を進む。 やがて彼は、とある部屋の前に辿りつく、血の匂いと火薬の匂いがぷんぷんする。 ここに待ちがいなさそうだ。 扉を開けると、一面瓦礫だらけの中に、1組の男女が倒れ伏していた。 「おい!大丈夫か!?」 闇の中、ランプの光をかざすとわずかに2人のまぶたが動く、意識はほとんど無いが、 まだ死んではいないようだ、早速カインは2人の傷の状態を確認する。 女の方は両手足と肋骨が折れているらしく、出来そこないの人形のような、 奇妙な姿で横たわっている、外傷についてはそれほど多くも無く、出血も少ない。 おそらく爆風を受けて壁にたたきつけられたのだろう。 男の方は女とは逆で、骨折はしていないようだが、その代わり全身にくまなく外傷があり、 おびただしい量の出血が認められる…。 そして2人に共通して言えるのは、このままだと、あと数時間も保たないという事、 傷が傷だけに運び出す事も出来なければ、助けを見つけて戻って来れるかもかなり微妙だ。 彼のバックの中には、この数日間、山野で摘んで歩いた薬草が1通り揃ってはいるのだが とてもじゃないが今の2人に使ったところで、どうにかなるとは思えなかった。 重苦しい思いでカインは頭を抱える。 だが、それでも今はその御伽話にすがってみる以外、方法は無い。 ぽたりぽたりとカインの血が流れる音がだけが聞こえる中、時間だけが過ぎていく。 意識が遠のいていく…これ以上は危険だ、だがそれでもカインはその手をクラウドの口から離そうとしない。 その鬼気迫る表情は、ただの善意だけでは無い事は確かだ。 「どうしてそこまでするの?」 アリーナの言葉にカインは即答する。 「償いだよ」 カインは思い出す…あの時、洞窟の入り口で自分は何も出来ず、逃げ出してしまった、 もしわずかでも勇気を振り絞れていれば……。 だから、今度こそ救う、そのためならば…だが、もはや限界のようだった。 へたりこむカインの手首に、アリーナは素早く薬草をあてがい包帯を巻いてやる。 「まだ…だ、まだ」 「もういいわ!そこまでしなくってもいいわ!やるだけのことはやったじゃない! 後は祈りましょう、出来るのはそれくらいよ」 アリーナは冷え切ったクラウドの手を握り、ひたすら祈りの言葉を口ずさむ。 さらに時間が経過する中。 「見て!」 「おお…」 死人のように青ざめたクラウドの肌に赤みがさしてくる、どうやら奇跡は起こったようだった。 「よかった、本当によかった」 クラウドの胸にすがり付き、嬉し涙を流すアリーナ、その様子をまぶしそうに見つめるカイン、 もしかすると彼は失った恋を思い出しているのかもしれない、事実カインから見た2人の姿は、 仲睦まじい恋人同士のそれに思えた。 だが、果たして2人は気がついていただろうか? クラウドの全身から、わずかだが妖しげな光が漏れ出していた事を、そしてその口からは、 聞き取れぬほどの小声で謎の言葉が口ずさまれていた事を。 そう、奇跡にはそれに見合った代償が必ず付きまとうものなのだ。 【カイン 所持品:ビーナスゴスペル&マテリア(回復) 天空の兜 第一行動方針:セシルを止める 基本行動方針:戦闘は避けたいが、自衛なら戦う】 【現在位置:地下通路(大陸中央付近)】 (セフィロスへの苦手意識あり) (現在著しく体力を消耗しております、戦闘不能) 【アリーナ 所持武器:イオの書×3 リフレクトリング ピンクのレオタード 第一行動方針:ソロを止める(倒してでも) 第二行動方針:クラウドをティファに会わせる 最終行動方針:ゲームを抜ける】 【クラウド 所持品:ガンブレード 第一行動方針:エアリス&ティファを探す 第二行動方針:アリーナを救う 最終行動方針:不明】 【現在位置:地下通路(大陸中央付近)】 (二人とも生命の危機は脱したが重傷、無論戦闘不能) (魔晄中毒の症状が出てきています) ※クラウドの回復は、龍の血と魔晄エネルギーとの化合ゆえの回復です、 したがって他のキャラには効果ありません ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV カイン NEXT→ ←PREV クラウド NEXT→ ←PREV アリーナ NEXT→
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プロローグ 「ジョン=スミスは俺なんだ!」 俺はハルヒに向かって叫ぶ、ハルヒは目を丸くして驚き、女子トイレに明らかなおかまのおっさんが入ってきたのを見たような表情をしている。 それを見ていた朝比奈さんは怯えた顔で、古泉はいつもの微笑で見守っていた。 「…え…ちょっと待ってよ!あの頃はあんただって中学生でしょ!ジョンは明らかに高校生だったわよ!」 くそっ!時は一刻を争うというのに、変なところで常識的な奴だ、すべてをハルヒに教える前に今回、なんでこうなっちまったのか急ぎ足で振り返ろう。 一章 季節は春。 寒かった冬も終わり、雪が溶けて川になって流れていったり、つくしの子が恥ずかしげに顔を出すそんな季節である。 だがしかし、今の地球の異常気象はそんなことはお構いなし、と、いうのも3月になるというのにまだ寒かった、というわけだ。 そうそれは先月ハルヒ達からやたら凝った方法で渡されたチョコレートのお返しをどうやって返してやるか考えを巡らせる頃だった。 朝というのも憚られるぐらい暗い早朝、携帯のけたたましい音により俺のぬくぬくとした安眠は部屋の中に飛んでいる蚊が蚊とり線香に落とされるように簡単に打ち砕かれた。 こんな早朝にいったい誰だ…という考えはカメレオンが口から舌を出して虫を口の中におさめるより早い時間で止まった。 人の迷惑顧みず、こんな傍若無人なことをしてくる人間に心当たりは1人しかいない。 「もしもし?」 眠い目を半分開いて手探りで探した携帯電話のボタンを押す。 「……」 予想していた大音量は飛んでこない…どころか電話口に音声すら発生しない。 改めて俺は電話のディスプレイを確認する。 「長門?どうしたんだ、こんな朝早く。」 正直言っていい予感なんて微塵もなかった。 普段絶対にこんなことをしない長門がこんな時間に電話をかけてくる、それは異常事態以外のなにものでもないだろう。 「…ごめんなさい。」 この電話の中で初めて発せられた長門の言葉は謝罪だった。 これはまずい。 俺の非日常警報がサイレンを鳴らす。 長門でも対処できないことが起こったとでもいうのか!? 「…声が聞きたかっただけ。」 …俺は最初何を言われたかわからなかった。 こんな純粋に感情だけに促されるような行動を長門がとるとは思わなかったからだ。 「別に構わんぞ、厄介事の知らせよりよっぽどいい。」 「…そう、ありがとう。」 俺はそれで切れた電話に温かさすら感じていた。 だが、この時の俺は楽観的すぎたんだ、長門がこんな時間に電話をかけてきて、何でもないはずがなかったんだ。 二章 二度寝は気持ちがいい。 異論は認めない。 長門の電話で朝早く起こされた俺だが、その時点で、まだ3時間も寝れる…そう考えれば最高の時間だった。 ただ最高なのはその時間だけでもう一度眠りにつけば本来の起床時間はすぐに訪れるのだ。 長門からの電話が切れ、枕元に再び携帯を置いて目をつぶった…とすぐに意識は落ち、その直後ぐらいの感覚で妹のエンジェルダイブエクストリームが俺に炸裂したのだった。 しかし、時計は無情にも起きる時間を示している、睡眠とはなんと儚いものか。アライグマが食べ物を洗う当然なような動きで俺は朝の支度をする 恨めしいながらも1年近く通い続けて少しだけ、本当に少しだけ愛着が沸き始めた学校の前のハイキングコースを登って学校に着くと、ハルヒから予想外の一言が聞こえた。 「今日有希休みだって。」 なんだって? 長門が休み? いったい何があったっていうんだ!? 「ちょっと慌てすぎよ、今朝早くメールがあったの…風邪ひいたんだって。」 言いながらハルヒは携帯のメールを見せてくれた。 その時刻は俺が長門に電話をもらった1分前だった。 「珍しいこともあるわよね、有希が風邪なんて……そうだ、放課後はみんなでお見舞いに行きましょう!」 いつもならお前が来たら病人もうかうか寝ていられないとか突っ込むところだが、それどころではなかった。 いやな予感が頭を駆け巡る、不安な気持ちが心を揺さ振る。 「ほらみんな席つけー。」 岡部がやってきて感じたのはただ座ってなきゃいけなくなったもどかしさだった。 三章 「古泉!」 1時間目が終わった休み時間、俺は全速力で9組までやってきた。 「どうしたんですか?そんなに慌てて。」 悠長に微笑みを絶やさない古泉に道を歩いていた時、目の前のカップルの歩みがゆっくりでなかなか追い越せないようないらだちを覚えるが、そんなことはまあいい、なぜならこいつはまだ何も知らないのだから。 「今日…長門が休みだそうだ。」 だから伝えてやるんだ、今の状況を、俺が慌てている理由を。 「…!」 にやけ面が真面目な顔に変わった。 俺の危惧している部分が、どうやらこいつにも伝わったようだ。 「…今は時間がありません、昼休みにテラスへ、いいですね?」 俺は授業をさぼってでも話をしたかったが、古泉はきっとその間にやることがあるのだろう、そんな気がした。 だから俺は古泉に了承の返事をしてから頭上で鳴り響くチャイムの音をバックミュージックに自分の教室へと戻った。 授業で何をやったのかなんて覚えていない。 後ろからのシャーペン攻撃に続いた言葉も覚えちゃいない。 ただ俺はもどかしく昼休みの到来を待っていた。 こんな短い時間と比較するのは大変申し訳ないとは思うが、永遠の夏休みにも似た気分を味わっていた。 偶然、あの時は俺の選択肢が合致して夏休みを終わらせることができた。 俺には最後の一回の記憶しかないから苦痛なんてない。 だが…長門は違う。 何百年と繰り返される夏休み、それを誰にも伝えることなく、観察者としてことの成り行きを見守っていた。 何もできないもどかしさ、ただ繰り返される日々を過ごすだけの退屈。 そんなものを感じていたから長門は、世界を作り替えちまったんだろ? だったら今度は俺の番だ。 あの時、俺は言った。 ハルヒを焚き付けてでも長門を救うってな。 長門に何が起きているかはわからない。 もしかしたらもういないのかもしれない。 だが、そんなことなんて鯨の口の中に蟻が入ってしまったくらいどうでもいいレベルの力を持った最強の団長様がこっちのバックにいるんだ。 俺は俺にできることをやるだけだ。 何がなんでも救ってやる。 「長門…」 窓の外の曇り空を見る。 すでに3月なのに日も当たらない寒空。 まるで俺の心を写しているかのような気分に陥る。 暗くなってどうする? そんなんじゃ長門にユニークとか言われちまうぜと、前に視線を向ければ、教師が授業のまとめをしているところだった。 少し進んだまま誰も直さない時計は、すでに昼休みの到来の時刻をさしている。 あとはチャイムがなるだけだ。 今か今かと待ちわびたチャイム、それが校内に鳴り響いた瞬間、俺は挨拶も忘れ、教室を飛び出していた。 四章 俺がテラスに着いたとき、すでに古泉はそこにいた。 「だいぶ急いでこられたようですね、どうですか?お茶でも。」 俺は悠長に構える古泉を咎めるように湯気が立っている横にあった茶色い液体を喉に流し込んだ。 冷たい烏龍茶が乾いた体を潤す。 「…まだ喋るのは難しいでしょう?まずは僕の話を聞いてください。」 そう言って古泉は俺を座らせ、喋り始める。 「機関が調査した結果、自宅に長門さんはいませんでした。学校にもいない、家にも機関の判断は静観せよ、でした。長門さんがいなくなったことは機関にとってはどうでもいいことだったんでしょうね。」 笑顔で手振りをつけながら話す古泉にいらだちを覚える。 だったらなんだ、お前は機関が我関せずだから何もしないっていうのか? 「…同じくTEFI端末の喜緑さんはいつも通りのようでした、さすがは穏便派といったところでしょう。」 だからなんでお前はそんなにこやかに話せるんだ! 長門が心配じゃないのか!? 「…もちろん心配ですよ…だからこそ、です。何か覚悟を決めた人間は逆に悟りを開くものです。」 目を見開き、顔の前で手を組む古泉。 その顔は怖いほどだった。 「前に言いましたよね?僕は一度、機関を裏切ってでもあなたを、ひいては長門さんを助けると。」 イエスマン古泉とはまるで違う、静かな迫力をもつ低い声。 その声に、顔にこれほどの頼もしさと恐怖を感じるとは。 「SOS団副団長、古泉一樹…機関を裏切り、あなたに協力します。」 ごくり、と自分が唾を飲み込む音が頭に響いた。 どれほどの覚悟をしたらこんな表情になるのだろうか、どれだけの決意を固めたらこんな目の色になるのだろうか。 これが…同じ人間の顔なのだろうか。 今ほど、古泉が味方でよかったと思ったときはない。 信頼できる仲間を手に入れた俺は、自分のジョン=スミス作戦を古泉に話した。 聞き終わった古泉は少しうつむいた後、淋しそうな表情でこう話した。 「……その作戦を実行すれば、SOS団はもうもとには戻れない、それはわかっていますか?」 …俺は言葉を失う、色々なことが脳裏を通過していく、頭が混乱する、どういうことだ? 「朝比奈みくるが敵になる、ということですよ。」 俺ははっと古泉の顔を見る。 真っすぐに俺を見据えた目には悲哀が感じ取れる。 「朝比奈みくるは…いえ、未来人組織は何か意味があってジョン=スミスを生み出した。それが長門さんを…彼女らにとってはただのTEFI端末にすぎない存在を救うためだとは考えにくい…この作戦において、彼女は敵です。」 自分のことばかり、考えていた。 朝比奈さんや古泉の事情なんて考えていなかった。 ただ自分のわがままで長門を助けるためにみんなを巻き込もうとしていた。 …情けなかった。 長門が戻ってくればみんなそれでいいと思っていた。 だが…古泉のおかげで思い知らされた。 敵にならないまでも朝比奈さんが未来に帰ってしまうかもしれない、このことを知られたら古泉だって機関に拘束されるかもしれない…ダメだ…この作戦は穴だらけだった。 「その作戦は最終手段です、できることを探しましょう。」 古泉の言葉にかぶさるように昼休み終了のチャイムが鳴った。 「僕もいろいろ考えてみましょう…では、放課後に。」 俺は切り札が切り札でしかないことを思い知らされ、歩き去る古泉に背中を見送ることしかできなかった。
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ガキィッ キィンッ! 激しい攻撃の応酬が続いている。 戦ってるのは蒼星石と、ローゼンメイデン第一ドールの水銀燈とかいう人形との事だ。 その舞台はnのフィールドではなく、俺の家の裏山となっている。 今、俺はアリスゲームの真っ只中にいた。 ちょっと前、家で蒼星石の家事を見ながら麦茶を啜ってると、どこからか黒い羽根がヒラヒラと舞って来た。 なんだこの羽根?・・とか思ってるとそれを見た蒼星石の顔が一変した。 洗濯物を放り投げ、俺に猛進してくる蒼星石。 ハハハ、昼間っから積極的だn・・ 「マスター危ない!」 ドン、と俺を突き飛ばす蒼星石。 「ぐぇっ」 ぐぇっ。いきなりなにすんだろうかこの子は。 「ちょ、ちょっと落ち着k」 カカカカカカカッ 何かが風を切る音と共に、それまで俺が座っていた場所に次々と突き刺さる。 とりあえず当たったら俺は血だるまになりそうな気がした。 ってこれ羽根か? 「ふふ・・慌てちゃってみっともなぁい」 羽根が飛んできた方向を見ると、そこには黒い人形がいた。土足で。 「水銀燈・・・!」 俺にダイブした体勢のまま蒼星石が驚き混じりの声で言う。 これが水銀燈か。中々かわいいじゃないか。 ・・とか思う余裕はあまり俺にはなかった。その崩れない微笑からは何か禍々しい物を感じる。 「おい、水銀燈。妹の家に来るにしては礼儀がなっていないんじゃないか?」 だってこいつ土足で家に入ってくるんだぜ!しかも攻撃してきたし! なにより至福の一時の邪魔を・・・! 「どうした?何か答えr」 「あなたは黙ってなさい」 怖ぇ。・・ん? 「何の用だい、水銀燈?いくら君でもマスターを傷つけるのは許さないよ」 蒼星石は鋏を出して構えの体勢をとる。 ・・そうか。今ここには二体のローゼンメイデン・・ 「何の用ぅ?決まってるじゃない・・」 しかもその一方は、アリスの座を貪欲に求めているという水銀燈・・ 「私は・・貴女のローザミスティカを貰いに来たの」 となると、その出会いが持つ意味は一つ・・・ 「アリスゲーム、始めるわよ」 やっぱり。 初めは乗り気ではなさそうな蒼星石だったが、このままだったら水銀燈が俺を狙うのは必至ということを悟ったのだろう。 攻撃を仕掛ける水銀燈を鋏で家から弾き飛ばすと、 「マスター・・しばらく待ってて」 そういい残し、蒼星石は裏山へ消えた。 突如俺を包む静寂。俺の耳にはテレビの音も、家の前の道路を走る車のエンジン音も届いていなかった。 「待っててだって・・・」 俺は駆け出す。 「そんなこと・・できるわけ無いだろ!」 木が鬱蒼と茂る山は、昼間だというのに薄暗い。 遠くで何かがぶつかる音がする。 ※ここから冒頭に戻ります 低空で戦い続ける二体のドール。 その様は美しく、力強くも、どこか寂しさを纏っていた。 「・・っはぁ!いいわよぉ、蒼星石ぃ!その力を、水銀燈にちょうだぁい!」 背中の羽から繰り出される攻撃を鋏で防ぐ蒼いドール。素人目にも、明らかに劣勢なのがわかった。 「ぐっ・・うぅっ・・」 羽根の猛攻に耐えかね、蒼星石は木に叩き付けられた。 「蒼星石!」 ずるずるとずり落ちる蒼星石を受け止める俺。 あぁ・・服もボロボロになっている。 「マ、マスター?!ここに来ちゃ危ないよ!」 「バカ、俺の心配なんかするな。今は・・」 水銀燈が近づいてくる。 「この状況を切り抜けることだけ考えればいい」 俺は蒼星石を抱えて走り出す。少しでも時間を稼がねば。 「人間・・邪魔をしないで!」 急に体から力が抜けていった。 これも水銀燈の力なのだろうか? 「やめて水銀燈!マスターは・・マスターは関係ないっ!」 蒼星石は俺の腕から飛び出し、水銀燈に突っ込む。 予想はビンゴのようだ。 「あらぁ・・蒼星石ぃ、あなた、あんな人間のために出てくるなんてねぇ」 たやすくそれを水銀燈はかわし、俺を一瞥する。 力が入らない。 どうしようもなく、俺は木に体を預ける。 前にも一度体から力を搾り取られたことはあるけど(蒼星石に)、今回とは訳がちがうな。 万事休すか・・・ 「しらけちゃったぁ・・今回は引かせてもらうわぁ」 ふん、と鼻で笑うと飛び去っていく水銀燈。 え?マジ? 蒼星石も水銀燈の姿が見えなくなると、鋏を仕舞って俺に駆け寄ってきた。 ・・・終わったのか。 「マスター・・待っててって言ったのに・・」 蒼星石が泣きそうな顔で俺を見つめる。 ふふふ、俺には蒼星石への愛という予備電源があるんだぜ。 こんぐらいで歩けなくなることはないさ。多分。 「ごめんね・・僕が、僕がもう少し上手くやってれば・・マスターをこんな目に遭わせずにすんだのに・・」 「もういいよ、蒼」 蒼星石の頭をなでると、俺は予備電源で立ち上がる。 ・・もう一度座り込んだら、動けなくなるなこりゃ。 水銀燈の奴、容赦なく吸い取りやがって。 「ほら、大丈夫だろ?」 腕を振っても、蒼星石は俯いたままだ。 アリスゲームは、やはり俺なんかがしゃりしゃり出ていい場ではない。 ・・俺って奴は、ほんと、先読みってのが下手だ。 逆に蒼星石に迷惑を掛ける羽目になってしまう、のは十分予想できたのに。 「蒼星石・・」 いかんいかん、悲しい顔をしてちゃ、もっと蒼星石を悲しめてしまう。 せめてこの子の前では笑っていよう。 次、上手く対処できればいいさ。 「さ、家に帰ってカステラでも食おうか」 俺達は家へと戻り始めた。 「本当に、あなたたちって甘いわねぇ」 え? 「この私が・・そう簡単に引き下がるとでも思ったのぉ?」 いつの間にか水銀燈が俺達と間合いを詰めてきている。 奇襲戦法か! 「さあジャンクに・・なりなさいっ!」 剣で俺を断ち切ろうとする水銀燈。 蒼星石は突っ立っている俺を蹴飛ばしてかわした。 無様にこける俺。 「水銀燈っ!君、マスターを・・!」 激昂して再び鋏で水銀燈に立ち向かう蒼星石。 に・・逃げないとまた蒼星石に・・・ 「う・・うああっ!」 大きなモーションで蒼星石は鋏を振るう。 それが仇となってしまった。 駄目だ・・立てねえっ・・! 「無駄よっ!」 剣で鋏を薙ぎ払う水銀燈。鋏は、蒼星石の手を離れた。 「あっ・・・」 ずしゃっ。 ・・迷惑をかけてしまうって、わかってるのに 弾かれた鋏は、俺に刺さった。蒼星石の顔が恐怖みたいなので歪んでいくのが見える。 「あ・・モ、モルスァ」 腹を貫通した鋏は、俺と地面を縫いつけた。 痛いというよりは、熱い。 「ぐぶふっ」 血が腹から逆流し、口から溢れ出す。思わず両手で受け止めてしまう。 あんまり、綺麗な紅色じゃないんだな、血って。 「そ、そうせい・・せきぃ・・」 手を伸ばす。俺に駆け寄る蒼星石も、 残虐な笑みを浮かべる水銀燈も、俺の手から滴る血も、すべてスローモーションの世界だ。 「ごめんな・・ごめんな・・」 俺は、目を閉じた。 続く bad normal