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せつな~迷宮の中から~/一六◆6/pMjwqUTk ―――何てことをしてくれたのだろう。 それが、驚愕の後にやってきた、偽らざる感情だった。 キュアピーチとの・・・ラブとの、全力と全力での果たし合い。 初めて明かした、自分でも気付いていなかった想い。 思いがけず見つけた幸せの素に、手が届かなかったのは残念だった。 でも、私は満足していたのだ。 私に許された、たったひとつの生き方。 その最後の最後で、本当に大切な人と、心を通わせた。 偽りで築いてきた友情を、自らの手で壊し 互いの本当の気持ちを、全力でぶつけ合って。 それは私にとって 生涯にただ一度の 自分のためだけの 戦いになるはずだったのだ。 突然与えられた、新しい命。 その代償は・・・私が、プリキュアであること? 一体 誰が信じられるというのだろう。 ラビリンスのイースが、4人目のプリキュアだったなんて。 そんなこと、許されるわけがないのに。 私にそんな資格が、あるはずもないのに。 戸惑う私に、本国へ戻ろうと言うウエスター。 しかし、ラビリンスに戻る気には どうしてもなれなかった。 ラブと出会って、私は気付いてしまったのだ。 偽りだと思っていたものが、確かに存在するということに。 弱者の言い訳と見下していたものの、本当の強さに。 そしてだからこそ、それを下らないと切り捨てることが、 自分にはもう、出来ないのだということにも。 でも、だからと言って・・・。 ―――あのまま死なせてくれていたら、どんなにか楽だったろうに。 いつの間にか、プリキュアの姿ではなくなっていることに気付く。 さっきの雨で出来た水溜りを、そっと覗きこんだ。 思わず息を飲む。 驚いた眼差しで 水面からこちらを見返しているのは、イースではない。 東せつな―――この世界に潜り込むための、私の仮の姿。 そして、ラブがあの笑顔で、親友と呼んでくれた姿。 揺らめくその顔を見ながら、心に想いが湧きあがる。 偽りだと思っていたものは、確かにあった。 弱者の言い訳と思っていたものは、真の強さだった。 それなら。 仮の姿だと思っていたものも、いつか真の姿になれるのだろうか。 風を感じる。 夏の風が柔らかく、黒髪をそよがせる。 そのかすかな力に押されるように、丘の上から立ちあがった。 無数に広がるクローバーの群れから目をそらし、そして、歩き出す。 夕陽を浴びた雲が、金色に輝くのが見える。 昼間とは違った涼やかな空気が、胸に行きわたる。 何かに急かされるように鳴く、蝉の声。 足元から立ち上る、草の匂い。 私は―――生きている。 一歩一歩、大地を踏みしめるように歩く。 一瞬先のことすらわからないなんて、初めてだ。 それも、この姿にはお似合いかもしれない。 私にはもう、帰るところは無い。 でも、帰るところが無くとも、前へ進むことはできる。 私がプリキュアになんて、なれるわけない。 それでも今、この姿とこの命は、紛れもなく私のものだ。 ならば―――とにかく歩き続けてみよう。この先へと。 クローバータウン・ストリート。 いつの間にか、足が向いていた。 今日、クローバーの丘で誘われた場所。 そして、ラブとのつかの間の、思い出の場所。 何かに導かれるように歩いてきた私は そこで茫然として、立ち止まった。 3つの背中が、ゆっくりと、こちらを振り向いた。 ~終~
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広辞苑 辞書 品詞 解説 例文 漢字 日本国語大辞典 自動詞 (「打たれる」意から)① 力、技、態度などで圧倒される。(イ) (すもうなどで)負ける。 ※順集(983頃)「言の葉はこはく見ゆれどすまひ草露にはうつる物にざりける」※古今著聞集(1254)一六「『いざさらば、いま一度とらむ』とて、又よりあひて取るに、此のたびは壇光うてにけり」 打 (ロ) (花が霜などで)しおれる。まける。 ※賀茂女集(993‐998頃)「くれなゐの世になからめや菊の花霜にもうてぬ色ぞかなしき」 (ハ) 気おくれする。臆する。また、けおされる。 ※源平盛衰記(14C前)三四「ゆゆしく見えつる磨墨(するすみ)も、勝(まさ)る生唼(いけづき)に逢ふたれば、無下(むげ)にうててぞ見えたりける」※ささめごと(1463‐64頃)上「大内裏大極殿の高座にて、ひとりなしても、うてぬやうにといふ。たくましく強力にといふなるべし」 ② おしつぶされる。 ※太平記(14C後)一三「軍兵共五百余人、一人も残らず、圧(おし)にうてて死にけり」 ③ 神仏に罰せられる。ばちがあたる。 ※宇治拾遺(1221頃)二「あはれ、世にもあひ、年なども若くて、みめもよき人にこそあんめれ、式にうてけるにか、此鳥は式神にこそありけれ」 ④ 承服できる。合点がいく。多く打消の形で用いる。 ※浄瑠璃・聖徳太子絵伝記(1717)二「嶋主一円うてぬ顔」 ⑤ 魚などが腐る。 〔譬喩尽(1786)〕 ⑥ 評判される。うたわれる。 ※浄瑠璃・倭仮名在原系図(1752)四「壬生(みぶ)村で名うてにうてた器量よし」 大言海 自動詞 〔擊つノ受身ノ擊たるノ、 約 (ツヅマ)リテ、一ノ自動詞トナレルモノ、(口語ハ、うてる) 措 (オ)かるノ、 後 (オク)るトナルト、趣ヲ同ジウスル語ナリ〕(一){ 氣壓 (ケオ)サル。弱 (ヨワ)ル。壓シ倒サル。負クル。所壓倒 所壓 源順集「 言葉 (コトノハ)ハ、 强 (コハ)ク見ユレド、 相撲草 (スマヒグサ)、露ニハうつる、モノニザリケル」金葉集、十、連歌「取ル手ニハ、ハカナクうつる、花ナレド、引クニハ 强 (コハ)キ、相撲草カナ」六帖、一「 深 (フ)ケシ夜ノ、行合ヒノ霜ニ、うてシカド、ナド身ニ寒ク、アタラザリケム」盛𮕩記、三十四、東國兵馬汰事「磨墨ニモ 勝 (マサ)ル 生唼 (イケズキ)ニ逢ヒタレバ、 無下 (ムゲ)ニうてテゾ見エタリケル」(磨墨、生唼、共ニ名馬ノ名)著聞集、十六、興言利口、壇光坊、相撲「今一度取ラムトテ、又寄合ヒテ取ルニ、此ノタビハ壇光うてニケリ」太平記、十三、時行滅亡事「大佛殿ノ棟梁、微塵ニ折レテ、云云、五百餘人、一人モ殘ラズ、壓ニうてテ死ニケリ 」 (二)神ニ罰セラル。 平家物語、十二、土佐坊事「イカニ土佐坊、起請ニハ早クモうてタルゾカシ」(起請文ニ背キテ捕ヘラレタルナリ)宇治拾遺、二、第八條、鳥ニ 糞 (ヱド)ヲシカケラレ「此ノ鳥ハ、 式神 (シキガミ)ニコソアリケレ、云云、オノレ只今、式ニうてテ、死ニ侍リヌ」 動詞活用表 未然形 うて ず、らゆ、らる、む、じ、さす、しむ、まほし 連用形 うて たり、き、つ、ぬ、つつ、たし、ても 終止形 うつ べし、らし、らむ、ましじ、まじ 連体形 うつる も、かも、こと、とき 已然形 うつれ ども 命令形 うてよ 広辞苑は同じ見出し語の扱い。「うつ(打・撃)」を参照。 検索用附箋:自動詞下二段 附箋:下二段 自動詞
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眠りの書やキュアライトワンドなど、水属性の魔法を使いたい場合は、サファイアの魔力を借りることになる。 入手方法(サファイア) 鳥の楽園の19~21マス目で稀に採取 女王の砂漠・現の39~40マス目で稀に採取 ハルマの入江に出現するクトゥルフから稀に入手 試練の洞窟第一六階層に出現するコーロモドモから稀に入手 トールから入手(ドロップ条件あり) サファイアのかけらx5で合成 入手方法(サファイアのかけら) ハルマの入江で稀に採取 宮殿前の噴水から稀に採取 その他、イベント限定ステージやモンスターからも採取できることがある。 サファイアを使用する主な合成アイテム ※公式アイテム図鑑も参照のこと。 完成品 主材料 副材料 魔力数 称号 備考 サファイアの指輪 金塊×1 サファイア×1 1 - 眠り耐性25% 水の指輪 サファイアの指輪×3 - 3 青の~ 眠り耐性50% 紺碧の指輪 水の指輪×3 - 9 紺碧の~ 眠り耐性100% サファイアの首飾り サファイア×1 金塊×2 1 - 水耐性25% 水の紋章 サファイアの首飾り×3 - 3 水の~ 水耐性50% 深海の紋章 水の紋章×3 - 9 深海の~ 水耐性100% サファイアの腕輪 金の腕輪×1 サファイア×1 1 青い~鯨 水属性付与40% 青眼のガントレット サファイアの腕輪×1 黄金の鉤爪×3金の腕輪×5 1 青眼の~ 水属性付与40% 水眼のガントレット 青眼のガントレット×3 巨大昆虫の眼×3 3 水眼の~ 水属性付与60% 水のアームレット メビウスアームレット×1 サファイア×1 1 ~水使い 水属性増幅40% 深海の◯眼アームレット 水のアームレット×3 水以外のアームレット×1 サファ3副材料の魔力1 水の~化身 水属性増幅70%副材料の属性増幅30% サファイアの杖 木の杖×1 サファイア×1 1 - - スリープロッド サファイアの杖×1 魔法の水種×50 1 ~魔法使い 水属性50%眠り10% キュアライトワンド サファイアの杖×1 水のたてがみ×50 1 ~魔法使い 水属性50%使う(自分または最も近くの味方を20回復) オアシススタッフ スリープロッド×1 キュアライトワンド×1 2 ~魔道師 水属性50%眠り10%使う(自分または最も近くの味方を20回復) 黄金の煙管 魔法の絹糸×50 サファイア×2金塊×50ライカンスロープの爪×50 2 煙管の~魔女 水属性50%材質 金使う(「とどろけ濃霧」と同様の魔法) 眠りの書 眠りの巻物×10 サファイア×1 1 眠りの~ 水属性50%使う(眠りの巻物と同様の魔法) 癒しの書 癒しの巻物×10 サファイア×1 1 癒しの~ 水属性50%使う(癒しの巻物と同様の魔法) 濃霧の書 濃霧の巻物×10 サファイア×2 2 濃霧の~ 水属性50%使う(「とどろけ濃霧」と同様の魔法) イピリアの書 イピリアの巻物×10 サファイア×3 3 雨の~精霊使い 水属性50%使う(イピリアが現れ周囲に4*複数の水属性ダメージ) 狼神の呪書 狼神の書×3 サファイア×2エメラルド×1 サファ8エメ4 ~狼使い 水属性75%自然属性25%使う(777の水・自然属性ダメージ+毒・眠り)消費魔力はサファ6エメ3 溺神のバレットスナッパー バレットスナッパー×1 サファイア×3 3 水属性100%クリティカル3%(水)特殊攻撃で魔力を1消費して弾丸を発射 水のフェアリーウイング フェアリーウイング×1 サファイア×1 1 ~妖精 水耐性5%上着枠 アクアフェンリス フェンリルアーマー×1 サファイア×15黒曜石×99災呼の大角×10 15 災呼の~浪狼 水耐性50%シャツ枠 ※「黄金の煙管」「濃霧の書」の魔法は、「濃霧の巻物」よりヒット数が少ないため注意 宝石を使ったマジックアイテムについてはマジックアイテムも参照のこと 宝石: ダイアモンド | ゾイサイト | ルビー | サファイア | トルマリン | エメラルド
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(損害計算のための鑑定)実意商 第一〇五条の二 特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当事者の申立てにより、裁判所が当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な事項について鑑定を命じたときは、当事者は、鑑定人に対し、当該鑑定をするため必要な事項について説明しなければならない。 (本条追加、平一一法律四一) 旧法との関係 該当条文なし 趣旨 本条は、特許権侵害訴訟における損害計算のための鑑定について規定したものである。 特許権侵害による損害額の立証のために必要な事項は、侵害品の販売数量等、侵害者が所持する証拠によらなければ立証できないものであるため、一〇五条において、民事訴訟法の文書提出命令の特則として、損害の計算に必要な書類の提出を求めることができるよう制度上担保していた。しかし、①損害計算のために提出される書類の量は膨大であり、経理・会計の専門家ではない者にとっては、書類の内容を正確かつ迅速に理解することは困難であるとともに、②提出書類が略号表記を含んでいたり、コンピュータ管理された帳簿類の打ち出しデータである場合には、説明を受けることなしにその意味を理解できず、③当事者照会(民事訴訟法一六三条)や鑑定人の発問(民事訴訟規定一三三条)等の制度を活用しても、当事者が説明に応じなければ、書類の内容を理解することは困難である。こうした問題を解決するためには、経理・会計の知識を持った専門家を活用するとともに、当事者を損害の計算に協力させることを有効と考えられることから、当事者は、鑑定に必要な事項の説明義務を負うことにした。 なお、本条において特段の定めがない手続や効果等については、民事訴訟における通常の鑑定と同様であり、民事訴訟法及び民事訴訟規則の規定が適用される。例えば、当事者の申出から、鑑定命令に至るまでの手続は、通常の鑑定と同様に当事者の申出により行い、申出を採用して鑑定を命じるかどうかは裁判所の裁量による。 また、当事者が説明義務に応じなかった場合の制裁措置は設けられていないが、鑑定人より、当事者の説明が得られなかったため十分な鑑定をすることができなかった旨の報告がなされた場合には、最終的には裁判官の心証に影響を与えることもあると考えられる。 [字句の解釈] 1 <損害の計算をするため必要な事項>侵害の行為による損害の計算に必要な相手方当事者の販売数量、販売単価、利益率等であり、当事者双方の意見を考慮したうえで裁判所が決定する。また、鑑定などの基礎となる資料の範囲は、訴訟に任意で訴訟された資料、鑑定に際し当事者より任意で提出された資料等が考えられる。 2 <鑑定をするため必要な事項>鑑定事項の調査に必要な資料の管理状況や当該資料の内容を理解するために必要な事項であり、必要に応じて、関連する補助的な資料を提示することも包含されるものと考えられる。 [参考] <民事訴訟一般における鑑定との関係>民事訴訟一般における鑑定では、当事者も第三者も鑑定人の鑑定調査を受忍して、これに協力する義務はないとされている。また、鑑定人が裁判所外において鑑定に必要な資料を収集することについて、民事訴訟法及び民事訴訟規則上、明文の規則はない。 平成八年の民事訴訟法の改正において、鑑定人の発問権について新たに規定が設けられ、鑑定人の証拠収集手段の拡充が図られているが、本条の規定は、こうした民事訴訟一般における鑑定の改正と軌を一にするものと位置づけることができる。(青本第17版)
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【名前】粉原隆利(こなばらりゅうり) 【性別】男 【所属】科学 【能力】赤色念動(レッドキネシス)レベル4 【能力説明】 念動力による力の塊を生み出しその物質(のようなもの)を操る能力。物体が無から生成されたように 見えるが、これは物質ではなく念動力による物理的エネルギーの塊で質量も持たない。 体積の合計は最大で25mプールと同じ大きさ。操作可能範囲は自分を中心に最大で半径100m以内だが、 念動力の塊を生成できる範囲は自分を中心に半径10m 以内とある程度は限られている。 形状は極めて自由でエネルギーというよりは物質の様にふるまう。自分だけの現実の影響で赤色透明。 様々な形状にできる代わりに、複雑な形状(角が多い図形)にはできない。 利用パターンとしては、 投擲 念動力の塊を球状の弾丸や先端の尖った塊にして飛ばす 複数個の塊を同時に 操作することも可能。念動力なので撃って終わりではなくその弾道は制御できる。 速度は最高で時速300kmを超える 当然のことだが速いほど弾道の制御は難しくなる 粒子 細かい粒子状にした念動力の塊を大量に発生させ操ることで砂嵐攻撃みたいになる。 当然大量に操るため演算は大変になる。 防御 前面に防御壁を展開する 周囲を囲むこともできる。 索敵 その辺の微生物くらい細かい粒子状にして周囲に散布、周りを把握する。 移動 自分の体をこの念動膜で包めばかなりの速度で飛行・移動することが可能。 足場 空中に展開すれば地面なる 使い方によっては空中エレベーター的な感じにもなる。 単純だが高い凡庸性や出力を持つため物理攻撃のみで彼を破るには相当の威力の武器or能力が必要。 しかし、炎、電撃、光学レーザーは防御することができないのでかなり不得意。 【概要】 置き去り出身で、非道な実験をされそうになったが結局は大したダメージを負うことなく表の世界に 復帰することができた。現在は映倫中学に通っていて、風紀委員一六八支部に所属している。 また、チャイルドデバッカーのメンバーでもあり、比較的平和に事を収められたが研究所を潰す方の グループに所属している。能力の性質と強さの関係で主力の戦闘要員である。 チャイルドデバッカーであることはあまり他人に話していない。風紀委員に所属しているのは情報収集と 少しは後ろ盾になるのではないかという考えから。同じクラスの木岡とは同じような境遇のため仲が良く、 木岡と同じ特別部隊の隊長である小鳥遊とも木岡つながりで面識がある。 小鳥遊はかなり頭が良いため下手な発言や行動をするとチャイルドデバッカーの裏側がばれる のではないかとかなり警戒視している。 今のところ風紀委員関係者には誰にもばれていない。 なお、木岡は彼がチャイルドデバッカーであることを知っている。 ぶっきらぼうな性格で、チャイルドデバッカーの他の メンバーたちに比べればそれほど仲間思いではない どちらかというと作戦の成功を第一の目標に掲げることが多いため、仲間思いな人と対立することもある。 身体能力はけっこう良く、念動力の塊を使った剣術が特に優れる。 【特徴】 身長170cm 髪は天然で色は黒 顔はけっこういい 私服は赤系統のものが多い 【台詞】 「なんで念動力が赤くなるのかだって? そりゃ俺が赤色が好きだからだよ・・・ まぁ正直よく分からない 自分だけの現実の影響らしいけど、自分だけの現実に影響するほど赤色好きなのかなぁ、俺は?」 「おいおいそんなちゃっちな拳銃じゃ俺の防御は崩せねえよ、駆動鎧と同等の耐久度なんだぜ」 【SS使用条件】特になし
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(未成年者、成年被後見人等の手続をする能力)実意商 第七条 未成年者及び青年被後見人は、法定代理人によらなければ、手続をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるときは、この限りではない。 2 被保佐人が手続をするには、保佐人の同意を得なければならない。 3 法定代理人が手続をするには、後見監督人があるときは、その同意を得なければならない。 4 被保佐人又は法定代理人が、相手方が請求した審判又は再審について手続をするときは、前二項の規定は適用しない(改正、平八法律一一六、平一五法律四七) (改正、平一一法律一五一) 旧法との関係 該当条文なし 趣旨 本条は、未成年者、青年被後見人等が手続をすることについての制限を規定したものである。未成年者でも青年被後見人でも特許権者又は実施権者となりえることから考えて、当然自己の名において手続をせざるを得ない場合があるわけであるが、実際の手続を代理人によらないで自らすることは、事実上むずかしいと思われる場合が少なくない。そこで自己の利益を手続の過程において十分に主張し防衛することができないこれらの者を保護するために本条の規定が設けられたのである。これと同様な考え方から民法においては行為能力の制度、民事訴訟法においては訴訟能力の制度が設けられている。本条はその性質から考えて民事訴訟の訴訟能力の規定とほぼ同様な内容を規定した。 なお、平成六年の一部改正において、準禁治産者(現在は被保佐人)又は法定代理人が、その特許権に係る特許異議の申立てについて手続をするときは、審判又は再審と同様に二項及び三項の規定は適用しない旨を四項に追加した。 また、平成一五年の一部改正において、特許異議申立制度が廃止されたことに伴い、該当箇所は削除した。 [字句の解釈] 1 <未成年者>民法四条の規定による未成年者は法定代理人の同意を得れば法律行為をすることができるとされているが、特許法上の手続については、すべて法定代理人によらなければすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができるとき、たとえば、婚姻をしたときなどは、自らすることができる。 2 <成年被後見人>民法九条の規定によれば、成年被後見人の行為は取り消すことができるとされているが、本条違反の場合においては、成年被後見人の行為は無効である。平成一一年の民法の一部改正において「日用品の購入その他日常生活に関する行為」については制限されることになったが、実質的な変更はない。 3 <法定代理人>何人が法定代理人であるかは民法その他の法令に従うわけであるが、通常未成年者については親権者又は後見人、成年被後見人については後見人である。 4 <被保佐人>民法一三条一項は被保佐人が行為をするに当たって保佐人若しくは保佐監督人の同意を要する場合を規定しているが、本条二項はこれと同趣旨の規定である。なお、保佐人若しくは保佐監督人の同意は一連の手続(民法一三条一項各号所定の行為)に対して包括的に与えられるもので、その中の個々の手続については与えたり除外したりすることはできない。 5 <後見監督人>民法八四八条から八五二条までが後見監督人(未成年、成年)について規定している。遺言で指定する場合と、家庭裁判所が被後見人、その親族若しくは後見人の請求によって、又は職権で選任する場合とがある。(青本第17版)
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※本キャンペーンのストーリーは「甲賀忍法帖」(山田風太郎/1958年/講談社刊)及び、「バジリスク~甲賀忍法帖~」(せがわまさき/講談社ヤングマガジンアッパーズ)を参考にしています。 慶長十九(一六十五)年…… 自分が老い先短いことを悟った徳川家康には二つ、頭を悩ませる問題があった。一方は大阪の豊臣。そしてもう一方が息子にして二代将軍・秀忠の後継者問題。 長男でありながらどもりで愚図の竹千代か、次男ながら文武に優れた才覚を見せる国千代か。 秀忠の妻で二人の母、江与の方は国千代を推し、竹千代の乳母阿福は竹千代を推す。 二人の女が先頭に立ち、臣下たちの家々も巻き込んだ跡目争いに徳川家は真っ二つに割れていた。 戦国を生き抜いた家康には豊臣という大敵を討滅してもこの問題の決着如何で徳川家が容易く崩壊することがわかっていた。 長子相続制に基づき暗愚な長男か実のある次男か。両派を納得させる解決法を求め、天海大僧正を家康は呼び寄せた。自分より老齢なこの妖怪じみた僧ならば何か妙案をくれるのではと思ってのことである。 初めに天海が示した案は 「剣の十番勝負にて決すべし」 とのこと。なるほど如何にも武門の長にぴたりと思われ悪くは無い。 が、両派の家々にまたがり十人の剣士を選ぶとなれば結果はどうあれ凄惨なものとなり、豊臣方に跡目争いを感づかれる可能性も自然高くなる。 そう難色を示す家康に、ならばと天海は続けた。江戸からそう遠くない、武蔵国と相模国にそれぞれ「魔人」の里があると言う。 武蔵国に番長(ban-tion、追放されし者たちという意味の英語)、相模国に生徒会(say-to-x、神の御子への言葉という意味の英語)。 あるキリシタン大名がそう名付けたという二つの里は、名も無き頃、遥か源平の昔から憎みあい、相争ってきた。 戦国の世が終わりを告げ泰平の世とあいなってもその力を大いに利用される「魔人」であるが、両里とも大名家に魔人の力を重用されながら決して手を取り合うことはなく、初代服部半蔵と交わした「不戦の約定」を以って戦わぬことのみを守ってきたのである。 それを解き、剣士たちの代わりに徳川家の世継ぎを決するために闘えと命じればよいと天海は言う。 徳川の都合で争いを禁じた魔人たちに、徳川の都合で争いをさせる。なんとも勝手な話であり、そしてその提案をしてきた天海自身また魔人なのである。 「彼奴らは服部殿との約定以後も相手方への憎しみを絶やしたことは無いとのこと。喜んで応じましょうぞ」 「それに」 「魔人なぞ幾ら死のうとも徳川や仕える家々には痛くもありますまい」 きひひと嗤うその老僧に家康は寒気を覚えた。 ✝✝✝✝✝ 獣もそうそう立ち寄らぬ秘境の地を天海の結界術で囲い、作り上げた戦場。そこに入る前に馳せ参じた双方の頭領に家康が手渡した巻物には以下のように書かれていた。 「服部半蔵の下交わしたる不戦の約定はここに解かれ了わんぬ。生徒会、番長十人衆及び二方の増援の者のいずれか、先にこの秘巻を携え敵陣の最も奥深くに至ることを以って勝ちとし、勝たば一族千年の永禄あらん。 慶長十九年四月 徳川家康」 魔人同士の二陣営に分かれた殺し合い。現代では「ハルマゲドン」と呼ばれるそれの先駆けとされる戦いの幕開けである--。
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<終末を背負う者- Terminal Hazard -> 『―――私は迷わない』 ステータス ス キ ル プロフィール 攻撃 20 1 赤色領域 名前の読み しゅうまつをせおうもの 防御 0 2 最後の審判 性別 女性 体力 35 3 絶世の美女 衣装 キャスケット+アウター+包帯+セーラー服+ローラースケート 精神 10 胸のサイズ 控え目 反応 30 格闘スタイル ニンジャアクション FS 30 FS名 ニンジャソウル 武器 ロジカル・デザイン 着衣 10 移動パターン 特殊(後述) 必殺技 『ソウルボディ』(消費MP:5) 効 果 : 20ダメージ攻撃(ガード不可) 自身に攻撃力+20付与(戦闘中継続。重複する) 制 約 :反応-30(戦闘中継続。30未満でも技の使用は可能) 説 明 :トランスポーターを用いてエイリアス(分身)を生成する。エイリアスは自らの意志を持たず、影のように自身と同じ行動をとる スペシャルスキル 『赤色領域 -Amaranth Field-』効果1:自身が一回の攻撃で受けるダメージは最大100となる 効果2:自身に対するアイテムの効果を無効化する(「転校生除けのお守り」も効果が無い) 効果3:戦闘終了毎に、自身のMPを10、着衣Pを1回復させる ★ RMX-114の永久機関「アマランス」から生じるエネルギー場が、閾値以上のあらゆる波動を捻じ曲げる 『最後の審判 -Doomsday-』効果1:同じ地形にいる連戦希望者(自分以外)のマッチング反応値を+5する 効果2:戦闘後の怪我判定で残り体力補正を100で計算する ★ RMX-114の自己修復機能を司るナノマシンを周囲に散布。 RMX-114の体外に放たれたナノマシンは、感染者の体内で無秩序に増殖を開始する。 無秩序な増殖の結果、ナノマシンは感染者の魔人因子を攪乱し、感染者を狂行へと走らせる。 ドロップアイテム ? 行動ロジック 前ターン終了時に『賞品の少年』を所持しているPC/転校生が移動する地形へ移動し、そのPC/転校生を狙う。『賞品の少年』がNPC化していればその地形に移動して『賞品の少年』を狙う。 マッチングに使用する反応値はステータス依存ではなく、0を基準とする(ダイス目修正は加わる) PCと同じように行動提出処理を行う。<対戦希望>……『賞品の少年』を所持しているPC/転校生。 <対戦回避>……なし。 <連戦>…………する。対象は『賞品の少年』を所持しているPC/転校生。但し戦闘回数は初戦含めて1ターンに3回まで。『賞品の少年』を所持した場合は自分からそれ以上の連戦を行わない。但し挑まれれば戦闘には応じる。 キャラクター説明 【名前】 χ(きぃ) 【容姿】 黒髪ショートカット。血の色の瞳を持つ。 「顔」と「ひじから指の先まで」を包帯でぐるぐる巻きにしている。 重量:40kg 全長155cm http //cdn18.atwikiimg.com/drsx2/pub/X5.png (1) http //cdn18.atwikiimg.com/drsx2/pub/xx2.png (2) http //cdn18.atwikiimg.com/drsx2/pub/X2.jpg (中破) 【強化型人造魔人-タイプ・エクスブリッド- CodeName RMX-114 (Reinforced Magusoid X 114)】 未来世界から送り込まれた強化型人造魔人の第114号実験機。 生体の限界を遥かに上回る情報処理能力と反応速度を持つ。 トランスフォーム能力により、瞬時に身体の各部を機械化できる。機械化によって自在に兵器を構築し、その操作が可能。 その高い回避性能ゆえに、耐久性能は他スペックに比べて低く設計されている。 【魔人化人工細胞 -Artificial Cell Typed Magus- (A.C.T.M)】 魔人因子を埋め込んだ人工の細胞。 RMX-114の肉体は、人体を構成する細胞数とほぼ同じく、約60兆個ものA.C.T.Mによって構成されている。 ▽ 【Matrixer】 A.C.T.Mの超有機的結合体。トランスフォーム能力の発動が可能な最小単位。数千から数万のA.C.T.Mから成る。 RMX-114にインストールされたオペレーティングシステムによってシステム化されている。システム化されることでA.C.T.Mは互いに結びつき、Matrixerを形成する。 トランスフォームは物理法則の制限を受けずに、質量等を無視して行うことが可能。 ただし、より超高々度な機械化ほど極端に発動率は下がってしまう。それでもトランスフォームに関わるMatrixerが多いほど、その発動率は指数関数的に跳ね上がる。 ▽ 【BouleOS】 RMX-114にインストールされているオペレーティングシステム。 ▽ 【Virtual Brain(VB)】 数多の強化型魔人の頭脳を解析して仮想化した人工頭脳。BouleOSのカーネル。 ▽ 【Logical Design(LD)】 トランスフォームに必要なデータの管理等を行うソフトウェア。機械(サイボーグ)化能力に特化している。 主な機能としては、生体の汎用性と機械の専門性を適時自動的に(瞬時に)切り替えることで身体機能を合理化する。 壁蹴りやダッシュなどのアクロバティックなアクションや高速自動修復等を可能にしている。 ▽ 【特殊武器】 RMX-114にプリインストールされた専用特殊武器。LDによってデータファイルは管理されている。 構築される武器は、数千から数千億以上の魔人因子が、RMX-114と同様に超有機的に働いている。その関わっている魔人因子の規模が、結果的にコピー防止機能の役割を果たしている。 WOZ-041「雷神」 ⇒Matrixer:掌 ⇒構築兵器:エネルギーソード ⇒備 考:基本兵装、紫色に発光するエネルギー体を利用した近接兵器 伸縮自在、太刀のようにモノを切り裂くでなく、鞭のようにしならせることも可能 貫かれたものは感電する WOZ-043「飛燕」 ⇒Matrixer:背部/脚部 ⇒構築兵器:イオンスラスター ⇒備 考:イオンエンジンを搭載した推進システム 主にダッシュなどの高速移動や多段ジャンプ、壁蹴り、ホバリングなどの移動能力の拡張に貢献している 戦闘における応用性は非常に高く、イオンスラスターの推進力を利用した強力な蹴り技など、RMX-114の学習機能と相まって想定以上の能力を発揮している WOZ-056「双幻」 ⇒Matrixer:頭部 ⇒構築兵器:トランスポーター ⇒備 考:物体の非実体化⇒転送⇒実体化の連続したプロセスを瞬時に行う装置⇒転送機 特殊な使用方法ではあるが、複数のワームホールをボット化し、それらのワームホールと使用者を常時接続することで使用者のエイリアス(分身)を発生させる WOZ-057「闇掌」 ⇒Matrixer:胸部 ⇒構築兵器:タイムブースター ⇒備 考:使用者の周囲の時間を1/1000に減速させる装置、周囲にとっては使用者の動きが1000倍になる 使用中は慣性が1000倍になることに加えて、莫大なエネルギーを消費することから、その使用時間は非常に短い WOZ-068「裂光」 ⇒Matrixer:左腕 ⇒構築兵器:ポジトロンライフル ⇒備 考:陽電子を加速して射出する兵器 魔人因子を導入することで加速器の超小型化および諸々の技術的問題の解決に成功している 対転校生戦を想定して採用され、対人兵器としてはオーバースペックな威力を誇る WOZ-088「葉断」 ⇒Matrixer:右腕 ⇒構築兵器:パイルバンカー ⇒備 考:金属製の槍を電磁力を用いて爆発的に射出する兵器 格闘戦においては、槍を射出せず、その爆発力とイオンスラスターの推進力を利用した突撃も行われる ▽ 【人格エミュレートプログラム:Key】 命令を遂行する上で、人とのコミュニケーションが必要な状況を想定してインストールされている。 エミュレートする人格情報は「被験体169号」との生活を元に学習したもの。 RMX-114の生体デザインも「被験体169号」をモデルにしている。 一人称は「私」。 ▽ 【一 六九】 一族中の魔人率が99%を超える戦闘破壊家族、一家(にのまえけ)の一人。華奢な体躯の絶世の美少女。 14歳にして燃え滾る熱いソウルを持つ、生まれながらのパンクロッカーにしてベーシスト。実は男性恐怖症。顔を隠すのはそのため。 魔人能力「Baby King Kitchen」を持つらしいが、その能力の発動を見たものは誰もいない。 腕っ節の強さからか、その容姿に似合わず「オンナゴリラ」「狂犬」「Gオンナ」など、様々な渾名を持つ。 そのパワーは鋼鉄製の壁を軽々と貫き、たとえ魔人能力を使わずとも、その格闘センスだけで並の魔人を凌駕している。 友人関係は良好で、義に篤く、割と社交的な面もあることから、何でも屋ポジが定着し、他校の生徒にまで頼られることもしばしば。 ▽ その正体は未来世界から送り込まれた要人抹殺用のマグソイド。 当時、まだ胎児であった「一六九」へとタイムリープすることで、一六九と入れ替わった。 構成する細胞の入れ替わり自体はおよそ7年で完了したが、RMX-114としての各種機能の復元にさらに7年を費やす。 その間の潜伏中は、一家の一員として振舞い続け、学校にも通う。 だが一六九としての人格はすべてエミュレートされたものにすぎず、現状、RMX-114には「ココロ」と呼べるものはない。 不必要な言動を一切せず、ひたすら命令に対して絶対的なその姿は殺戮兵器そのもの。 ▽ 【被験体169号】 一六九のクローン体。 http //cdn18.atwikiimg.com/drsx2/pub/6029.jpg ▽ RMX-114のタイムリープ先を、過去のある時点へと固定するために利用された。 RMX-114を妹のように思っており、製造されてから処分されるまでの14年間、RMX-114と共に過ごしてきた。 幼いころから機関による教育を受けていた割に、どこか抜けたところがある。自身を製造した機関を生みの親のように思い、その愛情を信じていた。 RMX-114を構成するA.C.T.M(人工細胞)の製造には、彼女の遺伝子情報が使われているため、RMX-114も厳密には一六九のクローンと言える。 機関は彼女の処分を命令の実行能力の試験を兼ねてRMX-114に行わせた。これは、万が一ココロが芽生えた場合でも、その重みにRMX-114自身が耐えられず、その心が壊れるように仕組んだからである。 誰よりもRMX-114に心が芽生えることを望んだ彼女であるが、皮肉にも彼女自身がその心の形成を阻害する最大のストッパーと化している。 [ダイス目] 1 気弾 2 強攻撃 3 神速攻撃 4 弱攻撃 5 必殺技 6 必殺技 [技表] 弱攻撃………飛燕脚 強攻撃………葉断突 神速攻撃……裂光覇 気弾…………ダークホールド 必殺技………ソウルボディ エピソード 【始】挿話「変わる世界」 「いい度胸だね、私に戦いを挑もうなんて」 ここは妃芽薗学園敷地内。グラウンド。 「ずっと探してたんだ。あの時の借りを忘れたとは言わせねえぞ!」 目の前の男はわなわなと全身を震わせている。 男は何か恨みを私に抱いているようだが、私には身に覚えがない。 「忘れるも何も。私は別に、君と関わりのある人だけを狙って遊んでるわけじゃないよ」 ここ妃芽薗学園は女子校ということもあって、他校の特に男子の侵入者が多い。 私は風紀委員として、そのような不埒な輩を幾度となく叩きのめしてきたのは確かだが、近頃はこういう逆恨みから挑んでくるのが多くて煩わしい。 「うるせえ! おまえのせいで! おまえのせいで……! 俺たちがどれだけ苦しんだと思ってやがる!」 目の前の男も、その手の輩であろう。男は涙を瞳に滲ませている。まぁ、この姿だけを見れば同情しないこともない。 「で、私があんたに何やったの?」 「この俺の夢をお前は邪魔したんだ! 千人切りの金次と呼ばれるべく、今まで地道に頑張ってきたのに! お前はそれを邪魔しただけでなく、俺の! 俺たちの! 大事な……!」 男は唇を噛みしめ、全身をぶるぶると震わせている。 妃芽薗の学外へと強制送還される際、去勢させられたのだろう。 「命があるだけましだね」 被害にあった子達が、私刑を行うのはよくあることだ。 「うるせえ! お前さえいなければ……! この落とし前つけさせてもらうぜ……!」 男はどこからかモーニングスターを取り出し、内股で私の方へとにじり寄ってきた。 「あんたには、もう落とせる『前』は無いけどね」 そう揶揄してやると、 「やめろぉ!」 と男は顔をひきつらせながら叫んだ。 「というか、あんたも希望崎なの……?」 「たりめえよ……!」 やはりと私は合点する。噂によると希望崎学園にはビッチとレイパーしかいないとか。この学園での彼らの蛮行の限りを見るに、こんなのまで、いちいち相手にしていたらきりがないかもしれない。 「まあまあ、お互い様ということでさ。あんたもこれで反省して、これからは女性として生きていくことを考えてみたらどうかな?」 そう打診してみる。 「て、てめえ、ふ、ふさけんじゃねえぞ!」 しかし男は激昂した。どうやら男としての矜持だけは捨てきれなかったらしい。 ◆ 男を叩きのめし、縄で縛っていると、背後から声をかけられた。 「よう! 相変わらず仕事熱心だな」 私はうんざりしながら振り返る。 そこには、今度は別の男が立っていた。 「希望崎の桐野紫檀だ」 面倒くさくなって私は手でしっしっと宙を払う。 しかし、紫檀と名乗る男は、なおもその場にとどまる。 「そいつ、うちのなんだ。返してくれよ」 紫檀は縛られている男を指して言う。 「むーりー。こいつほっといたらまた、うちに来るでしょ? うっとうしいんだよね、そういうのさ」 私がそう答えると、紫檀は盛大に笑いだした。 「要は力づくで取り返せってことか?」 紫檀は威勢よく言う。 「男女平等! 俺は女だからって手加減しないぜ? わび入れんなら今のうちだ。何せ俺は最強。誰にも負けたことがねえからな」 紫檀はガハハと笑う。こういう挑発は乗ってあげるのが、筋というものだろうか。 「じゃあ、その無敗北神話も今日までってことだね」 「は! いいぜ。ならやってみな! その細い腕っ節でよぉ」 紫檀がそう言い終えるやいなや私は、彼の顔面に拳を叩きつけていた。 「あ、あれれ?」 しかし、私の拳は紫檀に届くことなく、そのすぐ目の前で停止した。私は飛び退く。 「相手の能力もわからず突っ込んでくるとか馬鹿か? 調査通りの猪突猛進っぷりだな! どうだ? 逃げるなら今のうちだぞ?」 紫檀は得意顔だ。 「不利なのは明らかっぽいね。じゃあ、お言葉に甘えて今日は退くよ」 「おう、逃げたければ逃げろ。俺様は逃げるものは追わない主義だ。捨て台詞忘れんなよ負け犬」 気づけば、私は足元の石ころを紫檀に投げていた。紫檀は目を見開き、慌てたようにのけ反り、それを避けた。 「やっぱやめた。あんたムカつく」 私の中でスイッチが入った。一方で男はなぜだか動揺した。 「お、おい! 逃げんじゃねえのかよ。だまし討ちかてめえ!?」 狼狽して後ずさる姿は滑稽に映る。 「あれー? さっきまでの余裕はどうしたの?」 「クソ! マジかよっ! おまえら出て来い!」 紫檀が声をあげると、草むらや、木の上、ありとあらゆる物陰から、何人もの黒装束の男達が現れ、こちらへと駆けてきた。 「フハハ! これで多勢に無勢! お前も終わりだな!」 「ださっ……」 恥も外聞もなく仲間を呼ぶその姿勢に幻滅する私。 「あんたみたいのを卑怯者って言うんだよ。何が最強だよ。」 「ふんっ! 勝者こそが正義。俺様の辞書には勝利の二文字しかない! 卑怯者? そんな言葉は知らなくていいのさ」 「なら、今回の件で一つ勉強になるね。よくできました」 「負け惜しみを! その減らず口黙らせてやれ!」 「「「いー!」」」 ◆ 「てめえら、そんなやつにやられて恥ずかしくないのか!」 紫檀は黒装束らに向かってそう声を荒げた。黒装束らはグラウンドのあちこちで、力尽きたように横たわっている。 「あんたらみたいなのを有象無象っていうんだよ」 「俺の顔に泥を塗りやがって!」 「口だけの人がそれを言う?」 「てめえは黙っていろ!」 「あんたが黙ればね」 紫檀は拳を震わせている。 「もういい! おまえら下がれ! 来い『楓』!」 その瞬間、紫檀の影から何者かが飛び出し、私の背後に立つ。 「結局、他人使うんだ。さすが自称最強なだけはあるね」 「ふふふ」 紫檀は笑った。 「気持ち悪いなぁ」 「ふははは! 楓は我がチームの中でも群を抜くほどの強さ。おまえなんかに負けるわけがない。なあ楓?」 「……あの、そういうフラグとかはやめてください」 楓と呼ばれた黒装束の少女は迷惑そうに顔をしかめた。 「というか、兄様。ちょっと無理かも……」 「玉砕だ! 玉砕! ひるまずいけ、楓!」 「はぁ」 楓は気の抜けたような返事をし、こちらを見る。 「では、行きます」 そう告げると同時に、楓の姿がいくつにも分かれていく。 「え、ちょ……分身?」 思わず感嘆する。 気づけば私は楓の分身たちに取り囲まれていた。 楓はニヤリと口元をゆがませる。 「忠告しとくよ……。こんなことは無意味だと……」 意味深な言葉に私は眉をひそめる。 「何それ?」 「まあ、信じる信じないは君しだいさ……。どうする?」 どうするも何もないと私は思った。 「バカじゃないの」 そうきっぱりと告げた。 「ふふ……。なら僕がここにいる意味はないね……。じゃ、兄様頑張って」 結局何がしたいのかわからないまま、楓はどこかへと文字通り飛び去っていった。 紫檀は口を空けてぽかんとしている。 「逃げちゃったよ」 呆れつつ紫檀に声をかける。 「そうだな」 と紫檀は楓の飛んでいった空を見上げている。 「もう仲間は呼ばないの? それとも終わりにする?」 「その必要はねえ!」 紫檀は突如大声をあげた。ハッと私は身構える。 その刹那に、紫檀はグラウンドの隅へとすでに駆けだしていた。 「今日はもう遅いからな! 仕切り直しだ!」 小さくなっていく紫檀の背中に、私は足元にあった小石を投げつけた。 【終】挿話「変わる世界」 【始】本筋「前日譚」 目の奥に焼き付くような光。 燦々と輝き、この身を焼いていく赤熱。 「バカみたいだ」 思わずそんな言葉が口をつく。 幾つもの好奇のまなざしと反響する嘲笑。 やはり体は動かない。薬でも打たれたのか、身体にまるで力が入らない。 ――これでこいつも少しは可愛げのある顔になったな。 男達はせせら笑っている。 眼前に突きつけられる鏡。白く歪んだ皮膚が私の右目を塗りつぶし、視界の右半分がごっそりと抜け落ちていた。 ――もうやめて……。 級友たちの悲鳴が木霊する。 視界の隅には見知った顔があり、口元に手を当て、私を見て青ざめている。 「これくらいヘイキだから」 そう微笑みかけようと試みたところ、側頭部を何かが駆け抜けた。 ――へらへらするなよ、萎えちまうだろ。 男が拳を振り下ろして、私にそう告げる。 薄暗い部屋の中に、男が五人と少女が三人。私を入れれば九人がここにはいた。死者を含めるなら、おそらくその数は両手を使っても足りない。 「もう縮み上がってんのかと思った」 私は鼻で笑う。周囲の男たちはゲラゲラと声をあげ、目の前の男は激昂した。 意味不明な言葉を喚き散らし、私の胸倉をつかんで何度も拳を振り下ろす。 人助けなんて趣味でするもんじゃない。あまりにも割に合わない。 ぐらぐらする意識の中で、この場には不釣り合いなほど、景気のいい声が聞こえた。 ――さぁ、パーティー再開と行こうか。 それに続く男達の下卑た声。少女らはあられもない姿で男達に抱えられ、それぞれが苦痛に顔をゆがませている。 ああ、少女のカラダとココロを壊すことに、どれほどの価値があるというのか。 男達――とは言っても、彼らの年齢は少女らとさほど変わらない。纏っている制服とその体格からして希望崎学園の生徒であろうが、まだ中学に入って間もない彼女らにとって、獣欲に狂った彼らは得体のしれない化けものだった。彼女らにとって彼らは、決して「少年」などという言葉で言い換えられるような存在ではない。 あんな奴ら殺しちゃえばいいのに。 かつての級友の影が脳裏によぎる。彼女は私をそう詰った。その級友もまた彼らの犠牲者であり、「人助け」なんていう私のこの気まぐれに救われた人間の一人だった。 そんなやり方じゃ……いつかさ、痛い目見るよ? けれど彼女は、その言葉を残して校舎の屋上から身を投げた。手の届く位置にいながらも、私は誰も救えていない。 この手を血に染めず、この心を怒りに染めず、中途半端に「人助け」なんてことをしている私は、きっと誰よりも彼女の心を踏みにじった。 「おい油もってこい!」 声が続く。 「もっとビジンにしてやるよ」 意識が遠のいていく。 【続】本筋「前日譚」 【始】挿話「蠢動」 雪景色が広がっている。 降り積もった雪が、屋根を滑り落ち、軒下に大きな雪山を築いている。 空を見上げれば灰色の空。 想い馳せるは、かつての記憶。しかし、現実においてはただの幻。 とらえどころのない雪が、私の掌で溶けて消えていく。 これが単に妄想であるならば、きっと私はすでに気が触れている。 生まれ変わりなんてものが、もしあったとしても、この私に宿る記憶は空想(ファンタジー)と一笑にふされる絵空事。 ――未来世界から送り込まれた殺戮兵器。 なんともリアリティがなく、何とも夢のないことを想うのか。 かつてオカルト雑誌のコラムでみた前世の記憶の持ち主は、世界を救うべく立ち上がり、仲間とともに敵を払った。 強化型人造魔人。タイムリープ。 すべてを忘れろと、現実が私に迫りくる。すべてはお前の妄想だと、現実が私に突きつける。 限りなく人間に近い身体。 「復元には、まだまだ時間がかかる」 けれど脳裏によぎるのは疑念。誰もそれを保証しない。 未だに私の能力は魔人の域を出ない。身体能力が頭一つ飛び抜けてるだけ。 あいまいな記憶、あいまいなココロ、あいまいな居場所。 ふとした瞬間、冷静な自分が問いかけてくる。 そういう設定? 現実逃避。 妄想癖。 古い記憶は思い出す回数もやがて減る。 降り積もる雪のように、古い層の上に新たな記憶が降り積もる。 「何か悩み事?」 背後からかけられる声。振り返ると、一一(にのまえはじめ)がそこにいた。私の標的、定められた目標。 時期はお正月、親族のうちの何割かが一同に介し、団欒と会食している。 こんこんと降りしきる雪。こっそりと抜け出して、ぼんやりと空を仰いでいた姿は、はた目にも物憂げに見えたらしい。 家の中からは、大人たちの楽しげな声がする。 「ちょっと食べすぎちゃって」 私はお腹に手を当て、笑って取り繕う。 少年は心配げに私に歩み寄り、自身が纏っていたカーディガンを私に羽織らせた。 「冷え込むらしいからさ、あまり長居しちゃダメだよ」 少年はそう言い残して、家の中へと戻っていった。 噂によれば、親族内にも、その少年に並々ならぬ恋慕の念を抱いているものが一定数いるらしい。 魔人は思い込みの強い生き物だ。優しさがときに罪となることが少なからずあるのだろう。 このときも、一三九六が物陰から私をじっと見ていた。 「おいでよ」 そう声をかけると、彼女はハッとしたように目を見開き、私に背を向けた。 「逃げることないよ」 瞬時に彼女の目の前に回り込み、私はその行く手を阻んだ。 「え、え……?」 戸惑う三九六に、私は羽織わされていたカーディガンを脱いで渡した。 「風邪ひくよ?」 押し付けるようにそれを彼女の胸に差し出す。 三九六はカーディガンをその手にしっかりと握りつつ、怪訝な顔を向けてくる。 「頑張ってね」 ぽんと肩をたたいて、私はその場を後にした。 行く当てもなく歩いていると、神社の境内が目に映る。 「おーい」 見なれた後ろ姿を見つけ、私は声をかけた。 一三五が振り返ってこちらを見る。 「初詣に来た」 にっと笑ってみせると、三五はやれやれと首を振った。 「おぬしなぁ」 三五は本殿の下のテントの中で、初詣に来た人々に甘酒を配っていた。 彼女の元へ行くと、彼女は手を伸ばして、私の頭に積もった雪を払う。 「儲かってる?」 「ほら」 私のその言葉は無視し、彼女は甘酒を私の方へと差し出す。 「見てわかる通り、忙しいからな。それ飲んだら帰るのじゃぞ」 私は甘酒を受け取ると、テントの空いてるスペースに腰を下ろす。 ちょびちょび飲んでいると、三五が私のところへやってきて、すっと傘を差し出した。 「返さないよ?」 私は眉をひそめる。 「おぬしみたいなのも一応は家族じゃからな」 三五はその場に傘を置くと、甘酒を配りに戻っていった。 「……一人は家族の為に、家族は一人の為にか」 家に戻るなり客間から悪酔いする四一の声が聞こえてきた。 また彼女が暴れているらしい。客間を避けて居間の方を覗くと、 「裏切り者っ……!」 私の顔を見るなり、四が開口一番そう告げた。 どうやら子どもらは子どもらで、こたつでトランプに興じているらしい。 「まーだ裏切ってなーい」 ご名答と心中で皮肉りながら、私は四を押しのけてこたつに足を入れる。 「私には見えたんだから」 そう目を細める四。けれど私はせせら笑う。 「当たるも八卦、当たらぬも八卦ってね」 「私の未来予知は占いなんかじゃ――!」 「まぁまぁ、四ちゃん。六九ちゃんもする?」 声をあげる四に、それをなだめる一。見ると、その一の両隣には千四五と三一八がしがみつくように寄り添っていた。どうやらそのポジションは競争率が激しいらしく、彼女らの背後にも幾人か控えているため、異様にそこだけ人口密度が高い。 「来たばかりだし、見学するよ」 彼女らの身が凍り付くような眼差しに晒されたこともあり、私は誘いを断る。 四が居心地が悪そうにもぞもぞとしているのを見て、その原因が私にあると知りつつ、どことなく親近感がわいた。 「四ちゃんの占いは外れるって評判みたいだけど、当たることってあるの?」 「う、うらないなんかじゃない……! 魔人物理学に基づいて計算された確実な予知だよ!」 四は狼狽えつつもそう私に断言する。 「じゃーさ、四には何が見えた?」 「え……?」 「私について何が見えたー? 断言するくらいなら教えてよ」 私は何でもないことのように顔をきらきらさせて尋ねる。 しかし、四は深刻な顔で押し黙った。 この時代、この場所に、未来予知能力を持つ一四という存在は、機関にとってこの上なく厄介なものであった。 外すことが多いとはいえ、彼女の能力は間違いなく危機に瀕した際には有効に機能することが確認されており、たとえ未来から直接的にエージェントを送っても、こちらの手駒は限られており、手を打たれれば計画そのものが瓦解する可能性さえある。 「ん、どうしたの?」 その顔を私は覗き見た。苦悩に歪んだ表情。 だからこそ、機関は家族の絆を、その信頼を、逆に利用することを考えた。標的に対してエージェントを送りこむのではなく、標的にとって身近な存在をエージェントに変えること。 家族愛を逆手に取った狡猾な一手。 「……秘密」 四は悪戯っぽく笑った。彼女はそうやって、いつもはぐらかす。私に関する予知を自分の中で抱え込んで決して人には話さない。 一人は家族の為に、家族は一人の為に。そして家族と交わした約束は必ず守るべし。 私は彼女と約束した。誰も裏切ったりしないと。守るつもりのない約束を。 「ケーチー」 私は四の胸に顔をうずめて、彼女の脇腹をくすぐった。 「も、もう……! や、やめてってば……!」 彼女は身をよじらせ、こたつから這い出て逃げて行った。 その後姿を一瞥し、私は寝転がる。 強化型人造魔人RMX-114は、タイムリープマシンであり、さらに言えば、時間と空間を超えて、条件に適合する人物を洗脳する兵器であった。 RMX-114は時間軸を逆行することで、ウィルスとしての性格を発現し、タイムリープ先の生命体の遺伝情報を書き換え、自己複製を図る。適合可能者は十億人に一人。クローン個体を用いて遺伝情報の同期を行えば、三万人に一人。決してゼロではない。 未来世界において、争いの戦火が時間軸線上にまで広がったとき、機関は最重要ターゲットである一一の掌握を図った。一方、敵は敵で一枚上手であり、一一の保全を最優先として行動し、機関が彼に直接、干渉を行うことを許しはしなかった。彼と彼に近しいものの情報は、優先的に保護され、機関の計画は早々に断念せざるを得ない状況へと追い込まれた。 それでも、機関は探し求めた。何人もの人間を洗い出し、徹底的な調査の末に、機関は一六九を適合者としてついに特定した。 これが妄想の類であるならば、きっと私はすでに気が触れている。 けれど、四の予測するならば、ほんの数パーセントであろうと、それが私の希望となる。 「バカらしい」 思わずそう呟いていた。 四の能力の産物であるラプラスの魔。四の予測が外れれば四を、四の予測が当たれば私を、ラプラスの魔は食らおうとする。 誰だって死ぬのは怖い。四だってそうだ。能力の仕様を少しずつ変えることで、予測が外れてもいいように進化させている。 当然、私も死ぬのは怖い。 だからこそ、私は四の予測が当たればいいと思う。 私はまだ生まれてきてもいない。そのことを四は分かっていない。 【未完】挿話「蠢動」 【再開】本筋「前日譚」 気づけば私はけらけらと腹の底から笑っていた。 白衣の男たちが怪訝な顔を向けている。 私はそれでも笑い続ける。偽物のカラダと偽物のココロがぽろぽろと崩れていく。 ――気でも触れたか? どこからかそんな声。 まるで他人事のように、私はその光景を俯瞰していた。 真っ白な天井がそこにはあった。 ここに運ばれて一週間。右眼の欠損と全身におよぶ重度の火傷と打撲に裂傷。医者からは、この短期間でここまで回復したのは奇跡とまで言われた。 それでも全身に及ぶ損傷は永遠に残る。私が何者かに関係なく、私はまだ一六九だから。 あるはずのない記憶。薬品のにおいが、どこか懐かしく感じた。 「バカが」 声の方へと視線を向ける。 「紫檀……?」 透明なカーテンの向こうに、ぼんやりと見知った顔が浮かんでいる。 「わざわざ来てくれたんだ」 まるで他人事のように実感がわかない。 「当たり前だろ」 紫檀は今にも泣きだしそうな声で言う。 身体は思うように動かず、視界もどこか左に偏っているような違和感がある。 「あんたが助けてくれたんだよね」 「……俺は助けられちゃいねえよ」 紫檀は吐き捨てるように告げる。 あの状況で、私たちを助けられるのは、彼しかいないだろう。 「なんで、みんな殺しちゃったの?」 「あんな奴ら! 死んで当然だ!」 紫檀の震える声が病室に響き渡る。 「それでも、殺すのはダメだよ。我慢した私がバカみたいじゃん」 自嘲気味に私は笑った。 しかし、紫檀は私の冗談を笑うことなく顔をゆがませた。 「お前はなんで……! 自分を……!」 紫檀は身を震わせている。 「みんなは無事?」 「お前は自分の心配をしろ。みんなお前と比べれば、無傷みたいなもんだよ」 「身体じゃなくてさ」 「……お前、やっぱ狂ってんぞ」 「褒め言葉として受け取るよ。でさ、みんなは無事?」 「男の俺には分からん」 「……あっそ」 私は目をつぶり、紫檀が帰るのをじっと待つ。 しかし、紫檀の気配は消えない。 「あのさ、いつまで居る気?」 そう声をかけるが、紫檀は心ここにあらずといった顔で私をじっと見ている。 「見せられるような顔じゃないよ?」 思わず苦笑いを浮かべた。包帯で覆われているとはいえ、顔の少ない部分がケロイドとなりつつある。 しかし紫檀は首を振った。 「そんなことねえよ」 「もうお嫁にはいけないね」 「だから俺は本気で――」 「あーはいはい。ごめんね。気持ちはうれしいよ」 「……俺は諦めない。同情なんかで言ってんじゃねえぞ」 「じゃあさ――なんで私を殺さなかったの?」 「何言って……」 「私の右眼は大切にしてくれてる?」 「お前の眼は、俺は知らないが……」 「あはは、ごめん。まだちょっと混乱してるみたい。今日はもう帰ってくれない?」 【続】本筋「前日譚」 【始】挿話「病室の前で」 「兄様、振られちゃいましたね」 病室を出た紫檀を楓が出迎える。 にやにやと、どこか嬉しそうな表情の楓に対し、紫檀は拳を握りしめ、ツカツカと歩きだす。 「え、兄様、まさか……」 楓はその背中を追いつつ、どこか胸騒ぎを覚えていた。 【終】挿話「病室の前で」 【再開】本筋「前日譚」 「先輩、何ですかあの人たち?」 紫檀と入れ替わるように病室に声が響く。 同じ風紀委員の鵠城千花だった。私に懐いているのか、私以外の他者に対する不快感を隠すことなく表情に出す素直さは、割と嫌いではなかった。 「だめですよー? あんな得体のしれない人を入れちゃ」 千花はニコニコと私の前に座る。 「君は、私がこんなになっても変わらないね」 「ふふ! 当然です。何があってもチカは先輩一筋ですから」 「……ねえ千花」 私は目を閉じる。 「あ、先輩! 聞いてください。学校でですね」 「千花」 私は千花の話を遮った。 「ん?」 千花は目をパチクリさせてこちらを見ている。 「私の眼、どうしたの?」 千花の表情は変わらない。 「ようやく確信が持てた」 私はほっと胸をなでおろす。 「食べたの?」 私のその質問にも、千花は答えない。 「ふふ、別に問い詰めるつもりじゃないの。ただ、ただ、嬉しい。あなたがそれを拾っていてくれたことが」 「先輩、何を……」 千花はようやく口を開く。その頬には一筋の汗が伝っていた。 私は笑う。生まれて初めて心からの笑みを浮かべた。 千花の体の奥で、私の右眼が信号を送っている。 「せ、先輩。わ、わたし、あの……」 千花は私の様子に慄き震えていた。 ああ、彼女は勘違いしている。私は怒ってなどいないのだ。 終わってみれば、むしろ、これほどまでに清々しい気分はない。 「ありがとう! ありがと! 千花っ!」 身体が軽い。不思議と私は腹の底から笑っていた。 【未完】本筋「前日譚」 【始】挿話「本来の世界線にて」 工場跡に男どもの下卑た声が響く。 耳障りな破壊音が夜の闇に轟いている。 「先輩……」 私は恐怖に押しつぶされそうな心を奮い立たせて、シャッターの前に立った。 「千花ちゃん、無理だよ……」 同じ風紀委員のサナが私の手をつかんで首を振る。 振り返ると、皆が不安そうな顔をしていた。ここに来て、このシャッターの向こうから漂う異様な空気に気圧されていた。 「六九ちゃんは、運が悪かったんだよ……」 一人がぽつりと漏らす。 「六九、可愛かったからね。あいつらも、そりゃほっとかないよ」 誰かがそう続く。 さわさわとざわつき始め、一人が踵を返した。そして、一人、また一人と去っていく。 ◆ 少女たちの嗚咽と悲鳴が木霊する。 薄明りの中、男たちが喜びの声を上げている。 何人もの少女たちが裸に剥かれ、男たちとまぐわう中、ただ一人だけ、その狂気の宴にまじわらず、その光景を楽しむかのごとく見物している少女がいた。 「楓姉さんもどうすっか?」 男の一人がニタニタとその少女に話しかける。だが、少女はケラケラと笑うだけで、首を縦には振らなかった。 楓と呼ばれたその少女は、この宴を取り仕切っている者の妹であり、希望崎の生徒である。 本来ならば楓は男であるが、性転換能力を受けたことで、今は女性となっている。希望崎では性別を偽ることはよくあることであるため、特段、そのことが取りざたされることはなかった。 「兄様、こいつどうする?」 楓はのけ反り、背後へと視線を向ける。兄様と呼ばれた男は、部屋の隅でバイアルに入った目玉を光にかざし、恍惚の表情を浮かべていた。 兄様と呼ばれたこの男こそが、このグループのリーダーであり、楓の兄である。名を紫檀と言う。 楓の足元には全裸の少女が、力なく横たわっていた。少女の名前は一六九と言う。本来なら美しくしかったその容姿も、今となっては化け物のそれにしか見えない。右の眼窩が空っぽであることさえも可愛らしく見えるほど、彼女の全身は酷い火傷によって皮膚が変性していた。 ――絶対に許さない。 楓は思う。 『紫檀のお眼鏡に適ってしまった』 ただ、それだけが彼女の罪。 楓と六九はここで初めて出会った。六九の美しさに楓が嫉妬を覚えなかったといえば嘘になる。 そもそも楓は紫檀に並々ならぬ想いを抱いており、楓が性転換を受け入れたのにも、そのことが大きくかかわっていた。 「べっぴんさんに、もったいないことしたっすね」 下っ端の一人が楓の方を見てため息をつく。 「あーあ、こうなるなら、もっと楽しんでおけばよかったっす」 別の下っ端は腰を振りつつ笑う。 少女はここに集まった男衆全員に一通り回された後、楓によって油で全身をじわじわと焼かれ、紫檀によって右目をくりぬかれた。 少女が痛みと恐怖で気を失うたびに、楓は少女の爪を剥いだ。そして剥ぐ爪が無くなれば、鼻孔に水を注ぎ、無理やりにでも意識を戻させた。 紫檀が少女をここに囲い込み、仲間たちと慰み者にすること自体は、今に始まったことではない。彼も希望崎学園の生徒であり、その変態性はチームのリーダーだけあって突出していた。 楓自身も愛する兄の行いを容認しており、女性としての自身のルックスにも自身があった。しかし、その余裕も六九を前にして、嫉妬に代わる。紫檀が六九をその手に抱く順番が回ろうという時に、楓は紫檀を押しのけ、その顔に傷をつけた。 楓の並々ならぬ様子に、紫檀を含め周囲の男衆は楓の凶行を止めることはしなかった。 結局、紫檀は六九の右目をくり抜くことしか、楓に許されなかった。しかし、絶世の美女となろう六九の魔性は、たとえ右眼のみと言えど、紫檀の心を奪っていた。 「兄様はやっぱり、今でもこいつを抱きたい?」 楓の問いに紫檀は頬をひきつらせる。 「そんなもん抱けるか」 紫檀はそう吐き捨てる。 ホッと胸を撫で下ろす楓に、紫檀は不愉快そうに告げた。 「お前、今日は飯抜きな」 【終】挿話「本来の世界線にて」 【設定】 ◆一六九 華奢で小柄な体躯に似合わず、怪力を持つ少女。絶世の美女たる素質を持つが、その怪力っぷりによって魅力を台無しにしている。 面倒見もよく、厄介ごとにすすんで巻き込まれている節がある。その目的は、この世界線における全イベントの回収だが、死の運命に対する足掻きというよりも、与えられた人生を少しでも充実させられればという意味合いの方が強い。 RMX-114の能力により、未来世界からタイムリープしてきており、タイムリープの仕様上、連絡すらも取れない状況の中、単独で任務を遂行している。 自身の存在を抹消することなく、自身の死の運命を克服することが、任務の遂行以前に必要な条件。そのフラグが立たない限りは、RMX-114としての能力は解放されない。 この世界線においては、千花へと寄生することで、偶発的ではあるが千花の子や孫を脈々と経由することで、未来世界へとの六九のDNAが届くことになる。 ただし死の未来は回避したが、能力解放前に受けた損傷により、本来の能力の半分も発揮できない状態へと陥っている。 また、無理な状態での解放により、既に内部では細胞が次々にメルトダウンを起こしており、遅かれ早かれ、結局は大会終了後には跡形もなく溶けて消滅する定め。 未来世界で魔人全ての救世主となる存在の父親となる運命を持つ一一と、救世主の母となる存在とのフラグ立ての阻止、という指令を受けている。 ∴本来の世界線での設定 絶世の美女たる少女。 怪力を持つわけでも、面倒見が良いということもない。 家庭的な性格であり、家事が趣味。風紀委員であったが、風紀委員としての活動にはあまり参加せず、茶道部の方によく顔を出していた。 帰省のために、校門を出たところを、紫檀一派にさらわれ、暴行の末に殺害された。 このとき紫檀が持ち帰った彼女の右眼は非常に保存状態が良く、未来世界において回収され、RMX-114の開発に利用される。 ◆紫檀 結成したその日に、六九によってチームを壊滅させられる。その際、六九に一目ぼれし、たびたびチョッカイをかける。 自身のチームの元ナンバー3が結成したチームの策略によって、六九が捕らえられた際に、千花と協力して救出作戦を行った。 しかし、時すでに遅く、六九は命は助かるが、本来の世界線と同じように男達に虐げられる。 全身に火傷を負った六九の姿は、本来の世界線とは異なり、紫檀の覚悟を逆に固め、結果として六九に対する想いをよりいっそう強くさせた。 ∴本来の世界線での設定 この世界線では六九によってチームを崩壊させられていないため、非道の限りを尽くした結果、人格が歪んでしまう。 ◆楓 紫檀の妹。もともとは男性であるが、性転換能力を受けて女性と化している。 兄である紫檀に対して並々ならぬ愛情を抱く。 ∴本来の世界線での設定 六九に嫉妬する。直接的には彼女が六九を殺した。 ◆千花 六九の後輩。 六九に対して思春期ということもあってか、歪んだ想いを向けている。 ∴本来の世界線での設定 それなりに六九を慕ってはいるが、そこには特別な感情は無い。
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(回復した特許権の効力の制限) 第一一二条の三 前条第二項の規定により特許権が回復した場合において、その特許権が物の発明についてされているときは、その特許権の効力は、第百二条第一項の規定により特許料を追納することができる期間の経過後特許権の回復の登録前に輸入し、又は日本国内において生産し、若しくは取得した当該物には、及ばない。 2 前条第二項の規定により回復した特許権の効力は、第百二条第一項の規定により特許料を追納することができる期間の経過後特許権の回復の登録前における次に掲げる行為には、及ばない。 一 当該発明の実施 二 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産についてされている場合において、その物の生産に用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をした行為(改正、平一四法律二四) 三 特許が物の発明についてされている場合において、その物を譲渡等又は輸出のために所持した行為(本号追加、平一八法律五五) 四 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をした行為(改正、平一四法律二四) 五 特許が物を生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を譲渡等又は輸出のために所持した行為(本号追加、平一八法律五五) (本条追加、平六法律一一六) 趣旨 本条は、回復した特許権の効力の制限について規定したものである。 一一二条の二第一項第一項の規定に基づき特許料等が追納されたときは、一旦失効した特許権が遡及的に回復する(納付期限の経過の時に遡って存続し又は初めから存在していたものとみなす)こととなるが、この場合に、特許権が消滅した後に特許発明の実施をしていた第三者にまで、特許権の回復後に遡及的に特許権の効力を及ぼすことは妥当ではない。このため、一一二条一項の追納期間の経過後から、特許権の回復があった事実が公示される回復の登録までの間における第三者の一定の行為については、特許権の効力が及ばないこととした。 一項は、特許が物の発明についてされている場合に、特許料の納付期限経過後六月の追納期限の経過の時から特許権の回復の登録までの間において、輸入、国内生産又は国内において取得した物には特許権の効力が及ばない旨を規定したものである。また、二項は、通常は特許権の侵害とされ得る行為についても特許権の効力が及ばない旨を規定したものである。 平成一四年の一部改正において、一〇一条の改正により、「~にのみ用いる」という専用品の要件を満たさないものであっても間接侵害が成立する可能性が生じることとなったため、本条二項においても、「のみ」という要件を削除して各号の該当範囲を広げ、一〇一条で広がった侵害とみなす行為についても、所定の期間、特許権の効力が及ばない旨が規定された。また、一〇一条の記載に合わせ表現上の修正が加えられた。 また、平成一八年の一部改正において、権利の消滅から回復登録までの所定期間内において回復後の特許権の効力が及ばない行為として、当該特許に係る第三者による「譲渡等又は輸出のために所持した行為」を追加した。本条の規定によって、効力制限期間内に行われた第三者の譲渡等又は輸出の実施行為は非侵害行為とされるのであるから、非侵害行為とされる譲渡等又は輸出を目的として所持行為も同様に非侵害行為として法的整合性を図ったものである。(青本第17版)
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(同前) 第三六条の二 特許を受けようとする者は、前条第二項の明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書に代えて、同条第三項から第六項までの規定により明細書又は特許請求の範囲に記載すべきものとされる事項を経済産業省令で定める外国語で記載した書面及び必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの(以下「外国語書面」という。)並びに同条七項の規定により要約書に記載すべきものとされる事項をその外国語で記載した書面(以下「外国語要約書面」という。)を願書に添付することができる。(改正、平一一法律一六〇、平一四法律二四) 2 前項の規定により外国語書面及び外国語要約書面を願書に添付した特許出願(以下「外国語書面出願」という。)の出願人は、その特許出願の日から一年二月以内に外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。ただし、当該外国語書面出願第四十四条第一項の規定による特許出願の分割に係る新たな特許出願、第四十六条第一項若しくは第二項の規定による出願の変更に係る特許出願又は第四十六条のニ第一項の規定による実用新案登録に基づく特許出願である場合であつては、本文の期間の経過後であつても、その特許出願の分割、出願の変更又は実用新案登録に基づく特許出願の日から二月以内に限り、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出することができる。(改正、平一八法律五五) 3 前項に規定する期間内に外国語書面(図面を除く。)の同項に規定する翻訳文の提出がなかつたときは、その特許出願は取り下げられたものとみなす。 4 第二項に規定する外国語書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面と、第二項に規定する外国語要約書面の翻訳文は前条第二項の規定により願書に添付して提出した要約書とみなす。 (本条追加、平六法律一一六、改正、平一四法律二四) 旧法との関係 該当条文なし 趣旨 従来の特許法においては、特許出願にあたっては願書を提出するとともに、願書には明細書、必要な図面及び要約書を添付しなければならず(三六条二項)、これらの書類は日本語により作成しなければならないとされた。 このため、従来、外国人が我が国に特許出願を行う場合は、通常、外国語により行った第一国出願に基づきパリ条約の優先権を主張し、願書に日本語に翻訳した明細書等を添付することにより行っていた。 しかし、従来の特許法においては、①パリ優先権が主張できる一年の期間が切れる直前に特許出願せざるを得ない場合には、短期間に翻訳文を作成する必要が生じることに加え、②願書に最初に添付した明細書又は図面(すなわち外国語を日本語に翻訳した出願当初の明細書又は図面)に記載されていない事項を出願後に補正により追加することは認められてないため、外国語を日本語に翻訳する過程で誤訳があった場合には、外国語による記載内容をもとにその誤訳を訂正することができないなど、発明の適切な保護が図れない場合があった。 本条は、こうした問題点を解決するため、平成六年の一部改正において新設された外国語書面出願について規定したものである。 一項は、外国語書面出願の提出書類について規定したものである。願書には日本語で作成した明細書、特許請求の範囲、必要な図面及び要約書を添付しなければならない(三六条二項)が、本項では、これに代えて日本語による願書に、①明細書に記載すべき事項を経済産業省令で定める外国語(特許法施行規則二五条の四において英語を規定)で記載した書面、②必要な図面でこれに含まれる説明をその外国語で記載したもの及び③要約書に記載すべき事項をその外国語で記載した書面を添付して提出することができる旨を規定している。 二項は、一項の規定により願書に添付した外国語書面及び外国語要約書面の翻訳文の提出義務について規定したものである。我が国においては、特許権は日本語により発生させる必要があることから、特許協力条約に基づく外国語特許出願については、従来から翻訳文の提出を求めていた。外国語書面においても同様であるため、外国語書面及び外国語要約書面の日本語による翻訳文を提出しなければならないこととした。本項に規定する翻訳文の提出期間は、平成一八年の一部改正前は出願の日から二月以内とされていたが、我が国に外国語書面出願により第一国出願をする出願人の翻訳文作成負担の軽減を図るため、同改正により、優先日から一年二月以内に延長された。「一年二月」としたのは、(1)分類付与や公報発行準備等の出願公開前(先の出願)に基づいて国内優先権を主張して新たな外国語書面出願(後の出願)を行う場合であって、翻訳文提出期間経過後に後の出願を行う場合、先の出願と後の出願の両方について翻訳文を作成する必要がある(翻訳文を提出しておかないと、先の出願が見なし取下げとなってしまう)ことを考慮したためである。本項ただし書は、特許出願の分割、若しくは出願の変更に係る外国語書面出願、又は実用新案登録に基づく外国語書面出願を行った場合について規定したものである。この場合であっても、出願日(もとの出願又は基礎とした実用新案登録に係る実用新案登録出願(以下「もとの出願等」という。)の出願日に遡及)から一年六月経過後に速やかに翻訳文付きで公開が行われる必要があるため、翻訳文提出期間は原則として、「出願日(もとの出願等の出願日に遡及)から一年二月」であるが、もとの出願等の出願日から一年以上経過後に特許出願の分割若しくは出願の変更に係る外国語書面出願又は実用新案登録に基づく外国語書面出願を行う場合には、分割の日、変更の日又は実用新案登録に基づく特許出願の出願日から二月の間、翻訳文提出期間を設けることとしている。 三項は、翻訳文の提出がない場合の取扱いについて規定したものである。出願の日から一年二月以内に外国語書面のうち明細書に相当する書面の翻訳文の提出がなかった場合は、特許協力条約に基づく外国語特許出願について明細書及び請求の範囲の翻訳文が提出されなかった場合の扱い一八四条の四第三項)と同様、その外国語書面出願は取り下げられたものとみなすこととした。 なお、図面に相当する書面と外国語要約書面の翻訳文が提出されなかった場合の取扱いについては、以下のとおりとした。すなわち、図面について翻訳文が提出されなかった場合は、四項の規定により願書に添付して図面はないものとして取り扱えば足りるため、出願のみなし取下げとはせず、また、外国語要約書面について翻訳文が提出されなかった場合は、技術情報としての利用に供することができるよう出願人に補正を命じれば足りるため、この場合も出願のみなし取下げとはしないこととした。 四項は、二項の規定により提出された翻訳文の特許法上の位置付けについて規定したものである。特許法においては、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面」が審査の対象となるとともに、これらに基づき特許権、補償金請求権が発生する。外国語書面出願の場合は、従来の特許協力条約に基づく外国語特許出願と同様(一八四条の六)、外国語書面の翻訳文を願書に添付して提出した明細書、特許請求の範囲及び図面とみなし、外国語要約書面の翻訳文を願書に添付して提出した要約書とみなすことにより、翻訳文が審査及び特許権等の対象となることを明確にした。本項の規定により、外国語書面出願の審査は、特許法上の明細書等とみなされた翻訳文に基礎をおいてすればよいこととなるが、このような取扱いとしたのは、特許権等の範囲が外国語書面で確定されると、第三者は常に外国語書面イあたることが必要となり第三者の監視負担が極めて大きいこと、審査の対象を外国語書面とすると、たとえ翻訳文が提出されたとしても拒絶理由の有無等は外国語書面に基づいて審査しなければならず、迅速な審査に支障をきたすこと等を考慮したためである。 なお、平成一四年の一部改正において、三六条二項の「明細書」から「特許請求の範囲」が分離されたことに伴い、本状にも同様の修正が加えられた。(青本第17版)