約 2,183,701 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/515.html
演習場には、噂を聞いて集まった生徒たちにより既に人の輪が形成されていた。 学院という閉鎖空間での生活はどうしても単調なものになりがちだ。 そこに囲われ、刺激に餓えた生徒たちにとって、決闘とは(たとえそれが学生と使い魔のものであっても)なんとも魅力的な娯楽なのだ。 シュトロハイムが、輪へと向けて進み出る。主役の片割れの登場に、生徒たちがさっと道を空ける。 「負けんなよー、ゼロの使い魔! あのスケコマシ野郎のこと取っちめてやれー!」 「ギーシュさん、頑張ってください! あんなよそ者やっつけちゃって!」 双方に、声援が飛ぶ。 シュトロハイムの正面には悠然と立つギーシュ。隣に、モンモランシーが甲斐甲斐しくも付き従っている。 人ごみを押し分け、キュルケがギーシュへと近づく。懐から取り出した手紙を見せる。 ――ボッッ!! キュルケの右手の中で、炎上し燃え尽きる手紙。恐らく『火』の魔法なのだろう。 シュトロハイムのキュルケを介した返答を理解して、ギーシュも顔付きを微かに変える。 胸に挿した赤い薔薇が、彼の右手に移される。 ギーシュから少しはなれた最前列には、シュトロハイムの『主人』であるルイズ。 腕を組み、不機嫌そうに、あるいはふてくされた様に仁王立ち。 ギーシュから離れ近づいてくるキュルケの姿に、いつもは柔らかい彼女の眉は、更に勾配を急にする。 いつでもルイズをからかえる、定位置とも言える場所にキュルケは静止。 意外にもその後ろの列には、ケティの姿も見て取れる。 ギーシュに向け注がれる、熱っぽい彼女の視線。驚いたことにこのギーシュ、どうやら未だに二股を見事継続中。 あそこからどうやってケティの機嫌を(しかもモンモランシーに気付かれないように)取ったのかは不明だが、どうにもたいした奴である。 赤い薔薇――どうやらそれが、ギーシュの杖であるらしい――が、指揮者の操るタクトのように優雅な動きで振るわれる。 太陽の恵みを燦々と受け、真紅の彩りを得た花びらが一枚ひらひらと宙を舞い、やがて地に触れる ――その瞬間! 実験室での化学反応がごとく、発生する光。花びらを、落ちた先の土が包む。 瞬く間に、人の形を模した土。その青く輝く色は、既にもう土ではない。 「僕は『土』のドット・メイジ、『青銅』のギーシュ。メイジだから、魔法で戦わせてもらうよ」 「ほう! つまりその土人形も魔法というわけか?」 「もちろん。彼女は僕が魔法で作った青銅のゴーレム、『ワルキューレ』だ。 それじゃあ、始めようか。名誉を賭けた決闘を!」 土を練成して作られた、青銅の人形――ワルキューレがシュトロハイムに向けて踏み出す。 決闘が、始まった。 ハルケギニアのドイツ軍人 第五話 ゴーレムカイル! 「へえ、まずは一体、それも非武装か。ギーシュの奴、まずは小手調べってことかしら」 シュトロハイムに向う『ワルキューレ』を見て、キュルケが言う。 「ねえルイズ、あなたの使い魔は『何体』まで持つと思う?」 「さあ」 興味がないといった口ぶりの、ルイズの返答。 もちろん本当に興味がないのなら、決闘の舞台である演習場に来ている筈がない。 「なるようにしか、ならないわよ」 「あら、自分の使い魔なのに冷たいのね」 「誰の使い魔かなんて関係ないわ、この決闘は彼の意思だもの。私に出来るのはここで見ていることだけ」 「へえ……あら、ギーシュが仕掛けるわよ」 キュルケの言葉に、顔を上げるルイズ。 振るわれた薔薇の杖に従って、ワルキューレが一気にシュトロハイムとの距離を詰める。 「あの馬鹿! 何やってんのよ!!」 強張った、ルイズの声。視線の先のシュトロハイムは、いまだ一歩も動いていない。 駆けるワルキューレ。シュトロハイムは動かない。 右腕を振りかぶるワルキューレ。シュトロハイムは動かない。 右の拳をシュトロハイムに、叩き付けるワルキューレ。それでも、シュトロハイムは動かない ――動かない!? 青銅で体を構成された、ワルキューレの力は強力だ。その拳の破壊力は、瞬間最大900kg/c㎡!! だがそのワルキューレのパンチを正面から受けて、シュトロハイムは動かない? 吹き飛ばされもせず、それどころかただの一歩の後退すらもしてはいない!? 「なにィッ!!!」 「ふむ、この攻撃力……吸血鬼のおおよそ半分といったところか」 「ッツ! 退け、ワルキューレ」 「フッ、そうはさせん」 突き出されたワルキューレの右腕が、シュトロハイムに掴まれる――そして、潰される。 ゴギリという金属音と共に、右拳から手首までが、まとめて握りつぶされる。 「青銅、か。たしかに土と比べれば硬い……が、このシュトロハイムの前では、脆い脆い!」 「チィィッ!」 杖である薔薇の花を振るい、ワルキューレを引かせるギーシュ。破損した右腕を修復し、仕切りなおし ――だがその隙を、シュトロハイムは見逃さない。 機械で強化された脚力で、一気に跳進。一歩目で後退したワルキューレに並び、二歩目でそれを抜き去る。 ギーシュ・ド・グラモンを射程に収めるための三歩目と同時に、青銅で出来たゴーレムすら砕く右腕を繰り出す。 「くらえェェィ!」 「まずい! 『ワルキューレ』!!」 ギーシュとシュトロハイムの間に落ちる、薔薇の花びら。触れた土が盛り上がり、二人の間を阻む。 ――グギィン!! 二体目、形成途中のワルキューレが、頭部を破壊されて消滅。盛り上がり青銅へと変わりつつあった土が、その場に崩れ落ちる。 立ち上る土煙に紛れ、『レビテーション(物質浮遊、重力無効化魔法)』で十分な距離を確保するギーシュ。 「フー、危ない危ない。なるほど、少々君を見くびりすぎていたようだ」 額に浮かんだ冷や汗を、拭う。更に三枚、薔薇の花びらが宙を舞う。 接地――発光――召喚――接続――練金――固定化!! 先ほどの一体と合わせて、立ち並ぶ計四体のワルキューレ。 「なんと!! 操れるゴーレムは一体だけではないのか!」 「そういうことだ。そして更に!!」 振るわれる、薔薇の花。盛り上がる土。練成によって作られた剣が、槍が、ゴーレムによって握られる。 「君の体はなかなかに硬いらしい。だがこの『武器』による攻撃には耐え切れるかな?」 四体のワルキューレが、歩調を合わせて突進。それぞれの獲物を、シュトロハイム目掛けて振るう。 受けて立つ、シュトロハイム。一体目の剣を受け止め、二体目が突いてくる槍をかわす。 獲物を振りかぶり空いた三体目のの土手っ腹を、 「ヌウゥンッ!!」 左足で思いっきり蹴り飛ばす。演習場のグラウンドに、のめり込む三体目。 四体目は突き出した槍を肘鉄でへし折り、そのまま頭部を殴りつける。 グゴギィイ!! 頭部破壊によりワルキューレを崩壊させ、ギーシュへの道をこじ開けるシュトロハイム。 しかしその針路は、新たに現れた五体目に立ち塞がれる。 「もう一体追加だ、シュトロハイム君。そして武器も……」 消滅した四体目も復活、手にする獲物も再練成。今度は、五体全てが長剣だ。 再び、迫るワルキューレ。彼等を指揮するギーシュは杖で、シュトロハイムを示して言う。 「たしかに、君は頑丈だ。だが僕のワルキューレの攻撃を全て防ぎきれるわけではない。 先ほどの動きを見ればよく分かる、君は『突く』攻撃を恐れている!」 五体のワルキューレが槍兵のように、引いた剣を地面と水平に構える。 キラリと光る、切っ先。ジリリと、シュトロハイムは後ずさった。 ギーシュの観察は、正しい。ワルキューレによる攻撃の中で、シュトロハイムが恐れるのは『突き』なのだ。 どのような攻撃方法でも、ワルキューレの攻撃はパワー自体は変わらない。 『パンチ』でも、『斬撃』でも『突き』でも、問題は、パワーの相手への伝達方法。重要となるのは、攻撃時の相手との接触面積。 つまり、『接触面積が小さいほど攻撃の貫通力は大きい!』ということだ。 『一転に集中した波紋は、柱の男の表皮ガードを打ち破る!』 『吸血鬼が目から発射する体液は、鋼鉄すらも容易く切り裂く!』 両者の原理は全く同じ。 同様に、『パンチによる面の攻撃』、『斬撃による線の攻撃』を防ぐことの出来るシュトロハイムの装甲も、『切っ先という一点に衝撃を集中させた突きの攻撃』は防げない! 長剣による『突き』をかわし、シュトロハイムはワルキューレを殴りつけ、蹴り飛ばす。 殴られたワルキューレは3mほど飛翔してグラウンドに落下、その地面を埋没させる。 蹴り飛ばされたワルキューレは、勢いあまって演習場脇のベンチに激突、それを微塵に破壊する。 それでも、起き上がる彼女たち。武器や四肢の一部が欠けても、ギーシュが素早く補修する。 「くそ、読み誤った! こいつらは吸血鬼よりも頑丈かもしれん!!」 舌打ちと同時に『突き』をかわす。剣をへし折り、ワルキューレを牽制。一足大きく後方に跳び、敵との間に距離をとる。 シュトロハイムの誤算は、ギーシュ・ド・グラモンの性質にあった。 この決闘に望むに当たり、シュトロハイムは相手を過剰といえるまでに警戒していた。 彼はメイジをかつて挑んだ『柱の男』や『吸血鬼』のように『単体で強大な攻撃力を誇る存在』だと考えていた。 だが、実際のギーシュはちがった。強い弱いといった意味ではなく、戦いにおいて果たす役割が根本的に異なっていた。 ギーシュ・ド・グラモンはあくまでも、『ワルキューレ』という『部隊』を率いる『部隊指揮官』なのであった。 「驚いたなあ、五体のワルキューレでも仕留めきれないか」 距離をとったシュトロハイムに応ずるように、ワルキューレを一時退かせたギーシュが言った。 「僕は君の事を本当に侮っていたようだ。君は強い。うん、認めるよ。 だから僕も、僕に出せる最大の力でお答えしよう」 更に舞う、二枚の花びら。長剣装備のワルキューレが、更に二体。 「一つ、先に言っておこう。僕が操れるワルキューレの数は、この七体で最大だ」 「疑問だな、何故その数をわざわざ俺に教える」 警戒を崩さないままのシュトロハイムからの問いに、ギーシュは薔薇の杖を操りつつ答える。 「理由は二つ。一つは僕による僕自身への戒めだ。『自分の能力を相手に知られている』。 そういった状況に自らを追い込むことで僕の中から一片の油断をもなくすことができる」 「もう一つは?」 「言っても言わなくても、結果に変わりはないからさ。 僕は僕とこの七体のワルキューレで、君のことを粉砕する。僕のこの、必勝の隊形で!!」 薔薇を振り上げる、ギーシュ。彼のその動作を合図に、ワルキューレたちが変位を開始。 『指揮官』の前面に展開していた彼女たちが、ギーシュを囲みV字型を作る。 「おい! ギーシュの奴が『あれ』を出すぞ!」 観客である生徒たちが騒ぐ。 「わあぉ! あいつ、完ッ璧に本気じゃない!」 キュルケが、面白くなってきたと目を輝かせて言う。 「どうでもいいけど、この惨状の片付けは一体誰がやるのかしら?」 破壊されたベンチ、何箇所もが陥没したグラウンドを見て、ルイズは小さく呟いた。 「ウ、ヴゥゥ……これは!!」 ギーシュの作った隊形を見て、シュトロハイムはうめき声を上げる。 ワルキューレを――高い攻撃力と防御力を持つ存在を楔形に配置することで、部隊としての衝撃力を強化。 低防御力部隊(この場合はギーシュ・ド・グラモン本人)は楔の内部に置くことで、その弱点をカバー。 その戦術思想はドイツ軍戦車部隊が敵陣地強襲突破時に多用した、パンツァーカイルそのものだ。 いや、この場合楔を組んでいるのは戦車ではなくゴーレムであるからして…… 「名付けて、『ゴーレムカイル』!! いくぞ!!」 ワルキューレに囲まれたギーシュの声で、組まれた楔形陣形がそのまま真っ直ぐに前進を開始した。 この『ゴーレムカイル』こそが、ギーシュが最も得意とする勝ち方。 七体のゴーレムで作り上げた衝角で、敵を真正面から押しつぶす。 メイジの分類的には『ドット』でありながら、並みの『ライン』や下手な『トライアングル』にも打ち勝ってきた攻防一体の戦法だ。 「ま、まずい!!」 楔形陣形の有効性は、ドイツ軍人であるシュトロハイムも十二分に知っている。 圧倒的な、突破力! 全てを飲み込むような、衝撃力!! もし仮に一歩でもここで退いたなら、後はもうこの青銅の波に巻き込まれるしか道はない。 打てる手段は二つだけ。 一つは敵の手の届かない場所からの一方的な遠距離攻撃――体内に各種装備してある銃火器、あるいは右眼第二の能力の使用。 だがこの状況、周りを観客が取り巻く現状では双方とも周囲に生じる被害が予測不可能。 だからここは…… 「正面突破しかない!! ギーシュ、これまでの戦いで弱点を発見したのは何もおまえだけではないわ!!!」 向い立つ、カイルの正面に! 衝角の頂点に! ワルキューレに囲まれたギーシュこそ、この陣形の付け入る隙 ――囲まれているということは、防御力が高いのと同時に回避運動の自由がないことも意味するのだ。 ● ● ● ギーシュ ● 突撃方向―→ ● ● ● (●=ワルキューレ) 「貴様のゴーレムは屍生人と同じ、頭を破壊すれば消滅する!!」 そう、四肢を破壊しただけならしつこく起き上がるワルキューレも、頭部を損傷した場合だけはあっけなくも崩壊する。 屍生人と同様、そこに体の操作を司る、脳のような機関があるのだろう。 突撃するワルキューレの『カイル』に、突撃で応じるシュトロハイム。 その左手――左腕義手に刻まれたルーンが小さく光った。 「ぬゥゥんッ!!」 『カイル』の先頭のワルキューレの、頭部を右腕で握りつぶす。 消滅する、ワルキューレ――その土煙の奥から、二体目、三体目が剣を繰り出す。 「いいぞ、とどめだワルキューレ!!」 土埃が収まるその前に、ギーシュは更なる攻撃を指示。 ダメ押しの『突き』を繰り出そうとした四体目のワルキューレが――突如、崩れた。 「なにぃい!!」 煙が、晴れる。シュトロハイムの左足が、二体目ワルキューレの頭部に見事炸裂している。 それは、いい。二体目三体目が破壊されるのは想定内だ。だが、四体目を仕留めたのは……なんと、ワルキューレの持つ長剣!! 「な、なんだ、その腕は!!」 「ふ! この腕はナチスの科学力によって作られたもの!! 人体の仕組みの拘束など受けん!」 三体目ワルキューレの長剣をへし折ったシュトロハイムの左腕は、異様な角度に変形して、四体目頭部に折った長剣を突き立てていたのだ。 「これで、勝負あったな!」 瞬く間に三体のワルキューレを破壊し、『ゴーレムカイル』の硬い蓋をこじ開けたシュトロハイム。 ギーシュとの距離は2メイル程度しかあらず、新たなゴーレムを召喚する隙を与えるつもりもない。だが、 「まだよ」 観衆の一人、キュルケは目を逸らさずに静かに呟く。 ギーシュは、追い詰められたわけではない。 距離を詰められ身動きがとれず、しかしそれは彼にとって不利にはならない。 距離をとる、必要はない――この間隔が、彼にとって最適な位置取りなのだから。 身動きをする、必要もない――追い詰めて後はとどめを刺すだけなのは、彼のほうなのだから。 関節を無視した動きによって、複数のゴーレムを一度に屠ったシュトロハイム――とどめを刺すため態勢を整えようとした彼に、ギーシュは薔薇の杖を向ける。 「うん、勝負はあった。『君の負け』という形でね!!」 そう、『ゴーレムカイル』はワルキューレで突進するだけの単なる力押しの戦い方ではない! ワルキューレとギーシュ本人、性質の異なる部隊を混合させた二段構えの戦法なのだ!! まずは、両者一体となった突撃……そしてワルキューレの蓋をこじ開けて楔の中にたどり着いたものには、ギーシュ本人による近距離大威力『土』系統呪文をお見舞いする。 『ドット』である彼が使える大威力魔法は詠唱に時間のかかるものが多いが、その時間はワルキューレたちが稼いでくれる。 トリステイン王国有数の武闘派貴族、グラモン家の名は、伊達ではないということである! 「でも」 見物人の輪の中で、モンモランシーは首をかしげる。 「ギーシュさまが」 そこから少しはなれたところにいるケティもまた考える。 ――ドットメイジが唱えられる呪文で、一撃でシュトロハイムを……ワルキューレのパンチを正面から受け止めてぴんぴんしているような存在を仕留められるものなんてあったかしら? 「僕は言ったはずだぞ」 疑問に答えるかのように、吼えるギーシュ。 「君の事を『粉砕する』と!!」 振るわれる杖、唱えられるルーン――これは通常の攻撃魔法ではない。 「まさか!!」 無関心を装おうとしていたルイズが、何かに気付いて顔を上げる。 これは今日の午前、私が失敗し教室の掃除を命じられた、『土』系統の基本魔法――『錬金』だ!! 杖を向けられたその瞬間に、シュトロハイムもまた、ギーシュの魔法の危険性を理解した。 物質構造そのものを変化させる『練金』ならば厚い装甲も無意味だとか、『魂』の宿っていない義手義足ならば小石と同様、簡単に『練金』することが出来るとか、そういった魔法の小難しい理屈は、もちろんシュトロハイムは分かっていない。 ただ、軍人として幾多の生死の狭間を潜り抜けてきた直感が、『これはヤバイ』と彼の脳をプッシュした。 しかし、遅すぎる。 ワルキューレへの攻撃終了状態からギーシュへの攻撃に移行しようとしていた彼の姿勢では、この『魔法』をかわすことは不可能だ。 だが、まずい。これをそのまま受けるのは、非ッ常ーにマズイ!! どうする、どうする、どうナル、ドウスル、ドうナル、ドウナル!!!!???? 薔薇の杖が輝きを増し、同時にシュトロハイムの左手にあったルーンの光も強さを増す。 「さあ、『塵』と化したまえ、シュトロハイム君!!」 ギーシュの一声で、魔法が発動。どうにかしなければ、だが避けきれない。 どうにかかわして、だが無理だ――しかし……いや、本当にかわせないのか? 思うよりも早く、シュトロハイムの体は動いていた。 長剣をへし折った三体目のワルキューレを右腕で掴み、杖と自分の間に強引に割り込ませる。 ワルキューレを盾にして出来た僅かな時間を利用して、上方へと跳躍。半分以上が鋼鉄で構成されているはずの体が、軽い! 「そんなァッ!! 馬鹿なァ!!!」 ギーシュの『練金』は三体目のワルキューレにあたり、その青銅を砂へと変える。 崩れ落ちるワルキューレ、一方のシュトロハイムはギーシュから距離をとって構えなおす。 「な ん だ !? い ま の は !? 」 愕然とするギーシュだが、驚いたのはシュトロハイムも同じ。 あれほどの動きが出来たのは、この体を得てから――いや、その前を含めても初めての経験だ。 左手のルーンが放っていた光は、いつの間にやら消えている。 「ハ……ハ、ハハハハハ」 我に返ったギーシュによる、苦味と渇きの入り混じった笑い声。 「まさかあれでも仕留めきれないとはね。だがまだ、君が勝ったというわけじゃない。 なんだかは分からんが、決闘はいまだ継続中だ」 「――なるほど。それもそうだ」 再び両者の距離は開き、仕切りなおしに。ギーシュの振るう薔薇の杖で、復活する七体のワルキューレ。 そう、まだ決闘は終わっていない。そしてどちらにも、もう残されたカードはない。 「『ゴーレムカイル』! 今度こそ塵に帰してやる!」 「その前に、押しつぶしてくれるわ!」 再度の、両者突撃。正面を避け、横に回りこむシュトロハイム。ワルキューレの頭部を破壊し、カイルの内部へと入り込む。 右腕を、振りかぶる。ギーシュの杖が、向けられる。 拳による破壊と、杖による練成と、一体どちらが早いのか……その結果が出る前に、演習場に風が吹きすさぶ。 「なんだ!?」 「この風は……くそ!」 風が、絡め取る――ギーシュとシュトロハイムを。そしてギーシュの、残っていた六体のワルキューレを。 舞い上げられる、二人と六体。先にワルキューレたちが音を立てて、演習場へと落下。 続いてレビテーションをかけられた二人がゆっくりと地面に降り立つ。 「タバサ!! 決闘の邪魔をするとは、どういうつもりだ!?」 着地から体勢を立て直し、ギーシュは声を荒げると観客の輪の奥を睨む。 彼の視線の先にいたのは、シュトロハイムがルイズと共にコルベールの研究室前ですれ違った少女。 「もう時間」 「なに?」 「昼休みは終了、授業の時間」 タバサは抑揚のない声で答え、手にしていた小振りの杖を、懐の中から取り出した分厚い本と持ち替える。 気がつけばもういつの間にか、午後の授業が始まる時間だ。 見物していた生徒たちも自分の授業に出るために、蜘蛛の子を散らすかのように解散する。 「な、何なんだね、いったいぜんたいこの有様は!!!」 引き攣った声に振り向けば、そこにいるのはコルベール。 武芸の授業監督のためやってきた彼は無差別爆撃を受けたかのような演習場の様態を目にし、顔を茹蛸のように赤くしていた。 演習場――直径0.5メイル規模の穴(ワルキューレ召喚によるもの)×13 直径1メイル規模の陥没(シュトロハイムにより地面にのめりこまされたワルキューレによって出来たもの)×18 直径2メイル規模の穴(タバサの『風』の魔法で舞い上げられたワルキューレが落下して出来たもの)×6 完全破壊状態の脇に設置されていたベンチ×3 授業による使用――絶対不可能!!! To Be Continued…………
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1086.html
演習場には、噂を聞いて集まった生徒たちにより既に人の輪が形成されていた。 学院という閉鎖空間での生活はどうしても単調なものになりがちだ。 そこに囲われ、刺激に餓えた生徒たちにとって、決闘とは(たとえそれが学生と使い魔のものであっても)なんとも魅力的な娯楽なのだ。 シュトロハイムが、輪へと向けて進み出る。主役の片割れの登場に、生徒たちがさっと道を空ける。 「負けんなよー、ゼロの使い魔! あのスケコマシ野郎のこと取っちめてやれー!」 「ギーシュさん、頑張ってください! あんなよそ者やっつけちゃって!」 双方に、声援が飛ぶ。 シュトロハイムの正面には悠然と立つギーシュ。隣に、モンモランシーが甲斐甲斐しくも付き従っている。 人ごみを押し分け、キュルケがギーシュへと近づく。懐から取り出した手紙を見せる。 ――ボッッ!! キュルケの右手の中で、炎上し燃え尽きる手紙。恐らく『火』の魔法なのだろう。 シュトロハイムのキュルケを介した返答を理解して、ギーシュも顔付きを微かに変える。 胸に挿した赤い薔薇が、彼の右手に移される。 ギーシュから少しはなれた最前列には、シュトロハイムの『主人』であるルイズ。 腕を組み、不機嫌そうに、あるいはふてくされた様に仁王立ち。 ギーシュから離れ近づいてくるキュルケの姿に、いつもは柔らかい彼女の眉は、更に勾配を急にする。 いつでもルイズをからかえる、定位置とも言える場所にキュルケは静止。 意外にもその後ろの列には、ケティの姿も見て取れる。 ギーシュに向け注がれる、熱っぽい彼女の視線。驚いたことにこのギーシュ、どうやら未だに二股を見事継続中。 あそこからどうやってケティの機嫌を(しかもモンモランシーに気付かれないように)取ったのかは不明だが、どうにもたいした奴である。 赤い薔薇――どうやらそれが、ギーシュの杖であるらしい――が、指揮者の操るタクトのように優雅な動きで振るわれる。 太陽の恵みを燦々と受け、真紅の彩りを得た花びらが一枚ひらひらと宙を舞い、やがて地に触れる ――その瞬間! 実験室での化学反応がごとく、発生する光。花びらを、落ちた先の土が包む。 瞬く間に、人の形を模した土。その青く輝く色は、既にもう土ではない。 「僕は『土』のドット・メイジ、『青銅』のギーシュ。メイジだから、魔法で戦わせてもらうよ」 「ほう! つまりその土人形も魔法というわけか?」 「もちろん。彼女は僕が魔法で作った青銅のゴーレム、『ワルキューレ』だ。 それじゃあ、始めようか。名誉を賭けた決闘を!」 土を練成して作られた、青銅の人形――ワルキューレがシュトロハイムに向けて踏み出す。 決闘が、始まった。 ハルケギニアのドイツ軍人 第五話 ゴーレムカイル! 「へえ、まずは一体、それも非武装か。ギーシュの奴、まずは小手調べってことかしら」 シュトロハイムに向う『ワルキューレ』を見て、キュルケが言う。 「ねえルイズ、あなたの使い魔は『何体』まで持つと思う?」 「さあ」 興味がないといった口ぶりの、ルイズの返答。 もちろん本当に興味がないのなら、決闘の舞台である演習場に来ている筈がない。 「なるようにしか、ならないわよ」 「あら、自分の使い魔なのに冷たいのね」 「誰の使い魔かなんて関係ないわ、この決闘は彼の意思だもの。私に出来るのはここで見ていることだけ」 「へえ……あら、ギーシュが仕掛けるわよ」 キュルケの言葉に、顔を上げるルイズ。 振るわれた薔薇の杖に従って、ワルキューレが一気にシュトロハイムとの距離を詰める。 「あの馬鹿! 何やってんのよ!!」 強張った、ルイズの声。視線の先のシュトロハイムは、いまだ一歩も動いていない。 駆けるワルキューレ。シュトロハイムは動かない。 右腕を振りかぶるワルキューレ。シュトロハイムは動かない。 右の拳をシュトロハイムに、叩き付けるワルキューレ。それでも、シュトロハイムは動かない ――動かない!? 青銅で体を構成された、ワルキューレの力は強力だ。その拳の破壊力は、瞬間最大900kg/c㎡!! だがそのワルキューレのパンチを正面から受けて、シュトロハイムは動かない? 吹き飛ばされもせず、それどころかただの一歩の後退すらもしてはいない!? 「なにィッ!!!」 「ふむ、この攻撃力……吸血鬼のおおよそ半分といったところか」 「ッツ! 退け、ワルキューレ」 「フッ、そうはさせん」 突き出されたワルキューレの右腕が、シュトロハイムに掴まれる――そして、潰される。 ゴギリという金属音と共に、右拳から手首までが、まとめて握りつぶされる。 「青銅、か。たしかに土と比べれば硬い……が、このシュトロハイムの前では、脆い脆い!」 「チィィッ!」 杖である薔薇の花を振るい、ワルキューレを引かせるギーシュ。破損した右腕を修復し、仕切りなおし ――だがその隙を、シュトロハイムは見逃さない。 機械で強化された脚力で、一気に跳進。一歩目で後退したワルキューレに並び、二歩目でそれを抜き去る。 ギーシュ・ド・グラモンを射程に収めるための三歩目と同時に、青銅で出来たゴーレムすら砕く右腕を繰り出す。 「くらえェェィ!」 「まずい! 『ワルキューレ』!!」 ギーシュとシュトロハイムの間に落ちる、薔薇の花びら。触れた土が盛り上がり、二人の間を阻む。 ――グギィン!! 二体目、形成途中のワルキューレが、頭部を破壊されて消滅。盛り上がり青銅へと変わりつつあった土が、その場に崩れ落ちる。 立ち上る土煙に紛れ、『レビテーション(物質浮遊、重力無効化魔法)』で十分な距離を確保するギーシュ。 「フー、危ない危ない。なるほど、少々君を見くびりすぎていたようだ」 額に浮かんだ冷や汗を、拭う。更に三枚、薔薇の花びらが宙を舞う。 接地――発光――召喚――接続――練金――固定化!! 先ほどの一体と合わせて、立ち並ぶ計四体のワルキューレ。 「なんと!! 操れるゴーレムは一体だけではないのか!」 「そういうことだ。そして更に!!」 振るわれる、薔薇の花。盛り上がる土。練成によって作られた剣が、槍が、ゴーレムによって握られる。 「君の体はなかなかに硬いらしい。だがこの『武器』による攻撃には耐え切れるかな?」 四体のワルキューレが、歩調を合わせて突進。それぞれの獲物を、シュトロハイム目掛けて振るう。 受けて立つ、シュトロハイム。一体目の剣を受け止め、二体目が突いてくる槍をかわす。 獲物を振りかぶり空いた三体目のの土手っ腹を、 「ヌウゥンッ!!」 左足で思いっきり蹴り飛ばす。演習場のグラウンドに、のめり込む三体目。 四体目は突き出した槍を肘鉄でへし折り、そのまま頭部を殴りつける。 グゴギィイ!! 頭部破壊によりワルキューレを崩壊させ、ギーシュへの道をこじ開けるシュトロハイム。 しかしその針路は、新たに現れた五体目に立ち塞がれる。 「もう一体追加だ、シュトロハイム君。そして武器も……」 消滅した四体目も復活、手にする獲物も再練成。今度は、五体全てが長剣だ。 再び、迫るワルキューレ。彼等を指揮するギーシュは杖で、シュトロハイムを示して言う。 「たしかに、君は頑丈だ。だが僕のワルキューレの攻撃を全て防ぎきれるわけではない。 先ほどの動きを見ればよく分かる、君は『突く』攻撃を恐れている!」 五体のワルキューレが槍兵のように、引いた剣を地面と水平に構える。 キラリと光る、切っ先。ジリリと、シュトロハイムは後ずさった。 ギーシュの観察は、正しい。ワルキューレによる攻撃の中で、シュトロハイムが恐れるのは『突き』なのだ。 どのような攻撃方法でも、ワルキューレの攻撃はパワー自体は変わらない。 『パンチ』でも、『斬撃』でも『突き』でも、問題は、パワーの相手への伝達方法。重要となるのは、攻撃時の相手との接触面積。 つまり、『接触面積が小さいほど攻撃の貫通力は大きい!』ということだ。 『一転に集中した波紋は、柱の男の表皮ガードを打ち破る!』 『吸血鬼が目から発射する体液は、鋼鉄すらも容易く切り裂く!』 両者の原理は全く同じ。 同様に、『パンチによる面の攻撃』、『斬撃による線の攻撃』を防ぐことの出来るシュトロハイムの装甲も、『切っ先という一点に衝撃を集中させた突きの攻撃』は防げない! 長剣による『突き』をかわし、シュトロハイムはワルキューレを殴りつけ、蹴り飛ばす。 殴られたワルキューレは3mほど飛翔してグラウンドに落下、その地面を埋没させる。 蹴り飛ばされたワルキューレは、勢いあまって演習場脇のベンチに激突、それを微塵に破壊する。 それでも、起き上がる彼女たち。武器や四肢の一部が欠けても、ギーシュが素早く補修する。 「くそ、読み誤った! こいつらは吸血鬼よりも頑丈かもしれん!!」 舌打ちと同時に『突き』をかわす。剣をへし折り、ワルキューレを牽制。一足大きく後方に跳び、敵との間に距離をとる。 シュトロハイムの誤算は、ギーシュ・ド・グラモンの性質にあった。 この決闘に望むに当たり、シュトロハイムは相手を過剰といえるまでに警戒していた。 彼はメイジをかつて挑んだ『柱の男』や『吸血鬼』のように『単体で強大な攻撃力を誇る存在』だと考えていた。 だが、実際のギーシュはちがった。強い弱いといった意味ではなく、戦いにおいて果たす役割が根本的に異なっていた。 ギーシュ・ド・グラモンはあくまでも、『ワルキューレ』という『部隊』を率いる『部隊指揮官』なのであった。 「驚いたなあ、五体のワルキューレでも仕留めきれないか」 距離をとったシュトロハイムに応ずるように、ワルキューレを一時退かせたギーシュが言った。 「僕は君の事を本当に侮っていたようだ。君は強い。うん、認めるよ。 だから僕も、僕に出せる最大の力でお答えしよう」 更に舞う、二枚の花びら。長剣装備のワルキューレが、更に二体。 「一つ、先に言っておこう。僕が操れるワルキューレの数は、この七体で最大だ」 「疑問だな、何故その数をわざわざ俺に教える」 警戒を崩さないままのシュトロハイムからの問いに、ギーシュは薔薇の杖を操りつつ答える。 「理由は二つ。一つは僕による僕自身への戒めだ。『自分の能力を相手に知られている』。 そういった状況に自らを追い込むことで僕の中から一片の油断をもなくすことができる」 「もう一つは?」 「言っても言わなくても、結果に変わりはないからさ。 僕は僕とこの七体のワルキューレで、君のことを粉砕する。僕のこの、必勝の隊形で!!」 薔薇を振り上げる、ギーシュ。彼のその動作を合図に、ワルキューレたちが変位を開始。 『指揮官』の前面に展開していた彼女たちが、ギーシュを囲みV字型を作る。 「おい! ギーシュの奴が『あれ』を出すぞ!」 観客である生徒たちが騒ぐ。 「わあぉ! あいつ、完ッ璧に本気じゃない!」 キュルケが、面白くなってきたと目を輝かせて言う。 「どうでもいいけど、この惨状の片付けは一体誰がやるのかしら?」 破壊されたベンチ、何箇所もが陥没したグラウンドを見て、ルイズは小さく呟いた。 「ウ、ヴゥゥ……これは!!」 ギーシュの作った隊形を見て、シュトロハイムはうめき声を上げる。 ワルキューレを――高い攻撃力と防御力を持つ存在を楔形に配置することで、部隊としての衝撃力を強化。 低防御力部隊(この場合はギーシュ・ド・グラモン本人)は楔の内部に置くことで、その弱点をカバー。 その戦術思想はドイツ軍戦車部隊が敵陣地強襲突破時に多用した、パンツァーカイルそのものだ。 いや、この場合楔を組んでいるのは戦車ではなくゴーレムであるからして…… 「名付けて、『ゴーレムカイル』!! いくぞ!!」 ワルキューレに囲まれたギーシュの声で、組まれた楔形陣形がそのまま真っ直ぐに前進を開始した。 この『ゴーレムカイル』こそが、ギーシュが最も得意とする勝ち方。 七体のゴーレムで作り上げた衝角で、敵を真正面から押しつぶす。 メイジの分類的には『ドット』でありながら、並みの『ライン』や下手な『トライアングル』にも打ち勝ってきた攻防一体の戦法だ。 「ま、まずい!!」 楔形陣形の有効性は、ドイツ軍人であるシュトロハイムも十二分に知っている。 圧倒的な、突破力! 全てを飲み込むような、衝撃力!! もし仮に一歩でもここで退いたなら、後はもうこの青銅の波に巻き込まれるしか道はない。 打てる手段は二つだけ。 一つは敵の手の届かない場所からの一方的な遠距離攻撃――体内に各種装備してある銃火器、あるいは右眼第二の能力の使用。 だがこの状況、周りを観客が取り巻く現状では双方とも周囲に生じる被害が予測不可能。 だからここは…… 「正面突破しかない!! ギーシュ、これまでの戦いで弱点を発見したのは何もおまえだけではないわ!!!」 向い立つ、カイルの正面に! 衝角の頂点に! ワルキューレに囲まれたギーシュこそ、この陣形の付け入る隙 ――囲まれているということは、防御力が高いのと同時に回避運動の自由がないことも意味するのだ。 ● ● ● ギーシュ ● 突撃方向―→ ● ● ● (●=ワルキューレ) 「貴様のゴーレムは屍生人と同じ、頭を破壊すれば消滅する!!」 そう、四肢を破壊しただけならしつこく起き上がるワルキューレも、頭部を損傷した場合だけはあっけなくも崩壊する。 屍生人と同様、そこに体の操作を司る、脳のような機関があるのだろう。 突撃するワルキューレの『カイル』に、突撃で応じるシュトロハイム。 その左手――左腕義手に刻まれたルーンが小さく光った。 「ぬゥゥんッ!!」 『カイル』の先頭のワルキューレの、頭部を右腕で握りつぶす。 消滅する、ワルキューレ――その土煙の奥から、二体目、三体目が剣を繰り出す。 「いいぞ、とどめだワルキューレ!!」 土埃が収まるその前に、ギーシュは更なる攻撃を指示。 ダメ押しの『突き』を繰り出そうとした四体目のワルキューレが――突如、崩れた。 「なにぃい!!」 煙が、晴れる。シュトロハイムの左足が、二体目ワルキューレの頭部に見事炸裂している。 それは、いい。二体目三体目が破壊されるのは想定内だ。だが、四体目を仕留めたのは……なんと、ワルキューレの持つ長剣!! 「な、なんだ、その腕は!!」 「ふ! この腕はナチスの科学力によって作られたもの!! 人体の仕組みの拘束など受けん!」 三体目ワルキューレの長剣をへし折ったシュトロハイムの左腕は、異様な角度に変形して、四体目頭部に折った長剣を突き立てていたのだ。 「これで、勝負あったな!」 瞬く間に三体のワルキューレを破壊し、『ゴーレムカイル』の硬い蓋をこじ開けたシュトロハイム。 ギーシュとの距離は2メイル程度しかあらず、新たなゴーレムを召喚する隙を与えるつもりもない。だが、 「まだよ」 観衆の一人、キュルケは目を逸らさずに静かに呟く。 ギーシュは、追い詰められたわけではない。 距離を詰められ身動きがとれず、しかしそれは彼にとって不利にはならない。 距離をとる、必要はない――この間隔が、彼にとって最適な位置取りなのだから。 身動きをする、必要もない――追い詰めて後はとどめを刺すだけなのは、彼のほうなのだから。 関節を無視した動きによって、複数のゴーレムを一度に屠ったシュトロハイム――とどめを刺すため態勢を整えようとした彼に、ギーシュは薔薇の杖を向ける。 「うん、勝負はあった。『君の負け』という形でね!!」 そう、『ゴーレムカイル』はワルキューレで突進するだけの単なる力押しの戦い方ではない! ワルキューレとギーシュ本人、性質の異なる部隊を混合させた二段構えの戦法なのだ!! まずは、両者一体となった突撃……そしてワルキューレの蓋をこじ開けて楔の中にたどり着いたものには、ギーシュ本人による近距離大威力『土』系統呪文をお見舞いする。 『ドット』である彼が使える大威力魔法は詠唱に時間のかかるものが多いが、その時間はワルキューレたちが稼いでくれる。 トリステイン王国有数の武闘派貴族、グラモン家の名は、伊達ではないということである! 「でも」 見物人の輪の中で、モンモランシーは首をかしげる。 「ギーシュさまが」 そこから少しはなれたところにいるケティもまた考える。 ――ドットメイジが唱えられる呪文で、一撃でシュトロハイムを……ワルキューレのパンチを正面から受け止めてぴんぴんしているような存在を仕留められるものなんてあったかしら? 「僕は言ったはずだぞ」 疑問に答えるかのように、吼えるギーシュ。 「君の事を『粉砕する』と!!」 振るわれる杖、唱えられるルーン――これは通常の攻撃魔法ではない。 「まさか!!」 無関心を装おうとしていたルイズが、何かに気付いて顔を上げる。 これは今日の午前、私が失敗し教室の掃除を命じられた、『土』系統の基本魔法――『錬金』だ!! 杖を向けられたその瞬間に、シュトロハイムもまた、ギーシュの魔法の危険性を理解した。 物質構造そのものを変化させる『練金』ならば厚い装甲も無意味だとか、『魂』の宿っていない義手義足ならば小石と同様、簡単に『練金』することが出来るとか、そういった魔法の小難しい理屈は、もちろんシュトロハイムは分かっていない。 ただ、軍人として幾多の生死の狭間を潜り抜けてきた直感が、『これはヤバイ』と彼の脳をプッシュした。 しかし、遅すぎる。 ワルキューレへの攻撃終了状態からギーシュへの攻撃に移行しようとしていた彼の姿勢では、この『魔法』をかわすことは不可能だ。 だが、まずい。これをそのまま受けるのは、非ッ常ーにマズイ!! どうする、どうする、どうナル、ドウスル、ドうナル、ドウナル!!!!???? 薔薇の杖が輝きを増し、同時にシュトロハイムの左手にあったルーンの光も強さを増す。 「さあ、『塵』と化したまえ、シュトロハイム君!!」 ギーシュの一声で、魔法が発動。どうにかしなければ、だが避けきれない。 どうにかかわして、だが無理だ――しかし……いや、本当にかわせないのか? 思うよりも早く、シュトロハイムの体は動いていた。 長剣をへし折った三体目のワルキューレを右腕で掴み、杖と自分の間に強引に割り込ませる。 ワルキューレを盾にして出来た僅かな時間を利用して、上方へと跳躍。半分以上が鋼鉄で構成されているはずの体が、軽い! 「そんなァッ!! 馬鹿なァ!!!」 ギーシュの『練金』は三体目のワルキューレにあたり、その青銅を砂へと変える。 崩れ落ちるワルキューレ、一方のシュトロハイムはギーシュから距離をとって構えなおす。 「な ん だ !? い ま の は !? 」 愕然とするギーシュだが、驚いたのはシュトロハイムも同じ。 あれほどの動きが出来たのは、この体を得てから――いや、その前を含めても初めての経験だ。 左手のルーンが放っていた光は、いつの間にやら消えている。 「ハ……ハ、ハハハハハ」 我に返ったギーシュによる、苦味と渇きの入り混じった笑い声。 「まさかあれでも仕留めきれないとはね。だがまだ、君が勝ったというわけじゃない。 なんだかは分からんが、決闘はいまだ継続中だ」 「――なるほど。それもそうだ」 再び両者の距離は開き、仕切りなおしに。ギーシュの振るう薔薇の杖で、復活する七体のワルキューレ。 そう、まだ決闘は終わっていない。そしてどちらにも、もう残されたカードはない。 「『ゴーレムカイル』! 今度こそ塵に帰してやる!」 「その前に、押しつぶしてくれるわ!」 再度の、両者突撃。正面を避け、横に回りこむシュトロハイム。ワルキューレの頭部を破壊し、カイルの内部へと入り込む。 右腕を、振りかぶる。ギーシュの杖が、向けられる。 拳による破壊と、杖による練成と、一体どちらが早いのか……その結果が出る前に、演習場に風が吹きすさぶ。 「なんだ!?」 「この風は……くそ!」 風が、絡め取る――ギーシュとシュトロハイムを。そしてギーシュの、残っていた六体のワルキューレを。 舞い上げられる、二人と六体。先にワルキューレたちが音を立てて、演習場へと落下。 続いてレビテーションをかけられた二人がゆっくりと地面に降り立つ。 「タバサ!! 決闘の邪魔をするとは、どういうつもりだ!?」 着地から体勢を立て直し、ギーシュは声を荒げると観客の輪の奥を睨む。 彼の視線の先にいたのは、シュトロハイムがルイズと共にコルベールの研究室前ですれ違った少女。 「もう時間」 「なに?」 「昼休みは終了、授業の時間」 タバサは抑揚のない声で答え、手にしていた小振りの杖を、懐の中から取り出した分厚い本と持ち替える。 気がつけばもういつの間にか、午後の授業が始まる時間だ。 見物していた生徒たちも自分の授業に出るために、蜘蛛の子を散らすかのように解散する。 「な、何なんだね、いったいぜんたいこの有様は!!!」 引き攣った声に振り向けば、そこにいるのはコルベール。 武芸の授業監督のためやってきた彼は無差別爆撃を受けたかのような演習場の様態を目にし、顔を茹蛸のように赤くしていた。 演習場――直径0.5メイル規模の穴(ワルキューレ召喚によるもの)×13 直径1メイル規模の陥没(シュトロハイムにより地面にのめりこまされたワルキューレによって出来たもの)×18 直径2メイル規模の穴(タバサの『風』の魔法で舞い上げられたワルキューレが落下して出来たもの)×6 完全破壊状態の脇に設置されていたベンチ×3 授業による使用――絶対不可能!!! To Be Continued…………
https://w.atwiki.jp/f_go/pages/5702.html
性能議論コメント欄はスルーズ・ヒルド・オルトリンデ共通のものに設定しました。性能議論はこちらをご活用ください。 - whao (2022-08-17 19 02 54) 偉い - 名無しさん (2022-08-26 14 39 00)
https://w.atwiki.jp/eldersign/pages/362.html
「貴女は誰です? その美しく気高い姿は、まるで……」 「死すべき者にしか私は見えない。私の姿を目にする者は、命の光を消す定め」 ――W.R.Wagner "Der Ring des Nibelungen" ステータス ※個体値0のステータスを表記しています。 No ファミリー モンスター名 種族 タイプ アビリティ スキル 99 妖精 ヴァルキュリア - - 飛行残心 ヴァルキリージャベリンエインヘリヤル(潜在) カード 原/亜 レア レベル HP 攻撃 魔力 防御 命中 敏捷 属性耐性 状態耐性 原種 金 Lv.1 2700 1300 700 700 900 900 - 睡眠耐性5魅了耐性7 Lv.70 4676 3900 2100 2100 2700 2700 亜種1 白金 Lv.1 2800 1400 800 900 1000 1000 Lv.90 5238 4900 2800 3150 3500 3500 亜種2 白金 Lv.1 2700 1300 900 700 1000 1200 Lv.90 5051 4550 3150 2450 3500 4200 Illustrated by キイル 入手方法 通常個体期間限定ショップ「なお昏き嘆きの森」 備考 北欧神話における天使のような存在。日本ではワルキューレ(ドイツ語読み)またはヴァルキリー(英語読み)が一般的か。→wiki 本来9人いるとされているが、伝承によって人数に違いが見られる 主神オーディンに仕えており、戦場において死すべきものを定め、勝敗を決する。認められた勇者をヴァルハラに迎え入れてもてなす役割を担うエインヘリヤルは、この選ばれた勇者たちのこと。→wiki ヴァルハラに行くということは死ぬということであり、つまり彼女らに認められれば死んでしまうということである。その意味で死神的な側面もある ヴァルハラに迎え入れられた戦士たちは、ラグナロクに備えて日夜武芸に励む 白鳥の羽衣を持つ。このキャラ付けの例にもれず、やはりこれを男に奪われる話もある 関連項目 ノルン 主要なノルンの3姉妹の三女スクルドはヴァルキリーとされる コメント 名前 コメント 妖精 残心 飛行
https://w.atwiki.jp/gkpwiki/pages/49.html
ヴァルキューレの騎行 ヴァルキューレの騎行 絶対知ってる。保障する。
https://w.atwiki.jp/houseofhero/pages/1415.html
妖精王ヴァルキリー 妖精族を束ねるワルキューレ族の長。 血縁を重視し、世襲制となる例がほとんど。 特殊な能力を持っている者が継承する例が非常に多く、 明らかに他のナインサークルロードが持たない技も多く使う。 また『戦乙女』の長であるため、ヴァルキリーが母親となると、 その娘が生まれる前に、娘に対してヴァルキリーの名を継がせる 就任式や祭典が行われるという独特の風習を持っている。 また、ワルキューレ族には男子が存在しないため、 必ず異種族と結ばれるという特徴も持っている。 (ワルキューレの生態は同名項目を参照の事) ヴァルキリーの名を継ぐ者はヴァルキリーの姓を持ち、 ファーストネーム=ワルキューレ=ヴァルキリーの 図式で呼ばれる事になる。
https://w.atwiki.jp/3dspxz/pages/96.html
カオックス カオックス 初登場ステージ:プロローグ4 悪魔が恐れる男たち 能力値 1Lv 25Lv 50Lv 99Lv HP 2349 ATK 102 DEF 102 TEC 100 SPD 97 移動範囲:5(飛行) 攻撃範囲:1 重さ:軽い 技性能 技名 分類 習得Lv 追加効果 攻撃力 最大hit数 備考 - 通常技 初期 - - - 必殺技 複数技 コメント
https://w.atwiki.jp/gods/pages/12104.html
ワル~ 【ワア~】【ワカ~】【ワサ~】【ワタ~】【ワナ~】【ワハ~】【ワマ~】【ワヤ~】【ワラ~】【ワワ~】 【ワラ~】【ワリ~】【ワル~】【ワレ~】【ワロ~】 ワル ワルーバール ワルガヌス ワルキューリ ワルキューレ ワルキリー ワルキリュア ワルキュリア ワルキュリー ワルキュリエ ワルク ワルゲル ワルセオフ ワルセオフ(2) ワルダ ワルター ワルタハンガ ワルタリ ワルテル ワルトラーダ ワルトラーダ(2) ワルドラーダ ワルドラーダ(2) ワルトラーダドルレアン ワルナ ワルナワ ワルニヤ ワルハーン ワルフォロメイ ワルフォロメイイッセイ ワルフラーン ワルブルガ ワルプルガ ワルプルギス ワルフレド ワルミベ ワルミリミ ワルムベ ワルムンド ワルワラ ワルンベ
https://w.atwiki.jp/actors/pages/16211.html
モニーク・メルキューレをお気に入りに追加 モニーク・メルキューレのリンク #blogsearch2 モニーク・メルキューレとは モニーク・メルキューレの60%は赤い何かで出来ています。モニーク・メルキューレの40%は夢で出来ています。 モニーク・メルキューレ@ウィキペディア モニーク・メルキューレ モニーク・メルキューレの報道 gnewプラグインエラー「モニーク・メルキューレ」は見つからないか、接続エラーです。 冬のソナタ またでるよ 冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 DVD BOX(初回限定 豪華フォトブックレット&スペシャル特典ディスク付) 本当に長い間、待たせてごめんなさい。「冬のソナタ」韓国KBSノーカット完全版をいよいよお届けします。 映像は韓国KBSのオリジナルそのままに、音楽に関してもユン・ソクホ監督が想いを込めて監修し、一部楽曲を変更しました。初回限定特典にはぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/ユン・ソクホ監督&田中美里の対談スペシャルDVDの他、DVDオリジナルポストカード、シリアルNo付 豪華フォトブックレット(20P)を封入しております。 今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!)に加えて、映像特典の【スペシャル短編集】には、ペ・ヨンジュンのスノーボードシーンの撮影風景も収録しています。 【ここが違う!8つのポイント】 ◆今までの日本用編集版よりも約166分長いノーカット映像(本編後のエンドロールも収録!) ◆ファン待望の「ダンシング・クィーン」「白い恋人たち」をついに収録。 ◆日本語吹替を再収録。萩原聖人さん、田中美里さんが担当、その他主要人物もなつかしいあの声で。 ◆本編は日本語字幕に加えて韓国語字幕も収録 ◆一部変更した楽曲をユン・ソクホ監督が想いを込めて監修!(一部BGMはオリジナル版より変更されています) ◆<初回限定特典1>スペシャルDVD:★ぺ・ヨンジュン 独占インタビュー/★ユン・ソクホ監督&田中美里の対談 ◆<初回限定特典2>豪華フォトブックレット:シリアルNo付(20p) ◆<初回限定特典3>DVDオリジナルポストカード3枚 モニーク・メルキューレのキャッシュ 使い方 サイト名 URL モニーク・メルキューレの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ モニーク・メルキューレ このページについて このページはモニーク・メルキューレのインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるモニーク・メルキューレに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
https://w.atwiki.jp/tekiyakusaikyou/pages/1632.html
【作品名】ウルトラセブン1999最終章6部作 【ジャンル】特撮 【名前】寄生生命体ヴァルキューレ星人 【属性】精神寄生体 【大きさ】身長:58メートル(最大時)、フルハシ参謀を殺した時は、人間より少々大きい程度。 今回は大きさなし、実体なしの精神体としての姿でエントリー。 【攻撃力】 憑依能力 普段は実体を持たず、他の生物に憑依して自由に操る。 また、憑依せずとも周囲の生命体を複数操ることもでき、月面では隊員同士を精神操作して殺し合わせた。 その後、地球に侵入し、民衆を操りマスコミを煽動してウルトラ警備隊への信頼を失わせ、活動停止に追い込んだ。 というわけで精神操作可能な範囲は地球全域規模で、数百人レベルと推測される。 セブンに憑依しようとして拒絶されたところ、「お前の魂が俺を否定する」と言っているので、精神操作+魂憑依の効果がある。 寄生生命体として繁殖し星間戦争にも勝ち残ってきた存在のため、人間と全く別の人外相手にも有効だろう。 【防御力】実体がない時は、本来触れないエネルギー体や不可視の存在を見抜き破壊できるセブンでも感知したり攻撃できない。 物理、不思議両面での攻撃無効×2、および不可視×2 【素早さ】10m以下から光速反応のセブンと互角に戦闘可能。 【特殊能力】瞬間移動可能。別星系から太陽系まで来れるので数百光年規模。破壊された月面基地でもセブン同様平然と行動できるため、宇宙活動可能。 【備考】ウルトラセブン1999最終章6部作、第1話「栄光と伝説」に登場。 積極的排外的防衛政策「フレンドシップ計画」により母星を探査されたことに腹を立て、自分たちの母星が攻撃される前に 地球侵略と地球防衛軍内で最も侵略の障害となるウルトラ警備隊の無力化を狙った。 地球防衛軍の月基地を襲撃し、基地内の隊員たちを精神支配して同士討ちで全滅させた。 このとき月基地に居合わせたフルハシ参謀を殺害しているが、フレンドシップ計画に反対していたフルハシの死により計画は逆に推進され、 ヴァルキューレ星はテストケースとして破壊されてしまう結果になってしまい、更に親友を殺されたダン=セブンの怒りを買うこととなる。 その後、地球に侵入し、民衆を操りマスコミを煽動してウルトラ警備隊への信頼を失わせ、活動停止に追い込んだが、 最後はおとりとなったセブンに憑依し、肉体と魂から追い出されたときに強制的に実体化させられ、対決へ。 その時セブンは、被害者意識のまま全てを正当化し、地球人を醜いものとし殺してもいいと言うヴァルキューレ星人へ【短所】を言い放った。 【長所】最後まで被害者意識だった。実際先制攻撃の対象にされ、本当に母星を爆破されたので分からないでもないが…… 【短所】「お前の心のままに、醜い姿だぞ!」 【戦法】相手に憑依して操って勝ちを狙う。 300 自分:格無しさん[sage] 投稿日:2012/02/24(金) 16 17 24.52 ID 1kDIEmWu [3/3] 寄生生命体ヴァルキューレ星人 考察 ○ モーガン・ル・フェイ 精神操作勝ち ○ ラグトーリン 精神操作勝ち × 黒衣の者 美貌で止まるので無理か。 × 『敵』 実態無い同士、向こうのほうが早いので無理か。